モンスターハンター 寒冷群島の紅き鬼狩り


 

第一話 寒冷群島の紅き鬼狩り

氷牙竜ベリオロスの素材を使って作られた装備を着用した一人の男が、こんがり肉を頬張っていた。


「今日も元気だ!肉が美味ぇ!」

ここは、寒冷群島。
雪と海水が無謀者を待ち構える、極寒の地である。




心魂戦く 雪の獄

  強者 勇んで海藻屑

   渡れば戻れぬ 果ての死地


雪風に浮かぶ、龍の墓標
 寒冷群島



この歌が示すとおり、厳しい自然環境に加えて凶暴なモンスターが幾つも生息しているこの寒冷群島は、余程のことでもない限り人間は近づかないはずだが、愚かにも近づいた人間がいた

「さて、今日は頼むぜ、フラムエルクルテ」

彼の名はドラコ・ラスター。双剣を得意とするハンターである。一応他の武器も使えるが、特に双剣を扱うことが多い。

彼が挑むのは雪鬼獣ゴシャハギ。
「寒冷群島に住む雪の鬼」の正体である牙獣種である。
本来たった一年の新人が挑むことなど許されないのだが、ドラコは驚異的な才覚を発揮し様々なモンスターを狩猟した。そのため約五か月ほどでゴシャハギとまともに渡り合うレベルにまで達したのだ。

今回は対ゴシャハギ用に作った防具、ベリオシリーズと、武器のひとつ、フラムエルクルテを携えての狩猟となった。

「......念の為に調合しとくか」

ドラコは回復薬の調合を始めた。


そして、過去のことを思い出していた。

・・・・・


雪国の某地方では、「悪い子の元には寒冷群島にいる雪の鬼が家に来るぞ」

という言い伝えがあり、子供の躾にも使われていた。


少年だったドラコも、「寒冷群島にいる雪の鬼」の言い伝えを母から聞いて育っていた。

「.....なあ母ちゃん、本当にいるのかな?雪の鬼」

「さあねぇ~....でも悪い子の元にはやってくるかもよ~」

「俺って悪い子?」

「ドラコはいい子よ」

・・・・・


「おい、やめろ!」

ある日、ドラコはいじめを行っている同年代の悪ガキ共に注意した。

「なんだよラスター。ハンターごっこの邪魔すんなよ」

「そんなことしてると、寒冷群島に住んでる鬼が来るぞ」

ドラコの言葉を聞いた悪ガキ共は全く信じてないようで笑い声を上げた。

「はー?鬼?」

「そんなんいるわけないじゃん!」

「ショーコ見せろよショーコ!!」

「分かった、俺が雪の鬼を連れてくるよ」



そして夜、防寒服を着てこっそり家を出ると、寒冷群島に向けて歩き出した。寒冷群島までは結構近い距離にあるのだ。

「うう、寒いなぁ.....」

――――オォォ

どこからか唸り声がきこえてきた。

「......っ!」


―――グオォォ

徐々に大きくなっていく。近づいてきた証拠だ。

――グオオオォォォ

ドラコはとっさに木の陰に隠れ、様子を伺った。熊のような大柄な牙獣種のモンスターが唸り声をあげながら闊歩していた。


(......ほ、本当に出た....寒冷群島にいる雪の鬼....!)


気づかれないようあとずざりするが、\パキッ/ と音が鳴ってしまった。枝を踏んでしまったのだ。

「!!」

ドラコがハッとした時には既に遅し、ゴシャハギは既に背後をとっていた。


ゴシャハギが右腕を振り上げる。その手には氷を纏っており、刃のように鋭い。

ドラコは最早ここまでかと目をつぶったが.....

何者かに助けられた。それは、ドラコの育った村....ワーニェ村に常駐しているハンターだった。

「.....やっと見つけたぜ....大丈夫かい?」

「おじさん.....」

ドラコはホッとしかけたが、突然恐怖で目を見開いた。

ゴシャハギの振り下ろしでハンターの左腕が切断されてしまっていたのだ。

「おじさん、腕が.....!」

「大したこねーよ。おっさんそろそろ引退を考えてたんだ....丁度いいぜ」

「....ごめんなさい」

「無事でよかった、ドラコ」

その後、ゴシャハギは応援に駆けつけたハンター達により討伐され、村に運ばれ、これが雪の鬼の正体だと知らされた。

無事に村に戻ってきたドラコだが、ひとりのハンターの、「ハンターとしての生命」を奪ってしまったことを後悔し、ハンターとなりゴシャハギを狩猟することを誓った。



・・・・


自分の過去を思い返したドラコは、気合いを入れ直した。

「.....やっと戦えるぜ、ゴシャハギ...!」

ドラコは耳に神経を集中させる。

「.....」

――――オォォ

唸り声がきこえてきた。ゴシャハギの習性のひとつで、唸り声をあげながら獲物を探して徘徊するというものだ。

―――グオォォ

徐々に大きくなっていく。近づいてきた証拠だ。

――グオオオォォォ


「唸り声は南からか......よし、行くか....」


「グロロロロ!」

「グオオオォォォ!!」


「ん?」

ドラコは別の声を聞いて慌てて声のする方向に向かった。。

するとそこにはゴシャハギだけでなく、河童蛙ヨツミワドウが。

「確か、ヨツミワドウとゴシャハギって.....」


ヨツミワドウとゴシャハギは仲が悪いとされている。
ゴシャハギの徘徊時に発せられる唸り声が原因で獲物が逃げてしまい、怒ったヨツミワドウが飛び出してくるというのだ。訓練生時代に座学でやった事を思い出したドラコは動きを観察することに。

すると、動きがあった。

ゴシャハギが体当たりを仕掛けてきた。迎え撃つヨツミワドウは腹で防御し、相撲技に持ち込もうとすると....


「グオオオォォォ!」

「グロロロロ!?」

なんとヨツミワドウの頭に強烈な一撃を叩き込み、転倒させ馬乗りになった後に何度も何度も頭を殴りつけていた。


「......ったく、とんでもない乱暴もんだな.....」

ヨツミワドウは水ブレスを吐いてゴシャハギを怯ませ、そのすきに逃走した。

「....ヨツミワドウがいなくなったか....っつーことは」

「......」

ドラコはフラムエルクルテを構える。

「グオオオォォォ!!!」

新たな獲物を見つけたゴシャハギが力強い咆哮をあげた。

「おもしれぇ.....やってやるぜ!」

ドラコは笑みを浮かべると、フラムエルクルテを構えて好敵手(ゴシャハギ)に立ち向かって行った。



・・・・・


ワーニェの村にて、ドラコは受付嬢に狩猟の報告をしていた。

「これで寒冷群島を通る商人はしばらくはゴシャハギにおびえなくて済むかもな」


「そうですね。ゴシャハギの狩猟、達成です。こちらが報酬です」

「ありがとう」

「あっ.....ドラコくん、村長が呼んでたよ」

受付嬢が突然口調を変えて話しかけてきた。ドラコとは親しい仲のようだ。

「ほんと!?すぐ行かなきゃ.....」

実はこの受付嬢、ドラコの幼馴染だ。ドラコがハンターを志したことを知った彼女は受付嬢を目指すことにした。

そして奇跡的に二人共ワーニェ村に勤めることになった。

「失礼します」


「ドラコ、お前にウツシという人物から依頼が来ているぞ。緊急事態のようだ」

「ウツシ.....懐かしい名前だ」


左腕がない男....現村長が出迎えた。そしてドラコの旧友、ウツシからの手紙を渡す。

―――ドラコへ


急な依頼で申し訳ない。近々百竜夜行が起ころうとしている。

砦を建設しているのだが間に合いそうにない。応援を要請したいのだが近年はハンターの問題行動も増えていて下手に選ぶことができない...
えり好みしてられないのが本音だが、俺はともに訓練を受けた同期達に里の未来を託したい。どうか協力してくれないだろうか。

ウツシより




「なにやら百竜夜行とやらが近々起こるとのことだが...」


百竜夜行。数多のモンスターがカムラの里に進行してくる災害にして異常行動。ドラコも話だけは聞いたことがあるのだが、本当に起こったとは思ってもいなかった。

ドラコがハンターとして鍛えられた訓練所の同期「ウツシ」が緊急事態を告げたのだ。


「......村長、オレ、カムラの里に行きます。アイツの...ウツシの故郷を守るために!」

ドラコは決意を伝える。

「そうか。死ぬなよ、ドラコ」

「死にゃしませんよ。『鬼殺しのドラコ』は無敵なんだからな!」

自信満々に言い放ったドラコに、村長は溜息をつきながらも笑顔を向け、激励の言葉を放った。

「口だけは達者だな....ドラコ・ラスターよ、行ってこい!友の故郷を救うのだ!」


「おう!」

ドラコは受付嬢に緊急クエストを受注してもらい、村を後にするのだった。 
 

 
後書き

戦場に響き渡る力強い演奏。それは訓練所で最も親しくしていた「友」の命を賭した魂の咆哮であった。

ドラコはその笛の音を聞いて訓練所での日々を思い出す。

次回
モンスターハンター ~寒冷群島の紅き鬼狩り~
キレた赤鬼と魂の旋律 

 

第二話 キレた赤鬼と魂の旋律

ドラコは、再会した訓練所の同期達と共に未曽有の大災害、百竜夜行に立ち向かっていった。

「ねえ、何か聞こえてこない?」

「本当だな...狩猟笛の音色だ」

ドラコと共に毒妖鳥プケプケを仕留めた同期、カエデとゴウが狩猟笛の音色に気づいた。

「...。」

ドラコは一人この音色の主に気づいていた。音色の主はドラコが訓練所で最も親しくしていた友人だった。

「ヤツマ...」

・・・・・・

これは、ドラコが訓練生時代に起こった出来事である。

訓練生になってすぐの頃

食堂で一緒の席になったヤツマ、ウツシに話しかける

「なーなー、2人は好きなモンスターいる?俺はゴシャハギなんだ!」

「ドラコ、君は確か幼いころにゴシャハギに襲われたんだよね...?トラウマじゃないの?」

「ああ。まー確かにあの時はマジで怖かったし恩人を引退させちまったっていう後悔はある。けどゴシャハギの、『厳しい環境の寒冷群島で力強く生きている姿』に惚れ込んだんだ。まあ...フィオドーラちゃんのプケプケ推しの強さに比べたらそこまで熱はないんだけど」


ドラコは近くの席で他の同期たちにプケプケについて熱く語る少女を見ていた。


「あはは...あの子、プケプケにハマったみたいだからねえ...ちなみに俺が好きなモンスターはジンオウガかな~」

「ものまね上手いもんな~」

「僕は...ライゼクスかな」

「ライゼクスって...四天王ってやつだっけ」

「うん。その中でも青電主ライゼクスはすごく強くてかっこいいんだ...僕、小さいころに青電主と遭遇したことがあって...黒炎王リオレウスにも臆さず立ち向かう姿にあこがれたんだ」

「すげえ~...!」

ふと時間を見ると間もなく昼休みが終わることが分かり、三人は慌てて食べ進める

・・・・・

「オラオラオラオラ!!!」

ドラコはからくり蛙相手に激しい乱舞を食らわせていた。

「旋律の効果ってスゲーな、力が湧いてきたぜ」

先ほどヤツマが鳴らした狩猟笛の音色がもともと高い攻撃力を持つドラコの力をさらに引き出していた。


「凄いなぁ、ドラコは」

「そう?ヤツマも十分凄いと思うけどな~。」

ドラコと共に訓練していたのはヤツマ。同期の中では特に仲良しだった。

熱血漢のドラコと気弱なヤツマ。正反対の性格ではあるが自然と気が合い、一緒に訓練に励んでいるのだ。

「僕もドラコみたいに強くなりたいよ」

「ヤツマもなれるよ。ヤクライさんみたいな凄いハンターにさ。」

そんなある日、ドラコは何故か訓練所にいないヤツマを心配に思い、探しに行くことにしていた。

見つけたのは碌に訓練もせずサボっている先輩訓練生であった。

「アイツほんと臆病だよな」

「っていうか今年入ってきた奴ら全員生意気なんだよな~」

「なあなあ、今度ヤツマを寒冷群島に連れてって、捨ててこうぜ」

「泣く子はいねえが~ってな!雑魚はゴシャハギに食われちまえばいいんだよ」

「泣き叫ぶからモンスターが集まってくるぜ...」

「子泣きキジかっての!あはは!」

「!!!」

ドラコは激怒した。この外道共を殴らねばと決意したのだ。

そして彼らの元に躍り出て一人の先輩をぶん殴る。

「ふざけんな!!!!」

「いてぇ...!なにすんだよ!!」

「ヤツマを馬鹿にすんじゃねえ!!!」

そしてドラコは先輩訓練生に馬乗りになり何度も顔を殴りつける。ヨツミワドウを殴るゴシャハギのように。

「アイツは!誰よりも努力してんだよ!!お前らに何がわかるんだッ!!!」

そして、訓練時に使用しているツインダガーを引き剥がそうとする他の先輩訓練生たちに向ける。その時。

「やめろドラコ!!!」

ドラコの体に鉄蟲糸が巻きつけられた。異変を感じ取ったウツシが駆けつけたのだ。

「ぐっ...!」

「何をやっているんだいドラコ」

「俺は悪くねぇ!あいつらがヤツマを...」

ドラコの言い訳を遮るようにウツシの怒号が響き渡った。

「ドラコ!!!」

「....」


いつも穏やかなウツシがここまでキレたのを見たのは初めてだった。ドラコは何も言えなくなってしまった。そんなドラコを見たウツシは優しくかつ厳しく諭した。


「どんな理由があっても人に武器を向けちゃいけない。武器はモンスターに向けるべきだ。先輩たちだって人間なんだよ」

「.....ゴメン、頭に血が登っちまった」

反省した様子を見せるドラコに微笑んだウツシは、先輩訓練生たちの方を見た。

「分かればよろしい。先輩たちも、あまりヤツマをいじめないでくださいよ?俺も、同期達も、あんたたちの蛮行には内心腹が立ってますからね...」

ウツシは彼等をキッと睨みつけた。

先輩訓練生たちとドラコは一瞬、ジンオウガを見たような感覚に襲われた。

その後、戻ってきたヤツマとウツシと共に訓練に励み、ハンターになった。先輩たちはなんだかんだあって訓練校を退学することになり、ハンターでもないのに上位ハンターと偽って寒冷群島に行った後、行方不明になったらしい。
・・・・・・


「この旋律は...ヤツマの魂の叫びだ。アイツは臆病なんかじゃない。俺の知ってるハンターの中で一番勇敢な心の持ち主なんだ!!!」

ドラコは確信を持って呟いた。共に戦っていた仲間たちも同意する。

「さあ行こうか!アイツの勇気を無駄にするわけにはいかないぜッ!!!」


元々熱い性格のドラコは友の旋律に更に心を熱くするのだった。そして、ウツシに教えてもらった、気合を入れる言葉を叫ぶ。

「気焔万丈!!!」


 
 

 
後書き
百竜夜行が収束し、拠点に帰ろうとしたドラコに待ったがかけられる。ドラコは「推しモンスター」をドラコ達に狩られてショックを受ける少女を連れて水没林へ行く羽目になってしまった。

だがそこで出会ったのは「推しモンスター」を叩きのめす「鬼」であった。

ドラコは新たな武器を携え「鬼」に挑む。


次回
モンスターハンター ~寒冷群島の赤き鬼狩り~
第三話『毒妖鳥を求めて』 

 

第三話 毒妖鳥を求めて

彼女の推しモンスター「プケプケ」を勝手に狩猟してしまったドラコ。せめて一体倒したいというフィオドーラの我儘という依頼を受け、水没林に行くことに。

「あれ、なんでこうなったんだっけ.....」

ドラコは、拠点のワーニェ村に戻るはずが、なぜか水没林に来ていた。

「よ~し!プケプケに遭いに行きましょ~!」

「おー」

同行者であるヒルバーボウIを持ち、プケプケシリーズを身にまとった小柄な少女が天真爛漫な笑顔を向けていた。

彼女の名前はフィオドーラ。北方の貴族令嬢だった彼女は、毒妖鳥プケプケの持つ独特な愛嬌に魅入られて以来、装備のすべてをプケプケ系統で揃えるという愛着ぶりを発揮していた。

同期の間でも「プケプケ」はある意味NGワードで、一言でも発すればフィオドーラがすっ飛んできてプケプケの魅力について延々と語られる」とされていた。

なおドラコも被害者の一人であり、ヤツマに厳しい一言を放ったディノと争いになったときにフィオドーラが駆り出され、二人まとめてプケプケトークの餌食になったという。

後に「喧嘩両成敗」ならぬ「喧嘩両プケプケ」なる言葉が訓練所で流行ることになったとかなってないとか。



そしてなぜこのフィオドーラと水没林に来ることになったのか。それは、百竜夜行から砦を守り抜いて宴を行った後、解散した時に。

「さて、俺も帰りますか。村長やイヴ(受付嬢)も待ってるだろうし」

お土産を持って帰ろうとしたドラコの前にフィオドーラが立ちはだかった。

「待ってください!!」

「どうしたフィオドーラ...」


「責任、取ってください!」

「!?」

突然言われたことに驚くドラコにフィオドーラはさらに続ける。

「わたし、ウツシさんから『プケプケ来るよ』って手紙が来たから、わざわざ新大陸からここまで来たんです!それなのにドラコさんたちが狩ったせいでプケプケに会えなかったじゃないですか!」

頬を膨らませ怒っているフィオドーラ。彼女を怒らせた原因はただ一つ、『プケプケに会えなかった』からである。その怒りは現れたジンオウガにぶつけたのだが、まだ怒りは収まっていない様子だ。


「ごめんて...プケプケ素材渡したじゃん...」

「そーいう問題じゃありません!ドラコさん、プケプケ狩りに行きましょう!せめて1プケは狩らないと帰れません!」

「なあ、あんときはゴウとカエデもいたぜ?アイツらには声かけなかったのかよ」

「ゴウさんとカエデさんは誘おうとする前に帰られました...」

あの二人は宴の席でもあまり機嫌のよろしくなかったフィオドーラを見ていろいろ察したようだ。

肉と団子に夢中だったドラコは気づいていなかったらしい。

「しゃーねえ、少し付き合ってやるか」



・・・

水没林を探索している二人。ドラコは途中で環境生物エンエンクを拾った。

そしてようやくプケプケを見つけたのだが...

「そんな...」

「なんてこった...」

2人が目にしたのは...。なんとプケプケを完膚なきまでに叩きのめしている牙獣種のモンスターだった。

「ひどいです...!プケプケが...」

飛び出そうとするフィオドーラの腕をつかみ、それ以上行かないようにさせるドラコ。

「なにするんですかぁドラコさん!」

「ダメだ。アイツは金獅子ラージャン...俺達新人が勝てる相手じゃねえ」

そのモンスターは大型のサルのような姿で、頭には大きな二本角が生えている。しかも背中が金色になっていた。獅子のようなたてがみも持っている。ラージャンが「金獅子」と呼ばれる所以である。


「ドラコさんはゴシャハギに勝てるのでしょう?ラージャンにも勝てるはずですよ!」

「バカ言うな...俺が倒してるのは下位個体...上位にはまだ上がってねえ。それにラージャンはそんじょそこらのモンスターとは格が違う...。ゴシャハギの数倍は強いぞアイツは。下手したら二人とも殺されちまう。プケプケはあきらめよう」

「うう...わかりました...」

その時、ラージャンが二人に気づいてしまった。

「不味いな...フィオドーラ、お前だけでも逃げろ。そしてギルドに報告するんだ」

「ええ!?ドラコさんは?」

「俺はあいつをできるだけキャンプから遠ざける。このエンエンクを使ってな。大丈夫、戦わねえよ。」



そして二人は一旦別れ、ドラコはラージャンの前にわざと躍り出てエンエンクのフェロモンを付与した。


「ガアアアア...!!!」

「さあ、俺についてきな!」

ガルクに乗りラージャンを誘導しながら逃げていく。




だいぶ引きはがせたと感じたドラコだったが、後ろを向いた後に前を向くと何と目の前にラージャンが!


「うわ!?」

「ガアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!」

ラージャンは極太の「気光ブレス」を放ってきた。

「ぐわあああ!?」

「きゃうん!?」

なすすべなく吹き飛ばされるドラコとガルク。そんな一人と一匹にとどめを刺すべくラージャンが迫る。

何とか立ち上がり、記念すべき10体目のゴシャハギの素材で作ったチャージアックス「ゴシャガシャ」の盾を構え防御の姿勢をとるが、一撃で破壊されてしまった。


(同期の中で最初の殉職者になるのか...俺は....くそ、ディノより先に死ぬなんてな)

ドラコは内心あきらめかけていた。その時。



「やめなさーいっ!」

プケプケに乗ったフィオドーラが駆けつけてきた。驚くラージャンに舌攻撃を食らわせた。


「フィオドーラ!?」

「ギルドに連絡は済ませてきました!でもドラコさんを見捨てるわけにはいきません!」

「フィオドーラ.....」

「さあ、プケプケの背中に乗って!行きますよっ!」

プケプケを操りラージャンにぶつけて二体の動きを封じた隙に逃走、ラージャンの追跡を何とか免れ、2人はキャンプ前に辿り着いた。




「ありがとな、フィオドーラ」

「いいえ...もともと私の我儘でしたし...付き合ってくれてありがとうございました」

2人はギルドの調査団を待つことにした。

「見事なプケプケ捌きだったなぁ」


「ふへへ....プケプケに乗っちゃったぁ~♪」

「なんか凄い顔になってんぞ!?」

「にへへ...プケプケぇ~♪」


そして調査団に事情を説明し、二人はカムラの里へ。ゴコクにも報告する。


「報告感謝するでゲコ。あとはこちらで調査を進めるゲコ」

「まさかラージャンに遭遇するなんて思わなかったす」

「百竜夜行の影響は少なからず出ているかもしれないでゲコな」

「ですね」

「おかげでプケプケに乗れたので結果オーライです!」

最後まで変わらずプケプケ愛を貫くフィオドーラであった。


フィオドーラと別れ帰路につくドラコ。ふと、自分の装備を眺めた。ひどくボロボロである。

「...装備がボロボロになっちまったなぁ...村に戻ったら新調するかー....」


ワーニェ村にたどり着いた。ドラコの拠点にして故郷である。

「ドラコ、帰ったか」

「お帰りなさい、ドラコくん」


村長と受付嬢であるイヴがドラコを出迎えた。

「ただいま!!」



 
 

 
後書き
百竜夜行から数ヶ月後、ドラコは
かつて試験の時に組んだ仲間と共に連続狩猟に挑む。
ドラコ達の前には、彼等に因縁のあるモンスターたちが立ちはだかる

次回 モンスターハンター ~寒冷群島の紅い鬼狩り~
『第四話 久しぶりのパーティー 前編』 

 

第四話 久しぶりのパーティー 前編

百竜夜行から数ヶ月後。

「連続狩猟.....三体....ふーむ....」

ドラコは村のクエストカウンターで、ある依頼書を眺めていた。

米に異なるポイズンライフ

依頼主
ゼーグト領に赴こうとした商人

ババコンガ、ゲリョス、リオレイアの狩猟

依頼内容
ゼーグト領で商売を始めようと思ったんだが、道中にババコンガとゲリョスが現れたんだ。さらにリオレイアまで!....でも俺の知ってるリオレイアじゃなかったような気もするけど....とにかく狩猟してくれ!



受付嬢のイヴが話しかける。

「百竜夜行よりは数が少ないし、ドラコくんが今まで狩ってきたモンスターばかりだから、きっと大丈夫だと思う。....けど毒を使うモンスターが多いから、解毒薬は多めに用意した方がいいかな」

「確かに、毒使いが2体だもんなぁ....あ、ハモンさんがくれた耐毒珠を着けてみるよ」

「3つ使えば毒を無効化できるんだよね。これならグッと楽になるかも。....気をつけてね。」


「ゼーグト領....クリスの故郷だな」

ドラコがイヴと話しながら依頼文を眺めていると、後ろから声がかけられた。

「お、面白そうな依頼やなぁ」

「あたしも受けるっす!」

「こちらのクエスト、私も挑んでよろしいでしょうか?」

「.....クリス!?シン!?レマ!?」

「よう。久しぶりやなドラコ!」

「ドラコ様、お元気そうでなによりです」

「あたしたちも来たっす!」

フルミナントソードを携え、防具はディアブロDシリーズ一式を着用した豊満な体躯の美少女、クリスティアーネ・ゼークト

スカルダシリーズ一式を着用し、大剣バスターソードを持った巨漢、シン・オーマ

ボロス装備を着用し、ウォーハンマーを持った小柄な少女、レマ・トール

が現れた。

この3人はドラコの訓練生時代の同期であり、卒業試験にて(元々は別チームだったものの)チームを組んでババコンガを討伐した仲間である。

久々に仲間と再会しホクホク顔のドラコ。3人に依頼文を見せる。

「...めんど...厄介なモンスターばかりッスね」

「よく見たら私たちと因縁のあるモンスターばかりですね。それに私の実家のある領土付近に出現しているとなると....見過ごせません」

「.....連続狩猟やと、報酬金もたんまり貰えそうや。実家への仕送りもいいもんになるで」

「そうだな。そーいやクエストって最大4人まで受けれるんだったよな。イヴ、このクエスト、4人で受けていいかな」

「わかったわ。手続きを済ませるわね」

イヴは手続きのために奥の部屋に引っ込んでいく。

イヴの後ろ姿を見送ったドラコを見たレノとシンがドラコを弄りに来る。

「.....おやおやおやー?どうしたんやドラコー。あの子のことずっと見てるやん」

「この子が噂の幼馴染ちゃんっスか?」

「!?そ、そうだよ悪いか!?」

「ふふっ、綺麗な方でしたね....」

クリスティアーネも微笑んでいる。

「ああ。イヴは村1番の美人なんだ。綺麗で可愛くて優しい、俺の自慢の幼馴染だよ」


・・・・

「イヴ?何してんの?」

「はうう~~」///

同僚が何故か恥ずかしそうに顔に手を当てているイヴに声をかけた。

「(あっ、察し)イヴ、代わりに手続き済ませとくわ。火照りが冷めるまで休んでて」

「あ、ありがとうございます....」

イヴではない受付嬢が依頼を受理してくれた。

「あのー、イヴは.....」

「あの子は誰かさんのせいで仕事どころじゃないみたいよ。少し休ませてるわ」

「....具合悪いのかな」

「「「....」」」

恐らく自分のせいだということに気づいていないドラコ、受付嬢の説明を聞いてないような返答をしてしまう。ほかの面々は呆れるしか無かった....。


・・・・・

ゼーグト領付近の草原にある、モンスターが出現したエリアにたどり着くドラコ達。

「......あそこか。」

いびきをかいて寝ているババコンガを眺めるドラコ達。

「相変わらずのたるみ腹やなぁ」

「あの試験の日を思い出しますね....」

「お荷物センパイと入れ替わりで来てくれたドラコさんと狩猟したあの日っス!」

「そうだったな。.....あいつどうなったんだっけ」

「見つかったとか見つかってないとか....アイツの消息なんて正直興味ないで」

「そうッスよ。本当に邪魔だったっス」

「ええ。アレみたいなのとは二度と組みたくありません」

他の訓練生から試験の参加枠を奪い、上から目線で余計なことしかせず、挙句の果てには3人を置いて逃げ出そうとしてババコンガにぶつかられ崖から転落したコネ野郎先輩のことをボロクソに言う3人に対してドラコは苦笑する。

「....ハハ...そうだな。あんな奴のことはさっさと忘れるか。.....そろそろ始めようぜ」

ドラコはいつの間にか調合していた大タル爆弾Gを、ババコンガの顔の近くに設置する。

「ドラコ、中々えげつないことするやん」

「この投げクナイで起爆させるぜ。」

『~~~~!?』

爆音の目覚まし時計でダメージを受けつつ起こされたババコンガ。安眠を邪魔した人間を睨みつけ、大きく両手を上げ、突き出た腹を揺らしながら放屁して威嚇する。

「相変わらず下品ですね」

「せやなぁ....」

「うー、くさいっスー....」

「踊ろうぜ、フラムエルクルテ!」

ドラコは高らかに決め台詞と取れるセリフを言うと、ババコンガに真っ先に向かっていった。

・・・・・

しばらく戦闘し、ババコンガを着実に追い込んでいく。

「腹減ったろ?これでも食べな!」

ドラコはいつの間にか調合していたシビレ罠肉を設置した。ババコンガは腹が減っていたのかまんまと食らいつき、麻痺してしまった。

「っし、成功!今だ!」

「はい!.....参りますっ!」

「いくで!これでお陀仏やぁ!」

クリスティアーネとシンの同時溜め斬りが炸裂する!

「うおりゃあああ!」

最期はレマが力いっぱいハンマーを振り下ろしてババコンガに大ダメージを与えて倒した。

ババコンガを討伐した一行。だが、彼等に休む間はない。

次のモンスターを探しに向かうと....

「....いました、ゲリョスです」

クリスティアーネが、奇妙な形のトサカとくすんだ藍色の皮膚が特徴の鳥竜種、ゲリョスを発見した。

「今度はいけるよな」

「ええ。装備も強化してますから」

「あの時のリベンジやな」

「....そうッスね。今度はこの4人でいけるっス!」

「....すぐ行きたいところだが、一旦研石で研いでおこうぜ」 
 

 
後書き
試験の時は狩れなかった(試験内では狩ることが出来なかった)ゲリョスと対面するドラコ達。

更に、リオレイアも現れるが....

次回 モンスターハンター ~寒冷群島の紅き鬼狩り~
『久しぶりのパーティー 後編』 

 

第五話 久しぶりのパーティー 後編

ゲリョスに挑む前に、一旦休憩をとることにした。武器の手入れをしたりして準備を整えるのだ。

各人が回復薬の補充をしたり研石で武器を研いだり肉か団子を食べたりして過ごす。

そんな中、ドラコがポツリと話し始めた。

「実はよ、俺訓練生の時にクリスに告白したんだ。玉砕したけど」

突然のカミングアウトにシンとレマは同時に大声をだす。

「は!?告白した!?そんなん初耳やで!?」

「そうっスよ!?クリスさんから「告白されたけど断った」とは聞いたんスけどまさかドラコさんが!?」

クリスティアーネが頷く。

「.....ドラコ様は、私に告白しようと決意した際、心に迷いのようなものがあったそうです。」

訓練生時代のある時、ドラコが著しく不調だった時があった。

訓練に支障をきたすほどボーっとしてたこともあった。

ドラコは、幼馴染のイヴのことを想い続けてはいた。しかし訓練所で出会ったクリスティアーネに一目惚れしてしまったのだ。

だが、クリスティアーネは早くハンターになるべく修行に励んでいる。そんな彼女を邪魔していいのだろうかと。そして、中途半端な気持ちではクリスティアーネにも、イヴにも迷惑がかかるのではないかと考えた。

そこでドラコは思い切って告白してみることにした。

「出会った時に一目惚れした。モンスターから人々を守るクリスティアーネを、俺に守らせてくれ」

クリスティアーネから帰ってきた、告白への返事はNOだった。

「ごめんなさい、ドラコ様の想いには答えられません」

答えを聞いたドラコは「これで俺のモヤモヤはすっかり解消された。ありがとう」と答え、これからも"仲間"としてよろしく頼む」と握手を求めた。クリスティアーネは笑顔で握手に応じた。

・・・・

「.....そんなことがあったんスね...」

「そーいやメッチャボケーッとしてて教官に叱られてた時期があったなぁ....あの時か」

「そうなんだよね....」

「.....断ってしまった時、ドラコ様を傷つけてしまったのかと思いましたが、その真逆の反応を示してくるとは思いませんでした....」

「クリスには、俺なんかより相応しいやつがいるだろ?」

「....」///

クリスティアーネは一人の男の顔を思い浮かべてほんのりと顔を赤くした....

「....雑談はここまでにしよう、ゲリョスと決着つけなきゃな」

ドラコは思い出した様子で話を中断した。

「せやな....長話してる場合ちゃうかった」

「....ごめんな、長話につき合わせて」


「いいッスよ。それに、訓練生の時に「クリスさんに告白した相手」が同期女子の間で話題になってた時期があって....真相が分かってよかったっス」

「ドラコ様、この狩猟を終わらせて、訓練生の思い出を沢山お話しましょう」

「おう!」

そしてゲリョスの元へ向かおうとした時。

『ギュワア!?』

『ギャオオオオオオオオォォォ!』(ガブッ!)

ゲリョスが悲鳴をあげていた。何者かに襲われたらしい。

『ギュワアァァ~.....』

その声を最期に、ゲリョスの声は消え、代わりにグチャ、グチャと何かを噛みちぎるような音が聞こえた。

駆けつけると、ゲリョスは既に何者かに倒されていた。

「えっ.....」

「ゲリョスが死んどる!?」

ゲリョスはリオレイアに捕食されていた。しかし、体格は一回り大きく、所々紫がかった体色、赤く光る傷跡が頭から尻尾にかけて刻まれている、と言う特徴を持っている。


「な、なんですか!?このリオレイアは」

「ただのリオレイアやない.....?」

「普通のレイアの2倍....10倍怖いっす!?」

「とんでもねぇバケモノに出会っちまったな」


リオレイアは新たな獲物....ドラコ達を見つけると、

『ギャオオオオオオオオオオオオォォォン!』

と雄叫びをあげた。


 
 

 
後書き
・・・・・

ゲリョスを食い殺した謎のリオレイア。
その猛毒が毒対策をしてきたはずのドラコを蝕む。

次回 モンスターハンター ~寒冷群島の紅き鬼狩り~
『鬼狩り穿つ猛毒姫』 

 

第六話 鬼狩り穿つ猛毒姫

ドラコたちにリオレイアが襲いかかる!

「来たぞ!避けろ!」

「お、おう!」

「はいっス!」

「....ッ!」

突進は躱すことが出来た。が。

「きゃっ!」

「なんと、クリスティアーネが小石につまづいて転んでしまった。

「し、しまった.....」

「危ない!」

ドラコがクリスティアーネを守るべく彼女の前に立つ。

そしてリオレイアのサマーソルトをまともに喰らい、毒を喰らってしまった。

「がああっ.....!?」

「ドラコ様!」

「ドラコ!」

「えっと、解毒薬!」

「......グッ....」

「ドラコ!しっかりせい!ドラコー!」


毒にしては回るスピードが早すぎる。ドラコは力尽きてしまい、(死んではいない)ネコタクで運ばれた。

「毒やない、猛毒や!」

「ドラコ様は耐毒珠を付けていたはず...」

「耐毒珠でも絶えられない猛毒っすか!?」

クリスティアーネたちはドラコの分も攻撃するが....

『ギャオオオオオオオオオオオオオオォォォ!』

リオレイアを怒らせてしまった。その怒気を見たシンたちは....

「なんやあれ、紫毒姫か?」

「紫毒姫って...."二つ名"個体っすよね...」

「似てますが....どこかが違います...」

『ギャオオオオオオオオ!』

三人が話してる間にもリオレイアは雄叫びを上げて火球を吐き出したり、尻尾を振って毒の棘を飛ばしてくる。


隙を見てシンが罠を仕掛けるが、なんとリオレイアは踏み砕いてしまった。

「.....なんやて!?罠が効かへん!」

「古龍みたいです....」

「リ、リオレイアって飛竜種ッスよね?罠効くはずじゃ....」

「待たせたな!」

その時、ドラコが戻ってきた。手には見慣れぬ双剣を握っている。

「な、なんやその双剣は!?」

「見たことない武器っス....」

「封龍剣【超絶一門】!太古から復活した双剣だぜッ!」

ドラコは封龍剣【超絶一門】を掲げ、鬼人化をかける。

「はああああああああああッ!」

前に飛び込みながら斬りつけ、リオレイアにヒットすると飛び上がり、猛回転を繰り出す。

『ギャオオオオオオオオ!?』

「すごいッス!効いてるっス!」

「せやな.....あの武器そんなに強いんか?」

「....もしかすると、あの武器は龍属性なのでは?」

「「龍属性?」」

首を傾げるふたりにクリスティアーネが説明する。

「座学で習ったことがありましたよね。リオレウスやリオレイアは龍属性が最大の弱点と。素人には龍属性武器を用意するのは難しいので2番目に苦手な弱点で攻撃することを推奨しているはずです....」

「....そーいや属性についてやったなぁ」

「属性によって有利不利がある...ッスね」

「....こいつは元々すごく風化した双剣なんだ。少し強化したところで村長が『いにしえの竜骨』と『古龍の血』をくれてな。このお陰でコレに強化できたんだ」

3人が話してるところに、一旦離脱したドラコが戻ってきて武器について話す。

「ドラコ....まさか火山で採掘しまくったんか?」

「資金稼ぎも兼ねてな....。途中主任...ウラガンキンに出くわしたけどw」

「wじゃないっスよ!」

「一種の修行....でしょうか」

「修行と資金稼ぎの両方だな。」


ドラコが加わり4人の攻撃は激しさを増した。リオレイアの尻尾や火炎弾を躱しつつ高威力の攻撃を叩き込んでいく。

「っしゃああ!トドメだァァァ!」

ドラコの凄まじい勢いの乱舞に圧倒されるリオレイア。そしてとうとう地面に倒れ伏した.....

「た、倒したっス!」

「っしゃ、剥ぎ取りや。...毒の棘には注意やな」

「ドラコ様を侵した猛毒....危険ですね」

「なあ、剥ぎ取りは一旦待ってくれないか」

リオレイアの亡骸を剥ぎ取ろうとした3人を呼び止める。

「は?どないしてん?」

「もしかして自分だけが剥ぎ取りをしようとしてるんスか?」

「見損ないました....」

ドラコの発言を迷惑ハンターがよく言う発言と受けとったのか、3人はドラコを非難する。ドラコは慌てて自分の真意を伝えた。

「ちょ!?違う違う.....そういう事じゃないんだよ。このリオレイア、普通のやつじゃないから、専門家に調べてもらった方がいいなと思ってさ」

「あー....せやな...」

「罠も効かなかったッスし、普通のリオレイアより大きくて獰猛だったッスね...」

「なるほど.....。確かに、今まで見たリオレイアとは違いますね。...ドラコ様の意見は一理ありますが....剥ぎ取った素材でも十分では無いでしょうか?」

「...そりゃそうだな...」

「弱っ!?ドラコ弱っ!?」

「秒で論破されたッス!?」

クリスティアーネが一歩上手だったようで、ドラコは秒で論破されてしまった。

「首と尻尾の棘は俺が持って帰って専門の人達に調べてもらうことにするよ」


「うっかり毒に侵されへんようになー」

「....大丈夫だよ!」

兎にも角にも、クエストはクリアである。


その後、リオレイアを調べてもらったのだが....


どうやら、嵐に巻き込まれたかのような傷跡を持ち、百竜夜行に関連がありそうなモンスターだと分かった。

このままだと百竜夜行を率いていたのかもしれないとも言われた。

「.....その傷をつけた存在に備えて力を蓄えてたってことかな....」


このリオレイアが「ヌシ」と称されるのは、まだ先の話である.....
 
 

 
後書き
ワーニェ村のとあるお店で休憩をとることにしたドラコ達。そこでドラコがクリスティアーネに告白した話を詳しくすることになり.....

次回 モンスターハンター ~寒冷群島の紅き鬼狩り~
『玉砕!?ドラコの青春恋愛白書』 

 

第七話 ドラコの青春恋愛白書

 
前書き
後編の内容をより詳しく。 

 
ドラコ達はワーニェの村に戻り、イヴに狩猟の成果を報告した。

「ババコンガは討伐、ゲリョスは先にリオレイアに喰われた。で、リオレイアを討伐したんだがちょっと訳ありでな....。専門機関に調べてもらうことって出来ないかな」

「分かった、手続きしておくわね。それから....これが4人の報酬金。1回ネコタク使ったからその分は引いてあるからね」

「ありがとうな、イヴ」

「どういたしまして。ドラコくん、狩猟お疲れ様。みなさんにもお疲れ様でしたって伝えておいて」

「かしこま!」

・・・・

村の飲食店に来たドラコ達。そこで各々が食べたいメニューを注文する。

「.....面目ねぇ。俺が一乙したせいで報酬金が減っちまった」

「猛毒は想定外やったし、しゃあないやろ」

「そうッスよ。それに封龍剣【超絶一門】で挽回したっスしね」

「ドラコ様の鬼人乱舞、素晴らしかったです」

「そ、そうか?ハハ....なんかこそばゆいぜ」

「....ゲリョス狩りに行く前に話してたこと、もっと詳しく聞かせて欲しいッス!」

「せやな。ちょっと興味あるわ」

「....クリス、話してもいいかな」

「問題ありません」

ドラコが口を開く...

・・・・・

訓練所....

「でりゃああああああッ!」

「ド、ドラコ...もう休もうよ...」

「そうだよ。かれこれ1時間はぶっ通しだ。ツインダガーもボロボロじゃないか」

「....ん?あ、ホントだ....」

訓練生だったドラコは休む間もなく鬼人乱舞を、
に叩き込んでいた。心配したヤツマとウツシが話しかけてきた。

「.....喉カラカラだ....」

「あ、あの....ドラコ様」

そこに、1人の女子訓練生が話しかけてきた。

「ん?....クリスティアーネ...さん」

「お水、如何ですか?」

「....ありがとう」

クリスティアーネは水筒をドラコに渡してくれた。

そして、受け取ったドラコは彼女の背中を目で追い....

「......」

彼は不思議な感覚を覚えていた....


その日からだ。ドラコの調子が悪くなったのは。

ボーっとしてクリスティアーネを目で追うことが多くなった。

「ドラコ!何をボーっとしている!狩場でそのような醜態を晒せばモンスターに食われるぞ!」

教官にも叱られてしまうが、何も聞いていない。

「......」

「聞いているのか!」

「ド、ドラコ....」

ヤツマの呼び掛けでようやく意識を戻したドラコは教官に話しかける。

「!?.....俺なにかしましたっけ?」

「....何もしてないから声をかけたのだが」

「すんません、少し走ってきます!」

・・・・

「......」

ドラコは布団でぼんやりと考え事をしていた。

「俺、クリスティアーネのことが好きなのかな.....。でも、あの子は一人前のハンターになるために頑張ってる今告白してもあの子に迷惑掛けちまうよな....。それに、俺にはイヴがいるし...」

とドラコはあれこれ悩んでいたが.....

「考えたって仕方ねぇ.....!こういう時は....気焔万丈!」

と気合いを入れ直した。だがこの声で寝ていた、寮の同室のヤツマとウツシを起こしてしまった。

・・・・・

ドラコはクリスティアーネを呼び出すことにした。

なぜ自分が呼ばれたのかわからずクリスティアーネはドラコに指定された場所に来た。

そして、神妙な面持ちのドラコが現れた。

「...ドラコ様」

「出会った時に一目惚れした。モンスターから人々を守るクリスティアーネを、俺に守らせてほしいんだ」

クリスティアーネは突然の告白に驚くも、

「ごめんなさい、ドラコ様の想いには答えられません」

と断る旨の答えを出した。クリスティアーネの答えを聞いたドラコは、

「これで俺のモヤモヤは解消された。ありがとう」と返した。そして、

「これからも"仲間"としてよろしく頼む」

ドラコは握手を求めた。クリスティアーネは戸惑いつつも握手に応じた。

・・・・・

それからというもの、ドラコはすっかり元通りに戻った。それどころか更に技のキレが増している。


「今までよりも技のキレが増してる....」

「何かあったのかな?」

ドラコが急に本調子を取り戻したことに疑問を抱くヤツマとウツシであった

・・・・・


「ほー....そういうことかいな」

「なるほどっす〜!」

「断った時、ドラコ様は酷く落ち込むか、逆上するかしてしまうのではないかと思っていました.....。ですがドラコ様はいつもの、....いつもより明るい笑顔で「これからも仲間としてよろしく頼む」とおっしゃって....少し驚きました」



・・・・

「んじゃ、ワイは故郷に帰るで」

「わたしはデンホルムでクエストを受けるっス!」

「シン様、レマ様、どうかお気をつけて」

「また会おうな!」

シン、レマとはここで別れることになった。しかし、何故かクリスティアーネは残っていた。

「おん?クリスは帰らねぇの?」

「はい。....ドラコ様、わたし、ゴシャハギの狩猟に挑戦してみたいです」


「....お、おう!?...少し待ってろ...」

ドラコは慌ててクエストカウンターに向かい、ゴシャハギの依頼を探すが見つからずである。

「....そう都合よく依頼はこないよなぁ」

「ドラコくん、ゴシャハギの狩猟ならこのクエストを受けるといいよ」

イヴがクエスト内容が書かれた用紙を見せてくれた。

「.....ありがとう。この依頼、受けさせてもらう」

・・・・

フラヒヤ山脈の雪山にゴシャハギが出現する。クリスティアーネとドラコが挑むがそこにティガレックスとそれを追う2人のハンターが現れて....。

次回 モンスターハンター~寒冷群島の紅き鬼狩り~
『前門の雪鬼獣、後門の轟竜』