魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵


 

設定

 
前書き
弓兵と槍兵の設定です

随時更新ありです


ネタバレを含むため本編を見てから見ることをお勧めいたします 

 
・衛宮士郎


アーチャー。英霊エミヤシロウ。
魔導士としてはランクはBにはなっているがAA+くらいの実力はある。
ランクが低いのは単に魔力が少ないから。魔力光は真紅。


本来の戦い方ならばSSSオーバーの魔導士とも圧倒的差を見せる。
ただし魔力が充分ある場合。
魔力不足だとブレイドワークスが展開できないため、
せいぜいSランクと互角。
魔力充分なら投影ホイホイ使えるのでブレイドワークスなしでS+の強さ。


料理が得意、微妙に朴念人、答えを得ているためあまり皮肉を言わず、お父さんキャラになりつつある。はやてのおもちゃ。




魔導士としては


近代ベルカ式アームドデバイス『ソードワーカー』


魔導士ランクB


ブレイドフォーム、ガンフォーム、ボウフォームの三種類を使いこなし、近、中、遠距離をすべてこなすオールラウンダー。魔力量の関係からAMFに対抗する手段が力任せにブレイドで叩くことくらい。弓でも破れるが燃費が悪い。実力としてはヴィータリミッターなし≧エミヤと言ったところ。



サーヴァントとしてのステータスは

筋力 D
耐久 D
敏捷 C
魔力 C
幸運 E-

対魔力 C
心眼 A
単独行動 B

筋力、敏捷以外ワンランクダウン、個別はワンランクアップしてます。




…………………………………………………………………


マスターがなのはに代わり、能力が向上。魔導士ランク(非公式)は陸戦S相当、空戦S-相当。
魔力不足の解消により強さが跳ね上がった。


ステータス


筋力 B
耐久 C
敏捷 C
魔力 A+
幸運 D


マスター補正により、筋力2ランク、魔力3ランクアップ。




・衛宮ランス


ランサー。英霊クー・フーリン。
魔導士ランクはBだが、いろいろできるので実質AAAくらい。魔力不足はアーチャーと同じだが運用がうまいので強い。魔力光は群青。



本来の戦闘法はさらに燃費が良く、魔力不足でもSランク魔導士を圧倒。
魔力不足解消しても戦闘力自体に変化はあまりない。が、ルーンを効果的に使えるようになるのでまったく変わらないという事ではない。
魔導士としても相当優秀。大技以外は勘でまねる半チート野郎。


フェイトやなのはをからかって楽しんでいるが、はやてはいじれない。怖いから。ふらふらしてる時はたいてい釣りに行っている。釣竿は士郎の投影品。



魔導士としては


近代ベルカ式アームドデバイス『レッドブランチ』


魔導士ランクB


魔力値は低いが、それを補って余りある才能と魔力運用のうまさに加え、戦闘経験が豊富のため、対人戦ならば隊長格並の強さを誇る。はやて曰く、『リミッター掛けたところで強さ大して変わらないから昇格試験受けさせる意味がない。』




サーヴァントとしてのステータスは

筋力 D
耐久 C
敏捷 A
魔力 C
幸運 E

対魔力 B
戦闘続行 A
ルーン魔術 A


筋力ツーランクダウン以外は目立ったものなし。でも筋力ダウンがいたい。
ルーンが強化。


…………………………………………………………………


マスターがフェイトに代わり、能力が向上。魔導士ランク(非公式)は陸戦SS相当、空戦SS-相当。



ステータス


筋力 A
耐久 B
敏捷 A++
魔力 B
幸運 D


マスター補正により、敏捷2ランク、それ以外が1ランクアップ。

 
 

 
後書き
またまた更新です。

誤字修正。

再度更新。
 

 

プロローグ

 
前書き
凛「答えをえた男。女を守り、逝った男。二人の男の向かう先は?」

なのは「魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵、始まります」

 

 
side アーチャー


体が消える。存在を保てるだけの魔力が尽きたからだ。ゆっくりと消滅を迎える前に、目の前にいる少女を安心させてやるのが元従者としての役目だろう。


「大丈夫だよ遠坂。俺も、これから頑張っていくから」


そう言って、(マスター)に別れを告げ、サーヴァントとしての役目を終え、座に戻る。
その途中だった。突然何かに引っ張られるような感覚。
座に戻る前に再召喚なんてのは異例だ。
しかし、それもいいか、と思う自分がいる。
これが長い物語の始まりとも知らずに………。




side ランサー


消滅を間近に感じながら、俺は言った。


「へっ、そう言うセリフは、もちっと色気つけてから言いやがれ」


嬢ちゃんを脱出させ、言峰の野郎にも一矢報いてやった。
やり残したことなんてねぇ。でも、助けるならもう少し胸のある女が良かったなぁ。 
と、俺はそんなことを考えていた。
これから待ち受ける運命(フェイト)も知らずに……… 。




side アーチャー


召還される時の浮遊感を感じながら目を開ける。


「どこだここは………」


とりあえず私は状況を確認する。ここは森の中。周りに人の気配なし。魔力は…供給されてはいるようだ。
そして最後に一つ。


「この体は確かにサーヴァントのものだな。だというのに……霊体化できんとはどういうことだ?」


霊体化出来ない英霊ならよく知った騎士王(セイバー)がそうだ。
しかし自分は違う。何故、このようなことになっているのだろうか?


「……おい」


マスターとのラインを頼りに居場所を探ると、以外と近くにいるらしいことがわかった。


「無視か?この野郎」


とにかくマスターとなった人物を探してみるか……。
聖杯関連の事にはあまり関わりたくはないがな。


「てめえ!!人の!話を!聞けー!!!」
「……いたのかランサー」


スルーを決め込んでいた私に詰め寄るランサー。
流石に真正面から胸倉を掴まれたので無視は厳しい。


「あぁ?気づいてたよなお前、こっちチラチラ見てたよな?しかも笑ってたよな?」
「何、貴様を無視したら面白そうだったからな」
「てめぇ……ここで殺るか?」
「やめておけ、自然を壊すのは関心しないぞ」
「……チッ。相変わらず生け好かねぇ野郎だ」


仕方なく合流したランサーと共に状況を整理する。
木に登って周りを見渡すと市街地と、海の近くに大きな建物が見えた。
その海の近くの建物からは複数の魔力を感じる。少し異質な感じがあるが、ラインからマスターがそこにいる可能性が高いことが伺えた。


「ランサー、近くの建物に人がいるようだぞ。君もマスターとなった人物を探しているのだろう?」
「おうよ。まぁ、とりあえず行ってみるか」


市街地を横目に私達はその建物へと向かうことにした。




side なのは


新人達の訓練を終え、隊舎に戻る途中。


「おーい、なのはちゃ~ん」
「なのは、お疲れ様」
「はやてちゃん、フェイトちゃんも。どうしたの?」


二人とも忙しいはず。なのにわざわざここまで来る理由は何だろう?


「お昼、一緒にどうや?」
「いいけど…わざわざそのために?」
「…もう一つ、別の目的もあるけどね」


私の疑問に答えながらはやてちゃんは両手の甲を見せてきた。
その両手には刺青のような模様が二つ。なんなんだろう?
と、向こうから………人が来る?なんだろう……あの人たち。
フェイトちゃんとはやてちゃんも気づいたみたい。
その人たちは赤い外套に浅黒い肌に白髪で長身の男の人と、細身の全身青いタイツみたいなのを着ている青い髪の男の人の二人組だった。そのうちの一人、青い人がこちらに話かけて来た。


「よう、嬢ちゃんたち。聞きてぇ事があるんだ」
「なんや?うちで良ければ答えるで」
「ここどこだ?」
「機動六課の隊舎や」


青い人の聞き方も悪かったけど、道を聞いてるんだろうからその言い方はひどいと思う。


「……はい?」
「……はぁ、貴様の聞き方が悪いのだよ。すまない、この街はなんという名前なのだ?」


青い人に呆れたように言いながら赤い人が聞き直す。


「ここは管理局陸上本部のある世界、ミッドチルダの南駐屯地A73区画や。」
「「…………はい?」」
「地球ですらない、だと………」
「お二人さん、もしかして、地球の人か?とりあえず気になる事もあるし、中で詳しい話聞いたるよ。それにしても、変な格好やねぇお二人さん」
「ほっとけ!」


はやてちゃんは初対面の二人の格好ににやつきながら突っ込んだ。
相当失礼だと思う。と、ふざけているはやてちゃんが念話を飛ばして来た。


(この人たち、魔力持ちやな。でも、なんか変や)


はやてちゃんはふざけていながらも気づいていた。この人たちの魔力。その異質さに。
伊達や酔狂で部隊長やってるわけじゃないね。
すると今度はフェイトちゃんも念話を飛ばして来た。


(なのは、あの人、どう思う?)
(うーん、地球から来てて、魔力持ち、しかも少し変な魔力……)
(……そうじゃなくて……ね?)


フェイトちゃんの困ったような視線の先には、青い方の男の人……なんかフェイトちゃんを見て笑ってる……楽しそうに。


(はやて、本当にこの人たちの関わるの?)
(魔力持ちの地球出身者。上手く行けば協力者として引き込めるかも知れんやろ?)
(あ、あはは……なるほどね)


相変わらずはやてちゃんはこういうときの行動が早かった。



…………………………………………………………………


所変わって部隊長室。二人の男性と対面して座る私達。


「とりあえず、何から話そか?」
「先に、私たちの方からいいか?」
「ええよ」
「根源、聖杯、英霊、サーヴァント、魔術師、令呪、宝具。いずれかに聞き覚えはあるかね?」


聖杯と魔術師以外は全く聞いたことが無かった。聖杯なんてものも御伽噺の中のものしか知らないし、この人達は一体……?


「うーん、魔術師、ねぇ……長いこと魔導師やっとるけど御伽噺でしか知らんなあ」
「成る程……。君達も魔に関わりを持つようだな。ならばこちらの情報を開示しよう」


魔に関わりを持つ、と言っているが、地球に魔法技術は無いはず…。


「まず最初に、私達は英霊と言う人を超越した存在だ。まあ英雄が精霊化したものとでも思ってくれ」
「へー。お兄さん、もしかしてあれな人か?」
「はやて。真面目に聞こうよ……」


まあいきなり人を超越してる、とか言われても訳がわからないよね。


「まあ証拠となるものなど……ああ。あるか。ランサー、ゲイボルグを」
「なんでてめーに命令されなきゃなんねーんだよ。……まあいいぜ。ほらよ」


そうして青い方の彼は莫大な魔力の込められたら赤い槍をどこからともなく取り出した。
はやてちゃんはそれを見て目の色を変える。


「ゲイボルグ……クー・フーリンの槍やな」
「お、嬢ちゃん俺のこと知ってんのか?」
「……と、こいつ自身が証拠だ。アルスターの大英雄クー・フーリン」


アルスター伝説のことははやてちゃんに聞かされたので知っている。……まさか本人と会うとは思わなかったが。


「わかった。これだけの物を見せられたんや。信じるで」
「わかってもらえて何よりだ。それで、私達は今魔力を供給してくれているマスターを探している。そのつながりから見つけたのが君達なのだが……最近刺青のようなものが体のどこかにないかね?」
「もしかしてこれかな?」


はやてちゃんが両手の甲を見せる。


「……そうだ。どうやら、君は私たち二人とものマスターのようだ」
「そんなら、うちの元で働いてもらうで?マスターの言うことは聞くもんなんやろ?」
「……やることがあるわけでもなし、構わんが具体的には何を?」
「うちの所有する個別戦力として、この機動六課に入隊してもらう。雑用や戦闘などいろいろやってもらうで」
「戦闘やるなら俺らの力見せた方がいいよな?」
「その前に赤い人の名前、教えてもらえへんか?」
「私はア「こいつは衛宮士郎。士郎って呼んでやれ」……」


なんか赤い人…士郎君がクー・フーリンさんの事すごく睨んでる……


「……衛宮士郎だ。よろしく頼む」
「で、クー・フーリンさんの方はそのまま呼んでたら色々とまずいことなりそうやし、なんかいい偽名とかないかな?」
「なら衛宮ランスとでもするか」
「兄弟ってことにしとくんか?」
「おい、なにをかっ「ああ。それでいいぜ」…」


またもや士郎君がランス君?って呼べばいいのかな……の事睨んでる……。


「ちなみに、俺が兄貴な」


士郎君、諦めた顔してる……なんかランス君に遊ばれてるのかな?
と、はやてちゃんから念話が入る。


(なのはちゃん、士郎の方ばっかり見て、惚れたか?)
(な、なな、はやてちゃん!)
(士郎って、長身、イケメン、引き締まった体と外見はええし、性格もよさそうやからなぁ~。)
(そんなんじゃないってば~)


「とりあえず、これってなんなんや?」


上手く話をそらされた。はやてちゃんは相変わらず絶好調だった。



「それは令呪。令呪は契約の証にして私たちへの三度のみの絶対命令権だ」
「そうなんか!よーし、なら“二人とも、うちの言うことには絶対逆らうな!”」


そう言うと、はやてちゃんの両手の甲から模様が一つずつへった。


「命令権と言っても、そのような漠然とした命令は効果が薄いのだ。まったく、私のマスターはその命令をしなければ気がすまないのか?君も彼女に似ているところがあるし……」
「確かにマスターの声は嬢ちゃんににてるな、シロウ?」
「貴様にその名で呼ばれるとイラっとするな」
「まあまあ、二人ともその辺で、ね?」


フェイトちゃんが二人をなだめ、話は終わる。


「うちの言いたいことは大体今の話の中で出てもうたからな。あとはミッドチルダや管理局について、聞きたいことに答えるで」


はやてちゃんがそう言うと、それぞれが返事を返す。


「そこいらについては、明日でもいいか?俺は日が高いうちにこん中を見て回りたい」
「そか。なら、フェイトちゃんとなのはちゃん、二人の案内をお願いね」
「私は結構だ。部屋に案内だけしてもらえば、あとは休んでいたいからな……」
「なら、なのはちゃんが士郎、フェイトちゃんがランスでええ?」
「う、うん。私は大丈夫」
「俺はそっちの方がいいぜ」
「私も大丈夫」
「了解だ。マスター」


二人とも納得したみたい。フェイトちゃんは若干嫌そうな顔はしていたが。


「そうか。なら、二人とも……」
「「「機動六課にようこそ」」」


こうして、平穏とは程遠い運命の入り口に立った二人であった…………。 
 

 
後書き
六課メンバーとは 次回以降から絡んで行きます

大幅な話の流れの変更をしました。

誤字修正しました。

2回目の修正しました。

10/30 改定終了 

 

0.5話~槍兵と執務官 改定版

 
前書き
なのは「新たな出会いと始まり」

士郎「その中で、今回はフェイトとランサーの関係に迫ってみよう」

なのは「0.5話槍兵と執務官、始まります」 

 
side はやて


ある程度の説明が終わり、士郎は部屋の方へ。ランスは六課の隊舎を回るそうだ。
だが…………まだ終わっていないことがある。


「二人とも、そのままの格好で居る気か?」
「着替えがない以上、そういうことになるな」
「…もう少しだけ行くのは待っててや」


私はある人物に通信をする。私の家族の中でもいたずらと料理以外の家事をよく手伝ってくれる………シャマルに。




…………………………………………………………………


そうして連絡をとってから5分後。


「はやてちゃ~ん、お待たせ。あなた達が士郎さんとランスさん?」


頼りになる相棒、シャマルが到着。


「衛宮士郎だ。よろしく頼む」
「衛宮ランスだ。よろしくな、綺麗なおねーちゃん」


二人から自己紹介されるシャマル。


「綺麗だなんて、嬉しいわ。でもね、そんな格好だと引いちゃう女の子もいるかもしれないわよ?」
「確かにこれではな」


にやつく士郎に対してランスはというと。


「うっせえ!」


との対応。


「そんなわけで、お二人の制服を持ってきました~!」
「さっそく着替えや!」


さあ!レッツ、お着替えた~いむ!



side 士郎


とりあえず着替えたが……言いたいことがある。


「なぜサイズがぴったりなのだ………」
「私の目をなめたらあかんでえ?伊達に目だけでおっぱいのサイズがわかる女、と呼ばれてへんのや!」
「へぇー、そいつはすげえな」
「せやろ?ちなみになのはちゃんは」


そこまで言ったところでマスターがぶっ飛んだ。
後ろには顔を真っ赤にしたなのはが。フェイトも同様にしていた。そしてぶっ飛ばしたマスターの所に行き、声の限り叫ぶ。


「また!はやてちゃんは!そういうことを!」
「勝手に!男の人に!教えるんだから!」


そしておもいっきり踏みつけていた。


「ギブ!ギブ!中学の時のこと引きずらんといてや~」
「まあまあいいじゃねえか、今はともかく中学生の時ならよ」


フェイトが赤くなった顔のままランサーに突っかかっていった。


「良くないよ!文化祭の一般のお客さんに勝手に言いふらすんだよ!」
「………ええやないか、中学生ですでにDカップの美少女が給仕してくれるメイドカフェ、大盛況やったやんか………学校の内外にシャマルとビラ配るの大変やったんやで!」
「準備の時いないと思ったら、そんなことしてたの!?」
「一人一人人柄とスリーサイズを書くのはしんどかったわ~。あ、なのはちゃんのコピーは『天使の笑顔で癒しをくれるCカップ美少女!』やったんやで!」
「いかがわしい店みたいに見えないこともないな………」


私のつぶやきに同意するフェイト。


「でしょ?はやてはこんなことばっかりするんだよ!」
「男としては嬉しいかぎりだな。で、フェイトは今どんくらいなんだ?」


そんなことを言ったランサー。後ろのフェイトが震えている。
これは展開が予想できるな。


「す、す、す」
「す?」
「スケベー!!!!」


バチーン、と小気味良い音が部屋中に響いた。
昔、自分もこんな風に叩かれたことがあったなぁ、と物思いにふける私であった。




side ランス


「全く、いい一撃だったな」
「ご、ごめんなさい………」


フェイトは見るからに落ち込んでいる。


「ったく、気にしてねぇからあんまり顔曇らせねえでくれや。美人が台無しだぜ?」


浮いた台詞を言うが、頬に紅葉がしっかり浮かんでいるため、全然格好がつかない。


「はわわ………び、美人!?」


しかし気が動転していたフェイトは真っ赤になってしまった。


「おいおい、大丈夫か?」
「だ、だいちょぷ、れす」


………全く大丈夫ではなかった。と、都合よく一つの部屋を見つけたので話題をそのことに移す。


「お?ここはなんだ?」
「ふぇ!?………えっと、ここは管制室です。戦闘時にロングアーチが指示を飛ばすための部屋になります」
「ほー、指令室、ってとこか。それよりもよぉ」


そう言いながらフェイトを見ると無意識かはわからんが胸を隠していた。
腕でつぶれて逆にいい光景だ。


「なんでしょう?」
「敬語は止めてくれねえか?これから俺はあんたの部下になるんだぜ?」
「で、ですが………」


煮え切らないフェイトにこちらもカードを切る。


「あいつには敬語じゃねえのにか?」
「う、うう………わ、わかりました」
「既に敬語じゃねえかよ……ククッ、はははははっ!」


わかったといいつつも敬語の抜けないフェイトのテンパりようがおかしくて思わず笑ってしまう。


「何が可笑しいんですか?」
「いやなに、俺に苦手意識でもあんのかなってよ」
「そ、そんなことは……」


その反応。あるって言ってるようなもんだよな。


「あるのか。ま、初対面からあんなだもんな。ねぇほうがおかしいか。お、ありゃなんだ?」
「ああ、あれは……デバイスの調整室です。ここでデバイスマイスター達がデバイスの調整を行っているんですよ。覗いて見ます?」
「いや、邪魔になるだろ」
「いえ、今の時間はそんなに忙しくないはずですから」
「そうか。そんならちょっくらいってみるか」


そういって俺たちは調整室に入った。




side フェイト


クー・フーリンさん。又の名?を衛宮ランス。第一印象は格好は変だし、ちょっと怖かった。歴史に名を残す程の人なのにスケベな人。だけど、物珍しそうに隊舎の中を見る姿が子供っぽくて可笑しかった。
調整室に入った私たちを出迎えてくれたのはシャーリーだった。


「あ、フェイトさん。あの、そちらは……」
「今日付けでここに配属になった衛宮ランスだ。よろしくな」
「ええ。こちらこそ。シャリオ・フィニーノです。シャーリーって呼んでください」


お互いに自己紹介も終えたようで話題がデバイスに移る。


「で、ここにいるってことはアンタがデバイスマイスターか」
「ええ。衛宮さんはデバイスは?」
「持ってねえんだ。だからいろいろと教えてくれると助かる。それと、俺の事はランスでいいぜ」
「わかりましたよ、ランスさん。それでですね、デバイスというのは………」


シャーリーの説明を聞いて表情がコロコロ変わっている。
悪い人じゃないみたい………と、思っていた私は不意にバランスが崩れるのを感じた。


「フェイトさん!危ない!!」
「え?」


足元にあった部品に気が付かずに私は転倒していた。
ぶつかる、と思い身構えたが、衝撃は軽かった。呆然としていた私にかかる声。


「全く、気をつけろよな」


それはランスさんのもの。しかも私はランスさんに抱きとめられていた。
それもお姫様抱っこで。


「……………ごごご、ごめんなさい!!」
「いや、気にするな」
「そ、それより………」
「ん?なんだ?」
「お、降ろしてください……」
「ああ、ほらよ」


乱暴な口調とは違い、優しく降ろしてくれる。こういうことには慣れている様だ。


「いや~すごい反射神経ですね~」
「まあな」
「あ、あの……」


お礼を言おうと話しかける。
だが、苦手意識が抜けきってないためかたどたどしくなってしまった。


「なんだ?」
「ありがとう、ございました……」
「いや、いーって。それより、怪我はねえか?」
「は、はい。おかげさまで」


一連の会話を聞いていたシャーリーが話に入ってくる。


「そういえばフェイトさん、なんで敬語なんですか?」
「あ~なんかよ、俺に苦手意識があるみたいなんだ」
「え!?こんなに面白くていい方なのに……」
「おう、ありがとよ。でもなぁ、初対面でちょっと………」
「何かあったんですか?」
「ビンタされた」
「………………え!?」


その言い方じゃあ私が悪者みたい……。


「そ、そんな言い方しなくても……」
「事実だろ?」
「はうう……」
「まあフェイトさん、男性に免疫ないですから……」
「そ、そんなことないよ!」
「ほー、初心なのか?」
「そうなんですよー、この間も……」
「シャーリー!!もう!次行こう!日が暮れちゃうよ!」


彼の手を引いて強引に部屋から出る。
ある程度進んだところで彼が口を開いた。


「お前、意外と強引なんだな」
「え?はわわわわ!」


その言葉で手を掴んでいることに気が付く。


「ははははっ、シャーリーの言うとおり、マジで初心なんだな。大人びてると思ってたが、可愛いとこあんじゃねえか」
「あ、あなただって子供っぽいところあるじゃないですか!」


一瞬の沈黙の後、彼はまた笑い出した。


「くっくっくっく、そうかよ、はははははっ!」


本当におかしそうに笑う。つられて私も笑い出してしまった。


「ふ、ふふふ、はははははっ!」
「お、やっと笑ったな」
「え?」
「ずっと真面目な顔ばっかしてたからな。ああ、怒ってもいたな。でもよ、笑ってた方がずっといいじゃねえか」


簡単にそんなことを言う彼に私は不信感を抱く。
だからか、つい口を開いた。


「……あなたは誰にでもそんなことを言うんですか?」
「誰にでも、って訳じゃあねえな。こういうふうに言うのは気に入った女にだけだ。まだまだ青いところもあるけどよ、お前はいい女になるさ」
「今日会ったばかりでどうしてそこまで?」
「そりゃ、いろいろあったからねぇ………」
「う………」


確かに今日はすごくいろいろあったけど……。


「まあ、俺はこれからお前がどう成長していくかを見てるさ。よろしくな、フェイト」
「はい………いや、わかったよ。ランス」
「おや?どういう風の吹き回しだ?」
「あなたが私の事を見るというなら、私もあなたの事を見る。貴方がどういう人なのかをこの目で確かめる。だったら立場は対等な方がいいでしょ?」
「なるほどな、そういうことか。でもよ、一つだけ言っておくぜ」
「なに?」
「俺に惚れるなよ?」
「この……………バカー!!!!」


この後騒ぎを聞きつけたなのはと士郎に止められるまで、私とランスの追いかけっこは続いた。




side なのは


私ははやてちゃんの使い魔?になった衛宮士郎君を彼の部屋へ案内している。彼ら二人の部屋ははやてちゃんがシャマルさんに頼んで用意したらしい。はやてちゃんはというと。


「シャマルってジェバ■ニみたいやろ?」


っていってたけど、ジェ■ンニって誰なんだろう……。


「そういえば、私は君の部下になるのだったな。配属されるのはどのようなところなのだ?」


と、考え事をしていたら彼……士郎君がそんなことを聞いてきた。


「士郎君が配属されるのは、この機動六課のフォワード部隊の一つ、スターズ分隊だよ。私が隊長で、副隊長にははやてちゃんの守護騎士のヴィータちゃんがついてるんだ。残りの二人、スバルとティアナには明日紹介するね」
「一つ、という事はほかにも部隊が?」
「うん。フェイトちゃんが隊長をしているライトニング分隊があるよ。ランス君はそっちに配属だね」


納得したのかふむ、と呟いてそれ以降は静かにしている士郎君。しかし、こうしてみていると………。


「む?何か私の顔についているか?」
「え!?ううん、違うの。士郎君ってホントに背が高いなあって」
「まあ確かに私の身長は比較的高い部類に入るが………」
「それに、さっきもだけどとっても苦労してきたみたいに見えるんだ」
「苦労か。確かに子供のような自称保護者、妹のような姉、傍若無人な師など周りにまともな人がいなかったから苦労はしたな」


な、なんかすごい人たちだね…………。


「な、なんていうかお疲れ様……。士郎君、はやてちゃんにいたずらされそうになったら言ってね。フェイトちゃんと私で助けるから!」
「そうか、ありがとう」


そんなことを話しているといつの間にか士郎君達の部屋についていた。


「それじゃあ、明日は訓練が………」


そこまで私が言ったところで私たち二人は固まった。その理由はというと………。


「待てー!!!」
「とりあえずその光ってんの出すのはやめてくんねえかな?」
「じゃあ大人しくつかまって!!」
「それは無理だ!」


バインドを乱発しながらランス君を追いかけるフェイトちゃんがいたからだ。


「……アレは止めたほうがいいのか?」
「………う、うん」


その後、二人がかりでフェイトちゃんを止めるのに30分かかった。




side はやて


「ほほう、なかなかおもしろいことになってきたなあ?」


何か面白いことが起きそうな予感がした私はシャマルと共にフェイトちゃんとランスを追跡していた。
結果はフェイトちゃんのあわてた姿など中々見れないものを見せてもらった。


「今後の展開が楽しみやな~シャマル」
「そうね。フェイトちゃんとランスさん、いいコンビじゃない?」


これはなかなかの掘り出し物を捕まえたみたいやな~。今後が楽しみや!




この掘り出し物二人は、いい意味でも、悪い意味でもこれからの六課に影響を与えていくことを、このときは誰も知らなかった………。 
 

 
後書き
外伝です。次回から本編に戻ります。

六課襲撃編までに幕間をできるだけ書きたいなぁ~と思ってます。


それでは今回はこの辺で~

11/6 改定完了 

 

一話~出会い

 
前書き
フォワードたちと会う話です
アーチャーはこれ以降士郎、ランサーはランスで表記します。

6/19改訂を行いました。 

 
side 士郎


目が覚めた。どうやら、まだ早朝のようだ。時計を見ると、午前4時。このまま二度寝というのは性に合わない。


「……朝の鍛練でもするか」


外に出て、干将莫耶と同じ長さの木刀を投影。と、そこへ来客が。


「鍛練か?いいねぇ、俺も混ぜろよ」
「ランサーか、……まぁいいだろう。こいつを使え」


やってきたランサーに投影した木の槍を投げ渡す。


「そんじゃまあ、行きますかねぇ!」
「……フン、来い!」




side なのは


朝、訓練場を見に行こうとして外に出ると、そこには異常な光景があった。
士郎君とランス君の打ち合い。その速さと技術は人間ではないと言う二人の言葉を信じさせるには十分なものだった。しばらくその光景に見惚れていると、フェイトちゃんとはやてちゃんもやってきた。


「ほえぇー。あの二人やるなぁ」
「なのは、あの二人に勝てると思う?」


フェイトちゃんの質問に対し、私は考えを巡らせる。
そして出た答えは……


「遠距離ならともかく、近接格闘だったら私じゃあ勝てないね……。フェイトちゃんは?」
「私も無理、かな。一撃がかなり重そうだからかすっただけでも持っていかれそう……」
「そんなことより……二人とも~そろそろご飯の時間やでぇ~」


どうやらはやてちゃんの声が聞こえたらしく、訓練を中断する二人。
勝負はほぼ互角だったが、若干ランス君の有利で終わったみたいだ。


「ここまで、か。マスターが呼んでいる」
「今回はお前の負けだな」
「なに、本番なら私も遅れはとらん」
「へっ、言ってろ!」


とりあえず、聞きたいことは色々あるけど、まずは朝ご飯を食べてからだね。




side はやて


朝食の後、昨日聞けなかったことを聞くために二人を部隊長室に呼ぶ。
なのはちゃんとフェイトちゃんも呼んである。


「さて、昨日聞けなかった事について話してもらおか」
「あ、私からいいかな?」


最初に質問したのはなのはちゃんだ。


「なのはちゃん何か聞きたいことあるんか?」
「二人の訓練を見たんだけど、明らかに使い魔っていうレベルじゃないよね?」


それは私達皆の疑問だ。使い魔とは主の魔力で現界するのだから主のサポートをするのが普通だ。
それにしては二人の技量は高すぎる。


「……隠しだてすることでもない、いいだろう。そもそも私たちサーヴァントは過去に活躍した英雄、その魂だ。まぁ私は例外なのだがな。そして私たち英霊は自信が英雄になった象徴……まあ、武器や魔術などのことだな。それを宝具と呼び、基本的に一人一つ持っている。こいつはゲイ・ボルグ、私は自信の心象風景を具現化する魔術だ」
「魔術?魔法じゃないの?」


魔術?それってオカルト的な…アレか?


「魔法は使えん。私の知る限りでは魔法使いは世界に数人しかいない」
「え!?私たち魔法使うけど………」
「なんだって?」
「なんだ、お前知らなかったのか?」


彼らの言うことと私達の知ることは色々と差違があるようだ。


「どうも意見の食い違いがあるみたいや。士郎の知る魔法ってどんなや?」
「私の知る魔法は並行世界の運営、魂の物質化、後は第五魔法『青』。これくらいだな」


なんかいよいよオカルトチックになってきたなあ。それにしても並行世界、か。もしかしてこの意見の食い違いは……


「ねえ、並行世界って何?次元世界とは違うの?」


ここで知りたがりのなのはちゃんが並行世界について聞いた。私の知ってることと違いがないともいえない為、士郎の話しに耳を傾ける。


「いや、私の知る並行世界は地球からまた別の地球に渡る……つまりは自分Aがいる世界と自分Bがいる世界と……む、この表現はわかり辛いか」
「いや、十分わかりやすいよ。それと、これは私の推測に過ぎんのやけど、今の二人の状況がそうなのかもしれへんよな?」
「確かに有り得ない話ではないな……」


士郎と私で考えを巡らせていると、フェイトちゃんがおずおずと手を上げて発言した。


「ええと、つまり私たちの知る地球と、士郎たちのいた地球は同じ地球と言う名称を持つけど、違う世界、ってこと?」
「ま、そーゆーことになるんじゃねーの?」


ランスが同意するが、ノリが軽い為緊張感が欠ける。
そんな訳で私は咳払いして一呼吸置くと話し始めた。


「つまりや。私らも士郎たちも、同じ地球と言う名称の星にいたけど、二人がいた地球とは違う世界やったってことやろな。管理局で仕事してても魔術なんてのは聞いたことあらへんし、私達のいた地球で魔術なんてものは伝承でくらいしか聞いたことはない。これで決まりやろ」


私の完璧な説明に対し、さして興味を示した様子もなく質問を続けるなのはちゃん。


「なるほど~、それで、士郎君の魔術の心象風景の具現化っていうのは?」
「私の場合は無限に剣を内包した世界を作り出す。一度見た剣や槍などは手元にその偽物を作り出せる世界だ。さきほど使っていた木刀などもその一端だ」
「へぇー。それより、ランス君のゲイ・ボルグ?だっけ?どこかで聞いたことあるような気がするんだけど………」


なのはちゃんは本当にものを知らんな………ゲイ・ボルグなんて有名すぎるって言うのに……


「ゲイ・ボルグはケルト神話のアルスター伝説の英雄クー・フーリンの槍で、与えた傷を治らなくさせる呪いの槍だよ」
「へぇ~。フェイトちゃんよく知ってるね」
「なのははもう少し勉強した方がよかったんじゃ……それより、ゲイ・ボルグが象徴てことは……」


そう。彼の伝承は私も読んだことがある。ただ、イメージが目の前のチャラ男とはかけ離れてるとは思うんやけどな。


「そう。俺の真名はクー・フーリンだ。ま、でも呼ぶときはランスでいいぜ」
「偽名だったってこと?」


フェイトちゃんがそう聞くが、奴のあの名乗りには同じ匂いを感じた。つまり……士郎を弄る為の名乗りだということを!


「英霊は正体を隠すものだからな。私のような例外なら名前を教えたところで知っている者などいないが」


もっとも、当のいじられた本人は完全スルーを決め込んだようだが。


「士郎君の言う例外って?」


ここでまたもや知りたがり姫の質問コーナー。


「私は未来の英霊なのだよ。だからエミヤシロウという英霊を知る者はいない。英霊はその知名度により力に違いが出るものなのだが……と、私の事情より、私たちのこれからについての話をしようではないか」


えー。気になるのにー。と言いたいのをグッとこらえて指示を飛ばす。


「それは部隊長の私から。士郎は六課の部隊の一つ、スターズ分隊センターガードをメインに、状況によっては他のポジションもやってもらうよ。ランスはライトニング分隊にガードウイングとして入ってな。士郎はなのはちゃん、ランスはフェイトちゃんに従ってもらうで」
「心得た」
「へーい」


この後は、管理局や魔法、ロストロギアについて少し詳しく説明し、二人からは魔術回路や聖杯、サーヴァントシステムについての話を聞いた。とりあえず、二人が能力を隠して戦うことが出来るようにとデバイスを作ることにした。この二人の力、どれほどのものかは完全には把握していないけど、間違いなく生きるロストロギア扱いになるだろう、という事への配慮。二人は、私たちの危機の時のみ本来の戦い方で戦う、という条件付きで納得してくれた。
最終的にフォワードメンバーに交じって午後の訓練に参加するところまで決めて、一旦解散となった。




…………………………………………………………………


昼食のために食堂へ行こうとすると、ランスがポツリと呟いた。


「そういえばおまえ料理がうまかったよな」


漏らした情報を逃すようなことでは捜査官は務まらないッ!


「貴様また余計なことを………!」
「へぇ、それは食べてみたいなあ」
「私もー」
「二人とも、士郎に迷惑じゃ……」


なのはちゃんはノってくれたのにフェイトちゃん(クラス委員長)ときたら……(中学の時の委員長はアリサである。フェイトはすずかと共に副委員長をしていた。)


「……構わんよ。どうせこいつは私がうんと言うまで引きずり続けるだろうからな。厨房を借りるぞ」


だが、士郎は簡単に折れた。もしやこいつ、女の頼みに弱い……?




…………………………………………………………………


で、士郎の作ったものは………鯖の塩焼きとだし巻き卵、豆腐の味噌汁という純和食やった。


「……うちより上手い………やと!?」
「ほんとだ……すごいおいしい……」
「士郎君ほかには何が作れるの?」
「和、洋、中と何でもできる。デザートがご所望なら作ってきてもいいが?」


デザートとして作ってきたあんみつも格別やった。
ちきしょう。なんか悔しい。でも美味いッ!




side なのは


午後の訓練。二人の力を見せてもらうため、ガジェットとの模擬戦をしてもらうことにした。
まずは士郎君から。


「アレを破壊するのか。いいだろう。投影、開始(トレース・オン)


士郎君が出したのは色違いの二つの剣。鉈のような形状をしている。ガジェットは最高レベル設定を二十体。はやてちゃんからはなるべく主戦力はすべて出して戦うように指示が出てるから、士郎君の主武器はあの剣なのだろう。
士郎君はガジェットの攻撃を楽々避けて二体を片手の一撃でそれぞれ仕留める。
次に弓を出して、矢……いや、剣?を番え、放つ。



「行け。赤原猟犬(フルンディング)!」



その矢……いや、剣?で十体を破壊した。しかも貫通しても威力は落ちないし、軌道は直線じゃなかったし。まるで自動追尾のように飛んでいた。
さらにもう一発、すらりとした刀身を持つ剣をだし、何かを呟く。すると剣は見る見るうちに捻じれていく。そしてそのままその剣を放つ。


投影、重装(トレース・フラクタル)I am the bone of my sword.(我が骨子は捻れ狂う)偽・螺旋剣Ⅱ(カラドボルグ)!」


闘技場に散り散りになっていたガジェットの残りを闘技場の半分ごと破壊した。直撃したところには大きなクレーターが出来ていた。
所要時間16秒。………異常すぎる。
ランス君も似たようなものだった。見事な槍さばきと投擲でガジェットを一掃。所要時間は14秒。
この二人が本気だしたら非常に危険だという事はよくわかった。フォワード陣は言葉が出ないみたい。そりゃ自分たちがあんなに苦労して倒したものを瞬殺されればああなるよね。
そのあとの訓練では二人とも木刀と木の槍だった。最後の対私戦では「私たちが参加してはこの子たちのためにならん」って言って見てただけだったけど私が飛ぶのを見てとても驚いていたのは少し可愛かった。
訓練後、ティアナが士郎君に、エリオがランス君にいろいろ聞いていた。同じポジションだからだろう。



「士郎さんってなんでそんなに強いんですか?秘訣とかあります?」
「ランスさんの槍って普通の武器じゃないですよね?凄い魔力を感じます」


矢継ぎ早に質問する二人。とりあえず止めないと!!


「二人とも、士郎君もランス君も出自やレアスキルについては最重要機密だからあまり触れないでね。それに明日からは二人もデバイス使うから」
「まあなのは。少しくらいならいいだろう?私は非才の身でね。ただひたむきに鍛え続けただけだ」
「俺の槍は特別製だ。これ自体に魔力が通ってる代物だからあれくらいなら造作もねぇこった。」


せっかく二人のためを思って止めたんだけどな……どうやら二人の認識ではティアナたちはまだ子ども扱いみたい。


「士郎さん、私に訓練をつけてください!」
「僕もランスさんに槍の扱いを教えてもらいたいです!」


熱心な二人。しかし、彼らは首を縦に振りはしなかった。
「君には私のような戦い方は向いていない。私よりなのはに習った方が君のためになる。君は狙撃兵だ。銃と弓ではいろいろと違うからな。私から言えることは今の君は一つのことを極めるべきだ、という事だけだ」
「俺が教えてやるのは槍という武器の特性、後は槍兵としての基礎だけだ。後は自分で身につけろよ、エリオ」
「「はい!」」


ティアナもエリオも納得したみたいだ。それに私としては二人の戦い方は命を危険にさらすやり方だったから二人にはあまり真似してはほしくない。
そんなこんなで訓練は終了。隊舎に戻る。
明日からは士郎君たちにも魔法の練習をしてもらわないとね。



side 士郎


この世界に来て驚いたのは投影物がランクダウンしていない、と言うこと。
だが、同時に問題点も出てきた。干将、莫耶なら問題ないが、フルンディングを投影してわかったことがある。
自身の魔力が少ない。カラドボルグも魔力不足でほぼ魔力を込めずに放つことしかできなかった。
しかし、今はそれよりも目の前のことだ………


「マスター、これはどういうことだ?」


隊舎に戻るなりマスターが割烹着……それも明らかに私用のサイズだ……を持って立っている。


「何って……士郎の仕事着やないか?」
「……なんでさ」


エミヤシロウの食堂勤務が決まった日であった。
この後、食堂の人気が上がったとかどうとか。  
 

 
後書き
一話です。
スバルとキャロ出せんかった………
多分次出す……と思います 

 

二話~訓練

 
前書き
デバイス登場でーす

6/20改定を行いました。 

 
side シャーリィ


「………できたーぁ!」
「お疲れ様です、シャーリィ」


はやてさんの依頼で作った二つのデバイス。依頼された時点では『基本機能のみを完成させたら少し待ってて』といわれたので簡単な仕事かと思っていたら、
『二人の戦闘スタイルにできるだけ合わせたものをよろしく』といわれその作業に今の今まで追われていた、というわけだ。とはいえ、間に合わせでつけた機能なので、これからも定期的にアップグレードを行わなければならないのではあるが。


「私が届けてくるので、シャーリィは休んでいてくださいです」
「ありがとうございます、リイン曹長」


徹夜明けの私はひと眠りしに自室へ戻ることにした。




side なのは


リインから二人のためのデバイスを受け取り、朝の訓練に持って行く。
二人はすでに来ていて、一戦交えた後のようだ。


「士郎君、ランス君、おはよう」
「ああ、おはようなのは」
「おう、おはようさん」
「これ、ついさっき完成したばかりの二人のデバイス『ソードワーカー』と『レッドブランチ』だよ」


二人に大よその機能説明をする。まずは士郎君のソードワーカーから。


「士郎君ソードワーカーは昨日使っていた二本の剣を模した双剣型アームドデバイスで、ブレイドフォームとボウフォームの二種類あるからね。切り替えはフォームチェンジ、って命じてくれればOKだよ」
「なるほど、概ねは理解した」


次にランス君のレッドブランチ。


「ランス君のレッドブランチはゲイ・ボルグに似せた槍型アームドデバイスで、遠距離投擲ができるようにバリアジャケットへの転送式を組み込んであるから手元に戻したいときは転送式を起動させてね」
「ほう、中々にいい機能じゃねえか。ありがたくいただくぜ」


一通りの説明を終えたところで今日の予定の説明に入る。


「今日からは訓練ではこの子たちを使って空中戦闘訓練をメインでやっていってもらうよ。フェイトちゃんにも空いてるときはお願いしてあるから。基礎はスバルたちが来るまで私が教えるよ」
「まさか空中戦をすることになるとは思わなかったぞ……」
「面白そうじゃねえか、早速はじめようぜ」


やる気があるのはいいことなんだけど、バリアジャケットもなしに飛行するのはちょっと、いやかなり危ない。なのでバリアジャケットは装備してもらう。


「その前にバリアジャケットを展開してね」
「そのことだが、なのは。私たちサーヴァントには各々でランクは違うが対魔力がもともと備わっている。それに私たちの戦闘用の服は英霊としての物。防御面はおそらくバリアジャケットより優秀だ」
「そ、それならいいけど……」


その後、スバルたちが来るまでの三十分間空戦の基礎を覚えてもらった。
ランス君はすぐ慣れたみたいだけど、士郎君は少し時間がかかった。それでも、普通の人たちと比べると速いんだけどね。それと、毎日訓練終了後はシャーリーに預けてメンテナンスとアップグレードをしてもらうように指示した。今の状態だと性能としては最低クラスだし、それをシャーリーは良しとしないだろうしね………。




side ランス


実際にやってみると空中戦ってのは中々に難しい。何よりも、上下左右すべてからの攻撃の対応。こいつがなかなか難しい。だが、アーチャーの奴はそこまでデバイス使いこなしていねえからまだ脅威ではないが、こいつは慣れればかなり器用に使いこなすだろう。俺も負けてはいられねえ。こいつも早く愛槍(ゲイ・ボルグ)並みに使いこなしてやんねえとな。しかしだ。それとは別にこいつら異世界連中にかなりの情報を与えている。あいつ、少し人を信用しすぎだ。嬢ちゃんや坊主に「疑うことを覚えろ」とか言ってたやつにしては変だ。今夜あたりにでも話をしとかねえとな。




side ティアナ


士郎さんとランスさんもデバイスを使っての訓練をすることになった。初めて扱うのにあそこまで使いこなしているうえに、高ランク魔導士じゃないとできない飛行までこなしてるなんて、あの二人の才能がうらやましい。でも、私にはそんな才能はない。だったら、ただひたすらに努力するだけ―――!




side 士郎


ランサーが難なくこなした飛行を行うにも時間を要した。私はやはり非才の身。


「すまないな、ワーカー。私が慣れるまで少しばかり酷使することになる。フルメンテはしてもらうようにするが、大丈夫か?」
[問題ありません]
「そうか。感謝する。しかし、ボウフォームはいいが、ブレイドフォームが少し扱いづらいな。鶴翼三連などはもちろん使えんからな………」


しかし、訓練後にまたひと仕事とは……マスターもなかなかにこき使ってくれるな。


「士郎ちゃ~ん。そこの野菜炒めお願いね~」
「終わったらこっちでコロッケあげといてね~」
「こっちの玉葱の仕込みもお願いね~」
「了解した」


今私は、厨房にておばちゃんたちと隊員の食事作りをしている。あっちへ行き、こっちへ行き、を繰り返して大量の料理を作っていく。ちなみに服装は六課の隊員制服の上に割烹着という色々と間違ってる気がする格好だ。


「お~、やってるなあ士郎」
「士郎君その格好似合うよ~」
「なのは、それ男の人が聞いてもうれしくないと思うよ………」


そんな私の姿をマスター、なのは、フェイトの三人が見に来たようだ。


「士郎ちゃん作業が早いからねぇ~。あたしたちも助かるよ。ありがとねはやてちゃん」
「士郎ちゃん………プッ」
「………聞こえているぞ、マスター」
「はやてちゃん、笑ったらだめだよ!とっても可愛いのに……」
「だからなのは、それ男の人にいうことじゃないよ……」


そんなこんなで昼が過ぎていく。しかし気になることが一つ。絶対にからかいに来るであろうと思っていたランサーが現れなかった。何かあったのだろうか………




……………………………………………………………………


その後の午後の訓練。スバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人はなのはと、私たち二人はフェイトとやることになった。


「空戦での前衛は的を絞らせないように戦うのが基本。特にスピードタイプなら防御するような事態はない方が絶対にいいんだけど、空戦と地上戦は勝手が何もかも違うから、慣れるまで少し時間がかかるかな?」
「で、具体的に何をやるんだ?」


どうやらさっさと始めたいらしいランサーがフェイトを急かす。


「とりあえず二人とも攻撃面では私たちよりレベルが高いし、回避訓練をやったほうがいいね。私が攻撃するから、十分間避け続けてみて」
「避けるだけか?」


私の質問に対してフェイトが答える。


「撃ち落とすのは慣れてるでしょ?だからまずは避けるだけでやってみて」
「なんだ?避け切る自信がねえのか?」
「ふっ、そんなわけないだろう。十分間避け続けるなど簡単だ」
「言い切られた………。じゃあ、二人とも準備はいいね?それじゃ……いくよ!」




…………………………………………………………………………………


で、結果は………


「三発か。意外と食らっちまったな」
「貴様はまだいいだろうが。……私は五発も食らったぞ」
「………かなり本気でやったんだけど。私からこれしか食らわないならAランク魔導士の攻撃なら余裕で全弾回避できるよ……」
「基準がわかんねえな。フェイトよぉ。もちっとわかりやすく教えてくれ」


憔悴状態のフェイトに対してランサーは質問を投げかける。


「リミッター付きのなのはとやっても互角……っていえばわかる?」
「なるほど、フォワード四人をまとめて相手くらいはできる、という事か」
「明日からは二人で徹底的に模擬戦やるようにってはやてとなのはから言われてるから、よろしくね」


相手がランサーか。これは負けるわけにはいかんな。


「貴様とか……やってやろうではないか」
「弓兵ごときに近接戦で負けるかよ」
「あの~、二人ともその辺で………」


睨み合いを続けているとフェイトが見かねて仲裁に入る。


「しゃーねぇ、美人の頼みなら効くっきゃねーな」
「美人って?」


ほんとに何を言っているのかわからない、といった様子で首を傾げているフェイト。
まさか、素でやっているのか?


「………この場に君以外に女性がいるか?」
「ッ!!!!!えと、あの、その、あ、ありがと………」
「ヒューッ!照れる姿もいいねぇ、初々しい」
「も、もう!ランス!」


結局フェイトはランスを追いかけるも捕まえられず、後日偶然この近くにいたシャマルの口からこのことがはやてにばれて、いじられる羽目になるフェイトだった。




side ランス


夜、アーチャーを屋上に呼び出す。


「何か話でもあるのか?」
「ああ。お前、あっちで何があった?嬢ちゃんにはあれだけ隠してた情報を簡単に話しちまってよ。少しは疑うってことをしねえのかよ?」


少し強めの口調で言うも、アーチャーは大して気にした風でもなく微笑を浮かべながら答える。


「ああ、そのことか………。なぜだろうな、私もわからんが、彼女たちに隠し事をする気にならなかった、といったところかな。ああ、貴様の宝具に関して言えば、仕返しだぞ。それと、こちらからもひとつ聞きたい。なぜ私がエミヤシロウだと知っている?」
「こっちに来るときにお前の記憶が流れ込んできたんだよ」
「そうか。そういえば私もだな」


そう言って笑うアーチャー。今の顔はこいつがあの生け好かねぇ皮肉屋現実主義の弓兵だって知っているから驚いた。本当に坊主そっくりの笑顔だったから。


「変わるもんだな、ほんとによぉ」
「貴様もやることが言峰に近づいて行ってるぞ」
「嬢ちゃんならまだいいが言峰だと?」
「ああ。私をハメた後の笑顔とかそっくりだぞ?」
「くっ………、最悪だぜ、あいつと一緒にされるとはよ……」


そう言われて心底嫌な気分になる。


「で、その言峰と嬢ちゃんって誰や?」
「ああ、言峰は人を人とも思わない性格ド腐れ外道神父で、こいつの元マスター、嬢ちゃんというのは遠坂凛。別名赤い悪魔と呼ばれる……マスターみたいなことをする少女で私の元マスターだ」
「へぇー。でも神父が外道ってええんかな?その凛って子も私と気が合いそうやわ~」
「確かに話が合いそうだ………って、」
「ん?なんや?」


ちょっと待て。今俺はこいつと二人だけだったよな?
なぜ俺が返事をしていないのに会話が成り立っている?
その疑問は後ろを振り向くと解消された。


「なんでマスターがここにいる!!!」
「いや、面白そうやったから」
「……いつから居たんだ?」
「貴様の宝具が~ってとこや」


神出鬼没すぎだろ……。


「ほぼ最初からではないか………」
「で、ランス、アンタはまだうちらを信用してへんのやな。」


今までとは打って変わって真剣な表情でマスターが問いかけてくる。


「………ああ。アンタも俺らに隠してることがあんだろ?マスターよぉ」
「さすが、伝説の英雄、隠し事なんてできんってか。でも……これは教えられん。まだなのはちゃん達も知らんことやからな」
「そうか……いいさ。これ以上は聞かねえよ」


は少しの間マスターを見つめるとそう言って後ろを向いた。


「ランス!?」
「隠してることは大体わかる。この部隊の成り立ちのこと、だろ?」
「……そうや。ほんとにかなわんなあ。士郎もわかってたんか?」


隠してるつもりだったらしいこの部隊の成り立ちのこと。
組織にいる以上付きまとう権力争いを掻い潜る様にエリートだけを集めるなど普通は不可能。
ならばそれだけの秘密がある部隊である事などは容易に想像がつく。


「私はとっくに気づいていた。魔法の話をした時、部隊についての説明が簡潔すぎだ。ほかの部分を丁寧に話していたのに、そこだけ触れないのは明らかに秘密があるって言っているようなものだぞ」
「あちゃ~、やってもうたな。でも、これで信頼関係も築けるやろ?」


そう言ってマスターはニヤリ、という表現がぴったりな笑みを浮かべる。


「そうか、最初からそれが目的か。本当に凛みたいなことをするな、君は。ならば、令呪の使い方について、少し補足しておこう。基本的には私たちサーヴァントの支援のためにマスターが使うものだ。能力底上げ、遠距離召喚などのことが出来る」


興味がわいたのか、子供のように食いついてくる。


「遠距離召喚って、どんなや?」
「自分のもとに一瞬で来させたり、反対に指定場所まで一瞬で行かせることも可能だ」
「それはすごいなぁ、じゃ、さっそく女風呂に………」
「「令呪を遊びで使うなああああああああ!!!」」


このマスターに遊ばれなくなる日は来るのだろうか……そう思ったサーヴァント二人であった。




side スバル


父さん、ギン姉、私たち四人が六課に来て1週間。一日遅れの士郎さんランスさんの二人は結構六課に馴染んでるみたいです。
ランスさんはフェイトさんに何かを言っては顔を赤くさせて、そのあと追いかけっこしてるか、どこかにフラフラ出歩いてるか、訓練してるか。
士郎さんは、厨房にいるか、八神部隊長にいじられてるか、訓練してるか。あっ、士郎さんは料理がすごくうまいから六課の食堂でも働いてるんだ。
士郎さんもランスさんも、女性隊員からの評判がいいそうです。あたしもいい人たちだと思う。でも、その話をしたとき少しだけなのはさんとフェイトさんが面白くなさそうだった。ティアに念話で聞いたら、
『あんたって鈍いわね~』といわれてしまった。なんでだろ?二人はわかりますか?
しばらくは24時間勤務なので帰れそうにないけど、帰るときはお土産をたくさん持っていきます。楽しみにしててください。
                           『スバル』



「よし、できた!送信っと!」



さぁーて、今日も一日、頑張るか~!




side はやて


………夢を見ていた。
ここは………お城?
最近知った一人の男性が、少年と戦っている。手に持つのは白黒二本の双剣。少年も同じものを持っている。


「おまえは……………して……か!」
「ああ………だ!正義の………になん………よかった!
き………………どうだ!!■■■■■■!それでも…………たになり……か!」
「なり………じゃ……い!な……だぁ!」


士郎の剣が砕かれ、少年の剣が士郎を刺す。


「俺の勝ちだ……アーチャー!」
「ああ。そして、私の敗北だ。」


しばらくそのままの体勢でいた二人。
しかし、唐突に士郎が動きだした。


「…………!!!伏せろ■■■■■■!」


士郎がそう言うと、無数の剣が上空から飛んできて、士郎を貫いていった。
そこで、情景が変わった。


気が付けば小部屋にいた。そこには椅子に縛られた少女、ランス、神父服(カソック)の男。ランスと彼が何かを話している。その時、神父が言う。


「自害しろ、ランサー」


すると急にランスが自分の槍を自身に突き刺す。
倒れるランス。神父は笑いながら部屋を出ていこうとする。が、ランスに槍で刺され倒れる。
ランスは少女の枷を取り、少女と話しながら空中に何かを書く。すると突然部屋に火が付く。
少女は部屋を出ようとし、立ち止まる。


「私、あなたのこと結構好きよ」
「へっ、そういうセリフはもちっと色気つけてから言いやがれ」


そういったランスを残し、少女は出て行った。
そこで夢は終わった。


「………あの夢、なんやったんやろうか」


気にはなったが、やることはまだまだある、夢の事は後回しや。




side 士郎


今日は訓練の最後に3チームで模擬戦をやることになった。チーム分けは



なのは

ティアナ


ヴィータ
スバル
キャロ


シグナム
ランス
エリオ


の編成だ。


私たちは遠距離主体チーム
ヴィータたちはキャロのサポートで強化した前衛による打撃主体チーム
ランスたちは近接戦でのリーチが長い武器で戦う戦士系チームだ。


なのは曰く『フォワードたちが多くを学べるチーム編成』だそうだ。


「それじゃ、いくよ。ルールは簡単。チーム内の誰か一人がバリアジャケットまで攻撃を通されたら負け。士郎君とランス君も今回はバリアジャケット展開してね。」
「ルールなら仕方がない。ソードワーカー、バリアジャケット、セット。」
[バリアジャケット構築完了]
「一丁やるかぁ!行くぜ相棒!」
[セットアップ]


私たち二人はこれが初めてのバリアジャケット姿。
が………



「「変化なしか?」」
「ううん、違うよ。細部のデザインとか色々と違うんだよ。」
「ほんとだー。なんか現代的になりましたね!」
「よし、じゃあはじめようか」


開戦の合図とともにチームごとにそれぞれ分散する。
私たちのチームはというと……ビルに陣取って作戦会議を行っている。


「私たちは中~遠距離型だからあまり近づかれないように戦おうか」
「このメンバーでは近距離戦でまともに戦えるのは私だけか」
「私はクロスレンジは得意じゃないし、ティアナのアンカーガンは近づかれたら反撃しづらいしね」


その最中、別のビルで動く影を発見。あれは……


「む、早速スバルとキャロを発見した」
「えっ………どこに?」
「1.5Kmほど離れたビルの7階だ」
「あ、ほんとだ。士郎君よく見つけたね~」


どうやらなのはも見つけられたようだ。しかし、ティアナはというと………


「二人ともなんで見えるんですか………」
「もともと目がいいのでね。2Km位までなら表情までわかる」
「目がいいってレベルじゃありませんよそれ……もはや超人です」


完全に呆れ返っているティアナ。しかし、なのははどうやって見ているのだ?


「私はいいがなのは、君はなぜ見えるのだ?」
「私遠距離砲撃型魔導士だからあのくらいの距離ならおおよそなら何があるか位はわかるよ。それに、レイジングハートもいるしね」
「なるほどな………」
「あの~?攻撃、しないんですか?」


ティアナが一人、会話から置いて行かれていた。


「そうだな、素早く片付けよう。ワーカー、ボウフォーム」
[フォルムチェンジ。ボウフォーム]


フォームチェンジをしたソードワーカーは使い慣れたものに似た、しかし少し機械的な感じのする洋弓に変化する。


「では、一撃で仕留めて見せよう」


魔力によって編まれた弓を番え、放つ。しかしスバルに直撃する前に何者かによって阻まれた。




side ヴィータ


突如として嫌な予感がした。あたしの勘では狙われんのはスバルだ。
そしてスバルのほうを見れば後方から魔力矢が飛んできていた。
間一髪弾くことに成功。


「あぶねーぇ、間に合ったな」
「ヴィ、ヴィータ副隊長!?いったい何が………?」
「おまえは狙われてたんだ。あの矢……シグナムじゃあねえな。あいつか」


あいつのデバイスはまだ調整段階のはず……それでこの精度か、むちゃくちゃいい腕してんじゃねーかよ!
久しぶりに燃えてきたぜ!




side 士郎


「む、防がれたか。ヴィータだな、あれは」
「ヴィータちゃんだね」
「ならばこれでどうだ?」


今度は3発の矢を同時に番える。
するとティアナが聞いてきた。


「あの~もしかしてそれ……撃つんですか?」
「何を当たり前の事を聞くんだ君は?」
「私が言いたいのは3発も同時に打てるのかってことなんですけど……」
「それぐらいは造作もないさ。まあ見ているがいい。敵はおそらくこちらに向かってきているだろう。追撃は任せるぞ、なのは、ティアナ」


3発の矢を放ち、そのうちの2発がスバルを襲う。1発はヴィータが、もう1発はスバルが撃墜する。
狙い通りに最後の1発は二人の後ろにいたキャロの背後へと迫る。
だが、それは意外な人物によって阻まれた。




side ランス


一番小さいやつに迫っていたあいつの矢を叩き落とす。


「背後にも気は配っとくもんだぜ?お三方よぉ」
「てめぇ、なんで助けた?」


ヴィータのやつが聞いてくる。


「んなもん、お前とやり合いてえからに決まってんだろ?シグナムとは同じチームだから戦えねえからな。で、次に強そうなお前とやり合おう、ってこった」
「あいつからの攻撃はどうする気だ?」
「あっちにはシグナムが行った。あいつ相手にこっちに気を配る暇あると思うか?」


そう言われ考え込むヴィータだが、すぐに答えは出たのか不敵な笑みを浮かべ、答える。


「ねえな」
「だろ?じゃあ、さっさとはじめようせ!!」
「ああ。鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼン、行くぜ!」




side シグナム


最初の狙撃であたりをつけ、向かったビルにエミヤはいた。


「良い腕だな。エミヤ」


私の声に反応した奴は数本の矢を放ってくる。私はすべて叩き落とした。


「何、君の今の芸当に比べれば大したことはしていない。で、君が用があるのは私か?」
「ああ。お前ほどの手練れなら騎士としてはぜひ剣を交えたい」
「騎士………か」


騎士に何か思い入れでもあるのだろうか。しばらく考えたあと、


「いいだろう。その勝負、受けて立つ。ワーカー、ブレイドフォーム。」
[フォルムチェンジ。ブレイドフォーム]


奴の手には白い剣と黒い剣が一つずつ。この男も中々楽しませてくれそうだそう思いながら剣を構えた。 
 

 
後書き
ようやく二話投稿です

士郎とランスのバリアジャケットはEXTRAの赤アーチャーと青ランサーのデザインと思ってください。


2/18 文章を少々変更しました。 

 

三話~サーヴァント、その力は

 
前書き
久々の投稿で~す。

6/20改定 

 
side ヴィータ


目の前の男。その実力は相当なものだった。
デバイスをただの槍として扱っているにもかかわらず、押されている。


「アイゼン!」
[ギガントフォーム!!]


なればこそ、状況を打開するため一撃必殺を狙う。


「避けれるってんなら避けてみろ!」


でも、あいつは避けなかった。代わりに槍を投擲してくる。
アイゼンの一振りで槍を吹き飛ばす。そこで気づいた。


(……囮か!)


あいつの槍には転送機能があったはず、それを踏まえた上であたしの攻撃を誘導し………


「わりぃな、俺の勝ちだ」


後ろから声がした。




side ランス


ヴィータの攻撃はなかなかに鋭い。が、まだまだってとこか。それにしても、だ。
これはアーチャーとの模擬戦でも思ったことだが、ステータスが低い。やはり魔力が足りていないようで、それがどうにも動きを鈍らせる。
本来のステータスならばもっと余裕を持って戦えるのだが、文句を言っても始まらない。
さて、そろそろおわらせるか。


「アイゼン!」
[ギガントフォーム!!]


どうやら向こうもその気みたいだ。持っていた槌がずいぶんとでかいハンマーに代わる。


「避けれるってんなら避けてみろ!」


避けるのも、受け止めるのも骨が折れそうだ。ならば軌道を限定させる。
レッドブランチをヴィータめがけて投擲する。
当然はじかれるがそれも想定内。後ろを取ることに成功した。
手元にレッドブランチを転送。


「わりぃな、俺の勝ちだ」


背中へ一閃。勝負はついた。




side シグナム


「どうした?かかってこないのかエミヤ?」
「なに、簡単な話だよ。私から仕掛けるメリットが全くないからな」
「そうか、ならば……剣の騎士シグナム、参る!」


一撃目の袈裟斬りは右手の白い剣に防がれる。そこから胴薙ぎ、逆袈裟、突きと連撃を入れるがすべて紙一重で防がれる。
やはりこの男は強い。が、妙な感じがするのだ。ランスといいエミヤといい戦闘中に感じる違和感……彼らは何かを封じられているような感じがする。気にはなるが今は戦いに集中する時だ。


「レヴァンティン!」
[シュランゲフォルム!]


シュランゲフォームによる死角からの攻撃を行う。と、エミヤはこちらの予想をはるかに上回る行動をとった。なんと、両手の剣をこちらへと投擲してきたのだ。
何とか刀身を手元へ戻し、防ぐ。体勢を戻そうとした時、奴は堂々とした声色で言い放つ。


()()の勝ちだ」


その言葉と共にオレンジと桃色の閃光が私を襲った。


「……くっ、さすがにこれは予想できなかったぞ」
「あくまでチーム戦であることを利用させてもらっただけだ。1対1なら私が負けていたよ」


そう言いながらも、奴は『それでも負けはしない』と言いたげな顔をしていた。
だからこそ私もこう言ってやる。


「ならば明日続きをやるか?」
「……遠慮させてもらう」


食らいついてこない。どうやらランスとは違うようだ。


「フッ、やはりお前は奴とは違うな」
「アレと一緒にしないでくれ……」


げんなりとした様子でそういうエミヤ。


「なのはやティアナを抑えておく策がある、と言ったから奴の作戦に乗ったんだがな」
「奴の作戦はエリオに二人を狙わせることだろう。だが奴は私の目を舐めていたようだな。あの程度で隠した気になるなど甘い」


エミヤがそう言ったタイミングで、高町がこちらにやって来た。


「士郎君からの念話で場所が分かったから私がバインドで動きを封じておいたんだ。」
「今頃奴は驚いているだろうな……」




side キャロ


「……間に合いました!」


ランスさんの一撃は私が張ったシールドによって阻まれ、ヴィータ副隊長までは届きませんでした。でも、すごく重い一撃……二発は耐えられません……。


「おや、……お嬢ちゃん、やるなぁ」


それに、それだけでは終わりません。


「ディバイン………バスター――――!!」


私による威力強化付きのスバルさんの攻撃。これなら………!


「ふう、あぶねぇあぶねぇ」


と、思いましたが、効いてはいないようでした。


「効いてない!?」
「狙いはよかったが、もう少しだったな」


そんなランスさんを見たヴィータ副隊長は何かに気づいたように言いました。


「……槍の投擲による時間稼ぎか。でももうお前のデバイスのフレームはボロボロだろ?」
「確かにな。でもよ、ヴィータの嬢ちゃん。お前も満身創痍の二人をかばいながら俺とやれるか?」
「万全の状態じゃねえお前相手ならやれるさ」
「へっ、そうかい。なら……」


と、その時でした。


『シグナム副隊長チーム、脱落でーす』


「「「「え?」」」」


何が起きたのか、これでランスさんたちは脱落になりましたが……


「俺は食らってねーぞ?」


『シグナム副隊長が攻撃を食らいました~』


この声は……シャーリーさんでしょうか。
それより、


「「あのシグナムがか?」」


ランスさんとヴィータ副隊長はかなり驚いています。


『さあ、残りはなのはさんチームとヴィータ副隊長チームで~す。どちらも頑張ってくださいね~』


私も気にはなりましたが今はなのはさんチームに勝つことが先です!




side エリオ


決着は唐突だった。
僕はランスさんの指示通りになのはさんを狙い打てる位置に潜んでいたところをバインドで縛られ、身動きを封じられ、状況が分からなくなってしまった。
油断もしてなかったのに、どうして僕がいることがばれたんだろう………
と、そんなことを考えてる時にシグナム副隊長が攻撃を食らったという知らせを聞いた。
僕がもっと注意深くしていれば………!
そう思わずにはいられなかった。




side なのは


結局模擬戦はほぼ無傷の私たち三人と満身創痍のヴィータちゃん達では………結果は見えてるわけで。


「それじゃ解散ね~」


みんな隊舎に戻っていく。皆のんびりと帰っていく中で、ランス君だけは『相変わらずいけすかねぇ弓兵だ』と愚痴っていた。そんな中シャーリーが深刻な表情でこっちに来た。


「シャーリー、どうしたの?」
「……あっ、なのはさん。実は士郎さんとランスさんのデータなんですが………」


私も気になっていたこと。それはデータを見たときに更なる驚きを私に与えた。


「魔力ランク……Cかぁ。戦闘能力は明らかにAAAオーバーなんだけどね」
「ヴィータさんとの戦闘の時のランスさんの動きなんかフェイトさん以上ですよ!Cランクであの動きなんて……」


私やフェイトちゃんは理由を知っているが、彼女たちは知らない。
サーヴァントという英雄たちである彼らの本来の戦闘能力を見せてもらった時のデータでも魔力はCだった。
しかし、士郎君は剣を出すとき、ランス君は槍を投げる時にSクラスオーバーの魔力を観測してる。
故意にリミッターでもかけているのだろうか。聞いてみるべきかどうか悩む。
そんな私の様子を見たシャーリーが


「なのはさん、部隊長に相談してみたらどうですか?」
「そうだね、これは私一人の問題じゃないし。はやてちゃんの意見を聞かないとね。それと……」
「みんなのデバイスの事ですね?ご心配なく!完成間近ですよ~!士郎さんたちのもメンテで預かる際に強化を施します!!」
「そっか。たのしみだね」
「レイジングハートさんの協力のおかげですよ~」
[お安い御用です]


私も頑張らないとね、あの子たちのために!




side ランス


訓練も終わり、夜。現在、アーチャーと共に屋上にいる。その理由はというと。


「やはり貴様も気づいているか」
「あたりめぇだろ。魔力供給の少なさ、これは結構な問題だ。いくらマスターがかなりの魔力の持ち主でもサーヴァントを二人も一人で維持してんだ。こうなることぐらいは予想できたさ」


現在の俺らの状態についてだ。魔力がちゃんと供給されない。
とはいっても少量ではあるが供給自体はされている。


「私の方は宝具(無限の剣製)の発動は厳しいだろうな。貴様はどうだランサー?」
「真名解放は使えて6回ってとこだ」


お互いに宝具の開放も限定されたことを伝える。


「貴様は問題なさそうだな」
「お前はいろいろ出せるからそれでカバーしとけよ」
「便利な武器庫のように言うがな、約束された勝利の剣(エクスカリバー)などは出せんのだぞ……」
熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)やら偽・螺旋剣Ⅱ(カラドボルグ)出してる時点で充分だろ?」


俺の皮肉に対し、アーチャーはというと。


「それは……まあ、そうだが」



普通に答えた。
ほんとに変わるもんだな。
だが、とりあえずは……


「ま、今のままでも十分だってことだ」


(願わくば宝具を使うような事態が起こらなきゃいいんだがな………)


しかし、彼らはまだ知らない。そのような事態が裏で進んでいることを………

 
 

 
後書き
短めですが今回はこんなもんです

続きは未定です……

なるべく早くできるよう頑張ります

それではまた~ 

 

四話~剣の丘

 
前書き
はやてが見ている夢の話になります。
視点はほぼずっとはやて、タイトルで誰のことを夢見てるかはお分かりいただけると思います。 

 
………夢を見ていた。




無数の剣の突き刺さる丘の夢。



その剣のどれも煌びやかな装飾の施された逸品であることは素人の私にもわかった。



だが、その剣には違和感があった。



何か不思議な違和感が。



詳しくはわからないがこの剣はこの世界とつながっている、と思った。



なぜそう思うのかはわからない。


でも、そう思った。



そんな時、不意に何かが聞こえる。


――――I am the bone of my sword.(体は  剣で  出来ている。)



………誰かの声。聞き覚えがある誰かの。



――――Steel is my body,and fire is my blood.(血潮は  鉄で、   心は  硝子。)



………これは……何?詩のように聞こえる。



――――I have created over a thousand blades.(幾たびの  戦場を  越えて  不敗。)



………何か……とても悲しい……(うた)



――――Unknown to Death.(ただ  一度の敗走もなく、)


――――Nor known to Life.(ただ  一度の理解もされない。)




………悲しき運命(フェイト)を背負った人の(うた)




――――Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は  常に独り、  剣の丘で  勝利に酔う。)



………ここが、そうなのだろうか。その者が独りでいる丘なのだろうか。




――――Yet,those hands will never hold anything.(故に、   生涯に  意味はなく。)



意味のない生涯。そんな悲しいことがあっていいのか。



――――So as I pray,Unlimited Blade Works.(その体は、   きっと  剣で出来ていた。)



丘のてっぺんに人影を見た。その人は………




無数の剣に体を貫かれていた。その姿が、自分の知っている誰かと似ている気がして………





そこで、夢は途切れた。












…………………………………






「………またこの夢や」



最近よく見る夢。今日はやけに記憶に残っている。


一体なんなのだろうか。



「体は剣で出来ている…………か」



この夢は士郎たちが来てから見るようになったもの。彼らに関係するものなのか………?



「……アホらし。やめよやめよ」



考えたってわかるはずがないのだ。だったらあまり気にしない方がいい。



そう、割り切った。








……………………………………………………








「ねぇはやてちゃん。少し疲れてるように見えるけど、大丈夫?」




なのはちゃんとフェイトちゃんと久しぶりの一緒の昼食中に、なのはちゃんからそんなことを言われた。



「はやて、ちゃんと寝てる?学生時代はよくゲームとかで徹夜してたから心配だよ………」



方向性が少しずれてるがフェイトちゃんも心配してくれている。


………ゲームで徹夜は確かにしてたので言い返せない。



「いやな、これは変な夢のせいで疲れてるというか………」



「「へ、変な夢?」」



そう言って二人は自分の胸部、もといおっぱいを抱く。


いくら中学の時に寝惚けてみんなの前で揉んだからって警戒しすぎ………



そしてその豊満なおっぱいが腕の中で形を歪めている様は………何とも眼福である。



と、話がずれてしまった。



「二人が想像したようなR-18的内容やないで!」



「そ、そそ、そんな想像してないよ!」


「……に、にゃははは………」




とても分かりやすい二人である。




「そんなHなことやなくて………悲しい夢や」


「………もしかして……」



「リインフォースの夢やない。気ぃ使わんでええ」



「どんな夢なの……?」



「丘の夢、その丘にいる一人の男の夢や」



「丘にいる男の人の夢………悲しい夢なの?」



「夢ん中でな、悲しい詩が聞こえるんよ。体は剣で出来ている………だったかな?誰にも理解されず、常に一人でいる、そんな感じの詩や」



「常に一人………か。それはとっても悲しい夢だね」



「でもなんでそんな夢を見るんだろうね?」


「私もわからんのよ……」



そのあとはフォワードたちの話などをし、なのはちゃん達と別れた。






side 士郎




「そうか、マスターはアレ(・・)を見ているのか………」



偶然聞こえた会話は私の世界(無限の剣製)についての事だった。



「悲しい詩、か。的を射た言葉だな」


そう言って笑う彼の顔は、とても自嘲的なものだった。

 
 

 
後書き
二日連続更新です。

ガジェット戦はまだか!という方も大勢いらっしゃるでしょう。

作者は戦闘シーン書くの苦手です。

というわけで次は時間かかりまくると思いますがご了承ください。

それでは~ 

 

五話~初任務

 
前書き
ようやくできました~ 

 
side スバル


私たちが機動六課に来て二週間がたった。今日は書類仕事をしている。
隣のティアを見ると……


「あれ?ティア、調べもの?……これって、」
「ス、スバル!」


そこにあったのは個人データ『衛宮ランス・衛宮士郎』という名前。



(どうして士郎さんたちの事を?)
(魔法には触れるの初めてだっていうのにあれだけ強いっておかしいと思わないの?)
(確かに…………)
(それに出自が最重要機密扱いなのよね……)
(で、調べて出たのが、)
(これ、ってこと)


そこにあったデータは



・衛宮ランス、士郎両名データ。


第97管理外世界『地球』出身の戦闘部族「衛宮」の最後の生き残り。
古典的武器である剣や槍などの扱いに秀で、その技は魔力なしでAランク魔導士に匹敵。3年前、ギル・グレアム元提督に助けられた事に恩義を感じ、彼に従う。
今回、八神二佐は彼らをグレアム氏から借り受ける形で六課の戦力としている。階級は二人とも三等空尉。衛宮ランスは23歳、衛宮士郎は21歳。





(これだけよ。探すのあんだけ苦労したっていうのにね)
(そっか~、お疲れティア)






その頃………



「ねぇはやてちゃん」
「なんや?なのはちゃん」
「士郎君たちのデータ、あれで大丈夫だったの?」
「バッチリやで!グレアムおじさんには口裏合わせてもらうよう頼んであるし、心配ご無用や!」
「ほんと、手際がいいというかなんというか…………」



八神はやて、本日も平常運転であったそうな。



side なのは



早朝訓練の最後、私は前から考えていたことを実行した。


「みんな、最後にシュートイベーションやろっか。相手は………士郎君です!」
「………はい?」
「あー………なのはの嬢ちゃん、それ俺にやらしてもらってもいいか?試してえことがあんだよ」
「でもランス君遠距離は槍の投擲しかできないんじゃあ……」
「こっちの魔法にも慣れてきた。試験的にやるってんじゃ、だめか?」
「う~ん、みんなはどう?」
「あたしはいいですよ!」
「私も構いません」
「僕は賛成です!!」
「私はみなさんがいいのなら………」


皆賛成みたい。あとは………


「士郎君は?」


やる予定だった本人に聞く。


「そもそも私はそのようなことをするとは聞いていないのだがね」
「あ…………ごめんね、言い忘れてたよ」
「私としては速い直線起動の矢の相手というのはなかなか彼らには難しいと思うのでね。君が適任だと思うのだが…………」


そこにランス君が口をはさむ。


「俺はもう魔法を使いこなし始めてるんでね、こいつらの訓練相手をしてやれるくらいはできんだよ。お前はなのはの嬢ちゃんと乳繰り合いながら見てな」
「な、な、ななななななええ!!??」


どどどどどどどどどどういうこと?ち、乳繰り合ってろって……


「君もアレの戯言を真に受けてると身が持たんぞ、なのは」
「じょ、冗談だったの……?」
「悪いな、冗談だ」


全く、すごく焦った……



side ティアナ



ランスさん相手のシュートイベーションがはじまった。


「それじゃ、ルール説明するよ。ランス君相手に五分間逃げ切るか一撃入れたらおしまい。攻撃を受けたら初めからやり直しね」
「「「「はい!」」」」


ランスさんが魔法使うのは初めて………それなら!


「みんな、五分間よけきる自信は?」
「僕はあります!」
「あたしもあるよ!」
「私は……一撃入れたほうがいいと思います!」


2対2か………


「おっと、ずいぶん舐めてんな、スバルの嬢ちゃんにエリオ。だったら………ブランチ、モードリリース」
「「「「「えっ!」」」」」


驚きは士郎さん以外のこの場の全員のもの。


「いいの?ランス君」
「ああ。こいつら相手なら必要ねぇ。さっさとはじめてくれ」
「じゃあ……レディー、ゴー!」


ランスさんは何を使ってくるのか、しかし………


「デバイスひっこめるなんて、完璧挑発されてるわよ!なんとしても一撃入れて一泡吹かせてやりましょう!」
「よ~し、用意はいいか?行くぜ、フォトンランサー!!」


ランスさんが使ってきたのはフェイト隊長の得意魔法の一つ、フォトンランサーだった。真っ直ぐにこちらへと向かってくる。


「全員絶対回避!そのあとフォーメーションで攻めるわよ!」
「「「了解!」」」



しかし、あれほど精度が高いとは予想外だ。
これは厳しい戦いになる………





side ランス


試してみて分かったことがある。

一つ、消費魔力がかなり少ない。白兵戦の能力が落ちている今、これに頼らない手はない。

二つ、自身にかけた強化のルーンの効果がやけに高い。
魔法の威力もこれによるところは大きいだろう。

三つ、デバイスがなくともイメージさえできれば魔法は打てる。
この辺は魔術に似てないこともない。


これらの事もあり、遠距離戦闘に関して言えば冬木にいた時よりも強くなっているだろう。


ここまで情報が得られたことでこの訓練を買って出た意味はなくなった。
だとすれば…………




ま、いっちょ遊んでやるか。



「まだいくぞ?アクセルシューター!!」


今度はなのはの嬢ちゃんの技だ。
こいつで逃げていくスターズの二人を攻撃する。が……



「幻影か、やるねぇ」


と、そこへウイングロードを展開したスバルの嬢ちゃんが仕掛けてくる。


「くらえええええ!!!」

が、高度を上げて回避する。ふと、嬢ちゃんのブーツが気になったが、
視界にはこちらを狙うティアナの嬢ちゃん。即回避行動に移る。
だが、攻撃は来なかった。銃の不発で。そいつに気を取られ、既に後ろに迫ってきたエリオへの対応が一瞬遅れた。本気を出せばよけられる。だが、こんなとこですることじゃねえ……なら!


(防御魔法、できるか?)
(No problem.Master.)


そして俺は防御魔法を展開した。




side エリオ




「ホントに大丈夫?エリオ君。かなりスピード出るよ」
「大丈夫、ランスさんやフェイトさんと訓練してるんだ、これくらいなら平気だよ。それに…………」
「それに?」
「槍兵の武器は速さだからね!!」


ランスさんに稽古をつけてもらっていた時に教えてもらった数少ないことを生かすチャンス。二人が引き付けてくれている今しかないんだ!!!


「いくよ!ストラーダ!」
[OK.Master.]



side ティアナ



「うぇ!?不発?」


まさかの事態。しかも最悪のタイミング………


「こんなときに!」


だが、幸運なことにそれを見たランスさんの動きが一瞬止まる。

(エリオ!今!!)


その機を逃さずにエリオに念話を送る。キャロのブーストを受けて強力になったエリオとランスさんがぶつかり合う。
二人が爆煙に包まれる。
が、エリオははじかれて煙から出てきた。


「外した!?」
「いや、違うぜ」


そう私に答えたのは………煙から出てきたランスさんだった。


「参ったね、まさか防御を貫通されるとはな。やるじゃねえか、エリオ」


ってことは………


「おめでとう、みんな合格だよ。それじゃ、一回整列しようか」
「「「「はい!」」」」


整列したところで、


「きゅくる~」
「どうしたの?フリード?」
「そういえば焦げ臭いような……」
「あ~!スバル!あんたのローラー!!」
「え?ああ~!!しまったぁ~、無茶させちゃったなぁ」


見事にショートしていた。実はあたしも人のこと言えないんだけど……


「オーバーヒートだね。あとでメンテスタッフに見てもらおうか。ティアナのアンカーガンも厳しい?」
「はい………騙し騙しです」
「う~ん、訓練にも慣れてきたし、そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかなぁ?」
「「「「新デバイス?」」」」


そんなものまで準備されているなんて、本当に私のような凡人がいていい部隊なんだろうか……
それが気になって仕方がなかった。



side 士郎




「それじゃあ、一旦寮でシャワー使ってからロビーに集合しようか」
「あれ?あの車って………」
「中にフェイトと部隊長がいるな」
「相変わらず目がいいですね…………」


なぜマスターのことをこう呼んでいるかというと、公の場でマスターはどうか、というフェイトの提案によるものだ。

「すっご~い、フェイト隊長の車」
「ありがとう。これはね、地上での移動手段なんだ」
「で、みんな訓練はどうや?」
「あ、あはは…………」
「皆しっかりやってるよ。いつ出動になっても大丈夫」
「そっか……エリオ、キャロ、ごめんね。私は二人の隊長なのになかなか訓練見てあげられなくて……」
「いえ、そんなことは」
「大丈夫です」
「それはそうとランスの姿が見えへんのやけど……」


そういえば奴がいない。いったいどこへ……


「ランスさんなら先にシャワー浴びてくるって寮に戻りましたよ」


む、まさかとは思うが………


「二人はこれからどこかいくの?」
「私は6番ポートに」
「私は教会本部でカリムと会談や。夕方には戻るよ。で………や。士郎。付いて来てや」
「………一応聞くが、拒否権は?」
「あるわけないやろ♪」


奴め、こうなると予想して逃げたな……


(今回は士郎たちの事の説明もせなあかん。ほんとはランスも連れてく手筈やったんやけど……)
(君がそう言った目で見てるのを本人に感じ取られたんだろう。だが、アレは連れて行かない方がいいな。面倒事が増えそうだ。)
(仕方ないか……)


「私はお昼までには戻るから、昼食は一緒に食べようか」
「「「「はい!」」」」
「ほんならはよ乗り、士郎」
「了解だ」
「ほんならいってくるで~」




……………車中……………



「聖王教会騎士団の魔導騎士で管理局本局理事官、カリム・グラシアさんか。私はお会いしたことないんだけど……、はやてはいつから?」
「う~ん、私が教会騎士団に派遣で呼ばれたときで、リインが生まれたばっかやったから…………8年位前かな?」
「そうなんだ」
「カリムと私は信じてることも、立場も、やるべきことも全然違うんやけど、今回は二人の目的が一致したから。そもそも、六課の立ち上げの実質的なところをやってくれたのは全部カリムなんよ?おかげで私は人材集めに集中できた」
「部隊ひとつ作り上げるとは、よほど優秀な人物なのだな」
「信頼のおける上司、ってとこ?」
「仕事や能力はすごいんやけど……上司って感じは全然せえへんのよね。どっちかっていうとお姉ちゃん、って感じやな。レリック事件がひと段落したら紹介するよ。フェイトちゃんもなのはちゃんも気が合うと思うで~」
「そっか、楽しみにしてるよ」


ともかく、マスターがこれだけ信頼しているのだ。
生きたロストロギア認定して永久封印とかはされないだろう………



side スバル



「そういえばスバルさんのローラブーツとティアさんの銃ってご自分で組まれたんですか?」
「そうだよ~」
「訓練校でも前の部隊でも支給品って杖しかなかったのよ」
「あたしは魔法がベルカ式だし、戦闘スタイルはあんなだからね。ティアもカートリッジシステムを使いたいからって」
「そうなると自分で組むしかないってわけ。オリジナルデバイスもちなんて滅多にいなかったから、目立っちゃって」
「あ!それでお二人はお友達に……?」
「腐れ縁とあたしの苦悩の日々の始まりって言って」
「あはははは~。キャロ、髪洗おっか」
「お願いします」
「あたしは先上がってるから」
「「は~い」」


そういえばエリオはどうしてるかな………



その頃のエリオ……


「みんな、まだですかね……」
「きゅくる~」
「女の風呂は長えもんだ。慣れとかねえとそのうち苦労すんぜ?」
「待ち時間にですか?」
「………お前、男だよな?」
「??そうですが……」
「覗きをしないってのか?」
「え、ええ?」
「今度一緒にやるか?」
「へぇ~、ランス君、そんなこと考えてたんだ~。」
「覗きは男のロマンだろ?何言ってやが……」
「な、なのはさん……」
「嬢ちゃん!?」
「はやてちゃんに報告しようか?」
「それだけは勘弁してください!」




…………………


ロビーに行くと仁王立ちなのはさんと土下座するランスさん。
何があったのか聞いてみると……



「ぼ、僕からは何も………」
「みんな、こういうけだものには近づかないようにね。」
「「「けだもの?」」」


一体なんだったんだろうか………




side カリム



書類仕事が終わりに差し掛かったころ、シャッハから通信が入る。


「騎士カリム。騎士はやてとその従者の方がいらっしゃいました」
「早かったのね。私の部屋に来てもらって」
「はい」


はやてが話すべきことがあるって言ったのが今回の従者の人の事なのかしら。


「それからお茶を三つ。ファーストリーフのいいところをミルクと砂糖付きでね」
「かしこまりました」


と、ノックの音。


「どうぞ」



ドアの向こうにはフードをかぶったはやてと長身の男性。
二人とも部屋に入り、フードを取る。男性の容姿は褐色の肌に白髪。あまり見ない異彩の風貌だった。


「カリム。久しぶりや」
「はやて、いらっしゃい。そちらは…?」
「お初にお目にかかる。衛宮士郎という。以後、お見知りおきを」
「カリム・グラシアです。こちらこそ」


お茶が来たところでテーブルについて話を始める。



「ごめんなぁ。すっかりご無沙汰してもうて」
「気にしてないわよ。それより、話があるって彼のこと?」
「そうや。士郎」
「ここからは私が話そう。少しばかり長くなるが………」


そうして彼から聞いた話。彼ともう一人、今の六課にはサーヴァントと呼ばれる存在がいること。魔法とは違う技術、魔術。その担い手であること。
その力の一端を見せてくれるという。


投影、開始(トレース・オン)


彼の言葉の後に出てきたのは見惚れるような刀身を持つロングソード。


「これは彼の騎士王アーサーの持ちし王選定の剣勝利すべき黄金の剣(カリバーン)だ。ガジェットくらいなら一振りで50は切れる」
「すごい………この剣、少なくともSSランクの魔力を感じるわ」
「これが私の魔術。剣を複製することが出来る。そして、」


次の瞬間、剣は粒子となって砕け散った。


「破棄するのも自由自在。敵には絶対に渡らない、というわけだ」


彼の隣のはやてが少しふらふらしている。


「はやて、どうしたの?平気?」
「大丈夫や。少しふらっとしただけやから。で、士郎たちの説明はこんなとこ。これは秘蔵の切り札やから普段はデバイス持って戦ってもらってるよ。で、カリムも話したいことあるんやろ?」
「そうね、これをみてもらえるかしら?」


そう言ってカーテンを閉め、ディスプレイを出す。


「これ、ガジェット………新型?」
「今までの1型以外に2種類………戦闘性能は不明だけど………これ。3型は結構大型ね。本局にはまだ伝えてないわ。監査役のクロノ提督にはさわりだけお伝えしたけど……」
「で、この箱が」
「そう。今日の本題。一昨日づけでミッドチルダに運び込まれた不審貨物。」
「レリック……やね」
「その可能性が高いわ。2型と3型が発見されたのも、昨日からだし」
「ガジェットがレリックを発見するまでの予想時間は?」
「早ければ今日明日には」
「でも、おかしいな。レリックが出てくるんがちょい早すぎるような………」
「だから会って話したかったの。これをどう判断すべきか、どう対処すべきか。レリック事件も、そのあとにおこるはずの事件も、対処を失敗するわけにはいかないもの」


急にはやてがカーテンを開け、ディスプレイを片付ける。



「平気や。カリムのおかげで部隊はいつでも出動可能な状態や。即戦力の隊長副隊長、それに士郎たち。新人フォワードも実戦可能。緊急時に対応できる下地はできてる。せやから、大丈夫や」


自信満々に言うはやて。


「それにいざとなればあのレリックとやらを破壊してしまえばいい」


爆弾発言をした士郎さん。しかしあの剣を見せられた後ならばそれも可能なのではないかと思わされてしまう。
とりあえずは安心していいだろう。


「それにしても、この紅茶、かなりいい茶葉を使っているな」
「あら、おわかりになる?」
「ああ。昔地球のイギリスで執事をしていたことがあってね。その経験で………」


と、そこまで言って彼は言葉を止めた。なぜなら……





ほほう、いいことを聞いた。とでも言いたげな顔をしたはやてがそこにいたからだった。



side ティアナ



「これが……」
「あたしたちの、新デバイス……ですか?」

今までのとは全然違う……


「そうで~す!設計主任、私。協力。なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさんとリイン曹長」


「う~ん、ストラーダとケリュケイオンは変化なしかな……」
「うん、そうなのかな……」
「ちがいま~す!変化なしは外見だけですよ」
「リインさん!」
「はいです!二人にはちゃんとしたデバイスの使用経験がなかったですから、基礎フレームと最低限の機能だけで渡してたです!」
「あ、あれで最低限……?」
「ほんとに……?」
「みんなが扱う4機は六課の前線メンバーとメカニックスタッフが技術と経験の粋を集めて完成させた最新型。部隊の目的や個人の個性に合わせた機能の付いた文句なしに最高の機体です!この子たちはまだ生まれたばかりですが、たくさんの人の思いが詰まっています。だからただの道具と思わずに大切に、でも性能の限界までしっかり使ってあげてほしいです」


そんなにすごいものを私に……


「この子たちもね、きっとそう願ってるから」
「ごめんごめん、おまたせ~」
「なのはさん!」
「ナイスタイミングです。これから機能説明をしようとしてたところです」
「そっか、もうすぐに使える状態なんだっけ?」
「はいです!」


そしてシャーリーさんによる機能説明がはじまった。


「まず、その子たちはね、何段階かに分けて出力リミッターがかかってるの。最初の段階だと、そんなに大きな変化はないからそれで扱いを覚えていって」
「で、各自が今の段階を十分扱えるようになったら、私やフェイト隊長。リインやシャーリーの判断で解除していくから」
「ちょうど、一緒にレベルアップしていく感じです!」
「出力リミッター……っていうとなのはさんたちにもかかってますよね?」
「私たちの場合は本人にもだけどね」
「えっ……」
「リミッターがですか?」
「能力限定って言ってね、うちの隊長副隊長はみんなだよ」
「ほら、部隊ごとに保有できる魔導士ランクの総計規模って決まってるじゃない」
「え!え、ええ……そうですね」


スバルの奴、忘れてたわね……


「一つの部隊でたくさんの優秀な魔導士を所有したい場合はそこにうまく収まるように魔力の出力リミッターをかけるですよ~」
「ま、裏ワザみたいなものだけどね」
「うちの場合ははやて部隊長が4ランク、あとの隊長たちは2ランクダウンかな」
「4ランク………八神部隊長ってSSだから……」
「Aまで落としてるんですか!?」
「はやてちゃんもいろいろ苦労してるです……」
「なのはさんは……?」
「私は元がS+だから2.5ランクダウンでAA。だからもうすぐみんなの相手をまとめてはできなくなるかな」
「でも、ランスさんたちってBランクでしたよね?」
「まあ、あの二人はいろいろあるから………」



そう言ったなのはさんは、何かを隠しているように見えた。



「隊長たちははやてちゃん、はやてちゃんは直接の上司のカリムさんか、部隊の監査役のクロノ提督の許可がないとリミッター解除はできないですし………許可は滅多に下りないそうです」
「そうだったんですか…」
「まあ、隊長たちの事は心の片隅に置いておいて、今はみんなのデバイスのこと」
「みんなの訓練データを参考に作ってるから、そんなに違和感はないと思うよ」
「じゃあ、午後の訓練の時にでも使って、微調整しようか」
「遠隔操作もできますから、手間はかからないと思います」
「はぁ~、便利だよねぇ。最近は」
「便利です~」
「スバルの方は、リボルバーナックルとのシンクロ機能もうまく設定できてるからね」
「ほんとですか!?」
「持ち運びが楽になるように、収納と瞬間装着の機能もつけといたよ」
「わぁ~、ありがとうございます!」


そんな時だった。突如鳴り響く警報音。


「これって………」
「一級警戒体勢!?」
「グリフィス君!」


モニターにはグリフィスさんが。


「はい。教会本部からの出動要請です」


と、また別のモニターからは八神部隊長が。


「なのは隊長、フェイト隊長、グリフィス君、こちらはやて」
「状況は?」
「教会本部で追ってたレリックらしきものが見つかった。対象は山岳リニアレールで移動中」
「移動中!?」
「まさか……」
「そのまさかや。内部に侵入したガジェットが列車の制御を奪ってる。車内のガジェットは最低30はいると予想される。大型や飛行型の未確認タイプもいるかも知れん。いきなりハードな初出動や。なのはちゃん、フェイトちゃん、いけるか?」
「私はいつでも!」
「私も」
「スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、みんなもOKか?」
「「「「はい!」」」」
「よ~し、いいお返事や。グリフィス君は隊舎での指揮。リインは現場管制。なのはちゃん、フェイトちゃんは現場指揮。こちらで士郎を先行させとくけど、なるべく急いでや」
「「「「はい!」」」」
「ほんなら……機動六課フォワード部隊、出動!」



side はやて



「シャッハ。はやてを送ってあげて。機動六課の隊舎まで最短で。それと、士郎さんの飛行許可を」
「了解しました。」
「聖堂の裏へ回って。そこでシャッハが待ってる。士郎さんはそこから直接現場の方へ」
「おおきにな」
「感謝する、騎士カリム」
「それじゃ、いってきます」


さあ、初任務や。しっかり立ち回らんとな。



side ランス



今俺たちは問題の現場へ向かっている。が………



(おい、エリオ。キャロの嬢ちゃん、かなり上がってんぞ)
(え?あ、ほんとですね)



これはあれだな。あいつが先行したらしいし、俺もひと暴れさせてもらうか。


「あぶないところがあったら、私やリイン曹長、フェイト隊長がフォローするから」
「ちょっといいか?」
「何?ランス君。」
「嬢ちゃんたちは今回こいつらのフォローに専念してくれ。」
「え!?それは……」
「ま、現場行きゃわかるさ」
「ほんとに大丈夫?」
「安心しろって。」


(しっかし、この事件には裏がありそうだ、一応今のうちにサービスしとくか)



そうして彼は空中に何か文字を書く。


「何してるんですか?」
「なんでもねえ、ただのおまじないさ。」

彼が行ったのは『探索』のルーン。効果はかけた相手の現在の状態を知ることが出来る、というもの。効果時間は1時間。それだけあれば十分だ、と彼は思っていたのだった。 
 

 
後書き
五話です。
カリムとの会談に士郎連れてきました。 

 

六話~決意

 
前書き
亀更新の私がまさかのハイペースです



 

 
side キャロ


アルザスの竜召喚士。その力は、人を傷つける、怖い力。だから、不安だ。この力が、みんなを傷つけてしまいそうで。


「空からガジェットが来ます!数は………200!?」


ロングアーチからの情報。その言葉に現実に引き戻された。


「こちらスターズ5、衛宮士郎。空中の奴はこちらで始末する」
「ひとりで!?無茶です!」


士郎さんは怖くないのかな………あれだけの数相手に……


「ヴァイス、ハッチ開けてくれ。俺が出る」
「ランスの旦那、ひとりだけで平気か?なのはさんも出たほうがいいんじゃ?」
「隊長たちはこいつらが列車の中の奴に集中出来るようにサポートしてやってくれ。なぁに、あいつもいるんだ。10分もありゃ片付くさ」
「そうすか……了解」


ランスさんが出ていく前に私のところへ。


「あんま気張るなよ。気楽にやれや」


たった一言。でも……少しだけ、楽になった気がする。


「んじゃ、ライトニング5、衛宮ランス、いくぜ!」


楽しそうな顔で、ランスさんは出て行った。



side フェイト


「こちらライトニング1。パーキングに到着。直接現場に向かいます。グリフィス、飛行許可を」
「はい。市街地個人飛行、承認します。それと、フェイトさん。空は士郎さんとランスさんが抑えるそうです」
「そう……了解」


空のガジェットは相当数がいたはず。二人だけで平気かな……
でも、今は任せよう。


「バルディッシュ・アサルト、セットアップ!」
[Yes,sir.]



バリアジャケットを纏い、空に出る。


「ライトニング1、フェイト・T・ハラオウン。行きます!」



side なのは



「じゃあ今回のミッションの説明。1つ目はガジェットを全機撃墜すること。2つ目はレリックの安全な確保。私とフェイト隊長、リインがフォローするから思いっきりやってみよう!」
「「「「はい!」」」」


キャロ、不安みたいだね……よし!


「キャロ」
「は、はい!」
「そんなに固くならないで。キャロの魔法はみんなを守る力。とっても優しい力なんだよ」


そう言ってキャロの頭を撫でる。少しは安心できたみたいだね。


「なのはさん、旦那たちのおかげで無事に降下ポイントです」
「ありがとうヴァイス君。じゃあ、行くよ、みんな!」
「「「「はい!」」」」


まずはスバルとティアナ。


「スターズ3、スバル・ナカジマ」
「スターズ4、ティアナ・ランスター」
「「行きます!」」


次はエリオとキャロ。だが、キャロがなかなか踏み出せない。


「キャロ、一緒に行こう」
「エリオ君……」


エリオのおかげで落ち着いたみたい。


「ライトニング3、エリオ・モンディアル」
「ライトニング4、キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ」
「「行きます!」」


二人も無事降下完了。


「それじゃ、私も出るね」
「はい、お気をつけて」
「スターズ1、高町なのは。行きます!」


そうして私も降下した。


side 士郎


「全く、有象無象が。よく湧くものだな」


現在私は剣主体でガジェットを迎撃している。
最初は弓で迎撃しようとしていたのだが、AMFにより魔力消費量が普段よりも多い。
加えて、聖王教会本部での勝利すべき黄金の剣(カリバーン)の投影。
魔力節約のために剣で迎撃している、というわけだ。しかし……


一人では捌き切れんな。あれだけ時間をかけてこれだけか。


ちなみに、彼は5分で30体のガジェットを破壊している。一切の魔法を使用せずに。そんな彼に念話が入る。


(おいアーチャー。そこの固まってるやつら吹っ飛ばすからどきな)
(ランサーか。では私はあちらの奴を対処する。こちらは任せるぞ)
(へいへい)


「いくぜ、ブランチ!」
[Light javelin.]


彼の放った槍は亜音速で飛翔し、進行方向にいたガジェットを殲滅した。
しかし、士郎には彼のデバイスに刻まれた文字が見えていた。鷹の目は伊達ではないのだ。


『強化』のルーンがデバイスに施されていたのである。


(貴様、あの威力はルーンによる強化か。魔術がばれたらどうするつもりだ?)
(ばれるわきゃねえだろうよ。槍自体の強度の強化だ。見破れるはずがねぇ)
(だといいがな………。というか貴様いつの間にオリジナル魔法など習得した?)
(ぶっつけ本番だよ。イメージはできてたからな)



こちらもさっさと殲滅し列車のサポートに回らなければな。
だとすると………アレを使ってみるか。



「ワーカー。カートリッジロード」
[Load cartridge.]


これは………すごいな。これならば!


「いくぞ、ボウフォーム!」
[Form change.Bow form.]
「遊びは、終わりだ。行くぞ!」


10発の矢を同時に放つ。その矢はガジェットを貫通、さらに複数のガジェットを破壊していた。少なくとも50体はやっただろう。これで全滅か。
ロングアーチへ通信を入れる。


「こちらスターズ5。私の周囲3kmのガジェットは殲滅した」
「スターズ5、了解。ライトニング5、制圧完了。制空権獲得です!」

列車の方へ援護に行こうとした時、列車から落下するエリオの姿が。
そして、ランサーからの念話。


(大丈夫だ。俺らは手出し無用だぜ)


奴の言葉の意味はすぐ分かった。なぜなら………



強い決意をした顔をしたキャロがエリオを助けに飛び降りたからだ。


side スバル


「リボルバー………シュート!!!」


ガジェットを叩き壊し、その勢いで列車の上に出る。が、


「うわわわわ!」
[Wing road.]


マッハキャリバーが助けてくれた。


「お前って……実はすごいやつ?リボルバーシュートの出力調整にウイングロードまで……」
[私は貴女をより速く走らせるために生まれましたから]


なんか言い方が引っ掛かる………


「マッハキャリバーはAIだけど、心があるんだよね?だったら訂正。お前は、私と一緒に走るために生まれてきたんだよ」
[同じ意味では?]
「全然違うの」
[そうですか、考えておきます]


考えておく、か。まずまずの回答だけど、及第点かな。
さあ、レリック探しを進めよう!


side ティアナ


「クロスミラージュ、アンタホントに優秀ね。弾体生成までやってくれちゃうし」
[不要でしたか?]
「頼ってばっかじゃ自分のためにならないから私的にはだめなんだけど、実戦では助かるよ。」
[Thank you.]


さて、レリックも近いみたいだし、気を引き締めていかないとね。



side エリオ


新型ガジェットに遭遇。


「キャロ、僕が行くよ」
「エリオ君……」
「大丈夫。まかせて!」


今まで教えてもらったこと。それを生かして、勝つ!


「ストラーダ!」


ランスさんは言っていた。『槍において一番速い攻撃は突きだ。だから……』


「先端だけに魔力を込めて………突く!」


しかし、


「そんな……」


すぐにAMFでかき消され、装甲を破壊できない。機械相手にフェイントはいらない。すぐ下がって体勢を……
そう思った時にはガジェットのアームに足を取られていた。


「くそっ………」


そのまま放り投げられる。僕はそのまま谷へ落ちて行った。



side キャロ


エリオ君が戦ってる。だけど私は…………
力の暴走は怖い。未だに嫌な思い出だ。でも……



フェイトさんに引き取ってもらったあの日。私は知った。
してはいけないこと。いてはいけない場所。それだけだった私の世界に『自分のしたいこと』を。


そんな時、ガジェットに投げられたエリオ君が落ちて行った。私は………


(どうするんだ?隊長たちはスターズの方にいる。俺たちも距離があるから間に合わねえ。エリオの近くにいんのはお前だ。どうするんだ?キャロ・ル・ルシエ!)


突如入ったランスさんからの念話。エリオ君を助けられるのは………

(私が…………助けます!)


私しかいない。何より、私に笑いかけてくれたエリオ君を守りたい。
だったら………


(怖がってばかりじゃ何もできませんから!)
(よく言った。さあ、ぶちかまして来い!)



side はやて


私が隊舎に戻った直後、新型に放り投げられ、谷底へ落ちていくエリオ。そのあと、キャロがエリオを追って飛び降りた。


「ライトニング4、飛び降り!?あの高度からリカバリーなんて………」
「いや、あれでええ」
「八神部隊長!?」
「あそこまで離れればAMFも効かん。使えるで!フルパフォーマンスの魔法」


なのはちゃんとフェイトちゃんからの通信も入る。


「それに、私たちもいます。いざとなったらすぐ救出に行けるから大丈夫」


空中でエリオをキャッチしたキャロはそのまま竜騎召喚を行い………見事フリードを呼び出すことに成功した。


side エリオ


落下していく僕はキャロとフリードに助けられ、あの新型ガジェットに再び対面している。


「キャロ、ブーストお願い。今度こそ突き破るよ。」
「うん!ケリュケイオン!」
[Boost up.acceleration.]
「これで決める!!」


全力を込めた突き。ガジェットを貫くことに成功。ストラーダを引き抜くと、ガジェットは爆発。倒すことが出来た。


「ガジェット反応消滅。全機撃墜成功!スターズF、レリック確保しました」


本部からの通信で今回のミッションが成功したことを知る。
よかった……



side はやて


「スターズの二人はそのままレリックを中央まで護送お願いや。ライトニングは現場待機。現地の局員に引き継ぎお願いね」


今回は上々の成果だ。しかし………


簡単に行き過ぎや。何か裏があるかもしれんな……


安心はできなかった。




side スカリエッティ



「ふふふ………素晴らしい!素晴らしいよ!君もそう思うだろう?ウーノ」
「プロジェクトFの残滓たちですか?」
「あの子たちやエース・オブ・エース、タイプゼロ・セカンドなどもそうだがこの青い髪の男と白い髪の男さ」
「彼が何か……?」
「青い髪の彼のデバイスから微量だが異質な魔力反応を感知しているんだ。そして彼ら自身からも。白い髪の男は一切魔力を使わずにガジェットを楽々破壊している。タイプゼロも魔力行使なしで倒していたが、それ以上だ」
「追加戦力を送って様子を見ますか?」
「いや、やめておこう。彼らはまた来るさ。それまで準備をしておかないとね………」


機動六課か………いい研究材料がたくさんある部隊だね……ふ、ふふふふふふふ。はーっはっはははははは!


はやての予想は当たっていた。この事件の裏にいる男、ジェイル・スカリエッティ。
フェイトが追い続け、いまだ見つけられていない次元犯罪者。
この男のたくらみを英霊たちは阻めるのだろうか…… 
 

 
後書き
マジで戦闘シーン書くの下手すぎる……

誰か上手い書き方教えてください……


あと質問は感想版に書いてもらえると助かります。

それでは~


誤字の修正しました。 

 

七話~英霊と優しき少女

side ティアナ


私には夢がある。
執務官になること。そのために自分の力を証明し続けてきた。
でも、この部隊に来て思った。
天才や歴戦の勇士ばかりが揃い、『魔術』というレアスキルまで持っている人までいる。
同期の陸戦フォワードは将来有望。


凡人は、私だけ……………


だとしても、証明するんだ!


ランスターの弾丸はちゃんと敵を撃ち抜けるってことを。



side ヴィータ



「おらおらぁ!どうしたスバル!」


あたしは今、同じフロントアタッカーとしてスバルに訓練をつけている。


「くうっ………」
[Protection.]
「だありゃあああああ!!」
「うわあっ!」


いい強度だな。吹っ飛ばされても壊れねえプロテクション何ざそうねえからな。


「ま、筋はいいが、まだまだだな」
「あ、ありがとうございます………」
「おいスバル」
「なんですか?ヴィータ副隊長」
「あたしたちフロントアタッカーってのはな、単身で敵陣に切り込んだり、最前線で防衛ラインを守ったりすんのが仕事だ。防御スキルや生存能力が高いほど攻撃時間が長く取れる………てとこまではなのはに教わってるな」
「はい!」
「受け止めるバリア系、弾いて逸らすシールド系、身にまとって自分を守るフィールド系。この三種を使い分けつつポンポン吹っ飛ばされねえよう下半身の踏ん張りとマッハキャリバーの使いこなしを身につけろ」
「頑張ります。」
[学習します]
「防御ごと潰す打撃があたしの専門分野だ。グラーフアイゼンにぶっ叩かれたくなかったら……しっかり守れよ」
「はい!」


こいつもタフだしな。ガッツリ厳しくやってやるか。



side フェイト


久しぶりにエリオとキャロに訓練をつけてあげられている。


「二人はスバルやヴィータみたいにタフじゃないからまずは攻撃を食らわないように」
「「はい!」」
「まずは動き回って狙わせない。攻撃が当たる位置に長居しない。それが低速で確実に行えるようになったら……スピードを上げていく」


見本としてはこんなところかな。じゃ………


ターゲットからの一斉攻撃。それを高速移動で回避。


「「うわぁ……」」
「こんな風にね」
「「す、すごい……」」
「今のも、ゆっくりやればだれでもできる基礎アクションを早回しにしただけなんだよ」
「そうなんですか……」
「スピードが上がれば上がるほど勘やセンスに頼るのは危ないの。ガードウイングのエリオはどんな状況でも攻撃と支援が行えるように。フルバックのキャロは素早く動いて仲間の支援をしてあげられるように。回避行動の基礎、しっかり覚えよう」
「「はい!」」
「あの……フェイトさん」
「何?エリオ。」
「今日はランスさんは……」
「ランスはね、新しい魔法を試すってなのはのところに行ったよ」
「そうなんですか……」
「きゅくる~」


残念そうなエリオ。かなりなついてるみたいだね………ちょっとさびしいかも。




side なのは



「良いよ、ティアナ。その調子」
「はい!」
「ティアナみたいな射撃型は一々避けたり受けたりしてたら仕事ができないからね」
「はっ!」


後ろの魔力弾を撃ち落とせずに回避するティアナ。


「ほら、そうやって避けると後が続かない!」


ちらりと横目でランス君の方を見ると………


背後の魔力弾をまるで目が後ろにあるかのように正確無比に撃ち抜いていた。
初見で私の魔法をまねたり、近接戦はフェイトちゃんやシグナムさんとも互角以上。しかも本気じゃないのに。
二人にはリミッターもあるとはいえ………


ほんと、すごい才能。


おまけに今日は………



朝~


「なのはの嬢ちゃん、ちょっといいか?」
「何?」
「収束砲、だったか?あれ教えてくれ」
「ええ!?」



…………………




ときたものだ。
まだ魔法に触れて三週間ちょっと。だというのに………


魔力量が嘘のような強さ……リミッターが付いたとしてもオーバーSレベルの戦闘能力があるのは間違いないよね……


しかも奥の手たる魔術と自身の持つ魔槍を使ってはいない(気づかれてないだけで魔術は使ってますが)のだ。


と、ティアナが今度はしっかりと魔力弾を撃ち落とす。


「そうそう!その調子!」


ティアナもいい感じ。


「射撃型の神髄は?」
「あらゆる相手に、正確な弾丸をセレクトして命中させる。判断速度と命中精度!」
「そう!チームの中央に立って、誰より早く中、長距離を制する。それが、私やティアナのポジション、センターガードの役目だよ!」
「はい!」




side シグナム



「いや~、やってますねぇ」
「そうだな。やる気があるのはいいことだ」
「初出動がいい刺激になったみたいだな」


現在、モニターで訓練を見ているのは私とヴァイス、デバイスが調整中の衛宮の三人だ。


「若いっていいっすね~」
「若いだけあって成長も早い。まだしばらくは、危なっかしいだろうがな」
「若いころは我武者羅なものだ。それが裏目に出ることもある。それを止めてやるのが私たち年長者だろう?」
「衛宮の旦那って年の割にずいぶん老けたこと言いますね」
「なにしろ私は平穏という言葉と無縁の人生を送ってきたのでね。自然とこうなったのさ」
「へぇ~」


(ヴァイス、衛宮の過去はいろいろあるそうだ。あまり深く聞くのはよしておけ)
(ま、そうすね。人にはいろいろあるもんすから)


「そういや姐さんは参加しないんで?」
「私は人にものを教えるというのが苦手でな。戦法など、届く距離まで近づいて切れ、としか言えん」
「ある意味最高の奥義何すけどね………まあ、確かに連中にはまだちっと早いっすね……」
「私は食堂の方の仕事があるのでこれで失礼する」
「ああ」
「うまい飯期待してますよ~」
「心得た」




side なのは



「はい終~了。お疲れ様」
「個別スキルに入ってくると、結構きついでしょ?」
「け、結構というか………」
「かなり……」
「フェイト隊長はあんまり出てこれねえけど、あたしは当分お前らに付き合ってやるからな」
「あ、ありがとうございます……」


かなり疲労が見られる中、一人だけぴんぴんしている人が一人。



「ラ、ランスさん……なんでそんなに余裕そうなんですか?」
「昔一人で一個大隊の足止めしてたことがあっからな、これくらい散歩と変わんねえよ」
「さ、散歩って………」
「その前にさらっとものすごいこと言ったような……」



一個大隊一人でって……英雄ってこんな人ばっかなのかな?


「と、とりあえずエリオとキャロは特にだけど、体が成長途中なんだから無茶はしないように」
「「「「は、は~い」」」」
「じゃ、お昼にしよっか」



隊舎に戻ると、はやてちゃんとリイン、シャーリーが。


「はやてとリインは外回りか?」
「はいです!ヴィータちゃん♪」
「ちょっとナカジマ三佐とお話ししてくるよ。スバルはお父さんとお姉ちゃんになんか伝言とかある?」
「あ~……いえ、大丈夫です」
「そうか、じゃ、行ってくるよ。」
「ナカジマ三佐とギンガによろしくね」
「行ってらっしゃい、はやてちゃん」
「うん」
「行ってきま~す」




side スバル



「スバルさんのお父さんとお姉さんも陸士部隊の方なんですね」
「そうだよ。八神部隊長も一時期父さんの部隊で演習してたんだって」
「へぇ……」
「しかし、うちの部隊って関係者繋がり多いですよね。隊長たちも幼馴染なんですよね」
「そうだよ。なのはさんと八神部隊長は同じ世界出身で、フェイトさんも子供のころはそっちにいたんだよ」
「確か……第97管理外世界『地球』ですよね」
「97番ってうちのお父さんのご先祖様がいた世界なんだよね~」
「そうなんですか?」
「あっちには私も父さんも行ったことないからよくわかんないんだけどね」
「そういえばなんとなく名前の響きとかなのはさんたちと似てますよね」
「あとランスさんたちとも!」
「エリオはホントランスさんのこと好きだよね」
「はい!」
「そうか、そいつは光栄だ」
「「「「いつの間に………」」」」
「私もいるぞ」
「士郎さん!」
「俺らも97出身だからな、会話に混ざりに来たってわけよ」
「ああ!そうでしたね」
「スバルの嬢ちゃん、教えたことあったか?」
「え!ええと……」


そんな時、ティアから念話が。


(この馬鹿!あの事は秘密だって言ったでしょ!)
(ご、ごめん~)


「名前の響きからそんな感じがしてました」
「ほ~う?」


う、まずいかも……よし!


「え、エリオはどこ出身なの?」
「僕ですか?僕は本局育ちです」
「本局?住宅エリア、ってこと?」
「いえ、本局の特別保護施設育ちなんです。」


あっちゃ~、まずいこと聞いちゃった………
皆からの視線が痛い……


「そ、そんなに気にしないでください。とても良くしてもらってましたから」
「その頃からフェイトさんが保護責任者なんだっけ?」
「ええ。僕は今でもフェイトさんに育ててもらってるって思ってます。フェイトさん、子供のころに家庭の事でさびしい思いをされたそうで、そういう子供を放っておけないんだそうです。自分も、優しくしてもらえる手に救われたから、って……」
「そうか……優しくしてもらえる手、か……」



何かを呟いていた士郎さん。その眼はどこか遠くを見つめていた。




side はやて



「お久しぶりです。ナカジマ三佐」
「おう。八神よぅ、新部隊、調子いいみたいじゃねえか」
「はい。今のところは、ですけど」
「にしても、今日はどうした?古巣の様子見に来ただけじゃねえだろ?」
「愛弟子から、お願いがあってきました」


そんな時、来訪者が。


「失礼します」


スバルの姉、ギンガ・ナカジマだ。リインもいる。


「ギンガ!久しぶりやなぁ」
「八神二佐!お久しぶりです」


お茶をいただいて話を続ける。


「で、本題はなんだ?」
「お願いしたいのは、密輸物のルート捜査です」
「おめぇんとこで扱ってるロストロギアか」
「詳しい事はリインがデータを持ってきてますのでそちらを」
「まあ、うちの捜査部を使ってもらうのは構わねえけどよ、なんで本局とかじゃなくてうちなんだ?」
「捜査自体は彼らにも依頼してます。ですが、地上の事は地上部隊が一番知ってますから」
「ま、筋は通ってるな。いいだろう。引き受けた」
「ありがとうございます!」
「捜査主任はカルタス、その副官にギンガをつける。二人とも知った顔だろ。それに、ギンガならお前も動かしやすいだろう」
「うちの方はテスタロッサ・ハラオウン執務官が捜査主任ですので、ギンガもやりやすいんじゃないかと」
「そうだな、ギンガもハラオウンのお嬢と一緒にやれるのは嬉しいだろうよ」
「すみません…スバルに続いてギンガまでお借りすることになっちゃって」
「なに、二人とも満足だろうからいいさ。しっかし……お前も気付ば俺の上官なんだよな。魔導士キャリア組の出世は速いねぇ」
「魔導士の階級なんて飾りですよ。中央や本局ではまだまだ小娘扱いです」
「そうか……おっと、そういう俺も小娘扱いしてたな。すまん」
「いえいえ、ナカジマ三佐は今でも私の尊敬する上官ですから」
「そうかい。それにしても、おめえんとこの……衛宮兄弟だっけか?一部でうわさになってるみてえだぞ?」
「あの二人はもともと魔導士ではないんです」
「そうなのか?」
「はい。これ以上は彼らのプライバシーにも関わりますから………」
「すまねえな。無粋なこと聞いちまって」


そんな時、通信が入った。


「失礼します。ラッド・カルタス二等陸尉です」
「八神二佐から外部任務の依頼だ。ギンガ連れて会議室で打ち合わせしてきてくれ」
「了解しました」


通信が切れる。


「ま、そういうこった」
「ほんとに、ありがとうございます」
「会議終わったら飯でもどうだ?」
「はい!ぜひ」



さてと、これでひと段落つきそうやな。





side ギンガ




「そうですか……フェイトさんが」
「六課の捜査主任ですから、一緒に捜査することもあるかもしれないですよ」
「これは、頑張らないといけませんね!」
「はいです!それと、捜査協力にあたって六課からギンガにデバイスをプレゼントするですよ~」
「デバイスを?」
「スバル用に作ったのの同型機で、ちゃんとギンガ用に調整するです!」
「そんな……いいんでしょうか」
「はい!」


フェイトさんと一緒の仕事に新デバイス……これは一層頑張らないと!



side フェイト



現在、私とシャーリーは本局で回収したレリックのデータ整理を行っている。


「う~ん、それにしても、わからないんですよね。レリックの存在意義。エネルギー結晶体にとすると無駄な機構が多いし、動力源としてもなんだか……」
「まあ、すぐに使い方のわかるようなものならロストロギア指定はされないよ」


ディスプレイが切り替わり、ガジェットの画像が。



「今度はガジェットの残骸データ?」
「はい。こっちはあまり旧型との違いはないですね……」
「!!アレは……」
「どうかしました?」


その画像の中に一つだけ気になるところがあった。



「少し戻して。たぶん、内部機構の分解図のところ」
「はぁ。この辺ですか?」


そして見つけたそれは……


「ジュエルシード……」
「なんです?それ?」
「ずいぶん昔に私となのはが回収したロストロギアで、いまは局の保管庫にあるはず……」
「なんでそんなものが!?」
「シャーリー、ここの拡大を。何か書いてある」
「これ、名前……ですかね」



まさか、あの男の…………



「ジェイル・スカリエッティ………」
「だれなんですか?」
「Dr.ジェイル・スカリエッティ。ロストロギア関連の事件で数えきれないくらいの罪状で超広域指名手配されてる次元犯罪者だよ」
「次元犯罪者………」
「ちょっと事情があってね、この男の事は何年か前から追ってるんだ」
「そんな犯罪者が、どうしてこんなにわかりやすい自分の手掛かりを?」
「本人だとすれば挑発、他人だとしたらミスリード狙い。どっちにしても私やなのはがこの事件に関わってることを知ってるんだ。だけど、本当にスカリエッティならロストロギア技術でガジェットを製作できるし、レリックを集めてる理由も想像できる」
「理由……?」
「シャーリー、このデータをまとめてすぐ隊舎に戻ろう。隊長たちを集めて緊急会議をしたいんだ」
「わかりました」


これでレリック事件についても見えてくることがある。あの男は、今度こそ捕まえる……!



side はやて



ギンガとナカジマ三佐との昼食中にフェイトちゃんからの連絡。


「そうか……なら私もすぐに戻るよ。丁度こっちも捜査の手を借りれたとこやし。ほんならまたあとで」


通信を切るとギンガが質問してくる。


「何か進展が……?」
「事件の犯人の事でちょっとな。……そういうわけですので、ナカジマ三佐。私はこれで失礼します」
「おう」


お勘定をしようと伝票を取ろうとすると……先に奪われてしまった。



「そんな!?」
「さっさと行って来い。部下が待ってんだろ?」
「はい。ありがとうございます。ギンガには私かフェイトちゃんから連絡するから、それまで待っててな」
「はい。お待ちしています」


ナカジマ三佐にはほんとお世話になってばかりやけど、ここは甘えさせてもらって早く戻らんと!



side フェイト



「あの広域指名手配犯……Dr.スカリエッティでしたっけ?どうしてレリックを集めるんですか?」
「あの男は、生体研究に関して異常なまでの熱意と技術を持ってる。そんな男がガジェットみたいな道具を使ってまで探し求めるっていうことは、何かの生体兵器を作ろうとしてるとしか考えられないよ」


………母さんが関わったあのプロジェクトのように………



side なのは



「じゃあ、夜の訓練は終了。おつかれさま~」
「「「「お、おつかれさまでした~」」」」



みんなが帰った後、データ整理をしていると、不意に横から紅茶を差し出される。



「君もよくやるな。朝から晩まで一日中面倒を見てやるなどなかなかできることではないぞ」
「士郎君………」
「しかし、君の教導を見ていると、私がされていたのがものすごいスパルタで訓練と呼べるようなものでなかったことを改めて思い知らされるよ」
「いったいどんな訓練をされてたの?」



あの強さを生み出すような訓練、とても気になった。



「そうだな…………手合せと言って一方的にやられる中での剣技、魔術の訓練と称した一方的暴行、後は人外相手の実戦などだな」
「あ、あははは………」


全く参考にはならなそうな訓練だった。


「だが、おかげで………命のやり取りの中で生き残る術は身についた」
「命の………」


士郎君やランス君の戦闘で感じた違和感。それは……



『負け=死』という残酷な世界で生きてきて身についた動きだったからなのかな。



「すまない、辛気臭くなってしまったな」
「ううん………あのね」
「なんだ?」



だからだろうか。あの事を話してみようという気になったのは。



「私……死にかけたことがあるの。任務中に」
「………」
「小学五年生の時にね、任務の帰りに襲われたとき、今までの無茶がたたって撃墜されて。体とリンカ―コアに深刻なダメージを受けたの。医者には立って歩けなくなるかもしれないって言われて。とっても怖かったし、みんなに迷惑をかけた。絶望もした。だから、ね。私は教え子に無茶をしてほしくないんだ。あんな思いは、してほしくないから………」
「そうか」


しばらく黙っていた士郎君だったが、不意に語りだした。



「私の肌と髪の色、不思議に思うだろう?」


意図が分からない質問だった。だけど、確かに気になっていた。私と同じ日本人。白髪は百歩譲ってあったとしても、浅黒い肌になどなるはずはない。だから……



「理由が、あるの?」



そう、聞いていた。



「ああ。これはな、投影の使い過ぎ、なんだ」



投影―――


士郎君の魔術。その所為―――?



「以前、私の固有結界の話をしただろう?あれはな、行使しすぎれば自らを滅ぼす――と言って、師にあまり多用するな、と言われていたんだ。だが――――
私は師と決別し、その力を使い続けた。結果は、もともと赤銅色だった髪は白く、肌の色は変色した。強すぎる力は己自身を滅ぼす………まさしくそんな感じだ」
「どうしてそこまで………?」
「かなえたい、約束があった」
「約束……?」
「私を育ててくれた養父、その人はな、正義の味方を目指していた。すべてを救う、正義の味方を………
だが、なれなかった、と。亡くなる直前に、()に話してくれた。だから約束したんだ。
『俺が代わりになってやる』って。だが現実は正義の味方はきれいなものではなかった。十のため、一を見捨てる。百のため、十を殺す。万のため、百を切り捨てる。たとえその一に、十に、百にどんなに愛したものがいようと……そんなことを、ずっと、ずっと続けていた。そんな私を皆はこう呼んだ」



――――化け物、と―――――


そういって語る士郎君が……………はやてちゃんの見ている夢の人みたいだと思った。だから………



「士郎君は傷ついてきたんだね……、でも私はそんな士郎君の支えになりたいよ」


自然と、そう言っていた。


「……フッ、本当に、私の周りには強い女性が多いな」


彼は、笑った。出会ってから一番いい笑顔で。



「ありがとう、なのは。君のような女性(ひと)に出会えて、呼ばれた甲斐があったというものだ」
「私は何もしてないよ……してあげるのはこれからだよ」
「もらいっぱなしというのも何だ。()も君を守ろう。英霊エミヤではなく、衛宮士郎として」


そう言って私を見る彼が、月明かりに照らされる彼が、とっても格好良く、私の目にはまるで騎士のように映った。




side ランス



「いい雰囲気じゃねえか」



アーチャーの奴。本当に変わった。


こっちに来るときに流れ込んできた奴の記憶。その中の表情からは想像できないような笑顔。



「ありゃ惚れたかねぇ……」



経験が長いからわかる。嬢ちゃんのあの顔。まさに恋する乙女、って感じだ。自覚があるかはわからねえけどな。



「いや~やりおるなぁ、士郎の奴」
「全くだ。ほんとに女を落とすのが上手いやつだぜ」
「なに?士郎は女たらしなんか?」
「ああ。それも筋金入りの――――」


またこのパターンか。


「いつの間にか会話に混ざんのはよしてくれよ、マスター」
「ええやんか、減るもんでもないんやし」
「そういうことじゃあねえんだがな……」
「ま、これでも飲んで元気だしや」


そういって酒瓶を渡してくる。


「お、気が利くねぇ」
「気が利くんはええ女の最低条件やで?」
「ちげえねぇな」
「ほんなら、なのはちゃん達も戻ってきたし、私も戻るわ。月見酒もほどほどにしとき~」
「へいへい」



あいつのこともそうだが、俺も、ここで何かを探してみるか………
 
 

 
後書き
今回はなのはに転機を与える回でした。


本人は気が付いていない恋心……ってやつです。


ランス&フェイトはもう少し話が進んでからになるかな?


とりあえず今回はこれで~


修正しました 

 

八話~ホテル・アグスタ

side キャロ


今私達はヘリでとある場所に向かっています。


「じゃ、今日の任務のおさらいや。現状での容疑者はこの男」


モニターに映るのは紫の髪に白衣の男の人。


「名前はジェイル・スカリエッティ。違法研究で広域指名手配中の次元犯罪者や」
「こっちの捜査は私がするけど、皆も覚えておいてね」
「「「「はい!」」」」
「で、私達が今日向かうのはここ。ホテル・アグスタ」


モニターにはとっても綺麗な建物が。


「骨董品オークションの会場警備と人員警護。それが今日のお仕事ね」
「取引許可の出ているロストロギアがいくつも出品されるので、その反応をレリックと誤認したガジェットが出てくる可能性が高い、ということで私たちが呼ばれたです」
「この手の大型オークションは違法取引の隠れ蓑にもなるから、油断しないように」
「現場には、昨夜から副隊長たちとランスほか数名の隊員たちが張ってくれてる」
「私たち隊長と士郎君が建物内部の警備にあたるから、前線は副隊長の指示に従うように」


そういえば、あの四つの箱、なんなんだろう…………聞いてみようかな。



「あの~シャマル先生」
「ん?なあに?」
「さっきから気になってたんですけど、その箱の中身って?」
「ああ、これ?隊長たちの、お仕事着」


お仕事着………?ますますわからない………




side なのは



受付に行く前に、ロビーに集合。そこには…………




執事がいました。




「やっぱ似合うで!士郎!」
「………やはりきみの仕業か。これ(・・)は」
「…………」
「なのは?」
「ふぇ!?な、なにフェイトちゃん」
「ぼーっとしてるけど、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫」


私の反応を見たはやてちゃんはニタァ、と笑った。



「大方、ここの執事さんに見とれてました、って言うんやろ?お嬢さんや」
「そ、そそそそ、そんなこと…………」


あります。見とれてました。
だって!似合いすぎだもん!
きっちりとした燕尾服に赤いネクタイをしっかり締めていて、それでいて無駄のない立ち姿。一目で洗練された執事だってわかるような雰囲気を醸し出してる。



「ま、冗談や。でも、執事経験があるってほんとやったんやね~」
「そうなの?士郎」
「ああ。イギリスにいたころ、とある貴族の執事をしていたことがあるんだ」
「貴族………」



だからこんなに似合うのか……



「じゃ、ちょうど四人だし、二人一組で警備にあたろう」
「フェイトちゃ~ん、私と組むで!」
「え!?私はなのはと……」
「固いこと言わんといて~」
「そ、それは困るよ!!」


思わず大きな声で言ってしまった。周りから向けられる視線が痛い……


「ほ~う?どうしてや?」
「そ、それは………」


恥ずかしいからです。


「私が君と回ったほうがいいからだろう。戦力的に考えて、近距離に弱い君とこの中で一番近接戦のできる私が組むのが妥当、ということだよな?なのは」



理由は違うけど……ここは士郎君に乗っておこう。



「そ、そうだよ!それに私はクロスレンジもそこそこ戦えるし!」



大きなため息を吐いたはやてちゃんがこっちに向き直る。


「そういうことならそうしよか」



助かった………今の士郎君の姿まともに見れないし。





side 士郎



「会場内の警備はさすがに厳重、非常シャッターもあるし、これなら少しは安心できるな」
「なあ、士郎」
「なんだ?マスター」
「朴念仁、って言葉知ってる?」
「そのくらい知っている。馬鹿にしているのか?」
「いや?ここまで来るとなぁ、なのはちゃんが不遇で………」
「???」


なぜなのはがここで出てくるのだ?さっぱりわからん………………



side フェイト



「なのは、さっきはどうしたの?」
「ううん、何でもないの……」


さっきからなのはがおかしい。いつもよりぼーっとしてるし………大丈夫かな?



「バルディッシュ、オークション開始までどのくらい?」
バルディッシュ[約三時間半です。]
「ありがとう」
「はぁぁぁ…………」


なのはがこうなった理由、はやては知ってるみたいだった。後で聞いてみようかな………



side ユーノ



「あれ?」
「先生、どうかされましたか?」
「ああ、いえ……」


あの二人、どこかで見たような………



side ティアナ




警備中、スバルと念話で話している。



(今日は八神部隊長の守護騎士団、全員集合か……)
(そうね。アンタは詳しいわよね?八神部隊長たちのこと)
(う~ん、父さんやギン姉から聞いたことくらいだけど、八神部隊長のデバイスが魔導書型で、『夜天の書』っていうこと。副隊長たちとシャマル先生、ザフィーラは八神部隊長の保有する特別戦力だ、ってこと。それにリイン曹長を合わせれば無敵の戦力、ってこと。でも、八神部隊長たちの出自は匿秘事項だから知ってすのはそれくらい)
(レアスキルもちはみんなそうよね。あの二人のことは?)
(ティアが調べてたことくらい。あとは、あの二人が来た頃くらいから八神部隊長が手に紋章みたいなのをつけてる、ってことかな?ティア、気になるの?)
(別に。まあいいわ。また後で)
(うん)


六課の戦力…………はっきり言えば無敵を通り越して異常だ。
隊長たち全員がオーバーSランク。副隊長たちもニアSランク。ほかの隊員たちも前線から管制官まで未来のエリートたち。おまけに異質なレアスキル『魔術』を使う二人。やっぱり、この中で凡人は私だけ……でも!私は立ち止まるわけにはいかないんだ!



side ルーテシア



「あそこか。お前の探し物はここにはないはず。何か気になるのか?」


偵察に行っていた子が帰ってきて教えてくれる。


「ドクターのおもちゃが近づいてるって」




side シャマル



「!!クラールヴィントのセンサーに反応……シャーリー!」
「はい!来ました、ガジェット一型、総数36!三型二…三…四機です!」
「前線各位へ、今回は広域防衛線です。ロングアーチ1の総合管制と合わせて、私、シャマルが現場指揮を執ります」
「スターズ3、了解!」
「ライトニングF、了解!」
「スターズ4、了解!シャマル先生、私にも前線の映像ください!状況を知りたいんです」
「了解、クロスミラージュに直結するわ。クラールヴィント、お願い」
[Yes.]



やっぱり来たわね………これくらいなら、平気だと思うけど……



side シグナム



「エリオ、キャロ。お前たちは上にあがれ。ティアナの指揮で、ホテル前で防衛ラインを築く。ザフィーラは私と迎撃に出るぞ」
「俺はどうするよ、シグナム」
「ランス………持ち場はどうした?」
「連絡受けて急いできたんだよ」
「そうか……ならお前は新人たちのサポートを」
「はいよ」
「こいつらを頼むぞ、ランス」
「あいよ、ザフィーラ、しくじるなよ」
「ああ」
「ザフィーラ、喋れたの………?」
「守りの要はお前たちだ。頼むぞ」
「うん!」
「頑張る!」



さあ、行くか。新人たちの手前、みっともないところは見せられんからな。





side ヴィータ




シグナムと迎撃に出る。


「大型は私が叩く。お前は小さいのを頼む」
「おうよ、新人たちの防衛ラインまでは一機も通さねえ!」
「お前も案外過保護だな」
「う、うるせー!」


一体一体相手してる暇はねえ!だったら………


「まとめて、ぶち抜く!」


ザコどもを撃墜していく。いくらか倒した後、変化が訪れた。


自動機械のはずのガジェットが、AIではありえない動きを見せ、攻撃を回避する。



「急に動きが良くなった!?」



下にいたシグナムもこっちへ来る。


「ヴィータ、ザフィーラと合流して叩くぞ。どうやら簡単にはいかんようだ」
「新人どもはどうすんだよ?」
「新人たちはランスに任せてある。安心しろ」


そうは言うが……嫌な予感が消えねぇ。何にもなきゃいいんだが………




side ルーテシア



「ごきげんよう、騎士ゼスト。ルーテシア」
「ごきげんよう」
「なんの用だ」
「冷たいねぇ。見ているんだろう?あそこにレリックはない。が、研究材料としてはおもしろいものが1つあってね、回収してもらいたいんだ。君たちなら造作もないだろう?」
「断る。レリックが絡まぬ場合は互いに不干渉だったはずだ」
「相変わらず騎士ゼストは冷たいな。君はどうだい?ルーテシア」


ドクターの探し物、手伝ってあげたいな……


「いいよ」
「そうか、ありがとう。お礼に今度お茶とお菓子でもご馳走しよう。今データを送った。それではよい知らせを待っているよ」


ドクターとの通信が切れると、ゼストが話しかけてくる。



「いいのか?」
「うん。ゼストとアギトはドクターを嫌うけど、私は嫌いじゃないから」


あの子たちにドクターのおもちゃを動かしてもらって、邪魔な子たちの足止めに向かわせる。
その間にガリューに取りに行ってもらおう。


「ガリュー、お願いね」




side ティアナ




唐突にシャマル先生からの通信。


「ティアナ、来るわよ!」



ガジェット新型1台、旧型10台だ。



「さて、どうするよ?でかいのは俺が片づけてやろうか?」



大型は時間がかかる。その間に小型に防衛ラインを突破されかねない………


「お願いします。私たちが小型を叩きます!行くわよ!スバル!エリオ!キャロ!」
「「「おう!」」」
「そうか。じゃ、またあとでな」


しかし………こいつらの動き、この前とは全然違う!攻撃が当たらない……


「スバル!エリオ!」
「任せて!」
「行きます!」
「うおおぉぉぉぉぉぉ!」
「せやあぁぁぁぁぁぁ!」


だが、二人の攻撃もかわされる。
キャロのバックアップのおかげで、幸いにもこちらにダメージはない。だが、攻撃が通らなければ意味はない!


「前線、もう少し頑張って!今ランスさんがそっちへ向かってるわ。それまで持ちこたえて!」


指示は防衛。しかし、そんなんじゃだめだ!



「守ってばっかじゃだめです!ちゃんと全機落とします!」
「ティアナ!無茶しないで!」
「大丈夫です。こちとら毎日練習してるんですから」


そうなると………



「エリオ、キャロ連れてセンターまで下がって。私とスバルの2トップで行く。」
「わ、わかりました」
「スバル、クロスシフトAで行くわよ!」
「おう!」


私は今まで、どんな時でも自分の力と勇気を証明してきた。今回だって同じ。いくらすごい隊長のいる部隊でだって、どんな強い人のいる部隊でだって、関係ない!
私の弾丸は敵を撃ち抜く!


「ティアナ!?4発ロードなんて無茶よ!そんなことしたらティアナもクロスミラージュも……」
「大丈夫です。撃てます!」
[Yes.]


これで終わらせる!!


「クロスファイヤー………………シュート!!!」



ガジェットたちを破壊していく私の弾丸。しかし、1つだけずれてしまった。


その軌道上にはスバルが………


直撃コース……






しかし、弾丸は突如現れた影により阻まれた。



「何をやってる、ティアナ」
「ラ、ランスさん……これは」
「お前は黙ってろ、今はあいつと話している」
「あ、………」
「戦場に指揮官の話が聞けねえやつは要らねえ、さっさとさがれ」



その声は今までのような飄々としたものではなく、氷のような冷たさだった。


「ランスさん!」
「お前も同じだ。もうなにもするな」


私達は群青色のバインドをかけられ、強制的に転送された。
そのときに少しだけ見えたランスさんの顔は、無表情。
その顔を見たとき、私は自分の失態を悔やんだ。




side ランス



……間に合ったか。



シャマルの指示に従い、防衛ラインに戻ると、標的を外した弾丸がスバルの嬢ちゃんに当たるところだった。
すぐさま自身の槍を投擲し、駆ける。

爆発が起きたところでバリアを張り、爆発を防いだ。


焦ってやがるな。


あの二人、特にティアナだが、戦場での独断は相当な実力がなければ危険極まりない。
それがわかってねえ。


だから、今回はきつめに言っておいてやる。
俺も甘くなったもんだな。
他人にものを教えるなんて、柄じゃねえのによ。



side ヴィータ



「こっちは終わったぜ」
「こちらも全機撃ち落とした」


そこで気がついたが、スターズ二人の姿がねえ。


「ティアナとスバルは?」
「裏手の警備に行ってます」


シャマルから連絡はあったが、ティアナのやつ、焦りすぎだ。

(シャマルから聞いたんだけどよ、あの二人を転送したのはお前か?)
(ああ、そうだ)


こいつのことだ、あんまり強くは言ってねえだろうし、なのはもそういうのは苦手だ。
ここはあたしがガツンと言っとかねえとな!



裏手に来てみて、唖然とした。


「あ、ヴィータ副隊長………」
「………………」


声をかけるのをためらうほどに沈んでいる。
特にティアナの落ち込みは異常だ。


「そ、それじゃ私はヴィータ副隊長と行くね。いきましょう、副隊長」
「お、おう……」


(何があった?)
(ランスさんに独断先行するようなやつは引っ込めって……)
(そうか……)


これは相当きつく言われたな、今回はあたしは叱らねえでやるか。



にしてもあいつが怒るとは意外だ………



side ティアナ



ミスをした。それが自分の独断先行によるものだとは理解している。


だとしても、だ。兄さんが私に残してくれたもの。それが無駄なものではない、と証明したかった。



「私は………私は!」



兄さんの夢。かなえられなかった夢。それをかなえるために。くじけても進み続けてきた。


でも…………




side はやて



外の事の報告を受ける。



「そうか……でも、味方に被害も出てへんし、任務も順調。今回はよしとしようか」
「近隣の部隊にもあの召喚士の行方を追ってもらってます。逃走ルートくらいはつかめるといいんですが……」
「了解。とりあえずあとは帰ってからや。それじゃまたあとで」



にしても召喚士か……また厄介なのが出てきたもんや。


「ふぅ………」


一息ついた、そんな時だった。


(マスター、何者かがこちらに近づいている)


隣にいる士郎からの念話。だが………


(アレは………敵やないで、士郎)



その人物がこちらに来る。



「お嬢さん、こんなところで何を?オークションはもう始まっていますよ?」
「お気遣いありがとうございます。でも今はお仕事中ですので。どこかのお気楽査察官と違って忙しいんですわ」
「そうですか………」
「ふふふ…………えいやっ!」


その人物、ヴェロッサ・アコース査察官にパンチする。
と、向こうもこちらの頭を撫でてくる。


「こんなところで何してるんです?アコース査察官。またサボってるんと違いますか?」
「おいおいひどいな、これでも仕事中だよ。久しぶりだね、はやて」
「ほんと、久しぶりやね、ロッサ」
「で、こちらの方は?」


そこにいたのは今のやり取りを見て唖然とする士郎が。



「私は衛宮士郎という。機動六課で「私の執事をしている男や。」………」
「執事?」
「いや、私は……」
「冗談やって、士郎。ロッサも本気にせんといてや」
「冗談か……で、本当は?」
「フォワード部隊と食堂で働いてる私の部下。カリムから聞いてへん?」
「ああ………君がそうなのか」
「ロッサはカリムの弟なんよ」
「騎士カリムの弟か。それにしては似ていないようだが………」
「義弟なんですよ」
「ああ……それはすまない事を聞いた」
「いえ、お気になさらず」
「で、ロッサのお仕事って?」
「考古学者のユーノ・スクライア先生の護衛さ」
「ユーノ君の?今日一緒なんか?」
「今は舞台挨拶をしていると思うよ」
「そうか、ユーノ君が………」
「その、ユーノ博士というのは?」
「ああ、士郎は知らないんやったな。私となのはちゃんとフェイトちゃんの幼馴染で管理局の資料庫『無限書庫』の司書長や」
「ずいぶんとすごい方なのだな」
「そんなことないって。それにしても久しぶりやし、少しお話せえへん?」
「構わないが……彼はいいのかい?」
「私は下の手伝いに行く。積もる話もあるだろう。二人だけで行くといい」
「ほなそうしよか、ロッサ」



意外な人たちと再会できたな~





side なのは



「えーっと、報告は以上かな。現場検証は調査班がやってくれるけど、みんなも協力してあげてね。しばらく待機して、何もないようだったら、撤退だから」
「「「はい!」」」
「で、ティアナは…………」


誰が見ても落ち込んでいる。私は現場にいなかったから見てはないけど、ランス君に叱られた、というのは聞いている。フォローが必要だね。


「ちょっと、私とお散歩しようか」
「はい………」




……………………………………………………




「失敗しちゃったみたいだね」
「すみません…………一発、それちゃって」
「私は現場にいなかったし、ランス君に叱られてもう十分反省してると思うから、改めて叱ったりはしない。でもね、ティアナは時々、一生懸命すぎて周りが見えなくなっちゃうから、それで今回みたいなことになっちゃうんだよ」
「はい……」
「だけど、集団戦での私やティアナのポジションはね、前後左右、全部が味方なんだよ。その意味と今回のミスの理由、ちゃんと考えて、同じミスをもうしないって約束できる?」


しばらく考え込んだ後、



「はい」



約束してくれた。



「なら私からはそれだけ。約束したからね」
「……はい」


まだ悩んではいるみたいだけど、ひとまずは大丈夫かな。



side スバル



調査班の人と話をしていると、ティアが戻ってきた。



「ティア!」
「………スバル。いろいろ、ごめん」
「ううん、全然。ティア、なのはさんに、怒られた?」
「少しね」
「そう………あのさ、ティア。向こうで少し休んでなよ。検証の手伝いは手伝いはあたしがやるからさ」
「大ミスしておいてサボりまで出来ないわよ。一緒にやろ」
「……うん!」



よかった…………少しは元気になったみたい。




side 士郎



「そうか」
「うん。ティアナのことは、士郎君も見ててあげて」
「ああ。そうするよ」


なのはと合流し、ともに捜査をする。と、



「なのは、あそこでフェイトと一緒にいるのは?」
「え?ああ……ユーノ君って言って私の幼馴染」
「そうか、彼がユーノ博士か」
「知ってるの?」
「ああ。先ほどマスターから聞いた」
「そっか」


と、向こうもこちらに気づいたようだ。


「行ってきたらどうだ?君も息抜きは必要だ」
「でも捜査残ってるよ?」
「私一人でもそんなに難しい作業ではない。久しぶりなのだろう?」



少し迷った後、



「うん、ありがとう。行ってくるよ」


そういって駆けていった。





side なのは



「ユーノく~ん、フェイトちゃ~ん」
「あっ、なのは」
「なのは、ちょうどよかった。アコース査察官が戻られるまでユーノ先生の護衛を頼まれてるんだ。交代お願いしてもいい?」
「うん、了解」
「それじゃ、またあとで」


フェイトちゃんはエリオとキャロの方へ駆けていった。



「久しぶり。今日は偶然、なのかな?」
「アコース査察官は今回のオークションに機動六課が派遣されてくることはご存じだったみたいだよ。それで、オークションの見物がてら、って同行してくださったんだ」
「そうなんだ……」
「それより、なのは。さっき一緒にいた人は……?」
「ああ、士郎君?六課のフォワードメンバーで、はやてちゃん直属の部下なんだ」
「ふ~ん」
「今度紹介するね」
「うん、楽しみにしてるよ」
「そっか。それでね………」





side はやて



「部隊、うまくいっているみたいだね。僕も何か手伝えたらいいんだけど……」
「アコース査察官も、遅刻とサボりは常習やけど、基本的には忙しい身やろ?」
「おいおい、ひどいな」
「カリムも心配しとったでぇ?可愛いロッサのこと」
「心配なのはお互い様だろう?僕とカリムにとって、はやては妹みたいなものだからね」
「そういえば、ユーノ君とお友達やったん?」
「つい最近、無限書庫に調べものに行ってね。その時に彼が直々に案内してくれて、それからの付き合いだよ」
「ふ~ん」


そういうことやったんか…………



side 士郎



「機動六課フォワードメンバーのみなさ~ん、撤収準備が整いました~。集合してくださ~い」



これで今回の任務は終了か。何事もなく、とはいかんがとりあえずは一安心だな。
しかし、ティアナは………なぜあのような無茶をするのだろうか……… 
 

 
後書き
今回はここまでです。


そろそろいくつか宝具を出していきたいと思ってます。


中盤からは士郎のデバイスにある追加機能を持たせる予定です。



修正しました


それではまた~ 

 

九話~試合と死合

 
前書き
タイトル、内容の大幅変更を行いました

再びタイトル変更 

 
side ティアナ


隊舎に帰ってきた後、皆に言った。



「私、一人で自主練してくるから」
「ならあたしも行くよ!
「僕も!」
「私も!」


みんなこういうことはわかっていた。だから、



「悪いけど、一人でやりたい気分なの。隊長たちにも休めって言われたでしょ?だから先に帰ってて。スバルも、ちゃんと休みなさいよ」


ミスをしないようにするには練習しかない。だから私はやる。徹底的に。




side なのは


隊舎に戻り、ヴィータちゃん、フェイトちゃん、シグナムさん、士郎君、シャーリーと歩いているとき、ヴィータちゃんが話しかけてきた。


「なあ。ちょっといいか?ティアナの事なんだが……」



ヴィータちゃんも気になっていたみたいだ。





……………………………………………………………





「若い魔導士なら強くなりてえってのは当然だし、無茶だって多少はする。でも、あいつは……時々度を超えてる。あいつ、ここに来る前になんかあったのか?」


話しておくべきだろう。ティアナのためにもここにいる人たちには



「執務官志望のお兄さんが、いたんだよ」
「魔導士だったのか?」
「うん、ティアナのお兄さん、ティーダ・ランスター。当時の階級は一等空尉。所属は首都航空隊。享年二一歳。親を亡くしたティアナを育てていた人物でもあるんだ」
「結構なエリートだな……」
「エリートだったから、なんだよね………。任務中、追跡していた違法魔導士に手傷は負わせたんだけど……」
「犯人は陸士部隊に協力を仰いだおかげでその日のうちに捕まったんだけど、心無い上司がひどいコメントをしてね」
「コメントって、なんて?」
「犯人を取り逃がすなんて首都航空隊の魔導士としてあるまじき失態だ。たとえ死んでも取り押さえるべきだった、って…………」
「それだけじゃなくて、任務を失敗するような役立たずは………とか」
「ティアナはその時まだ10才。たった一人の肉親の最後の仕事が無意味で役立たずなものだって言われて、きっとものすごく苦しんで、悲しんで………」
「それであんなにも躍起になっているのか。代わりに兄の夢を追おうと………」



士郎君の物言い。私にしてくれたお義父さんの話と似ているところがあるからだろう。どこか遠いところに思いを馳せているようだった。


(士郎君………)
(反対はしないさ。彼女はエミヤシロウとは違う。理想の果てに絶望したりはしないだろう)
(うん、そうだね…………)




追い求める理想は違うが、過程が似ている士郎君ならティアナの力になってくれるかな……





side ヴァイス




「もう4時間も続けてるぜ。いい加減倒れるぞ」
「ヴァイス陸曹………見てたんですか?」
「ヘリの整備中にスコープでチラチラとな。……ミスショットが悔しいのはわかるが、精密射撃何ざホイホイうまくなるもんじゃねえし、無理な詰め込みで、変な癖つけるのもよくねえぞ」
「…………」
「……って、前になのはさんが言ってたんだよ。俺はなのはさんやシグナム姉さんとは割と古い付き合いでね」
「それでも、詰め込んで練習しないとうまくなんないんです。凡人なもので!」
「凡人、ねぇ……俺からすればお前は十分に優秀なんだがな。羨ましいくれぇだ」
「………」
「はぁ……ともかく、お前らは体が資本なんだ。体調には、気ぃ使えよ」
「ありがとうございます。大丈夫ですから」



これはまた頑固だねぇ、しかし、どうしたもんか………





side スバル



マッハキャリバーの整備中にようやくティアが戻ってきた。



「スバル、あんたまだ起きてたの?」
「……うん」
「まあいいわ。私、明日4時起きだから。目覚ましうるさかったらごめん」
「いいけど………大丈夫?」
「うん………」



そうはいっているがやっぱり心配。ここはパートナーのあたしが支えてあげないと!




……………………………………………………




「ティア、起きて~。4時だよ。ティ~ア~」
「う…………」


ティアが目覚ましを止める。


「ごめん。起きた………」
「練習、いけそう?」
「……行く」
「そう。じゃあこれ、トレーニング服」
「ありがと……」
「さて、じゃああたしも……」
「………って、なんであんたまで!?」
「一人より二人の方が色んな練習できるしね」
「いいわよ、平気だから………私に付き合ってたらまともに休めないわよ?」
「知ってるでしょ?あたし、日常行動だったら4、5日寝なくても平気だって」
「日常じゃないでしょ……アンタの訓練は特にきついんだから、ちゃんと休みなさいよ」
「や~だよ。あたしとティアはコンビなんだから。一緒に頑張るの!」
「…………か、勝手にすれば?」
「へへへ………」





……………………………………………………



「で、ティアの考えてることって?」
「短期間での現状戦力の向上。うまくいけば、アンタとのコンビネーションの幅も広がるし、エリオやキャロのフォローももっとできる」
「それはワクワクだね。で、どうするの?」
「まずは技数を増やす。幻術は切り札にはならないし、中距離射撃だけじゃ、それが通用しなくなったときに行き詰る。私のメインは兄さんに教わった精密射撃だけどそれだけじゃだめなんだ」
「攻撃手段を増やすんだね」



これは頑張らないと、だね。





side なのは




「それじゃ、今日も個別スキルの基礎、行ってみよう。ここは大事だから地味だけど、しっかりやろう!」
「「「「はい!」」」」


そんなとき、ティアナとスバルが嬉しそうにしていたのが目に入った。


「二人とも、今日はご機嫌だね。なんかいいことあった?」
「い、いえ……」
「そういうわけじゃないです」



やる気を出してるのはいいことだね。





………………………………………





二週間ほどたったある日の午前
の訓練。



「それじゃ、2オン1で模擬戦やるよ。まずはスターズから。相手は………」
「私がやろう。丁度頼んでいた調整が終わったところだしな」
「でも……」
「君もたまには見る方に回るといい。最近働きすぎだ」
「う………」


それを言われると弱い。


「なのはもあたしたちと一緒に見学だな」
「……うん。じゃあ、三人とも、バリアジャケット装着して」




準備が整う。



「やるわよ、スバル!」
「おう!」
「いつでもいいぞ」




side フェイト




「もう模擬戦始まってる?」
「フェイトさん!」
「あれ?なのはも見学?」
「うん。士郎君が私の代わりにやってくれてるよ」
「あいつの言うとおりだ。なのはは少し休め」
「そうだよ。部屋に帰ってからも休まないし」
「訓練中も僕たちにつきっきりで休めてないんですから」
「こんな時くらい休んでください」
「みんな………ごめんね」
「あれ?そういえばランスは?」
「デバイスメンテ中だからってサボりだ。まったくあいつは………」
「でも、実際教えるものはもうないよ。収束砲に追尾弾、バインドも完璧だし転移魔法すら使えるからね」
「お、ティアナたちが仕掛けるぞ。アレはクロスシフトか」



その時は、あんなことが起きるなんて誰も思っていなかった。




side ティアナ




「クロスファイアー……シュート!!」


コントロール重視の誘導用の攻撃。これで!



(スバル!)


「うおおおおおおおおおお!!」
「ずいぶん無茶苦茶な突っ込み方だな。だが、まだまだ甘いぞ」


突っ込んだスバルは士郎さんの双剣に軽くあしらわれてしまった。でも、十分だ。



「ティアナは……あそこか」
「ティアナが砲撃!?」


見学しているなのはさんの驚きの声。隣にはフェイトさんもいる。


(よし、スバル。特訓成果、クロスシフトC、いくわよ!)
(おう!)


「うりゃあああああああ!!!」
「く、仕方がない。ワーカー!」
[Gun form.]
「な!?」


スバルも士郎さんの手にある双銃に驚いだようだが、それも一瞬。バリアで射撃を防ぎながら突っ込む。
士郎さんは左手の銃を剣に変え、受け止める。よし、タイミングは今!



「あっちのティアさんは幻影!?」




特訓の成果であるダガーを展開し、ウイングロードを駆け、士郎さんに向かっていく。
バリアを切り裂いて一撃で決める。



「ええええええええええい!」


そんなときに聞こえた。




―――莫迦者が―――



そして、攻撃を加えた後に会った光景。それは、
















右腕でダガーの刀身を受け止める士郎さんの姿だった。
刀身が貫通し、かなり血が出ている。



「ぁ、あの…………」
「君たちは何がしたい?私は君たちにとってなんだ?訓練の相手か?それとも、殺すべき敵か?」



その声のトーンには聞き覚えがあった。



あの時のランスさんと同じ………いや、もっと……



スバルは驚きに声も出せないみたいだ。
沈黙を破ったのは士郎さん。


「それが君たちの望みなら………殺し合いがどういうものか教えてやる。投影、開始(トレース・オン)


刀身が刺さったままの右手には長さ2メートルほどの真っ赤な槍。その槍で貫通している刀身に触れると、ダガーは霧散して消えた。


「なんだよ、あの槍………」


ヴィータ副隊長のつぶやきがやけに大きく聞こえた。


「どうした?言いたいことがあるなら言え」
「…………私は!!!!もう何も失いたくないから!!!!強くなりたいんです!!!!」


射撃を乱発するが、


「穿て、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)


その言葉とともに振るわれた槍にすべてかき消された。



side なのは


ティアナが士郎君に向けて射撃を行うがその手にある赤い槍に阻まれ、一発も通らなかった。



「そんな………」
「ティア!!!!」


スバルの叫びが聞こえた時にはもう遅かった。


そこにあった光景は鮮烈で誰もが言葉を失った。


明らかに両手もちであろう大剣を左手一本で持っている士郎君。






大なる激情(モラルタ)!」


その言葉と共に振るわれた大剣は発光し、ウイングロードを紙のように切り裂いた。その上にいたティアナが落ちていく。そして先に地面に着地した士郎君は剣を未だ座ったままのティアナの首筋に当て、


「これで一度死んだ。まだやるか?」
「う、うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


ダガーを展開したティアナが斬りかかる。が、大剣に弾かれたクロスミラージュは遥か後方へ飛んでいった。そしてティアナの眼前に剣を突きつける士郎君。


「二回だ」
「……………ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


その後、クロスミラージュを拾ったティアナは何度も何度も繰り返しやられる。三回、四回、…………十を越えた当たりで、


「………もう眠っていろ」


士郎君は大剣を空中に投げ捨て、呟く。



壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)


とたんに剣が大爆発を引き起こす。爆風は闘技場全体に広がった。



「なんだよあの威力………」



ヴィータちゃんの言うとおり、アレは私の出力最大のディバインバスターをも越えるかもしれない威力だった。


煙が張れると……





「ティア、ティア―!!」



爆風に吹き飛ばされて気絶したであろうティアナと巻き込まれ、ぼろぼろになりながらも駆け寄るスバルが。



「直撃はしていない。じきに目覚める」
「どうして………!」
「どうして、だと?甘えるな」


その声のあまりの威圧感にへたり込んでしまったスバル。
その威圧感は遠くにいた私たちですら言葉を失うほどだったのだから。


「教導を無視した行動を起こしたのは君たちだ。意味くらい、自分で考えろ」


そういってバリアジャケットを解除し、戻ってくる士郎君。



「すまなかった。君に言われていながらティアナがあのような行動を起こすと予想できなかった」
「う、うん………」
「それより士郎、ティアナは………」
「気絶しているだけだ。大事には及ばん」
「そう………」



皆聞けなかった。あの爆発した剣は、射撃を打ち消した槍はなんなのか。だからティアナの無事が分かった私は別の事を聞いた。


「士郎君の傷は?」
「これからシャマルのところへ行くさ。それよりも二人を頼む、なのは」
「う、うん……わかった」


ここは士郎君の言うとおり、二人のことを優先しよう。でも………







去っていく士郎君の後ろ姿は、とても儚いように見えた。






side シャマル




これは…………



「何をしたの?」
「何、とは?」
「体中の魔力が著しく低下しているわ。その理由よ」
「魔術を使った。それだけだ」
「こんなに魔力を使うなんて………」
「カートリッジを使えば問題はなかったのだが、生憎と時間がなかったのでね」
「あなたはただでさえ魔力値が低いんだから、多用しないで」
「ああ」



それにしてもひどい。なのはちゃんの1/10ほどしかない魔力でディバインバスタークラスの魔力消費をするなんて……



side 士郎



完全再現したモラルタの真名解放を行ったが、投影に比べ真名解放は消費魔力が多い。前の世界でもそうだったが、この世界ではかなり多くなっている。フルンディングやカラドボルグを放った時は魔力をほとんど込めなかったから負担が少なかったが、今後はカートリッジによる補正が必要だろう。そして、気づいたことがある。
自身の魔力の少ない理由。どうやらマスターとのラインが上手く形成されていないようなのだ。
カリバーン投影の際はパスからできるだけ魔力を得ようとしたため魔力不足にはギリギリならなかったが、今回はしなかった。そうして魔力が少なくなって分かったのだが、マスターの魔力総量からすると本来このくらいで魔力不足にはならないはずなのだ。それで、パスを解析してわかったのだが、ランサーと私の間でお互いのパスに悪影響を及ぼしているらしいことがつかめた。つまり……



本来得られるはずの魔力はもっと多いはずなのだ。しかし、こればかりはどうしようもない。
なるべく魔術を使うことは控えよう。私は一人ではないのだから。


side スバル



ヴィータ副隊長に付き添われて医務室へ行くと、


「ヴィータとスバルか」


士郎さんがいた。



「…………」
「シャマル、私はこれで失礼する。」
「そう……傷の方はすぐに治ると思うけど、魔力の方はわからないわ。」
「大丈夫だ。休んでいれば2、3日で元に戻るさ」



そういって出て行ってしまった。言いたいことはあったけど、今はティアのことが心配。もうすぐなのはさんが連れてくると思うけど……



「ごめんね、遅れちゃって」
「なのはさん………」
「何?スバル」
「わからないんです……強くなるために頑張ったのに、どうして士郎さんはあんなに怒ったんですか?どうして…………」
「もし士郎君じゃなくて私が模擬戦の相手だったとしても怒るよ」
「なのはさんでも……?」
「あたしでもだ」
「ヴィータちゃんはいつも怒ってるけどね……」
「ぐ、むむう…………」
「とにかく、何がいけなかったのかちゃんと自分で考えて、謝ってきな」
「はい………」



なのはさんも、ヴィータ副隊長も、あたしたちの行動を認めてくれなかった。
そんなにいけないの?なんで……?どうして……? 
 

 
後書き
九話です。


魔王降臨はしませんでした。


士郎が銃モードを取得。ケースバイケースで使います。


それではまた~


またまたまた修正しました。 

 

十話~それぞれの過去

side ティアナ



目が覚めた。見慣れぬ天井。



「ここは………」
「医務室よ。目が覚めたのね、ティアナ。」
「シャマル先生………」
「昼間の模擬戦で、撃墜されちゃったのは覚えてる?」



そうだ、士郎さんの出した大剣。それが光ってから爆発し、その爆風に吹き飛ばされたのは覚えている。



「はい………」
「でも爆発の余波に巻き込まれただけだから怪我とか体へのダメージはないわ。」
「そうですか………」

そこで自分がズボンをはいていないことに気が付く。
なんだか居たたまれなくなり、ちら、と時計を見た。



「え!?九時過ぎ!?………よる!?ええ!?」
「ふふふ………すごく熟睡してたわよ。死んでるんじゃないかって思うくらい。たまってた疲れがまとめてきたのよ。スバルやなのはちゃんも心配してたわよ。」


後でお礼を言いに行かなきゃ………




side なのは



訓練場でデータ整理をしていると、



「なのは~」
「フェイトちゃん…………」
「今ティアナが目を覚まして、スバルと一緒にお礼を言いに来たよ。なのはは訓練場だから、明日の朝にしな、って言っちゃったけど……」
「ううん、ありがとう。………あのね、フェイトちゃん、」
「わかってる。士郎の事でしょ?」
「どうしてわかったの?」
「はやてに聞いたんだ。なのはが士郎のことを気にしてるって。それで、ランスに聞いたんだ。士郎の出した剣の事。魔力が万全じゃない状態で使うようなものじゃないんだって。だから、ものすごい負担がかかってるはずだ、って……」
「士郎君はどこにいるの?」
「わからない……ランスもどこかに行っちゃったし、シャマルは士郎はしばらく魔力を使わない方がいいって………」
「そっか……」



隊舎についた時だった。



「警報……」



こんな時に……





side はやて




「東の海上に今までとは比べ物にならん性能のガジェット空戦型が50機。どうみる?」


質問はこの場にいるなのはちゃん、フェイトちゃん、グリフィスに向けたもの。



「私は遠距離砲撃で片づけるのがいいかと………」



グリフィスに反論したのはフェイトちゃん。


「おそらくスカリエッティはこっちの情報を集めるためにガジェットを仕向けてきたんだ。レリックの反応もないのにあれだけの数を送り込んできたのが何よりの証拠だよ。」
「なのはちゃんはどうや?」
「私もフェイトちゃんと同じ考え。戦法としては今までと同じ方法をとって奥の手は見せない、ってのがいいかな。」



そんな時だった。



「面倒だな、俺が砲撃で吹っ飛ばすぜ。」
「ランス!?」
「奥の手を見せなきゃいいんだろ?だったら俺が魔法で倒すのが一番手っ取り早い。全力を出したって奥の手ではないんだからよ。」
「フェイクの情報を与える、ってことやな。」
「ああ。だから今回は……」
「隊長たちのサポートのもと、ランスが砲撃で倒す、ってことでええな?」
「いや、俺は一人で……」
「だめや。トラブルがないとも言い切れへん。だから隊長たちはついていく。これは命令や。わかった?」
「……わかった。」



しぶしぶながらの了承が得られた。



side なのは



出動のため、屋上へ。



「今回は空戦だから、私とフェイト隊長、ランス君の三人ででるけど、皆もロビーで待機しててね。」
「こっちの指揮はあたしとシグナムだ。」


ティアナは……まだ落ち込んでいる。


「ティアナは………」
「今回は外すべきだろう。」


そういったのは士郎君。


「…………いう事を聞かない奴は使えない、ってことですか?」
「そう言ったつもりだが?」
「衛宮、そこまで言わなくても………」


そういったヴィータちゃんはランス君に止められる。その目は『言わせておけ』と語っていた。



「現場での指揮はちゃんと聞いてます。教導だってサボらずやってる。それ以外の努力にまで教えられた通りじゃなきゃダメなんですか?私は、なのはさんたちみたいなエリートでもないし、スバルやエリオみたいな才能も、レアスキルもない。少しぐらい無茶しないと、強くなんてなれないじゃないですか!!」


そういったティアナを殴り飛ばした人物がいた。



「駄々をこねるのもそこまでにしろ。」
「シグナム!」
「シグナムさん!」
「加減はした、心配するな。ヴァイス!もう出られるな。」
「いつでも行けますよ!」



ヘリに乗り込む。



「ティアナ、思いつめちゃってるみたいだけど、戻ってきたらちゃんと話そう!」
「放っておけ、嬢ちゃん。ヴァイス!出してくれ。」
「はいよ!旦那。」


ティアナ……




side 士郎



「さっさと部屋に行け。目障りだ。」
「シグナム副隊長、その辺で…………」
「スバルさん、とりあえずロビーに……」


そこまでキャロが言ったところでスバルが、


「シグナム副隊長!」
「なんだ。」
「……命令違反は絶対だめだし、さっきのティアの物言いとか、それを止められなかったあたしは、確かに駄目だったと思います。………だけど、自分なりに強くなろうとか、きつい状況でも何とかしようと頑張るのって、そんなにいけないことなんでしょうか!?自分なりの努力とか、そういうのも……」
「自主練習はいいことだし、強くなろうと頑張るのも、とってもいいことだよ。」


答えたのは、いつの間にか来ていたシャーリーだった。


「シャーリーさん……」
「持ち場はどうした?」
「メインオペレートはリイン曹長がいてくれますから。なんか、皆不器用で見てられなくて………」
「不器用、か。」


的を射ている言葉だな。


「みんな、ロビーに集まって。私が説明するから。なのはさんのことと、なのはさんの教導の……意味。」





……………………………………………………………




「昔ね、一人の女の子がいたの。」


その言葉と共にモニターに映し出されたのは、なのは……の子供のころだろうか。



「その子は、友達と学校に行って、優しい家族と、幸せに暮らすはずだった。でも……事件が起きた。」
「ふとしたことで魔法と出会った、特別なスキルを持っていたわけでもない、ただ魔力が大きかっただけのたった9歳の少女だ。」
「そんな子が魔法と出会って、たった数か月で命がけの戦いに巻き込まれた。」
「これ……フェイトさん?」


そこには同じく……子供のころのフェイトがいた。


「フェイトさんは、その頃家庭環境が複雑でね、あるロストロギアをめぐって敵同士だったんだって。」
「この事件はテスタロッサの母、プレシア・テスタロッサによって引き起こされた。その名を取ってプレシア・テスタロッサ事件。」
「これ………」


そこには集束砲……それも相当な威力のものを放つ9歳のなのはが。


「集束砲……こんなに大きな!?」
「9歳の、女の子……」
「大威力砲撃はただでさえ体への負担が大きいのに………」
「その後も、対して時もたたず、戦いは続いた。」
「闇の書事件。あたしたちが深くかかわった事件だ。」
「襲撃戦での撃墜と、敗北。それに打ち勝つためになのはさんが選んだのは……」
「当時は安全性に問題のあったカートリッジシステム。そして、自身の限界以上の出力を無理やり引き出すフルドライブ、エクセリオンモードだ。」
「誰かを救うため、なのはは無茶を続けた。」


……似ている。かつての私、生前の衛宮士郎に。歪んではいなくとも、たしかになのはは衛宮士郎に似ていた。


「だが、そんなことを続けて体が無事で済むはずがない。事件が起きたのは入局二年目の冬だった。」
「あたしと一緒に行った捜査任務の帰り、突然現れた未確認体。いつものなのはなら何でもない相手だった……」
「でも、たまっていた疲労がなのはさんの動きを少しだけ鈍らせちゃったの。その結果が………これ。」


映された映像にフォワードたちが息をのむ。


「ひどい………」
「こんな状態になってさえ、私たちの前では努めて明るく、迷惑かけて、ごめんなさい、と言っていたが……もう飛べないかもしれない、と言われて内心どんな気持ちだったか……」
「確かにさ、命を懸けてでも、無茶をしてでもやらなければならない時はあるよ。でもよ、ティアナ。お前がミスショットをしたあの時はそうだったか?どうしても撃たなきゃいけなかったのか?」
「!!!…………」


うつむき、黙ってしまうティアナ。自分の行いを悔いているのだろうか。


「わかっただろう、お前たち。なのはがどういう思いで教導を行っていたのかを。」
「「「はい………」」」
「あのさ、衛宮、ちょっといいか?」
「なんだ?」
「お前、知ってるような口ぶりだったけど、誰かに聞いたのか?」
「ああ。なのは本人に、な。」
「そうだったんですか……それで……」
「いや、それだけではないさ。見ていられなかったからな。」
「優しいんだな。衛宮は。」
「優しい、か。少し違うな。」
「そんなことはないですよ。」
「そうか………」


かつて”化け物“と呼ばれた私の事を優しい、とはな。


自分でも気づかぬうちに自嘲的な笑みがこぼれていた。


それに気が付いたものが、一人だけ、いた。



side フェイト



「準備はいい?」
「ああ。」
「サポートはこっちでするから、全力全開で撃ち抜いて!」


槍の穂先に群青色の魔力が集まっていく。なのはがランスに教えた集束砲はなのは自信の最終奥義である『スターライトブレイカー』だ。
魔力値の低いランスはカートリッジと私たちのあげた魔力を使っている。


「いくぜ、スターライトブレイカー!!!!」
[starlight breaker.]



放たれた群青色の光線はガジェットを一機のこらずに殲滅した。


「初めての集束砲でこれだけの威力を出せるなんて………」
「だが、これは、きついな。もうほとんど魔力がねえ。」
「増援もないみたいだし、帰ってしばらく休もう。ランス君は明日の訓練はお休みしようか。」
「ああ。そうさせてもらう。」


ティアナたちの事も心配だし、早めに戻れるといいな………




side なのは




「ええー!?話しちゃったの?」
「す、すみません…………」
「ダメだよ~、人の過去勝手に話しちゃ~」
「口の軽い女はだめだぜ~」
「でも、いずれはばれることだったんだ。それよりさ……シグナム、さっき衛宮となに話してたんだ?」
「ああ、そのことか。奴にヴィータが優しいな、と言った時、奴が何やら遠い目をしていたのでな、気になって聞いたんだ。そうしたら………」
「そうしたら?」
「過去の私はただの人殺しだ。そんな奴に優しいというやつがいるとは思わなかった。と言ったんだ。」


あの事だ………


「なのはさん、どうしました?」
「ううん、なんでもないの。何でも……」
「………お前は知っているんだな、衛宮の過去について……」


シグナムさんは気づいたみたい。顔に出てたのかな………?


「………うん。少しだけど。」
「聞いてもいいだろうか。」
「シグナム姐さん。本人のいないところでそういうのはだめだと思いますよ。」
「そう、だな。すまない。」
「ところで、シャーリー。ティアナは……」
「さっきまでは士郎さんのところにいたみたいですけど、さっき訓練場で見かけましたよ。」
「訓練場か……ありがと。」




…………………………………………………………



「士郎君に、叱られてたの?」


後ろから現れた私に驚いたみたいだけど、すぐに話し始めた。


「少しだけ、昔話をしてもらいました。」
「聞いてもいいかな?」
「はい。………昔、ある少年がいて、夢を追っていたんだそうです。『世界中のみんなを救う』という夢を。少年はその夢のため、何度も何度も死にそうな目にあって、それでも夢を追い続けて、最後にはその夢しか見えなくなって、大切な人たちを見捨てたんだそうです。そして、夢がかなわず、最後の時を迎えた時、その人たちを見捨てたこと、現実を見ていなかったことを後悔した。っていうお話です……」
「そう………」


私が聞いた話と同じ。自分の事だという事を伏せて話したんだろう。



「だから、もっと周りを見て、仲間を頼れって言われました。お前が求めるのは殺すための力じゃない、とも。」
「そう。士郎君の言う様に今は焦らないで仲間を頼ればいいの。ティアナの力は、皆を守るためのものなんだから。」
「………はい。」
「だけど、ティアナの考えてたことも間違ってはいないの。クロスミラージュ、システムリミッター、テストモードリリース。」
[Yes,sir.]
「命令してごらん。モード2って。」
「………モード、2。」
[set up.dagger mode.]


その姿は、少し大きめのダガー。


「これ………」
「ティアナは執務官志望だもんね。ここを出た時のことを考えて用意はしてたんだ。執務官になればどうしても個人戦が多くなるから。」
「………!!」
「クロスもロングも、もう少ししたら教えようと思ってた。だけど、出動は今すぐにでもあると思うから使いこなせてる武器をもっと確実なものにしてあげたかった。だけど、私の教導は地味だからあんまり成果が出てないように思えて苦しかったんだよね。……ごめんね。」
「うっ、ううう…………ごめんなさい。ごめんなさい。」


今は優しくなだめてあげる。この試練はティアナを強くしてくれるだろうから。



side 士郎



「一安心、か。」


なのはによってティアナは今までの行動を反省したようだ。私に言えたことではないが、これからも無茶もするだろう。でも、間違いは起こさない。そう確信できた。



side スバル


「「おはようございます!」」
「うん……おはよう。」


ティアは吹っ切れた顔をしていた。昨日のなのはさんとの会話からあたしも間違っていたことが分かった。これからはティアと一緒に頑張るんだ!


「昨夜はよく眠れた?」
「はい。」



……………………………………



「技術が優れてて、華麗で優秀に戦う魔導士を『エース』って呼ぶでしょ。そのほかにも優秀な魔導士を表す呼び名があるって知ってる?」
「いえ………」
「その人がいればどんな状況でも突破できる。そんな信頼を込めて呼ばれる名前。ストライカー。」


ストライカー………


「なのはね、訓練を始めてすぐのころから言ってた。うちの四人は一流のストライカーになれるって。だからうんと厳しく、だけど大切に育てるんだ、って。」



なのはさんはそんなことを考えてくれてたんだ。ストライカー……あたしもなるんだ!一流のストライカーに!!



side なのは



「しっかし、教官ってのもな、一っ番手のかかる時期に面倒見ても、教導が終わればみんな自分の道を行っちまうからなぁ。」
「確かにさびしいけど、一緒にいられる期間が短いからこそ、できる限りのことを教えてあげたいんだ。」
「「「「おはようございまーす!!」」」」


なにがあっても、誰が来ても、この子たちは落とさせない。一緒にいる間はもちろん、いつかそれぞれの空を飛ぶようになっても………


「さあ、今日も一日頑張るよー!!」
「「「「はい!」」」」


私はそのためにここにいるのだから。 
 

 
後書き
ようやく完成しました。


9話に修正入れました。


次はほのぼの?になるのかな?


それでは~

 

 

十一話~機動六課の休日(前編)

side スバル


「ティア~。起きろ~」
「う………ん……」
「ティ~ア~」
「あ……」
「あ、起きた?」
「って………何しとんじゃー!!!」


起きていきなり蹴られた。


「痛いよティア~」
「寝てる人の胸をもんでくるやつがどの面さげて言ってんのよ!」
「スキンシップじゃんか~」
「セクハラよ!!」


こんな感じで朝はあわただしかった。




side なのは



「はい、お疲れ様。」
「「「「はぁ…はぁ…」」」」
「無事朝の訓練と模擬戦も終了。……実はね、今日の模擬戦が第二段階の試験だったんだけど………フェイト隊長、ヴィータ副隊長、どうですか?」
「合格。」
「「「「即答…」」」」
「ま、あんだけ厳しくやってんだ。これで合格じゃない方が危ないぞ。」
「それじゃあ後でシャーリーのところにデバイスを持って行ってね。」
「明日からの訓練は第二段階メインだからな。」
「「「「明日?」」」」
「そう、今日までみんな頑張ったから………この後の訓練はお休みにします。街にでも出て遊んで来るといいよ。」
「「「「やっ…………たー!!!」」」」


みんな嬉しそうだね。




……………………………………………………


隊長たちでの朝食中、


『では、次のニュースです。』


画面には演説を行うレジアス・ゲイズ中将が。


「このおっさんはまーだこんなこと言ってんのか?」


彼の主張は、魔法犯罪が増えている今こそ、武装強化を行うべき、というもの。


「しかし、ゲイズ中将のおかげで地上が安定しているのも事実だ。無下にできんところがまた、な。」
「あ、ミゼット提督。」
「ミゼットばーちゃんか?」
「キール元帥とフィルス相談役も。」
「伝説の三提督、そろい踏みやね。」
「このジーさんたちそんなすげえのか?」


いつの間にやら来ていたランス君が会話に混ざってきた。



「管理局黎明期から今の形まで整えた功労者やで。」
「ほー。ま、いいや。フェイト、午後予定は?」
「え?ない……けど?」
「丁度いいや。街を案内してくれや。」


キラーン、とはやてちゃんの目が光った。


「ほほう、お兄さん、デートのお誘いですかな?」
「え、デデ、デート!?」
「そうだが?」
「な、なななな、ななな……………」
「テスタロッサがこんなにあわてるとはな。いいものを見た。」
「わ、忘れてシグナム!」


フェイトちゃんにもお休みは必要だしね。ここは私もはやてちゃんに便乗しよう。



「フェイトちゃん、行ってきなよ。」
「な、なのはまで………」
「嫌か?」
「嫌じゃない!嫌じゃないけど……」
「ならええやんか。」
「ううう、わ、わかりました………」


よかったね、フェイトちゃん。


「なのはちゃんは士郎さんと出かけないの?」


シャマルさん、本日の爆弾発言。


「ふにゃあ!?」
「なんだよその声………」
「私がどうした?」


どや顔はやて再び。


「あ、士郎。なのはちゃんが士郎と街に行きたいって。」
「え!?言ってな「そうだよ!どうしても士郎と行きたいんだって!」………」


フェイトちゃん………してやったりって目で見ないで………


「だが私は仕事が「今日はないで。」……」
「食堂の「そっちはみんなが街に出てるから平気や。」……はぁ。」
「そういうわけや。付いて行ってあげるな?士郎。」
「………わかった。市街地の地形は概ね把握してはいるが、細かいところはわからん。君に任せるぞ、なのは。」
「え、あ、うん。」


つい返事をしてしまった。


「ほな、行くで。なのはちゃん、フェイトちゃん。」
「「どこに?」」
「お召かえや!」




side ティアナ



今、ヴァイス陸曹に町まで出るためにバイクを借りに来た。



「貸すのはいいけどよ、吹かすなよ?」
「これでも経験長いんで大丈夫です。」
「そっか、………よし、いい調子だ。」


ヴァイス陸曹に借りたバイクに跨る。


「あの……これ聞いちゃいけないことかもしれないんですけど、ヴァイス陸曹って魔導士経験ありますよね?」
「ま、武装隊の出だからな。ド新人共に説教くれてやるくらいには。………けどよ、昔っからヘリが好きでな。そんで今はパイロットだ。……ほれ、相方が待ってんだろ?さっさと行ってやんな。」
「ありがとうございます!」



side エリオ



「キャロ、遅いなあ………」
「エリオく~ん。お待たせ~」
「あ、キャロ……」


キャロが来た。来ていたワンピースよく似合っていていつもより可愛く見えてつい照れてしまう。キャロもそんな僕の視線に気が付いたのか顔が少し赤い。


「は、早く行こう!急がないと日が暮れちゃうよ。」
「う、うん!行こう、エリオ君!」



………………………………………………………………………



「あれ?八神部隊長。どうしたんですか?それにティアさんにスバルさんも……」
「私はみんなのお見送りや。」
「あたしたちもこれから出るんだ~」
「それじゃ、八神部隊長、エリオ、キャロ。行ってきます。」
「気を付けてな~」

スバルさんたちは行ってしまった。


「それじゃ僕たちも……「エリオ!?」え?」


声のした方にはフェイトさん。だが、いつもとは違った。紫のロングスカートと白いブラウスに黒のハイヒール。薄めの化粧がもともと美人のフェイトさんの美しさを引き立てていた。


「フェイトさん、とって綺麗です……」
「八神はやてプロデュースやで。」


キャロは感動しているようだ。部隊長はどや顔だ。


「ふふ、ありがとう。キャロもとっても可愛いよ。ね、エリオ?」
「は、はい。」
「フェイトちゃん。お相手が来たで。」


向こうからやってきたのは………



「おう!エリオじゃねえか。それにキャロ。」


アロハシャツに黒いズボンという格好のランスさんだった。


「これからどこか行くんですか?」
「お前らと一緒だよ。デートだ。」
「「「えええ!?」」」
「いや~、若いってええな~」
「な~におばちゃんみたいなこと言ってんだ。」
「いえいえ、あたしゃもう年ですわよ。」
「はやてもまだ19でしょ………」


そんな話をしていると…………



「あ、フェイトちゃん。」
「なのは!」
「君たちも今から出るのか?」



なのはさんと士郎さんが来た。
なのはさんは黒のミニスカートに長袖の赤いTシャツ、黒のハイソックス。士郎さんは黒いシャツに赤いジャケット、ジーンズという格好だ。


「どや!絶対領域やで!男の子ならだれでも反応を示すはずや!!」


八神部隊長が何かを熱弁している。が、さっぱりわからない。


「そこの変人は放っておいてさっさと行こうか、なのは。」
「う、うん。」
「俺らも行くぞ、フェイト。」
「あ、待って……」



四人はさっさと行ってしまった。


「誰が変人やー!!!」
「うわ!や、八神部隊長、いきなり叫ばないで下さいよ………………」
「むぅ、エリオ、なのはちゃんの絶対領域、どうやった?」
「あの、何のことかわからないんですけど……」
「なん………やて!?」


しばらく考え込む八神部隊長。


「エリオ、帰ってきたらベッドの下を探すんや。」
「え?何でですか?」
「何でもや。ほな、二人も早く行かんと日が暮れてまうよ?」
「はい!それではいってきます!」



こうして僕たちも町へ出発した。


後日、エリオのベッドの下からは『絶対領域ザ・ベスト』という本が出てきたとか……




side 士郎



現在、町をなのはと歩いているのだが………
なぜ凛と同じような格好なのだろうか?


「なのは、その服は誰が選んだのだ?」
「はやてちゃんが。ビビっとキター!って叫んでたよ。」


どんな感覚だ………



「それより、どうかな?変じゃない?さっきからすごく見られてる気がするんだけど……」
「変なことなどはないぞ。周りから見られているのは君が美人だからだろう。」
「そ、そんなことないよ!」
「……もう少し自覚を持ってもいいと思うぞ。」


その後、服屋へ行き、なぜかスーツを購入した。なのは曰く、


『絶対似合う』


だそうだ。だからと言ってあまり使わないものを買うというのはな………
もちろん普通の服も買った。


「そろそろお昼だね。」
「弁当は用意してあるぞ。」
「ほんと!?」


でも、女としてのプライドが……とか呟いている。


「なのは、女性だから料理が出来なければならない、ということはないぞ。」
「でも、ホントなら私が作ってきたかったの……」


最後の方はよく聞き取れなかった。しかしごねているのはわかる。


「まあ、近場に公園もあることだ。そこで昼食にしよう。」
「うん。」


そんなこんなで和やかなひと時を過ごした。



side フェイト



「それじゃ、どこに行く?」
「そうだな、まずは………」


で、向かった先はデパート。ランスは当てもなくぶらぶらするのが好きだとか。


「何か買わないの?」
「これといったもんがねえからな。強いて言えば釣竿くらいだが……」
「釣具店なら近くにあるよ。行ってみようよ。」
「へぇ………、じゃ、そこに行くか。」



釣具店に行ったランスは店のおじさんと色々と話していた。
で………


「いいのはあった?」
「ああ。オッチャンが気前良くてな。値引きしてくれたぜ。彼女の分と合わせて二本で安くしとく、ってな。」
「彼女?誰が?」
「フェイトが。」
「誰の?」
「俺の?」
「…………ええ!?」
「ま、オッチャンにはそう見えたらしいな。」
「そそ、そうだったんだ!」


か、かか、彼女だなんて………



「お、クレープ屋が来てるな。食うか?」
「え、う、うん!」
「じゃ、買ってくるから少し待ってろよ。」


そう言って行ってしまった。


「ふう……」


少し動揺しすぎだなぁ……………
そんなことを考えていた時だった。


「よぅ!お姉さん、一人?」
「暇なら俺らと遊ばない?」


二人組の男に声をかけられた。ナンパだろうか。


「いえ、人を待っているので………」
「固いこと言わないでさぁ!」
「楽しいコトしようぜぇ?」


そういって手を掴んできた。


「離してください!」
「めんどくせえなぁ。さっさと連れて行っちまおうぜ。」


こんなことをしていても彼らは一般人。管理局員として手を出すわけにはいかないし……



そんなときだった。



「おい、てめぇら俺の女に手ぇ出す気か?」
「あ?んだてめえ!」
「ほら、フェイト、行くぞ。」
「う、うん。」
「おい待てやコラ!」
「ああ?」


ランスが振り向いて彼らを睨んだ。その目の威圧感に、


「く……やっちまうか?相棒。」
「そうだな。先手必勝ぉ!」


二人組は殴りかかった。しかし、


「やめとけ、てめえらじゃ俺の相手にゃなんねえよ。」


片手で起用に二人の拳を止める。


「それとも、痛い目見てえか?」
「くそっ……………覚えてろ!」


ありきたりな捨て台詞で去っていった。


「大丈夫だったか?」
「う、うん……ありがと……」
「顔赤いけど、熱でもあんのか?」
「へ、へへ平気!何でもない!」
「そうか。じゃあほらよ。ストロベリーとチョコ、どっちにする?」
「え、えっと、ストロベリーで。」
「んじゃ、食うか。」


ベンチに座ってクレープと食べるが、落ち着かない。


(ランス、かっこよかったな………)


颯爽と現れて助け出してくれた。こっちが恥ずかしくなるようなことも言っていたが、素直に感謝している。しかし、こちらだけ恥ずかしい思いをするのは何だか悔しい。なので仕返しをすることにした。


「ねぇ、ランス。」
「どうした?」
「はい、あーん。」
「お、くれんのか。サンキュ。」


仕返しのつもりだったのに普通に食べるランス。


「もらったんだから返さねえとな。ほら、あーん。」
「あ、あーん………」


そして食べさせられた。すごく恥ずかしかった。これじゃあ仕返しになってない…………
そうして私だけ恥ずかしい思いをしてクレープを食べ終わった。


「さて、これからどうするよ?」
「もうすぐお昼の時間だし、ゆっくりお店探しでもしよっか。」
「そうだな、そうすっか。あ、それと。」
「なに?」
「あんま俺から離れんなよ。またナンパされるぞ?」
「も、もう!」


今日はからかわれてばっかだな……と思うフェイトであった。




side キャロ



「何だかほんとにのんびりだね~」
「うん。………キャロは、六課に来る前はこういうお休みとか過ごしてた?」
「実は……あんまりないかな。あっ、でもフェイトさんに遊園地とか水族館に連れて行ってもらったことはあるよ。」
「ほんとに?僕もそうだよ。」
「初めて遊園地に行ったときはホントに楽しくて、日が暮れた時に楽しい時間が終わっちゃうのが嫌で泣いちゃったんだ。」
「わかるよ……前日は楽しみで眠れなくて、終わった後はずっと寂しくて…………」
「うんうん!そうそう!」
「今だからわかるけど、フェイトさん、すごく忙しいのに、その合間に面倒見ててくれたんだな、って。」
「うん。」


そんな時、エリオ君のストラーダに通信が。



「やっほ~。そっちはどう?楽しんでる?」


相手はスバルさんだった。



「はい。まだ始めたばかりですが、何とか。」
「困ってることとかない?私たちが相談乗るわよ。」


ティアさんも通信に入ってくる。


「ありがとうございます。」
「おかげさまで、順調です。」
「そっちはどんな感じなの?」
「えっと、このまま公園で散歩。そのあとデパートを見て映画、って感じです。」
「あとは食事して、夕方に海岸線の夕焼けを見る、というプランを作ってもらってますので。」
「「はぁ?」」
「一個ずつクリアしていきます!」
「クリアって………」
「け、健全だね!」
「「はぁ……」」


何をがっくりしているんでしょうか………
ティアさんは『六課のカップルってこんなのばっかなのね………』と呟いていた。


「それじゃあ、困ったことがあったら連絡してね。街中での遊びの事なら詳しいから!」
「はい!」
「ありがとうございます!」
「それじゃ~ね~」


通信が切れる。


「スバルさんもティアさんも、優しいね。」
「そうだね。そろそろ僕たちも行こう。」
「うん!」




side なのは



今、私と士郎君は本日最大の危機に出会っている。


「なのはさ~ん!」
「サインくださ~い!」
「隣の男性との関係は~?」


私のファンらしき人たちに追いかけられている。



「なんでこんな目に………」
「全く、これでは休日もあったものではないな………仕方がない。すまん。なのは!」
「ふぇえええ!?」


いきなり謝ってきたので何事かと思ったら、お姫様抱っこされました。


「な!?」
「やはりそういう関係なんですか?」
「何としても聞きだす!逃がすな!!」
「「「「「おお!!」」」」」


(しっかりつかまっていてくれ。跳ぶ(・・)。)
(え?どういう……)


言葉の意味はそのあとわかった。
路地裏に入った士郎君は文字通り跳んだ(・・・)


「あれ?」
「消えたぞ?」
「こっちに小道がある!ここだ!」
「追うぞ!」



追っかけの人たちはいなくなった。



「ふう………む、すまん。今降ろす。」
「あ…………」
「どうした?」


もうちょっとだけこのままで……なんて思ってても言えない………
それにしても、士郎君の腕すごく逞しかったな………


「ん?………ああ。跳んだことについてか。飛行は法令で禁止されているが、跳躍は禁止されていないからな。」
「いや、それより…………どうやって降りるの?」
「あ………」


飛び乗ったビルは下に降りる階段がないタイプだった。
結局、抱えられて飛び降りました。



side ギンガ



今、私が来ているのはトレーラーの横転事故の現場だ。


「陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹です。捜査のお手伝いに来ました。」
「ご苦労様です。ナカジマ陸曹、事故の状況についてはご存知ですか?」
「いえ、横転事故、という事くらいしか……」
「ではこちらに。説明いたします。」


現場捜査官から聞いた話によれば、運転手の証言によると『何者かの攻撃を受けて、荷物が爆発した』との事だそうですが……荷物は食料品や飲料といった爆発などしそうにないものだ。
しかし、その中に気になるものがいくつかあった。


一つ目、生態ポットのようなもの。
なぜそんなものがあったのかはわからないけど……


二つ目、ガジェットの残骸。
爆発の原因はこれだろう。しかし、どうしてガジェットが……?




side スカリエッティ



「レリックを追跡中のドローン一型6機が撃墜されました。」
「ほう、局の魔導士にかい?それとも、あたりを引いたかな?」
「確定はできませんが、どうやら後者のようです。」
「そうか。早速追跡をかけるとしよう。」


ウーノと話しているとき、娘の一人が私のもとへ。


「ねぇドクター。それならあたしも出たいんだけど。」
「ノーヴェか。」
「ダメよノーヴェ。あなたの武装はまだ調整中でしょう?」
「本物が出たんなら直接見に行きたい。」
「そんなに焦らずとも、アレはここにやってくる。気長に待っていなさい。それに、彼ら(・・)が出てくるかもしれないからね。」
「………わかった。」


ノーヴェは戻っていった。せっかちな子だね。



「ドローンは様子を見てから出しましょう。妹たちの中から適任者を行かせます。」
「ああ。あとは、愛すべき友人にも頼んでおくとしよう。優しいルーテシア、聞こえるかい?レリックがらみだ。少し手伝ってくれるかい?」


さあ、楽しくなってきたねぇ。




side ???




下水道を歩く一人の少女。何かのケースらしきものを手に巻きつけられた鎖ともども引っ張って歩く。


「行かなきゃ…………」


彼女のたどりつく先はどこなのだろうか…………




side エリオ



「!!」
「エリオ君?」
「キャロ、今何か聞こえなかった?」
「何か?」
「ゴトッというか、ゴリッというか……」


あそこだ!あの路地裏!
そこに向かって駆けだす。キャロもついて来ている。



そこには…………




side 士郎



「全体通信……キャロからだな。」
「なんだろう?事件かな?」


なのはの表情が引き締まる。


「こちらライトニング4。緊急事態につき、現場状況を報告します。サードアヴェニューF23の路地裏にてレリックと思わしきケースを発見、それと、レリックを持っていたらしい小さな女の子が一人。女の子は意識不明です。指示をお願いします。」



ふむ、どうやらここから近いようだな。なのはもそう思ったのか、



「スバル、ティアナ。お休みはいったん中断。私と衛宮士郎三尉が一番近くにいるから、現場に向かいます。二人もすぐに向かって。」
「「了解。」」
「エリオとキャロ。君たちは彼女の応急手当てを。」
「「はい!」」
「こちらライトニング1と5。救護班の手配は私たちが行います。」
「「了解。」」
「部隊長。私と高町隊長の飛行許可を。」
「了解。持ち場を離れてる子たちはすぐ戻るように。レリックも、その女の子も安全確実に保護するよ!」



さて、現場に向かうか。


「行こう。士郎君。」
「ああ。」
「レイジングハート!」
「ソードワーカー!」
「「セットアップ!」」
[set up.]
[stand by leady.]



願わくば、穏便に済んでほしいものだ。 
 

 
後書き
日常?からのシリアス。


前半で出したなのはの服装。完全にノリだけでやった。反省してます。だが修正はしない!


次回は宝具だす……かも?



それでは~ 

 

十二話~機動六課の休日(後編)

 
前書き
後書きに説明文追加しました。 

 
side カリム



私は六課の今後についてある人物と会談をしている。


「それにしても、あなたの制服姿は久しぶりね。クロノ提督」
「制服が似合わないと部隊のみんなからだけでなく妻にまで言われていますよ」
「そんなことはないわ。いつもの防護服と同じくらい凛々しくてよ」
「ありがとうございます。騎士カリム」


のんびりと世間話をしていた時、


「失礼します」



シャッハと共に一人の女性が入ってきた。


「あら、シグナム。合同会議の方はもういいの?」
「ええ。滞りなく」
「今六課の今後について話していたところだ。君にも同席してほしい」
「わかりました」


そんな時だ。


「直接通信…………はやてから?」


何かあったのかしら………?



side エリオ



レリックのケースの封印、女の子の応急処置が終わってから少しして、


「エリオ、キャロ。待たせたな」
「この子が……」


なのはさんと士郎さんが到着した。


「地下水路を通って、かなりの距離を歩いてきたみたいです……」
「まだこんなに小さいのに……それに服もボロボロだね……」
「ケースの封印は?」
「それは私がしました」
「それと、これ………」
「ふむ、ケースは二つだった、という事だな」
「ロングアーチに知らせて、調べてもらってます」


そんな会話をしていると、



「お待たせしました!」
「状況は?」


説明を行う。


「フェイト隊長たちとリイン曹長、シャマル先生がこっちに向かってるから、それまでは周辺警戒を」
「「「「了解です!」」」」




side はやて



「そう………レリックが………」
「それを持ってたのが小さい女の子だって言うのも気になるし、なによりガジェットや召喚士が出てきたら市街地での戦闘になる。迅速に、確実に片付けなあかん」
「近隣の部隊への連絡は?」
「海上部隊と市街地の部隊には知らせてあるよ」
「そうか……」
「奥の手も出さなあかんかもしれん…………」
「そうならないことを祈らなければな……」
「シグナムもそっちに戻ったほうがいいわね。シャッハ、送ってあげて」
「はい」
「わかりました」


そういって手の甲を見る。
令呪。使うことになるかもしれんな………
私たち自身の限定解除はあまり使いたくないし……
しかし、4回しかないものだ。タイミングは考えないといかんな……



side なのは



フェイトちゃん達も合流し、シャマル先生による女の子の診断が行われている。



「バイタルも安定してるし、危険な反応もない。心配ないわ。」
「よかった……」
「みんな、ごめんね。せっかくのお休みだったのに………」
「いえ、平気です」
「大丈夫です!」


とりあえずは、現場調査かな。


「レリックと女の子はこのままヘリで搬送するから、皆はこっちで現場調査ね。サポートは………」
「俺が行くぜ」
「うん。お願いね」
「まかしときな」
「なのはちゃん、この子をヘリまで抱いて行ってくれる?」
「はい。わかりました」


もう一度女の子を見るが、うなされているようだった。こんなに小さい子がレリックを………
少し悲しかった。



side はやて



「来ました!地下水路にガジェット一型、数機単位のグループで、総数……20です!」
「海上にも来ました!12機のグループが5個です!」
「結構多いな……」
「どうしましょうか?」


そんな時に通信。


「スターズ2よりロングアーチへ。海上にて演習中だったが、ナカジマ三佐の許可が出たから現場に向かってる。それから、もう一人」
「108部隊、ギンガ・ナカジマです。別件の捜査中だったんですが、そちらの事例とも関係がありそうなんです。私も参加してもよろしいでしょうか?」
「うん。お願いや。ほんならヴィータはリインと士郎と合流して海上の南西方向を制圧」
「南西方向、了解です!」
「心得た」
「なのは隊長、フェイト隊長は北西から」
「「了解!」」
「ヘリの方はヴァイス君とシャマルに任せてええな?」
「任せてください!」
「しっかり守ります」
「ギンガは地下でスバルたちと合流。別件の話は道々聞かせてな」
「はい!」


皆、頼むで。
いざとなったら私も出れるようにしとかんとな。
そんなことにならんといいけど………



side ランス


地下の調査を任せられた俺たち。



「こんなことになっちまったが、これも仕事だ。準備はいいか?」
「「「「はい!」」」」


それぞれがバリアジャケットを纏う。
俺の仕事はフォロー。こいつらの成長のためにも後方に回るか。


「ああ、ちょっと待て。全員だ」
「なんですか?」



全員に『探査』のルーンをかける。



「何をしたんですか?」
「お前たちが大体どこにいるかを俺に知らせる……まあ、発信機みたいなのをつけた、とでも思ってくれ」
「なんでそんなことを?」
「今回、俺はあくまでサポートだ。お前らに危険が及ばねえ限りは手出ししねえ。お前たちの力で乗り切れ」
「わかりました。みんな!そうと決まったら思いっきりやるわよ!」
「「「了解!」」」


ま、無事に終わることを祈るか。





side ルーテシア



「ヘリに回収されたレリックとマテリアルは妹たちが回収します。お嬢様は地下の方へ」
「うん」
「騎士ゼストとアギト様は?」
「別行動」
「おひとりですか?」
「一人じゃない。私にはガリューがいるから」
「これは失礼いたしました。ですが、助力が必要なときはお申し付けください。最優先で実行いたしますので」
「わかった」


レリック……やっと出てきた。


「行こう。ガリュー」



私の探し物を見つけるために。




side はやて



「スターズ1、ライトニング1南西方向に進行中、1分ほどで現場に到着します」
「スターズ2、リイン曹長とスターズ5と合流、フォワード陣、ガジェットの目標点へ進行中。このペースなら先行できます」


ここまでは順調やね。
でも、問題はこの後や。


「スターズ1、ライトニング1ガジェットと交戦開始しました」
「八神部隊長。全体通信です。108部隊ギンガ・ナカジマ陸曹からです」


ギンガからか。さっき言ってた話かな。



「私が呼ばれた現場にあったのは、ガジェットの残骸と、壊れた生体ポッドでした。ちょうど、5、6歳の子供が入るくらいの大きさです。その近くには何か重いものを引きずったような跡があって……それをたどっていこうとした時、連絡を受けた次第です。それと、この生体ポッド……前の事件でよく似たものを見たんです」



それは私も見たことがあった。



「人造魔導士の……素体培養器です」
「人造魔導士……」
「これは私の推測ですが、あの子は人造魔導士の素材として生み出されたのではないでしょうか」



そんな子がレリックを………これは裏がありそうやな。




side 士郎



「おっし。いい感じだ」
「リインも絶好調です!」
「にしてもよぉ………衛宮」
「ん?なんだ?」
「一回に十発の矢を飛ばすとかどうなってんだよお前………」


そんなにおかしかっただろうか………


「私の専門は弓だ。これくらいできなくてどうする」
「答えになってねえよ………」
「二人とも、見てください!アレは………」



敵の増援。だが………


「まずいです………」
「何体いるんだよ………」
「少なく見積もっても500はいるな」


攻撃を加えていると、実機と幻影で構成されている、ということがわかった。
そんなとき、なのはたちから念話が。


(この数はちょっとまずいね………)
(幻影が交じってる。これは私たちを足止めするのが目的だよ。本命は地下かヘリに行ったと思う)
(まずくねえか?地下にはランスがいるとはいえ………)
(援護にむかべきだろう。私が残る。君たちは地下へ向かってくれ)
(一人で!?無茶だよ!)
(ちゃんと手はある。安心しろ、なのは)


自身の手札を切るため、通信をする。



「マスター、宝具使用の許可を。最大出力なら一撃でこの軍団を破壊できる」
「ダメや。ここは目立ちすぎる。士郎の魔術は本局の方にも目つけられてるんや。それに、そんなことせんでも私が参戦する。だから何とかなるよ。ヴィータとリインは地下に、士郎はヘリに向かってや。空は私となのはちゃん、フェイトちゃんが抑えるよ」
「そうか。それならば………」



そうと決まればここは三人に任せ、ヘリの方へ向かうとしよう。
その前に…………


「ワーカー、カートリッジロード。」
[load cartridge.]


4発の薬莢が飛び出す。これで魔力は何とかなったか。



投影、開始(トレース・オン)


ある物を投影しておく。


「ヴィータ!持って行け」
「これは……盾か?」


投影したのは加護を与えし女神の盾(イージス)。黄金色に薄く光る四角い小型の盾で、彼の女神アテナの持ちしあらゆる魔的要素を無効化するという概念を持つ盾だ。
真名解放すれば盾が鏡のように光り輝き、担い手の幸運を上げ、ほとんどの攻撃を跳ね返す、まさに最高クラスの防具である。


「いざとなったらこいつでフォワードたちを守ってやってくれ。魔法相手ならこの盾に防げぬものなどない」
「……ま、一応借りてくぜ」


私もヘリのもとへ向かわねばな。



side スバル



ギン姉と合流し、ガジェットを倒しながら進む。ランスさんは直接戦闘に参加はしないが、アドバイスをしてくれていた。
そして、だいぶ進んだところで



「ありました!」



キャロがレリックを確保。だが………


「な、何?」


謎の影が現れ、キャロのもとへ。


「キャロ、危ない!」
「え?」


間に合わない―――!誰もがそう思った。が、


「おせぇよ」
「……………」


いつの間にキャロのところへ移動したのか、ランスさんがその影……人型をした虫?のような生物の攻撃を止めた。



「てめぇ、何者だ?」
「…………」
「だんまりか、なら……」


そうして一度目をつぶったランスさんが再び目を開けた時、急に虫のような生物がランスさんから大きく距離を取った。



その様子にあっけにとられていたが、



「きゃああああああああ!」
「キャロ!?」


キャロの叫び声で現実に引き戻された。
そこには一人の女の子が。
どうやら彼女がキャロを吹き飛ばしたようだ。


「あった……」
「それは危ないものなの!こっちにわたして!」
「…………」


キャロの言葉を無視して、女の子は去っていく。が、



「荒っぽくてごめんね。でも、それほんとに危ないものなの。こっちに渡してくれない?」
「…………」


ティアが女の子にダガーを突きつけて動きを抑えた。
女の子は答えない。と、女の子が不意に目をつぶったのとランスさんが叫んだのは同時だった。



「耳と目を塞げ!!!!」


瞬間、辺り一面に閃光が閃いた。


「……くっ、待ちなさい!」


ランスさんの言葉のおかげですぐに行動を開始できたティアが女の子をとらえに走る。が、



「ルールーに手ぇ出すなー!!!」
「きゃああああ!!」


小さい………リイン曹長と同じくらいのサイズの女の子が攻撃してきて弾かれた。



「アギト………」
「……………」
「おう!まったく……ルールーもガリューも勝手に出かけたりするからこんなことになるんだぞ?まあ、でも………この烈火の剣精!アギト様が来たからには心配ねぇ!あいつらまとめてぶっ飛ばしてやる!」



レリックはあの子たちの手にある………なんとかしなきゃ!



「ま~た変なのが出てきやがったな。おい、そこのちっこいの」
「なんだと!?あたしはチビじゃねえぞ!!」
「んなこたぁいいんだよ。さっさとレリックをよこしな」
「や~だね!」
「そうか、なら力ずくで奪い返させてもらうぜ!」


そういって駆けるランスさん。ガリューと呼ばれた生物と打ち合いを始めた。


(おい、全員聞こえてるか?)


そんな中で念話が。



(聞こえてますけど………あいつを相手にしながら念話なんて……)
(こまけぇことはいい。ちっこいのとこいつは俺が引き付ける。お前たちはあのお嬢ちゃんからレリックを取り返すんだ)
((((了解!))))


あの子からレリックを取り戻すんだ!


だが、まだ彼女たちは知らない。さらに裏で動いているものたちがいることを……………



 
 

 
後書き
ホントはもっと長くなる予定でしたが、長すぎになると思ったので、一度切りました。


次は一週間以内にできたらいいな………


あと今回の宝具の補足です。


加護を与えし女神の盾(イージス)


女神アテナが使用していた盾。魔を退ける概念武装としての使用が主。
本来のランクはA++ですが、士郎は今回Cまで落として渡しています。
今作で出てくる中では最強の盾なので、完全なものを投影しようとすればものすごい負担があります。



それでは今回はこの辺で~ 

 

十三話~ナンバーズ

side ティアナ



ランスさんの作戦通り、エリオ、スバル、ギンガさんの三人が打って出る。



「………邪魔」



魔力弾を飛ばしてくるが、それは私がすべて撃ち落とす。
前方からから迫る三人から逃げるために逃げるのは……上か後ろ。
上は私を警戒してるだろうから確率的には低い。
だから………


「アルケミックチェーン!!」
「………!?」


あらかじめ張っておいた罠のところに勝手に入ってくる、というわけだ。



「よっし!」
「レリックは無事確保。さあ、観念しなさい!」
「…………」


何を聞いても女の子はだんまりだ。丁度そこに先ほどの二人をとらえたランスさんが。


「レリックは?」
「無事に確保しました」
「で?このお嬢ちゃんはだんまりか」
「はい。さっきから何を聞いても……」


その時だった。


「私を捕まえるのはいいけど」


女の子が急に話し出した。



「大事なヘリは、放っておいてもいいの?」
「「「「「なっ!!」」」」」


まさか、本命はヘリの方!?



side クアットロ



「クアットロ。お嬢様たちが捕まった。救出してあげて」
「はぁ~い。わかりましたぁ」


通信を切る。


「お嬢様たちが捕まっちゃったみたい。私とセインちゃんで救出するから、ディエチちゃんはヘリを撃ち落としちゃってね~」
「いいの?レリックは無事だろうけど、マテリアルの方はどうなるかわからないよ?」
「あのマテリアルが当たりなら、本当に聖王の器なら砲撃程度では死なないそうよ」
「そっか。わかった」


こちらはこちらでやらなければならないことがある。セインちゃんに動いてもらわないとね。


(はぁ~い。聞こえる?セインちゃん)
(オッケー、聞こえてるよクア姉。どうする?例の青いのがいるみたいなんだけどさ)
(心配ないわ。私に考えがあるから。セインちゃんは隙を見てお嬢様たちを救出してあげて)
(了解。それじゃまたあとでね、クア姉)


さてと。それじゃあ、



(はぁ~い。お嬢様。クアットロで~す)
(クアットロ………)
(お困りのようですねぇ~。手助けが必要ですか?)
(……うん。お願い)
(それじゃ、今から言う言葉をそこにいる奴らに言ってくださいな)


こっちはOKね。



「IS、へヴィバレル発射まで10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、発射!」


ヘリの方もこれで落ちたわね。




side 士郎


三人にガジェットを任せ、市街地に戻ってくる。


「ヘリは無事のようだな」


距離はかなりあるが、無事は確認した。
と、視界に妙なものが。



「アレは………!」



ボディスーツのようなものを着た二人組。その一人が取り出したものを見て、それから起こるであろうことを察した私はすぐさま通信をつなげた。



side はやて



「はぁ、はぁ……」
「大分、片付いたね………」
「あと何体や?」
「あと六編隊、だね」
「幻影の解析パターン、判明しました!!」


幻影対策も出来、これで一安心。
そんなことを思った時やった。


「通信……士郎から?」


なんやろうか。


「マスター!今すぐ私を令呪でヘリのもとまで飛ばしてくれ!!」
「え?」


いきなりすごい剣幕で話す士郎に呆気にとられてしまう。


「早く!ヘリが落とされる!!」
「「「!!!!!」」」


その言葉に現実に引き戻される。



「でも、なんで令呪が………?」
「距離が遠すぎる。このままでは間に合わんのだ」
「でも、陸に怪しまれるんじゃない?」
「たしかにそうや。でも………そんなことで助けられるものを助けないことはできんよ」
「マスター……。こちらの準備はできている。いつでも行けるぞ!」
「いくよ!我が騎士、衛宮士郎に令呪を持って命じる!今すぐにヘリのもとへ行き、攻撃からヘリを守れ!!」



その瞬間、爆発的な魔力の奔流が私の右手から流れた。



side シャーリー



「そんな………」
「Sクラスの砲撃が、直撃………」


突如街中に現れたエネルギー反応。それは砲撃のチャージのもので、推定Sクラスの砲撃がヘリに直撃した。


「まだわからないわ!通信は?」
「ジャミングがひどくて繋がらない!」
「復旧急いで!」


私たちがもう少し早く気付ければ……!



side ティアナ


「あなた、仲間がいるのね!どこにいるの?答えなさい!」
「ヘリは…………落ちちゃったんでしょうか……」
「いや、落ちちゃいねえよ」
「ヘリは無事です!」


声のした方に振り向くとヴィータ副隊長が。


「ヴィータ副隊長!どうしてですか!?」



そんなときだった。


「スターズ5より全体通信。ヘリは死守した。これより犯人を抑える!空戦可能メンバーは手伝ってくれ!」
「スターズ2、了解!そっちに向かうぜ!」
「ライトニング5、俺も行くぜ、少し待ってろ」



通信が切れた後、ヴィータ副隊長とランスさんが私の元へ。



「ティアナ、これをお前に預ける。こいつでみんなを守ってやれ」
「なんですか?これ………盾?」
「ほう、あいつのものか」
「ああ。何でも魔法に対しては無敵だそうだ」
「………わかりました。ランスさんはなんですか?」
「……嫌な予感がする。警戒は怠るなよ」
「……わかりました」


さてと、それじゃあ、


「スバル、エリオ。ギンガさんと一緒にそこの三人を地上へ運んで。私とキャロは後から行くから」
「「了解!」」
「ギンガさんもいいですか?」
「ええ。構わないわよ」


キャロと二人で地上へ戻る三人を見送る。



「あの……ティアさん?私たちだけ残ったのには何か……?」
「そう、レリックを安全確実に保護する方法があるから、その準備!」



side クアットロ


作戦通り、とはいかないものの、ヘリは落とした。


「ディエチちゃ~ん。さっさと帰りましょう?」
「静かにして。ちゃんと落ちたの確認してから…………」


いきなり言葉に詰まるディエチちゃん。だが、それは私も同じだった。なぜなら…………




手から大きな花のようなものを出した男がヘリの前に浮いていたからだ。それだけでなく、ヘリも、男も無傷だったのだ。



「こっちも本気じゃないとは言っても………」
「あの男、何者なの?」



ドクターは研究したい、とか言ってたけど………
と、男がこちらに声をかけてきた。


「街中での危険魔法使用、並びに殺人未遂で拘束させてもらう」


あ~ら、まずいわね。ここは………


「ディエチちゃん、逃げましょう!」
「うん。あいつはまずい気がする」






side 士郎




令呪のおかげで何とか落とされる前にヘリのところへ来ることが出来た。そして、私がヘリを守るために展開したのは



熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)


私自身が最も得意とする防御武装。投擲武器に対しては無敵、という概念を持つ盾であり、展開すると七つの花弁のようなものが展開され、その一枚一枚が城壁に匹敵する防御力を誇る。



本来、魔法攻撃を防ぐにはヴィータに渡したイージスの方が適しているのだが、アレは範囲が狭いうえに魔力消費が膨大なため、今回はアイアスを投影した。
しかし、対象はそれを見てすぐに逃走を図った。


(ヴィータ、ランサー。対象は逃走を図った。こちらで動きを止める。確保は任せたぞ)
(おう!)
(はいよ)


動きを止める、という事ならば適しているのはこれだな。



「カートリッジロード」
[load cartridge.]


今回は3発ロードする。


「よし。投影、開始(トレース・オン)


投影したのはいつもの弓に、赤き猟犬。


魔力を込める。5秒、10秒込めたところで、放つ。


「赤原を往け、緋の猟犬!」



直線起動で放たれた猟犬をよける二人組。だが、



「うそ!?戻ってきた!?………IS発動、シルバーカーテン!」


途端に二人の姿が消えた。しかし、


「その程度で逃げられるとでも?」



フルンディングはその特性上、射手が健在ならば対象に当たるまでずっと追い続ける。


それゆえ、


「「うわっ!?」」



どこに逃げようが、姿が消えようが問題はないのだ。
足を狙ったため、完全に動きが止まった。


「よう、待たせたな」
「お前ら、逮捕するぜ」
「さあ、観念しろ」


丁度二人も追いついた。ようやくひと段落、といったところか。




side トーレ



「馬鹿どもが………!」


見に来ていて正解だった。
衛宮士郎。ドクターが面白い男、と言っていたが、実際見てみれば厄介なことこの上ない男だった。
クアットロとディエチをとらえた矢。空中で360°反転する矢など聞いたことすらない。だが、


(クアットロ、ディエチ、そこを動くなよ!)
(トーレ姉さま!)


私のISならば逃げ切れる。


「IS発動!ライドインパルス!」


二人を脇に抱え、離脱。そのままセインと示し合わせていた合流地点まで一気に進んだ。



side ルーテシア


「やった!」
「犯人たちを捕らえたみたいね」


クアットロ達、捕まっちゃったのかな………
そんな時、


(ルーお嬢様、ナンバーズ6、セインです。今から私のIS、ディープダイバーでお助けしますので、ガリューさんを引っ込めて、フィールドとバリアをオフにしておいてください)
(うん)


セインはまず、レリックを持ったオレンジの髪の人のところへ。


「なっ!?」



突然のセインからの攻撃に手に持った盾で防御すると、


「うわっ!?」


セインは吹き飛ばされる。が、盾も粒子になり、消えた。


「仲間か!捕まえる!!」
「やっば!?」


再び地中に潜るセイン。警戒が強くなり、出てこられないみたいだが、


(ルールー、目つぶしやるから目ぇつぶってろよ!)
(わかった)
(じゃあ行くぜ、3、2、1、0!!)


目をつぶっているが、管理局の人たちがあわてる声が聞こえる。
その隙に、


「いっただき!」
「あっ!」


レリックを確保したセインがこっちに来た。


(じゃ、いきましょうか、お嬢様)


セインに連れられ、私は逃走した。




side 士郎



私たち三人は、現在、報告を行っている。



「ああ、すまねぇ、咄嗟の事であたしたちの誰もあいつらを追えなかった」
「すまない、マスター。宝具まで出しておきながら………」
「しゃーないよ。でも、傷は負わせたんやろ?」
「三人のうち、二人には」
「そんならしばらくは行動を起こせんはずや。それだけでも良しとしよか。………リインからも連絡が来とる。これ以上ないなら三人は隊舎の方に戻ってな」


通信を切る。
完全に安心しきっていた。それゆえのミス。しかも、二つも宝具を使用してしまった。
部隊が目をつけられるかもしれんな………



side リイン



「はい、すみませんです。召喚士たちには逃げられ、レリックも奪われちゃったです………全部リインのせいです」


はやてちゃんに報告。その最中、


「あの~、リイン曹長……」
「報告中です。後にしてくださいです」
「レリックなんですけど……」
「無事ですよ」
「「「「ええ!?」」」」


でもケースは……


「ケースは取られちゃいましたけど、中身は私が取り出して、キャロが直接厳重封印して」


キャロが突然帽子を取る。そこにはカチューシャが。


「ティアさんのシルエットでこうやって隠して私が持ってました!」


「「「おお~」」」


最悪の事態は避けられたみたいです~



side トーレ



「いや~なんとかなったなあ」
「お嬢の集団転送のおかげですね。ありがとうございます」
「うん。それより、クアットロとディエチ、けが大丈夫?」
「ええ。足をやられてしまいましたけど、私は前線タイプじゃないんで平気です~」
「でも、驚いたね。軌道が変わる矢なんてさ」
「全く、私がいなかったら捕まっていたぞ」
「今度はそんなヘマしませんよ、トーレ姉さま」
「反省くらいはしろ。セイン、ケースの中身の確認を」
「はいは~い」


しかし、ケースは



「空っぽ!?」
「ちょっとセインちゃん!ちゃんと確認したの?」
「したに決まってるだろ!」
「ディープダイバーの使い方間違えて落としてきたんじゃないの?」
「んなわけないって!ちゃんとスキャンして本物か確認してきたんだから!」


スキャン映像を見せてくるセイン。


「確かに本物ねぇ………」
「間違いないみたい………」


………これは!


「この馬鹿ども!よく見ろ!本物はここだ!」
「あ!このチビの帽子の中……」
「してやられたね」
「すみませんお嬢。愚妹の失態です」
「いいの……私が捜してるのは11番のコアだけだから」
「あ、これ6番か」


しかし、これでコアもマテリアルも管理局の手の中だな………



side レジアス



副官である娘オーリスから見せられた映像は、衝撃的なものだった。



「なんなんだこれは!」
「本日海上にて遺失物捜査部、機動六課がAMF装備のアンノウンとの戦闘時に起きたものです」
「このような膨大な魔力をこんなところで使うなど……ふざけている!」
「この魔力反応、SSSクラスの魔力が観測されたにもかかわらず、付近への影響がありませんでした。この魔力の使用者は、機動六課部隊長、八神はやて二佐です」
「八神……!?あの八神はやてか?」
「はい。闇の書事件の八神はやてです。それと、こちらを」


次の映像は浅黒い肌に白い髪の赤い外套姿の男だった。


「この男は?」
「機動六課所属、衛宮士郎三等空尉です。管理局所属前の経歴が不明であり、八神はやての特別戦力扱いになっています。後見人が元管理局提督、ギル・グレアム氏であることも気になります」
「経歴不明……どうせ犯罪者つながりであろう!」
「……問題発言です。公式の場ではお控えください」
「わかっている!……近いうちにお前が直接査察に入れ。問題があれば即部隊長の査問だ」
「了解しました」


海の連中め、好き勝手にしおって……!




side なのは



保護した女の子は聖王医療院に入院させることにし、現在は私と士郎君が様子を見に来ている。


「検査も問題なかったし、私たちも戻って報告書書かないとね」
「そうだな。しかし、あの少女は一体……」
「狙われる、っていうことは何かあるのかもしれないね……」


そんな会話をしながら売店の前を通ると、ウサギの人形が。


「私、もう少し残るから士郎君は先に戻ってて」
「構わんが……なにかあるのか?」
「もう少しあの子の様子を見ててあげたいんだ」
「そうか。あまり遅くなるなよ」
「うん」


それだけ言うと士郎君は帰っていった。
人形を購入し、あの子のところへ。




「ママ……」
「……大丈夫。ここにいるよ」


うわごとで母を呼ぶ女の子。私はしばらくの間、そばにいて手を握っていた。ママはここにいるよ、と語りかけながら。 
 

 
後書き
ヴィヴィオが来ました。


後半の日常はヴィヴィオメインにする(予定)ことにしてます。


この小説も折り返しに入りました。

評価してくださる皆さんには本当に感謝してます。


そして、ここで一つ報告です。


後半に向けて、オリジナル宝具を募集したいと思います。


感想版、メッセージなど方法は何でも構いませんのでよろしくお願いします。


あと、挿絵とか書いてくださる方がいたら作者はハイテンションになって更新速度が上がります。外伝なども書いちゃうかもしれません。


後書きが異常にダラダラしてしまいました。ホントにすみません。


それでは今回はこの辺で~


 

 

十四話~小さな少女と弓兵

side なのは


「すみません、シグナムさん。車出してもらっちゃって………」
「なに、車はテスタロッサからの借り物だし、向こうにはシスターシャッハがいる。私が仲介するのが一番だろう。しかし、検査が済んだとして、あの子はどうなるのだろうな」
「当分は、聖王教会か六課で預かることになるでしょうね……受け入れ先を探すにしても、長期の安全が保障されてからでないと………」



そんな時、



「騎士シグナム、聖王教会、シャッハ・ヌエラです!」
「どうされましたか?」
「すみません、こちらの不手際で検査の合間にあの子が逃げ出してしまいました……」



……………………………………………………


「申し訳ありません!」
「状況は?」
「転移や侵入、飛行の形跡はありませんでした。特別病棟付近の封鎖と避難は済んでます」
「でしたら手分けして探しましょう。シグナム副隊長」
「はい。私たちは中を探します」
「私は外を」



私が向かったのは中庭。外でいるとしたらここしかない。



中庭についたところで物音が。その方向を見ると、あの子はいた。その目は右が翡翠色、左が紅色のオッドアイ。そんな異質な見た目をしているが、私のあげたウサギの人形を抱いていた。



「………」
「やっと見つけた。心配したんだよ?こっちにおいで」


そう言って近づいていくと………


「下がってください!」



バリアジャケットを展開したシスターシャッハが。



「あ、あ、う………」


その場にへたり込む女の子。そして、


「うええええーん」


泣き出してしまった。


「シスターシャッハ、少し下がっていてもらえますか?」
「え、あ、はぁ」


シスターシャッハは後ろに下がった。私は女の子の前に行き、


「ごめんね。びっくりしたよね。大丈夫?」
「ぁ………」
「立てる?」
「……うん」


(緊急の危険はなさそうです。シスターシャッハ、ありがとうございました)
(は、はい)


女の子の服についた泥をはたき、人形を渡す。


「はじめまして。高町なのはって言います。お名前、言える?」
「ヴィヴィオ……」
「ヴィヴィオかぁ、可愛い名前だね。ヴィヴィオはどこかに行きたかったの?」
「ママ、いないの……パパも……」


その言葉にはっとなる。私が話しかけていたから、だから………


「そっか、それは大変。一緒に探そうか?」
「………うん」



side フェイト



「機動六課に臨時査察?」
「うん。地上にそんな動きがあるらしいんよ」
「地上本部の査察はかなり厳しいんだよね……」
「うちはただでさえ突っ込みどころ満載なのに……」


そういえば、六課設立には真の目的がある、って言ってたっけ。


「ねえ、はやて。これは査察対策にも関係するんだけど、六課設立の真の理由、聞いてもいいかな?」
「…………そうやね。丁度今日カリムのとこに報告に行くんや。クロノ君も来る」
「クロノも?」
「そん時に全部話すよ。なのはちゃんと、それに、士郎やランスにも話しとくべきやな………。なのはちゃんが戻ってきたら出発しよか」
「なのはならそろそろ戻ってるは…ず……」


そういってなのはに通信を繋げた瞬間に聞こえたのは子供の泣き声。
映像にはおろおろするフォワード陣。困惑するなのは。件の女の子が映っていた。


「あのー?いったい何が……」
「あ!フェイト隊長。実は……」
「いっちゃやだー!!!!」


(連れて帰ってきたのはいいんだけど、なつかれちゃって離れてくれないの)
(で、フォワードに面倒見てもらおうとしたらこう、というわけやな)
(そうなの。たすけてよ~)
(エース・オブ・エースにも勝てん相手はおるんやな~)



あらら、そういうことか。


はやてと二人、ロビーに出る。と、



「いったいこれはなんの騒ぎだ?」
「おう、今日はずいぶんと賑やかじゃねえか」


割烹着姿の士郎と私服姿のランスが。


「ランス?ま~た遊び歩いてたんか?」
「うげ、マスター……」
「うげ、やない。アンタも仕事や。さっさと着替えてきな」
「へ~い」


あれ?そういえば泣き声がやんでる……?

見ると、


「…………」
「む?どうしたのだ?」


女の子は士郎を見つめていた。


「ヴィヴィオ、この人は士郎さん。なのはさんの大切なお友達だよ」
「……おっきい」
「おっきい?……ああ、私の背丈の事か」
「……いいにおい」


その問いに、しゃがんで目線を合わせる士郎。


「お兄さんはな、さっきまでみんなのご飯を作っていたんだよ」
「ヴィヴィオも食べる?士郎さんのご飯、とってもおいしいんだよ?」
「……たべる」
「そうか、じゃあお兄さんといこうか」
「なのはさんね、大事なお仕事があるの。それまで士郎さんとお留守番してくれる?」
「………うん」
「よし、じゃあ……」


士郎はヴィヴィオをひょい、っと持ち上げる。



「肩車で行こうか」
「わぁ~」


士郎の肩車に興奮したヴィヴィオはすっかりご機嫌だ。これなら大丈夫だろう。


「いや、ぜんっぜん大丈夫やないで、フェイトちゃん」
「はやて!?人の心を読まないでよ!」
「忘れてへんか?カリムのとこに連れて行くのは……」
「士郎も、だったね……」
「え!?そうだったの!?」


驚いてこっちに詰め寄るなのは。


「ヴィヴィオにすごく悪いコトしちゃったな~」
「いや、もうええで。士郎にはあとで話す。ここで士郎までいなくなる言うたらヴィヴィオが泣き止まなくなっちゃうよ」


ちょうどランスも着替えて戻ってきた。


「あれ?あいつどこいった?」
「士郎ならヴィヴィオと食堂にいったよ」
「あいつがガキのお守りか……」


何だろうあの含み笑いは………


「さてと、人がそろったところで行くで」
「そうだね」
「うん」
「は?行くってどこによ?」
「聖王教会」
「なんで?」
「大事な話があるからや」
「そうか、行ってらっしゃい」
「何言うてるんや?アンタも行くんやで、ランス」
「………まじ?」
「「「マジ」」」
「はぁ………へいへい、おともしますよ」



……………………………………………………


「ごめんね、待たせちゃって」
「いやいや、えーもん見せてもろうたからいいで」
「にゃはは………」
「それにしても、あの子どないしよか。教会に預ける?」


はやての問いに、


「もう少しだけ、私が話をするよ。ヴィヴィオは今、頼れる人がいなくて不安なはずだから………」


そう、なのはは答えた。



side カリム



はやてを先頭に、今回来たのは3人。


「高町なのは一等空尉であります」
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です」
「衛宮ランス三等空尉だ。よろしくな、ねーちゃん」
「ようこそ。聖王教会騎士、カリム・グラシアです。………あら?士郎さんはいらっしゃらないの?」
「あ~、士郎は今ちょっと……」
「そう……」


前回は機会がなかったからお茶を入れる腕を見せてもらおうと思ってたんだけど……
これないなら仕方がない。まずは3人を席に案内する。


「おかけになって」
「おう」
「失礼いたします」
「クロノ提督、少しお久しぶりです」
「ああ。フェイト執務官」
「ふふふ、お二人とも、そんなに固くならないで。私たちは個人的にも友人ですから、いつも通りで構いませんよ」
「約1名、いつも通りすぎるんがおるけどな……」
「まあ、騎士カリムがそう仰せだ。いつも通りで平気だぞ」
「じゃあ、久しぶり。クロノ君」
「お兄ちゃん、元気にしてた?」
「なっ、それはよせって言ってるだろ?お互いもういい年なんだし」
「年齢は関係ないよ、お兄ちゃん」
「うっ………」
「おやおや?お兄ちゃんと呼ばれただけで照れるとはねぇ………兄妹って似てるもんなのな」
「ランス、からかうのはやめとき。クロノ君はこの若さで提督なうえ、二児の父親なんやで?」
「はやて!余計なことを言うな!」
「お、照れ隠しか」
「まあまあ皆さんその辺で……」


私の一言で静まる。


「ともかく、ランスはもう少し静かにせえ。あんまうるさいと……使うで?」
「令呪を盾にするか……へ~い、静かにしますよ」
「で、今回の話は昨日の動きの事、機動六課設立の裏表、それから………今後の話や」



まずはクロノ提督が話をする。



「六課設立の表向きの理由は、ロストロギア、レリックの対策と独立性の高い少数部隊の実験例。後見人は僕と騎士カリム、そして僕とフェイトの母親で上官のリンディ・ハラオウンだ。さらに、非公式ではあるが彼の三提督も設立を認め、協力を約束してくれている」
「その理由は私の稀少能力(レアスキル)と関係があります。『プロフェーティン・シュリフテン』………これは、最短で半年、最長で数年先の未来を詩文形式で書きだす能力です。二つの月の魔力がそろわなければならないのでページは年に一度しか作成できません」


三人にページを見せる。


「予言の中身も、古代ベルカ語で書かれた、解釈によって意味が変わる難解な文章。世界に起きることをランダムに書き出すだけで、解釈ミスも含めれば、割とよく当たる占い、程度です。まああまり便利な能力ではないんですが………」
「この予言は聖王教会はもちろん、次元航行部隊のトップも目を通す。信用するかどうかは別にしてな」
「地上部隊はこの予言がお嫌いなんやけどな。実質のトップがこの手のレアスキルとかお嫌いやからなぁ」
「レジアス・ゲイズ中将、だね」
「ああ、あのおっさんか」
「「「「「おっさん………」」」」」


はやてから聞いてはいたけど、本当に士郎さんとは全然違う方ね……


「ま、まあそれは置いておいて、数年前からこの予言にある事件が書き出されているんだ」
「古の結晶と無限の欲望が集い交わる地、死せる王の元、聖地より彼の翼がよみがえる。死者たちが踊り中つ大地の法の塔はむなしく焼け落ち、数多の海を守る法の船も砕け落ちる」
「それって……」
「まさか……」


彼女たちの予想はあたっているだろう。


「ロストロギアから始まる、管理局地上本部の壊滅と……管理局システムの、崩壊」


side 士郎



「おかわり~」
「ほら、まだまだあるからな、たくさん食べていいぞ」
「わ~い!」
「あたしもいただきま~す!!」
「じゃあ、僕も……」



どうしてこうなった……… 



……………………………………………………



ヴィヴィオを連れ、食堂に来たところまではよかった。が、今日のメニューはあまり子供が食べられそうなものがなかったので、おばちゃん達にヴィヴィオを頼み、チャーハンを作ることにした。


で、


「あ~、チャーハンだ!私も食べた~い!」
「そう言えばお腹すきましたね」
「こら!あんたたち、これはヴィヴィオの分でしょ?我慢しなさい!」
「いや、構わんよティアナ。君たちの分も作って来よう」
「すみません……」


それから、普通に昼食として食べていたが……スバルが、


「エリオ、大食い対決やんない?」
「いいですね!やりましょう!」
「おおぐいたいけつ?」
「そう!誰が一番多く食べられるか競争するの!ヴィヴィオもやる?」
「やる!」



…………………………………………………………




で、当然乗るはずのないティアナとキャロはさっさと戻っていったのだが……


「まだまだ~!」
「ぼ、僕もそろそろ……」
「おなかいっぱい……」
「何言ってんの二人とも!まだまだあるんだよ!」


……仕方がない。


(ティアナ)
(士郎さん?どうしました?)
(スバルを、回収しに来てくれ……)
(あのバカ、まだやってたんですか!?……わかりました。すぐ行きます)


そして、スバルはティアナに引きずられて戻っていった……。


「ヴィヴィオ、この後はどうする?」
「……まってる」
「なのはさんの帰りをか?」
「うん。おへやでまつ」
「なのはさんのか?」
「うん」



で、



「いっしょにはいろう?」
「いや、でもな……」
「…………」
「………はぁ、わかった。入ろう」
「……うん!」


本来ならば、女性の部屋に無断で入るなどはせんのだが…………ヴィヴィオの泣きそうな目には勝てなかった……


「で、なにをしようか?」
「ごほんよんで」
「絵本か、いいぞ」


そうして私はヴィヴィオと過ごした………
この子は人造生命体らしい、という話は聞いている。
しかし、だからといって差別する必要はないだろう。この子はこんなにも普通の女の子なのだから。



side はやて


私たち四人は六課に帰ってきた。


「そんなら、ここで解散や」
「うん」
「情報は十分そろったし、大丈夫だよ」
「さてと、俺も戻るかぁ……」


それぞれが自分の部屋へ。
私は、部隊長室へと向かった。


「グレアムおじさん………」



私の命は、グレアムおじさんに育ててもらって、うちの子たちが守ってくれて、なのはちゃん達が救ってくれて、そして………初代リインフォースが残してくれた命や。
この命は、私の命は、誰かを救うために使う。そのために私は生きてるんや……!




side なのは


自室に戻ってくる。


「ただいま~」
「戻ったか、二人とも」
「あっ!」


私に気づいたヴィヴィオがこっちに走ってきた。そのまま抱きついてくる。


「ヴィヴィオ、いい子にしてた?」
「うん!おにいさんとあそんでた」
「そっか、ありがとね、士郎君………!?」
「ん?どうした?」
「え、え、え、ええー!!!!!」



なななななななななんで士郎君が私の部屋に!?


「なんだなんだ?」
「今の叫び声って……」
「なのはさんだよね?」
「なのはちゃん?どないしたん?」
「エリオ君、大丈夫?」
「あ、ありがとキャロ……うっぷ!」



そしてなぜかみんなが私のところに集まっていた。


「どうしたんだよ、嬢ちゃん」
「し、士郎君が」
「その件に関しては私が説明する」



で、聞いた話は………


「そういうことだったんですか~」
「ま、解決したわけだし、私たちは戻りましょう、スバル」
「エリオ君、部屋まで送るよ……」
「あ、ありがとうキャロ……」


フォワード陣は帰っていった。そのあと、フェイトちゃんが士郎君に質問する。


「ね、ねえ士郎。エリオは何があったの?」
「ただの食べすぎだ」
「そ、そうなんだ……」
「なんにせよ、これで一件落着だ。お休み、ヴィヴィオ」



ヴィヴィオの頭を撫でて帰ろうとする士郎君。その袖をヴィヴィオが掴んでいた。


「いっちゃうの……?」
「お兄さんも寝るからね」
「いっしょにねてくれないの……?」


泣きそうになるヴィヴィオ。でも、


「なのはさんが一緒に寝てくれるから、な。ヴィヴィオ」
「いや!みんないっしょ!」


そしてなぜかランス君の袖もつかむ。


「なんで俺も?」
「みんないっしょがいい……」


ほぼ泣きかけているヴィヴィオに駄目、といえない私たち。そんな中、口を開いたのは未だ帰っていなかったはやてちゃんだった。


「安心していいよ、ヴィヴィオ。お姉ちゃんがみんなで寝られるようにしてあげるからな」
「……ほんと?」
「ほんとや!指切りするか?」
「……うん!」


指切りをするはやてちゃんとヴィヴィオ。微笑ましい光景ではあるのだが……


「何を出鱈目なことを言っているのだ君は……」
「出鱈目やないで!」


その時だった。
ベットを抱えたシグナムさんとヴィータちゃんが入ってきたのは。


「はやて~これどこ置くんだ?」
「ベットにくっつけておいてや。入口はふさがん様にな」
「おうよ!」
「……これは一体どういうことだ?」


士郎君がはやてちゃんに問う。


「同居の準備?」
「なぜ!?」
「ヴィヴィオのお願いやから?」
「にしては展開が早すぎないか?」
「さ~あて、なんのことやろな~」
「はやて~もう戻ろうぜ~」
「そうやな。部屋に戻ってアイス食べよか」
「よっしゃー!」
「あ、そこの四人、今日からヴィヴィオと寝てあげること。これは部隊長命令やで!」
「主、それは職権乱用では……」
「それじゃな~」


三人は帰っていった。


「これでみんないっしょ!」


呆然とする大人三人。嬉しそうな子供一人。まあいいか、みたいな顔してる大人一人。という状況だ。


「まあベッドが丁度三人用と二人用だ。男女でわかれて寝るとしよう」
「そ、そうだね!士郎の言うとおりだよ!」


動揺しているフェイトちゃん。まあそうだろうな………
が、そんな平穏な望みをぶち壊す子供一人。


「いっしょ……」


ヴィヴィオは士郎君と私の服の袖をつかんでいた。


「ヴィヴィオ、あのな……」
「ダメなの……?」


泣きそうな顔。それを見た士郎君は


(どうする?)
(わ、私は構わないけど……ほら)


私の目線の先には顔から湯気が出ているフェイトちゃん。


「ヴぃ、ヴぃヴぃヴぃヴぃ、ヴぃヴィヴィオ。そ、それはよくないんじゃないかな?」
「……なんで?」


ああ、半泣きだ……。


「まあいいじゃねえか、ヴィヴィオはこの二人と寝たいんだろ?」
「……うん」
「お兄さんがこのお姉さんを説得するから、二人と寝な」
「ありがとう、おにいさん」
「ちょ、ちょちょちょっとランス!」
「こんなに喜んでるのに水を差せるか?」
「う………」


フェイトちゃんも折れたみたい。



そして、



「すぅ、すぅ」
「もう寝ちゃった………」
「今日はずっと遊んでいたからな。疲れたのだろう」
「……………」


ヴィヴィオを間にはさめば大丈夫だとか思ったけどや、やっぱり緊張する………。


でも隣は……


「ラ、ランス端っこ行って!私も行くから!」
「いや、落ちたらあぶねえだろ……」
「平気!落ちないよ!」


ああ、明日はどうなってるだろうね、フェイトちゃん……。


(なのは、フェイトは何であんなに端に行きたがるのだ?ある程度離れれば十分では……)
(あー、フェイトちゃんね、寝相が悪いの)
(寝相が?)
(うん。この間は朝起きたら覆いかぶさられてたよ)
(それでか………)



とにかく、私も寝よう。目をつぶっていれば寝られる……はずだ。



side 士郎



全く、なんでこんなことになっている……


確かにイリヤや桜などは人の布団に侵入してきたが、それとはまた違う。
最初の令呪のせいか逆らう気もあんまり起きないし……


まぁヴィヴィオのためだ。このくらいまでならいいだろう。


そう思いながら眠りについた。 
 

 
後書き
更新です。

士郎さん、子供に甘いです。



しばらくは馬鹿話をやっていきたいです。


それじゃ今回はこの辺で~ 

 

十五話~両親

side なのは


士郎君たちと同室になった最初の朝。私が目を覚ますと


「起きたか、なのは」


制服に着替えた士郎君がいた。


「おはよう、士郎君。ところで今何時?」
「まだ六時だ。隣は………まあ、なんだ。すごいな……」


フェイトちゃん達の方を見る。


「あー、これは……」


ランス君はフェイトちゃんの抱き枕と化していた。
フェイトちゃん、頬擦りまでしてるよ……


「起きた時大変そうだね……」


そんな話をしていると、横で何かが動く感触が。


「うぅ……ん」
「ヴィヴィオ、よく寝てるね………」


起き上がろうとして、服を掴まれているのに気付いた。
そっとその手を放させて、寝かせる。


「私朝練行かないと……」
「ヴィヴィオは私が見ておこう。安心して行ってくるといい」
「ありがとう」


その後、士郎君は朝食の仕込がある、と言って部屋を出て行った。
その間に着替えを済ませ、私も部屋を出る。
フォワード陣もいい動きをするようになってきたし、一層鍛えてあげないとね。



side 士郎


仕込みを終え、部屋に戻ってきたときにものすごい叫びが聞こえた。



「何事だ、まだ七時だ。少し静かにしたまえ」
「し、しししし士郎!起きたらランスが私に抱きついてたの!!」
「だ~から何度も言ってんじゃねえか、んなことしてねえって」
「嘘!じゃあなんであんなに顔が近かったの!?」
「それはお前が……」
「そんなことしてない!」


大体予想通りな展開だな。


(フェイトはずっとこの調子か?)
(ああ。自分から抱きついて来てこれだ。このやり取りももう5度目だぞ)


仕方がない。助け舟を出すとするか。


「こいつを抱き枕にしていたのは君だぞ。私だけでなくなのはも目撃している。嘘だと思うなら聞いてみるといい」
「え、えええええええ!!!」
「ったくよ、そうだって言ってただろうが」


その騒がしさで目が覚めたのだろうか、ヴィヴィオが起き上がった。


「うぅん……」
「ヴィヴィオ、目が覚めたか?」
「あ……」


こちらを見て数秒すると、私に飛びついてきた。


「いきなりどうした?」
「いなくなっちゃった……」


隣にいたはずのなのはと私がいなかったから不安だったのか。


「いなくなったりはしないよ。それより、朝起きたら挨拶をしような」
「あいさつ?」
「そうだ。おはよう、って言うんだぞ」
「……おはよう」
「ああ。おはようヴィヴィオ。こっちの二人にも言おうな」
「おはよう」
「おう。おはようさん」
「おはよう」
「おはよう。よく言えたね。偉いよヴィヴィオ」
「えへへ……」


しかし、フェイトの変わり身の早さには驚くな……



side なのは


「はい、じゃあ朝練はこれで終了。みんなだいぶミスも減って動きが良くなってきたよ。この調子でやってこうね」
「「「「はい!」」」」


フォワードたちが隊舎に戻ったあと、データの整理をして戻ろうとした時、ヴィヴィオと士郎君を見つけた。


「ヴィヴィオ~」
「あっ………」


私を見つけ、飛びついてくる。


「どこかに行くところだったの?」
「ああ、今から朝食を取りにいこうとしていた。ヴィヴィオ、なのはさんにも」


ヴィヴィオとアイコンタクトを取る士郎君。なんだろうか……


「おはよう」


朝の挨拶だった。驚きながらも返答する。


「おはようヴィヴィオ。朝ごはん、私も一緒に行ってもいいかな?」
「………うん!」



こうして私たちは朝食を取りに向かった。




……………………………………………………………



朝食を取り終え、部屋に戻ったところで


「高町なのは一等空尉、衛宮士郎三等空尉、至急部隊長室まで来てください」


呼び出しを告げる放送。


「何だろう………」
「どうしたの?」
「ヴィヴィオごめんね、なのはさんたちお仕事みたい。お部屋でいい子にしててね」
「すぐ戻ってくる。絵でも書いて遊んでるといい」
「うん………」


悲しそうな顔。そこで私は


「なのはさんたちが戻ってくるまで遊んでくれる人を連れてくるから大丈夫だよ」
「ほんと?」
「うん!」


少しだけだが嬉しそうにしてくれた。
さてと、あの人……まだ隊舎にいるかな?



side 士郎


マスターに呼び出され、現在私たちがいるのは部隊長室。


「で、何の用だ?」
「話はほかでもない、ヴィヴィオについてや」


予想できていたこと。あの子をどうするか。敵に狙われているのは事実。しかし、だとしたらなぜ私たち二人だけなのだ?


「単刀直入に言うよ。二人はヴィヴィオの親になる気ある?」



予想の斜めどころかはるか上を行く発言だった。



「「………はい?」」
「あの子が狙われてるのは事実や。だとしたら目の届くところに置いておく方がええと思うんやけど、どうや?」
「どうや、といわれてもな、突拍子がなさすぎる。たとえそうだとしても親になる必要はないだろう?」
「確かにそうやな。でも、あの子は作られた存在。本当の親なんておらへん。そんな子を放っておいても二人はええんか?それにや。あの子は二人にすごく懐いとる。六課で面倒見るんなら二人に任せたいんやけど」
「だが………」
「迷惑なんか?」
「そう言う問題では……」


ここでずっと発言のなかったなのはが口を開いた。


「私は、いいよ」
「なのは!?」
「私、やっぱりほっとけないよ。どんなに探したって、本当の親は見つからない。私にできることがあるならしてあげたいんだ」
「そうか、士郎はどうや?」


二人から視線を向けられる。一人は懇願するような、もう一人は………すごく悪意を感じる視線を。
しかも、『断るとかそんなKYせんよな?』的な感じだ。


「はぁ………わかった。引き受けよう」
「よーし、これであとは書類提出で終わりやな」


ん?ちょっと待て。普通こういうものは決まってから書類を用意するはず……


「いや~予め作っておいてよかったな~。シャマルとの徹夜が無駄にならんかったし」


やはりというかなんというか、マスターは相変わらずだった。というかそんなことで徹夜するな……


だがさすがにすぐに養子、とはいかないようで被保護者扱いとする、という方向で話が進んだ。



side なのは


話を終え、部屋に戻る。


「おかえり~」
「やっと帰ったか。ったくよ~、嬢ちゃんも人使いが荒いぜ」
「あはは……ありがとね、ランス君」


ヴィヴィオの面倒と頼んでいたランス君にお礼を言う。


「別にいいって。どうせ暇だったしな」
「それでもありがとう。助かったよ」
「おにいさんとおはなししてたよ」


ヴィヴィオは嬉しそうにあったことを報告する。


「そっか、なのはさんたちもね、ヴィヴィオにお話があるんだ」
「なあに?」
「しばらくの間ね、なのはさんと士郎さんがヴィヴィオのママとパパになることになったの」


私たちを交互に見て、


「ママ?」
「はい」
「パパ?」
「ああ」
「…………うっ、うっ」


泣き出してしまった。


「よしよし、泣かない泣かない」
「うええええええーん」


しばらく背中をさすってあげた。



「大丈夫?」
「………うん」


泣き止んだ後わたしから離れて涙をふく。そんなヴィヴィオにランス君が耳打ちした。
何を話したんだろう………。ヴィヴィオは私たち二人を見て


「あのね」
「なあに?」
「ママとパパのなれそめをおしえて」
「…………………………ええええええええええ!?」



爆弾発言をした。


「ヴィヴィオ、そういうことはな、もう少し大きくならないとわからないんだぞ」
「そうなの?」
「そうだ」
「………わかった」


残念そうにするヴィヴィオ。士郎君のおかげで助かった………
その士郎君が念話を飛ばしてきた。


(なのは、ヴィヴィオにアホなことを吹き込んだ犯人が逃走しようとしている。逃がしていいのか?)
(犯人?)


士郎君の視線の先には……そろーりそろーりと部屋を出ようとするランス君が。


(………捕まえてくる)
(ああ。お仕置きしてやれ)


そうして私はランス君の後に続いて部屋を出た。




side 士郎



「ママ、どこにいくの?」


急に部屋を出て行ったなのはのことを聞いてくるヴィヴィオ。


「ママはな、ちょっとしたお仕事だ。すぐ戻ってくるから安心しなさい」
「おしごと?」
「そうだ」



そんな時、


「待て待て冗談だって、冗談…ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!」


誰かさんの叫び声が聞こえた。
唖然としているヴィヴィオ。
少しするとなのはが戻ってきた。


「ママ、おかえり。おしごとたいへんだった?」
「え!?……あー、うん。でも、もう終わったから大丈夫だよ」
「じゃあいっしょにあそべる?」
「ママはお昼まではお仕事ないから一緒に遊べるよ」
「パパは?」
「パパはみんなのお昼ご飯を作らなきゃいけないから、この後は遊べないが、お昼ご飯までには戻ってくるから、朝みたいに三人で食べようか」
「……うん!」



途端に笑顔になるヴィヴィオ。その笑顔を見て思う。この無垢な少女と、この少女の母となった女性を守りたいと。
俺は、そのために剣を取る。
………見つけたよ、凛。全てを救う正義の味方を目指した俺が。一人の少女とその母親の小さな幸せを守りたい、というとてもちっぽけだが、確かな願いを。 
 

 
後書き
十五話です。短めです。

フェイトさんはママになりません。
士郎がパパ。ここ重要です。

今回の補足は


『ヴィヴィオのみんなに対する呼称』


なのは→なのはママorママ
士郎→しろうパパorパパ
ランス→おにいさん
フェイト→フェイトおねえさん
はやて→おねえさん


と、こんな感じです。



それでは今回はこの辺で~ 

 

十六話~見守る者たち

side ティアナ


オフィスでのデスクワーク中、部隊長に呼び出しを受けた。


「実は今日本局に行くんやけど、ティアナも一緒に来るか?」
「本局に……ですか?」
「今日会う人はフェイト隊長のお兄さん、クロノ・ハラオウン提督なんや。執務官資格もちの艦船艦長さんや。将来のためにこういう偉い人と会う経験しといたほうがいいと思ってな。一緒に来る?」


こちらとしては願ってもない事。もちろん私は


「はい!同行させていただきます!」


二つ返事で付いていくことにした。




……………………………………………………



「ついたで、ティアナ」



着いたところは次元航行艦、『クラウディア』の艦内。



「ようこそ、クラウディアへ。僕が艦長のクロノ・ハラオウンだ」
「査察官のヴェロッサ・アコースだよ。よろしく~」


出迎えは二人。クロノ艦長御自らとは驚いた。


「で、はやて。そちらは……?」
「ティアナ・ランスター二等陸士であります!」
「ティアナは六課のフォワードリーダーで執務官志望なんよ。それでクロノ君に会っとくか~、って」
「そうか。それより、臨時査察を受けたそうだが……」
「即時査問は回避したよ。しばらくは大丈夫そうや」
「立ち話もなんだし、そろそろ移動しないかい?」


アコース査察官の一言で私たちは移動した。



side はやて



着いた先は艦長室。そこで私は驚くべきものを見た。


「クロノ君が、ケーキを……!?」
「相変わらずのオーバーリアクションだな……」
「僕の自作ものだよ。甘さ控えめだからね」
「なるほど、納得や」


椅子に座り、ケーキとお茶をもらう。
そして、食べる。本人の言う様に甘さの抑えられたものだ。しかし……


「ロッサ、もうちょいやね。士郎の方が上やな」
「お、少し辛口の評価だね。それにしても、あの彼はそんなに上手なのかい?」
「上手いなんてもんやない。アレを食べた時、私は初めて料理で完全敗北を味わった……!」
「それはまた、すごいな………」


と、話が脱線しすぎた。ティアナは驚愕の表情でこちらを見ているし。


「ティアナ、だよね。コレはあんまり気にしないで。僕ら三人で集まるといっつもこうだからさ」
「は、はぁ……」
「なぜ僕を含める………」
「え?」
「クロノ君何言うてるんか?」
「僕がいなくても君たちはそんな感じだろう!」
「いや、クロノ君は大事なアレだからね」
「そう、大事なアレや」
「アレってなんだよ……」


ロッサを見ると、いかにも『考えてること同じでしょ?』という顔をしていた。まあ間違いなく同じだろう。そうして私は口を開いた。


「「ツッコミ」」
「やっぱりか!」


やっぱり同じだった。


…………………………………………………………………………


おバカ騒ぎを追えて本題に入る。


「そうそう、君も座りなよ」
「いえ、自分はここで……」
「じゃあさ、ケーキ、いるでしょ?」
「いえ、自分は……」
「じゃあ、お土産にあげるから六課のみんなと食べてよ。ね?」
「は、はい……ありがとうございます」


これはロッサとティアナの会話だが、本題はこれではない。断じてこれではない。
大事なことなので二回言いました。


(今回の事は前線にも?)
(予言関連はぼかしてあるよ。地上本部が襲われる可能性がある、という事だけや)
(なるほど、それより僕はあの男のあの時の発言、あちらの方が気になるんだが……)
(あれは結局よくわからんのよ……ほかの三人はよく聞こえてなかったみたいやし)
(そうか……)


クロノ君の気になる発言、とは聖王教会での会談の時のことだ。
カリムに協力をお願いされた時、近くにいた私にギリギリ聞こえるくらいの声で


「この予言が俺たちを呼んだのかもしれねぇな……」


と呟いていたのだ。解散後、部屋を後にしたなのはちゃん達三人の後を追おうとすると、クロノ君がこのことを私に話した。それで後で聞いてみる、といったのだが……
単刀直入に聞いても答えてなどくれるわけがない、というのは重々承知だったのでそれとなく


「なんで私がマスターに選ばれたんやろうな?」


と、聞いたのだ。
そうしたら


「俺たちの幸運がないからだろ」


とはぐらかした答えが返ってきたのだ。
で、人の事を疫病神みたいに言うな!といったら、


「ステータスがマジでそうなんだって!嘘だと思うなら見てみろ」


といわれ、マスターの権利の一つであるというステータス透視、そのやり方を聞いてみると………



(でも、わかったことはあるよ)
(ほんとうか?)
(あの二人、幸運がない)
(……………は?)
(マスターにはサーヴァントのステータスを見る能力があるんや。それでみたら幸運が最低クラスやった)
(どうでもいい情報だな………)



ほかにも筋力や敏捷などわかったことは多いのだが、ここでは省略する。



(てなわけで収穫はなしや)
(いやまて、てなわけでな意味わからないから!)
(も~、クロノ君のいけず~)
(いけず~、じゃない!)
(あっ!忘れとった!!)
(なにかあったのか!?)
(いや、こっちの話や)
(そんなどうでもいいこと念話で伝えないでもっと有用なことを話してくれよ……)
(だが断る!)
(そんなところでジョ●ョネタを持ってくるな……)
(クロノ君、ジョジ●わかるんか!?あとで語ろ!!)
(………はぁ)


そんなこんなで時間は過ぎて行った………



side エリオ



僕はフェイトさんとキャロと先日の事件の現場での調査に向かっている


「地上本部にテロ行為………ですか?」
「あくまで可能性の話だけどね」
「確かに、管理局の魔法防御は鉄壁ですけど、ガジェットなら……」
「そう。対処しづらい。管理局法で質量兵器の保有は禁止だからね」
「質量兵器……?」


キャロは知らないのかな?


「質量兵器は質量物質をぶつけたり、爆発させたりする魔力を使わない兵器の事だよ」
「それって………」


キャロが言いたいことは大体分かった。


「士郎の出す剣がそうじゃないか、ってことでしょ?」


フェイトさんが先に聞いてくれた。


「はい……」
「アレは、魔力で構成してる武器で、爆発したのはその魔力を暴発させてるんだって」
「っていうことは……?」
「一応は魔法兵器に分類される、って士郎は言っていたよ」


余談だが、衛宮士郎の剣に関して言えば魔力で構成されてはいるが、材質の複製を行うために魔力を使っていて、剣の形になったときはすでに本物の剣と変わりのないものになっている。そもそもが宝具という質量兵器(笑)なスペックを持つものであるので、ロストロギア扱いで違反、の方が正しい判断であるだろうが。


「そうなんですか……」
「質量兵器って子供にも扱えてしまうようなものもあるんですよね?」
「そう、扱いやすい危険な力。それが質量兵器の一番怖いところ。管理局創設当時から質量兵器、並びにロストロギアの規制を続けてきた。でも、色んな意味で武力は必要。さて、どうしたでしょう?」


この答えは簡単だ。隣のキャロはわかっていないみたいだが。


「クリーンで安全な力として魔法文化が推奨されました」


僕の言葉にはっとなるキャロ。


「正解。魔法の力を使って、管理局は今の体制を整えた。各世界の浮かぶ次元空間に本局、発祥の地ミッドチルダに地上本部を置いた。それが約75年前」
「あっ!新暦の始まりですね!」
「そう。で、その時に管理局を切り盛りしていたのが」
「彼の三提督ですね」
「と、歴史の話はここまでにして、ガジェットが出てくるようならレリックが絡まなくても出動があるからね」
「「はい!」」


ガジェットの相手はだいぶ慣れてきたし、ランスさんからもだんだん実戦的なことを教えてもらえるようになってきた。頑張ろう!



side ランス


俺がいるのはミッドの首都クラナガン。非番なので(デスクワークから逃げただけ)街をぶらぶらしている。目線の先には管理局地上本部。
俺は聖王教会でのことを思い出していた。



……………………………………………………



「情報源が不確定という事もありますが、管理局崩壊という事自体が現状ではありえない話ですから」
「そもそも、地上本部がテロやクーデターにあったとしても、それが原因で本局まで崩壊、言うんは無理があるし……」
「本局も警戒の強化はしている。しかし」
「問題は、地上本部なんです」
「ゲイズ中将は予言を信用していない。特別な措置は取らないそうだ」
「異なる組織が手を取り合うのは難しい事です」
「協力の申請も内政干渉や強制介入に言いかえられてしまうし……」
「ただでさえミッド地上本部の発言力や武力は問題視されてるのに……」
「だから、表立っての主力投入はできない、と」
「すまないな。政治的話は現場には関係ないんだが……」
「せやから、裏ワザ気味でも地上で動ける部隊が必要やった」
「地上本部が本腰を入れるか、本局と教会の主力投入まで前線で持ちこたえる」
「そう。それが六課の意義や」
「もちろん、任務以外のご迷惑はおかけいたしません」
「それについては大丈夫です」
「八神二佐から確約をいただいていますので」
「では、改めて聖王教会騎士団騎士、カリム・グラシアがお願いいたします。危険も伴い、華々しくもない任務ですが、どうか協力していただけませんか?」
「全力をかけて」
「承ります」
「………」
「ランス?」
「あ、ああ。すまねえな。考え事してた。話は聞いてたぜ」
「では……」
「いいだろう。赤枝の騎士の誇りのもとに、その任務承る」
「ありがとうございます!」



……………………………………………………



地上本部の崩壊から本局崩壊まで繋がる事態。
常軌を逸した存在である俺でさえ何が起こるか分からねえが、これだけは言える。
この事態を止めるために俺はここにいる。その時は………


宝具の使用も必要になるかもしれない。それだけは確かだ。
そうして俺は踵を返した。



side スバル



「よ~し、お~わりっと」


作業を終え、席を立つ。廊下に出ると士郎さんとばったり会った。


「おや、スバルか。仕事は今終わったところか?」
「はい。士郎さんは?」
「私は……」


と、昼の休憩を告げるチャイムが鳴った。


「む、少し遅れてしまうな」
「どこかに行く予定だったんですか?」


手元を見れば、何やら大きめの荷物が。


「これから寮でなのはとヴィヴィオと昼食だ。食堂で昼食をつくっていたら、作りすぎたのか思いのほか時間がかかってな」


どうやらこの荷物は三人のお昼ご飯らしい。そして今の言葉の中の一言を私は聞き逃さなかった。


「作りすぎちゃったんですね!ならあたしも食べるのお手伝いしますよ!だから一緒に行ってもいいですか?」
「あ、ああ………」



若干引きつりながらも了承をもらった。ゴリ押しの勝利!



……………………………………………………………


道中、気になっていたことを聞いてみた。


「そう言えば、ヴィヴィオってこれからどうなるんですか?」
「一時的にだが、私となのはで預かることになった。なのはが保護責任者、私が後見人だ」
「そうなんですか~」


ヴィヴィオ、二人に懐いてるから喜んでるだろうな~



side なのは


「そろそろパパ戻ってくるね」
「ほんと?パパかえってくる?」


その時、部屋のドアが開いた。


「戻ったぞ」
「おかえりなさい」
「あっ、士郎君おか……え、り……?」
「おっじゃまっしま~す!」


なぜかスバルも一緒だった。



………………………………………………



「そういうことだったの……」
「ああ。それにしてもなぜさっきは不機嫌だったんだ?」
「別に不機嫌じゃなかったよ?」


最初スバルがいた時に驚いた私を見た二人がばつの悪そうな顔をして


「なぜ怒っている?」


だの


「おじゃまでしたか?」


だのと聞いてくるから驚いただけだって説明したらスバルが申し訳なさそうに理由を話してくれた。
ホントに驚いただけなのに………


「ママ、パパがおねえさんといっしょだったからおこってたの?」


ヴィヴィオまでこれだ。私そんなに怒った顔してたのかな………
だが、そんなことも士郎君の料理が出されてからはみんなの中から吹き飛んでしまった。


なぜか重箱(しかも四段重ね)が出てきて驚いた私とヴィヴィオとスバルだったが、中身を見たらもっと驚いた。


一段目には唐揚げ、卵焼き、ミニコロッケ、ポテトサラダ、きんぴら、野菜炒め、ミートボール、エビフライなどがぎっしり詰まっていた。
二段目にはサンドウィッチ。卵サンド、カツサンド、コロッケサンド、生ハムサンド、イチゴジャムサンド、などが。
三段目はおにぎりが。具は食べてのお楽しみらしい。
そして四段目にはデザート。アップルパイがきれいに切り分けられて入っていた。


ちなみになぜおにぎりとサンドウィッチが一緒に入っているかというと
ヴィヴィオがサンドウィッチを食べてみたい、と言っていたからだそうだ。
おにぎりは私たちの分、という事で作ったらしい。………どう見ても作りすぎだが。



「あまくておいしい」
「ほら、ヴィヴィオ。口の周りにジャムが付いているぞ」


イチゴジャムサンドを食べるヴィヴィオの口周りを拭く士郎君。なんだか本当にお父さんみたい……


「このエビフライ、おいし~い!」
「ソースが自家製だからな」


相変わらずすごい………
と、かくいう私も


「このおにぎり、ツナマヨだ~。なつかしいな~」
「なのはさんにも子供のころがあったんですか!?」
「君も見ただろうが……」
「あははは…………」


スバル………もう忘れてるよ……


そんなこんなで大絶賛の昼食は残さずいただきました。…………おもにスバルが。



side ティアナ



アコース査察官からデータを受け取る。


「ティアナ、だよね?君から見てはやてはどうかな?」
「優秀な魔導士で、優れた指揮官だと思います」
「うん、そうだね。はやてとクロノ君、僕の義理の姉、カリム。三人は結構古くからの友人同士でね。その縁で僕も仲良くさせてもらってるんだけど……」
「はい。存じ上げています」
「古代ベルカ式魔法の継承者同士だし、何より、はやてはいい子だ。いたずらはするけど、根はとっても優しいしね」
「はい」
「僕にとって、妹みたいな存在なんだ。だから、心配でね……。レアな魔法や強力な戦力、人を引き付ける牽引力。そういうものを持つってことは、同時に孤独になっていく、という事でもある」
「はい……」
「そう言う人は、確かに必要とされる。でも、それはその人ではなく、力そのものが必要とされている、という事なんだと僕は思う。まぁこれは極論だけどね」
「わかります。そういう力を持つ人には重圧やさみしさが常に付きまとう……」
「そうそうそれそれ!つまり、僕が言いたいのは……部隊長と前線隊員として、上司と部下としてだけじゃなく、人として、女の子同士として、接してあげてほしいんだ。はやてだけじゃなく、君の隊長さんたちにもね」


この人は、本当に部隊長の事を大切に思っているのだろう。それがひしひしと伝わってきた。だから、


「はい。前線一同、心がけていきます」



そう、答えた。でも、だからこそ気になった。
あの二人のこと………どこかで一歩遠慮しているような、そんな二人。
最近射撃の訓練をつけてくれるようになった、家事が得意で気配りのうまいあの人。
普段は仕事をさぼったり、人をからかったりしているが、いざという時は見えないところからサポートしてくれるあの人。


そんな二人にも、もっとそうやって接していこう。そう、思った。



side クロノ



二人が帰った後、ヴェロッサと共に六課の部隊データに目を通す。


「それにしても、はやては身内と部下に恵まれているな」
「そうだね。ティアナもいい子だったしね。でも……罪の意識は消えていない。はやては相変わらず生き急いでるように見えるよ」
「この件が片付けば、はやての指揮官適性は立証される。闇の書事件についても、言えるものは少なくなるだろう。なのはとフェイトが付いているとはいえ、こちらでもサポートはしてやらないとな」
「おいおい、本局が表だって動いちゃダメだろ。僕に任せてよ。査察官って立場は秘密行動に向いてるんだからさ」


こいつには世話をかけっぱなしだが……


「すまないな、頼む」


それでも、やっぱり頼れるのはこいつだけだった。



side ゲンヤ


マリエル技官の検証データ。そいつを確認するが……


「間違いねぇか」
「はい。襲撃してきたボディスーツの子たち………最新技術で作られた戦闘機人に間違いありません」


嫌な予感はあったが……やっぱり、まだ続いていたか……。


「マリーさんの解析データを六課とすり合わせないといけないんですが……」


ギンガの声にも若干の動揺が見て取れる。こいつもあの事を思い出したようだ。


あいつの……クイントの命を奪った『戦闘機人事件』を。


「そいつは俺が直接行く」
「わかりました。八神部隊長、お戻りは八時過ぎだそうです」
「マリエル技官はどうする?」
「私もご一緒します。最近スバルにもあっていませんから」
「そうかい。じゃ、時間まで自由にしていてくれ。ギンガ、任せたぞ」
「はい。マリーさん、休憩室の方へ」
「うん!」


二人が出て行った後、一人物思いにふける。


「まだ、なんも解決しちゃぁいねえんだよな……」



side フェイト


「へぇ~二人がママとパパになってくれたの」
「そいつぁ良かったな」
「うん!」

ヴィヴィオから今日の出来事を聞いた。


「で、はやてちゃんの計らいで私も少しオフシフトが増えることになったから……」


申し訳なさそうななのは。言いたいことはわかってる。


「大丈夫。新人たちの事は任せて。ヴィータもいるし、私も協力するから」
「フェイトちゃんただでさえ忙しいのに、ごめんね」
「これくらい平気だよ。そこのサボりの常習犯も協力してくれるし」
「ん?誰の事だ?」


わかってない犯人。その事実を突きつける。


「「ランス(君)だよ」」


なのはとセリフが被った。


「は?俺?」
「貴様以外にこの中でサボる者がいるか?」


ランス、思考中。


「………いねぇな」
「でしょ?ちゃんと協力してね」
「もの教えんのは得意じゃねぇんだがな……」
「だったら書類仕事やる?私の分も」
「……わぁーったよ。やってやる」


でも、なんだかんだで満更でもなさそう。エリオとキャロの事も可愛がってくれてるしね。


「フェイトおねえさん、おにいさんとなかよし?」


今の会話を聞いたヴィヴィオがそんなことを聞いてきた。


「おう!抱き枕にされるほどだぞ」


まだ根に持ってるの……?


「だきまくら?パパ、なあにそれ?」
「だっこして寝る、少し大きめの枕の事だよ」
「へぇ~。おにいさんはまくらだったの?」
「ヴィヴィオ、それはちょっと違うよ……」
「………???」


はてなマークを浮かべるヴィヴィオ。


「つまりは、お姉さんはお兄さんが大好き、ってことだ」
「ラ、ランス!ヴィヴィオに変なこと吹き込まないでよ!!」
「じゃあわたしもママとパパだきまくらにする~」


ヴィヴィオの中に謎の方程式が生まれた。


この後、ヴィヴィオの誤解を解くのに30分かかった。



side スバル


本局に言ったティアを除く三人での夕食中、ヴィヴィオの話になった。


「ヴィヴィオ、なのはさんと士郎さんが親代わりになったんですか」
「すごい至れり尽くせりですね……」


確かに。あの二人が両親なんて少し羨ましいかも……とか思ってみたり。


「でも、二人だってフェイトさんの被保護者でランスさんにも可愛がってもらってるよね?」
「それは、そうですけど……」


そこで、ふと気になった。


「そう言えば、二人にとってフェイトさんってお母さん?それともお姉さん?」
「私は、優しいお姉さん、かな……?」
「僕は……どっちだろう?難しいかも……」
「へぇ~。じゃ、ランスさんは?」
「「お兄さん!」」


即答だった。フェイトさんの時は結構悩んでたのに。


「そう言えばフェイトさんはエリオ君が弟なのと子どもなの、どっちが嬉しいのかな?明日聞いてみようよ」
「キャ、キャロ!お願いだからやめて!」
「???」


そんな二人の会話を聞いて、私も思い出していた。


母さん………。ちっちゃかったからよくは覚えてないけど、すごく優しかった母さんの事を。



side ギンガ


六課に向かう車中で、私は考えていた。


あの事件は終わっていない。母さんを殺した、戦闘機人事件は。


ブリッツキャリバーを握りしめ、母さんのためにもこの事件は必ず解決させる。そう決意した。 
 

 
後書き
十六話で~す。

クロノはツッコミ。これは譲れなかった。

そしてこれが年内最後の更新となります。

新年は幕間からやってこうかな~と考えています。

それでは皆様よいお年を~ 

 

幕間~士郎となのはとヴィヴィオのとある1日

side 士郎


私たち六課のメンバーの朝は早い。フォワードメンバーの朝練は7時から始まるため、なのはは5時半に起きる。私は自己鍛錬のため、4時に起き、日ごとにローテーションで剣、弓、銃と魔法の鍛錬を行い、部屋に戻ってなのはを起こし、食堂へ向かう。食堂で朝の仕込を行い部屋に戻る。戻るとたいていフェイトとランサーが言い争いをしているのでそれを止める。7時になるとヴィヴィオが起きるので、朝の支度を手伝う。そうして支度が終わるとヴィヴィオと二人でなのはを迎えに行き、三人で朝食、というのが朝の流れだ。だが、今朝はいろいろと違った。その理由は昨晩にさかのぼる………




……………………………………………………


始まりは唐突だった。


「パパ、でーとにいこう?」


ヴィヴィオのこの発言である。
私は努めて冷静に


「ヴィヴィオ、誰にそんなことを聞いた?」


と聞いた。予想ではそんなことを教える人物は一人しか心当たりがないのだが、


「はやておねえさん」


予想通りでした。


「いいか、ヴィヴィオ。そういうのはもっと大きくなってから好きな男の人と行くものなんだぞ?」
「え?おねえさんはママとパパとおでかけすることだ、っていってたよ?」


純粋すぎる目。ああ、これには逆らえんな………
と、丁度なのはが戻ってきた。


「ただいま~」
「あ、ママ。今ね、パパとママとでーとにいくおはなししてたの!」
「え、ええ!?」


驚いたなのはに、


(要は三人で外出したいそうだ)
(な、なぁんだ、そういうこと……)


しかし、問題がある。


「ヴィヴィオ、ママとパパはなかなか一緒にお休みが取れないんだ。だから三人では……」
「ダメ、なの……?」


泣きそうな目。どうにかしてあげたいのはやまやまだが、ここはしっかり言わなければならない。


「行くことは「できるよ!ヴィヴィオ!!」………またか」


もう慣れた。マスター乱入には。


「あ、はやておねえさん!」
「そうや。よい子の味方はやておねえさんやで~」
「はやてちゃん、いつの間に………?」
「そんなことはどうでもいいんや!ヴィヴィオ、明日ならママもパパもお休みやからな。行くなら明日やで!」
「ほんと?」
「ほんとや!部隊長権限でついさっきシフトいじってきたから間違いないで!」


いや、それは職権乱用だろう……だが、


「やったー!!」


喜んでいるヴィヴィオを見ていたら、まあ、いいか。という気にもなってきた。どうやら隣のなのはも同意見のようだ。


「じゃあ、ヴィヴィオはどこに行きたいの?」
「えーっとね、………」



……………………………………………………



で、ヴィヴィオの回答が『地球』だった。マスターめ、ここまで仕組んであったな。しかも


『翠屋には連絡しといたからな
                By はやて』


この用意周到さである。ちなみに翠屋はなのはの実家が経営する喫茶店だそうだ。


そして現在朝の5時。ヴィヴィオは絶対起きるような時間ではないのだが……楽しみで仕方なかったのか4時には起きていた。


「パパ、はやくはやく!」
「ヴィヴィオ、あんまり急かさないの。パパは持っていく物いっぱいあるから大変なんだよ?」
「はぁい……」


しかし、お土産にはケーキをつくっていけ、とマスターに言われていたのだが……夜に作っておいてよかったな。朝作ったら後2時間はかかっていた。


「よし、じゃあいこうか」
「しゅっぱーつ!」




……………………………………………………………



で、2時間ほど転移を繰り返して着いた先は、豪邸だった。遠坂邸や間桐邸に引けを取らない大きさの。


「ここが、翠屋……!?」
「違うよー。ここは私の友達の家」


ずいぶんとすごい友達だな………
と、向こうから手を振りながら駆けてくる少女が見えた。


「なのは~」
「アリサちゃん!久しぶり~」


どうやら彼女がなのはの言っていた友達らしい。


「昨日はやてから明日なのはがこっちに来る、って連絡もらってたからさ、待ってたのよ?」
「そうなんだ~。お土産あんまり用意してないよ~」
「いいわよそん……な…の?」


彼女……アリサはこちらを見て固まった。


「お、お、お、お」
「お?」
「男連れぇ――!?しかも子供付き!?どどどどういうことよ!?」
「ああ、それはね………」



…………………説明中…………………



あの後お互いに自己紹介をし、現在に至る。




「そういうことなんだ~」
「全く、アリサちゃんは早合点しすぎだよ」
「そんなことないわよ!それよりなのは………」


そういうとアリサはなのはを連れて少し離れた場所へ。
内緒話をしているようだが急にボン!とでも音がしそうなくらい顔が真っ赤になった。


「あ、アアアアアリサちゃん!」
「なによ~ここまでしといてそういう関係じゃないって言い張るわけ~?」
「違うの!そんなこと……」


言い争いながら屋敷の奥の方へ行ってしまった。
何やらアリサの方は楽しそうだった。



side なのは


アリサちゃんに呼ばれて少し離れたところへ。
そこでアリサちゃんは小声で


「で?どこまでいってんのよ?キスは済ませた?それとも……もっと先も?」


と聞いてきた。後半は自分も赤くなっていたが。
だが私はもっと赤くなっているだろう。


「あ、アアアアアリサちゃん!」
「なによ~ここまでしといてそういう関係じゃないって言い張るわけ~?」
「違うよ!そんなこと……どう、なのかな」


裏の方まで来て、士郎君とヴィヴィオの姿は見えない。


「どういうことよ?」
「わからないの……私にとって士郎君はどういう存在なのかが」
「はぁ~。アンタやっぱり変わってない。そういうことに関してダメダメなところがね。だから可愛いのに彼氏が出来なかったのよ」
「そう言うアリサちゃんだって!」
「私は周りにいい男がいないだけ。士郎さんみたいないい男がいたら即刻かっさらってるわよ」
「かっさらうって……」
「それくらいでいなきゃいい男なんてつかまらないわよ?彼、モテそうだしねぇ。とられちゃうかもよ?」
「も、もう!」


私にとっての士郎君って、なんなのかな……?
大切な友達?……でも、ユーノ君やクロノ君に感じるものとは何か違う……。
でも、今考える事じゃないよね。今はヴィヴィオを楽しませるために来てるんだから!
そして、アリサちゃんの家を後にし、我が家に向かう。
ちなみにアリサちゃんへのお土産は


「アンタの浮いた話が聞けたから十分」


と言われてしまった。そんなんじゃないのに………


そうこうしてるうちに着いた。


「ただいま~」
「なのは!おかえりなさい!」


出迎えてくれたのはお母さん。


「ただいま、お母さん」
「お母さん!?」


士郎君驚愕の声。


「お姉さんではないのか……?」
「あらあら、嬉しいこと言ってくださいますね~。ところであなたは……?」
「お母さん。こちら同僚の衛宮士郎君」
「衛宮士郎です。つまらないものですがどうぞ」
「あら、わざわざご丁寧に……。なのはの母の高町桃子です」
「で、こっちの女の子が私と士郎君で保護してる……」
「ヴィヴィオです。こんにちは」
「はい。こんにちは」


挨拶も終え、お土産も渡した。お母さんは中の道場にいるお父さんとお姉ちゃんにもあって来なさい、と言ってくれた。お兄ちゃんは忍さんとドイツなので不在だ。



……………………………………………………



「ふう、今日はここまでにしようか、美由紀」
「はい!」
「お父さ~ん、お姉ちゃ~ん」
「おや?…なのは!」
「もう着いたの?早かったね~」
「朝早く出たからね~」


と、二人とも士郎君とヴィヴィオに目が行ったようだ。


「……なのは」
「何?お父さん」
「いつの間に結婚して子供まで作ったんだ!父さん聞いてないぞ!!」
「そうだよ!私よりなのはが先に処……じゃない、子供産むなんて!」


ああ、お兄ちゃんがいないからって安心してた……この二人もこうだったな。


「二人とも落ち着いて、話聞いてよ……」
「君!なのはがほしければ私を倒していくがいい!」


始まったよ……まあ士郎君に勝てるわけないと思うけど。
で、



……………………………………………………



(なぜこうなった?)
(ごめんね、うちのお父さん熱くなるとすぐこうだから……ちょっと本気でやっちゃって)
(魔力を感じないが……いいのか?)
(お父さん丈夫だから平気。それに負けないと調子に乗るから……)


「パパ~がんばって~」


木刀を両手に持つお父さんと士郎君。ヴィヴィオの応援がある士郎君に対し、先に冷静さを取り戻したお姉ちゃんと私からの応援が皆無のお父さん。それどころか向けられるのは冷ややかな視線。父親勝負だったらもう勝負はついている、という状態だ。


「自己紹介もまだなのに申し訳ありませんが、やられてください」
「ふっ、御神流継承者の私に勝てると思うなよ!」


いや、お父さん。英霊に勝とうとしないでください。
で、結果は……



「く、こんなにあっさりやられるとは……」
「パパ、すご~い!」
「お父さん、簡単にやられたね……」


士郎君圧勝。というか勝てたらお父さん生身でSランク魔導士を倒せちゃうよ……。



「少しは冷静になりましたか?」
「ああ。おかげでね。そういえば名前を聞いていなかったね」
「衛宮士郎です。よろしくお願いします」
「士郎……同じ名前だね。私は高町士郎だ」
「私はなのはの姉の美由紀で~す」


それぞれの自己紹介も終わり、事情とその他もろもろを説明する………


「へぇ~。保護児童なの」
「だから話聞いてって言ったじゃんか……」
「それにしても衛宮君、君の剣を見てて思ったんだが、君は剣は得意じゃないね?」


お父さんの言葉に反応したのはお姉ちゃんだった。


「え?どういうこと?お父さんを倒すような腕前なのに?」
「ええ。その通りです。非才の身ですので多くの戦法を求めた結果、剣、弓、槍、槌、戦斧に銃などとにかくいろいろなものに手を出しています。最も得意なものは弓ですが」
「アレで、本気じゃないの……?」
「士郎君はうちの部隊の切り札だからね~」
「あれ?それってなのはじゃなかった?」
「私は表向きの切り札だよ。本命は士郎君」
「確かに魔法を行使せずにあれだけの戦闘力があり、しかも本命の弓じゃないことを知ればうなずけることではあるな」
「パパ、おなかへった…………」


ヴィヴィオの発言は会話の流れ的に場違いだが、時間的にはあってるだろう。
そういえば私もお腹減ったかも………


「朝食の用意が出来ているはずだ。そろそろ行こうか」


お父さんが言うと私たち5人はリビングに移動した。お母さんの料理久しぶりだな~



side 士郎(衛宮)



出された朝食をいただいて、私は久々に思う。


上手いっ………


彼女の料理は素材を生かしつつ、薄すぎず濃すぎずのしっかりとした味付けがされていて、なおかつ見た目もとてもきれいだ。ヴィヴィオも、


「おいし~い!」


と、喜んでいる。
私が作らないと絶対に食べないピーマンやニンジンなどもしっかり食べている。


「お母さんの本業はパティシエなんだけど、料理も上手でしょ?」
「あら、なのはも中学の時は当時の私よりいい線行ってたじゃない?」
「中学の時のこと言われても………」


和やかな家族の談笑風景。それを見た私はどんな顔をしていたのだろうか。ヴィヴィオが心配そうに声をかけてきた。


「パパ、どうしたの?」
「いや、なんでもないんだ、ほらヴィヴィオ、冷めないうちに頂こうか」
「うん!」


いずれはこの子もこんな風景の中に……そう、思わずにはいられなかった。




……………………………………………………


ところ変わって、現在翠屋。


「衛宮君!シュークリーム3個追加!」
「こっちはショートケーキ2つ!」
「了解しました!」


私はなぜか厨房に……


「おまたせいたしました~」
「あら、可愛いお手伝いさんね」
「お嬢ちゃん、お名前は?」
「ヴィヴィオです」
「ヴィヴィオちゃん、偉いわね~」
「お待たせいたしました~」
「あら、なのはちゃんもお久しぶりね~」
「はい!お久しぶりです」


ヴィヴィオとなのははウェイトレスをしている。
なぜこうなった……………





………………………………………………………………



きっかけは私のお土産のケーキだった。
それを食べた桃子さんが


「うちで働いてみない?」


と言い出した。マスターめ、ここまで計算しているとはな。最初は断っていたのだが、その時に電話が。厨房のバイトの子が急用で来られなくなってしまったらしい。そこで今日だけ、という条件で引き受けると


「わたしもやりたい!」


と言い出すヴィヴィオ。さすがにそれは……と言おうとしたら桃子さんが


「じゃあウェイトレスさんしてもらおうかしら」


と言い出した。そしたらなのはが


「じゃあ私も手伝うよ」


というわけで……




……………………………………………………



現在に至る。それにしても……ヴィヴィオもなのはも世代を問わずに大人気だな……


「二人の事が気になるのかい?」


いつの間にか士郎氏が隣に。客足が引いてきたからだろう。


「ええ。まあ」
「そうか。……衛宮君。なのはは、普段どうだい?」
「とてもしっかりしていますよ。保護者としての自覚も出てきたみたいですし」
「無茶は、していないかな?」
「ええ。今はそれを諭す側の立場ですからね。……やはりあの時のことを?」


家族はどう思っているのか、少し気になってあの事を聞いた。



side 士郎(高町)


「……やはりあの時のことを?」


どうやら彼は知っているようだ。あの事を。
そして、剣を通して見えた彼の技の異常なまでの錬度。それはなのは以上の無茶無謀に挑んだであろう証拠に他ならない。そんな彼にだからこそ……
なのはのことを頼むべきだ。そう、思えた。


「ああ。またそういうことがないとは言い切れない……。なのははああいう性格だからね。だから、君に頼みたいんだ。あの子が無茶しないように、見守ってあげてくれないか」


すると彼は不敵に微笑み、


「安心してください。なのはもヴィヴィオも、二人まとめて守ると決めています。それが、わたしの存在意義ですから」


ああ、彼ならきっとなのはを守ってくれる。だから、彼のところになら、嫁にやってもいい、と思った。



side なのは


三時を過ぎ、お客さんもまばらになったので翠屋を後にし、最後の目的地に向かう。
その前に……


「はい。お土産、忘れないでね。ヴィヴィオちゃんも」
「ありがとうお母さん」
「ありがとうございます!」


六課へのお土産分のシュークリームをもらい、ヴィヴィオにはお手製クッキーを持たせてくれた。


「衛宮君」


お父さんはいつになく真面目な顔で士郎君と話していた。


「なのはを……頼んだよ」
「はい。彼女の事は私が守ります」
「そうか。よかったよ。なのはにも君のような相手がいてくれて」


何の話?模擬戦の相手かな……?
はてなマークを浮かべる私とヴィヴィオにお母さんは


「二人とも、勘違いって大変だからよく覚えておきなさいね」


妙に悟ったかのような物言いだった。



……………………………………………………



そして最後の目的地にして帰るための転送ポートがある場所でもある月村邸へ。
月村邸は侵入者よけのセキュリティがとにかく凄いので、家主に出てもらわないといけない。そのセキュリティを見た士郎君が、「割烹着の悪魔……」とか呟いてたけどなんのことだろうか?
で、その家主が……


「なのはちゃん!久しぶり!」
「すずかちゃん!」


月村すずか。アリサちゃんと同じく6歳の時からの親友である。


「相変わらずの警備システムだね……」
「最近お姉ちゃんが残していったのを少し改造したんだ。より厳重になったよ」
「これ以上にする意味ないと思うけど………」


と、ここですずかちゃんが士郎君とヴィヴィオに気づく。


「なのはちゃん、この男性とこの子は……?」
「同僚の衛宮士郎君と私が保護責任者やってるヴィヴィオ。二人とも、紹介するね。私の友達の月村すずかちゃんだよ」
「はじめまして。ヴィヴィオです」
「え、衛宮士郎だ」


士郎君が若干、いや、かなり引きつっている。何かあったのかな……?


(どうしたの?)
(彼女から、ちょっとマッドサイエンティスト的なものを感じてな……)


確かにすずかちゃん探究心は旺盛だけど……そこまでかな?


「それより聞いてよなのはちゃん。この間警備用散弾銃のゴム弾の素材の研究してたらいいのが出来て……」


訂正。士郎君は正しかった。暫く見ないうちにすずかちゃんはそっち方面に突っ走ってしまったようだ。




……………………………………………………




あの後30分近く銃器の部品云々を聞かされた。その後は他愛ない話をし、気が付けばもう帰る時間。


「じゃあ私たちそろそろ帰るね」
「うん。衛宮さんもヴィヴィオちゃんもまた来てくださいね」
「うん!」
「ああ。そうさせてもらうよ」


雑談の際のすずかちゃんを見て、士郎君も最初の警戒はある程度無くなったようだ。若干は残っているみたいだが。


そうして私たちの一日地球旅行は幕を閉じた。



side フェイト



「きょうね、ママとパパのうまれたところにいったの!すごくたのしかった!」


ヴィヴィオは帰ってくるなり私とランスに興奮冷めぬ様子で今日の事を教えてくれた。


「そっか、地球に行ってきたんだね。実は、フェイトさんとランスさんもそこにいたことがあるんだよ」
「ほんとう?じゃあつぎはみんなでいきたい!」


そのことを聞いて私たちはみんなで笑いあった。お仕事が一段落ついたらここのみんなで行こうね、と言って。



……………………………………………………



ヴィヴィオが寝た後、それぞれいつものように就寝。
でも、今日はなのはが変だった。


(フェイトちゃん、起きてる?)
(まだ起きてるよ)
(あのね……ううん、ごめんね、なんでもない)


悩んでるのは確かだ。なのはの親友として放っては置けない。



(なのは、悩みがあるんでしょ?見てればわかるよ。なのはの悩みならいつでも相談に乗るよ)
(フェイトちゃん……ありがとう。じゃあ、聞いてくれる?)
(うん)
(士郎君の事なんだけど……私にとって士郎君の存在ってなんなんだろう、って)


士郎の存在……?


(クロノ君やユーノ君に感じるのとは別の何かを感じるんだ。でも、それがなんなのかわからないの)
(どういうこと?)
(なんだろう、一緒にいるといろんな気持ちになるの。嬉しかったり、恥ずかしかったり、すごく安心できたり、もやもやしたり……)


何だろう、私にも覚えがある。それはつい最近の事だが。私は悩んではいないし、今は前より毎日が楽しくなっているからあまり気にしていない。でも、なのはは違うようだ。


(私もわからないや。相談して、って言っておきながらごめんね……)
(ううん、いいの。少し楽になったから。それじゃ、おやすみ)
(うん。おやすみ)


なのはの迷い。それは私がランスに感じている感情と同じもので悩んでいるようだった。
この気持ちの正体。私はわからなくてもいい、と思ってるけどなのはが答えを求めてるなら一緒に探すのもいいかな、とも思えた。



side はやて



今日、シフトをいじってなのはちゃんを士郎と出かけさせたが……自分の気持ちに気づいただろうか。
ここんとこ悩んでるみたいやったからな。いつもどこか上の空やし。
ヴィヴィオの事もあるし、早く吹っ切ってほしかった。フェイトちゃんも同じだが、こちらは気づかずとも楽しんでいるようだ。……まぁ、初恋だろうし、わからんのも無理はないんやけどな。



…………にしても、年下のスバルやティアナよりそういうことに疎いってどうなんや。
男たちも男たちで士郎は全く気づいとらんし、ランスはランスでわかっていながら楽しんでるところがあるからなぁ……。
まったく、二人とも厄介なのに惚れてもうて、キューピッド役は苦労するわぁ~。


当事者たちの親友と主、というポジションの彼女は仕事よりこっちで疲労がたまっていた。



………それでいいのか機動六課よ。 
 

 
後書き
新年初投稿です。



~補足~



士郎ズの会話。


お父さんは嫁にもらってくれ、と思って話している。
士郎は物理的障害から守って平和に暮らせるようにしてあげてくれ、と言われていると思っている。


二人の空気から言い分の違いを悟る桃子さん。流石です。


さて、読者の皆様に伺いたいのですが、こういった話は間に挟んだ方がいいですか?それともさっさと話を進めて事件解決後にまとめてやったほうがいいですか?

ご意見ください。待ってます(=^・^=)


では皆さん、今年もよろしくお願いします!(^^)! 

 

十七話~それぞれの思い

side 士郎


地球旅行の翌日。
ヴィヴィオが寝た後、マスターに前線メンバー全員が呼ばれた。



「で?用事はなんだよ。俺はそんなに暇じゃねぇんだが………」
「暇の権化みたいな生活してるやつが何を言ってるんや?」
「そんなことはねえよ!」
「いや、あるだろう」
「あるよね」
「ランス、自覚なかったの?」
「………エリオ、キャロ」


私、なのは、フェイトにダメだしされ、うなだれるランサー。
最後の望みをかけ、エリオとキャロを見る。


「え、そ、そんなことは、ないんじゃ、ない、かと…………」
「私ランスさんがお仕事してるとこ見たことないです……」


キャロの言葉に轟沈するランサー。エリオはものすごく優柔不断な答えだな……


「話がずれたな。で、今回の用事っていうのはな、明日陸士108部隊から二名ほど六課に出向することになってるんや。つまりしばらくの間は同僚が増えるよ、ってことや」
「で、その出向してくる人物のうちの一人が……ギンガ・ナカジマ陸曹なんだ」


マスターの説明にフェイトが補足する。


「ギン姉が!?」
「ほう、あいつか」
「知っているような口ぶりだな」
「この前の事件の時、ちょっとな」


ギンガ・ナカジマ陸曹……たしかスバルの姉で前回の事件の協力者、だったな。
だが、それだけで全員呼ぶ必要はないはず……


「部隊長、それだけではないだろう?それだけのためにわざわざ全員を呼ぶ必要はないはずだ。もっと重要なことがある、そうだろう?」


私の言葉にマスターは表情を引き締める。


「……相変わらず鋭いなぁ、士郎は。今日集まってもらったのはな、108部隊の協力で、この間の襲撃者の正体がわかったからや。あの子らの正体は……戦闘機人」
「「「「戦闘機人?」」」」


ランサー、私、エリオ、キャロ以外は知っているようだった。


「体に機械を埋め込まれ、戦闘能力を飛躍的に増大させられた改造人間の事や。人道的、技術的に無理がありすぎて凍結された計画………のはずなんやけどな」
「そんなものが出てきた、という事は……」
「敵も本腰を入れ始めた、ということや」


そうして戦闘機人についての大体の説明を受け、解散になった。



……………………………………………………



翌朝、珍しく私となのはが一緒に訓練に出ている、という状況だ。
大抵はどちらかがオフでヴィヴィオを見ているので、最近はほとんどなかった光景だ。で、その理由が……


「陸士108部隊から出向になりました、ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします!」
「本局第四技術部のマリエル・アテンザで~す。デバイスの事なら何でも聞いてくださいね~」


六課に出向となったこの二人との顔合わせのためだ。ちなみにヴィヴィオはザフィーラと寮母のアイナさんに見てもらっている。


「さてと、自己紹介も済んだし、早速朝の訓練開始だよ!」



…………………………………………………………



訓練はフォワードの新人を隊長副隊長が個別で相手をする、というものだ。今日はスバルがヴィータ、ティアナがなのは、エリオがシグナム、キャロがフェイトだ。ちなみに、今日のフィールドは森である。


「あの~、私は?」


一人だけ相手がいないギンガはそう尋ねた。


「俺とやるぞ」


返答したのはランサー。そうすると、私は相手がいなくなってしまうのだが……


「士郎く~ん、ちょっといいー?」


なのはに呼ばれたので、ティアナと訓練している彼女の元へ。


「どうした?」
「あのね、ティアナと模擬戦してくれないかな?」
「模擬戦か………」


最近増えた1対1の模擬戦。自己鍛錬だけでは得られぬものもあるし、


「いいだろう。いつもと同じか?」


そう尋ねる。ちなみに、いつもティアナとやるときは剣を使う。


「今日は銃でやってほしいんだ」
「銃で?」
「ティアナも士郎君の技術が見たいみたいだからね」
「わかった。勝敗の条件は?」
「いつもと同じ。士郎君は撃墜、ティアナはクリーンヒットね」


そうして始まる模擬戦。


「先手は譲ろう。いつでも来い」
「はい。行きます!」


ティアナは両手のクロスミラージュからそれぞれ3発の魔力弾を放つ。
すべて撃ち落とすが、その間にティアナの姿が消えていた。


「幻術か。使いどころが上手くなったな」


解析の魔術を使えばどこにいるか、ダミーはどれかなどは全てわかるのだが実戦ではないのでそんなことはしない。代わりに魔力弾を背後に飛ばす。


「嘘!?なんで……」


予想通り背後に回っていたらしいティアナの声が。


「幻術を使い、背後に回る、というのは単調すぎる。そんなことでは簡単に行動を読まれてしまうぞ」
「くっ………」


姿を現したティアナに容赦なく魔力弾を浴びせる。が、


「ほう、そういうことか」


そこにティアナの姿はなかった。


「クロスファイアー……」
「ワーカー、カートリッジ!」
[load cartridge.]


あの量は……撃ち落としきれんな。


「シュート!!」
「シールドだ!」
[scarlet shield.]


そして私は爆炎に包まれた。



side ティアナ



「はぁ、はぁ、やった………?」


私が行った作戦は幻術を駆使して背後に回る。相手は士郎さん。当然読まれて攻撃をされる。
そんなことはわかっていた。だからわざと驚いた声を出し、シルエットを出す。
そうすれば攻撃対象になるのはシルエット。その一瞬で右方向に移動し、大技を入れる、というものだ。かなり大量に魔力を消費してしまったが、これで……!


「狙いはよかった。だが、後の事を考えていなかったな」
「え………」


振り返った私が最後に見たのは、自分に迫る真紅の魔力弾だった。



side なのは



士郎君の攻撃でティアナが気絶。模擬戦は終了した。


「相変わらず容赦なしだね………」
「手加減して相手をしたらティアナに失礼だろう?」
「それは………そうだけど……」


ティアナのクロスファイアーシュートをシールドで弾きつつ後退して木々を飛び移り背後に回り込む……という芸当をこともなげに成し遂げた士郎君。もう少しは手加減してあげてもよかったのでは……と思う。


「ううっ…………」


気絶していたティアナが目を覚ます。


「ティアナ、幻術の使いどころもうまくなったし、動きもよくなってたよ」
「でも……悔しいです!今日こそ勝てると思ってたのに………」
「相手の裏の裏を読め。私が教えたことを実践したようだが、さらに裏の裏まで読めなくては私には勝てんぞ」
「あーもう!団体では負けませんからね!!」


切り替えも早くなった。あの一件から士郎君はティアナの事を鍛えてあげることにしたらしい。
おかげでティアナはどんどん指揮官として強くなってきている。状況判断もうまくなったし、視野も広くなった。でも……ティアナと訓練する士郎君を見てるともやもやする。ティアナが強くなって嬉しいはずなのに。そんな二律背反な思いを抱えつつ時間が過ぎて行った。



side ギンガ


ランスさんの発言に私は驚きを隠せなかった。


「訓練はこれだけだ。『俺に攻撃を防がせてみろ』」


防がせるだけ?私だってAランク魔導士だ。それくらいできるに決まってる!



……………………………………………………



「はぁ……はぁ………」
「どうした?もう終わりか?」


なんなんだこの人。Bランクのはずなのに攻撃が当たらない。いや、できない。
まず、シューティングアーツの使い手である私は近づかなければ攻撃できない。
だが……追尾弾、砲撃、バインド、クロスレンジ、どれをとっても一流クラスのこの人はあろうことか3つ4つ平気で併用してくるのだ。明らかにオーバーSレベル魔道士の実力はある。だが、攻撃に威力があるわけではない。かなり食らっているのにダメージが意外に少ないのが証拠だ。


「まだ……まだです!」
「そうこなくっちゃなあ!」


そうして再び戦闘に戻ろうとしたところで、


「個別訓練終了~。一回集まってね」


なのはさんの声。結局一撃も与えられなかった。



………………………………………………………



「はい、じゃあ朝の締め、隊長陣対フォワードの団体模擬戦やるよ~」
「よーし!」
「頑張りましょう!」
「今日こそ勝つわよ!みんな!」
「おう!」
「…………えええ!?」


な、なにそれ!?


「あっ、ギン姉は知らないんだね。たまにやるんだ。隊長陣との模擬戦。かなり本気で来るから気を付けてね」
「でも今日は人数が合わないからそっちに助っ人を入れないとね」


隊長陣は四人のはず……ランスさんと衛宮さんはあっち側なのかな?確かにそれなら人数は合わない……


「あたしがいく」
「ヴィータちゃんが行く?みんなもそれでいいかな?」
「「「「「はい!」」」」」
「よーし、じゃあ始めるよ!」



side フェイト



「あー、もうちょっとだったのに~」
「あそこで邪魔されなければ……!」
「今日は行けたと思ったのになぁ……」
「エリオ君、あそこで私が……」
「キャロは悪くないよ!僕が……」
「違うよ!私が……」


模擬戦は隊長陣の勝利で終わり、一休み中。


「はぁ~、てか何であたしにあいつら二人まとめて相手させんだよ………」
「あ、あはは………」
「アレはヴィータ副隊長じゃなきゃ無理ですよ……」


ヴィータは一人でランスとシグナムを相手していた。アレは私もやりたくない……ヴィータは終始防御に徹していたし。



「やはりヴィータの守りは堅いな。相手をするのは骨が折れる」
「全くだ。久々に楽しめたぜ」
「お前ら相手に10分耐えられる奴がいるなら見てみてえよ……」


訓練はこんなところで……


「じゃあみんな、寮に戻って朝ご飯にしよう」


なのはの言葉で寮に向かおうとした時だった。


「ママ~、パパ~」


ヴィヴィオが走ってこちらに来ていた。今日はリボンをしている。ザフィーラも一緒だ。


「ヴィヴィオ、そんなに急ぐと転んでしまうぞ」
「ちゃんと足元に気を付けて……あっ!」


転んでしまった。


「ヴィヴィオ、大丈夫!?」


駆け寄ろうとした私に


「大丈夫。うまく転んだ。怪我はないはずだよ」
「一人で立てるな?ここで待ってるからおいで」


士郎となのはに手で制された。


「ママ……」
「うん。ママはここだよ」
「パパ……」
「大丈夫だ。先に行ったりしない」
「ふぇ……ふぇ……」


ああ、泣き出しちゃう……!


「もう、二人とも厳しすぎるよ!ヴィヴィオまだ小っちゃいんだよ!?」


二人を振り切って駆け寄った。


「大丈夫?怪我してない?」
「うん……」


服についた汚れをはたき、抱き起こす。


「も~う、フェイトちゃんは甘すぎだよ~」
「なのはたちが厳しすぎるんです!」
「いつでも甘やかしていては一人で何もできない子に育ってしまうぞ」
「そんなことないよ!」


まったく………



side シャーリー


「ねえ、シャーリー?」
「なんですか?」
「六課の訓練っていっつもこんななの?」
「あー、今日は特別ですよ。普段ならあの六人がそろうなんてことはないですから」


そういって隊長陣を指す。丁度その時


「おはようございます」


ヴィヴィオが通った。


「おはよう。足元に気を付けてね~」
「はい!おはようございます」


マリーさんにも挨拶をする。


「はい、おはようござい……ます…」


呆然と見送るマリーさんの横をついてきたザフィーラが通る。


「ザフィーラはお目付け役かな?」
「あー!ザフィーラ久しぶり~」


マリーさんはハイテンションでザフィーラを撫でている。


「ところであの子は……?」
「ああ、ヴィヴィオですか?あの子は……」


丁度そのタイミングで


「ママ~、パパ~」


ヴィヴィオが駆けて行った。


「ということです」
「どういうこと!?」
「えーっとですね」
「あ!転んだ!」


話の途中でヴィヴィオの方を向くマリーさん。しばらくはむこうのやり取りを見ていた。


「あんな感じです」
「へぇ~、そうなんだぁ~………えええええええ!?」


そう教えたらものすごく驚いてました。




……………………………………………………



「なぁ~んだ、保護児童か……」
「全く、驚きすぎですよ」
「驚くよ~。なのはちゃんあんな素敵なパートナーを見つけるなんて………」
「そっちですか……」


なのはさんは……ヴィヴィオとの会話に集中していて聞こえてないみたい。
これを言うとなのはさん異常なまでにテンパるから六課メンバーはあまり言わない。約二名を除き。
そうして私たちは各自朝食を選びに行った。



side なのは



「ヴィヴィオはどれにするの?」
「オムライス!ママは?」
「えーっと……ママもオムライスにするよ」
「ほんと!?いっしょいっしょ!」


そうして各自選び終わり、席へ移動した。




……………………………………………………



「あれ?ヴィヴィオ、ピーマン残しちゃだめだよ」
「おいしくない……」


ああ、今日は士郎君厨房に行ってないからか……
ヴィヴィオ、と言おうとしたところで


「ヴィヴィオ、このオムライスはな、たくさんの人の頑張りで出来ているんだ。お米を作ってくれる人、お野菜を作ってくれる人、卵を作ってくれる人、出来たお米などを此処まで運んでくれる人、そして料理を作ってくれる人。ヴィヴィオが残したピーマンにはそんな思いが込められているんだぞ?残して捨てられちゃったりしたらその人たちの頑張りを無駄にすることになるんだ」
「それにな、ヴィヴィオ。好き嫌いばっかしてるとママみたいな美人になれへんよ?」


士郎君が先にヴィヴィオに説教していた。それに便乗するはやてちゃん。別に私そこまで美人じゃないけど……


「……がんばる」


士郎君の説教は効果覿面だったようだ。


「だってさ、キャロ、どうする?」
「……ちゃんと食べます……」


別の方面にも効果があったようだ。


「美人になれないのは嫌ですから!」


訂正。あっちははやてちゃんの一言でらしい。



……………………………………………………



「じゃあ、ギンガとスバルお借りしていきますね」
「うん」


スバルたちはマリーさんと一緒に検診に行くらしい。ヴィヴィオは士郎君が見ててくれるし、私は午後の訓練の準備しないとねー。



side スバル


「データはこれで全部かな」
「探してやっとくからいいわよ。もう行きなさい」


書類をティアに任せ、マリーさんの元へ向かおうとするが、


「あ、ちょっと待って」


ティアに呼び止められた。


「ほら、アンタが健診の時よく買ってきてくれた……あれ」
「ああ、チョコポット?」
「そう!それそれ。私も半分だすからみんなの分買ってきてよ」
「りょ~かい!」


そういえば買うの久しぶりだった気がするな~。今から楽しみだな。



side レジアス


副官のオーリスが気になることを報告してきた。


「先日の事件の際、強力な空間歪曲をほぼ同時に2か所で観測した、という報告がありまして」
「空間歪曲だと?」
「はい。詳しくは手回しがされていたため調べることはできませんでしたが、そういうものがあった、というのは本当のようです」
「お前の権限で調べられん、という事は……」
「提督クラスが関わっているのは事実でしょう」
「相変わらず忌々しい海の連中め!公開意見陳述会まで時間がないというのに!」


そういえばあちらの方はまだ聞いていないな。


「アインへリアルの方は?」
「三号機の最終確認が遅れていますが、順調です」
「遅らせるな。何としても陳述会までに終わらせろ」
「これから視察に行く予定です」
「そうか」


陳述会さえうまくいけば……!


side スバル


「二人ともー。準備出来たー?」
「はーい!」
「大丈夫です」
「それじゃ、定期健診、始めるよー」



………………………………………………




健診は問題なく終了し、現在チョコポットを買いに来ている。


「お待たせしました」
「あ、ありがとうございます。あと、すぐ食べる分3つください」
「わかりました。少々お待ちください」


無事購入し終え、外で待っているギン姉の元へ。


「お待たせー」
「今日はまたずいぶん買ったわね」
「みんなへのお土産だよ」
「そっか」
「ギン姉、あーん」
「あーん」


さっき買ったものを一つギン姉に食べさせる。


「どう?」
「うん。おいしいよ」
「えへへ……」
「それにしても、スバルもティアナも六課に入ってから生き生きしてるわよね~、嬉しいわ」
「あたしはなのはさんと同じ部隊、ってだけで頑張れるよ」
「そうよね、なんといってもあこがれの人だしね」


そう言った後、真剣な顔になり、こちらを向くギン姉。


「スバル、この後の任務で戦闘機人戦があると思う。その時は……頑張りましょう」
「うん、あたしも強くなってるから、ね。きっとギン姉を追い越してみせるよ」
「まだまだ抜かせないわよ?……私も、強くなるんだから」
「え~、頑張るもん!」
「ふふふ………」


そうしているうちにマリーさんが迎えに来てくれた。そうして寮へと帰り、チョコポットをみんなに配っていたら就寝時間になった。願わくば、こんな日常が続きますように、と祈りながらあたしは眠りについた。



side ノーヴェ


「宴の時は近い。準備も滞りなく進んでいる。君たちもそう思うだろう?」


ドクターの質問はあたしともう一人、妹のウェンディに向けられている。


「そうっスね~。あたしは武装も完成したし、さっさと暴れたいっスよ~。ね?ノーヴェ?」


こいつは相変わらずアホみてえだな。


「一緒にすんな。あたしは確かめたいだけだ。あたしたちの王がどんな奴なのかをな」
「心配せずとも君たちの望みはかなうさ。もう少しでね」


丁度向こうからみんなが来た。


「お待たせしましたドクタ~」
「クアットロか。ご苦労だったね」
「いえいえ、そんなことありませんよ~」
「さあ、祭りが始まる。きっと素晴らしく楽しいひと時が待っているだろう!ひとつ、大きな花火を、打ち上げようじゃないか!フフ、ハハハハハハ!!」


そんな時、トーレ姉が口を開いた。


「ドクター、あいつの、衛宮士郎の対策は?」
「映像を見た限り、彼は魔力の絶対量が少ないようだ。AMFを最大限に発動させればあの矢も撃てないだろう」
「鉄くずどもに頼る、という事ですか……」
「不満かね?」
「いえ、そんなことはありません」


あんなに警戒してるトーレ姉なんて初めてだ。そんな強いやつがいるなんて思えねえんだがな。


彼女たちは警戒しているトーレの杞憂だと思っているが、彼女の心配は正しいのだ。しかし、それを彼女たちが知るのは少し先のことになる……… 
 

 
後書き
お待たせしました!

十七話です。

この後の予定は幕間3つはさんでから本編になります。

最近サブタイトルが思いつかない………


と、ここで皆様にお知らせです。


StS編の後日談が終わるまでに総合評価3000越えを達成したらVivid編を書きます!
今からこんなこと言ってますがそこまで行くのにまだ半年以上はかかりそうです……


と、今回はこの辺で~ 

 

幕間~なのはの思い

 
前書き
今回はずっとなのは視点で進みます 

 
一人でいると、考えてしまう。


彼のことが、頭から離れない。


彼と一緒にいると、嬉しい。


彼が自分の事を自嘲的に語るのを見ると、悲しい。


彼がほかの女の子といるのを見ると、何だか嫌な気分になる。


どうしてだろう?


今まであった男の子と一緒にいる時と、何か違う。


彼は優しい。面と向かってそう言うと『優しくなんてない』と卑下したことを言うので、言わないけど。困っているときは必ず助けてくれる。いつでもそうだ。


彼は子供にしっかりとした躾をする。普段は甘やかしても、怒るべきところはちゃんと怒る。褒めるべきところはちゃんと褒める。


彼は料理が上手い。主夫………と言うと渋い顔をする。洗濯に掃除も完璧にこなす。


彼は強い。そして………弱い。努力で培われた剣技。百発百中の弓。明らかに手馴れている銃の扱い。いったいどれだけ努力したのだろう。そしてその努力は誰のために。そうしてふるった力は、けれど彼を“化け物”と呼ばせた。でも、その心は……とっても、弱くて脆かった。




…………………………………………………………




「はぁ……」


お昼の休憩中。今日は士郎君とヴィヴィオは買い物に行っている。食堂の食材が足りなくなったんだそうだ。ヴィヴィオは一緒に行きたいと言って聞かず、結局着いて行った。



「……………………」



久しぶりに一人で昼食。ここのところずっと三人だったから、何だか穴が開いた様。
フェイトちゃんも今日はランス君とエリオとキャロと一緒。最近のフェイトちゃんは、よく笑う。
アリサちゃんとすずかちゃんと過ごした子供の時のように。



「……っと、時間だ」


一人で食べるごはんは、何だか味気なかった。




………………………………………………………




「…………さん」



この思いは、なんだろう。



「………のはさん」



わからない。でも、どうしようもない。



「…なのはさん!」
「え?」



大声に我に返ると、心配そうに見てくるスバルとティアナ。


「どうしたんですか?さっきからボーっとして……」
「やっぱり、オフの時もずっとヴィヴィオの事見てて休めてないんじゃ……」
「ううん、平気。なんでもないよ」


この子たちにも余計な心配は駆けられない。


「休んでろよ、なのは」
「ヴィータちゃん……」
「スバルの言うとおりだ。子供の面倒見るのは、自分で思ってる以上に大変なんだよ。二人の面倒はあたしが見るから、さ」


ここで意地を張ったら逆に心配させちゃうか……


「うん。ありがとね」
「気にすんなって」


隊舎に戻ろうとしたとき、


「さて、なのはがいねぇ分ガンガン厳しくすっぞ!」
「「ええー!?」」


そんな会話が聞こえた。



……………………………………………………



「あ、ママ~」
「ヴィヴィオ……」


部屋に戻ろうとすると、ヴィヴィオに会った。と、いうことは……


「む、なのは。今日は訓練ではなかったか?」


士郎君も一緒だった。


「ちょっと調子が悪くて……」
「何!?それはいかんな。早く部屋に戻って休むんだ」
「ママ、だいじょうぶ?」


二人が心配してくれる。それだけで心が軽い。


「うん。もう平気だよ。ありがとう、ヴィヴィオ、士郎君」
「うん!どういたしまして」
「本当に平気か?熱はないか?」


そう言うと士郎君は………私の額に自分の額をくっつけた。
か、顔が近い!ほんの少しずれれば唇がくっつきそう……


「熱は……少し高いな。やはり部屋でしっかり……どうした!?顔がかなり赤いぞ!?」
「な、なんでもないよ!それじゃあ後でね!」


きっと今の私はゆでダコみたいになってるだろうなぁ……
そう思いながら部屋に戻った。



………………………………………………………



「あれ?なのは?」
「フェイトちゃん……」


部屋に戻るとフェイトちゃんがいた。


「午後は訓練じゃなかった?」
「調子悪いみたいで…ボーっとしちゃうんだ」


フェイトちゃんにまで余計な心配はかけられない。


「それって……士郎のこと?」
「……わかる?」
「私とはやてとシャマルとザフィーラはわかってるよ」
「ヴィータちゃんとシグナムさんは?」
「あの二人は、ねぇ?」


悪戯っぽく言うフェイトちゃん。


「そうだね」
「うん」


しばらく二人で笑いあった。


「……あのさ、なのは」


笑い終えた後、フェイトちゃんが真剣な顔で話を切り出した。


「そういうことは、やっぱり人生の先輩に相談するべきじゃないかな」
「人生の、先輩か……」


誰かいるかな………


「たとえば、なのはのお母さんとか………」
「お母さんか……うん、そうだね。そうするよ」


フェイトちゃんは悩んでる人の機微に鋭い。また助けてもらうことになっちゃったな…………




…………………………………………………………



その夜、フェイトちゃんの言う様にお母さんに連絡を取った。


「もしもし?」
「おかあさん?なのはだよ」
「あら、どうしたのこんな時間に?」
「ちょっと相談があって………」


今悩んでいることの全容を話した。


「……なのは」
「なに?」
「答えは、自分で見つけなさい。そうすれば、あなたは女として、人として一回り成長するわ。だから今はたくさん悩みなさい。そうすれば、自ずと答えは出てくるから」
「うん………」


お母さんからのアドバイスは、『もっと悩め』だった。
無論答えも教えてくれない。でも、その悩みは大切なことだ、と教えてくれた。


「私は、どうしたいのかな………」


ヴィヴィオと二人でいる時、思うこと。それは、この子の事を見る私が変わってきている、という事。
被保護者から、娘へと……
この件が片付いたら、正式に養子に取ろうと思う。無論、ヴィヴィオが嫌がらなければだが。


士郎君と二人でいる時、思うこと。嬉しいような、恥ずかしいような、よくわからない気持ち。この気持ちの正体がわかる日は来るのかな………


考えながら通信のために来ていた屋上を後にした。
………その時、私を見ていた人影があったことに気づいた。


「……誰?」
「私や」
「はやてちゃん?」


聞いていたのかな?


「なのはちゃん、私が言いたいんはこれだけや。……頑張れ。でも、助けられん。これは、なのはちゃんが一人で辿り着かないといけないものやから。それじゃ、おやすみ。また明日な」


それだけ言ってはやてちゃんは戻っていった。



……………………………………………………



部屋に戻ると、言い争うランス君とフェイトちゃん、それをなだめる士郎君とヴィヴィオ、といういつもの光景が目に入った。これからもこんな日が続くように……そのために私は戦う。その思いにだけは、迷いはない。そうだよね、レイジングハート?

 
 

 
後書き
幕間その一完成しました~

その二はフェイト主役で~す。

それでは今回はこの辺で~

誤字の修正しました。 

 

幕間~フェイトの思い

 
前書き
すごく………短いです。


 

 
私は彼をどう思っているのだろうか?


からかわれるのは嫌だけど、彼と過ごすのは楽しい。


ちょっとがさつだし、スケベだし、仕事はよくサボるけど、そんな彼がたまに見せる頼れるところ。それが彼の魅力なのだろうか。
エリオが最近よく言っている。『彼のような男になりたい』と。


そんな彼の事を、私はどう見ている?友達?それとも………



もっと踏み込んだ関係……?



それは親友とか相棒とか……?


もしかして……………?




……………………………………………………


きっかけは母さんからの通信だった。


「フェイト、彼氏が出来たって本当?」
「え、ええ!?」
「いや、はやてさんがそう教えてくれたから」


はやては……


「違うよ、彼とはそういうのじゃないから!」
「あーら残念ね、エイミィ」
「ほんとですね~、せっかく可愛い義妹に春が来たと思ったのに~」
「はぁ……」


この二人は昔っからこうなのだ。エイミィはクロノと結婚して私の義姉になってからはそういうことばかり聞いてくる。
その時だ。


「ん?誰と通信してんだ?」


今一番入ってきてほしくない人が入ってきた。


「あら……青い髪に赤い目……あなたが衛宮ランスさんね?」
「ああ、そうだが……あんたは?」
「初めまして。フェイトの母、リンディ・ハラオウンです。娘がお世話になっています」
「ずいぶんと若いし美人だな」
「あら、こんなおばさんよりうちのフェイトの方がおすすめですよ?」
「か、母さん!」


すぐこういうこと言うんだから……


「まあまあ、落ち着いて、フェイトちゃん」
「あんたは?」
「義姉のエイミィ・ハラオウンで~す。義妹がお世話になってま~す」
「ああ、あんたがクロノの……」
「うちのアホな旦那の事よりも……衛宮さん!義妹とはどうなってるんですか?」
「どう、って?」
「清らかな関係?それとも、エロい関係?」
「にゃっ!?」


義姉の爆弾発言に上ずった声が漏れる。


「あらら、お盛んね~。でも、確かにフェイトはナイスバディですから男として放っては置けないですよね?」


母さんはそんな義姉を煽る。


「まぁな」


そしてその流れに乗るランス。


「もう!三人ともいい加減にしてよ!」
「と、お姫様がお怒りのようですぜ、お二方?」
「あら、貴方があまりにもノリがいいのでついからかいすぎちゃったわね」
「うんうん」
「うんうん、じゃないよ!もう!」


反省してるのかな……?


「「「してない!」」」
「三人とも心を読むのはやめて!」
「いや、だってねぇ?」
「あんまりにもわかりやすすぎたから」
「つい、な。悪い悪い」


まったく……


「次はやらないでよ?」
「「「は~い」」」


これでひと段落……


「それにしても、本当に貴方とはいい関係が築けそうね。婿養子にならない?」
「母さん!」


しなかった。この人はいつまでたっても変わらない。
結局はなのはたちが戻ってくるまでこの騒ぎは続いた。



…………………………………………………………………



「関係、か………」


夜、ベッドで考えている。
ランスとの関係。あまり考えたことがなかったのだが、母さんのトンデモ発言により考えさせられている。


「うーん……」


隣で寝る彼を見る。ちょっとだらしがない寝顔。そんなところが……


……なんだろう?わからない。でも、悪い感情ではない。少しこそばゆいが、それが心地よい。
そんな感情。それに………


絡まれていて助けてもらった時や、任務中などに見せる貌。すごく頼りになるし、安心する貌。
少しずつ、見えてきた。私が彼とどんな関係になりたいのか。それは………エイミィの言ったえっちな関係?…………違う違う!そういうのじゃなくて………母さんが言ったような……こ、恋人?………なの、かな?
わからない。でも、今の関係はわかる。それは……




背中を預けられる関係………に近い。
なのはとは既に背中を預けられる関係だからわかる。
ランスとの関係はそれとは少し違う。でも……似ている。



なんて言うんだろう………支え合う関係?とでも言えばいいのかな?
でも、そのことばかり考えてもいられない。スカリエッティの事、六課の事、エリオやキャロの事。
私には考えるべきことがほかにある。だから、今は答えが出なくてもいい。
私が戦わなければ、幸せになれない人がいる。だから私は……進み続けるんだ。バルディッシュと一緒に。なのはやランス、はやて、シグナム、六課の皆と一緒に。


だから、答えがわかるその時まで……私にできることをしていけばいいんだ。
私が、私であるために。



フェイト・テスタロッサ・ハラオウンであるために。


だから、答えを得る、その時まで………


貴方の事を、見ているよ。ランス。


隣で眠る彼を見つめながら、私は誓った。 
 

 
後書き
幕間その二できました~


前書きの通りめっちゃ短いです………


それから、皆様のおかげで日間ランキングでまさかの1位獲得しました。
毎度毎度ありがとうございます!


さて、公開意見陳述会前の幕間もあと一つです。
シリアスの連続だったので、ほのぼの&ギャグをメインにしていきたいと思います。


それでは今回はこの辺で~


 

 

幕間~どうしてこうなった!?男女対抗、料理対決!(調理編)

side 士郎


衛宮士郎だ。ひとこと言わせてほしい。


「なんでさ……」


いきなり何!?と思う人もいるだろう。
そういう人のために、説明しよう。


アレは……今朝の朝食の時だった………………




…………………………………………………


原因はマスター……ではなく、ヴィータだった。



「う~ん、衛宮より料理出来る奴って六課にいるのかな?」



それを聞いた数名がピクッ!と反応し……


「それなら料理対決しましょう!」


そんな発言をするシャマル。その発言の直後、


「「「「「「もちろんシャマル(さん)は不参加だよな?(ですよね?)」」」」」」


海鳴市出身者総出でシャマルの参加を拒絶した。過去に何が………!?



「みんなひどい~。いいもん!だったら司会をやるから!」
「なっ!?私を放っておいて司会なんて許さへんで!」
「なら一緒にやりましょう、はやてちゃん」
「せやな。名付けて……」


あ、まずい気がする………


「「第一回!!機動六課男女対抗料理対決~!!」」


絶対何かある……ここは……逃げる!


「逃がすと思うか?士郎!」


マスターに先回りされた。


「……なんでさ」


呟いてしまった俺は悪くない。


「で、ルールとかどうする?」
「そうねぇ………」




…………………………………………………………………




で、ルールはこうなった。







『チーム人数は5人。各チームとも全員で一品、各員それぞれ一品完成させる。各員の一品は相談あり。審査ははやて、フォワード副隊長、リインフォース、ヴィヴィオ、ギンガ、マリーの7名が一人一品5点、審査委員長はやてのみ一品10点で満点は240点計算。得点の高いチームが勝者とする。』



「さあ、参加者たちよ!存分に腕を振るうんや~!!」
「「「「「「おお~!!」」」」」」
「なんで女性陣とヴァイスは乗り気なのだ?」
「僕に聞かないでよ、ザフィーラ……」
「全く、なんでこんなことに……」
「てか俺説明受けてないんだけど?」


そんなことを言うランサー。大方マスターに拉致られてきたのだな……


「ランスさん、僕が説明します」



少年説明中………




「と言うわけです」
「おう、そりゃ面白そうだな。で、相手が……」


男性陣はお分かりだと思うが、私、ランサー、エリオ、ザフィーラ、ヴァイスの5人だ。


「やってやるの!……今日こそは士郎君に食べてもらうの…」


一番やる気のなのは。格好は割烹着。どこから持ってきた……。後、何かを言っていたがよく聞こえなかったが。


「だ、大丈夫かな……」


少々おろおろしているフェイト。制服エプロン姿である。ちなみに黄色。フリル付きである。


「自炊歴10年舐めんじゃないわよ………!」


二番目にやる気のティアナ。なぜか訓練着にエプロン。色はオレンジで飾りっ気のないものだ。


「ティア、私服に着替えなよ……」


ティアナを諭すは私服に水色のエプロンのスバル。柄がティアナとお揃いだ。


「エリオ君のエプロン姿…可愛いです!」


別の方向で盛り上がるキャロ。ピンクのフリフリが全体に着いた派手なエプロン姿だ。


ちなみに、男性陣の格好はと言うと……


私は食堂で使っている割烹着、ランサーは白無地のエプロン、エリオは赤無地のエプロン、ザフィーラは三角巾を着用し、ヴァイスは迷彩柄のエプロンだ。
と言うか、ザフィーラは狼形態のままやる気なのか………!?


「皆、準備できた?」


シャマルの確認の声に


「「「「「「「「「「はい!(おうよ!)(ああ)」」」」」」」」」」


各人がそれぞれ答える。


「ほんなら………レッツ、クッキング!」


マスターの合図でこのしょーもない戦いの火蓋が切って落とされた。で………



「いきなり全員が私頼りか……」
「僕、お手伝いくらいしかしたことないので……」
「俺はまあまあできますけど、やっぱ旦那の意見を聞いとこうかな、と」
「俺は材料を取りに来ただけだ。あと全員でやる奴何作るのかを聞きに、な」
「で、どうするのだ?」


そうだな……


「誰が何を使い、何をつくるか、それを決める必要があるな」
「俺は魚の塩焼きをつくる予定だぜ」
「僕は……何をすれはいいんでしょうか……」
「じゃあ俺はハンバーグをつくりますぜ」
「俺は無難に卵焼きをつくろう」


なるほど……これは野菜が足りないな。


「エリオはサラダ、私は野菜と茸のグラタンとドレッシングを担当しよう。全員で作る品は野菜スープだ」


こうして男性チームの方針が決まった。



side なのは


「みんな!今日は勝つよ!!」
「なのは、すごいやる気だね……」
「フェイト隊長!何を他人事みたいに言ってるんですか!これは女のプライドをかけた聖戦ですよ!?」
「ティ、ティア。そ、そんなすごいものなの……?」
「せいせん?」


なんか温度差を感じる……


「ここは自炊歴10年の私が指揮を執ります!まず、隊長お二人!腕前の方は?」
「私は一通りできるよ。得意なのは煮物かな?」
「私は……最近やらなくなっちゃったから不安だな…でも焼き物や炒めものは得意だよ」
「あたしは…「アンタは聞いてない!」ティア、ひどい~」
「私はお料理初めてです」


しばらく考え込んだティアナ。そうして決まったのは……


「前に士郎さんが作った……『和食』でしたっけ?それで行きましょう!」
「全員で作るのは味噌汁でいいかな?」
「そうですね、一番全員が参加しやすいですからね」


そして、私が魚の煮付け、フェイトちゃんが野菜炒め、ティアナは唐揚げ、スバルはサラダ、キャロは冷奴を作る事になった。


男性チームはすでに動き出している。こっちも負けていられない!



side ティアナ


動き始める前にスバルに文句を言われた。


「どうしてサラダなの~?野菜を切るだけじゃんか」
「アンタはがさつすぎるのよ!見なさい!アンタがサラダ担当だって知って安堵するギンガさんを!」


視線の先のギンガさんはまるで『奇跡の生還を果たしました』とでも言いたげな顔だ。


「そんなことないもん!」
「あるわよ!いい?あんたの料理に足りないのはねぇ、効率判断計量経験技量繊細さ美しさ!そしてなによりも!味見が足りないのよ!そんなんじゃどこにもお嫁にいけないわよ!?」
「そこまで言わなくても……」
「そう思うならギンガさんを見たら?」


ギンガさんは『ティアナの言う通りよ、スバル』と言いたげな顔をしていた。


「ギンねぇ~」


妹に甘いギンガさんだが、こればっかりは譲れないらしい。こいつに味付けさせるととんでもないことになるのを知っているからだろう………


「と・に・か・く!余計な手を加えるんじゃないわよ!?加えたら……」


ポケットのクロスミラージュを光らせる。


「わかるわね?」
「絶対加えません!!」


スバルはビビりながら即答した。
これでよし!


…………………………………………………………………



私が向かうのはキャロのところ。無論唐揚げの仕込は終わらせてある。後は味がしみ込むのを待ち、揚げるだけだ。


「キャロ、どう?」
「はい!順調です!」


まずは指示通りに冷奴に乗せる薬味をつくらせている。生姜のすりおろし、刻み葱、大根おろしだ。
まずは葱が終わったようだ。


「いい順番ね。生姜と大根はおろしたてがおいしいから他の人のが完成してからでいいわよ。味噌汁の方お願い」
「はい!」


次に隊長たちのところへ行くと、なのはさんは煮付けに乗せる付け合せの白髪葱を作っていた。ヴィヴィオには付けないらしいけど。まあ葱は辛いからまだ早いわよね。フェイトさんは火の通りやすいキャベツをフライパンに投入し、完成に近づいていた。他はニンジン、ピーマン、もやし、ベーコン、パプリカ、エリンギなどを使っているようだ。
さてと、時間もそろそろよさそうだし、私も始めちゃいますか!




side 士郎


あ、ありのままにおこったことを話そう。私は自分の作業を終えてみんなの様子を見に行っていたら前足で器用に卵焼きをつくるザフィーラを目撃した。アレはシュールなんてものではない。もっとすごいものの片鱗を味わった気分だ……
そんなことがあり少しグロッキーになっていた私にエリオが声をかけてきた。


「士郎さん、できました!……というか、大丈夫ですか……?」
「エリオか…ああ、なんとかな。……ふむ」


彩が少しさびしいな……
と、言うわけで、


「エリオ、少し待っていてくれ」


私はある物を取りに行く。


「これは……?」
「生ハムだ、八等分くらいにしてのせるといい」
「わかりました!」


エリオはこれで良し、さてと、ヴァイスは……


「お、旦那。こっちも出来上がるぜ。付け合せも完璧だ」


予想以上に綺麗にできていた。


「ほう、目玉焼き付きか。中々のアイデアだな」
「ハンバーグには半熟の目玉焼きが欠かせないでしょう!」


力説された。


「あ、ああ。そうだな」
「旦那のグラタンはできたんです?」
「すでに完成している。大丈夫だ、問題ない。完成したらスープの方を頼むぞ」
「任してください!」


そうして次はランサーの元へ。


「塩焼きにはやっぱポン酢だよな~」
「待て……その前に」
「あん?」
「なんで室内で焚き火をしてる!?」
「いや、被害出ないよう結界張ったし」
「そう言う問題ではない!」
「焚き火で焼いた方が旨いし」
「それはそうだが……やめんか!」
「へーへー。ったく、これだから主夫は……」
「誰が主夫だ、誰が!」
「お前だよ!朝は叩き起こすし、やれ散らかすなだの、やれ掃除しろだの…お前はオカンか!」
「貴様ががさつすぎなのだ!」
「はいはいそこまでや」


マスター乱入。


「もうみんな完成させて待っとるで?早くこっちに来なよ」
「ああ、すまんなマスター」
「りょーかい、すぐ行きますよ」
「ああ、それと……」


そういってマスターは振り返る。小悪魔のような笑みを浮かべて。


「ランス、後でここの掃除はやっとくんやで?」
「なん………だと……!?」
「当然だろう」
「当たり前や」
「そんな……嘘だっ!!」


お前はどこの鉈少女だ、と突っ込みたくなったのはここだけの話だ。



side はやて


こ、この献立は………!


「お米食べろ!」
「はやて?」
「あ、ああ。何でもないよ、ヴィータ」


恐ろしい……松●修造のネタをついやってしまうほどとは……
はっ!これが『最高にハイ』ってやつなんか!?
いかんな。審査委員長としてしっかりせんと……!
それにしてもご飯が欲しくなるものばかりやな………


「じゃあ、審査を始めるよ。先攻は………」
「私たち女子チームからお願いします!」
「平均年齢16歳の女子チームが先攻ね」
「なんだそのくだらない分析は……」
「男子チームは平均21歳よ」
「ザフィーラは?」
「設定年齢28歳、蟹座のB型、という事で」


マー●ィン・ジ●マールか!と突っ込みたくなったのは内緒や。でも彼の設定年齢は19歳……


「おなかすいた……」


おおう、ヴィヴィオが泣きそうや。名残惜しいけどここまでやな。


「じゃあ審査委員のみんな、各自審査を開始や!」


さあ、始まる。私、八神はやての食レポが。


「おーい、はやて~?声漏れてんぞ~」


今日!私は彦●呂を超えるッ!
今この瞬間私の聖戦(たたかい)が始まった。 
 

 
後書き
どうも、お待たせしました。

本来の予定では一つにまとめるはずだったのですが、あまりに長くなりすぎるため分割しました。


後編である“審査編”も近いうちに投稿します。


それでは今回はこの辺で~ 

 

幕間~どうしてこうなった!?男女対抗、料理対決!(審査編)

 
前書き
今回はずっと審査委員長こと八神はやてさんの視点です 

 

まず、私は味噌汁に手を伸ばした。
………こ、これは!
鰹だし……そして!絹ごし豆腐!わかめ!油揚げ!これぞまさに味噌汁!!


「……日本を、愛している……」


士郎がセイバーのパクリ!?とか言ってるけど……この味は!日本人の味だぜ!
と、ブ●ャラティみたいな感想を抱きつつ、私は……高評価を出した。


「やりましたね、なのはさん!」
「言ったでしょ?はやてちゃんは鰹だし大好きだからって」


なのはちゃんか……やりおるな!
ちなみに、味噌汁の評価は……


私 8
シグナム 4
ヴィータ 5
リイン 4
ヴィヴィオ 3
ギンガ 5
マリー 5


と、おおむね好評。ヴィヴィオに味噌汁はまだ早かったかな?



次はなのはちゃん作の煮付けや。


「ほう、これは……鰈、やな」


よくヒラメと間違える人がいるので言っておく。これは鰈だ。


「うん。あ、ヴィヴィオには一番いいところあげるね」


なんやて!?卵の部分とは……羨ましすぎる!


と、ふざけてないで審査せんと。背中の飾り包丁もきれいやし、味もしっかりしみこんどる。それに加えて………


「ヴィヴィオの事を考えて生姜とお酒の比率が低くなっとる…んで、少し甘みが強い……砂糖が多めに入っとるな?」
「さすがはやてちゃん、大当たりだよ」
「しかも砂糖が増えると焦げやすくなるのにそれが見当たらない……じっくりと煮込んだんやな」
「うん。中々のものでしょ?ヴィヴィオ、ママが作ったお魚さん、おいしい?」
「うん!」


これは……お姫様も満足やし、高得点やな。


結果は


私 8
シグナム 3
ヴィータ 5
リイン 5
ヴィヴィオ 5
ギンガ 4
マリー 5


かなりの高得点だ。しかし、なんというか、子供っぽい人の評価が高いような……



で、次はフェイトちゃんの野菜炒め。見た目がとてもきれいだ。簡単なようでいて、難しい。それが野菜炒めや。


私はキャベツを取り、口に、運ぶッ!
こ、これは……


「強火で素早く、油少な目で健康にも気を使った見事な野菜炒めや。定番の塩味、その良さを最大限に引き出している……」
「そ、そうかな?」
「これはッ!箸ッ!止めずにはいられないッ!!」


そして出した結論は…


私 8
シグナム 5
ヴィータ 4
リイン 4
ヴィヴィオ 3
ギンガ 5
マリー 4


フェイトちゃんもいい感じやな。ヴィヴィオは人参とピーマンがダメだったらしい。てかそれを食べさせることのできる士郎って…………



さて、女子チーム指揮官、ティアナ。その腕前、見せてもらうで!


「さあ、どうぞ!」


ティアナは唐揚げか。どれ……



こ、こいつぁ………


「やめられない、止まらない~」
「部隊長!?」
「気にするな、ティアナ。はやては食レポ中はおかしくなるんだ」
「いつも、の間違いではないのか?」
「おいおい、んなこと言ってっと後が恐ろしいぞ、衛宮」


なんかヴィータと士郎が失礼なこと言っとるけど、今はそんなことどうでもいい!私はついに見つけた!文化の真髄を!!


ティアナ、やりおるなあ。だが、まだ大御所には勝ててへんな。


結果


私 9
シグナム 5
ヴィータ 5
リイン 5
ヴィヴィオ 5
ギンガ 5
マリー 5



「くっそ~、惜しい!」


一品40点満点で39点。これで満足せえへんとは、いい向上心やな。


そして、スバル。


私は思った。この子、女の子?と。
なぜなら………スバルの作ったサラダがまさに『漢の料理』だった。
見た目が凄く豪快なのだ。本人いわく、


「食べるの専門なので」


だそうだが…………もうチョイ!もうチョイでいいからきれいにしよ!?
まぁ……味の方は普通でした。ティアナが「助かった……」とか言ってたけど。


結果


私 6
シグナム 3
ヴィータ 3
ヴィヴィオ 2
ギンガ 5
マリー 4


後ろ二人、甘すぎませんか?



女性陣最後はキャロ作、冷奴だ。………って、おい!いくら何でも冷奴は………


「じーっ」
「キャ、キャロ?どないしたんか?」
「ど、どうですか?」


感想言えいうことか。ええい、ままよ!


………冷奴です。てかそれ以外何言えばいいんや!?


「う、うん。おいしいよ」


途端に咲き誇る花のような笑顔になるキャロ。


これは低評価出せへんやんか……


結局


私 7
シグナム 4
ヴィータ 4
リイン 5
ヴィヴィオ 3
ギンガ 4
マリー 4


子供は正直やね~。ちなみにリインは単純に豆腐が好きなだけや。


さて、女性陣はこれで終了。合計得点は………195点!
結構高いな……


そして、男性陣や。


と、重そうなものが多いなぁ……
エリオのサラダからいただこうか。


「ちょっと待ってください!」


手を伸ばしたところでエリオに遮られた。


「食べる直前の仕上げがまだなんですよ」
「仕上げ?」
「はい」


そういうとエリオは持っていた小瓶の中身をサラダに振り掛けた。


「どうぞ」


そして、


「こ、これは!」


それは特製チーズドレッシング。生ハムと相性ばっちしやで……!
もちろん、感想は……


「ブラボー!おお……ブラボー!」
「は、はやてちゃんが戦車のス●ンド使いみたいなことを言ってるわ!」


これはなかなかのもんやな。


結果


私 8
シグナム 5
ヴィータ 4
リイン 4
ヴィヴィオ 4
ギンガ 5
マリー 4



「快調な滑り出しだな」
「くっ……その手があったわね…」


安堵の表情の士郎と悔しがるティアナ。さてさて、次行きますか!


「これは……また、中々やな」
「そうでしょう?旦那ほどじゃないっすけど俺もそこそこできるんすよ」


ヴァイス君作のハンバーグ。これは子供心がっちりキャッチしそうやな……


「おいし~い!」
「おいしいです♪」
「くっ、やるな、ヴァイス……」


子供たち(二名はそれ言うと怒るが)には大好評のようだ。


私も食べる。……確かに中々や。が、満点は上げられんな。


結果


私 7
シグナム 4
ヴィータ 5
リイン 5
ヴィヴィオ 5
ギンガ 4
マリー 4


無難な評価だった。




次はザフィーラか……最近はザフィーラが料理するんは見てないなぁ。久しぶりやないのか?
で、出てきたのは……


「卵焼きかい!しかも綺麗や!」
「人型になってないのに……やるじゃねえか、ザフィーラ」


てか狼形態で作ったんかい!なんか凄いわ!



まあ、卵焼きでしたね。え?感想?一工夫あるならまだしも普通の砂糖多めの卵焼きに何をリアクションすればええねん!


結果は


私 8
シグナム 3
ヴィータ 5
リイン 5
ヴィヴィオ 5
ギンガ 4
マリー 5


結構評価高かった。ってか、この審査委員、甘党ばっかやないか!シグナムはちゃうけど。


「で、次は俺か」


そう、焚き火で焼くと言うス●ちゃんより『ワイルドだぜぇ~』なことをしてくれやがったランスの番や。


串に刺して塩振って焼きました。的な感じの鮎が。
ここは……


「夏祭りか!」
「おおう!?」


ツッコミを入れておきました。


さて、ふざけてないで審査の方に戻る。
一口食べると……


「川釣りしたいなぁ………」
「主もですか……」
「海行きてぇ……」
「行きたいです……」
「事件終わったら行こか……」
「もちろん費用はランスもちでな……」
「おい、シグナム!なんで俺持ちなんだよ!?」


後で聞いたがこのときの私たちは哀愁が漂っていたらしい。


結果は


私 7
シグナム 3
ヴィータ 3
リイン 4
ヴィヴィオ 4
ギンガ 5
マリー 4


八神家の評価が低めだったのは、悔しかったからです。あいつ昨日釣ってきたの残しておいたと言うんやもん!私たちだって行きたいわ!


さて、残り二つ。スープとグラタン……どっちも巨匠が関わっとる。ここは……



「本命は最後や」


スープから行かせてもらおう。入ってるのはキャベツ、トマト、ニンジン、もやし……と言ったところ。このにおい……鶏がら出汁か。さあ、私。リアクションの準備は十分か?いざ!


「こいつはうめぇー!野菜の出汁がガンガン効いてるぜぇー!」
「はやてがスピー●ワゴンみたいなことを!?」
「リアクションせずして何がレポーターや!」


士郎とランスがA●O!?って言ったたけど、AU●って誰や?


で、結果


私 9
シグナム 4
ヴィータ 4
リイン 5
ヴィヴィオ 5
ギンガ 5
マリー 4


めっちゃ高評価やな……



そして………


ついに来た!最後の砦が!


「これが最後の戦いや!」


RPGの決まり文句と共にグラタン(ラスボス)に立ち向かう勇者たち。結果は……



「ウボアアアア!!!」
「はやてがやられた!?」
「くっ、私も、もう……」
「シグナム!?シグナーム!!!」


茸と野菜とチーズのトリプルユニゾン・アタック……効いたでぇ……


結果は言わずとも


私 10
シグナム 5
ヴィータ 5
リイン 5
ヴィヴィオ 5
ギンガ 5
マリー 5


満点や。く、この男……何をつくらせても一流や……


これにて審査終了。結果、男性チームは………209点!


「男性チームの勝利で~す」
「悔し~い!」
「まあまあ、ティア、どんまい」
「アンタのせいでしょうが!」
「痛い痛い!ギブ、ギブ~!」


それぞれが終わったことによりふざけたり悔しがったり、ため息をついたり掃除したり。
そんな中で一人だけ真剣な表情を持つものが。


「し、士郎君!あのね……」


なのはちゃんや。士郎に手料理アタックをかけるなんて………成長したなぁ……。


「はやて、孫を見守るばーちゃんみたいな顔になってるぞ」
「ヴィータ!ばーちゃんはひどいで!?せめてオカンに……」
「主よ。そう言う問題ではないと思いますが……」


アホ騒ぎをする八神家をよそになのはちゃんは士郎の評価を緊張した面持ちで待つ。


「ふむ、私もマスターと同意見だ。それに、下処理もなかなかうまくできているな。それにしても、君がここまでできるとは少々驚いたな。っと、これは失礼な言い方だな」
「ううん、そんなことないよ。……実際隠れて練習してたし」
「ん?何か言ったか?」
「な、何も言ってないよ!?」
「?……まあ、いいか」


こうして今日一日は平和に終わった。


まだ、誰もがこんな日が続くと信じながら。



せやけど、平和な日常の終わりは静かにすぐそばまで忍び寄っていた…… 
 

 
後書き
投稿完了で~す。


この話は前後編合わせてかなりパロディを入れてます。全部わかった人とはすごく気が合いそうです!(^^)!

JS事件編もクライマックスが近づいてきました。
ある程度構想はできていますが、しっかりと練って話をつくりたいので更新速度が落ちると思いますが、これからもよろしくお願いします。


長ったらしくなっちゃいましたが今回はこの辺で~ 

 

十八話~公開意見陳述会(前編)

side なのは


陳述会が二日後に迫った日、フェイトちゃんと共にはやてちゃんに呼び出された。


「わざわざごめんな。でも、これは大事な話なんや。教会の方から新しい予言解釈が来てな。公開意見陳述会が狙われるのはほぼ間違いないそうや。それと、陳述会本番は中に入れるのは私たち三人とあと一人だけになりそうなんよ。ほんとなら副隊長クラスを二人は置いておきたかったんやけど………」


申し訳なさそうに言うはやてちゃん。ほんと、変わってないなぁ………


「平気だよ。これまでだって、三人一緒に乗り越えてきたんだから」
「フェイトちゃんの言う通り。それに、新人たちもサードリミッターも解除してる。それに、副隊長たち、士郎君たちもいい調子だし。だから、大丈夫」
「そうか……とにかく、ここを抑えればこの事件は一気に好転する。だから……頑張ろうな」
「「うん!」」


この時の私たちは、この後におこる悲劇を想像すらしていなかった。まさか、あんなことになるなんて………



side 士郎


陳述会の前日の夜。六課前線メンバーはロビーに集められた。


「それじゃ、前から説明していた通り、スターズ全員、エリオとキャロ、リイン、ギンガは現場入りや。私とフェイト隊長、シグナム副隊長、ランスは明日の早朝に現場に向かうからな」
「みんな、仮眠は取った?」
「「「「はい!」」」」


フォワード新人たちは元気だな。私は何やら胸騒ぎがしてならないが……




…………………………………………………………………



出発時間になり、屋上へと集まった。そんな時だった。


「ママ、パパ……」



ランサーに連れられたヴィヴィオがやってきたのは。


「あれ?ヴィヴィオ……だめだよ、お兄さんに迷惑かけたら」
「まぁまぁ、堅苦しいこと言うなって嬢ちゃん。俺が連れてきたんだからよ」
「そうなの?」
「ああ。どーしてもママとパパを見送りたいんだとさ」
「ごめんなさい……」


全く、なんだかんだで奴も甘いな。


「我が儘を言ったのはあんまり関心しないけど、嬉しいよ。ありがとう、ヴィヴィオ」
「いつかえってくるの?」
「今日は帰ってこれないが、明日の夜には帰る。だから、いい子で待ってられるな?」
「いい子にしてたら、ママがヴィヴィオの好きなキャラメルミルク作ってあげるからね」
「……ぜったい?」
「ああ。約束だ」
「絶対、帰ってくるからね」


そう言って私はヴィヴィオの頭を優しくなでる。なのはは指切りをしていた。


「さて、そろそろ時間だろ?早く行ってやんな。心配すんなって。こっちには俺もフェイトもいる。それに、あっちはお前ら待ちみたいだぜ?」


ランサーの言葉にヘリに向かう私達。


そして、ヘリに乗り込んだ。



………これが少し長い別れになるとも知らずに。




…………………………………………………………………




現在はヘリの中。任務についての説明も終わったところで、


「それにしても、ヴィヴィオすっかりお二人にべったりですよね~」
「そうかな~?」
「そうですよ。もういっそ養子にしちゃえばいいんじゃないですか?」


そのことか……


「実は、まだ迷ってるんだ」
「「「「迷ってる?」」」」


なのはがそう切り出す。最近悩んでいると思っていたが、そういうことだったか。


「うん。六課が解散になったら、士郎君と私は別の部隊になるから住む場所も変わるし、どっちが引き取るべきなんだろう、って」
「そんなの簡単ですよ。お二人が一緒に住んじゃえばいいんです!」


キャロの発言にポカーンとしてしまうほかのメンバー。しばらくして事を理解したのかなのはが、


「そ、そそそそそれはちょっと………」
「何かいけないことがあるんですか?」


ああ、純粋だ……だが、ちょっと常識知らずではないか?


「普通はな、結婚してない男女が一緒には住まないんだぞ、キャロ」


衛宮士郎である私がこれを言って説得力があるかは疑問だがな。


「そうなの?エリオ君」
「うん。普通はそうだよ」


その言葉にしばらく考え込むキャロ。少しして、何かすごいことに気が付いた、と言う顔で


「じゃあなのはさんと士郎さんが結婚すれば解決ですね!」


ものすごいことを言い出した。


「いやいや、どうしてそういう発想になるのだ?それに、なのは程の女性なら私などよりもいい男に巡り合えるだろうさ」


そう言ったら、ティアナが


「……鈍感男」


小声で何かを呟いていた。


「何か言ったか、ティアナ?」
「いいえ、なんにも?ただ士郎さんは本当に鈍いな~って」
「私は鈍くなどないぞ……」


そう言い返したら強く睨まれた。……なんでさ。




side フェイト



部屋に戻り、ヴィヴィオとランスと三人で過ごす。
部屋に戻ったヴィヴィオが一枚の写真に気が付いた。


「このひと、フェイトおねえさんのママ?」


それは、プレシア母さんとアリシア姉さんの写真。


「そうだよ。テスタロッサのお家のプレシア母さんとアリシアお姉ちゃん。フェイトさんの大事な家族だよ」
「へぇー」
「それより、ママとパパがいないからって遅くまで起きてちゃだめだからね。早く寝る仕度しないと!」
「はーい!」


その後、寝る仕度も終わり後は寝るだけ、と言うところで通信が入った。


「はぁ~い、フェイト、こんばんわ。ヴィヴィオちゃんも、こんばんは」
「こんばんは」
「母さん?こんばんは。こんな時間にどうしました?」
「いや、明日の陳述会なんだけどね、私も顔だそうかな~って。久しぶりに娘に会いたいし」


全く、いっつもこうなんだから……


「明日はクロノも別任務で来ませんし、本局の方もあまりいらっしゃらないそうですよ。それに私は警備任務ですから」
「あ~ん、フェイトのいじわる~。ねぇ、ランスさんからも何か言ってくださいよ~」
「あんまケチケチすんなよ、フェイト。いいじゃねえか、ちょっとくらい」
「よくないよ!母さんは何かと理由をつけてはすぐ見に来ようとするんだから!」
「だ、そうだぜ。リンディさんよぉ」
「も~、いっつもそうやって………」
「どうしました?」
「ねぇ、フェイト。そこはあなたの寝室よね?」
「そうですが?」


パジャマ姿でいるのだ。当たり前だろう。


「で、どうしてランスさんがここに?まさか……逢引き!?」
「いや、ここ俺の部屋でもあるし」
「ママとパパとわたしのおへやでもあります!」


母さん、思考中…………



思考終了。


「まさか……ねえヴィヴィオちゃん、普段はどうやって寝ているのかしら?」
「こっちのおっきいベッドでママとパパとわたしがねて、あっちのちいさいベッドでフェイトおねえさんとランスおにいさんがねてます」
「………………」
「あのー、母さん?」
「フェイト」


母さんが何時になく真面目な声で私を呼んだ。


「襲われちゃいなさい♪」


と思ったらいきなり満面の笑みで爆弾発言して勝手に通信を切っちゃいました。


「ちょっと何言ってるの!?母さん!?かあさーん!!!!」
「ねえねえ、おにいさん。フェイトおねえさんだれかにおそわれちゃうの?」
「あー、お前にはまだ早い話だ。もう少し大きくなってからじゃなきゃわかんねえぞ」
「むずかしい?」
「そうだな………って、おいフェイト。どうした?」


私の様子を心配して聞いてくるランス。でも私は……


「はうう…………」


ゆでダコと化していた。


「顔が赤いぞ?熱でもあんのか?」


意地の悪い笑みを浮かべ、明らかに理由をわかっていてのこの発言。ほんとにランスは意地悪なんだから……


「おねえさん、ぐあいわるいの?」
「平気だよ。ちょっと驚いただけだから」


そう答えてベッドに入る。十分もするとヴィヴィオは寝てしまった。そうしたらランスが……


「なあフェイト」
「な、なに?」
「ヴィヴィオも寝たし、一つ俺に襲われてみるか?」
「え、え、え、ええ!?」


え、ちょっと、それは……つまり……


「冗談だ。さっさと寝ろよ」


それだけ言って寝てしまった。


「ほんと……意地悪なんだから……」


そう言いながらも私の頬は緩んでいた。




side ヴァイス


現場に着いてヘリの整備も終わり、一息ついたときだ。


「ん?」


人が近づいてくる気配がしたのでドアを開けると、


「お?どうしたよ?」


ティアナの姿があった。


「警備部隊の方からお茶の差し入れをもらったのでお届けに来ました」
「お、いいねぇ。ありがとよ」


お茶を受け取る。


「連中はどうしてる?」
「警備の端の方ですので、交代でのんびりやってます」
「そうか」
「あの、ご一緒してもいいですか?」
「おう」


そういって隣に来たティアナはなにやら重苦しい雰囲気だった。


「あの、失礼だとは思うんですけど、ヴァイス陸曹の事、調べさせてもらいました」
「はあ?なんだそりゃ?」
「数年前まで、エース級の魔導士だったって……」


エース級、ねぇ………


「エースなもんかよ。俺の魔力値なんざ、お前の半分、旦那たちの3/4ねえんだぞ?」
「それでも、アウトレンジショットの達人で、優秀な狙撃手だったって……」


全く、こいつは……


「昔がどうであれ、今の俺は六課のヘリパイロットだ。おまえが聞いて参考になるような話はねえぞ?それに、お前はそんなことに構ってる場合じゃあねえだろ、またミスショットで泣いても知らねえぞ?」
「すみませんでした。気を付けます」
「わかればよし。もう行きな」


ティアナが戻っていった後、ヘリの中に戻った。


「昔の話さ、そうだろ?ストームレイダー」
[I think so.]


そう、昔の事なんだよ……


side 士郎


開始が一時間後に迫った午後1時になった。


「それじゃあ私は中に入るね。で、どうも内部警備はデバイスを持ち込めないみたいなんだ。だから、レイジングハートをお願いね」
「ああ。承知した」


内部に入ったなのはを見送り、一旦全体で集まるために私も移動せねばな。



………………………………………………………



「始まりましたね………」
「そうだな。なんも起こらなそうだし、「「サボりはダメだ」」………マジかよ」


今朝合流したランサーはまったくもって不真面目だ。と、


(序盤はしかけてこねえよ。来るとしたら終わりが近くなって警備が緩む時だ)


そんな私を見てかランサーは念話を飛ばしてきた。


(だからと言ってサボるのは関心せんな)
(おい、二人で何話してんだよ?)
(ヴィータか)
(私たちもいるで)
(私たちもね)
(マスターになのはか、何か用が?)
(用があるのはあたしだ)


ヴィータがか。おおよそ何が言いたいのかはわかるが。


(今回何かが起きるとして、クーデターの可能性はほぼねえんだろ?で、襲撃してくるとしたらスカリエッティ一味……なんで地上本部を襲うなんてハイリスクなことするんだ?)
(大方、新開発の兵器でも売り込みてえんだろうよ。地上本部の警備を敗れるようなものだったら欲しがる奴なんていくらでも出てくるだろうしな)
(でもよ、売り込み目的ならそんな危険を冒す必要なくねえか?)
(そうだな。だがスカリエッティはマッドサイエンティスト。自身の研究がどこまで通用するかを試す意味合いが強いだろうな)
(それでもそこまでやるのか?……わっかんねえな~)
(まあ、私たちには信頼できる上司がいる。その指示の通りに動くことを考えよう)
(ついでだから確認しておこう。マスター、緊急時における宝具の使用は?)
(攻撃系の宝具はさらなる混乱を招くことになると思う。せやから盾とかみたいな防御系統だけにしてな。まあ地下とかなら別に使っても構わへんけど)
(そうかい。じゃあ俺の出番は少なそうだな)



そんなこともあったが、何事もなく時間は過ぎて行った。



side ヴィータ


「陳述会が始まってもう四時間……そろそろ中の方も終わりね」
「最後まで気を抜かずに頑張ろー!」
「そう言えばギンガはどうしたですか?」
「報告だ。北エントランスに行ったぜ」


フォワードたちと違ってランスと衛宮は時間が経つにつれて警戒レベルを上げてる……時間的にも仕掛けてくるとしたらそろそろだろうしな。



side ゼスト


「奴らの尻馬に乗るのは気が引けるんだよなぁ……」
「だが、それですべて解決するならばそれに越したことはない」
「まあね」


地上本部から遠く離れた空でアギトと共にスカリエッティからもらった陳述会の内部映像を見る。


「にしても、ルールー大丈夫かなぁ…?」
「心配ならばルーテシアの方に行ってやれ」
「今回は旦那の方が心配だよ!なんだかんだ言ってもルールーは虫たちとガリューがいる。けど旦那は一人だろ?」


私などの為ににそこまでする必要はないのだがな……


「旦那の目的ってこのひげおやじだっけ?」
「ああ」


レジアス………


「そこまではアタシが付いていく。旦那の事、守ってやるよ」
「好きにしろ。お前の自由だ」
「ああ。そうさせてもらうよ。なんたって旦那はアタシの恩人だからな!」



side ウーノ


「妹たちは全員配置につき、ドローンの待機も完了しました」
「ゼスト殿とアギト、お嬢様も所定の位置に着かれた」
「あとはゴーサインを待つだけですぅ~」


ここまでは順調……


「く、くくくくくく」


ドクターは笑いをこらえているのだが、全くこらえきれていない。そんなに楽しみなのですね。


「楽しそうですね」
「ああ、楽しいさ。この手で歴史を変えるんだ。研究者として、技術者として、これ以上のことはあるまい?そうだろう?ウーノ」


私はドクターの望みのために動いてきた。その始まりなのだから心が躍る。


「さあ、始めよう!!」
「はい」


ここから始まる、私たちの歴史のために。



side クアットロ


お姉さまからのゴーサイン。ミッション開始の合図だ。


「さあ、始めましょう!」


まず手始めに通信システムを乗っ取る。


「クアットロさんのISシルバーカーテン。電子が織りなす嘘と幻。銀幕芝居をお楽しみあれ!!」


しかし、この間の矢、食らったのが後衛の私とディエチちゃんでよかった。あの時の傷は未だにふさがっていない。掠っただけだというのに。でも、いかに強力であろうと、今回ばかりは無力!さあ、私たちの掌の上で踊りなさい!


さて、あとは障壁強度を下げに行ったチンクちゃんが成功すれば……


「クアットロ、こちらチンク。システムにダメージを与えた。じきに強度は下がる」
「はぁ~い、ごくろうさま」


では、


「ルーお嬢様~お願いしま~す」
「うん。遠隔召喚、開始」


さて、仕上げに……


「魔導士の無力化、いきますよ~」


この日のために過剰量作成したガジェットが役立つときね。



side 士郎


「来たか!」
「そうみてえだなぁ!」
「おいおい、なんだよこのAMF濃度は!」


本部内のAMF濃度が濃すぎて通信がまったく通らない。
状況が分からんのはまずい。だが、アレならば通るはずだ!



side はやて


超高濃度のAMFにより、内部システムがダウンし、私たちは閉じ込められてしまった。


「通信も通りませんし、魔力結合に至っては全くできません」
「やられた……」


そんな時、脳に違和感があった。


(き……るか、マ…ター!)


今まで感じたことのない違和感とともに、部下にして契約相手の声が聞こえた。


(士郎か!?どうして通信が……)
(そ……ついては……だ!な…ぶのじょう……は?)


だが、何かに突っかかったようでうまく聞き取れない。


(よく聞こえん!もう少しはっきり言えんか?)
(き…えんのは……らもお…じだ!じょ…きょうだ!)


恐らくは状況かな?この場合はそれしかないやろうし。


(最悪や。AMFでシステムがダウンして閉じ込められた。幸い、なのはちゃんとフェイトちゃんは外や。二人だけでも前線に連れ出して!)
(りょ…かいだ!)


それで念話は途切れた。


「主…?」
「今何でかわからんけど士郎と念話がつながった。概ねこちらの状況を伝えられたからなんとかなる」


今回はみんな頼りや。私たちはここから動けん………頼むで!



side 士郎


状況を何とか知ることはできたが、


(どうだったよ?)
(ああ、最悪だ。パスによる意思疎通、こんなところにまで影響があったとはな)


パスが不完全なことにより、ところどころにノイズが入ってしまっていた。だが今はそれよりも優先すべきことがある。


「このガスは麻痺性です!耐性データを送るですよ!」


リインフォースが全員にデータを送る。私たちには必要ないが、送られてきたので使用しておく。
そのとき、通信が復活したロングアーチより連絡が。


「本部に向かって航空戦力!ランクは推定Sです!」
「あたしとリインが出る!ランス、衛宮、下は頼む!」
「ああ」
「任しとけ」
「それと、こいつらも頼むぞ!」


預かっていたシュベルトクロイツ、レヴァンティン、ヴィンデルシャフトをフォワードに渡すヴィータ。


「リイン!ユニゾン行くぞ!」
「はい!」
「「ユニゾン・イン!」」


いつもの赤い騎士甲冑が白くなり、髪の色が薄くなるヴィータ。
そのまま空にあがり、魔力反応のする方に飛んで行った。




side なのは



「なのは、そっちはどうだった?」


本部内の状況確認をしていたフェイトちゃんと合流する。


「どこも隔壁ロックがかかっちゃってた。中のはやてちゃんとも通信は繋がらなかったよ」
「こっちもダメ。エレベーターも動かないし、外への通信もつながらないから皆混乱してる。騒ぎは抑えてきたけど……」
「このまま黙ってるわけにはいかないね。ちょっと荒業になるけど、フェイトちゃん、付き合ってくれる?」
「当然!」


そうして私たちは近くの局員の手を借りてエレベーターの扉をこじ開けた。


「これなら行けそうだね」


エレベーターのワイヤーを掴み、手を魔力で覆うことで摩擦から守る。そしてそのまま下へと降下した。


「こんなの、陸士訓練校の時以来だよね。やっといて損なかったよ!」
「緊急時の合流地点も教えてあるし、あっちには士郎君たちもいる。そこまで急ごう!」


合流地点は地下のロータリー。状況が分からない今はそこまで急ぐしかないね!




side アギト


だいぶ建物まで近づいたところで声が聞こえた。


「こちら管理局。貴方の飛行許可と個人識別データが確認できません。直ちに停止してください!それ以上進めば迎撃に入ります!」


その声の直後、魔力弾が飛んできた。横に回避し、魔力弾を撃ち落とす。


「げぇ!?自壊弾!?」


こちらに飛んできた塊を旦那がシールドではじく。と、


「ギガントハンマー!」


白いバリアジャケットの女がでかいハンマーを手に襲ってきた。
あたしは咄嗟に


(旦那、ユニゾン!)
(ああ)


旦那とユニゾンし、障壁と相殺のための攻撃をする。


(痛って~。あんにゃろー!思いっきり殴りやがって!)
(すまん、アギト。助かった)
(なんのなんの!)


さっきの女がこちらにハンマーを向けて、


「管理局機動六課スターズ分隊副隊長、ヴィータだ!」


名乗ってきた。


「……ゼスト」


旦那もデバイスを構えて名乗る。
さっきの声の主が見当たらない。やっぱりあいつはあたしと同じ……


(来るぞ、サポートを頼む)


そんな思考は旦那の声でいったん中断した。
そして戦いが始まった。


side ルーテシア



「こっちはもういいの?」
「ええ、お嬢様。この後は聖王の器と未回収のレリックのある場所……」
「機動、六課……」
「ええ。そこに向かってください」


そこのレリックが11番だったらいいな……




side グリフィス




「エネルギー反応!?大きいです!こっちに2個向かってきます!」


まずい……!


「近隣部隊に応援要請!バックヤードスタッフの避難を!」
「はい!」
「総員最大警戒体勢!」


持ちこたえられるか……?



side 士郎




緊急合流地点であるロータリーを目指す。が、


[マスター。エネルギー反応です!]


ソードワーカーのセンサーに反応があった。


「止まれ!」


進んでいたスバル、ティアナ、エリオ、キャロに指示を出す。


「うらあああああああ!!」


上から赤い髪をした少女が蹴りを出しながらスバルの方へ向かってきた。スバルの前に出て右手の剣で足をそらし、左手で斬撃を叩き込む。



「くっ!」


が、少女は後方へ飛んで回避した。



「ノーヴェ、ダメッスよ~任務忘れてんじゃないッスか?」
「忘れてねーよ。対象の捕獲、特にこの赤いやつとあの青いやつ。タイプゼロも出来れば捕獲、だろ?」


もう一人、ボードのようなものを持った少女が現れ、そんな会話をしていた。


「ほう、おめーらが戦闘機人、ってやつか。ずいぶんと舐めたこと言ってくれるな」
「この状況でもそんなこと言えるッスか~?」


彼女の視線の先には、


「くっ……」


多数のスフィアに囲まれたティアナ、エリオ、キャロが。


「人質のつもりかね?無駄だよ」
「アンタ仲間をずいぶん簡単に切り捨てるッスね~」
「切り捨てる?違うぞ。なぜなら……」


そう言い放つとスフィアは全て砕け散った。


「なっ!?」
「この子たちはそんなもので捕えられるような訓練をしてはいないからな」


スフィアを破壊したのはティアナとエリオ。攻撃に対する防御は全てキャロが行うコンビネーション。この子たちも強くなったものだ。


「士郎さん!」
「ティアナ、こいつを頼む!」


そういって私が投げ渡したのは赤い宝石。


「これは……!」
「なのはに届けてやってくれ。ここは私が抑える!」
「おいおい、てめーだけかっこつけんじゃねえよ。俺も残る。エリオ、こいつらを任せるぜ」


ランサーはエリオに複数のデバイスを渡していた。


「逃がすかよ!」


ロータリーに向かったスバルたちに向かって行こうとする赤い髪の少女を、


「行かせてやると思うか?」


剣を銃に切り替え、魔力弾を浴びせる。


「くそっ!」


直撃は免れたようだが、ダメージは通った。が、やはり魔導師としての私は火力がない。


「さて、やるとしますか!」


軽い口調で言うランサー。戦闘機人がどのくらい強いのかはわからないが、負けてやる気はない。
そんな感じの言い方だった。


ここに、本日二度目の戦闘が始まった。


 
 

 
後書き
お待たせいたしました~。


こっからはオリジナル要素多めで行きます(*_*)


シナリオはできてるのでなるべく早く書き上げたいと思います!(^^)!

それでは~ 

 

十九話~公開意見陳述会(中編)

side ヴィータ



「はあああああ!!!」
「ぬおおおおお!!!」



お互いのデバイスで打ち合いをする。鍔迫り合いになったとき、目の前の男に問いかける。


「ゼストっていったな。何企んでやがる。目的を言え!納得できる理由なら管理局は話を聞く!」
「………若いな」


そういうと、ゼストの周りに炎が現れた。
咄嗟に離れる。


「だが、いい騎士だ」


賞賛を送られるが、あたしはリインとの相談があったので返答はしなかった。


(リイン、気づいたか?)
(はいです!あの二人、融合相性が良くないみたいですね。ユニゾンアタックにずれがあります)


なら勝機はこちらにある……!




side アギト


旦那と打ち合える相手の実力にも驚くが、もっと厄介なのは…


(あの二人、融合相性がいいだけじゃなくて、錬度まで高いなぁ……)
(アギト、ユニゾンを解除しろ。フルドライブで一撃で落とす)


な、何言ってんだよ!


(馬鹿言うな!そんなことしたら旦那の体は……)
(持たせるさ。目的を果たすまではな!)


んなことさせられるわけねえだろ!


(旦那の事はアタシが守るって言ったろ!)


だからアタシは旦那のデバイスにありったけの魔力を送り込んだ。




side ノーヴェ


ありえねぇ………!こいつら、いったいなんなんだよ……!


「おいおい、その程度じゃねえだろ?」


くそ、青いやつのすまし顔がむかつく……!



あたし達は前線タイプ。クア姉とディエチ姉がやられた、と言っていたが、二人に比べ近接戦には圧倒的に強い。だから捕獲はできると思っていた。だが、攻撃がまったく通らねえ。後ろから攻めても、まるで後ろにまで目が付いているかのような動きで振り返りもせずに防がれる。さらに、あっちの攻撃は的確にこちらをとらえる。幸い一発ごとのダメージが少ないため、まだまだ平気だが、持久戦になったらまずい……!


そんな時だった。


「ノーヴェ、ウェンディ、チンクだ。応援を頼みたい。現在こちらはもう一機のタイプゼロ、ファーストの方と交戦中だ」


こいつら相手に逃げ切れるか……?と、思っていたら、


「任せろッス!」


ウェンディがいきなりスフィアで地面に射撃を始めた。すると壊れた床が煙幕を上げる。


「さ、行くッスよ」
「あ、ああ」


相変わらず無茶苦茶だが、これなら逃げられる……!



side 士郎


「逃げたようだな」


煙幕の中を去ってゆく二人の姿が見える。狙い撃ちしてもいいのだが、今の役目は足止めである。深追いするよりも今は皆と合流する方が優先だ。


「なんだよ、だらしねえやつらだな」
「不平を言うな、ランサー。さっさと合流地点に向かうぞ」
「そうだな」


足に強化をかけ、走る。
5分もすると合流地点に到達した。



side なのは


ロータリーに着いたとき、


「高町一尉!」


シスターシャッハが後ろから追いかけてきた。


「シスター、どうしてここに?会議室にいたんじゃあ……」
「会議室の扉は有志の手で開けられました。それで、私もお二人を追って……」
「はやてちゃん達は?」


会議室が空いたのなら出てくるはずだが……


「会議室に残り、現場の方に状況とガジェットについての説明をしています」


丁度その時、


「なのはさん!」


スバルたちがやってきた。
だが、


「ランスと士郎は?」


フェイトちゃんの問いかけに、


「先ほど戦闘機人と遭遇しまして、その足止めをして下さっています。その間にこれを渡すように頼まれました」


そういってティアナが差し出したのは私達のデバイス。


「ありがとう」


それぞれ自分のデバイスを受け取り、


「八神部隊長と騎士シグナムには私がお届けします」
「お願いします」


そのタイミングで


「よお、待たせちまったな」


士郎君とランス君がこちらに来た。


「あの二人はどうなりましたか?」


ティアナが問う。


「逃げちまったよ。俺はそいつらの迎撃に出るつもりだ」
「ここまで大規模に攻めてきている。外にも仲間がいるだろう。私はそちらを叩く」


交戦した相手の特徴について二人に聞こうとしたとき、


「ギン姉!?」


突然大きな声を出すスバル。


「どうしたよ?」
「ギン姉と通信がつながらないんです!」
「何だと?ロングアーチ、こちらスターズ5」
「スターズ5、こちらロングアーチ。現在、ガジェットとアンノウンによる襲撃を受けています!持ちこたえてはいますが……」


これはまずいね……


「二手に分かれよう。スターズがギンガの安否確認と敵対戦力の撃墜。ライトニングは六課に戻るよ!」
「「「「はい!」」」」
「シスターシャッハ、上のみんなをお願いします」
「この身にかけて!」


それぞれ移動を開始しようとした時、


「シスター、部隊長に伝えてくれねぇか?」


真面目な顔で話すランス君。



「何でしょう?」
「万が一の時は使え。これだけ言えば伝わるはずだ」
「わかりました。お任せください!」


話は終わったようだ。


「じゃあみんな。行くよ!」



side シャマル


六課へと来た襲撃者。ガジェットによるサポートやコンビネーションの良さに私とザフィーラは追い込まれていた。既に隊舎も半壊状態である。


「たった二人でよく粘ったね。でも、僕のIS、レイストームの前では抵抗は無意味だ!」
「クラールヴィント、防いで!」
[yes.]


放たれた光線を防ぐ。が、長くはもちそうにない。


「うおおおおおお!!」


大本の術者を攻撃するため、ザフィーラが飛び上がるが、


「ディード」
「IS、ツインブレイズ」


もう一人に叩き落されてしまった。


「がっ!」
「ザフィーラ!しっかりして!」


傷が深い。が、治癒に回す余力が今の私にはない。


「あきらめなよ。これであんた一人だ。いったい何ができる?」


その問いかけに、


「ここの守りを託されたからにはあきらめるわけにはいかないのよ!」
「ふーん。だけど、これも防げるの?」


そういってガジェットを呼び寄せ、私に向けて一斉射撃をしてきた。


ここまでね……みんな、ごめんなさい…
そうして私は目を閉じた。



side はやて


「!!!」


この感覚は……


「はやて、どうしたの?」


カリムが心配そうに聞いてくる。


「シャマルと、ザフィーラが……」
「!!まさか……」
「シグナム、ごめん!ここお願いや!!」


10年前と同じ感覚……みんなが消えた時の感覚……そんなことにはもうさせんって決めたのに……!
一心不乱に廊下を駆け、通信が通りそうな地下へと向かう。と、


「八神二佐!少しお話が……」


シスターシャッハと会った。


「ごめん!今急いでるんや!」
「ランスさんから伝言です!“万が一の時は使え”と!!」


シスターの言葉に手の甲を見る。そうや、もし重症だとしても治癒のルーン魔術が使えるランスなら……
そう思った私は、


「我が青き騎士よ!令呪をもって命じる!今すぐ六課の隊舎へ戻り、シャマルとザフィーラを助けて!」


令呪の一角がまた減り、その代わりに手の甲から莫大な魔力があふれた。



side フェイト


それは突然だった。


「これは!!」


ランスが驚いた様子でそういった次の瞬間、彼の姿はここにはなかった。


「ランスさん!?」
「いったいどこに……?」


だが、私はこの現象を知っていた。直接見るのは初めてだが。


「二人とも、落ち着いて。ランスは無事だから。今は六課に急ぐよ!」
「「は、はい!」」


納得はしていないみたいだが、返事はしてくれた。
と、その時だった。こちらに向けたエネルギー弾が発射されるのが見えたのは。


[sonic move.]


咄嗟にエリオとキャロを守る。
煙が張れるとそこにいたのは……


「戦闘、機人……」


それも二人。ここは……


「エリオ、キャロ、二人は先に行って」
「でも……フェイトさん一人でなんて……」
「……わかりました。フリード!」


キャロは渋ったがエリオはわかってくれた。


「エリオ君、どうして……?」
「アウトレンジから狙える相手がいるのに空戦のできない僕たちがいたらフェイトさんが全力を出せない。だったら当初の目的を完遂することを優先するのが僕たちのやるべきことだよ」


エリオ、だいぶ視野が広くなって戦術思考もいい感じになってきたね。
あっちはエリオに任せて、私はこの二人に集中だ!


「バルディッシュ、サードフォーム!」
[zanber form.]


そうして私は戦闘態勢に入った。




side ヴィータ



打ち合いを初めていくらかした時、


「む、オーバーSが動き出したようだな……ここまでか。撤退するぞ、アギト」


ゼストがユニゾンを解いた。


(ヴィータちゃん!)


リインが何かに気が付いたのか、話しかけてくる。


(なんだ?)
(シグナムがこっちに向かっています!)


よし、二人掛かりならこいつを捕まえられる!と、思った時だった。


(ヴィータちゃん、上です!)


リインの言葉に上を見ると、


「てめえらだけは、ここで落としていく!!」


さっきの融合機が特大の火炎弾を放とうとしていたところだった。


「くそっ!」


迎え撃つために一瞬ゼストから意識が離れた。その時



[Full Drive start.]


ゼストのデバイスが話すと、一足で距離を詰められた。
攻撃を受け止めるが、


「はあああああああ!!!」
「くっ、うわあああああ!!」


アイゼンは破壊され、吹っ飛ばされてしまった。



「くそっ、待ちやがれ……」


立ち上がり、追いかけようとするが、


「えっ?」


突然ユニゾンが解除された。


「リイン?おいリイン!?」


反応がない。なんで……


「しっかりしろ!リイン!」


あたしのむなしい叫びだけが虚空に響いていた。




side シグナム



「むっ、アレは……?」


ヴィータの増援に向かっている最中、進行方向から向ってくる影が。


「ヴィータと戦っていたやつか!」


かなり高速で飛んでいたが、今から追えば捕まえられる!
そう判断し、追おうとしたが、


「シグナム……リインが……アイゼンも!」


ヴィータから通信で悲痛な叫びを聞いて、私は追うのをやめた。
今はヴィータの元へ向かうのを優先した方がいいだろうからな。
そう判断し、ヴィータの元へ向かった。




side 士郎


私たち四人はギンガがいるポイントへと向かっている。が、


「ちょっとスバル!先行しすぎ!!」


姉の安否が気になっているのだろう。スバルが先行しすぎている。


「ごめん、でも大丈夫だから!」


原因はもう一つある。ティアナは飛行できないため、なのはに抱えられて移動しているのだ。
そのため速度があまり出せない。


「もう、ほんとにあの子は……!」
「こういう入り組んだところはスバルの方が早いのは仕方がないよ。だったら私たちが急ぐしかないよね。ちょっと揺れるけど、スピード上げるね」


しかし、本当に行き過ぎだ。サポートについた方がいいかもしれんな。


「なのは、私も先に行こう。一人だけで行かせるのは危険だ」
「そうだね……お願いできる?」
「ああ」


私は飛行をやめ、地面に降りる。そして、そのまま身体強化の魔術をかけ、疾走した。


「えっ………はや!」


後ろからティアナのそんな声が聞こえたがそのまま最高速度を維持して走り続けた。



side ティアナ



スバルを追うために見せた士郎さんの速さ。はっきり言って異常だった。
身体強化をかけたとしても、あのレベルを出すには少なくともAAAランクは必要なはず。
驚いていたのはなのはさんも一緒だった。


「えっ………はや!」
「フェイトちゃんのソニックムーブ……とまではいかないけどかなり速いね…」


本当にあの人は何者なのだろうか。
爆発する剣。魔力を消す槍。対象を追い続ける矢。
ありえないものばかりを出している。
だが、今はそんなことを考えている暇はない。
私は思考を切り替えて戦闘に備えることにした。



………だが、この後すぐに知ることになる。
彼のさらなる異常さを。 
 

 
後書き
更新完了で~す


なんかさらに長くなりそうな予感……


とりあえず次で陳述会編は終わらせます。


ではまた次回お会いしましょ~う(^O^) 

 

二十話~公開意見陳述会(後編)

side スバル


走り続け、狭い通路を抜けると大部屋に出た。
そこには………


「む、追いつかれたか」


三人の戦闘機人と………





全身血まみれの重傷を負ったギン姉がいた。



「あ、あ、あ………うああああああああああああああああ!!!!!!!」



あいつらが……あいつらが!!



「ギン姉を………返せええエエええエエエエエ!!!!」


カートリッジを4発ロードし、あたしは飛びかかろうとした……が、突然現れた鎖に捕まれて動けなくなった。


「ああああああああ!!!」


力任せに引きちぎろうとするが、できない。
前の三人の仕業と思い、見ると……



二人はあたしと同じ鎖にとらえられ、眼帯をした奴はものすごい警戒した顔であたしを見ている。
そして、


「貴様……衛宮、士郎…!」


この場にいるはずのない人物の名を呼んだ。




side 士郎



「…………間に合ったか」



私がスバルに追いついたのは、スバルが叫びだしたところだった。
どこから見ても冷静さに欠けている。あれでは逃げられてしまうだろう。だから私は、


「カートリッジロード!!」
[load cartridge.]


二発のカートリッジを使い、



投影、開始(トレース・オン)


ある物を投影した。



「捕えろ!天の鎖(エルキドゥ)!!」


あの場の全員をとらえるために使ったのは英雄王のお気に入り、『天の鎖(エルキドゥ)』。
神を捕える鎖である。神性を持たぬ者には丈夫な鎖程度にしかならないが、それはサーヴァントに対してのもの。人間相手ではいくら戦闘機人であろうと破壊はできない。


しかし、捕えることが出来たのは三人。眼帯をつけた少女にはよけられてしまった。


「貴様……衛宮、士郎…!」


その少女が私の名を呼ぶ。


「ほう、私の事を知ってるか。私の要求は一つ、その子を返してもらおう」


全身血まみれのギンガ。アレは治癒魔法や魔術でどうにかなるものではない。
だが、私には手がある。だが、ギンガは今のままでは長く持たないだろう。だから時間をかけている暇はない。


「断る、と言ったら……?」
「こちらも本気を出させてもらおう」


そういった矢先、投げナイフを10本投げてくる少女。


「IS発動!ランブルデトネイター!」


その言葉とともに爆発するナイフ。だが、瞬時に投影した干将莫耶で防いだ。


「今度はこちらの番だ。投影、開始(トレース・オン)


投影したのは全長3Mはある大槍。その真名は……


妖しき大槍(マルテ)!」



彼のバビロニア提督バリガンの使いし大槍。
血を吸わせると重くなり、威力が増していく。
真名を解放すれば槍から放たれる妖気でB以上の対魔力スキルを持たぬ相手の動きを鈍らせる。


その力は拘束宝具との相性が抜群だ。


「体が……いう事を聞かない!?」
「捕えさせてもらおう、魔獣捕えし足枷(グレイプニル)!」


そして私が使ったのはフェンリルを捕らえた伝説の紐。
魔獣の類に対し絶対的な拘束力を誇る紐である。
人に使っても効力があるわけではないが、エルキドゥに比べても速度が速い。
マルテで動けなくした後、グレイプニルで縛る完璧な展開だ。


「くっ………」
「ギンガは返してもらう。君たちの身柄も拘束させてもらおうか」


だが、


「ふっ、間に合ったか」


三人のうち縛られている赤い髪の少女……先ほど私を襲った子がそう言い放つと、


「お待たせ!」


突然床から水色の髪の少女が現れ、赤い髪の少女を抱くと再び床の中に戻っていった。


「なに!?くっ、投影開始(トレース・オン)!」


干将莫耶を投影し、再びの襲撃に備えようとしたが、


「あああああああああああああああああああああ!!!!!」
「なに!?」


エルキドゥの拘束を自力で解いたスバルが襲いかかってきた。
その体は傷だらけで………その傷からは部品のようなものがのぞいていた。


「まさか、スバル……君は……」
「あああああああああああああああああああ!!!」


拳を干将で受けるが砕かれてしまった。
まずい!このままではギンガが………


「スバル!すまん!」


残っていた莫耶の柄頭でスバルの鳩尾をおもいっきり殴る。
それでスバルは気絶した。が、


「あとはチンク姉とこいつだけ!」


見れば先ほどの水色の髪の少女がギンガを連れて行こうとしていた。


「させん!」


瞬時に干将莫耶を投影し直し、干将だけを投擲する。


「あぶなっ!?」


避けられるが、それでいい。
その一瞬でギンガのもとまで行くことが出来た。


「うわ!戻ってきた!?」


少女は干将莫耶に翻弄されている。この隙に撤退だ。彼女たちを捕まえられなかったのは誤算だが、ギンガの救出はできた。


通路を逆走していると、


「士郎君!」


なのはと遭遇した。


「スバル!ギンガさんも……すごい傷」
「早く医療班のところに!」


私が抱きかかえている二人を見てそういう判断を下した二人だが、


「スバルはそれで十分だ。だが、ギンガはそうも言ってられん。待っていたら手遅れだ」
「じゃあどうするんです!?」


ティアナが詰め寄ってくるが、


「私に任せろ。手がある。ワーカー、カートリッジ」
[yes,master.explosion!]


6発のカートリッジを使う。
なぜならば、ギンガを救うことが出来る宝具が一つだけある。
かつて背中を両断された私を救ったあの宝具が。
そのための魔力が必要だった。


投影、開始(トレース、オン)



創造の理念を鑑定し、
基本となる骨子を想定し、
構成された材質を複製し、
制作に及ぶ技術を模倣し、
成長に至る経験に共感し、
蓄積された年月を再現し、
あらゆる工程を凌駕し尽くし、
ここに、幻想を結び剣と成す―――――――!


「綺麗……」
「これは……?」


投影されたそれを見た二人がそれぞれ声を漏らす。


「これは全て遠き理想郷(アヴァロン)。彼のエクスカリバーの鞘だ」
「それとギンガさんの治療に何の関係が………?」
「まあ見ていろ」


アヴァロンをギンガに押し当てる。
するとギンガの体内に飲み込まれていき………


「!!傷が……」


見る見るうちに全身の傷が癒されていった。


「う……」
「ギンガさん!」
「ティアナ?ここは……」


目を覚ましたギンガ。すると目が隣で寝ているスバルに行き、


「スバル!どうしてこんな……」
「すまんな。それは私がやった」
「「「え!?」」」


三人とも驚く。まあ当然だ。


「全身傷だらけの君を見て暴走していたのでな。止めるために仕方なく攻撃した」


正確には拘束を無理やり引きちぎった際に追った怪我なのだが……
それにしても宝具から抜け出すとはずいぶんと無茶苦茶だな……


「そうですか……あれ?傷が……」


ここで怪我が治っていることに気が付くギンガ。


「士郎さんが治してくださったんです。それよりあれは一体…?」
「話はあとだ。スバルを医療班のところへ運ぶぞ」
「「は、はい!」」


ギンガにスバルを任せ、ティアナを抱えたなのはと共に飛行する。


(士郎君、魔術のこと、説明するの……?)
(そうだな……これ以上隠すのは難しいかもしれん。マスターと相談して決めるつもりだ)
(……そっか)


完璧、とまではいかないが今回は無事に済んだな。



だが、それはスターズだけの話だった………



side ランス


「ここは……六課か?」


令呪による強制転移できた先は六課の隊舎だった。だが……


「ひでえな……」


半壊状態で瓦礫だらけだ。そんな中に、


「シャマル!ザフィーラ!しっかりしろ!」


二人を見つけた。


「ランス、さん……?」


シャマルはかろうじて意識があるようだが、ザフィーラはかなり重症だ。


「治療する。少し大人しくしろ」
「私たちはいいから……レリックとヴィヴィオちゃんを……」
「悪いが出来ねえんだ。今の俺は最優先対象がお前ら二人の安全になっちまってるからな」


令呪の強制によるため、二人の治癒が終わるまではここから動くことはできないだろう。
そんな時、


「今から10分後、建物の広域殲滅を行う。我々の目的は施設の破壊のみだ。人間の逃走は妨害しない。速やかに非難を。無意味な血を流すことはしたくない」


ガジェットを介して話しているのだろう。そんな声が至る所から聞こえた。


「そうかよ……おい、ちょっとだけ待ってろ。どうやらあいつらの破壊もお前らを守ることに含まれているみてえだからな」
「まって!500はいるのよ!?それを一人でなんて………」


シャマルがとめてくるが、


「俺以外はもう戦えねえ。そんな状況で逃げ出すような男じゃねえんだよ、俺は!」


その怒声に一瞬怯むシャマルだが、


「ごめんなさい、私がいけなかったわ。みんなを、お願い……」
「ああ」


そして取り出すのはデバイスではなく、己の象徴たる呪いの朱槍。
その真名を解放する。


「さあ、ガラクタども。この一撃、手向けと受け取れ………!」


魔槍は周囲の魔力をも喰らい、力をためていく。十分にたまったところで上空に跳び上がる。そして……


突き穿つ(ゲイ)―――」


その名を言い放つ。


死翔の槍(ボルク)!」


放たれた音速の槍は瞬く間にその進路にいたガジェットを破壊した。


「クランの猛犬をなめるんじゃねえよ!」


そう吐き捨てるように言う。
そして、残っているガジェットは数えるほどしかいないことを確認した。
そのあとすぐさま俺はシャマルたちの元へ戻った。



side ヴァイス


「はぁ、はぁ……」


襲撃前に隊舎に帰ってきていた俺は侵入してきたガジェットの撃退を続けていた。


「さあ、あと何体……だ……」


そこで見つけてしまった。小さな女の子を。








あの時のラグナと同じくらいの。



「あ、あ、……」


手が震える。敵だとわかっているのに狙うことが出来ない。



「……邪魔」


女の子が魔力弾を放ってきた。そこで俺の意識は途絶えた。



side ルーテシア



「この子でいいの?」


私はウーノに報告をしている。その間、女の子はガリューに抱いてもらっている。


「ええ。保護してくださってありがとうございます。それと、お嬢様。表の方にかなり危険な男が出たらしいので迎えを行かせますか?」
「いいよ。安全に転送できるとこまでⅡ型で飛ぶから」
「そうですか……」


早く戻らないと……




side キャロ


私たちが六課に戻った時には隊舎はひどい有り様だった。


「ひどい……」


そんな時、エリオ君が何かに気が付く。


「キャロ、あれ……!」
「あの子……ヴィヴィオ!?」


あの時の子がヴィヴィオを連れて行こうとしている。止められるのは私達だけ……!


「僕が行く!ブーストお願い!」
「うん!」


そんな時、私はあの人の言葉を思い出していた。




………………………………………………………………


『いいか、力を求めるんならこれだけは覚えておけ。激情に任せてめちゃくちゃに振るう力はただの暴力だ。暴力は傷つけるだけのものだ。だから、何が起ころうと激情に身を任せたりするなよ』




………………………………………………………………




そうだ。激情に身を任せちゃいけない。こんな時だからこそ心を強く持つんだ!
そう思い直した私は、


「エリオ君、覚えてる?『何が起ころうと激情に身を任せるな』って言われたの」


私に言われたエリオ君は驚いている。


「私たちの力は守るための力。助けるための力。そこに怒りとか、憎しみとかは有っちゃいけないんだよ」
「そうだね………ありがとう、忘れていたよ。でも、もう大丈夫。二人でヴィヴィオを助けよう!」
「うん!行くよ!ケリュケイオン!」


ブーストのためにありったけの魔力をエリオ君へ。


[Boost up,Full power.]


ブーストを受けたストラーダを手にエリオ君が突っ込む。


「その子を返せえええええ!!!」


その言葉に反応したあの子の召喚獣が反撃をしてきた。
そして、そのままぶつかり合い、エリオ君は弾き飛ばされた。


「エリオ君!」


助けに行こうとした時、私の横を青い閃光が通り過ぎた。



―――――よく言ったな。



そんな声が、聞き覚えのある頼もしい声が、閃光が通る際に聞こえた。
その閃光はエリオ君のところへ行き彼を抱きとめる。閃光はそこで止まった。
そうして見えたその姿は…………








初めて見た時持っていた朱い槍を携えた、私たちの兄のような存在だった。




side ランス


シャマルとザフィーラの治療を終えた時だった。


「あれは?クラールヴィント!」


遠くから飛んでくる物体に対してシャマルがサーチを行うと、


[あれはエリオとキャロ、それにフリードの魔力反応です]


と、教えてくれた。だが、エリオがフリードの上で突然立ち上がり、キャロと何か会話をしている。
悪いとは思いながらも強化のルーンを自身に掛けることで会話を聞くと、


「私たちの力は守るための力。助けるための力。そこに怒りとか、憎しみとかは有っちゃいけないんだよ」
「そうだね………ありがとう、忘れていたよ。でも、もう大丈夫。二人でヴィヴィオを助けよう!」


と、ずいぶん前に俺が教えたことについて話していたようだ。
だが、この会話の中におかしい所があった。
ヴィヴィオを助ける―――?
まさかと思った時、


「ランス!エリオが!」


ザフィーラの言葉に思考を中断し、示された方向を向くと、落下していくエリオが。
そこからは槍騎兵(ランサー)のクラス最大の武器たる速さを最大限に生かし、エリオの元へ疾走する。
その途中、すれ違う際にキャロを褒めておいた。


「間に合ったみてえだな」


目の前の二人を見据え、言い放つ。


「……ガリュー、帰ろう」
「おいおい、返してやると思ってんのか、お嬢ちゃん?」
「私たちがいますよ、お嬢様」


エリオを抱えた俺に上空から斬りかかってくる女が。


「加減はしてやる。死にたくなけりゃその子を返しな……!」


そう言い放ちながら魔槍を出し、振るう。
それだけで女の武装は砕け散った。


「……………!!」
「ディード!」


斬りかかってきたディードと呼ばれた女が後退していく。そして、


「これでどうだ!ISレイストーム!!」


もう一人がレーザーを広範囲に展開した。
だが、矢よけの加護を持つ俺は自分の意志でこのスキルを発動させることが出来る。
俺の矢よけの加護は飛び道具のほとんどが当たらなくなるものだ。
おまけに、こいつの展開している弾幕など俺にとってはお遊びみたいなもの。
この隙に奴を切り伏せてヴィヴィオを救出――――――




することは、できなかった。
なぜなら――――――



「ランス!?なぜ………」


俺の行動に驚いているザフィーラ。治療を施したとはいってもあれだけの重傷だったのだ。万全ではない。
だからこそ発動してしまったのだ…………




令呪の命令が。




命令は『シャマルとザフィーラを守ること』だった。
万全の態勢ならばあの程度が防げないシャマルやザフィーラではない。
だが、今は違う。だからこそ俺自身の意思とは関係なく、行動が行われた。
そして、それは逃亡時間を与えてしまった、という事でもあり………


「逃げられた……」


防ぎきると、召喚士の嬢ちゃんと二人組はいなくなっていた。


「ランスさん………」


キャロが駆け寄ってくる。


「すまねえ、エリオ頼む。俺は中の奴らを運び出してくるからよ」


抱えていたエリオをキャロに引き渡し、半壊した隊舎の中へ。
少し進み、外から見えなくなったところで


「畜生が…………!」


俺は、自分の不甲斐無さを呪った。




side フェイト



戦闘機人二人を相手しているが、戦況が良くならない。それより、気になることがあった。


「スカリエッティは何処にいる!どうして彼はこんな事件を起こす!」
「お望みならば、すぐにでもお連れいたしますよ」
「もちろん、貴女が我々に協力していただけるならですが」


何をふざけたことを………!


「彼は最悪の犯罪者だ!協力などするものか!」


私を憐れむような目で見ながら、短髪の戦闘機人が言う。


「哀しいことを言わないでください。貴女やあの少年にとってドクターは生みの親のようなものではないですか」
「貴女方の命はドクターがプロジェクトFの基礎を作ったからこそ「黙れ!」……」


長髪の戦闘機人の言葉を遮る。
聞いていたくなかった。あの男が生みの親だ、などと言う戯言は……


「仕方ありません。後日ゆっくりとお話をしましょう」


長髪の方がそういうと、周囲に謎の粒子が現れる。彼女たちはそれに包まれていく。


「ああ、それともうお気づきでしょうけど……」


短髪の方がそこまで行った時、彼女たちのところから光があふれた。
そのあとには彼女たちの姿はなく、



―――――――貴女では、私たちには勝てません―――――――


最後に彼女が残したであろう言葉だけが響いていた。



side オットー



咄嗟の判断によりお嬢様に転移をお願いしたことでギリギリ帰ってこれたが、


「ディード、ダメそう?」
「うん……完全に破壊されてる。それに、何か分からないけど修復妨害みたいなのもかかってる」


ディードの武装は破壊され、六課の破壊も出来なかった。


「油断してた……」


衛宮ランス。この前までの情報では、戦闘技術が異様に優れている魔導師、程度の認識だったが、
あの槍、ディードの武装をやすやすと砕くなんて異常だ。何かあるに違いない………
そういえば、あいつ確か……
そう思い、ガジェットに撮らせていた映像データを確認する。
その中には……


「ゲイ………ボルク!」


やはりだ。武器の名前を叫んでいるであろう奴の映像が。
それに………


「クランの猛犬をなめるんじゃねえよ!」


どうやら自分の通称であろうことを言っている。
こいつの正体を掴む手掛かりになるかな……?



side はやて


「いかかだったかな?ミッドチルダ管理局地上本部の諸君。ささやかながらこれは私からのプレゼントだ」


何がプレゼントや……


「これは技術促進を妨害し続ける管理局に対しての技術者からの恨みの一撃、とでも思ってくれたまえよ。とはいえ、私も人間を、命を愛するものだ。今日も無駄な血を流さず、人道的、合理的に敵を制圧できる技術を証明することが出来ただろう?」


確かに、私たちは何もできなかった……


「今日はここまでにしておくが、この技術が欲しくなったらいつでも私宛に依頼をしてくるといい。格別の条件でお譲りしよう。フフ、フハハハハハハハハハハハ!!」


今回は全て後手に回ってしまった、だが!


「まだ、終わりやない……機動六課は、まだ終わっていないんや………!」


まだやるべきことが残っているのだ。六課は終わるわけにはいかない……! 
 

 
後書き
ようやく陳述会編が終了しました~


長かった………


後書きに書くことがあんまりなくなってきた………


ここからシリアスが続いていくので思い切って後書きでギャグでも……


と、これは要望がなければ没にしますが。


と言うわけですので、前書き、後書きでネタをやってほしい、とかいう要望があればやるかもしれませんのでよろしくお願いしま~す


それでは~ 

 

二十一話~失ったもの、得たもの

side ティアナ


六課襲撃の翌日。私は隊舎周りの調査を担当していた。


「ひどいことになってしまったな」
「シグナム副隊長……」


話しかけてきたのは病院の方へ行っていたシグナム副隊長。


「そちらの方はどうでした?」
「隊舎にいたものはランスの治療のおかげで皆2~3日で退院できるそうだ。それより、高町隊長は?」
「いつも通りです。ヴィヴィオのこと聞いた後もいつも通りで………」
「そうか。ここは私が引き継ぐからお前は病院へ向かえ」
「いえ、ですが………」
「行ってやれ。スバルのパートナーはお前だろう?」
「……わかりました。ありがとうございます」


病院に向かう前に報告を。


(なのはさん、ティアナです)
(どうしたの?)
(シグナム副隊長が変わってくださったので病院に行ってきます)
(そう……病院には士郎君が行ってるから現場の状況とかも伝えておいて)
(わかりました。それと、スバルにあのことを話してもいいですか?)
(う~ん、そこはティアナに任せるよ)
(はい。それでは)


念話を切って私は病院へ向かった。



side ランス


「はぁ……」
「珍しいね。ランスがため息なんて」
「……フェイトか」


こいつも無理してるな。うまく隠してるつもりみてえだが俺には通じねえ。


「人の心配より自分の心配しろよ」
「うん……。でもね、ランスが落ち込んでたら私も元気でないよ、だから元気出して」
「……………プッ、くっ、はははははははは!!!」
「何で笑うの!」


全く、こいつ自分が何言ってんのかわかってねえみたいだな。


「今のセリフ、落ち込む恋人を励ましてるみたいだったぜ」
「ふぇ、ふぇ、ええ!?」


やっぱわかってなかったか。


「はうぅぅぅ……」
「ま、ありがとよ。おかげで少しは楽になったぜ」
「う、うん……」
「じゃ、俺は行くわ」


そういって踵を返した。



しかし、ヴィヴィオを助けてやれなかったのは俺だ。嬢ちゃんもアーチャーも俺を攻めはしなかったが……だからこそ俺は未だに自分の不甲斐無さに苛立っていた。
そんな俺にフェイトは自分なりの励ましをしたかったのだろう。
だとすれば俺がくよくよしてるわけにはいかねえな。
そして俺は調査を再開した。



side なのは


調査中、ある物を見つけた。それは……





ヴィヴィオのぬいぐるみだった。私が初めて出会った時に買ってあげて、そっれからずっと持っていたものだ。
ところどころが焦げ、ひどい状態だ。
私は、あの子を助けられなかった。守ってあげると、ママになってあげると約束したのに。


「あ、………」


今の私には涙をこらえることしかできなかった。




side 士郎


病院に来て、シャーリーたちの病室を訪ねると、


「ごめんなさい…私がもっとしっかりしていれば…!」
「謝るな。君たちは悪くない。これは私達前線の責任だ。だから気に病むな」
「でも、私達の所為でヴィヴィオは……!」


アルトが言うが、


「ヴィヴィオを助けられなかったのも全て私たちの責任だ。君たちが謝ることではない」
「でも!私たちは何もできませんでした!」
「そんなことを言うな。起きてしまったことは仕方がない。悔やむより対策を考えるんだ。いいな」


そういって私は病室を出た。


「ヴィヴィオ……すまない……」


連れ去られたヴィヴィオを思いながら、私はその場を去った。



side ティアナ


スバルの病室に入ると、先客がいた。


「ティアさん」
「エリオ、キャロ。あんたたちも来てたのね」
「はい。調査はフェイトさんがやってくれていますから」


改めてスバルを見る。



「ほら、差し入れ。受け取んなさい」
「……ありがと、ティア」


完全に落ち込んでるわね~


「なにしけたツラしてんのよ。もうじきギンガさんも来るわよ。そんな顔で会うわけ?」
「……合わせる顔ないよ…」


話は聞いてるけど……


「士郎さんだって怒ってはいなかったわよ」
「……ほんとに?」


これは嘘だ。私はまだ士郎さんに会っていないのだから。
そんなことを考えていた時、ドアが開いた。


「スバル……」


入ってきたのはギンガさんだった。


「ギン姉……」
「歯を食いしばりなさい」
「え?」


次の瞬間、ギンガさんがスバルの顔を殴った。グーで。


「ちょ、ちょっとギンガさん!?」
「ティアナは黙ってて」


いつもと雰囲気が違う……


「スバル、私が心配だったのはわかるわ。その件に関してはごめんなさい。だけど、味方の事を攻撃するほど冷静さを忘れるなんてダメよ」
「うん……ごめんなさい」


ここは二人だけにしてあげたほうがいいかしらね。


(エリオ、キャロ)
(ティアさん?)
(ちょっと外に出るわよ)


二人も私の意図を察したのか


「スバルさん、温かい飲み物いりませんか?」
「私たちで買ってきますね」
「ギンガさん、私もこの子たちについていくんでスバルお願いします」
「え、ええ。わかったわ」


私たち3人は病室から出て売店に向かった。




side はやて


「お疲れ様です。八神二佐」


地上本部内を歩いていたら、オーリス三佐とすれ違った。聞きたいこともあったのでちょうどいい。


「オーリス三佐。少し、お時間よろしいですか?お伺いしたいことがありますので」
「これから会議がありますので、そのあとに。私からもあなたにお伺いすることがありますのでこちらから連絡いたします」
「そうですか、それでは」


そういって別れる。しかし………
両手の甲を見る。残り一画ずつしかない令呪。ヴィヴィオが攫われたのは私のせいだ。令呪の使い方を間違えてしまったせいで………
それに、もう一つ。私はおかしいことがあることに気が付いていた。
その二つを踏まえ、私はあることを考えた。だが、可能なのだろうか?士郎かランスに聞いてみる必要があるな……



side ヴィータ


「おい、無理すんなよザフィーラ。ひどい怪我だったらしいじゃねえか」


あたしはシャマルとザフィーラの見舞いに来ていた。


「平気だ。ランスの治癒魔術のおかげでこのくらいならば問題はない」
「私は明日には退院するわ。ザフィーラのおかげで怪我も軽かったから」
「あたしも、リインが守ってくれた。リインとユニゾンしてなきゃ死んでたかもしれねえ」
「マリーさんから連絡を受けてるわ。リインちゃんも、明日には目を覚ますって」


リイン………



side ティアナ


私達が部屋に戻ると、スバルの表情が良くなっていた。そこで、私はなのはさんから聞いていた話をして、さらに元気づけてあげることにした。


「ティア、話って何?」
「私たちのこれからのこと。どうやら六課の任務はレリック捜査からスカリエッティ一味の捜索に代わるらしいのよ」
「雪辱戦、ってことね」
「ええ。幸い六課のみんなのけがは軽いですしね」
「そうね。でも、私はかなりの重傷だったはず……ティアナは見てたのよね?私が治されるところ」
「はい。ですが、なのはさんから絶対にそのことは言うなって………」


あの……アヴァロン?の存在は下手なロストロギアよりも強力なものだから話さないようにって言われた。だが……気にならないわけがない。
あんなものを出した士郎さんの事が………
彼は何者なのだ?特に彼の扱う武器。質量兵器にしては不可解な部分が大きく、魔法兵器にしては危険。謎は深まっていくばかりだった。



side はやて


「それで、聞きたいこととは?」


会議を終えたオーリス三佐と合流し、話をしている。


「レジアス中将のお仕事についてです」
「匿秘事項がほとんどですので、お話できることはありません」
「私の話を、聞くだけ、聞いてください。戦闘機人と人造魔導士……どちらも中将が局の戦力として取り入れようとしましたよね」
「昔の事です」


反応は予想通り。だからこそ話を進める。


「中将は今でもその計画を裏で進めてはいませんか?」
「…………」
「スカリエッティならその取引相手としてうってつけです。彼が技術を確立させたところで検挙し、回収した戦闘機人の試験運用をする。そして……」
「くだらない妄想はそこまでにしてください」


やはりここで話を止めに来た。これは繋がっているのは間違いないだろう。


「証拠もないことをべらべらと話したところで時間の無駄です。それよりも先日の事件の際、貴方が会議室から抜けた後に本部で膨大な魔力が観測されています。八神二佐、あなたが関わっているのではありませんか?」


令呪の事か……やっぱり観測はされていたか。だが、こちらも探られぬように準備はしてきてある。


「それに関しては上官に口止めされていますので、私の方からはお答えできません」
「……そうですか。それと、先ほどのお話、続きは調査申請書を持ってきてからにしてください。それからならお話を聞きましょう」
「ええ。近いうちに必ず」


そうして私たちは別れた。私も、この後は用事があるからあんまりのんびりしてられんしな……



side スカリエッティ


私はウーノと共にディードとオットーの持ち帰った衛宮ランスの情報を探っていた。
そして………


「これは!………フフ、素晴らしい、実に!!」
「ドクター?見つけたのですか」
「ああ。見たまえウーノ」
「……これは!?いったいどういうことなのでしょう……」
「これが真実ならばますます彼に興味が持てるね……」


ディードの武装は砕かれたが、この情報に比べれば安いものだ。砕かれた武装がこちらのリカバリーを受け付けないのもこの情報が確かであることを示している。
さあ、もっと私を楽しませておくれ!




side 士郎




私達は現在、スバルとギンガの父親ゲンヤ・ナカジマ三佐から戦闘機人事件についての話を聞いている。


「戦闘機人のベースは人型戦闘機械だ。人の体に機械を埋め込むことで戦闘能力の向上を図る、それが戦闘機人計画だ」
「だが、どうしても拒絶反応などの問題は出てくる。それを解決したのがスカリエッティだ」


クロノ提督の発言に質問を投げかけるシグナム。


「その方法と言うのは?」
「素体の人間の方を機会に適合するように生まれる前に調整する技術。それを生み出したのさ、あの男は」
「次にスバルとギンガの出自についてですが…」


フェイトが切り出すと、


「衛宮士郎、って言ったか、おめえさんは見たんだろう?」
「はい、彼女の腕……確かに機械の腕でした」
「……ギンガとスバルはな、戦闘機人事件を追っていたうちの女房が保護した実験体だったんだ。俺たち夫婦は子供に恵まれてなくてな。そんな時に見つけた二人が自分に似てるって言って女房がな。普通の子供として育てていこう、ってよ」


しばらく沈黙が続いた後、三佐が語りだした。


「女房が亡くなったのはあいつらにそれなりに物心がついた時だった。任務中の事故とか言ってはいたが、俺は女房が見ちゃいけねえものを見ちまったんじゃねえか、って思ってる。俺が引き続き捜査をしてもよかったんだが、女房との約束でな、ギンガとスバルを一人前に育てる、って決めてたから危険が伴うような調査はあまりしていなかった。だがよ、地道には続けていたんだ。いつか告発の機会があるかもしれねえからな。八神はよ、自分とこの事件に戦闘機人が絡むと予測してたから俺んとこに捜査を依頼してきたんだ、あの狸娘はよ!」


手玉に取られたことが悔しいのか三佐はお茶を煽った。
その光景に皆は笑っていた。私とランサーを除き、だが。


(戦闘機人、ねぇ………)
(殺すのか?)
(いいや、俺はマスターに従うさ。殺せと言われりゃ殺すし、捕えろと言われりゃ捕える。サーヴァントが口出す話じゃあねえさ)
(そうだな)


俺はどう動くべきか、傀儡(サーヴァント)として動くのか、それとも………



side はやて



「おまたせや、ロッサ」


本局にてロッサと合流する。


「さすがのはやても元気がないかい?」
「……そやね。今回のヴィヴィオ誘拐は私の失態が招いた事態やから。せやけど失ったものは取り返す。今度は後手には回らんよ」
「それだけ言えるなら大丈夫だね」


そう言って頭を撫でてくるロッサ。また子ども扱いして………


「しかし、本気かい?はやてとクロノ君の頼みだから許可は取ったけど……」
「隊員たちの住居や生活スペースを考えると、本部は必要不可欠。今後の事も考慮すれば移動できた方がええからな」
「それは、そうだけどね……」


ロッサは心配そうだ。なぜなら……


「廃艦前のアースラを使おうなんてさ……」
「アースラは私たちの思い出の船や。最後に一緒に頑張ってもらいたいからな……」
「………そこまで言うなら止めないよ」


お休み前にもう一仕事お願いやで、アースラ。



side ディエチ



「いや、いや……!」
「はぁ~い、お姫様。怖くないですよ~」


回収した聖王の器。そのことレリックを融合させるための最終調整中だ。


「バイタル、魔力値ともに安定。移植準備もOK」
「ふむ。丁度いいタイミングだ」


検査が終わったところでドクターが入ってきた。ウーノ姉さまがレリックのケースに手をかけたところで……


「ママ、パパぁー!いや、うああああぁぁぁぁぁ!!!!」


突然叫びだした。


「あら~わかるのね。今から自分がどうなるのかが。泣いても叫んでもだ~れも助けてなんてくれませんよ~?」
「さあ、始めようか!聖王の器に、王の印を譲り渡す。ヴィヴィオ、君は私の最高傑作になるんだよ!!」
「いやあああああ!!!!!!」




side なのは



「こんなところにいたのか、風邪をひくぞ」
「士郎君……」


一人で海を眺めていると士郎君がやってきた。


「ヴィヴィオの事を考えているのか……」
「うん……」


二人の間に沈黙が流れる。破ったのは士郎君だった。


「すまないな。私は、守ってやれなかった」
「違うよ!!」


思わず叫んだ。士郎君が驚く。


「なのは………?」
「士郎君は、ギンガを助けた、スバルの事も助けた!でも私は……何もできなかった!犯人を捕まえることも、ヴィヴィオとの約束を守ってあげることも!」
「……………」
「あの子は今頃泣いてる!きっと助けてって言ってる!今すぐ助けに行きたい!でも私は……!」


管理局員だから、と続けようとした。しかし、続くことはなかった。なぜなら、士郎君に抱き寄せられたから。


「もういい。我慢するな。一人で抱え込むな。辛くなったら私を頼れ。寂しいなら泣いてもいい。君は一人じゃないんだ。私は君の味方でいるから……」


その温もりに包まれて、私は知った。この胸の高鳴りの正体を。安心感の訳を。
私は……………






士郎君が、好きなんだ……
ようやく気付いた、自分の気持ち。
私はそのまま士郎君の胸の中で子供のように泣いた。その間、士郎君はずーっと頭を撫でてくれていた。
落ち着いた私は言った。


「ヴィヴィオを助けよう。二人で……」
「ああ。きっと……」


彼と一緒なら、きっと助けられる。そう思ったところで、私は意識を手放した。



side 士郎



「…………なのは?」


胸の中の彼女に問いかけるが、


「すぅ、すぅ………」


疲れが出てきたのか、寝てしまっていた。


「さて、どうするか………」


服を掴まれてしまっているので、離すことが出来ない。私は抱え上げて彼女の部屋へと連れて行った。
その際、フェイトが驚いていたが、安眠するなのはを任せ、私は一人で外へ出た。


「我ながら凄いことをしたものだ……」


我慢する彼女はとても弱々しく見えた。あんな風に子供をあやすかの様にしたのは失礼だったな……
明日にでも謝っておくか。



と、相変わらず素晴らしい勘違いをしている士郎だった……… 
 

 
後書き
二十一話完成で~す。


この話はものすごく悩みましたね~。なんせなのはさんが自分の思いを自覚する話ですからね。


次回はもっと大変なことが起きる(予定な)はずですのでご期待ください!


それでは~ 

 

二十二話~契約

 
前書き
少々短めです。


 

 
side 士郎


機動六課の本部が次元航行艦アースラとなった初日。
前線隊員たちは全員がミーティングルームに呼び出された。


「さて、今日皆を呼んだんは……」


こちらを一瞥したマスターが話を続ける。


「士郎たちの能力について、フォワード陣にも知っておいてもらおうと思ってな」


そう語りながら私に念話をしてきた。


(サーヴァント云々は伏せとこ。話が厄介になる)
(ランサーの転移が説明がつかんのではないか?)
(魔術はあの子たちにとって異界の技術や。なんとでもなる)


そういってフォワードたちを見つめ、語り始めた。


話した内容はランサーは槍を手元に持ってくる転送、ルーンと言う神秘を扱う魔術師であること。
魔力を扱うが、どちらかと言えば神秘に近いもののため、奇跡に近いこともできる。先日の転移がそう。私は宝具と呼ばれる過去の遺物を生み出す魔術を扱う。ギンガの傷を治した鞘などはその中でも最高位の存在である、ということくらいだ。


一通りの話が終わった後、解散になったが、なのは、フェイト、シグナム、ヴィータ、私、ランサーは残された。


「さて、本題はここからなんや。あの子たちには聞かせられん話やからな」
「サーヴァントに関係ある話……だよね?」


フェイトの言葉に静かにうなずくマスター。


「そうや。で、ランス、士郎。まだ私らに隠してることあるやろ?」
「……なんのことだ?」
「とぼけんでええ。もうわかっとるんや。私からあんたたちにちゃんと魔力供給がされてないことくらいは」


なのはたち四人は驚愕の表情でこちらを見る。


「……いつ気づいた?」


ランサーの問いかけに


「陳述会の日や。士郎が飛ばしてきた念話。アレは回路(パス)を通して行うものやったんやろ?だけどそれがまともに繋がらんかった。それにや。冷静に考えてみれば自分の能力を十全に使えん戦士がおるか?本来ならあり得へん。士郎が投影の際に毎回カートリッジを使うんも魔力供給がされてないのを示してるんやないか?」
「………見事な推理だ。その通りだよ」


大したものだ。もう少し位は隠し通せると思ったんだが……


「で、二人に聞きたい。マスターを変える、ってのは可能なんか?」
「「はやて(ちゃん)!?」」


なのはとフェイトは驚いている。それに対しシグナムとヴィータは微動だにもしない。


「はぐれサーヴァントとの再契約って言うのはあるがよ、それには令呪が………っと、一つだけあったな、無視できる方法がよ」


こちらを見るランサー。だが、アレは不可能だろう。


「あるんか!?」
「ああ。だが、無理だろう」
「どうしてなの?」


あるのにできない。そのことが疑問なのかなのはが問いかけてきた。


「君たちに宝具の真名解放が出来るならば可能だ。しかし、担い手でもないのに真名など解放できるものではない」
「やってみるだけやってみる、って言うのは?」
「……やってみるだけなら問題はないが……その前に、なぜそんな考えに至ったのか君の考えを聞かせてくれ、マスター」


少しの間迷っていたようだが、


「そやな。知っといてもらうべきやろ。ランスはわかっとるんやろ?」
「……一応、な」
「なら説明するよ。ヴィヴィオを助けられなかった理由、それは私にあるんや」
「はやてちゃん、いきなり何を……?」
「私がランスに下した命令はシャマルとザフィーラを守ること。けど、その判断は間違いやった。その令呪の強制力で捕えられたはずの敵戦力は取り逃がした。それに、今後を考えれば二人が全力を出せんってのは痛手になる。だからパスがうまくつながってない私がマスターやっておくんは戦力的にもよくないことや」


なるほどな、そういうことか。私は従うのはやぶさかではないが、騎士であるランサーは主替えには反発するだろうな。


「だとしても、マスターをホイホイ乗り換えるってのは俺の主義に反するからな。あんまりやりたくねえんだが……」
「それについてはマスターと主を別物と考えればエエやろ?何も私を裏切れ、って言ってるわけやないんやから。魔力供給をしてもらうだけなんやし」
「そもそも、うまくいくかわからんことの話をするのは性急ではないか?」


契約替えと言えばアレだが、真名解放などできるわけがないしな。


「とりあえずやって見るだけやってみよ。で、その宝具はどんなや?」
「これだ」


投影するのは紫に鈍く光る歪な短刀。


「この変な形のナイフが?」
「そうだ。名を破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)という」
「魔女殿の宝具だな」
「ランス、知ってるの?」


ランサーはゆっくりと語りだした。


「ギリシャの魔女メディアの裏切りの伝説が形になった宝具で、あらゆる魔術的な契約を無に返し、再契約を結ぶこともできる」
「なるほどな、問題は……」
「新たにマスターとなる人物に使ってもらわねば再契約にならん、ということだ」


そう言い放った私に答えたのはなのはだった。


「私がやるよ!」


side なのは



知らなかった。士郎君は魔力供給がまともにされていなかったんだ。
それなのに……
そんな時にマスターを変える方法がある、との発言。ヴィヴィオを救うため、なにより大切な人の力になりたくて、


「私がやるよ!」


気が付いたらそう言っていた。


「なのはちゃんか……だけど、また一人で二人分を受け持ったら同じ結果になる可能性がある。だから……」
「それなら私もやるよ」
「フェイトちゃん………」


フェイトちゃんも名乗り出てくれた。


「これ以上はやてだけに負担はかけられないからね」
「そうか……ありがとうな」


笑顔でお礼を言ってくるはやてちゃん。


「じゃあ、始めようか」


短刀を受け取り、士郎君と向かい合う。


「真名解放ってどうやるの?」
「私にそれを刺して、魔力を込めて名を言うだけだ。だが、うまくいく可能性は低いぞ」
「それでも………やるよ」
「そうか」


私は士郎君の力になりたい。だから、きっと成功させてみせる!
そして私は士郎君の手の甲に短刀を突き立て、


「ルール、ブレイカー!!」


魔力を込めて言い放った。
短刀は光を出し、私の魔力を吸い上げていく。やがてそれが収まると……


「成功やな……令呪が消えた」


はやてちゃんのつぶやきに私が左手を見ると令呪が一画刻まれていた。


「これは………」
「どないした?」
「ステータスが上がっているようだ。それに……回路(パス)もいい感じだ。これなら余程のことがなければ投影にカートリッジを使う必要もないだろう」
「それはよかった…きゃ!?」


魔力をかなり持っていかれたからか、足がもつれて転びそうになった。が、


「大丈夫か?」


士郎君が先回りして受け止めてくれた。のだが………


周りから見れば抱き合っているように見える体制になってしまった。
士郎君を意識し始めたせいか顔が熱くなっていくのがわかる。


「おやおやぁ?お熱いですなぁお二人さん」


はやてちゃんがにやにやしながら言ってきたことでさらに顔が火照る。


「あまり茶化すな、なのはも魔力を消耗して………なのは?どうしたんだ?」


士郎君が反応のない私を心配したのか覗き込んできた。か、顔が近い!


「にゃにゃにゃにゃんでも!?」
「何でもなくはないだろう!とりあえず医務室だ!」
「ふぇ?えええええええええ!?」


お姫様抱っこで抱えられて連れて行かれてしまった。





side フェイト



「行っちゃった………」
「鈍感は罪やな……」
「はやて、どういうこと?」
「……そうやった。フェイトちゃんは女版士郎やったな………」


はやてが遠い目をしている。どうしたのだろうか……?


「面白そうだな、その話聞かせてくれよ」
「お、ランス気になる?ええよ。あれは小6の冬の事や……」


あの二人、当初の目的忘れてないかな?


「昔話は後にして、やっちゃおうよ!」
「おう、じゃよろしく」


ランスのノリが軽い………


「真面目にやろうよ!」
「せやかて、頑張るのはフェイトちゃんだけやで?」
「そうそう、俺は突っ立ってりゃいいだけなんだからよ」


この二人、もう嫌。
振り回されて悔しいから仕返しすることにした。


「えい!」
「ん………?痛ってえええええええ!?」


なのはは手の甲に刺していたが、私はお尻に思いっきり突きたててやった。


「ルールブレイカー!」


結果としてはだいぶ魔力が持っていかれたが、上手くいった。


「あの……フェイトさん?抜いてください……」
「ふん!」


そのあとバカ(ランス)のお尻に短刀を刺しっぱなしにしておいた。


「いや~、ランス、ドンマイ♪」
「そう思うならさらに深く刺そうとすんのはやめろおおおおおお!!!」


はやてがそれをいじっている。ランスはおかげで悶絶している……ちょっとだけ可愛いかも。


「アーチャー!!早く破棄してくれええええええええ!!!!」


ランスの切実な叫びがミーティングルームに響いていた。




………なんだかんだで彼と過ごす日々は楽しい。いじられるのは好きじゃないけど、嫌なわけではない。そんな日々を守るために、出来ることをやっていこう。一人ではかなわなくても、皆がいれば、きっと大丈夫だから。 
 

 
後書き
短いですが大事な話です。


マスターが変わりました。ちなみに、真名解放に関してですが、Cランク宝具の開放がAAAクラスの魔法と同じくらい、と考えてください。(士郎は別)


マスターじゃなくなってもはやて節は変わりません。むしろ悪化します。


では今回はこんなところで~ 

 

二十三話~守りの誓い

 
前書き
シリアス……だがネタに走る!

田村ゆかりネタから始まります。 

 
side なのは


夢を……夢を、見ていました。


夢の中で私は、一人の男の人の生涯を見ていました。


その人は、たくさんの人を救うため、戦っていました。


敵を殺して、傷ついて、傷ついて、目を背けたくなるような怪我を何度もして、それでも彼は人を救い続けました。


そのうち彼は、かつて自分が救った人たちからも恐れられ、来るな、と言われていました。


人々は彼をこう呼びました。


―――― 化け物 ――――


そこまで言われても、彼は敵を殺し、人々を救い続けました。


でも、彼を恐れた人たちに捕まり、処刑されることが決まりました。


最期を迎える時、彼は一人、言葉を漏らしました。



…………………結局俺は、命ばかりを救って、心は一度たりとも救わなかったんだな…………………




そこで、夢は終わりました。








…………………………………………………………………





「はぁ、はぁ………」


目が覚めた。


「あれは……?」


誰かの記憶のようなものを夢に見ていた気がする。思い出そうとしても靄がかかったようになってしまう。


「……あれ?」


涙の跡が頬にあった。哀しい夢だったのかな……?


「……起きないと」


今日は本局に行っていたはやてちゃんが戻ってくる。これからの六課の事、スカリエッティや戦闘機人の事、解決していないことは山ほどあるのだから。
そんな時、来客が。


「なのは、起きてる……?」


来客の正体はフェイトちゃんだった。


「起きてるよ、何?」


ドアのロックを解除し、中へ招く。


「……泣いてたの?」


フェイトちゃんはこういう時はいつも鋭い。拭いたつもりだったのにばれてしまった。


「ちょっと……哀しい夢を見たから」
「ヴィヴィオの……?」
「違うよ。内容はよく覚えてないんだけど、哀しい夢だったんだ」
「そっか……」


それよりも、こんな朝早くに来る、という事は何か重要なことがあったのだろう。


「それで、本題は?」
「シャマルが昨日こっちに戻ってきたから私達二人の健康状態の確認をするってはやてからの伝言」
「だいぶ魔力を持っていかれちゃったからね……。士郎君はあれくらいで済むなんて、って言ってたけどね」


その後フェイトちゃんと共に受けた健診では魔力の低下以外は目立つ問題はなかったそうだ。
魔力の方も1週間ほどで戻る、という事だそうだ。



side ランス


「はあああああああ!!」
「まだ遅い!」
「はい!」


俺はエリオと艦内訓練場で打ち合いをしている。理由は………


…………………………………………………………………



「純粋な槍術を鍛えたい?」


エリオが突然そんなことを言い出したのだ。


「はい。僕は今回の事でストラーダの性能に頼って戦っていたことを痛感しました。だから、自分自身を高めたいんです!お願いします!」
「……わかった。先に訓練場に行ってろ。すぐに行く」
「ありがとうございます!」



…………………………………………………………………


そのあとアーチャーのところで木の槍を二振り借り、現在に至る。


「はぁ、はぁ、まだまだ!」
「いいねぇ、そう来てもらえると相手のしてる甲斐があるぜ!」


斬り、払い、突き。その中にフェイントを混ぜたり、同時に体術を繰り出す。一朝一夕で出来ることではないが、姿を見せてやることはできる。その中から何を学ぶか、それはこいつ次第だ。


「はあっ!」


エリオの繰り出した突きを柄で受け、そのまま槍を回してエリオの手から絡め取る。


「ま、参りました………」
「おう、どうだったよ?」
「最後のはあんな使い方は想像もできませんでした………」
「相手が武器使いなら武器を奪っちまえばいい。シグナムやヴィータなんてのはそれで無力化できる。武器使いながら体術をつかえる奴何ざそうそういねえからな」
「それは、そうですが……」
「ったくよ、そんな弱気じゃキャロを守れねえぞ?」


意地の悪い笑みを浮かべて言う。


「なっ!い、いつからそれを……」
「安心しろ、気づいてんのは俺と部隊長とティアナだけだ。ばらしはしねえよ」


赤くなってうつむくエリオ。ま、女のために強くなりてえってのは悪い事じゃねえな。


「じゃ、ちゃんと反省点を次までに見つけておけよ」


そういって訓練場を後にする。そしてのぞいてた人物に声をかけた。


「ったく、ホントにお前は過保護だな」


のぞいていたのはフェイトだ。


「それはランスのせいでしょ?魔法訓練じゃなくて木の槍なんか持っていくんだから……」
「あいつが言い出したことだ。お前に心配かけたくねえんだろうよ。ったく、いい息子じゃねえか」
「ふふ、どうも」


二人で廊下を歩きながら他愛ない話をしていたが、突如真面目な顔でフェイトが質問してくる。


「ランスから見て、エリオはどう?」
「あ?どうって?」
「強くなってるか、ってこと」


強くなってるか、ねぇ………


「確かに呑み込みは早い。だが、まだまだ発想が固いな。応用が利かねえし槍と体術の複合もまだまだだ」
「結構辛口評価だね」
「だが今回の件を仲間と一緒に片づけるならあれでも十分だ。ま、タイマンなら戦闘機人とでもやれるだろうよ」
「そっか」


俺は部屋に戻るため、フェイトは捜査の打ち合わせがあるから、と言って別れた。


「無理してんな、あいつも」


スカリエッティに固執しているのは見ていればわかる。
だが、


「あんま根詰めるんじゃねえぞ……」


聞こえていない呟きが廊下に響いた。




side エリオ


「ふぅ………」


訓練後に一息ついたあと、ランスさんに言われたように反省点を探す。


「捌き切れなかったのは体術………それに攻撃の逸らしだ」


ランスさんは連続した刺突によって距離を詰めて体術を交えながら戦う。僕にはそんな芸当はできないが、いろいろと思うところはある。何よりも攻撃の受け流しがうまいランスさんには僕の槍術では手が出ない。だとしたら工夫がいるのだ。


僕の持ち味である速さを生かした工夫が。
あの技を完成させれば、皆を守れる!


「もう少しだけ、付き合って。ストラーダ」
[もちろんです、マスター]


そうして僕は訓練を再開した。




side なのは



「皆揃ったな、それじゃ始めよか」


本局から戻ってきたはやてちゃんから六課の今後についての話がされる。
六課が追うのはあくまでレリック。その延長線上にスカリエッティがいる、と言う形をとるそうだ。


「理想的な形だけど………また無茶してない?」
「後見人さんの了解は取ってるし、問題はないよ」


はやてちゃんは士郎君とランス君を一瞥し、


(あの二人の事をごまかす方がよっぽど大変やからな)


と、念話で伝えてきた。


「とりあえず今はこんなところや。それじゃ解散な」


解散した後、会議室には私と士郎君、ティアナが残った。


「ティアナ、スバルは……?」
「今日の午後には戻るそうですが……」
「そうか……」


怪我をさせたのは自分だからなのか士郎君の声は暗かった……



side スバル


「うん!フレームの方も問題ないね?」


マリーさんの問いかけに少し体を動かして調子を確かめてから返事をする。


「はい!大丈夫です」
「じゃ、あとはマッハキャリバーだけど……」


マッハキャリバーは陳述会で士郎さんの拘束から抜け出そうとしたあたしのIS発動のサポートでダメージを負ってしまったのだ。
そんな事情からかマリーさんの声もトーンが低い。


「ごめんね、マッハキャリバー。あんなことしちゃって……」
[私があなたの力に耐えられなかったからです。ですからあなたに問題はありません]
「……怒ってる?」


恐る恐る聞くが、


[怒る、と言う感情が私にはありませんので]


どうしてそんなことを言うのだろうか。だが……
あの時マッハキャリバーの事など一切考えずにISを行使したあたしが悪いのだ。
沈黙していたあたしだが、ドアの開く音で意識が覚醒する。


「……シャーリーさん?マリーさんも……」


入ってきたのはあたしと一緒に本局に来ていた二人だった。


「ごめん…取り込み中だった?」
「いえ……」
[反省会です]
「そっか」
「それより……シャーリーさんはもういいんですか?」


六課メンバーはランスさんの治療を受けてはいるが、基本は安静、と言われているのだ。


「けがは大したことなかったんだし、みんな頑張ってる。デバイスたちの事もあるし、ここで寝てるわけにはいかないよ。あとね、マッハキャリバー、修理ついでに、って自分で強化プラン考えちゃったの」



予想外の発言にあたしはシャーリーさんが出したモニターを見る。
その内容は、


「アウトフレームの装甲強化、魔力消費が1,4倍、本体重量2,5倍……」
「かなり重くなってるし、扱いづらくなってるからスバルに確認取らなきゃ、って思ってたんだけど……」


このくらいだったら……!


「やれます!このぐらいなら平気です!」
「そっか。よかったね、マッハキャリバー」
[Thank you.]


今度こそ、仲間はあたしが守る……相棒と一緒に!



side シャマル



「なあ、もういいだろ?仕事たまってんだよ」
「待って、もう少し………」


守護騎士システムの異変。各人の相互リンクが弱くなり、治癒速度も遅くなっていたりといろいろなことが起こっている。


「いいじゃねえか、これでよ」
「ヴィータちゃん?」
「あたしたちが望んだことじゃねえか。最後の夜天の主と、限られた時を過ごしてえ、ってのは」
「…………………」
「怪我したらなかなか治らねえ、ってのもさ。『人間』みてえでいいじゃん?」


確かにそうだ。でも………


「それでも、私ははやてちゃんとリインちゃんだけじゃなくヴィータちゃんやシグナム、ザフィーラの事も心配なのよ………」


真っ直ぐに目を見てヴィータちゃんに言う。


「……安心しろ。あたしもシグナムも落ちたりしねえ。この十年で守るもんは増えちまったけど、全部まとめて守るからよ。料理が下手で心配性の湖の騎士を泣かせたりしねえからよ」


頼もしい発言だが、からかわれている気がしたので、


「……バカね」


少し悪態をつくことにした。



side ティアナ


会議も終わり、一息ついた後にギンガさんとエリオとキャロと会ったので話をしていると、アースラの内部でキョロキョロしていたスバルがいたので声をかける。


「スバル!」
「あ!ティア!」


こちらに気が付いたスバルが駆け寄ってくる。


「スバルさん、お怪我の方は……」
「もう大丈夫、あたしもマッハキャリバーも完全回復だよ」


その時だった。この事件において、最も長い一日の始まりを告げるアラートが鳴ったのは。 
 

 
後書き
はい、スクライドよりかなみネタでした。

前回の話は質問が多くあったため、『教えて!マテリアルズ!』の方に質問回答を用意しました。

そちらの方を見てください。てか、シリアスの後書きがこんなんでいいんでしょうかね……


それでは~ 

 

二十四話~壊される仮面

side はやて


「アインへリアルがか!?」


アラートが鳴って管制室に入ったとき、それまで指示を出していたグリフィス君からの情報だった。


「はい、どうやら戦闘機人の襲撃を受けたようで………」
「そうか………グリフィス君はこの状況をどう見る?」
「………計画の邪魔になりそうなアインへリアルを先に落としておきたかったのではないでしょうか。もし僕がスカリエッティの立場ならそうしたと思います」


グリフィス君の考えは最もだが、陣形が嫌な感じで拡散している今、隊長陣の投入はできない。
もちろん、最終兵器である士郎とランスの全力解放は色んなところの“目”がある今、簡単には許可できない。
前回の時はクロノ君が三提督に掛け合って何とかしてくれたけど……


「これ以上は六課の立場に関わる、か……」
「何がですか?」
「ううん、何でもないよ」


どうやら声に出していたようだ。緊急事態だからか、グリフィス君もこれ以上は突っ込んでこない。
だが、早めに叩いておかなければ大変なことになるのは事実。士郎は多数の殲滅が得意だ、と言っていたから彼に出てもらおう、と考えをまとめた時だった。


「戦闘機人たち、アインへリアルから撤収していきます!向かってるのは……市街地です!」


シャーリーの報告を聞き、モニターを見ると、


「かなりバラバラに動いとるな……」


これでは制圧に結構な人数を送り出さなければならない。だが、問題はそれだけではなかった。


「アコース査察官より直通連絡が来ています!」


この通信がとても良いものであり、また悪いものでもあったからだ。



side ヴェロッサ


「この洞窟がですか?」


僕が108部隊とフェイト執務官から得た情報をもとに当たりを付けた洞窟。そこに無限の猟犬(ウンエントリヒ・ヤークト)を送り込んだが、過剰なセキュリティに侵入を阻まれた。


「僕の猟犬が一撃でやられるようなセキュリティだ。ここで間違いないだろうね」
「よく見つけましたね、ロッサ」
「……子ども扱いはやめてくれないかな?」
「貴方の優秀さはよくわかっていますよ」
「だといいんだけど……!」


そんな話をしていると迎撃のためにガジェットが大量に出てきた。しかも……


「かなり強力なAMFを張ってるね……」
「ならば力ずくで破壊します!」
「……相変わらずシャッハは頼もしいな……」


ただでさえ戦闘は得意じゃないのにこの強力なAMFだ。
正直シャッハ一人では荷が重い。だから僕は応援を頼むことにした。



side はやて


「こちらヴェロッサ。スカリエッティのアジトを発見した。応援をお願いしたい」


ついにスカリエッティの尻尾をつかんだようだ。こちらからも戦力を送りたいのだが……


「こっちも結構ヤバいことになってるんやけど……」
「かなり強力なAMFを出してくるガジェットが出てきた。シャッハと二人で迎撃はしているが状況が思わしくない。二人ほど高ランク魔導士を出せないかい?」
「二人か……」


悩んでいると、


「俺が出る」


いつの間にか管制室に来ていたランスが私の代わりに答えていた。


「ランス!?」
「戦闘機人なら心配いらねえ。チビ共で十分な相手だ。だから俺がこっちに出向く」
「………そうか。それならランスとフェイトちゃんを行かせる。ロッサ、それでええか?」
「ああ。ありがとう」


こちらが一段落した時、シャーリーが驚愕の声を上げた。


「あれは……この間の騎士!?」


ヴィータと戦ったという騎士が地上本部を目指して飛んでいた。
相手の戦力も最大限に出てきた。ここがこの事件の正念場や……!




side スカリエッティ



「さあ、見ているかい?私のスポンサーたち、それに管理局の諸君。偽善の平和を謳う聖王教会の諸君。今から見せるものが、君たちが忌避しながらも欲した絶対の力だ!」


外では手筈通りにゆりかごが起動している。


「古代ベルカの悪夢の英知、聖王のゆりかご。迎えるべき王を迎え入れ、世界を破壊したこの素晴らしき兵器は蘇った!」


さあ、始めよう!世界の変革を!




side なのは


「迎えるべき王を迎え入れ、世界を破壊したこの素晴らしき兵器は蘇った!」


スカリエッティの言葉、そんなものは私の耳には入らない。なぜならば、


「いや、いたいよ…こわいよ…ママ、パパ、たすけて………」


スカリエッティから送られた映像に私に助けを求めるヴィヴィオがいたのだから。


「ヴィヴィオ……」


そんな中、震える私の肩に手を置く人物がいた。


「まずは落ち着け。冷静にならなければ救えるものも救えなくなるぞ」
「士郎君………」


それは士郎君の手だった。いつもと全く変わらないように見える態度。だが、触れられている手から伝わってきた。
士郎君は、怒っている……今までに類を見ないくらいに。
そんな士郎君に怒りをぶつけた人物がいた。


「どうして……」
「アルト?」
「どうして、衛宮さんはそんなに冷静なんですか!あんな、小さな子があんな目にあっているのに!衛宮さんにとってヴィヴィオはなんなんですか!」
「アルト!」
「なのはさんは黙っててください!答えてください!衛宮さん!!」


少しの間をおいて、士郎君は語った。


「娘だ」
「ならどうして!」
「私たちの任務はなんだ?ここで憤ることか?違うだろう。アルト・クラエッタ二等陸士」
「う……」


正論。まさしく管理局員としての正論ではある。だが……、私にはわかってしまった。それは仮面だ。本心を偽るための。


「わかったら未だ自分の殻に閉じこもっているヴァイス陸曹の代わり、と言う君の責務を果たすことだ」
「……了解、しました。衛宮三等空尉」


そういってアルトは駆けて行った。
そのあと、


「もう、やめてよ」
「なのは……?」
「そうやって嫌われ役になって」


止められなかった。みんなのために、士郎君が一人で傷つくのが耐えられなかったから。


「一人だけで傷ついて」


支えになる、と言って何もできていない自分が情けなくて、


「傷ついてないふりをする」


だから思いをぶちまける。


「私は、そんな士郎君を見てられない!」
「……なんのことだ?」


しらばっくれていても、もう私にはわかる。
はやてちゃんがマスターの時に見ていたという夢。きっとあれは、士郎君だ。
“正義の味方”を目指していた時の。私が見ていた夢もそうだろう。


「本当は士郎君、今すぐヴィヴィオのところへ行きたいはず!もう大丈夫、って言って抱きしめてあげたいはず!それなのに………」


だから私は彼の仮面を壊す。


「嘘ばっかりつく!自分は平気だって!悲しくても!辛くても!嘘ばっかりつく!」
「………なぜ君が泣いている?私のことなど気にする必要はない」
「気にしないわけないよ!!」


いわれて気が付いたが私は泣いていたみたいだ。涙が流れていくのも無視して士郎君の仮面を砕く最後の言葉を言い放つ。









「だって私は、士郎君が好きだから!!一人で悲しんだり、苦しんだりしないでほしいから!!ヴィヴィオと一緒に笑っていて欲しいから!!」


ため込んでいたものを全てぶつけた。私が全てを言い終わってから、士郎君がゆっくりと口を開いた。


「全く、緊急事態の時にそんなことを言われるとは思わなかったぞ。今のはスターズの隊長としてどうなんだ?」


その顔には先ほどまでの仮面はなく、普段の士郎君だった。


「そ、それは……」
「冗談だ」
「え?」
「助けに行こうか。私達の娘を」
「………うん!」


ようやく私の思いが届いた。仮面に隠され、剣で覆われた彼の心に。




side 士郎


驚いた。まさかこんなことを言われるとは。


「だって私は、士郎君が好きだから!!一人で悲しんだり、苦しんだりしないでほしいから!!ヴィヴィオと一緒に笑っていて欲しいから!!」


なのはが私を好きだ、と言ってくるとはな。
だが、今はそれよりも優先することがある。
それは………ヴィヴィオを助けることだ。
()の娘を。


今はなのはと共に、ヴィヴィオを助ける…………
そのことにだけ集中しよう。 
 

 
後書き
はい、ついになのはさんがぶちまけましたね。

一体士郎はどうするのか?
……それは事件解決後のお楽しみです(*´ω`*)


次回!
ついに動き出したゆりかご!
六課の面々はどう動くのか?
その中で一人迷うヴァイスは?

ご期待ください!


それでは( *・ω・)ノ 

 

二十五話~陸曹の過去

 
前書き
今回の主役はヴァイスです。
時系列はゆりかご浮上の少し前になります。
 

 
side ヴァイス


「よ。こんなとこにいたか」
「旦那………」


アースラの端の方にある一室にいた俺に声をかけてきたのはランスの旦那だった。


「何しに来たんです?」
「いやな、お前の過去について聞きに来ただけだ」
「過去、ですか………」
「ああ。ミスショット、したんだろ?」


この人は普段飄々としているのにこういう時には研ぎ澄まされた刃物のような雰囲気を醸し出す。
そして、こちらの心情を当ててくるのだ。


「ええ。情けない話ですがね。人質になった妹に当てちまったんですよ」
「それでそん時の妹と同じくらいの年ごろだったあの召喚士の嬢ちゃんを撃てなかった、と?」
「………ま、そうすね」


しばらく二人とも無言だった。が、


「ヴァイス、お前は魔法をどう思う?」
「魔法を、ですか……?」
「ああ。特に非殺傷設定、って奴だ」


考えたこともなかった。管理局員は、魔力ダメージを与えて犯罪者を捕える。
俺たちにとっては当たり前すぎることだからだ。


「安全な力だと思います」
「そうだな。命にかかわるような事態にはならねえな。俺はよ、この手で何人も人を殺めてきた。親友とその息子の命をこの手で奪った。だからよ、俺は忘れねえんだ。自分が殺したことを。命を奪ったのならそのことに責任を持たなきゃいけねえからな」
「……………」


普段とは全く違う戦士としての貌。その貌は、精神(こころ)はどこまでも強かった。
もし俺が親友を殺したとしたら正気なんて保てない。
非殺傷設定で妹を失明させても感じることのできないような恐怖を感じた。


「それによ。きっとお前の妹もお前を恨んだりはしてねえさ」
「どうして、そんなことがわかるんですか!」
「俺も恨まれてねえからさ。あいつは最後までを俺を気遣っていきやがった。死んだ奴だってそうなんだ。生きてるんならやり直しはいくらでもきくだろう?」


もしそうだったら……どんなに……


「ま、俺からはそれだけだ。トラウマに引きずられんのもほどほどにしてさっさと現場に戻ってこいよ」


それだけを言って旦那はこちらに背を向ける。その時だった。


「アラート………」
「おやおや、お呼び出しかよ。すまねえな、俺はこれで失礼するぜ。後は頑張んな」


そうして彼は部屋を後にした。


「それでも、俺は……!」




side ランス



「ったく、世話が焼けるな、どいつもこいつも」


そうして俺は頼んでいたことを確認するためにある人物に通信を繋いだ。




side ヴァイス



「……通信?」


しばらく一人で悩んでいた。俺はどうすべきか。ここにいる意味は何かを。そんな時に来た通信だった。


「ザフィーラの旦那か」
[出ないのですか?]


ストームレイダーが話しかけてきた。


「そうだな……」


少し迷ったが、通信を繋いだ。


「ようやく出たか。ヴァイス」
「用件は何すか?」
「いや、用があるのは私ではない」
「?」
「今変わる。ちょっと待っていろ」


そして旦那と通信を変わったのは、


「お兄ちゃん、久しぶりだね」
「ラグナ…………」



俺がミスショットで光を奪った妹だった。



side ザフィーラ



「全く、あいつの世話焼きも大概だな」


俺は独自にヴァイスの事を調べたランスから妹と向き合わせる機会を作ってやってほしい、と頼まれヴァイスの妹、ラグナのことを探していた。
そして、ようやく見つけてヴァイスと通信を繋ぐことに成功した。
後は無粋な部外者は去るのみだな。


(あとは君次第だ。頑張ってくれ)
(はい。ありがとうザフィーラさん)


さて、俺も仕事に戻らねばな。



side ヴァイス


「あのね、あの事件の時の傷、もう消えたんだよ。眼帯もそろそろしなくてもよくなるんだ」
「そうか………」


あの時以来、まともに向き合うのは久しぶりだ。


「お兄ちゃんの怪我、ランスさん、だっけ?その人が治してくれた、ってザフィーラさんから教えてもらったんだ。今度お礼言いにいかないとね」
「あ、ああ……」
「……お兄ちゃん」


ラグナの声のトーンが少し変わった。


「私は、怒ってないし、恨んでなんていないよ。お兄ちゃんと昔みたいに笑ってお話できるような関係に戻りたいだけなの」
「…………」
「お兄ちゃんはどうなのかな、聞かせてほしい」
「俺は………」


そんな時俺の頭をよぎったのは、


――― 生きてるんならやり直しはいくらでもきくだろう? ―――


先ほど言われた旦那の言葉。悩んで、情けなくて、悔しくて、それでふさぎ込んでしまった。
だけど、



「お前が許してくれるなら、やり直したい」


あの事件以降初めてしっかりとラグナの顔を見つめて言った。
その目は痛々しかったが、それでも目をそらさずに言い放った。


「………うん!」


そして、久しぶりに、本当に久しぶりにラグナの笑顔を見ることが出来た。


「それじゃ、この事件が片付いたら、迎えに行くよ」
「うん!待ってるね、お兄ちゃん!」


そうして俺は部屋を飛び出した。



side ランス


「さて、それじゃあ今回の件について説明するよ」


管制室にいるはやてからミーティングルームに集まったフォワード隊とギンガとアルトへ説明が行われる。


「今回は3チームに分かれて行動や。ゆりかごを制圧するチーム、スカリエッティを捕えるチーム、市街地で戦闘機人とガジェットを抑えるチームや」
「スカリエッティのアジトには俺とフェイトが向かう」
「ま、それは決まってたからな。問題はゆりかごや。空戦可能メンバーを全員送り込むわけにもいかんし、地上本部に向かった騎士を止める必要もあるからな」
「戦闘機人たちはどうすんだ?」


ヴィータの疑問は隊長たち空戦戦力を市街地に出すのか、という事だろう。だが、


「私達だけで行けます!」
「おい、ティアナ……」
「ええよ」
「はやて!?」


なんだ、ヴィータは聞かされてねえのか。


「許可を出したのは私だよ」
「なのは!?なんで……」
「この子たちだってもう一人前。ギンガもいるし、向こうの戦力も考えれば1対1に持ち込んでも戦える、ってのが私の見解だから」
「それにだ。せっかく俺が訓練付けてやってんだ。あの程度は倒してもらわねえと割に合わねえよ」
「………戦闘機人をあの程度呼ばわりするのはお前ぐらいだよ」


ヴィータが、もう突っ込むまい、とでも言いたそうな顔をしているな。


「俺はボケんのは得意じゃねえぞ?」
「ランス、会議中にふざけとるんやない」
「へいへい」


はやてに言われて大人しくする。


「てなわけで、フォワード陣が戦闘機人とガジェット。フェイトちゃん、ランスがスカリエッティのところ。私、なのはちゃん、ヴィータ、士郎がゆりかご。シグナムが地上本部の騎士、念のためにシャマルとザフィーラはどこにでもサポートに行けるよう待機、でええな?それじゃ……」
「待ってください!!」


はやてが号令をかけようとした時、部屋に駆け込んできた人物が。


「ヴァイス陸曹!?」


アルトが驚きの声を上げるが、


「俺も出ますよ……!」
「……そうか。もうええんやな?」
「はい、ご迷惑をおかけしました」
「全くだ、おせえっつうの!」


本当に世話のかかる奴だ。


「よし、じゃあヴァイス君ヘリ、お願いや」
「了解!」
「それじゃあ、各自出撃準備や!」


しかし、ヴァイスも振り切ったか。これなら地上は問題ねえな。
だが………



不安は消えないが、今は自分の戦いに集中だ。 
 

 
後書き
今回はこの小説内の三大兄貴たちが主役でした。


え?士郎がいない?いや、あれはお父さんですから(笑)


さてさて、それではここでお知らせです。


後日談のために人気投票を行いたいと思います!


形式は基本コンビまたはカップル、家族、ライバルなど二人以上の組み合わせで一人3グループまでOKです。

EX)1,衛宮家(士郎、なのは、ヴィヴィオ) 2,ランス、フェイトのカップル 3,フォワードチーム(スバル、ティアナ、エリオ、キャロ)


みたいな感じでお願いします。投票方法は感想版に書き込む、またはメッセージで私に直接送ってください。

上位三グループまでその人たちが主役の後日談を作ろうと思います!


それでは投票お待ちしてま~す(=^・^=) 

 

二十六話~出撃

side なのは


「今回の出動は、今までで一番ハードなものになると思う」


私は一番最初に出動するフォワード隊とギンガを送り出すために士郎君とヴィータちゃんと共にヘリの元へ来ている。


「でも、目を閉じて思い出して」


この子達はこの日のためにずっと訓練をしてきた。


「ずっと繰り返してきた基礎スキル。磨きに磨いたそれぞれの得意技」


解り合えないときもあった。


「痛い思いもした防御練習」


和解してからは士郎君やランス君も手伝ってくれた。


「毎日ぼろぼろになりながらやった模擬戦」


皆苦い顔をしている。途中から六課に出向だったギンガも。


「はい、目を開けて。まあ、私が言うのもなんだけどキツかったよね」


それぞれ思うところがあるのか渋い顔をする。


「でも、四人はよくここまでついてきた。ギンガは途中からだったけどな」


ヴィータちゃんの発言に皆驚く。士郎君まで一緒に驚いていた。


「四人とも誰よりも強くなった………とは言えないけど、どんな状況でも負けないように教えてきた」


ここで今まで黙っていた士郎君が声を出した。


「どんな状況でもあきらめないこと。たとえ相手が格上であろうと状況をひっくり返すための戦術。私が教えてやれたのはそのくらいしかないが、自分がやってきたことを信じて挑め」
「それに、ここにはいねえけどランスもお前らならやれる、って言ってたぜ」
「私たちからは以上。それじゃ、機動六課フォワード部隊、出動!」
「「「「「はい!」」」」」


そうして三人は駆けて行った。が、スバルとティアナが残った。


「あたしは先行くぞ」


ヴィータちゃんは気を遣ってくれたのか、先に戻っていった。
そうして、スバルは私のところに、ティアナは士郎君のところへ行った。


side ティアナ


「士郎さん………」
「どうした?」


無茶しても強くなれないことを教えてくれたのはこの人。射撃を伸ばすよう勧めてくれたのもこの人。戦術を教えてくれたのもこの人。ずっと考えていた新しい技もこの人の教えがなければ完成しなかったと思う。だから………


「必ず、勝ってきます!」


私が言うべき言葉はこれだけ。


「ああ」


そっけない返事。だが、それでいい。余計な言葉はいらない。
この人に教わったこと、自分で努力して掴み取ったもの、それらすべてを使って街を守る。
そのことを誓っておきたかった。ただ、それだけなのだから。


「お前なら、大丈夫だ、ティアナ」


そんな声が去り際に聞こえてきた気がした。



side スバル


「スバル………」


なのはさんは辛いはず。ヴィヴィオを攫われてしまったのだから。あたしが力になれるかわからないけど、少しでも励ましたい……!


「あのっ!ヴィヴィオのこと……」
「平気だよ」
「えっ?」


言葉を切られたのと、考えを見通されたので上ずった声を上げてしまった。


「一番怖かったのは、現場に行けなくなることだったんだけど、八神部隊長のおかげでそれもクリアできた。それに、私たちは一人で戦ってるわけじゃないんだよ?怖いものなんて何もないよ」
「でもっ!」
「ヴィヴィオなら平気。士郎君も一緒だからきっと連れて帰ってくる。それに、スバルの憧れてくれたなのはさんは無敵のエースなんだからね!」


ああ、やっぱりなのはさんにはまだまだかなわない……


「はい!……行ってきます」
「うん!」




…………………………………………………………………


「泣いてたのね、スバル」
「ギン姉……」


ちゃんと拭いたはずなのに、なんでばれるんだろう……


「スバルは解りやすすぎるのよ」
「そうね、それになのはさんはあなたに心配されなくても心配してくれる人がいるからね」
「えっ?」


誰のことだろ………
そう思ったのが顔に出ていたのか顔を見合せため息をつくギン姉とティア。


「………事件が解決したら教えてあげるわ」
「う、うん……」


呆れ顔の二人に生返事を返すことしかできなかった。



side なのは


「さて、隊長陣も出るよ!準備はええ?」
「うん!」
「いつでも」
「ちゃっちゃと片付けようぜ!」
「そうだな」


先行したシグナムさんとリインを除いた隊長陣も出動する。


「機動六課隊長、副隊長一同。能力限定の完全解除を許可します」


カリムさんから通信が入り、それぞれがリミッターを解除する。


「レイジングハート、エクシードモード!」
[all ringht.master.]


エクシードモードになると、すぐにフェイトちゃんが飛んできた。


「なのは」
「フェイトちゃん?」
「なのはのリミットブレイク、ブラスターモード。使うなとは言わないけど、お願いだから、無理はしないでね」


相変わらず心配症のフェイトちゃんは人の事ばかりだ。


「私は大丈夫。それよりもフェイトちゃんの方が心配だよ。熱くなるとすぐ周りが見えなくなっちゃうから」
「!!な、なのはだっていっつも危ない事ばかりするじゃんか!!」
「航空魔導師だもん。危ないのも仕事だよ」
「………なのははいっつも危ない事ばかりするから私たちがどれだけ心配してるか……」
「知ってるよ」
「え?」


私が勝手に突っ走ってる、と思ってるフェイトちゃんは返答が意外だったのか驚いている。


「心配してくれてるのはよくわかってる。でもね、今はパートナーがいるから。だから、きっと帰ってくる。士郎君と、ヴィヴィオと、三人で!」
「なのは………」
「おーい、フェイト、嬢ちゃんの惚気話聞いてないでさっさと行くぞ~」


そんな時に見事な横槍を入れてきた槍使いが一人。


「の、惚気てなんかないよ!」
「あー、はいはい。言い訳はよせって」
「言い訳じゃないもん!」
「…………リア充爆発してまえ」
「……あの二人くっつけようとしたのははやてだよな?」
「ヴィータ!それは言わないお約束やろ!」


こんな時でもはやてちゃんとランス君は平常運転。


「まあいい。フェイト、行くぞ」
「あ、待ってよ!……なのは、気を付けて」
「うん、フェイトちゃんもね」


二人と別れ、私たち四人はゆりかごへと向かう。
………この手の魔法はみんなを守る力。左手の印は彼との絆。私は、一人じゃない。
たとえどんな状況だろうと、仲間とともに立ち向かう。
あの四人も、それを忘れないでほしい。そう、思った。


side スカリエッティ


「お帰り、ウーノ」
「トーレ、セイン、セッテ配置につきました。クアットロとディエチもゆりかご内部へ。そのほかの妹たちも市街地へ向かっています」


ふむ、計画は問題なく進んでいる。ディードの武装も間に合ったし、ルーテシアも協力してくれている。何も問題はない。


「騎士ゼストが独断で動かれています。いかがいたしましょうか」
「問題ないよ。ドゥーエがもうすぐ地上本部へ向かうだろうからね」


評議会のお歴々ももう用無しだ。


「全て私の掌の上だ。結果は変わりなどしないよ。ふふ、はははははははははは!!!」



side 士郎


「ふむ、こんなところか」


マスターが変わってからの初戦闘だが、体が軽い。はやてからの厳令でゆりかご内部に入るまで宝具は使わない予定だがガジェット相手ならばガンフォームで一掃できるほどのスペックだ。
そんな時、なのはと共に行動しているヴィータから念話が入った。


(おい、士郎。そっちはどうだ?)
(ヴィータか。粗方片付いた。これより内部侵入経路の散策に向かう。経路が確保でき次第合流しよう)
(そうか、了解!)


「私は突入部隊の援護に回る!ここは任せるぞ!」
「了解!」


航空隊の魔導士たちにこの場を任せ、移動を開始する。
今はヴィヴィオを一刻も早く救出することを考えよう。
私はあの子のためにここにいるのだから。 
 

 
後書き
更新完了です。


アンケートの件ですが、JS事件を書き終えるまで受け付けます。

現在は圧倒的に衛宮家が人気です(^O^)
投票お待ちしてま~す!(^^)!


それでは~ 

 

二十七話~決戦――地上

side クロノ


「約三時間、か…………」


ユーノからの説明でゆりかごが二つの月の軌道上、に上がられると手が付けられなくなる、と言われた。それまでの時間が約三時間。対して、次元航行部隊がミッドに着くまで三時間半。


「六課の面々に頼るしかない、か……」


世界の危機だというのに何もできない、それが何とも歯がゆかった。



side ティアナ


「うわっ!」


現場に向かっていた私たちのヘリはガジェットⅡ型に襲われていた。


「ちいっ!アルト!操縦変われ!!」
「は、はい!」


ヴァイス陸曹とアルトがなぜか一緒に乗ってきていたのはこういうことだったのだ。


「いけるな?ストームレイダー」
[当然です]


ヘリを追いかけてきていたⅡ型5機を瞬く間に撃ち落とすヴァイス陸曹。


「俺はよ、自分のミスで身内を傷つけたことにビビッて逃げてた情けねえ野郎だ。でもよ、そんな情けねえ俺にもお前らのために道を作ってやるくらいはできんだよ!」


さあ、ヴァイス陸曹の思いに、師との誓いを果たすために、私は戦場へと向かう。


「行って来い!」
「「「「「はい!」」」」」



side チンク


「来たようだな」


私達に対する迎撃戦力は………5人。


「あたしはセカンドとやる」
「あたしはオレンジの髪の奴とやるッスよ~。ちびっこたちの相手はルーお嬢様がしてくれるみたいっすから」
「僕とディードは援護に回るよ」
「そうだな。ディードの武装は間に合わせの急造品だ。オットーの護衛に回ってくれ。姉はファーストの相手をしよう」


しかし、衛宮士郎が来なくてよかった。あいつが来ていたら私たち全員10分足らずで無力化されていただろう。
奴とはそれほどまでに実力が違う。奴の相手はガジェットが一番だ。時間稼ぎさえできればよいのだからAMFを使え、数が多いガジェット以上の適任はいない。
それに、こいつら相手ならば1対1で私たちが負ける可能性はほとんどないからな。


「では行くぞ!」
「「「「はい!」」」」



side スバル


「君があたしの相手?」
「ああ」


この子たちがなんで戦うのかはわからないけど、あたしは守りたいもののために負けるわけにはいかない。


「あたし、機動六課スターズ分隊のフロントアタッカー、スバル・ナカジマ二等陸士!君は?」
「……ナンバーズ9、ノーヴェ」


名乗り合った後、彼女、ノーヴェが動いた。
接近してラッシュを仕掛けてきた。しかし、ランスさんのラッシュと比べればこの程度、


「遅いよ!」
「なあっ!」


蹴りをかわし、そのまま足を掴む。そのまま振り回し、投げる。
この一連の攻撃は何度もランスさんにやられたことがあるから効果は折り紙つきだ。


「このや、ろ!?」


案の定バランス感覚が崩れ、ふらつく。
これが続くのはせいぜい10秒と言ったところだが、戦闘時の10秒と言うのは致命的だ。
ふらついたノーヴェと距離を詰め、


「もらったよ!ディバイーン………」
「しまった!」
「バスター!!」


至近距離からの砲撃を喰らわせた。これならダメージは大きい。立てたとしても満身創痍のはずだ。
そして、煙が張れる。そこには………


「え?」


ノーヴェの姿は、なかった。



side ノーヴェ


「全く、油断しすぎだよ」
「う、うるせえな!オットー!」


ナカジマの砲撃を喰らった、と思ったあたしを助けたのはオットーのISレイストームだった。
シールドを張って砲撃を防ぎ、光の紐で救出されたのだ。


「助けてもらっといてそれはないんじゃないかな?」
「く、……あ、ありがとよ。でも次は油断しねえ」
「助かるよ。どうやら……あっちがもっとまずいことになってるみたいだからね」


オットーの視線の先にはウェンディが戦っているであろう場所が。


「もう油断はしねえ。全力でぶっ潰す!」


あたしはエアライナーを展開し、ナカジマの元へと戻った。




side ティアナ


「……そろそろ降参してほしいんだけど?」
「誰が……そんなことするッスか!」


そういってまた空へと上がる私の相手。
もしかして馬鹿なのだろうか?


「キャプチャーシュート、全方位展開……ファイア!」


新技、キャプチャーシュートを使い、あの子を追い詰める。
この技は極薄の魔力の膜を纏わせ、弾丸型に固めたチェーンバインドを放ち、進むうちに魔力の自然な拡散により固められていたチェーンバインドで相手を捕える、と言う技だ。


魔力消費が若干多いが、かなり避けづらい技であることは間違いない。あのランスさんを初見とはいえ捕えたほどの技だ。その後すぐに破られはしたが。


「くっそー!また捕まったっスー!!」


この子は本当に気が付かないのだろうか?
この技は地上の方が避けやすい、という事に。
相手が空中にいればそれだけで上下左右と弾数を増やせる。
この技は弾数が増えるほどその真価を発揮するのだから。


「そろそろ終わらせましょうか。クロスファイアー………!!」


私は身の危険を感じ、咄嗟に飛びのいた。そして私が飛びのいた直後爆発が起きた。
さっきまで私がいた場所には二本のブレイドを持った戦闘機人がその攻撃で作ったであろうクレーターと共に、


「よく躱しましたね」


私に賞賛を送ってきた。


「生憎あの程度の奇襲じゃあ驚かないような訓練してますから!」
「そうですか、それでは………ここからは2対1とさせていただきましょう」


そして状況は私に不利に傾くのであった。



side エリオ


「どうしてこんなことを!!」


僕は目の前の女の子と、その召喚獣ガリューに語りかける。


「…………………」
「黙っていたら何も変わらないよ!話せばわかり合えるよ!」


キャロが説得する。


「……ドクターの、お願いだから……このお祭りが終われば私の探し物、レリックの11番を探すのを手伝ってくれるから………」
「そんなことのために?」
「そんな、こと?」


突如女の子の纏う雰囲気が変わる。
そして大量の魔力弾をキャロに放った。


「キャロ!」
「……きゃあ!」


耐えきれずに魔力弾を喰らい、弾き飛ばされたキャロに


「あなたにとってはそんなことでも、私にとっては大事なこと。そうすればお母さんが目を覚まして、私は不幸じゃなくなる」
「そうじゃない、探し物の事じゃないよ!」


キャロは必死に訴えるが、


「あなたと話すの、嫌い」


再び魔力弾を飛ばしてくる。あの量はまずい。キャロでは防ぎきれない。そして僕自身はガリューに足止めをされ、動くことはできない。手詰まり…………いや、違う。一つだけ方法がある。


新技……使えるか?
いや、迷ってはダメだ。ここでやらなくていつやるんだ!


「ストラーダ!カートリッジ!」
[Exprosion!]


ここで決めなきゃ、男じゃない!!


「オーディーン!」


叫びと共に魔力を集めた手からストラーダを投擲した。
紫電をまき散らして前進するストラーダと魔力弾がぶつかり、爆発を起こす。その一瞬でわずかに隙を見せたガリューを蹴り飛ばし、ストラーダを回収、キャロの元へと戻った。


「ありがとう、エリオ君」


お礼を言うキャロ。だが、


(今はそれよりやることがあるでしょ?)
(……!うん、そうだね!)


僕の念話で気が付いたのか、真剣な表情になったキャロは、


「私、アルザスの竜召喚士、管理局機動六課の魔導士キャロ・ル・ルシエ!」
「同じくエリオ・モンディアルと、飛竜フリードリヒ!」
「話を聞かせて!レリックの事も、お母さんの事も、私たち機動六課みんなが協力するから!!」
「……私は」


ようやく話を聞いてくれる、と思った時、


「あ~ら、だめですよ、ルーテシアお嬢様」
「クアットロ……」


一人の戦闘機人が通信で割り込んできた。


「こいつらは敵。話なんかしないでぶち殺せばいいんです。お嬢様にはこの後防衛ラインの突破やライフラインの破壊などやってもらうことがいーっぱいあるんですからね」
「でも、私……」


嫌な予感がする。この戦闘機人が何かとてつもなく非道なことを考えている、と言うのが直感で分かった。


「大丈夫ですよ~。お嬢様には、クアットロがとーっても素晴らしいプレゼントをあげますから、安心してください」
「え?……ううっ!」


突然苦しみだしたルーテシア…そして彼女の足元には戦闘機人がISを使用する際に現れる魔法陣が。
そして大量の召喚獣が現れた。


「さあ、お嬢様、そこにいるのはお嬢様の敵。そいつらをぶち殺さないとお母さんが目を覚ましませんよ~?」


僕の最悪の予想は当たった……ルーテシアは洗脳されたのだ。


「………インゼクト…地雷王…ガリュー……」
「ルーちゃん!」


キャロの呼びかけにも答えない。


「殺して……………こいつらを、殺してえええええ!!!!」


最悪の状況が生まれてしまった。


(エリオ君、どうしよう?)
(時間を稼いで。僕が作戦を考える!)
(うん!)


考えるんだ!あの人ならどうするか、憧れの槍使い(ランスさん)ならばどう切り抜けるかを!!


side チンク


「まさかまたあなたと戦うことになるとは思わなかったわ」
「同感だ。だが、今回も私が勝つ!」
「どうかしらね!!」


私の相手はまたしてもファースト。情報によれば衛宮士郎はゆりかごに向かっている。今回はサポートしてくれるのがオットーだけだが、それでも十分だ。


「IS発動!ランブルデトネイター!!」


12本のナイフを投擲、爆発させる。が、


「効かないわよ!」


無傷で切り抜けられ、こちらに迫られた。が、


「ナイフだけと思うな!」
「!?」


足元に転がっていた鉄パイプを爆発させる。おかげでまた距離が開いた。


「……近づけば私の、離れればあなたの領域、ってわけね」


ファーストがそんなことを言う。


「確かにそうだな。……だが!」


今度は16本投擲。


「近づかせなどせん!」


着弾し、爆発。確かにとらえたが……
油断せず、煙が張れるまで構えているが……


「いない!?どこへ………」


と、後ろからかすかなモーターの音が聞こえる。


「ここよ!」
「くっ!」


気づいていたおかげでギリギリ避けることが出来たが………


「やる、な……」
「あなたこそ……ね」


お互いに一層警戒を強めることになった。それに、こいつとわたしはほぼ互角。ならば先に増援が来た方が勝つ!そう思いオットーに通信をする。


(オットー、チンクだ。応援を頼みたい)
(チンク姉さま、正直それどころじゃない。幻術使いが思ってた以上に厄介でね、僕も今そっちにいるんだ。なるべく早めに倒すからなんとか耐えてて)


なるほど、それならば……


「逃げる気!?待ちなさい!」


移動を開始した私を追ってきた。そうだ、それでいい……
これで均衡は崩れるはずだ……



side アギト


「止まってください」


旦那と共に地上本部に向かっていると長髪の騎士とバッテンチビがいた。


「中央本部を落としに行かれるおつもりですか?元首都防衛隊、ゼスト・グランガイツ殿」
「……古い友人に、レジアスに会いに行くだけだ。……お前は?」
「本局機動六課所属、シグナム二等空尉です。前所属は首都防衛隊……あなたの、後輩です」
「……そうか」


しばしの沈黙。


「中将に会いに行くのは、復讐のため、ですか?」
「言葉では言い表せんよ。道を、開けてもらおう」
「言葉にしてもらわねば、譲れる道も譲れません!」


騎士が剣を抜く。その剣は……炎を纏っていた。


「……えっ?」
「どうした、アギト」


旦那に感づかれてしまったかもしれない。あの騎士が、アタシの理想のロードの条件に酷似しているかもしれない、と思ったことを。


「何でもねえよ!ごちゃごちゃと言うなんて騎士のすることじゃあねえ!」
「騎士だとかなんだとか、そんなことばかり気にしてるから戦うことになっちゃうんですよ!」


旦那はアタシと、騎士はバッテンチビとユニゾンする。


「行きます!」
「来い!」


そして二人は空を翔けた。 
 

 
後書き
今回はここまでになります。


シグナムたちは間にちょいちょいはさんでいく形を取ろうと思っています。


今回のオリジナル魔法


“キャプチャーシュート”
本編中の説明の通りの効果。訓練中に士郎が銃弾の後ろにバインドを隠して仕掛けてきたときに思い付いたもの。バインドを銃弾に込めればもっと効果的なのでは?と言うティアナの思いつき。
ランスですら初見では捕まるほどの初見殺し。
消費魔力はバインド+αくらいだが打つのに少し時間がかかるのが難点。


“オーディーン”
手とストラーダの先端に魔力をためて投擲。
紫電をまき散らして進むため、着弾点以外にも効果を発揮する。
難点はストラーダの回収。飛距離は出るが、遠ければ遠いほど回収の際のリスクも高くなる。



と、こんな感じです。


それでは~ 

 

二十八話~決戦――スカリエッティアジト

side フェイト


アジトに着くと、ガジェットの残骸の山のところにいたシスターシャッハが、


「お待ちしていました、フェイト執務官、ランス三等空尉」
「これはあんたが?」
「はい。ヴェロッサ査察官も手伝ってくださいましたが」


半呆れ顔のランス。恐らくは、“こんな暴力的なシスターがいるはずがない”とか考えてるんだろうな。


「それでは、突入しましょう。シスター、ランス。準備は?」
「問題ありません」
「さて、行くとしますか」



……………………………………………………


「なかなか、きついですね………」
「ええ。AMFがかなり濃いようです」
「………おい、二人とも。これははやてには内緒な」


ランスが急に真剣な表情に砕けた口調でそんなことを言うのでそのギャップに驚いていると、


「モード、リリース。機能、飛行サポート限定。バリアジャケット、解除」
「!?ランス三尉、何を!!」


一旦制服に戻ったランスは再び武装を纏う。一見すれば何も変わらないように見えるそれは………
英霊としての彼の本来の姿だった。


「さてと、それじゃ、久々にやりますかね」


そして、蒼き閃光が翔ける。時折紅が混じる芸術的な光景。時間にしてものの5秒もないそれが収まり、私たちの目の前に再びランスが現れると、


通路内にいた30はいたであろうⅢ型ガジェットがすべて爆ぜた。


「…………これが、英霊……」


その圧倒的な強さ、そして美しさに呆然となってしまう私たちに、


「下から!」


床から現れた戦闘機人への対処が遅れた。


(シスターシャッハ!)
(私は平気です!この戦闘機人は私が抑えます!お二人は先へ!!)
(……了解!)

私達は先を急いだ。



side スカリエッティ


「ふふふ、来たか。やはり素晴らしい。彼の能力。どうして太古の人間がここにいるのか、いろいろと興味はある」


だが………


「AMFをいとも簡単に無視するとは、それに魔力を使わずに破壊できるほどⅢ型はやわな作りはしていないのだがね………」


本当に彼はおもしろい。ぜひ実験材料にしたいものだ。



side フェイト


「なんだこりゃ?」


生体ポッドの並ぶ通路に来た時、ランスが不思議そうに聞いてきた。


「人体実験のために集められた人たちだよ。スカリエッティはこうやって人の命をもてあそぶ……!」
「なるほどな……」


会話をしていると、


「いらっしゃいましたか、フェイトお嬢様。ここに来た、という事は協力していただけるのですか?それとも……反逆ですか?」
「おい、フェイト。こいつら何言ってんだ?」
「それは「黙れ!わたしは犯罪者の逮捕に来ただけだ!」……」


ランスが私の生まれを軽蔑するとは思わない。だが、できる事なら知られたくはなかった。
だが、


「フェイト君の生まれについては私が説明して差し上げよう。私の作品と戦っているFの遺産と竜召喚士にもね」


通信で割り込んできたスカリエッティがそんな私の願いを壊す。


「スカリエッティ!」
「ほう。てめえが親玉か」
「そうだよ。衛宮ランス………いや、アルスターの大英雄、クー・フーリン」


この男、ランスの正体を……!?


「ほう?よく調べたじゃねえか」
「君には前々から興味があったのでね。調べさせてもらったよ。神と人の間に生まれた半人半神の英雄が彼女の生まれをどう思うのか気になってね」
「生まれだと?」
「そう、彼女は「やめろ!」私の考えたクローン人間作製プログラム『プロジェクトF』によって生み出された人造人間なのさ」


知られてしまった。こんな時に、こんな形で……!


「だからどうしたよ?」
「どういうことかね?」
「天才、とか言われてる割には理解が遅えな。生まれ何ざどうでもいい、って言ったんだよ」
「ほう?ほかでもない生まれに恵まれた君がそんなことを言うとはね」
「人の価値はどうやって生まれたかじゃねえ。そいつが何を思って、何のために、何をしたかが重要なんだ。俺は神の子だからって理由だけで英雄なんて呼ばれた覚えはねえ。騎士の誇りにかけてそれだけは言わせてもらう!」


ああ、なんて気高いのだろう。なんて真っ直ぐなのだろう。そして、なんて強いのだろうか。


「そういうことだ。クローンだとか、作られたとか、んなことはどうだっていい。お前は自分の誇りを持っているか?フェイト」


そんな彼だから、私は…………


「あるなら命令すればいい。その誇りを守るため、“私のために道を作れ”ってな。そうすればあのイカレ白衣のところまで行くのに邪魔する奴は俺が蹴散らしてやる。決めるのはお前だ。どうする?」


………そんなことは、決まっている。


「令呪を持って命じます。スカリエッティのところに行くために道を作って!」


最後の令呪。その魔力は私のソニックやライオットすらも越えるほどの莫大なものだった。


「了解だ!見せてやるよ!赤枝の騎士の誇りってやつを!!」



side トーレ


フェイトお嬢様が自身の手首を握りしめ、言葉を紡ぐと膨大な魔力が生じ、衛宮ランス、いや、クー・フーリンに流れ込んだ。
そして、


「先へ行く!お願い!」
「ああ!行って来い!!」


こちらへと向かってきた。


「行かせるか!セッテ!!」


セッテがブーメランブレードを投げつけるが、


「無粋なまねはよせ」


クー・フーリンはこともなげにブーメランブレードを掴み、握りつぶした。
その間にお嬢様は先へ行ってしまった。


「くっ!」
「戯れてやるよ、まとめて来い」
「……侮るな!」


いくら英雄と呼ばれた男とはいえ、姉妹の中でも上位の戦闘能力を誇る私とセッテ相手なのだ。余裕などないはず……!


「ライドインパルス!!」


ナンバーズ最速を誇る私の速度ならば!
一足で距離を詰め、拳を繰り出す。


「どこ狙ってんだ?」


確実に不意を突いたはずなのに私の拳は空を切る。
そしてその声は後ろから掛けられた。
振り向かずに蹴りを放ちながらセッテに念話を。


(こいつは速すぎる!セッテ、全力でいかねば負けるぞ!)
(姉さま!上です!!)


その言葉に上を見ると、上空から槍を振りかぶる奴の姿が。


「がっ!!」
「ま、殺さねえように加減はしてやる。部隊長からは捕えるように言われてっからよ」


完全に舐められている。


「セッテ!援護頼む!!」


そうして私は再び翔けた。



side フェイト


ついに辿り着いた。やっと、やっとここまで来た。


「ようこそ、フェイト・テスタロッサ」
「スカリエッティ…………」
「君と私は似ていると思わないか?」
「何を……!?」
「私は戦闘機人や人造魔導士を自分の目的のために利用している。君はあの子供たちとクー・フーリンを自分の目的のために育て、恩を売ってきたのだろう?自分に逆らわないように」
「………そんなことは!」
「ない、と言い切れるのかね?」


惑わされるな!そんなのは妄言だ!


「バルディッシュ!」
[yes,sir.]


魔力弾を放つが、障壁を張られて防がれる。


「ふふふ、そうやって激情に身を任せるところは実に母親に似ているね。だからこんな簡単に引っかかる」


スカリエッティが右手を振るうと赤い魔力の糸が現れて私を拘束した。


「さて、これで身動きはとれまい。君にも被験者になってもらおうか。フフフフフ、ハーッハッハッは!」


ここまで来たのに……ゴメンね。エリオ、キャロ。六課の皆……それに、私のために戦ってくれた誇り高き青い騎士。
AMFで抵抗出来ない私は目を閉じて大人しくすることしか出来なかった。 
 

 
後書き
スカさんアジト組です。

フェイトがピンチにしかなってない気がする……

一応見せ場は作るつもりですが……

アンケートの方も大分票が集まってきましたので次の話の後書きで中間発表を行います!

それでは~ 

 

二十九話~決戦――ゆりかご

 
前書き
お待たせしました。

時間かかっただけあって今回は長めです。

それではどうぞ


 

 
side 士郎


ガジェットを殲滅しつつヴィータとなのはからの連絡を待つ。と、ヴィータから通信が入った。


(突入口が見つかったらしい。お前の目ならあたしたちが見えるだろ?ここまで来てくれ)
(ああ、了解した)


ワーカーをブレイドモードにし、道中落とせるだけのガジェットを落としながらなのはたちの元へと向かう。


「くっ、こんなところまでAMFが………」


そこへたどり着いたとき突入隊の一人がそんな言葉を漏らしていた。


「状況は?」


なのはに問うと、


「思った以上にAMFが強くてゆりかごの壁が破れないんだ」
「なるほどな………」


AMFは魔導師の天敵ともいえるものだ。だが、魔術師(・・・)にとっては何ら問題ない。
魔術師にとって魔力は結合するものではなく、変換するもの。大源(マナ)が使えなくとも小源(オド)がある。だからこそAMFの影響などあってないようなものなのだ。


強化、開始(トレース・オン)


ワーカーに強化の魔術をかける。ランサーがよくやっていたので効果は折り紙つきだ。


「どいていろ。私がやる」
「衛宮三尉!?」


魔力弾を放っている隊員たちをどかし、壁を一閃。
壁は簡単に崩れ去った。


「なのは、ヴィータ!突入するぞ!」
「うん!」
「おお!」


待っていろ、ヴィヴィオ……!



side なのは


「スターズ1,2,5ゆりかご内部に突入!」


中へ入ると、飛行魔法がキャンセルされた。


「内部空間全部にAMF!?しかも今までとは桁違いの濃度……」
「仕方がない……少し揺れるが我慢してくれ、二人とも」


飛行魔法がキャンセルされた私とヴィータちゃんを抱えて壁を蹴り綺麗に着地する士郎君。


「ったくよ、相変わらずふざけた運動神経だな」
「そんなことより、これはまずいぞ」
「ああ。わかってるよ」


そう。このAMF濃度では魔力消費が普段の3倍は必要と思われる。
これでは突入隊は相当な高ランク魔導士しか入ってこられない。


「なのは、ヴィータ。飛行魔法はなるべく使うな」
「おい!じゃあどうやって移動する気だよ!!」
「安心しろ。手はある。強化、開始(トレース・オン)


士郎君が私たちに触れ、言葉を紡ぐと体が異様に軽くなった。
この感覚はおそらく………


「身体強化……だね?」
「ああ。察しが良くて助かるよ、なのは。消耗を抑えるため、走って移動しよう」
「なるほどな。確かにこれだけ体が軽けりゃ飛ぶのと同じくらいの速さは出せそうだ」


AMFが濃すぎるため、突入隊の面々にはAAランク以下の隊員は入ってこないように伝えると、私たちは先を急いだ。



side ヴィータ


「すっげえな………」


士郎は手にした双剣……干将莫耶……だっけか?を使って次々ガジェットを破壊していく。
正直なところ、万能すぎだ。チーム戦だったらどのポジションだろうとこなしてしまう、と思えるほどに。そんな時に本部から通信が。


「玉座の間と駆動炉の位置、判明しました!」



示された駆動炉と玉座の間はそれぞれ反対方向にある。ここは……


「別行動を取ろう」
「ヴィータちゃん!?」
「それしかないだろうな」
「士郎君まで!?」


なのはは反対のようだが、士郎は賛成している。


「でもよ、駆動炉を止めるだけじゃゆりかごは止まらねえかもしれねえ。王座の間のヴィヴィオも止めないとゆりかごは止まらないかもしれねえんだ。それに、時間がない。別行動を取るしかねえだろ……!」


しばらく考えたなのはは


「わかった。私が一人でヴィヴィオのところに行く」
「なのは!?何を……!」
「私はなのはの意見に賛成だ」
「士郎!お前まで何言ってんだよ!?」


どうしてなのはが一人で行かなきゃなんねえんだよ……!


「私にはまだブラスターモードがあるし、ピンチになってもこれがある」
「令呪か……」
「それに、さっきの通信でギリギリ届くレベルのここじゃあ念話は届かない。だけど私と士郎君はパスによる念話が可能。だから私が単独行動をするの」


なのはは意思を固めた顔だ。ここは……


「わかった。さっさと片を付けてそっちに向かうからな!」


そうしてあたしたちは別行動を開始した。


side なのは


「行けそう?レイジングハート」
[運用にかかる魔力が桁外れに多いですが、問題ありません]
「OK。なら短期決戦と行こうか!レイジングハート、A・C・Sドライバー!!」
[all right.my muster.]


ガジェットを叩き潰しながら進む途中、私は思い出していた。



………………………………………………………………


「そうですか……」
「ええ。ですからあの子の本当の両親は……」
「もういないんですよね……」


シスターシャッハから聞いた話。
ヴィヴィオのオリジナルは300年前の古代ベルカの人物、と判明した。


「それにしても、本当に懐かれていますね。このままご自分の子に?」
「……本当に、私でいいのか不安になるときがあります。今は衛宮士郎三尉にも手伝っていただいているので何とかなっていますが、私は自分の事しか見えていないところがありますから。いい母親になれるのか、本当にあの子の母親になれるのか、まだ不安なんです」


そう。士郎君が支えてくれているから。私は何とかヴィヴィオの母でいられた。もし彼と離れたら?一人でこの子を育ててあげられるのだろうか?


「ママ……」
「どうしたの?」
「かなしいかおしてたから……」


生まれがどうであれ、こんなにも優しい子なのだ。幸せになってほしい。


「ヴィヴィオのおべんとう、たべる?パパのごはんはげんきがでるよ?」
「……大丈夫。ヴィヴィオが元気ならママも元気だから。ね?」
「うん!」



…………………………………………………………………


もうすぐ………!すぐに助けに行くからね、待っててヴィヴィオ……!



side クアットロ


やはりおかしい。想定よりも明らかに粘られている。そんな状況に苛立ち始めた時、ディエチちゃんから声をかけられた。


「正直な感想言ってもいい?」
「ご自由に」
「この作戦、あんまり気が進まない」


……やっぱりこの子もつまらない。わかっていない。


「どうして?」
「こんな小さい子どもを使って、こんな大きな船を動かして、目的が技術者の復讐、だなんて……」
「ああ、それはドクターの出鱈目。舌先三寸の大嘘よ」
「そうなの?」
「ドクターの目的は最初から一つ。生命操作技術の完全な完成。このゆりかごはそのための船」
「そうだとしても……やっぱり、この子は関係ないんじゃないか、って思うよ……こんなに弱くて、こんなに小さいんだから……」
「姿を見る前なら平然と引き金を引けたのに、ねぇ?」
「……ごめん、気の迷いだ。与えられた任務はちゃんとこなすよ」


そう言って王座の間から出ていった。本当にバカな子。あなたもチンクや
セインと同じでつまらない子なのね。


「小さい?弱々しい?そういう虫みたいな命を弄ぶのって、最高に楽しいじゃないの!」


side ディエチ


今、このゆりかごにあの子の母親と父親が乗り込んで来ている。
………あの子を助けるために。
もうすぐあの子の母親がここに来る。


「あなたに恨みはないけどここで落とす」


砲撃をチャージし、彼女が通路に入ってきた瞬間に放った。


「IS、ヘヴィバレル」
「エクセリオン、バスター!!」


お互いの砲撃が均衡する。チャージなしの上、このAMF状況下でここまで……


「ブラスターモード、リミット1、リリース!!」
「!!!」


威力が跳ね上がった!?


「ブレイク、シュート!!」


押し込まれ、砲撃の直撃を受ける。


「何て威力、本当に人間……?」
「あなたを、拘束します。ここで大人しくしていてください」


倒れている私にバインドをかけ、彼女は飛び去って行った。


side ヴィータ


「これなら余裕だな」
「気を抜くな。まだ仕掛けて来るかも知れんぞ」
「んなことねー「ヴィータ!!」えっ?」


突然士郎があたしに剣を投げてきた。
その剣はあたしに投げられたものではなかった。
あたしの頭を越え、後ろにいた何かに突き刺さる。
その後ろにいたナニカは………


「こいつは………!」


あのときなのはを襲い、撃墜したアンノウンだった。


「許さねえ、許さねええええっ!!」
「落ち着け!目的を忘れるな!!」


士郎がナニカをイッテいる。ダケドソンナコトハカンケイナイ。
壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊すコワスコワスコワスコワス壊す壊す壊す壊すコワスコワスコワスコワス壊す壊す壊す壊す!!!
一体残らずぶち壊してやる!!


「ヴィータ!!」
「うるせぇ!!」


何も聞こえない。あたしを支配するのは憎悪。ただこいつらを叩き潰すことだけ。


天の鎖(エルキドゥ)!!」
「!?」


ナニカに捕らわれた。動きが取れない。暴れるあたしの耳に力強い声が響いた。



「―――鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎ むけつにしてばんじゃく )


あたしは前を見た。白と黒の双剣が空中を舞っていた。


「―――心技、泰山ニ至リ(ちから やまをぬき)


その光景に思わず息を呑む。双剣は2組に増えた。


「―――心技 黄河ヲ渡ル(つるぎ みずをわかつ)


剣を投げた男を見る。その手には3組目の双剣が。


「 ―――唯名 別天ニ納メ。(せいめい りきゅうにとどき)


それを投げた彼の手に現れた4組目の剣。その刀身が見る見るうちに肥大化する。


「 ―――両雄、共ニ命ヲ別ツ……!(われら ともにてんをいだかず)


彼は両手を広げ、駆ける。そして、双剣の投擲により中央に集められていたアンノウンが………その手の剣により10体ほど破壊された。そして、彼は一言呟いた。


壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)


その一言が放たれると、アンノウンを囲んでいた3組の双剣が一斉に爆発する。
煙が張れると、30は居たであろうアンノウンが一体残らず残骸と化していた。


「…………」


あたしはただ呆然とその光景を眺める。と、拘束が解除された。


「落ち着いたか?」


彼、士郎に声をかけられた。


「あ、ああ……………」
「では行くぞ。駆動炉の破壊は君の仕事。それまでは力とカートリッジは温存してくれよ」


それだけ言うと、再び彼は駆けていく。あたしもそのあとに続いた。



side なのは


ようやく着いた王座の間。ここにヴィヴィオが………!


「ディバイーン、バスター!!」


砲撃で扉を撃ち抜く。ここまでの消費はかなり来ていたが、そんな弱音は言っていられない。


「いらっしゃーい、王座の間へようこそ」


私を出迎えたのは玉座に縛り付けられたヴィヴィオと、眼鏡をかけた戦闘機人。


「……大規模騒乱罪の現行犯で、貴方を逮捕します。速やかに武装の解除を」
「……フフ、娘のピンチにも顔色一つ変えずにお仕事ですか?いいですね~。その悪魔じみた正義感!」


にやにやといやらしい笑みを浮かべる彼女はヴィヴィオに視線を移す。


「でもぉ、これでもまだ冷静でいられますかぁ~?」


彼女が指を鳴らすと、それに反応したのか、玉座から電撃が奔った。


「う、う、あああ!!!」
「ヴィヴィオ!!」
「あらあら必死になっちゃって、ならこれはどうかしら~?」


彼女の手がヴィヴィオに近づく。その様子を視界にとらえた私は即座に砲撃を放った。
彼女は砲撃に触れると霧散するように消えた。この現象には覚えがある。ここにいた彼女は……幻影。
と、唐突に空中にディスプレイが浮かび上がった。


「ふふ、いいこと教えてあげる。あの日、輸送トラックとガジェットを破壊したのはこの子なの。あの時の白髪頭が防いだディエチの砲撃。あのくらいじゃあこの子はびくともしない。それが、古代ベルカ王族の固有スキル『聖王の鎧』なのよ~」


なおも勝ち誇った笑みを浮かべ、彼女は話し続ける。


「レリックとの融合を得て、彼女はその力を完全に発揮する。古代ベルカの王族たちがその身を作り変えて完成させたレリックウェポンとしての力を!」


彼女が話を終えたと同時、虹色の閃光がヴィヴィオから放たれる。


「ママぁ!」
「ヴィヴィオ!!」


近づきたいが、あまりの魔力の密度にその場に踏みとどまるのが精一杯だった。


「すぐに完成しますよ。私たちの王が。ゆりかごの力を得て、無限の力を得た戦士が!!」
「いやだ、ママ、ママぁ!!!」
「ヴィヴィオ……ヴィヴィオ!!!」


周囲を覆っていた魔力がヴィヴィオの元へ収束する。その際に一段と強い閃光が奔った。
光が納まると―――


「うう、ああああ!!!!!!」


ヴィヴィオが叫びだした。その体は見る見るうちに成長していく。
そして……………


「………あなたがヴィヴィオのママをどこかに拐った……」


あまり私と変わらないくらいまで成長したヴィヴィオが放った最初の一言。それは明らかに私への憎悪を込めた一言だった。




side ヴィヴィオ


いたい、いたい、いたい、いたい!!
いやだ、いやだいやだいやだ!!
たすけて、ママ………


―――ほら、いつまで泣いてるんですか?―――


だれ?このこえは……?


―――陛下のママが助けて、って呼んでいますよ?―――


ママが?


―――陛下のママを拐って行った悪い悪魔がそこにいます。そいつを倒して本当のママを助けに行きましょう?―――


この人が……わたしのママを?


―――陛下の体にはそのための力があります―――


私の……力?


―――心のままに、思いのままにその力を解放して―――


ママを助ける―――力!!


「う………」


私の中のナニカが目覚める。それは激しい痛みがあったが、ママを助けるため、そんなものは耐える。


「うう、ああああ!!!!!!」


痛いけど、耐える。耐える耐える耐える耐える耐える耐える!!
だって、ママはもっと苦しんでるはずだから。
そして、私は耐えきった。


「………あなたがヴィヴィオのママをどこかに拐った……」
「違うよ!?私だよ!なのはママだよ!!」


この人は悪魔。ママを拐った悪者。こうやって私も連れ去ろうとしている。


「嘘だ……私のママは、あなたじゃない!」
「ヴィヴィオ……」


全力を込めて殴りかかる。悪魔はシールドで防いだ。


「もうすぐパパも来る!ヴィヴィオを助けに来るから!」


その言葉を聞いて、私は固まった。


………パパ?私には、パパがいた?
考えた私の頭の中に薄ぼんやりとした記憶があった。


……………………………………………………


―――私を見て、笑っている。茶色い制服を着た190㎝位の人。この人が、パパ?


―――記憶に靄がかかっているようだ。顔が思い出せない。でも、私のことを大切に、本当に大切に思ってくれていることだけはわかっている。


……………………………………………………


―――パパも、その女に拐われたんですよ。―――


脳に直接語りかけられたその一言で正気に戻った。
正気に戻った私は自分の置かれている状況を確認した。
………四肢をバインドで固定され、魔力の籠のようなものに入れられていた。


「こんなの、聞かない!!」


力任せにバインドを引きちぎり、籠を破壊する。


「許さない……!あなたは、ママを拐っただけじゃなく、パパまで……!」


こいつを倒して、早くママとパパを助けにいくんだ……!!




side なのは


どうしよう。ヴィヴィオは話を聞いてくれない。先ほど父親の話をしたときはわずかに動きを止めたが、最初の一回目だけだった。
シールドやプロテクション、バインドを駆使してしのいではいるが、この高濃度AMF空間でやれることはひとつだけ………!
ぼんやりと体の中に感じる感覚を頼りに回路(パス)を探し当てる。
そのまま回路に意思を流し込むようなイメージで念を送った。


(……なのはか?)


無事に繋がった。並列思考(マルチタスク)を使い、念話と戦闘で思考を使い分けておく。


(うん。こっちは王座の間に着いたけど、洗脳されたヴィヴィオと戦闘になっちゃった)
(なるほど……洗脳ならば破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)で解けるはずだ。もうすぐ駆動炉へ到達する。そのタイミングでこちらから念話を送るから令呪で召喚をしてくれ)
(了解!)
(それでは………何!?)


念話を切ろうとした時、少し驚いた士郎君の声。


(どうしたの!?)
(………すまない。もう少し頑張ってくれ。大量のガジェットが駆動炉前で待ち構えていた)
(そう……。10分くらいなら持たせられる、と思うけど……)
(わかった。そのくらいで何とかしよう。それではな)


士郎君はそこで念話を切った。
念話中は誘導弾を使用し、上手く近づかせないようにしていたが、それも限界だった。
誘導弾を撃ち落としたヴィヴィオがこちらへ向かってくる。
咄嗟にシールドを張って受け止めるが、弾き飛ばされてしまった。


「はぁ、はぁ、っ!!」


出力が足りない。もっと、もっと!!


「レイジングハート」
[all right.limit break.]
「ブラスター2!!」


ブラスターシステムのレベルを引き上げ、士郎君を待つ。今の私がやれるのはそれだけだ。
ブラスター3ならばおそらく私一人でもヴィヴィオを抑えられる。だが、AMFの事を考えると、確率は高くない。だからこの場を凌ぐことだけを考える。
私は一人で戦っているわけではないのだから。 
 

 
後書き
ようやく前半戦終了です。


次回から後半戦に入ります。


そして、人気投票の中間結果発表です!!(=^・^=)





1位 衛宮家
2位 ランス&フェイト
3位 テスタロッサ家(エリオ、キャロ含む)



となっております。アンケートの方は本編終了まで受け付けますのでまだ送られてない方はぜひ投票お願いします!!
投票方法は感想版に書き込むor私に直接メッセージを送るのどちらかでお願いします。


それでは~!(^^)!
 

 

三十話~決着――地上

side ギンガ


いきなり逃げ出した戦闘機人のあとを追いかけて行くと、その先にいたのは……


「スバル!?」
「え?ギン姉!」


スバルと、赤い髪の戦闘機人。


「ノーヴェ。ここは2対2だ。やれるか?」
「あったりめーよ!チンク姉と一緒ならどんな奴にだって負けねえ!」
「ふ、頼もしいな、ではいくぞ!!」


どうやら彼女の目的はこれだったようだ。だが、チーム戦ならばこちらも!!


「組んで戦うのは久しぶりね、スバル」
「ギン姉と一緒……絶対に勝つよ!」
「いきましょう!」
「おう!」


私はスバルと同時に駆け出した。




side ティアナ


「ちょっと不味いわね……」


物陰に隠れ、状況を整理する。


敵は三人。近接系、オールラウンダー、遠距離支援系。
どの距離でも対応出来るメンバーが相手だ。それはつまり……


「絶対絶命ね」


そんな状況だと言うのに、私は笑っている。理由は単純。


「まるで今までの訓練がこのためにあったみたいね」


士郎さんとの模擬戦。その再現のような状況だったからだ。


「あれ、上手くいくかわからないけど、やるしかないわね、クロスミラージュ」
[Yes.]


対士郎さん用に開発した切り札。ここでお披露目になるとはねぇ……


「隠れても無駄ッスよ~。あんたの場所はもうわかってるッス!!」


さてと、勝利の布石を打ちに行きますか!




side エリオ


「フェイトさん……」


スカリエッティの通信でフェイトさんの状況がわかった。そして、僕の憧れの存在が何者なのかも。


「大昔の、英雄……」


いつか言っていた。一個大隊を一人で足止めした、と。
そして見事な状況判断。それは全て本物の戦場で命のやり取りをして来た英雄としての物だったのだ。
あの人がついているのだ。フェイトさんは大丈夫。
だから僕はキャロを守り、ルーを助けることだけ考えればいいんだ。


「さあ、いこう。ストラーダ!」


僕は駆ける。大切な人を守るため。あの人との誓いを果たすために。




side チンク


先に仕掛けてきたのはあちらだ。ファーストが左方向から、セカンドが右方向から。


「ノーヴェ、左だ!」


ファーストは小技を使いながら隙を見つけて一撃を叩き込むタイプ。ノーヴェを向かわせればしばらく状況は均衡するはず。対してセカンドは一撃一撃が重いパワーファイター。弾幕で押しとどめておき、ファーストを先に倒す。


「くうっ…………」


防御しながら苦悶の声を漏らすセカンド。このまま押しとどめる!


(ノーヴェ、3数えたら一旦引いてこい)
(おうよ!)


ファーストの方へ丁度ギリギリノーヴェを巻き込まないタイミングで爆発するようにナイフを30個投擲。


「ISランブルデトネイター!」


ナイフが一斉に爆発する。咄嗟にプロテクションを張ったファーストの姿が見えたが、そんな急ごしらえのプロテクションでは対して変わるまい。案の定、煙が張れると、


「ギン姉、ギン姉!!」


ファーストはその場で血を流して倒れていた。


「このまま決めるぞ!ノーヴェ!!」
「おう!」


戦局は変わった。このような形になったのは予定外だが、根幹は何も変わらない。
勝つのは、私達だ。




side ウェンディ


「そらそらそら~!!」


3対1になった途端、幻影攻撃に切り替えてきたオレンジ頭。
私とオットーで数を減らし、ディードが切り込む。完璧なコンビネーションッス!!


「何だ……?」
「どうしたッスか?オットー」


何を思ったのか知らないけど、オットーがいきなり困った顔になった。


「いや、気のせいだ………」
「ふーん」


ま、どうせ魔力切れで幻影出せなくなる前にオレンジ頭が増援を呼ぶ準備でもしてるとでも思っただけッスよね。
おっと。また幻影が現れた。撃ち落とす。


「いい加減あきらめたらどうッスか~?」
「ウェンディ、油断しちゃだめよ」


ディードに怒られた。


「へいへい、ちゅーいしておくッスよ~」
「………来た!」


ディードの声に振り向いた先にはまた幻影。撃ち落とす。


「ほ~んと、バカの一つ覚えっすね~」
「馬鹿はウェンディでしょ」
「何おぅ!?オットー、今のは聞き捨てならねえッス!!」
「……二人とも、戦闘中」


こ、こいつらといると疲れるッス………
この時の私達はまだ知らない。幻術使いの掌の上で踊らされていたことを。




side エリオ


「もうやめようよ……こんなことしても意味ないよ……」
「あなた達にはわからない……優しくしてくれる人がいて、友達がいて……私の近くにいる人たちは皆いなくなっちゃう。私を置いてきぼりにして……一人は嫌だ……寂しいのは、嫌だああああああ!!!!!」


ルーが叫ぶと同時に、今までとは比べ物にならない魔力が溢れだし、ひときわ大きな召喚魔法陣が現れた。
そこから出てきたのは、巨大……まるでビルのような大きさの召喚獣だった。


「地雷王……ガリュー……白天王……殺して。全部壊してええええええ!!!」


あのサイズは僕たちでは押さえられない。不味い……


「大丈夫。エリオ君。私に任せて」


だがキャロは強い意志をその瞳に宿してルーを見据えていた。
そんなキャロからもひときわ大きな召喚魔法陣が現れる。


「天地貫く業火の咆哮、遥けき大地の永遠の護り手、我が元に来よ、黒き炎の大地の守護者。竜騎招来、天地轟鳴、来よ、ヴォルテール!」


竜騎召喚。キャロの最大の切り札だ。ルーの白天王と同じ位のサイズを誇る巨大な竜ヴォルテール。


「殺したって、壊したって、あなたの不幸がなくなることはない。それ以上に、もっともっと不幸になっちゃうよ。だから止める。私は、あなたを助ける!!」


ルーに向かってキャロが強く言い放った。だから僕も続く。


「ガリュー。君だってこんなことしたくないんでしょ?ルーにもっと幸せになってほしいんでしょ?だったら僕たちを手伝って」


ガリューは俯いて、そして首を横に振った。


「………そう。だったら僕は君を止める。僕の、すべてをかけて!!」




side ルーテシア


なにもわからない。分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない。
私は……なんでこんなことをしてるの?
わからないけど、憎い。
何が憎いのかもわからないけど、憎い。
だから壊す。地雷王も、インゼクトも、ガリューも、白天王もいる。全部壊せる。この子たちがいれば、全部。




…………………………そのあとには、何が残る?





そんなこと、どうでもいい。とにかく壊してしまえばいいんだ。





…………………フリード、ブラストレイン!!



いたい。なにかをくらったみたいだ。いしきが、うすれていく………。



………………ルーちゃん!!



さいごにきこえたのは、わたしをよぶだれかのこえだった。




side エリオ


「はあああああああああああ!!」
「…………………!!!!」


ガリューの拳とストラーダがぶつかり合う。


「君がルーを大切に思ってるのは知ってる。でも!!主が間違っているのならそれを正すのも君の役目なんだ!!」
「………」


僕はフェイトさんに助けてもらって、八つ当たりを繰り返していた自分が間違っていることを教えてもらえた。だから今の僕がいる。……きっと、ルーにはいなかったんだ。大切なことを教えてくれる人が、間違いを正してくれる人が。


「でも、まだやり直せるんだ!!」
「……………」


この一撃で、決める。


「雷槍……一閃!!」


ストラーダを振りかぶり、渾身の力で降り下ろす。
ガリューが防御するより先にその身を捉えた。


「キャロ……」


ガリューは気絶した。早くキャロの元へ戻ろう。
そう思った時だった。


「通信………誰からだろう?」


その通信を繋ぐ。その相手から伝えられたのは、驚くべきことだった。




side キャロ


「ああああああああああああああ!!!」


発狂しながら地雷王を仕向けてくるルーちゃん。こんなの見てられないよ………。


「フリード、ブラストレイン!!」


ブーストしたフリードのブレスで地雷王の攻撃を打ち消す。その余波を喰らってルーちゃんも気絶したみたい。


「ルーちゃん!!」


倒れたルーちゃんを抱き起こす。
深いダメージはなかったみたい。よかった……。
でも、問題はそのあとにあった。


「キャロ、無事!?」


エリオ君があわてて駆け寄ってくる。


「エリオ君、いったい何が……?」
「フェイトさんが……ランスさんが……!」
「落ち着いて!何があったのか話して」
「ご、ごめんね」


そうしてエリオ君は語りだす。


「ガリューを倒した後、またスカリエッティから通信が来たんだ」
「え………!」
「アルハザードの技術で強化したAMFで二人を捕えて実験材料にする……そう、言ってきた」
「今すぐ教えないと!!」


私はフェイトさんに、エリオ君はランスさんに通信を繋いだ。が、フェイトさんは出なかった。


「ランスさん!!聞いてください!!」
「お?どうしたエリオ」


ランスさんには通信がつながったようで、エリオ君はランスさんにスカリエッティが言っていたことを伝えた。そうしてきた返事は……


「そうか。エリオ、お前は市街地から動くな」


予想とは全く違うものだった。


「え……?」
「これはお前をおびき寄せるための罠だ。だから来るな。俺が何とかする」
「でも!!」
「お前は誰を守りたいって俺に言った?そいつの傍から離れるな。フェイトの事は心配するな。あいつの騎士はこの俺だぜ?」


ランスさんの言葉はよくわからなかったが、エリオ君はわかったらしく、


「わかりました。お気をつけて」
「バカヤロー。俺にそれを言うには20年はえーぞ」


そんな受け答えをしていた。


「キャロ」


通信を終えたエリオ君は私を見つめ、


「ルーを救護班のところへ連れて行って、防衛ラインの援護に入ろう」
「いいの………?」
「うん。あの人の背中はまだまだ遠いってことがよくわかったよ。だから僕たちにできることをしよう」
「うん!」


エリオ君は絶対にランスさんが勝つことを信じていた。だから私も信じる。二人が無事に帰ってくることを。




side ティアナ


「よし、あと一か所……!!」


廃ビルの中、私は着々と準備を進めていた。これは本来チーム戦を想定した技だが、個人でも可能だ。シルエットを使っているのは囮役の代用。そのためどうしても威力が低下してしまうが、このレベルの相手を倒すには十分だ。


「待て!!何かおかしい!!」


だが、相手の司令塔っぽいやつは最後の最後で気づいたみたいだ。
………ちょっとだけ、まずいかな?


「どういうことっすか?オットー」
「巧妙に隠されていたから気づけなかったけど、あの幻影は僕たちを囲むように(・・・・・)出されていた。これが意味するのは………」
「広域殲滅の、準備………?」
「恐らく。このままじゃまずい。幻影にはもう攻撃するな!!それと、防御の準備をしておくように!!」
「「了解!!」」


………近いけど、はずれね。幻影に攻撃しなくても仕込みはできる。幻影を最後の地点に出現させる。攻撃はされなかった。問題なく仕込みも完了。これで、終わりよ!!


「起動!!」


仕掛けてあった魔法陣が起動し、一斉に魔力弾を放った。


「来たぞ!!……思ったより弱いな。迎撃を……!?」


迎撃を仕掛けるのが遅すぎね。ま、広域殲滅で蹴散らさなきゃいけないんでどの道無理でしょうけど。


………私がやっていたのはキャプチャーシュート・スプレッドスタイルという広域捕縛魔法だ。
キャプチャーシュートのスフィアを生み出す魔法陣を周囲に仕掛け、一斉起動。上下左右から広がりながら迫ってくるチェーンバインドの網に捕えられる、という技だ。この技は性質上自動的に多重にバインドがかかるため、抜け出すのもかなり難しい。


「広域捕獲、なんて………!」
「そうよ」


私は姿をさらす。


「仕掛けてるのは広域殲滅と思ったかしら?ごめんなさいね。相手の裏の裏をかく。戦術家の常識でしょう?私はこれ以上戦う必要はないと思うわ。大人しく投降してちょうだい。そうすればあなたたちの罪はそこまで重くはならないから」
「誰が………!」
「よせ、ウェンディ」


反発してきたあの一番アホっぽい子を司令塔の子がたしなめた。


「このバインド、四重五重………、いや、もっと多重に重ねて掛けてある。僕らのバインドブレイクで敗れる物じゃないよ」
「それじゃあ……」
「術者を倒せば解ける」


そういっていきなりスフィアを展開、撃ってきた。


「これで解け……ない!?」
「ええ。あなたの考えは合ってるわよ」
「何で無傷……!?」


あの攻撃を避けられたのは、咄嗟に士郎さんが良くやっていた剣の刀身で魔力弾を受け流す、と言うのをダガーブレイドで行ったためだ。


「でも、そのくらいの不意打ちは予想してるわ。せっかく捕まえても倒されちゃ元も子もないからね」
「くっ………」
「これ以上は無意味でしょう?まだやるって言うなら至近距離で砲撃ぶち込むわよ♪」


とってもいい笑顔で警告してあげた。ちなみに砲撃はブラフである。だますのも戦術のうちだからね。


「……降参、するよ」


これで終了。後は防衛ラインの援護にでもまわりましょうか。




side スバル


「うっ、この!」
「効かねえよ!」


ギン姉がやられ、2対1に。堪えてはいるが、このままじゃ……!


「ここまでだな。よく粘ったが私たちの方が上だ。あそこで寝ているファーストともども連れ帰るとしよう」


どうしようも、ないの………?
もう……だめなのかな、ティア……。


「沈みな!!」


呆然とするあたしに殴り掛かってくるノーヴェ。


(スバル!!左よ!!)
(え?)


言われたとおりに左に避けると、そこには……


「はあああああ!!」


こちらに向かってくるギン姉がいた。


「なっ!?うわああああああ!!」


ノーヴェが吹き飛ぶ。


「貴様……!何時の間に目覚めていた!!」
「そもそも気絶なんてしてないわよ」
「え?」


ウソ……


「どういうこと!?」
「敵を騙すにはまず味方から、よ」


よかった……。


「で、これで形勢逆転だけど、どうするのかしら?」


いつの間にかノーヴェはバインドで縛られていた。いつやったんだろう………


「私一人でもお前たち位………」
「武器がなくても倒せる、と?」


そう言いながらギン姉が取り出したのはあの戦闘機人の子が使っていたナイフ。


「い、いつの間に!?」
「あなたが私の傍に来るたびにちょっとずつね」


………ギン姉、いつの間にそんなことを……


「負けを認める?」
「ま、まだだ!」
「これでも?」


ギン姉がそう言いながら指を鳴らすと、


「なに!?」
「設置型バインド。仕掛けておいたのよ」


我が姉ながら卑怯な気が……


「それにしても……流石八神部隊長の作戦ね。大成功よ」


部隊長!?ギン姉になに教えたんですか!?


「さて、防衛ラインの援護に行くわよ、スバル」
「え、ええ!?この子たち……あれ?」


さっきまであの子たちがいたところを見ても、誰もいなかった。


「あの子たちは輸送ヘリのとこに転送したわよ」
「はぁ!?」
「すごいわねー。八神部隊長特製『システムマサキ』」
「なにそれ?」


ギン姉が持っていたのは真ん中にボタンの付いた上部が赤で下部が白い小さな球体。


「このボタンを押すと、光線が出てきてその光線の当たった対象が指定のカプセルまで転送されるって言う代物よ。部隊長の趣味らしいんだけど、犯罪者を捕まえる時役に立った、って言ってらしたから借りておいたのよ」


部隊長って何でもアリだね………。とりあえず解決、でいいのかな??




side ゼスト


「はあああああああああ!!」
「うおおおおおおおおお!!」


目の前の騎士、シグナムと打ち合う。


「飛竜、一閃!!」


鞭のように変化させた剣で攻撃してくる。回避するという選択肢は俺にはなかった。
懐まで一気に飛び込み、一閃。


「くっ、うわあああああ!!」


咄嗟に鞘で防御したようだが、威力に負けたようで、落ちていく。
その隙に本部へと向かった。
もう少しだ。レジアス………。お前は今、何を思っているのだ? 
 

 
後書き
今回のオリジナル魔法

・雷槍一閃


電気を纏ったストラーダで斬る。という単純なもの。


・キャプチャーシュート・スプレッドスタイル


本編中の説明の通り。本来は囮役が敵を引き付けている間に魔法陣を仕掛けるチーム戦用の技。




書いてて思った。ティアナがはやて化しつつある、と………


「至近距離から砲撃ぶち込むわよ♪」


オレンジの悪魔誕生か……!?


そしてギンガも変な方向へ………おもにはやてさんのせいで。
シリアスばっか書いてたせいで変になったみたいだ。反省はしない。


と、あんまり締まらない後書きになりましたが、許してください。


次話も近いうちに投稿したいと思います。


それでは~ 

 

三十一話~決着――スカリエッティアジト

side フェイト


スカリエッティが近づいて来る。AMFを発生させる魔力糸の影響で魔法が使えない。


「どうかね?衛宮士郎とクー・フーリンの対策に完成させた最新のAMFは?魔法がほぼ使えないだろう?」


悔しいがスカリエッティの言う通りだ。魔法が使えないだけで、何て無力……


(諦めんのか?)


諦めたくない。ここまで来たのに……!ずっと、ずっと探し続けてきたのに!
だけど、私は無力だ……


(力があるかないかじゃねえだろ?お前はどうしたいんだよ?)


私は……スカリエッティを捕まえて、然るべき手段を用いて罪を償わせたい。
でも、どうしようもない………


(おいおい、弱気だな?いつもの威勢はどこいった?人のことスケベとか言いながら追いかけ回してるやつの発言とは思えねえな)


……そんなこといわれても、どうすればいいの?


(お前の道を行けばいい。迷ったら俺を頼れ。エリオやキャロもついてる。お前は一人じゃねえんだぞ?)


いいのかな?迷惑じゃない?


(わけわかんねーこと言ってんじゃねえよ。生涯一人とかアホなことやったのはどこぞのバカぐれーだぞ?普通は誰かに支えられて生きてるんだ。それでいいじゃねーか。どうしてもって言うなら俺がずっと傍にいてやるよ)


………今言う事?それ。……ほんと、ずるいんだから………


「さあ、君にはプロジェクトFの最初の成功例として私の夢の完成を見届けてもらおうか!」


スカリエッティは高笑いをしながら私を囲んでいた魔力糸で私の四肢を縛ろうとした……はずだった。
だが、その魔力糸は赤い閃光によって断ち切られた。


「何が!?」


スカリエッティは予想外の出来事にその閃光の出所を探しているようだ。
そして、私には確信があった。私を助けてくれた閃光の正体。それは……


「そいつはてめえみたいな野郎が触れていいような安い女じゃねえんだよ」


普段はおちゃらけているけど、なんだかんだで回りのことをしっかり見てて、さりげなく気を遣ってくれる。私の……惚れた男の人。


「さ、あとはお前の責任量だぜ?行ってきな」


衛宮ランス。彼はいつものような悪戯っぽい笑顔を私に向けてきた。




side トーレ


「ありえん……なんなんだ、あいつは………!!」


奴との戦いは一方的だった。明らかにレベルが違った。どんな攻撃も避けられ、いなされ、受け止める。
それでいて攻撃は槍で殴ってくるだけだった。突きを使われていたら勝負は一瞬だっただろう。
槍による打撃すら回避できなかったのだ。数多の武具の中でも最速を誇る槍の刺突など奴が行えば音速など簡単に超えるだろう。
その上で、多重にバインドで縛られ、


「引き取りを頼んだ奴が来るまで待ってろ」


と言って私たちを置いて奥へと進んでいった。
この屈辱、忘れんぞ……!!!




side スカリエッティ


「まさか、もう来たとはね」
「あ?あの程度の奴等で俺の足止めなんざできる分けねえだろ」


トーレたちをあの程度呼ばわりか……それに難なく私の特別製の魔力糸を切り裂くとはね。これは計算外だ。


「それに、てめーの相手は俺じゃないんでね」


彼は視線を横に移した。私もその方向を見ると、


「ライオット!」


どうやらフェイト君が切り札を出したようだ。だが、この状況下でどうすると言うのだ?
それに、君は精神攻撃に弱い……じっくりと攻めれば心が折れてしまうさ。母親と同じようにね。




side フェイト


出し惜しみしてる時ではない。覚悟は決めた。私は、戦う。


「Dr.ジェイル・スカリエッティ。あなたを、逮捕します」
「できるかな?その形態を展開するだけで息が上がっているように見えるぞ?」


スカリエッティの言っていることは確かにあっている。
それでもやるしかないんだ!私には、皆がついてるんだから。


「はぁっ!」


スカリエッティが右手から魔力糸を飛ばしてきた。それを切り裂く。
AMFの影響だろう。かなり魔力を持っていかれた。


「ふふふ、そんなペースではたして持つのかな?それに、ここの私を倒したところで、この事件は終わらないのだよ」
「どういう、事……?」
「私のコピーは、既に12人の戦闘機人の体内に仕込んである。この私が消えれば一か月もしないうちに同じ記憶を持ったジェイル・スカリエッティが生まれてくる、という事さ」


そんなことって……!


「くだらねえな」
「え……?」


不意に聞こえたランスの声。心底呆れたような声だった。


「ほう?どうしてだね?」
「そうまでして生きる意味がどこにある?人の人生はやり直しがきかねえからこそ輝くんだろうがよ」


スカリエッティはそれに対し、


「技術。知識。それらを求めて生きる事こそが理性を与えられた生き物としての幸福だろう?そのためにありとあらゆる手段を使って何が悪い?」


そう答える。


「ああそうかい。だったらもうてめーと話すことはねえよ」


ランスはそういって槍を消した。そして私に念話で、


(俺の魔力を少し持って行け。何だかわからねえが俺も自分で魔力生成が出来てるみてえなんだ。少しは足しになんだろ?)


自分の魔力を持っていくように言ってきた。
だが私は、


(ダメだよ。それだとランスが……)
(平気だって。それに、魔力結合が防止されてる今、なりふり構ってる場合じゃねえだろ?)


それは、そうだけど……


(つべこべいうな!心配だったらさっさとあいつを捕まえりゃいいだけの話だ!)
(うん……ありがとう)


ランスがこちらに来て、私の手を握る。そこから魔力が流れ込んできた。それにしても、手、大きいな………。


「ほう、魔力を渡したようだね。はたしてフェイト君で私を捕まえることが出来るのかな?」
「捕まえます。私()が。……真、ソニックフォーム」


私の真の切り札。バリアジャケットは最低限になり、バルディッシュは双剣状態になる。限界まで速度を極めたフォームだ。
だが、切り札だけあって魔力消費が多い。AMFのせいもあり、魔力刃を形成するだけで息が上がってしまう。
だが、


「フェイト。バルディッシュをこっちに向けろ」
「うん」


ランスが何か私の読めない文字ををバルディッシュに刻んだとたん、魔力消費が著しく減った。


「なにをしたの?」
「ちょっとしたおまじないだ。気にすんな」


これがなんなのか聞いたところできっと彼は教えてくれない。だから、今は目の前のことに全力を向けるだけ………!


「おやおや、どうやら君が手を貸したようだね、クー・フーリン」
「あ?んなこたぁどうでもいいだろ?これから捕まる奴にはよ」
「君相手ならまだしもフェイト君に捕まるなどありえんよ。一見冷静に見えても激情に身を任せてしまう母親似のフェイト君にはね」


普段の私なら絶対に食い掛かっていった。だが、今は隣にランスがいてくれる。それだけでとても心が穏やかになれた。私は、自分のしたいことを。やるべきことをやるだけだって。
………だが、あのAMF相手と言うのは分が悪い。これでは近づこうとすることさえ………待って。
それなら何で空間全体に張り巡らせない?今まで一度も姿を見せなかった男がそんな単純なことに気が付かないはずがない。という事は……


「どうした?かかってこないのかい?こうしている間にも君のお友達は私の作品たちに苦しめられているというのに?」


しないんじゃない。できないんだ。だから私がそのことに気が付かないように意図的に私から攻撃しに向かう様に仕向けようとしているんだ。
だとすれば………


「バルディッシュ!!」
[plasma lancer.]


床に向かって攻撃。これにより空中に粉塵が巻き上がる。要は目くらましだ。


「ほう、目くらましか。だが甘い!」


当然ながらスカリエッティは右手からパラボラアンテナ状に魔力糸を展開した。
私の予想通りに。
そして煙が張れると………


「おや。どこへ行ったかと思えば……離れただけか」
「……………」
「おやおや、だんまりかね?」
「………あの魔力糸は」


スカリエッティが眉をひそめる。


「魔力の事象への干渉を妨害するもの」
「!?」
「だから魔法が発動しない。でも物体に対しては効かない」
「………」
「それさえわかればこっちのものだ!!」
「だとしたらどうする?」
「こうする!!」


話し終えると同時に私は先ほど仕掛けておいたある物を引き寄せ、スカリエッティにぶつけた。


「なんだと!?」


スカリエッティは驚く。なぜなら私が彼にぶつけたのは双剣となったバルディッシュの片方だったのだから。


「ふ、まさかそんな奇策で来るとはね。予想できなかったよ」


バルディッシュをぶつけられたスカリエッティはそう呟いた。


「だが、君の攻撃は効かない。それはわかっているのだろう?」


確かにそうだ。だが、右手を封じれば勝機はある。


「さあ、どうする?このままいたちごっこを続けるのかい?」
「その必要は、ない!」


さっきバルディッシュを当てた時のスカリエッティの反応は、痛みを堪えているような感じだった。
恐らくランスがバルディッシュにした何かが影響しているんだろう。
それに、バルディッシュの魔力刃は先程からAMFの影響をほぼ受けていない。
他の魔法を使うと多大な影響を受けているにも関わらず、だ。
だったらとるべき手段はひとつ。
バルディッシュによる直接戦闘……!


「はあっ!」


魔力刃で斬りかかる。スカリエッティは魔力糸を出して受け止めるが、バルディッシュの魔力刃はそのまま魔力糸を切り裂く。


「な!?」


驚愕の声はスカリエッティのもの。私も多少は驚いたが、ここが攻め時。一気にたたみかける……!




side ランス


「やっぱそうか」


フェイトが押している。あれだけ苦戦していたのにバルディッシュ本体に“硬化”、魔力刃に“強化”のルーンをかけてやっただけでこれだ。
これで証明された。神秘を理解していないこの世界の人間ではあの状態のバルディッシュの魔力刃を消すことなんざ不可能だ。


「さて、ちゃっちゃと終わらせろよ?」




side フェイト


「これで、終わりだ。スカリエッティ!!」


渾身の一撃を真横から叩き込む。魔力刃で殴られたスカリエッティは壁に激突した。


「広域指名手配犯、ジェイル・スカリエッティ。貴方を、逮捕します」
「…………クックックッ」
「何がおかしいんですか?」
「ここはもうすぐ崩壊する」
「えっ!?」


最後の悪あがきか!


「私に何かあったら自動で発動「しねえぞ」……なに?」


今の今まで見ていただけだったランスがそう言いはなった。


「ヴェロッサにな、爆破装置は外に運び出させた」
「そんなことできるはずが!!」
「ない、って言い切れるか?今の自分を見てよ」
「………」


本当にいつの間にそんなことまで………


「お、噂をすればなんとやら、ヴェロッサからだな」


ランスが通信を繋いだ。


「よ!首尾はどうだ?」
「完璧だよ。君から渡された石のお陰で司令塔であろう戦闘機人も捕獲完了。爆破装置は僕の猟犬が運び出したよ」
「おう、ご苦労さん。報酬にこんどナンパの仕方でも教えてやるよ」
「あ、あははは……ま、こっちはそんなとこ。そっちは?」
「全部終わった」
「それは何より。それじゃ、入口で落ち合おう」


アコース査察官はそう言って通信を切った。


「んじゃ、帰るか」
「うん!」




side ゼスト


「ゼスト……おれは、」
「レジアス!!」


今回も、今回も遅すぎた!俺は、いつも……


「これで貴方の復讐は終わりですね」
「………」


せめて、お前の仇だけでも!!


……………………………………………………………


アギトが先程の騎士、シグナムと共にやって来た。


「これは……あなたが?」
「ああそうだ。俺がやった」
「旦那……」


俺は何を為した?何も出来てない。俺たちの正義は、何も……

 
 

 
後書き
更新にすんげー時間かかった………

の割りには内容薄いかもですが勘弁してください(゜Д゜)

次は多分……早めに更新しますので(・ε・` )

それでは~ 

 

三十二話~決着――ゆりかご

side 士郎


駆動炉の目前で私達の行く手を阻むアンノウン。先程は鶴翼三連でまとめて破壊することが出来たが、学習したのか少数の編隊で仕掛けてくるようになった。


「なあ、士郎」
「どうした」


半分くらいのアンノウンを破壊した時、ヴィータが真剣な表情で話し掛けてきた。


「ここまで来ればあたし一人でやれる。お前はなのはのとこに行ってやれ」
「しかし……」


渋る私にヴィータは言った。


「ヴィヴィオを救うのがお前となのはの親としての責任だとあたしは思うぜ?心配すんな。駆動炉の破壊はあたしに任せろ。鉄槌の騎士の得意分野は破壊と粉砕。ここはあたしの舞台なんだぜ?」


……そうだな。


「ありがとう、ヴィータ」


私は礼を言うと、なのはに念話を繋げた。




side なのは


強い…………ヴィヴィオはブラスター2の私と互角以上に打ち合っている。いや、AMFの影響で私の方が消耗が激しい。これはかなりまずいかな………


「どいて……あなたじゃ私に勝てないんだよ!!」


攻撃しても攻撃しても倒れない私にしびれを切らしたのか、ヴィヴィオは半狂乱になって喚き散らしていた。


「倒れるわけにはいかないの……。約束、したんだから。3人で一緒に帰るって………」


丁度その時だった。


(待たせたな!もう大丈夫だ!!)


私が今一番待っていたものが来た。


「ヴィヴィオ」
「……勝手に呼ばないで」
「私()はあなたを助ける」


私は左手を高く突き上げ、この状況を変えるために叫ぶ。


「マスター、高町なのはが命じます!!今すぐに私の元へ!!」


最後の令呪はその莫大な魔力を放出し、発動した。そして……


「助けに来たぞ、ヴィヴィオ」


私の想い人にしてヴィヴィオの父親、衛宮士郎君がそこに現れた。




side クアットロ


「……ありえない」


なんなの?どうしてこのAMF状況下で転移なんて芸当ができるの?魔法陣すらない転移なんて聞いたこともない。


「………予定外だけど、やるしかないわね……」


ドクターは捕まり、お姉さま達や妹達も全員捕まった。逆転の一手はこれしか残っていない。


「さあ、どんな顔をしてくれるのかしらね……ふふふ、あーっはっはっはっは!!」


眼鏡をはずしながら私はこれから起こるであろうことを予想して大笑いした。




side 士郎


ヴィヴィオは姿が代わり、大人になっていた。が、中身は子供のままだろう。洗脳ならばルールブレイカーで解ける。恐らくだがヴィヴィオに埋め込まれたというレリックも取り出せるだろう。
あとはゆりかごを操る戦闘機人を確保して終わりだ。


「あなたは、……う、う、うう。あああああ!!!」


ヴィヴィオは私を見ると頭を押さえて苦しみだした。


「パ、…パ?……わ、たし……は!?うぐ、ああぁっぁあぁぁああぁあああぁぁあ!?」


ヴィヴィオが私の事を思い出しそうになった時だった。突然奇声をあげながらもがきだした。


「はぁ~い、感動の再会中失礼しま~す」


ヴィヴィオが苦しみだしたのとほぼ同時に通信が。私はその通信の主に見覚えがあった。


「貴様は……!」


赤原猟犬(フルンディング)で狙い撃ちにした戦闘機人だった。


「あらあら、怖い顔ねぇ。今から楽しいたのしいショーが始まるのに」
「何を、する気……!?」


なのはが問う。それを聞いた戦闘機人は嬉しそうに笑う。


「あなたたちの娘にゆりかごの力を全開で使わせるのよ~。使用者の負担を無視した完全なる全開を、ね」
「………!?そんなことしたら!!」
「あなたはやっぱりわかるのねぇ~。自分が似たようなものを使っているからかしら?」


なのはがその言葉を聞き動揺する。だが私は、


「その前に、止める!」
「あらまぁ。愛娘に剣を向けられるんですの~?」
「それがこの子を救うためならためらいはしない」
「………つまらない男ね。でもぉ、これを聞いてもそんなこと言える?ゆりかごの力を全開で与えたらぁ、その子、5分経たずに廃人よ」


5分だと……!?


「まぁ三人仲良く心中でもすればいいかもしれないわねぇ、ふふ、あははははははははは!!」
「貴様……!」


この女は、言峰以上の外道だ。


「ア………ガァアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


そして、ゆりかごの力を得たヴィヴィオの暴走が始まった。一直線に突っ込んできたのを干将莫邪で受け止める。


「くっ、速い!?」


攻撃の速度、威力共にかなりのものだ。イリヤのバーサーカーやセイバーには及ばないがサーヴァント並みの強さになっている。これでは五分以内にルールブレイカーを刺すことなど……できない。


「士郎君!援護するよ!!」


なのはがシューターやバインドを仕掛けるが、全く効いていない。恐らくなのはの攻撃手段の中でも最高峰の攻撃でなければ通らないだろう。
そして、これは賭けだがルールブレイカー以外にも手はある。ルールブレイカーを使うのはほぼ不可能に近い。分が悪いが、今はこの方法しかないんだ。


「なのは!!スターライトブレイカーを最大出力で撃ってくれ!!」


しかし、そのためには今も続いているヴィヴィオのラッシュを止めなければならない。そのためになのはにスターライトブレイカーを放ってもらう。


「わかった!!」


なのはがチャージに入る。その間は無防備になってしまうため、なのはの方へ攻撃が行かないようにしながらこちらの準備を進める必要がある。


「あああああああ!!!!」


暴走しているというのに闇雲に暴れまわっているわけではないのが厄介だ。
的確にこちらの攻撃をさばき、カウンターを打ち込んでくる。
今は魔法を使っているわけではないので非殺傷設定がない。そのため必然的に加減が必要なのだ。
そのため、今私とヴィヴィオはほぼ互角の戦いを繰り広げている。
時間がない。間に合うか……?


(お待たせ!いつでも行けるよ!!)
(3秒後に頼む!!)


離脱前に干将莫邪をヴィヴィオを挟むように投げ捨てる。


壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)


この爆風から逃れるために選ぶのは……上。
だが、そこには


「スターライトォォォ………ブレイカー!!!」


チャージを終えたなのはが特大の砲撃を放つ。
避けることはできない。ヴィヴィオはそれを真正面から受け止めた。
その隙に、私は詠唱を始めた。


「――――I am the bone of my sword.(体は  剣で  出来ている。)


魔力が、もっと必要だ。だが、持ち合わせはない。


「――――Steel is my body,and fire is my blood.(血潮は  鉄で、   心は  硝子。)


ならどうする?簡単だ。足りないならば、外から持ってくる……!


「――――I have created over a thousand blades.(幾たびの  戦場を  越えて  不敗。)


両手にデバイスを展開。カートリッジをロード。


「――――Unknown to Death.(ただ  一度の敗走もなく、)


一発、二発、三発。まだだ。まだ足りない。


「――――Nor known to Life.(ただ  一度の理解もされない。)


さらにロード。合計六発。まだまだだ……!


「――――Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は  常に独り、  剣の丘で  勝利に酔う。)


さらにロード。合計十二発。あと少し……!


「――――Yet,those hands will never hold anything.(故に、   生涯に  意味はなく。)


追加二発。これで足りる!!


「――――So as I pray,Unlimited Blade Works.(その体は、   きっと  剣で出来ていた。)


その一言により、世界は塗り替えられる。剣の荒野。空には歯車。私の世界『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』へと。




side なのは


「スターライトォォォ………ブレイカー!!!」


ヴィヴィオへとスターライトブレイカーを打ち込む。が、


「ああああぁぁぁああぁぁぁ!!!!」


正面から拳を叩きつけてきた。


「うっ……」


押され初める。でも、ここで引くわけにはいかないよ!!


「ブラスター……3!!」
[Limit release.]


最後のブラスターリミット。その解放とその詩が聞こえてきたのはほぼ同時だった。


―――体は剣で出来ている。


……直感でわかった。この詩が士郎君が生きてきた人生を表している、ということは。


―――血潮は鉄で、心は硝子。


感じる。世界が変わるのを。


―――幾たびの戦場を越えて不敗。


現実が、塗り潰されるのを。


―――ただ一度の敗走もなく、


彼の、心象世界に。


―――ただ一度の理解もされない。


あまりにも悲しすぎる彼の世界が、


―――彼の者は常に独り、剣の丘で勝利に酔う。


その姿を、現してくる。


―――故に、生涯に意味はなく。


赤い大地と、空に浮かぶ歯車。


―――その体は、きっと剣で出来ていた。


私達の周囲を炎が包み…………


「え…………!」
「見つけたぞ、戦闘機人」


世界が、変わった。




side クアットロ


なに?なんなの?なによこれ?ありえない。ありえないありえないありえないありえないありえないありえないアリエナイアリエナイありえないありえないありえないアリエナイありえないありえないありえないありえないありえないアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイ!!!


「あ、あああ、あああああああ!!??!?!?!?」


どうして?私はゆりかごにいたはず。こんな変な荒野に来た覚えはない。
逃げたい。逃げたい逃げたい逃げたい。


「無駄だ」


メノマエニケンガフッテキタ。


「俺の世界で勝手はさせん」


クサリガワタシヲツカマエタ。ウゴケナイ。ドウシヨウ。ドクターノユメヲカナエラレルノハワタシダケナノニ。ニゲラレナイ。……そうだ。聖王の器を操れば……!!
そしてコンソールを呼び出そうとしたが……


「させると思うか?」


紅い槍が飛んできてかき消されてしまった。
……打つ手はない。


「貴様はこれで終わりだ」


目の前には剣の大軍。


停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)…!」


男がその言葉と共に指を鳴らすとそれらが一斉にこちらに向かって来る。
剣が剣がケンがケンがけんが剣がケンがけんが剣が剣がケンがけんが剣が剣が剣がケンがけんが剣がケンがケンがけんがけんが降る。
あまりに桁外れな攻撃。桁外れな恐怖。


「いや、嫌ああああぁぁぁ!!」


最後に聞こえたのは、何かを叫ぶ女の声だった。




side 士郎


固有結界の広域展開。うまくいく保証はなかったが、ヴィヴィオを操っていた女を引き込むことが出来た。女は目の前で起きたことが信じられないと言いたげな顔でこちらを見ている。そして、


「あ、あああ、あああああああ!!??!?!?!?」


発狂し、逃げ出した。が、無銘の剣を数本仕向けて逃走を妨害した。


「無駄だ。俺の世界で勝手はさせん」


天の鎖(エルキドゥ)を放ち、女を捕らえる。
捕らわれて大人しくなった女は視線をさまよわせた後、何かに気が付いたような顔になった。そしてコンソールを呼び出そうとしたので、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を投擲し、妨害した。


「させると思うか?」


そう言ってやる。


「貴様はこれで終わりだ」


やり方が英雄王そっくりというのは気に入らないが、これでいい。


停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)…!」


空から無数の武器が降る……まさに英雄王のような攻撃。
だが、一発も命中させず、ギリギリのところで当てない。だが、強力な神秘の塊たる宝具を大量に向けられる恐怖は尋常ではない。案の定女は気絶していた。
そこでヴィヴィオの様子を見るために視線を女から外した瞬間


「ヴィヴィオ!」


叫ぶなのはの声がした。





side なのは


士郎君の固有結界。その中に入ったのとほとんど同時に私とヴィヴィオのぶつかり合いが終わった。


「はぁ、はぁ、はぁ」
「う、うあ、ああああ、あ」


急に力の供給がなくなったからか、ヴィヴィオはしばらくの間頭を抱えて苦しんでいた。
今すぐ近寄りたいが、ヴィヴィオは絶えず魔力を放出しているため、近づけない。


なんて、もどかしい…………!!


「う………こ、こ、は?」


ヴィヴィオが正気に戻った。


「ヴィヴィオ!!」


私は駆け寄ろうとした。


「来ちゃダメ!!」


ヴィヴィオはそう言いながら、泣きながら攻撃してきた。


「全部、思い出したの。私の生まれも、作られた目的も。私は、生きてる兵器。ゆりかごを動かすためだけに作られた道具。ここにいてはいけない存在……!」
「そんなこと「そんなことを言うな!」……士郎君」


何時の間に戻ってきたのか士郎君が私の隣にいた。今まで見たことがないような、とても怒った、そして、同時にとても悲しそうな顔で。





side ヴィヴィオ


苦しい。苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい!!


私の中で何かが暴れる。永遠に続くのかと思われた痛みは唐突に何かが抜け出ていくような感覚に変わった。段々と意識がはっきりしてくる。それと同時に私の存在理由はなんなのか、という事も明確に思い出した。


「う………こ、こ、は?」


下を見ると土がある。私はゆりかごにいたはず……


「ヴィヴィオ!」


声のした方を見ると、ママ……いや、なのはさんがいた。こちらに駆け寄ってくる。
そんななのはさんに私の体は勝手に迎撃をしようとした。


「来ちゃダメ!」


見れば彼女はもうボロボロ。もう傷つかないで……私なんかのために……こんな、兵器のために。
だから私は言い放った。


「全部、思い出したの。私の生まれも、作られた目的も。私は、生きてる兵器。ゆりかごを動かすためだけに作られた道具。ここにいてはいけない存在……!」
「そんなこと「そんなことを言うな!」……士郎君」


唐突に聞こえた怒りと悲しみの入り混じった声。それは………
衛宮士郎さんのものだった。




side なのは


士郎君は続けて言い放った。


「ヴィヴィオ。どうして泣いている?兵器だなんて思いたくないんだろう?」
「………思いたい、思いたくないじゃなくて兵器は兵器なんだよ、士郎さん。なのはさんも、そう思うでしょ?」


ヴィヴィオが私たちを他人のような呼び方で呼ぶ。だから、


「ううん。ヴィヴィオは普通の女の子。私と士郎君の、大切な娘。それ以外の何者でもないよ」
「そんなこと……!」
「口先だけなら何とでも言える、か?」
「!!!」


ヴィヴィオが驚いている。士郎君が自分が言おうとしたことを当てたからだろう。


「こんなところまで来ているのがママの言葉が真実である、という証拠にならないか?」


士郎君が今までヴィヴィオと接してきたときの優しい口調でそう言った。


「だけど!私はなのはさんを、士郎さんを殺そうとした!!」
「それは操られていたからだ。お前の意思じゃない」
「それでも!!」


これじゃあイタチごっこだ。


「だったら、さっきから流れている涙はなんなんだ?」
「!!!」


嫌なんだよね……。戦いたくないんだよね……。


「ヴィヴィオ。ヴィヴィオはどうしたいの?ホントの気持ち、ママたちに教えて」
「わ、たし、は……」


ヴィヴィオは今の今まで抑えていたであろう感情が爆発したように思いを叫ぶ。


「一緒にいたい……ママと、パパと、三人で……!!助けて……私を、助けて!!!」
「当然だ」
「助けるよ。私たち二人で!」


その言葉を待っていた私たちはそれぞれ準備に入った。
士郎君はその手に歪な短刀……ルールブレイカーを。私はバインド“レストリクトロック”の準備をした。


[Restrict Lock.]


光の輪がヴィヴィオを捕える。


「ヴィヴィオ。少しだけ、我慢しててくれ。破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)………!」


短刀がその力を発揮する。ヴィヴィオが光に包まれた。
そして光がおさまると…………


「成功、だ」


子供の姿に戻ったヴィヴィオと士郎君がそこに立っていた。


「レリックは………?」
「ここにある。が、破壊してしまうのがいいだろう」


そういって、士郎君は一振りの剣を手に取った。
黄金の柄を持ち、刀身は透き通るかのような美しさの剣。
まさに名剣……と言うべき様なものだ。


絶世の名剣(デュランダル)


士郎君はその名を静かに言い放ち、レリックを一閃。
レリックは音も立てずに二つに分かれ、消滅した。


「さて、そろそろ戻るっ………!?」


レリックも破壊し、犯人も確保。ヴィヴィオも無事に救出したというのに、この事件はまだ終わりではなかった。




side ヴィータ


「はああああああああああああああ!!!」


あの後無事に駆動炉にたどり着いたが、攻撃を加えた途端に防衛システムが作動。現在はその処理をしている。


「これで、最後だ!!」


防衛システムの最後の一機を落とした直後の事だった。


『聖王陛下、反応ロスト。直ちに全機構の停止、並びに全魔力リンクのキャンセルを行います』


いきなりそんな放送がしたと思うと、


「え?」


飛行魔法がキャンセルされた。それだけじゃあない。駆動炉も勝手に停止している。


『ただいまより、破損個所の修復にかかります』


何が起きているのか全く分からねえ。が、とりあえずは……


「なのはと士郎がやったみてえだな。ひとまずは脱出だ!」


あたしは出口に向かって走った。




side 士郎


鼓動を感じる。体の中に。
魔術回路がソレを拒む。
ソレは魔術回路と融合しようとする。
そうすると痛みが生まれる。


「くっ…………」
「士■く…!しっか■し…!!」


誰がが呼んでいる。……誰だろうか?


「士郎君!!」


………ああ、思い出した。彼女たちは、私の………






守りたい、大切な人たちだ。
笑っていて欲しい人たちだ。
立てる。彼女たちのためなら。
俺は何度だって立ち上がる。
だから………




泣かないでくれ……





…………………………………………………………………




「はぁ、はぁ……」
「士郎君……!よかった……」


気が付くと固有結界は解け、玉座の間にいた。
身体を起こそうとした私に目に涙をためたなのはが抱きついてきた。


「本当に、よかった……!」


かなり心配させてしまったようだ。


「大丈夫だ。すまなかったな」
「ううん。士郎君が無事なら……!?」


と、今の自分の体勢に気が付いたなのはは、


「ごごごごごごめんね!!!すぐ離れるから!!!」
「あ、ああ……」


気まずい沈黙。しかし、確認しなければならないこともあることだ。こんなことで時間をくっている暇はない。


「…………それより、私はどれくらいの時間倒れていた?」
「5分もしてないよ。それより……」


そういって下を向いてしまうなのは。
その理由はすぐにわかった。


「魔法が……使えないのか」
「うん……どうしよう……」


おまけに扉も締まっている。脱出するためだ。少しくらいの無茶は大目に見てもらおう。


投影、開始(トレース・オン)……!」


やはり魔法が使えないのはAMFの効果のようだ。魔術が使えるのが何よりの証拠。
今の身体状況で魔術を使うと全身が軋む。だがそんなことはどうでもいい。
この状況で最も適した武器を幻想する。そして生み出したのは私が一度背中を両断されたこともあるあの武器だ。


「それは……?」


なのはが聞いてくる。


「英雄ヘラクレスの斧剣だ」


壊す、と言ったらやはりこれだろう。威力はお墨付きだしな。


投影、装填(トリガーオフ)全工程投影完了(セット)――――――是、射殺す百頭(ナインライブスブレイドワークス)……!」


扉に向けて一閃。扉は粉々に吹き飛んだ。


「よし、行こう」
「う、うん……あの人は?」
「担いで運ぶしかないな。私が…」
「私が担ぐよ」
「なのは……」
「これ以上無理しないで。さっきは本当に心配だったんだからね……」
「…………わかった」


私が先頭を行き、なのはがヴィヴィオを抱き、女を背負ってついてくる。
先程ナインライブスブレイドワークスを放ったときは痛みはなかったが、魔術回路に異変を感じた。
まるで、何かから魔力供給をされているような感じだったが、魔力の状態がめちゃくちゃだった。倒れたのはそれが原因かもしれない。なるべく魔術は使わずに進みたいが……


「くっ、またか!」


目の前に現れてくる魔力障壁。手に持つ斧剣で切り裂きながら進んでいく。
ある程度進んだところで、


「なのは!士郎!」


ヴィータと合流。彼女も戦闘機人を背負っていた。


「やったんだな」
「ああ。そっちは?」
「駆動炉はいきなり止まった。魔法が使えなくなるのと同時にな。んでお前らの方が気になって行ってみたらこいつを拾ったんだ」


どうやらヴィヴィオを固有結界に取り込んだことで王を失ったゆりかごが停止した、という事だろう。


「急ごうぜ。時間がねえ」
「ああ」


後少しだ。後少しでこの事件は終わる。




side ゼスト


「はあああああああ!!」
「……紫電、一閃!」


身を切り裂かれる感触。命が尽きる、と感じるのは二度目だ。
……俺たちの意志は、正義は、しっかり受け継がれていた。
思い残すことはない。


「旦那ぁ!」


ああ、ひとつだけあったな。


「この子を頼む。きっと、お前ならばいいマスターになってくれるだろう」
「……はい。必ず」


これで終わりだ。ようやく、終わりだ。
レジアス。もう大丈夫だよな。世界は、きっと大丈夫だよな。
お前も、そう思うだろう? 
 

 
後書き
更新です(*´ω`*)

この話はかなり書き直しをしたのでクオリティは高い……はずです。

いや、それはない。と思う方がいらしたら感想で説教してください。

これからエピローグですが、結構更新に時間がかかると思います。

同時平行で後日談書いてますので(・ε・` )

書き溜め作成はいいからさっさと更新しろや!!という意見が多い場合は全力全開で更新速度を上げますのでよろしくお願いします\(^o^)/

長くなりましたがこの辺で!

それでは~ 

 

三十三話~終幕

side はやて


「まだか……!」


ゆりかごの上昇速度が激減してから30分近くたった。
が、未だに三人は出てこない。


「なのはちゃん…ヴィータ…士郎…」


きっと、無事に帰ってくるよな?


「大丈夫ですよ、はやてちゃん」
「リイン……」


先ほど合流したばかりのリインは自信たっぷりに言う。


「ティアナが言ってたです。あの三人が落ちるわけがないって。どんな困難も必ず乗り越えてくるって」
「ティアナがか……」


以外だった。スバルなら言いそうやけどティアナがそんなこと言うなんて思わんかった。
と、その時いきなり轟音が聞こえてきた。


「な、なんですか~!?」


まるで壁を無理やり壊しているような音……それはゆりかごの中から聞こえてくる。


「帰って、来たんやな」
「はいです!」


そして………


「脱出、成功だぜ。はやて」


三人は、帰ってきた。




side フェイト


「ランス、お疲れさん」
「おう、ありがとよヴェロッサ。お前のお陰で随分楽に解決できたぜ」


入口まで戻った私達を出迎えたのは、アコース査察官だ。
労いの言葉をかけられたランスがやけに親しげに話しかけている。


「ランス、アコース査察官と面識あったの?」


気になったので聞いてみた。


「そ、それはだな「サボり仲間だよ」ヴェロッサてめえ!裏切りか!!」
「ああ、成る程」


納得。


「納得するな!」
「え?六課のサボり常習犯が何言ってるの?」
「だってさ。ドンマイ♪」
「本局査察部のサボり魔に言われたくねえよ!」


なんだか楽しそう。


「なあ、なーんか忘れてねえか?」
「え、そんなこと無いんじゃない?」
「シスター………」


私が言うと、


「よし、帰ろう」


平静を装ってはいるが明らかにビビりまくりなアコース査察官。
そんなにシスターシャッハが怖いのかな……


「へぇー、ロッサは私を置いて帰る、と。そうなんですねー」


アジトの入口の方から聞こえてきた声に、ギギギ、とでも音が鳴るかのように振り返るアコース査察官。


「シャ、シャッハ………」


彼の目線の先、アジトの入口には……阿修羅と化したシスターシャッハがいました。
彼女に捕まっていた戦闘機人が、


「あ、あたしの時より10倍怖い……」


と、呟いていた。


「カクゴハイイカシラ、ロッサ?」
「ま、待って!は、話せばわかる!」
「………問答無用!」
「うわああああああああぁぁぁ!!!」


アコース査察官はそのままアジトの中へ連行され、


「Jpm.pdug.jp2mt.ajpang-0*+#*65!?」


最早何語でもない言葉で叫んでいました。


「………生きてるかな?」
「………多分な」


残された私達はそんなアコース査察官の生存を祈っていた。




side ティアナ


「止まった……?」


攻撃を続けていたガジェットが一斉に動きを止めた。


「なのはさん達が上手くやったんだよ!」
「そうね」
「ええ」


ゆりかごを止めるのに成功した、ということね。


「おいおい、だからといって終わりじゃねえぞ、ギンガ、スバル、ティアナ」
「わかってるよ、父さん」


こちらも事後処理をしなければならない。
ぬか喜びしてる暇はないのだ。


「あともう一頑張りよ。いきましょう、スバル、ギンガさん」
「ええ!」
「おう!」




side 士郎


脱出した私達は待っていたヘリに乗り込んだ。
そこでなのはが、


「シャマル先生は?」
「アースラで待機中やで」


シャマルの所在を聞いていた。


「そっか……」
「何かあったんや?」
「ゆりかごの中で士郎君が一回倒れたの。だから心配で……」
「今は何ともない。大丈夫だ」


そう言ってやるが、


「駄目や。ちゃんと検査受けるんや。これは部隊長命令です」


はやてにそう言われる。さらに、


(それに、なのはちゃん泣きそうやで?ここで受けない、何て言ったら泣かれるかもしれんなあ~)


と、ニヤニヤしながら念話を送ってきた。


「……わかったよ。受けるさ」


と、こちらから折れることにした。
こちらの世界の検査などは受けたことがないが、これ以上心配させるのはよくない。それに、シャマルが担当ならば魔術関係については大丈夫だろう。


「そう言えばヴィヴィオは大丈夫なんか?」
「今は寝てるけど、このまま聖王病院に連れて行くからひとまずは大丈夫かな」
「そうなんか」


事件は終わった。しかし、それは先送りにしていた問題に向き合う時が来た、と言うことでもある。
私はどうすべきだろうか…… 
 

 
後書き
短い!本当に短い!

ですが書くことがあまりないんです……

というわけで次回に期待してください\(^o^)/

それでは~ 

 

三十四話~繋がる思い

side ランス


「はぁ?検査?」
「ええ」


エセ白衣を捕まえた翌日。シャマルにそんなことを言われた。


「士郎さんの検査をやるから一緒にやっちゃおうかなって」
「いや、今日は仕事が……」
「ないわよ」
「何故に!?」
「はやてちゃんに話したら受けさせておけって。代わりに明日の仕事増やすそうよ」


あの鬼め。


「大丈夫よ。小一時間で終わるわ」
「は~、わーったよ。受ける」


結局受けることにした。




side シャマル


「これは……」


二人の精密検査は初めてだったが、この現象は驚きだ。
確か魔術回路……だったかしら?
その核としてリンカーコアが機能している。
丁度心臓とそこから延びる血管のような関係だ。
だが、驚くべきはそのリンカーコアのランクである。


「Dランク……しかも安定性がないわ…」


おまけに、そのリンカーコアには外部から魔力を貰っている様子があった。恐らく、なのはちゃん達とのパスだろう。もう少し詳しく調べることができればいいのだが、二人の秘密は公には出来るものではない。


「しばらくは様子見ね」


今はそうするだけしかできないのだから。



side ティアナ


あの事件が終わり、1ヶ月近く事後処理に追われていた私達機動六課。
異変に気が付いたのはそんな時だった。
なのはさんと士郎さん。二人がなんだかぎこちないのだ。
あの感じは……


「恋愛関係ね……」


二人があんな状態じゃヴィヴィオも喜べないわよね。
ここは私が!


…………………………………………………………………


「こんな所まで呼び出してどうしたの?」


臨時本部となっているアースラを出て、港の方になのはさんを呼び出す。


「少し、聞きたいことがあるんです」
「いいよ。何かな?」
「士郎さんとの事いつまでそのままにしておく気ですか?」


驚き、赤くなってしまうなのはさん。だが、


「………このままじゃいけないとは思ってる。だけど、どうするかまでは……」


まあそんなことだとは思ってたが。


「そんな煮え切らないのはなのはさんらしくないですよ。私たちの憧れで、ヴィヴィオの母親なんですから、ビシッと決めてください」
「……そうだね。ありがとう、ティアナ。私、もう迷わない。思うままにやってみるよ」
「それでこそなのはさんです!応援してますよ。あと、差し出がましいことして申し訳ありませんでした」


私がそう言って謝ると、


「ううん。おかげで気持ちの整理がついたよ。だから、謝らないで」
「ですが…」
「いいの。心配してくれたんでしょ?大丈夫。もう迷ったりしないから」


そう言って士郎さんのところへと向かって行った。


「………頑張ってください、なのはさん」


私にできるのはここまでだ。後はなのはさんの問題。
でも、きっと大丈夫。そんな予感があった。




side 士郎


「こんなところにおったんか」


後ろからの声に答える。


「はやてか」
「また盛大に悩んどるなぁ」
「………そうだな」


考えたところで、答えは出ない。


「なのはちゃんは、待ってるで。士郎の答えを」
「ああ」
「自分の気持ちをぶつければええんや。難しく考える必要なんかない。士郎がなのはちゃんをどう思ってるか、それを伝えるだけでええんや」


私は、なのはのことをどうみている?……
彼女は私にとって、どういう存在なのだろうか?あの笑顔は、私にとって……
……そうか。答えは、すぐそこにあったのだな。


「っと、仕事が残ってるから私は戻るで。それじゃ」


あの狸娘はまた大嘘をついた。仕事など既に終わらせてあるだろう。だが、今はその大嘘に感謝しよう。
何故なら………


「士郎君!」


今一番会いたい人が私の後ろにいるのだから。
気を利かせてくれたはやてに感謝しよう。


「なのは、聞いてほしいことがある」
「うん。聞くよ。ちゃんと聞く」


私の思いを、全て。彼女へと。


「私も、君が好きだ。だから、笑っていて欲しい。そのために、私にできることをさせてほしい。これが、私の答えだ」


単純だが、この短い言葉に彼女に対する思いを全て込めた。
やがて、ゆっくりと彼女が口を開く。


「ありがとう。私も士郎君が好き。だから、ずっと一緒にいてほしい。私の大好きな人として。最愛の娘の父親として。家族として、ずっと一緒にいてください」
「ああ。どんな時でも、一緒にいるよ。君の傍に、ヴィヴィオの傍にいる」


お互いに言いたいことを言い終えると、どちらからともなく距離を詰める。
手を伸ばせば届く距離。肩が触れ合うほどの距離。お互いしか目に入らない距離。
そして………


唇の、触れ合う距離。




とても永く感じた時間の後、ゆっくりと離れる。


「………戻ろっか」
「………そうだな」


アースラへと帰る。見つけたものを離さぬよう、しっかりと握りしめて。




side フェイト


「ふぅ……」
「ため息か、テスタロッサ」
「シグナム……」
「ランスのことか?」


やっぱりわかるのかな……


「どうすればいいのかな?」
「さあな。だが、お前らしくまっすぐにぶつかれば悪い結果にはならないだろうな」


私らしく、か……


「でも、もしダメだったら……」
「何がダメなんだ?」


不意に聞こえた声。いつもと同じその声。


「ランス……」
「二人して辛気くさい顔してよ、らしくねえな」
「そうだな。私達らしくない」


シグナムはこちらを一瞥し、


「そう言えば、テスタロッサがお前に話があるそうだ。ちゃんと聞いてやれ。私はアースラに戻るからな」


そのままアースラに戻って行くシグナム。去り際に念話で、


(後はお前次第だ。健闘を祈る)


そう言い残して去っていった。


「で、話ってなんだ?」


ランスは私の目の前に来て、まっすぐに私を見ている。
ここまできたら、進むしかないよね。


「大事な話。ちゃんと聞いてほしい」
「大事な話?もしかして告白か?」
「うん。私は、ランスが好き。俺を頼れ、って言ってくれて嬉しかった。いつもふざけてても、いざって時にはいつも私のことを助けてくれる、そんなあなたが好き。だから、これからも、私の一番近くに居てくれる……?」




side ランス


予想はしていた。俺を見る目が変わっていた、ということから薄々は気が付いていた。
最初はこんな目をする何て思わなかった。
もっと恋愛沙汰に対しては奥手だと思っていた。
そんなこいつがこんなにも意志の強い目をするとはな。
それに………


「………くっ、くくく、はははははっ!」
「な、何で笑うの……?」
「いやな、お前との出会いを思い出すとな、はははははっ!」
「出会い……っ/////!?」


どうやらこいつも思い出したようだ。


「あ、あれは……」
「“バカー!!”とか言いながら追っかけ回して来たよな」
「うう……ラ、ランスだって子供みたいなことしてたもん!!」
「お?そうだったか?」
「そうだよ!」


そう言われればそんなこともあったな。
だが、


「でもよ、これで俺の勝ちだな」
「何が?」
「恋愛は、惚れた方が負け、だろ?」


しばし考えこむフェイト。そして、


「うん。負けちゃった」


とても嬉しそうに笑いながらそう言った。


「ああ。俺の勝ちだ。だから……」


ゆっくりと近づき……抱き寄せる。


「改めて、これからもよろしくな。フェイト」
「…………うんっ!」


二度目の生、とも呼べそうな今の状態。望んで得たものではないが、今は……


ただ、彼女(フェイト)のために………


「ね、ランス」
「ん?」
「私のファーストキス、貰ってくれる?」
「ああ。いいぜ」


こうして過ごすのも悪くはない。 
 

 
後書き
遂にここまで来ました。長かった……

アンケートはここまでで締め切ります。

結果は呟きで近日中に発表する予定です。

それでは~ 

 

最終話~二人の英霊

 
前書き
最終話、とありますが、StrikerS編の最終話という意味です。
この小説はまだまだ続きます(*^^*)

あと、めっちゃ短いです(T_T) 

 
side 士郎


「幸せ、か」


幸せ。それは人によって違いがあるものだ。
私も見つけた。それは彼女達の笑顔を守ること。共に生きること。この二度目の生は、きっと私にとって、意味のあるものだ。


体は剣で出来ている。
変わることはない。しかし、今は殺す剣ではなく、守る剣。


「お待たせ。行こっか」
「ああ」


隣を歩く彼女。その差し出された手を握った。


「ふふふっ」


なのはが見つめてきている。


「ん?どうした?」
「何でもないよ」


彼女に誓った思い。この世界に来て見つけた新しい在り方。
『大切な人の正義の味方』であり続ける事。
それが、英霊エミヤとしてでなく、一人の男として見つけたもの。


「ママ~、パパ~」


駆け寄ってくる少女。もう一人の大切な人。
二人の笑顔のために、私は生きていく。


「じゃあ、帰ろうか」
「うん!みんないっしょ!」
「ああ。ママとパパとヴィヴィオはずっと一緒だ」


これからもずっと………




side ランス


「二度目の生、ねぇ……」


そんなもの、興味がなかった。


「どうしたの?」


隣に立つ(ひと)


「いや、なんでもねぇ」
「ふふっ、変なの」
「笑うことねえだろ」
「ううん。全然似合わないんだもん」


守ってやりたくなる。そんな女。
でも、強い目をしている女。


「悪くねぇな」


そんな奴と共に生きる。楽しめそうだ。
戦いに明け暮れていた英雄としての生。
それとはまた違う面白さがある。


「さて、戻るとするか」
「あ、待ってよ」


小走りで追ってきて、手を握ってくる。
俺よりも、ずっと小さい手。


「なんだよ?」
「すぐ先に行っちゃうから、逃げないようにつかんでおくの」
「それならよ……こっちのほうがいいだろ?」


その手を放し、腕を組んだ。
少しの間驚いていたが、


「うん!」


すぐに咲き誇る花のような笑顔を見せた。


「じゃ、改めて……行くか」
「エスコートよろしくね、私の騎士様」
「仰せのままに。お姫様」


こいつ(フェイト)と二人、どこまでも……









魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵―StrikerS編


完 
 

 
後書き
これにて本編は終了です。


ここまでお付き合いくださり、誠にありがとうございました。


ここから新たな始まりに向けて再始動するので、これからもよろしくおねがいします!! 

 

①~部隊長の暇つぶし

 
前書き
最終話のちょっと前のお話です。

声優ネタが入ります。分かる人は気が合いそうです。 

 
side なのは


JS事件が終わり2か月ほど経ち、機動六課も山のようにあった事後処理ようやく片付きました。
ヴィヴィオは検査入院があったため、まだ帰ってこれていません。
士郎君、ランス君はシャマル先生の検査を受けて、リンカーコアのことについて色々やっているみたいです。
本人達は


「魔力供給が一人で行えるようになるとはな」


と、結構びっくりしていました。
私と士郎君は、毎日交代でヴィヴィオのお見舞いに行っています。
ヴィヴィオには内緒にしていますが、機動六課解散後に三人で住む家を買ってあります。
退院日に教えてあげる予定です。
そんなこんなでのんびり過ごしています。




side はやて


「はぁ~」
「お?いつも遊ぶことを考えているお前がため息とは珍しい」
「あんたにだけはそれ言われとうなかったわ……」
「同感です」
「シグナムてめえもか!」
「事実を述べたまでだが?」
「くっ………」


さて、私がため息をついた理由はというと……


「暇や」
「………」
「………」
「なんなんやこの暇さは!!JS事件の事後処理終わってから暇で暇で!!」
「まあ平和が一番だろ」
「そうだな。お前はテスタロッサと二人で居られる時間が増えるしな」


あー、シグナムこう言うやり方は……


「おう、その通りだ」
「……」


シグナム絶句。仕掛けた相手が悪いんやで。
と、ドアが開いた。入ってきたのは……


「あれ?フェイトちゃんは?」


高町なのは教導官殿である。


「おやおや浮気ですかな?士郎というものがありながらフェイトちゃんに手を出すとは……」
「ええ!?ち、ちちちちちち違うよ!!」


期待を裏切らない反応である。
てなわけで、


(シグナム、あの二人はこの手の弄りに強い。せやからなのはちゃんやフェイトちゃんに対してやったほうが効果は高いんやで)
(成る程、確かに今の高町の反応を見る限りそのようですね)


「おいおい、あんま苛めてやんなよ」
「えー、どないしようかなー」
「いじめているつもりはありませんよ」
「はやてちゃんもシグナムさんも何で棒読みなの!?」


本当になのはちゃん弄りは退屈せんな。


「あ、なのは」


と、お姫様の登場やな。


「お?、婿は無視ですかな?執務官殿?」
「え?婿?誰が?」


こいつ……予想の斜め上をいきおった!!


「ランスだろう?ハラオウン家では既にそういう認識だと聞いたが?」
「え!?聞いてないよ!!」


もちろん嘘である。シグナムGJ。


「おいおい、知らなかったのかよ?」
「知ってて教えてくれないのは誰!?」
「俺だけど?」
「………意地悪」
「はいはい爆発爆発」


やはりランスは侮れんな。こちらの弄りすら惚気に変えるとは……


「惚気じゃないよ!!」
「思考を読んだ、だと……」
「いえ。声に出ていました」


流石はシグナム。ボケ殺しはお手の物だ。


「それも声に出てます……」


と、おふざけはここまでにしておいて、と。


「なーんか面白いイベントでもやらへん?」
「イベント、ねぇ……」
「前回の料理対決的なノリの奴や」
「物まね大会、等はどうでしょうか」


あのボケ殺しがナイスアイデア、やて……!?


「声に出しているのはわざとですか?主はやて」
「もちろん!」


シグナムがorzの格好をして落ち込んでいる。が、ナイスアイデアなのは事実だ。


「てなわけで……召集や!!」


……………………………………………………………………………


「第一回!!機動六課物まね大会!!」
「司会は私達ヴォルケンリッターの女性陣が担当させていただきま~す。ルールは簡単!審査委員のザフィーラに何のものまねをしたか当てさせる!見事一回で的中させた人には豪華な景品が出ま~す!二回以降は景品のランクが下がっていくからね」
「と言うわけでエントリーナンバー1番!八神はやて、行きます!!」


―――犯人は……おまえだ!―――


「はい、回答ターイム!!」
「………金田三少年?」
「なわけあるかい!」
「……ならわからん」
「なんでやああああああ!!」
「はーい、残念でした。じゃあエントリーナンバー二番、高町なのはさんでーす」


―――あたしが、タイムトラベラー、ジュン・タイターだよ―――


「はい、回答ターイム!!」
「………ジュン・タイター?」
「違うよ……」
「わからん」
「えー……」
「ふっ、ザフィーラは意外と無知なんやで!」
「その所為で主はやても失敗されていますがね」
「ぐっ、言いよるな、シグナム……」
「じゃあ、エントリーナンバー三番、フェイト・T・ハラオウンだ」


―――こりない人ね、黒桐さん―――


「……グラニュー糖?」
「もはや人じゃないよ!?」
「そんなことを言われても、知らぬものは知らぬ」
「さあ、この無知識ザフィーラに正解をさせるのは誰なんでしょう?続いて四番、ティアナ・ランスター!!」


―――それでも、この町が好きでいられますか?―――


「クロナドの古川渚」
「正解です!!」
「なん、やて!?まさかkay作品で攻めてくるなんて……」
「その手があったの……」
「ティアナ、すごい……」
「初正解出ました~!さて、あと何人正解者が出るんでしょう?次は五番、スバル・ナカジマ!!」


―――虎太郎君、色んな物、見てね―――


「Rewroteの神部小鳥」
「やった!!」
「正解ですね~。スターズは調子よさそうです。では六番、キャロ・ル・ルシエ!!」


―――世界は、いつだって……こんなはずじゃないことばっかりだよ!!―――


「誰だ?」
「ひどっ!?」
「知ってる人やで!?」
「……そう、なのか?」
「だめやこいつ、はやく何とかせんと………」
「次へ行こうぜ。七番、衛宮ランスだ」


―――筋肉、筋肉~―――


「リトルブラスターズの猪原真人」
「またもや正解!」
「やはりkay作品には対応するんやな……」
「次は八番!衛宮士郎!!」


―――軋れ!『豹王(パンテラ)!』


「BLIACHのグリムジャー」
「なん、やて!?」
「まさか……」
「これは意外だな」
「ああ。意外だ」
「皆してひどくないか………?」




………………………………………………………………


「で、結果半分正解、てとこか」
「それにしても……なんでkay作品だけわかったんや………」
「主が無性に進めてきたもので。Kenonをやったらそのまま……」
「さすが私やな。なのはちゃんとフェイトちゃんにも勧めてたし」
「その所為で自分の首絞めてたがな」
「なんか言うたか?ランス」
「イエイエナンデモアリマセンヨ」


とりあえず……


「景品を渡そう。シャマル!」
「は~い」


転んでもただでは起きない。それが私、八神はやてである。


「くじ……ですか?」
「せやで。これで景品を決めるんや」


で、決まったのが……


「ドクホ………」
「パプシ………」
「D.D.レモン………」
「ゲキデカミン………」
「「「「なんで炭酸飲料!?」」」」


ちなみに上からスバル、ティアナ、ランス、士郎である。
ドクターホッパー、パプシコーラ、D.D.レモン、ゲキデカミン……シャマルに景品を決めさせたらこうなった。
反省などしない。


「さて、それじゃこれでお開きや!」
「無理やり終わらせようとするな!!」
「えー、士郎のいけず~」
「いけず~、じゃない!!もう少し大人しくできないのか?」
「そないなことしたら……私は、死ぬ。皆には隠してきたんやけど、私は『定期的にふざけないと死んじゃう病』にかかってるんや」
「…………んな病気あるわけねえだろ」
「ないで♪」


…………………………………………………………………


そんなこんなで超ぐだぐだになった物まね大会は終了した。
こんなふうにふざけてられる日々がこれからも続いていけばいい。
平和な日々が、ずっと……… 
 

 
後書き
全部わかった方はすごく気が合いそうですね。ちなみに字はわざと変えていますので間違いではありません(^O^)

使ったパロディーは
はやて→桂木弥子
なのは→阿万音鈴羽
フェイト→黄路美沙夜
ティアナ→古河渚
スバル→神戸小鳥
キャロ→クロノ(少年)
ランス→井ノ原真人
士郎→グリムジョー



です(*´ω`*) 

 

②~魔導師ランク昇格試験

 
前書き
お気に入り500人突破しました!これからもよろしくお願いします\(^o^)/ 

 
side ティアナ


「魔導師ランク昇格試験、ですか?」
「そうや。フォワード皆で受けへんか?」


部隊長に呼び出され、言われたのは今の私達にとっても凄くいい話だ。


「はい!是非!!」


…………………………………………………


「AAAを受ける!?」
「はい!」


なのはさん達に報告したら驚かれた。


「うーん、私は数回に分けて受けた方がいいと思ってたんだけど……四人とも、ちゃんと考えて決めたんだよね?」
「はい!」
「あたしはいいと思うぜ」
「私はお前らがやりたいなら反対はしない」
「ま、やるだけやってみろ」
「皆がちゃんと考えて、その答えが出たなら私は反対しないよ」
「私も賛成だ。今の君達はそれだけの実力があるだろう」


反対はされず、私達はAAAを受けることを決定した。


「そういや士郎にランス。お前らはどーするんだ?クロノから受けろって言われてたろ?」
「私はSSを受ける」
「俺もだな」


やっぱりこの二人はレベルが違う……


「SS……私達より上だね」
「ま、俺はランクなんざ興味はねえんだがな、お兄様がうるさくてよ」


お兄様………クロノ提督のことかな?


「ま、SSとは言っても数回に分けて受けるからまずはAA、それからSを受けて、最後にSS、って感じだ」
「大事な大事な妹の旦那が僕より弱いなんて許さん!キリッ」
「はやて、それクロノの物まねか?」
「そやで。どうやった?」
「本人に聞かせるのは……な」
「似すぎてて、ってことやな」


部隊長……それはちょっと……


「ま、皆頑張ってな」




side エリオ


そして試験の当日。


「それじゃ、全員合格目指して頑張ろー!」
「「「おー!」」」


スバルさんの一声で気合いを入れ、試験に挑む。


「お前ら元気だなー」
「緊張でガチガチになるよりはいいだろう。今の君達ならば大丈夫だ。私が保証する」


少し離れた所からランスさんと士郎さんが激励してくれた。


「お二人はAAを受けるんですよね?」
「ま、俺らのは出来レースみたいなもんよ。戦闘技術だけでもS位までは余裕だ」


二人はやっぱり規格外でした。



…………………………………………………………


「では、始め!」


試験官は中遠距離型。今まで教わってきた攻撃の受け流しを駆使し、的確に魔力弾を逸らしていく。
そうすれば次に相手がとる手段は………こちらを拘束すること。


「効きません!」


幾重にも張られる設置型バインドを一つ一つ丁寧に避けていく。
ある程度まで距離を詰めた僕が次に取った行動は、


「オーディーン!」
「なにっ!?」


ストラーダの投擲。意表を突かれた試験官はシールドで防ぐ。
それこそが僕の狙い。試験官は無手になった僕はストラーダを回収すると思うはず。
だが、僕はソニックムーブで一気に懐に入り、紫電を纏った蹴り上げを食らわせる。
攻撃の準備をしていた試験官は反応できず、僕の蹴りをまともに食らった。
そしてそのまま試験官よりも上に跳び、


「紫電……一閃!」


全力の拳で勝負を決めた。




side スバル


「でりゃああああああああああ!!」


試験官はあたしと同じ近接格闘型。


「リボルバー………シュート!!」


小手調べに放った攻撃。試験官はそれを回避。
そこからあたしはギン姉やフェイトさんのような機動型と判断。
そういう相手は……


「はぁっ!」
[protection.]


攻撃を受け止め、捕まえてから大技で決める。
と、行きたいところだが……
相手の機動力の高さゆえ中々つかまらない。
このままでは持久戦になってしまう。逃げ切られてしまえば合格にはならない。
そんな時に思い出した、模擬戦で何度もやられた憧れの人(なのはさん)の技。


(やれる?マッハキャリバー)
(当然です。私はあなたの相棒ですから)


試験官が迫ってくる。これが決まればきっと勝てる!
だから、絶対、決めて見せる!!


「なに!?」
[binding shield.]


なのはさんの近接戦封じの技だ。何度も何度も食らったのだ。これの脅威は知っている。
そしてこの後すべきことも。


「一撃……必倒!」
[Divine Buster.]


水色の砲撃が試験官を飲み込んだ。




side キャロ


「フリード!」


試験官はベルカの騎士で剣型のデバイスを使っている。
動きも速く、こちらの攻撃はほとんど当たっていない。
だけど、私も頑張ってきた。皆と一緒に訓練してきた。
強く、なって来たんだ!!


「ケリュケイオン!」
[Boost up.]


私は足にブーストを掛けた。
そして、強化した足で試験官の所まで駆ける。
端から見ればフルバックの私がそんな行動を取るのは無謀以外の何者でもない。
しかし、私は普通のフルバックではなかった。


「はあっ!」
「なにっ!?」


突進と共に蹴りを放つ。デバイスで防がれるが、それこそが狙い。


「バ、バインド!?」


私が放ったのはただの蹴りではないのだ。


『バインドキック』


事件が終わってから、ランスさんに体術を習い、完成させた私のクロスレンジ封じ。
自分の足に設置型バインドを仕掛け、相手に触れれば発動する。
応用でパンチや肘鉄等もある。無論のことバインディングシールドもあるため、クロスレンジに対抗する術は沢山ある。


「くっ、くそ!」
「フリード!ブラストカノン!」


フリードにも新技を使わせた。ブラストカノンはブラストフレアの強化版。欠点はため時間が二倍以上かかることだが、威力は三倍近い。ケリュケイオンによるブーストもついているため、一撃で決められるほどの高威力だ。
こうして私も無事に戦闘を終えた。




side ティアナ


「くっ……」


正直、予想外の相手だった。
まさか、私と同じ射撃型のオールレンジタイプが相手になるなんて。


「自分に似た相手がこんなにも厄介とはね……」
[そうですね]


クロスミラージュも同意してくる。


「だけど、それなら尚更負けられないわよ!」
[その通りです。マスター]


同タイプということは、弱点も似通ってくる。つまり、弱点の突き合いになるわけだ。
私はロングレンジ勝負を仕掛けることにした。その為には下準備が必要。
センターガードの利点であり、欠点。それは、その場からあまり動かない方がいい、ということ。
今回はそこを突く。
私は動き回りながらスフィアを設置していく。もちろん幻術を使い見えないようにして。
設置が完了したところで、


「クロスミラージュ、一斉発射!」
[Yes.]


放たれる大量の魔力弾。試験官は冷静に撃ち落としていく。私の思惑通りに(・・・・・)


[チャージ完了]
「OK。行くわよ、クロスミラージュ」
[OK.]
「しまった!?」


気づいたようだがもう遅い。
全方位から迫る魔力弾を撃ち落としつつ防御など出来やしない。


「ファントム………ブレイザー!!」


砲撃が試験官を呑みこむ。だが、私はそれで終わらせない。
ダガーを展開し、追撃に走る。
双剣の扱い方はある程度士郎さんに習ったため、自信は結構ある。
やはり、砲撃だけでは堕ちていなかった試験官は満身創痍になりながらも立ち上がろうとしていた。


「これで、終わりです」


両手のダガーによる一閃は完璧に試験官を捉えた。




………………………………………………………


「皆、どうだった?」


どうやら四人ともほぼ同時に終わったらしく、戻った所で鉢合わせた。


「「「バッチリです(だよ)!」」」


皆も試験官を倒せたようだ。そう言えば、士郎さんたちは……?


「その様子は全員合格ラインに立てたみたいだな」
「おやおや、これで四人とも俺らよりもランクが上になっちまったな」
「お二人はどうだったんですか?」


キャロが二人に聞くと、


「「五分かからず終わった」」


と、まあ相変わらずの規格外っぷりでした。


「次に受けられるのは3ヶ月も後だからな。それまでお前らの方が高ランク、ってことになるな」


ランスさんのそんな軽口に辟易しながら私達の魔導師ランク試験は終了した。 
 

 
後書き
久しぶりの更新です\(^o^)/

原作組が若干の強化となりました。
英霊二人がSSとなる過程はめんどk…尺の都合上カットさせていただきます。

あと、つぶやきで告知したアンケートへのご協力お願いします。

次話はリアルが忙しくなってしまうので更新はとても遅くなってしまいそうです……(゜Д゜)

それでは~ 

 

③~戦闘機人達

 
前書き
今回は戦闘機人たちのお話です(*^^*)

 

 
side 士郎


12月に入った頃、私は仕事でとある場所を訪れていた。


「お!赤の旦那じゃん。なんか用?」
「セインか。今日は仕事だ」


訪れたのは戦闘機人たちのいる更生施設。はやてから様子を見て来るように言われて来たのだ。


「士郎さん。あの子の様子は…?」


控えめに聞いてきたのはディエチ。真面目でいい子だ。


「ヴィヴィオなら元気にやっているよ」
「そうですか……よかった」


と、ディエチと話していたら突如後ろから抱きつかれた。


「……ウェンディ。降りてくれないか?」
「嫌ッス。にーさんの背中は乗り心地最高ッスから」
「理由になってねーぞ。困らせてないでさっさと降りろ」
「んー?もしかしてノーヴェは羨ましいんスか?」
「な訳ねーだろ。仕事で来てるんだ。邪魔したら悪いだろ」
「へーいッス」


背中に張り付いていたウェンディが渋々といった様子で降りる。


「助かった。ありがとうノーヴェ」
「こちらこそこのアホが迷惑かけてすみません」
「アホじゃないッス!」
「「「「「「いや、アホでしょ」」」」」」


見事なシンクロ。


「みんなしてひどいッス!」



…………………………………………………………


「そう言えば、衛宮。聞きたいことがあったのだが」


喚いていたウェンディがセインとディード、オットーによって押さえられたあと、チンクが聞いてきた。


「なんだ?」
「クアットロが拘置所で「剣が…剣が…赤い大地が…」と意味不明な事をずっと繰り返しているらしいのだが、理由はわかるか?」


………私はどうやらものすごいトラウマを与えたようだ。


「さらに金属を見ると発狂するらしくてな、私達も抑える方法はないか、と聞かれたんだ」
「……そっとしておいてやれ」
「何か知っているのか?」
「……まあ、な」


と、そろそろ本題に入らねばな。


「それより、私が今日来たのは君達の今後についてなんだ」
「私たちの?」
「ああ。これからどうするんだ?今日はそれを聞きに来たんだ」
「私とディエチ、ノーヴェ、ウェンディはナカジマ家にお世話になる予定だ。ゲンヤ氏の養子として、な」
「なるほど……」
「セインとディード、オットーは聖王教会の方にシスターとして迎えられるらしい。詳しいことは知らないがな」


チンクから一通り聞きたいことを聞き終えた私は、


「さて、今日は土産がある」


と、言った瞬間に、


「どこどこ!?どこッスか!?」
「なになに!?また美味いもの!?」


ウェンディとセインが食いついた。


「残念ながら食べ物ではない。が……あながち間違いでもないな」
「謎かけは苦手ッス。もったいぶらずに教えてくれッス!!」


そう言いながら詰め寄ってきたウェンディは……


「やかましい!少しは大人しく待てねーのか!!」


ノーヴェに殴られた。


「痛っ!?」
「自業自得だ」
「でも待てないッス!!」


と、いつまでも教えないのは可哀想なので、持ってきていたそれを見せる。


「これだ」
「にーさん、これがお土産ッスか?」
「ああ。鍋だ」
「鍋か……」


あからさまにがっかりした様子を見せるセインとウェンディ。


「ん?これはどこかで……」


そして、見たことがあるのか記憶を探っているディエチ。


「これは土鍋と言って、私の出身地ではこの鍋でパーティーのようなこともする」
「へぇ~」


間の抜けた声を出すウェンディと対照的に、何かに気づいたセイン。


「旦那、もしかして……」
「今日は食材も持ってきている。早速これを使って見せよう」
「「やったー!!」」
「相変わらずの食い意地だな……」


チンクのつぶやきは二人には届かない。



…………………………………………………………………


「あー!!ウェンディ、それはあたしの肉だぞ!!」
「へへーん、隙を見せる方が悪いっすよ~」
「野菜も食べるんだぞ、セイン」
「え~、チンク姉だって茸食べてないじゃんか」
「そ、それはそれだ!!」
「今のうちに……」
「ふふふ……」


肉を取られたノーヴェが怒り、チンクとセインのやり取りの隙をついて自分の分を確保するオットーとディード。それを見守るディエチ、という構図が出来ていた。


(こうして見ると普通の姉妹のようだな……)


「あの……」


と、物思いにふけっていたらノーヴェに話しかけられていた。


「なんだ?」
「ありがとう……。士郎さん達のおかげであたし達はこうしてみんなで過ごせてる。新しい生き方を探せる。だから……この恩はちゃんと返す」
「そうか。それならば自分の幸せを見つけてくれ。それが私への恩返しだ」
「ああ。きっと」
「ノーヴェ~早く来ないと肉無くなるッスよ~」
「何!?てか犯人はお前だろウェンディ!!」


彼女たちも変わっていく。戦闘機人として戦う事しか知らなかった彼女たちは普通の少女として生きていくのだろう。
私も、先へ進まなくてはならないな……。
なのはとの事。これからの事。やるべきことはまだまだあるのだから。




side ノーヴェ


士郎さんが帰ったあと、一人で考える。


「幸せ、か」
「お悩みのようだな。姉が相談にのるか?」
「チンク姉……あのさ、幸せってなんだと思う?」


あたしは隣に来たチンク姉に聞いてみた。


「幸せ、か。わからんな」
「…え?」
「ノーヴェ。幸せを知っているならばすでに私達は幸せ、ということではないか?」


やはりチンク姉は頭がいい。そんな風に考えるなんてあたしには出来ない。


「時間はたっぷりあるんだ。あせる必要も、慌てて探し回ることもしなくていいだろう。先は長いんだからな」
「そうだな……ありがとう、チンク姉」
「フッ、これも姉の勤めだからな」


そうやって得意気に言うチンク姉は戦うことしかしらなかった時のような冷たい笑顔ではなく、慈愛に満ちた笑顔だった。
これからあたし達は変わって行くのだろう。自分の目指す方向に向かって。
何が待っているのかはわからないけど姉妹みんながいれば頑張っていける。
それだけは変わらない。
 
 

 
後書き
次回からリクエスト話に入ります(*^^*)

ですが、下書きが全く出来ていないため更新速度は亀になると思われます(T_T)

それでは~

 

 

④~家族旅行…衛宮家

 
前書き
リクエスト話その1です(*´ω`*)

 

 
side なのは


「もうすぐクリスマスだね」
「そうだな」
「それでね、当日は三人でどこかに行かない?」


と、言っても行くところは既に決まっているのだけれど。


「それはいいな。どこへ行くかは決まっているのか?」
「もちろん!」


……………………………………………………



「で、翠屋に来たわけか」
「お母さんがケーキ位なら作るって言うから……」
「ケーキ!?やったー!!」


と、翠屋に来たのだが……入りづらい。前来た時はなのはとの関係は単なる同僚だったから簡単に入れたが、今はまあ、所謂恋人同士であるわけで。
両親に会うのにわずかに抵抗がある。


「こんにちはー!!」


だがしかし、子供にはそんな葛藤は関係ないわけで。
ヴィヴィオはなのはを引っ張って入って行ってしまう。


「いらっしゃいませ」


そんな私達三人を出迎えたのは、端正な顔立ちをしたエプロン姿の男性。
彼はどこか士郎氏に似ている所があった。


「お兄ちゃん、ただいま」
「……なのは、その子は?」
「私と彼の娘だよ」
「……彼とはその後ろに居る男か?」
「うん。私の……大事な人だよ」


なのは、見事なまでに誤解を生む台詞を言う。


「おい、君、今のは本当か?」


物凄く睨みを効かせながら聞いてきた。


「いろいろ語弊はあるが、概ねその通りだ」
「……なのはが欲しければ俺と闘え!責任取れ!」



…………………………………………………………


そんなことがあり、現在高町家の道場にてなのはの兄?と木刀を両手に向かい合っている。


「覚悟はいいか?」
「いつでも」
「大層な自信家だな。その自信、砕かせてもらう!!」


そして闘いがはじまる。



side 恭也


なのはの連れてきた男。構えからそこそこのやり手であると判断し、小手調べとばかりに手に持つ二刀で斬りかかる。が、


「今のを防いだか。中々出来るようだな」
「賛辞は素直に受け取っておこう」
「だが、これでどうだ?」


連撃を叩き込んでいく。彼もいなしているが、二十合ほど打ち合った所で隙が出来た。


(もらった!)


決まった、と確信する。
が、彼は笑っている。
その理由は直ぐにわかった。
必勝を確信した俺の一撃は彼には届かず、紙一重で防がれ、カウンターが俺を襲った。
咄嗟にバックステップで避けられはしたが、今のは……


(わざと隙を作り、こちらの攻撃を誘導した)


なんて危険性の高い戦い方だ。失敗すれば敗北は確定だったはず。


「まさか今のを見切るとはな」
「……どうやら俺は君を見誤っていたようだ。全力で相手をさせてもらう」


俺は御神流の奥義『神速』を使い、斬りかかる。常人には反応出来る筈のない速度。
確実に取った……はずだった。


「成る程、それが『神速』か」


避けられた。あり得ない。


「ではこちらも本気を見せよう」


そう言った彼は一足で俺の眼前に迫り、一閃。俺の手にあった木刀はその一閃を受け、後方へと飛んでいった。
その軌道は…ほぼ見えなかった。
彼は俺の首筋に木刀を当て、


「まだやるかね?」


と、いい放った。


「……参ったよ」




side 士郎


現在、私と恭也氏は四人の女性の前で正座をしている。
ちなみにヴィヴィオは士郎氏と遊んでいる。


「恭也」
「な、何でございますか?」
「どうして衛宮さんを攻撃したの?」
「そ、それは……」
「シスコンだから、でしょ?」
「なっ!?」
「安心して。私は旦那がシスコンでも許すわよ」


と、桃子さん、美由紀さん、月村忍さんの三人に迫られる恭也氏。本来ならば私が正座させられる理由はないはず……なのだが。


「どうして勝負を受けたの?」
「ま、待て。どうして怒っているのだ?」


何故かなのはに説教されてる私がいた。


「怒ってないよ」
「……いや、誰がどうみても怒っているだろう」
「違うよ……心配なだけだもん」
「心配?」
「士郎君、いっつも危ないことばっかりするから……今回だって、たまたま怪我しなかっただけで……」
「……見せたかったんだ」
「え?」
「私がなのはを守る事が出来る、と言うことを彼にわからせたかったんだよ……」


これは偽らざる本心だ。少し子供っぽい感じは否めないのだが。


「あ、ありがとう……」


顔を真っ赤にして微笑んでいるなのは。
何だろう。凄く、いい……。


「あの……」
「あらあら、アツアツね♪」


いつの間にかこちらに来ていた美由紀さんと桃子さんに話しかけられる。


「わ、わわわ!!!おか、お母さん!!お姉ちゃん!!そそそそ、そんなこと!!」
「なのは、落ち着け……」


慌てているなのはが可愛いと思ってしまった私は悪くないと思う。




side ヴィヴィオ


わたしはママのおとうさん……わたしにとってはおじいちゃんっていうらしい。
たかまちしろうさんとあそんでいます。


「ヴィヴィオはママのことは好きかい?」
「うん!だいすき!!」
「そっか。パパのこともかい?」
「うん!パパはね、ママとヴィヴィオの“せいぎのみかた”なんだって!」


わたしははやておねえさんにおしえてもらったパパのことをおしえた。


「そうか……ヴィヴィオは幸せだね」
「うん!」


ふたりがびょういんにおむかえにきてくれたとき、とってもうれしかった。
だから、


「ママとパパとヴィヴィオはずっーとなかよしでいるやくそくをしたの!」
「どんな約束だい?」
「ゆびきり!おじいちゃん、しってる?」
「ああ。知っているよ」
「じゃあおじいちゃんもゆびきりしよう!ずっーとなかよしでいるために!」
「そうだね。指切りしようか」


これでみんななかよし!!





side 士郎


それから8人でクリスマスパーティーをした。
ヴィヴィオはこういったパーティーは初めてだったので終始はしゃいでいた。
大人達は酒を開けた(主に恭也氏と忍さん、美由紀さんが飲んでいた)ので、私もいくらか頂いた。なのはは頑なに飲もうとしなかった。美由紀さんが言うには過去に何かがあったらしい……。
時刻が夜の8時を回ろうとしたときには恭也氏が泥酔し、忍さんに膝枕をされていた。
……羨ましくなんてない。


…………………………………………………………


なのはとヴィヴィオが風呂に入っている間、私は道場に一人でいた。


(家族、か)


ふと、冬木の家のことを思い出した。おぼろげな記憶だが、凛、桜、イリヤ、藤ねえ、セイバー……皆と過ごしたあの時間。とても楽しかった。なのはとヴィヴィオ。二人のために私は何ができる?
本当に俺で彼女達を幸せに出来るのか?
悩んでいた私は後ろから近付く人物に気が付かなかった。




side 士郎(高町)


クリスマスパーティーを終え、士郎君を探していたら、道場に一人でいた。


「おや、こんなところにいたのか」
「……士郎さん」
「ふふ、お義父さん、でいいよ」
「………」


以外に冗談が通じないみたいだ。


「大丈夫、皆反対などしないさ。なのはだって、きっと待っているよ」
「本当に、私などでいいのですか?」


疑いが混じった声。彼は自分を過小評価する癖があるから、ここは後押ししてあげよう。


「なのはが君を選んだんだ。それに、僕個人としても君のことは気に入っているしね」
「私にはなにもありません。人に誇れることはなにも……」
「いや、あるよ。君はなのはを誰よりも大切に思っている。もちろん、ヴィヴィオちゃんのこともね。それ以上に誇れることなんてない」


前回来たときとなのはに向ける目が決定的に違っていたのにはすぐに気づいた。もちろんなのはも彼に向ける目が変わっていた。


「頑固で無鉄砲な所がある子だけど、よろしくお願いします」
「……はい。必ず、幸せにします」


なのはにも彼のような人が見つかってよかった。
きっと、幸せになってくれる。




side なのは


私達が今日泊まるのは私がこの家にいたときに使っていた部屋。
ベッドでは三人も寝られないので布団を床に敷いている。


「士郎君、お父さんとなに話してたの?」
「なのは……聞いて、いたのか?」


何だろう。凄く焦っているのがわかる。


「ううん。お母さんがね、“男の会話だから聞いちゃ駄目”って言うから」
「ならいいんだ……」
「おとこのかいわ?」


ヴィヴィオも興味を持ったようだ。


「ヴィヴィオも気になる?」
「うん!」
「教えて…くれる?」


実際のところ、私もとても気になっている。


「……その内わかる」
「えー、いまききたいー!」
「ヴィヴィオ、楽しみは後にとっておいたほうが喜びが大きくなるんだぞ」
「うー……わかった。がまんする」


結局なんだったんだろう……?


「それよりごほんよんで!」
「本か……確かあの辺に……あった!」
「ほう、桃太郎とはまた懐かしい物を」


小さい頃の物を捨てないでとっておいたのがこんなところで役にたった。


「それじゃ、はじまりはじまり。昔々、あるところに……」




…………………………………………………………………


「……寝ちゃったみたい」
「ああ。あんなにはしゃいでいたんだ。疲れたんだろう」
「そうだね……」


と、士郎君は鞄から小さな包みを2つ出した。
その内の1つをヴィヴィオの枕元に置いた。


「それは……?」
「クリスマスプレゼントだよ。なのは、君にはこれを」
「ありがとう。いま開けてもいい?」
「ああ」


包みを開けると出てきたのはネックレス。宝石がついているが、私はそういうことには疎いので、何の石かわからない。


「これはアクアマリン。3月の誕生石で幸福の象徴とされる」
「私達三人にぴったりだね……」


しかし、困ったことに私はプレゼントなんて用意していない。
お返しがない……と悩んだが、あることを思い付いた。


「ね、士郎君。私からもプレゼントがあるんだ。出すから少し目を瞑って」
「……よくわからんが、目を瞑ればいいんだな?」


私は士郎君の目の前に行き、目を瞑る。そして、唇を触れ合わせた。


「………!?」


どれくらい時間がたっただろうか。よくわからない。息苦しくなったところで唇を離した。


「ぷはっ……」
「な、なのは……?」
「えへへ…メリークリスマス!おやすみなさい、士郎君!」


その夜は、中々寝付けなかった。




……………………………………………………


翌日、士郎君が中々目を合わせてくれないのがとっても可愛いと思ってしまった。
ヴィヴィオもプレゼントの髪飾りを喜んでいたし、とっても楽しいクリスマスになった。
来年は、もっと楽しいクリスマスになるといいな……。
 
 

 
後書き
と、言うわけでリクエスト一話目です。

なんか後半なのはと士郎のイチャイチャに路線がずれた気がする……

そこは暖かい目で見ていただけると嬉しいです。


最後にお知らせです。

現在リアルで予定が立て込んでいるため、5月中盤辺りまで更新が出来なくなると思います。

ですが、少しずつ書き溜めをしているので再開後はいいペースで更新が出来ると思います。

長くなりましたがこの辺で(゜Д゜)ゝ

 

 

⑤~クリスマスの過ごし方…ランス&フェイト

 
前書き
ヴィヴィオ「さーて、今回のお話しは~?」

アインハルト「フェイトさんとランスさんのデートのお話しだそうです。お二人はアr」

ヴィヴィオ「アインハルトさん!ネタバレ厳禁!」

アインハルト「し、失礼しましたヴィヴィオさん……」

ヴィヴィオ「それでは本編どうぞー!」 

 
side フェイト


「クリスマス、かぁ……」


今年はなのはも士郎とヴィヴィオと一緒に過ごすらしいし、はやてはヴォルケンリッターの皆がいる。
私も今まではリンディ母さんやクロノ、エイミィ、アルフ、キャロと一緒だった。エリオと過ごした時もある。なので、一人で過ごした記憶はあまりないのだが……今年はというと。


「皆予定があるなんて……」


母さんはレティ提督と約束があり、クロノとエイミィは一家で。アルフはユーノの所に。エリオとキャロは二人でデート……と、これは私とはやてで仕組んだために文句は言えないが。
それにしても、断る際に皆がニヤニヤしていたのだが、一体何がそんなに面白いのだろうか。


「なーにため息なんざついてんだ。老けるぞ」


そんなことを考えていると、不意に声が聞こえた。ランスの声だ。


「相変わらず失礼なことばっか言うんだから」
「こういったイベントの時にため息なんかついてるお前が悪い」
「うっ………」


完璧な正論に言い返すことができない。


「おっと、本来の目的忘れちまうとこだった」
「目的?」
「おう。デートに行くぞ」
「う、うん…………えええええええ!?」
「でかい声出すなよ……」
「だだだ、だって……」


今、デートって言ったよね!?ランスとデートかぁ……
どこに連れてってくれるんだろう?イルミネーションとか見て、
『綺麗だね』『お前の方が綺麗だ』
とか言っちゃったりして!キャー!!




…………………………………………………


「………ト。………イト。……フェイト!!」
「はっ!?私は何を……」
「どうした?調子悪いのか?」
「平気!元気いっぱいだよ!!」
「お、おう……。それにしても、何を考えてたんだ?うぇへへへ、とか言ってたが」


え……も、もしかして、声に出てた……?


「ほ、他には?」
「あん?」
「他には何か言ってなかった?」
「そうだな、『あんっ!そこはらめぇ!』って言ってたぞ」
「ほ、ホント!?」
「もちろん嘘だ」
「ま、またからかった!!」




………………………………………………………………


と、いうことがあり、結局出発したのは夜の9時を過ぎてからだった。


「むぅ…………」
「悪かったって。そんなに怒るなよ」
「だって……」


ランスはさっきのことで怒っていると思っているようだが、私が怒っているのは別の理由だ。


「何でクリスマスに居酒屋に行かなきゃ行けないの?」
「駄目か?」
「駄目に決まってるでしょ!?」
「いいから入るぞ」
「え、ちょっと待って……」


手を引かれ、半ば無理やりに入店。
するとそこには長めの廊下があった。
先に進んで行く彼に着いていくと、そこは……


「あれ?」


洒落た雰囲気のバーだった。


「中々いい店だろ?」
「うん。でも何で……?」
「マスターが変わり者でな、親しみやすさをモットーにあの入口にしたんだとよ」
「おうおう、変わり者とは言ってくれんなあ、旦那」


そう言いながら出てきたのは三十代半ばと思われるオールバックの男性。
彼がマスターだろうか。


「事実だろ?」
「まあな。で、そっちの別嬪さんはコレか?」


そう言いながら小指を立てるマスター?らしき男性。


「おう。今日はデートだ」
「かーっ!うらやましいやつめ!今日の代金は二割増しだコノヤロー!」
「はぁ!?なんでだよ?」
「やかましい!こんな美人捕まえやがって……って、彼女どっかで見たような……」
「雑誌とかじゃねーか?フェイトはよく取材受けてっからな」


と、ランスの発言の直後、マスターの動きが止まった。


「ふ、ふぇ」
「ふぇ?」
「フェイト執務官だとおおおおお!!??」
「声がでけーよ」
「あ、ああ。すまんな……じゃねーよ!」
「まだなんかあんのか?」
「当たり前だ!超有名人だろ!何でそんなにすごい人がお前見たいな真っ昼間からうちに来るような半ニート野郎と……」
「半ニートで悪かったな」


憎まれ口を叩きながらも、マスターと話すランスはとても楽しそうだ。


「おいおい、そんなとこに突っ立ってないで座れや」
「あ、……うん」
「どうした?さっきから元気ねえみてえだけどよ」
「二人のノリについていけてないだけだから気にしないで……」
「そうか。じゃあ呑むぞ」
「何がじゃあなの?前置きもなにもなかったよね!?」
「バーに来たって時点で前置きは十分だろ」
「うぐぅ……」


またもや言い返すことができない私。
絶対遊ばれてる……


「ま、いいや。マスター、俺はいつもの。フェイトにはオススメのやつ頼むわ」
「はいよ」


お勧め、か。何が出てくるんだろ?
こういった所には初めて来たので落ち着かない。
頼んだものはすぐ出てきたのだが、私にはその時間がかなり長く感じた。


「お待たせいたしました。当店自慢の一杯、オリジナルオレンジカクテルでございます」


私の元にカクテルをおいたマスターはランスの所に行くと、


「ほれ。いつものだ」
「おう、ありがとよ」


先ほど私に対して見せた完璧な接客態度をどこかに放り投げて来たかのようなずぼらな態度でウィスキーの瓶と氷の入ったグラスを置いた。


「あの……」
「はい、何でございますか?」
「私と彼とで態度が変わりすぎてませんか?」


私の疑問に答えたのはマスターではなくランスだった。


「こいつが男女で接客態度を変えるのはいつものことだ」
「そ、それってどうなの……?」
「俺は嫌いじゃねーぞ。こいつと話すと退屈しねえからな」
「褒められた、ということにしとこう」
「これでいいの……?」


何だかこの二人についていこうとすると疲れそう……。
とりあえずは出されたお酒に口を付けてみた。


「……美味しい」


仄かなオレンジの香りと味わい、程よいアルコール。
とても飲みやすく、お勧めされたのにも頷ける。


「中々いけるだろ?」
「うん。ランスが飲んでるのは水割り?」
「いや、ロック」
「こいつはよく昼間からコレ飲みに来てますから」


仕事サボって一人で飲んでるなんて……


「はやてにばらそうか?」
「………やめてください」
「じゃあ今日のお代は全部ランス持ちで♪」


私が言ったら、


「よし!今日は三割増しにしよう」
「てめえ!?」


マスターとランスの間で一悶着あったのは別のお話し。




side ランス


……不味いことになった。
俺の奢りだとわかった瞬間、フェイトはかなりのハイペースで呑み始めた。
ま、言われなくとも奢るつもりだったが。
しかし、本当にどうするべきか………


「らんす~ちゅーして~」
「マスターが見てるぞ?」
「えへへ~ちゅー」
「わかったわかった。じゃあ場所変えるぞ」
「やだー!」


まさか酔ったフェイトが幼児退行するとは思わなかった。
それと言うのも……今の俺、全国の男を敵回すような状態なのである。


「すりすり~」


フェイトは今、俺の膝に座りながら頬擦りしてくるのだ。
その際背中に手を回してかなり強く抱きしめて来るわけであって。
必然的に胸板にはフェイトご自慢の二つの果実が押し当てられる。
子供の様になってしまった今の状態。普段のしっかり者のエリート執務官。
二つのギャップにぐっと来るものがある。
……これをギャップ萌え、と呼ぶことを俺が知るのは少しあとの話……
閑話休題(それはさておき)


「そろそろ帰るぞ」
「うごけない~らんす、だっこ!」
「長距離移動するからおんぶで我慢してくれ」
「やだやだやだやだ!!だっこだっこ~」
「わかった、わかったから落ち着けフェイト」
「だっこ~」
「はいはい……と言う訳だからお代はここ置いていくからな、マスター」
「おう!リア充は爆発してこい!」
「おじちゃんバイバ~イ」


とりあえず店を出たのはいいものの……


「すんげー見られてんな……」
「んー?」


それはそうだろう。酔った金髪美女がお姫様だっこされているのだ。道行く人々が振り返るのにも頷ける。
だが、さすがに視線を感じまくるのが億劫になった俺は裏路地に入り、近くの建物に入った。
そこまではよかった。だが、そこは………


「ラブホじゃねえかここ……」
「らぶほ?たのしいところ?」
「楽しむところだ」
「????」


とりあえず部屋を取り、そこでフェイトを下ろす。
下ろした途端に部屋の物色を始めるフェイト。


「わー、おふろ~。わー、べっどおっきい~。わー、こんどーむだ~」


最後の発言がおかしかったのは無視しようとおもう。
とりあえずは……


「フェイト、水でものn「おふろはいる~」……おい待て」
「なに?」
「アルコール入ってる時に風呂はよくねえぞ」
「んー……じゃあねる!おやすみ~」


そしてフェイトはベッドにダイブ。
すぐに眠ってしまった。


「………ま、起きた頃には酔いも覚めてるだろ」


と言う訳で、待つことにした。




side フェイト


何だろう……頭がくらくらするなぁ…。
私、何してたんだっけ?……はっ!?


「ここは!?」
「お、起きたか」


目が覚めてすぐに隣から聞こえて来る声。ベッドにランスが腰掛けていた。


「ランス……ここどこ?」
「ホテル」
「ふーん………ってそんなことは今はどうでもいいよ!」
「なんで?」
「だって……」


折角のクリスマスデートなのに酔って寝ちゃうなんて……


「だって、なんだ?」
「私、デートなのに寝ちゃったから……」
「それで?」
「え?怒らないの…?」
「寝顔をじっくり堪能させてもらったからな。それにしても寝相悪いなお前。座ってる俺に絡み付いて来るとはな」


怒らなかった。寝ちゃったのに。飲みに行っただけで何にもしてないのに。
………冷静になるとランスが色々と凄い発言を連発していたこと、酔っていたときの記憶などを思い出した。


「さてと。酔いも覚めて来たろ?」
「う、うん。それよりね……シャワー浴びてきていい?」
「ダメだ」
「えええ!?」
「それよりも……」


その言葉の続きを聞く前に、私はベッドに押し倒された。


「一汗かいてからの方が風呂は気持ちいいだろ?」


そう言いながらニヤリと笑った。


「本当にいっつも強引何だから」
「そうか?」
「うん。でも、そういう所も好きだよ」
「ならもっと強引に行くか?」
「それはちょっと……私、初めてだし……」


やっぱり、最初だし、優しくして欲しい。
はやてみたく知識が豊富な訳ではないけど、初めての時は痛いらしいっていうのは知っている。


「それなら……ゆっくりと開発してやるとするか」
「お、お手柔らかにお願いします……」


そのまま私はランスに身を委ねた。




…………………………………………………………………………


「んん………」
「お、起きたか」
「おはよう……」


そう言ってから自分の格好を確認。
……続いてランスの格好を確認。
………結論。


「向こう向いて」
「は?」
「いいから!」


向こうを向かせている間に服を着る、と言う選択をとった。
その際にベッドを見ると赤い染みが見られた。そう言えばお風呂でも……
それを見ながら感慨に耽っていると、


「いつまでボーッとしてんだ。着替えなら早くしろよ」
「あ………うん。……っ!?」
「どうした?」
「む、向こう向いてって言ったのに!」
「下着は着けたんだったらいいだろうがよ」
「そう言うことじゃないの!!」


結局朝は騒々しくなってしまった。




side ランス


結局ゴタゴタがあったせいでホテルを出たのは8時過ぎにはなったが、今日の仕事は一応昼からなので問題はない。
だが、まだ渡していない物があるのだ。
隊舎へ戻る前には渡しておきたい。


「フェイト」
「…………」
「渡したい物がある」
「………何?」
「これ。クリスマスプレゼントだ」
「えっ……」


俺が渡したのはターコイズ、別名トルコ石のイヤリング。
成功の象徴とされる宝石であり、心配を打ち消してくれる、とも言われる心配性(フェイト)にぴったりの石だ。


「あ、ありがとう……」
「さてと。それじゃ戻るか」
「待って!」
「ん?」


振り返ると、フェイトが小さな箱を差し出していた。


「クリスマスプレゼント…気に入ってもらえるかはわからないけど…」
「そうか。ありがたく頂いておくぜ」


中身は腕時計だった。
凝ったデザインをしていて、そこそこ高いものであることは予想がついた。
お互いに贈った物が装飾品だったため、ある提案をしてみる。


「なあ、折角の機会だから着けてくれよ。俺も着けてやるから」
「えっ!?……うん。いいよ」


フェイトは少しぎこちない手つきで、俺は手慣れた手つきで、それぞれのプレゼントを着け合う。


「やっぱり俺の見立て通りだな。よく似合ってるぞ」
「ランスもいつも以上にかっこいいよ」
「おうおう、言うようになったな。……それじゃ、帰るか」
「うん!」


帰り道は少しゆっくりと歩いた。二人だけの時間がちょっとでも伸びるように。 
 

 
後書き
予想よりも早く完成したので更新です。

そして、お気づきの方もいらっしゃる……と言うかほぼすべての方が気付かれているとは思いますが、前書きの方式を変更しました。

いかがでしょうか?この件に関して感想や意見を頂ければ幸いです。

それではまた~ 

 

⑥~大晦日とお正月…テスタロッサ家

 
前書き
なのは「さてさて、今回のお話しは~?」

士郎「フェイトとランサー、エリオとキャロの話だな」

なのは「私達もお正月はゆっくり過ごそうね」

士郎「そうだな。それではそろそろ本編へ入ろうか」 

 
side キャロ


12月30日。私達は八神部隊長に呼び出されて部隊長室にいました。


「お正月休み、ですか?」


部隊長から呼び出された私達が聞いた話は休暇についてでした。


「そやで。今は大きな事件もないし、許可は簡単に降りたからね。隊長達にはもう言ってあるから休暇の準備してると思うよ」


それで皆でそれぞれ自室に戻ろうとすると、


「あー、エリオとキャロはあとでフェイトちゃんの所に行ってな」
「どうしてですか?」
「何でも帰省するから一緒にいかないかって」


きせいって何でしょうか?
そう思うとエリオ君が、


「部隊長。きせいって何ですか?」
「帰省って言うんは実家に帰る、って言うことや。この場合だと地球のお家に行くことやで」


フェイトさんの地球のお家かぁ……久しぶりに行きたいです!


「話はこれだけやから早く戻って準備してきな」
「「はい!」」



……………………………………………………………


「あ、二人とも来たね」
「準備は万端か?」


フェイトさんのお部屋に行くと、旅行鞄を準備してフェイトさんとランスさんが待っていました。


「着替えと、歯ブラシ、お風呂セット。準備はばっちりです!」
「それじゃ、明日の朝一番の次元航行船で地球に向かうよ。今日は早く寝ようね」
「はい!」
「起こしに行くのめんどくせえからここで四人で寝るか?」
「いいんですか?」
「いいよ。久しぶりに一緒に寝ようか」


ここまでお話しが進んだ所でエリオ君が、


「そ、それはちょっと……」
「何だエリオ。キャロと一緒の布団がそんなに恥ずかしいか?」
「え、そ、それは……」


エリオ君、私と一緒に寝るの、嫌なのかな……


「じゃあエリオは私と寝る?」
「キャロと寝ます!!」


即答するなんて、フェイトさんと寝るの、嫌なのかな?


「即答……エリオは私と寝るの嫌なの…?」
「それは嫌だろ。潰されるからな」
「え、いや、そう言うわけでは……」
「じゃあ一緒に寝ようよ!」
「ですが……」
「胸を当ててくるのであっちの方の制御g「ランス!!」…ハイハイ」


あっちの方の……何でしょうか?


「エリオ君、あっちの方って何ですか?」
「え、そ、それはちょっと……」
「は、早く寝よう!!」


結局あっちの方と言うのが何なのかはわからないままでした。




side エリオ


危なかった。ランスさんがとても際どい発言をしたけど、フェイトさんのお陰で何とかキャロには知られずにすんだ。と言うか、フェイトさんに知られた時点でほとんどアウトなんだけれど。
それにしても……眠れない。隣で眠るキャロの肌の柔らかさとか、女の子らしい匂いとかのせいで意識が冴える。そんな僕の葛藤などお構い無し、といった様子で熟睡するキャロ。


「えへへ……エリオ君……むにゅ……」


その上この可愛い寝言。……僕はどうすれば寝られるんだろうか?


(寝られねーみたいだな)


そんなときにランスさんが念話を送ってきた。


(ランスさんはその……フェイトさんと寝るの、慣れてるんですよね?)
(まあな。もっとすげえことも色々やったしな。だがよ、お前の年じゃ女と一緒、それも意識してるやつと同じ布団ってのは少しハードルが高いかもな)
(すげえことって……今以上のですか!?)


キャロのことに意識がいっぱいで、気付いてもツッコめなかったのだが、現在のフェイトさんの状態はとにかく凄い。
まず、ネグリジェがはだけて下着が丸見えになっている上、片足をランスさんに絡ませ、その上で首を両腕でしっかりとホールド。さらにランスさんの腕に頬擦りしながら『大しゅき……』
と言う寝言まで言っている。僕がキャロにそんなことをされたら悶絶して転がり回ってしまいそうだ。


(どうする?こっち来るか?)
(それはそれで眠れませんよ……)
(そうか。ま、頑張れや)


明日寝坊しなきゃいいけどなぁ……




side ランス


翌朝6時。最初に目が覚めたのはいいんだが……フェイトが絡み付いているので身動きが取れない。
起こせばいいんだが、物凄く幸せそうな寝顔をしているため、起こすに起こせない。
さて、どうしたもんか……


「………うにゅ?おふぁよ、らんす」


そんな葛藤をしていたら、件のお姫様が目を覚ました。


「おう、おはよう。それよりさっさとしねえと予約の便に間に合わねえぞ」
「えー、じゃあおはようのちゅーして」
「はいはい。わかりましたよ」


我が儘お姫様のおねだりに答えてやる。
だが、普通のキスじゃあ面白味に欠けるため、舌を絡ませてやった。


「ん!……んふ、んんう……」


粘液の触れあう艶かしい音が部屋に響く。
しばらく続けていると、物音が聞こえた。
恐らくエリオかキャロが起きたのだろう。
しかし、フェイトは昂ってしまったのか、一心不乱に俺の唾液を求めてくる。


「はわわ……」


横目でエリオ達が寝ていた方を見れば、顔を真っ赤にしたキャロが手で顔を覆っていた。
……が、興味はあるのか指の隙間からチラチラとこちらの様子を伺っている。
やがて、フェイトの方から唇を離した。


「……ぷはっ。……もう、すっかり目が覚めちゃったよ」
「そりゃよかったな」
「さてと!それじゃあエリオとキャロを起こし……」
「み、見てませんから!!何も!!」


フェイト、硬直。キャロ、沈黙。


「お、おおおおはよう、キャロ。支度するからエリオ起こしてくれる!?」
「はははは、はい!」


二人とも今の行為のことで真っ赤になっている。フェイトの動揺っぷりは乱れた服装がそのままになっていることにすら気がついていない始末だ。


「エ、エリオ君、起きて!」


キャロもキャロで、動揺が隠せていないため、エリオの肩をぐいぐい揺すっている。


「うわぁ!……キャロ、もう少し優しく起こしてよ……」
「ご、ごめんなさい……」
「いや、そんな気を悪くしないで!」
「で、でも……」
「そんなに気にされるとこっちもおうっ!?」


助けを求めるようにこちらを見たエリオの目線の先にはフェイト。
もちろん乱れた服装はそのまま。
それはエリオにはとても刺激の強いものであるわけで。
素晴らしい速度で後ろを向いた。


「エリオ君?何で後ろ向いてるの?」
「ちょ、ちょっとね……」
「エリオ、調子悪いなら言ってね」
「お前のお陰で絶好調なんだよ、フェイト」
「「???」」


まあ、エリオにも男の尊厳があるわけで。
ここは助けてやることにする。


「いいから俺に任せろ。二人は飯の準備でもしててくれや」
「でも……」
「女にはわからねえこともあるんだ。な、フェイト」


しばらく考え込んだ後、意味が分かったのか真っ赤になるフェイト。


「………スケベ!」
「エリオにも同じこと言うか?」
「うっ……そこでエリオを出すのは卑怯だよ!」
「何でだ?エリオも男だぞ?」


完璧なる正論。これで折れてくれるだろう。
ただ一人、状況が全く読めていない純真無垢なる少女を除いてではあるが。


「……訳がわかりません」
「と、とりあえず部屋を出ようか!」


エリオのお姫様はフェイトによって無理矢理に外へと連れ出されたのであった。




…………………………………………………………………


「で、ここがお前の家か」
「正確にはクロノの、だけどね」


9時の便に乗った俺たちは12時位に目的地につくことができた。
しかし、だ。


(なーんか嫌な予感がすんだよなぁ)


この時感じた嫌な予感が、この滞在期間中の俺を苦しめるとは今は思っていなかった。




side リンディ


「そろそろかしらね」
「なにがー?」
「フェイト叔母さんが来るのよ」
「ほんとー!?」
「夕方にはパパも帰って来るって」
「やったー!」


カレルとリエラも楽しみにしているようだ。
エイミィは久しぶりの大人数を出迎えるために少し豪勢な昼食の仕度をしている。
そして、12時を少し過ぎたところで玄関のチャイムが鳴った。


「僕出てくる!」
「私もー!」


二人とも玄関まで駆けていった。
エイミィが注意しようとしていたが、あまりに嬉しそうな二人の様子に怒るのは憚られたようだ。


「うわぁ!」


そんな時に玄関からカレルの驚愕する声が。
気になったので私も玄関へと向かうことにした。




side ランス


とりあえず困った。チャイムを押したら子供が二人出てきて俺の姿を見るなり驚いて扉を閉めてしまった。
何でだ?


「どうしようか……」


フェイトが顔を見せる前に閉められたので、不審者が来たとでも思われてしまったのだろう。
だが、以外と早くドアが開いた。


「ごめんなさいね。この子達が迷惑かけちゃったみたいで」
「そんなことないよ。ただいま、母さん」
「お帰り、フェイト。それと、キャロちゃんは久しぶりね。ランスさんとエリオは直接会うのは初めてよね。フェイトの母、リンディです」
「は、初めまして!」
「よ、よろしくお願いします!」


エリオとキャロの初々しい挨拶に和まされながらフェイトの実家訪問の日々が始まった。



………………………………………………………………


「……どういう状況なんだこれは?」
「あ、お帰りクロノ」
「お邪魔してるぜ、お・に・い・ち・ゃ・ん」
「君に言われても気味が悪いだけだな……」


昼食を食べ終わり、手持ちぶさたになった俺たちはUN〇とか言うカードゲームをやっていた。
これが以外と白熱することになり、いつの間にか帰って来ていたクロノに対し、皆反応が薄い。


「久々に帰って来たのにこの対応か……」
「はい!ここでスキップ!」
「あっ……」
「キャロお姉ちゃんが上がれる手札だったのはわかってたよ!」
「ど、どうして?」
「「「「「手札が見えてる(から)」」」」」
「え!そうだったの!?」
「フェイトさん……」


なんだかとても憐れなクロノであった。




side クロノ


結局15分くらいかけてゲームが終わり、それからようやくまともな対応をしてもらった。
カレルとリエラがゲームが終わるまで僕の存在に気がついてすらいなかったのはちょっと……いや、かなりショックだった。


「それにしてもよく休暇が取れたわね」
「取れたのは三日だけだし、今後に関わる用もあるからね。部下達も何とかしてくれるそうだ」
「こんなときまで仕事か?」
「君達の勧誘だよ。ランス」


今回戻って来れたのはこれが大きい。
衛宮士郎、ランスの両名のクラウディアへの勧誘。
高すぎるその戦闘能力や、魔術の事があるために下手な部隊には入れられない。
彼らの本当の能力は局員のほんの一部の人間だけしか知らない。
だからこそ事情を詳しく知る僕が引き抜くように、と三提督からの直接司令があったのだ。


「うーん、本局勤務ねぇ……俺は構わんが、あいつは了承しねえぞ」
「何故言い切れる?」
「そりゃなのはの嬢ちゃんとヴィヴィオから離れるって言う選択肢がねえからだろ」
「しかし、クラウディアの乗組員として名前を連ねるだけでもいいんだ。実質的に君たちは僕の護衛、非常勤戦力としての特別出撃が主だからな」
「そう言うことなら平気かもな」


とりあえず当面の問題は解決した。
これで少しはくつろげそうだ。




…………………………………………………………………


そして夜。赤白対抗歌唱祭を見ながらビールを煽る。
フェイトは色々あるから、と言って飲んでいないので僕、母さん、エイミィ、ランスの四人だけだが。


「この人とっても歌が上手です!」
「ああ、瑞木菜々さんか。この人は本来声優なんだぞ」
「声優?」


エリオとキャロは声優を知らない様だな。


「声優って言うのはアニメとかで声を当ててる人達のことだよ」
「へぇ~」


子供達はほのぼのとしている。それなのに大人達は……


「おいおい、二人とも俺についてこれるたぁすげえ飲みっぷりだな!」
「あらあら、私はまだまだ行けますよ?」
「わらしも飲める~」


酒盛りに夢中。回りには缶や瓶が所狭しと転がっている。
ちなみにランス(ほろ酔い)母さん(酔い)エイミィ(泥酔)と量を飲んでいる人ほど酔っていない、という摩訶不思議な状況である。
そしてエイミィが泥酔、という状況はお馴染みのアレが発動する、と言うことである。


「ねぇねぇおとうとく~ん。フェイトちゃんとはどこまでいったの?」
「そりゃあやるべきことは全部やったぜ」
「ぶふぉうぇあへ!?」


エイミィの絡みにフェイトが凄い奇声を上げる。てかなんでそんな声が出るんだ……?


「ちょ、ちょっとランス!?子供達も居るのに何言ってるの!?」
「聞かれたから答えた」
「答えた、じゃないよ!」
「大丈夫だ、意味わかってんのはエリオだけだから問題ねえよ」
「大有りだよ!?」


エリオの方に視線を向けると耳が赤くなっているのがわかった。
恐らくは顔も赤いだろうな。


「……うぅ、フェイトちゃんも遂に大人の階段を登って(処女喪失して)しまったんだね……お姉ちゃん悲しい!」
「あらあら~。これは三人目の孫をみる日も遠くないのかしらね~」
「僕としてはもう少し敬意を持ってくれる義弟が良かったんだがな」
「でも私はワイルドな息子に憧れがあったのよ。クロノはほとんど手のかからない子だったから」
「だってさ、ガンバれおとうとくん!」


僕らで呑気にフェイトをからかっていると、


「あの~?」


いつの間やらキャロとエリオがカレルとリエラを背負ってこちらに来ていた。


「んー?二人ともどしたの?」
「カレル君とリエラちゃんが寝ちゃったんですけど、寝室は何処ですか?」
「だいじょうぶ!わたしがつれてくから!」


そう言うエイミィだが、流石に酔っぱらいには任せられない。


「僕が着いていく。そのままおぶって来てくれ」
「「はい」」


この後、僕が居なくなったことでフェイトが母さんとエイミィに弄られまくることになるとは考えていなかったため、フェイトに怨み言を言われまくる羽目になったのだが、それは別の話である。




side エリオ


カレルとリエラを寝室に連れていき、二人をクロノ提督に任せてリビングに戻った僕とキャロは急に聞こえた大きな音に驚いてしまった。


「こ、この音なんですか……?」
「除夜の鐘だよ。新しい年になるときに鐘を108回打ち鳴らす日本の風習だよ」


鐘の音のことはフェイトさんが教えてくれた。
しかし、その鐘をのんびり聞いていることは出来なかった。
理由はというと………


「うぇへへ、もうのめな~い」
「zzz……」


寝ている二名を運ぶのが最優先だからだ。
ちなみにランスさんは『酒が足りない』とか何とか言って外に買いに行ったので今はいない。
とりあえず僕とフェイトさんで寝室まで運んだ。


「ありがとね、エリオ。日付も変わっちゃったし、朝早くから出掛けるから少し休んでおいで」
「何処に出掛けるんですか?」
「それは行ってからのお楽しみだよ」


とても気になったが、教えてくれそうにないので諦める。
二日連続で夜が遅かったので、布団に入るとすぐに眠気が襲ってきた。




…………………………………………………………………


「起きろエリオー」
「ん……ランスさん?」


目を覚ますと大人達は全員コートを着こんで出掛けられる支度をしていた。


「すぐに出るから早く着替えてね」
「あう~。頭痛い……」
「あんなに飲むからだろ……」
「そうよ、エイミィ。少しは抑えないと」
「母さんが言っても説得力が……」


ただ、二日酔いでフラフラなエイミィさんだけは支度が終わっていなかったが。


「眠いです……」
「うにゅぅ………」
「どこいくのー?」


子供たちも三者三様の返答を返す。
ちなみにキャロ、リエラちゃん、カレル君の順である。


「ついてからのお楽しみ♪」


そう言って微笑むフェイトさんはとても色っぽく見えた。
……だからと言って何、と言うわけではないのだが。


閑話休題(そんなことより)


「車は誰が出すんだ?」


クロノ提督の疑問に答える人は誰もいなかった。




side フェイト


結局地球の車の免許を持っている二人はアルコールが抜けていないために歩いて行くことになった。(私はミッドの車の免許しか持っていない。ランスやクロノも同様)
そしてついたところは………


「公園?」
「えーっと……読めません………」


キャロもエリオも地球の文字が読めないためにこの公園の名前がわからないようだ。


「海鳴臨海公園、か。何のひねりもねえネーミングだな」


ランスは公園に何を求めているのか。
普通の名前でいいと思う。


「それより、ここに来た目的って言うのは……?」
「もう少し待ってて。そろそろのはずだから」


母さんがみんなに呼びかけたのは丁度そのタイミングだった。


「ほら、来たわよ」
「何がです……か……」
「うわぁ……」
「きれい……」


見えてきたのは初日の出。
小学生のころはなのはの家族やはやてたち、アリサやすずかとも一緒に見ていたこの公園からの初日の出。
エリオとキャロにも見せたくて、母さんにお願いしたけど、大成功だったみたい。
いい思い出になったかな?




side キャロ


初日の出、と言うのを見て、帰ってきた私たちはおせち料理と言う縁起担ぎの特別なお料理を食べて、すごろくをしたり、みかんを食べながらテレビを見たりとのんびりとすごしました。
こんなにゆっくりできたのは久しぶりでした。
帰る時もとても名残惜しくて、カレル君達にも、


「もっと遊ぼうよー!」
「お姉ちゃん、帰らないで!」


と、引き留められましたが、お仕事だと言ったら渋々了承してくれました。
また遊びに行く約束をして、ミッドに戻りました。
やっぱり家族ってとても暖かい存在なんだな、と思いました。
 
 

 
後書き
まずは更新遅れまくって大変申し訳ありませんでした。

クロノの息子の名前は公式設定……のはずです。多分。

最近Vividの下書きが楽しすぎてこっちに手が付かない……

ですが頑張ろうと思います。 

 

特別編~女たちの聖戦

 
前書き
本編終了後のバレンタインデーのお話。

六課の解散の2ヶ月前の話になります。

人気投票の中間発表は本編をお待ちください(=^・^=)

総合評価2000越えしました!これも読者の皆様の応援のおかげです!今後もよろしくお願いします!!


それでは本編どうぞ!(^^)! 

 
マテリアルズ「「「こんにちはー!」」」

シュテル(以下シュ)「あれ?書き方がいつもと違う?と思ったそこのあなた。今回の話は特別編なので私達の視点でお送りします。色々違うところはありますがご了承ください。気になるあなたは私達が主演の『教えて!マテリアルズ!』をご覧ください」

レヴィ(以下レ)「難しいことはいいから早く行こうよ~」

ディアーチェ(以下ディ)「そう急かすでないわ!……っと、今回は衛宮士郎、衛宮ランス、エリオ・モンディアル、ザフィーラ、ヴァイス・グランセニックの五人のバレンタインデーを我らの視点からお見せしよう」

シュ「では、まずは衛宮士郎からご覧ください」


……………………………………………………………………
新暦76年2/11




「バレンタインデー?」


声をあげたのはヴィヴィオ。正式に母となったなのはとの会話の中でのことでした。


「うん。女の子が大事な男の人にチョコレートを渡す日なんだよ」
「ママはパパにあげるの?」


ヴィヴィオに問われたなのはは少し赤くなりつつも、


「うん。だからヴィヴィオもママと一緒にパパにあげるチョコを作らない?」


そう答えた。ヴィヴィオは一瞬きょとんとしたが、


「うん!つくるつくる!」


すぐに返事を返しました。


「じゃあ3日後に渡すから明後日にやるよ!今日は材料を揃えにいこうか!」
「レッツゴー!」


…………………二日後…………………



「さて、それじゃ始めるよ!」
「おー!」


さて、二人は何を作るのでしょうか?


「ヴィヴィオはホワイトチョコにするんだよね?」
「うん!パパのかみのけとおんなじいろ~」


なんとまあ適当な理由で選んでますね……


「ママはびたーチョコ……だっけ?」
「そう、甘さ控えめの大人の味だよ」


実は事前にはやてがそれとなくチョコの好みを聞き出して教えてくれていたのです。あの狸さんは散々リア充爆発しろとか言いまくっているのに……
行動と言動が矛盾しまくりですね。


「よーし、調理開始!」
「おー!」


……………キングクリムゾン!……………


過程は飛ばしました。これは料理番組ではありませんので\(^o^)/byマテリアルズ


「完成~!」
「ううう………」


あれ?ヴィヴィオの様子が……?(進化する訳ではありませんよ)


「大丈夫。こういうのは気持ちが大切なんだよ。それに、形は崩れちゃったけど味は変じゃないからパパも喜んでくれるよ」
「うん……」


ちなみに、何が起きたかというと、チョコにパパ大好き、と書きたかった様なのだが、失敗して手を突っ込んでしまったのです。ちなみにチョコはハート型。
余談ですがなのはのチョコはハート型に『I LOVE SHIROU』と書かれているものです。
はやてに見せようものなら壁殴り代行六時間コースもののスイーツ(笑)っぷりですね。


「とりあえず、明日に備えて早く寝ようね」
「はーい………」



…………翌日…………


「ね、士郎君今日何の日か知ってる?」
「今日?男性職員がやけにそわそわしているのと何か関係あるのか?」


流石ミスター朴念仁。いや、勝ち組か。こういう日にそわそわするのは基本が負け組。


「も~。今日はバレンタインデーでしょ?はい、これは私から」
「ああ、ありがとう。今開けてもいいか?」
「!!!そそそ、それだけはダメ!部屋に帰ってからにして!」


人が多くいるロビーで渡しているのに開けられるのはダメとは面白い人ですね。
まあ、既に“リア充爆発しろ”と言いたげな目で見られている二人だが、当の本人たちは気づいていない。


「それなら一旦戻るが……そんなに恥ずかしいなら部屋で渡してくれれば良かったのだぞ?」
「………その発想はなかったの」


そんな頭の固さでいいのか?管理局のエース・オブ・エース。


……………士郎、なのは、ヴィヴィオの部屋…………


部屋に戻った士郎を出迎えたのはソファに腰掛けうつむくヴィヴィオ。


「ヴィヴィオ?どうしたんだ?」


顔をあげたヴィヴィオの手には綺麗にラッピングされた箱。


「パパ……これ、失敗しちゃったんだけど……もらってくれる?」


どうやら受け取ってもらえないのではないか、と心配していたようです。


「ヴィヴィオの手作りなのだろう?ありがたくいただくよ」
「ほんと?」
「ああ」


途端に笑顔になるヴィヴィオ。


「では……こ、これは……」


箱を開ければパパ大好き、の文字。ま、驚きますよね。形が歪な事よりもそちらに目が行ってしまうところは親バカなのでしょうかね?


「……へん?」
「いや。そんなことはない。嬉しいよ。ありがとう、ヴィヴィオ」
「……うん!」


ヴィヴィオ作のチョコはおいしくいただかれました。


「さて、次はなのはの、だが…………」


絶句する士郎。まあ、ね。ハート型に『I LOVE SHIROU』は外では見せられませんよね。


「……確かにこれは外で開けなくてよかったな」
「どうして?」
「あ、いや、なんでもないんだ。なんでも……」


珍しく狼狽える父親の姿に


「そうなのか~」


で済ませる娘であった……



…………………………………………………………


シュ「以上、衛宮士郎のバレンタインデーでした」

レ「こういうのをリア充暴発しろ、って言うんだよね!」

ディ「爆発しろだうつけ……」

シュ「では、衛宮ランスとエリオ・モンディアルのバレンタインデーに移りましょう」


…………………………………………………………
新暦76年2/13



「うーん、どうしようか」
「はい、私チョコレートを作るの初めてなので……」
「エリオはケーキとか好きだからね、チョコレートケーキにしようか」
「ランスさんには?」
「お酒が好きだからウイスキーボンボンにしよう」
「はい!」


フェイトとキャロは合作にするようです……


………………跳べよおおおおおおおおお!……………


はい、跳びました。


「できました!」
「はじめてにしては上手くできたね、キャロ」


キャロを誉めるフェイトは母の顔。


「じゃあ早速……」
「キャロ、バレンタインデーは明日だよ…」
「はっ!そうでした……」


素で忘れていたようです。
まるでレヴィのようですね。



…………翌日…………


「フェイトさん!早く行きましょう!」
「こらこら、二人は逃げる訳じゃないんだよ?」
「でもでも!」


すっかりハイテンションのキャロ。
まだまだ子供、と言うことなんですかね。


「あ!エリオ君です!」
「キャロ!走ったら…」
「あっ!」


やはり転びそうになるキャロ。
だが、


「大丈夫?……その箱は?」


キャロに気がついたエリオが救出。もちろんお姫様抱っこである。イケメンめ。


「バレンタインデーだからエリオのためにキャロとチョコレートケーキを作ったんだよ」


フェイトによる説明が入ると、


「えっ?……あ、ありがとうございます!」
「ふふっ、そんなにかしこまらないの」


慌ててお礼を言うエリオと微笑ましく見守るフェイト。


「キャロも……ありがとう」
「とっても上手にできたから食べてね!」
「うん!……フェイトさん。その袋は?」


エリオはフェイトの手の包みが気になる様子。


「え!?こ、これは」
「ランスさんの分だよ。ウイスキーボンボンって言うの!」


キャロが説明すると赤くなってしまうフェイト。


「そういえばランスさん出かける、って言ってましたよ」
「どこに?」
「なんでも聖王教会に用があるとかで…」


と、丁度その時でした。


「ん?三人で集まってなにしてんだ?」
「あっ、ランス……」


件の人物、衛宮ランスがやって来ました。


「ランスさん、その手の紙袋は?」
「これか?教会に行ったらセインの奴とカリムがバレンタインデーだからって……!?」


彼の言葉は最後まで続かない。なぜなら……


「へぇ……」


ダークなオーラを纏ったフェイト・T・ハラオウンさんがいたからである。


「あの、フェイトさん……?」


嫌な予感がしたランスは下手にでるが、


「セインとカリムさんに、ねぇ?かっわいいもんね~セインは!カリムさんも美人だし!」
「な、何を言って……」
「……大体ランスは私以外の女の子にも優しくし過ぎるんだから……惚れられたりしたらどうするの……」
「もしも~し?」


ぶつぶつ言っているフェイトは話かけられていることに気付かない。


「フェイト」
「……なに?」
「やきもちか?」
「なっ!そ、そんなんじゃ……」
「……分かりやすすぎだ。な?エリオ、キャロ。お前たちもそう思うだろ?」


うんうん、と頷く二人。


「………むぅ」
「悪かった悪かった。安心しろよ、お前以外の女に手出しはするつもりはねぇからよ。許してくれや」
「……デート」
「は?」
「今度デートに連れて行ってくれたら許す」


しばらくきょとんとしていたランスでしたが、


「了解いたしました。お姫さま」


そう言ってとても可笑しそうに笑いました。


「もう!調子いいんだから!」
「でも、そういうところが?」
「……ばか」


この場にはやてが居たら間違いなく“このスイーツ(笑)め!末長く爆発しろおおおお!!”とか言いながら走り去っていったでしょうね。エリオとキャロもそんな二人を見つついちゃついてますし。



「それじゃ、お詫びに今日は一緒に風呂に入るか?」
「え!?ラ、ランスのえっち!」
「フェイトさん。家族は一緒にお風呂に入るんだ、って教えてくれたのはフェイトさんですよ?」
「キャ、キャロ……私とランスはその、こ、恋人であって家族じゃ……」
「???」
「キャロ、お前にはまだ早い話なんだ。ここは俺に任せろ」
「はい!」
「ちょっと!?」
「で?何を想像したんですか~?フェイト執務官さん?もしかして昨日のことか?」
「/////!!」
「きのうはおたのしみでしたね、ってか?はははははっ!!」
「わ~ら~う~な~!!!!!」


R指定なお話が始まるようですね。設定的に私たち永遠の9歳児ですからここで退散しましょう。


…………………………………………………………………


シュ「……はぁ、ようやく解放されました……」

レ「なんで二人ともげっそりしてんの?」

ディ「こやつはあの空気の甘さに耐えられるのか……」

レ「皆仲良しで楽しそうだっただけじゃん。それに、空気には味はないよ?」

シュ「この子はただ単に子供過ぎて理解出来ないだけなんですよ……」

レ「僕子供じゃないもん!」

ディ「あーはいはいレヴィは大人だなー(棒)」

レ「うー、バカにされてる気がする……ところでR指定って何?」

ディ「レヴィ。世界には知らなくていいこともあるんだ。知らないことも幸せなんだぞ?」

レ「む~!!絶対にさっきから二人で僕の事馬鹿にしてる~!!」

シュ「はいはい、そんなことないですから。さっさと次にいきますよ」

ディ「次はザフィーラか。数だけでいえば一番リア充なのではないか?」

レ「4つだもんね!」

シュ・ディ(こいつ、アレを頭数に入れているのか!?)

レ「早速見に行こーう!」




…………………………………………………
新暦76年2/13


「シグナム、ヴィータ。ザフィーラの命はなんとしても私達で守るで!」
「ああ。アレを食わせるわけにはいけねえからな」
「くっ、今年に限ってこの時期に仕事が少ないなんて……」


三人は何をそんなに悩んでいるのでしょうか……
それは、ここにいない八神家女性陣最後の一人が原因である……


「なんとしても今年も今まで通りシャマルにだけは手作りさせたらあかんよ!」
「ザフィーラの命を守るため!」
「全力を尽くしましょう!」


……………………………………………………………


「今日は時間があるわね」
「そうだな」
「だからザフィーラにあげるチョコも」
「おおっーと!」
「ど、どうしたのシグナム?」
「今晩の夕食の材料を買わなくてはな~」
「?食堂にいけばいいじゃない。それに、目が泳いでるわよ」


シグナムさん、嘘下手すぎである。


「お、おお!そうだ!主はやてから新しいソファを見てきて欲しいと頼まれていたんだ!私はそういったものを選ぶのが下手なのでな!一緒に来てくれ、シャマル!!」
「え、ええ。わかったわ」


どうやらなんとかなったようである。



……………………………………………………


「私や。状況は?」
「おう、シャマルは尾行に気づいてねえ。バッチリだ」
「了解。こっちは4つ分別の種類を手に入れたところや。引き続き状況報告を頼むよ」
「任しとけ!」
「ヴィータ、アンタ今最高に輝いてるよ………」


こっちはこっちで楽しそうですね、しかしヴィータは私服で尾行しているので不審な行動をする幼女にしかみえませんけど。


……………………………………………………


「ねぇ、さっきからおかしいわよ、シグナム。まるでわざと時間を稼いでいるようなことばかりして……」


シャマルもシグナムが明らかにおかしいことに気がついてはいたのですが、あえて言わないでいたのです。
しかし、それも限界を迎えてしまった様子です……


(ヴィータ、どうすればいい?これ以上は誤魔化せんぞ……)
(あたしに考えがある。言う通りにしてくれ)
(済まない。助かる)


さて、ヴィータの考えとはなんなのでしょうか……



………………………………………………………………………


「コスプレ?」
「ああ。はやてが六課解散の二次会でコスプレパーティやるから衣装作りをシャマルに手伝ってほしいらしいぜ」
「そうなの……わかったわ!」


ヴィータの言う策はイベントと裁縫好きのシャマルを丸め込むには覿面だったようです。
………この二か月後、本来はやるはずではなかったコスプレパーティが行われたのはまた別のお話。


………………………………………………………………………



「………てなことがあったんやで、ザフィーラ」
「なるほど……毎年毎年申し訳ありません」
「今年ははやてなんもしてねーけどな……」
「ヴィータ、そういうことは……」
「ふ~ん、ヴィータはそういうこと言うんやね~。さてと、ヴィータに着せるコス何にしよっかな~?」
「えっ!あ、あたしは着ねーぞ!?」
「「「自業自得」」」
「なんでさ~!!」


あらあら、士郎の口癖がうつっちゃってますね。


「それにしても……シャマルが忘れてくれて助かった」
「ああ。また一名犠牲を減らすことに成功したな」
「俺はもうアレを食うのは御免だぞ?」
「あれはまさに劇物やからね~」


と、散々な言われ様のシャマルはと言うと………



「はっくしょん!………何かしら、すごく不名誉なことを言われてる気がするわ」


コスプレ作成しながら何かを受信していたようです。




………………………………………………………………

シュ「ようやく最後の一人まで来ましたね」

レ「ヴァイス陸曹は誰からもらうのかな?」

ディ「案外一番もらってたりとか?」

シュ「それはないんじゃないでしょうか」

レ「地味にひどいこと言ってる………」

ディ「ま、とりあえず見ればわかるだろう」


…………………………………………………………………
新暦76年2/14



「………どうしてこうなった」


ヘリのところでやけにテンションの低いヴァイス陸曹を発見。いったい彼に何があったのでしょう?




……………二時間前……………


「ヴァイス陸曹、お届け物でーす」
「はいよっと………おお!これは!」


届いたのはラグナからのチョコレート。
こんな年になっても妹からもらえるとは良いお兄さんですね。


「と、………ん?これは?」


部屋の入口にて箱を発見。差出人はアルトのようです。メッセージカード付き。内容は『いつもお世話になっているお礼です アルト・クラエッタ』


「今年は二個か………、ありがてえこったな」
「あ!いたいた。ヴァイス陸曹!」


ヴァイス陸曹が振り向いた先にはシャーリーとスターズの二人が。


「ん?どうした?」
「実は……」


かくかくしかじかまるまるうまうま。


「というわけなんです」
「なるほどね……」


いや、わかんねーよ!と言うツッコミを入れたいあなたのために説明すると、友チョコの要領で作っていたチョコが一人分余ってしまった三人は処理に困り男性陣に渡しに行こうとした。
が……
士郎、ランス、エリオ、グリフィスとリア充ばかりな上に相手の女性たちは嫉妬深そうな人たちが多い、と言うわけでヴァイスに白羽の矢が立った、という事だそうです。


「ザフィーラの旦那は?」
「八神家は女四人」
「……おう、正直スマンかった」
「じゃ、処理よろしくお願いしま~す!」


そうしてさっさと退散したシャーリー、スバル、ティアナ。


「はぁ、………食うか」


まず一人目、ラグナ。
見た目完璧味完璧、と文句なし!!だそうです。
シスコン、とか言わないであげてください。たとえ事実でも。事実でも。


二人目、アルト。
見た目は大雑把ですが味の方は問題ない、という事だそうです。
男兄弟の中で育ってますから見た目が大雑把になるのは仕様、という事にしておいてあげましょう。


三人目、シャーリー。
どうしてだ?なぜ彼女は蜂蜜をぶち込んだ?
甘すぎで困った。byヴァイス・グランセニック


四人目、ティアナ
いや、すごい。どこにお嫁にやっても恥ずかしくないよ、これ。
クオリティ高杉ワロタ。と、反応がどこぞの@ちゃんねるみたいになってしまうほどレベルが高かった、と言うわけだそうです。


五人目、スバル。
あ、ありのままにおこったことを話そう。
俺はスバル作のチョコを口に入れたと思ったら次に気が付いたときには2/15になっていた。
妄想とかそんなものじゃねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。


と、なんだかんだで一番もらったヴァイスだった。
グリフィスとルキノ?とりあえずスイーツ(笑)だった、という事だけ明言しておく。Byヴァイス・グランセニック


…………………………………………………………………


レ「ようやく全員分紹介し終わったねー」

ディ「眠い…だるい…リア充爆発…」

シュ「ディアーチェがお疲れモードですね」

レ「ねーねー、そろそろ帰ろう?僕も飽きたよ~」

シュ「そうですね。ではお決まりのあれだけやって帰りましょう」

レ「うん!それじゃあ……」

マテS「また見てね~」

ディ「はぁ……鬱だお」

レ「ディアーチェが壊れた!?」 
 

 
後書き
くちゃくちゃしてやった。反省はしない。

聖戦と書いてバレンタイン、と読む。

そしてランスは自重しない。


最後に一言。


リア充末永く爆発しろ------------------!!! 

 

⑦~女子会?

 
前書き
シャマル「さて、今回のお話しは~?」

はやて「ぬふふふ……」

シャマル「は、はやてちゃん?」

はやて「遂に!私の時代やー!これであんなことやこんなことも……ふっへっへ」

シャマル「よ、よくわからないけど本編いきまーす!」 

 
side なのは


それは、あまりにも突然でした。
はやてちゃんに外食に誘われ、フェイトちゃんと三人で晩ごはんを一緒に食べていた時の事。


「そう言えば、二人とももう膜はやぶられたんか?」
「っえっほげほ!!」
「な、なのはちゃん大丈夫!?」


いや、はやてちゃんのせいだけど。


「こんな所でそんな話しないでよ……」
「ごめんごめん。でもな、気になるんやから仕方ないやろ?」
「全く……」


これで終わると思っていた。だが、終わらせないのが八神はやて。それを忘れていた。


「で?どうなん?士郎とランスのアレはデカかった?」


悪びれもなくこれだった。


「な、な、ええやろ?教えてくれても。十年来の仲やないか」
「そこでそれを持ち出すのは……」


と、何も言わないフェイトちゃんを不審に思って見てみると、顔を赤くしてクネクネしてました。


「とっても、おっきくて逞しかった……」


恍惚の表情でそんなことをぶちまけていました。


「フェイトちゃん!kwsk!」
「最初は直視できなかったんだけど、最近はいろいろなことを調べてやってみてるんだ。やっぱり、喜んでほしいから……」
「へぇ、フェイトちゃんはその女性的な部分(おっぱい)を使ってしてあげてるんか?挟んでしごいてあげてるんか?こんちくしょう!このリア充!」


何でこうなったの……?


「でも!まだまだランスの方が上手で…私ばっかりしてもらっちゃうから……」
「自慢か?自慢なんか?それとものろけか!彼氏いない私への当て付けか!」
「聞いてきたのははやてでしょ!」
「それとこれとは話が別や!」
「何て理不尽…。そ、そうだ!なのははどうなの!普段士郎とどうやってるの?」


そして矛先は私へ向いた。


「どーせなのはちゃんも士郎とらぶちゅっちゅでエロエロな性活してるんやろ!あーリア充爆発爆発!」
「そ、そんなことしてないよ!!」


その瞬間、


「「えっ」」


空気が凍った。


「な、なんかごめん、なのは」
「なんと……。ちなみにフェイトちゃん初めてはいつ?」
「この間のクリスマス」


謝られた。そして、フェイトちゃん。初めてのことってそんなノリのまま教えるようなことなの?


「でも、完全にないってわけじゃないよね?」
「………」
「mjd?」
「う、うん」
「Are you virgin?」
「……はい」




side はやて


正直、予想外でした。あまりの事に英語で聞いてしまった程である。
根掘り葉掘り夜の性活の事を聞き出してやろうと誘ったら、まさかのなのはちゃんの発言。
これはちょっと不味いのでは……?


「もしかしてアレか?士郎はEDか?」
「そんなことはない……と、思う」
「だとすると女として見られてへん可能性があるよ?」
「そ、そうなの?」
「そうや、これは不味いで!」


もちろん、それだけがすべてではない。だがしかし、面白いので勘違いさせておく事にする。


「ど、どうしよう……」
「やっぱりアレやな。裸エプロン!」
「「いや、それはないよ」」


まさかのシンクロ。びっくりや。


「じゃ、『お風呂にする?ご飯にする?それとも……わ・た・し?』はどうや?」
「最近お風呂もご飯も士郎君が準備してるから……」


あの主夫、そんなことまでしてるんか……


「最終手段!酒や!」
「お酒?」
「そう!酔った勢いで責めるんや!」
「それいいかもね。なのは、やってみたら?」
「でも、酔ったらちゃんと記憶に残るか不安で……それと私は二人と違ってまだ19…」


そう言って顔を赤く染めるなのはちゃん。なにこの生き物可愛い。


「私はなのはらしくすればいいと思うよ。そうすればきっと答えてくれるよ!私もそうだったし」


おおぅ、流石天然女王は言うことが違うなあ。
ナチュラルにあててんのよをしてしまうフェイトちゃんとはなのはちゃんは違うんやからな。


「私天然女王じゃないよ!」


こ、こちらの考えが読まれている!?


「「声に出てる」」


またもやシンクロ。二人とも仲ええな。


「ま、なのはちゃんも積極的に誘っていけばええんよ。据え膳食わぬは男の恥、って言うしな」
「誘うって……どんな風に?」
「風呂上がりにバスタオル一枚で抱きつけ!」
「えええ!?は、恥ずかしいよ……」


私それやったことある………とか言う声がどこかから聞こえて来たが、無視して話を進める。


「それにね、なんか最近士郎君が何か隠し事してるみたいで…」


私は士郎が何を隠しているのか知っている。相談されたのは私やしね。
だが、ネタバレを教えるわけにはいかない。
と、言うわけで。


「きっと溜まってるんや」
「溜まってるよね」


ということにしておいた。そしたらフェイトちゃんまでもがノってきた。


「た、溜まってるとどうなの?」
「辛いんやない?」
「ムラムラする?」


フェイトちゃん。何故に疑問系?
もしやランスは……?


「そうなんだ……ありがとう、二人とも。私、頑張ってみる!」


高町なのは(19)。本気になったよ!
さてさて、どうなるのかね、うぇっへっへっ。




side 士郎


「あと少し、だな」


私はある物を用意するために仕事の量を増やしているので、休日がほとんどなく、最近あまりなのはと話をしていない。
だが、はやて曰く


「そっちの方がサプライズは喜ばれるで」


と言うのでその助言に従っている。と、通帳を眺めていた時だった。


「士郎君!!」


息を切らせてなのはが駆けこんできた。
とても切羽詰った様子だが、なにかあったのだろうか……?


「その……あのね。ごめんね!!」


いきなり謝られた。訳がわからん。


「いったいどうしたんだ?謝られるようなことをされた覚えはないんだが……」
「だって……ずっと、我慢してたんでしょ?」
「何をだ?」
「うぅ……そんなこと言わせないでよ……」


どうやらなのははものすごい勘違いをしているようだ。その犯人は……


「全く、そういう風になのはをいじるのはやめてくれないか、はやて」
「え!?」
「あっちゃー、ばれてたか」


なのはが開け放したドアの隙間からこちらを窺っていた。


「サーチャーを飛ばしているフェイトも一枚かんでいるのかね?」
「そこまで見破られるとは、お見事やな。流石、といったところか?」


相変わらず人をいじって楽しんでいるな……


「もしかして、後を付けてたの……?」
「ごめんな。面白いことになりそうやったから」
「むー、二人ともひどいの……」


なのはははやてに遊ばれていたと知って拗ねてしまった。


「まあ、私らはこれで帰るから、あとはごゆっくり~。……ちゃんと着けるんやで!」


悪びれもせずに帰っていくはやて。
いつも通り余計な一言を残していった。


「ごめんね、なのは。頑張ってね」


通信で謝ってサーチャーを撤退させたフェイト。
後には私となのはだけが残った。


「ねぇ、士郎君?」
「なんだ?」


立っていたなのはが私の座っていたソファのところに来る。


「私、女として魅力ない?」
「そんなことはない。君はとても魅力的だぞ」
「本当に?」
「こんなことで嘘を言ってどうなる?」
「そっか。だったらね……」


私の隣に腰を下ろしたなのはは、


「証拠、見せてほしいな……」


と、言いながら潤んだ瞳+上目遣いで見つめてきた。
その色気に思わずドキリと心臓が鳴る。


「ダメ?」


と、とても不安そうに懇願される。これは断れば泣かれるかもしれないな……。


「いいのか?」
「うん。あなたになら、何をされてもいいよ……」


最後の方は消え入りそうなほど声が小さくなっていたが、距離が近かったので、しっかりと聞こえていた。
私はなのはの腰を抱き寄せる。
そのままゆっくりと唇を合わせた。


「んっ…」


唇を離し、見つめあう。なのはは物足りなさそうな顔をしている。
それでいて、自分からそれを言い出すことが恥ずかしいのかもじもじしている。
そんな彼女がいとおしい。


「続き……するぞ」
「お、お願いします……」


そして…………この日、私は彼女(なのは)を抱いた。 
 

 
後書き
と、言うわけでここまでです。


続きをかけええええええええええええ!!!!


と言う方がいらっしゃいましたらメッセージを下さい。


要望が多ければ18禁版を短編として書くかも……しれませんので。


それでは~ 

 

⑧~機動六課、解散(前編)

 
前書き
ティアナ「遂に六課も解散するのね」

スバル「ここまで長いようで短かったね」

ティアナ「さてさて、それぞれの道を行くメンバー達の別れと約束のお話です」

スバル「始まるよ!」 

 
side なのは


私が士郎君と思いを確かめあってから1ヶ月。
機動六課の解散式が行われた。


「………以上を持ちまして機動六課は解散となります。ここでの経験を生かし、それぞれの職場で活躍してください」


はやてちゃんの締めの挨拶も終わった所で、私は屋上に士郎君と二人でいた。


「風が気持ちいいね」
「そうだな。……あの時から一年近く経つんだな」
「初めて会った時のこと?」
「ああ」


士郎君の第一印象は苦労してそうな人、だったな。
あの時はこんな関係になるなんて思いもしていなかったのに。
今では……。


「なのは。大事な話がある。聞いてくれるか?」


ぼーっと回想に耽っていた私の意識は士郎君のその一言で現実に帰ってきた。
彼の今の顔はあの時に似ている。
私のことを好きだと言ってくれたあの時の顔に。


「うん。なに?」
「私はクラウディアの非常勤戦力として働き続けることにしたよ。クロノ提督の直属としてな」
「クロノ君の?じゃあ本局の方に行っちゃうの?」
「いや。S級危険任務専門の非常勤が主の特別事件対応課、という新設部署で、本部はミッドにおいてくれるそうだ。だから基本的に地上に居られる」


大事な話、と言っていたのにこれで終わりな訳はない。
士郎君は何か本題を言葉にするのを躊躇っているように見える。
いつもと違って落ち着きなく視線をさ迷わせているのがその事を裏付けている。


「だから、な……家も購入したことだし……いや。やめよう。四の五の言うのは苦手だ」


不意に士郎君は言葉を紡ぐのを止めた。
その代わりにポケットから何かを取り出した。


「なのは。これを見てくれ」


士郎君が取り出したものは小箱だった。
そこにはとても綺麗に輝く純銀の指輪があった。
それの意味することは……


「これって、つまり……」
「結婚指輪だ。受け取ってくれるか?」
「……はい……!」


知らぬ間に涙が流れていた。
私は夢中で士郎君の胸に飛び込んだ。


「嬉しい……」
「良かった。断られたらどうしようかと思ったよ」
「断るなんてあり得ないよ。だって……」


私は彼を見上げて言う。


「私は士郎君のことが大好きだもん!」



今日は別れの日でもあるけれど、私の生きてきた中で一番幸せな日になった。




side ティアナ


「なんかあっさり終わっちゃったわね」
「そうですね」
「でも、この後お別れ二次会もありますから」


エリオたちと話している中、スバルだけがあまり元気がないことにはみんな気が付いていた。
確かに今日でみんなそれぞれの進路へと進んでいく。
別れは当然の事なのだ。
私だって寂しくないと言えば嘘になる。


「お、ようやく見つけたぞ」


そんな空気が変わったのは私達を見つけて駆け寄ってきた二人の人物の発した言葉だった。


「ランスさん!」
「ギン姉……」
「解散だからってしょぼくれてんじゃねえ。まだお前らに伝えてねえことがあるんだ。付いてこい」


それだけ言ってさっさと先に行ってしまうランスさんを私達は追いかけていった。




side フェイト



皆で集まったところは、私たち地球出身者にとってはなじみ深い花のある場所。


「わぁ………」
「この花って確か………」
「桜の花だ」
「私やはやて部隊長、士郎君とランス君の世界の花だよ」


その言葉を発したのは、最後に到着した士郎となのは。
なぜ彼らが一番最後だったのかはほんのりと赤いなのはの目元とその左手の薬指にはめられた指輪が物語っている。


「お二人が最後なんて珍しいですね」


スバルはどうして遅れたのかわかっていないようで、純粋にそんな質問をする。
と、当人たちは………


「あ、ああ。ちょっと、な………」
「うん。ちょっと、いろいろね………」


赤くなりながら言い訳をする。理由を知っている人たちからすれば微笑ましいのだが、全く分かっていないスバルは頭に?マークが浮かんできそうな状態だった。
そんな状況で面白がるのはやはり私たちの中でも人をからかうのが好きな彼女。


「おやおや?お二人はなぜに遅れたんやろな~?私聞いとらんけどな~?」
「なっ!?」
「ふぇえ!?」
「待たせたからには理由を説明してもらわんとな!」
「君と言うやつは……!」
「は、はやてちゃん………」


そして、こういう時に便乗するのはもちろん、私のパートナー。


「なんだぁ?ひょっとしてやましいことでもしてたって言うのか?」


さらに、悪乗りする人たちは続出。


「隊長が遅刻ってのは部下に示しがつかねえよな」
「全くだ。門出を祝おうというときにそんなことをされては困るぞ」
「ヴィータちゃん、シグナムさんまで………」
「………わかった。言えばいいのだろう言えば!!」


煽りに煽られ、士郎がやけになった。


「私がなのはにプロポーズしていて遅れた!!これで満足か!?」
「………し、士郎君/////」


事情を知っていた人たちはにやつき、知らなかった人たちは呆けていた。
体感時間にしてずいぶんと長く感じた沈黙を破ったのはスバルだった。


「え、え、え、え、ええええええ!?」
「そ、それって……」
「なのはさん、士郎さんと結婚するんですか!?」


事情が分かっていなかったスバル、エリオ、キャロの三人は各々驚きを見せる。
そして、私の隣に立っていた当事者たちの娘であるヴィヴィオはと言うと。


「フェイトおねえさん。けっこんってなあに?」


こんなことを聞いてきた。この状況でどう答えろと?


「ヴィヴィオ、結婚ってのはな、やることやった男女g「ちょっと!ランス君!!」……やっぱ止めてきたか」
「ランス、ヴィヴィオの変なこと吹き込まないの。ヴィヴィオ、結婚って言うのはね、家族になりましょうって言う約束の事なの」
「パパとママとヴィヴィオはかぞくだよ?」
「そう言う事じゃなくて………」


ああ、本当に小さい子にこう言う事を教えるのって難しい……
そう悩む私を助けてくれたのはティアナだった。


「ヴィヴィオ、結婚するとね、皆同じ名字になって、知らない人たちから見てもヴィヴィオ達は家族ですって言う証明になるのよ」
「う~ん、むずかしい……」
「そうね。ヴィヴィオにはちょっと早かったかしらね」


ティアナの一言でとりあえずは場に落ち着きが戻った。
数名は未だににやにやしているが。


「ま、そんなことよりお前ら、デバイス持ってきたな?」
「ええ……」
「持ってきました、けど……」
「ならわかるな?」


そう言っていきなりランスはレッドブランチを展開した。
それに便乗するように自身のデバイスを展開していく隊長陣。


「機動六課最後の模擬戦、皆が一年間で強くなったことの証明戦だよ!」
「え、ええ?」
「準備はいいか?あんま言わなかったけどな、今のお前らならあたしらとも互角にやれるくらいにはなってる」
「ど、どういうこと?」
「なんだ、お前は聞いていないのか?」
「聞いてないよ!?」
「ランス……まさかとは思うが……」
「すまん。言うの忘れてたわ」


私の彼氏はこういうところがちゃんとしていない。


「フェイトさん!お願いします!」
「頑張って勝ちますから!」


しかし、エリオやキャロにこうまで言われては引き下がれない。


「さてさて、リミッターのとれた隊長陣相手にどこまでやれるんかな?」
「それでは機動六課隊長陣&士郎さんランスさんVSフォワードメンバー、ともに準備はできた?」


この一年間で得たものを全力でぶつけてくるフォワード陣。
見違えるようになった。誰から見ても立派なストライカーに成長した。


「なのはさん!行きますよ!」
「いつでもいいよ、スバル!」


突き進む勇気と、守る優しさを持つスバル。


「今日こそ勝ちますよ士郎さん!」
「まだ負けてやる訳にはいかんぞ、ティアナ!」


皆を導く作戦を考え、どんな状況でも諦めない信念を持つティアナ。


「ランスさん!全力で行きます!」
「いい目をするようになったなあ、エリオ!」


鋭く速く、敵を倒して姫を守る騎士に成長したエリオ。


「フェイトさん!負けませんよ!」
「思いっきりおいで、キャロ!」


優しい心と、サポートの魔法、主を守護する竜達と戦うキャロ。
皆自分の守りたいもののために戦えるようになった。
これから何があっても、機動六課のフォワードメンバーとして戦った誇りと経験を元に、羽ばたいて行けるように、この模擬戦で私達が教えてあげられる全てを込めて。


「「レディー……ゴー!」」


皆一斉に動き出した。 
 

 
後書き
前半はここでおしまいです。

模擬戦描写があると思った方、申し訳ありません。

Vividの合宿と似たような感じになってしまうのでこちらはカットしました。

それではまた後編にて! 

 

⑨~機動六課、解散(後編)

 
前書き
エリオ「さて、最後の模擬戦を終えた僕ら六課メンバーは……」

キャロ「二次会を行うことに!」

エリオ「お酒が入ったフェイトさんたちはすごいことに……」

キャロ「ランスさん、頑張って!」
 

 
side 士郎


最後の模擬戦を終え、二次会に向かった私達。現在そこは……


「えへへ~。しろーくーん♪」
「らんす~。だっこ!」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!フェイトちゃんだっこって!だっこて!!うわははははは!!」


カオスと化していた。


「な、なあなのは?その……皆が見ているんだ。離れてくれないか?」
「や~だ」
「………本当に恥ずかしいんだが……」
「そーいうじょーだんいうしろーくんには……」


そこで言葉を中断し、いきなりグラスの中の酒を煽った。


「ふひふふひへほはへへはへふ(口移しで飲ませてあげる)」
「は?」
「おやおやぁん?見せつけてくれますなぁなのはちゃん。ほれほれ士郎!さっさと呑み!」
「くっ……」
「折角嫁さんが飲ませてくれるんだ。ありがたく頂いておけ」
「シグナム……!」


確かに酔って普段より大胆になったなのはは可愛いが……これは行き過ぎだろ?
シグナムとはやては煽り、シャマルは『あらあら』とでも言いたげな顔をして見ている。
ザフィーラとヴィータ、ヴァイスは……特にヴィータはビジュアル的に酒を飲んでいるのはアレだが、はやてはヴォルケンリッターは皆大人だからOK、と言っているので飲んでいる……が、我関せずといった感じで止めてくれそうにない。最後の頼みの綱としてランサーを見ると……。


「お、落ち着けフェイト……」
「ぎゅー♪」


フェイトの胸に顔を埋められていた。


「なんでさ……」


どうしてこんなことになったのだろうか?
それは一時間ほど前に遡る……。




…………………………………………………………………


「さて、二次会やけど………呑むで!」


はやてのこの発言に、


「おっ、いいねえ」
「大人だけで楽しんでいいんですかね?」


ランサーは肯定的、ヴァイスは未成年者を気遣う発言をした。


「大丈夫や。未成年者にはヴィヴィオのお守り、と言うめんどくさ……大事な仕事があるんやから」


む?今すごく聞き捨てならない発言があったような……


「と言うことで大人は集合や!あることないこと根掘り葉掘り……やなくて、楽しくやろ!」
「今、不穏な発言があったような気がしたのだが……」
「こまかいことは気にしない!」
「そうだぜ。お前ももうちょい楽しくやることを覚えるんだな」
「そうそう。士郎君も一緒に呑もうよ。たまには息抜きしないとダメだよ?」


なのはにまで言われては呑まない訳にもいかない。
そう思い了承しはしたが………


「ほらほら呑んだ呑んだ~!なのはちゃ~ん?飲んどるか~?」
「ほらなのは!まだまだたくさんあるよ~」
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて……」
「士郎も飲めやぁ~」
「なのは飲もうよ~」


はやてとフェイトがずっとこの調子なのである。
それよりフェイトはこんなキャラだったか?
もう少し……落ち着きのある感じだったと思うのだが。


「そんなに難しい顔をするな、こんなとき位ははしゃがせてやれ」
「シグナム……そうだな」


だが、ここで止めなかったことを後悔することになるとは、この時は思わなかった。




side なのは


なんだろう。凄く気持ちがいい。
士郎君からのプロポーズが嬉しくて、ついついたくさん飲んでしまったからだろうか。
まあ、そんなことどうでもいいや。
それより……士郎君随分離れたところにいるなぁ。
もっと近くに行かなきゃ。これからは夫婦なんだし♪


「しろーくーん♪」
「なんだ?」
「どうしてそんなに離れてるのー?」
「君は……何を言っている?隣にいるではないか」
「ん~。えいっ」


士郎君、つーかまーえたー!


「お?なんやリア充め!幸せアピールは他所でやってくれへんか?私の酒が不味くなる!」
「な~に~?はやてちゃん羨ましいの~?」
「あっはっはっはっ!なのはちゃん言うようになったなぁ、お姉さん嬉しいわ~」
「だってなのは、もう大人の女だもん!処女じゃないし~。ご奉仕だってできるもん!」
「「「「ぶふぉう!?」」」」


なのはのお話を聞いていた男の人達が一斉にお酒を吹き出した。
もー、もったいないことして!


「ぅげほげほ!な、なのは?そう言うことはあんまり大声では……」
「ん~?なーに?なのは、愛してる?んもう!そんなのわかってるよぉ!」
「高町、もとい衛宮なのは、恐ろしい子!」
「はやてちゃん、誰も聞いてないわよ……」
「ザフィーラの旦那、俺、着いていけねえっすよ……」
「奇遇だな。俺もだ」


なのは、愛されてるなぁ~!




side フェイト


なのはたのしそうだな~。あんなに士郎にあまえて。
私も……あまえたいな。


「ランス~」
「お?どうしたよ?」
「ひざまくらして~」
「はい?」
「ひ・ざ・ま・く・ら!」
「何故?」
「……イヤなの………?」


いやなんだ……かなしい。


「わかった、わかったから泣くな」
「わーい!」



……………………………………………………………


「うぇへへへ……にゃーん」
「はぁ……」
「むー。なんでためいきつくの?かわいいかのじょがあまえてるんだよ?」
「いや、なんかデジャヴがな……」
「でんしゃ?」
「……いや、もういいわ」


うーん、なにかものたりないなぁ。……そうだ!わたしにあまえてもらってないからだ!わたし、あったまいい~!
それなら……はやてがおとこのひとはおっぱいがだいすき、っていってたから……


「よいしょ!」
「おわ!いきなり立ち上がるなよ……」
「んふふ~」
「ど、どうしたよ?」
「え~いっ!」
「もがっ!?」


おっぱいでらんすのかおをはさんで、と!
うん♪よろこんでるよろこんでる!




side 士郎


と、言った事があり、冒頭の状況が生まれたわけだ。そして、あの後色々とあり、本当に色々あり、現在大量に爆弾を投下していったなのはとフェイトを如何にして眠らせるかを魔法の訓練で身に付けた並列思考(マルチタスク)を総動員して考えているのが現在の私の状態だ。(努力の無駄遣いとか言わないで欲しい。)
協力が得られそうなのはランサーのみ。
ならばどうする?諦めるのか?そんな訳がないだろう!


(ランサー、この状況を打開するぞ)
(お、おお?なんだアーチャー、随分熱くなってるな。ま、俺も流石にこれはキツいぜ……息が持たねえしな。お前は精神的に来てるだろ。ずいぶんとお熱いキスだったようだしな)
(言うな……。ここは魔術に頼ってでも記憶を……)


そこまでやり取りをした時だった。


「むー………。士郎君さっきからフェイトちゃんばっかり見てる……」
「な、なに?」
「おっぱいやな」
「はやて!!!!」


女狸の発言を阻止しようとしたが遅かった。


「やっぱり巨乳なの……?ボインボインがいいの!?」
「待て!なんでそうなる!?」
「私だって結構おっぱいおっきいもん!!頑張ったもん!!」


外野が“何を!?”と言っているが、そんなことよりこの誤解を解かなくては……!


「誤解なんだ、なのは」
「じゃあなんでフェイトちゃんの方見てたの!?」
「見てたのはフェイトではない!!」
「えっ?じゃあ私の勘ちg「ア゛ッ――――――!!!」……」


またやられた。本当に奴はどうしようもない。


「嘘……。士郎君は……士郎君は……」
「な、なのは?」
「男の人しか愛せないんですね――――――――!!!!」
「なんでさ!?」


なのははそのまま走り去ってしまった。
とりあえず、追いかける。


「待て!誤解だ!!」
「士郎!そこは『俺はなのはが大好きだぁぁぁぁぁぁ!!』って言って追いかけるんや!!」
「誰のせいだと!!思ってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


後で覚えていろ……!はやて!!





side ランス


結局アーチャーの奴はどっか行っちまうし、この状況どうすっかね………。
そんなことをぼんやりと考えていると、すぐ近くから規則正しい寝息が聞こえてきた。


「ん?」


視線だけを動かして確認してみると、寝息はフェイトのものだった。


(全く、可愛い寝顔しやがってよ)


普段の大人っぽさはどこへやら、遊び疲れた子供のような寝顔をして寝ている。しかし、体型はまさにボン・キュッ・ボンと言うのがふさわしいナイスバディ。その上で寝相も悪く、幼児のように動き回る。
そして、フェイトがどんな体勢でいたか思い出してほしい。
そう。谷間に俺をがっちりホールドしているんだ。
おかげで未だ息が出来ない。そろそろまずい、と思った時に不意に楽になった。


「むにゅ……うぅん……」
「慣れたとはいえすげえ寝相だ……」


フェイトが自発的にずれたのだ。俺の体を滑り落ちるようにしてだが。


「さてと、お姫様はもう一眠りして来いよ」
「う~ん、うへへ……」


フェイトをお姫様抱っこで抱え上げ、部屋まで運ぶ。
その際、酒の飲めない未成年女子数人(ティアナ、シャーリー、スバル、ルキノ)に見つかってキャーキャー言われたのは誤算ではあったが。




side 士郎


「………」
「んふふー♪」


あの後、何とか誤解を解いたのは良いが、なのはに、


『私が世界で一番好きだって証拠を見せて』


と言われて、皆の所でなのはを膝の上に乗せる羽目になった。
ランサーもいつの間にか居なくなっているし、周囲の視線がとても痛い。


「ほんと、見せつけよって……」
「まぁまぁ、若いっていいわねー」
「そうだな。若い頃にしかできんこともある」


はやて、シャマル、シグナムの三人から話題にされている様子だ。


「なあ、ザフィーラ、ヴァイス」
「どうしたヴィータ?」
「慣れってさ、怖いよな」
「全くだ」
「ホントっすね」


傍観者組は悟りを開きだすし、にやにやしながらこちらを見ているものもいる。
ティアナたちがいないのは幸いだが、見世物にされるのは辛い……
……………だからと言って、なのはに甘えられるのが嫌なわけではない。
むしろ普段よりもかわいく見えるし、嬉しくはある。
皆に見られていさえしなければ、なのだが。


「ふふ~ん♪」


しかも超が付くほどの上機嫌。
気のせいかはやてを見てニヤリ、としていたような……


「ねぇ、しろうくん?」
「な、なんだ?」
「だーい好き!」


不意打はやめてほしい。柄にもなく赤面してしまったではないか。
またはやてにネタを……と、はやてがからかって来ないことを不審に思っていると、それは聞こえてきた。


「……なんでや」
「は、はやてちゃん?」
「なんで私には男がよって来ないんや!」
「「「「ノリに着いていけないから(でしょう)」」」」


ヴォルケンリッター、完璧に息があっている。


「ノリを棄てた八神はやてはただの女の子や!」
「そ、その方がモテるんじゃないスか?」


ヴァイスの発言に対し、はやてはと言うと。


「私はありのままを受け入れてくれる男がエエんや!」
「ユ、ユーノさんとかは?」
「ユーノ君はアルフがおるからなぁ……ちくしょう」
「そ、それならヴェロッs「誰かいないんか!?私のノリに着いてこれる男は!?」」


ヴァイスの発言なんぞ全く聞いていないようだ。確かにヴェロッサならばついてこれる上にありのままを受け入れてくれそうなものだがな。


「全く、二人だけで大人の階段登り(エロいことやり)おって……」


はやてはここぞとばかりに愚痴を言っている。
ザフィーラが宥めようとしている。頑張れ常識人。


「ねぇ……しろうくん?」


その様子を眺めていると、なのはが声をかけてきた。


「なんだか、熱いな……」


そう言うと、いきなり上着を脱ごうとしだした。


「なぁっ!?なにをしてるなのは!?」
「熱いの……」


これは……まずい!不味すぎる!
とりあえず………


「不幸だああ!!」


そう叫ばずにはいられなかった。





………………………………………………………………


「はぁっ、はぁっ………」
「んん~、もう、しろ~くん、そこばっかいじらないでぇ………えへへ」


あの後何とか部屋まで戻ってきて、なのはをベッドに降ろすと、速攻で服を脱いで下着姿になり、爆睡してしまった。そしてこの寝言である。正直勘弁してほしい。
私はこの時誓った。―――なのはを泥酔させるまい―――と。





後日、このことを覚えていた三人組はと言うと………


「見られた……。あんなみっともない姿士郎君に見られた…………」


と、落ち込みまくりで地面に『の』と書き続けるなのは。


「またやっちゃった………でもランス嬉しそうだったしいいか」


反省しつつもまたやりそうな感じのする泥酔常習犯のフェイト。


「たまには愚痴ってもいいじゃない。にんげんだもの」


どこぞのみ●をみたいなことを言っていたというはやて。
そんな姿が三人の新たな配属先で見られたという……… 
 

 
後書き
最近ちょっとスランプ気味です。

そして眠い………!

でも頑張ります(´・ω・`)

それでは\(^o^)/ 

 

⑩~新しい生活

 
前書き
リオ「ようやくあたし達の出番か!」

コロナ「リオはでないよ」

リオ「マジ?」

コロナ「マジ」

リオ「い、いいから本編いくよ!」 

 
side ヴィヴィオ


私の名前は衛宮ヴィヴィオ。St.ヒルデ魔法学院初等部の一年生!
パパの名前は衛宮士郎。お料理、お洗濯、お掃除が得意で、とっても優しいパパです。
私は詳しく知らないけれど、とっても強いらしいです。
魔導師ランクは総合SS、さらにレアスキルと呼ばれる稀少な能力まで持っている……凄い人何だそうです。
ママの名前は衛宮なのは。この名字に変わったのは、つい最近のこと。
今でもお仕事の同僚さん達は昔の名字で呼んでしまう、とこの間教えてくれました。
そんなママのお仕事は、時空管理局の戦技教導官と言う先生みたいなお仕事をしています。
ママはお仕事の時は『エース・オブ・エース』と言う時空管理局の最高のエースでいる、と言うお話しを聞きました。
だけど、私の前ではとっても優しいママです。
パパほどではなくても、ママもお料理、お洗濯、お掃除は上手です。
これが私達家族です。



……………………………………………………………………………


「行ってきまーす!」
「気を付けて行くんだよー」
「寄り道はするんじゃないぞ」


勉強は大変だけれど、優しいママとパパと三人で仲良く毎日を過ごしています。



side なのは


「ヴィヴィオ、大丈夫かな?友達出来たかな?」
「心配しすぎだ。これではフェイトの過保護を笑うこともできなくなるぞ?」
「うぅ……」


そんなに過保護かなぁ……?


「まあいいさ。それより、そろそろ時間だろう?」
「あ!そうだった!」
「ほら、荷物は用意してあるから」
「ありがとう。行ってきます」
「気を付けて行くんだぞ」
「うん。それじゃあ……」


日課になりつつある出かける前のキスを済ませる。
そろそろ連休も控えている。
連休には地球で挙式の予定もある。
私の足取りは軽かった。
そう、昼休みにあの連絡をもらうまでは………




side フェイト


「あれ……?」


体が重い。ここのところこういう事が何度かあったが、今回は特にだ。


「フェイトさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫。ごめんね、心配かけて」
「いえ……」


副官のシャーリーにも心配をかけてしまっている。疲労を見せないようにしないと。
ランスも長期任務に出ているんだから。


「それじゃこの案件ですけど……!?フェイトさん!!」


一歩踏み出そうとしたら強い目眩が襲って来て、倒れこんでしまった。


「と、とりあえず医務室に!!」



……………………………………………………


「う~ん、詳しくはわからないですね。掛かり付けの医師に診てもらっては?」
「ですが仕事が……」
「今日はデスクワークだけですから私がやります。フェイトさんはシャマル先生に診てもらってください」
「でも……」
「もう連絡入れちゃいましたから」
「シャーリー……ごめんね」
「これくらい副官の務めですよ」


シャーリーと先生の強い勧めでシャマルが来るまで医務室で休ませてもらうことになった。




side シャマル


シャーリーから連絡を受けて、フェイトちゃんの元へと向かう。
幸い本局内に居たために20分程で着くことが出来た。


「お待たせ」
「ごめんね。シャマルだって忙しいのに……」
「平気よ。フェイトちゃんに何かあったらランスさんも任務に身が入らないでしょうから」


とりあえず症状を聞いてみる。
全てを聞いて思い当たったものは1つだけだった。
診断を行うと、やはり私の考えが一番可能性が高い事が分かった。


「ねえ、フェイトちゃん。生理来てる?」
「え!?いきなり何を……」
「来てないのね?」
「そう言えば……来てない、かも」


決まりね。何もかもが当てはまってるわ。
なのはちゃん、先越されちゃったわね。


「おめでとう!」
「え?」
「フェイトちゃん、出来たのよ」
「出来たって、なにが?」
「子供」
「…………え?」
「妊娠したのよ。おめでたよ」
「ええええええええー!?」


ものすごい叫びが部屋中に響いた。





side なのは


[通信が来ていますよ、マスター]
「あ、ほんとだ。ありがとう、レイジングハート」


通信の相手はフェイトちゃんだった。
六課が解散してから1ヶ月しかたっていないのに、どうしたんだろうか?
ひとまず繋いでみる。
すると、顔が緩みまくったフェイトちゃんが画面越しにいた。


「ど、どうしたのフェイトちゃん」
「えへへ…なのは。聞いて聞いて」
「う、うん……」


正直に言えばこんなテンションの高いフェイトちゃんは見たことがない。
はっきり言えば怖いくらいだ。
一体何があったんだろうか?


「私ね、親になるんだ」
「へ、へぇ……(また新しく子供保護したのかな?)」
「どうしよう……ランスになんて報告しようかな?」
「新しい子供保護したよ、でいいんじゃない?」


そう答えた私に対してのフェイトちゃんの返答は私を驚愕させるものだった。


「違うよ!私の子供!正真正銘血の繋がりのある子供!」
「え?」
「私、妊娠したんだ」
「ふぇえええええええ!?」
「こういうのってできちゃった婚って言うんだよね?どうしよう…?母さん喜ぶかな?」
「さ、さぁ……」


もうなんて答えればいいかわからない……。
その後はフェイトちゃんのマシンガントークに相槌を打つことしかできない私だった。



………………………………………………………


「って言う事があったの……」
「へぇ……あの二人もなぁ……」


なにか遠い目をして私の話を聞いているヴィータちゃん。


「こうして人は進化していくんだなぁ……」
「なんで悟りを開いたみたいな感じで言ってるの!?」
「なのはよ。時には息抜きも必要なのだぞ」
「待って!キャラが違うよ!」


ヴィータちゃんがどんどんおかしくなってきている。
何とか元に戻ってはくれたが、生徒たちの中に最近のヴィータ教導官はおかしい、という噂が生まれてしまったようだった。




………………………………………………………………………


帰り道、ぼんやりと考えながら歩いた。


「子供かぁ………」


私達にはヴィヴィオがいる。大切な娘が。だけど……


(あんなフェイトちゃんを見てると、なぁ………)


惚れた男の子供ができた、ということでとても幸せそうだった。
自分に置き換えてみる。もし彼との子ができたら………


「私も欲しいなぁ………」
「何がだ?」
「子供が」
「ヴィヴィオがいるだろう?」
「そう言う事じゃなくて……!?」


そこまで言って気づく。
なぜ独り言に返答があったのか?
なぜ普通に返答した?
色々と疑問は浮かぶが、一番は………


「ししし、士郎君!?なんでこんなところに!?」


なぜか旦那がここにいる。ということだ。
一体なんで?と、思っていると………


「それはこちらのセリフだ。ここの商店街はうちとは反対方向だぞ?」
「え?」


そう言われて周りを見渡すと………
知らない場所だった。


「ま、迷っちゃったの!」
「わざわざ逆方向に行ってか?」
「少し寄り道してて……」
「全く、私が買い物に来ていなかったら帰れなくなっていたぞ?」
「はうぅ………」


思いっきり嘘だが、本当のことを言うよりはましだ。
“あなたとの子供が欲しいなぁ、って考ながら歩いてたら知らないところにいました”
なんて恥ずかしくて言えるわけがない。


「では、車を出してくるからここで待っていてくれ」
「待って!」
「ん?」
「駐車場まで一緒に行っちゃダメ?」


ここまで来てしまった理由は言いたくないけれど、だからと言って少しでも離れているのは嫌だった。


「かなり距離があるぞ」
「平気。たまには一緒に歩きたいから」
「……そうまで言われては断れん。行こうか」


そう言って士郎君は荷物を持っていない方の手を差し出してくる。
たったそれだけのことが無性にうれしかった。
だから私は、


「うんっ!」


無垢な子供のような返事をしていた。




side 士郎


「それでね、今日は先生に褒められたんだ!」
「そうか、勉強頑張っているようだな」
「うん!」
「……………」


夕食時。明らかになのはの様子がおかしい。
いや、商店街で会った時から変だったな。


「ママ?なのはママー?」
「………ふぇ!?な、なぁにヴィヴィオ?」
「どこか悪いの?」
「そ、そんなことないよ!ママはいつでも元気元気!」
「そっか~。良かった」


と、少し経つとまた上の空。
そんな状態が続いていた。




………………………………………………………………


「それで、お話って何?」


風呂も終え、ヴィヴィオを寝かしつけたところでなのはを居間に呼び出した。


「何があったんだ?今日の君は少し変だ」
「何でもないよ。ホントになんでも……」
「子供の事か?」
「………!?どうして……」


なぜ知っているんだろうか?とでも言いたげな顔をしている。


「フェイトから聞いた。自分が身籠ったことを伝えたらなのはがどこか陰りのある顔をしていた、ってな」
「フェイトちゃんが……」
「舞い上がっていても執務官は伊達じゃあない、という事だ」


ここまでいってもまだ言うべきか悩んでいるなのはに対し、私は、


「一人で抱え込まないでくれ。私たちは家族なのだから」
「うん……。わかった。全部話すよ」


そしてなのははぽつり、ぽつりと語り始めた。




―――聞いた内容を簡単に説明するとこうだ。
好きな男の子供が出来たフェイトが羨ましい。
自分も欲しいと思った。
だが、私たちに実の子供が出来ればヴィヴィオは引け目を感じてしまうのではないか。
ということだった。―――




「やっぱり、ヴィヴィオのためにも……」
「決めつけはよくないぞ。あの子は優しい子だ。血が繋がっていようがいまいが、姉として接してあげられるだろう」
「そう、かもしれないけど……」
「本人に聞くか?丁度起きてきたみたいだしな」
「え?」


なのはは気が付いていなかったようだが、ヴィヴィオが先ほどトイレに行った音が聞こえていた。
そして足音がこちらに近づいてきている


「う~、お水飲む……」
「ヴィヴィオ、少しだけお話良いか?」
「うん………」


眠そうに眼をこすりながら水の入ったコップを片手によたよたとこちらに来た。


「お話って何?」
「ヴィヴィオはお姉ちゃんになる、って言ったらうれしいか?」
「うん!とっても嬉しいよ。できれば弟がいいな。いっぱいお世話してあげるの!でねでね、色んな所に連れてって、一緒に遊んで……お勉強も教えてあげるの!」


ヴィヴィオのその言葉を聞いて、なのはは驚いている。
予想と全く違う答えだったのだから当然と言えば当然だが。


「そうか。ヴィヴィオはきっといいお姉ちゃんになるな。ありがとう。おやすみ」
「おやすみなさ~い」


そのままヴィヴィオは二階へあがっていく。
それを見送るとなのはの方を向く。


「どうだ?私の言ったとおりだったろう?」
「どうして……?」
「簡単だよ。あの子は君のように思いやりのある子だからな。ああ言ってくれることくらいはわかる」
「そっか………ヴィヴィオ………」


そこまで言うとなのはは、


「じゃあ……いいかな?」
「は?」
「そろそろ……あの日だから…ね?」


マジですか。
てかここでそれを言うか普通。


「ヴィヴィオも待ってるし、なるべく早く欲しいな」
「………念のために聞こう。なのは、明日仕事は?」
「今ヴィータちゃんに変わってもらったよ♪」


そう言ってモニターを見せてくる。


「士郎……赤飯の差し入れは、任せろ」


それだけ言って通信を切るヴィータ。
拒否権とかは無いようだ。


「………寝室に行こうか」
「うん。今夜は寝かせてもらえないのかな?」
「そんなにするのか……」
「嫌?」


なのはが少し女狸に毒されていないか心配になった日であった。
………この数か月後になのはの妊娠が発覚することになる。 
 

 
後書き
はい、生活のお話でしたね。

……誰だ?生の字が違うとか言った奴。

………事実だよ!!

と、わりとどうでもいいことを後書きに書きたくなってます。

最後にお知らせです。

18禁版もただいま執筆中です。ご期待を。 

 

⑪~ヴィヴィオ、出会う

 
前書き
エリオ「この話はヴィヴィオがある人と出会うお話だよ」

キャロ「Vividでの重要人物の一人!」

エリオ「誰に出会うのかは見てからのお楽しみ!」

キャロ「それでは、始まります」 

 
side ヴィヴィオ


昼休み、学院の中を見て回る。
今日は図書室に行くことにした。


「何か面白そうな本は……っと」


何を読もうか探していると、一人の女の子が高い所にある本を取ろうとして背伸びをしているのが見えた。
足元がふらついているのが遠目にもわかる。


(転んだら怪我しちゃうよね……)


だから私はその子に近づいて行った。
……………これが、親友の一人目との出会いになるなんて、この時は想像すらしていなかった。




side ???


「と、取れない……」


私は図書室で本を探していた。
お目当ての本を見つけることはできたのだが、高い所にあって取れそうもない。
司書さんに話しかける勇気もなかったので、自分で取ろうとするが……無理だった。
と、気を緩めた瞬間に、


「あ……」


バランスを崩した。本棚と本棚の間は約1メートル。このままでは……
“ぶつかっちゃう”と、恐怖に目を瞑った時だった。
誰かに受け止められた感触。受け止めてくれた人物はしかし、


「あっ」


私もろとも転んだ。




…………………………………………………………………


「痛たたた……」
「だ、大丈夫ですか?」
「あはは……な、なんとか」


私を助けてくれた人は金髪に右目が翡翠色で左目が紅色の虹彩異色の少女だった。


「あの……ありがとうございました!」
「いいよいいよ。それより、怪我してない?」
「は、はい。大丈夫です」
「そっか。それならよかった。それじゃあね」


そう言うと少女は立ち去ろうとする。
まだちゃんとお礼も言えてないのに……
だから私は彼女を呼び止めた。


「あのっ!お名前…教えてもらえませんか?」


しばらく彼女は呆けていたが、にっこりと笑って自己紹介をしてくれた。


「私、1年2組の衛宮ヴィヴィオ!よろしくね!」


衛宮さんか……お、同い年!?


「わ、私、1年1組のコロナ・ティミルです。ありがとうございました」
「そっか。それじゃあコロナさん、ごきげんよう」
「あっ…ごきげんよう…です」


衛宮ヴィヴィオさん………また会えるかな?
そんな期待をした。
―――図らずともすぐに再開することになるのだが。この時の私はそれを知らない………




side ヴィヴィオ


「痛たた………」


転びそうだった女の子、コロナ・ティミルさん。
助けられたのはよかったけど……


「こぶになっちゃった……。パパやママみたいにはいかないなぁ……」


自分が怪我をしては本末転倒。
もう少しかっこよく助けたかったな。




…………………………………………………………………


放課後。帰ってきて洗面所に行くと、ママがお腹を押さえて苦しそうにしていた。


「ママ!!大丈夫!?」
「ヴィヴィオ……?お、おかえり」
「そんなことは良いから!!」


急いで傍に行って背中をさする。
しばらく続けていたら落ち着いたみたいだ。


「………もう大丈夫。ありがとね、ヴィヴィオ」
「びっくりした………あ。ママ、ただいま」
「うん。お帰りヴィヴィオ」


それよりもあんなママ初めて見た……。凄く苦しそうだったけど、大丈夫なのかな?


「ママ、さっきのは……」
「ああ。あれ?悪阻(つわり)っていってね、お腹に赤ちゃんが出来てすぐのころのお母さんは皆あんな風に急に苦しくなったりするの」
「大丈夫……?」
「平気平気!今日はたまたまパパがお仕事の時間だったけど、普段はパパが居てくれてるから」


それならいいけど……私が知らないうちにこんなことになってたなんて……
子供を産む、って大変なんだ……。
そんな会話をしていた時だった。


「ただいま」
「お、お邪魔します……」


パパの声が玄関から聞こえた。
それと、どこかで聞いたような声も一緒に。


「パパ、お帰りなさ……い……」


玄関に出向いた私は固まってしまった。
なぜなら………




パパにお姫様抱っこされたコロナ・ティミルさんがそこに居たからだ。


「「ええええ!!」」




…………………………………………………………………


「な、なるほど……そんなことがあったんだ」
「は、はい……」


話を聞いてみると、帰り道、ボンヤリと歩いていたらしいコロナさんは道端に落ちていた空き缶につまずいて転んで膝をすりむいてしまったらしい。で、困っていたところに丁度仕事帰りのパパが現れた、と言うわけだった。


「それにしても、一日におんなじ家族の人に2回も助けられるなんて、面白いこともあるんだねー」


ママは呑気にそんなことを言っているが、先ほどの事は忘れているのだろうか。


「ママ、さっきは自分が大変だったのに呑気なものだね」
「にゃ、にゃははは……」
「大変?………ああ、また悪阻が来たのか。大丈夫だったか?」
「うん。心配ばっかかけちゃってごめんね」
「いいさ。その位しかしてやれることがないんだ。いくらでも頼ってくれ」
「士郎君………」
「なのは………」


そしてまた惚気だす。コロナさんも困っているみたいだ。


「おーい、パパー?ママー?」
「……む、何だ?」
「コロナさん困ってる」
「あ!ご、ごめんね!!」
「い、いえ……それにしても衛宮さんのお母様凄くお若いんですね。おいくつなんですか?」
「ママは二十歳だよ」
「えっ……それじゃあ衛宮さんを産んだ時って……十四歳!?」
「ううん。私養子だから」


そう言うと、途端に顔色を悪くするコロナさん。


「す、すみません。知らなくて………」
「いいよいいよ。私はママもパパも大好きだし、本当の親子だって思ってるから」
「ですが……衛宮さんには悪いことを……」


コロナさんの対応はなーんか堅苦しい。同い年なのに敬語だし、変なところで遠慮ばっかりするし。


「ヴィヴィオでいいよ」
「えっ?」
「呼び方。同い年だし、敬語もなしで。私もコロナ、って呼ぶから。それでさっきまでの事はチャラね」
「は、はい。……ヴィヴィオ」
「うん!コロナ」
「良かったね。これで二人は友達だ」


呼び方の事を私たちが話ていると、ママがそんなことを言ってきた。


「友達?」
「うん。お互いの事を名前で呼び合えば友達。私もそうだったからね」
「フェイトやはやての事か?」
「そうそう!二人ともそうやって友達になったんだよ」


友達……か。ママとフェイトさん、はやてさんはとても仲がいい。
私もコロナとそんな関係になれるかな……?
そう思った時だった。


「あ!もうこんな時間!早く帰らなきゃ!!」


時計を見たコロナが慌てだした。


「あ、ほんとだ。もういい時間だね」


ママも時計を見てそんなことを言う。
私も時計を見ると、6時少し前くらいだった。


「ヴィヴィオ、せっかくだし、うちで夕食を食べていってもらったらどうだ?」


パパがそんな提案をしてくる。
それはいいかも!!


「いえ、ご迷惑ですから……」
「ぜーんぜん!うちは大丈夫だよ。コロナちゃんのお家の人に連絡するから電話番号を教えて」
「ですが……」
「いーからいーから!」


コロナは遠慮したが、そこは押しの強さに定評のあるママ。
あっという間に説き伏せてしまった。




side コロナ


結局うちのお母さんがOKを出し、ヴィヴィオのお宅でごちそうになることになった。
そして出てきた夕食は……
鶏肉のソテーにエビのサラダ、野菜たっぷりのスープに芋の煮転がし、主食が混ぜご飯ととってもおいしそうだった。
しかし、何よりも驚いたのはこれを作ったのがお母様でなく、お父様だったのだ。
しかもわずか30分で作ってしまったのだ。


「それじゃあ、いただきます」
「「いただきます」」
「い、頂きます……」


まずスープに口を付ける。野菜のうまみが引き出ていて、とってもおいしい。


「どうかな?」
「すごくおいしいです!」
「そうか。それは何よりだ」


私の返答に満足そうにする皆さん。
その後もヴィヴィオと学校の事を離したり、趣味や得意なこと、家族の事などを色々と聞かれた。
その様子を見ていたご両親もずっと笑っていて、すごく楽しい夕食になった。


「ごちそうさまでした」
「ふー。お腹いっぱい」


ヴィヴィオは三回もお代わりをしていたので苦しそうだった。
代わりに、お母様はあまり食べていないみたいだった。


「さて、では家まで送ろう」
「いえ、そこまでしてもらうわけには……」
「いーのいーの。私たちもコロナちゃんのご両親に挨拶しなくちゃ」


結局はまたお母様のその一言で送ってもらうことになった。




…………………………………………………………………


「ありがとうございました。娘の怪我の治療だけでなく、夕飯までごちそうになっちゃって……」
「いえいえ。こちらこそうちの子と仲良くしてくださってありがとうございます」


車で十分ほどで家まで着くと、母親同士で会話をし始めた。
しかもものの数分で仲良くなってしまったようだ。
凄く楽しそうに話している。


「なのは、そろそろ帰るぞ。あまり長居してはいかんだろう」
「えー……もう少し……」
「子供たちはそろそろ寝る時間だ。大人の都合で遅くさせるわけにはならん」
「旦那さんの言うとおりです。また今度にしましょう」
「そうですね……今度は時間があるときにゆっくりお話ししましょう」


そう言ってヴィヴィオ達は帰っていった。


「コロナ、よかったわね。いいお友達が出来て」
「うん!」


また明日、学校で会えるといいな……




side ヴィヴィオ


「友達、かぁ……」


お風呂に入りながら考える。
今日一日でコロナと仲良くなった。私にとって初めての友達。
明日もまた会えるかな……?


「上がったよー」
「あ、ヴィヴィオ。ちょっとおいで」


お風呂から上がるとママから呼ばれる。


「なにー?」
「これ。渡しとくね」


そう言って渡されたのは通信用の端末だった。


「これは……?」
「ママとパパとの連絡用の端末。これでコロナちゃんともアドレスの交換できるしね」
「デバイスじゃないのー?」
「まだまだちびっこのヴィヴィオには早いです」
「むー。………でも、いいか。ありがとうママ」
「ちゃんと大事にするんだよ」
「はーい!」


これでコロナともすぐ連絡が取れるね!


「それじゃあお休み、ヴィヴィオ」
「うん!お休みなさい」


早く寝て明日に備えなきゃ!




side 士郎


夜。ヴィヴィオが寝た後にちょっとした食事を作る。
その理由は……


「体調が良いうちに食べて置くんだぞ」
「ごめんね。部隊の設立前だから忙しいのに……」


悪阻で日が高いうちはあまり食べられないなのはのため。
このくらいしかしてやれないというのに申し訳なさそうにするなのはに対し、私は告げる。


「君はまだまだ大変なことが続くんだ。それに比べれば私の苦労など大したことではない。それと、こういう時はありがとう、だろう?」
「そう……だね。いつもありがとう」
「どういたしまして。さあ、冷めないうちに食べてくれ。ゆっくりでいいからな」


その後なのはは30分ほどかけて用意した食事を完食した。
ピークは来ていないみたいだが、それでもこれだけの元気があれば一安心だ。
―――余談だが、寝る時になのはが「ぎゅってして……」と言いながらすり寄ってきて凄く可愛かった。


閑話休題(そんなことより)


ヴィヴィオにも友達が出来たみたいで安心だ。
願わくばその友情がずっと続いていくように祈る。 
 

 
後書き
結婚式の話だと思った方、すみません。

その話はまだまだ先になります。

時系列的にはこの時点で終わっているので、回想形式でやる予定にしてます。

それではまた次回の更新にてお会いしましょう 

 

⑫~特別事件対応課

 
前書き
ヴィヴィオ「今回はパパの部隊のお話で~す」

ノーヴェ「すげえよな。二人だけの部隊だってよ」

ヴィヴィオ「だよね。どんな部隊なんだろう?」

ノーヴェ「それは見てからのお楽しみ、ってことで」

ヴィヴィオ「本編行きましょー!!」 

 
side クロノ


「では、これにて特別事件対応課の設立を容認します」
「ありがとうございます。ミゼット提督」
「しっかりおやりよ」
「はい」


僕が中心となって動かしていた計画、特別事件対応課、通称『特事課』の設立がようやく終わった。
この件には三提督が大きく関わっていて、目指したところは『陸でも海でも動ける中立の超少数部隊』というものである。
そのため、メンバーはと言うと………。


「……三人、それも僕はパイプ役みたいなものだから実質二人、という事か」


実際この部隊は事務仕事を僕が引き受け、他の部隊からの要請により動く、と言う傭兵みたいな部隊なのだ。
だが、その戦力は絶大。全力はSSSクラスの魔導師をも遥かに凌駕すると思われる二人。
衛宮士郎三等空佐と、僕の義弟でもあるランス・ハラオウン三等空佐。
今日はミッドに置いた隊舎に来るように言ってあるため、そこで着任式の予定だ。
そこまでやれば、僕のこの部隊での仕事はほぼ終わったと言ってもいい。
要請の承認など、サインをするだけの簡単なお仕事ですから。


「さて、……行くか」


そうして僕はミッドに向かった。




side 士郎


「ここか。随分と小さい建物なのだな」


クロノ提督から送られた隊舎の住所に着くと、一軒家程のサイズの建物があっただけだった。


「ワーカー。ここで本当に間違いないか……?」
[間違いないでしょうね。それにしても、彼らは遅いですね]
「奴の事だ。どうせ遅れてくる」
[確かに]


ワーカーとそんな会話をしながら隊舎に入る。
中までもとても簡素な作りだった。一階の一番奥にあった部隊長室。そこをノックする。


「失礼します」
「ああ。入ってくれ」


そう言われ、中に入る。
そうして部隊長と向かい合い、


「衛宮士郎三等空佐、ただいまを持ちまして正式に特別事件対応課へと配属になります」
「特別事件対応課部隊長、クロノ・ハラオウンです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「はい」


形式的な挨拶を終える。


「………っと、それじゃあ今後の話に移ろう。その前に、これを受け取ってくれ」


そう言って部隊長……クロノは一枚のIDカードを差し出してきた。


「これは?」
「管理局の全データベースを使用できる特事課のメンバーIDだ。これを読み込ませればその施設の情報が全て閲覧できる様になっている」
「ずいぶん凄いものを用意したな」
「用意したのは三提督だよ」


そんな会話をしていると。


「うーっす。待たしたか?」


ランサーが緩慢な動きで部隊長室に入ってきた。


「ランス……もう少し真面目にやってくれ。困るのはこちらなんだぞ」
「へーい。了解しましたよ、お・に・い・さ・ま」
「わかっていないようだな、ハラオウン三佐。君の給料は僕が査定するんだぞ?」


クロノが半キレ気味に脅しをかけると……


「ランス・ハラオウン三等空佐、本日を持ちまして特別事件対応課に配属になります!!」


見事な敬礼でそう言った。変わり身速すぎだろう。


「全く、しっかりしてくれよ。フェイトの為にも怠けてはいられないんだからな」
「はいよ」
「さてと、仕事の内容について説明するぞ」


そこからは完全に仕事モードのクロノ。ランサーも一応しっかり聞いている。


「事務は基本的にあまりない。実働がメインになる。だが、魔術の方は色々あるからな。中々許可は出せない。出せるとしたらS級ロストロギアの処理の時位だろう」
「そうか」
「当面は魔法のみで処理しろ、ってことでいいのか?」


ランサーが確認の為に聞く。


「そう言うことだ。まあ君達の実力ならば犯罪者の相手位ならば必要ないだろう?」
「まあな」
「流石に遅れを取るような事などはないさ」
「それは何よりだ。ならば後は言うことはない。今日は解散としよう。僕も滅多にここには来ないが、何かあればここの端末に連絡をくれ。本局の僕の方まで繋がる様になっている」
「心得た」
「あいよ」


そこまでで解散となった。
これでしばらくはなのはの側に居てやれるな。




side クロノ


それから一週間後に初出動の機会があった。
いきなりAAA級ロストロギアが相手だ。
その事で僕はミッドにいる士郎とランスに通信で現状を伝えている。


「第128世界か」
「ああ。遠距離からの狙撃で封印を。それが困難ならば破壊してくれ。。アウトレンジの使い手が現場に居なかった為、うちに依頼が来た。二人とも出られるか?」
「一人で行けるだろ。特Sじゃねー限りは二人ともでる必要はねーな」


そうは言っているが、このロストロギアは質が悪い。
正直二人で出て欲しいが……


「そうだな。ランサーの言うように一人で十分だろう。私が出よう」
「……わかった。一応魔術使用の申請はしておく。ただ一般人には秘匿が前提だ。結界は張ってくれ」
「心得た」


そこまで決めると次は説明だ。


「今回の確保対象の名前は『オルタレイションクリスタル』だ。形状は虹色の宝石で、生物に物質を分解し、様々な形で再構築する能力を与えるようだ」
「中々厄介そうだな」
「数は20個だそうだ。さらに、バリアジャケットも分解されると報告にある。クラスとしてはAAAレベルの能力らしい」
「それだけ聞ければ十分だ」


それだけ言うと士郎は一瞬で外套とボディアーマーの姿になった。


「なるほどな。そいつの耐性なら簡単には分解されねえだろうな」


確かに彼ら本来の武装ならばAクラスまでの魔法ならば無力化することができる。それ以上だとしても軽減は可能。これならば問題はないだろう。


「では頼むぞ」
「了解!」




side 士郎


第128管理世界『エイリアス』は、不可思議なロストロギアがよく出土することで有名だ。
今回もその一つらしい。
転送ポートから降りて少し進むと、


「うわぁあ!」
「グルオオオ!!」


虎ほどの大きさの装甲が着いた生物に市民が数名追いかけられていた。恐らく今回の捕獲対象の影響だろう。
……丁度いいな。助けるついでに試すか。
魔術による認識阻害の結界を張り、投影するのはお馴染みの紫の歪な短刀。


「はっ!」


ルールブレイカーを投擲して当ててやると、装甲は虹色の粒子となって霧散し、情報にあった宝石が出てきた。やはり魔的ななにかであった事は間違いない。
これならば問題ないな。恐らくは破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)も相応の効果を期待できそうだ。


「た、助かった……」
「はぁ、はぁ…」


市民も無事の様だし、次に行くか。




………………………………………………………………


「これで半分か。それにしても随分早く集まったな」


探索を開始してから二時間程で半分が集まった。
その内4つは狙撃で破壊しなければならない状態だったが、被害は軽く済んでいる。
そう思っていた時だ。


「………っ!この反応は!今までとは桁違いだな!?」


突如ロストロギアの魔力を感じた。
最速でそこに向かうと、そこには鎧のようなものを身に着けた男が破壊活動を行っていた。


「なんだこいつは……」


どうやら殴るだけでは足りないのか、回りの物質を分解し、自身に取り込んでいる。
狙撃で倒そうと弓を投影した時、あることに気がついた。


「こ、怖いよお……」
「私達、どうなっちゃうの?」


奴の側方200mほどのところに子供が四人取り残されていた。
あそこまで近くに居られては壊れた幻想が使えず、確実に止めることが出来ない。
加えてこちらと奴との距離はおよそ1km。


(不味い、奴が子供たちに気付く前に何とかせねば…!)


方法はいくつかある。しかし、確実性に欠けるものがほとんどだ。
封時結界では破られる可能性が高いし、破魔の紅薔薇で無力化させられるかも不明。もし無力化に失敗するような事があれば、子供たちの命はない。
考えろ。確実に子供たちを助ける方法を……奴と分断する方法を!
だが、現実は非情だった。


「ひッ………」
「………!」


奴が子供たちに気付く。迷っている時間はない。


「必滅の……黄薔薇!!」


ランサーほどの精度はないが、1kmくらいならば確実に当てることなど造作もない。
これでこちらに注意が向くはず……そう、向くはずだったのだ。
しかし、奴は左腕を貫かれたというのに、血の一滴も出ていない。
その上、こちらには見向きもせずに子供たちへと向かって行った。


「させん!」


強化をかけた体で一直線に飛び、奴よりも先に子供たちのところへ着いた。
背後から聞こえてくる怯えた声。何とかしてこの子らを逃がさねば……
そのためには目の前のこいつを何とかせねばなるまい。


「貴様、何者だ?」
「………」
「だんまりか。ならば……」


牽制のため黒鍵を三本投擲する。
奴はそれを避けず、()()()()()()()()()


「厄介な……!」


しかし、ここで必滅の黄薔薇が刺さったままであることに気づいた。


(宝具を分解することはできないのか?……やってみるか)


仮説をもとに使う宝具は日本古来の名刀。
ヤマタノオロチの首から出てきたと言われる天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)


投影、開始(トレース・オン)!」


天叢雲剣はすらりとした刀身を持つ太刀。
別名の示す様に植物を切る際にはいかなる場合も一刀のもとに切り伏せる概念武装でもある。
単純な切れ味だけでも一級品の宝具だ。
これならば奴にも有効打を与えられるだろう。
そう思ったが、奴の行動は予想を裏切るものだった。
なんと、右半身を狙った攻撃を左腕を犠牲にして逃れたのだ。
さらにその腕は地面に落ちると虹色の粒子になって霧散した。
それだけでなく、奴は周りの物質を取り込み、左腕を再生させた。


「なんてやつだ………」
「………」


奴の腕が再生する前、中身が見えた。
その中身は虹色の光が渦巻いている亜空間のようだった。
どうやらこいつは人ではないようだ。
状況から察するにロストロギアの暴走体だろう。
ならば遠慮は不要。一撃で葬り去る!
その前に子供たちを結界で保護しておく。


「――Anfang(セット)


認識阻害と衝撃緩和の結界を張って、子供たちを守る。
これで後は奴を倒すのみ!
この状況で使える一撃で葬り去る威力を持つものはあれしかない。


投影、開始(トレース・オン)投影、装填(トリガー・オフ)全工程投影完了(セット)是、射殺す百頭(ナインライブスブレイドワークス)……!」


そう。ヘラクレスの技たる射殺す百頭だ。
これならば奴も流石に倒せただろう。
そう思い奴の居た方向を見る。
するとそこにあったのは10個の結晶。
やはり奴は今回の件のロストロギアの暴走体だったようだ。
回収を終えて子供たちを守っていた結界を解除し、帰ろうとすると、


「ありがとう!お兄さん!!」
「お兄さんはヒーローなの?」


助けた子供たちが群がってきた。
ヒーロー、か。私はそんな大それたものではない。
だから問いかけにはこう答えた。


「お兄さんは、アーチャー。通りすがりの弓使いだよ」
「「「「アーチャー……」」」」
「それじゃあそろそろ管理局の人が来るからその人たちに着いていきなさい」


そう言って立ち去った。




side クロノ


「士郎。いったいどういう事なんだ?」


事件解決から1週間。そこで僕は部下たちからある噂を聞いて士郎を呼び出した。


「どう言う事、とは?」
「あの世界で『赤いアーチャー』と言う噂が出来ているみたいなんだ。何か知っているんだろう?」


聞いた噂とは、アーチャーと名乗る人物があの世界で英雄扱いされているらしい、という事だった。
お礼がしたいから、と本局の方に捜査依頼まで出されているらしい。
しかし、彼の存在は局内以外では公になっていない。さらに言えば現在の局の中核の意見では下手に一般人にその存在を知らせるわけにはいかない、との意見が多い。
そのために本局では対応に困っているのだった。


「あー……。助けた子供たちにな、姿を見られているんだ。その時に名を名乗れぬものだから咄嗟に……」
「全く……とりあえず、正体不明の男という事で誤魔化しはしたが……今後は気を付けてくれよ」
「了解した」


しかしこの後も何度か姿を見られ、赤い弓兵と青い槍兵と言う二人の噂が次元世界中に生まれてしまうのであった。
………このことで僕の仕事量が二倍近くになってしまったのはまた別の話である。
 
 

 
後書き
お気付きの方も多いとは思いますが、ランサーはハラオウン家の婿養子になりました。

この事には後々触れていきます。

今回出てきた管理世界とロストロギアはオリジナルです(^^)v

元ネタは……分かりますよね?

それでは~ 

 

⑬~初合宿!

 
前書き
はやて「お泊り会や!!」

フェイト「合宿だからね」

はやて「えー、あそぼー」

フェイト「それは妊婦に言う事?」

はやて「……チッ、リア充が。爆発してまえ」

フェイト「ここで八つ当たり……」

はやて「よーし!そろそろ本編いこか!!」

フェイト「ほんとにはやては……」

はやて「美少女なんだから~」

フェイト「言ってません」

はやて「なん、やと……」

フェイト「それでは本編どうぞ」 

 
side なのは


「合宿……ですか?」
「ええ。いかかでしょうか?」
「そうですね……」


今、私の元に連絡をしてきたのはルーテシアの母親、メガーヌさん。
目覚めてからやることもなかったので自宅を宿泊施設に改造、そのオープン記念にとお誘いを受けたのだ。


「ですが訓練施設などは……」
「それは大丈夫です。ルーテシアがノリノリでやってくれていますから」


あれ?ルーテシアってそんな性格だったっけ?
と、そんな疑問が生まれたが、メガーヌさんの次の一言で私の意思は傾いた。


「実はもう八神さんとハラオウンさんのところからはお返事をもらっているんですよ。スバルちゃんとティアナちゃんも来る、って言っていますし、あとは衛宮さんのお宅だけなんですけど……」


そう。みんなとの再会。(フェイトちゃんとはよく連絡を取り合っているので別)
それは……すごく魅力的な話だ。


「わかりました。彼と相談してからまた連絡しますね」
「はい。いいお返事を待ってますよ~」


そう言うとメガーヌさんは通信を切った。
さて、士郎君、許可してくれるかな……。
ちょっとした外出の時でさえかなり過保護だし。いや、迷惑とかじゃないけどね!
むしろ愛されてるって感じ……げふんげふん。
話題がそれてしまった。とりあえず話してみないと始まらないよね。




side 士郎


「ダメに決まっているだろう」
「即答……」


いきなり話がある、と言うので聞いてみれば「合宿行こうよ!」
である。


「今は大事な時期なんだ、大人しくしておいてくれ」
「別に私は動いたりしないもん……」
「見てたらやりたくなるだろう?」
「うっ……」


図星を付かれて押し黙るなのは。
涙目で見上げて来るが、ここはしっかりと言っておかねばなるまい。


「あのな、なの「何の話してるの?」ヴィヴィオ?起きていたのか」


なのはを諭そうとした時、ヴィヴィオが上から降りてきた。


「パパに旅行に行きたいな~って言うことを話してたの」
「え!旅行?行きたい行きたい!」


この流れは……まずい。
押し切られる!?


「でもパパがダメって言うんだ…」


おい。完全に私が悪者みたいな言い方だな。


「いいじゃん!揃って旅行なんて滅多に行けないんだから!!パパの甲斐性なし!!」


ヴィヴィオ()の口撃(誤字に非ず)。士郎(パパ)にクリティカルヒット。
士郎のライフは0になった。


「ぐう……」
「ヴィヴィオ、何もそこまでは「女のわがままを聞いてあげるのも男の仕事だってはやてさん言ってたよ!」……は、はやてちゃん…」


よし、あの狸、絞めるか。


「わかった。行こうか」
「やったー!ねーねー、コロナも誘っていいかな?」
「ああ。好きにすると良い」
「はやてちゃん、生きて……」


はしゃぐヴィヴィオ。
狸の冥福を祈るなのは。
どうお仕置きするかを思案する私。
さあ、覚悟は出来てるか、八神はやて!!




…………………………………………………………………


その頃。


「…はっ!?なんか寒気が……」
「どうしたのはやて?」
「なんかロックオンされたような気がしたんや」


はやて(被害者)は何かを受信していたようだ。




side コロナ


皆様おはようございます。コロナ・ティミルです。
現在私は無人世界『カルナージ』に向かう次元航行船に乗っているのですが、とてつもなく緊張しています。
その理由は……。


「いや~楽しみやねー!お泊り会!」
「主、訓練合宿だってわかってますか?」
「ランス、お酒は夜だけだよ」
「わーってるよ。お前も訓練に参加しようとか考えるなよ?」
「なのはさん!お腹触らせてもらっても良いですか?」
「アンタは遠慮を覚えなさい!」
「にゃはは……ティアナ、そんな怒らなくてもいいよ」
「うぇへへ、エリオくん美味しそう♪」
「キャロ、一体どんな夢を見てるの…?」


周りが有名人ばかりなんです。八神はやて司令に始まり、フェイト・T・ハラオウン執務官やスバル・ナカジマ防災士にティアナ・ランスター執務官補佐などの若くして有名になっている局員の方々と一緒で緊張しない人がいたら見てみたいです。
一般人と呼べそうなのはヴィヴィオのご両親とハラオウン執務官の旦那さん位だと思われます。


「コロナ、どうしたの?」


そんな私にヴィヴィオは話しかけてくる。
気軽に話しかけて来てくれる彼女が居てくれたのはとても有り難い。


「いや、よく見るともの凄いメンバーだね……お近づきになるのも恐れ多い人ばっかりで……」
「そんなことないよー。皆優しいし、とってもフレンドリーだよ!」


いや、そんなこと言われても……
と、喉まで出かけた台詞を飲み込んで適当な相槌を打って到着までの時間を過ごした。




…………………………………………………………………


「ホテルアルピーノへようこそ!」
「「「「「「「「「「「「誰!?」」」」」」」」」」」」


目的のホテルへ着くと、エリオさんとキャロさんと同じくらいの年の女の子が『歓迎』と書かれた板を持った鋭利な爪を持った生物と一緒に現れた時、ほぼ全員が彼女を見てそう言った。
知り合いじゃないのかな……?


「いや、ルーテシアですけど?」
「見ればわかるわよ!!あなたに一体何があったわけ?」


ティアナさんが『何言ってんのこいつら?』的な目を向けながら説明するルーテシアさんに詰め寄る。


「ルールーは昔っからこんなんだぞ?」
「皆さん知らなかったんですか?」


アギトさんとキャロさんがそう言うも、皆さん納得がいかないようです。


「うう、エリオさん、皆がいじめるよ……ヨヨヨ」


そんな皆さんを見て嘘泣きを始めるルーテシアさん。
その様子に皆さんは、


「これがこいつの地か……」


と、渋い顔をしていたのが印象的でした。




side はやて


あ、ありのままに今まで起きたことを話すよ!
カルナージに着いたらなんかすごく仲良くなれそうな性格と化していたルールーとの出会いに始まり、広大な森の陸戦場に空間シミュレーター、更には訓練用機械兵製作装置などメカヲタ達が喜びそうなものまで完備されていた。ルールーに聞くと、『ガリューと作った。反省はしていない』と模範的な解答をしてくれて思わずハイタッチを交わしたりといろいろあった。
そして現在、私、八神はやてはと言いますと……


「ちょ、士郎さん?何故私は上下左右全方向を魔力弾で囲まれているんですか?」
「回避訓練の一環だ」
「んなわけあるかあ!!ならこの天の鎖(エルキドゥ)はなんなんや!?」
「大丈夫だ、安心しろ。魔力弾は非殺傷にしてある」
「いや、私セットアップすらしてないんやけど………」


と、絶賛大ピンチなんです。
主のピンチだというのに、我が家族たちはというと………


「はやてちゃん……治療は、任せてくださいね」
「まあ自業自得じゃね?」
「すみません、我らには、どうすることも……」
「楽しそうですね……」
「シグナム!?」
「は、はやてちゃ~ん……」


上から食らう前提で話すシャマル、完全向こう側のヴィータ、比較的まともな対応に見えるが、全く助ける気がないザフィーラ、発言が意味不明なシグナム、それに驚くアギト、おろおろするリイン。
誰も、助けてくれません。


「さあ、神への祈りは済んだか?」
「ちょお待って!?完全殺る気やんか!?」
「魔力弾一斉掃射!!」
「いやああああああああああああああ!!!!!」




…………………………………………………………………


「全く、死ぬかと思ったわ……」
「復活するの早いですね……」


で、合計200以上の魔力弾を喰らった私だったが、そこは生きるロストロギアの名を持つだけあって20分ほどで復活した。
アギトが呆れてたけど、んなこたぁ分かってんだよ!この蛇野郎!と、最速の兄貴の名言で誤魔化す。
しかし、目の前のこれ、何とかならんの……?


「フフ、やはりお前との手合せは心が躍る」
「そうだな、お前ならこの新技出しても構わねえだろ」


こんな感じで戦闘狂(バトルジャンキー)さんたちが勝手に盛り上がっているんです。
止めようにもフォワード達は士郎とヴィータが連れてってもうたし、なのはちゃんとフェイトちゃんもおらんし、ドナイセーッチューンジャー!って感じや。


「じゃ、いくぜ!」
「む………これは………」


勝手に模擬戦を始めだす二人。しかし、ランスの使う新技に驚くシグナムは距離を取った。


「おいおい、かかってこいよ?」
「ランス、何だその技は……」
「あ?魔力を手足に集束させてるだけだが?」


おいおい、今こいつとんでもないこと言ったよ。つまりは『私ブレイカー纏ってますよー』ってことやろ?シグナムが近づきたくないのもわかるわ……


「少ない魔力で多大な効果。集束打撃、とでも言ったところか」
「残念だったな。打撃だけじゃあねえぜ?」


そう言うとランスは槍で突きを放つ。
その軌道から青い何かが飛び出した。


「……ちぃっ!」


その何かを避けるシグナム。
その後ろには薙ぎ倒され、無残な姿になった木々の姿があった。


「……随分とふざけた威力だな」
「まだまだ序の口だぜ?」
「それは、楽しめそうだな!!」


完全にお互いしか見えてないよ、あの人たち。
付き合ってたら命がいくらあっても足りない。
そんなわけでフォワード陣の所へと向かうことにした。




side ヴィータ


現在、あたしと士郎でフォワード陣の訓練をしているのだが……


「ぜぇ、ぜぇ……」
「ひぃ、ひぃ……」
「どうした?スバルとエリオを見習え二人とも」


へたり込むティアナとキャロに対してそう言う士郎。
だが、別に二人が体力がない、とかではないのだ。
士郎の訓練がオーバーSクラスを対象としているものなのだから。
ついてこれる方がおかしい。


「なんで……アンタたちは……無事なのよ……」
「僕はランスさんに言われた基礎訓練を欠かしていませんので」
「あたしはご飯一杯食べてきたから」


待て待て。エリオはわかる。だがスバル。お前はどうなっている。


「そんな理由で、なんて…………」


やはり、というかキャロが落ち込んでしまった。
ティアナは睨みを利かせ、士郎は呆れている。


「……まあいい。10分後に模擬戦だ。それまでに陸戦場に来るように」


そう言って陸戦場に向かった士郎と入れ替わるような形ではやてがやって来た。


「やっほー。みんなの様子はどうや?」
「かなり成長したみてえだ。あたしも油断してたら負けちまうくらいには、な」
「でもまだまだ負けてはやらない、ってか?」


言いたかったことを当てられてしまい、ちょっと恥ずかしい。


「で、これから何するんや?」
「この後は陸戦場で模擬戦」
「えっ……マジすか?」
「はやて?どうしたの?」
「いや、いいんよ。何でもない……」


この時のはやての表情の意味を知るのはこれから数分後の事である………。




side コロナ


「行くよー!」
「よーし、来い!」
「あ、あわわ……」


現在、私とヴィヴィオとルーちゃんは近場の川でビーチバレーをして遊んでいる。(海じゃない、というところはスルーでお願いします)
監督役としてなのはさん(いつまでもヴィヴィオのお母さんと呼んでいると長い、と言われなのはさんと呼んでいる)とフェイトさん、シャマルさん、ザフィーラさんの四人だ。


「ふふふ。若いっていいわねぇ……」
「シャマル、その言い方年寄り臭いよ……」
「三人とも楽しそうだね」


にこやかに見守ってくれるシャマルさん、そのシャマルさんにツッコミを入れているフェイトさん。率直な感想を述べるなのはさん。何も言わずに見守るザフィーラさん。
それぞれが別々の形で私達を見ていてくれている。


「必殺!羆落とし!!」
「なんの!!ブーメランスネーク!!」


ヴィヴィオとルーちゃんはおかしな方向で盛り上がっている。なんだかんだ必殺技と言いながら全部強烈なスパイクの応酬である。
技名付ける意味ないのでは?と思ったが、ルーちゃんはそう言うのが大好きらしい。
そして、なんだかんだでヴィヴィオもノリノリで付き合っている。
結果。私、蚊帳の外。


「はぁ……」
「あれ?コロナちゃんは元気ないね?」
「なのはさん……」


そんな私を見てこちらに来るなのはさん。


「やっぱりついていけない?」
「はい……。あそこまで凄い動きするとは思ってませんでしたから」
「あはは……確かにね」


と、なのはさんと談笑していると、赤い外套を着こんだ士郎さんがこちらにやって来た。


「あれ?訓練はもうおしまい?」
「いや、模擬戦前に少しお仕置きが必要な奴らがいてな。シャマルを借りていくぞ」
「う、うん」


士郎さんはそのままシャマルさんを引き連れて戻っていった。


「何があったのかな……かなり怒ってたみたいだけど……」
「え、そうなんですか?」


私にはいつも通りに見えたが、なのはさんには怒っているように見えたらしい。
……というか、ちょっと待って。士郎さん模擬戦って言った?
来てた外套から魔力感じたし……もしかして?


「あのー……なのはさん?」
「ん?なに?」
「士郎さんってもしかして魔導師なんですか?」


そう聞いた私に対し、なのはさんは驚いた顔をして言った。


「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてませんよ!びっくりしました……」


そんな私のところにいつの間に帰ってきてたのかルーちゃんとヴィヴィオがやって来た。


「コロナ、知らなかったのね。士郎さんは総合SSランク。はやてさんと同じランクよ」
「へ?」
「ちなみにママはS+!航空武装隊のエース・オブ・エースだよ」


あまりのことに頭が付いて行かない。全次元世界中1000人居ないと言われるオーバーSクラス?
なのはさんがエース・オブ・エース?
……待って。エース・オブ・エースの名前は高町なのは……なのは?
目の前の女性は衛宮なのは。これ偶然?


「結婚して苗字変わったって言うのを意外と知らない人も多いんだよね」


ルーちゃんが呑気にそんなことを言っているが、私は頭の処理が追いついていない。


「じゃ、じゃあもしかしてフェイトさんの旦那さんも……?」
「SSランクだよ」
「えええええええええええええええええええええ!!!!!!」


私が一般人だと思っていた人達は、実はとんでもない人たちだったようです。




side ティアナ


あの後私たちが陸戦場の方に行くと、隅の方で正座しているシグナム副隊長と赤い布で簀巻きにされて気にぶら下げられているランスさんがいました。
二人を見ているシャマルさんが“我に触れぬ(ノリ・メ・タンゲレ)~”という謎の鼻歌を歌っているのも気になる。


「あの~?士郎さん、アレは一体……?」
「お仕置き中だ。気にするな」
「そ、そうなんですか………!?」


エリオが士郎さんと話しながら何気なく陸戦場を見ると………


そこには何もありませんでした。


「「「「「は?」」」」」


あまりのことについていけない私たち。
その様子を見て士郎さんが教えてくれた。


「あそこの二人が模擬戦で木端微塵にしたそうだ。そう言うわけで……模擬戦はなしで基礎トレーニングを続けることにしよう」
「「うそぉ……」」
「「うげぇ……」」


私とキャロ。エリオとスバルのセリフがそれぞれ被った。


「安心しろ。基礎トレーニング、とは言ったが、最終日に新技を伝授するからそのために必要な技術のものだ」


新技?何かしら?


「具体的に言えば、各人の弱点を補うための技だ。スバルは遠距離対策、ティアナは攻撃の威力、エリオは防御力、キャロは近距離戦闘、ってとこだな」


?マークを浮かべる私たちにヴィータ副隊長が丁寧に説明してくれた。


「では、そのためのトレーニングをこれから2日間、みっちりやっていくぞ!」
「「「「はい!」」」」




…………………………………………………………………


そして最終日。……トレーニングの中には川遊びという名の地獄や、休息と言う名目の料理の手伝いという筋トレもあったが、無事に最終段階に辿り着いた。


「さて、それでは技の伝授に入ろうか」
「や、やっとここまで来た……」
「頑張ろうね、みんな……」


最後の昼食は疲労回復に効果があるなのはさん特製のメニューが出るらしい。
というわけで、余力は使いきれ、と言われている。


「ではそれぞれ別れようか」


そして別れた組み合わせはというと。


スバルが士郎さんと。


エリオがヴィータ副隊長と。


キャロがランスさんと。


私がレイジングハートだった。


………っておい。


「なんで私だけこんな扱いなんですか!?」
[私では不満ですか?]
「あー、いえ、そう言うわけではなくてですね……」


私が言いたいのは人じゃないのは何故?という事なのだが……


[本当はマスターが直接教えるところなのですが……]
「ごめんなさい私が悪かったです許してください」


レイジングハートが落ち込み始めたので平謝り。


「ごめんねーティアナ。通信越しになっちゃうけど許して」
「いえいえ!大丈夫ですよ!!」


レイジングハートに教わるのか、と思ったらなのはさんが通信越しに教えてくれるらしい。
デバイスに新技教わるとかシュールすぎて泣ける状況は回避できたようだ。


「それでは合宿最後の訓練、始めるとしようか!」


士郎さんの一言でそれぞれが動き出す。




…………………………………………………………………


「もう少しだよティアナ!」
「は、はい……!」


新技講習も私を除いてみんなが終わった。
スバルは士郎さんに射撃の反射(リフレクト)を。
エリオはヴィータ副隊長に瞬間的なバリアフィールドの張り方を。
キャロはランスさんに体術を教わっていた。
で、私は……


「そう!そのまま魔力を集中させて!」
「ぐぅ……」
「……今だよ!」
「スターライトォ……ブレイカー!!」


スターライトブレイカーを教わっていた。
……って何この差は!?
何で私だけこんな難易度の高いもの教わってるの?


「いや~、ティア、すごいね!」
「凄いです!」
「流石ティアさん!」


褒めてくれるのは嬉しいけど、課題が楽なだけ羨ましいわよ……


「よし。これで終了だな」


士郎さんの一言で、訓練の全課程を終えて宿舎に戻った。
昼食はなのはさんとフェイトさん、暇を持て余していた八神部隊長とメガーヌさんがとても豪勢なものを作って待っていてくれたのでついつい食べ過ぎてしまった。
ベ、別に一人だけ時間がかかって悔しかったからやけ食いした、とかじゃないんだからね!


……後で知ったことだが、皆がやっていたことも相当な難易度だった、と知った私が落ち込むのは必然であった、とだけ言っておく。 
 

 
後書き
ようやく書き上がりました~。

さてさて、次回はある人物がミッドチルダにやってくるお話です。

その正体をあなたはきっと知っている……… 

 

⑭~『魔法使い』がやってくる(前編)

 
前書き
はやて「さて!今回は?」

ネコアルク「みーんなが知ってるアイツが登場だにゃ~!」

はやて「だ、誰やねんあんた!?」

ネコアルク「アチシを知らんとはお主もまだまだよのう。出直せ出直せ!」

はやて「は、腹立つわこいつ~!」

ネコアルク「カーニバルファンタズム、始まるよっ!」

はやて「始まらんわ!!」 

 
side ヴィヴィオ


その日は学校の帰り道に、公園の近くを通りました。
その時に出会ったんです。本物の『魔法使い』と……。




………………………………………………………………


「あれ?誰の声だろう?」


公園の横を通り過ぎようとしたとき、言い争うような声が聞こえてきました。
――…から、やめておけって……たんだよ!――
――しょう……いじゃな……こんな……になるなんてわからない………――
その声には聞き覚えがあるような、ないような、そんな不思議な感覚のする声でした。
気がつけば私はその声に導かれるように公園の中へ入って行っていました。


「どうすんだよ!言葉は通じないし、字は何となくしかわからないし、おまけに月が二つ!どう考えても異世界だろ!」
「そんなことわかってるわよ!穴のサイズ間違えただけでこんなことになるなんてわかるわけないじゃない!」
「至ったからって簡単に平行世界に渡ろうなんて言うからだろ!」
「士郎だって賛成したじゃない!」
「凛がこんなところでうっかりを出すなんて思わなかったんだよ!」
「何よ!もう知らないんだから!」


その声の主は黒くて長い艶のある髪をストレートに下ろした女性と、少しだけ色の抜けた赤毛に程よく日焼けした肌が印象的な男性が地球の言葉、パパとママの出身地日本の言葉で言い争っていたものでした。
男性の後ろ姿がどことなくパパに似ているように感じた私は声をかけていた。


「あのー?」
「ん?……なあ、今君日本語で話しかけた?」
「は、はい。日本にはたまに行くので話せるんです」
「ちょっといいかしら?」


女性が私に話しかけてくる。


「なんですか?」
「私達、迷っちゃったみたいなの。この町の名前を教えてくれないかしら?」
「ここはミッドチルダの首都クラナガンにある中央市民公園です」
「はい?」
「お二人は地球の人ですか?」
「え、ええ」


あの対応と言い争いの内容からして次元漂流者だろう。
とりあえずパパかママに伝えればいいかな?


「あの!私の両親が管理局員なのでもしかしたら力になれるかもしれません!」
「「管理局?」」


二人とも疑問はあるようだが、何やら小声で相談すると、


「それじゃあ両親の所に案内してもらえないかな?」


男性の方がそう言ってきた。女性の方は不満があるのか渋い顔をしている。


「多分二人とも家にいると思うので着いてきてください!」
「ありがとう。俺は遠坂士郎。こっちは妻の…」
「遠坂凛よ。よろしくね」
「はい!私は衛宮ヴィヴィオって言います!」


私が名乗ると何やら考え込んだ二人だけど、すぐに


「それじゃあよろしくな、ヴィヴィオちゃん」


そう返事を返してくれた。この時はまさかあんなことになるとは思っていなかった。




side 凛


私達に話しかけてきた少女、衛宮ヴィヴィオ。
名字が士郎の旧姓、というのは気になったが、右も左もわからない異世界、日本語で会話のできる人物と会える機会はもうないだろうと言う士郎の言葉に彼女に着いていくと、この世界の文字で多分『衛宮』であろう表札があった家の前で彼女が止まる。
この時はまさかアイツと再会するなんて思っていなかった。


「ただいまー!」
「「お邪魔します」」
「お帰りヴィヴィオ。随分と遅かったじゃない、か……」


私達を出迎えたのは、忘れもしないあの男。赤き外套の弓兵だった。
……今はエプロン姿の主夫のようだが。


「「アーチャー!?」」
「な!?凛!?それに……」


士郎の名前を呼ぶことに抵抗があるのか、口ごもる主夫エミヤ。


「え?パパの知り合い?」
「まあ……そうだ」
「それよりママは?」
「検診だ。もう少しで帰って来るはずだぞ」


アイツが父親な対応を取っている事に驚く。……っておいおい、


「「娘ぇ!?」」




……………………………………………………


「養子、ね」
「ああ。見た目でわからなかったか?」
「そうね。アンタの実子ならあんなにいい子な訳がないわよね」
「言ってくれるな……」


とりあえずヴィヴィオちゃんは士郎に任せて、私が状況の説明を行った。
もちろんアーチャーの方の状況も聞いた。管理局と言う組織やこの世界に来てからのことなど。


「それにしても、リンカーコア、ね。面白いものがある世界なのね」
「そうだな。私もこの世界の理に従わされる形で老化も進んでいる。魔力に存在を頼る、と言うこと以外はほぼ人間と同じ存在と化している。身体能力はサーヴァントのものだがな」


色々と修正は働いているようだけど、満足そうじゃない。
良かったわ。幸せを見つけられたみたいで。


「紅茶のおかわりはどうかね?」
「もらうわ」


相変わらず美味しくお茶を淹れるこいつには驚く。
まあ士郎も負けてないけどね。
そんな優雅な一時を過ごしていたときだった。


「ただいま~」
「お邪魔します」
「ちーっす」


三者三様の声が聞こえてきた。
その内ひとつは何処かで聞いた様な……


「ランス君、ありがとね。私まで乗っけてってもらっちゃって」
「暇人だから平気だよ、なのは」
「ったく、労いの一つくらいあってもいーんじゃねーか?」


そんな会話をしながら私達のいるリビングにその三人が入ってきた。
栗色の髪と金髪の妊婦が二人、よく知る男が一人。


「今度はランサー!?」
「おおぅ!?こいつ誰だ?」
「ランサー、凛だ」
「マジで嬢ちゃんか?美人になりすぎてわかんなかったぞ」


笑いながらそういうランサー。しかし、私はバッチリ見ていた。
栗色の髪の女性が泣きそうなのと、金髪の女性が阿修羅と化していたのを。


「士郎君……浮気なんてしないって言ったのに……」
「待て!?誤解だ!」


滅茶苦茶慌てるアーチャー。こんな姿は見たことがない。と言うかその前に……


「アンタ!?これどう言うことよ!?」
「凛!?待て待て、説明しただろ!」
「されてないわよ!ちゃんと話しなさい!」
「やっぱり浮気してたんだ……」
「だから違う!」


不意に何も声の聞こえないランサーが気になり、後ろを向くと……


「嫁の目の前でナンパするなんてどういうつもりなのかな?」
「しゃ、社交辞令だろ……」
「へー。最近めっきり私には可愛いとか綺麗だとか言ってくれなくなったのに?他の女の人には言うんだね?」
「そ、それはだな……」


絶賛説教中であった。
御愁傷様です。


「何かあったの?」
「おいおい凛、何を騒いで……って、ランサー!?」
「お、おお坊主!久しぶりだな!」
「アナタ?コッチヲミナサイ」
「はい!」




……………………………………………………………


その後、二階から降りてきた士郎とヴィヴィオちゃんの活躍で何とか全ての誤解は解けた。
と言うわけで現在七人で居間にいる。


「ご、ごめんなさい……」
「全く、私が浮気なんてするわけないだろう」
「うん……そうだよね」
「家のアホはどうかわからないけどね」
「失礼な!そんなにホイホイ声かけたりはしねえよ!」
「「「「「「えっ?」」」」」」


その場の全員が驚く。


「いじめか!?」
「「自業自得」」
「が、頑張れランサー……」


女性陣に言われてorz状態になるランサー。
士郎がフォローを入れるも、落ち込んだままだ。
以外に可愛いとこあるのね。


「それにしても、笑える話だな。魔法に至ったからってそう簡単にはいかねえってことだな」
「で、帰り方は分かってるのか?」


即時復活したランサーとアーチャーは痛いところを突いてきた。


「い、一週間くらいあれば……」
「長いな……」
「泊まる所とかはどうするんですか?」


お金は……ない。地球のならば幾らかあるが、ここのではただの紙切れだ。
となると……


「野宿……?」
「なら家に泊まりませんか?」
「なのは!?」
「いいの?」
「はい、こちらもご迷惑おかけしましたから」


なのはさんのその言葉にアーチャーは何も言わずにすんなり折れた。
以前のアイツなら確実に嫌味のひとつやふたつは言っていたはずだ。


「ありがとうね」
「本来なら本局の方で対応を取っているんですけど、平行世界からの場合は管理局にはどうしようもありませんから」


フェイトさんが説明をしてくれる。
そう言うことなら好意に甘えておきましょうか。


「それじゃあよろしくお願いします」
「はい!それじゃあ早速女子会やりましょう!」
「凛さんこっちにどうぞ」
「え、ちょっと、ええ?」


予想外に押しが強いわねこの二人……
これは大変な一週間になりそうね。




side 士郎(遠坂)


「なあ坊主」
「なんだよランサー」
「女三人集まると姦しいとはよく言ったものだよな」
「ああ。全くだ」


俺は今現在、ランサーと共にリビングの隅で大人しくしていた。何故かって?
女性陣にリビングを乗っ取られているからである。
ちなみにアーチャーはヴィヴィオちゃんを連れて買い物に行ってしまったため、不在である。


「でねでね、うちの人はいっつも美人を見つけるとナンパし始めるんだ」
「うっわ~。あいつフェイトちゃんみたいな美人捕まえといてそれ?変わってないわね~」
「凛さん、どう思う?」
「最低ね。全世界の男たちから恨まれるわよ」
「あはは……。ランス君、すごい言われ様だね」
「なのはちゃんはアイツに不満とかないの?」
「う~ん。今はないけど……付き合いだす前とかはいっぱいあったな~」
「へー。詳しく聞かせて」
「あのね、………………」


そして女性陣はこうやってそれぞれの旦那の話で盛り上がっている。
こういう状況では男はいつだって無力なんだ。
しかも………


「それでね、ほら。彼鈍感だからさ。全然気づいてもらえなくて。告白したの私からなんだよ」
「あら~。英雄になろうとも衛宮士郎の本質は変わらないのね」
「変わらないって……彼もなの?」
「筋金入りのニブちんよ。あいつのこと好きだった女の子は結構いたってのに、そのほぼすべての好意に気づかないんだから。特に高校のときなんか通い妻状態の子がいたのに本人は全く好かれてるって思ってなかったのよ?」
「それひどーい。その子可哀想だよ!」
「でも、その鈍さのおかげで私があいつと一緒にいるわけだしね」
「な~に?凛さん惚気話~?」
「そうよ。問題ある?」
「「ないない!」」
「じゃあ二人の惚気話も聞かせてよ。まずなのはちゃんから!」
「えー!私から!?」


終始こんな感じである。
なのはさんとフェイトさんが年下だから敬語はいらない、って言ってから凛の奴も楽しそうに話している。
それ自体は良いことなんだが……


「士郎~。紅茶お代わり入れてー」
「わかったよ……」


時折お茶汲みで呼ばれるのだ。しかも……


「そうなの!?ホントそういうとこそっくりね!」
「わかる?付き合いだす前なんて気づきもしなかったのに今なんてすごいんだよ。何も言わなくてもすぐにこっちの気持ちに気付いてくれるし」
「わかるわ~。こいつもそう言うのには結婚してから鋭くなったしね。ね、士郎?」


こうして行くたびに話を振られる。
正直なところすごく疲れる………。
その後、この女子会はアーチャーとヴィヴィオちゃんが帰ってくるまで続いた。




side ヴィヴィオ


今、私はパパと晩ごはんのお買い物に来ている。
今日は七人もいるため、たくさん買うからお手伝いに来たのだ。


「ねぇパパ。凛さんや士郎さんとはどういう関係だったの?」
「そんなこと聞いてどうする?」
「だってパパ自分のことはあんまり話してくれないから…」
「……」


しばらく沈黙が続くが、不意にパパが語りだした。


「……パパをヴィヴィオやママと会わせてくれた恩人、だな」
「えっ?」


少し予想外な解答だった。
古い友達、位だと思っていたから。


「ママと出会う少し前の事だ。パパは凛と一緒にある戦いに参加していたんだ。そこでアイツと一緒に参加したもう一人と同盟を組んだんだ」


そう語るパパはどこか遠い所に思いを馳せていた。


「で、アイツはそんな中でも皆を救う、と言う絵空事を本気で信じていた。パパが諦めた夢をな。そんな姿を見てパパはアイツに戦ってわからせてやろうとしたんだ。絶対に無理なんだって」


私の憧れのパパがそんなことを言うなんて信じられなかった。
いつもかっこ良くて、困った時にはすぐに来てくれる正義の味方。
それが私のパパだ、と思っていたから。


「だが。負けたのは私だった。その時にアイツはこう言ったんだ。『例え不可能な理想だとしても、それを追いかけていたことには必ず意味がある。俺はその道を選んだことに後悔なんて絶対にしない』とな」
「パパは皆を救う道を選んだことを後悔した、ってこと?」
「ああ。結局一人で幾ら足掻いた所で救えない人はたくさんいたからな。だが、私もその言葉に考え方が少し変わったんだ」


そう言って笑うパパは私の良く知るパパだった。


「結局アイツも一人では限界があった。最後の戦いで負けそうになったんだ。でもパパはアイツに賭けてみたくなってな。協力してやった。そうして全ての敵を倒した後、私は凛にアイツのことを頼んで去った。その後で新しい理想を探す旅をしていたらミッドチルダに流れて来たんだよ。自分の歩んで来た道に後悔しない、と言う思いを持ってな」
「ちょっと難しい……」
「ヴィヴィオには少し早かったかな?でも、ここで見つけた新しい理想がヴィヴィオとママ、新しく産まれてくる子の事を守っていく、と言う今のパパの生き方なんだよ。それだけ知っていてくれればいい」


話しているうちに商店街に着いていた。


「さて、話はこれで終わりだ。早く買って帰って作業に取り掛からないとな」
「うん!」


パパの昔話は難しいことばかりだったけど、士郎さんと凛さんのおかげで今のパパがいる、ってことだけはわかった。
帰ったらお礼をしないとね!
パパに大事な事を教えてくれてありがとう、って。
夕日でオレンジ色に染まり始めた空を見上げながら私はそんなことを思った。 
 

 
後書き
謎の人物の正体は皆のアイドルあかいあくまでした。

補足すると、彼女は25才、聖杯戦争の8年後から来た、と言う設定です。

時系列は余り気にしないで下さい。第2魔法は時間も越える、と言うことで。

次は中編。ヒートアップする女子会と、男達の嫁自慢大会になります。

それでは~ 

 

⑮~『魔法使い』がやってくる(中編)

 
前書き
ネコアルク「さて、次は中編だにゃ~」

はやて「またこいつとやるんか……」

ネコアルク「お?悪いがただでサインをやるわけにはいかんにゃ。アチシのファンのみんなが怒りだしちまうからにゃ~」

はやて「(この猫…殴りたい………)」

ネコアルク「猫パーティー、始まるよッ!」

はやて「だから違うやろ!」 

 
side なのは


夜。私とフェイトちゃんと凛さんは私と士郎君の部屋にいた。
その理由はというと……


「さあ、暴露大会を始めましょうか」


凛さんの一言で火蓋を切った暴露大会。まずはフェイトちゃんからだ。


「それじゃあ何を話す?」
「そうね、結婚式の事とか?私忙しくて式挙げてないのよね」
「そうなの!?」
「でもいいのよ。人の話聞くだけでも楽しいから」
「それじゃあ私のを話すね」


フェイトちゃんはそう言って自分の結婚式のことを話し出した。




………………………………………………………………


「そう。ようやく決心してくれたのね」

 
通信で話すリンディさんとフェイトちゃん。
2人とも笑顔だ。


「それで、式の段取りとか相談したいんだけど……」
「あら、その心配はないわよ」
「え?」


驚くフェイトちゃん。
リンディさんの真意がわからないからだ。


「もう終わってるから」
「……ど、どういうことですか?」
「それはね……」
「はーい!それは私が説明しまーす!」
「エ、エイミィ!?」


いきなり通信に参入したエイミィさんが説明を始める。




………説明中………


「つまり、母さんたちもミッドに来るんだね?」
「そうよ。娘の晴れ姿を拝むために頑張ったんだから♪」


書類手続き、式場の用意、その他諸々の準備は既に終わっているらしい。
あとは本人たちのサインだけで準備は完了だそうだ。
準備が速すぎる……。


「それじゃあ書類送って置いたからね。式場の場所、日程とかは貴女とランスさんのを調整して決めてあるから確認しておいてね」
「はい、わかりまし……ってええ!?」


驚いて素っ頓狂な声を上げるフェイトちゃん。
まあそれが普通の反応だよね……。


「じゃ、そういうことで。またね、フェイト」
「ちょ、ちょっと待っ…」


そして通信は無常にも切られた。




…………………………………………………………………


「と、言うことがあったの…」
「マジ?」


翌日、送られて来た書類と共に今までの経緯をランス君に説明するフェイトちゃん。
書類には、リンディさんの手紙が一緒に付いてきたので、それを見ながらなのだが……。


「まさか婿養子とは……しかも日程まで完璧に調整されてやがる」
「ご、ごめんね。母さんが勝手に……」
「いや、いいさ」
「え?」


俯いていたフェイトちゃんが顔を上げる。


「どんな形だろうとお前とその子と一緒に居られるならな」
「ランス……」


その一言で桃色空間が発生。
ちなみにこの会話、本局の食堂で行われているのである。
きっとそのときの周りの人たちの心はひとつだっただろう。


『家でやれよ』





……………………………………………………………………


さてさて、時は流れて結婚式当日。
私、高町なのははと言いますと、はやてちゃん、リンディさんと共にフェイトちゃんの着付けを手伝っていました。リンディさんの希望で着物でやるんだそうです。それにしても着るの大変そう。


「ど、どう?変じゃない?」
「大丈夫大丈夫!すっごく綺麗だよ!!」
「ええ。これならランスさんもぞっこんよ♪」
「やべぇ、襲いたくなる……」


髪を結い上げ、化粧をしているフェイトちゃんは同性の私達から見ても思わず息を呑むような美しさだった。
約一名おかしなことを言っているが、無視することにしよう。


「さあ!あまり待たせても悪いし、行きましょうか!!」
「ええ!?ちょ、ちょっと待って!心の準備が……」
「問答無用じゃヴォゲええ!!」


娘の晴れ姿にハイテンションになったリンディさんと最早よくわからない状態になったはやてちゃんに連れ去られる形で会場に向かったフェイトちゃんを苦笑いで見送る私であった……。




…………………………………………………………………


「で、結局どたばたしちゃったんだよね」
「そうそう!はやてが暴走するし、ランスは悪戯するし…」
「あらら……」


結局フェイトちゃんの結婚式は酒が入ったはやてちゃんとランス君の暴走でフェイトちゃんはもみくちゃにされて大変そうだった。ランス君はどさくさに紛れてフェイトちゃんにセクハラをしていたらしいし。
だけど、フェイトちゃんは幸せそうだったし、良い結婚式になったと思う。


「じゃあ次はなのはだよ」
「わかったよ」


そうして私は語り始める……。




side ランス


女性陣が別室で盛り上がっているのと同時刻、俺達は酒を飲みながらリビングである会話をしていた。それは……


「お前ら、制服エプロンってどう思う?」
「「制服エプロン?」」


ハモったことでお互いを少し睨むアーチャーと坊主。
しかし、この会話は腹を割って話すべきもの。険呑な空気はお呼びでないのだ。


「まあ二人とも落ち着け。まずだな、俺が体験した話を聞かせてやろう」
「実体験か。それは興味深いな」


意外にアーチャーが食いついてきた。


「これは大分前の話でな、六課が解散してすぐの時だ」




…………………………………………………………………


「帰ったぞ~」


クロノからの呼び出しで本局に行って帰ってくるとだな、


「お帰り。ご飯もうすぐできるからもうちょっとだけ待っててね」


そういって台所から執務官の制服に淡いピンクのエプロンをしたフェイトが出てきたんだよ。お玉装備で。
その破壊力に声が出なかった。あれはやべぇ。めちゃくちゃ萌えるぞ。




……………………………………………………………………


「……そんなにか?」
「おうよ。思わず襲いそうになるぐらいだ」
「……そうか?桜も制服の上から着けてたがランサーが言うほどインパクトはなかったと思うぞ」
「「朴念仁は黙ってろ」」
「なんでさ!?」


とりあえず坊主は放って置いてアーチャーに聞くとなのはの嬢ちゃんはしてくれてないらしい。
そういうところは律儀なんだそうだ。
こいつは性格上してほしいこととか言わないだろうしな。


「次は私からいいか?」
「お?何かあんのか?」
「ああ。普段甘えてこない彼女が偶に甘えてくるときって、グッと来ないか?」


これは……わからねえな。
そういう女はあまり周りにはいなかったし、フェイトもそういうタイプじゃねえからな。


「それはわかるぞ、アーチャー。そういう時ってさ、何か嬉しくなるよな。男として頼られてる感じでさ」
「ほう、貴様もわかるのか。あの頼られる時の嬉しさが!!」
「ああ!二倍、いや三倍近く可愛く見えるよな!!」
「よくわかっているようだな!ははは!!」


勝手に二人で盛り上がり始めた。
いがみ合いをされるよりはよっぽど良いのだが。




…………………………………………………………………


「さて、坊主は何かあるか?」
「そうだなぁ………」


何だかんだで盛り上がっていた士郎ズ。二人ともすっかり出来上がっていた。


「凛は可愛い。これが世界の真理だ」
「フッ、なのはより可愛い女性など存在しない」
「んだとアーチャー!?」
「正しいことを正しいと言って何が悪い?」


酒の回った赤い顔で睨み合いを始める二人。
内容は間抜けなものだが。


「ま、フェイトは積極的だしな。エロ方面では一番だろ」


ぼそりと呟くように言った一言。


「「うちの嫁が一番に決まってんだろうがあああああああ!!」」
「のうぉわ!?」


それが聞こえていたらしく、ぴったりと息の合ったドロップキックが左右から飛んできた。
『んだとてめえ!?』『やるか!?』という言い争いが俺が意識を失う前に聞いた最後の言葉だった……。




side フェイト


なのはの結婚式は地球で行われた。
参加者は少ないみたいだけど、それは本人たちの希望らしい。


「ど、どうかな?おかしいところない?」
「大丈夫よ。とっても似合っているわ」
「くぅ~。なのはに先を越されることになるとは……」


現在なのははお姉さんとお母さんにドレスを見せて確認をしている。
そんな様子をはやてと眺めているのだが……


「ブーケトスブーケトスブーケトスブーケトス………」


隣ではやてが呪詛を唱え続けているのである。
目が血走ってるし、ぶっちゃけ逃げたいです。


「待たせたな。そっちはどう……おぉう」


そんな私のところに旦那(救世主)がやって来た。
彼は士郎のところにいたはず。こちらに来たという事は……


「士郎の方は終わったの?」
「あ、ああ。出てくるのを渋ってるみたいだから任せてきた」


と、当たり障りのない会話をしている裏ではというと。


(おい!なんだよあれ!?怖すぎだろ!!)
(知らないよ!会場に来たあたりからおかしかったんだもん!!シグナムたちは先に会場に行っちゃうし、アリサ達もまだ来てないし、止められないんだよ!!)


隣のはやてについて論争をしていた。
結局ランスもはやてを止められず、式場に移動するまではやては正気に戻らなかった。




…………………………………………………………………


式は滞りなく進み、ブーケトスの時が来た。
明らかに目がおかしいのが三人。
はやて、アリサ、なのはのお姉さん。
そんな様子を苦笑いで見るそのほかのメンバー。


「私は、この瞬間だけに全魔力をかける!!」
「奥義を使ってでも………」
「相手が人外だろうと関係ないわ!!」


魔法使う気満々のはやて。なのはの家の流派……たしか御神流だったかな?その奥義を使おうとするなのはのお姉さん。唯一の一般人、アリサ。
三つ巴の戦いが今、始まろうとしていた。


「来たッ!!」


反応が最も早かったのはなのはのお姉さん。
2メートルくらいジャンプしてブーケを取ろうとしている。


「甘いわッ!!」


そんなお姉さんをバインドで縛るはやて。
……なんて外道。


「貰ったわよ!!」


そんな二人の争いの中、アリサは落下してくるブーケに手を伸ばす……が、


「させない!」


バインドで縛られているなのはのお姉さんが何かを投擲。
それによって軌道が変わったブーケは………。


「あ」


私の手の中に納まった。




…………………………………………………………………


「こんなことがあったの」
「………凄い知り合いね」
「あの時の落ち込み様はすごかったよね」


なのはもあの後の三人の落ち込み様は酷かったことはよく覚えている、と言っていた。
三人とも普通にしていればいい人が現れると思うんだけどなぁ………。


「そういえば凛さんの知り合いはどんな人がいるの?」
「そうねぇ………。どんなものでも殺せるとか言う魔眼の持ち主とその恋人の真祖……まあ吸血鬼ね。
とか、カレーについて熱く語りだす代行者とか、破壊に関しては右に出るものはいないと言われる魔法使いとかかしら?」
「「変人ぞろい……?」」
「……そうね」


ちょっとテンションは下がったけど、その後も女子会は続いた。
料理の話、旦那のどこに惚れたか、など話しているうちにいつの間にかかなり遅くなってしまっていた。
私達はそこで寝たが、下からはまだ声が聞こえてきていた。
翌日、何故かぼろぼろの三人がリビングで呻き声を上げていたのを見て固まってしまった私達は悪くないと思う。 
 

 
後書き
お待たせしました。

ようやく更新です。

夏休みは早く更新出来るようになるかなぁ……

それでは 

 

⑯~『魔法使い』がやってくる(後編)

 
前書き
ネコアルク「宴の終わり……それは唐突にやってくるのにゃ」

はやて「今回のは唐突でもなんでもあらへんからな」

ネコアルク「出会いがあれば、別れもある、それが人生なのにゃ」

はやて「少しは人の話聞けや」

ネコアルク「293話、猫と真祖と殺人貴、始まるよッ!」

はやて「勝手に題名変えるんやない!!」 

 
side ヴィヴィオ


あれから一週間がたち、ようやく帰るための手掛かり……凛さんが言うには元の世界の座標を掴んだそうだ。


「で、問題は魔力なんだけど……」
「凛の魔力でなければならないのだったな。地道にやっていくしかないだろう」


しかし、帰るためにはかなりの魔力が必要らしい。
期間にして一週間。その間ずっと魔力を溜め続けていくそうだ。


「魔術って大変なんだなー」
「いや、これは第二魔法よ。魔術に比べても大変なのは仕方がないわ」


と、魔術に対しての感想を言ったら凛さんに指摘されてしまった。


「ま、とりあえず……もう一週間お世話になります」
「む…君は相変わらずの無計k「はい!こちらこそ!」……なのは」
「うん?何かな?あ・な・た?」
「……いや、何でもない」


ママ、強し。我が家の上下関係を思い知った私であった。
……しかし、財布も台所も基本的にはパパが掌握してるはず何だけど……何でだろうね?
ランスさんの所なら分かるんだけどね。あの人は仕事の時以外は家でゴロゴロしているか、お酒を飲んでるか、ナンパしにいっているかのどれかだし。
パパにニート認定されてるし。


「やはり嫁には勝てないんだな……」


そう言う士郎さんの背中からは哀愁が漂っていた。




side 凛


その日の夜、私はアーチャーと公園にいた。


「で、わざわざこんな所まで来て何の用だ?」
「私は聞きたいだけよ。アンタ……帰る気はないの?」
「帰る、か」


私はアーチャーが元いた世界に対する執着を持っているのかを確かめたくてここまで呼び出したのだ。
なのはちゃんとかヴィヴィオちゃんの前では言えないだろうし。


「その表現は違うぞ、凛」
「え?」
「私の帰る所はなのはとヴィヴィオの所だからな」


一瞬コイツが何を言ってるのかわからなかったが、落ち着いてみれば答えは既に出ていたのだった。


「そう。ならいいの。アンタがいいならもうこの話は終わり。帰りましょう」
「まさかこれだけのために……?」
「そうよ。アンタが今の生活を大事にしていることはよくわかったから。私はもう何も言わない。幸せになんなさいよ」


そう言って一足先に公園を出る。私が先頭を行き、アイツが後ろからついてくる。まるで聖杯戦争の時みたい、と一瞬だけ思った。





side なのは


寝室で布団に入ろうとした時、凛さんが話しかけてきた。


「ねえ、なのはちゃん」
「なんですか?」
「アイツのことなんだけど………」


アイツ、というのは士郎君のこと。


「あなたといる時ね、凄く優しい顔してるのよ。私との別れの時に見せてくれた顔をね。だから……幸せにしてあげてね」


そう言ってこちらを見る凛さんはまるで士郎君の母親のようだ、と私は思った。


「はい。任せてください。私と、ヴィヴィオと、この子で彼を幸せにしますから」
「そう……ありがとう。私が言いたかったのはそれだけ。それじゃあお休み」


そう言って凛さんは布団に入った。
士郎君は凛さんのサーヴァントだった時、一体どんな感じだったのだろうか。
凛さんがこんなことを言うのはその時の彼が荒んでいたからなのだと思う。
教えてくれるかはわからないけれど、聞いてみようと思った。




side 士郎(遠坂)


「なあ、ちょっといいか」


凛となのはさん、ヴィヴィオちゃんが寝静まった後、俺はアーチャーと二人でリビングにいた。


「なんだ?」
「お前さ、変わったよな。俺を殺そうとしていた時とは別人みたいだ」
「ふっ……それはそうだろう。あの時の俺は衛宮士郎という存在そのものを嫌悪していた。お前を殺したところで英霊エミヤというシステムが消える保証などどこにもないのにな」


そう言うアーチャーはどこか悟ったような様子だった。


「なら今は……?」
「はっきりと言うならばもうそんなことはどうでもいい。衛宮士郎を憎んだところで英霊エミヤが刈り取ってきた命が戻るわけではない。とは言え、俺がいくら本体とは別の存在になったとしても英霊エミヤが行ってきたことは自身への戒めとして忘れることはしないがな」


そう語るアーチャーはどこか吹っ切れたような顔をしていた。
しかし、本体とは別の存在になった、とはどういう事だろうか……?


「くくく、その顔は別の存在になったという発言の意味が気になるのだな?」
「う……ま、まあな」


どうやら顔に出ていたらしい。
アーチャーは笑いながら語りだす。


「俺も気が付いたのは一年程前のことだ。俺はどうやら令呪によってサーヴァントとして繋ぎ止められていたみたいでな。令呪が失われるとゆっくりと体の内部に変化が訪れた。英霊のコピーとしてではなく、一つの『個』としての命としての感覚が生まれたんだ。だが、それは世界の修正だったみたいでな。どちらかと言えばこの世界の使い魔になったような感じなのだ」


この世界の使い魔は魔法生命体。アーチャーはどうやらそれに近い存在になった、という事らしい。
厳密に言えばかなり違いはあるらしいのだが、俺にはさっぱりわからない。


「まあ魔力はリンカ―コアのおかげで自分で賄えるし、今の現状には満足している。なのはとパスも繋がっているから戦闘時に魔力を供給してもらうことも可能だしな」


結論は今のアーチャーは身体能力以外はほぼ人間と変わりないらしい。
しかし、聞いてもいないことを教えてくれるなんて、アーチャーも本当に変わったな。
話を聞きながら俺はそんなことを考えていた。 




side ヴィヴィオ


そしてついに凛さん達が帰る日がやって来た。


「見送りは良いわ。どうせ結界で見えなくなっちゃうしね」


万が一を考えて、という事で移動は早朝に行う、という事なので起きたのだが……眠い。


「そうですか……」
「そんなに落ち込まないで。この世界の座標は記録してあるから遊びに来ようと思えば来れるわよ」
「またお前はそう言う事に魔法を使う……」


士郎さんは呆れていたが、私もまた遊びに来てほしいと思った。


「それじゃあね。いろいろありがとう。なのはちゃん、またね」
「はい!またいつでも来てください!!」


そう言い残して凛さんは出て行った。
こうして私の魔法使いとの遭遇劇は幕を閉じる。
後日、パパが掃除をしていると凛さんが小さな宝石箱を忘れて帰ったことが判明したが、パパはさして気にしていないようだった。
この宝石箱に何が入っているのかは再び凛さんが我が家を訪れるまではわからないのかも知れない………。 
 

 
後書き
お待たせした上に短くて申し訳ございません。

次回はなるべく早めに上げられるように頑張ります\(゜ロ\)(/ロ゜)/ 

 

⑰~母親、父親

 
前書き
ヴィヴィオ「ようやく産まれる新しい命。正しい産まれ方による命。産まれてくるまでとっても大変で、母親は辛そうで。たくさんの人に祝われて。そんな様子を見ていた私は、自分の生まれ方に疑問を持った」

フェイト「そんなヴィヴィオに対し、なのはと士郎は……」

ヴィヴィオ「後日談17、母親、父親。始まります」 

 
side なのは


その連絡をもらったのは朝早くだった。
ヴィヴィオの学校の支度を手伝っていたらレイジングハートに通信が入っていた。相手ははやてちゃんのようだ。


「はい、なのはです」
「なのはちゃんか!?」
「は、はやてちゃん?どうしたのそんなに慌てて……」
「フェイトちゃんの事や!!陣痛始まったそうやで!!」
「えっ!?」




…………………………………………………………………


その後、ヴィヴィオを送り出した私たちは車で病院に向かった。


「はやてちゃん!」
「おお、二人とも来たか。全く、ランスもタイミング悪いなぁ……」
「どういうこと?」
「任務の帰りが丁度今日の夜なんよ。だから代わりに非番だった私がフェイトちゃん見てたら……」
「陣痛が来てしまった、と」
「そういうこと。はぁ……予定日の2日前やからなんかあるかも、とは思ってたけど……」


はやてちゃんもランス君も何と言うか、運が悪いよね。
ランス君は立ち会えないし、はやてちゃんは色々なところに連絡したりとかしなきゃいけなかっただろうし。


「…………うーっ!っはあ、はぁ」
「はい、吸ってー。吐いてー」


分娩室からはフェイトちゃんの呻き声が聞こえてくる。
私も二か月後くらいには……
そう考えると少し緊張してしまった。


「てかごめんな。私そろそろ限界や……。後は、頼んだで……」


そんな私の心情などお構いなしにはやてちゃんは寝てしまった。


「はやても大変だっただろう。病院に連絡してから一睡もしていないそうだからな」
「そうなの?」
「聞いてなかったのか?」


どうやら私が考え事をしていた間に説明があったらしい。


「うん……ちょっと考え事してて。それで、いつから寝てなかったの?」
「昨日の夜からずっとだ。深夜2時くらいに始まったそうだからな」
「そうだったんだ……」


はやてちゃんもすごく頑張ってたんだな、ということが分かったのでそのまま寝かせておいてあげる。
その後は士郎君と二人でゆっくり待った。




…………………………………………………………………


それから一時間程で産声が聞こえてきた。
無事に産まれたようで良かった。


「うむぅ………」
「あ、はやてちゃんおはよう」
「うん。おはよう………ってちゃうやろ!?」


一人ノリツッコミ。相変わら