恋姫~如水伝~


 

最終話の時点での人物紹介

 
前書き
この小説の黒田の人柄を紹介します 

 
姓 黒田 名 孝高 通称 官兵衛 洗礼名 ドン・シメオン

役職 曹操軍首席軍師兼序列六位将軍 外交交渉責任者 情報局局長 技術開発担当 流通・財貨内政担当

性格 臆病、冷静沈着、倹約家

趣味 読書、情報収集、思考、歌詠み

特技 築城、交渉、海戦以外の戦闘指揮

好きな事 権謀術数、華々しい事、子供と遊ぶ

嫌いな事 見苦しい行為、浪費

人物
日本の戦国時代に生きた武将、豊臣秀吉の軍師として名を知られ天下を盗る策を秀吉に授けた智謀の人。
臨終の間際の声に応じて、今の世界に来た。

実年齢は五十九歳だが、この世界に来て若返り、二十前後の外見。更に、昔、荒木側によって有岡城に投獄された時に出来た瘡や足の不具は無くなっている。
無一文で行くあての無かった所を曹操に拾われ、その比類なき才能を再び曹操の下で発揮し、曹操から評価されている。鮮やかな桔梗色の小袖を身に纏い、涼やかな風貌と巧みな処世術を持ちあわせており人当たりも良い。

曹操達と違い真名が無く、親しい者や同僚、部下からは隠居名の如水で呼ばれているが、桔梗色の小袖を着ている事と、曹操の創った天の遣いと言う噂から、最近では、水色策士、又は空の奇術師と呼ばれ始めた。

謀を大いに好むが、欲が少ない、その証拠の一つに曹操から多額の金銭を貰いながら、殆ど諜報や研究に使い、曹操に役立つ為に日夜、自身の研鑽をしており、その事を知る曹操からの信任や周囲の者からの信頼も厚い。
政戦において卓越した能力と、豊富な知識と経験を持ち、文武に秀でているが、馬術以外の腕力等と言った個人の格闘では一般以下と言ってもいい。それと、海を見ることや潮の香りを楽しむ事は好きだが、泳ぐ事は苦手。その事は昔、足萎えだった事も関係している。

また、以前、宣教師等から教わった知識を自身で創意工夫し技術として確立し、曹操陣営の医療、軍事、政事に役立てている。

基本的に血生臭い事や荒事は苦手で、人を殺す事も嫌いだが、それ以上に綺麗事や自身の言動を言い繕う事が嫌い。自分の成すべき事の為には、悪事にも手を染める事も厭わず、そのせいで汚名を着せられても構わないといった心構えを持つ。

 
 

 
後書き
ほとんど私の私見です。
少し訂正してみました。 

 

序章

 
前書き
はじめて投稿します、感想を書いてもらえるとありがたいです 

 
日本国慶長9年・京伏見 そこで一人の男が息を引き取ろうとしていた。
その男の名は黒田孝高、呼名を官兵衛と言い、隠居した今では如水と呼ばれかつてこの国の戦国の世で亡き太閤秀吉を助け、その天下を作ったとまで巷間では噂に語られる戦国英雄列伝に名を連ねる一人の老人である。 
「私もここで死ぬか。乱世を終わらせた自分の役目もここまでだと思えば、良い人生だったかも知れんな」
と呟きながら自分の半生を振り返ってみた。
「非業に死んだ故右大臣、落魄して没した藤兵衛殿、御拾いの事を案じながら世を去った秀吉に。この戦乱で無念に散っていった者たちに比べればなんと幸せな事だろうか」
そして今は無き二人の友を思い出し
「隆景殿に重治殿の二人に比べれば、愚息は大封を持ち、徳川の覚えも悪くない、悔いの無い人生だろうな」
と面白みを込めて満足していた。しかしと自分でも思う事がある自分に別の生き方があればどうしたのだろうかと、自分の人生は二人の人間を助けてきた。最初は小寺政職で次は羽柴秀吉。関ヶ原の時は運に任せて自分が天下を取ろうとしたが天運が自分に無く自分に出来るのは誰かを支える事だと知った。それでも自分が思うのは別の人生を歩く自分の姿だった。
そして末期の息を引き取る今際に誰かの声が聞こえた気がした。

もう一度機会が欲しいかと

おぼろげな意識の中で自分はそれを望んだ。 
 

 
後書き
黒田官兵衛と書いていますが人物は自分の想像なので歴史好きの方は不満があるかもしれませんがご了承ください 

 

一話

目を開けると不思議な景色の中に自分が居る事がわかった。これまでに見た事が無い風景、そして病に臥せっていた自分が起きあがっている事、そして一番の衝撃は、牢に入れられて脚萎えになっていた自分が2本の足で立っている事。そんな疑問を思った時に剣を突きつけられた。
「おいそこの兄ちゃん、なんか金目の物持ってねえかい?」
と、声をかけて来た男が盗賊だと気づくのに時間は掛からなかった。

「私に声を掛けたのは貴方ですか」

ととぼけるように答え時間を稼ごうとした。

「そうだよ、金目の物が欲しいんだが兄ちゃんもってねえのか」

だが、相手も急ぐ用に同じ事を言ってきた、逆らって殺される必要もないので、ここは素直に言う事を聞いておく事にした。
「生憎と今持っていない衣服だけ盗って命は助けてくれないか」
謙った言い方に気を良くしたか、男は満足した用で衣類を剥ぎ取るだけで命だけは獲らないと言ってくれた。油断は出来ないがとりあえず相手がおとなしくしている事に少し安堵し衣類に手を掛けた時
「待てぃ!」
「天下の往来で堂々たる狼藉その所業許しがたい覚悟せよ」
と突如声を上げ自分を庇う様に一人の女子が相手に槍を突きつけた。
「なんだ、てめえは」
「貴様の様な者に語る名など、無い」
言うや相手を突き伏せていた、あまりの見事さに思わず感歎してしまったとそこに新しく2人の女子がやってき
「大丈夫ですかー?」
「怪我はないようでよかった」
と声を掛けて来てくれた。賊の男が倒れた事と新たにきた3人は自分を助けに来たのだと思い安心して腰が抜けてしまった。
「男子のくせに意気地がないな」
「いきなり剣を突きつけられればそうなりますよ星」
「それにこのあたりは治安がいいので盗賊にあうような機会など滅多に無さそうですし」
3人の会話を聞きながらようやく今の状況を考えたこの風景もそうだが先ほどの男や3人の身なりでここは私が知る世界とは異なる事、自分は死の間際だったのになぜこの様に生きているのか疑問が尽きなかった。
「どうした何を呆けている」
「いや、危ないところを助けてくれて感謝しますご婦人方。一つ質問してもよろしいでしょうか」
「何でしょうか」
「生憎とこの辺りは初めてでしてここが何所かお聞きしたいのですが」
「…ふむ答えてやりたいがどうやら時間の様だ後の事は陳留の刺史殿に任せるとしよう」
「そうですねー」
「ししとは…」
と言い切る前に3人は立ち去る様だ
「あの」
「すいません今は官と関わりたくないのです」
「ではでは~♪」
嵐のように去っていってしまった。そして次に見えたのは騎馬と旗、どうやら先ほど言っていた刺史の者かも知れない。ここは大人しくしていた方が良さそうだ。そうしていると騎馬武者らしき者達が自分を取り囲んできた。そして奥から黒髪と青い色の髪と金の色の髪の3人の女性が出て来た。

「華琳さま!こやつは…」
「…どうやら違うようね。連中はもっと年かさの中年男と聞いたわ」
「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」
「そうね…。けれど、逃げる様子もないは…そこの倒れている男は」
「見たところ盗賊の様ですね仲間割れでもしたのでしょうか」
「盗賊の仲間にしては堂々としているわ」
と、値踏みをする様に3人が自分を見てくる

「あなた何者?盗賊には見えないしここで何をしていたの」
と金色の髪の子が尋ねてきた
「私は黒田官兵衛と申す者です気が付けばそこの者に剣を突きつけられましたが、旅のお方らしき人に助けてもらいました」
「生国は?」
「播州でございます」
「…播州なんて所聞いた事無いは」
「貴様、華琳さまの質問に答えんかぁっ!生国を名乗れと言っておるだろうが!」
「質問にはお答えしました私の生国は播磨の国、播州と申す所です」
「姉者。そう威圧するな」
「しかし秋蘭!こ奴が盗賊の一味という事もあるのだぞ!そうですよね華琳さま!」
「そう?私には盗賊をやるような手合いには見えないのだけど」
「…それはそうですが」
「黒田…と言ったかしら?」
「はい」
「ここは陳留…。そして私は、陳留の刺史をしている者」
「刺史ですか」
刺史とはたしか唐の国の官だったがという事はここは唐の国なのだろうか
「何?」
「いえ、私の国では刺史という役職は無かったので」
「その国とは播磨の事?」
「いえ、国とは倭国の事です」
「倭国とはどこにあるの」
「恐らくですがここよりも遥か東の島国です」
「こ奴、語り者でしょうか?」
「それにしては話しがよくできてるわ」

何かを考えていたがすぐに決めたらしく
「とりあえず、そこに倒れている男は縛って連れて行きなさい。そしてあなた」
と自分をみて
「あなたは私たちについて来なさい、色々と聞きたい事もあるし。あなたも私達から聞きたい事もありそうだし」
そういって町に引き返すようだ。自分の身に起きた事を知る為にもついていく事が良さそうだった。盗賊らしき男は縛り上げられて引きずられるように連れて行かれたが、自分は逃げないと思われているのか刺史の方の馬の隣を歩くように言われた。
「何か気になる事でもあるの」
馬上から声をかけてきたのは刺史殿だった。
「いえ、自分の足で長く歩くのは久しぶりのものでしたので少し懐かしく思っただけです」
「貴方よほどの貴族だったのね」
呆れられてしまったたので少し笑ってしまった。
「いえ若い頃に足を痛めてそれで歩けなかったのです」
「若い頃って貴方、今でも十分若いじゃない」
と言って更に呆れられた。そういわれて、気が付いたが自分の体を見てみると自分の今の姿に驚いた。今の自分の体は足が悪いのがない事とそれにどう見ても元服を終えたばかりの頃の体だった。それを見て何がおもしろかったかわからないが刺史の方は少し笑って
「なんにせよ話は町についてからね!」
と楽しそうに馬を進めた。

しばらくして町に着き役場の中に入ってそこに座るように言われた。そして青い髪の女性が再び訊いた。
「もう一度聞こう。名前は」
「黒田…官兵衛といいます」
「では黒田官兵衛。おぬしの生国は」
「倭の国の播磨という所です」
「…この国にきた目的は?」
「申し訳ありません、わからないのです」
「…ではどうやってここまで来た?」
「誠に申し訳ございません。気が付けばあの荒野にいたもので」
「…華琳様」
「埒があかないわね。春蘭」
「はっ!拷問にでも掛けましょうか?」
「失礼ながら拷問に掛けられましてもそれ以上の事はわかりませんので申す事が出来ません」
「本当に埒があかないわね、…それにしても肝が据わっているわ」
「後はこ奴の持ち物ですが…」
生憎と嚢中には何も入っておらず、持っているのは普通の装束に若い頃好んだ桔梗色の小袖だけだった
「その服もこの辺りでは見ない物だしその羽織っている物はなに?」
と言ったので小袖差し出した。
「改めてみるといい服ね。色合いも鮮やかで品がある賊に狙われてもおかしくないわ」
そういって一頻り見た後返して頂き、再び小袖を羽織った
「そうやって着ていて似合うのだからそれは奪った物ではないようね」
物騒な事を言いながら褒めてくれたのは賊の類と否定してくれているのだろう。
「それにしても、東の果ての島国が貴方の生国なのね」
「…はい」
「貴様ぁ…っこちらが下手に出ていればのらりくらりとわけのわからん事ばかり言いおって」
「別に嘘は申しておりません。それに、今の会話ではそちらの刺史様が納得するように話をしているだけでございます」
「なんだと、貴様ぁっ!」
「はあ…春蘭。いい加減にしなさい」
「で、でもぉ」
「一つお伺いしてもよろしいでしょうか」
「なに?」
「刺史様を含めたお二方の名をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「そういえば名乗って無かったわね。私の名は曹孟徳。そして彼女達の名前は、夏候惇と夏候淵よ」
「…今なんと」
「聞こえなかった?」
「いえ…聞こえましたが。少し、信じられないものでしたので」
この女子達が…?
確かにその名であればここが大陸だとわかるがしかし
「失礼ながら、曹孟徳様。曹操と呼ばれておりませんか」
「そうよ、何か引っかかる事でもあるの?」
確かめる意味で念を押し通称まで聞いたが間違いないようである
「恐れながら、私としても信じられない事でして少しばかりの猶予をいただきたい」
ここが大陸だとはわかったが目の前の者が曹操と名乗っている。曹操といえば大昔の中国の魏王と称されたはずだがその者がいま刺史を勤めている。となれば私は今どうしてかは知らないが曹操が世に出る以前の過去に来ている事になる。そう考えれば曹操が女だったとにはは驚いたが今の状況も理解できる。と考えをまとめると曹操殿は声を掛けてきた。
「考えはまとまったようね」
「はい、どうやら私は自分の知る世界とは違うところに来たようでして」
「そうなの?」
「はい、私自身も信じられませんがここに自分がいると思えば納得のいく事なので」
「そう、それなら私の名乗っていない操という名を知っているも少し納得がいくわね」
というと左右の二人がにわかに殺気だち
「まさかこ奴、五胡の妖術使いでは…!」
「華琳さま!お下がりください!五胡の妖術使いなどという怪しげな輩に近付いてはなりませぬ!」
「私は妖術など使えませんそれに異国の者ではありますが五胡に当てはまる種の者でないのはたしかです」
殺気だった二人とは対照的に曹操殿は何か思いついた様に喋り出した
「…南華老仙の言葉に、こんな話があるわ」
南華老仙。たしか、荘子死んだ後の名の事のはず
「それは、道教の始祖の名ですね」
「へぇ~…大した教養ね。では夢の中で蝶となり、蝶として大いに楽しんだあと、目が覚める。この話は知っているはね」
「胡蝶の夢の話ですか」
「見事だわ、では私の考えた事もわかるわね」
「はい、ここは私の夢なのか、それともそちらの見ている夢なのかと言う事でしょう」
「そうね、それなら貴方や私たちに起きた事をその様に考えれば少し簡単ね」
ここまで話して、夏候惇殿が話しに入り込み
「な、ならば華琳さまは、我々はこ奴の見ている夢に過ぎないと仰るのですか!」
「そうではないわ。なぜなら官兵衛はここにいるのは事実、その様に考えれるということよ」
「は、はあ…」
「官兵衛が夢でここに迷い込んだか、こちらにいた官兵衛が夢の中での事を話しているのかはわからないと言う事」
「…要するに、どういうことです?」
夏候惇殿が悩んでいると夏候淵殿が助け舟を出した
「官兵衛がここにいる、と言う事だけは事実、と言う事だ」
「…うむぅ?」
「それでわからないなら、諦めろ。無理に理解しようとすれば知恵熱が出るだけだぞ」
「むむむ…」
「春蘭。色々難しいことを言ったけれど…この黒田官兵衛は、天の国から来た遣いなのだそうよ」
まだ悩んでいる夏候惇殿に曹操殿が決め付けるようにいった。
…天の国の遣いとはなんだろうか
「なんと…。この男が天の遣いなのですか?」
なぜその天の遣いとやらなら納得できるのだろう?
「五胡の妖術使いや、知らない世界から来たなんていう突拍子も話よりわ、そう説明した方がわかりやすくて済むわ。あなたもこれから自分のことを説明するときは、そうしなさい」
「確かに、そのほうが無用に警戒されることもありませんが」
「話が早くて助かるわ」
天の遣いか、その様なものに自分が化けるとはと思っていると夏候淵殿か改まった顔でこちらを見た
「さて。大きな疑問がお互い解決したところで、もっと現実的な話をして良いか?黒田」
そう話を切り出した。
「はい、よろしいですが先の賊の話でしょうか」
「いいえ、賊の方は目を覚ましてから改めて本人を問い詰めるわ、今はあなたの事よ」
「構いませんが、どういった事でしょう」
そういって私の目をみすえる
「あなた、行く宛も無い様だし私に仕えてみる気はない?」
「それはありがたい話ですが私めでよろしいのでしょうか」
「ええ、その高い教養とそれに今までの会話の節々にある品性、そしてなによりその頭の切れとそれを悟らせない所作。どれをとっても申し分ないわ。私の大きな助けになると言い切れるわ」
「そこまで私を買って頂くのでしたら喜んで御仕えさせて頂きたい」
「そう。なら決まりね、部屋を準備させるから好きに使いなさい」
「そこまでの恩遇、心より感謝します」
「ふふ…そうだわ。まだ官兵衛の真名をきいていなかったわね。教えてくれるかしら?」
「真名とは何でしょう?」
「真名を知らないの?、まあそんなところから来た事にしましょう、真名とは自分の気を許した相手だけが呼べる特別な名の事よ、迂闊に喋れば殺されても文句が言えないほど神聖な名よ」
「そうですか、私には真名とは言いませんが。孝高と言う名がございます」
「そう、では孝高と呼べばいいのね?」
「いえ…できれば如水と呼んで頂けるとありがたいのですが」
「如水、いい名ね!ではそう呼ぶ事にするわ。私もあなたに真名を預けましょう」
「華琳さま…っ。こんなどこの馬の骨とも知れぬヤツに、神聖な真名をお許しになるとは…」
夏候惇殿は再び声を荒げたが曹操殿は意にも介さず
「私は如水と話して信ずるに値する者と思って名乗るのまさか私の目を疑うの?」
「いえ…そんなつもりでは」
「ならいいわ、改めて授けるはね、私のことは華琳と呼びなさい如水、それに様はつけなくていいわ、そしてその必要以上に謙った敬語も。わかった」
ときつく念を押してきたどうやらこの口調が少し気に入らないようだ。
「わかりました、では以後。華琳と呼ばせて貰います」

そう言うと、華琳は満足した様に微笑んだ
 
 

 
後書き
柿色を桔梗色に変更しました
更新は遅いですが根気のある方だけでも付き合ってください 

 

二話

 
前書き
すごい、短いです。
すいません 

 
如水が華琳の下に仕官し、半月余りが経った。基本は文官を務め、余暇を見ては、軍の鍛錬に当たった。当初は慣れない漢文、しかも自身の知る文体と多少異なる事。そして、一介の役所では竹簡を使う為に最初は戸惑ったが文字を華琳や秋蘭に教えられ、十日目には秋蘭を含む華琳以外全ての文官より優秀な存在となっていた。
  執務室
「華琳、薪炭の仕入れについて、意見があるのだが」
「なに、申してみて」
「うむ、月に城内にある庭園の枯れ枝や草花を捨てずに薪の代わりにすれば、月の消費分の三割ほどになるのだが」
「そこまで考えて計算ができているなら。今までの毎月の薪炭の費用をあなたに直接渡すからそれであなたの好きにやってみなさい、浮いた分はあなた手元に預けて置くから好きに使って」
「…いいのか。この方法だと手元にはかなりの額が入ってしまうが」
「かまわないわ。あなたならそれも有効に活用しそうだから」
「費用がいくら安くなるのは聞かなくてもいいんだな」
「上手く使わなければあなたの取り分が減るだけのことだしね」
「了解した」


小なりとも城主として生きてきた如水は経理にも明るく、華琳の指示を受けるだけの秋蘭達と違い。自分で案件を提示し周囲に不満を持たせずに解決案を持ってくる点でも以下の文官らの無いところであり、如水の有能さを示していた

そして武官としては兵の鍛錬で自ら剣を振るう事は一切しなかったが。十人単位での戦闘指揮。百人単位での戦術指揮や部下の兵卒に対する気遣いや思いやりは端々に行き届いており、曹操軍の将では夏候惇と夏候淵の二人に並ぶ有能さを発揮していた。

「調子はどう如水」
如水が兵の鍛錬を終え城に引き上げ自分に与えられた部屋に帰ろうとすると華琳が声を掛けてきた
「ああ、最初こそ文化や風習に戸惑ったが今ではうまくやっていると思う」
「兵達からも受け入れられている様で安心したわ」
「最初は剣をまともに使えないことに春蘭に呆れられたがな」
「あの子らしいはね」
と華琳は笑い次の話題に入った
「その手に持っているのは?」
「今回の鍛錬の記録を付けた物だが今回の鍛錬の問題を挙げて今後の課題を考えようと思ってね」
「見せてもらって構わない?」
「君の軍隊の事だ遠慮されても困る、参考になるかわからないが」
そういって如水は記録した紙を手渡し華琳が目を通した
「さすがね、よく纏めているわ」
「褒められると恐縮してしまうな。恥ずかしい話だか君たちの様に実際に兵士たちの模範となる事ができないのでこのようにして兵士たちの事知るようにしている」
「そう謙遜しなくてもいいわ、私でも気が付かなかった事が書いてあったわ、上手く改善するように考えておいて」
「理解している、これを纏めて改善策を考えるつもりだ。そうなればまた目を通してもらいたいのだが」
「ええ、でも悪いけど明日までに頼むわ、こういう事は早いうちに解決したいから」
といって華琳は去って行った。
               
               華琳~私室
夜に華琳は腹心の二人を呼び如水についての意見を陳べさせた
「如水の事改めてどう思うかしら、春蘭申してみて」
「はい、最初は剣一つ使わない事に呆れましたが、兵の統率には目を見張る物があります。そして華琳様や我ら二人にはとても及びませんが部下達の信望は厚いと見ております」
「そう、秋蘭はどう思う?」
「姉者の言うように武官としても見事ですが、文官としても優れているており、もはや私では如水の仕事についていくのが精一杯の有様で」
非の打ち所の無い逸材だと言わんばかりの二人の評価を聞き華琳も内心共感した。あれほどの人間をよく拾い上げたと我ながら関心していた、しかも如水の才幹はそれだけでは無いだろう。
まず如水の典雅さ、そしてその知性は恐らく兵学そして政事さらには天下国家の大事を語らせても超一流であろう。更には、それをけして表に出さずにいる見事な処世術。どれを見てもまるで人を補佐する為に生きている様な存在だった。
「世は荒れ始めている、朝廷の腐敗に賊の跋扈いずれ天下は乱れる。そうなればこの私が天下に名を上げるにはまたとない好機。そしてその風雲に乗じて天下を掴む。それには如水の力がいるというまさに天意なのかもね」
華琳が二人に聞こえないほどの小声で呟き、そして二人に改まって向き合い
「いずれにせよ、私はまだ力を付ける必要があるわ。これからも二人とも頼むわよ」
「「はっ」」

その翌日

華琳の執務室に如水が入って来た
「昨日の言っていた案件を持ってきたが時間は構わないか?」
「いいわ、見せてみて」
如水の持ってきた書類に目を通して
「これでいいわ、明日の鍛錬からこの方法を取り組むように他の者にも伝えておくわ」
「考えた甲斐があったよ、ではこれで私は失礼しよう」
「…待って」
部屋を去ろうとする如水を華琳は呼び止めた
「少し聞きたい事があるわ。…いいかしら?」
真剣な華琳の顔を見て如水も改まった
「何かな?」
「いきなりだけど。あなた私が天下を取りたいと言ったらどう思う」
「…そうだな、私は出来うる限りの事でその大事を助けて君の天下を描いて行きたいと答えるが」
「あなた正気?」
「質問に関しての答えなら、問いかけた君も正気とは思えないが」
「そうだけど…二つほど聞いていい?なぜ会って間もない私の為にそこまでするのそれとあなたは自分が天下を取るのに興味が無いの」
「そう言われれば真面目に答えるが。君ならそれを目指しておかしくないと思ったからだ、そして私も大きな事をするのが好きだからだ。それと私が天下欲しいかと言われれば…」
少し間を置き言葉を選ぶように
「私には自分の天下が似合わないと思っただけだ」
と言ってのけた
「あなた変わり者だと言われない?」
「よく言われたよおかげで友人と言えた人は二人しか居なかったぐらいだ」
そう言って笑った如水に華琳はからかうように
「なら、私が三人目になってあげようかしら」
と軽やかな声でそう言った
「それはとてもありがたいが、私には荷が重過ぎるので辞退させてもらおう」
「なぜかしら」
華琳は答えが解っていながら問いかけた
「君の様な人には恐らく真の友と言える者は今の世で生きていたら殺しあってしまうだろうからな。ちょうど劉邦と項羽の様に」
そういって如水は部屋を去って行った
一人になった華琳は去り際の言葉を思い出し
「あの男にそこまで買われているとわね。いいわ見せてあげましょうこの曹孟徳の覇業を」
と言って笑った。
 
 

 
後書き
最後の華琳と如水の会話は史実での毛利元就の言葉をもじっています
ちなみに友とは竹中と小早川の事です 

 

三話

 
前書き
とても短い文を不定期に投稿する可能性があるので
長い目で見てください 

 
城の外では武装した兵が八千人ほどが隊伍を崩さず整列している。その近くでは荷駄に兵糧や槍や弓などの武具を積むために軍夫達が働いている。この近辺で動いている賊を討伐する為だった。賊の居場所を掴んだ華琳は賊の規模・篭っている砦・そこの首領の性格などを調べる事と、討伐の為の軍の編成と必要な武具・食糧・荷駄を用意をする事を全て、如水に任せた。
全ての用意が整った事を華琳に報告すると、すぐさま出陣の触れを出し今に至っている。
「この光景も懐かしいな、文化は違っても人の生活の根本は変わらないのかもしれないな」
昔を思い出し城壁から兵士たちを見ていると春蘭が話しかけて来た
「どうした、間の抜けた顔をして」
「いや、少し故郷を思い出してな」
「そうか、お前の故郷と比べてなにか違うか」
「いや、大した違いはないな」
そこに華琳が秋蘭を連れてやってきた
「…何を無駄話をしているの、二人とも」
叱責を受けた春蘭は狼狽し
「か…っ、華琳さま…!」
「春蘭、兵の装備と兵士の数の最終報告、まだ受けてないわよ。数は揃っているの?」
「は…はいっ。全て滞りなく済んでおります。」
「私は昨日、すべて報告した通りだが何か問題でも」
「あなたが糧食の監察官と揉めたと報告があったわ。その件はどうなっているの」
「その件は、担当官を変えて処理したと報告したが」
「その者から、直に話がしたいと申し込まれたわ」
華琳がそう告げると一人の女性が顔を出した
「この顔に見覚えがあるわね、如水」
「ああ、私が辞めさせた旬彧という名の監察官だな」
「自分の意見を聞かなかったと申しているのだけどどうするの」
「出陣前の今言われても困る、それに彼女の意見を聞いたがあまりにも馬鹿らしくて採用する気にならないので辞めさせただけだ。これ以上深く聞きたかったら城に帰陣してから改めて場を設けてくれ」
如水がそう言ってその場を去ろうとすると旬彧が声を荒げた
「待ちなさいよ、そこの男」
声を掛けられ振り向いた如水は不機嫌に返事をした
「私の事かな?」
「そうよ!あんた以外だれがいるのよ」
「男なら下に一万人近く居るそれに町に行けばまだ居るだろうが」
「今ここに居るのはあんただけじゃない」
「それだと城壁の警備に当たって居る者を数えていないことになるな」
二人が言い争っているのを見た華琳と春蘭、秋蘭はいつも物腰の柔らかい如水が不機嫌な顔を見せる事に驚いていた。
「如水でもあんな顔するのね」
「はい、私も始めて見ましたあんな如水」
「確かに兵の指揮でも滅多に声を荒げませんからね」
三人は当然知らないだろうが、如水は幼い頃から張良に憧れており。徳川秀忠に対面した折に「今張良」と称えられた自分がこの世界に来て曹操に仕え、曹操から「我が子房」とまで称えられた旬彧に会うことに楽しみにしていたが実際に人物を見てこの程度の者かと失望していたために、今回は子供のように拗ねて不機嫌になっていた。
「二人共いい加減にしなさい」
珍しいものが見て感心していたが、さすがに出陣前にこんな言い合いをしている二人を見て華琳は静止させた
「君が旬彧をここに連れてこなければよかっただけのことだ、ここで時間を無駄にするのも惜しい。これ以上この場で時を浪費するなら私は自分の部隊だけでも連れて索敵の任に当たるが構わないな」
静止した華琳にそう言ってから時を急ぐ用に如水は部隊の方に去っていった。
「待ちなさい、如水」
如水を追いかける様に華琳が去っていくと春蘭と秋蘭も後を追っていった
そしてその場には旬彧だけが残り周りの者からは如水に二度も言い負かされ挙句に曹操に捨てられた事に嘲笑の眼差しで見られていた。
「おのれ、男の分際でよくも曹操様の傍でこの私に恥を掻かせて覚えていなさい」
と言って旬彧もその場を去った。その後で、更に大きな笑い声が聞こえ自分の事を笑っているのだと察したその屈辱に耐えきれなかったがそれでも、曹操をまじかで見て自分の才を披露するのはこの方を置いていないと確信していたそのためにはどんな嘲笑も甘んじてうけるつもりだった


 休息地・本陣
出陣前の事を恥じた如水は華琳の陣に足を運び城壁での醜態を詫びていた
「先ほどは見苦しい振る舞いをして申し訳なかった。しかも腹をたて軍を独断で動かすとは将として恥ずべき事。いかなる罰も受けるつもりだ」
「いいえ、さっきの事は私が時を選ばなかった事が悪かったわ。それにあそこで時を無駄にしていたら兵の士気がだれていたわ、それに気づかせてくれてありがとう」
「しかし、君に八つ当たりをして去って行ったのは事実だ。このまま許されては私の気が治まらない」
「では、この討伐で見事に働く事。それがあなたに課す罰よいいわね」
「わかった、君が納得するような働きを示して見せよう」
そのようなやり取りがあり如水が自分の陣に帰ると敵情偵察していた者と敵陣に潜入していた者が帰ってきたとの知らせがあった。
その話を聞き、華琳と春蘭、秋蘭を呼び報告内容を語らせた。
「聞いた限りだと連中はただの賊の集まりと言った方が正しいでしょうね」
「うむ、だからこそれらを纏める者が出て軍閥に成る前に早く討伐した方が良いでしょう」
「そうね、これ以上民草に害をなす輩を放って置けないし。それにこのような賊の横暴は私としても許しがたいは一刻も早く淘汰するわよ」
「彼らは古い砦に篭っているそうだが今回はそれを奪うだけでなく出来うる限り根絶やしにする必要があるな」
「たしかに、また他所で狼藉を働かれても困るしそれは頭に入れておきましょう」
華琳が基本方針を決めると三人に問いかけた
「攻め方についてなにか工夫がある?」
「…??そのまま賊の所に向かって攻め落とせばいい話では?」
「姉者、それでは取り逃がした賊がでてしまうかもしれんだろう」
「?…??」
「春蘭は今放っておきましょ、如水。あなたの意見を聞かせて」
「相手は四千人の賊の群れだ、このまま進めば数に恐れをなして逃げる可能性もある、軍を三つに分けて三方向から攻めるのが良いかと思う、数は本陣に二千人置き。残りの六千を二つに分け、敵の砦を左右に回りこむ。そうして本陣が敵の正面から向かえば相手はただの賊だ、討伐軍が自分達より少ないと思い何も考えず突っ込んでくるだけだろう。相手が正面に気を取られている内に左右に回り込んだ部隊が同時に砦を襲うその後に前後から挟み撃ちにすると言うのはどうだ」
「その案なら左右の部隊は私と姉者が受け持つほうが良いかと」
「確かにその方が取り逃がしは少なくて済みそうね。春蘭理解した?」
「…私が右側から回り込んで秋蘭と合わせて砦に襲い掛かれば良いわけですね」
「そうだ、この戦いは我らの二人の息が合うかが決めてだ抜かるなよ姉者」
「わかっている、しかし正面は華琳さまが受け持つのでしょう大丈夫でしょうか?」
「この程度の賊に遅れを取る様に兵士達を鍛えてはいないわ。安心なさい、それに如水もいるのだから」
「そうですね、申し訳ありません。如水、華琳さまを任せるぞ」
「わかった、不肖ながら引き受けよう」
では、と言って二人が去って行った
残った二人も馬を進めながら布陣の準備をし、陣を整えると華琳が如水に馬首を並べてきて
「あなたの手並み見せてもらうとするわ」
そう言って後方に下がって行った
陣の指揮は如水に任せ華琳は後方で連絡兵を指示するようだったその方が如水の働きが見れるからだろう
華琳が笑ったのを見て如水も期待に答えるように笑った

 
 

 
後書き
旬彧はとりあえず、如水の初陣で外しました、役が被る上に自分的には如水の方が陣頭指揮できる分、優れている気がしましたし。
旬彧ファンの方申し訳ありません 

 

四話

 
前書き
何人かの方に読んで頂きとてもありがたいでrす 

 
砦が視界に入る位置に付くと後方から銅鑼の叩く音が聞こえる兵士たちに陣に付く様に命じ、相手が来るのを待つ、この音は左右に回った二つの部隊にも聞こえただろう。
だが、相手の盗賊側は何を勘違いしたかこちらに向かって進んできた。
「報告にあったがまさかこれ程統制の取れていないとはな」
如水はすぐさま、兵に柵を置かせその中に入って盾を構えるように命じに弓兵と弩兵を後ろに下がらせ一斉掃射の準備をさせた
「柵から出るな。そして盾の陣形を崩すな。隙間を作ればその隙間から自分や仲間の命が失われると思え」
如水は大声を出して励まし兵士の恐怖感を取り除き勇気づけた。
「私に従う限り犬死はさせない。私を信じろ、そして隣にいる仲間を信じろ。お前たちが信じあう限り、私はお前たちの勝利を信じる」
「「「おおーっ」」」
兵士たちも如水の言葉を聞き、それに答えるように声を揃え答えた
敵が眼前まで近付いてくるのを確認し如水は弓兵や弩兵に狙撃を命じた
賊側は弓の一斉掃射に気勢を殺がれ、それを逃れても相手方の柵と盾に足を獲られ動けないところを槍や剣で突き刺されて倒れていった。
相手が浮き足立ったところに騎兵を差し出し敵の側面を突かせた
善戦している如水だったが一つの予想外の事が起きていた
左右に回った二つの部隊のうちの一つの春蘭の部隊がまだが到着していなかった。
それを見た華琳は、急遽、馬を引かせた。
「春蘭は何をしているの、このままだとこちらが押し切られてしまうわ」
と思い、すぐさま如水の元に行った
「如水、私は春蘭の元に行くわ。ここを任せたわよ」
そういって華琳は数人の共を連れて春蘭の所に向かった
華琳を見送ると如水は銅鑼を鳴らす事を命じ、秋蘭だけでもに砦に襲い掛かるように合図を送った

  秋蘭側
「姉者がまだ来ていないが、仕方あるまい。何もせず味方が殺されるのを見て居る訳にいかぬ」
合図を聞いた秋蘭はそう言って砦側に突撃を仕掛けた
 
後ろから砦を襲撃されている事のわかった賊は挟み撃ちに遭う恐怖ですぐさま崩れ出した。
それを見た如水はすくさま槍兵を前に出し騎兵と共に追撃を命じた
しばらくして、華琳の指揮のもと右翼に回った軍が攻撃に参加し賊側は降伏する者が多く出てきた
如水はそれらを拘束するように命じ、自身は負傷者の手当てに当たった
「傷の浅い者は出来るだけ他の重症者に手を貸してやれ、重症者は天蓋の中で治療に当たる。重傷者を早く天蓋の中へ運べ」
次々と負傷者への指示をしていき全ての指示を終わると既に日が暮れようとしていた。
全ての指示が終わったことを報告する為に如水は華琳のいる天蓋に入るとすでに秋蘭、春蘭と見知らぬ少女が中で待機していた
「ご苦労様、如水。部隊の指揮に負傷者の手当ての的確な指示さすがだわ」
開口一番に華琳が如水を褒めると春蘭がなぜ攻撃に参加出来なかったかと、そしてその原因の見知らぬ少女について話した
どうやら、この子は近くの村にすむ少女でこの地区を纏める者は重税を課すだけで兵を動かさず、それを許せずひとりで賊を退治に向かっていったのだが官の軍隊を見て八つ当たりしてしまったようだ
華琳が話し終えると春欄がまず詫びて来た
「私のせいで華琳さまや秋蘭に心配をかけた事。それに如水を危うく見殺しにしてしまう所だった。如水、本当に申し訳なかった」
春欄が詫びると少女が庇うように発言した
「いえ、春蘭様のせいではないんです。ボクが八つ当たりをして春蘭様に挑みかかったから遅れてしまったんです」
「そこまで反省して侘びを入れられたら私としても何も口を挟むことはない、ただ二人共できればこの戦いで負傷した者達の前で今言った事を話して貰いたい」
「そうね、少なくとも二人はその事を兵たちに詫びる必要があるは、今すぐに行きなさい」
華琳がそういうと二人は駆け足で天蓋を出て負傷者の所に向かって行った
「如水、姉上を気遣ってもらい私からも礼を言おう」
二人が立ち去ると秋蘭がそう述べると如水は笑いながら
「戦場では何が起きても不思議ではない。今回のことは私も気にしていない、どうしても気が収まらなければ次に私が危ないときに助けてもらえばいいだけ。それよりも今は私たちが生き残り、戦いに勝利した事を喜ぼう」
「そうね、今はこの遠征が成功した事を喜びましょう」
華琳が話を打ち切り今後の事を話し合うように言った
「華琳、投降した者たちをこれからどうする気だ」
「私が意見を言う前に二人の意見を聞かせて」
秋蘭はそれに答え
「私は連中に危害を加えられられた者たちの気持ちを考えれば、賊の全員を処断するべきかと思います。それに許して野に放てばまた同じ事を繰り返すやもしれません。華琳さまの今後の為にもあのような輩は根絶やしにするべきかと」
秋蘭をそう発言したが如水のほうはその意見に反対を述べた
「確かに、連中の所業が、許される事では無い秋蘭の言う事が道理だ。それが普通だと思うが、私は彼らの命を助けたいと思う」
「如水、それは奴らを見逃すと言うのか」
如水の話を聞き秋蘭は責めるように問い詰めた
「いや、見逃すのではなく華琳の軍に加え、兵役に就かせる事が彼らに対する罰だと思う。たしかに彼らに被害を受けた者たちの事を考えると処罰する事がいいが、連中の殆どは重税や悪政に耐えかねて故郷を逃げ出した者が多い、居場所が無くなり賊を働く事でしか食べていけなかったのだろう。これは為政者の問題だ華琳の領内ではそのような事もないが、いま大陸中でその様な者が多い私は賊よりもそんな奴らの方が許せない。彼らを助ける程度で解決することでは無いが今はもう一度彼らに生きるすべを与えそれで改心して貰いたい」
「そのようなやり方で本当に連中が改心すると思っているのか」
「私もそこまで簡単だとは思っていない、逃げ出す者や狼藉を行う者が出てくるだろう。そんな奴らは改めて処断すればいい、だか窮したあまり賊を働いた者は今だけでも助けて貰いたいと思っている」
二人の意見を聞き華琳は決断した
「如水の意見を取りましょう。秋蘭、あなたの意見もわかるしそうするのがいいと思うわ、でも窮したあまり賊を働いた者を処断するだけでは救いが無いわ。今は寛容を示してやる事が必要。連中が賊を働いた事は事実としても如水の言う様にそれは為政者の問題。私もそんな連中が許せないわ、彼らには機会を与え改心するようにしましょう。荒事には慣れているだろうし私の兵として管理すれば滅多に狼藉を行えないわ逃げる者はその時に処断すればいいだけの事」
「しかし、華琳さま連中に寝首を掻かれるやもしれませんが」
「その様な事が無いように教育すればいいだけの事、その為にあなた達が居るのでしょう」
「わかりました、仰せのままに」
「私も言い出した以上、最善を尽くそう」
二人が頭を下げると華琳は明日の為に休む様に命じた

翌朝

華琳は兵の前に立ち捕らえた賊を軍に加え兵役を課す事を伝えると兵たちに動揺が走った
それを鎮めるように華琳は声を張った
「諸君の気持ちもわかる、だが居場所をなくし賊を働いてしまった者を私はむざむざと殺すようにしたくは無い。家族や仲間を殺された気持ちは汲むが今は抑えよ、彼らは私が責任を持って管理し更生させてみせる、それでも気が済まねば私の首を刎ねよ」
華琳の声を聞き兵士達は納得し、捕らえられていた賊の中にも涙を流し感動した者が多く居た
「これより帰陣する。皆、出立せよ」
そう言って一万以上に増えた曹操の軍は陳留に向かって進んでいった。


 
 

 
後書き
恋姫の原作の内容を、殆ど忘れてたのでやり直してながら書いています。
それと春蘭と秋蘭と華琳の関係って、小説で書かれるような、母里と栗山と官兵衛に似てる気がする。 

 

五話

 
前書き
桂花と如水の会話です。
改行などを考えてみましたが意見を述べて貰うとうれしいです 

 
華琳の軍が城内に帰陣すると、すぐ将兵らに休みを与えると華琳はすぐ町に行き。父老らを話の場を設けた。まず盗賊を倒滅した事、この遠征で出た死者の亡骸を埋葬した事、その名簿と遺族への手当ての事。更に捕らえた賊を軍に置き監視させ更生させる事を父老達に語るなどして慰撫していた。
一方如水は城内の一室で、各兵士達の論功行賞の草案を作り、更に消費した糧食や負傷した騎兵馬の数の確認を行い、城内の予算と考えいくら補充するかを計算していた。
華琳が城に帰る頃に、如水もすべての作業を終えた事を華琳に報告をした。
二人はお互いを労い、談笑した。
「ご苦労。これをすべてあなた一人でやらせて申し訳ないわね」
「気にしないでほしい。剣を振るより得意なだけの事だ」
「その割には見事な部隊の指揮だったわね」
「そうやって持ち上げて、更に仕事を増やそうとしないでくれ」
「あら、残念」
如水が話を打ち切ると華琳も別の話を出した
「それにしても、人手不足なのは確かね。以前は、私一人でやっていたのだけど。今回はあなた一人に任せてしまったし。だれか人が居ればいいのだけど」
「その件にも関わるが、出陣前の事を覚えているか」
「ええ、あなたと旬彧と名乗る者が口論していたわね。なんであなたがあんなに熱くなっていたの」
「旬彧が糧食の量を半分にするように私に言ってきたのでな、私も呆れてしまったが、理由を話すように言ったが私には話したくないと言うだけで埒が無いと思い、担当から外したのだか、一度君が旬彧に話を聞いて見ればいいと思うが」
「そうね、時が時だけに話す事が出来なかったけど。一度意見を聞いて見るのもいいかもしれないわ。今から呼ぶから、あなたも立会いなさい」
「しかし、彼女は男嫌いの様だから私が居て話すとも思えんが」
「その程度で意見を述べないものに様は無いわ」
そう言って華琳は旬彧を呼ぶように近臣に命じた

半時ほと経ち旬彧が姿を見せたが如水がいる事に露骨に嫌悪感を見せていた
「来たわね。出陣の前は話を聞けなくて申し訳無かったわね、もう一度私の前で話を聞かせてくれる」
華琳がそういうと旬彧が喜んたが
「はい!…ですがその前にそこの男に席を外させて欲しいのですが」
と言って如水がこの場に居るのが不快だと言ったが華琳は聞き入れず
「如水は私の大事な臣の一人。それに今回の遠征の成功は如水に寄るところが大きい。それでも話せぬなら用は無い失せなさい」
華琳が旬彧の意見を一蹴すると旬彧も意見を述べる為に容儀を正した
「改めて名乗りを申し上げます、以前は南皮の袁紹の下に仕えておりましたが、身を置いても才の振るうすべが無く。また、袁紹自身に私を使う器では無いと見限りました」
「どうせあれの事だから、わからなくは無いわ。それがなぜ私の下に?」
「はい、城下で曹操さまを拝見した折に思ったのです。我が才は曹操さまの下でこそ生かされると」
「なにが望みなの」
華琳が問うと旬彧は華琳の目を見据えて
「この旬彧めを、曹操さまの軍師として幕下にお加えくだされ。必ずや曹操さまを勝利に導いてごらんにいれます!!」
「ふむ。なかなかの大言だが、根拠はあるのだろうか」
如水が質問すると旬彧は嫌悪を露にし
「天界から来たとか言う猿に語る事はないわ」
旬彧は如水の質問に、にべも無く断ったが如水は
「私が君を担当官から外した理由は、その自分の主観の知識そして、自身の考えを絶対的に信じすぎ、他者に対しての配慮を考えぬ所だ。もし我らが君の意見を聞き、それを実現したとしたら、兵達は前触れも無く食糧が少なくなる事に不安を感じそれが軍の士気に影響が無いと言えるのか。その上食糧が減ったのは君の売名の為だと思いこむ。そしてそれに答えた華琳に対して士卒はどう思うか考えたか、更に、私はその以前に君にその理由を聞いたが、君は華琳にしか自分の考えは理解出来ないと言い、話さないといった。そのように、自分の思い込みで相手を決め付ける者ににとても軍を勝利に導くとは思えないが」
そういって如水は旬彧を否定した
当然ながら旬彧は怒り如水に食って掛った
「なら、あんたと私の格の違いを見せる為に簡単に象棋で勝負をつけてあげる」
「構わないが、制限を設けさせて貰って良いかな?」
「…いいわよ、駒を取り上げなさい」
と旬彧は自分から言い出した手前その条件を飲んだ
「いや、その様な制限ではなく私達が動かす駒はこの遠征の部隊と見立て、私たちの指示で駒が動くかを華琳が判断した上で駒を動かしていく事にしよう」
「なんで、そんな面倒な事をさせるのよ」
「そこに気づかないようなら、君に軍師を務める資格は無いな。君は兵達を戦場ではただの駒だと思っているのか」
如水の言葉を聞き華琳がその意見に賛成した
そこにいたって初めて旬彧は如水の真意がわかった。自分の献策はただ自身が名を上げる為に兵の心情を考えなかった、反対に如水は味方をいたわり心置きなく戦えるように入念な気配りをしている事と。如水が自身も部隊の指揮を執り兵達と積極的に関わりを持ち信頼関係を築いていた事に。
その事に気づかされた旬彧は打ちのめされたように負けを認め、自身の無礼と非を詫びた。
「如水殿、申し訳ありません出した。その深慮遠謀とても私には及びません」
「旬彧殿、それは違う私は謀でその様に行動していたわけでは無い。この事はいかに相手の事を思いやれるかがそして皆がどう思うかとその様に考える事だ。いずれ君にも理解できるだろう」
ひたすらに詫びる旬彧に如水はそう言って励ました
それを見た華琳は
「話は終わったようね、旬彧。あなたの真名は」
「桂花にございます」
「桂花。これよりあなたを軍師として迎え入れそして私の真名を授けるわ。以後華琳と呼びなさい。我が覇業の為に大いにその才を振るいなさい」
「はっ!ありがたき幸せです華琳さま」
「しばらくは如水の下で働き文官として務めよ、戦陣においては我が帷幕に参与せよ」
「承知いたしました、如水殿の働きを間近で見知り、その上で必ずや華琳さまのお役に立って見せましょう」
桂花が下がっていくと、再び二人だけになった
「どう思う、桂花の事」
「私も見方を誤っていた。自らの非を素直に詫びれる者とは思わなかったのでな」
「そう、平時は文官として、あなたの手助けをさせるわ、これで少しはあなたの負担も減るでしょうし」
「了解したが、私に部隊指揮だけをさせてくれないのか」
如水が軽口を言うと
「有能な者を捨て置くほど私は寛容ではないのあなたは以後も軍師として帷幕に加わってもらうわ」
そういって華琳はその申し入れを断った
「あなたももう休みなさい、いずれ休む間のない戦乱が来る。その時までに万全を期さなければならない。私は決して敗者になどなる気はないの、その為にも今は力が必要。休める時に休んでおきなさい」
華琳が去って行くのを見届けた如水は、一人微かに笑った
「曹孟徳。乱世の奸雄として生き、大陸に覇を唱えたが、劉備、孫権にその覇道を妨げられついに天下を取る事が出来なかった。…いいだろう。この私が再び天下をかの者取らせてやろう」
そういって、決意を新たにした。
 
 

 
後書き
ラブラブと書いてますが。正直、如水に恋愛沙汰は似合いそうに無い… 

 

六話

 
前書き
今回は、今まで以上に短いです。 

 
盗賊討伐の遠征から一月経った、陳留の華琳の軍は一万以上に増え更に先の遠征の後に仲間になった許緒と旬彧。真名を季衣と桂花の二人を加え曹操の名も朝廷や在野の者達に広く知られるようになってきた。
季衣は華琳の親衛隊の将として春蘭の指導を受けながら働くようになり、桂花は曹操軍次席軍師として迎え入れらた。
自身の軍が大所帯になった事で華琳は軍制を改め軍を大きく三つに分け春蘭、秋蘭、如水の三人の将を軍団長に任命し軍行動の効率を上げるようにした。
三人の将はそれぞれ華琳より軍団長としての指示を与えた。
春蘭は新兵の育成と兵の錬度を高めるように勤め
秋蘭は新しく軍規を設け軍紀を正す事を主な仕事とし
如水は軍の全体演習時の草案、兵の部隊編成と当直の案を出すように指示した
加えて如水と秋蘭は文官としても勤めさせ。
秋蘭には領内の治安維持。
如水には桂花と共に城の予算編成と財貨、糧食、荷馬、武具の管理を任せ更に、領内の治水と城下の区画整理を担当させた。

更に如水は、巨額の財を投じて大陸各地に諜者を撒き天下の情勢、地理、人情、各地の領主や在野の有力者の性格と能力を調べ来るべき時に備えての準備を行った。

華琳自身も桂花と共に宮廷に働きかけ自身の名声の箔付けに腐心したり。領内の新地開発による産業促進や、交易路の開発整備による市場拡大によって民力向上と財源の拡大に務めた。
曹操の名が朝廷でも取りだたされるようになり、陳留に勅使が下り、至急、曹操は都に下り、朝廷に参内するようにとの命が下った。華琳は軽兵を率い留守を春欄たちに任せ上洛した。
帰郷後、華琳は朝廷より刺史から州牧に任じられる内示が下ったと各位に知らせた

すべての知らせが終わると華琳は如水に執務室に来るように言われた
「私だが」
「入って」
そう言われ、如水が部屋に入ると華琳一人だけが室内で待っていた、含みを持った笑いを浮かべてる華琳に如水は軽口を言った
「州牧に任じられるとはずいぶん過分な沙汰だな」
「まだ内々の事だから皮肉と世辞はいいわよ。それより、州牧となれば今以上にするべき事が増えるわ、その下準備を怠らない事。いいわね」
「わかっている。明日にでも各新領地に人を遣って父老達から実情を聞くように指示しよう」
「それと各地の特産品や資源の確認も怠ら無いこと」
「承知した。用件はこれだけかね?」
如水がそういうと華琳が挑発的に笑って
「あら?。てっきりあなたの方が私に聞きたいことがあるんじゃなくって?」
と言ってきたそれを聞き、自身の好奇心を見抜かれていた事を笑った
「やれやれ、すっかり見透かされていたか。そうだな、朝廷の実情について君の体験をもって聞いてみたいのだが構わないか」
「ええ、私もあなたの意見を聞いておきたいし。まず、今上については近臣たちに壟断されているといっても過言では無いでしょう。実際、いろんな伝手を使ったけども拝謁は適わなかったわ。」
「そうか、君の伝手と言うのは聞いてもいいのか?」
「ええ、まず、私の祖父が何代か前の大長秋だったの、それの縁を伝って、拝謁の為に働きかけたのだけど、それでも駄目だったから、腐れ縁の袁紹が都合よく都に居たからそいつを上手く使ってみたわ」
「袁紹といえばたしか桂花がかつて使えていた者だな、確か三公を輩出する名門の家柄だったはずだが」
「そうよ、袁紹本人については別の機会に話すとして、その袁家の名を使ってでも拝謁が叶わないとなれば、宮殿の奥に引きこもっているとしか考えられないわ」
「確かにそうだろうな、では、今現在、宮廷を取り仕切っているのはその近臣たちとして、それらはどのような者たちだ?」
「ほとんどが、金に目の眩んだ小物ね。朝廷の権威を利用して、地方の有力者から賄賂を受けて私腹を肥やすしか能の無い奴らだわ。当然、賊の跋扈や各地での重税に苦しむ民衆の声。今の世の現状を知る輩は一人も居ない。宮廷の要職は殆どそいつ等の類縁。まあ、だからこそ今回の上洛での私の任官もすんなり行った訳だけど」
吐き捨てる様に語った後、華琳は冷ややかにほくそ笑んだ
「私の知りうる限りだと、今の朝廷に絶望している民衆も少なくは無い。何かのきっかけがあればいずれ朝廷に反意を起こしても不思議ではない。もしそうなれば、今の朝廷では何も打つ手は無いだろうな。となれば各地の有力者に兵を出させる様に命が下るだろう」
そこまで言うと二人はお互いに考えている事がわかったのか急に笑い出した
「それこそが、この私が名を広めるに十分な条件ね」
「人の不幸で成り上がるか、ろくな死に方しないだろうな私達は」
「自分の死に様を今から考えても仕方が無いわ。そんなもの死の直前に考えなさい」
「だが、せめて君の領内では出さない様にしよう。少なくともそうなれば、兵を他の領内で動かす口実も出来るそれに、後日、後ろ指を刺されるような事は無いだろうからな」
「当然よ。私の領民からその様な者を出しては、誰が許そうとも、私が私自身を許せなくなるわ」
「その命に答えて私達も力を尽くしていこう」
その言葉を聞き、当然の様に思った華琳は、自分の目的には如水の存在が無くては為らないものと気づき。そして、この男が自分にとってどれほどかけがえの無い者だと気が付いてしまった。 

 

七話

華琳が州牧の内示から数日して、朝廷より勅使が下り、州牧の任官が正式に沙汰された。その翌日に、華琳は新領地の安定と兵の徴募を公表した。
曹操の良政は既に他の地に広まっており、新しい領地の者は曹操の赴任を歓迎した。またその名声を慕い、圧政の為に故郷より逃げ出した者や、流民達が陳留に集まって来た。
華琳はそれらに戸籍を与えて領内に迎え入れ、如水と桂花に命じ、領内の荒地の開墾をさせたり、職人としての能のある者は城内で召抱えたり、志願する者は兵役に就かせる等して、生活の成り立つようにした。

一方で桂花は華琳の命で如水と共に働き、改めて、如水に感心していった。
最初に如水の存在を知った桂花は、天界から来たと言う嘘で祭り上げられただけの道具で、その為だけに曹操の傍に居るという先入観があり、更に自身の男嫌いも有って、曹操の下に採用された時に、如水の下に就く事が決まり嫌悪の余り、何度も、如水を陥れようとしたが、全て見抜かれ。それでも何食わぬ顔の如水に対して遂に、先の遠征の前に、正面から喧嘩を仕掛けたが、それでも、全く相手にされなかった。
思い余った桂花は、曹操に直談判したが。その時も出陣の刻限を理由に話を打ち切られ、取り残された時の、周囲の嘲笑の視線や声で、如水に対する憎しみは、頂点に達した。
曹操の軍が無事、遠征から帰って来た時に、遠征の成果を他の者にも聞いて見たが、如水を貶す者は、だれも居らず、皆が口々に、如水の作戦と、戦闘指揮を褒め称え、更に損害の多い前線を受け持っていた如水の部隊が最も被害が少なかった事。そして、投降した者に対する寛容さを聞き、桂花は、如水に対する認識を改めたが、それでも、まだ認める事は出来なかった。
その後、曹操から、呼ばれて謁見した折に、華琳の傍らに居た、如水に自身の足りなさを痛感させられた。
その後、文官として共に仕事をする機会が増えたが、その智謀と人柄の涼しさに感心した。
まず、如水は、華琳に献策し、城内の無駄な消費を抑えたが、その事で、城内の人間から、一切の不評が出ていなかった。
薪炭の事の他に、戦場で使う、柵や、槍、弓矢といった武具も出来るだけ費用を押さえた、例えば、軍の演習の際に森に素手に入らせて、獣を狩らせたが、これは、兵士達が戦場で素手になった時にどのように戦うかを訓練させるだけで無く。桂花の見る限り、武具に掛かる費用を出来るだけ抑える事にもあるだろう。
そして、如水は費用を抑える一方で、演習時の兵士達の食事には、出来るだけ贅を凝らせた物を作らせて、兵に軍役に就く事に誇りを持たせた。
如水自身も、華琳から、高額の金銭を貰っていながら、自身を飾る事に使わず、殆どを、大陸の各地に諜者を送り、諜報に務めた。
それを、まじかで見ていた桂花は、この男は確かに、華琳が認める程の男だと思い、改めて尊敬した
ある日、桂花は興味本位で、如水の自室を訪ねた。
「如水殿、少し時間を取らせて貰っていいでしょうか」
「構いません、私もちょうど、他者の意見を聞きたかった所ですので」
そう言った、如水は、多くの竹簡に埋もれる様な状態で紙に何かを書いていた
「あの、その竹簡や、紙はどういった物ですか?」
「これは、諜者達の報告を書いた物です、紙には私が重要だと思った物を纏めています」
好奇心を刺激された、桂花は
「よろしければ、読んでも構いませんか」
と言っていた。
「ええ、できれば、貴方の意見も聞いて見たいので」
そう言って、桂花は書に目を通したが、その内容に戦慄した。
華琳の領内の近くはおろか、遠く西涼から呉郡、更に巴蜀と言った辺境の土地の内情を調べられており、更には人物の調査では領主のみならず、野に有って、その地で尊敬を受けている者までを調べ上げていた。
「如水殿、これはいったい、どのような諜者を使って、調べているのですか。」
「いえ、これ等の報告者の半分は自分が諜者だと気づいていないでしょう、大陸の各地で旅をしている者から、何気なく聞いた話を纏めているだけです」
「しかし、それだけで、これほど正確な情報が得られますか?」
「もちろん、各地で情報を探る者は私が選んだ者ばかりです、それと、噂話等を集めて、その中から私が役に立つものかを選ぶだけです」
如水が何気なく言うと、桂花は改めて部屋を見渡した。部屋の至る所に竹簡等が置かれており、紙に纏めているのはその中から選んだ物だと理解した。
「これだけの、情報を集めて、その中で役に立つ物を選ぶだけでも大したものです。やはり、貴方は素晴らしい智謀の持ち主ですね」
如水は謙遜し、改めて桂花の意見を聞いた
「大陸各地で、圧政を敷く者や朝廷を恐れぬ者が多いですね、朝廷には今、それを止める事ができる者は居ない、何かのきっかけで本当に朝廷は崩れるしかないでしょう」
「やはり、そう思いますか。私も同意見です、華琳はこの混乱を機に天下に名乗りを上げるでしょう。それを支えるのが私達の仕事です」
「そうですね、そして、華琳さまの覇道を成就させましょう」
こうして、二人の希代の軍師は同じ志を持った
 
 

 
後書き
しいて言うなら如水を桂花が認めた話 

 

八話

 
前書き
気がついたら一月も空いてた。 

 
 
 華琳が新たに州牧に任官し、一通りの庶務に区切りがついた為。一度自身の目で成果を見たいと思い、偲ぶ形で街の視察に向かう事を決めた、留守には新参の季衣と桂花を任せ春蘭、秋蘭、如水の三人を共に連れて華琳は街に行く事を決めた。
華琳らが街に下りる少し前に三人の大きな荷物を持った、女性達が居た
「ようやく着いたのー」
「ほんまに大変やったで」
「ここが陳留か」
三人の女性は荷物をひとまず置き、城壁から町を見上げた。
「とりあえず、街に入ろう。この籠を売って、村にお金を持ち帰らなければ村のみんなに申し訳が無い」
「せやな、早いとこ商売を始めようか。なんや、新しい州牧様はえらい立派な方やし、変な難癖付けられんと思うで」
「それなら、三人別々に売ったほうがいいと思うの。そうすれば、早く終わるかもしれないの」
「せやったら、一番、売れへん買った奴が今日の晩飯奢りにしようや」
「おい、せっかく村の人が出してくれた路銀を無駄にするな」
「でも、三人で一緒に売るより効率がいいと思うの」
「せやで、凪、固いこと言わんと、三人で競争した方が売れるかもしれへんやん」
「しかし、そんな事をして…」
「じゃあ、さっそく、籠を売ってくるの」
「せやな、じゃあ夕暮れまで売って、一旦、宿の前で待ち合わせようか」
「おい、まて」
「わかったの。早く売って、街を見回りたいし頑張るの」
「それじゃあ、行くで」
3人の女性は騒ぎながら陳留の街に入っていった

陳留城下

街に下りた華琳は、三つの通りを見て回る事を決め、右側を春蘭、左側を秋蘭に見て回るように指示し、自身は、如水と共に大通りを見る事に決めた。
しばらく歩くと、如水は町並みやその活気に感心し、また遠方からも行商人が多く来ている事に改めて、曹操の名声の高さに感心した。
興味深そうに街を見ている如水に、華琳が声をかけてきた。
「何か、変わった事でもあったの?」
「いや、改めて街並みを見て。私の知っている世界とは少し異なるようだな、と思ったのでね」
「なにが、違うの?」
「そうだな、人の生活も多少異なるが、これは大した差ではない。地方によって異なるのは当たり前だからな」
「そうね、何が一番気になったの?」
「そうだな…、やはり、石材を多く使っている事かな。」
「石材?」
「私の国では、建物は殆どに木材と粘土を使っていて、石を使うのは。建物の土台と外郭の一部や、庭の置物にくらいしか使わないが、ここでは、多く石材を使っているな」
「そんな建物だと、私の感覚だと、心もと無く思えるわ。」
「そうだな、私もここ世界の建物を見た後。故郷の建物と違い少し戸惑った。恐らく、この世界の採石技術が、優れているのだろう。それとやはり、気候や風土のせいかも知れないな」
「どう言う事?」
「私の住んでいた土地では、地震や台風がこの世界よりも多いのでな。その様な環境だと、石造りの建物は崩れやすい。その点、木造ならば揺れには強い。恐らくそのせいだろう」
「なるほどね、人の生活は環境に影響してくるのね」
「そうだな。自分達の生活をいかにして住みやすくしていくか、その点で言えばどこの世界も同じかも知れん」
「そうね。環境とは建物だけでなく、人一人の人生を左右するのかも知れないわね」
「確かに。今の生活が安泰なら、悪事を働かなくて済む者も居るのかもしれない」
華琳と如水が思いを語りながら歩いていると、カゴを売っている露天商を見つけた。
「華琳、済まないが少し待ってくれ。そこの露天商からカゴを買っておきたい」
「いいけど、貴方。少しは部屋を綺麗にする気になったの。」
「自分では部屋を荒らしているつもりは無いのだが。竹簡を纏めるのに必要だと思ってな」
如水の言葉を聞き、華琳はため息をつき呆れた。
「それだと、一つ二つの量では済まないでしょう。私も手伝ってあげる」
「いいのか」
「ええ、どうせ私にも必要な物になって来るでしょうから」

如水と華琳は露天商に近付き声をかけた。
「済まない、カゴを貰いたいのだが」
声に答えたのは若い女性だった。
「へい。毎度、お二人さん、おおきに」
「二十程欲しいのだが、良いかね」
如水の注文に少し驚いたが、すぐに気を取り直した
「お兄さん、太っ腹やね。ありがとうな」
明るい性格で、このような商売に向いている女性だった。
「少し、見せて貰っても良いかな」
如水がそう言うと、女性の方が喜んで見ていってくれと言った
「なかなかしっかりした物ね。これは誰が作った物かわかる?」
華琳がそう言うと、女性の方が更に喜んだ。
「これは、うちの村のみんなで作った物なんや、ここの領主様はえらい立派な方らしいから、売りにきたんや。他の土地では、えらい金が掛かるし、大人しく商売も出来んらしいからな」
「そうか、ところでこれは何に使う物だろうか」
変わった物を見つけ、如水は女性に聞いた
「お兄さん、目が高いな。これはうちが発明した、全自動カゴ編み装置や」
「全自動カゴ編み装置?」
華琳が首を傾げていると、如水はそれを手に取り見ていたが思いついた事を言った
「もう少し、竹のしなりを押さえる為に細工した方が良さそうだな。このままだと、竹のしなる勢いで壊れてしまう。」
「え、なんやお兄さん、わかるの?」
「ああ、そうだな。…留め具にネジを使えば良いいと思うが」
「ネジ?なんやそれ」
「渦のような溝を巻いている留め具だ、それを使うと安定するかもしれない」
如水がそう言うと、女性の方は興味深げに聞いてきた
「渦のような溝。それって、どんな物なんや」
そう問われた如水は、地面にネジの図を書き出して説明した。
それと、他にも質問してくる、女性に一つ一つ教えてあげていった。
「お兄さん、ありがとう。えらい参考になったわ」
説明を聞いた女性は、お礼の換わりに籠の代を半分でいいと言った
「いや、構わない。いいのか、こんなに安く買って」
「ええんや、うちの授業料ちゅうことで」
「それなら、その好意はありがたく受け取っておこう」

華琳はそれを黙って見ていてたが、そろそろ集合場所に戻ろうとして若干険を含んで声を掛けて来た。
「ずいぶんと熱心に教えてたわね」
「そうだな、彼女が満足してくれて、教え甲斐があってね」
それを聞き、華琳は別の興味を持った
「それにしても、あなた絡繰にも詳しかったのね」
「昔、暇なときに教わっただけさ、知識はあったが彼女のように自分で作った事は無くてね」
それを言う如水は懐かしむ様に話しをしていた。
その顔を横目に見ていた華琳は先ほど険を含んだ事を忘れ、その事に興味を持った。
「どんな者に教わったの」
華琳が聞くと、如水は話し出した
「遠い異国から来た者に聞いたんだ。先ほどの技術の話の他には、薬や天候の事を教わったりしたな」
「そう、これからその知識を私の為に役立てなさい」

集合場所に行くと、春蘭と秋蘭の二人と合流し華琳は後に視察の報告するように命じた。
城に帰ろうとしている所に、一人の薄汚れた装束の者が近寄ってきて、華琳を占い乱世の奸雄と言った。
秋蘭は怒りを露にしたが、春蘭は占い師の暴言を理解していないようで首を傾げていた。
華琳は秋蘭を制し占い師に褒美を与えた。
「乱世の奸雄大いに結構。その程度の覚悟もないようでは、この乱れた世に覇を唱えるなど出来はしない。そういうことでしょう?」
それ聞いた後、如水に向き直った
「それから、そこのお主」
「いかがかしましたか」
「大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬ事だ。でなければ身の破滅を招く。…くれぐれも用心なされ」
それを聞いた如水は占い師をに笑いかけた。
「そのような生き方は私にはつまらないな、自身の成すことで破滅に怯えていては大した事も出来ないだろう。自分の才を示す事が身の破滅なら、私は喜んで我が才を天下に披露しよう」

占い師の去り、城に戻った華琳らは各々の仕事に戻っていった。
その最中に華琳は如水に声を掛けた。
「先ほどの事、ただの広言でないことを祈るわ」
そう言って面白そうに笑った。

 
 

 
後書き
技術の事は秀吉の御伽衆をしていた時に、宣教師から教わった事にしています。 

 

九話

陳留に朝廷より勅使が届いた。
黄巾党と名乗る者らが朝廷を覆さんと立ち上がったとの事、そして諸侯は沈静に務めよとの事である。
勅使が去った後に華琳は春蘭ら主だった者を集め勅使の持って来た内容を伝えた。
「以下が朝廷よりの報よ、これより私達も黄巾党と名乗る者らを倒滅に当たるわ。春蘭、秋蘭、如水三人は直ぐに軍を整えなさい。桂花は兵站の用意を二日後には出陣するわ、それと黄巾党について何か知っている事は無いかしら」
華琳の質問に対し、如水は意見を述べた。
「私が知るところでは黄巾党の首領の名は張角と言う者らしいその下に張宝、張梁が左右にて支えているとの事だ。黄巾党についてはそれ以上の事だが、朝廷の動きについてだが当初は事態を軽く見ていた朝廷は後手に回り、大陸各地に広がった乱に手をこまねき、更に朝廷の派遣した官軍は互いに反目し連携も取れず満足な軍事行動も行えず、敗戦を繰り返しているとの事らしい」
その意見を聞き華琳はその情報力に驚くより呆れた
「そこまで良く調べたわね、一体どうやって知ったの」
「黄巾党の中に私に情報を寄越している者が何人か入っている様だ、朝廷側の動きは君でも知っていただろう」
「朝廷の動きはある程度予測はしていたわ、肝心の黄巾党の居場所は解っているの?」
「さすがに首領の張角らは何処に居るのかは分からない、恐らく周りの一部にしか分からない様だ」
如水の意見を聞き華琳は納得し方針を伝えた。
「まずは周辺に蔓延る賊徒を討つ事にするわ、そのうちに張角達の居場所も掴めるでしょう、今は討伐に力を入れなさい」
華琳の決定を聞いた皆は準備の為に散って行った
一人になった華琳は以前の占い師の言葉を思い出していた。
「乱世の奸雄ね、良いでしょう私がどれだけの者か天下に知らしめてあげるわ」

二日後、軍を整えた華琳は陳留を発し黄巾党討伐を開始した。
緒戦を圧倒的勝利で飾りその後、各地で転戦し戦勝を上げた曹操の名は広く知られる様になった。
「黄巾党と大層な名を名乗っているが所詮は鼠族の群れと大差が無い、華琳様の軍の敵ではないな」
軍議の場で春蘭はそう言い今までの戦勝について感想を述べた。
秋蘭と如水もその意見には同意したがこの後の戦いはその様に進まないだろうと言った
「姉者の言う様に今までの連中はそうかもしれんがこれからはどうなるかは分からんぞ、何せこの短時間でここまで乱を起こした者だ一筋縄ではいかんだろう」
「そうだな、このままで終わるのなら朝廷も連中に手をこまねいたりせんだろうこれからの奴らの動きに注意する必要があるな」
その二人の意見に桂花も賛成した
「今までの戦いで華琳様の名を黄巾党の中でも警戒するでしょう。慢心せず次に備えましょう」
それぞれの意見を聞いた華琳は春蘭を宥める一方で他の三人の感想と同意した
「春蘭の言う様に確かに連中は鼠族の群れと大差は無いでしょう、でもこれからはそれらを動かしている連中と戦うことになる。この勝利に慢心せず今まで以上に励みなさい」
その言葉でその日の軍議は終わった。


遠征より一月後、曹操軍宿営地にて

華琳は各位を労う為、ささやかながら酒宴を張った
「皆ご苦労、これまでの戦い皆の働きにて勝利を収めれた。今夜はその働きに感謝し私からの祝い盃をあげたい、皆、今夜ばかりは大いに楽しんで欲しい」
その言葉を聞き、皆から割れるような歓声が上がった。
華琳も主だった者を集めて自分達も酒宴を楽しんだが、宴も終わりに近付いた頃に如水が席を外している事に気が付いた。
華琳は如水が何処に言ったのかを聞き、如水を見たという場所に向かった。
少し陣から離れた所で華琳は如水を見つけたが、如水の醸し出すの雰囲気に見惚れ声をかける事を躊躇った。
何故なら、その顔はこの遠征で死んでいった味方を弔う風でもなく、まして討ち取った敵を悼んでいる様でもなかった。
意を決し華琳は如水に声をかけた。
「勝手に席を外して、何をしているの」
華琳の声を聞き、如水は声をかけられた事に驚いたがすぐさま気を取り直して華琳の質問に答えた。
「今のこの大陸の動きを考えていた」
「大陸の動き?」
「ああ、聞く所では朝廷の派遣している軍と我々の様な諸侯の軍だとその戦いぶりに大きく差がある。朝廷側は兵を養う為の食糧が満足に用意できず、至る所の街や集落から朝廷の威を借って略奪している。まあそれは他の諸侯の中でもやっている者がいるようだが。その上でも朝廷の軍は各地で負け戦を重ねている。略奪された連中は居場所を失い黄巾党に身を寄せ朝廷を倒そうとするか、そこまで積極的ではなくても朝廷に失望している者もが大陸上に溢れている。このままだと例え黄巾の連中を討伐できたとしてもこの乱の後には朝廷には求心力が無くなっているだろう。そうなるとこの戦いで力を付けた諸侯を朝廷は抑えていくことは出来ない。そうなれば今以上の事態が大陸を襲うだろう。その事を少し考えていた」
「それだけを考えていたとは思えないわね、他には何を考えていたの」
「やれやれ、お見通しのようだな、この乱で名を上げる者の事を考えていた。それらは必ず君の前に立ちはだかるだろう。そういった者がどのような人物か不謹慎ながら楽しみにしていた」
「そうね、それは私も楽しみだわ、どうやってそいつ等を倒していくのか、考えただけでも心が躍るわ」
「それらが今、何を思ってこの戦乱に挑むのかとても気になっていた。民の安寧かそれとも自分の安息を守る為かあるいは己の矜持の為か。そればかりはおそらくどうやっても理解できないだろう」
華琳はその言葉を聞いて笑った
「暇人の様な事を考えてたのね、結局何を考えてたの貴方は」
それを聞いた如水は急に真剣な顔で華琳に顔を向けた
「いずれ君の前に立ちふさがるのはそれぞれの取るに足らない崇高な願いを持った者達だ。それらの信念を打ち破る覚悟が君はあるか」
如水の問いに華琳も改めて向き直って答えた。
「私の思いは変わらない、相手がどんな思いでいようとも私は必ず勝利を収めそれらをひれ伏して見せる。それが私の決めた生き方よ、誰にも邪魔はさせない」
その言葉を聞き如水は恭しく跪いた
「この黒田官兵衛孝高、私の名にかけて必ずや貴方の大望を成就させて見せましょう」
「許すわ、見せてみなさい貴方の力この私が見定めてあげる」
ここに二人の誓いが結ばれた

 
 

 
後書き
考えたら季衣との接点がどうやっても出でこない 

 

十話


黄巾党が襲っている街があるとの報を受けた。その報を聞き華琳は一計を案じ、まず、秋蘭と季衣に軽兵を率い都市の支援に向かわせた。更に春蘭には後続の主力軍を整えさせ敵の背後に回り込む様に命じ二方面からの攻撃で殲滅させる方針を決めた。
その方針で軍議が決まった所にこのあたりの黄巾党の本拠地を見つけたとの斥候からの報を受けた。
如水はその報を聞き、華琳に頼み予備兵を集め自分に向かわせて貰うように頼んだ。
「何を考え付いたの?」
「いまなら連中の虚を突いて、このあたりから黄巾党の勢力を無くす事が出来るかもしれない」
「そう…許すわ。やって見なさい」
「了解した、期待を損なわないようにしよう」

如水は八百人余りを連れ黄巾党の拠点に向かった。
報告ではすでに廃棄された古城を拠点としているとの事で、規模としては中程度の砦以上の防御機能は有るとの事だった。
如水は街道から外れ拠点近くの森に隠れて城が視界に入る位置に陣取った。そこから更に情報を集め、城の内情を調べさせた。
「如水殿、城の中には百人程しかおらず皆出払っている様です」
「そうか、予想どうりだが、少しばかり多い気がするな。何かあるのかもしれんな」
報告を聞き一つ疑問を持った如水だが次の報告で納得した
「報告、城内には大量の食糧と金品が有りそれを守っている様です」
その報を聞き納得した如水だったが。それを奪い取る算段を思いついた
「百人程を私に付いてきてくれ、連中を騙して食糧と金品を奪い取る、残りは私達が城を去った後に城を取り壊してくれ」
それぞれに作戦を伝えた後、如水は衣装を改め、更に連れて行く百人に黄巾を頭に付けさせ黄巾党に扮した。

城門にて
「張角様よりの報せである。中の同志達心して聞け」
如水は声の大きい者を指名し口上を述べさせた。
「先ほど街を制圧したとの報を受けた、そしてその場所は交通の便が良くなく連絡が取り難い、今後はその街を新しい拠点となる皆速やかに移る用意をせよ。更にそちらに逆賊が向かっている天意が下った。急ぎその場を離れよとの命だ、何か異論はあるか」
「食糧等はどうしたらいい?」
「それは無論運び出して欲しい。街では逆賊らによって餓えた同志が多く居る張角様の御慈悲によって彼らを救えとの命だ」
その言葉を聞き、城内の者達は先を争って荷馬や荷車に積み込み物資を運び出した。
城内より物資が全て出たのを確認した如水は街に向かう号令をかけさせた
「同志達を救え、皆参ろう」
そう言って城の中から一人残らず黄巾党が去って行った後。森に伏していた残りの七百人が指示どうりに城の中に入り込んだ。
如水が指示したように彼らは中の施設を解体し、その上で如水の用意した油を掛けて火を放った。
後方より燃えている城を見た黄巾党の者は驚いたが。如水が言わせた一言で落ち着いた。
「逆徒らが火を掛けたのだろう、張角様の天意の通りだ」
その一言でかえって勇気づけた

そして戦場後に来た彼らは曹操の軍が街に居る事に驚いた。
「おい、どういう事だよ街は同志達が占拠しているはずだろ」
対して如水に付いてきた百人は落ち着いていた
「言葉通りだ我らの仲間が街に居ると」
物資を持ってきた者達が揉めていると夏候惇と夏候淵の二人が兵を連れて包囲して来た。
「貴様ら黄巾の一味だな、のこのこと出て来るとは間抜けな奴らだ」
そこに如水の連れていた残りの七百人が帰ってきて報告を述べた
「報告、黄巾の拠点の取り壊しに成功」
その報を聞き如水は作戦の成功した事を確信した。だが黄巾の面々は恐慌状態になった
「おい、どういう事だよお前ら、張角様の天意はどうなったんだ」
「おれら、張角様の命でここに来たって言うのに何でこんな事になっているんだ」
「ふん、ここに至って仲間割れか。所詮は賊に過ぎんな」
夏候惇の冷笑に対して黄巾の者は歯向かおうとしたが数で劣り包囲されてはどうしようもなかった
その騒ぎの中、如水は百人の兵を指揮し物資の点検を行い。更に、後続が持ってきたいつもの桔梗色の小袖といった装束に着替え終えてた。
「春蘭、秋蘭、この連中は私が連れてきたとりあえず縛り上げるだけで今は押さえてくれ」
その声を聞き、春蘭ら二人はこの中に如水が居る事に驚いた。
「如水、なぜこの様な所に居る、一体どういうつもりだ」
「姉者の言う通りだ、返答しだいではお前でも許さんぞ」
二人の殺気に周りの兵は怯えたが如水は若干呆れて答えた
「私の単独行動は華琳の許可を取っている、その事は秋蘭はともかく春蘭は聞いていたはずだが」
「何、いつそんな事を」
「春蘭、貴方また軍議を理解していなかったのね」
騒ぎを知った華琳は如水のした事を察したが、春蘭が軍議を聞いていなかった事に気づき呆れた
「華琳様、如水は一体何をしていたので」
秋蘭はこのままでは収拾がつかないと思い華琳に事態を聞いた
「如水は黄巾党がこちらに気を取られている内に本拠地を落としてきたのよ、その荷物はそこから奪った物ね」
華琳の説明に秋蘭は納得し春蘭を抑えた
「姉者、どうやら如水に一番の手柄を獲られた様だ」
「なに、どういう事だ」
「今はそれだけ理解していろ、そしてこれに懲りたら軍議をしっかり聞くことだ」
その言葉で渋々納得した春蘭だった
更に華琳は如水の連れて来た黄巾の連中を拘束する様に命じ、荷物について聞いた。
「これらは黄巾の奴らが奪い取った物ね、如何しましょう」
華琳の思案に如水は解決案を出した
「これは君が所有しても問題ないだろう、しっかりと工作している」
「どういう言う事?」
「城に火を掛けた後、この事はここの反対側にいた討伐軍がやった様にして来た。報せによると黄巾の側もあの場所はあの討伐軍がしたと思い込んでいる。君の物にしても苦情の出ようが無い」
「あいかわらず抜かりないわね、その討伐軍とやらはどんな旗だったの?」
「確か…袁と書いてある旗らしい」
「袁ね、このあたりなら袁紹ね。まあ、あいつなら問題無いでしょう」
「そんなに優れている者なのか、袁紹とやらは」
如水の問いに笑って答えた
「細かい事を気にしないの、覚えが無くてもあいつは自分の手柄
だと思い込むでしょう」
「そうか、それを聞いてなおさら安心できた。こちらに類は及びそうに無いな」
「貴方もいやな性格ね」
華琳の軽い皮肉に如水は何気なく答えた
「どうだろうか、見知らぬ他人の不運にそこまで案じる気がしないだけだ。それに知りもしない人間より、身近な人間の方が大事なだけだ」

それもそうかと、華琳は如水の考えに納得した。
 

 

十一話

街の郊外 曹操軍陣地

華琳は主だった将を集め、今回の戦役についての報告を語らせた。
全ての報告を聞いた後、華琳は新たに曹操の臣となった者について話した。
「どういった者達だ」
「如水はまだ知らなかったわね、この街で義勇軍として黄巾党に戦った者よ。秋蘭の言う通りなら、まだ荒削りながら鍛えれば、今後の有能な将となるでしょう。入って来なさい」
華琳の呼びが掛かり三人の女性が入って来た。
「紹介するわ、楽進、李典、于禁よ。三人共、改めて挨拶しなさい」
「この度曹操様の軍に加わりました楽進です、以後曹操様の為に我が武を持って尽くす所存です。よろしくお願いします」
「うちは李典ちゅうんや、以後よろしゅうお願いしますわ」
「私は于禁てゆうのー♪、二人と同じくよろしくお願いするの」
三人の紹介を終わり、如水はある事に気づいた。
「そこの李典という女性。もしかして以前、カゴ売りをしていなかったか」
「あら、気づいたようね。李典だけでなく他の二人も以前に陳留でカゴ売りをしていたそうよ。そうよね、春蘭、秋蘭」
二人が同意すると、李典が如水に話しかけてきた。
「あん時の兄ちゃんか、この前はおおきにな」
「いや、私こそあの時は安く売って貰って感謝している」
一通り雑談を済ませた処で華琳は三人に向き合って話しかけた
「三人に私の真名を授けるわ。以後、華琳と呼びなさい」
「では、私の方も、私の真名は凪といいます。以後そうお呼び下さい」
「うちの真名は真桜ちゅうんや。以後そう呼んでや」
「私の真名は沙和っていうの。よろしくおねがいしますなのー♪」
「三人についてだけど、如水の指揮下に入ってもらうは。三人共、如水の命を聞き、指導を受けなさい」
「私はかまわんが、三人はどう思う」
「うちは異存ないは、この前教わった事意外も知りたいし」
「華琳様の命とあれば私も異存ありません。それに真桜がそこまで信頼している御仁です、喜んで御指導を願います」
「二人がいいなら私もかまわないのー♪」
「如水、三人の教育は任せたわよ」
「了解した、期待に応えるように指導しよう」

その後、華琳は今後の方針について決める為、軍議を開いた。
「この付近の黄巾党は一掃したわ。これからどう動こうかしら。桂花、糧食の残りはいくらほどある」
「十ヶ月程かと思われます、更に、今回如水殿が持って来た物を含めると三年と程かと」
「華琳様、闇雲に動いてもどうしようもありません、一旦引き上げた方が良いかと思いますが」
「そうね、その通りなのだけど何か気になるのよね、如水何か掴んでいない」
「かなり遠方だが、南東の方に一万程黄巾党が集まっている、私が拠点と食糧を奪ったせいと、この辺を一掃したせいででまだ増えている」
「どういった所なの」
「街道を集める交通の要所だ、いわゆる衢地に当たるところだな。そこの砦に黄巾党が集まっている」
「そんな場所に兵を置くとはね、そこに張角がいるのかしら」
「どうだろう、士気も低く、軍としての統制が取れていないようだ。おそらく各地の敗残兵が逃げて来たと言った方がいいのかもしれん」
「ここからどれくらいかかるの」
「最短で五日、だか兵の現状を考えると三日は休息が必要だと思う。それを含めると、十日と見たほうが良いかもしれん」
「如水の言う通りです。負傷者も多いですし、この所強行軍が続きました。兵の疲れも目立っています。それに街の父老らは中で休んで貰って構わないと言っています、今はその厚意に沿うべきかと」
「そうね、少し厚意に甘えさせて貰いましょう。四日後に出陣するわ、ひとまず休息を取りましょう。では解散」

軍議が終わり全軍が街に入り休息を取るように命じた。華琳は街の父老に兵の狼藉をさせない事約束し、住民にその旨を高札に掲げて安堵させた。
全部の仕事を終えた後、如水は新たに軍に加わり自身の部下となった三人を集めた
「改めて、挨拶をしよう。私が君達を指導する黒田官兵衛孝高だ。真名は無いが如水と呼ばれている。三人共これからよろしく頼む」
「はい、凪と呼びます。隊長、これからの御指導よろしくお願いします」
「沙和なのー♪よろしくお願いしますなの隊長」
「真桜や。よろしく頼むで先生」
「…隊長はともかく、先生とはどういう意味だ真桜」
「この前、教えて貰った事でうちの発明がすごく増えたんや、せやから先生って呼ばせてもらうわ」
「まあ、いいだろう。初めに言っておくが、私は春蘭や秋蘭に比べて格段に腕力で劣る。正直、自分の身を守れるかすら危うい。華琳はおそらく君達を私の護衛の意味でも就けてくれたのだろう。私の身を守ってくれると助かる」
「ずいぶんとあっさり自分が弱いって言うんやな、ええでうちらで先生を守ったる」
「はい、隊長の護衛はお任せ下さい」
「そうなの、その代わりしっかり指導して欲しいの」
「わかった、凪、真桜、沙和これからよろしく頼む」
その後しばらく如水は部下の三人と共に話をし親交を深めた

四日後

街を出陣する曹操の軍を住民は名残惜しそうにしていたが出陣の際には、皆が曹操軍に声援を送り今回の事に感謝していた。

それを見た季衣は感心した
「すごい声援ですね、春蘭様」
「当然だろう季衣、何せ華琳様なのだから」
「姉者、言いたいことは何となく分かるが、それでは説明にならん」
「華琳様の名を慕う者は遠方にも多く居ると言う事よ季衣」
桂花は季衣に分かりやすく説明した
「やっぱりそうなんですか、ボクの村でも華琳様を悪く言う人は居なかったし」
「そう言うのを人徳って言うのよ、覚えておきなさい」
「はい!」

一方で、如水は行軍中の部隊の指揮を凪達に任せ、自身は華琳と馬首を合わせ、現在の黄巾党の動きを報せた。
「目的地の黄巾党は増える一方だそうだ、三日前は一万だったが現在は五万以上に膨れ上がっている。おそらくまだ増えるだろう。それだけの規模なら敗残兵だけでなく黄巾党の上層が送った兵も居るだろう。ここを討てば首領の張角の居場所が分かるかもしれん」
「そう。なら、次の戦いが連中の総力と見てもいいのかもね」
「しかし、こちらの兵力は各地の義勇軍を合わせても、二万七千。その内頼りになるのは君が連れてきた本軍二万。相手が賊の群れとはいえ少々危険だと思うが」
「その心配なら大丈夫だと思うわ、官軍が今の状況を見逃すとは思えない」
「しかし、官軍が当てになるかな。このまま増えていけば少なくとも相手は十万を超える大部隊になるだろう。それに兵の錬度はともかく、それを指導している者は今までとは比べ物にならんと思うが」
「有力な諸侯の内、見る目のある者はその場所を見逃さないはず。かならずその場所に来るわ」
華琳の予想に如水は疑問を持った。
「失礼だが、その根拠は一体何処から来ているのか教えて欲しい」
その質問に華琳は笑って答えた
「私の勘よ」
その言葉に納得がいった如水だった
「そうか。なら安心だ」
そう言った後、如水は自身の部隊に戻った
 

 

十二話


曹操が軍を発して三日目

行軍の先鋒を務める如水の部隊の前方に謎の一軍が視界に入った。
「隊長、一体何者でしょうか、黄巾党とは思えませんが」
凪が如水の意見を求めた
「わからないな、官軍の旗でもなく、華琳に聞いた諸侯の旗のどれとも一致しない。軍の武具を見る限り義勇軍だと思うのだが。真桜、すまないが素性を聞いてきて貰えるか、危険は無いと思うが気をつけてくれ」
「わかったで先生、じゃあ行って来るわ」
「沙和は華琳の所に報せに行ってくれ、状況によっては私の手に余るかもしれん」
「わかったの、すぐ華琳様に伝えてくるの」
「凪、念の為、戦闘の用意をしておいてくれ」
「了解しました」
三人にそれぞれ指示を与え、如水は様子を見た。そこに真桜が帰って来た
「先生、あの人達は義勇軍らしいで、何でもこの先の砦にいる黄巾党を倒しに行くんやって。華琳様の名前を出したら是非会いたい言うて来たわ」
「そうか、今、華琳を呼んでいる所だ。とりあえず私が会おう。お通ししてくれ」
真桜の言葉を聞き、義勇軍の将と会おうと如水は席を用意した

真桜の案内で入って来たのは三人の女性だった。
「お初にお目に掛かります。私は曹操軍にて将を務めます、黒田孝高と申す者です。どうぞ席にかけて下さい」
如水の挨拶に答えるように席に着き三人の女性はそれぞれ名乗った
「私の名前は劉備、字は玄徳と言います、この二人は私の仲間の関羽と諸葛亮の二人です」
「失礼ながら、我が軍へ如何なる用向きか聞かせて貰って構わないでしょうか」
その事を聞くと三人は気まずそうな顔を浮かべ
「その事は曹操殿にお会いしてから話したいのですが」
「左様でしたか、これはご無礼を、どうかご容赦下さい。ただいま我が主君の曹孟徳を呼んでおりますので、暫しお待ち下さい」
話を打ち切るようにした劉備に対し、如水は詫びた
しばらくして沙和が華琳を呼んで来たと聞き、華琳を席に案内した
「待たせて申し訳ないわね、私が曹孟徳よこちらは、旬彧。黒田を含め二人の陪席を許してくれるかしら」
「構いません、まずは挨拶から」
それぞれが名を紹介すると華琳は劉備に聞いた
「では、聞くけど。我が軍に何の用向きかしら」
「はい、実は…」
聞くところによると劉備らは黄巾党討伐の為に義勇軍を起こしたが、戦闘を重ねるにつれ糧食や武具の不足が出てきた。その為、曹操に物資を分けて欲しいとの事だった。
その事を華琳の傍らで聞いていた如水は、顔では穏やかに笑っていたが内心は複雑だった。劉備のしようとしている事は確かに正しいが結果、無計画に軍を動かし士卒を餓えさせた事の罪。そして兵を餓えさせた事は恥じているが、その罪については気づいていない事。それは軍を預かる者として失格だと思った。
しかし、感心する点もあった。それだけ餓えていながら略奪を働いていない事。そして劉備の軍が餓えていながら軍としての形を残している事。この二つに関しては、劉備の人望もあるのだろうと思い。徳と言う点ではおそらく華琳は劉備に及ばないだろうとも思った。
「わかったわ。要望に答えましょう、少し席を外させて貰うわ。食糧の残りを確認するわ。桂花、如水ついて来て」

華琳らは席を立ち、糧食の担当していた桂花と劉備と最初に会った如水に意見を求めた。
「桂花、どれ位までなら劉備に渡せる」
「劉備の軍は五千程と言っています。それなら持ってきた分の食糧の残りの半分を渡せばとりあえず、向こうの要望に答えれるかと」
「その場合、こちらの残りはいくらになるの」
「六ヶ月程かと思います」
そう言った後、桂花は不満を漏らした
「賊を働かないだけましですね、ずいぶんと堂々とした物乞いだと思います」
「そうね、気持ちは分かるわ。とりあえず他に意見あるかしら」
「華琳。彼女らに渡す食糧だが、私がこの前、黄巾党から奪った物を全て渡せばどうだろうか」
「どう言う事?」
「正直言って、私は奪ったまでは良かったがその使い道について考えていた。あれは元々、黄巾党の連中が民衆から奪った物だ、それを自分達が食べるのは正直言って気が引ける。なら勝手な自己満足だが捨てた物として彼女らに渡せば良いと思う」
「そう…確かに私も少し気が引けたのよね、あれを使うのには」
「それともう一つは、彼女の肝を冷やすほど渡せば、今後、何かの交渉材料として利用できるかもしれん。劉備は君に無い物を持っている。それが何か良く分からんが、いずれ君の敵となり得るかもしれん、ここで彼女に引け目を感じるくらいの恩を売るのも良いと思うが」
「私に無い物?」
「うまく言えないのだが、君が一番わかるはずだ」
「私も、如水殿の意見に同意します。確かに言葉にすると、その言葉が一番合っているかと」
「言われて見れば、そう言いあらわすとわかりやすいわ。私が劉備に感じたのは、それかもしれない」
そう言った後、華琳は決断した。
「劉備に黄巾党から奪った食糧を全て与えましょう。桂花、すぐに渡すよう準備しなさい」
「はい、わかりました。直ちに用意します」

三人の話が終わった後、華琳と如水は劉備らに食糧の与える量を伝えた。
劉備は驚き遠慮したが、それを制すように華琳は話した
「このくらいの量、我が軍には大した事じゃないわ。それに共に黄巾党を討つ同志じゃない、ぜひ、受け取って欲しいわ」
「本当に良いんですか。そんなに貰ってしまって」
「そんなに畏まらないで。私は貴方の気持ちに答えたいの、大事に使って」
「はい!。ありがとうございます」
「よかったですね、劉備殿。そんなに喜んで貰うと、私も貴方を紹介した甲斐がありました」
「黒田さん、ありがとうございます」
そう言って涙を流して感謝の言葉を言い、劉備は自分の軍に戻って行った。

「なかなかの名演技だったわね」
「私はただ笑っていただけだ、君ほどじゃない」
「それにしても、劉備か…。貴方、何か知ってる?」
「劉備については知らないが、隣にいた関羽と諸葛亮については多少知っている」
「どう言う者なの」
「関羽は以前、盗賊退治で名を上げていた者だ、噂ではかなりの武勇の持ち主だとか。諸葛亮は水鏡と言う者に教わり、秀逸のといわれた程の者だそうだ」
「そう、そう言った者を従えている所を見ると、劉備の度量も伺えるわね」
「二日後には、砦が確認出来るだろう。聞くところ、劉備もそこに向かうようだ、君の言う通り、本当に他の諸侯も来るのかも知れないな」
「当然よ、私の勘って外れないの」
「そのあたりが私のどうやっても真似できない所だな、私は物事を都合の悪いようにばかり考えてしまう」
「それを一々解決させていくのは大変ね。でも、それを克服するのには多くの情報を知る事、その為の探究心が貴方の知性の本質なのかもしれないわね」
「そうなのかもしれない」

華琳と話をしながら如水は、別の事を考えていた。
今回、如水は当初、今向かっている砦を軽視していた。だが、今では無視できない重要な場所である。そこに向かうように決めたのは華琳だった、あの軍議の場で、如水は華琳より早く、あの場所を知っていた、だが、無視しても構わないものと思っていた。しかし、華琳はあの時点でこうなる事を解っていた予感があるようだった。
如水にとって今回のような経験は初めてではなかった。如水にその経験をさせたのは、信長と秀吉の二人である、あの二人は、今回の華琳の様にまるで予知するかの様にモノが見えていたように思う。
その事を思い出し。やはり曹孟徳には信長と秀吉と同じように天下を取る可能性を秘めているのかもしれないと思い、自分の新しい生涯の目的がわかった気がした。




 
 

 
後書き
奪った食糧は、劉備に全て渡しました。
正直、自分は桃香の考えが余り好きではないので、今後、いい方に書かれないと思います。
桃香ファンの方申し訳ありません 

 

十三話

曹操軍本陣

眼前には黄巾党の砦がある。十日前の報告とは違い、この乱を象徴するかの様な威容を見せている。

華琳は一同を集め軍議を開いた。
「報告では黄巾党の数は十五万程の事です、対するこちらは官軍と諸侯の軍、義勇軍を合わせて十二万程。しかも官軍は互いに反目しあい動く事を恐れています。諸侯の軍も似たようなものです、正直言って頼もしい味方とは思えません」
「つまり、頼れるのは自分達だけと言う事か」
「そうですね。ですが、言い換えれば、この戦いで私達だけが活躍する事が出来る。曹操の名を大陸中に広める機会かと」
「そうね、そうなれば、我が軍の強さをここに居る一同が知る事になるわ。何か意見は」
「この状況では、策を施すより、余計な事を考えず、一塊にになって突撃を仕掛けるのがいいと思う。黄巾党側は多勢に驕っている、今仕掛ければ浮き足立つだろう。そうなれば他の味方も黙って見ている事も無いと思う」
「そうね、功を取られまいと私達に続くでしょうね。そうなればこの戦いに勝てるわ。その案でいきましょう。問題は軍の編成だけど」
「私は春蘭を先鋒の将に推したい。それだけの任に応ええるのは、春蘭しかいないでしょう」
「わたしも如水の意見に同意です。この役、姉者にしか務まりません」
「そう、わかったわ。春蘭、先鋒の将としてわが軍の強さを知らしめなさい、それから秋蘭、春蘭と共に先鋒を務めなさい」
「了解しました、必ずや華琳様の期待に答えて見せます」
「我ら姉妹が華琳様の名を世に広めて見せましょう」
「頼んだわよ二人共。如水は後方にて二人を援護しなさい。では解散」

軍議が終わり急ぎ軍を整える春蘭、秋蘭、如水の三人。それを見ながら華琳はいよいよ自身の名を天下に披露する時が来た事を思った。
「黄巾党を残らず殲滅する、私に続け!!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
春蘭の号令の下曹操軍二万七千が黄巾党に一斉に突撃した。
如水の予想どうり、黄巾党は浮き足立ち、押し切られていった。それでも、突き進む曹操軍を包囲するように黄巾の軍は背後に回り込もうとしたが、後続の如水の軍がそれを許さなかった。
「敵に後ろをとらせるな、先陣の者達が突き進めるよう、私達が後ろを守れ」
「「「おーっ!!」」」
「前に進め、お前達の後ろは仲間が守ってくれる、仲間を信じ、敵を打ち崩せ」
「「「「おーっ!!」」」」」
黄巾党の陣を次々と打ち崩して行く曹操軍を見て、傍観していた官軍と諸侯の軍が功を盗られまいと次々に動き始めた。
「このままでは、曹操に手柄を独り占めされる、そうなれば、我々は叱責をうけるぞ」
「これ以上、曹操軍ばかりに、手柄を取らせるな。我々も進むぞ」
官軍の将は曹操に手柄を独占される事を恐れ、急いで進軍した。
その動きを見た黄巾党は一気に崩れ始め、陣形が崩壊し始めた。
それを機と思い、華琳は声を張り上げた
「敵は崩れたぞ、あと一息だ。皆、残りの敵を一掃せよ」
「「「「「「「おー!!」」」」」」」
華琳の命の下、曹操軍は更に士気を高め、果敢に討ちかかった。
その後、黄巾党は総崩れとなり、逃げて行く者も処断されて行った。

戦闘が終わった曹操軍は砦近くで陣を張りそこで休息した。

如水は負傷者の治療に凪達に自分の教えた治療を施すよう指示し、自身は今回の戦闘の行賞を決めるための草案を考えた。
如水は草案を纏めた終えた所、凪の報告を聞いた、負傷者の治療が終わり後は回復を待つだけだと事だった。

如水は華琳に報告すべく、華琳のいる天蓋に入った。

だが、中では華琳が苛立ちを顕にしており、春蘭、秋蘭、桂花らは怯えたように黙っていた。如水はおそらく先ほど来たと言う官軍の使者のせいだろうと察したが、報告するべき事は伝えた。
「華琳、負傷者の治療は終わった、後は休息すれば回復するだろう、それと行賞についても纏めておいた、目を通してくれ」
「わかったわ、ありがとう」
「後、官軍の使者の言葉だが、そこまで気にする必要は無いだろう」
その言葉にを聞き、その場に居た華琳以外の全員が驚き、その事を言われた華琳は怒鳴った。
「うるさいわね!。私、あんな屈辱受けたの生まれて初めてよ、よくもあれだけ偉そうに喋れるものだわ」
「そんな奴は何処にでも居る、そういった類を気に留めるのはやめておいた方がいい、それより、張角の居場所を掴んだぞ」
「本当!」
その言葉を聞き、機嫌を戻した華琳。更に、春蘭らも気を引き締めた。
「逃げた連中の後を追わせた、どうやら今回の敗戦がよほど響いたようだな。かなりの数が散って行った様だ、それに連中の食糧は底を尽き始めた様だ、動くなら今かもしれん」
「そう…、張角を討ち取ればこの乱も終わる。いま動かせる軍は何処?」
「負傷者が一番少ないのは、私の所の凪と君の護衛軍だが」
「なら、如水、直ぐに凪を連れてそこに向かいなさい。私も直ぐそこに、向かうわ。春蘭、秋蘭、桂花ここは任せたわよ」
留守を春蘭らに任せ、華琳は如水と共に、張角の元に向かった。

張角の所に向かう最中、華琳は如水に話しかけた。
「さっきは怒鳴ってわるかったわ」
「別に、私は気にしていない」
「そう、ありがとう」
「それより、張角についてだが、君は、張角をどうするつもりだ」
「どういう事」
「この人数では、連中を取り逃がすぞ」
「わかっているわ、これ以上連中を刺激させたくないの」
「仲間に加える気か」
「使えそうならね。だって、これだけの組織を短時間で作ったのよ。殺すよりこちら側に懐柔した方がいいわ」
「それは、確かにそうだが。そう、上手くいくかな」
「張角にもう逃げ場はないわ、でも、今なら私が救ってあげれらる。それを教えれば、張角はこちらの意のままになるわ」
「そうか、君がそこまで考えていえうなら、私も異論は無い。ただ、張角の首を見せなければ、世間は収まらんし、なにより、君の功績が霞む。その点は如何する気だ」
「その点は抜かりないわ、なにせ張角の顔を知るのは黄巾党の中でも一部だけ、貴方の情報網でも人相を掴めていないなら、殆どの者が知らないわよ」
「そこまで言ってくれるのは嬉しいが、替え玉でも使うのか」
「そんなところ、素性が定かでなくて、足がつかない、人相が悪いのが一番いいのだけど」
「なら、五胡が一番いいだろう。丁度、捕虜の中に羌族が四、五人混じっている」
「なら、そいつらを張角と黄巾党の首謀者って事にして、晒せばいいわ」
「わかった、真桜と沙和に連絡してそれらしい格好に着替えさよう。良いか」
「ええ、これだけの乱を起こした者がみすぼらしい格好だと、示しがつかないわ、上手くやるように指示しなさい」
「了解した」
そう言って、如水は真桜と沙和に対し捕虜の羌族を張角に仕立てるよう書をしたためた。更に、この事は自分達が戻るまで誰にも口外するなとも書き、書を送らせた。
「これで、帰陣する頃には、張角の替りが出来るだろう。急いで、本物を捕まえよう」
「そうね、向こうを逃がしたら、元も子も無くなるわ」

その後、張角ら捕らえたとの凪からの報せを受けた。二人は張角、張宝、張梁と対面し、命を助ける代わり自分の為に働くよう命じた。殺されると思っていた三人は意外な救いに感謝し、ぜひ、役に立ちたいと申し出てきた。

帰陣した曹操は、如水の指示通りに真桜と沙和が用意した替え玉を、張角と名乗らせ朝廷に差し出した。

朝廷は曹操の功を称え、曹操を西園八校尉の一つ典軍校尉に任じた。

これで黄巾の乱は終わったが、朝廷の権威は落ち、対して諸侯は力を付けた。如水は曹操の文官と武官としての仕事、更に、凪、真桜、沙和の指導に忙殺されながら、これからの動きに注意を払っていた。権威が衰えたとはいえ、まだ、利用価値のある漢王朝を誰が如何、利用するのか。
如水は次の動乱を予想しながら、それを統べる力を曹操に持たせる準備を行っていった。

 
 

 
後書き
最後の方ぐだぐだ… 

 

十四話


黄巾の乱が終わり、曹操の名は大きく上がった。そして、領土も増え如水ら文官の仕事も以前以上に多くなった。
まず、首謀者の張三姉妹だが曹操の監視下に置かれ、黄巾の残党を鎮める様に命じさせた。
何でも、乱の発端は歌の興行で大陸を歌で制覇すると言った事が、下の者達が勘違いしたらしい。今後は、曹操のお抱えの楽曲団としてほとぼりが冷めた後、活動するらしい。その事について如水は切っ掛けはどうであれ、漢王朝には既に民衆を統べる事が出来ないと理解した。
張三姉妹に至ってはしばらく、黄巾の残党を鎮めさせ、その後、曹操が主催する興行で歌を披露するらしい、おそらくそれもいずれ大きな財源となるだろう。
いずれにせよ、能や狂言を自分から主催した事も無く、茶道についてものめり込む事も無かった、芸術分野に疎い如水には、自分にあまり関わりの無い事だと思った。
そして、曹操は為政者として新たに増えた領土に良政を敷き民力の向上に、専念した。
手始めに曹操は、荒廃した都市や集落への支援や、新たに増えた領土の安定と発展の施政を行う様に如水ら文官に命じた。
文官として働く一方で、曹操の軍でも有力な将の一人の如水は、兵の鍛錬にも力を入れ、更に、自分に預けられた三人を将として指導していた。

その他、如水は華琳に頼み、以前は出来なかった、技術研究の予算を設けて貰う事を許され、特別に部屋を用意して貰い、研究に力を入れていた。
その事を聞き、興味を持った真桜はそれを見てみたいといい、如水もそれを許可した。

城内の外れの小屋

部屋に入ると見た事が無い物が多く並んでおり、真桜は如水に次々に質問した。
「なあ、先生。この竹の筒は何や?」
「これは火箭と言って、火薬を含めた竹筒に矢を入れて、火薬の爆発で矢を飛ばす武器だ」
「じゃあ、この、丸い鉄は何や」
「それは、鉄玉と名づけた物だ。鉄の中に大量の火薬を入れてある、衝撃で爆発するから、気をつけてくれ」
「じゃあ、こっちの壷は?」
「これは、私が製造した火薬が入っている、不純物が少なく爆発力が格段に高い。この火薬が製造できたから、これらの武器が完成した」
「さっきから言ってる火薬って何や、先生」
「ああ、火や、衝撃で爆発する粉の事だ」
「それが、この粉かいな」
「領内に硝石と硫黄が採れる場所がいくつかあるのでな、華琳と相談し、その土地は税の代わりにこれを収める様に命じた」
「それを混ぜたんがこの粉か、そう言えば、この前、皆に見せてくれてたな」
「あれは、花火と言って、どちらかと言えば見て楽しむものだが、この部屋の物とは少し違うな」
「物騒な物ばっかりなんやな、この部屋」
部屋を見渡した真桜は感心した
「ああ、だから、私と華琳しか鍵を持っていない部屋だ」
「先生って、絡繰だけやのうてこんな事も知ってたんやね」
「真桜の様に、作った事は無かったがな、知識だけは持っていた。それに、今までは予算の都合で出来なかったが、ようやく予算が許された」
「なあなあ、これって、量産するんか?」
「ああ、いずれはな、だが、火薬は製造法を秘匿しなければいけないから今の所難しいか、火箭や鉄玉は作り方を教えれば、城内の鍛冶職人でも作れるだろう。だか戦場で使うなら、それなりの数を揃えないといけないから、時間が掛かるだろうな」
そこに、華琳が入って来た。
「調子はどう、如水。あら、真桜も居たの?」
「あ、華琳様。先生に頼んで見学させてもろてます」
「許可を得ているならいいわ。如水、上手くいってる」
「いいところに来てくれた、華琳、この武器を城内の鍛冶職人達に作るよう依頼できるだろうか」
「作れると思うけど、まだ試作段階でしょ、その武器。もう少し安全が確保できる様にしなさい」
「そうだな、火箭はともかく、鉄玉は輸送で誤爆する可能性もあるしな、そこのあたり何か考えて見るか」
「火箭の方も、実戦なら、少なくとも五百、理想を言えば二千や三千以上は揃えないと意味が無いわ、今はそれだけの予算が割けないからしばらく待って頂戴」
「そうだな、確かに、予算の事もあったな」
二人の話を大人しく聞いていた真桜だったが、華琳に願い出た。
「華琳様、うちに、先生の研究の手伝いさせて貰ってええやろか?」
「いいわよ。如水もいいでしょ」
「真桜なら私と違った発想を期待できだろう、私も異存は無い」
「それなら良いわ、真桜、この部屋に入るときは、如水に必ず許可を取りなさい、それが条件よ、わかった」
「はい、わかりました」

そして、以前同様、如水は大陸各地に諜者を撒き、情報を集めていた。
その中で興味を持ったのは劉備と朝廷の動きである。
劉備は乱が終わると朝廷から平原に小さな領地と城を貰っていた。曹操と劉備は以前、陣中で会っただけの縁だが、史実では曹操の覇道の最大の敵だった。今後の為にも注意して問題は無いだろうと如水は思ってだった。
しかし、集めた情報を調べると如水は疑問を持った。劉備の領地は作物の物成りも良くなく、目立った産業も無い様であり、更に、前任の領主が圧政を敷いた為、民力が落ち、食糧、資金が思うように集めらない様だった。更に、連れて来た義勇軍を解散させずにいる為、資金、食糧不足は慢性的に続き、市中の警備が上手く回らず、夜には治安が良くない事、そして日々の糧にも困り、以前、曹操が渡した食料を使っているとの情報も入っていた。
「この情報筋は信頼できる者達だが、どうも信じられないな。諸葛亮と言えば劉備を助け蜀の建国の功臣だったはず、それがこんな施政を行うのか、甚だ疑問だ、それとも、こちらの動きを知り、偽の情報を流しているのか」
しかし、向こうが防諜に使う予算があるかと言われれば、無いとしか考えられない。となれば、この情報は真実味を帯びていると言う事になる。一方で、劉備らのその施政に対し、街の父老らは好意的であると言う事が確かだとわかった、その方面から見れば真実に近い。だが、如水はそれはおそらく前任の者が、重税を課していた事が大方の理由だとうと推測した。その事はとるに足らない理由だとしても、現在、地下の者から慕われている為政者はこの大陸では少ないその事を考えると今後、脅威となるかもしれない。
現時点では劉備の判断に困る為、如水は一定の観察を続ける事にした。

そしてもう一つ興味のあるのは朝廷の動きだった。

黄巾の乱の終わった後、官軍の将軍、何進と宦官達との対立が激化していった。特に、何進は今回の遠征で、曹操に功を独占された為、何進の実力を疑う声が出ており、異母妹の皇后もその言葉を聞き、その為、擁護出来ず、朝廷内での求心力が下がり、孤立しているらしい。しかし、以前、何進が禁軍の大将であり、宦官も表立って動けないらしく、何進の周りの者を仲間にしていき何進の勢力を崩している様だった。

その報せを知った如水は、朝廷はしばらく内部抗争に明け暮れ、おそらく大きく動かないだろうと思った。そして、いずれ、窮したどちらかの勢力側が有力な外部の諸侯を頼り、上洛させ、それを裏で操る。その時に再び世は荒れるだろうと思った。

その事について、一つの疑問を持ち、一度如水は華琳に直接尋ねてみた。
「私が上洛するのかですって、馬鹿を言わないでよ。何で、私がそんな面倒な事引き受けるのよ。確かに私の祖父は何代か前に大長秋だったわ、当然、世間から見て私は宦官派よ、それに、今回の行賞は宦官連中が私に優位に運んでくれたわ。宦官が私を利用しようとする事は不思議では無いわ、でも、そんな面倒な事より、如何考えても、今は地盤固めが優先よ、今、言われたとおり上洛すれば、間違いなく、私に敵対する連中が増えるわ、後々潰すにしても、わざわざ好んで汚名を着る必要なんか無いわよ」
そう言って華琳は如水の疑問を否定した。如水としても同意見だった為、異論はなかった。

如水としては、それまでにまず第一に、曹操の領内の富国強兵を図り地盤を整える事を目的とし、第二に凪、真桜、沙和の三人を将として育てる事。そして、最後に開発した兵器をいずれ実戦で投入できる様にする事を目的とした。

 
 

 
後書き
火薬の発明は正式には七世紀から、八世紀なのですが黒田孝高は十五世紀末期の人間なので知っています。また、中国は昔、火薬資源が豊富でした。作中で創ったのは黒色火薬ですが、如水の知識で爆発力を格段に上げています。
鉄玉とつけた物は「てつはう」とよばれた武器を私が勝手に変えました。
火箭を含め戦場で使用するのは袁紹との戦いあたりからです。 

 

十五話

曹操が新たに拝領した領地、以前の領地に善政を尽くし、領民らも曹操の良政に安堵した。
曹操は配下に命じ、各自に仕事を与えた
如水も自身の仕事をしながら、凪、真桜、沙和の三人を将として教育した。

演習場

如水は兵の演習が終わった後、三人を集め指導した。
「凪、君は時折、損害を恐れず攻勢に出る時がある。戦況にもよるが、出来るだけ損害を出さない様に兵を動かす事を頭に入れてくれ。その為にはまず、常に自分の部隊の状態を把握しておく事だな。その事を考えてくれ」
「はい、わかりました、隊長」
「真桜は、今のところ問題はないが、言いにくいのだが。二人に比べ将としての長所が無い。華琳とも相談しているが、君の長所を生かすのに今後、工兵を指揮してもらうだろう、その事も考えて、これからの兵の指揮の参考にしてくれ」
「了解したで、先生。うちも自分の好きな事を担当させてもらうと嬉しいわ」
「沙和、君はようやく兵との信頼関係が築けてきた様だな。だか、君は凪と反対に必要以上に慎重になる時がある。慎重になるのは悪くないが、兵が君の指揮に不審を持つ時があるようだ。そうならない様に、兵に自分の意図を知らせておく必要がある。わかったか」
「はい!、難しいけど二人に遅れない様にがんばるの」
「今は、言えるのはその事ぐらいかな、今言った事を次の演習までに自分で解決方を考えてくれ。いいかな」
「「「はい!」」」

武官としては三人の指導だけでなく、曹操の筆頭軍師兼、曹操の将の一人として、全軍の鍛錬、部隊の編成に当たっていた。
華琳は拡大した自軍の演習を見て春蘭らを集め議論させた
「新兵と今までの居た兵に比べると大きく錬度に差がありますね、これは時間をかけてやるしかないでしょう」
「そうだな、今、華琳様の軍は四万を超えている、しかし、その内の半分以上は新規の兵だ、いま、全体の錬度が下がっているのは必然かもしれません」
「でも、その事は克服しなければならないわ、いきなり精兵を作るのは無理でも、兵の錬度を上げる事は今後の為にも、早急さが必要ね」
「それには、地道に演習の回数を増やすしか無いと思います」
「そうですね、ここばかりは急いでも仕方がありません、無理に上げる事は危険と思います」
「そうよね、それしか思いつかないわね。では、四日に一度だった演習をこれからは、演習を二日に一度に増やしましょう。その事をしっかり伝えないさい」

一方で、文官としても務めている秋蘭と如水は桂花らと共に、曹操の官僚として仕事を怠らなかった。
秋蘭は広大となった曹操の領内の治安維持を担当し、新領地の住民が安堵できる生活を守る様にした。
如水と桂花は領内の活性化に力をいれた、まずは、領内を豊かにし、税収を安定させ、人心を鎮め、その財政を確たるものにしようとした。
そして、曹操の考えた政策によって、交通路の整備拡大、領内の開発、資源の確保、又、商人を誘致し商業の活性化を行い、財源の拡大、軍備の充実を成功させ、府庫は満たされていった。

更に、如水は、軍事や政事に役立つ新技術を開発するため、私財を投じ、研究に力を入れていたり、各地の諜者からの情報を纏めていた。

その為、如水の働きはおそらく、華琳に並ぶ多忙さだった。その働きぶりを見ていた周囲は、二人体調を心配し無理やり休暇をとらせた。

その日一日休みとなった、華琳と如水は庭園にある東屋に入り、どうやってすごすか話し合った。

「どうしようかしら、いきなり休まされたけど、特にしたい事が無いのよね、何をしようかしら」
「難しく考える事も無いのでは無いか、それに君は詩を考えるのが好きだと聞いたが」
「私は、自分の人生を題材に詩に書きたいの、こんな状況じゃ、詩作が出来そうにないわ。貴方こそ何かしないの」
「そうだな、私は好きな事は、子供と遊ぶ事や、歌を詠むことくらいか。しかし、君の言う様に今は、歌を考える様な気が起きないな」
「そうなのよね…、そういえば、私って貴方が以前何をしていたのか詳しく聞いた事が無かったわ、いい機会だから教えてくれない」
「そういえば、話して無かったな。いいだろう、答えられる事は教えよう」
そう言って、如水は自分の故郷の話を華琳に聞かせた

「確か、生まれは倭の国の播磨だったかしら」
「ああ、ここより、遥か東の島国だ」
「そこでは、一体何をしていたの」
「その国は、私が生まれる前から、戦乱が続いていた。そして、私はある男に魅力を感じ、その男に会い、その下で働くようになった」
「今の、この大陸と余り変わらないのね、で、その男が天下を取ったの?」
「いいや、その男は志半ばで部下に殺された、余りにも苛烈すぎたのだろう。事実、何度も親類や部下に裏切られ、その度に敵を虐殺をした」
「よほど人徳が無かったのね、その男」
「そうだな、だが、私がその男を見込んだのは、その彼の強さだけでなく、彼が、戦乱を終わらせ新しい時代を創ると思ったからだ」
「新しい時代ね」
「ああ、彼は旧弊な社会を壊し、自分の力で世を変えようと思っていた気がする」
「それで、その男が死んだ後、貴方は如何したの」
「彼が死んだ時、その男の部下の下で働いていた。私は、男の主人が死んだとき、その男こそ、天下を取れると思った」
「それは何故?」
「よくはわからない、だが、その男には天運が憑いている様に思えた、それに死んだ主人には無い人に慕われる徳があった。だから私はその男に天下を盗らせる様にさまざまな策を授けた、そして彼の下に天下は平定された」
そこまで言った後、如水は恥ずかしそうに話を続けた。
「以前、君が言ったな。私が天下を取る気は無いのかと」
「ええ、覚えているわ。貴方、自分に天下は似合わないって、言っていたわね、それとどんな関係があるの?」
「天下を取った男が死んだ後、その男の子供はまだ幼かった。結果、その遺児の天下を守ろうとした者と、それを奪う者の二つに別れた」
「あなたは、どっちについたの」
「…私は何処にもつかなかった、二つの勢力が争っている間に第三の勢力として、天下を奪ってみようと考えた」
その言葉に、少し驚いた華琳だっだが、続きを急かした
「私の計算は完璧だった、少なくとも、成功すれば、そのどちらの勢力をも上回る兵力を持つ事が可能だっただろう。だが、私は失敗した、私には天運が無いのだろうとその時ようやくわかった」
「それで、その罪で国を追われたか、殺されたの?」
「いいや、特に咎めは受けなかったよ。奪った領地を全て勝者に渡し、それに息子が勝者の側について功を挙げていた。その事もあって、命は無事だったし、家も守れた」
「そう…、それであの時、そう答えたのね」
「結局、私は誰の下でしか役に立たないのだ、そして、それが私の生甲斐なのだろう。その為なら、私はどんな事でもしよう」
「それが、貴方の決めた生き方ね。ありがとう、いい話が聞けたわ。お茶を持ってこさせるから、今日はもう少しここでゆっくりしましょう」
「そうだな、少し喋りすぎた、お茶でも飲んで休もう。また、明日から忙しくなる」

そうして、華琳と如水の二人はゆったりと過ごしていった、未来を予想する事も、過去を懐かしむ事も忘れるように東屋に時は流れた


 
 

 
後書き
最後の如水の話は私の個人的主観です 

 

十六話


黄巾の乱が終わり、随分と時が経った。
曹操は拡大した領土を安定させ、善政を敷き、人心を安堵させ、城内の府庫を満たした。更に、自身の軍の人数、質を共に充実させ、富国強兵を成功させた。
そして、それらの政策や兵の充実を効率よく運用する為の制度を確立し。いずれ、他の土地でも施行できる様にした。

一方で朝廷は混沌としていた。大将軍何進と宦官らの対立は激化し、遂に二つの勢力は外部の有力者に力を借り、上洛させた。何進は袁紹と袁術を、宦官らは涼州の董卓を呼び、二つの勢力争いは過激化した、そして宦官派の何進の暗殺により、政争に敗れた袁紹と袁術はそれぞれ領地に引き上げた。

如水がその情報を掴んだ直後、桂花が部屋の前に来て、華琳から密議をしたいとの呼び出しが掛かった。

華琳 私室

如水が入ると、部屋には華琳と桂花の二人しか居なかった。
「来たわね。これからの事で話をしたいのだけど、貴方と何処まで知っているの」
「朝廷内での内部抗争なら、宦官の何進の暗殺と、その政争に負けた袁紹と袁術の都落ちしか知らない」
「そこまで知っているなら話は早いわ、これから連中がどう動くか、それによってこちら対応を話し合いたいの」
「構わないが、私は董卓や、袁紹と袁術の人柄を知らない。相手になるかな」
「そのあたりは心配しないで、董卓はともかく、袁紹と袁術の二人なら私と桂花が教えるわ」
「はい、それに私は以前、袁紹の下で働いておりました、その事お忘れですか」
如水の懸念に二人が答えた
「ああ、それなら心配ないだろう、それで、どういった事を話し合うんだ」
「まず、貴方が知る董卓の事を話して」
「了解した、董卓の今の権勢だが、大陸中を圧倒している。都に呼び込んだ宦官らをも手の内にし、宮廷を牛耳った、そして、その幕下には賈駆や陳宮と言った智謀に優れた者。また、呂布、張遼、華雄といった武勇に秀でた将がいる。しかも、禁軍を手中に収めた董卓の兵は十五、二十万とも言う、まさに大陸一の勢力だな」
「そうね、でもそれに反発する連中もいるわ。まず、袁紹の動きだけど、間違いなく董卓を討つの為に兵を挙げるわ。でも、いまの董卓の勢力は袁紹の勢力は袁術と二人を合わせても格段に差があるわ、おそらく連合を立ち上げるでしょう」
「私もそうおもいます、董卓の権勢を黙って見ているほど袁紹は器も大きくありませんし何より、なにより人間が出来ていません、かならず復讐を図ります」
「ところで、袁紹と袁術の二人の性格を教えて欲しいのだが」
「袁紹と袁術の性格はまず、共通点として虚栄心が強く、名門意識が高いわ、そのくせ対して能が無い事も似ているわね」
「それと、これは袁紹の下で働いて思った事ですが、身内や古くから仕えているの者への贔屓が強く、新参の者に対しては袁紹は心を許さず、意見を述べても採用させません。冷遇に不満を持つ者も多いでしょう。しかし、四世三公を輩出しただけあって、世間に顔が広く、広大な領土を持ち、私財や兵も多いのは確かで、董卓に次ぐ大勢力でしょう、それだけに袁家が反董卓の旗を揚げれば多くの諸侯が味方するでしょう」
「そうね、成り上がりの董卓と違い、袁家の権威は漢王朝に並ぶ程でしょう、味方に回る者も多いわ、対して董卓は人気が無い。これが決定的な差ね」
「華琳、先ほどから袁家の凄さを私に教えているが、君は、どちらに付くのだ」
「当然、袁紹に付くつもりよ、あいつがいくら馬鹿とはいえ、その周りは私の力が無ければ董卓には勝てないと思っているでしょう、一応、腐れ縁って言うのもあるし、見知らぬ董卓よりは利用し甲斐があるでしょう」
その言葉を聞き如水は華琳の意見に納得したが、その場合この密議の意味が分からなくなった。
「方針が決まっているのなら、わざわざ三人で話す必要があったのか?」
「念の為、貴方達の意見を聴きたかったの。一度、情報を共有して二人の意見を聴きたいの貴方達の意見は私の参考になるから、二人共、改めて意見を聴かせて」
華琳が二人の意見を聴きたい理由を話たので、如水と桂花は忌憚の無い意見を述べた
「私は袁紹に付く方がいいと思う、一応の大儀は袁紹にある、董卓は孤立するだろう、旧知や恩人ならともかく、わざわざ共に悪名を着る義理もないだろう」
「私もです、それに董卓よりも袁紹のほうが、華琳様にとって利用しやすいでしょう、今は袁紹と共に戦う事が有利かと思います」
「わかったわ、二人が同じ意見なら私も言う事無いわ。解散」


華琳の私室を出た二人はそれぞれ役割を決めた
「如水殿、私は朝廷と袁紹の動きを調べます、その二つなら伝手がありますので私に向いています」
「そうですね、では、桂花さん。そちらはお任せします、私は董卓軍の内情と連合に集まる諸侯の顔ぶれを調べます」
「わかりました、如水殿。お互い華琳様の為、力を尽くしましょう」
「ええ、この後の為にも今が一番重要です。私達の出来る限りやりましょう」
そう言って、二人はお互いの仕事に移った。


それから一月程して、曹操の下に袁紹からの反董卓連合への参加の呼びかけが掛かった。曹操はこれに応じ、五万二千の兵を率い連合へ加わった。

 

 

十七話

曹操軍が反董卓連合の集合場所に向かっている中、集まった諸侯の顔ぶれを調べた如水は一つの疑問を持った。

「名だたる者が集まっているが、袁術に従属しているこの孫策と言う者、確か、私の知識では、この時まだ孫堅は存命していたはず、華琳の話だと随分前に戦死しているとらしいから。劉備の時といい、私の知る世界とは大小の違いがある様だな。しかし黄巾といい反董卓連合といい大筋は同じ、極端に違うのは女性が主体と言う事とこの私の存在か」

そして、合流前の最後の休息で華琳は新たに加わった仲間、典韋を紹介した。
「典韋といいます、季衣とは幼馴染で仕事が見つかったって言う便りを貰って心配で来たんですけど、まさか曹操様の軍に加わっているとは知りませんでした。曹操様に誘われて私も一緒に皆さんと一緒に曹操様の下で働きます」
「典韋、貴方の真名は」
「流琉って言います」
「私の事は華琳と呼びなさい、以後、季衣と同じく親衛隊の将として働きなさい。秋蘭、この子の教育を任せるわ」
「了解しました、華琳様」
「ありがとうございます華琳さま、私頑張ります。秋蘭様、それに皆さん、私の事は流琉って呼んでください、よろしくお願いします」

そして曹操の軍は連合に合流した。
華琳は凪、真桜、沙和と季衣と流琉に部隊の留守を預け、桂花に物資の最終確認を任せ、春蘭と秋蘭、如水を連れて、袁紹の本陣に向かった。そこで見た諸侯の集まりを見て、袁家の威光を目の当たりにしたが、肝心の当人は華琳らの言う様にさほどの者ではなさそうだった。
余りにも傍若無人の性格で華琳や、春蘭と秋蘭でさえ何も言わないらしい。

「おーっほっほっほ!皆さん、我が袁家の為に集まって頂いてとても光栄ですわ。それでは最初の軍議を始めますが、皆さん、私以外は名も知らないでしょうから、そちらの方から名乗って言って。いただけますこと?ああ、びりっけつの華琳さんは、一番最後でけっこうですわよ。おーっほっほっほ!」
袁紹の言葉で、各諸侯が名と陪席させた者を紹介した。如水の調べた通り、各地から数多くの諸侯が集まり、袁家の威光はもはや漢王朝以上ではないのかとも思った。
「最後に、びりっけつの華琳さん、おねがいしますわ」
「…典軍校尉の曹操よ。こちらは夏候惇と夏候淵、…そして、黒田」
黒田の名を聞き他の諸侯がざわついた。
「あーら。その貧相なのが、天からの遣いとかいう輩ですの?どこの下男かと思いましたわ」
「黒田と申します、これほどの方々に知って頂き、身に余る光栄です」
「私に対しての礼儀を弁えているとは、貧相なわりに袁家の威光を知るようですわね」
如水が改めて名乗ると袁紹が納得した様だった。

そして、各位が名乗り、軍議に入った。
連合に集まった者は全員、董卓の事を知らない様だった。
如水は華琳に許可を取り発言した。
「あの、皆様、僭越ながら私から董卓の事の報告をさせて頂きます。董卓は元は涼州の者だとの事、どの様な伝手かわかりませんが、宮廷に取り入り権勢を意のままにしているとの事。そして、董卓の軍勢は現在二十万を超えています。ですが、その殆どが董卓の連れていた兵では無く、吸収した禁軍で出来ているようです。しかし、名のある者が率いており士気も高く、一概に雑軍とは言えないでしょう」
如水の言葉を聞き、董卓軍の数に華琳以外、集まった諸侯と陪席した者、更に袁紹までもが驚いていた
「そっそうですか、わかりました。つっ、次は…」
「みっ都までどうやって行くかじゃな」
動揺を隠せない袁紹と袁術だったが、威厳を保つ為か軍議を仕切りなおした。
そう言って、気を取り直した他の者らも軍議を再開し、行軍経路、隊列を決めていった。
先鋒は公孫賛、劉備の混成軍で、どうやら、二人は旧知の間柄らしい。

「おい、いくらなんでも少なすぎるだろう。桃香と合わせても三万も満たないぞ」
「あーら、そうなんですの。さすがに身分の卑しい者には荷が重かったかしら」
袁紹は、公孫賛の意見を一蹴し、二人の間に険悪な空気が流れた。一座はざわついたが、華琳の発言で場は収まった。
「私の方から黒田を派遣するわ、そうなれば六万以上になるわ。公孫賛構わない?」
「…ああ、それなら何とかなりそうだ。桃香も良いよな」
「うんっ、それだけいたら何とかなるかも」
その話を聞き袁紹も納得した。

「では、最後にこの連合を誰が纏めるかですけと、家柄、地位を考えれば、候補は絞られてしまいますが、とおも」
「麗羽しかいないわ、他の者もそれでいいでしょう」
「そ、そうですか…仕方ありませんわね。そこまでいうのであれば、この袁本初がお引き受けますわ! おーっほっほっほ!」
「これで、全ての議題は済んだわね、これで解散しましょう」
華琳の一言で軍議が終わり、一同は解散した。

自陣に戻る最中、如水は華琳に疑問に思った事を尋ねた。
「軍議の場で言っていた、天からの遣いとは何だ。一体」
「あれ、適当に流したのよ、まさか、皆が知っているとは思わなかったけど」
「その噂は知っているが、まさか自分自身の事だとは思わなかったな」
「そうなの、意外と抜けている事があるのね、それより先鋒への応援の事だけど」
「わかっている、劉備や公孫賛の事を調べて置けばいいのだろう」
「そうよ、公孫賛はともかく、劉備は配下の者の事も気になるからお願いね」
「ああ、わかった。しかし、これだけの諸侯を集めるとは、袁家の名声は漢王朝を越えるものなのだろうな」
「そうね、本人の人物はともかくとして、その名声は諸侯随一と言えるわ」
「とりあえず、私は公孫賛達と合流しよう。敵側の内情や、相手の将の能力や性格を調べたらそちらに送る」
「わかったわ。それと、先鋒に加わるのだから、他の所の兵を割いて、あなたの軍の数を増やすわ。気をつけて行って来なさい」
「ああ、曹操軍の名に恥じない戦いをしてこよう」

如水は自身の軍と春蘭、秋蘭からの加勢された軍、合計四万二千を連れ、公孫賛の陣に向かった。

公孫賛陣地

如水が向かうとすでに、劉備は来ており二人は軍議を始めていた様だった。
「公孫賛殿。我が主、曹操の命によって先鋒の加勢に参りました。黒田と申す者ですどうか御面会下さい」
如水がそういうと公孫賛、劉備が出て来た。
「良く来てくれた、曹操や黒田の好意に感謝する」
「お久しぶりです、黒田さん。ありがとうございます」
「いえ、私は主の指示で来ただけです、それより、軍議を始めていたみたいですが、私も参加させて頂けますか」
「もちろんだ、じゃあ、軍議を始めよう」

そう言って、如水を含め、公孫賛と劉備の軍議を始めた。
「まず、桃香の所に入っている情報だと、汜水関には華雄って言うのが配置されているらしい」
「数は、どれほどですか」
「よくはわからないが、重要な場所だ五、六万以上はいるだろう」
「そうですね、汜水関と虎牢関は重要な防衛拠点、そこを落とせば都は眼前です。用心し万全を期しましょう」
「はい、力を合わせて圧政に苦しむ人を救いましょう」
「まずは、先頭ですが、戦場視察を兼ねて騎馬兵の多い公孫賛殿に任せたいのですが。よろしいでしょうか」
「ああ、私の騎馬隊ならその役はうってつけだ、引き受けた」
「では、お願いします。劉備さん、私達は後ろから進みましょう」
「私は、白蓮ちゃんと一緒に行こうと思います」
その発言に二人は驚いた
「それは、どうでしょうか、失礼ながら劉備殿の軍は騎馬兵が少ない様です、騎兵中心の公孫賛殿と共に行軍すれば、かえって速度が落ちてしまいます。それに、私も余り騎兵を連れてきていません。私達は公孫賛殿が先陣で騎兵偵察を行ってくださる間、陣を整えた方が良いと思いますが」
「でも…、白蓮ちゃん一人じゃ心配ですし」
「桃香、黒田の言う方法で行こう。何も私が単独で攻め落とすわけじゃ無いんだ。お前は後からついて来てくれ」
その言葉に納得した劉備を見た公孫賛は騎兵を集め先陣に走っていった。如水と共に残った劉備は先陣から少し遅れて陣を整え行軍を開始した。

公孫賛が陣を去り、騎馬隊の進軍を見た如水は感嘆した。
「さすが、名高い白馬義従ですね、速さだけでなく、その行軍に乱れが無い」
「そうでしょ、白蓮ちゃんって、すごいでしょ」
「ええ、私達も遅れずに行くとしましょう」

そして、反董卓連合は進軍を開始した。
 

 

十八話


汜水関に反董卓連合の先鋒約六万が進軍しているとの報は董卓側も受けていた。

汜水関を守るのは、董卓側でも武勇の名高い華雄であり、兵の数は五万を超え、帝都防衛の前線の要所だけに、兵も董卓側の精鋭が配備され、士気も高い。騎馬兵の策敵行為を眼前に見すえ、華雄は兵を鼓舞した。
「敵は連合と大層に名乗るが、所詮は烏合の衆だ、我ら董卓軍の敵では無い。皆、出陣するぞ敵を蹴散らせ」
「「「「おおっー!」」」

連合側の公孫賛は策敵兵を纏め、後続の劉備、黒田に合流した。
公孫賛の要請で三人は急ぎ軍議を始めた。
「敵の数は五万四千程、華雄の統率が行き届いているらしく、士気も高い、それと出陣してこちらに向かっているそうだ」
「どうして、砦に篭らないのかな?」
「この戦いが、緒戦だからでしょう。いきなり守勢に回れば兵の士気に関わります、そしてこの戦いに圧倒的に勝利すれば、連合が浮き足立つと思っているのでしょう」
「そうなのか。私もよくは分からないが、だとしたらこちらはどうすればいい」
「そうですね、劉備殿。何か意見はありますか」
「ええっと、そうだ、私の軍師が意見があるそうです。聞いて見ませんか」
「そうだな、呼んでくれ、黒田もいいだろ?」
「はい、構いません」

そうして劉備の軍師の諸葛亮が入って来た。
「諸葛亮です、劉備軍の軍師を務めています。よろしくお願いします」
「さっそくだが、意見を聞かせてくれ」
「はい、公孫賛殿の報告を聞くと、敵は先鋒の我々を崩し、連合の動きを抑えようとしているのかも知れません。ですが、それを逆にこちらが制せば、これから連合の有利になると思います」
「そうですか、では、どの様な布陣で対峙すればいいと思いますか」
「それは、私達、劉備軍は八千、公孫賛殿の軍は一万五千、黒田さんの軍は四万二千です、おそらく華雄軍は数の多い黒田さんか、逆に少ない方のこちらに攻めて来ると思います」
「そうでしょうね、しかし、それを知るには華雄の性格を考えなければ分かると思いますが、諸葛亮殿、何か知っていますか」
「はい、華雄は血気に逸る人物と聞きます。となれば、数の多い黒田さんの陣に向かって来ると思います」
「わかりました、ありがとうございます」

諸葛亮の話が終わり、その意見の参考に布陣を決めた

まず、正面に如水の軍が配置され、劉備軍は敵陣の脇を突く形で攻撃を仕掛け、そして機動力のある、公孫賛の軍は後方の予備兵として一時待機し、頃合を見て敵陣の薄弱な場所に奇襲すると決まった。

その布陣が決まった後、劉備は如水に提案した。
「あの、黒田さん。私の仲間を一人、そちらの加勢に行かせます」
「何故、でしょうか?」
「だって、私達より数が多いからって危険です。それに、この間のお礼もしてません。私の方は比較的安全ですから、ぜひお願いします」
「劉備殿、御好意、誠にありがとうございます。ですが結構です」
劉備の提案を如水は丁重に断った。
「え、何でですか」
劉備は驚き、自分の好意を無下にされた事に不快感を持った。
それを無視し、如水は布陣の用意を急がせた。劉備は慌て意見を聞きたがった
「あの、教えて下さい。私、何か変な事言いましたか」
如水はそんな劉備を見て穏やかに言った
「この陣の配置で、安全な場所などありません。皆、命を懸けて戦うのです、劉備軍の側面からの強襲が弱ければ正面のこちらも危機に晒されます。それとも貴女は我が軍を侮辱するお積もりか」
「そんな事は…」
「でしたら、余計な増援を送られてはこちらも迷惑です。それに私は貴女の部下がどの様な者か知りません。そんな者と一緒に命を掛けられません」
そこまで言った、如水に劉備は剝きになった
「私の仲間を貶める事を言うのはやめて下さい、それに知らないなら今からでも…」
「そんな時間はありません。後、一刻もすれば戦端は切られます。準備が遅くなれば、それこそ負けてしまいます。では失礼します」

如水の言葉を聞き、劉備の配下の者らは憤り、劉備自身も納得していない様子で自分の担当する部署に向かって行った。

その様子を見ていた如水の部下の三人は話しかけてきた。
「先生、ええんか。あれじゃ、劉備の軍、動かないかも知れんで」
「そうなの!そうなったら、大変なの!」
「しかし、隊長の意見も分かる。いきなり他の軍の将と一緒に戦えと言われれば困りますし」
三人が口々に意見を言うと如水は笑いかけ、自身の意見を語った
「真桜の意見がもっともだな。まあ、出来ればそれが目的でもある」
その言葉を聞き、三人は緊張して如水に向き合った。
「隊長!もしかして私達だけで戦うつもりなの?」
「ああ、相手は名高い董卓軍だが、私が教えた君達になら出来ると信じている」
「先生、そこまで見込んでくれるのは嬉しいけど、大丈夫かいな」
「二人共、隊長を信じよう、それに私も自分がどれほど強いのか試したみたい」
三人が不安を感じながら、如水を信頼に応えてみたいとも思っている様だった
「確かに、董卓軍は強い。しかも、相手は精鋭揃いと言ってもいいだろう。だが、私の指示に従ってくれれば必ず勝つ算段はある。問題は華雄を一対一で討ち取るだけの力が私には無い事だ。そこを君達が引き受けて貰いたい」
そこまで言って、三人の部下に信頼に満ちた顔を向けた。

それに応えようと三人は顔をそろえ如水に向き合った。
「隊長。やりましょう。私達の手で華雄の軍を打ち破りましょう」
「せやな。そこまで言ってくれるなら、うち等もがんばるわ」
「そうなの!やってやるの」
その言葉を聞き、如水は頷いた
「ああ、私達が力を合わせれば必ず勝つ」
そう言って、如水は急ぎ陣を整え、華雄軍に向かって行った。

如水は布陣を整え、華雄軍の正面に対峙した。

その前に得た情報では、真桜の言った様に劉備軍は戦意が無いとの事だった
「劉備さんの軍、もしかしたら本当に戦わない気かもしれないの」
「逆に言えば、私達の強さを見せ付ける機会。黄巾の時と似ているな」
「せやな、不安やけど、うち等は先生の指示に従ってやれる事をやるだけや」
「ああ、隊長の指示に通りに戦えば、私達は負けはしない」
「そうなの!隊長を信じて私達もがんばるの」
開戦に最後の会話をし、皆、持ち場に着いた。

華雄軍
「相手の旗は曹か、と言う事は曹操だな。黄巾の乱での一番の戦功を挙げたらしいがそれを討ち取ったとなれば私の名が一挙に挙がるな。皆、進軍せよ、曹操を討ち取れ」
「「「「「おおっー!!」」」」」
如水は華雄軍の進軍を見て、すぐさま対処した。
「調べた通り、華雄は自分の武勇に引きずられる性格らしいな。数が多いこちらの方に真っ直ぐ向かって来たな」

如水は想定していた通りに陣形を変更した。

まず、如水側は華雄軍の果敢な突撃に対処するように兵を前線に送ったが、その都度、敗走し、次第に本陣は手薄になった。
「よし、本陣が薄くなった、このまま一気にけりをつけるぞ」
そして、兵が寡少になり手薄となった本陣は後退した、華雄は進軍速度を上げる為、軍の陣形を伸ばした。
更に、華雄が部隊から突出し本陣に遂に肉薄した時、凪、真桜、沙和の三人が華雄の前に向き合った。
「華雄殿と見受ける。武勇の名が高いと聞くが、いかに貴女が強かろうと、我ら三人を相手に勝負になるかな」
「せやで、悪い事言わんわ。早く引き上げえ」
「そうねの~!私達にやられちゃう前に、ささっと引き上げた方がいいの!」
「ほざけ、貴様らごとき三人掛かりでも私の敵では無いわ」
「その大言、法螺だと証明させてやる」
凪のその言葉で、三人は一斉に華雄に挑みかかった
「ふっ!、いいだろう、まずは貴様らを討ち取って、後ろに逃げた曹操を討ち取ってやる」
華雄もそれに応じ、三対一での戦いが始まった。
華雄に挑んだ三人は一人では及ばないながらお互いに庇い、助けながら善戦していた


その報告を聞き、華雄が三人に気を取られている間、敗走していた曹操の軍が如水の指揮の下一糸乱れずに動き出し、敗走から急転し突然、四万の兵が八方から包囲しだし、攻守が逆転した。

指揮官は不在であり、すでに陣形を崩しかけており、その上、八方から曹操軍に包囲された、華雄軍は五万を超える部隊だが、成す術無く、討ち取られ、又は恐慌の末、同士討ちし遭い、遂に崩壊した。

それをまじかで見た劉備は目暗ましの幻術でも見せられた様に動けなかった。

「何?一体、どう言う事。何で、押されてた黒田さんの軍がいきなり華雄の軍を倒しちゃったの」
劉備の言葉を聞き、関羽と諸葛亮といった者が意見を述べた。
「わかりません、それに黒田の本陣は後退していたはずです。それがなぜ、あの場所に居るのか」
関羽は水色の服を着た男を確認し困惑し、諸葛亮は信じがたいモノを見たように説明した。
「おそらく、潰走していた味方の兵の中に紛れていたのでしょう。そうでなければ、敗走していた兵があれだけ上手く纏まるわけがありません」

如水の陣の後方にいた公孫賛は不覚にも、敵の壊滅に気が付かなかった。
「どう言う事だ、いつの間に敵軍が消えたんだ」
左右にその事を聞いたが誰も要領を得なかった。

三人と対峙していた、華雄は自分の軍が壊滅した事に気づき、動揺した。
「何故だ、いつの間に私の兵が消えたのだ、ええい、一体どうなっている」
それを好機と見た三人は最後の力を振り絞り、華雄にどどめを刺す為、攻撃した
「そんな事、これから死ぬ者が知ってどうする気だ」
「せや、どうしても知りたかったら。先に逝った連中に聞いてみい」
「じゃあ!ばいばいなの!!」

凪が渾身の気弾を放ち、すくみあがった華雄に抱きつく様に跳び付いた沙和が双剣を体に刺し、致命傷を負わせ、とどめに、真桜の螺旋槍で串刺しにし絶命させた。

華雄の死を確認し三人は声を張り上げた。
「敵将華雄、典軍校尉曹操が将の一人、黒田の部下が討ち取った」
「うちらの勝ちや、皆、勝ち鬨をあげるんや」
「そうなの~!隊長~!私達やったの!!」
「「「「おおっー!」」」」

こうして反董卓連合の緒戦は如水の奇計とその部下三人の奮戦によって快勝した。そして、黒田孝高の変幻自在の用兵術は参加した諸侯や敵の董卓側、そして、華琳の放った報告者によって瞬く間に大陸各地に広まった。
 
 

 
後書き
カンナエの戦いを参考に考えました。

藤崎竜さんの封神演義を知っている方はわかりやすいと思います。

 

 

十九話

反董卓連合は汜水関を瞬く間に落とし、敵将華雄を討ち取った。

そして、董卓の精鋭五万と猛将華雄を討ち取り、黒田孝高はその名を知らしめ、汜水関攻略の戦功を独占した。
それとは逆に公孫賛、劉備の二人は眼前に居ながら黒田軍を助けなかったと悪評がたてられた。

汜水関 公孫賛、劉備軍共同陣地

「くそ、いったいどういう事だ。なぜ我らがこうも貶められねばならん」
劉備軍の将、関羽は自身らの悪評と今回の不手際に憤慨した
「しかたがありません、私達はこの戦いで先鋒でありながら、何一つ役立っていないんです」
「だけど、この扱いはあんまりなのだー!」
諸葛亮は関羽を押さえたが張飛も不満を口にしていた

総大将の袁紹が汜水関で休息を取る様に指示したが、この戦いで何一つ働かなかった劉備軍は場所を割り当てて貰えず、更に、連合諸将の休息間に敵への警戒の任をあてられた。

かろうじて陣地だけは公孫賛の割り当てられた場所を彼女の好意で借りれたが、公孫賛の陣もさほど大きくなく、劉備軍の殆どの兵は露営せざるをえなかった。
「すまないな、桃香。でも私の所も手一杯なんだ」
「ううん、気にしないで、白蓮ちゃん。ありがとうね」
劉備はなんとか気丈に振舞ったが、他の諸侯からの悪評、そして、自分のせいで兵に野宿させえてしまった事で心身が疲れてしまった。
「落ち込んでばかりいられない、味方が休める様にしっかりと警戒しなくちゃ」
自身にそう言い聞かせ配下の将に警戒の為の当直を決めさせた。


汜水関 曹操軍陣地

戦いを終え、休息を与えられた後、如水は更に多忙だった。
まず、自身の部隊を解散させ、兵の休息と負傷者の治療を急ぐ一方で、後に来る華琳らを迎えるための本陣を造ったが、華雄との戦いで凪、真桜、沙和の三人が負傷してしまい、それらすべての指示を如水一人で行った。
全て終える頃に華琳らが到着した。
「ごくろうさま、如水。見事な戦いだったそうね」
「うむ、さすが、華琳様の見込んだ通りだな」
「いえ、演習で何度もあの布陣を行ったので出来たのです」
「とにかく、ごくろうだった、後の事は私達が指示しよう、お前も休んでくれ」
「そうです、この戦いの一番の功績者なのですから、少しは休んで下さい」
「しかし、戦闘の報告がまだだ、せめてそれを終えてから」
それを聞き華琳は厳しく言った。
「これは私からの命令よ、貴方は少し体を休めないさい。報告は一刻後に聞くから、貴方は宿舎で横になってさい」
その言葉を聞き、ようやく如水自身も休息を取った。
「まったく、仕事の事となると自分の身を考えないのだから」
華琳がそう言ってため息を尽くと秋蘭が釘を刺した
「それは、華琳様にも言える事です」
「そうかしら、あそこまで酷くないわよ」
「とりあえず、華琳様。如水殿が戻られるまで、私達のする事をしてしまいましょう」
「そうだな、このままでは如水ばかり働かせてしまう、秋蘭、行くぞ」
「わかった、では、華琳様。兵に休息を取らせますので、我らはその指示をします」
「なら、私は、負傷者の治療の指示を取ります」
「いいわ、行きなさい」
その言葉で春蘭らは各自に指示を与えに行った。
一人残った華琳は不機嫌な顔で
「…私は、別に、あそこまで自分の事を顧みていないわよ…」
と言い、秋蘭らの言った言葉を気にしていた。


一刻程経ち、如水は宛がわれた宿舎を出て、曹操軍の本陣に向かった。
「よく来たわね、改めて言うわ。見事な勝利だったわ」
「ありがとう、だが、私より、華雄を討ち取った三人の働きのおかげだ」
「まあ、いいでしょ。それより、今後の事だけど、袁紹は宴を設けて戦勝を祝う気らしいわ。相変わらず無駄が好きね」
「いいのでは無いか、好きにさせて置けば、こちらは治療に五日は掛かる。それを理由に辞退すればいい」
「如水殿の言う通りです。それにまだ、董卓軍の内情は見えていません。迂闊に動くより、ここでしばらく、情報を集めた方がいいです」
如水、桂花の意見に春蘭は反論した
「しかし、そんな悠長にしていていいのか。相手が立て直す前に動いたほうが良いと思うぞ」
その意見には秋蘭も一応賛成した。
「私も姉者に意見に賛成だ、しかし、二人がそこまで言うなら、何か理由があるのか」
秋蘭の質問に如水と桂花が答えた
「まず、朝廷の動きだけど、どうやら、今回の華雄の戦死と軍の壊滅で董卓側は勢いを無くし始めた様なの。多分、宦官連中が息を吹き返したからだと思うわ。それに董卓の軍は吸収した禁軍がほとんどで、董卓軍の主力は汜水関と虎牢関に配置されていた。その前線の汜水関が落ちた今、宦官に近かった禁軍が董卓を見限り出すと思うわ」
桂花の意見を聞き華琳は納得しありえるだろうと思った。
「それと、以前から噂があったのですが、董卓の本拠地の涼州や他の土地でも大規模な飢饉が起きているそうです。そして洛陽の都には百万以上の住民と、多くの難民が流れています。時が経つほど、彼らは食に困り董卓を見限るでしょう、そうなった時、董卓の勢いは萎んで行くでしょう。元々、無理に無理を重ねた急激な勢力拡大ですから罅が入れば崩れていきます」
二人の意見を聞き春蘭と秋蘭は納得した。そして華琳も決断を下した
「しばらくはここに留まり休養するわ。麗羽の方には私から上手く言っておくわ」

会議が終わった所に、袁紹からの使者が来た。
「曹操殿、我らが袁紹様そして従姉妹の袁術様より、先陣の大任を務めた黒田への祝いとしてこれらの品物を進呈されるとの事、どうか受け取って頂きたい」
「役目ご苦労、袁紹、そして袁術には後、この曹操が礼に参ると伝えて欲しい」
「了解いたした。では、その事伝えておきましょう」

使者が去った後、袁家の者から恩賞の品が黒田宛に大量に贈られてきた。
その量を見て、さすがに春蘭、秋蘭は驚いたが、華琳はため息を尽き、袁紹達のやり方に呆れた。
如水も感心し感想を述べた。
「すごいですね、さすがは袁家と言った所でしょうか。食用の獣の量で、牛十頭、羊二十頭、豚が三十頭。更に麦等の穀物は全てで六十石、そして酒が五石これだけの進呈を見るのは久しぶりですね」
「貴方、前にもこんなに貰った事あるの?」
祝いの品の量より如水の発言に華琳は驚いた
「いえ、逆です。私が送る側でした。といっても私は荷物の宰領をしただけで、別に私が贈ったわけでも貰ったわけでも無いのですが」
「そう、でどうするの、その品物」
華琳の問いに如水が答えた
「貴女に返しますよ、私はあくまで曹操軍の将として働き、貴女に兵を借りて戦ったのです。当然この品の持ち主は貴女ですから」
その如水の言葉を聞き、予想していただけあり驚かなかったが、あまりにも明快に答えられたので照れて顔を背けた。

気を取り直した春蘭は疑問を言った
「袁紹らの狙いは一体何なのでしょうか」
「今回の連合は袁家が主体となり、集まったけど、別に袁紹の為に働く必要なんか無いわ。袁紹がそれに気づかなくても、その辺を顔良あたりが考えたのでしょう。働けばこれだけの恩賞を与えるって教えたいのでしょ」
桂花の説明に納得し華琳も賛同した
「そうね、袁紹はあくまで盟主に過ぎない。あの馬鹿はそれに気づいていないのでしょうけど、とにかく、奴らは物で釣って味方を維持したいのよ。事実、この恩賞の事を知った他の陣では次の戦いでは自分達が先鋒を引き受けようとしているみたい」
「だとしたら、董卓軍はもうこれ以上の攻勢に出れませんし。桂花さんの話だと董卓は足元に火が付き出しています。おそらく、虎牢関に守備を割いている場合では無く、洛陽の都での決戦の兵力しか残って居ないでしょうから、私達だけが貰ってしまう事になりますね」
「いいのよ、それだけの事をしたのだから、貴方達は」

そして、それ以上の吉報が治療を施していた者から届いた。
「曹操様、如水殿。楽進、李典、于禁の御三方は無事に治療が終わり、四日後には動ける様になるとの事です」
その事を聞き、如水は、ようやく安心した様だった。
「そうか…、よかった」

それを聞いた華琳は如水をなだめた。
「よかったわね、でも、貴方の教えた部下なのよ、この程度でやられる様に指導していないでしょう。もう少し信じてあげなさい」
「そうだぞ、それに楽進達はお前が居ない時でも私達に教えを請うて来たのだ。そうだろ、秋蘭」
「ああ、お前が文官として働いている間、私や姉者、それに季衣とも何度も立ち会いをしていた。あいつらは強い、それも皆、お前の期待に答えたかったからだろう」
「春蘭、秋蘭、それに皆…ありがとう」

そして、反董卓連合は二週間後、汜水関を出立し虎牢関に進軍した。

 
 

 
後書き
余談ですが秀吉の贈り物って頭おかしいくらいだったそうです。 

 

二十話

汜水関を発した反董卓連合は、洛陽防衛の最後の砦、虎牢関に進軍した。

しかし、諸侯は功を焦り、我先に先陣を進んでいる為、行軍は安定しなかった。

曹操軍は後続に配置され、その様を見て一様に呆れた。
「酷い有様ですね、これではどちらに大儀があるのか分かりませんね。なにせ、獲物を見つけた盗賊と大差無いですから」
如水の言葉に華琳と桂花も賛同した。
「袁紹が後先考えず恩賞を渡すからですね。そのせいでこの有様、それを抑えるには袁家の威光では収まりませんから」
「そうね、麗羽自身の器が試されている所だけど、見るまでもないわね」
華琳がそういうと、ある一団を指差した。
「袁紹、袁術自ら先陣を争っていますね。あれでは総大将としての示しがつかないでしょう」
秋蘭がそう語り他も賛同した。
「この戦いで、漢王朝の威光は地に堕ちるでしょうけど、それと同じく袁家の威光も堕ちるわね」
「そうですね、あのような振る舞いをする者に身を預けられる訳がありませんから。おそらく各地で紛争が続くでしょう」
「となれば、頼れるのは自身の力だけになるわ。こちらはその準備も出来ている、この戦いの終わりは私達の始まりと思いなさい」
華琳の言葉に一様に頷いた。

四日後 虎牢関

「あーら、全く人気が無いですわ。所詮は成り上がりの者、袁家に恐れをなして逃げたのでしょう。おーほっほっほ!」
「まったくじゃ、わらわに恐れをなした様じゃな」

袁紹、袁術は口々に董卓を貶し、他の諸侯は恩賞にありつけなかった事に落胆した。

曹操軍本陣

「まさか、事前に敵の内情を調べる事を怠っているのが殆どとは思いませんでした」
「ええ、私も驚いたわ。これだけ居れば半数は行っていると思ったのだけど、過大評価しすぎたかしら」
華琳は諸侯の実態に唖然とした。

そして桂花が朝廷の現状を説明し、如水が董卓軍の現状を報告した
「華琳様、都の現状ですが董卓は宦官の粛清と離反した禁軍の処断を行い、ようやく軍の建て直しが終わった様です」
「そう、では現在の数は」
「八万程でしょう、ですが都の住民の有志や涼州等では、飢饉の為餓える者が多く居ます。今は董卓の人柄で押さえていますがいずれ不満が爆発するかと」
「徳と器では袁紹よりも董卓の方が数段も上ですね」
「そうね、でもそれを倒してこそ私の名が挙がるわ。董卓軍の将は誰」
「呂布と張遼が両翼らしい、そしてその動きを纏めるのに賈駆や陳宮が後ろから支援している。この前の様にはいかんだろう」
「欲しいわね、その人材」
「華琳様、またその様に」
華琳の言葉に春蘭、秋蘭は呆れた
「呂布はやめておいた方がよさそうだな、各自の性格を調べたが君の下で働ける様な者では無い様だ。そして陳宮は呂布を敬愛している、この二人は無理だか張遼と賈駆なら条件次第では君の役に立つだろう」
「条件?」
「賈駆は董卓の古くからの友人らしい、今回の董卓の勢力拡大も賈駆の手腕だそうだ、董卓の命を助ければおそらく仲間に下る。張遼の方は簡単だ、君の器を見せれば良いだろう」
「わかった。その二人を私の配下に加えるわ、ついでに董卓の命を保障して使える様ならこちらの仲間に加えるわ」
「では、董卓と賈駆の二人は私が引き受けよう」
「なら、張遼の方だけど」
そこまで言うと、春蘭が名乗りを上げた
「華琳様、張遼は私が引き受けます。如水にばかりいい所盗られていられません」
「なら、春蘭が引き受けなさい。二人共、しっかりとやりなさい」
「はい!」
「了解した」

そして、他の者が去った後、如水は別の事も報告した。
「華琳もう一つ伝えておく、私の他にも内偵を送り込んだ所がある」
「どこ?」
「袁術の傘下の孫策だ」
「そう…。となればいずれ私の敵になるのは劉備か孫策の二人でしょうね」
「そうかもしれん、なにせ向こうの部下は多士済々と聞く、いずれ袁術の手に余るだろう」
「そうね、引き続き警戒しなさい」


虎牢関を無血で落とした反董卓連合は翌日に都に向けて進軍した。

行軍編成は袁紹が周囲の反対を押し切り先鋒を引き受けた、袁術がそれに続き、他の諸侯はそれに続いた。

行軍中曹操軍の幕僚が集まって話していた。
「袁家への諸侯の不満が凄いですね、洛陽一番乗りを独占する気だと憤慨しています」
「そうね、まあでも、連中の損害で董卓軍の実力がわかるわ」
「そうですね、董卓はもう後が無いですから必死でしょう」
「とりあえず袁紹、袁術の二人が大損害を受ければこちらとしては漁夫の利を得れますからしばらく大人していましょう。いずれ泣きついて来ます」
華琳らが話していると春蘭、季衣、流琉らが説明を求めた。
「一体、何を話しているのですか華琳様」
「そうです、私達にもわかり易く教えて下さい」

それに答える様に如水が説明した。

「袁紹、袁術が痛手を負ってその後で、私達が動くんです。そうなれば今回の戦い、曹操軍の活躍だけが残りますから。その事を話し合っていました」
如水の説明に春蘭らが食って掛かった
「それは卑怯では無いのか」
「そうです、如水さんの考え方は納得できません」
「季衣の言う通りです、まるで味方が倒れるのを待っているみたいです」
更に不満を漏らした三人だったが如水は穏やかに説明した
「この連合で味方は私達だけです、それに卑怯と言いますが。では逆に聞きますが正々堂々とは一体どういう事ですか。真正面から敵にぶつかる事ですか」
「そうだ!」
「いや、そこまででは無いですけど」
春蘭以外の二人は否定した
「御二人はまだ聞き訳がいいですね、では春蘭に聞きますが、その戦い方をして自分の部下が大勢死んでも構わないのですか」
「そんな事は言っていない」
「ですが、貴方の考え方だとそうなってもおかしくないです。戦いとは元来異常なのですその中での正々堂々と言う言葉は存在しません、裏をかき相手を騙す事で味方の損害を少なくする事が戦術です、それを卑怯と呼ぶのは愚者か敗者だけです」
「如水、私を愚弄する気か」
「していません、私は、味方の損害を少なくする事を考えて喋っているだけです」

「そこまでにしなさい、二人共、これ以上口論するなら相応の罰を与えるわ」
華琳の一言で二人は静まった。

それぞれが自分の軍に向かう途中春蘭は如水に話しかけた。
「如水、お前の言い方はわかった。だが、私は私の戦いがある。それをこの戦いで見せてやる」
「ええ、私も自分の戦い方で貴女に認めて貰います」

そして遂に、反董卓連合は洛陽を眼前に捉えた。
 
 

 
後書き
なんかフラグっぽい 

 

二十一話

洛陽城塞部

「連合ちゅうだけあるで、大体、二十万ちゅうとこか」
華雄亡き今、董卓軍の双璧と言われる張遼が眼下に見える軍勢を見下ろした。
「ええ、報告ではその数であっているわ」
そして張遼の横には董卓軍の頭脳と言うべき賈駆が控えていた。
「うちらの数は八万七千、まあ、この城壁を上手く使えば何とか戦えるやろ」
「そうね、一、二ヵ月耐えれば連中も瓦解する可能性もあるわ。それまで持ち堪えて」
「ええで、その辺はうち等に任しとき」
「頼んだわよ」

袁紹軍本陣
「さあ袁家の兵達、華麗に前進し成り上がり者を討ち取りなさい。おーほっほっほ!」
袁紹の命の下に顔良、文醜の率いる七万の軍が城壁に挑みかかった。

袁術軍本陣
「わらわの兵も遅れるな、急いで攻めるのじゃ」
袁紹に功を盗られまいと袁術も六万四千の軍を動かせた

それを見て、各諸侯も一斉に動き大規模な攻城戦が始まった。

一方で、曹操軍は陣形を崩さず傍観していた
「華琳様、なぜ動かないのです、この機に乗れば我々の勝ちです」
「そうです、一体どういうお考えですか」
春蘭、秋蘭は攻撃に参加すべきだと説いた
「だめよ、汜水関や虎牢関とは違うの。今、迂闊に都を攻めたとしたら下らない悪評が立てられるわ」
華琳が二人の意見に反対し、如水と桂花も賛同した
「落ちぶれたとは言え、一応は帝の居る所です。それに相手は禁旗を掲げています。迂闊に矢で射落とせば、敵味方から非難を受けます」
「それに、洛陽の城壁は容易に突破出来ないわ。今しばらく様子を見ましょう」
その意見に納得した二人だったが、この現状に黙ってみている事は我慢ならなかった
「しかし、見ているだけというのも歯がゆいな」
「確かに、華琳様や如水らの言う事もわかるが何もしないというのも芸が無いかと思いますが」
その考えを理解し如水は華琳に意見を述べた
「矢文で住民らに呼びかけるというのはどうだろうか、餓えている者らを助けに来たと文を送ればこちらが優位に立てるかも知れない」
「そうね、秋蘭。遠矢を利くものを集めて矢文を打ちなさい」
「御意」

華琳の命を受け、秋蘭率いる曹操軍の弓の名手百人が一斉に矢を放った。
それを受け洛陽の住民は困惑した。
「おい、曹操って言うのが俺達に飯を食わせてくれるってよ」
「でも、あれだけ俺達に良くしてくれた董卓様を裏切るのかよ」
「じゃあ、このまま飢え死にしてえのか」
その混乱を防ぐ為、董卓は府庫を空け、ただでさえ少ない糧食を住民に配った。

董卓の軍師賈駆は歯噛みした
「やってくれるじゃない。曹操、さすが黄巾で一番の戦功を挙げただけあるわね。それに華雄を討ち取ったのはその配下の黒田って奴だったわね。水色策士と呼ばれるだけはあるわね」
その様子をみた張遼は心配で声をかけた
「どうするんや、これ以上篭城は難しいで」
「わかってるわ。打って出ましょう、そうなれば戦況を打開できるかもしれないわ」
その言葉を聞き、張遼は勇み喜んだ
「まかしときぃ、そういうのを待ってたんや」

賈駆は呂布を先陣に配置し、張遼に遊撃隊の指揮を命じ城壁から打って出た。

呂布の圧倒的な力と、張遼の絶妙な用兵術で連合軍は四散した。

「ええい、なにをやっているの。早く不埒者を討ち取りなさい」
「そうじゃ、袁家の名に懸けて討ち取るのじゃ」
袁紹、袁術は狼狽したが二人の見事な戦術の前に他の諸侯も打つ手は無かった。

後方に居た曹操軍はその様子を見て、華琳は感歎した
「みごとね、さすが貴方は称えただけはあるわね」
「ああ、だが呂布は自身の圧倒的な武勇に頼りすぎ兵の指揮は他が執っている。やはり君の下で働くとしたら張遼だろう」
「そうね、呂布は所詮は匹夫の勇。私の役に立ちそうにないわ。で、この現状を如何する気」
「まずは、二人の連携を断ち切る。呂布は無理でも張遼なら捕らえられるだろう」
「そうね、春蘭。張遼を食い止めなさい。秋蘭は邪魔が入らないように援護しなさい」
「はい、華琳様」
「承知しました」
春蘭と秋蘭はそう言って軍を引き連れ向かって行った

「私はどうすればいい」
「もうしばらく様子を見るわ。二人が成功すれば、いずれ呂布といえど数に押し切られる。私達は合図が来たら別口から攻めましょう」
「了解した」

「張遼殿と見受ける、我が名は夏候元譲!我が剣を受けられるか」
「あんたが曹操軍の大剣やな、ええで、相手したる」
「良い心がけだ。ならば、行くぞ!」
「おおおおおおっ!」
「でやあああああっ!」

夏候惇と張遼の打ち合いが続く中、秋蘭は出来るだけ部隊の足止めをした。
「敵を張遼に近づけるな。姉者を信じろ」
「「「「おおおおっ!」」」」

お互いに何度も得物を打ち合い二人はお互いの実力を称えあった。
「なかなかやるな、張遼。華琳様が欲しがるわけだ」
「そうかい、曹操にそこまで買われとる自分を褒めてやりたいわ」
「謙遜せずともよい、私は曹操軍一の使い手だ。その私とここまで打ち合える奴など初めてだ」
「ええな、それ、なら曹操とこに入るんやったら、手始めにあんたの首を土産にしたるわ」
「ぬかせ!」
「姉者っ!」

そこに秋蘭の悲鳴に近い声が聞こえた。
「……ぐ…っ」
春蘭は敵の放った矢に目を射抜かれた。
「姉者っ!姉者ぁっ!」
「…ぐ……くぅぅ!」
それを見た張遼も狼狽した。
「ちょ…あんた!?」
「姉者!大丈夫か、姉者!くそ、だれだ」
「くっそぉぉ…っ!誰じゃあ!うちの一騎打ちに水差したド阿呆は!出て来ぃ!ウチが叩き斬ったる!」
「やめろ、二人共手を出すな!ここは私の戦いだ、貴様らの戦い見事だった。だが、この程度で私は負けん」
「せやけど!」
「私が気を抜いたから射抜かれたのだ、それを卑怯と呼ぶのは…愚者か敗者だけだ!」
「姉者…」
「夏候惇…」
(奴も言っていた、剣も持たず丸腰のくせに、常に前線に立ち多くの戦功を残してきた)
「私は愚者でも…ましてやまだ敗者でない」

春蘭は大音声を上げた
「我が精は父から、我が血は母からいただいた!そしてこの五体と魂、今は全て華琳様のもの!断り無く捨てるわけにも、失うわけにもいかぬ!」
そういって春蘭は自身の眼を飲み込んだ
「皆、私は無事だ心置きなく戦え」
「「「「おおおおーっ」」」」
「こんのか張遼、ならこちらからいくぞ」
「な……」
「では、続きといくぞ」
春蘭が挑みかかろうとした時
「ウチの負けや、夏候惇。好きにせい」
「なら、貴様の力、華琳様の元で使って貰うぞ」
「ええで、それと勝手な話やけど、ついでにうちの部下も助けてやってくれんか」
「構わん、ただし姉者を撃った奴は後できちんと刑にかける」
「それはしゃあない!すまんな手を掛けて」
張遼は敵味方に宣言した。
「張文遠!曹操軍に降伏する、皆戦いをやめい」
「「「「おおおおっ」」」」

その一方で、華琳と如水は城内への抜け道を使い入っていった。
「こんな場所、どうやって知ったんだ」
「宦官連中に董卓軍が出たらここを空けろっていっておいたの」
「そうか、しかし、董卓と賈駆の顔がわからん以上無闇に探し回る時間は無いぞ」
「董卓と賈駆なら常に一緒にいるのでしょう。それにもう逃げるしかないでしょう」
「それを捕まえるとわね、身分の良さそうな者を探して攫うとは、人攫いにでもなった気持ちだ」
「しつれいね、人攫いじゃなくて宝探しよ」

「にっにげよう月」
「まっ待ってよ詠ちゃん」
広場に出ると身なりのいい少女と、従者らしき少女が逃げようとしていた。
華琳と如水はその二人を林の中に攫い取り押さえた

「貴女達が董卓と賈駆ね」
「うぅ…」
「黙っていてもわかるわ、その身なり、宦官らの寄越した情報と一致するわ」
「だったらどうする気、僕らを殺すの」
「いや、賈駆君には曹操の下で働いて貰う。どうせいく宛もないだろう」
「なら、月は…」
「君が部下になるのに幾つか条件をだそう、董卓の身柄の安全は曹操とこの黒田が保障しよう」
「あんたが黒田、水色策士ね。いいわその条件なら曹操の下で働いてあげる」
「話が早くて助かるわ、董卓の安全は必ず保障する。安心しなさい、如水二人を私の陣に連れて行きなさい」
「了解した、二人共この布を被ってくれ。本陣まで案内する」
如水は二人を連れ来た道を辿って曹操軍の陣地に戻った。

そして、本陣に入った時。董卓と賈駆を曹操が討ち取ったとの報と、春蘭が負傷し、秋蘭に担がれて帰ってきた。

「如水、姉者を急いでで治療してくれ」
「わかった」

曹操軍 医療用天蓋

如水は自ら春蘭の治療に当たった
「すこし、沁みるぞがまんしろ」
「うっ…がぁ…」
「幸いにも骨に届いていない、君の体力なら二、三日で治るだろう」
「そっそうか…」

治療が終わり手持ち無沙汰だった二人は今回の事を話し合った。
「無茶をするな君は」
「いつも丸腰で敵陣に向かっていくお前ほどじゃない」
「ふっ…そうだな」
「しかし、今回の事でこの前、お前の言っていた事がわかった気がする」
「そうか」
「ああ、相手はむしろ上手く私を狙った。そのまま倒れてたら間違いなく敵の勝ちだった、しかも損害の少なくな。私は戦いに卑怯な事等存在しないと身を持って知った」
「そう言われると私が怪我を負わせたみたいだな」
「いや、おまえの言葉が無ければ私は死んでいたかもしれん。…ありがとう」
そういって、春蘭は寝息を立て始めた

しばらくして、華琳が帰ってきて春蘭の様子を見て安堵し、如水と桂花に都での炊き出し等を命じた。

三週間後、反董卓連合は解散した。だが、これで平穏になるとは誰も思わなかった。
漢王朝の威光は既に無く、それに次ぐ袁家の名声もこれだけ力を付けた諸侯を抑えられるとは如水には不可能だと思った。

新たに始まる戦乱の兆しを感じ、如水はその戦いの果てに、華琳の天下を描いて見るのもまた面白い人生だろうと思った。

 
 

 
後書き
如水の旗
藤の花と十字架どっちがいいと思います。 

 

二十二話

連合の解散からしばらく経った。
華琳や如水の予言したとおり、諸侯同士の小競り合いや紛争が相次ぎ、治安が悪化し盗賊らが増えた。
幸いにも曹操の領内ではまだそれだけ深刻な問題となっていないがそれも時間の問題だろう。
曹操は広大な領土と、拡大した軍を整備する為、軍の大編成を行った。

まず、第一の将軍として春蘭が任命され
次席には新たに配下となった張遼、真名を霞が抜擢された。
序列三位には秋蘭が任命させ
如水は序列四位に任命し、更に首席軍師も兼任した

そして賈駆、真名を詠が加わった事で、如水は内政の文官の任を解かれ新たに、外交交渉責任者を命じらせた。
更に、従来の部署を大きく改変し、情報部長官と技術開発の責任者に任命した。

そして董卓。真名、月の処遇は如水に預けられ如水の指導部署の医療班の責任者に就く事を命じられた。

城内のある棟

予算の拡大で外れの小屋から城の一角に与えられた技術開発室、そこで如水は真桜と共に鉄玉と火箭の二つを改良し、量産していた。

「先生、火箭五百何とか量産できたで。この調子やと華琳様に言われてた目標の四千まで二月ほどや」
「こちらも鉄玉千個量産できた。君の言った様に綿を詰めた箱に入れれば輸送時の誤爆は防げるようだ」

二人で完成させた設計図を元に城内の鍛冶職人らに華琳の許可を取り、製造を依頼した。
だが火薬の生産のほうは信頼できる百人にのみ製造法を教え量産していった。

一方で医療の所にも力を入れた。

「如水さん、この水は何ですか」
そこに配属された月は如水に質問した
「ああ、この水は蒸留水と言って綺麗な水だ飲んでみるといい」
如水に言われるまま飲んだ月は感動した。
「すごいです、あの泥水がこんなに美味しく飲めるなんて」
「ああ、この水を使えば治療も上手くいくかもしれん」
「そうですね、水が悪くて治らなかった人、私も何人も見てきました」
「蒸留水の作り方を教えるから今度は君が作ってみてくれ」
「はいっ!」

その一方で如水は他勢力の内情を探っていた。

連合から逃げた呂布は南方の城に兵をつれ逃れた。
その事を華琳に話した如水だったが華琳は対して興味を持たなかった。
「呂布は確かに強いわ、でも奴の頭には野心がなさそうだった今は放って置きなさい、それよりも注意すべきはあの馬鹿二人よ」

華琳の言葉に納得した如水はその二人の情報を多く集めた。
「今一番の問題は袁紹と袁術か、離反した者や敵対した者の倒滅に躍起になっている。その中でも気になるのは、孫策と公孫賛だな」

如水の情報では、孫策は未だに袁術に従っていた、おそらく兵と財を借り自身の領土を拡大するまでは大人しく従う気だろう。
袁紹は既に公孫賛と戦いをする気だった、戦力差を考えるとどうやっても公孫賛の負けだろうが彼女は烏桓族の押さえとなっている。袁紹が考えなしに公孫賛を攻め潰せば何が起きるかわからないと思い手を打っておこうと考え、華琳の許可を取りある場所に向かおうとした

「袁紹に対しての何か考えがあるのね」
「ああ、その前に一つ聞きたいが、袁紹が河北四州を手に入れたら次は隣接する、劉備と君のどこに向かうと思う」
「間違いなくここね、あいつは小さな宝箱と大きな宝箱どちらを選べと言われたら、迷い無く大きな方を選ぶわ」
「そうか、予想どうりだが。…君はどうなんだ」
「もちろん両方奪うわ。貴方は」
「私はその奪い方を考える方が好きだが、宝箱そのものには余り興味が無いな」
「ほとんど変人ね貴方」
「強欲な君程じゃない」
主従二人が笑い華琳は如水の長期の留守を許し、その場での全権を与え向かわせた。

烏桓族集落

如水ははるばる烏桓族の集落に訪ね、曹操に協力する様に頼んだ。
その為の品物と如水の人柄を気に入り彼らは一族を挙げて曹操に味方すると約束してくれた。
そして今までの者らと違い力を借りるだけでなく、こちらの身の安全の保証と自治権を公認してくれた事に感謝し、いずれ胡を挙げて曹操に味方すると伝えて欲しいと言って来た。

華琳私室

無事帰ってきた如水を労う為、華琳は私室に呼び食事を共に取った。
「上手くいったみたいね」
「ああ、私が異民族というのも関係しているのだろう」
「それだけじゃないと思うけど、でもこれで麗羽を牽制出来るわね」
「ああ、そうなれば袁紹といえど上手く動けんだろう」
「ご苦労様、明日、一日休んで良いわよ」
「そうか、では久しぶりに休ませてもらおう」

翌日、如水は凪達の出身の里に入り、村夫子の様に子供に文字を教えたり、一緒に遊んだりして過ごした。そして、三人の家族に活躍を報告し食事をご馳走して貰っていた。
夕方になると城から凪達が迎えに来た為惜しまれつつも城に戻った。
 
 

 
後書き
ろ過のくだりと烏桓族の設定変えました。 

 

二十三話

 
前書き
色々愚痴を書いてしまいましたが。
応援してくれる人の為、頑張ります。

袁紹らの戦いあたりからかなり変わるので、納得いかない人は本当に読まなくて結構です。 

 
曹操の下に急使が届いた、公孫賛を落とした袁紹が曹操の領内に大軍を向けたとの報である。
自身は以前の諜報で公孫賛は兼ねてより親交の逢った劉備の元に逃げたらしい。
「まずいわ、今、殆どの部隊が出払っているから。とても迎え撃てないわ」
現在曹操軍は、各地で起きた盗賊団等や各諸侯の紛争の進出を阻む為に華琳の手元には三千程しか残って居なかった
「旗は?」
「旗印は袁、文、顔。主力を揃えた様です。数は、およそ三万」
「どうするのです、華琳様」
「そうね、袁紹軍は何処へ向かっているの」
華琳は桂花に質問した。
「一番薄い城に向かいました。城兵は七百しか居ません」
「七百、一日も持たんではないか」
「まずいわよ、そこを破られたら袁紹は他の城を内側から攻める事ができるわ。そうなればこちらが立て直せる時間が益々無くなるわ」
桂花の答えに春蘭は驚愕し、詠は最悪の状況を語った。
「そうね、城の指揮官に連絡を取りなさい」
華琳の言葉に桂花と詠が気まずそうに語った。
「それが、援軍の必要なしとの事です」
「はい、何度も連絡しましたが城兵も同じ意見だとか」

その言葉を聞き居合わせた者は混乱したが、如水は初めて喋った
「中々やりますねその二人、三万相手に七百では私でも十日しか持たないが、援軍の必要なしとはとても言えません」
「如水!何を考えている」
「そうです、存亡の瀬戸際ですよ」
秋蘭と桂花が如水の態度に怒鳴った
「皆さん、冷静に考えた下さい。袁紹の軍勢は河北四州をこぞって数えれば十万は越えます。それが袁紹の出陣だというのに三万。全体の三分の一も居ません、残りはおそらく公孫賛の戦いで疲弊したのでしょう。とりあえず、袁紹の新領地はまだ地固めが済んでいません。私が感心したのはそれを見抜いた指揮官です。それに、七百人の兵がその指示に従ったのは驚嘆すべき事です。私が一兵卒なら逃げますよ」
如水の意見を聞き華琳も賛同した。
「そうね、それを考えると三万の兵の大半は偵察と言って良いでしょう。あれは派手好きだから」
「偵察に三万も動かしかますか」
「不思議では無いでしょう。威力偵察と言って、相手への威圧行為ですから。ただ袁紹がそれを出来るかは別ですが」
「どういう事だ」
「既に、手は打ちました。胡に話をつけ袁紹領に侵攻せよと送りました。幸いにも牽制だけなので向こうも快諾して頂きました。これで袁紹は引き上げます、そして今回こちらは何も出来なかった。袁紹の性格から言っておそらく、こちらを見くびるでしょう。今はそう思わせておけば良いですよ」
「そうね、決戦まで奴に見くびらせておけばいいでしょう。桂花、詠。城の指揮官の名は」
「程昱と郭嘉の2名です」
「両名とも比較的新しく志願した者です」
「なら、袁紹が去った後、こちらに呼びなさい。皆の前で今回の行動の理由を説明して貰うわ…でないと、納得出来ないでしょうから」
「…承知しました」
「直ぐに連絡を送ります」
「皆勝手に兵を動かさない事、これに逆らう者は斬刑に処すわ、良いわね」
その言葉で解散し全員、万が一に備え、出来る限りの兵力を陳留に集めた。

そんな中、春蘭が如水に話しかけてきた。
「なあ如水、華琳様の前で言ったのはどういう事だ簡単に説明してくれ」
「いいですよ、要するに後ろから攻撃されたら袁紹も嫌だという事です」
「なんだ、そう言う事か」
と言って上機嫌で去って行った。
「…戦いにおいての心構えは変わった様だか、単純さは相変わらずか。まあそれでこそ筆頭将軍が務まるのだろう」
如水は自分は死にかけて変わった所もあるが、どうやら今でも自分の性格の根本は変わっていない事を考え、春蘭も似たようなものだろうと思った。

翌日

袁紹軍が去った後、華琳は程昱と郭嘉の二名を城に呼んだ。如水が驚いたのは、その二人が昔、この世界に来た時に助けてくれた三人の内の二人だとわかった。
「お久しぶりです、あの時は命を助けで頂き有難うございました」
「いえ、私達は何もしていません」
「そうです~。それにあの時のお兄さんが空の奇術師とは思いませんでした。今度、華雄との戦いの事を教えて下さい」
「この二人がいつぞや貴方を助けた、旅の者ね。まあ、雑談は後にして、程昱と郭嘉の意見を聞かせて」

二人の言った事は如水や華琳の憶測したとおりだった。
「まさか、そこまで見抜かれているとは思いませんでした。流石は曹操様ですね」
「はい、しかし御二人と同じ考えを持てた事を誇りに思いたいです」
「謙遜しなくていいわ、それより今後二人は城に戻らず私の軍師として働きなさい。二人共、真名は」
「風と言います。ぜひ喜んで」
「稟と言います。身に余る光栄、必ずや期待に答えましょう」
「私の事は華琳と呼びなさい。それと、二人共。治政には詳しい?」
「はい~」
「書で読んだだけですが自身はあります」
「なら、桂花と詠と共に文官としても務めなさい。以上解散!」

会議が終わった後、風と稟が如水に話しかけてきた。
「お兄さんが、天の遣いですね。今じゃ、水色策士、空の奇術師と呼ばれていますから、そんな方と一緒に働けて嬉しいです。どうか真名で呼んで下さい」
「私もです、稟とお呼び下さい。伝え聞く、如水殿の采配。まじかで見れるとは曹操様に仕える事と並ぶ光栄です」
「有難うございます。しかし風。お兄さんは止めてくれませんか」
「何故ですか?」
「私は妻も子供も居ますし、その息子も子を持ち。私には孫も居ますのでその呼び方は少し、抵抗がありまして」

如水の発言にその場に居た全員が混乱し、華琳ですら凍りついた。
「その若さで孫が居るのですか凄いですね」
そんな中、風だけは取り乱さなかった。
「私はこれでも五十九歳でした、こちらに来てから三年は経ちましたから。もう六十二ですね」
「でも、見た目はそんなに御年には見えないのでやっぱり、お兄さんと呼ばせてもらいます」
「…仕方が無いですね」
「ありがとうございます」

二人の会話が終わるのを待ち、華琳は意を決して話しかけた。
「如水。貴方、…結婚していたの?」
「あれ、言ってませんでした」
「聞いてないわよ!!全く、そういう大事な事は直ぐに知らせなさい」
「華琳、なぜ怒っている?。それにその事は大事な事か?」

その言葉を聞き風が呆れた
「お兄さん、女心がわかっていませんね。もしかして奥さんとも上手くいかなかったのじゃ無いんですか」
「なぜそうなるのかはわからんが。妻は私に良くしてくれたし、私も妻を愛していたよ」

その言葉を聞き、華琳は手が付けられなくなった。


 
 

 
後書き
如水ってキリシタンって事もあるから、他のキャラとの恋愛を入れるのって凄く抵抗がある。

秀吉、前田親子、山内に並ぶ円満夫婦だったし。

…秀吉と前田利家は浮気が多かったけど。 

 

二十四話

袁紹が曹操の領地から引き上げて二ヶ月が経ち。その間袁術と劉備の戦端が切られた。
劉備軍は小勢ながら善戦していたが、袁術にばかり目立たせまいと、袁紹も劉備に挑んできた。
その報を伝えられた華琳は配下の将と軍師を集め、軍議を行った。

「以上がことの全てよ、何か意見がある」
その意見に軍師四人の意見ははっきりと分かれた。
この機に袁紹を討つ事を主張する桂花
劉備を討ち後の為に後顧の憂いを絶つ事を主張する稟
劉備と同盟し恩を売り義侠を得る事を主張する詠
今は何もしないで軍備の拡大をすべきだと主張する風

軍師から四つの意見を提示され、諸将の意見も分かれた。華琳は一言も喋らない首席軍師に話しかけた。
「まるで意見が合わなわね。如水、貴方さっきから一言も喋って無いけど意見は無いの?」
「私の意見は全員のを一度にやる事だな」
「は?」
その意見に全員が沈黙した。
「劉備の軍は何故か解らないがこちらに向かっているそうだ。かと言って劉備がこちらに従属する気も無いだろう。おそらく、この領内を通って南方あたりに逃げる気だろう」
「正気なの劉備は?」
如水の発言に華琳は呆れ。他も賛同した
「大いに正気だろう。彼女は情に流されやすい所がある、そして相手の心情もその様に考える様だ。その証拠に君に食糧をねだったり、連合の時にも公孫賛の情に縋って陣を分けて貰ってた。それに窮した者は考え方が常人の考えとは違う。それを考えたら、比較的中立の曹操に領内を通して貰う事を願うだろう」

そこまで聞き、華琳は劉備を軽蔑した。
「少しは見込みがあると思ったけど、残念だわ。そんな考えだったとわ」
「同意見だな。だか、これで四人の意見が全部通るな」
如水の言葉に桂花、詠、稟、風が賛同した
「そうですね、これで袁紹を倒す大義ができます」
「そうなれば、劉備の武威は信を失います。殺すより酷でしょう」
「それに、こちらに義が付くわね」
「ついでに敵を想定して軍備を整えられますね。お兄さん考えましたね」

四人の軍師の賛同を得れた如水の意見は華琳に改めて奏上した
「華琳、私達の意見は劉備を逃がしてやることだ。君の決定を聞かせてくれ」

そして華琳は決断した。
「貴方達の意見を取るわ。劉備を逃がし、恩を売る。その上で袁紹、袁術を討ち袁術に従属している孫策の力を殺ぐ。この方針で決めたわ。肝心なのは劉備に代償に何を払わすかだけど」
「その件だが私に決定権をくれないか」
自分に任せて欲しいと頼んだ如水に華琳は許した。
「外部勢力との交渉権は貴方に預けているわ、好きにしなさい」

その会議から二週間後

陳留に劉備の使いで関羽がやって来た。
「曹操殿、この夜分に御面会を許された事に感謝します」
「よけいな挨拶はいいわ、早く用件を言いなさい」
「はい、我が主の意見を伝えます」

関羽の伝えた劉備の言葉は如水の事前に考えていた事と同じだった。その言葉を聞き、予想したとはいえ如水以下、他の者は劉備の言葉に呆れた。

華琳は関羽の話を聞き、劉備に逢って決定すると決めた。
「関羽。私を劉備に逢わせなさい。自ら伝えるわ」
「はい。ご案内します」

曹操領はずれ、劉備軍陣地

「上手い場所を取った所だな。要害は悪くない上、丁度中間に位置している」
「ええ、これ以上進んだら、攻め滅ぼしてやるところだったわ」
如水の感想に華琳は物騒に返した。
「春蘭、季衣、稟、如水の四人だけ付いて来なさい。残りは万一に備えなさい」

華琳は念の為に春蘭らに劉備に対して警戒させた。

「曹操さん、それに黒田さん久しぶりです」
「ええ、久しぶり。今は旧交を温めている場合ではないわ。要件を言いなさい」
「あ、はい!」
劉備の言った事は関羽の伝えた事と同じだった。
「いいわ。通行しなさい」
「本当ですか、ありがとうございます」
「対価はそうね、関羽一人で良いわ」
「…え!?」
華琳の言葉に喜色を浮かべた劉備の顔が凍った。
「何を驚いているの、通行税ぐらいだれだっって払うわ。当たり前の事じゃない」
春蘭は同意する様に頷いた
如水はその事に驚いた劉備に呆れた。
(一体、何処まで甘い考えなのだ。このような見苦しい行為を行って、その対価を払うのを渋るとは)
無論、顔に出さなかったがこれが伝え聞く、仁君劉備かと思った。

劉備は結局、その申し出を断った。
その言葉に関羽が反対し自分が曹操の下に行くと言ったが劉備は譲らなかった。

その態度に華琳は激怒した
「いい加減にしなさい、劉備。貴女それでも上に立つ者なの。いつまで甘えている気。貴女はもう義勇軍ではなく仮にも配下を率いる者でしょう、関羽一人で全軍が救えるのよ」
「でも…なら、私が曹操さんに仕えます」

その言葉で華琳の怒りは頂点に達した。
「劉備、貴女一体何を…」

華琳の言葉を遮る様に、如水が発言した
「そのあたりにしておいてあげよう。華琳、外部交渉の責任は私だ。此処は私の意見を聞き入れて劉備達を通過させよう。第一、関羽に来られても軍師として私は迷惑だ。関羽の将としての心構えは私の考えと違いすぎる、そんな者居たところで曹操軍にとって邪魔にしかならん」

劉備は旧知の如水が庇ってくれた事に喜んだが、後の言葉に反論した。
「黒田さん、どういう意味です。愛紗ちゃんが邪魔って。私の仲間を侮辱しないで下さい」
「言葉通りだ。それに侮辱と言うなら、今の君の醜態の方が余程仲間を侮辱しているが」

その言葉に劉備は黙った。そして如水は華琳に決定を伝えた
「劉備の軍の旗全てを此処に置いていく事。それが条件だ、断るなら勝手に死んでくれ」
「そんな…」
「君がこちらに仕えた証として置こう。なに、雨に濡れた以上、川に落ちても同じだろう。生憎、敵軍を通す程私達は寛容ではない。断るなら話はここまでです」

如水の言葉に従い、劉備は旗を置いて通過する事を決定した。
「曹操殿、黒田、この屈辱決して忘れんぞ」
「なら、今ここで晴らして貰って結構ですよ」
「ぐっ…」

関羽の恨みに皮肉で返した如水を今度は華琳が咎めた」
「やめなさい、これ以上敗軍に関わりたく無いわ。劉備!又餓えたら頭を下げに来なさい。略奪されるよりましだから」

こうして劉備の軍勢は去って行った。何人かの将兵は惨めさに泣き、劉備の無様な行動に失望し去って行ったと後に報告を受けた。

「かなりの悪役だったな、華琳」
「貴方程じゃないわ。貴方、善人役より悪役の方があっているのじゃない」
「そうかもな。まあ、これで劉備が再起を図るなら蜀地方を統一するしかない。手間が省けたな」
「そうね、その後。劉備を討てば良いわ」

その会話を聞いていた春蘭と季衣だったが、如水の豹変に凪は驚いていた。
「如水さんがあんな風に喋るとは驚きでした」
「失望したか?」
季衣の疑問に如水は答えながら同僚に軽蔑される事を恐れた
「いえ、逆です。その様な芝居も打てる事に改めて感心しました」

季衣の素直に尊敬する態度に如水は照れ。その事を華琳らにからかわれた。

そして袁紹、袁術との戦いに華琳らは備えた。
 

 

二十五話

 
前書き
この投稿からしばらく、構想を練り直します。 

 
曹操が劉備を逃がしてから二日後。袁紹、袁術の二名が曹操領に軍を向けた。
曹操も袁家の進軍に対して軍を発し、自身の存亡を賭け戦いに望んだ。

それから半月後

官渡の地に両軍が集結していた。

袁紹・袁術合同陣地
「あの生意気なくるくる小娘。袁家に逆らうとは良い度胸ですわ」
「そうじゃ!大長秋の孫程度が三公を輩出する名家に逆らうとわ。わらわの力を思い知るのじゃ!」

袁紹、袁術は口々に曹操を罵る形で軍議を進めた。

軍議の結果、陣の最前列に外様の孫策らが配置され。進軍した。

対岸に配置された曹操軍本陣

「袁紹、袁術の軍勢の数。およそ十五万こちらに向かって進軍中。先陣は孫策が務めている」
如水の報告に一同はその数の多さに緊張し、気合を入れた。
「先陣の孫家は約二万。袁家も馬鹿にしたものじゃ無いですね、これだけの大任は孫策にしか務まりません」
如水の関心に桂花と華琳が否定した。
「確かにそうだけど、連中そこまで考えて無いわよ」
「そうです。如水殿、袁家の連中を過大評価しすぎです。どうせ自分達が先陣を務める事が嫌なだけです」
「そうですか。では孫家を叩けば崩れると思わないほうが良いですね」
「そうね、向こうの本隊は孫策とこちらを互いに消耗させた後来るわ。その事を頭に入れて置きなさい」

華琳の発言に納得した後、部隊編成を決めた。
「先陣は秋蘭殿が適任かと思います。第二陣に霞殿。次に本隊が配置し、私は遊撃を担当し。春蘭殿が後陣を務めて頂きたい」
「その布陣の理由は?」
「相手の先鋒は猛将孫策です。正直、孫策相手にまともに打ち合えば、こちらの被害は甚大です。しかし、孫策が捨て駒ならこちらは正面から打ちかからず、先鋒と後方を孤立させれば孫策も軍は整えられないでしょう」
如水の説明を聞き秋蘭は納得した
「そうだな。しかし、それなら姉者か霞の方がいいのではないか?」
「いえ、春蘭殿や霞殿ですと、孫策と互角に戦ってしまい、乱戦になります。そうなると袁家の連中は孫策ばかりに良い所を盗られまいと進軍するでしょう」
「それはありえるわね。あの馬鹿二人なら」
華琳や他の者も納得した
「ですので、秋蘭殿には敵をいなし続けて欲しいのです。そうすれば孫策軍も浮き足立ち、後続も火中の栗を拾う気にならないでしょう。孫策軍を足止めし孤立させるそれが第一の作戦です。そして、その後に全力で袋だ抱きにして孫策軍を討つ。その勢いで改めて袁家の陣に斬り込む。その作戦を提示します」
「わかったわ、その案でいきましょう。皆、万全を尽くしなさい」
「はい!」
如水の意見を採用し軍議が決まった曹操軍は配置に付いた

こうして、袁紹、袁術連合対曹操の戦いが切って落とされた。

袁紹、袁術側は十五万、対する曹操側は六万三千。数では袁紹、袁術が優位だが、各陣の連携と士気は曹操に圧倒的優位だった。

決戦直前。華琳自ら先陣に立ち兵を鼓舞した。
「皆!良く聴け。我らは数で劣り敵は此方の三倍近くだ。だが、正義は我らにあり。袁紹、袁術は弱小の劉備を痛めつけるだけの卑怯者。私の鍛えた精鋭の敵では無い。この曹孟徳を信じよ。我に必勝の策あり!!」
「「「「「「おおー!!」」」」」」
「いざ往かん。曹孟徳と覇道を共に進もう」
「「「「「「おおー!!」」」」」」
華琳の演説を聞き三倍近くの敵を前に曹操軍の士気は上がった。

先陣の秋蘭の隊が孫策と激突し、苛烈な戦いが始まった。

秋蘭は猛将孫策相手に一歩も引かず後続の仲間を信じた。
「我らは決して孤軍では無い。落ち着いて後ろを信じ突き進め」
「「「おおー」」」
秋蘭の指揮の下、功を焦らず各隊は孫家の猛攻をいなし奮戦した。

それに対し孫策軍は自軍が孤立し始め浮き足立った。
「まずいわね。味方が続かない。あの馬鹿共、私達を見捨てる気ね」
孫策が慌て始めた時、左右から爆音が響き孫策軍は未知の物に恐怖した。
「おい、なんだ今の音。あんな音聞いた事無いぞ」
「大変だ!曹操軍の投げてきた黒い球が破裂して味方が死んでいったぞ」
「おい、どういう事だ。一体、何が起きている」

如水軍は左右に回り込み鉄玉を投擲していた。その音を合図に第二陣の霞の軍が強襲した。
「いまや。孫策を討ち取るで~」

未知の物体への恐怖と張遼の強襲で孫策軍は持ち堪えれず壊滅した。

袁紹、袁術は孫策軍が壊滅した事で驚き陣形を下げ本陣の守りを強化した。
曹操はそれを好機と見て全軍に突撃の命を下した。

「くそ!!あの馬鹿のせいで私の大事な兵が皆死んじゃった。しかたないっか!…冥琳、蓮華を頼むわ」
孫策は親友の軍師周瑜に妹の事を頼み、最後の攻撃の準備をした。
「おい、何をする気だ雪蓮。急いで逃げるぞ」
「だめよ。袁術に恩は無いけどこのまま逃げれば、死んでいった仲間に申し訳ないわ」
「おい!待て。行くな雪蓮!」

孫策は友の静止を振り切って残った手勢を集め張遼に突撃した
「我が名は孫伯符。命が惜しく無い奴から掛かって来なさい」
「よっしゃ!この張文遠が相手や」
「貴女が張遼ね、仲間の仇討たせて貰うわ」
「そうわいくかい。返り討ちにしたる」

霞と孫策の戦いが始まり。周瑜が残りを撤退させた為。敵の陣形は崩れた。そこに秋蘭と、後から合流した春蘭は袁術軍本隊に挑み。如水と華琳は袁紹の陣に攻撃を仕掛けた。

「如水!鉄玉と火箭の用意は出来てる」
「ああ、鉄玉四百個と火箭四千丁、いつでも使える」
「わかったわ。如水、先陣に行きなさい」
「了解した」

そして、如水軍の真桜は再び部隊に鉄玉の投擲を命じた

袁紹軍は混乱しそこに火箭四千丁が一斉に火を噴いた
「なっなんですの一体」
「わかりません。孫策さんの所でも同じ事があったそうです」
「そんな事、私の知った事じゃありません。早く何とかしなさい」
「でも、どうすれば、もう敵は目の前に来ていますよ」
「ええい、何でもいいから早く何とかしなさい」
袁紹の取り乱しで本陣の指揮は取れなくなり、兵達は恐怖で逃げ始めた。

如水軍は散っていく敗走兵を追撃し、華琳の本隊は混乱する袁紹の本陣に突撃した。

如水が敗走兵を討滅し終えた頃、曹操軍が歓声を挙げた。
「袁紹、そして、顔良、文醜。討ち取った。皆、勝ち鬨を挙げろ」
「「「「「おおっー!」」」」」

そしてその前後に春蘭、秋蘭が袁術を討ち取り、霞が孫策を仕留めたとの方が届いた。

「われらの勝利だ、袁紹、袁術の領地を我が物にせよ」
「「「「「おうっ!」」」」」

その勝利の一月後、華琳は袁紹、袁術の領地を殆ど支配下に置き。如水は隣接する胡の勢力圏に行き、以前の約束した自治を認めと双方の不可侵の同盟を結んだ。
 
 

 
後書き
誤解の無いように言っておきますが、雪蓮は好きです。
ただ、蓮華の方がもっと好きなだけです。 

 

二十六話

 
前書き
構想練り直すの、意外と早かったです。 

 
官渡の戦いの戦勝によって華琳は袁紹、袁術の領土の殆どを手に入れ、その広大な領地を支配下に置いた。
手に入れた新領地は曹操の政策によってすぐに安定させ、曹操の覇道の足がかりとした。

しかし、曹操の勢力拡大に警戒した他の領地からの侵攻を受け。曹操軍の将達は連日駆り出された。

その為に曹操の手元の将は外交と諜報、防諜を担当する如水だけが残り、如水の部下の三人も単独で兵を動かし、華琳の元には一万程しか兵力が残っていなかった。

一方で、華琳の領内を通り逃げ延びた劉備は蜀地方に逃れ。勢力を拡大した。

華琳私室
「劉備は呂布を配下に下し、勢力を拡大し、大陸南西部を支配しようとしている。一方で孫家は現在孫策の戦死で勢力の建て直しに手一杯だ。この状況下でなら劉備が仕掛けてくるだろう。君の思う壺だな」
「そうね、劉備の力は認めるけど、あのやり方は容認出来ないわ。おそらく向こうもそうでしょう」
「ああ、恩を忘れこちらの留守を狙って君の首を獲りに来るだろうな。その証拠に劉備は軍の編成をしている。向かうのは間違いなくこちらだ、なにせ密偵の報告では今回の戦いは復讐と唱えているからな」
「それを言えば貴方もじゃない。何せ劉備の旗を奪ったのだから」
「そうだな、通行税として買ったのだがどうやらとんでもない買い物をした様だ」
「そうね。それより劉備が攻めてきそうな国境沿いの城の改修は上手く行っているの」
「ああ、完成した。しかも、向こうには偽の設計図を奪わせる事も成功した。間違いなくそこに来る」
「ならいいわ。鉄玉の備蓄は」
「それなら二千個以上が城に保管されている」
「そう。ところで貴方、いい加減、旗は決まったの?」
「ああ、藤の花だかどうかな」
「花の旗印とは珍しいわね。でも貴方には似合っているわ」
そう言ってからかいながら褒めた。

三日後
劉備軍が動いたとの方が届き、如水の設計した出城に五万の大軍が進軍しているとの報を受けた。その報告を聞き、華琳は如水らを連れ出城に入った
「上手く嵌ったわね」
「そうだな、向こうも情報収集に余念が無いが。こちらの防諜を見抜く事は出来なかった様だ」
「まずは私が相手するわ、貴方はその後に困難な仕事をして貰うわよ」
「了解している。そのかわり、劉備の言動にむきになるな」
「…わかったわよ」
「…私の不安はそこだけだな」
如水は華琳が必要以上に熱くならない事を釘刺し、華琳も納得した。

「華琳様、出撃準備整いました」
「じゃあ、行ってくるわ」
そう言って華琳は城外に布陣した。
「やはり、天下を取るにはこの場面でも、守勢だけに回らない事が必要なのだな」
如水は伝え聞いた、秀吉と家康の小牧・長久手の役を思い出していた。

最初の舌戦では初め、劉備が華琳のやり方を非難した。
その言葉を遠出に聞き、如水は劉備の言動の矛盾に呆れた。
「劉備も軍を動かしているというのに、なぜ、自分が正しいと言い切れるのか私には分からないな、私としてはああいう手合いが一番苦手だ。なにせ自分が善と信じ切って居る」

華琳も似たような事を思ったか、劉備のしてきた事と自分と何が違うのかを言い。結局、舌戦は華琳の方に優勢で終わった。
そして曹操軍と劉備軍が激突した。華琳は少数ながら巧妙に立ち回り奮戦したが、圧倒的数の前に撤退し、如水はその援護に移った。

「君が自棄になるのを心配したが、大丈夫だった様だな」
「さすがにあれだけ釘を刺されたら、大人しくするわよ。それより後は頼んだわよ」
「了解した。君は急いで戻り、軍を集めてくれ」
「わかったわ。でも本当に貴方と詠だけで良いの?」
華琳の心配に如水は笑って答えた
「この城に八千も居れば四ヵ月は持つ。安心してくれ」
如水の言葉を信じ、華琳は急いで撤退して各地に居る配下を一箇所に集める様に指示した。

華琳が城を去った後、如水は自身の旗を立て、以前劉備が置いていった旗を城壁に吊るした
それを見た劉備軍は憤慨した。

劉備軍本陣

「っつ…われらの誇りをあの様にして、一体あの旗は誰のだ?」
「おそらくですが、黒田さんの旗では無いかと。他の曹操軍の誰とも一致しません」
「ひどいのだ、あいつは絶対、鈴々が倒すのだ」
「そうだな。曹操の前にあ奴をかならず討ち取ってくれる」
「私達みんなの誇りを踏みにじる行為は絶対許せないよ」
「しかし、曹操さんが居ないのに城を攻めても意味が無いです」
「黒田は我らの誇りを二度も侮辱したのだ、このまま兵を引けば新しく加わった仲間までもが我らを見くびるぞ。それだけはさせぬ」
「そうですね、幸いにも、城の設計図は手に入れています。この程度の城なら何とかなるかも知れません」

軍議が終わり劉備軍は城攻めを開始した。

それを見た如水はほくそ笑んだ
「あの高名な諸葛亮を騙せるとは、私も捨てたものではないな。詠、本陣は君に任せる。私は防戦を担当しよう」
「わかったわ、それにしても趣味の悪い作戦ね」
「ああ。だが、劉備らには効いた様だ。必死に攻めてくる」
「華琳様が戻って来るのに早くて二ヶ月は掛かるわ。それまで持ち堪えましょう」
「そうだな、こんな所で負けるわけにはいかない」

劉備軍は城攻めを開始したが、手に入れた設計図と違い。更に、城内の兵の連携に困惑し、城攻めは上手くいかなかった。

「どうなっている!私達の知る城ではないぞあの城は」
「…おそらくですが私達が手に入れた設計図は偽物だったのかも知れません」
「なんだと!」
「え、うそ!」
「さすがは水色策士。まんまと騙されました」
「つまり、我らは今まで奴の掌で踊らされていたわけか」
「…はい、そうなります」
「っつ、くそ!」
そして、本陣へ伝令が駆け込んできた。
「…大変です。味方が動揺しています」
劉備軍の軍師、龐統その内容を味方に伝えた。
「城から、矢文が打ち込まれました。内容は、…劉備軍は、黄巾の乱の折の曹操の恩を忘れ、更に昔日の恩を忘れた不義の軍である。その様な者には、曹操の手を煩わせずこの黒田の手で十分であり、貴殿らの不義・忘恩に味方する事は進められず」
「くっ…」
如水の文に対し、沈黙する劉備軍、新参配下は劉備に不審感を持ち、困惑した。

困惑した劉備の陣に、城壁の兵が鉄玉を投げ込み。劉備軍は混乱した
「なに、今度は。一体どうしたの」
「わかりませんが、あれがおそらく官渡で使った曹操軍の新兵器でしょう」
そこに再び、伝令が駆け込んだ
「報告します、呂布軍が撤退して行き、他の軍にいたっては曹操側に降伏しています」
「どうして!」
「それが、約を違い、自身の武を穢されて指をくわえて見ている者等とは共に戦いたく無い、との事です」
「くっ!」
「桃香さま、私達も撤退するしかありません。これ以上は戦えません」
「っつ!でも」
「私も朱里と同じ意見です。直に曹操が他の将を引き連れてやってきます、これ以上の戦いは危険です」
「星!貴様、それでも武人か」
「なら、みすみす兵達を死なせるつもりか」
「それは…」
「愛紗ちゃん、星ちゃんの言うとおりだよ。くやしいけど引き上げよう」
「わかりました」

こうして劉備軍は撤退した。それを見た如水は城壁に吊るした劉備らの旗に火を掛け燃やした。
そして、劉備の新参の配下は劉備を見限り。如水の元に行き、曹操に帰順したいと申し出て来た。

この戦いで如水は五万の敵を八千で防いだと大陸に再び、勇名を広めた。
 
 

 
後書き
ここから最後まで一応、最後まで書けました。
投稿を続けるのでご理解下さい。 

 

二十七話

劉備の軍を防いだ如水は、華琳に早馬を出し。劉備軍が撤退した事と、自身は新たに加わった軍勢を率い、これから劉備軍の追撃に移ると送った。

華琳は劉備らを殺さない様に追い詰めろを言い、自身は西涼に侵攻すると返答を送った。

如水は城内の本陣で詠と報告について話し合っていた。
「詠、君は馬氏と知り合いか?」
「そこまで、親しく無かったけど。よく、支えあって五胡を倒したわ」
「問題はそこだ、外憂は一つでも減らしたい。その為には馬氏を殺さない事だな」
「そうね、月も居なく、馬騰が死ねば。五胡は侵攻してくるかもね」
「君達の方から、馬騰の助命をしてくれないか」
「いいわ、その代わり。劉備の勢力を完全に消しちゃだめよ」
詠は如水の提案と交換に意見を述べた
「難しい事を言う」
「当たり前でしょ。あんた、韓信にでも為りたいの」
「いや、私は張良の方に憧れているが」
「どっちも長く無いって意味では同じでしょ。大体、あんた、華琳様を呼び捨てにしているじゃない」
「その事は昔、言われたんだ。華琳と呼びすてにしろと」
その言葉を聞き、詠は呆れた。
「あんた、本当に結婚してたの。いや、してたとしても円満とは思えないわ」
「失礼だな。よく妻とは二人で歌を読み合っていた」
「はいはい、惚気は結構よ。それより、急ぎましょう、ぐずぐずしていたら劉備達、体制を立て直すわ」
「そうだな、急ごう」

如水は三万七千の兵を連れ、劉備軍の追撃に進軍した。
その攻勢に劉備軍は壊滅的被害を受け。その戦いを見た、呂布は曹操軍に降伏を申し出た。

「君は呂布とは知り合いだったよな、どう思う?」
「あの子は、別に欲が深く無い、純粋な子よ。私と月がこちらに居るとわかれば下ってくれるわ」
「しかし、華琳に話をつけなくていいのか」
「その事なら、私と霞が命がけで説得してくれるわ」
「そうか。なら、私の責任で呂布の安全を保障しよう」

その後。しばらくして、陣中に呂布が入って来た。

「こちらは呂布殿、私は軍師の陳宮と言うのです」
「音々音、あんたやっぱりここに居たのね」
「詠殿がなぜこんな所に、月殿と一緒に戦死したものとばかり思ってました」
「曹操様に助けられたのよ、それに月も一緒にいるは後で逢わせるから、今は要件を言いなさい」
「了解しました。この度、呂布殿は曹操軍に下る事を決め。それより後、曹操の下で身命を賭して働く所存です」
「…うん。恋、がんばる」
「つかぬことを聞くが、なぜ、曹操の下に」
「…劉備達、約束守らなかった。それにこのままだと兵士達が餓えちゃう」
「そちらの条件を述べてくれ」
「兵士や私の動物達がお腹いっぱい食べれたらいい」
「了解した。その言葉、この黒田孝高が請け負おう」
「ありがとう。恋の事、真名で呼んで言い」
「わかった、私の事は如水と呼んでくれ」
「うん!わかった」
恋との話が終え、如水は詠に話しかけた。
「城で待つ、月に炊き出しの用意をさせてくれ、それと負傷者の収容もだ」
「わかったわ。これで引き上げるの」
「ああ、目的は達成した。劉備の勢力はしばらく戦力を整えるのに精一杯だろう」
「そうね、これだけ大敗して、しかも恋もこちらについた以上、劉備は当分動けないでしょう」
「城に帰って、まずは、新しく手に入れた領内を安定させる。その後、国境沿いに大規模な築城をする」
「じゃあ、金穀や物資を華琳様に頼まなきゃ。恋の事と西涼の馬騰の事もあるから、私が行くわ」
「ああ、任せた」

如水は劉備追撃を止め。城に戻り、新たに加わった配下を撫育し、各地の父老を集め、良政を敷き、新領地を安定させた。
その頃、西涼を平定し周囲の勢力を自身に帰順させた華琳は如水の申し出を全て受け入れ、呂布については詠、霞の説得し、如水の新たに造った城を守らせよとの命が下った。西涼の馬氏は曹操に下り、馬騰は自害する所を、詠の説得で曹操の配下に加わった。

その知らせと、物資が届き。如水は築城を開始した。

この戦いの後、曹操は西涼を支配下に置き、馬騰、呂布を傘下に加えた。
その説得には詠、月、霞が行い、その功績を称えられた。

劉備軍が撤退した後。如水は城の縄張りを設計し、各地から、労役の為の人足が集まった。

十万の大軍を収容出来る城の為である。

工事現場
如水は火箭に槍や、鉄の玉を詰め、相手陣地に攻撃する大砲の様なものを設計していた。
それに合わせ火薬兵器に対応した城の為、今までとは勝手が違い他の者らは困惑したが、如水を信じ、建設に従事した。

その間、如水の為に、華琳の所から見舞いに来る者が、後を絶たなかった。
その中でも、新たに配下となった馬騰、呂布と言った者らは如水にとって新鮮だった。
馬騰は気さくな軍人で霞を指導した事もあるとの事、そして呂布は真名を如水に預け、如水は恋と呼び、恋自身、如水の事を兄の様に慕った。

そして、諜報による、現在の大陸の現状を見た。
劉備は敗走の後、戦力をまとめ蜀郡を奪い。孫権は孫策の死後、郎党らに支えられ、父祖以来の呉郡を固めた。
「朝廷は最早、どうする事も出来まい。今、この大陸の最大勢力は三分の二は華琳。残りの一つを孫権が六、劉備が四といった所か。勢力は圧倒的にこちらに利がある。私の知る歴史とは違うが今までと同じく大筋は同じ。劉備は今動けない、次に仕掛けるのは孫権か」

そして、外郭が完成しと内郭が半分出来上がった後、如水は真桜と交代し、華琳のもとに戻った。

如水を帰城した後、華琳は私室に呼んだ。
華琳私室
「城の設計図見たわ。精巧な城ね、そして規模の大きさ、その華麗さ、全てが私の力を象徴する城だわ」
「その様にしたつもりだ」
華琳は如水の仕事ぶりを褒め、あいかわらず、如水は華琳の意に沿ったまでと言った。
そして、本題に入った。

「…私は、王を名乗ろうと思うわ」
「そうか…」
「もはや、漢王朝にこの天下を統治する力は無いわ。それに代わる秩序は私が創る」
「そうだな、君にはその覇道こそ相応しい」
「褒めてる?」
「…すまない、この様な言葉しか思いつかない」
「そう。でもそうね、私は自身の力で自分の道を切り拓く。それこそが私の生き方」
「私も、力の限り、支えて頂きます。我が王」
華琳の宣言に如水はひれ伏して答えた。

その二日後、華琳は即位し魏王と称した。

 
 

 
後書き
馬騰の真名思いつきませんでした 

 

二十八話

曹操が魏を建国し、洛陽を首都とし。魏王を称した。
武官として六位の将軍に任じられた。
外交の仕事を一人で専念していた如水だが情報部は拡大し、情報局と改め、その局長を任せられた。更に、他の者と共に内治の任を再び与えられた。

他の地方でも。それに対応する様に、孫権は呉を建国し。劉備は蜀を建国した。

如水執務室
「赤壁の戦いの前に、三国志の国が建国されたな。やはりかなり、私の知る世界と異なって来た。これもあの占い師の言った事に反しているのかもしれん」
如水はかつて告げられた、身の破滅に怯えたが、それ以上の仕事のやりがいに心が躍った。

そして、馬騰と恋については華琳は如水に献策し
馬騰は五胡の押さえとして、一族郎党と共に西涼に駐屯し。恋は音々音と共に如水の築城した城に詰めた。
馬騰は臣従の誠意として娘を一人。人質として曹操の配下に送り出した。
馬超といい気のさっぱりした女性だった。

玉座の間

「あんたが黒田か、五万の軍を退けたって聞いたから。どんな奴かと思ってたけど、随分と優男だな」
「そういう貴女も、戦場に挑む女性には見えません。とても可憐な方ですね」
その言葉を聞き、馬超は照れて慌て。華琳は殺気を出し、周囲は恐怖に凍りついた。
「如水、初対面の女性を口説くとは、随分手が早いのね」
「私はただ、感想を述べただけだ。馬超殿、私の事は如水と呼んで下さい」
「…あっああ。私の真名は翠と言う。皆もそう呼んでくれ」
「わかったわ。翠、私の事は華琳と呼びなさい」
「はいっ、よろしくお願いします。華琳様」

そして、その後。春蘭ら武将らは演習に向かった。

演習場

翠は如水の用兵を見て、驚嘆した
「凄いな、如水は。縦横無尽とはまさにあの事なのかも」
如水は演習相手の春蘭の軍を翻弄していた。翠が驚いた事は凪、真桜、沙和といった有能な部下だけでなく。五十人組の小隊や二百人の中隊、六百人の大隊がまでもが如水と息を合わせ、一つのからくりの様に動いた。その一糸乱れぬ用兵に戦慄した。
「そうやろ、如水の奴、まるで水か煙の様に掴みどころない用兵をつかうんや」
「ああ、姉者や、私達は、いつもあの手にやられている。華琳様だけが唯一、互角以上に戦える」
「さずが、空の奇術師。だな」
「ああ、うちらは何度騙されたかわからん」
「そうだな。だが、文官を兼任している以上最下位の将軍を動かない」
「それはあんたもやろ、秋蘭。領内の治安維持の為、って事で。春蘭と同じ最古参やのに、五位をになったやないか」
「そうなのか、母さんは二位将軍って聞いたが」
「せや、でも、馬騰さんなら当然やろ。恋は三位将軍。うちは四位。あそこで、翻弄されてるのがうちらの大将軍や」
「そういう、お前こそ、恋や馬騰殿に席次を譲ったではないか」
「うちは、恋より弱いし、馬騰さんの足元にも及ばん」
「人の事を言えた義理ではないな。今の所、変わって無いのは姉者だけか」
「失礼だが、あんなので務まるのか」
「ああ、兵士や、部下の信望が一番厚いんや。それにあの性格に裏表の無いところがうちらも信用できるんや。それに華琳さまの敬愛を隠しもせんところやな」
「そうか、そうだな。大将軍はただ強いだけでは務まらないよな」
結果としては、翠も如水の奇計に嵌り惨敗した。

「優男なんて言うんじゃ無かった、外見で既に騙された」
「よっぽど、こたえたのだろうな。だから、そのしかえしで翠を慌てさせたのだろう」
「せやで、如水を怒らせたら、後が怖いで」
そういいながら、二人は自軍の足りない所の研究に余念が無かった。

翠は改めて、曹操軍の強さと、その幕下の将達が強さに貪欲な事を改めて知った。


 

 

最終話

華琳私室

如水は今までの諜報の結果を、華琳に報告した。
「呉と蜀が、攻守同盟を結ぶ様だ。目的は言うまでも無いだろう」
「私達への敵対でしょうね」
「ああ、二つが組んでようやく、こちらの半分の兵力だ。それに、孫家は、孫策の件もある。孫権がこちらに敵対してもおかしくは無い」
「劉備もこのまま黙っていないわ、呉と蜀と戦うとなれば、これからの戦いは国内の紛争ではなく、国外への遠征に為るわ」
「そうだな。だが、それを制すれば君は大陸の覇者だ」
「ええ、最初の目的は孫呉を討つわ」
「そうだな、劉備は今、南蛮平定に国力を注いでる。そこに付け入るより、安定している孫呉を討つ方が大義が作れるだろう」

その会話から数ヶ月後、呉と蜀が同盟を組み、魏への攻守同盟を結んだ。曹操はその同盟を受け、激怒を演出し。魏に敵対した蜀の劉備と組んだ、呉の孫権を討つ為、洛陽を発し、四十万の兵を向けた。

曹操は軍を左右二手に分け、第一軍は二十五万を華琳自身が指揮し。第二軍十五万は春蘭が指揮し、合流地の赤壁に向かった。

曹操軍の威容を見て、呉を見限り。魏に下る者が後を絶たなかった。

曹操軍本陣
「各地で呉を見限り、こちらにつく者が多いな」
「当然だ、華琳様の偉大さを知れば、誰だって臣下に下る」
「…言い方は変ですが。春蘭殿の言う通り、これだけの規模の軍容を見れば怯えます」
「せやけど、それでも対抗するちゅう事は、かなり気が強いちゅうことや。残りの奴らの方が手強いっちゅう事や」
「そうね、敵も対岸に配置している。そちらの方が厄介ね」
「そうですね~。兵力差は歴然なのに、こちらと戦う気ですから」
「何か考えがあるのでしょう、でなければ。このまま建業に進軍しましょう」
「そうね、こちらは船での戦いは圧倒的に不利だわ。向こうは必ず、それを狙うわ」

そこに、孫権側から投降して来た将が居る、との報告が駆け込んだ。
「黄蓋という者がこちらに投降して来ました」
「なに!黄蓋が」
報告を受けた春蘭らは驚いたが、如水だけは驚かなかった。
黄蓋の報告の内容では、周瑜のやり方と対立した結果。曹操軍に下ると決意したらしい。
「華琳さま、これは天運が味方しています、すぐさま眼前の孫権軍を討つべきです」
諸将は口々に開戦を唱え、黄蓋の技術を持ってすれば敵の主力を壊滅出来ると述べた。
そんな中、如水は反対意見を述べた。
「黄蓋殿の報告では、建業は現在、空らしいです。私の諜報でも同じ事を報告しています。この際、彼らを捨て置き、十万を監視にし、三十万の軍で相手の領土を全て奪えば面白いと思いませんか」
その言葉に黄蓋は驚き、自身の為にもここで開戦して欲しいと述べた。
「黄蓋殿、我々は貴女の為に、戦っていません。全ては主、華琳の為です。私怨で兵を動かしてはいけません。貴女も軍籍に属したなら、この言葉がわかるはずですっ…」
黄蓋を説得していた如水の異変に華琳らは驚いた。
「っつ…いえ、少々息が上がった様です、ご安心を」
「そう…」

如水の意見を取り、秋蘭、如水、稟ら十五万を指揮し、敵の主力警戒に当て、残りの二十五万の軍が孫呉の土地を占領した。

対岸の曹操軍と対峙していた孫権軍は眼前に敵が居る為、動けず。戦おうにも相手は開戦を避ける為、何も出来なかった。

その間、如水の体調は悪化し、軍の指揮を凪達に預け、横になっていた。その後、更に悪化した為、遂に洛陽に送還された。

その後、呉は魏に従属し、曹操は、呉の自治権を認めて、呉との戦いは終わった。

その報を洛陽の自室で聞き、自分の役目が終わりつつある事を知り、準備を整えた。

曹魏が孫呉を下し、従属してから劉備の方から使者が届いた。
如水はその言葉を、後から、病床で聞き、劉備の性格を疑った。
同盟国の孫呉が従属した以上、自分達も同盟したいとの事で、孫呉と同じ様に領土もそのままで、自分達と同盟を組みたいとの事だった。
当然、華琳は要求を跳ね除け。同盟を組みたければ、劉璋に領土の半分を返還する事、そして人質を孫権に差し出す事を条件とした。

そして、病床を見舞いに来た、華琳に質問した。
「なぜ、劉備の人質を孫権に渡すのだ」
「劉備の方が格下だとわからせる為よ、孫呉は私達と戦い力を見せた。それに、あの領地は元々、孫家のもの。対して劉備は劉璋から奪った方なのよ」
「なるほどな」
そして華琳は如水に病状を聞いた。
「どうなの。その体」
「いつぞやの占いの通りだ、君の統一と同時に私は消える。劉備はかならず条件をのむだろう」
「そう…」
「そんな顔するな、どうせ散った命だった。また、君の覇道を支えられて満足している」
「っつ…だれが悲しんでいるって言うの」
「私は、別に、悲しんだ顔とは言っていない」
「口の減らない男ね」
「なら、清々するだろ」

その言葉の真意を知った華琳は笑って如水に答えた。
「…そうね、貴方の最後の献策。受け入れましょう」

最初の使者が帰ってから一月後、劉備は条件を全てのみ。曹操に従属した。孫権への人質は関羽を差し出すらしい。

そして、曹操の覇業を支えた男は消えた。
彼は、事前に、自分の存在の証拠となる物を、一切捨てさせ。建設した城も廃棄した。

残ったのは曹孟徳の下、平定された大陸の平和な治世だけだった。
 
 

 
後書き
なんかすごく、後半、淡白にしてしまいました。

読んでくれた方、すいません。これでこの話は終わりです。

最後には書くこと無くなってしまい淡々と話が進み物足りなくなっているかもしれませんが、お気に入りに登録してくれた方や、読んでくれた方。ありがとうございます。 

 

不機嫌な華琳

曹孟徳による天下平定と言う平和が来て半月。黒田孝高こと、如水は多忙だった。

各地の文官、又は軍師との会談(全員女性)
余暇を見ては街を歩き、住民の声を聞き相談に乗る。(何故か女性ばかり)
その他にも、曹操領内の陳情。曹操陣営での文官との打ち合わせ。(やっぱり、全員女性)
そして、曹操の天下を創った立役者として話題になっていた。(主に女性)

更に、小柄だが涼やかな風貌持ち、品性のある顔は女性に絶大な人気を博した(一部男性あり)

そんな噂が立っている事も知らず、如水は日々多忙に過ごした。その事が仇となった。

その事を聞いた華琳は、最近、自分とはろくに話もしておらず、何もないとはいえ、他の女と仲良くしている事を思い、不機嫌になり、他の者らが華琳が不機嫌な事を恐れた為、何とか二人で話が出来る様に話し合った。

玉座の間
「如水、話があるわ」
「うん?何か遭ったか。私はこれから使節との懇親会に行くのだが?」
「じょっ…如水殿、その件でしたら、私が引き受けるよう、華琳様に言われました」
桂花が動こうとする如水を引き止めた。
「そうですか、なら…」
「領内の開拓事業については私が引き継いだわ」
詠が如水の行動を先読みし、制止した
「そうですか…」
如水は暇になった事を華琳に告げ、街に下りる許可を貰おうとしたが、そこを風がからかった
「お兄さん、休みを理由に街遊びですか」
「それもいいですね。今日はそうしましょうか」
そうこうと話をしている所に華琳が遂に切れた。
「如水!話があるの。いいから付いて来なさい!」
そう言って華琳は去って行った。
「何か知りませんが、私は華琳の後を追います。皆さん、頑張って下さい」
「…如水殿の方が大変ですよ」
稟の言葉を聞き如水は首を傾げた

庭園 東屋
「いつだったか、ここに追いやられたな。それで話とはなんだ華琳」
如水は、先ほどから黙っている華琳に話かけた。
「…貴方、最近ずいぶんといろんな女と会っているわね」
険を含んだ華琳の態度に如水は困惑した。
「一体どうした、何が起きた?」
あまりの剣幕に如水は慌てたが、華琳はいつもと変わらない様子に諦めた
「…別に、…ただこうして話せる機会が少なかったわね」
「…そうだな。平和になって、更に多忙になった」
「そうね」
「華琳。一つ聞いていいか?」
「何?構わないわよ」
如水の問いに華琳は耳を貸した。
「私は君が望む働きをしただろうか」
その言葉を聞き華琳は笑った。
「半分は良くやったわ。もう半分はこれから答えなさい」

その言葉を聞き、如水は安堵した。

そして、その日は華琳と如水の二人は一日歌を読み合って過ごした。
 
 

 
後書き
この外伝って別にしたほうが良いですかね…
 

 

四ヶ国合同演習

 
前書き
とりあえず、ここに投稿します。 

 

魏・呉・蜀・漢の協力によって治世が訪れ、四ヶ国の友好・不可侵条約と交易が結ばれた。魏国も国政が整い、如水らも以前ほどの多忙さは無くなった。如水は華琳に相談する為に私室に訪れた。

華琳私室
「合同演習?」
「ああ、これからの治世が続く意味と、共に外敵に備える為に、魏・呉・蜀・漢の、軍事の一本化を図った方が良いと思うが」
如水の提案を聞き、華琳は納得した。
「そうね。確かにそれを行えば、国々の友好を保てるかもしれないし、他の国の軍事力を分かる事が出来るし。何より、いずれ外敵が来た時に別々に動いたのでは意味は無いわ。いいわ他の国に打診してみるわ。…貴方って要件が無ければ私の部屋に来ないのね」
「なぜそんな事を聞くかわからないが。女性に対して、私は気安く話しかけられなくてね」
「…そこだけが、貴方に対する不満なのだけど」
「何か言ったか?」
「別に。すぐに書状と使者を送るわ。貴方も支度しなさい」

そして、華琳は他の三ヵ国に使者を送り、これからは、軍の演習を四ヶ国の合同で執り行う事にしたいとの書状を送った。
三国は、友好と、他の国の軍事を知る為と、外憂を防ぐ為に快諾した。

四ヶ国合同演習場
集まった顔ぶれは

魏は曹操・夏候惇・黒田孝高
呉は孫権・周瑜・甘寧
蜀は劉璋・王累・張任
漢は劉備・趙雲・諸葛亮

演習場には既に、各国が提示した将と、その軍が集まっていた

演習に集まった数は、総勢三十万を超えた。

そして、各国の王らが壇上に立ち兵士達から歓声が挙がった。そして曹操が代表として宣言した
「諸君、よく来てくれた。乱世は終わり、治世が訪れた。しかし私達にはこの平和を守る義務がある。それには諸君らの力が必要である。この演習において外敵に備え、君達の力で平和を守ろう」
「「「「「「「「おおっー!」」」」」」」」

演習が始まり、皆なれない者との演習に戸惑ったが、各国の将達の手を取り合った指導によって、次第に別の国の兵士達での助け合いが出来る程にまでなった。

そして最後に、王と、辞退した諸葛亮を除いた、七人の将での総当り戦によって、順位を決める事になった。

「如水、いつもの様にいくと思うな」
「残念ですが、勝たせて貰いますよ」
「なんだと。華琳様の前で醜態を晒すものか」
春蘭と如水が話でいる所に、他の国の将がやって来た。
呉の軍師、周瑜。漢の将、趙雲が如水に懐かしそうに話し掛けて来た。
「黒田殿、先の戦いではしてやられましたが今回はそうは行きませんよ」
「あの時、賊から助けた男が空の奇術師だったとは。私も見る目が無かったな」
「趙雲殿、助けていただいた恩は忘れませんが手は抜きませんよ。それと周瑜殿、勝敗は兵家の常とはいえ負けるわけにいきません」
「当然です、私も同じ気持ちです」
「あの程度の恩で、手を抜かれたらそれこそ我が武の恥だ。存分に戦うとしよう」

一通りの雑談が終わり。刻限が近付き、各位が自分の陣についた。如水は部下の三人に話しかけた。
「凪、真桜、沙和。三人とも頑張ろう」
「はい!隊長の名に恥じぬ戦いをします」
「うちらの強さ、みしたろうや先生」
「絶対勝つの~!!」

そうして総当り戦が始まり、如水は各将らとの戦いを始めた。

一番盛り上がった戦いは、黒田孝高と周瑜の戦いだった。
両者共、表裏定かではない用兵を駆使し、見学した者達は息を呑んだ。
最後に決めてとなったのは如水の三人の部下の働きで、如水の勝利となり、如水は一位を獲得し、凪、真桜、沙和三人は天の三羽鳥と称された。
二位は周瑜で、夏候惇と趙雲が三位となりそれぞれ称えられた。

演習が終わり。兵士は、怪我した者は月の治療を受け。贅を尽くした食事に満足し、最後に張三姉妹の歌が披露された

 
 

 
後書き
自分の中では、周瑜と三司馬の方が評価が高いです。 

 

二十九話

 
前書き
とりあえず投稿します 

 
曹操、劉備、孫権の三者による大陸の統治から、しばらくして。劉備が孫権と同盟し、魏に対して攻守同盟を結ぶつもりだとの情報が如水の元に届いた。

「あれだけ、見苦しい行為をして、まだこちらに敵対するとは。一体どういう神経なんだ、劉備は」
如水は再三に渡る劉備の醜態に呆れた。

華琳私室
如水は今までの諜報の結果を、華琳に報告した。
「呉と蜀が、攻守同盟を結ぶ様だ。目的は言うまでも無いだろう」
「私達への敵対でしょうね」
「ああ、二つが組んでようやく、こちらの半分の兵力だ。それに、孫家は、孫策の件もある。孫権がこちらに敵対してもおかしくは無い」
「劉備もこのまま黙っていないわ、呉と蜀と戦うとなれば、これからの戦いは国内の紛争ではなく、国外への遠征に為るわ」
「そうだな。だが、それを制すれば君は大陸の覇者だ」
「ええ、最初の目的は孫呉を討つわ」
「そうだな、劉備は今、南蛮平定に国力を注いでる。そこに付け入るより、安定している孫呉を討つ方が大義が作れるだろう」

その会話から数ヶ月後、呉と蜀が同盟を組み、魏への攻守同盟を結んだ。曹操はその同盟を受け、激怒を演出し。魏に敵対した蜀の劉備と組んだ、呉の孫権を討つ為、洛陽を発し、四十万の兵を向けた。

曹操は軍を左右二手に分け、第一軍は二十五万を華琳自身が指揮し。第二軍十五万は春蘭が指揮し、合流地の赤壁に向かった。

曹操軍の威容を見て、呉を見限り。魏に下った。

曹操軍本陣
「各地で呉を見限り、こちらにつく者が多いな」
「当然だ、華琳様の偉大さを知れば、誰だって臣下に下る」
「…言い方は変ですが。春蘭殿の言う通り、これだけの規模の軍容を見れば怯えます」
「せやけど、それでも対抗するちゅう事は、かなり気が強いちゅうことや。残りの奴らの方が手強いっちゅう事や」
「そうね、敵も対岸に配置している。そちらの方が厄介ね」
「そうですね~。兵力差は歴然なのに、こちらと戦う気ですから」
「何か考えがあるのでしょう、でなければ。このまま建業に進軍しましょう」
「そうね、こちらは船での戦いは圧倒的に不利だわ。向こうは必ず、それを狙うわ」

そこに、孫権側から投降して来た将が居る、との報告が駆け込んだ。
「黄蓋という者がこちらに投降して来ました」
「なに!黄蓋が」
報告を受けた春蘭らは驚いたが、如水だけは驚かなかった。
黄蓋の報告の内容では、周瑜のやり方と対立した結果。曹操軍に下ると決意したらしい。
「華琳さま、これは天運が味方しています、すぐさま眼前の孫権軍を討つべきです」
諸将は口々に開戦を唱え、黄蓋の技術を持ってすれば敵の主力を壊滅出来ると述べた。
そんな中、如水は反対意見を述べた。
「黄蓋殿の報告では、建業は現在、空らしいです。私の諜報でも同じ事を報告しています。この際、彼らを捨て置き、十万を監視にし、三十万の軍で相手の領土を全て奪えば面白いと思いませんか」
その言葉に黄蓋は驚き、自身の為にもここで開戦して欲しいと述べた。
「黄蓋殿、我々は貴女の為に、戦っていません。全ては主、華琳の為です。私怨で兵を動かしてはいけません。貴女も軍籍に属したなら、この言葉がわかるはずですっ…」
黄蓋を説得していた如水の異変に華琳らは驚いた。
「っつ…いえ、少々息が上がった様です、ご安心を」
「そう…」

如水の意見を取り、秋蘭、如水、稟ら十五万を指揮し、敵の主力警戒に当て、残りの二十五万の軍が孫呉の土地を占領した。

対岸の曹操軍と対峙していた孫権軍は眼前に敵が居る為、動けず。戦おうにも相手は開戦を避ける為、何も出来なかった。

その間、如水の体調は悪化し、軍の指揮を凪達に預け、横になっていた。その後、更に悪化した為、遂に洛陽に送還された。

その後、呉は魏に従属し、曹操は、呉の自治権を認めて、呉との戦いは終わった。

その報を洛陽の自室で聞き、自分の役目が終わりつつある事を知り、準備を整えた。

曹魏が孫呉を下し、従属してから劉備の方から使者が届いた。
如水はその言葉を、後から、病床で聞き、劉備の性格を疑った。
同盟国の孫呉が従属した以上、自分達も同盟したいとの事で、孫呉と同じ様に領土もそのままで、自分達と同盟を組みたいとの事だった。
当然、華琳は要求を跳ね除け。同盟を組みたければ、劉璋に領土の半分を返還する事、そして人質を孫権に差し出す事を条件とした。

そして、病床を見舞いに来た、華琳に質問した。
「なぜ、劉備の人質を孫権に渡すのだ」
「劉備の方が格下だとわからせる為よ、孫呉は私達と戦い力を見せた。それに、あの領地は元々、孫家のもの。対して劉備は劉璋から奪った方なのよ」
「なるほどな」
そして華琳は如水に病状を聞いた。
「どうなの。その体」
「いつぞやの占いの通りだ、君の統一と同時に私は消える。劉備はおそらくだが要求を跳ね除けるだろう。そうなれば、これが私の最後の戦いだ」
「そう…」
「そんな顔するな、どうせ散った命だった。また、君の覇道を支えられて満足している」
「っつ…だれが悲しんでいるって言うの」
「私は、別に、悲しんだ顔とは言っていない」
「口の減らない男ね」
「なら、清々するだろ私が消えても」
「そう。それが貴方の意思なのね」
「ああ。私は、この乱世で君に天下を取らせる」


二月後、劉備は曹操の要求を跳ね除け。魏と魏に従属した呉に対しての敵対を継続した。

その報せを受けた華琳は、如水の築城した城に軍を派遣し、西涼の馬騰を加え、蜀漢の討滅の為の軍。総数五十万を進軍し、孫権も援軍として、十万の軍を西進する事を約束した。
 
 

 
後書き
この話は完全にアンチ蜀なので、蜀ルートの好きな人には進められません。 

 

三十話

水徹城

城内を視察した華琳らは城の規模と精巧さ、美しさに感動した
「見事な城ね。流石、私の力を象徴するだけはあるわ」
華琳の言葉に桂花、秋蘭が答えた
「そうですね、これだけの建造物は連中に造れないでしょう」
「ああ、華琳様の天下も目前だ。皆、あと一息だ、精進しよう」

玉座の間
軍議の前に華琳は、如水、恋、音々音の功を褒めた
「まずは、如水、恋、音々音。この城の建設と守備ご苦労だっだわね」
「光栄です」
「…うん」
「光栄なのです」
「では、軍議を始めるわ。如水、報告を」
「はい、蜀軍は総数、二十万弱。こちらの半数以下です。しかも、兵の内情は、これまでの戦いで逃げていった兵や、徴発された民衆、流民が半数以上を超えています。まず、雑軍と言っていいでしょう」
「…そう、劉備の人徳もここまでね」
「ええ、しかも、この城は西方交通の要所を制していますので、蜀の国内は現在、経済が立ち行かない状況です」
「そう。では、関税を引き上げて様子を見ましょう。そうなれば劉備の軍は是可否でもここを攻めて来るわ」
「「「「「「「御意」」」」」」」

それから一年間、魏、呉の二ヶ国の封鎖戦略によって、蜀の国内は経済、治安共に混乱した。

そして、如水は密偵を撒き、劉備は人道を謳うが内実は己の威厳の為であり、その心底は虎狼であると、蜀の国内にばら撒いた。
その言葉は、瞬く間に信じられ、蜀の民衆は劉備に不満を持ち、劉備を非難し出した

 成都市中
「劉璋様の頃はこんな事は無かった。劉備がこの土地を奪うから曹操と孫権に睨まれるんだ」
「そうだ、何が仁君だ。怪しげな奴らを兵隊に加えたり、うちの倅も軍に盗られちまった」
「曹操様がせっかく和睦を持ちかけたのに、劉備の奴は自分の土地が減らされるのが嫌だと蹴ったんだ」
「ここが自分の土地だと思っているのかあの暴君は」

その言葉を聞き、この空気を打ち破る為に、劉備とその配下は水徹城に出陣を決定した。

「朱里ちゃん、これでいいのかな」
「桃香様、気持ちはわかりますがこれ以上待っていても、国内は混乱するだけです、水徹城を落せば交通の要所を手に入れられます」
「…そうだね、こんな酷い事をする人達を倒して、みんなの為に頑張ろう」
「そうです」
そう言った二人だったが、気分は優れなかった

水徹城 玉座

「劉備がここを目指しているわ、目的は言うまでも無いわね」
「はい、この城を落し、大陸行路を手に入れる為でしょう」
「長かったですね、待つの」
「うん…でも一年間ゆっくり出来た」
「ようやく暴れられるで。腕が鳴るわ」
「ああ、今度こそ。劉備らに曹魏の力見せてやろう」
「そうだな、劉備との相手はいつも如水に盗られてしまったからな」
「各位、自分の場所に着きなさい」
「「「「「「「御意」」」」」」」

蜀軍が城攻めの部署に着き、攻城戦を開始した
しかし、城の各地にうえつけられた大石火矢と火箭が蜀軍に火を噴き、蜀軍は混乱した。
そこに真桜の指揮の下、鉄玉を投げられ、その上で城から出陣した魏の武将らが次々に蜀の軍を蹂躙した。
元々、寄せ集めだった、蜀の兵は四散した

関羽と張飛は軍を立て直そうとしたが、呂布の姿を見て食って掛かった
「呂布!。貴様、裏切っただけでなく、曹操の犬になったか」
「そうなのだ、お姉ちゃんを裏切って、許さないのだ」
「…裏切ったのは劉備の方、私達にご飯くれなかった。それに、別に許さなくていい、二人共ここで死ぬから」
関羽、張飛は呂布に戦いを挑み出し、蜀の兵士達は音々音の指揮を受けた魏の兵士達に討ち取られていった。

諸葛亮と趙雲、黄忠は、その様子をみてこれ以上の戦いは無理と判断し、劉備を無理やり撤退させ、自身らも部隊を下げ、敵の追撃に備えた。

関羽と張飛はなおも恋と戦ったが、しだいに疲れて討ち取られた。そして、蜀の謀臣の鳳統は退却の指揮を執りながら戦死した。
 

 

最終話

魏軍は蜀軍に大勝し、華琳は追撃を開始し、蜀に侵攻した。如水は第二軍を引き連れ、漢中に進軍し、定軍山に軍を動かした。
「私の知る史実ではここで、秋蘭が死ぬのだったな。しかし、秋蘭は別行動をとっている。ここでは一層、万全を期す必要があるな」
「隊長、如何しましたか?」
「いや、これが最後の戦いだ気を引き締めるぞ」
「はい」
「わかったで」
「了解なの」

如水軍二十万は定軍山の麓に陣を敷き、策敵を開始した。

蜀軍陣地
「旗は藤の花、となれば黒田ですね。水色策士の力見極めて見ましょう」
「油断はせぬ方がいいだろう、我々にはもう後が無い」
「ええ、愛紗ちゃん達の仇獲らせて貰うわ」

そして、蜀軍は十段に別れ、奇襲を開始した。

如水はそれに対し冷静に対処し、四方からの敵の攻撃に交代制で対応し、逆に少数の蜀軍を疲労させた。
「いいか、敵は寡兵だ。私の指示通りに対応すれば必ず相手は疲れてくる、今はしのげ」
「「「「「「おおっー」」」」」」

奇襲に失敗した蜀軍は体制を建て直し、対陣した。
「へたな小細工は効かない様ね」
「…ああ、さすが曹操軍の首席軍師だ」
そこに伝令が駆け込んできた
「将軍、敵に動きありとの事です」
「どうした」
「敵が我が軍を包囲し始めました」
「私達の居場所が気づかれた様ね、急いで撤退しましょう」
「しかし、逃げられるかな」
「包囲はまだ完全ではありません。敵の包囲はまだ成都の方角にはまだ逃げ道が出来ております」
「そこに向かいましょう」
「そうだな今しかない」
蜀軍は成都の方角に向かって隠密に撤退し、趙雲が先陣を受け、黄忠は殿を指揮した。
黄忠が後退していく最中に凪、沙和の部隊が襲い掛かり、黄忠軍は四散した
兵士達が逃げていくのを見ながら黄忠はようやく真意を悟った。
「罠?わざと逃げ道を作っていたの」
「そういうことだ、観念しろ」
「そうねの~」
「くっ…」

黄忠は奮闘したが相手は数千を超え、黄忠の部隊は既に逃げており、武勇を誇る彼女でも多勢には勝てず、奮戦むなしく討ち取られた。

その報を聞き、趙雲は軍を反転させ城に入り。魏軍に備えた。
「皆、死んでしまったか。短い間だったが楽しい思い出だっだな。だが、ただでは死なんぞ」
趙雲は兵を城の周りの森に隠し、自身は城門に一人で立ちふさがった。

「我が名は趙子龍。魏の兵達よ命が惜しくなくば掛かって来い」
趙雲の叫びに魏の兵らは佇んでいた。
「ふん、二十万も居て誰も挑んでこんのか」

趙雲が冷笑したがその後、戦慄した。城の周りに配置していた兵士達が全滅し、城の周りには藤の花の旗が立っていた。
「一体いつの間に?」
「貴女達が奇襲をしていた時からですよ。逃げ道を想定し、その道筋に都合の良い城が有りました、最初からそこに兵を置いて居ただけの事です」
「貴様!あの時の」
「お久しぶりです、趙雲殿。あの時は命を助けていただいてありがとうございます」
「まさか、あの時の男が空の奇術師か。私も見る目が無かったな」
そう言って趙雲は槍を構え自身の喉を突き刺し絶命した。
その様子を見た、如水は趙雲を褒め称えた
「趙子龍。見事な最後です、私ももう長く無いでしょうが、貴女の事は決して忘れません」

如水はそう言って軍を纏め、成都に進軍した。

成都

劉備が逃げ帰った後、成都では民衆が劉備を包囲していた。
「お前、一人逃げ帰って着やがって」
「うちの息子はどうなったんだ」
「お前のせいで、俺達の生活はめちゃくちゃだ」
劉備はそれに対して弁明した
「…でも、…私は皆を守りたかったの」
「何を言ってやがる。だれがお前に守って貰いたいなんて頼んだ」
「そうだ、お前さえ来なければ平和に暮らせたんだ」
「…ごめんなさい」
劉備の態度に民衆は激昂した
「ふざけるな!」
民衆が劉備に手を出そうとした時。

「「そこまでにしなさい」」
不意に声を掛けられ、劉備と民衆はそちらを向いた

そこには曹操が、四十万の軍を引き連れた、曹操と孫権が立っていた
「確かに劉備のした事は許される事では無いわ。でも、直接貴方達を苦しめたのは私達二人よ」
「そうね、貴方達の家族を殺したのは私達だわ」
そう言って二人は頭を下げた。
「許してくれとは言わないわ、でも、だからこそ私達はこれから償っていくつもり」
「私と曹操の二人で、貴方達を守っていくわ」

その言葉を聞き、民衆は納得した。
「わかりました、御二人に従います」
その言葉を聞き、華琳は劉備を水徹城に送った。

「劉備の身柄は私達が預かるわ、劉備には自分の罪を認め、どうするか自分で決めて貰うわ。皆、炊き出しをするから付いて来なさい」

華琳は立ち止まり宣言した
「これで、乱世は終わった。皆、戦乱は終わり、嘆き悲しむ時代は去った。この曹孟徳と盟友の孫仲謀が大陸の治世をここに誓おう」
「「「「「「「「「「おおっー」」」」」」」」」」


成都郊外

各地で歓声が挙がる中、如水は流れる川を見ながら一人佇んでいた
そこに華琳が声をかけた
「こんな所に居たのね」
「華琳か」
「いくのね」
「ああ、もう乱世は終わった、私は用無しだ」
「…そんなわけっ」
「ありがとう、君に逢えて私は幸せだった」
華琳の言葉を遮る様に如水は語った
「君の覇道を仲間と共に支えれた、君と共に過ごした時間とても楽しかった。とても心の躍る時間だった、感謝している」
「如水、私は…」
「散っていった者と共に、君の天下を何処かで見守ろう。そして願わくばこの平和を祈るとする」
そして最後に華琳に笑いかけ
「さようなら、我が愛しの可憐な覇者、実をいうと初めて会った時からずっと君に惹かれていたんだ」
そう言って如水は跡形も無く消えた。
それを見ていた、華琳は笑った。
「馬鹿…。最後に私も好きだったって言いそびれたじゃない」

川に流れる水をみながら華琳は涙を流し笑った。
 
 

 
後書き
これで、本当に終わります。

前回よりは上手く終わらせたと思います。