仮面ライダー エターナルインフィニティ


 

第一話 集うライダー達その一

                                仮面ライダー  エターナルインフィニティ
                                   第一話  集うライダー達
 紅渡はこの時町の中にいた。名護啓介も一緒だ。
 名護はその紅にだ。鋭い目で言った。
「確かにいたな」
「はい、ここにいました」
 紅も鋭い目になり名護の言葉に答える。
「何かがここに」
「いた。しかしだ」
「あれは何だったんでしょうか」
「何だと思う」
 名護は己の隣にいる紅の顔を見ながら彼に問うた。
「あれは」
「少なくとも今出ているグリードじゃないですね」
「そうだな。そしてドーパメントでもない」
「どちらでもないですね」
「あれは。むしろ」
「悪霊だよな」
 キバットがだ。二人の周りに出て来て言う。
「そうした感じの奴だったよな」
「そうだ。あれは悪霊だ」
 名護は確かな声でキバットの言葉に頷いた。
「虚ろな白い姿、そして底知れない悪意」
「それってまんま悪霊の特徴だしな」
「悪霊、それを操る存在か」
「それが僕達の今度の相手でしょうか」
 紅は怪訝な顔になり名護に問い返した。
「グリード以外の」
「そうなのだろうか」
 紅の言葉にだ。名護は顔を顰めさせてだ。
 そのうえでだ。こう言ったのだった。
「違うかも知れない」
「違いますか?」
「この悪霊の様なものは今まで我々が戦ってきた相手とは全く違う」
「それは確かですね」
「そうだ。何もかもが違う」
「物理的な攻撃は効きますけれど」
 しかしだ。それでもだというのだ。
「何かが決定的に違いますね」
「この世界に元からいるのか」
 名護はこうも考えた。
「そして我々の前に来ているのか」
「といいますと」
「あの悪霊は我々の世界のものとは全く違う」
 名護は目を鋭くさせて紅に話す。
「他の世界から来たのではないのか」
「違うとなると一体」
 紅は名護の言葉に首を捻りだ。そうしてだった。
 怪訝な顔になりだ。名護に問い返した。
「他の世界、他の世界から出て来た」
「そうした存在か」
「ディケイドがそれぞれの世界を回りましたけれど」
 紅はこのことからだ。推理していき名護に話していく。
「その世界の何処からか来たんでしょうか」
「その可能性はあるな。だが」
「だが?」
「ライダーのいない世界もある筈だ」
 名護もまた推理を働かせながら話す。
「その世界の何処からか来たのだろうか」
「あの悪霊達は」
「まだ確信はできない」
 決め付けはできない、そうだというのだ。
「しかしだ」
「怪しいですか」
「そう思う。あの悪霊はこちらの世界の存在には思えない」
 それはだ。どうしてもだというのだ。
「ではどの世界から来たのか」
「そうした話になりますね」
「少なくとも今回のこともスサノオは関わっている」
「そうですね。それは間違いありませんね」
 このことは名護だけでなく紅も確信できた。何故ならライダー達が戦う理由はスサノオと戦うことだからだ。それでこのことは確信できたのだ。
 そしてスサノオはあらゆる世界で仕掛けてきている。そのことも知っているからだ。
 名護も紅もだ。スサノオの陰は確信できた。
 それでだ。紅はこんなことも話した。
 

 

第一話 集うライダー達その二

「じゃあ今度あの悪霊が出て来たら」
「その時はか」
「少し調べますか?」
 名護に顔を向けて提案する。
「あの悪霊の何かしらの手掛かりを手に入れて」
「そうだな」
 名護もだ。紅の言葉に頷く。
「そのうえで決めよう」
「そうしましょう」
「ああ、それでだけれどな」
 キバットがだ。また言ってきた。
「ひょっとすると悪霊だけじゃないかも知れないぜ」
「悪霊だけじゃないって?」
「何か他の妙な気配も感じるんだよ」
 そうだというのだ。
「何かな。こっちに来てるな」
「こっちに?」
「とりあえず花鳥に行こうぜ」
 その喫茶店に行こうというのだ。
「あそこにな」
「花鳥に?」
「ああ、そこに他のライダー達の誰かが来てる筈だからな」
 それでだ。そこだというのだ。
「そこで話を聞こうぜ」
「確か今あそこには」
 今度はだ。タツロットも出て来た。そのうえで紅と名護に話すのだった。
「城戸さんと秋山さんがいますよ」
「あの人達がいるんだね」
「そうか。彼等が」
「はい。ですからそこに行きましょう」
 また話すタツロットだった。
「それで情報収集といきましょう」
「それがいいな」
「そうですね」
 名護が最初に言い紅が頷く。
「じゃあ兄さんにも連絡します」
「彼も悪霊達と戦っているのか?」
「ちょっと待って下さい」
 紅は自分の携帯を取り出してそのうえで兄である登太牙に連絡を入れる。そのうえで耳元に当てる。そしてわかったことは。
 彼はだ。電話の向こうの兄に問い返した。
「えっ、そっちには?」
「そうだ。悪霊ではなかった」
「それで出て来たのは」
「妖しい女だった」
 それだったというのだ。女だとだ。
「奇妙な術を使う女だった」
「女!?グリードでも悪霊でもなく」
「女だ。何かに変身することもなかった」
 電話の向こうの登は弟にさらに話す。
「だが力はかなりのものだった」
「そうだったんだ」
「あれは間違いなく只者ではない」
 登はこうも言う。
「言うなら魔人が。実際に俺一人では危うかった」
「兄さん一人では」
「五代さんが来てくれた」
 そのだ。五代の力も借りてだというのだ。
「それで何とか退けたが」
「けれどその女の正体は」
「わからない」
 登の返答は紅が予想したものだった。
「全く。何者かも」
「じゃあ兄さん、とりあえずは」
 どうしたいか。紅は兄に話した。
「花鳥に来てくれるかな」
「あの店か」
「うん、あの店でね」
 集まりだ。そうしてだというのだ。
「話をしよう」
「そうだな。それがいいな」
「じゃあ。僕達も今から行くから」
 こう話をしてだ。そのうえでだった。
 紅は登との電話のやり取りを終えた。そうしてだ。
 携帯を切ってポケットの中に入れてからだ。名護に顔を向けて言った。
「じゃあ今から」
「花鳥に行こう」
「けれど。女ですか」
「それだよな」
 ここでまた言ってきたキバットだった。
 

 

第一話 集うライダー達その四

「俺さっき妙な感じがするって言ったよな」
「それがそうなのかな」
「そうかもな。とりあえず今はな」
「グリード以外にも」
「ああ、ひょっとしたら今回かなり大掛かりに話になるかもな」
 キバットはふとこんなことを言った。言いながら紅の傍をホバリングしている。
「派手な戦いにな」
「その可能性はあるな」
 名護も言う。
「これまで以上にだ」
「折角グリードとの戦いが一段落してきそうなのにですか」
 タツロットはこのことを残念に思いながら話す。
「今度はもっと派手にですか」
「それが僕達の戦いだけれどね」
 紅は自身のライダーとしての運命を受け入れながら話す。
「だから。仕方ないよ」
「そうだよな。スサノオが諦めるか完全に滅ばない限りな」
 どうかとだ。キバットも言う。
「永遠に続くよな」
「それは受け入れるしかない」
 名護もそのことは受け入れていた。既にだ。
 そうしてだった。そのうえでだった。
 彼等は花鳥に向かうのだった。そうしてだった。
 花鳥に着く。その内装よりは広い喫茶店の中を見回すとだ。
 そこにもう登がいた。彼以外にも。
 城戸真司に秋山蓮もいる。二人は紅達が店に入るとすぐに彼等が立っているカウンターの中からだ。こう言ってきたのだった。
「おい、話は聞いてるよな」
「また出て来た」
「はい、今度は女らしいですね」
「それもかなり妖しい」
「俺達も悪霊と戦ってきたところだよ」
「しかしだ。ここでだ」
 城戸と秋山は二人に応えながら話していく。
「そんな訳のわからない女まで出て来てな」
「話はさらにややこしくなってきた」
「そうだ」
 その通りだとだ。ここでカウンターの席に座る登も話す。
「とにかくおかしな女だった」
「それでどうした女だったのだ」
 名護はカウンターに向かいながら登に尋ねる。
 そうして彼の隣の席に座りだ。それからだった。
 まずは城戸と秋山にコーヒーを尋ねてだ。再びだった。
「妖しいことはわかるが」
「ちょっと聞かせてくれるかな」
 紅も登の隣に来た。彼が右で名護が左でだ。登を挟んだ形になる。
 そのうえで彼は紅茶を頼んでだ。兄に尋ねたのだった。
「どんな女だったの?」
「右目に眼帯をしていた」
 登はまずはそこから話した。
「そして白髪を後ろに長く伸ばし」
「白い髪を」
「そうして伸ばしていたのか」
「丈の短い高校生の制服に唐草模様を思わせるストッキングに手袋をしていた」
 ここまで聞いてだ。コーヒーと紅茶を淹れていた城戸と秋山が言った。
「何かそれってよ」
「一度見たら忘れられない姿だな」
「俺もそう思った」
 その女と戦っただ。登自身もそうだというのだ。
「そしてその力はだ」
「力も」
「かなりの強さなのか」
「そうだった。刀を使っていてかなりの腕だった」 
 それこそだ。ライダーとなった登を以てしてもだったのだ。
「ダークキバになっても俺の方が押されていた」
「ダークキバになった兄さんでも」
「そこまで強かったのか」
「五代さんがいなければ」
 そのだ。共に戦った彼がいてくれたからだとも話すのだった。
「退かせることすらままならなかった」
「おい、それって洒落にならないだろ」
「そこまでの強さなのか」
 城戸と秋山もだ。そこまで聞いてだ。
 唸る様に言ってだ。そうしてだった。
「何か悪霊が増えただけでも厄介なのにな」
「また出て来たか」
「それで何者なんだよ、その妖しい女は」
 城戸は腕を組みながら首を捻る。
「まあスサノオが関係してるのは察しがつくけれどな」
「それは間違いないな」
 秋山もそのことについては同意だった。
 

 

第一話 集うライダー達その四

「俺達の前に出て来たのならな」
「だろうな。ドーパメントの次はグリードでな」
「悪霊も出て来たと思ったが」
「今度は女かよ」
「敵が増える一方だ」
「何かよ。このまま増えるとな」
 どうなるか。城戸はまた話す。
「そのうちどうにもならないことになるんじゃねえのか?」
「少なくともそうはさせない為にだ」
 どうかとだ。秋山はコーヒーを淹れながら話す。
「俺達がいるからな」
「だよな。じゃあとりあえずはな」
 どうかとだ。城戸は紅茶を淹れ終わってだ。紅に出してからだ。
 そしてだ。また言うのだった。
「その女とも戦うか」
「それでだが」
 名護はだ。ここまで聞いてだ。
 そのうえでだ。こう登に尋ねた。
「その女は何処に去ったのだ」
「去った場所か」
「そこに案内しなさい」
 いささか命令口調でだ。登に言う。
「そうして実際にまた戦えば色々とわかる筈だ」
「だよな。これまでスサノオが関わって外見が人間の奴ってな」
「いなかったからな」
 城戸と秋山もだ。このことについて指摘する。そうしてだった。
 ここまで話してだ。彼等もだった。
「とりあえず登、いいか?」
「女が去った方に案内してくれ」
「わかった。そこはだ」
 何処なのか。彼が言おうとするとだ。
 不意にだ。城戸の携帯が鳴った。それで出るとだ。
「おい、今どうしている」
「何だ、乾かよ」
「そうだ、俺だ」
 こうだ。乾が彼に携帯で言ってきたのだ。
 それでだ。彼が言うことは。
「今草加や三原と一緒に埼玉アリーナの方にいる」
「そこで悪霊が出たのかよ。それともグリードか?」
「いや、女だ」
 その言葉を聞いてだ。そこにいた全員がだった。
 眉を顰めさせだ。乾の話に注目した。
「女!?」
「まさか」
「片目の白い髪の女だ」
 また言う乾だった。
「その女が出て来て今から戦うところだ」
「御前等三人だよな」
「ああ、とりあえずいけると思うがな」
「今からそっち行っていいか?」
 女の外見まで聞いてだ。城戸は乾にすぐに言った。
「埼玉アリーナの方にな」
「何かあるのか?」
「ああ、あるんだよ」
 あるから行くというのだ。
「だからな。今からな」
「そうだな。女だけじゃない」
 ここでだ。さらにだった。
「悪霊まで出て来た」
「悪霊までかよ」
「俺達三人だけじゃ辛いかもな」
 乾は冷静に分析して述べた。
「悪霊達も出るとな」
「数はどれだけいるんだ?」
 その悪霊の数をだ。城戸は尋ねた。
「一体」
「百、いや二百はいる」
 乾はその数についても答えた。
「かなりの数だな」
「わかった。じゃあ今すぐ行く」
 城戸は乾に対して即答した。
「ちょっと待っていてくれ」
「女は俺達が相手をする」
 乾達でというのだ。
「悪いが悪霊達はな」
「任せろ。それじゃあな」 
 こう話してだった。城戸は携帯を切り自分のズボンのポケットに収めた。それからだ。
 紅達に顔を戻してだ。こう言ったのだった。
 

 

第一話 集うライダー達その五

「おい、それじゃあな」
「そうだな、すぐに埼玉アリーナに行くぞ」
「そこですね」
 秋山と紅が応える。そうしてだった。 
 彼等はすぐに店を出てだ。それぞれのバイクで埼玉アリーナに向かった。バイクを飛ばしその前に来るとだ。既にだった。
 登が言ったそのままの姿の女がだ。三人のライダーと戦っていた。彼等は埼玉アリーナの入り口のところでだ。女と戦っていた。
 仮面ライダーファイズと仮面ライダーカイザがだ。仮面ライダーデルタのフォローを受けながら片目の女と戦っていた。しかしだ。
 ファイズとカイザが正面から攻撃するが。それでもだった。
「甘いわね」
「くそっ、これでも駄目か!」
「今の攻撃も効かないのか」
 ブレイドの攻撃を弾き返されてだ。ファイズとカイザはそれぞれ悔しさに満ちた声を出した。
 そしてだ。デルタもだ。
 その両手に持つ銃で撃とうとする。しかしだった。
 ビームをあえなくかわれた。それを見てだ。
「くっ、またか!」
「無駄だ三原」
 カイザがデルタに対して言う。
「こいつに銃は通じない」
「見切ってるっていうのか!?」
「そうだ。間違いない」
 カイザは女と間合いを取りながら話す。
「こいつは既に見切っているんだ」
「じゃあどうすればいいんだ」
「このまま攻めるか?」
 ファイズが二人のライダーに問うた。
「そうするしかないか?」
「いや、それは駄目だ」
 カイザがすぐにそれは駄目だとした。
「さっきやっても何の効果もなかったな」
「ああ」
「俺達のブレイドではこの女の剣には勝てない」
「そうだな。忌々しいがな」
「こいつは剣の達人だ」
 カイザはそのことをもう把握していた。戦いの中で。
「かといっても下手な距離じゃ銃も見切る」
「じゃあどうすればいいんだよ」
 デルタが二人のすぐ傍まで来て問う。
「このままじゃラチが明かないぞ」
「こっちは三人だ」
 しかしだ。ここでだった。カイザはこう言ったのだった。
「三人いる。相手は一人だ」
「オルフェノクの王と戦った時と同じだな」
 その状況を聞いてだ。ファイズは言った。
「そうだな」
「そうなる」
「じゃあどうするんだ。今は」
「いいか、乾君はだ」
 ファイズを見てだ。カイザは告げた。
「正面からブラスターモードで向かえ」
「あれでか」
「俺は奴の右に回る」
 カイザはそうするというのだ。そしてさらにだった。
「三原、君は奴の左だ」
「三人で囲んでそれでか」
「一斉に攻撃を浴びせる」
 そうするというのだ。
「それでどうだ」
「少なくとも今までよりはいいな」
 ファイズは女を見据えて言葉を返した。
「目くら滅法に仕掛けるよりはな」
「そうだ。この女が何者かは知らない」
 それはカイザにもわからないことだった。
「だがそれでもだ」
「こいつもやっぱり」
「スサノオの縁者だ。間違いなく」
「あら、知っているのね」
 スサノオという名前を聞いてだった。女は。
 悠然とした笑みになってだ。こう三人に言ってきたのだった。
「あの方のことを」
「あの方だと!?」
「ではやっぱり貴様は」
「スサノオの」
「あの方に導かれてここに来たから」
 それでだ。知っているというのだ。
 

 

第一話 集うライダー達その六

「素晴らしい方ね。あの方は」
「糞野郎だ」
 ファイズは女がスサノオを褒め称える言葉を言うのを聞いてだ。
 吐き捨てる様にしてだ。そのうえで言い返したのだった。
「あいつだけはな」
「話は聞いているわ」
 女は三人にこうも言ってきた。彼等の周りには無数の悪霊達が蠢いている。彼等の間合いは間も無くファイズ達を掴めるところにまで達していた。
 その中でだ。女は悠然として言うのだった。
「あの方からこちらの世界のことをい」
「こちらの世界!?」
「今確かに言ったな」 
 まずはファイズとカイザがだ。その言葉の意味に気付いた。
「ということは」
「こいつはやはり」
「そうよ。元々はこの世界の人間ではないわ」
 その通りだとだ。女は言い切った。
「私達の世界では侍がまだいるのよ」
「侍!?」
 デルタがそれを聞いて言う。
「侍がまだいる世界」
「そうよ。その世界から来たのよ」
「言っている意味がわからないな」
 ファイズは女の言葉を聞いてまずはこう言った。
「侍がいる世界。シンケンジャーとかいう連中じゃないな」
「シンケンジャー?」
 その戦士達については女は。
 怪訝な声になってだ。こう言うのだった。
「彼等のことは知らないわね」
「そうか」
「私達の言う侍は生身で刀やそういったものを手にして戦う存在」
「昔ながらの侍だな」
 カイザは女の話を聞いてこう察した。
「そういう存在がか」
「私達の世界の侍よ」
「相変わらず話はわからないが」
 ファイズは女の話を最後まで聞いてまずはこう返した。
「少なくとも御前がこの世界の奴じゃないことはわかった」
「そしてスサノオと関わりがある」
 カイザが指摘したのはこのことだった。
「その二つは確かだな」
「その通りよ」
「じゃあ御前は何者なんだ?」
「私が何者か、というのね」
「そうだ。何者だ?」
「柳生」
 女は名乗った。
「柳生というのよ」
「柳生!?というと」
 柳生と聞いてだ。カイザは。
 いぶかしむ声になってだ。こう女に問い返した。
「あれか。かつて江戸幕府に仕えた柳生家の」
「あの家か」
「確か剣豪も生み出した」
 ファイズもデルタもだ。柳生家のことは知っていた。
「あの家の人間か?」
「まさか」
「しかしこの世界の人間ではない」
 カイザはこのこともだ。話したのだった。
「違う世界の柳生家の女だな」
「そうなるわ。それにね」
「それに?」
「今度は何だ?」
 ファイズとデルタが今の女の言葉に問うた。
「一体」
「何だっていうんだ」
「貴女達が戦っているこの者達は」
 今彼等の前にいるだ。その悪霊そのものの連中のことだ。
「何と呼んでるのかしら」
「悪霊じゃないのか?」
「そうじゃないのかな」
 ファイズとカイザが答える。
「そうとしか思えないんだが」
「違うというのかな」
「悪霊ね。言い得て妙ね」
 その呼び方はだ。女も悪くはないとした。
 

 

第一話 集うライダー達その七

 しかしだ。女はだ。こう言ったのだった。
「けれど違うわ」
「この連中は悪霊じゃなかったのか」
「近いわ」
 近いことは近いとだ。女はデルタに答えた。
「けれど。彼等は悪霊じゃないのよ」
「じゃあ何だ」
 ファイズは女を見据えて問う。その周りには今もだ。その者達が迫ろうとしている。
「この連中は」
「魔獣」
 女はこう言った。
「彼等は魔獣というのよ」
「魔獣!?」
「この連中は魔獣」
「そう呼ぶのか」
「彼等の世界ではそう呼ばれているわ」
 そうだとだ。女は三人のライダー達に答えた。
「彼等はね」
「彼等の世界、か」
 カイザはこのことに反応を見せた。
 そのうえでだ。また女に問うたのだった。
「では御前とこの連中はそれぞれ違う世界にいるんだな」
「その通りよ」
「複数の世界からこの世界に介入してきている」
 カイザはこうも言った。
「そういうことだな」
「頭の回転が速いわね。全てはそのままよ」
「ということはだ」
「スサノオは複数の世界から送り込んできている」
 ファイズとデルタにもだ。このことがわかった。
「そういうことか」
「つまりは」
「そうよ。貴女達も結構頭がいいわね」
「頭が悪ければな」
「とっくの昔に死んでいるからな」
「そうね。それに」
 しかもだとだ。女はまた言った。
 その言葉と共にだ。今だった。
 紅達がだ。この声をあげてだ。
「変身!」
「変身!」
 それぞれその言葉と共にだ。ライダーに変身してだ。
 魔獣達に突き進みだ。薙ぎ倒していくのだった。
 その中でだ。仮面ライダー龍騎になっている城戸がファイズに問うた。
「おい、乾無事か!」
「城戸さんか」
「ああ、無事か?」
「何とかな」
 無事だとだ。乾も彼に応える。
「生きているさ」
「そうか、それは何よりだ」
「詳しい話は後になるな」
 ここでだ。乾は。
 右手をスナップさせてだ。それからだった。
 再び剣を手にしてだ。女と対峙して告げた。
「御前が何者かはわからないがな」
「それでもだというのね」
「御前は敵だな」
「結果としてそうなるわね」
「それにスサノオがいるのなら」
 女の後ろにだ。それならばだというのだ。
「倒す。詳しい話も聞いてやる」
「あの方と戦う為に」
「御前がそれを望むのならそうしてやる!」
 こう叫んでだ。ファイズは。
 順手に持ったその剣、赤い光を出すその剣を振るいだ。
 女に突き進もうとする。その前にだ。
 入力してだ。そのうえでだ。
 その姿を赤く変えた。その姿になりだ。
 女に進む。そのうえで言うのだった。
「これならだ」
「私に勝てるというのかしら」
「少なくとも負けるつもりはない」 
 それはないとだ。ファイズは女に返す。
「だから今この姿になったからな」
「ブラスターモードね」
 女はファイズの今の姿を見てだ。こう言ったのだった。
「今の姿は」
「何っ、知っている!?」
「ファイズのブラスターモードを!?」
 他のライダー達もだ。女の今の言葉にだ。
 このことを察してだ。そうして言ったのだ。
「やっぱりスサノオからか」
「聞いていたんだな」
「そうよ。貴方達のことは全てね」
 女は魔獣達と戦う龍騎とナイトにも話してきた。
 

 

第一話 集うライダー達その八

「わかっているわ」
「仮面ライダーのこともか」
「全て」
「知っているわ。そしてね」
 女はファイズと戦いながらだ。そのライダー達に話してきた。
「私とこれ以上戦いたければ」
「どうしろというんですか?」
 仮面ライダーキバが女に尋ねた。
「そうしたければ」
「私達の世界に来ることね」
 悠然と笑ってだ。女はライダー達にこう告げてみせた。
「そちらにね」
「御前達の世界にか」
 仮面ライダーイクサが女の言葉に対して返した。彼はライジングモードになりそのうえで魔獣達と戦っている。
「来いというのか」
「そうよ。来ることね」
 悠然と笑ったままだ。女はライダー達にまた言う。
「そうすることね」
「それは誘いだな」 
 仮面ライダーサガ、登が言った。
「そう思っていいな」
「ええ、そうよ」 
 その通りだとだ。女も悪びれずに返す。
 そのうえでだ。ファイズ達を見て言うのだった。
「さて、今から来るわね」
「その通りだ」
「ここで決めさせてもらう」
 彼女の左右にそれぞれついたカイザとデルタが答える。
「この状況ならだ」
「倒せない筈がない」
「確かにね。このままだとね」
 女も彼等を目だけで見回しながら返す。
「危ういわね」
「だから言ってるだろ」
 ファイズがさらに攻撃を仕掛けながら女に言う。
「御前はここで倒す」
「敵は少しでも少ない方がいい」
「どうせ御前以外にもいるんだからな」
「話を聞きたいとは思わないのね」
 女はファイズのその攻撃を己の剣で受け止めながら三人に返した。既にjカイザとデルタも攻撃に入っている。今まさに三人の同時攻撃がはじまろうとしていた。
 その中でだ。女は言うのだった。
「私達の世界のことを」
「生憎な。そんなつもりはないからな」
 ファイズが女に対して返す。
「どうせこれ以上話すつもりはないんだろう」
「確かに。それはその通りよ」
「それに御前がこっちの世界に来られるんならな」
 そこからだ。ファイズも察したのだ。
「俺達も御前の世界に来られるな」
「この魔獣達だったな」
「この連中のいる世界にも」
「その通りよ。貴方達仮面ライダーは」
 女は平然としてだ。彼等に話してみせる。
「私達の世界にも来られるから」
「そういうことだな。それならな」
「ここでだ」
「倒させてもらう」
 三人同時に言ってだ。そのうえでだ。
 カイザがだ。二人に言った。
「あれで決めるぞ」
「あれでか」
「一気になんだな」
「この女にはあれしかないだろうからな」
 それでだ。ファイズとデルタに話してだ。そうしてだった。
 三人のライダー達は同時にだった。
 それぞれのポインターでだ。ロックオンした。
 赤、黄、そして青の三つの光の円錐が女に突き刺さる。それでだった。
 三人同時に跳びだ。蹴りを浴びせにかかってきた。
「面白い攻撃ね」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!」
 叫び声を挙げながらだ。攻撃を浴びせる。しかしだ。
 女はそれを受けはしなかった。微笑んでからだ。
 

 

第一話 集うライダー達その九

 姿を消してしまった。後に残ったのは。
 声だけだった。女の声が攻撃を空振りさせ空しく着地した三人に届いた。
「流石ね。それを受けたら私も危うかったわ」
「くっ、逃げたか」
「ええ、そうさせてもらったわ」
 女の声が何とか体勢を立て直しながら歯噛みするカイザに応えてきた。
「仮面ライダー、噂通りね」
「出て来い!」
 デルタが顔をあげて女に叫ぶ。
「俺だってやられっぱなしじゃいられるか!」
「だから。今倒される訳にはいかないのよ」
 女は姿を出さない。しかしだ。
 それでも声だけがしてだ。ライダー達に対して言うのだった。
「どうしても私を倒したければ」
「そっちの世界に来い」
「そういう解釈でいいのかな」
「その通りよ。待っているわ」
 楽しむ声でだ。女は告げてだ。
 やがて気配も全て消えた。後に残っていたのは。
 ライダー達だけだった。既にだ。
 魔獣達も倒されるか消えていた。それを見てだ。
 ファイズが最初に変身を解いた。そうして乾巧本来の姿になりだ。
 そのうえでだ。同じく変身から戻っていた草加雅人、三原修二にだ。こう声をかけたのだった。
「あいつの世界に行くか?」
「そうだな。そうするか」
「向こうから言ってるんだしな」
 草加と三原もだ。乾のその言葉に応える。
「今は行き方がわからないにしても」
「そうしてあいつを倒さないとな」
 こうだ。二人が話しているとだ。
 彼等の目の前にだ。白い小さな生き物が出て来た。
 猫と兎を合わせた様な姿をしている。目が赤く耳は尻尾の様になっている。その謎の生きものが出て来てだ。彼等に言ってきたのだった。
「君達はあっちの世界よりこっちの世界に来て欲しいんだけれどね」
「何だ御前は」
「僕はキュウべえっていうんだ」
 こうだ。この生きものは名乗ってきた。
「あの魔獣達がいる世界の者なんだよ」
「魔獣達の?」
 既にライダーから戻っている紅がその言葉に問い返してきた。
「あの連中のことを知ってるんだ」
「うん、知ってるよ」
 この生きものキュウべえは己の身体を猫の様に舐めながら紅の問いに答える。
「けれどあの女のことはあまり知らないよ」
「それでも魔獣達のことは知ってるんだよね」
「僕達の世界のことだからね」
 だからだとだ。キュウべえはまた答えた。
「ずっと戦ってきてるしね」
「色々と聞きたいことがあるんだけれどな」
 城戸もキュウべえに尋ねる。
「いいか?話を聞かせてもらってな」
「うん、その為にここに来たんだしね」
 キュウべえは城戸の問いにまた答える。
「何でも聞いてよ。魔獣のことなら」
「それではだ」
 ここまで話を聞いてだ。秋山も言った。
 そのうえでだ。ライダー達は。
 それぞれの仲間達に連絡をする。そうしてだった。
 レストランアギトに集るのだった。それからだった。
 白い店の中でだ。キュウべえの話を聞くのだった。
 キュウべえはそれぞれの席に座る戦士達にだ。こう話すのだった。
「まずは僕達のことを話そうか」
「僕達?」
「僕達というのか?」
「うん、そうだよ」
 まずはこうライダー達に話すのだった。
「僕達だよ」
「おかしい表現だな」
 葦原涼がアギトの面々が座るテーブルにいるキュウべえに言い返した。
「あんたは見たところ一匹だが」
「それでも僕達なんだよ」
「あんた達は何匹もいるのか?」
「そうなんだ。僕達は固体はそれぞれだけれど一つの目的の為に動いてるから」
 だからだというのだ。
「僕達なんだ」
「何かそうした話を聞くと」 
 葦原と同じ席にいる氷川誠も言う。
「君達って群生生物みたいなんだけれど」
「そう考えてもらっていいよ」
 無表情そのものにだ。キュウべえは氷川の言葉にも応える。
 

 

第一話 集うライダー達その十

「その通りだしね」
「何だよ、それ」
 その話を聞いてだ。こう言ったのは。
 剣崎一真だった。彼は仲間達と共に別の席にいる。
 だがその席でこう言ってだ。首を傾げるのだった。
「頭の中身は同じなのか?」
「身体は違うけれどね」
 その剣崎にも話すキュウべえだった。
「そうなってるんだよ」
「そうなのか」
「話わかってくれたんだね」
「大体だけれどな」
 わかったと。剣崎も返す。
 それを見てからだ。キュウべえはライダー達に話を再開した。
「それでだけれど」
「ああ、それでだよ」
「まずはあんたがどうやってここに来てるか」
「それを聞きたいんだけれどな」
「僕は門を通って来てるんだ」
 そうして行き来しているとだ。キュウべえは話す。
「それぞれの世界の門をね」
「あれか」
 今度言ったのは門矢士だった。
「それぞれのライダーに行き来していたあの様なものか」
「あれっ、僕達の世界だけじゃないんだ」
「あの女の世界も含めてだ」
 門矢はキュウべえにこう話す。
「俺達はそれぞれの世界を行き来して戦ってきた」
「それなら話は早いよ。この門のことを知っているのはあちらの世界じゃ僕とあの魔獣達だけなんだ」
「それとスサノオだね」
 野上良太郎がこう言う。
「スサノオが世界を通しているかどうかはわからないけれど」
「それは僕も知らないけれど」
 キュウべえも知らないことがあるというのだ。
「とにかく門はね」
「それ何処にあるんだよ」
 城戸が門の場所を尋ねる。
「それがわからないとどうしようもないだろ」
「門の場所はね」
 それは何処にあるかというと。
「いつも急に出て来るから」
「門が出て来てか」
「その都度移動する?」
「それぞれの世界に」
「そうした理屈か」
「つまりあれだな」
 ここまで話を聞いてだ。左翔太郎は自分の席で腕と脚を組んだ状態で話した。
「スサノオがその都度俺達をその世界に行かせるんだな」
「ふうん、スサノオってそういうことをするんだね」
 キュウべえはこのことははじめて知ったという感じだった。
「それは知らなかったよ」
「あいつはそうした奴だ」
 今言ったのは天道総司だった。
「俺達と戦い。色々と仕掛けてだ」
「そうして?」
「俺達がそれをどう防ぐのかを見て楽しみにしている」
「楽しみねえ」
 キュウべえはそのことについてはだ。
 首を傾げさせだ。無表情のまま話す。
「僕にはわからないね」
「楽しみがわからないのか」
「僕達には感情がないんだ」
 そうだとだ。キュウべえは天道だけでなく他のライダー達にも話す。
「だから。そうしたことはわからないんだ」
「そうなのか」
「そうなんだ。それはわかっておいてね」
 あらためて話すキュウべえだった。
「けれど少なくとも君達の敵じゃないし」
「隠していることはあるのかな」
 今言ったのは草加だった。
「君はどうも何かを隠すタイプの様だが」
「隠せたら隠すけれど」
 その場合はそうすると。このことは否定しないキュウべえだった。
 だがそれでもだ。今はだというのだ。
「君達には隠せないみたいだね」
「隠してもすぐに見破ってみせるさ」
 北岡秀一はこのことを堂々と告げた。
 

 

第一話 集うライダー達その十一

「伊達に敏腕弁護士をやってる訳じゃないからな」
「だよね。隠しても何にもならないし」
 キュウべえは既にライダー達を見抜いていた。彼等は戦闘力だけでなく頭脳においてもかなりのものだということをだ。
「隠さないよ。僕の知ってる限りのことを話すよ」
「それでどうなっているんだ?」
 響鬼もまたキュウべえに尋ねた。
「スサノオは色々な世界に介入しているみたいだけれどな」
「少なくとも僕の世界の魔獣はスサノオが後ろにいるんだ」
 キュウべえはまずはこのことから響鬼に話す。
「それとあの女にもそうみたいだね」
「魔獣を操ってその世界のか」
「仮面ライダーに挑んでいる」
「そうなのか?」
「僕達の世界には仮面ライダーはいないよ」
 それは否定するキュウべえだった。
「魔法少女はいるけれどね」
「魔法少女?」
「何だ、そりゃ」
「女の子が戦ってるのか?」
「僕達の世界ではそうだよ」
 彼等の世界ではだ。そうだというのだ。
「仮面ライダーはいないけれど魔法少女が戦ってるんだ」
「あの魔獣達とか」
「そうしてるのか」
「そうだよ。それで君達が僕達の世界に来る時になったら」
 その時こそはと。キュウべえは話す。
「門が開くから。それまでは待っていることだね」
「待つまでもないだろうな」
 今言ったのは橘朔也だった。
「スサノオはいつもあちらから仕掛けて来る」
「そうですよね。あちらから来るからこそ」
「門もすぐにやって来る」
 橘は剣崎にも話す。
「すぐにだ」
「じゃあその時にその世界に入って」
「あちらの世界のスサノオの企みを潰す」
 橘は己の考えを淡々と話していく。
「そうするべきだ」
「ええ、それじゃあ」
「ううん、やっぱり仮面ライダーは頭がいいみたいだね」
 キュウべえにもこのことはよくわかった。
「僕があれこれ言う必要はないみたいだね」
「あいつと戦いはじめてかなりになるからな」
 秋山がそれが何故かを話す。
「そのやり方は知っている」
「だからなんだ」
「それに俺達が全員城戸みたいならだ」
 何気に向かい側の席に座る城戸のことも話す。
「とっくに死んでいた」
「おい、俺が馬鹿だっていうのかよ」
「違うのか?」
「くそっ、こんな時でもそう言うのかよ」
「まあ。そっちの赤いライダーの人はね」
 キュウべえは秋山に言われて少し怒った城戸を見て言った。
「直情的な性格みたいだけれど頭はそこまで悪くないと思うよ」
「あれっ、わかるのか?」
「うん。だって頭が悪いとそれこそすぐに死ぬからね」
 だからわかるというのだ。
「ある程度の頭はあるよ」
「だよな。俺これでも大学だって出てるしな」
「とりあえず。僕の説明は不要な位皆頭はいいね」
「そうだよ。頭が悪いと今頃死んでたよ」
「じゃあ。まあ僕は暫くここの世界にいるから」
 キュウべえは断る様にして話す。
「僕のわかる限りのことなら話すからね」
「わかった。ではまずはだ」
 天道が言う。
「その開いた門に入るとしよう」
「それにしても何か大変なことになってきたな」
 城戸は腕を組んでこう言った。
「スサノオが他の世界にもちょっかいかけてることはわかってたけれどな」
「それが仮面ライダーのいる世界にもだからな」
 今言ったのは相川始だ。
「他の戦士達にもそうしていたとはな」
「全く。暇な奴だ」
 秋山は表情を変えずにこう言った。
「何かとな」
「全くですよ」
 良太郎は少しぼやいてる感じになっている。
「あちこちの世界に関わってるんですね。本当に」
「問題はどれだけの世界に関わっているかだね」
 フィリップが考えるのはこのことだった。
「果たして幾つの世界に関わっているのか」
「多分関わっているのはあの二つの世界だけじゃない」
 天道はこう見立てた。
「おそらく。俺達の今度の戦いはだ」
「それだけに長く激しいものになる」
「そういうことか」
「戦いははじまったばかりだな」
 響鬼は少し気さくな感じで話した。
「じゃあ。気長にいくか」
「何か余裕だな」
「あれこれ深刻に考えても仕方ないさ」
 その気さくな笑みでだ。響鬼は乾にも返した。
「戦うことは変わらないんだからな」
「それはその通りだな」
「だからな。油断は禁物だが気楽にいこう」
 また言う響鬼だった。
「鍛えていってな」
「何か違うね」
 キュウべえは響鬼の言葉を聞いてだ。
 右の後ろ足で頭の後ろをかきながら言った。
「魔法少女達と」
「何が違うんだ?」
 今問い返したのは小野寺ユウスケだった。
「俺達とその魔法少女の何処が」
「強いっていうかね。割り切ってるよね」
 そこが違うというのだ。
「魔法少女達は諦めって言うかね。そういうのがあるんだけれどね」
「魔法少女がどういった存在かはまだよく知らない」
 門矢はまずはこう言った。
「しかしだ。俺達はだ」
「仮面ライダーは?」
「ライダーになった理由は様々だ」
 それこそ人それぞれだ。血の問題だったり運命的なものだったり自分で選んだりだ。だが共通しているものはあるのだった。
 それは何か。門矢は話すのだった。
「だがライダーは何があろうと。例え死のうと」
「ああ、それは聞いてるよ」
 キュウべえは門矢の今の言葉にすぐに言葉を入れた。
「君達は例え死んでも何度でも蘇るんだったね」
「そしてスサノオと戦う」
「それが君達の運命だったよね」
「俺達はその運命を受け入れている」
 そうだというのだ。
「人間としてスサノオと戦う運命をだ」
「人間としてなんだね」
「そして人間だからだ」
「人間だから?」
「だからこそ仮面ライダーだ」
 そうした意味もあるというのだ。
「だからだ。どの世界でも俺達はライダーとして人間としてだ」
「戦うんだね」
「そうさせてもらう」
 こうした話をしてだ。彼等はだ。
 戦いに向かうことをだ。キュウべえに告げたのだった。
 仮面ライダー達の戦いがまたはじまった。それは彼等にとってこれまでの長い戦いに匹敵する激しい戦いになる。彼等もこのことを予感していた。


第一話   完


                      2011・8・13
 

 

第二話 にゃんぱいあその一

                          第二話  にゃんぱいあ
 ライダー達はあらゆる世界に赴きスサノオと戦う決意を固めた。しかしだ。
 そのそれぞれの世界への門はまだ開かれていなかった。そしてだ。
 あの女も魔獣達も出て来なかった。この事態には。
 彼等はだ。少し拍子抜けしたものを感じていた。 
 それは五代雄介も同じでだ。パートナーであり親友でもある一条薫にだ。こんなことを話していた。
「今のところは何よりですね」
「その魔獣達が出て来なくてか」
「ええ。平和が一番ですから」
 屈託のない顔でだ。一条に話すのだった。
「何よりですよ」
「しかしだ」
 それでもだとだ。一条はその屈託のない笑顔の五代に話す。
「安心はしていられない」
「はい、スサノオは絶対に仕掛けて来るからですね」
「話は聞いた」
 その五代からだ。キュウべえの話を聞いたというのだ。
「そのキュウべえだな」
「本当の名前はインキュベイダーというらしいですね」
「仮面ライダーのいない世界でもスサノオは仕掛けてきている」
「そうです。人間に戦いを挑んでいるんです」
「あいつが他の世界にも仕掛けていることは知っていた」
 ディケイドの頃にだ。それは判明していた。
 しかしだ。この現実についてだ。一条は話すのだった。
「だが。仮面ライダーのいない世界にもか」
「スサノオは介入してきていたんですね」
「そうしていたとはな」
 一条が言うのはこのことだった。真剣な面持ちで話す。
「それは考えていなかったな」
「そうですよね。仮面ライダー以外にもですか」
「人間ならばか」
 一条はここでこう言った。
「仮面ライダーでなくとも挑んでいるのか」
「若しかしてスサノオは」
 五代は笑顔から考える顔になってだ。一条にこう述べた。
「あれですかね」
「いえ、門矢君が人間ならって言ってまして」
 そこからだ。考えての言葉だった。
「そこから思ったんですけれど」
「どうだというのだ?」
「人間であれば仕掛けてくるんじゃないでしょうか」
 そうしているのではないかとだ。五代は言うのだった。
「それでなんじゃ」
「人間だからか」
「はい。仮面ライダーは人間ですよね」
「そうだ。人間だ」
 このことはだ。一条も五代と長い間共に戦い生きてきて五代という人間を見てきてだ。このことがよくわかっていた。
「御前は姿が変わるがそれでも人間だ」
「そうですよね。ですから」
「仮面ライダーは人間だ」
 このことはだ。一条は断言した。
「紛れもなく人間だ」
「その人間ならどんな戦士も仕掛けてくるんじゃないでしょうか」
「退屈を紛らわせる為」
 これが大きかった。スサノオにとっては。
「そして人間という存在を見る為にだな」
「だから仕掛けているんじゃないでしょうか」
「そうだろうな」
 五代の言葉にだ。一条も頷いた。
「言われてみればだ」
「そいう考えるのが妥当ですよね」
「スサノオはそうした存在だ」
 一条もだ。スサノオについては熟知していた。長い戦いの中で。
「人を見たいのだ」
「あえて仕掛けてですか」
「最初は違っていたのだろう」
 そしてこうも言うのだった。
「まだ。ショッカーの初期はな」
「あの頃はですか」
「おそらく真剣に世界征服を考えていた」
「その頃はですね」
「そうだ。しかしだ」
「それがどうして変わったんでしょうか」
「仮面ライダーと戦い」
 そのショッカーはだ。ライダーと戦い続けていた。
 

 

第二話 にゃんぱいあその二

 そしてだ。そこでだった。
「おそらく。時期的には仮面ライダーニ号が出て来てから」
「確かかなり最初ですよね」
「そうだったな。仮面ライダー一号が欧州に経ち」
 ショッカーとの激戦の中で、である。
「仮面ライダー二号が日本に残ってから」
「あの頃にですか」
「スサノオの考えが変わった様だ」
 その辺りからだというのだ。
「二人の仮面ライダーと戦い」
「そうして」
「仮面ライダー、ひいては人間を見ていてだ」
「世界征服の考えを変えたんですか」
「表向きは違っていた」
 ショッカー、ひいてはバダンまでだ。その考えは同じだった。
「世界征服のままだった」
「けれどそれは」
「あくまで表向きだ」
 それだけのことだったというのだ。
「それだけだった」
「では実は」
「仮面ライダーとの戦いを楽しむようになっていた」
 そうなっていたとうのだ。スサノオは。
「その証拠に作戦もだ」
「戦いのそれがですか」
「世界征服の為の作戦ではなくなってきていた」
「ですね。言われてみれば」
 五代もだ。一条のその話を聞いてだ。
 考える顔になりだ。こう述べた。
「最初は世界征服の作戦ばかり立てていたのに」
「変わってきたな」
「ライダー打倒の。つまりは」
 ライダー打倒は題目に過ぎない。では真の目的は。
「ライダーに罠や強敵をぶつけてですね」
「それをライダーがどう潜り抜けるか」
「それを見て楽しむ様になっていったんですね」
「それは御前もわかるな」
「はい」
 一条の今の問いにだ。五代はそのライダーとしてだ。こくりと答えた。
 そすいてだ。こうも言ったのだった。
「俺も。もうすぐで究極の闇になりましたし」
「一歩間違えれはな」
「グロンギ達との戦い自体が罠でしたから」
 既にだ。五代も一条もこのことを把握していた。
 それでだ。五代も今言うのである。
「クウガとして彼等と戦い」
「人間として戦い」
 一条はクウガ、ひいては仮面ライダーを定義付けて話す。
「そしてだ」
「その戦いの中でグロンギになるのか」
「人間であり続けるのか」
「それを見ていたんですね」
「ン=ダグバ=ゼバはスサノオの分身の一つだった」
 一条はまた指摘した。
「そのこともだ」
「はい、アークオルフェノクやワイルドジョーカー、キュリオスやカイも」
 彼等は全てだ。スサノオの分身だというのだ。
「全てスサノオだからだ」
「あいつはその都度俺達に仕掛けていたんですね」
「人間が自分の仕掛けた罠にどうするのか」
 一条はまた話す。
「どう切り抜けるのかをだ」
「見る為に」
「仕掛けてきている」
「そしてそれは仮面ライダーに対してだけじゃなかったんですね」
「他の世界の戦士達」
 まだ姿も名前も知らない。彼等もまた。
「彼等に対してもだ」
「あのキュウべえの話だと」
 五代はここでキュウべえの話を思い出してだ。一条に話した。
「あれですよね。魔法少女達が戦っているって」
「女の子もその対象の様だな」
「確かに女の子も戦いますけれど」
 女の仮面ライダーもいる。ならば否定できないことだった。
 

 

第二話 にゃんぱいあその三

「それでなんですね」
「そうだな。スサノオにとって性別は意味のないものか」
 彼はあくまで人間を見ている。だからだというのだ。
「結局は」
「あくまで人間を見てですか」
「仕掛けてきているのだ」
「それで他の世界にも」
「仕掛け。そして見ている」
 一条の言葉はシビアなものになってきていた。
「俺達をだ」
「人間そのものを」
「世界征服もおそらくは退屈を紛らわせる為だった」
「あの牢獄に囚われたままだから」
「あの牢獄はだ」
 一条はスサノオが囚われている牢獄の話もした。
「そう出られるものではない」
「ツキヨミがその全てを賭けて築いたあれは」
「そうだ。出られはしない」
 神であるスサノオを以てしうても。それは非常に困難であるのだ。
「だからこそ今もあの場所にいる」
「その中で何もすることができなくて」
「ああして仕掛けているのだ」
 人間に対して。そうしているというのだ。
「それがスサノオだ。奴は飽きるまでそうするだろう」
「厄介な話ですね」
「厄介だ。だが」
「だが?」
「人間自体がそうなのだろう」
 一条はさらに考える顔になり右手に手を当ててだ。
 そうしてだ。こう五代に話したのだった。
「人間は常に試練が前にありだ」
「それを乗り越えるものなんですね」
「そうだ」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「だからだ。我々はだ」
「スサノオを憎んだら目が曇りますよね」
「スサノオの出して来る罠を乗り越えていく」
 そうするというのだ。憎しみを抱かずだ。
「永遠にだ」
「仮面ライダーは死ぬことができませんし」
 もっと具体的に言えば死のうが何度でも蘇る。黒衣の青年なりスマートレディがそうするのだ。そしてスサノオもライダー達が永遠に死ぬことは望んでいないのだ。
 それがわかっているからだ。五代もだった。
 前を向いてだ。一条に話した。
「俺、戦うことは嫌いです」
「それでもだな」
「はい、罠には打ち勝ちます」
 そうするというのである。
「絶対に」
「そうだな。それではな」
「一条さんもですね」
「そうする」
 これが一条の言葉だった。
「あの時と同じ様にな」
「すいません」
「何、いい」
 戦うことはだ。いいと答える一条だった。
「あの時に全ては決まっていたからな」
「グロンギとの戦いの時にですか」
「そうだ。決まっていた」
 彼にしてもだ。そうだというのだ。
「共に戦うのはな」
「けれど一条さんは」
「俺は人間だ」
 仮面ライダーでなくともだ。それだというのだ。
「俺は人間だからな」
「それで、ですね」
「そうだ。戦う」
 また答える一条だった。
「仮面ライダーと共にな」
「そうしてくれるんですか」
「死ぬな」
 今度はこう五代に告げた。
 

 

第二話 にゃんぱいあその四

「いいな。絶対にな」
「わかってます。例え何度も生き返らなければならないにしても」
「死ぬな。俺も死なない」
「はい、俺は死にません」
「そうしてこの戦いも最後まで生きよう」
「そうしましょう」
 こう二人で話してだ。戦いのことを誓い合うのだった。その二人のところにだ。
 二本足で歩く黒猫が来た。それだけでも異様だが。
 背中には蝙蝠の翼がある。その猫を見てだ。
 五代がだ。最初にこう言った。
「ファンガイアですかね」
「そうかもな。若しくはあの一族か」
「そうした感じですよね」
 最初彼等はこう考えたのだった。
「彼等との戦いは終わりましたけれど」
「では安心していいか」
「ですよね。特にね」
「警戒する必要はないか」
 こう考えたのだった。しかしだ。
 ここでだ。その一風変わった猫は。
 五代の足下に来てだ。こう言ってきたのだ。
「血ィくれにゃ」
「血!?」
「そうだにゃ。血ィくれにゃ」
 こう五代に言うのである。
「喉が渇いたにゃ。血が欲しいにゃ」
「血が欲しいってまさか」
「この猫は」
 猫の言葉にだ。五代だけでなく一条もだ。
 目を瞠ってだ。そして言うのだった。
「吸血鬼!?」
「バンパイアの猫か!?」
「んっ?僕を知ってるのかにゃ?」
 その猫も猫でだ。こう彼等に返す。
 そしてだ。こう名乗るのだった。
「僕はにゃんぱいあにゃ」
「にゃんぱいあ」
「それが君の名前か」
「そうだにゃ。とにかくにゃ」
 ここでだ。その猫にゃんぱいあはさらに言うのだった。
「早く血を寄越すにゃ」
「血を」
「それを」
「どうします、それで」
「そうだな。血と言われても」
 二人も咄嗟にはどうしていいかわからない。しかしだった。
 たまたまだ。二人の目の前にだ。
 漢方薬の店があった。その店を見てだ。
 一条がだ。五代に対して言った。
「あの店がいい」
「あの店に入ってですね」
「血を貰おう」 
 店でだ。買うというのだ。
「漢方薬なら血もある筈だからな」
「それでなんですね」
「そうだ。血は」
「血なら何でもいいにゃ」
 にゃんぱいあがまた五代の足下から言う。
「とりあえず喉が渇いたから欲しいんだにゃ」
「そうか、わかった」
 一条もだ。にゃんぱいあの言葉を聞いてだ。
 そのうえでだ。店に入りだ。
 そうしてすっぽんの、ドリンク扱いになっている生き血を買ってにゃんぱいあに渡す。それを飲んでだ。
 にゃんぱいあは満足した顔でだ。二人に言った。
「有り難うだにゃ。お陰で落ち着いたにゃ」
「それはよかったね」
「そうだな」
 二人もまずそれはよしとした。
 だがだ。ここでだ。
 二人はあらためてだ。にゃんぱいあに尋ねたのだった。
「君は一体何なのかな」
「何故猫なのに吸血鬼なのだ?」
「それで飼い主は」
「そうした人はいるのか」
「飼い主はいるにゃ」
 それはいるとだ。にゃんぱいあは素直に答える。
「とても可愛い女の子にゃ。そこに弟と一緒にいるにゃ」
「成程。飼い猫か」
「それは間違いないか」
「あと血が好きなのは」
 それはどうしてかとだ。にゃんぱいあはさらに話す。
 

 

第二話 にゃんぱいあその五

「僕は最初普通の猫だったにゃ」
「普通のか」
「猫だったのか」
「子猫の頃は捨て猫で」
 このことから話すのだった。
「それで死にそうな時に親切な人に助けてもらったにゃ」
「まさかその親切な人が」
「まさか」
「血を飲ませて助けてくれたにゃ」
 話を聞くうちにいぶかしむ顔になる二人にだった。
 にゃんぱいあはだ。さらに話してきた。
「それで今の僕がいるにゃ」
「吸血鬼の血を飲めば吸血鬼になる」
「それは猫もだったのか」
「とりあえず僕はそれで助かったにゃ」
 にゃんぱいあはにこりと笑って話す。
「あの親切な人のお陰だにゃ」
「その吸血鬼が誰かはわからないけれど」
「それは」
「んっ、何かあるにゃ?」
「あるよ」
「おそらくはだが」
 一条と五代はすぐににゃんぱいあに話した。そうしてだ。
 二人は顔を見合わせだ。こう話し合うのだった。
「それじゃあまずは」
「皆に話を聞いてもらうか」
「はい、そうしてですね」
「このことについての話を聞こう」
 こうしてなのだった。彼等は。
 すぐに連絡がつく仲間達に連絡を取ってだ。集ってもらった。その場所は。
 城南大学だった。その研究室にだ。
 皆が集ってだ。そうしてだった。
「この猫が?」
「吸血鬼ですか」
「まさかと思いますけれど」
「確かに翼もありますし」
「普通の猫じゃないのは」
「すぐにわかりますね」
 こう話していくのだった。そうしてだ。
 椿秀一がだ。こんなことを一条に話した。
「この猫はな」
「何かわかったか?」
「確かに吸血鬼だ」
 こう話すのである。
「それは間違いない」
「それはわかったのか」
「ただし生物学的にはだ」
 その観点からはどうかというのだ。
「翼がある以外は他の猫と変わりがない」
「それは同じか」
「ああ、同じだ」
 そうだというのだ。
「何処もおかしなところはない」
「じゃあ食べものは」
「何でも食べるにゃ」
 机の上に二本足で立つにゃんぱいあが自ら言う。
「特に苺とか赤いものが大好きだにゃ」
「苺!?」
 その言葉に目を顰めさせたのは沢渡桜子だった。
 それでだ。こうにゃんぱいあに尋ねたのだった。
「苺が好きなの」
「あとトマトも好きにゃ」
 にゃんぱいあは実に楽しそうに桜子に話す。
「トマトをたっぷりと使ったナポリタンなんか最高だにゃ」
「ナポリタンって」
 榎田ひかりもこれにはだった。
 いぶかしむ顔になりだ。こんなことを言った。
「猫が食べるものかしら」
「そこがかなり変わっていますよね」
「本当に猫なのかどうか」
 椿はこのことを指摘した。しかしだった。
 それでもだ。こう言ったのだった。
「しかし調べた結果は」
「生物学的にはですか」
「そうだ。猫だ」
 そうだとだ。彼は五代にも話した。
「間違いなく猫だ」
「血を吸わなくても生きていくことはできるにゃ」
 またにゃんぱいあが自分のことを説明する。
 

 

第二話 にゃんぱいあその六

「ただ。血を吸うと喉が渇かなくなるにゃ」
「お水は飲むの」
「勿論飲むにゃ」
 またひかりの言葉にそうだと話す。
「けれど血は大好きにゃ。身体が自然と求めるにゃ」
「この辺りは確かに吸血鬼ですね」
「そうよね」
 桜子とひかりもこのことは間違いないと言う。しかしだった。
 それでもだ。彼女達から見てもなのだ。
「それでも生物学的には」
「猫だから」
「それなら猫だな」
 一条はここでは生物学的な見解から判断して述べた。
「間違いなくな」
「そうですね。確かに食べものの好みは独特ですけれど」
 五代もこのことには引っ掛かるものがあった。しかしだった。
 それでもだ。生物学的にはだと聞いてだった。彼もこう判断するのだった。
「猫ですね」
「そうだな。猫だな」
「翼はありますけれど」
「しかし。この翼を使って」
 一条は今度はにゃんぱいあの翼を見た。黒い蝙蝠の翼をだ。
 その大きさを見てだ。彼は言うのだった。
「あまり飛ぶことはできそうにもないが」
「飛ぶことは好きでないにゃ」
 にゃんぱいあ自身もそうだという。
「歩く方が好きだにゃ」
「やっぱり猫だな」
「確かにそうですね」
 椿と五代がそんなにゃんぱいあの話を聞いてこのことを再確認した。
「間違いなくな」
「よく見たら仕草や行動も猫そのものですし」
「だとすると問題は」
「この子を吸血鬼にしたその吸血鬼が何者か」
「それが問題だな」
「そうなりますね」
 こう話してだ。話の重点が移っていった。
 そのだ。彼に血を与えた吸血鬼が誰か。五代が彼に尋ねた。
「あの、ちょっと教えてもらえるかな」
「何だにゃ?」
「君を吸血鬼にしたのは誰かな」
「あの時僕を助けてくれた人にゃ?」
「そう。それは誰かな」
「通りすがりの人だったにゃ」
 これだけを聞くと門矢の様だ。しかしだった。
 そこからさらにだ。五代はにゃんぱいあに尋ねたのだった。
「外見は?」
「黒いタキシードにマントだったにゃ」
「それだけを聞くと」
「そうですね」
「標準的な吸血鬼に聞こえるわね」
 椿に桜子、ひかりはだ。こう思った。
 そしてだ。にゃんぱいあはさらに話すのだった。
「金髪に青白い肌に赤い目だったにゃ」
「完璧だな」
「ドラキュラ伯爵そのままですし」
「それならよね」
 三人はここで確信したにゃんぱいあに血を与えたのは間違いなく吸血鬼だとだ。わかってはいたがこのことを再認識したのである。
 しかしだ。それ以上にだった。彼等はだ。
 その外見を全て聞いてだ。こうも話した。
「だが。そうした外見の吸血鬼は」
「そうですね。この世界には今はもう」
「いないか。休息に入っているか」
 ファンガイアはいるがだ。そうした吸血鬼はというのだ。
 いない。それならばだった。
「では別の世界の住人か」
「この子も含めて」
「あの謎の女や魔獣達と同じ様に」 
 それではないかというのだ。そう話してだった。
 

 

第二話 にゃんぱいあその七

 あらためてだ。彼等は。一つの結論を出したのだった。
「間違いなくだな」
「はい、この子もまたです」
「別の世界から来たわね」
「そうだな」
 一条もだ。三人のその言葉に頷いた。
 そのうえでだ。あらためてだった。彼は五代に話した。
「おそらく。このにゃんぱいあもだ」
「門を潜り抜けてこちらの世界に来ていて」
「あちらの世界にもスサノオがいる」
 二つの事実がだ。確信されたのだ。
「間違いなくだ」
「そうなっていますね」
「ではだ」
「はい」
 二人は頷き合い。そうしてだった。
 そのうえでだ。あらためてにゃんぱいあに話した。
「一つ聞きたいのだが」
「ここにはどうして来たのかな」
「穴を通って来たにゃ」
 そうしてこの世界に来たとだ。にゃんぱいあは二人の問いにこう答えた。
「そうしてここに来たにゃ」
「そうか。やはりな」
「そういうことでしたね」
「何か光っている不思議な穴だったにゃ」
 にゃんぱいあはその穴についても話す。
「そこを通ったら何かここにいたにゃ」
「では間違いなくですね」
「そうだな」
 また五代と一条が話す。
「にゃんぱいあも」
「スサノオが関係している」
「スサノオって何だにゃ」
 だがにゃんぱいあはスサノオのことは知らないようだった。それが言葉に出ている。
「僕が知っているのは吸血鬼のお兄さんだけにゃ」
「ねえ、よかったら」
「君が通ってきたその光る穴に案内してくれるか」
 五代と一条はにゃんぱいあに同時に頼み込んだ。
「そうしてくれるかな」
「よければ」
「わかったにゃ」
 にゃんぱいあは快く笑って快諾した。
「じゃあ案内するにゃ」
「わかったよ。それじゃあ」
「同行させてもらおう」
 こうしてだった。二人がだ。にゃんぱいあに同行してだ。
 彼の後についていく。そうして来た場所は。
 ごく普通の公園だった。そこに来てだ。
 一条が公園の中を見回しながら言う。
「ここは」
「普通の公園ですよね」
「そうだな。どう見てもな」
 こう五代にも返す。ジャングルジムにすべり台にブランコがある子供用の公園だ。本当に何のおかしなところもない普通の公園だ。
 その公園の中を見回してだ。一条は言うのだった。
「ここに何があるとは」
「思えませんね」
「グリードが出るなら不思議ではないが」
「そんな気配はないですし」
「グリード?何だにゃそれは」
 にゃんぱいあは二人の前にいる。その彼がだ。
 二人の方を振り向いてだ。こう尋ねてきた。
「お菓子だにゃ?それなら苺があると最高だにゃ」
「まあお菓子じゃないから」
「そういうものではない」
「じゃあどうでもいいにゃ」
 お菓子でなければだ。どうでもいいと言ってだ。
 にゃんぱいあは土管を寝かせて土を持ったそこに向かう。それを見てだ。
 一条がだ。また五代に話した。
「あそこだな」
「あそこに入ってですね」
「彼等の世界に入るか」
「そこに」
「では行こう」
 一条は決意と共に言った。
「そしてあちらの世界でもだ」
「スサノオと」
「ついて来るにゃ」
 土管の入り口でだ。にゃんぱいあは二人にまた声をかけた。
 

 

第二話 にゃんぱいあその八

「あの穴を潜ったら僕の世界だにゃ」
「うん、じゃあ」
「行くか」
 こうしてだった。二人は身体を屈め膝を折ってだ。
 そのうえで土管の中に入る。すると光に包まれ。
 土管を潜り終えると。そこは。
 何もおかしなところのない世界だった。ただ出て来たのは川辺だ。川辺に転がっている土管を潜り抜けてだ。出て来たのである。
 右手に青い静かな川が。左手には緑の土手がある。草の中に赤や白の小さな花が見える。
「さあ、ここにゃ」
「ここか」
「そうだにゃ。ここだにゃ」
 にゃんぱいあの言葉に応えてからだ。一条はその周りの川や土手を見回したのだった。無論ささやかに咲いている花達もである。
 そうしたものを見てだ。一条がまず言った。
「何の代わりもないな」
「ですよね。平和そうです」
「んっ?ここは平和だにゃ」
 また二人に顔を向けて話すにゃんぱいあだった。
「そっちでは違うにゃ?」
「そうだね。色々といるからね」
「御世辞にも平和とは言い難いな」
 仮面ライダー、その協力者としてだ。二人は答えた。
「さっき言った様なグリードもいるし」
「騒がしい世界だ」
「とりあえず平和ではないんだにゃ」
 二人の話を聞いてだ。にゃんぱいあは。
 困った顔になってだ。それで言うのだった。
「そうした世界には困ったものだにゃ」
「つまりこの世界は平和で」
「グリードやそうした存在はいないか」
「だからグリードはお菓子でないなら何にゃ?」
 にゃんぱいあの関心はそちらにあった。
「よくわからないが美味しそうな名前だにゃ」
「ううん、美味しそうかな」
「特にそうは思わないが」
「とにかくだにゃ。僕は今から家に帰るにゃ」
 そうするというのだ。
「一緒に来るにゃ?」
「どうする?」
 にゃんぱいあの言葉を受けてだ。一条は。
 五代に顔を向けて。それで尋ねたのだった。
「行ってみるか」
「ええと。猫の家ですよね」
「飼い主がいるらしい」
 一条はこう考えて話す。
「どうやらな」
「飼い主がいるんですか」
「そんな感じがする」
 これは一条の勘から言うことだ。彼の戦いで培い、そして刑事という職業、その二つから身に着けた勘からの言葉である。 
 それを言ってだ。彼はあらためて五代に話した。
「だからだ。言ってみよう」
「その飼い主の人から手掛かりをですね」
「この世界の手掛かりも手に入るだろう」
「ですね。それじゃあ」
「まずは言ってみることだ」
「わかりました」
 五代も一条の言葉に頷き。そうしてだった。
 二人でにゃんぱいあに案内され彼の家に向かった。そこは。
 白い家だった。人間のごく有り触れた家だ。その家の前に来てだ。
 今度は五代がだ。一条に問い返した。
「あの、何ていいますか」
「同じだな」
「ですよね。この家は」
「普通の家だ」
 一条もだ。その家を見ながら言う。
「どう見てもな」
「けれどまさか」
「中は違うか」
「その可能性もやはり」
 あるのではと。五代は本来は一条が言うことを話した。
 

 

第二話 にゃんぱいあその九

「あるのでは」
「では気をつけてか」
「行きましょう」
「帰ったにゃ」
 にゃんぱいあは家の玄関の前でにこりと笑って言った。
「誰かいるにゃ?いたら出て欲しいにゃ」
「あっ、にゃんぱいあ?」
 その言葉に応えてだった。家の扉が開いてだ。
 そこからごく普通の女の子が出て来た。そうしてだ。
 そのうえでだ。にゃんぱいあと五代達を見て言うのだった。
「お客さんなの?」
「そうだにゃ。僕の友達にゃ」
 何時の間にかそうなっていた。
「だからお家の中に一緒に入れて欲しいにゃ」
「大人の人ね」
「仕事は刑事だ」
 まずは一条がだ。警察手帳を出して話した。
「これでわかってくれたか」
「刑事さんがですか」
「僕の友達だにゃ」
 にゃんぱいあがまた言うとだった。女の子は。
 首を捻ってだ。にゃんぱいあに問い返した。
「何か悪いことしたの?」
「えっ、何でそう言うにゃ!?」
「だって。刑事さんよ」
 女の子はこのことを根拠にして言うのだった。
「悪いことしないとお家に来ないじゃない」
「僕何もしてないにゃ」
「けれど実際に来てるし」
「だからしてないにゃ」
「そうなの?」
「大体猫が人間のお巡さんに捕まる筈がないにゃ」
 にゃんぱいあはここで根本的な真理を言ってみせた。
「僕は猫にゃ」
「そういえばそうね」
 女の子もだ。ここでようやくだった。
 にゃんぱいあの言葉に納得してだ。それからだ。
 五代と一条にだ。こう尋ねるのだった。
「じゃあにゃんぱいあのお友達なんですね」
「はい、そうです」
「確かに刑事だが事件に来た訳ではない」
 一条はその事情を説明した。
「それは保障する」
「そうですか。ではどうぞ」
 あらためてだ。二人に家に入るように話したのだった。
 そしてだ。そのうえでだった。二人に自分の名を名乗った。
「美咲です」
「美咲ちゃんですか」
「それが君の名前か」
「はい。宜しく御願いします」
「僕の飼い主だにゃ」
 にゃんぱいあはここでこのことも二人にまた話した。
「とても奇麗な娘だにゃ」
「奇麗なのはいいけれど」
 それでもだとだ。美咲はにゃんぱいあを抱き抱えてから。
 そのうえでだ。二人を家の中に案内したのだった。
 二人は家の応接間に案内された。そうしてだ。
「はい、どうぞ」
「あっ、どうも」
「済まない」
 二人にだ。苺が出される。にゃんぱいあにもだ。
 その苺をだ。出した後でだ。美咲はにゃんぱいあに話した。
「じゃあ後はどうするの?」
「僕がお話するにゃ」
「にゃんぱいあが?」
「そうだにゃ。だからもう美咲ちゃんはゆっくりとしていいにゃ」
「わかったわ。それじゃあね」
 美咲はにゃんぱいあの言葉に頷いてだ。そのうえでだ。
 二人とにゃんぱいあを残して部屋を出た。こうしてだ。
 二人はにゃんぱいあと対した。まずはだ。
 五代がだ。苺を食べながら自分の向かいの席で自分と同じく苺にかぶりつき幸せな顔をしているにゃんぱいあに尋ねたのだった。
「いいかな」
「何だにゃ?」
「その吸血鬼の居場所はわかるかな」
 尋ねたのはこのことだった。
「それはどうかな」
「ううん、実はにゃ」
「実は?」
「どう何処に行ったのか」
 困った顔になって前足を組んで。にゃんぱいあは五代の今の問いに答えた。
 

 

第二話 にゃんぱいあその十

「僕も知らないにゃ」
「えっ、知らないの」
「そうなのか」
「神出鬼没の人だにゃ」
  だからだというのだ。
「そう簡単に見つかりはしないにゃ」
「ではだ」
 にゃんぱいあが吸血鬼の居場所を知らないと言われてだ。今度は。
 一条が出て来てだ。そうして彼に尋ねたのだった・
「手懸かりだが」
「手懸かり?」
「それはあるだろうか。または証拠は」
「そう言われてもにゃ」
 にゃんぱいあは困った顔になり一条の言葉に応える。
「思い出せないにゃ」
「そうなのか」
「悪いけれどそうだにゃ」
 こう二人に話すのである。
「さっき言った通りにゃ」
「手懸かりもなしか」
 一条は腕を組みだ。困惑した顔を見せた。
 そしてだ。五代にこう言うのだった。
「こうなれだ」
「俺達だけで、ですね」
「そうだ。手懸かりを探そう」
「そうしましょう」
 こうした話をしてだった。二人は。
 この世界の町を見回り手懸かりを探そうと決意した。その二人にだ。
 にゃんぱいあがだ。こう言ってきたのだった。
「それならにゃ」
「君も?」
「ついて来てくれるのか」
「この町のことはよく知ってるにゃ」
 だからだというのだ。
「それでにゃ。ついて来るにゃ」
「うん、それじゃあ」
「共に行こう」
 こうしてだ。二人はにゃんぱいあも連れてだった。
 そのうえで家を出てだ。それからだった。
 町に出て手懸かりを探しはじめた。その彼等の前にだ。
 頭に茶色い部分のない、頭が真っ白のシャム猫の子猫が来た。背中にはリボンがある。
 その子猫がだ。にゃんぱいあを見てだ。自分の方から声をかけてきた。
「あっ、兄上」
「んっ、茶々丸だにゃ」
「何処に行かれるのですか?」
 こうにゃんぱいあに対して尋ねてきた。
「今から一体
「少しだにゃ」
「少しですか」
「スサノオという奴、もしくは吸血鬼の手懸かりを探すにゃ」
「スサノオはわからないですが」
 茶々丸と呼ばれたにゃんぱいあを兄と呼ぶ猫はここで言うのだった。
 

 

第二話 にゃんぱいあその十一

「吸血鬼さんですね」
「そうだにゃ。あの人だにゃ」
「兄上から外見は前に御聞きしていますが」
 こう前置きしれから話す茶々丸だった。
「何日か前に見ましたが」
「えっ、見たって」
「その吸血鬼をか」
「はい」
 その通りだとだ。茶々丸は二人に返した。
「何か猫を一杯連れていましたよ」
「その人だにゃ」
 ここでまた言うにゃんぱいあだった。
「その人が吸血鬼だにゃ」
「猫を一杯連れている」
「わかりやすいな」
 五代と一条も言う。
「それなら今から」
「探すか」
「そうしましょう」
 こうした話をしてだった。二人はにゃんぱいあと茶々丸の協力を得てだ。
 この世界を調べて回ることにした。しかしだ。
 ふとだ。一条がにゃんぱいあと茶々丸に尋ねたのだった。
「今思ったのだが」
「何にゃ?」
「どうかしたのですか?」
「あの娘だが」
 こうだ。美咲のことに言及したのである。
「君達、特ににゃんぱいあのことだが」
「僕がどうかしたかにゃ」
「君を見ても何とも思っていなかったか」
 このことにだ。今気付いたのである。
「吸血鬼である君を見てもだ」
「それがどうかしたにゃ?」
「だからだ。吸血鬼というものはだ」
 彼が話すのはこのことだった。
「そう簡単に受け入れられる存在ではないのだ」
「そうなのにゃ?」
「血を吸うのだぞ」
 一条が話すのは吸血鬼のその性質のことだ。
「それでどうして簡単に受け入れられるのだ」
「僕そんなにまずかにゃ?」
「僕にもわからないです」
 茶々丸は首を捻るにゃんぱいあにこう返した。
「けれどそうみたいですね」
「どういうことかわからないにゃ」
「若しかしてあの美咲という娘は」
「かなりの娘かも知れませんね」
 五代もだ。腕を組んで言った。
「この子を普通に受け入れているんですから」
「例え吸血鬼であってもその本質を見る」
「そうした娘かも知れませんね」
「だとすれば」
 どうなのかとだ。一条はさらに言った。
「この世界にはあの娘以外にもこの子達を受け入れている人間がいるのか」
「問題はそこにあるかも知れませんね」
 何となくだ。二人もこのことがわかってきたのだった。そうしてだった。
 彼等はあらためてこの世界を回りだ。手懸りを探していくのだった。


第二話   完


                          2011・8・20
 

 

第三話 受け入れる器その一

                          第三話  受け入れる器
 五代と一条はにゃんぱいあ、茶々丸の案内を受けてだ。彼等の世界を回った。そうしてだ。
 まただ。変わった猫に会ったのだった。
 右目に眼帯をし三日月の兜を被った白猫に会ったのだ。その猫を見てだ。
 五代と一条はだ。それぞれ言うのだった。
「まさかこれは」
「そうだな。どう見てもな」
「戦国大名のあの」
「伊達政宗か」
「んっ、俺のことを知ってるのか?」
 実際にだ。この猫、この猫もまた二本足で立っている。この猫が二人を見上げてだ。自分からこんなことを彼等に対して言って来たのだった。
「俺は独眼竜まさむにゃだ」
「やっぱりそうか」
「あの大名にちなんでいるのか」
「あの人は人間だが尊敬しているぜ」
 自分でこう言うまさむにゃだった。
「凄い人だったよな」
「うん、確かに」
「そして君はか」
「あの人にちなんでこの格好をしているんだよ」
「まさむにゃはいい奴にゃ」
 にゃんぱいあがにこりと笑って二人に話してきた。
「僕の友達にゃ」
「あ、ああ」
 にゃんぱいあにそう言われてだ。まさむにゃは。
 何処か恥ずかしそうな顔になってだ。こう言うのだった。
「そうだな。俺達は友達だにゃ」
「そうだにゃ。いつも仲良しだにゃ」
「成程。君達は友達なんだ」
「ではこの猫も」
「ああ、俺は吸血鬼じゃないからな」
 二人が何を言うのか察してだ。まさむにゃから言ってきた。
「普通の猫だぜ」
「ううん、あまりそうは見えないけれど」
「そうなのか」
「そうだよ。何処がおかしいんだよ」
 自分では自覚がないといった口調である。
「俺は別に血を吸わないしちゃんと飼い主もいるしな」
「君もそこはにゃんぱいあと同じなんだね」
「飼い猫だったのか」
「そうだよ」
 こう答えるまさむにゃだった。
「立派な飼い主だぜ」
「そうですね。あの子もいい子ですね」
 茶々丸もここで言う。
「僕達の飼い主の美咲ちゃんと同じで」
「美咲ちゃんは時々血を吸わせてくれるにゃ」
 にゃんぱいあはここでもにこにことして話す。
「とても優しくていい御主人様だにゃ」
「やっぱりあの娘は」
「かなりの娘だな」
 五代と一条は今の話からもだ。美咲の器をあらためて認識した。
 そのうえでだ。彼等は。
 まさむにゃにだ。さらに尋ねるのだった。
「君の他にもそうした猫はいるのかな」
「この辺りにいるか」
「いるっていったらいるな」
 まさむにゃは急にだ。顔を曇らせてだ。
 そのうえでだ。二人にこう話したのだった。
「けれど俺は好きにはなれないな」
「好きになれない」
「どういった猫なのだ」
「性格がな。悪いんだよ」
 それでだ。好きになれないとだ。まさむにゃは二人にまた話した。
「だからな。ちょっとな」
「そうなんだ。だからなんだ」
「その猫には会いたくないか」
「けれどまあいいぜ」
 まさむにゃは二人にだ。今度はこう告げた。
「案内してやるよ、そいつの場所に」
「うん、御願いするにゃ」
 にゃんぱいあがまたまさむにゃに話す。
「にゃてんしのところに行くにゃ」
「さて、あの人は何をしているのでしょう」
 茶々丸もここで言う。
 

 

第三話 受け入れる器その二

「また悪戯をしているのでしょうか」
「だよな。この前なんてな」
「そうそう、毛虫をです」
 茶々丸はまさむにゃと話をしていく。
「女の子に見せて怖がるのを見て喜んでましたから」
「性格悪いよな」
「はっきり言って悪いですね」
 茶々丸の言葉には何の容赦も見られない。
「意地悪です」
「だから好きになれないんだよ」
「何か今度の猫は」
「悪戯者か」
 一条と五代も彼等の話からこう考えた。
「だとすると少し」
「厄介なことになるか」
 だが、だ。それでもだった。五代はこの心配はしていなかった。
「しかしそれでもですね」
「そうだな。クウガに変身する必要はなさそうだな」
 その懸念はなかった。この世界は平和な中にあるからだ。
 それでだ。今はだった。
「このまま戦いとは別の」
「調査が続くな」
「そうですね。それにしても」
 五代はだ。ここでだった。
 まさむにゃをあらためて見てだ。こんなことを言った。
「それにしても君は」
「何だ?まだ何かあるのか?」
「甲冑というか鎧まで着てるんだね」
 五代が今言うのはこのことだった。
「また本格的だね」
「ああ、鎧か」
「兜だけでも凄いのに」
「俺は徹底的に凝る主義なんだよ」
 それでだ。この格好だというまさむにゃだった。
 彼は胸を張ってだ。五代にさらに話す。
「だから鎧だってな」
「そういうことだな」
「格好いいだろ」
「確かに。けれど猫がここまで人間的な世界なんて」
「あるとは思わなかったな」
「そしてそのことをこの世界の人達は受け入れて」
 そのことにだ。五代だけでなく一条もだ。
 考えるものがありだ。実際に言葉に出していくのだ。
「彼等と共存しているんですね」
「スサノオはこの世界で何を仕掛けている?」
 一条はこのことについても考えを及ばせた。
「一体だ」
「スサノオはいつも人間を見ていますけれど」
「この世界では何を見ている?」
「そこに何かがありますね」
「間違いなくな」
 そうした話をしていってだ。彼等は。
 にゃんぱいあだけでなくまさむにゃ、そして茶々丸も加えてだ。そのうえでだ。
 そのにゃてんしのところに来た。見れば。
 黒い翼、鳥のそれを背中に生やしている白猫がいた。その猫がだ。
 耳が灰色の白猫にだ。棒に糸で括っている毛虫を見せてだ。 
 そうしてだ。こんなことを言っていた。
「どうですか?」
「ちょ、ちょっと」
「毛虫は嫌いですか?」
「僕そういう虫は苦手なんだよ」
 その白猫は泣きそうな顔になり彼に言う。
「だから近寄らせないでよ」
「駄目ですよ。こんなものを怖がっていてはですね」
「けれどどうしても」
「ほらほら、怖がらない怖がらない」
 こうしてだ。意地悪をしていた。その黒い翼の白猫をだ。
 まさむにゃがだ。右の前足で指し示しながら五代と一条に話した。
「そのにゃてんし?」
「あの黒い翼の猫がか」
「そうだよ。やっぱり悪いことしてるな」
「ううん、何か意地悪をしているな」
「その様だな」
 このことは二人もすぐにわかった。そうしてだ。
 あらためてだ。まさむにゃに尋ねるのだった。
「見れば頭に天使の輪があるね」
「黄金に輝いているが」
「あれかよ」
「あれを見る限りあの猫は天使かな」
「だが翼が黒いな」
 二人はこのことにもすぐに気付いてだ。まさむにゃに話す。
「堕天使なのかな」
「本来の天使なら翼が白い筈だな」
「そういえばそんなことを言っていたにゃ」
 ここでにゃんぱいあが二人に話した。
「にゃてんしは悪いことをし過ぎて天界を追い出されたにゃ」
「それで天界に何かしようと企んでいるらしいな」
 まさむにゃも言う。
「だからあいつはなあ」
「困った方ですね」
 茶々丸もここで言う。
「ああしてすぐに悪戯をされますし」
「嘘も吐くしな」
 まさむにゃは顔をやや顰めさせて話す。
 

 

第三話 受け入れる器その三

「だから俺はあいつは好きになれないんだよ」
「そうかにゃ。そこまで徹底的に悪くはないにゃ」
「そうか?結構意地悪いぜ」
「ううん、あの猫は」
 五代は彼等の話を聞きながらこう述べた。
「確かに性格はよくないね」
「そうだな。しかし根は極端に悪くはないようだ」
 一条はこのことも見抜いた。五代もそうであるが。
「少なくとも人や猫を徹底的に害したり殺したりはしないな」
「そういうことは絶対にしませんね」
「少しあの猫ともな」
「話しますか」 
 二人が言っているとだ。そこにだ。
 そのにゃてんしがひょっこりと来てだ。こんなことを言ってきたのだった。
「僕に何か御用ですか?」
「あっ、今声をかけようと思っていたけれど」
「気付いたのか」
「はい」
 その通りだとだ。にゃてんしも答える。
 そしてだ。二人を見てだ。こんなことを言った。
「この町の方ではないですね」
「そうだにゃ。この人達はにゃ」
 二人に代わってにゃんぱいあがにゃてんしに説明する。
「僕が遊びに行った世界にいる人達だにゃ」
「ほう、別の世界から来られた方々ですか」
「そうだにゃ」
 こうにゃてんしに説明するのである。
「とてもいい人達にだ」
「そうですね。ただ」
「ただ。何にゃ?」
「どうも僕の遊びには乗ってくれそうもないですね」
 とりわけ一条を見てだ。にゃてんしはすぐにこのことを見抜いたのだ。
「残念ですが」
「少なくともだ」
 一条が真面目な顔でそのにゃてんしに答える。
「我々は君の悪戯にどうこうされることはない」
「そういうことは子供の頃にやったりやられたりだからね」
 五代もその人生経験から話す。
「だからそういうことにはね」
「どうこうされることはない」
「それは残念です」
 こうは言うがだった。にゃてんしは。
 特に表情に出すこともなくだ。こう言っただけだった。
「では貴方達には何もしません」
「しても何もないから」
「それでなのか」
「その通りです。それではですが」
「それでは?」
「我々への質問だな」
「そうです。見たところ貴方は」
 にゃてんしはここで五代をまじまじと見た。それからだ。
 こうだ。彼に尋ねたのだった。
「只の人ではありませんね」
「それはわかるんだね」
「はい。伊達に天使だった訳ではないですから」
 その力からだ。五代のことがわかるというのだ。
「一体どういう方なのでしょうか」
「仮面ライダーと言おうか」
 五代は真面目な顔になってだ。にゃてんしに答えた。
「このことはにゃんぱいあ君は知っていると思うけれど」
「そういえば聞いたにゃ」
 あちらの世界に来た時のことを思い出してだ。にゃんぱいあも応える。
「何か色々な連中と戦っている人達らしいにゃ」
「そうなるね」
 五代もそのことを認めた。
 それでだ。彼等にこう話したのだった。
「俺達は」
「俺は変身はしないが」
 一条も言う。それでも同じだというのだ。
「それでもだ」
「色々な奴等と戦ってきているんだ」
「だがそれでもだ」
「戦っている相手は同じだよ」
 こうも言ったのだった。
「それはね」
「あれ?何かおかしいにゃ」
 にゃんぱいあもその言葉に対して言う。
「色々な奴と戦っていると言ったにゃ」
「そうですね。それで同じというのは」
 茶々丸もこのことを指摘する。
「妙な感じがしますけれど」
「そのことだが」
 一条が彼等のその疑問に答える。
 

 

第三話 受け入れる器その四

「つまりだ。色々な敵を出している黒幕がいる」
「ああ、そういうことですか」
 その話を聞いて最初に理解したのはにゃてんしだった。
 それでだ。一条に対してこう尋ねた。
「犬やら猫の後ろに人間がいたりするというのと同じですね」
「そうだな。簡単に言えばそうなる」
 一条もにゃてんしのその話で大体いいとした。
「そしてその黒幕だが」
「何ていうんだよ」
「スサノオという」 
 一条は今度はまさむにゃに話した。
「神と言えば聞こえがいいがかなり癖の悪い神だ」
「神は大体そういうものですよ」
 にゃてんしは一条の今の言葉にすぐにこう言ってきた。
「傲慢で身勝手なものです」
「そうかも知れない。しかしだ」
 一条はにゃてんしの言葉に頷きながらさらに話す。
「スサノオは少し違っている」
「俺達と戦い。罠を仕掛けて」 
 五代がだ。仮面ライダークウガである彼が詳しく説明する。
「そうしたことで人間を試して見ているんだ」
「どうしてそんなことをするにゃ?」
「退屈を紛らわさせる為にね」
「それでそこまで回りくどいことをするにゃ」
「そうなんだ。どうやらこの世界にも」
 一条はここでだ。遂にだった。
 スサノオの存在をだ。彼等に話すのだった。
「スサノオは関わっているから」
「我々はそのスサノオを探しているのだ」
 一条もそうだというのだ。
「何処にいるのかをだ」
「何処かっていってもな」
「そのスサノオがどういう姿をしているのか」
「それもわからないのですけれど」
 まさむにゃに茶々丸、にゃてんしがそれぞれそのスサノオについてだ。五代と一条に対して突っ込みを入れた。そうしてきたのだ。
 それに対してだ。二人はこう話した。
「姿は色々あるんだ」
「その都度変えてくる」
 つまりだ。姿ははっきりしないというのだ。
「俺達の前に現われる度に姿を変えているから」
「それははっきりと言えない」
「それじゃあ絶対にわからないにゃ」
 にゃんぱいあは二人の話を聞くとだ。 
 すぐに困った顔になって返した。
「姿がわからないのなら」
「はい、お話になりません」
 茶々丸は兄よりも手厳しかった、可愛い顔をしてぴしゃりと返す。
「それでどう調べろというのでしょう」
「手懸りはあるよ」
 すぐにだ。五代がこう告げる。
「それが吸血鬼なんだよ」
「僕を助けてくれたあの人にゃ」
「その人が何処にいるのか知りたいんだ」
 そこにあるとだ。五代は話す。
「教えてくれたら有り難いけれど」
「知っているのなら」
「ああ、それでしたら」
 すぐにだ。にゃてんしが答えてきた。
「面白い方々がおられますよ」
「吸血鬼の行方を知っている?」
「そうした相手なのか」
「はい、おそらくは」
 にゃてんしは二人に話していく。
「ですから。その方々に御会いしてはどうでしょうか」
「それ本当か?」
 まさむにゃは幾分疑う顔でにゃてんしに対して問い返した。
「本当に知ってるんだな」
「本当ですよ。この人達には見破られますから」
 見破られるとわかってだ。にゃてんしも何かをすることはしないというのだ。
 それでだ。二人には嘘を吐かないというのだ。
「ですから本当ですから」
「それじゃあ一体」
「どういう相手なのだ?」
「やっぱり猫ですかね」
「そうだろうな」
 五代と一条は最初はこう考えた。しかしだ。
 

 

第三話 受け入れる器その五

 ここでだ。にゃてんしは二人に言ったのだった。
「いえ、蝙蝠ですよ」
「蝙蝠!?」
「今度は蝙蝠なのか」
「はい、蝙蝠です」
 そのだ。蝙蝠だというのだ。
「蝙蝠の方々です」
「蝙蝠、吸血鬼には相応しいですね」
「まさに象徴だな」
 五代と一条はにゃてんしからの話を聞いて話し合う。
「じゃあその蝙蝠達なら」
「吸血鬼の行方を知っているな」
「ならすぐにですね」
「その蝙蝠達の行方を探そう」
 こう言うとだった。すぐにだった。
 二匹の蝙蝠達が来た。どちらも頭と翼だけの姿だ。一匹の耳と足がピンク色でもう一匹のそれは黄色だ。その蝙蝠達が来てだ。
 五代の両肩にそれぞれ止まりだ。服の上から吸いはじめた。
 そしてだ。こう言うのだった。
「何か違うね」
「そうだね」
「普通の人間の血じゃないような」
「ちょっと味が違うね」
「しかもこの人あまり痛がらないし」
「おかしいね」
 その彼等を見てだ。すぐにだ。
 五代は血を吸われたままだ。にゃんぱいあに尋ねた。
「若しかしてこの蝙蝠達が?」
「はい、そうです」
 まさにそうだとだ。にゃてんしも答える。
「その方々です」
「そうか、やっぱりね」
「あの、痛くないんですか?」
 カツオを少しオドオドとした感じで五代に尋ねる。
「血を吸われて」
「まあこれ位だとね」
 何でもないとだ。五代は返す。
「俺は別に何ともないから」
「そうなんですか」
「これまでの戦いで何度も死に掛けているしね」
「それと比べればですか」
「そう。何ともないよ」
 こうカツオに答える五代だった。
「特にね。けれどだよ」
「けれど?」
「この蝙蝠達は知ってるんだよね」
 まだ自分の血を吸っている蝙蝠達を横目で見ながらだ。五代はカツオに尋ねた。
「吸血鬼の居場所よ」
「そうみたいですね」
「なら話は早いよ」
 それならというのだ。
「彼等に聞くから」
「ちょっと待ってね」
「吸い終わってからね」
 蝙蝠達も応えてきた。
「お話していいかな」
「吸血鬼さんのことは」
「うん、いいよ」
 五代もだ。気軽に返す。
「それじゃあそういうことでね」
「何かこうして気軽に血を吸わせてくれるし」
「お兄さんいい人だから気に入ったよ」
 こうしただ。のどかな会話をしつつだ。蝙蝠達は五代の血を楽しんだ。にゃんぱいあも彼の足にかぶりついてだ。血を吸った。
 それからだ。血を満腹になるまで吸った蝙蝠達はだ。五代と一条に言ってきた。
 宙をぱたぱたと舞いながらだ。そのうえで話すのだった。
「まずは僕達の名前ね」
「それ言うね」
「そうだね。まずはお互いに名乗って」
「それからだな」
 こう言葉を交えさせてだった。それぞれだった。
 まずはピンクの蝙蝠と五代が名乗った。
「毛利っていうんだ」
「五代祐介。宜しくね」
 続いてだ。黄色の蝙蝠と一条だった。
「小森だよ」
「一条薫。覚えていてもらおう」
「二人共別の世界から来た人にゃ」
 にゃんぱいあは蝙蝠達にこのことを付け足した。
 

 

第三話 受け入れる器その六

「宜しくにゃ」
「へえ、他の世界からなんだ」
「こっちの世界に来たんだ」
「うん、そうなんだ」
「縁があって行き来することになる」
 二人は二匹の蝙蝠達にも自分達のことを話した。
「もっと言えば俺はさ」
「五代さんだったっけ」
「何なの?」
「仮面ライダーなんだ」
 このこともだ。五代は話した。
「バイクに乗って戦う仮面の戦士なんだ」
「そうにゃ。何かとても強いらしいにゃ」
 またにゃんぱいあが蝙蝠達に話す。
「そうでなくても五代さんは凄くいい人だにゃ」
「うん、それはわかるよ」
「よくね」
 蝙蝠達もだ。そのことはわかるというのだ。
「僕達にたっぷりと御馳走してくれたし」
「こうしてお話していてもわかるしね」
「それにしても仮面ライダーなんだ」
「話は聞いてるよ」
「えっ!?」
 毛利君と小森君の今の言葉にだ。五代は思わず問い返した。
「君達仮面ライダーのことを知ってるんだ」
「うん、吸血鬼さんから聞いてるから」
「バンパイアさんからね」
「何か。向こうもですね」
「知っているのだな」
 五代と一条はここでもだった。顔を見合わせてだ。
 そのうえでだ。話をするのだった。
「まさかとは思いましたけれど」
「最初から知っているのか」
「これはまさか」
「覚悟しておくか」
 こちらを既に知っている、そのことから吸血鬼はスサノオの分身かその統率下にあり仮面ライダーと敵対しているのではないか、こう考えてだ。
 そうしてだ。彼等はだった。
「若しそうなっても」
「勝たなくてはな」
「そうですね。絶対にですね」
「勝とう」
「それでどうしたの?」
「何かあったの?」
 まただ。毛利君と小森君が二人に尋ねてきた。
「何か吸血鬼さんに用があるの?」
「それで僕達に用があるみたいだけれど」
「うん、そうだよ」
「それはその通りだ」
 こうだ。二人も二匹にはっきりと答える。
「それでだけれどいいかな」
「吸血鬼は今何処にいる?」
「まさかと思うけれどまた向こうから出て来るとか」
「そういうのはないな」
「今お城にいるよ」
「吸血鬼さんのお家にね」
 流石に今回はそれはなかった。そしてだ。
 二匹の話によるとだ。吸血鬼は。
 城を持っていてそうしてそこに住んでいるというのだ。それでだ。
 彼等は今度はだ。こう言うのだった。
「じゃあ今から?」
「その吸血鬼の城に行くか」
「そして万が一の時は」
「腹を括るか」
 こうしてだ。覚悟も決めてだ。あらためてだ。
 毛利君と小森君にだ。頼みをした。
「それならその吸血鬼さんのお城に今から」
「案内してくれるだろうか」
「うん、いいよ」
「それじゃあね」
 彼等も応えてだ。そうしてだった。
 吸血鬼への城に案内するのだった。その二人にだ。
 にゃんぱいあ達もだ。こう言ってきた。
「じゃあ僕達もにゃ」
「ああ、行くか」
「そうですね。面白そうですし」
「行きましょう」
 あっさりとついて行くことにした。とりわけ。
 

 

第三話 受け入れる器その七

 にゃんぱいあはだ。とても楽しそうにだ。こう言うのだった。
「命の恩人に会えるなんて楽しみだな」
「そういえば兄上はずっと」
「そうだにゃ。会いたいと思っていたにゃ」
 こうだ。満面の笑顔で茶々丸に言うのである。
「だから凄く楽しみだにゃ」
「それなら余計にですね」
「行きたいにゃ」
 こうした話をしてだ。にゃんぱいあはとりわけ楽しそうに吸血鬼の城に向かうのだった。
 だが、だ。ふとだ。五代がそのにゃんぱいあ達に尋ねた。
「長い旅になるかも知れないからね」
「何だにゃ?」
「どうしたんだ?」 
 にゃんぱいあとまさむにゃが彼の言葉に応える。
「何かあるのかにゃ」
「別に何でもないだろ」
「君達の御主人達に連絡しておかなくていいのかな」
 彼が言うのはこのことだった。
「それはどうなの?」
「ああ、その心配はないよ」
「すぐそこだから」
 また毛利君と小森君が話してきた。二匹は五代の頭の上を飛んでいる。
「もうすぐ見えてくるから」
「安心していいよ」
「あれっ、近いんだ」
「それはまたな」
 二人はそう言われてだった。
 いささか拍子抜けした。そしてそれは。
 にゃんぱいあも同じでだ。こうまさむにゃに言うのだった。
「あれっ、こんな近くにいたのにゃ?」
「歩いていける距離だよな」
「そうだにゃ。それだけの距離だにゃ」
 実際にそうだとだ。まさむにゃに話すのである。
「本当に意外だにゃ」
「身近な人だったんだな」
「これならもっとお家の外をしっかり散歩しておくんだったにゃ」
「まあそれは仕方ないぜ」
 まさむにゃは前足を組みとことこと歩きつつ述べた。
「俺達の移動範囲って限られてるからな」
「縄張りの中でしか動けない筈だな」
 一条は猫の習性から話す。
「もっとも猫の縄張りは広い場合もあるが」
「この辺りは一応縄張りにゃ」
「俺もだ」
「僕もです」
 にゃんぱいあだけでなくまさむにゃと茶々丸も答えてきた。
「これでも結構広いんだぜ」
「他の方と重なってる場所もありますが」
「僕も一応」
 カツオもおどおどとしながらだが話す。
「この辺りは」
「僕に縄張りは関係ありません」
 にゃてんしはそうだというのだ。
「何しろ元天使ですからね」
「それでこの辺りに気付かなかったのはどうしてかな」
「縄張りでもあまり行かない場所もあるにゃ」
 だからだとだ。にゃんぱいあは二人に話した。
「それでにゃ」
「成程、そういうことなんだ」
「だから誰もその城には気付かなかったのか」
 五代も一条もこのことがわかった。
「猫といっても色々あるんだね」
「はじめて知った」
 二人もだ。知らないことは多い。所詮人間の知っていることなぞまさに大海の中の一杯のスプーン程度のものしかないのである。
 そのことをだ。二人は今再認識したのだ。
 そうした話をしながらだった。彼等はその城の前に来たのだ。その城は。
 如何にもだった。実に不気味な城だった。
 西洋風であり石造りだ。苔や蔦が壁を飾りやたらと古い。
 塔もあり窓はやけに頑丈そうだ。そしてやけに細く曲がった木々に囲まれている。何かの動物の咆哮まで聞こえてきそうだ。
 その城の門のところに来てだ。二人は話した。
「ここはまさに」
「吸血鬼がいる場所だな」
「この如何にもって場所に吸血鬼がいる」
「俺達の手懸りになる」
 こう話してだ。そのうえでだ。
 彼等は門からどうして城の中に入ろうと考えはじめた。その中でだ。
 

 

第三話 受け入れる器その八

 ふとだ。カツオが二人に言ってきた。
「あの」
「うん、この城に入るには」
「どうすればいいかだが」
「チャイムがありますけれど」
 カツオはいつもの少しおどおどとした調子で二人に話してくる。見ればだ。
 門の左の柱、ダークグレーの石の柱にだ。チャイムがあった。音符のマークまでついている。それを見てだった。
 二人はだ。やや拍子抜けしてだ。顔を見合わせてからだ。
 そうしてからだ。こう話すのだった。
「何か。今度も」
「拍子抜けするものがあるな」
「そうですよね。吸血鬼っていうからさぞかし危険な相手かって思いましたけれど」
「これでは一般市民と変わらないな」
「じゃあチャイムを押しますか?」
 五代が提案した。
「そうしますか」
「そうだな。とりあえずはな」
 一条も五代のその提案に頷く。そしてだった。
 五代がそのチャイムのボタンを押した。するとだ。
 暫くしてだ。チャイムの向こうからこう返事が返って来た。
「はい、どちら様でしょうか」
「普通の声ですね」
「そうだな」
「新聞なら間に合ってますよ」
 まずは新聞のことから話してきた。
「東スポ取ってますから」
「あれっ、朝日じゃないんですね」
「読売でもないな」
「とりあえず新聞はいいですから」
 まただ。返事が返って来た。
「それなら帰って下さいね」
「新聞屋さんじゃないにゃ」
 にゃんぱいあが下からその声に言った。
「僕達は吸血鬼さんに会う為に来たにゃ」
「僕に?」
 吸血鬼と言われるとだ。すぐにだった。
 声はだ。今度はこう返してきた。
「僕に何か用かな」
「はい、実はですね」
「貴方に会いたくて来た」
「セールスマンもお断りですよ」
 今度はこう言ってきたのだった。
「それなら別に」
「だからそういうのじゃないです」
「猫について聞きたい」
 五代と一条は今度はこう声の主、吸血鬼と思われる彼に述べた。
「貴方が助けた猫と一緒にいるんです」
「それで聞きたいことがあるのだ」
「ああ、そのころですか」
 吸血鬼の声は実に素っ気無いものになった。
 その素っ気無い声でだ。彼はまた言ってきた。
「ならいいですよ。お城の中に入って来て下さい」
「いいんですね、そうして」
「今から」
「はい、どうぞ」
 ここでも素っ気無くだ。彼は言ってきたのだった。
「御待ちしています」
「よし、それじゃあ」
「今からな」
 二人は話があまりにも簡単にいっていることに首を捻りながらもだ。それでもだ。
 にゃんぱいあ達を連れてだ。そのうえでだ。
 門を開け城に向かう。城の左右の木々は今にも動かんばかりの姿だった。


第三話   完


                         2011・8・24
 

 

第四話 吸血鬼の話その一

                          第四話  吸血鬼の話
 五代と一条はにゃんぱいあ達と共に門を潜り城に向かう。その途中の道は。
 左右に木々が生い茂りその中から何かが出そうな気配がある。その気配についてだ。
 五代はだ。こう言ったのだった。
「猫に蝙蝠かな」
「そうだな。そうした気配だな」
「特に危険な動物の気配はしませんね」
「吸血鬼の使い魔達か」
「はい、そうですよ」
「ここには僕達のお友達が一杯いるんです」
 毛利君と小森君がそうだとだ。二人に話してきた。相変わらず二人の上をぱたぱたと羽ばたいている。そうして話してきているのだ。
「血を少し貰う以外は全然危なくないですよ」
「皆大人しくていい子ばかりですから」
「吸血鬼といっても人に危害を及ぼす奴だけじゃない」
「そういうことか」
 二人はまたこのことを確認させられた。
「俺達も吸血鬼に対する偏見があったみたいですね」
「吸血鬼も人の心があれば」
 どうなるのか。一条は自然にこのことについても話した。
「人間なのだからな」
「ですね。姿形がどうであれ」
「心がそれならば」
「その人は人間ですね」
「仮面ライダーと同じく」
 だからこそだ。わかるというのだ。
 そのことを話してだった。彼等は。
 その古い城の前に来た。その入り口は。
 今にも朽ち落ちてしまいそうだ。その入り口を開いた。すると。
 鈍い、きしむ音がした。木の扉が開き。そしてその中は。
 暗い。そこからは何も見えなかった。
「まるで洞窟だ」
「ですね」
 五代は一条のその言葉に頷いた。
「そしてこの奥に」
「吸血鬼がいるのか」
「いえ、もう来られてますよ」
「あちらから」
 しかしだった。またしても毛利君と小森君がだ。二人に言ってきた。
 するとだ。その暗闇の中からだ。
 黒いマントにタキシードを着てだ。金髪を後ろに撫でつけた男が出て来た。
 肌は青白く顔は幾分やつれた感じだが整っている。目は紅い。その彼が出て来てだ。五代と一条に舞踏会式の挨拶をしてきた。
 それからだ。彼はこう二人に言ってきた。
「はじめまして、吸血鬼です」
「五代祐介です」
「一条薫だ」
「猫のことですね」
 吸血鬼は頭を上げて二人にまた言ってきた。
「そのことですね」
「はい、宜しければ」
「そのことについて話してもらえるだろうか」
「わかりました」
 にこやかに笑ってだ。吸血鬼も応えてきた。
 そのうえでだ。二人とにゃんぱいあ達に述べてきた。
「いいでしょうか」
「はい、それでは」
「何処に」
「城の応接間に来て下さい」
 それでだ。話をしたいというのだ。
「飲み物も用意していますので」
「血かにゃ」
「いえ、コーヒーです」
 吸血鬼はにゃんぱいあにはこう返した。
「人間の方々には。僕はトマトジュースです」
「じゃあ僕達は何にゃ?」
「君はトマトジュースですね」
 吸血鬼はにゃんぱいあを見てにこりと笑ってだ。こう述べたのだった。
「若しくは苺ジュースでしょうか」
「どっちも大好きにゃ」
「では僕と同じトマトジュースで」
 同じものをだというのだ。
「それを用意しましょう」
「有り難うにゃ。流石は僕の命の恩人にゃ」
「毛利君と小森君もそれで」
 彼等にもトマトジュースを分けるというのだ。
 

 

第四話 吸血鬼の話その二

「そうしましょう」
「はい、有り難うございます」
「ではお言葉に甘えまして」
 二匹も応える。かくしてだった。
 二匹の飲み物も決まった。まさむにゃ達にはミルクを用意するとだ。吸血鬼も話した。
 全て決めてからだ。一行はあらためて城の中に入った。城の廊下は暗い一歩先すらもわからない様な状況だ。しかしだった。
 吸血鬼はその暗闇の中を何でもないといった風に進んでいく。その彼の動きを見てだ。五代と一条は彼の背を見ながら話をした。
「流石ですね」
「闇夜には何もないか」
「ですね、見えてるんですね」
「そうだな」
 二人でだ。言うのだった。
「ちゃんと」
「道が」
「はい、見えています」
 実際にそうだとだ。吸血鬼も答える。前を向いて進みながら。
「私の目はそういう目ですから」
「吸血鬼は夜でも見える」
「だからか」
「そうです。私は吸血鬼です」
 そのことを話し。さらにだった。
「仕事は手品師です」
「手品師!?」
「仕事もあるのか」
「人の世で生きるのなら」
 それならばだとだ。吸血鬼も話してくる。
「仕事は必要ですから」
「だからですか」
「仕事も持っているのか」
「はい、猫達の餌代もそれで得ています」
 そのだ。仕事からだというのだ。
「そうしています」
「成程、つまり貴方は」
「自分を人間だと考えているのか」
「はい、そうです」
 まさにそうだとだ。二人に答える吸血鬼だった。
 そうした話をしながらだ。彼等は応接間に着いた。そこはごく有り触れた品のいい部屋だった。二人はそのソファーに座った。
 向かい側のソファーには吸血鬼が座る。にゃんぱいあ達はソファーの周りにそれぞれたむろしてだ。話し合いがはじまるのだった。
 二人にコーヒーを出しトマトジュースを飲みながらだ。吸血鬼が話す。
「それで御二人は」
「はい、別の世界から来ました」
「そこで戦っている」
「ああ。じゃあ噂は本当だったんですね」
 ふとだ。こんなことを言う吸血鬼だった。
「それぞれの世界が入り組んでいるんですね」
「えっ、まさか」
「知っていたのか」
「はい、聞いています」
 そうだとだ。吸血鬼は少し驚く二人に話す。
 トマトジュースを飲みながらだ。述べていくのだった。
「吸血鬼の集まりの中で」
「その中で聞いたのですか」
「我々のことを」
「仮面ライダーですね」 
 吸血鬼の言葉だった。
「貴方達は」
「ええ、俺がです」
 五代がだ。内心驚きながらも吸血鬼の問いに答えた。
「仮面ライダー、仮面ライダークウガです」
「やっぱり仮面ライダーの方でしたか」
「それでこちらにお邪魔したのは」
「何故僕が困っている猫達を助けるかですね」
「吸血鬼としてにしても」
「好きだからですよ」
 吸血鬼はあっさりとした笑みでだ。それが為だと答えた。
 そのうえでだ。こうも話したのだった。
「昔から動物は好きなんですよ」
「何かそれは」
「人間の会話ですよね」
「はい、そう聞こえます」
「僕は元々人間です」
 今度は屈託のない笑み、気品のある顔にそれを浮かべてだ。
 

 

第四話 吸血鬼の話その三

 そうしてだ。さらに話すのだった。
「死んで。何かの力で吸血鬼になったのです」
「あれっ、僕と同じだにゃ」
 ここまで聞いてだ。にゃんぱいあが述べた。
「僕は吸血鬼さんにそうしてもらったけれど」
「そうそう、実は同じなんだよ」
 吸血鬼は今度はにゃんぱいあに顔を向けて話す。
「僕の場合は死んでからだけれどね」
「そうだにゃ。同じだにゃ」
「ということはまさか」
「貴方を吸血鬼にしたのは」
 五代も一条もだ。そこまで聞いてだ。
「スサノオでしょうか」
「スサノオ?」
「あっ、この世界では名前も姿も変えているかも知れません」
「つまりだ。神だ」
 一条はスサノオをこう表現して吸血鬼に話した、
「人を見て楽しむ神だ」
「人をっていうと」
「君は死んだと今言ったな」
「若くして。病気で」
 そうなったとだ。吸血鬼自身が話す。
「けれど。そこを助けてもらって」
「その君を助けた者がだ」
「そのスサノオですか」
「僕達吸血鬼を生み出したんですか」
「そう考えていいだろう」
 一条は真剣な面持ちでその吸血鬼に話していく。
「実際にこれまで多くの種族をそうして生み出してきた」
「種族っていいますと」
「つまりです」
 ここでだ。さらにだった。五代がだ。吸血鬼に話してきた。
「俺達の世界ではそうして多くの勢力を生み出してきまして」
「我々はその様々な種族と戦ってきた」
 一条もこのことについて話す。
「そうしてきた」
「そうだったんですか」
「俺が戦った最初の種族はグロンギでした?」
「グロンギといいますと」
「戦うこと、いや人間をることを文化とする種族で」
 忘れられなかった。五代にとってグロンギとの戦いはまさに運命だったからこそ。
 だからこそ忘れられずにだ。彼は今そのグロンギのことを話すのだった。
「そうして最後に生き残った者が彼等の主と戦う文化だったんです」
「またそれは変わった文化ですね」
「それがグロンギという種族でした」 
 そうだったとだ。一条は話す。
「そしてその主が」
「そのスサノオですか」
「はい、そうです」
 まさにそうだというのだ。
「その時はン=ダグバ=ゼバでした」
「それで五代さんはそのン=ダグバ=ゼバと」
「闘いました」
 究極の戦士になって闘った。このこともまた五代にとっては忘れられないことだった。
「そうして戦いを終わらせました」
「そのスサノオがですか」
「貴方を吸血鬼にしたのです」
「いや、僕も含めて」
 吸血鬼はそのグロンギの話を聞いてだった。
 そのうえでだ。戸惑う顔になりこう話した。
「吸血鬼は人を特に襲ったりしませんよ」
「血を吸うだけですよね」
「なかったら苺やトマトとかで充分ですし」
 この辺りはにゃんぱいあと同じだった。
「ですから人に対して危害を加える様なことは」
「スサノオは人間と戦っているだけではないのだ」
「ああ、見ているんでしたっけ」
「そうだ、見ているのだ」
 一条が吸血鬼に今度話したのはこのことだった。
「その様々な種族との戦いを見てだ」
「それで?」
「人間を見て、そしてその退屈を紛らわせているのだ」
「じゃあ僕達吸血鬼も」
「にゃんぱいあも含めてだ」
 一条は彼も含めてきた。
 

 

第四話 吸血鬼の話その四

「君達は見られているのだ」
「人間としてですか」
「スサノオはいつも見ているんですよ」
 一条と交代する形でまた五代が話す。
「人間が。姿形を変えられてです」
「僕みたいに」
「果たしてその種族のものとされている性格になるか」
 それと共にだった。
「変わらない姿の人間が彼等とどうしていくのか」
「そうしたことを見ているんですね」
「そうです。ですから」
「君達は」
 こちらの世界の吸血鬼達のことだ、今一条が言ったのは。
「人間としてこの世界に生きているな」
「ええ、楽しく」
「そして猫達を助けているな」
「困っている動物を助けることは当然ですから」
「それだ。君達は全て見られていたのだ」
 一条は真剣な面持ち指摘していく。
「何もかもだ」
「そうだったんですか。それで」
「それでだな」
「僕達は合格したんでしょうか」
 今度は吸血鬼が尋ねた。五代と一条に。
「その人間に」
「はい、スサノオから見ればですけれど」
「合格しているだろう」
 二人も吸血鬼にこう答えた。
「この世界の人達も含めて」
「そうなっていると思う」
「そうですか。じゃあ僕達は人間なんですね」
「はい、紛れもなく」
「その心が人間だからだ」
 それも心優しい。それが吸血鬼の心だった。
「ですから合格したと思います」
「あくまでスサノオから見ればだが」
「そうですか。じゃあ僕としてはですね」
 二人に言われてだ。吸血鬼は安堵した顔になった。
 そしてそのうえでだ。こうも言ったのだった。
「このまま人間として生きさせてもらいます」
「はい、そうされて下さい」
「是非な」
「わかりました」
 吸血鬼は満足した面持ちで頷いた。そしてだ。
 その彼にだ。五代と一条は。あらためてだ。
 彼に対してだ。こう尋ねたのだった。
「それで、なんですけれどスサノオの」
「君を吸血鬼にした彼のことだが」
「はい、あの人のことですね」
「一体どちらにいますか?」
「この世界の何処に」
「月に一回吸血鬼同士で集っているんです」
 吸血鬼は二人にこのことを話した。
「そこにマスター。僕達を吸血鬼にしてくれた」
「スサノオも来る」
「そうなのか」
「そうです」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「ではその会合に」
「御願いします」
「連れて行ってくれ」
「わかりました」
 吸血鬼の返答もすぐだった。
「それなら。早速今夜ありますので」
「よし、それじゃあ」
「その会合に行こう」
「そうしてスサノオと会って」
「その目的を問い詰めるとしよう」
 ここでも。スサノオと戦うつもりだった。
 そうしてだ。早速その夜だった。
 今度はだ。吸血鬼が彼等を案内した。
 その道中でだ。五代と一条はだ。
 先に進む吸血鬼にだ。こう尋ねたのだった。
 

 

第四話 吸血鬼の話その五

「それでなのですが」
「君達のマスターはどういった姿をしているのか」
「それです。一体」
「どういった格好なのか」
「それですね」
 吸血鬼もだ。彼等のその言葉にだ。
 すぐにだ。こう答えたのだった。
「服装は僕と同じでして」
「タキシードにマント」
「それか」
「はい、これは吸血鬼の正装です」
 そうだというのだ。彼が今実際にしている格好はだ。
「二十世紀初頭から決まっているんです」
「あれっ、昔は違ったの」
 カツオは吸血鬼その話を聞いて述べた。
「そうだったの」
「そうだよ。昔は正装も違ったんだよ」
「というとどんな服を着てらしたんですか?」
「昔の貴族の礼装だったんだ」
 かつて着ていたのはそれだというのだ。
「僕達は闇の貴族とも言われているからね」
「だから貴族の礼装なんですか」
「その時代ごとのね」
「それでタキシードなんですか」
「マントは翼みたいなものだよ」
 マントについても語られた。
「これはね」
「マントはそれなんですか」
「そう、僕達は空も飛ぶから」
 ただしこの姿で飛びはしない。宙に浮かぶことはあってもだ。
 それでも吸血鬼本来の姿で飛ばない。それならばだった。
「蝙蝠に姿を変えてね」
「ああ、だから僕の背中に蝙蝠の翼があるにゃ」
 にゃんぱいあはここで自分のその背中のことがわかった。
「それでだったにゃ」
「そうだよ。吸血鬼は蝙蝠にもなれば」
 それに加えてだった。
「狼にもなれるし霧にもなれるし」
「何だ?結構変われるだな」
「吸血鬼の能力は多彩なんだ」
 まさむにゃにもこう話す。
「だから蝙蝠にもなれて」
「それでマントもあってか」
「そういうことだよ。ついでに言えば」
 今度は吸血鬼の方から話した。
「僕達はこうして日の下にいても大丈夫だよ」
「そうそう。それ位では何でもないんですね」
 にゃてんしはだ。どうやらそのことを知っていたらしい。
 それで実際にだ。こんなことも言った。
「カーミラさんや伯爵さん普通にいましたからね」
「あの人達は吸血鬼の中でも名士だよ」
 この吸血鬼も彼等のことを知っていた。しかも名士だというのだ。
「素晴らしい人達だよ」
「そうですよね。あと大蒜も」
「あれが通じるのはスラブの吸血鬼だから」
 吸血鬼のルーツの一つはそこにある。東欧にだ。
「僕は大蒜とトマトを使ったパスタも好きだから」
「そうそう、トマトに大蒜を入れると余計に美味しいんだにゃ」
 またにゃんぱいあがこのうえない笑顔で話す。
「僕も大好きだにゃ」
「そう、パスタもいいね」
 吸血鬼はさらに上機嫌で話す。
「イタリア料理もいいよね」
「吸血鬼にイタリアというのは」
 茶々丸にとっては。それは。
「あまり合わないと思いますが」
「あれっ、そうかな」
「ルーマニアとかならともかく」
「ルーマニアもラテン系だよ」
 イタリアと同じくである。実はそうなのだ。
「だから別に構わないじゃないかな」
「では好きなものは何ですか?」
「パスタの他には赤ワインで」
 吸血鬼は茶々丸のその話に応えて言う。
「あとは鮪のお刺身も」
「和食も好きにゃ?」
「だから日本にいるんだよ」
 そうだともいるのだ。
「和食が好きだからね」
「ううん、やっぱり何ていうか」
「人間的だな」
 五代も一条もだ。あらためてだ。
 吸血鬼自身の話からだ。彼が人間であることを知ったのだった。
 

 

第四話 吸血鬼の話その六

 そのことを知って話をしながらだった。
 一行が辿り着いた場所は。そこはというと。
「あれっ、ここって」
「そうだな。ホテルだな」
「はい、ホテルです」
 豪華なホテルだった。帝国ホテルの様な。
 そのホテルの前に来てだ。また話す五代と一条だった。
 ホテルは白い巨大な姿を彼等の前に現わしていた。まさに聳え立っていた。そのホテルを見上げながらだ。吸血鬼が話した。
「ここのパーティー会場で、ですね」
「会合ですか」
「その吸血鬼の」
「はい、それが行われます」
 こう話した。しかしだ。
 ここでだ。黒と金色の制服を着たホテルマンが来てだ。彼等に言ってきた。
「お客様ですね」
「あっ、はい」
 吸血鬼がそのホテルマンに応える。
「今日パーティーに招待されていた」
「確か」
 ホテルマンはここで日本人そのものの名前を言った。するとだ。
 吸血鬼は大きく頷きだ。こう返したのだった。
「それが私です」
「わかりました。では案内させて頂きます」
「それとです」
 ホテルマンは手慣れた動作でだ。今度はだ。  
 五代と一条に目を向けてだ。こう言うのだった。
「こちらの方々は」
「連れです」
「お連れの方々ですか」
「はい、ですから」
「わたりました」 
 ここでまた和風な名前を出し。そうして吸血鬼から五代と一条に顔を向けて。
 そのうえでだ。こう彼等に話した。
「ではです」
「いいんでしょうか」
「我々も参加して」
「はい、どうぞ」
 すぐに応えたホテルマンだった。
 そしてだ。今度はだ。 
 にゃんぱいあ達も見る。彼等を見てからだ。
 吸血鬼にだ。こんなことを話してきた。
「当ホテルはペット持ち込みも可ですが」
「それでもですか」
「はい、それでもです」
 こう言ってだ。そのうえでだ。
 吸血鬼にだ。こうも言った。
「ですがサインを御願いできますか」
「持ち込み許可のですね」
「はい、ペットの」
 ホテルマンは気軽に彼等に話す。
「その許可証にサインを」
「それでは」
「今から」
 五代と吸血鬼が応えた。そうしてだ。
 その中でだ。吸血鬼が出て来てだ。五代に話した。
「ではここは僕が」
「サインされますか」
「はい、僕が主に呼ばれてますから」
 言うならホストだからだ。それでだというのだ。
 彼はだ。五代に自分がサインすると言ってだった。
 実際に彼がサインをしてだ。にゃんぱいあはよしとなった。そうしてからだ。彼等はだ。
 吸血鬼に案内されてホテルの中を進む。ホテルの廊下は奇麗な赤絨毯でだ。その絨毯は隅から隅まで丁寧に掃除されている。
 全体的に気品のある造りだ。そのホテルの中を進んでだ。
 にゃてんしはこんなことを言った。
「いや、ここは中々」
「いいにゃ?」
「はい、天界もよかったですが」
 彼が元いただ。そこを話に出してだ。
 そのうえでだ。彼は今話すのだった。
「ここもいいですね。というよりは」
「というよりは?」
「やっぱり人間の世界の方が楽しいでしょうか」
 こう話したのだった。
「とても」
「そうなのにゃ」
「天界は杓子定規な方と何から何まで善で統一されて面白くないのです」
 そうだというのだ。にゃてんしの言葉では。
「むしろ。多くの悪がある方が」
「おい御前」
 にゃてんしの顔に黒いものがさした時にだ。まさむにゃがだ。
 

 

第四話 吸血鬼の話その七

 すぐにだ。彼を右の前足で指し示し言った。
「それが天使の言葉か?」
「はい、そうですよ」
「何処がそうなんだよ」
「どうせ私は天界を追い出されましたから」
 表情は変わらないが黒さは増していた。
「それでもいいではないですか」
「そんなのだから天界を追い出されたんじゃないのか?」
「何分融通の利かない世界でしたから」
「だから御前が悪かったんじゃないのか?」
「さて、どうでしょうか」
「しかしだ」
 ここでだ。一条がだ。
 にゃてんしのその話を聞いたうえで述べた。
「それも一理ある」
「僕の言葉にですね」
「そうだ。実際に人間というものはな」
「奇麗ごとが好きにしても」
「善ばかりではないからな」
 これまでの戦いからの言葉だった。これも。
「悪もある。そうしたものも含めて全てが人間だ」
「全てがですか」
「人間と言っても完全に純粋でもない」
 一条はやや首を捻りながら話す。
「悪の部分もある。だがそれに絶望したり諦めることがだ」
「スサノオの思う壺なんだよ」
 五代もこのことについて話す。
「スサノオはそうしたところも見ているからね」
「非常に複雑なのですね」
 茶々丸はそうしたことを聞いて述べた。
「スサノオという人のやることや考えていることは」
「うん、何重にも罠を仕掛けているから」
 五代はにゃんぱいあ達にこうも話す。
「それを乗り越えていくことが大事なんだ」
「では僕は乗り越えられたのでしょうか」
 その五代の考えを聞きながら。吸血鬼もだ。
 考える顔になりだ。彼に問うた。
「スサノオのその罠を」
「それは彼に会ってからはっきりする」
 一条はここでは即答しなかった。それをあえて避けたのだ。
 そしてだ。そうした話をしているうちにだ。
 その会場が行われている大広間の扉の前に来た。そこを開けると。
 立食のパーティーが開かれていた。誰もがだ。
 吸血鬼と同じ格好をしていた。男も女もだ。ズボンをはいていた。
 それを見てだ。にゃんぱいあが首を捻って言った。
「あれっ、女の人もズボンにゃ」
「吸血鬼の正装だからね」
 それでだとだ。その吸血鬼がにゃんぱいあに答えた。誰もがテーブルを囲んでその上にある馳走や酒を飲んでいる。赤い食べものが多い。
 その中でもだ。とりわけだ。
 酒はだ。紅いものばかりだった。ワインが多い。
 そのワインをもの欲しそうに見ながらだ。吸血鬼は五代達に話す。
「ここです」
「ここが会場ですね」
「吸血鬼達のパーティーの」
「はい、そうです」
 まさにそうだとだ。吸血鬼も答える。
「ここがです」
「さて、それではですね」
「このパーティーの主賓を探すか」
 二人はこう言い合ってだった。そうしてだ。
 中を見回す。だがここでだ。
 その吸血鬼達がだ。彼等のところに来てだ。笑顔で声をかけてきた。
「やあ、よく来たね」
「久し振りだね」
「それでそちらの人達は?」
「お客さんかな」
「ひょっとして」
「うん、そうだよ」
 その同胞達にだ。吸血鬼は笑顔でこう答えた。
「僕の友達なんだ」
「ふうん、見たところ悪い人達じゃないね」
「かなり真っ直ぐだね」
「しかもかなり強い」
「そういう人だね」
「わかるんだ」
 吸血鬼が彼等に応える。
 

 

第四話 吸血鬼の話その八

「そうしたことも」
「伊達に何百年も生きているからね」
「それもわかるよ」
「一目見ただけでいい人か悪い人かはね」
「そうしたことは」
 わかるとだ。彼等も言う。そしてだ。
 今度はにゃんぱいあ達を見てだ。こんなことも言ったのだった。
「で、そこの猫ちゃん達はペット?」
「蝙蝠もいるし」
「じゃあ使い魔?」
「それかな」
「あっ、ペットでもないし使い魔でもないし」 
 そうしたものではないと言ってだった。そしてだ。
 そのうえでだ。吸血鬼はだ。彼等にこう話した。
「友達なんだ」
「ああ、友達か」
「そういえば君猫とか蝙蝠とか好きで」
「すぐに助けてたし」
「そういう子達なんだ」
「その通りだにゃ」
 にゃんぱいあも彼等に話す。右の前足をあげて応えてだ。
「僕はこの人に助けてもらったにゃ」
「ああ、やっぱりね」
「そうだったんだね」
「彼はいつも優しいからね」
「困っている相手がいたら見捨てていられない人だから」
 猫や蝙蝠だけではないというのだ。助ける相手はだ。
 そしてだ。彼等は再びだ。五代達を見た。特に五代を見てだ。
 こうだ。彼等に言った。
「君達、相当色々な戦いを経てきたね」
「特にそっちの優しい感じの人」
 五代のことである。
「貴方は特にですね」
「とても優しい人ですが多くの戦いを経てきた」
「戦いたくはなくても」
「そうしてきてですね」
「生きてきましたね、ずっと」
「その姿になれるようになって」
「はい」
 その通りだとだ。五代もだ。
 真剣な顔になってだ。そうしてだった。
 頷いてだ。彼等に答えたのだった。
「俺は。仮面ライダーです」
「仮面ライダー?」
「それが貴方のその戦う時の姿」
「それなのですか」
「その仮面ライダーというのが」
「はい、仮面ライダークウガといいます」
 それだとだ。吸血鬼達にもだ。五代は話した。
「その姿で戦ってきています」
「では今ここに来ておられる理由は」
「それは何故でしょうか」
「それは」
「貴方達のマスターのことでだ」
 五代と共にだ。一条が話してきた。
「その彼のことだ」
「そうですか。あの方とですか」
「御会いしたいのですか」
「そう仰るのですか」
 吸血鬼達はそれを聞いてだ。納得した様にそれぞれ言った。
 それでだ。すぐに二人に言ってきた。
「では今は」
「マスターに会われますか」
「今ここで」
「来られてるよね」
 吸血鬼が同胞達に尋ねた。
「あの方も」
「あれっ、さっきまでおられたけれど」
「何処かな」
「何処に行かれたのかな」
 吸血鬼達は周囲を見回した。会場の中をだ。
 そうして彼を探すがだ。それでもだった。
 何故か見当たらずだ。彼等もだった。
 困った顔になる。それでもだ。
 その彼が見つからずだ。困ってしまっていた。
 

 

第四話 吸血鬼の話その九

「おかしいなあ。すぐにおられるってわかる方なのに」
「どうして今に限っておられないんだ?」
「また急に姿を消されて」
「よくこういうことがあるにしても」
「そうだよな。ちょっとな」
「今は特に」
「まあここにはおられるんだよね」
 ここで言ったのは吸血鬼だった。同胞達に言ったのである。
「それはそうだよね」
「うん、それは間違いないよ」
「私達実際に御会いしたし」
「だからね」
「おられるのは間違いないから」
 それは確かだというのだ。だがそれでもだった。
 その彼は見つからずだ。彼等は途方に暮れることになった。
 しかしここでだ。にゃんぱいあが言うのだった。
「まあ言っても仕方ないにゃ」
「仕方ない?」
「仕方ないっていうと」
「待つのが一番だにゃ」
 あっけらかんとしてだ。こう言ったのである。
「その人を」
「いや、何時出て来られるかというと」
「それがわからないからね」
「急に消えられて急に出てこられる方だから」
「どうも」
 吸血鬼達がこう言うとだった。ふとだ。
 五代があることを思い出してだ。こう一条に囁いた。
「そうしたところは同じですね」
「そうだな。変わらないな」
「スサノオですね。やはり」
 五代も一条もだ。彼のことはよくわかっているからこそだ。
 それでだ。頷き合って話すのだった。
「そうして様子を見ているんですね」
「俺達のな」
「ということは」
 それならばとだ。五代は言っていってだった。
 そうしてだ。一つの答えが出たのだった。
「スサノオは出て来るな」
「間も無く」
「何かわかっておられる感じですね」
 吸血鬼がその二人に対して述べた。彼等を見てだ。
「マスターのことも」
「まあ。そのマスターが俺達が思っている相手ならね」
「その行動はわかっているから」
 二人はこのことを仮定して話していた。
 しかしだ。それでもだった。
 あらためて考えながらだ。述べたのだった。
「じゃあ。今はにゃんぱいあ君の言う通り」
「じっくり待つとするか」
「そうにゃ。とりあえず何か食べるにゃ」
 にゃんぱいあの考えはもうそこに至っていた。
「とりあえず赤いものを食べたいにゃ」
「ああ、苺があるよ」 
 吸血鬼がだ。その彼に話す。
「それでいいかな」
「苺大好きにゃ」
 満面の笑顔でだ。にゃんぱいあは吸血鬼の言葉に応えた。両方の前足も万歳の形になっている。身体全体で喜びを表わしている。
 そうしてだった。早速だ。
 テーブルの上に登ってそうしてだった。苺を食べはじめた。
 まさむにゃや茶々丸もそれに続く。五代達もだ。
 パーティーの料理、バイキングのメニューをだ。それぞれ楽しみはじめた。その味は。
「美味いですね」
「そうだな」
 また五代の言葉に頷く一条だった。ただし今度は頷く話の中身が違っていた。
「味はいいな」
「このホテルはかなりのホテルみたいですね」
「はい、かなりのホテルです」
 実際にそうだとだ。吸血鬼も答える。
 彼は赤ワインを飲んでいる。そうしながら話していた。
「もうこっちの世界ではかなりランクが上の」
「ですよね。この味は」
「かなりのものだな」
「じゃあこの御馳走を食べながら」
「待つか」
 スサノオが来るのをだ。待とうというのだ。
 そうした話をしてだった。彼等は。
 御馳走に美酒を食べながらだ。相手を待っていた。そうしてだ。
 やがてだ。彼等の周囲が騒がしくなってきた。
「おお、マスター」
「戻られたのですか」
「そうなのですね」
「いや、ずっとこの場所にいた」
 そうだとだ。誰かが言った。
 

 

第四話 吸血鬼の話その十

「この会場にな」
「あれっ、そうだったんですか」
「最初からですか」
「おられたんですか」
「いた」
 あの声だった。二人、とりわけ五代はだ。
 その声を聞いてだ。瞬時に身構えた。その彼と共にだ。
 一条もだ。声の方を見たのだった。そこはだ。
 人だかりができて見えない。しかしだった。
 そこにいるのはわかった。彼がだ。それでだった。
 二人はだ。それぞれ身構えたまま言うのだった。
「あそこですね」
「そうだな。あの中にな」
「奴がいます」
「スサノオが」
「ああ、あの方がですか」
 吸血鬼も彼等のそのやり取りを聞いて述べる。
「やっぱりそうなんですか」
「うん、間違いない」
「声でわかる。それにこの気配」
「圧倒的なプレッシャー」
 そうしたものまで感じてだ。二人はわかったのだ。
 そうしてだった。その人だかりを見る。やがてだ。
 その人だかりの中からだ。彼が出て来たのだった。
 吸血鬼の礼装のそのタキシードにマントでだ。髪の毛は一本もない。
 肌はやはり白く目は血走りだ。口からは普通の吸血鬼よりも大きく鋭い牙がある。その姿を見るまでもなくだ。二人は既に確信していた。
 そしてだ。本人に対してだ。直接にだった。
 その名前をだ。呼んだのだった。
「スサノオ」
「やはりいたか」
「ふむ」
 それを聞いてだ。その声でだ。
 その吸血鬼のマスター、スサノオが言ってきた。
「来ているのはわかっていた」
「そちらもか」
「わかっていたというのか」
「如何にも」
 その通りだと答えてだった。そうしてだ。
 スサノオはだ。二人の頭に直接語り掛けてきたのだった。
『さて、それではだ』
『頭の中にか』
『直接語り掛けて来るか』
『如何にも』 
 その通りだとだ。答えきたスサノオだった。
『君達の聞きたいことはわかっている』
『この世界で何をしている』
『何を考えてだ』
『既にわかっていると思うが』
 スサノオは頭の中で笑ってみせて述べた。
『最早な』
『この世界でも見ているんだな』
『人間を』
『そう、私は永遠の退屈の牢獄の中にいる』
 そこから逃れることはまだできていない。それでだというのだ。
 スサノオはだ。二人にだ。さらに語り掛けてきた。
『その退屈を紛らわせる為にだ』
『人を吸血鬼として助け』
『そうしてか』
『そうだ。人間を見ている』
 このことはだ。やはり同じだった。
 スサノオは自らの口で言いだ。そしてだ。
 二人にだ。さらに話してみせた。
『ただし。この世界ではだ』
『この世界では!?』
『一体何をしているというのだ』
『戦うことはしていない』
 それはしていないというのだ。これも五代達の見た通りだった。
『見ているだけだ』
『人間を』
『それだけだというのか』
『そして君達に伝える為に今いる』
 今度はこんなことを言ってきたスサノオだった。
 

 

第四話 吸血鬼の話その十一

『私はあらゆる世界にいてそうして人を見ている』
『そしてか』
『それぞれの世界で人間を見ているというのか』
『他の世界では戦うこともある』
『その世界にいる戦士達と』
『やはりそうしているのか』
『そしてだ』
 ここまで話してだった。スサノオは。
 その声を笑わせてだ。そのうえでだった。
 二人の脳にだ。告げたのだった。
『君達が来るのを待っている』
『貴様がその考えでいる限りはだ』
『俺達は戦う』
 二人の、より言えばライダー達の答えは決まっていた。そのスサノオ、目の前にいるバンパイアマスターを見据えての言葉だった。
『そして全ての戦いでだ』
『貴様を退ける』
『それを楽しみにしている』
 まさにだ。それをだというのだ。
 ここまで話してだ。スサノオは。
 不敵な笑みを浮かべてだ。踵を返してだ。
 吸血鬼達の中に姿を消した。そうしてだった。
 目的を果たした五代達は帰ろうとした。だがここでだ。
 茶々丸がだ。二人に言ってきたのだった。
「あっ、待って下さい」
「えっ、待って欲しいって」
「何かあるのか」
「折角来たんですから楽しみましょう」
 こう二人にだ。二人の足下から話したのだった。
「御馳走にお酒を」
「ううん、戦わないっていうし」
「それならいいか」
「ああ、戦わないんですか」
 茶々丸も二人の話を聞いて述べる。
「それはよかったですね」
「スサノオは戦いばかりを求めてはいない」
「この発想はなかった」
 二人もだ。それはなかった。
 何故ならスサノオとは常に戦ってきたからだ。だからこそだ。
 スサノオは戦うものだを思っていた。しかしそれは違っていた。彼は。
「戦いを抜きにしてもまず人間に仕掛け」
「そうして人間を見ているのだ」
「それがスサノオの目的」
「そういうことか」
「マスターは難しい方だったのですね」
 吸血鬼もあらためて知ることだった。自身のマスターとはいっても。
「まあとにかく戦いが行われなくて何よりです」
「とりあえずはですけれどね」
「この世界では」
「では今は楽しみましょう」 
 吸血鬼も彼等に話した。そうしてだった。 
 一行は御馳走に美酒を楽しんでからだ。そうしてだった。
 帰路についた。その中でだ。
 まさむにゃがだ。二人に尋ねた。
「それでだけれどよ」
「それで?」
「それでというと」
「あんた達もうこの世界でやることはやったんだよな」
「うん、スサノオとの話は終わったから」
「後は帰るだけだ」
 こう話してだった。二人は実際にだ。
 今は彼等がこの世界に来る時に通ったその公園の土管に向かっていた。だが、だ。
 ここでだ。にゃてんしが彼等に言ってきた。
「僕達もそちらの世界に行っていいですよね」
「うん、何時でも来て」
「そして楽しんでいってくれ」
 彼等の世界をだ。そうしてくれというのだ。
「何なら今からね」
「来るか?」
 二人はここで彼等を誘った。
「俺達の世界に」
「俺達もこの世界が気に入った」
「だからお互いにね」
「行き来しないか」
「いいですね」
 吸血鬼がだ。二人の提案にだ。
 笑顔になってだ。それで述べたのだった。
「それではお互いに」
「あっちの世界に自由に行っていいにゃ」
「それはいいな」
 にゃんぱいあとまさむにゃも言う。
「ならあっちでも血を吸うにゃ」
「ってそれはまずいだろ」
 そこはすぐに突っ込みを入れるまさむにゃだった。
「幾ら何でもな」
「じゃあどうすればいいにゃ?」
「俺の血を吸えよ」
 これがまさむにゃの言葉だった。
「他の世界の奴等の血を吸ったら問題だからな」
「そうかにゃ。血を吸って駄目かにゃ」
「よくないね」
 五代もそこは突っ込みを入れる。
「どうしてもなら俺の血を吸えばいいから」
「何か面白くないにゃ」
 まさむにゃと五代に言われてだ。にゃんぱいあは。
 少し面白くないといった顔になった。しかしだ。
 すぐに気持ちを取り直してだ。こう言いだした。
「なら五代さん、あっちの世界に行ったらにゃ」
「俺の血を吸うんだね」
「それと苺にゃ」
 それもだとだ。笑顔で言うのである。
「苺たっぷりと欲しいにゃ」
「本当に苺好きだね」
「赤いものは何でも大好きにゃ」
 こう言ってであった。彼等は元の世界に戻り別の世界に行くのだった。
 にゃんぱいあの世界でだ。一つのことがわかった。そしてそれがライダー達の戦いのだ。はじまりとなり合図となるものだった。


第四話   完


                       2011・8・31
 

 

第五話 忠の世界その一

                          第五話  忠の世界
 にゃんぱいあ達の世界でのことは五代が終わらせた。しかしだ。
 響鬼は川の土手にだ。明日夢と横に並んで座りだ。そうしてだった。
 彼はだ。こう明日夢に話した。
「この戦いはかなり激しく長いものになるだろうな」
「にゃんぱいあちゃんの世界だけじゃないですか」
「うん、それに終わらないな」
 こうだ。川の銀色のせせらぎを見ながら話す。
「あの女のこともあるし」
「あと野獣ですね」
「多分それだけじゃない」
 他の世界の存在についてもだ。響鬼は言及した。
「にゃんぱいあの世界も出たんだ」
「なら他の世界も」
「関わってくるだろうな。だから」
「戦うんですね」
「今回の相手は魔化魅だけじゃない」
 他の存在もだ。今回の彼等の相手だとも言うのだった。
「その中で俺が一番気になるのは」
「野獣ですか?」
「いや、女だ」
 そちらだというのである。響鬼が一番気になっているのはだ。
「あの女だ」
「っていいますと」
「乾達と戦っていたあいつだよ」
「ああ、あの人ですか」
「明らかに何か知ってるしな」
 考える顔で言う響鬼だった。
「あいつと会いたいな」
「それで確めたいんですね」
「あいつが何処から来たか」
 響鬼は太陽の光を反射し銀色に輝いている川を見る。川は波打つ度に銀色に光る。その合間に青も見えている。その川を見ながらだ。
 彼はだ。明日夢に話すのだった。
「そしてその力も」
「スサノオが関わってるのは間違いないですよね」
「それは確かだな」
 このことはだ。もう言うまでもなかった。
「だから是非あの女と会いたいな」
「会えますかね」
「会えるさ」
 このことにはだ。響鬼は微笑みだ。
 そのうえでだ。こんなことを言うのだった。
「あの女の方から俺達の相手をしに」
「来るんですね」
「だから待っていればいいんだ」
「じゃあその間は」
「たちばなに行こう」
 まずはそこにだというのだ。
「それでお茶でも飲もう」
「何か落ち着いてますね」
「焦っても仕方ないからな」
 このことにはだ。響鬼は気さくに笑って話した。
「ここは明るくいこうか」
「そうですね。焦らず明るくですね」
「リラックスしていこうな」
 実に響鬼らしい言葉だった。
「それじゃあ何を食べる?少年は」
「少年じゃなくて明日夢ですよね」
「ははは、そうだったそうだった」
 かつての呼び名はだ。何となく出してしまった響鬼だった。そうしたリラックスした雰囲気でだ。二人はたちばなに行った。
 そしてそこで、であった。二人は店に入るとすぐに立花香須美と立花日菜佳にだ。こう言われたのだった。
「あれっ、響鬼さんですか?」
「明日夢君まで」
 何故かだ。二人は思わぬ客といった顔で二人を出迎えたのだ。
 それでだ。こう言ってきたのである。
「さっき何か連絡があって」
「来て欲しいって言われてましたけれど」
「えっ、誰にだい?」
 響鬼もだ。二人の話を聞いてだ。 
 すぐに怪訝な顔になってだ。二人に問い返した。
「そんなことを」
「威吹鬼さんと轟鬼さんからです」
「御二人に連絡はいってなかったですか?」
「あの二人に」
 それを聞いてだ。余計にだ。
 響鬼は首を捻りだ。そしてだった。
「というとまさか」
「魔化魅でしょうか」
 ここで明日夢も言った。
「それが出て来たんでしょうか」
「いや、まさか」
「あの人ですか」
「あの女かな」
 考える顔で述べる響鬼だった。
 

 

第五話 忠の世界その二

「やっぱり」
「噂をすればでしょうか」
 こう話すとだ。ここでだった。 
 明日夢の携帯が為った。彼はすぐにそれに出た。すると出て来たのは。
 天美あきらだった。彼女が言ってきたのだ。
『明日夢君、今何処ですか?』
「うん、たちばなだけれど」
『響鬼さんはおられますか?』
「いるよ」
 すぐに答える明日夢だった。
「ならすぐに」
『来て下さい』
 話は急いでいる感じだ。
『あの女の人が出て来ました』
「場所は何処なの?」
『はい、あの橋の下です』
 そこだというのだ。
『そこで今』
「わかったよ。それじゃあ」
 ここまで聞いてだ。明日夢はあきらにこうも言った。
「京介にも伝えるから」
『御願いします』
「それじゃあね」
 こう話してだ。携帯を切りだ。
 響鬼にだ。話したのだった。
「あのいつもの橋のところで戦っておられるそうです」
「ああ、あそこか」
 橋の下と聞いただけでだ。響鬼もわかった。
「あのいつも戦っている石と川のか」
「ですね。じゃあ」
「行くぞ、明日夢」
 響鬼もすぐにだった。
 明日夢に声をかけてだ。そうしてだった。  
 たちばなを後にする。その際だ。
 立花姉妹がだ。こう二人に尋ねた。
「私達のどちらかが行かなくていいの?」
「サポーターとして」
「ああ、いいさ」
 響鬼は二人に背を向けて店から出ようとしていたがここでだ。
 二人の方を向きなおりだ。気さくな笑みで応えた。
「明日夢がいるからな」
「あっそうね、明日夢君がいるのならね」
「何の心配もいらないわね」
 二人もだ。響鬼の言葉を受けてだ。
 すぐに笑顔になってだ。こう応えたのだった。
「やっぱり響鬼さんには明日夢君よね」
「それならそれでいけるわね」
「ええと、できるかどうかわからないですけれど」
 少し照れ臭い笑みになってだ。明日夢も応える。
 そうしたやり取りからだ。二人はたちばなからだ。その橋の下に向かう。当然その途中で桐矢に連絡もしてだ。そのうえでそこに向かった。
 小石が敷かれた場所が下に絨毯の様んみ拡がる青い塗装の鉄とコンクリートの橋の下には小石と共に浅い川がある。そこに足首を浸からせてだ。
 威吹鬼と轟鬼がだ。あの女と戦っていた。
 二人でそれぞれ左右から攻撃を仕掛ける。しかしだ。
 女は強くだ。全く相手にならなかった。
「くっ、やはり僕達だけでは」
「適わないというのか?」
 一旦間合いを離して体勢を立て直しながらだ。二人は言う。
「乾さん達とは違い」
「それも二人だと」
「確かに貴方達は強いわ」
 女はその手に持った刀を悠然と構え宙に浮かんだ状態でその二人に告げる。
「けれど」
「けれど?」
「何だっていうんだ」
「私はもっと強いのよ」
 そうだとだ。女は言うのである。
「あの三人、とりあけファイズとカイザだったかしら」
「既に覚えているというのか」
「一度の戦いで」
「記憶には自信があるわ」
 それでだ。もう覚えたというのだ。
「あの二人の強さはかなりだったわね」
「だが僕達はというのか」
「乾さんよりも」
「同じ位かしら。けれど」
 それでもだというのだ。女は。
 

 

第五話 忠の世界その三

「二人では私の相手にはならないわ」
「くっ、やはりそうか」
「二人だけではか」
「そして」
「そして?」
「今度は何だって言うんだ?」
「私の相手にならなければ」
 それではだ。どうかともいうのだ。
「天草様の相手はできないわね」
「天草!?」
「というとまさか」
 その名を聞いてだ。二人はすぐにだ。
 ある者の名を思い出した。その者こそは。
「天草四郎のことか!?」
「島原の乱の」
「知っているのね。そうよ」
 その通りだとだ。女も返す。
「この柳生義仙の主であるあの方の相手はできないわね」
「天草、あちらの世界の天草なのか」
「この女の世界の」
「その通り。この世界の天草様と私達の世界の天草様は違うわ」
 実際にそうだとだ。女、義仙も答える。
「その天草様には遥かに及ばないわ」
「くっ、僕達ではか」
「二人だけでは」
「ええ。ただ二人ではなくなるわね」
 ここでだ。義仙がこう言うとだ。
 後ろからバイクが一台来た。そこからだ。
 まずは明日夢と桐矢が降りて来てだ。二人に言ってきた。
「お待たせしました!」
「すいません、遅れました」
「ああ、あきらが呼んでくれたんだ」
 威吹鬼は二人の姿を見てすぐに察した。
「有り難いね。それで響鬼さんも」
「よっ」
 左手を敬礼の様にしてびしっと前にやってだ。響鬼はバイクから降りてから二人に挨拶をしてきた。
「頑張ってくれてるな」
「はい、何とか」
「生きてます」
「で、あきらは?」
 響鬼は周囲を見回しながら彼女の姿を探した。
「何処にいるんだ?」
「あれっ、さっきまでいたんですけれど」
「何処に行ったかな」
「すいません、大丈夫ですか?」
 威吹鬼と轟鬼が言ってからだ。すぐにだった。
 そのあきらが出て来てだ。頭を下げて来た。
「実はおトイレに行っていまして」
「そうか。それなら仕方ないな」
 威吹鬼はそれで納得した。
「まあとにかく。今は」
「はい、今はですね」
「響鬼さんが来てくれたから」
 それでだというのだった。そうしてだ。
 響鬼の変身も終わりだ。三人でだ。
 義仙と対峙する。そのうえでだ。
 響鬼はだ。明日夢に言った。
「じゃあ明日夢はな」
「はい、天美さんとですね」
「ちょっと安全なところにいてくれ」
 戦えない彼はそうしろというのだ。
「危ないからな」
「わかりました。それじゃあ」
「じゃあ俺も」
 桐矢もだ。変身してだった。
 そのうえで義仙に対峙する。これで四人だった。
 四人はもうそれぞれの楽器を手にしている。武装しながらだ。
 響鬼は義仙の正面にいながらだ。三人に告げた。
「じゃあ俺が正面から攻めるか」
「それではですね」
「俺達は」
「ああ、横から頼むな」
 こう威吹鬼と轟鬼に言ってだ。
 そのうえでだ。桐矢にも言った。
「いいな」
「はい」
 彼も響鬼の言葉に頷く。
「四人で仕掛けてですね」
「一気に決めるぞ」
「そうね。四人ならね」
 どうかとだ。義仙も言ってくる。
「私の相手になるわね」
「こっちも一対一でいきたいんだがね」
 それにはこだわりも見せる響鬼だった。
 

 

第五話 忠の世界その四

 しかし彼も状況がわかっている。だからなのだ。
「まあ仕方ないな」
「好みは言っていられないということね」
「そういうことだ」
 響鬼は口調はいつもの通り飄々とはしている。
 しかしだ。それでもだ。
 義仙を見据えたままだ。次第に間合いを詰め。
 四人の鬼で一斉に攻撃を浴びせようとする。だが、
 ここでだ。急にだった。
 義仙はだ。構えを解いてこう響鬼達に言ってきた。
「いいわ、それじゃあ」
「それじゃあ?」
「ここで決着をか」
「いえ、それはまだよ」
 こうだ。余裕の笑みで告げたのである。
「ここでそれを決めるのは勿体無いわ」
「勿体無い」
「何が言いたい」
 威吹鬼と轟鬼が義仙に問うた。
「まさかここではなく」
「別の世界でというのか」
「私達の世界で決着をつけましょう」
 これが義仙の言いたいことだった。
 それを告げてだった。彼女は。
 宙に浮かんだままでだ。足からだ。
 姿を消していく。その中で響鬼達に告げた。
「門は既にあるわ」
「それは何処だ」
 桐矢が鬼の姿で義仙人に問う。
「御前達の世界に行く門は」
「この橋の上よ」
 そのだ。彼等が今いるそこのだというのだ。
「そこにあるわ」
「何だ、近いな」
 それを聞いてだ。響鬼が言った。
「そこからか」
「来るといいわ。そしてそこでね」
「天草、そしてだな」
「そうよ。スサノオというのね」
 義仙も響鬼達の言葉に合わせて言う。
「あの方もおられるわ」
「さて、今度はどういった姿で出て来るのか」
 響鬼はもうスサノオのことを考えていた。
「そしてあちらの世界でどういった戦いになるのか」
「楽しみにしているのかしら」
「楽しみはしないさ」
 響鬼はそれは否定した。少なくとも彼は戦いに楽しみや喜びといったものを見出す者ではない。それで言うのであった。
「だがそれでも」
「戦いはするというのね」
「ああ、そういうことさ」
「わかったわ。それじゃあ来るといいわ」
 既にだ。義仙の姿は完全に消えていた。声だけが残っている。
 その声で告げてだった。気配も消えた。
 後に残ったのは鬼達だった。その鬼達にだ。
 明日夢とあきらが駆けて来てだ。こう話してきた。
「あの、橋の上に」
「怪しい門が出て来ました」
「成程、言った通りだな」
 元の姿に戻りながらだ。響鬼は。
 二人の言葉に頷きだ。それからこう彼等に告げた。
「さっき女から聞いたよ」
「あの隻眼のですか」
「おかしな女に」
「うん、そうなんだ」
「橋の上にあいつ等の世界に行く門があるってね」
 威吹鬼と轟鬼も元の姿に戻っている。その姿で明日夢とあきらに返す。
「言った通りだね」
「少なくともあいつは嘘は吐いていないんだな」
「それなら」
 桐矢はまさに単刀直入だった。勇んでだ。
 響鬼にだ。右手を力瘤にして言った。
「今から行きましょう」
「そうだな。早く行って早く片付けよう」
 響鬼はあえてリラックスした調子で言ってだ。そうしてだ。
 

 

第五話 忠の世界その五

 一行にだ。こうも言った。
「じゃあ今から橋の上に行こう」
「よし、それなら」
「橋の上の門に」
 全員応えてだ。そうしてだった。
 彼等はだ。橋の上に向かう。その彼等にだ。
 一組の男女が来てだ。言ってきたのだった。
「おっと、四人だけじゃな」
「少し寂しいわね」
「えっ、斬鬼さん」
「それに朱鬼さんも」
 轟鬼と威吹鬼はだ。彼等の姿を認めてだ。
 目を丸くさせてだ。驚いた声で言った。
「死んだ筈なのに」
「まさか」
「そうだ、あの黒衣の青年にだ」
「甦らせてもらったわ」
 彼の力によってだ。そうなったというのだ。
「仮面ライダーはスサノオとの戦いが続く限り何度でも蘇り戦う」
「それが宿命だと言われてね」
「そうですか。だからこそ」
「生き返って来られたんですね」
「そういうことになる。だからだ」
「私達も一緒に行くわ」
 こう言ってだった。二人もだ。
 響鬼達に合流してだ。あちらの世界に赴くというのだ。
 彼等は今から門に向かおうとする。しかしここでまた、だった。
 今度は威吹鬼の携帯に電話がかかあってきた。それでだ。
 出るとだ。電話をかけてきた主は。
「あれっ。香須美さん」
『戦いは終わりましたか?』
「終わることには終わりました。ですが」
『ですが?何かあったんですか?』
「あの女に去られました」
 そのだ。義仙にというのだ。
「あの女の世界に」
『そうなんですか。残念ですね』
「いえ、残念ではないです」
 すぐにだ。威吹鬼は香須美に言った。
「門を見つけました」
『えっ、門を!?』
「はい、今からそちらに向かいますので」
『あの。門って何処ですか?』
 うわずった声でだ。香須美は威吹鬼に問い返した。
『そこは』
「橋の上です」
 彼等が戦っているそこだとだ。威吹鬼は話す。
「そこにあります」
『ああ、あそこですね』 
 それだけでだ。香須美もわかった。そうしてだ。
『わかりました。それでは』
「それじゃあですね」
『今からそちらに向かいます』
 その判断は早かった。
『これから。妹と一緒に』
「わかりました。では待っています」
 こうしてだった、立花姉妹も来ることになってだ。
 一行は橋の上に出た。そこにある門は。
 如何にも和風の門だった。黒い瓦にだ。木の扉の重厚な門だ。
 その門を見てだ。轟鬼が言う。
「何かお城の門みたいですね」
「そうだな」
 斬鬼もその通りだとだ。弟子の言葉に頷く。
「あの女が行き来するのに使うのに相応しいか」
「それでなんですけれど」 
 ここでだ。明日夢はだ。
 その門を見ながらだ。それで言うことは。
「この門の向こうはどんな世界なんでしょうか」
「それが問題だな。おそらくは」
 その門を見ながらだ。桐矢も言う。
「この門は日本風だから向こうの世界も」
「和風でしょうか」
 あきらも言う。
「やっぱり」
「だとすれば俺達に相応しいな」
 響鬼はこう考えて述べた。
「じゃあ今から皆で行くか」
「そうですね。香須美さん達が来られたら」
 また言う明日夢だった。そうしてだ。
 そんな話をしているうちにだ。一台の車が来てだ。
 そのだ。立花姉妹が来てだった。そのうえでだ。
 

 

第五話 忠の世界その六

 響鬼達にだ。こう言ってきた。
「それならですね」
「私達も一緒に行かせて下さい」
「よし、助っ人も来てくれたしな」
 響鬼もだ。車から出て来て言う姉妹を見てだ。その気さくな笑みでだ。
 一行にだ。こう言ってだった。
 門の前に向かう。彼がそうした。
 その彼にだ。明日夢は心配する顔で言った。
「あの響鬼さん」
「何だ、明日夢」
「気をつけて下さいね」
 それはだというのだ。
「何があるかわからないですから」
「ははは、明日夢は心配性だな」
 心から気遣う彼にだ。響鬼は笑ってだ。
 そうしてだ。門の前まで来てだ。
 右手をだ。その取っ手に置いてだ。ゆっくりと引いた。
 するとだ。その門からだ。
 白い光が出て来た。それが開かれた門の入り口から放たれる。それを見てだ。
 一行はだ。口々に言うのだった。
「五代さん達から聞いたのと同じだな」
「そうですね、これは」
「じゃあこの光を潜り抜けたら」
「そこは」
「さて、どんな世界か」
 笑いながらだ。響鬼が先頭に立ちだ。
 光の中に入る。それに続いてだ。
 明日夢達も続く。そうして中に入るとだ。
 そこからだ。出て来た場所は。 
 その頃だ。黒く絹の様な極端に長い髪の凛とした顔の少女がだ。小柄でこれまた黒く長い髪の少女とだ。何故か不機嫌な顔で言い合っていた。
 見れば凛とした少女の顔には気品がありだ。着物を思わせる丈の長い、紫に豪華な柄の上着に黒いこちらは短い服にだ。極端に短い白のスカートである。そして足は黒いハイソックスの様なものを穿いている。
 目は紫で顔立ちは整いだ。気品がある。そして。
 それに対する小柄な少女は白いスクール水着に赤と黒の柄の上着、頭には扇の如き紅い帽子がある。六文銭が服のあちこちに飾られている。紅い目の顔はまだ幼いが気丈そうであり麗しい。その二人がだ。
 それぞれ薙刀、そして金の六文銭が入った黒い巨大な扇を手にしてだ。対峙しているのだ。その中でだ。
 小柄な少女がだ。相手に対して言った。
「よいか千姫」
「何かしら、幸村」
 道場の中でだ。二人は言い合っている。
「わらわはまさに肥後のラーメンこそが最高だと言っておるな」
「ええ、確かにね」
「あの濃さ、豚の骨からダシを取ったのがじゃ」
「いいというのね」
「播磨なぞ何じゃ」
 ムキになった調子でだ。その千姫に言う。
「大体御主は江戸生まれであろう。何故播磨なのじゃ」
「そういう貴女は確か信州だったわね」
「そうじゃ、真田は信濃じゃ」
 まさにそこだというのだ。
「信濃はよいぞ。梨に林檎にそばじゃ」
「それを言うなら播磨もよ」
 何故かだ。播磨にこだわる千姫だった。
 そしてだ。目の前の少女真田幸村に言うことは。
「明石焼きにカチワリに筋肉のカレーに。中華街だってあるから」
「御主実に詳しいのう」
「それに野球は虎よ」
 何故かだ。千姫は野球の話までしだした。
「虎ことが最強よ」
「ふん、鷹に二回も負けておるではないか」
 幸村は虎と聞いてだ。眉を顰めさせてだ。
 そしてだ。こう返したのだった。
「御堂筋決戦の時もこの前の星野の時も」
「あ、あれは」
 それを言われるとだ。千姫は。
 弱みを衝かれた顔になってだ。こう返した。
「スタンカなんて凄いのがいたし。星野様がたまたま運がなくて」
「そもそも星野はシリーズに勝っておるのか?」
「悲運の人なのよ。仕方ないでしょ」
「どうだか。鷹なんぞ毎年優勝してもクライマックスでは負けておるぞ」
「それ威張れるの?」
「上総だか下総の鴎のせいじゃ」
 幸村の答弁は苦しい。それもかなり。
「蝦夷の熊も鬱陶しいがのう」
「敵だらけじゃない、鷹は」
「そういう虎は何じゃ。ここぞという時にいつも巨人に負けおって」
「・・・・・・言ってはならないことを言ったわね」
 ここでだ。それまで極端に怒っていなかった千姫がだ。
 

 

第五話 忠の世界その七

 全身に怒りのオーラを身にまといだ。幸村に言ってきた。
 その手の薙刀を構え。そしてだった。
「この小娘!今日こそは!」
「うむ、やるか!」
「巨人許すまじ!」
 彼女が怒るのはここだった。
「何があろうとも成敗してあげるわ!」
「望むところよ。わらわも大きな奴は好かぬが!」
 何気に自分のことも入れる幸村だった。
「売られた勝負は受けて立つ!」
「なら今日こそは!」
「決着をつけようぞ!」
 こうしてだ。二人が決闘に入ろうとしている時にだ。
 道場の扉が開いてそこからだ。
 ぞろぞろとだ。彼等が入って来たのだった。
「あれっ、ここは」
「道場!?」
「そうですね。武道の鍛錬を積む道場ですね」
「これがこっちの世界かな」
「道場だけ見たら全然変わらないけれど」
 そんなことを言いながらだ。彼等は。
 道場の中を見回す。すると。
 そこでだ。千姫と幸村に気付いた。それでだ。
 威吹鬼がだ。彼女達に尋ねた。
「あの、ここは何処かな」
「何じゃ、御主達は」
「一体誰なの!?」
 幸村も半蔵もだ。彼等の姿を認めてだ。
 言い争いを止めてすぐにだ。彼等に問うた。
「見たところ異国の者の様じゃが」
「けれど顔は日本人ね」
「はい、日本人です」
 明日夢が二人に答える。
「それでなんですけれど」
「待て、よく見ればじゃ」
「はい?」
「御主達土足ではないか」
「そういえば」
 ここでだ。千姫もそのことに気付いた。見ればだ。
 一行は全員土足である。それで道場にあがっていた。
 それに気付いてだ。幸村は。
 怒りを急激にみなぎらせてだ。彼等を一喝した。
「道場に土足であがるとはどういう了見じゃ!」
「それは許せないわね」
 千姫もだ。このことについては幸村と同じだった。それでだ。
 その手にしている薙刀を手にしてだ。彼等に問う。
「すぐに過ちを認めて謝罪しなさい。さもなければ」
「容赦はせぬ!」
 幸村も扇を構える。完全に本気である。
 しかしだ。ここはだ。
 響鬼がだ。すぐにだった。
 自分の後ろの一行に顔を向けてだ。こう言ったのだった。
「まずは靴を脱ごう」
「そうですね。幾ら急に出て来たとはいえ道場ですから」
「土足はいけませんよね」 
 威吹鬼と轟鬼が応える。
「それじゃあまずは靴を脱いで」
「玄関に置きましょう」
「むっ、思ったより素直な者達だな」
 彼等のそうしたやり取りを見てだ。幸村はその目を少し動かした。
 それでだ。こうも言うのだった。
「ふむ。下駄箱はそちらじゃ」
「ここか」
 斬鬼が道場の入り口のその下駄箱を見た。木製で上に何段も重なっている古風な下駄箱がそこにあった。それを見てだ。
 一行は納得してだ。そこにそれぞれ靴を脱いだ。
 それからだ。朱鬼が幸村と千姫に尋ねた。
「あと。掃除をしておきたいけれど」
「ほう、ちゃんとしてくれるか」
「それもなのね」
「汚したからね」
 それはしておかなければなrなあいというのだ。
「だからね」
「よい心掛けじゃ。雑巾と箒を持って来よう」
 こうしてだった。掃除もしてからだ。あらためてだ。
 

 

第五話 忠の世界その八

 響鬼一行はだ。幸村達にだ。道場においてだ。
 向かい合いだ。そのうえでだ。
 頭を下げた。それから話すのだった。
「いきなり出て来てそれで道場を汚してしまってな」
「ふむ、まことにいきなりよの」
 幸村が響鬼の言葉に応える。
「それで道場の土足のことじゃが」
「まことに申し訳ない」
「よい。過ちを認めたからにはのう」
 それでいいというのだ。それはだ。
 千姫も同じでだ。こう言うのだった。
「まあいいわ。掃除もしたし」
「そうか。許してくれるのか」
「だから過ちを認める者には何も言わぬ」 
 またこう言う幸村だった。そのうえでだ。
 あらためてだ。こう響鬼達に尋ねた。
「御主達は一体何者じゃ」
「言葉は日本語ね」
「だから日本人なんだ」
 またこう話す響鬼だった。
「ただ。世界は違うがな」
「違う世界から!?」
 響鬼のその話を聞いてだ。千姫は。
 すぐに怪訝な顔になってだ。こう言った。
「そんな。馬鹿な話が」
「待て、それは有り得る」
 しかしだ。幸村はだ。
 考える顔になりだ。こう言ってだ。
 そのうえでだ。また響鬼達に尋ねた。
「様々な世界が並行して存在していることは聞いておる」
「そうなんです。それでですね」
 今度は明日夢が話す。
「僕達ここに柳生義仙という人と戦ってそれで来たんですけれど」
「!?柳生じゃと」
「柳生義仙」
 その名を聞いてだ。幸村も千姫も。
 表情を一転させ強張らせてだ。一行に言うのだった。
「あの者は死んだ筈だぞ」
「しかも貴方達の世界に出て来たですって!?」
「はい、そうです」
「その通りです」
 あきらもそうだと答える。
「それで僕達は門を通って」
「この世界に来たんですけれど」
「十兵衛と刺し違えたのではなかったのか」
「それがどうして」
 二人はだ。響鬼達の話を聞いてだ。
 その表情を曇らせてだ。そうして言うのだった。
「御主等の世界に出て来たのじゃ」
「そして門とは一体」
「あの、それでなのですけれど」
「いいですか?」
 立花姉妹が幸村と千姫に話してきた。
「私達もこちらの世界のことは全く知らないので」
「よかったらどういった世界か教えてくれますか?」
「そうじゃな。わらわ達ももっと聞きたいことがあるしのう」
「そちらの世界のことを」
「服だけを見れば私達の世界と全く違いますね」
「それもかなり」
 立花姉妹は自分達の前で正座する二人の姿を見て言う。どう見てもだ。
 姉妹の服とは全く違う。それを見てだ。
 姉妹はだ。こう言うのだった。
「水着にミニスカートですか」
「それもかなり派手な」
「おかしいか?」
「これが私達の普段着よ」
「あの、それがかなり」
「驚いてまして」
 二人が言うとだ。桐矢もだ。
 少し戸惑いながらだ。二人に言った。
「とにかく。どういった世界なのかをな」
「わかった。それではじゃ」
「皆も呼んでお話してあげるわ」
「あれっ、二人だけじゃないんですか」
「そうじゃ。この屋敷にはわらわ達の他に何人か住んでおる」
「ここは幕府の武道指南役の屋敷なのよ」
「武道指南役というと」
 あきらはそう言われて驚きながら述べた。
「それに幕府というと」
「うむ、徳川幕府じゃ」
「私の家でもあるわ」
 千姫は自分の家の話もここでした。
「徳川将軍家よ」
「徳川幕府がまだ続いてるんですか」
 そのことを知ってだ。あきらだけでなく響鬼達全員が驚きを隠せなかった。
 

 

第五話 忠の世界その九

「私達の世界と全く違いますね」
「ではお互いの世界の話をしようぞ」
 こうしてだった。お互いに道場に集った。響鬼達は既に集っているが。
 大柄で丈の長い黒服とズボンに身を包んだあどけなさが微かに残る柔らかい笑顔の灰色の髪の少年だった。
「柳生宗朗です」
「服部半蔵です」
 青い目に紫の長い髪のメイドである。ただカチューシャの後ろは紅い巻物をかんざしにしている。眼鏡をかけた楚々とした顔の少女だ。
「後藤叉兵衛です」
 白い褌である。上は短いセーラー服をビキニの様にしている。 
 青がかった灰色の髪を小柄をかんざしにして止めている。凛とした中にも何処か優しい雰囲気をした顔の瞳は少し垂れていて黒い。背が高い。
「直江兼続ですわ」
 黒いベストとミニスカート、ハイソックスに白いブラウスと紅いネクタイ。栗色の瞳を持つ顔はまだ幼い。紫の髪をツインテールにして長く伸ばしている。頭には愛の字が書かれた髪留めがある。
 この面々がだ。響鬼達と向かい合ってだ。
 正座をして一礼をする。響鬼達もそれに応える。それからだった。
 彼等はだ。お互いにだった。自分達の世界の話をした。
 それが終わってからだ。宗朗が言った。
「にわかには信じられないのはお互いですね」
「そうだよな。こっちもな」
 響鬼もだ。腕を組んだ言う。
「そっちの世界とこっちの世界がな」
「その門でつながっていてですね」
「しかもその義仙って女はそちらの世界でも暴れてたんだってな」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。義仙も話す。
「あの時は大変でした」
「しかし十兵衛がじゃ」
 幸村はこのことを残念な顔で述べた。
「失ってからじゃからな」
「あの小娘がいなくなって清々しますわ」
「・・・・・・・・・」
 兼続がそんなことを言うとだった。千姫がだ。
 無言で何時の間にか彼女の手元にあった鈴付きの紐を引っ張ると。それで。
 兼続の頭の上に盥が落ちた。それから言うのだった。
「憎まれ口は黙っておきなさい」
「あいたたたたた・・・・・・。酷いですわ」
「自業自得じゃ」
 幸村も兼続には厳しい。
「とにかくじゃ。あの女が生きておってじゃ」
「スサノオ、ですね」
 半蔵が言うのはその存在についてであった。
「貴方達の世界で絶えず仕掛けてきている神ですね」
「かなりおかしな神ではあるな」
 斬鬼はスサノオをそう考えていたし実際にそうだと話した。
「仮面ライダーに常に仕掛けてきているんだからな」
「圧倒的な力があるというのにそれに徹している」
 叉兵衛も怪訝な顔で述べる。
「確かに妙な神ですね」
「楽しんでおるのじゃな」
 幸村は話を聞いてすぐに察した。
 そしてだ。こう言うのだった。
「仮面ライダー、ここでは人間じゃな」
「そうなんだよな、人間に仕掛けてそれで」
 轟鬼もここで話す。
「人間を見ているんだよ」
「ふむ。そういえばじゃ」
 幸村は彼等の話を聞いてまた察して言った。
「こちらの世界でもそうじゃな」
「確かに。柳生義仙の時といい」
「では天草という者の背後には」
 千姫もだ。考えが至った。
「そのスサノオがいるのかしら」
「そう思っていいと思います」
 威吹鬼がこう千姫に返す。
「こちらの世界にもいるのは間違いないですから」
「あの女を操っているのは天草じゃ」
 幸村はまた話す。
「そしてその天草の背後におるか若しくは天草はスサノオの化身の一つか」
「だとしたら厄介だね」
 今度は宗朗が腕を組み考える顔で述べた。
「今度の戦いは」
「おそらくわらわ達だけでは歯が立たぬ」
 幸村はここでもすぐに分析し終えて述べた。
 

 

第五話 忠の世界その十

「申し訳ないが御主達にもじゃ」
「私達ね」
 朱鬼が幸村のその言葉に応える。
「仮面ライダーにも」
「頼めるだろうか」
「勿論だよ」 
 微笑んでだ。響鬼が幸村のその申し出に応えた。
「だから来たんだ」
「そうですね。おそらく僕達も」
 今度は宗朗が応える。
「貴方達と一緒ならそうしていたと思います」
「そういうことだな。それじゃあな」
「はい、一緒にですね」
「戦おうか」
「おそらくこの世界だけでは済みませんね」
 半蔵が考える顔で述べる。
「スサノオとの戦いは」
「猫の吸血鬼の世界では戦いにはならなかったにしても」
 叉兵衛はにゃんぱいあの世界のことから述べる。
「それでも。あらゆる世界に干渉してきているとなると」
「うむ、間違いなく多くの世界を股にかけた戦になる」 
 幸村の洞察はここでも発揮される。
「これは長く激しい戦になるぞ」
「そうだね。それでは響鬼さん」
 宗朗は幸村の言葉に応えたうえでだ。それからだ。
 響鬼に顔を向けて。こう言うのだった。
「スサノオとの戦いが一応の終結を見るまでは」
「一緒に戦ってくれるか」
「そうさせて下さい」
 これでだ。仮面ライダーとサムライ達の共闘が決まったのだった。それが決まってからだ。
 ここでだ。兼続が言った。
「お話は決まりましたけれどお腹が空きましたわ」
「その辺りの雑草でも食っておけ」
 幸村は相変わらず彼女には厳しい。
「少しは頭のよくなる草でも食え」
「何ですの、その言い方は」
「御主が馬鹿だから言うのじゃ」
 まことに容赦がない。
「それか葱でもたらふく食え」
「うう、何と口の減らない」
「まあとにかくな」
 響鬼がそんな二人の間に入る形でだ。笑って言った。
「腹が減っては戦ができぬってな」
「そうですね。では幸い今料理ができましたので」
 宗朗が微笑みながら話す。
「では一緒に」
「あっ、御馳走してくれるのか?」
「鮎の塩焼きに若布の味噌汁にです」
 宗朗はその献立を話していく。
「ほうれん草のおひたしに蛸と胡瓜の酢のもの、もやしとニラを茹でたものです」
「あと御飯だな」
「はい、白米です」
 これは外せなかった。和食なら。
「勿論納豆もありますので」
「凄いな、やっぱり日本だな」
 ここまで聞いてだ。響鬼は満面の笑顔になる。
「それで食後は」
「団子があります」
「見事、流石侍だ」
「では皆さんご一緒に」
「何か悪いですね」
 あきらは遠慮の言葉を述べた。
「そこまでしてもらって」
「いや、よい」
「いいのですか?」
「わらわ達はもう仲間になったのじゃ」
 幸村が言うのはこのことだった。
「その中で遠慮はいらん」
「そうなのですか」
「わらわ達も御主達の世界に行くことがある」
 幸村はこうも話した。
「そしてその時にはじゃ」
「そうだな。俺達が御馳走することになるな」
「そうした意味でお互い様じゃ」
 幸村は響鬼にもこう述べた。
「だからいいのじゃ」
「そうだな。それじゃあな」 
 また響鬼が言う。
「御互いに美味い飯を食うか」
「腹が減っては戦ができぬ」
 幸村が満足した面持ちで応える。
 

 

第五話 忠の世界その十一

「そして胸も大きくはならぬ」
「それは無理ね」
 千姫は幸村の今の言葉にはこう突っ込みを入れた。
「間違ってもね」
「言うのう、御主は」
「だって貴女の場合は中もそうだから」
「中を言えば御主もそうであろうが」
「うっ、それは」
 まさに薮蛇だった。千姫にとっては。
 それでだ。しまった、という顔でだった。
「それを言うと」
「中身を言うときりがないんじゃないのか?」
 桐矢もそのことは何故か無視できなかった。
 それでだ。あきらを見て話すのだった。
「そうだよな、やっぱり」
「あれっ、桐矢君はそうしたことは」
「俺の場合はあれなんだよ。もやしがどうとかな」
「原作と比べて大き過ぎる、ですね」
「俺の背が高いのはあれだよ。仕方ないからな」
「そうですよね。ただ見たところ」
 あきらは先程打ちのめされて今も目をくらくらと回して倒れている兼続を見て言った。
「直江さんは中は背が高い様に思えます」
「あと後藤さんかな」
 明日夢は叉兵衛を見て言う。
「後藤さん御自身も大きいですけれど」
「あと絵はどうでしょうか」
 何故かだ。あきらはこんなことも話した。
「後藤さんの絵は」
「はい、絵は得意ですが」
 叉兵衛はあきらの問いにだ。納豆を椀の中に入れて掻き混ぜながら話す。
「それが何か」
「いえ、全然違いますから」
「そうよ。間違ってはいけないから」
 ここでだ。半蔵と千姫が必死の顔で叉兵衛の言葉を訂正してきた。
「叉兵衛さんに絵だけはです」
「いけないわよ。その話は」
「何か大変なことがあるみたいですね」
 明日夢は二人の話からそのことを察した。そうしてだ。
 いぶかしみながらだ。こんな言葉を出した。
「つまり。画伯でしょうか」
「画伯?」
「はい、何か独特な絵を描かれる人はそう言われるそうですし」
「とりあえず色々とあるからな」
 響鬼はまた話した。
「とりあえずは今は親睦を深めていくか」
「はい、そうですね」
 宗朗がだ。響鬼の言葉に頷いてだった。そんな話をしてだった。
 彼等はその鮎や漬物、味噌汁を食べていく。そして団子に抹茶まで楽しんだ。それが終わってからだ。
 立花姉妹がだ。宗朗達に尋ねた。
「この団子はどちらで?」
「どちらで買われたものですか?」
「私の実家から取り寄せたものよ」
 千姫が答える。
「そこからよ」
「というと徳川将軍家から」
「わざわざですか」
「ええ。だから美味しいわね」
 幾分自慢げにだ。千姫は笑って話す。
「お団子もお抹茶も」
「確かに。お茶もいいですね」
「最高です」
 そうした話をしてからだった。ふとだ。
 宗朗がだ。その千姫に話した。
「このことだけれど」
「お兄様にも?」
「お話した方がいいんじゃないかな」
「いいの?それは」
「僕とあの人のことを言っているだね」
「お兄様はあれだけ宗朗とあったから」
「それでも。今回は事情が事情だから」
 それでだとだ。宗朗は言うのである。
「あの方にもお話しておかないと思うけれど」
「だからお兄様は」
「ああ、それは気にせずともよい」
 しかしだ。ここでだ。幸村が言ってきた。
 

 

第五話 忠の世界その十二

「慶彦のことはじゃ」
「お兄様を呼び捨てにするとは」
「わらわはそもそも真田じゃ。真田は徳川の敵ぞ」
「いいえ、そういう訳にはいかないわ」
「ふん、何を言われても徳川にはつかぬわ」
「まあそれはいいとしてね」
 二人の間には今回は威吹鬼が入ってだ。
 それでだ。二人にこう尋ねたのだった。
「その慶彦さんって人は千姫さんのお兄さんだよね」
「ええ、そうよ」
 その通りだとだ。千姫も答える。
「学園の生徒会長でもあるわ」
「生徒会長でもあり」
「あら、わかったのね」
「うん、千姫さんが徳川家のお姫様だから」
 そこからわかったとだ。千姫に対して答える威吹鬼だった。
「だからね」
「そうよ。お兄様は次期将軍なのよ」
「その人にもお話をするんだ」
「はい、そう考えています」
 宗朗は威吹鬼達にも話す。
「それはどうでしょうか」
「いいんじゃないのか?」
 最初に答えたのは斬鬼だった。
「それは」
「いいですか」
「その慶彦って人がどういう人かは知らないが」
 それでもだとだ。斬鬼は言う。
「それでもな」
「それでもですね」
「話してみる価値はある」
 こう話すのである。
「少なくともな」
「それにじゃ。慶彦はじゃ」
 幸村は何を言われても呼び捨てを止めない。そこには彼女の意志もあるからだ。
「御主を嫌ってはおらぬ」
「僕を?」
「そうじゃ。御主自体は嫌ってはおらぬ」
 そうだとだ。宗朗に話すのである。
「それに今回は事情が事情じゃ」
「うん、徳川やそれどころじゃないね」
「日本どころか世界全体の話じゃ」
「それも多くの世界の」
「だとすれば道は一つ」
 幸村はまた言い切った。
「力を一つにすることじゃ」
「では早速慶彦様のところに」
「行こうぞ。よいな」
「うん、皆でね」
「僕達もですね」
 明日夢がその宗朗の言葉に問うた。
「やっぱり」
「うん、君達からも慶彦様にお話して欲しいんだ」
「僕達の世界のことを」
「頼めるかな」
 彼等を見てだ。宗明は問うた。
「それも含めてね」
「どうしますか、響鬼さん」
「俺の考えはもう決まってるからな」
 響鬼の返答は気さくなものだった。
「行くか、次の将軍様のところに」
「わかりました。それでは」
 宗朗は響鬼のその返事に笑顔で返す。こうしてだった。
 彼等は徳川慶彦のところに向かう。そのうえで仮面ライダーの世界、そしてこの世界との関わりのことも話すことにしたのだった。


第五話   完


                      2011・9・7 

 

第六話 信の誓いその一

                   第六話  信の誓い
 響鬼達は宗朗達と共に徳川慶彦の下に向かう。彼の居場所はというと。
「学校なんですね」
「うん、そうなんだ」
 宗朗は先頭をいっている。その中でだ。自分の後ろにいる明日夢に話した。
「僕達も学生だからね」
「そうですか。実は」
「明日夢君もだね」
「はい、そうです」
「僕も一応師範代だけれど学生でもあるから」
 それでだというのだ。
「学園生活も楽しんでるよ」
「実は私と同じクラスです」
 半蔵がここで衝撃の事実を語る。
「姫様も一緒ですよ」
「あまりいたくないクラスだな」
 桐矢は千姫を見てすぐに言った。
「どうもな。何かと騒動を起こしそうだ」
「失礼な、私はそんな」
「自覚しておらぬところが厄介なのじゃ」
 幸村は桐矢についた。それでだった。こう言ったのだった。
「全く。高飛車で金遣いは荒く」
「服部さんはそのクラスで何をしているんだ?」
「学級委員です」
 半蔵はそうだと話す。
「それとこの武應学園塾の風紀委員長も務めています」
「風紀委員長としてもな」
 桐矢は半蔵の話を聞いてまた述べる。
「今一つ頼りないか」
「うっ、何故そんなことを言うのですか?」
「思っただけだったがまさか」
「確かに私は幸村殿や千姫様程強くはないです」
 彼女の話を聞いて響鬼達はその二人が侍としてはかなりの戦闘力を持っていることを悟った。それは気配からもかなりわかることだった。
 そうした話をしてだ。さらにだった。
 半蔵はだ。響鬼達にいささか必死の顔で話した。
「ですがそれでも」
「半蔵の悪口は許さないわよ」
 千姫はこれまで以上に強い声で桐矢に話した。顔だけでなく身体も桐矢に向けてだ。そのうえで咎める顔になり顔を突き出して話すのだった。
「私への悪口も許さないけれど」
「半蔵が貴女の家臣だからか?」
「家臣でもあり友達よ」
 そうしただ。かけがえのない存在だというのだ。
「その半蔵の悪口を言うことは絶対に許さないわ」
「姫様、そんな」
「この人達はいい人達が多いみたいだけれど」
 それでもだとだ。千姫は桐矢を見て話す。生徒会長室に向かって歩きながらそのうえでだ。千姫は後ろ向きになって歩きながら桐矢に話してきている。
「この桐矢だけは違うみたいだから」
「まあそんなことは言わないでくれよ」
 響鬼が微笑んで両者の間に入って述べた。
「京介も付き合ってみればそんなに悪い奴じゃないからな」
「そうかしら」
「人間っていうのはあれだよ。少し付き合っただけじゃわからないものだからな」
「少しではなのね」
「場合によっては何年も付き合っても中々わからなかったりするんだ」
 そうだともだ。響鬼は微笑んで話す。
「そういうものだからな」
「随分と人生経験があるのね」
 千姫もそのことはわかった。響鬼について。
「やっぱり多くの戦いを経てきてなのかしら」
「戦いもそうだし後は」
「後は?」
「多くの人とも出会ってきたからな」
「出会いもなの」
「出会いもあれば別れもあった」
 それもあったとだ。響鬼は今度は少し寂しげな顔になって述べた。
「そういうのを経てきてなんだ」
「響鬼さん、貴方はどうやら」
「どうやら?」
「最初に御会いした時はわからなかったけれど」
 響鬼の話をだ。そのまま言った形になった。
「喜びも悲しみも経てきたのね」
「そうなるかな。生きてきたからな」
「鬼として」
「そう、生きてきたからこそ」
 そうだとだ。響鬼に話すのだった。 

 

第六話 信の誓いその二

「そうして今の響鬼さんになられたのね」
「ははは、人間生きていればそれなりになっていくさ」
「正しい道を歩めば」
「正しいことかどうかわからないけれど」
「けれど?」
「鍛えてますから」
 心もという意味だった。響鬼は悲しみはあえて見せずにだ。それでだった。
 笑顔でだ。こう言ったのだった。千姫もそれを聞いてだ。
 響鬼の心に深い、人間としての成熟を感じたのだった。
 そしてそのままだ。千姫は響鬼の話を聞く。彼は生徒会長室への道中でさらに話すのだった。
「俺は実は機械が苦手なんだ」
「機械は」
「うん、だからバイクも免許は持っていたけれどね」
 苦笑いになってだ。そのことを話すのだった。
「それでも。中々運転しなかったしな」
「あれっ、仮面ライダーなのにですの?」
 兼続はかなり素朴に尋ねた。そのことに。
「オートバイに乗らないっていうのは」
「仮面ライダーとしては失格かな」
「仮面はともかくとして」
 響鬼を見ながらだ。彼女は言う。
「オートバイに乗らない仮面ライダーはないと思いますけれど」
「実はそれでだ」
「何かと言われたりしたわ」
 斬鬼と朱鬼はこんなことを兼続に話した。
「それでは音撃戦士でしかないとな」
「鬼と」
「というか鬼ではなくて?」
 さらに言う兼続だった。
「それですと」
「まあな。否定できないな」
「仮面ライダーになってはいるけれど」
「一つ言わせて頂きますと」
 あきらがここで話す。
「鬼は鬼ですか」
「それでもですね」
「はい、私達は人として戦う鬼です」
 そうだとだ。叉兵衛に話すのだった。
「そうした鬼ですから」
「鬼といっても色々なのですね」
「あれだな。人は時として鬼になる」
 響鬼、その鬼の言葉だ。
「そういうことだな」
「成程のう。人の心を持って鬼となり戦いその魔化魅を倒すのじゃな」
「簡単に言えば妖怪退治さ」
「スサノオが出すそれを」
「その為に鍛えてもいるからな」
 ここでも鍛えていることを話す響鬼だった。
「そうして鬼になったんだ」
「思えば凄い話じゃ」
 そのだ。生身の人間が鬼になれることについてだ。幸村は唸る様にして述べた。
「修業はするものじゃな」
「まあ鬼になるにはコツもあってな」
「修業だけではなれぬか」
「身体を鍛えてそこからなんだ」
 鬼になる、そのことはというのだ。
「色々とあってな」
「ふむ。中々興味深い話じゃ」
 そんな話をしているうちにだった。一行は。
 遂にその生徒会室の前に来た。すると。
 その前にだ。思わぬ者がいた。
「待っていたにゃ」
「何ですの、この猫は」 
兼続はにゃんぱいあを見てだ。すぐに首を傾げさせて言った。見事な扉の前にだ。にゃんぱいあが二本足で立っていたのである。
 その彼を見てだ。兼続は言うのだった。
「黒猫とは不吉ですわ」
「それは九州の方のことでは?」
 半蔵がその兼続に突っ込みを入れる。
「別にこの江戸では」
「ですが実際に」
「米沢では違う筈じゃが?」
 幸村はここでも兼続に突っ込みを入れた。
「それはあくまで化け猫のみじゃ。普通の黒猫は違うぞ」
「けれどこの黒猫は」
 兼続はにゃんぱいあを見ながらさらに言う。
「牙がありますし」
「猫なら絶対にあるものだろうに」
「それに蝙蝠の翼まで」
「むっ、確かに」
 ここでだ。幸村はようやくにゃんぱいあをまともに見た。すると確かにだ。
 その背には蝙蝠の翼がある。それを見て幸村も言った。
 

 

第六話 信の誓いその三

「御主、何者じゃ」
「僕はにゃんぱいあにゃ」
「にゃんぱいあじゃと」
「そうにゃ。猫の吸血鬼にゃ」
「むう、猫の吸血鬼までおるのか」
「暇だったからこっちの世界に遊びに来たにゃ」
 そうだとだ。幸村に話すのである。
「それでここには僕そっくりの気配を感じたので来たにゃ」
「にゃんぱいあちゃんにそっくりの気配?」
「そうにゃ。もう一人の僕みたいな気配にゃ」
 それを聞いてだ。明日夢がだ。今度は彼が腕を組み首を捻りだ。そのうえで言うのだった。
「何なのかな、それって」
「この扉の向こうから感じるにゃ」
「まさか会長さんが猫なんて筈がないし」
「それは絶対にないから」
 千姫がこのことは保証した。確かに。
「それなら私も猫になるじゃない」
「そうですよね。ですから」
「ああ。慶彦様は確かに人間ですから」
 宗朗が明日夢達にこのことを確かだと話す。
「僕達は何度も御会いしていますし」
「そうですよね。それじゃあ」
「この猫。にゃんぱいあだったかな」
「そうじゃ」
 その通りだとだ。にゃんぱいあは笑って応える。
「それが僕の名前だにゃ」
「吸血鬼の猫というのは驚いたけれど」
「そんなに珍しいかにゃ?僕の世界では普通にゃ」
「いや、話は聞いてたよ」
 それはだとだ。宗朗もにゃんぱいあに対して話す。
「響鬼さん達からね」
「それでも見たら驚いたにゃ?」
「うん、いや、本当にいるんだなって」
「そういうことにゃ。それでにゃ」
「それで?」
「だからこの扉の向こうにいるにゃ」
 その自分の後ろの扉を指し示してだ。にゃんぱいあは宗朗に話す。
「僕と同じ気配の人がいるにゃ」
「慶彦様が猫を飼っておられるのかな」
「お兄様にそうした趣味があるとは」
 妹の千姫もだ。このことにはだ。
 首を捻っている。どうやら本当に知らないらしい。
 しかし何はともあれだった。彼等は。
 扉をノックした。するとだ。女の声で返事が入って来た。
「誰だ」
「柳生宗朗です」
 扉をノックした宗朗自身が返事を返す。
「慶彦様はおられるでしょうか」
「おられる。それで何の様だ」
「お客様をお連れしました」
「客だと」
「そしてお話したいことがありまして」
 それでだというのだ。
「中に入りたいのですが」
「少し待て」
 女の声がこう応えてからだ。暫し沈黙となった。その中でだ。
 にゃんぱいあがだ。一同に言うのだった。
「あの声にゃ」
「あの声がか」
「そうにゃ。僕と同じ気配がするにゃ」
「あの声の主は」
 叉兵衛がここで話す。
「シャルル=ド=ダルタニャンですが」
「だるたにゃん?」
「そうです。仏蘭西から騎士ですが」
「その人から感じるにゃ」
 また言うにゃんぱいあだった。
「僕と同じ気配をにゃ」
「成程な。事情はわかった」
 ここでにゃんぱいあの言葉に頷いたのは斬鬼だった。桐矢も何処かそうなっている。
 それでだ。その斬鬼が話す。
「俺も同じだからな。一人狼男がいるがな」
「そういえばそうにゃ斬鬼さんとあの人はそっくりにゃ」
 にゃんぱいあも斬鬼のその言葉に頷く。
 

 

第六話 信の誓いその四

「そういうことにゃ」
「うむ、わかった」
「そうね」
 まずはだ。幸村と千姫が頷けた。
「わらわも心当たりが多そうな話じゃしな」
「私もかなり」
「はい、それは私も」
「私もです」
「私もですわ」
 そしてだ。それはだ。
 叉兵衛に半蔵、兼続まで同じだった。そして宗朗もだ。
 だが宗朗はだ。こう言うのだった。
「僕はちょっと」
「うむ、宗朗はのう」
「そうなんだよ。よく死ねって言われるから」
 彼だけは困った顔になって話す。
「アニメだけでなく漫画やゲームの方も観て言って欲しいなあって」
「切実な願いじゃな」
「幸村もそういうのない?」
「わらわはそういった世界とは縁がないからのう」
 だからだ。知らないというのだ。
「この中では御主だけではないのか?」
「相手が男ってのもあったし」
「だから柳生宗朗は破廉恥なのですわ」 
 兼続はそれも根拠だと言うのだ。
「まことにはしたない」
「そういう御主も他の世界では何じゃ」
 幸村の突込みがまたしても兼続に炸裂する。
「妄想がどうとか。他にも乳がどうとかじゃ」
「うっ、それは」
「わらわなんぞ胸がある話は滅多にないぞ」
「というよりあったの?」
 千姫は幸村に言う。
「そういう話は」
「残念じゃが記憶にない」
「そうよね。幸村といえばツインテールよね」
「まことに。中身のことを話すと思わぬ墓穴になってしまうのう」
 こんな話をしてだ。ようやくだった。
 一行は扉を開ける。するとまずはだった。
 長い金髪に吊り上がり気味の赤紫の目のだ。ヨーロッパ系の少女がいた。ドレスと鎧を組み合わせた様な服を着ている。武装している感じだ。 
 背は高く胸も目立つ。頭には羽帽子がある。
 その彼女を見てだ。にゃんぱいあが言うのだった。
「この人にゃ、間違いないにゃ」
「この猫は」
 そしてだ。そのヨーロッパ系の少女もだ。
 にゃんぱいあを見てだ。興味深そうに言ってきた。
「私に似ている。むしろ」
「そうにゃ。そっくりにゃ」
「確かに。見たこともない猫だというのに」
「こういう相手がいてくれると嬉しいにゃ」
 実際にだ。とても嬉しそうなにゃんぱいあである。そうしてすぐに少女の足下に来てだ。その足下で少女に対して尋ねたのである。
「それで名前は何ていうにゃ?」
「ダルタニャン」 
 少女は自分から名乗った。
「シャルル=ド=ダルタニャン」
「それが貴女ですね」
 轟鬼がダルタニャンに対して述べる。
「そうなんですか。貴女が」
「私は慶彦さまにお仕えする騎士だ」
 ダルタニャンはこう轟鬼に返す。
「そしてこちらにおられるのが」
「まさか君達が来るとはね」
 ここでだ。青年の声がした。
 そしてだ。見事な席に彼が座っていた。
 座っていてもわかる程の長身に銀色の波打つ見事な髪、水色の傲慢さ、そして冷徹さをたたえた目は切れ長になっている。
 顔は白くアジア系であるが何処かヨーロッパ系を思わせる。細長く鼻は高く彫もある。そうしたアジア系とは少し離れた顔である。
 服は黒だ。だが宗朗のそれとは微妙に違う。その青年がだ。
 宗朗達を見てだ。言ったのだ。
「意外と言うべきかな」
「お兄様、実は」
「戦いに来たのではない」
 彼は千姫に対して述べた。座ったままで。
「そうだね」
「はい、むしろです」
「君達だけでもない」
 青年は今度は響鬼達を見た。そうしてだ。
 

 

第六話 信の誓いその五

 彼等も見てだ。そして言うことは。
「見たことがないが君達は」
「まずは一つ申し上げたいことがあります」
 宗朗がだ。彼に言う。
「いいでしょうか」
「何かな、一体」
「柳生義仙が甦りました」
「何っ!?」
 それを聞いてだ。彼、徳川慶彦もだ。
 宗朗の話を聞いてだ。眉をぴくりと動かした。
 そのうえでだ。あらためて宗朗に対して尋ねたのだ。
「まさか。そんなことが」
「はい、そのことですが」
「彼等が知っている」
 慶彦は響鬼達をまた見て言った。
「そういうことだね」
「はい、そうです」
「君達も彼女と闘ったんだね」
「俺達が何人かかろうともな」
 ここで言ったのは響鬼だった。
「かなりの相手だったさ」
「ふむ」
 慶彦は響鬼の話を聞いて頷く。
「そうか。では眼帯をしていたのかい?」
「ああ、知ってるさ」
「何処までも知っている様だね」
 それを聞いてだ。慶彦は。
 納得した顔でだ。こう言ったのだった。
「ではやはり君達は」
「俺達の話を聞いてくれるか」
「是非聞かせてもらいたいね」
 これが慶彦の返答だった。
「君達が何者かも」
「ああ、それじゃあな」
 こうしてだった。響鬼達は自分達のことを慶彦に話した。話を聞き終えてだ。
 慶彦はだ。まずはこう言った。
「荒唐無稽と言うべきかな」
「信じられないか?」
「それは否定しないね」
 実際にそうだとだ。慶彦は響鬼に返す。
「仮面ライダー。他の世界から来た」
「それが俺達ということなんだけれどな」
「そしてスサノオ」
 慶彦はこの神のことも聞いていた。それで言うのだった。
「君達の世界、そしてあらゆる世界に介入してくる謎の神」
「人間を見る為にな」
「そのスサノオが柳生義仙、そして天草四郎の後ろにいる」
「どうだい、この話は」
 あらためてだ。響鬼は慶彦に尋ねた。
「荒唐無稽にしても」
「信じられない筈の話だよ」
 慶彦の言葉がここでこうなった。
「けれどね」
「けれどなんだな」
「そう。君達の言葉は嘘だとは全く思えない」
 慶彦から聞いてもそうだった。
 そしてだ。宗朗も千姫も見て。あらためて言ったことは。
「宗朗も千姫も嘘を吐くことは絶対にしないからね」
「ではわかってくれたんだな」
「君達の話は嘘ではない」
 そのことは間違いないというのだ。
「間違いなくね」
「それならです」
 ここでだ。宗朗がだ。
 思い切ってだ。慶彦に対して言った。
「我々はこの仮面ライダーの人たちと協力して」
「そのスサノオを討つ」
「そうするべきです」
 宗朗と千姫がそれぞれ言う。
「この世界だけでのことではありません」
「全ての世界がです」
「大きいな」
 慶彦は二人の話を聞いてだ。こう言った。
 

 

第六話 信の誓いその六

「僕達の世界だけではないなんてね」
「勿論日本だけのことでもないです」
「より大きな」
「だから大き過ぎるんだ」
 これが慶彦の最初の言葉だった。
「わかるかい?大き過ぎるんだよ」
「といいますと」
「あの、お兄様はどう考えておられるのでしょうか」
「僕は大きいものや大きいことは好きだ」
「大きいものが」
「ではお兄様は」
「この世界の危機は即ちこの国の危機」
 当然だ。そうなることだというのだ。
「それなら次期将軍として放置はできない」
「だからですか」
「お兄様もまた」
「そう、ダルタニャンを貸そう」 
 そのダルタニャンを見て。そのうえでの言葉だ。
「思う存分戦うといい」
「有り難うございます。それでは」
「私達は」
「あとあくまで気が向けばだが」
 こう前置きしてだ。また言う慶彦だった。
「僕も行こう」
「慶彦様もですか」
「そうして頂けるのですか」
「気が向けばだ」
 あくまで口ではこう言うがだ。その目も口元も笑っている。
 その笑みで言ってだ。そうしてだった。 
 慶彦も協力することが決まった。かくしてダルタニャンが彼等と行動を共にすることになった。そうしてであった。彼等は。
 まずは生徒会長室を後にした。それからまずは道場に戻ることにした。
 その途中にだ。威吹鬼がそのダルタニャンに問うた。
「あの」
「何だ」
「フランスの方ですね」
「如何にも」
 その通りだとだ。ダルタニャンも答える。
「慶彦様がフランス御留学の折に出会いだ」
「その時にですか」
「そうだ。今に至る」
 ダルタニャンはこう話す。
「かつてはこの者達とも刃を交えた」
「そうだったのですか」
 それを聞いてだ。威吹鬼は頷く。それからだ。
 彼は今度は幸村に尋ねた。彼等は今は混ざって共に校内の廊下を進んでいる。和風な独特の趣のある校舎だ。その中を進んでいるのだ。
「その時のお話がですね」
「そうじゃ。話したな」
「十兵衛さんが消えられた」
「うむ、残念なことじゃった」
 幸村は実際に目を閉じこう言う。
「わらわ達はかけがえのない者を失った」
「全くです」
 又兵衛が幸村のその言葉に頷く。
「あの戦いは我々が勝利を収めましたが」
「犠牲も大きかった」
「そうですね。まことに」
「あの戦でのことは忘れぬ」
 ひいてはだ。十兵衛のこともだというのだ。
「しかしあの女は甦って来た」
「忌々しい話ですわ」
 兼続もだ。このことは同意だった、何だかんだと言ってだ。
「あの義仙がまた出て来るなんて」
「問題は何時何処に出て来るかですね」
 半蔵も言う。
「果たして」
「それは案外早いだろうな」
 響鬼は時から話した。
「場所もここからあまり離れはしない」
「それはどうしてなんですか?」 
 宗朗がその響鬼に尋ねる。
「すぐにこの近くで会えるということを言えるのは」
「スサノオは人間を見る」
 響鬼はこのことを指摘した。
「それなら。今戦っている俺達に仕掛けて来るからだよ」
「じゃあ本当にすぐなんですね」
 それを聞いてだ。宗朗も言う。
「何時合ってもおかしくはない」
「そういうことだろうな。俺達が仕掛けるにしろ向こうから仕掛けてくるにしろ」
 どちらにしてもだというのだ。
 

 

第六話 信の誓いその七

「来るな」
「そうなりますか」
「俺の予想が正しければ」
 どうかとだ。響鬼はさらに話す。
「あの女はすぐにこちらに攻めて来る」
「そしてですね」
「天草も来るだろうな」
「最初から決戦ね」
 千姫はそれを聞いて言った。
「それなら」
「戦いは早く終わらせるに限るさ」
 こんなことも言う響鬼だった。
「しないに越したことはないしな」
「さっきから思っていたけれど」
 千姫はそんな響鬼の話を聞いて言う。
「響鬼殿は」
「ああ、殿づけはいいさ」
「では響鬼さんは」
「それならいいさ。殿づけはどうも気恥ずかしいからな」
 だからだというのだ。
「それでどうかしたのかい?」
「いえ、戦いは好まないのね」
「好きじゃないのは確かだな」
 響鬼もこのことを否定しなかった。
「稽古や修業は好きだけれどな」
「つまり。響鬼さんの強さは」
 それが何なのか。宗朗は察して言う。
「人を活かす強さですね」
「活人剣かな」
「はい、人を殺すものではなく」
「鬼は人と戦うんじゃなく人を害する魔化魅を倒すものだからな」
 それがだ。鬼、即ち音撃戦士だというのだ。
「人を殺したりはしないさ。それに」
「それに?」
「魔化魅にしろ命はあるんだ」
 そのだ。彼等にしてもだというのだ。
「自然の化身のあの連中にもな」
「確か魔化魅は」
 それは何かというとだ。それは。
「妖怪ですね」
「そうだな。簡単に言えばな」
 まさにそれだった。魔化魅は妖怪なのだ。山にいるだ。
「それと戦っているからな」
「妖怪にも。そうですね」
「日本ではそう考えているよな。昔から」
「はい」
 宗朗も日本人だ。それならよくわかることだった。
「だからな。やっぱりな」
「命を奪っているのは事実」
「自然にも害を与えているんだよ」
 そうだともいうのだ。鬼は。
「もっともな。あの連中を倒さないとな」
「人間もですね」
「ああ、実際によく食い殺されてるしな」
 それはだ。響鬼もよく知っていた。
「その辺りが難しいんだよ」
「ふむ。人の命を護る為に他の命を消す」
 幸村は腕を組んで言う。
「そういうことじゃな」
「ああ、そうなるな」
「戦うとはそういうことじゃな」
「誰でもっていうんだな」
「侍とて同じ」
 ひいてはだ。彼女達もだった。
「そういうことじゃな」
「じゃあ何時来てもいいように」
 宗朗は義仙について言う。
「警戒は怠らない様にしよう」
「そんなの警戒する必要ありませんわ」
 兼続の意見は過激だった。何故過激かというと。
「出て来たところを叩くだけですわ」
「やれやれですね」
「全くです」 
 そんな兼続の言葉を聞いてだ。半蔵と又兵衛は。
 溜息をつきつつだ。こう言った。
 

 

第六話 信の誓いその八

「あの戦いで何も学んでいないのか」
「そもそも学んでわかる頭がないのか」
「どちらにしろこれは」
「お荷物にならなければいいのですが」
「お荷物!?わたくしがですの?」
「その通りじゃ」
 幸村も言う。
「全く。そんな簡単な相手ではないぞ」
「やれやれです」
「本当に」
 しかしだ。兼続はまだ言うのだった。
「何ですの!?結局はあの女を倒せばいいだけですわ」
「そんな簡単な話じゃないから」
 宗朗もそれを言う。
「天草四郎だっているし」
「幕府に長きに渡って仇なすあの女」
 千姫はその目を鋭くさせている。
「あの女もとなると」
「激しい戦いになるのは間違いないわ」
 朱鬼は静かに言った。
「さて、まずは道場に戻りましょう」
「そうですね。それじゃあ」
 明日夢も頷きだ。そうしてだった。
 彼等はまずは道場に戻った。にゃんぱいあは陽気にダルタニャンの傍にいる。ダルタニャンもまんざらではない感じである。
 そうして一行がまたこれからのことを話し合っていると。ここで。
 外からだ。凄まじい音が聞こえてきた。それを聞いてすぐにだ。
 響鬼と宗朗がだ。同時に声をあげた。
「まさか」
「来た!?」
「それならだ」
「僕達も」
 お互いに言い合いだ。そして。
 全員道場から飛び出た。すると。
 彼等の前にだ。宙に浮かぶあの女がいた。彼女を見てだ。
 宗朗がだ。その義仙に対して言った。
「生きていた。いや」
「ええ、違うわ」
 微笑みすら浮かべてだ。義仙は彼等を見下ろして言ってきた。
「甦ったのよ」
「そうか、やはり」
「問題は誰が御主を甦らせたかじゃ」
 幸村は前に出て義仙に問い返した。
「天草ではなかろう」
「既にそれもわかっているようね」
「スサノオじゃな」
 幸村はさらに問うた。
「その見る神か」
「そうよ。天草様も私も」
 二人共だった。それは。
「あの方に甦らせてもらったのよ」
「御主達を手駒にしてか」
「手駒ではないわ」
 義仙がこのことを否定した。
「私も天草様もね」
「では御主達はスサノオの考えにあえて乗ってか」
「その通りよ。私達にとって悪い話ではないから」
「そして天草と共にか」
「この国を思う存分染め上げてもらうわ」
 こうだ。言ってだった。
「そうさせてもらうわ」
「そうはさせないわよ」
 千姫は既にその手に薙刀を持っている。戦闘態勢だ。
 その戦闘態勢でだ。彼女は義仙と対峙しようとする。そして。
 響鬼もだ。仲間達に対して言う。
「じゃあ今から」
「はい、そうですね」
「鬼になって」
「戦うとしようか」
 こう言ってだった。彼等もまた。
 鬼になる。それと共に。
 侍達もそれぞれの得物を握る。そうして空中に浮かぶ義仙を取り囲む。戦いがはじまろうとしていた。
 それを見てだ。義仙は。
 彼等に対してだ。悠然と笑って告げた。
「楽しみましょう」
「楽しむ、ね」
「戦いは楽しむものよ」
 こうだ。響鬼に対しても言う。
 

 

第六話 信の誓いその九

 しかしだ。響鬼もまた言うのだった。
「そこが違うな」
「違う?」
「俺は戦いを楽しむことはしないからな」
 これが響鬼の言うことだった。既にその手には太鼓のバチがある。
 他の鬼達も同じだ。そうしてだ。
 彼等はだ。音楽を鳴らそうとする。その彼等に。
 義仙は両手に剣を出しだ。動きはじめた。
「来た!?」
「空から!」
 それを見てだ。鬼達も侍達も。
 身構える。だがその彼等に。
 義仙は嵐の如く攻める。空から。
 その剣撃を繰り出し衝撃波も繰り出す。剣を振るい出して来ている。その義仙の圧倒的な攻撃を前にしてだ。宗朗が言った。
「皆、散開だ!」
「散ってどうしますの!?」
「敵の攻撃を各自かわすんだ!」
 そうするというのだ。
「そして決して一人と当たらないことだ」
「そうですね。ここはですね」
「それが一番いいですね」
 威吹鬼と轟鬼も宗朗のその言葉に応え。
 最初に散開した。それを見て。
 他の鬼達も侍達も続く。だが兼続は。
 散開せずにだ。空中から来る義仙に対して。
 その鎚を思いきり振り下ろす。それで叩き潰そうとする。
「もらいましたわ!」
「あら、自分から来るのね」
「これならどうでして!?」
 自信があった。だからだ。
「わたくしのこの鎚、防げまして!」
「ええ」
 悠然とした笑みでだ。義仙は応え。
 そうしてだった。彼女のその左の刀で。
 兼続の鎚を受け止めてみせた。それを見て。
 兼続も唖然となった。言葉が自然に出た。
「そんな、鎚を刀で!」
「確かにいい一撃ね」
 義仙は悠然とした笑みをそのままにして言う。
「しかし」
「しかし!?」
「それでは私は倒せないわ」
 こう言うのだ。
「まだね」
「!?いかん!」 
 ここでだ。幸村が叫んだ。その瞬間にだ。
 義仙は右の刃をだ。兼続に向けてきた。それを見てだ。
 兼続は何とかだ。鎚を蹴ってそれでだ。後ろに跳んだ。それで義仙の刃をかわした。そうしてそれからだった。
 地面に降り立ちながら空中でだ。落ちてくる鎚を取り。
 そうしてだ。上にいる義仙を見上げて言う。
「何て奴ですの」
「今のをかわしたのは見事よ」
 義仙は余裕のままその兼続に返した。
「真っ二つにできたのに」
「生憎ですけれどそう簡単にはやられませんわ」
「だからこそ侍ね」
「その通りですわ。今度こそは」
「止めた方がいいな」
 しかしだ。ここでだ。
 斬鬼が来てだ。そのうえで兼続に述べた。
「また仕掛けてもだ」
「同じといいますの?」
「そうだ。あの女は一人で倒せるものじゃない」
 斬鬼は上にいる義仙を見ながら兼続に話す。
「それこそ全員でぶつからないとな」
「倒せないですね」
 宗朗も言う。
「とても」
「そうだな。じゃあ俺も」
 響鬼はここでカードを切る決意をした。そうしてだ。
 そのうえでだ。彼はその切り札を出そうとした。
「じゃあここはな」
「あれですか」
「あの姿になってですね」
「それなら少しは違うだろう」
 こう考えてのことだった。
「それじゃあなるか」
「そうですね。今はですね」
「それしかありませんね」
 威吹鬼と轟鬼も応える。こうしてだ。
 赤い鬼になろうとする。しかしここで。
 

 

第六話 信の誓いその十

 不意打ちにだ。何かが出て来たのだった。
「!?あれは」
「何だ!?」
 鬼達がだ。まずそれを見て言った。
 それはいきなり空から来てだ。空中の義仙にだ。
 一気にだ。斬りかかる。それを見てだ。
 宗朗が言う。
「まさか。あれは」
「そんな筈がない!」
 しかしだ。それはすぐにだ。
 幸村がだ。こう言ったのである。
「あの娘は死んだ筈じゃ!」
「け、けれどあの剣撃は」
「それに姿は」
 千姫は風の様に来たそれの姿を見て述べた。
「どう見ても」
「しかしじゃ。あの娘は」
「いや、待ってくれ」
 宗朗は尚も否定しようとする幸村に言う。義仙と戦うその姿を見ながら。
「柳生義仙も甦ったんだ」
「そうですね。それではです」
「あの娘もまた」
 半蔵と又兵衛も言う。
「甦ってもおかしくはないです」
「そうして再び」
「ううむ、これはまことなのか」
 まだ釈然としないままでだ。幸村は述べた。
「十兵衛、まさか」
「十兵衛、あの人ですね」
 明日夢はそれを聞いてすぐに言った。
「かつてあの眼帯の人と相打ちになって消えた」
「そうじゃ。しかしじゃ」
 それでもだとだ。幸村はまだ言う。
「相打ちになったのじゃ。それでは」
「普通に生きていられる筈がないんですね」
「では何故じゃ」
 幸村はここでは自問自答する。そしてその自答の結果は。
「まさか。まことに誰かが甦らせたのか」
「久し振りに会ったな」
 その女が言った。見れば。
 紅の長い髪を白縄で無造作にまとめている。セーラー服を思わせる桃と赤の服を着ており太腿がほぼ剥き出しになっている。顔はまだ幼い感じだがその青い目からは非常に強いものが見える。その少女がだ。両手の剣を縦横に振るい義仙と闘っている。
 その少女がだ。義仙に対して言っていた。
「しかしそれでも」
「それでもだというのね」
「強さは変わってはいないな」
 こう言うのである。
「私と闘うだけの強さはあるな」
「そうね。そしてそれは」
「私もか」
「ええ、そうよ」
 義仙もだ。その剣を繰り出しながらだ。
 少女に対してだ。こう言うのだった。
「生憎だけれど力は落ちていないわ」
「その様だな。それでこそ」
 どうかとだ。女はまた言う。
「この柳生十兵衛の相手に相応しい」
「そうね。どうやらこの戦い思った以上に楽しめそうね」
「私が戻ったからにはだ」 
 十兵衛は名乗ってからまた言ってみせた。
「御主等の好きにはさせん」
「言うわね。それじゃあ」
「どうするつもりだ」
「今はこれで帰らせてもらうわ」
 楽しげに笑ってだ。義仙は十兵衛に答えた。そのうえで。 
 一旦間合いを離してだ。再び十兵衛に述べる。その述べる言葉は。
「悪いけれどね」
「後日再戦か」
「そうなるわ。折角貴女も帰ってきたのだから」
 そのだ。十兵衛を見ての言葉だった。
「そうさせてもらうわ」
「ふん。ならば去るがいい」
 十兵衛はそれをよしとした。そのうえでだ。
 

 

第六話 信の誓いその十一

 義仙が去るのを見届けようとする。その彼女にだ。義仙はまた言った。
「私は一度死んだけれど」
「何だ?」
「貴女はそうではないわね」
「私は生きていた」
「そうね。けれどこれまで受けた傷が深くて」
 そのせいでだとだ。義仙は十兵衛を見ながら話す。
「大人しくしていたのよ」
「そしてその傷を回復させ」
 下からだ。宗朗が言ってきた。
「天草の封印を解いたのも」
「そうよ。スサノオよ」
 他ならぬだ。彼がしたというのだ。
「それはわかるわね」
「確かに。それなら」
「私達のこの騒乱を終わらせたいのなら」
 それならばどうするべきか。義仙は十兵衛達に話す。
「あの方を倒すことね」
「言われずともそうする」
 十兵衛が強い言葉で答える。
「御主は倒す。天草もな」
「ではそれを誓いにして」
「今は去るがいい」
「見逃してくれるのかしら」
「戦意を消した相手と刃を交える趣味はない」
 それでだとだ。義仙に告げた。
「ではまたな」
「ええ、またね」
 二人は微笑みさえ浮かべ合ってだ。そのうえでだった。
 義仙が姿を消した。これが戦いの終わりだった。それが終わりだ。一行は。
 響鬼がだ。宗朗に言ってきた。
「とりあえずな」
「あっ、はい」
 はたと気付いた顔でだ。宗朗は響鬼に応える。
「あの娘のことですよね」
「話してくれたあの娘だよな、あの娘が」
「そうです。柳生十兵衛です」
 まさにだ。彼女こそがだというのだ。
「あの娘がそのです」
「そうだな。じゃああの娘を交えてな」
「あらためてこれからのこともですね」
「ああ、話そうか」
「わかりました。それでは」
 こう話してだった。一行は。
 まずは十兵衛が降り立つのを待った。その彼女は。
 戦いが終わり暫くは不服そうだった。しかし何時までも宙にいても仕方ないと判断したのか。
 地に降り立った。それから周りに話した。
「ええと。まさか生きているなんて」
「あれっ、口調が」
「はい、感じも何か」
 そんな十兵衛の話と表情を見てだ。明日夢とあきらが言う。
「変わったけれど」
「穏やかというか幼い感じに」
「普段はこんな感じなんだ」
 宗朗がその二人に話す。
「十兵衛はね」
「そのことは実際に御聞きしましたけれど」
「本当だったんですね」
「普段は特に攻撃的でもないから」
 宗朗はこのことを保証した。
「だから。ここはね」
「そうだな。道場に戻ってな」
「そのうえで」
 斬鬼と朱鬼が話してだった。そのうえで。
 彼等はだ。道場に戻りだ。十兵衛にだ。ことの顛末を話すのだった。その戻って来た侍に。


第六話   完


                        2011・9・14 

 

第七話 義の戦その一

                                  第七話  義の戦
 またしてもだ。飯だった。
 鬼達と侍達は向かい合って正座し膳の上のの飯を食べている。その中でだ。
 十兵衛は丼飯を次々に掻き込みながらだ。こう響鬼達に言った。
「つまりあれ?」
「あれ?」
「うん、響鬼さんだよね」
「ああ、そうだ」
 気さくな笑みでだ。響鬼は十兵衛に応えた。
 そうしてだ。こう言ったのである。
「俺達は鬼だ」
「鬼って人を食べたりしないんだ」
「俺達はそういう鬼だ」
 こうだ。響鬼はその笑みのままで十兵衛に答える。
「さっきも言ったが」
「魔化魅よね」
 十兵衛はおかずの焼き肉を箸で取りながら答えた。
「それと戦ってるんだ」
「あちらの世界ではな」
「それで他にもだよね」
 箸を動かし食べながら十兵衛は質問していく。
「響鬼さん達が戦ってる相手って」
「そう。スサノオが仕掛けてくる奴等とな」
「スサノオねえ。凄いんだ」
 少しきょとんとした目になって言う十兵衛だった。
「響鬼さん達と何度も戦ってるのって」
「確かに凄いな」
 響鬼もだ。そのことを否定しない。
 それでだ。こうも言うのだった。
「何しろ神様だからな」
「神様なんだ」
「要するにな。スサノオは神様だからな」
「その神様っていったらね」
 今度は十兵衛から話す。その話すこととは。
「十兵衛もなの」
「十兵衛も!?」
「というと!?」
 今の彼女の言葉にだ。すぐにだ。
 宗朗と幸村がだ。彼女の左右からそれぞれ問うた。
 そしてだ。こう言ったのである。二人共。
「まさか十兵衛を甦らせたのは」
「神の一柱だというのか」
「何かね。黒い服の凄く奇麗な人」
 十兵衛は豆腐の味噌汁を飲みながらその二人に話した。
「その人に。こっちの世界に連れて来てもらって」
「あの人か」
「そうだったのね」
 ここで納得した様に言ったのは斬鬼と朱鬼だった。
「俺達と同じく」
「この娘も」
「黒衣の青年でしたね」
 半蔵がその二人の言葉に応えて言った。
「貴方達の側にいる神は」
「ああ、そうだ」
「このことはもう話したわね」
「はい」
 半蔵は二人の言葉にこくりと頷いてそれを返事にした。
 そのうえでだ。彼女の口からその青年のことを話した。
「貴方達の世界の人間の造物主でありかつてアギトを消そうとした神ですね」
「あの神様は人間を見ている神様なんだ」
 響鬼がこのことを話した。
「とにかく。自分達の子供である人間を愛してくれているんだ」
「そう考えるといい神ですね」
 宗朗もだ。彼等の話から言った。
「そうなりますね」
「そうさ。まあアギトのこともわかってくれたしな」
 響鬼はかつての戦いのことからも黒衣の青年について話した。
「俺達のことをずっと助けてくれてるんだ」
「何かあれば助けてくれる神様じゃな」 
 幸村もこう認識していた。
「有り難い神じゃがそれでも」
「ああ。その辺りは本当に複雑なんだ」
 響鬼はこのことも話した。
 

 

第七話 義の戦その二

「スサノオは人間を試す神で」
「黒衣の青年は人間を助ける神ですね」
「で、そこにバトルファイトの話も入って」
 あの戦いのことも話されていく。
「ヒューマンアンデットやスマートレディやら」
「ええ、その話は聞かせてもらったけれど」
 今度は千姫が言う。
「凄い神様ね」
「しかもその神を一時は敵に回しておったとは」
 幸村はかつてのアギトの戦いのことに言及した。
「御主等凄いというものではないぞ」
「貴方達はそうした戦いを経てこられたんですね」
 宗朗もだ。感心する様にして述べる。
「だからこそそこまでの強さなんですか」
「神さえも凌駕する」
「そこまでの力じゃな」
「力の問題じゃないんだよ、これがな」
 しかしだ。響鬼は笑ってそのことは否定した。
「あれだよ。要はな」
「大事なのは?」
「というと」
「心なんだよ」
 それがだ。大事だというのだ。
「人間っていうのはな」
「そうそう、心なのよ」
 十兵衛が響鬼のその言葉に応える。そうして。
 ここでだ。こう言ったのだった。
「お代わり」
「まだ食べるんですか」
「うん、だってまだ五杯目だよ」
 驚く又兵衛ににこりと笑って話す。
「十杯は食べないと」
「ううん、何か大食の方は」
 戸惑いを見せながら。又兵衛は十兵衛の茶碗を受け取りお櫃から御飯を入れながら言う。
「前よりも凄くなっているかも」
「いや、五杯は普通じゃろ」
 幸村もここでお代わりだった。
「わらわもそれ位食べるぞ」
「確かに。幸村様も」
「腹が減っては戦ができぬ」
 非常によく言われる言葉がここでも言われた。
「そういうことじゃ」
「はい、では」
「うむ。それでじゃ」 
 ここまで話してだ。そうしてだ。
 幸村は響鬼に顔を戻し。問うたのだった。
「心じゃが」
「確かに力も必要だよ」 
 鬼としてだ。それはどうしてもだとだ。響鬼は言う。
 しかしだ。それと共にだった。
「けれどそれ以上にな」
「心があってこそか」
「何かが出来て果たせるんだ」
 これが響鬼の言葉だった。
「そうなんだよ」
「ううむ。義じゃな」
「義?」
「うむ、義じゃ」
 それだというのだ。
「わらわ達のそれは義になるな」
「その義があるからアギトは神に勝てたっていうんだな」
「そうなるな」
 こう響鬼に話す幸村だった。
「ひいては」
「それがわらわ達にとっては義になるのじゃ」
「義、忠義か」
「忠義とは限らん」
 義とはだ。それだけではないというのだ。
 そしてだ。幸村はその義について具体的に話しはじめた。
「仁義に信義、孝義とじゃ」
「つまりあらゆることか」
「左様、義とは即ち心」
 幸村の心が澄んできた。尚更。
「それがあるからこそじゃ」
「人間だっていうんだな」
「そうした意味でも鬼、仮面ライダーと侍は同じ」
 幸村はここで一つの結論を出した。そうしてだった。 

 

第七話 義の戦その三

 宗朗に顔を向けてだ。そして言ったのだった。
「ではそのことを忘れずにじゃ」
「戦っていくんだね」
「最後の最後までな」
「それでね」
 十兵衛がほうれん草のひたしを食しながら言ってきた。
「その黒い神様だけれどね」
「黒衣の青年が?」
「うん、何か色々やることがあるんだって」
 こう一同に話すのである。
「それで今はね」
「今は?」
「ここに来ることはできないけれど」
 それでもだというのだ。
「十兵衛に鬼さん達に伝えて欲しいって」
「何ですか、それは」
「一体」
 威吹鬼だけでなく轟鬼も十兵衛に問うた。思わず身を少し乗り出している。
「黒衣の青年が僕達に伝えたいこと」
「それって何なんだ!?」
「この世界のスサノオは天草四郎との戦いの後で出て来るんだって」
 これがだ。黒衣の青年からの伝言だというのだ。
「だから。天草に勝ってもね」
「油断してはいけない」
「そういうことか」
「そのことを伝えて欲しいって」
 十兵衛はあくまで天真爛漫な調子で話す。戦いの時とは全く違う。
「そう言われたから」
「やっぱりそうなんだね」
 宗朗は十兵衛の言葉を聞いて。納得した様に頷いた。
 そうしてだ。また言う彼だった。
「スサノオは僕達を見て試し続けているんだ」
「本当に趣味の悪い奴ね」
 千姫は宗朗の言葉を受けて憮然とした顔になる。
 そのうえでこう言ってだ。スサノオへの嫌悪を見せたのである。
「最後の最後まで出て来ないなんて」
「まああれだ。大物は最後に出て来るものだからな」
 響鬼がその千姫にこう話す。
「特に気にすることでもないさ」
「まずは戦いましょう」
 半蔵が述べる。
「柳生義仙、そして天草四郎と」
「そうだな」
 半蔵の今の言葉に頷いて応えたのはダルタニャンである。見れば器用に箸を使い続けている。
「それでは今からだ」
「また向こうから来るな」
 桐矢は己の読みを述べた。
「さて、その時に」
「もう一度迎え撃ちましょう」
 あきらが応えて。そうしてだった。
 彼等はそのまま食事を摂る。そうして今は十兵衛の帰還を喜ぶことにした。その食事の後で。
 十兵衛はにゃんぱいあ達とだ。庭で遊んだ。そのにゃんぱいあ達にだ。
 十兵衛はその彼等にこう尋ねた。
「君達ってさ」
「何にゃ?」
「何かあるのかよ、俺達に」
 にゃんぱいあとまさむにゃがその十兵衛に問い返す。
「他の世界から来たんだよね」
「そうですよ」
 にゃてんしがその問いに答えた。彼も来ているのだ。
「僕達は元々は天界にいまして」
「天界?」
「神様がおられる世界です」
 そこから来たというのだ。
「ですからとても偉いんですよ」
「ふうん、君達って偉い猫なんだ」
「はい、そうなんです」
 にゃてんしは平然と嘘を吐いた。
「だから崇め奉らないといけないんですよ」
「そうだよね。偉いんだからね」
 そしてだ。十兵衛はにゃてんしの嘘をそのまま信じた。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「神様みたいなものだよね」
「いえいえ、僕は天使ですよ」
 このことだけは正しかった。
 

 

第七話 義の戦その四

「天界にいまして」
「天界って?」
「その神様がいる世界で」
「あっ、何か基督教の?伴天連の人達が言う」
「そうなんですよ。そこにいまして」
「じゃあ本当に天使なんだ」
「はいそうです、ですから」
 ここからがだ。にゃんぱいあの本題だった。
 その顔に黒いものを帯びさせてだ。彼は言った。
「僕にですね。お魚なり鶏肉なりを何時でもたっぷりと」
「っていい加減にしておけよ」
 しかしだ。そのにゃてんしをまさむにゃが注意してきた。
「御前いつもそう言って誰かに悪さしてるだろ」
「はて、そうでしょうか」
「そうだよ。全く仕方のない奴だな」
「何しろ僕は天使ですから皆崇めなくてはいけないのですよ」
「けれどその行いのせいで」
 茶々丸はにゃてんしに対しても鋭く容赦がない。
「天界にいられなくなったんですよね」
「全く。天界も心が狭いですね」
「御前は幾ら何でも日頃の行いが悪過ぎるんだよ」
 まさむにゃはにゃてんしに対して一番容赦がない。見ればカツオはそのまさむにゃの後ろに隠れてがたがた震えている。そんな状況だ。
 そんな中でだ。毛利君と小森君が十兵衛に尋ねた。
「それでいいかな」
「僕達周りを見てきたけれど」
「何かわかったの?」
「うん、周りは平和だったよ」
「特に怪しいところばなかったよ」
「そうなの」
 二匹から話を聞いてだ。十兵衛は。 
 目を何度かしばたかせてからだ。こう言った。
「じゃああの娘何処に隠れてるのかな」
「多分ですけれど」
 茶々丸がその十兵衛に話してきた。
「その人達こちらの世界にはいませんよ」
「じゃあ茶々丸ちゃん達の世界にいるの?」
「いえ、そこでもありません」
 彼等の世界でもないとだ。茶々丸は話す。
「そこにいれば大騒ぎになりますから」
「あんな人が出て来たら」
「そうです。それこそ大変なことになります」
 それだけの騒ぎになってしまうというのだ。
「とはいっても響鬼さん達の世界でもなく」
「それじゃあ何処なの?」
「あの人達の世界ですね」
 茶々丸は自分に顔を下ろしてきている十兵衛の顔を見上げて話す。
「スサノオさん達の」
「そこにいるの」
「はい、そこから僕達を見ているんです」
 そうだというのだ。
「そうして何を仕掛けようかと考えているんです」
「僕みたいににゃ」
 にゃんぱいあは自分のことから述べた。
「人が何をするのかを見ているにゃ」
「そうですね。兄上の仰る通りです」
「やったにゃ、僕の予想が当たったにゃ」
「いえ、もうこれは仮面ライダーの皆さんに御聞きしてますから」
 兄に対してもだ。茶々丸は容赦がない。
「十兵衛さん達も見ていますよ」
「十兵衛そんなにじろじろ見られるの好きじゃないけれど」
「そうした意味ではなくてですね」
「違うの?」
「そうです。スサノオは人間自体を見ていますから」
 ひいてはだ。それは。
「人の心を持っている相手を」
「じゃあそれだと」
 茶々丸の言葉からだ。十兵衛は一つの答えを出した。その答えは。
「にゃんぱいあちゃんや茶々丸さんだってそうなるわよ」
「そうですね。僕達に人間の心があるかどうかはわかりませんが」
「猫だから?」
「蝙蝠だから?」
「それで?」
 十兵衛に続いて毛利君と小森君もここで言う。
 

 

第七話 義の戦その五

「それでなの?」
「まあ確かに僕達蝙蝠だけれど」
「それでもなんだ」
「いえ、もっと根本的な問題です」
 かつより大きなことだとだ。茶々丸は話す。
「僕達の心が人間のものかというと」
「完全に猫だからな、俺達」
「その通りだにゃ」
 まさむにゃとにゃんぱいあもこのことには頷く。
「猫として生きて好き勝手やって」
「それで人間というのもにゃ」
 また違うのではないのか、二匹もこのことに気付いた。
 そしてだ。彼等はこう言うのだった。
「それじゃあ猫としてか」
「考えてもいいにゃ?」
「兄上は吸血猫ですが猫は猫です」
 自分の兄はそうだというのだ。
「そのことは変わりがありません」
「ただ血や苺が好きなだけにゃ」
 にゃんぱいあも言う。
「それだけにゃ」
「はい、その通りです」
「まあ猫だから人間だからじゃなくてな」
 まさむにゃは茶々丸に続く形で言った。
「俺達は俺達でいいか」
「そうだにゃ。少なくとも僕は不自由していないにゃ」
「そうです。ただあのスサノオに見られているという点で」
 それならばだというのだ。
「僕達はもう人間とも考えられます」
「僕達が人間?」
「スサノオは人を見る神ですから」
 そのだ。彼に見られているということから出る答えだった。
「ですからそれも」
「ううん、何か難しいにゃ」
「特に難しく考える必要はありません」
 それはないとだ。茶々丸は兄に話した。
「そのまま考えればいいんですよ」
「そうにゃ?」
「そうです。十兵衛さんもです」
「十兵衛もなの」
「そうです。あくまでありのままです」 
 茶々丸はまた十兵衛に話す。
「考えられていいですから」
「ううん、それじゃあ?」
「それじゃあ?」
「今度は何なんだ?」
「十兵衛お腹空いた」
 十兵衛が今思ったことはこのことだった。このことを言ってだ。
 早速だ。にゃんぱいあ達に提案した。
「だから皆で何か食べる?」
「そうですね。ここはですね。
 にゃてんしは宙に浮かび寝転がり煙草を吸いながら述べる。
「デザートにしますか」
「デザートかよ」
「はい。お菓子でも食べますか」
「お菓子よりもさくらんぼがいいにゃ」
 にゃんぱいあはそれがいいと主張してきた。
「紅いものがいいにゃ」
「紅ですか。いいですね」
「それがいいにゃ」
「ではそうしましょう」
 気紛れな感じでだ。にゃんぱいあの言葉に頷いてだ。
 にゃんてんしもいいと答えた。ここでだ。
 彼等のところにだ。宗朗と明日夢が来て声をかけてきた。
「ああ、君達ここだったんだ」
「十兵衛さんもおられますね」
「うん、何?」
 十兵衛は二人に顔を向けて応える。
「何かあったの?」
「いや、丁度おやつの時間だから」
「それで探してたんですよ」
「おやつ?何でしょうか」
「さくらんぼだよ」
「どうですか?」
 宗朗も明日夢もにゃてんしにも答えた。
「皆もう集まってるから」
「それで皆で一緒に」
「丁度食べたかったところにゃ」
 にゃんぱいあは満面の笑みで応える。
 

 

第七話 義の戦その六

「それじゃあそれを食べるにゃ」
「俺もにゃんぱいあが一緒ならな」
「僕も別に」
 まさむにゃと茶々丸も言う。
「それでいいぜ」
「そうさせてもらいます」
「僕達も実はね」
「雑食だし」
 毛利君と小森君も問題なしだった。
「それじゃあお言葉に甘えて」
「今から」
「はい、では君も」
 にゃてんしはカツオの前に立ち彼を問い詰める様にして賛成を促す。カツオはその彼に見られてやはり震えている。震えずにはいられない。
「いいですね」
「えっ、僕は」
「さくらんぼ好きですね」
「ええと、その」
「ここで好きと言えば天国に行けるのですね」
 いつもの滅茶苦茶な暴論だった。
「さあ、言うのです」
「そのさくらんぼ僕食べられるのかな」
「えっ、それは当然じゃないか」
「カツオ君の分もあるよ」
 そのことはにゃんてんしではなく宗朗と明日夢が保証する。
「だから皆集まってね」
「それで食べようよ」
「はい、それじゃあ」
「そしてここで、です」 
 まだだった。にゃてんしはカツオの前に立ったままだ。こう言うのだった。
「僕にそのさくらんぼをくれれば」
「えっ、僕のさくらんぼを」
「そうです。そうすればです」
 また言うのであった。
「貴方は天国に行けるのですよ」
「おい、いい加減にしろよ」
 まさむにゃがここでにゃてんしに言う。
「全く。カツオはちゃんとカツオの分食べていいからな」
「いいの?」
「ああ、気にするな」
 こうカツオに言うまさむにゃだった。
「本当にな」
「うん、それじゃあ」
 こうしてだった。彼が食べることはまさむにゃも保証した。こうしてだった。
 人間も猫も一緒にさくらんぼを楽しむ。そのさくらんぼを食べて千姫が言う。
「このさくらんぼは」
「山形のさくらんぼです」
「そうね。絶品ね」
 微笑んで食べながらだ。千姫は満足して言う。
「やっぱりさくらんぼは山形よ」
「そうですよね。本当に」
「あと牛は」
 それはどうかというと。
「兵庫ね。あの神戸の牛がいいわ」
「姫様は神戸を贔屓にされてるんですよ」
 半蔵が自分達の向かい側に座る響鬼達ににこりと笑って話す。
「御幼少の頃から神戸がお好きで」
「相性か?」
 桐矢がそれを聞いて言う。
「それの関係か」
「相性というよりは」
 どうかとだ。その千姫が話す。
「中から来るものなのよ」
「だから神戸が好きなのか」
「昔からね。それで野球は虎よ」
 それはそちらだというのだ。
「縦縞でないと納得しないわ」
「鬼の球団はこっちの世界にはあるか?」
 響鬼は少し笑って千姫達に尋ねた。
「あれは少し嬉しいだけれどな」
「あっ、そういう球団はないです」
 宗朗がその問いに真面目に答える。
「十二球団ありますけれど」
「それでもか」
「鬼はないですね」
 こう話すのである。
「あとこの世界ではです」
「この世界ではか」
「野球よりもやっぱり」
「武道だな」
「侍ですから」
 それが理由でだというのだ。 

 

第七話 義の戦その七

「武道が一番盛んですね」
「じゃあ体育の時間も」
「それとは別に武道の時間があります」
 そうだというのだ。
「僕はその師範なんです」
「じゃあ宗朗少年はあれか」
「学生ですが師範でもあります」
 そうだとだ。響鬼に話すのである。
「それで結構忙しいんです」
「成程。そしてその忙しい中でだな」
「充実してます」
 それはだと。微笑んで言うのである。
「毎日が」
「そうだな。忙しいと余計にな」
「充実しますね」
「そう、それがいいんだ」
 響鬼は大人のそのよさを見せて応える。
「忙しい中で何をするか」
「それですね」
「何を果たすか」
 ひいてはそういうことだった。
「それが大事なんだ」
「では僕は」
「果たすんだな」
「スサノオとのことを終わらせます」
 具体的にはそういうことだった。
「ここで」
「それがいいな。ただしな」
「スサノオはですね」
「強いからな」
 このことも言うのだった。
「何しろ神だからな」
「神の力は絶大ですね」
「そうさ。けれどな」
 それでもだとだ。響鬼は微笑んで言うのだった。
「勝てない相手じゃない」
「大切なのは心ですね」
「それがどうかで戦えるからな」
「神に勝つ戦いですか」
「それができるんだ。何度も言うが心なんだ」
 それがあればだとだ。響鬼は話していく。
 そのうえでだ。宗朗にまた言った。
「勝てないと思っていたら勝てる戦いも勝てないよな」
「はい、それは確かに」
「武道だってそうだよな」
「気持ちが負けていればどうしようもないですね」
 彼もだ。これまでの多くの勝負でそれがわかっていた。彼も伊達に武道指南役ではない。尋常ではない武芸、それを培ってきた勝負も知っているのだ。
 だからだ。響鬼の言葉に頷き答えたのだった。
「確かに」
「そう。じゃあ最初から勝つって思ってな」
「戦いに赴きますか」
「そうしよう。それとだけれどな」
「それと?」
「あの十兵衛ちゃんは面白いな」
 彼女のことも話す響鬼だった。
「純粋でそれでいてな」
「そうです。あの娘は純粋で」
 そうしてだとだ。宗朗も彼女について話した。
「そうしていざという時には」
「ああなるんだな」
「ああなった時の十兵衛は本当に強いです」
「あの娘がいるのも運命だな」
「十兵衛もですか」
「そうだろうな。運命だろうな」
 こう言う響鬼だった。
「俺達全員が運命の中にいるんだ」
「じゃあ次の戦いでは」
「運命を切り開くか」
 響鬼はここでも微笑んでみせた。
「俺達自身でな」
「運命は自分の手で切り開くものでしたね」
「それが人間だからな」
 こんな話もしたのだった。その二人に十兵衛、それに明日夢がだ。
 今度はだ。慶彦から直接呼ばれた。その慶彦はだ。  

 

第七話 義の戦その八

 生徒会室でダルタニャンを横に置きだ。会長の机から問うたのだった。
「一つ決めた」
「決められたとは」
「僕も戦おう」
 こうだ。宗朗に言ったのである。
「君達と共にな」
「おや、考えを変えたんだな」
「少し考えたのだが」
 そのうえでだとだ。宗朗は自分の前に立つ響鬼に話した。
「スサノオだったね」
「はい、その荒らぶる神です」
「かなりの力を持っているのは間違いない」
 そうだとだ。彼は宗朗達に対して話す。
「そして若し彼等が勝利を収めれば」
「この国大変なことになっちゃうよね」
 十兵衛は彼女が考えていることをそのまま言葉に出した。
「もう滅茶苦茶にされて」
「そうだ」
 まさにそうだとだ。慶彦は十兵衛にも答えた。
「徳川家、日の本の政を司る我が家としてもだ」
「捨ててはおけないんですね」
「最初はダルタニャンだけでいいと思った」
 慶彦は明日夢に応えながら自分の右隣に立つダルタニャンを見た。
 そのうえでだ。響鬼達に語ったのだ。
「しかし相手はそれどころではないな」
「何しろあらゆる世界に干渉してきている相手ですから」
「それだけの相手ならばだ。僕も戦わなくてはならない」
 慶彦は確かな顔と声で言い切った。
「君達と共に戦おう」
「有り難うございます、それでは」
「慶彦さんも十兵衛達の仲間なんだね」
「仲間か。仮面ライダーではそう言うのか」
「ああ、言う奴もいれば言わない奴もいるな」
 そこは色々だとだ。響鬼は話した。
「けれどまあ。一緒に戦うんならな」
「仲間になるか」
「そう思ってくれていいさ。さて、そろそろかな」
 慶彦の微笑んでの言葉に応えてだ。すぐにだ。
 響鬼はだ。その表情を少し察するものにして目をやや上にさせてだ。
 こう言ってみせたのだった。思わせぶりな雰囲気で。
「また出て来るかな」
「柳生義仙が」
「あと天草四郎か」
 彼女もだというのだ。
「それとその後ろにいるな」
「スサノオもですね」
「出て来るだろうな」
「わかりました。じゃあ」
「戦いの準備だね」
 宗朗と十兵衛が応えてだった。そうして。
 慶彦を迎えた彼等はだ。一旦また道場に入った。そこでだ。
 またしても飯を食う。今度は。
「この鍋は」
「何かしら」
 慶彦と千姫の兄妹が皆で鍋を食う中でだ。眉を顰めさせていた。
 鍋の中には豆腐に白菜、葱、エノキ、それに白身の魚がある。その魚を食べてだ。
「美味だが」
「食べたことはないわ」
「あっ、この魚はですね」
 宗朗がだ。その二人に説明した。
「河豚です」
「河豚!?」
「河豚というと」
「はい、毒がありますがとても美味しいですよ」
「その毒はじゃ」
 幸村もその河豚を食いながら二人に話す。
「ちゃんと宗朗が取り除いておいた」
「河豚の毒は皮や内臓にありまして」
「それを取り除いてか」
「そうして調理したものなの」
「はい、だから大丈夫です」
 食べてもだ。いいというのだ。
「安心して召し上がって下さい」
「それならいいが」
「河豚を食べるのは正直」
 二人はやや戸惑いながらだ。こう言うのだった。 

 

第七話 義の戦その九

「僕は河豚を食べるのははじめてだ」
「私も。この魚は」
「天皇家と将軍家の方々はです」
 半蔵がだ。ここで事情を話した。
「河豚は食べられないんですよ」
「毒があるからだよな」
「はい、だからです」
 それでだとだ。半蔵は響鬼にも話す。
「若しものことがあってはいけませんから」
「それなら出さない方がよかったですか?」 
 あきらも食べながら言う。その顔が曇っている。
「私が決めたんですが」
「いや、それはいいよ」
 宗朗がそのあきらに言った。
「僕もいいって言ったし」
「だからですか」
「うん、いいよ」
 こう言うのである。
「御叱りは僕が受けるから」
「言ったわね」
 宗朗がこう言った瞬間にだ。千姫がだ。
 その目をきらりと光らせてだ。こう言ったのである。
「ではいいわね」
「何がですか?」
「責任を取ってもらうわ」
 その目での言葉だった。
「このことのね」
「むっ、御主何を言っておる」
「だから責任を取ってもらうのよ」
 千姫は宗朗にも臆面もなく言い返した。
「この河豚のことをね」
「待て、この場合の責任とは何じゃ」
「言うまでもないわ。柳生家は代々幕府の武芸指南役で家柄も充分ね」
「だからそれがどうしたというのじゃ」
「徳川家とも幕府開闢以来懇意だし」
 千姫の話が続く。
「以前にもこうしたことはあったし」
「あの、姫様それでは」
「半蔵、高校を卒業したら」
 このだ。学園をだとだ。千姫は半蔵にも言った。
「いいわね、結婚よ」
「ほ、本気ですか!?」
「嘘でこんなこと言わないわよ」
 千姫の目はその輝きをさらに強くさせていた。
「いいわね。この責任は必ず」
「よいのか、これで」
 千姫にはもう言っても無駄だと判断してだ。幸村は兄の慶彦に問うた。
「とんでもない話が勝手に進んでおるぞ」
「河豚のことは僕も知っていた」
 慶彦は幸村のその言葉にここから話した。
「その毒は一匹で何十人も殺せる」
「それがどうかしたのじゃ」
「次期将軍である僕を毒殺しようとしたこと」
「だからそれは違うと言っておろうが」
「このことは万死に値する」
 幸村の話を聞いていない様に思えた。しかしだった。
 慶彦はだ。ここでこう言ったのだった。
「責任を取ってもらわないといけない」
「ではお兄様」
「可愛い妹を奪われることは残念だ」
 完全な棒読みだった。見事なまでの。
「しかしこの罪を咎めないではいられない」
「それではですね」
「千、認める」
 ここでだ。慶彦はにたりと笑ってみせた。
「これで僕は妹婿を手に入れ徳川家もまたよき侍を取り戻せた」
「あの、御言葉ですが」
 しかしだ。慶彦がここまで言ったところでだ。
 あきらがだ。こう言ってきた。
「この河豚ですけれど」
「河豚が?」
「どうかしたの?」
「サバフグですけれど」
 その河豚だというのだ。 

 

第七話 義の戦その十

「毒のない」
「何っ、毒のない河豚もいるのか」
「そうだったの」
「はい、最初はトラフグだと思ったんですけれど」
 それがだ。実はだというのだ。
「サバフグでした。毒のない」
「この河豚は安心して食べられますから」
 明日夢もここで慶彦達に話す。
「美味しいですし」
「ううむ、では宗朗の責任のことは」
「これでは」
「ないのう」
 幸村がすかさず打ち消してきた。
「全く。河豚位ちゃんとわかっておれ」
「いやいや、河豚はやっぱり毒があるものだからな」
 響鬼はその幸村に笑って話す。
「ある脚本家の人なんかは河豚を食おうと思って皆に止められたこともあるからな」
「毒があると皆思うておるからか」
「そうだよ。だからそれは仕方ないさ」
「しかし責任のことはどうなる」
 幸村は不安げに宗朗と千姫を交互にせわしく見ながら響鬼に問うた。
「全く恐ろしいことを言いおる」
「まあ毒はないからね」
「責任は起こらんな」
「そうなるかな、この場合は」
「ではじゃ。この話はなしじゃ」
 幸村は強引にそういうことにしてしまった。
「よかったのう宗朗、御主は助かったぞ」
「助かったっていうか僕は何も言っていないけれど」
 周りの騒ぎにきょとんとしていただけだった。
「何ていうか」
「全く。あと一歩だったのに」
 むしろだ。千姫が忌々しげに歯噛みしている。
「余計なことを」
「危ういところだったわ。油断も隙もないわ」
「けれどまたの機会に」
 これで諦める千姫ではなかった。それでだ。
 まだ宗朗を見てだ。今度はこんなことを言うのだった。
「私はそれこそ宗朗をいつも」
「どうしていたのじゃ」
「馬にしていたのよ」
 幼子の頃のことを言うのだった。
「私が人になって宗朗をいつも操っていたのよ」
「完全にかかあ天下ではないか」
「悪くて?私はそもそも」
「わかっておるわ。庭球でも部長だったな」
「知ってるのね、そのこと」
「ふん、知らぬと思うかこの幸村が」
 話がここでもよくわからない方に飛んできていた。
「西洋の軽音楽もやっておるし魔乳がどうとかもじゃな」
「あっ、それわたくしもですわ」
 兼続もここで言う。
「これでも最初は胸が大きくてたゆんたゆんでしたわ」
「何か話が凄くなってませんか?」
 威吹鬼は鍋の中の野菜と豆腐を取りながら言った。
「まあ何はともあれ今はサバフグを食べてですね」
「はい、英気を養いましょう」
 又兵衛が彼のその言葉に頷く。
「それでは」
「河豚も野菜もまだまだありますから」
 轟鬼はこんなことを言いながら実際に鍋に野菜や豆腐を入れていく。無論河豚もだ。
「それで最後はですね」
「雑炊だな」
「最後の最後はそれね」
 斬鬼と朱鬼が応える。
「鍋の最後はやはりあれだ」
「雑炊がなくては話にならないわ」
「卵も用意してますから」
 轟鬼は実に用意がよかった。
「最後の最後まで食べましょう」
「そうして決戦に赴くとするか」
 慶彦がまた言った、
「この世界での決戦に」
「はい、先は長いですし」
 宗朗はこの世界でのことだけではないと。もう強く意識していた。
「食べてそうしてです」
「わかっているさ。そうして」
「戦いましょう」 
 こうした話をしながらだ。彼等はその河豚鍋を食べていく。その後でだ。
 風呂だった。女組が風呂に入っている。その中において。 

 

第七話 義の戦その十一

 幸村がだ。いささか嫉妬する目でだ。あきらの胸を見てこう言った。
「大きいのう」
「そうですか?」
「全く。若いというのにその大きさか」
 こう言うのである。羨望の目で。
「わらわはずっとこうだというのに」
「そればかりは仕方ないわよね」
「胸はね」
 立花姉妹もいる。彼女達はこう言ってだ。
 幸村にだ。こんなことも言った。
「けれどそれはね」
「気にすることはないから」
「慰めはいらんぞ」
「だから。慰めじゃなくて」
「胸が小さいのがいい人もいるのよ」 
 二人が話すのはこのことだった。
「世の中そういう人も多いから」
「特に気にすることはないわ」
「それでしたら私も」
 兼続が二人の話に乗ってきた。
「夢がありますわね」
「夢というのかしら」
 千姫は身体を洗いながら彼女に対して言う。大事な部分は泡で隠れている。
「それは」
「私これでもギターもやってまして」
「ギターも。ああ、そういえば」
「あの時もね」
 姉妹はそのことにふと気付いた様になって述べた。
「妹さんの方がね」
「そうなってるわよね」
「うう、だから余計にですの」 
 兼続もムキになっている。無意識のうちにそうなっている。
「何時か討ち乳になれる位の胸が欲しいですわ」
「討ち乳ね」
 また千姫が反応を見せる。
「あれじゃやられたらもう痛いわよ」
「千姫様はそちらの世界でも巨大じゃないですか」
 兼続は千姫のその大事なところが隠されている胸を見て言った。
「正直羨ましいです」
「そうじゃ。胸が大きいのはそれだけで凄いことなのじゃ」
 幸村もそれを主張する。
「わらわもじゃ。何時かはたゆんたゆんになってじゃ」
「幸せになりますわ」
「幸せなんですか?」
 あきらは二人の話を聞いてもそれには首を傾げさせる。
「胸が大きいとそれだけで」
「持っている者にはわからんわ」
「持たざる者の苦しみは」
「ううん、そうなんですか」
「だから。何度も言うけれど」
「大きいのも小さいのもそれぞれよ」
 姉妹は落ち着いてこう彼女達に話し続ける。
「何も大きいだけじゃないから」
「形だってあるし」
 そうした話をしながらだった。風呂に入っていた。
 既に男達は風呂から出ている。それから浴衣に着替えて縁側で西瓜を食べながらだ。響鬼はだ。慶彦にこう尋ねた。同じく西瓜を食べている彼に。
「あの時の話だけれどな」
「千姫の戯れのことかな」
「あれは戯れじゃないよな」
 笑ってだ。慶彦に尋ねる響鬼だった。
「そして君もな」
「さて、それはどうかな」
 このことはだ。何かを隠す笑みを浮かべてだ。
 そのうえでだ。彼はこう響鬼に返した。
「僕は特にね」
「特にかい」
「千姫の幸せを願っているだけさ」
「妹さんのか」
「そう。兄としてあの娘には幸せになって欲しいだけさ」
 その微笑みで西瓜を食べて言う慶彦だった。
「もっとも僕は宗朗も」
「彼もか」
「嫌いじゃない」 
 妹のことを話しながらだ。同時に彼のことも言うのだった。
「昔からね。ああいう人間は嫌いじゃない」
「むしろ好きというのかな」
「そうだね。好きだね」
 隠さなかった。それも全く。
「だからできれば」
「妹さんの相手に」
「なって欲しいけれど。それは無理かな」
「彼の方が問題だろうな」
 響鬼は今ここにいない宗朗を見てこう述べた。 

 

第七話 義の戦その十二

「彼はどうもな」
「鈍感なんだ、宗朗は」
「そう。それもかなりの」
「それさえなければ完璧だというのにね」
「完璧な人間なんてこの世にはいないさ」
 響鬼はここでは自分の人生経験から答えた。
「神様だって完璧な神様もいないさ」
「全てはなにかしらの欠点がある」
「そういうものさ。だから彼は鈍感なんだ」
 その鈍感さをだ。響鬼は笑顔で受け入れていた。
「それでいいじゃないか」
「それはいいとしても」
 だが、だった。今の慶彦はだ。
 そのことを受け入れてもだ。まだあるというのだ。
「千姫は純情で一途だから」
「彼じゃなければ駄目だっていうのか」
「幼い頃からそう決めているんだよ」
 兄だけあってだ。千姫のそうしたところはわかっていた。
「宗朗じゃないと駄目なんだ」
「難しいな、そこは」
「どうしたものか」
 慶彦は自然にだ。苦笑いになって言った。
「その辺りは」
「彼が気付くことを待つべきだろうな」
 これが響鬼の解決案だった。
「女の子達のそれぞれの気持ちに」
「では千姫が選ばれないかも知れない」
「その可能性は否定できないね。君には悪いことだが」
「ははは、その時はその時だよ」
 慶彦は今の響鬼の言葉には笑ってこう返した。
「宗朗が選んだ相手ならそれでいいさ」
「そしてそれは君だけじゃないか」
「千姫も。いい娘だ」
 妹のこともだ、胸朗は話した。
「その辺りはわかっているさ」
「わかっているんだったら」
「確かに嫉妬して暴れることがあってもそれでも」
 千姫はだ。どうかというのだ。
「宗朗が選んだことなら」
「受け入れてくれるか」
「うん、そういう娘だから」
 それでいいというのだ。
「だから。全ては宗朗を信じるさ」
「それが君の考えか」
「そうだよ。それじゃあ」
「西瓜はこんなにあるんだ」
 見れば数個分の西瓜が切られている。その西瓜の山を見てだ。
 響鬼はその気さくな笑みでだ。慶彦にこう言った。
「二人だけで食べるのは勿体ないよな」
「二人だけで食べられる量でもないし」
「そう、だからな」
「うん、じゃあ皆を呼ぼう」
「そうしよう。しかし」
「しかし?」
「河豚鍋の後で西瓜というのはな」
 それはどうかとだ。響鬼が今度言うのはこのことだった。
 彼は笑ってだ。こう言った。
「冬と夏だな」
「それが共にある」
「あちらの世界じゃ技術の進歩でそれが味わえるようになったんだ」
「この世界でもだ」
「それは同じか」
「基本的な技術の進歩は同じだ」
 こちらの世界にもテレビもあればクーラーもあるのだ。当然発電所もだ。違うのはまだ徳川幕府があり日本の文化が色濃いということだ。
 だからだ。冬も夏もこうして同時に味わえるというのだ。それでだ。
 慶彦はだ。こんなことも言った。
「昔は氷は夏に将軍や限られた者だけが食べていた」
「そうだったな。氷は滅多に手に入るものじゃなかった」
「しかし今は違う」
 どう違うかというと。
「誰もが氷に甘い蜜をかけて食べられる」
「夏も冬もな」
「いい時代になった」
 慶彦はそのことを笑顔で受け入れていた。
「徳川幕府は贅沢を独り占めにする趣味はない」
「むしろその逆だな」
「誰もが美味いものを食べられいい服を着られる」
「そうした国にしたいんだな」
「ひいてはそうした世界にな」
 これは響鬼の世界の徳川幕府も同じだった。この政権は決して強欲ではなかった。むしろ節約を重んじ民生に心血を注いだ政権だったのだ。
 それはこの世界でも同じでだ。次期将軍たる慶彦も言うのだった。
「だからこの世界を守りたい」
「それで戦うんだな」
「そういうことだ。では皆も呼んでか」
「この西瓜を食おう」
「千も呼ぶか」
 慶彦はここでも妹のことを思い出し言う。
「そして宗朗も呼んでな」
「おいおい、また騒ぎを起こすつもりか?」
「だがそれがいい」
 あえてそうするというのである。
「それを見るのもまた楽しみだ」
「それはちょっと趣味が悪いな」
「自覚はしている」
「それでもなんだな」
「そう。だから呼ぼう」
 こうした話をしてだった。彼は実際に全員呼んでそうしてだ。宗朗と千姫、そして幸村達のやり取りを見て笑うのだった。兄の目で。


第七話   完


                         2011・9・21 

 

第八話 信の激突その一

                          第八話  信の激突
 響鬼達は暫くの間平穏に過ごしていた。しかしそれが永遠のものでないことはよくわかっていた。
 だからだ。道場では常に鍛錬を積んでいた。その外でもだ。
 響鬼達が修業を積んでいる。そのセコンド役でだ。
 明日夢達もいる。彼はランニングの後で休憩に入った響鬼にタオルとお茶を渡してから尋ねた。
「この世界でも鍛錬は欠かせないですね」
「ああ、何時あの女が来るかわからないからな」
 響鬼は汗を拭き茶を飲みながら応える。水筒に入れられている茶はよく冷えた抹茶である。それを飲みながら明日夢に応えているのだ。
「だからな」
「本当に何時来るかわからないですね」
「戦いに備えてな」
 それでだというのだ。
「鍛錬は怠ったらいけないんだ」
「だから皆さんも」
「俺もそれは同じだ」
 桐矢もいる。彼も汗を拭いている。そうして抹茶を飲みながら言うのである。
「鍛錬は積み重ねてこそだからな」
「京介もそう思うようになったんだ」
「鬼になってから、いや鬼を本気で目指すようになってから」
 それからだというのだ。
「そのことがわかってきたんだ」
「だからだね」
「あの女は何時来るかわからない」
 義仙のことも話すのだった。
「だから余計にだ」
「そうだ。その為にも気を引き締めてだ」
 斬鬼も話す。
「鍛錬を積んでいかなければならない」
「また向こうから来ますかね」
 轟鬼は整体にストレッチをしながら師に問うた。
「あの女は」
「間違いないな」
 来るとだ。斬鬼も屈伸をしながら話す。
「あの女のこれまでの動きを見ると」
「来ますね」
「その時はおそらくは」
「天草四郎でしたね」
 威吹鬼は立ち上がり背筋を伸ばしている。
「僕達の世界の天草四郎とは明らかに違いますね」
「女らしいわね」
 朱鬼が言う。
「聞いた話によると」
「じゃあ柳生義仙と同じですね」
「ええ、女の侍よ」
 朱鬼はあきらに答える。あきらもセコンドに徹している。そのうえで鬼達にタオルを手渡し茶を出している。そうしながら話の相手もしているのだ。
「そうした意味では幸村ちゃん達と同じね」
「そうなりますか」
「さて、問題は何時来るかだけれど」
「攻撃する側の有利なことはというと」
 ここで言ったのは響鬼だった。もう汗を拭き終えている。
「あれだ。攻撃する場所と時間を自由に選べる」
「そのことですね」
「そうだ。これまでもそうだったな」
「はい、あの人はいつも急に来てでした」
「乾君達と埼玉アリーナで戦った時も」
 魔獣達も出て来たあの時のことをここで話すのだった。
「それに俺達と橋の下で戦った時もな」
「後道場に攻めて来た時ですね」
「俺達は基本的に守る側だ」
 迎え撃つ側だというのだ。彼等は。
「そのことでは向こうにかなり有利だ」
「こちらは向こうが何時何処にいるかわからないですね」
「魔化魅なら山や町にいるから俺達が出向いて退治する」
 実際にそうしてきた。鬼の戦いとは本来はそうした形だった。
「しかし今回はそれが違う」
「敵が来てそれを迎え撃つ」
「ですよね。ただそれでも」
「俺達がこの道場にいればだ」
「敵は間違いなく道場に来ますね」
 攻めて来る時はだ。そうだというのだ。明日夢はこのことはよく把握していた。 

 

第八話 信の激突その二

「それならですね」
「そう、万全の態勢で迎え撃つ」 
 響鬼の言葉が強いものになる。
「そうすればいいんだ」
「普段の鬼の戦いとはそこが違うにしろですね」
「勝たないといけないのは同じなんだ」
 あえて単純化してだ。響鬼は言ってみせた。
「戦いなんだからな」
「だからこそ毎日鍛えてですね」
「この世界でもな」
「はい、わかりました」
 明日夢も頷く。そうしてだ。
 彼等も鍛錬を続けていた。そうして義仙を待っていた。その中には慶彦もいる。彼も道場に入り敵が来るのを今か今かと待ち受けていたのだ。
 そうした日が数日続く。その中で。
 修業の合間にだ。宗朗が言う。
「そろそろかな」
「来るんですね」
「そう、来る」
 こうだ。宗朗にも応える。
「それも今度は」
「二人で、ですね」
「多分その二人を倒したら」
 それからもあるというのだ。
「スサノオが出て来るだろうね」
「そうじゃろうな。そのスサノオとやらもじゃ」
 幸村も話に加わってきた。
「わらわ達の力を見たいというのならじゃ」
「人間を見たいのなら」
 宗朗も考える顔になり素振りを止めて言う。
「僕達と直接戦うことも」
「考えていますね」
 半蔵もそのことに気付いた。
「だとすると今度の戦は」
「続けての戦になりますね」
 又兵衛が半蔵のその言葉に応える。
「柳生義仙と天草四郎」
「その後にスサノオとの」
「激しい戦いになるのは間違いないわ」
 千姫も顔を険しくさせて述べる。
「これまで以上のね」
「けれどあれですわね」 
 兼続は今もあまり考えていない。
「勝てばいいだけですわ」
「御主は本当に気楽じゃのう」
 そんな兼続の言葉を聞いてだ。幸村は呆れる顔で応えた。
「全く。楽な相手ではないぞ」
「そうよ。相手はスサノオ達だけとは限らないわ」
 千姫もその兼続に言う。
「周りに何が出て来るかわからないわ」
「そういえば」
 言われてだ。兼続もはたと気付いた。ようやく。
「響鬼さん達が仰っていたけれど」
「他の世界のよからぬ者達もいる」
 ダルタニャンが言う。
「そうした連中が来ても」
「おかしくはないですわね」
「そうなるから」
「何かそういうことを考えるとじゃ」
 幸村があらためて言う。
「この度の戦尋常なものではない」
「多くの世界が複雑に絡み合ったものだね」
 宗朗はそこまで読んでいた。
「それだけに長く激しいものになるから」
「ううん、けれどやるしかないよね」
 十兵衛は彼女らしく答えた。
「戦って勝つしかね」
「わたくしと同じ様なこと言ってますわよ」
 兼続はそう言う十兵衛をじと目で見ながら幸村達に問う。
「この娘はいいんですの?」
「十兵衛は結果を残す」
 幸村が言うのはこのことだった。
「そこが御主とは違う」
「ではわたくしは結果を残さない」
「御主は笑いを取る場面以外で役には立たん」
「失礼ですわね。わたくしの如き猛者を捕まえて」
「何処が猛者じゃ」
 そんなやり取りをしながらだ。彼等も修業に勤しんでいた。しかしだ。
 慶彦の予想通りだ。数日後にだ。彼女達は来た。 

 

第八話 信の激突その三

 いきなりだ。嵐が来た。そうして。
 外からだ。あの声が聞こえてきたのだ。
「さて、今度こそ」
「来たな」
「はい」
 響鬼と宗朗が互いに顔を見合わせて頷き合う。
「あの女だな」
「柳生義仙です」
 そしてだ。もう一人だった。
「この凄まじい気配は」
「間違いありません」
「その天草四郎」 
 まさにだ。彼女だというのだ。
「その噂のその女が来たんだな」
「そうですね。では」
「全員で出よう」
 慶彦が立ち上がって告げた。
「戦える者は全てだ」
「ここで戦力を出し惜しみしても何にもならん」 
 幸村もそれを言う。
「だからじゃな」
「その通り。今はあれこれ言うよりも」
 それよりもとだ。慶彦も言いだ。
 全員で道場を出た。するとその前にだ。
 台風が来ていた。暗い雲の下に雨と風が荒れ狂っている。
 その中心にだ。二人がいた。
 一人が義仙だ。そして。
 長い黒髪を髷にして後ろに束ね前髪立ちにもしている。
 白いカラーのある紫の派手な着物と袴に白の十字の紋章の入った陣羽織を着ている。
 妖艶な顔をして切れ長の目を光らせているこの女こそが。
 女はこう義仙に問うた。彼女と同じく宙に漂いながら。
「さて。それではね」
「はい、それでじゃ」
「決戦になるわね」
 こうだ、女は妖しい笑みで義仙に問うた。
「今度こそ」
「その通りです。ですから」
「私も出陣することになったのね」
「それで四郎様」
 義仙はここで彼女の名を呼んだ。
「この度の戦では」
「サムライ一人残らず倒してね」
「この世界を破壊と渾沌で覆いましょう」
「ええ。それじゃあ」
 こうした話をしながらだ。彼女達は台風の目の中に。
 そのうえでだ。出て来た宗朗達を見ていうのだった。
「来たわね」
「待っていたわよ」
「御主がか」
 幸村は天草を見上げて問うた。
「御主がその天草四郎か」
「そうだと言えばどうするのかしら」
「倒す」
 幸村の返答は一言だった。
「決して逃さん」
「では宗朗」 
 千姫は薙刀を手に宗朗に声をかけた。
「ここで一気に」
「うん、そうしよう」
「さて、ここで」
 響鬼が言うとだ。そこにだった。
 嵐の中から四方八方からだ。魔化魅達が出て来た。その彼等を見てだ。
 響鬼が彼等を見ながら周囲に話した。
「さて、出て来たな」
「あれが噂のですね」
「そう、魔化魅だよ」
 それだとだ。半蔵にも話す。
「数は百というところか」
「えっ、多いですわね」
 その数を聞いてだ。兼続がうんざりとした口調で言った。
「百ですの」
「多いと思うか?」
「百といえば多いに決まっていますわ」
 むっとしてだ。幸村にも言い返す。
「それだけいれば」
「やっぱり御主はアホじゃな」
 そんなことを言う兼続にだ。幸村は呆れた口調で返す。 

 

第八話 信の激突その四

「百で多いとは限らんわ」
「それはどうしてですの?」
「わらわ達の強さを考えてみよ」
 ここで言うのはそれぞれの質のことだった。
「百おってもわらわ達のそれぞれの強さならばじゃ」
「はい、どうということはありません」
「百いようが千いようが」
 半蔵と又兵衛は幸村の言うことを理解していた。そのうえでの言葉である。
「我等ならです」
「倒せます」
「そういうことじゃ」
 ここでまただ。幸村は兼続に言った。
「万で多いと言え。しかし万来てもじゃ」
「勝てるというのでして?」
「勝つのじゃ」
 幸村は今は一言だった。
「よいな。それだけじゃ」
「万が来てもですの」
「一人一人の力でわらわ達に対抗できるのは」
 義仙と天草を見ての言葉だった。
「あの者達だけじゃ」
「では周りのこの連中は」
 見れば魔化魅の他にもいた。落ち武者の如き連中は。
「何ですの?」
「ふん、見たところただの亡霊じゃ」
 具足を着けてはいる。しかし身体が透け朧な感じだ。それを見ればわかることだった。
「あの程度の者達造作をもない」
「はい、それではです」
「あの者達が我々が」
 半蔵と又兵衛が彼等に向かうというのだ。
「ではお任せ下さい」
「そして直江、貴女もです」
 半蔵が兼続に声をかける。
「あの者達に向かいましょう」
「わたくしお化けは嫌いですの」
 こう言ってだ。兼続は拒否しようとする。
「ですからそれはですわ」
「我儘を言うでない」
 しかしその彼女にだ。幸村が何処からか出してきたハリセンで彼女の頭を後ろをはたく。
「そんなことを言っておる場合か」
「うう、はたきましたわね」
「何度でもはたくぞ」
 ハリセンを持ちながら兼続に言う。
「それこそな」
「何という奴ですの、わたくしは」
「まあまあ。今はね」
「見れば亡霊の数は増えてきてるし」
 まだ言おうとする兼続にだ。威吹鬼と轟鬼が言う。
「一緒に戦おう」
「そうしようね」
「そうですわね」
 二人に穏やかに言われるとだ。兼続も。
 憮然としながらも納得してだ。そうして応えるのだった。
「御二人となら一緒に」
「うん、戦おう」
「今からね」
 こうしてだった。兼続も二人と戦うことを決めた。
 そして斬鬼と朱鬼も言うのだった。
「では俺達もだ」
「亡霊達の相手をするわ」
 こう言うのである。そのうえでだ。
 威吹鬼と轟鬼、そして桐矢にだった。
「行くぞ」
「一万。大したことはないわ」
「はい、やります」
 桐矢が応えてだ。そのうえでだ。
 彼等はそれぞれ変身に入る。そして。
 響鬼もだ。後ろにいる明日夢に言った。
「それじゃあな」
「はい、行ってらっしゃい」
「すぐに帰ってくるからな」
 言いながらだ。その右手にあの鬼を出してだ。
 そうしてだ。顔の前に掲げる。すると。
 そこから鈴の音が鳴りだ。響鬼の身体が光に包まれ。
 鬼になった。そしてさらに。
 そこから紅の姿になる。紅の鬼の姿から宗朗達に言う。
「じゃあ行こうか」
「それ響鬼さんの全力ですね」
「切り札ってところかな」
 その姿になっても響鬼は響鬼だ。気さくな返事は変わらない。 

 

第八話 信の激突その五

「これを出したってことはな」
「はい、本当にこの世界での」
「決戦さ。行こうか」
「よし、僕はだ」
 響鬼に合わせる様にしてだ。義彦も言う。
 彼はダルタニャンに顔を向けてだ。彼女に告げた。
「亡霊達の相手をしよう」
「そちらに」
「あの二人の相手は宗朗達がする」
 それでだというのだ。
「ここは彼等に任せて」
「私達は亡霊を倒す」
「そうしよう。それではだ」
 慶彦は剣を抜いた。長刀だ。
 その長刀を右手に持ちだ。言うのである。
「徳川家次期将軍の剣を見せてやろう」
「お兄様、どうか」
「安心するんだ。僕は死なない」
 気遣う妹ににこやかに返す。
「では千、御前はだ」
「はい、天草達を」
「討つんだ。いいな」
「わかりました」
 妹とも言葉を交えさせてだ。そうしてだった。
 彼はダルタニャンと共に亡霊達に向かう。そうしてその剣を振るう。
 残ったのは宗朗と響鬼、それに幸村と千姫、十兵衛だった。幸村と千姫は既に。
 マスターサムライの姿になっているその美麗且つ艶やかな姿で言うのである。
「行くぞ、天草四郎!」
「そして柳生義仙!」
 それぞれの得物を構えながらの言葉だ。
「うぬ等はここでじゃ!」
「必ず倒すわ!」
「そうしてだ」
 十兵衛もだ。あの人格になっている。その人格で二人の魔性の侍を見上げて言うのである。
「その後ろにいる者達を倒す」
「我等が主スサノオを」
「倒すというのに」
「造作もないこと」
 十兵衛は凄みのある目に余裕さえ見せていた。
「今の我等にとってはな」
「言うわね。流石は生き返ってきた者」
「さらに力をつけて」
「覚悟はよいな」
 十兵衛は彼等を見上げ続けたまま言う。
「容赦はせんぞ」
「いいわ。それではね」
「我等もまた」
 彼女等もだ。宙からだ。十兵衛達に応える。
 そのうえで戦おうとする。まずは響鬼がだ。
 両手に持つ剣を構えたままだ。宙に舞う。それを見てだ。
 宗朗がだ。彼に問うた。
「飛べたんですか」
「いや、跳んでいるんだ」
「跳んでいる・・・・・・」
「そう、俺は飛べないけれど」
 それでもだというのだ。
「跳ぶことはできるから」
「そうですか。だから」
「そう、今は跳んで戦うさ」
 実際にだ。空中を何段も跳びながら言うのである。
「これも工夫って奴かな」
「凄いですね」
「じゃあ行こうか」
 跳びながらだ。宗朗達に言う響鬼だった。
「戦いに」
「うむ、ではな」
「今から」
 幸村と千姫もだ。跳んだ。そして宗朗もまた。
 何段にも跳ぶ。その彼を見て十兵衛が問うた。
「ぬしもマスターサムライになったのか」
「修業をしてね」
 そうだとだ。宗朗は言葉を返した。
「それによってね」
「どうやら相当な鍛錬を積んできたな」
「僕も。戦うサムライだから」
 それでだというのだった。 

 

第八話 信の激突その六

「だからね」
「そうか。流石じゃな」
「流石なんだ」
「御主は見事な侍になる」
 十兵衛が見たところである。
「だからじゃ。必ずじゃ」
「僕自身がマスターサムライになることも」
「予想しておった。それではじゃ」
 十兵衛は天草に向かう。そのうえでだ。
「御主はもう一人を頼む」
「うん、じゃあ」
「この女は我等三人で相手をする」
「うむ、行くぞ」
「不本意なのは事実だけれど」
 それでもだとだ。幸村と千姫が言いだ。
「わらわ達三人で向かえば」
「そう簡単にはいかないわ」
 こう言ってだった。三人でだ。
 その天草に向かう。天草の相手はこの三人だった。
 そしてだ。義仙にはだ。
 宗朗、そして響鬼が向かう。響鬼は両手に剣を持ちそれを上から振り下ろした。だが。
 その剣をだ。右の刀で受けたのである。
「何っ」
「見事な攻撃だわ」 
 攻撃を受けてからだ。義仙は言う。
「しかしそれでも」
「それでもだというのかい?」
「私を倒すまえには至らないわ」
「随分と自信があるんだな」
「如何にも。二人がかりであろうとも」
 それでもだとだ。義仙は言う。そこにだ。
 宗朗も来た。しかしそれもだった。
 彼は突きだった。しかしその突きは。
 義仙は右の刀でだ。払って防いだのだった。二人の攻撃をだ。
 彼女は防いでみせた。そうしたのである。そのうえで言うのだった。
「二人共この腕では」
「見事と言うべきだけれど」
 それでもだというのである。
「私を倒すにはやや不足ね」
「くっ、今の僕の攻撃を防ぐとは」
「いや。確かに力はある」
 響鬼は歯噛みしかけた宗朗に言った。
「けれどそれでも」
「それでもですか」
「そう、隙のない相手はいないさ」
 こう言ったのである。
「そう、身体的な強さはあってもね」
「別の強さはどうかですか」
「そこをどうするかさ」
 響鬼が今言うのはこのことだった。
「攻めるのならね」
「それじゃあ一体どうすれば」
「何か面白い考えを抱いているみたいね」
 義仙も二人のやり取りを聞いて楽しげに述べる。
「私を攻めるつもりなのはわかるけれどどう攻めるのかしら」
「心をさ」
「心を?」
「そう、君の心を攻める」
 響鬼はこう義仙にも話した。
「そうさせてもらおうか」
「私の心を」
「身体は強くとも心が弱い場合がある」
 義仙に対してさらに言う。
「俺はそこを攻めようか」
「けれど響鬼さん」
 やり取りの間にも攻防は続いている。宗朗も響鬼もだ。 
 義仙に攻撃を繰り出し続けている。しかしそれは。 
 彼女の両手の刀に防がれている。攻防はそのままだった。
 だがその中でだ。宗朗は言うのである。
「心を攻めるといっても」
「できるかっていうんだね」
「はい、そう簡単には」
「できるさ。心といっても」
「心といっても?」
「心理戦を挑んだり精神的なダメージを狙うばかりじゃない」
「そうした戦いじゃなくてですか」
 そう言われてだ。宗朗は。
 戦いの中でだ。また響鬼に問うた。
「他の戦い方ですか」
「そう、じゃあ仕掛けるか」
 話すその傍からだ。響鬼は。
 一旦間合いを離した。そのうえでだ。
 剣を収めてだ。太鼓を出してだった。音楽をはじめたのだ。
「音楽!?ですが」
「見ているんだ。音楽は剣と同じだけ強いからさ」
「剣と同じだけ、ですか」
「そう、強いんだ」
 言いながらだ。太鼓での演奏を続けていく。
「だからこうして」
「それが心を攻めるということですか」
「如何にも。さあ」
 言いながらだ。太鼓からだ。
 音楽は聴こえて来る。その音楽は。 

 

第八話 信の激突その七

 義仙の耳にも届く。その音楽を聴いてだった。
 義仙の動きが止まった。そうしてだ。こんなことを言いはじめた。
「この曲はまさか」
「わかったか?子守唄さ」
「子守唄、やはり」
「いつきの子守唄。この曲を聴かなかった日本人はいないよな」
「そうですね。この歌は」
 同じ曲を聴くだ。宗朗も言う。
「僕も昔母からよく」
「さあ、この曲を聴いてどう思う」
 響鬼はさらにだ。演奏を続けながら義仙に問う。
「尋常な気持ちではいられない筈さ」
「馬鹿な、私は」
「君は?」
「天草様の忠実な侍」
 こう言ってだ。あくまで拒もうとするのだった。その音楽を。
「決して。この様な歌で」
「心が動かないか」
「動かないというのかい?」
「その通り。この程度では」
「嘘だな」
 響鬼にはわかっていた。この辺りは人生経験からくるものだった。
「嘘を吐いたらいけないな」
「馬鹿な、私は決して」
「それはもう顔に出ている」
 実際にだ。義仙のその顔を見ての言葉である。
「君にもあった。幼い頃が」
「じゃあ柳生義仙もまた」
「そう、天草四郎にしても」
 彼女も同じだというのだ。隣で十兵衛達と戦う彼女もだ。
「同じく人間なんだ」
「妖人ではなくですか」
「妖しくても人間は人間さ」
 響鬼は宗朗にこう話す。
「そう、心は人間なんだよ」
「心がそうならですか」
「それならその心をどうするか」
 響鬼の太鼓は続く。
「そういうことだよ」
「思いきったやり方ですね」
「その思いきりが時として」
「状況を解決させるんですね」
「それは生きていればわかるさ」
 そうなるというのだ。
「だから。やるのさ」
「そういえば何か」
 宗朗は見た。その義仙を。
 彼女は動きを止めていた。攻撃できなくなっていた。それでだ。
 次第にだ。表情を和らげさせていき。
 構えを解いた。それでこんなことを言った。
「私は」
「!?明らかに変化が」
 宗朗もそれを見た。
「これは」
「そうか、地が出て来たんだな」
「本当に音楽でそうなるんですね」
「音楽は全ての母だからな」
「全てのですか」
「そう、だからこそ」
 それでだというのだ。
「効くんだよ」
「まさか。柳生義仙が」
「戦いは武器で行うだけじゃない」
 これも音撃戦士ならではの言葉だった。
「そして身体を攻めるだけじゃないんだ」
「心に訴えることもまた」
「それも戦いということさ」
「頭ではわかっていましたが」
 宗朗もだ。そういうことはわかっていたのだ。
 人間には心がありそれが最も重要だと。しかしそれでもだ。頭でわかっているだけだった。
 だが響鬼はそれをしてみせた。その音楽でだ。それを見てだ。
 彼はだ。思わずこの言葉を出した。
「見事です」
「おいおい、まだ終わってないぜ」
「まだですか」
「そうだよ、まだだよ」
 太鼓はまだ続いていた。 

 

第八話 信の激突その八

「むしろこれからだからな」
「あの、柳生義仙はもう」
「あの娘だけじゃないさ」
 義仙だけではないというのだ。響鬼は。 
 義仙とだ。天草を見て言うのである。
「あの娘もだよ」
「天草四郎もですか」
「如何にも」
 まさにだ。その通りだと言ってだ。彼は十兵衛達と戦っている天草を見た。見ればその彼女もだ。少しずつだが確かにだ。
 その動きがだ。遅く緩やかになっていた。それはだ。
 十兵衛達も感じ取ってだ。そして言うのである。
「そういうことか」
「音楽か」
「その力なのね」
「音撃戦士はそれぞれの楽器の力で戦う」
 見れば下ではだ。実際に威吹鬼達がそれぞれの楽器の力で魔化魅達と戦っていた。それと共に悪霊達も退けていたのである。
 その戦いを見てだ。幸村は言った。
「ああして音楽の力を使うやり方もあるのじゃ」
「音楽の力は確かに大きいわ」
 そのことをだ。千姫も言う。
「けれど。響鬼さんのあの使い方は」
「意表を衝いたな」
「兵とは何か」
 千姫は孫子の言葉も出した。兵法の話だ。
「軌道よ」
「敵の意表を衝くということじゃ」
「あの人はそれをしたというのね」
「いや、違うな」
「違う?」
「あれが響鬼の戦い方じゃ」
 それがわかったのだ。幸村もだ。
「そうしてそのうえでじゃ」
「この戦いを終わらせるのね」
「響鬼の戦い方は見事よのう」
 十兵衛も言った。その響鬼のやり方を見て。
「どうやらここでは我等の出番は終わった」
「私も琴なら使えるけれど」 
 千姫は何気に負けん気を見せる。
「けれどそれでもなの」
「うむ、ここは黙って見ておることじゃ」
 幸村がその千姫を止める。
「響鬼の戦いをな」
「そうね。それじゃあ」 
 千姫も頷きだ。そうしてだった。
 構えを解き天草を見る。その天草は。
 戦いを行う手を止めていた。そしてだった。
 その表情を穏やかなものにさせていき。遂に言うのだった。
「私は」
「どうしたんだい?」
「かつては人々の平和を安息を願っていた」
「だから立ったんだな」
「そう、立った」
 こう言うのである。
「島原の民達を救う為に。だから戦った」
「しかし君は負けた」
「あの戦いで敗れた」
 そ所謂島原の乱だ。この時代でもそれがあったのだ。
 そこでも天草は敗れた。そしてそれからだ。
 彼女は悪霊の如き存在となり徳川幕府と戦い続けた。何度も甦りだ。その中で彼女は本来のものを失いだ。今に至ったのだ。
 そのことを思い出しだ。天草は言うのだった。
「そして私は」
「今は君の目指していたものはある」
「目指していたものは」
「そう、この世にある」
 天草が民達の為に立ち上がり目指したものはだ。既にあるというのだ。
 そのことを言ってだった。響鬼は。
 その天草にだ。また言った。
「徳川幕府の世は続いている。しかし」
「切支丹は。虐げられていた者達は」
「切支丹は許され民は泰平と幸福を満喫している」
 それがこの世界の今の日本だ。そのことは間違いない。 

 

第八話 信の激突その九

 そのことを言いだ。響鬼は。
 太鼓を再び叩く。そしてまた天草に言った。
「もう憎むことも怨むこともない」
「そうしたこともまた」
「そう、もういいんだ」
 優しい声になっていた。
「だからもう」
「私は」
「休むといい」
 言葉にある優しさがさらに深いものになっていた。
「ずっと。静かに」
「もう。私は」
「戦う必要もない」
 鬼の仮面からこのうえなく優しい言葉が告げられる。
「さあ、それじゃあ」
「ええ、じゃあ・・・・・・」
 遂にだ。天草のその身体が。
 柔らかい黄金の光に包まれていく。そうしてその中で悪夢から覚めた様な晴れやかな顔になりそのうえでだ。彼女は光の中に消えたのである。
 それを見届けてだ。義仙は。
 どうしていいかわからない顔になっていた。そうして出る言葉は。
「私は」
「暫く考えてみることだ」
 響鬼は彼女にも言うのだった。
「自分がどうするかな」
「私自身が」
「そう。そうすればいい」
 これが響鬼への義仙の言葉だった。
「ゆっくりとな」
「少なくとも御主のしがらみは消えた」
 幸村もその義仙に話す。
「後は御主でこれからどうするか考えることじゃ」
「私自身が」
「うむ。そうせよ」
 こう義仙に告げてだった。するとだった。
 義仙は何処かへと去っていった。そのまま今は姿を消した。その時には周りの戦いも終わっていた。魔化魅も亡霊達もいない。しかしだ。 
 響鬼は仲間達にだ。こう言ったのである。
「じゃあ第二試合だな」
「スサノオですね」
「そろそろ出て来るかな」
 響鬼は宗朗に答えた。
「向こうも」
「さて、何の姿で出て来るかだな」
 斬鬼はそのことを問題にしていた。
「こちらの世界で来るかそれとも」
「それともですよね」
「若しくは」
「俺達の世界の姿で出て来るか」
 響鬼は威吹鬼と轟鬼に応えながらこんなことも言った。
「どうしてくるかだな」
「そうだね。君達も僕達も日本だ」 
 慶彦はこんなことを言った。
「日本なら。取るだろう姿は」
「あれかな」
 響鬼はふとした感じで頭の中にあるものを思い出した。その思い出すものは。
「八つ頭の」
「あれですのね」
 兼続も流石にこのことはわかるといった感じだった。
 しかしだ。ここでこんなことを言うのが彼女だった。
「ナナマタのですわね」
「御主そのネタは止めるのじゃ」
 幸村がその兼続にここでも突っ込みを入れた。
「だからあれじゃろ。青狸であろう」
「むっ、あの漫画だというのでして?」
「あれはネタにするのはまずいから止めるのじゃ」
「この世界でもあの漫画はあるのか」
「うむ、あの漫画はこちらの世界でも人気じゃ」
 幸村は桐矢にも答える。
「とにかくじゃ。あのナナマタというのはじゃ」
「違うというのですわね」
「そうじゃ。頭がなまってマタとなったのであろう」
 これが幸村の見立てだった。
「だから股とかそういうものではないのじゃ」
「そうでしたの」
「そうじゃ。しかしあれとなるとじゃ」
「これまで以上に厄介な相手になるわね」
 千姫も言う。彼女達は既に着地している。そのうえで話をしているのだ。  

 

第八話 信の激突その十

 その彼等のところにだ。不意にだった。
 これまで以上にだ。恐ろしい気配が来たのだった。それは。
 暗雲、まるでこの世の終わりを知らせるかの如きそれと凄まじい嵐、そして豪雨が来てだ。遥か彼方からそれが来たのだった。
 それを見てだ。明日夢は言った。
「響鬼さん、あれはやっぱり」
「ああ。ある程度予想していたけれどな」
「そうですね」
「オロチだな」
 響鬼は言った。今。
「ヤマタノオロチだ。間違いない」
「あのオロチもまたスサノオの分身だった」
 ここで言ったのは朱鬼だった。
「そういうことだな」
「じゃあ。この世界での戦いも」
「オロチとの決戦だな」
「頑張って下さい」
 明日夢は響鬼に告げた。
「この世界での最後の戦いを」
「行って来るな」
 響鬼は左手で敬礼をするあの動作で明日夢に告げた。
「この最後の戦いもまた」
「待ってます」
「楽しみにしておいてくれよ。帰って来る時を」
「そうさせてもらいます」
「では行きましょう」
 宗朗も言ってきた。
「この世界での決着を着けに」
「さて。ここまでの相手ならかえって楽しみじゃ」
 十兵衛はその手に剣を構えてだ。オロチを見て笑みを浮かべる。
「思う存分やらせてもらうぞ。ところでじゃ」
「ところで?」
「御主は先程宙に留まって太鼓を叩いておったが」
 響鬼が言うのはこのことだった。
「あれはできたのか」
「あの時は周りに特別な空間ができていたみたいでな」
「音楽でか」
「そうだ。音楽でだ」
 それでだというのだ。
「音撃戦士の力でな」
「成程、そういうことじゃったか」
「ああ。音撃戦士の中でも響鬼の力は特別みたいでな」
「それ故か。わかったぞ」
「そういうことだな。けれど今度の戦いはな」
「今度の戦いはか」
「太鼓だけじゃなくて。とにかくあらゆるものを使って戦うことになるだろうな」
 そのオロチを見ての言葉だった。かくしてだ。
 まさに八つの山を越えるばかりの巨大な怪物が来てだ。戦士達の最後の戦いの相手となるのだった。


第八話   完


                          2011・9・26 

 

第九話 蛇の力その一

                          第九話  蛇の力
 八つの頭に八つの尾を持つとてつもなく巨大な蛇が来た。その八つの頭がそれぞれ響鬼達を見下ろしていた。その頭の大きさもかなりのものだ。
 そのオロチのそれぞれの頭がだ。こう彼等に言ってきた。
「もう説明は不要だな」
「その声だけでわかるさ」
 響鬼がオロチの声に返した。その声にだ。
「スサノオだな」
「如何にも」
「スサノオがオロチになるとはな」
「ふふふ、意外に思うか」
「何だ?神話じゃ自分が倒したことになってる相手に思い入れがあるのか」
「蛇は龍」
 ここでだ。スサノオはこう言うのだった。
 そしてだ。彼はこうも言うのである。
「私は以前その力で君達と戦っている」
「ああ、俺はその時のことはよく知らないが」
「しかし知ってはいるな」
「実際に戦ってはいないだけでな」
 響鬼はスサノオにこう返す。
「聞いてるさ。日本全土で戦った時だな」
「如何にも。しかも私は蛇は嫌いではない」
「ゲルショッカー、そしてデルザー」
 今言ったのは斬鬼である。
「その紋章に使っていたな」
「そうだ。蛇は私の象徴の一つでもあるのだ」
「だからか」
「こうして蛇の姿を取ることにも何も思うことはない」
 それでだというのである。
「これでわかってくれただろうか」
「そのことはわかった。しかしだ」
「この世界に干渉していることについてだな」
「やはりあれなんだな。この世界でも人間っていうのが見たいんだな」
「これはクウガにも言ったことだが」
 そのことをだ。響鬼達にも話すというのである。そして実際に話すのだった。
「私は退屈を嫌う」
「だからなんだな」
「あらゆる世界の人間を見させてもらっている」
「では聞こう」
 十兵衛がそのスサノオに対して顔を見上げて問うた。
「御主はこの世界を滅ぼしたいのか」
「君達のいるこの世界をということか」
「そうよ。それはどうなのだ」
「では君達はどう考えている」
 逆にだ。スサノオがだった。質問に質問で問い返す形で仕掛けてきた。
「この世界を滅ぼしたいだろうか」
「戯言を言う」
 十兵衛はすぐにこう返した。
「自分達がいる世界を滅ぼしたい者なぞ余程気が違うた者だけよ」
「そういうことだ」
「では我等がそれをどう凌ぐかをか」
「既に知っている筈だ」
「確かにな。うぬの話は聞いておる」
 まさにそうだとだ。十兵衛も返す。そのうえでだった。
 両手に持つ刀を構え。そうして言った。
「では行くぞ」
「では諸君」
 響鬼、そして十兵衛達への言葉である。
「戦うとしよう」
「では僕もまた」
 慶彦もだ。その剣を手にして述べる。
「この世界の為に戦おう」
「この戦いで敗れればじゃ」
 幸村はそれを話す。
「我等に明日はない」
「確かに。それなら」
「行くぞ」
 こう千姫に話してだった。彼等はそれぞれ武器を構えてだ。散開しオロチの八つの首を囲む。そうしてから響鬼がこんなことを話した。
「さて、と。相手がオロチなら」
「問題は八つの頭と巨大さですね」
「神話だと酔わせたんだがな」
「残念ですがお酒は用意していません」
「わらわ達が飲んだ」
「美味しかったわ」
 幸村と千姫がそうだと話す。
「昨日全部空けてしまった」
「駄目だったかしら」
「いや。どのみちこのオロチには通じないだろうな」
 響鬼は首を少し捻ってから述べた。 

 

第九話 蛇の力その二

「だからあってもなくてもな」
「よかったんですね」
「別にな」
 またこう宗朗に話す。
「相手の手がわかって乗ってくる様なことはしないからな」
「それでは面白くも何ともない」
 実際にオロチの方からそれはないと返す。
「ましてや私の身体にはそうしたものは効果がない」
「やっぱりそうなのですね」
 話を聞いて納得した顔で頷く半蔵だった。
「それならです」
「来るのだな」
「これを」
 言いながらだ。スカートから無数の苦無を出してだ。
 それをオロチに向かって投げる。それでオロチの頭の一つを撃つ。
 だがその無数の苦無を受けてもだ。オロチの頭はびくともしなかった。
「見事な攻撃だ」
「くっ、しかしそれでもですか」
「それでは私は倒せはしない」
「ではどうすれば」
「半蔵。小さい武具では意味がないわ」
 言いながらだ。千姫が歯噛みする半蔵を見て話した。
「だからね。ここは」
「あの大型の手裏剣ですね」
「あれを使いなさい」
 こう半蔵に告げる。
「それと私もいるわ」
「姫様、それでは
「いい?二人で一つの頭を攻めるわ」
 家臣であり親友でもあるだ。半蔵への言葉だ。
「いいわね、それで」
「わかりました」
 半蔵もだ。二人の言葉に頷いてだ。そのうえでだ。
 二人同時に宙に跳びだ。左右からオロチの頭のうちの一つを狙う。それを見てだ。
 斬鬼もだ。轟鬼に話す。
「いいか、俺達もだ」
「はい、オロチの頭のうちの一つをですね」
「それを潰す」
 こう弟子に話すのである。
「いいな、そうするぞ」
「わかりました。それなら」
「久し振りだな」
 弟子の言葉を受けてだ。斬鬼は楽しげに言った。
「こうして御前と二人で戦うのも」
「嘘みたいです」
 轟鬼もだ。心から笑って応える。
「こうして共に戦うのも」
「しかし今俺は実際にここにいる」
「嘘じゃないんですね」
「そして夢でもない」
 それでもないと言ってだ。彼等もだ。師弟で向かうのだった。 
 それに威吹鬼と朱鬼も応えてだった。
「僕達もですね」
「いいな、行くぞ」
 朱鬼はこう威吹鬼に話す。
「一人で相手にならずとも二人ならだ」
「はい、二人ならですね」
「向かうことができる」
「そうですね。それじゃあ」
「また鬼になることができた」
 朱鬼は少し神妙な声になっていた。
「それならだ」
「戦うんですね」
「そうする。それではだ」
「はい、そうしてオロチを」
 こう話してだった。彼等もだ。
 オロチに向かう。慶彦とダルタニャンもだ。
「では僕達もだ」
「はい」
「一人で攻められないのは不本意だが」
 それでもだというのだ。今は。
「仕方がない。オロチは手強い」
「はい、ですから」
「二人で戦おう」
 こう話してだった。彼等もまただった。
 二人で一つの首に向かおうとする。しかしだ。
 慶彦はここでだ。ダルタニャンにこんなことも話した。
「しかしだ」
「しかし?」
「このオロチ。確かにかなりの強さだ」
 そのことはもう言うまでもなかった。気だけでわかる。
 その圧倒的な力を感じながらだ。彼は言うのである。
「勝たなければならない。今は」
「その通りです。ですから」
 彼等もだ。戦うのだった。二人で。
 ここまでは無事であった。しかしだった。
 又兵衛は困った顔でだ。隣にいる兼続を見ていた。そうして言うのだった。 

 

第九話 蛇の力その三

「全く」
「何ですの?何かありまして?」
「貴女、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですわ。わたくしがいれば」
 自分ではわかっていない。そのうえでの言葉だ。
「この程度の敵なぞ造作もありませんわ」
「又兵衛、どうしてもならじゃ」
 ここでまた幸村が言う。
「オロチより先にその五月蝿いのを始末せよ」
「そうしてもいいのですね」
「別に構わん」
 幸村は平気な顔で言い切る。
「頭が悪くて足手まといになるよりましじゃ」
「ちょっと、どういう意味ですの」
「言った通りじゃ」
 兼続自身にも言い切ってみせる。
「御主は邪魔をするな」
「うう、私の力を甘く見ていますわね」
「甘く見てもらいたくなければちゃんとせよ」
 幸村はとにかく普通にしろというのだ。
「オロチの相手をせよ」
「うう、二軍だからといって」
 そうは言いながらもだった。兼続は又兵衛と共に戦うのだった。
 そしてだ。幸村もだ。首の一つを見て宗朗に言う。
「ではじゃ」
「うん、残る首はね」
「三つじゃ」
「じゃあ後の三つは」
「一つはわらわが引き受ける」
 幸村が一人で首を一つ引き受けるというのだ。
「そしてじゃ」
「僕も一つだね」
「そうするべきか」
「待つがいい」
 しかしだ。ここでだった。
 十兵衛が出て来てだ。そうして二人に言ってきた。
「わしがもう一つを引き受けよう」
「御主が一つか」
「宗朗は鬼の御仁と共に真ん中のと戦うがいい」
 見ればだ。八つの首の中にとりわけ大きな首がある。その首を見てだ。十兵衛は幸村と宗朗に対してこう話したのである。
「よいな。あれがとりわけ手強いからな」
「ふふふ、それがわかるか」
「見ただけでわかる」
 それで充分だとだ。十兵衛もオロチ、即ちスサノオに返す。
「だからこそじゃ」
「流石と言っておくべきか。それならばだ」
「行くぞ」
「わし等が二つ受け持つ」
 一人ずつだ。そうするというのだ。
「わらわ達ならば何とかなるだろう」
「マスターサムライのこの力で、いや」
「勝ってみせる」
「御主のその力にだ」
「その考えだ」
 オロチもだ。二人のその考えを聞いて述べた。肯定の言葉だった。
「さもなければ面白くとも何ともない」
「ふん、やはり御主は戦いから楽しみを見出すか」
「人を見ているのだな」
「何度も言おう。その通りだ」
 スサノオ自身もこのことを隠しはしない。
「では来るのだ」
「行くぞ!」
「その人というものを見せてやろう」
 二人は飛んだ。そのうえでそれぞれの相手となる首に向かい戦いに入る。そしてだった。
 響鬼と宗朗は二人並んでだ。その一際大きな首に対して言うのだった。
「それならな」
「貴方の相手は僕達だ」
「見せてもらう」
 オロチの、その一際大きな首が二人を見下ろして言ってきた。
「人というものをな」
「まあ幾らでも見せてやるさ」
「戦いを通じて」
「鬼、いや人のその力」
「そして心を」
「いいことだ。そうでなければ面白くとも何ともない」
 戦いあってこそだというのである。オロチも。
 こう話してだ。早速だった。その巨大な首が急降下してきて二人を襲う。 

 

第九話 蛇の力その四

 それをかわしてからだ。二人は言うのだった。
「成程な、この強さは」
「噂通り、いや以上でしょうか」
「前に戦った時より強くなっている」
 かつてのオロチとの戦いを思い出しつつ。響鬼は宗朗に話す。
「それもかなりな」
「そうなんですか。じゃあこの戦いは」
「辛いものになるだろうな」
「そうでなくては何も面白くはない」
 オロチは楽しむ声で述べてくる。
「違うだろうか。しかしだ」
「ああ。例えあんたがどれだけの力で来ようともな」
 響鬼は再び頭をもたげてきたオロチのその首に対して返す。
「俺達は勝つからな」
「では勝ってみせるのだ」
 楽しむ言葉だった。
「私も全力でやらせてもろおう」
「!?これは」
 二人の周囲にだ。今度は。
 赤紫の霧が出て来てだ。二人の視界を遮ってきたのだ。 
 周りが全く見えなくなる。その中でだ。宗朗は。
 目を閉じた。そうして言うのである。
「霧なら。こうして」
「目には頼らないか」
「はい、見えないのなら意味はないですから」
 それでだ。目を閉じたというのである。そしてそれを見てだ。響鬼は。
 剣を構えてだ。動きを止めた。その彼等にだ。
 霧の中からだ。オロチが言ってきたのだった。
「面白いな。狼狽はしないか」
「今更狼狽しても仕方がないからな」
 響鬼が話す。
「むしろ狼狽しない方があんたにとってもいい筈だ」
「そうだな。私にしてもだ」
 オロチも話してだった。彼は。
 気配をそのままにしてだ。二人に言うのだった。
「君達の全力を見たい」
「狼狽していたら全力は出せないからな」
 これまでの数多くの戦いからだ。響鬼も冷静さがどれだけ重要なのかわかっていた。熟知していた、そう言っても過言ではない程だ。
 そのうえでだ。響鬼も宗朗も。
 周囲のオロチの気配を探りながら。そのうえでだった。
「そこだな」
「そこか!」
 それぞれ剣から炎、そして気を放つ。その炎と気でだ。
 オロチの気配がした方を撃つ。すると。
 忽ちのうちに霧が消えた。それを見てだ。響鬼は宗朗に告げた。
「霧が消えたぞ」
「そうみたいですね」
 目を開けてだ。宗朗は自分でもそれを確めてから述べた。
「どうやら今の僕達の攻撃は」
「オロチのその首に当たったな」
「はい、そうですね」 
 見れば仲間達がそれぞれの首と戦っている。そしてだ。
 彼等が戦っている首もだ。やはりいた。見れば額が割れている。その額から一条の赤い血を流しながらだ。オロチは二人に言ってきた。
「霧は破ったか」122
「ああ、そうさせてもらった」
 響鬼がオロチのその言葉に返す。
「この通りな」
「いい攻撃だ。しかしだ」
「まだだな」
「言うならこの霧は余興」
 それに過ぎないと言うのだ。二人の視界を完全に遮ったそれですら。
「楽しみの中の一つでしかない」
「だからあっさりと諦めたか」
「それに過ぎないからこそ」
「そういうことだ。さて」
 ここまで話してだった。オロチは今度は。
 幾つにも別れてきた。そうしてだ。
 一斉にだ。二人に襲い掛かって来た。だがそれを見てだ。
 宗朗がだ。こう響鬼に言った。
「この首達はあれですね」
「そうだろうな。一つだけだ」
「はい、本物はですね」
 このことをだ。二人はすぐに察したのである。
「ですがそれでも」
「攻撃力はあるな」
 幻影の首にもだ。全てだというのだ。
「実体はなくても」
「そうですね。間違いなく」
「その通りだ。確かに私の実体は一つだ」
 それはオロチも言うことだった。
 

 

第九話 蛇の力その五

「だがそれでもだ」
「幻にも攻撃力はあるんだな」
「その実体以外にも」
「私の力だ」
 その自身のことをだ。オロチはさらに述べていく。
「実体に捉われないのだ」
「つまり。実体を倒さない限り」
「僕達は幻からも攻撃を受け続けるということか」
「さて、今度はどうする」
 オロチは楽しげに二人に問う。
「それを見せてもらおう」
「まあこちらにしてもな」
 響鬼が応える。
「手のうちは隠さないさ」
「駆け引きはしないというのか」
「いや、駆け引きになる前に」
 それよりもだ。さらにだというのだ。
「あんたを倒させてもらうさ」
「だからか」
「ああ、だからな」
 こう言ってだった。響鬼は宗朗に言った。
「悪いが今度もな」
「音楽ですね」
「俺はこれで戦うからな」
 それでだとだ。実際に太鼓のバチを両手に出してだった。
 そのうえでだ。宗朗に対して言った。
「これで叩けば幻なら消えるさ」
「消してそうしてですね」
「ああ、最後に残るのは実体だけだ」
「そしてその実体を」
「二人で倒すからな」
「わかりました。それじゃあ」
 響鬼の言葉に応えそうしてだった。
 響鬼は跳びだ。早速だ。
 オロチの頭のうちの一つをそのバチで叩く。するとだ。
 それだけでオロチの頭が消える。やはり幻だった。
 そしてだ。宗朗もまた。
 響鬼に続いて彼も跳びオロチの頭を斬る。するとだ。
 それでまた頭が消えた。二人がオロチの首達の執拗な攻撃をかわしつつ。
 そのうえで頭を一つ、また一つと打っていく。それをしてだ。
 遂には全て消してしまった。残るは一つだった。そしてその最後の首は。
 二人を見据えてだ。こう言うのだった。
「面白い。うって出るとはな」
「攻撃は最大の防御じゃないのか?」
「確かにな」
 その通りだとだ。オロチ自身も認める。
「流石だ。私が見ようと思っただけはある」
「それでか」
「そうだ。それでだ」
 こう話してだった。オロチは。
 今度はだ。ただその首で襲い掛かる。そうしてだ。
 二人を噛み潰さんとする。だがここでだった。
 二人はそれぞれだ。渾身の力を込める。そのうえで。
「ではな」
「はい、最後の最後で」
「勝負を決めよう」
「これで」
 こう言い合いだ。そのうえでだった。
 二人は自分に向かって来る巨大な首に向かい跳んだ。そのうえで
 まず宗朗が上から下に大上段で斬った。そこに。
 響鬼もだ。オロチの頭にバチでこれでもかと打ち立てる。幾度も幾度も。
 そうしてだった。遂にだった。
 オロチは動きを止めて。ゆっくりと崩れ落ちた。その頃には。
 他の首も倒れていた。八つの首全てがだ。戦士達は勝ったのだ。
 しかしここでだ。オロチ、敗れたそのスサノオが言ってきたのだ。
「見事だ」
「勝負ありじゃな」
「そうだ。この世界での戦いは君達の勝ちだ」 
 スサノオもだ。そのことを認めてきた。彼自身がだ。
「そのことは認めよう」
「では御主は去るか」
「そうさせてもらう。とりあえずは」
「とりあえずか」
「また君達の前にその姿を現す」
 スサノオは述べていく。
「そうして永遠にだ」
「全く。諦めの悪い奴じゃのう」
「しつこいと嫌われるわよ」
 幸村だけでなく千姫も言う。
「何はともあれ戦は終わったが」
「完全に終わりとはいかないのね」
「さて、次の世界ではどのライダー、そして戦士が私とどうして戦う」
 そのことをだ。スサノオは楽しげに話していく。
「見せてもらおう」
「そうだな。次の戦ではだ」
 十兵衛もだ。そのことについて話す。
「どういったものになるのか見せてもらおう」
「ではその時に再び」
 それを言ってだ。スサノオは。
 完全にその気配を消した。それと共にオロチの巨体もだ。何処かへと消えてしまっていた。そのうえでだ。残った戦士達は。
 

 

第九話 蛇の力その六

 まずはだ。響鬼が話した。
「とりあえず戦いは終わったがな」
「はい、それでもスサノオとの戦いは続きますから」
「俺達は元の世界に戻るけれどな」
「僕達がどうするかですね」
「仮面ライダーの世界には行けるな」
 ここで問うたのはだ。慶彦だった。
「それならだ」
「あちらの世界でも戦ってくれるんですね」
「そうして」
「約束は守らなくてはならない」
 慶彦はこう威吹鬼と轟鬼に話す。
「それは権現様からの幕府の決まりだ」
「そうだったな。江戸幕府はな」
「そう、約束は守る」
 そうだとだ。慶彦は斬鬼にも述べた。
「徳川幕府の名にかけて」
「よいのか?」
 幸村が慶彦のその言葉に問い返す。
「わらわ達も共にいるのだが」
「別に構わない」
 それもいいとだ。慶彦は幸村に応えた。
「相手は強大だ。そのことを言っていられる場合ではない」
「だからじゃな」
「うむ。それではだ」
「わかったわ」
 ダルタニャンも応えてだった。
「それなら他の世界にも行って」
「戦いましょう」
 半蔵が言った。こうした話をしてだった。
 宗朗達はだ。響鬼にこう誘われたのだった。
「じゃあ俺達もお邪魔させてもらったしな」
「といいますと?」
「どうだい。これから俺達の世界に来ないか?」
 笑顔でだ。彼等を自分達の世界に誘うのだった。
「そうしないか?」
「響鬼さん達の世界にですか」
「仮面ライダーの世界にな」
 具体的にはその世界だった。
「来るか?どうする?」
「そうですね。それでは」
「あちらも世界も面白いようだしね」
 宗朗と慶彦が応える。そして他の面々もだった。
 それぞれ頷きだ。話は決まったのだった。そのうえでだ。
 あの門を潜ってだ。その世界に来た。響鬼達にしてみれば戻ってきた。その戻って来た世界はというのと。
 何の変わりもない。サルに行くと天道がいてだ。宗朗達を見て言った。
「あちらの世界の戦士達か」
「あれっ、この人って確か」
 十兵衛がその天道を見て言った。彼は丁度サルのカウンターにいてそこでだ。昼食を食べていた。その天道を見てだ。彼女が言ったのである。
「確か執事さんだったんじゃ?」
「待て、違うぞ」
 それは幸村が否定した。
「あちらの世界とこちらの世界はまた違う」
「ふうん、そうなんだ」
「それを言うと御主もそのうちうじゃうじゃと出て来るぞ」
「中身が同じ人が?」
「そうじゃ。言っている傍からな」
 こう言うと早速だった。ダルタニャンが話してきた。
「心当たりがある」
「最高にあるにゃ」
 そして彼女ににゃんぱいあが応えた。
「こういうことだな」
「けれどこれって凄く嬉しいことにゃ」
「ふむ。中身が同じ人ですか」
 そんな彼等を見てだ。にゃてんしが話す。
「僕は果たしてそういう人に出会えるでしょうか」
「出会えるんじゃないのか?」
 まさむにゃはいささか不機嫌ににゃてんしも応えた。
「ただな。御前とは全然違うからな」
「中身は同じでも人格は違いますからね」
「御前みたいな奴はそうそういないからな」
「それは少しやれやれですね」
 宙に漂い座って煙草をふかしながらだ。にゃてんしは余裕の顔で述べた。
「しかし何はともあれまた一つの世界が救われました」
「さて、次の世界は何処かじゃな」
 幸村がこのことを言った。
 

 

第九話 蛇の力その七

「どうも御主が行きそうじゃな」
「俺がか」
「そうじゃ。御主がじゃ」
 こうだ。幸村は天道に話すのだった。
「出陣かのう」
「そうか。ではどういった世界に行ってもいいようにだ」
 言いながらだ。天道はだ。
 自分の食べているその鯖の煮付けに加えてだ。店の奥に注文した。
「豆腐を貰おうか」
「どういった料理がいいんだい?」
「麻婆豆腐だ」
 それだというのだ。
「大蒜を利かせただ。俺のレシピで頼む」
「わかったよ。それじゃあね」
「さて、それではだ」
 麻婆豆腐を注文しそれからだ。鯖の煮付けを再び食べながらだ。
 彼は十兵衛を見てだ。こんなことを言った。
「君は同じか」
「同じって?」
「一人の為に戦えるな」
 こうだ。彼女を見て言うのだった。
「そうした人間だな」
「十兵衛宗朗のこと大好きだよ」
 実際にだ。にこりと笑ってだ。十兵衛はこう天道に応えた。
「だから宗朗の為にだったら何でもするよ」
「そうだな。そして君もそのことがわかっている」
「わかっているのでしょうか、果たして」
「甚だ疑問じゃな」
 幸村は又兵衛にこう答えた。
「しかし天道という者、この者は」
「只者ではありませんね」
「平均よりかなり上の知力を持っておる」
 まさにだ。そこまでだというのだ。
「だからじゃ。この者の言うことならじゃ」
「真実ですか」
「それを言っておくな」
 それがわかるというのだ。こうした話をしてだった。
 彼等は天道の話を聞いていた。その天道からだ。
 響鬼達にも宗朗達にもだった。誘いがあった。
「それでは皆もだ」
「僕達もですか」
「豆腐を食おう」
 こう誘いがあったのである。
「麻婆豆腐だ。いいだろうか」
「そうですね。それでは」
 ここで宗朗は懐から何かを出してきた。それは。
 小判だった。それを見てだ。天道が言った。
「それが君達の世界での通貨か」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。宗朗も答える。
「こっちの世界では使えませんか」
「高価だがそれでもだ」
 使えないというのだ。そしてだ。
 天道は無言でだ。札を出して言うのだった。
「今回は俺が支払う」
「すいません」
「金の心配はしなくていい」
 金についてはだ。天道は実際に実に素っ気無い。
 その素っ気無い口調でだ。彼は話す。
「充分にある」
「そうなんですか」
「これでも一応ゼクトの司令官の一人だ」
「えっ、まだ司令官だったんですか」
 その話を聞いてだ。明日夢は目を丸くさせた。
「天道さんってゼクトの」
「というかゼクトってまだあったんですね」
 あきらがこのことを驚いた顔で尋ねた。
「消滅していたと思っていました」
「存在していてスサノオと戦っている」
 実際にそうだとだ。天道は明日夢とあきらに話した。
「ただだ」
「ただ、なんですか」
「そうだ。その体質は変わった」
 そうなったというのだ。
「ネイティブもいなくなったしな」
「ネイティブ。根岸達だったな」
 その彼等のことをだ。天道はここで思い出して述べた。
 

 

第九話 蛇の力その八

「思えば奴等も愚かだった」
「まんまとスサノオに乗せられていたな」
 響鬼も彼等のことは聞いていた。それで言うのだった。
「奴等も気付かないうちにな」
「姿形は問題ではない」
 天道は今度はだ。彼が身に滲みて知ったことについて言及した。
「大事なのは人間であるかどうかだ」
「今度はどういった戦いになってもだな」
「肝心なのはそれだ。例えどうした姿形でも」
 天道その話は続く。
「心が人間ならば人間なのだからな」
「そういうことだな」
 響鬼も天道の言葉に頷く。そのうえでだ。
 彼はあらためてその天道にだ。こう尋ねたのだった。
「俺達が出ている間何かあったか?」
「スサノオか」
「ああ。あいつはこっちの世界で何をしたんだ?」
「門が出て来た」
「ああ、また出て来たんだな」
「学校の校門みたいな門がな」
 それが出て来たというのである。
「そしてそこからワーム達が出て来た」
「今度はあの連中か」
「俺達が行く」
 天道は自分からこう名乗り出た。
「次の戦いにはだ」
「ああ。それじゃあな」
 微笑みだ。響鬼も応えてだ。
 そのうえでだ。天道の隣の席に座って言うのだった。
「頼むな」
「ではな」
「俺達は侍の世界とこちらの世界を暫く行き来する」
 そうして戦うというのである。
「そっちはその世界に専念してくれ」
「ではそうさせてもらう」
「ふむ。ではわらわ達もじゃ」
 幸村もだ。思慮する顔になって述べる。
「二つの世界を行き来して戦をしていくか。いや」
「それ以上だね」
「他の世界も行き来することになるな」
 そうするというのだ。考えをさらに巡らせてだ。
「そうしようぞ」
「そうだね。ではさし当たっては」
「にゃんぱいあの世界に行きましょう」 
 ダルタニャンが言う。
「そちらの世界のね」
「そうにゃ。ダルタニャンさんなら大歓迎だにゃ」
 その彼女の横でにゃんぱいあが手放しで言う。
「一緒に世界を守るにゃ」
「にゃんぱいあって戦えまして?」
 兼続はにゃんぱいあのその言葉に首を捻る。だがそれは彼女だけが思うことではなかった。
 半蔵もだ。このことには流石に首を傾げさせて疑問を呈する。
「戦闘力はなさそうですが」
「いや、そういう問題ではない」
 だが、だ。ここで慶彦が話す。
「大切なのは心だ」
「心がですの?」
「それの如何によってですか」
「そう。にゃんぱいあ君達にはそれがあるから」
 だからだというのだ。
「戦える。確かに戦闘には加わらないが」
「では明日夢達と同じですね」
 千姫がこのことを悟って述べる。
「戦闘には加わらず他のことで」
「戦いは戦闘に加わるだけじゃない」
 慶彦にはわかっていた。次期将軍として。
「剣や槍の後ろでも行われる」
「まあそうですね。僕は喧嘩は嫌いですし」
 にゃてんしはその慶彦の横で宙を飛び煙草をふかしながら言った。やはりその姿勢は座っている様な、そうした姿勢である。いつもの。
「応援させてもらいます」
「そうですね。僕達には癒しの力があるそうですし」
 茶々丸も話に加わってきた。
「ではそれによってです」
「まあ俺達が役に立つんならいいけれどな」
 まさむにゃも異存はない。
「それじゃあな」
「あの、僕もですよね」
「当然です」 
 おどおどとして尋ねるカツオにはにゃてんしが彼の顔のまん前に来て黒いものを帯びた顔で言い切ってみせる。 

 

第九話 蛇の力その九

「貴方も猫なのですから。むしろ」
「むしろですか」
「貴方は先陣になるべきです」
 こう言うのだった。
「何故なら貴方は平凡な寝込んだからです」
「平凡だからですか?」
「そうです。平凡だからです」
 ずい、とだ。カツオの前に出たまま話していく。
「凡人は僕達の礎にならないといけないのですよ」
「うう、何か怖いです」
「怖くなくなる方法はあります」
 強引に言っていくにゃてんしだった。
「そうです。僕にです」
「にゃてんしさんに?」
「今日のおやつを御馳走しなさい。そうしれば怖くなくなります」
「こいつ何とかした方がいいじゃろ」
 カツオを脅かしてカツアゲまがいのことをしているにゃんてんしを見ながらだ。幸村が周囲に尋ねる。
「というか本当に天使なのか?元とはいえ」
「あまりにも人格が問題になり天界にいられなくなったのでしょう」
 又兵衛は事情を的確に見抜いていた。
「素行に問題があったかと」
「そうであろうな。こ奴はそういう奴じゃ」
「困ったことです」
「とにかくじゃ。おやつなら好きなだけある」
 幸村はにゃてんしのカツアゲは止めさせた。
「だからじゃ。弱い猫をいじめるのはよせ」
「やれやれ。仕方がないですね」
 全く反省していない態度でだ。にゃてんしは返す。
「それではです」
「そうじゃ。今度やったら承知せぬぞ」
 幸村は釘を刺すことも忘れない。
「わかったな。これで」
「はい、わかったことにしておきます」
 こうしたやり取りをしてだった。にゃてんしはとりあえずは大人しくなった。サルではそうしたやり取りが行われていた。その中でだ。
 天道がだ。デザートの豆乳アイスを食べてからだ。
 そのうえでだ。周囲に言うのだった。
「ではだ」
「行かれるんですね」
「そうさせてもらう」
 こう明日夢にも応える。
「それではな」
「はい。では頑張って下さい」
「何故ワームが出て来たのか」
 天道は考える顔で述べる。
「その謎を突き止め。そしてだ」
「あちらの世界にもいるスサノオとですね」
「戦う。そして勝つ」
 天道は一言で述べた。
「今度の戦いもな」
「校門っていうと」
 ここで言ったのはだ。桐矢だった。
「学園が戦場になるか」
「一体どうした戦いになるんでしょうか」
「学園での戦い方も知っている」
 天道はかつての戦いのことを思い出していた。
「何ということはない」
「そうですか。じゃあ」
「期待している」
「お祖母ちゃんが言っていた」
 天道はここであの言葉を出したのだった。
「人の期待に応えるのは人として最高のことだとな」
「いいことを言われたお祖母さんですね」
 宗朗はその天道に対して述べた。
「僕もそう思います」
「そうだな。だからこそだ」
「はい、だからこそですね」
「俺は人として最高のことをしに行く」
 即ちだ。期待に応えるというのだ。
「そうしていく」
「では」
「また会おう」
 宗朗達にも別れを告げる。そうしてだった。
 天道はサルを出た。その背を見てだ。十兵衛が言った。
「天道さんって凄い人だよね」
「器はあるな」
 幸村はここで響鬼を見て述べた。
「響鬼とはまた違った意味で」
「彼も多くのことを経てきたんだ」
 そうだとだ。彼は話すのである。
「それでなんだよ」
「経験が人を大きくする」
 今度は慶彦が言う。
「僕もそうした意味では経験を積まなければならないか」
「お兄様も変わりましたね」
 千姫はその兄の言葉について問い返す。
「何か人として丸くなりました」
「ははは、僕も色々あったのかな」
「そう思います。それではです」
「食べましょう」
 明日鬼がここで彼等に話す。
「この世界の食べ物を」
「後で和菓子も食べましょう」
 あきらも笑顔で話す。
「立花のお菓子は絶品なんですよ」
「私達もお店なんです」
「父も一緒にいますから」
 その立花姉妹の言葉である。
「サルの次は立花にいらして下さい」
「是非共」
「はい。じゃあそうさせてもらいます」
 宗朗が笑顔で応えてだった。そのうえでだ。
 彼等は一つの戦いが終わったことを祝ったのだった。そうして今は美味い食事を楽しんだのである。


第九話   完


                      2011・10・2
 

 

第十話 バカとテストと仮面ライダーその一

               第十話  バカとテストと仮面ライダー
 天道はまずはだ。加賀美新、交番にいる彼に話していた。彼は立ちだ。交番の椅子に座って丁度書類整理をしていた加賀見に話したのである。
 彼は警官の制服を着ている。しかしその話を聞いてすぐにだ。書類に書くその手を止めてそのうえで顔を強張らせて天道に応えた。
「じゃあその校門を潜ってなんだな」
「あちらの世界に行く」
「そのワームがうじゃうじゃ出て来る世界にか」
「今から行く」
 天道は加賀美にこう言い切った。
「俺はだ」
「それで俺も誘いに来たんだな」
「嫌なら別にいい」
 ここでは素っ気無く返す天道だった。
「しかしだ。来たいのならだ」
「わかってるさ。俺も仮面ライダーだからな」
「来てくれるか」
「ああ。あと探偵事務所の矢車さんと影山さんに連絡して」
 加賀美はまずこの二人の名を挙げた。
「あとはゼクトの」
「田所司令達には俺が話しておく」
「ああ、頼めるかそっちは」
「御前は神代を頼む」
 神代剣については加賀見だった。
「そして風間だが」
「何だ?探しているみたいだな」
 名前が出るとすぐにだった。交番に風間大介が入って来た。相変わらずその手にはバイオリンがある。そしてゴンも一緒だ。
 その彼がだ。天道に対して言ってきたのだ。
「噂がしたんでこの交番に来たんだがな」
「相変わらず勘がいいな」
「仮面ライダーだからな」
 だからだとだ。風間は天道に返す。
「勘がよくないと死ぬからな」
「その通りだな。戦いでな」
「門に行くんだな」
 風間からだ。門について言及してきた。
「あの学校の校門みたいな門にか」
「それも知っているのか」
「さっき戦ってきた」
 丁度その門のところでだ。そうしてきたというのだ。
「それで知った」
「出て来たのはワーム達だな」
「それとネイティブだな」
 やはり彼等だった。しかしだ。
 風間はここでだ。天道達にこんなことを話した。
「連中には実体がなかったな」
「実体がない」
「というと」
「何か数字が出てそれを零にすると倒せた」
 そうなったというのである。
「俺は何千点かあったけれどな」
「何か違うな」
「テストか。学校の問題を解かさせられた」
 風間は今度はこんなことをだ。天道と加賀美に話す。
「それで勝った」
「あの、それ何なんだ?」
 話を聞いた加賀美はだ。眉を顰めさせて風間に言い返した。
「学校のテストで敵を倒す」
「雑魚ばかりだったので何ということはなかった」
 風間はここでこんなことも言う。
「これでも学校の成績はよかった」
「当然だな。仮面ライダーには知力の必要だ」
 天道はこのことには冷静に返した。
「学校の勉強位は何でもない筈だ」
「まあ俺も高校までの勉強なら」
 どうかとだ。加賀美も話す。
「いけるしこれでも警官の試験はパスしてるし」
「今は警視正だったか」
「そこまで昇進したさ」
 そうなったとだ。彼は天道に話す。
「仮面ライダーとしてだけでなくペーパーテストでも成績出してな」
「では学校の勉強も問題はないな」
「ああ、特にな」
 そうだとだ。加賀美は天道に答える。
「けれど何で勉強なんだ?」
「あちらの世界の戦いのルールだな」
 天道はこのことについても冷静に述べる。
「それでそうなっている」
「何か変わった世界だな」
「その世界それぞれのルールがある」
 天道の冷静なコメントは変わらない。 

 

第十話 バカとテストと仮面ライダーその二

「中にはそうした戦いのやり方もあるだろう」
「意味がわからないな」
「行けばわかる。それではだ」
「ああ。まずは仮面ライダーを集めてか」
「その世界に行く」
 天道はまた加賀美に話した。
「いいな」
「さて、それじゃあな」
 風間は二人の話がまとまったのを見てだ。それからだった。
 ゴンに顔を向けてだ。こう尋ねたのである。
「ゴンはどうするんだ?」
「その世界に一緒に行くかどうか?」
「ああ、俺とな」
 こう彼女に尋ねたのである。
「それはどうするんだ?」
「一緒に行っていい?」
 ゴンは顔を見上げてだ。風間に逆に尋ね返した。
「そうしていい。私も大介と一緒に」
「勿論だ」
 風間は微笑んでゴンにこう答えた。
「だから尋ねてるんだからな」
「そう。じゃあ」
「行くか。その世界に」
「あの世界でも一緒にね」
 こう話してだった。二人も決めたのだった。そうしてだった。
 風間の他にもだ。ライダー達が集められる。
 矢車想に影山瞬もだ。天道達のところに来た。彼等は既に門のところにいる。
 その校門そのものの門を見つつだ。矢車は言うのだった。
「この門の向こうにワームがいるんだな」
「そうだ」
 その通りだとだ。天道は矢車の問いに答えた。
「スサノオもだ」
「成程な。事情はわかった」
「じゃあ兄貴、行こうか」
 影山は早速矢車に言った。
「この校門の向こうに」
「そうするか。向こうにスサノオがいるんならな」
「では俺も行こう」
 神代も来た。爺やも一緒だ。
「あちらの世界にだ」
「では坊ちゃま」
 爺やもだ。その神代に対して言う。
「爺も共に」
「頼む。それではな」
 こう話してだった。彼等もそこに来たのだ。そうしてだ。
 田所修一が率いる黒崎一騎、織田秀成、大和鉄騎も来た。彼等もだった。
「ゼクトとしてもだ」
「参加してくれるんですね」
「そうさせてもらう」
 こう加賀美に話したのは田所だった。
「スサノオは放ってはおけないからな」
「有り難うございます。それじゃあ」
「ではだ」
 田所は後ろに控える三人にも声をかけた。
「今から行くぞ」
「わかりました」
 まずは黒崎が答える。
「では我々も」
「さて、それではですね」
「いよいよ別の世界ですね」
 織田と大和も言ってだ。彼等も前に出るのだった。
 ここでだ。神代がこんなことを爺に尋ねた。
「爺、ミサキーヌだが」
「岬様もすぐに来られます」
「そうか」
 そのことを聞いてだった。神代は安心した微笑みを浮かべ。そのうえでこう言うのであった。
「これで何の心配も無用だな」
「坊ちゃま、ではあちらの世界でも」
「安心して戦わせてもらう」
 そうするというのである。
「これで何の憂いもない」
「安心していいな」
「どうした戦いになるかわからないが」
 それでもだとだ。天道も前に出る。その横には日下部ひよりがいる。
 ひよりはその兄を見ながらだ。気遣う様にして問うた。
 

 

第十話 バカとテストと仮面ライダーその三

「あちらの世界でも戦うのだな」
「そのつもりだ」
 こう話すのだった。
「面白い戦いになりそうだ」
「僕も行こう」
 ひよりもだ。行くというのだった。
「何か心配になった」
「心配か」
「戦いの度に心配になる」
 本音を話していく。少しずつ。
「僕の為に戦ってくれている人が。これは」
「自然なことだ」
 天道は妹のその感情をだ。そうだというのだった。
「人は誰かを。何かをいつも想うものだからな」
「だからか」
「来てくれるのなら来てくれ」
 天道からもだ。ひよりに告げた。
「それではな」
「わかった。ではそうさせてもらう」
 こうした話をしてだった。遂にだ。
 仮面ライダー達はその門を潜り戦場に赴く。別の世界の戦場に。
 文月学園。今日もこの学園では騒動が起こっていた。
 二年F組、このクラスはただひたすら粗末だ。教室にあるのは蜜柑のダンボール箱、ちゃぶ台はもうなくなっている。そしてクラスの窓はあちこちが割れて隙間風が入ってきている。
 しかも床はぼろぼろで壁も古い。ここだけ木造建築になっているのが不思議だ。
 その二年F組の中でだ。長身で赤髪を立たせた精悍な顔立ちの赤い眼の若者がクラスの面々に問うていた。無論制服は文月学園の洒落たブレザーだ。この学園のブレザーは青いズボンにダークブラウンとゴールドの配色になったものだ。何処か軍服を思わせる。
 その軍服の彼がだ。腕を組んでクラスメイト達の前に立って言うのだった。
「この辺り異常と言うしかないな」
「全くじゃな」
 緑の目にブラウンのショートヘアの中性的な面持ち、少女にしか見えない顔立ちだ。ただしはいているのはスカートではなくズボンだ。
 その性別がわからない学生がだ。赤髪の男、坂本雄二の言葉に頷く。その名を木下秀吉、一応男になってはいる。
「何じゃあの緑の得体の知れぬ者達は」
「少なくとも人間ではない」
 雄二はこのことは断言できた。
「しかも試験召喚システムも使ってくる」
「あれがわからぬ」
 秀吉も腕を組んで言う。
「先生がおらぬのにな」
「しかも校長も知らないときている」
「おまけに負ければそれだけで補習だ」
「ただ緑の奴等は何でもない」
 その連中はだというのだ。
「時々出て来る様々な色の化け物共が問題だ」
「あれ、おかしい・・・・・・」
 青がかった灰色の髪と目の抜け目なさそうな小柄な少年である。土屋康太、仇名をムッツリーニという。その手にはカメラがある。
「本当に急に出て来る・・・・・・」
「手掛かりは掴めたか?」
「全く・・・・・・」
 ムッツリーニはこう雄二に答える。
「何時何処から出て来るのかさえ」
「奴等が出て来てから一週間になる」
 雄二は腕を組んだまま言う。
「その間俺達は学園にいる間はひっきりなしに奴等の奇襲を受けている」
「どのクラスも手当たり次第にな」
「わからん。何者で目的が何かもな」
 雄二はこう言って首を捻る。
「うちの学園の生徒でもないしな」
「生徒の姿をしておってもいきなり変わって襲い掛かって来る」
 秀吉も雄二と同じく首を捻る。
「校長まで襲われているからな」
「鉄人も・・・・・・」
 ムッツリーニはぽつりと呟いた。
「流石にこの二人はやられなかった・・・・・・」
「伊達に教師やってる訳じゃないな」
 雄二も二人を認めることは認めていた。
「だが。それではっきりしている」
「あの連中は校長の差し金ではない」
「最初から校長のやり方じゃなかったしな」
「全くじゃ。何なのじゃ」
 秀吉も誰が仕掛けてきているのかわかりかねている。
「姉上もこの前危うくだったしのう」
「ああ。Aクラスの奴等も結構やられてるしな」
「滅茶苦茶強いのよ、色が違う奴等が」
 赤がかった長い茶色の髪を黄色のリボンでポニーテールにしている。目は緑で何処か猫を思わせる顔立ちをしている。胸が薄い。島田美波、このクラスで数少ない女子である。尚ドイツからの帰国子女だ。 

 

第十話 バカとテストと仮面ライダーその四

「うちも一回負けかけたしね、数学で」
「島田が数学でやられるんだからな」
 雄二もこのことには驚きを隠せない。
「これはかなりだな」
「とにかくじゃ。緑の虫と人を合わせたものはまだよい」
 秀吉がまた言う。
「問題はあれじゃ。あの色も形も違う奴等じゃ」
「しかも速い・・・・・・」
 ムッツリーニはこのことも言う。
「だから余計に手強い」
「こっちが何かしようにもいきなり出て来るからね」
 美波もたまりかねた口調で話す。
「奇襲とかも受けるし」
「全く何者なんだ」
 流石の雄二もだ。たまりかねた口調になっている。
「お蔭で学園自体が滅茶苦茶になっているぞ」
「怪人でしょうか」
 ピンクのふわふわとした長い髪に青いおっとりとした目の娘だ。胸がやけに大きい。このクラスのもう一人の女子生徒である姫路瑞希である。
 その瑞希がだ。こんなことを言いだしたのである。
「そういう感じですよね」
「否定したいがな」
 雄二の言葉がここで苦々しいものになった。
 そのうえでだ。彼はこうクラスメイト達に述べた。
「残念ながら俺もだ」
「否定できぬか」
「できる奴がいたら言ってみてくれ」
 雄二はこうまで言う。
「いたらな」
「残念じゃがな」
 秀吉もだった。難しい顔になって述べる。
「どうしてもな」
「否定できない・・・・・・」
「あの外見もあるからね」
 ムッツリーニも美波も同じだった。どうしてもだ。
 彼等は否定できなかった。その謎の緑の者達が怪人だとだ。
 その証拠にだ。雄二はこのことに言及した。
「何故瞬間移動ができる」
「それが一番謎ですよね」
「奴等には超能力がある」
 雄二は瑞希に答える形で言い切った。
「通常の人間にはない力がだ」
「それに何でうちの学園にこだわるのかしら」
 美波も今は首を傾げさせている。
「うちの学園に連中が何か興味を惹くところがあるのかしら」
「ええと。うちの学園は」
 瑞希は美波の言葉を受けて考える顔になりだ。
 そのうえでだ。こう述べたのだった。
「試験召喚システムですよね」
「あのシステムが最大の特徴よね」
「それを狙ってでしょうか」
「そうなのかしら」
 瑞希も美波も話していく。
「それで私達に攻撃を仕掛けている」
「それで?こんなにしつこく攻めてくるって」
「待て、それならシステムそのものを盗めばいいぞ」
 秀吉は二人の女子にこう突っ込みを入れた。
「あのシステムをどうして悪用するかはわからぬがな」
「そう、俺達を相手にする必要はない・・・・・・」
 ムッツリーニも言う。
「ハッキングなり何なりして」
「しかもだ」
 ここでまた言う雄二だった。
「俺達をかなり執拗に攻めてきているが」
「あの能力ならうち等すぐに皆殺しにできるわよね」
「しかし同じ土俵に上がってきて戦ってきている」
 その試験召喚システムを使ってである。
「あの化け物そのもの能力をシステムに反映させてだ」
「考えれば考えるだけわからぬな」
 秀吉も腕を組んで言う。
「だからあの連中は何なのじゃ?何者で何が目的なのじゃ」
「怪人ならそうした組織がバックにあって」
 瑞希は彼女が子供の頃から観ているアニメや特撮の番組から話す。
「首領みたいなのがいますけれど」
「首領か。普通ならあの校長だがな」
 雄二はここでも校長のことを話した。
「どう考えてもあの校長のやり方じゃないし襲われるにしてもな」
「自作自演じゃないわね」
 美波はそのことはすぐに否定した。
「それにしては妙にね」
「そう、全く違う」
 ムッツリーニがまた言う。
 

 

第十話 バカとテストと仮面ライダーその五

「何かが決定的に・・・・・・」
「俺も何度も考えてシュミレーションをした」
 雄二は幾度もそうして答えを出したというのだ。
「校長か学園内の誰が黒幕か」
「あそこまでやれる奴はおらんな」
 秀吉は腕を組んだままで述べる。
「校長にしてもわし等をけしかけるにしてもじゃ」
「あまりにも過激だ」
 雄二がまた言う。
「しかも校長は一人で校長室にいる時にも何度も襲われているな」
「あっ、自作自演なら」
 瑞希は雄二の話からあることに気付いた。
「誰かがいる時に仕掛けますよね」
「そうだ。だが校長も他の先生達も隙を見せれば襲われる」
「何なのじゃろうな」
 難しい顔でだ。また言う秀吉だった。
「誰も殺さぬしのう」
「裏にいる奴は何を考えている」
 雄二のその目が鋭くなった。
「いるかどうかもわからないがな」
「絶対にいる・・・・・・」
 ムッツリーニは断言した。
「あの連中の黒幕は」
「いるにしてもどうして引き摺り出すかだな」
 雄二は黒幕をどうするかについて考えだした。
「しかしそれもだ」
「手がないわよね」
「ああ。そもそもどうした組織なのかもわからないかもな」
「種族とかでもですよね」
 瑞希はまたアニメや特撮から考えて言及した。種族だと。
「結局何なのかわからないと」
「どうにもならない。対処不能だ」
 雄二も今は流石にお手上げだった。しかしだ。
 ここでだ。ふとだ。秀吉が言ったのである。
「そういえば明久は何処じゃ」
「ああ、あいつか」
「うむ。午前中はいたが早退したのか?」
「早退はしていない」
 雄二はそのことは否定した。
「ただ。連中に襲われてだ」
「補習か」
「今回はとりわけ念入りにやられたからな」
 それでだ。今はというのである。
「鉄人にみっちりとやられている」
「その鉄人にしてもよね」
 美波はすぐにこう察した。
「連中に襲われたんでしょ」
「緑の連中だけだったから鉄人は平気だった」
 流石にだ。鉄人は雑魚にはやられなかった。
「ただな。明久はな」
「やっつけられたのね」
「ああ。完璧にな」
 倒されたというのである。彼等にだ。
「それで鉄人の補習行きになった」
「あ奴にとっても災難じゃな」
 秀吉は今は明久に同情していた。
「昨日も補習じゃったしな」
「明久だけじゃない・・・・・・」
 ムッツリーニはぽつりと言った。見ればだ。
 F組の生徒の数が普段より少ない。それについてだ。
 彼はだ。こう言ったのである。
「皆もかなり」
「やられてるからね」
「とにかくどのクラスも滅茶苦茶だ」
「この状況をどうするか」
「俺が思うにだ」
 どうかとだ。雄二はここで言った。
「今はどのクラスもばらばらでいる状況じゃない」
「一つになるのじゃな」
「少なくともクラスごとの試験召喚戦争はしている状況じゃない」
「それは流石に今は起こっておらんな」
 そのことは秀吉も言う。
「どのクラスもそれどころではない」
「そういうことだ。だからだ」
 どうかというのだ。今は。
「A組からF組まで全部のクラスを併せてあの連中と戦うべきだ」
「それでどうにかする」
 ムッツリーニはぽつりと呟く感じで述べる。
「それが大事・・・・・・」
「戦力は集結させてこそ戦力だ」
 雄二は今は戦略家になっていた。彼の真骨頂だ。
 

 

第十話 バカとテストと仮面ライダーその六

「鮫も相手が自分より多いと襲い掛かっては来ないからな」
「少なくとも連中の奇襲は避けられるわね」
 常に多く集っていればそうなるとだ。美波も気付いた。
「一人か二人の時に皆襲われてるから」
「そうですよね。ただ気になるのは」
 瑞希はおっとりとした口調だが鋭く指摘した。
「あの人達?ですけれど私達がおトイレの時や着替えている時は来ませんよね」
「んっ!?」
「そういえば確かに」
「その時は」
「一度も」
 他の面子も気付いた。瑞希のその言葉で。
「来るのはこちらが勝負できる時だけ」
「あくまで」
「そうよね」
「普通そういう時にこそ狙う筈だな」
 雄二は戦術、戦略的観点から述べた。
「丁度いい狙い目だからな」
「しかしそうした時には来ぬ」
 秀吉はここでも腕を組んで述べる。
「何かルールでもあるのか。連中に」
「少なくとも知性はあるわよね」
 美波はこのことを察しながら述べた。
「外見は人間の姿で来るしね」
「そう、多分明久よりずっと頭がいい・・・・・・」
 ムッツリーニは何気に酷いことを言う。
「あの連中は人並の頭はある」
「だからああして勉強もするんですね」
 瑞希は試験召喚システムから考えていた。
「外見以外は人間に近いですよね」
「こうして考えれば考える程訳がわからないな」
 雄二もいい加減考えが煮詰まってきた。
「何者なんだ、本当に」
「ただいまぁ・・・・・・」
 彼等がそんな話をしているとだ。やや小柄で薄い茶色の髪を裾のところだけ刈り上げた少年が部屋に来た。人懐っこく実に気さくな感じがする。目は鳶色だ。彼の名を吉井明久という。その渦中の人物だ。
 その明久がふらふらになってクラスに入って言うのだった。
「鉄人の補習やっと終わったよ」
「ああ、生きていたのか」
「生きていたのかって何だよその言い方」
 明久は何とかといった感じでクラスに入ってから雄二に言い返した。
「今日二回目の補習だってのに」
「一日二回も補習なぞ普通はないぞ」
 秀吉がその明久に突っ込みを入れる。
「御主はどれだけあの化け者達に襲われておるのじゃ」
「もういつもだよ」
 学校にいる間常にだというのだ。
「登下校の時も来るしさ。家の中にいる以外はいつも」
「そうだ。制服を着ている間はいつもだ」 
 雄二がここでまた気付いた。
「あと体育の授業中もだがな」
「いや、僕何か特に狙われてる気がするんだけれど」
「その理由はわかる」
「それはどうしてなんだよ」
「馬鹿だからだ」
 雄二は明久に対してきっぱりと言い切ってみせた。
「それ以外に何か理由があるか」
「馬鹿って。馬鹿って言う奴が馬鹿なんだぞ」
「それじゃあ補習はせめて一日一回にするようにしろ」
「今日はこれでも少ない方なんだよ」 
 明久は言い訳にならない言い訳に入った。
「昨日なんて五回もだったし」
「五回って何なのよ」
 美波はその回数に思わず呆れ果てた。
「二回でも凄いっていうのに」
「だってさ。あの緑色のがいつも集中的に来るから」
 明久はとにかく狙われているというのだ。
「もうこっちもへとへとだよ」
「本当に訳のわからぬ奴等じゃ」
 秀吉はまたこんなことを言った。
「少なくともこんなことが続くとたまったものではない」
「全くだよ。そういえばさ」
 ここで明久は話題を変えてきた。その話題は。
「何か校長室に何人かお客さんが向かっていたよ」
「お客さん?」
「そう、お客さんがね」
 また言う明久だった。
 

 

第十話 バカとテストと仮面ライダーその七

「何か来てだよ」
「それ誰ですか」
「何かかなり背の高い人達ばかりだったよ」 
 明久は自分の席に座りながら瑞希に述べた。
「殆どの人が雄二位だったかな」
「それはかなり高い・・・・・・」
「うん。如何にも格闘技してるっていうかそんな感じの人達だったよ。中には鉄人より怖そうなのもいたし」
「誰、それ・・・・・・」
 ムッツリーニも話を聞いて首を少し捻る。
「鉄人より怖そう」
「とにかくそういう人達が来てたよ」 
 こう話す明久だった。
「一体何なのかな」
「さてな。少なくとも今は何とも言えないな」
 雄二も判断材料が少なくはっきりとしたことは言えなかった。
 しかしだ。このことは言えたのだった。
「だが今はクラス一つ一つでは駄目だ」
「全部のクラスを合わせてじゃな」
「連中に対抗するしかないわね」
「ああ、結局はな」
 秀吉と美波に話してだった。雄二はまずは戦略を練っていた。そうしたのである。
 皺のある顔に薄茶色の長い髪のややきつめの顔のスーツとズボンの女にだ。天道達は会っていた。そうして彼女に話すのだった。
「少しこの世界について調べさせてもらったが」
「何だってんだい?それで」
「この世界にワームが来ているな」
 天道はこうだ。自分の前にいる文月学園の校長に話したのである。彼等は今は校長室にいる。その広く独特な機能性を見せている部屋にだ。
 そのうえでだ。校長室に立っている校長に話したのである。
「そしてネイティブが」
「ワームやネイティブってのは知らないがね」
 校長はまずはそうした者達は知らないと述べた。
 それからだ。こう言ったのである。
「今この学園全体にちょっかいをかけてる緑の化け物達がいるがね」
「それだ」
 矢車がまさにそれだと言った。
「その連中だ」
「あの連中の名前がワームだってのかい」
「そしてネイティブだ」
 矢車はまた校長に言った。
「まさにその連中だ」
「成程ね。あの連中には違いがあったんだね」
「そうなった経緯が違うだけで大体同じ存在だ」
 天道は校長にわかりやすく話した。
「そこから脱皮だな。それをしてだ」
「別の姿になるんだね。色々な生き物と人間を合わせた形の」
「それも知っていたか」
「あたしも何度も戦ってるからね」
 校長は不敵な笑みを見せて天道に話す。
「よく知ってるさ」
「そうか。では今この学園はかなりか」
「ああ、戦争だよ」
 最早そうした状況だというのだ。校長はこう話す間も不敵な笑みを崩さない。
「まさにね」
「なら話は早いな」
「そうだね。それであんた達はあれだね」
「そうだ。奴等と戦ってきた」
 その通りだとだ。天道は話した。
「もっとも俺達の世界ではそちらの戦い方ではなく実際に拳を交えてきたがな」
「けれどこっちの世界ではそうなんだよ」
 校長は自分のいる世界の理屈から天道達に話す。
「試験召喚システムにおいて戦ってるんだよ」
「あれっ、ワームやネイティブがルールを守ってるのか?こちらの世界の」
 加賀美はこのことに怪訝な顔を見せた。
「何かおかしいな」
「いや、おかしくはない」
 田所はそれはそうではないと述べる。
「スサノオがそうした考えならな」
「そうですね。言われてみれば」
 田所に言われてだ。加賀美もわかった。納得した顔で頷く。
 そしてだ。こうも言う加賀美だった。
「じゃあこっちの世界でのスサノオの目的は」
「また見たいのか」
 風間が首を傾げさせながら話す。
「こちらの世界でも」
「何を見たいってんだい?」
 校長はすぐに風間の言葉に問い返した。
 

 

第十話 バカとテストと仮面ライダーその八

「それにそのスサノオだね」
「ワームやネイティブを操っている存在だ」
 天道が校長に説明する。ここでもだ。
「それがスサノオだ」
「へえ、あの連中の王様か何かなんだね」
「もっと上だな」
「じゃあ神様かい?」
「そうだな。そう考えて問題ない」
「神様ねえ」
 スサノオがそうした存在と聞いてである。そうしてだ。
 校長はあらためてだ。こう述べたのである。
「それを倒せばワームとかネイティブは消えるんだね」
「少なくともここでの戦いはなくなると思うんだけれどな」
 影山が校長に話す。
「あいつをどうにかしたらな」
「じゃあこっちの願いを言うね」
「あれか?やっぱりワームとかネイティブをどうにかして欲しいんだよな」
「是非ね。正直迷惑なんだよ」
 笑って話す校長だった。
「毎度毎度いきなり出て来て喧嘩売ってきたらね」
「わかった。それならだ」
 ここまで聞いてだ。天道は納得した声で応えた。そうしてだ。
 そのうえでだ。校長に対して述べた。
「意見は一致したな」
「そうだね。お互いにあの連中をどうにかしたいのならね」
「この学園でワーム、ネイティブと戦っていいな」
「ああ。ただしね」
 校長はさらに言う。
「あんた達にも試験召喚システムの中で戦ってもらうよ」
「その試験召喚システムとは何だ?」
 神代がいぶかしむ目でそのシステムのことを尋ねる。
「どうして戦うのだ」
「つまりだよ。テストの点数がそのまま戦闘力になってだね」
 校長はその神代達に対してシステムのことを説明する。
「それを元にして自分の代理というか分身の召喚獣を使って戦うんだよ」
「ワームは自分達の姿をそのまま召喚システムにしているんだな」
 田所はすぐにそのことを察して言った。
「そしてネイティブも」
「そうみたいですね。この校長先生の話を聞いていると」
「では俺達もか」
「そうなりますかね」
「ちょっと見せてくれるかい?」
 校長はここでライダー達に言った。
「あんた達の召喚獣を」
「構わない」
 天道が応える。そうしてだった。
 校長の言葉に頷く。他のライダー達もだ。
 それをよしとした。それを見てだ。
 校長は右手の親指と人差し指を合わせて鳴らした。己の顔の横でそれをするとだ。
 ライダー達にだ。こう告げたのである。
「あんた達の召喚のやり方でいいよ」
「わかった。それではだ」
「変身!」
 それぞれのシステムが来てだ。それがベルトに収まり。
 彼等は変身する。するとだ。
 それで召喚獣が来た。小さいがそれぞれの等身のライダー達がだ。
 その彼等を見てだ。校長は満足した面持ちになり述べた。
「いいねえ。これは頼りになりそうだね」
「では戦わせてもらう」
「全面的に協力させてもらうよ」
 校長は笑みを浮かべてライダー達の言葉に頷く。これで決まりだった。
 ライダー達は校長、即ち文月学園の面々と共にこちらの世界に来ているスサノオと戦うことになった。そのことを決めてから校長室を出る。
 その彼等のところにだ。あの影が出て来てこう言ってきた。
「よく来たな」
「貴様か」
「如何にも。私だ」
 その通りだとだ。答える影だった。見れば。
 その影はライダーのそれに似ている。その影を見て言う天道だった。
「本来の姿か」
「だがこの世界で再び君達と出会う時はだ」
「別の姿になるというのだな」
「とはいっても君達の知っている姿だがな」
「おおよそ話はわかった」
「ではだ。また会うことを楽しみにしていよう」
「待て」
 しかしだ、去ろうとするスサノオにだ。
 田所が声をかけてだ。呼び止めこう問うたのである。
「貴様はこの世界もやはりか」
「如何にも。退屈はだ」
「嫌いだからか」
「それはもう知っている筈だ」
 馴染みの相手、まさにそれに対する言葉だった。
「私のそうした趣味はな」
「知ってはいる」
 天道がそのスサノオに対して返す。
 

 

第十話 バカとテストと仮面ライダーその九

「だがそれでもだ」
「納得はしないか」
「戦う」
 これがライダーの言葉だった。
「貴様が仕掛ける限りはな」
「ふふふ、そうでなくては面白くはない」
 スサノオは影から話していく。
「私にしてもな」
「何故この学園にした」
「面白いからだ」
 それが理由だった。スサノオの。
「試験召喚システムというものがだ」
「確かにな。話を聞く限りはだ」
「だからこそこの世界に来ているのだ」
 スサノオは言った。
「楽しめるからだ」
「しかしだ」
 矢車がそのスサノオに問う。
「そのシステムでは人は死なない」
「その通りだ」
「貴様はそれはいいのか」
「構いはしない」
 人が死ななくてもだ。いいというのだ。
「私は今は人の生死は主に見てはいない」
「人がどうするかを見るからか」
「そうだ。私が見るのは生死ではない」
 では何かというとだった。それこそが問題だった。
「人間そのものなのだからな」
「ではよく見ることだ」
 天道がスサノオに言うことはこのことだった。
「俺達も。そしてこの世界の人間達もだ」
「見せてくれるのか」
「貴様が飽きるまでな」
「そうさせてもらう」
 こうした話をしてだった。スサノオは天道達の前から消えた。そしてその後に残った彼等はだ。
 一旦だ。こんな話をするのだった。
「ではまずはな」
「何処に寝泊りするんだよ、まずはそれだよな」
「ああ、そのことだけれどね」
 ここでだ。校長が彼等のところに来た。彼女はまずこうライダー達に尋ねた。
「さっきの影があれなんだね」
「そうだ。スサノオだ」
 まさにそうだとだ。天道が答える。
「俺達の永遠の敵だ」
「如何にもって感じの怪しい神様だね」
「何かと仕掛けてくる。用心することだ」
「そうさせてもらうよ。それでね」
 校長からだ。話を変えてきた。
「あんた達の住む場所ならあるよ」
「それは何処なんだ?」
 影山がすぐにそのことを尋ね返した。
「俺は何処でも寝泊りできるけれどやっぱりいい場所にいたい」
「うちの学生寮でどうだい?」
「あれっ、寮もある学校なのか」
「職員用も合わせてね。あるよ」
 校長はその独特の余裕のある笑みで影山に話す。
「それぞれ個室で。丁度数は十空いてるよ」
「職員用と生徒用を合わせてだな」
「ああ。そこに入るといいさ」
「有り難い。俺達は両方の世界を行き来できるが」
 それでもだとだ。今度は田所が話す。
「やはりこちらの世界に専念したいからな」
「そうだね。じゃあ部屋の鍵も渡すからね」
「わかった。それではだ」
 最後に天道が応えそうしてだった。
 彼等は校長にそれぞれの鍵を渡されそのうえでだ。その日は寮に入って休んだ。そしてそれからだ。新しい戦いに向かうのだった。この文月学園の世界での戦いに。


第十話   完


                           2011・10・7
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその一

                           第十一話  転校生とキャストオフとメイクアップ
 明久がだ。自分のクラスでぼやいていた。
 畳の上に寝転がってだ。そして言うのである。
「もうさ。登校したらさ」
「早速襲われたのか」
「うん、あの緑の連中にね」
 早速そうなったというのだ。
「本当にいきなりだったよ」
「それはもう毎度のことじゃろう」
 秀吉が寝転がっている彼の横に座ってこう返した。
「特に言うことでもあるまい」
「今回は十匹もいたんだよ」
 それだけいるから言うというのである。
「それが一度に襲い掛かって来てさ」
「で、どうなったのじゃ」
「今残り一桁しかないんだ」
 点数がだというのだ。
「あと一回あったらそれこそ」
「ふむ。補習じゃな」
「もう嫌だよ」
 明久はたまりかねた口調になっている。
「こんな状況が何時までも続くのかな」
「とりあえずさ。奴等何者なのよ」
 美波が腕を組み気難しい顔で述べる。
「それで本拠地は何処なのよ」
「ああ、それだよね」
「そうよ。それがわかれば違うのに」
「とにかく何もかもがわかってないからね」
「しかもだ」
 今度は雄二が言う。皆明久の周りに集まって座っている。
「向こうはこちらのことを全てわかっているな」
「校内のことも細かい場所まで知っておるな」
 秀吉はこのことに気付いていた。
「とにかく何処にいても襲い掛かって来るからのう」
「敵は俺達のことを全部知っている」
 雄二はまた言う。
「しかし俺達は向こうのことを全く知らない」
「非常にまずい・・・・・・」
 ムッツリーニは現状を知りこう呟いた。
「ここままじゃもっと好き放題される」
「あの、ですが」
 瑞希は困った顔でだ。顔をやや俯けさせて言った。
「どうして調べるんですか?相手のことを」
「ううん、とにかく何もわからないなんてさ」
 明久はいぶかしむ顔のままだった。
「防戦ばかりでどうしようもないよ」
「情報はどうして集める?」
 秀吉が言う。
「ムッツリーニ、調べられるか」
「調べたいけど無理・・・・・・」
 これがムッツリーニの返答だった。
「神出鬼没過ぎて」
「そうだ。俺達は攻められる、狩られる側だ」
 雄二もこのことを指摘する。
「このままでは狩られ続けるだけだ」
「こっちに狩る人がいれば違うのにね」
「全くだな。このままではやられっぱなしだ」
 雄二は美波にも返す。彼等がこう話しているとだ。
 クラスにだ。いきなり二人入って来た。彼等はというと。
 何故かだ。一人は老人だ。しかももう一人は白い服で文月学園の制服ではない。
 その二人を見てだ。雄二が尋ねた。
「どちら様ですか?」
「あの、ここ文月学園二年F組ですけれど」
 瑞希はいささかピントを外して言った。
「何処かのお屋敷と間違えていませんか?」
「ふむ。汚いクラスだな」
 しかしだ。白い服の男はだ。クラスの中を見回してこう言うのだった。彼等の言葉に応えず。
「これもまたショ、ミーーンの学び舎なのか」
「はい、その通りです」
 彼に対して老人が恭しく答える。
「それでもかなり酷い状況の部屋ですが」
「そうだな。まるで倉庫だ」
 こうまで言う彼だった。
「ショ、ミーーンの場所にしてもだ」
「全くでございます」
「何か凄い変わった人ね」
 美波がその二人をいささか引きながら見ている。
「御金持ちみたいだけれど」
「というか何なのじゃ、この人達は」
 秀吉もいぶかしむ顔である。
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその二

「いきなり来たが」
「あの、どちら様ですか?」 
 明久が彼に問うた。
「転校生の方ですか?」
「俺のことか」
「はい、見たところ僕達より年上みたいですけれど」
「年齢のことは気にすることはない」
 彼はぞんざいな態度のまま述べる。
「俺は気にしてはいない。そんな些細なことはだ」
「あの、些細じゃなくてですね」
「そういう問題じゃないと思います」
 瑞希も恐る恐る述べる。
「あの、そもそも貴方は誰なんですか?」
「俺の名前か」
「はい。どなたですか?」
「俺は神代剣」
 ここでようやくだ。神代は誇らしげに己の名を名乗った。
「全てにおいて頂点を極める男だ」
「それで幾つなんですか?」
「そんなことは些細なことだ」
 あくまで年齢についてはこれで済ませるのだった。
 しかしだ。ついこんなことを言ってしまったのだった。
「名門ディスカビル家の主として既に大学を出ている」
「今大学と言ったな」
「確かに言った・・・・・・」
 秀吉もムッツリーニも聞き逃さなかった。
「では二十二歳より上か」
「そうなる」
「大学はオックスフォードだ」
 さらに言うのだった。
「どうだ、名乗りはこれでいいか」
「あの、大学を出ているんですよね」
 流石に雄二も引きながら神代に尋ねる。
「それでどうして俺達の高校に来ているんですか?」
「それも転校生って何なんですか?」
 美波もかなり唖然となっている。
「あの、校長は納得してるんですよね」
「無論だ。あの老婆だな」 
 知っている口調だった。明らかに。
「中々以上の切れ者だな。爺やには及ばないが」
「有り難きお言葉」
「ではこれでいいな」
 強引に話を勧める神代だった。
「俺はこれからこのショ、ミーーンのクラスの一員なのだ」
「何処をどう突っ込んでいいのかな」
「訳がわからないです」
 美波も瑞希もだ。神代の編入には唖然となっていた。
 そして彼だけでなくだ。Aクラスには。
 天道がいた。彼は席で優雅に座りだ。コーヒーを飲み菓子を食べている。
 その菓子を食べながらだ。彼は言うのだった。
「ふむ。豆乳を上手に使っている。美味だ」
「あのですね」
 その彼にだ。秀吉と同じ顔だがそれでもスカートを履いている少女が怪訝な顔で天道に声をかける。秀吉の双子の姉である木下優子である。彼女が問うたのだ。
「貴方一体」
「俺か」
「はい。急にクラスに入って来られましたけれど」
「俺は天道総司だ」
 彼はこう名乗る。堂々とコーヒーを飲みながら。
 そしてだ。足を組み座った姿勢で右手の人差し指で天を指し示して言った。
「天の道を往き総てを司る者だ」
「天道さんですか」
「そうだ。しかしさん付けなのだな」
「絶対に私より年上ですから」
 見ればすぐにわかることだった。
「それに大学出てません?」
「それもわかるのだな」
「年を見れば」
「それもですね」
 ここでだ。黄緑の蒲公英を思わせるショートヘアに栗色の目の利発そうな少女が天道に言ってきた。Aクラスの一員で水泳部にも所属している工藤愛子である。
「何か風格がありますね」
「風格か」
「経験豊富ですよね」
 何気に危ないことを言う愛子だった。
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその三

「戦いの」
「とはいってもこちらの試験召喚システムでは初心者だ」
「あっ、そうなんですか」
「訳あってこの学園に転校してきた」
「大学を卒業していてもですか」
「そうだ。だが俺の経歴は気にすることはない」
 天道もまた堂々とそんなことはどうでもいいとする。
「そしてこのクラスの一員にもなった」
「ううんと。何かかなり釈然としないですけれど」
「私は全然納得できないわよ」
 愛子はまだそれで済んだが優子は全くだった。
「いきなりこんな強烈な人が出て来るなんて」
「確かに強烈な人よね」
「それも校長先生が転校認めたって」
「訳がわからないなんてものじゃないわよね」
「うちの学校かなり強引なことしてきたけれど」
 優子は尚も言う。全く納得していない顔のままで。だが彼女達が傍で立って話しているのに対してだ。天道は全く平然として言っていくのであった。
「少なくともだ」
「少なくともなんですね」
「俺は君達の敵じゃない」
「?っていうと」
 愛子は天道の今の言葉から察した。あのことを。
「あの緑の連中のこと御存知なんですね」
「戦ってきた」
 そうだったとだ。天道は言う。
「そしてよく知っている」
「それは本当ですか?」
 眼鏡をかけた真面目そうな整った顔の少年である。髪は青緑でこれも奇麗に整えている。Aクラス、そして学年の次席でもある久保利光である。彼が天道の言葉にすぐに問い返した。
「あの緑の者達のことを御存知なんですか」
「また言うがよく知っている」
 天道は利光にも答えた。
「だからこそ君達の力にもなれる」
「そうらしいね」
「それはわかったけれど」
 それでもだとだ。また言う優子だった。
 天道に対してだ。首を捻りながら尋ねる。
「天道さん、お名前はわかりましたけれど」
「俺は何者か、か」
「天の道を往き総てを司る方なんですか」
「その通りだ」
「本来のお仕事は脚本家さんですか?」
 優子は何故かこんなことを言った。
「若しかして」
「よく似ていると言われる」
「けれど違うんですね」
「職業は。今は学生だ」
 この学園にいるからだった。まさにだ。
「そう思っていてくれ」
「納得できると思います?その言葉で」
「納得しないか」
「あの、だから強引過ぎるんですよ」
 優子は天道に真面目に突っ込み返した。
「天道さんが悪い人でも私達の敵でもないことはわかりましたけれど」
「僕はそれだけわかればいいけれどね」
「僕もだ」
 愛子と利光は納得していた。
「天道さん面白いし」
「こうした人がいてくれてもいいじゃないか」
「まああんた達が納得するのならね」
 どうかとだ。また優子は二人の話を聞きながら述べた。
「私がどうこう言っても何か仕方がないし」
「そう」
 濃いパープルのロングヘアに髪と同じ色の神秘的な瞳を持つ物静かな雰囲気の少女だtyた。そこには一見すると楚々とした美貌がある。脚は黒いストッキングで覆っている。
 Aクラス代表にして学年主席、霧島翔子だ。
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその四

 翔子は天道のところに来てだ。こう言ったのである。
「天道さんは多分」
「俺がか」
「そう。これまで色々な戦いの中を生きてきた」
 その天道を見ての言葉である。
「沢山の悲しみや苦しみも見てきた」
「それは」
「言いたくないのならいい」
 天道を気遣ってだ。翔子はそれはいいとした。
「けれどその中で多くのものを身に着けてきた」
「色々あったのは否定しない」
 それは天道自身もだった。その多くの戦いの中でだ。
「俺は仮面ライダーだ。戦いの中で生きる存在だ」
「仮面ライダー」
「後々わかる。仮面ライダーとは何かが」
 こう言うのだった。Aクラスの面々に。
「そして君達が今直面している現実についてもだ」
「というとあれですね」
 利光がすぐに応える。
「あの緑色の一団」
「あの連中のことを御存知みたいですけれど」
「本当にちょっと教えてくれないですか?」
 優子と愛子が天道にそのことを頼む。
「あの連中が一体何者かを」
「とにかく今あちこちでゲリラ戦ふっかけられて困ってるんですよ」
「人間だ」
 彼女達の問いにだ。まずはこう答える天道だった。
「奴等もまた人間は」
「えっ、まさかそんな」
 あの者達は人間だと言われてだ。優子は目をしばたかせて天道に問い返した。
「あの連中が人間なんて」
「本体の姿形も化け物のままなのですが」
 利光もだ。流石に天道の今の言葉は容易には信じられなかった。
 それでだ。こう言ったのである。いささか驚いた様な顔になって。
「それでもなのですか」
「確かに姿形は違う」
 天道もそのことは言う。
「だがそれでもだ」
「人間なんですか。連中も」
「姿形の問題ではない」
 天道は今度は愛子に応える形で述べる。
「心が人間のものならだ」
「それで人間だっていうんですね」
「その通りだ。人は心で人となる」
「ううん、深いですね」
 愛子は天道のその言葉を聞いてだ。腕を組みだ。 
 唸る様にしてだ。こう言ったのである。
「じゃあ僕達は人間と戦っているんですね」
「その通りだ。そして見られている」
「何にですか」 
 翔子の言葉は敬語になっている。天道の方が年上でしかも敬意を払うべき相手と考えたからだ。それでだ。天道に対して敬語を使って尋ねたのである。
「私達は何に見られているんですか」
「神だ」
「神、ですか」
「まずは全クラスの生徒達を集めることだ」
 天道は次には戦略戦術を述べた。
「そのうえで人間に当たるとしよう」
「あの緑の一団にですね」
「ワーム、そしてネイティブにだ」
 利光が眼鏡に手をやって述べた言葉に返してだ。天道はその緑の一団の名前をだ。彼等にはじめて話したのだった。
 その天道の提案はだ。彼がしただけではなかった。
 明久は学校の屋上に出ていた。そしてそこでだ。
 雄二にだ。こう話すのだった。
「神代さんは確かに突拍子もない人だけれどね」
「だが。それでもだ」
「何かさ。今の文月学園のことよくわかってない?」
「奇天烈な人だが戦い方は知ってるな」
「そうだよね。だからかな」
「ああ。AクラスからFクラスの全てのクラスを糾合する」
 これこそだ。雄二が考えていることだった。
 そのことを述べてだった。彼は明久にさらに言う。
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその五

「そのうえで奴等に決戦を挑む」
「ワーム、そしてネイティブにね」
「そのことだけれど」
 不意にだ。二人のところにだ。
 翔子はいきなり来た。そしてこう二人に話したのである。
「私達のところでも同じ」
「ああ、Aクラスにも仮面ライダーの人来たんだったね」
「確か天道さんだったか?」
「そう。その天道さんが言っていた」
 こう二人に話す翔子だった。
「全てのクラスの戦力を一つにして」
「そのうえでだよね」
「ワーム、そしてネイティブと決戦か」
「あの人はただ偉そうなだけじゃない」
 翔子は天道のそうしたところを既に見抜いていた。
「とても深くて。人がわかっている人」
「神代さんもだな」
 雄二は神代について話した。
「あの人から聞いた話だがな」
「あの人は昔そのワームだったらしいんだよ」 
 明久が話す。
「それでもね。あの人はね」
「人間として一度死んで向こうの世界の神様に甦らせてもらって今は人間に戻っているんだ」
「それで仮面ライダーとして戦っているっていうんだ」
「あの人も凄く深い人だ」
「あの人達は信じられる」
 翔子はこうも言った。
「一緒に戦える」
「そうだな。仮面ライダーか」
 雄二は屋上のフェンスに背中をもたらせかけてだ。腕を組んで述べた。
「人間として戦う人達か」
「何故人間なのかだよね」
 明久も今は真剣な顔で少し俯いて述べる。屋上のフェンスの傍で。
「心が人間ならって言ってたけれど」
「神代さんの話は嘘じゃないな」 
 雄二は本来ならとても信じられない話を事実だと確信して述べる。
「間違いなく本当のことだ」
「そうだよね。ワームにお姉さんを殺されて自分もワームに殺されて」
「長い間そのワームが擬態していたっていうからな」
「そんな話嘘じゃ言えないよね」
「大体あの人はどう見ても嘘を言える人じゃない」
 雄二は確信していた。このこともまた。
「誠実な人だしな。それにだ」
「それにだって?」
「御前と同じところがあるからな」
 ちらりとだ。明久を見ての言葉だった。
「御前とな」
「僕とって?」
「ああ。御前と同じであの人にもな」
 どうかというのだ。それは。
「馬鹿なところがある」
「何だよ、それって僕が馬鹿みたいじゃないか」
「馬鹿は馬鹿でもあの人の馬鹿はな」
「いい馬鹿なんだね」
「色々な辛さを知ってきた馬鹿か?」
 雄二は神代の馬鹿をこう表現した。
「背負っているものがあるな」
「そのワームだったこと。姉さんを失ったこと」
「そうしたことを経験してきた馬鹿だ」
 こう言うのである。
「沢山傷ついてもきたんだろうね」
「二回も死んだ位だからな」
「普通二回も死なない」
 翔子も言う。
「そして他のクラスのライダーの人達も」
「各クラスにだからな」
 雄二は翔子の今の言葉にすぐに応えた。
「ライダーの人が来ていてそれで」
「皆それぞれ戦いを経てきている」
「その人達がこの世界に来た」
「絶対に何かある」
「そのワームとかネイティブの黒幕だな」
 雄二はその存在について言及した。
「何者かわからないけれどな」
「スサノオっていうんだよね」 
 明久がこの名前を出す。
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその六

「連中の親玉って」
「最初はあれじゃったな」
 秀吉達が急に出て来て話す。
「世界征服を考えておったらしいが」
「それが急に変わって人間を見る様になった」
 優子は双子の弟に続いて考える顔で述べる。
「また急な路線変更ね」
「それはわかる」
 翔子は優子のいぶかしむものに答える。
「自分の計画を潰していく人間、つまり仮面ライダーに興味を持ったから」
「あれだね。スサノオは牢獄に囚われたままで思考や分身だけを外に出せるらしいから」
 利光も今はまともである。明久がいるにしても。
「世界征服も退屈凌ぎだったんだろうね」
「退屈凌ぎで世界征服ねえ」
 愛子は腕を組んで少し苦笑いになって述べる。
「また極端なことするわね」
「肉体はずっと牢獄に囚われてるから退屈で仕方がないからなのよね」
 美波も神代から聞いたことを頭の中で反芻させながら話す。
「それで世界征服よりも人間自体に興味を持った」
「世界征服は征服したら終わり・・・・・・」
 ムッツリーニはぽつりと話す。
「けれど人間との相手は」
「人間がいる限り永遠に続きますね」
 瑞希が一つの核心を衝いた。
「それこそ。人間は滅びない限り」
「考えれみればだ」
 雄二は腕を組みだ。仁王立ちして述べた。
「ワームにしてもネイティブにしても俺達を何時でも皆殺しにできる」
「うん、召喚システムに入らないで直接攻撃すればね」
 明久もそのことに突っ込みを入れた。
「学園内皆殺しだよね」
「俺も翔子もだ」
 雄二は自分だけでなく彼女の名前も出す。
「流石に化け物が相手だと誰にも勝てはしない」
「それこそ仮面ライダーでないと」
 翔子そのものずばり仮面ライダーのことを指摘した。
「体力勝負だと勝てない」
「それであえて召喚システムで相手してくれるって律儀だと思ってたけれど」
 愛子はワーム達の中でもある存在について言及した。
「特にあの色々な色の。ワームなりネイティブが脱皮した連中ね」
「瞬間的に移動できるから余計に怖いからのう」
 秀吉はその移動についても既に聞いていた。その神代から。
「クロックアップといったな」
「あっという間に出て消えるからタチ悪いって思ってたわよ」
「そう。あれが一番最悪だった」
 優子とムッツリーニが話す。
「あれでいきなり襲われてばかりだったからね」
「ずっと受け手に回ってた・・・・・・」
「けれど天道さん達からそのことを聞いたら納得できたわね」
「何とか」
「あらゆることがわかってきたのはいいことだよ」
 利光は情報を肯定的に捉えていた。
「相手の意図もわかった。なら僕達が採る行動は一つ」
「敵を迎え撃つことですね」
 瑞希は利光のその話に続いた。
「仮面ライダーの人達と一緒に」
「俺達は今回仮面ライダーの人達と共闘することになるな」
 雄二がまた言う。
「さて、具体的にどういった決戦になるかだが」
「そう。天道さん達ならいける」
 翔子はこう言ってからだ。雄二に対してとんでもないことを何気なく述べた。
「戦いに負けたら」
「どうだっていうんだ?」
「結婚」
 言いながらだ。制服のポケットから婚姻届を出してきた。もう翔子のサインと押印がある。しかも何時の間にか雄二のサインや押印までしっかりと為されている。  
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその七

 その婚姻届を見てだ。雄二は青い顔で翔子に問い返した。
「おい、負けたらまさか」
「そう。雄二と私が結婚する」
 まさにそうなるというのである。
「宜しく」
「おい、何でそうなるんだ」
「負けても気落ちしないようね」
 雄二から顔を少し逸らして頬を赤らめさせての言葉だった。
「だから」
「そんな論理が何処にあるんだ」
「ここにある」 
 とにかく強引な翔子だった。
「そういうことだから。私は負けても構わない」
「糞っ、ここは何としても勝つぞ」
 雄二の後ろに督戦隊がついた。
「いいな。ワームだろうがネイティブであろうがだ」
「まあ負けたらまた補習じゃ」
 秀吉は現実味のあることを言った。
「正直勝たねばならん戦じゃな」
「そのスサノオの思うままっていうのは癪に触るけれどね」 
 明久はこう言ってもだった。
「けれど。僕達だって意地を見せないとね」
「それに神代さんの必死さを見てたらよ」
「そうです。何か頑張らないといけないと思います」
 美波と瑞希は神代のその心根を見て既に決意していた。
「確かに凄くずれてる人だけれど」
「御心は確かな方ですから」
「そうそう。天道さんだってそうだしね」
 愛子も天道の心はもう見ていた。それ故の言葉だった。
「凄く唯我独尊な人だけれど妹さんのことを全てを賭けて守ろうとした人だし」
「若し僕が吉井君に出会わなかったら」
 利光はやはり変態だった。恋愛に関しては。
「天道さんを好きになっていたよ」
「友人としてだよね」
 ただし当の明久は気付いていない。全く。
「確かに天道さんも立派な人みたいだしね」
「うん。確かに素晴らしい人だね」
 利光はその彼を見ながら話していく。
「吉井君、君と同じで」
「とにかくよ。まずは六つのクラスが集ってよね」
 美波がまた話す。
「それでライダーの人達と作戦会議よね」
「そうそう。仮面ライダーは全部で十人いるのよね」
 優子はこの世界に来ているライダー達の話をする。
「全員がクロックアップ使えるtって聞いてるけれど」
「そのうちの二人はハイパークロックアップを使える」
 ムッツリーニはこう指摘する。
「何でも時間さえ行き来できるらしい」
「それって無敵ですよね」
 瑞希もそのハイパークロックアップには驚きを隠せない。
「時間まで動かせるって」
「それだけ手強い相手なんでしょうね。スサノオって」
 愛子はこう考えた。
「そんな能力まで必要になるなんて」
「果たして僕達で勝てるのかな」
 明久は弱気なことも言った。
「神様になんて」
「誰もがそう思うじゃろ」
 それは自然だとだ。秀吉は述べる。
「しかしそれはじゃ」
「それでもなんだ」
「うむ。あの人達も言いはせぬが」
「思ってるんだね」
「人が神と戦うのは容易なことではない」
 神、その存在について意識すれば意識する程だというのだ。
「しかしあの人達は戦っておる」
「じゃあ僕達も」
「そうだな。奴等は俺達と同じ土俵にわざわざ上がってきているんだ」 
 ここで言ったのは雄二だった。これまで以上にしっかりとした言葉だった。
「それで怖気付いていたら何にもならない」
「そう。むしろ試験召喚システムに慣れていない天道さんの方が辛い筈」
 翔子は雄二に続いた。
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその八

「けれどあの人達は何も言わずに戦うと決めてるから」
「それなら俺達もだ」
 雄二が言うとだった。ここにいる誰もが無言で頷いた。そこにだった。
 不意にだ。彼等の周りにだ。昆虫と人間を合わせた様な緑の姿の者達が出た。そうしてだ。
 彼等に一斉に襲い掛かる。その彼等を見て優子が叫んだ。
「ワーム!出て来たわね!」
「いけない。召喚システムは!」
「そこか!」
 その彼等のところにだ。いかつい顔に逞しい身体をしたスーツの男が来た。黒い髪は短く刈られそれが彼を嫌が応にも男らしく厳格に見せていた。 
 この学園の象徴とも言っていい生活指導の教師西村宗一、通称鉄人である。彼が生徒達のところにいきなり出て来た。そして彼だけではなかった。
 オレンジの左右をカールにした小柄な少女も来た。制服は文月学園の制服だ。トパーズ、いやオパールを思わせる輝きの目をしている。清水美晴、二年D組の生徒だ。
 美晴はだ。美波のところに来て言った。
「お姉様、助太刀に来ました!」
「えっ、あんたもなの」
「こんな化け物共私一人で!」
「よし、試験召喚システムの使用を許可する!」
 鉄人がそれを許そうとする。しかしその前にだ。
 ワーム達の方からだ。それをしてきた。
「くそっ、またか!」
「やっぱりこうなるのね」
 愛子は無理矢理召喚システムに入れられ苦笑いを浮かべる。だがそれは他の面々も同じだった。
 誰もが召喚され戦いの中に入る。誰もが一斉にだった。
「サモン!」
 こう叫んでだ。召喚獣を呼ぶ。明久も黒い長ランのそれを呼んでだ。
 戦いに入ろうとする。だが助っ人は美晴だけではなかった。
 ここでだ。風間が来たのである。彼は美晴に対して言う。
「遅れてすまない」
「風間さん、来てくれたんですか」
「ああ、約束だからな」
 微笑んでだ。美晴に対して言ったのである。
 彼は悠然として明久の前に来てだ。こう言った。
「俺も戦う。仮面ライダーとして君達と共に」
「頼めるか」
「はい」
 鉄人にもだ。普段の飄々としたものではなく真面目な面持ちで返す。
「任せて下さい」
「わかった。では頼む」
 こうしてだった。彼も試験召喚システムでの戦いに加わる。その彼を見てだ。
 ムッツリーニはだ。ぽつりとこう言った。
「そういえば仮面ライダーの人の召喚システムは」
「それが問題だね」
 利光もどういったものになるか。興味があった。
「僕達は普通は二頭身の小さいもので妖怪のみ等身大だが」
「それがどうなるかじゃな」
 秀吉もかなり興味があった。
「風間さんだけでなくライダーの方の召喚システムはどういったものか」
「戦闘力?まあ学力も気になるところね」
「そうです。正直かなり見たいです」
 美波と美晴も注目する。その彼等の視線を背中に浴びながら。
 風間は変身に入る。その右手に銃を出し掲げてだ。そこに水色の蜻蛉の形のシステムが留まりだ。
 風間は一言だ。こう言った。
「変身」
「変身!?」
「サモンじゃなくて」
「変身」
「そう言ったけれど」
 明久達が言うのと共にだ。彼の身体を少しずつ、新しい皮膚が覆う様にしてだ。鎧の如き重厚な姿になった。その姿は明久達の召喚獣と違い風間と同じ位だ。等身も違う。
 そして彼の前に立つワームもその仮面ライダードレイクと対峙する時は同じ大きさになっている。それを見てだ。
 明久達はこう話すのだった。
「何か大きさが違う」
「ワームとかネイティブって大きさも合わせてくれるんだ」
「何か意外と紳士的?」
「そんな感じ?」
 何気にそうしたことにも気付いた。そのドレイクがワーム達と対峙する。 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその九

 その学力は。
「これは」
「かなりね」
「ああ、俺達が束になっても適わないな」
 桁が一つ違っていた。それは優に鉄人、いや校長並はあった。それを見てだ。明久達は唖然として言うのだった。
「仮面ライダーって頭も必要なんだね」
「生き残るには頭脳も必要か」
「確か風間さんも大学出てますよ」
 美晴がこのことを話す。
「城北大学、あちらの大学の芸術学部卒業だそうです」
「じゃあ特に強いのは美術なんだ」
 明久はすぐにそのことがわかった。
「ええと、じゃあ美波とそこは似てるかな」
「ええ、うち絵は得意だから」
 何気にそうしたことが得意な美波である。
「けれど。仮面ライダーってこんなに強いの」
「あれなら私達が束にならないと勝てない進化したワームやネイティブにも勝てますね」
「そうね」
 とにかくだ。普通のワーム達には楽勝であることはわかった。実際にだ。
 銃撃の形でノーマルのワーム達を無傷で蹴散らしていく。それを見てだ。
 雄二はだ。仲間達に言った。
「よし、俺達もだ」
「ああ、やろう」
「戦いだ!」
 こうしてだった。彼等もだ。ワーム達との戦いに入る。ドレイクと共にだ。
 ドレイクは普通のワーム達を銃撃の形でだ。テストで次々と倒していく。まさに圧倒的だった。
 だが、だった。彼の前に立つ最後のワームがだ。
 脱皮してだ。そして赤い百足を思わせる姿になった。そのワームを見て明久が言う。
「あれっ、レッドムカデ?」
「馬鹿、それは世界が違うぞ」
 雄二がすぐにその明久に突っ込みを入れる。
「あれは人造人間の人達の世界だぞ」
「あっ、そうだったんだ」
「そうだ。また違う世界の存在だ」
 こう注釈を入れるのだった。
「もっとも造物主は同じ方だがな」
「何でそこ敬語なの?」
「あの人達仮面ライダーさえ生み出した偉大な方だからだ」
 流石にその偉大な賢者だけは敬語にならざるを得なかった。さしもの雄二といってもだ。
 そうしたやり取りも入れてだ。その百足を思わせるワームはドレイクに向かう。それを受けてドレイクはだ。静かにこう言ったのである。
「キャストオフ」
『キャストオフ』
 機械声もしてだ。ドレイクのその鎧が四方八方に吹き飛ぶ。そうしてその中から先程とはうって変わったスタイリッシュなライダーが現れたのである。
 そのライダーを見てだ。瑞希が呆然として言った。
「何か。凄く」
「強いぞ、あれは」
 鉄人もすぐにわかった。そのことが。
「あの仮面ライダーは」
「ああ。それも相当な」
 雄二もそう見た。実際にだ。
 ワームが消えた。それを受けてだ。ドレイクはまた言った。
「クロックアップ」
「消えた!」
「風間さんも!」
 確かに二人は消えた。だがその中でだ。
 彼等はだ。闘っていたのだ。互いに超高速で動きながら攻防を繰り返す。
 だが、だ。ドレイクの前への蹴りがワームを吹き飛ばす。それを受けてだ。
 ワームは動きを止めた。派手に吹き飛ばされコンクリートに叩きつけられてだ。
 姿も現す。それは明久達も見た。
「出て来たぞ!」
「それに風間さんも!」
 ドレイクも動きを止めた。クロックアップを解除したのだ。そうしてだ。
 銃を両手に構えて起き上がってきたワームに狙いを定めて。
「ライダーシューティング」
『ライダーシューティング』
 また機械声がしてだ。それと共に。
 銃からこれまで以上の光が放たれ。それがワームを撃ち。
 大きく吹き飛ばして消し去った。それで終わりだった。
 戦いが終わってからだ。風間は言うのだった。
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその十

「死にはしないんだな」
「そうだ。この学園の生徒は零点になれば補習だが」
 戦いを終えた鉄人がその風間に話す。
「だがワーム達はだ」
「何処かに消えるんだな」
「そうだ。何処かで補習を受けているのだろう」
 これは鉄人の推測である。
「そのスサノオとやらにな」
「成程。そうなのか」
「それでだが」
 鉄人はここで風間をよく見た。そのうえでの言葉は。
「君は何もないか」
「特に深い傷は受けていない」
「そうだな。あれだけの戦闘を経てもか」
「これでも大学を卒業してるんでね」
 風間は笑って鉄人にもこのことを話す。
「城北大学だ。こっちの世界にはないか」
「存在しないが中々レベルの高い大学の様だな」
「仮面ライダーでそこの卒業生は多いんだよ」
 風間はさらに話す。
「まあそういうことでな」
「そうか。事情はわかった」
「で、他の子達は」
「はい、無事です」
「何ともありません」
 明久と美波が応える。見れば全員補習は免れている。
「僕達に来たのは普通のワームばかりでしたし」
「それも大半が風間さんにいっちゃいましたから」
「そうか。それは何よりだ」
 風間は彼等の言葉を聞いて爽やかな笑みになった。その彼にだ。
 美晴がだ。ふとした感じで言ってきたのだった。
「あの」
「どうしたんだ、今度は」
「実は聞きそびれていたんですけれど」
 こうだ。風間にそっと近寄りながら尋ねたのである。
「風間さんがいつも背負っているそのバイオリンケースは」
「ああ、これか」
「それって何なんですか?」
 その黒いバイオリンケースを見ながら尋ねていく。
「風間さんは芸術学部ですけれど音楽は」
「ああ、歌うけれどバイオリンは弾かない」
 それは風間自身が言う。
「楽器はギターだな」
「それで何でバイオリンなんですか?」
「俺の商売道具が入ってるんだよ」
 風間は微笑んでこう美晴に話す。
「ここにな」
「バイオリンケースにですか」
「俺の職業はメイクアップアーチスト」
 このことはこの世界では実ははじめて話すことだった。
「この中には化粧道具が全部入っている」
「そうだったんですか」
「試しに見てみるか?俺のメイクアップ。名付けて」
 不敵な笑みにもなってみせてだ。風間は話す。
「風間流メイクアップを」
「けれどお金かかりますよね」
 美晴はこう言って断ろうとした。少なくともプロのメイクアップなぞしては高校生の小遣いでは払いきれないと思ってだ。それで断ろうとしたのである。
 だがここでだ。風間はこう言ったのだった。
「いや、ここでは金はいい」
「いいんですか?」
「君達は仲間だからな。金は貰わないさ」
「仲間だからですか」
「それに君達はまだ高校生だ」
 子供だということも踏まえての言葉だった。
「いいさ。メイクアップして欲しい娘は一歩前に出てくれ」
「一歩ですか」
「そう、一歩でいい」
 こう美晴に話す。
「誰でもいい」
「ええと。それじゃあ」
 まずだ。美晴が応えてだ。
「お姉様に少しでも奇麗な顔を見せたいですし」
「何か面白そうじゃない」
 愛子は興味から一歩前に出た。
「僕もお願いします」
「ううんと。うちもやっぱり」
「女の子ですから」
 美波と瑞希は少しだけ理由をつけてだった。
 

 

第十一話 転校生とキャストオフとメイクアップその十一

「どんなのか見せて下さい」
「風間さんのそのメイクアップ」
「私も。何か最近秀吉の方が女の子らしいって言われるし」
 優子は双子の妹ではなく弟を意識してだった。
「御願いします」
「私は勿論」
 そして翔子もだった。前に出て言う。
「雄二とのウェディングの時のお化粧をお願いします」
「おい、何でその時なんだ」
「結婚式は女の晴れ舞台」
 翔子は雄二の抗議に頬を赤らめさせその頬に両手を添えて恥ずかしそうに話す。
「だから」
「くっ、もう決まっているっていうのか」
「許婚だから」
 翔子はあくまでそれを言う。
「御願いします」
「そこの君はいいのかい?」 
 風間は女の子の他に秀吉も見ていた。
「ああ、君は男か」
「わかってくれるのか」
「わかるさ。その外見を見ればな」
「ううむ、風間さんは違いがわかる御仁か」
「仕事柄な。見慣れてるからな」
 それでわかるというのだ。
「それじゃあ君はいいな」
「申し訳ない」
「よし、じゃあはじまるか」
 バイオリンケースを無造作に地面に置くとそれだけでケースが開きだ。そうして。
 風間は女の子達の間を駆け抜けた。その一瞬の間で。尚ここでもう一人前につまづいたが彼も巻き込んだ。
 女の子達の顔が変わった。顔立ちのよさはそのままだが遥かに華やかになって。
 そして彼女達それぞれにだ。手鏡を投げ渡して言うのだった。
「さあ、見てくれ」
「えっ、これが私ですか」
「あの、凄過ぎるんですけれど」
「ここまで奇麗になるなんて」
 美晴も美波も瑞希もだ。鏡に映る自分の顔を見て唖然となる。そこには普段よりも三倍以上奇麗な自分自身がいた。
 その自分達を見てだ。驚いているのだ。
 愛子もだ。鏡で自分の顔を見てからだ。ムッツリーニに対して尋ねる。
「どう?今の僕」
「赤ザク・・・・・・」
 ムッツリーニは自分の鼻を手で押さえながら答える。
「いつもの三倍」
「いけてるのに」
「風間さんもう犯罪」
 最高の褒め言葉だった。
「凄過ぎる」
「おいおい、それは褒め過ぎじゃないか?」
「けれど本当に凄い」
 ムッツリーニはまだ言う。
「これは風間流メイクアップ」
「そうさ。美を極限に引き出すものだ」
 まさにそうだと話す風間だった。
「今回も成功みたいだな」
「はい、こんなメイクはじめてです」
 優子もだ。自分の顔を手鏡で見ながら応える。
「風間さんって天才ですか」
「ああ、天才だ」
 このことに関してはだと。風間は誇らしげに笑って言い切る。
「カリスマメイクアップアーチストだからな」
「それはいいんですけれど」
 だが、だ。ここでだ。明久がこう言ってきた。
「あの、風間さん」
「ええと。吉井君だったかな」
「はい、そうです」
「どうしたんだい、一体」
「何で僕もなんですか?」
 見れば彼もメイクアップされていた。それも実に見事に。
「女の子だけじゃないんですか?」
「いや、前に出たからね」
「あの、それは」
 彼はたまたまつまづいただけだ。しかしそのせいで、だったのだ。
 自分の顔を風間から手渡された手鏡で見ながらだ。こう言うのだった。
「これじゃあ完全に女の子じゃないですか」
「いや、しかしこれは」
「かなりの腕前だな」
 秀吉と雄二はメイクの方に注目していた。
「これがカリスマの技術なのじゃな」
「男の俺が見ても凄いな」
 彼等は素直に感嘆していた。しかしだった。
 利光だけは違っていた。今の明久を見てムッツリーニにそっと近付きだ。
 小声でだ。こう囁いたのである。
「今の吉井君の写真は」
「もう撮った」
 ムッツリーニはカメラを見せながら利光に答える。
「安心するといい」
「有り難う。じゃあ後で買わせてもらうよ」
「うん」
 そしてだ。利光だけでなくだ。
 美晴もだ。ムッツリーニに近付いてそっと尋ねるのだった。
「お姉様の今のお写真は」
「撮ってある」
 美波も既にチェック済みだった。
「後で」
「はい、わかりました」
「メイクが必要なら言ってくれ」
 風間は彼等のそうした状況は見ないまま言う。
「何時でも引き受けるからな」
「はい、お願いします」
 瑞希が目をきらきらさせながら風間の言葉に応える。
「このメイクなら絶対に」
「狙えるわ」 
 美波はもう相手を見ていた。
「風間さんっていう強い味方が来てくれたから」
「幾ら吉井君でも」
「あれっ、何でかな」
 明久はこれには気付いた。ふと身震いをして言う。
「寒気がするけれど」
「気のせいじゃないのかい?」
 風間がこう彼に返す。しかし彼は今見られていた。危険な六つの、三色の目に。気付かない方が幸せなこともあるのである。


第十一話   完


                       2011・10・14
 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その一

                          第十二話  ワームと運動会と体操服
 ライダー達が文月学園に生徒として編入して数日が経っていた。この日は矢車と影山がだ。Eクラスにおいてこんなことを言っていた。
「どうも多いな」
「そうだよね。ワームがひっきりなしだよ」
「拠点があるな」
 矢車は鋭い顔でだ。こう言った。
「敵の拠点が」
「それは一体何処なのか」
「それが問題だが」
「兄貴は何処にあると思う?」
 影山は腕を組み自分の席に座る矢車に尋ねた。彼等は今は学生服を着ている。そうしてそのうえでだ。二人で話をしているのである。
「ワームの奴等の本拠地は」
「この学園にはない」
 矢車は鋭い目で断言した。
「これだけ隈なく探してもないからな」
「そうだね。本当にないね」
「どの部屋も探した」
 それこそだ。ライダー達は学園内のあらゆる場所を探し回った。しかしだったのだ。
 怪しい場所はなかった。それで言うのである。
「だとすればだ」
「校外に拠点を置いてそこからこの学園を攻めている」
「そうなるな」
「問題はそれが何処かだけれど」
「この世界で奴等が隠れやすい場所だ」
 矢車は言った。
「そこに拠点がある」
「えっ、この学園の中にいるんじゃないんですか?」
「俺達てっきりここに奴等が潜んでるって思ってましたけど」
「それであちこち探したんですけれど」
「違うんですか」
「そうだ。違う」
 矢車は彼等の話に急いで尋ねたE組の面々にも答える。
「君達は俺達よりずっとこの学園に詳しいな」
「ええ、お言葉ですが」
「僕達この学園の生徒ですし」
「この学園に一年以上いますし」
「ですから」
「その君達から見てだ」
 矢車は腕を組んだままだ。冷静な口調で彼等に問うた。
「校内に怪しい場所はなかったな」
「ええと。何ていいますか」
「全くありません」
「というか何処にいても急に襲い掛かってきますし」
「ゲリラみたいに」
「そうだな。ゲリラだ」
 矢車はそのことについても言及した。
「ゲリラは地の利があるだけでなく何処かの拠点を置いている」
「そしてその拠点がですか」
「校内にはない」
「何処か別の場所にあってそこから私達に攻撃を仕掛けている」
「そうなんですか」
「拠点は必ずある」
 矢車の話は続く。
「問題は何処にあるかだが」
「ええと、それじゃあ?」
「校外も探し回って突き止めますか」
「そうするんですか?」
「それが一番なんだけれどね」
 影山もだ。クラスメイト達に話す。E組は普通に古い木造の校舎で通用する。F組の様に極端なものはない。まだこのクラスはまともだった。
 そのクラスの中でだ。彼は言うのだった。
「けれどそれだと時間がかかるし。それに」
「それに?」
「それにといいますと」
「君達は自分達のアジトを探そうとする奴等はどうするかな」
 影山が今尋ねることはこのことだった。
「その場合は」
「そりゃまあ妨害します」
「攻撃とか仕掛けて邪魔して」
「アジトを見つけさせません」
「見つけられたらやばいですから」
「そういうことだよ」
 こうクラスメイト達に話すのだった。
 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その二

「それだけで派手な戦いになって収拾がつかなくなるからね」
「じゃあどうすればいいんですか?」
「ここは」
「もうすぐ運動会がある」
 また矢車が言う。
「学園内の全員が集るな」
「運動会?」
「それに一体何が」
「全員が集る大会だ」
 矢車が言うのはこのことだった。
「ならば必ず」
「ワームやネイティブが攻撃を仕掛けて来る」
「そしてそこで、ですか」
「敵をですか」
「そうだ。一人だけでもわざと逃がす」
 矢車は腕を組んだまま言う。
「そうして敵のアジトの場所を突き止める」
「ううん、何か凄いですね」
「そこまで考えてなんですか」
「戦うものなんですね」
「これまで色々な奴等と戦ってきた」
 矢車は過去の経験から話す。
「だからだ。こうしたこともだ」
「考えていかないといけないからね」
 影山もクラスメイト達に話す。
「少なくとも戦略は戦術は俺達で考えていくから」
「君達も頼む」
「はい、わかってます」
「ワームやネイティブがどれだけ来ても」
「凌いでみせます」
 Eクラスの面々もだ。二人に応えて意を決するのだった。かくしてだ。
 校長もだ。そのことを校長室で鉄人から聞いてだ。楽しそうに笑って言うのだった。
「戦闘力、それに勉強だけじゃないってことだね」
「流石と言うべきでしょうか」
 鉄人もだ。矢車達のその考えをだ。校長に報告しながら言う。
「運動会を利用して罠を張るとは」
「正直あたしもね」
「校長も?」
「今回の運動会は中止も考えていたんだよ」
「そうだったのですか」
「連中が五月蝿いからね」
 ワームだった。やはり彼等だった。
「だからね。今回はって思ったけれど」
「それでもですか」
「そうした考えがあるんだね」
 今度は感心する顔での言葉だった。
「あたしも目から鱗だよ」
「そうでしたか」
「乗るよ」
 矢車達の考えにだ。そうするというのだ。
「そうして是非連中のアジトを突き止めるよ」
「そのうえで、ですか」
「あの鬱陶しい連中をこの世界から追い出したいね」
「連中と戦うことによって生徒の学力があがっていますが」
「戦いを通じて能力があがっていく」 
 校長は考える目になって述べた。
「それが神様の考えだとしてもね」
「それでもですか」
「あたし達は人間だよ。神様は敬うけれど」
 だが、だとだ。校長は強い顔で言うのである。
「駒みたいに扱われるのは嫌だからね」
「人は自分の力でやっていくということですね」
「ああ、そうだよ」
 だからだとだ。校長も言うのである。
「乗らないよ。そうした考えにはね」
「学力があがることは」
「そんなのは自分達でやっていくものだよ」
 スサノオの計略やワーム、ネイティブとの戦いによってではないというのだ。
「だからね。連中はね」
「この世界からはですか」
「追い出すよ」
 これが校長の考えだった。
「そうするよ」
「わかりました。それでは」
「さて、あたし達も戦うよ」
 校長達もだ。そうするというのだ。 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その三

「丁度新しいジャージも買ったところだしね」
「そうですね。私もまた」
「あんたの場合は運動不足はないだろうけれど」
 それはなかった。鉄人の場合は。
「思う存分暴れてくれるね」
「御期待下さい」
 こうしてだった。運動会の開催が正式に決められる。それを受けてだ。
 こちらの世界にだ。彼等も来た。天道がその彼等を迎えていた。
 そうしてだ。彼等にこう言うのだった。
「よく来てくれた」
「構わぬ」
 幸村がだ。楽しげに笑って天道に返す。
「面白そうだしな」
「ええと。学校の成績に基いて戦うんですよね」
 宗朗は天道にこのことについて尋ねる。
「召喚獣を出して」
「そうだ。ただ俺達の戦う姿はだ」
「それぞれの戦う時の姿ですか」
「俺なら仮面ライダーの姿になる」
 天道は具体的に話す。
「そして君達ならばだ」
「それぞれの武器を持った姿になって戦う」
「そうなのですね」
 千姫と半蔵もそのことがわかった。
「わかったわ。それなら」
「戦いに加えさせてもらいます」
「それはそうと皆さん成績は大丈夫でして?」 
 兼続は早速核心を衝く。
「学問が勝負だと聞いてますけれど」
「大化の改新は何年じゃ?」
「六四五年ですわ」
 幸村の問いにすぐに答える。
「これでも上杉家の神童でしてよ」
「ふむ。つまりあれか」
「学校の成績はよくてもなのですね」
 幸村と又兵衛は彼女の事情をすぐに理解した。
「そういう奴は結構おるからのう」
「学校の成績だけではわからないということの証左ですね」
「そこ、五月蝿いですわ」
 兼続も二人の話を聞いてすぐに突っ込みを入れる。
「ちゃんと戦力になりましてよ」
「それならいい」
 天道はそんな兼続も何なく受け入れる。
「宜しく頼む」
「器が大きいな、君は」
 そんな天道の言葉にだ。慶彦はそうしたものを感じ取っていた。
「だからこそここまで戦えるのか」
「少なくとも生きてきた」
 そうだとだ。天道は慶彦にこう返した。
「そしてその中で見てきた」
「そうだというんだね」
「俺は自分の器のことはいい」
 そうしたことには構わないというのだ。
「俺はただだ」
「戦いその中で生きてきた」
「それだけのことだ」
 こう言うだけだった。天道はその彼等も呼んだのだ。その中でだ。
 十兵衛がだ。文月学園に向かいながら言うのだった。
「ええと。こっちの世界の制服着るの?」
「そうなる」
 実際に文月学園の制服を着てだ。天道は答える。
「君達も転入生ということになる」
「わかったわ」
 十兵衛はにこにことして述べる。
「それじゃあね」
「私もそうなのか」
 ダルタニャンも言う。
「やはりこの世界の」
「当然だ」
 天道はダルタニャンにも述べた。
「その制服だ」
「貴殿等が今着ているその制服か」
「その女のものになる」
「わかった」
 ここまで聞いてだ。ダルタニャンも頷く。
 そしてそのうえでだ。彼女はこう言った。
「思う存分戦わせてもらう」
「今回の戦いは学力に基く」
「勉強をしておいてよかったですね」
 胸朗は微笑んでこんなことも述べた。
 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その四

「さもなければどうなっていたか」
「宗朗はね」
 何故かだ。彼のことを千姫が話す。
「文武両道で学問もできるのよ」
「そうなのか」
「学年でトップクラスで。凄いんだから」
「それはわかった」
「納得したわね」
「しかし。それを本人が言わずにだ」
 天道はその千姫に対して突っ込みを入れて述べる。
「君が言うのか」
「むっ、それがどうかしたの!?」
「しておるわ」
 天道ではなく幸村が文句をつける顔で突っ込む。
「全く。御主をきたら」
「私がどうしたのというのよ」
「わかりやすい素直でない娘だからのう」
「私は別に」
 そう言われてだ。狼狽を見せて返す千姫だった。
「ただ事実を説明しただけで」
「それだけにしては狼狽し過ぎじゃろ」
「気のせいよ。私は宗朗なんて別に」
 千姫は嘘が下手だ。それもかなり。
「何も思っていないわよ。私を侮辱するつもり!?」
「別にわらわは何も言ってはおらんぞ」
「いいえ、言っているわ」
 最早言い掛かりだった。そうでもしないと言い繕えないからだ。
「はっきりとね」
「言っておらぬぞ」
「私はね。宗朗のことなんか何とも思っていないんだから」
「だから言っておるではないか」
「何処が言ってるのよ」
「やれやれだな」
 そんな千姫にだ。兄の慶彦は呆れる顔だった。そのうえでのぼやきだった。
「全く。子供の頃から嘘が吐けないからな」
「お兄様までそんなことを言って」
「いや、この場合は慶彦が正しいぞ」
 幸村は醒めた目で慶彦に突っ込み返す。
「御主はどう見てもじゃ。宗朗のことがじゃ」
「全く。とんだ濡れ衣よ」
 まだこう言う千姫だった。しかしである。
 そんな話をしているうちに彼等も文月学園に着いた。そのうえで運動会と戦いに備えるのだった。
 運動会は次の日だった。その次の日にだ。 
 全員体操服姿で参加していた。ただしだ。
 ライダー達はジャージだ。そのジャージ姿を見てだ。
 F組の面々がだ。こう神代に尋ねた。彼は相変わらず豪奢な椅子に座り爺やを控えさせてだ。グラウンドにあるその席で優雅に紅茶を飲んでいた。
 明久がだ。その神代に対して言う。
「あの、神代さん」
「何だ?」
「紫のジャージですか」
「それがどうかしたのか?」
「よくそんなジャージありましたね」
「俺の色は紫だ」
 神代のライダーとしての色である。
「だから何の問題もない筈だ」
「それはそうですけれど」
「何か不都合があるのか」
「何かやたら派手なんですけれど」
 ただの紫ではない。ラメまで入っている。その何処かのタレント事務所のステージ衣装の様なジャージを見てだ。明久は呆然として言うのである。
「それで一体何処で売ってたんですか?」
「売っているものではない」
 神代は胸を張ってそのことは否定した。
「これはオーダーメイトだ」
「オーダーメイト?」
「特別に注文して作らせたのだ」
 そうしてできたジャージだというのである。
「俺の為だけにある特別のジャージなのだ」
「そうだったんですか」
「そしてだ」
 神代から明久にこう言う。
「我が友アッキーヒサよ」
「アッキーヒサ、ですか」
「そうだ。我が誇らしき友よ」
 何時の間にかだ。彼等は完全に友人になっていた。
 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その五

「この戦いは間違いなく大きな戦いになる」
「はい。何か僕の呼び名何時の間にか決まってますけれど」
「その戦いにおいては力を集結させなければならない」
「それはわかります」
 明久もだ。それはだった。
 だが、だ。それでも彼はこう言うのだった。
「けれど何か人増えていません?」
「それは誰のことですの?」
 文月学園の体操服姿でハンマーを持っている兼続が明久に突っ込みを入れた。
「怪しい人がいるとでも。まさかそれは」
「君のことなんだけれど」
 明久は呆然としながらその兼続に突っ込みを入れる。それぞれのクラスで分かれたクラス対抗の運動会でだ。彼女はF組に入れられたのだ。
「ええと。何者なのかな」
「わたくしの名前は直江兼続。侍でしてよ」
「侍なんだ」
「ええ。神代さんと同じくわたくしの世界から来ていますのよ」
「そうなんだ」
「そうですわ。それにしても」
 ここでだ。兼続はだ。D組の方を見てだ。そのうえでそこにいる美春を見て言うのだった。
「あの娘、以前に何処かで」
「会ったことあるの?」
「そんな気がしますわ」
「そうなんだ」
「ええ。気のせいかしら」
「多分気のせいじゃないと思うよ」
 それはそうではないとだ。明久は兼続に述べた。
「まあ僕にもよくあることだしね」
「そうですの」
「色々なつながりがあるものだからね」
 だからあるというのだ。
「僕もひょっとしたら僕に似てる人と会っていくかも知れないし」
「ううん、そうですのね」
「まあとにかく。君も一緒に戦ってくれるんだね」
「戦ってあげますわ」
 こう答えるのが兼続だった。胸を張っての言葉だ。
「感謝しなさい」
「まああまりあてにはしないでおくか」
 雄二はそんな兼続を見てあっさりと述べた。
「こいつはかなりの馬鹿だ」
「そうじゃな。勉強はできるかも知れぬが」
 秀吉もその兼続を見て言う。
「こ奴は賢くない」
「相当酷い頭の持ち主じゃな」
「あの小さい女の子はそうでもないみたいだがな」
 雄二はBクラスのところにいる幸村を見ていた。
「相当切れるな」
「とりあえず運動会はしていこう」
 ムッツリーニはこのことについては冷静だった。
「半ズボンだからこれといって撮影することはない」
「半ズボンは駄目ですの?」
「ブルマ万歳・・・・・・」
 ぽつりとだ。兼続にも答える。
「半ズボンを決めた奴は万死に値する」
「俺への撮影はフリーダムだ」
 神代だけが胸を張っている。
「さあ、好きなだけ撮るのだ」
「あの、そういえば神代さんって」
「凄く大きくないですか?」
 美波と瑞希は席から立ち上がった神代を見て言う。
「一体どれだけあるんですか?」
「私より三十センチは高いと思うんですが」
「一八〇程か」
 神代は考える顔になり顎に右手を当てて述べる。
「俺は」
「うち一五六なんですけれど」
 美波がこう言うとだ。神代はこう彼女に返した。
「百五十ではないのか?」
「それは中身ですから」
 美波本人ではないというのだ。
 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その六

「とりあえずうちはそれだけです」
「そうなのか」
「はい、それにしても高いですね」
 見れば美波は神代を見上げていた。そこまで高いのだ。
「そういえば仮面ライダーの人って皆さん」
「背がありますよね」
 美波よりまだ小さい瑞希から見れば余計にだった。
「皆さんそうなんですか?仮面ライダーの方々は」
「おおむねそうか」
「背が高いんですね」
「まあ戦うことを考えるとな」
 雄二も己の手に右手を当てて考える顔で述べる。
「体格に恵まれた方がいいからな」
「そもそも何で仮面ライダーになったのか」
 秀吉は神代にこのことも尋ねた。
「よかったら教えてくれませんか」
「ゼクターに選ばれたのだ」
「ああ、あの蠍の」
「そうだ。俺達はそれで仮面ライダーになった」
 こう秀吉の問いに答える。
「他にもベルトのシステムでなったりする者もいるがな」
「ライダーになるのはそれぞれなんですね」
「それは本当に色々だ」
 明久にも答える。
「ただしだ。仮面ライダーであるからにはだ」
「それじゃあなんですね」
「人として戦う。それだけだ」
 こんな話をするのだった。そのうえで運動会に入る。運動会はライダーに侍達も加えただ。かなり派手なものになっていた。
 矢車もだ。E組でこんなことを言う。
「さて、それでは次もだな」
「はい、四百メートル障害物です」
「それも出られるんですよね」
「出させてもらう」
 クラスメイト達の言葉に応えながらだ。矢車は準備体操をしている。服は緑のジャージだ。
 その格好で屈伸をしつつだ。彼は言うのだった。
「さて、相棒も頑張ったな」
「ああ兄貴、トップだったぜ」
 その影山も戻ってきた。彼は灰色がかった緑のジャージだ。
「二百メートル走はな」
「よくやった。では次は俺だ」
「頼んだぜ、兄貴」
「それではです」
 又兵衛もE組だ。彼女も文月学園の体操服姿で言う。
「私の次の出番は暫く先ですし」
「あれ、又兵衛さんは一体何を」
「何をされるんですか?」
「絵を描いてみようかと」
 こうクラスメイト達に言うのだった。
「時間がありますので」
「あれっ、後藤さんって絵も描けるんですか」
「運動や勉強だけじゃないんですか」
「はい。嗜む程度ですが」
 それでもできると言う。しかしだ。
 矢車がだ。E組の面々に真剣な顔で述べた。
「止めた方がいい」
「えっ、後藤さんの絵をですか」
「描いてもらったら駄目なんですか?」
「君達は後悔することになる」
 だからだというのだ。
「いいか。止めておくことだ」
「俺もそう思うからな」
 影山は焦った感じでクラスメイト達を止める。
「本人に悪気はないんだ。けれどな」
「人間見てはいけないものがある」
「だから止めておくんだ」
「くれぐれもな」
「ええと、そうはいいますけれど」
「又兵衛さん何か描いてますよ、もう」
「何か凄い勢いでスケッチブックに」
「何なんだろう」
 Eクラスの面々の話を聞いてだ。矢車も影山も。
 そそくさとだ。顔を隠しながら彼等に告げた。
「見てはいけない」
「本当だからな!」
「矢車さんがこんなに怯えるなんて」
「影山さんまで」
「カメンライダー二人をこんなに怯えさせるって」
「一体何だっていうの?」
 彼等は首を捻るばかりだった。訳がわからずだ。しかしここで又兵衛が出してきたスケッチブックの中のその絵を見てだ。
 まずは大爆発を起こしてだ。そのうえでだった。 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その七

「な、何これ!?」
「アマゾンの怪物!?」
「いや、意次元の獣だろ」
「ええと。クトゥルフ?」
 こうまで言う者もいた。
「もう何が何だか」
「足ないし、一本もそれで」
「それで何で血を吹いているのか」
「さっぱりわからないけれど」
「不動明王です」
 仏教の退魔の怒りの仏だというのだ。
「それを描かせてもらいました」
「あの、ですから足なくて」
「何かよくわからない形で」
「しかも血を吹いてますし」
「どう見ても不動明王には」
 それではだ。何かというと。
「妖怪にしか見えません」
「クトゥルフですか?」
「言った通りの様だな」
「残念だ」
 ライダー二人は顔を背けさせたまま言う。
「彼女の絵は何かが違う」
「それも決定的にな」
「おそらく。特殊な才能だ」
「画伯っていうのか?」
 二人の話を聞いてだ。Eクラスの面々は落ち込みきったテンションで話す。
「うう、確かに強烈です」
「忘れられないものがあります」
「けれど気を取り直して」
「そうしてですね」
「そうだ。ワームやネイティブは何時来るかわからない」
「気構えはしておいてくれよ」
 矢車も影山もこのことはしっかりと言う。そうしてだった。
 彼等も彼等で競技に出ていた。会自体は派手だが平和だった。しかしだった。
 昼食が終わったその時にだ。彼等は来たのだった。
 一斉にだ。グラウンドに四方八方から殺到する。
「来た!?」
「遂に!」
「皆用意はいい!?」
「戦うぞ!」
「全員固まることだ」
 矢車が文月学園の面々に告げる。
「一クラスだけでは駄目だ」
「敵の数は多いんだ。一クラスじゃ限度がある」
 影山もこう話す。
「だからだ。今はだ」
「せめて学年全体でまとまってくれ」
「わかりました」
 翔子が応える。そして雄二もだ。
 仲間達にだ。こう告げた。
「ライダーや侍の人達を軸に円陣組むぞ!」
「円なんだ」
「そうだ。それで守りを固めてだ」
 そのうえでだとだ。雄二は明久に答える。
「敵を退けることからはじめるんだ」
「そうするんだ」
「まずはそれからだ」
「そうだ。まずは時を待つ」
 矢車もそれを言う。
「守りながらだ」
「それならだ!」
 鉄人が応え。そうしてだ。ワーム達が来るより早くだ。
「試験召喚システム承認!」
「よし、ではだ」 
 矢車は鉄人の言葉を聞くとすぐにだ。影山に対して告げた。
「行くか、相棒」
「ああ、兄貴」
 影山も矢車の言葉に応える。その二人がそれぞれの手にライダーシステムを出すとだ。
 バッタ達が来てだ。彼等の手に収まりだ。二人の仮面ライダーが出た。
 その彼等がだ。召喚システムの中においてだ。ワーム達と対峙しながら言い合うのだった。
「でははじめるか」
「わかったぜ」
 二人で敵に向かう。それに続いて。
 他のライダー達もだ。次々にだった。
「変身」
「変身!」
 十人のライダー達が変身し戦いに入る。それを見てだ。
 侍達も続く。その姿は。
「あれっ、あの人達もなんだ」
「そうなのね」
 明久と美波が侍達の召喚獣を見て言う。彼等はそのままの姿で等身も彼等のそのままだ。ただ小さいだけだ。その召喚獣でワーム達と対峙していた。
 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その八

 宗朗がその中で慶彦に対して声をかける。
「それならですね」
「そうだ。今からだ」
「ええと。何かはじめての戦い方ですけれど」
「だが学問は怠っていないな」
「はい、それは」
 千姫の言う通りだった。少なくともそのことは大丈夫だった。
「いけます」
「それならいい。それではだ」
「戦闘ですね」
「学問においてな」
 こうしてだった。彼等も戦いに入る。そうしてだった。
 本来の文月学園の生徒達もだった。雄二が言う。
「では行くか」
「そうじゃな。最近何かと圧倒されてばかりじゃが」
「行こう・・・・・・」
 雄二に木下とムッツリーニが応える。
「わし等もな」
「召喚獣を出す」
「そうだ。行くぞ」
「サモン!」
 彼等の言葉でだ。召喚獣を出してワーム達との戦闘に入るのだった。
 その中でだ。明久が言う。彼は学ランの召喚獣だ。
「いつもの十倍位かな」
「それ位よね」
 美波の召喚獣はサーベルを持っている軍服姿だ。十九世紀の軍服だ。
「数は多いけれど」
「何か。ライダーの人達がとんでもなく強いから」
「うち等にまで敵があまり来ないわね」
「それでも普段より多いよ」
 少なくとも普段の倍はいた。彼等の前にも。
「これを相手にするのはやっぱり」
「骨が折れるわよ」
「ううん、何か大変なことになってきたけれど」
「それでも弱音は言わないの」
 美波の今の言葉は厳しいものだった。
「ライダーの人達も侍の人達も戦ってるんだし」
「そうだね。それじゃあ」
「行くわよ!」
 美波が言ってだ。二人でワーム達に向かう。その科目は。
「数学ね。やったわ!」
「美波の得意科目だよね」
「これなら何とでもなるわ」
 多少の数の相手ならというのだ。
「それならよ」
「ううんと。僕の数学の点数は」
 明久はここで己の残り点数を見た。それは。
「げっ、これだけ!?」
「何よ、二百点だけなの」
「昨日の戦いも数学だったから」
 それでなのだった。
「まずいな。これは勝てないかな」
「もうあんた下がってなさい」
「えっ、けど」
「いいから下がってなさい」
 美波は多少強引に告げる。
「さもないと補習よ」
「げっ、しかも」
 明久のすぐ後ろにだ。鉄人がいた。
「鉄人もいるし」
「零点になったらわかるわよね」
「嫌になる位」
「ならここはうちに任せて。明久は他の科目で戦って」
「他の科目って言われても」
 明久は咄嗟にまだ点数のある科目を探した。それは。
「現国なら五百点あるよ」
「ならそれで戦って」
 美波は明久の話を聞いてすぐに述べた。
「うち国語系統駄目だから」
「そうだね。それじゃあ」
「文系ならわしが助太刀するぞ」
 二頭身で和服の秀吉が来た。
「ではじゃ」
「えっ、助けてくれるんだ」
「尋常な数ではない。ここは一人では無理じゃ」
「そうよね。何か増えてきてるし」
 美波は召喚獣にサーベルを振るわせながら言う。
「ここは一人じゃ無理よ」
「はい、美波さんには私が」
 彼女のところには瑞希が来た。騎士の姿でレイピアを持っている。
「それでいいですか?」
「御願いできる?洒落にならない数だし」
「勿論です。それなら」
「ええ、頼むわ」
 こちらも二人になってワーム達と戦う。次々に点数をぶつけ合ってだ。
 ワーム達を倒していく。まずは順調に勝っていく。
 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その九

 しかしだ。やはり数が違った。ワーム達は次々と出て来てだ。
 明久達を圧倒していく。彼等は一人で十人のワーム達を相手にしていた。
 その中でだ。秀吉が言った。
「ううむ、幾ら得意科目でもじゃ」
「辛いね」
「うむ、幾ら得意科目でも限度がある」
 秀吉は言いながら召喚獣でワーム達を退けていっている。
 だが、だ。彼も明久も次第に点数を減らしていっていた。美波も同じだ。
「ううん、皆も何とか持ち応えているけれど」
「このままではやばいぞ」
「まずいです。また来ました」
 瑞希の声も辛そうなものになっていた。
「これ以上は」
「補習ね」
 美波が苦い声で述べた。
「四人全員補習かしら」
「鉄人も鉄人で辛そうだけれど」
 彼も多くのワームと戦っている。しかしだった。
「このままだと皆」
「安心しろ」
「助けに来たからな!」
 だがここでだ。明久達のところにだ。仮面ライダーキックホッパーと仮面ライダーパンチホッパーが来た。即ち矢車と影山が来たのだ。
 彼等はだ。こう明久達に言う。
「俺達の相手は全員倒した」
「後はここだな」
「えっ、けれどお二人の相手のワームって」
「わし等の倍程はおったが」
「どうということはない」
 キックホッパーが素っ気無く返す。
「あの程度の数ではな」
「兄貴も俺もちゃんと大学でも勉強してきたんだ」
 二人も大卒の学力を備えているのだ。
「城北大学でな」
「あっ、その大学なんですか」
 美波はその大学の名前を聞いてすぐに言った。
「風間さんと同じで」
「同じ大学とは知らなかったがな」
「ああ、そうなんだよ」
 その通りだとだ。二人も言う。そうしてだ。
 彼等はワーム達と対峙してだ。こう彼等に告げた。
「俺達の得意科目はだ」
「何だっていけるからな」
「音楽でもいい」
「さあ、何で来るんだ」
 ワーム達はその彼等にそれぞれの科目でぶつかる。しかしだった。
 やはり彼等はライダーだった。強い。
 向かって来る彼等を次々と倒していく。全くの無傷でだ。
 そうしてだ。お互いに話すのだった。
「この程度ならな」
「どうってことはないぜ」
「しかし相棒、わかるな」
「ああ、兄貴」 
 二人並んで歩きながらだ。彼等は話す。
「敵はまだいる」
「その敵の中には」
「必ずいる」
 キックホッパーは戦いながらパンチホッパーに話していく。
「そう、脱皮する奴がだ」
「それも一人じゃないよな」
「俺達は二人だ」
 それならばだった。彼等が二人ならばだ。
「スサノオも脱皮する奴を二人用意する筈だ」
「そういえば」
 ここでだ。パンチホッパーは他のライダー達の戦いを見た。彼等はそれぞれ一対一で脱皮したワームやネイティブ達と戦っていた。それを見てだ。
 彼もだ。こうキックホッパーに話した。
「兄貴と俺と」
「俺達それぞれにだ」
「そうだよな。じゃあそろそろ」
「行くか、相棒」
「ああ、兄貴」
 二人が心で身構えているところにだ。その二人の前にだ。
 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その十

 ワームが二人来た。そしてその二人が。
「変わった!」
「脱皮しました!」
 雄二と瑞希が言う。その脱皮を見て。そしてワームは黒いだ。竜と人と合わせた姿になった。秀吉がその黒いワームを見て言うのだった。
「そうか。ブラックドラゴンじゃな」
「ギル・・・・・・」
 ムッツリーニはぽつりと呟いた。
「レッドの次はギル」
「ううむ、青か銀かと思ったのじゃが」
「いきなり凄いのが出て来た」
「その学力はどうなっておる」
 秀吉はムッツリーニにそのドラゴンワームのだ。肝心の学力について問うた。
「一体どれ位じゃ」
「凄い・・・・・・」
 見て出たその数字をだ。この言葉と共に秀吉に見せる。すると秀吉もだ。
 難しい顔になりだ。こう言うのだった。
「鉄人でも危ういぞ、これは」
「そう。やっぱりどの教科でもいける」
「矢車さんと影山さんも強いが」
 見ればだ。学力では互角だった。二人とワームは。
「しかも二人で一人ではなく一対一、いや二対二か」
「どちらが勝つかわからない」
「矢車さん、影山さん、加勢します!」
「俺達もいきます!」
 Eクラスの面々、戦いを生き残り補習になっていない彼等が二人のところに来た。
「流石にそれだけの相手ですと」
「僕達も」
「いや、いい」
 しかしだ。キックホッパーは落ち着いた口調で彼等にこう返した。
「ここは俺達に任せてくれ」
「君達もぼろぼろじゃないか。ならここは俺達に任せてくれるか?」
 パンチホッパーもだ。クラスメイト達に優しい声で告げる。
「勿論ハンマーのお嬢ちゃんもな」
「わたくしもですの?」
 兼続も応える。彼女も生き残っていた。
「ですがわたくしが加勢すれば鬼に金棒でしてよ」
「いや、君もかなり傷ついている」
「だから今は休んでいてくれ」
 こうだ。二人は兼続にも助太刀無用と告げた。
「何度も言うが俺達に任せてくれ」
「この連中はな」
「うう、そこまで言われるのなら」
 さしもの兼続もだ。二人の言葉にそう告げられてだ。
 少し憮然としながらもそれでもだ。納得した顔で頷いて言うのだった。
「矢車さんと影山さんにお任せしますわ」
「そうしてくれ。白夜の光をな」
「ここで見せてやるからな」
 こう話してだった。そのうえでだ。
 二人はだ。それぞれのワーム達と戦いに入る。互いに激しい攻防を繰り広げる。
 その中でだ。キックホッパーと戦っているワームは物理で彼に挑戦してきた。しかしだ。
 それを見てだ。キックホッパーはここぞとばかりにだ。物理の問題を猛烈な勢いで解きはじめたのだった。
「えっ、物理が!?」
「矢車さんの得意科目」
「そうだったの」
「伊達にゼクトでザビーだった訳じゃない」
 キックホッパーは物理の問題を解いていきだ。ワームを追い詰めながら話す。攻撃は蹴りになっている。
「物理もできる」
「そうだったんですか」
「あの難しい物理も得意だなんて」
「やっぱり矢車さんってできる人なんだ」
「地獄兄弟って言われていても」
「そういえば金色の人でもあったっけ」
 キックホッパーへの評価はこうしたものだった。そしてだ。
 パンチホッパーもだ漢文においてだ。
 ドラゴンワームを何なく攻め続けている。彼の得意科目はそれだった。彼についてもだ。クラスメイト達は驚きを隠せずに言うのだった。
「えっ、凄っ」
「史記全文クリアー!?」
「本場の中国人みたい」
「ああ、この時代の漢王朝と今の中国じゃかなり違うからな」
 パンチホッパーからこう彼等に話す。
 

 

第十二話 ワームと運動会と体操服その十一

「だからそこは違う」
「あっ、そうなんですか」
「そういえば中国人から見れば史記は古典か」
「そうなるのね」
「ああ、そうなんだよ」
 史記も二千年以上も前の書だ。確かにそれならば古典だ。
 その古典をだ。パンチホッパーは解読しながらだ。ドラゴンワームを追い詰めていき。キックホッパーと息を合わせ。
「やるか相棒」
「ああ、兄貴」
 こう言い合ってだ。そのうえでだ。
 二人同時にだ。ベルトのゼクターを操作し。
「ライダージャンプ」
『ライダージャンプ』
 これは二人共同じだった。だがここからが違っていた。
 キックホッパーは空中でこれをセットしたのだった。
「ライダーキック」
『ライダーキック』
 そしてだ。パンチホッパーもだった。
「ライダーパンチ」
『ライダーパンチ』
 それぞれの必殺技を繰り出してだ。二人はドラゴンワームに急降下攻撃を仕掛けた。それは即ちテストの解答を最後まで終えたということだった。
 ワームはそれぞれだ。持ち点を零点にして二人の攻撃を受け。遂にだ。
 ワーム達を倒した。その頃にはだ。
 戦いも終わっていた。勝ったのは文月学園だった。僅かに残ったワーム達が撤退していく。
 そのワーム達にだ。変身を解いた田所がザビーゼクターに告げていた。
「それならだ」
「・・・・・・・・・」 
 ザビーゼクターは無言で応えてだ。そのうえでワーム達を追わせるのだった。何はともあれこれで戦いは終わった。
 しかしだ。ここで校長はこう言うのだった。
「さて、運動会を再開しようかね」
「えっ、ワームとの戦いがあったのに!?」
「それでもなんですか!?」
「ああ、そうだよ」
 確かな顔でだ。こう生徒達に答える。
「それがどうかしたかい?」
「ですから戦いがあったのに」
「それでもなんですか」
「勝ったじゃないか。じゃあ何ともない筈だよ」
 校長は胸を張ってさえいた。そうしての言葉であった。
「違うかい、それは」
「タフだな、あんたも」
 田所もだ。その校長に対して言った。
「ここであえてそうするんだな」
「意気がないと戦いってのはやっていけないさ」
 校長も戦った。だがそれでもだ。胸を張ったままだった。
「それとも何かい?ここで止める様な意気地なしがスサノオに勝てるっていうのかい?違うと思うがね」
「そうだな」
 校長の言葉に頷いたのは天道だった。彼は落ち着いた顔でいる。
「この程度はよくあることだ」
「そっちじゃそうなんだね」
「その通りだ」
 こう校長に応える天道だった。
「だからどうということはない」
「それはあんたもじゃないのかい?」
 校長は天道の話を受けてあらためて田所に問い返した。8
「戦ってきてるんだからね」
「それはその通りだ」
「ならそれでいいね」
「俺達はいい」
 仮面ライダーやサムライ達はだというのだ。
「だが生徒達はどうなのだ」
「そんなやわな教育はしてないよ」
 校長はここでも不敵な笑みだった。
「世の中体力だからね」
「だからか」
「勉強も競争も大事さ。けれどね」
「第一は体力か」
「そうさ。だからそっちはもうあたしが保証するよ」
「だから運動会もか」
「続けるさ。それじゃあね」
 校長はだ。あらためて周りに告げたのだった。
「運動会再開だ。いいね」
「よし来た、それじゃあな」
「またやるか」
 明久と雄二が応えてだ。他の面々もだ。
 今は運動会を再開し最後まで楽しんだ。校長が言う通り彼等は少なくともやわではなかった。その体力で運動会もやり遂げたのである。


第十二話   完


                          2011・10・20 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその一

                          第十三話  デートと遊園地と鞘当て
 ザビーゼクターの追跡によりだ。ワーム達のアジトがわかった。そこは。
「遊園地だ」
「ああ、あの遊園地ですね」
 優子が天道の言葉に応える。天道は相変わらずAクラスで優雅にコーヒーを楽しんでいる。それを飲みながらこうクラスメイト達に話したのである。
「あそこにアジトがあったんですか」
「そうだ。ゼクターが教えてくれた」
 天道は話す。
「後は奴等のあのアジトを攻めるだけだ」
「それならですね」
 利光が天道の話を聞いて冷静に述べる。
「今すぐにでも僕達全員で」
「いや、それは早計だ」
 それが慶彦が止める。彼もAクラスになっているのだ。
「今僕達は運動甲斐の戦いで多くの者が点数が足りない」
「そうだ。だから今はだ」
 天道も言う。
「学力を戻すことが先決」
「それを優先させるんですね」
「万全の戦力で挑むことが勝利の秘訣だよ」
 慶彦は楽しげに笑って述べる。彼もまた席に優雅に座っている。ただし彼が飲んでいるのは抹茶だ。それを飲みながら話すのである。
「だからね」
「慎重ですね」
「戦うからには勝たないとね」
 こう利光にも述べる慶彦だった。
「だからここはそうしよう」
「わかりました。では僕も」
 他ならぬ利光自身もだとだ。とりあえずは冷静に己の眼鏡の位置を修正しながら言う。しかしだ。
 次の瞬間にだ。こんなことを言うのだった。
「吉井君と一緒に補習を」
「何でそこであいつが出て来るのよ」
 優子もそこに突っ込みを入れずにいられなかった。
「脈絡が全然ないじゃない」
「いや。僕は友人として吉井君をだ」
「だといいけれど。あんた最近怪しいわよ」
「何っ、僕の何処が怪しいのだ」
「やけにあいつのこと気にしてるけれどどうしたのよ」
「いや、僕は別に」
「ふむ。君は」
 慶彦が声をかけたのは利光ではなく優子だった。彼女に対してだ。いささか楽しげに声をかけて言う。
「どうやらそうした関係が好きなようだな」
「えっ、どういう関係をなんですか?」
「そう。中学生の頃生徒会にいて」
 楽しげにだ。優子に話していく。
「そして仲が悪いことにしている女の子と実はだったな」
「あの、それ世界が違いますから」
 優子は気まずそうに慶彦に返す。
「ですから私であって私でないので」
「ゆるい世界のことはか」
「はい、ゆりの世界のことはです」
 彼女自身には関係ないというのだ。その話をしてだ。
 今度は優子からだ。こう慶彦に言った。
「それにです。私と慶彦さんはそもそもですよ」
「事務所か」
「お互いにそういうことは言わないでおきませんか?」
「そうだな。事務所のこともあるからな」
「半蔵さんもですけれど」
 そうした対象が結構いる優子だった。秀吉もであるが。
「まあそういうことでお願いします」
「お互いに中身では色々とあるものだ」
「はい。ですから」
「何か面白い話だけれど中身は僕もね」
 愛子はこんなことを言った。
「名前を変えてあれこれとね」
「むっ、その話は止めておこう」
 利光は愛子の今の話は止めに入った。
「君もそうだが特にだ」
「そうそう。島田さんなんか四十七通りも名前があったりするからね」
「実は吉井君も坂本君も怪しいのだ」
 利光はいささか困った顔で話す。
「だからそうした話はだ」
「雄二、まさか」
 都合の悪いことにだ。その話を翔子が聞いていた。そうしてだ。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその二

 えげつないオーラを身に纏いだ。こう言うのだった。
「そうした世界に出入りしているというのだ」
「それは中身だから気にしなくていい」
 慶彦はその翔子に述べた。
「中身は彼だが彼ではないからな」
「そういえば私も」
「そう。君も中身は色々とある筈だ」
「口に言えないことも」
「だから言わないでおこう。そこまで言ったら仕方がないからね」
「わかりました」 
 流石に中身のことは翔子も素直に頷く。しかしだ。
 凄みのあるオーラを身に纏ったままでだ。こう言うことは忘れなかった。
「こっちの世界でしたら許さない」
「安心することだ。彼はそうした人間ではない」
 そのことは天道も太鼓判を押す。
「君のことを想い続けている」
「天道さんもそうしたことは」
「わかる」
 こう翔子にも答える。
「色々とあったからな」
「成程」
「さて、では今は学力を戻すことだ」
 天道は戦いの話に戻してきた。
「全員それを怠らないことだ」
「天道さんもですよね」
 愛子がその天道に話す。
「それはやっぱり」
「当然俺もだ」
 天道自身もだとだ。彼はコーヒーを飲みケーキを食べながら話す。
「それはしている」
「けれどそういうところは人には見せないんですね」
「見せるものでもない」
 こう言ってからだ。言う言葉は。
「お祖母ちゃんが言っていた」
「そのお祖母ちゃんがですね」
「白鳥は水の中で足を動かすものだとな」
「ううん、何か凄いお祖母ちゃんですね」
「だから俺はそうしている」
 天道の努力はそうしたものだった。
「君達は君達のやり方でしてくれ」
「わかりました。それじゃあ」
「今のうちに」
 Aクラスだけでなく他の面々もだ。今は学力を戻すか上げることに専念していた。それはFクラスも同じである・・・・・・筈だった。
 だがFクラスではだ。神代がだ。
 タキシードにフロックコートの姿になってだ。クラスメイト達に尋ねていた。
「どうだろうか、この姿は」
「あの、神代さん」
 瑞希がだ。その神代に呆然とした顔で尋ね返す。
「どうされたんですか?一体」
「決まっているテーマパークに行くのだな」
「はい、遊園地に」
「それならだ」
 遊園地に行くのならというのだ。神代も。
「正装で行かねばなるまい」
「遊園地に行くならですか」
「そう。俺はデートをするのだ」
「デート!?」
「ワームとの戦いに赴くんじゃなくて!?」
「デートですか」
「そうだ、デートだ」
 こうだ。瑞希だけでなく他のFクラスの面々にも話す。誰もが驚いているがその彼等になのだ。
「ミサキーヌとデートをするのだ」
「ミサキーヌって誰ですか?」
「一体」
「はい、坊ちゃんの婚約者であられる岬様のことです」
 爺やが唖然とするFクラスの面々に親切に話す。
「その方とデートをされるのです」
「それはわかったんですけれど」 
 流石の美波も目が点になっている。
「あの、それでもです」
「ミナーミよ。何かあったのか」
「はい、あのですね」
「デートのことか」
「戦うんですよね」
 目を点にさせたままだ。美波は神代に問うた。
「それでどうしてデートを」
「戦いと恋は似ている」
 神代は己の話を続ける。
「その二つを楽しむのだ」
「ううん、何が何だかもう」
 首を捻りながらだ。美波も唖然とするばかりだった。そしてだ。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその三

 その美波にもだ。神代は言うのだった。
「そして我が友ミナーミよ」
「何かその言い方も気になりますけれど」
「君も恋と戦いを同時にするといい」
「同時にですか」
「人は一つだけを楽しんでいいと誰が決めたのか」
「けれど戦いの中デートというのも」
「遊園地はどうした場所か」
 神代は美波を指差して問うた。
「答えるのだ」
「遊ぶ場所ですけれど」
「そしてデートをする場所だな」
「はい、デートスポットなのは間違いないです」
「ならばだ。楽しむことだ」
 強引にだ。こう定義付けて話すのだった。
「これでわかっただろうか」
「全然わかりません」
「頭でわからずとも心でわかる」
 神代に勝つにはだ。Fクラスの面々は人生経験が足りなかった。ただただ唖然とするばかりだった。
 その彼等にだ。神代はさらに言う。
「ミサキーヌとのデートのうえでだ」
「それでなんですね」
「そう、俺は戦いも行う」
 明久にも応えてだった。彼はタキシードを着るのだった。
 そしてだ。その中で彼は周囲に尋ねた。今度は彼が尋ねたのだ。
「君達もだ」
「僕達もっていいますと」
「デートをしないのか」
 こう尋ねたのである。
「君達もだ」
「戦いなのにですか」
 普段は冷静沈着な雄二も額に汗をかきつつ神代に尋ねる。
「それは幾ら何でも」
「ワーム、ネイティブが来れば倒す」
 こう言うのである。
「そうすればいいのだ」
「デートといいましても」
「ユッウージ、君には相手はいないのか」
「あ、相手は」
「いる」
 雄二が神代のその問いに戸惑っているとだ。ここでだ。
 何故か翔子が彼の隣にいてだ。こう言ってきたのである。
「戦いつつデート。それもいい」
「馬鹿、危ないだろうがそれは」
「危なくはない」 
 急いで言う雄二にだ。翔子はぽつりと告げる。
「安心していい」
「危ないなんてものじゃないだろ。戦うんだぞ」
「ワームやネイティブが出て来たら倒す」
 翔子は素っ気無く答える。
「それだけだから」
「それでいいのか、御前は」
「戦わない間はデートをすればいい」
 翔子が言うとだ。神代もだ。
 頷きながらだ。こう言うのだった。
「その通りだ。常に戦う訳ではないのだからな」
「非常に強引じゃが何故納得できるのじゃ?」
 秀吉は腕を組み釈然としない顔で俯きつつ呟く。
「神代さんの言うことも他のライダーの人達の言うことも」
「強引過ぎるとかえって説得力がある」
 ムッツリーニはこう述べた。
「だから」
「そういうものかのう」
「けれどそれなら」
「うち等も」
 ここで反応したのは瑞希と美波だ。二人はだ。
 即座にだ。明久をそれぞれ左右から囲んで言ってきた。
「あの、明久君よかったら」
「ま、まあ嫌ならいいのよ」
 こうそれぞれ言ってである。
「遊園地一緒に行きませんか?」
「一人じゃワーム相手に不利だからね。仕方なくよ」
「えっ、デートとかじゃないよね」
 明久はその二人にまたピントの外れたことを返す。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその四

「それでどうして」
「ですから。ワームやネイティブが一杯いるんですよ」
「それなら一人でいるより二人でいる方がいいじゃない」
「雄二、これ」
 翔子はいきなりだ。婚姻届を出して来て雄二に告げた。
「これにサインして」
「おい、何でそれなんだ」
「この前約束した」
「だからどういう約束だ」
「お化け屋敷の時」
 その時の話をだ。翔子は出したのだ。
「とは違って」
「じゃあ何なんだよ」
「若しワームとの戦いで雄二が負けたら」
 つまりだ。補習になったらというのだ。
「これにサインする」
「じゃあ俺が生き残ったらどうなるんだ」
「その時はハネムーン」
 どちらにしろ同じだった。
「お義父様からもお義母様からも許可は得た」
「何時の間に俺の両親に話したんだ!」
 流石にこれにはだ。雄二も驚きを隠せない。
「おい、何時の間にだ!」
「この前。お二人にお話したら許してくれた」
「くっ、じゃあ御前の家の方もか」
「そう。許してくれた」
 翔子は頬を赤らめさせその頬に両手を添えて言う。
「有り難いことに」
「俺にとっちゃ有り難いことじゃない!」
「ハネムーンは平壌」
「どうやって行くんだあんな独裁者の国に!」
「それは嘘でヨハネスブルグ」
「ワーム達より危ないだろうが!」
「そこでもなくて普通にバイロイト」
 ワーグナーの歌劇場のある町だった。
「バイエルン全体」
「何か急に普通になったら」
「ノイシュヴァンシュタイン城たヘーレンキムゼー城」
 バイエルン王が築いた城だ。どれもだ。
「そこを二人で行く」
「俺が補習にならなかったらか」
「そう。そして補習になったら」
 どっちにしてもだった。
「お義父さんとお義母さんに感謝」
「しなくていい!」
「いいことだ」 
 神代はだ。そんな彼等のやり取りを見ながらだ。
 温かい言葉でだ。こう言ったのである。
「愛とは何か」
「はい、愛とはですね」
「この世で最も美しい宝石だ」 
 爺やに対しても話す。
「それがこのクラスにはある」
「地獄では?」
 ムッツリーニからの言葉だ。
「この有様は」
「わしもそう思うのですが」
 秀吉もこう思っていた。
「それは違うのですか」
「三途の川がまだましに見える位の」
 明久も雄二もだ。そうしたものは見てきている。
「そうした世界じゃ・・・・・・」
「真の光、それはだ」
 だが、だ。神代はまだ言うのだった。
「こうした明るい喧騒の中にこそあるのだ」
「明るい喧騒ですか」
「サミングに拷問まであるのが」
「闇の中ではそんなものはない」
 神代はこう秀吉とムッツリーニに話す。
「光があってこそのことだ。恋路の中でのそうしたことはだ」
「ううむ、神代さんの言うことは時折深いものがあるのう」
 秀吉は腕を組んで述べる。
「わし等ではまだわからん程な」
「人生経験、それ」
 ムッツリーニはその答えをそこに見ていた。
「何しろ色々あった人だから」
「人だからこそ恋路があるのだ」
 また彼等に言う神代だった。
「我が友アッキーヒサもユッウージも幸せなのだ」
「あの、今の僕見ても言えます?」
 何故かだ。明久はだ。ぎざぎざの石畳の上に正座させられ膝の上に石をどんどん置かれていた。瑞希と美波がそうしているのだ。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその五

「あの、吉井君これって」
「この写真誰よ!」
「黒い服の女王様みたいな方は」
「何処で会ったのよ」
「少なくとも僕は知らないから!」
 それは必死に否定する明久だった。
「中身に聞いてよ!僕自身は知らないから!」
「安心するのだ。アッキーヒサよ」
 その拷問を見てもだ。神代は平然としている。
「彼女達は君を殺すつもりはない」
「あの、死にそうなんですけれど」
「最悪足がぼろぼろになるだけだ。だがそんなものは一瞬で治る」
「はい、そうした世界ですから」
「ギャグの世界に感謝しなさい」
「感謝できないから。だからその人は知らないから!」
 瑞希と美波にこう言う明久だった。見ればその黒いボンテージの女は顔に仮面をして素顔はわからなくしていたがだ。胸の大きい妖艶な女だった。
 何はともあれだ。彼等は今度は遊園地に赴くことになった。今度も二年の全クラス合同である。
 六つのクラスが一つになり遊園地に向かう中でだ。Bクラスではだ。
 生徒達がだ。こんなことを話していた。
「まさかうちは四人なんてな」
「ちょっと予想外だったよな」
「ああ、ライダーは四人で」
「しかも侍は二人か」
「派手だよな」
 見ればだ。田所や大和達がいてだ。千姫と半蔵もいる。その千姫がだ。
 半蔵にだ。こんなことを話していた。
「この世界の遊園地について何か知っているかしら」
「私達の世界のそれと違い西洋の外観で」
「それじゃあライダーの方々の世界と同じ様なものね」
「はい、そうした感じです」 
 まさにそうだとだ。半蔵破線姫に話す。
「ですから同じく楽しめますので」
「わかったわ。じゃあ宗朗と」
 Aクラスの方を見てだ。千姫は言う。
「絶対にね」
「わかりました。ではこの半蔵が全力でお助けします」
「そうしてくれるのね」
「お任せ下さい」 
 半蔵はここでも千姫の忠臣であり親友だった。
「全てはこの半蔵に」
「若しもよ」 
 千姫はいささか不安な顔になってこうも言った。
「宗朗が捕まらなかったら」
「いえ、それは」
「だからよ。若しもよ」
 こう前置きしてもだ。千姫は不安に満ちた顔で言う。
「貴女に代わりをしてもらうから」
「私がですか」
「そうよ。二人でいましょう」
 これが半蔵への言葉だった。
「お願いね」
「はい、それでは」
 千姫の言葉にだ。半蔵も微笑む。そして田所はだ。
 大和達とだ。こんなことを話していた。
「ワーム達が逃げたのはだ」
「この遊園地の何処ですか?」
「何処に逃げたのですか?」
「お化け屋敷だった」
 そこにだ。彼等は逃げ込んだというのだ。
「当然ながらあの場所が最も怪しい」
「ならまずはですか」
「そのお化け屋敷に乗り込んで」
「そのうえで」
「いや、ここは慎重にいこう」
 田所は冷静な口調で三人のライダー達に話す。
「迂闊に敵の本拠地に乗り込んでも危険なだけだ」
「ならまずはですか」
「お化け屋敷を囲む様にしてですか」
「そのうえで」
「他の場所も探していこう」
 遊園地は行く場所の宝庫だ。遊ぶべき場所だからだ。
「それでどうだ」
「そうですね。言われてみれば」
「すぐに敵地に乗り込むのもリスクが高いですね」
「俺達にとっても」
「スサノオがいる」
 彼等の永遠の敵であるだ。彼がだというのだ。
「だからだ。迂闊に入るのではなくな」
「慎重に。周囲を囲み」
「そのうえでじっくりとですね」
「敵の本拠地に乗り込む」
「そうしていこう。だがそれでもだ」
 ここでだ。こうも言う田所だった。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその六

「お化け屋敷に迂闊に入る面々もいるな」
「このBクラスにもですね」
「そうしたクラスメイトはいますね」
「やはり」
「それは未然に防ぐか。お化け屋敷についてはだ」
 どうかとだ。田所は考える顔で話していく。
「少し伝えておこう」
「わかりました。それでは暫くはですね」
「お化け屋敷は立ち寄り禁止」
「そうしますか」
 こうしてだ。お化け屋敷の話が決まった。田所達からそのことが六つのクラス全てに伝わる。そしてそれを聞いてだった。
 引率になっている鉄人もだ。言うのだった。
「成程な。流石戦いのプロだな」
「ライダーの方々ですね」
「よくわかっている」
 こうだ。他の引率の先生にもだ。鉄人は話す。
「本当にな」
「ええ。我々は教師ですから」
「戦いのプロではない」
 このことがだ。今回の問題点の一つだった。
「だが彼等は違う」
「仮面ライダー、そして侍の方々はですね」
「特に仮面ライダーだ」
 鉄人は腕を組みだ。彼等のことを話した。
「彼等は非常に大きな戦いを経てきているな」
「そして我々の世界にも来てですか」
「戦っているのだな。そして文月学園の生徒達もだ」
 ひいてはだ。彼等もだった。
「大きな戦いに入っていくな」
「まさか。命を賭けて」
「いや、それはない」
 鉄人はその危険は否定した。そしてその根拠も述べた。
「その。スサノオだが」
「仮面ライダー達が戦っているという神ですね」
「信じられないが古代に地球に、彼等の世界の地球に訪れた他文明の存在だ」
 それこそがスサノオだった。アマテラス、ツクヨミと共に来てやがて争った。
「そのスサノオは征服や殺戮自体は考えてはいないようだからな」
「では考えていることは」
「人間だな」
「人間?」
「そうだ、人間だ」
 鉄人は彼等自身のことを話に出す。
「人間を見ているのだ」
「私達自身をですか」
「文月学園の特徴が試験召喚システムだ」
「それに注目してだったのですか」
「スサノオは仕掛けてきている」
 鉄人はこう看破していた。
「試験召喚システムは互いに戦い合うことによって学力をあげ」
「そしてですからね」
「切磋琢磨し合うシステムだ」
 そこまで考えているシステムなのだ。競争原理を取り入れてだ。
「戦いを通じてな」
「切磋琢磨ということは」
「努力、人間を高めていくものだ」
「スサノオはそれを見てですね」
「この世界で文月学園に仕掛けてきている」
 そういうことだった。スサノオの狙いは。
「我々がその競争でどうなるのかを見ているのだ」
「そしてそれを見る為にですか」
「ワームやネイティブを送り込んできているのだ」
「ううん、まあ生徒達に犠牲が出ないのはいいですね」
「犠牲が出る戦いでもどうやらだ」
「ああ、仮面ライダーの中には死んだことのある人もいるそうで」
 こちらの世界に来ている面々では神代や影山だ。
「そうしたことがあってもですか」
「甦るからな」
「死ぬ心配はないんですね」
 もっと言えば死んでもアフターケアがある戦いだ。
「スサノオはそれを求めてはいないからこそ」
「スサノオが甦らせることもあるだろう。それにだ」
「ええと。こちら側にも神様がいるんでしたよね」
「黒衣の青年というらしいな」
 この人を愛する神のこともだ。鉄人達は聞いて知っていた。仮面ライダー達から。
「その神が甦らせてくれるそうだ」
「例え死んだとしても」
「仮面ライダーの場合はそれが永遠に続く」
 まさにだった。それはだ。
「彼等は死のうとも戦いから解放されない」
「それはかなり辛いですね」
 その先生もだ。鉄人の言葉に難しい顔になる。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその七

「永遠に戦い続けなければいけないというのは」
「だがそれは彼等の運命でもある」
「そうですか」
 こうした話をしてだった。彼等も文月学園の生徒達を引率しているのだった。
 そしてその中でだった。文月学園の面々は。
 今は平和にだ。遊園地の中を楽しんでいた。その中でだ。
 愛子はだ。少し挑戦的に笑ってムッツリーニに言ってきた。
「ねえ、いいかな」
「むっ、工藤愛子」
「一緒に色々回らない?」
「それはどういうことだ」
「決まってるじゃない。デートよ」
 今度は明るく笑ってムッツリーニに話す。
「一緒にどう?」
「デ、デート」
「愛し合う二人が共に遊び楽しむことです」
 半蔵が二人のところに来て話す。
「それは普通男女の間で行われます」
「そういうこと。まあ愛し合ってるかどうかは別にして」
 愛子はその辺りはあえて誤魔化して話す。
「どう?僕と一緒にね」
「デート。そんなことは今までは」
「あっ、したことないんだ」
「説明するつもりはない」
 事実は言わない。ムッツリーニにもプライドがある。
「ノーコメント」
「まあいいけれどね。実は僕も」
「見たところ君はあれか」
 今度は田所が出て来て話す。
「少なくとも君自身は実は疎いか」
「うっ、それはその」
「中の人の他の世界はわからないが」
「色々あるんですよ。だから」
 愛子はそのことはかなり狼狽して話す。その辺りはかなり複雑な事情がある。
「もうね。何かとね」
「そうだな。その辺りはな」
「まあそのせいかそっち方面の知識はありますから」
 そうした意味での実践だった。愛子の場合は。
「他にはハーバード大学のことも」
「俺も実は色々と」
 そしてそれはムッツリーニもだった。
「あるから」
「じゃあその色々と問題のある人間同士でね」
 またムッツリーニに言う愛子だった。
「デートしようよ。二人でね」
「うう、どう言えばいいかわからない」
「そうした場合は一つ言えばいいことがある」
 田所はムッツリーニに親身にアドバイスをした。
「その言葉を教えよう」
「何ですか、それは」
「はい」
 一言だった。
「こう言うだけでいい」
「それだけですか」
「そうだ。それだけでいい」
 田所は腕を組んで言い切る。
「わかったな」
「他の選択肢は」
「考えるべきではない」
 田所の言葉は絶対だった。
「わかったな。それではな」
「わかりました・・・・・・」
「じゃあムッツリーニ君、いいわね」
「何か複雑な気持ち」 
 ムッツリーニは暗い顔で言う。
「はじめてのデートなのに楽しいけれど何か負けた気分」
「まあまあ。そう言わずにね」
 愛子は笑顔でムッツリーニと腕を組んでだ。彼をリードして連れて行くのだった。彼や雄二と翔子、雄二達は強引だがそれでもだった。
 彼等は幸せだった。しかしである。明久はというと。
 右から瑞希、左から美波が来て引っ張り合っていた。そしてだ。
 その美波にだ。美晴も来てだった。
「お姉様、私と一緒に」
「だからうちはね。秋と」
 美波はまず美晴を引き離すことからはじめないといけない。だがそれで瑞希が有利になるかというとそうではなくだ。利光も来てだ。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその八

 明久にだ。こう言うのである。
「吉井君、今日こそは僕と一緒に」
「何でいつもここで久保君が出て来るのかな」
「あれっ、そういえばですよね」
「何かこういうことになったらうち等だけじゃなくて」
 ここで瑞希と美波も気付いたのだった。
「久保君もよく」
「秋と一緒にいるわね」
「吉井君はかけがえのない友人だからね」
 利光はそういうことにして話す。
「だからだよ」
「ううん、そうなんですか」
「妙に美晴と同じ匂いも感じるけれど」
「それは気のせいだよ」
 利光の本質を知らない人間、美晴以外にはそれで納得される言葉だった。
「僕はただ友人としてだ。吉井君と」
「ですよね。やっぱり」
「別に久保はおかしな人じゃないし」
 二人もだ。見抜いていなかった。それでこう言うのだった。
 しかしだ。利光の存在が気になりだ。瑞希も美波も引いてしまった。
「けれど。久保君がおられるのなら」
「友達同士ってことでね」
「別に。女の子と一緒にいる訳でもないですし」
「それならいいかしら」
 こうしてだ。お互いに顔を見合わせて話してだった。
「ではここでは」
「一緒にいる?女の子同士で」
「そうですね。木下さんもそうされてますし」
「姉妹でね」
「だからわしは男なのじゃが」
 秀吉は優子の横からこう告げる。
「何度も言うば誰もわかってくれぬのか」
「あれっ、違うんですか?」
「女の子じゃないの?」
「まあ慣れたがのう。そう言われることは」
 秀吉も不本意ながら納得した。諦めたのだ。そして美波のところには。
 美晴はいたままだった。そしてこう美波に言うのだった。
「では私もです」
「だから何であんたもなのよ」
「お姉様が好きだからです」
「何か誰かの思い通りにお話がいってる気がするけれど」
 美波は無意識のうちに利光を見た。
「気のせいかしら」
「では吉井君行こう」
 利光はとても嬉しそうな声で明久に話した。
「最初は何処に行こうか」
「そうだね。ジェットコースターとかどうかな」
「悪くないね。他にもコーヒーカップとかメリーゴーランドとか」
「あれっ、久保君詳しいんだ」
「事前に調べたんだよ」
 利光は何気に恐ろしい秘密を告白した。
「吉井君と一緒に色々な場所を楽しもうと思ってね」
「僕の為なんだ」
「そう。では行こうか」
「うん、それじゃあ」
 こうしてだ。明久は何も知らないまま陽気に利光と二人で遊園地を楽しむのだった。そして神代もだ。岬と二人でだ。様々な場所を巡りながらだ。
 そうしてだ。こう岬に話すのだった。
「思えばあのクリスマスの時は」
「そうだったわね。折角の約束が」
「儚く消えてしまった」
 悲しむ顔でだ。神代は言った。
「俺はワームの姿を晒してしまった」
「あの頃の剣君は剣君だったけれど」
「身体はワームのものだった」
「そうだったわね。そしてそれ故に」
「俺は一度死んだ」
 そうなったのだ。天道との戦いの結果だ。
「だがそこから甦りだ」
「今に至るわね」
「奇跡だった」
 遠くを見る目でだ。神代は岬に話す。
「そして今こうして他の世界でもミサキーヌと共にいられる」
「全ては。本当に奇跡ね」
「全くだ。そしてだ」
「ええ、この遊園地でもね」
 岬もだ。強い声で言う。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその九

「ワーム、ネイティブ達がいるのなら」
「戦う」
 神代もだ。その言葉が強いものになった。
「そして勝つ」
「ワームの本拠地はお化け屋敷にあるそうよ」
「それはゼクトの報告だな」
「そうだ。田所さんのザビーゼクターの追跡でわかったのよ」
 そのことをだ。岬は神代に話したのである。
「そうしたこともね」
「わかった。それではだ」
「ええ。彼等が何時出て来てもいいように」
「心は身構えておく」
 こう言ってだ。神代もまた。
 ワームが来るのを待っていた。そしてその中でだ、神代も岬とのデートを楽しんでいた。
 そしてだ。彼等がコーヒーカップに乗っている横でだ。 
 明久と利光もいた。彼等もカップに乗っている。その中でだ。
 利光はにこやかに笑っていた。そうしてこう言うのだった。
「これこそ神の配剤だよ」
「神様の?」
「吉井君、楽しいと思わないかい?」
 その至福の顔でだ。明久にも言う。
「今この時が」
「楽しいことは楽しいけれど」
 それでもだとだ。彼は利光に話す。
「何か今の久保君って」
「僕がどうしたんだい?」
「いや、あんまりにも嬉しそうだかな」
「そうかな。普段通りだけれど」
「だったらいいけれど。後は」
「どうしたんだい、僕達の他に誰かいるのかい?」
「ほら、神代さんと岬さん」
 明久はここでその二人を見て話すのだった。
「何かお似合いだよね」
「確かに。何か深い絆が」
「感じられるよね」
「実際にそうなのだろうね」
 眼鏡の奥の目を真面目なものにさせてだ。利光は話した。
「神代さんは色々あって岬さんと一緒にいられるようになったから」104
「そうだね。だからだね」
「あの人達の様になれるといいけれど」
 利光は明久をちらりと見ながら話す。
「けれどれは」
「難しい。いや」
「そうだね。神代さんの様に重いものを背負わないといけないから」
「お姉さんも自分自身も殺されて」
「そしてワームだったんだ」
 神代もだ。それだけ重いものを背負っているのだ。
「今は心も身体も人間だけれど」
「それでもかつては」
「その重い苦しみを乗り越えてきたんだ」
 利光にしてもだ。神代のことには素直に尊敬の念を抱けた。そしてだ。
 彼はだ。明久に天道のことも話した。
「天道さんもそうなんだ」
「ひよりさんだったよね。妹さんの」
「そう。ひよりさんもまたワームだけれど」
「それでも天道さんはそのひよりさんの為にね」
「全てを捨ててでも護ろうとしたんだ」
「普通の人にはとてもできないね」
 明久もだ。そのことはよくわかった。天道や神代の持っているものの重さと凄さは。
「それに風間さんも」
「あの人も同じだね。愛した人がワームで」
「そしてその人を」
「その手で倒さざるを得なかった」
 ライダーとしてだ。そうしたのだ。
「凄いことだよ」
「僕にはできないよ、そんなこと」
「僕もだよ」
 二人共俯いて話す様になっていた。
「僕も。そういう人がいたら」
 明久の脳裏に二人浮かんだが彼はそのことに気付かない。
「とても」
「吉井君を撃つなんて僕には」
 そして利光はこう言うのだった。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその十

「出来る筈がない」
「そうだね。友達でもね」
「できることじゃない」
「風間さん、やっぱり辛かったろうね」
「言葉に出さない人だがそれでも」
 二人はライダー達のその心境にも想いを馳せた。そのうえで明久にとっては友人との交流を、利光にとっては愛しい人とのデートを楽しんでいた。その中でだ。
 神代は遂にだ。こう岬に言った。
「では今からだ」
「あそこに行くのね」
「ミサキーヌ、いいだろうな」
 真剣な顔になりだ。岬に問う神代だった。
「あの場所にだ」
「いいわ」
 岬は神代の問いに一言で答えた。
「それなら今からね」
「うむ、行こう」
 こうしてだった。二人は遊園地のお化け屋敷の前に来た。そこにはまだ文月学園の生徒達はいない。いるのは彼等二人だけだった。
 だがその彼等の前にだ。次々にだ。
 ワームやネイティブ達が出て来た。その彼等を見ながらだ。
 神代がだ。剣を手にして言うのだった。
「いいだろう、それではだ」
「仮面ライダー、今回はわかるな」
「御前達の命を賭けた戦いではない」
「無論承知のことだ」
 神代は剣を構えてそのうえで応えた。
「ではこの剣でだ」
「坊ちゃま、それではですね」
「爺、ミサキーヌを安全な場所に」
「畏まりました」
 ふと出て来た爺は神代の言葉に一礼してだ。そのうえで岬を後ろに案内する。だがその時に岬は爺にこんなことを言ったのだった。
「私も学力なら戦えるんですけれど」
「まあそれは言わないことで」
「言ったらいけないことなんですね」
「仮面ライダーである坊ちゃまにお任せ下さい」
 そういうことだった。かくしてだ。神代のその掲げた剣に向かってだ。
 サソードゼクターが来た。神代はそのゼクターを手に取りだ。剣に装着し。
「変身!」
 その言葉と共にだ。重厚なライダーの姿になった。そしてその姿でだ。
 剣を振るいだ。ワームやネイティブ達を倒していく。それを見てだ。
「神代さん!」
「やっぱりここだったんですか!」
「ワーム達が!」
「君達か」
 明久達が後ろに来た。その彼等に対してだ。
 神代はだ。背を向けたままこう言ったのである。
「君達も戦うというのだな」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。明久が強い声で答える。
「だから来ました」
「お化け屋敷が怪しいとは聞いていたがな」
 雄二もいた。彼はお化け屋敷のその建物を見ている。
「実際にこうして出て来るとはな」
「予想通り」
 翔子は雄二の隣にいる。
「そうだったわね」
「そうだな。それなら後は」
「戦うだけ」
 翔子はいつもの淡々とした調子で述べていく。
「そうしてお化け屋敷に」
「攻め込むか」
「皆、気をつけてね」
 優子は既に己の召喚獣を出している。
「このお化け屋敷は迷路だから」
「しかも巨大じゃったな」
「そうよ。巨大な迷路なのよ」
 優子は隣にいる秀吉にも話す。
「だから迂闊に入ってもね」
「かえってやられるだけじゃな」
「そういうことよ」
 こう仲間達に話すのだった。そしてだ。
 愛子はだ。ムッツリーニに話していた。
「そもそも中に入る前によね」
「出来ているワームの連中を倒さないといけない」
 そうだとだ。ムッツリーニも話す。
「まずはそれから」
「そうよね。今回も数は多いけれど」
「今ここにはAクラスからFクラスの殆どの面々がいるけれどね」
「その四倍はいます」
 美波と瑞希は周囲を見回しながら話した。
「これまでよりもさらに多くなってるし」
「そしてまだ中にも」
「こんなものではない」 
 神代は実際にそうだと言った。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその十一

「この連中は只の門番だ」
「では本隊はやはり」
「あのお化け屋敷の中にいるんですね」
「その通りだ」
 戦いながらだ。サソードは利光と美晴に話す。
「ここでの戦いは前哨戦に過ぎない」
「とりあえずはあれなんですね」
 明久がサソードに対して問うた。
「今ここにいるワームを倒して」
「そのうえで中に入る」
 サソードはこう明久に答えた。
「わかったな」
「はい、それじゃあ」
「私達も」
 明久と瑞希が応えてだった。それでだ。
 彼等もだ。一斉にだった。
「サモン!」
 召喚獣を出してそのうえで戦いに入る。ここで他のライダーや侍達も来た。そうして彼等もだ。すぐに戦闘に参加するのだった。召喚獣を出して。
 神代は今は重厚な鎧を着ていた。しかしだ。
 その彼の前に出て来たワームがだ。やがてだ。
「貴様が門番の長か」
「仮面ライダーサソードか」
「その通りだ」
 正々堂々とだ。サソードはワームの問いに応じた。
「俺は仮面ライダーサソードだ」
「そうだな。それではだ」
 ワームは彼の言葉を受けてだ。そのうえでだ。
 脱皮した。そしてそこから出て来たのは。
 海老の、銀色の姿をしていた。その姿になって言うのだった。
「この姿で戦おう」
「海老か」
「そうだ。ロブスターアーム」
 銀色の海老と人を合わせた姿のワームはこう名乗った。
「このラビリンスの門番だ」
「そうだな。そしてそのラビリンスの先にはか」
「あの方がおられる」
 ロブスターワームはこう仮面ライダーサソードに答える。
「そのことは確かだ」
「話は聞いた。それならだ」
「戦うな」
「そうさせてもらう」
 サソードは己のベルトをセットした。するとだ。
「キャストオフ」
『キャストオフ』
 その重厚な鎧を脱いでだ。ライダーフォームになった。マスクドフォームから。
 そしてそのうえでだ。再び剣を構えそのうえで。
 ワームに突進する。ワームもそれを受けて立ち。
 双方は互いに攻撃を繰り出しあう。その中でだった。
 ブロスターワームがだ。両手の鋏で切り掛かってきた。
「くっ、あの鋏を受けると!」
「幾ら神代さんでも」
「ああ、一撃だ」
 雄二は強張った顔で翔子に答えた。
「召喚システムでの戦いだから首は落ちないがな」
「それは何よりだけれどね」
 美波は何故か首ということに反応した。
「けれど。本当に一撃よね」
「あのワームの得意科目は英語だったのか」
 英語でだ。そのワームは攻撃を仕掛けてきたのだ。
「さあ、神代さんはどう出るんだ?」
「あれっ、確か神代さんって」
 明久はここであることに気付いた。それは何かというと。
「ディスカビル家の後継者だよね」
「そうだったな。それにだ」
「オックスフォードだったよね。大学」
「勉強はできる人だからな」
「だったら大丈夫かな」
「多分な」
 雄二はこう明久に答えた。神代の英語の力を信頼していたのだ。
 そしてその予想は当たった。彼はだ。
 落ち着いて剣を構え。そうしてだ。
 ベルトを操作してだ。こう言ってだった。
「ライダースラッシュ」
『ライダースラッシュ』
 機械声もしてだ。そのうえでだった。
 攻撃を仕掛けてきたワームにだ。逆に瞬時に詰め寄り。
 両手に持った剣で縦横に切り裂く。そのうえでワームの後ろに来て、こう言ったのである。
「俺は英語においても頂点を極める男だ」
 その言葉と共にだ。ワームは派手に爆発して消えた。サソードの勝利だった。
 

 

第十三話 デートと遊園地と鞘当てその十二

 それを見てだ。優子も唸りながら言うのだった。
「流石に。イギリス貴族の嫡流だけあるわね」
「しかし日本人なのに何故イギリス貴族の嫡流なのじゃ?」
 秀吉は何気に指摘してはならないことを指摘してしまった。
「考えてみれば妙な話じゃが」
「その辺りは御考えにならない様に」
 爺がそのことはそっと二人に話す。
「坊ちゃまは完全な日本人でございますし」
「一応日本の華族の出ならわかるんですが」
「しかし。イギリス貴族というのは」
 二人にもどうにも納得できなかった。しかしそれでもだ。
 ワームを倒しそのうえでだ。神代は言うのだった。
「ではだ。中に入ろう」
「うん、じゃあね」
 十兵衛は宗朗の隣から話す。
「宗朗、一緒に入ろう」
「いや、宗朗はわらわと一緒に入るのじゃ」
「私とよ」
 十兵衛が言うとだった。幸村と千姫が慌てて出て来た。
 そしてだ。それぞれ宗朗の左右について言うのだった。
「だからじゃ。ここはじゃ」
「十兵衛でも抜け駆けは許さないわよ」
「あれっ、私別に抜け駆けはしてないけれど」
 ただ自覚がないだけである。
「ううんと。何でそうなるのかな」
「むっ、これはいけない」
「確かに。許されざる行いだ」
「あれだけの美女達に囲まれるのは」
 ならないというのはだ。怪しい一団だった。
 黒いフードを全身にすっぽりと被っている。その彼等が言っていた。
「柳生宗朗、他の世界の者でなければ」
「断じて許さないところである」
「何気になんだけれどね」
 愛子がその宗朗を見てふと言った。
「宗朗さんって女難の相があるわよね」
「そうよね。多分死ねって言われたことあるわね」
 美波もそのことは見抜けた。
「それで首切られたりとか」
「あと刺されたりとかね」
「他には付き合っていた相手が実は男の子だったとか」
「そういう感じの人よね」
「ま、まあそれは言わないでくれるかな」
 宗朗はその愛子と美波に苦しい顔で頼み込む。
「僕は一応そっちの彼とは無関係だから」
「けれど包丁嫌いですよね」
「それと飛び降りとか電車も」
「怖いこと言うね。確かに好きじゃないよ」
 宗朗もそのことは否定しなかった。というよりかはできなかった。
 そしてその苦しい顔でだ。十兵衛に言うのだった。
「じゃあとにかく入ろうか」
「うん、そうしよう」
「むっ、ではわらわ達もじゃ」
「抜け駆けは許さないわ」
「一度包丁を出すべきか」
「あの男には」
 怪しい一団はまだ言っていた。しかし他の世界の仲間なので手は出せない。
 しかしだ。その代わりに明久を囲んで言うのだった。
「だが御前は許されない」
「両手に花、いや秀吉も含めれば三輪」
「Fクラスの女性陣を独占する罪は重い」
「これより裁判をはじめる」
 完全に何処かの人種主義者の一団になっている。木槌を打ちながらだ。何時の間にか縛り付けている明久に対して言うのだった。
「被告人、何か言いたいことはあるか」
「場合によっては他の世界の所業も考慮する」
「だから中身言い出したらきりないじゃないか!」
 縛られた明久もたまらず言い返す。
「あのさ、せめてこっちの世界だけにしてよ。中身言ったら美波なんて名前が幾つもあって大変だよ!?」
「だからそれは言わない約束でしょ!」
 その美波が速攻で突っ込みを入れる。
「それ言ったらあんたも雄二も愛子ちゃんも皆そうじゃない」
「それはそうだけれど」
「それにね。うちは別人よ、皆」
「あれっ、けれど声は」
「別人って言ったら別人なの」
 強引にそういうことにしてしまう美波だった。
「反論は許さないわ」
「うう、じゃあそういうことでいくしかないんだ」
「そう。絶対にね」
「吉井明久、女性陣三人独占に加え美人の姉がいる」
「しかも他の世界でも美少女に囲まれている」
 結局他の世界のことも考慮されてしまった。
「そして名前を変えて猥褻な所業を繰り返す」
「この罪、到底許されるものではない」
「判決、流刑」
 木槌が無慈悲に打たれた。そして。
「被告人をシベリア送りにする」
「協力、ロシア共和国大統領」
「何であんな元秘密警察の人まで出て来るの!?」
 明久でも知っている人物だった。実際にその手で人を何人も殺しているのではないかと言われている。非常に冷酷な目をした人物だ。
「っていうか今首相じゃないの?あの人」
「実質大統領」
「誰がどう見ても独裁者だ」
「だから問題ない」
「ああ、そうなんだ」
「では被告人をシベリア送りにする」
 話が落ち着いたところでこうなった。
「では被告人、何か言い残すことはあるか」
「最後に聞いておこう」
「だからお化け屋敷はどうなるんだよ!」
 お化け屋敷に入る前にまずは恐怖の裁判だった。内輪揉め以上のものがそこにあった。


第十三話   完


                           2011・10・26
 

 

第十四話 迷路とお化け屋敷とワームその一

                          第十四話  迷路とお化け屋敷とワーム
 明久の裁判の後でだ。一行は。
 そのお化け屋敷に入った。その中で加賀美はこうBクラスの仲間達に話す。
「このお化け屋敷だが」
「はい、迷路になってます」
「その迷路の中であれこれとお化けが出て来ます」
「普段はそうなっています」
「そうなのか。それにしても凄い迷路だな」
 実際に迷路の中を歩きながらだ。彼は言う。
「ここは」
「通称ラビリンスです」
「そうも呼ばれています」
 Bクラスの面々はこう加賀美に話す。
「ですから本当に気をつけないと迷います」
「そして迷ったらそこにですよね」
「ああ、来るな」
 ワームやネイティブ達がだというのだ。加賀美も。
「絶対にな」
「そういえば今はお化け出て来ないですね」
「お化け屋敷なのに」
「つまり。この場所はもう」
 どうなっているかというとだった。
「奴等に占領されているんだ」
「じゃあ何時何処で連中が来てもなんですね」
「おかしくないってことですか」
「そうだ。だから皆周囲には注意してくれ」
 加賀美はクラスメイト達に話す。
「何時奴等が出て来てもいいように」
「わかりました。けれど加賀美さんって」
「そうだよな」
 Bクラスの面々は加賀美の言葉に頷きながらこうも言ったのだった。
「頼りになるよな」
「うちの代表ってあんなのだからな」
「正直人望ないしな」
「そうそう」
 彼についての話もされる。
「けれど加賀美さんって真面目だし前向きだしな」
「腹の中奇麗だしな」
「信用できる人だよな」
「頼りになるしな」
「いや、俺も実はな」
 どうかとだ。加賀美は少し苦笑いになって彼等に話した。
「あまり強いとは言われないんだよ」
「いえ、何か違いますから」
「だってもう警視さんですよね」
「まだ若いのに」
「仮面ライダーってことが考慮されてるからな」
 それで警視になったというのだ。
「もっとも二十歳で警視になった奴とかいるからな、俺達の世界じゃ」
「一体どうやったらそこまで昇進するんだ?」
「高卒二年で。しかも教育機関も入れてそれって」
「その人一体何やったんだか」
「かなり疑問だよな」
「どういう世界なんだ?」
 Bクラスの面々もだ。その二十歳で警視になった男については首を捻りながら話す。
「かなり実力主義の警察なんだな」
「そういえば部外から上層部の人入れてるらしいし」
「それだけ物騒な社会なのかな」
「スサノオの本場だし」
「そういえば相当実力社会だな」
 加賀美自身ライダー世界の警察についてはこう言った。
「俺も外部から入ってもう警視だからな」
「まあ話を戻してですけれど」
「警察官ですしね。それだけで何となく信頼できますし」
「安心できるんですよ」
「有り難いな。そう言ってくれるなんてな」
 加賀美は彼等のそうした好意の言葉を受け取ってだ。そのうえでだ。
 彼等は順調に進む。しかしだ。
 明久は右手に瑞希、左手に美波という状況でだ。ゆっくりと進んでいた。
 その中でだ。瑞希も美波も彼の手にしがみつきながら言うのだった。
「お化けが出て来なくても」
「何かお化け屋敷ってだけでね」
「そうですよね。怖いですね」
「ワームとネイティブしか出て来ないってわかっていてもね」
 こう言う二人だった。しかしだ。
 明久はだ。その二人にこんなことを言うのだった。
 

 

第十四話 迷路とお化け屋敷とワームその二

「あのさ、そんなに怖い?」
「はい、かなり」
「だって。お化け屋敷だから」
「何かさ、今さ」
 ここでさらにだった。明久は言ってしまった。
「美波にしがみつかれてると」
「何よ。何かあったの?」
「痛いんだけれど」
 言うのはこのことだった。
「何でだろう」
 言ったその瞬間にだった。明久は美波に思いきり殴られた。頭を抑えてしゃがみ込みながらだ。その叩いた本人対して言い返した。
「痛っ、何するんだよ!」
「硬いとか痛いってのは駄目よ」
 こう言ってだ。美波は怖い顔を見せる。
「絶対にね」
「な、何でなんだよ」
「秘密よ。裏の名前と同じくね」
 自分手言ってしまう秘密だっは。
「あとぺったんこもよ」
「何で秘密なんだよ」
 まだわからない明久だった。しかしその彼に瑞希が言ったきた。
「あの」
「あれっ、どうしたの姫路さん」
「前から何か来ます」
「何かってまさか」
「ワーム!?ネイティブ!?」 
 二人はすぐに身構える。明久だけでなく美波もだ。
 無論瑞希もだ。しかしだった。
 三人のところに来たのは雄二だった。翔子も一緒だ。彼は何でもないといった調子でこう一行に言ってきた。
「ああ、そっちは三人か」
「あれっ、雄二じゃない」
「ちょっと迷ってしまってな」
「ここは凄く複雑だから」
 翔子も言う。
「ただ。歩いていると」
「結構ワームの奴等が出て来たぜ、こっちは」
 真剣な顔でだ。雄二は明久達に話す。
「そっちはどうだ?」
「こっちは今のところまだ」
「何も出ていません」
 明久と瑞希が二人に話す。
「ただ今のところはってだけでね」
「絶対に出て来ると思います」
「そうよね。結構戦いの音聞こえるし」
 それは迷路の中に響き渡っていた。それも複数だ。
「やっぱりワームやネイティブのアジトなのね、ここって」
「俺達は切り抜けられてるけれどな」
 雄二は美波に応えながら言う。
「それでも。他の連中はどうなんだろうな」
「それが問題よね」
 美波も目を鋭くさせて言う。
「うち等だって何時襲われるかわからないしね」
「ああ。そんな話をしてるとな」
 雄二は言いながらだ。身構える。
 同時に翔子もだ。その彼等のところにだった。
 周囲からワーム達が来た。当然明久達にもだ。彼等もそれを見てだ。
「サモン!」
 召喚獣を呼びそのうえでワーム達と戦う。そうしてだ。
 今回は一瞬で退けた。その戦いの後でだ。明久はこう言った。
「あれっ、このワーム達何か」
「弱いですよね」
 瑞希も戦いの後で言う。彼女のワームは鎧とスカートの女騎士だ。
「特に困りませんでした」
「っていうか一撃で」
「うちも。苦手な国語で挑まれたのに」 
 美波は帰国子女だったので国語系が苦手だ。
「それも一番嫌な古典だったのに」
「何でかな。僕も苦戦しなかったよ」
「運動会の頃より楽に戦えました」
「多分それはな」
 何故かとだ。雄二がいぶかしむ彼等に話した。
「連中が出て来てから俺達は奴等と戦ってばかりだったな」
「うん、それはね」
「もういつもだったから」
 明久と美波がこう雄二に答える。
「自然とだよね」
「慣れたっていうか?」
「いや、慣れたんじゃないな」
 雄二は言った。
「俺達の学力があがってるんだ」
「戦いの中でなんだ」
「そうなったの」
「ああ。その証拠にだ」
 雄二はさらに話していく。
 

 

第十四話 迷路とお化け屋敷とワームその三

「島田が国語でワームやネイティブを倒したんだぞ」
「うち国語苦手だったけれど」
「最初の頃は国語で来られたら駄目だったな」
「そうなったら絶対に負けてたわ」
「だが今はどうだ」
 雄二は美波に対してだ。『今』を尋ねた。
「今現在はだ」
「凄く楽になったわ」
 こうだ。美波も答える。
「国語の勝負でもね」
「そうだな。俺にしてもだ」
「あれっ、雄二は元々じゃないの?」
 明久は彼が元々頭がいいのを指摘した。
「だから別に」
「さらに楽になった」
「そういう意味なんだ」
「そうだ。とにかく連中との戦いでだ」
 雄二は再び明久達に話していく。
「俺達は相当の力がついたな」
「ううん、自覚なかったんだけれどね」
「そうですよね。別に」
 こうだ。瑞希も話す。
「何か気付いたら」
「そういうものだ。強さは目に見えて備わるものじゃない」
 雄二は強さについても話した。例えそれが学力であったとしてもだ。
「気付いたらそれだけあがっているものだ」
「だから私達も」
「多くの戦いの中で強くなってきているんだ」
「あっ、そういえば」
 雄二の話からだ。明久はあることにふと気付いた。
「スサノオって人を見ているんだよね」
「人が自分が仕掛けたことをどう乗り越えるかをな」
「じゃあ僕達も」
 明久は考える顔で述べていく。顎に己の右手を当てて。
「スサノオのその仕掛けに応じて」
「強くなっていた」
「確かスサノオは世界を征服するとかいう考えはとっくの昔に捨ててたわよね」
「はい、そうして人に仕掛けてその反応を見るようになったんでしたね」
 美波と瑞希は顔を見合わせて話す。
「それならうち等はその中に入って」
「気付かないうちにスサノオの策略に乗っていたんですね」
「けれどさ。正直僕達にとっていいことでしかないよ」
 明久は学力があがることからこう話した。
「だって僕達死なないし。しかも勉強ができるようになるから」
「正直スサノオにとって何の利益もないっていうか」
 美波も首を捻って述べる。腕も組んでいる。
「邪魔になる人間を増やしてない?ライダーの人達も来てるんだし」
「だからだ。スサノオは世界をどうとかはもう考えてないんだ」
 雄二は再びこのことを指摘する。
「だったら人間が強くなろうともな」
「構わないんだ」
「むしろそうして強くなっていくことを楽しんでいるんだろうな」
 雄二も腕を組み考える顔で述べる。
「そしてより厄介なことを仕掛けてきてまた楽しむ」
「僕達はそうしてどんどん強くなる」
「けれどそれって堂々巡りじゃない」
 明久と美波はこう言った。
「そうだよね。何かスサノオのおもちゃみたいな」
「そういうのにもなった気分だけれど」
「確かにそういう一面もある。スサノオは神だからな」
「ううん、それはあまりいい気持ちがしないけれど」
「とりあえずスサノオがどういった考えかはわかったかしら」
「俺達は戦い勝っていくだけだ」
 雄二が言う答えはこうしたものだった。
「それならそれでいいとするしかない」
「割り切ってですね」
 瑞希の眉は曇っていた。
「その辺りは」
「その通りだ。そうしていくしかない」
「わかりました。それなら」
 瑞希は頷いてだ。そのうえでだった。
 周りを見回す。するとまたワームが出て来たのだった。必然的にだ。彼等はまた戦うことになった。
 天道はAクラスの面々と一緒だった。彼等と共にワームを倒しながらだ。こう仲間達に述べた。
「もう少しだな」
「もう少しで出口なんですね」
「そうだ。少しずつだが近付いてきている」
 こう優子にも話す。
 

 

第十四話 迷路とお化け屋敷とワームその四

「それは確かだ」
「そうですか。何か天道さんが仰ると説得力がありますね」
 根拠がわからなくともそうだと言う優子だった。
「不思議なことに」
「しかもそれが絶対に合ってるしね」
 愛子はこのことを話した。
「それ考えると本当に凄い人よね」
「ワームの数がかなり増えてきている」
 実際に彼等を変身させたシステムで戦い倒していく。
「生きものというのは心臓に近付けば護りを堅くするものだ」
「だからですね」
「出口に近付いているんですね」
「その通りだ」
 天道はここから話すのだった。
「入り口に比べてどうだ。今のワームやネイティブの数は」
「四倍位になっていますね」
 利光は己の召喚獣の鎌でワーム達を切り倒しながら言う。
「尋常な数ではなくなってきています」
「だからだ。出口は近い」
 天道は前に進んでいた。ワーム達を退けつつ。
「そしてその先にだ」
「先にですね」
「出口に」
「あいつがいる」
 天道は鋭い目で言った。
「スサノオがだ」
「そのスサノオというのは」
 翔子はスサノオ自身について天道に尋ねた。
「姿を自由に変えられるのでしたね」
「その通りだ。ショッカー以来様々な姿を取ってきている」
「確かネオショッカーの時の恐竜みたいな姿が」
「あいつの本当の姿だったわよね」
「いや、違う」
 天道もそれは違うと話す。
「だが。それは奴の身体の一つに過ぎない」
「無数の姿、無数の分身があって」
「そして本体は牢獄の中にいる」
「そういうことなんですね」
「天道さん達が変身する仮面ライダーによく似た姿のあれが」
「あれが本来の姿だ」
 だが、だ。天道は仲間達にこうも話す。
「精神だ。あのスサノオは精神だ」
「じゃあ肉体は本当に数えきれないだけあって」
「数え切れないだけの姿があるんですか」
「それがスサノオだ」
 こう話すのだった。
「だからだ。この世界においてもだ」
「僕達の想像もつかない姿で出ることも」
「あるんですね」
「そのこともわかっておいてくれ」
 天道は仲間達に話す。
「あいつはどんな姿にでもなれるからな」
「その通りよ」
 千姫も共にいた。彼女は薙刀で戦いながら話す。
「私達の世界ではヤマタノオロチだったから」
「あれですね。我が国の神話に出て来る」
「ええ、あれよ」
 千姫は利光の問いに答える。
「あれが出て来たのよ」
「成程。スサノオはその姿を取って千姫さん達と戦ったのですね」
「そうよ。かなりの強さだったわ」
「でしょうね。オロチですからね」
 それは愛子も頷いて答える。しかしだ。 
 愛子はここで利光に顔を向けてだ。こう彼に尋ねたのである。
「そういえば久保君今は」
「今どうしたんだい?」
「吉井君と一緒じゃないわね」
 言うのはこのことだった。
「またどうしたのよ」
「うん、実は入り口で君達と一緒になってね」
 そうしてだというのだ。
「吉井君とはぐれてしまってね」
「それでなんだ」
「そう。こうなったのも仕方ないと思ってね」
「それで僕達と一緒にいるんだ」
「吉井君といられないのは確かに残念さ」
 本音はあからさまに出している。
 

 

第十四話 迷路とお化け屋敷とワームその五

「けれど。クラスメイト達と一緒にいることもね」
「そうそう。僕だってね」
 愛子はあっさりと失言してしまった。満面の笑顔で。
「ムッツリーニ君と一緒じゃないとどうもね」
「えっ、今何と?」
「何て言ったのよ」
 利光と優子は愛子の今の言葉に思わず問い返した。
「Fクラスの彼が一体」
「どうしたのよ」
「あっ、何でもないわ」
 ここで失言に気付いてだ。愛子は狼狽しながら己の言葉を打ち消した。
「別に何もね。そうそう、最近僕そっくりの警察官がいるらしいけれど」
「あの世界だね」
 利光は眼鏡に己の手を当てて述べた。右手の人差し指で眉間のところを押している。
「探偵と怪盗が争う。僕もあの世界のことは聞いているよ」
「というか久保君そっちの世界でも吉井君と一緒でしょ」
「そう。あれはいい世界だね」
「そっちの世界も関わってくるのかしら」
「わからないな。それにしても君はあっちの世界では面白いことになってるな」
「あっちの僕は色々と大変だけれどね」
 何故二人は別世界の話で盛り上がりはじめた。
「ハーバード大学卒業してキャリア官僚になってても失態続きだし」
「あれだけ豪華な顔触れでも駄目なのだな」
「そうなのよね。それに小学生の女の子にストーカーされてるし」
 そんなこともこちらの世界では笑顔で話せる愛子だった。
「無茶苦茶困ってるのよね。あっちの僕」
「あちらの世界の僕は悪事をしているがな。吉井君と一緒に」
「楽しい?あっちの世界は」
「かなりいい」
 利光の今の言葉には煩悩が出ていた。
「あちらの世界の僕とも色々と話がしたいものだ」
「僕も。あっちはこっちよりずっと大変な状況だけれどね」
「そうだな。しかしあの小学生の娘は」
 何気に彼女の話もするのだった。
「かなり悪質だな」
「そうよね。あっちの世界の僕は捕まって何をされてるのかしら」
「考えるだけで怖いものがあるね」
「本当にね」
「何か私も色々会いそうね」
 優子も少しぼやき気味に言う。
「Fクラスの島田さんと一緒にね」
「そういえば君も色々あるからね」
「そうだな。木下さんも複数の世界に関わっていたね」
「何か天道さんが言っていた白い猫みたいな生きもの」
 キュウべえのことをだ。優子は不機嫌な顔で話しはじめた。
「私に凄く似ている感じで嫌なのよ」
「あの生きものか」
「そう。キュウべえっていったわよね」
「俺もそう思った」 
 その天道も話す。尚今も戦闘は続いている。彼等は戦いながら話しているのだ。
「君と君の弟さんはキュウべえにそっくりだった」
「それ凄く嫌」
 優子は戦いながら不機嫌に言う。
「何かね。一生ついて回りそうだし」
「それ安心していいと思うよ。木下さん普通に分身多いから」
 愛子は屈託のない笑顔でその優子に話す。
「大体そんなこと言ったら天道さんだって執事やってたし」
「知っていたか」
「はい。凄く格好よかったですから」
「俺だけが出ていたのではないしな」
「仮面ライダーの人は結構出てましたよね」
「あれは面白い世界だった」
 天道はワーム達を次々に倒しながら話す。
「執事もまたいいものだ」
「そう。執事なら」
 翔子が思い浮かべるのは一人しかなかった。
「雄二、今度は執事」
「執事はお嬢様にお仕えするもの」
 天道はよく知っていた。そのことを。
「まさに真の紳士なのだ」
「お嬢様。だとすると吉井君は」
 またしても煩悩の世界に浸る利光だった。
「そうだな。僕は誠心誠意を以て吉井君の執事になろう」
「恋愛っていいよね」
 愛子はにこやかに笑ってそうした非現実の恋愛も受け入れていた。
「僕ももっと頑張らないとね」
「雄二、この戦いが終わったら」
 翔子は普通なら死亡フラグになる台詞を出した。
 

 

第十四話 迷路とお化け屋敷とワームその六

「結婚するから」
「さて、出口が見えてきた」
 天道の前にだ。それが見えてきた。
 それでだ。他の面々もその光を見た。そしてここでだ。
「よし、来れたな!」
「やっと!」
 Bクラスの面々もだ。遂に到着したのだった。そこには当然加賀美もいる。
 加賀美はBクラスの面々、特に青がかった色の髪のショートカットの青年根本恭二に対して言った。
「さて、ここまで来たが」
「加賀美さん、本当にいいんですか?」
 根本がだ。怪訝な顔で加賀美に問うた。
「ワームの脱皮したのは」
「これまでも俺が戦ってきたじゃないか」
「けれどあれですよ」
 人格では評判の悪い根本もだ。こう言う程だった。
「これまで出て来たのは百足、竜、海老でしたから」
「次は絶対に鰐だな」
「三つの命があってもおかしくないですよ」
「いや、それはオルフェノクだろ」
「けれど強いのは間違いないですよ」
「俺も何時までも噛ませでいていい訳じゃないからな」
 自分から言う加賀美だった。
「ここはやってやるさ」
「御自身で、ですか」
「ああ。ここは任せておいてくれ」
 こうBクラスの面々に話すのだった。
「俺にな。そいつが出て来てもな」
「わかりました。それじゃあその時は」
「俺達は先にですね」
「出口に」
「そうしてくれ。俺も後から行く」 
 そしてだ。そこにいる展望にも話すのだった。
「そうしていいな」
「御前がそうしたいのならそうするといい」
 天道もだ。友人のその言葉を受けて言うのだった。
「俺もそうさせてもらう」
「悪いな。それではな」
「来たぞ」
 天道が言うとだ。そこにだった。
 一人のワームが来た。そしてだ。
 加賀美にだ。こう言ってきたのだった。
「仮面ライダーガタックだな」
「そうだ」
 加賀美もだ。受けて立つ顔だった。
「俺が仮面ライダーガタックだ」
「そうだな。ではだ」
「いいのか。俺の相手をしている間に他の仲間達は」
「構いはしない」
 実際に構わないとだ。ワームは答えた。
「俺はあの方に貴様の相手をする様に言われた。だからここに来たのだ」
「あの方・・・・・・スサノオか」
「そうだ」
 まさにだ。あの神だというのだ。
「あの方にだ。貴様と戦う様に言われた」
「そして俺の戦いを見るというんだな」
「ではいいな」
 ワームはあらためて加賀美に言う。
「戦いをはじめよう」
「加賀美殿、それでは」
「ああ、あんたも先に言ってくれ」
 Bクラスの面々と共にいる半蔵にも告げるのだった。
「俺の戦いだからな」
「では後で」
「会おうな」
「はい、再び」
 こう言葉を交えさせてからだった。加賀美はワームにだ。今度は自分から言うのだった。
「それじゃあはじめるんだな」
「無論だ。逃げるつもりはあるまい」
「俺も仮面ライダーだ」
 これが加賀美のワームに対する返事だった。
「仮面ライダーならだ」
「戦う。そうだな」
「そうだ、行くぞ!」
 こう言ってだ。自分に向かって攻撃する様に飛んで来たガタックゼクターを受け取り。そのうえでだ。
 ベルトに装着してだ。あの言葉を叫んだ。
「変身!」
 その言葉と共に加賀美の身体が光に覆われだ。まずはマスクドフォームとなって出て来た。その彼を見てだ。
 

 

第十四話 迷路とお化け屋敷とワームその七

 ワームもだ。脱皮してだ。それになったのだった。
 ガタックと同じく青い身体をした鰐のワーム、それこそはだった。
「クロコダイルワームか」
「最後は俺だ」
「これでラッキクローバーが全員出て来たってことか」
「ワームのそれがな」
「ならだ!」
 ガタックはそのワームに対してだ。鋏を出してだ。
 それで戦いを挑む。ワームも強靭な顎で応じる。
 ワームがガタックをその顎で噛み砕こうとすればだ。ガタックはそれをかわしてだ。
 そのうえで今度は拳を繰り出すワームの左肩を打つ。しかしワームはその程度では倒れずだ。
 身体を左に回転させ尻尾を繰り出す。ガタックはそれを右手で受け止める。
「くっ!」
「今のを防ぐか」
「流石だな。今のはかなり効いた」
「だがそれでも立っているな」
「この程度でやられてたまるか」
 ガタックは衝撃、まだ残っているそれに耐えながら言う。
「まだだ、俺もだ」
「そうか。ならばこれはどうだ」
 今度は右の回し蹴りだった。しかしそれもだった。
 ガタックは左手で受け。そうしてだった。
 彼からだ。科目を指定して攻めてきたのだった。
「国語か」
「ああ、現代国語だ」
 それで勝負を挑んだのである。
「俺の得意科目だ」
「それは俺もだ」
「何っ!?」
「俺も現代国語は得意だ」
「そうか。得意科目同士の闘いなんだな」
「互角か。どちらが倒れるか見物だな」
 言いながらだ。ワームも攻撃しガタックも応じる。そうしながらだ。
 彼等は闘いだ。そしてだった。
 互いに百合程してからだ。ワームが再び大技を仕掛けてきた。
「喰らえ!」
「今度は何だ!」
「これならどうだ!」
 顎を飛ばしだ。それでガタックを食い千切らんというのだった。
「俺の顎、避けられるか!」
「そう来るなら俺もだ!」
 ガタックもだ。ここでだった。
「キャストオフ!」
『キャストオフ』
 機械音によりだ。マスクドフォームからライダーフォームになりだ。
 そこから一気に前に出ながらだ。鋏を出してだ。
 まずはそれでだ。襲い掛かって来る鋏を受け止めてだった。
「何っ、俺の顎を!」
「そう来るのはわかっていたからな!」
 既にだ。ワームの攻撃は読んでいたというのだ。
「それならな、こうすればいい!」
「くっ、俺の顎を!」
 ガタックはワームの顎を鋏で絡め取りだ。そうしてだ。
 その顎を上に大きく投げて間合いを離しだ。それからだ。 
「クロックアップ!」
『クロックアップ』
 また機械音が出てだ。ガタックはそのクロックアップでワームの前に来た。
 そのうえでだ。切り札を出したのだった。
 ベルトのスイッチを押す。その技は。
「ライダーカッティング!」
『ライダーカッティング』
 鋏がワームの腹を襲いだ。切り裂いたのだった。それでワームの得点を零点にした。
「太宰治をか」
「そうだ、これならどうだ!」
「よくそれを解いたものだ」
 ワームにしてもだ。賞賛していた。
「俺もまた昭和文学は精通していたが」
「俺は太宰は全部読破した」
 意外な趣味だった。
「だからだ。その太宰の問題ならだ」
「こうして全問正解もできるというのか」
「残念だったな」
 ワームの点は零点になっていた。まさに勝負ありだった。
 そのことはワームも自覚してだ。こうガタックに言った。
「では俺はだ」
「負けを認めるんだな」
「認める。では行くがいい」
 ガタックにだ。先に行けと告げた。そのうえで。
 姿を消しながらだ。最後にこうガタックに言うのだった。
「その学力、見事だ」
「俺も伊達にライダーじゃないんだ」
 加賀美はその消えたワームに対して告げる。
「勉強しているんだ」
「そうですね」
 その彼の後ろにだ。美晴が来た。そのうえで彼に言ってきた。
「加賀美さんもライダーだからこそ」
「ああ、戦わないといけないからな」
 加賀美はその美晴に顔を向けて微笑んで応える。
「どんな形でもな」
「Dクラスももうすぐ全員来ます」
「そうか。じゃあEクラスやFクラスも」
「はい、私はお姉様と合流しますので」
「またな」
「はい、後で会いましょう」
「この戦い、この世界でのやつは終わってもな」
 どうかとだ。加賀美は話す。
「あちこちの世界で続くからな」
「長い戦いになりますね」
「その間。厳しいだろうが一緒にやっていこう」
「はい、クラスメイトですから」
 美晴は微笑み加賀美の言葉に頷く。加賀美はそれを見届けてから彼も微笑みだ。そのうえで出口に入り。最後の戦場に赴くのだった。


第十四話   完


                          2011・10・30

 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその一

                          第十五話  スサノオと決戦とハイパーカブト
 天道は出口の向こうの世界に来た。そこはというと。
 白い世界だった。一面白だ。
 地面だけでなく空も何もかも白い。その中に出てだ。
 幸村はすぐにだ。傍にいる文月学園の面々に尋ねたのだった。
「こんな場所がこの遊園地にはあったのか?」
「いえ、なかったですよ」
「お化け屋敷を出たらまた遊園地ですから」
「こんな場所なんてとても」
「ないですよ」
「そうか。それならじゃ」 
 ここまで聞いて幸村は頷きだ。こう言うのだった。
「ここはスサノオが創り出した世界じゃな」
「そうね。間違いないわ」
 千姫も言う。
「この世界は」
「じゃあここにいるってことか」
 雄二もだ。身構えていた。無意識のうちに。
「俺達に色々と仕掛けてくれている奴がな」
「問題はそいつが何処にいるかだけれど」
 明久はその白い世界の中を見回した。しかしだった。
 そこには誰もいない。ただ白い空間があるだけだ。彼等のいる。
 そしてその中にいてだ。彼は言った。
「何かさ。本当に何も世界なんだけれど」
「出口はそのままあるわね」
 美波は後ろを振り返った。確かに出入り口はそのままだった。
「いざとなったらあそこから引き返せばいいけれど」
「だがそれは何の解決にもならない」
 その美波に田所が話す。
「決してだ」
「そうじゃな。スサノオはわし等を見たいのじゃ」
 秀吉は周囲を見回していた。腕を組みながら。
「ならばここで下がっても何にもならん」
「むしろ逃げたい奴は勝手にしろ」
 ムッツリーニもだ。その出入り口を見ながら述べる。
「そういうことだと思う」
「あからさまな挑発じゃのう」
 秀吉はスサノオのその考えを察した。
「そしてということはじゃ」
「スサノオは間違いなくここにいる」
 天道は言い切った。
「問題は何時出て来るかだが」
「間に合ったか」
 ここで加賀美が来た。ワームとの戦いを終えて肩で息をしながらだがだ。
「スサノオはまだ出て来ていないか」
「そうだ、まだだ」
 その通りだとだ。天道は加賀美に顔を向けて答えた。
「まだいない」
「しかしここにいるか」
 そのことはだ。加賀美も察することができた。
「この空間に」
「スサノオとかいったな」 
 雄二が一同を代表してそのスサノオに対して言う。今ここにはAクラスからFクラスの全ての面々が集まっている。その彼等を代表しての言葉だった。
「ここにいるな、俺達は来たぞ」
「そう。試練に勝った」
 翔子その雄二に続く。
「それなら早く出て来る」
「ここで俺達と会うからわざわざこんな場所を用意したんだな」
 雄二は読んだ。スサノオのその意図を。
「だったら出て来い。俺達が来たんだからな」
「んっ!?」
 そしてここでだ。十兵衛が言った。
「感じたよ、今」
「では間も無くですか」
「スサノオが」
「もうすぐ出て来ると思うよ」
 十兵衛は半蔵と又兵衛に答える。
「スサノオがね」
「ならば」
「出て来たならその時は」
 半蔵も又兵衛も身構える。それぞれの得物を手にして。
 そのうえで敵を待つ。その彼等にだ。遂にだった。
 声がしてきた。その声はというと。
「確かに。私はここにいる」
「あの声がですか」
「間違いないわね」
 瑞希と優子が言う。
「私達に仕掛けてきていた」
「あいつなのね」
「そうだ」
 まさにその通りだという返事だった。
 気配は恐ろしいまでに、部屋を包み込むまでに感じる。しかしだった。
 それでもその圧倒的な気配からだ。彼等は言うのだった。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその二

「如何にも。私は文月学園にワームやネイティブを送り込んできた」
「やはりそうか」
 利光の目が険しいものになった。そのうえでの言葉だった。
「君がスサノオか」
「その通り。ライダー達と戦ってきている者だ」
「それならさっさと姿を見せるのです、豚野郎」
 美春はここでも豚だった。
「隠れて格好をつけているつもりですか」
「それはしない」
 こう言うスサノオだった。
「ではそろそろ姿を出すとしようか」
「早く出て来るのだな」
 神代の声は強いものだった。
「そして俺達と戦うのだ」
「いいだろう。それでは」
 そのスサノオが出て来た。彼等の前に闇が浮かび出て来てそれが人間に似た形になりだ。オレンジ色のカブトムシを思わせる姿になってきていた。 
 その彼がだ。こう名乗ったのである。
「この世界ではキュリオスという」
「キュリオスか」
「それが貴様の今の名前か」
「その通り」
 スサノオはその姿で慶彦に対して答える。
「君達の世界ではオロチだったがな」
「今はその姿か」
「俺が以前戦った姿だ」
 天道はかつての戦いを思い出しながら述べる。
「ワーム達の主だからその名前だというのか」
「その通りだ」
「キュリオスというと」
 ふとだ。利光が言ってきた。
「ギリシア語で言う王だったかな」
「そうだ。つまりワーム達の王だ」
 まさにそうだとだ。天道は利光に対して述べた。
「この姿の時はそういう名前だ」
「それならまだ出て来るんですか」
 愛子は周囲を見回す。その白い空間の至る場所を。
「ワームやネイティブが」
「そう、出て来る」
 こう言うとだった。そこにだ。
 多くの彼等がだ。愛子達の周りに出て来た。それを見てだ。
 愛子は少し納得する顔になってだ。こう述べた。
「ううん、予想通りだけれど」
「嬉しくはないか」
「戦いばっかりで飽きてきましたから」
 それでだとだ。愛子は田所に話す。
「ですから」
「そうだな。しかしだ」
「これで最後ですよね」
「だから気合を入れることだ」
 田所はこう愛子に言うのだった。
「とりあえずはこれで最後だ」
「ええ、じゃあ」
 もうだ。愛子は己のそのセーラー服の召喚獣を出した。
 そうしてだ。ムッツリーニに対して言った。
「戦おうね、デュオで」
「むっ、俺と」
「そう。嫌とか?」
「それは」
 そう言われるとだ。ムッツリーニも返答に詰まった。だがそれは一瞬でだ。
 彼はだ。こう愛子に返した。
「背中は任せろ」
「いい台詞言うじゃない」
「少なくとも今は保健体育以外でも戦える」
 彼もそこまで学力があがっていたのだ。これまでのワーム達との戦いの中で。
「こうなったら最後の最後まで戦う」
「一緒にね」
 こう話してだった。彼等は互いに背中合わせになってだ。ワームに対する。それは他の面々も同じでだ。利光と美晴もワーム達に向かいながら話していた。
「ではいいな」
「ええ、このワーム達を倒しましょう」
「そして僕は吉井君を助けに」
「お姉様をお助けに!」
 彼等の煩悩は不滅だった。だが何はともあれだ。
 彼等も戦う。そしてそれは。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその三

 翔子に無数のワーム達が殺到する。翔子は彼等をその召喚獣、スカートに日本の鎧のそれで退けていた。だがその上からだ。一体のワームが襲い掛かる。
「来る」
 翔子はそれを察した。しかし反応が遅れた。攻撃を受けるのは間違いなかった。
 そのワームにだ。白ランの召喚獣が跳んで一撃を加えてだ。退けたのだ。それを見て翔子は言った。
「雄二?」
「ああ、俺も戦うからな」
 こう言ってだ。彼は翔子の隣に来た。
「一緒にな」
「そう。戦ってくれるの」
「この数、多いか?」
「さっきまでは多かった」
 翔子はこう雄二に応える。今二人は左右に並んでいる。
「けれど今は多くない」
「俺達が来たからか」
「そう。二人ならどんな状況でも怖くない」
 翔子は前を見ながら言う。
「雄二となら。何も怖くはない」
「ああ、じゃあ行くぞ!」
「うん、二人で」
 こう話してだった。彼等も戦うのだった。そしてだ。
 明久はだ。左右にだ。
 瑞希と美波がいてだ。三人で戦っていた。
「これ以上になく多いけれど」
「はい、ここで負けたら駄目です」
「スサノオ、見てなさい!」
 三人もそれぞれの召喚獣で戦いだ。ワーム達を退けていた。
「貴方が私達を試しているのなら!」
「それを乗り越えてやるわよ!」
「僕達にも意地があるんだ!」
 明久もだ。今も果敢に戦う。
「どんなハードルでも乗り越えてやる!」
「少なくともこの戦いを乗り越えることだ」
 田所も彼等に言う。
「もうすぐ脱皮する奴が出て来るな」
「それが問題なんですけれど」
「どういった奴が来るのかじゃが」
 優子と秀吉の二人は双子で組んでいる。そのうえで田所に問うてきたのだ。
「あの、そうした奴が来たら」
「わし等も戦います」
「いや、数はそれ程多くはない」
 田所は彼等の志願を退けて述べた。
「君達なら二人がかりとかだと何とでもなる」
「そうなんですか。二人ならですか」
「わし等でも」
「そして手強い奴なら」
 そういった者達ならだとだ。田所は目の前に来る一人のワームを見ながら話す。
「我々が相手をする」
「三人また来ましたね」
「じゃあ田所さん、ここは」
「俺達も」
 黒崎、織田、大和がそれぞれ言ってだ。そのうえでだ。
 三人が最初にベルトを出す。それに続いてだ。
 田所もだった。そこにそれぞれのゼクターが来る。
「変身!」
 四人はそれぞれのゼクターを装着してライダーになる。田所のザビーはマスクドフォームからライダーフォームになる。それからの言葉だった。
「行くぞ、俺はあいつを倒す」
「あれは確か」
「かつてはゼクトの」
「そうだ、あいつだ」
 そのコオロギの姿のだ。グリラスワームを見ての言葉だ。
「あいつは俺が倒す」
「三島ですね」
「あの男はですか」
「御前等は後の三人を頼む」
 ザビーはコーカサス、ヘラクス、ケタロスにそれぞれ言う。見ればそれぞれ脱皮したワームがいた。蟹、象、蝙蝠のだ。それぞれがいたのだ。
「頼んだぞ」
「はい、わかりました」
「なら奴等は俺達が」
 彼等はすぐにザビーの姿に頷きだ。そうしてだ。
 それぞれのワームに向かう。そしてザビーはだ。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその四

 グリラスワームと対峙する。そのうえで彼に対して言う。
「こちらの世界では中々出て来なかったな」
「あの方の御考えでな」
「それでだというのだな」
「私の相手は御前の予定だった」
 三原の声でだ。グリラスワームは話すのだった。
「そして実際にこうしてだ」
「闘うということだな」
「これまで貴様等には二度敗れてきた」
 グリラスワームにとっては忌々しい思い出に他ならない。
「だがそれでもだ」
「それでもか」
「今度は勝つ」
 こうだ。強い決意を見せて言うのだった。
「私とて伊達にゼクトの幹部だった訳ではない」
「科目は何だ」
「これだ」
 グリラスワームから出してきた。それは。
「生物だ。どうする」
「俺も生物は得意だ」
 こうだ。ザビーはその科目での挑戦を動じることなく受けた。両者はそのうえで対峙を続ける。
 そしてその対峙を少し続けだ。彼等は戦いに入った。
 他のライダー達も生徒達もだ。戦っていく。そしてだ。
 その中でだ。天道もだ。
 キュリオス、即ちスサノオと戦う。そしてその中でだ。スサノオに言うのだった。
「まだ全力ではないな」
「君が全ての力を出していないのと同じだ」
 スサノオはカブトの攻撃を受け止めながら彼に返す。
「さあ、だから君もだ」
「あれか」
「そうだ、あの姿になるのだ」
 まさにそうしろというのだ。
「あの姿なら私も全力を出そう」
「わかった。それではだ」
 カブトの手にハイパーゼクターが出た。それを腰の横に装着してだ。
 カブトの姿が変わる。その姿は。
「ハイパーキャスト」
『ハイパーキャスト』
 空を舞う赤と銀の姿になりだ。その手に黄金の剣を出してだ。
 スサノオにだ。こう問うのだった。
「この姿だな」
「そうだ、その通りだ」
 スサノオは満足した顔で答える。
「では私も真の力を出そう」
「どの教科だ」
「全てだ」
 返答は一つだった。
「全ての教科で闘おう」
「言うものだな。全ての教科でか」
「闘いは激しければ激しい程いい」
 スサノオは実に楽しそうに話す。
「それだけ楽しくなるものだ」
「だからこそか」
「そうだ。全ての教科で闘う」
 試験召喚システムについて細かいところまでわかったうえでの言葉だった。
「だからこそだ」
「そうか。それでは俺もだ」
「受けてくれるな」
「受けない筈がない」
 ハイパーカブトも言葉を返す。
「俺も楽しませてもらうのだからな」
「楽しむというのか、君も」
「学問は楽しませてもらう」
 そうした意味での言葉だった。
「そのうえで貴様をだ」
「倒すというのだな」
「貴様が飽きるまで何度も何度も倒す」
 ハイパーカブトだけではない。全てのライダーが同じ考えだった。
「諦めるのだな。人間への挑戦を」
「それでは楽しみがなくなる」
 キュリオスはハイパーカブトに対してだ。こう返すのだった。
「私のその楽しみがだ」
「人間に仕掛けその仕掛けをどう潜り抜けるのかを見る楽しみがか」
「その楽しみがなくなる」
 キュリオスはこのことは実に残念そうに話す。そこには明らかに感情がある。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその五

「それにこのことは君達にとってもいいことではないのか」
「人間の成長になっているというのか」
「君達ライダーも私との戦いの中で大きく成長した」
「確かにな」
 それはハイパーカブト、天道自身もである。実感のあることだった。
「俺も貴様との戦いの中で大きく変わった」
「成長しているな。君達も」
「そしてだな」
「この世界の少年少女達はどうなのか」
 明久達のことに他ならない。
「彼等も私が仕掛けたことにより大きく成長している」
「では聞こう」
「何をか」
「俺達人間が成長し貴様の世界に赴ける様になり」
 人がそこまで成長したらどうかというのだ。人が成長しそれにより次元すら超えられる力を身に着けた時にはそれも可能だというのだ。
 天道、ハイパーカブトはそのことをだ。キュリオス、即ちスサノオに問うたのである。
「貴様を倒せるだけの力を身に着ければどうするのだ、その時は」
「面白いではないか」
 そうなることすらだ。スサノオは楽しみとしていた。
 だからこそだ。こうも言うのだった。
「そのことも。まただ」
「面白いか。貴様が倒されることも」
「退屈ではなくなるのだ」
 何処までもそのことが念頭にあるスサノオだった。
 そしてキュリオスとしてだ。彼は言うのである。
「それでどうして不満に思うのか」
「貴様が滅んでもか」
「滅ぼうとも構いはしない」
 やはりこう言ってみせる。
「永遠の牢獄での退屈がなくなるのだからな」
「成程な。そういうことか」
「では君達はこれからも私の仕掛けを破るのだ」
「そして俺達が貴様と最後の戦いに入るまでか」
「仕掛けさせてもらおう」
「それではだ。行くぞ」
 こうしてだった。彼等はだ。
 戦いに入る。ハイパーカブトとキュリオスの全教科での闘いがはじまった。
 他のライダー達も戦っていた。その中でだ。
 コーカサス達も戦いだ。それぞれのワームを倒した。
「よし、これでいい」
「ワームは倒したぞ」
 彼等が対峙していたそれぞれのワームを倒したことをだ。喜んでの言葉だった。
「後はだな」
「司令だが」
「安心しろ。俺もだ」
 田所、即ちザビーも言うのだった。
「これで終わらせる」
「よく言ったな」
 三島の声でだ。グリラスワームはザビーに言い返してきた。
「私もかつてはそのザビーを使いこなしたのだがな」
「従わせたと言うべきか」
「どちらにしろ使いこなした」
 それをしてみせたのが三島だったのだ。だがその彼にだ。
 ザビーはだ。構えを取ってそのうえで言い返してみせた。
「俺は違う」
「違うというのか、どう違うのだ」
「俺はゼクト、人間として戦っている」
「仮面ライダー、人間か」
「その人間としての心をザビーは認めた」
 気難しいと言えるザビーもだ。田所の人間としての資質を認めたのだ。
 だからこそだ。彼と共にいて彼をライダーとしているのだ。
 そのことからだ。田所はライダーとしてだ。グリラスワームに話していく。
「その俺の力の。ライダーとしての戦いをだ」
「私に見せるというのか」
「ではこれで終わらせる」
 構えを取ったままだ。ザビーは勝負に出た。
 そうしてだ。その右手に渾身の力を込め。ベルトを操作してだった。
「ライダースティング」
『ライダースティング』
 機械音と共にだった。一直線に前に出てだ。
 拳を一撃、突き刺す様にグリラスワームに浴びせた。それで決めたのだった。
「勝負ありだな」
「私が敗れたというのか」
「確かに優れた学力だった」
 三島にしてもだ。伊達にゼクトの幹部だった訳ではない。学業もできていたのだ。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその六

 だがその彼もだ。田所に敗れた。そのことを自分から言うのだ。
「貴様はライダーになってか」
「蕎麦屋の親父としてだけじゃない」
「学業も備えていたか」
「仮面ライダーには多くの資質が求められる」
 そこには知力もあるのだ。学業なぞその中の一環に過ぎない。
「そのうちの一つを使ったに過ぎない」
「そうか。それによって私をか」
「倒させてもらった。それだけだ」
「わかった。では敗北を認めよう」
 三島もだ。得点がなくなってはどうしようもなかった。
「では私はこれで去ろう」
「しかしまた何処かの戦いでか」
「会おう、またな」
 こう言い残してだった。三島、グリラスワームも姿を消したのだった。その間に他の面々も戦いを終えだ。ハイパーカブトの戦いを見るのだった。
 ハイパーカブトは黄金の剣を手にキュリオスと闘っている。。それはまさにお互いの全てを賭けた闘いだった。その死闘を見てだった。
 明久がだ。強い顔になって言うのだった。
「凄いね。天道さん位の学力があったら」
「世界のどの大学でも行けますよ」
 瑞希もだ。その天道の闘いを見て言う。
「どの教科もあそこまでできるなんて」
「そうだよね。それこそハーバードでもマサチューセッツでもね」
「けれど。そうしたことには興味ないんですね」
「仮面ライダーとして戦うには必要なものであって」
 それだけの学力があってもだ。天道にとってはそうだったのだ。
「そうしたいい大学に行く為じゃなかったんだ」
「もっと上のものを見て勉強されてるんですね」
「いい大学なんか誰でも行けるんだよ」
 校長は自分一人で脱皮したワームを倒してから言っている。
「ちょっと勉強すればいいだけなんだからね」
「それじゃあ大きなことをするにはですか」
「もっと。沢山勉強して」
「勉強だけじゃないよ。常に己を磨かないといけないんだよ」
 これが校長の言葉だった。
「人間ってやつはね」
「じゃあ試験召喚システムって」
「その為にも」
「競争ってのはね。切磋琢磨なんだよ」
 校長の教育方針がここで出た。
「御互いに磨き合うものなんだよ。もっともそこでズルする奴は駄目だけれどね」
 それは否定するのだった。
「けれどそれでもね」
「それでもなんですね」
「健全な競争なら」
「幾らでもして磨き合うんだよ」
 校長は明久達にこう話す。
「学問からでも何でもね」
「じゃあスサノオはそれをわかっていて」
「仕掛けてきたんだよ」
 校長は明久に応えながらだ。そのスサノオを見ていた。
「やってくれるよ。面白い神様じゃないか」
「あれっ、ひょっとして校長先生は」
 瑞希は気付いた。校長の今の言葉から。
「スサノオのことは」
「嫌いじゃないね」
 実際にこう瑞希に答える校長だった。
「仮面ライダー達もね。切磋琢磨はいいものだよ」
「だからですか」
「あんた達、いいかい」
 生徒達にだ。校長はさらに言う。
「この戦いが終わっても必要なら課外授業に出させてやるからね」
「それで戦ってですか」
「己を磨けってことですか」
「そうしな。いいかい、人間は磨かれるものなんだよ」
 校長の頭の中で人間と宝玉が一つになっていた。
「そうして大きく奇麗になっていくものなんだよ」
「わかりました。それじゃあ」
「この戦いが終わっても私達は戦います」
「何かよくわからないけれど僕達も逃げられないみたいですしね」
「戦いから私達自身、磨き合います」
 明久と瑞希はそれぞれの言葉で言う。そしてだった。
 雄二はだ。二人の死闘を見ながらこう言ったのだった。
「もうすぐだな」
「決着がつくのね」
「ああ、それが近い」
 こうだ。彼は翔子に話す。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその七

「そろそろだな」
「御互いに点数が少なくなってるけれど」
「天道さんがやや劣勢だな」
 そのことは数字に出ていた。既にだ。
「このままだとな」
「負ける」
「ああ、天道さんはどうするんだ?」
 天道のハイパーカブトも果敢に闘っている。しかし次第にだった。
 守勢に回ってきていた。それを見てだった。雄二は言った。
「このままだとやばいんだが」
「安心してくれ」
 彼等にだ。加賀美が出て来て言ってきた。
「あいつはそう簡単にやられる奴じゃない」
「だからなんですね」
「この戦いでも」
「しかもあいつは進化する奴だ」
 天道自身が言う通りだ。彼は進化する男だった。
「それも光速でな」
「光の速さの進化。それなら」
「この戦いでも」
「安心して見ていてくれ」
 加賀美は苦戦するハイパーカブトを見ても動じない。
「あいつは絶対に勝つ」
「わかりました。それじゃあ」
「今は」
 雄二も翔子もライダー達には素直だった。そうしてだった。
 天道の闘いを見守る。その闘いは。
 やはり天道が劣勢になってきていた。得点が減ってきていた。 
 その彼にだ。スサノオは問うた。
「さて、そろそろ終わりか」
「そう思うか」
 ハイパーカブトとしてだ。天道はスサノオの言葉に言い返した。
「俺がこれで終わりだと」
「違うな」
「そうだ、違う」
 まさにその通りだとだ。天道自身も言う。
 そしてだ。右手に持つその剣をだ。
 横にだ。肩の高さで掲げる。そうして言うのだった。
「一撃で決める」
「全ての教科で仕掛けるのだな」
「俺の進化を見せてやる」
 天道がこう言うとだった。彼のところにだ。
 全てのライダーシステムが来た。そうしてだ。 
 右手に持つその剣にだ。次々と自ら装着されていく。
『ザビーセットオン』
『ドレイクセットオン』
『サソードセットオン』
『パンチホッパーセットオン』
『キックホッパーセットオン』
『コーカサスセットオン』
『ヘラクスセットオン』
『ケタロスセットオン』
『ガタックセットオン』
 そしてだった。天道が自ら出したダークカブトのシステムも一旦飛んでから剣の一部に止まりだ。この機械音が告げられたのだった。
『ダークカブトセットオン』
『オールライダーセットオン』
「凄いのう、全てのライダーシステムが装着されたぞ」
 秀吉もそれを見て思わず唸る。
「あの力ならスサノオといえどもじゃ」
「いや、あれだけじゃないんだ」
 宗朗がその秀吉に話す。
「天道さんはあれに加えて」
「まだあるというのか」
「そう、見ているんだ」
 実際にだ。天道のその背を見ながらだ。宗朗は言う。
「あの人がさらに何をするか」
「まさか。あれ以上のことができるというのか」
「天道さんの進化は光速の進化だね」
 宗朗もだ。このことを言うのだった。
「それならね」
「あれ以上のことがか」
「できるよ。必ずね」
 そしてだ。実際にだった。剣を持つ天道がだ。
 分身した。二つが三つ、三つが四つ、そして四つが五つにだ。
 その天道にだ。スサノオは問うたのだった。
「それが君の新しい力か」
「言っておくが分身したからといってだ」
「一つ一つの力は弱まった訳ではないな」
「言った筈だ。俺の進化は光速だ」
 五人の天道がそれぞれ言う。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその八

「そうした生半可な成長はしない」
「そうだな。では五人の君がか」
「貴様を倒す。覚悟はいいな」
「いいだろう。では来るのだ」
 スサノオは悠然と構えてだ。天道に告げた。
「この世界での決着をつける時が来た」
「行くぞ」
 五人の天道は剣を構え一斉に攻撃を繰り出す。その中でだ。
 その天道達は腰の横のハイパークロックアップを動かしだ。こう言うのだった。
「ファイナルマキシマムハイパータイフーン」
『ファイナルマキシマムハイパータイフーン』
 機械声もしてだった。その光子の無数の刃がスサノオに向かう。スサノオも無限の白い炎を繰り出す。両者の攻撃が炸裂し。
 そして戦場に残っていたのは。炎も光も消えた後に。
 天道だった。その彼を見てだ。誰もが言った。
「勝った!?」
「天道さんが」
「僕達が」
 文月学園の面々も言う。
「この戦いに勝った!?」
「まさか」
「そうだ、君達は勝ったのだ」
 スサノオの声だった。
「私は敗れた。それは確かだ」
「スサノオか」
 雄二がその声に顔を鋭くさせる。
「負けたことは認めるんだな」
「見ての通りだ。私の姿はないな」
「つまり得点はなくなったな」
「そういうことだ。私は敗れた」
 そのことを自分でも認めるスサノオだった。
「この通りだ」
「そうだな。だがそれはこの世界だけのことだな」
「私はまだ多くの世界にいる」
 スサノオの分身達がだ。そうしているというのだ。
「そのことを言っておこう」
「つまり僕達の戦いは世界を変えて行われる」
「十兵衛さん達と同じですね」
 明久も瑞希も言う。
「そういうことになるんだ」
「つまりは」
「そう。では君達とは別の世界で会おう」
 スサノオは文月学園の面々に話した。
「それではな」
 こうしてだった。スサノオの声も消えた。そして気配もだ。
 その気配が消えてからだ。天道が言う。既にライダーの姿は消えている。
 その彼の言葉はこうしたものだった。
「では美味いものを食おう」
「えっ、美味しいものって」
「そうだ。美味いものをだ」
 意外な言葉に呆気に取られる明久にまた言う彼だった。
「戦いは終わったのだからな」
「あの、また次に戦いに行くとかは」
「それは後でいい」 
 悠然とした口調でだ。天道はまた話した。
「まずは美味いものを食おう。勝った祝いにな」
「何か天道さんって違いますね」
 明久も彼のその器に驚きを隠せない。しかしだった。
 すぐに笑顔になりだ。こう応えたのだった。
「なら何か食べに行きましょう」
「いや、それには及ばない」
 天道はそれはいいというのだった。食べに行くことはだ。
「俺が作る」
「天道さんの料理は凄いのよ」
 愛子がここで笑って話す。天道のその料理のことをだ。
「特に鯖とお豆腐を使うとね」
「そうだな、鯖と豆腐だな」
 天道も愛子のその言葉に乗る。
「色々と作ろう」
「僕は吉井君と同じ席がいい」
 利光は早速明久を見てだった。
「それに天道さんの料理はそれこそ至高のものなのだからな」
「ううん、じゃあ皆でだね」
「そう、吉井君と一緒に食べられるんだ」
 明久と利光の言うことは食い違っていた。だがそれでもだった。
 二人は共に天道の料理に期待を見せていた。しかしだ。
 瑞希がだ。ここでこんなことを言い出したのである。
「私もお料理作らせてもらいますね」
「いや、姫路さんはちょっと」
 明久はすぐにだ。青い顔になって瑞希を止めに入った。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその九

「止めておいた方がいいんじゃないかな」
「けれどお料理ですから」
「天道さんが作ってくれるし」
「そうじゃ。ここは天道さんにお任せするべきじゃ」
「俺もそう思う・・・・・・」
 秀吉とムッツリーニも言う。
「だからここはじゃ」
「俺達はただ待っていよう」
「ううん、それならですね」
 仕方ないといった顔でだ。瑞希も頷いた。
「私も今回はお料理はしません」
「ならうちもよね」
 美波もそれでいいとだ。身を引いた。
「天道さんのお料理楽しませてもらうわ」
「お姉様、隣の席は確保しました」
 美晴はその手にスタンガンがあった。足下には明久が倒れている。
「ではお願いします」
「おい、そのスタンガンは誰のだ」
「私の」
 翔子が出て来て話す。
「雄二の隠し撮り写真と交換で貸したから」
「おい、何時の間に撮ったんだ」
 雄二は美晴にこう抗議した。
「そして何故貰ったんだ」
「雄二が格好いいから」
 翔子は顔を赤らめさせて理由を話す。
「だから貰った」
「くそっ、この学園の法律はどうなってるんだ」
「そんなのあったの?」
 優子も知らないことだった。そのことは。
「この学校って弱肉強食じゃない」
「隠し撮りもか」
「そうよ。私だって美晴ちゃんにはいいもの貰ってるし」
 優子は楽しげに笑ってこう言うのだった。
「同人誌ね。ちょっとね」
「ああ、あのボーイズラブの薄い本だよね」
 スタンガンから復活した明久は何気なく致命的な失言を犯した。
「木下さんあれ好きだよね」
「ええい、五月蝿い!」
 いきなりだった。優子のドロップキックが炸裂した。両足で放たれるそれがだ。明久の胸を打ちそのまま吹き飛ばしてしまった。
「その話は禁句よ!」
「けれどこの前だって交差する日々の」
「関係者がいるのに言わないの!」
 優子はちらりと宗朗を見てそれは止めた。
「それにあんただってそっちの世界の関係者じゃないの」
「いや、あれは別人なんだけれど」
「声一緒だからばればれよ」
「多分僕の生き別れの双子の妹なんだよ」
「そんな強引な設定で誰も納得しないわよ」
 何故かそうした話になっていきだ。裕子は今度は矢車をちらりと見て言う。
「矢車さんだって危ないのよ」
「俺もか。確かに自覚はあるが」
「そうよ。冒険黒の人とよ」
 何故かこんなことまで知っている優子だった。だがそうした話はだ。
 田所がだ。こう言って止めたのだった。
「では蕎麦も打つ。食うか」
「あっ、じゃあお願いします」
「お蕎麦も」
 これで蕎麦も食うことが決まってだった。彼等は一旦文月学園の食堂に出た。そこでだ。
 彼等は天道達の作った料理を食べてだ。そしてだった。
 加賀美がだ。こんなことを言った。
「ここでの戦いを見てもな」
「スサノオのことだな」
「はい、俺達を試してますよね」
 こう田所にも話すのだった。
「そうして見てますよね」
「この世界でもそうだったしな」
「そして他の世界でも」
「いる」
 それは間違いないとだ。田所は自分が打った蕎麦を食べながら話す。
「間違いなくな」
「問題はそれが何処の世界かですけれど」
「向こうから招待してくれるからな」
「どうして行くかは考えなくていい」
 大和と黒崎がこう瑞希に話す。
「問題はその世界でスサノオが何を見ようとしているか」
「そして何を仕掛けて来るかだ」
「ううん、私達って何か受け身ですよね」
 二人の話を聞いてだ。瑞希は困った様な顔になって言う。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその十

「スサノオが仕掛けてきてそれに対して、ですから」
「そうよね。何か性に合わないわ」
 瑞希は湯豆腐を食べながら話す。
「こっちから仕掛けてやっつけていかないとね」
「少なくとも今それはできないんだよ」
 影山も同じく湯豆腐を食べながら話す。
「俺達はあいつの居場所まで辿り着けないしな」
「それはまだなんですね」
「あいつは全く違う次元の何もない牢獄にいるんだよ」
 かつてのツクヨミ、アマテラスとの戦いの結果だ。そこで虜囚になっているのだ。そうしてその中から様々な手段で人間達に仕掛けてきているのだ。
 そのことをだ。影山は話す。
「そこに辿り着くのなんてそう簡単じゃなくてな」
「その牢獄は何処に」
 ムッツリーニはその場所を尋ねた。
「異なる次元というけれど」
「詳しい場所も全くわからない」
 矢車は麻婆豆腐を食べている。尚それは彼が作ったものだ。
「無論行き方もだ。しかしだ」
「しかし・・・・・・」
「必ず辿り着く」
 それは絶対だとだ。矢車は彼が作ったその麻婆豆腐を食べているムッツリーニに述べた。無論彼もその麻婆豆腐を食べ続けている。
「何時かはな」
「では僕達もです」
「こうなったら乗りかかった船ですから」
 利光は真面目に、愛子は右目をウィンクさせて言う。
「そして是非共探偵、いえ。怪盗と戦いたいです」
「そうさせて下さいね」
「だからどうしてそこでそっちに話がいくのよ」
 優子はその二人に呆れた顔で突っ込みを入れる。尚利光は明久の隣にいて愛子もさりげなくムッツリーニの隣の席に位置している。
 その彼等にだ。優子はこう言うのだった。
「私はどっちかっていうと竜の世界があればいいかなって」
「思うんだよな、やっぱり」
「ええ、やっぱりです」
 その通りだとだ。彼女は加賀美に答える。
「私はそっちです」
「じゃあ今度はそうした世界かもな」
「竜の世界ですか」
「本当に色々な世界を行き来することになるからな」
 加賀美は自分もそうなったからこそしみじみとなっていた。
「いや、次はどの世界か俺も興味がある」
「どの世界にどのライダーが行くか」
 幸村は鯖の味噌煮を箸に取りながら話す。
「実に興味深い。若しやわらわに似た者もおるやも知れん」
「君はそういう人多いんじゃないのか?」
 織田は幸村のその声を聞きながら述べた。
「そんな気がするが」
「わらわ自身もそう思う。果たしてどんな者が出て来るか」
「楽しみですよね」
「いや、御主もそうじゃろ」
 幸村は自分に応えてきた明久にも述べた。
「御主と似た者が絶対に別の世界にもおるぞ」
「じゃあその人とですか」
「会うことも考えておれ」
「はい、僕もそう思います」
 ひょっこりとだ。茶々丸が出て来た。
「僕としては何か島田さんに愛着を感じます」
「あれっ、この子の声何処かでよく聞いたけれど」
 実際にだ。美波は茶々丸の声を聞いてこう言った。目を少し大きく見開いて。
「十兵衛ちゃんもだけれど何処だったかな」
「多分ひだまりですね」
 茶々丸の方からこんなことを言ってきた。
「あの世界では先輩後輩の関係だったと思いますよ」
「そうだったわね。それで十兵衛ちゃんとも」
「ええと。魔女?」
「だったかしら。そんな気がするけれど」
「まことに誰でも彼でも関わりがあるものじゃな」
 秀吉が言ってもあまり説得力のないことだった。
「しかし。次の世界ではどうなるかじゃな」
「そう。どういった戦いになるのか」
「全くわからないから心配だにゃ」
 ダルタニャンとにゃんぱいあである。
 

 

第十五話 スサノオと決戦とハイパーカブトその十一

「しかしそれでも戦うとならば戦う」
「僕は応援させてもらうにゃ」
「あんた達もどっちがどっちかわからないな」
 雄二はその彼等を見て述べた。
「だがとにかくこっちの世界での戦いは終わった」
「そうそう、それなら楽しくやろうか」
 風間も蕎麦を食べている。見事なまでにヘルシーな美食だった。
 そうして話をしながらだ。神代は豪勢な、ここでもわざわざ取り寄せてきた椅子に座ってだ。爺やに対してこんなことを尋ねていた。
「爺、この黒い細長いものは確か」
「はい、お蕎麦です」
「オッ、ソーバか」
「左様でございます」
「いい味だな」
 箸で食べながらだ。神代は満足した面持ちで話す。
「しかも身体にいいそうだな」
「はい、ですから思う存分お召し上がり下さい」
「好きなだけな。それでミサキーヌだが」
「どうかしたの?」
 話に出るとすぐに本人も出て来た。
「何かあったの?剣君」
「いや、確かミサキーヌもこのオッ、ソーバを食べていたな」
「立ち食いで?随分懐かしいこと言うわね」
「そうだったな。俺はあの店で勤めていたこともある」
「えっ、神代さんが普通のお仕事!?」
「それ絶対に無理だろ」
「こんな変わった人をお店に雇うって一体」
「どんな勇者がいる店なんだろう」
 こんなことさえ言われる。
「けれどこのお蕎麦は確かに」
「美味しいし」
「幾らでも食べられるっていうか」
「そんな感じよね」
「本当に幾らでもあるからな」
 量のことは気にするな、これが田所の言葉だった。
「好きなだけ食べてくれ」
「お祖母ちゃんが言っていた」
 そしていつもの天道節だった。
「好きな時に蕎麦を食える。人はそうあるべきだとな」
「蕎麦をですか」
「好きな時に」
「蕎麦はそうしたものだ」
 蕎麦にも造詣の深い天道だった。
「気軽に、かつ楽しんで食べるものだ」
「ですよね。このざる蕎麦なんて特に」
 明久はその蕎麦をすすりながら話す。
「気軽に、それで楽しく食べられますから」
「なら今がその時だ」
 蕎麦を食う時だというのだ。
「思う存分食おう」
「はい、じゃあ」
「今からも」
 こう話してだった。戦いが終わり文月学園の生徒達は蕎麦に豆腐、鯖を食べていく。そうしてそれが終わってから。
「じゃあ次の戦いに」
「行きましょう」
 こう笑顔で言い合いだった。
 彼等は今の戦いが終わったことを祝っていた。そしてそのうえで新たな戦いに思いを馳せるのだった。勝利の美酒は醒めるものなのだから。


第十五話   完


                          2011・11・6 

 

第十六話 四人の竜その一

                          第十六話  四人の竜
 文月学園での戦いは終わった。しかしだ。
 それでもスサノオとの戦いは終わりではなくだった。
 紅と名護は紅の屋敷の中で話をしていた。木造の屋敷の中には様々なバイオリンを作る道具が置かれ雑然としている。その中でだった。
 名護は己の席に座り腕を組みだ。こう紅に話した。
「文月学園だったな」
「ええ、そこです」
 紅も己の席から答える。二人は今向かい合って座っている。
 そのうえでだ。彼はこう名護に話したのである。
「あちらの世界でスサノオは僕達に仕掛けてきました」
「そうだな。そしてあの世界の仲間達とか」
「共に戦い勝ちました」
「これで三つの世界でスサノオの介入があった」
 名護はにゃんぱいあ、そして侍の世界とその世界の三つを合わせてだった。
 彼も考えてだ。言ったのである。
「しかしそれだけではないな」
「一体どれだけの世界に介入しているかわからないですけれど」
「そうだな。だが」
「だが?」
「いや、君は人間とファンガイアのハーフだ」
 名護がここで言うのはこのことだった。
「そうしたライダーは君以外にも何人かいる」
「それでも僕は人間ですよね」
「姿形の問題ではない」
 名護もこれまでの戦いでわかったのだ。そして過去に行きだ。
 そのうえでだ。今紅に話すのだった。
「問題はその心だ」
「心ですね」
「その心がどうなのかだ」
 こう言うのである。
「人間のものなら」
「それでいいんですね」
「逆に言えば人間であってもその心が人のものでなければ」
 それでだというのだ。
「最早人間ではない」
「そうですね。かつての乾さんや相川さんも」
「神代君、そして君もだ」
「そういうこともスサノオの見たいことなんですね」
「ということはだ」
 名護はここで一つの答えを出した。
「我々が行く世界の中にもそうした姿形の違う人がいる世界がある筈だ」
「そうなりますね。ただそれがどの世界かは」
「それはわからない」
 最も重要なだ。それはだというのだ。
「だが我々がその世界に行けば」
「その時にですね」
「これまでスサノオは人間を見る為に仕掛けてきている」
「姿形もその中に入るからこそ」
「門が出て来ればその時にだ」
「はい、入りましょう」
 こう話してだった。彼等もスサノオの仕掛けることに向かうことを決意していた。そうしたことを話しているとだ。そこになのだった。
 二人のところにだ。野村静香と襟立健吾がだ。慌ててやって来てだ。こう二人に言ってきたのだ。
「渡、名護さん、大変なのよ」
「門が出て来たで!」
「えっ、それで場所は」
「何処だ!?」
 二人は静香と襟立のその言葉に応えてだ。すぐに立ち上がった。
 そうしてだ。二人にあらためて問うたのだった。
「どの場所にその門が」
「出て来たというんだ!?」
「埼玉アリーナの前よ」
「そこに出て来たんや」
「埼玉アリーナ、あの場所だね」
「そこならよく知っている」
 二人にとっても熟知している場所だった。そこはだ。
 それでなのだった。二人は顔を見合わせて頷き合いだ。それからだった。
 静香と襟立にだ。こう告げたのである。
「じゃあすぐに行こう」
「埼玉アリーナの前に」
「青空の会の人達にも連絡するんやな」 
 襟立はこのことを確認した。
 

 

第十六話 四人の竜その二

「あの人達にも」
「お願いできますか?」
「ああ、お安い御用や」
 こう言ってだ。襟立はすぐに自分の携帯を出した。 
 そうしてだった。すぐに彼等に連絡を入れたのだった。
「はい、それじゃあ埼玉アリーナの前にお願いします」
「これでいいですね」
「うん、島さんと恵が来てくれる」
 紅と名護が頷き合う。
「そして後はだ」
「はい、兄さんにも」
「ライダーが三人いれば何とかなる」
「それに青空の会の人達がいれば」
 彼等は用意周到だった。すぐに仲間達に連絡をしてだ。
 そのうえで埼玉アリーナの前に来た。階段になっているその白いコンクリートの場所に来るとだ。二人のところにすぐに登太牙が来た。
 彼はバイクから降りてすぐにだ。紅のところに来て言った。
「ここだな、渡」
「うん、ここって聞いたよ」
 紅もバイクを降りてきた。それは名護もだ。
 そしてライダー三人でだ。周りを見回す。するとだ。
 静香と襟立がだ。言ってきた。
「ここよ!」
「ここやで!」
 二人はアリーナの入り口を指し示す。そこにだった。
 黄金の竜が飾られた門があった。その門を見てだ。
 名護がだ。最初に言った。
「あの門の向こうにだな」
「そうですね。スサノオが待ち受けていますね」
「すぐに行きたいところだが」
 名護は自分達の上にあるその門を見上げながら紅と登に話す。
「だがまだだ」
「はい、島さん達がまだです」
「あの人達を待とう」
「迂闊に行ってはいけない」
 名護はスサノオを警戒しつつ言った。
「スサノオは常に我々を見ているのだからな」
「そう、あいつはあの門の向こうにいて」
 登もだ。その門を見上げながら言う。
「俺達を見ているんだ」
「それに迂闊に乗ることは危険だ」
 名護はこう看破した。
「もう少し待とう」
「そうよね。下手に門に入って入り口に敵が一杯いたら」
 どうなるかとだ。静香も言う。
「幾ら渡達が強くてもね」
「その場では勝っても後が大変だね」
 紅も当然その門を見上げている。そのうえでの言葉だ。
「だから待つべきだね」
「あっ、今来るで」
 襟立は自分の携帯に着信が来てだ。それを見て言った。
「島さんも恵さんも」
「わかりました。それじゃあ」
「恵達が来てからだ」
 紅と名護が応えてだった。そのうえでだ。
 彼等は今は待った。そうしてだった。
 青空の会の二人が来た。島と麻生恵がだ。その二人がすぐにライダー達に言ってきた。
「遅れて済まない」
「あの門がなのね」
「そうだ。あの門に入ればだ」
 実際にだとだ。名護が二人に話す。
「そこにスサノオが待っている」
「わかった。それならだ」
「今から」
 こうしてだった。全員揃ってからだ。彼等はその世界に入ったのだった。だがその世界は。
 何の変わりもなかった。彼等のその世界とだ。それでだった。
 紅がだ。首を捻りながらこう仲間達に話した。
「あれっ、この世界って何か」
「同じだな」
「俺達の世界と全く」
「そうですよね。何もかもが」
 現代文明の世界だった。そうしてだ。
 道行く人々の服も言葉もだ。日本のものだ。そうしたものを見てだった。名護も登もだ。紅にだ。周囲を見てそうして話すのだった。
「この世界は」
「鏡、いやまさか」
「違うと思うわ」
 それはだとだ。静香が言った。
「何か微妙に」
「あっ、そういえば」
 静香に言われて再び周囲を見回してだ。紅も気付いた。確かにだった。
 

 

第十六話 四人の竜その三

 この世界は何かが違っていた。彼等のいた世界とだ。
「同じ文明、同じ時代、同じ国だけれど」
「私達の日本じゃないわよね」
「うん、そうだね」
「じゃあこの世界でもやることがあるのね」
「そう、スサノオの仕掛けてきていることに向かおう」
 紅は静香だけでなく他の仲間達にも述べた。
「問題はそれが何かだけれど」
「ああ、パパも来てたんだ」
 こんな話をしているとだ。ここでだった。
 未来にいる筈の紅の息子である紅正夫がだ。彼等のところに来たのだ。
 我が子を見てだ。紅は目を丸くして彼に問い返した。
「えっ、正夫も来てたんだ」
「そうなんだ。僕の世界でも門があってね」
「待て、その門はあれなのか」
 名護が前に出て彼に問う。
「金の竜が飾られた」
「うん、その門だよ」
 まさにその門だというのだった。
「その門を潜ってここに来たんだ」
「そういうことなんだ」
 ここでキバット四世も出て来た。
「それで俺達もこうして来てるんだよ」
「ひょっとしてパパ達って今この世界に来たのかな」
「うん、そうだけれど」 
 その通りだとだ。正夫に答える紅だった。
「それでこの世界って一体」
「詳しいことは僕が話すよ。それじゃあ何処かでお茶でも飲みながらね」
「うん、この世界のこと聞かせてくれるかな」
「それじゃあね」
 こうしてだった。紅達は正夫からこの世界の話を聞くことにした。彼等は近くにあった喫茶店に入りだ。そこで正夫の話を聞くのだった。  
 話を聞き終えてだ。まずは襟立が言った。
「ええと。遺物にトレジャーハンターにかいな」
「この世界ではそうしたものが重要視されてるんだ」
「つまりお宝やな」
 正夫の話をまとめて言う襟立だった。
「それを探して手に入れてかいな」
「そのうえで保管する組織があるんだ」
「で、あれやな」
 襟立はコーヒーを飲みながら正夫にさらに尋ねる。
「この世界には竜がおるんやな」
「そうだよ。四匹ね」
「物騒な世界やな」
 襟立は竜へのイメージからこう述べた。
「あんなんが普通に闊歩してる世界ってめちゃ怖いやろ」
「ううん、結構平和な世界だよ」
「いや、竜やで竜」
 本気で警戒する顔で言う襟立だった。
「そんなんおったら危ないわ。キャッスルドランみたいなのが四匹もおるとな」
「だから。竜っていっても普段は人間の姿だから」
「それ聞いたけれどな」
「大丈夫だよ。この世界は僕達の世界よりまだ平和だからな」
「そうなんかいな」
「うん、そうだよ」
 正夫は気楽に話していく。その彼にだ。
 今度は恵がだ。こう尋ねた。
「ところで君随分とこっちの世界に詳しいけれど」
「何で知ってるからだよね」
「私達より先にこっちの世界に来たのはわかるけれど」
「実は今高校に通ってるんだ」
「こっちの世界の高校に?」
「うん、そうなんだ」
 そうなっていることをだ。正夫は屈託のない笑顔で話す。
 彼はアイスティーを飲んでいる。それを飲みながら話すのである。
「キバットがこっちの世界に来てすぐにたまたま金髪の小さな女の子を見掛けてね」
「その娘がまさか」
「そう、キバットが感じ取ってなんだ」
「確かにあれは人間の姿だったぜ」
 そのキバット四世が正夫の右肩の上を飛び回りながら話す。
「けれど気配でわかるからな、俺は」
「竜らしいんだ。そしてその竜がね」
「高校に通ってた?」
「竜が」
「うん、そうなんだ」
 その通りだとだ。正夫は一同に話す。
 

 

第十六話 四人の竜その四

「それで僕もその学校に今潜り込んでいるんだ」
「それはどの高校だ」
 島は身を少し乗り出して彼に尋ねた。
「竜ははどの高校にいる」
「うん、じゃあ今からそこの高校に案内するね」
「頼む。それではだ」
「私達もその高校に」
 潜伏しようとだ。島と恵が言ってだった。
 彼等は今回も正夫に案内されてだ。その高校に向かうのだった。
 高校自体はごく普通の校舎で制服もだ。ダークブラウンのブレザーにかなり短いスカート、男はそのブレザーに同じ色のズボンという格好だった。だがその姿になったのは紅に襟立、そして静香だけだった。
 静香はその制服を実際に着てみてだ。あちこちを見ながらこう言うのだった。
「ううん、何かこの制服って」
「嫌いなの?デザインとか」
「何ていうか派手よね」
 これが静香の意見だった。
「どうもね」
「いや、男は地味やで」
 襟立も自分のブレザー姿をチェックしながら言う。紅に比べてかなり砕けた着方になっている。
 その彼がだ。こう静香に言ったのだ。
「スカートの丈が滅茶苦茶短いから地味に思えるんやろ」
「それでなのかしら」
「そやろ。けれど何はともあれや」
「そうだね。僕達三人も潜伏してだよね」
 紅は真面目に着こなしたうえで話す。
「竜について調べようか」
「そうしてくれ。我々はだ」
 名護と恵、そして登はスーツだった。その姿で言うのだった。
「教師として潜伏する」
「そうするわ」
 ここで恵も言う。
「島さんは用務員として入るからね」
「よし、それじゃあ今から」
「行くぞ渡」
 登が弟に告げてだった。そのうえでだ。
 彼等は学校に入った。そしてその学校ではだ。
 その金髪に青い目の明らかに日本人離れした小柄な少女がだ。こう周囲に尋ねていた。
「ねえ、竜司何処?」
「えっと、如月君?」
「そういえば今クラスにいないわね」
「一体何処に行ったのかしら」
「急にいなくなったけれど」
「御昼持って来たの」 
 少女はこう言ってだった。
「竜司に」
「ううんと、確か今屋上だったかしら」
「そっちにいるの?」
「多分ね」
 そうではないかとだ。周囲は少女に答える。
「確かなことは言えないけれど」
「わかった」
 少女は彼女達の言葉に応え。そうしてだった。
 すぐに弁当箱、赤い布に包んだそれを持ってだ。屋上に向かった。その少女を見てだ。
 周囲はだ。こう話すのだった。
「竜司君も隅に置けないわよね」
「そうよね。ローズちゃんだけじゃないから」
「他にもいるしね」
「もてるのよね」
 こんな話を明るく笑ってするのだった。
「ローズちゃんだけじゃないし」
「そうそう。実咲もだからね」
「本人気付いてないけれど」
「そういえばだけれど」
 ここで話題が変わった。その話題はというと。
「あれじゃない?実咲とローズちゃんって案外仲よくない?」
「っていうか妙に相性いいっていうか?」
「少なくとも険悪な関係じゃないよね」
「何か桃色とオレンジの服お互いに着たりね」
「そんなこともよくあるし」
「特に二人一緒に歌ったら」
 そうした話にもなっていく。
 

 

第十六話 四人の竜その五

「物凄い合ってるし」
「何ていうか。あの二人って古い付き合いっていうかね」
「そんな感じするわよね」
 そんな話も為されていた。彼女達の間でだ。
 彼女達がそうした話をしている中でだ。屋上ではだ。
 黒い髪に黒い瞳、それにこの学園の制服の少しばかり小柄で優しい顔立ちの少年がだ。紅達と会っていた。そうしてだった。
 正夫がだ。彼にサンドイッチ、購買部で買ったそれを差し出しながらだ。こう彼に言ったのである。
「まあ食べようよ」
「あっ、うん」
 彼もだ。正夫からのそれを受け取ってだ。そうして食べる。カツサンドだ。
 そのカツサンドを食べながらだ。彼は正夫に対して答えた。
「ええと。正夫君のお友達だよね」
「まあそういうところだよね」
 正夫は紅達に顔を向けて彼の問いに答えた。
「ただこの人はね」
 ここで正夫は紅に顔を向けて笑ってこう言った。
「僕のパパだけれどね」
「お父さんって。歳近いけれど」
「僕達のことは話したよね」
「仮面ライダー。他の世界から来た」
「そう、僕とパパはそれぞれ違う時代から来たからね」
「それで年齢が近いんだ」
「そうなんだ。勿論僕の時代じゃパパはいい歳だよ」
 このことをその笑顔で話す正夫だった。
「けれど今はそれぞれ違う時代から来たからね」
「成程ね。そうなんだ」
「それでだけれど」
 今度は紅が丁寧な口調で少年に尋ねてきた。
「ええと。如月竜司君だったよね」
「はい、そうです」
「君はこの世界の四匹の竜のことを知っているそうだけれど」
「ローズ達のことですよね」
「そう。レッドドラゴンだっていう」
「ローズは僕と同じクラスですけれど」
「ずっと一緒にいるんだったね。お家でも」
 紅はその彼如月竜司にこうも尋ねた。
「それも聞いたけれど」
「そうです。まあ色々とありましたけれど」
「そうなんだね。じゃあそのローズさんは」
「ローズに何かあるんですか?」
「うん、僕達のことは話したけれど」
 他ならぬ仮面ライダーのこと、彼等自身のことも既に話しているのだ。
「他の世界から来てスサノオと戦っている」
「それでこの世界にもスサノオが来ているんですね」
「そうなんだ。詳しいことはわからないけれどね」
「あの、ここまでお話してなんですけれど」
 戸惑いながらだ。竜司は紅達に話す。
「僕何か凄く驚いてて」
「僕達の話は信じられないかな」
「すいません。仮面ライダーって変身できるんですよね」
「うん、そうだよ」
「じゃあ申し訳ないですけれど今ここでちょっと」
「何か疑い深ないか?」
 襟立は竜司のそのいぶかしむ顔を見て眉を少し顰めさせて言った。
「俺等ってそんなに怪しいか?」
「怪しいっていうかいきなり別の世界から来てそう言われても」
 静香がその襟立に話す。
「にわかには信じられないからじゃないかしら」
「うん、僕はもう竜司君と友達になってるけれどね」
 正夫は既に彼とは友人関係を築いていた。しかしなのだ。
「けれどそれでも。急にそんなの言われてもね」
「誰でもそうなるものね。考えてみれば」
 恵もそのことを言う。
「だから如月君の言うこともね」
「一理あるんやな」
「そういうことよ。けれどそれならよ」
 恵はあらためて紅を見てだ。こう言ったのだった。
「渡君、それならそれでだけれど」
「今ここで、ですね」
「変身してみたらどうかしら」
 竜司に実際にそれを見せればどうかというのだ。
「そうすればわかってくれると思うから」
「そうですね。じゃあここは」
「そういうことでね」
「やらせてもらいます」
 こうしてだった。紅の手にキバットが噛み付きだ。そうしてだ。
 

 

第十六話 四人の竜その六

 実際に仮面ライダーキバになってみせる。その姿であらためて竜司に尋ねたのである。
「これでどうかな」
「えっ、本当に変身できたんですか」
「うん、これが仮面ライダーキバなんだよ。僕が変身するね」
「何ていいますか」
 目を丸くさせてそのキバを見ながらだ。竜司はこう話した。
「蝙蝠に似てますね」
「うん、よくそう言われるよ」
 実際にそうだと答える紅だった。そのキバの姿で。
「けれどこれで信じてくれたかな」
「はい、本当にあちらの世界から来られたんですね」
「そう。それでだけれど」
「僕の話ですね」
「うん、君と一緒にいるローズさんをはじめとして」
 人間の姿に戻ってだ。紅はまた竜司に尋ねた。
「四匹の竜達、その他にも」
「アイですね」
「狼人だったね」
「そうです。彼女は狼の力を持っています」
「この世界はそうした姿や能力の人もいる。だから」
「そのスサノオがですか」
「うん、仕掛けてくるんだと思う」 
 紅は自分の考えをそのまま竜司に話した。
「それでよかったらだけれど」
「ローズ達にもこの話を」
「そうしていいかな」
 その是非を竜司に尋ねる。
「君としてはどうかな」
「そうですね。問題はそのスサノオが」
 少し俯き考える顔で述べる竜司だった。
「一体何をしてくるかですけれど」
「スサノオは試してくる」
 名護が竜司に告げる。
「ありとあらゆる方法でだ」
「そうなんですか。ありとあらゆるですか」
「そうだ。我々はそのスサノオと常に戦ってきた」
「今スサノオはあらゆる世界に干渉してきてもいる」
 今度は登が話す。
「それはこの世界でも同じなんだ」
「それでこの世界に干渉するやり方は」
 竜司はそのことを考えた。しかしだ。
 わかりかねだ。こう言ったのだった。
「あの、具体的にはどんな」
「四匹の竜だな」
 島が言った。
「彼等を狙っている」
「じゃあすぐにですね」
 竜司はそれを聞いてだった。考えを変えてだ。
 そのうえでだ。こう話したのである。
「ローズ達を集めてそのうえでまたお話を」
「ローズ、そうだったね」
 紅はこの名前を聞いてすぐに理解して述べた。
「そのレッドドラゴンの女の子だったね」
「はい、その他の娘も集めてそうして」
 竜司がこう行ったところでだった。
「竜司、いる?」
「あっ、ローザ」
 そのローザが紅達の前に弁当を持って来てだ。そうしてだった。
 この日は放課後に竜司のマンションの部屋にライダー達、それに関係者が集いそのうえでそれぞれの話をした。それを終えてだ。
 やけに胸が大きくスタイルのいい、茶色の長い髪を無造作にまとめたブラウンの目のだ。竜司達に比べて大人の雰囲気を醸し出している女、七尾英理子がだ。こんなことを言った。ラフな青いズボンに黄色のシャツを着てソファーに足を組んで座っている。その彼女が言ったのである。
「まあ。仮面ライダーとか別の世界から来たって言われてもね」
「信じられませんか?」
 紅は英理子と向かい合ってソファーに座っている。その席で竜司が淹れてくれたコーヒーを飲みながらそのうえで彼女に言うのだった。
「そのことは」
「いいえ、それでもね」
 こう言ってだ。英理子はにこりと笑ってだった。
 

 

第十六話 四人の竜その七

 そうしてだ。紅達に話すのだった。
「信じられるわよ」
「信じてくれるんですか」
「だってね。世の中色々とあるし」
 その笑顔で言う英理子だった。
「私もそれだけの人生経験積んできてるのよ」
「有り難うございます。じゃあ」
「ええ。それでスサノオよね」
「はい、そのスサノオです」
「何かね。嫌な奴よね」 
 英理子から見るとだ。そうだったのである。
「色々仕掛けて人間を見るって」
「っていうか何なのよそいつ」
 ローズと同じ位小柄で水色の短い髪と赤い目のだ。白い肌の何処か生意気そうな感じの少女だった。彼女がむくれた顔で言うのだった。
「サフィ達を見て楽しみたいっていうのは」
「そやからそいつはめっちゃ退屈やねんや」
 襟立はこうそのサフィにも話す。
「そやから人間を見て退屈を紛らせるんや」
「やっぱり嫌な奴じゃない」
「そうよね」
 サフィは英理子の隣に来ていた。そのうえで彼女と話すのだった。
「そんな奴さっさとやっつけちゃいたいけれど」
「そうよ。さっさと倒して終わりにしたいけれど」
「けれどそれどうするの?」
 ローズはあっさりと核心を指摘した。当然彼女もいるのだ。
「スサノオは他の世界にいるんでしょ?次元?」
「そう、次元よ」
 ピンクのやけに波がかった長い髪にだ。青緑の目に眼鏡をかけている。顔立ちは整っているが表情が何処か危うい感じの女だった。
 白衣の下に紅いミニのチャイナドレスというかなり風変わりな格好をしている。竜司やローズの仲間の一人であるビアンカである。
 彼女がだ。次元を話に出して来たのだった。英理子の傍に肘をかけて紅茶のカップを手にしている。そうしながらの言葉である。
「私達がいる次元とは全然違う次元に隔離されてるのよね、スサノオって」
「そうだ」
 名護がビアンカのその問いに答える。
「その通りだ」
「それじゃあどうしようもないから」
 ビアンカはスサノオを倒すこと自体はすぐに諦めてこう言った。
 そうしてだ。そのうえでだった。
 竜司達にだ。こう提案するのだった。
「こっちのスサノオを倒しましょう」
「僕達の世界に干渉してきているですか」
「そのスサノオをなのね」
「ええ。スサノオの分身?っていうか端末みたいなのが送られてるのは間違いないから」
 ビアンカは竜司と英理子に話していく。
「その端末を潰すべきね」
「そうですね。こっちの世界のスサノオなら何とかなりますね」
「やっつけることも」
「そう、それをどうするかだ」
 登がここで話す。
「この世界のスサノオは必ず君達に仕掛けてくる」
「あれっ、じゃああれじゃない」
 それを聞いて言ったのはだ。ブラウンのポニーテールのを持つ少女だった。目は右がトパーズ、左がサファイアとなっている。何処か荒々しい感じがするが同時に邪気のなさも感じられる。
 竜司達の学園の制服だ。ただしよく見れば尻尾が見えるし耳も違う。犬、いや狼のものである。彼女の名はアイ、狼少女である。
 そのアイがだ。こう言うのである。
「私達は待っていればいいの。スサノオが仕掛けてくるのよ」
「そうなりますよね」
 ブルーグレーの長い髪にパープルの瞳のだ。貴族の令嬢の様な娘だった。楚々とした外見が儚げである。ホワイトドラゴンのマルガだ。
 彼女はだ。アイの言葉に応えて述べた。
「この場合は」
「そうなんです。スサノオはあれでかなりせっかちでして」
 静香はかなり砕けて話していた。
「絶対に自分から仕掛けてきますから。それもすぐに」
「おや、本当に短気な神様みたいですね」
 無造作な黒髪に眼鏡、そして白衣の如何にも科学者という男だ。戸倉である。
 その彼がだ。静香の言葉に笑ってこう返した。
「それでは私達は少し待っていればいいですね」
「はい、そうするべきです」
「そうですね。ではこちらは隙を作るべきですね」
 戸倉は別の笑顔になって述べた。
「そのうえでスサノオを迎え撃ちましょう」
「あの、それは危険が大きいんじゃないですか?」
 危惧する顔でだ。竜司は言うのだった。
 

 

第十六話 四人の竜その八

「それじゃあローズ達にとって」
「いえ、普段ならそうでしょうが」
「今はですか」
「この方々がおられますので」
 ここで紅達を見て言うのだった。
「ですから心配は無用かと」
「それに私達だってね」
 英理子もここで言う。
「はいそうですかってやられるつもりはないしね」
「はい、ですから」
 それでだと話す戸倉だった。
「是非共です。迎え撃ちましょう」
「ローズやられない」
 ローズもここでこう言った。
「スサノオなんかにやられないから」
「そうよ。誰がやられるものですか」
 サフィもムキになっていた。
「スサノオなんてぎったんぎったんにしてやるんだから」
「その意気だな。しかしだ」
 名護が言った。
「今は迂闊に動いては駄目だ」
「そうね。慎重に身構えておくべきね」
 英理子も名護のその考えに賛成して頷く。
 そうしてだ。こうローズ達三人の竜に言うのだった。アイも見て。
「スサノオが狙っているのは貴女達よ」
「ローズ達を」
「それ以外に有り得ないわ」
 こうだ。断言さえするのだった。
「だって。スサノオは人間を見ているのよ」
「私は狼なんだが」
 ここでこう言ったのはアイだった。
「それでもなのか」
「だから。紅君達が言ってるじゃない」
 英理子は優しい顔でアイを見てだ。そのうえで言うのだった。
「姿形が変わっててもね」
「心が人間ならか」
「そう、人間なのよ」
「じゃあローズも?」
「サフィもなんだ」
「勿論マルガもね」
 彼女もだというのである。
「人間なのよ」
「人間とは何かといいますと」
 戸塚もここでローズ達に話す。
「結局のところ生物学的な問題ではないのです」
「精神的なものでね」
 英理子もそうした意味で紅達と同じ考えだった。その考えをだ。
 ローズやアイ達にだ。あらためて話すのだった。
「人間でも最低な人間っているじゃない」
「そうですね。中には本当に」
「人間の屑っていうかね」
 英理子は今度は竜司に話していく。
「もう人間止めましたって感じのがいるじゃない」
「俺達の世界にもそうした奴は結構いる」
 登が話す。
「そうした奴こそ人間じゃない」
「心が。本当に意味でファンガイアになってしまったっていうのかしら」
 英理子はあえてだ。ファンガイアを話に出してみせた。
「そういう感じかしら」
「そうだ。ファンガイアとは何か」
 そのファンガイアに他ならない登の話だ。
「人間が少し外見が違うだけだった」
「だから君は人間なのね」
「そうだ。俺は人間だ」
 登は英理子の問いにはっきりと言い切った。
「それがわかった」
「人間っていうのはあれですね」
 ここで言ったのは竜司だった。彼は考える顔でソファーに座っている。その隣には英理子がいて丁度横一列になっているのである。
 その中でだ。彼は話すのだった。
「そうした意味で一歩間違えたら人間じゃなくなるんですね」
「下手をすれば魔女になるかしら」
 不意にこんなことも言う英理子だった。
「ええと。キュウべえってのが言ってたらしいけれど」
「うん。キュウべえのいた世界じゃそうした存在がかつていたらしいのよ」
 恵が話す。
 

 

第十六話 四人の竜その九

「まあその頃のキュウべえはかなりの曲者だったみたいだけれどね」
「曲者ってのは心外だね」
 言えばすぐそこにだった。そのキュウべえがやって来た。
 そしてそのうえでだ。ソファーに挟まれたテーブルの上に来て話すのだった。
「僕は僕の務めを果たしているだけだし」
「あれっ、この子何か」
 サフィはそのキュウべえを見てふと声をあげた。
 そうしてキュウべえをまじまじと見ながらだ。こう言ったのである。
「サフィに似てる?そんな感じするけれど」
「うん、僕もそう思うよ」
 キュウべえ自身もだ。こうサフィに顔を向けて言葉を返す。
「君と僕は似てるね」
「そうよね。何処かが」
「あれっ、キュウべえを追い掛けてここに来たけれど」
「ここは何処じゃ?」
「全くわからんぞ」
 そして部屋にだ。今度は明久に秀吉、それに幸村が来てだ。そのうえで部屋の中を見回しながら言うのだった。
「ううん、今度の世界はここなんだ」
「何というかわし等の世界やライダーの人達の世界と変わらんな」
「そうじゃな。本当に同じじゃな」
「あれっ、君何か」
「ローズと似てる?」
 竜司とローズがだ。それぞれ明久と幸村を見て声をあげた。
「他人の気がしないけれど」
「どうしてなの?」
 そしてだ。サフィもまたしてもであった。秀吉を見て言うのだった。
「何かまたサフィに似てる人が出て来たし」
「ううむ、鏡を見ている様じゃ」
 秀吉もサフィと対していささか困惑している。そうしてだ。こんなことを言うのだった。
「わしのそっくりさんはキュウべえだけではなかったのか」
「というか貴方私じゃないわよね」
「違う筈じゃがな」
「何でこんなにそっくりに思えるのかしら」
「思えば妙なことじゃ」
 こう話してだ。首を捻る二人だった。そしてキュウべえもだった。
 サフィや秀吉を見てだ。こう話すのだった。
「何故か他人に思えない人が一杯いるなんてね」
「君も思うところがあるのか」
「いや、それはないよ」
 そうしたことはないとだ。キュウべえは名護に答えた。
「だって僕には感情がないからね」
「そうだったな。では感慨はないか」
「そうだよ。そうしたことはないんだ」
 キュウべえは名護に素っ気無い感じで話す。話しながらその舌で毛づくろいをしている。そうしながらこんなことも言うのだった。
「あの島田美波も巴マミにそっくりに思えるしね」
「そうした話何となくわかるけれどね」
 英理子は彼等の話を聞きながらこんなことを言った。
「まあお互いに感覚が似ている人がいるのはいいことよ」
「いいことなんですか」
「竜司君も悪い気しないでしょ」
 悠然と笑ってだ。英理子は竜司に返した。
「実際にね」
「そうですね。ええと、君名前は」
「吉井明久っていうんだ。宜しくね」
「僕は如月竜司っていうんだ」
 お互いににこりと笑って話す二人だった。
「こちらこそ宜しくね」
「うん、仲良くしようよ」
 心から親しみ合う感じの二人だった。そして幸村もだ。
 ローズを見てにこりとしながらだ。こんなことを言うのだった。
「よいのう。ローズというのじゃな」
「真田幸村さん?」
「幸村でよい。初対面じゃが御主ならよい」
 名前を呼び捨てでいいというのだ。
「他人とは全く思えぬからのう」
「ローズ、幸村のこと好き」
 自然とだ。ローズもこう話す。
「自分と同じこと感じるから」
「まあとりあえずだな」
 キバット三世がローズと幸村の周りを飛び回りながら話す。
 

 

第十六話 四人の竜その十

「中身の話はそれ位にしてな」
「そうですね。とりあえずはですね」
「作戦はそれでいいな。竜のお嬢ちゃん達を狙ってスサノオが出て来た時にな」
「その時にですね」
「ああ、スサノオを倒すんだよ」
 典型的な囮戦術だった。
「それをしような」
「わかりました。僕はそれでいいと思います」
 竜司はキバットのその言葉に頷いて答える。
「そしてスサノオが来たらですね」
「一気に潰しましょう」
 英理子はにこりと笑って話す。
「それで決めちゃいましょう」
「わかりました。それじゃあ」
「話は決まりだな。しかしだ」
 ここで言ったのは名護である。彼は部屋の中、一堂を見回してから言った。
「四人の竜とはいっても三人だな」
「ああ、オニキスね」
 サフィが彼の言葉に応えて話す。
「あの人はへそ曲がりだからね」
「学園にもいないな」
「ええ、そうよ」
 こう名護に答える。
「ブラックドラゴンってああなのかも知れないけれどね」
「彼はこうして誰かと一緒にいることは少ないのです」
 マルガもこう話す。
「甲斐さんは別ですが」
「甲斐さんっていうとあの人ですよね」
 ここで言ったのは紅だった。
「学校の先生の」
「はい、あの人です」
 マルガは紅の問いに答える。
「あの人が甲斐さんです」
「じゃあ甲斐さんにもお話して」
「あと。教会からジョージ呼びましょう」
 英理子はこの名前を出した。
「戦力は少しでも多く欲しいところだしね」
「総力戦になることは間違いない」
 島はそれは確実だと話した。
「戦力は少しでも多いに越したことはない」
「ライダーは四人いるけれどな」
「それでもですね」
 キバットとタツロットが紅の頭の上で話す。
「戦力は多くないとな」
「相手も何をしてくるかわかりませんし」
「おい渡、ここはあれだよ」
 キバットはあらためて紅に話した。
「次狼やラモンにな」
「それに力さんにもですよ」
「話して来てもらおうぜ」
「そうするべきです」
「そうだね。じゃあ次狼さん達も呼んで」
「ああ、総力戦だ」
「そうして勝ちましょう」
 こう話してだった。一同は次の日学校に言った。それぞれの立場でだ。
 だが紅はその前に深夜にこちらの世界にキャッスルドランを呼び出してだ。今は封じられていないがそこを家にしている三人を呼んだのだった。
 公園の上空に巨大なキャッスルドランがある。それを見ながらだ。
 次狼はだ。首を捻りながらこう言うのだった。
「目立って仕方ないな」
「夜だからいいと思ったけれど」
「まあ昼なら洒落になっていなかった」
 次狼も紅に対して述べた。
「夜なのがせめてもの救いだ」
「そうだね。とにかく渡が僕達を呼んだのは」
「どういった事情だ?」
 ラモンと力が紅に尋ねる。三人は今彼を見ていた。
「別に話せないことでもないよね」
「俺達に力を貸して欲しいのか」
「うん、この世界での戦いだけれど」
「いいぞ」
 次狼は彼が言うより先に答えた。
「力を貸そう」
「いいんだ。今回の戦いも」
「悪い筈がない」
 次狼は微笑んでさえいた。そのうえで紅に話すのである。
 

 

第十六話 四人の竜その十一

「俺達は音也から御前を頼むと言われてるんだからな」
「それにだよ。僕達だって渡が好きだし」
「それで断る筈がない」
 それはラモンと力もだった。
「僕達は友達じゃない」
「友人の頼みを断ることはしない」
「だからね。今回の戦いもね」
「共に戦わせてくれ」
「有り難う。それじゃあ」
 三人の言葉を受けてだ。紅も微笑みになりだ。
 そのうえでだ。こう彼等に言った。
「今回も宜しくね」
「ああ。しかし四人の竜か」
 次狼は紅に教えられたそのことについて言及した。
「それに狼人間か」
「狼っていうと次狼と一緒だよね」
「そうだな。しかし違うところがあるな」 
 それは何かというとだった。
「俺は男だがその娘は女で。しかもだ」
「次狼より狼の遺伝子が強いかな」
「そうみたいだな。俺は姿を変えるが」
 それに対してアイはだった。
「そいつは元からだな。少し話してみたいな」
「僕みたいな半漁人はいないみたいだね」
「フランケンシュタインもいないか」
 ラモンと力は少し寂しそうに述べた。
「まあいいか。何処かの世界にいるだろうし」
「それを楽しみにすることも悪くない」
「そう。それではだ」
 こう話してだった。彼等はだ。
 紅と共に戦うことを述べた。そのうえでだ。
 紅は登校した。三人と一緒だ。その三人を見てだ。
 竜司がだ。少し戸惑いながら言うのだった。
「あの、三人共学生としては潜入されませんよね」
「安心しろ、俺もわかっている」
「僕はその名目で入るけれどね」
「俺は用務員になった」
 三人はそれぞれ竜司に話す。そうしてだ。
 次狼がだ。こう話すのだった。
「しかしだ。俺はだ」
「間違っても学生じゃないわよね」
 かなり無理のある制服姿の英理子が突っ込みを入れる。人のことを言えた義理ではないかも知れなかった。その無理のある制服姿がかなり淫靡であった。
「一応聞くけれど」
「体育教師になった」
 次狼は自分で述べた。
「そういう名目だ」
「まあそれなら通用するけれどね」
「そうだ。ところで狼人がいたな」
「私のことね」
 ここでアイが出て来て言う。
「何か用かしら」
「俺もそうだ」
 こう言ってだ。次狼は変身してみせた。その本来の姿にだ。
 その姿になってからだ。彼は言うのだった。
「これでわかったか」
「あんたもそうだったの」
「俺だけではない。他の奴等もだ」
 次狼はラモンと力に顔を向けて述べる。
「それぞれの種族の最後の生き残りだ」
「こういう姿なんだ」
「この通りだ」
 ラモンと力も本来の姿になる。見れば確かにその通りだった。
 それを見せてだ。彼等は話すのだった。
「わかってくれたかな、これで」
「俺達のことは」
「そうだったんですね」
 竜司は彼等の本来の姿を見て驚かなかった。紅達の話を聞いたからだ。紅にしても人間とファンガイアのハーフと知っているからだ。
 それでだ。特に驚くことなく述べたのだった。
「貴方達も」
「うん、じゃああらためて宜しくね」
「共に戦おう」
 ラモンと力は人間の姿に戻って再び挨拶をした。そうしてだった。
 

 

第十六話 四人の竜その十二

 挨拶を終えたのを見てだ。英理子が話してきた。
「それじゃあね」
「それじゃあって?」
 ラモンが英理子に問い返す。
「何かあるの?」
「ええ、集められる面子を集めてね」
 そうしてだというのだ。
「それで迎え撃つんだけれど」
「じゃあ今すぐやってもいいんじゃないの?」
「だから。今呼んでいる面子がまだ来てないのよ」
 英理子が言うのはこのことだった。
「ジョージに。それに最後の一人の竜ね」
「ああ、オニキスね」
 サフィが英理子に応えて言う。
「ジョージは今は」
「はい、もうすぐ到着するそうです」
 彼についてはマルガが話す。
「あの聖剣を持ってもうすぐこの学園に」
「じゃああいつよね。オニキスよね」
「四人揃わないと勝てないわよ」
 英理子は眉を顰めさせて言った。
「それどころかね」
「スサノオが仕掛けてくるかどうかも怪しいですね」
 紅が顔を曇らせて話す。
「スサノオはおそらく僕達が揃うかどうかも見ていますから」
「そうよね。人集めるのも戦いのうちだから」
 静香も言う。
「それすらできないなんてね」
「そう。だから本当に四人揃わないと」
「仮面ライダーは揃ってるんやけれどな」
 襟立はぼやくようにして述べた。
「それでも。こっちの世界がなあ」
「今三人いるけれど」
 ローズは周りを見回している。
「それでもオニキス必要なのね」
「甲斐先生にお話してきますね」
 竜司がここで話してきた。
「あの人が一番オニキスさんと近いですし」
「私も一緒に行くわ」
 また言う英理子だった。
「じゃあ三人でね」
「はい、行きましょう」
 こうしてだった。まずは甲斐を呼ぼうとした。しかしだ。
 そのだ。黒いスーツに奇麗に切った黒髪に鋭い顔立ちの大人の女が来た。その顔は彫刻の様に整っている。その彼女がだ。
 彼等がいる屋上に来てだ。こう一同に言ってきたのである。
「呼ぶには及ばないわ」
「あっ、先生」
「来てくれたの」
「オニキスのことよね」
 微笑みさえ浮かべてだ。その女甲斐は右手を腰に当てて悠然として言ってきた。
「彼にも伝えておいたから」
「それでどう言ってるんですか?」
「あいつは」
「群れるのは嫌いだって言ってたけれど」
 こう言うのが如何にも甲斐だった。
「それでもね。興味は持っていたわ」
「じゃあ来てくれるんですか?」
「あいつも」
「気が向けばね」
 その辺りははっきりとしないというのだ。
「まあ待っていればね」
「ひょっとしたらなのね」
 英理子は首を少し捻ってから述べた。
「まあ可能性は零じゃないのね」
「そうですね。じゃあ来ればですね」
「一緒にってことでね」
「では今はね」
 今はどうかとだ。甲斐が言ってきた。
「ジョージだったわね。あの聖剣の彼は」
「もうすぐ到着します」
 マルガはこのことを今度は甲斐に話した。
「それからですね」
「ええ。オニキスはどうかわからないけれど」
 それでもだというのだ。
「私も今回は協力させてもらうわ」
「そうしてくれるの」
「気が向いたわ」
 彼女は既にだというのだ。微笑んで一行に言うのである。
「だからね。そういうことでね」
「ううん、じゃあいいかしら」
 甲斐の参戦にはだ。英理子は微妙な顔になった。しかしだった。
 何はともあれまた一人仲間が加わりだ。彼等はスサノオを待つだった。その仕掛けてくるものを。


第十六話   完


                           2011・11・12
 

 

第十七話 戦士達の集結その一

                           第十七話  戦士達の集結
 クラスにだ。やけに制服の似合わない男が来ていた。
 金髪に碧眼でだ。髪は短く刈っている。
 そして引き締まり精悍だが何処か抜けた感じがする。背は高く体格もいい。そのマルガが言うだ。ジョージ=エヴァンズその人である。
 彼はクラスの中でこう言うのだった。
「あの、それでマルガさんは」
「今図書館ですよ」
「そっちに行ってますよ」
 クラスの面々の返答は明らかに年上に対するものだった。
「あの、それでジョージさんですよね」
「一体何のご用件でしょうか」
「はい、マルガさんに呼ばれてです」
 ジョージはありのまま言った。
「私はここに来たんですけれど」
「それで転校されてきたんですか」
「この学校に」
「スサノオと戦う為に」
 このこともありのまま言うのだった。
「宜しくお願いします」
「それでスサノオは何処にいるんですか?」
 何とクラスメイト達に聞くジョージだった。
「この学校に来ているんですか?」
「えっ、スサノオって?」
「一体誰ですか?」
「それはどの人ですか?」
「ですから。邪神だとか」
 見事なまでにありのまま言っていくのだった。
「この世界に干渉してきているという」
「何なのかな、この人」
「急に転校してきて訳のわからないこと言ってるし」
「外国の人なのは間違いないし」
「どうした人なのかな」
 クラスの誰もが首を捻るのだった。そしてそれを遠目で見てだ。
 さしもの襟立もだ。引きながら紅と竜司に尋ねた。
「ジョージさんやったな。あの人放っておいてええんか?」
「ううん、まさかあそこまで素直な人だって思わなかったです」
 紅が戸惑いながらこう襟立に話す。
「というかああいう人もいるんですね」
「全部言ってますし」
 竜司、ジョージを知っている彼も困っている。
「僕達の戦いのこと」
「流石にまずいやろ」
 襟立はまだ引いている。
「この展開。スサノオどころちゃうで」
「止めましょう。とりあえずは」
 これが竜司の案だった。
「さもないと取り返しがつかないことになります」
「そうですね。本当に」
「ほなあの兄ちゃん止めるか」
 紅と襟立がだった。二人でだ。
 ジョージのところに行き彼を止めようとする。しかしその前にだ。
 竜司にだ。首のところで黒髪を切り揃えつむじのところがはねている黒い瞳の、大人しそうな顔立ちに大きな目をした少女、江藤美咲が来てだ。彼にこう言ってきたのだった。
「あの、竜司君」
「あっ江藤さんどうしたの?」
「あのジョージさんって人だけれど」
 彼を見てだ。美咲は言うのだった。
「私達と同じ歳なのよね」
「江藤さんには幾つに見えるのかな」
「十代には見えないけれど」
 眉を曇らせてだ。美咲は述べた。
「ちょっと」
「三十代とか?」
「そんな筈がないわよね」
「うん、違うよ」
 このことは事実だった。彼はまだ三十代ではない。
 それでだ。襟立が紅にこっそりと言うのだった。
「あの人ほんまに十九かいな」
「そうみたいですけれど」
「ちゃうやろ。絶対に俺より年上やで」
 襟立は本気で疑っていた。
「あんな十代おらんで」
「ううん、風格はありますよね」
「確かにスタイルはええし禿げてもない」
 そうした老いは見られなかった。しかしだったのだ。
 

 

第十七話 戦士達の集結その二

「それでもあの雰囲気はないで」
「雰囲気ですか?結構騒がしい感じがしますけれど」
「優しい人やけれどおっちょこちょいやな」
 襟立も彼のそうした気質はすぐにわかった。
「嘘吐けへんしな」
「悪い人じゃないですね」
「そや。それはないわ」
 彼のそうした気質はわかったがそれでもなのだった。
 誰が見ても十代に見えないジョージだった。だが何はともあれだ。
 明るい顔立ちで黒の後ろ髪を少しだけ伸ばした明るい顔立ちの少女と彼女と同じ髪の色のどこかお調子者といった感じの少年が出て来た。
 この二人は双子だ。相川真央と相川真人である。竜司達のクラスメイトだ。
 その二人がジョージにだ。明るくこう言ったのである。
「ねえ。ジョージさんでいいかな」
「それでいいよね」
「いや、僕は十九じゃなくて君達と同じ年齢なんだよ」
 何気に自分の実際の年齢も聞いてしまった。それを聞いてからだ。
 紅はふとだ。襟立に尋ねたのである。
「あの。今あの人さっき」
「ああ。実際の年齢言うたな」
「それが十九歳だったんですね」
 紅はあえてこの歳だと定義付けていた。
「いや、やっぱりそれは」
「信じられへんな」
「そうですね」
 そんな話をする二人だった。しかしだ。 
 ジョージは自分の失言に気付かないままだ。相川姉妹に多雨z寝る。
「それでなのですが」
「それで?」
「っていいますと」
「スサノオは何時来るんでしょうか」
「スサノオ!?日本神話の?」
「それのことですか?」
「はい、仮面ライダーと戦っている戦士達です」
 このことも言ってしまうのだった。
「それは一体何処にいるのですか?」
「スサノオ!?」
「ええと。日本神話の?」
「俺達の国の」
「そうです。それです」
 話が混乱してきていた。
「スサノオは何処に」
「こらあかんわ」
「はい、もうこれ以上は」
 こうしてだ。襟立と紅でだった。そのジョージを相川姉弟の前からそっと屋上に案内した。そしてそこで竜司を交えて話すのだった。
「僕達のことはもう御聞きですよね」
「紅渡君達ですね」
「はい、そうです」
 その通りだと答える紅だった。
「そして貴方が」
「はい。ジョージ=エヴァンズです」
 自分から名乗るジョージだった。
「これから宜しくお願いします」
「こちらこそ」
 紅は笑って応えてだった。ジョージに挨拶を返した。
 そのうえでだ。こう彼に話した。
「それでスサノオについて詳しくお話してくれますか」
「わかりました。では」
「それで呼ばれましたし」
 こうも話すジョージだった。
「宜しくお願いします」
「それじゃあ」
 こうしてジョージはスサノオについて細かく聞いたのだった。こうしてまた一人加わったのだった。そんな話をしてそうしてなのだった。
 また一人加わった。しかしだ。
「何か先生の様子がおかしくない?」
「あっ、そうだね」
 相川姉弟が休み時間に教室で話していた。
「甲斐先生妙にね」
「うきうきした感じよね」
「何でかな」
 首を捻ってだ。真人は言った。
「いつもはクールな先生なのに」
「ううん、あれじゃあ何か」
「恋人に会うみたいな?」
 真人が姉に言った。
 

 

第十七話 戦士達の集結その三

「そんな感じだよね」
「そうそう。何かね」
「はうう、恋人なんて」
 美咲がここで言う。困った様な顔で。
「あの先生にもいるのに」
「だから。悲観することないから」
 真央はこうその美咲に話した。
「美咲は美咲で頑張ればいいから」
「私はそれでいいのね」
「そう。それにしても最近転校生多いわよね」
 真央は話題を変えてきた。
「何でかしらね」
「多いなんてものじゃないよ」
 そのことは真人も言う。
「多過ぎるっていうか。先生の転任も含めて」
「名護先生とかね」
「あの人も変わってるよね」
 真人はその名護についても言及した。
「何をしなさい、って常に言うから」
「あれ口癖なのかしら」
 美咲は首を捻って名護について話した。
「だとしたらかなり変わってるけれど」
「変人っていうのかしら」
「それは言い過ぎなんじゃ」
「だって。あんまりにも変わってるから」
 それで変人だというのだ。
「他には用務員の人とか体育教師の」
「ああ、次先生だね」
「苗字もそれで何?名前が狼って」
 何と名前をそのままにして潜入している次狼だった。
「滅茶苦茶おかしいじゃない」
「何か変わった人だよね」
「何かあるのかしら」
 こうも言う真央だった。
「あの人にも」
「そうそう。これだけ転入してくる人が多いのも」
「おかしなことだし」
「しかも何でそうした人達が皆竜司の近くに来るのかな」
「それもおかしいわよね」
「おかしなことだらけっていうか」
「そんな状況よね」
 こう話していく彼等だった。そしてだ。
 その渦中の彼等はだ。この昼は学校の食堂でだ。
 食事をしながら話す。ローズは若布うどんを食べながら言った。
「それでオニキス待つの?」
「ええ、そうするわ」
 英理子がざる蕎麦を食べながら答える。二人共麺をずるずると啜る音を立てている。
 その音の中でだ。彼女は言うのだった。
「甲斐さんが言うにはもう少しみたいだし」
「そうよ。来るのは間違いないわ」
 甲斐もいる。彼女は天丼を食べている。
 その海老の衣を食べながらだ。こう言うのである。
「連絡があったから」
「よく来たわね」
 サフィは半信半疑の面持ちでだ。きつねうどんを食べている。
「来ないかもって思ってたのに」
「スサノオという存在に興味があるらしいから」
「それでなの」
「そう、それでよ」
 甲斐はオニキスが来るその理由についても話した。
「私も実際スサノオには興味があるし」
「スサノオねえ。話を聞くだけだとあれよね」
 英理子が言う。
「何かとんでもない奴みたいだけれど」
「みたいじゃなくて本当にとんでもない奴ですから」
 静香が言う。彼女が食べているのはカレー丼だった。
「いつも仕掛けてくるんですよ、あいつは」
「ううん。神様は神様でも」
 英理子は傍を一口啜ってから話す。
「何かね。邪神?」
「邪神。そう言えるかな」
 ラモンが英理子の今の言葉に突っ込みを入れる。彼は鯖味噌定食を食べている。鯖は味噌によって美味そうに調理されている。
 その鯖を食べながらだ。ラモンは首を傾げさせてだった。
「スサノオってやっぱり」
「邪神といってもだ」 
 次狼は焼き肉定食だった。
「世界を滅ぼすことも支配することもない」
「あくまで見ているだけだからな」
 力は揚げ定職を食べながら応える。
 

 

第十七話 戦士達の集結その四

「仕掛けてそうしてな」
「そうだ。そこが全然違う」
「混沌の存在かというと違う」
「あくまで俺達人間に仕掛けそれをどう乗り越えるのかを見る」
「それが奴の目的だからな」
 こう話していく彼等だった。そしてその会話を聞きながらだ。
 竜司もだ。ラーメンを食べながら言った。
「僕達の世界に来た理由は。やっぱり」
「私達に間違いありませんね」
 マルガはサンドイッチだった。それを手に取り静かに食べている。
「私達と竜司君達が一緒にいるからこそ」
「それで仕掛けて見るってどうもですね」
 ジョージはカツカレーだった。それを食べていた。
「凄く傲慢ですよね」
「あれなんでしょ。スサノオから見れば私達なんて小さなものなんでしょ」
 今言ったのはアイだ。彼女はハンバーグ定食を箸で食べている。
「だから仕掛けてくるのよ」
「けれどあれよね。上から目線の割には」
 どうかと言う英理子だった。
「やけにしつこく絡んでくるっていうか」
「スサノオは人間に興味を持っている」
 登が言うのはこの事実だった。話しながら彼はお好み焼き定食を食べる。
「それは間違いない」
「それでファンガイア達と戦わせてみたりしているんですね」
 竜司はその登達に尋ねた。
「そういうことなんですか」
「そうだよ。ただどうも」
 どうかとだ。豚骨ラーメンを食べている紅が述べる。
「スサノオは僕達と直接闘うことも多いし」
「渡闘ったっていうのは」
「うん、戦いの一つの節目だったよ」
 紅はこうローズの問いに答えた。
「そうした意味のある大きなものだったよ」
「そうなの」
「スサノオは色々な姿の端末を出せるんだ」
「それとどう戦うかもまた重要になる」
 名護は炒飯だった。かなり大きな皿の上に丸く置かれている。
「とりあえずは迎え撃つことが問題だが」
「あれやねんや。つまりはや」
 襟立はたこ焼き定食だった。それもあるのだ。
「カウンタークロスなんや」
「カウンタークロス!?」
「っていうと」
「あの手来る。スサノオの手がな」
 襟立はファイティングポーズを取りながら具体的に話す。
「そしてそこを逆にやったるんや」
「ああ、そういうことね」
 英理子はそれを聞いて納得して頷いた。
「こちらからは仕掛けられないしね」
「そう、だからこの戦いはクロスカウンターなんや」
「ですね。その通りですね」
 襟立の今の話にだ。竜司も頷く。
 そしてそのうえでだった。ラーメンとそれと一緒に置いてある御飯も食べつつ話したのである。
「僕達は待ち構えてそうして」
「そや。竜司もわかってきたみたいやな」
「少しですけれど」
 微笑んで応える彼だった。
「そういう感じかなって」
「そういうこっちゃ。俺等は待つしかあらへん」
 たこ焼きをおかずにしながら話していくのだった。
「けど来たらそこでや」
「一気にですね」
「そういうこっちゃ。何が来るかわからんけどな」
「ファンガイアではないのか」
 名護はこう考えた。彼は味噌煮込みうどんを食べている。
「そう思うのだが」
「ファンガイアが来るの?」
「俺達が来ているからだ」
 名護が英理子に話す根拠はここにあった。
「それならファンガイアを送ってくるかも知れない」
「そういえば渡君と太牙君が」
「はい、そうです」
「俺達がそうだ」
 そのだ。ファンガイアだと答える二人だった。
 

 

第十七話 戦士達の集結その五

「僕はハーフになりますけれど」
「それでも血が入ってるわよね」
「それは否定しません」
「それもあるからかしら」
 若しファンガイアが来るならだとだ。英理子は話していく。
「ファンガイアなのね」
「それでそのファンガイアで来るならだ」
 名護はさらに話す。
「やはり俺達と君達で力を合わせてだ」
「戦うしかないですね」
「そういうことになる」
 名護は竜司にも話した。
「逆の場合でもそうだっただろうが」
「僕達がそちらの世界に行っててもですね」
「その可能性もあった」
「そうなった場合は」
「君達が俺達の世界で今の俺達の様になっていた」
 立場が逆転する、そうなっていたというのだ。
「だが大きな違いはなかった筈だ」
「そうね。結局はね」
 それは英理子も言う。
「だって。私達も名護さん達も人間なんだし」
「ローズも?」
「勿論よ」
 英理子はすぐにローズの問いに答える。
「だって。ローズちゃんも心は人間なんだし」
「そうした意味では皆同じだ」
 島は山かけうどんを食べつつだ。サフィやアイ達も見ていた。
 そのうえでだ。彼は自分自身のことも話したのだった。
「かくいう俺もかつてはだ」
「あっ、ファンガイアだったんでしたね」
「いや、それではない」
 竜司に断ってだ。さらに話すのだった。
「人というものがわかっていなかった」
「俺も同じだった」
 名護も島のその言葉に続く。
「姿形の問題ではないということだ」
「大事なのは何か。心だったのだ」
 名護はこう話してだ。ローズを見て言う。
「昔の俺なら君を攻撃していただろう」
「ローズを?」
「竜になれるな」
「一応。翼出せるよ」
「だからだ。それで君を攻撃していた」
 それは確かにその通りだった。かつての名護はだ。
 そしてそのかつての自分自身のことをだ。彼もまた話すのだった。
「過去に行きそこであるファンガイアと会いだ」
「それでなんですか」
「そのことがわかって」
「そのうえでもう一度渡君と会った」
 名護の人生が変わった瞬間だった。それも大きくだ。
「過去の俺の行動が父と俺の運命まで変えるとは思わなかったが」
「ううん、名護さん若しもそこでそのファンガイアと御会いしなかったら」
 ジョージは彼の話を聞きながら考える顔で述べる。
「ここにこうしていなかったかも知れませんね」
「俺は死んでいただろう」 
「そこまでなんですか」
「名護さんの運命を変えたのね」
 竜司も英理子も少し驚いた。二人の予想以上だったのだ。
 それを聞いてだ。ローズも言うのだった。
「名護、幸せになれた」
「俺もそう思う」
「確か恵が」
「そうよ。私達夫婦よ」
 恵からこのことを話す。
「色々あったけれど一緒になったのよ」
「多分そうなれたのも」
「そうだ。全てはそこからはじまった」
 過去の世界で紅の母であるクイーンに会ってからだった。
「何もかもがだ」
「それよね。人間が何かなのよ」
 また言う英理子だった。
「その辺りしっかりさせてスサノオの仕掛けることに向かわないとね」
「一体どうして来るかが問題ですけれど」
 マルガも話す。
「果たしてどうなのかですね」
「まあそれは待つしかないから」
 恵がそのマルガに話す。
 

 

第十七話 戦士達の集結その六

「今はゆっくりと待とう」
「そうしますか」
 マルガは恵にこう返す。今はだった。
 彼等は待つしかできずにだ。そのうえでだ。
 敵を待つ。そうして遂になのだった。
 学校にその男が来た。黒い髪は奇麗に首のところで切り揃え黒い目に剣呑なものを漂わせている顔立ちだ。服は黒のスーツにネクタイだ。
 彼がオニキスである。彼が来るとだ。
 すぐに甲斐が彼のところに来てだ。こう言うのだった。
「御待ちしていました」
「俺を呼んだが」
「はい、貴方も是非にと思いまして」
「スサノオ?別の世界の神か」
 オニキスは鋭い目で甲斐に対して尋ねた。
「連絡にはそうあったがな」
「はい、メールにあった通りです」
「人を見る為に仕掛けて来る神か」
 そのことについてこう言及してからだ。
 オニキスはその不敵な顔に不快なものを帯びさせてだ。そのうえでだ。
 こうだ。甲斐に話すのだった。
「下らんな。俺は竜だ」
「そう御考えですね」
「言ったままだ。俺は竜だ」
 また言うのである。
「人ではない」
「ではこのことは」
「しかし。俺にも仕掛けてくるのだな」
「おそらくは」
「気に入らん。そうした相手はな」
 これがオニキスの返答だった。
「倒す。そうする」
「では今回は」
「俺は俺だが一緒にいさせてもらう」
 ズボンのポケットに両手を突っ込んだままでだった。
 彼は言いだ。そうしてだった。
 竜司達のところに来てだ。こう話すのだった。
「俺はスサノオを退ける」
「素直じゃないわね。協力するとか仲間に入れてくれとかじゃないのね」
「俺は誰とも群れはしない」
 英理子に対してもこう言うのである。
「しかしだ。スサノオが俺を試すというのならだ」
「戦うっていうのね」
「俺を試すとはいい度胸だ」
 プライドからだ。述べたのである。
「その際は容赦しない、それだけだ」
「じゃああんたは別行動なの?」
 静香がそのオニキスに尋ねた。
「そうするの?」
「いや、ここにいればスサノオが来るのだな」
「そうよ。その通りよ」
「それならだ。ここにいる」
 オニキスは静香にこう答えた。
「協力はしないがな」
「何かこういう人いるよね」
「そやな」
 オニキスの話を聞いてからだ。静香と襟立は二人で話した。
「素直じゃないっていうか協調性ないっていうか」
「ライダーでもおるしな」
「仮面ライダーか」
 オニキスはその言葉に耳を止めてだ。それからだ。
 紅達に顔を向けてだ。こんなことを言った。
「御前等についても興味はない」
「あくまで君一人なんだな」
「そのことを言っておく」
 登に対してもこうだった。
「戦いに協力することもしない」
「それならそれでいい」
 登もオニキスに何も求めてはいなかった。そうしてだった。
「敵にならなければな」
「あれっ、それでいいの」
「少なくともスサノオと手を組むつもりはないからな」
 登は落ち着いて恵に話す。
「それで構いはしない」
「ううん、割り切ったわね」
「だが今はだ」
 オニキスは英理子の言葉を聞きながらだ。紅達も見てだ。
 そうしてだ。こうも言うのだった。
 

 

第十七話 戦士達の集結その七

「少なくともここにいる連中を攻撃したりはしない」
「同じ敵に向かうからか」
「そうだ。利用させてもらう」
 オニキスは名護にも答える。
「そういうことでいいな」
「別に構わない。それではな」
 島が応えだった。こうしてだ。
 何はともあれオニキスも来た。これで全員揃った。そのことをその目で確かめてからだ。
 竜司がだ。周囲を警戒する様に言うのだった。
「それならですね」
「ええ。スサノオね」
「すぐに仕掛けてくるかも知れないですよね」
「渡君達の話を聞くとね」
 どうかというのだ。
「すぐに仕掛けてくるか。若しくは」
「宣戦布告ですね」
 ジョージがその可能性について述べた。
「それも考えられますね」
「そうね。まあどっちにしても挨拶はしてくる性格みたいね」
「スサノオってそういう芝居がかったことも好きなのよ」
 静香がスサノオのそうした演技的な性格について話す。
「演出に凝るっていうかね」
「つくづく面白い性格してるわね。けれどそれならそれでいいわ」
 英理子は腕を組みだ。少し歩きつつ述べた。
「楽しめばいいんだし」
「そうしてなんですね」
「ええ。一緒に戦いましょう」
 今彼等はそれぞれ混ざり合って立っていた。ライダー達、そしてこちら側の面々で分かれておらずだ。それぞれ混ざり合ってだ。
 そうしてだ。英理子はその中で話すのだった。
「まあ一人素直でないのもいるけれど」
「俺のことか」
 英理子に背を向けた状態で顔を向けながらだ。オニキスは応えた。
 そして英理子はだ。その彼に言うのだった。
「自覚してるのかしら」
「ふん、相変わらず食えない女だ」
「どういたしまして。ともかくね」
「それでもか」
「そう。何はともあれスサノオとの戦いがはじまるわね」
「その前に何かすることあるの?」
 ここでだ。サフィが英理子に尋ねた。
「私達で」
「とはいっても特にないわ」
 英理子はあっさりとした口調でサフィに返した。
「相手が来たらそれで迎え撃つだけだしね」
「大事なのはその時にお互いに連絡できるようにしておくことね」
 恵は連絡の重要性を指摘した。
「御互いの携帯の番号とメールアドレスは記録しておきましょう」
「そうですね。それじゃあ」
「皆さんの携帯の」 
 紅と竜司が応えてだった。そのうえでだ。
 彼等はだ。それぞれの携帯の番号とメールアドレスを自分達の携帯に記録させた。だがここでも一人問題になる者がいるのだった。
 静香がだ。そのオニキスに尋ねる。
「で、あんたはどうするの?」
「甲斐から聞け」
 やはり背を向けたままだった。
「そいつに教えてあるからな」
「そう。じゃあ甲斐さんお願いします」
「わかったわ。それじゃあ」
 こうして甲斐からだ。オニキスの携帯の番号等を教えてもらった。アイがすぐにその番号を送るとだ。彼のポケットから音楽が鳴った。
 それを聴いてだ。皆頷いた。
「これでよしね」
「そうですね」
 英理子と竜司が頷き合ってだった。そのうえでだ。
 彼等はお互いの連絡ができるようにした。そうしてだ。
 一旦それぞれ別れた。紅は竜司、そしてローズと共に下校してだ。その中でだ。
 こうだ。ローズに対して尋ねたのだった。
「それでローズさんは」
「ローズがどうかしたの?」
「うん。君は竜司君のところに来て最初の頃は」
「色々あったの」
 そうだったとだ。ローズは紅に顔を向けて答える。
 

 

第十七話 戦士達の集結その八

「それでも竜司が優しかったから」
「上手くやっていけたんだ」
「そう。竜司に英理子がいたから」
 こうだ。ちらりと竜司の方を見て話す。
「ローズ、幸せにやれた」
「僕は何もしてないです」
 竜司はこう紅に述べる。二人はローズを挟んでだ。お互いに顔を見合わせて話す。
 そうしてだった。彼は今度はこう言うのだった。
「ただ。ローズと一緒にいて」
「わかったんだ」
「紅さんの方の世界と同じです。ローズは人間なんだって」
「姿形をドラゴンに変えられてもだね」
「はい、人間だって」
 わかったのはそのことだったのだ。
「わかりましたから」
「それがわかることが凄いんだ」
「そうみたいですね」
「うん。僕はこの通り人間とファンガイアのハーフでね」
「やっぱり偏見とかは受けていましたよね」
「名護さんとは何度も闘ったし」
 今では紅の最大の理解者の一人である名護ともだ。それが彼の過去だったのだ。
「偏見はあったよ」
「それでもなんですね」
「名護さんが自分で言ってたね。名護さんもわかってくれたんだ」
「過去で。ファンガイアと会って」
「僕の母さんと会ってね」
 クイーンとだ。それが彼にとって大きかったのだ。
「そして兄さんも」
「完全なファンガイアの登さんもですか」
「姿形なんて些細なものなんだ」
 語る紅のその目が遠いものを見るものになっている。
 そしてその目でだ。彼は言うのだった。
「大事なのはね」
「心ですね」
「ローズさんはとても奇麗な心だから」
 それはよくわかることだった。人のその心を見てきた紅なら。
 それで言いだった。彼は。
「スサノオはこの戦いで心を見ようとしているんだと思う」
「その人の心を」
「それをどうやって仕掛けてくるかだけれど」
 問題はそこだった。人の心を見る為にスサノオがどういったことを仕掛けてくるかだ。
 そのことについて考えながらだ。紅は竜司に述べた。
「今はとにかくね」
「スサノオが仕掛けてくるのを待って」
「迎え撃とう。それが一番だよ」
「そうですね。作戦として話し合った通り」
「ローズも頑張る」
 ローズもだ。ここで言ってきた。
「竜司、そして渡と一緒に」
「頼んだよ。一緒に」
 紅が微笑んで言うとだ。三人の周りにだ。
 キバットが飛んできてだ。こう話すのだった。
「まああれだな。今はリラックスすればいいからな」
「そうだね。それじゃあ」
「ああ。どっかで楽しく遊ばないか?」
 彼はこう三人に提案するのだった。
「あれだよ。動物園でも行ってな」
「どうして動物園なの?」
「いや、文月学園の奴等は遊園地に行ったそうだしな」
「それで動物園なの」
「ああ、そうだよ」
 こうローズに応えて話すのだった。
「それでどうだ?動物園で楽しくな」
「動物園。そこなら」
「いいですね」
 ローズだけでなく竜司も微笑みだ。そのうえであ。
 キバットの言葉に応える。そうして言うのだった。
「じゃあ今度の土曜に」
「行こうぜ。こっちの世界にも色々な動物いるよな」
「そうしたところは同じみたいだね」
 紅がそのキバットに話す。
「コアラとかそうしたものがいるみたいだよ」
「蝙蝠はいるかい?」
「はい、いますよ」
 竜司は少し微笑みキバットに答えた。
 

 

第十七話 戦士達の集結その九

「そうした生きものもちゃんと」
「そいつはいいな。やっぱり俺の仲間だからな」
「キバットって蝙蝠なの」
「ああ、そうだぜ」
 その通りだとだ。キバットは今度はローズに答える。
「そんなの見ればわかるだろ」
「ううん、あまり」
 しかしだった。ローズはキバットのその問いにだ。何処か気合の抜けた感じで首を横に振ってだ。そのうえでこうキバットに答えたのである。
「蝙蝠っていうか機械に見える」
「おい、それは言うなよ」
「そうだったの」
「機械っていうかこういう種族なんだよ」
 キバットは機械と言われることには拒否的なものを見せていた。
「俺達はな」
「ううん、そちらの世界って何かと色々な人がいるんですね」
「まあな。俺みたいに格好いいのはいないけれどな」
 キバットは竜司には笑いながら返す。ただし表情はない。
「渡とも色々な縁があるしな」
「縁っていうかいつも一緒にいるからね」
 その紅の話だ。
「僕が生まれた時にはもうキバットがいたよ」
「で、俺が母親であり父親だったんだよ」
 つまりだ。キバットが家族だったというのだ。
「まあ色々とあったけれどずっと一緒だぜ」
「絆ですね」
 竜司はそんな二人を見てそれだと言った。
「お二人には確かな絆があるんですね」
「その絆だけれどな」
 キバットは絆についても言及する。
「最初からあるものじゃないからな」
「築いていくものですね」
「そうだよ。覚えておけよ」
 そんな話をしながらだった。四人はそんな話をして親睦を深めていった。しかしその中でだ。こんなことを話す面々もいたのだった。
 静香はだ。喫茶店でアイに話していた。
 紅茶を飲みつつだ。彼女に尋ねていたのだ。
「じゃああんた猫はなの」
「嫌いじゃないわよ」
 こう答えるアイだった。自分の席で腕を組み足も組んでいる。
 そのうえでだ。自分の紅茶を前にして話すのだった。
「実際に家でも飼ってるし」
「まぐろね」
「いい名前でしょ」
「何ていうか変な名前ね」
 静香は自分の思ったことをそのまま言った。
「食べられそうな名前じゃない」
「それがいいのよ」
 だが、だった。アイはこうその静香に返すのだった。
「親しみが持ててね」
「まぐろって名前がなのね」
「そう。静香だってそうでしょ」
「私は別にね」
 そうした名前は付けなかった。静香はだ。
 そうしてだ。こんなことも話すのだった。
「名前だともっと違うのにするし」
「そうなの」
「まあまぐろって名前も面白いけれど」
「ブログもまぐろが更新してるから」
「いや、それは嘘でしょ」
 流石にこのことは冗談だった。何はともあれ彼女達はそんな話をしていた。
 そしてだ。さらにだった。二人と一緒にいたサフィが言ってきた。
 彼女の紅茶を飲んでからだ。言うのである。
「ところで静香ってさ。渡のこと知ってるのよね」
「そうよ。だからここにいるし」
「その時何も思わなかったの」
「渡は渡だから」
 最初からそう思っていたからだった。彼女の場合は。
「だから特にね」
「そうだったの」
「別に渡が人殺しとかそういうのじゃないから」
 そうしたことは姿形によらない。それでだというのだ。
「だからいいのよ」
「そうなんだ。静香は最初から」
「ずっと渡のお家に出入りしてたし」
「渡のこと知ってたのね」
「それで仮面ライダーとかわかってもね」
 本当に今更だった。彼女の場合はだ。
 

 

第十七話 戦士達の集結その十

「やっぱりあれなのよ。心が人かどうかよ」
「人ね」
「それがどうかっていうのね」
「そう思ってたから、最初から」
 静香はサフィとアイに話した。
「そういう人って少ないみたいだけれど」
「実際に少ないわよ」
 それを指摘したのはアイだった。
「静香やっぱり凄いじゃない」
「凄い?私が?」
「私も。狼人間だから色々あったから」
「サフィもよ。まだ小さいけれど色々なこと言われてきたから」
 この辺りは同じだった。二人共。
「それでもそう思えて渡と一緒にて」
「凄いなんてものじゃないわよ」
「そうなのかしら」
 そう言われてもだ。静香はだった。
 自覚がない。そうしてだ。
 自分の紅茶を飲み終えた。するとだ。
 こうだ。その紅茶について言ったのだった。
「あれっ、ここの紅茶って」
「美味しいでしょ」
「ええ。こんなに美味しい紅茶ってちょっと」
 少し驚いた口調でアイに応える。
「ないわ」
「確か島さん達の行きつけのお店が美味しいのよね」
「あそこは主にコーヒーなの」
「あっ、紅茶よりも」
「そう。そのお店はコーヒーだから」
 こう話す静香だった。
「まあ美味しいもの飲めるお店はサルでもミルクディッパーでもあるけれどね」
「そっちの世界も多いのね」
「レストランでアギトってあるけれど」
 静香はサフィ達にその店も紹介する。
「そこも美味しいから」
「何かそっちの世界にも行きたくなったわね」
「確かにね」
 サフィもアイも同意見だった。
「やっぱり美味しいもの飲みたいしね」
「どの世界でもね」
 二人も言う。その二人にだ。静香はさらに言う。
「じゃあ今度ね」
「ええ、ここでの戦いが終わったら」
「そういうコーヒーとか紹介してね」
「わかってるわ。まあサフィは似てる人とも会うでしょうし」
 こう言うとだ。サフィの方から言ってきた。
「秀吉とか優子とか」
「キュウべえとかね」
「あれっ、呼んだ?」
「何か用かな」
 言えばだった。その優子とキュウべえが出て来た。そうしてだ。
 サフィに対してだ。こう尋ねたのである。
「たまたまこっちの世界に来てたんだけれど」
「君の声が耳に入ったからね」
「それで来たの」
「そうよ。このお店にいるって感覚でわかったし」
「それでなんだ」
「やっぱりあれよね。声って大事よね」
「同感ね」
 静香とアイは羨ましそうにだ。サフィ達を見て話す。
「こうしてすぐに来てくれる人ができるから」
「私もそうした相手がいればいいけれど」
「そういうのも縁だから」
 優子がこう二人に話す。
「中々いいものよ」
「そうだよ。僕には感情がないけれど」
 キュウべえはそうだった。しかしそれでもだ。
 サフィを見てだ。こう言うのだった。
「何かこうしているといいような気がするんだ」
「まああれよね。次狼さんと斬鬼さんもそうだし」
 この二人も似ているとだ。静香は言う。
「そうした相手っていいよね」
「いいわよ、とても」
 そんなことを話す彼女達だった。そうしてそうした話からだ。彼女達も交流を深めてだ。絆というものを築いていくのだった。


第十七話   完


                      2011・11・18
 

 

第十八話 スサノオの罠その一

                          第十八話  スサノオの罠
 宗朗はだ。町を歩きながらだ。
 そのうえでだ。こう傍らにいる幸村に言うのだった。
「こっちの世界も気に入ったみたいだね」
「うむ、よい世界だ」
 こうだ。今はセーラー服姿の幸村も応える。
「何かと親しみが持てる。それにじゃ」
「あのローズって娘?」
「あれはよい者じゃ」
 こう言うのである。
「実にのう」
「そういえば幸村と似てるかな」
「さっき話したがよい娘じゃった」
 満足そうな顔でだ。幸村は話す。
「宗朗にはこっちの世界にはおらんか」
「いないみたいだね」
 少し残念な顔になってだ。宗朗は答えた。
「そうした人は」
「これは縁じゃからのう」
「いる時にはいるけれどね」
「おらぬ時におらぬ」
「けれど幸村にはそうした人も多いよね」
 宗朗はそのことはそうだと話す。
「こっちの世界のローズさんもそうだし」
「他にもいそうじゃな」
「ダルタニャンもいるし」
 彼女にもいた。しかしだ。
 宗朗にはいなくてだ。彼はそれがかなり残念でだった。
 今歩いていてもだ。寂しそうである。それでこんなことも言った。
「僕の関係ある世界といえば」
「ああいう世界じゃな」
「日々はもう深いね」
「あろあれじゃな。最近は境界上の」
「そうそう、そこで又兵衛と一緒で」
「御主もあちこちの世界と縁があるではないか」
「意外と又兵衛と一緒になってるかな」
 宗朗は歩きながら腕を組みつつ述べる。
「考えてみると」
「十兵衛とも一緒だよね」
 宗朗の隣にいる、幸村と彼を挟む形になっている十兵衛が言ってきた。
「その境界上の世界じゃ」
「そうだったね。あっちはあっちで騒がしい世界でね」
「そう。あの世界は面白いよ」
「そっちの世界にはライダーの人達は行くのかな」
「スサノオ次第じゃろうな」
 そのことについては素っ気無く答える幸村だった。
「どうもこの戦いはわし等が主にする戦ではない」
「そうだね。どうやらスサノオが仕掛けてきて」
「それをわらわ達が迎え撃つ」
 幸村も考える顔になって述べる。
「そうした戦じゃな」
「じゃあ十兵衛達は迎え撃つだけ?」
「そうなるのう」
 幸村は十兵衛の問いにも答える。
「受動的と言えば受動的じゃ」
「そういった戦いは好きじゃないんだがな」
 雄二もいた。それで彼もだった。
 腕を組みだ。こう言ったのである。
「俺は仕掛ける方だからな」
「けれど今は仕掛けられない」
 彼の横にいるだ。翔子が述べた。
「私達はスサノオが何処にいるかわからないから」
「その次元の牢獄だな」
「そう。それが何処かわからない」
「わかってもそれでもな」
「そこに辿り着ける方法はないから」
 見つかっていないのだ。それがだ。
「私達は迎え撃つしかない」
「もっともあれじゃ」
 幸村が彼等の話に加わる。
「スサノオはその牢獄におらなければこうしたことをせぬ」
「ああ、奴は退屈だから仕掛けてくるからな」
 雄二は頭の後ろで両手を組んでいる。胸のところで腕を組みそうして身体を屈めているのだ。大柄な彼と小柄な彼女では対象的だ。
 その彼がだ。幸村に話す。
「そこから出たらな」
「そうなればまた世界征服とかしてくるかな」
「多分それはない」
 翔子は宗朗の言葉に返した。
「スサノオはもう今更世界征服には興味がない」
「それじゃあ目的は」
「スサノオは世界よりも人を見ている」
 そちらだというのだ。
「だからそれはない」
「そうじゃな。あ奴は今更それはしてくまい」
 幸村も言う。
 

 

第十八話 スサノオの罠その二

「出て来ても結局はやることは同じだ」
「こうして仕掛けてくるんだね、僕達に」
「そうして見るのじゃ」
 宗朗にも話すのだった。
「趣味の悪い奴じゃがな。しかしじゃ」
「そこに情熱を見つけてるから」
 翔子はそう指摘する。
「私達の世界にも来た」
「わらわ達の世界にもな」
「けれどそれが思わぬ状況にもなってるね」
 宗朗も思索する顔で述べる。
「明久君と竜司君。彼等は」
「俺もあれは驚いたな」
 雄二は両手を頭の後ろに組んだままでだ。少し首を捻って言った。
「本当にそっくりだからな」
「外見は違うけれどね」
 十兵衛は一応このことを指摘はする。
「けれどそれでも雰囲気とかは」
「そっくりだからな。本人達もやけに仲がいいしな」
 またこうした話になる。
「俺もそうした相手いるのか?」
「いないかも知れない」
 翔子がぽつりと答える。
「けれど大丈夫。雄二には」
「俺には?何だよ」
「私がいる」
 言いながらだ。頬を赤らめさせる翔子だった。
「だから大丈夫」
「あ、ああ。そうだな」
 雄二もだ。顔を少し赤くさせてだ。
 そのうえでだ。翔子の言葉に頷き言うのだった。
「俺もな。そうだな」
「何かあっても大丈夫」
 戦いがあってもだというのだ。
「私達二人なら」
「俺達の戦いは試験召喚システムを使うものだがな」
「あっ、それなんだけれど」
 宗朗がシステムについてだ。雄二達に尋ねた。
「君達のそのシステムはこちらの世界でも使えるのかな」
「そうみたいだな」
 雄二は少し考える顔になって宗朗に応えた。
「こっちの世界でもこれがあればな」
 こう言って右手にある一見すると腕時計に見える銀色の装置を見せた。
「これで召喚できるみたいだ」
「だから君達はこの世界でもそのシステムにおいて戦うんだね」
「それができる。けれど宗朗さん達は」
「うん、こっちの世界じゃ普通に戦うよ」
 そうだというのだ。
「それぞれの剣でね」
「それはかなり大変だな」
「いや、僕達の戦いはそうしたものだから」
 だからだと返す宗朗だった。
「特にね。思うところはね」
「ないっていうんだな」
「そうだよ。それで今考えてるのは」
「左様、スサノオがどう仕掛けてくるかじゃ」
 幸村もそのことを指摘する。眉を顰めさせて。
「四人の竜が揃った。ならば遅かれ早かれじゃ」
「来るよね、やっぱり」
「来ぬ筈がない」
 幸村は胸を張って十兵衛にも答える。
「あ奴との戦はこれで三度目じゃ。その性格がおおよそわかってきたわ」
「あれだな。遊戯的っていうのか?」
「そんな性格ね」
 雄二と翔子が言う。
「それがスサノオだな」
「遊びが好きね」
「奴にとっては戦は退屈を紛らわせる遊びじゃ」
 幸村は看破した。スサノオをそう。
「さすれば遊べる状況になればじゃ」
「仕掛けて来ない筈がない」
「間違いなく」
「今にも来るぞ。問題はそれがどういったものかじゃが」
「この世界全体に関わることかな」
 宗朗はふとそんな危惧も感じた。
「そうだとしたらかなり激しい戦いになるけれど」
「いや、この世界と竜司達のことを考えればじゃ」
「そうしたことは仕掛けてこないかな」
「まずな。それはない」
 そこまで大掛かりなものはだというのだ。
 

 

第十八話 スサノオの罠その三

「仕掛けるとすればあの者達自体にじゃ」
「仕掛けてくるんだね」
「さて、それで何をしてくるかじゃ」
 またこう言う幸村だった。
「わらわ達の世界では十兵衛に関わるものじゃった」
「そうよね。それで十兵衛を戻して」
「そうしたものじゃった。そしてじゃ」
 幸村は雄二達を見た。雄二もそれに応えて言う。
「で、俺達のところはな」
「試験召喚システムを見てじゃったな」
「俺達がそのシステムを使ってどう成長するのか試してきた」
「奴はそれぞれの世界と戦士達を見て仕掛けてくる」
 それならばだというのだ。
「さすればこの世界では竜、そして人じゃな」
「そこを狙ってくるというんだね」
「うむ、そう考えるのが妥当であろう」
 幸村はまた宗朗に話した。
「もっともわらわ達の世界ではこうしたこともできた」
「こうしたことって?」
「宗朗じゃ」
 彼を見ての言葉だった。今は。
「御主のその女好きを使うやり方もあったのう」
「えっ、僕はそんな」
「御主は自覚しておらずとも御主はあれなのじゃ」
 何故かここでだ。幸村は顔を赤くさせて宗朗を見上げて抗議めいて言う。
「何というか。目を離せぬのじゃ」
「それじゃあ僕が子供みたいだけれど」
「子供ではない。おのこじゃ」
 本音を言ってしまう幸村だった。
「そのじゃ。見事なじゃ」
「けれど何か色々言われるけれど」
「へたれとかそういうものか」
「うん、氏ねとかそういう言葉も含めて」
「あちらの御主も分身もそうじゃがどうも御主はおなごを魅了する」
 どうしてもそちらの世界から離れられない宗朗だった。
「もっともそれはじゃ」
「それはって?」
「あちらの世界の島田も吉井もそうじゃし」
 ここでまただ。幸村は雄二を見た。だが今度はちらりとだ。
 そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「この者も実はそっちの世界に縁があるしのう」
「ああ、ましろ色だな」
 雄二もつい言ってしまった。
「あっちの世界はな。俺は」
「ましろ色」
 しかしだ。それを聞いてだ。翔子はだ。
 全身に剣呑なオーラを漂わせてだ。こう雄二に問うたのだった。
「あの世界は確か」
「待て、だから俺はだな」
「雄二、浮気は許さない」
「だから俺は誰も相手にできてないんだよ!」
「そうなの」
「それができるのは主役だけだ。俺は主役じゃなかったからな」
 そうした世界の法則から話す雄二だった。
「そうだよ。だから俺は潔白だ」
「ならいい」
「大体あっちの世界にいるのはだ」
「雄二は雄二」
「中身が違う。じゃあこっちの世界の幸村とローズも同じなのか!?」
「かなり似ている」
 実際には似ているどころではなかった。
「竜司君と吉井君も」
「けれど似ているだけで済むだろ。あっちの世界の奴と俺は似ているが違うんだよ」
「ならいいけれど」
「だからせめて他の世界の俺に似ている奴については勘弁してくれ」
 雄二も必死だ。流石に自分自身とは無関係だからだ。
「御前だってそういう相手いるだろ」
「多少は」
「そういうものなんだよ。秀吉なんてそれこそ何人いるかわからないからな」
 そんな話をしながらだ。彼等もこの世界に来ていた。そしてだ。
 竜司達もだ。全員集まりだ。
 今はだ。これからのことについて話していた。
「まああれね。会議ばかりだけれどね」
「それでも仕方ないことだ」
 名護がこう英理子に返す。場所はまた竜司の家のリビングだ。
 

 

第十八話 スサノオの罠その四

 そこに集まりだ。こう話をするのだった。
「何しろ俺達は戦っているのだからな」
「そのスサノオとね。何はともあれよ」
 英理子がまた言う。
「何時仕掛けてくるか、何をしてくるか」
「時間はすぐだな」
 登が述べる。
「その時は」
「そうね。今すぐでもおかしくないわね」
 恵は腕を組み立ってだ。彼の言葉に応える。
「スサノオのこれまでの行動から見てね」
「何か。見てる感じ?」
 サフィがふと気付いた様に述べた。
「スサノオは私達をいつも」
「そうだ、見ているのだ」
 島がサフィの言葉に応える。
「こうした時もだ」
「いつも見ているから。それで」
「仕掛けることもできるのだ」
「今次狼達や幸村さん達が町に出てね」
 紅がここで話す。
「調べているというか囮になってくれてるけれど」
「すぐに出て来るんじゃないのかしら」
 ここで言ったのはアイだった。
「囮を出してるのなら」
「いや、スサノオも馬鹿ではない」
 だが、だった。すぐにこう指摘した島だった。
「そう簡単に囮に引っ掛かるとは思えない」
「あれね。あえて囮に引っ掛かるのならあるわね」
 甲斐が話す。
「それはあるわね」
「あえて、だとすると厄介ね」
 英理子はその場合については眉を顰めさせて述べた。
「囮は相手が知らなくて引っ掛かればいいけれど」
「向こうが知っていて引っ掛かるとすればですね」
「そうよ。策が策として跳ね返されるわ」
 英理子は竜司にその危険を指摘した。
「もっともそれもわかっててやってるのよね」
「当たり前だろ。真田幸村だぜ」
 キバットは英理子の上を飛び回りながら話す。
「あっちの世界じゃ女だけれどな。わかるんだよ」
「真田幸村?」
「人間の世界での知将だよ」
 竜司は真田幸村と聞いて誰かと問うたローズに答える。
「同時に猛将でもあったけれどね」
「知将なのね」
「うん、その真田幸村がいたら」
 まさにだ。それならばだというのだ。
「大丈夫だと思うけれど」
「幸村。ローズに似たあの子」
 こう考えればだ。ローズもわかるのだった。
 そしてそのローズはだ。こう一同に話した。
「じゃあ今は幸村の頭が」
「うん、きっと解決してくれるね」
 こう話してだった。彼等はだ。
 まずは囮となっている幸村達からの報告を待った。その幸村は相変わらず宗朗や雄二達と共にいた。そのうえで今はゲームセンターにいた。
 そしてそのゲームセンターでだ。雄二は翔子に言われていた。
「UFOキャッチャーで」
「ああ、わかったわかった」
「それ頂戴」
 見れば何かのキャラクターのぬいぐるみを見てだ。翔子は雄二におねだりをしていた。雄二がそのUFOキャッチャーを動かしている。 
 そうしながらだ。雄二は言うのだった。
「しかし。こうしていてもな」
「スサノオは来る」
「そうだな。こういう時こそな」
「来る。ただ」
「わかってる。その前に手に入れるからな」
 雄二は応えながら話す。
 

 

第十八話 スサノオの罠その五

「それで御前にやるからな」
「うん。ただ」
「ただ、何だ?」
「このゲームセンターで仕掛けてくるとしたら」
 翔子はゲーム機が林立し少年少女が遊ぶそのゲームセンターの中を見回す。暗い店の中をそうしていた。そのうえで話をするのだった。
「この入り組んだ店の中を囲んで」
「だろうな。中と外からな」
「例えば人が」
 その遊んでいる客達がだというのだ。
「ファンガイアだという可能性もある」
「いや、確実にそうじゃな」
 幸村もいた。当然宗朗もだ。
 二人も雄二のUFOキャッチャーを動かすことを見届けながらだ。そのうえでだった。
 横目で周囲を見つつだ。話していく。
「見よ。客達を」
「ああ、ゲームをしているようでな」
 雄二もだ。遊びながら横目で周りを見ていた。
「俺達の動きを注視してるな」
「お店の外もね」
 宗朗は外を見ていた。見ればだ。
 外の通行者達もだ。通る度にだ。
 店の中、彼等を見ている。そうしてだった。
 隙を窺っていることがわかる。それを見てだ。
 幸村がだ。翔子に囁いた。
「できるな。今のうちにじゃ」
「携帯でメールを送って」
「うむ、頼む」
 そうしてくれというのだ。
「それではな」
「わかった。じゃあ」
「よし、捕れたぞ」
 雄二は今もUFOキャッチャーをやっていた。その中でだ。
 翔子がねだっていたぬいぐるみを手にしてだ。彼女に手渡した。その瞬間にだ。
 店の中の客達がだ。一斉にだった。
 ファンガイアに変わる。それを見てだった。
 まずは宗朗と幸村がだった。すぐにだ。
 剣と扇子を構えてだ。こう言うのだった。
「やっぱり来たね」
「そうじゃな。読み通りじゃ」
「紅さん達から連絡が来た」
 翔子は冷静にだ。己の携帯を見ながら話す。
「すぐにゲームセンターに来る」
「そうか、わかった」
 雄二は翔子の言葉に応えるとだ。すぐにだ。
 翔子にだ。こう声をかけた。
「いいな、翔子」
「うん、じゃあ」
 二人同時にだ。それぞれの右手を拳にしてだ。
 そのうえで頭の高さで掲げてだ。こう叫ぶのだった。
「サモン!」
 その言葉と共にだ。試験召喚システムを発動させてだ。戦いに赴くのだった。
 そしてその中で戦いに入る。この世界での戦いがはじまったのだ。
 翔子から連絡を受けた紅達はすぐに竜司の部屋を出てだ。
 そのゲームセンターに向かう。その途中でだ。
 竜司がだ。こうローズ達に話す。
「いい、ゲームセンターの中では」
「力を使わない」
「それですね」
「いや、セーブして欲しいんだ」
 使うなというのではなかった。
「それは頼むよ」
「そうね。下手に火とか使ったら」
 アイがそのことについて話す。
「火事とかになって大変だから」
「うん、そこはお願いするよ」
「スサノオも考えたものだな」
 登も言う。彼等は今ゲームセンターに向かって全速で駆けている。
「狭い店の中ではな」
「戦い方が限られるわね」
「そこをどうするかだが」
「ライダーには」
 竜司がだ。その登に問うた。
「やっぱり変身されますね」
「当然だ。しかしだ」
「戦い方だ、問題は」
 島もそのことを指摘する。
 

 

第十八話 スサノオの罠その六

「スサノオもそれがわかって仕掛けてきている」
「困ることは飛べないことよ」
 サフィはそのことを心配していた。
「ドラゴンは飛べるけれどそれでも」
「そうだな。建物の中ではな」
「そう、飛べないから」
 このことをアイにも言うサフィだった。
「そこをどうするかよね」
「いや、それは何とかなるわ」
 だが、だ。そのサフィに甲斐が話す。
「確かに高くは飛べないけれどね」
「えっ、飛べるの?」
「高く飛ぶだけが戦い方じゃないのよ」
「そうなの?それこそ高く飛ばないと」
「わかるわ。向こうに着けばね」
 言いながらだ。甲斐は紅を見る。そのうえでこう彼に言うのだった。
「君はそれがわかるわね」
「はい、その姿にもなれますから」
 飛翔態のことだった。紅は彼等にその姿のことも話していたのだ。
 それでだ。甲斐の言葉にも頷いて述べるのだった。
「ああした場所でもできますね、それは」
「その姿で戦うのかしら」
「必要とあらば」
 そうするとだ。紅も答える。
「そうしますから」
「わかったわ。じゃあ期待しているわ」
「はい、それじゃあ」
「もうすぐ?」
 ローズも駆けている。そうしながらだ。
 彼は傍らにいる竜司に顔を向けてだ。こう尋ねるのだった。
「そのゲームセンターは」
「うん、もうすぐだよ」
「そう。それじゃあローズも」
 右手を出す。その手に紋章がある。
 紅達も今からライダーに変身する。駆けながらキバット達やシステムの力を借りてだ。
 変身しそのうえでだ。戦場に向かうのだった。
 幸村と宗朗は背中合わせになっていた。UFOキャッチャーの間で。その背中合わせの二人を囲んでファンガイア達がいる。その彼等を見据えつつだ。
 幸村はだ。己の背中の方にいる宗朗を横目で見つつだ。こう問うのだった。
「さて、皆来ると思うか」
「紅君達だね」
「そうじゃ。あの者達も来ると思うか」
「来るよ」
 微笑みだ。こう答える宗朗だった。
 二人は扇や剣を構え迫り来るファンガイア達を倒していく。その中でやり取りをしているのだ。
 そしてだ。宗朗はこうも言った。
「来ない筈がないよ」
「そうじゃな。皆来てくれるのう」
「だから今はね」
「うむ、耐えようぞ」
 幸村は不敵な笑みを浮かべ宗朗に応えた。その彼等のすぐ傍ではだ。 
 UFOキャッチャーを背にしてだ。召喚システムでファンガイア達と戦っていた。そうして彼等を一人、また一人と退けながらだ。
 雄二がだ。こう翔子に言った。
「秋久達から連絡はあったか」
「あった」
 その感情が乏しい声で答える翔子だった。
「ただ。それでも」
「来るのは遅いか」
「もうすぐ来るそう」
「それじゃあ何でもうすぐなんだ?」
「今すぐには来られないから」
 だからだ。それでもと言ったというのだ。
「それでもうすぐ」
「そうか。そういうことか」
「そう。じゃあ」
 召喚獣の剣を振るう。そうしながらだ。
 翔子は雄二にだ。今度は自分から言うのだった。
「二人共生き残る」
「わかってる。それじゃあな」
「負けない。絶対に」
 彼等も戦う。仲間が来ることを確信しつつ。そうしてだった。
 店の中にだ。彼の声がしたのだった。
「雄二、何処にいるんだよ」
「来たか、馬鹿が一人」
 秋久だった。声でわかった。その彼の声を聞いてだ。
 

 

第十八話 スサノオの罠その七

 雄二は楽しげな笑みになりだ。こう言うのだった。
「他にもどんどん来てるな」
「本格的な戦いのはじまりだから」
 翔子もこう言うのだった。
「こっちの世界の」
「よし、それじゃあな」
「まずは勝つようにするべき」
 こんな話をしながらだ。彼等は見かたの援軍を得た。その彼等はというと。
 入り口からゲームセンターに雪崩れこむ。そのうえでだ。
 既に変身しているライダー達がだ。ファンガイアに向かいだ。
 彼等を先頭にして切り込む。その中でだ。
 千姫がだ。薙刀を振るいつつ言うのだった。
 店の中を駆けていく。ゲームの台にもあがりだ。
 薙刀を縦横に振るう。そうして戦っている彼女の言葉は。
「入り口は誰が受け持ってるの?」
「又兵衛殿です」
 半蔵が千姫の問いに答える。
「それと久保利光さんです」
「そう、あの二人なら安心ね」
「はい、それじゃあ今は」
「中の敵を倒すわ」
 こう話してだった。千姫は舞を舞う様にしてだ。
 ファンガイアをその薙刀で斬っていく。そのゲームセンターの中でだ。
 英理子がだ。こうローズ達に話した。
「飛びなさい」
「えっ、飛ぶの!?」
「この中で!?」
「ええ、敵の周りを飛んでね」
 そうして戦えというのだ。
「力も接近して一気に使えばいいから」
「そうですね。そのやり方がありましたね」
 マルガは英理子のその言葉を聞いて納得した顔で頷いた。
「それなら」
「銃もこれはね」
 ビアンカは残念そうにだ。バズーカは引っ込めてだ。今は拳銃を出して言うのだった。
「こうしたチャチなものしか使えないから」
「けれどその銃あれよね」
「ファンガイアだって倒せるわよ」
 それができるというのだ。
「改造したのよ」
「やるわね。じゃあ私もね」
 英理子もだ。その手にあのステッキを出す。そうしてだった。
 戦いに入る。その中でローズ達はというと。
 それぞれ敵と敵の間、少し上を飛びだ。そのうえでだ。
 ファンガイアを撃つ。その攻撃は意外と効果がありだ。
 ファンガイア達を戸惑わせ倒しもしていた。サフィのその水もだ。
「あれっ、サフィ何か」
「強くなってるね」
「うん。何時の間に?」
 こう自分のすぐ下で戦うアイに答えるのだった。
「そうなったのかな」
「成長したんじゃないの?」
 そのせいではないかと返すアイだった。
「サフィもね」
「そうなのかしら」
「気付いていないうちに成長するものなのよ」
 アイもこう言いながらだ。素早い身のこなしで戦いつつファンガイアを倒していく。そうしながらだ。サフィに対して話をしていくのだ。
「人はね」
「人だからなの」
「そうよ。それは私も」
 見ればだった。アイのその動きもだ。
 これまでよりも素早く蹴りも威力がある。噛む攻撃もだ。
 ファンガイアを退けるに充分なものだった。サフィは水流でファンガイアを一人吹き飛ばしながらそのアイとの話をしていくのだった。
「ううん、人だからこそなの」
「そう言われた。英理子に」
「英理子になの」
「ビアンカにも言われた」
 彼女にもだというのだ。
「だからこれからも成長していく」
「スサノオはそうしたのも見ている?」
「その通りだよ」
 二人のところに紅が来た。彼はまだ通常の状態だ。エンペラーフォームではない。その通常の姿で拳や蹴りを繰り出して戦っている。
 そうして戦いながらだ。紅が変身しているキバが述べたのである。
 

 

第十八話 スサノオの罠その八

「スサノオは人間を見るって言ったね」
「うん、確かに」
「そのことは聞いた」
「そうなんだ。スサノオは見て楽しむから」
「それ前に言った通りね」
「そうなのね」
「だからこそ僕達が成長してそこにまた仕掛けてくるんだ」
 それがスサノオだというのだ。
「成長すること自体は楽しみにしているんだ」
「成長を見るって聞くと何か嬉しいけれど」
 それでもだとだ。サフィはアイと闘うファンガイアに水を浴びせて怯ませる。そこにアイの周り蹴りが来てスサノオを退けてだ。
 そうしてからだ。あらためてキバに答えたのだ。
「嫌な話ね」
「その通りね」
 アイも不機嫌そうに応える。そんな話をしながらだ。
 戦士達は戦っていく。まずはゲームセンターの中はだ。
 ファンガイア達を順調に倒していく。そして外もだ。
 戦士達が相手をしていた。そこには慶彦にだ。利光もいた。
「試験召喚システムは便利だね」
「そう思われますか」
「うん、何時でも戦えるからね」
 だからいいというのだ。
「便利だね。僕達とも一緒に戦えるしね」
「確かに。僕もそう思います」
 利光も慶彦の言葉に応える。そうしてだ。
 彼もまた戦いだ。そして言うのだった。
「吉井君と共にいられますし」
「友情かな、それは」
「そんなところです」
「いや、違うな」
 すぐにだった。慶彦は気付いた。その言葉を訂正してだ。
 微笑みだ。そして言う。その間彼は剣を振るいだ。縦横に戦っている。
「君はより別の感情だな」
「そうでしょうか。僕は吉井君には誠意を以て対しています」
「誠意だね」
「はい、それだけです」
「それならそうとしておこう」
 気付いたことはあえて言わずにだった。彼等もまた戦い続ける。ゲームセンターの外から新手が来るがそれは完全に防がれていた。
 ゲームセンターを巡る戦いは次第にライダー達に傾いていきだ。遂にだった。
 彼等は完全にだ。ファンガイア達を全て退けた。最後のファンガイアはだ。
 ローズが右手から放つ炎でだ。一気に燃やしたのだった。それでなのだった。
 戦いを完全に終わらせた。その戦場の跡でキバから戻った紅が言う。
「さて、ここでの戦いは終わったけれど」
「それだけではないな」
 名護がその彼に応える。
「見ているな。あの男が」
「はい、スサノオですね」
「そうだ。見ているな」
 名護は周囲を見回してだ。それからだ。
 こうだ。その見ている存在に対して言ったのだった。
「答えなさい、すぐにだ」
「気付いていたか。流石だな」
「気付かない筈がない」
 名護は鋭い顔でスサノオに返す。
「これまでがそうだったからな」
「そうだ。その通りだ」
 スサノオの声もだ。名護に対して答える。
「君達のここでの戦いも見せてもらった」
「事情はわかった。それではだ」
「どうするのだ。今ここで御前が出て来るのか」
「いや、今はそれはしない」
 決してだ。それはしないというのだ。
「しかし次は違う」
「次か」
「君達は動物園に来る筈だ」
「読んでいたか」
 スサノオの今の言葉にはだ。登が顔を険しくさせた。
 

 

第十八話 スサノオの罠その九

 そしてだった。こう言うのだった。
「そしてか。そこでだな」
「私は待っている」
 実に楽しげにだ。スサノオは言うのだった。
「そして君達の相手をしよう」
「相変わらず偉そうね」
 そんなスサノオの話を聞いてだ。恵が嫌そうな顔で言った。
「神様としてそうするのね」
「その通りだ。しかし私が偉そうだとはな」
「違うのかしら。それは」
「いや、否定はしない」
 悠然として答えるスサノオだった。そしてだ。 
 そのうえでだ。こう紅達に言う。
「私は神なのだからな。それも傲慢な神だ」
「自覚してるのね」
 そのことは英理子にもわかった。すぐにだ。
「自分でそのことは」
「その通りだ。しかしだ」
「そのことはあらためないのね」
「全くない」
 まさにそうだと話す。やはり平然としてだ。
「また君達の戦いを見させてもらおう」
「では見せてあげるよ」
 正夫が忌々しげにスサノオに返す。
「そしてこの世界でも勝ってみせるよ」
「その意気だ。私は待っている」
 スサノオの態度は変わらない。それも全くだ。
 その態度のままだった。彼の発言は。
「動物園でな」
「わかりました。じゃあ行きます」
 竜司もだ。強い声でスサノオに返した。声がした方を見てだ。
「そしてそこで貴方と戦います」
「待っている。それではな」
「ローズも行く」
 ローズはだ。その竜司の傍にいた。そのうえでの言葉だった。
「そして戦う。絶対に」
「実に楽しみだ。しかしだ」
「しかし?」
「しかしというと」
「私は既に見させてもらっているな」
 ローズ達を見ての言葉であるのは言うまでもなかった。それは間違いなかった。
「人間をだ」
「というとやっぱり」
「はい、間違いありません」
 ジョージにだ。マルガが話す。
「私達を見てのことです」
「そうですね。間違いなく」
「それじゃあ次の戦いも」
「間違いなく私達に対して」
「私も気付いたのだよ」
 スサノオはさらに言ってきた。
「世界征服なぞ果たせば終わりだとな」
「確かにそうね」
 甲斐がその世界征服が成った時のことを考えて述べた。
「世界を征服してもね」
「それでは楽しみはすぐに終わる」
 だからだとだ。スサノオは言うのである。
「そんなものは実に下らない」
「だから人を見るの?」
「その通りだよ」
 ローズにもだ。スサノオは悠然として話す。
「私の楽しみの為にだ」
「そうだったの、やっぱり」
「何ていうかね」
 ローズに続いてだ。ビアンカも言う。
「凄く頭にくるけれどね」
「ははは、だが君達には死なれたら困るとは言っておこう」
「理由はわかるわ」
 これまた不機嫌そのものの顔のビアンカだった。
「私達がいないとそれこそ」
「そうだ。私が君達の戦いを見て楽しむことができなくなるからだ」
「全てはあんたの都合ってことね」
 理恵子も流石に不機嫌さを隠せない。もっとも最初から隠すつもりもないが。
「本当に腑に落ちないことね」
「けれどそれでもですよね」
 竜司がその理恵子に眉を曇らせて尋ねる。
 

 

第十八話 スサノオの罠その十

「スサノオとの戦いは」
「ええ。勝つしかないし」
 敗北は許されなかった。
「さもないと一回死ぬことになるわよ」
「死ぬ、ですか」
「どうも何度も行き返らさせられるみたいだけれどね」
 腕を組み考える顔になって話す理恵子だった。
「けれどそんなの嫌でしょ」
「何度も死ぬのは」
「そんなのいいって言う人いないわ」
 理恵子はこう断言した。
「生き返ることができてもね」
「そうですね。それなら」
「戦って勝つしかないわ」
 そして生き残るしかないというのだ。
「そういう戦いね」
「如何にも。確かに君達は何度死んでも黒衣の青年が甦らせる」
 そして戦わせるというのだ。
「仮面ライダーと同じくだ」
「けれどだからといってもなのね」
「その通り。君達にとっていいことではない」
 生き返ること、それ自体がだというのだ。
「そのことを言っておこう」
「じゃあやっぱり」
「そう。そんな嫌な思いをしたくないのなら」
 今度は紅が竜司に話す。
「僕達は戦い勝つしかないんだ」
「一応戦線離脱って選択肢もあるで」
 襟立はこの選択肢もあるとは述べた。しかしだ。
 彼はそのことについて難しい顔になりこうも言うのだった。
「けどそれはしたないやろ」
「はい、逃げることも選択肢だとは思います」
 竜司が答える。それはあるがというのだ。
「ですが。それじゃあ何の解決にもならないですし」
「スサノオに負けることやからな」
「それは嫌です」
「私は逃げる者を追いはしない」
 スサノオ自身もそのことは保証する。
「所詮その程度の者だからだ」
「それなら答えは一つしかないですね」
 決意した顔になりだ。竜司は述べた。
 そしてそのうえでだ。彼はこうスサノオに告げた。
「スサノオ、この世界では絶対に」
「それでいいのだ。では戦おう」
「何があろうとも貴方に勝ちます」
「楽しみにしている。では動物園だ」
 場所はここしかなかった。そうしてだ。
 スサノオはそのことを話してだった。その気配を消していく。その消えていく気配の中でだ。彼は紅達に最後にこう言うのだった。
「君達の戦いを見せてもらおう」
 これを最後の言葉にしてだ。その場から気配を完全に消した。後に残ったのは何もなかった。
 スサノオが消えてからだ。島が一同に言った。
「場所は決められている。しかしだ」
「じゃあすぐそこに行くんですね」
「それは違う」
 明久の言葉はだ。すぐに否定した島だった。
「今すぐに行っても何にもならない」
「あれっ、そうなんですか」
「そうだ。まずは準備が必要だ」
「ああ、作戦ですね」
「まさかと思うがだ」
 島は真剣に疑いながらだ。その明久を見て言う。
「君は何も考えずに行くつもりだったのか」
「ええと。それはですね」
「そうか。だがそれは駄目だ」
 島はそんな何も考えていない明久に対して述べる。
「まずは作戦を立てなければな」
「どうせなら速攻勝負だと思ったんですけれど」
「明久、それは絶対に駄目だぞ」
 秀吉がその彼に呆れた顔で腕を組んで突っ込みを入れる。
「御主、わざわざ敵地に何も策もなく乗り込むとどうなるかわかっておるのか」
「だって戦うこと自体は変わらないじゃない」
「戦いがあるにしろどう戦うかじゃ」
 秀吉が言うのはこのことだった。
「策なくして戦はない。御主は馬鹿か」
「馬鹿って何なんだよ。戦うのは速い方がいいっていうじゃないか」
「兵は神速を尊ぶが無謀はかえって駄目じゃ」
 秀吉は正論で明久に応える。
 

 

第十八話 スサノオの罠その十一

「それは破滅の元じゃ」
「破滅って大袈裟な」
「ではあの遊園地の戦いは天道さん達の策なくして勝てたのか」
「えっと、それは」
「無理だ汰tであろう。そういうことじゃ」
「ううん、何か違うと思うけれど」
「御前はもう黙ってろ」
 雄二が呆れた声でその明久に告げる。
「策は俺がいつも立てているがそれも見ていないのか」
「ああ、ああいうことなんだ」
「そうだ。戦いは作戦あってだ」
 雄二は流石にそのことはよくわかっていた。
「それがわからない奴は馬鹿だ」
「馬鹿って何だよ。僕が馬鹿だっていうのかよ」
「そうだ。馬鹿も馬鹿」
 それに加えてだった。
「大馬鹿だ。どうにもならないまでな」
「うう、何かボロクソに言われてるけれど」
「何か凄いね、明久君は」
 竜司もさ。流石に今回は呆れていた。
「僕も作戦は必要だと思うけれど」
「えっ、竜司君もそう言うの」
「悪いけれどね。僕もやっぱり」
「何か僕だけ馬鹿みたいじゃないか」
「だから御主は今は静かにしておれ」
 幸村もその彼に言う。
「今が大事じゃからな」
「それでは話をはじめようか」
 慶彦は至って冷静に述べる。
「これからのことを」
「わかりました」
 竜司が慶彦のその提案に頷いた。
「それなら今から」
「場所は何処なのかしら」
 千姫は話をする場所は何処なのか尋ねた。
「できれば美味しいものを食べながらといきたいけれど」
「それならいい場所があるわ」
 ビアンカが千姫の言葉に応える。
「こっちの世界のお店だけれどいいわよね」
「ええ、美味しいものなら何でも」
「お金は持っていますので」
 半蔵がそれは安心しろというのだ。そうしてだ。
 自分のメイド服からあるものを出してきた。それは。
「この通り」
「えっ、小判じゃない」
「それはちょっと」
「いや、これはこれで使えるわ」
 皆半蔵の出してきた小判にどうかと言うがここで英理子がこう言ったのだ。
「骨董品屋さんに売れば相当の値で売れるわ」
「あっ、そうか」
「そういえばそうなるわね」
 英理子の言葉にすぐにだ。皆頷きだ。
 そのうえでだ。あらためて言うのだった。
「じゃあその小判を売ってこっちのお金にして」
「それでお金作りますか」
「そうすればいいわ。むしろ」
「そっちの方がお金になりますね」
 紅が言う。
「小判の値段を考えますと」
「じゃあそれでいいわね」
 こうしてだった。彼等はその小判を売りだった。そうしてだった。
 ビアンカの言う店に行きだ。そこで話をすることにしたのだった。
 その店に行く途中でだ。瑞希がこんなことを言った。
「お料理なら私が」
「いや、姫路よ。それはじゃ」
「止めておいた方がいいわよ」
 すぐにだ。秀吉と千姫が止めに入ってきた。
「折角ビアンカさんがよい店を紹介してくれるのじゃ」
「ご好意に甘えないと、ここはね」
「そうなんですか。それじゃ」
「さて、ビアンカさんお勧めの店はどんなものかのう」
「今から楽しみだわ」
 かなり白々しい顔で言う二人だった。
「わしは気分的には鍋がよいのじゃが」
「私もよ。お鍋はいいものね」
「鮟鱇に鱈、鶏もよいのう」
「さて、どういったお料理かしら」
「ううん、残念です」
 瑞希は二人に遮られ、これは彼女は気付いていないがそれでも言うのだった。
「折角だと思ったのですけれど」
「ふう、一大事だったのじゃ」
 秀吉はこっそりと胸を撫で下ろした。
「もう少しでわし等は決戦前に全滅しておったわ」
「あの、ひょっとして姫路ちゃんって」
「はい、料理の腕は絶望的なのです」
 秀吉はこうマルガに話す。
「ですから絶対に食べられぬ様」
「わかりました。では気をつけておきます」
「それにしてもさ。ふと思ったけれど」
 明久は腕を組み背中をやや屈ませて話す。
「どの世界にも一人はお料理があれな人いるよね。僕の姉さんもだし」
「あれっ、明久君お姉さんいたんだ」
「はい、そうなんです」
 紅の問いにこう答える彼だった。
「まあ。かなり独特な姉さんですけれど」
「ひょっとしてそのお姉さんってこういう人?」
 静香が言う。
「ザンギャックって組織と関係あるとか?」
「ライダーの人ってそちらの世界とも関係があるんですか?」
「何となく知ってるの」
 こう答える静香だった。
「色々な縁で」
「そうなんですか。その辺り複雑ですね」
「ああ、あっちの世界ね」
 ここで言ったのは英理子だった。
「プリ何とかなら私も多少はわかるから」
「そのうちそういう人一杯出てきそうね」
 ふとだ。美波はこう思ったのだった。
「これからだけれど」
「まあいいんじゃない?それはそれで楽しいし」
 愛子は陽気に笑っていた。彼女はかなり余裕がある様だった。
「楽しくやろうよ。生き残ること前提でね」
 愛子の言葉を聞いてだ。それからだった。
 彼等はその店の前に来た。そこは一軒のちゃんこ鍋屋であった。


第十八話   完


                         2011・11・25
 

 

第十九話 動物園での戦いその一

                          第十九話  動物園での戦い
 ちゃんこ鍋屋に入りだ。一同は。
 かつて力士だったという店の親父にだ。こう言われたのだった。
「今なら鳥がいいよ」
「鶏ですか」
「それですね」
「いや、鴨だよ」
 鳥は鳥でもそちらだとだ。親父は一同に話す。
「合い鴨ね。どうだい?」
「合い鴨か。実にいい」
 名護は親父の言葉に何故かにやりと笑った。
 そしてだ。紅達にこう言うのだった。
「それにしなさい。合い鴨は美味いし健康にもいい」
「味と栄養なのね」
「そう。だからそれにすべきだ」
 名護は英理子に対しても自信をもって答える。
「ここはだ」
「そうね。じゃあそれにしましょう」
 英理子も名護の言葉に頷きだ。そうしてだ。
 彼等はそれを注文した合い鴨のちゃんこをだ。注文して程なくしてだ。
 そのちゃんこ鍋が来た。それを食べるとだった。その味はだ。
「あっ、確かに」
「美味い」
「濃い味なのにそれでいてあっさりしてて」
「かなり食べやすいですね」
「鶏とはまた違った味がある」
 名護もその鴨鍋を食べながら言う。
「だからこれでいいと言ったのだ」
「そういうことなんですね」
「つまりは」
「それでだが」
 名護はさらに話す。
「話をはじめたいのだが」
「スサノオのこと?」
「そうだ。動物園のことだ」
 名護は今度はローズに応えて話す。
「我々はその動物園のことは詳しくはない。しかしだ」
「はい、この町の動物園でしたら」
「ローズ達知ってるよ」
 竜司とローズがそれぞれ名護に言葉を返す。
「僕は子供の頃からあの動物園に通っています」
「ローズも竜司と一緒に行ったよ」
「ですから道案内もできますし」
「細かい場所も覚えてるよ」
「地図とかある?」
 恵は動物園の地図を求めた。
「それはどうなの?」
「地図ですか」
「うん。それはあるかな」
「はい、あります」
 竜司は恵の問いにこう答えた。しかしだ。
 彼はすぐに難しい顔になりだ。葱を食べながら話すのだった。
「ですが今手元には」
「ないのね」
「すいません、そういうのはちょっと」
「けれどすぐにわかるわ」
 甲斐が言ってきた。彼女も共にいるのだ。
「サイトを検索すればね」
「その方法があるな」
 登はそれを聞いてすぐに言った。
「それで地図を調べて」
「頭の中に叩き込んでね」
 静香が言った。
「そうしてよね」
「万全でいこうぜ」
 キバットが言ってきた。彼は食べていない。
「地の利があったら有利だからな」
「相手は動物園の地図は知っているんでしょうか」
 タツロットはその可能性について考えた。
「どうなんでしょうか、それは」
「一応は知ってるでしょうね」
 英理子が腕を組み述べた。
「そうじゃなければ戦場にしてこないし」
「それじゃあかなり危険よね」
「そうよね」
 こう話す彼等だった。そうしてだ。
 竜司がだ。あらためて話す。
 

 

第十九話 動物園での戦いその二

「それじゃあ僕達は皆動物園の地図を頭に入れてからですね」
「うん、そのうえでスサノオのところに向かおう」
 紅も話してだ。そうしてだった。
 彼等はまずは動物園の地図を覚えた。それにかかったのだ。
 学校でもそれは同じでだ。竜司はクラスでも地図とにらめっこをしていた。それを見てだ。真人がこう彼に言ってきた。
「何か熱心だね」
「うん、ちょっとね」
「それで何の地図なんだよ」
「動物園のなんだ」
 実際にそれを見せながら話す竜司だった。
「ちょっと今度行こうって思ってね」
「またローズちゃんとな」
「いや、今回はね」
「今回は?」
「紅さん達と一緒なんだ」
「ああ、あの人達と」
「皆で一緒に行くんだ」
 その遊園地にだというのだ。
「そうしているんだ」
「成程ねえ。それじゃあね」
「それじゃあ?」
「俺達も一緒に行っていい?」
 真人から提案するのだった。
「そうしていいかな」
「えっ、真人達も」
「そう、俺だけじゃなくてね」
 さらにだった。
 真央も出て来てだ。そして言うのだった。
「私もよ。それによ」
「あの、竜司君」
 真央は美咲を連れて来た。そうしてなのだった。
 美咲はだ。こう言うのだった。
「私も、その」
「あっ、江藤さんも」
「よかったらだけれど」
 俯きだ。少しもじもじとしながら話す美咲だった。
「動物園に。どうかな」
「いいんじゃないの?」
 竜司が返答に窮する前にだ。英理子が出て来てだ。
 そうしてだ。こう美咲達に言ってきたのである。
「行くのなら楽しい方がいいしね」
「いいんですね?私達も一緒で」
「ノープロブレム。楽しくやりましょう」
 にこりと笑って話す英理子だった。
「そうしましょうね」
「有り難うございます。それじゃあ」
 こうしてだった。美咲達も一緒に動物園に行くことになった。しかしだ。
 竜司はその話の後でだ。英理子にこう言うのだった。
「あの、まずいんじゃ」
「美咲ちゃん達のことね」
「江藤さん達は戦いのことを知りませんから」
「そしてローズちゃん達のこともよね」
「それでもいいんですか?」
 怪訝な顔で英理子に言うのである。
「戦いに巻き込まれたりしたら」
「大丈夫よ。もう動物園の地図は頭の中に入れたわ」
 右目をウィンクさせて話す英理子だった。
「敵が来そうな場所もわかったから」
「それでなんですか」
「そう、それでなの」
「じゃあ江藤さん達は敵が来る様な場所には連れて行かないで」
「そこは島さん達に任せるわ」
「そうですね。あの人達ならそういうことができますね」
「戦える人間はそうした場所に行くわ」
 動物園のそうした場所にだというのだ。
「わかったわね。それじゃあね」
「わかりました。それにしても」
「大胆だっていうのね、私が」
「はい、江藤さん達も一緒って」
「あえてそうしたのよ。だってね」
「だって?」
「竜司君へのサービスよ」
 今度は思わせぶりな笑みで言う竜司だった。
 

 

第十九話 動物園での戦いその三

「そういうことなのよ」
「どういうことなんでしょうか」
「やれやれね。相変わらずね」
 気付かない竜司に苦笑いになる英理子だった。彼女の今度の笑顔はそれだった。
「ローズちゃんも美咲ちゃんも大変ね」
「何でそこでローズが」
「わからなかったらいいわ」
 こう言ってだ。そうして。
「何時か気付くことだからね」
「それでなんですか」
「そうよ。じゃあとにかくね」
「はい、動物園ですね」
「動物園の地図は頭の中に入れて」
 また言う英理子だった。
「竜司君学校の勉強は悪くないわよね」
「自分ではそう思います」
「だったらいいわ。それじゃあね」
「はい、覚えます」
 そのことはわかる竜司だった。そうしてだ。
 彼等は勉強していく。そのうえでだった。
 地図のことを全て頭の中に入れた。戦いの前にだ。そのうえでだった。
 動物園に向かう。その入り口で紅が竜司に話した。
「多分。スサノオが来るのは」
「何処になるでしょうか」
「ライオンのところかな」
「そこですか」
「あと豹や狼のところだね」
「猛獣のところですか」
「うん、そこで来るよ」
 こう話すのだった。
「間違いなくね」
「そうでしょうね」
 英理子も言う。彼等は制服ではなく普段着だ。
「そこが入り組んでるから、この動物園って」
「ですね。だからこそ」
「迷路でこそね」
 また言う英理子だった。
「仕掛けるのなら」
「どうして迷路で仕掛けて来るの?」
「そこが戦いやすいからだよ」
 竜司がローズに話す。
「僕達が地形に惑わされるからね」
「それでなの」
「そう、だからそうした場所で来るんだ」
 そのだ、迷路でだというのだ。
「相手もね」
「スサノオも考えてるのね」
「少なくとも馬鹿ではない」
 名護はそのことを嫌になる程わかっていた。だからこその言葉だった。
「全てをわかっていて仕掛けてくる相手だ」
「それならそれで、ですね」
 ジョージが名護の話に応える。
「やり方がありますね」
「というかあれなんや」
 襟立も話す。
「スサノオは俺等に罠なり何か出してくるんや」
「そしてその罠をですね」
「私達が乗り越えるのを見るのね」
 マルガとビアンカが応えた。
「そういうことになりますね」
「要は私達次第ってことなのね」
「諦めたら終わりです」
 紅はかなり簡単にこう話した。
「最後の最後まで諦めずに」
「乗り越える」
「そういうことか」
「おそらく最後にはスサノオが出ます」
 他ならぬ彼がだとだ。紅はこのことも話した。
「スサノオには僕達が向かいます」
「まあ任せておいてくれよ」
 キバットも紅に応えて言うのだった。
「あいつの相手は俺達にな」
「けれど戦いはですね」
「うち等もなのね」
 竜司と美波が難しい顔になって話す。
 

 

第十九話 動物園での戦いその四

「スサノオと戦ってそうして」
「あいつの鼻をあかしてやらないとね」
「とどのつまりはその意気が大事なんでしょ」
 優子が指摘した。
「私達が諦めたらスサノオはもうどうでもいいって考えみたいだし」
「そうであろうな。あ奴はわらわ達が諦めたらそこで自分も去る」
 幸村もそう見抜いた。スサノオの考えをだ。
「しかし諦めずに向かって来れば応えるのじゃ」
「あの、じゃあ結果として終わらない戦いになりませんか?」
 瑞希は優子や幸村の話を聞いてだ。おっとりとした感じだが考える顔でこう述べた。
「結果として」
「そうなんだよ。僕の時代でも戦ってるし」
 正夫がその通りだとだ。瑞希に話す。
「君達の世界に行った天道さん達だってそうだったよね」
「はい、あの人達もずっと戦っていました」
「仮面ライダーはそういうものなんだ。人間としてスサノオと永遠に戦う存在なんだ」
「そして戦士もですね」
 利光の眼鏡の奥の目がここで光った。
「僕達もまた」
「君達は多分この一連の戦いが終わったらそれで終わるよ」
 紅は彼等は永遠に戦わないと話す。
「確かに長く辛い戦いになるけれどね」
「ううん、仮面ライダーって何か」
「そうだね。最早それは」
「ライダーになることそれ自体が運命みたいな」
「逃れられないものがあるね」
 明久と竜司が話す。二人でだ。
「最初の本郷猛さんや一文字隼人さんの頃からはじまって」
「今に至るまでそうだっていうと」
「俺は自ら志願して素晴らしき青空の会に入った」
 二人が運命の話をしたのを受けてだ。名護がまた話してきた。
「そしてイクサシステムの適合者になり渡君と戦い過去の世界にも行った」
「そのこと自体がそもそも」
「運命だったんですか」
「剣崎さんが仮面ライダーになったのも運命だった」
 名護は彼のことも話した。
「だがあの人はそれと共に運命にも勝っている」
「ジョーカーになる運命」
「それにでしたね」
「だから俺達も戦う」
 名護は強い決意と共にこう語った。
「この世界での戦いもだ」
「運命に勝つ為にも」
「その為にも」
「では行くか」
 次狼が仲間達に告げた。
「戦場にな」
「さて、戦うけれど楽しませてもらおうかな」
「動物園自体もな」
 ラモンと力はリラックスして話をした。
「可愛い動物達も一杯いるしね」
「色々と見させてもらうか」
「ああ、この動物園凄い種類と数の動物がいるから」
 英理子は動物園については明るい顔で話せた。
「コアラなりパンダなりね」
「あれっ、本当に色々いるんだ」
「それは面白いな」
「ラモン君の好きそうなアマゾンの生きものもいるわよ」
 英理子はラモンに笑顔でこんなことも話した。
「アナコンダなり鰐なりバクがね」
「僕別にアマゾンの生きものは好きじゃないけれど?」
「あれっ、そうなの?」
「半漁人は確かにアマゾンにいるよ」
 それはその通りだと話すラモンだった。しかしだった。
 彼自身はどうかとだ。こう話すのだった。
「それでもね。僕はアマゾンにはいなかったから」
「あっちの世界の日本になのね」
「うん、だから違うよ」
「そうだったの。アマゾンとは特になの」
「そういうこと。違うからね」
 こう話すラモンだった。一連の話が終わってからだ。
 そこに美咲達が来た。真人、真央の双子もだ。徳に美咲がだった。
 かなり奇麗で可愛らしい服を着ていてだ。俯き気味に竜司に言ってきたのである。
 

 

第十九話 動物園での戦いその五

 全体的に白く柔らかい服だ。スカートの丈が長く前で小さな白いバッグを持っている。その彼女が言う言葉はこういったものだった。
「あの、よかったら」
「ええと。動物園にね」
「一緒に行こう・・・・・・」
「いいよ」
 笑顔で応える竜司だった。美咲はその返事と笑顔に笑みになる。しかしだった。
 すぐにだ。彼はこう言ったのである。
「ローズ達も一緒だよ」
「はううう・・・・・・」
「全く。こいつは」
「どうしたものかしらね」
 真人も真央も今の竜司の言葉には苦い顔になる。それを見てだ。
 雄二はだ。こっそりと英理子に尋ねたのだった。
「あの、こいつもまさか」
「そう。相当な鈍さだからね」
「やっぱりそうですか。実はうちのところのもです」
「わかるわ。もう声でね」
「そうですね。声でもうそれは」
「あの手の声は鈍感みたいね」 
 真剣にこう考えている英理子だった。
「ローズちゃんもそうしたことにはかなり疎いけれどね」
「二人共かなりですね」
「全く。女の子は大変よ」
「確かに」
「これで本当にああいう手の世界に縁があるのか」
 慶彦も顎に自分の右手を当てて真剣な顔で述べる。
 そのうえでだ。宗朗を見つつこうも言うのだった。
「もっとも。宗朗もだけれどね」
「僕が一体?」
「いや、君は吉井君に似てると思ってね」
「似てますか、僕達は」
「そう。案外ね」
 思わせぶりな笑みで言う慶彦だった。
「君達は似ているね」
「そうなんですか。よくわからないですけれど」
「わからないか。やはりな」
「慶彦様、一体何が何なのか」
「いや、気にしないでいい」
 宗朗のその鈍感さを認識したうえでの言葉だった。
「それならだ」
「そうなのですか」
「そうだ。ただしだ」
「ただ?」
「少し周りに目を向けた方がいいな」
 慶彦は何気に千姫に幸村、それと十兵衛を見ていた。しかし宗朗はそのことにも気付かないのだった。
 そんな話をしつつだ。一行は動物園の中に入った。すると早速だ。
 ローズがだ。満面の笑顔でキリンを見て言うのだった。
「あっ、あの首って」
「長いよね」
「何であんなに長いの?」
 こうだ。竜司に尋ねるのである。
「キリンの首って」
「あれはね。高いところの葉を食べようとしてね」
「そうしてなの?」
「そう、首を伸ばしているうちにああなったんだよ」
「首を伸ばしてると長くなるの?」
「時間をかけてそうなったんだ」
 竜司は温かい声でだ。ダーウィンの進化論に基いて話した。
 そのうえでだ。彼もそのキリン、首も足も長いその生きものを見て話す。
 そうしてなのだった。ローズにそのキリンを見せながらこんなことも話した。
「けれどそれはキリンの一生だけじゃ終わらなくてね」
「どれだけ長いの?」
「子供も孫も曾孫の代も。何代もかけて」
「そうやって時間をかけてなの」
「首を伸ばしていったんだ」
 そのことを話すのだった。
「キリンはね。そうなんだよ」
「じゃあ象もなの?」
 ローズはキリンの隣のコーナー、堀と柵で囲まれたそこにいる象達も見た。やはり鼻が長くだ。優しい目をしてそこにいた。
 その象達を見てだ。また言うローズだった。
「お鼻を伸ばそうとしてそうしてなの」
「そうだよ。象もね」
「何か不思議」
 ローズはきょとんとした顔で首を捻って言った。
 

 

第十九話 動物園での戦いその六

「伸ばしてたら本当に伸びるなんて」
「何世代もかけてだけれどね」
「ローズもそうなる?」
 ふとだ。ローズは自分のことにも当てはめて考えてみたのだった。
「大きくなろうと思っていれば大きくなるの?」
「ええと、それはね」
「ローズも英理子みたいに大きくなれたら」
 英理子を見て。そうして次は。
「名護程じゃなくてもいいから」
「確かに大きいよな」
「そうよね」
 ローズの話を聞いてだ。真人と真央は二人でこう話した。
「名護さんって新しく来た人達の中では一番かな」
「大きいけれど」
「俺は大きいのか」
 背が高いと言われなかったことに少し意外な名護だった。そう言いながら象の横のシマウマのエリアを見ている。シマウマ達はのどかにそこにいる。
「そうなのか」
「確かに大きいわね、名護さんって」
「そうですよね」
 それは美波と瑞希も納得することだった。
「うちよりも二十センチは余裕で高いんじゃないかしら」
「私と比べて三十センチ位」
「私が一緒に立つとこんな感じですよ」
 美晴が名護の横に来るとだ。最早圧倒的だった。
「名護さん大き過ぎます。というよりかはライダーの人達は大抵」
「戦ってる人達は違う」
 ムッツリーニがぽつりと述べる。
「戦士だから」
「なら私も戦ったら大きくなるのですね」
「多分無理」
 ムッツリーニはこっそりと動物園の観客の中で可愛い娘達を隠し撮りしながら美晴に答える。
「清水美晴、御前とライダーの人達では性別や職業以上に骨格がそもそも違う」
「ううむ、なら小柄なままでいくしかありませんね」
「俺も諦めている。これは仕方ない」
「渡君でも一七四あるのよね」
 英理子は紅を見てすぐに彼の身長を言ってみせた。
「小さそうで案外大きいのよ」
「よく僕の身長わかりましたね」
「大体ね。見てわかったわ」
「そうなんですか」
「君は大きいわ」
 その紅を見ての言葉だった。
「確かにライダーは背の高い人ばかりで。それが羨ましくなるわね」
「ローズも渡みたいに大きかったら」
 その紅を見上げての言葉だ。
「竜司と一緒にいても首が疲れない」
「首なんだ」
「そう。疲れなかった」
 こんなことを話すのだった。その話の中でだ。
 美咲はだ。さりげなく竜司の傍に来た。そのうえで彼にこう言うのだった。
「竜司君、よかったらだけれど」
「あっ、どうしたの?」
「パンダのところ行かない?」
 そこに誘うのだった。
「それでパンダを観ない?」
「そうだね。いいね」
 美咲の提案にだ。竜司は笑顔で応える。ここまではよかった。
 しかしだ。彼はこう言ってしまうのだった。
「それじゃあ皆でね」
「はううう、皆でなの」
「あれっ、駄目なのかな」
「こ奴といい明久といい宗朗といいこういうおのこばかりじゃな」
 幸村は困る美咲の横に来て呆れた顔で言った。
「全く。どうしたものなのじゃ」
「正直焦ったりするけれど」
「焦ることはない。御主はしっかりと動けばよいのじゃ」
 幸村は気落ちしかける美咲にこう言って慰め励ます。そうしたのである。
 そしてだ。一行はそのままパンダのコーナーに行く。そこではだ。
 パンダが厳重に管理されたガラス張りの部屋の中で笹を食べている。そのパンダを見てだ。
 サフィがだ。跳びはねつつ言うのだった。
「凄い、あれがパンダなの」
「パンダははじめてですか?」
「そう、はじめてなの」
 その通りだとだ。サフィはジョージに答える。
 

 

第十九話 動物園での戦いその七

「実はそうなの」
「そうだったのですか」
「だからサフィパンダ見られてとても嬉しいの」
 跳びはねているのはそのせいだった。
「写真とかテレビでは観てたけれどこの目で見るのははじめて」
「そうだったのですか」
「パンダな。可愛いことは可愛いがな」
 雄二はそのパンダを見ながらこんなことを呟いた。
「これで案外怖いからな」
「熊ですからね」
 又兵衛もそのことは知っていた。
「戦うと強いです」
「そうだ。流石に向こうはパンダまで繰り出しては来ないだろうがな」
「熊は出して来る危険がありますね」
「あれっ、熊って案外少なかったんじゃ?」
 雄二と又兵衛の話にだ。静香がふとこう思った。
「結構昆虫系多かったみたいな」
「虫は多いな」
 島も静香のその言葉に応える。彼も今はパンダを見ている。
「それに血に餓えているとされる生きものか」
「俺か」
 すぐにだ。次狼が応えてきた。
「狼はそうだな」
「他にも色々といたが」
 しかし熊は思ったよりも少ないという島だった。
「少ないな」
「何でなんですかね」
「昆虫とか他の猛獣は多いのに」
「それでも熊はですね」
「少ないな」
 他の面々も言う。このことについてだ。
「スサノオにも好みがあるのか」
「そうみたいですね」
 正夫が名護に応える。
「どうやらですけれどね」
「蛇も好きだな」
 名護がこのことを指摘した。
「何かと多い」
「蛇というと」
 ビアンカがそれを聞いてふとだ。
 ローズ達を見てだ。そして言うのだった。
「竜は蛇とも言うわね」
「ああ、それでなのかしら」
 英理子もだ。親友の言葉に気付いてだ。そのうえでだ。
 そのローズ達を見てだ。言った。
「スサノオがこちらの世界に介入してきているのは」
「そうみたいね」
 ビアンカも応える。二人は美咲達に聞こえない様に小声で話す。
「そのローズちゃん達が果たして人間でいられるのかどうか」
「それを見る為に」
「けれどね」
 それについてはどうかとだ。英理子は言った。
「もう答えの出ていることよね」
「そうね。ローズちゃん達だけでなく」
「アイちゃんも含めて」
「私も!?」
 耳がいい。それですぐに振り向いてきたアイだった。
「人間だというの」
「そうじゃない。ちょっと尻尾とかあるだけで」
 最早今更といった感じの英理子の返答だった。
「人間じゃない。どう見ても」
「狼人ではなく」
「心が人間だから」
「今言われているそれだから」
「そう。アイちゃんは人間よ」
 また言う英理子だった。
「それはもう答えが出てるじゃない」
「ならスサノオはどうしてこの世界に」
「多分。また見たいのよ」
 これが英理子の予想だった。
「私達がこの戦いで人間でいられるのか」
「それを見る為に」
「そう、仕掛けてくるのよ」
 英理子はパンダを見ながら落ち着いた声で話す。
「心理的に来るでしょうね」
「僕達のですか」
 竜司は英理子のその言葉を聞いてだ。竜司は。
 

 

第十九話 動物園での戦いその八

 真剣に考える顔になりだ。こう言った。
「それなら僕達とローズを離間させてくるんでしょうか」
「どうかしらね。細かいことはわからないけれど」
「それでも何かをしてくるのは間違いないですね」
「それは確かみたいね。ゲームセンターでの戦いは挨拶で」
 本番はここ、動物園でだというのだ。
「そうなるわね」
「妙に演出に凝るんですね」 
 ジョージが少しぼやく声で述べる。
「スサノオっていうのは」
「退屈なんだよ、あいつは」
 そのジョージのところにキバットが来た。
 そうしてだ。そのうえでジョージに言ってきたのだった。
「だからそういうのに凝って退屈を紛らわせてるんだよ」
「全ては退屈凌ぎなんですね」
「そういうことだよ。だから凝るんだよ」
「よくわかりました」
 ジョージはキバットの話に頷いた。だがそのキバットを見てだ。
 真人がだ。いぶかしむながら言った。
「また随分と精巧なラジコンだな」
「そうね。誰が作ったのかしら」
 真央もだ。そのキバットを首を捻りながら見ている。
「紅さん?ひょっとして」
「そうじゃないの?普段はあの人のところにいるし」
「そうね。それじゃあやっぱり」
「ええと。それは何ていうか」
「んっ?俺がラジコンだってか」
 キバットは羽ばたきながら言う。
「まあそう思ってるんならそのままでいてくれよ」
「ラジコンですよね、実際に」
「だからそう思ってくれても構わないからな」
 キバットは美咲に対しても答えた。
「まあ渡とはいつも一緒だな」
「よくできたラジコンだなあ、本当に」
「音声まで出せて」
 双子はあくまでこう考えている。
「紅さんってラジコンが趣味だったんだ」
「バイオリンだけじゃなくて」
「うん、そうなんだ」
 紅は彼等の誤解を利用して真実を隠しにかかった。
「ちょっと特別なリモコンで動かしてるんだ」
「俺達もちょっとこういうの造ってみようかな」
「そこ俺達じゃないでしょ」
 真央はそのことはすぐに突っ込みを入れて打ち消した。
「私は作らないから」
「それはそうだけれどね」
「ラジコンは興味がないのよ」
 完全にだ。男の遊びと思っているからだ。
「だからね。そういうのはね」
「俺一人で、なんだ」
「そういうことよ。まあこんな凄いラジコン滅多に作れないでしょうけれど」
「無理かな、やっぱり」
「かなり難しいわよ」
 こう双子の片割れに言う英理子だった。そうしてだ。
 島や襟立に静香達がだ。美咲達にだ。
 こうだ。言ってきたのだった。
「少し何か食べるか」
「どや?お好み焼きでも」
「えっ、お昼ですか」
「それになんですか」
「そうだ。どうだろうか」
 島が美咲と真央に言う。
「渡君達が今から持って来る」
「じゃあ私も行きます」
 美咲はこう言った。しかしだ。
 彼女には恵がだ。こう言ってきた。
「あっ、ちょっとお願いできるかな」
「はい。何ですか?」
「私アザラシ見たいのよ」
 にこりと笑ってだ。理由をつけたのである。
 

 

第十九話 動物園での戦いその九

「だから貴方達三人で案内してくれるかしら」
「えっ、俺達もですか」
「案内人にですか」
「ええ。そうして欲しいけれど」
 パンダの場所からアザラシのコーナーまで遠い。それを知ってのことである。
「駄目かしら、それは」
「いえ、いいですけれど」
「それならですね」
「お願いするわね。それじゃあね」
 こうしてだ。事情を知らず教えることも憚れる面々は離された。その間に襟立と静香がだった。
「ほなお好み焼きやな」
「注文してくるからね」
「頼む」
 登が彼等に応える。こうしてだった。
 二人に島も食事の注文に行きだ。残った面々がだ。
 猛獣達のコーナーがある場所に向かった。そこはだ。
 狼やライオン、虎に熊といった猛獣達が檻の中にいる。その猛獣達を見てだ。
 正夫がだ。こうキバット四世に言った。
「ねえ。猛獣達を出してくるってさ」
「考えられるよね」
「スサノオって前にそんな作戦やったよね」
「そうだ。そうした作戦も過去にあった」
 実際にそうしていたとだ。名護が話す。
「ショッカーのアニマルパニック作戦だな」
「そうした作戦もありましたよね」
「ショッカーの時の作戦だな」
 名護もその猛獣達を見ながら話す。
「だから今もだ」
「ううんと。じゃあここは」
「まずは猛獣達を皆眠らせるか動けなくするかだな」
 キバットもここで言ってきた。
「さもないと猛獣達が暴れて檻から出て来て厄介だぜ」
「それもスサノオの狙いだね」
 察する顔でだ。正夫は話した。そうしてだ。
 四世に対してだ。こう言ったのである。
「それじゃあ何かをいいのある?」
「睡眠ガスとかですか?」
「そういうのがあったらいいけれど」
「それならあるわよ」
 ビアンカが答えてきた。そして実際にだ。
 懐からあるものを出してきた。それはガスマスクにだ。
 手榴弾丈の爆弾だった。それを一同に見せて話すのである。
「これがその睡眠ガス入りの爆弾よ」
「爆発させればそれで、ですね」
「そう。中のガスが出て周りは全部お休みよ」
 こう竜司にも話すのだった。
「幸いお客さんは私達しかいないし」
「それならですね」
「早速ね」
 こうしてだった。ビアンカはだ。
 全員にガスマスクを配って装着されたことを見届けてだ。そのうえでだった。
 睡眠ガス入りの爆弾を爆発させた。そうしてだ。
 猛獣達を眠らせた。どの猛獣もすやすやと眠りだした。
 それを見届けてからだ。ビアンカは言うのだった。
「これで暫くは起きないから」
「一時間位?」
「それ位よ。じゃあその間にね」
「話を終わらせましょう」
 英理子はビアンカに応えつつ周囲を見回す。今いるのは檻の中で眠らさせられている猛獣達と彼等だけだった。しかしだった。
 ここでだ。またあの声がしてきたのだった。
「見事だ。まずはそれを封じてきたか」
「やっぱりそのつもりだったんだ」
 紅がだ。その声を聞いて応えた。
「猛獣達も使って僕達を」
「その通り。君達をそれでも攻めるつもりだったが」
「それはこうして封じさせてもらったから」
「それならだ。オーソドックスに戦うとしよう」
 スサノオの声がだ。こう言ったのである。
 そしてだ。そのうえでだった。
 紅達の周りにだ。一斉にだ。ファンガイア達が出て来たのだ。それを見てだ。
 竜司がだ。ローズに対して言った。
「じゃあローズ」
「うん、竜司」
「僕の傍を離れないでね」
 真剣な顔でだ。ローズに対して言いだ。ローズもそれに応える。
 そうしてだ。ローズはこう言うのだった。
「ローズ、何があっても竜司の傍にいてそうして」
「そうして?」
「竜司を護る」
 そうするとだ。右手のその紋章を左手で押さえて言うのだった。
 

 

第十九話 動物園での戦いその十

「そうする」
「それなら僕もね」
「ローズを護ってくれるの?」
「そうするよ」
 竜司も応える。彼等は戦いに向けて覚悟を決めていた。
 英理子達もだ。それぞれの武器を構えてだった。戦いに赴こうとする。そしてライダー達も。
 名護はベルトを装着しイクサシステムを右手に持った。そうしてだ。
 その右手を真横に掲げてだ。こう言ったのである。
「変身!」
 それからだ。胸の前で左手の平にそのシステムを合わせる。それからだ。
 そのシステムをベルトにセットさせる。するとだ。
『ビーストオン』
 この機械音がしてだった。彼はだ。
 仮面ライダーイクサになった。そしてそこからだ。
 すぐにライジングシステムを使ってだ。そのうえでだ。
『ライジング』
 この機械音と共にだ。彼はライジングイクサにもなった。次はだ。
 正夫のところにだ。キバット四世が来たのだ。そうしてだ。その四世をベルトに装着する。
「変身!」
「かぶっと!」
 彼もここからだ。全身が変わりキバになる。続いてだ。
 登にもだ。蝙蝠が来てだ。
「いくか」
「ああ、行くぞ」
 こうしてだ。その暗黒のキバット二世が噛みだ。
「変身!」
 二世もそのベルトに装着される。登はここではダークキバになった。
 そしてだった。最後にだ。
 紅のところにだ。キバットとタツロットが来て言ってきた。
「じゃあここではあれだな」
「エンペラーフォームですね」
「うん、それでいこう」
 それにするとだ。紅は迫り来るファンガイアの大軍を見ながら言う。
「決戦だからね」
「わかった。それじゃあな」
「いきますよ」
 まずはキバットが左腕を噛み装着される。そうしてだ。
 続いてタツロットが来てだ。キバの真の姿、黄金のエンペラーフォームとなった。こうして四人のライダーが出て来たのだった。
 それを見てだ。次狼達もだった。
「ではいいな」
「うん、じゃあね」
「俺達もだ」
 次狼にラモンと力が応えてだった。
 そのうえでだ。彼等も戦う姿になった。三人は紅に言うのだった。
「俺達も一緒だ」
「今は渡とは一つにならないけれどね」
「共に戦わせてもらう」
「うん、頼むよ」
 エンペラーフォームとなり剣をその両手に持ちだ。紅は彼等に応えた。
「それじゃあこの戦いもまた」
「勝つ。いいな」
 次狼が応えてだ。そうしてだった。
 彼等は戦いに入る。それを見てだ。英理子も竜司達に言った。
「じゃあいいわね」
「僕達もですね」
「ファンガイア達に」
「渡君達だけにいい格好させるのもあれでしょ」
 あえてこう言ってみせる英理子だった。
「それじゃあね」
「わかりました。それじゃあ」
「私達も」
 ジョージとマルガがだった。応えてだ。
 そのうえで彼等もそれぞれ翼を出し武器を手にして戦いに向かう。こうして動物園での戦いがはじまった。
 ローズはその右手から炎を出す。それによりだ。
 ここでもファンガイア達を焼く。その横ではだ。
 竜司が戦う。そのステッキを手に。しかしだ。
 ビアンカがだ。バズーカを放ちながら彼に言うのだった。
「無理はしないでね」
「それはですか」
「生身じゃ限度があるから」
 戦うにはというのだ。
 

 

第十九話 動物園での戦いその十一

「だからいいわね」
「僕はできるのなら」
「死んだら色々と面倒よ」 
 ビアンカはこう竜司に言う。
「死ぬのは。わかるわよね」
「はい、生き返れてもそれでも」
 いい気分はしない。竜司もそのことはわかっていた。
「ですから」
「そういうことよ。死なないことよ」
 嫌な思いをしない為にだというのだ。
「わかったわね」
「はい、それじゃあ」
 ビアンカに応えながらだ。竜司もだ。
 その手にしている剣、スラッシュローズも持ちながら戦う。それを見てだ。
 英理子はだ。満足した顔で言うのだった。
「竜司君も戦えるようになったわね」
「あの剣は何なの?」
「ジョージ君に貰ったものよ」
 微笑んでビアンカに話すのである。無論彼女もそのステッキを振るいながら。
「それをね。竜司君にね」
「貸してあげてそうして」
「正直。私達普通の身体の人間は戦闘力は落ちるから」
 それは否定できなかった。それを踏まえてだったのだ。
「だから。ジョージ君にもお願いしてね」
「成程ね。いい判断ね」
「自分でもそう思うわ。けれどね」
 ここでだ。英理子は周りを見た。ファンガイア達の数はかなり多い。
 四人のライダー達はそれぞれかなり強い。それでもだ。
 数で押し切られかねないとも思われた。しかしだ。
 ここでだ。彼が現れたのである。
「面白そうだな」
「来られたのですか」
「気が向いた」
 甲斐がその声に顔を向ける。彼女は拳銃を出している。
 その彼女が振り向いた方にだ。彼がいたのである。
 漆黒の服を身に纏ったオニキスがいた。彼は悠然と戦場に来る。そのうえでの言葉だった。
「だから来たのだ」
「相変わらず素直じゃないわね」
 その彼の言葉を聞いてだ。アイが言った。
「それはどうしようもないのね」
「言った筈だ。俺は誰とも群れはしない」
 やはりこう返すオニキスだった。
 そしてだ。こう言ったのである。
「だがそれでもだ。興味を持った」
「それでだね」
「君は来たというのだな」
「その通りだ。あんた達に対してもだ」
 オニキスはキバとイクサにも応える。彼等が主力となり戦い続けている。
 その彼等に応えながらだ。そうしてだ。
 戦場に着くと翼を出した。その漆黒の翼を。
 そのうえでだ。舞い上がりファンガイアに向かう。そうして黒い闇を放ちながら彼に問うた。
「スサノオだったな」
「そうだ。君がか」
「オニキス。ブラックドラゴンだ」
「この世界の四人目の竜か」
「俺の存在は知っていたな」
 空を舞い戦いながらだ。オニキスはスサノオにまた問うた。
「そのうえで仕掛けてきたな」
「君だけではない」
「ローズ達もか」
「そうだ。君達四人の竜」
 彼等全員をだというのだ。
「その君達全てを見たくて仕掛けたのだ」
「ふん、売られたのならだ」
「買うか」
「そうしたものはそうさせてもらう」
 即ちだ。買うというのだ。巨大な漆黒の翼が大きく舞う。
「例え相手が神であろうともだ」
「では見せてもらおう」
 スサノオもだ。そのオニキスに対して言う。
「君自身をだ」
「俺の戦いではなくか」
「そうだ、君をだ」
 戦いだけではないというのだ。それはだ。
 そうしてだった。彼等は戦いだった。
 そのうえでだ。戦っていく。これで四人の竜が全て揃って戦うことになった。


第十九話   完


                        2011・12・1
 

 

第二十話 信頼関係その一

                          第二十話  信頼関係
 美咲はだ。動物園の屋外の席でだ。お好み焼きを食べながらだ。
 こうだ。襟立に言うのだった。
「あの、襟立さんって」
「俺がどないしたんや?」
「はい、確か関西出身ではなく」
「ああ、東京生まれや」
 こうだ。美咲に笑顔で話すのだった。
「俺は元々そっちの生まれで育ちや」
「ならどうしてお好み焼きで関西弁なんですか?」
「恥ずかしいからな、それでや」
 関西弁だというのだ。そしてお好み焼きについては。
「最初から好きやったけれど今はこれが仕事や」
「お好み焼き屋さんですか」
「そや。実はそうなんや」
「大変ですね。学生さんでしかもお好み焼き屋さんって」
 美咲は彼が別の世界から来ていることを知らない。
「何かと」
「まあな。それはな」
 襟立もその話に乗りだ。真実を隠して応える。
「大変やけどちゃんとやってるで」
「それでそのお好み焼きですけれど」
「これってやっぱり」
 今度は真人と真央が襟立に問うた。
「関西風ですよね」
「この感じは」
「そや。これは関西風や」
 そのだ。小麦粉を練って具と完全に一つにしたそれこそがだというのだ。
「広島焼きはまた違うんや」
「そうそう。大阪と広島で違うのよね」
 静香もここで言う。彼等は一緒のテーブルに座ってそれぞれの箸でお好み焼きを食べているのだ。その関西風のお好み焼きをだ。
 そうしてだ。静香はだ。
 それを食べつつだ。こんなことも言った。
「ただ。それでも味の濃さはね」
「それは変わらないよね」
「お好み焼きって」
 双子も静香のその言葉に頷く。
「おソースかけてマヨネーズかけて」
「それで思いきりこってりとさせて食べるから」
「ソースとマヨネーズなくしてお好み焼きやない」
 襟立はお好み焼き屋として言い切った。
「そして青海苔と鰹節もや」
「そういったものが全部あってこそですか」
「お好み焼きなんですね」
「お好み焼きは小麦粉を焼いてできあがりやない」
 さらに言う襟立だった。
「そこに具があってソースとかがあるんや」
「逆に一つでもないとそれで」
「駄目になるんですね」
「そや。お好み焼きは深いんや」
 そして言う言葉は。
「宇宙や。お好み焼きは宇宙や」
「宇宙って。大きく出たわね」
 恵は襟立のその主張には唖然となった。そうしてだ。
 そのうえでだ。こう彼に問うたのである。
「そこまで言えるの。お好み焼きに」
「言える。断言できるで」
 そのお好み焼きを食べながら言う襟立だった。
「それこそ何でも入れられるしな」
「お好み焼きのいいところよね」
 静香はイカ玉を食べている。そうしながらの言葉だ。
「こうしてイカも入られれば」
「海老も豚もだよね」
「その他にも色々と」
「だからお好み焼きだしね」
 静香は真人と真央にも応える。
「確かに小麦粉焼いてはいできました、って料理じゃないわよね」
「簡単そうに見えて深いんや」
 また豪語する襟立だった。
「そやから今はじゃんじゃん食うで」
「わかりました。それじゃあ竜司君達を待ちながら」
「そのうえで、ですね」
「食べていましょう」
 美咲に双子もだ。応えてだった。
 そのうえで竜司達を待っていた。その頃動物園の猛獣コーナーの場所では。
 死闘が続いていた。まずは四人のライダー達がだ。
 それぞれの剣や拳を振るって戦う。その中でだ。
 キバになっている正夫がだ。こう腰のキバット四世に言った。
「ねえ、今どんな感じかな」
「はい、オニキスさんの参戦で、ですね」
「ましになってきてるよね」
「ファンガイアの数は減ってきています」
 そうなっているというのだ。話をしながらだ。
 キバは右の拳をストレートで出し前のファンガイアを退ける。そうしてだ。
 返す刀で左足でソバットを出し別のファンガイアを倒す。彼の周りにはまだ多くのファンガイア達がいて向かってきていた。しかしだった。
 

 

第二十話 信頼関係その二

 その数を見ればだ。どうかというと。
「確かにね」
「減ってきてますよね」
「うん、間違いないね」
「じゃあこのまま戦っていけば」
「いいけど。ただ」
 キバの口調がだ。警戒するものになった。
 そしてだ。こう四世に言った。
「絶対に出て来るね、あいつは」
「スサノオですね」
「出て来ないとは思えないよね、キバットも」
「はい、これまでのことを考えますと」
 彼等の世界での戦い、そしてそれぞれの世界での戦いだ。
 その多くの戦いの中でだ。どうかというのだ。
「最後にはですね」
「そう。けれどその相手は僕じゃないね」
 キバは自分ではそう見ていた。そしてそれは何故かというのも話すのだった。
「だってね。その相手はね」
「渡さんですね」
「父しかいないね」
 他ならぬだ。彼の父である紅だというのだ。
「それ以外考えられないよね」
「はい、本当に」
「だから。来るよ」
 キバは戦いながら言っていく。
「この戦いでも。父さんとスサノオの戦いがね」
「じゃあ我々はその戦いに向けて」
「出来る限りファンガイアを倒そうか」
「ですね。それじゃあ」
 こうしてだった。彼等も彼等でだ。
 戦いそうして敵を減らしていく。これが彼等が今やることだった。 
 登が変身しているダークキバにだ。名護が変身しているライジングイクサもだった。彼等もそれぞれ激しい戦いを繰り広げていた。
 その中でだ。彼等は話す。
「猛獣達を眠らせて正解だったな」
「そうだな。これで猛獣達までいれば」
 イクサがダークキバに応える。二人はそれぞれ剣に拳で戦っている。
「厄介どころではなかった」
「負けないにしても翻弄されていた」
 数が多いだけだ。そうなっていたというのだ。
 しかし猛獣達を眠らせている為だった。今の彼等は。
「順調にいけている」
「後はだ」
 名護が言う。その剣でファンガイアを上から下に斬りつつ。
「渡君だが」
「あいつなら問題はない」
 登がだ。安心した声で話す。
「ここでの戦いも勝つ」
「そうだな。渡君ならな」
「俺達はファンガイア達を倒し」
 そうしてだというのだ。
「あいつの戦いを見守ることだ」
「そうだな。しかしだ」
「しかしか」
「スサノオはやはりあの姿で出て来るか」
 名護はこの世界でのスサノオの姿について言及した。
「そう思うか」
「おそらくはな」
 察しをつけてだ。登も話す。
「スサノオはそれぞれの世界に合わせてきているからな」
「そうなるな、やはり」
「ファンガイアの王、かつての俺か」
「だが君はファンガイアではあるが」
「最早そんなものはどうでもいい」
 ファンガイアの王、その座はだというのだ。
「最早ファンガイアもだ。人間だとわかったのだから」
「そういうことだ。それではだ」
 ファンガイア達が迫る。二人はそれを受けてだ。
 背中合わせになる。しかしそれは追い詰められてではなかった。
 名護がだ。登に言う。
「前に出なさい」
「わかった。そしてだな」
「一気に決めるとしよう」
 見れば二人共力を溜めていた。そうしてだった。
 その力を開放してだ。二人共そこから一気に前に出てだ。
 縦横に荒れ狂いそのファンガイア達を倒していく。二人のライダーも戦っていた。
 その戦いが続く中でだ。四人の竜達はだ。
 次第に周りにファンガイア達が減っていっていくのを見てだった。オニキスが言った。
 

 

第二十話 信頼関係その三

 翼は出したままだがだ。それでもだった。
 舞い降りだ。そうして甲斐に言ったのである。
「中々手応えがあったな」
「満足されましたか?」
「一応はな。そうか、これがあちらの世界の敵か」
「はい、ですが」
「あの二人か」
「はい、彼等です」
 甲斐は竜司達を見た。見ればだ。
 彼等は互いに庇い合い戦っている。そうしていたのだ。
 ローズは炎を出し竜司を襲わんとするファンガイアを退ける。そして竜司もだ。
 ローズに迫るファンガイア達を剣で斬る。そうしていたのだ。
 その戦いの中でだ。竜司はローズに問うた。
「怪我はない?」
「うん、大丈夫」
 死闘の中で汗だくになっている。だがそれでもだ。
 ローズはまだ戦えていた。その彼女を見てだ。
 竜司は一旦ほっと胸を撫で下ろした。そうしてこう言うのだった。
「よかったよ。それじゃあね」
「この戦いを」
「うん、戦い抜こう。そして」
「そして?」
「またこの動物園に来よう」
 あえて微笑みを作ってだ。言う竜司だった。
「そうしよう。またね」
「うん、ローズまたこの遊園地に来る」
 ローズもだ。戦いつつ笑顔になり竜司に応える。
「そして竜司と一緒に遊ぶ」
「そうしよう。今度はゆっくりとね」
 二人はあくまで離れることがなかった。そうしてだ。
 その彼等を見てだ。オニキスは言うのだった。
「俺も。御前が必要だが」
「有り難うございます」
「彼にはローズが必要だな」
 自分達の話をしてからだった。
「そしてローズにもだ」
「そうですね。彼がいてこそですね」
「あの二人の絆は強い」
 そしてだ。彼等だけでなくだった。
 マルガとジョージもだ。今は。
 二人で共に戦いだ。互いを気遣い合っていた。
「ジョージさん、気をつけて下さいね」
「はい、マルガさんも」
 互いの吹雪と剣を出し合いだった。それでだ。
 戦いだ。気遣い合っていたのだ。
 その中でだ。互いを見てだった。
「僕はあの時マルガさんと出会えてよかったです」
「そう言って頂けるのですね」
「はい、竜という外見が問題ではなく」
 彼もだ。その結論に至ったのだ。
「心ですね」
「私も。今までは」
 マルガもまた言うのだった。
「竜であることに捉われていました」
「ではマルガさんも」
「はい、人と竜は違うものだと思っていました」
 彼女にしてもそうだったというのだ。
「ですがそれは」
「違いましたね」
「心が人ならば」
 それだけで、だった。
「それは人なのですから」
「竜の姿になることができても」
「狼の力を備えていても」
 アイのことであるのは言うまでもない。
「心が人間ならばですね」
「はい、その考えに至りました」
 そしてだった。ジョージは。
 己の剣でまたファンガイアを倒しつつ述べた。
「だからです。僕はマルガさんを」
「私をです」
「御護りします」
 これが彼の今の考えであり言葉だった。
「例え何があろうとも」
「ジョージさん・・・・・・」
 マルガはジョージのその心を受けて温もりを感じた。そうしてだった。
 二人も絆を感じながら戦っていた。その彼等を見てだ。
 

 

第二十話 信頼関係その四

 サフィはだ。少し寂しそうに呟いた。
「サフィも。そんな人がいれば」
「あれっ、オニキスは?」
「オニキスは甲斐と一緒だから」
 だからだというのだった。サフィは優子に寂しい声で返した。
「だからね。仕方ないわよ」
「まあサフィも何時かそうした相手が出て来るわ」
「そうじゃな。何時かはじゃな」
 優子に続いて秀吉も加わってきた。
「御主もできるぞ」
「だから安心しなさい」
「何かあんた達に言われると本当に頷けるわね」
 それは自分でも不思議で仕方ないサフィだった。そうした話をしつつだ。
 彼等は戦いだ。遂にだった。
 全てのファンガイアを倒した。しかしだった。
「これで終わりじゃないわよね」
「そうだよ。これまでのパターンだとね」
「最後にあの人が出てきます」
 十兵衛と瑞希が英理子に答える。
「ここでスサノオが出て来るの」
「そしてライダーの人達と戦うんです」
「ここではあの人です」
 利光はさりげなく明久と竜司の傍に来ていた。
「紅渡さんで間違いありません」
「おう、その通りだよ」
 まさにそうだとだ。キバットも彼等に答える。
 そしてだった。予想通りにだった。
 スサノオの声がしてきて言ってきたのだった。
「はっはっは、待たせたな諸君」
「考えてみればかなりな」
「わかりやすい相手だな」
 雄二とダルタニャンがスサノオの声を聞いて述べた。
「では。本当に渡さんとか」
「闘うというのね」
「いや、今回は趣向を変えてみたのだよ」
「こういう遊び心はあるんだな」
「退屈を紛らわせる為に」
 雄二とダルタニャンはまた言った。
「本当にある意味においてわかりやすい相手だ」
「徐々にわかってきたわ」
「全くだにゃ」
 何故かここでにゃんぱいあも出て来た。急にだ。
「僕を助けてくれたことも何となくわかってきたにゃ」
「そうですね。兄上と御主人様を見たかったからですね」
 茶々丸も出て来ていた。
「そういうことですか」
「ちょっと。あんた待ちなさいよ」
「はい、いいですか?」
 美波と瑞希はその茶々丸の声を聞いてだ。すぐにだ。
 眉を顰めさせてだ。こう彼に尋ねたのである。
「その声何処かで聞いたと思うけれど」
「私もです」
「確か。ひだまりとか恋姫とか?天下御免でもだったわね」
「私もひだまりで」
「あっ、僕とそちらの方々は一応別人ですから」
 そこは断る茶々丸だった。しっかりとだ。
「特に九条さんって方とは別人ですから」
「それは本当に別人なのかな」
 宗朗が茶々丸の今の言葉に首を捻る。
「僕も人のことは言えないけれど違う様な」
「それはあえて言わないで下さい」
 茶々丸はかなり強引に誤魔化してきた。
「美波さんとは他にも真剣に、の世界でも知り合いではないかと言われてますけれど」
「あれっ、僕も君のこと知ってる様な」
 今言ったのは竜司だった。明久ではなかった。
「ええと。翼はないとか?」
「何でこんなに色々な世界が複雑に絡み合ってるのかしらね」
 愛子が彼等のやり取りを見て首を捻らせる。
「これもスサノオの影響かしら」
「ははは、君達のそれぞれの人格もいい具合に影響し合っているな」
「やっぱり貴方が関係してたの?」
「それは私の知るところではない」
 その辺りははっきりと話すスサノオだった。
 そしてだ。その話をしてからだった。彼はあらためて話すのだった。
「何はともあれだ。私の今回の趣向はだ」
「何だ?渡との一騎打ちだけじゃないのか?」
「そうだ。これが今回の私の姿だ」
 キバットに応えてだった。そのうえでだ。
 

 

第二十話 信頼関係その五

 蝙蝠をベースに獅子、蝶、それに貝を合わせたファンガイア、その禍々しい姿のファンガイアの帝王たるスサノオが出て来た。しかしだ。
 それは一体ではなくだ。二体だった。その二体のスサノオを見てだ。
 英理子がだ。眉を顰めさせて言うのだった。
「渡君だけでなく。竜司君達とも戦うつもりね」
「そうだ。では呼ばせてもらおう」
 こう言ってなのだった。
「如月竜司君、ローズ君」
「僕達とも戦う」
「そうするの」
「そうだ。今回の戦いはそうさせてもらおう」
 こう竜司とローズの二人に告げたのである。
「君達二人には一体の私が相手をする」
「そして僕とは」
「もう一体の私が相手をする」
 こうだ。紅にも告げるのだった。
「それでどうだろうか」
「へっ、相変わらず退屈しのびばかり考えてやがるな」
 そのスサノオの話を聞いてだ。キバットが減らず口で返す。
「ある意味見事だぜ」
「君もそれでいいな」
「そう来れば倒すだけだからな」
 これがキバットの返事だった。
「渡と一緒にな」
「はい、僕も賛成です」
 タツロットも言ってきた。
「ではここは」
「僕も同じだよ」
 そして紅もだった。仮面の奥から答えるのだった。
「スサノオがどう来ようとも絶対に」
「はい、倒しましょう」
「キバってな!」
 彼等の考えは一つだった。そしてだ、
 竜司もだ。ローズに顔を向けて尋ねるのだった。
「いいね、じゃあ」
「うん」
 ローズも竜司に応えて頷く。
「ローズ、言ったから」
「そうだね。それじゃあ」
「竜司と一緒」
 ローズの返答はここでも変わらない。
「戦う。ローズも」
「じゃあ僕はローズを」
 竜司も応える。そうしてだった。
 二人で共にだ。スサノオに対峙してだった。
 まずはだ。キバに対して言うであった。
「渡さん、それじゃあ」
「ローズ達も戦うから」
「うん。一緒に勝とう」
 キバもだ。ローズに対して言葉を返す。そうしてだった。
 スサノオを見つつ。彼も二人に言うのである。
「いいね、絶対に」
「そうですね。他の世界でも戦いがあるんですね」
「この世界だけで終わりじゃない」
「そう。何時まで続くかわからないけれど」
「人間として。僕達は」
「スサノオに勝つ」
 三人の心は同じだった。それを見てだ。
 キバットとタツロットがだ。会心の声で話をした。
「まだ最後の戦いははじまってもいないけれどな」
「それでもですよね」
「ああ、竜司もローズもいい奴じゃねえか」
「そのことはしっかりと見せてもらいましたね」
 二人の心を見て満足していたのだ。そのうえでだ。
 彼等も戦いに向かう。スサノオと対してだ。そしてスサノオもだった。
 二体同時にだ。こうキバ達に言うのである。
「いいことだ。では見せてもらおう」
「君達のその戦いを」
「いいな、それではだ」
「行くぞ」
 まずはだ。二体同時にだ。それぞれの右手を前に出してだ。 
 そこから闇の瘴気を出した。それを見てだ。
 キバがだ。最初にだった。
 右にかわす。しかしそれを見てだ。スサノオは言うのだった。
 

 

第二十話 信頼関係その六

「ふむ。今のはかわしたか」
「まさか今のが本気とか言わないよな」
「ほんの挨拶だ」
 こうキバットに返す。見ればだ。
 ローズはその炎で瘴気を相殺していた。彼等もスサノオの攻撃を凌いでいた。そのローズがスサノオを見据えながら言うのだった。
「これ位なら何とかなる」
「ローズ、見切ったんだね」
「うん、動きがわかった」
 それでだ。炎を相殺できたというのだ。
「それは何とかなった。けれど」
「それでもだね」
「今度は何が来るかわからない」
 こうだ。己の前にいるスサノオを見ながら言うのだった。
「その時はこうしてかわせるかどうか」
「安心して、僕もいるから」
 こう言ってだ。竜司は両手に武器を構える。そうしてだった。
 再びスサノオと対峙する。今度はだ。
 竜司からだ。ローズに提案した。
「いいかな」
「ローズ達で攻めるの?」
「このまま攻撃を凌ぐだけじゃ何にもならないからね」
 だからだというのだ。
「攻めよう。どうかな」
「ああ、いいなそれ」
 キバットが竜司に対して賛成の言葉を返す。
「それじゃあ攻撃に転じるか」
「はい、それじゃあ」
「ローズ達も」
 二人が応えた。そしてだった。キバもスサノオの動きを注視しながらだ。そのうえでキバットに対して答える。その剣を構えながら。
「僕もそうするべきだと思うよ」
「攻めるべきですね」
「うん、攻撃こそがね」
「最大の防御ですよね」
 タツロットも賛成だった。今戦っている全員の意見が一つになりだった。
 三人で動きを合わせる。キバットとタツロットもキバに協力する。
 そしてだった。三人は一気にだ。前に出る。まずはローズが攻撃を出した。
「まずはローズが」
「よし、次はな!」
「僕達が!」
 キバットとタツロットが応えてだ。そのうえでだ。
 キバ、竜司が剣を構えて突進する。その剣でそれぞれのスサノオを斬ろうとする。しかしだった。
 二体のスサノオはその攻撃を受ける。そうして言うのである。
「見事だ」
「しかしだ」
「くっ、今の攻撃は」
「見切られていた!?」
「そうだ、残念だがな」
「動きははっきりと見えていたのだよ」
 二体のスサノオが話す。キバ達に。
「筋はいいがこれでは私を倒すことはできない」
「そのことは言っておこう」
「それならこちらも」
「まだ!」
 キバと竜司はそのまま接近戦に入る。その剣を繰り出していく。 
 こうして彼等とスサノオの死闘がはじまる。それを見てだ。
 ローズもだ。翼を羽ばたかせ上に飛びあがりだ。そこから竜司に話してきた。
「竜司、ローズは上から」
「攻めるんだね」
「うん、そうする」
 咄嗟にだ。そこから二人を援護しようと考えてだった。
 実際に右手から炎を繰り出す。だがその炎は。
 帯だった。一本の炎がスサノオを襲う。それを見てだ。
 竜司がだ。咄嗟にローズに叫んだ。
「駄目だ、それじゃあ!」
「駄目って!?」
「帯じゃ連続して出せない。だからそれよりも」
「それよりも?」
「火の玉だ、それで連続して出すんだ!」
 こうローズにアドバイスするのだった。
「その方がいい。今は」
「連続して出して」
「うん、スサノオを撃つんだ」
「わかった、じゃあ」
 ローズも竜司のそのアドバイスを受けてだった。
 

 

第二十話 信頼関係その七

 すぐにだ。炎を竜司に言われた通り火の玉にして出す。それも連続でだ。
 その攻撃を上から受けてだ。スサノオもだ。
 攻撃を凌ぎかわさなければならなくなった。それを見てだ。
 キバがだ。竜司に言った。
「今だ」
「はい、隙ができましたね」
「ここで攻めよう」
 こう提案したのである。
「一気にね」
「そうですね。そうしてですね」
「うん、決着を着けよう」
「ふむ、こう来るとはな」
「見事だな」
 ローズの上からの攻撃を受け止めながらだ。スサノオは言う。
「しかしこれではだ」
「まだやり方があると言っておこう」
「やり方!?」
「それは一体」
「こうすればいいのだ」
「こうだ」
 こう言ってだ。彼等の上にだ。
 瘴気のバリアーを作った。それによってだ。ローズの炎を防ぎにかかったのだ。
 実際にローズの炎は次々に打ち消される。それを見てだ。
 竜司はだ。すぐにローズに言った。
「ローズ、上からはもういい!」
「それじゃあどうするの?」
「ここは。どうすれば」
「上から駄目ならな」
 キバットが考える彼に助言をしてきた。
「他の方角からだろ」
「上以外ですか」
「上からが駄目なら何処にする?」
「横です」
 すぐにだ。こう答える彼だった。
「横からなら」
「ほう、横からか」
「はい、それなら」
「無理だぜ、それは」
 キバットが言うとだった。早速だった。
 スサノオは自分達の横にも瘴気による壁を出す。それを見せてだ。
 竜司にだ。こう言ってきたのである。
「さて、後ろもだが」
「どちらにしても防ぐことができるとは言っておこう」
「くっ、そう来るなんて」
「こんなの普通に考えつくだろ」
 キバットは歯噛みする竜司に突っ込みを入れた。
「バリアーを作れさえすればな」
「そうですね。言われてみれば」
「で、上も横も後ろも駄目だ」
 キバットは竜司に言う。
「お嬢ちゃんの炎の援護はなしかい?」
「大丈夫、ローズバリアー破れるから」
 竜司の横に舞い降りだ。ローズはこう話してきた。
「この力を思いきり使って」
「いや、待って」
「待ってって?」
「ローズ、今の場所から火の玉を撃ってくれるかな」
 己の前にいるスサノオを見据えてだ。そのうえでローズに言うのだった。
「そうしてくれるかな」
「えっ、けれどそれは」
 竜司の後ろから撃つことになる。彼のいる方角にだ。
 それがどういったことかは言うまでもなかった。それでローズも躊躇を見せたのだ。
 だがそのローズにだ。竜司は尚も言う。
「大丈夫、ローズは僕を撃たないよ」
「信じてくれるの?ローズを」
「当たり前じゃないか。ローズだから」
 他ならぬだ。彼女だからだというのだ。
「だから。いいね」
「本当にいいの?」
 流石にだ。ローズはまだ躊躇を見せている。しかしその彼女にだ。
 紅もだ。こう言うのだった。
「竜司君も僕も大丈夫だから」
「渡も」
「そう、そのままそこから撃つんだ」
 紅もローズに対して撃つ様に話す。
 

 

第二十話 信頼関係その八

「いいね。それじゃあ」
「おう、ローズなら大丈夫だな」
「そうですよ」
 キバットとタツロットもローズに話す。
「だからな。どんどんな」
「そこから撃って下さい」
「わかった」
 彼等の言葉も受けてだ。ローズもだ。
 確かな顔で頷きだ。そのうえでだ。
 竜司達にだ。こう告げたのだった。
「じゃあローズスサノオに炎を撃つ」
「そうしてだね」
「うん、竜司達には絶対に当てない」
 このことをだ。確かに約束したのである。
「安心して。何があっても」
「よし、じゃあ竜司君」
「はい」
 紅と竜司がだ。互いに顔を見合わせてだった。
 そのうえで頷き合い。そうしてだった。
 構えを取り力を溜め、一気に突進に入る。その後ろからだ。
 ローズが次々に火の玉を放つ。それが紅達の後ろからスサノオを狙う。
 それを見てだ。ジョージが驚きの声をあげた。
「危険だ!若し一歩間違えれば!」
「いえ、大丈夫よ」
 しかしだ。その彼に英理子が言う。
「ローズちゃん達は絶対に竜司君には当てないわ」
「だからですか」
「そう。安心していいわ。それにね」
「それに?」
「竜司君を見て」 
 彼もだというのだ。スサノオに向かって突き進む彼をだ。
 見れば一直線に進んでいる。その彼を見る様にだ。ジョージに話したのである。
「本当に一直線に進んでいるわよね」
「はい、確かに」
「若し。不安があったらあそこまで一直線に進めないわ」
 後ろから火の玉が次々に来る。それならばだというのだ。
「それならね」
「確かに。若し火の玉が当たると思うと」
「そう。動きはぶれてしまうわ」
「では竜司君もローズちゃんを」
「信じてるのよ」
 だからこそああしてだ。一直線に動いているというのだ。
「そうしているのよ」
「竜司君もローズちゃんも御互いに」
「信じているからああして動きを合わせられるのよ」
 ローズは竜司を撃たない。竜司は下手に動かない、その二つの動きには信頼があるというのだ。その話を聞いてだ。
 ジョージもだ。確かな顔になり頷き言った。
「わかりました。それなら」
「ええ。見ているといいわ、二人をね」
「そして渡さんも」
 紅も同じだった。ローズを信じているが故にそのまま突き進む。そうしてだった。
 彼等はスサノオに接近する。二体のスサノオはその瘴気で二人を襲う。だがそれぞれの剣で払ってだ。一気にだ。
 火の玉達がスサノオに炸裂する中でだ。剣をスサノオの腹に突き刺した。二人同時にだ。それを受けてだ。
 スサノオは動きを完全に止めた。そして言うのだった。
「見事だ」
「君達の勝利だ」
 こう言ってだ。一体に戻る。二体のスサノオの間の距離が縮まり一体になったのだ。
 そのうえでだ。彼は紅達に告げる。
「今の動きはまさにだ。信頼し合っているからこそだ」
「それを見せてもらった」
「そう言うんですね」
「信頼、それもまた人間の持っているものだな」
 スサノオはキバットとタツロットに応えて述べた。
「それを見せてもらったのだよ」
「この世界ではそれを見たかったというのか」
「その通りだ」
 スサノオは紅、即ちキバにも答える。
「そしてそれを確かに見せてもらった」
「成程な、じゃあ満足したよな」
 キバットはそのスサノオの話を聞いてこう言った。そのうえでまた彼に言ったのである。
「この世界での戦いは俺達の勝ちでいいな」
「いいだろう。では私はだ」
 消える、そうするというのだ。
 

 

第二十話 信頼関係その九

「また会おう。別の世界でな」
 こう言い残しだ。スサノオの身体は完全にだ。霧の様に消えてしまった。後に残ったものは何もなかった。これがこの世界での戦いの終わりだった。
 全てが終わってからだ。竜司は。
 ローズのところに来てだ。微笑んでこう言った。
「有り難う、ローズのお陰で勝てたよ」
「ううん、ローズ何もしてない」
 しかしローズはだ。竜司と同じ微笑みで首を横に振りだ。竜司に話したのである。
「全部。竜司のお陰だから」
「そんなことないよ。どっちがどっちを助けたとかね」
「そういうのはないの?」
「そう、ないと思う」
 こう話すのだった。
「特に」
「そうなんだ」
「うん、だから」
 さらに話す竜司だった。
「僕達はこの戦いに勝てたんだ」
「渡と一緒に」
「何か話してる途中にわかったよ」
 そのだ。どちらが助けたということではないということがだというのだ。
「それがね」
「そうだったの」
「僕達が御互いに信じていたから」
「ローズ達はスサノオに勝てた」
「そう思うよ、今は」
 竜司が微笑んで言うとだ。紅もキバの姿から本来の姿に戻り。
 そのうえでだ。こう彼等に話すのだった。
「そうだね。竜司君とローズちゃんはね」
「あれだよ。御互いに信じ合えてたからな」
「ああしたことができたんですよ」
 紅に続いてキバットとタツロットも二人に話す。
「本当によくやったよ」
「いや、貴方達の勝利ですよ」
 そうだと話す彼等だった。彼等に言われてだ。
 二人はあらためて笑顔になった。そうしてだった。
 竜司はだ。ローズに言った。
「じゃあ戦いも終わったり」
「動物園もっと回るの?」
「うん、そうしよう」
 微笑んでだ。竜司はローズに勧める。
「何処に行く?今度は」
「ええと、今度は」
 ローズが言おうとした。その生きたい場所をだ。しかしだ。
 ここでだ。英理子が二人にこう言ってきた。
「ああ、それじゃあな」
「はい、英理子さん」
「何処に行くの?」
「美咲ちゃん達と合流しましょう」
 微笑みだ。彼女の名前を出したのである。
「そうしないとね。一緒に来てるんだし」
「あっ、そうでした」
 竜司がだ。言われてはっとした顔になった。
 そうしてだ。その顔で英理子に言うのだった。
「じゃあ今から恵さん達と連絡を取って」
「そうしましょう。戦いは終わったし」
 何につけてもだ。そのことに誰もが解放感を覚えていた。
 そしてだ。二人は言うのだった。
「じゃあね」
「はい、今から」
 こうしてだ。彼等は恵と連絡を取り美咲達と合流した。美咲は少し俯き寂しそうな顔でだ。そのうえで竜司に対して言うのだった。
「遅かったから。心配だったの」
「御免、ちょっとね」
「皆も一緒だからいいけれど」
 とにかくだ。そのことには安心しているというのだ。これが竜司とローズだけなら違っていたが今回竜司はそうした意味では運がよかった。
「もうお昼食べたの」
「そうなんだ。もう」
「けれど。まだ食べられるから」
 小さな声でだ。竜司に話す美咲だった。
「何か食べる?」
「ええと。じゃあおうどんでも」
「うどんや。それやったらや」
 うどんにもだ。話を出す襟立だった。
 

 

第二十話 信頼関係その十

「ここのうどんも美味そうやしええんちゃうか?」
「あれっ、襟立さんおうどんも好きなの?」
「関西はうどんや」
 本当は東京生まれだがこう静香に応えるのだった。
「薄口醤油のやつや」
「ここって普通のお醤油なんじゃないの?」
「いや、匂いは関西のだしやった」
「匂いでわかる位詳しいのね」
「そや。じゃあ食いに行こうか」
「それにする?皆も」
 静香は紅達にも顔を向けて尋ねる。
「じゃあそれで」
「うん、それじゃあね」
 紅は微笑んで静香の言葉に応えた。
「できれば豚骨ラーメンもあればいいけれど」
「俺はうどんでいい」
 紅と登はそれぞれ言う。
「じゃあとにかくね」
「昼飯にしよう」
 こうしてだ。彼等は友人達と合流してだ。昼食の後で動物園をさらに楽しむのだった。そして動物園を出てそのうえでだった。
 竜司はローズ達と家に戻る。その時にだ。
 不意にだ。彼の前に黒い、顔を全て隠した無気味な覆面の者達が出て来た、その彼等を見てだ。英理子が思わずこう言った。
「KKKの色違い?」
「似ているが違います」
 美波が英理子に話す。
「文月学園の。まあ何ていうか」
「嫉妬団みたいなものです」
 雄二がややうんざりとした顔で英理子に説明する。一言で。
「もてる人間の前に制裁を加えます」
「何か凄い厄介な子達みたいね」
「えっ、まさか僕!?」
 明久はその彼等を見てぎくりとした顔になる。そして言うのだった。
「僕今回は何もしてないけれど」
「吉井明久、如月竜司」
 この二人だった。
「この者達、もてることにより」
「制裁を加えるべし」
「許してはならない」
「もてる者には死を」
「正義の鉄槌を」
 勝手にだ。彼等を取り囲んで裁判をはじめていた。
「被告人、如月竜司」
「あの、どうして僕なの?」
 身に覚えのないことなので。竜司も問い返す。
「もてるとかって」
「二人の美少女にクラスメイト、それに女子大生の御姉さん」
「合わせて四人」
「これをもてると言わずして何と言うか」
「もてる、これは即ち格差社会」
「格差社会よ滅んでしまえ」
 勝手にだ。こうした訳のわからない話になっていた。
「よって声も境遇も似ている吉井明久と共に」
「今より我々が正義の鉄槌を下す」
「もてる罪は明白」
「よって市中引き回しのうえ朝鮮民主主義人民共和国に追放するものとする」
「万景峰号に放り込む」
「あの、それってつまり」
「生きて帰れないってことなんじゃ」
 何時の間にか縛られている明久と竜司が彼等に言う。
「幾ら何でもそれは」
「酷いんじゃないかな」
「じゃあ朝鮮総連への殴り込み」
 幾らか軽減したつもりだった。
「これを判決とする」
「我々とて鬼ではない」
「安らかに眠れ」
「ってこの世界にも北朝鮮も総連もあるの!?」
「えっ、吉井君の世界にも!?」
 今わかった衝撃の事実だ。迷惑な国家はどの世界にもある。
 

 

第二十話 信頼関係その十一

「それで殴り込みって」
「絶対に死ぬじゃない!」
「判決は与えられた」
「では安心して旅立ってくれ」
 こうしてだ。強引にだった。彼等はそのならず者国家の出先機関の本部の前に放り出された。それはそれで迷惑な騒動だった。
 だが虎口から何とか逃れられてだ。竜司はだ。
 明久と共に紅の家に集まっていた。そこで話すのだった。
「とにかくですね。まだ戦いは続くんですね」
「そうなんです。これからも」
 その彼にだ。光夏海が話す。
「まだまだ続きます」
「そうですか。じゃあ次の世界はどういった世界なんでしょうか」
「それはまだ」
 そう問われるとだ。光も困った顔になる。
「わからないです」
「そうなんですか」
「ただ。間違いなく戦いはありますから」
 光がこう言うとだ。サフィが言った。
「じゃあ他の世界でも戦うだけね」
「月詰めればそうした考えになります」
「そういうことよね。それじゃあね」
「一緒に戦って下さるんですね」
「当たり前よ」
 当然だとだ。サフィは光に話す。
「絶対にそうするからね」
「有り難うございます、それじゃあ」
「さて。じゃあ次の戦いまではね」
 英理子はコーヒー、白いカップの中のそれを飲みながら話す。
「とりあえず休みましょう」
「はい、それじゃあもう一杯どうですか?」
 紅がその英理子に言う。
「コーヒー淹れますけれど」
「お願いできるかしら」
「わかりました」
 こうしたやり取りを経てだ。英理子はもう一杯飲んだ。そのうえでだ。
 お茶菓子のクッキーもつまみながらだ。こう言うのだった。
「そういえば今気付いたけれど」
「何でしょうか」
「女の子のライダーって殆どいないわね」
 英理子が今言うのはこのことだった。
「本当に少ないわよね」
「ええと。私に」
「私と?」
「私ね」
 仮面ライダーラルク、三輪夏美と仮面ライダーファム、霧島美穂だった。
 その二人もだ。ここで言うのだった。
「今いるのは三人ね」
「それだけね」
「そうよね。三人しかいないわよね」
「かつてはタックルという方がいました」
 光は彼女の名前を出した。
「仮面ライダーストロンガーと共に戦っていた」
「その人もいたのね」
「残念ですがもう」
 光はタックルの名前を出すとだ。その顔が自然に曇った。
 そのうえでだ。英理子達に話すのだった。
「その人は」
「いなくなったのね」
「別の世界のタックルもいたのですが」
 光はそのタックルの話もした。
「ですがその人も」
「そうなのね」
「それで今いる女の人のライダーは私達だけです」
「一応適合すればファイズのベルトとかも仕えるけれどね」
 三輪はこのことも話した。
「けれど基本は私達三人だけよ」
「女のライダーはね」
 霧島も言う。確かに見れば女ライダーは今は三人だけだった。
 だがその三人のライダーにだ。門矢が言ってきた。
「若しかすれば次の戦いはだ」
「私達三人だけかも知れないっていうんですか?」
「その可能性もあるだろう」
 こうだ。門矢はいつもの口調で光に話すのだった。
「その時は。いいな」
「はい、何とか戦って勝ちます」
「そうするのだな。俺はその間写真でも撮って時間を潰す」
「最近やっと普通の写真になってきましたね」
「そうだ。だからもっと撮っていく」
 こう光に返してだ。門矢は実際にカメラを出してだ。
 そのうえでだ。席を立ちながら一同に話した。
「戦いはこれからも続く。息抜きも楽しんでおかないとな」
「そうですね。じゃあ今は皆で」
「時間を楽しく過ごしましょう」
 竜司にローズが応えてだ。そうしてだった。
 彼等は一つの戦いが終わり束の間の休息に入った。そしてそのうえでだ。あらたな戦いに向かうのだった。戦士達の世界を超えた戦いに。


第二十話   完


                       2011・12・7
 

 

第二十一話 仮面乙女その一

                            第二十一話  仮面乙女
 光はだ。街を三輪、霧島と共に歩いていた。その三人を見てだ。
 三人と共にいる面々がだ。こんな話をしていた。
「ライダーの人達って皆大きいけれど」
「女の人もなのね」
 美波とサフィである。
「ううん、何かモデルみたいっていうか」
「大き過ぎるわよ」
「私なんかあれよ」
 優子もだ。三人を羨ましそうに見て言う。
「外も中も小さいんだから」
「それうちもだから」
 美波もだった。それは。
「というかライダーの人達が大き過ぎるのよ」
「そうでしょうか」
 しかしだ。ここで又兵衛はこんなことを言った。
「私は特にそうは」
「そうだな。私もそうは思わない」
 ダルタニャンも又兵衛と同じ意見だった。
「外についても中についてもな」
「はい、そう思います」
「それは例外中の例外です」
 見れば瑞希も小さい方だった。
「私達、ライダーの人達から見れば小柄なのが普通ですから」
「中も外もね」
 アイも困った様な顔で光達を見ながら話す。
「一五五ない人も多いし。けれどあっちは普通に一六五超えてるから」
「男のライダーの人であれよね」
 愛子も何故か身長のことでは余裕を見せていない。
「一七五がナチュラルだからね」
「特にあのゾルダや剣は何じゃ」
 幸村は彼等に抗議する。
「でかいにも程があるぞ」
「あの人達は特にそうですね」
 半蔵も彼等の大きさは認める。
「本当に大きな人が多いのがライダーの世界ですね」
「あの、あまり大きくてもですね」
 光がその彼女達に困った顔で話す。
「あちこちぶつけたりして大変ですよ」
「ぶつけるだけのものがある人だからこそ言えるんですよ」
 茶々丸が何気にこんな突込みを入れてきた。
「背だけでなく胸もですよ」
「私は胸はあまり」
「私もね。それはね」
 光に霧島はそちらだった。
「ですからそれについては」
「言うことはないわ」
「ですがそっちの人は違いますよ」
 茶々丸は最後の一人、三輪を見ていた。そのうえでの言葉だった。
「胸もありますよ」
「私の話に持って来るなんてね」
 三輪も応える。今彼女達はそんな話をしながら街を歩いていた。そのうえでだ。
 門を探していた。別の世界への門をだ。
 その中でだ。ふと霧島の携帯が鳴った。そしてだ。
 霧島がその携帯に出るとだ。幸村が言ってきたのだった。
「見つけたぞ」
「門ね」
「うむ、ミルクディッパーの前じゃ」
 場所はそこだというのだ。
「そこに来るのじゃ」
「ええ、わかったわ」
 霧島は鋭い目になり応えてだ。そのうえでだ。
 彼女はだ。こう自分以外の二人のライダー達に告げたのだった。
「いいわね」
「はい、わかりました」
「じゃあ行きましょう」
「まずは私達が行くわ」
 霧島は他の世界の仲間達に顔を向けて告げた。
「偵察でね」
「まずはその世界を下見してからですね」
「そうよ。それからよ」
 こう瑞希にも話す霧島だった。
「それからまた呼ばせてもらうから」
「少し危険じゃないですか?それは」
 今こう問うたのは美波だった。
「向こうの世界はどうなのかわからなくてそれはかえって」
「安心して。私達はそう簡単にはやられないわ」
 絶対の自信に基く今の霧島の返事だった。
「だから。少しだけ待って」
「はい、私達はそう簡単にはやられませんから」
「安心していいわ」
 光に三輪も仲間達に言う。こうしてだった。
 彼女達はミルクディッパーの前に向かった。するとそこにだった。
 赤く大きな和風の門があった。何処か羅生門を思わせる。
 

 

第二十一話 仮面乙女その二

 その門を見ながらだ。幸村が駆けつけてきた仲間達に話した。
「そこのミルクディッパーでお茶を飲んで出て来たらじゃ」
「こんなのがあったのよ」
 十兵衛もそうだと話す。
「あからさまにおかしいじゃろ、これは」
「別世界の門よね」
「はい、あからさま過ぎます」
 光もこう応える。
「これは」
「さて、どういった世界がじゃ」
 幸村はその門を腕を組みつつ見てだ。
 そうしてだ。眉を顰めさせて言うのだった。
「この門の向こうの世界がのう」
「それを今から調べてくるから」
「少し待っていてくれるかしら」
 霧島と三輪があらためて仲間達に顔を向けて話す。
「じゃあ今からね」
「行って来るわ」
「わかったわ」
 最初に応えたのは千姫だった。
「じゃあお願いするわね」
「姫様、それは」
 半蔵がだ。怪訝な顔でその千姫に言ってきた。
「霧島さん達にとって負担になるのでは」
「そのことね」
「はい、それはどうかと思うのですが」
「いえ、ここはね」
 それでもだとだ。千姫は強い顔になり半蔵のその問いに答える。
「美穂達の考えを入れるわ」
「そうされるのですか」
「そうじゃないと納得しないから」
 彼女達の性格をわかってのことだった。
「だからね。今はね」
「そうですか。では」
「ええ、半蔵もそれでいいかしら」
「姫様がそこまでお考えなら」
 いいとだ。半蔵は千姫に対して頷いた。そのうえでだ。
 半蔵もだ。霧島達に顔を向けてだ。こう答えたのである。
「私の考えは同じです」
「有り難う。それじゃあね」
 千姫は半蔵のその心遣いに笑顔になった。そうしてだ。
 二人は霧島達を見送ることにした。他の戦士達も同じだ。ただ兼続はだ。少し面白くなさそうにだ。顔を顰めさせて言うのであった。
「仕方ありませんわね。今回だけですよ」
「わかってるわ。まずは偵察に行ってね」
「帰って来ますので」
 霧島に光が応えてだ。そのうえでだ。
 三人は赤いその門を開きだ。白い光の中に入る。その三人を見送ってだ。
 翔子がだ。こう言った。
「健闘を祈ります」
「翔子も心配してるのね」
「期待しているの」
 こう愛子に答える翔子だった。表情はないがだ。それでもだ。
 言葉はだ。切実なものだった。その切実な言葉で言うのだった。
「あの人達が戻って来るのよ」
「そうなのね。それじゃあ」
「朗報を待つから」
 こう話してだ。翔子は。
 本当に微かだが微笑んだ。その微笑みを見てだ。
 その微笑みを見てだ。優子は唖然となり言った。
「翔子が笑うなんて。変わったわね」
「そういう優子もじゃないの?」
「えっ、私もって」
「そう。何か猫被らなくなって素直になったわよ」
「別にそんなつもりはないけれど」
「人は気付かないうちに変わるらしいわよ」
 右目をウィンクさせてだ。笑顔で優子に話す翔子だった。
「誰だってね」
「だから私もなの」
「僕素直な翔子好きだよ」
 そしてだ。優子にこんなことも言ったのだった。
「前のちょっと素直でない翔子も好きだけれどね」
「ちょっと、あんたそういう趣味があったの?」
「僕も結構事情が複雑だから」
「またそっちの世界の話題なのね」
「あはは、ワンパターンかな」
「段々そうなってきたわよ」
 口を尖らせ腕を組んで抗議する翔子だった。
「特に今回私が知ってる人とまた会いそうだし」
「事務所の関係?」
「先輩にね」
 自分から言う翔子だった。
 

 

第二十一話 仮面乙女その三

「そう言うと愛子もなのかしら」
「そうかもね。まあ優子と同じよね」
「そうなるかもね」
 こんな話をしながらだ。戦士達は三人を見送った。門はもう閉じられていた。
 門が閉じたところでだ。ミルクディッパーの中からだ。野上愛理が出て来てだ。こうおっとりとした口調でだ。少しだけ困った様に言うのだった。
「こんなところに門ができて。困ったわ」
「えっ、それだけ!?」
「それだけなんですか!?」
 今の愛理の言葉にはだ。戦士達は誰もが唖然となった。それで一斉に突っ込みを入れたのである。
「あの、それどこじゃないんじゃ」
「物凄いことなんですけれど」
「門が急に出て来たんですから」
「誰の悪戯かしら」
 しかしだ。愛理は変わらない。
 おっとりとした口調のままでだ。こう言うだけだった。
「お巡りさんにお話しようかしら。北條さんにでも」
「っていうか北條さんここにも?」
「ここにもいらしてるんですか」
「真面目な人よね」
 愛理は実際に北條を知っていた。そのうえでの言葉だった。
「警察官として立派な方よね」
「まあ。多少嫌味らしいですけれど」
「それに髪の毛がちょっと」
「きてますけれど」
 戦士達は何気に言ってはならないことを話していく。
 そしてだ。あることに気付いたのだった。そのことアイが言った。
「前工事現場にそっくりな人がいたわね」
「ああ、そういえばそうよね」
「何か現場監督にこづかれてた」
「あの眼鏡の人」
「いつも詩集読んでる」
 他の面々もわかる。それが誰かだ。
 そんな話をしながら門を見る。誰がどう見ても普通ではない。しかしだ。
 愛理だけが少しだけ困った顔でいる。そうした状況だった。
 元の世界がそうした状況でもだ。門の向こうに入ったライダー達はだ。その世界を見て回りはじめていた。その世界はというと。
「昔ね」
「はい、戦国時代でしょうか」
 光が木と藁でできた家を見ながら霧島に話す。
「この世界は」
「そうね。見たところ服もそうだし」
 霧島は彼女の周りにいる人々を見て話す。見ればだ。
 そのまま大河ロマンの撮影の様な世界だった。その世界を見て言うのだった。
「この世界は戦国時代の日本かしら」
「そうみたいですね」
「ただ。おかしいわね」
 しかしここでだ。三輪が怪訝な顔になりだ。 
 道行く人々を見ながらだ。霧島と光に話した。今三人は町にいてだ。左右には店が立ち並び様々なものが売られている。そこに客達も出入りしている。
 しかしその店の人間も客も通行人もだ。全てだ。
 女だった。老若いるが全て女だ。それを見てだ。
 霧島と光もだ。不思議に思い言った。
「女しかいないって」
「何かおかしいですね」
「ここはそういう世界なのかしら」
「こんな世界もあるんですか」
 こう話して首を捻るのだった。そうしてだ。
 あらためてだ。霧島が二人に話す。
「とりあえず。服だけれど」
「そうですね。私達全員あちらの世界の格好ですし」
「これがちょっとね」
 見れば三人共ズボンだ。これではかなり目立つ。
 しかしだ。霧島は平然として話すのだった。
「別にいいわ。南蛮から来たってことでね」
「また随分思い切りますね」
「それで終わらせるの」
「服を買おうにもこの時代のお金はないし」
 霧島は三輪にこのことも話す。
「それなら仕方ないわ。とりあえずはこのままでいましょう」
「わかったわ。それじゃあ」
「今はですね」
 三輪と光もとりあえずは頷いた。こうしてだ。 
 三人はその格好のまま町を歩き回った。町の者達は誰もが驚きの目で彼女達を見る。そうしてだ。口々にこんなことを囁き合うのだった。
 

 

第二十一話 仮面乙女その四

「南蛮の人かしら」
「そうじゃないの?あの格好」
「神の色も少し違うし」
「雰囲気も」
 時代が違うからそう思われることだった。
「じゃあ殿様に言われて来たのかしら」
「ノブナガ様に」
「ノブナガ?」
 その名前を聞いてだ。光がふと声をあげた。
 そしてだ。二人に言うのだった。
「ノブナガっていいますと」
「織田信長?」
「あの信長かしら」
 霧島に三輪もだ。その名前に反応を見せた。
 そうしてだ。そのうえで光と話す。その中でふとだ。
 城の向こうに見える城を見上げた。それは山に幾重にも城壁や石垣を囲んでだ。その上には天守閣がある。その天守閣は青い瓦に赤や金があるだ。そうしたものだった。
 その何処か南蛮の趣がある一風変わった天守閣を見てだ。ここでも光が言った。
「あれは安土城ですね」
「安土城、あの織田信長の築いた」
「あのお城よね」
「はい、歴史の本とかに出て来るのそのままです」
 まさにその安土城だというのだ。
「それです」
「ではやっぱりここは」
「戦国時代、いえ安土時代の日本なのかしら」
「間違いないと思います」
 また二人に話す光だった。
「ここは。ただ」
「女の人しかいないっていうのはね」
「やっぱりおかしいわね」
「おい、何だよあんた達」
 ここでだ。足下からだった。声がしてきた。
 三人がそちらに顔を向けるとだ。兜を被った白犬がいた。
 その白犬がだ。三人に対して言って来ていたのだ。
「まさかと思うが別の世界から来たのかよ」
「喋る犬ね」
 その犬を見てもだ。霧島も他の二人も特に驚かない。これまでそれどころではない存在と数多く出会ってきたからだ。それはもう今更のことだった。
 その犬の三日月がある兜を見てだ。三輪が言った。
「あんた少なくともまともな犬じゃないわね」
「そんなの見ればわかるだろ」
「ええ、よくね」
 まさにそうだとだ。三輪は犬に返す。
「で、あんたが喋ることも気になるけれど」
「この世界のことだよな」
「この世界はどういう世界なの?」
 怪訝な顔でだ。実輪は犬に問うた。
「ちょっと聞かせてくれるかしら。知ってることについて」
「ああ、いいぜ」
 それでいいとだ。犬も応えてだ。そのうえでだ。
 三人にだ。こう言ったのである。
「来な。いいな」
「ええ、それじゃあ」
「お願いします」
 三人は犬に案内されてそのうえでだ。町の中の廃屋に入りだ。その中にそれぞれ腰掛けだ。
 そうしてだ。犬の話を聞いただ。
 話を聞いてだ。まずは光が言った。廃屋の中の椅子に腰掛けている。他の二人も適当に見付けた椅子や座布団の上に座っている。そうしているのだ。
 そのうえでだ。まずは犬について言うのだった。
「貴方は未来から来た男の方で」
「ああ、伊達氏の子孫なんだよ」
「それでお名前はですね」
「シロっていうんだよ」
 この名前も名乗るのだった。
「まあこっちの世界じゃこの名前だからな」
「そうなんですか」
「それでな。こっちの世界はどういう仕組みかわからないけれどな」
「はい。女の人しかいませんね」
「どうして子供ができるかは。まあコウノトリでな」
 この辺りの仕組みもかなり妙なことである。
「連れて来るんだよ」
「本当にそうした世界があるなんてね」
 そのことで既にだ。三輪は眉を顰めさせるに充分だった。
 

 

第二十一話 仮面乙女その五

「流石に思いも寄らなかったわ」
「そうだろうな。それで男、俺だけれどな」
「この世界に来たら犬になるのね」
「そうなんだよ。訳のわからない世界だぜ」
「全くだよ。ただな」
「はい、赤い具足ですね」
「あれの騒動があって。安土の城も一回派手に潰れてな」
 シロはこのことも話したのである。
「で、今に至るんだよ。俺は戻ろうとしたらちょっと悶着があってこっちの世界にまた来ちまってな」
「そのヒデヨシさんとですね」
「あいつには悪いことしたな。ただな」
「ただ、ですね」
「どうだよ。訳がわからないだろ」
 こう言ったのである。三人の女ライダー達に。
「俺もわからねえよ。滅茶苦茶にも程があるだろ」
「はっきり言ってそうね」
 その通りだとだ。霧島も答える。
「こんな世界もあるのね。本気で驚いてるわ」
「けれどこの世界に来たってことは」
「そうよ。この世界でもね」
 光と三輪が言うとだった。シロもだ。
 三人に対してだ。彼女達の世界のことを話したのである。
「スサノオな。その神様があんた達の相手なんだな」
「そうよ。とにかく色々なやり方で仕掛けてくる相手よ」
「そうみたいだな。そのスサノオと戦っているあんた達がこっちの世界に来た」
 シロは何時の間にか人間の様に胡坐をかいて座ってだ。腕を組んでいる。
 そうしてだ。こう三人に話すのだった。
「じゃあこっちの世界にもスサノオが来ているよな」
「絶対にね。ただね」
「ただ、ね」
「それでも具体的にスサノオが何をしてくるかというと」
 スサノオがこの世界で何をしてくるか。そのことについてはだ。
 霧島も三輪も光もだ。どうしてもわからなかった。
 それでだ。こう言ったのである。
「それはわからないわ」
「それでなんだけれど」
「こっちの世界の人達とお話がしたいんですけれど」
「そうだな。まずはそれからだな」
 シロも話がわかってだ。三人に応えた。
 そうしてだ。そのうえで話するのだった。
「それならあいつからだな」
「そのヒデヨシさんですね」
「ああ、あいつと話をするか」
 胡坐をかき腕を組んだままだ。シロは三人に問うた。
「あいつもあんた達と似た様な事情だからな」
「それとだけれど」
 霧島がここで言う。
「そのヒデヨシって娘の先生であんたのご先祖に当たる」
「伊達マサムネか」
「その人とも会いたいけれど」
 彼女にもだというのである。
「そうしてくれるかしら」
「二人とか」
「まずはね」
 鋭い、まるで探偵の様な顔でだ。霧島はシロに話す。
「それから。その織田ノブナガや武田シンゲンとね」
「わかった。それじゃあな」
「お願いするわ」
 こうしてだ。彼等はだ。まずはその羽柴ヒデヨシ、伊達マサムネと会うことになった。こうしてだ。
 金髪を左右で結んだ黄色い丈の短いスカートに上着、オレンジのリボンが所々にある小柄な女の子、紫の目のその少女とだ。
 水色の長い髪に三日月をあしらった青い兜と陣羽織に鎧、水色の短いスカートのだ。優しげな顔立ちで鳶色の目の大人の女性がだ。茶屋で三人と会った。
 まずはだ。少女から名乗った。
「羽柴ヒデヨシです」
「伊達マサムネです」
 大人の女も名乗った。そうしてだ。
 二人はだ。ライダー達にこうそれぞれ話すのだった。
「未来から来ました」
「とはいっても貴女達とはまた別の世界の様ですが」
「そうね。どうやらね」
「住んでいた世界は違うみたいですね」
 霧島と光がそれぞれヒデヨシとマサムネに応える。
 

 

第二十一話 仮面乙女その六

「けれどこの世界に来たのは」
「やっぱり」
「私達一回元の世界に戻ったんですよ」
 ヒデヨシは少し苦笑いになって彼女達の事情を話す。
「シロを神社でまた見つけて」
「そうそう、そうなったんだよ」
 まさにそうだとだ。シロも話す。
「あそこでこいつが来てなあ」
「そして私はです」
 今度はマサムネが話す。
「この世界にまた戻って来たシロから聞いてそうして」
「俺はタイムマシンで行き来できるんだよ」
 過去と未来をだとだ。シロは三人のライダー達に話す。
「それでな。この二人をまた連れて来たんだよ」
「今私達二つの世界を掛け持ちになっちゃってまして」
 ヒデヨシは困った笑顔で話す。
「結構大変なんですよ」
「元の世界では生徒と教師でね」
 マサムネはヒデヨシに比べて落ち着いた笑みであった。
「こちらでは武将なのよ」
「織田ノブナガ様にお仕えしています」
 ヒデヨシはこのことも話す。
「ですからノブナガ様に御会いしたいんなら」
「私達に話してくれたら有り難いわ」
「織田ノブナガっていうとあれよね」
 三輪は二人の話を聞いてだ。考える顔で尋ねた。
「天下人よね」
「はい、まあ各地に大名の人達はいますけれど」
「実質的にそうよ」
「他の大名の方々とも今は協力関係にありますし」
「天下はノブナガさんが治めているわね」
「それならお願いするわ」
 まずは三輪が言った。
「織田ノブナガさんに会わせてくれるかしら」
「それじゃあ私もね」
「お願いします」
 続いてだ。霧島と光が応えた。こうしてだ。
 三人はその織田ノブナガに会う為に安土城に入った。その天守閣に案内される。
 そしてだ。その中の主の部屋に入りだ。ショートに見えるが後ろの部分を延ばした髪に紫と黒の露出の多い、とりわけ上はブラだけの、肩がけはある服と具足のやや吊り目の少女に会った。少女は三人を見てからだ。あらためてヒデヨシとマサムネに尋ねた。
「この者達がか」
「そうなの。別の世界から来たね」
「仮面ライダーという戦士達よ」
「ふむ。ヒデヨシ達と同じ立場か」
 その少女明智ミツヒデはヒデヨシの話を聞いてこう考えた。
 そのうえでだ。三人を見て言うのだった。
「大体事情はわかったつもりだが」
「まだ信じられないですか」
「済まないがその通りだ」
 やや怪訝な顔になりだ。ミツヒデは光に答えた。
「とはいっても仮面ライダーという戦士にはだ」
「何かありますか?」
「何故か親近感が湧く」
 こう言ったミツヒデだった。
「プリキュアか?それだな」
「プリキュア?ドレミじゃないのね」
 霧島は少し不機嫌な顔になりミツヒデに問うた。
「あんたはそれではないのね」
「悪いが私はそちらだ」
 ミツヒデは少し済まない顔になり霧島に答える。
「だが貴殿はそちらか」
「古いというのかしら」
「いや、そんなことを言うつもりはない」
 ミツヒデはそれは否定した。
「だが。それでもだ」
「それでもなのね」
「どうもそちらの世界には親近感も湧くな」
「それを言えば私は余計によ」
 マサムネは苦笑いになって話に加わってきた。
「ライダーといえば左翔太郎ね」
「あれっ、あんたあいつのこと知ってるの」
「ええ、少しなら」
 マサムネは素直な笑みになって三輪に話す。
「何となくだけれどね」
「あれっ、先生もアケちゃんもその人達のことわかるの」
「実は俺もだけれどな」
 今度はシロも言ってきた。
 

 

第二十一話 仮面乙女その七

「あれだろ。マジレンジャーだろ」
「マジレンジャーって?」
「俺はそっちで神様だったこともあるんだよ」
「何なのよ、それって」
「まあ御前もそのうちわかるようになるかもな」
 こうヒデヨシに言うシロだった。
「そういうことがな」
「ううん、何が何なのか」
「安心しろ。縁があればわかるようになる」
「そうよ。ちゃんとね」
 ミツヒデとマサムネのヒデヨシへの言葉は温かいものだった。
「私もそうだったからな」
「ゲキレンジャーは面白かったわよ」
「まさかこの世界でそうした人と会うとは思わなかったけれどね」
 霧島も楽しげに微笑みながら言う。
「それでだけれど」
「ノブナガ様か」
「ええ。その人はまだかしら」
「もう少し待ってくれ」
 ミツヒデはこう霧島達に話す。
「間も無く来られるからな」
「わかったわ。それじゃあ」
「今は」
 こんな話をしてだった。そのうえでだ。
 その場に座ってだ。ノブナガを待つ。そして暫く経ってだ。
 部屋にだ。黒いビキニの西洋風の具足に気の強い金色の目、赤い燃える様な長い髪を縛ってまとめた気の強い顔立ちの女がやって来た。
 背が高く胸が大きい。その美女が西洋の玉座を思わせる黒い西洋風の座に座ってからだ。一同に対して言うのだった。
「猿、マサムネ、その者達がじゃな」
「はい、そうです」
「この娘達がよ」
 二人もだ。こうその美女、織田ノブナガに話す。
「別の世界から来た仮面ライダーです」
「そう言っているわ」
「ふむ。仮面ライダーか」
 そう聞いてだ。ノブナガは。
 考える顔になり三人を見てだ。こう言ったのである。
「嘘は言ってはおらんな」
「おわかりになられるんですか」
「目を見れば大体わかる」
 そうだとだ。ノブナガは己の座から光に答える。
「それでな。それでじゃが」
「はい、この世界に私達が来たということは」
「スサノオのことも聞いておる」
 既にだ。ノブナガは彼のことも聞いていた。
「妙な話じゃが猿やマサムネが我等の世界に来ておることを考えればじゃ」
「信じて頂けますか」
「作り話にしては荒唐無稽に過ぎる」
 ノブナガは真剣な面持ちでこう述べる。
「ましてや御主達のその服じゃ」
「明らかに我等の世界のものとは違う」
 ミツヒデも言う。
「疑う方が難しい」
「猿のいた世界と同じじゃな、時代は」
 ノブナガはこのことも指摘してきた。
「世界自体は違ってもな」
「はい、そうです」
「その通りよ」
 光と三輪がノブナガの指摘に答える。その通りだとだ。
 そしてだ。光はこうノブナガ達に話した。
「仮面ライダーのことですが」
「うむ、そのことか」
「このことは信じて頂けるでしょうか」
「見たいものじゃな」
 ノブナガは三人を見つつ光に述べた。
「実際にどういった姿かな」
「そうですよね。何かお名前聞いたら特撮のヒーローみたいですけれど」
 ヒデヨシもだ。興味深げに三人に対して言う。
「ええと。どんな格好なんでしょうか」
「はい、それならです」
「呼んだかしら」
 光が応えるとだ。すぐにだ。
 彼女のところにキバーラがだ。何処からともなく飛んで来た。
 そしてそのうえでだ。こう光に言うのだった。
「あたしの出番?」
「あっ、お願いできますか?」
「ええ、いいわよ」
 キバーラも応えてだ。そのうえでだ。
 光の腕のところに来て噛む。他の二人もだ。
 

 

第二十一話 仮面乙女その八

 立ち上がりそれぞれ変身をした。そしてその姿でノブナガ達に言う。
「これでね」
「信じてもらえたかしら」
「うむ、わかった」
 腕を組みだ。確かな顔で応えるノブナガだった。これで充分だった。
 かくしてだ。ノブナガは三人を認めたうえでだ。ミツヒデに告げた。
「さて、それではじゃ」
「はい、各地の大名達にですね」
「安土に来る様に伝えよ」
「はい、それでは」
「スサノオという者。どうやらかなり厄介な奴のようじゃ」
 直感でだ。ノブナガはこのことを悟った。そのうえでだった。
 他の大名を呼び集めてだ。何をするかというのだ。
「戦力が多い方がよいからのう」
「そうですね。それではすぐに」
「派手な祭りになるな」
 ノブナガは戦をこう表現した。
「前の戦よりものう」
「えっ、じゃあ安土城また潰れちゃうの?」
「不吉なことを言わないでくれるか」
 ミツヒデはヒデヨシの今のびくりとした言葉に眉を顰めさせて言い返した。
「またあんなことがあってたまるものか」
「それはそうだけれど」
「わかったらそうしたことは言わないことだ」
 ミツヒデは咎める顔でヒデヨシに話す。
「何はともあれだ。武田殿や上杉殿にもすぐに伝えよう」
「トクにゃん達にもよね」
「うむ、今川殿にもな」
 彼にだと話してだった。そしてマサムネもだ。
 静かにだ。こう言ったのだった。
「では西国の大名達にも」
「うむ、ではそちらにもな」
 ノブナガはマサムネのその言葉にも応えた。こうした話をしてだった。
 彼女達の方針が決まった。その後でだ。
 三人はヒデヨシ、そしてマサムネと安土城の一室で話した。その中でだ。
 霧島がだ。マサムネのその眼帯を見る。ライダー達の服はそのままだがヒデヨシとマサムネは着物、それぞれ黄色と青の服を着てだ。そのうえで話をしている。
 その中でだ。霧島はマサムネに話すのだった。その話すことは。
「貴女の右目だけれど」
「このことね」
「まさかと思うけれど御先祖様と同じで」
「あっ、見えてるわ」
 それはだ。ちゃんとだというのだ。
「これはただの変装なのよ」
「そうだったの」
「ほら、この通り」
 眼帯を外すとだ。実際にだ。
 奇麗な目が出て来る。その目を見てだ。
 霧島も他の二人もだ。納得した顔で言ったのだった。
「成程、確かにね」
「見えてるんですね」
「しかも結構奇麗な目じゃない」
「私もそう思います」
「そう言ってもらって何よりよ」
 奇麗と言われてだ。悪い気はしないマサムネだった。そうしてだ。
 また眼帯をしてからだ。言う言葉は。
「けれど今はこうしてね」
「意味ないんじゃないの?はっきり言って」
 眉を顰めさせて言う霧島だった。
「見えてるのなら。それに世界が違うじゃない」
「私のいる世界とこの世界は」
「何かファッションになってるけれど」
「そうかも知れないわね」
 ファッションと言われてだ。否定しないマサムネだ。そうしてだ。
 自分の右目、眼帯の上からそれを擦ってだ。微笑んで言うのだった。
「付けていると何となくいいから」
「遠近感は大丈夫なの?」
「特に」
 問題はないとだ。マサムネは三輪に答える。
「何ともないわ」
「じゃあ戦うこともできるのね」
「できないこともないわ」
 何故かここでは弱い言葉になるマサムネだった。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「とはいっても専門ではないけれど」
「実は私もなんです」
 ヒデヨシもだ。困った顔になりだ。戦いについて話す。
 

 

第二十一話 仮面乙女その九

「戦うことはあまり得意じゃなくて」
「二人共程々といったところね」
 その二人を見ながらだ。三輪は述べた。
「ノブナガさんとミツヒデさんはかなりの強さみたいだけれど」
「御館は強いですよ、アケちゃんも」
 この二人は間違いないとだ。ヒデヨシは述べる。
「それこそ何十人も一度に相手にできますから」
「なら戦力的には問題はないわね」
 いけるとだ。話す三輪だった。
「他の大名の娘達も来るっていうし」
「ただ。問題は」
「スサノオのことね」
「話を聞く限り相当な相手だから」
 それでだ。どうかというマサムネだった。
「私達の戦力でどれだけ戦えるかだけれど」
「戦って勝つしかないのよ」
 霧島の返事はここでは淡々としていた。
「正直なところね」
「そうですよね。さもないと」
「この世界が」
「ああ、滅ぼすとかそういうのはもうしないから」
 それは否定する霧島だった。
 そしてだ。また二人に話すのだった。
「ただ。私達に仕掛けて来るだけだから」
「仕掛けるっていうと」
「策略を」
「ただの策略じゃないけれどね」
「おおむねそうよ」
 霧島と三輪が話す。スサノオのその策略について。
「そうして私達がそれをどう乗り越えるか」
「それを見たいのよ、奴は」
「何かそれって」
「そうね」
 その話を聞いてだ。ヒデヨシとマサムネは。
 嫌な顔になりだ。こう言うのだった。
「凄く嫌な神様ですね、スサノオって」
「悪趣味な者ではあるわね」
「そうですよね。幾ら神様っていっても」
「いい趣味ではないわね」
「正直趣味は悪いわね」
 霧島もこのことは否定しない。それも全くだ。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「何しろそうして退屈を凌いでいるから」
「その。牢獄にいるからですね」
「そこから出られないからこそ」
「そうよ。ツクヨミ達との戦いの結果幽閉されてね」
 太古の、それこそ気の遠くなるまでの過去の話である。
「それ以来のことだから」
「ううん、退屈ならゲームをすればいいのに」
「だからそのゲームをしているのよ」
 今度は三輪がヒデヨシに突っ込みを入れる。
「スサノオもね」
「人間に、ライダーに仕掛けてそのうえで戦って」
「私達を見ることが」
「スサノオにとってはそれは最早生きがいなのよ」
 三輪は見抜いていた。スサノオのそうしたことを。
 だからこそだとだ。彼女も言うのである。
「私達にも仕掛けているのよ」
「悪趣味ですけれど」
「スサノオにはスサノオなりの事情があるのね」
「ですから。私達としてはです」
 光h自分達の立場から話す。ライダー、そして戦士としての立場からだ。
「そのスサノオと戦って仕掛けを破っていくしかないんです」
「答えはそれしかないわね」
 マサムネはいささか残念そうに達観した。そのうえでだ。
 小さく溜息を出してだ。三人のライダー達に述べたのだった。
「戦うしか」
「はい、じゃあ私達と一緒に」
「戦ってくれるわね」
「そうしてくれるかしら」
「いいわ」
 微笑みだ。マサムネは答えた。
 

 

第二十一話 仮面乙女その十

「ノブナガさん達と同じくね」
「私もそうしまーーーす」
 ヒデヨシは右手をあげて述べた。
「というかそんな神様の仕掛けることなんて全部叩き潰しますよ」
「有り難うございます。それなら」
「是非共一緒にね」
「戦いましょう」
 三人も二人の言葉に微笑みで応える。こうしてだった。
 女だけの世界でもだ。戦士達は手を握り合った。そのうえでだ。
 マサムネがだ。微笑みつつだ。こう霧島に問うたのである。
「貴女どうやら」
「私が。どうしたのかしら」
「東北好きね」
 こうだ。微笑んで彼女に言ったのである。
「そうね。見たところ」
「確かに。嫌いじゃないわ」
 霧島もだ。マサムネのその問いを否定しない。
 むしろ肯定してだ。こう述べたのである。
「秋田は特にね」
「わかるわ。それはね」
「そういうマサムネさんは名前から」
「ええ。実家は仙台にあるから」
 先祖代々である。彼女の場合は。
「そこの出身だから」
「成程。だからなのね」
「ただ。私はね」
 どうかとだ。ここでマサムネの言うことはというと。
「北海道。この時代では蝦夷というけれど」
「あそこね」
「あの場所も嫌いじゃないわ」
「特に夕張かしら」
「ええ、そこは特にね」
 こう話すのである。何故かは自分達でもわからないがだ。
 そんな話をしながらだ。三輪がだ。
 光に対してだ。こう提案したのである。
「ところで。私達だけじゃなくて」
「他の人達もですね」
「ええ、呼ぶべきだと思うわ」
 そうしてだ。戦力を集中させるべきだというのだ。
「ただ。問題は」
「この世界のことですね」
「女の子以外は皆犬になってしまうことよね」
「そうですね。ですから呼べるのは」
 限られていた。それは。
「女の子だけですね」
「そこがネックね。これまでみたいにオールスターは無理よ」
 三輪は腕を組み深刻な顔になり光に話す。
「限られた戦力でどう戦うのか」
「どうしたものでしょうか」
「あら、そんなに困ることじゃないわよ」
 キバーラが出て来てだ。そのうえで光の周りを飛びながら戦士達に話してきた。
「それならそれでやり方があるから」
「あるんですか?ちゃんと」
「っていうかあれだけの数がいたらどうにでもなるわよ」
「どうにでもって」
「そう。まずは戦力を集めることよ」
 まずはそこからだというのだ。キバーラの考えでは。
「とりあえずはそうしましょう」
「今からあれこそ考えずにですか」
「そういうこと。じゃあいいわね」
 今から迷うなというのである。
「戦力を集めるわよ」
「はい、それじゃあ」
 光がキバーラの言葉に頷きだ。そうしてだった。
 御互いに方針を決めた。キバーラの言葉が決定打になった。
 そしてだ。それだけではなくだ。
 ここでだ。マサムネは今度はキバーラを見てだ。こんなことを言ったのである。
「何故か蝿を思い出すわ」
「あら、蝿をなの」
「カメレオンと蝿ね」
 言うのはこのことだった。自分でも妙に思っている顔だった。
 その顔でだ。マサムネは言うのである。
「それを思い出したわ」
「そうねえ。マサムネさんだったらわかるわ」
「そう。わかってくれるの」
「マサムネさんの別の世界でのことね」
「ええと。臨獣殿だったかしら」
「そうそう、その世界でのことよ」
 まさにその世界でだ。マサムネは蝿と縁があったというのだ。
「何かそう思えるのよ」
「よくわかるわ。それじゃあね」
「ええ。それではなのね」
「マサムネさんとも仲良くなれそうね」
 そのことについてだ。とても楽しそうに言うキバーラだった。
 そしてだ。キバーラはこんなことも話したのである。
「柳生の十兵衛ちゃんも真理ちゃんにそっくりだしね」
「あっ、言われてみれば」
 キバーラのその指摘にだ。はっとした顔になる光達だった。
 そしてだ。こう言ったのである。
「外見も服装も全然違うのに」
「何か。雰囲気とかが」
「そっくりね」
「そうですよね」
 三人のライダー達も気付いたのだった。そのことにだ。
 そうした話をしつつだった。戦士達は互いに話をして親睦を深め合っていた。そしてだ。
 御互いにだ。こう言い合うのだった。
「それじゃあね」
「ええ。あらためてね」
 霧島とマサムネが笑みを浮かべ合ってだった。
 そのうえでだ。それぞれ酒を出してだ。飲み合うのだった。その中でだ。
 マサムネは杯を手にしてだ。陽気に三人に話した。
「やっぱりお話をする時はこれよね」
「そうですよね。お酒が一番ですよね」
 光もだ。赤い顔で応える。
「堅苦しい話が終わった後は」
「無礼講で飲んで親睦を深めましょう」
「あの、先生」
 ヒデヨシは未成年なのでジュースだ。霧島達が出してきた。
 それを飲みながらだ。困った顔でマサムネに言うのである。
「先生何かあると飲んでませんか?」
「先生お酒大好きだからね」
「幾ら何でも毎日じゃないですか」
「毎日飲んでも飽きないのよ」
 にこにことした真っ赤な顔での言葉だった。
「ヒデヨシさんも大人になればわかるわ」
「それまでは駄目ですか」
「未成年の飲酒は駄目よ」
「この世界そういうのないですけれど」
「それでも駄目よ。身体に悪いからね」
「大人でも飲み過ぎると駄目なんじゃないですか?」
 怪訝な顔でだ。ヒデヨシはまたマサムネに話した。
「身体を悪くしますよ」
「だから大丈夫よ。先生飲む量はあまり多くないから」
「いえ、どう考えてもそれは飲み過ぎですから」
「いえ、飲み過ぎですから」
 マサムネを横目で見てだ。いささか憮然とした顔で言うヒデヨシだった。だがマサムネはそんな教え子の言葉も視線も今は無視してだ。そのうえで酒を楽しむのだった。


第二十一話   完


                            2011・12・14

 

 

第二十二話 集結乙女その一

                         第二十二話  集結乙女
 安土城の正門のところにだ。彼女達がいた。
 美波はその見事な門、そして幾重にもなっている城壁に青と赤、それに金の南蛮の趣きも加わった天守閣を見上げながらだ。驚きと共もこう言うのだった。
「これがあの教科書にも載ってる」
「安土城よね」
 アイもここで言う。
「紛れもなくね」
「まさか実物をこの目で見るなんて思わなかったわよ」
「世界は違うけれどね」
「あれ本物よね」
「アトラクションにしては精巧過ぎるわよね」
 美波もアイも話していく。そしてだ。
 英理子もだ。その天守閣を見て言うのだった。
「この天守閣は二代目らしいわね」
「そうらしいですね」
 英理子のその問いにだ。瑞希が答える。
「初代は戦いで潰れたと。夏海さんが仰ってますし」
「そこは私達の世界とは違うわね」
「私達の世界ともです」
 英理子だけでなく美波も言う。そしてだ。
 千姫もだ。こう一同に話すのだった。その天守閣を見上げながらだ。
「私達の世界でも織田信長公は天下統一の土台を築いたけれどね」
「それでもなのね」
「ええ。天下は統一してもね」
 それでもだというのだ。
「本能寺の変で横死してるのよ」
「私達の世界でもですよ」
「勿論こっちの世界でもね」
 瑞希と英理子は彼女達の世界の歴史について話す。
「けれどこの世界では信長さんは生きておられて」
「安土城も再建されたのね」
「本当に世界によって随分と違うんですね」
 美晴もだ。その天守閣を見上げながら話す。
「本当に何もかもが」
「ただ。この世界はあれよね」
「そうそう。話には聞いてたけれど有り得ないわよ」
 優子とサフィがそのことについて話す。そのこととは。
「女の人しかいないって」
「どういう世界なのよ」
「というか子供はどうやってできてるかって」
 愛子が興味を持っているのはこのことだった。
「コウモトリが運んでできるって。これが一番凄いと思うけれど」
「恋愛は百合のみなのか?」
 幸村はこのことについて真剣に考えている。
「またそれは随分と妖しい世界じゃな」
「子供ができない恋愛ですか」
 マルガはこのことについては首を捻る。
「ううん、何か凄い世界なのはわかります」
「それで信長さんも女の人らしいわね」
 ビアンカが一同に尋ねる。
「そう聞いてるけれど」
「とんでも設定が続くわね」
 さしもの英理子もいい加減呆れてきていた。
「こんな世界もあるのね。パラレルワールドって意外だわ」
「それで何時お迎えの人が来るのですか?」
 兼続は周囲を見回している。しかし兵達以外には誰もいない。
 それでだ。他の面々に尋ねたのである。
「そのヒデヨシさんですの?私としては前田慶次であって欲しいですけれど」
「御主の主家筋ではないのか?」
 幸村はこう兼続に問い返した。
「上杉謙信は丁度この時代の者だからのう」
「えっ、謙信様もおられるのですか」
「無論わらわの主筋の武田信玄様もおられる」
 このことも知っている幸村だった。全て光達から聞いてだ。
 しかし肝心のライダー達はいない。それは何故かというと。
 キバーラがだ。彼女達の上から話すのだった。
「もうちょっと待ってね。今お城の中でお話中だから」
「そのノブナガさん達とよね」
「そう。貴女達とノブナガさん達との会見のことでね」
 まさにだ。それでだというのだ。
「お話中だからね。もう少し待ってね」
「ううん。女の信長さんですか」
 美晴はその信長に会いたいとだ。心から思っていた。
 そうしてだ。また言うのだった。
「どんな方か本当に楽しみです」
「織田信長っていうと凄い気が短かったけれどね」
 英理子は俗に言われていることを話した。
「こっちの世界の信長さんはどうなのかしら」
「怖い人?やっぱり」
 ローズもそう思うのだった。
 

 

第二十二話 集結乙女その二

「何かあると刀を振り回す様な」
「可能性はあるわね」
「はい、充分に」 
 美波と瑞希も俗に言われていることから述べる。
「織田信長だからね」
「凄く怖い人としか思えません」
「そうね。覚悟しないとね」
 英理子もだ。その笑顔に幾分緊張がある。
「さもないといきなり手討ちとかね」
「怖い人だったら大変」
 それは翔子も気になっていた。
「召喚システムでも刀には勝てないから」
「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
「いよいよそれがわかるわよ」
 英理子とビアンカが言うとだ。そこでだった。
 正門が開いてだ。霧島が出て来たのだった。
 そしてだ。彼女はこう仲間達に言うのだった。
「話は整ったわ。今からね」
「中に入ってね」
「そうしてですね」
「そう。ノブナガさん達と会いましょう」
 ノブナガを知っている彼女には余裕がある。しかしだ。
 他の面々はだ。やはり緊張して言い合うのだった。
「じゃあこれからだけれど」
「いよいよよね」
「その天下人とご面会」
「他の人達とも」
 こうしてだ。戦士達はノブナガ達と会いにだ。安土城に入った。その城の中ではだ。
 緑と薄緑の具足と公家の衣装を合わせた様な服を着た、黒い長髪の楚々とした顔立ちの背の高い気品のある美女がだ。小柄で薄紫色の髪と服の少女に尋ねていた。その頭には緑の烏帽子がある。目は濃い緑だ。
 美女の名を今川ヨシモトという。名門今川家の主だ。その彼女がだ。
 今も共に暮らしている徳川イエヤスにだ。こう尋ねたのである。
「あの、イエヤスちゃん」
「何でしょうか」
「私達に会いたい人とは誰なのかしら」
 きょとんとした顔でだ。ヨシモトはイエヤスに問う。
「ヒデヨシさんやマサムネさんと似た人達らしいけれど」
「そうらしいですね」
「一体どんな娘達なのかしら」
 首を傾げさせてだ。イエヤスに尋ねるのだった。
 そしてだ。イエヤスはだ。
 見ればだ。何処かアラビアのそれを思わせる袴に具足である。袴や具足は濃紫だ。垂れ目でその目は濃い赤だ。髪はかなり長く帯はまるで蝶々の羽根である。
 その彼女がだ。こうヨシモトに答えた。
「仮面ライダーとのことですが」
「そうそう。変身するらしいわね」
「何か。南蛮の具足の様なものに」
「余計にわかりませんわ」
 ヨシモトはさらに首を傾げさせた。
「一体どういった方は」
「はい。ただですね」
 どうかとだ。イエヤスはヨシモトに話した。
「ヒデヨシさんやマサムネさんと同じ様な方なら」
「特に悪い方ではありませんわね」
「そう思います」
 確信はないがこう述べるイエヤスだった。
「ですから御会いしても問題はないかと」
「そうですわね。ただ」
「その方々に御会いするのは私達だけではないので」
「シンゲンさんにケンシンさんも」
 ヨシモトはこの二人の名前を出した。
「御二人もですわね」
「他にも西国の方々もです」
「確か。毛利モトナリさんに」
「長宗我部モトチカさんに大友ソウリンさんもです」
「天下の大名が一同に集ってそのうえで」
「スサノオですね。何かその名前を聞くと」
 どうなのかとだ。イエヤスはそのおっとりとした顔を曇らせてだ。ヨシモトにこう話した。
「安芸にいるその」
「あのイエヤスちゃんがいつも言っている?」
「不吉な。上村チカという名前に匹敵する」
「嫌なものを感じるのですわね」
「はい、どうもです」
 イエヤスは巫女でもある。その巫女の能力からだ。
 そのことを感じ取ってだ。ヨシモトに話すのだった。
「邪神の類らしいですし」
「イエヤスちゃんが感じるのなら」
 どうかとだ。ヨシモトもだ。
 

 

第二十二話 集結乙女その三

 考える顔になりだ。そして言うのであった。
「間違いありませんわね」
「何はともあれですね」
「ええ。仮面ライダーの方々と御会いしてですわね」
「話はそれからですね」
 こうした話をしているとだ。ここでだ。
 また二人来た。それはというと。
 白く荒々しく伸ばした髪に赤い水着を思わせる具足に黄色の陣羽織と額の部分を覆う兜を着けた猛々しい顔の女がいた。頬に傷があり目の色は黄色だ。甲斐の主にして天下随一の猛将である武田シンゲンだ。その口元には不敵な笑みがありそれが一層彼女の猛々しさを誇示している。
 もう一人は黒と藍色の具足と袴を着けた鳶色の目の少女だ。傍らにいる白髪の女とは雰囲気がまるで違い思慮深い印象を受ける。目はしっかりとしていて眉は細く長い。髪は後ろを伸ばし額を開けてだ。額の鉢巻には毘の文字がある。武田シンゲンの好敵手、越後の主上杉ケンシンである。
 二人がそれぞれ部屋の中に入りだ。ヨシモトとイエヤスに対して言ったのである。
「おう、久しいな」
「二人共元気そうね」
「ええ、お陰様で」
 ヨシモトがだ。気品のある笑みで二人に応えた。
「御二人も相変わらず御元気そうですね」
「ああ、見ての通りだ」
「いつも通り楽しくやっている」
 二人も明るくヨシモトに返す。
「それはそうとだ。また別の世界からか」
「人が来たそうね」
「はい。まずはですね」
 イエヤスが立ったままの二人に話す。彼女とヨシモトは座っているのだ。
「お座りになられた方が」
「そうだな。それではな」
「まずはそうしてね」
 二人もイエヤスの言葉を受けてだ。そうしてだ。
 それぞれヨシモト達の前に座る。そのうえでだ。
 シンゲンはだ。イエヤスに対して問うた。
「仮面ライダーとは何だ?」
「私も文に書いてあること以上は」
「知らないか」
「はい、すいません」
「ヨシモトは知らないのかしら」
 ケンシンはヨシモトに対して尋ねた。
「貴女の蔵書の物語の中にいるのかしら」
「いえ、いませんわ」
 ヨシモトもだ。知らないというのだった。
「私にしても残念に思っていますわ」
「そうなのね。ヨシモトもなの」
「とにかく全く謎の連中なんだな」
 シンゲンが彼等に出した結論は今のところそれだった。
「とりあえずスサノオっていうのが強いのはわかるがな」
「邪神ね」
 シンゲンとケンシンへの文にもスサノオについて書かれていたのだ。
 それでだ。彼女達は話すのだった、
「そのスサノオと思う存分戦うのはな」
「かなり面白そうね」
「今から腕が鳴るぞ」
「うむ、私もだ」
 二人は顔を見合わせて話す。その二人を見て。
 ヨシモトはだ。微笑んでイエヤスに話した。
「あの娘達も変わらないわね」
「はい、本当に」
「イエヤスちゃんは変わったけれど」
 何故かここで彼女に話を振るのだった。
「可愛くなったわ。さらにね」
「あの、私がですか」
「そうよ。可愛くなったわ」
 こう言うのだった。
「さらにね」
「私はそれは」
「私は嘘は言いませんわ」
 それは誇りが許さなかった。名門今川家の主としての誇りがだ。
「ですから。イエヤスちゃんは可愛いですわ」
「それで私は今度は一体」
「私今女の子二人の旅芸人のお話を書いていますの」
「ええと。王炉螺夢物語ですか」
「そう。主役の一人がイエヤスちゃんですの」
「歌に踊りにお笑いですね」
「蹴鞠もしますわ」
 それもあるというのだ。
 

 

第二十二話 集結乙女その四

「どうでして?その主役になった気持ちは」
「何と言っていいかわかりません」
 イエヤスは本心をそのままヨシモトに話す。彼女にしては珍しく。
「その前は三つ子の二番目でしたし」
「あれは喜劇でしたわね」
「他にも妖精になったりしていますし」
「また三人でしたわね」
「あの、私はそんなに書きやすいのでしょうか」
「可愛いから。そうしやすいのでしてよ」
 それを理由にしてだ。ヨシモトはイエヤスを自分の書く物語に出しているというのだ。
「ですから。その王炉螺夢物語もですわよ」
「そうなのですか」
「はい。それではですわね」
 ここでだ。ヨシモトは話を一旦打ち切った。そうしてだ。
 あらためてだ。シンゲンとケンシンに話すのだった。その話はというと。
「とにかく。他の世界から多くの方々が来られてますね」
「それがどうしてかだな」
「おかしなことではあるわね」
 シンゲンもケンシンもヨシモトに応えて述べる。
「絶対に何か理由があるんだろうがな」
「果たしてそれはどうしてか」
「スサノオか?そいつ絡みなのはわかっても」
「そのスサノオが我々にどう仕掛けてくるのか」
「今の時点じゃわからないことだらけだな」
「全くだ」
 こう次々に言う二人だった。彼女達もわかること、知っていることは少なかった。そうしてだった。
 まただ。イエヤスが言ったのだった。
「あと。三人の方がでしたね」
「そうだ、西国の面々だ」
「あの者達もいた」
 すぐにだ。シンゲンとケンシンもイエヤスのその指摘に応えた。
「あの三人も来るのだな」
「そうでなければおかしいが」
「そのことですが」
 ここでだ。四人のところにミツヒデが入って来た。そのうえでだ。
 四人に対してだ。こう言ってきたのである。
「既に文は御渡ししています」
「そうか。それならだ」
「あの三人も来るな」
「既にこちらに向かわれているとのことです」
 だから大丈夫だというのだ。そして実際にだ。
 ここでだ。藍色の髪をボブにした胸の大きい乙女が来た。前が開いている黒い和服の左肩ははだけさせているところにだ。黒い肩当をしている。胸は大きく目はざくろの色だ。安芸の毛利モトナリだ。
 続いては緑の収まりの悪い短髪に紫の勝気な目に猛々しい表情の女が来た。オレンジの具足に紫の袴、それに兜で額のところを覆っている。土佐の長宗我部モトチカだ。
 最後は南蛮のシスターを思わせる濃青と水色の具足と服を着た金髪の少女だった。二人に比べれば小柄で目は青い。まだ幼さが残るが気が強そうな顔をしている。九州に覇を唱える大友ソウリンだ。 
 この三人が来てだ。まずはモトナリが言った。
「よろしゅう。来たけえのお」
「相変わらずの安芸弁ですわね」
「はいな。ヨシモトさんも元気そうで何よりじゃけえ」
 こうだ。ヨシモトに明るく返すモトナリだった。そうしてだ。
 モトチカとソウリンもだ。笑顔で言ってきた。
「それでスサノオは何処ぜよ」
「大砲用意してきたたいよ」
「おい、もうか」
 二人の話を聞いてだ。シンゲンが苦笑いと共に突っ込みを入れる。
「それはまた気が早いな」
「戦は準備が第一ぜよ」
「それで用意してきたばい」
「そうか。まああたしもな」
「用意はしてきたぞ」
 シンゲンとケンシンもだ。楽しそうな笑顔で三人に返す。
「それじゃあスサノオが出て来たらな」
「早速成敗するとしよう」
「しかしスサノオという相手はどうも」
 ここでモトナリが言う。三人のリーダー格の彼女がだ。
「よくわからん相手に思えるのはうちの気のせいではないけえ」
「そうですわね。それは間違いなく」
 ヨシモトもだ。そのことについては全くの同意だった。
「邪神の類ですわね」
「邪神といいますか」
 イエヤスは少し考える顔で述べた。
 

 

第二十二話 集結乙女その五

「遊ぶ神かと」
「というかそんなおかしな神が出て来たっちゅうことは」
 どうかとだ。モトナリは言うのだった。
「また争いになるのは確実けえ」
「何はともあれ別の世界から来た連中に会うぜよ」
「それが先ばい」
 モトチカとソウリンも言いだ。彼女達に応えてだ。
 ミツヒデがだ。こう集っている大名達に言ったのだった。
「さて、それではです」
「よし、いよいよだな」
「面会だな」
 シンゲンとケンシンが応えてだ。そのうえでだ。
 大名達はノブナガのいる主の間に来た。そうしてだ。
 彼女の前でだ。ライダー達、そして他の世界の戦士達と出合った。そのうえでだ。
 その場でだ。モトナリはだ。美波を見てだった。
 目を鋭くさせてだ。こう言ったのだった。
「あんた、確かうちの生徒だったあの」
「えっ、うちも何かこの人と」
 美波も言う。彼女は驚いた顔になっている。
 そしてだ。御互いにだ。こう言い合うのだった。
「金髪で胸の大きい」
「緑のロングヘアの先生!?」
「何でこんなところにおるけえ」
「凄い奇遇なんだけれど」
「それを言うとだ。私もだ」
「私もばい」
 今度はミツヒデとソウリンだった。こうそれぞれ話すのだった。
「奇遇なことだが」
「おはんまさか魔法少女だったばい」
「私もそちらの世界に妙に感じるところがあるが」
「なしてこんなところにおるとよ」
「うう、うちも何でかわからないけれど」
 それでもだとだ。美波は困った顔で言うのだった。
「この人達とは凄い縁を感じるけれど」
「それにじゃ」
 モトナリは美晴も見て話す。
「そこの小さい娘、あんたもじゃ」
「お好み焼き屋さんに似ていません?」
 美晴の方も言う。
「ううん、妙な縁が」
「お好み焼きはやっぱり安芸じゃけえ」
 モトナリの主張が強い。
「それは絶対に外せんけえ」
「そうですね。それはわかります」
 美晴は何故かモトナリのその主張に頷けた。
「不思議とですけれど」
「それを言うと私は契約を出す側ね」
 優子にも心当たりのあることだった。
「そういうことね」
「あの、モトナリさん」
 半蔵がそのモトナリに話す。
「私も何かモトナリさんと」
「そうじゃけえ。うちも何かあんたとそっちの娘とは一緒の場所にいる気がするけえ」
 モトナリは優子も見ていた。
「八十一という番号はいい番号じゃけえのう」
「はい、そう思います」
「私もです」
 優子も半蔵も頷けることだった。そうしてだった。
 その話にだ。ノブナガもだった。
 その三人、サフィも含めてだ。こう言ったのである。
「わしも八十一という数字は好きじゃ」
「ノブナガ殿もですか」
「そうなのですか」
「うむ、馴染みを感じる数字じゃのう」
 こうだ。ノブナガは優子と半蔵にも話す。
「よい数字じゃ」
「その通りじゃけ。それじゃあ話をはじめるけえ」
「はい、それではです」
「はじめるわよ」
 共にいた光と霧島が言ってだった。そうしてだ。
 一行はそれぞれ名乗ってからだ。そのうえでだ。
 彼女達の世界のことと戦いのことも話す。それからだった。
 ノブナガはだ。こう言ったのだった。
「ふむ。よくわかった」
「おかしな話ですけれどね」
 愛子がだ。そのノブナガに応えて述べる。こちらの世界の面々は右側。ライダー達と他の世界の面々は左側にいる。そうしてだ。御互いに話すのだった。
 そしてだ。その話が終わってからだった。
 

 

第二十二話 集結乙女その六

 ヒデヨシがだ。驚きながら言うのだった。
「ううん、一回聞いたんですけれど」
「それでもね」
「はい、信じられないです」
 こうだ。眉を顰めさせて義仙に返す。
「スサノオが私達をですか」
「そう、私達を見ているのよ」
「愉快犯」
 翔子は一言で述べた。
「言うなら」
「つまり天下統一は考えていない」
「それは確かか」
 シンゲンとケンシンが言う。
「ましてや世界の滅亡とかはか」
「最早考えてはいないか」
「考えていることは一つじゃな」
 ノブナガが強い顔で述べた。
「わし等を試して罠をどう潜り抜けるかを見るのじゃ」
「それだけですね、確かに」
 ミツヒデはノブナガの言葉に応える形で己の考えを述べた。
「最早他にはないかと」
「そう考えると気が楽じゃ」
「楽ですか」
「うむ、楽じゃ」
 己の座で腕を組みだ。ノブナガは不敵な顔でミツヒデに応えた。
「別に民や世界がどうなる訳ではないからな」
「それは確かに」
「なら気が楽じゃ」
「自分達だけのことだからですか」
「民や世界がかかっておるのなら別じゃ」
 彼等を気遣いだ。ノブナガは話すのあった。
「しかしわし等だけなら楽にやれる」
「確かに。民を犠牲にしないのならば」
「気が楽じゃな」
「はい、まことに」
「ではじゃ。思う存分やってやろう」
 まただ。腕を組み言うノブナガだった。
「そのスサノオとの戦をな」
「そのスサノオの戦い方はじゃ」
 幸村がノブナガ達に話す。
「とにかく数で来る」
「数ね」
「そうじゃ。数で一気に攻めて来る」
 マサムネに応える形で述べていく。
「それも四方八方からじゃ」
「取り囲んでくるのね」
「左様、それもいきなり出て来る」
 幸村はこれまでの戦い、彼女も参加してきた一連のそれからノブナガ達に話す。
「そうして戦を挑んでくるのじゃ」
「とはいってもあれなのよ」
 今度は英理子が話す。
「これといって統制のない戦いだから」
「それじゃあ楽じゃけえ」
 統制がないと聞いてだ、モトナリはくすりと笑って述べた。
「そんな相手どうということはないけえ」
「けれどそれでもね」
 そのモトナリにだ。英理子はさらに説明する。
「それぞれの質はいいからね」
「では個々がそれぞれに向かって来る?」
「強い者が大勢」
 ヨシモトとイエヤスはこう述べた。
「それなら結構厄介ですわね」
「はい、こちらが囲まれているのなら余計に」
「うむ、そこは気をつけるのじゃ」
 まさにそこだとだ。幸村も一同に話す。
「強い奴等が一気に来るからのう」
「ううん、何か命がけ?」
「その通りよ」
 泣きそうな顔になるヒデヨシにだ。千姫が述べる。
「まさにそうした戦いだから」
「うう、こっちの世界に来たらそれはそれで」
「仕方ないわね、それは」
「あの、先生凄く冷静じゃないですか?」
 ヒデヨシはその泣きそうな顔を隣にいるマサムネにも向けて言う。
「生きるか死ぬかの戦いになりそうなのに」
「仕方ないわ、それも」 
「仕方ないんですか」
「仮にもこの世は戦国だから」
 それ故にだというのだ。マサムネはだ。
 

 

第二十二話 集結乙女その七

「だからそれもね」
「仕方なくなのね」
「戦いがあるのならね」
「それならですか」
「勝って生き残るしかないわ」
「そうなるんですかあ」
 マサムネに言われてだ。さらに泣きそうな顔になるヒデヨシだった。その彼女にだ。
 サフィがだ。こう言ったのである。
「あれよ。生き残るのもね」
「まさかそれもスサノオの」
「そうよ。スサノオが見て楽しむことなのよ」
「本当に凄く悪趣味ですね、スサノオって」
「そうかもね。けれどそれでもよ」
「戦いになれば生き残るしかないんですl
「そういうことだから」
 こうヒデヨシに話すサフィだった。そしてだ。
 十兵衛がだ。能天気な、普段の彼女そのままの感じで一同に述べた。
「それとね。スサノオってその世界ごとに見たいものが違うみたいだから」
「あれっ、そうなの!?」
「そうだったのですか」 
 その話を聞いてだ。アイと又兵衛が驚きの声をあげる。
「スサノオにはそういうのがあったの」
「それぞれの世界において」
「あっ、そういえば本当に」
「ええ、そうね」
 彼女達の話からだ。光と三輪がだ。
 それぞれ顔を見合わせてだ。こう話すのだった。
「私達の戦いもそれぞれでしたから」
「人間を見るにしてもね」
「それぞれ違うものがありましたね」
「見たいものは一つではなかったわ」
「その通りね」
 霧島もだ。考える顔になり述べた。
「スサノオはそういう奴だったわね」
「そうですよね。人の色々な一面を見ようとする」
「その戦いの都度にそれぞれの一面をね」
「克服だったり絆だったり」
 霧島もだ。ここで言っていく。
「本当にそれぞれね」
「違うものを見ようとしてですね」
「仕掛けてくるわね」
「ならこの世界では何をしてくるか」
 霧島は考えていく。そしてだ。
 こちらの世界にあっただ。それについて言ったのである。
「赤い甲冑だけれど」
「あれか」
 ノブナガがだ。紅い甲冑と聞いてだ。眉を顰めさせた。
 そしてそのうえでだ。こう言ったのである。
「あれは最早ないがな」
「そうね。元のはね」
「スサノオがまたあれを造るというのか」
「スサノオの力なら可能よ」
 こう答える霧島だった。
「それも簡単にね」
「じゃあ今回はそれ?」
「紅い甲冑を使って?」
「それで仕掛けてくる」
「そうしてくるっていうの」
「ふむ」
 その話を聞いてだ。ノブナガはだ。
 暫し考える顔になりだ。こう一同に述べたのである。
「あの紅い甲冑は最早無用の長物じゃ」
「ですよね。あんなのに頼っても」
「何にもならんわ」
 素っ気無くだった。ノブナガはヒデヨシにも述べた。
「あんなものがなくても何とでもなる。天下はな」
「じゃあどうしてその紅い甲冑で仕掛けて来るんでしょうか」
「まだそれはわからん。今更あの様なものに惑わされる者もおるまい」
 ノブナガがこう言うとだ。マサムネがだ。
 左目のその眉を曇らせてだ。こう言ったのである。
「あれは。確かに人を惑わすもので」
「そうね。安っぽい野心はそれに憑かれるわ」
 イエヤスも己の過去を思い出してだ。忌々しげに言うのだった。
 

 

第二十二話 集結乙女その八

「そういうものだからね」
「逆に言えば確かなものを持っていれば」
「惑わされることもないものだけれど」
「では仮にそれを使って仕掛けて来るにしても」
「どうしたものになるのかしら」
 二人にはそれがどうしてもわからなかった。そしてだった。
 モトナリもだ。首を傾げさせて言うのだった。
「わからんのお。ちょっと」
「とりあえずスサノオが仕掛けるのはわかったきに」
「それでもどういったものかはわからんばい」
「紅い甲冑にしろどうするつもりじゃけえのお」
 モトナリはモトチカとソウリンに応えながらまた言った。
「あんなものを今更出すとなれば」
「見極める必要があるやもな」
 幸村が鋭い目で述べた。
「暫し。スサノオは必ず仕掛けて来るしな」
「ええと。じゃあ今はどうするの?」
 ローズがとりあえずはどうするか仲間達に尋ねる。
「皆集まってるけれど」
「そうじゃな。親睦を深めるか」
 ノブナガは陽気な笑みで一同に提案した。
「花火でも見て。西瓜を食いながらな」
「では夜にですね」
「うむ。皆で楽しもうぞ」
 ミツヒデにも応えだ。そうしてだった。
 一同は夜の安土城からだ。琵琶湖のほとりに打ち上げられる花火達を見る。色とりどりの大輪が次々に咲きだ。戦士達はそれを見てそうして話すのだった。
 ヒデヨシがだ。今打ち上げられた花火を指差してノブナガに言う。
「御館、今度は菊ですね」
「そうじゃな。あの形と色はそれじゃな」
「はい、菊です」
 まさにそれだとだ。ヒデヨシはノブナガに笑顔で話す。
 そうしてだ。今のノブナガを見る。見ればだ。
 彼女は紅い浴衣を着ている。白い大輪が浴衣にある。その紅と白の浴衣を見て言うのだった。
「凄く似合ってますよ」
「そうか?わしは浴衣はあまり着ぬがのう」
「いえ、本当に似合ってます」
「ははは、それを言えば猿もじゃ」
「私もですか」
「その金魚の浴衣よいではないか」
 淡い青にだ。金魚が描かれた浴衣だった。その浴衣を見て言うノブナガだった。
「他の者達ものう。似合っておるぞ」
「ううん、何か悪いですね」
 美晴が少し申し訳なさそうにノブナガに応える。彼女も青地に赤の紫陽花の浴衣だ。
 その浴衣姿でだ。ノブナガに言ったのである。
「こうして浴衣まで貸してもらって」
「ははは、気にすることはない」
 煙管を吸いながらの言葉だった。
「服はある。あるものは貸すからのう」
「だからですか」
「さて、では西瓜じゃ」
 その切られた西瓜が出される。ノブナガはそれをい見ても言うのだった。
「甘いものはよい。食うと気持ちがよくなる」
「ですが御館様」
 ミツヒデはそのノブナガに心配する顔で言う。
「あまり甘いものを食べられてもです」
「虫歯じゃな」
「はい、それには御気をつけ下さい」
「わかっておる。歯磨きも忘れておらぬぞ」
「御休みになられる前には必ずです」
 歯を磨いて欲しいというのだ。これがミツヒデの願いだった。
「さもないとまことにです」
「わかっておるわ。ミツヒデは心配性じゃのう」
「御館様のことが気になり」
 まだ心配する顔のミツヒデだった。
「私も歯は毎日磨いていますので」
「そうじゃな。歯磨きは忘れてはならんな」
「はい、ですから」
 それでだと言いながらだ。ミツヒデも西瓜を食う。しかしだ。
 ここでだ。彼女は瑞希や千姫の胸を見た。当然彼女達も浴衣だ。
 そしてだ。少し羨ましそうに言うのだった。
「いや、私も胸はそれなりにあるが」
「あの、何か?」
「どうかしたの?」
「西瓜の如くというのはやはりな」
 二人の胸を見ての言葉だった。そうしてだ。
 

 

第二十二話 集結乙女その九

 イエヤスの胸も見る。今度はこう言うのだった。
「中の人もまた同じか」
「言いたいことはわかってるわよ。それによね」
「貴殿とは確か庭球の方でも一緒だったが」
「そっちでも胸はなかったわよ」
 眉を顰めさせて反論するイエヤスだった。イエヤスは桃色でだ。紫の鳥のある浴衣だ。
 その浴衣姿の自分の胸をちらりと見てからだ。ミツヒデに言い返すのである。
「とある先生にはもっとないって言われたし」
「そうだったのか」
「胸の話は大嫌いよ」
 むっとした顔で言うのだった。
「そりゃ豊かな人もいるでしょうけれどね」
「同じ中身でもだな」
「そこはあんたと同じよ」
 またミツヒデに返す。
「そういうことよ」
「そういえば私も何か」
「そう思うでしょ。ええと」
 ここでだ。イエヤスはだ。
 美波に顔を向けてだ。そして同意を求めたのである。
「胸についてはね」
「それね。男が言ったら速攻でぶっ飛ばしてるわよ」
「けれど私もないから」
「中身もよね」
「同じだから別にいいでしょ」
「まあね。それはね」
 美波も頷くことができた。そうしてだ。
 彼女はここで幸村とローズ、当然浴衣姿の二人を引っ張ってきてだ。そして言うのだった。
「この娘達だってそうだし」
「中身も外もなのね」
「そう、ないから」
 何がないのかは最早言うまでもなかった。
「同志よ、うち等の」
「胸なんかいらないのよ」
 イエヤスは力説する。
「そんなのにこだわっているうちはね。小さい小さい」
「そうそう、全く以て同感よ」
「私はあくまで胸については求めないわ」
 求めてもだった。もっと言えば。
「求める方がおかしいのよ。絶対にね」
「こんなところに同志がいるなんて思わなかったぞ」
「ローズも」
 幸村とローズはイエヤスの主張に全面的に同意だった。そしてだ。
 こっそりとだ。英理子のその胸を見て言うのだった。
「中には中身も凄いのがおるしのう」
「ローズ達は中身もなのに」
「というかあれじゃない?技能映像だったかしら」
 美波が彼女達共通の話題を出した。
「あんた達の所属先とうちの所属先って姉妹みたいなものだけれど」
「うむ、胸はない者が多い様じゃな」
「平均的に見て」
「特に。うちは関係ないけれど」
 前置きしてから話す美波だった。
「アイドルとかマスターに関係があると」
「胸がない方が多いのう」
「違う人もいるけれど」
「割合的に胸のない人が多いじゃない、中も外も」
「その通りじゃ。わらわ等はアイムとかいうがのう」
「それでも。技術映像とは同じ系列だし」
 幸村とローズはどちらがどちらなのか全くわからないまでにそっくりだった。
 その二人がだ。同時に話していくのだ。それを傍から聞く面々は戸惑いを禁じ得なかった。
 それでだ。密かにだ。ケンシンが愛子に尋ねた。
「区別がつかないのだが」
「うん、僕も実は」
「そうだな。拙者もこうした相手がいるとは思うが」
「いると思うよ、ケンシンさんも」
「その場合は気をつけておくか」
「その方がいいね、お互いにね」
 こうした話をするのだった。そしてだ。
 ケンシンは梅を食べつつ酒を飲む。そのうえで言うのだった。
「ふむ。やはりこれだな」
「御主はまたそれか」
「酒は拙者にとって命だ」
 杯を手にシンゲンにも返すケンシンだった。
「これと戦なくしてどうして生きられようか」
「それはわかるが程々にしろ」
 飲み過ぎるなというのだ。
「全く。どれだけ飲めば気が済むのだ」
「酒は百薬の長だ。だからこそだ」
「飲むというのか」
「とことんまでな」
 言いながらどんどん飲むケンシンだった。何はともあれだ。
 彼等は花火や西瓜、それに酒を楽しみつつ親睦を深めていった。そうしてこれからのスサノオとの戦いを前にしてだ。心を通わせ合うのだった。


第二十二話   完


                           2011・12・19 

 

第二十三話 甲冑乙女その一

                          第二十三話  甲冑乙女
 戦士達は安土城に集結している。そうしてだ。
 それぞれ町に出る。流石に服はこの時代のものになっている。
 着物姿で町を歩きながらだ。美晴は兼続にこんなことを言うのだった。
「何か物足りないのです」
「そうなのですか?」
「そうです。ここは男しかいないのです」
 それでだ。少しだというのだ。
「それが物足りないのです」
「アンバランスではありますね」
 兼続も美晴のその言葉に頷いた。そうしてだ。
 そのうえでだ。彼女も言うのだった。
「慶彦様も来られないですし」
「私はあの豚野郎をぶちのめせないことが残念です」
「吉井明久ですね」
「あの豚野郎からお姉様をどうするかです」
 ある意味において美晴の生きがいだった。それはだ。
「お姉様だけですと張り合いがありません」
「私も。何かあの破廉恥漢がいないと」
 兼続もだった。この状況はというのだ。
「物足りないのです」
「ぶちのめし懲らしめる相手がいないとですね」
「そうなのです。張り合いがありません」
「そうそう。僕だってね」
 愛子も共にいる。その彼女が言うのだった。無論彼女も着物姿である。
「ムッツリーニ君がいないと何かね」
「張り合いがないのですね」
「愛子さんにしても」
「こうした世界もあるのね」
 愛子は首を少し捻って述べる。
「いや、僕かなり驚いてるよ」
「というかどういう世界なのよ」
 今言ったのはビアンカだった。着物でも巨大な胸が目立つ。
「子供の生まれ方といい」
「それは何の問題もありません」
 兼続はこのことに関してはこう言うのだった。
「むしろ破廉恥なことがなくて健全です」
「えっ、私はやっぱり」
 美晴はどうかというのだ。彼女はだ。
「お姉様の子供が欲しいです」
「いや、それは無理だ」
 ダルタニャンも着物だ。白い着物に金髪である。
 その金髪が今一つ似合わないがそれでもだ。彼女は言うのだった。
「女と女では子供は生まれない」
「そんなの気合が入れば生まれます」
「どう考えても無理ですよ、それは」
「そう、それは絶対に無理ね」
 兼続とビアンカが同時に美晴に突っ込みを入れる。
「それではこの世界と同じですけれど」
「無理なことを言うものね」
「うう、何か私ここでも立場がないです」
 美晴にとっては辛いことだった。だが互いの親睦を深め合ってはいた。
 そうして町を見回ってからだ。そのうえでだ。
 安土城に戻ったビアンカはノブナガにだ。こう話すのだった。
「正直な感想を言っていいかしら」
「うむ、何じゃ」
「私の世界のこの時代と同じね」
「そうか。ただ男というものがおるだけか」
「そう、男がどういうものかは知ってると思うけれど」
「あれじゃな。猿とマサムネが言っていた」
「他の世界では性別は二つあるのよ」
 ビアンカはノブナガにこのことも話す。
「それで男がいるけれど」
「その男がいるかどうかで全然違うというが」
「そう。けれどそれ以外はね」
「御主等の世界と同じじゃな」
「この時代とね」
「ではある程度はわかるか」
「そう、ある程度だけれど」
 わかることはわかるとだ。ビアンカは答える。
「わかるわ。それで今私達は町のあちこちを歩いて色々なものを見てるけれど」
「どうじゃ、この安土は」
「よく治まっているわね」
 にこりと笑って話すビアンカだった。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その二

「いい具合にね」
「そうじゃろう。わしは戦だけを見てはおらん」
「政もだというのね」
「左様じゃ。天下とは何かじゃ」
 ここから話すノブナガだった。
「手に入れるだけでは駄目なのじゃ」
「そういうことね。どうやらそうした貴女達だからね」
「スサノオが仕掛けてきたのじゃな」
「そう思うわ。どうやらね」
「ふむ。ではじゃ」
 どうかとだ。ここでだ。
 ノブナガは強い目になりだ。こうビアンカに言ったのである。
「スサノオはわし等に民から仕掛けて来るのかのう」
「その可能性もあるわね」
「奴は民を害する奴なのか?」
「過去にそうした策を仕掛けて来たことも多いわ」
「それ許せぬな」
 そのことを聞いたノブナガの目が鋭いものになる。
「その時はスサノオを成敗してやるわ」
「民を害することは許さないのね」
「断じてな」
 ノブナガは断言する。
「例えどの様なやり方でもじゃ」
「伊達に天下を目指す訳ではないのね」
「天下を手に入れ何をするかじゃ」
 ノブナガが見ているのはそれだった。
「ただ欲を満たすだけでは何もならぬわ」
「それでは器が小さいわね」
「わしは大器じゃ」
 自負があった。この自負がだ。それ故の言葉だった。
「それに相応しいことをするわ」
「わかったわ。じゃあ私達もその貴女にね」
「仲間としてじゃな」
「戦わせてもらうわ、この世界でもね」
「仲間か。安土等の戦ではじめて知ったがのう」
「その安土城が一度派手に壊れた戦ね」
「うむ、天下はわしだけではない」
 ノブナガは確かな顔でビアンカに言っていく。
「仲間達もおる。天下を治めるのも一人ではできぬ」
「そういうことがわかったのね」
「壊れた城はまた建て直せばよい」
 今の安土城の様に、そうだというのだ。
「しかしじゃ。仲間はそうはいかぬ」
「それだけ掛け替えのない存在だからね」
「人は死ねばそれで終わりじゃ」
 こうも言うノブナガだった。
「だからじゃ。それはじゃ」
「そうね。それじゃあね」
「うむ、御主達も仲間じゃ」
 他の世界から来ただ。彼女達もだというのだ。
「ならばじゃ。これからもじゃ」
「ええ、それじゃあね」
 ビアンカもノブナガも笑みになる。そのうえでの話だった。
 ライダー達はこの時ヒデヨシと共にだ。四人でだ。 
 琵琶湖の岸辺にいた。そしてその巨大な湖を見ていた。その中でだ。
 ヒデヨシは三人でだ。笑顔でこんなことを言うのだった。
「やっぱり琵琶湖っていいですよね」
「はい、そうですね」
 光が穏やかな笑顔でだ。ヒデヨシのその言葉に応える。
 琵琶湖は青と銀に澄みだ。静かな水面を見せている。その上を船達が行き来している。
 その琵琶湖を見てだ。光もヒデヨシに言うのだった。
「見ているとそれだけで落ち着きますね」
「海みたいですよね」
「この琵琶湖は」
「私ずっと東京の方にいて」
 ヒデヨシはその身の上を話す。
「こうした湖って見たことなかったんですよ」
「海はありますよね」
「はい、あります」
 それはだというのだ。
「私海大好きなんですよ」
「海っていうと」
 ここでだ。三輪がだ。海と聞いてだ。
 少し微妙な顔になりだ。こんなことを言ったのである。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その三

「よく行ったわ。けれどね」
「けれど?」
「泳いだことは殆どなかったわね」
「何でですか?」
「写真に撮られてばかりで」
 それでだというのだ。
「泳ぐことはなかったわ」
「そうなんですか」
「ええ、多分それは」
「ええ、そうよ」
 ここでだ。マサムネもひょっこりとだ。ヒデヨシの横に出て来た。
 そしてそのうえでだ。三輪の言葉に応えてきたのである。
「私にしてもそれは同じでね」
「色々とあるわよね」
「本当にね。何かとね」
 こう二人で話すのだった。
「海に出ても泳げなくて」
「写真に撮られてばかりになって」
「それが仕事だから何も言うことができなくて」
「中には派手な水着もあったりしてね」
「困るのよね」
 こんな話をする二人だった。そしてだ。
 そんな彼女達の話を聞いてだ。ヒデヨシは首を右に捻り微妙な顔になり言うのだった。
「あれっ、先生ってグラビアとかの御仕事も?」
「それに三輪さんって確か」
 光は三輪をいぶかしむ目で見て言う。
「前の御仕事はOLだったんじゃ」
「それでどうしてグラビアを?」
「アルバイトとかで、ですか?」
「まあその辺りはね」
「色々とあるのよ」
 三輪とマサムネは少しバツの悪い顔になって返す。
「あれで重要なお仕事だから」
「色々とやったわ」
「先生って何かあれですよね」
 ヒデヨシはそのマサムネを見つつまた言った。
「カメレオンになったり博物館の人になったりですよね」
「アルバイトは一杯したわ」
「前にはマクドナルドにもおられたとか」
「ええ、学生時代にアルバイトしてたのよ」
「そんなに大変だったんですか?昔は」
「ええと。実家は大きなお家だけれど」
 それでもだというのだ。伊達家はヒデヨシ達の世界でも大名の家で華族でもあった。だがそれでもだったのだ。
「学生時代は頑張ったのよ」
「仙台から出て来て大変だったんですね」
「まあ一番困ったのは食べものだけれど」
「お口に合わなかったんですか」
「御味噌が特にね」
 こうした話もする彼女達だ。そんな話をしながらだ。
 五人で湖を見ていく。その中でだ。
 ふとだ。霧島がだ。琵琶湖の先の陸地にだ。
 あるものを見た。そして仲間達に言ったのである。
「あれは」
「あれは?」
「あの社は何かしら」
 対岸にだ。社を見たのだ。
「急に出て来たけれど」
「あっ、そういえばですね」
「見えるわね」
 光と三輪もだ。その社を確認した。そのうえで言うのだった。
「ここから見えるということはかなり大きな社ですね」
「あれだけ大きな社は滅多にないわね」
「どの神社でしょうか」
「かなり大きな神社なのはわかるけれど」
「あれっ?」
 光と三輪の話を聞いてだ。ヒデヨシはだ。
 きょとんとした感じの顔になり右手の人差し指を顎にやりだ。そのうえでその首を右に傾げさせてだ。そのうえでマサムネに尋ねたのである。
「そんな大きな神社琵琶湖のところにありました?」
「神社は多いけれど」
 マサムネもだ。いぶかしむ顔でヒデヨシに応える。
「それでも。あそこまで大きな社を持つ神社は」
「なかったですよね」
「ええ、この世界にもなかったわ」
 そうだとだ。マサムネはヒデヨシに話す。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その四

「この辺りは何度も馬で走ったけれど」
「じゃあ何なんでしょうか」
「一度言ってみる?」
 霧島はその社を見ながら二人に問うた。
「ここはね」
「そうですね。それじゃあ」
「行ってみましょう」
「じゃあ今からね」
 こうしてだ。五人はすぐにだ。その対岸に馬で向かった。そうしたのだ。
 そして辿り着くとだ。その社は。
 赤く何十メートルもあった。その巨大な社を見上げてだ。霧島は言った。
「こちらの世界の靖国神社のそれよりも大きいわね」
「こんな大きなのはじめて見ました」
 光も驚きを隠せない感じだ。
「あの、これは一体」
「やっぱり見たことがないわ」
 マサムネは赤い巨大な社を見上げつつ呟いた。
「ここまで大きなのはね」
「じゃあ一体この神社は」
「何なんですか?」
 霧島とヒデヨシがマサムネに問う。
「急に出て来たみたいだけれど」
「こんなの急には造られないですよね」
「じゃあ一体何だと思うのかしら」
「先生、心当たりはありますか?」
「心当たりはあるわ」
 それはだとだ。マサムネはヒデヨシの問いに答える。
 そのうえでだ。こう仲間達に言うのだった。
「この神社こそがね」
「スサノオですか」
「有り得るわ」
 その可能性がだというのだ。
「それもね」
「えっ、じゃあまさか」
「今にもここから」
「気配はないわね」
 三輪は鋭い目になりヒデヨシとマサムネに告げた。
「けれどここはね」
「怪しいことは間違いないわ」
 霧島も鋭い顔で述べる。言いながら周囲を見回している。
「急に出て来たのならね」
「ここは一旦安土に帰りましょう」
 そしてだ。光はこう提案した。
「そうして皆さんと一緒にです」
「そうね。また来た方がいいわね」
 マサムネもだ。その左目で周囲を見回しながら述べる。
「五人だけだと」
「負けはしないわ」
 霧島は絶対の自信をマサムネに見せた。
「私達はね。何があろうとも」
「けれどそれでもなのね」
「ええ、完全に勝つ為にね」
 まさにだ。その為にだというのだ。
「万全を期すべきだから」
「その辺りかなり慎重なのね」
「戦いに慣れてるから」
 だからだとだ。伊達にそうではないというのだ。
「それでなのよ」
「わかったわ。それではね」
「一旦安土に戻りましょう」
 こう話してだ。乙女達は一旦安土城に戻った。そのうえでだ。
 一同にその巨大な社のことを話す。それを受けてだ。
 まずはだ。ノブナガの傍らに控えるミツヒデが言うのだった。
「はて。その様な社なぞ」
「御存知ないですか」
「うむ、初耳だ」
 実際にそうだとだ。ミツヒデは自分の顎に右手を当てて考える顔で光に述べる。
「そこまで巨大な社だと嫌でも目につくが」
「それにじゃ」
 今度はノブナガが言う。今はこちら側の世界とそれぞれの世界の面々が向かい合うその間、上座であるがそこにだ。ミツヒデを傍らに置いて言うのだった。
「わしの領地の寺社は全て把握しておるが」
「近江にその様な社がある神社はありませぬ」
 今度はノブナガに答えるミツヒデだった。
「ですからこれは」
「かなり。怪しいのう」
「はい、確実にです」
「スサノオの社じゃな」
 ノブナガはこう断言した。
「そこにわし等を誘っておるわ」
「ではどうされますか」
「うむ、わしの意見は決まっておる」
 ミツヒデの言葉に応えてだ。ノブナガは言った。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その五

「行くべきじゃ」
「はい、それでは」
「皆はどう思うか」
 ノブナガは自分の意見を述べてからだ。あらためて一同に問うた。そうしたのだ。
 それを受けてだ。まずは十兵衛が述べたのである。
「ううんと、それじゃあその社に行ってみよう」
「そうじゃな。そこまで怪しいとのう」
「行くべきね」
 幸村と千姫もだ。行くべきだというのだ。
「行って確めるべきじゃ」
「そして何か出て来たらその時は」
「戦じゃ」
「またスサノオをやっつけてあげるわ」
「そう。行くのなら」
 翔子もぽつりとした口調で述べる。
「徹底的に倒すべき」
「そうじゃな。今から皆で行こうぞ」
「そしてスサノオを倒すぞ」
 シンゲンとケンシンも続く。しかしだ。
 ヒデヨシは幾分慌ててだ。こう言ったのである。
「ううん、何か大変なことになりそうだけれど」
「だから戦だ」
 ミツヒデはそのヒデヨシに対して述べた。
「戦だ。命を賭けたな」
「私そういうのはあまり」
「しかし御主も戦をせねばならないのだ」
 こう強くだ。ミツヒデはヒデヨシに話す。
「それはわかっていると思うが」
「じゃあわかったわ。それじゃあ」
「うん、戦うわ私も」
 仕方ないといった顔で頷くヒデヨシだった。だが決めたからにはだった。
 はっきりとした顔になってだ。そうして言うのだった。
「この世界、絶対に護ってみせるわよ」
「そうじゃのう。じゃあやるけえ」
「よし、スサノオでも何でも倒してやるぜよ」
「私達の世界護ってみせるばい」
 モトナリにモトチカ、ソウリンも言う。こうして話は決まった。
 そしてその中でだ。ヨシモトは優雅な面持ちでこんなことを言うのだった。
「ではわたくしも参りますが」
「何かあるのですか?」
「このことは是非物語にしたためなければなりませんね」
 こうだ。穏やかにイエヤスに話すのだった。
「是非共ですね」
「戦も物語ですけれど」
「だからですわ。是非書き残さないといけませんわね」
「それはそうですけれど」
 幾分かだ。困惑した顔でヨシモトに言うイエヤスだった。だが、だった。
 イエヤスは何かを察した鋭い顔になりだ。こう言うのだった。
「スサノオ、どうも」
「イエヤスさん、何か感じましたの?」
「邪なものよりも妙なものを感じます」
「妙なものとは?」
「常に私達を見て仕掛ける。歪んではいますが」
 それでもだというのだ。
「妙に遊んでいるものが確かにありますね」
「そうそう、それそれ」
 愛子がここでそのイエヤスに突っ込みを入れる。右手の人差し指で指し示す動作をしつつだ。
「イエヤスちゃんにもわかるでしょ。スサノオってそういう奴だから」
「それによって暇潰しをしているとは聞いたけれど」
「それなのよ。スサノオはそうして楽しむ奴だから」
「歪んでいるけれど純粋な」
「そんな奴だから。結構複雑なのよ」
 愛子はこれまでの戦いで彼女がわかったことをイエヤスに話す。そうしてだ。
 その話をしてからだ。愛子はイエヤスにさらに述べた。
「じゃあとにかくその靖国神社のそれみたいな社にね」
「そこに行ってスサノオが出て来たらやっつけるのね」
 アイが愛子に問う。
「そういうことね」
「それじゃあ今から行きましょう、皆でね」
 こう話してだった。そのうえでだ。
 戦士達はその社に来た。それは一瞬のことだった。
 その一瞬の移動に対してだ。突込みを入れたのは英理子だった。
「仮面ライダーって常にこうなのよね」
「否定はしないわよ」
 彼女の周りを飛ぶキバーラが応える。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その六

「携帯かけたら一瞬で来るからね」
「どういう現象なのかしら」
「俗に言う井上ワープよ」
「井上?」
「東映ワープでもいいわ」
 どちらにしてもワープだった。
「呼べばあっという間に来てくれるのが仮面ライダーなのは覚えておいてね」
「それはかなり便利じゃな」
 突込みを入れたのはノブナガだった。
「わしも欲しいのう、その力は」
「そうですよね。便利ですから」
 ヒデヨシはノブナガのその言葉に能天気な調子で頷く。
「学校にも遅刻しないし」
「あの、ヒデヨシさんの場合は」
 マサムネはそのヒデヨシの話に呆れた顔で突っ込みを入れる。
「もっと早く起きないと」
「だって。幾ら寝ても足りないですから」
 そのマサムネにこう返すヒデヨシだった。
「ですから」
「一日何時間寝てるの?」
「九時間は」
 それだけ寝ているというのだ。
「寝ています」
「寝過ぎじゃないの?」
「そうですよね」
 美波と美晴がヒデヨシの話を聞いて言う。
「それは幾ら何でも」
「極端ではないでしょうか」
「うう、小学生の頃は十二時間だったし」
 バツが悪そうな顔になってだ。両手の人差し指を突付き合わさせてだ。ヒデヨシは分が悪い顔で言う。
「それに比べれば」
「まあ。十二時間はちょっとね」
「幾ら何でもですけれど」
「それから三時間も減ってるし」
 何とかだ。ヒデヨシは言おうとする。
「いいわよね、九時間も」
「個人差はあるけれどね」
「それは確かにですけれど」
 美波と美晴はまだ言う。しかしだった。 
 ヒデヨシはまだだ。何か言おうとするがだった。苦しいところだった。
 その苦しい彼女がまだ言おうとするがだ。それより先にミツヒデが言った。
「それではだ」
「あっ、行かないといけないの?」
「御館様、どうされますか?」
 ミツヒデはノブナガにも問うた。
「もうそろそろだと思いますが」
「そうじゃな。神社の奥に向かうか」
「そうしましょう」
 こう話してだった。そのうえでだ。
 一行は神社の奥に入ろうとする。しかしだ。
 それより前にだった。この声が聞こえてきたのだった。
「ははは、やはり来たか」
「その声は」
「やっぱりここだったのね」
「如何にも」
 その通りだとだ。スサノオの声がだ。光とキバーラに応える。
 そのうえでだ。こう一同に言ってきたのである。
「さて、この世界でも君達と戦うことになるが」
「ちょっと聞きたいことがあるわ」
 千姫が鋭い目でスサノオに問う。
「何でこの世界にしたのかしら」
「そのことか」
「そうよ。どうしてなのかしら」
「面白い世界だからだ」
 これがスサノオの理由だった。
 彼はだ。戦士達にさらに言うのだった。
「だからだ」
「女の子しかいないから」
 十兵衛が考える顔で述べた。
「だからなのかしら」
「その通りだ」
 まさにそうだと答えるスサノオだった。
「こうした世界は他にない」
「やっぱりそうなんですね」
「そうだと思っていたけれど」
 ヒデヨシとマサムネが顔を見合わせて話す。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その七

「他にはこんな世界ないんですね」
「女性だけの世界というのは」
「男は来たら俺みたいになるしな」
 シロは考える顔で腕を組んで述べた。
「トンデモもいいところだぜ」
「そうした世界でも戦士達がいる」
 スサノオの話は続く。
「そして何かを目指しているからだ」
「そういうことか。やはりな」
「予想通りではあるな」
 シンゲンとケンシンが述べる。
「それで来てか」
「我々と戦うというのか」
「確かに戦うつもりではある」
 このことは間違いないと言う。しかしだ。
 ここでだ。こうも言うスサノオだった。
「しかし君達を見せてもらおう」
「はい、そう来たわね」
「予想通りね」
 英理子と愛子はある意味慣れていた。
 そしてその慣れのままだ。二人は言うのだった。
「で、こっちの世界では何を出してくるのかしら」
「ワームとファンガイアはもう出したけれど?」
「この者達だ」
 スサノオが言うとだ。急にだ。
 それはだ。赤い服の一団だった。その彼等を見てだ。
 三輪はだ。眉を顰めさせて言うのだった。
「ジューシャよ」
「ジューシャ?」
「ああ、言ってなかったわね」
 いぶかしむ顔になった翔子にだ。三輪は話した。
「ゲドンという組織の戦闘員よ」
「ゲドン。確か」
「そう、仮面ライダーアマゾンと戦った敵の組織よ」
「アマゾン。山本大介さん」
「この人のことは話したと思うけれど」
「アマゾン川流域で生まれ育った野生の戦士」
 翔子達が知っているアマゾンへの知識はこの程度だった。実は彼女達はそうしたライダー達とは会っていない。だからだ。こうした言葉になったのである。
「その人と戦った組織」
「この世界は女の子しか来られないから」
 それでだとだ。三輪は予想するのだった。
 そのうえでだ。あらためてスサノオに問うたのである。
「その通りね」
「如何にも」
 その通りだとだ。スサノオは楽しげに答える。
「流石だ。察したか」
「ということはあれね」
「この世界に来る怪人達もだ」
 実に古典的な表現も出た。
「女のものばかりだ」
「そういうことね」
「では彼女達も見せよう」
 こう言うとだった。すぐにだった。
 戦士達の周囲にだ。女の怪人達が一斉に出た。そうしてだ。
 奇声をあげる。その彼女達を見てだった。
 霧島がだ。こう仲間達に言ったのである。
「じゃあ。いいわね」
「ふむ。妖怪の軍勢じゃな」
 その彼等を見てだ。ノブナガは言った。
 そしてそのうえでだ。大刀を出して構える。そのうえでだ。
 ミツヒデ達にだ。こう言ったのである。
「さて、それではじゃ」
「今よりですね」
「戦いですね」
「そうじゃ。やるぞ」
 苦無を構えたミツヒデ、棒を構えるヒデヨシにも述べる。
「よいな」
「わかりました。それでは」
「戦うんなら覚悟を決めて」
 こうしてだった。まずはこの三人が構えに入る。その他にもだ。
 戦士達が構えてだ。怪人達を見る。ライダー達もだ。
 変身をする。それを済ませてからだ。キバーラがだ。仮面ライダーキバーラになった光に話した。
「さて、こっちの世界でもね」
「はい、戦って」
「そうよ。戦うからね」
「勝ちましょう」
 光は毅然とした顔で言った。そうしてだ。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その八

 目の前の蜂女に襲い掛かる。そのフェシングをかわしながらだ。
 拳を繰り出す。彼女の闘いもはじまっていた。
 その中でだ。ヒデヨシはだ。棒を縦横に振るいだ。
 ジューシャ達を倒していく。瑞希達もだ。
 試験召喚システムの中でだ。ジューシャを複数相手にする。しかしだ。
 そのシステムの中でジューシャ達を薙ぎ倒す。そして言うのだった。
「あれっ、何かこれまでの戦いよりも」
「そうよね、こいつ等って」
 美波もだ。召喚獣で闘いながら言うのだった。
「オルフェノクやワームよりもね」
「弱いですね」
「ファンガイアとも全然違うわ」
 てんで弱いというのだ。
「楽勝に近いけれど」
「どういうことなんでしょうか」
「戦闘員だからよ」
 いぶかしむ二人にだ。光の腰のところにいるキバーラが話してきた。
「だからなのよ」
「戦闘員というと何か」
「雑魚ってイメージがあるけれど」
「そうよ、雑魚よ」
 まさにそれだというのだ。
「この連中は雑魚だから」
「だから弱いんですか」
「こうしてあっさりやっつけられるのね」
「そうよ。この連中は気にしなくていいわ」
 キバーラは述べる。そしてだ。
 その戦いの中でだ。ローズはだ。
 炎を出してジューシャ達を退けながらだ。そのうえでだ。
 怪人達にも向かう。彼女が向かったのは。
 トカゲと人の合成怪人だった。右手にはギロチンがある。その怪人を見て言うのだった。
「これって何か」
「名前がわかったのかしら」
「ギロチントカゲ?」
 こう霧島、仮面ライダーファムに述べたのである。
「それかしら」
「そいよ、それそのものよ」
「ギロチントカゲって」
「そいつはデストロンの改造人間よ」
「デストロン?」
「スサノオが昔操っていた組織の一つよ」
 ファムはローズにわかりやすく説明する。その中でだ。
 白い剣を横薙ぎに、駒の如く動き。
 そうして敵を倒しながらだ。ローズに話すのだった。
「仮面ライダーブイスリー、ライダーマンと戦った組織よ」
「それがデストロン」
「その怪人がいた組織よ」
「何か不吉な名前」
 すぐにだ。ローズはそれは察したのだった。
「そんな組織もあったの」
「そうよ。けれどその他にも敵の組織は存在していたから」
「ファンガイアやデストロンの他にもなの」
「このことも覚えておいてね」
 こうローズに話すのだった。
「よくね」
「わかった。じゃあローズ今は」
 とりあえず今はどうするかというと。
「この戦いに勝つ」
「そういうことよ。まずはね」
「勝って生き残って」
「話はそれからよ」
 ファムも話してだ。そうしてだった。
 彼等は敵を倒していく。モトナリ達もそれは同じだった。
 モトナリは木と木の間を縦横に飛び回りだ。
 その手にある爪で怪人もジューシャも倒す。そうして言うのだった。
「うち等でも戦えるけえ。忘れたらあかんなあ」
「そうぜよ。我等とて」
「ひとかどの武士ばい」
 モトチカは斧を振るいソウリンは砲撃を行う。そうしてだ。
 彼女達も戦っていくのだった。
 そしてだ。マサムネもだった。剣と格闘術でだ。
 戦っている。その中でヒデヨシに言うのである。
「大丈夫ね」
「はい、いけます」
 棒を振るうヒデヨシもだ。毅然として返す。
「これならです」
「そう。けれどね」
 それでもだと言うマサムネだった。そのうえでだ。
 二人で背中合わせになりだ。群がる敵達を見てだ。
 そうしてだ。またヒデヨシに言うのだった。
「この戦はね」
「はい、負けられませんね」
「ええ、絶対にね」
 それはできないというのだ。
「これはそういう戦よ」
「本当にそうですね」
「だからこそ余計に」
 マサムネの左目が光った。そうしてだった。
 より強い言葉になってだ。言ったのだった。
「勝つわよ」
「はいっ、それじゃあ」
「私が見たところだけれど」
 今二人の周りにいるのはだ。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その九

 ジューシャ達にだ。後はだ。
 怪人二人だった。その状況を見ての言葉だった。
「敵は二人よ」
「あの怪人達だけですね」
「わかるわよね。戦闘員達はね」
「私でも普通に勝てます」
「彼女達は大したことがないわ」
 マサムネも戦ってみてわかったのだ。
「だから。問題は」
「怪人ですね」
 その怪人達はというと。
 アリクイを思わせる怪人とだ。後はだ。
 ムカデだった。それは。
「名前はわからないけれど」
「アリガバリとムカデヨウキヒです」
 二人を囲んでいたジューシャ達を倒しながらだ。光が答えてきた。
「それぞれショッカーとゴッドの組織の怪人です」
「あっ、その怪人達もですね」
「これまでの組織の」
「はい、そこで改造手術を受けた怪人達です」
 まさにそれだというのだ。
「彼女達もそうです」
「成程、そうなんですか」  
 既に戦いははじまっていた。ヒデヨシはここでもだ。
 棒を前に突き横に払いだ。そのうえだ。
 回転させてだ。ジューシャ達を倒しつつ光に応えるのだった。
「ショッカーにゴッドの」
「スサノオがそれぞれ操っていた組織なのね」
「はい、そうです」
「その頃はこうした改造人間ばかりだったんですね」
「スサノオの使う怪人は」
「そうなんです」 
 まさにそうだと答える光だった。
「その頃は種族とかは殆どありませんでした」
「ワームやファンガイアのことは聞いたけれど」
 マサムネもその右手に持つ刀をだ。横に払いだ。
 ジューシャを倒す。その中で話すのだった。
「改造人間は」
「今はスサノオも使いません」
「そうよね。全然みたいね」
「それでもういない存在ですけれど」
 この場においてはだ。どうかというのだ。
「こうして復活させて出て来させることもできます」
「厄介ね、本当に」
「全くですよね」
 マサムネだけでなくヒデヨシも応える。
「これって」
「そうよ、ただね」
「ただ?」
「これはどの組織でも同じみたいね」
 マサムネは戦いながらヒデヨシに話していく。
「スサノオが操る組織はね」
「うう、全部の組織がですか」
「その通りよ」
 ファムが二人に話す。
「どの種族でもね」
「スサノオがいる限り何度でも甦る」
「それが私達の相手よ」
「ただしね」
 キバーラがここでこのことを話した。
「あたし達もそうよ」
「私達も?」
「何度もなんですか?」
「戦いが終わるまで何度でも生き返って戦わないといけないのよ」
 そうだとだ。キバーラはヒデヨシ達に話す。
「それが運命なのよ」
「生き返るのはいいんですけれど」
 言いながらだ。ヒデヨシは棒を前に突き出した。それでだ。
 前にいる怪人、アリガバリの腹を突いた。それからだ。
 その棒を一旦引いて上に旋回させて頭も打ちだ。それで倒したのだった。
 怪人を倒してからだ。彼女は言うのだった。
「あの、何かそれも結構」
「辛いわね」
 マサムネもだ。その刀でジューシャ達を切り伏せつつ言う。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その十

「考えてみて。スサノオが諦めるか私達がスサノオに完全に勝つまでね」
「戦い続けないといけないんですから」
「それも辛いことよ」
「うう、何か大変なことになっちゃいましたね」
「あっ、あんた達はまだ大丈夫よ」
 だが、だ。ここで泣きそうな顔になったヒデヨシにキバーラが話したのだ。
「この一連の戦いまでだから」
「そうなんですか」
「どうも今回の戦いはあちこちの世界に介入していているスサノオを退ける戦いで」
 それでだというのだ。
「全部の世界からスサノオを退けたら終わるから」
「それまでの間なんですか、私達は」
「あんた達はね」
 そうだとだ。キバーラは話す。しかしだ。
 マサムネがだ。キバーラの話を聞いて言うのだった。
「けれど貴女達はどうなのかしら」
「あたし達?」
「私達がこの戦いでとりあえずの戦いは終わっても」
「あたし達仮面ライダーはどうかっていうのね」
「まだ。戦うわね」
 今回の大きな戦いが終わってもだとだ。キバーラに問うたのである。
「そうなるのね」
「ええ、そうよ」
 これもその通りだとだ。キバーラは答えた。
 そしてそのうえでだ。ヒデヨシ達に話したのである。
「仮面ライダーは人間として永遠にスサノオと戦う存在なのよ」
「スサノオが諦めるか完全に倒されるまで」
「そう、それまでね」
「死ぬこともできずに」
「生き返るからね、何度も」
 結果としてだ。そうなることだった。
「黒衣の青年やスマートレディのことも話したわね」
「はい」 
 その通りだとだ。ヒデヨシが答えた。
「それはもう聞きました」
「その通りよ。あの神様達が甦らせてくれてね」
「何度も何度も」
「実際に死んだけれどそうなった人もいるし」
 実際にだ。そうしたライダーもいるというのだ。
「だからね。そういうことなのよ」
「ふむ。それが仮面ライダーというものか」
 ノブナガもだ。戦いの中にいた。
 彼女はその大剣をだ。縦横に振るいだ。
 ジューシャだけでなく怪人達も薙ぎ倒していた。彼女の強さは圧倒的だった。
 その圧倒的な武勇で敵を倒しつつだ。言うのだった。
「成程のう」
「運命だからね」
 ファムの言葉は受け入れるものだった。
「迷いはもうないわ」
「だからこそ戦えるのじゃな」
「そういうことよ。だから」
「この世界でもじゃな」
「戦うわ」
 また言うファムだった。そうしてだ。
 ファイナルベイントを出してだ。周りの敵をだ。
 剣で次々に切り伏せてだ。それによってだ。
 戦局を決めた。敵はだ。
 今のファムのファイナルベイントで数を一気に減らした。それを受けてだ。
 他の戦士達も一気に攻勢に出る。イエヤスもだ。
 杖を上に掲げてだ。上空に巨大な魔法陣、徳川の家紋のそれを出して。
 そこから放たれ落とされる光でだ。敵を倒していきだ。遂にだった。
 全ての敵が倒された。それを見届けた様にだ。
 スサノオがだ。また言ってきたのだった。
「ふむ」
「何じゃ?」
「この戦いは無事勝ったか」
 スサノオはノブナガに応えて述べた。
「見事だと言っておこう」
「では次は御主か」
「いや、今は止めておこう」 
 こう応えてだ。そしてだった。
 ノブナガ達の目の前に現われた。それはだ。
 あの赤い甲冑だった。その姿で出て来てだ。言うのだった。
「しかし挨拶はしておこう」
「その姿を取るか」
「この世界では私に相応しい姿だからな」
 だからだというのだ。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その十一

「この世界を支配する力にな」
「ふん、今更その様なものには頼らぬ」
 ノブナガはその赤い甲冑の姿になっているスサノオに対して冷笑を向けた。そうしてだった。
 彼女はだ。こう彼に言ったのである。
「わしはわしの力で天下に泰平をもたらすわ」
「そうだ、何を今更」
「その様なものに頼る必要がある」
 シンゲンとケンシンもだ。そのスサノオに言う。
「わしもまたわしの力でだ」
「天下を泰平にする!」
「わし等の力ならばだ!」
「それは可能!」
「そういうことですわね」
 ヨシモトもだ。優雅にそこに立ち言うのだった。
「わたくし天下には興味がありませんけれど」
「それでもだというのだな」
「今更。その様なものが出て来ても」
 落ち着いてだ。そのスサノオの甲冑を見ての話だった。
「何ともありませんわ」
「わ、私も」
 イエヤスは自身の過去に幾分か負い目を感じながら述べた。
「もうそんなのいらないんだからっ」
「それ本当ばい?」
 ソウリンがそのイエヤスに問う。
「それだと何の心配もないでごわすが」
「こいつの場合はわからんぜよ」
 モトチカも幾分疑惑を感じながらイエヤスを見ていた。
「何しろ安土であれだけ暴れた奴きに。そこが心配ぜよ」
「だからね。あの時にわかったのよ」
 イエヤスは必死の顔になり前に出てソウリンとモトチカに話す。
「あんなのに頼って何かをしても意味がないって」
「それでわかったと言うばい?」
「そう言いたいきに」
「そうよ、そういうことよ」
イエヤスも必死の顔で言う。
「何で今更そんなものに頼って」
「まさか貴殿は」
 ミツヒデは今のイエヤスの言葉からだった。
 あることを察してだ。こう問うたのだった。
「まだ天下を狙っているのか」
「前まではそうだったわ」
 そのミツヒデに対してだ。イエヤスはこう返した。
「けれど今は違うわ」
「まことか?それは」
「だって。天下を手に入れても」
 そうしてもだとだ。イエヤスは眉を曇らせて話した。
「私は自分のことしか考えられないから」
「だからだというのか」
「すぐに天下はまた乱れるわ」
 天下を手に入れてもだ。維持はできないというのだ。
「そんな私が手に入れても仕方ないじゃない」
「それで天下を諦めたというのか」
「そうよ。だから私は今は」
 ヨシモトの方を見た。今も彼女の隣にいるヨシモトをだ。
 そうしてだ。ミツヒデにあらためて話したのである。
「お姉様と一緒にいるのよ」
「イエヤスちゃんには色々と手ほどきしていますの」
 ヨシモトはにこりと笑って仲間達に話す。
「とても筋がよくて。教えがいがありますわ」
「一体何を教えてるんですか?イエヤスさんに」
「色々と」
 くすりと笑ってだ。美晴にも応えるヨシモトだった。
「学問や物語以外にもですわよ」
「絶対に怪しいことですね」
「間違いないわね」
 自分達も割合そうした間柄だからだ。半蔵と千姫はわかった。
 そうしてだ。千姫はこんなことも言うのだった。
「私も。実はね」
「何かあるのですか?まさか私以外の女の方と」
「違うわよ、女の子は貴女だけよ」
 さりげなくだ。千姫はとんでもない秘密を自分から口にした。
「そして操は宗朗だけだからな」
「ではどうして」
「兼続よ」
 その彼女を見ながら話したのである。
「あの娘とね。乳こそ全てという世界でね」
「乳こそ全てですか」
「その世界で妙に絡まれてる気がするのよ」
「そうした世界にも縁がおありですか」
「どうやらね。他にも瑞希さんがいたり」
「そういえば何か記憶が」
 瑞希もだ。千姫の言葉にふと気付いたのだった。
 

 

第二十三話 甲冑乙女その十二

 そのうえでだ。こんなことを言うのだった。
「討ち乳の刑とかがあって」
「それでよ。兼続はその世界でその討ち乳の刑になったのよ」
「それでその別世界の兼続さんにですか」
「妙に絡まれているのよ」
 そうなっているというのだ。千姫は兼続を見ながら言うのだった。
「どういうことかわからないけれど」
「左様ですか。しかし乳が全ての世界ですか」
「凄い世界だと思うわね」
「この世界に勝るとも劣りませんね」
 そこまで凄い世界だとだ。半蔵もだ。
 唸る様にして声を出して首を捻りつつだ。千姫に答えた。
「無茶な