魔理沙が幻想郷全部入り


 

「うわぁ、何これ!? すごーい!」

「うわぁ、何これ!? すごーい!」
私の目に飛び込んできた光景に思わず歓声を上げてしまうと、隣で一緒にテレビ画面を見ていたお兄ちゃんが呆れたような顔をした。
「おい……いくらなんでもそれはオーバーだろ?」「そんなことないよ! だって本当にすごいんだもん!」
私は興奮しながら目の前で繰り広げられているドラマの内容を説明する。
それは、とある少女が憧れの人を追いかけて芸能界に入るという話で……私もその主人公と同じように、テレビの画面に釘付けになっていた。
「……ふぅん。まあ、お前が楽しんでくれたようで良かったけど」
「うん! それにしてもこの女優さん、すっごく綺麗だよね!」
「ああ、この人は最近人気急上昇中らしいぞ」
「へぇ~……」
「小暮美奈って元子役だっけ?」とお兄ちゃんが聞いてきたので、「確か、そうだと思う」と答える。
「やっぱりそういうのって演技の勉強になるの?」
「そりゃあ、もちろんだよ。この前なんか有名な監督さんに会わせてもらって、いろいろ教えてもらったんだから」
「マジか?増田衛門監督が??へぇ……意外と顔が広いんだな、あいつ」
「……? 知り合いなの、お兄ちゃん?」
「ああ、一応。ちょっとした腐れ縁みたいなもんだけどな。それより……どうせならその監督の映画のオーディション受けてみればいいのに。」
「嫌だよ。小暮美奈ってポリプロだろ? この俺が同じ事務所? この俺がポリプロアイドルに? この顔で?w」「……別に、そこまで言わなくても」
「だいたい、こんな顔がオーディション通ったところで、どうせ端役かエキストラ止まりだっての」
「……じゃあ、顔を変えれば?」
「無理言うなって。整形手術なんてしたら、すぐバレてネットで叩かれるぞ」
「だったらいっそのこと性転換すればいいのよ。魔法の力で。それ」
ガラっといきなり窓が開いて小暮美奈が乱入してきた。そして兄に飛びつくとむにゃむにゃ言って煙に包まれた。
「な、なんだこりゃ!! うおっ、胸が、胸が重い!!」
そして再び現れた兄の姿は……美少女へと変貌していた。
「ほら、どう見ても女の子じゃない。これなら文句無いでしょ」
得意げな様子の小暮美奈。
「ちょ、やめ、触るな、触らないでくれぇぇええ!!!」
悲鳴を上げる兄の身体を、容赦なく弄ぶ妹。
こうして……私たちは家族になったのだ。
【第1章】
私はその日以来、ずっと悩んでいる。魔理沙と博麗霊夢どちらと結婚すればいいのか。いや結婚というのは大袈裟だが、とにかくどちらかを選ぶべきなのか。それとも両方選べばいいのか。
そんなことを考えながら私は今日もまた学校へ行く支度をする。ちなみに私は普通の女子高校生である。容姿は普通だし成績も平均的。スポーツに関しては特に目立ったものは持ち合わせていない。名前は小暮美奈。東方の大ファンである。好きなキャラクターは霧雨魔理沙と博麗霊夢。彼女たちについて語ると一晩では足りないほど語り尽くせる自信があるのだが、今回は割愛させて頂くことにしよう。
そんな私がなぜ悩みを抱えているかというと、それは私の通っている高校にある。我が校には二種類の制服が存在する。男子用のブレザータイプと女子用のセーラー服タイプの二つだ。これは去年ぐらいまでは存在しなかった制度なのだが、今年から試験的に導入されたものだ。なんでも生徒の意見を取り入れた結果だとかなんとか……。
さて、話を戻そう。私は先程から何に悩んでいるのかというと、つまりはどっちが好きかということである。正直なところ、どっちかというとセーラー派かなぁと思っている私がいる。理由は単純明快で可愛いからだ。スカートのプリーツとか、リボンの結び方とか……色々と凝っていて面白いと思うし。でも問題は男子用だ。ズボンの方は何の変哲もない紺色の生地に白いラインが入ったものだけど、ブレザーの方が問題だ。
なんと! 男物のブレザーが超絶格好良いのである! しかもこれがまた着ると意外と様になっているのだ。まあ、確かに女物と比べるとちょっとゴワついているような気もするけど、それでも似合っているのだ! だからと言って男の人と付き合いたいとかそういうわけではないけれど、一度くらいは試してみたいと思ってしまうのが乙女心というものだろう。しかし、そうなると……やっぱり魔理沙か霊夢のどっちかを選ばないといけないわけで……ああもうっ、どうすりゃいいんだよ!?
「おい、早くしないと遅刻すんぞ」
「うわっ、びっくりした!魔理沙、いきなり何なの?」「何なのってお前がボーッとしてるからだろ」
「そっか……」
「なあ、それより今日の放課後暇?」
「うん、特に予定はないけど」
「じゃあさ、一緒にゲームセンター行こうぜ」
「ゲーセン?いいけど魔理沙は型月の人なんじゃないの?何で765のゲーセンで遊ぶの?」「いや、俺シューティングあんまり上手くないんだよね」
「へぇー、意外ね」
「それに……最近あいつが全然家に帰って来なくてさ」
「あいつ……っていうと」
「もちろん、霊夢だよ」
「あ、ああ……なるほど」
「ま、あいつも忙しいんだとは思うんだけどな」
「そういえば最近あまり見かけなくなったかも」
「……まあ、あいつのことだから心配はいらないと思うんだけど」
魔理沙がどこか寂しげな表情を浮かべる。
「ま、博麗神社がすっかりさびれてしまったぜ。霊夢のかわりにお前こと小暮美奈が東方入りするんだぜー」
「ちょっといきなりそれは困る」
「冗談だってw」
「……」
「な、なあ、美奈。ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
「なに?魔理沙」
「実は……その、あれだ。えっと、な」
「……??」
「だ、誰にも内緒だぜ。実は幻想郷が大変なことになっててだな」
「……????????????霊夢の失踪と関係があるの?それより魔理沙、博麗神社が廃れているって言ったじゃない。こんな所でゆっくりしてる場じゃないでしょ」」「お、おう。そうだったな。よし、行くぜ」
「ちょ、魔理沙。どこに行くのよ」
「いいから黙って付いてこい!」
私は魔理沙に手を引かれ、無理やり外へ連れ出された。
***
「着いたぜ」
「ここは?」
「博麗神社だ」
「いやいやいやいや、ここどう見ても外の世界じゃん。どうやってここに戻ってきたの?」
「まあ細かいことは気にすんなって。それより中に入るぞ」
「ちょっと、勝手に入っていいの?」
「大丈夫だって。ほら、入るぜ」
「うう、なんかドキドキしてきた」
「そんな緊張する必要なんて無いって。ただの境内なんだしさ」
「……って言ってる側から、賽銭箱に小石入れてる」
「お? 誰かいるぞ」
「あの子は?」
「うーむ……多分、霊夢だと思うけど」
「え?魔理沙、どう見たって子供よ?」
「まあ外見だけは幼女だけど、れっきとした大人だ」
「でも、どうしてあんな姿に」
「さあ……?とりあえず話しかけてみようぜ」
「こんにちは」
「誰ですか?貴方たち」
「私は小暮美奈です。貴女は博麗霊夢さん?」
「霊夢?いえ違いますよ。私は紫です」
「ゆ、ゆかり?」
「八雲、紫ですよ」
「えっと、もしかして妖怪?」
「ふむ、少し惜しいですね」
「どういうことですか?まさか本物」
「いいえ。残念ながら私に尻尾はありません」
「でもじゃあ、いったい……」
「どうでしょうねぇ。それより、こちらをご覧ください」
「これは?」
「よく見てください」
「……あっ、目が3つもある!!」
「えぇ、そうなんです。この子ったら悪戯っ子で」
「それで?この子が何か?」
「いえ、別に何も。ところで小暮美奈ちゃん」
「は、はい」
「突然だけど霊夢に会いたい?」
「会いたい」
「会えるよ」
「ほんとに」
「ただし、会うためには対価が必要よ」
「どんな?」
「それは……お金よ」
「金?なんで」
「お金が無ければ生活出来ないわよ」
「いくら必要になるの?」
「100万円」
「そんな大金、持ってるはずがないわ」
「なら諦めなさい。それとも、まだ他にも条件があるのだけど」
「聞きましょう」
「その前に……一つだけ教えて欲しい事があるわ」
「……何よ」
「魔理沙は好き?」
「えっ!?な、なんで急に」
「大事な事なの。正直に答えてちょうだい」「す、好きです」
「本当かしら?」
「はい、もちろん。それがどうかしたのですか?」
「そう、それを聞いて安心したわ。これで準備は整ったわね」
すると突如、
「おいおい、いきなり何を言い出すかと思えば。ふざけんな」
「魔理沙? どうして?」
「美奈、騙されるな。これは幻覚か催眠術の類いだ。早く逃げるぞ」
「……逃げれるとでも思ってるの?」

「ちっ、こうなったら仕方ねえ」
魔理沙がスペルカードを取り出し、攻撃しようとした瞬間。辺り一面が光に包まれた。
「……うぐっ」
気がつくと、私は地面に寝転がっていた。隣には同じように倒れている魔理沙の姿。
「な、なんだ……今のは」
起き上がり周囲を確認すると、そこには先程の場所とは全く違う光景が広がっていた。まるでSF映画のような世界が目の前にある。しかし不思議と私はその光景に対して驚きはしなかった。
なぜならこの場所は私が大好きな『東方project』に出てくるような幻想的な風景そのものだからだ。
私がそんな事を考えているうちに魔理沙も目を覚ましたようだ。
魔理沙も周りを見渡して驚いた顔をしている。
しばらくして私たちの前にスキマと呼ばれる空間が現れ、その中から一人の女性が姿を現した。私はその姿を見た途端、目を奪われてしまう。それは幻想的で美しくて。今までに見たことのないほど美しい女性だった。
彼女は微笑を浮かべながらゆっくりと近づいてきた。 

 

霊夢は森の中を歩いていた。しかし一向に森を抜ける様子は無い。

私の隣にいる魔理沙も言葉を失って呆然としている。
女性は私の前に立つと静かに頭を下げて言った。私はまだ彼女の名前を知らなかったが、何故かすぐに分かった。彼女が自分の運命の相手だということを。
こうして……私たちは家族になったのだ。

***
それからの毎日は幸せだった。魔理沙はいつも一緒にいてくれたし、私といるときは優しくしてくれた。でも私は知っていた。私が好きなのはあくまで霧雨魔理沙であって博麗霊夢では無いことを。だから私は博麗霊夢に会うことにした。でも、どこに行けば彼女に会えるのか分からない。魔理沙に相談しても適当にあしらわれるだけで何も答えてくれなかった。
そんなある日。学校からの帰り道、魔理沙は言った。
明日、一緒に神社へ行くぞ。そして霊夢を探すんだ。お前はきっと博麗霊夢にも気に入られるはずだ。だから頑張ろうぜ。……次の日。
魔理沙に言われた通り神社に来たものの、そこにいたのは見知らぬ女の子だった。その日から、神社へ通い詰めることにした。しかし一向に霊夢が現れる気配はない。魔理沙が言うには博麗神社は忘れられるたびに寂れていっているという。ならば霊夢が忘れ去られるまえにもう一度思い出させればいいのではないかと考えた。そこで魔理沙に頼んで、皆でゲームをして遊んだり、お祭りを開いてみたりした。しかし、なかなかうまくいかない。そんな中、魔理沙が家出をした。魔理沙を追いかけて幻想郷へ向かったけど、霊夢の手がかりは掴めずじまいだった。仕方なく、幻想郷でしばらく過ごすことになった。
幻想郷での暮らしはとても楽しかった。友達もたくさん出来た。しかし、いつまでもこのままではいけないと私は思う。幻想郷で暮らすのもいいけどやっぱり私は霊夢を探しに行きたいと思う。でも魔理沙に反対された。それでも食い下がると、ついに折れて私と一緒に探すと言ってくれた。でも、私のせいで魔理沙が死んでしまうかもしれない。それに魔理沙と二人きりの生活は辛かったから、ちょうど良かったと思う。魔理沙との別れは本当に辛いものだった。でも、またいつか必ず会えると信じている。だから今は我慢しようと思う。

***
美奈が語り終えると、あたりはしんと静まり返ってしまった。
美奈が語った内容は衝撃的ではあったが、どこか嘘臭いように感じられた。だからだろうか、美奈の話を信じようとしない者がほとんどであった。
ただ一人を除いて。
「美奈……お前……」
美奈の話を聞いた魔理沙は今にも泣き出しそうな顔で美奈に歩み寄ると、そっと抱き寄せた。「美奈……お前は……お前ってやつは……」
「魔理沙……」
美奈の目からも涙が溢れ出した。
「美奈……寂しい思いをさせてすまなかったな」
「魔理沙……私はもう大丈夫よ。魔理沙がいてくれるから」
二人はお互いの体を抱きしめ合うと、声を上げて泣いた。その様子を見て他の者たちは何も言えずに黙って見守るしかなかった。
***
「さて、感動の再会も済ませたところで本題に入りましょうか」
紫は仕切り直すようにして話を始めた。
「えっと、確か私をここに呼んだ理由を聞こうと思ったんだけど」
「そうよ。私も聞きたかったわ」
霊夢の言葉に反応したのは、いつの間にか現れた紫ではなかったもう一人の人物だった。
「誰だ?あんた」
霊夢の質問に対し、「八雲藍だ」と名乗るとその者は人差し指を一本立てて説明し始めた。
「私は八雲紫様に仕える式神の一人だ」
「式は分かるけど、その『仕える』っていうのは何よ」
「分かりやすく言えば、紫様に忠誠を誓っているということだ」
「ふーん……それで?そんな偉い人がどうしてここにいるわけ?」
霊夢は興味なさげにそう訊ねると、藍は少し間をあけてから答えた。
「実は……ここだけの話だが、霊夢と魔理沙の二人がいなくなったせいで幻想郷は大変なことになっている」
「……どういうことよ?」
「つまりだな……霊夢たちがいないせいで幻想郷のバランスが崩れてしまったのだ」
「バランス?」
「ああ。簡単に説明すると、例えば妖怪の数が増えすぎたとする。するとどうなる?」
「どうなるって……」
「妖怪たちはお互いに殺し合いを始めるだろう」
「まあ、そうでしょうね」
「そうなれば、人間たちにとって非常に困った事態になる」
「そうね」
「だから私たちは幻想郷を守るために奔走していたのだが……」
「ちょっと待て。じゃあ何で幻想郷は滅茶苦茶になってないんだよ」
「それは……」
「それは私が結界を張って守っていたからだ」
「何のために?」
「この世界を外から隔離するためだ」
「何だって?」
「いいか、よく聞け。この世界は外の世界と繋がっている。もし仮にこの世界に何か異変が起きた場合、外の世界の人間がこの世界に入ってくる可能性があるのだ」
「え?じゃあ私と魔理沙は……」
「そうだ。この世界で何かが起きれば、それはすぐに外の世界に伝わってしまう」
「でも私達には関係無いじゃない」
「いいや、あるぞ。この世界が壊れたら外の人間は誰もこの世界に来ることが出来なくなる」
「じゃあ私たちがこの世界から出ていったら、外の人たちが危ないんじゃ」
「そういうことになるな」
「なら、早く帰らないと!!」
美奈は慌てたが、それを制止したのは魔理沙だった。
「待て、落ち着け。ここは幻想郷だ。幻想郷でなら、たとえどんな事が起こっても外には一切影響は出ない」
「え?」
「だから、安心しろ。お前の居るべき場所はここなんだ」
「そう、なの?」
「ああ、そうだよ」「魔理沙がそう言うなら信じるわ」
「それでは、これで話は終わりね」
「まだだ。最後に一つだけ聞かせろ」
「何?」
「何で美奈を騙して連れてきた?」
「……何のことかしら?」
「とぼけるな。美奈が言ってただろ?霊夢に会いたいと」
「……それがどうかしたの?」
「お前は美奈の願いを叶えただけだと言うつもりか?」
「もちろん、その通りよ」
「ふざけるな!!何が目的なんだ!?」
「……別に何も」
「……なんだと」
「私は、小暮美奈の本当の望みを教えてあげただけ」
「それが、これだと」
「そうよ」
「……っ」
魔理沙は怒りに満ちた目を向けるが、紫は涼しげな態度でそれを受け流した。
そんな時、霊夢が静かに口を開いた。
「……魔理沙、もういいわ。ありがとう。でも、私は帰りたいの。お願い……私を助けてくれないかしら?」
「霊夢……分かった。一緒に行こうぜ」
魔理沙は微笑みながら手を差し伸べた。しかし、その手を取ろうとはしなかった。
「魔理沙、私は一人でも行くわ。だから先に帰ってちょうだい」
霊夢は笑顔で言うと、一人神社を出て行ってしまった。
残された者たちはしばらくの間、呆然と立ち尽くしていた。
霊夢は森の中を歩いていた。しかし一向に森を抜ける様子は無い。
その時だった。
後ろから足音が聞こえてくる。誰か来たようだ。しかし、振り向いても誰もいなかった。気のせいだったのかな?霊夢は歩き出そうとしたが、今度は前方から別の音が聞こえてきた。
霊夢は再び振り返ったが、やはりそこには誰もいない。しかし今度は前方の地面から小さな光が現れた。
やがて光が消え、中から現れたのは妖精だった。霊夢はその姿に見覚えがあった。
「あなたは、いつも神社の縁側でお茶を飲んでいる子よね」
霊夢は優しく問いかけるが、妖精は何も答えずに飛び去ってしまう。追いかけようとしたが、目の前の地面に再び光が灯る。今度こそ現れるのだろうと警戒していたが、そこから出てきたのは全く予想していない人物だった。
「あれ……ここはどこだぜ?」
霧雨魔理沙は周りを見渡した後、霊夢に気づくと目を丸くする。
どうしてこんなところに魔理沙がいるのか不思議だったが、今は考えている暇はない。
魔理沙が近くにいることで先ほどの妖精は姿を現さないのではないかと考えた霊夢は、すぐさま駆け寄って声をかけた。
しかし、反応がない。もう一度声をかけてみたが、魔理沙の目は虚ろで意識があるのかさえ怪しかった。霊夢は仕方なく魔理沙を背負い、その場を離れることにする。
しばらく歩いたところで、またもや前方に光が見えた。霊夢は無視しようとしたが、魔理沙を背負っている以上避けて通ることは不可能である。霊夢は諦めて進むことにした。
しかし霊夢の予想に反して、そこにあったのは一人の女性だった。
その女性は霊夢に気がつくと、笑みを浮かべて話しかけてきた。突然の出来事に戸惑っていると、女性の顔は霊夢の顔へと変わっていく。霊夢は思わず後退りしてしまうが、逃げることは出来なかった。女性の手がゆっくりと霊夢の肩に伸びていく。
そしてその手が霊夢の体を掴んでしまった。霊夢が目を覚ますと、そこは神社の寝室だった。いつの間に眠ってしまったのだろうかと考えていると、部屋の入り口の方から聞き慣れた少女の声が聞こえた。
魔理沙だ。どうやら魔理沙は霊夢を探していたらしい。ようやく見つけたかと思うと、寝ていた自分の上に霊夢の姿が映る。魔理沙はそれを見た途端、血相を変えて飛び起きた。
何が起こったんだと尋ねる魔理沙に、霊夢は一部始終を話した。 

 

(霊夢……どうか幸せになって)

話を聞き終えた後で、魔理沙は霊夢に謝罪した。それから、二人でこれからのことについて話し合ったが、特にこれといった良い案が出てくることは無かった。話し合いが終わると、魔理沙は疲れているだろうから休めと言って部屋を出ていこうとする。そこで、霊夢はずっと疑問に思っていたことを尋ねた。なぜ自分を連れ出したのかと。すると魔理沙は一瞬躊躇う素振りを見せたが、意を決したように口を開く。それは自分が外の世界にいた時に知り合った友達に似ていたからだ、と。そう言われてもピンとは来なかったが、とりあえず納得しておくことにした。霊夢は続けて他にも何か自分に出来ることがあれば協力させて欲しいと告げると、それなら少し頼み事があると返ってきた。それは博麗の巫女としての力がどれくらい使えるのか試したいので、この境内にある札を一枚持って外に出てほしいという事だった。霊夢はそれを承諾すると、札を持って外に出て行った。

***
紫が説明を終えると、皆はそれぞれ思い思いのことを呟いていた。その中で藍は一つの質問をした。
紫は幻想郷を守るために結界を張っていると言った。ならば、この世界に存在する他の生物たちにはどんな影響が出る?紫の説明を聞く限りこの世界に住む生き物たちは、外の世界に影響を与えられないように思えるのだが……藍の言葉を聞いた紫は難しい顔をしながら説明を続けた。この世界では妖怪たちの数が多すぎるため、バランスが崩れると妖怪たちが互いに殺し合いを始める恐れがあること。そうなれば幻想郷は簡単に崩壊しかねないということ。だからこそ、幻想郷を守るために結界を張って守ろうとしていること。藍の質問に対して紫は全ての問いに対し、答えられるだけの情報を持ち合わせていなかった。だから紫は幻想郷を守るために尽力していることを伝えた。
その言葉を聞いても、霊夢たちの中には疑念が生まれつつあったのだが、結局その真偽を確かめる手段は無かったのでそれ以上言及することをやめた。

***
その後、二人は神社に戻り今後の方針について改めて話し合う事にした。魔理沙は自分の魔法薬の材料を集めに行くために暫く家を留守にすると言っていたが、本当は美奈を連れて家に帰るつもりだったのだ。しかしその話をすると美奈は、魔理沙と一緒なら幻想郷で暮らしたいという返事が帰ってきた。魔理沙は当然反対したが、それでも美奈の意志は変わらなかった。そこで、霊夢はしばらくの間二人を神社に置いておくことに決めた。その間、美奈には神社の家事を任せることにした。
霊夢は毎日美奈と行動を共にするようになった。最初はお互い距離感をつかむことが出来なかったが、次第に仲良くなっていった。しかし、そんなある日のことだった。魔理沙が材料を集める為に外出した日、美奈が買い物をしてくると言い残して神社を後にした。その時の美奈の様子がおかしいことにはすぐに気づいたが、何が原因なのかまで知る由もなかった為、美奈が帰ってくるのを大人しく待っていた。だが美奈が帰ってこない。いくら待っても美奈が戻って来る気配が無かった。
不安になった霊夢は神社を出ると辺りを探索してみる事にした。
しばらくして霊夢は人里で美奈の姿を見つけることが出来たが、そこには信じられない光景が広がっていた。美奈は複数の人間に取り囲まれており、その中には見知った男の姿もあった。霊夢はその光景を見て、急いで止めに入るが時すでに遅く、取り押さえられてしまった。男は魔理沙の知り合いだと名乗ると、霊夢に向かっていきなりナイフを振りかざしてきた。幸いにも、すぐに霊夢に危害を加えるつもりはないらしく、そのまま神社に連れて帰ろうとしたが、その時霊夢が抵抗したためにやむなく手荒な方法で連れ帰る羽目になってしまった。霊夢は魔理沙の事を頼むと必死で訴えるが、誰も聞いてはくれなかった。
それどころか霊夢は、その日から暴力を振るわれる日々が始まった。霊夢が逃げ出さないようにするためか手足は常に拘束されていた。
さらに食事さえも満足に与えてもらえず、衰弱していく一方だった。
その事を知った魔理沙が救出しようと乗り込むものの、返り討ちに遭ってしまう。魔理沙はそのまま監禁されてしまった。
「……これが全てだ」
藍は静かに語り終えると同時に大きな溜め息を吐いた。それを見た霊夢が悲痛な面持ちを浮かべる。魔理沙が誘拐された理由については大体想像がついた。
「まさか……私のせいだったなんて」
美奈は両手で顔を覆い、肩を震わせて泣いている。その様子を見た霊夢がそっと抱き寄せた。
「気にしないでいいのよ。私が勝手にやったことだもの」
「でも……」
美奈が嗚咽まじりにそう言うと、霊夢は優しい笑顔を向けた。
しかし、それも束の間。霊夢の顔からは表情が消えてしまう。そして霊夢は静かに口を開いた。
美奈は幻想郷へ来て間もない頃は霊夢を尊敬していたが、今ではその姿は見る影もない。しかし霊夢にとっては美奈が自分の娘のように可愛く思えていたので仕方の無いことだった。しかしこのまま放置すれば、いずれ美奈が壊れてしまうことも分かっていたため、どうにかしなければならなかった。だから私は美奈の為に、魔理沙の為に出来る限りのことはするつもりよ。たとえそれで自分がどうなったとしても構わないわ。でも一つだけお願いがあるの。私はこれからしばらくの間眠りにつくけど、その間に霊力の封印を解くことが出来る者がいれば私を起こしてちょうだい。そうしないと今度こそ私は完全に消滅してしまうかもしれないから……。

***
あれから一週間が経過したが、未だに誰一人として目を覚ます者は現れない。霊夢の言った通り、幻想郷に異変が起きた様子は無いようだ。
霊夢は相変わらず眠っている。もうじき目を覚ますのだろう。
そして目覚めた時には、霊夢はこの世界にはいない。そう思うと寂しさを覚えるが、同時に安心している自分もいることに気付く。これでよかったのだと……きっと霊夢の事を大切に思ってくれる誰かが現れてくれるはずだと。
そんなことを考えながら縁側に腰掛けていると背後から声をかけられた。
振り向くとそこには魔理沙がいた。どうやら魔理沙の方は順調に回復したようで、今はいつも通りの服装に戻っていた。
隣に座るよう促すと、魔理沙は遠慮がちにそこに腰掛けた。それからお互いに何も言わないまま時間が過ぎていったが、やがて魔理沙が意を決したように話し出した。
自分は霊夢が幻想郷に戻ってきたら自分の想いを伝えるつもりでいる。その話を聞いた時、美奈は驚いたが魔理沙ならきっと霊夢に似合った良い男性になれると思った。そこで、もし霊夢が起きていたら伝えて欲しいことがあると魔理沙に頼まれる。しかし、魔理沙は困ったような顔を浮かべるだけで、なかなか口に出してはくれない。美奈が痺れを切らせて早く言ってあげてと言うと、魔理沙は大きく深呼吸をして霊夢の方を真っ直ぐに見つめた。
それから一言一句間違えずに言葉を紡ぐ。それはまるで呪文のような、どこか懐かしさを感じるものだった。魔理沙はそう言い残すと立ち上がって、美奈に別れを告げると去って行ってしまった。美奈は呆然としながらその背中を見送ると、しばらくその場に立ち尽くしていた。そして空を仰ぎ見ると、霊夢の事を想う。
(霊夢……どうか幸せになって)
その瞬間、霊夢の身体に変化が訪れる。霊夢は再び目を開くと、目の前にいる存在を視界に捉える。その視線に気づいた少女は、ゆっくりと霊夢の方へと振り返る。少女は目に涙を浮かべると、微笑みかけた後で静かに呟いた。ありがとう……それからごめんなさい。
少女が何を言っているのか分からない霊夢だったが、何かを伝えようとしていることだけは理解できた。だからもう一度よく見ておこうと思い、目を凝らす。すると少女の身体は徐々に透けていき、ついには消えてしまった。その直後、激しい頭痛に襲われて意識を失いそうになる。だが、ここで自分が倒れたら誰が幻想郷を守るのか。だから歯を食いしばって必死に耐えると再び辺りの様子を確認する。そこは神社の寝室であり、傍らには心配そうな顔をした少女の姿があった。そこで初めて自分が倒れていたことを理解すると、美奈に向かって手を伸ばすと掠れた声で話しかける。大丈夫よ……。まだ時間があるはずよ。そう伝えると美奈が泣き出しそうになっているのが分かった。しかし霊夢はそれを止める術を持っていない。せめて少しでも美奈の支えになろうと手を握りしめると、美奈は強く握り返してきた。しかし、それすらも出来なくなるほど体力は低下しており、やがて霊夢の手は美奈の腕の中へ収まると完全に力が抜け落ちてしまった。

***
魔理沙は自分の気持ちを伝えた。それは紛れも無い事実なのだが、どうしても引っかかることがあった。あの日以来、美奈の様子がおかしいのだ。いや、おかしいのは最初からか。 

 

それからしばらく時間が経った

ここ最近、美奈が自分に対して向ける視線に違和感を覚え始めていた。最初は嫌われてしまったのだろうかと悲観的になっていたのだが、美奈はただ黙っているだけだった。しかし今日、ようやくその理由が明らかになったのだ。魔理沙が部屋に戻ると、美奈が一人で涙を流しているのを見つけた。美奈が何故泣いているのか理由はわからない。だけど理由を聞いてはいけない気がした。だから美奈が落ち着くまで傍にいてやることにする。だが魔理沙が部屋に戻ってくると美奈は突然、魔理沙の胸に飛び込んできた。一瞬驚くが、優しく抱きしめて頭を撫でてやると美奈は落ち着きを取り戻したようだった。そして美奈の話を最後まで聞くと、今度は魔理沙が泣かないように必死に我慢する。だが美奈の涙は止まることを知らずに溢れ続けた。それでも美奈は話し続ける。それがどんな内容であれ、魔理沙は最後まで美奈の話を聞くつもりだ。すると美奈は魔理沙が想像していたこととは真逆の内容を口にして見せた。美奈の話は霊夢がこの世界に残した言葉だった。魔理沙はそれを静かに聞いていた。美奈は魔理沙の胸に顔を埋めて、泣いていた。だが美奈は魔理沙から離れると、精一杯の笑顔を見せると「今まで本当にありがとね」
と言い残して神社から出て行く。
「待ってくれ!!」
***
(どうして……こんなことになったんだろうな)
霊夢の言葉を思い出す。今にして思えば、あれは別れの挨拶のようなものだったに違いないと思うと、今すぐにでも探しに行きたかった。でも今の状態ではとてもじゃないが霊夢の力になれそうもないな。霊夢が起きるのはまだ先になるだろうからその間に強くなる必要がある。今の私では足手まといにしかならないだろうな。だから今は耐えるしかない。いつかまた霊夢に会える時までに必ず力を蓄えておくからな!待っていてくれ!!そして魔理沙が立ち去ろうとすると背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
私は目を覚ますと見慣れない天井が広がっていた。何が起きたのかさっぱり分からないがとにかく起き上がろうとしたところで手足を拘束されていることに気が付く。私はどうやら監禁されていたらしい。しかしここはどこなんだろう?周りを確認してみると、どうやら私は牢屋の中に居るようだ。
とりあえずここから出られないかなと考えているところに魔理沙がやってきた。どうやら私を助けに来てくれたようだ。私は拘束を解かれた後、一緒に脱出する。私はどうすればいいのかわからなかったから、魔理沙の言うとおりにすることにする。そして二人で脱出を試みてみたけれど、見張りの人間がいるらしく上手く逃げ出せたとしても、結局見つかってしまう。
それから数日が経った。私は毎日のように殴られたり蹴られたり、挙句の果てには首を絞められる始末だった。そんなある日、魔理沙が助けに来てくれたが返り討ちに遭ってしまう。でも魔理沙が頑張ってくれている間に、なんとか逃げ出すことに成功した。それから数日間は魔理沙と一緒に行動していたけど、いつの間にかいなくなってしまった。きっと魔理沙にも事情があったのだろうと納得はしているものの、やっぱり不安で堪らない。それから数日後に霊夢の声が聞こえると魔理沙は嬉しそうに駆け寄っていくが、途中で異変に気が付いたようで急いで引き返していった。それから数時間後、美奈と藍の会話に耳を傾けていた時のことだった。
美奈が語った内容は衝撃的ではあったが、どこか嘘臭いように感じられ、信じようとしない者がほとんどであった。美奈自身も魔理沙のことを疑う気は無いが、やはり気になってしまう部分があった。そこで魔理沙のことについて調べてみることにしたのだが、どうもおかしな点がいくつかあった。例えば博麗霊夢のことだとか……。そもそも幻想郷に七人しか存在しない筈なのに八人目の名前が出てくる時点でおかしかったのだが、それ以上に奇妙な点が一つだけある事に気付く。それは魔理沙が八雲紫と知り合いであること、更には霊夢とも知り合いであるということ。
美奈は霊夢に魔理沙のことを任せてみることにする。それからしばらくして美奈が目を覚ますと、霊夢の姿が見当たらない。慌てて飛び起きると、美奈は辺りを探し回る。そして神社の中を隈なく探すがどこにも居ないようだ。
美奈は一旦落ち着いてから考えることにした。まずは魔理沙に連絡を取ることを考える。電話を掛けてみたものの繋がらず留守番サービスに繋がっただけだった。それから魔理沙の家に向かうことにした。
魔理沙は霊夢が幻想郷に戻ってきたら自分の想いを伝えるつもりでいる。その話を聞いた時、美奈は驚いたが魔理沙ならきっと霊夢に似合った良い男性になれると思った。そこで、もし霊夢が起きていたら伝えて欲しいことがあると魔理沙に頼まれる。しかし、魔理沙は困ったような顔を浮かべるだけで、なかなか口に出してはくれない。美奈が痺れを切らせて早く言ってあげてと言うと、魔理沙は大きく深呼吸をして霊夢の方を見つめる。
そこで美奈は思わず息を呑む。まさかそんなはずはないと心の中で否定するが、目の前にある現実は覆せない。
それから魔理沙は霊夢の事を好きだと伝えた後に、これからは霊夢の代わりに私が守ってみせると宣言すると、美奈は涙を浮かべて魔理沙の背中を見送った。
魔理沙は美奈の言っていた事が本当だと知った。それから霊夢の身に何かが起こったことも。美奈の話が真実だというのならば、霊夢はもう二度と目覚めることが無いのかもしれない。魔理沙は霊夢にもう一度会いたいと願う。しかし、いくら祈っても霊夢は戻ってこなかった。
それからしばらく経つと、魔理沙は霊夢の言葉を思い出した。そして霊夢の言葉を噛み締めるように思い出す。
それから魔理沙は霊夢を探す旅に出る。しかし、手がかりは何も無いままだ。それでも諦めずに旅を続ける。
それからしばらくすると、魔理沙は霊夢の行方を知ることになる。
霊夢は生きている。その事実を知った時の喜びは計り知れないものだったが、同時に疑問が浮かぶ。一体誰が霊夢を助けたのか。それにどうして美奈の家に居るのか。しかし考えても答えは出てこない。だから直接本人に聞くことにしよう。
魔理沙が美奈の元へ向かう。するとそこには見覚えのある人物が立っていた。その人物はこちらに気づくと、笑顔で手を振りながら近づいてくる。魔理沙はその人物の正体を知らなかったが、どこか懐かしい雰囲気を感じていた。すると美奈が急に立ち上がって、そのまま走り去ってしまった。
美奈は神社を飛び出して、森の中へと入っていった。すると、後ろから誰かが追いかけてくる気配を感じた。美奈は恐る恐る振り返ってみると、そこにいたのは霊夢だった。霊夢は美奈を見つけると、何も言わず抱き寄せて頭を撫でてやった。美奈は我慢していたが、ついに堪え切れなくなって泣き出してしまった。

***
美奈が泣き止んで落ち着いた頃、魔理沙は霊夢に質問をする。霊夢は魔理沙の問いに対して真剣に答える。だが、魔理沙は納得できない様子だった。魔理沙は美奈に話した内容と、霊夢が知っている内容を照らし合わせて矛盾点を指摘して見せると、霊夢は美奈の話を補足するように説明を始めた。美奈が魔理沙に話した内容は、あくまでも魔理沙が聞いたことの無い情報ばかりだった。だから魔理沙は美奈の話を信じることができなかったのだ。
魔理沙が美奈に話したことは全て本当の事だ。ただ、その中に一つだけ嘘が含まれている。魔理沙は美奈に話していないことがあった。それは美奈の話を信じないということだった。魔理沙は確かに美奈の話を聞いて、霊夢が生きていると聞いて喜んだ。しかし、どうしても美奈の話に嘘が混じっている気がしてならなかったのだ。美奈の話を信じてしまえば、霊夢が生き返ったという事実を認めてしまう事になる。それではあまりにも都合が良すぎる。だから魔理沙は美奈の話を全て信じた訳ではなかった。
魔理沙が霊夢の話を聞いて、少し考える素振りを見せる。すると霊夢は魔理沙の肩に手を置くと、安心させるように優しく微笑んだ。すると魔理沙は霊夢に全てを委ねることにした。霊夢は魔理沙の頭を撫でてやる。すると魔理沙は照れたようにそっぽを向いてしまった。
美奈は二人の様子を羨ましそうに見つめていると、突然霊夢に抱きしめられた。それからしばらくの間、霊夢は美奈の面倒を見てくれた。その間、霊夢は美奈に色々なことをしてくれた。それはまるで母親のように優しく接してくれ、美奈は霊夢のことをお母さんと呼びたいくらいだった。

***
それからしばらく時間が経った。魔理沙が霊夢の元へやって来たのは、美奈が霊夢の元に預けられてから数日後の事だった。魔理沙は霊夢の姿を見て、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔になると「おかえり」と言って霊夢を抱き寄せる。霊夢も笑顔で「ただいま」と答えた。
魔理沙は霊夢から美奈の話を聞いた。美奈は魔理沙に謝ると、魔理沙に許してもらえたので、霊夢の所にいても大丈夫だということを伝えた。魔理沙は霊夢の顔をじっと見つめて、本当に霊夢なんだなと呟く。
魔理沙が美奈に霊夢の事をよろしく頼むと伝えると、美奈は嬉しそうな笑みを浮かべて、任せてください!と胸を張って見せた。
それから魔理沙は美奈に別れを告げると、美奈は魔理沙を引き留めようとしたが、すぐに諦めたようだ。魔理沙が行ってしまうのは寂しいけれど、霊夢と魔理沙の邪魔をしてはいけないと自分を律する。
魔理沙は改めて美奈に礼を言うと、今度は美奈のほうから魔理沙に話しかけてきた。魔理沙が美奈の顔を見ると、美奈は満面の笑みを浮かべていた。
魔理沙が家に帰ると、魔理沙は疲れたから休むと行って自室へ戻っていく。
「ねぇ、魔理沙?」 

 

取り持ってあげられないかな?

魔理沙が階段を上っている最中に呼び止められて立ち止まる。
魔理沙が振り返ろうとすると、背中に柔らかい感触を感じる。それは紛れもなく霊夢のものだった。霊夢は魔理沙に抱きつくと、
「大好きよ。魔理沙。ずっと一緒にいてね……」
と耳元で囁いた。魔理沙は嬉しそうに頬を緩めると、私も大好きだぜと返す。霊夢が幸せそうに笑ってみせると、魔理沙も霊夢と一緒に笑い合った。

***
魔理沙が美奈のところへ向かっていると、途中でアリスにばったりと出くわした。
それからしばらく二人は世間話をしていたのだが、途中で美奈のことを聞く。するとアリスが、美奈は霊夢のところに預けてあると教えてくれる。魔理沙はお見舞いついでに霊夢の顔を見て帰ることにした。
美奈の家に着くと、玄関の前に誰かがいることに気付く。魔理沙はその人物が誰なのか分かると、大きく手を振りながら声をかける。霊夢も手を振って返事をしたが、魔理沙が駆け寄ってくると、霊夢は咄嵯に身を引いた。魔理沙はそれを不審に思いながらも霊夢に近づくと、いつもの調子で話しかけた。
それからしばらくすると、魔理沙はふと思い出したかのように美奈に霊夢のことについて訊ねる。美奈は霊夢に魔理沙の看病を任せたと答えると、美奈が魔理沙を家に上げると、霊夢は魔理沙を部屋に連れて行った。霊夢が魔理沙と美奈に紅茶を入れて持ってきたところで、三人でのお茶会が始まった。最初は和やかなムードだったが、徐々に雲行きが怪しくなってきた。霊夢が二人の会話に割って入って魔理沙を自分の方に向かせると、強引に唇を奪う。
すると魔理沙も負けじと霊夢の体を押し倒してそのまま上に覆い被さる。そして二人は激しく求め合うと、服を脱ぎ捨ててお互いの体を貪り合った。
***それからしばらくして、二人がようやく落ち着きを取り戻した頃、美奈が魔理沙と霊夢の元にやってきて霊夢の様子を見に行った。
それからしばらくすると、美奈が霊夢の様子を見に魔理沙の部屋に入ってくる。そこで美奈は魔理沙の体に霊夢が寄り添って眠っているのを発見する。美奈が魔理沙の側に歩み寄ると、魔理沙が霊夢の頭を撫でながらこちらを見据えてくる。その瞳には涙を浮かべていて、どこか寂しげだった。
美奈は思わず息を呑むと、どうしたらいいのか分からずに戸惑っていた。しかし、いつまでもここに居座っていては迷惑がかかるかもしれないと考え直し、その場を離れることにした。
美奈は外に出て空を見る。そこには月明かりが輝いていた。
美奈はしばらくの間その場に佇んでいたが、意を決したように踵を返し歩き始める。美奈はこれからどこへ行くのかは分からない。それでも前に向かって進むしかなかった。美奈が行く先に待っているものは希望か絶望かも分からない。それでも前に進んでいけばいつか辿り着くと信じて……。
私は美奈の家から少し離れた場所にある公園に来ていた。ブランコに座って一人物思いに耽っていると、突然後ろから肩を叩かれた。驚いて振り返るとそこには咲夜が立っていた。
咲夜に何か用ですか? と尋ねると、彼女は笑顔で隣に腰掛ける。そしてしばらくの間、お互いに無言のままだったが、不意に咲夜の口が開いた。
「霊夢さん……貴方はまだ諦めないのですね。私の能力で時間を止めても、すぐに動けるようになっているようですし、どうやったらあの人を救えるんでしょうかね」
そんなの分かりませんよ。でもきっと方法が見つかるはずですよ。それまでに私は強くなるだけです。
すると咲夜が呆れたような顔をしてため息をつく。すると急に立ち上がり、霊夢に近寄ると手を差し伸べた。
「貴女はそれで良いんですか?」
はい。
「本当にこのままでいいと思っているのですか!?」……
すると咲夜が突然霊夢に掴みかかってきた。霊夢は抵抗しなかった。というより、出来なかったのだ。なぜなら彼女の力の方が上回っており、振りほどこうとしてもびくともしないからだ。
「霊夢さんのバカ!なんで諦めちゃうんですか!あなたならできるはずじゃない!もっと自分に自信を持って下さいよ!それに貴女の気持ちはもう魔理沙ちゃんに伝わっているんじゃ無いの!?」
えっ? すると突然、霊夢の体が宙に浮かぶ。
「私が今から魔法をかけてあげるわ。この世界が終わらない限り解けることの無い、強力な魔法の呪いをね!」
霊夢が下を見下ろすと、そこに咲夜の姿は無かった。辺り一面見渡してもどこにもいない。霊夢は不思議に思って首を傾げる。
「ねぇ、魔理沙」
霊夢は振り返って魔理沙の方へ目を向けると、魔理沙と目が合った。
「お前、いつから気付いてたんだ?」
霊夢は黙ったまま魔理沙の顔を見つめていた。
「まぁ、バレちまったもんは仕方ないか。私、実は霊夢に言いたいことがあるんだぜ」
魔理沙は真剣な眼差しを浮かべて、霊夢の顔色を窺う。
私、霧雨魔理沙は博麗霊夢が好きである。友達としてではなく、
「愛しているんだぜ。霊夢」
霊夢が驚いたように目を大きく開くと、魔理沙は微笑みながら言葉を続けた。
「ずっと前から好きだったんだ。こんな時に言うのはおかしいと思うけど、言わずにはいられなかったんだ。もし良ければ、返事が欲しい。もちろん、ダメだったら断ってくれて構わないぜ」
魔理沙はそう言って、返事を待っていた。霊夢は目を瞑ると、考え込むように俯いた。
「分かった」
「じゃあ……」
魔理沙はそう言ったきり黙ってしまう。
「何がわかったのよ……」…………。
しばらく沈黙が続くと、唐突に魔理沙が立ち上がって走り去ろうとする。霊夢の顔を見ると辛そうな表情を浮かべているのが見えた。それが嫌だったので慌てて追いかけようとしたが、
「来なくていい!」
そう言われてしまうと足が動かなかった。魔理沙はそのまま何処かに行ってしまった。霊夢は悲しそうな顔を浮かべて立ち尽くすことしかできなかった。

***
魔理沙と別れて、美奈はあてもなく歩いていた。
「あれ、美奈じゃん。どうしたんだよ、そんな暗い顔をして。なんかあったのか?」
美奈は声をかけられて振り返る。するとそこには早苗がいた。
「いえ、何でもありません。それより、どうしてここにいるんですか?」
「ああ、ちょっと気分転換に散歩してただけだよ。美奈こそこんな時間に何をしてたの?」
「私も似たようなものです。特にこれといった理由はありません。強いて言えば、悩み事があるからでしょうか?」
「ふーん。それって魔理沙のこと?」

「はい。魔理沙のことで悩んでいるんですよ。魔理沙のことが好きなのに、それを伝えられないままでいるのが辛いんです。いっそ伝えてしまおうかなと思ったこともありますが、やっぱり怖いです。だから、どうすればいいのか分からず、困っているんです。でも、魔理沙のことは諦めたくないんです。どうにかならないものでしょうか?」
美奈がそう告げると、早苗はしばらく考えてから美奈のほうを向いた。
「魔理沙のことが好きだっていうのは本当なんだよね?それは間違いない?」

「はい。そうですが……」
美奈がそう答えると、早苗はしばらく黙り込んでから口を開いた。
「ねぇ、美奈。魔理沙のこと、助けてあげてくれない?お願い……」
美奈はしばらく考えると、
「それはどういう意味ですか?具体的に教えてくれないと分からないですよ」
と、聞き返した。すると、
「魔理沙は今、霊夢さんのことが好きで好きで堪らないの。だけど、霊夢さんは魔理沙のことをただの友達だと思っていて、全く相手にしてくれていないの。だから、なんとかして二人の仲を取り持ってあげられないかな?って思ったんだけど……。どうかな?魔理沙のこと、助けてくれる?」
美奈はしばらく考えた後、
「分かりました。やってみましょう。でも、魔理沙が素直に話を聞いてくれるかどうかわかりませんが、そこは任せて下さい。絶対に何とかして見せます」
美奈が力強く宣言すると、早苗は安心したような笑みを浮かべて美奈の手を取った。
「ありがとう。美奈。私、美奈のそういうところ大好き。これからもよろしくね」
美奈は早苗に手を握られて照れ臭くなったのか、頬を赤く染めると恥ずかしそうにしていた。
それからしばらくして、美奈は魔理沙の家の前に立っていた。美奈は緊張した面持ちでインターホンを押すと、中から魔理沙が出てきた。「美奈か。何か用か?もしかして、霊夢の件についてか?だとしたら悪いが、今は誰とも話したくはないんだ。帰ってくれ」
魔理沙が冷淡な態度で美奈に接すると、美奈はそれでも食い下がった。「魔理沙さん、聞いてください。私は霊夢さんと貴方を仲良くさせる為にやってきました」
魔理沙は美奈の言葉を聞くと、不機嫌そうな顔をする。
「余計なお世話だっての。いい加減にして帰れよ」
しかし、美奈はそれでも引き下がらなかった。「私は霊夢さんに頼まれて来たんです。魔理沙さんが元気が無いようだから見てきてって言われたんです。だから、話を聞かせてください」
「……霊夢が私を心配してくれたってのかよ……。嬉しいぜ……。でも、私は大丈夫だ。心配いらねえよ。さっきの話は忘れろ」
魔理沙は美奈を追い返そうとする。
「本当に霊夢さんの気持ちを考えていませんね。霊夢さんの気持ちは私には分かりませんが、きっと魔理沙さんのことを考えています。だから、霊夢さんの気持ちを汲んであげたらどうですか?」
美奈は魔理沙に訴えるが、それでも魔理沙は首を横に振る。
「それでも私は霊夢の気持ちに応えられない。あいつの気持ちには応えてやれないんだ」
「なぜですか?霊夢さんの気持ちを受け止めてあげれば良いじゃないですか。そうすれば霊夢さんの気持ちが報われるかもしれないのに」 

 

「いい眺めだぜ」

「霊夢の気持ちに応えることは出来ない。霊夢とはずっと一緒に居たいと思っている。だからこそ、この気持ちは隠し通さなければならないんだ。私のこの気持ちは霊夢を苦しめるだけだから」
「そんなことないと思いますよ。霊夢さんは魔理沙さんに好意を抱いているはずです。魔理沙さんはどうなんですか?」
「私は霊夢のことが大切だし、大切に思っている。でも、霊夢は私のことを友人としか見ていない。それに私は霊夢を不幸にしたくないんだ。霊夢が幸せになってくれればいいんだ」
「霊夢さんは貴方と一緒に居るだけで幸せなんじゃ無いんですか?」
「霊夢は私に幻想郷を救ってほしいと思っているはずだ。私と付き合うなんてことになったら、その期待を裏切ることになる。それだけは出来ないんだ」
「じゃあ、もし魔理沙さんの身に危険が迫ったら、霊夢さんは魔理沙さんの側にいられなくなるんですよ。それでもいいんですか?」
「霊夢が私の為に傷つく姿は見たくない。それに霊夢は強いから、どんな危機的状況に陥っても切り抜けられると思うぜ」
「魔理沙さんの言う通りかもしれませんが、霊夢さんが怪我をしない保証はどこにもないんですよ。それでもいいんですか?」
「霊夢が危険な目に遭うくらいなら、私が霊夢の代わりになってやる。霊夢が無事ならそれで構わない」
「本当に霊夢さんの為を思うなら、霊夢さんの気持ちに応えてあげるべきです。霊夢さんは魔理沙さんに恋をしているんですよ」
「ああ、そうだな。分かってるんだ。霊夢の想いは分かっているつもりなんだ。だけど、この気持ちは霊夢に知られてはいけないんだ」
「霊夢さんに自分の気持ちを伝えようとはしないんですか?」
「出来るわけないじゃないか。私と霊夢はずっと一緒だったんだ。今更告白したって遅いんだ。霊夢を困らせることになる」
「そうですか……」
美奈は悲しそうな顔をして俯くと、「そういえば、魔理沙さんはどうしてこんな時間に外に出ていたんですか?」
美奈が質問すると、魔理沙は顔を曇らせて答えた。「ちょっと眠れなくてな。気分転換に外の空気を吸っていたんだ」「眠れないんですか?」「ああ、なかなか寝付けなかったんだ。おかげで頭が痛いぜ」
「それって霊夢さんが原因ですか?」
「ああ、霊夢が近くにいないせいで寂しくて仕方がないぜ」
「そうですか……」
美奈はそう呟いたきり黙り込むと、しばらく俯いていた。そして、決心がついたのか顔を上げると、真剣な眼差しで魔理沙の顔を見つめた。
美奈はしばらく黙ったまま魔理沙の顔を見つめていたが、唐突に口を開いた。「魔理沙さんは霊夢さんのことが好きなんですよね?」
「いきなり何を言い出すんだよ。好きに決まっているだろうが」
「では、霊夢さんと付き合いたいとは思いませんか?」
「そりゃ、もちろん付き合いたいさ。でも、それは無理なんだ。今の関係を壊すわけにはいかないんだよ」
「どうしてですか?」
「霊夢は優しいから、私の気持ちを知ったらきっと受け入れてくれるだろう。でも、そうしたら私と霊夢の関係は今までとは違うものになってしまう。それは嫌なんだ。霊夢との関係を壊したくないんだよ」
「では、霊夢さんに自分の気持ちを伝えたことはありますか?」「ない。怖くて言えないんだよ。霊夢に拒絶されるのが怖いんだ。もうこれ以上関係が壊れるのはごめんだよ」
「でも、このままでいいんですか?このままだと後悔しますよ。今の関係が変わってしまうのが怖いというのであれば、いっそ伝えてしまえばいいんですよ。たとえ、霊夢さんが貴方の事をどう思っていても、伝えなければ何も変わりません。でも、伝えてしまえば、少なくとも今のままの関係ではいられなくなります。でも、伝えてしまわないと、いつまでも苦しい思いをすることになりますよ」
「確かにそうかもしれないな。だが、やっぱり怖いんだ。霊夢が離れていくのが怖いんだ。せっかく手に入れた幸せを失いたくないんだ」
「それならば、伝えてしまえばいいんです。例え、霊夢さんが魔理沙さんの気持ちを受け入れてくれなくても、伝えずにいるよりはましです。そうすれば、いつかは魔理沙さんの気持ちが伝わるかもしれません。その時に霊夢さんが魔理沙さんの傍にいなかったら、魔理沙さんは一生苦しむことになります」
美奈はそこまで話すと、ふぅっと息を吐いて呼吸を整えてから、再び口を開いた。「魔理沙さんは霊夢さんのことが好きではないんですか?本当は霊夢さんのこと、嫌いなんじゃないんですか?」
「そんな訳ないだろ!私は霊夢の事が好きだ。大好きだよ。だから、霊夢を傷つけるような真似は絶対にできないんだ」
「では、なぜ霊夢さんに本当の気持ちを打ち明けないんですか?霊夢さんに嫌われてしまうのが怖いからですか?それとも霊夢さんに嘘をついている自分が許せないからですか?どちらにせよ、魔理沙さんは霊夢さんに隠し事を続けているんです。それがどれほど辛いことなのか、魔理沙さんにも分かるでしょう?嘘をつくのはやめて下さい。お願いだから、霊夢さんの気持ちに向き合って下さい」
「分かったよ。霊夢に本当のことを言うよ。霊夢にちゃんと気持ちを伝えるよ。霊夢に全部打ち明けるよ。霊夢に私の気持ちを受け止めてもらうよ。霊夢がどんな反応をしようとも、霊夢の気持ちを受け入れるよ。だから、美奈、ありがとう。お前のおかげで目が覚めたぜ」
「良かった。魔理沙さんが元気になってくれて。これで安心しました。これからもずっと友達ですよ」
美奈の言葉を聞いた魔理沙は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になった。「ああ、ずっと友達だ」
美奈も笑みを浮かべると、「また遊びに来てくださいね」と言って帰って行った。
それからしばらくして、魔理沙は美奈の言っていた言葉を思い出していた。
『霊夢さんは魔理沙さんに恋をしているんですよ』
魔理沙は美奈の言葉を思い出すと、恥ずかしさのあまり顔を赤くした。
魔理沙は霊夢に告白しようと思ったが、やはり霊夢に真実を告げるのは躊躇われた。霊夢に告白して、もしも霊夢が魔理沙のことを受け入れられなかったら、霊夢と今までのように接することが出来なくなってしまう。そんなことになったら、魔理沙はきっと耐えられない。魔理沙は告白する勇気が出ないまま、ずるずると時間だけが過ぎていった。
そんな時、魔理沙は霊夢が生きているという噂を耳にした。
その噂によると、博麗神社には霊夢の幽霊が出るらしい。その霊夢はいつも巫女服を着ていて、とても綺麗なのだとか。その霊夢は夜になると神社の境内に現れて、何かを探しているのだという。その探し物を見つける為に、霊夢は毎晩境内をうろうろしているのだそうだ。そして、見つけたものは大事そうに懐に仕舞いこんで、どこかへ消えて行くのだとか。魔理沙はその話を聞いてからというもの、毎日神社に通った。しかし、いくら待っても霊夢は現れなかった。
そんなある日、魔理沙は偶然にも霊夢の霊夢に会った。その霊夢は魔理沙に気付くと、嬉しそうな表情をして駆け寄ってきた。
「やっと会えたわね。ずっと会いたかったんだから」
霊夢はそう言うと、魔理沙に抱きついてきた。「私だって霊夢に会いたくて仕方がなかったんだぜ」
「そうよね。貴方は私のことが大好きなんですものね」
「ああ、私は霊夢が大好きだ」
「私も貴方が大好きなの。ねぇ、私と付き合ってくれませんか?」
「えっ?」
魔理沙は驚いて目を丸くした。まさか霊夢の方から告白されるとは思っていなかったからだ。
「私じゃ駄目かしら?」不安そうな顔をして上目遣いに魔理沙を見つめてくる。
「そんなことはない。嬉しいぜ」
「じゃあ、付き合うということでいいのね?」
「ああ、よろしく頼むぜ」
「こちらこそ、よろしくね」
二人は見詰め合ったまま微笑んだ。
「じゃあ、まずは恋人同士として、一緒にお風呂に入りましょうか」
「ああ、いいぜ。って、ちょっと待て。何でいきなりそういう展開になるんだよ」
「あら、貴方は私のことが好きなんでしょう?」
「確かにそう言ったけど、まだ付き合い始めたばかりじゃないか。もう少し段階を踏まないと」
「大丈夫よ。私がリードしてあげるから」
「いや、そういう問題ではなく……」
「じゃあ、行きましょ」
霊夢は強引に魔理沙の手を引っ張って行く。
「ちょ、ちょっと待て。せめて服を脱ぐまで待ってくれ」
「嫌よ。早く脱ぎなさい」
「いや、こういうことはもっとムードを大切にしないと」
「うるさい。さっさと脱げ!」
霊夢が怒鳴りつけると、魔理沙はビクッと身体を震わせた。
「はい……」
魔理沙は大人しく従うことにした。霊夢に逆らったら何をされるか分からないし……。「ねえ、どうして裸にならないの?」
「いや、これはその……」
「言い訳なんて聞きたくない。さっさと裸になりなさい」
「いや、あの……」
「なるのかならないのかどっちなのよ?」
「……はい」
結局、霊夢に押し切られてしまった。
「いい眺めだぜ」
「ちょっと、変なところ触らないでよ」
「いいじゃんか。減るもんじゃないし」
「嫌よ。貴方の変態」
「ちぇ、つまんないの」
「ほら、いい加減に離れないとぶっ飛ばすわよ」
「はいはい」
魔理沙は霊夢から離れると、浴槽につかる。
「なぁ、霊夢。どうしてこんなに急に態度が変わったんだ?」
「別に変わらないわよ。ただ、貴女と一緒にいるうちに、だんだん好きになっていっただけ」
「そっか。なんか照れるな」
「そうでしょ。私もすごくドキドキしているんだから」
霊夢は自分の胸を押さえながら魔理沙の顔を見る。魔理沙も顔を真っ赤にしていた。「な、何だよ。いきなりこっち見るなって」
「顔が赤いぞ」
「お前が見ているせいだろ」 

 

「だから、キスの真似事だって……」

「私の方を見てもいないくせによくそんな事が言えるわね」
「……」
「可愛い奴め」
「う、煩いわね。それより、そろそろ上がりたいんだけど」
「そうだな。私も上がるよ」
「なら、一緒に入る意味ないじゃない」
「いいだろ。せっかくなんだからさ。たまには二人で入ろうぜ」
「もう、仕方がないな」
霊夢は苦笑いすると、魔理沙に続いて湯船から出た。
「なぁ、霊夢。一つ聞いてもいいか?」
「なによ。改まって」
「霊夢はどうして空を飛べるんだ?教えてくれないか」
「そんなこと?簡単よ。私は人間じゃないから」
「どういうことだ?詳しく聞かせてくれ」
「分かったわ。少し長くなるかもしれないけれど、いいかしら」
「構わないぜ」
「あれは今から千年以上前のことよ。あるところに一人の男がいたの。彼はある日、不思議な女の子に出会った。その子は普通の人とは違っていた。その子は妖怪だったの。彼女は彼のことを気に入ったらしく、それから度々彼の前に現れるようになった。そして、いつの間にか二人は愛し合っていた。でも、その関係は誰にも知られてはいけないものだった。なぜなら、二人が結ばれるということは、この世界が崩壊するということだから。だから、二人は秘密の関係を続けていたの。そして、ある時、とうとうその関係がバレてしまった。そして、二人は引き離されてしまった。その男は、愛する人の身を案じた。そこで、自分と彼女の魂を分離させたの。そして、自分の肉体を封印したの。それから長い年月が過ぎた頃、再びその男が目覚めることがあった。その時、男の側にはもう一人の少女の姿があったという。その少女はどうなったかと言うと、実はその男と結ばれていたの。その事実を知った男は絶望した。しかし、それと同時に激しい怒りを覚えた。そして、その少女の亡骸を抱き寄せると、こう呟いたという。『許さない。絶対に許すもんか』こうして、その男は姿を消した。その日以来、その男の姿を見ていないという。これが私の知っている全てよ」
「そうなのか。お前は本当に辛い思いをしてきたんだな」
「ええ、そうなのよ。だから、私には貴方が必要なの」
「分かったよ。これからはずっとお前の側にいてやるから」
「ありがとう」
「礼を言うのはまだ早いぜ。これからだろ」
「そうね」
「そうだ。明日はデートしようぜ」
「いいわね。どこへ行くつもり?」
「そうだな。やっぱり最初は映画かな。その後は遊園地に行って観覧車に乗って、それから夜景を見ながらキスをするんだ。それで、最後にもう一度告白する。それから、それから……」
「はいはい。分かったから。興奮しないの。落ち着いて」
「ああ、悪いな。ついつい嬉しくてさ」
魔理沙が顔を赤くして恥ずかしそうにしている様子を見て霊夢も顔を赤くする。それから、二人はしばらく無言のまま見つめ合った。先に口を開いたのは霊夢の方だ。
「ねぇ、魔理沙。今日は一緒に寝ましょうか」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、布団を敷くわね」
「ああ、頼むぜ」
霊夢が押し入れから布団を出そうとするのを見て、魔理沙は慌てて止めた。
「おい、霊夢。それは流石にまずいだろ」
「何が?」
「だって、いくら何でも同じ部屋で二人きりで眠るのはまずいと思うぜ」
「どうして?」
「どうしても何も、その……いろいろとあるだろう」
「大丈夫よ。貴方は私に手を出さないでしょ?」
「そりゃそうだが、それでも駄目なものは駄目だ」
「じゃあ、仕方が無いわね。私は床で寝ることにしますか」
「いや、そこまでしなくてもいいよ。私が我慢すればいいだけの話だし」
「ふーん。そう言う割には顔がにやけているように見えるけど気のせいかしら」
「気のせいに決まっているぜ」
「まあいいわ。それじゃあ、電気消すわよ」
「おう」
霊夢は部屋の明かりを消した。辺りが暗闇に包まれる。しばらくして、霊夢が魔理沙の方へ歩み寄ってきた。
「ねぇ、魔理沙。起きてる?」
「ああ、起きているぜ」
「手を出して」
「ああ、いいぜ」
魔理沙は言われた通りに右手を差し出した。霊夢はその手に指を絡めると、そのまま魔理沙の身体の上に覆い被さった。
「ねぇ、魔理沙。キスしていい?」
「ああ、いいぜ」
霊夢が顔を近づけてくる。魔理沙は目を閉じて霊夢の唇を受け入れた。二人の初めてのキス。しばらくの間、お互いの舌を絡ませ合うと、やがてゆっくりと口を離した。
「魔理沙。大好きだよ」
「私も霊夢のことが好きだよ」
「嬉しいわ」
そして二人は灯りを消した。翌朝、雀が鳴いている。朝だ。霊夢は目を覚ますと、隣で眠っている魔理沙の顔を見つめた。とても幸せそうな表情をしている。「おはよう。魔理沙」霊夢は優しく魔理沙の頭を撫でる。すると、魔理沙はゆっくり目を開いて微笑んだ。「おはよ。霊夢」
「よく眠れたかしら」「うん。ぐっすりと眠ることができたよ」
「そう。良かったわ」
「ところで霊夢。一つ聞いてもいいか?」
「何かしら」
「昨日の夜のことだけどさ……」
「ごめんなさい。ちょっと調子に乗りすぎちゃって……」
「いや、別に怒ってはいないけどさ。何であんなに積極的にアプローチしてきたんだ?いつもはもっと奥手で消極的な感じなのにさ」
「魔理沙の気持ちを確かめたかったから。もしかすると、私のことなんて好きじゃないんじゃないかと思って不安だったの」
「バカだな。そんな訳ないじゃないか。私は霊夢のことを愛しているんだよ」
「本当?」
「当たり前だろ」
「ありがとう。私も魔理沙を愛しています」
「知ってるよ」
「もう、素直じゃないな」
「そういう性格なんだよ」
「もう、仕方がないな」
霊夢はクスッと笑うと、魔理沙に軽くキスをした。
「さて、そろそろ起きるか」
「あら、もう行くの?」
「いや、まだ行かないよ。でも、あまり遅くなると紫に怒られるからな」
「そういえば、あの人は一体どこにいるのかしら?」
「多分、どこかに出かけていったんだろうな。全く、困ったものだよ」
「そうよね。私達を放っておいて何処かに出かけるなんて酷いわよ」
「そうだな。後で文句言っておくか」
「それがいいわね」
「なぁ、霊夢。今日は何をして遊ぼうか」
「そうね。じゃあ、まずは朝食を食べに行きましょうか」
「そうだな。腹が減ってきたぜ」
「行きましょうか」
二人は着替えると、一階に降りていった。そして、居間に入ると、そこには誰もいなかった。テーブルの上を見ると、置き手紙がある。どうやら出かけてしまったらしい。「まったく、あいつらはどこに行ったんだろうな」
「さぁね。きっと私達に内緒で美味しいもの食べているんでしょうね」
「だとしたら、少しばかり懲らしめてやらないとな」
「ええ、そうね」
二人は不敵な笑みを浮かべた。
その頃、紫と藍は人里に来ていた。
「なぁ、藍。最近、霊夢と魔理沙の様子がおかしいとは思わないか?」
「確かに、最近の二人は妙に仲が良い気がしますね」
「そうだろ。実はな、私はある仮説を立てているんだ」
「どんな説ですか?」
「実は二人は付き合っているのではないかと私は考えているんだ」
「まさか、そんなことはあり得ませんよ」
「そう思うか?だが、そうとしか考えられないような行動をとっているんだぞ」
「例えば?」
「まず、二人は毎晩のように同じ部屋で寝ている」
「そうですね」
「そして、今朝のことなんだが、二人は同じ布団の中で抱き合って寝ていたんだ。これはどういうことだと思う?」
「うーん。普通に考えるなら、恋人同士だからでしょうね」
「そうだろうな。つまり、二人は交際しているということだ」
「まあ、その可能性は高いと思いますが……」
「でも、二人が本当に付き合っていないとしたら、何故二人は一緒に寝ているんだ?おかしくないか」
「それはそうですが……」
「そこでだ。二人に直接聞いてみることにする」
「どうやって聞き出すんですか」
「ふふふ。こうするのさ」
紫は懐に手を入れると、小さな箱を取り出して中に入っている物を手に取った。そして、それを口にくわえると、もう片方の手で藍の手を握った。
「何をする気なんですか?」
「見てれば分かるさ」
そして、その物体を激しく上下に動かし始めた。
「どうだ。これで分かったか?」
「何が?」
「だから、これを口に入れて動かすことで、相手にキスをしているように錯覚させることが出来るんだよ」
「なにそれ。意味分からないんだけど」
「え?」
「何でわざわざ口にくわえてまでキスの真似事をする必要があるわけ?」
「いや、だからキスの代わりとして……」
「あんた馬鹿なの?」
「な、何を言うんだ。私はただ純粋にキスというものに興味があって……」
「はいはい。分かったから。で、本当は何が目的なのかしら?」
「だから、キスの真似事だって……」
「嘘ばっかり。本当は霊夢と魔理沙が付き合っているかどうか調べる為に来たんでしょ?」
「ち、違う!私は純粋な興味から……」
「はいはい。分かったから」
「お前こそ、どうしてここに居るんだ?」
「それは、たまたま通りかかっただけだぜ」
「ほう。偶然か。ということは、霊夢と魔理沙が一緒に寝ていたという情報も偶々手に入れたということか?」
「ああ、そうだぜ」
「なにぃ!?それは本当か?」
「ああ、間違いないぜ」
「貴様……許さん!」
「おいおい。いきなり何する気だ」
「決まっているだろう。霊夢と魔理沙が二人きりで寝ていたことを問い詰めに行くのだ」
「おいおい。落ち着けよ。そんなことをして何になるっていうんだ?」
「決まってるだろう。二人に罰を与えるのさ」
「どうしてそんな必要があるんだ?」 

 

「だから、キスの真似事だって……」

「私の方を見てもいないくせによくそんな事が言えるわね」
「……」
「可愛い奴め」
「う、煩いわね。それより、そろそろ上がりたいんだけど」
「そうだな。私も上がるよ」
「なら、一緒に入る意味ないじゃない」
「いいだろ。せっかくなんだからさ。たまには二人で入ろうぜ」
「もう、仕方がないな」
霊夢は苦笑いすると、魔理沙に続いて湯船から出た。
「なぁ、霊夢。一つ聞いてもいいか?」
「なによ。改まって」
「霊夢はどうして空を飛べるんだ?教えてくれないか」
「そんなこと?簡単よ。私は人間じゃないから」
「どういうことだ?詳しく聞かせてくれ」
「分かったわ。少し長くなるかもしれないけれど、いいかしら」
「構わないぜ」
「あれは今から千年以上前のことよ。あるところに一人の男がいたの。彼はある日、不思議な女の子に出会った。その子は普通の人とは違っていた。その子は妖怪だったの。彼女は彼のことを気に入ったらしく、それから度々彼の前に現れるようになった。そして、いつの間にか二人は愛し合っていた。でも、その関係は誰にも知られてはいけないものだった。なぜなら、二人が結ばれるということは、この世界が崩壊するということだから。だから、二人は秘密の関係を続けていたの。そして、ある時、とうとうその関係がバレてしまった。そして、二人は引き離されてしまった。その男は、愛する人の身を案じた。そこで、自分と彼女の魂を分離させたの。そして、自分の肉体を封印したの。それから長い年月が過ぎた頃、再びその男が目覚めることがあった。その時、男の側にはもう一人の少女の姿があったという。その少女はどうなったかと言うと、実はその男と結ばれていたの。その事実を知った男は絶望した。しかし、それと同時に激しい怒りを覚えた。そして、その少女の亡骸を抱き寄せると、こう呟いたという。『許さない。絶対に許すもんか』こうして、その男は姿を消した。その日以来、その男の姿を見ていないという。これが私の知っている全てよ」
「そうなのか。お前は本当に辛い思いをしてきたんだな」
「ええ、そうなのよ。だから、私には貴方が必要なの」
「分かったよ。これからはずっとお前の側にいてやるから」
「ありがとう」
「礼を言うのはまだ早いぜ。これからだろ」
「そうね」
「そうだ。明日はデートしようぜ」
「いいわね。どこへ行くつもり?」
「そうだな。やっぱり最初は映画かな。その後は遊園地に行って観覧車に乗って、それから夜景を見ながらキスをするんだ。それで、最後にもう一度告白する。それから、それから……」
「はいはい。分かったから。興奮しないの。落ち着いて」
「ああ、悪いな。ついつい嬉しくてさ」
魔理沙が顔を赤くして恥ずかしそうにしている様子を見て霊夢も顔を赤くする。それから、二人はしばらく無言のまま見つめ合った。先に口を開いたのは霊夢の方だ。
「ねぇ、魔理沙。今日は一緒に寝ましょうか」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、布団を敷くわね」
「ああ、頼むぜ」
霊夢が押し入れから布団を出そうとするのを見て、魔理沙は慌てて止めた。
「おい、霊夢。それは流石にまずいだろ」
「何が?」
「だって、いくら何でも同じ部屋で二人きりで眠るのはまずいと思うぜ」
「どうして?」
「どうしても何も、その……いろいろとあるだろう」
「大丈夫よ。貴方は私に手を出さないでしょ?」
「そりゃそうだが、それでも駄目なものは駄目だ」
「じゃあ、仕方が無いわね。私は床で寝ることにしますか」
「いや、そこまでしなくてもいいよ。私が我慢すればいいだけの話だし」
「ふーん。そう言う割には顔がにやけているように見えるけど気のせいかしら」
「気のせいに決まっているぜ」
「まあいいわ。それじゃあ、電気消すわよ」
「おう」
霊夢は部屋の明かりを消した。辺りが暗闇に包まれる。しばらくして、霊夢が魔理沙の方へ歩み寄ってきた。
「ねぇ、魔理沙。起きてる?」
「ああ、起きているぜ」
「手を出して」
「ああ、いいぜ」
魔理沙は言われた通りに右手を差し出した。霊夢はその手に指を絡めると、そのまま魔理沙の身体の上に覆い被さった。
「ねぇ、魔理沙。キスしていい?」
「ああ、いいぜ」
霊夢が顔を近づけてくる。魔理沙は目を閉じて霊夢の唇を受け入れた。二人の初めてのキス。しばらくの間、お互いの舌を絡ませ合うと、やがてゆっくりと口を離した。
「魔理沙。大好きだよ」
「私も霊夢のことが好きだよ」
「嬉しいわ」
そして二人は灯りを消した。翌朝、雀が鳴いている。朝だ。霊夢は目を覚ますと、隣で眠っている魔理沙の顔を見つめた。とても幸せそうな表情をしている。「おはよう。魔理沙」霊夢は優しく魔理沙の頭を撫でる。すると、魔理沙はゆっくり目を開いて微笑んだ。「おはよ。霊夢」
「よく眠れたかしら」「うん。ぐっすりと眠ることができたよ」
「そう。良かったわ」
「ところで霊夢。一つ聞いてもいいか?」
「何かしら」
「昨日の夜のことだけどさ……」
「ごめんなさい。ちょっと調子に乗りすぎちゃって……」
「いや、別に怒ってはいないけどさ。何であんなに積極的にアプローチしてきたんだ?いつもはもっと奥手で消極的な感じなのにさ」
「魔理沙の気持ちを確かめたかったから。もしかすると、私のことなんて好きじゃないんじゃないかと思って不安だったの」
「バカだな。そんな訳ないじゃないか。私は霊夢のことを愛しているんだよ」
「本当?」
「当たり前だろ」
「ありがとう。私も魔理沙を愛しています」
「知ってるよ」
「もう、素直じゃないな」
「そういう性格なんだよ」
「もう、仕方がないな」
霊夢はクスッと笑うと、魔理沙に軽くキスをした。
「さて、そろそろ起きるか」
「あら、もう行くの?」
「いや、まだ行かないよ。でも、あまり遅くなると紫に怒られるからな」
「そういえば、あの人は一体どこにいるのかしら?」
「多分、どこかに出かけていったんだろうな。全く、困ったものだよ」
「そうよね。私達を放っておいて何処かに出かけるなんて酷いわよ」
「そうだな。後で文句言っておくか」
「それがいいわね」
「なぁ、霊夢。今日は何をして遊ぼうか」
「そうね。じゃあ、まずは朝食を食べに行きましょうか」
「そうだな。腹が減ってきたぜ」
「行きましょうか」
二人は着替えると、一階に降りていった。そして、居間に入ると、そこには誰もいなかった。テーブルの上を見ると、置き手紙がある。どうやら出かけてしまったらしい。「まったく、あいつらはどこに行ったんだろうな」
「さぁね。きっと私達に内緒で美味しいもの食べているんでしょうね」
「だとしたら、少しばかり懲らしめてやらないとな」
「ええ、そうね」
二人は不敵な笑みを浮かべた。
その頃、紫と藍は人里に来ていた。
「なぁ、藍。最近、霊夢と魔理沙の様子がおかしいとは思わないか?」
「確かに、最近の二人は妙に仲が良い気がしますね」
「そうだろ。実はな、私はある仮説を立てているんだ」
「どんな説ですか?」
「実は二人は付き合っているのではないかと私は考えているんだ」
「まさか、そんなことはあり得ませんよ」
「そう思うか?だが、そうとしか考えられないような行動をとっているんだぞ」
「例えば?」
「まず、二人は毎晩のように同じ部屋で寝ている」
「そうですね」
「そして、今朝のことなんだが、二人は同じ布団の中で抱き合って寝ていたんだ。これはどういうことだと思う?」
「うーん。普通に考えるなら、恋人同士だからでしょうね」
「そうだろうな。つまり、二人は交際しているということだ」
「まあ、その可能性は高いと思いますが……」
「でも、二人が本当に付き合っていないとしたら、何故二人は一緒に寝ているんだ?おかしくないか」
「それはそうですが……」
「そこでだ。二人に直接聞いてみることにする」
「どうやって聞き出すんですか」
「ふふふ。こうするのさ」
紫は懐に手を入れると、小さな箱を取り出して中に入っている物を手に取った。そして、それを口にくわえると、もう片方の手で藍の手を握った。
「何をする気なんですか?」
「見てれば分かるさ」
そして、その物体を激しく上下に動かし始めた。
「どうだ。これで分かったか?」
「何が?」
「だから、これを口に入れて動かすことで、相手にキスをしているように錯覚させることが出来るんだよ」
「なにそれ。意味分からないんだけど」
「え?」
「何でわざわざ口にくわえてまでキスの真似事をする必要があるわけ?」
「いや、だからキスの代わりとして……」
「あんた馬鹿なの?」
「な、何を言うんだ。私はただ純粋にキスというものに興味があって……」
「はいはい。分かったから。で、本当は何が目的なのかしら?」
「だから、キスの真似事だって……」
「嘘ばっかり。本当は霊夢と魔理沙が付き合っているかどうか調べる為に来たんでしょ?」
「ち、違う!私は純粋な興味から……」
「はいはい。分かったから」
「お前こそ、どうしてここに居るんだ?」
「それは、たまたま通りかかっただけだぜ」
「ほう。偶然か。ということは、霊夢と魔理沙が一緒に寝ていたという情報も偶々手に入れたということか?」
「ああ、そうだぜ」
「なにぃ!?それは本当か?」
「ああ、間違いないぜ」
「貴様……許さん!」
「おいおい。いきなり何する気だ」
「決まっているだろう。霊夢と魔理沙が二人きりで寝ていたことを問い詰めに行くのだ」
「おいおい。落ち着けよ。そんなことをして何になるっていうんだ?」
「決まってるだろう。二人に罰を与えるのさ」
「どうしてそんな必要があるんだ?」 

 

「いや、私が今から取りに行ってくるよ」

「霊夢と魔理沙が二人きりで寝ているという情報を入手した以上、放置しておく訳にはいかないだろう」
「いや、別に放っておけばいいだろう」
「何言っているんだ。もしも二人の関係が親密なものになっていたらどうするつもりだ?」
「その心配は無いと思うぜ」
「なぜそう言い切れる」
「私達は霊夢の家で暮らしてるんだぜ。もし、二人の関係が進展しているのであれば、同じ部屋で寝ることなんて無いはずだぜ」
「むぅ。言われてみれば、それもそうだな」
「それに、仮に霊夢と魔理沙が付き合っていたとしても、紫がそれを邪魔するのは間違っていると思うぜ」
「な、何を……。私には霊夢の幸せを願う義務があるんだぞ」
「だったら、尚更駄目じゃないか。自分の欲望の為に霊夢の恋路を妨害するのはどうかと思うぜ」
「くっ。正論すぎて何も言えないぜ」
「そもそも、霊夢が魔理沙を好きになったのも紫が原因だぜ。なのに、今度は魔理沙と霊夢の関係を壊そうとするなんて、一体霊夢がどれだけ傷つくと思っているんだ?」
「すまない。私が悪かった。もう二度とこんな事はしない。約束しよう」
「分かってくれればいいんだぜ」
「ああ、魔理沙は優しいな」
「そんなことないぜ」
「ところで、一つだけ質問してもいいか?」
「何だ?」
「霊夢と魔理沙はキスしたことがあるのか?」
「そんなこと、本人に聞けばいいだろ」
「それが出来たら苦労はしないんだよ」
「そうか。じゃあ、ヒントをあげようか?」
「おお、頼む」
「霊夢は魔理沙のことが好きだけど、魔理沙はそうでもないかもしれない。でも、二人はお互いに愛し合っているんだ」
「そうか。ありがとう」
「ちなみに、霊夢と魔理沙はもう既にキス済みだぜ」
「な、何だとぉーっ!!」
「ほれ、早く霊夢に聞いてこいよ」
「あ、ああ。そうだな。聞いてくるぜ」
紫は慌てて家に向かって走り出した。
その頃、霊夢は美奈と一緒に朝食をとっていた。
「ねぇ、魔理沙。今日は何処かに遊びに行きましょうよ」
「そうだな。でも、どこへ行こうか?」
「うーん。そうね。やっぱり遊園地とかが定番じゃないかしら」
「遊園地か。久しく行ってないな」
「あら、そうなの?」
「いや、霊夢と二人で行くのは初めてだからな」
「そうね。私も魔理沙と二人だけで遊ぶのは始めてね」
「なぁ、今度さ、二人だけで何処か遠くに旅行に行かないか?」
「いいわね。行きましょうか」
その時、突然紫が現れた。
「霊夢。魔理沙。ちょっと聞きたいことがあるんだが、良いか?」
「あら、紫じゃない。どうしたのかしら?」
「いや、実はな。お前達が付き合っているのか知りたくてな」
「え?どういうこと?」
「実はな、私はある仮説を立てたんだ。それで、実際に確かめてみることにした」
「何よ。その仮説というのは?」
「それはだな。実は、霊夢と魔理沙は付き合っているのではないかと思ったんだ」
「な、何を言ってるのよ。そんな訳無いわよ」
「じゃあ、霊夢は魔理沙のことを好きなのか?」
「そ、そりゃあ、嫌いではないけど……」
「そうか。では、何故付き合わないんだ?」
「付き合う理由が無いじゃない」
「なるほど。付き合う理由はあるということだな」
「え?いや、そういう意味ではなく……」
「で、魔理沙は霊夢と付き合いたくないのか?」
「うーん。よく分からないんだぜ」
「なにぃ!?分からんだと?それはおかしいだろう」
「だって、今までずっと一緒にいたからな。急に好きだと言われても実感がわかないんだぜ」
「そうか。まぁ、気持ちは分かるな」
「そうだろ。だから、今は友達として仲良くやっていきたいんだぜ」
「なにぃ!?ふざけるなぁ!」
「おいおい。いきなり怒鳴りつけてどうするんだ?」
「うるさい!黙れ!」
「なんだその態度は。そんなに怒るようなことでもないだろ」
「黙れと言っているだろうが!」
「何だ?喧嘩なら買うぞ」
修羅場が始まった。何故ならこの世界線では霧雨魔理沙と博麗霊夢の和合など構造的に許されないからだ。神に仕える巫女は清廉潔白でなければならない。もしその禁を破ろうとすれば世界によって関係を破綻させられるか、強行すれば世界が破局する。いずれにしてもなかったことにされる。「お前がその気なら、こっちにも考えがあるぞ」
「何だと?やってみろよ」
「ふん。後悔しても知らないからな」
「上等だぜ」
「おい、やめろって。何でお前らはいつもこうなんだ?」
「だって、紫が……」
「だって、魔理沙が……」
「分かった。分かったから。私が悪かった。謝るから許してくれ」
「本当に反省しているんだろうな?」
「ああ、もちろんだ」
「じゃあ、許してあげるわ」
「ありがとう。感謝する」
「でも、紫も少しは自重しないと駄目だと思うぜ」
「ああ、分かった。気をつけることにしよう」
「さっきから何の話をしているの?」
「いや、何でもないぜ」
「そう。まあいいわ。ところで、これからみんなでどこかに出掛けないかしら?」
「おお!いいなそれ」
「ふむ。悪くない提案だが、私はパスさせて貰おうかな」
「どうしてだ?」
「いや、特に用事があるわけではないのだが……、ただ単純に面倒くさいんだよな」
「なんだよそれ。もっと頑張るんだぜ」
「いや、私は霊夢と違って怠け者なのだ。霊夢のように毎日頑張って働くことは出来ないんだよ」
「そうか。分かったぜ。霊夢。どうする?」
「うーん。私は別に構わないんだけど……」
「よし。決まりだな。じゃあ、早速出かけるか」
三人は出掛ける準備を始めた。
一方、紫は霊夢と魔理沙が二人きりになる前に何とか阻止しようと試みるが、時すでに遅し。二人は手を繋いで歩き始めていた。紫は二人の後を追いかけると、必死に説得を試みる。しかし、二人は聞く耳を持たない。紫は二人の前に立ち塞がって通せんぼをするが、霊夢と魔理沙は紫を払い除けて先に進もうとする。それでも紫は二人を引き止めようと躍起になる。そんなことをしているうちに、いつの間にか三人とも人里に辿りついていた。
「お腹空いたな。何か食べに行こうぜ」
「うん。私も丁度そう思っていたところよ」
「おいおい。まだ話は終わっていないだろう?」
「紫はもう帰ってもいいんじゃないかしら?」
「おい待ってくれ。話を聞いくれぇ~っ」紫は泣きながら叫んだが誰も助けてくれなかった。結局、三人は食事処で食事をすることになった。
その日の夜、魔理沙と霊夢はベッドの上で寝転んでいた。
「ねぇ、魔理沙。明日は何しようか?」
「そうだな。久しぶりに神社に参拝客が来るといいな」
「そうね。でも、あんまり無理しないでね」
「分かってるぜ」
「ところで、魔理沙は私の事好き?」
「え?なんで急にそんなことを聞くんだぜ?」
「いや、魔理沙が私に対してどう思っているのか知りたくなってね」
「うーん。そうだな……。嫌いじゃないぜ」
「それは好きということなのかしら?」
「そうなのかもしれないな」
「じゃあ、魔理沙は私の事を好き?」
「うーん。よく分からないんだぜ」
「そう……。でも、魔理沙がそう言うのであれば仕方がないわね」
「霊夢は私の事が嫌いか?」
「うーん。そうね……。好きか嫌いかと言われたら、好きかもしれないわね」
「それは好きという意味か?」
「そうね。好きと言ってもいいと思うわ」
「そうか……。ありがとうな」
「いえ、こちらこそ」
「ところで、霊夢は私とキスしたいのか?」
「そうね。してみたいとは思うけど……」
「そうか……」
「魔理沙は私とキスしてみたいと思わないの?」
「うーん。そうだな。してみたいな……」
「そう。じゃあ、キスしましょうか?」
「そうだな。するか?」
「ええ。しましょう」
「そうか。じゃあ、キスしような」
二人はキスをした。唇と唇を重ねるだけの軽いキスだった。
「霊夢。愛してるぜ」
「ありがとう。私も愛しているわ」
二人は抱き合ったまま眠りについた。
翌朝、魔理沙と霊夢は二人で朝食をとっていた。
「おはよう。魔理沙」
「ああ、おはよう。霊夢」
二人は挨拶を交わしたあと、朝食を食べ始めた。しばらくして魔理沙が言った。「今日は何処かに遊びに行くか?」
「ええ。いいわよ」
「じゃあ、何処へ行くんだぜ?」
「うーん。何処へ行こうかしら?魔理沙は何処か行きたい所はないの?」
「いや、私も何処かに行きたいとかは無いんだぜ」
「そうなの?珍しいこともあるのね」
「まぁな。何処へ行こうか迷うくらいなら家でゆっくりしていた方がいいと思ってな」
「それもそうね。じゃあ、今日は家で過ごしましょうか」
「そうだな。それがいいぜ」
「そうだ。お茶でも飲みましょうか?」
「おっ。いいな。飲もうぜ」
「じゃあ、今から用意するわ」
「いや、私が今から取りに行ってくるよ」
「あら、いいの?お願いするわ」
「任せろ。すぐに戻ってくるぜ」
数分後、魔理沙は湯呑みと急須を持って戻ってきた。
「はい。どうぞ」
「ありがとう。頂くわ」
「どうだ?美味しいか?」
「そうね。とてもおいしいわ」
「そうか。良かったぜ」
「魔理沙の分もあるから飲んでみて」
「そうか。じゃあ、遠慮なく貰おうかな」
魔理沙が一口飲むと、突然苦しみ出した。
「どうしたんだぜ?これは毒か?」
「違うわ。ただのお酒よ」
「なんだ。お酒か。びっくりさせないで欲しいぜ」
「ごめんなさい。間違えちゃった」
「まったく。気をつけろよ」
「そうね。気をつけることにするわ」
魔理沙は眠ってしまった。
霊夢は魔理沙をベッドに運ぶと、隣に横になった。
そして、魔理沙の手を握って静かに目を閉じた。 

 

「でも、私は貴方に会えて本当によかったと思っているわ」

霊夢は幸せを感じていた。魔理沙と一緒に居られるだけで幸せなのだ。たとえ、この世界線がどんな結末を迎えようとも構わない。そう思えるほどに、今の自分は満たされている。だから、今はこのままでいい。そう思った。魔理沙は目を覚ました。外を見ると日が落ちかけている。どうやら随分と長い時間寝ていたようだ。霊夢の姿が見当たらない。魔理沙は起き上がると、部屋を出て霊夢の居るであろう場所へと向かった。霊夢は縁側に腰掛けて空を眺めていた。
「霊夢。こんな所で何をしているんだぜ?」
「ああ、魔理沙。起きたのね」
「うん。さっき目が覚めたんだぜ」
「そう。それで、どうしたの?」
「いや、特に用事があったわけでもないんだが、暇だったから来てみたんだぜ」
「そう。じゃあ、一緒に星を見ない?」
「おお!いいな。見ようぜ」
二人は並んで座ると、夜空を眺めて話し始めた。「綺麗な月だな」
「そうね。まるで満月に吸い込まれてしまいそうだわ」
「確かにそうだな。なんだか少し怖いぜ」
「でも、大丈夫よ。私が傍にいるから」
「ああ、ありがとう」
「ねぇ、魔理沙。覚えてる?」
「何の話だ?」
「ほら、前に私達が初めて会った時のことよ」
「うーん。そうだな。確かあの時は……」
「私達はお互いに酷い目にあったわよね」
「ああ、そういえばそうだったな」
「でも、私は貴方に会えて本当によかったと思っているわ」
「そうか。私も同じ気持ちだぜ」
「ねぇ、魔理沙。私は今でも貴方のことが好きだけど、魔理沙はどう思っているのかしら?」
「私は霊夢のことを好きだぜ」
「ありがとう。嬉しいわ。私も魔理沙の事を愛しています」
「ありがとう。霊夢。私はお前に出逢えたことが人生で一番の幸運だと思っているぜ」
「私もそう思っています」
二人は手を握り合うと、そのままキスをした。霊夢は魔理沙と出逢い、恋をして、愛し合い、結ばれた。その全てが奇跡であり、運命だった。きっと、これから先、どれだけ時間が経とうとも、私達の想いが変わることはないだろう。いつまでも、永遠に続く愛を誓うように、二人はもう一度キスをした。

あとがき
初めましての方ははじめまして。そうでない方はお久しぶりです。作者でございます。この作品は、去年(2015)の11月から書き始めて、途中まで書いたものの放置されていたものをリメイクしたものです。