ねっけつ!パウマルタン百裂帳!!~時の刻みネギにゅう麵【完結】
プロローグ
プロローグ 2040年12月10日午前9時23分20秒(現地時間)
「さてと、どうしたものか」
2039年にタイムトラベルを成功させてから3年の月日が経過したある日のこと、アメリカ西部にある田舎町に住んでいる平凡な中年男性のアンドリュー・カーペンターはある問題について頭を悩ませていた。彼の名前はダニエル・ディケンズと言い歳は35歳になる独身の男性だ。普段は真面目に働いているごくごく普通の男なのだがこの日は珍しく仕事を休んで自宅でのんびりくつろいでいたのである。だが、それも午前中だけの出来事で午後になると自宅を出てとある場所へ向かおうとしていたところだったのだ。しかし、その前にやるべきことがある為まずはそれを片づけてしまおうと考えを巡らせていたのである。
というのも、最近近所にできた雑貨屋に行く用事ができたからだ。その店の名は、リバーサイドと言う名前で以前から存在自体は知っていたのだが一度も入ったことがなかった為どんな品揃えなのか気になったという理由から入ってみようと思ったわけである。ちなみに、この店を開店させた理由は店主の趣味が高じてのことだったようだ。もっとも、そのおかげで客入りはそれなりに良いらしく連日盛況だという話を聞いて羨ましく思っていたのはここだけの話であるが……
そんなことを考えているうちに目的地に到着したダニエルが店の中に入るとさっそく商品棚を一通り眺めて回りながら物色していくことにした。その際、店員に話しかけられると丁寧に応対しながら店内を見て回った後で買い物を済ませると帰宅することにしたのである。そして、帰宅した後は購入した商品の入ったビニール袋を片手に家に戻ると早速中を開けて中身を取り出してみることにした。すると、中には様々な種類の酒瓶が入っておりどれを見ても非常に興味深いものばかりだったので思わず目を輝かせてしまうほど興奮してしまったのである。特に気に入ったものについては箱ごと買うことにすると大事に抱え込みながら部屋の中に戻った彼はそのまま箱をテーブルの上に置くことにしたのだった。そして、ソファーに腰を下ろした彼は改めて買ったばかりのウイスキーの銘柄を確かめるべくラベルを眺めていると自然と笑みがこぼれてくることに気がついたのであった。どうやら、想像以上にお気に入りのものを発見したらしく購入を決めた理由を再確認することができたので満足していたのだ。しかしながら、
「いやいや、喜んでばかりはいられないな」
と独り言を口にした途端にハッとした表情になり、急に真剣な眼差しになる。なぜなら、この場にいるのが自分一人だけであるなら良かったのだが生憎そうではなかったからだ。実は、
「何をブツブツ言っているんだ?」
と後ろから声をかけられた為振り返るとそこにいた人物を見てダニエルは驚くことになった。なぜなら、その人物は今朝方知り合ったばかりのある人物だったからだ。
「君は確か……ミスター・クイルだったか?」
「そうだよ。それで、何で俺の名前を?ああ、自己紹介がまだだったな。俺の名前はクライブ・オーウェンス。ミスターでも構わないし、呼び捨てにしてもらってもかまわない。ただし、あまり年齢が離れているような奴に対してはさん付けするようにしているがね」
「なるほど、了解した。ところで、こんな場所で何をしているんだ?」
「あんたと同じようなもんだよ。ただ、俺の場合は自分の意思じゃないんだがな……」
「ということはつまり、誰かに無理やり連れてこられたのか?」
「まあ、そういうことになる。俺はあんたみたいに自由自在に過去に行けないしな……」
彼は俺が持っていたウイスキーの箱に目を向けると、それを指差して聞いてきたのだ。
「その箱はいったい何なんだ?」
俺は彼の質問に答えようとしたのだがその直前にあることを思い出すと、
「……そうだ!忘れるところだった」
と言いながら、手に持ったままのウイスキーの箱を再びテーブルの上に置き、中身を取り出そうとしたのだがその前に聞いておかなければならないことがあったので彼に質問をすることにした。
「一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」
そう言うと、
「何だい?何でも答えてやるぞ!」
と胸を張りながら返してきたのだ。どうやら質問には何でも答えてくれるらしいので、遠慮なく聞いてみることにした。その問いというのはもちろんあの事についてだった。というのも、俺は彼からとんでもない事実を知らされることになったからである。
「あんたが俺に声をかけてきた目的を教えてくれないか?それに、どうやって時間を遡行する術を身につけることができたのかについても教えてほしいんだが」
すぐに返事をすることはできなかった。
その質問に対して彼が答えたことといえば次のような内容だった。彼は元々アメリカのワシントンD.Cで考古学調査をしていた学者だったらしいのだが、ある時を境にして、
「何か嫌な予感がするんだよね……」
と思い始めた彼はそれ以降何かに怯えるように生活をしていたのだという。しかし、そんな生活を続けていたある日のこと、突然目の前に得体の知れない存在が現れたのだという。そして、その存在から自分は過去へ遡ることのできる力を授けられ、
「あなたにその力を与えましょう」
と言われたらしいのだ。その話を聞いた私は、そんなことがあり得るのかと疑いを抱いたのだが、実際に彼がそのような体験をしたのだから信じるしかないと考えた。とはいえ、
「それで、その過去へ戻る能力とやらはどこにあるんだい?」
「それがわからないんですよ。ですから、こうして探しているというわけでして」
「……つまり、今のところは何も手がかりがないということか」
私がそういうと彼は無言のまま首を縦に振ったのである。そして、しばらくすると彼は立ち上がってその場から離れようとした。
「おい、ちょっと待ってくれ!」
慌てて彼を呼び止めると不思議そうな顔でこちらを振り向いたのである。私は彼に、今しがた自分が思ったことを全て話すことにしたのだった。すると彼は、「なるほど、確かに言われてみればそうだよなぁ」と言って納得する様子を見せたのだ。どうやら、
「あんたは見かけによらず鋭いことを言うじゃないか」
と思っているようだ。ただ、
「だけどまあ……結局は同じことだよ」
と言うと続けて、次のように説明を始めた。
まず、この世界の人間は、誰一人としていないという点である。これについての理由は簡単だ。
「だってそうだろう?ここは、君のいた世界とは全く異なる世界なのだから」
彼はそう言って、
「だから当然、ここに君を知っている者など誰もいない」
と答えた。その返答に対して彼は、
(そりゃそうだ。いきなり知らない世界に飛ばされて、
「僕を知ってますか?」
って聞かれたらそう答えるに決まってる)
と考えていた。ただその一方で
(この人なら何かわかるかも……)
と考えていたのだが、それはまた別の話である。それからしばらくして今度は別の疑問が頭に浮かんできたので尋ねてみることにしたのである。
「……そうだ!もう一つ聞きたいことがあったんだが」
そう言いかけた途端に、彼は私の言葉を遮りこう言ったのである。
「おっと、悪いがそいつはまたの機会にしてもらえるか?」
「どうしてだ?」
「理由は単純だ。もうすぐ俺が待ち望んでいる瞬間が訪れるんだ。そうすりゃ、あんたは元の世界に帰れるようになるからさ」
「それは本当か?」
「嘘だと思うなら試してみるといい」
「わかった。約束するよ」
「ありがとう。それともう一つ頼みがあるんだが」
「何だい?」
「実はな……俺と手を組んで欲しいんだよ。もちろん、無理強いするつもりはないんだけどな」
彼はそう言うとニヤリと笑いながらこちらの様子を窺っていた。
「……俺に手伝えと言うのか?」
俺がそう聞くと彼は嬉しそうに何度も首を上下に動かしていたのである。その様子はどこか犬のような印象を受けたのは言うまでもない。すると、その反応を見た俺もつい笑みを浮かべてしまう。
「あんた……なかなか良い性格をしてるじゃないか」
そう言うとさらに笑みを深めることになった。ただでさえ笑っているように見える顔をさらに笑顔にしたから余計に表情を読みにくくなった気がするんだが、そんな事を考えていた矢先の事であった。突如として目の前にいる男が、
「俺と手を組むつもりはあるか?」
と、真剣な眼差しを向けて尋ねてきたのである。しかも、声音からも真剣さが伝わってくるほどだった為、すぐに返事をすることはできなかった。だが、少し間をあけた後で俺も彼に質問をすることにしたのである。
「……いくつか聞きたいことがあるんだが、答えてくれるかい?」
そう言うと彼は静かに首を縦に振ると質問を促してくれた。
「まず最初に、君はなぜそんな事を俺に聞いてきたんだ?」
「決まっているじゃないか。過去に行けるかどうか確かめるためだよ」
「過去に?なんでそんなことする必要があるんだ?」
「何でってそりゃあ……過去に戻れるなら戻りたいと思うのは当たり前のことだろう?」
俺はその言葉を聞いて呆れてしまった。まさかとは思っていたけど、
「過去に帰りたいだと?何を言っているんだ?」
「何を言っているんだと言われても困るな。俺はただ……」
「わかってるよ。でも、その前に俺の質問に答えてくれないか?」
「ああ、構わないよ」
「じゃあ、質問だ。過去に行くことができるのは、あんただけなのかい?」
「ああ、俺だけだ。残念なことにな……」
「本当に?」
「何度聞かれたとしても答えは変わらない」
「何度聞かれたとしても答えは変わらない」
「つまり、あんたは過去に行けるが、あんただけが過去に戻ることができるということなんだな?」
「ああ、その通りだ」
「なるほどね……」
俺は彼の話を黙って聞いていたのだが、彼の話に出てきたとある人物の名が出てきた時に、ふと疑問を抱くことになった。なので、その疑問について質問をすることにしてみた。
「……ちょっと待ってくれ。確か、過去へ遡ることができるのは、あんただけのはずだよな?」
「そのはずなんだが……何か気になることでもあるのか?」
「ああ、どうやらそうらしい」
「何があったんだ?」
「実は、今あんたが話してくれたことが関係してるんだ」
「どういうことだ?」
「あんたの話の中に出てきた人物が、俺にこの箱を渡した張本人なんだよ」
「なっ!?本当か?」
「もちろんだ。それにあんたは知っているはずだぞ?その人物は俺の名前を知っていたんだから」
「確かにそう言われればそうだな……。という事は、あんたの名前を教えてもらったっていうことか」
「そういうことになるな」
「それにしてもその男、何であんたのことを知ろうとしていたんだろうな?」
「わからない。それにあの男は、自分が未来から来たことを俺に知られるのを恐れてる様子でもあったんだ」
「なるほど。ところでその男の外見とか服装については何も覚えていないのか?」
「うーん。そうだな……黒いスーツ姿だったのは間違いないんだけど……顔に関しては全く思い出せない」
「おいおい。大丈夫かよ?」
「仕方ないだろう。突然目の前に現れたんだから」
「まぁいい。それはさておき……過去へ戻る方法について何か手がかりになりそうなものはあったか?」
「いや、今のところはまだ見つかっていない」
「そうか……それは良かった。もし見つかっていたとしたら大変だったところだったからな」
「そうかもしれない。ただ、あんたが言った通り、過去へ行くためには特別な装置が必要なのは確かみたいだ。それと、過去へと遡るために必要な能力についても教えてくれたんだが、それが何なのかが未だにわからない」
「どんな内容だったんだ?」
「何でも、この世界に存在する全ての物には、全て名前がついているらしいんだ。そして、それをすべて把握できれば、過去の出来事を正確に予測できるようになるらしいんだ」
「なるほどな。だが、あんたはその仕組みが分からなくて悩んでいるわけだ」
「そういうことさ」
「だけど、あんたならきっとできると思うぜ」
「本当か?」
「まあな。なんせ、この世界で一番の天才科学者だからな」
「……褒められるのは嬉しいんだけど、それはちょっと違うと思うんだよなぁ」
「え?だって、この世界のことに詳しいってことは、それだけ色々と発明ができるってことじゃないのか?」
「まあ確かにそう考えることもできるんだけど、実際には、その逆なんじゃないかって思うんだよね」
「その反対?」
「そう。だって考えてもみろよ。仮にこの世界で暮らしていけるとした場合、何かを作る必要なんかあると思うか?」
「……思わないな」
(この世界は科学技術の発達した世界であると聞いている。ならば、何かを作る必要はないんじゃないだろうか)
「だろう。だからこそ俺はこう思ったのさ。もしもこの世界に、俺たち以外の誰かが暮らしているとすれば、その誰かも同じように何らかの道具を必要としてるだろうってな」
「なるほど」
(彼は俺と同じような考え方をしているんだな)
俺はそう思いながらも彼の意見に同意した。
すると、彼は満足そうに笑みを浮かべながらこう続ける。
「だろ?」
どうやら、俺の反応を見て楽しんでいたようだ。
ただ、それも仕方がない事だと思う。なぜならば、今まで出会った人達の中では、俺の考え方に近い考えを持つ人が一人もいなかったのだから。ただ、それと同時に俺は、
「……ああ」
と答えると、彼に笑顔を返した。すると、そんな俺の表情を見た彼も嬉しそうに微笑んでくれたのであった。……
俺達はその後も会話を続けていたのだが、しばらく経つと彼はこんな提案をしてきたのである。
「……おっと、悪いがそいつはまたの機会にしてもらえるか?」
「どうしてだい?」
と聞くと彼はニヤリと笑いながらこちらの様子を窺っていた。……
俺は彼女の言葉に耳を傾けていた。すると彼女は最後にこんな質問をしたのだ。「ねぇ。もしかして過去に行けるって思ってる?」
「もちろんだよ」
と俺は即答すると彼女も嬉しそうに「ありがとう!」と言ってきたのである。……
「そう言えば……俺の名前はなんていうんだい?」
と尋ねると彼は、少し間を空けてから答えてくれた。
「あんたの名前は確か、……あれ、何て名前だったかな?」
「おいおい、自分の名前が思い出せないのか?」
ただ、その事を後悔することになるとは、
と聞くと彼は、恥ずかしそうに頭を掻き始めると苦笑いを浮かべるのである。
「……面目ない」
と彼は申し訳なさそうに謝ってきた。
「別に気にすることはないよ。俺も自分が誰なのかわからないくらいなんだからさ」
そう言って俺が笑うと彼は、どこか納得いかない様子であったがとりあえず俺の話に合わせてくれた。
「まあ……あんたがそう言うならそう言うことにしておくよ」
そんなやり取りをしていたら、
「お二人とも仲が良いんですね」
と言い、女性はクスッと笑ったのであった。……
それから俺達は三人で話を続けたのだが、その中で俺達二人が過去に行けるという話をすると、女性は驚いたような反応を見せた。その事に対し俺は不思議に思っていたのだが、
「あ!ごめんなさい。私の知り合いにも同じことを言っていた人がいましたので……」……ということらしい。その事に女性も気づいたようで、「あっ……」というような声を出した。だが、その直後、俺達が過去に行けるという事実に驚いてしまった事を反省するような素振りを見せてきたので、
「いえ、構いませんよ」
と言うことにした。……
ただ、その事を後悔することになるとは、この時の俺は予想していなかったのである。……
そして俺達の話を聞いた彼女は、しばらくの間は驚きを隠しきれない様子だったが、やがて落ち着きを取り戻すとその話を真剣な眼差しで聞き続けていた。
「なるほど。あなた方は過去に行くためにこの時代にやって来たということですか」
と彼女が確認してくると、俺は黙って首を縦に振ってから「はい」と答えた。すると、今度は彼女が口を開いた。
「それにしてもすごいですね。本当にそのようなことが本当にあるなんて信じられない話です」
「まぁ普通はそうでしょうね」
と俺が答えると、続けてこう言ったのである。
「私としては是非、その力を使って過去の世界を救ってほしいと思いますが、いかがでしょうか?あなたほどの力があればきっとできますよ」
と言ってきたので、思わず耳を疑ってしまったのだが、さらに続けてこんなことまで言ってきたのだ。それを聞いた瞬間、この人は頭がおかしいんじゃないかと思ってしまった。
なので、そのことを彼に伝えようとしたのだが、
「それは無理ですよ」
と言うと彼も納得したらしく、素直に諦めてくれたのだった。
その後しばらくしてから別れることになったのだが、その際に彼がこんなことを言い出したのである。それは次のような内容だった。曰く、俺には不思議な力があるみたいなんだよ。だからもしよかったらなんだけど、俺の力を試させてもらえないかなと思ったんだけどダメかな?
「それってどういう意味なんですか?」と聞いてみたら、それについて説明するにはちょっと時間がかかるんだけどいいかと言われたので俺は頷いたら彼は説明を始めてくれた。まず始めに彼はこう切り出した。実は俺ね……、相手の心の中が読めるみたいなんだよね?まぁ厳密に言えばちょっと違うんだけど……。例えばの話だけど、
教師は娘が切ったのか、髪型を問い詰めるような口調だった。
「君ってさ、実は超能力使えるよね?」って言ったら信じてくれるかって話だよ?うん。その通りなんだよなこれがさ……(笑)つまりそういうことなんだよな……。でもこれは決して冗談とかじゃないからな?本当だからな!?あー!何でそんな冷たい目してるんだ!!……えっ?だって今から言う事全部信じられないような話だし……仕方無いじゃん。まぁいいや、とりあえず僕の身の上話から聞いてくれよ……あっいやいやその前にまず俺の自己紹介からだな。えーと俺は如月真琴って言います。職業?うーん大学生かな。そうそう大学の入学式の時にね、いきなり目の前に黒髪ロングの少女が現れたんだよ!もうそれはそれは可愛くてさ〜!!しかも胸も大きいし顔立ちも良い!まさに理想の女性そのものって感じだったんだけどその子が僕を見て開口一番「私と契約して魔法少女になってほしいんです」なんて言ってきた訳ですよ!!!どう思う?!どうする?!これ!!こんな事ある?!絶対何かあるでしょこれ!と思ったんだけどさぁ。その時僕はこの少女の事を信じた訳よ!なんかすげぇ可愛い子だしさ。そんでもってよく分からないけど、その子は突然光に包まれて消えたわけ。それから一週間後かな?僕にも同じような現象が起こったんですよ!そしたらまた同じ少女が目の前に現れて、契約した時と同じように「魔法少女になりませんか?」なんて言ってくるわけ!そんなの即答するじゃん!?普通!だから当然なります!と返したわけなんだけどね、その後その女の子に連れて行かれたのは廃墟となったビルの中だったんだよねー……。それで色々説明されたあと、「これからあなたの魔法を使いこなさなければいけないからとりあえず戦ってみて!」と言われまして、まあ戦ったんですよ。でも全然勝てなくて結局負けたわけですわ!すると突然少女は言ったのです!「貴方は弱い……もっと強くならなくちゃダメ」とか言い出したんです!んで僕が強くなるために特訓してくれ!と言う前に勝手にどこか行っちゃったんですわ!全く何なんですかあの子は!!!
「さっきの話は本当なのか?その少女とはまさか君の事じゃ無いだろうな?」
「えっ!?違うよ!!僕も最初は夢だと思ったけど、現実なんだ!!」
僕が必死に訴えると、彼は腕を組み何かを考え始めた。しばらく沈黙が続いたあと彼が再び話し始めた。
「実は私はこの前、自分の意思に反して体が動いてしまっていた事があるのだ。それは君も同じではないかと思ってな……」…………ん?どういう事?僕の場合完全に意識はあるし、体を動かすこともできないぞ?むしろ今こうして話してるだけでかなり奇跡的なレベルだし、そもそも喋る事さえ出来ないんだぜ?
「そうだ!君はいつから動けるようになったのかを教えてくれないか!?頼む!」
「えっ、あっうん分かった。僕は気づいたら動けたけど多分生まれた時だと思うよ」
「本当か!じゃあ、さっそく試しに死んでくれないか?」
いきなりどこからともなくバスタードソードを取り出した。本物だ。鋭い。研ぎ澄まされている。うっかり触れば指が取れそうだ。
「えーっと、あの、すみません。この剣を返して欲しいんですけど」俺はそう頼んでみた。だが相手は無言のまま俺に歩み寄り、いきなり俺の頭上から斬り下ろしてきた。もちろん本気だ。俺は慌てて身を屈めた。
危ねえ。
「ほう、かわすか。やるじゃないか」男はニヤリと笑った。そして二撃めが来る。これもギリギリで避けた。三発めの振りおろしを転がって避けることができたが、四発目の突きが俺の右脇腹をかすめて服を破き、その下の肌に傷をつけた。その瞬間、俺の殺意はマックスに達した。「死ねや、ゴルァ」
俺は近くにあったスチール机をぶん投げた。グシャッと嫌な音がして相手の頭が潰れた。しかしその瞬間とんでもない事が起きた。
奴の死体もろとも部屋がぐにゃっと曲がった。気づけば俺はどこかの葬儀場にいた。そして信じられないことに俺の腕に手錠が嵌っていた。遺族の嗚咽が聞こえる。
「謝罪は受け入れてもらえなかったか。そろそろ行こうか」
「待ってください刑事さん」
「何だ」
「最後に家族の顔を一目だけ見たいんですが駄目でしょうか」
「……駄目だね」
刑事は俺の腕を引っ張って出口まで連れて行く。
「おいっ、待ってくれ! いやだっ、嫌だああああぁぁ!」
教師は娘が切ったのか、髪型を問い詰めるような口調だった。
「誰のものだろ。その人のものだ。だから別に、」
「なら、自分のものだから別に」
娘は母親に言い当てられたように、少し怒ったような口調で言うと、母親は「いや、それはでも」と言葉を濁したが、娘の言葉で自分のものではないと言われ、「……ありがとうございます」と礼を述べた。
「お姉さん、もういいから、」母親が娘に話しかける。「ありがとう」
「もう、いいんですよね」
父親が母親に言うが、娘はそちらにいかない。
「うん、もう、いい。ちょっと、いいから、」
父親が母親に言うが、娘はそちらにいかない。視線を合わせず、母親の手から、自身の手を取る。手を握られて驚いた父親が、娘の手を見て、なんだ、と言っているが、娘は無言で、手を握られていて。
何だ、と父親が父親を見ると、父親はあっけなく手を取られ、「いたい」と言って、娘を見た。母は、母の手に、自分の手の平を当てる。
「いいから、」そう父親は言うが、娘は父親の手を取り、自分の手の平を、母親の手の平に合わせる。
「あ、いたい、」
父親は母親の手に手を当てれば、自分の手に当てることが出来そうだと言うほど、手に力が入る。父親の手から、自分の手を引き寄せ、母親の手に当てた後は、父親が母親の手から受けたせいで、母親が父親の手から受けたため、握る手が強くなる。力いっぱい引き寄せられる自分の手に、母親が自分の手を当てれば、強くなる。強くなった手に、自分が乗っていた手を、娘は、引き寄せれた。
「……ありがとう」と父親は呟いた。
娘は母親の手を両手で掴み、「……ありがとう」と言って、父親から、母親へ視線を移す。
「あなた、、私の……せいで」
「なんで、、、あんな言い方するの」
「言い方? ……あんな言い方して、どうする気だったの?」
「……」
娘にとって、どういうものか分からないまま、聞きたくないと思っていても、言え、と言っている母親からしてみたら、何か言うかもしれないという、少し、恐くなってきてしまった。
「ねぇ、聞いてる?」と母親は尋ねるが、娘は「はい」と返答をするだけだった。
「……」母親は黙っている娘を見て、怒るつもりはないようで、「そう。……まぁ、いいけど。……それで、あんまり、あんなに怒る事はないの?」
「いや。……何となくよ、、」
「……」
「あの、、言い方が」
母親はそれ以上は言わず、娘の部屋に戻って行った。
母親も後に続き、部屋を出ると、「あんまり怒るなって」と、声が掛かった。
「……」娘も黙っている。
母親は娘をちらりと見てから言った。「私には、あれくらいしか思いつかなかったわ。それなのに、そんな言い方って……。それに、何て言って欲しかったの?」
娘は何も答えない。ただ俯いているだけだ。
母親は溜息を吐いて、「分かったから。ごめんなさいね」と言い、部屋に戻ろうとする。
娘は母親の後ろ姿を見ているだけで、何もしない。
「じゃあ、明日ね」と母親は娘に言い残し、部屋に入って行く。
部屋の中に入った母親は、扉越しに聞こえる娘の声を聞いてしまう。
「ううん。……別に。……気にしないで。もう寝るだけなんだから、……お休みなさい」と聞こえた。
翌朝、娘はいつも通りに起き、朝食の準備をし、
「お母さん、朝だよ」と母親を起こしに行く。
母親は目を覚まし、身体を起こすが、すぐに横になる。
「どうしたの?」と娘が尋ねても、母親は何も言わずに、また横になった。
母親は布団の中で考えた。
(昨日、
「あんな言い方って……」と言っていたけど、何に対してかしら?……でも、何だかんだで、謝った方がいいかしら?)と思いながら、寝返りを打つ。
しかし、考え直したようで、そのまま、二度寝してしまった。
それから一時間後、娘が起きてきて、
「おはようございます」と言うと、母親が目を開けて、上半身を起こした。
そして、「おはよう」と言った。
母親はベッドから出て、洗面所に行き、顔を洗い始めた。
その様子を見た娘は、台所へ行き、朝食を作り始める。
しばらくすると、母親が戻って来て、
「いただきます」と食事を始めた。
「いただきます」娘も同じように言い、食べ始める。
娘は朝食を食べながら、ふと、昨夜の事を思い出してしまう。
母親に言われていた言葉を思い出してしまい、胸が痛む。
(私は悪い子なんだわ)そう思うと悲しくなってしまうが、涙だけは我慢していた。
「今日は何時に帰るの?」
「……お昼前ぐらいに帰ります」
「わかった」
娘は食事を終えると、身支度をして家を出て行き、その途中でコンビニに寄って弁当を買い、学校へ行く。
授業が始まると、教室に教師が入って来て、授業が始まるが、誰も話さずに、
「えーっ、であるからして……」
教師の話を聞く生徒達の中に、娘もいた。
休み時間になり、女子生徒達が話している内容を聞いていると、ある男子生徒達の話が聞こえてきた。
「おい!知ってるか? あいつの事!」
「え!?なになに!?」
一人の女子が聞くと、
「お前、あいつとは話さない方が良いぜ」と言われた少女は首を傾げた。
「何で?」
「あいつはなぁ、俺の母さんの妹の娘さんなんだけどな、そいつの家が金持ちらしいぞ。しかも、あいつが住んでたとこなんて豪邸だぜ!」
(私ったら、そんな風に言われてるんだ……。
少女の声は小さいので、男子生徒達には聞こえない。
「そうなんだ。知らなかった……」少女の声は小さいので、男子生徒達には聞こえない。「でもさ、あの子だって、私達と同じ高校生じゃん。なんでそんなこと分かるのよ?」もう一人の女子生徒が言うが、
「いや!俺もそう思って、調べたんだよ。そしたらよぉ、やっぱり凄い家だったよ。だから、絶対に関わらない方が……」と言い掛けた男子生徒を遮った生徒がいた。
「うるせぇよ」と言う声に遮られてしまった男子が言った生徒は誰なのか分からないようだ。
「えっ? 何が?」聞き直す男子生徒に答えたのは、やはりというべきか彼だった。「お前らが関わるかどうかの話だろ?」彼はそう言うと、教室を出て行った。残された生徒の一人が聞く。
「どういうことなんだよ」すると彼が答えてくれた。
「どういう事って、お前も言ってたじゃないか。俺達より裕福な生活をしてるってことだろ?」と当たり前という顔で答える。「それが、どうしたんだ?」と尋ねる彼に、女子生徒が詰め寄った。「だからさ、なんでそんな事が言えるのかって事でしょ?」と言うと、彼も分かったようで、説明することにしたようだ。
「……まぁ、それは、あれだ。あのお嬢様はな、親がいないらしいからな。一人で暮らしてるんだって」と答える。しかし彼女は不満そうに言う。
「へぇーそうなんだ。でもさ、それと、あんたが言ってることって関係無いんじゃないの?」彼の態度が変わったのが分かったらしく、口調を変えずに続ける彼女だが、彼女も少し不安そうな様子が伺える。
そんな彼女達を見て言う彼に続けて聞いた。
「……で、他には何か分かったのかい?」
「あーっ、あとはだなぁ……確か、お金持ちのお祖母さんの家に住んでるとかだったな。後は……」と言うと、急に口を閉ざした彼に女子生徒が尋ねた。「他に何かあるの?」
「あぁ~そうだなぁ……あ!そう言えば、その親戚のお婆さんが死んでるって話もあったよな」彼の言葉を聞き、一人が言った。「ねぇ、それ絶対嘘でしょ?あんた騙されてるよ……」と他の生徒も同意し始めた時、チャイムが鳴った。皆は自分の席に戻り始めた。彼も戻ろうとすると声を掛けられる。振り返ると彼女が立っていた。
「……さっきはありがとうね。なんかお礼した方が良いかな……?」と聞かれてしまうが、慌てて言う彼女に笑顔で言った。「いや!いいっていいって!俺は別に何もしてないからさ!じゃ!」そう言い、急いで席に座った。彼女の方は少しの間見つめていたようだが、チャイムが鳴り始めると、急いで席に着いた。
昼休みになるといつものように娘は食堂へ向かった。いつもは弁当なのだが、この日だけは、昼食代を渡されていたのだ。と言っても、三千円も渡されたのだが。(これじゃあお弁当作れないじゃない)と思い、娘は思ったことを呟いたが、直ぐにやめた。
娘は財布の中を確認しながら歩いていると誰かにぶつかってしまった。顔を上げるとそこには今朝見た顔が……。
(どうしよう……)と思っているうちに向こうから話しかけてきた。
「すみません……」
と言われてしまい、少し驚きながらも謝る娘に彼は更に謝った。そして彼は娘の持っていた財布を見て言った。
「あっ!すみません!!僕のせいですね!!」と言いながら、彼の手が伸びるのを見た娘はとっさに身構えたが、その手は彼の頭の上に乗せられた。キョトンとする娘に対し、笑いながら彼が言う。「あははっ!大丈夫ですよ。お金を取って食べようなんて思っていませんから」そう言われた瞬間、安心と共に恥ずかしさを感じた娘の顔は赤く染まった。それを見た彼は慌てて謝りながら言った。
「ごめんなさいね!別にそういうつもりでは無かったんですけど、……あの……すみませんでした」
頭を下げる彼を前にした娘は慌てるばかりでどうしていいのか分からなかったため咄嗟に口走ってしまった。
「べ、別に大丈夫です!」そう言った瞬間だった。
彼の頭がゆっくりと上がるのを見て、ホッとしていた娘の視界にある物が映った途端固まってしまう。
なんと彼の頭にあった手が動き出し始めようとしていたからだ。(まずいわ!このままだと叩かれる!)そう思い目を閉じるも一向に痛みがやって来ない。不思議に思い目を開けるとそこには手が止められている姿があった。驚いて見てみると、いつの間にか横にいる男性の手が止めていたのだった。「何をしているんですか?」と聞いた彼に男が言う。「何って、この子の頭を触ろうとしただけだよ?何か問題があるかい?」と返す男に娘が話しかける。
「あ、あの!私は気にしていませんので!頭をあげてください!!」
「あ、あの!私は気にしていませんので!頭をあげてください!!」と言った娘に対し男は手を放し言った。「すまないねお嬢さん方。ではまた今度会った時にでも」そう言って去って行ってしまった男の後ろ姿を見ていると不意に名前を呼ばれる。呼ばれた方へ振り向くと先程止めた男性がいた。「君もごめんね。でも良かったぁ。間に合って。もし君が殴られたりしたらどうしようかと思っていたんだ」と話す男性は微笑みながら娘を見てるが何故か目は笑っていなかった。
その様子に恐怖を覚えた娘は思わず後退りしてしまったが男性はそれを見てさらに微笑むと娘に話し掛けてきた。
「ねぇ君名前はなんて言うんだい?良かったら一緒にお昼食べない?」と言う男性の誘いに対して断る理由もなく娘は了承したのだが次の瞬間驚くことになった。何とその男は娘を連れて歩き出すと人気のない場所へ連れて行ったのである。何故こんな事になったのか分からないまま娘は怯えていると突然背後から抱きつかれたのだ。驚いた娘は思わず叫んでしまいそうになったが口元を押さえられ叫べなくなってしまった。そうしている間に男の腕はスカートの中に伸びていったその時だった後ろから男性の声が聞こえたのは。その声に反応した娘は思わず振り返ってしまうとそこには先程の男性が立っていたのだ。
「こんなところで何をしてるんですか?」と言う質問に対して男性はこう答えたらしい。「いや〜可愛い子を見つけたんでちょっとお茶しないかなぁと思って声を掛けたんだけど断られちゃってさ~」と言って笑う男性だったがそれを遮って今度は私が口を開いた。「それって私のことですか?」それを聞いた男性は一瞬驚いていたがすぐに笑顔に戻るとこう言ったのだ。「そうだよ♪どう?僕とお茶しない?」と言われた私は思わず首を横に振ってしまったのだが、この行動によって事態が悪化してしまった事は言うまでもないだろう。
「何で駄目なんだい?」と聞かれた私は正直に答えた。「だって知らない人と一緒に行くだなんて嫌ですから」と答えた私に怒ったらしいその人は私の腕を強引に引っ張ると歩き出したのだ。そして連れて来られたのは人気の無い路地裏だったのだが、そこで私を地面に押し倒すと服を脱がそうとしてきた。
「やめて下さい!」と言ったものの聞いてくれずとうとう下着だけになってしまった私を見た男の人は言った。「大丈夫だって♪優しくしてあげるからさ♪」その言葉を聞いた時、私はこの人について行ってはいけないと思ったので必死に抵抗したのだが力の差がありすぎてどうすることも出来なかったので仕方なく諦めることにしたのだが、
「それじゃいただきま~す♪」と言われて服を破かれた時は流石に私も怒りが込み上げてきて叫んだのだがその声は誰にも届かなかったようだ。
それからしばらくしてやっと解放された私は急いでその場から逃げ出したのだが途中で転んでしまった際に足を挫いてしまったのだ。それでもなんとか家に辿り着いた私は部屋に閉じ籠ると泣いてしまった。
「うっ……ぐすっ……ひっく……」暫くして落ち着いた頃になってようやく冷静になれた気がした私はこれからの事を考えた結果ある決断をしたのだった。それは学校を辞めることである。理由は簡単でこれ以上あんな思いをしたくないからである。それに私には家族と呼べる人がいないからである。
「さようなら……」誰もいない部屋で一人呟くと荷物をまとめ始めた私は学校へ行く準備を済ませて家を出ると学校へ向かっだが当然の事ながら学校には行かなかった。なぜならもう辞めることが決まっていたからだ。翌日学校へ行った私は担任の先生に事情を話したところ先生は何も言わずに承諾してくれたのでホッとしたのだが問題はここからである。
「それで君は今後どうするつもりだい?」と聞かれて困ってしまった私はとりあえず家に戻ることにしたのだが帰り道の途中で買い物を忘れていたことを思い出したのでスーパーに立ち寄ることにしたのだがここで問題が起きた。それは万引きを疑われてしまったことである。それも何度もだ。最初は店員だけだったが次第に警備員まで出てくる始末だ。
「違うんです!」と言っても信じてもらえず途方に暮れていた時だった。そこへ現れたのは例の男子生徒達だった。男子生徒達は私を助けてくれただけでなく犯人扱いされたことに腹を立てたのか、その人達を追い払ってくれただけではなく警察を呼ぶように言ってくれたおかげで助かったのだが、男子生徒達が帰って行った後、
「ありがとう……」と言うと、一人の生徒が、
「気にしないでくれ」と言った後、続けて言われた言葉に私は驚きを隠せなかった。何故なら、彼はこう言ったのだから……。
「困っている女の子を助けるのは当然だろ?」と……。その言葉に嬉しくなった私は彼にお礼として食事を提供することを約束したのでした……。
「それなら良いのですが……」
「おーい!早くしろよー!」遠くから呼ぶ声が聞こえる中、僕は声の主に向かって叫び返した。
「待ってよー!今行くよー!」すると向こうの方から声が聞こえてきた。
「全く遅いぞお前!!何やってんだよ!?」と言っている彼に対して僕は言い訳をするように言った。
「しょうがないじゃんか~!急に呼び出したのはそっちでしょ!?それなのにこんなに待たせるなんて酷いよ~!」そんな僕の言葉に呆れているのか大きな溜め息が聞こえたかと思うと、彼が言ってきた。
「はぁ~まぁいいや、さっさと行くぞ!」そう言って歩き始める彼の背中を見ながら思ったことはただ一つだった。
(まぁいいか)そう思った僕は彼の後を追うようにして歩き始めた。そして歩きながら考えていたことがあったのだが、それは彼女の事であった。(彼女はどうしているのだろうか……?元気にしているのだろうか?)そんな事を考えているうちにふと我に返った時には目の前に彼女がいたのである。しかも至近距離だったのでビックリしていると彼女が話しかけてきた。「あのぉ……どうかしましたか?」と言われ慌てて何でもないと答えると、彼女は微笑んだ後に言った。「それなら良いのですが……」そう言った彼女の表情はとても可愛かったのだが、それとは裏腹に僕には疑問が生まれていたのだが、その答えは彼女が持っていた物を見て理解したのだ。というのもその中身というのが僕がよく食べているものだったからで、それを見た瞬間思わず口に出してしまった程だ。「えっ?これって……」それに対して彼女も頷いて答えてくれる。「はい!そうですけど何か……?」首を傾げながら聞いてきた彼女に僕は正直に話した。「いや……だってこれ君のお弁当じゃないの?」という僕の言葉に対し、一瞬呆けた表情をしていたが、直ぐに我に返ると否定してくる彼女なのだが、どう見ても僕の為に作ったとしか思えない程の量の食材や料理がそこにはあって僕は心の中で呟いた。
「(どうしてここまでしてくれるんだろう?)」そう思っていた時、不意に聞こえてきた言葉で現実に戻される事となった僕は彼女の顔を見ると、恥ずかしそうに頬を赤らめている姿を見た途端ドキッとしてしまうのだがすぐに冷静になることが出来たので良かったのだが今度は別の意味で落ち着かなくなっていた為どうしようかと考えていたら彼女に話しかけられた。
「あのっ!良かったら食べてくれませんか?お口に合うかどうか分からないですけど……」そう言われて差し出されたお弁当を受け取るとお礼を言いながら早速食べてみる事にした。一口食べる度に彼女の優しさを感じながら味わっているとあっという間に無くなってしまい名残惜しさを感じているところにまた声が掛かる。「美味しかったですか?」と聞かれた瞬間、
「うん!!凄く美味しいよ!!」と元気よく答えると、それを聞いた彼女の顔には笑顔が浮かんでいたのを見て嬉しくなる反面照れ臭くなってしまっていたのだが次の瞬間、彼女はとんでもない事を言い出したのだ。
その言葉を聞いて唖然とするしか無かった僕はただただ見ている事しか出来なかったのは言うまでもなく、その間に彼女は話を進めていくのだが、
「あっ、そうだ♪まだ残っているんで良かったらもっと食べますか?」と言って来たが、正直これ以上食べたら太ると思い断ろうと思っていたのだが、
「遠慮しないでいいですよ♪」と言いながら近づいて来る彼女を見ていたその時だった……
「あ~ん」突然彼女が口を開けたのだ。
「ちょっ!?な、何してるの!?」と聞くと、キョトンとした顔でこう言って来たのだ。「え?だって食べさせてあげようと思って……」それを聞いた僕は全力で拒否しようとしたのだが結局流されてしまいされるがままになっていたのだが、途中から抵抗しても無駄だという事に気付いたので諦めて従う事にしていた。
「どうですか?私の手作りのお味は?」そう聞かれ僕は素直に答える。「美味しいです……」それを聞いた彼女は満足そうに微笑んでいたのだが、その顔を見た瞬間、
「(可愛いなぁ)」と思った直後だった。
チュッ♪ キスをされてしまった。しかも唇同士が触れるようなものではなくしっかりと舌を絡ませるディープキスだったため余計に恥ずかしくなった僕は何とか離れようとしたものの彼女の力が予想以上に強かったらしく全く動けずにいたのだ。そのまましばらくの間貪られていた僕は解放される頃には完全に力が抜けてしまっていた。
「ふふっ、これで貴方は私から離れられないね♡」と言う彼女を前に何も言えずにただ見ている事しか出来ない僕に彼女は再び顔を近づけてくると、今度は耳元で囁いた。
「……ねぇ、もう一度してもいいよね?」そう言われてしまった僕は拒むことが出来なかった。
「うん……」と返事をすると、
「ありがとう♪じゃあいくよ?」
「ありがとう♪じゃあいくよ?」と言った後でまたキスをしてきたのだが、先程とは違い軽く触れるだけのものだったので少し物足りなく感じてしまったのだが、そんな事はお構いなしといった様子で舌を入れてきたのだ。その瞬間口の中に広がる甘い味がしたかと思えば意識が遠退いていく感覚に陥りながらも、
「ぷはっ」と言って離れる彼女の顔を見ていると、目が合ったので目を逸らす事が出来なくなってしまったがそこでふと気が付くといつの間にか押し倒されていた僕は慌てて抵抗するのだがびくともしない上に段々と近づいてくる彼女の顔から目が離せなくなってしまっている自分がいることに戸惑いつつも覚悟を決めた時、急に目の前が真っ暗になったことで驚いていると、
「あれ?どうされたんですか?」と後ろから声を掛けられたので振り向くとそこにいたのは同じクラスの女子生徒達でどうやら忘れ物を取りに来ていたようだった。
「あぁ、実はこの子がね……」と言うと、何があったのかを説明することになった。話を聞いた彼女達は、何故か嬉しそうな表情を浮かべていたので不思議に思っていると、女子生徒の一人が教えてくれた。「貴方知らないのですか?この学校では知らない人はいないくらい有名な話ですよ?」と言われてしまった僕は気になったので詳しく教えて欲しいと頼むと、快く引き受けてくれたので感謝の言葉を伝えると彼女達の口から語られた話は衝撃的な内容ばかりだった。その話とは、なんと僕のファンクラブが出来ていたというのである。
「嘘だろ……」あまりのことに驚きを隠せないでいたがそれでも信じられないという気持ちが強くて信じようとしなかったのだが、そんな僕を置き去りにしてどんどん話が進んでいくのを見ていることしか出来ないまま話を聞いているとある人物が現れたことにより事態は大きく動いた。その人物は僕と付き合っていると噂になっている女生徒だったのだが、
「あら、ここにいたのですね?もう帰りますわよ?」と言いながら近寄ってくる彼女の姿を見て嫌な予感を感じた僕が咄嗟に逃げようとするよりも早く捕まえられてしまった後強引に引きずられるようにしてその場を後にすることになった。
「それではご機嫌よう」その言葉を残して去って行った彼女と別れた僕は自宅に戻ると真っ先にお風呂に入り汚れを落とすことにしたのだった……
翌朝目を覚ました俺はいつも通り身支度を済ませてから朝食を取ると家を出た。それから学校に着くまでの間誰とも会わなかったことが不思議だったけれど特に気にすることなく教室へ向かうことにする。
「おはよう!」そう言いながら勢いよく扉を開けて入ったところクラスメイト全員から挨拶されたのでびっくりしたものの俺もそれに答えたところで違和感を覚えてしまう。何故なら昨日までの彼らならこんな反応はしなかったからである。
(何故なんだ?何かあったのか……?)
「どうしたの?そんな難しい顔して?」不意に話しかけられたのでそちらを見ると例の女子生徒がいた為驚いた俺はつい質問してしまったのだ。「お前……何でここに……?」それに対して返ってきた言葉は、
「何言ってるのよ?私は最初からここの生徒よ?」というものだったが信じられなかった俺がさらに追及しようと口を開いた所で、
「こらっ!何をしているんだお前は!!もうすぐ授業が始まるというのに何をのろのろしているんだ!!」と怒鳴る教師が現れてしまった為に中断せざるを得なかった。だがしかしその後もずっと俺に対する態度を変えることなく接してきたせいで俺のイライラは限界に達しかけていたのだ。なので思い切って話しかけてみることにしたのだが……
「なぁ?いい加減にしろよな?いつまでこんな事を続けるつもりなんだよ?」すると彼女は微笑みながらこう言ってきたのである。
「それはどういう意味かしら?」その言葉に怒りを覚えた俺はついに我慢出来なくなったので彼女に掴みかかると怒鳴った。
「ふざけんなよっ!俺はお前なんかと付き合う気なんて無いんだよ!!それなのに勝手に恋人面しやがって……!迷惑だって言ってるだろっ!?いいからとっとと離れろよクソビッチがっ!」それを聞いた彼女は悲しそうな表情を浮かべるだけで何も言わずに黙っていたかと思うと突然笑い始めたのだ……。それを見た俺は思わず固まってしまうのだが彼女は何事も無かったかのように話しかけてきたのでますます混乱していると彼女の方から提案を持ちかけられた。その内容を聞いた俺は悩んだ末にそれを承諾することにしたのだった……。
放課後になると急いで帰宅した俺は制服を脱ぐなりすぐに風呂に入った。
放課後になると急いで帰宅した俺は制服を脱ぐなりすぐに風呂に入った。その後夕食を食べた後は勉強をして寝る準備を終えた後にベッドへ潜り込むと目を閉じる。そして眠りについた頃を見計らってやって来た彼女が声を掛けてきたので目を開けるとそこには予想通りの人物が立っていた。「こんばんは♡夜這いに来たわ♡」そう言って微笑む彼女の姿を見た俺は呆れながら言う。
「はぁ……またかよ。何度言えば分かるんだ?俺にはそういう趣味はないって言っているじゃないか……。」そう言うと彼女は怒ったような口調で反論してくる。
「そんなの関係ないじゃない!!私がしたいんだから良いでしょ!?」
と言って近付いてくると俺に抱きついて来た為引き剥がそうとするも力が強く上手くいかない……それどころかそのまま服を脱がされそうになった俺は必死に抵抗するもののそれも無駄に終わり遂に全裸にされてしまった……(くっそ!こうなったら魔法で反撃してやる!!)
そう思った瞬間彼女は突然動きを止めるとその場に倒れ込んだのだ……。一体何が起こったのか分からなかった俺は恐る恐る声を掛けるが返事は返ってこなかった……代わりに聞こえてきたのはすすり泣く声だったのだがその理由はすぐに判明した……なんと死んでいたのである……しかもその顔は幸せそうな笑顔を浮かべていたのだ……それを見てしまった俺はショックを受けると共に吐き気に襲われてしまいトイレまで走るとその中を覗くようにして嘔吐した……しばらくして落ち着いてきた頃にふと我に返ると今度は寒気を覚えてしまう……それはそうだろう……目の前で人が一人死んでいるのだから冷静でいられる方がおかしいというものである。しばらく放心状態だったのだがいつまでもこうしていても仕方がないと思い部屋に戻ったのだがそこに彼女がいないことに気付いた途端不安感に襲われた為必死になって探したのだがどこにも見当たらなかったのだ……途方に暮れていると突然声が聞こえたような気がしたので振り返るとそこには彼女の姿があった……しかも裸のまま立っているではないか!驚いて声を上げようとしたところで彼女は再び動き出したのだが次の瞬間には俺に襲い掛かって来た……その勢いに負けてしまい倒れ込んでしまうとそのまま馬乗りになって押さえ込まれた状態でキスをされてしまったのだが、その時に見た彼女の目は正気ではなく明らかに異常者そのものといった雰囲気を漂わせていたこともあり恐怖を感じた俺はなんとか振り解こうとするも全く身動きが取れず、その間に彼女はどんどん体を押し付けて来るので苦しくなって来て堪らず口を開いて酸素を取り入れようとしてしまったところを狙われてしまったようで口の中に舌をねじ込まれてしまった挙句口内を舐め回されてしまう始末であった……(くそっ!!気持ち悪いんだよ!さっさと離れやがれ!)と思っている間にも容赦なく続けられる行為にとうとう耐えられなくなり、俺は気絶してしまうのだがそれでもまだ解放されなかったらしく目を覚ますと同時に続きを始められてしまうという最悪な展開に見舞われてしまうことになるのでした……(もう嫌だっ!!誰か助けてくれぇええええっ!!)
そんな思いも虚しく結局一晩中続けられた結果、翌朝には『女子高生』は『女』になっていたのである。そして翌日から少女を目にした者は誰一人いない。
その晩、少年が家に帰ってくるなり「どうするんだよ」と声をかけてきたが、「何が?」と少年は聞き返すと、
「何って、お前……。……あの子の目、見た事あるのかよ? あいつの目は違うぞ。あれはな、俺らとは違うんだよ。大人なんだ」
少女は聞いていて、「……違うって何が違うの?」と言うと、別の少女が答える。
「だって、……あの子って、時々凄く大人びて見える時があるし……。ほらっ!なんかさぁ……なんて言ったら良いのか分かんないんだけど、何か、……ね!」別の子が言っていて、もう一人の女子生徒が、
「え~!?」と言い、「それにしても、あいつ、また今日もいないな。……あいつの家って、結構大変なんかな」と言った言葉を聞いた瞬間、少女の顔色が変わった。少女は教室から出て行き、階段を上る。三階に行く途中、足を止めずにそのまま四階に上がり、階段近くの扉から外に出た。そして、校舎の裏にある焼却炉まで歩いて行くと、少女は足を止めた。そこには、一人の少年が座っていたからだ。
少女に気付いた少年は立ち上がり、「……あ、こんにちは。……えっと……」と言うと、少女は何かを言いかけようとして口を開きかけた時、友人に呼ばれた少年はその場を離れてしまう。
教室から見える中庭に、一人の女生徒が見えた。(ああいう人もいるし……。きっと大丈夫)少女はその女生徒に目を向けていたが、すぐに視線を戻した。
午後の授業が終わり、少女が帰りの準備をしていると、「ねぇ、ちょっと」と声をかけられる。
午後の授業が終わり、少女が帰りの準備をしていると、「ねぇ、ちょっと」と声をかけられる。
振り向くとそこには女子生徒がいた。彼女は先日一緒に食事をした友人の一人だ。少女は彼女と一緒に教室を出た。
そして、近くのファミレスに入って、向かい合うように座ると、彼女が話しかけてくる。
「ねぇ、あの時言った事、嘘だったの?」と聞いてくるので、自分は首を振る。彼女は続ける。
「じゃあ何で?」……どうすれば良かったのか分からないからです、とは答えられない。彼女は言葉を続ける。
「あなたが何を思ってるのか、正直言って、私には全然分からない」……分かってほしいと思ったことはない。自分だって、人の考えている事が全部分かるわけではないのだ。
それに、自分が思っている事なんて、きっと誰にも分からないだろう。だから自分は黙っていたのだが、それを伝える方法も、分からなかった。
ただ、自分が彼女を傷つけてしまった事は分かった。だから謝ろうと思って口を開いたが、何も言えなかった。
「……何が言いたいの?」……ごめんなさい。
「それで、許してくれるとでも思ったの?」……はい。
「ふざけないでよ」……本当に、すみませんでした。
「何でよ」
……もう、分かりません。
「ふざけんなよ」……本当に、申し訳ありませんでした。
「何なのよ」……自分でもよく分かりません。
「意味わかんない」……そうですね。
「あんたのせいよ」……そうかもしれません。「ふざけんなよ」……はい。
「何なのよ」……
「もういい」……
「ふざけんなよ」……
「いい加減にしてよ」……
「うるさいんだよ」……
「いい加減にしろよ」……
「お前のせいで」
……
「死ねよ」……
「あんたなんか死ねばいいのよ」………………。…………私、死にます。
そう言って席を立った彼女を、彼は呼び止めなかった。
それから一週間程して、彼女は死んだ。
遺書には、こう書かれていたそうだ。「私は最低の人間です。私は友達を殺しました。私は自殺します。今までありがとうございました」
この話をしてくれた人の名前は知らない。というか、誰も知らなかった。何故ならその人は、自分の事を話した後すぐに死んでしまったかららしい。
ある日突然現れて、いつの間にかいなくなっていた。そんな不思議な人だ。
今思えば、あの話は本当だったのかもしれないと思う。
そして僕は思うのだ。もしかしたら、僕はその人に会った事があるのかもしれないと。いや、確実に会ったはずだと。なぜなら、僕自身が、彼女の言う「彼」だったからだ。
これは僕が経験した話だ。ある所に、二人の男がいた。二人は同じ大学に通っていて、仲が良く、いつも行動を共にしていた。彼らはそれぞれ違った性格をしていて、一見すると正反対に見えるが、実はとても気が合っていたので、一緒にいる事でお互いを補う事が出来たのだろう。
彼らの名前はA君とB君としよう。彼らについて詳しく書くのは面倒だし、何より長くなってしまうので割愛するが、一つだけ言えるのは、彼らが僕の親友であるという事だけだ。
A君は優しくて思いやりのある男だった。誰にでも好かれるような男で、皆に慕われていたように思う。
B君は気さくな性格をしており、皆の中心にいるような存在だった。男女問わず人気があり、誰からも愛されていたようだ。
ある時、二人が喧嘩をした事があった。原因は今となっては覚えていないのだが、その時の二人には、どうしても譲れないものがあったのだろう。お互いに一歩も引かず、何日も口論が続いた。周りの人間は困り果て、どうする事も出来ずにいたのだが、その時偶然通りかかった僕に相談を持ちかけてきたのである。話を聞いた僕は、彼らにこう言った。「とりあえずさ、一旦落ち着いて考えようよ。まずは話し合ってみようよ」それを聞いた二人は頷き合い、話し合いを始めた。しかしやはりと言うべきか、なかなか上手くいかずに、数日が経過した頃、ようやく解決の兆しが見えてきた。というのも、
「俺は別に怒ってないし、お前にも怒っているわけじゃないんだ」
という一言により、事態は収束に向かったからである。その後仲直りした二人を見て安心した僕は、その場を後にしようとしたのだが、突然後ろから声をかけられたので振り返ると、そこには笑顔でこちらを見ているB君が立っていた。どうしたのかと聞くと、どうやら先程の話を聞いていたらしく、
「ありがとな!」と言われたので、どういたしましてと答えた後、続けて質問する。
「どうしてお礼を言われたのかな?」それに対してB君が答えた内容は驚くべきものだった。
「お前があの二人に声をかけてくれなかったらどうなってたか分からなかったからさ!本当にありがとう!」そう言った彼に別れを告げた後、今度こそ帰ろうとしたのだが、何故か気になって後ろを振り返ると、
いつものように学校に行くと、
「おい!待てよ!」と言う声が聞こえてきたような気がしたが、気のせいだと思い直し帰路についたのだった。
その日からしばらく経ったある日の事だった。いつものように学校に行くと、何やら皆がざわついている様子だった為、何かあったのかと近くにいた友人に聞いたところ、何でも転校生が来るという話だった為、どんな子なのかと聞いてみると、
「それがさぁ……可愛い女の子なんだけどね?ちょっと変なんだよね」と言われてしまい困惑するしかなかったのだが、その理由はすぐに分かった。教室に入って来たその少女は、確かに美人ではあったがどこか不自然だったのだ。その理由は彼女の目にあった。彼女の目は左右の色が違っており、右目が黒かったのに対し左目は白だったのである。
「はじめまして」と挨拶した後、彼女は続けた。
「私の目は他の人と違っていますけど気にしないで下さいね?生まれつきなんです」それを聞いて周りが少し騒がしくなる中、彼女は話を続ける。
「それともう一つだけお願いがあるんですけど、聞いてもらえますか?」その言葉に頷くと、彼女は少し恥ずかしそうにしながら小さな声で呟いたのである。それはまるで小さな子供のようで可愛らしかったが、僕にはその言葉を理解することが出来なかった。何故ならそれは、聞き覚えのない言葉だったからだ。
彼女が転校してきて数日後の事だった。その日は朝から雨が降り続いていたため、憂鬱になりながらも登校し教室に入ると、
「おはよう」と言ってきたので僕も返事を返した後席に着くなり授業が始まったのだが、隣の席の彼女が教科書を忘れてきてしまったようで困っているようだったので見せてあげる事にしたのだが、それを見た彼女が驚いた様子で話しかけてきたのである。
「……あれっ!?もしかしてあなたも同じなんですか!?」そう言われて見てみると、
「本当だ……気付かなかった……」と呟くのと同時に気付いたことがあった。それはお互いの教科書が同じだということなのだが、よく見ると名前まで一緒だったのだ。それを見て驚いていた彼女に理由を聞いてみた所、なんでも両親が離婚してしまったそうで、母親に引き取られて名字が変わったのだという話を聞いているとチャイムが鳴ったので急いで準備をしていると先生が入ってきて朝礼が始まり、
「今日は皆さんに新しいお友達を紹介したいと思います」と言った直後、その少女が入ってきたのを見て驚く事になった。なぜならその少女は先日転校してきたばかりの彼女だったからである。驚いている僕達をよそに自己紹介をする彼女だったが、その口から出たのは信じられない言葉だった。
「初めまして、今日からお世話になります『ミサキ』と言います」と言ったかと思うと、
「よろしくお願いします!」と言った途端その場に崩れ落ちるようにして倒れてしまったのだ。慌てて駆け寄る先生を横目に呆然としていると誰かが声をかけてきた気がしたが反応する事すら出来なかった僕はそのまま意識を失ってしまったのだった。
(ここは何処だろう……?)目を開けるとそこは何もない空間だった。
「目が覚めたか?」声が聞こえた方に顔を向けるとそこには一人の老人が立っていた。だが不思議と恐怖心は感じず、むしろ安心感のようなものさえ感じていた。老人は続ける。
「お前さんは何故ここにいるのか分かるかね?」その質問に首を振ると彼は言った。
「そうか……なら教えてやろう……お前は死んだんじゃよ」
「え……?」突然の事に驚きながらも聞き返す。
「……死んだってどういう事ですか?……確か私は学校にいて……それで……」そこまで言うと老人は頷く。
「……思い出したようじゃな」そう言われた瞬間頭の中に記憶が流れ込んできた。そうだ私はあの時教室で倒れて……それで……どうなったんだっけ……?思い出せないまま考え込んでいると彼が話しかけてくる。「大丈夫かの?」心配そうなその声に大丈夫だと答えると再び話し始めた。
「ふむ……それならいいのじゃが……それよりもこれからどうするか決めた方が良さそうじゃのう」そう言うと私に尋ねてくる。
「もう一度聞くぞ?お前さんはこのまま死ぬつもりか?」それに答えることが出来ずにいるとさらに言葉を続ける。「まぁ無理もないじゃろうなぁ……何せ初めての経験なんじゃから当然と言えば当然かもしれんが……」そう言って黙り込んだ後私を見るとこう言った。
「そこで提案なんだが、もし良ければ別の世界で生きてみる気はないかい?」
すると答えてくれたのはB君で
「……はい?」突然の提案に戸惑っていると彼は説明してくれた。曰く、彼には特別な力があり、その力を使って異世界へ転生させる事が出来るのだそうなのだ。ただし条件として一つ条件を提示されたのだが、その内容を聞いて私はすぐに了承したのである。何故ならその条件は私にとってとても魅力的だったからだ。それから数分後私は決意を固めると彼に向かって頷いたのだった。それからしばらくして目を覚ました私が最初に目にしたのは知らない天井だった。ゆっくりと身体を起こすと辺りを見回してみる。するとすぐ横に人影を見つけたので話しかけようとした瞬間、いきなり抱きしめられたのである。一瞬何が起こったのか分からず混乱していると耳元で囁かれる声がした。
「良かった……!本当に良かった……!」聞き覚えのある声に顔を上げるとそこにいたのはB君であった。訳が分からないまま固まっていると今度は反対側から声が聞こえてくる。そちらを向くとそこに立っていたのはA君であり、こちらも涙を流しながら喜んでいたのだが私には何が何だかさっぱり分からなかった。そんな私を他所に二人は喜んでいる様子だったのだが、しばらくすると落ち着きを取り戻したらしくこちらを見ながら話し出した。「それにしても心配したんだぞ?急に倒れたと思ったら目を覚まさないんだからな!」
「そうだよ!あれからずっと心配してたんだからね!」そう言う二人に謝る事しか出来ずにいると不意にある疑問が浮かんだので尋ねてみた。
「そういえばここはどこなのかな?」その問いに答えたのはA君だった。
「病院だよ、覚えてないのかい?」それを聞いて思い出す事が出来たのでお礼を言うと続けて質問した。
なぜ病院にいるのか気になったからだ。すると答えてくれたのはB君で、どうやらあの後私は気を失ってしまい救急車で運ばれたらしいのだが、原因は栄養失調だったらしい。その後検査を受けた結果特に異常はなかったそうなのだが、念の為に一日入院する事になったようだ。そして今は翌日の昼だという事を教えてくれた後で二人に感謝の言葉を伝えると、彼らは照れ臭そうにしながらも喜んでくれたので私も嬉しくなったのだが、それと同時に一つの疑問が生まれた。それを尋ねると二人とも顔を見合わせて笑った後こう答えたのである。
僕の名前は中村健斗だ。大学二年生になる僕は今、とある悩みを抱えている。その悩みとは恋人についてなのだが、これがまた難しい問題なのである。というのも彼女は僕以外の男性と話す事が苦手なようなのだ。なので友達と呼べる人がいないらしくいつも一人でいる事が多いのだが、そんな彼女の事を好きになったのだから仕方がないのかもしれない。とはいえこのままではいけないと思っているのも事実だった為何とかしたいと考えていると友人の田中に話しかけられた。
「お前さ、あの子の事好きなんだろ?だったらもっと積極的に行かなきゃ駄目だろ!」そんな事を言われたもののどうすればいいのか分からないと言うと呆れられてしまったのだが、それでも何か良い方法はないかと聞かれたので考えていると一つだけ思いついた事がある。それは僕が告白して恋人同士になればいいのではないかと思ったからである。しかし問題はどうやって彼女に想いを伝えればいいのかという事だったが、それについても既に考えてあった為早速実行に移す事にした。まず彼女を呼び出し二人きりになると思い切って想いを打ち明けたのだが、それを聞いた彼女は不思議そうな顔をした後首を傾げてしまったのである。どうやら意味が伝わっていなかったようで改めて言い直すとようやく理解したらしく顔を真っ赤にして俯いてしまったのでその様子を可愛いと思いながら見つめていると彼女が顔を上げてこちらを見つめてきたので見つめ返すとしばらく沈黙が続いた後に小さく頷いてくれたので思わずガッツポーズをすると笑われてしまい恥ずかしくなりつつもその日は別れる事となった。翌日学校で会った時には普段通りだったので安心したのだが、次の日になってみると様子がおかしかったのである。話しかけても上の空といった感じで返事もどこかぎこちない様子だったため心配になったのだが授業が始まるといつもの調子に戻ったので気のせいだったのだろうと思っていたら放課後になり帰ろうとしている彼女を呼び止めたのだが無視されてしまったので仕方なく帰る事にしたのだが、やはり気になるので後をつけてみることにした。暫く歩いたところでふと気付くとそこは人気のない路地裏だったのだが、その時後ろから声をかけられたのである。驚いて振り返るとそこには見覚えのある男子生徒が立っていたのだ。確か彼は隣のクラスの……そう思った時彼が口を開く。
「覚えてねぇのかよ……まぁいいや、それよりちょっと付き合えよ」
「久しぶりだな」と言われてしまったので困惑しつつも返事をすると続けて言ってきた。「覚えてねぇのかよ……まぁいいや、それよりちょっと付き合えよ」と言ってきたので断ろうとしたのだが強引に腕を掴まれてしまうとそのまま引っ張られて連れていかれそうになった所で抵抗するとその手を振り払ったのだが、その瞬間彼の顔が怒りに染まるのが見えたかと思うと次の瞬間腹部に強烈な痛みを感じた後意識が遠のいていくのを感じたのだが、薄れゆく意識の中で最後に見たものは彼の拳だった。目を覚ますとそこは見慣れない部屋だったがすぐに自分がベッドに寝かされているのだと気付いた。起き上がろうとすると両手両足が縛られているようで身動きが取れなかった為困っていると部屋のドアが開いて誰かが入ってきたのだが、その人物を見て驚いた。何故ならそこにいたのは昨日会ったばかりの相手だったからだ。そんな彼は私の姿を確認すると近づいてきて話しかけてきた。
「やっと起きたのか……待ちくたびれたぜ」そう言って笑う彼に一体何の事かと聞くと彼は笑いながら言った。
「決まってるじゃねぇか、今からお前を俺の女にしてやるんだよ!」そう言われて驚いていると突然キスをされたのだが、必死に抵抗していると舌打ちをした彼が再び殴りかかってきたので身構えていると何故か何もされなかった。不思議に思っていると彼は私の服を破り始めたのだ。突然の事に驚き戸惑っていると今度は下着に手をかけられ脱がされそうになる。必死になって止めようとするが力で敵うはずもなくあっという間に裸にされてしまうとそのまま押し倒されてしまった。恐怖から震えていると彼が顔を近づけてきて耳元で囁いてくる。
「安心しろよ、優しくしてやるからさ」そう言って笑うと再びキスをしてきた。舌を入れられ口内を舐め回される感覚に不快感を覚えていると突然下半身に違和感を覚えたため見てみると彼の手が秘部に触れていたのだ。慌てて離れようとしたが押さえつけられているせいで動く事が出来ずされるがままになっているうちに次第に気持ち良くなってきてしまい声が出そうになるのを必死で我慢していたのだがそれも限界に達しようとしていた時だった。突然手の動きが止まり離れていくのを見てほっとしたのも束の間、今度は胸に吸い付かれたのだ。予想外の行動に驚いていると乳首を甘噛みされて変な声を上げてしまった事で恥ずかしさのあまり顔を背けると彼は楽しそうに笑っていた。その後も何度も繰り返し行われた行為によってすっかり感じてしまっていた私は無意識のうちに足をもじもじさせているとそれに気づいたらしい彼はニヤリと笑みを浮かべると言った。「そろそろ頃合いだな……」
「何を言って……んぐっ!?」言いかけた言葉は途中で遮られてしまったのだった。何故なら突然口の中に指を突っ込まれたのである。驚いて吐き出そうとするが上手くいかないどころか逆に奥まで入れられてしまう始末だった。苦しさに耐えられず涙目になりながら睨んでいると、それを見た彼は満足そうに頷くと口から引き抜いたのだった。
「どうだ?美味いか?」そう聞かれて答える筈もなく黙っていると今度は胸を揉まれる。最初は痛みしか感じなかったのだが段々と快感を感じ始めてしまいつい声が漏れてしまうとそれを聞いた彼はさらに激しく揉んできた。
「んっ……ふぅっ……あっ……」あまりの気持ち良さに頭が真っ白になっていくのを感じながらひたすら耐えていたがやがて限界が訪れたらしく絶頂を迎えてしまったのだった。同時に潮を吹き出してしまい床を濡らしながらぐったりしていると彼は満足した様子でこちらを見ていた。そして一言だけ呟くように言った後その場を去っていったのだった。
それから数日後、
「ほら、早く来いよ!」そう言いながら私を引っ張っていくのは先日私を無理矢理犯した男だった。あれから毎日のように呼び出されているので正直うんざりしているのだが逆らうわけにもいかずに大人しくついて行くと部屋に入るなりベッドに押し倒された。服を脱がされると全身を隈なく愛撫された後でとうとう挿入されたのだが、
「痛い!抜いてぇ!」泣き叫ぶ私に構わず腰を動かす彼に対して私はただ耐えるしかなかった。しばらくしてようやく解放される頃には全身汗まみれになっており息も絶え絶えになっていたのだが休む間もなく次のラウンドが始まった。結局この日だけで十回以上は中に出されたと思う。
「これで最後だからな、しっかり受け止めろよ?」そう言われた瞬間熱いものが注ぎ込まれる感覚と共に絶頂を迎えた私は気を失ってしまったのだった。次に目が覚めた時には自宅のベッドの上だった。あれは夢だったのかと思ったが下腹部に残る鈍い痛みが現実だと告げていた。起き上がると枕元には一枚の紙が置かれており読んでみるとそこにはこう書かれていたのだ。
「お前の事は気に入ったからな、これからも可愛がってやるよ」
「お前の事は気に入ったからな、これからも可愛がってやるよ」それを見てため息をつくとシャワーを浴びに行く事にした。
翌朝学校へ行く途中昨日の事を考えているといつの間にか着いてしまっていたようだ。
「おはよう!」背後から声をかけられ振り向くと友人である中村健斗が立っていた。
挨拶を返すと教室へと向かい席に着くと教科書を取り出すと予習を始めることにした。
暫くしてからチャイムが鳴り先生が入ってくるとホームルームが始まる。
「皆さんおはようございます!」元気よく挨拶をする先生に皆それぞれ返事を返した後着席すると出席確認が行われたのだが、そこである事に気付いた。
(あれ?一人足りない?)そう思い周囲を見回してみるがやはり一人だけ足りていないようだった。
誰だろうと首を傾げていると不意に肩を叩かれたので振り返って見るとそこには見知らぬ男子生徒の姿があったのだが、
「初めまして」と言ってきたのでこちらも挨拶を返そうとしたその時、急に視界がぼやけてきたかと思うと次の瞬間には意識が途切れてしまっていたのだった。目が覚めると知らない部屋に寝かされていたようで動こうとするが手足の自由が利かない上に猿轡までされているらしく声も出せない状態であった。
「おや、お目覚めかな?」そんな声と共に現れた人物を見て驚くと同時に理解した。この人が私を攫った犯人なのだと。だが何故こんな事をするのだろうかと考えているとその理由はすぐに分かった。それは私が彼に好意を抱いていたからだ。
「君みたいな子を探していたんだ、どうだい?僕の元に来ないかい?」そんな事を言われて断れる筈がなかったのだがそれでも一応拒否の姿勢を見せるといきなり頬を叩かれてしまった。痛みに涙を浮かべながらも睨みつけると彼は笑みを浮かべたまま続けた。
「悪いが君に拒否権はないんだよ、諦めて僕の物になりたまえ」
「嫌です!誰が貴方なんかのところに……!」そう言うとまた殴られてしまった。しかも今度はさっきよりも強く殴られたせいで口の中が切れたのか血の味がする。しかしそんな事などお構いなしといった様子で私の胸を掴むと乱暴に揉みしだき始めたのだ。
「やぁっ……やめて下さい!」必死に抵抗するも聞き入れてもらえずそれどころかスカートの中に手を入れられたかと思うと下着越しに割れ目を撫でられた。その瞬間電流のような衝撃が走るのを感じた直後、今まで感じたことのない感覚が襲ってきたのである。
「ひゃうん!?」
「へぇ~、結構可愛い声を出すじゃないか」そう言われて顔が熱くなるのを感じるとますます恥ずかしくなってしまう。
「それじゃあ次はこっちだね」そう言って彼が取り出した物は男性器を模した玩具であった。それをどうするのかと思って見ているとおもむろにズボンを脱ぎ始めると自身の股間にあてがいゆっくりと動かし始めたではないか。
「ああ……凄いよこれ……!君の中に入ってると思うと興奮するなぁ……」そう言いながら更に激しく動かす彼の姿に恐怖を覚えつつも目を逸らす事ができなかった。やがて絶頂に達したのか動きを止めると大きく息を吐き出した後こちらに視線を向けてきた。その瞳からは狂気のようなものが感じられたのだが不思議と怖いとは思わなかった。むしろ愛おしくさえ感じる程である。
「さて、そろそろいいかな?」言いながら近づいてくる彼に思わず後退ってしまうがすぐに壁際に追い詰められてしまう。そのまま唇を重ねられると舌を入れられ絡め取られるようにしながら濃厚なキスをされた後ようやく解放されたので息を整えようとしていると今度は首筋に吸い付かれてしまった。
「きゃっ!?何してるんですか!?」驚いて声を上げると彼は笑いながら答えた。
「大丈夫だよ、痕が残るようなヘマはしないからさ」そう言って再び口付けてくる。今度は先程とは違い優しく触れるだけのキスだったがそれだけでも十分すぎる程に刺激的だった。唇が離れると今度は耳元に顔を寄せてきて囁いた。
「好きだよ」その言葉に胸が高鳴るのを感じた。まさかこんな形で告白されるとは思っていなかったが素直に嬉しかった。だから私も答えようと思ったのだが、その前に彼が口を開いた。
「返事は後で聞かせてもらうからね、今はゆっくり休んでくれたまえ」それだけ言うと部屋から出て行ってしまった。
「待って!行かないで!」慌てて呼び止めるが聞こえていないのかそのまま出ていってしまったため追いかける事も出来ずに項垂れていると、ふと下半身に違和感を感じたので見てみるとなんと私のあそこから愛液が流れ出ているのが見えたのだ。どうやら先程の行為のせいで発情してしまったらしい。その証拠に身体が疼いて仕方ないのである。
「うぅ……どうしよう……」
「うぅ……どうしよう……」悩んだ末、意を決して自慰を始めた私は夢中になって手を動かし続け絶頂を迎える寸前のところで手を止めると深呼吸をした後眠りについたのだった。
翌日目を覚ますと既に昼近くになっていた為急いで支度を済ませ学校へと向かう。
「あ、来た来た」声をかけてきたのは友人の橘由香里だった。彼女はいつも明るく元気なので一緒にいるだけで自然と笑顔になれる不思議な魅力を持っている少女なのだが、そんな彼女に誘われる形で私達は昼食を取る事になったのだが、その時に昨夜の出来事について聞かれたので正直に話す事にした。
「えぇー!じゃあ昨日あの人に会ったって事!?」驚いた様子の彼女に頷くと溜息混じりに言った。
「そっかぁ、ついにバレちゃったかぁ~」何やら訳知り顔で言う彼女に対して疑問をぶつけてみると、返ってきた答えは驚くべきものだった。
実は以前あの教師に襲われた事があるのだという。
「その時は何とか逃げ切れたんだけど、それからずっと狙われてたんだよね」苦笑しながらそう語る彼女の話を聞きながら考えていたのはどうやって復讐するかという事だった。その為にも情報が必要だと考え、後日彼女と話をする約束を取り付けるとその日は別れたのだった。
次の日になると早速情報を集める為に動き出したのだが、これが中々大変だった。
「ねぇ、何か悩みでもあるんじゃないの?」
「え?どうしてそう思うんですか?」
「だって最近様子がおかしいんだもん」
「そ、そうですかね……?」なるべく平静を装っているつもりだったが顔に出ていたらしく心配されてしまったようだ。
これ以上誤魔化すのは難しいと判断した私は思い切って打ち明けることにした。
「……わかりました、話します」
「本当!?良かった~!」嬉しそうな顔をする友人の姿に癒されつつ全てを話した後暫く考え込んでいた彼女が出した結論はこうだった。
「それならさ、いっその事襲っちゃえば良いんじゃない?」
「はい?」予想外の提案に困惑していると説明してくれた。
「ほら、襲うって言っても本当に最後までしちゃうんじゃなくて寸止めを繰り返すんだよ!そうすれば相手は欲求不満になって自分から襲ってくれるかもしれないでしょ!」なるほどと思ったもののそれはそれで恥ずかしい気がすると思っているとそれを察したのかこんなことを言い出した。
「大丈夫だって、私達しか見てないんだから気にしなくてもいいんだよ」確かにそれもそうかと思い納得する事にした。
「分かりました、やってみます」
「よし決まりだね!それじゃ明日決行しよう!」こうして作戦が決まったのだが一つだけ問題があった。それは場所である。人気のない場所に呼び出したとしても誰かに見られてしまう可能性があったからだ。どうしようかと考えていた時にある事を思いついた。
(そうだ、
「屋上に行こう」)そう思い立った瞬間、スマホを手に取り電話をかけた。電話の相手が出たことを確認すると用件を伝えることにした。
「もしもし?私だけど今時間あるかな?」
『あぁ、大丈夫だ』その声を聞いて安心した私は本題に入ることにした。
「あのね、大事な話があるんだけど聞いてくれないかな?」そう言うと向こうは一瞬黙った後こう言った。
『わかった、聞くだけ聞いてやる』それを聞いてホッとすると話し始めた。
「ありがとう、実は話したい事って言うのはね……」そうして事情を説明した結果、
「……という訳なんだけどどうかな?」不安になりながら尋ねると少しの間を置いて返事が返ってくる。
「分かった、協力してやる」その言葉を聞くと安堵の息を漏らした後お礼を言った。
「ありがとう、助かるよ」
「気にするな、それよりいつにするつもりだ?」そう言われたので日時を決めようとしたのだが、そこで重要な事に気が付いた。
「そう言えばまだ決めてなかったよね、どうしよう?」困っていると向こうから提案された。
「なら今から行くか」
「えっ?でも授業が……」
「サボれ、どうせもう単位足りてるだろ?」言われてみて気付いたのだがその通りだと思ってしまったので反論する事もなく従う事にした。そして放課後になると同時に教室を出て行く彼の後ろ姿を見ながら思った。
(あれ……?もしかしてこれってデートなんじゃ……)
「どうした、行くぞ」声を掛けられ我に返った私は慌てて後を追う事にしたのだった。
その後、彼と合流した私は近くの公園へと向かった。そこは昼間だというのに人通りが少なく閑散としていた為好都合だと思い中に入るとベンチに腰掛けた。
「それで、具体的に何をすればいいんだ?」彼の質問に答えるべく口を開く。
「えっとですね、まず最初にお互いの名前を教え合いましょう」と言うと彼は頷いた。
「そうだな、まずはそこから始めよう」そう言うとお互いに自己紹介を始めることになった。
「ええ、その通りですよ……私こそが本物の貴女です」
「俺は鬼龍院翔吾だ、よろしく頼むぜ」そう言って手を差し出してきたので握り返すと笑顔で応えた。
「こちらこそよろしくお願いしますね!」
「おう、よろしくな」そんなやり取りをしている内に段々と緊張が解れてきたのか、落ち着いてきた所で次の話題に移ることにした。
「ところでなんですけど、これからどうしますか?」そう尋ねた所、彼は少し考えた後で答えた。
「うーん、まあ適当にぶらついてみるか」
「そうですね、行きましょうか」こうして私達は当てもなく歩き出す事にしたのである。しかし歩きながらも考える事は同じでどうすれば相手を殺せるかという事ばかりだった。やがて路地裏に入った辺りで突然彼が立ち止まったのでどうしたのかと聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「なあ、お前って処女なのか?」あまりにも唐突な質問だったので思わず固まってしまう。
「ど、どうしたんですか急に!?」驚きのあまり声が裏返ってしまったが気にせず続ける。
「いや、ちょっと気になってな」そう言いながら私の身体を舐め回すように見つめる彼に嫌悪感を抱きながらも答えることにした。
「いえ……違いますけど……」それを聞いた彼はニヤリと笑うと再び歩き出したので私も後に続いたのだが、
「嘘つけよ」と言われた途端、視界が歪み始めたかと思うと次の瞬間には地面に倒れ伏していた。
突然のことに混乱しつつも立ち上がろうとするが上手くいかずそれどころか身体に力が入らないことに気付くと恐怖を覚えると共に理解した。どうやら毒か何かを盛られたらしい。だが一体いつの間にそんな事をされたのだろうかと考えていると、不意に声が聞こえてきた。
「おいおい、まさか気付いてなかったのか?」驚いて顔を上げるとそこには先程まで一緒にいた筈の彼の姿があり更に混乱する事になったのだが、同時に違和感を覚えた。というのも目の前にいる彼に対して妙な既視感を覚えたからである。
しかしその疑問はすぐに解消されることになった。何故なら目の前の彼が自分の知る人物だったからだ。
「あ……貴方は……!」
そう呟く私に笑いながら話しかけてくるその人物は紛れもなく私自身であったのだから。
何故こんな事になっているのか理解できず呆然としていると、もう一人の私が話しかけてきた。
「随分と驚いているようだな」そう言って笑う自分を見て怒りが込み上げてくるのを感じた私は、なんとか冷静さを取り戻すと改めて観察してみた。見た目こそ瓜二つなのだがよく見ると細かい部分が異なっていることに気付いた。具体的には髪の色や瞳の色といった部分である。それを見て何となく察した私は尋ねてみた。
「貴方、もしかして私のドッペルゲンガーですか?」すると相手は肯定した。
「ああ、その通りだ」やはりそうだったのかと納得しつつ今度はこちらから話しかけた。「それで、何の用なんですか?わざわざ会いに来たということは何か用事があるんですよね?」そう尋ねると奴は頷きながら言った。
「もちろんだ、実は頼みがあって来たんだがその前に一つ確認しておきたいことがあるんだが構わないか?」その言葉に頷くと続きを促す。
「では遠慮なく聞かせてもらうがお前は本当に俺と同じ存在なんだな?」
そう言われて一瞬迷ったものの素直に認めることにした。
「はい、そうです」そう告げると奴は大きく息を吐いた後で満足そうに頷いてみせた。それから続けて言う。
「そうか、ならば話は早いな」言いながら近寄ってくるとそのまま抱き付いてきたのだが私は抵抗しなかった。むしろ自分からも腕を回して抱き締めると耳元で囁いた。「ええ、その通りですよ……私こそが本物の貴女です」それを聞いて笑みを浮かべる彼女に対して微笑み返しながら唇を重ねる。最初は軽く触れるだけのキスだったがすぐに舌を絡め合った濃厚なものへと変わると唾液を交換し合いながら互いの口内を犯していく。しばらくしてから口を離すと銀色の橋がかかったのを見て恥ずかしくなったのか顔を赤くしながら目を逸らす彼女に笑いかけてから首筋に吸い付くと舌を這わせていった。時折歯を立てて甘噛みをしながら徐々に下へと向かっていき鎖骨の辺りに辿り着くと強く噛み付いた。痛みに顔を歪めている彼女の様子を見ながら更に力を込めていき少しずつ肉を食い千切っていく。ブチッという音と共に皮膚を突き破る感触を感じた瞬間口の中に血の味が広がりそれと同時に激痛が走ったようで悲鳴を上げていたが無視して一気に引き抜いた。傷口からはドクドクと血が流れておりそれを見た私は恍惚とした表情を浮かべていたのだが、彼女は痛みに耐えかねたのか気絶してしまったようだ。そんな彼女に構わず行為を続けることにするのだった。
「あら、どうかしましたか?そんなに驚いた顔をして」
暫くの間堪能した後でようやく満足した私は一息つくと周囲を見渡してみた。するといつの間にか夜になっていたらしく周囲には誰もいなかった。そのことに安堵していると背後から声を掛けられたので振り返るとそこには先程殺したはずの彼女が立っていたのだ。
「どうして……?」
動揺する私に向かって微笑むと彼女は言った。
「あら、どうかしましたか?そんなに驚いた顔をして」首を傾げる仕草に合わせて長い黒髪が揺れた。その様子を見ながら恐る恐る尋ねることにした。
「あの……死んだはずじゃ……」そう尋ねると不思議そうに首を傾げていたもののやがて納得したような表情になるとこう言ってきた。
「ああ、そういうことでしたか」そう言うとクスクスと笑う。
何がおかしいのかわからないまま戸惑っていると彼女が言った。
「すみません、説明不足でしたね」そして説明をしてくれたのだがその内容を聞いて愕然としてしまうことになる。要約するとこういうことだった。まず前提として自分は死んでいないということだった。つまり最初から偽物だったのだということが判明したわけである。それを聞いて安堵した瞬間、唐突に吐き気を催したので慌ててトイレへ駆け込むと嘔吐し始めた。胃の中の物を吐き出し終える頃には大分楽になったので洗面所で顔を洗うことにしたのだが、ふと鏡を見るとそこに映っていたのは自分自身の姿ではなく見知らぬ女性の顔だったので驚いてしまった。そこで初めて自分が裸のままだということに気付いた私は慌てて服を着ることにしたのだが、その際股間にあるべきものが無いことに気付くとその場に座り込んで泣き出してしまったのだった。
それからしばらくの間泣き続けていたわけだが落ち着いた所で現状について考えてみる事にした。まず最初に思いついたことは夢オチの可能性だがこれは違うだろうと思い直した。何故なら先程の痛みがまだ残っているからだ。次に考えられる可能性としては幻覚を見るような薬を飲まされたということくらいだろうか?そんなことを考えながら部屋の中を調べてみると机の上にメモ書きが残されていることに気付いたので読んでみることにした。そこには次のようなことが書かれていた。
『この手紙を読んでいるということは無事に目が覚めたようですね』
『まずはおめでとうございます、貴方は選ばれた人間なのです!』『これから貴方にはあるゲームに参加してもらいます』
『ルールは簡単!参加者同士で殺し合って最後の一人になれば勝ちだよ♪』
『最後に生き残った人にはご褒美があるから頑張ってね☆』
(何だこれ……?)読み終えたところでそう思ったがとりあえず最後まで目を通すことにした。
『それではゲームの開始時刻ですが……』そこまで読んだ所で電話が鳴り出したので出てみる事にした。「もしもし?」そう呼びかけると相手が答えた。「どうもこんにちは」それは若い女性の声だったので不思議に思っていると相手の方から名乗ってきた。「初めまして、私の名前は雪乃と申します」それを聞いた私は何故か懐かしい気分になりつつ挨拶を返すと話を続けた。
部屋に入るまで
「こちらこそ初めまして、私は……」名乗ろうとしたのだがそれを遮るようにして相手の女性が話し始めた。「貴方のお名前は存じておりますわ」そう言われた私は首を傾げたが特に気にすることもなく質問することにした。「そうですか……それで今日はどんなご用件でしょうか?」そう尋ねると女性は意外なことを言い出した。「実はですね、貴方に会いたいと言っている方がいらっしゃるのですが会って頂けますか?」突然の申し出に困惑しつつも断る理由も無いので了承することにしたのだった。その後待ち合わせ場所や時間などを決めると電話を切った後で溜息を漏らしてしまう。というのも今回の依頼人はかなりの美人さんだったからだ。こんな私に会いたがるなんて一体どういう心境なのだろうと考えているうちに約束の時間が来たので出掛けることにした。目的地に到着すると既に相手は来ていたらしくこちらを見つけるなり駆け寄ってくるのが見えた。その姿を目にした途端思わず見惚れてしまいそうになる程の美しさを持つその少女は私の目の前まで来ると微笑みながら挨拶をしてきたのでこちらもそれに応じる形で自己紹介をした。「はじめまして、私は柊といいます」そう言って頭を下げるとその少女も頭を下げてきた。「はじめまして、私は……」そこまで言うと言葉を詰まらせたかと思うと突然笑い始めた。その様子を不審に思いながら眺めていると急に真顔に戻ったかと思うとこう言った。「……いえ、ごめんなさい。何でもないのよ、気にしないで頂戴」それだけ言って黙り込むと黙り込んでしまう。どうしたものかと思っていると不意に彼女が話しかけてきた。「ねえ、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかしら?」そう尋ねられたので何でしょうと答えると彼女はこんなことを尋ねてきた。「貴方って童貞なのかしら?」その質問に面食らってしまいながらも答えることにした。
「ええ、そうですよ」すると彼女は嬉しそうに笑うと再び口を開いた。「そうなのね、良かったわ!」そう言った後で続けて言う。「実は私も処女なのよ♪」それを聞いた私は内心複雑な気持ちになりながらも愛想笑いを浮かべていると、今度は彼女の方から質問をしてきた。「ねぇ、もしよかったらこの後二人でホテルにでも行かない?」そう言われて一瞬ドキッとしたものの平静を装って返事をする。「いいですよ」そう答えると早速移動することになったのだが道中で会話は一切なかった。気まずい空気の中歩いていると程なくして目的の場所に到着したので中に入ることにした。部屋に入るまでの間ずっと無言の状態が続いていたが、部屋に入った途端に緊張してしまい動けなくなってしまう。そんな私の様子を察したのか彼女の方から声をかけてきた。「緊張してるの?」その言葉に頷くと笑われてしまった。
それから暫くの間無言のまま見つめ合っていたのだがやがて我慢できなくなった私が服を脱ぎ始めると彼女もそれに合わせて脱ぎ始めた。お互い全裸になるとベッドの上に寝転がると抱き合った状態でキスをした。舌を絡ませ合いながら互いの唾液を交換し合っている内に気分が高まってきたのか下半身に手を伸ばすと割れ目をなぞるように指を這わせていった。そのまま中へと侵入させるとゆっくりと動かしながら解していく。ある程度柔らかくなってきたところで指の数を増やしていき三本入るようになるといよいよ本番に入ることになった。最初は痛いかもしれないけど我慢してねと言うと一気に奥まで突き入れた。その瞬間激痛が走ったようで悲鳴を上げていたが無視して腰を動かし続けた。しばらくすると慣れてきたのか喘ぎ声を上げ始めていたので更にペースを上げることにした。暫くの間は無言でひたすらピストン運動を繰り返していたのだがとうとう限界が訪れたようだった。絶頂を迎えると同時に膣内が激しく収縮したせいで射精してしまったらしい。ドクンドクンと脈打ちながら大量の精液を流し込んでいく度に彼女の身体がビクンッと跳ね上がるのが分かった。全て出し切った後に引き抜くと秘所から溢れ出た白濁色の液体が流れ出てきたのでそれを拭き取ることにした。その後はシャワーを浴びて汗を流すことにするのだった。それから数時間後、私達はベッドの上で横になっていたのだが、どうやら疲れてしまったらしく眠ってしまったようだ。目が覚めると既に夕方になっており慌てて飛び起きると急いで帰り支度を始めた。何とか間に合いそうだと思ったその時だった。ドアがノックされたので出てみるとそこにはラヴィングストーン博士が立っていたのだ。彼は私の顔を見るなり笑顔を浮かべるとこう言ってきた。
そして、彼の口から語られたの
「君に頼みたいことがあるんだがいいかな?」いきなりそんなことを言われて戸惑ってしまったが話を聞くだけなら構わないだろうと返事をしたところ部屋に招き入れることにしたのである。そして、彼の口から語られたのは驚くべき内容であった。なんと博士は未来の世界から来た人間であり、この世界を破滅の危機から救うためにやってきたのだというのだから驚きだ。だが、なぜそのことを自分に打ち明けたのか疑問に思ったため聞いてみることにした。すると返ってきた答えは実に単純なものだった。つまり、君は信用できる人間だと判断したからだというのである。それを聞いて嬉しくなった自分は思わず笑みを浮かべてしまっていた。まさか、自分がそこまで信頼されていたとは思いもしなかったからである。とはいえ、これからどうすべきか考えあぐねていたのも事実である。何しろ帰る手段を失ってしまった以上どうすることもできないというのが現状なのである。だからといってこのままこの世界に居続けるわけにもいかないだろうと考えた結果、思い切って元の世界に帰る方法を探すことにした。幸いにも当てはあったのでそこに向かうことに決めた。その場所というのはアメリカのニューメキシコ州にあるエリア51と呼ばれる軍事施設内にある秘密の研究所なのだというのだが、詳しい場所は分からないらしかった。それでも行ってみる価値はあると判断して出発する準備を済ませたあと出発することにした。そうして車に乗り込むと目的地へと向かっていくのだったが、その途中で立ち寄ったガソリンスタンドでガソリンを入れようとした際、所持金がほとんど残っていないことに気が付いた。そのため、仕方なくATMに寄って現金を引き出した後で給油を行うことにした。
その後、無事に目的地に到着することができたわけだが、車を降りた途端妙な違和感を感じ取った。というのも周囲には人の姿が全く見られなかったためである。それどころか人の気配すら感じられない状況だったのだ。そのことに不安を覚えたものの気を取り直して建物の中に入っていくことにした。
建物の中に入ってみると外観以上に異様な雰囲気に包まれていることに気付くことになる。その理由としてはあちこちに謎の装置が設置されていることに加えて照明も薄暗く設定されていることが原因ではないかと推測することができた。ただ、それ以外に気になる点があるとすれば警備員の姿が見当たらないという点だろうか?そんなことを考えているうちに奥のほうから声が聞こえてきたような気がしたので確認するためにそちらへ向かってみることにする。すると、そこには白衣を着た男性が立っているのが見えた。その男性はこちらに気付くなり話しかけてきた。
「やあ、待っていたよ」
その言葉を耳にした瞬間、目の前にいる人物が何者なのかを理解することになった。なぜならその人物こそ私をこの場所に連れて来た張本人だったからだ。なので私は彼に質問を投げかけてみることにした。どうしてここに連れてきたのかと尋ねると、彼は笑いながら答えてくれた。
「実はだね、君と話がしたかったんだよ。だからわざわざここまで来てもらったというわけさ」
その言葉を耳にして私は内心で呆れてしまう。何故なら彼が口にしたことはあまりにも身勝手な言い分だからだ。仮にも相手は女性だというのに一人でこんな場所に連れてくるなんてどうかしていると言わざるを得ないだろう。しかも、ここは人目につきにくい場所にある廃墟ビルの地下に存在する秘密の部屋なのだ。当然、周囲にいるのは私と彼しかいないわけで、助けを呼ぶことも出来ないという状況だった。その為、ここから逃げ出すことが出来ないかと考えていたのだが、そう簡単に逃がしてくれるはずもなく、結局は無駄な抵抗に終わるだけの結果となってしまった。その結果を知った私は項垂れながら溜息を漏らすしかなかった。
「それで、話って何なの?」そう問いかけると彼は笑みを浮かべながらこう言った。
「ああ、それは簡単なことだ。君に協力してもらいたいことがあるんだ」
それを聞いた瞬間に嫌な予感がしたが断るわけにもいかず引き受けることにした。すると彼は嬉しそうにしながら話し始めた。その内容を聞いた時に私が真っ先に抱いた感想は、この人頭がおかしいんじゃないかというものだった。確かに言っていること自体は間違っていないのかもしれないが常識的に考えてありえない話だとしか思えなかったのだ。とはいえ、実際にそれが可能であるのならば話は別なのだが……
シャワーを浴び終えた後で着替えを済ませると外に出たのだが、その直後だった。
「まあ、そういうわけなんだ。協力してくれないかい?」そう言われたので仕方なく了承することにした。ただし、条件付きでという条件付きではあったが……。そして、その話が終わった後で改めて自己紹介をすることになったのだが、その際に私の名前についても聞かれたので素直に答えることにした。そうすることで少しでも信頼を得ようと考えたからだ。それからしばらくの間雑談を続けていたのだが、そろそろ本題に入るべきだと思い話を切り出したところ、意外にもあっさりと承諾してくれたので拍子抜けしてしまったくらいだ。もっとも、その後に告げられた言葉に対しての反応の方が大きかったかもしれないが……
「それじゃあ早速始めようか」
そう言うと同時に服を脱ぎ始めたので驚いてしまった。いくら何でも早すぎるのではないかと思いながら見ているとあっという間に全裸になってしまった。その様子を見て唖然としていると突然キスをされてしまったので慌てて離れようとしたが抱きつかれてしまった為逃げることができなかった。そしてそのまま押し倒されてしまい身動きが取れなくなってしまったので諦めることにした。それから数分後にはお互い裸になった状態で抱き合っていたのだが、その直後にとんでもないことを言われてしまったのだった。
「……お願いですから早く終わらせてください!」そう言って懇願するとようやく納得してくれたのか動きが止まったので安心したのだが次の瞬間再び挿入されたことで思わず悲鳴を上げてしまっていた。だが、すぐに慣れてしまったのか喘ぎ声を上げ始めると絶頂を迎えた直後に膣内に射精された。そのせいで全身が痙攣してしまい動けなくなった状態で余韻に浸っていると引き抜かれると同時に大量の精液が溢れ出てきた。それを見た彼女は満足そうな表情を浮かべながらシャワーを浴びに行ったので自分も後を追うことにした。シャワーを浴び終えた後で着替えを済ませると外に出たのだが、その直後だった。突然誰かに声をかけられたので振り返るとそこには一人の女性が立っていた。どうやら道に迷ってしまったらしく案内してほしいということだったので、快く引き受けることにした。その後、彼女を目的の場所に連れて行くと礼を述べて去って行ったのだが、その際にあることを思い出した。それは彼女が持っていたバッグの中に財布が入っていたことである。慌てて追いかけたものの既に見失ってしまっていたので仕方なくその場を離れることにした。
その日は一日街中を歩き回って情報を集めていたのだが、特にこれといった収穫は得られなかった。だが、ある人物と出会うことができたおかげで今後の方針を決めることが出来たので良かったと思う。そして、夜になるとホテルに戻ると疲れ果てたのかベッドに横になって眠ってしまった。
翌朝、目が覚めるとベッドから起き上がって身支度を整えることにした。それから部屋を出ると受付に寄って鍵を返すとチェックアウトを行った。それからロビーまで移動して朝食を取ると、そのまま出発することにした。それから街を歩いていると奇妙な看板が目に入ったので立ち止まるとそこに書かれている文字を読んでみた。
「あなたが探しているのはこの人ですか?」
そう書かれた下に写真が載っており、その人物は自分と瓜二つであった。さらにその下に名前らしきものが書かれていたのだが、何故かその名前に見覚えがあった。だが、それが誰なのかまでは分からなかったので気にはなったものの深く考えることはしなかった。だが、この街に滞在している間に再びこの看板を見ることになるとは思いもしなかった。というのも、この後に訪れた街のあちこちに似たような看板が立てかけられていたからである。最初は気にしていなかったものの、何度も目にするうちに不思議に思い始めていた。
そんな時、ふとある噂話を耳にした。なんでも、この辺りに幽霊が出るらしいという話だった。どうせ嘘だろうと高を括っていたものの、念のため調べておくことにした。そのおかげか、本当に幽霊が目撃された場所を見つけることに成功した。その場所というのは、かつて自分が働いていた会社の近くにあった廃工場跡だった。その場所は普段立ち入り禁止になっていたはずなのだが、なぜか今は入れるようになっていた。そのことに違和感を覚えつつも中に入っていくと、そこには複数の人影が存在していた。だが、明らかに普通の人間とはかけ離れた姿をしていた。そのことから宇宙人である可能性が高いと判断した自分は身構えながら様子を窺うことにした。すると、こちらに気付いたのか人型の異星人と思われる存在は近づいてきた。
「ほう……これは珍しいな」
「……何者だ?」
「私はバルーサ。お前は?」
「……カーター」
「なるほど、カーターか。それで、ここで何をしている?」
「あんたらこそ、いったい……」
「信じられない」
「私はバルーサ。私は自分の歴史を変えようとしている。そして、お前は私の目的を知っているはずだ」
「……どういうことだ?」
「お前も見ただろう? あの巨大な地震のことを」
「ああ。あれは確か、今から三六五年も前のことだ」
「そうだ。つまり、我々がここに来たのは、その時代からだ」
「……ということは、まさか」
「その通りだ。我々は、過去の世界に来てしまったのだ」
「そんな馬鹿なことがあってたまるか! どうして、こんなことが」
「さあな。とにかく、事実は一つだけだ。我々の世界は、もはや存在しない」
「どうしてだ? どうして、そんなことが分かるんだ?」
「私も、お前と同じように過去に来たからだ」
「なんだって?」
「私は、三七四年前に、この時代に来ていた」
「信じられない」
「信じろ。私は、ここに来る前に、ある男と会ってきた」
「どんな奴だ?」
「名前は、ミスター・クイル」
「そいつは、どこで会ったんだ?」
「場所は、言えない。私も、そいつも、人目につかない場所を選んだ」
「じゃあ、どうして、そいつは生きている?」
「そいつは、死んではいない」
「じゃあ、どこにいるんだ?」
「そいつは、死んだ」
「なんだって?」
「そいつは、もう死んでいる」
「じゃあ、そいつは誰なんだ?」
「そいつは、私の協力者だ」
「じゃあ、そいつは、何者なんだ?」
「そいつは、タイムマシンを作った科学者だ」
「それは、本当なのか?」
「ああ。私が、この目で確かめた」
「じゃあ、そいつの名前は?」
「ミスター・クイル。本名は知らない。彼は、私に名乗らなかった」
「どうして、偽名を使ったんだ?」
「彼は、本名を名乗りたくはなかったのだろう」
「それで、彼はどこにいるんだ?」
「それは分からない」
「彼が死んだら、どうなる?」
「それも不明だ」
「それじゃあ、どうやって、過去に戻ればいいんだ?」
「分からん」
「そもそも、あんたが生きていれば、どうにかできたんじゃないのか?」
「いや、無理だっただろう」
「なぜだ?」
「なぜなら、私には時間がないからだ」
「なんだと?」
「私は、寿命で死ぬことになっているのだ」
「あんたの仲間も、同じ運命なのか?」
「そういうことになる」
「そうか……」
「……」
「……なあ、ちょっといいか?」
「何だ?」
「もしよければだが、あんたはどうやってここにやってきたのか教えてくれないか?」
「……いいだろう。実はだな……」
俺は、彼と出会った経緯を話した後でこれまでのことについて語ってもらった。どうやら、彼の正体は宇宙を旅しているエイリアンだったらしい。しかも、彼は俺の上司によく似た容姿をしていた為、一瞬本人ではないかと思ってしまったほどだった。もっとも、それは単なる思い過ごしだったわけだが……。それにしても、驚いたことはそれだけではない。なんと、彼も俺と同じく時間を遡って来たというのだ。最初は何かの冗談だと思ったのだが、話を聞いているうちに真実だと分かったのでひとまず信じることにした。ただ、やはりどうしても腑に落ちない点があったのでそれについて聞いてみることにした。
「一つ聞きたいんだが、あんたの目的は何なんだ?」
何でも、今いる時代のどこかに俺が持っているはずのライトセーバーがあるらしいのだが
すると、彼は驚くべきことを口にしたのである。何でも、今いる時代のどこかに俺が持っているはずのライトセーバーがあるらしいのだが、それがどこにあるのかまでは分からないらしい。なので、それを探す為にこの時代にやってきたのだという。その為には、この時代のことに詳しい人間の協力が必要だと考えたらしく、そのために俺に声をかけてきたというわけだ。ちなみに、先ほど出会ったときに言っていたことを詳しく聞いていくと次のような内容であった。まず、自分は現在二九八〇年の世界にいて、その時代はまさに終末を迎えようとしていた。その理由は明白であり、人類の数が激減してしまっていたからだった。その原因というのが例のウイルスによる感染症が原因だったのだが、これによって人口は一気に減少してしまったというわけである。さらに悪いことに、その病原菌は現在もなお増え続けているため、このままではいずれ地球上に生息するすべての生物が死滅してしまう危険性があったのだ。とはいえ、現時点ではまだ深刻な状況にまで陥っていないとのことだったので安心することができた。だが、それも時間の問題だということが判明してしまったので早急に対策を講じなければならないと思った矢先の出来事だったのである。そして、その結果行き着いた先が時空移動装置の開発だったという訳だ。つまり、彼は自身の目的を達成するためにわざわざ過去へとやって来たらしい。ところが、そう簡単に事は運ばず計画は失敗続きで上手くいかなかったのだという。それでも諦めずに何度も挑戦しているうちにようやく完成させることができたのだと聞かされた時は驚きを通り越して呆れてしまった程である。というのも、俺にはそんなことができるとは到底思えなかったからである。だが、こうして目の前に実物があることからも紛れもない事実なのだと認識させられたのであった。それからしばらく経った後、俺は再び彼に質問を投げかけることにした。今度は一体何があったのかということを聞いたのである。すると、返ってきた答えは予想外のものだった。何と、彼には妻がいるようで彼女の妊娠が発覚したらしいのだ。それで慌てて連絡を取ろうとしたものの時すでに遅く、彼女は既にこの世にはいなかったのだった。そのことに酷くショックを受けていた彼だったが、すぐに立ち直ったらしくこれからのことを話し合っていたらしい。その際に、彼が提案した内容が今から約五〇年後に訪れるとされる災厄を回避するというものだった。その出来事というのは何かと聞いたところ、今からおよそ四九七年後の二〇一二年十一月二五日に起きた彗星落下のことであることが判明した。その日こそ、小惑星ユリシーズが地球に接近して衝突するかもしれないと言われている日なのだそうだ。そのことを知った彼は早速行動を開始したものの結局どうすることもできずに終わってしまったということだったが、そんな彼に対して私はある提案をすることに決めた。
その内容というのは、私の時代に来て共に歴史を変えるということである。そうすれば、最悪の事態だけは回避できるだろうと考えていたのだが、意外にもすんなりと受け入れてくれたことに驚いたと同時に安心した気持ちになっていた。ただ、その後で彼から意外な言葉を聞くことになった私は驚くことになることになるのだがそれはまた別の話である。そして、私はこの時になって初めて自分が過去の世界にいることに気付いたのであった。