緋弾のアリア 一般高校での戦い


 

第1話 転校初日

 
前書き
よろしくお願いします! 

 



 12月1日。俺、遠山金二(とうやまきんじ)は一般人となった。
 理子やジャンヌ、ブラドなどとの戦いや、俺のバカな弟との戦いなどがあったのち――俺(と同じくレキ)は武偵高を退学……もとい、東池袋高校という高校に転校することになった。
 俺は共学というのに少し不満はあったが、心に希望と嬉しさを多く抱き、校門を通りレキと別れて俺の教室2年2組の扉を開いた。
 までは良かったのだが――
 黒板に名前を書いてクラスの連中に自己紹介をしたあと、『ゴリ』というあだ名の体育教師が俺への質問タイムを取る。
 すると――
「一発芸見せて!」「趣味は?」「特技は?」
 といったずっと、面白く回答出来ない質問ばかりされた。
 で、みんな、つまんなそうになった。
 俺ってつまらない人間だったんだな。まあ、知っちゃいたけど。

 HRが終わる直前にゴリが「今日の一時間目の英語は、こないだ結婚して退職なさった先生の代わりに、新しく入った先生が来るからな」と言い、HRが終わる。
 そしてゴリが続けて「学校の事で何か分からないことがあったら、遠山に教えてやってくれ」と――俺の隣に座ることになった女子に言い残して去って行った。
 で、指示された窓側の後ろの席についていた俺に……
 くるっ。――と、その女子が笑顔で振り向いて来る。
「先生も言ってたけど、何かあったら聞いてね。私、望月萌(もちずきもえ)。クラスの委員長なの。他のクラスにも望月さんがいるから、萌って呼ばれてるよ」
 サラサラの髪はふんわりのボブカット、色は少し茶色がかっているが、眉毛(まゆげ)から見て地毛。穏やかそうで大きな、ふたえの目。色白で、身長は158、白雪や中空地(なかそらち)ほどじゃないものの健康的にグラマーな体型をしている。
 ……いかん、探偵科(インケスタ)の習慣で外見をパーツに分けて分析してしまった。
 ていうか、分析せずとも分かるが、かわいいな。ツイてない、これは。俺の場合。
「あ、ああ、分かった」
「さっそく何かある?」
「いや……特に」
 ぐらいにしか俺は会話が出来なかった。
 元々女子がニガテなのと――なんというか、普通に良い子そうだった。
 ……眩しい。
 銃や刃物なんかで薄汚れた俺には、少なくともそう思ってしまった。
 変人が多い武偵高でツッコミ役に慣れすぎて、俺はこんな普通の会話も話しずらかった。


 俺との会話を終えて、隣に座っている萌は次の授業の用意を始めている。
 俺も用意しなければと思い、そこであることに気づく。
 ……教科書って、貰ったか?
 いや、貰ってないよな。なぜ今になって気づくんだ俺よ。遅すぎるだろ。
 ――と、そんなどうしようか早速困っていた俺に、隣に座っていた萌が気が付いた。
「どうしたの?」
「いや……教科書をまだ貰ってないことに気が付いてな……」
「あー、そういえば先生が遠山君に2時間目の終わりに職員室に取りに来てって言ってたね」
「……そうだったか?」
 正直、自己紹介の時の不甲斐なさでほとんど聞いてなかった。
「聞いてなかったの!?」
「……すまん。教えてくれてありがとう」
 驚く萌に、素直に教えてくれたお礼と、なぜだか謝罪が口に出た。
 そして俺の言葉を聞いて萌は少し悩んだ顔をしてから……
「じゃ、じゃあ、私の見せてあげるよ。ほら、席近づけて……」
 ――少し恥ずかしそうに、ほんのり顔を赤くしながら俺にそう言ってきた。
「……いいのか?」
「う、うん……」
 正直、あまり女子に近づきたくはないのだが……武偵高の勉強では、ほとんどついていけないと思うので授業は真面目に聞いておきたい。
 なので、萌の提案は非常に助かるものだった。
 ……というか、なんで萌は恥ずかしそうなんだ?
 と、思いながら席を近づけた所でクラスの扉が開かれ、先生が入ってくる。
 そして俺は、その先生を見て言葉を失う。
 なぜなら――
 入ってきた先生は、俺の妹だったのだ。



 
 

 
後書き
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第2話 新しい英語の教師




「そ、それでは、授業を始めまーす」
 そんなことを言いながら、萌とは違う感じの栗色のボブカットの髪に、宝石のような可愛さの整った顔立ち。その顔にメガネをかけて、東池袋高校の制服の上から白衣を着た俺の妹――遠山金女(とうやまかなめ)、元ジーフォースが黒板の前に立つ。
 その女子中学生が先生の真似をしようと背伸びしたような格好のかなめに、クラスのみんな――隣にいる萌ですら声を失っている。
 ……なんで、かなめが東池袋高校(ココ)にいるんだ!? そういえば、俺が出て行く時にかなめは家にいなかったような……
 そんな風に訳が分からないでいると、かなめは黒板に自分の名前を書き終わったらしく、自己紹介が始める。
「えーと……今日から前の退職なさった先生に()わって、このクラスの英語を教えることになりました。遠山かなめです。よろしくお願いします!」
 そう言ってかなめにしては珍しく緊張したように、頭を下げながら挨拶をする。
 ……そういえば、先生がどうのってHRの終わりにゴリが言っていた気がする。
 そしてかなめは俺の方を向いて、少し安心の顔をしたのち――俺の隣にいる萌に気づいて引きつった顔になった。ホント、我が妹ながらよく分からん奴だ。
 ……でもなぜだか、かなめが来たことで凄く安心というか、なんだか分からんが心が凄く楽になっていた。
「あ、あのー……質問良いですか?」
「は、はい、どうぞ」
 顔を引きつらせたかなめに、クラスの一人の女子が手を挙げた。それに気づき、慌てて返事を返す。
「あのー、先生は何歳なんですか?」
 まあ、そこが一番気になる所だよな。実際。俺がかなめを知らないでいたら、確実に質問していただろう。
「十四歳です」
 そしてその問いにかなめが素直に答えると、クラスのみんながより――『訳が分からない』といった顔になる。
 ――そんな静かになってしまった教室の扉が再び開けられ、ゴリが入ってくる。
「みんな、今日からみんなの英語を教える遠山かなめ先生だ。かなめ先生はアメリカの大学を12歳で卒業いている。――けど、みんなより年下の14歳だ。なのでこのクラスの生徒としてもこの学校に通うことになった」
「あ、改めまして、2年2組の英語教師(えいごきょうし)(けん)生徒(せいと)の遠山かなめです。よろしくお願いします!」
 また頭を下げて挨拶をするかなめ。なんかデジャヴだな、さっきと。
「それじゃあ、後は任せたぞ。席は今日来た転校生の後ろが空いているからな」
「あ、はい」
 そう言って、一言(ひとこと)言うだけ言ってゴリは教室を出て行った。あれだけの為に来たのか?
 というか、転校生って俺だよな。確かに俺の後ろの席が一つ空いているが……
 ……考えるだけ無駄か。
 そう思うことにして、またかなめの方に意識を向ける――と同時に、さっきとは違う女子がかなめに質問をする。
「あの、英語教師兼生徒ってなんですか?」
「あ、それは――」
 その後のかなめの言ったことを簡単に説明すると、
 かなめは大学を卒業しているので、高校には通わなくて良いのだが……衛星通信の大学だった為、人と余り触れていなかったので、この高校に入りたいとお願いしたらしい。
 それで、通わして貰える条件に今不足している教師の代わりに入った先生が新人で、前の先生が持っていたクラス数を埋めきれないので、このクラスだけでも――と、お願いされたらしい。
 つまり英語の授業だけ、かなめは受ける側じゃなく、教える側な生徒ってことだ。
 ……実際はどうだか分からないけどな。武偵高から来てるのは事実だし。
 そしてその説明を聞いたクラスのみんなは、
「すげー」「すごーい」「よろしくー」
 などと言った声と共に拍手を始める。

 ――そして、拍手が終わるといよいよ、かなめに対する質問タイムが開始された。
「かなめ先生と、かなめちゃん、どっちで呼べば良い?」「かなめちゃんで」「特技は?」「えっと……特にないです」「趣味は?」「MLB(メジャーリーグ)観戦です」などなど。
 その質問を黙って聞いていると、隣の萌が俺の腕を軽く(つつ)いてきた。
「あの、かなめちゃんも『遠山』って苗字だけど、遠山君はかなめちゃんの事知ってるの?」
「……ああ。俺の腹違いの妹だ」
「妹さん!? えっと……すごいね」
「それは俺も心底感じてる。前の学校じゃ『賢妹愚兄(けんまいぐけい)』とか呼ばれるぐらいだ」
 頭も良いし、運動神経も良い……もはや、本当に俺の妹かというくらいの凄さだ。
「……そんなことないと思うけどな」
 萌は俺の言葉を聞いてなんか呟いて言っていたが、余り話すのもなんだと思い、聞き返さなかった。
 こうして萌との会話も終わり、質問地獄のかなめについにクラスの連中が萌と同じことが気になったのか、かなめに質問する。
「かなめちゃんは今日入ってきた遠山くんのご親戚?」
「あ、はい。お兄ちゃんです」
「ってことは、妹……さん?」
「はい」
 かなめがそう言うと、クラスの連中が小さい声で「似てないね」「本当に兄妹?」「そうやって言わせてるのかな……」と色々聞こえる。
 悪かったな。俺だって最初は兄妹だと思わなかったよ。……あと、どうでもいいが最後のはどういう意味だ?
「はい。もう質問はいいですか? 良いなら授業を始めまーす」
 かなめは質問をされて緊張が少し解けたのか、終わりそうにないのでそう言って授業に入る。
 俺も萌に近づいて教科書を見せて貰ったんだが……かなめが『ジー』っと俺を見てきていた。……いったいなんなんだよ。
 しかし――
 妹がこの学校に――しかも同じクラスになって、俺は一般人になれるんだろうか?
 そんな事を考えずにはいられなかった。





 
 

 
後書き
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第3話 学校の案内

 
前書き
久しぶりの更新です。 

 



 かなめが教える一時間目を終えての俺の感想……それは『やはり一般高校の授業は、結構難しい』――この一言だった。
 かなめの教え方はアメリカ育ちなことがあり、とても発音の良く、さらに日本人の苦手な発音の出し方や覚えにくい単語などを詳しく教えてくれるなどで、他の生徒も真剣に聞いていた。
(……流石(さすが)人工天才(ジニオン)だな……)
 そう思いながら、かなめの授業を受けること数分経った頃。
 俺もかなめとクラスメートが真剣に授業をしているのと、授業についてもいけてないのも加算してマジメに授業を受けようと思い、萌に教科書を見せてもらおうした瞬間――
 ――かちんっ。
(――S&W M19コンバットマグナム、4インチ!)
 とっさにナナメ後ろでクラスメートの金属製の筆箱(カンペン)を閉じる音を、撃鉄を起こす音に聞こえて、バッ、と振り返ってしまった。
 まずい……周りの生徒から「?」って顔で見られる。当然、隣の萌も。
 そんな俺の振り返えった理由を一人分(ひとりわ)かっていたかなめは、何もなかったように授業を続けてクラスメートたちの気を俺から()らしてくれた。
 そんなかなめのフォローも(むな)しく俺は、授業中何回も椅子(いす)(こす)れるおとなどに反応してしまった。

 そして今、チャイムが鳴り授業が終わり、かなめが俺の席の後ろに歩いて来て座る。
 席に座った後、白衣とメガネを外して俺に、
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「お前は席に着くなり、なんでそんな心配そうな声で聴いてくるんだ……」
 周りの生徒がかなめに話かけようか迷っているのか、周囲がこちらに向いているので、かなめと俺は少し声の大きさを抑えながら話す。
「だって授業中に何回も反応してたでしょ」
「かなめだって少しは反応してたろ。目線がそっちに向いていたぞ。持ってた教科書でとっさに何回も隠してたけど」
「あ、バレてたぁ――えへへー」
 なんで、かなめがこの学校にいるのか――などを聞く前に、かなめにツッコミを入れてしまったためか、そのままズルズルとたわいもない話をしてしまっていると、俺の言ったことに笑い始めた。
 本当によく分からん妹だ。
「何で嬉しそうに笑ってるんだよ」
「だってお兄ちゃんがあたしの事を見てくれてたんだと思うと、そりゃー嬉しいよ。だってお兄ちゃん、音の方か――隣の女の方しか見てないと思ったからね」
 最後の方はトーンがマジになり、ほんの一瞬だが背筋が凍るような目線で横を見る。
 今の一瞬じゃ周りのクラスメートは気づかなかっただろうが、かなめと話していた俺はトーンなどの違いで目線が誰に向いたのか分かってしまった。
 かなめにつられて俺も目線を向けられた方へ向けると――俺から席を離して教科書をしまおうとしていたらしいが、一瞬背筋を震わせてこちらの方を向いてきた萌の姿が。
 やはり今の目線は一般の人でも気づくほどの目力(めぢから)だったか。
 しかし萌が振り向くとかなめはさっきの目力はどこへやら――兄の俺ですら可愛いと思ってしまう笑顔をしている。
(わ、我が妹ながら怖すぎる……)
 萌もこんな笑顔の妹に何も疑いを感じなくなったのか、それとも気のせいだと思ったのか、こっちに向いたついでなんだろうが、普通に話しかけてきた。
「えっと……遠山くんとかなめちゃん。次は体育の授業なんだけど、二人は校内を見て回っていいんだって。二人ともジャージとかまだないでしょ?」
「あ、確か今日届く手配(てはい)になってたな。そういえば」
「だから校内の案内してあげるよ。――というか転校生が来た時はそのクラスの担任の授業の時間に、クラスの委員長が案内するのが、この学校の仕来(しきた)りなんだよね」
「なんだそれ……まあ、案内してくれるんだったら助かるよ。その案内の(あと)に教科書を取りに行けばいいのか?」
「うん。かなめちゃんも大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
 ……名前をつけたバスの時も思ったが、相変わらず敬語で猫被ってるな。
 まあ、一般の高校じゃこれくらいがいいのかもしれないけどな。
「それじゃあ行こうか」
 話が終わり、早速といった感じで案内をしてくれるらしい萌に、俺とかなめはその後ろについて行く。
 すると廊下に出てから俺の背中に、トントン、トン、トントトン、と――かなめが英文(えいぶん)モールスで『やるねぇお兄ちゃん!』と言ってきた。
 なので同じように俺もかなめの背中に、『言っている意味がよく分からん』と返し、そのまま萌について行った。



 その()、萌に体育館や生徒会室、職員室などを案内してもらい、最後に俺たちのクラスが授業をしているグラウンドに向かった。
 萌の案内でだいたいだが、この学校の教室などの場所が分かった。
 しかし――
 グラウンド行くために階段を歩いていると、壁の掲示板には『インフルエンザ予防のため、うがいをしましょう』というポスターが目に入る。『銃の違法改造(いほうかいぞう)をするな』だのと張られていた武偵高とはまるで別世界だな。この学校は。
 かなめも今まで自分の居た世界と違いを感じているのか、キョロキョロと学校を見ている。
 そうやって階段を降り、靴を穿きかえ外に出てグラウンドに行くと――クラスメイトたちはサッカーをしていた。
「今日は男女混合でサッカーなんだ~」
 着いてそうそう萌がそんな事を言う。
「いつもサッカーじゃないのか?」
「うん。先生の気分でその日にやるスポーツが違うの。たまに教室で授業の時もあるし」
「他には何をやるの?」
 案内の最中、萌に『歳は違うけど、同じクラスなんだからそんなに他人行儀(たにんぎょうぎ)にしなくて良いよ』と言われて、少し話し方が砕けたかなめが萌に聞く。
「えっとね……バスケットボールやバレーボール、卓球に持久走なんかだよ」
「ホントにその日の気分だな……」
「あと本格的じゃないけど野球やソフトボール、テニスなんかもあるよ」
「野球!」
 お、かなめが食いついた。そういやMLB(メジャーリーグ)観戦だもんな、趣味。
 まあ俺もかなめと趣味や映画などの好みが合うので、当然というのもしゃくだが野球観戦などは好きな部類だし、やる(ぶん)にも楽しみだが……
「やるにしても手加減しろよ」
 そう、自分に言い聞かせるようにかなめに言う。
「お兄ちゃん非合理的ぃー。そんなの言われなくても分かってるよぉ」
「かなめちゃんは前に野球部やソフトボール部だったの?」
「いや、そんなことはないんだが……こいつの場合、運動神経が良すぎて他の奴がついて行けないんだ」
 アリアや理子より運動神経が良いかなめは、武偵高でもトップクラスの運動神経のはずだ。
 そんな奴が一般の奴らとスポーツをしたら、圧勝するのは目に見えている。
「そんなにスゴイの?」
「ああ」
 そうしてまた三人でクラスのサッカーをやっている姿を見始める。そして1分くらい見てあることに気付く。
「――ッ!」
 気付いた瞬間、反射的にサッカーをやっているクラスの奴らから目を逸らす。
 いや……正確には『サッカーをしている女子』から目を逸らした。
(――ゆ、揺れてやがるっ!)
 そう、サッカーをするためにジャージを脱いで必死に走る女子の良い大きさの胸が揺れている。
 ――ヤバい! 一般高校だからって油断していた。俺には武偵高を離れたって大きな爆弾あったことに。
 そんなとっさに視線を動かした俺を、萌は不思議そうに首を(かし)げ、かなめは……
「お兄ちゃんはあまり見ない方が良いみたいだね」
「な、何言ってるんだ? サッカー見るだけでなにがダメなんだよ?」
「お兄ちゃん……あたしには分かるんだよ? ……お兄ちゃんなら分かるよね?」
 ……確かに遠山家の人間は、ヒステリアモードになる際の変化が何となく分かる。
 かなめも俺の妹、俺の変化に気づけるのも(うなず)ける。
「これは体育だけじゃなくて、部活動も入るんだったら考えなくちゃね」
「いや、部活は……」
「あ、そういえば部活といえば運動部の外にある部室なんか紹介してなかったね」
 ――と萌が、俺とかなめの会話で思いついたのか思い出したか分からんが、そんな事を口に出した。
(――シメたっ!)
 こんなヒステリア的に危なくなりそうな状態でサッカーなんか見てはいられないので、萌の言葉にすかさず乗っかる。
「な、ならすぐにでも行こう! 時間も残り少ないしな!」
「え……う、うん」
 案内を急かす俺に萌も少しうろたえたが、すぐに頷き歩き出す。
 かなめもやれやれといった感じに、萌の(あと)をつづく俺の後ろについてきた。



「遠山君とかなめちゃんは、前の学校では何部(なにぶ)だったの?」
 部室などの案内を終える最後らへんで、さっきまでの俺たちの会話か……それともヘンな時期に入ってきた謎の転校生に興味があるのかは分からんが、萌がこちらに振り返りながら話しかけてくる。
「いや……特に、部活はしてなかった」
「あたしも……」
 まさか、『探偵学部(インケスタ)だった』なんて言うわけにはいかないよな。
 まあ部活じゃないけど。
「じゃあ習い事とかは?」
 好奇心旺盛(こうきしんおうせい)なのかな。萌は。
 ……いや、もしかしたら俺たちを気遣ってのことかもしれない。
 それにこれくらいでイヤになっていたら、一般高校で友達ができないかもしれない。
(正直、あまりかなめのいる近くで俺の事を聞いてほしくないんだけどな……)
 この俺の妹は先ほどの目線から分かるように、俺と自分以外の女子が仲良くしているのが面白くないらしい。
 なぜだか分からないけど、かなめは俺の事を好きらしいからな。
 けれど、案内してくれたこともあり、そのまま会話を続ける。
「いや……それも特には……」
「あのね、私は家庭科部なの。男子はいないんだけど……かなめちゃんと……と、遠山くん、お料理とか出来る?」
 ああ、勧誘ですか。
 しかし、なんで俺の名前を呼ぶ段になって急に視線を下に()らしたんだろう。
 白くてふわふわした(ほほ)も、少し赤くなってるし。
 しかも、隣にいるかなめも気分が悪くなってきてるし。まだ必死に笑顔でいるけどな。……こんな些細な事も、女子でもかなめだと分かってしまう。
 ……正直、今に(かん)しては分かりたくないんけど。
「女子だけの部は、正直……ちょっと困る」
「あっ、そ、そうだよね。やっぱりそうだよね」
「あたしもごめんなさい」
「う、うん。大丈夫だよ」
 と、俺とかなめの(ことわ)りに、萌がちょっと太めの(まゆ)を下げて、はにかんだ時――ぴゅう。
 (こがらし)が吹いて、ひらっ……
(……っ……)
 俺たちの案内をしてくれる為、体操着に着替えないでいたので、萌のブレザーのチェック柄のスカートとかなめのスカートが少し持ち上がったので、目を逸らす。
「や、やだ。やな風。びっくりしたぁ」
 武偵高の女子は常時丸見せの大腿部(だいたいぶ)を少し露出しただけだが、萌は恥じらう。……現に隣にいるかなめはそんなに気にしてないしな。
 しかし、そんな恥じらう姿に、俺も少し赤くなってしまった。なんて……や、柔らかそうな太ももかと。
 決して太いわけじゃないが、筋肉と皮下脂肪(ひかしぼう)の割合が武偵高の女子とは違うんだろう。
 なんていうか、むっちりとして……それはそれで、新しい(おもむき)が……
(……っておい、ヘンなこと考えるなよ俺!)
 さっきもそうだけど、気が抜け過ぎだろ。今日の俺は。
 かなめの視線も冷たくなっているような気がする。
 この空気を抜け出すべく俺は――
「そ、それじゃあ、萌。色々と案内してくれてありがとう! 俺とかなめは教科書を取りに行くことにするよ!」
 ――素早くお礼と要件を伝えて、かなめの手を握り走り出した。
 一般高校でのヒステリアモード……それがどんな問題行動を起こすのかはもう考えたくない。起こしたらよくても停学処分は(まぬが)れないはずだ。
 そしたら、もう行き場が無くなるぞ。
 気をつけなきゃいけない、ここでも。女子とは危険物なんだ。俺にとって。






 
 

 
後書き
感想や間違いの指摘待ってます! 

 

第4話 昼休み

 
前書き
二日連続投稿です。 

 



 教科書を受け取り、数時間の授業を終えて昼休み。
 また音のせいで何回も反応しそうだったのだが……そんな中、後ろからかなめがモールス信号で話しかけてきた。
 しかし、授業中なので後ろを向くわけにはいかない――なので、かなめに音を鳴らす指の動き(実際は鳴らしてないが)を見せて話していた。
 お互いに音を気にしない為とはいえ、一般高校に来てまで妹とモールス信号で話しを授業中にするとか、やはり普通じゃないな。
 ちなみに授業の(あいだ)に合った休み時間に、クラスメイトが何回か話しかけてきたのだが……かなめのおかげでなんとかコミュニケーションが取れて、一応(いちおう)会話は休み時間が終わるまで続いた。
 かなめも俺と同じくらいの知識のはずで話す話題が無いのだが、人の話しを聞くのと話題の返し方がやたらと上手かった。
 そしてそんなことがあり、多少は疲れたが……アリアに一日中(いちにちじゅう)追われた時よりマシな疲労感を抱えながら昼飯をどうしようか考えていると――
「お兄ちゃん、一緒にご飯食べよー」
 後ろから可愛らしい声をかけられた。
「別に良いが……何を食べるんだ?」
「えへへー、実はお弁当作ってきたんだー」
 そう言ってお弁当を出そうとするかなめを俺は、
「他の場所で食べないか?」
 食べながらかなめに聞きたいことがあった。それには場所が悪すぎる。
「じゃあ屋上に行こうよ。さっきの案内の時にお昼は使っていいって言ってたし」
「ああ」



「はい、お兄ちゃん。愛妹(あいまい)弁当だよ」
「なんだ愛妹弁当って……、そんなことよりさっきモールスで話した通り、かなめがこの東池袋高校に転校してきたのかを教えろ。お前結局、『あとでね』の一言で終わらしただろ」
「お兄ちゃん、非合理的ぃー。せっかく兄妹水入(きょうだいみずい)らずなんだから、そんな些細(ささい)なこと気にしないものだよぉ」
 かなめと一緒に屋上へ来てみると人が少し()たが、なるべく人のいない所にある椅子に座った。
 レキも誘おうと思って、レキのクラスにも行ったんだが……なんとレキの奴、クラスの女子たちに囲まれて『カワイイカワイイ』なんて言われていた。
 とてもじゃないが、そんなところに誘う勇気は無く、しかたなくかなめと二人で昼飯を取ることにした。
 そしてかなめが作ってきた弁当を広げたんだが……また非論理的な造語(ぞうご)を声高らかに喧伝(けんでん)しやがって。
 今のセリフで何人かの生徒がこっちに振り向いて見てきたじゃないか。
「誤魔化すなよ、かなめ」
「もう……分かってるよ、お兄ちゃん」
 かなめはさっきまでの声のトーンと大きさを他の生徒に聞こえないほどにして、真面目な顔になる。
 俺もかなめの転校してきた理由を話すのを、少しからず緊張して待つ。
 もしかしたら、何らかの依頼かもしれないからな。
 そしてかなめの可愛らしい口が開き――
「大好きなお兄ちゃんが転校するから、あたしもついてきちゃったんだよ」
「…………は?」
 なんの依頼を受けたのかと待っていたのだが……あまりに信じられない言葉が出てきて、一瞬耳を疑った。
 いや、もしかしたら他の意味があるのかもしれない。
「えっと……どういう意味だ?」
「いやだから、そのままの意味だよ、お兄ちゃん。――お兄ちゃんのいない武偵高にいる意味なんか無いし、一緒に転校してきたんだよ」
 こいつ……マジで俺が転校するからってついてきたのか……まったくレキといい、なんで俺について…………ん?
「おい、かなめ。なんでお前、俺が転校するって分かったんだ?」
 俺とレキは武偵高では、教務科(マスターズ)から長期の特秘任務(シールドクエスト)を受けた事になっているはずだ。
 まさか教務科の奴らがそんな簡単に情報漏洩(じょうほうろうえい)するとは思えない。……それなのに、かなめはいったいどうやって……
「あ、それはね。あたしが武偵高に入る時に出した条件に『遠山キンジが長期クエストなどに行く際は、遠山かなめを同行(どうこう)をさせる』っていうモノを(つく)ってたんだよ」
「な、なんでそんな条件を……!」
「だってあの時のあたしはお兄ちゃんから離れたくなかったし……長期クエストを受けて逃げられても困ったからね」
 な、なるほど……確かにあの時のかなめは、俺からどんな事をしても離れない覚悟だったんだろう。
「武偵憲章2条『依頼人との契約は絶対守れ』――まあ、あたしは依頼人じゃないけど……まさか武偵を育てる武偵高の教師が、契約を守らないわけにはいかないしね」
 まあ、条件や約束も両人(りょうにん)の了解を()た時点で、言うならば契約だしな。
「しかし……あの教務科がよくそんな条件を了解したな。どうやって了解させたんだ?」
 もう関係ないとはいえ、あの(つづり)蘭豹(らんぴょう)なんかを納得される(すべ)は、個人的に興味がある。
「え……普通にコネだよ。あとは――『遠山の妹なら実力は十分だな』とか、『あいつは危険なヤマが多くて女グセも悪いから、せめて女に殺されないくらいには妹のお前が面倒見てやれ』とかも言われたよ」
「……そうですか」
 ……ひどい言われようだ。――『武偵は自立せよ』じゃなかったのか。なんでかなめにそんな理由で許可してるんだよ。
 さらにいえば、どちらかといえばあんたらが面倒見てやれと言った奴に、数日後、殺されかけたんだけどな。
「でもまあ、そのおかげでお兄ちゃんが転校するって分かって……それから『君も転校するかい?』なんて校長に聞かれたから『はい』って答えて、この学校に転校してきたんだよ」
「なるほどな……でも、かなめはどこに住むんだ?」
「え? 何言ってるのお兄ちゃん? あたしもお爺ちゃんの家に住むに決まってるじゃん。――家族だもん」
「……ですよね……」
 なんとなくだけど分かってたよ。
 その言葉を聞いて、今後の事を考えて俺は肩を落とす。
 ただでさえレキがいるのに、かなめまで一緒に住むとなるとホントにどうなるんだろう。
「ほら、お兄ちゃん。元気出して。それに早く食べないと昼休み終わっちゃうよ。――はい、あーん」
「ん、ああ……あーん――――って、なにちゃっかり食べさせようとしてるんだよ!」
「ちっ!」
 俺が気づいた瞬間、舌打ちを器用に可愛らしくするかなめ。これは確実に狙ってきてたな。
 ……危なかった。あまりに自然だったから、思わず食べる所だった。
 俺が油断している隙を的確についてきやがって……ホント、油断のできない妹だな。
「昼飯は自分で食べる。だから(はし)を……」
「箸なんか無いよ。あたし上手く使えないし」
「だからかなめが使えなくても、俺の箸が……」
「……ごめんねお兄ちゃん。お兄ちゃんの箸、忘れてきちゃったみたい。――だから、あたしのフォークが一本だけあるから、一緒に使って食べよ?」
 なん……だと……
「どうしたの、お兄ちゃん? 昼休みはあとちょっとだよ。早く食べよ?」
(――クソ、やられた!)
 真面目に話してご飯を食べさせないで時間を減らし。
 フォークを一本しか持ってこないで、弁当の中身はタレであえたモノなどの手で食べるには躊躇(ためら)うものばかり。
 しかも、他の生徒が食べ終わって、自分たちの話しに夢中になり始めて、俺とかなめの事を気にかけなくなる時間帯。これで周りの視線がどうだのという理由での打開(だかい)方法が取り()くくなった。
 これは完全に()められた。
 さっきのセリフの『フォークが一本』の『一本』を強調してきたことを考えると――今までのこれらすべてが、かなめの作戦だったのだ。
「食べないの、お兄ちゃん?」
 ……どうする。流石(さすが)に購買まで箸を取りに行ってたら昼休みが終わる。……っていうかそれ以前に箸だけをくれるか分からん。
(かなめからフォークを奪うか……?)
 いや、ヒステリアモードでも無い俺にかなめからフォークを奪える可能性は、かなり低いだろう。
 それに下手すりゃ、女子を――しかも妹を襲ったと勘違いされて、退学ならまだしも警察に逮捕されかねん。
 ……結論は……
(……つ、()んでやがる……!)
 そう、将棋に例えるならもう『王手(おうて)』なのだ。
 手で俺が食べようにもかなめが何か実行してくるだろう。
 口で説得しようにも人工天才(ジニオン)に勝てるはずもない。
 他にも食べないなど言ったり、いろいろと打開策(だかいさく)を考えるが、かなめはそれすら予想しているだろう。
「…………はあ……今回だけだぞ……」
 もう、渋々(しぶしぶ)だが負けを認めるほかなかった。
「わーい。それじゃあ、(あらた)めて――はい、あーん」
「……あーん」
 その後、かなめに昼飯を食べさせたり、食べさせられたりして、人生でそうはかかないであろう冷や汗を()きながら、やけに長く感じる時間を過ごした。
 まあ……弁当の味は悪くは無かった。







 
 

 
後書き
感想や間違いの指摘待ってます! ……明日も更新できる……かな? 

 

第5話 帰り道

 
前書き
三日連続投稿です。まさか出来ると思わなかった。 

 



 放課後になり、萌とクラスの男子と女子の数人にカラオケに誘われ、かなめがカラオケに行ったことがないと言ったら、ぜひとも行こうということになった。
 爺ちゃんと婆ちゃんを待たしちゃ悪いから、一時間だけだけどな。
 しかし……かなめが転校してきてくれて助かったかもな。
 俺だけだったらクラスの連中とこうして話もできずに、もしかしたら疲れてこのカラオケも断っていたかもしれん。
 かなめは見た目はとても可愛いから、男子もだが女子もだんだん休み時間になるにつれて話しかける人が増えてきた。……昼休みは上手く()いたが。
 けれどもかなめは男子が苦手なこともあり、上手く俺の話せそうな話題で俺に話を渡し。
 逆に俺が女子に話しかけられたら上手く話を拾う。
 そうやってかなめに凄く助けられてだが、クラスの人たちとも話せるようになった。
 その内、かなめに助けられなくても話せるようのに頑張ろう。

 クラスの連中と校門を出ると、良く知った顔の女子がポケーっと俺を待っていた。
 通学鞄には、普通の女子がヌイグルミを垂らすように……狙撃銃(ドラグノフ)から外したスコープをつけているが……まあ素人目(しろうとめ)には分からんからいいか。
 横には狛犬(こまいぬ)みたいなポーズで、ハイマキもおすわりしてる。
 どうも持ってきてはいたらしいヘッドホンをかけたレキは、このカラオケを企画した為、隣で話していた萌と当然のごとく隣にいるかなめに、チラッとガンを飛ばしてから――かなめもガンを飛ばし返していたが――微妙に非難する目線で俺を見てきた。なんだそれ?
 そして俺の前に歩いて来る。クラスの連中も「なんだ?」とか言って、少し困っている。
「キンジさんはこれからクラスの方々と、どこかお出掛(でか)けなさるんですか?」
「ああ。これからカラオケに行くんだ」
「なら、私も行きます」
 俺がこれからどこへ行くと答えると、即答でそう返してきた。
 まあレキに俺の実家に一人で行かせるわけにはいかないよな。
「なあ、萌。こいつもカラオケに連れて行っていいか?」
「え……う、うん。いいよ……」
 受け答えをする際に、なぜか残念そうな顔をしたが萌は了解してくれた。他の人たちも文句はないそうだ。
「よかったな、レキ。みんないいってよ」
「……ありがとうございます」
 一応、俺のクラスメイトにお礼を言うレキ。
 ちゃんとお礼が言えるんだな。……いや、これはレキに失礼か。

 それから俺たちはカラオケに行ったんだが……レキの奴、知ってる歌が全然無いとかで一回も歌わなかった。……今度来る時までには数曲聞かせよう。
 ……次はいつ行くかわからんけどな。
 かなめも歌う曲が、好みが似ているせいか俺が見ていた映画やドラマの主題歌だから、ほとんど俺と歌う曲が一緒だった。
 それに……やっぱりこの人数で一時間じゃぜんぜん歌えなかったな。
 あと、クラスの奴らが俺とレキをチラチラ見ながらこそこそ喋ってたんだが……何かヘンな所でもあったんだろうか?
 分からんことだらけだな。一般校の世界は。



 カラオケを終えて、レキとかなめに左右に挟まれながら帰っている途中、三人ともなぜか黙っていた空気の中――ついにレキが口を開いた。
「――キンジさんは手が早いですね。さすがです」
「……なんの話だ?」
「先ほどの女性の事です」
「もしかして……萌のことか?」
 レキはカラオケの最中も、萌のガン見してたからな。それ以外思いつかん。
「そうだよねー。さすがお兄ちゃんだよ」
 レキの言葉にかなめまで乗ってきた。
「だから、それはどういう意味で言ってるんだお前たちは……」
 理由を尋ねると、二人ともノーリアクション。
 ホント、なんなんだこいつら。
 仕方ない。ここは俺も無視して話題を変えよう。
 俺は先ほどレキがコインロッカーから取り出したトランクに指を何回か当てた。
「それより、レキ。お前……こんな物あんな所に置くなよ。あとハイマキも連れてくるな。家に置いておけ。誰かにかみついたりしたら一大事だし。銃剣(じゅうけん)も持ってくるなよ? 校則違反なんだから」
 クラスのみんながハイマキを見て怖がってたし。
 カラオケに入れたかったから、外でおすわりしてるハイマキを見て帰った客もいるかもしれない。
 なのでハイマキを連れてくることを()めさせ、念には念を入れて銃剣も注意しておく。
「分かりました。ですが……」
「ですが何だ」
「警戒して下さい。風に(かか)わる者の存在を感じます。全くの偶然と思われますが、遠くはない」
 出た。『風』。まだそれ、レキの中で生きてたのか。
 だが俺はさっきのお返しで、自分に都合の悪い話は聞かなかったことに……
「ふーん……よく分からないけど、敵が来るかもしてないんだったら、お兄ちゃん『オロチ』だけでも学校に持っていけば? あれなら校則違反にもならないし、ポケットにしまってられるよ」
 横から会話に割り込んできたかなめのせいで出来なかった。
「いや……確かに校則違反してないかもしれないが……」
 実際の所は分からないが、どうなのだろう。
 まあ、それくらいなら持っていっても良いか……いや、でも……
「お兄ちゃんは悩み()ぎだよ。それくらいの武器――というか武装したって大丈夫だよ。いきなり一般人になるのは、ムリがあるからね」
 なるほど。かなめは今日の俺の様子を見て、いきなり全武装を解除させないほうが良いと思ったのか。
 確かに武偵高でいつも着ていた防弾制服がなくなって、落ち着きがなかったのかもしれない。
「……まあ、オロチくらいならいいか……」
 オロチがあれば少なからず、この浮ついた気持ちが落ち着くかもしれないからな。
 レキがスコープやハイマキを連れてきたのにも、俺と同じように多少は落ち着かなかったからかもしれない。
 そう思うと、俺だけだと不公平な気がしてきた。
「えーと……レキ。お前も校則違反にならない程度の物だったら持って行っていいからな」
「はい。分かりました」
「それよりも、かなめ。お前よく俺の『オロチ』のこと知ってたな」
 かなめに――オープンフィンガーグローブである『オロチ』は、見せたことはあっても、名前を教えたことはなかったはずだ。
 まあかなめのことだから、調べたのだろうということは分かるが――なら、どういう(ふう)にオロチの名前を調べたのかが気になった。
 どう調べたかはあまり聞くもんじゃないと思うから、これ以上は追及はしないが。
「あー、それはね。……武偵高を出る数日前に、クラスの子たちから『迷子の子を見つけるの手伝って! 手当たり次第に探したいの!』って、任務を頼まれちゃって――」
「だから俺が武偵高出る時にほとんどいなかったのか」
「うん。――そうしたら調べてみると本当は誘拐事件だったらしくてね。頑張った結果、子供はちゃんと助けることは出来たんだけど……銃を持った仲間がいて、子供を狙ってたから――屋内だったから電気推進繊盾(P・ファイバー)も使えなかったし――とっさに助ける為に新しく思いついた技を試して使ったんだよね」
「新しい技……!」
 こうしてかなめは平然に話しているが、俺は驚きを隠せなかった。
 人をかばう為、あるいは自分が助かる為にとっさに思いついた新技を使うことで、俺は何度も危ない橋を渡ってきた。
 そうか……お前もそうやって人を助ける為に新技を(つく)ったのか……
 ――さすがは俺の妹だな。
「それで、これからもその技を使おう思って、平賀(ひらが)(あや)に頼んでお兄ちゃんと同じようなグローブを作ってもらうことにしたんだ。使ったときは防刃ネクタイをとっさに手に巻いて使ったけど、やっぱりグローブの方が良いしね」
「平賀さんか……」
 そういえば武偵高を出る前の金を返しに行った時、なんか編んでたな。あれ、かなめのだったのか。
「ついでに、頼む時に平賀文が『とーやまくんのオロチとほとんど同じグローブなら、編み方を覚えてるから、すぐですのだ!』って言ってたんだよ。まあ大きさや形は少し変えてもらったけどね」
 平賀さんのマネをしながらそう言うかなめ。
 結構、似てるかもしれない。
 そのあとに『ふはふははっ』と笑っている姿が目に浮かぶ。
「できたらお爺ちゃんの家に配達で来るようにしてきたから、あと数日で届くと思う」
「そうか。良かったな」
 なんでか分からないが、かなめがそうやって人を助けたことがなぜだか嬉しく、ついかなめの頭を()でてしまった。
「えっ!?」
「あっ……わ、悪い」
 だか、かなめが驚いた顔をしたので、とっさに手を()()めようとしたら――手首をかなめ掴まれ、
「いきなりだから驚いただけだよ。お兄ちゃんから頭撫でてもらえることなんて滅多にないもん。――もっと撫でて撫でてー」
「ちょっ、かなめ!?」
 と、右腕に抱き付いてきて、猫が甘えるように言われてしまった。
(うぉッ……!)
 抱き付いてきたことで、かなめの柔らかいゴム毬のような胸の感触が……!
 まあしかし、頭を撫で始めたのは俺だしな……もう少しくらい我慢して撫でてやるか――
 ……じぃーー……
 ――と思ったのだか、隣のレキの視線があまりに冷たく、そしてキツイものになっていたので、かなめに伸びていた手を戻す。
 冷静に考えたら、レキや道行く人が見てるのに俺は何をやっているんだろうか。
「いや……これはだな、レキ。違うんだ――!」
「いえ。大丈夫です。私はキンジさんが犯罪者になっても忘れませんから」
 全然大丈夫じゃねぇ! むしろすげぇ勘違いだよ!
「いやだから、これはだな……」
 それから爺ちゃんの家に着くまでレキを納得と誤解を解くために全力を尽くした。
 あと、人が話してる途中に横からかなめが挑発的に事をレキ言って、バトルになりそうなのを止めるのも大変だった。
 マジで俺、この二人と暮らしていけるのか?







 
 

 
後書き
感想や間違いの指摘待ってます! 書くのが乗ってきてるので、もしかしたら明日も更新出来るかもです。……やる気が明日まで続いてればですけどね。 

 

第6話 遠山家

 
前書き
いつもより更新する時間が遅くなりましたが、更新できました。 

 



 今日から身を寄せる俺の実家は、駅から少し離れた所にある。
 東池袋高校からは、ギリギリ徒歩圏内だ。
 商店街をかすめるようにして歩き、古い一戸建ての多い住宅地に出る。路地でキャッチボールをしてる子供たち、チャリンコで警邏(けいら)するお巡りさん、雑種のネコとすれ違い……(さび)れたタバコ屋の角を曲がり、材木屋の前を通り……もう少し歩いた所にある日本家屋が、俺の実家だ。古いが、けっこう広い。
(久しぶりだなぁ、実家)
 と、門に向かう角を曲がろうと思ったら、
「ちょっと待って、お兄ちゃん!」
 ――かなめに手を掴まれて止められた。
 レキもそれに合わせて足を止める。
「何だ? どうし……」
 そこまで言いかけて気づく。かなめの手が少しだが震えていることに。
「かなめ……もしかしてお前、緊張してるのか……?」
「そ、そりゃあちょっとはするよ……。初めて自分のお爺ちゃんたちに会うんだから……」
 なるほど……
 しかし意外だな。かなめのことだから、(あらかじ)め爺ちゃんたちに会ってから学校に来たのかと思ってたんだが……
 それに、いつものかなめならアメリカ人特有の堂々さで、緊張もせずすんなり会えるはずだ。
 ……まあ考えても仕方ない……かなめも緊張する時くらいあるか。クラスに初めて来たときも珍しく緊張してたし。
「爺ちゃんたちに何の連絡も入れてないのか?」
「先にサードが行って、あたしが行くことと事情を話してると思うけど……あたし自身はまだ……」
「……そ、そうか。まあ気にすることないと思うぞ。爺ちゃんたちはあまり細かいことは気にしない人たちだからな」
 そうやって、かなめの緊張を()こうと声をかけている中、俺の頭の中でかなめのさっきのセリフが何度も繰り返される。
『先にサードが行って――』
 ……サードが……どこにだ? もしかして爺ちゃんの実家か……まさか……
「おいジジイ。道の清掃終わったぞ。奥義(エザテリクト)を教えろ」
 聞こえる。聞こえるぞ。角の先から、今考えてしまっていた奴の声が。
 そいつの姿を確認するために、そー、と角の先を覗いてみると――
「お前は近所づきあいってモノが分かっとらーんッ! 向こう三軒両隣の前も掃除せんか! 次は鉄拳制裁(てっけんせいさい)じゃぞ!」
 ――着流し半纏(はんてん)を重ね着して、角刈り頭がすっかり白髪になったヨボヨボの爺ちゃんが、ぽかーん! と、下駄(げた)でジーサードの頭を家から出てきて叩いていた。
「チッ」
 舌打ちしつつも、あの凶暴なジーサードが……ちゃんと従って、(ほうき)を持ち直してる……!
 そのあまりの姿に、俺は肩を下げながら、まだ出るかどうか迷ってるかなめを連れて角を曲がる。
「ジーサード……お前、何してるんだ……」
 爺ちゃんへの挨拶より先に、俺はそのロック歌手みたいな姿で家の前を掃除している疑問を口にしてしまう。
 なんてったって、あのエセ暴君っぷりを発揮したビデオを見ているのだ。
 大人しくこんなところで掃除をしてる姿を見て、驚かないはずがない。
「――おう、兄貴じゃねえか。そりゃこっちのセリフだぜ。俺はホームステイだ。かなめもやけに遅かったじゃねえか」
 だんだん分かってきたぞ。
 さっきから考えていたが……ジーサードの奴、監視してたな。米軍の偵察衛星とか通信傍受施設を借りて、俺を。
 壮絶な喧嘩別れをしたから、かなめからジーサードに連絡を取る可能性より、サードからかなめに連絡を取った確率の方が高いからな。
 それで、俺の転校をダシに仲直りして、サードが先に爺ちゃんの家を訪ねることになったのだろう。
 俺が推理できるとしたらこれが限界だな。これ以上の事が起きてても後で聞こう。
 とりあえず、サードの事は後回しにして爺ちゃんに、
「……ただいま」
 とだけ、言った。
「ん、よく帰った」
 爺ちゃんは……嬉しそうに、笑ってくれた。
 それだけで少し、帰ってきて良かったな、という気分になる。
 だが爺ちゃんはすぐ、
「――んー? この別嬪(べっぴん)さんはキンジのこれか?」
 などとレキに少し近づき、スケベな目つきで小指を立て、心底ハッピーそうにレキの顔を覗きこむ。
「いや、これは何というか勝手についてきちゃったんだけど……」
「んー、若い娘はいいのう。ウェヒヒ、ミントの香りじゃ、ミントちゃんと呼ぼう」
 俺にも遺伝したムダに鋭い嗅覚で、レキのニオイを少し遠くから嗅ぐ。
 そして少し真面目な顔になり、次はかなめの前に行く爺ちゃん。
 そのまま少しかなめを眺め、
「なるほどのう。そこで掃除しているバカ同様に、うちの緑者じゃな」
「爺ちゃん、よく分かるね……見ただけで」
「お前のこともじゃ、キンジ」
 にい、と、爺ちゃんは俺を褒めるように笑った。
「ずいぶん、男の顔になった。修羅場をくぐり、死線(しせん)を超えてきたか」
「……まあ、いろんな意味でだけどね」
 俺との話しが終わり、再びかなめに目を合わせ、
「――理由は聞かん。じゃが、お前はうちの緑者であることは間違えない。ならわしの可愛い孫じゃ。キンジ同様、ここに住め」
 かなめの頭に手を置いて、そう言う。
「お爺ちゃん……ありがとう」
 嬉しそうに、はにかむかなめ。
「良かったな、かなめ。俺以外にも家族が出来たじゃないか」
 と、なんとも言えない気持ちで、俺も隣にいるかなめに声をかけてやる。
「……うん。あたし変に緊張してバカみたいだったよ」
 いったい、どんな事を考えて緊張していたのだろうか。かなめは。
 ……なんてかなめと話していると、
「それにしても……お前もキャラメルのようないいニオイが……」
 マジメモードの終わったらしい爺ちゃんが、かなめに顔を近づけ匂いをレキのように嗅ごうとしたら――
「おやキンジ、おかえり。あれまあ、可愛い女の子だねぇ」
 ――ゴスッッッ!
 いつも間にか現れた、俺の婆ちゃんによる、喋りながらのベリーショートパンチが叩き()まれた。
 爺ちゃんは「ほぉぷっ!」などという声にならない声を上げ、向かいのブロック塀まで吹っ飛ばされ、がしゃ、がらがら……衝撃で壊れたブロックの下敷(したじ)きになっていく。
「……しゅ、『秋水(しゅうすい)』……!」
 初めて見た。遠山家の奥義の一つを。意外すぎるシチュエーションでだが。
「『秋水』? なにそれお兄ちゃん?」
 驚きのあまり声が漏れていたらしく、かなめが初めて聞く言葉に反応する。
「ん……ああ。家に入ったら教えてやる。今の婆ちゃんの動き、よく覚えておけ」
「あ、うん。分かった」
 かなめも遠山家の一員になったんだ。教えてやってもいいだろう。
 ただし奥義の技名と、理屈だけな。
 遠山家の技は基本的に、手取り足取りは教えてもらえないものなのだ。
 なので、見様見真似で覚えるしかないんだ。
 だから今の秋水はよく覚えておけよ。
 俺も爺ちゃんという(とうと)い犠牲のもとに実演を見せてもらって、ようやく実践方法が掴めたところだ。……できるかなこれ、ヒステリアモード時。
「おいジジイ! 掃除が面倒になるだろ!」
 というジーサードの怒声なんかどこ吹く風で、婆ちゃんは……
「おいでキンジ。金花(きんか)の『(そろ)いぶみ』があるよ。ミントちゃんもかなめもお入り」
 曲がった腰の後ろに両手を戻し、ノンビリと家に入っていく。
 婆ちゃん……帰ってくること聞いて、買ってくれたのか。揃いぶみ。
 俺が小さい頃に好きだったのが、婆ちゃんの中では現役なんだなあ。
 いや、いつまで()っても、俺は婆ちゃんの中では子供なのかもしれないな。






 
 

 
後書き
感想や間違いの指摘待ってます! 今回は原作のエピソードが少し多めです。
次回の更新は、明日になるか……それとも一か月後になるか分かりませんが、これからも宜しくお願いします。 

 

第7話 遠山家の奥義

 
前書き
更新です。 

 



 衝撃の力――撃力(げきりょく)とは、実践上、激突する物の重さと速度によって決まる。
 遠山家の奥義の一つである『秋水(しゅうすい)』とは、この法則が深く関わってくる。
 ボクシングなどでは『(こぶし)にできるだけ体重を乗せる』ように放つと撃力が上がる――秋水ではこれを『余すところ無く全体重を拳に乗せる』。
 そうすると、どうなるか。ベリーショートパンチ、つまりほとんど動きのない打撃でも甚大(じんだい)な撃力が生じる。
 要はパンチに見えて、実は最も技術化された体当たりなのだ。
 なお昔、兄さんが分かりやすく解説してくれたところによると――
 拳銃の弾丸が大きな撃力を生むのは、『軽い』が『速い』。
 秋水は、『重い』が『遅い』。婆ちゃんの体重だって40kgはある。弾丸の5千倍だ。それが拳に集中して一気に激突するなら、爺ちゃんを吹き飛ばすくらい、速度なんて(わず)かで済む。
 ――と、俺はコタツで婆ちゃんの用意してくれた豆菓子(まめがし)を、かなめと一緒に食べながら秋水について教えていた。
 ジーサードはまだ掃除をしており、婆ちゃんは台所で晩御飯(ばんごはん)のしたく。
 レキは連絡もなしに連れてきた為、レキが使う部屋が決まっていなかった。
 なのでレキは爺ちゃんと一緒に、これから使う部屋を決めるために色々な部屋を見に行った。
 そして俺と一緒にコタツでくつろいでいるかなめは、俺の説明を大人しく豆菓子を一緒に食べながら聞き、その後に『他の技についても教えて』と、興味津々(きょうみしんしん)に聞かれたので、俺の思い出せる範囲で秋水と同じように技の名前と理屈を教えてやる。
 みんなそろってないし、晩御飯もまだ出来てないみたいだからな。
 武偵高を離れてこんな話をしてるのもなんだが、時間を潰すくらいはできる。
 まだ面白そうなテレビ番組もやってないことだし、他の事をしようにも疲れるしな。



 一通り教えた後、かなめは――
「う~ん……理屈はわかるけど、使い方のイメージがなあ~」
 技がどういうモノだが想像がつかないらしく、珍しく頭を悩ませていた。
「だから、さっきの婆ちゃんの秋水をよく覚えておけって言ったろ」
「うん。お兄ちゃんがあの時なんであんなこと言ったのか、やっと理解できたよ。確かに遠山家の技って理屈だけじゃ使えないね」
「ああ。実際、俺も秋水を見たのは初めてだったしな」
「……でも、なんで手取り足取り教えてくれないの?」
 かなめがもっともらしい意見を口にする。
 確かに俺もそれはガキの頃には疑問に思ったが、それにはちゃんと理由がある。
「遠山家の技や奥義の多くは、教える側と教わる側がヒステリアモード時でないと目視(もくし)すらできないものや、できないモノだらけだからな。先に理屈を教えて、後は見せるだけの方が覚えるのが早いんだ」
 だいたい技を覚えるためだけに、いちいちヒステリアモードになっていたら倫理的に遠山家はやばい一族になってるだろう。
「まあ、一部は形や型なども教える技なんかもあるけどな」
 ジーサード戦に使った『絶牢(ぜつろう)』なんかは、まさにそれだ。
「そうなの?」
「ああ。ちょっとだけ教えてやる」
 なので、ついでにいくつかの型なんかも軽くかなめに20分ほど教えて、まだ教えてないのは今度教えることにし、今教えた奥義などをかなめがちゃんと覚えているか確認すると……
 さすがは人工天才(ジニオン)、俺が言ったことをちゃんと理解し覚えていた。
 そして、
「ねぇ、お兄ちゃん。今度教えてもらう時は、お兄ちゃんの技も教えてよ」
「は? なんで俺の技を教えてほしいんだ?」
「だって、お兄ちゃんの技ほとんど見たことないんだもん」
 かなめが唇を少し尖らしてそう言ってくる。
 そういや、かなめの見てる前で俺ほとんどヒスって戦った事ないな。
「教えてるのいいが……ほとんど俺の技はヒステリアモード時でないと出来ないものばかりだから、かなめには使えるか分からないぞ?」
 実際、同じ人口天才(ジニオン)のサードもヒスらなきゃ使えんかったしな。
「それは分かってるよ。お兄ちゃんとサードって使ってる技の形がほとんど同じなんでしょ? なら、近くで見たことが何回かあるけど、見えないモノばかりだったよ」
「ならなんでだよ?」
「だからこそ、どうな技なのか知りたいんだよ。今の遠山家の技のように理屈だけでもね」
 と、かなめは少し顔を曇らせながら話す。
 ……なるほど。
 それだけで、今かなめが何を考え、今まで何を感じてきたのかが分かった。
 いや、分かってしまった。
 そう、この顔は何となくだが――かつての俺と似てる。
 兄さんがアリアを殺すといった時の、どうしてだか分からなくて迷っていた時の俺に。
 かなめは何回もサードが戦ってる姿を見てきてるはずだ。
 しかし、同じ遠山家の遺伝子を持っているのに、どんな技かも分からない。
 そのことが情けなくて、そして弱さを自分から言うようで怖くて聞けなかったんだろう。あの時のかなめは、サードに。
 俺も兄さんがアリアを殺すって言ったあと、兄さんが何を言っているのか分からなかった。
 アリアが強襲科(アサルト)で兄さんに襲われてる時、自分が弱くて情けないものだと感じた。
 その時の鏡で見た時の顔に似ていたのだ。
 そんな顔を見たら……
「……まあどういったものなのかを教えるくらいはいいけどな」
 断ることなんか、出来るわけないじゃないか。
 その俺の返事を聞き、かなめは嬉しそうに――
「お兄ちゃん……ありがとう」
 そして、しおらしい笑顔になり、お礼を言ってきた。
 俺はその笑顔に、さっきまでの顔と(あい)まって、そんなかなめの珍しくしおらしい笑顔に不覚にも、少し顔が熱くなってしまった。
 そのことをかなめにバレない為に俺は、
「しかし、それにしても……やっぱりコタツは眠くなるな」
 と言って、少しわざとらしく話を逸らし、寝転がる。
「お兄ちゃん?」
「ほら、かなめも横になってみろ。だんだん眠くなってくるぞ……もうすぐメシだから本当には寝れんけどな」
「え、でも……」
「いいから。お前も半分は日本人なんだから、日本の家庭的なことも知っておけ」
 コタツで横になって寝るのが日本の家庭的な面なのかは断言できないしれんが……少なくとも俺はコタツがあって入ったら眠くなるので、そう言っておく。
「わ、わかった」
 かなめも躊躇(ためら)いながら、俺の言ったように横になる。
 すると――
「あ、ホントだ。ホカホカして気持ち良さと、横になった重力からの解放感で、なんだか眠くなってくるね……」
 向かい合って座っていた為、横になったらお互いに姿は見えず声しか聞こえないが……かなめの声からして眠さが感じられた。
 そしてそのまま横になること数分……俺はさっきまで足を伸ばしていた位置を変えようと、足を動かすと――
 ――むにゅ……
「あっ!」
 ――足の先に柔らかい感触と、脹脛(ふくらはぎ)にハリのある柔らかい感触……それと同時にかなめの驚いたような声がした。
 なんだ、と思い、少し足を動かしあたっているモノを確認する。
「あ……あっ、んっ、お、お兄ちゃん……ちょっと……っ――」
 俺が足を動かすのと一緒にかなめの声が、だんだんヘンな感じになっていくのが分かる。
(……まさか……!)
 なんかヤバいと思い、急いでコタツを開けてみると……
(――なっ!)
 なんと、俺の足がかなめの足の真ん中……しかもスカートの中に足のつま先が当たっていた。
 さらに俺の足で東池袋高校のスカートがめくれて、奥が見えそうになっている。
 いや、正確には俺の脹脛(ふくらはぎ)()たるかなめの太股(ふともも)から分かるように、普通は見えているはずなのだが……
 俺の足が、かなめのスカートの奥の部分に当たりながら(かぶ)さり、見事にスカートの奥が隠されていた。
 そのことに気づいた瞬間、俺はヒステリアモードでもないのに橘花(きっか)を使ったんじゃないかと思うくらいの速さで足を引き、コタツに座りなおす。
 それと同時に身体の真芯を確認する。
(あ、危なかった……)
 少しヤバめだった。ギリギリ(メザ)ヒスになりかけていたが……相手がかなめのおかげか、すぐに収まりそうだ。
 もし完全にヒスっていたら、俺は自分で自分に何をしたか分からんぞ。
「かなめ、悪かったな」
 真芯を確認し終わり、落ち着いた所でかなめに謝るが、
「だ、大丈夫。ちょっと、くすぐったかっただけだから……」
 弱弱しく声が返ってくるだけで、少したっても顔を上げない。
「かなめ、お前どうし……」
 と、かなめの方を少し覗いた所で気づく――
「……ごめん、ちょっとだけ待ってお兄ちゃん。あとちょっとで落ち着くから……」
 かなめがなりかけていたのだ――ヒステリアモードに。
 いや、この感じからすると(メザ)ヒスになっているかもしれないぞ。
 そんな覗きこむ俺に気づいたかなめは、少しヒスってるせいか、少し女性らしい笑みを浮かべながら、
「あはは……お兄ちゃんと一緒のコタツで寝れて、少し興奮してたのを必死に誤魔化してたんだけど……お兄ちゃんに触られて、少しヒスっちゃった……」
 と、言ってきた。
 コタツに俺と寝てるだけで何を興奮することがあるんだよ……
 それとも、俺が触った所が悪かったのか?
 俺が触ってた所ってあれだろ、スカートの奥が当たってたって事は、かなめの下着を穿いている所ってことで……
 ――これ以上考えるのは()めよう!
 とにかく、俺も少しからず悪かった。それ以外に考えることは何もない! 
 かなめがヒスってるのは確かだしな!
 なら謝るのが礼儀だ。
「……なら、少し落ち着くまで寝てろ。あと……ホントに悪かった」
「ううん、別にいいよ。誰も今この部屋にいないから。……でも、ヒスった感じってこんな感じなんだ。前回の時のこと、ほとんど覚えてないから初めての感覚かも」
 なるほど、甘ヒスだから完全には切り替わっておらず、泣き出したりもしないし、記憶が残るのか。
「へぇ、どんな感じだ?」
 俺のヒステリアモードと女性版ヒステリアモードでは、感覚に違いがあるかもしれないので、気になって聞いてみた。
 俺の場合、思考が冴えるのと同時に、身体の芯が熱くなり、さらに肉体が活性化していく感じなのだが……
 かなめだと男の俺と違って、『弱くなる』ヒステリアモードなので、どんな感じなのだろう?
「なんか、前なった時の微かに残ってる記憶に、ヒスる前のがどんな感じだったかあるんだけど……それと一緒で真芯(ましん)が……お腹の奥が、きゅんってして……頭の回転は速くなってる感じなのに、あまり物事が考えられなくて、身体がやけに重い……」
「なるほど……」
 その会話を最後に、しばらく俺とかなめは黙り、部屋には台所で婆ちゃんが料理しているのか、微かに聞こえる包丁の音だけになった。
 気まずい……
 かなめをヒスらしてしまったのには、俺も少しは関係しているはずなので、何か収まることを手伝いたい気持ちもあるのだが……実質、ヒステリアモードを抑えるには、なりかけてる本人が気持ちを落ち着ける(ほか)にない。
 なので、俺には何も出来ず、黙っていることしか出来なかった。



 かなめと気まずい空気になってから、数分が経った頃、部屋の外から足音が聞こえた。
 すると俺の後ろから、
「なんじゃい、キンジ。テレビもつけずに黙って座りおって」
「あ……いや、実家が懐かしくてね。コタツを楽しんでいたんだよ」
 爺ちゃんそんな事を言いながら部屋に入ってきたので、適当に話を誤魔化す。
 まさか、妹と気まずくなってました、なんて言えんしな。
「ほー……まあよい。ところでキンジ。お前も来年18になる。もう覚えてもいい歳じゃ……『春水車(しゅんすいしゃ)』をな」
「え、シュンスイシャ? 何それ」
 俺が聞くと……爺ちゃんは婆ちゃんが料理してる音を確認してから、
「遠山の秘技の一つ。技じゃよ、技」
 声を潜めつつ、押し入れにあった金庫を出してきた。
 正直、もう俺は格闘技なんかと無縁の生活をするべきなんだが……
(婆ちゃんにも秘密の――金庫にしまえる。技?)
 どうなものだろう。興味は、()くな。
 カリカリカリ、カチッと金庫を開けた爺ちゃんが、
「これぞワシの爺ちゃんが版画(はんが)で開発した、春水車。それを進化させたものじゃ。作り上げるのに時間がかかるんで、ワシも戦前からずっとコレクションしてきておるッ」
 大量に取り出してきたのは……
 ……グ、グラビア雑誌や水着写真集の、切り抜きページっ……!
(な、なんてこった……!)
 そういえばすっかり忘れてたけど、爺ちゃんは筋金入りのグラビアオタク。
 いい歳こいてんのに、まだ現役だったのかよッ……!
「色本は、間を置いてからだとまた新鮮になる。飽きたと思っても、捨ててはならんぞ」
 幾星霜の時をかけて()()かれてきた、名グラビアの数々が――
 夢幻(ゆめまぼろし)の光景のように、畳の上に広げられていく。
「ちょっ……しまってくれよ!」
 興味が無かったから知らなかったが、こういうのは――
 な、並べて見る鑑賞法だと、よりどりみどり感が広がってより危険だ!
 しかも爺ちゃんからは丁度、横になってるから見えないかもしれないが、ここにはかなめが――
「……お兄ちゃん」
 ……間に合わなかったか。
 声がした方を見ると、甘ヒスが収まったらしいが、()わりに冷たい目をしているかなめの姿があった。
「うぉ! かなめ、おったのか!?」
「かなめ……さっきの俺と爺ちゃんの会話を聞いてたんだったら、どっちが悪いのか分かるだろ?」
「うん。分かってるよ。――ちょっとお婆ちゃんの所に行って――」
 婆ちゃんに、この春水車の事を伝えるためか、かなめがコタツから立とうとすると、
「ま、待つのじゃ、かなめ。遠山は自在に『返体(へんたい)』してこそ一人前なのじゃっ! これはその為の技なんじゃ!」
 言い訳のごとく、かなめにすぐさま近づき、かなめの肩に手を置いて引き留める。
 ちなみに、『返体』というのはヒステリアモードのことだ。
 そしてさらに言葉を続ける。
「それに、かなめだって遠山を名乗るからには自在に『返体』なれなければ一人前にはなれんぞ! 確かに女子(おなご)であるお前は、扱いを間違えれば弱くなってしまうが……キチンと使いこなせれば――」
「ちょっ、ちょっと待って爺ちゃん! 今の言い方だとまるで女性版のヒステリアモードのことを知っているような言い方だったけど……知ってるの?」
 俺はかなめと爺ちゃんの会話にすかさず割り込む。
 爺ちゃんは俺の問いに、ケロリと答えた。
「ああ、知っているよ」
「かなめのヒステリアモードが『弱くなる』ことも?」
「うむ。……しかしなキンジ。遠山の返体は一つだけではない。お前も何度か死線を越えて来たのなら経験があるんじゃないか?」
 確かに、俺は何度かヒステリアモードの派生系である『ベルセ』や『メガルメンテ』、他にも『ワイズマン』などになったことがある。なので、かなめにも派生系が存在してもおかしくはない。
 けれど――
「女性版ヒステリアモードは派生系も弱くなるんじゃないのか?」
「馬鹿者。女子(おなご)の身体は、わしら男よりもデリケートなんじゃ。ゆえに、『返体』の数も多く存在する。……まあ、実際この目で見たことが無いから、よくは知らんがの」
 その爺ちゃんの言葉を聞いたかなめは、
「あたしの中に……強くなるHSSの可能性がある……」
 婆ちゃんに告げ口しに行くのも忘れて、爺ちゃんに言われたことを何ともいえない表情で呟いていた。




 
 

 
後書き
ここまで読んでいれば分かると思いますが、この小説のメインヒロインはかなめです。
しかし、かなめはキンジの妹。なので他のレキなどのヒロインものちのち絡ませて行こうと考えてます。
感想や間違いの指摘待ってます!
 

 

第8話 登校初日の夜に

 
前書き
少し予定していたのよりも投稿が遅くなってしまいました。すいません。
あと、話のタイトルが相変わらず酷い。 

 



 一般高校へ転校しての最初の晩。
 久しぶりに婆ちゃんの和食を食べ終えた俺は、明日の為に風呂へ入りに行く前にかなめの部屋へ向かった。
(……どうもあれから様子がヘンなんだよな。かなめの奴)
 爺ちゃんからヒステリアモードの事を聞いた後、ご飯を食べたと思ったらすぐに部屋へ行ってしまった。
 多分……というか確実に様子がおかしくなった理由は、爺ちゃんに言われた『女性版の強くなるヒステリアモード』のことで間違いないだろう。
 かなめ――ジーフォースは少し前まで、俺と交互にヒステリアモードになれる『双極兄妹(アルカナム・デュオ)』と言われた最強の兄妹になろうとしていた。
 しかしその兄妹へはなれなかった――なぜならかなめのヒステリアモードは『弱くなる』もので、『双極兄妹』は机上の空論に過ぎなかったのだ。
 けれどかなめは今、爺ちゃんによって己の中に『強くなる』ヒステリアモードがある事を知ってしまった。
 知った後、ご飯の時は必死にいつも通りふるまっていたが……明らかに様子がヘンだった。
 今日初めて会った爺ちゃんや婆ちゃん、それにレキには分からないかもしれなかったが……十月の末からかなめが現れて、それからずっと一緒に家で生活していたせいか、俺にはそのわずかな変化も分かってしまったのだ。
 分かってしまったからには、むやみに無視することもできない。あれでも俺の妹だからな。
(……分かったのには、かなめが妹だってことも関係してるだろうけどな)
 これがアリアや白雪の様子とかだったら確実に分からなかっただろう。……あいつらはいつもヘンだしな。
 ――と、かなめのおかしくなった理由を整理している間に、かなめに今日新しく用意されたの部屋の前に到着。
「おい、かなめ。いるかー?」
 部屋の扉にノックして一応部屋にかなめがいるかを確認するが……返事がない。
「……かなめ? いないのかー?」
 再度ノックをするが、これまた返事なし。
 いないのか? と思い部屋を去ろうとしたが……
 ――ウォーン……
 というヒーターらしき音が、かなめの部屋から聞こえてくることに気づく。
「かなめー。いるんなら入るぞー」
 そう声をかけ、一応数秒待ってから――うちはほとんどの部屋にカギがついていないので――扉を開ける。
 するとそこには――
「なっ!」
 真っ暗な部屋の中、ヘッドフォンをしながら用意された学習机の椅子に胡坐(あぐら)を書きながらテレビを見ているかなめの姿があった。
 ただし――
(――な、なんて恰好してるんだっ!)
 少し大きめの黒のタンクトップと、暗くてテレビの灯りのみで色までは確認できないがシマシマした柄の下着を下に穿()いているだけだった。
 部屋はヒーターであったまっており、そんな恰好でも寒くはなさそうだ。
 そんなかなめの姿と――テレビに集中しているのか俺に気づいておらず、いつもは見れないかなめの無防備な表情が相まって――
 ――ドクンッ……!
 俺の中の例の血流が、昼間の時よりも強く始まりそうになる。
 や、ヤバい……!
 実の妹の部屋で過ごしている姿を見てヒスるとか、マジでシャレにならん!
 た、確かにここはかなめの部屋で、勝手開けた俺が悪いかもしれないが……それにしても、もう少し用心しろよ。
 爺ちゃんとかが勝手に入ってきたりしたらどうするつもりなんだ。かなめの奴。爺ちゃんはノックとかしないぞ……多分。
 それに外の音が聞こえないようにへッドフォンなんかしやがって……まずはあいつを外させるのが先だな。
「お、おい、かなめ。聞こえてるか? その頭につけてるヘッドフォンを外せ」
 今の時間、そこまで大きな声をあげると、
「うるさいぞ、このバカモーン!」
 とか言って、昔どでかい声を出しながら爺ちゃんが来てしまった(爺ちゃんの方が俺よりうるさかったが)ことがあるので、できるだけ最少の声で呼びかける。
「…………」
 ダメか。
 というか、外から呼びかけても気づかなかったのに、ここで呼びかけても気づくわけないよな。
 ……それにしても、かなめが部屋に入っても俺の存在に気づかないなんて、やはり様子がおかしい。
 ヒスるのを必死にこらえてよく見ると、テレビも集中して見てないな。あれは。目はテレビに向いているけど、焦点がテレビの距離にあっていない。
 なんかテレビの方を見ながら必死に何かを考えている感じだ。
 呼びかけにも応じず、かなめにしては珍しくこちらにも気づく気配がない。けれどだからと言って大声をあげるわけにもいかない。
 つまり、俺が近づいて肩などを叩くしかないわけで――けどだからって、あの恰好のかなめに近づくのも……
(――くそっ、考えていても仕方ない!)
 このまま考えていて、もし誰かが部屋の前を通りかかったりしたらと思い、まずは扉を閉める。
 そこで後ろを向き深呼吸をして、体の血流の確認&精神安定を確保する。
「スー、ハー、スー、ハー……よし!」
 さすがだ。俺の中の俺よ。かなめに対する防御力は天下一品だな。他の女子なら今の時点でヒステリアモード突入ものだったぞ。
 かなめまでの距離や障害物も、先ほどヒスるの覚悟でかなめの顔を見た時に確認済み。
 このまま後ろを向きながら近づいて、肩なんかを叩けばいいだけだ。
 ――そう考え、一歩、二歩、三歩……と、先ほどの記憶を確かに、慎重にかなめに近づく。
 そして手が届くであろう距離になり、
(――ここだっ!)
 記憶のかなめの肩の位置に、後ろへ右手を伸ばす。
 ――ぷよんっ……
「――ひぁっ!」
 そういう音でしか表現できない、肩とは思えない柔らかさが俺の手の平に広がる。
 それに加えてかなめのビックリしたような声。
 まさか……
 そう思い後ろに振り向くと、
「お、お兄ちゃん。な、なにしてるの?」
「な、んで……」
 ヘッドフォンを外してこちらを向いているかなめの姿があった。
 そして俺の右手は、そんなかなめの未成熟な胸の膨らみをつかんでいた。
 感触から……というか、はたから見てわかるが、かなめが下着をつけていないのがよく分かる。
 しかもただでさえ大きめのタンクトップが、俺の手によって肩からズレて、微かにだが胸の谷間が見えて――
「――っ……!」
 強くなってしまった。例の血流が……!
 ――ドクンッ――!
「……お兄ちゃん。まさか……!」
 どうやらかなめには、いつもの俺がだんだん変わっていくのが分かったらしい。
 ああ、どうやらもうダメらしい。
 まあ今のは事故みたいなものだし、兄妹ということはノーカンということにしよう。……精神安定のために。
「……ごめんよ、かなめ。可愛い妹にこんな事をしてしまって」
 そう言いかなめの胸から手を放す俺。
 そして同時に妹のかなめに対しても、俺の口調がいつもより低くキザっぽくなっていることに自分でも驚く。
 前のかなめでなった時は血流のかかりがまだ甘い方で、普通の女子になるよりもかなめに対してはまだマシだったのだが……
 今回は昼間のコタツ、無防備な顔や姿、胸の感触のスリーアタックだ。前よりも血流が明らかに強い。
 でもだからって妹にはこんな口調にならないと思ったのだが……やっぱり妹も『女』なんだな。
「いや、お兄ちゃんに触られるのは全然OKなんだけど、ちょっと驚いちゃって……でもなんであたしの部屋にお兄ちゃんがいるの? 近くでヘンな気配がすると思ってそっち向いた瞬間、胸をつかんでくるし」
 なるほど。俺が肩だと思うところに手を伸ばしたと同時にかなめが振り向いたせいで、見事に胸にジャストでたどり着いてしまったということか。
「かなめを心配してきたんだよ」
「あたしの心配?」
「そう。俺の大切なかなめが何かに悩んでるんじゃないかと思ってさ」
「……なんでそう思ったの、お兄ちゃん? あたしは別にご飯の時も普段通りだったと思うけど……」
「確かに普段通りだった。けど――普段通り過ぎた。あれじゃ、普段からかなめの事を見てる俺の事は騙せないよ」
 おい俺よ。マジで妹相手にウィンクとかやめてくれ。
 そのウィンクを見て、
「あたしを、いつも見てる……」
 顔を赤くしてるじゃねぇか。しかも幸せそうに。
 かなめもかなめで、
「ヤバい。今のお兄ちゃん、最高にかっこいい。――どうしよう、ヒスっちゃいそうだよ……!」
 とか呟いている。
 どうやら前から何度かかなめを狂わしている、心のナントカ・スイッチがONになってしまったらしい。
 ……そう言えば、かなめが前のヒステリアモードになる前の事をあまり覚えていないなら、かなめの見ている時にまともなヒステリアモードになるのは、これが初めてのような気がする。
 アリアとの屋上でも遠くからかなめがストーカーしてただけだしな。
 けれどそのせいなのか――
「お兄ちゃん。その事を話す前に一つお願いがあるんだけど……いい?」
「ん、なんだい?」
「着替えが部屋の隅に置いてあるということは、これからお風呂だよね……な、なら……あ……あたしも一緒にお風呂――は、入っていい?」
 偶然扉の近くに置いてあった俺の風呂用の着替えを見て、唐突に入りたいと思ったのか、かなめが少し興奮気味にとんでもないことを言ってきた。
「……かなめ。可愛い妹からそう言われるのは嬉しいが、俺とかなめは兄妹なんだ。だから……」
「お願い! 今のお兄ちゃんとちょっとでいいから話がしたいの!」
 ならここでもいいだろっ! と、ツッコミをいれてやりたいが、悲しいことに今の俺はヒステリアモード。そんなことできるはずもなく、しかも――
「入ってくれたら、お兄ちゃんがあたしの胸をつかんでヒスったこと、レキたちに言わないから!」
 逆に言えば『入らないとレキたちに今の事を言うよ』と脅しまで言ってきやがった。
 こんなことをヒステリアモードの俺に言われたら……
「……分かったよ。けど、かなめが何を悩んでるのかもちゃんと聞かせてくれよ」
「う、うん! ありがと、お兄ちゃん!」
 OK出すよね。そりゃ。
 こうして俺とかなめは一緒に風呂へ入ることになってしまったのだが……大丈夫だろうな、ヒステリアモードの俺よ。
 さすがにいくらお前でも、実の妹に手を出すなんてこと……ないよな?
 そんな不安をまだ微かに残った冷静な部分で考えながら、爺ちゃんたちに見つからないようかなめと一緒に風呂へと向かった。




 
 

 
後書き
……本当にこの小説はこのまま書き進んでいいのだろうか? そう感じえない話を書いてしまいました。
よければ感想や間違いの指摘を下さい! 待ってます!
次回の更新は早めにします。 

 

第9話 ヒステリアモード

 
前書き
今回は少し……というか凄く文が長いです。
しかも文章がメチャクチャの可能性があるので、分からなかったり分かりにくい箇所があったら、どんどん感想や文章の指摘を下さい。 

 



 ヒステリアモード。兄さんやサード風に言うならHSS――それは男なら『女を守るために強くなり』、女なら『男が守りたくなるような女になり、男心をくすぐるような仕草をするようになる』。
 つまり女のヒステリアモードは『弱くなる』のだ。
 そのことは前に俺とかなめによって実証された。
 しかし爺ちゃんは、女性版ヒステリアモードにも『強くなる』派生系があると言う。
 そのことをご飯のあと、偶然爺ちゃんと二人になったタイミングがあったので聞くと、爺ちゃんも詳しいことは知らないらしい。
 どうやら、遠山家にも一応女は生まれてくるのだが……そのヒステリアモードの性質上、その子供の名前などは先祖代々の巻物に記載されていることは極めて少ないとのことだ。
 ……まあ『守ってもらう』ヒステリアモードじゃ、先祖代々から戦闘まみれだった遠山家に名を残すのは難しいだろう。
 それでも爺ちゃんは、知っていることを全部話してくれた。
 その内容は俺の知っている『弱くなる』ヒステリアモードの事がほとんどだったのだが……
 けれでもほとんど情報はないが、情報がぜんぜんなかったわけではなく、女性版にも確かに『強くなる』ヒステリアモードはあると爺ちゃんは言った。
 その際に数少ない情報として教えてもらったこと。それは――
「お兄ちゃん。入るよー」
「……ああ」
 がらりら。
 ――と、湯船に浸かりながら現実逃避……もとい考え事をしていると、かなめがそう言い風呂場へと入ってくる。
 ぴたぴたとかなめはスノコの上を歩き、シャワーの前へ座る。
 ――体育祭の水上騎馬戦の時に着ていた、今風のスクール水着を着てな。
 そして俺も海パンを着用して湯船に使っている。
 もちろん体は洗って入っている。
 女性を優先するヒステリアモードで、いつまでも脱衣所にかなめを待たせるのことは出来ないので、昔開発した高速洗体術でな。
 なぜこんな事になったかというと……さすがにヒステリアモードでも俺は妹と風呂はヤバいと感じ、入るならせめてもの譲歩としてこうなったのだ。
 しかし……まさか妹に対して、
「かなめ。俺はかなめを信じてるよ。俺の可愛いくて大切な妹のかなめは、何も言わなくても俺の言おうとしてることが分かるって――そうだよね? かなめ」
 という風に、新幹線ジャックの時に白雪に使った『呼蕩(ことう)』を使う日が来るなんてな。
 今後使う機会がないことを祈ろう。
 お風呂に水着で入るという行為は、日本の温泉やこの家自慢の檜風呂(ひのきぶろ)に対する侮辱かもしれんが、こうでもしなきゃこの歳の妹と風呂なんて入れるわけがない。
 このことに関しては、今度、新年の初詣かなんかで神様にでも謝ることにしよう。
「それでお兄ちゃん。何か話しがあるんでしょう?」
 座って髪を洗いながらそう言ってくるかなめ。
 そのシャンプーの匂いに、少し血流が加速する。
 俺の買ってきたシャンプーをかなめも使っているはずなんだが……女子が使うとこうも違う匂いに感じるから不思議だ。
「ああ。かなめ――キミは爺ちゃんから聞いた、自分の中の『強くなる』ヒステリアモードの事で悩んでいるんだろう?」
「あはは、もしかしてお兄ちゃん。あたしがまたお兄ちゃんを襲おうと考えてるんじゃないかって来たの? それなら……」
「違うよ」
「え?」
 かなめは一旦(いったん)髪を洗うのを止めて、俺の方へきょとんとした顔で向いてくる。
 シャンプーが目に入らないように片目だけ開けてこちらを見るかなめは、兄の俺から見てもかなり可愛かった。
「俺はかなめの事を信じてる。かなめがそんなことするわけないってね。……かなめが悩んでるのは、もっと他の事なんだろう?」
 これがヒステリアモードの俺がたどり着いた結論だ。
 かなめが前に襲ってきた時は、『ヒステリアモードを扱えるようになって、立派な(ソルジャー)になる』という目標のうえだった。
 それ以外にもあったかもしれないが……それでも襲う気があるなら、その情報をもたらした爺ちゃんに即刻聞くはずだ。『どうやったら、そのHSSになれるの?』とでもな。
 けれどかなめは爺ちゃんに聞かなかった。
 よってかなめが俺を襲う確率はゼロに等しい。……まあいつもの態度から、じゃれ合いレベルで襲われる可能性はあるかもしれないが……
「…………」
「俺に話してごらん、かなめ。俺に出来ることなら、可愛い妹であるかなめの力になりたい。――だから、話してはくれないかい? かなめ」
「…………自分でもよく分からないけど……言葉にするんだったら、存在意義について考えてたのかな……?」
 先ほどもう使わないと思っていた『呼蕩(ことう)』を再びかなめに使い、かなめから悩みを聞き出す。
 こうでもしないと、かなめが悩みを言わないと思ったからだ。
 そう思った理由ははっきりしないのだが……それでもそう思ってしまった。
「存在意義?」
「……うん。あたし――ジーフォースはアメリカではサードに殺されたことになってる。それはお兄ちゃんも知ってるでしょ?」
「ああ」
 かなめはシャワーを出し、髪を流しながらそう言ってくる。
 その後、湯船に足を入れて来たので、俺もかなめが入れるだけのスペースを開ける。
「ありがと――サードにあたしが殺されたあの時の映像は、アメリカに流れていたらしくてね。これで晴れてあたしは『遠山かなめ』といて生きていけるようになった……」
 スペースを開けたことに対しお礼を言った後、俺とお風呂で向かい合いながら話すかなめの顔はだんだん曇ってきていた。
 それでも俺は黙ってかなめの言葉を待つ。
「……サードともその時に縁が切れるものだと思っちゃってたけど……転校の準備をしてる時に『部下としてはもう一緒にはいられないけど、兄妹としてだったらあってもいいんじゃないか?』って現れてから言われて、それでサードと一緒にお兄ちゃんを追いかけてきたの」
 ……かなめの意見を否定するわけじゃないが、サードのセリフは実際はもっと砕けて乱暴な言い方だったんじゃないか。そんなこと言ってるサードなんて想像できないぞ。
 だが、今のかなめの話しで大体の事が分かった。
「なるほどね。かなめが悩んでいることは大体(だいたい)分かったよ」
「えっ……でも、まだ話は途中までし……んっ」
「今までの話しで十分さ。あとはかなめの事を見ていれば、自然と分かるよ」
 驚くかなめの唇に――これ以上話さなくていいよ、と言う意味を込めて右の人差指を優しく置き言葉を止める。
「かなめは爺ちゃんから『強くなる』ヒステリアモードの事を聞いた後、こう考えたんだね。『あたしにも強くなるHSSがあるなら、再びサードの(ソルジャー)に戻れるかも』って」
「……!」
「そしてそれと同時にかなめは気づいたんだ。『自分は……ジーフォースはすでに死んでいる』って。だからサードの元へ――兵、または部下としては戻れない。それどころか戻ったらアメリカに自分が生きているのを公言するようなものだ」
 正直、かなめが本当にこう思ったのかは分からない。そんな確証も根拠もない。
 けれども俺はヒステリアモードによって導き出された推測を続ける。
 これより先は間違っていたとしても、俺が言ってあげないといけないと思うから。
「そしてそう考えたら再び『なら自分はどのように生きればいいのだろう?』って思ったんだね。『遠山かなめ』はどうやって生きていけばいいかって」
 俺が指を置いた状態でかなめが首を縦に振る。
 なので俺が手をどけると、
「……そうだよ。凄いね、さすがお兄ちゃんだ」
 関心と恥ずかしさが混ざったような顔でそう言ってきた。
「――ならかなめ。俺と一緒に探して行こう。丁度いいことに一般校に転校したんだ。生き方だって見つかるさ」
「……うん。ありがとう、お兄ちゃん。でも……」
「……気にしなくてもいいよ。武偵をやめても、かなめは大切な妹だ。もしアメリカにバレて襲ってきたとしても、戦ってやるさ」
「――っ!」
 『なんで気づいたの?』という顔で、少し泣きそうになるかなめ。
 気づかないと思っていたのかよ。バレバレだ。
 『自分がいない方が、お兄ちゃんは一般校でうまくいける』って考えてることくらい。
 そう。かなめは一般校に通う俺を、自分の戦いに巻き込むわけにいかないなんて考えていやがったんだ。
「だからかなめ。二度と『自分はいない方が良い』なんて考えないでくれ。俺だってアメリカにケンカを売ったんだ。今更かなめを狙う奴が来ようと変わらないさ。それに一般高校じゃ――」
「お、お願いお兄ちゃん! それ以上言わないで!」
 向かい合ってから目を合わせながらずっと話していたのだが、かなめは初めて目を逸らし、顔を赤くしながら両手で両耳を抑える。
 悪いな、かなめ。今の俺はヒステリアモード。
 こういう状況下(じょうきょうか)でも平然と言えてしまうのが今の俺なんだ。
 いつもは言葉が足りなかったり、照れくさくて言えないことも、それらを含めて今言ってやるよ。
 俺は右手でかなめの(あご)に手を置き、真剣に思いを伝えるために俺の目線に合うよう顔をあげ、顔を少し近づけ目をしっかり合わせる。
 その際に合気道の要領で、動揺しているかなめの動きを誘導し、耳を押せえてる手を離させる。
「お、お兄ちゃん! ちょっ、今こんなことされたら……!」
「――かなめがいないと俺が困る。……いいや。学校じゃなくったってかなめがいないと俺は困ってしまう。そういう自信があるよ。だから――俺と一緒にいてくれ。たとえかなめが戦えなくなろうと、ね」
 『たとえかなめが戦えなくなろうと』……この意味についてはおそらくだが……
 昼間かなめが俺の技について真剣に聞いてきたのには、俺のあの時感じた以外の理由がもう一つ隠されていたんだと思う。
 それは――いずれ来る先端科学刀(ノイエ・エンジェ・エッジ)の使用出来なくなってしまった時の為の戦う術の開発。
 かなめはアメリカには死んだと思われている。
 しかし先端科学兵装はアメリカが作っている。
 あの銃すらおもちゃ扱いしているサードが、刀をデザインとした先端科学兵装を作ってくれと言ったら、さすがにアメリカも怪しむだろう。
 それどころか、かなめが使用している武器を頼んだだけでも怪しむかもしれない。
 だからかなめは、今使ってる先端科学刀を失えば替えがきかないのだ。
 いや……もしかしたら俺に分からない燃料なんかを使っていて、それすら補充できずに使えなくなっている可能性だってある。
 そんな事を考えている時に『強くなる』ヒステリアモードの事を聞かされて、迷わないわけがない。
 しかしたとえ強くなっても、サードのところでも必要なければ、俺と一緒に転校した一般校でも必要ない。
 なら、俺はこの言葉は絶対に言ってやらなければいけない。兄として。
 さっきも言ったように『かなめが必要だ』と、
「大丈夫だから。もしかなめが危険なことが起こったら、俺が守るよ。絶対に」
 ヒステリアモードになれなかったとしても、俺たちと一緒に戦えなくなったとしても『守ってやる』と。
「――っ……こ、こんなの……反則……だよっ――!」 
 俺が言うことを言った次の瞬間。
 かなめはそう呟き、そして――
「……だ、ダメっ――兄妹でこんな……こんなことしちゃっ……」
 ……ぽろ……っ……ぽろぽろっ……
 急に泣き出し、前のように俺の胸にあて、俺を拒みながらそんな事を言ってくる。
 これは――かなめのヒステリアモード。
 どうやら、かなめの中で何かが限界を迎えてしまったらしい。
「……ごめんよ。かなめ。そんなつもりはないんだ」
 そう言ってかなめから少し距離をとる。
 そして同時にさっきまで風呂に入って考えていた、爺ちゃんが言った言葉を思い出す。
 ――女性のヒステリアモードは『二段階』存在することを。
 まず一段階目は『拒絶』。
 男心をくすぐり、男に『守ってもらう』。
 ここまでは今目の前で起きているのと同じく、前回もここで俺は部屋を出てしまったから、てっきりこのまま男に守らせるものだと思っていたが……
 実はその先があったのだ。
 爺ちゃんが言うには、女のヒステリアモードは男と違い『相手が一人』なのだ。
 分かりやすく言えば、俺のヒステリアモードはなる時にはアリアや白雪などの相手が必要となってくる。なる際には血流の違いなんかもあるけどな。
 けど女はその対象が比較的に一人なんだそうだ。
 その一人というのが特例がない限り、基本的には『好きな異性』ということらしい。
 なぜ一人なのかと言うと――理由は守ってくれる男が二人いた場合、二人が『弱くなっている』自分に襲われないようにするためらしい。
 簡単に言えば男の嫉妬で殺されないためだ。
 多分男からいえば『俺が守ってやるって言ったのに、なんで他の男もお前を守ることになってるんだ』ってことだろう。
 男は一人で女を守りたいと思う生き物だからな。
 だから『ベルセ』や『レガルメンテ』などと言った派生系が生まれたのだろう。
 他にも、男は一度に何人もの子供を女に産ませることは出来るけど、女は自分が産むから一度に一人の男の子供しか産むことが出来ないのも関係しているらしい。
 つまり女は、絶対とは言えないが『好きな異性』の前でしかヒステリアモードになることはほとんどない――が、それでも『守ってもらえる』という確証がない。
 だから『二段階』なのだ。
 そしておそらく……この二段階目が終えなければ、かなめが派生系に行きつくことはないだろう。
 守ってもらえる――ヒスれる相手がいないのに、派生系が生まれるはずもない。
 ……かなめ。お前がヒステリアモードで戦う為には、パートナーが必要なんだよ。
 しかも『強くなる』ヒステリアモード場合は、俺が出した予想によれば――男だけじゃダメなんだ。
 だからかなめ。お前に俺以外の好きな奴が出来るまで――

 ――俺がパートナーになってやる!

 強くなるためには男だけじゃダメだけど、まずはパートナーがいなければ話しにならない。
 かなめ……お前だってヒステリアモードで戦いたいよな。
 昼間言っていたように、サードの技をちゃんと見たいよな。
 だったらしばらくは俺がパートナーになって、お前を強くしてやる。やれるがどうかはかなめしだいだけどな。
 俺たちは兄妹で、俺はお前の兄貴だ。
 なら俺が遠山家の兄として――兄さんに俺が教わったみたいに――俺がお前に遠山家の技を教えてやる。
 先端科学兵装がなくても大丈夫なようにな。
 だから……
「かなめ……さっき俺が言った事を覚えているかい?」
「……え?」
 泣きべそをかいている『こっちのかなめ』にも、改めて言ってやる。
「かなめを絶対に守るって言ったことだよ。そんなことを言った俺が、かなめを襲うわけないだろう?」
「……本当に……本当にキスしたりしない?」
「ああ」
「……本当に……あたしを守ってくれるの?」
「ああ」
「絶対……?」
「絶対だ」
 そうやって何度も来るかなめの確認に、やさしく返事を返す。
 すると、しばらく確認を繰り返すうちに、かなめの警戒が解けてきているのが分かる。
 そして――
「えへへ……ありがと」
 俺が守ってくれる人だと確認し終わった途端に、そう言い俺に近づいてきて、体の体重を俺にを預けて甘えだした。
 ……なるほどね。
 泣きながら男心をくすぐり『この子を守りたい』と思わせ――そのあと守ると分かったら、甘えてその気持ちを強めると同時に継続させる。
 しかも多分、この甘えは俺が兄妹だからいきなりこんなスキンシップが激しいけど……他の男と自分の距離感で甘え方も違ってくるんだろうな。
 本当に罪作りなシステムになってるな。ヒステリアモードって。 
 そう感じながらも、
「かなめ。のぼせそうだから、そろそろ出ようか」
 かなめにそう言って、かなめが「いいよ」と承諾したのち、俺たちはお風呂をあとにした。
 ……さて、明日からはどうなるんだろうな。いろいろと。





 
 

 
後書き
感想や間違いの指摘など待ってます!