ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~


 

プロローグ

 
前書き
悟空の娘となるオリ主は悟空の母親のギネ似です。

チチ似だとありきたり過ぎて面白くありませんし、悟飯の正反対の性格の描写が上手く出来ればなと思います。 

 
エイジ757。

パオズ山と呼ばれる山奥で父親と同じ尻尾を生やした双子の赤ん坊が誕生した。

1人は女の子で、もう1人は男の子だ。

この2人は孫悟空とチチとの間に生まれた双子。

弟の方は悟空の育ての親の名前が与えられ、姉の方には悟空の一番の仲間、親友のクリリンの名前と自分の名前を足した悟林(ごりん)と名付けられた。

「へぇー、赤ん坊って小っちぇーんだなー」

「当たり前だべ、でもこの子はオラにも悟空さにも似てねえだな。髪も生え揃ってるだ」

悟林は生まれた直後であるにも関わらず、頭髪が揃っており、ボサボサの肩にかかるくらいの髪であった。

「オラの嫁にも似てねえ…ひょっとしたら悟空のおっ父かおっ母に似たかもしれねえだ」

悟空の養父であり、チチの実父である牛魔王が悟林を見つめながら呟いた。

「オラの父ちゃんか母ちゃんにか…」

悟空が悟林を抱き上げながら、どこか懐かしさを感じさせる娘を見つめた。

それから数年後、悟林は弟の悟飯と共にすくすくと成長していた。

「女の子なんだから絶対お淑やかな子に育てるべ」

チチが悟林をお淑やかな女の子に育ててみせると意気込んだ直後。

「おとーさーん。いのしし、とれたよー」

「おおー、でけえなー」

「うわーっ!?」

眉間に小さな拳の痕が付いたでかい猪を持ち上げて悟空に自慢する悟林と感心する悟空。

そしてピクリとも動かない猪に怯えて悟空の足にしがみつく悟飯。

「お淑やかに…」

「おとーさーん、おさかなとってきたよー。やいてー」

「おお、丸焼きか。こいつは丸焼きにすると美味えんだ。」

次は大型の怪物魚を持ち上げながら、ずぶ濡れ状態で悟空に丸焼きを頼む悟林。

修行帰りだからか、丁度空腹だった悟空は手っ取り早く気功波で魚を焼いて半分こにした。

因みに悟飯は怪物魚が怖くて距離を取っている。

「お、お淑やかに……」

「おとーさーん、おじーちゃーん。みてみてー、かめかめ…はっ!!」

悟林の小さい掌から放たれる見覚えのある亀仙流の奥義。

「おめえ、かめはめ波を撃てるようになったんかー!」

「す、素晴らしい…!流石悟空とチチの娘だべ!」

かめはめ波を放った悟林に悟空と牛魔王は大興奮である。

「おめえ、修行すれば強くなっぞ!父ちゃんと一緒に修行すっか?」

「うん!いっしょにやるー!悟飯は?」

「い、いいよ…こわいし…やりたくない…」

活発すぎる長女に大人しすぎる長男。

チチは世の無情に泣いた。

「(普通逆だべ…)」

悟林の修行は教育優先のチチは猛反対したものの、悟林は修行すると猛烈に言い返して最終的にチチが折れて勉強も手伝いもしっかりやるようにという条件付きで承諾。

更に悟空に悟林に無理はさせないようにと釘を刺してだ。

余談だが、チチと悟林の口論に悟空と牛魔王は圧倒されて口を挟むどころか身動きすら出来なかったとか。 
 

 
後書き
父親のマイペースと母親の頑固さを引き継いでいます。 

 

第1話

 
前書き
まだ幼いから力のコントロールは未熟ですが、その気になったら数百の戦闘力は叩き出せます。 

 
悟林と悟飯が生まれて4年が経過し、2人は悟空に連れられた所には東の海に浮かぶ島の上に小さな家が建っている。

知る者は知る、亀仙人の家であるカメハウスだ。

そこに向かって一つの黄色い雲が飛んでいく。

黄色い帯を引き走っていく雲…筋斗雲は、カメハウスに辿り着くと、そのスピードを落とし…砂浜のすぐ上にぷかりと浮く。

筋斗雲の上に乗っていた人物が砂の上に立ち、中にいるであろう師匠と親友達に声をかけた。

「やっほーっ!」

すると、クリリン、ブルマ、亀仙人がカメハウスから出てきた。

「やあっ!」

娘を肩に乗せ、息子を抱きながら久しぶりの仲間に挨拶する。

「孫君!」

「悟空っ!」

久しぶりの再会に喜ぶ声が上がったのも束の間、ブルマの視線が2人の子供に向けられた。

「あらなあにその子達?」

「子守りのバイトでも始めたのか?いきなり2人なんて大丈夫なのか?」

「バイト?」

「バイトじゃねえよ。2人はオラの子だ」

悟空と悟林が互いに目を見合わせた後に悟空が2人の正体を暴露する。

「「「えええーーーーーーーっ!!!??」」」

「うわっ」

「おっと」

地面を揺るがすほどの大声に悟林は悟空の肩から落ちかけたが、咄嗟に悟空が支えることで落下は免れた。

「ありがとうお父さん」

「おう、そら、おめえ達、挨拶。」

「こんにちはっ!」

「こ、こんにちは……」

元気よく挨拶する悟林とは対照的に悟飯は小さくもしっかりと挨拶する。

「は、はい…こんにちは…」

「こっちの女の子は孫悟林、男は孫悟飯だ。」

「孫悟飯!?そうか、死んだ祖父さんの名前を付けたのか?」

「ああ」

「じゃあ、女の子は?チチさんが付けたのか?」

「それもオラだよ。おめえの名前をちょっとな」

「へ?」

「悟林(ごりん)…ああ、孫君とクリリン君だから悟林ちゃんね」

「な、何か照れるな…」

「何言ってんだ。おめえはオラの一番の仲間じゃねえか」

自分の名前が親友の子供の名前に使われているのは嬉しくもあり、照れ臭くもあった。

「し…しかしこいつはたまげたわい。ま…まさか悟空が子供を連れてくるとはの…」

亀仙人の呟きに内心同意しながらブルマは悟林と悟飯の前に立つと、屈んで目線を合わせる。

「2人共、今何歳かな?」

「4歳です」

「ぼ、僕も4歳です…」

「あらー、孫君の子供にしては礼儀正しいのね…それにしても悟林ちゃんって孫君やチチさんのどっちにも似てないわね」

「チチの奴がうるせえんだ。牛魔王のおっちゃんは、オラの父ちゃんか母ちゃんのどっちかに似たんじゃねえかって言ってたな…」

「ふーん」

悟空と悟林を見つめて、悟空の父母のどちらに似ていても顔立ちは整っているだろう。

「ということは、孫君のパパとママは結構良い男と女だったのね…まあ、私には及ばないだろうけど」

「………」

「「……?」」

ブルマの最後の一言にクリリンと亀仙人がずっこけ、悟空はこめかみに汗を一筋流し、双子は意味を理解出来ずに首を傾げた。

そしてブルマの視界に見覚えのある尻尾が入る。

「し…尻尾が…」

「ああ、はは…前のオラと一緒だろ!」

「ほ、本当だ…!」

悟空が2人の尻尾を懐かしそうに笑いながら見ているが、尻尾がある者の脅威を知る者からすれば笑い事ではない。

「ね、ねえ、その子達、特に妙なことがあったりしない?」

「た、例えば、満月の夜、何が変かはないか...?」

「満月の夜?さあなあ、オラんち早く寝ちまうから... 何で?」

ブルマと亀仙人の問いに悟空は疑問を感じながらも答える。

何故そんな質問をするのか分からない悟空は逆に尋ねた。

「い、いや、何でもない!それならええんじゃ!」

「な、なあ悟空。この子達もお前みたいに強いのか?」

「ああ、悟林はかなりの力を持っててよ。勉強や手伝いの合間に鍛えてやってんだ。悟飯も…悟林と同じでかなりの力持ってるはずなんだけどなー。オラが悟飯を鍛えてやろうとすると怒るんだ。悟林の時も悟林とチチの奴、大喧嘩したしなー。」

話題を逸らすようにクリリンが尋ねると、娘の頭を撫でながら悟飯を鍛えられない不満と、次は娘と妻の大喧嘩を思い出してか複雑な顔をした。

「そ、そうか…大変だな…でも勿体ないよな。よーし、悟林ちゃんだっけ?武道家の先輩としてどれくらいか見てやるよ。俺に一発パンチしてみて」

「良いの?怪我しない?」

「大丈夫さ、信じて思いっきり来い!」

「うん!」

次の瞬間、悟林の小さな拳はクリリンの眼前に迫り、慌てて顔を逸らす。

僅かでも顔を逸らすのが遅れていれば顔面にパンチを喰らって確実に吹き飛ばされていただろう。

「…………」

「凄ーい!じゃあ、もっと行くよ!」

今度はラッシュを繰り出すつもりなのだと判断し、クリリンは慌てた。

「わわっ、ちょっと待った……き、急に腹が痛くなっちゃってさー。今日はこれでおしまい」

「えー」

膨れる悟林だが、冷や汗を流し、流石悟空の娘だとクリリンは表情を引き攣らせながら思った。

「ほほ、悟空の武道家としての素質は確実に娘に受け継がれたようじゃのう」

「だろ?実はオラ、悟林の成長が結構楽しみなんだ。悟飯も鍛えてやりてえけど、悟飯は偉い学者さんになりてえみてえだし。」

「へえ、孫君の子供なのに学者さんねえ…何でまた?」

「お父さんの影響なんだよねっ」

「「「へ?」」」

予想外な悟林の言葉にクリリン達の視線が向けられるが平然としている。

どうやら父親の胆力も娘に継承されたようだ。

「お父さん、私と悟飯と一緒にパオズ山の色々な所に連れていってくれるの。見たことのないお花が咲いてる場所や恐竜の卵が孵りそうとか、食べられる物や食べられない物。お薬になるものとか…色々教えてくれて、もっとたくさん知りたいから学者さんになりたいってお母さんに言い出したんだっけ?」

「う、うん…」

恥ずかしそうに俯きながら人差し指をつつきあいながら肯定した。

「そっかー、それにしても学者になりたいって切欠がお前なのが意外だよ」

「そうか?」

「そうだよ、何だ…お前も良い父親してるじゃないか」

悟空が2人に知識を与えてることについては驚いたものの、悟空は幼い頃からパオズ山でずっと暮らしていたのだ。

山奥で生きるために培った生きた知識は相当な物だろう。

「はっはっは、あの世間知らずで子猿のようじゃった悟空が一端の父親になれたようで何よりじゃよ。あの跳ねっ返り娘も中々の教育ママさんなようじゃし。」

世間知らずで奔放な悟空には寧ろ厳しいくらいの母親が必要だろう。

「ねえ、今気がついたんだけど、悟林ちゃんと悟飯君の帽子に付いてるのドラゴンボール…!?」

「ああ、悟林には三星球。悟飯には四星球だ。四星球は祖父ちゃんの形見だからな!探しだして付けてやった。後、六星球も見つけて家に置いてあるぞ」

「懐かしいわね、ドラゴンボールか…」

和やかに談笑する悟空達だが、それは次の瞬間壊されてしまう。

悟空がここから少し離れた場所で恐ろしく強大で邪悪なパワー…気を感じ取ったのだ。

険しい表情を浮かべた悟空にクリリン達が動揺する。

「な、何だ!?どうしたんだ?悟空…」

「な、何かこっちにやって来る!何か…!!」

クリリンが尋ねるが、悟空から聞いた言葉にクリリンも悟空の見ている方角を見つめる。

「え…?何か来るって?」

「ヤムチャかしら…」

不機嫌そうにブルマは悟空の見ている方角を見つめる。

「す…凄え…凄えパワーを感じる…!!な…何だってんだ…!?………来たっ!!」

「あっ!」

筋斗雲よりも速いと思われるスピードでやって来たのは妙な装備で身を包んだ長髪の男だった。

「ふっふっふ... 成長したな。だが一目で分かったぞ、カカロットよ。父親そっくりだ。」

「へ!?」

「な、何だよこいつ...」

突然現れた男と聞き慣れない名前に悟空とクリリンは困惑した。

「カカロット、この星の有様は何だ。人類を死滅させることが貴様の使命だったはずだ。一体何を遊んでいた…!」

「ねえ、あんた何処の誰か知らないけど、帰って帰って!しっしっ!んもう…昼間っから酔っぱらってちゃ駄目だったら」

気の感知が出来ないクリリンは男を酔っ払いと判断して追い返そうとする。

「クリリン!近寄るなっ!!」

悟空が止めようとするが既に遅く、クリリンは弾かれてカメハウスに激突した。

「クリ…!貴様っ…!!」

悟空が男に向かって振り返った時、クリリンを弾き飛ばした物の正体が分かった。

「し、尻尾…!!」

かつての自分にあり、娘と息子に受け継がれた尻尾が男にはあった。

クリリンを吹っ飛ばした男の尻尾に悟空は驚く。

昔、修行の旅をしていた時も自分と同じ尻尾を生やした人間などどこにもいなかったからだ。

「し…尻尾だ…!こ…こいつにも尻尾が、ある…!」

「ふふふ…やっとこの俺の正体が分かったようだな…」

「正体…!?どういうことだ…!」

男の言葉に悟空は聞くが、悟空の言葉に男は表情を険しくする。

「カカロット…貴様、そんなことまで忘れてしまったのか…!?何ということだ…!おい!以前頭に強いショックを受けたことがあるか!?」

「オラはその、カカ何とか何て言うおかしな名前じゃねえぞ!孫悟空だ!!」

「質問に答えろ!幼い頃などに頭を強く打ったこととかあるのか!?」

「…ある!オラは覚えちゃいねえが、うんと小せえ頃に頭を打った…!今でも傷が残ってる…」

男の問いに悟空は古傷のある頭に触れながら肯定する。

「くそ~!やはりそうだったか…!」

「だけどそれがどうしたって言うんだ!」

「…悟空よ…その昔、死んだ孫悟飯が言っておった…尾の生えた赤ん坊を拾ったが、性格が荒くどうにも懐こうとはせず、ほとほと困り果てていたそうじゃ…だが、ある日誤って谷に落ち、頭を強打して死にかけたが、信じられん生命力でその赤ん坊は助かったらしい。おまけにその後、性格の荒さは消え、大人しい良い子になったと言う…」

今は亡き孫悟飯老から聞いた悟空の過去。

「ちぃっ!!」

「そ、それがオラか…!?」

「…うむ…」

それを聞いた男は舌打ちし、悟空も動揺しながら亀仙人に尋ねると肯定する亀仙人は少しの沈黙の後に肯定した。

「…そ…それってどういうこと?あ…あいつ、孫君と何か関係があ…あるわけ?」

双子を庇いながら話を聞いていたブルマはあの男が何故悟空に拘るのか分からず、男を見ながら言う。

「…お、おめえ一体誰だ!何者なんだ!!」

「何もかも忘れてしまったとは、厄介な野郎だ。いいだろう思い出させてやる。これから貴様にも色々と働いてもらわねばならんからな…」

「う…うくくく」

尻尾を腰に巻き付けると、クリリンは気絶から復帰し、何とか起き上がった。

「大丈夫か!?クリリン」

「あ…ああ…何とかな…気を付けろ悟空…あ…あいつ普通じゃない…」

「うん…そうみてえだな…こうやって向かい合ってるだけでも正直言って怖いぐらいだ…こんなこと初めてだ…」

クリリンが隣に移動して悟空に注意を促すと、悟空も冷や汗を浮かばせながら同意し、今までにない恐怖に動けないでいた。

「教えてやる!まず貴様はこの星の人間ではない!生まれは惑星ベジータ!誇り高き全宇宙一の強戦士族サイヤ人だ!!」

「なな…何じゃとお…!!」

悟空の正体に全員が驚愕し、ようやく出た亀仙人の言葉も震えていた。

「そしてこの俺は…貴様の兄、ラディッツだ!」

ラディッツと名乗った男は自分を悟空の兄だと言った。

つまりそれはブルマが庇っている双子の叔父と言うことになる。

「ご…ご…悟空の…あ…兄貴だって…!?」

「きょ、兄弟…!?う…嘘…!」

クリリンとブルマが唖然となるが、次の瞬間悟空が否定する。

「出鱈目だっ!出鱈目を言うなっ!!」

「そ、そうだ!悟空が宇宙人なら何で地球にいるんだよっ!」

「ふっふっふ…答えは簡単だ。カカロットはこの星に住む邪魔な人間共を絶滅させるために送り込まれたのだ!我々サイヤ人は戦闘民族だ。環境の良い星を探し、そこに済む者を絶命させてから適当な星を求めている異星人達に高く売るのが仕事だ。戦闘力の高い奴らのいる星へは大人の戦士が直接乗り込むが、この星のようにレベルが低い所にはお前のように赤ん坊を送り込む。幸いなことにこの星にも月があるしな…お前1人でも数年かければ充分に邪魔者を一掃出来たはずだ…命令さえ覚えておったらな!」

「も…もしそれが本当のことだったら、ひ…酷え奴らだ…無茶苦茶だよ…ピッコロが可愛く見えらあ……」

赤ん坊すら利用する冷徹さや、星の住人を根絶やしにした上に売り飛ばすと言うサイヤ人の所業にクリリンは思わず呟く。

「………おい、ここには月があるから何で幸いなんだ…?」

「惚けるな…月が真円を描く時こそが我々サイヤ人の本領を発揮出来る時ではないか!」

「「「…あ…!」」」

それを聞いたクリリン達の脳裏を過ぎったのは満月を見て大猿となった悟空であった。

つまり、あの大猿の姿はサイヤ人の能力だったというわけだ。

「何のことかさっぱりだ!」

「何!?」

しかし、自分が大猿になったことなど知らない悟空にはラディッツの言っていることは理解出来ない。

そしてラディッツも悟空に尻尾がないことに気付いた。

「!!ま、まさか…!貴様、尻尾は…!尻尾はどうしたっ!?」

「ずっと前に切れて無くなった!」

正確には神様に切られて二度と生えない処置を施されたのだが、ラディッツにはそこまで説明する義理は悟空にはない。

「何ということだ…!愚か者め~…!道理で貴様がこの星の者共と仲良くしていられるわけだ…!」

「もういいっ!オラが他所の星から来た何とかって奴だろうが、おめえが兄ちゃんだろうが関係ねえ!!クリリンの言う通りだよ!そんな奴らは最低だ!!オラはここで育った孫悟空だ!とっとと帰れ!!」

「そうよそうよっ!」

「そう言うことじゃ…過去はどうあれ、今の孫悟空は誰よりも立派な地球人なんじゃ」

「悟空はな!この世界を救ったぐらいなんだぞ!帰れ帰れ!!」

悟空の言葉にブルマが同意し、亀仙人とクリリンも続くが、ラディッツは笑みを深めるだけだ。

「ふふふ…ところがそう言うわけにはいかんのでな…サイヤ人は元々少数民族だった上に惑星ベジータが巨大隕石の衝突で爆発してしまったのだ…。ほとんどのサイヤ人は宇宙の塵と消えた…俺達の父親や母親もな。残ったサイヤ人はお前を含めてもたったの4人しかいないのだ!この俺ともう1人は他所の星を攻めていて助かった。そして後1人はお前のように星に送り込まれていたのが幸いした…ついこの前、非常に高値で売れそうな良い星が見つかってな!そこを攻めたいのだが、3人ではちょっと苦戦しそうなんだ……そこで思い出したのがカカロットのことだ。お前はまだ戦闘力が完全ではないが、3人に加わってくれれば何とかなる…目を覚ませカカロット!楽しいぞ!サイヤ人の血が騒がんか!?」

「馬鹿言ってろ!そんなこと、オラ死んだって手を貸すもんかっ!!」

ラディッツがどれだけ言おうと悟空は従うつもりなどない。

そんな反抗的な態度を取る悟空にラディッツは腕を組みながら口元を歪めた。

「ふ…なるほどな…さっきから気になっていたのだが、後ろにいる2人はお前の子ではないのか?」 

ラディッツが親指でブルマに庇われている双子を指差す。

「!!」

「ち、違うっ!!」

「惚けても無駄だ。あの尻尾は何だ?サイヤ人の血を引いている証拠じゃないか」

双子にはサイヤ人の特徴である尻尾が生えている。

サイヤ人であるラディッツに悟空の言葉は容易く破られた。

「何だってんだよっ!!」

「父親のお前がなかなか聞き分けが悪いでな。ちょっと2人を貸してもらうとするか…」

それを聞いた悟林はブルマの腕を抜け出して悟飯を守るように前に出た。

「ちょ!?悟林ちゃん!」

「お姉ちゃん!」

「ほう、流石に勇敢なサイヤ人の血を引いているだけはあるな」

目を吊り上げて威嚇する悟林にラディッツは笑みを浮かべた。

「悟飯に近寄るなっ!!」

「ふん……その髪…その顔……お袋に似ている」

「…?お袋…おめえの母ちゃんに悟林が似てるのか?」

ほんの僅かだけラディッツの威圧感が和らいだ感じがした悟空はラディッツの発した言葉に聞き返した。

「俺だけではない、お前の母でもあるんだぞ。お袋は息子の俺から見ても甘かった。サイヤ人の生業である戦闘を苦手とし、誇り高きサイヤ人の中でも底辺と呼ばれる下級戦士以下の、最底辺とも言える非戦闘員に自らなった。サイヤ人の癖にどこまでも甘かったな……まあいい、貴様の娘と息子を借りていくぞ」

威圧感が元に戻り、2人に向かおうとするラディッツを悟空は構えた。

「それ以上近寄ってみろ!ぶっ飛ばすぞっ!!」

クリリンと亀仙人も構えるが、ラディッツは一瞬で悟空との間合いを詰め、強烈な膝蹴りを喰らわせた。

防御すらろくに出来ないまま、悟空は吹き飛ばされて地面に倒れてしまう。

「お父さん!?」

「…が……!うあ…あああ……!」

悟林はあの強い父親があっさりと吹き飛ばされたことに驚愕する。

「お父さーんっ!」

「おっと」

「「………」」

クリリンと亀仙人はラディッツのスピードと悟空が一撃でやられたことに目を見開く。

ラディッツは悟空に駆け寄ろうとした悟飯の首根っこを掴み、悟林も同じように捕まえた。

「離してっ!」

抵抗する悟林にラディッツは笑みを浮かべた。

「ふん、気の強いところもお袋にそっくりだ。だが、お袋と比べてサイヤ人らしく随分と好戦的なようだ。カカロットよ、子供は預かっておく。生きて返して欲しければ兄の命令を聞くんだな…」

「ぐ…ぐぬぬ…」

「ご…悟空が…たったの…一撃で…」

「1日だけやるから苦しんで考えてみるがいい。まあ、仲間に加わるしかないだろうがな。ただしその証拠を見せてもらうぞ…なあに、簡単なことだ。明日のこの時間までにこの星の人間を取り敢えず100人ほど殺してここにその死体を積んでおけ。聞こえたな、明日を楽しみにしているぞ。弟の子供だ、出来れば俺も殺したくはない。ふっふふふ…」

「そ…そんなの…無茶苦茶だ…!」

あまりの冷酷な言葉にクリリンはそう呟いた。

ラディッツは起き上がろうとする悟空に向けてもう一度念を押す。

「いいか、もう一度念を押しておく。明日までにこの星の人間を100人殺してここに死体を積んでおくのだ。そうしたら我々の仲間に加えてやろう。勿論死体がなければ貴様の娘と息子は死ぬことになる」

「う…ぐ…」

「ひ、卑怯だぞ…!子供を利用するなんて…!」

「そ、そうじゃ!大体悟空に人など殺せるわけがないぞ…!」

ラディッツの非道なやり方にクリリンと亀仙人が批難するが、ラディッツが笑みを浮かべて振り返る。

「いいとも…こいつらが死んでも良ければ百人の死体を用意する必要はない。ただ…この星の人間共はどのみち近いうちに滅びる運命だぞ…今度の星を攻め落としたら次のターゲットはこの星に決めた!」

「い!?」

「な、何じゃと…!?」

「ふっふっふ…この星の奴らなど我々サイヤ人の3人にかかればたったの1ヶ月で絶滅出来るだろう。カカロットが今100人殺してみせても結局は同じことではないのか…?分かったなカカロット!どう足掻いても貴様はこの兄達の仲間に加わるしかないのだ!」

「こ…子供をか…えせ…!」

泣き喚く悟飯と抜け出そうと暴れる悟林に悟空が手を伸ばそうとする。

「いい返事を期待しているぞ!貴様のためにもだ!逆らおうなどとは考えても無駄だぞ!貴様の未完成な戦闘力では到底この兄には敵わんのだからな!」

「お父さーん!!」

ラディッツが双子を抱えながら空を飛ぶと、悟飯が泣きながら悟空に手を伸ばす。

「離してっ!離してってばっ!」

「ご、悟林っ!悟飯ーーーっ!!」

手を伸ばす悟空を嘲笑うように悟空とラディッツとの距離は離れていく。

「じゃあな!明日を楽しみにしているぞ!ふははははははっ!!」

高笑いしながらラディッツはカメハウスを離れていく。

「うわぁぁあーーん!お姉ちゃーん!」
 
同じくラディッツに捕まっている悟林に向かって、悟飯は一生懸命手を伸ばしたが、悟林は手を取って少しでも安心させたかったが、ラディッツに邪魔されて掴めない。

「悟飯っ、大丈夫だよ、お姉ちゃんが守ってあげるからね…っ」

ラディッツは目的地についたのか、丸い宇宙船らしき物の近くに降り立つと、悟林だけを地面に放り出し、泣き喚く悟飯を一喝した。

「うるさいぞ!いつまでもめそめそしおって!お前も勇敢なサイヤ人の血を引いてるんだぞ!同じサイヤ人とは言え男が女より気弱など恥もいいところだ!!この中に入ってろ!」

宇宙船の中に悟飯を放り込むと、ぴったりと閉じてしまう。

そこに走って行こうとした悟林の前にラディッツは立ち塞がる。

「悟飯を返してっ!」

「そんなに弟が大事か?」

「当たり前だよ!」

勢いをつけてラディッツの横を通り過ぎようとしても妨害されて吹き飛ばされる。

「……私達をどうする気なの?」

「カカロットが仲間になるならよし、そうでなければ殺す」

悟空が本当に仲間になると思っているのか。

父の人となりを幼いながら知っている悟林からすれば絶対に有り得ない。

兄というのは名ばかりの兄弟だ。

敵意を剥き出しにする悟林にラディッツは口元を歪めた。

「カカロットが俺達の仲間になるのなら、貴様もついてくるがいい。出来れば弟の子供を殺したくはないんでな、混血とは言えサイヤ人の生き残りだ。それに貴様もこいつもまだ幼い、サイヤ人らしい教育をしてやればマシになるだろう」

「お父さんも私達もお前の仲間になんてなるもんかっ!!」

「ならば死ぬだけだ」

「お姉ちゃん!お姉ちゃーんっ!」

「だあっ!」

宇宙船から聞こえる弟の声に悟林は恐怖を振り払ってラディッツに殴りかかる。

「おっと」

ラディッツが悟林の拳を片手で受け止めると、鈍い音が響き渡る。

「っ!」

「…サイヤ人とは言えガキにしてはかなりのパワーだな。惑星ベジータが健在ならそれなりの階級を与えられたかもしれん。」

尻尾の一撃が悟林の顔面に直撃し、悟林は吹き飛ばされる。

「う…ううっ…」

悟林は鼻血を流しながらも何とか起き上がった。

「ほう、加減したとは言え起き上がったか。流石はガキとは言えサイヤ人。それなりに打たれ強いな」

「これでも喰らえ…か…め…は…め…」

「む?」

「波ーーーっ!!」

父からの手解きを受けて完成し、ラディッツに向けて放たれた渾身のかめはめ波。

「くあっ!」

かめはめ波はラディッツに直撃し、ラディッツは体を見ると戦闘服に小さな罅が入っていた。

「き、効かない…」

「この戦闘力……スカウターの故障か?いくらサイヤ人とは言えエリートでなければガキの段階でここまでの戦闘力はないはずだが…下級戦士のガキならば尚更…」

罅の入った戦闘服を見つめながら悟林の異常性にラディッツは警戒し、一気に間合いを詰めて腹に拳をめり込ませ、意識を刈り取った。

「スカウターの故障ならいいが、もし故障でないならばこのガキは始末した方がいいな…」

意識が無くなる直前にラディッツのそんな声が聞こえた。 
 

 
後書き
ゲームとかで見ると良くラディッツは勇敢とか一流とか言えたな… 

 

第2話

 
前書き
師匠となるピッコロとの邂逅

サイヤ人って元々の狂暴さや命令とかの刷り込みもあるけど自立心が異常に高いですよね。 

 
意識を失っていた悟林が目を覚ますと、ラディッツの宇宙船が壊れており、クレーターから抜け出すと父親が、悟空が胸に風穴を開けて倒れていた。

「お、お父さん…?お父さーんっ!!」

体に走る痛みに構わずに悟空に駆け寄る。

娘の声に反応した悟空はゆっくりと振り返った。

「悟林…大丈夫か…?」

ボロボロと涙をこぼす悟林の頭に、そっと悟空が触れた。

徐々に冷えていく体、指先はとっくに冷たい。

口を開くと嗚咽になりそうで、何度も頷くと悟空は苦しそうに笑った。

クリリンが悟飯を抱き抱え、ブルマ、亀仙人が悟林と悟空の様子を見守っていた。

「へ、へへ……良かった……あいつに、酷いこと、されなかった、か?」

「う、ん……大丈夫だよ……」

今度はちゃんと声を出せた。

多少声が震えているけれど、それは仕方がない。

「泣くな、って……父ちゃん、すぐに……戻ってくっから……」

「う、ん…うん…」

「みんな…悟林達のこと…頼めるか…?」

「あ、ああ…任せろ。お前もドラゴンボールですぐに生き返らせてやるからな」

全員を代表してクリリンが答えると、悟空は安心したように笑った。

「へ、へへ…頼んだぞ…悟林…悟飯と母さんを頼んだ…ぞ…?」

「お父…さん…?」

自分の頭に乗せられていた手が自分の頭から力なく倒れた。

目を閉じて少しも動かなくなった悟空を見て、幼いながら父親の死を理解した悟林は号泣した。

亀仙人がそんな悟林の背中を撫でてやる。

冷凍カプセルを用意しようと、ブルマが近寄ってきた時に、悟空の姿が揺らぎ、誰もが何事かと目を凝らす悟林達の目の前で、悟空の体は消えた。

「お、お父さん!?消えちゃった…」

「神の仕業だろう。貴様も父親から聞いているはずだ、あの野郎、孫悟空を使って下らんことを考えてやがるな」

「神様って…ドラゴンボールを作った人?」

「そうだ。死人をどうこうするなど、神以外にやらんだろうからな…ぬぁっ!!」

目の前で無くなっていたはずの片腕が生えて、悟林は思わず涙が引っ込んだ。

「蜥蜴の尻尾みたい…」

「あ、それ俺も思った」

悟林の例えにクリリンが同意した。

「貴様らはドラゴンボールを探せ……だが、そこの孫悟空の娘と息子は俺が預かる」

「え?」

「ちょ、ちょっと!何で2人を連れていくのよ!」

「さては2人を食べる気だな!」

「誰が食べるか!そこの2人は訓練次第で強力な戦力になる。1年後にやってくるという2人のサイヤ人と戦う戦力にな……そのために、俺が鍛える」

悟林の腕を掴み、クリリンから悟飯を奪い取る。

「あ、いやでも!悟林ちゃんは女の子だぞ!?」

「女でもこいつはそこらの奴より強い。ラディッツの鎧に最初に傷を付けたのはこいつだからな」

「そ、そうなのか?」

亀仙人が悟林に尋ねると、悟林は頷いた。

「全然効かなかったけど………おじさん、私…強くなれるかな?」

「貴様は孫悟空の娘だ。強くなれるに決まっている」

断言するよう言うと悟林は決意をしてピッコロを見上げて頼み込んだ。

「おじさん、お願い。私に修行つけて」

「いっ!?」

驚愕するクリリン達だが、ピッコロは悟林を見下ろしながら口を開いた。

「父親に鍛えてもらっているようだが、俺はあいつのように甘くはない。それだけは覚悟しておけ」

「はい!」

「ちょ…ちょっと悟林ちゃん!?流石にまずいんじゃないかしら…」

「う…うむ…悟空や母親のチチに聞いてからでないと…」

「そんな時間の余裕はない!」

「亀仙人のお爺ちゃん。お母さんによろしく言っておいて」

さらりと亀仙人にとんでもないことを言い放つ悟林であった。

「では1年経ったらこいつらと共に貴様らの家に行く。孫悟空が蘇ったら楽しみに待っていろと伝えておくんだな」

それだけ言うと、ピッコロは双子を抱えて飛び立った。

「あ…あ…!」

「………」

「知ーらない、私知ーらない!」

「悟空に鍛えてもらってる悟林ちゃんはともかく、弟の方は死んじゃうぞ…!運が良くても不良になる…!お…怒るぞ、悟空とチチさん…」

クリリンがピッコロが飛んでいった方向を見つめながら呟いたのであった。

そしてしばらくして、ピッコロが口を開いた。

「孫悟空の娘」

「何?」

「弟の方は本当に武術を教えられてないのか?」

「うん、お母さんも反対してたし、悟飯も怖がりだから。お父さんは残念がってたけどね」

「チッ、基本すら知らないのか…まあいい、やるならば徹底的にだ」

池のある場所に降り立ち、悟林はピッコロからするりと降りると未だに気絶している悟飯に声をかける。

「悟飯起きて、悟飯ーーーっ」

「いい加減に目を覚ませ、孫悟空の息子よ」

ピッコロも声をかけるが悟飯は目を覚ます気配がない。

「起きないね…」

「チッ!」

「あっ!?」

ピッコロは悟飯を池に落とし、それを見た悟林は慌てて悟飯を引っ張り上げた。

「ぶはっ!げほっ!げほっ!」

「大丈夫、悟飯?」

水を飲んだのか咳き込んでいる悟飯の背を擦ると、ようやく落ち着いたのか悟飯は悟林を認識した。

「はあっ、はあっ…お姉ちゃん…!?」

「ほら、悟飯。水から上がろう、あの人が私達を鍛えてくれるんだってさ」

「え!?」

悟林が指差す方向を振り返るとピッコロが2人を見下ろしていた。

「ほら、お父さんから聞いてたでしょ?あの…」

「ひっ、だっ、誰なのっ…!?」

「だからお父さんの昔話で教えてくれたピッコロさん」

「お、お姉ちゃん!怖いよーっ!」

悟林の後ろに隠れる悟飯。

そんな弟の姿を見ながらピッコロを改めて見上げる。

「いや、そんなに怖がるくらい怖い…かなあ…?私達の伯父さんよりは怖くないと思うけど…」

悟林にとって怖い人ランキングでぶっちぎりの1位は今のところ伯父のラディッツである。

「孫悟空め…極端な育て方しやがって…!」

姉弟のあまりにも正反対な反応に、極端すぎる育て方をした悟空に思わず呟いてしまったピッコロであった。

取り敢えず悟飯は悟林に引っ張られて池から上がり、悟林と悟飯はピッコロの話を聞くことになった…相変わらず悟飯は姉の背中にくっついてるが。

「娘の方は知っているが、まずお前の父は死んだ!少しは覚えているだろう、あの男を倒すために犠牲になったのだ」

「っ!ほ、本当?お姉ちゃん…?」

「………うん」

ピッコロの言葉を信じたくなく、悟林に尋ねてもピッコロの言葉を肯定された。

「お…お…お父さんが…」

「おっと泣くなよ!首の骨をへし折るぞ!」

泣きそうになる悟飯に拳を振り上げるピッコロ。

「泣かないで悟飯、大丈夫だよ。お父さんはドラゴンボールで生き返れるから」

「ひっく…ドラゴンボール…?」

姉の言葉に悟飯は何とか泣き止んだ。

「そうだ、父親に聞いて知っているだろう?お前の姉の言う通り奴の仲間が集めて生き返らせるだろう。しかし問題はそんなことではない。お前達を拐ったあの恐ろしい奴は何とか始末をしたが、1年後に奴よりもっと恐ろしい仲間が2人やって来るらしい。そうなったら孫悟空が生き返ったところで俺と奴だけではまるで勝ち目はない!お前とお前の姉の力が必要だ!修行で戦術を身につけ、共にこの地球を守れ!」

「地球を守る…良く分かんないけど…あんな悔しい思いはしたくないから私…頑張るよ!」

地球を守ると言われても実感はあまり湧かない。

しかし、ラディッツから弟を守れず、手も足も出なかったこと、悟空から弟と母親を任されたことが悟林のやる気に火を点けた。

それに、何故かは分からないが、ラディッツよりも恐ろしい相手と聞いて…何故か気分が高揚するのだ。

それがサイヤ人の性質であることなど今の悟林は知る由もないが、悟林の返答を聞いてピッコロは軽く頷き、次に悟飯を見つめた。

視線を向けられた悟飯はビクリと震えた。

「ぼ、僕も…!?そ…そそ…そんな…無理だよ…僕、お姉ちゃんみたいに闘えないよ…!」

「悟飯、お父さんが悟飯にはかなりの力があるって私と修行する時に言ってたよ。」

「その通りだ。お前は気付いていないようだが、お前の秘めたるパワーは姉弟揃って相当な物だ!特にお前は姉よりも爆発力がある。だから修行でそのパワーを引き出し、有効に使えるようにしろ!」

「う…嘘だ…ぼ…僕、そんな力ない…」

「……でも悟飯、前に森に遊びに行って崖から落ちて岩にぶつかりそうになった時、岩を砕いてたよ?悟飯は覚えてないようだけど」

「だそうだ…何なら証拠を見せてやろう」

「なっ、何するのっ!?」

ピッコロが悟飯の頭を掴んで持ち上げる。

悟飯が痛がっているが、ピッコロは岩の方を向いた。

「ね、ねえ…ピッコロさん…何を…」

「証拠を見せてやるんだ」

「あっ!?」

岩に向けて勢い良く放り投げられた悟飯。

「わーーーっ!!お姉ちゃーーんっ!!」

「ご、悟飯ーーーっ!!」

「(さあ、秘めたる力を見せてみろ…!岩に叩き付けられるぞ!)」

次の瞬間、悟飯の顔付きが変わり、全身にエネルギーを纏ってのエネルギー波が岩に炸裂した。

「う、うわっ!?」

あまりの破壊力に悟林は吹き飛ばされそうになり、ピッコロの足にしがみついて何とか吹き飛ばされずに済んだ。

「す…凄い…悟飯…」

「(お…驚いた…こいつは想像以上だ…)」

大岩が跡形もなく消し飛んでいるのを見て悟林とピッコロは呆然となっていた。

「………」

「悟飯!凄い!凄いよ!時々凄いパワー出してたけど、これなら修行すれば絶対に凄く強くなれるよ!」

興奮しながら呆然としている悟飯の元に向かう悟林。

「(複雑な気分だぜ…俺は将来最も恐ろしい敵になるかもしれん奴を育てようとしている)」

「こ…これ、僕がやったの…!?」

「そうだよ悟飯!こんなに凄い攻撃出来るならお父さんとの修行に連れて行けば良かったなー」

「だが、それは一瞬だけだ。相当に感情が昂った時にだけ本来の秘めたる力を発揮する…しかしそれはほんの一瞬でしかない。それではお前にすら勝てん…この俺が闘い方を叩き込んでこいつを最強の戦士にしてやる。分かったな…」

「だってさ、良かったね悟飯」

「お、お姉ちゃん…でも僕…武道家になんかなりたくない…え…偉い学者さんになりたい…」

「あ、そうだった…悟飯の将来の夢は学者さんだったね」

弟の火事場の馬鹿力に感動してすっかり失念していた。

「なるがいいさ、ただし1年後にやってくる2人のサイヤ人を倒してからだ。奴らは地球人を絶滅させるつもりだ。そうなっては将来も糞もないだろ」

「だ…だって僕…怖い…」

今まで山奥と言う閉鎖的な場所で父母と姉に守られて愛情を注がれて生きてきた悟飯。

悟林のように武術に関心を持つこともなければ、寧ろ痛くて怖いものと忌避してきた。

姉に助けを縋ろうとしても普段は優しい姉も今回ばかりは厳しかった。

「悟飯…私達が何とかしないとお母さんもお祖父ちゃんも殺されちゃうよ?お父さんが死んじゃったから、ドラゴンボールで生き返るまでお母さんとお祖父ちゃんを守れるのは私達しかいないんだよ?」

「その通りだ。サイヤ人からすればお前の母も、大事なものもゴミ屑でしかない。時間がない、早速始めるぞ!さっさと上着を脱げっ!!」

悟飯は慌てて上着を脱いで、悟林がそれを受け取って畳んで近くに置いた。

「ぼ…僕…お…お父さんが生き返るんだったらお父さんに修行を教えてもらいたい」

「ふん、残念だな。あいつは確かに強いがお前のような甘ったれの師匠にはまるで向いていない。人に対する厳しさが全くない…お前達姉弟の極端な育ち方を見ていれば良く分かる…」

「そ…そうかなぁ…?ところでピッコロさん、どういう修行をするの?」

周囲に比べる対象がいないので、自分達がどれだけ正反対なのか理解していない。

とにかく今は修行だと悟林がピッコロに尋ねた。

「まずは何もせんでいい。生きるんだ」

「「え…?い、生きる…!?」」

「そうだ、お前達は別々の場所で1人でここで無事に生き延びてみせろ。姉の方は3ヶ月、弟の方は6ヶ月だ。それまでに生き延びられれば闘い方を教えてやる

「3ヶ月かぁ…ここって食べ物とかあるの?」

「ここは野生の獣や自生している木の実もあり、水場も豊富だ。狩りをすれば食うには困らんだろう」

「そっかあっ!それなら大丈夫そう!!」

父親に数日間、家を離れての修行の時にサバイバルの方法を教えてもらったので悟林はそれなら何とかなると判断した。

楽天家なところは父親譲りかと悟林を見ていたピッコロは悟林を抱えて悟飯を振り返る。

「姉は俺が連れていく。お前はここで生き延びろ」

「ろっ、6ヶ月もぼ、僕1人でこんな所に…!?い、嫌だよ。僕もお姉ちゃんと一緒がいいっ!」

「甘ったれるな!何のために別々にすると思っている!お前は6ヶ月間を何とか生き延びてまずタフさを身に付けろ!精神的にも肉体的にもな!この地球の運命の鍵はお前達姉弟が握っているんだということを忘れるな。お前の姉は自分の力をそれなりに使いこなしている。弟のお前に出来んはずがない」

「頑張ってね悟飯。少し寂しいけど私も頑張るからさ!お父さんから野生の食べ物のこととか教えてもらったの覚えてる?それさえ覚えてれば大丈夫だよ!」

「お、お姉ちゃん!でも…でも僕…」

「悟飯、どんなに離れてても私は悟飯を感じ取れるんだ。悟飯もきっと私を感じ取れるようになる。だから頑張って」

「じゃあな。そうそう、ここから逃げ出そうと思うな。周りは砂漠地獄が広がるのみ…ここが天国に見えてくる程の死の世界だ…。」

「あ…そうだった…」

意識を失っていた悟飯と違って悟林はここに来るまでの道中をしっかり見ており、ピッコロの言葉に偽りがないことを悟飯に思い知らせた。

「行くぞ」

「うん、悟飯。お姉ちゃんはもう行くね」

「い、嫌だ!置いてかないでよお姉ちゃん!置いていくなんて酷いよ!」

「…………」

悟林は悟飯の言葉に迷いを見せたが、ピッコロが口を開いた。

「恨むんならてめえの運命を恨むんだな…この俺のように…」

それだけ言うとピッコロは悟林を抱えて飛び立った。

下から悟飯の泣き声が聞こえてきた。

「………」

「言っておくが、あいつの元に行こうなど考えるなよ」

「うん、分かってるよピッコロさん…私…強くなる…強くなりたい…!もう弱いままでいたくない…!」

「お前にも強くなってもらわねば困る。とにかくお前はここで三ヶ月生き延びろ」

川の近くに悟林を降ろして飛び立とうとしたピッコロを呼び止める。

「ピッコロさん」

「何だ?」

「動きやすい服とかないかな?ピッコロさん、魔法使いみたいなことが出来るってお父さんが言ってたんだ。これ、お出掛け用の服で少し動きにくいんだ。どうせなら動きやすい道着がいい」

「ふむ…服か…それくらいなら良いだろう。貴様の親父と同じデザインにしてやる」

指を悟林に向けると服が父親が着ていた亀仙流の道着に変わった。

「あ、変わった!ありがとうピッコロさん」

「ふっふっふ…刷られている文字は違うがな…」

「え?」

左胸の文字を見ると確かに“亀”ではなく“魔”の一文字が刷られていた。

「俺は自分の修行をせねばならん…もう行くぞ…貴様が3ヶ月の間を生き延びられたらこのピッコロ様直々に地獄の特訓をしてやろう…死んだ方がマシだったと思えるほどのな…覚悟しておくんだな」

「うん、頑張って生き延びるよ。行ってらっしゃいピッコロさん」

早速寝床と食べ物を探しに行った悟林を見て、双子でも扱いが違えばこんなにも違うのかとピッコロにある種の感心をさせた。

その後、悟飯の大猿化により、月は破壊されて念のために双子の尻尾は処分されてしまった。

因みに悟林は手頃な洞窟を見つけてそこを寝床にしていたので、月は見ずに済んだのだが、熟睡していたところを尻尾を千切られて1日眠れず体のバランスも変化したことで慣れるのに少し時間がかかってしまった。 
 

 
後書き
主人公にはあの技も習得してもらうつもりです。 

 

第3話

 
前書き
取り敢えずベジータと従者さんとの対面 

 
荒野で弟とは別々で過ごし、1人で生き延びていた悟林は狩りで得た成果である狼と蛙を焼いた物を食べていた。

悟飯は気が乱れていないことから元気だと言うことが分かり、安心している。

「ピッコロさん、まだかな?」

岩に傷を付けていたので既に約束の3ヶ月は過ぎていることは分かっている。

今日ピッコロが修行をつけてくれるはずなのだが。

「生き延びたか、孫悟空の娘よ」

上から聞こえた声に悟林は立ち上がった。

「修行つけてくれるんだよね?」

「ああ、お望み通り…」

ピッコロが間を置かずパンチを繰り出し、悟林は両腕をクロスしてガードした。

「死んだ方がマシと思える地獄の特訓をな」

腕が痛みで熱いと感じたが、同時にこれからの修行に心を踊らせながら悟林はピッコロに飛び掛かった。

ピッコロは強かった。

父親の悟空が自分を誰よりもわくわくさせてくれる最強のライバルと言うのは伊達ではなく、悟林の攻撃を受け流して逆に痛烈な攻撃を加えた。

「どうした?その程度では生き残れんぞ。孫悟空の技だけに頼るな、俺との修行を通じて己の闘い方を身に付けろ」

悟空の闘い方だけでなく、ピッコロの技も動きも闘いながら学んでみせろと言うことだろう。

過酷なほどに燃える傾向がある悟林は真剣でありながらどこか楽しそうであった。

「行くよピッコロさん!!」

足に力を込めて一気にピッコロとの間合いを詰めてラッシュを繰り出す。

ピッコロは悟林の攻撃を全て見切って受け流し、蹴りを繰り出して吹き飛ばすが、悟林はかめはめ波を放った。

「その程度で…」

「今だ!」

片手を前に出すピッコロに悟林は腕を動かした。

「何!?」

するとかめはめ波の軌道が変わり、ピッコロの真横を通り過ぎ、そこで更に腕を動かすとかめはめ波がピッコロの背に迫る。

ピッコロは振り返り様にかめはめ波を弾き飛ばすが、悟林は既に距離を詰めてピッコロの腹にラッシュを叩き込む。

「だだだだだだっ!!!」

「温いっ!!」

ピッコロに弾かれて吹き飛ばされても何度でも立ち上がって突っ込んでいく。

2人の修行は更に勢いを増していき、悟飯の特訓の日の前日になった時には道着はボロボロであった。

「悟林、明日から弟の方を鍛えに行く。お前はここで再び3ヶ月修行しろ。3ヶ月経ったら弟の元に来い」

「分かった」

「お前は既に気のコントロールをマスターしている。俺の取って置きを教えてやる。サイヤ人との闘いの切り札になるだろう。まず2本の指を額へ、全身の気を額を通して指先に集める…」

「………」

全身の気を額を通して、額の指先に集中させると、指先に気が溜まっていく。

「そして気を前方に向けて放て!」

「はーーーーっ!!」

指先から放たれた螺旋を纏った高速の光線は大岩を容易く貫いたが、ピッコロの放った魔貫光殺砲と比べれば明らかに威力が劣る。

「よし…初めてにしては上出来だ。魔貫光殺砲…全身の気を指先に一点集中して放つ大技だ。最大まで溜めれば多少の実力差を覆せるが、気を溜めるには時間がかかる。使う際は気を付けろ。弟の方を鍛えている間、以前教えた魔閃光と一緒に完璧に仕上げろ」

「はい!!」

ピッコロが悟飯の元に向かい、悟林は次は魔閃光の練習をする。

「確か、魔閃光は両手を額に、全身の気を額を通して手のひらに…」

魔閃光は魔貫光殺砲と基本は同じだ。

魔閃光は威力が魔貫光殺砲に大きく劣るが、溜めの時間が短く、使い勝手に優れている。

悟空から教わったかめはめ波の練習も忘れず、悟林は2人から受け継いだ技の練度を上げていき、3ヶ月はあっさりと過ぎていった。

悟林は弟の元に向かうと姉の姿を認識した悟飯の方から駆け寄ってきた。

「お姉ちゃーんっ!」

「悟飯っ!」

駆け寄ってきた弟を受け止めると、久しぶりに見た弟は最後に見た時と比べて随分と逞しくなった。

筋肉も付いているし、背だって伸びている。

悟飯は久しぶりに見る姉の姿に涙腺が緩んでいるようだが、泣くまでにはなっていない。

「おい悟飯、姉が傍にいるからといって甘ったれるなよ。少しでもダラダラと甘えてみろ。貴様の首をへし折ってやる」

「本当にこれが泣き虫だった悟飯?本当にどんな修行をさせられたのかな?ピッコロさんから技は教わった?」

「うん、魔閃光を教わったの」

「そっか、お姉ちゃんも教わったよ。ピッコロさん、3人で修行やるんだよね?」

「そうだ、残りの3ヶ月…死ぬ気でやれ。生き残りたければな」

3人は残りの3ヶ月、3人での変則形や1対1での組み手、そしてピッコロに気功波の仕上がりを見てもらうなどをして、1年まで残り数日となった。

「痛ててて…」

悟林との組み手でボコボコにされた悟飯は腫れ上がった頬を押さえながら休憩していた。

「ふん、悟林に殴られてもぴーぴー泣かなくなったな」

初めての姉弟の組み手では姉に初めて手加減なしで殴られたことで何回か泣いたことがある悟飯であった。

「泣いたら強くなれないってピッコロさん言ってたでしょ。どうしたらお姉ちゃんみたいに強くなれるんだろ」

「さあな、経験の差もあるだろうが、あいつは孫悟空に似ている」

「お姉ちゃんはお父さんじゃなくてお祖母ちゃん似だって聞いたよピッコロさん」

「そう言う意味じゃない。あいつは内面が孫悟空に似ている。相手がどれだけ強かろうが、その強さに怯えるどころか闘えることに喜びを覚える。もしかしたらサイヤ人の血なのかもしれんな」

瞑想して体内の気を練っている悟林を横目に見ながら言うピッコロ。

そして次の日の食料調達の時間。

「うーん」

「どうしたのお姉ちゃん?」

「サイヤ人ってさ、やっぱり強いんだろうなって思ってさ」

狩りを終えて帰ってきた悟林が呟くと悟飯も頷いた。

「う、うん…前の僕達の叔父さんだって言うサイヤ人より強いって、ピッコロさん言ってた」

「もっと強い技が欲しいよね。でもピッコロさん、魔貫光殺砲が取って置きって言ってたからこれ以上の技はないんだろうね」

強い敵と戦うのだから、手数は多い方がいい。

しかし、師匠のピッコロが悟林に取って置きの技である魔貫光殺砲まで伝授したのだ。

時間もあまりないことだから、今の技の練度を上げるしかないのだろうか?

「………そうだ、悟飯。私が魔貫光殺砲を撃つから、悟飯は魔閃光撃ってよ。2つの技を一緒にすればもっと強力になるかもしれないし」

何となく思い付いた悟林は悟飯に提案したが、悟飯は乗り気じゃないようだ。

「余計なことをしたらピッコロさんに怒られるよお姉ちゃん?」

「自分で色々やるのも修行なの!やらなかったら恐竜の尻尾の肉は私が食べちゃうよ?いいの?」

「うう…ずるいよお姉ちゃん…」

修行で実力はついたものの、腕っぷしでは姉に及ばない悟飯は渋々両手を額に翳し、悟林も指先を額に当てた。

「………行くよ、悟飯!」

「うん!」

2人は同時に技を放った。

「魔貫光殺砲ーーーっ!!」

「魔閃光ーーーっ!!」

同時に放った技は変化を起こしていき、そして…。

「………」

悟林の思い付きの予想以上の威力に離れて双子の様子を見ていたピッコロの目を見開かせるのであった。

そして修行を続け、サイヤ人襲来まで後僅か。

ボロボロになった道着を新しくしてもらった2人は、問題点をピッコロに指摘してもらいながら組み手をしていたのだが、突然空が暗くなった。

因みに悟林は亀仙流の道着に“魔”の字が刷られた物で、悟飯はピッコロの道着に近い物を着ていた。

「ひ…昼間なのに…!急に暗くなっちゃった!」

「何が起こってるんだろ…?」

双子が空を見上げながら困惑している隣で、ピッコロはドラゴンボールが使われたことに気付いていた。

「(いよいよ孫悟空が蘇るか……と言うことはサイヤ人は思ったより早く来る…!?)」

ピッコロは残りの時間に出来る限りの修行をしようと急いだ。

そして翌日の午前11時43分。

ついに地球は2人のサイヤ人の侵入を許してしまった。

ピッコロは勿論、悟林も悟飯も、そして悟空の仲間達もサイヤ人の強大な気を感知した。

「これって…」

「と…とうとう来やがったか…!」

「物凄い気だね…」

地球の都市である東の都の方角を見つめる3人だが、次の瞬間に凄まじい衝撃波の余波に戦慄することになる。

「…………」

「お、お姉ちゃん…お父さん…来るよね…?」

緊張していた悟林は悟飯の弱気な発言に緊張が多少解れた。

「………あのねぇ、敵さんと向かい合う前にお父さんに頼ってどうすんの…」

呆れたように言うと悟飯は恥ずかしそうに笑った。

「ご…ごめんなさい…」

「大丈夫だよ、悟飯。この日のために一生懸命修行した。後は修行の成果をサイヤ人にぶつけるだけだよ。それに悟飯と一緒に編み出した切り札もあるんだから」

「う…うん……お姉ちゃんは怖くないの?」

「ん?怖いよ?でも…何でか分からないけど、わくわくしてる」

弟の問いに悟林はそう答えた。

強大な敵と戦うことへの恐怖は勿論あるのだが、同時に気分が高揚していく。

2人が話しているとサイヤ人が動き始めた。

「来る…!奴らはここに来るつもりだ」

「うん!」

「はい!」

3人は闘いに向けての準備をし、こちらに向かってくるサイヤ人達に備えた。

そして午後0時20分、鳥や動物達はこのただならぬ気配を敏感に察知し、この地を去り始めた。

「恐れることはない…俺達は1年前とは比べもんにならんほど強くなった…」

「うん!」

「は…はい!」

ピッコロが重りのマントとターバンを脱ぎ捨てると、こちらに向かってくる気を感知した。

「ピッコロさん、あっちから何か近付いてくるよ?」

「そのようだ…他にもまだこっちに向かってくる奴が…!」

「サ、サイヤ人って、ふ、2人だけじゃないの!?」

するとピッコロの近くに誰かが降り立ち、ピッコロ達は構えた。

「サ、サイヤ人!?」

「あーっ!クリリンさん!」

「やあ!久しぶりだなピッコロ…」

それは悟空の親友のクリリンであった。

「何だ貴様か…ふっふっふ…ここに何の用だ!?邪魔者にでもなりに来たのか!?」

辛辣な物言いだが、以前と比べれば刺がなく、クリリンは笑いながら口を開いた。

「そう言うなよ…これでも少しは腕を上げたんだからさあ」

「そのようだな…他にもここに来ようとしている馬鹿がいるようだが…?」

「ああ、きっとみんな来る。俺が一番ここの近くにいたんだ。」

「思い出した!亀仙人様の所にいた人…」

悟飯もようやくクリリンのことを思い出したようだ。

「ああ!クリリンだ。お前ら随分逞しくなったな!悟空のガキの頃みたいだぜ!」

「小さいけど強いんでしょ!?お父さんが良く言ってました!」

「お父さんが小っちゃい時に亀仙人のお爺ちゃんの所で一緒に修行してた時、良くズルして良い奴だけどズル賢いってお父さん言ってたよ?」

それを聞いたクリリンが微妙な表情を浮かべる。

「小さい…ってのは余計だったな…あの野郎…ちょっとでかくなったと思って…ま、まあ…あの時の俺は良くも悪くもガキだったからな」

「僕達と一緒に闘ってもらえるんですねっ!」

「しかしお前ら、ピッコロなんかに鍛えられて辛かっただろ…」

「ん?結構楽しかったよ」

「ピッコロさん、思っていたよりとっても良い人…」

クリリンから小声で尋ねられて双子がそれぞれの言葉を返すと、ピッコロが注意を飛ばしてきた。

「お喋りはそこまでだ。来たぞ!」

全員が空を見上げると、上空には2人の男がいた。

1人はスキンヘッドが特徴の大柄な男、もう1人は逆立った髪が特徴の小柄な男。

「くっくっく…いたいた…!1匹増えてお強そうなのが4匹…」

「どうやら俺達のことは良ーくご存知だったらしいぜ…」

自分達を見下ろすサイヤ人。

ラディッツの時も凄まじい威圧感を感じたが、2人から放たれる威圧感はその比ではない。

「あ…あいつらがサイヤ人か…!な…なるほど、物凄い気を感じる…ま…正に鬼気迫るって奴だぜ…!」

2人のサイヤ人が降り立ち、ピッコロ達と相対する。

「なるほど…お待ちかねだったようだな…」

「そう言うことだ…念のために聞くが貴様ら…ここに一体何しに来やがった…!」

ピッコロが尋ねると小柄なサイヤ人はピッコロの声に反応した。

「その声…そうか、ラディッツを倒したのは貴様だな?」

「声…!?」

小柄なサイヤ人のその言葉にピッコロが疑問を抱いた。

「ラディッツが言わなかったか?こいつは通信機にもなっているんだ」

着けている小型メカを指差しながら言うと、隣の大柄なサイヤ人がピッコロを横目で見ながら口を開いた。

「あいつナメック星人だぜ…」

「らしいな…ラディッツの奴が殺られてもそれほど不思議じゃなかったわけか…」

2人のサイヤ人の会話にピッコロが反応する。

「!?………ナメック星人……?」

「ピッコロさん、地球の人じゃないの…?」

「…ピッコロ、お…お前も宇宙人だったのか…!?ど…道理で…」

「そ、そうなの?ピッコロさん」

悟林もクリリンも悟飯もそれぞれの反応を見せるが、クリリンはピッコロの強さが宇宙人ならばと納得したようだ。

「分かったぞ!ナメック星人は並外れた戦闘力の他にも不思議な能力を持っているらしい…!魔法使いのようなことが出来る奴もいると聞いたことがある…ドラゴンボールとか言うやつを作ったのは貴様だろ…!」

「ド…ドラゴンボールのことまで知ってるのか…!」

サイヤ人達がドラゴンボールのことを知っていることにクリリンは驚く。

「そのドラゴンボールが一番の目的だ。俺達に寄越すんだな!いくらナメック星人だってよ、1匹やそこらじゃ俺達には蝿みてえもんだぜ」

「へっ…ありがとうよ。おかげで俺様の祖先のことが何となく分かってきたぜ…だが、残念だったな…ドラゴンボールを作ったのは俺様じゃない…俺は闘いの方が専門なんだ…蝿みたいなもんかどうか…試してみやがれ!」

ピッコロが構えを取り、残りの3人も続いて構えを取って戦闘体勢に入った。

サイヤ人との闘いが始まろうとしている。 

 

第4話

 
前書き
悟林の戦闘力はナッパの戦闘力の半分の2000です。

怒り悟飯より弱いけども素悟飯よりは強い。 

 
構えを取った4人を前にしてもサイヤ人達は余裕を崩さない。

「ドラゴンボールのことなど教えるもんか…って感じだな…良いだろう。力ずくでも言わせてやる…」

「981…1019……1220……1083……馬鹿め!その程度の戦闘力で俺達に歯向かうつもりか…!?」

「ナッパよ、スカウターを外せ」

「何?」

ナッパと呼ばれたサイヤ人がスカウターと言う機械で4人の戦闘力を計測し、嘲笑を浮かべるが、隣のサイヤ人の言葉に訝しげな表情を浮かべる。

「こいつらは闘いに応じて戦闘力を変化させるんだ。こんな数字はもう当てにはならん」

「そういやそうだったぜ…弱虫ラディッツの馬鹿はスカウターの数字に油断してやられやがったようなもんだったからな」

「よ…弱虫ラディッツだと…」

「お、叔父さんが弱虫…!?」

ピッコロ達にとって今でも記憶に残っているラディッツが、目の前の2人のサイヤ人にとって弱虫と侮蔑されていることに驚く。

「ラ…ラディッツって…悟空とお前の2人がかりでやっと倒したって言うサイヤ人だろ…?」

「…………」

「弱虫…か…はは…」

ラディッツを弱虫呼ばわりし、そしてそのように扱えるサイヤ人達とこれから戦うことにクリリンは苦笑した。

「そうだ、ちょっとこいつらのお手並みを拝見させてもらうか。きっとドラゴンボールのことも喋る気になるだろうぜ…おいナッパ、栽培マンが後6粒ほどあっただろ。出してやれ」

「へっへっへ…お遊びが好きだなベジータも…」

ベジータと呼ばれたサイヤ人の言葉にナッパは笑みを浮かべながらポケットに手を入れた。

「サイバイマン…?」

「な…何それ…?」

クリリンと悟飯が聞いたことのない名前に不思議そうな表情を浮かべるが、ナッパはポケットから小瓶を取り出して中身を確認した。

「ああ、確かに6粒だ。この土なら良い栽培マンが育つぜ………よし…」

ナッパは屈んで指で地面に穴を空けて種を植え、その上に薬液をかけると、立ち上がった。

「な…何だってんだよ…!?」

敵のやっていることが分からず、クリリンが思わず呟くものの、すぐに答えが姿を現した。

地面から緑色の小型の怪物が現れたのだ。

「うわあ…気持ち悪い…」

「本当にな…」

栽培マンの気味悪さに悟林は顔を引き攣らせ、クリリンも同意した。

「標的はあの4人だ。痛め付けてやれ栽培マン!」

ベジータが栽培マンに命令すると、4人も気を更に引き締めた。

「こ、こいつら結構出来るぜ…!」

「そのようだな…」

「叔父さんに近い気だ…」

修行によって大きくパワーアップした今ならば勝てない相手ではないが、数はこちらが不利だ。

「ん!?」

「誰!?」

クリリンと悟林が何者かの気を感知して振り返ると、3つ目の男、天津飯と少年のような体格の男の餃子が現れた。

「天津飯!餃子もっ!…おっ!?」

続いてクリリンと悟林と同じ山吹色の道着を着た悟空の最も古い知り合いのヤムチャも現れた。

「よう!遅くなったな」

「ヤムチャさん!」

現れた頼もしい救援にクリリンが笑顔を浮かべる。

「おやおや、そっちもたくさんお出ましだな」

「雑魚共が…」

しかし天津飯達を見てもベジータ達は焦るどころか余裕そうな表情を浮かべたままだ。

「2人じゃなかったのか?サイヤ人てのは」

「ま、色々あってね。増えたみたい…」

情報と全く違う状況に天津飯が尋ねるものの、クリリンは上手く説明出来なかったようだ。

「7匹か…1匹余るが…どうだ!貴様ら、こっちの兵と1匹ずつ闘ってみんか!ゲームだ!そちらは7匹のうちに6匹出せ。何なら栽培マン1匹に2匹がかりでも構わんぞ!」

ベジータの言葉にピッコロが憤った。

「ゲームだと!?下らん奴共だ…!そんな回りくどいことなんぞ止めて一気にカタをつけやがれ!」

「まあまあ、良いじゃない!こっちにとっては好都合だよ。悟空の奴もまだ来てないことだしさ!」

「そうだよピッコロさん」

しかし、ベジータの提案がこちらにとって好都合なのも事実。

クリリンと悟林はピッコロを宥め、そして天津飯が前に出た。

「良いだろう、この俺からやってやる。さあ、かかって来な」

「だははは…!あいつ栽培マンがどんなに強いか知ったらぶったまげやがるぜ!」

笑っているナッパの横でベジータの視線は悟林に向けられていた。

「(あの顔…ガキの頃に見たラディッツの母親にそっくりだな。ということはあいつがカカロットの娘か…地球人とサイヤ人の混血の力…興味があるな)……こっちの奴から行け、思い切りやるんだ。いいな」

「て、天さん!頑張って!」

天津飯と1匹の栽培マンが相対する。

「キエーッ!」

「つあっ!!」

天津飯に飛び掛かった栽培マンを天津飯はそれを弾き飛ばして一気に距離を詰める。

「ギッ!!」

弾き飛ばされた栽培マンは体勢を立て直し、天津飯に向けて頭から液体を放った。

「うわっ!?」

天津飯はそれをかわし、後ろにいた悟林達も避けるものの、液体はどうやら強力な溶解液だったようで地面が溶けてしまった。

「げげっ!」

溶けてしまった地面に悟林達は驚いてしまう。

「はああーーっ!!」

天津飯の強烈な肘打ちが栽培マンに叩き込まれ、吹き飛ばされて地面に倒れ伏した。

「…!な、何だと…!?」

「ふうっ」

「やったー!」

「流石、天津飯だぜっ!」

栽培マンがやられたことにナッパは驚き、餃子とクリリンは天津飯の勝利を喜ぶ。

「くっくっく…俺の思った通り、少しは楽しませてくれそうだ…」

栽培マンが1匹倒されてもベジータは楽しそうな笑みを浮かべるだけだ。

「ギ…ギギ…!」

「ば、馬鹿な…!栽培マンの戦闘力は1200だぞ…!パワーだけならラディッツに匹敵する…!」

「奴の戦闘力はそれを超えるんだろ。単純な計算だ」

「しかし…!そんなデータは無かったぜ!」

ベジータの言葉通りなのだが、地球は下級戦士の悟空が送られるような星なので当然住人のレベルは低い。

今まで栽培マン以上の戦闘力を持つ者のデータなどなかったのだ。

「ギ…!」

そして天津飯に吹っ飛ばされた栽培マンは何とか起き上がって天津飯を睨んだ。

「天さん、あいつ起き上がったよ!」

餃子の言葉に天津飯が振り返った直後、ベジータは片手の指を突き出し、指先から放った衝撃波で栽培マンを粉砕した。

その行為にこの場にいた誰もが驚愕する。

「「な…な…!?」」

「ベ…ベジータ…どうして…!?」

天津飯とクリリンが破壊された栽培マンを見つめながら唖然となり、ナッパもまた味方を処刑した理由を問う。

「これ以上やっても時間の無駄だ、奴には勝てんだろう。おまけにあの栽培マンは始めに奴を舐めてかかった…俺は言ったはずだ。思い切りやれとな…」

「な…何て奴だ…」

味方を躊躇せずに殺すベジータにクリリンは思わずそう呟き、ピッコロは先程の攻撃の威力に戦慄する。

「(あ…あのサイヤ人…一瞬で化け物を粉々に…何と言う破壊力だ…!)」

「さあ、お次はどいつだ?」

「貴様ら、今度ははなっから飛ばしていくんだぞ!」

「よ、よ~し」

ベジータに促され、今度はクリリンが前に出ようとするが、ヤムチャが申し出た。

「俺にやらせてくれ、ここらでお遊びはいい加減にしろってとこを見せてやりたい」

「ヤムチャさん、そんなら俺だって…」

「クリリンは一度ドラゴンボールで生き返っている。もし万が一のことが起こってしまえば二度と生き返れない。さあ!来やがれ」

ヤムチャが構えを取ると、栽培マンの1匹が前に出た。

「へっ、調子に乗りやがって」

「見せてやれ!栽培マンの本当の恐ろしさを!」

「ギ!」

向かい合うヤムチャと栽培マン、先に動いたのはヤムチャだった。

高速で移動し、栽培マンもそれに続いて高速で移動した。

「き、消えた!」

「馬鹿め!高速で動いているのだ!気の動きを良く感じてみろ!お前以外は皆見えているぞ!」

「少しずつ慣れていこうね悟飯」

気の感知が未熟な悟飯は消えたと思ったが、ピッコロに指摘されたことでヤムチャと栽培マンの闘いが見えた。

激しい攻防を繰り広げるが、次第にヤムチャが押していき、堪らず岩場にジャンプする。

ヤムチャがそれを追うと栽培マンがヤムチャに飛び掛かった。

「ギャウ!!」

それをヤムチャは不敵な笑みを浮かべて回避し、かめはめ波を直撃させ、地面に叩き付けて気絶させた。

「…またかよ……」

栽培マンが気絶したことを確認したヤムチャはベジータ達に振り返る。

「お前達が思っている程、この化け物達は強くなかったようだな。残りの4匹もこの俺一人で片付けてやるぜ…」

ヤムチャの言葉にベジータは笑みを浮かべる。

「くっくっく…今度は甘く見たのはお前達のようだな…」

「何!?」

気絶していた栽培マンが背後から襲い掛かり、振り返ったヤムチャにしがみつき、ニヤリと笑った直後に自爆した。

「そう…それで良いんだ」

栽培マンの自爆に満足そうに笑うベジータ。

爆煙が晴れると、倒れているヤムチャの姿があった。

「何て奴だ…自爆しやがった…」

「ヤ、ヤムチャさーん!」

ピッコロが呟くと、クリリンは慌ててヤムチャの元に向かい、生死を確かめたが、心臓は動いていない。

「………死んでる…き…きっとヤムチャさんは嫌な予感がしてたんだ…そ…それで俺の代わりに…ち…畜生…プーアルやブルマさん達に何て言や良いんだよ…」

「情けねえ栽培マンだぜ、相討ちとはよ!あんな屑共を相手に何やってやがんだ!」

「おい!汚いから片付けておけよ、そのボロ屑を!」

ベジータの侮辱にとうとうクリリンはキレた。

「……!く…くそったれ!みんな、離れてろーーっ!!修行の成果を見せてやる!!」

両手に気を溜め、凄まじいエネルギーの気功波をベジータ達に向けて放った。

「離れろ餃子!巻き添えを喰らうぞーーっ!!」

「凄まじいエネルギーだが、スピードがない!避けろと言っているようなもんだ…!」

天津飯達が距離を取り、ピッコロはベジータ達に当たらないと判断したが、クリリンとて達人。

簡単にかわされるような技を出すはずがない。

「ばっ!!」

気功波を上に曲げると拡散させ、拡散した気功波はベジータ達に降り注ぐ。

ベジータ達には命中したが、栽培マン1匹にかわされてしまう。

「やったぞ!」

「へへっ…1匹外しちまった…」

「す…凄いや…!」

天津飯と悟飯はクリリンの技の成果にそれぞれの反応をするが、残った1匹が悟飯に迫る。

「しまった、外した奴だ!」

天津飯が叫ぶのと同時に悟林が間に入って栽培マンの両腕を掴んだ。

「ギ…!」

「私の弟に…何すんの!?」

そのまま腹に蹴りを入れて悶絶させると上空に殴り飛ばし、魔閃光を放とうとするが、ピッコロが口から放った気功波によって栽培マンが消し飛ばされた。

「ピッコロさん」

「こんな奴に飛ばしすぎるな。」

「さ…流石ピッコロだ…いずれまた敵になるかと思うとゾッとするぜ…」

「そ、それに流石、悟空の子供だ…末恐ろしいぜ…」

「あ…ありがとうピッコロさん…お姉ちゃん…」

天津飯とクリリンがそれぞれの反応を示し、悟飯が二人に礼を言う。

「うん!」

「勘違いするんじゃない。貴様なんぞ助けるか…これから始まる素晴らしい闘いのためのウォーミングアップだ…」

「くっくっく…素晴らしい闘いになればいいがな…」

煙の方を見遣ると、多少の汚れがついただけのベジータとナッパが無傷の状態で出てきた。

「では、そろそろお前達の望み通り、お遊びは終わるとするか…」

「ぎひひひひ…いよいよ本番てわけだ」

「ば…馬鹿な…まるで堪えてない…ま…まともに喰らったはずだ…」

いくら拡散して威力が下がっていようが、栽培マンを一撃で倒す程の威力はあったのにダメージがないことに天津飯は驚く。

「お…俺はフルパワーでやった…!あ…あれがサイヤ人か…!」

クリリンのフルパワーの一撃を受けてもダメージを受けないこの二人の実力は栽培マンを遥かに超えている証拠だ。

「俺にやらせてくれ、一瞬で6人纏めて片付けてみせるぜ」

「好きにするがいい」

ベジータの許可を得たナッパは笑みを浮かべながら構えを取った。

「へっへっへ…精々楽しませてくれよ…はあああ……」

ナッパがフルパワーを徐々に発揮していくのと共に大地が震えていく。

「う…うう…!だ…大地が震えている…!」

「て、天さん!ぼ、僕の超能力が効かないっ!!」

「そ…そんな…!」

「も…物凄いパワーだ…!」

「こ…これほどまでとは…!」

フルパワーを解放していくナッパに全員が戦慄し、ナッパが解放を終えた。

「ピ、ピッコロさん…」

「く…来るぞ…!」

地球戦士達とサイヤ人、ナッパとの戦闘が始まった。

だが、闘いが始まるとほとんど一方的であった。

フルパワーとなったナッパは手始めに天津飯に襲い掛かり、気を纏った腕で天津飯の腕を切り落とし、追撃を舞空術でかわした天津飯をナッパは即座に距離を詰めて蹴り落とし、地面に叩き付けた。

クリリンが救出に向かおうとしても横薙ぎした右手の指先からのエネルギー波でクリリンを吹き飛ばし、地面に大穴を開けた。

穴の底が見えないくらいの破壊力に誰もが戦慄する。

「ナッパ!後ろを見てみろ!!」

突然にベジータが楽しげな声を出す。

気付けば、衝撃波で吹き飛ばされていたと思っていた餃子が、ナッパの背中にべったりとくっついていた。

天津飯の顔が変わったその時には、餃子は光り輝いて自爆を果たし、餃子が命を懸けたにも関わらずダメージがないナッパ。

次々と起こる仲間の死に戦意が低下しそうになるが、ピッコロが反撃の策を練っていた。

「聞け…奴は攻撃に移る僅かな一瞬に隙がある…その時を狙うぞ…」

「いい作戦だ。健闘を祈るぞ」

「随分余裕だね」

聞いていたらしいベジータを悟林が睨みながら言ってやると、ベジータはニヤリと笑った。

「……そうやって笑ってられるのも、今のうちなんだからね」

ピッコロが悟林の言葉の後を引き継ぐ。

「孫悟空が来れば貴様らの間抜け面を凍り付かせてくれるだろうぜ」

「ほう、何者だそいつは…取って置きなのか?」

尋ねてくるベジータを無視してタイミングを狙う3人とは反対に悟飯は恐怖で震えている。

「悟飯…」

「はあああーーっ!!」

「今だ!」

悟飯の様子に気付いた悟林が声をかける前に天津飯にとどめを刺そうと突撃するナッパに、ピッコロが声を上げた。

「よし!!」

「う、うん!!」

3人が高速で移動し、ピッコロがまずナッパの横っ面を殴り飛ばして悟林が真上に蹴り飛ばし、クリリンが組んだ拳を振るい落として脳天に叩き込んだ。

勢いをつけて地面に落ちていくナッパに、悟飯の攻撃が入るはず……だった。

「悟飯、今だ!撃てーーーっ!!」

ピッコロが悟飯に叫ぶが、怯えていた悟飯を見た悟林も叫んだ。

「悟飯!!」

「あ……あわわわ…!」

「悟飯早くーーーっ!!お母さんやお祖父ちゃんが死んでもいいのーーーっ!!?」

「ま、魔閃光ーーっ!!」

「つあっ!!」

悟林の叱咤によってようやく魔閃光を撃ったものの、ナッパは悟飯の魔閃光をかわした。

「くっ!!」

「外された!タイミングが遅かった…!」

悟飯の魔閃光が当たらなかったことにピッコロとクリリンは悔しそうにし、ナッパは口許の血を拭うと、悟林達を睨んだ。

「やってくれたじゃねえか…てめえら更に寿命を縮めたな…!殺してやる順番を変えることにしたぜ…覚悟しな…!」

怒りに震えたナッパが標的を変えた直後に下から、天津飯が片手の気功砲を放つ。

どんな技なのかは、悟林は知っていたわけではない。

けれどその後、直ぐに息絶えた天津飯の姿を見て、その技は体に異様な負担をかける物だったと知る。

「ふう…脅かしやがって…!」

それを喰らってもナッパはピンピンしていた。

正真正銘の化け物だ。

「う、嘘…凄い技だったのに…ば…化け物だ…!」

「ま…まさか…や…奴は不死身か…!?」

「あ…あ…そ…そんな…天津飯まで…ひ…酷え…悪夢だよ…つ…次々にみんな…死んじゃうなんて……悟空ーーー!!早く来てくれーーーっ!!頼むーーーっ!!」

悟空の名を呼び、早く来てくれと叫ぶクリリンの気持ちは、多分ここにいる誰もが思っている事だろう。

「ゴクウ…?さっきから一体…待てよ…」

クリリン達の言う名前が妙に引っ掛かるベジータ。

「ぐひひひ…また1人片付いた…今度は貴様らの番だ…そっちのピッコロとか言うナメック星人だけは虫の息程度に生かしておいてやる…ドラゴンボールのことをもっと聞き出さんとな…そして最後に裏切り者のカカロットのガキ共だ」

「ラッキーだな…ピッコロ…ドラゴンボールのことあんたしか知らないと思ってやがる…」

「同じことだ…どっちにしても全員殺すつもりだ…」

「私と悟飯なんか最後だよ…」

「それにしてもこうなるとさあ…あんたが今だけとは言え味方だってのは頼もしいよ…まさかこんなことになるとはね…す…少しは勝つ自信あるんだろ?」

「ない…!」

ピッコロの言葉にクリリンと悟林は目を見開いた。

「嘘だよね…?ピッコロさん…?」

「こんな嘘など言うか…これほどまでの怪物だとは思わなかった…この前に来たサイヤ人を遥かに上回ってやがる…お前達姉弟を鍛えればどうにかなると思っていた俺の考えは相当に甘かったらしいな…」

「ねえ、クリリンさん…私達死んじゃいそうだね…」

「それ言わないでくれよ悟林ちゃん…くそぉ…俺も死ぬ前に結婚したかった…!」

「無駄話は止めろ…!地上に降りて闘うぞ!空中戦では奴の方が遥かに慣れている!」

「くっくっく…どっちにしても同じことだ…足掻け足掻け!」

3人は地上に降りると、上空を見上げる。

「はーーーっ!!」

「ピッコロさん!クリリンさん!来るよっ!!」

「「っ!!」」

「お父さーん!!」

襲い掛かるナッパに悟飯が思わず叫んだ時であった。

「ナッパ待ていっ!!」

意気揚々と攻撃を仕掛けようとしたナッパに、ベジータの声が飛ぶ。

その声にナッパは急停止し、誰もがベジータに視線を向けた。

「な、何だよベジータ…!何でやらせない…」

「まあ、そう慌てるな。そいつらにちょっと聞きたいことがある」

「何!?」

「お前達が言うソンゴクウと言うのはカカロットのことだな?そうだろ…」

ナッパは楽しみを中断させられて、少し驚いたようだが、ベジータはそんな事は全く気にせず、4人に質問をぶつけてきた。

「そうだ…!だから何だ…!」

「なるほど、やはり無線で聞いた通りドラゴンボールで生き返ったらしいな。それにしても、はっはっはっ…お前達の頼みの綱があのカカロットだとはな!」

笑うベジータに悟林は目を吊り上げて声を上げた。

「何がおかしいの!?」

「ラディッツにさえ歯が立たなかったあいつが来た所で、何の役に立つというのだ」

「お父さんは叔父さんなんかと闘った時より、全然ずぅっと!比べ物にならないくらい強くなってる!!」

きっぱりと言い放ち、ベジータはしげしげと悟林の顔を見つめた。

「ふっふっふ…大した信頼だな……よし、3時間だけ待ってやる」

「な、ベジータ!!」

咎めるナッパに対してベジータは鋭い視線を投げかけてナッパの行動を止める。

ベジータの方がナッパよりも比べ物にならないくらいに強いという事だろうが、こんな時に知りたくはない。

「3時間だ。それが過ぎたら待つつもりはない。少しは寿命が延びたんだ、感謝しろ」

そう言って何とか3時間の猶予を与えられた4人。

悟林はくたっとなって座り込んでしまった。

「お、お姉ちゃん!?」

「ごめん…ホッとしたら…」

「無理ないさ、悟林ちゃんは良く頑張ったよ」

気が抜けて座り込んでしまった悟林の頭をクリリンが撫でてやると、ピッコロが悟飯を叱責した。

「悟飯、何故もっと早く撃たなかった。お前が魔閃光を当てていれば奴にもっとダメージを与えられたんだぞ」

「ご…ごめんなさい…ぼ、僕怖くて…」

「しょ、しょうがないってピッコロ!あの時撃てただけでも大したもんだよ。初めての実戦だし相手があれじゃあ…ピッコロに鍛えられるまで武道もしたことないんだろ?悟林ちゃんみたいに闘いに向いてる性格でもなさそうだし…それに悟飯も悟林ちゃんも5歳だぞ?2人共、良くやってるよ」

「…ねえ、ピッコロさん。私と悟飯の合体技ならあのでかいのなら倒せるんじゃないかな?」

「合体技?」

「うん、ピッコロさんに教えてもらった技を合わせてみたんだけど結構強力だったんだ。当たれば倒せると思う」

「あんな隙だらけの攻撃が通用すると思うか?奴の動きさえ止められれば……」

「「「…?」」」

急に黙り込んだピッコロに誰もが不思議そうに見つめるが、恐らく勝つための作戦を練っているのだろう。

邪魔してはならないと思い、ピッコロから少し離れた。

「クリリンさん、お父さん…生き返ったのかな?」

「生き返ったと思う…ブルマさん達がドラゴンボールを盗まれてさえなきゃね…」

「お姉ちゃん…」

「大丈夫だよ、悟飯。お父さんが来るまで頑張ろ?」

不安そうにしている悟飯に言うと悟林は空を見上げた。 
 

 
後書き
ベジータがラディッツと一緒に遠征に行く時、ギネが見送りに来てその時チラリと見ていたから覚えていた設定です。

バーダックのことも知ってたし、ギネのことも知ってても良いかなと 

 

第5話

 
前書き
オリ主、ボコボコにしてごめんよ… 

 
3時間の猶予は与えられたが、3時間経過しても悟空はやってこず、指定した3時間の経過を示すようにベジータのスカウターが反応した。

「時間だ…どうやら待っても無駄だったようだな…臆病者のカカロットは来なかった…」

「お、お父さんは臆病者なんかじゃないっ…!」

「く…くそ~、何で来ないんだよ…!」

ベジータの言葉に悟飯は反論し、クリリンはまだ悟空が来ないことに焦る。

「さ~て、じっくりと痛め付けてやるか…カカロットに見せてやれないのは残念だったがな…」

破損した戦闘服を脱いだナッパが戦闘体勢に入った。

「これ…ヤバいよね?」

「ヤバいどころじゃないって…いよいよ俺も死んじゃうかもな…畜生…特攻隊の気分だぜ…」

悟林の言葉にクリリンがそう返すと、ピッコロが口を開いた。

「俺達が奴に勝てる可能性がたった1つだけある…勿論、上手く行けばの話だがな…良いか、まず…クリリンだったな…お前が奴の注意を目一杯引くように仕掛ける…そして俺が隙を見つけてサイヤ人の弱点である尻尾を掴む…」

「…そ…そうか…!」

「尻尾…(そうか、だからピッコロさん。私の尻尾を切ったんだ!)」

相手はサイヤ人なので当然尻尾の弱点を知っている。

こちらにとって不利になる要素をピッコロは予め消していたのだ。

「力が抜けて動けなくなったところを…悟林、悟飯。お前達は全ての力を振り絞って奴にあの技を叩き込め!いいな…」

「は、はい…!こ、今度は怖がったりしないから、だ…大丈夫!」

「当たり前だ…!地球の運命は貴様ら姉弟にかかっていると思え…」

「(す…凄え…流石ピッコロだ…光が少しだけ見えてきたぞ…勝てるかもしれない…!)」

「悟飯、自信を持て…お前がその気になればこの中の誰よりもパワーは上だ…」

姉と言う比較対象がいるせいかどうも自分を下に見がちな悟飯をピッコロが鼓舞し、4人は最後の賭けに出た。

「よしっ!行くぜっ!うおおおおーーー!!」

ナッパ目掛けて突っ込むクリリン。

「いきなり突っ込んで来やがったぜ!」

「何か作戦を立てやがったな」

「悟飯!」

「う、うん!!」

悟林は魔貫光殺砲を、悟飯は魔閃光の発射体勢に入る。

2人はギリギリまで気を溜め始めた。

「(注意を引き付けろ…!)」

「わああああ…!!」

クリリンは下に気功波を放ち、その勢いで上に上がっていく。

「!?」

「今だっ!!」

その隙をピッコロは逃がさずにナッパの後ろに回ると尻尾を掴んだ。

「悟飯!悟林!撃てーーーっ!!」

「やったあ!!」

ピッコロが叫んだのを合図に2人は溜めた気を解放しようとした。

唯一の懸念はピッコロにも直撃してしまうことだが、ピッコロならギリギリで避けるはずだと師匠であるピッコロへの信頼があった。

「魔閃…!」

「光殺…!」

「馬鹿め!」

2人の合体技が炸裂する前にナッパの肘打ちがピッコロの脳天に叩き込まれた。

「「!!」」

「うっ!!」

動揺によって溜めていた気が霧散してしまい、クリリンは目を見開いた。

「馬…鹿…な…」

頭にダメージを受けたことで崩れ落ちるピッコロをナッパは楽しげに見遣り、残りの3人は愕然となる。

「そ、そんな…サイヤ人は尻尾が弱点じゃないの!?」

「はっはっは…!まさか俺達が弱虫ラディッツと同じだと思っていたのか?怠け者のあいつのように俺達がそんな弱点を克服していないと思ったか!?」

悟林達の疑問にベジータは笑いながら答えた。

「(し、しまった…悟空もガキの頃に尻尾を鍛えていたじゃないか…どうして忘れてたんだ…!!)」

クリリンは少年時代の悟空も尻尾の弱点を克服していたことを思い出し、それを忘れていた自分を罵る。

「へっへっへ…残念だったな…この星の一番の使い手も一撃でこの様だ…さて…と、こいつにおねんねしてもらってる間、チビ共を遊んでやるかな…へっへっへ…」

「お、お姉ちゃん…」

強張っていた体が怯えている悟飯の声によって体の強張りが抜けた。

「悟飯、下がって…」

悟飯を後ろに下がらせると、悟林はナッパと真正面から闘いを挑もうとして構えた。

「ほう!流石ガキとは言えサイヤ人の血を引いてるだけはあるな、殺されると分かっていても闘って死にてえってのか?」

「はあああ…!」

気を解放してフルパワーとなる悟林にベジータはスカウターを拾って悟林の戦闘力を計測する。

「ほう、戦闘力2000!やはりサイヤ人と地球人の混血は純血のサイヤ人の子供と比べて異常に高いな」

惑星ベジータが健在なら確実にエリートに認められる戦闘力だ。

下級戦士の子供でこれならば、やはり地球人を絶滅させるべきだとベジータは考えを固めた。

「だあああっ!!」

「うぐっ!」

足に力を込めて一気にナッパとの間合いを詰めると横っ面に拳を叩き込んで尻餅を着かせ、そこに片手での気功波を上に放ってその推進力を利用してナッパの腹に肘打ちし、そして足を掴んで回転する。

「どりゃああああっ!!!」

「うおおおおっ!?」

遠心力を利用した投げにより、ナッパの巨体は岩山に叩き付けられ、そこにフルパワーの魔閃光を叩き込んだ。

魔閃光を受けた岩山が爆発に呑まれたが、悟林は息を切らしながら爆煙を見つめる。

「はあ…はあ…はあ…っ」

「や、やったか…?」

激しい連続攻撃にクリリンはもしかしたらと思ったが…。

「チビの癖にやってくれるじゃねえか…!特に腹への攻撃が効いたぜ…痣になっちまった…!」

「っ!」

煙を振り払いながら現れたのは腹に痣ができ、体に少々の火傷が出来ただけの五体満足のナッパである。

「おい、チビ。これで終わりじゃねえだろ?もっと俺を楽しませてみろ」

悟林との距離を詰めて腹を蹴り上げるナッパ。

反応速度を超えていたために蹴りを受け流すことも出来ずに吹き飛ばされる。

「ごふっ!こ、こんのーーーっ!!」

血を吐きながらもナッパに突っ込む悟林にナッパは楽しげに笑いながら悟林の必死の拳や蹴りも容易く受け止めていく。

「おいどうした!?サイヤ人と地球人の混血は強いんだろ!?もっと力を入れてみろ!!」

「魔…閃光…っ!!」

横薙ぎの手刀をまともに喰らった悟林は岩山に叩き付けられるものの、魔閃光を放った。

「ふん!」

裏拳で弾かれるが、その隙に悟林は最後の力を振り絞ってナッパに突撃した。

「うわあああーーーっ!!!」

渾身の頭突きがナッパの腹に炸裂する。

「ぐおっ!?…へ…へっへっへ…」

「っ!ぎゃっ!!」

一瞬揺らいだが、ナッパは悟林の体を掴んで顎を蹴り上げると上に打ち上げられた悟林の真上に移動し、回転の勢いを利用した蹴りを悟林に叩き込んで地面に叩き落とした。

「あ…ああ…」

「や…止めろ…!」

地面に叩き付けられてピクリとも動かない悟林に悟飯は震え、クリリンが何とか制止の言葉にしてもナッパは止まらない。

「おいおい、どうした?まさかこれで死んじまったなんてないよな?」

頭を鷲掴んで持ち上げるナッパ。

その時、悟林の手がピクリと動いた。

「ナッパ!そいつを離せ!」

「!?」

ベジータの言葉に気を取られたナッパの顔面に最後の力を振り絞った気功波が炸裂し、ナッパは仰向けに倒れた。

「勝手に…殺さ…ないでよね…!」

地面に転がり、ボロボロになりながらも何とか生きている悟林。

「ぐっ…畜生…このガキ…!」

火傷を負った顔を手で押さえながらナッパは起き上がった。

「………っ!!」

「踏み潰してやる!!」

「お、お姉ちゃーん!!」

「や、止めろーーーっ!!」

身動きすら出来ない悟林を踏み潰そうと足を振り上げたナッパ。

急いで止めようとする悟飯とクリリンだが間に合わない。

そこにピッコロが起き上がり、ナッパの背中に気弾を直撃させた。

「ぐおおお…!」

背中を襲う痛みに悶えるナッパ。

今のうちにクリリンが悟林を抱き上げて離れた。

「う…うう…!」

「悟林ちゃんしっかりしろ!くそ…仙豆があれば…!」

1粒食べればどんな怪我でも全快する不思議な豆。

以前カリン塔を登って修行を完遂した時に仙猫・カリンから餞別で貰った仙豆を当時は真の効果も知らなかったとは言え空腹を満たすために使ってしまった自分に憤る。

「や…野郎~!も…もう目が覚めやがったか…!」

「はーっはっはっはっは!手こずってるようだなナッパよ!」 

「地球を…舐めるなよ…!」

何とか立ち上がるピッコロにナッパは憤りながら睨んだ。

「て…てめ~!頭に来たぞ…!貴様だけはドラゴンボールのせいで殺せねえから手加減してやったらいい気になりやがって~!!」

「っ…!ク、クリリン…さ…お父さ…」

「無理しちゃ駄目だ!ああ、分かってる。あいつの気だ!」

悟林は懐かしい気を感じてクリリンに伝えようとするが、クリリンも分かっているのか顔に希望が戻っている。

「ほ…本当だ…す…凄いけど懐かしい気…!」

悟飯も同様に気の正体を理解して希望を取り戻す。

「けっ!わけの分からないこと言いやがって…!」

「奴しかいない…孫悟空だ!孫悟空がやってくるぞーっ!必ずやって来ると思っていたぞ!待たせやがって!!」

「お、お父さんが来てくれる…!早く!早く!!」

「カカロットが…!?どこだ…!」

「こいつらには気配で分かる不思議な力がある…カカロットか、どれ…」

スカウターで調べると、ベジータの目が驚愕で見開かれた。

「ベジータ!こいつらの言っているのは本当か!?へっへっへ!カカロットの奴がこっちに向かってるのか!?」

「カカロットかどうか知らんが…後4分ほどでここにやって来るだろう…戦闘力5000ほどの奴が…!」

それを聞いたナッパが驚愕する。

「ご…5000だと…!?ば…馬鹿な…!そ…そいつは何かの間違いだ…」

「(確かに以前のカカロットからは考えられん数値だ…しかもここの奴らは数値を変化させられる…最低でも5000と言うことだ…)」

「くっくっく…奴が珍しく狼狽えてやがるぜ…!」

悟空がようやく来る事実はピッコロにも希望を持たせて余裕を取り戻させた。

「ナッパ!4人を殺せっ!5匹揃って手を組まれると厄介なことになりそうだ!そしてカカロットへの見せしめのためにもだ!」

「「何!?」」

「「!!」」

ベジータの命令にピッコロ達が動揺する。

「ド、ドラゴンボールのことは…!?」

「構わん!俺に考えがある!そのナメック星人の故郷、ナメック星に行けばもっと強力なドラゴンボールがきっとある!下らない噂だと思っていたが、カカロットがもし本当に生き返ったとなればあの伝説は真実だったわけだ!」

「く、くそ…!」

地球のドラゴンボールがあるからピッコロには手加減をしてくれていたらしいが、ベジータによってそれが無くなってしまった。

クリリンは悟林を安全な場所に運びたいが、ナッパの攻撃の破壊力を考えると結局自分が抱えている方が遥かに安全であるために闘いに参加出来ない。

「ち…カカロットが5000なんて絶対機械の故障だぜ…ま、良いけどな。どうせこいつらを皆殺しにすることに変わりはねえ…」

「…ピッコロさん逃げてーっ!お父さんが来るまで何とか僕が食い止めるよ!だってピッコロさんが死んじゃったら神様も死んじゃってドラゴンボールが…!」

「…へっ…下らねえこと言いやがって…てめえだけで食い止められるわけないだろ…」

「食い止めるだと?この俺を…?笑わせやがってこのガキがーっ!!」

悟飯の言葉に怒ったナッパは悟飯に迫る。

「いかんっ!!」

ピッコロも駆け出すが間に合わない。

「はーっはっはっは!!」

「うわあああーーーっ!!!」

拳を振り上げるナッパだが、悟飯の顔つきが変わり、強烈な蹴りがナッパの横っ面に叩き込んで岩山に激突させた。

沈黙が流れるが、ナッパは瓦礫を吹き飛ばして脱出すると頭から血を流しながら悟飯を睨んだ。

「…ガキィ~!!これまでだあ…!!」

「あ…あああ…!」

「ま、まずい…!」

「ご、悟飯…!」

「死ねええーーーっ!!」

ナッパの左腕の強力な気にクリリンと悟林は戦慄し、立ち竦んだ悟飯は、ナッパの気弾をそのまま受ける形になった。

「……!!」

そしてクリリンは目を見開いた。

死を目の前にした悟飯の代わりに気弾を受けたのはピッコロであったからだ。

爆風によって吹き飛ばされそうになるが、クリリンは悟林を庇いながら何とか堪えて爆風が止んだところで悟飯達の方を見遣ると、悟飯の盾となったピッコロが今にも倒れそうな状態だった。

「ピ…ピッコロ…さん…」

「そ…んな…!」

師匠の死にそうな姿に双子の目が見開かれた。

「逃…げ…ろ…ご…悟飯…」

「…あ…あ……」

「「…!」」

そしてそのまま力なく崩れ落ちるピッコロに悟飯が駆け寄る。

「ピ…ピッコロさん…ど…どうして僕を…た…助けて…」

「に…逃げろと…言っただろ…は…早く…しろ…悟林と…一緒に…少しでも…遠くへ…」

「し、死なないで!す、すぐにお父さんが来てくれるよ!お…お願い…!死なないでーーーっ!!」

「ちっ!馬鹿め、殺す順番が変わっちまったか…まあいい…どっちにしても同じことだ…」

「な…情けない話だぜ…ピ…ピッコロ大魔王ともあろう…者が、ガ…ガキを庇っちまうなんて…最低だ…へ…へへ…き…貴様ら親子のせいだぞ…あ…甘さが…移っちまった……だ…だが…お…俺と…まともに喋ってくれたのは…お前達…姉弟だけだった…悟飯…悟林…き…貴様らといた数ヶ月…わ…悪く…なかったぜ…死ぬ…な…よ…」

悟飯とクリリンに抱かれている悟林に言葉を残し、静かに息を引き取った。

最後まで双子を心配し続け、厳しくも不器用な優しさを持っていた2人の師匠はもう、動かない。

「………ピ…ピッコロさん…!」

「ピッコロ…!」

悟林は血や傷でボロボロの顔で泣き、クリリンも最初はとんでもない悪党だったのに悟空の息子のために命を懸けたピッコロの最期に悲しみを抱いた。

「うわあああ~~~っ!!」

ピッコロの死により、感情が爆発したことで悟飯の気が膨れ上がり、小さな体のどこにこんな気があるのかと、驚くばかりの力が溢れていた。

悟飯の気は悟林のフルパワーを大きく超えていた。

「魔閃光ーーーっ!!」

「ご、悟飯…!?」

「す…凄い気だ…!」

「戦闘力2800…!やはりこいつら戦闘力が激しく変化しやがるぞ!」

「2800か…!!」

誰もが悟飯の力に反応し、悟飯はピッコロの仇を討つために渾身の魔閃光を放った。

怯えていた時に放った魔閃光の比ではない気が込められた一撃がナッパに迫る。

「うおおおおっ!!」

しかしそれをナッパは左の拳で殴り飛ばした。

「チ…チビの癖に凄えことやってくれるじゃねえか…へっへっへ…腕がちょいと痺れちまったぜ…」

殴り飛ばしたナッパもただでは済まなかったようだが、腕の痺れ程度ではすぐに回復してしまうだろう。

「戦闘力がガクンと減った…どうやら今ので力を使い果たしてしまったらしいな…」

「つ…強すぎる…あ…あまりにも強すぎる…」

ベジータがスカウターで悟飯の戦闘力を計測する。

怒りに身を任せた攻撃は悟飯の体力をごっそりと持っていったようだ。

あまりにも理不尽な強さにクリリンはナッパを睨むことしか出来ない。

「ピ…ピッコロさん、ごめんなさい…か…仇討てなかった…も…もう、逃げる力も無くなっちゃった…」

膝を着いた悟飯に悟林とクリリンが焦る。

「悟飯…っ!」

「く、くそ…何とか…何とかしないと…!」

このままでは悟飯が殺されてしまう。

しかし、クリリンの攻撃ではナッパを倒すことが出来ない。

倒せそうな技はあるのだが、当たる保証がないし、悟飯を盾にする可能性だってある。

それを考えると迂闊にサイヤ人との闘いのために開発した新技は使えなかった。

「はーっはっは!!グシャグシャに潰された息子を見た時のカカロットの顔が楽しみだぜ!!」

ナッパが足を振り上げて一気に押し潰そうと足を降ろした。

クリリンは目を閉じ、悟林の目を手で覆ったが…。

「!?」

「ぬ!!」

ナッパとベジータの反応に2人は悟飯の気を追って視線を向けると、そこには見覚えのある雲に乗せられた悟飯の姿があった。

「…き…筋斗雲…!?」

「な…何だ…!?ありゃ…」

ベジータが上空を睨み、空中にいた男は地上に降りて着地した。

「悟空…!」

クリリンが男の名前を呟いた。

「遂に現れたな…!」

「悟空…待ってたぞ…!」

「「お…お父さん…!」」

クリリンと双子も待ち望んでいた人物の登場に笑みを浮かべた。

「わざわざ何しに来やがったカカロット…まさかこの俺達を倒すためなどと言う下らんジョークを言いに来たんじゃないだろうな?」

「ぬ!!」

悟空はベジータを無視して倒れているピッコロに歩み寄り、脈を確認する。

「ピッコロ…」

「ピッコロさんは僕を庇って死んだんだよ…」

ピッコロの死因を語る悟飯に、悟空は周囲を見渡す。

「天津飯…ヤ…ヤムチャ…」

どちらも少年時代から切磋琢磨し合ってきたライバル。

その2人の死に悟空は更に怒りを高めていく。

「へっへっへ…!馬鹿な仲間共が死んじまってショックか?そういやあもう1匹バラバラになったチビもいたっけな。悲しむ必要はないぜ、すぐに貴様も仲間入りだ。せっかく生き返ったのにのこのこやって来やがってよ」

「そうか…餃子まで…」

「へっへっへ…!」

餃子まで死んだことを理解した悟空にナッパは下卑た笑みを浮かべる。

「そして神様も…」

ピッコロが死んだと言うことはピッコロと一心同体である神も死んだと言うこと。

仲間をほとんど殺された悟空は更に怒る。

「(戦闘力がどんどん上がってやがる…!)」

スカウターで悟空の戦闘力を計測するが、どんどん数値が上がっていく。

悟空は前進し始めた。

「お!な、何だ!もう死ぬつもりか!え!こいつは挨拶代わりだっ!!」

ナッパの拳が悟空に向けて繰り出されたが空振りであった。

「悟飯、こっちへ」

ナッパの挨拶と称した拳での一撃をすり抜けた悟空は悟飯を連れてクリリンと悟林の所に移動する。

「……え…!?」

「(…速い…!)」

ナッパは悟空のスピードに反応出来ず、ベジータは悟空のスピードに反応出来たが、下級戦士とは思えないスピードに警戒心を高めた。

「遅れてすまなかったな3人共…よく堪えてくれたな…悟飯…クリリン…最後の1粒…悟林に食わせていいか?」

酷い怪我をしている悟林に最後の仙豆を与えてもいいかと尋ねるが、クリリンも悟飯も同じ気持ちだ。

「あ、ああ…俺は構わない。俺は何も出来なかったからな…」

「クリリンさんは、お姉ちゃんを守ってくれてたんだよお父さん。僕よりもお姉ちゃんに」

「悟飯には俺の気を分けてやるから大丈夫だ。」

「そうか、サンキュー、クリリン…悟飯。悟林…仙豆だ…食え」

「う…うん…」

仙豆を口に含んで噛み砕いて飲み込むと体の痛みが引いて力がみなぎってきた。

「凄い…怪我が治った!力がみなぎってくるよ…!仙豆って凄いね…!!」

仙豆で回復した悟林は気の総量が大幅に上がった。

ナッパとの闘いで見せたフルパワーの倍以上で、今の悟林ならナッパに渡り合えるだけの気力がある。

「(え?仙豆ってパワーアップさせる効果なんてあったっけ?)」

クリリンは悟林の気の上昇に目を見開く。

悟空も娘の急激なパワーアップに驚きを隠せないようだが、すぐに疑問の答えを出す。

「(さっきまで悟林は酷え怪我をしていた。仙豆を食べて回復したらパワーが段違いに上がったってことは…悟林は酷い怪我から回復するとパワーアップするのかもしれねえ…もしかしたらオラにもそういうのがあるのかも…)」

推測の域は出ないが戦闘に関して天才的な悟空の考えが当たっていたことを身を以て知るのはもうしばらく後だ。

「(あのガキ…あのボロボロの状態からどうやって回復したのか分からんが、戦闘力が増してやがる…戦闘力4500…ナッパだけでは厳しいか…)」

ベジータもスカウターで復活した悟林の戦闘力を計測し、ナッパでは厳しいと考え始めた。

「クリリン…物凄く腕を上げたな。気で分かるぞ…」

「そ…そのつもりだったけどな。駄目だ…あいつらにはてんで通用しない。強すぎるんだ…みんなをみすみす死なせちまった…」

「悟林と悟飯も見違えたぞ…!良く修行したな!」

1年前とは比べ物にならないくらいに逞しくなった2人に悟空は父親として誇らしく思う。

「ピッコロさんが修行をつけてくれたんだ」

「で…でも僕…何にも出来なかった…」

悟飯はただ皆の足を引っ張ることしか出来なかったことしか出来なかった自分が情けなかった。

「ピッコロ…死んじゃったろ…もうドラゴンボールも二度と使えない…誰も生き返らないんだ…ち…畜生…」

「………」

「4人で仇を討ってやろう!悟空が加わってくれたし、悟林ちゃんも何でか強くなったんだ!1人ぐらいは何とかやっつけられかも!界王って凄え人の所で修行したんだろ!?」

「ああ、だけど奴らとはオラ1人で闘う。おめえ達は離れててくれ、巻き添えを喰らわねえように」

それを聞いた3人が驚く。

「!?ひ、1人でだって…!?い、いくら悟空だってそりゃ無茶だ!あ、あいつらの強さはそ…想像を遥かに超えている…!」

「ほ、本当だよお父さん…!」

「みんなで闘おうよ!」

今までサイヤ人の強さを見ていた3人は考え直すように言うが、悟空の怒りを見たクリリンと悟林は言葉を失った。

「い…言う通りにしよう…悟空に任せるんだ…」

「ほら、悟飯…行こう…」

「だ…だって…!」

「良いから、は、早く!」

「私達がいてもお父さんの邪魔になるから…!」

「お、お父さん…!」

クリリンと悟林が悟飯を連れて離れた場所に向かう。

「クリリンさん…私、お父さんのあんな怖い顔…初めて見た…」

「俺もだよ…俺達の立ち入る隙がない…」

かつてない悟空の怒りにクリリンと悟林はただ勝利を願うしかないのであった。 
 

 
後書き
戦闘力4500でナッパ超えしたけど、魔貫光殺砲が当たらないと結局は負ける可能性が高い。 

 

第6話

 
前書き
サイヤ人編の悟空が一番人間臭かった気がする。

まあ、神様が死んでドラゴンボールがないからそれの影響もあるんだろうけど 

 
悟林達は界王での修行を果たした悟空の飛躍に目を見開いた。

戦闘力をベジータ曰く8000以上にまで上昇させた悟空は自分達が苦戦したナッパの猛攻を物ともせずに逆に痛打を与えていく。

「な、なあ……悟飯、悟林ちゃん。今の、見えたか?」

「い、いえ……お姉ちゃんは?」

「ちょっとしか見えない…かな?」

謎のパワーアップを果たした悟林にも微かにしか見えないくらいに今の悟空は速い。

今度は悟空が猛攻を加えてナッパを岩山に叩き付けたが、ナッパは岩を払いながら立ち上がった。

悟空の攻撃は確実にナッパにダメージを与えていると言うのにまだまだ倒れる程ではない。

ナッパは恐ろしく強いが、特筆すべきは驚異的なタフネスだろう。

いくら戦闘力に差があるとは言え、悟林達が追い詰められたのはナッパのこのタフネスによるところが大きく、このナッパのタフネスには流石の悟空も驚いた。

しかし、ナッパを肉体的にも精神的にも追い詰めているのは事実だ。

「クリリンさん、お父さん凄いよ!」

「ああ!これなら勝てる…勝てるぞ…!」

「は、はいっ…!」

3人にも希望と余裕が戻り始め、下級戦士に圧し負かされているという怒りから、完全に頭に血が上っているナッパに、ベジータが激しい怒号を飛ばした。

「愚か者め!頭を冷やせナッパ!冷静に判断すれば捉えられんような相手ではないだろう!落ち着くんだっ!!」

ベジータの鋭いの声に、ナッパは少々冷静になったのか息を整え、悟空にまず、気による爆発の攻撃を仕掛けるが、先ほどまでとは多少違って、動きを捉えられている。

上空で戦っているために詳しくは分からないが、冷静さを取り戻したところで、どう見ても悟空が優勢だ。

「お父さんと渡り合ってる…でも…」

「ああ、それでも悟空には余裕がある…!勝てるぞ…!」

「っ…!」

興奮気味にクリリンが言い、悟飯が喜んで頷く。

ナッパがかぱっと口を開き、悟空に向かって凄まじい威力の気砲を放ったが、かめはめ波によって切り返されて逆にダメージを受ける結果となる。

しかし、実力差のある悟空のかめはめ波を多少は受けたにも関わらずまだ闘えそうなナッパのタフネスには驚くしかない。

悟空もナッパのタフネスが予想外だったのか少し表情が険しくなっている。

それを見たベジータが、苛々しながら大声を出した。

「もういい、ナッパ、降りて来い!貴様では埒が明かん!俺が片付けてやる!!情けない奴だ…まさかあのカカロット相手にこの俺がわざわざ動くことになるとはな…」

「い…いよいよあいつが…あ…あのでかい奴さえあいつには怯えていた…」

「………」

悟林はベジータではなくナッパに視線を向けていた。

あの男がいくら命令だからと大人しく引き下がるとは到底思えない。

何やら喋っていたナッパはゆっくりと下降し、ナッパの視線が、悟林達を捕らえて3人に向かって突進してきた。

悟空も慌てて追い掛けるものの、追い付けない。

しかし、ナッパを警戒していた悟林は既に気を溜め終えていた。

「ピッコロさんやみんなの仇だーーーっ!!」

「うおおおおっ!?」

フルパワーの魔閃光が不意を突かれたナッパに直撃し、押し返していく。

「でかしたぞ!界王拳!!」

そして悟空も赤いオーラを纏ってパワーとスピードが向上した状態で魔閃光によって押し返されているナッパの背に突進による強烈な一撃を与えた。

前後からの攻撃によってナッパの背から骨が砕ける音がした。

背骨が砕けたことで動けなくなったナッパを持ち上げるとベジータの横に投げられた。

「界王拳…?」

「もう闘えないはずだ…連れてとっとと地球から消えろ!」

ほんの僅かな時間だったが、パワーもスピードが急激に上がったことに悟林は目を見開いた。

後ろのクリリンや悟飯も同様のようだ。

「凄いじゃないか悟空!界王拳だっけ?ど、どうなってんだ?界王様って人に教えてもらった技なのか?」

「ああ、界王拳は体中の全ての気をコントロールして瞬間的に増幅させるんだ。上手くいけば力もスピードも破壊力も防御力も全部何倍にもなる…」

「す、凄いねお父さん…でもそんなに急に強くなって体は大丈夫なの?」

人は自分の体を壊さないように無意識に力をセーブすると聞いたことがある。

急激なパワーアップに悟空の体は大丈夫なのだろうか?

「大丈夫だ…って言いてえけど、上手く気を抑えながらコントロールしねえとオラ自身が参っちまうんだ…限界を超えた界王拳は体にかかる負担が大きすぎるんだ。界王拳に体がついてけなくなっちまって体がぶっ壊れちまう。今のオラは2倍の界王拳が限界なんだ」

「ふうん……」

悟林は取り敢えず界王拳で無理はしてはいかんということだけは理解した。

次の瞬間。

ナッパの体がベジータによって大きく空に投げ飛ばされた。

4人の視線が、一気にベジータとナッパの2人に引き寄せられる。

「わあああーっ!!なっ、何を…!ベジータ!ベジーターッ!!」

「動けないサイヤ人など必要ない!死ね!!」

ベジータは全身にエネルギーを纏うと、上空のナッパに向けてエネルギー波を放ち、爆砕した。

悟空は双子を抱え、悟林は悟空に抱えられた時クリリンの腕を咄嗟に掴んでいた。

あの一瞬で舞空術を使って上空に退避しなければエネルギー波の余波でダメージを受けていただろう。

「な…なな…何て奴だ…じ…自分の仲間までこ…殺しちまいやがった…」

あの異常なまでのタフネスを誇ったナッパが一撃で消し飛ばされる様は悟空の勝利の余韻を吹き飛ばすには充分過ぎる程だ。

ベジータの力の片鱗を見た悟空は3人を安全な場所に避難させることにした。

「おめえ達は今すぐカメハウスに帰ってくれ!」

「「え?」」

双子が同時に悟空を見上げ、その理由を察したクリリン。

「…そ…そうか…2人共、聞いただろ。早く行こう!」

「え!?だ…だって…」

「でも、お父さん1人で…」

「あいつは凄すぎるんだよ!俺達がいたって何の役にも立てない!却って悟空が気を遣って邪魔になるだけなんだ!」

ナッパにさえ勝てなかった自分達がいたところで闘いの邪魔になるだけなので、クリリンは双子を説得する。

「すまねえな…あいつの強さは思ってた以上みたいなんだ…」

「は…はい…分かりました…」

「…うん、分かった。そうだ、お父さん。場所を変えて戦ってくれる?」

「悟林……いや、それは別に構わねえけど……何でだ?」

クリリンがハッとして悟林を見遣ると後の言葉を引き継ぐ。

「みんなが生き返る可能性があるんだ。だから体が無茶苦茶になったら悪いだろ?」

「生き返った時…って、ピッコロが死んで神様も死んじまった…ドラゴンボールはもう永久に無くなっちまったんだ…残念だけどみんなは二度と生き返りはしねえ…」

ピッコロがいなくなった事で、神様も消えたことでドラゴンボールはもう地球にはない。

けれど、クリリンも悟林も1つの可能性を頭に描いていた。

「…!ク…クリリンさん…ひょっとして…」

「詳しい事は後で話す…!悟空があいつに勝つ事が出来たらら……!」

「勝てたら…か…そうだな……勝たなくちゃな…何としても…」

「何をしている。さっきまでの勢いはどうした!怖じ気づいて逃げ出す相談か!?」

ベジータの言葉にもう話す時間は無さそうだと悟空は大きく息を吐き、動きのないベジータを見遣る。

「さーてと、じゃ、場所を変えて頑張ってみっかな…!とにかくオラに任せてくれ」

横からクリリンがそっと悟空に手を出した。

「悟空よ……いつもお前にばかり運命を任せて悪いな。絶対に死ぬなよ、親友…!」

「ああ!悟飯、生きて帰ったらまた釣りにでも行こうな。悟林もまたオラが修行つけてやっからな」

「は、はい!」

「頑張ってお父さん!」

双子の頭をぐりぐりと撫でると、悟空は下に降りていった。

ベジータと悟空が場所を変え、飛んでいった後に残された3人は、小さく溜め息を吐いた。

「……とにかく、カメハウスへ行こう」

クリリンの言葉に従い移動し始めた。

悟林は悟空の飛んでいった方向をしばらく見つめていたが、悟飯とクリリンを追い掛けた。 
 

 
後書き
真正面から凄い勢いで押し返され、背後から10000超えの突撃を喰らって原作以上のダメージを受けて再起不能となったナッパ。

そしてとどめを刺すベジータ。 

 

第7話

 
前書き
尻尾攻略はゼノバースを元にしています。 

 
悟空と別れた3人はカメハウスへと向かい、後少しでと言うところで悟林は異変を察知した。

悟空とベジータの気が激しく上下し、ベジータの気が大きく減ったかと思えば大幅に上昇した。

「あれ…何だろう…?」

「俺達がやって来た方向だ…やけに明るいな」

「星じゃないようですけど…」

「…あのベジータって奴の気が大きく減ったと思ったらグンと大きくなった。」

「ほ、本当だ…!何だよこの馬鹿でかい気は…!」

「お、お父さん大丈夫かなお姉ちゃん…」

悟林は何も言わず、ただその場所を見ている。

どうすればいいのかは分かっているが、どうしなければいけないのかも分かっている。

「私、戻るよ!大分離れてるけど、今の私が目一杯飛ばせばすぐに行ける!」

「ぼ、僕も行く!」

悟林がオーラを纏うと、悟飯は咄嗟に悟林の手を掴んだ。

「ちょ!?2人共!待てよ、俺も行くよ!!」

クリリンが空いている悟林の手を掴むと悟林は一気にフルスピードで悟空とベジータのいる戦場に向かう。

途中で凄まじい大爆発が起きたことで悟空の気が更に小さくなった。

「お父さんの気がさっきより小さくなった…!急がないと!!」

「す、凄えスピードだ…もう着いちまった……あっ!?悟林ちゃん!止まってくれ!」

目的地に着いて視界に映った物に見覚えがあるクリリンは悟林は急停止させた。

「な、何なの…?あれ?」

「あのベジータって奴が大猿になったんだ!でも月がないのにどうやって…!」

「月って…あれじゃない?」

悟飯は大猿に驚愕し、クリリンは月がないのにベジータが大猿になっていることに疑問を抱くが、上空に浮かんでいる光の玉が原因ではないかと悟林は指差した。

「あれが月の代わりを果たしてるのか?とにかく悟空を助けないと!悟林ちゃんは悟空を助けに行ってくれ、俺と悟飯は何とか奴の尻尾を切る!サイヤ人は尻尾を切れば元に戻るんだ!」

「分かった!」

近付いて分かったが、悟空の気はほとんど残っていない。

もし少しでも遅れていたら取り返しのつかないくらいの重傷を負っていただろう。

悟空がベジータに弾き飛ばされて岩に叩き付けられて動けないところをベジータが踏み潰そうとしたギリギリで悟空を助けることに成功した。

「悟林!?」

助けられた悟空はカメハウスに向かわせたはずの娘がここに来たことに驚く。

「こいつは驚いた。カカロットのガキじゃないか!なるほど、父親と一緒に死ぬために来たってわけか!よーし、ならばお望み通りにしてやろう。俺は優しいんだ」

「な、何で来たんだ…!?」

「大丈夫、悟飯とクリリンさんがサイヤ人の尻尾を切ろうとしてるの。サイヤ人は尻尾を切れば元に戻るんだって…」

最後に見たときと比べれば、酷く疲弊していてボロボロである。

限界ギリギリまで闘っていたのだろう。

「尻尾を切れば…?」

「お父さん、私の気をあげるから頑張って…!」

悟空は悟林の気を分けてもらったことで少しだけ体に力が戻ったような感覚を覚えた。

「す、すまねえ…あいつの尻尾をクリリン達が切るまで持ちこたえりゃいいんだな?」

「うん!」

「よし、行くぞ悟林!」

2人は同時にベジータに気弾を発射した。

「痒いぞ!」

巨体な上に戦闘力が大きく上回れているからか、気弾が直撃してもベジータには蚊に刺された程度だ。

悟飯とクリリンはタイミングを狙うが、ベジータの動きが速いせいで狙いが定められない。

「うわあっ!?」

ベジータの拳をギリギリでかわすが、風圧で岩に叩き付けられてしまう。

2人はベジータの周囲を飛び回りながら気弾で攻撃し続け、ベジータが攻撃の構えを取ればすぐに全速力で逃げ回る。

こちらは一撃でも喰らえば一巻の終わりなのだから。

「そうだ!かめはめ…波っ!!」

何か閃いたのか、悟林はベジータにかめはめ波を放った。

防御するまでもないと気を抜いていたベジータは悟林が腕を動かしたことで軌道が変化したかめはめ波に対応出来ずに右目に直撃した。

「うぁぎゃーーーっ!!」

「気円斬!!でりゃあああーーっ!!」

目を焼かれたことでベジータは苦しんで動きを止め、そこをクリリンが気の刃…気円斬で尻尾を切り落とした。

「ぐ…っ!畜生…!お…俺の尻尾を~…!」

体が縮んでいくベジータを見てクリリンは悟空達と合流する。

「これであいつは元に戻るぞ…」

「そうか…クリリン、今のうちにおめえに渡す…オラが地球中から集めた元気玉を…!」

「え?な…何を渡す…って!?」

「元気玉…地球中から少しずつ集めた気だ。半分くらい逃げちまったけど、今のあいつなら倒せると思う。」

クリリンの手を掴むと悟空の手から元気玉の気がクリリンの手に宿った。

「わわっ!なっ、何だっ!?こ…これ…!すす…凄え…!物凄え気だっ…!」

「オラ達がベジータを食い止めるから隙を見てあいつに元気玉を当ててくれ。そいつを手のひらを上に向けて集中させるんだ。そうすれば玉が出来る…悟林、悟飯…力貸してくれ。父ちゃんは体がガタガタで限界が近え…でもおめえ達が力貸してくれれば何とか戦えそうだ。」

本来なら元気玉の使い手である悟空が良いのだろうが、いくらダメージと界王拳の乱用でボロボロでもこの中では充分強い。

しかし、ベジータも疲弊したとは言えまだ闘える状態だ。

押さえ込むには悟空も闘わなければならない。

「分かった。悟飯、私とお父さんがあいつに突っ込むから悟飯は離れた場所で攻撃して気を逸らしてくれる?」

「そうだな、頼めるか悟飯?あいつの気を少しでも逸らしてくれればオラ達も大分助かる」

「は、はい…!分かりました…!」

そして体のサイズが元に戻ったベジータが怒りに身を震わせて悟空達を睨み付ける。

「き、貴っ様らぁ~…俺を怒らせてそんなに死にたいか~…だったら望み通りぶっ殺してやるぞーっ!屑共めーーーっ!!」

「「はあああああーーーっ!!」」

ベジータが超スピードで悟空達に突っ込み、悟空と悟林は悟飯に援護を任せてベジータに突撃した。

クリリンも何とか元気玉の玉を作り終え、攻撃のタイミングを狙う。

3人が激突し、同時に吹き飛ばされるものの、悟空と悟林はベジータに猛攻を仕掛ける。

「この落ちこぼれがあっ!!」

「ぐおっ!?ぐっ!」

ベジータの拳が悟空の腹にめり込むが、悟空はベジータの腕を掴んで動きを止めると、ベジータの顔面に悟林の蹴りがお返しとばかりに炸裂する。

「よくもお父さんを!」

ベジータに連続で拳や蹴りを繰り出すが、ベジータも負けじと悟林を殴り返す。

「ぐっ…この糞ガキが…っ!」

「いい加減に倒れてよね…!悟飯ーーーっ!!」

「魔閃光ーーーっ!!」

悟林の声に悟飯は魔閃光をベジータに直撃させて幾分か後退させる。

「はあっ!!己……!?」

魔閃光を気合いで消し飛ばすと正面に悟空と悟林はいない。

「「だあっ!!」」

そして次の瞬間、真横からの2人の同時攻撃を受ける。

「ぐ…!うおおおおーーーっ!!」

悟空を蹴り飛ばし、悟林も上空に殴り飛ばして悟飯との距離を詰める。

「あっ!」

「死ねっ!」

咄嗟に悟飯は気弾でベジータを攻撃するものの、それをかわして悟飯の腹を殴り付けた。

「…が……」

あまりの威力に蹲る悟飯。

ベジータがとどめを刺そうとするが、それよりも速く悟空がベジータとの距離を詰めた。

「うおおおおおーーーっ!!」

「ぐおおおおっ!?」

界王拳のオーラを身に纏い、ベジータに突進して悟飯から引き離す。

「悟飯!大丈夫!?」

「う、うん…」

ベジータとの闘いのダメージでふらつきながら悟林が少しだけ悟飯に気を分けると痛みが多少はマシになったのか悟飯が立ち上がる。

「悟飯、あれやるよ。」

最大威力の魔貫光殺砲は悟空と悟飯に気を分けたり、ベジータとの戦闘ダメージで消耗しているので後一発が限度だろう。

「あ、あれ?あいつに当たるかな…?」

「当たらなくても隙を作れれば良いの。クリリンさんの元気玉を当てられれば良いんだから」

早くしなければ悟空がやられてしまう。

界王拳で誤魔化しているが、元々限界が近い状態では長続きしない。

岩が砕ける音に2人はハッとなって向こうを見ると、ベジータに殴り飛ばされた悟空が岩に叩き付けられていた。

2人は慌てて技の体勢に入った。

「うぐ…ぐっ…!」

「落ちこぼれの屑の癖に手こずらせやがって…貴様を始末したら貴様のガキ共…そして俺様の尻尾を切りやがった野郎だ!」

拳に気を纏わせて悟空の息の根を止めにかかるベジータだが、悟空は最後の力を振り絞った。

「界王拳…5倍だあーーーっ!!」

「何!?」

ベジータとの距離を一気に詰めると、超スピードでの頭突きを喰らわせた。

「ぐがあっ!?」

額から血を流しながら仰向けに倒れたベジータ。

「あ…うう…っ!」

5倍界王拳の代償で身動きすら取れなくなった悟空。

ベジータは額を押さえながら何とか立ち上がった。

「お、己…カカロット如きに…俺の気高い血が…!絶対に許さんぞカカロット…!」

動けない悟空に歩み寄るベジータ。

「「ベジーターーーっ!!」」

「っ!!」

双子の声にベジータの視線が双子に向けられた。

「魔閃…」

「光殺砲!!」

ベジータに向けて発射された魔貫光殺砲と魔閃光の合わせ技。

魔閃光に魔貫光殺砲の気功波が螺旋を描き、そして1つとなってベジータに迫る。

「や、やばい!!」

高速で迫る魔閃光殺砲の威力は疲弊しているベジータでは受け止めることも相殺も出来ず、ベジータに回避を迷わず選択させた。

ギリギリで回避し、岩山を跡形もなく粉砕した威力はベジータさえも戦慄させる程だったが、回避直後の気の緩みを狙った元気玉がベジータに直撃した。

「ぐわあああ~っ!!」

閃光が走って遥か上空にベジータの体をそのまま持っていった。

「……やった…んだよね?」

「た、多分…」

悟林の呟きに悟飯が答えるとクリリンの歓喜の声が聞こえてきた。

「ひゃっほーっ!やったぁーっ!!やった!ははっ、やったぞ悟空ーーーっ!!」

クリリンは界王拳のダメージで倒れている悟空の元に駆け寄り、双子も気のほとんどを使い果たしたことでふらつきながら悟空の元に歩み寄った。

「とうとうやったな…」

「大丈夫?お父さん?」

悟林が尋ねると、悟空は苦笑しながら答えた。

「はは…指を動かすことも出来ねえや…やっぱ、5倍の界王拳は…無理があったなぁ…」

「でも、もう大丈夫だ。何回も駄目かと思ったけどさ、あれを喰らったら流石のあいつもおしまいだ」

それをクリリン達に確信させるだけの威力があの元気玉にはあったのだ。

次の瞬間、ベジータが地に落ちてきた。

受け身も何もなく、元気玉の強烈なエネルギーに全身をやられ、ただ地面に仰向けに倒れている。

「サ、サイヤ人が…!」

「生きてるのかな…?」

双子が不安そうに呟くとクリリンが何気なく近づき、小さく息を吐いた。

「大丈夫、死体だ。くそったれ…とんでもねえ奴だったけど…墓ぐらい作ってやるかな…」

「……貴様らの墓をか!?」

「!?」

聞こえるはずのない声に悟林は身を強張らせてぎょっとする。

ベジータは、元気玉を喰らって尚、生きていた。

「随分酷い目に遭わせてくれたな…い…今のは俺も死ぬかと思ったぜ。か…かなりのダメージは喰ったが…貴様らゴミを片付けるぐらいの力は残っているぞ。貴様らを殺した後、体力の回復を待って…この星を徹底的に破壊してやる!」

クリリンが殴り飛ばされ、殴り飛ばした者など気にもせずに、ゆっくりと近づいてくるベジータ。

「悟飯!お父さんをお願い!」

2人を守るように前に出る悟林。

「貴様ら~、このベジータ様の力を限界近くまで使わせやがって…数人掛かりとは言えゴミ共を相手にこれじゃあプライドが傷付いたぜ…いい加減にしてくたばっちまえ…!」

「だあああああっ!!!」

悟林は拳を構えてベジータに突撃した。

「ずあっ!!」

ベジータは全身の気を放出し、自分の周囲を爆発させた。

気爆破を至近距離でまともに喰らった悟林は大きく吹き飛ばされてしまう。

体に蓄積したダメージも手伝って、悟林は動く事が出来ない。

他の仲間がどうなったのかを確認しようと、目を必死に開けるが、見えたのは地面だけだ。

ベジータの気が、悟飯の気に近づいていく。

このままでは悟飯が殺されると思った瞬間、聞き慣れない声が届いた。

悲鳴ではなく、攻撃の際の叫びであり、状況を見ると何者かが攻撃したのか、ベジータは地面に伏していた。

しかしベジータはすぐに立ち直り、何者かを攻撃した。

元々の驚異的なパワーは削がれているため、一撃で死ぬような事はないようだ。

他の面子を確認すると、とてもじゃないが動けそうにない。

悟林も気爆破を諸に受けてしまい、まともに動けない。

「悟飯ーっ!!空だ…!空にある光の玉を見るんだーーっ!!」

悟空の声が響き渡り、仰向けになっていた悟飯がそれに従って空を見ると、変貌を始めた。

驚きに目を瞬かせ、大猿化したのが悟飯なのかと本気で訝る。

大猿にならせまいと、ベジータは必死に悟飯の尻尾を引っ張っていたが、焦っていたのもあってか失敗した。

大岩を持ち上げ、凶暴に吠える弟に向かって叫んだ。

「悟飯!ベジータを……サイヤ人を攻撃して!!」

暴れていた悟飯が、ぴたりとその動きを止めて声のした方角を見た。

「サイヤ人を倒して…みんなで帰ろう!!」

悟林の言葉が通じたのか、悟飯は標的を絞ってベジータに向かって岩を投げつける。

悟林の傍に何とか来ていたクリリンはその様子を見て小さく笑った。

「そ、そうだよ…っ…悟飯は…半分は地球人なんだもんな…!」

悟飯がベジータに向かってジャンプした。

尻尾が重力で下に垂れ下がり、そこを狙って、ベジータがクリリンの気円斬のような物を作り出した。

「くそったれーーーっ!!」

悟飯に向けて投擲され、音を立てて尻尾が切れる。

だがベジータは力を使いすぎた反動か動けなくなり、小さくなりながらも、まだ大猿の状態が続いている悟飯の体の下敷きになった。

虫の息状態のベジータは何かリモコンを操作し、宇宙船を呼び出した。

ようやく戦いが終わったのだと悟林の意識は安堵と共に途切れた。 
 

 
後書き
ヤジロベー、尻尾切りさせてやれなくてすまんかった。 

 

第8話

 
前書き
一応悟空のダメージは大幅に軽減、しかしやっぱり即復帰は無理 

 
意識を失っていたが、騒がしい声によって悟林が意識を取り戻して目を覚ました時、視界に入ったのは母であるチチの顔であった。

「お母さん…?」

「悟林ちゃん!目が覚めただか!」

「お姉ちゃん!」

「あれ?どこなのここ?」

「ブルマの飛行機だ…良く頑張ったな悟林…おめえがいなかったらオラ達もっと酷い目に遭ってたぞ…」

「あっ!お父さん!」

チチの腕から抜け出して悟空の元に向かうと、自分以上にボロボロだった。

「はは、界王拳のせいでまるで動けねえや…動けるようになるまでどれだけかかっかなぁ…」

「お父さん、サイヤ人は?」

「あー、あいつは逃げちまったよ。でもあいつ結構痛め付けたからもう大丈夫だろ」

「…そうかなー」

悟空の代わりにクリリンが答えた。

あのプライドの高そうなベジータの性格を考えると簡単に諦めるようには見えなかった。

「悟林、本当に助かったぞ…本当に強くなったな」

「お父さんほどじゃないもん。お母さーん、お父さんとお話しないのー?」

「良いんだ!悟空さのせいで2人が危険な目にあっただぞ!」

「えー?そんなこと言ってー、本当はお父さんのことが心配で心配で仕方ないのにみんながいるから恥ずかしくてイチャイチャ出来ないんでしょ?」

「悟林ちゃん!!」

「みんながいて残念だったねお母さん、お父さんと2人きりになったら好きなだけイチャイチャするといいよ。」

「悟林ちゃんっ!!!」

怒鳴るチチの顔は真っ赤だったが、それは怒りだけではなく恥ずかしさも含まれているのは誰が見ても明らかだった。

「(冷めてるように見えて本当は仲良いんじゃねえか畜生…)」

誰も見ていないところでギリッと歯軋りするクリリンであった。

そして悟林はクリリンからナメック星のことを聞き、死んだピッコロ達をナメック星のドラゴンボールで蘇らせるためにサイヤ人の宇宙船を利用してナメック星に向かうことになったことを知った。

「でもあれ小さいし1人用じゃない?」

「大人数が乗れるように改造すれば良いのよ」

悟林の疑問をブルマが答えてくれた。

その後4人は病院に運ばれ、界王拳とベジータから受けたダメージで全治3ヶ月、悟林はベジータから受けたダメージ…特に気爆破を至近距離で受けたことでの火傷もあるので全治3週間。

悟飯とクリリンは3日で退院と言うあまりにも差のある入院となった。

「良いなー、2人だけ3日なんて。私なんか3週間だよ3週間。ずるいよ代わってよ」

「オラなんて3ヶ月だぞ」

不満そうな父子に誰もが苦笑を浮かべる。

寧ろあれだけの激戦で3ヶ月や3週間ならマシな方だと思っているのだろう。

しかも仙豆は後1ヶ月もしないと出来ないようなのでそれまでは病院で寝たきり生活だ。

「あーもう、早く修行したいよー」

「オラも修行してえぞー」

「何を言うだ!病院にいる時くれえ大人しくしてるだ!」

「お母さん、病院で叫んじゃいけないよ」

修行修行修行と連呼する父子にチチの怒声が飛んだものの、悟林はさらりとかわしながら言い返した。

「なあ、悟飯…悟林ちゃんとチチさんっていつもあんな感じなのか?」

「いつもあんな感じですよ。」

悟林は父親に似てマイペースなのでチチの説教はのらりくらりとかわし、気の強さは母親似なので口喧嘩ではチチにも負けないのだ。

「喉渇いたなぁ、ジュース買ってくる」

ベッドから飛び降りるとチチから小銭を貰ってジュースを買いに廊下に出た。

すると途中でブルマと擦れ違った。

「あら、悟林ちゃん」

「あれ?ブルマさん、どうしたのその髪?」

以前会った時と髪型が違うことに気付いた。

「ふふん、似合うでしょ?悟林ちゃんはどこに行くの?」

「喉が渇いたからジュースを買いに来たの。」

「あらそう?なら急いだ方がいいわよ?見逃しちゃうから」

「???」

そう言って去っていくブルマに悟林は首を傾げるしかなかった。

取り敢えず自動販売機に小銭を入れてオレンジジュースを購入すると近くの椅子に座って飲んだ。

「……平和だなー」

そう呟いてジュースの残りを飲み干そうとした時であった。

「うるさーいっ!!!」

「ぶーっ!?」

悟飯の怒声が聞こえてジュースを噴き出してしまった。

慌てて病室に戻るとチチが落ち込んでいた。

「ちょっとちょっと、何があったの?」

「それがなあ…」

クリリンが事情を話してくれた。

サイヤ人の宇宙船はブルマが壊したので、神様が地球にやってきた宇宙船でナメック星に向かうことになったのだが、ピッコロを生き返らせたい悟飯はチチの反対を押し切ったようだ。

つまりあの悟飯の怒声はチチの反対に怒鳴った声だったわけだ。

因みに宇宙船の整備を含めて5日後に行けるそうだ。

「そうかそうか、泣き虫は完全卒業だね。おめでとう悟飯。」

「悟林ちゃん!」

「ん?何?」

沈んでいた状態からすぐに復活したチチは悟林の元に歩み寄る。

「おめえも一緒に行くだ」

「へ?あ、あのお母さん?私も悟飯についていくですますか?」

「何だべ、そのおかしな敬語は?悟飯ちゃんだけなら心配だどもおめえが一緒なら安心だべ」

「…お母さん…私も行きたいのは山々だけど、私は全治3週間だよ。忘れてない?」

それを聞いたチチが頭を抱えた。

「3週間後に引き伸ばすのは…」

「いや、駄目でしょ」

チチの言葉にクリリンが即答し、悟飯に対する過保護にブルマは呆れてしまう。

「ちょっとチチさん、悟飯君に過保護すぎない?普通逆でしょ?」

「何を言うだっ!悟飯ちゃんはな!夜に1人でトイレにも行けねえだぞっ!何度夜に悟林ちゃんに連れていかれるのを見たか!他にも1人じゃ小せえ川にも入れねえ!後は夜の獣の遠吠えにも怯えて…」

「あの、チチさん。悟飯が別の意味で泣きそうだからそろそろ勘弁してやって下さい」

クリリンが悟飯に同情の眼差しを寄越しながらチチに言う。

サイヤ人襲来前までの自分の恥ずかしい過去を暴露されて恥ずかしさで悟飯は泣きそうであった。

確かに事実だが大勢の前で言わなくてもいいではないかと、孫悟飯5歳の胸中であった。

因みに妻の大声に悟空が代わりに看護師に怒られていた。

「病院内では静かに!」

「す、すんません」

その後、チチを何とか説得して悟飯はナメック星に行けるようになったのであった。

因みに悟林はクリリンが病院にいる間に、ベジータの尻尾を斬った気円斬を教えてもらっていた。 
 

 
後書き
幼年期の悟飯ちゃんは夜中のトイレに1人で行けないイメージがありました。

ごめんよ悟飯ちゃん… 

 

第9話

 
前書き
悟空には家族との付き合いをしてもらいました。

原作読んでて思うんですけど、悟空って本当に悟飯との親子の時間が少ないんだな…ある意味これが後のセル戦に響いてくると… 

 
ブルマ達がナメック星に出発する日、チチの手によって長かった髪が切られて坊っちゃん刈りになった悟飯の姿が悟空と悟林の視界に入った。

視界に入った瞬間、2人は笑ってしまった。

「はは…悟飯、おめえ何だその頭?」

「ぷくくく…凄く似合ってるよ悟飯」

「人類が初めて行く宇宙だべ、失礼がねえようにな。悟林ちゃんや悟空さは全然伸びねえし、髪切ってもすぐに元通りになっちまうからなぁ…」

「不思議だね、でも私は悟飯みたいな髪型は嫌だな」

「オラも嫌だぞ」

そう言うと、チチは悟飯を連れてカメハウスに向かった。

それから2週間が過ぎ、怪我が思ったよりも早く治った悟林は悟空の見舞いをしながら悟空の師匠の1人である天界のポポの所に修行しに来ていた。

「ポポさーん、今日も修行に来たよー」

ポポが用意してくれた重り(アンダーシャツ、リストバンド、靴1つ50㎏、合計250㎏)入りの道着を着た悟林が修行に来ていた。

戦闘力では随分な差があるが、重りでスピードが落ちているためかポポに全ての攻撃をかわされる。

「悟林、パワーもスピードもある。でも動きに無駄があるせいで活かしきれてない、昔の悟空と一緒。後は無意識に物を目で追おうとする。気配や僅かな空気の動き、それに勘。気を感じる力をもっと研ぎ澄ます。これさえ出来れば悟林、もっと強くなれる」

「本当!?よーし、私頑張るよ!」

「悟林、悟空そっくり」

修行に打ち込む悟林をポポは懐かしそうに指導しながら見つめた。

数時間後、修行を終えた悟林は神殿の風呂を借りて汗を流すと病院に向かい、悟空のいる病室に入ると、悟空が神妙な顔で窓を見つめていた。

「お父さん、どうしたの?」

「悟林…いやな…オラ最近夢を見るんだ。ベジータに頭突きを噛ましたせいかなぁ…小せえオラが丸っこい宇宙船に入れられて窓にオラを見ていた奴らがいたんだ。男の方は目付きは悪いけどオラにそっくりで、女の方はおめえそっくりだった。」

「もしかしてお父さんのお母さんやお父さんの夢?」

「多分な、宇宙船が飛ぶ直前に見た父ちゃんは笑ってたな。母ちゃんは泣きそうだった」

夢で見たその2人の表情はラディッツやベジータ達と同じサイヤ人とは思えないくらいに優しかった。

「お父さん…お祖父ちゃんやお祖母ちゃんに会いたい?」

「…分かんねえ…でもよ、この夢のおかげで思い出したことがあったぞ。オラがガキの頃に乗ってきた宇宙船があるからブルマの父ちゃんに直してもらってるんだ。それならナメック星に6日で行けるんだってよ!」

「本当に!?」

「ああ!早く仙豆出来ねえかな?オラ、界王様の星が地球の10倍だったから100倍の重力装置を頼んでるんだ」

「へー、100倍」

「それくらいやらねえとサイヤ人に勝てっこねえもん。それにおめえも強くなったようだしな。」

悟林の気が更に大きくなっている。

ちゃんと修行をしている証拠だ。

悟空は天界でのポポとの修行の話を聞いていると、懐かしそうに天界のある方角を見つめた。

「ねえ、お父さん。界王拳教えてよ」

「へ?界王拳を?」

「うん!私、ベジータやでかいのに全然敵わなかったからさ!界王拳教えて欲しいな」

瞬間的にパワーを上げられる界王拳は悟林からすればとても魅力的な技であった。

「うーん、別に構わねえけど…このままじゃ退屈だし…よし、屋上に行くかっ!」

車椅子に乗せられた悟空は悟林と共に病院の屋上に向かうと界王拳の説明をする。

界王拳は使用する者の基礎力を反映し、気を内面で激しく高め、その力を体の隅々にまで行き渡らせてコントロールする。

力、破壊力、防御力、スピード。

全ての戦闘に関わる力が大きく上がる代わりに、コントロールを誤れば界王拳が瞬時に解けるどころか体に激しい負担をかけてしまい、乱用は出来ない。

そして肉体の限界を超えた倍率での界王拳も厳禁であり、もしそのようなことをすれば今の悟空のように体を壊してしまう。

界王拳を使う上での注意はこれだ。

悟林も界王拳で無理した結果が今の悟空なのだから良く理解している。

「良いか悟林、界王拳を使うにはまず全身の気を高めるんだ。」

「うん」

「……よし、それくらいだ。練習なんだからいきなり全力でやらない方がいい。病院に逆戻りになる、高めた気を全身に回してコントロールするんだ。そのままな」

「………っ」

悟林の表情が険しくなり、ほんの一瞬赤いオーラが出たがすぐに消えてしまった。

「大丈夫か悟林?」

「う、うん…界王拳…難しいんだね…」

口で説明すると簡単だが想像以上に難しい。

内面で高めた気をそのままにコントロールしてそのまま全身に行き渡らせ続けると言うのは難しい。

しかもこれを動いた状態で発動していたのだから父親の悟空の凄まじさが理解出来る。

「簡単に出来るはずねえさ、父さんも苦労したんだ。それにいい線行ってたぞ。まず止まった状態で界王拳をしばらく続けられるようになる。次は歩きながら、そして更に次は走りながら、最後は空を飛んで速く動き回りながらだ。大丈夫、おめえなら出来るさ」

「うん、ありがとうお父さん」

悟林は天界と病院を行き来しながら仙豆が出来上がるまで、ポポと悟空の修行を受けるのであった。    

そしてそんな生活をしながら悟飯達がナメック星に旅立ってから34日が経過した。

悟林は悟空の指導を受けながら、界王拳を発動して走る段階にまで来ていた。

「もっとペース上げて走ってみろ!」

悟空に言われて更に走るペースを上げながら界王拳を維持していく。

「よし、良いぞ…次は空を飛びながら使えるようになれれば界王拳の倍率を上げる練習をしよう」

「はーい」

「今日はここまでだ。部屋に帰るぞ」

悟林に車椅子を動かしてもらって部屋に戻ると亀仙人がいた。

「おお、悟空に悟林。どこに行っておったんじゃ?」

「修行だよ。悟林が界王拳教えて欲しいって言うから屋上で教えてたんだ。ところで爺ちゃんはどうしてここに?」

「見舞いと、ちょっと悪い報せをな…あ、こいつは見舞いのカステラじゃ。2人で食え」

「サンキュー」

「ありがとう亀仙人のお爺ちゃん」

早速悟林はカステラの封を開けると悟空に半分渡して頬張る。

「食べながら聞いて欲しいんじゃが、2時間前にブルマ達から連絡が来たんじゃ。」

「無事にナメック星に着いたか?」

「ナメック星人の人達に会えたかな?」

カステラを咀嚼しながら亀仙人に聞くと、亀仙人の表情が深刻な物に変わる。

「悟空よ、ブルマ達は確かに無事ナメック星に着いた…しかし、ナメック星にやって来たのはブルマ達だけではなかったんじゃ…ベジータと言うあのサイヤ人…何と奴もやって来たらしいのじゃ…!」

「ベジータ!?あ、あいつが!?」

「あいつもナメック星に来てたの!?」

カステラを飲み込んだ2人が目を見開いた。

「それだけではない…今さっき亀から無線が入った…新しいブルマからの連絡を受けたらしいのじゃが…それによると…ナメック星にはベジータの他にも奴の仲間が十数人おるようじゃ。乗っていた宇宙船はそいつらに壊されて地球に戻ることも出来んらしい…」

「な…何だって…!?」

「お母さんがここにいなくて良かったね」

チチが聞いていたら色々叫んでいたことは容易に想像出来た。

「全くじゃな、しかも、少なくてもそのうちの1人はベジータを超える気を持っておったと…」

「…ま…まさか…」

「ベジータよりも強い気…」

悟空と悟林は互いに深刻な表情で向かい合う。

あの恐ろしく強いベジータよりも強いと聞かされれば流石の2人も思うところがあるのだろう。

「よう、生きてたか」

場違いなまでに慇懃無礼な声に時と場合が違えば、友好の言葉以外の何物にも聞こえなかったのだろうが、間が悪かった。

ヤジロベーは手に布袋を持ち、病室の入り口付近に立っていた。

「えーっと、ヤジロベーさんだっけ?」

「おう、何だよ、せっかく来てやったのに湿気た面しやがって」

ブルマ達の状況の話を聞いて、意気揚々としている人物はここにはいない。

ヤジロベーはずかずか中に入ると、片手に持ってる布袋を軽く上げた。

「ほれ。仙豆が出来たからよ。カリン様がよ、おめえの親父に出来た7粒全部持ってけって」

「本当!?ありがとう!カリン様にも伝えておいて!お父さん、はい!」

「おう」

悟林がヤジロベーから布袋を受け取ると、悟空に仙豆を食べさせ、悟空は空中前転してベッドから床に立つと、腕と足に填まっていたギプスを粉々に砕いた。

「やったー!」

「待ってたんだこの時を!これ、界王様があの世から送ってくれたんだぜ!オラの道着!」

「私もーっ!」

悟空が道着姿となると、悟林も服を脱ぎ捨てるとサイヤ人との闘いで着ていた“魔”の文字が刷られた亀仙流の道着姿となる。

「よしっ!オラ達ナメック星に行ってくる!」

「残りの仙豆貰ってくね」

「ナ…ナメック星に…って、ど、どうやって行くつもりじゃ!?」

「へっへ~、オラ、ブルマの父ちゃんが見舞いに来てくれた時頼んでおいたんだ!念のために宇宙船を作っといてくれって!」

「なるほど!神様のと同じ奴か!」

「ううん、お父さんが小っちゃい時に乗ってた宇宙船を改造した宇宙船なんだって、それなら6日でナメック星に着けるって!」

「悟林行くぞ、筋斗雲ーーーっ!!」

「それじゃあ、行ってきまーすっ!」

2人は筋斗雲に乗り込むとカプセルコーポレーションに向かった。

西の都のカプセルコーポレーションの敷地内の広い庭が見えた辺りで、筋斗雲は高度を下げ、乗っていた2人が飛び降りるとまた上昇し、青空へと消えていった。

地面に着地した2人はとりあえず周囲を見回すが、宇宙船らしき物は見当たらない。

「宇宙船ないねお父さん」

「家ん中で作ってんのかな?」

「ブルマさんのお父さんを探そうよ」

取り敢えずブリーフ博士を探す父子だが、そこにブルマの母親が花壇から声をかけてきた。

「あら?悟空ちゃんに悟林ちゃんじゃない!」

「あ、どーも」

「ブルマさんのお母さん、お邪魔してます」

「2人共すっかり元気になって、もう体はよろしいの?」

「うん、この通り」

「ブルマさんのお父さんはどこなの?宇宙船の改造は?」

自分達がここに来た理由である宇宙船の改造はどこで行われているのか、ブルマの母親に尋ねる。

「どうかしら~。まだ何かやっていたみたいだけど……とにかくついていらっしゃいな。それにしてもあんなにチビだった悟空ちゃんが2人のパパになるなんてね~悟林ちゃんも良い子で可愛いわ。」

ブルマの母親が悟空と腕を組み、悟林の手を引いて歩く。

「………」

「あ、ありがとう…」

「そうそう、悟林ちゃんケーキはお好きかしら?美味しいケーキ屋さんを見つけたの。今度一緒にどうかしら?」

「ケーキ…う、ううん…いいや」

「あら~残念」

一瞬揺れそうになったが今は緊急事態なので必死に我慢した。

そうこうしている間に、目の前に巨大な球体が現れた。

「これがお父さんの乗ってきた宇宙船?」

「あんな小っこいのが良くこんなでっかいのになったなー」

悟空と悟林が目を瞬かせる横で、ブルマの母親がブリーフ博士を呼んだ。

「あなたー!悟空ちゃんと悟林ちゃんがいらしたわよー!」

「おーおー、もう治ったのか悟空君。仙豆っちゅうのは本当に凄いもんらしいな~」

「おじさん!これがお父さんの乗ってきた宇宙船なの!?」

「そうじゃよ、ほとんどの部分を作り変えたんじゃ。しかしサイヤ人の科学力は素晴らしいもんじゃったぞ」

2人は早速宇宙船の中に入る。

中は広い空間で、これがあのサイヤ人達の乗ってきた物と、同型の宇宙船が原型とは思えないほどだ。

「これなら思いっ切り修行出来るねお父さん!」

「おう、人工重力装置って奴は?」

「ああ、出来とるよ。こいつがそうじゃ。」

ブリーフ博士が中央の装置を指差す。

「これで体を重く出来るの?」

「そうじゃよ、これが人工重力のスイッチじゃ…で、こいつがコントローラー。お前さんの注文通り最大100Gまで重力を発生出来るが…いくらお前さん達でもこいつはあまりにも無茶じゃないかね?100Gといやあ何だよ。60㎏の体重だったら6000㎏になっちまうんだよ!6tだ!悟林ちゃんですら2tなんだから死ぬよ普通だったら」

「大丈夫、それぐらいやんないとサイヤ人に勝てっこねえもん…で、こいつはまだ飛ぶことが出来ねえの?」

「飛べるよ、もうデータは全てインプットしてあるからスイッチをポン!と押すだけで6日後にはナメック星に着く。風呂とトイレとキッチンとベッドルームはその梯子を降りて…」

「お、おじさん。何が出来てないの?」

宇宙船は飛べるし、色々揃ってるのに後は何が足りないのだろうか?

「ステレオのスピーカーの位置が中々決まらんのじゃ…どうせなら2人共、良い音で聴きたいじゃろ?」

「「そっ、それだけ!?完成してないってそれだけのことなのっ!?」」

完成していない物の正体に流石の悟空や悟林も唖然となる。

どこまでもマイペースな2人だが、ブリーフ夫妻のマイペースさには敵わないのだろう。

「それだけ…って君達、最高の音で聴くには反射とかを考えると中々難しいんだよスピーカーの位置は…」

「お、おじさん!ステレオは要らないよ!」

「オ、オラ達今すぐ出発するよっ!!」

「何をそう急ぐんじゃ?ステレオを諦めるほどのことなのか?」

「ブルマから通信が入ったんだ!3人の行ったナメック星にこの前のサイヤ人やその仲間もいたんだ!おまけにあの宇宙船も壊された」

ブルマ達がピンチだと教えると流石のブリーフ博士も目を見開いた。

「何と…!確かにそれは大変じゃ」

「早くオラ達にこいつの飛ばし方を教えてくれ!」

「分かった!…で、本当にステレオは良いんじゃな?」

「うん、修行するだけだから要らないと思う」

ブリーフ博士に宇宙船の飛ばし方を教えてもらい、悟空と悟林は早速宇宙船を飛ばそうとする。

「えっと、ここのスイッチを…」

悟空の膝に乗せてもらい、スイッチを弄る悟林。

発進スイッチを押すと宇宙船は飛び立ったのであった。 
 

 
後書き
悟空も悟林も中々暢気でマイペースだけど、やはり上には上がいると… 

 

第10話

 
前書き
魔閃光とかめはめ波の合体技は取り敢えずこれなら出来るかなーって感じでやりました。 

 
悟空と悟林父子を乗せた宇宙船は宇宙へと飛び立ち、飛び立つ際に悟空が悟林を捕まえたことで床に落ちるのは避けられた。

「す、凄い揺れだったねぇ…」

「あ、ああ…こ、こいつは確かに速え~や…!それにしても宇宙…ってのは随分暗いもんだな。今、夜なのか…?」

「本で読んだことあるけど、宇宙ってずーっと暗いんだって」

「何でだ?」

「明かりになる物がないからじゃないの?地球だってお日様やお月様の光で照らされてるじゃん」

「ふーん、まあいいや。早速修行すっぞ!たった6日間で着くのはありがてえけど、それまでにあのベジータって奴を超えなきゃならねえってのはえれえことだ…」

「じゃあ、重力装置入れるよー」

「おー、界王様の星は地球の10倍だから20倍にしてくれ」

悟林が重力装置を動かすと重力が20倍となり、即座に2人を襲う。

「ふぎゃ!?」

「おほっ!!」

急激な変化に悟林は床に倒れ、悟空も膝を着きそうになるが、何とか堪えた。

「お、重い…!」

「く~っ!さ、流石に効くなあ…!悟林…全身に気を何時もより多く充実させるんだ…そうすりゃあ動けるぞ…!」

「は、はい…!」

「やっぱ基本から徹底的に鍛え直さねえと…何倍もの界王拳に耐えられねえ…!」

腹筋、腕立て伏せ、ランニングなどの基本を繰り返しながら2人の激しい修行は始まった。

目標の強さは最低でも大猿となったベジータだ。

あの圧倒的な力は今でも忘れはしない。

「お父さん、界王拳を使いながら修行って駄目かな?重りの服とかこの修行みたいにきついからきっと強くなれるし界王拳の練習にもなるし」

「うーん、悪くはねえけど、こうも体が重いと気のコントロールが上手くいかねえと思う。でも基本から徹底的に鍛えれば界王での無茶は何とか耐えられると思うぞ」

「そっかー…」

良いアイデアだと思ったのだが、高重力でただでさえ体がきついのに界王拳を維持しながらの修行は体を壊すだけだと言われた。

「落ち込むことはねえって、界王拳に慣れようってのは良いと思うぞ。でもそれは地球に帰る時だな」

2人は20倍の重力に多少慣れていくと、組み手を始めた。

本人達が認めているかは分からないが、戦闘民族と言われるサイヤ人は闘いの中で更に成長し、20倍重力でもそれなりに動けるようになった。

「たあっ!!」

悟林の拳を悟空がガードして互いに距離を取ると2人は深い息を吐いた。

「ぷーっ!ハアッハアッ、よ、よーし良いぞ。オラ達、20倍の重力にも随分慣れてきたし、30倍にしてみっか?」

「ハアッハアッ…そ、そうだね…」

汗を床に落としながら2人は重力を30倍にしようとした時、悟林にとって聞き慣れない声が聞こえてきた。

『悟空よ、聞こえるか。悟空…あれ?』

「え?誰?」

「あー!その声は界王様か!?」

『お、おう、如何にも界王じゃが…お、お前一体、そこは…もしかして宇宙か!?お前一体宇宙なんかで何を…あ、そうか!ナメック星じゃな!ドラゴンボールが見つかるといいのう』

間の抜けた台詞に、父子は少しばかり肩を落とした。

この分では、ナメック星に何が起きているのかも知らないのだろう。

「何だよ~界王様、何にも知らなかったのか?ナメック星じゃとんでもねえことが起こってるんだぞ!」

『とんでもないこと?…まあ、その話は後で聞くとして…実はな、ここに客が来おったんじゃよ』

「ねえ、お父さん。この人誰なの?」

「界王様だ。父さんを鍛えてくれた凄え人だ。前に話したろ?」

「へえ…」

『何じゃ娘もおるのか?とにかく凄いぞ!今度の客はお前より遥かに短い時間で蛇の道をクリアしてここに到達しおった。しかも4人じゃぞ!』

「「4人?」」

互いに顔を見合わせる父子に界王様は楽しげに笑った…気がする。

『そうじゃ!お前達も良ーく知っておる4人のはずじゃが』

「ま、まさか…」

「ピッコロさん達…かな?」

『当たりじゃ。みんな悟空がしたよりも厳しい修行を望んでおる』

悟林の呟きが当たっており、悟空が笑った。

「そりゃあ凄えや!ははっ、揃いも揃ってみんな界王様んとこに着いたってか!」

次に聞こえてきたのは界王ではなく、ヤムチャの声であった。

『よう、聞こえるか?悟空。あの世で死んだ神様に会ってさ、ここのことを教えてもらったわけだ。聞いたぞ、お前達ピッコロの故郷の星に行ってドラゴンボールを探してくれてるらしいな。俺達を生き返らせるために…』

「4人って言ったな。ヤムチャと天津飯とピッコロ…残りの1人は神様か!?」

『いや違う、神様はあの世に残られた。何と餃子さ』

「え?でも餃子さんバラバラになっちゃったけど…」

ナッパを倒そうと命を散らした餃子。

体がバラバラになったのにあの世では大丈夫なのだろうか?

『心配無用だ悟林ちゃん、餃子の体を神様が元通りにしてくれたんだ。ここで修行させるためにな』

「そうか、良かったな」

「ピッコロさーん、元気にしてる?」

『死んでるのに元気も何もあるか…修行は怠っていないようだな』

「勿論、今お父さんと地球の20倍重力で修行して、今30倍に挑戦するの!」

悟林の言葉にヤムチャはどこか引き攣った声を出した。

『に、20倍に30倍か…俺達は10倍でも動くのがやっとなのにな…流石、悟空の娘だな』

「オラ達、後5日半でうんと強くなんねえと偉いことになっちまうんだ」

『え!?何だ、何かあったのか?』

『そう言えばさっきもそんなことを言っておったな。話してみろ…』

「オラが大怪我をしてたからクリリンとブルマと悟飯がドラゴンボールを探しにナメック星に行ったんだ…だが、そこにはあのベジータってサイヤ人もドラゴンボールを探しに来ていた…」

『な、何!?』

『そ、それでそいつにやられてしまったのか!?』

ヤムチャと界王の声に悟林が答えた。

「ううん、まだベジータは悟飯達に気付いてないの。でもいつか見つかっちゃうかも…しかも神様が乗ってきた宇宙船も壊されちゃったらしいの。しかもベジータと同じ格好をした奴らもいて、ベジータの気を超えてるって…」

『な、何っ!?』

界王、それからヤムチャの驚きの声が響く。

悟空が限界を超える界王拳を使わなければ手に負えなかったベジータよりも強い人物がナメック星にいるなど、普通ならば考えたくもないことだ。

『ひょ…ひょっとしてそ…そいつはフリーザと言う名前では…』

「フリーザ?何それ?」

「さあ、そいつは聞いてねえが分かったら教えるよ…」

聞き覚えのない名前に首を傾げる父子。

『ちょっと待っておれ。い、今、儂がナメック星を調べてやる』

「本当か?頼むよ」

暫く時間が空くが、沈黙は界王の叫びに似た声で破られる。

『フ、フリーザ!!』

「え?何?」

「何だよ!界王様、知ってんのか!?」

驚く2人に構わず界王は警告する。

『い、いいかお前達!今度ばかりは相手が悪い。というか、最悪の奴だ。とても手に負える相手ではない……ぜ、絶対に手を出すんじゃないぞ』

「…え…?な、何だよそれ……」

「フリーザってそんなにとんでもない奴なの?」

『とんでもないどころではない!良いかお前達!これは界王の命令じゃ!奴には近付くな!お前達がナメック星に着いたら仲間の3人を連れて即刻脱出しろ!お前とて娘や息子を死なせたいわけではなかろう!これは地球やナメック星、その他の星のために言っておるのだ…!中途半端な攻撃を仕掛けて奴の怒りを買えばとんでもないことが起こるぞ…!あいつだけは放っておくしかないのだ…!』

「界王様、サイヤ人よりやばいの?」

『フリーザに掛かれば大猿となったサイヤ人も赤子同然じゃ…奴はその気になれば片手間で星を消し去ることも出来る…!』

それを聞いた2人の表情に緊張が走るが、戦闘民族であるサイヤ人の血なのか少しの興味が湧いたようだ。

「そんなに凄え奴なら…」

「ちょっと見てみたいよね…」

『絶対に近寄るんじゃないぞ、分かったか!!』

界王の怒声が響き渡ると、次はピッコロの声が聞こえてきた。

『お前達、意地でもドラゴンボールを集めて俺達を生き返らせろ。ここで腕を上げてナメック星に行ってやる。俺達でその何とかってふざけた野郎をぶっ飛ばしてやろうぜ』

それを最後に界王からの通信は途切れた。

どうやら界王側から通信を切ったらしい。

「お父さん、どうする?」

「まあ、例え手を出さねえにしたって…強くなって損はねえさ!よーし!悟林、一気に50倍やるぞ!慣れたらまた組み手だ!」

「おーっ!!」

それでも強くなって損はないと考えた父子は一気に重力を50倍にして修行を再開した。

倍以上の急激な重力増加に最初はまともに動けはしなかったものの、限界まで体に気を充実させて無理にでも体を動かす2人。

これにより、50倍の重力に慣れた頃には2人の気の総量が増していき、結果的に2人は1日で大幅なパワーアップを遂げていた。

不眠不休で修行していたためか、組み手の途中でバランスを崩してしまう2人。

悟林は意識を手放して眠ってしまい、それを見た悟空も休憩を兼ねて眠りに就いた。

そして眠りから覚めて体を解すと再び組み手を始めようとしたのだが、悟林が試してみたいことがあると言ってきたのだ。

「お父さん、行くよ」

「おう!来いっ!」

悟空は笑みを浮かべながら悟林の試みを待つ。

娘は時々悟空ですら驚かせるようなことをやってのける。

今度は何をするつもりなのか楽しみだ。

「…魔閃光!」

両手を額に翳すと手のひらに気を溜め、そこからかめはめ波の体勢に入り、腰だめの状態で魔閃光の気を増幅させる。

「こいつはっ!?」

娘の手のひらに収まっている気の大きさに悟空は目を見開いた。

「かめはめ…波ーーーっ!!」

青と金の混じった気功波…魔閃光とかめはめ波の合わせ技が悟空に迫る。

「くっ!」

悟林としては軽く放った一撃でも宇宙船を木っ端微塵にするほどの威力がある。

悟空は両手を前に出すと気功波を受け止め、気合で掻き消した。

「やった!成功だ!魔閃光とかめはめ波だから…魔閃かめはめ波…かな?」

「今のは驚いたぞ悟林。2つの技を合わせてもっと強え攻撃にするなんてな」

「うん、前に魔閃光殺砲って言う合体技を作ってね。あれより威力が弱くても強い攻撃が使えればなぁって。魔閃光なら早く撃てるし、かめはめ波に繋げられそうって思ったんだ。」

「新しい技か…」

自分に使える強力な気功波の技はかめはめ波くらいだ。

悟林みたいに色々出来るようになると言うのも面白そうだ。

かめはめ波を曲げるのはピッコロと闘った時にやってみたし、ヤムチャの繰気弾のように手元から離れても自在に操作出来るようになるのもやってみる価値があるかもしれない。

「よーし、オラも色々試してみっか!」

娘の新技に刺激を受けた悟空は更に修行に精を出していく。

その後宇宙船で様々な問題が起こるものの、何とかやり過ごしていき、そして宇宙に出て4日が経過した時には…。

「はっ!てやあっ!」

「ふっ!だあっ!」

2人は100倍の重力を克服し、戦闘と勘違いさせるほどの凄まじい組み手を行っていた。

まるで自分達の体を痛め付けるように。

「かめはめ波ーーーっ!!」

「魔閃光ーーーっ!!」

互いに全力の気功波を繰り出し、腕を動かして操作すると互いに直撃した。

「う…うぐぐぐ…」

「う…うう…せ、ん…ず…」

悟空が倒れ、悟林が早速半分に割っていた仙豆を飲み込むと、傷と体力は完全にとはいかなくても回復し、悟空に急いで食べさせた。

「ふうー…危ねーっ!サンキュー悟林、助かったぞ」

「今のはちょっとやばかったね、私も後少しで死んじゃうかと思った」

「だなー、死んだら修行も糞もねえもんな~」

「後残り2日とちょっとだね」

宇宙船につけられた時計を確認してナメック星到着までの時間を確認する。

「そうだな、よし!もうちょい頑張ってみっか!」

「おーっ!!」

2人はこのように体と気を死の直前まで追い込み、仙豆を食べて回復すると言う無茶を繰り返していた。

カリンに貰った仙豆も浪費を防ぐために半分にして食べていたが、残り3粒までに減っていた。

2人はとんでもない修行をしていたが、死を乗り越えれば強くなれるサイヤ人の特性に気がついていたのかもしれない。

この特性に気付いた切欠はナッパとの闘いで重傷を負った傷を仙豆で回復させた時だろう。

何度も組み手で互いを限界まで追い詰めて復活を繰り返したことで、2人の戦闘力は地球にいた時とは比べ物にならないくらいに跳ね上がっていた。

そして更に1日が過ぎ、悟空は逆立ちしての腕立て伏せ。

悟林は界王拳の倍率を上げるための気のコントロールをしていた。

「…おっ!界王拳を3倍に上げられるようになったな!」

「うん、でもこれ以上は無理みたい。」

悟林の戦闘力が3倍に跳ね上がったことに気付いた悟空は嬉しそうに笑ったが、悟林は少し不満そうだ。

「うーん、おめえはまだ小せえからな。体が小せえ分、オラより界王拳に体が耐えられねえのかもしれねえな。もう少しでかくなったらもっともっと上げられるさ」

「むうー」

納得いかない顔をしている娘の頭を悟空は撫でる。

「よし!修行はここまでだ!残った1日はうんと休む!元の重力にも慣れなきゃいけねえし!」

「はーい、亀仙流の教えだよね。良く動き、良く学び、良く遊び…」

「良く食べ、良く休む!亀仙人のじっちゃんの教えだ」

「お父さんにとって亀仙人のお爺ちゃんはいつまでも師匠なんだね」

「ああ、じっちゃんは本当に凄え…オラ…実力はじっちゃんを超えたけど…まだまだ敵わねえところがたくさんある。今のオラがあるのはじっちゃんのおかげだ。じっちゃんがいなかったらかめはめ波も撃てなかったし、読み書きも出来なかったなー。教科書はろくなもんじゃなかったけどよ」

因みにその教科書は色々疎かった悟空にその手の知識を与えるのに絶好の教材であり、地球最大の不思議の1つである孫姉弟誕生に貢献しているのかもしれない。

「???」

不思議そうに首を傾げる悟林に悟空は笑う。

「悟林、おめえは何のために武道をやるんだ?」

「え?うーん、楽しいから……じゃあ、駄目?」

「それもいいけど、武道ってのは勝つためにやるんじゃねえ、自分に負けねえためにやるんだ。最初は分からなかったけど…あのじっちゃんの言葉がなかったらオラは強くなれなかったと思う。じっちゃんに会えなかったらもしかしたらおめえ達も生まれてなかったかもな」

「怖いこと言わないでよお父さん…自分に負けないため…か…良く分かんないや」

「今は分からなくてもいつか分かるさ」

重力を元に戻すと2人はあまりの身軽さに呆然となる。

悟空は床の破片を拾って投げ、悟林は気弾を撃つ。

2人は目にも留まらぬ速さで先回りし、破片と気弾を受け止めた。

「凄い!体が軽いよ!」

「驚えたーっ!あんま軽いんで自分がいねえみたいだったもんなーっ!悟林、父さんを殴ってみろ!」

「えいっ!」

言われたように悟林が胸の辺りを数回殴っても悟空はびくともしない。

「体がずいぶん打たれ強くなったな!これならオラは10倍の界王拳にだって耐えられるぞ!いよいよ、明日はナメック星だ。まずは風呂に入るか、飯はその後だ」

汗だくだったので風呂に入り、悟林が母親のチチに仕込まれた料理の腕でサイヤ人2人分の食事を作って堪能した。

「どう、お父さん?お母さんに教えてもらったんだよ?」

「ああ、凄え美味え。」

仙豆で必要な栄養は補給出来たものの、やはりこの手作りの料理の心身を満たしてくれる感覚には敵わない。

室内灯を落とし、床に敷かれた布団に横になる。

布団は一組しかないので、悟林が悟空の横で丸まって眠っている状態だ。

「明日はナメック星だね…」

「緊張してんのか?」

「うん、ベジータよりやばい奴がいるのはちょっと怖いけど…でも、わくわくしてる。お父さんは?」

「へへ、オラもだ…おめえは本当に強くなったな」

「そうかな?」

「ああ、オラがおめえと同じくらいの時は全然大したことなかったからな」

年齢を考えればこれからも修行を積んでいけば更に強くなれるだろう。

大事な娘であり、身近で小さなライバルでもある悟林が将来どのような武道家になるのか悟空は今から楽しみだった。

自分より強くなったら悔しい反面凄く嬉しいかもしれない。

「お父さん?」

「もっと強くなれよ悟林」

「……うん!お休みお父さん」

「おう、お休み」

修行の疲れもあってかすぐに眠ってしまい、2人を乗せた宇宙船はナメック星へと飛び続ける。 
 

 
後書き
戦闘力

孫悟林:80000

孫悟空:100000

悟空の戦闘力は修行相手がいることもあって原作より伸びている。

そして普通の親子関係ではないものの、娘の成長を間近で見続けてきたことで悟空の父親力もアップしている。 

 

第11話

ナメック星への接近を知らせるアラートが目覚まし代わりになり、2人は目を覚ますと歯を磨いて顔を洗った。

「ふわあ…」

「後もう少しでナメック星だ。すぐ動けるように軽くやるか」

「うん」

「オラには界王様が送ってくれた道着があるけどおめえは?」

「大丈夫、私も自分で作った道着があるんだよ」

新しい道着に着替えると、2人は準備運動代わりの組み手を始めた。

拳と蹴りを互いに軽く繰り出し、体を温めるのと同時に寝起きで鈍った反射神経を研ぎ澄ませる。

するとナメック星到着まで後2分を切った。

「………悟飯の気が減ってる…」

「本当か?」

「うん、最初は物凄いパワーだったけど凄い勢いで減ってる…多分闘ってるんだ」

仙豆を確認すると、布袋を握り締めた。

そして宇宙船がナメック星に到着し、ハッチが開いた。

「早く3人を見つけねえとな。悟林、悟飯の気はどこだ?多分そこにみんながいるはずだ。」

双子だからか悟飯の存在を悟林は悟空以上に感じていた。

「あっち、でも悟飯の気が少ししかない…多分死にかけてる」

「そうか、よし…行くぞ!オラ達の100倍の重力に耐えた修行の成果を発揮する時だ!」

先に飛び立った悟林を追うように悟空も飛び立ち、目的の場所に着くとそこには悟飯とクリリン、そしてベジータと見慣れない3人がいた。

「悟飯!」

「クリリンにはオラが仙豆をやる、おめえは悟飯を」

悟空に仙豆を渡すと悟飯に仙豆を食べさせようとするが、首の骨を折られているせいか食べられないようだ。

「無理やり押し込んで…」

仙豆を飲み込んだことで悟飯の傷と気が回復した。

「お、お姉ちゃん!」

「悟飯、大丈夫?もう安心だからね」

「お、お姉ちゃん気をつけて!あ、あいつら…」

「まあまあ、落ち着いて。ところで何でベジータまでやられてんの?あいつら仲間じゃないの?」

悟林には何故ベジータまでやられているのか分からないので悟飯に尋ねた。

「え、えーっと、仲間だったらしいんだけどベジータもドラゴンボールを手に入れるためにあいつらを裏切ったんだって…」

「ふーん…それにしても何で悟飯、いつの間にそんなに強くなってるの?地球にいた時とは別人じゃない」

「そ、それは最長老さんって言うナメック星人に…」

「悟林!」

「へ?」

悟空の声に振り返ると隣には仙豆を食べて復活したらしいクリリンが立っていた。

「仙豆は後1粒あったよな!?」

「あるよ」

「最後の仙豆をベジータに!」

「え?何で?」

悟林だけではなくクリリンや悟飯も唖然としている。

「あいつとは後で地球での決着を着けてえからな。頼む」

「……はーい」

不貞腐れたようにベジータに歩いていく悟林の前にボロボロの格好の巨漢が立ち塞がる。

「おーっと待った!ここから先は通行禁止だぜ~」

「誰?」

「俺はギニュー特戦隊!リクーム!カスはみんな俺がお掃除しちゃうもんね~とうっ!」

ふざけた態度と共に悟林に迫るリクームの拳。

「お姉ちゃーんっ!!」

悟飯の叫びが響いた次の瞬間、悟林の後方に吹っ飛ばされていたのはリクームだった。

「へ?」

「「え!?」」

「へへ~」

突然の浮遊感に唖然となるリクーム。

目を見開くクリリンと悟飯。

得意げに笑う悟空。

リクームは顔面から地面に激突した。

「な、何だ…!?一体何をしやがったんだあのガキ…!?」

ベジータも困惑しているが、悟林がしたのは何ということはない。

リクームの拳を片手で掴んでその勢いを利用して後方に投げ飛ばしただけである。

ただそれが目に見えなかっただけで。

「はいこれ」

ベジータの前に立つと最後の仙豆を渡した。

「何だこの豆は…?」

「それは仙豆って言って酷い怪我を治してお腹も膨らむありがたい豆なの。それ食べて治して」

「き、貴様らの情けなど…!」

「情けじゃないよ。お父さんはお前と闘いたがってるんだもん。ボロボロのお前を倒したってお父さんは嬉しくないの、どうせなら怪我を治して強くなったお前と闘いたいんだよ。食べないなら無理やりにでも押し込むよ」

最初は拒否するベジータだが、押し付けられた仙豆を見ると渋々口に含んで噛み砕き、そして飲み込むとベジータが全快し、更にパワーが増した。

「…か、体が…」

「あ、あのさ…悟空?ひょっとして悟林ちゃん。滅茶苦茶強くなってないか?」

「ああ、オラも悟林も地球の100倍の重力で修行したんだ。当然100倍の重力に慣れてな」

「ひゃ、100…!?」

とんでもない修行にクリリンと悟飯は唖然となるしかない。

「さてと…こいつらはオラ達が片付ける。おめえ達は休んでろ」

そして悟林を睨んでいるリクームの元に向かっていく。

「こ、このチビめ~!何をしたか知らねえが、こうなったら俺の最高の技を見せてやる!リクーム!ウルトラ…ファイティングうっ!?」

悟空の肘打ちと悟林の蹴りが容赦なくリクームの腹に炸裂し、大きく吹き飛ばされたリクームは岩に激突し、気絶してしまった。

「残り2人だね」

「ならオラとおめえが1人ずつ相手をするぞ」

「す、凄い!凄いよ!お父さん!お姉ちゃん!」

悟飯は自分達が手も足も出なかったリクームを2人同時とは言え一撃で倒した父と姉に感動していた。

「どうするおめえ達!とっとと自分の星に帰るか!それともこいつみたいにぶっ倒されてえか!」

声を張る悟空に、残り2人が挑もうとする。

「ねえーっ!悟飯!あの人達の名前って?」

「ええっと……確か、赤いのがジースで青いのがバータって言ってたけど」

「ふぅん」

乳製品のバターやチーズみたいな名前だなと悟林は思った。

「何かチーズとバターみてえな名前だな」

どうやら悟空もそう思ったみたいだ。

ジースが悟林と相対し、バータが悟空と相対した。

「教えてやるぜギニュー特戦隊を舐めるってことがどういうことかをな。たっぷりと可愛がってやる、ああ…可愛がるといっても頭をよしよしと撫でたり高い高いをするんじゃないぞ!痛め付けてやるということだ!」

「…説明しなくてもいいよ」

「宇宙一のスピードを見せて…おぐっ!?」

バータの台詞の途中で顔面に悟空の拳が叩き込まれる。

「わりいな、隙だらけだったもんでよ。おめえ油断しすぎだぞ」

「こ、この野郎…台詞の途中で妨害しやがるとは許さねえ!!」

バータが飛び立つと悟空がそれを追い、悟林とジースは拳と蹴りを繰り出し合う。

「ふん、お前みたいなチビがこの俺と真っ向からやり合おうとはいい度胸だ!」

ジースは距離を取ると悟林に気弾を放つが、悟林はそれを腕で弾くと回転しながら組んだ拳を叩き付けようとするが、ジースは上昇してかわす。

悟空はバータの攻撃をかわし、逆に超スピードで背後を取って気合い砲で吹き飛ばす。

悟林もジースの蹴りをかわしてジースの足を足場にすると顎を蹴り上げた。

「「こ、こいつら…!」」

攻撃をしても逆にダメージを受けているという事態に2人は戸惑いを隠せない。

「もう一度言うぞ、とっとと自分達の星に帰れ」

悟空が警告をするが、敵はそれを聞こうとしない。

「て、てめえら…何者だ…」

「オラは地球育ちのサイヤ人…らしいぜ」

「私はサイヤ人と地球人の混血だよ。隣の人がお父さんであの子が弟なんだ」

悟林が悟空と悟飯を指差しながら説明する。

「こ、混血…!?まだサイヤ人は生きて数を増やしてるのか…!滅ぼしても害虫のように沸いて来やがる…!」

「むっ」

ジースの害虫呼ばわりにムッとなる悟林。

「オラ達は無駄な闘いはしたくねえ、さっさと帰れ」

「ふざけるなぁ!!」

「ギニュー特戦隊員がお前らのような雑魚に負けてたまるかーー!!」

バータとジースは同時に気功波を放ち、青と赤のエネルギーが悟空と悟林に迫る。

「お父さん!」

「行くぞ!」

悟林は魔閃光、悟空はかめはめ波の体勢に入った。

「魔閃!」

「かめはめ波ーーーっ!!」

青と金が混じった特大の気功波がジースとバータの気功波を打ち砕き、唖然となる2人だったが、上昇して魔閃かめはめ波をかわした。

「たあっ!」

しかし背後に回った悟林の蹴りがバータの背に炸裂して吹き飛ばし、悟空の肘打ちが脳天に叩き込まれて地面に叩き付けられる前に受け止めた。

悟林も悟空の隣に降り立つ。

「これで分かっただろう!無駄な戦いは止せ!こいつもさっきの奴もまだ死んじゃいねえ!さっさとこいつらを連れてこの星から出てけ!」

「き、貴様ら何をしている…!とどめだ!とどめを刺せーっ!!」

とどめを刺そうとしない悟空と悟林にベジータが叫ぶが、悟空が言い返す。

「こいつらはもうガタガタだ!意味なく殺す必要はねえだろう!」

そうこうしている間に、残ったジースが逃げた。

「お父さん、あいつ逃げちゃった…」

「しょうがねえな……仲間置いて行っちまった」

「…ねえ、お父さん…これからどうする?」

「そうだなあ…」

これからのことを話し合おうとした時、ベジータが動いてバータの首の骨を折り、岩の近くで倒れているリクームに気功波を放って爆砕したのだった。

バータとリクームを始末したベジータに悟林が声を張り上げた。

「ちょっと!殺さなくてもいいじゃない!あの人達ろくに動けなかったのに!」

母親譲りの凄まじい剣幕に一瞬ベジータは気圧されたが、すぐに言い返した。

「…あいつらを生かしてどうする。目を覚まして体力が回復したら邪魔をしに来るのは確実だろう」

「むっ!」

冷徹ではあるが、正論でもあるために悟林は黙った。

「それにしても貴様らの甘さには反吐が出るぜ。何故奴を逃がした、今の貴様らなら簡単に始末出来たはずだ…どうやら貴様らは超サイヤ人になりきれていないようだな。当然だな、貴様のような甘い奴とこんなガキになれるわけがない」

「っ~!こんのーっ!」

頭に来る言い方に悟林がベジータに殴り掛かるものの、悟空に首根っこを掴まれて阻止された。

「圧倒的に強くなったのが自慢らしいがこんなことではフリーザには絶対に勝てんぞ!不死身にでもならん限りな!貴様らはフリーザの恐ろしさを丸っきり分かっちゃいないんだ!」

「オラは自分で言うのもなんだが随分強くなったと思っている…それでもフリーザには絶対勝てねえって言うのか...!?」

「そういうことだ。闘うつもりなら覚悟しておくんだな。フリーザの強さは恐らく貴様らの想像を遙かに超えているぞ。」

「私達全員で闘っても勝てないの?」

「不死身にでもならん限り奴には勝てん。だから俺はドラゴンボールで不老不死になろうとしたんだ。例え今は倒せなくとも食らい付いて体力を消耗したフリーザならば勝てる可能性があった…!」

「プライドの高えおめえがそこまで言うなら相当なんだろうな」

悟空は敵としてのベジータしか知らないが、プライドの高さは理解しているつもりだ。

プライドの塊とも言えるベジータが不老不死となって体力切れを起こしたフリーザを倒すという卑怯な戦法を取らざるを得ないと考えさせるくらいフリーザは恐ろしいのだろう。

「おまけにフリーザは今頃ドラゴンボールで不老不死を手に入れてしまっているはずだ...これでどう考えても勝ち目はあるまい。奴に会わんように祈るだけだ…」

「ねえ、フリーザは願いを叶えられたの?」

「…いや、多分まだだと思う」

「何だと?何故分かる?」

悟林がクリリンに尋ねると、少しの間を置いてクリリンはまだフリーザは願いを叶えていないと言う。

「地球のドラゴンボールと同じならの話だけど神龍が現れたなら空が暗くなるはずだ…さっきから明るいってことはきっとまだ願いは叶えていないはずだ」

「…シェンロン…!?何だ!?そいつは!ドラゴンボールが揃うと何かが出てくるのか!?」

「ドラゴンボールを7個揃えれば大っきい龍が出て願いを叶えてくれるんだ。」

「でも神龍を呼び出すには合言葉が必要なんだ。おめえが知らねえってことはフリーザって奴らも合言葉を知らねえようだな。まだオラ達にもチャンスがあるぞ」

悟林と悟空が簡単に説明するとベジータは合言葉が必要であったことに衝撃を受ける。

「ところでドラゴンボールで叶えられる願いって1つだよね?じゃあ生き返らせてナメック星に来てもらうのは無理なんだ」

「えっと、ネイルさんってナメック星人の人がナメック星のドラゴンボールは3つ願いを叶えられるって」

「へえ、3つ…じゃあ、1つ目はサイヤ人に殺されたみんなを生き返らせて…」

2つ目に生き返ったみんなをナメック星に呼ぶか、地球に戻るかを考えた時、ベジータが割り込んだ。

「そんな下らない願いを叶えてもそのうち地球ごとフリーザにぶっ潰されりゃ何にもならんだろ。こいつらはフリーザに攻撃をして目をつけられた。近いうちに地球を攻めるだろうよ、中々良い星だったしな」

「ええ!?」

「そ、そんな…」

クリリンと悟飯を見遣りながら言うベジータ。

言われた2人は目を見開いた。

「地球ってさ、そんなに良い星なの?」

「地球は文明レベルが低いが重力が低く過ごしやすい環境の星だ。恐らく異星人に売れば相当な高値になるだろう…それほどの星をフリーザが見逃すとは到底思えんな。そんな下らん願いを叶えるよりもこの俺に不老不死の願いを叶えさせろ」

悟林の問いに答えると地球は個人的なことを抜かしてもフリーザにとってビジネス的に魅力的な星のようだ。

「不老不死になったら強くなれなくなっちゃうんじゃないの?」

不老不死になるというのはサイヤ人の特性を考えればかなりの悪手な気がするのだが…。

「ん!?2つの戦闘力がこっちに…おいでなすったな。お前達の逃がしたジースがギニュー隊長を連れてきたぞ…!今度はいくらお前達でも一筋縄でいく相手じゃないぞ」

「あ、あいつか…!確かにやばいぞ2人共…!」

「待てよ…フリーザはどこだ…!?ギニューの奴がドラゴンボールを持っていった宇宙船の位置に確かにいたはずだが…」

「ねえ、あっちから物凄く強い気を感じるよ…あれがフリーザかな?」

悟林が指差した方角にクリリンと悟飯が反応した。

「あ、あの方向は...!?」

「た、大変だ...!!最長老さんの所だぞ...!フリーザの奴、願いが叶わないから直接ナメック星人にどうするか聞き出しに行ったんだ...!!」

「最長老さんって悟飯達を強くしてくれた人だよね?その人がドラゴンボールを作ったの?」

「う、うん!大変だよお姉ちゃん!あいつ、願いの叶え方を聞き出したら絶対に最長老さん達を殺しちゃうよ!」

「…そ、そっか!地球のドラゴンボールと同じだ。神様が死んじゃってドラゴンボールが無くなったように最長老さんが死んじゃうとナメック星のドラゴンボールが消えちゃうんだ!」

「なっ、何だと!?」

悟飯の言葉に悟林は急いで止めなければと思うが、タイミング悪くギニューを連れたジースがやって来た。

「さっきは良くも舐めた真似をしてくれたな!ギニュー隊長自らが貴様らに制裁を加えて下さるぞ…!」

ギニューと言う男は紫の肌の角の生えた大男だ。

他の隊員とは比べ物にならない気を感じた。

「き…来やがったか…ど、どうだ2人共?今度も勝てそうか!?」

「どうだろ?あの角の生えた人強そうだし」

「そうだな、やってみなきゃ分からねえ。他の奴らと違ってあいつは桁違いの強さみてえだ」

「なるほど、あの2人か…戦闘力、約6000に4000…」

スカウターで悟空と悟林の戦闘力を計測するギニュー。

「そうなんですよ、たったの6000と4000で…妙でしょ!?」

「愚か者め…!スカウターの数値だけを見ているからそう言う間抜けな目に遭うんだ。あいつらは恐らく瞬間的に戦闘力を大きく上げたに違いない。そう言うタイプだ…俺の見立てでは男が70000…同じ服を着たチビはお前達と同じく50000程と見た。」

「な、何ですって!?70000に50000!?あいつらはサイヤ人ですよ!?大猿でもないサイヤ人が…」

「あり得んことではない。あの男は我々と同じく突然変異で生まれた超天才戦士…あのチビはサイヤ人と地球人の混血なんだろう?異なる種族の間に生まれた子供が高い戦闘力を持って生まれてくることも稀にある。野蛮ではあるが、戦闘に関しては高いセンスを持った種族だからなサイヤ人は…恐らくサイヤ人と地球人の相性が余程良いのか………こいつはかつてない程の面白い闘いになりそうだ…このギニュー様の真の力を見せる時がまさかやって来るとは思わなかったぞ」

「あいつはオラ達が食い止める。おめえ達はドラゴンレーダーでボールを探してくれ!多分奴らの宇宙船って所にそのまま置いてあると思う…」

「あいつらを倒したらすぐに行くからね!」

「わ、分かった…!は、早くしないと最長老さん殺されちまうからな…!」

「も、もう殺されちゃってるかも…」

「とにかく急いでくれ!ベジータ、おめえはもう1人の奴を倒してくれ。死にかけて全快してから力がグンと増えたはずだ。これで勝てない相手ではなくなった…」

「気付いてるよ、私達だって修行で何回も死にかけたんだもん」

「ち…貴様ら知ってやがったか…」

死にかけから全快したことで大幅にパワーアップしたことに気付かれていたことに苦笑するベジータ。

「ほ…本当かよ…」

「………」

その事実に唖然となるクリリンと悟飯。

凄まじい勢いで成長をするサイヤ人達に驚きを隠せない。

「よーし!行ってくれ!気を付けてな!」

クリリンと悟飯が飛び立ち、悟空と悟林、ベジータの3人が残った。

「に、逃げやがった…!」

「放っておけ、雑魚だ」

睨み合う両者。

「よし!こっちも行くぞ!」

悟空の声に悟林も気を引き締めたが、ベジータはニヤリと笑うとこの場を去っていく。

「あばよっ!!」

「えっ!?」

「ベジータ!!」

「「隙ありーーーっ!!」」

2人の気がベジータに向いた隙を突き、ギニューとジースは同時に攻撃した。

悟空はギニューの肘打ち、悟林はジースの拳を横っ面にまともに受けてしまう。

「くっ…こんの…!」

「ギニュー特戦隊員は全宇宙のエリートを集めて作ったんだ!お前のようなチビ猿に負けてたまるか!」

今度はジースも油断せずに悟林と闘う。

ギニューは戦闘の天才であり、その観察眼もかなりの物。

悟林の推定戦闘力50000は信じたくなくとも認めざるを得ない。

今度は一方的な戦闘にならずにまともな打ち合いとなる。

「あいつ、さっきより動きが良くなってんな…」

「くっくっく…ジースは特戦隊No.2なんでな、油断さえしなければ多少の戦闘力差を埋めるくらいの技量はある」

ギニューと打ち合いながらジースの動きが良くなっていることに気付いた悟空は打ち合いを止めてギニューと距離を取った。

「痛って~、ち、畜生。ベジータの奴…」

「なるほど、こいつは思った以上に出来るようだな…くっくっくっ…それだけにベジータに逃げられたのは痛かろう…」

「あの野郎…オラをこいつと闘わせておいて、その隙にドラゴンボールを手に入れようって腹だな…こいつは早く勝負を着けねえとせっかく出てきた希望がみんなパーになっちまうぞ…」

希望を失うわけにはいかないために、勝負を急がねばならないと、悟空は改めて構えた。

「お父さんの邪魔をさせるわけにはいかない!こっちだ!」

悟林は手のひらを前に突き出し、2人の闘いの邪魔にならないように気合いでジースを吹き飛ばして悟空とギニューから離れた場所で闘うことに。 
 

 
後書き
悟林のこの地球人としての性質は少しずつ減っていくんです。

界王拳3倍が限度の理由ですが、一言で言うなら体が小さいからです。

悟空も体が小さいために超3の変身が短時間で解除されてしまったので、セル編の悟飯くらいの背丈になれば大きな無茶が出来るようになります。 

 

第12話

悟林は悟空とギニューの気の高まりを感じながらジースと闘っていた。

悟林が蹴りを繰り出すとジースはそれを受け止めて蹴り返す。

悟林はそれを腕でガードすると立て続けに拳と蹴りを連続で繰り出す。

「お前のようなチビ猿に俺達が負けるはずがないんだ!」

距離を取って気弾を連射するジース。

「猿猿言わないでよ!」

気弾をかわしながら距離を詰めて強烈な拳の一撃を横っ面に叩き込む。

「ぐがあっ!?」

「魔閃光ーーーっ!!」

追撃の魔閃光を放つものの途中で体勢を立て直したジースが何とか上昇してかわす。

「しつこいなぁ…っ!こうなったらフルパワーで…!ん…?お父さん…?」

悟空の気が可笑しくなった。

何故か悟空の気がとても弱々しい。

「まさか…!?」

父がやられてしまったのかと思った悟林はジースを放置して悟空の元に急いだ。

ジースも悟林を追い掛けるが、100倍の重力にも耐えたことでスピードは悟空にも劣らない悟林には追い付けなかった。

戦場に向かうと、そこには無傷の悟空と胸に傷が出来てふらついているギニューの姿があった。

「お父さん!良かったー無事だったんだ」

安心して悟空の元に向かうと悟空はスカウターを装着して邪悪な笑みを浮かべた。

「悟林!そいつはオラじゃねえ!」

ギニューから聞こえた声は聞き覚えのある父親の声で、一瞬悟林は気を取られて悟空からの一撃を横っ面に喰らってしまった。

吹き飛ばされた悟林をギニューが受け止める。

「え?お父さん…?どうなってるの?」

「す、すまねえ…あいつに体を奪われちまったんだ…」

「か、体を!?」

つまりこのギニューは父である悟空なのだろう。

到着したジースは一瞬不思議そうにしたものの、すぐに状況を察したようだ。

「ギニュー特戦隊の赤いマグマ!ジース!!」

「そしてこの俺は…ギニュー特戦隊隊長!ギニュー様だ!!」

両者は並んで立つと、地球の歌舞伎のようなポーズを披露し……悟林とギニュー悟空となった悟空に妙に冷たい風が通り過ぎていった。

「……えっと、つまりあれがギニューって奴で良いんだよね?」

「あ、ああ…そうだ。」

あの妙なポーズはスルーして悟空に尋ねると、悟空は頷いた。

「…お母さん泣いちゃうかも」

「怒るかもなぁ…」

2人の脳裏に泣きながら怒るチチの姿が過ぎった。

「と、とにかく!お父さんの体を返して!」

「はーっはっはっは!返せと言われて返す馬鹿がどこにいる!安心しろ、お前の父親の体は強い…この俺が有効に使ってやろう!」

悟空ギニューとなったギニューが高らかに笑いながら言うと、悟林の目付きが険しくなる。

「お父さん、痛い目に遭わせちゃうけどごめんね」

「ああ、構わねえ…思いっ切りやれ!」

父を元に戻すにはギニューを叩きのめして交換させるしかない。

「ふははは…!今の俺に挑むつもりか?戦闘力200000の体だぞ?お前の戦闘力は高く見積もっても70000か80000程度…3倍くらい強くならなければ俺の相手にはなれ…」

「3倍界王拳!!」

フルパワーとなって界王拳のオーラを纏い、一気に戦闘力を限界の3倍にまで上昇させる。

「なっ!?」

「せ、戦闘力…240000!?」

基本戦闘力80000から一気に240000にまで跳ね上がった戦闘力にギニューとジースが驚愕する。

一気に距離を詰めてジースの首に蹴りを叩き込むと骨が砕ける音がし、勢い良く地面に叩き付けられ、バータの隣で息絶えた。

「ジース!?ぬおっ!?」

一瞬の出来事に唖然となっている隣のギニューの胸倉を掴む。

「お父さんの体を返せーーーっ!!」

そのままギニューの頬に数十発もの往復ビンタをして腹を殴り、更に追撃の蹴りで吹き飛ばすと真上に移動して組んだ拳をギニューに叩き込んで地面に叩き付けた。

「ご…悟林…」

娘にボコボコにされている自分の体を見て複雑になる悟空であった。

「お、己…ま、まさか娘の方が強いとは…完全に誤算だった…」

正確には界王拳込みでも悟空の方が強いのだが、精密な気のコントロール技術を持たず、体と心が一致していないギニューでは悟空の肉体を使いこなすことは出来ない。

240000のパワーをまともに喰らったギニューは悟空の肉体の力を発揮出来ないまま、戦闘不能となる。

「お父さんに体を返さないならもっと痛くするよ!」

かめはめ波の体勢に入った悟林にギニューはニヤリと笑った。

「っ!ま、まさか…!」

ギニューのやろうとしていることを察した悟空。

「かめはめ…」

「チェーーーンジ!!」

ギニューの体から光が放たれた。

気を溜めていた悟林は不意を突かれたこともあって動けなかったが…。

「しめた!元のオラに戻れるぞ!間に合ってくれーっ!!」

悟空が間に入ることでギニューが悟林の肉体を奪うのを妨害し、悟空は元に戻れた。

「え!?」

ギニューと悟空の雰囲気が再び変わり、悟林は激しい変化に混乱しそうになる。

「ご、悟林!さっきの技は体を交換する技なんだ!さっきはオラが庇ったけど…も、もうオラは動けねえ…!」

「ぐっ…あ、あの野郎…良くも邪魔を…!だが、浅はかだったな…今度はもう邪魔出来まい!頂くぞ、240000の戦闘力の体を!!チェーーー」

「させるかあっ!!」

再びボディチェンジをしようとするギニューに悟林は超スピードで射線上から離脱した。

「何いっ!?」

姿が掻き消え、驚愕したギニューがボディチェンジを中断し、背後に悟林が現れると即座に攻撃するがかわされてしまい、倍の戦闘力差があり、更に傷ついた体では対応出来ずに悟林のラッシュをまともに受け、顎を殴り飛ばして上空に打ち上げる。

「か…め…は…め…」

3倍界王拳を維持しながら繰り出すのは悟空から教わった亀仙流の奥義。

「ぐおおおおっ!」

「波ーーーーっ!!!」

3倍界王拳かめはめ波がギニューに炸裂し、ギニューを跡形もなく消し飛ばしてしまった。

「…ふぅ……あ、お父さん!大丈夫!?」

「あ、ああ…す、すまねえな悟林…オラがへましちまったせいで…」

娘に父親を殴らせるようなことをさせてしまったのは流石に悟空も思うところがあったようだ。

「私だってお父さんを思いっ切り殴っちゃったもん…クリリンさん達の所に行こう!手当てしないと!」

悟林は悟空を背負ってクリリン達がいるはずのフリーザの宇宙船に向かう。

「っ…う…くっ…」

「お父さん、大丈夫?ゆっくり行こうか?」

「だ、大丈夫だ…急いでクリリン達の所に行こう…」

「う、うん……あの、ごめんねお父さん…?」

「何がだ?」

「だって…ジースって奴も、ギニューって奴も……殺し…ちゃった…」

悟空は無駄な殺生は好まないことを知っている悟林はジースとギニューを殺したことに何か言われるのではないかと思ってるようだ。

「仕方ねえさ…オラが慣れねえ体で闘えねえせいで2対1だったからおめえも余裕がなかったんだろ…?おめえは良く頑張ったぞ、流石オラの子だ」

「お父さん…」

「昔、オラが闘った奴らにもいた…本当にどうしようもねえ奴もいる…多分あいつらもそれだ…オラがあいつらに情けをかけたせいでおめえにも迷惑かけちまったな」

脳裏に浮かぶのは卑怯な手を使いながらも勝利に執着した過去のどうしようもない悪の強敵達。

質の悪さは身を以て知っていたのだが、どうやら強くなりすぎたせいで自信過剰になってしまっていたようだ。

「ううん、そんなことないよ」

悟林は悟空を背負って出来るだけ早くフリーザの宇宙船へと向かうのであった。

しばらく飛んでいると、クリリン達のいるフリーザの宇宙船に辿り着いた。

「クリリンさん!悟飯!」

「悟林ちゃん!」

「お姉ちゃん!」

ドラゴンボールの前で悩んでいた2人に声をかけるとボロボロの悟空の姿に驚く。

「ご、悟空!?大丈夫か?」

「あ、あいつにやられたの?」

2人は悟空がギニューにやられたと思い込んでおり、悟林は言いにくそうに、悟空は苦笑するだけだ。

「なあ、仙豆はもう1粒もないのか?」

「あ…ああ…参ったな…」

「くっくっく…今なら鬱陶しい貴様らを消し去るくらいわけはない」

宇宙船の脚の陰に隠れていたベジータが姿を現した。

「べ、ベジータ!?そ、そんな…気を感じなかったぞ!?」

「ふん、貴様らに出来ることがこのベジータ様に出来んわけがないだろう…宇宙船の中に来い。カカロットを治療してやる。フリーザと闘うには貴様らの…特にカカロットと娘の力が必要だからな…早くしろ!いつフリーザが戻ってくるか分からんぞ!」

「分かったよ」

悟林は背に腹は代えられないと宇宙船の中に入り、クリリン達も慌てて中に入った。

「(貴様らはフリーザを倒した後でゆっくり料理してやるさ!その時には間違いなくこの俺は超サイヤ人になっているはずだ!)」

メディカルルームに入ると注射器を見た悟空が暴れるというハプニングがあったが、何とか悟空をメディカルマシーンに放り込むことが出来た。

「なあ、悟林ちゃん。悟空って何で注射が嫌いなんだ?」

「えーっと、前にお父さんが予防接種のために村の病院に行ったんだけどね。そこのお医者さんが滅茶苦茶下手くそで…何度も針刺すの失敗したり針をグリグリしたり…」

「ひいっ!止めてくれ悟林ちゃん!聞くだけで痛い!」

想像してゾッとなったのかクリリンは両腕を擦りながら言う。

ということもあり、すっかり悟空は注射がトラウマになってしまったらしい。

「それでこの機械で本当に治るの?」

「ああ、こっちのメディカルマシーンは旧型だが、カカロットなら大した時間もかからずに全快出来るだろう。新型の方は俺が壊しちまったからな」

薬液に浸された悟空は痛みが和らいだのか幾分楽そうに見える。

口に酸素を送るコードもあることだし酸欠になる心配もないだろう。

「さて、貴様らには戦闘服をくれてやるか。防御に関しては少しはマシになるだろうぜ」

指で扉の外を示してベジータは先に廊下に出ると悟林達もそれに従って外に出た。

廊下を歩いて、部屋をいくつか通り過ぎる。

「ここだ」

ベジータが案内した所は、ロッカーが壁伝いにくっついている場所だった。

「おいガキ」

「悟林」

「?」

「私には孫悟林って名前があるの、それに私も悟飯も“ガキ”じゃ分かりにくいでしょ」

「チッ…女用のジャケットはここにはない。男用のジャケットで我慢しろ」

舌打ちすると悟林にアンダースーツを押し付け、悟飯とクリリンに投げ渡す。

「服を脱いでそのアンダースーツを着ろ、さっさとしろ!フリーザが来るぞ。」

服を脱いでアンダースーツを着ると次は戦闘ジャケットを渡してきた。

悟林のはベジータと同型の物だ。

「お前にサイズが合うのはリット星人間用の旧型だ。我慢しろ」

「そうかな、肩動かしやすそうだけど」

しかし、ジャケットを着ようにもサイズがどうも合わないように見える。

「…?これってどうやって着たら良いんだ?」

「頭が入っても手が通らない……」

クリリンと悟飯も同じことを思ったのかジャケットを見つめている。

「強引に着てみろ、そいつは柔らかくて引っ張ればどんどん伸びる。地球でこの俺が大猿になった時にも破れはしなかっただろ。だが、衝撃には相当強いぞ」

それは納得出来る。

地球でベジータやナッパがどれだけ攻撃を受けようとジャケットは完全に壊れはしなかったからだ。

ベジータが大猿になった時もジャケットは健在だった。

「あっ!凄い!本当だ!」

「手袋や靴なんかもこういう素材なのか?」

「まあな」

「他じゃあこれが当たり前なの?」

「一般的だ。地球は文明が低すぎる」

戦闘服を着込むと悟林はあまりの身軽さに驚く。

「凄く軽い…」

しかし、戦闘服はベジータとサイズ以外は全て同じなのでお揃いみたいで少し複雑だ。

「ベジータ…さん…お父さんは後どれくらいで治るかな?」

呼び捨てしようと思ったが、思惑はどうあれ自分がボコボコにしてしまった父を治療してくれたのは事実なのでさん付けで呼ぶことにする。

「そうだな、奴のことだから40~50分で完治出来るはずだ」

「そっか…」

「なら俺は最長老様の所に行ってくる!もしかしてフリーザがいるかもしれないけど神龍を呼び出す合言葉を聞かないとどうしようもないからな」

「ぼ、僕も…!」

「いや、悟飯は悟林ちゃんと一緒にいるんだ」

久しぶりに会えたのだから積もる話もあるだろう。

クリリンは最長老の元へと向かっていく。

ベジータは睡眠不足のせいでふらついており、軽い仮眠を取り始めた。

「お姉ちゃん…クリリンさん大丈夫かな?ここから最長老さんの所へ行って帰ってくるまで2時間はかかるから…その間にフリーザが来たらどうしよう…」

「その時はその時で私達が闘ってお父さんが治るまで時間稼ぎするしかないね」

多分、散々邪魔をしてきた自分達をフリーザは許さないだろうから、今のうちに覚悟を固めておいた方がいい。

拳を連続で突き出してやる気満々の姉の姿に悟飯は頼もしさを感じるのと同時に嫌な予感を感じた時である。

こちらに2つの気を感知して2人はそちらに向かうとクリリンとナメック星人の子供。

「クリリンさんの隣にいるの誰?」

「デンデ君だ!やった!」

「小さいピッコロさんだ」

チビサイズのピッコロみたいなデンデを凝視する。

「物凄い速さでしたね!どうやったんです!?」

「なーに、デンデの奴が最長老さんに頼まれてこっちに来てたのさ!」

「えーっと、デンデ君…だっけ?」

「あ、はい…あなたは?」

「私は孫悟林。悟飯のお姉ちゃんだよ。よろしく」

「ドラゴンボールの願いの叶え方を教えに!?」

「はい!」

つまりドラゴンボールさえあればすぐにでも願いを叶えられる状態だ。

「ところでベジータは?あいつに分からないように途中から気を消して来たんだが…」

「気付かれてないと思いますが…」

「睡眠不足みたいで寝ちゃってるよ」

「よーし!ついてきたぞ!良いか、ベジータに悟られないようそっとドラゴンボールをこの辺りまで運ぶんだ…!神龍が出た時に気付かれても少しは時間が稼げるからな…」

4人はベジータに気付かれないようにドラゴンボールを運んで7つ並べた。

「ひゃっほー、やったぜ!」

「はあ、緊張した…」

「あ、悟林さん怪我してますね…」

デンデが悟林の少し腫れた頬を見ながら言うと、悟林はそっとまだ熱を持った頬に触れた。

「え?ああ、ギニュー達にやられたんだ。でもこれくらいなら」

「僕が治してあげますよ」

デンデが触れると傷だけではなく体力まで全快した。

「す、凄い!仙豆を食べたみたいだ!」

「デンデにはこんな能力があるのか!くそー、それなら悟空も連れてくれば良かったぜ」

デンデに治してもらえば悟空もここで一緒にいただろう。

「仕方ないよ、それより…」

「な…何かがこっちに近付いている…す…凄い速さで…」

「え!?これって…」

「うん、多分フリーザって奴だね…凄い気だ」

「ご、悟林ちゃん、勝てそうかな?」

「……無理」

クリリンが尋ねるが即答される。

感じられるフリーザの気は3倍界王拳を使った自分の倍以上だ。

限界を超えて4倍にしたところでようやく半分を超えるかもしれないところか。

「そ、そうか…なら急げデンデ!早く願いを叶えさせてくれっ!」

「はっ、はいっ!」

そしてデンデはナメック語の合言葉を言うと、ドラゴンボールが光った。

「ひ…光った…」

次の瞬間、空が暗くなり、それに気付いた全員が空を見上げた。

「空が暗くなった!あの時と同じだ!」

以前サイヤ人との闘いの前に起きたのと同じ現象だ。

するとドラゴンボールが一層輝きを増して巨大な龍が姿を現した。

「うわあ、でっかい!あれが神龍なんだ!」

初めて神龍を見た悟林は驚きと感動が混じった表情を浮かべる。

「でも、地球のより全然でかい…!形も違うし…」

「あ…あれが神龍…」

「ここではポルンガと言います…“夢の神”と言う意味です…ぼ、僕も見たのは初めてですけど…」

「ドラゴンボールを7個揃えし者達よ。さあ、願いを言うがいい。どんな願いも可能な限り3つだけ叶えてやろう。」

「じゃあ、サイヤ人に殺された地球のみんなを生き返らせてくれない?」

驚いているクリリンと悟飯の横でこの星に来た理由である地球の師匠達の復活をデンデに言うように頼む。

「分かりました」

デンデがナメック語で伝えると、ポルンガから返ってきた返答は良いものではなかった。

「それは叶わぬ願いだ。生き返らせることの出来る人数は1人ずつだけだ」

「えっ!?」

「そっ、そんな…」

ポルンガの返答にショックを受けるクリリンと悟飯。

「さあ、どうした。願いを言うがいい、可能な限り3つの願いを叶えてやろう」

「1人だけ…あ、そうか…ナメック星人の人って数少ないから大勢生き返らせるようにする必要がないんだ」

ピッコロがあれだけ強かったのだからナメック星で暮らしていたナメック星人も相当強いはず、穏やかな性格らしいので争い事もないため大勢を生き返らせるようにする必要はなかったのだろう。

「じゃ、じゃあどうする!?1つの願いでたった1人ってことは…」

「3人だけですか!?い、一体誰を…!」

『悟飯っ!悟林っ!聞こえるか、ピッコロだ!早くしろっ!』

「ピッコロさん!もしかして界王様に?」

宇宙船で経験した悟林は界王を通じてこちらに通信を寄越してきたのだろう。

『そうだ、界王を通してお前達の心に直接話しかけている!』

「こ、心に…」

クリリンが呟くと、ピッコロが言葉を続ける。

『叶えられる願いは3つ!1つの願いで生き返らせることの出来るのはたったの1人だと言うことは分かった!良く聞くんだ!1つ目の願いでこの俺を生き返らせるんだ!俺が生き返れば神も生き返る!そうなれば地球のドラゴンボールも復活して他の連中も蘇ることが出来るはずだ!』

「そっか…!」

サイヤ人との闘いで死んだのはピッコロの方だ。

神はそれに引っ張られただけなので、死んだ方のピッコロを生き返らせれば神も生き返る。

「そ、そうか!その手があったんだ!」

「わ、分かりましたピッコロさん!」

「…?」

デンデにはピッコロの声が聞こえていないので3人の話している内容が理解出来ない。

『そして2つ目の願いを言う!生き返った俺をそのナメック星に飛ばしてくれ!俺は闘いたいんだ!生まれ故郷で、お、俺と同じ仲間だと言う連中を殺したフリーザって奴とな…!俺はここで遥かに力を増した!必ずそいつを倒してみせる!その星に俺を呼ぶんだ!』

「分かった!1つ目の願いでピッコロさんを生き返らせて、2つ目はピッコロさんをナメック星に呼べば良いんだね!?」

「わ、分かりましたピッコロさん!」

『頼んだぞ!3つ目の願いは好きにしろ!』

願いを確認した悟林は即座にデンデに1つ目の願いを伝える。

「デンデ、地球のナメック星人さんのピッコロさんを生き返らせて!」

「あ…!は、はい!ピッコロさん…ですね!」

デンデはナメック語でポルンガに1つ目の願いを叶えてもらう。

「分かった、1つ目の願いを叶えてやろう」

そしてポルンガの目が光り、次の願いを叶えてもらう。

「2つ目の願いは生き返らせたピッコロさんをこのナメック星に飛ばして欲しいんだけど…出来る?」

「た、多分…」

あの世からナメック星に飛ばすことが出来るのか分からないために悟林は不安そうに尋ねる。

デンデもポルンガに願いを頼むのは今回が初めてなので確信出来ないようだ。

「デンデ、早くっ!ベ、ベジータが気付いた!」

「え?もう起きちゃったの!?」

デンデが急いでナメック語で2つ目の願いを言う。

「それは容易い。2つ目の願い、叶えてやろう……2つ目の願いも叶えた。さあ、最後の願いを言うがいい」

目が赤く光り、最後の願いを促すポルンガ。

「ねえ、ピッコロさん…いないんだけど?」

「ほ、本当だ!いない!」

「ど、どこ!?ピッコロさん!」

「こ、“この星に呼んで下さい”って言っただけですからど、どこかの場所に…こ、ここへ来て欲しかったんですか!?」

デンデの言葉に悟林は唖然となるが、ベジータが降り立った。

随分と苛立っており、仮眠を取ったことで瀕死から立ち直った時のパワーアップした全てのパワーを発揮出来るようになったからか、界王拳込みの悟林を上回る気を感じる。

「ベジータさん…」

「やはりそういうことだったか…!貴様らよくもこのベジータ様を出し抜きやがったな…許さんぞ!愚か者め…!貴様らはフリーザを倒すたった1つの手段を不意にしたんだぞ!勝てる方法はこの俺を不死身にするしかなかったんだ!く…くそったれ共め~!」

「あ、あのさベジータさん。願いはまだ1つ残ってるからそれ使えば?」

「悟林ちゃん!?何でバラすんだよ!?」

「お姉ちゃん!?」

「いや、だって…お父さんはまだ治らないし…」

不死身となってサイヤ人の特性が働くのかは分からないが、悟空が復活するまでフリーザに対抗するには不死身になるしかないだろう。

「そいつを聞いて安心したぜ…さあ!この俺を不老不死にしろ!早くするんだ!フリーザはもうそこまで来ているぞっ!」

「3つ目…最後の願いはまだか。さあ、言うがいい」

ポルンガが最後の願いを促す。

ベジータがデンデに掴みかかり、願いを言わせようとする。

「何をぐずぐずしている。早く言わんかっ!さっさとこの俺を不老不死にするんだっ!フリーザに殺されたいのかっ!」

「……く……」

「ク、クリリンさん、フ…フリーザはも、もうすぐそこまで…!」

「こっ、こうなったら破れかぶれだ!デンデ、そいつの願いを叶えてやれ!ベ、ベジータもとんでもない悪だが、フリーザよりはマシだ!く、悔しいがそれしか今のピンチを凌ぐ方法はない…!」

悔しそうにデンデにベジータを不老不死にさせるように言うクリリン。

「わ…分かりました…」

「よーし!それで良いんだ!(い、良いぞ!これでフリーザに俺を殺すことは出来ん!どこまでも食らい付いてやれば今は無理でもそのうち倒せる…!くっくっく…全宇宙を支配するのはこの俺だ!!)」

「で…では…」

デンデがポルンガに振り返り、最後の願いを言おうとした直後にポルンガが消えて空が明るくなり、ドラゴンボールが石となった。

「………ど…どうしたんだ…な…何故、龍が消え…空が、ま、また明るくなった…んだ。な…何故ドラゴンボールが、あ…あんな石に…」

突然のことに理解が追い付かないのかベジータは拳を震わせながら石となったドラゴンボールを見つめた。

「さ…最長老様が亡くなられたのです…ドラゴンボールを作られた最長老様にと…とうとう寿命が…」

「なっ、何だとーーーっ!?ガキ…!お、俺の不老不死はどうするんだ…!」

「そ…それは…」

ドラゴンボールがない以上、ベジータを不老不死にすることは出来ない。

つまりこのままでフリーザと闘わなければならないことになる。

「き…貴様らがこの俺を出し抜きさえしなかったら…ゆ…許さんぞ…」

「あ、あの…フリーザを倒すための作戦があるんだ。聞いてくれないかな?不老不死だったら…みんなを生き返らせた後に地球のドラゴンボールで…」

「作戦だと!?俺を不死身にする以外に何の……」

悟林に食って掛かろうとするベジータだが、言葉が途切れた。

不思議に思った全員がベジータの見ている方角を見遣るとそこには…。

「……あ……あ……」

「あいつが…フリーザ…なの…?」

岩の上でフリーザが悟林達を見下ろしていた。 
 

 
後書き
ギニュー隊長御臨終。

でも蛙の姿で生き延びるよりかはマシではないかな?

地獄で新たなスペシャルファイティングポーズを考えてて欲しい。 

 

第13話

 
前書き
デンデの能力を早めに知っていれば早期にこの作戦が出来たかも? 

後、見せ場奪ってごめんよ悟飯。 

 
とうとうフリーザと対面することになった悟林達。

冷静そうなフリーザだが、とてつもない怒りを感じる。

「やってくれましたね皆さん…良く私の不老不死への夢を見事に打ち砕いてくれました…」

「おいガキ…」

フリーザが話している最中、ベジータがフリーザに聞かれないように小声で悟林に話しかける。

「何?」

対する悟林もフリーザに聞かれないように答える。

「さっき言っていたフリーザに勝つための作戦とは何だ…癪だが無策で闘うよりはマシだ…!」

「……デンデにはね、怪我を治す力があるの…」

「何だと…?」

チラリとデンデを見遣るベジータ。

「私達は死にかけから復活すると強くなるでしょ?だから…」

つまりデンデの力を借りて瀕死からの復活によるパワーアップを繰り返してのごり押し戦法。

確かにそれならばフリーザにも勝てる可能性がいくらか増す。

しかし、それにはいくらかの問題がある。

治療を受ける前に死んでは意味がない上にデンデが死んだらこの作戦は機能しなくなる。

そのため、デンデを守りながら致命傷は避けなければならない。

舌打ちするベジータだが、それしかフリーザに勝つ手段はないと理解した。

するとフリーザは悟林達の前に着地すると恐ろしい笑みを浮かべた。

「私を前に内緒話ですか?全く初めてですよ…この私をここまで虚仮にしたお馬鹿さん達は…まさかこんな結果になろうとは思いませんでした…ゆ…許さん…絶対に許さんぞ虫けら共!じわじわと嬲り殺しにしてくれる!1人たりとも逃がさんぞ覚悟しろ!」

「悟飯!クリリンさん!離れて!」

「貴様らはそこのナメック星人のガキを守れ!…ふん、本性を表しやがったな…やってみやがれ!今の俺がそう簡単にやられると思ったら大間違いだぞ!」

「くっくっく…何を言い出すかと思えば…どうやら私の恐ろしさを忘れてしまったようだな…思い出させてやるぞ!」

気を解放するフリーザ。

そのプレッシャーはサイヤ人の限界を超えた戦闘力を持つベジータと悟林も気圧されそうになるほどであった。

悟飯とクリリンに至っては完全に怯えている。

「とんでもない気だね…確かに普通にやったら勝てそうにないや…」

引き攣った笑みを浮かべる悟林にフリーザは嘲笑を浮かべた。

「当たり前だ…たった4匹の蟻が恐竜に勝てると思ったのか?」

「勝てる!俺とこいつの2人掛かりならば何とか勝てるぞ!」

「何?」

「「へ?」」

ベジータの言葉にフリーザと悟飯達の視線がベジータに向けられた。

「ほっほっほ…!何を言い出すかと思えば…」

「笑っていられるのも今のうちだ…俺とこの悟林と言うガキはサイヤ人の限界を超えて更に強さを増している!それが何を意味するのか分かるか?つまり、俺達は超サイヤ人に近付いているということだ!貴様が何よりも恐れていたな!」

「ほう、このおチビさんはサイヤ人ですか。しかし誰の子か…ベジータやナッパにも似ていない…ラディッツの子でしょうか?面影がありますし…それにしても良くそんな大法螺が吹けますね…超サイヤ人などと…くっくっく………いちいち癪に障る野郎だ!!!」

超スピードでベジータに迫り、殴りかかるフリーザだが、ベジータはそれを掴み止めた。

「くっ…くくく…!」

フリーザとベジータは残りの片手を組み合い、力比べの状態となる。

「………何!?」

スカウターがベジータの戦闘力を計測し、出た数値に驚いてスカウターが爆発した瞬間。

「界王拳3倍!」

悟林が3倍界王拳を発動してフリーザを横から蹴り飛ばす。

ベジータは荒く息を吐き、悟林も表情を険しくしながらフリーザを見つめる。

体勢を立て直したフリーザは腫れた頬に触れながらニヤリと笑った。

「なるほど、超サイヤ人はともかくサイヤ人の限界を超えたと言うのは出鱈目ではないようですね。」

「(そ、そうか…ベジータも悟林ちゃんも今では限界を超えて、とんでもない実力になっている。いくらフリーザでもベジータと悟林ちゃんの2人掛かりなら…でも、フリーザのあの余裕はなんだ…?)」

クリリンがフリーザの不気味な余裕の態度に疑問を抱く。

「変身しろ、フリーザ!どうせなら今すぐ変身して正体を見せたらどうだ!」

「ほう!良くその事を知ってましたね。どうして分かったのでしょうか?」

「変身って…フリーザってサイヤ人みたいなことが出来るの?」

「宇宙人には必要に応じて姿を変える奴がいやがるんだ…俺や貴様のように特定の条件下で変身出来る種族や…カムフラージュのためや平常時に余計なエネルギーを消耗させんためにな。まあ、口を滑らせたザーボンのような下らん理由な奴もいやがるが」

「なるほど、ザーボンさんからですか…ところでおチビさん?私の変身をサイヤ人のような野蛮な変身と同一視されるのは心外ですね。私の変身はパワーが大きすぎて自分でも制御出来ないので変身を繰り返してパワーを抑えているだけです」

「繰り返して…?」

「そう、私は3回変身出来るのです。そうしないとパワーが有り余り過ぎて部下を触れただけで殺してしまいますからね」

「恐れるなハッタリだ。俺達の大猿への変身ほど大きくは変わらんはずだ」

様々な宇宙人と闘ってきたベジータは自分達サイヤ人の変身ほどの劇的な戦闘力の変化は見たことがないため、フリーザの変身も大したパワーアップではないと判断する。

「そうでしょうか?良ーく見ておきなさい。最初の変身も滅多に見られる物ではありませんよ。サイヤ人の住む惑星ベジータに攻め込んだ時に王と闘った場合も全く変身する必要もなく勝ってしまいましたからね…ベジータさん…あなたのお父さんも大したことありませんでしたね」

「お、お父さんの生まれた星を壊したのはフリーザだったんだ…!」

「ち…!そんなことでいい気になるなよ…俺は王の力などガキの頃にもう超えていたんだ…!」

次の瞬間、フリーザのジャケットがバラバラに吹っ飛んだ。

ジャケットを脱いだことで身軽になったようだが、まるで変化していない。

「何が変身だ…笑わせやがるぜ。そいつを脱いでただ身軽になるだけか?それなら残りの変身とやらも大したことなさそうだな!」

ベジータが笑いながら言うとフリーザは気合いを入れ始めた。

「ほああああ…ああ…!」

「べ、ベジータさん!あいつの気が膨れ上がって…!」

上半身から急激に巨大化し、小柄だったフリーザの体格も大柄になり、体も細身から筋骨隆々になって角も闘牛のように曲がった形状に変化していった。

「ま…まさか…こ…こ…こんなことが…」

「ば、化け物だね…」

「へ…へへ…気を付けろよ…こうなってしまったら前ほど優しくはないぞ…何しろ力が有り余ってるんだ。ちょっとやり過ぎてしまうかもしれん…くっくっく…因みに戦闘力にしたら100万以上は確実か…」

「なっ、何っ!?」

「ひゃっ、100万以上!?」

驚愕のフリーザの戦闘力の数値に精々、戦闘力数十万が限度のベジータと悟林の表情に戦慄が走る。

「ばっ!!」

片手を上げた瞬間、フリーザの足元を除いて小島が吹き飛んだ。

「しまった!デンデ!」

悟飯とクリリンは自分で避けられるだろうが、闘う力のないデンデはそうはいかない。

「くそったれ!」

吹き飛ばされていくデンデだが、ベジータが腕を掴んでデンデを助けた。

デンデの死が自分達の闘いの命運を左右するのだからベジータが慌てるのも当然だろう。

「あ、ありがとう…」

助けられたデンデは色々思うところはあるが、一応ベジータに礼を言う。

「勘違いするな…貴様に治療の能力がなければ助けるか…良いかガキ…これから俺とあいつは何度もフリーザに挑む。今は無理でも死の淵から何度も這い上がれば奴を倒せるはずだ。貴様の生死がこの闘いの勝敗を決めると思え…」

悟林はデンデの無事を確認して安堵の息を吐く。

周囲を見渡すとクリリンと悟飯はどうやら無事のようだ。

「はっはっは、流石にみんな中々の逃げ足の速さだ。尤も今のはほんの挨拶代わりだ。こんなことはサイヤ人にだって出来る」

「ふん、挨拶代わりだと?だろうな、そんな程度じゃがっかりするところだぜ…」

冷や汗を流しながらもフリーザを挑発するベジータ。

これから自分達は地獄の戦闘に足を突っ込むことになる。

しかし、勝ち目があるのなら何が何でも勝機を掴み取ってみせる。

「ほう、威勢が良いなベジータ?開き直りか?それともお前もまだ実力を隠しているのか?まあいい…地獄を見せてやるぞベジータ!!」

フリーザが超スピードでベジータに迫り、このままではデンデが巻き込まれるためにベジータがデンデを悟林に放り投げた直後にベジータの腹をフリーザの角が貫いた。

「ぐ……があ…っ!」

「ベジータさん!」

あまりの速さに悟林も反応出来なかった。

デンデを受け止めると悟林はベジータの状態に思わず叫ぶ。

「おっとすまんすまん。くっくっく…やはりどうもパワーがありすぎて自分を上手くコントロール出来なかったようだ」

「…あ…ぐっ…己…!」

ベジータはフリーザを殴り、蹴るが元々の戦闘力差に加えて瀕死の状態の力ではフリーザには蚊に刺された程度だろう。

「もう少し力を入れろ、マッサージにもならんぞ…むっ!?」

横から飛んできた気功波…魔貫光殺砲がベジータを貫いている角を折った。

ベジータはそのまま海に落ちる。

「デンデ、ベジータさんを治してあげて…」

「で、でもあいつもフリーザと同じ…!たくさんのナメック星人を殺して…」

「気持ちは分かるよ。でもこのまま私達が負ければナメック星も壊されちゃう…!お願い…!」

「………分かり…ました…」

唇を噛みながらデンデはベジータの救出に向かい、悟林はフリーザと相対する。

「貴様…よくもこのフリーザ様の角を折ってくれたな…」

「そっちだってベジータさんのお腹に穴を開けたじゃない。おあいこだよ」

フリーザの鋭い視線に体が震えそうになるが、何とか睨み返す。

「ふん、サイヤ人にも仲間意識があるのか?さて、貴様はどう料理してやろうか…」

フリーザに対して3倍界王拳を発動してフリーザに殴り掛かるが、フリーザは悟林の拳を片手で受け止めた。

「っ!!」

「もしかしてこれがパンチのつもりか?本当のパンチとはこういう物だ」

「がっ!?」

腹にフリーザの拳が入り、悶絶する悟林に手刀の横薙ぎで弾いて地面に叩き付ける。

「これ程度でダメージを受けるんじゃないぞ。お楽しみはこれからなんだからな」

「「はーーーっ!!」」

悟林の危機にクリリンと悟飯はかめはめ波と魔閃光を放つが、戦闘力がベジータと悟林より下の2人の攻撃などフリーザにとってはそよ風に過ぎない。

「そう慌てるなチビ共、あのチビの後でたっぷりと遊んでやる」

「あ…あ…!」

「もう…駄目だ…!」

あまりの実力差に悟飯もクリリンも戦意喪失してしまう。

「くっ!」

「流石サイヤ人…中々タフじゃないか。まあ、そうでなくては困る。俺の不老不死の夢を打ち砕いた代価はきっちりと払ってもらうぞ」

「これならどうだ!クリリンさん直伝の気円斬だーーーっ!」

「遅いぞ!」

悟林が連続で投擲する気円斬をフリーザは腕を組みながらかわし、距離を詰めると悟林の脇腹を蹴り飛ばす。

「あ…ぎゃ…ああ…!」

そして脇腹を押さえて苦しむ悟林を蹴り飛ばし、追撃の気弾を放つが何とか悟林は舞空術でかわす。

「逃げられると思うか?」

一瞬で悟林の真上に移動して尻尾を叩き付けると悟林は地面に叩き付けられそうになるが、何とか体勢を立て直して着地し、上を見上げるがフリーザはいない。

「っ!?いない…」

「ここだ」

悟林の背後を取り、頭に肘打ちを喰らわせた。

あまりのダメージに悟林は立ち上がれなくなる。

「ぐ…うう…」

「ここまでだな…死ね!」

「う…ぎゃあ…あああ…!」

フリーザが悟林の頭を踏み潰そうとした時である。

「おい」

「ん?」

後ろから聞こえた声に振り返った直後、顔面を殴り飛ばされて尻餅を着いた。

「「あ!?」」

悟飯とクリリンはフリーザを殴り飛ばした人物に目を見開く。

「べ、ベジータ!?」

顔を押さえながら立ち上がったフリーザが見たのはフリーザの角に貫かれたはずのベジータが無傷の状態で拳を構えていた。

「随分と隙だらけだなフリーザ様よ…」

「ば、馬鹿な…貴様は少なくとも相当な重傷だったはず…な、何故だ…!?」

フリーザの角で貫かれたのはベジータの戦闘服の穴を見れば間違いなく事実だ。

「さあな、それより鼻血が出てるぞ。みっともないぜ?」

挑発するように言うとフリーザの殺気が更に強くなる。

「……くっくっく…ベジータ…貴様は本当にいちいち癪に障る野郎だ…良いだろう、今度は二度と復活出来ぬよう粉々にしてくれるぞ!」

「ふん、貴様にそれが出来るのかフリーザ?貴様は俺達サイヤ人のことを良く知っていると思ったがな…俺達サイヤ人は死から立ち直る度に戦闘力を高めることが出来る!」

それを聞いたフリーザの表情が怒りから苦虫を噛み潰した物に変わる。

「いくら戦闘力を上げようが俺を超えることは出来ん!」

「戦闘民族サイヤ人を舐めるなフリーザーーー!!」

ベジータとフリーザが激突し、互いに乱打戦に持ち込む。

体格で劣るベジータだが、そんなもの関係ないとばかりに拳と蹴りをフリーザに叩き込んでいく。

悟飯とクリリンは悟林をデンデの元に連れていき、治療をしてもらう。

全快するとサイヤ人の特性で大幅に悟林の戦闘力が上昇する。

素の戦闘力はフリーザの上とまでは行かないが、2倍界王拳でフリーザの戦闘力を上回ることが出来るくらいの戦闘力にはなった。

悟林の作戦通り、瀕死から復活して大幅なパワーアップを遂げたベジータはフリーザを追い詰めていく。

「ぐ…ぐぐぐ…っ!!」

「ぬううううっ!!」

空中で力比べをするベジータとフリーザ。

パワーアップしたおかげでフリーザに力負けすることなく互角の比べ合いとなる。

「……ふん」

「何!?」

途中でベジータはニヤリと笑いながら力を抜き、体勢を崩したフリーザの腹に蹴りを入れて上空に吹き飛ばす。

「くたばれフリーザーーー!!」

渾身のギャリック砲がフリーザに直撃し、爆風で瓦礫が吹き飛んでいく。

煙が晴れると、そこには体に多少の火傷を負ったフリーザの姿があった。

「…っ!己、やってくれたなベジータ…!」

「チッ…想像以上のタフさだな。この俺の全力のギャリック砲を受けてその程度のダメージとは…」

確実に仕留めるために最大威力で放ったと言うのに耐えられたことにベジータは舌打ちする。

フリーザはゆっくりと下降して着地すると再びベジータに突撃し、ベジータもフリーザに突撃した。

「す、凄え…フリーザと互角以上に闘ってる…」

「こ、これなら勝てるでしょうか?」

「どうだろうね…フリーザも想像以上に強いから…今はベジータさんの方が強いけど」

離れた場所でベジータとフリーザの闘いを見守る3人。

悟林はいつでも加勢出来るようにする。

「ずあっ!」

ベジータの拳がフリーザの横っ面を弾き、よろめいたフリーザに怒濤のラッシュ攻撃を浴びせる。

そして最後の一撃で大きく吹き飛ばすとフリーザに向けて限界まで範囲を絞って貫通力に長けた気功波を放った。

「くっ!」

起き上がったフリーザは何とかそれをかわすものの、尻尾の先端が消し飛ばされてしまう。

「避けやがったか…だが、次は外さんぞ」

「…くっくっく……」

「何を笑っていやがる?追い詰められて狂ったか?」

「素晴らしい、素晴らしい進歩だぞベジータ。少し前まで戦闘力18000がやっとだった貴様が俺をここまで追い詰めるとはな。このままでは勝てんな…」

その言葉にベジータの表情が固くなる。

「見せてやろう!このフリーザ様の第2段階の変身を!あの世で地獄のサイヤ人達に誇るがいい!俺にこの変身まで引き出させるのは貴様が最初で最後だろうからな!!かあああ…!!」

気合いを入れるとフリーザの背に突起が飛び出した。

「くそったれ!」

変身などさせないと言わんばかりにフリーザに気弾を放つが、バリアーで無効化される。

煙が晴れるとフリーザの変身が終わっており、肩、そして頭に生えていた角などがこれまでと明らかに異なる形になっており、頭部が後ろに長く伸びている。

「ふう、残念でしたねベジータ。さあて、第2回戦と行きましょうか」

「化け物め…!」

最初の形態からの変身に比べれば肉体の変化はそれほどでもない。

しかし、潜在パワーが先程とは別物レベルだ。

「さあて、あなたの死期が近付いて来ましたよベジータ。何故なら今の私はパワーとスピードも少々上がっていますので」

一瞬でベジータとの間合いを詰めるフリーザ。

即座に上空に逃げるが、フリーザもそれを追い掛ける。

「くそったれ!パワーが貴様ならスピードは俺の方が上だ!」

ベジータは超スピードで移動するが、途中で急制動をかける。

「おやおや、急に止まってどうしましたベジータ?」

「ば、馬鹿な…!俺のスピードに…!」

「どうやらパワーだけでなくスピードも私の方が上みたいですね…ひゃあ!!」

奇声と共に指先から発射された気弾がベジータの脚に直撃する。

「ぐっ!?お、俺が…見切れないだと…!?」

「ひゃあ!!」

「チッ!!」

2発目の気弾はかわせたものの、フリーザは手数を増やしてベジータに気弾を浴びせる。

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ…!!!」

「ぐああああ…!!」

防御体勢を取ることでダメージを最低限に抑えるものの、これでは嬲り殺しである。

「ま、まずい!」

悟林は即座にベジータに加勢しようとするが、見覚えのある気功波がフリーザに迫る。

「むっ!?」

咄嗟に身を捻ってかわすフリーザだが、完全に避けられなかったのか頬に傷が付いていた。

「「ピッコロさん!」」

復活したピッコロがフリーザに魔貫光殺砲を放ったのだ。

「おやおや、誰かと思えばまだナメック星人が生き残っていたのですね。今までのナメック星人と比べて中々お強そうで…」

「化け物め…」

完全に不意を突いた一撃であったにも関わらずにかわされてしまった。

しかもフリーザにはまだまだ余力があるように見える。

ピッコロが化け物と思うのも無理はない。

「き、貴様は地球にいたナメック星人か…!ドラゴンボールで何を願ったのかと思えば貴様のようなカスを生き返らせやがって…」

「死にかけの貴様よりはマシだ。」

「2人共、喧嘩してる場合じゃないでしょ!」

悟林がベジータとピッコロの間に入ってフリーザを睨み付ける。

「あなたも復活しましたね…一体どのような魔法を使っているのでしょうか?」

「さあね、今度は私が相手だよ。復活した私のフルパワーを見せてやる」

パワーアップした状態で3倍界王拳を発動する悟林。

「ほう、戦闘力は分かりませんが、このプレッシャー…相当なパワーアップですね…それがあなたの限界のようですが」

気付かれてることに表情が歪むが、場合によっては限界を超えた4倍の使用も視野に入れて構えた。

「ピッコロさん、力を貸してくれるよね?」

「チッ、ここに来てやることがお前の援護か…強くなったな悟林。それにあいつも…俺は嬉しいぜ」

足手纏いを自覚しているのかクリリンと共に離れている悟飯を見るとピッコロは笑った。

悟林には遠く及ばないが、悟飯もまた地球にいた頃より遥かに強くなっており、弟子の成長を喜ぶ。

「行くぞーーー!!」

「きええええっ!!」

悟林とフリーザの拳が激突し、周囲を揺るがす。

3倍界王拳を駆使したことで悟林の戦闘力はフリーザの上を行っているが、基本の戦闘力はフリーザの方が遥かに上だ。

界王拳なしでは悟林の戦闘力は未だにフリーザの第2形態にも敵わない。

おまけに体格もフリーザに大きく劣っており、2人は互角の戦闘を繰り広げるが、界王拳の使用によって悟林の体力の消費が激しいので持久戦に持ち込まれれば悟林の敗北はほぼ確定する。

「喰らえ化け物め!爆力魔波!!」

しかし、ここで頼りになるのがピッコロのサポートである。

ピッコロが的確なタイミングで気功波と気弾をフリーザに放ってくれるおかげで悟林はその隙を突いて攻撃を喰らわせることが出来る。

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ…!!」

肉弾戦は不利と悟ったフリーザは距離を取るとベジータに放った気弾の超連射を繰り出す。

悟林は界王拳の恩恵もあって難なくかわすが、戦闘力がフリーザに大きく劣るピッコロはそうはいかない。

「ぐっ!」

「ピッコロさん!」

悟林はピッコロの前に立つと気弾を弾く。

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

気弾の弾幕が更に激しさを増す。

「だだだだだだ…!」

全て弾いていくが、このままではジリ貧だ。

悟林の額に大粒の汗が浮かんでいる。

しかしピッコロとてこのまま守られっぱなしではない。

「悟林!もう少し耐えろ!」

ピッコロが額に指を当てて気を集中している。

その意味を理解した悟林は界王拳を維持しながら気弾を弾いた。

「そろそろ限界ですかね。それではフィニッシュです!」

界王拳が切れかかっている悟林に指先に全ての気を収束させた気功波を放った。

「死ぬのは貴様だ…魔貫光殺砲!!」

最大まで気を溜めたピッコロの魔貫光殺砲がフリーザの気功波を打ち砕いてフリーザに迫る。

「くっ!」

流石のフリーザもまともに喰らってはアウトなのか、慌てて回避する。

「かーめーはーめー…」

「っ!」

「波ーーー!!!」

悟林はフリーザの真上を取り、3倍界王拳状態でのかめはめ波を放つが、フリーザはそれを受け止めた。

「ぐぐぐぐ…!」

「ぐっ…ぐおおおお…!!」

「良いぞ!そのまま押し切れ!!」

後少しで押し切れるのだが、体力が消耗しているせいで押し切れない。

少しずつフリーザにかめはめ波を押し返されていく。

「ぐぎぎぎ…」

「ぐううう…!4倍だあーーーっ!!」

限界突破の4倍界王拳で一気にかめはめ波の威力を跳ね上げた。

「なっ!?ぐああああっ!!」

フリーザの悲鳴が響き渡り、フリーザの体はかめはめ波に飲み込まれたのであった。 
 

 
後書き
一応ベジータは原作よりも瀕死体験が多いので原作よりは強くなっている。

原作フリーザ編の悟空くらいの強さ 

 

第14話

 
前書き
いや、フリーザ様書いてて楽しい 

 
フリーザがかめはめ波の直撃を受けたことに安堵した悟林は一息吐いた。

次の瞬間、全身に身を切られるような激痛が走った。

「う…あ…っ!?ああああああっ!!!」

体の内側から壊れていくような感覚に絶叫を上げながら悟林は海に落下していく。

「悟林ーーーっ!!」

即座にピッコロが悟林を救出する。

「あ、ありがとう…ピッコロさん…」

「気にするな、全く大した奴だぜ…」

「ううん…あいつはまだ死んでないと思う…」

「ああ、奴の気の消え方が不自然過ぎる。恐らく気を消したな」

探してとどめを刺しに行きたいが、気を消されては探しようがない。

「私達の闘い方を見て気の消し方が分かったのかも…痛た…ピッコロさん、私をデンデの所に…」

「分かった」

ピッコロは岩陰に隠れているデンデの元に悟林を連れていった。

「悟林さん!」

「デンデ…治してくれるかな…界王拳で無理したから体が凄くきつくて…」

「はい!」

デンデが触れると悟林の傷は癒されて全快となる。

すると悟林の気が大幅に増大し、先程の3倍界王拳時よりも少し上の力にまで上昇した。

近くに同じく全快したベジータがおり、悟林同様2回目の復活もあって倍くらいにまでパワーアップしている。

デンデがピッコロの怪我も治すとピッコロは信じられないように自分の怪我をしていた頬などに触れた。

「お、俺にもこんな力があるのか…?」

「いえ、あなたは戦闘タイプですから…」

ピッコロの疑問にデンデが答えるとクリリンが悟林に尋ねてきた。

「悟林ちゃん、凄えかめはめ波だったな!あれならフリーザも…」

「まだ死んでないよフリーザは…」

「あの程度でフリーザは死なん」

悟林とベジータの答えにクリリンと悟飯の表情が凍り付く。

「多分最後の変身をするつもりなんだと思う」

「俺達との闘いで戦闘力のコントロールを上達させやがったようだな。フリーザの戦闘力が感じられん(今の俺ならば確実に今のフリーザは倒せるが、変身されたら勝てるか分からん。伝説の超サイヤ人に俺かこいつのどちらかがなれれば…)」

戦闘力は大きく上がったが、今の自分は一瞬だけ見た4倍界王拳の悟林の戦闘力より僅かに下だ。

これでは超サイヤ人になった実感がない。

一番の理想は自分が超サイヤ人になることだが、死んでしまっては意味がないので悟林の超サイヤ人化にも期待しなければならない。

「ねえ、ベジータさん。超サイヤ人って何なの?」

今まで疑問に思っていた悟林はベジータに超サイヤ人とは何なのかと尋ねる。

「超サイヤ人は一千年に1人現れる伝説の戦士だ。どんな天才でも超えられない壁を超えてしまうサイヤ人…それになれさえすれば今の戦闘力とは比べ物にならない力を手に入れられるはずだ。俺が超サイヤ人になれさえすれば…最後の変身をしたフリーザさえも確実に…」

言い切る前にここからかなり離れた小島で大爆発が起きた。

そこに誰もが振り返ると、フリーザらしき者が佇んでいた。

「とうとう最後の変身をしやがったか…」

「あ、あれがフリーザなのか?小さくなってさっぱりしちまって迫力が…」

「…が…外見だけで実力を判断するなと言う良い見本だ…さっきの姿の方がずっと可愛かったぜ…」

ベジータが冷や汗を流し、クリリンがフリーザの正体に唖然となり、ピッコロはフリーザの強大な戦闘力に表情を険しくする。

「ま、参ったなあ…か、勝てないかも…」

引き攣り笑いを浮かべる悟林。

フリーザは無言でこちらに指を向けた次の瞬間、デンデが爆発に飲まれた。

突然のことにベジータも悟林も対応出来なかった。

振り返るとデンデが殺されていた。

恐らく気弾を撃ったのだろう。

「デンデーーーっ!!」

「デンデが殺された…!」

悟飯がデンデの死に絶叫し、悟林もデンデの死に動揺した。

「これでもう俺達のパワーアップは望めんと言うことか…!」

「く、くそ……隠れながら俺達があいつのおかげで復活したのを見てやがったんだな!!」

ベジータも最悪とも言える状況に表情を険しくし、ピッコロは歯軋りしながらデンデの死体を見る。

次の瞬間、フリーザが目の前に現れた。

「さて、君達に僕から取って置きのプレゼントをしてあげよう。地獄以上の恐怖をね」

「クリリンさん!ピッコロさん!悟飯をお願い!」

「お姉ちゃん、僕も闘う!デンデの仇を…」

「邪魔だと言うのが分からんのか!最早この闘いは超サイヤ人に近付いているサイヤ人にしか踏み込めん領域だ!雑魚共は引っ込んでいろ!!」

悟飯はデンデの仇を討とうと闘おうとするが、ベジータに一蹴される。

最早戦場はパワーアップしたピッコロでさえ雑魚呼ばわりされる未知の領域である。

「逃がすと思うかい?」

フリーザが3人に向けて気弾を放つが、悟林とベジータがそれらを弾く。

「ま、また見えなかった…!」

「ベジータと悟林には見えていた…こいつらの実力がそれだけアップしているのか…」

クリリンとピッコロが2人が弾いた気弾の着弾点を見ながら呟いた。

言い方はあれだが、ベジータの主張は間違っていない。

フリーザの攻撃が見えない上に一撃でやられそうな味方がいては戦闘に集中出来ない。

「……界王拳!」

「…ふん、カカロットの出番はないぜ…!」

悟林は2倍の界王拳を発動し、ベジータはもう後がないことを理解しながらも己を鼓舞するように言うと、2人は構えた。

「…さあ、始めようか…キッ!!」

フリーザの目が見開かれた瞬間、2人は視線から離脱した。

2人のいた場所に小規模の爆発が起きた。

「見えているぞ!だだだだ!!」

「魔閃光ーーーっ!!」

ベジータはフリーザに向けて気弾を連射し、悟林も魔閃光を放ってフリーザを攻撃するが、姿が消える。

「そこだっ!」

「逃がさないんだから!」

フリーザのスピードに反応してベジータと悟林もフリーザに突っ込む。

流石に自分のスピードに対応されたのが予想外だったのか、フリーザの目が多少見開かれた。

「なるほど、このスピードではちょっと遅いか…ならもう少し本気を出そうかな?」

ベジータと悟林の拳と蹴りをかわしながらフリーザは笑みを深めると距離を取った。

2人が気功波を放とうとした時、フリーザの姿が掻き消えた。

「「!!」」

悪寒を感じた2人は顔を横に逸らすと、フリーザの肘が頬に掠る。

「ほう!良くかわしたね、ギリギリとは言え大したものだよ。」

「くっ…!」

「あんまり調子に乗らないでよ…!」

冷や汗を流しながらフリーザを睨む2人だが、フリーザは余裕の笑みを浮かべるだけだ。

「ふっふっふ…どうやらベジータはそれまでのようだけど、君もそろそろ本気を出した方が良いよ。まだ全力を出してないんじゃないか?」

「………」

まだ3倍の界王拳を使っていないことに気付かれていることに悟林は表情を歪めた。

「先程見せた君の限界を超えたパワーアップとベジータのサポートを考えに入れても僕の計算では…」

「「………」」

フリーザは悟林の4倍界王拳とベジータのサポート込みでの計算を行い、そして答えを導き出すと、人差し指を立てた。

「約10%」

「え!?」

「なっ!?」

「僕がマックスパワーの1割の力を出せば君達を宇宙の塵にすることが出来るんだよ」

「冗談きついよ…流石にそれは笑えないなあ…」

「残念だったね、僕は下らない冗談は嫌いなんだ。それじゃあ、軽くまず5%から行ってみようか」

次の瞬間、ベジータにフリーザの頭突きが炸裂した。

「ぐがあっ!?」

「ふんっ!!」

吹き飛ばされるベジータにフリーザが一瞬で真上に移動し、尻尾による一撃で地面に叩き付けた。

「ベジータさん!」

「あ…ぐう…う…!」

「ベジータ、君がこれくらいで参っちゃ困るよ。もっと堪能してもらわないとね…地獄以上の恐怖を…さて、ベジータが立てるまで回復するまで今度は君と遊んであげよう。お待ちかね10%だ。」

「はあああっ!!」

界王拳を3倍を発動してフリーザに特攻する。

フリーザは笑みを深めて悟林の攻撃を全て足だけで捌いて見せた。

「どうしたんだい?僕は両腕を使ってないのにそれでは拍子抜けだよ。」

「気円斬ーーーっ!!」

悟林は指を額に当てながら3倍界王拳での気円斬を繰り出す。

流石のフリーザもこれを受ければただでは済まないだろう。

「はっ!」

目を見開き、念力で気円斬を止めるフリーザ。

「そ、そんな…」

「これは返すよ」

そのまま悟林に返し、慌てて悟林はかわした。

「くっ!くそおっ!な、ならこれならどうだ!」

気円斬がかわされた時の保険として予め気を溜めていた指先をフリーザに向けた。

「魔貫光殺砲ーーーっ!!」

最大まで気を溜めた魔貫光殺砲がフリーザに迫る。

「きえええっ!!」

次の瞬間、フリーザの顔つきが変わり、気も数倍に膨れ上がって魔貫光殺砲を容易く蹴り飛ばした。

「あ…ああ…!」

格上に対して心強い技であった気円斬と魔貫光殺砲がまるで通用しないこと、そして一瞬見たフリーザの圧倒的な気に悟林は戦意を失ってしまった。

再び10%のパワーに戻ったフリーザは悟林との距離を詰めて強烈な肘打ちを喰らわせ、そして組んだ拳を悟林に叩き付けてベジータと同様に地面に叩き付けた。

「ゴ…ゴホッ…う……」

「ふふ、もうダウンか。少しやり過ぎたかな?僕としたことが少し大人げなかった。」

「く、くそお…っ!」

ふらつきながら立ち上がるベジータにフリーザは笑みを浮かべた。

「そうそう、そうこなくちゃ…でもその前に…このチビにとどめを刺そうか…」

フリーザの手のひらの気弾。

それは界王拳を発動していない悟林を消し飛ばすには充分過ぎる威力だった。

「お姉ちゃーんっ!」

見ていられずに悟飯が飛び出すが、フリーザの軽く振るった尻尾に触れただけで吹き飛ばされてしまう。

「「悟飯っ!」」

「…あ…う……」

吹き飛ばされた悟飯にピッコロとクリリンが叫び、フリーザの気弾が発射された瞬間、山吹色の何かが通り過ぎて悟林を救った。

「っ!カカロット!!」

ベジータがその正体に気付き、声を上げた。

悟林を抱き上げているのはメディカルマシーンでの治療を終えた悟空だったのだ。

治療を終えてフルパワーとなった悟空は、悟林をピッコロに預けた。

「君は誰だ?」

「カカロット…やっと来やがったか…!」

あの一瞬で悟林を救出した悟空に警戒するフリーザだが、ベジータの言葉に振り返る。

「カカロット…!?その名前は…サイヤ人か!だが、こいつの顔はどこかで…はっ(あいつだ!惑星ベジータを滅ぼした時に最後まで抵抗をしたあのサイヤ人にそっくりなんだ…!)」

その最後まで抗ったサイヤ人が悟空の父であり、悟林と悟飯の祖父であることなど知る由もない。

「ピッコロ、悟林のことを頼むぞ…不思議なでかい気の正体はピッコロだったのか。ドラゴンボールでやって来れたんだな。遅くなってすまなかった。おかげでダメージも回復出来た。後はオラが何とかする」

「ご…悟空…ほ…本当に悟空か?い…今までのお前の気とは感じが違う…」

ベジータや悟林も今までとは質が異なった気を発していたが、悟空はそれ以上だった。

悟空はフリーザと向かい合うと口を開いた。

「貴様がフリーザか…思ってたよりずっとガキっぽいな…」

「(さ…さっきまでのカカロットじゃない…やはりあいつも超えやがったか…サイヤ人の限界の壁を…こいつも近付いてやがるのか…超サイヤ人に…!)」

ベジータはサイヤ人の勘が働いたのか、悟空も自分達と同じ…それ以上のステージにいることを察した。

「サイヤ人は1匹たりとも生かしてはおかないよ…馬鹿だね、大人しく震えてりゃ良かったのに…」

「かもな…」

挑発らしき言葉にも全く動じない。

突然にフリーザが悟空に向かって尻尾による攻撃を仕掛けた。

しかし、それ以上に素早い動きでフリーザのそれが当たる前に悟空が蹴り返した。

頬に一撃が入り、一回転して何事もなかったように立ち、フリーザはニヤリと笑いながら指を向けた。

「やばいっ!避けろ悟空ーーーっ!!」

射線上から悟飯を抱えて逃げるクリリン。

しかし悟空は片手で全て弾いてみせた。

「まさか…全部弾き飛ばした…片手だけで…」

「く、くそったれ…まさか最下級戦士が…ここまで…」

今の一撃はベジータでは防げなかった。

自分には出来なかったことを悟空は容易くやってのけたことにベジータは表情を歪めた。

「貴様ら、この場から離れるんだ!俺達は邪魔だっ!!」

ピッコロが悟林を、クリリンが悟飯を抱き上げながら、ベジータは複雑な表情で離脱した。

始まった悟空とフリーザの闘いは凄まじく、ダメージから復帰した悟林とベジータでさえついていけないほどにハイレベルなものだった。

どちらも本気ではなく準備運動みたいな物なのだろう。

悟空がフリーザの蹴りを受けて海に沈んだが、少しの間を置いて繰気弾のように操作するかめはめ波が海から飛び出してきた。

「あれは…宇宙船の修行で」

威力は通常のかめはめ波に劣るものの、操作出来るために相手の動きを限定することが出来る。

2発目の後に悟空は海を飛び出してフリーザの背後を取って蹴りを浴びせて地面に叩き付けた。

「奴の注意を逸らし、超スピードで奴の背後を取ったか」

口で説明すると簡単だが、悟空以外では説明しているベジータを含めて誰にも出来ない。

後はフリーザが気の感知が出来ないと言うのも大きな理由だろう。

次はフリーザが超能力を駆使して岩を飛ばしていく。

悟空は岩をかわしていくが、フリーザは先程の意趣返しとばかりに悟空の背後を取って金縛りをかけると、小島に向かって飛ばされて大爆発が起きる。

悟林もベジータは顔を腕で庇いながら爆心地を見遣り、ピッコロ達も吹き飛ばされそうになるが、何とか耐えていた。

「お父さんは…」

「あれくらいで死なん…ナメック星人共の後ろだ。」

「え?」

ピッコロ達の方を見ると確かに悟空がいた。

「ふうっ…ちょっとやばかったよなあ!今の攻撃には気を付けねえとな…」

「お父さん、ひょっとして…」 

「爆発の瞬間から超スピードで抜け出したんだ…全く頭に来やがるぜ…最下級戦士に超エリートの俺が抜かされるなど…」

ベジータの胸中は複雑だろう。

最下級、落ちこぼれと蔑んでいた存在が自分よりも上のステージに立っているのだから。

闘いの舞台は地上に移り、悟空が猛攻を仕掛け、フリーザは何故か足だけで闘っていたがほぼ互角だ。

しかし形振り構わない悟空の攻めにフリーザは耐えかねたのか遂に腕を使った。

そこから再び睨み合う両者。

「ベジータさん、お父さん勝てるかな?」

「知るか…頭に来るが奴らの戦闘力は俺達のレベルを遥かに超えている。ここでカカロットが勝てなければ俺達は死ぬだけだ」

そして沈黙が破れ、悟空はフリーザの一撃を受けて吹き飛ばされた。

悟空も戦闘力を10倍にする10倍界王拳を引き出して闘うものの、10倍化したパワーもスピードもフリーザには通用しなかった。

徐々にフリーザはパワーを上げていき、悟空は防戦一方となっていく。

「貴様がやられたら俺達に後はない…!何とかしやがれカカロット…!」

ベジータの表情にも焦りが見え始め、フリーザは次の瞬間大地を斬り裂いた。

「な、何て技なの…」

あまりの威力に悟林やベジータも、少し離れた場所で闘いを見ていたピッコロ達も驚いている。

悟空は着地すると赤いオーラを纏い、10倍状態の倍である20倍界王拳を発動し、急激な戦闘力の上昇にフリーザは対応出来ずに吹き飛ばされる。

悟空の追撃をかわしたフリーザに渾身のかめはめ波が放たれたが、フリーザはそれを片手で防いでしまった。

限界を超えた界王拳の反動によって悟空の気が大幅に減ってしまう。

「に、20倍の界王拳でも駄目なんて…」

「…くそったれ……俺達の考えは相当に甘かったらしいな…」

何度も瀕死から復活すれば勝てると思っていたが、フリーザの強さは多少のパワーアップでどうにか出来るものではなかったのだ。

最早悟空は抵抗らしい抵抗も出来ずに攻撃を受け続けるだけだ。

「私…!」

もう我慢出来ずに飛び出そうとする悟林にベジータは何かに気付いたのか声を上げた。

「待て!何だあれは?」

「え?」

改めて悟空の方を見ると両腕を上げていた。

そして少しずつ周囲の気が悟空の真上に集まっていく。

「カカロットの奴は何をするつもりだ…?」

「元気玉だよ。」

「元気玉?」

「えーっと、元気玉は人間や動物や植物…自然にある全てのエネルギーを貰って攻撃するの…ベジータさんが喰らったあの青い玉だよ」

それを聞いたベジータの表情に苦いものが混じる。

「チッ…嫌なことを思い出させるぜ…カカロットめ…サイヤ人に相応しくない技を…」

「効くか分からないけどね…ナメック星人さん達が生きていれば…」

この星はフリーザにたくさん傷つけられているし、生き物の数だってそう多くなさそうだ。

だからといって、界王拳が通じないのでは元気玉ぐらいしか勝てそうな見込みがないのも確かで。

次の瞬間、大気が震えた。

辺りを見回して真上を見ると大きなエネルギー弾が出来ていた。

「あの時とはサイズが違うな…」

実物を見たベジータは当時の元気玉と今の元気玉の違いに驚く。

「多分お父さんは他の星からも元気を分けてもらってるんだ。もっと大きくして強くしないとフリーザを倒せないから…」

フリーザの底無しの強さを心身に刻まれた悟林は悟空の考えを理解する。

「カカロットめ…いつまでもたついてやがる…早く完成させやがれ…!」

次の瞬間、フリーザに悟空が蹴り飛ばされ、悟空は何とか立ち上がるものの、フリーザの気合砲で吹き飛ばされて海に落ちる。

そしてフリーザが海に近付き、何かに気付いたようだ。

「気付かれた…!」

「チッ!」

ベジータは一瞬焦るが、すぐに覚悟を決めた表情をしてフリーザに突撃し、悟空にとどめを刺そうとしているフリーザを蹴り飛ばし、それを追い掛けた悟林が魔閃光をフリーザに直撃させ、海に落下させた。

「お、おめえ達…」

「お父さん、大丈夫!?」

「あ、ああ…ベジータ…ま、まさかおめえに助けられるなんてな…」

「ふん、我慢するんだな。俺だって貴様を助けるなど反吐が出そうだぜ」

「ふ、2人共!喧嘩してないで!お父さんは早く元気玉を!」

「ああ!すまねえ!」

悟空は元気玉の元気集めを再開し、ピッコロもこちらに現れた。

「ピッコロさん!」

「遅くなったな…」

「ふん、ナメック星人の雑魚が何しに来やがった?せっかく生き返ったのにわざわざ死にに来たか?」

「言ってくれるぜ…貴様らだけでは時間稼ぎも出来そうにないから来てやったのによ」

「だから喧嘩しないで!来るよ!」

フリーザは海から飛び出して地面に着地すると悟林達を睨んだ。

「やれやれ、慌てなくてもそいつを始末したら君達も始末してあげたのに……そんなに死に急ぎたいか!良いだろう、それならお望み通りにしてやる!!」

「サイヤ人を舐めるなフリーザーーーっ!!」

「「はーーーっ!!」」

こちらに突撃してくるフリーザに3人が気功波を放った。

気功波が直撃したにも関わらずフリーザにはダメージはない。

一瞬驚愕するが、すぐに3人もフリーザに突撃する。

「はあああ!!」

「でやあああ!!」

「ちぇりゃああ!!」

「邪魔だ!」

3人がフリーザにラッシュを仕掛けるが、戦闘力が大きく劣る3人の攻撃を捌いて気合で吹き飛ばすと悟林をまず尻尾で弾き、ベジータの腹に拳を叩き込み、ピッコロを蹴り飛ばす。

「あ…うう…!」

腫れた頬と痛みに耐えながら立ち上がろうとした時、フリーザが悟林の胸倉を掴んで持ち上げる。

「どれだけ小細工を使おうが貴様らが俺に勝つことなど無理なんだ!!」

「うぐぐぐ…無理だって分かっててもやらなきゃなんない時だってあるんだーーーっ!!」

顔を真っ赤にするほどに力を入れてフリーザの手を引き剥がそうとする。

「滅びろサイヤ人!!」

片手に気弾を作り出し、悟林を消し飛ばそうとするフリーザ。

「滅びるものか…!」

「っ!ベジータ!」

膝を着きながらもフリーザの腕を掴むベジータ。

「戦闘民族サイヤ人は不滅だ!!サイヤ人に不可能など…」

「ぬおっ!?」

「あるものかーーーっ!!」

フリーザを投げ飛ばし、渾身のギャリック砲を直撃させる。

「はあっ!!」

そこに駄目押しとばかりにピッコロか気弾を連射する。

煙を腕の一振りで吹き飛ばすと怒りに染まった表情で4人を見下ろした。

「カカロット!元気玉とやらはまだ完成せんのか!?」

「いや、まだ足りねえ…もう少し…もう少しだけ耐えてくれ!」

言っている悟空自身理解しているだろう。

フリーザ相手にその“もう少し”がどれだけ苦行なのかを。

「ピッコロさん、フリーザの奴…怒ってるね」

「ああ、完全にキレてやがる…」

次の瞬間、2発の気功波がフリーザに直撃し、ピッコロ達の視線が気功波が飛んできた方角を見遣ると、クリリンと悟飯が構えていた。

「あいつら…残り少ねえ気で無理しやがって…」

「もうここまでだ!この星諸とも、貴様らをゴミにしてやるーーーっ!!」

星を壊そうと気を指先に集めたフリーザ。

同時に悟空の元気玉が出来上がる。

「よし!出来たぞ!」

「お父さん!」

「「やれーーーっ!!」」

悟空の両腕が、下に向かって大きく振り下ろされた。

元気玉は悟空の腕の動きに従うようにフリーザに迫り、そして押し潰した。 
 

 
後書き
ゼノバースやゲームのおかげで本当にネタに困らないわ 

 

第15話

 
前書き
この作品の悟空は悟林と濃い修行期間を過ごしたので父親としての情もそれなりに育まれています。 

 
元気玉の破壊力は想像絶するもので、悟空達は海に落ちたものの何とか生き延びていていた。

悟飯とクリリン達も合流したが、悟林とベジータの姿が見えない。

「ま、まさか…お姉ちゃん…元気玉の爆発に巻き込まれて」

「いや、きっと生きてるさ…お前の姉ちゃんは強いんだ。そうだろ?」

「………」

不安そうに周囲を見渡す悟飯の前に1つの大きな水飛沫が上がる。

「ベジータ…それに悟林!」

ベジータの手は悟林の腕を掴んでおり、ベジータは深呼吸すると悟林を地面に手放した。

「ごほっ!ごほっ!」

悟林は思い切り水を飲んでしまい、気管に入った水分に痛みを感じて咳き込む。

「お姉ちゃん!」

「ベジータ、ありがとよ」

悟飯が咳き込む悟林の背を擦り、娘を助けてくれたベジータに悟空は礼を言う。

「あ、ありがとう…お姉ちゃんを助けてくれて…」

「ふん」

悟飯も礼を言うが、その礼にベジータは素っ気ない態度を取る。

「さあ、帰るか。オラの乗ってきた宇宙船なら5日で地球に帰れるぜ…ベジータ、おめえはどうすんだ?」

「ふん、俺には自分が乗ってきた宇宙船がある。貴様らと一緒にいるなど虫酸が走るぜ…フリーザも死んだことだ。近くの星を襲い、装備を整える…いずれ地球に行き、貴様らを木っ端微塵にしてやる…楽しみにしていろ」

ここにいる全員が疲弊しており、流石の純粋なサイヤ人も闘いたいとは思わないようだ。

「あっ!」

「な、何だ!?クリリン」

突然声を上げたクリリンに全員の視線が集中する。

「すっかり忘れてた!ブ、ブルマさんのこと…!」

「驚かすなよ…またフリーザが出てきたかと思ったじゃねえか」

「あ…ある意味じゃブルマさん、フリーザより怖いよ…」

「それブルマさんに言っちゃおうかなあ…」

「いいっ!?止めてくれよ悟林ちゃん!そんなことされたら俺がブルマさんに殺されちゃうよ!」

「はっはははは…わ、笑わすなよ。か…体中が痛えんだから!」

ベジータを除いてクリリンの言葉に笑った。

ダメージの大きい悟空など、笑うだけで体が悲鳴を上げるが、やはり笑ってしまうものは笑ってしまう。

ピッコロは空を見上げながら呟いた。

「ナメック星も酷い事になってしまった……。だが、これで最長老様や、死んで行った皆も安らかに眠ることが出来るだろうな…」

「…?何でお前が最長老さんの事を知ってんだ?……」

ピタリと言葉が止まる。

「クリリンさん、どうしたの?」

どうかしたかと悟林が顔を見ると、クリリンの表情は完全に固まって青ざめていた。

「そ、そんな……そんな…フリーザだーーーー!!」

「何!?」

クリリンの言葉にベジータが振り返った瞬間、ベジータの心臓をフリーザの気弾が貫いた。

「が…がはっ…!」

後方に吹き飛ばされながらベジータは仰向けに倒れた。

「ベジータさん!?」

悟林がベジータに駆け寄り、悟空はフリーザを見遣る。

「さ…流石の俺も死ぬかと思った…このフリーザ様が死にかけたんだぞ…」

「逃げろおめえ達!オラが最初にやって来た所のすぐ近くに宇宙船がある!ブルマを連れてこの星を離れろ!」

「で、でもお父さんは…?」

「さ…さっさと行け!邪魔だ!みんな揃って死にてえのか!!悟林、おめえが生き残って、いつかフリーザを…」

自分を犠牲にする覚悟を決めた悟空は最後の望みとなる娘に生き残って修行し、いつか地球に来るであろうフリーザを倒せるくらいに強くなることを願いながら逃がそうとする。

「貴様らを許すと思うか?1匹残らず生かしては返さんぞ…」

「…!悟飯!クリリンさん!」

フリーザの憤怒の表情に恐怖を覚えた悟林は2人の腕を掴んで離脱しようとする。

「ベジータの次は貴様だ!」

悟林の背に向けて気弾を放つフリーザ。

それに気付いた悟林は横に移動してかわすが、フリーザはニヤリと笑うと気弾の軌道が変わり、そのまま悟林の心臓を貫いた。

「あ……」

心臓を貫かれて落下していく悟林。

一瞬それを見て頭が真っ白になった悟空だが、我に返ると海に落ちる前に悟林を受け止める。

悟空の上で状況が理解出来ずに目を見開いているクリリンと悟飯。

悟林の目は固く閉ざされており、息をしていない。

悟空の手が娘の血で赤く染まっていく。

「悟林…」

どんどん冷たくなっていく娘の体に悟空の体が震えていく。

「くっくっく…お次は…もう1人のガキの方かな?今度は木っ端微塵にしてやろう」

その言葉に悟空の怒りが頂点に達した。

「ゆ…ゆ…許さんぞ、よくも……よくも……っ!!うおああああーーーっ!!!」

金色のオーラ。

黒髪は逆立った金髪に、瞳の色は碧へと変化した。

「カ…カカロット…!?」

心臓を貫かれてもまだ生きていたベジータは悟空の変化に驚くのと同時に即座に悟空の状態を理解した。

とうとう悟空は超サイヤ人になったのだと。

「な…何…!?」

「「ご、悟空…!?」」

「お…お…お父…さん…!?」

あまりのことに状況の理解が出来ないフリーザを含めた者達。

悟空はピッコロに悟林を押し付けるとフリーザを睨んだ。

「なっ、何だあいつの変化は…!サイヤ人は大猿にしか変わらんはず…どういうことだ…!?」

「は、はっはっは…わ、分からんのかフリーザ…こ、こいつが…貴様が最も恐れていた超サイヤ人だ…!」

「超サイヤ人…!?」

「そ…そうだ!あ…あの伝説の全宇宙最強の戦士…超サイヤ人だ…ふ…ふっふっふ…皮肉だな…フリーザ…!貴様が最も恐れていた存在を…貴様自身が呼び起こしたんだ…ざ…ざまあみやがれ…!」

次の瞬間、フリーザはベジータに再び気弾を放つが、悟空に容易く弾かれた。

「な、何だと!?」

驚くフリーザに悟空の気合砲が炸裂し、フリーザは吹き飛ばされて海に叩き付けられた。

それを見たベジータは今の悟空ならば勝てると確信して、悟空に語りかけた。

「カ…カカロット…良く聞け…お…俺や貴様の生まれた星…惑星ベジータがき…消えてなくなったのは…きょ…巨大隕石の衝突のせいなんかじゃ…な…な…なかったんだ…」

「それ以上喋るな…死を早めるだけだぞ…!」

悟空が止めようとするが、ベジータは止めようとしない。

「フ…フリーザが攻撃しやがったんだ…!お…俺達サイヤ人は、あ…あいつの手となり足となり、命令通りに働いたってのに…」

「………」

「お…俺達以外は全員殺された…貴様の両親も、俺の親である王も…フリーザは…ち…力を付け始めたサ…サイヤ人の中から超サイヤ人が生まれるのをお…恐れていたからだ…た…頼む…フリーザを…フリーザを倒してくれ…た…のむ。そ…その…超サイヤ人の…力…で…」

そう言い遺してベジータは息を引き取った。

閉じられた目から、生きているかのように涙が溢れて落ちる。

その姿を複雑そうに悟空は見つめた。

「ベジータ…お前が泣くなんて…お前が俺に頼むなんて…よっぽど悔しかったんだろうな…分かってる…サイヤ人の仲間が殺されたのが悔しいんじゃねえんだろ?あの屑野郎にいいようにされちまったのが悔しくて仕方がなかったんだろ…?お前のことは大嫌いだったけど、サイヤ人の誇りは持っていた。俺にも分けて貰うぞ。お前の誇りと怒りを…クリリン…ベジータを頼む…ここにいたら死体が滅茶苦茶になってしまうからな…」

ベジータの死体をクリリンに任せると悟空は背を向けた。

「あ…ああ…」

「お前達は早く俺の乗ってきた宇宙船で地球に帰れ。フリーザは俺が倒す」

「い、嫌だ!僕も残って闘う!闘って、お姉ちゃんの仇を取るんだ!」

「さっさと行け!邪魔だ!死にたくなかったらさっさと帰るんだ!」

悟林を殺したフリーザを許せない悟飯は、残って戦おうとするが、超サイヤ人となったことで性格が荒くなっている悟空の怒声に悟飯は身を強張らせる。

「悟空…死ぬなよ…?お前が死んだらチチさんもみんな、悲しむんだからな!?」

「ああ」

クリリンの言葉に頷くとピッコロは悟飯の腕を掴んだ。

「悟空、必ずフリーザを倒せ…頼んだぞ」

3人が飛び立った瞬間、フリーザは海から飛び出して3人に気弾を放とうとするが、悟空が即座に動いて気弾を作り上げている腕を掴んだ。

「いい加減にしろ…この屑野郎…罪のない者を次から次へと殺しやがって…ご…悟林まで…」

「く…!な…何故貴様にそ…そんな力が…ま…ま…まさか…本当に…」

フリーザは何とか悟空の手を振り払って距離を取った。

掴まれた腕を押さえながら悟空を見る。

「悟林を…俺の娘を虫けらのように殺しやがって…貴様はもう謝っても許さないぞ!!この屑野郎ーーーーっ!!!」

金色のオーラを爆発させて悟空はフリーザを殴り飛ばした。

遠く離れたピッコロ達は悟空の気の爆発を感じ取りながら悟空の勝利を願ったのであった。

クリリン達は悟空の乗ってきた宇宙船を目指しながら悟空とフリーザの闘いの気を感じ取っていた。

途中で大爆発が起き、その後にフリーザの気が悟空に匹敵する程に増大したため、クリリン達は急いでブルマを探す。

「な…何かが…この星に何かが起こり始めている…絶望的な何かが…!」

「ああ、おまけにフリーザの気もまだ大きくなっている…急いでブルマさんを見つけないと!」

「…いたぞ!」

ピッコロがブルマを発見し、岩の下敷きになりそうなところを悟飯が救出した。

「悟飯君!それにクリリン君にピッコロ!?何やってたのよあんた達はっ!不安で退屈でもうしょうが……」

「ブルマさん?」

ブルマの声が途中で途切れたことに悟飯は不思議がる。

「ピッコロが抱えてるのって…ひょっとして悟林ちゃん…?む、胸に穴が開いて…も、もしかして…」

「お姉ちゃんは…フリーザに殺されました…今、お父さんがお姉ちゃんの仇を取るためにフリーザと闘っています…」

「そ、そう…でも大丈夫よ悟飯君。ピッコロがいるってことは神様も生き返ったわ。だから…悟林ちゃんは生き返れるわよ」

「……はい」

悟林が地球のドラゴンボールで生き返ることが出来るのは悟飯も理解している。

しかし、理解は出来ても納得出来ないのだ。

「と、ところでそれ…ベジータよね…?」

「ええ、悟空に頼まれてね。一応俺達もこいつに助けられたし」

「う、動いたりしないわよね…?」

「…一応死んでるから大丈夫」

クリリンはブルマの問いに答えながら悟空の宇宙船を目指していると、いきなり空が暗くなった。

「ん…」

そして悟林の目が開いて身動ぎする。

「悟林!」

「「悟林ちゃん!」」

「お姉ちゃん!」

生き返った悟林にクリリン達が歓喜する。

「え?え?フリーザは?」

「フリーザは超サイヤ人になった悟空が闘ってるよ」

「お父さんが超サイヤ人に!?」

「ああ、悟林ちゃんがフリーザに殺されて本当に頭に来たんだろうな。あいつもお父さんなんだな」

「お父さん…」

「っ…な…何故だ…俺は…俺は生き返ったのか…!?」

「ひっ!何でベジータまで生き返ってるのよ!?」

生き返ったベジータにブルマは怯える。

「恐らく地球のドラゴンボールでフリーザの奴らに殺された連中を生き返らせたんだろう。だからフリーザに殺されたベジータも生き返った…」

「地球のドラゴンボールで生き返ったのか…」

ベジータはクリリンから離れるとある方向を見つめてそちらに向かった。

「お、おい!?…行っちまった…」

「あ、そうだ。フリーザ達に殺された人達を生き返らせたならデンデも!助けてあげなくちゃ!」

悟林もピッコロの腕から飛び出してデンデがいた場所に向かう。

「あ、あの馬鹿…生き返ったばかりで気が不充分だと言うのに…!」

「…やっぱり孫君の子ね…」

悟林は父とフリーザの凄まじい気を感じながらデンデのいた所に向かうと、飛んでいるデンデの姿を発見した。

「デンデーーー!」

「悟林さん!」

「良かった!生き返ってた!デンデ、私達と一緒にナメック星を脱出しよう!」

「いいえ、最長老様が生き返ったのでポルンガも復活しています。ドラゴンボールでナメック星にいる孫悟空という人とフリーザを除いたみんなを地球に移動させるんです!」

「そっか…お父さん…フリーザを倒すつもりなんだ…」

デンデを抱えてポルンガのいる所まで運ぶと、ポルンガが尋ねてきた。

「さあ、どうした?願いはもうないのか?」

「で、では3つ目…さ、最後の願いを…」

「このフリーザを…不老不死にしろーーーっ!!」

デンデが願いを言おうとする前にフリーザが姿を現してポルンガに叫んだ。

「しっ、しまったーっ!」

「フ…フリーザ…!」

「魔閃光ーーーっ!!!」

悟空もフリーザに追い付き、デンデは自分を殺した相手に体を強張らせたが、悟林がフリーザに自分を殺したお返しとばかりに魔閃光を放って直撃させた。

「っ…悟林!」

生き返った娘の姿に嬉しそうな悟空の声。

「凄い…お父さん…それが…超サイヤ人…」

「な、何故だ!?何故お前が生きている!?」

父親の姿に感動していた悟林だが、フリーザの声に我に返る。

「フリーザーーー!!」

そして悟空達を追いかけてきたのだろう、ベジータも姿を現した。

「ベジータ…お前も…!」

「お、お前まで…何故だ…何故生きているのだ貴様ら!?」

「へっ!喰らえーーーーっ!!」

フリーザに攻撃しようとしたベジータだが、デンデが願いを叶えたことでベジータは地球に飛ばされた。

「お父さん負けないで!フリーザをやっつけて!」

「ああ」

悟林の言葉に不敵な笑みを浮かべながら悟空は頷いた。

地球に飛ばされた悟林は父親の勝利を祈りつつ、いつか自分も超サイヤ人になりたいと思わせた。

「それにしてもクリリンさんは助かったね、一度ドラゴンボールで生き返ってるから二度と生き返れないんでしょ?」

「ああ、本当に生きた心地がしなかったぜ…」

見慣れた地球の風景にようやく安心したクリリン。

「あの二度と生き返れないって…地球のドラゴンボールはそうなんですか?ナメック星のでは自然死でなければ多分何度でも…」

「ということは餃子も生き返れるのか!」

ナメック星のドラゴンボールさえ使えるようになれば餃子を復活させられる。

数分後、ブルマにヤムチャから界王を通じて通信があった。

『ブルマ…ブルマ聞こえるか、俺だ…ヤムチャだ…』

「…!?え?ヤムチャ…?…あれ?」

『そうだ、ヤムチャだ。界王様を通じてお前の心に直接話しかけている』

「心に!?本当!?」

こちらにはヤムチャの声が聞こえないのでほとんどブルマの独り言に聞こえる。

「どうしたんですか?ひょっとして界王様から?」

『…だって!あんた良く分かったわね、今喋ってんのはヤムチャだけど…で、元気?ヤムチャ』

『う…うむ、死んではいるが、元気と言えば元気だ…それより落ち着いて聞いて欲しい…悟空のことだ…悟空はフリーザを倒した…そ…そして…』

「ねえ、聞いて聞いて!孫君さ、フリーザをやっつけたって!」

「本当ですか!やったーーっ!」

「いえーいっ!」

ブルマの言葉に姉弟で喜ぶ。

「フ…フリーザを…カ…カカロットが…」

『静かに…静かに聞いてくれ…!…そ…それだけじゃないんだ…ご、悟空は…必死で脱出を試みたが…ナ…ナメック星の爆発に間に合わず…死んだ…』

「ちょっとー!孫君も星が爆発して死んじゃったってよー!ショックよねー!」

「「お父さん、逃げられなかったんだ…」」

ブルマの言葉を聞いて双子は複雑な表情を浮かべた。

『馬鹿野郎!す、少しは悟林ちゃん達のことを思いやれ!そっ、そんな言い方があるかよ…!』

「ほーっほっほっほ!なぁーんにも知らないんだから!ナメック星の人達とね、向こうのドラゴンボールも地球に来たんだけどさ…驚くわよ~。ナメック星のドラゴンボールではね、何回でも生き返らせることが出来るんだって!」

『え!?』

「つまり!孫君も餃子君も生き返れるってこと!」

『…何も知らんのはお前達の方だ。餃子はここで生き返ることが出来るが、悟空はナメック星で生き返る…だが、そのナメック星はもうないのだ…宇宙空間だ…。生き返った瞬間にまた死が待っている…どうにもならん…あそこは私の区域ではないのだ…』

「……」

そしてブルマは悟林達に説明する。

「お、お父さんは生き返れないですって…!?」

「え…ええ…餃子君みたいに神様に肉体を再生されて界王様んとこにいるんならいいみたいだけど…そうでない場合は死んだ場所で生き返るみたいなの…でも、そのナメック星はもうないでしょ…宇宙空間だから…それにナメック星の辺りは界王様の
担当区域じゃないらしいし…」

「そ…そんな…」

暗い雰囲気になりかけた時、ベジータが口を開いた。

「少しは頭を使ったらどうだ。こっちの方に魂だか何だか知らんが、移動させてから生き返らせりゃ良いだろ…多分な…」

「…あ…そ、そうよ!その通りだわっ!あんた良いこと言うじゃん」

「ありがとうベジータさん、ナメック星でもお父さんのことでもたくさん助けてくれて」

「ど、どうもありがとう…」

「勘違いするな、奴に勝ち逃げなどされたくないだけだ(超サイヤ人となったカカロットに勝ってみせる…いつか必ず…)」

「失礼、地球人のお方…」

「あ、はい」

今まで黙っていたナメック星の長老が話しかけてきた。

「我々はドラゴンボールが復活し次第、適当な星を見つけ、そこに移るつもりです。それまでの間を過ごすため、どこか良い場所に案内して下さらんか」

「だったらあたしんちに住んだら良いわ!すっごく広いから平気よ!こっちだってあなた達のドラゴンボールでもう少しお世話になりたいしー。そうしなさいよ!その人数でどこかにウロウロしてたら見つかっちゃって大騒ぎになっちゃうわ。あんたも来たらー!どうせ宿賃もないんでしょ?」

地球ではピッコロ大魔王の騒動があったので、ピッコロにそっくりな者達が集団で彷徨いていたら大騒ぎになる。

ついでなのでベジータも誘うことにしたブルマ。

「そうしたらベジータさん?地球にいればお父さんに会えるんだし」

ブルマと悟林の言葉にベジータは顔を背けた。

「ご馳走たくさん出すわよ!どうせ孫君と一緒ですっごく食べるんでしょ。ただしいくらあたしが魅力的だからって悪いことしちゃ駄目よー」

「げ…下品な女だ…でかい声で…」

ブルマの言葉に赤面しながらベジータは呟いた。

「じゃ、皆さんちょっと待ってて、あそこの家で電話貸してもらって父さんにでも来てもらうから」

「私は自分で帰るよ。早速修行しないと!悟飯ー、お母さんによろしくねー。夜には帰るからー!」

「え、えー!?お姉ちゃん!それはないよ…」

自分1人にチチの対応をさせる姉に悟飯は嘆いた。

後日、ナメック星のドラゴンボールは復活が早く、130日めで神龍を呼び出すことが出来た。

1回目で悟空の生存が発覚し、地球に呼び寄せるのを本人が拒否したので一度でヤムチャ、天津飯、餃子が生き返り、更に130日後にドラゴンボールでナメック星人達は新しい星へと飛ばされた。

悟林はフリーザの存在と超サイヤ人の悟空が良い燃料となったのか、修行に今まで以上にのめり込むことになる。

自分も超サイヤ人となるために。 
 

 
後書き
ベジータと悟林はナメック星で一度死にました。 

 

第16話

 
前書き
鳥山先生ありがとう… 

 
フリーザとの闘いから1年の時が過ぎた。

悟林は超サイヤ人になるために激しい修行をしていた。

実力はまだまだフリーザと闘った時の父やベジータには及ばないものの、大きくパワーアップしていた。

しかし、ここである問題にぶち当たる。

「超サイヤ人ってどうやってなるんだろ?」

闇雲に修行してもなれないのは何となく理解出来る。

悩む悟林だが、あることを考え付いた。

「困った時のドラゴンボールだ!」

早速西の都に行き、女の子に鼻の下を伸ばしていたヤムチャをしばいていたブルマからドラゴンレーダーを借りるとドラゴンボールを集めて早速神龍を呼び出した。

「出でよ神龍!」

「さあ、願いを言え。どんな願いも1つだけ叶えてやろう」

神龍を呼び出し、呼び出した神龍から願いを言うように促される。

因みに呼び出した時間帯は夜なので変化は少ない。

「えーっと、超サイヤ人ってどうやってなるの?」

悟林が願いとして尋ねると、神龍は知っている知識だったのか難なく答えた。

「容易い願いだ。超サイヤ人とは高い戦闘力と穏やかな精神を持ち、“S細胞”と呼ばれる細胞を多く持つサイヤ人が怒りなどの感情でS細胞を急激に増やすことで変身する。」

「え?怒り?超サイヤ人に変身するにはいちいち怒らないといけないの?」

「いや、その怒りなどの感情によるS細胞への刺激を擬似的に再現することが可能だ。サイヤ人は怒ると背…肩甲骨辺りに気を無意識に集中させる習性がある。そこが最もS細胞が集中している箇所なのだ。そこに気を集中させ、爆発させることで超サイヤ人への変身が可能となるだろう。尤もそなたはS細胞の方はともかく戦闘力は…」

「まだ足りないかもしれないの?そうだよね…あんなに強くなったお父さんでも苦労したんだから。まあいいや、ありがとう神龍!」

「ではさらばだ!」

それだけ言うと神龍は消え、ドラゴンボールは各地へと散った。

「よーし!頑張るぞ!肩甲骨辺りに気を集中させて…はあああ…!」

肩甲骨辺りに気を集中させるとぞわぞわした感覚が襲う。

体を纏うオーラが金色へと変わり、目付きも鋭い物へと変化していくがそれだけだった。

気の消費が凄まじく、悟林は膝を着いた。

「くっ…!はあ…はあ…」

その後何度も練習を繰り返すが、戦闘力が足りないのか後一歩のところで解けてしまう。

「後少し…なんだけどなぁ…戦闘力が足りないなら修行して……ん?」

あることを思い付いた悟林は界王拳を発動した。

修行と成長で使えるようになった最大の5倍を維持しながら肩甲骨辺りに界王拳で高まった気を集中させる。

赤いオーラに金色が混じり、瞳の色も碧色に、髪も金色へと変化していく。

「だあああああっ!!!」

集中させた気を爆発させる直前に界王拳を解除すると、ナメック星で見た悟空と同じ状態となったが…すぐに解除されてしまう。

「…は…はは…」

悟林は一瞬とは言え超サイヤ人となり、5倍界王拳と比べても凄まじいパワーに興奮した。

そして新たに決意する。

この力を使いこなしてやると、満足そうに家に帰るとチチからのお説教が待っていたのは言うまでもない。

そして数日後、悟林は界王拳を経由した超サイヤ人…超化に慣れてきた頃である。

そろそろ仲間達に見せてびっくりさせてやろうと悪巧みを考えた時であった。

フリーザの気とそれに近い気を感じた。

ただ事ではないと判断した悟林は修行場にしていた荒野から飛び立った。

一番大きいベジータの気もあったのですぐに場所が分かり、悟林も到着した。

「お待たせー」

「やっほー悟林ちゃん」

「あれ?何でブルマさんがいるの?ヤムチャさん、デート場所にしたってこれはないよ」

「そんなわけないだろ!ブルマが勝手に来たんだ。」

「あ、そうなの?」

「そうなんだよ、何せブルマは地球一の野次馬でその上じゃじゃ馬なんだ…痛ててて!」

ブルマに耳を引っ張られて痛がるヤムチャをスルーしてフリーザ達が来るまで待つ。

「来たぞ!」

ピッコロが叫んだ直後にフリーザの宇宙船が現れ、少し離れた場所に着地した。

「あっちに降りたよ!」

「ま…間違いないフリーザだ!い…生きていた…」

「や…やっぱりフリーザの他にもう1人いやがる…!」

「いいか貴様ら、飛ぶんじゃないぞ!スカウターで探られんように歩いて近付くんだ!」

ナメック星でフリーザと闘った面子は即座にフリーザの存在を確信する。

そして宇宙船へと近付こうとする者達にヤムチャは声をかけた。

「ま…待てよ…フ…フリーザ…ってのは、あ…あんなにとんでもない…ば…馬鹿でかい気なのか…?」

「あれはまだ序の口だね…本気を出したあいつはあんなもんじゃないよ!」

「まあ、フリーザを見たことがない貴様らには想像も出来まい」

フルパワー状態を見たことのある悟林とベジータは脳裏にその姿が過ぎった。

「あれで序の口…お前達はそんな奴と闘っていたのか…?」

今でさえ天津飯はフリーザの気に戦意を喪失しそうなのにそれが序の口レベルだと言われると唖然となる。

「じょ…冗談じゃないぜ…ち、近付いて行ってどうしようってんだ…!し、信じられんような化け物じゃないか。そ…そいつが2人もいるんだぞ!ど…どうしようもないじゃないか…!」

「だったらどうする…ここで腐ってるか?好きにしろ…どうしようもないのはみんな知ってるんだ」

かなりショックを受けているヤムチャの言葉にピッコロがそう言うとベジータがとどめを刺した。

「はっきり言ってやろうか?これで地球は終わりだ」

「………終わりになんてさせないよ。はああ!!」

そんな絶望的な雰囲気に希望の光が差した。

悟林がほんの少しだけ超化すると、全員が驚愕する。

「お、お姉ちゃん?」

「そ、それ…超サイヤ人じゃないか…悟林ちゃん、いつの間に」

「お父さんの超サイヤ人を見てね、私も超サイヤ人になれるように修行したの。なるのに界王拳を使わないといけないのが恥ずかしいけど…1人だけなら何とかなると思う。でも2人を同時に相手にするのはきついからみんなが1人を抑えてくれれば何とかなると思うんだ」

ベジータからの視線がきついが、クリリン達はこれなら何とかなるんじゃないかと思い始めた。

「そ、そうか…悟林ちゃんが超サイヤ人になれたなら何とかなるかもしれないぞ!」

あのナメック星で見た超化した悟空に匹敵する気をクリリンは感じるのだ。

これなら生き残れるかもしれない。

悟林は深呼吸して前進した。

フリーザに殺されたために正直恐怖を感じるが、逃げるのは性に合わない。

途中でフリーザとは全く違う大きな気を感知し、悟林は歩くのを止めて飛び立った。

そこには斬り捨てられたフリーザの部下達と、紫色の髪の青年がいた。

「ほう、誰かと思えばナメック星にいたチビじゃないか。せっかくドラゴンボールで生き返ったのにまた死にに来たのかい?」

「お前…お父さんが倒したはずなのに…」

「フリーザは儂が救出した。そしてサイボーグにしたのだ」

「それが何を意味するのか分かるかい?君を殺した相手が更にパワーアップしてしまったんだよ」

それを聞いた悟林は一瞬体が震えたが、笑みを浮かべた。

「私だってあの時のままじゃないんだ!界王拳!」

界王拳を経由して超化するとフリーザの目が驚愕で見開かれた。

「超サイヤ人…!?」

「これが超サイヤ人か…!?」

悟林の超化を見てフリーザは忌々しそうに表情を歪めるがニヤリと笑う。

「だけど、君だけで僕とパパを同時に相手をすることなんて出来るかな?」

それを言われた悟林は表情を険しくする。

隣の青年は逃がさなくては。

「お兄さん、ここは危ないから逃げて」

「大丈夫です、悟林さん。俺もあなたと同じです。一緒に闘わせて下さい」

初めて会う青年が自分の名前を知っていることに悟林は目を見開いた。

それに青年は少しばかり寂しげに微笑むとフリーザ達を睨んだ。

「中途半端な力を身につけた者は却って早死にするよ。そいつを教えてあげようか?」

「お前達は俺達には勝てない…分かっているんだ。」

「“分かっている”?ほっほっほ…そいつはユニークな表現だね」

「初めから全力で掛かってくるんだな、俺は孫悟空さんのように甘くはない…」

「ソンゴクウ?…そいつは確かあの超サイヤ人の名だ。なるほど、貴様もあいつの仲間か…」

青年が悟空の名前を知っていたことでフリーザは青年を悟空の仲間の1人だと判断したようだ。

「…お父さんからお兄さんのこと聞いたことないけど…」

悟空から隣の青年のような仲間がいるのならもっと早くに知っているが…。

「会ったことはないんです。孫悟空さんのことは話から聞いた程度で……悟林さん、まずはフリーザとフリーザの父親を倒しましょう。」

「え…でも、危ないよお兄さん!」

確かに青年からは強い気を感じるが、フリーザ達には遠く及ばない。

悟林は慌てて止めようとするが青年は微笑む。

「大丈夫です…超サイヤ人になれるのは悟林さんや孫悟空さんだけじゃない…俺もなれるんですよ」

「え!?」

「「何!?」」

「はああっ!!」

青年の言葉に誰もが驚愕し、青年は気合を入れて悟林同様に超化した。

「超サイヤ人に…!」

ナメック星で超化した悟空以上の気に悟林は驚愕する。

「くたばれ!!」

超化し、体に気を入れた青年の言葉にハッとなった悟林も体に気を入れた。

「くたばるのは…貴様らの方だ!!」

フリーザが青年と悟林に気功波を放つ。

2人はそれをかわすと技の体勢に入った。

魔閃光を撃とうとした悟林だが、隣の青年の構えに驚く。 

「お兄さん…それ…」

「後で説明します。それより早く!」

「う、うん!」

「「魔閃光ーーーっ!!」」

悟林と青年が同時に魔閃光を放ち、フリーザ達が上空に逃げたところを青年は剣を抜き、悟林は額に指先を当てた。

青年がフリーザを真っ二つにし、フリーザの父親が動揺したところを界王拳の訓練と、超化の練習のおかげで気のコントロール技術が飛躍的に上がったために短時間で最大威力になった魔貫光殺砲でフリーザの父親の心臓を貫いた。

青年は真っ二つにしたフリーザを細切れにし、悟林はナメック星でやられた仕返しとばかりにフリーザだった物にかめはめ波を当てて消滅させた。

「お見事です悟林さん」

「うん…ねえ、お兄さん…どうして私のことを知ってるの?どうして魔閃光を使えるの?あれはピッコロさんが教えてくれた技なのに…」

「孫悟空さんが来たら悟林さんに全てお話します…それまで待ってくれませんか?」

「本当に?」

「約束します。どうして俺が超サイヤ人になれるのか、そして魔閃光を撃てる理由も」

青年の目を見て嘘偽りがないことを感じて悟林は青年を信じることにした。

「分かった、約束だよ。」

「はい、フリーザの父親の死体を始末しないと…死体を利用されないとも限りませんし、悟林さんは宇宙船を」

2人は気功波を放ってフリーザの父親の死体と宇宙船を処分した。

「これでいいの?」

「はい」

2人は超化を解くと一息吐いてこちらにやってきたベジータ達に振り返る。

「あ、みんな」

「これから孫悟空さんを出迎えに行きます!一緒に行きませんかーーー!!」

青年の言葉にベジータ達が驚いている。

「お父さんの場所ってどこなの?」

「そこまで案内します。このすぐ近くですから俺についてきて下さいー!」

青年が飛び立ったのを見て悟林も慌てて追い掛けた。

後ろの仲間の気を感じながら。 
 

 
後書き
未来トランクス登場。

超サイヤ人ゴッドのことを知っていたんだから下位変身のことも知ってるよね神龍?

この作品では足りない戦闘力を界王拳で補いながら強引に変身しています。 

 

第17話

 
前書き
未来トランクスの師匠は最初は未来の悟林、二番目が未来の悟飯です。 

 
悟林は青年に着いていきながらどこに向かうのかを尋ねる。

「ねえ、お兄さん。お父さんはどこに降りるの?」

「少し待って下さい…573の…18220ポイントぐらいか…じゃあこの辺りだな…ここに降りましょう」

青年が座標を確認すると、ここに降りるように言う。

「うん」

青年と悟林が降りると悟飯達も降りてきた。

青年はケースからカプセルを出すと展開し、四角い箱にチューブのような物がついている何かを出した。

「何これ?」

「これは冷蔵庫ですよ。飲み物はたくさんありますから悟林さんもどうぞ」

ドアを開けてジュースを1つ取り出し、青年は悟林にも飲んでいいと言うと早速選ぶ。

「ありがとう!えーっと、何が美味しいかな…?」

「悟林さんなら…これがいいかと」

白い缶のジュースを受け取り一口飲むと好みの味だったのか悟林は満足そうに飲み続けた。

そんな悟林の姿を青年はどこか懐かしそうに見つめていた。

「皆さんもどうぞ」

青年が言うと悟林が飲んでいることで警戒が幾分か緩んだのか悟飯とブルマが出た。

「頂くわ!」

「僕も」

そんな2人に笑みを浮かべる青年。

「頂きます!」

「うちの製品でこんな冷蔵庫あったかな…」

「ねえ、お兄さん…お父さんって何時くらいで来るの?」

「そうですね、孫悟空さんは今から3時間後に地球に到着すると思います」

「ふうん…」

悟林の問いに青年が答えると悟飯が尋ねてきた。

「どうしてお父さんのことを知っているんですか?」

「俺も話で聞いたことがあるだけで、会ったことはないんです…」

「…じゃあ何で3時間後にここへ悟空が来るって知ってんだ?」

会ったことはないのに悟空が3時間後にここに降りてくることを知っているのかクリリンが尋ねる。

「…それは…すいません…言えないんです…」

どこか申し訳なさそうに言う青年に今度はベジータが尋ねる。

「言えないってのはどういうことだ?貴様は一体何者だ。どうやってあんなパワーを身につけた…」

「す…すいませんそれも…」

「そう言えば、お兄さんも超サイヤ人になれてたよね。フリーザに星ごとやられたのにサイヤ人ってまだいるんだね」

悟林がそう言うとベジータが怒鳴ってきた。

「ふざけるな!サイヤ人は俺とカカロット、ここじゃそのソンゴクウって名前だがな…それに地球人との混血である悟林とその弟のガキ…この4人しかもう残っていないんだ!貴様がサイヤ人であるはずがないだろ!」

「でもベジータさんが知らないってだけでサイヤ人の生き残りがいるかもしれないじゃん。えーっと、例えばベジータさんが生まれる前に他の星に飛ばされたとか」

「ぐっ…だが、サイヤ人は全て黒髪のはずだ…」

「じゃあ、私達と同じ混血じゃないの?」

「え、ええ…まあ一応」

サイヤ人であることはバレているので混血であることは知られても問題ないようだ。

「あれ!?ねえ…それうちのカプセルコーポレーションのマークじゃない!?何で?うちの社員?」

ブルマがジャケットの肩部分にあるCマークを見て言う。

「…そう言うわけじゃないんですが…」

「それも秘密?じゃあ名前も歳も全部内緒なわけ?」

「名前は言えませんが、歳は17です…」

名前さえ言えない青年に誰もが訝しむ。

「名前も言えんというのは妙だな…」

「ああ…隠す意味がないだろう…」

「よし!質問はもう止めましょ、困ってるじゃない!この子は私達や地球を救ってくれたのよ!」

「賛成!」

ブルマの言葉に悟林は同意し、青年についての素性を調べるようなそれ以上の質問はしないことにした。

「ねえ、お兄さん。私とお話しようよ」

「え?悟林さんとですか?」

「嫌?」

「いえ、大丈夫ですよ」

「じゃああっちで話そうよ」

少し離れた岩場を指差す悟林に青年も頷いた。

「あら、悟林ちゃん積極的ね」

「ブルマさん、悟林ちゃんは子供ですよ」

ブルマとクリリンの会話を聞き流しながら、青年と一緒に岩に腰掛ける。

「ねえ、お兄さん。魔閃光が使えるなら魔貫光殺砲も使える?」

「え?あの…」

「大丈夫、言わないよ。秘密にする」

「…使えます。どっちも俺にとって大切な…形見のようなものですから」

「そっかあ…教えてくれた人はピッコロさんみたいに厳しかった?」

それを聞かれた青年は一瞬答えにくそうにしながらも秘密にしてくれるならと思ったのか答えてくれた。

「俺はピッコロさんのことは良く知らないから比較出来ませんが、物凄く厳しかったですよ。でも魔閃光や魔貫光殺砲を覚えた時、自分のことのように喜んでくれて…出来たご褒美にたくさんのことを教えてくれました。武道だけでなく勉強も…色々教わりました。動物や食べられる植物や怪我の治療に使える薬草とか…」

「そうなんだ…ねえ、お兄さん!組み手してよ!」

「組み手ですか?」

「うん、ただ待ってるの暇だし。お兄さんも強いからやりたいんだ」

わくわくしたような表情に青年は懐かしそうに目を細めると頷くことで承諾した。

2人は多少の距離を取って相対すると悟林は待ちきれないとばかりに構えた。

「悟林さん、手合わせ前の一礼をしなければ」

「え?あ、そうだった…」

一礼をした後に両者は構えた。

2人が構えた瞬間いくつもの視線が向けられたがそれらを無視して両者は動き出す。

悟林が拳と蹴りを繰り出すと青年にいとも簡単に防がれる。

しかし受けた青年は悟林の攻撃の重さに驚いた。

こんな小さな体のどこにこんな力があるのだろうと。

悟林の方も青年の攻撃を防ぎながらも動きを良く見ており、青年の闘い方は自分の理想とも言えた。

父親の剛と師匠の柔を融合させた型。

しかし青年の気の質は誰かに似ているような気がする。

「(…まあいっか)」

気になるけれどこんな楽しい組み手の前では些細なことだ。

青年も笑みを浮かべて自分との組み手を楽しんでいるのが分かった。

攻防が続き、青年は一気に目付きを鋭くして悟林との距離を詰めて足払いをかけると悟林は尻餅をつき、青年の拳が眼前に迫ると寸止めしてくれた。

「ありがとうございました。こんな楽しい組み手は久しぶりです」

「うう…参りました…」

悟林は悔しそうにして立ち上がり、胸の前で自分の右の拳を左の掌に押し当てて黙礼し、青年も同じ動作を返す。

拳を納めると言うのは既に敵意がないという拳法での礼の形。

「悟林さん、とても強かったです」

「負けちゃ意味ないもん」

悔しそうに青年を見上げると青年は優しく微笑んだ。

「大丈夫です。悟林さんなら俺よりずっとずっと強くなれます。それこそ宇宙一になれるくらいに」

「そうかなあ……お父さんが帰ってきたら修行に付き合ってもらお」

悟空が来るであろう空を見上げながら呟く悟林。

青年も同じように空を見上げた。

「あの人…闘い方がお姉ちゃんに似てる…」

「そうだなあ…悟空やピッコロの技を合わせたような…」

2人の組み手を見たクリリンと悟飯は青年の動きが悟林に酷似していることに気付いた。

そして3時間が経過して青年が時間を確認すると立ち上がった。

「そろそろ到着するはずです」

それを聞き、全員が感覚を研ぎ澄ませると大きな気を感知した。

「ほ、本当だ…!感じる!気を感じるぞ…!」

「た…確かに何かが来る…!」

「じゃ、じゃあ、あのこの子の言った時間も場所もズバリだったってわけ!?」

「お父さんだ!お父さんの気だ!」

宇宙から飛来する小型の宇宙船。

それが着地した地点に悟林は急いで向かう。

クレーターの中心にある宇宙船のハッチが開くと見慣れない服装の悟空の姿があった。

「お父さーん!」

久しぶりに見た父の姿に悟林は勢いつけて悟空に飛び付いた。

「うわあっ!悟林…おめえ…何でここに?」

「みんなもいるよ」

「あれ?本当だ。何でおめえ達がここに?どうやってオラのことが分かったんだ?」

悟空が悟林を抱いたまま舞空術で上昇した。

「(本当に生きてやがったか…)」

ベジータは五体満足の悟空の姿を見つめながら心の中で呟いた。

「この子よこの子!この子がここに帰ってくるって教えてくれたの!」

「知ってるんでしょ!お父さん」

「…?誰だ?」

「「「へ?」」」

ブルマが青年のことを教え、悟飯が悟空に尋ねるものの知らないと返される始末。

青年の謎が更に深まった。

「こ…この子知らないって…全然?」

「ああ、全然知らねえ」

ブルマが再度尋ねても悟空の答えは変わらない。

「孫君がこの時間にこの場所に来るって知ってたのよこの子…」

「……」

「本当か!?妙だな…フリーザ達には宇宙船を発見されていつオラが地球へ着くか分かってたみたいだがな…それにしてもフリーザ達を倒したのは誰だ?すんげえ気だったな?」

「フリーザ達は悟林とそいつがやったんだ。あっという間にな…貴様や悟林のように超サイヤ人になれるんだ。」

「超サイヤ人に…って、悟林もか!?そいつは凄えや!オラも相当苦労したのによ!それにしてもオラ達の他にもサイヤ人がいたとは知らなかった!」

娘や目の前の青年が超化出来ることに驚く悟空だが、同時に感心する。

「違う!サイヤ人は絶対に俺達以外にはいない!いるわけないんだ」

ベジータの反論だが、超化出来るのがサイヤ人である何よりの証拠だろう。

「ふうん…ま、そんなことはどうでもいいさ。とにかく超サイヤ人なんだろ!?」

「どうでもよくはないでしょ。あんたって相変わらず軽いのね」

確かに軽いが考えても仕方ないことなのも確かである。

今まで無言だった青年が口を開いた。

「孫さん、それと悟林さんも…お2人にお話があります…ちょっと…」

「あ、話してくれるんだっけ?」

約束していたことを思い出した悟林は父の腕から飛び降りる。

「何だよ、俺達には内緒ってわけか?」

「わりいな、ちょっと待っててくれ」

青年と悟空と悟林は悟飯達から大分離れた場所に移動する。

「この辺りで…」

「そういや礼を言わなきゃな。悟林に手を貸してくれてすまねえ。オラがやっぱ甘かったらしい…フリーザはナメック星でやっつけておくべきだった」

「フリーザ達はあなたと悟林さんが倒すはずだったのですが、時間的な食い違いがあって何故か無理でした…そこでやむを得ず俺が…」

「ああ、フリーザ達の宇宙船の方が速くて抜かれちまったんだ。ちっとも反省してねえようだからやっつけてやろうとしたらおめえ達が先にやっつけちまってたからなあ」

「えへん!」

「あなたが到着するまで3時間もあって無理だったようですね」

悟林が胸を張り、青年が3時間もあっては無理だったことを言うと悟空は2人に笑みを見せる。

「いやあ…そうでもねえ。新しい技を手に入れてさ」

「新しい技!?」

「何の技なのお父さん?」

「所謂、瞬間移動って奴だ」

「「瞬間…移動!?」」

青年と悟林の声が重なる。

悟空はそれを気にせずに瞬間移動のことを説明した。

「ヤードラットって星の連中が教えてくれたんだ。不思議な連中でさ。力はそんなに強くねえが、色んな技を知ってんだ」

「そ…そうだったのですか…俺は無意味に歴史を変えてしまった…そのせいで孫さんと悟林さんだけに会うつもりだったのにみんなと出会ってしまったし…」

「歴史…?どういうことだ?」

青年の言葉が気になった悟空は不思議そうに見つめる。

「その前にお伺いしたいのですが…孫さんは自分の意志で自由に超サイヤ人になることが出来ますか?悟林さんのように無理をしてなるような感じではなく」

「ああ、最初は駄目だったが、苦労して今はコントロール出来るようになった。」

「凄いなお父さん。私は界王拳で無理してパワーを上げないと変身出来ないのに」

「今ここで…なって頂けませんか?お願いします…」

「…分かった。んっ!!」

気合を入れると悟空は青年と同じように、悟林と違って技で無理やり変身するような物ではなく普通に超化した。

「わあ…凄いなお父さん。格好いい」

「ありがとな、さてこれでいいのか?」

普段の悟空からは考えられないくらいに声が低い。

悟林もそうだが、変身すると少し興奮してしまう影響なのかもしれない。

「ど…どうもありがとうございます…驚いた…超サイヤ人になった悟飯さんと瓜二つだ…」

「悟飯と?…どういうことだ?」

遠くで驚いている悟飯を少しだけ見遣り、次に悟林を見つめる。

「悟飯は超サイヤ人になれないよ」

ナメック星に帰ってから修行はしていないし、超サイヤ人になろうとさえ思ってもいないだろう。

「…まあいいさ、で…どうするんだ?」

「俺も超サイヤ人に…」

青年も超化すると悟空の目が見開かれた。

「その若さで大したもんだ。俺が苦労した超サイヤ人になれるなんてな」

自分が苦労した超化を目の前の青年も同じようにコントロールしている。

いや、自分以上に慣れている様子に敬意を抱いた。

「悟林さん、少し離れていただけませんか…失礼します」

「え?」

次の瞬間、背負っていた剣を抜いて悟空に振り下ろすが寸止めする。

「…な…何故避けなかったのですか…?」

「殺気がなかったからだ。止めると分かっていた」

「…なるほど…では今度は止めません。良いですね」

「分かった」

剣を構える青年に対して悟空は人差し指を立てると気を集中させる。

それにより、同じ超化をし、そのエネルギーを乗せられた青年の剣を受け止める程の硬度となる。

青年の連擊を指一本で捌いて見せる悟空に青年は距離を取って剣を鞘に戻すと超化を解いて笑みを浮かべた。

「流石です。噂は本当でした。いや…それ以上です…フリーザをも切り裂いた剣だったのですが…」

「おめえが本気じゃなかったからさ」

悟空も超化を解くと青年が口を開いた。

「それでは全てをお話します。これからお話することは全てあなた達の心の中だけにしまっておいて下さい」

「分かった、安心して喋ってくれ。オラは口の固い方だ」

「私も大丈夫」

「この時代のあなた達には信じられないかもしれませんが…俺は約20年後の未来からタイムマシンに乗ってやってきたのです」

「未来から!?」

「に、20年後…ってことはお兄さんは私より年下なの!?」

「はい、名前はトランクス…何故俺がサイヤ人の血を引いているのかと言うと…あそこにいるベジータさんの息子だからです…」

「「え!?ベジータ(さん)の!?」」

衝撃の告白に悟空と悟林の目は大きく見開かれた。

「そして俺がどうして悟林さんの…正確にはピッコロさんの技を使えるのかと言うと…俺の師匠は未来の悟林さんだからです」

「え!?私が!?」

「ご、悟林の弟子い!?」

更なる衝撃の告白に親子の目は更に見開かれたのであった。

驚愕の事実に悟空と悟林は目を見開いた。

「ほ、本当におめえベジータの息子なのか?そ、それに悟林の弟子って…」

「はい」

「に、似てる…確かにベジータさんに似てるよ…ベジータさんがパパかあ~へえ~」

「この2年後に俺が生まれたんですよ悟林さん。でもそんなことを言いにタイムマシンで来たわけじゃないんです…是非あなた方に知っておいて欲しい重大なことが…」

「重大なことって何?」

悟林が尋ねると、トランクスは説明を始めた。

「今のこの時代から3年後の5月12日、午前10時頃。南の都の南西9㎞地点の島に恐ろしい2人組が現れます…この世の物とは思えない程の怪物が…」

「…何者だ、宇宙人なのか?」

「いえ…この地球で生み出された人造人間…所謂、サイボーグという奴です。造り上げたのは元レッドリボン軍の狂人的科学者、ドクター・ゲロ…」

「レッドリボン軍!」

聞き覚えのある組織の名前に悟空が反応する。

「歴史の本で見たことあるよ。地球の最悪の軍隊だったって!」

「そうです、軍その物はあなたが昔叩き潰したらしいが、ドクター・ゲロは生き残り、研究を続けていた…」

「何のためだ、例によって世界征服が目的か…?」

「良くは分かりませんが、少なくともドクター・ゲロの狙いはそうだったと思います…しかし究極の殺人マシンとして造られてしまったその人造人間達は生みの親であるドクター・ゲロをも殺してしまった…つまりただ殺戮と破壊だけを楽しみとする人造人間だけが残ってしまったのです…」

超サイヤ人になれるトランクスが怪物というくらいなのだから相当に強いのだろう。

それこそフリーザ以上に。

「フリーザをあっさり倒しちゃったトランクスさんが怪物って言うんだからとんでもない奴らなんだね」

「はい…悟飯さんと一緒に立ち向かったのですが…相手も2人…1対1に持ち込んでも勝てませんでした」

「悟飯と…?待てよ、悟飯以外のおめえの味方は…?」

「…いません。20年後に戦士は俺と悟飯さんしか残っていないんです…」

「「……!」」

その言葉に2人は息を飲んで話の続きを待った。

「3年後の闘いでそこにいる父もクリリンさんもヤムチャさん、天津飯さん、餃子さん、ピッコロさん…皆、殺されてしまったのです…闘いの途中で悟飯さんを逃がし、辛うじて生き延びた悟林さんも…悟林さんは俺と悟飯さんを超サイヤ人になれるように鍛えてくれた師匠だったのですが、俺と悟飯さんを生かすために単身で人造人間に挑んで…俺の時代で4年前に人造人間を道連れにしようとして自爆したんです…それでも奴らを倒しきれなかったんです…あなたも知っておられるようにピッコロさんが死んでドラゴンボールも無くなり、誰も生き返ることが出来なくなってしまったんです…年月をかけ、楽しみながらじわじわと命を奪っていく人造人間のせいで俺のいる未来の世界は地獄のような物です…今は何とか俺と悟飯さんが奴らの侵攻を食い止めて被害を抑えていますが…それも…時間の問題でしょう…強すぎる…!強すぎるんですよ奴らは…!」

「わ、私…死んじゃうんだ…」

悟林は超サイヤ人になれても敵わずに死んでしまったことにショックを受けた。

人造人間の理不尽な強さに怒り、震えるトランクスだが、悟空はあることに気付いた。

自分の名前が人造人間に殺された者の中に入っていないことに。

「ま、待てよ。オラは?オラはどうなったんだ!?オラもやられちまったのか!?」

「あなたは闘っていない…今から間もなく病気に冒されてしまうんです…そして死んでしまわれる…」

「え…!?」

「お、お父さんが病気で!?」

「ウイルス性の心臓病です…流石の超サイヤ人も病気には勝てなかったんです…」

「…ま…参ったな…仙豆も病気には効かねえのか…」

「あっ!でもドラゴンボールで…ああっ!私使ってたーっ!!」

「…くっそ~死んじまうのか…悔しいな…闘いてえよそいつらと…」

超サイヤ人になるためにドラゴンボールを使ってしまったことに頭を抱える悟林。

そして闘えずに死んでしまうことに悔しがる悟空。

「…た…闘えないのが残念なんですか…恐怖はないのですか…」

「そりゃ怖いけどよ…すっげえ強い奴らなんだろ、やってみてえよな…」

「…あなたはやはり本物のサイヤ人の戦士だ…母さんや悟林さん達の言った通りの人だった…頼もしいですよ。来てよかった…症状が現れたらこれを飲んで下さい」

トランクスが差し出したのは小さな小瓶であった。

「これ…もしかして薬?」

「はい、悟空さんの薬です。この時代には不治の病でも約20年後には特効薬があるんです。この薬であなたは死なずに済みます…一応ウイルス性なので悟空さんが発症したら念のため悟林さん達も飲んで下さいね」

「分かった」

「本当か!やった!サンキュー!早くそれ言ってくれりゃいいのによもう!」

薬によって死なずに人造人間と闘えることに喜ぶ悟空。

「お父さん良かったね!」

「おおっ!」

「本当はこういうことはまずいんです…歴史を変えてしまうことになって…でもあんな歴史なら…あなたなら必ず何とかして下さると信じています。母さんもそのことだけを願い、苦労してやっとタイムマシンを完成させてくれたんです…」

「お…おめえの母ちゃん…オラのこと知ってんのか?」

「はい、よく…」

それを聞いた悟空と悟林の表情が引き攣る。

トランクスの容姿に、悟空を良く知る女性…それから導き出される答え…。

「ね、ねえ…お父さん…トランクスさんの髪の色…誰かに似てない?目の色とかさ…」

「た、確かに…ま…まさか、そ…その母ちゃん…って…」

「はい、あそこにいる…」

「どっひゃーーーーっ!!!」

「えーーーーっ!!!?」

地面を揺るがす程の大声を出す2人。

「ブッ、ブルマが…!!」

「ブルマさんがトランクスさんのお母さん!?」

驚愕する2人。

まさかヤムチャの恋人のはずのブルマにベジータとの間にトランクスが出来るとは…。

「い…今のが一番おどれえた…!」

「そ、そうだよ!ブルマさん、ヤムチャさんとお付き合いしてたのにベジータさんと結婚したなんて!」

「俺の時代の悟林さんから聞いたんですけど…どうもヤムチャさんは浮気性だったらしくて、堪忍袋の尾が切れた母さんが別れを切り出したらしいんです…教えてくれた悟林さんも呆れてました…その後、寂しそうな父を見てつい何となくらしいんですが…でも結婚はしてなくて…あ…ああいう性格の母ですから…」

「…ヤムチャさん、最低だね…それにしても世の中どうなるか分からないもんだねお父さん」

「そ、そうだなあ…ま…まあ、そこんとこがあいつらしいっちゃ、あいつらしいけど…」

「ま、まあ、それでトランクスさんが生まれたから結果オーライでしょ?こ、こう言っちゃなんだけど、ブルマさんの何となくに感謝だね。」

「はは…父は俺が物心つく前に死んでしまったもんですから初めて会えて感激しました」

悟空と悟林はヤムチャ達の方を見る。

確かに喧嘩ばかりだと聞いているが、ヤムチャを生き返らせるためにナメック星にまで行ったというのに、最終的にベジータとくっついたとは。

「あ…あの、このことは特に絶対に内緒にしておいて下さいね。喋っちゃって2人が気まずくなってしまうとお…俺は存在そのものが無くなってしまって…」

「分かった分かった」

「トランクスさんのことを上手く隠して説明すればいいんだね?任せてよ」

2人の言葉にトランクスは安堵すると、トランクスはそろそろ未来に戻ろうとする。

「では、俺はこの辺りで失礼します。早く母さんを安心させてあげたいし」

「ああ、これ助かったって伝えてくれ。変わるといいな。未来…」

「はい、悟空さんの強さを知って少し希望が持てました。」

「トランクスさん、また会えるかな?」

「分かりません…タイムマシンの往復分のエネルギーを得るにはかなりの時間が必要なんです…もし、それまでに生きていられたら必ず応援に来ます。3年後に…今度は悟飯さんも一緒に!」

それを聞いた悟空も悟林も笑みを浮かべた。

「生きろよ、いい目標が出来た。こっちもそのつもりで3年間たっぷりと修行するさ」

「私達も頑張るからトランクスさんも頑張って。未来の悟飯にもよろしく」

トランクスは笑みを浮かべてこの場を舞空術で飛び立ち、去っていった。

「よーし、みんなに説明しないと」

「おめえ、大丈夫か?」

「大丈夫、トランクスさんのこととか言わなきゃ良いんでしょ?おーいみんなー!!」

悟林と悟空は合流し、悟林がトランクス関連のことを隠しながら全てを話す。

流石に誰もがショックの色を隠せていない。

「ちょっと嘘臭い話だよな。未来からやって来たって言われてもなぁ……」

「タイムマシンでー?」

ヤムチャが軽く笑いながら言い、ブルマも少し笑う。

「別に信じないなら信じないで良いんだよヤムチャさん。どうせ後で困るのは3年後の闘いで人造人間に殺されるヤムチャさんだし、私は別にヤムチャさんが人造人間に殺されても痛くも痒くもないしねー」

「お、お姉ちゃん…!?」

あまりにも冷たい声に悟飯は悟空の服を掴む。

悟空も悟林の冷たい態度の理由が分かり、苦笑いを浮かべている。

恋愛事に対する関心は薄いものの、サイヤ人との闘いで死んだヤムチャを生き返らせるためにブルマはわざわざナメック星に行ったのに浮気性でブルマの怒りを買ったヤムチャへの悟林の好感度はマイナスの限界突破だ。

「え?あ、あの…悟林ちゃん…?俺、何かしたかなー?」

「さあ?」

幼い上に混血とは言えサイヤ人の冷たい視線にヤムチャは冷や汗をかきながら後退る。

「俺は修行するぞ…死にたくはないからな」

ピッコロは3年後の人造人間との闘いに向けて修行することを決意する。

それ以前にピッコロは悟林から聞かされなくても自慢の聴覚で聞き取っていたようだが。

「あ、お姉ちゃん。あれ?」

「ん?あ…」

悟飯に呼ばれて振り向いた先にはタイムマシンに乗ったトランクス。

悟林とトランクスの視線が合うと互いに手を振った。

そしてトランクスを乗せたタイムマシンは未来へと帰っていった。

「行っちまったな…」

「うん…また会えるといいな」

悟空は未来のトランクスの師匠となった娘の頭を撫でながら言うと、悟林はトランクスとの再会を願った。

「お…俺は修行をするぞ…」

「俺も…」

「(くそったれ…3年後には必ず俺が生き残ってやる…)」

これを見た皆は彼が未来から来たという事を信じ、それぞれ3年後に向けて修行をする事を決めた。

トランクスが伝えてくれた未来からのメッセージ。

地獄の未来を振り払うための闘いに挑むためにそれぞれが厳しい修行をする決意でいた。

「カカロット、教えろ…貴様ナメック星でどうやって生き残った…」

「そういやそうだ…フリーザの宇宙船はぶっ壊れてたんだろ?界王様も言っていた。助かるわけないってな…」

界王ですら助からないと断言したほどの絶望的な状況だったのだ。

一体悟空はどうやって生き残ったのだろう。

「ああ、オラだって駄目だと思ったさ。だけど運良くすぐ近くにその玉っころみてえな宇宙船があってよ。4つか5つか…」

それを聞いたベジータに心当たりがあったようだ。

「そ…そうか…ギニュー特戦隊…!奴らの乗ってきた船だ…!」

「…とにかくそいつに乗ってがむしゃらにスイッチを押したら上手く飛んで脱出出来たんだ。そんでもって宇宙船は勝手にヤードラットって星に着いちまった…」

「ギニュー達はヤードラットを攻めていた…そこに着くようにインプットされていたんだ…なるほど、その妙な服はヤードラット人の物か…」

悟空の服装は靴を除けば全て地球にはない物で、恐らくヤードラット人の民族衣装なのだろう。

「貴様のことだ…ヤードラットに行ってただ帰っては来るまい…奴らは力はないが不思議な術を使う…そいつを習っていやがったな…」

「当たり~!流石に良く知ってんな」

「そうか!お前それで今まで地球に帰ってこなかったのかよ!」

「ねえねえ、どんな術なの!?教えてよ!」

悟空がポルンガの願いで帰らなかった理由を理解し、ブルマは好奇心で悟空の術について尋ねた。

「時間が無くてよ、教えてもらった技は1つだけなんだ。そんでも、えれえ苦労したんだけどさ。瞬間移動って奴が出来るようになったぜ!」

「それで一度は地球に戻ろうとしたんだよね」

「ああ、その前におめえ達がフリーザ達を倒しちまったからな」

瞬間移動の習得に仲間がざわめく中、少し前にトランクスと共に聞いていた悟林は平然としていた。

「ほ…本当か孫…!やってみせろ…!」

「見たい?良いよ。これはさ、場所じゃなくて人を思い浮かべるんだ。そんでもってそいつの気を感じ取る…だから知った奴のいねえ場所とかは行けねえんだ。え…と、どこ行ってみっかな…よし」

「「あっ!」」

場所を決めたのか悟空の姿が一瞬で消えたことに悟飯とクリリンが声を上げた。

「ただいまー!」

そして間を置かずに戻ってきた悟空にベジータが皮肉気に口の端を上げた。

「ふ…下らん、何が瞬間移動だ。超スピードで誤魔化したにすぎん……」

「ねえ、お父さん。それ亀仙人のお爺ちゃんのサングラスじゃないの?」

悟空がかけているサングラスに見覚えのあった悟林が尋ねる。

「ああ、クリリン。これ返しといてくれな」

「お…おう、分かった」

「こ…こことカメハウスは1万㎞以上離れている…す…凄え…」

「本当だったろ!」

「あ…あんた今やもう何でもありね…」

クリリンにサングラスを亀仙人に返すように頼むとブルマはぽつりと呟いた。

「よし…ではみんな、3年後に現地で集合しよう。3年後のいつどこへ行けば良いんだ?」

「人造人間が現れるのは今から3年後の5月12日の午前10時頃。南の都の南西9㎞地点にある島だよ。1時間前に集まれば良いんじゃないかな?」

天津飯の問いにトランクスから聞いた情報を1つも間違えることなく説明する悟林。

「おめえ良く覚えてるなー」

「お…お前、悟林ちゃんが一緒に聞いててくれて良かったな…それにしても凄い記憶力だな…」

人造人間が現れる時間と場所を忘れていた悟空にヤムチャは悟林がいて助かったと心底思った。

「言っておくが自信のない奴は来るな!今度の敵は超サイヤ人になって今より強いはずの未来の悟林でさえ敵わなかったらしいからな」

「そ、そうか…お姉ちゃん…人造人間に殺されちゃったんだ…」

「元気出せよ悟飯。3年後に人造人間を倒しちまえば悟林ちゃんも生きていられるんだ」

自分を守って死んだ未来の姉を想って落ち込む悟飯にクリリンが慰めると、ベジータがピッコロに向かって言い放った。

「笑わせるな…一番自信のないのはてめえじゃないのか?」

「何だと?試してみるか?」

「まあまあ」

「喧嘩しないでよー」

険悪な雰囲気になりかけたところを悟空と悟林が仲裁した。

「ね、ねえねえ!ちょっと考えたんだけどさあ!その人造人間を造ったドクター・ゲロってのを今のうちにやっつけちゃったら!?居場所が分かんなくても神龍に聞けばきっと教えてくれるわよ!そうすりゃ何も3年後にわざわざ苦労することはないわ!」

「駄目っ!!それは絶対に駄目っ!!」

「な、何でよ…」

悟林に猛反対されたブルマはたじたじになりながらも理由を聞く。

「だって私が殺された相手なんだよ!?負けっぱなしなんて悔しいじゃない!それで倒したって全然嬉しくない!3年間修行して人造人間を倒してやるんだから!!」

「貴様と意見が合うとは珍しいな…そんな余計なことをしやがったらてめえをぶっ殺すぞ!いいな!!」

血の気の多いサイヤ人とその混血の発言にブルマがキレた。

「あんた達何考えてんのよ!ゲームなんかじゃないのよ!地球の運命がかかってんのよ!孫君だってそう思うでしょ!?ねっねっ!!悟林ちゃんのパパなんだから止めなさいよ!!」

「わ…悪い、正直言ってオラも闘いてえ…そ…それによ、その科学者、今はまだ何にも造ってねえだろうにやっつけるってのは…」

悟空の発言に体勢を崩すブルマだが、こうなったら数だと全員に叫んだ。

「みっ、みんな!こ、こんなサイヤ人達なんかに付き合うことなんかないわよ!こいつら戦闘マニアの人種なんだから!今度死んじゃったら二度と生き返れないのよ!」

一応悟飯もサイヤ人なのだが、悟飯はどうもサイヤ人の性質が強い悟林と比べて地球人としての性質が強いため、ブルマにとって悟飯はサイヤ人のカテゴリから外れているようだ。

「俺も闘う…自分の可能性を試してみたい…死ねばそれだけの物だったと諦めるさ…」

武道家として自分の力が超サイヤ人でも敵わなかった人造人間にどれだけ通じるか試してみたい天津飯は悟空側のようだ。

「あ…呆れた…」

武道家ではないブルマには理解出来ない思考なのでただ呆れるしかない。

「ブ…ブルマさん…お…俺思うんだけど…こ…ここにいるみんな…昔はそれぞれ敵同士だったろ…お…俺だって最初は悟空なんか嫌いだった…みんな凄え敵が現れるとしょ…しょうがないから手を組み出したんだ…そ…それでもっていつの間にか、な…仲間になっちまって…ふ…普通こんなことにはならないよ…みんなすっげえ恐ろしい奴らだったんだから…」

「…何が言いたいのよ…」

サイヤ人組に聞こえないようにクリリンはブルマに耳打ちする。

「…共通の敵という目的がなければピッコロはまあ大丈夫として、ベジータなんか何仕出かすか分かったもんじゃないすよ旦那…それこそとっくに地獄なんぞ…ね…」

「…クリリンさん、途中までは良いお話だったのに…」

「うるさい!生意気言うんじゃない!言ってることは正しい!じゃあお前は闘う気満々の悟林ちゃんを止められるのか!?言っておくけど俺は無理だぞ、超サイヤ人に勝てるわけないからな」

「無理です、僕じゃお姉ちゃんには勝てません」

「だろう?」

この中で実力のトップ3の悟空、悟林、ベジータが闘う気満々なのだ。

自分達にはもうどうしようもない。

「情けない男共ね…分かったわよ。好きにしたらいいでしょ。あんた達に巻き込まれるあたしみたいにか弱い一般市民はたまったもんじゃないけどね」

クリリンと悟飯の会話に呆れながら言うブルマ。

「でもブルマさん、本当にか弱い人はフリーザが現れる所になんか来ないよ」

「ははっ、確かにな!ブルマみてえなのを野次馬って言うんだろ?」

「そうそう!」

「「ははははっ!」」

「お黙り!戦闘マニア親子!!…本当にこの2人って親子ね…やばい独裁者みたい…絶対に間違ってる…親子揃って変態よ…しょうがないから一応付き合ってやるけど…」

呆れたように笑い続ける悟空と悟林を見つめるブルマ。

「じゃあさっき悟林が言った時間と場所に!本当に自信のある奴だけで構わねえからな!」

「カカロット…悟林…超サイヤ人になったからっていい気になるな…この俺はそのうち必ず貴様ら親子を叩きのめしてみせる…サイヤ人ナンバーワンは俺だってことを忘れるな…」

「ああ…」

「ベジータさん、私の名前を言ってくれるようになったんだね」

悟林の言葉にベジータは舌打ちしながら飛び立った。

「俺達も行く。じゃあ3年後に…」

「バイバイ」

天津飯と餃子も飛び立ち、悟林はピッコロに振り返る。

「ピッコロさん!修行つけてよ!」

「そうだなあ、ピッコロもやらねえか?組み手とかしてえし…オラが悟林と組み手してる間は悟飯が1人になっちまうからな」

「…良いだろう、悟林。修行をする以上厳しくするから覚悟しろ」

「望むところだよ!ピッコロさんこそ先にダウンしちゃ駄目だからね?何なら超サイヤ人抜きでやろうか?」

「ふ…言ってくれるぜ」

弟子である悟林の生意気とも言える発言にピッコロも不敵な笑みを返す。

「クリリンもヤムチャもどうだ?一緒に」

「え?」

「俺は良いよ、武天老師様と自分のペースで修行すっから」

「俺も遠慮する。正直言ってお前達の修行にはついていけそうにないからな…」

兄弟弟子であるヤムチャとクリリンも誘ったが、流石にサイヤ人3人とピッコロの修行についていけるとは思わないのか断った。

「それじゃあ、うちまで競争しようよ!ピッコロさんは数に入れないで、私とお父さんと悟飯で!」

「お、いいな」

「きょ、競争か…」

悟林の提案に悟空も乗っかり、悟飯は自信がなさそうだが…。

「ビリの人の今日のおやつは1位と2位の人が貰うからねー!」

「ははっ!これは負けらんねえぞ!」

「お、お姉ちゃん!お父さん!それ僕が一番不利だよー!」

飛び立った親子。

ピッコロも少し遅れて飛び立ち、余談だが1位は悟空、2位は悟林、ビリは悟飯であった。 
 

 
後書き
悟飯の戦闘力はフリーザ第二形態との戦闘前よりも少し衰えていますので思いっきりしごかれるでしょう。 

 

第18話

 
前書き
超サイヤ人になってから悟林のサイヤ人としての性質が強くなっていきます。

この作品はチチに(出来るだけ)優しい世界となっております。 

 
帰って母であるチチに人造人間が出現するので3年間修行すると説明したら返ってきたのは怒声であった。

「いい加減にしてけれっ!冗談じゃねえ!悟空さと悟林ちゃんはどこまで悟飯ちゃんの勉強の邪魔したら気が済むだよ!修行でもっと強くしてやりてえなんて大きなお世話だべ!悟空さ達だけでやってりゃええ!」

「いやあ、お母さん。丸1日机にかじりつかせてるのもどうかと思うけど?少しは運動させようよ。」

「おめえはこの前、勉強中の悟飯ちゃんを無理やり引き摺り出して組み手で大怪我させたでねえか!!」

今でも忘れはしない。

おやつを持っていこうとした時、外から轟音が聞こえて外に飛び出すとボロボロになった悟飯の姿とやり過ぎたと困ったように頭を掻いている悟林の姿。

「おめえそんなことしてたんか?」

「だって1人で修行してもつまらないんだもん。悟飯なら相手になるかなーって、でも私、ナメック星での闘いで強くなりすぎちゃってさあ…少ーし本気でやったら悟飯をボコボコにしちゃって…うん、お母さんの言う通り、確かに前のはやり過ぎたと思ってるから今度はもっと力をセーブして悟飯を殴るから大丈夫だよ!やり過ぎて悟飯が死んじゃったら修行の意味ないもんね!大丈夫、力のコントロールも大事な修行だからさ!」

「そういう問題じゃねえんだーーーっ!!」

どんどん思考やら価値観が地球人から離れてサイヤ人になっていく娘にチチの怒声が響き渡る。

「ま、まあまあチチ。悟飯の力も必要になるかもしれねえし、べ…勉強も分かるが、3年後には地球そのものがやばくなるかもしんねえんだ…」

「えっらそうに…大体オラは悟林ちゃんに拳法教えるのも反対だっただぞ!おかげで悟林ちゃん強くなりすぎて嫁の貰い手が見つかるのか分かんねえだ!それに悟空さは結婚してから一銭だって稼いだことあったか!?」

それを言われると悟空としても思うところがあったのか困ったように頭を掻いた。

「そ…それ言われっと辛えが…い…今はそれどころじゃ…悟飯も闘う気になってるし…」

「駄目だ駄目だ何と言おうと許さねえ!!」

「じゃ、じゃあおめえは地球のみ…未来より悟飯の勉強の方が大事だって…」

「そうだっ!当ったりめえだ!何が起ころうと知ったこっちゃねえ!悟飯ちゃんの勉強がいっとう大事なんだ!」

「死んじゃったら将来も何もないんじゃないかなお父さん…」

「未来の悟飯も生きててもそれどころじゃねえみてえだしなあ…」

トランクスと共に人造人間と闘って何とか生き延びている悟飯だが、未来の悟飯の年齢は今の悟空と同じくらいの年齢だろうし、人造人間のせいで悟飯は学者になれず、未来は荒れ果てているのだから3年後に倒した方が良いのではないかと思う。

「うーん、ようするにお母さんはお父さんが働いて家にお金を入れれば修行には文句はないわけでしょ?」

「「「え?」」」

悟林によって孫家の者達はパオズ山の悟林の修行場の1つであるかなり広い更地に引っ張り出された。

「ここは私の修行場なんだけど、ここが一番広いし、仕方ないからここを使おうか」

「お、お姉ちゃん。こんな所で何するの?」

「あ、悟飯。勉強ばかりでお父さんの昔話聞いてなかったね?ここを全部畑にするんだよ。素手で」

「あー、亀仙人のじっちゃんの修行かー。懐かしいなー」

「私達が競争しながら耕して畝を作って野菜を作るの。因みにルールは簡単。ビリの人はおやつと…夕飯抜き、そりゃ!!」

地面を殴りつけると地面に罅が入り、耕しやすくなった。

「よーし、競争しながらだって言うならオラも修行しながらやれそうだ」

「それじゃあ競争だよ、よーい!ドン!!」

悟空と悟林が凄まじい勢いで素手で土を耕し始め、チチと悟飯とピッコロはそれを見つめていたが、悟林からの怒声が飛んできた。

「こーらー!悟飯ーーーっ!!何をサボってるの!?ビリ扱いにして今日の悟飯の晩御飯は私とお父さんが全部貰うからねーーっ!!」

「ええ!?お姉ちゃんそれはないよーっ!!」

悟飯も慌てて参戦するものの素手での作業に慣れている悟空と単純に能力に差のある悟林には勝てずに結局ビリになってしまった。

そして今日の夕食。

「うーん、美味しいー」

「チチーお代わり」

「う…うう…ジュル…」

「ご、悟飯ちゃん…」

「……」

隅っこで猛烈な勢いで食事を掻き込む2人を涎を垂らしながら凝視するビリの悟飯。

ピッコロは水だけだが、悟飯の視線に飲みにくそうにしている。

「お仕事の後のご飯は格別だね」

「特にオラは久しぶりのチチの飯だからなー」

「ヤードラットでは何を食べてたの?」

「うーん、色々食わしてくれたけどよ。なーんか地球の飯に比べっとなー。まあ、美味えんだけどよ」

「明日は植える野菜のことを考えないとね。因みに雑草取りや野菜を採るのも競争だよ」

「おー、オラも負けねえかんな」

「でもこれだけじゃ物足りないよねー。ピッコロさんに頼んで重り入りの服を頼もうかな?手袋と靴とシャツで合わせて2tくらいの奴」

「うーん、もうちょっと重くても良いんじゃねえか?」

「そうだね、じゃあ倍の4tは?」

「そうだな、まずはそれくれえだな」

「うん、そうそうお母さん、これも修行だから悟飯に夜にこっそり差し入れなんかしないでね」

過酷な修行になりつつある畑仕事に付き合うことになる悟飯の表情が引き攣っていく。

このままではずっとビリのままでおやつも食事も抜きになってしまう。

それは流石に嫌だったので、悟飯は今まで以上に厳しい修行に身を投じるのであった。

因みに出来た野菜を出荷して得た金を悟空がチチに渡すと号泣された。 
 

 
後書き
何と言うかドラゴンボール超で思ったんだけど、耕すなどの作業は機械よりも悟空が素手でやった方が遥かに早いと思います。

重い装備で競争しながらやるので充分修行になります。

後、チチはナメック星で悟林が死んだことを知ってます。

胸に穴が開いた戦闘服姿で帰ってくればバレますが、一度死んでも闘うのは止めないのがサイヤ人なので、悟林の修行は仕方ないと認めている(死なれるよりはマシなので) 

 

第19話

 
前書き
ブルマはヤムチャが浮気性と言っていたけれど、無印とかでは明らかにブルマも人のことを言えなかったりするんだよなぁ… 

 
悟林は悟空と超化した状態で組み手をしていた。

悟空としては悟林が超化出来るようになっていたのがありがたく、互いに好戦的な笑みを浮かべながら拳と蹴りを繰り出していく。

離れた場所で悟飯とピッコロも組み手をしており、人造人間との闘いの修行はそれなりに順調であった。

「お父さん、超サイヤ人になったまま界王拳って使えないかな?」

一旦距離を取ると、今まで考えていた超サイヤ人と界王拳の併用について悟空に尋ねた。

「超サイヤ人の状態で界王拳か…あまりお勧めはしねえな」

悟空は構えを解いて思考すると、超化した状態での界王拳はお勧め出来ないようだ。

「どうして?」

「超サイヤ人になるとどうも気分が落ち着かねえ。そんな状態で界王拳のような少しのミスも許されねえ気のコントロールが出来ると思うか?それに超サイヤ人も界王拳ほどじゃねえが疲れる。もし使えてもすぐに体が保たねえし、長期戦も出来ねえ」

「むむ、そうか…」

簡単に強くなる方法はないのだと悟林は眉間に皺を寄せた。

「けどな、少しでも強くなろうって姿勢は良いと思うぞ。ただ鍛えるだけが修行じゃねえ。自分の使える技を工夫しようって言うのは良いことだしな」

悟空は微笑むと超化を解いた。

そろそろ昼食の時間だ。

以前超化した姿を見られてチチに怒られたことがあるので、チチの前では超サイヤ人の姿は見せないことになっていた。

「超サイヤ人は不良じゃないのにね」

何度説明しても超サイヤ人を不良で片付けるチチに悟林は溜め息を吐いた。

「そういうとこも母さんじゃねえのか?」

「…そうだね」

きついところもあるが、自分達のことを想ってくれる人だ。

お説教は嫌だが、2人にチチを嫌うと言うのは絶対にない。

「よーし、帰ろう。」

先に家に帰って手伝いをしなくてはと思っていたのだが。

「悟林ちゃん、西の都に行って買い物に行ってきてくれねえだか?」

「買い物?」

「調味料が少なくなってきてなあ、取り敢えずこの紙に書かれた物を買ってきて欲しいだ。」

「うん、良いよ」

必要な調味料の書かれた紙を受け取ると早速超化して超サイヤ人となると西の都に向かった。

「悟林ちゃん!不良は止めるだーーーっ!!」

後方のチチの怒声を聞き流しながら。

あっという間に西の都に到着し、チチに頼まれた調味料を大量に買ってパオズ山に帰ろうとした時にブルマの姿を見かけた。

どこか怒っているような気がするが。

「ヤッホー、ブルマさん」

「あら…悟林ちゃん」

「何か怒ってるけど…またヤムチャさんが女の子に鼻の下でも伸ばした?」

「あいつあたしに一言もなく旅に出ちゃったのよ!プーアルだけ連れてね!」

「あー、修行の旅ね」

恐らくヤムチャも人造人間との闘いのためにヤムチャなりに自分を追い込むために旅に出たのだろう。

「全く!恋人のあたしを置いていって!」

「仕方ないよ修行の旅なんだし、ブルマさんがいたらヤムチャさんも集中出来ないよ」

修行の旅の最中に危険なこともあるだろうし、身を守る術がないブルマを連れてはヤムチャも集中出来ないだろう。

大体根っからの都会人のブルマがヤムチャの修行の旅についていけるのかも疑問だ。

「はあー、悟林ちゃんって本当に孫君そっくり」

「え?そう?」

「そうよ、はあー…あたしってこのまま結婚しないで一生を終えるのかしら…」

溜め息を吐くブルマ。

悟林は困りながら頭を掻く…これは父親である悟空の癖である。

「えーっと、ブルマさん結婚したいの?」

「そりゃあね…あたしもそろそろいい歳だしさ…」

自分で言って不快になったのか表情を歪めるブルマ。

「ヤムチャさんのこと好き?」

「好きよ」

「じゃあヤムチャさんと結婚したい?」

「どうかしら…あいつ浮気性だし…」

「ブルマさんも大概な気がするけど…」

「何か言った?」

「ううん、なーんにも。ヤムチャさんは今でも浮気してんの?」

悟空からブルマのいい男好きを昔話で聞いていた悟林。

昔のブルマはヤムチャと言った顔の良い男にすり寄ることもあり、そして時々の会話でブルマのそう言う所が滲み出ることがあるのだ。

「分からないわ、必要以上に干渉なんて互いにしないし。浮気が発覚したらあたしが疲れるし」

「まあ、浮気するような人と一緒にいたら疲れるしね…(ヤムチャさんもブルマさんにそういうとこがあるから少しの距離を取りながら付き合ってるんだろうな…多分…)でもヤムチャさんが本当に好きなら結婚しても良いんじゃない?」

脳裏にトランクスの顔が過ぎるが、トランクスに胸中で謝罪しながら言葉を続ける。

こればかりはこの時代のブルマの気持ちもあるのだし。

「浮気性でも?」

「ヤムチャさんもどうしようもない人ってわけじゃないじゃん?結婚すれば変わると思うよ。私のお父さんだって結婚する前とした後じゃ違うところもあると思うけど」

「まあ、孫君がそれなりにパパしてるのは分かるけどね。でも働いてないでしょ?」

「残念でした。お父さんはつい最近農家さんになりました。」

「ええ!?孫君働いたの!?」

「お母さんの説得のためにね。修行も兼ねてるんだよ、昔の亀仙人のお爺ちゃんの修行で4tの重りの服を着て」

「よ、4t…あたしには想像出来ない世界だわ…と、とにかく就職おめでとうって孫君に伝えといて…後で必要な機械とか贈るわ」

「…機械より私とお父さんが素手でやった方が早いよ?」

「それでもよ、チチさんに使わせれば良いでしょ?」

「…お母さんも農作業は素手でやった方が早いと思うんだけど」

そう考えると悟空と双子もそうだが、チチも大概超人なのだろう。

「悟林ちゃん達の強さは両親譲りなのね…話は戻すけど結婚してもヤムチャを振り向かせ続けられる自信がないのよ」

「ねえ…ブルマさんはヤムチャさんのこと好きじゃないの?」

段々と面倒になってきたのか悟林の声に疲れの色が見える。

「好きよ、好きじゃなかったらナメック星にまで行かないわよ。大好きだけど、仮にヤムチャと結婚してもそこまで尽くす自信ない…別にヤムチャと別れたいなんて思わないし、一緒にいると楽だし。あっ、ヤムチャより好きな人が出来れば別だけどね。」

「ふーん、恋愛と結婚って面倒だね」

元々興味の薄かった恋愛だが、ここまで面倒臭くなると余計に遠慮したくなる。

「あんたも他人事じゃないわよ。あんただっていずれ恋愛と結婚するんだから」

「私は結婚とか恋愛には興味ないしね。そういうのは悟飯に全部任せるよ。どうせ学者になるんだから出会いなんていくらでもあるんじゃないの?」

「チチさん泣いちゃうわよ」

「私のことはどうでもいいじゃない…んー…じゃあヤムチャさんと上手く行かないならベジータさんならどう?」

「はあ!?悟林ちゃん、あたしに何か恨みでもあるわけ~?」

ブルマの表情が怖かったが、そこは同性の悟林なので怯まない。

「恨み?ないよ?」

「じゃあ、あたしを破滅の道に進ませたいわけ!?」

「何でそうなるの?」

「じゃあ何よ?どう言う根拠でベジータなのよ!?普通ならベジータよりクリリン君とかを勧めるでしょうが!!」

「ブルマさん、クリリンさんが好きなの?」

「違うわよ!一般的にベジータよりクリリン君の方がいいじゃないのよ!」

面倒臭くなった悟林は手っ取り早く片付けようとしてトランクスの父親であるベジータの名前を出したのだ。

「だって、ブルマさんの身近な男の人ってヤムチャさんを除けばベジータさんじゃん。クリリンさんはブルマさんのことそう言う風には(絶対に)見ないだろうし、お父さんはお母さんのだから論外。天津飯さんとかは知らないけどさ」

「あのね!ただ同居してるからってベジータは飛躍し過ぎよ!大体ね、あの男は前に地球を狙ってヤムチャ達を殺した男よ!悟林ちゃんだって殺されかけたんでしょ!?」

「あはは、あの時か…懐かしいね。あの時のベジータさんには全然歯が立たなかったもん。でもさ、ナメック星で一緒に闘ってベジータさんのことは少しは分かったよ。悪い人だけどお父さんとは違う意味で真っ直ぐなんだってこと。ブルマさんってヤムチャさんとかお父さんを良く見てるから自分に出来ないことが出来る人が好きって感じなんだよね。ベジータさんのこと、良く見てみたら?」

「あーもう!全然お話にならないわ!最近は酷いことに巻き込まれるし、人造人間のことと言い…フリーザやベジータと言い…悟林ちゃんが生まれてからとんでもないことばかりが頻繁に起こるわ…孫君がいる時も大概だったけど…」

疲れたように帰っていくブルマ。

ブルマの苛立ちと共に何気なく発した言葉はパオズ山に帰っても悟林の頭に何となく残った。

後日、ブルマから最新の農業機械が贈られ、早速チチに勧められて悟空が乗ってみた。

どうやら悟空が動かすこともあって操作はかなり簡単な物のようだ。

「どう?お父さん?」

「どうだべ?悟空さ?」

悟林とチチがトラクターに乗っていた悟空に尋ねると、悟空はトラクターを止めて振り向いた。

「自分でやった方が早えな」

「だよね」

「だな」

せっかく貰って全く使わないのもあれなのでチチに使ってもらうことになったのであった。 
 

 
後書き
この時期の…ベジータと結婚する前のブルマは悟空達の闘いを他人事のように見ていると思うんですよね…。

悟空達=人に迷惑かける知り合い

結婚する前のブルマ=巻き込まれる常識人

まあ、恋人のヤムチャがもう既に戦力外になりかけていたからチチみたいに諦めの部分が強いとはいえ向き合うことが出来なかったからなんでしょうけど 

 

第20話

 
前書き
悟林が超サイヤ人になったことで原作以上にプライドがボロボロになったあのキャラも… 

 
悟林は人造人間との闘いに向けて修行している時である。

今日は悟空とピッコロが悟飯に修行をつけているので、自分は今日は1人で修行していた。

少し張り切りすぎて神様が新しく直した月を壊してしまったが、気にしないでおこう。

誰もいない荒野で界王拳を何度も発動を繰り返す。

超化出来るようになったことで戦闘時での界王拳の使用の必要はなくなったが、気のコントロールの修行にこの技は最適であった。

全身の気を一切のブレなくコントロールする作業を繰り返すことで気の扱いは目に見えて向上する。

特にこの修行の恩恵を受けているのは魔貫光殺砲である。

最大威力を発揮するのに溜めが必要なこの技だが、従来よりも遥かに短い時間で溜め終わることが出来た。

「ふう…」

界王拳を解いて息を吐くと空腹であることに気付いた悟林は早速狩りに向かう。

探せば獣や恐竜くらいは見つかるだろうと、思って探すと中々に肥えた獣を発見し、それを狩ると気で焼いてあっさりと平らげる。

普通なら充分だが、悟林はサイヤ人。

1匹では足りず、更に獣を数匹狩ってそれを丸焼きにして平らげることで満腹となる。

「うーん、満足満足」

満たされた腹を撫でながら横になると、良い匂いがした。

「この匂いは…肉?それにこの気は…」

匂いを辿っていくと、そこには気功波で仕留めた恐竜の肉を食べているベジータの姿があった。

「…貴様か」

「あれ?ベジータさんじゃない。こんなところで修行?」

「ブルマの奴が重力室の電源を切りやがったんだ。サイヤ人の王子である俺を使い走りさせやがって…」

「ああ、買い出しさせられたんだね。でもブルマさん達のおかげでえーっと、300倍の重力室で修行出来るんだから良いじゃん。流石だねベジータさん…サイヤ人の王子様なだけあるね」

「ふん、そうやって上から目線でいられるのも後僅かだ。貴様ら下級戦士一族の栄光はな」

「どういう意味かな?」

「俺もなれたんだ。超サイヤ人にな」

「ベジータさんが?穏やかな心がないとなれないのに?」

地球での暮らしで幾分静かになったが、戦闘力はともかく超サイヤ人になれる程とは思えない。

意外そうに見上げるとベジータは不敵な…彼らしい笑みを浮かべる。

「穏やかだったさ…穏やかで純粋だった。ただし純粋な悪だがな。ただひたすら、強くなることを願った。自分の弱さを認めると言う屈辱を受け入れ、凄まじい特訓を繰り返し、そしてある日俺は自分の限界に気付いた…。カカロットや貴様に先を行かれ、終いにはどこの馬の骨とも知らん奴にさえ先を行かれた自分への怒りで突然目覚めたんだ。超サイヤ人がな」

超サイヤ人が3人。

特に自分よりも年下で、ベジータからすれば正体不明のサイヤ人であるトランクスやそれよりも年下の悟林にまで負けたのはプライドを大きく傷つけられ、そしてその2人にまで負けているというその怒りが起爆剤となり、まだ足りないS細胞の数を補って余りある程に刺激して増やし、ベジータを超サイヤ人の領域へと押し上げたのだ。

「凄い…凄いよベジータさん…」

口から思わず出たのは感嘆。

そして思わず悟林は超化した。

「何のつもりだ?」

超化した悟林を見ても余裕の態度。

超化した理由など純粋なサイヤ人であるベジータは理解しているのだろう。

悟林は闘いたいのだ。

自分を上回る父親以外の超サイヤ人に。

「勝負しようよベジータさん…!」

「ほう、超サイヤ人の境地に達したこの俺に挑もうと言うのか?」

「うん!」

戦闘欲に支配された悟林の視線を心地良さそうに受けるベジータ。

「良いだろう…光栄に思うが良い!貴様はこの超ベジータ様の最初の相手だ!!」

「だああああーーーっ!!」

ベジータも超化し、2人は激突した。

超パワーのぶつかり合いにより、周囲の岩が吹き飛ばされていく。

拳と蹴りを互いに繰り出し、叩き付けるとクレーターの規模が深く、広がっていく。

悟林の拳を受け止めるとベジータは上空に蹴り上げ、吹き飛ばされた悟林は真上に気功波を放って急停止して真下を見るが、ベジータの姿がない。

「上だ」

「うわあっ!」

ベジータは悟林の脳天に組んだ拳を叩き付ける。

悟林は何とか体勢を立て直して着地するとベジータに気弾を連射する。

そして気弾に小型の気円斬もいくつか混ぜてベジータに放つ。

「俺にこんな小細工は効かん!」

しかしベジータは気弾に混ざった気円斬を見破り、全てかわしてみせた。

「本命はこっちだーーーっ!!」

しかし悟林とて気円斬がベジータに通じないのは予測済み。

気円斬は凄まじい殺傷力を誇るがスピードが遅いため、対処はしやすい。

いくら小型化してスピードを上げたとは言え、超化したベジータが見切れないはずがない。

しかし気円斬は凄まじい殺傷力のために回避にいくらか気を割かねばならない。

悟林はベジータの横っ面に全力の回し蹴りを叩き込んだ。

「ぐっ!!」

「だだだだだだ!!」

怯んだベジータに悟林はラッシュを仕掛ける。

数発貰ってしまったが、ベジータはすぐに立て直して悟林の腹に拳を叩き込んでそのまま気功波を放った。

気功波に押された悟林は岩壁に叩き付けられる。

「どうした?そんなものか?」

ベジータの挑発に悟林は自分を下敷きにしている岩を気で吹き飛ばすことで答えた。

「そんなわけないでしょ?こんな楽しいことあっさり終わっちゃ勿体無いよ」

「ふん…人造人間とカカロットとの闘いの前にこれ以上の余興はないだろうな」

「余興にしちゃ派手だけどね」

「くっくっく…これくらいが丁度良いだろうが!!」

「まあ、私は勝つつもりで行くけどね!!」

再び2人はぶつかった。

体格は言うまでもなくベジータが上だが、混血とは言え悟林とてサイヤ人。

自分より上の体格の相手と闘ってばかりなので機転を利かせて体格差を埋めていく。

しかし、やはり経験も戦闘力も上を行くベジータには押されていき、悟林はベジータの拳を喰らって地面に倒れる。

「特別に見せてやろう。俺の新必殺技、ビッグバンアタックをな!!」

舞空術で上昇し、気を放出すると手のひらに高密度の気弾を作り出した。

「はは…凄い気だ。」

かなり闘ったと言うのにまだこれ程の余力があるベジータに悟林は敬意を抱いた。

「これで終わりだ!!」

ビッグバンアタックが悟林に向けて発射されたが、これに対して悟林は笑みを浮かべた。

「悪いねベジータさん。私は負けるつもりなんかないんだ…私の中のサイヤ人の血が叫んでる…“もっと先へ、もっと強くなれ”ってさ!!」

「っ!!」

悟林の姿が悟空と重なったように見えたベジータは目を見開く。

「魔閃!かめはめ波ーーーっ!!!」

悟林もまた最高の技で迎え撃ち、ビッグバンアタックと魔閃かめはめ波の激突によって無人の荒野が凄まじい閃光で照らされた。

数分後、気絶した悟林はベジータによってパオズ山まで運ばれ、孫家の前で倒れていたと言う。

運んでくれたなら家の中に入れても良かったんじゃないかとも思ったが、ベジータはまだまだ修行中で調整の途中だったのだろう。

中途半端な状態で悟空と会うつもりはないのだと悟林は何となく分かった。

後日、会ったブルマに最近妙にベジータの機嫌が良いと聞いた。

会話の内容がほとんどベジータで構成されていたのでこの時代のトランクスに会えるだろうかと悟林はわくわくした。

最近修行の旅から帰ってきたらしいヤムチャの背が煤けていたが気にしない。

生まれたら未来の自分同様に自分が鍛えてやると意気込みながら日々の修行に打ち込む。

因みに悟空だけにベジータが超サイヤ人になれるようになったと報告すると。

「おーそっかそっか」

怪物魚の丸焼きに齧りつきながら、ライバルのパワーアップを喜んだのであった。 
 

 
後書き
悟林とベジータが強くなってニッコリで食欲マシマシな悟空さ 

 

第21話

 
前書き
悟空と悟飯は性格はともかく、親子としての相性はあまり良くなかったんじゃないかなと思います。

体を動かすのが大好きな父親と勉強大好きな息子…悟空も頭の回転は悪くないし、知識不足なだけで頭は良いはずなんだけど…と言うか頭が悪かったら絶対に思い付かんようなことやってるからな… 

 
悟林と悟飯による組み手の結果はほとんど悟飯の負けで終わっている。

片や超サイヤ人へと変身でき、おまけにそれを抜きにしても界王拳まで使えるのだ。

宇宙船での修行とナメック星で死にかけてパワーアップした姉に対して悟飯は超サイヤ人になれず、ナメック星に帰ってからは勉強に時間を割いていたせいかどうも勘が鈍っている感じがする。

ハッキリ言って攻撃がワンパターン過ぎて悟林の方が飽きてしまい、中断してしまう。

「あーもう、つまんない…お父さん!ピッコロさん!勝負しよう!!」

そして悟飯との組み手を放棄してそのまま悟空とピッコロに突撃してくる悟林に悟空は苦笑し、ピッコロは呆れながら応戦するのであった。

「相変わらず極端な姉弟だな」

好戦的な姉に穏和な弟。

どうしてこうも同じ環境で育って極端な性格になるのかピッコロには分からない。

「はは、オラは悟林が一緒に修行してくれて色々助かってっけどな」

やはり修行と言うのは1人よりも一緒にやってくれる相手がいる方が遥かに効率が良い。

自分や相手の悪い部分が分かりやすくなるメリットもある。

ピッコロにとって悟飯は相変わらず素直な弟子だった。

無理難題を吹っ掛けても、やる気満々の悟林の隣で情けない顔をしながらも結局は一生懸命にピッコロが課した無理難題をこなしていくので悟飯の実力は着実に伸びた。

ただ、どこかで悟飯はもっと強くなれるはずだというもどかしさもあり、双子の姉の悟林がここまで強くなれたのだから、同様の素質は確実に眠っていると言う確信が悟飯の潜在能力の凄まじさを間近で見たピッコロにはあった。

ただ本能的に力を使いこなせる…悟空のようなタイプである悟林とは異なり、悟飯は追い詰められてから…感情の爆発によって限界以上の力を引き出せるタイプであった。

そのため、後先考えずに攻撃してしまい、体力切れを起こしてしまって危機に陥るのは一度や二度ではない。

感情をコントロールしながら秘められた力を使えるようになれば悟飯は一気に実力を伸ばせるだろう。

しかし、悟飯は地球人の性質が強い上に性格上の問題で強さには無頓着である。

そして、案の定と言うべきか悟空の悟飯への指導は悟林と比べて甘いものだった。

そしてパオズ山で1年ほど過ごした今、休憩中にとうとうピッコロは悟飯の鍛え方について悟空に文句を言う。

「貴様はもう少し悟飯を厳しくしたらどうだ?貴様のやり方は温すぎるぞ」

「‥‥ピッコロ、悟飯が悟林と違って闘いを好きじゃねえってこと、おめえは分かってんだろ?」

「そんなことは最初から分かっている。しかし敵に殺されてしまっては、元も子もあるまい?悟飯が重要な戦力であることには変わりはないだろう。特に今回は超サイヤ人になれる未来の悟林さえ敵わなかった相手だぞ」

「おめえの言うことは分かる。確かにオラも悟飯が強くなってくれりゃ嬉しいけどよ。悟飯は、自分も何か出来るんだからやんなきゃなんねえって、責任感みたいなもんで修行してる。オラや悟林みてえに単純に強くなりたくて修行してんじゃねえ。強くなることにこだわりがねえから、オラもおめえも逆に物足りねえ感じが出てきちまう。それに…」

「それに…何だ?」

「悟飯が闘うきっかけはベジータ達だったろ?元々悟飯は武道に興味なかったし、武道なんてただ痛えだけの怖いもんだと思ってたとこもある。悟林みてえに最初から武道に興味があったわけじゃねえし、オラや悟林みてえに腕を磨いて勝負するライバルもいねえし、闘う楽しさを得られる土台もねえ。悟林が悟飯のライバルになってくれりゃ良いんだけど、どうも悟林は悟飯をそう言う風に見るつもりはねえみてえだし」

娘のライバル心は主に自分やベジータに向けられているところがあり、悟飯に対しては弟だから守る存在としか見れないのだろう。

この前ボロボロになって帰ってきた悟林はベジータよりも強くなってやると自分に意気込んで更に過酷な修行に身を投じた。

そう言う負けず嫌いの娘の姿に悟空は嬉しく思いながら身近なライバルで大事な娘の成長を願う。

サイヤ人としては愛情深い部類に入る悟空。

宇宙船での濃い修行の日々を過ごした悟林を大事に思っているし、自慢の娘だ。

「それによ、あっちの未来じゃ人造人間と闘えたのは悟林しかいなかったんだろ?オラも一緒に闘うからあっちのようにはならねえと思うぞ」

あっちの未来ではベジータは超サイヤ人にはなれなかったのか、それとも別の理由があったのか…とにかく負担が全て悟林に行ってしまったのだろうが、ここではそんなことにはなるまいと悟空は思っていた。

「…本当に甘い奴だな。その甘い考えがいつか貴様の身を滅ぼすぞ」

「へへ、すまねえな。おめえの言ってることの方が正しいのはオラも分かってる。でもオラはオラのやり方しか出来ねえからな」

悟空の言葉にピッコロは舌打ちしながらそっぽを向いた。

悟空達が人造人間との闘いに備えて修行している中、20年後の未来のパオズ山でトランクスが長い黒髪の女性と悟空に似た男性となった悟飯と共に1つの墓の前に立っていた。

「悟林さん、今日は悟林さんに報告があります」

過去から帰還し、ようやく一段落ついたトランクスは自分の初めての師匠である悟林の墓に報告をしに来たのだ。

悟林と悟飯が話してくれた悟空が言っていた通りの頼もしい人であったこと。

悟林から聞いていた通りベジータは善人ではなかったが、とても誇り高い人だったこと。

悟林と悟飯の師匠であるピッコロや仲間であったクリリン達のことも。

「あたし達がドラゴンボールを使わなかったら…」

「いや、気にしなくていいさ。君達が願いを叶えなくてもきっと間に合わなかった。」

悟林に逃がされた悟飯が願いの現場に駆けつけた直後に神龍が消えてしまったのだ。

どのみち間に合わなかったのだ。

寧ろ彼女が願いを叶えたことでトランクスに自分達以外の支えが出来たのだから良かったのだろう。

姉の悟林が死んだ後も彼女はトランクスを支えてくれたのだから感謝しかない。

悟飯とトランクスの成長もあり、善戦は出来る程度にはなったが、まだまだ超えるには至らない。

奴らを倒すには善戦出来る程度では駄目なのだ。

それだけに姉の強さが理解出来てしまい、目標はまだまだ遠いと悟飯に思わせた。

「せめて俺があの時、一緒に修行していたら姉さんは今でも生きていたんだろうか…?」

「悟飯さん、そんなに自分を責めないで下さい。」

女性がそう言うが、悟飯の表情は変わらない。

父が病気で死んだショックで塞ぎ込んでいた自分とは対照的に姉は勉強をさせられながらも修行や悟空がチチに説教されないために家族全員で作った畑の作業に打ち込んでいた。

何て薄情なんだろうと憤ったが、姉は自分よりも地球や自分達の置かれた状況が分かっていたのだろう。

もう地球には頼れる悟空がいないのだから残された自分達がやらねばならない。

姉が自分を修行や畑作業に誘わなかったのは自分が塞ぎ込んでいたのもあるだろうし、自分の学者になりたいと言う夢を尊重してくれたからだ。

けど、もう地球には父も姉もいない。

もう2人の後ろに隠れることは出来ない。

父や姉の代わりに地球を救わねばならない。

とりあえず修行をしなければ、最低でも地球に帰還した時の父親くらいの強さにならなければ。

過去の父も姉も強くなるだろう、あの2人は目標があればどんどん強くなる人達だから。

自分が守らなければ、父や姉の代わりにならなければ。

報告を終えたトランクスは立ち上がると、悟飯達と共にパオズ山を去っていくのであった。 

 

第22話

 
前書き
悟林の服装は亀仙流道着に戦闘服の手袋と靴の所謂色違いのベジットスタイルです。 

 
3年。

時間は誰しも平等に訪れ、流れてゆく。

普段と変わらぬ時間に起きた悟林は、いつもと変わらない日常の朝を迎え、チチお手製の食事を済ませて亀仙流の道着に着替え、ナメック星で着た戦闘服の手袋と靴を身につけた。

地球人の道着とサイヤ人(正確にはフリーザ軍)の戦闘服の合体スタイル。

自分の目標である2人のサイヤ人を意識しつつも、自分は地球人とサイヤ人の混血であることを誇るような姿だった。

「良いだか悟飯ちゃん?悟林ちゃんから絶対に離れるでねえぞ?悟林ちゃんも悟飯ちゃんを守るだぞ?おめえは姉ちゃんなんだからな」

「勿論、悟飯はいつでも私が守ってあげるよ。」

「お、お母さん!お姉ちゃん!ぼ、僕だって闘えるよ!い、いつまでもお姉ちゃんに甘えてるわけじゃないんだから…!」

「ふふ、そう言うのは私に一本取れるようになってから言いなさい。でもまだまだ悟飯ちゃんには負けてあげないけどねー」

からかうように言う悟林と悔しそうな悟飯。

双子の微笑ましい姿に悟空達は笑みを浮かべる。

「悟空さとピッコロさも気を付けるだぞ……本当に弁当持ってかねえだか?」

「ああ、すまねえチチ。行ってくる!」

悟空の言葉と共に4人は目的地へと向かっていった。

「おーい、悟飯。そんなに飛ばさなくても間に合うんだからスピード落としなさい。体力がなくなっちゃうよ」

「あ、うん」

悟林の注意に悟飯はスピードを落とした。

「孫悟空、どうだ…正直言って今度の敵…勝てると思うか…」

双子が話し合っている隣でピッコロが悟空に尋ねる。

「見てもいねえのに分かりっこねえさ。やってみてから答える」

「呑気で良いな貴様は…俺だって自信がないわけじゃない…だが、どうも嫌な予感が頭から離れん…」

「ピッコロ、頼むからおめえはやばくなっても無理すんなよ。おめえが死んだらドラゴンボールもなくなっちまうんだから」

新しいナメック星への正確な場所が分からない以上、ナメック星のドラゴンボールにも頼れない。

ピッコロの死がアウトなのだ。

「お父さん、クリリンさんだよ!おーい!クリリンさーん!」

「クリリンさーん!」

双子が声をかけるとクリリンが振り返った。

「お…おう、大きくなったな2人共…」

「何だよクリリン、久しぶりだってのに随分元気ねえじゃねえか」

「これから化け物と一戦やらかそうって時に浮かれてられっかよ…お…俺は超サイヤ人じゃないんだぜ…」

「…お、見えてきたよ」

「南の都の南西9㎞地点…あれだ!あの島だ!」

南の都、南西9㎞地点。

その場所に到着してみれば、結構大きな島で、まずい事にわりと大きな町まである。

「結構でけえ島だな」

「ああ、まずいぞ…わりと大きな町まであるじゃないか…」

「人造人間を他の場所に誘い出さないと島の人達が闘いの犠牲になってしまうかもしれませんよ…」

「そうだね、ここで暴れられたら私達も全力で闘えないからね…えーっと、他のみんなは…」

悟飯の呟きに悟林がそう返すと、周囲を見渡す。

「あの山の辺りにでかい気を感じるから、あそこにヤムチャさん達がいるかも」

「行こう!」

クリリンが山の方を見遣りながら言うと、このまま宙に浮いていても仕方がないので、とりあえず悟空の指示に従って仲間と合流するために気のある場所へと移動する。

「おーう!」

ヤムチャが大手を広げて呼び、そこには天津飯の姿とブルマの姿もあった。

「ブ、ブルマ…!?」

「待ってたぞ!お前達、ちょっと遅刻だ」

「やっほー!あらー、大きくなったわね、悟林ちゃんと悟飯君」

にこにこ笑うブルマに、悟空が呆れた。

「馬っ鹿だなー!おめえまで何だってここに来んだよ」

「見学に決まってんじゃない、大丈夫よ、人造人間を一目見たら帰るから」

……フリーザを見に来た辺りから、何だか物凄く度胸が上がったというか、強くなったというか。

「お…俺はそんなことよりブ…ブルマさんの抱えてる物体の方が驚いたけど…」

「結婚したんですね!ヤムチャさんと」

しかし振り向いて見ればヤムチャはムスッとしていて、実に不機嫌そうな顔だ。

不機嫌を隠そうともしない声で答える。

「…俺の子じゃねえの…とっくに別れたんだ俺達よ…誰の子か聞いたら驚くぞおめえら」

「お…おおー!トランクス君!トランクス君だ!お父さんのベジータさんに似て強そうな顔だね!貸して貸して!抱っこさせて!」

未来の弟子となるトランクスの姿を認識した悟林は凄い勢いでブルマに迫る。

その勢いに引きながらもブルマはトランクスを悟林に渡した。

「な、何でそんなこと知ってんのよー!あたし驚かそうと思って誰にも連絡してないのに…」

「別にブルマさんがベジータさんとくっつくのは予想出来てたし、この凛々しい目付きを見てよ。ヤムチャさんに全然似てないじゃない。」

「な、何であたしとベジータがそうなるのが分かるのよ…?」

「私と会って話す度にベジータがベジータがベジータがって言ってればブルマさんがベジータさんのこと好きなの丸分かりだし、予想つくよ。あの時のブルマさんはほとんどベジータさんのことしか話に出してなかったからね…隠したいならもっとベジータさんの話題を控えたら良かったのにさ…」

「あ、あらやだ。あたしとしたことが…でも何で名前まで知ってんの?」

「さあー?何でだろうねー?可愛いなあ、トランクス君。大きくなったら私が修行をつけてやるからね!魔閃光も魔貫光殺砲も教えるし超サイヤ人にだって変身出来るようにしてあげる。君が私の弟子1号だ!自分でライバルを育てるのもいいしね」

悟林は想像する。

超サイヤ人となったトランクスと思いっきり修行する日々を。

「あ、あんまりやりすぎないでよね…」

「大丈夫だよ、酷いことになっても海に落とすか岩に埋まるだけだから」

「駄目よ!絶対に駄目!海に落としたり岩に埋めるのは悟飯君にしなさい!」

「何でー!?」

「そ、そんな…ブルマさん酷い…」

「嫌だよ!悟飯と修行するのつまらなくて飽きたもん!私はもっと強い相手と修行したいの!トランクス君なら絶対絶対悟飯よりずっとずっと強くなれる!!私がトランクス君を鍛えて最強のライバルにするんだー!!」

「だーめーよー!!トランクスを返しなさいーーー!最強のライバルなら弟の悟飯君を鍛えなさいよーーー!!」

「いーやーだー!!悟飯を鍛えても全然楽しくないからいーやーだー!!ブルマさんのケチーーーっ!!お金持ちなのにケチーーーっ!!」

「ケチとは何よーーーっ!!」

トランクス争奪戦を繰り広げる2人。

幼いトランクスは2人に挟まれて楽しそうに笑っていた。

「………」

「元気出せよ悟飯。ま、まさかブルマさんがベジータと…」

落ち込んでいる悟飯をクリリンは同情しながら肩を叩いた。

「…誰か俺を慰めてくれないのか?」

「まあ、元気出せってヤムチャ」

「悟空…!」

落ち込むヤムチャの肩に悟空がポンと置いた。

「うるさいぞ貴様ら!それよりもベジータはどうしたんだ。姿が見えんが…」

耳の良いピッコロには悟林達の喧嘩は騒がし過ぎたので怒鳴ると、話題となっているベジータはどこにいるのか尋ねる。

「あたし知らないわよ、今一緒に住んでるわけじゃないしさ。でもそのうち来ると思うわよ、この日に備えて凄い訓練やってたみたいだし…」

「来るさ…絶対あいつは来る…」

「うん、ベジータさんは絶対に来るよ。未来での話だからって負けっぱなしなんてあの人は絶対認めないから…そう言えば餃子さんは?」

ベジータと言う人間を良く理解している2人の言葉。

そして悟林は餃子の姿が見えないことに気付いて周囲を見渡す。

「餃子は俺が置いてきた。修行はしたがはっきり言ってこの闘いにはついていけない…」

「そっか、ちょっと残念」

餃子とは会話はしたことがないが、共にサイヤ人と闘ったのだから少し残念だ。

「あの…今、何時ですか?」

「え…と…9時半…後30分で現れるはずよ」

悟飯が時間を尋ねると人造人間との闘いまで残り30分。

「今のうちだ、帰った方がいい。赤ん坊まで連れて来たんじゃ特にだ!」

「だから人造人間てのを一目見たら帰るって!」

「言うことを聞かないママだねー。トランクス君はブルマさんみたいになっちゃいけないよ?」

「?」

「失礼ね!このあたしほど人間の理想を体現しているのはいないわよ!」

「…あ、うん…」

ブルマの発言にツッコめなくなってしまった悟林はトランクスと戯れることにした。

「………」

「複雑か?悟林ちゃん取られて」

「そ、そんなわけないじゃないですか!僕はもうそんな歳じゃありませんし!」

トランクスと戯れる悟林を見つめる悟飯に、クリリンがからかい気味に尋ねる。

「ショックだな~俺…」

トランクスを見つめながらぼやくヤムチャ。

何かに気付いたピッコロが静かに呟いた。

「何者かがこっちに来る。邪悪な者ではない…」

「え?ベジータさんかな…」

「あいつは邪悪だろ…」

「クリリンさん、トランクス君の前でそんなこと言わないで。ベジータさんはトランクス君のお父さんなんだから」

「そ、そうだな…」

小型飛行機が近づいてきて、その中にいる人物を見て悟空が笑む。

「あーヤジロベー!」

「間に合って良かった」

ヤジロベーは着地し、飛行機から降りる。

「よう、ヤジロベー。おめえも戦いに!?」

「……これ、カリン様から仙豆だ」

「おっ!助かりー!さっすがカリン様だな!」

仙豆の入った袋を渡すと、ヤジロベーはすぐさま飛行機に乗る。

「じゃあな、頑張れよ」

「え!?おい、ヤジロベーも闘うんだろ!?」

「俺はおめえ達のような馬鹿と違って死にたくねえんだよ。いちいち付き合ってられっか」

そのまま去っていくヤジロベー。

凄く本能に忠実と言うか、普通の人を象徴していて悟林はその姿を新鮮だと思う。

「妙だと思わんか…10時はとっくに過ぎているのに。敵の気配が全く感じられん…」

「え?」

「そ…そう言えば…」

天津飯の呟きに一同が振り返り、悟飯も同意する。

ヤムチャが希望的観測を口にした。

「やっぱりあいつの出鱈目じゃなかったのか?人造人間なんて…」

「…でも10時頃って言ったのよ。今、10時17分だから分かんないわよ」

「それにしても強い気などまるで感じられないんだ。そんなに凄え奴らならこの地球のどこにいたって分か…痛え!?」

悟林によって脛に蹴りを入れられたヤムチャ。

抗議しようとしたが、超化してヤムチャを冷たく見据える悟林にヤムチャは冷や汗を流した。

「トランクス君を悪く言わないでよおじさん」

「おじさ…!?お、俺はその子には何も言ってな…!」

「問答無用。人造人間の前に殴り潰してやる」

「ま、待て落ち着け!落ち着いて話し合おう!超サイヤ人の悟林ちゃんに殴られたら死んじまう!」

「トランクスのこと本当に気に入ったんだなー」

「いや、ヤムチャさんが言ってたのは未来から来た奴だろ?何でそれで悟林ちゃんはあんなに怒るんだ?」

悟空とクリリンの会話の直後にヤジロベーの乗っていた飛行機が爆発した。

「ヤジロベーさんの飛行機が!?」

悟林が爆発したヤジロベーの飛行機を見つめながら叫び、ピッコロが近くの人影を発見した。

「見ろ!何かいるぞ!あれが攻撃したんだ!」

飛行機の爆発地点からほんの少し上空に明らかに飛んでいるとしか思えない人物が2人いる。

遠い上に爆発の煙が邪魔をしていたため姿が見えず、2人はそのまま下の町に降りた。

「見えたか!?」

クリリンに問われ、悟林は首を横に振り、悟空も同じように首を振った。

「い、いや、どんな奴か分からなかった……!ど…どういう事だ……。ま…まるで気を感じなかったぞ…」

町を見下ろしてみても、高い山の上からじゃどこに降りたのか分からない。

すぐに見失ってしまい、悟空の言うとおり、2人からは気などなかった。

もしあれば、ヤジロベーの飛行機が爆発する前に分かったはずなのに。

「じ、人造人間だからだ……き…気なんてないんだ…」

「な…何だと…!」

「人造人間はどこに降りたんだろう?」

「気を感じないのであれば直接目で探すしかあるまい…!」

悟林の言葉にピッコロが答える。

当たり前の事だが、気を感じ取れないのであれば、直接肉眼で確認するしかない。

「よし。みんな散って探そう!ただし深追いはするな。発見したらすぐみんなに知らせるんだ!悟飯はヤジロベーを見てやってくれ。まだ生きてるはずだ!」

「はいっ!」

「行くぞ!」

ピッコロの言葉を合図にそれぞれが散る。

悟林も例に漏れず、町中を探し出した。

人造人間との闘いが幕を開けた。

急いでいたため、周りの人がどう思うかを完全に失念していたが、幸いにも悟林が降りた付近は人がいなかった。

走って大きな通りに面した道に出るが、普通に歩く人々ばかりで、怪し気な空気を発している者はいない。

いくつか人の集まっている場所を見てみる。

「……そもそも人造人間の顔を知らないんだから、探そうったって…探しようがないよね。トランクスさんに人造人間の特徴を聞いとけば良かった。」

手当たり次第に、“あなたは人造人間ですか?”なんて馬鹿みたいに聞けないが、かといって見つけられないと取り返しがつかない事になりかねない。
 
仕方なく、当てもなく探していると、大きく気が乱れて減っていくのに気付き、この気の質からしてヤムチャだ。

ヤムチャがいる場所にすぐさま移動した悟林。

既にヤムチャは不気味な2人組みのうちの1人の攻撃を受けて既に意識がなく、腹を突き抜けた手が引き抜かれた。

「ヤ、ヤムチャ!」

「こいつらがトランクスさんの言っていた…」

後に悟空達も同時に到着し、悟空がヤムチャの状態を見て叫んだ。

不要とばかりに放されたヤムチャは無惨に転がり、悟空がクリリンに指示を飛ばす。

「クリリン!ヤムチャはまだ生きてる!仙豆をさっきのとこに置いてきちまったから、連れてって食べさせてくれ!」

「わ…分かった…!」

クリリンはヤムチャを連れて先程の場所へ戻っていった。

「あなた達が人造人間…何かイメージと違うなあ…もっと強そうで怖そうなのを想像してたけど」

悟林がイメージと正反対の見た目の老人と白い人形のような人造人間に拍子抜けする。

しかし、こういう見た目に騙されて未来の世界の自分達はやられてしまったのかもしれない。

「不思議だ…何故我々が人造人間だと分かったのだ?それにここに現れることも分かっていたようだな…何故だ?答えてもらおうか」

「さあな…力ずくで聞き出してみたらどうだ?」

「そうしよう」

老人の言葉に悟林達が構えた時、悟空が叫ぶ。

「待て!ここじゃ犠牲が大きい!誰もいない場所に移ろう!おめえらもいいな!?」

「誰もいない場所へか…良いだろう。だが、わざわざ移動することはない…」

次の瞬間、老人の目からビームが発射され、町が破壊されていく。

「止めろーーーっ!!」

悟空が老人を殴って攻撃を中断させ、老人の帽子型のメットが転がり落ちた。

その際に老人の頭部が露出する。

「(…人間の脳?)」

「き、貴様~…!」

悟林がガラスのような物で守られている脳を見つめ、悟空が老人に怒り、老人はメットを拾って被り直した。

「誰もいない場所を作ってやろうと思ったのだが…どうやらここは気に入らないらしいな」

「ついてこい!2人共、ぶっ壊してやるっ!!」

「お前達に我々は倒せない」

今まで黙っていた方の人造人間が言うと、老人の方が同意した。

「良いだろう、ついていってやろう。好きな死に場所を選べ孫悟空…」

老人の言葉に驚く悟空達。

「な…何で、悟空の名を…!?」

「お前達も分かるぞ…ピッコロ…天津飯…そして孫悟空の娘の孫悟林だろ?」

驚く天津飯の言葉に他の者達のことも知っていると言い放つ。

更に驚くが、パトカーかこちらにやって来た。

「お父さん、みんな。パトカーが来た…訳は後で聞こうよ」

「ああ、行くぞ!!」

悟空が飛び立ち、人造人間達がそれを追いかけ、悟林達も追い掛けた。

そして多くの岩山が存在する荒野に着いた途端に老人が声を上げた。

「いい加減にしろ孫悟空。どこまで行く気だ。ここがいい、この場所にしろ。貴様らには選ぶ権利などないのだぞ」

老人と男が降りると仕方なく悟空達も降りた。

「(ちい…高原ではあるが、周りは岩山に囲まれている…いざと言う時は岩に隠れて闘おうと言う計算か…こいつら考えてやがるぜ…)」

「さあ、闘う前に教えろ…何故オラ達のことを知ってるんだ…」

悟空が老人に尋ねるが、天津飯は悟空に違和感を感じた。

「良いだろう、教えてやる…恐らく聞かなければ良かったと後悔するはずだ」

「(ど…どういうことだ。孫が息を切らしている…あ…あいつがただ飛んだだけで何故だ…)」

今まで悟空が舞空術で飛行するところを見てきたが、これくらいで息切れをするような体力ではなかったはずだ。

「孫悟空…貴様をずっと偵察していたのだ。超小型の虫型スパイロボットを使ってな…天下一武道会の時もピッコロやベジータとの闘いの時も…つまり貴様が我がレッドリボン軍を滅ぼして以後、研究を続けたわけだ…如何にすれば孫悟空を倒すことが出来るか…どういう人造人間なら勝てるのか…」

「オラへの恨みか…」

「そうだ!貴様のせいでレッドリボン軍世界制圧の夢は消え去ってしまい、ドクター・ゲロだけが残った…!」

「何かお父さんが悪者扱いされてるけど、レッドリボン軍のやって来たことを考えれば当然の報いって奴じゃないの?散々悪さしてきたんだからさ。滅ぼされても文句は言えないんじゃないかな?」

歴史の教科書にも載っているくらい、レッドリボンの悪事は相当に酷い物であった。

何故父である悟空と激突したのかは知らないが、悪事に対する当然の報いと言う奴だろう。

「黙れ!貴様のような小娘に創設時から掲げられたレッドリボン軍の崇高な夢を理解出来るものか!」

「まるで貴様自身がドクター・ゲロのような言い方だな…」

老人の言葉に違和感を感じたピッコロが言うと老人は冷静さを取り戻したようだ。

「馬鹿を言うな…!私はドクター・ゲロの造り上げた人造人間20号だ…ドクター・ゲロは死んでこの世にはもういない…」

「なるほど…だが、ナメック星での闘いもスパイしたのか?」

悟空にとって一番気になるのはそこだ。

自分達の闘いをどこまで偵察されていたかで人造人間の強さも変わってくる。

「そんな必要はない。ベジータ達との闘いまでで貴様のパワーや技は完全に把握した。その後、更に腕を上げたとしても年齢から考え、それまでのような大幅アップは無理だと言う計算だ…」

それを聞いた悟空が不敵な笑みを浮かべる。

「一番肝心なことを調べ忘れちまったらしいな…おめえらの負けだ…!」

「何?」

「致命的だったな…超サイヤ人のことを知らなかったとはな…」

「スーパーサイヤ人?」

「はああ…!」

ピッコロの言葉に疑問を抱く20号だが、悟空が気合いを入れて超化して超サイヤ人となる。

「ほお…」

「(あれ?お父さんの気、何でこんなに弱々しいの?)」

いくら感じ慣れたり、体に気を入れていないからと言ってもこの弱々しさは異常であった。

「(な…何という気だ!凄い…!これが超サイヤ人の悟空か…!)」

「………」

悟空の超化を一度しか見ていない天津飯はトランクスとの手合わせの時以上の気に驚き、ピッコロもまた悟林同様に悟空の気の弱々しさを感じていた。

「2人共、手を出さないでくれ。こいつらの一番の目的は俺らしいからな…」

「なるほど…確かにかなりのパワーアップを果たしたようだな。不思議な技だ。計算した数値を遥かに超えている…だが、我々が慌てるほどの物ではない。私は当然として19号でも充分に倒せるレベル内だ…」

「あ、そう。じゃあ早速その強さを見せてもらおうかな。そりゃ!!」

悟空が19号に向かっていき、19号も構えを取って右手を突き出して来たが悟空の姿が掻き消えて19号の背後を取ると、肘打ちを喰らわせて岩に叩き付ける。

19号は起き上がると悟空に向かっていくが、片手で頭突きを受け止められた後に上空に蹴り上げられる。

悟空も舞空術で追い掛けて猛攻を加える。

「す…凄い…!…何という強さだ…あ…あれが超サイヤ人…俺達とは…まるで次元が違う…ち…違いすぎる…」

「そうかなあ…」

「悟林、お前も気付いたか」

「何て言うか、お父さん。気が不安定過ぎるよ。不安定過ぎて実力の半分も出せてない感じ」

悟空と修行して実力を把握している悟林とピッコロは今の悟空に違和感しか感じない。

人造人間側に焦りが出てきたところに悟飯達が到着してきた。

「お…お父さん…!」

「心配は要らん。悟空はとんでもない強さだ。凄いぞ超サイヤ人とは…!奴らでかい口を叩いていたが、手も足も出ん」

天津飯の言う通り、悟空の攻撃は19号に叩き込まれており、反撃すらろくに出来ていない。

「ほ…本当だ…エネルギーを吸い取られてしまうというのは…お…俺の勘違いか…!?」

「エネルギー?どういうことなのヤムチャさん?」

ヤムチャの呟きに反応した悟林が尋ねるとヤムチャが説明してくれた。

「奴らに顔を掴まれた時、何か…何もしていないのに気をどんどん吸い取られていったんだ…」

「お父さんの不調の原因はそれ…いや、闘いが始まる前から様子がおかしかった…」

「お、お姉ちゃん…何かお父さん…変じゃないかな?」

「悟飯もやっぱりそう思う?」

「やはりお前達もそう感じるか、孫悟空は何故か勝負を焦っている…既に全力に近い飛ばし方だ…それなのにあの様は何だ…」

「な…何を言ってるんだお前達は…圧倒的に悟空が押しているんだぞ…!」

双子とピッコロの言葉に天津飯は驚くが、超サイヤ人となった悟空の実力はあんな程度ではない。

「うーん、今のお父さんの力は私達との修行で見せてくれたフルパワーの半分以下だね。流石に地球に帰ってきた時よりは強いけれど」

「半分以下だと…!?あれでか…!?」

悟林の言葉に天津飯だけでなくヤムチャ達まで驚愕する。

次の瞬間、19号は悟空の蹴りによって蹴り落とされ、地面に叩きつけられた。

しかし、叩きつけられた19号は何事もなかったように起き上がった。

「見…見ろよ…あれだけやられながらケロッとしてやがるぜ…」

「人造人間だ。痛みも疲れもないんだろうぜ…」

悟林が上空にいる悟空を見ると、悟空は既に息切れを起こしている。

いくら全力で飛ばしてもあれくらいならばまだまだ余裕なはずの父の悟空がだ。

「だーーーっ!!」

このままでは埒が明かないと考えたのか、かめはめ波を放つ悟空。

「しめた!」

「ひゃは!」

かめはめ波を放ったことに20号と19号が笑みを浮かべ、19号が右手を翳すとかめはめ波を吸収した。

「かめはめ波が!?」

「きゅ…吸収した…!」

悟林と天津飯達がかめはめ波を吸収されたことに目を見開く。

「や…やっぱりそうだ!奴ら手から…!」

「孫っ!気功波の類いは撃つなーっ!こいつら気を吸い取るらしいぞ!手からだ!掴まれてもまずい!良いかーっ!!」

「き…気を吸い取る…?じょ…冗談じゃねえぜ…」

ピッコロが叫ぶとかめはめ波を撃ったことで更に疲労した悟空が引き攣った笑みを浮かべる。

「やっぱりお父さん様子がおかしいよ…」

「た、確かに…かなり辛そうだ。もうそんなに気を奪われちまったのか!?」

「いや…直接は一度も吸い取られていないはずだ…」

悟林の言葉にヤムチャが同意するが、ピッコロは吸収されたのはかめはめ波くらいで他は一度も吸収されていないはずだと言う。

「「はっ!!」」

そこで双子は違和感の正体に気付き始めたが、敵は待ってはくれずに悟空に向かっていった。

そして始まった第2ラウンドだが、今度は悟空が19号に押され始める。

19号のパワーとスピードはかめはめ波を吸収したことで向上し、反撃しても逆に手痛い攻撃で返されて空中から叩き落とされてしまう。

「この…!」

「撃つな悟空っ!」

何とか急制動をかけて地面への激突を避け、再びかめはめ波を放とうとしてピッコロに止められる。

「くっ!ちっ…畜生…!」

「もしかしてお父さん…今、心臓病が発症したんじゃないの!?お父さん…症状が出なかったから今まで薬飲んでなかったし…」

胸を掴んで耐えるような悟空の姿に悟林は心臓病が発症してしまったのではないかと予想する。

「心臓病だと!?あの時、未来から来た奴の言っていたウイルス性の心臓病か!?」

「多分!今まで症状が出なかったのは、本当はフリーザ達は私とお父さんが倒すはずだったんだ。フリーザ達と闘わないで済んだおかげで心臓病の発症が遅れちゃったんだよ!」

もしトランクスが介入しなければ恐らく悟空の心臓病の発症は歴史通りとなっていただろう。

「お父さん!私と交代して!お父さんは家に戻って薬を!」

19号との闘いに入ろうとする悟林に20号が立ちはだかる。

「ここから先へは行かせんぞ。病気とは好都合だ、奴を苦しませながら息の根を止めてやろう」

「退いてよお爺さん。私はお年寄りを殴ったり蹴ったりする趣味はないんだよね」

「ならば父親が苦しみ抜いて死ぬ姿を黙って見ているがいい…」

「ふうん…あんまり調子に乗るなポンコツ!!」

「っ!!」

怒りのまま超化して超サイヤ人となると、20号を蹴り飛ばして岩山に叩き付け、19号も同様に蹴り飛ばして岩に埋めた。

「お父さん!しっかりして!ここは私が何とかするからみんなはお父さんを家に!!」

悟空をピッコロに投げ渡し、悟林は体に気を入れて充実させる。

「お姉ちゃん!でも…未来じゃ…未来じゃお姉ちゃんは!せめて僕も一緒に…」

「我が儘言うな悟飯!私を困らせるんじゃないの!」

「まさか貴様まで孫悟空と同じ変化をするとはな。だが、私と19号から逃れられると思っているのか?諦めろ、どれだけ足掻こうが貴様らに残されているのは絶望だけだ」

「どうかな?そうとは限らないぞ」

離れた場所から聞こえた声に振り返るとベジータが腕を組んだ姿でこちらを見下ろしていた。

姿を現したベジータにこの場にいる誰もが驚いた。

悟林の隣に降り立つと、人造人間達を睨みながら言い放つ。

「こいつら親子は俺の獲物だ。てめえらガラクタ人形の出る幕じゃねえ」

「遅れて来たのに相変わらずな態度だね…お父さん、心臓病になっちゃった」

「俺は全て見ていた。カカロットの馬鹿は自分の体の異変に気付きながらも超サイヤ人になってしまった。そんなことをすれば心臓病が一気に進行してしまうだけだというのにだ…さっさとそこの馬鹿を自宅へ連れていき、あの時受け取った薬を飲ませてこい!」

悟空をヤムチャが連れていき、残りはここに残るようだ。

19号が追いかけようとするが、それは20号によって止められる。

「19号!追わなくてもよい!楽しみは最後に取っておくと言うのも一興だ。まずはこのうるさい蝿共を片付けておこう…ベジータも加わったことだし少しは面白くなるはずだ」

「何を偉そうに言ってるんだか…本調子じゃないお父さんに勝ったくらいで…」

かめはめ波を吸収するまで相当焦っていたと言うのにまるでなかったように振る舞う姿には呆れるしかない。

「ふん、で?俺と闘うのは爺か?それとも白い奴か?」

「あ、一応白い方はお父さんのかめはめ波を吸収してパワーアップしたようだから手応えは爺さんよりはあるでしょ、そっちはベジータさんにあげるよ。私は…このポンコツ爺さんをスクラップにしてやる」

「20号…どうか私にベジータを始末させて下さい」

「欲張りめ…孫悟空からエネルギーを水取って己の絶対パワーを上げた癖に…まあ良かろう…その代わり、ベジータの次に強力な孫悟林のエネルギーは私が頂くぞ」

超サイヤ人の副作用の興奮により、苛立ちやすくなっている悟林のこめかみに青筋が浮かんだ。

「これまでの僅かな動きを見ていて分かった…貴様らは噂ほどとんでもないタマじゃなさそうだ。エネルギーを吸い取るらしい手のひら…注意するのはそこだけだ…」

「ずっと様子を窺っていたらしいが、肝心な部分を聞き逃している。ベジータ、貴様の格闘技は既に知り尽くしているのだ。」

「その割にはカカロットや悟林の超サイヤ人には対応出来ていなかったぜ。つまり貴様らのデータはフリーザとの闘い以前から現在を推測したものだ…計算だけで分かるもんじゃない。俺達サイヤ人はな…」

闘えば闘うほどに、目標があればそれを超えるために際限なく強くなるサイヤ人に計算で理解出来るはずがない。

「ふん」

しかし、19号はそれを負け惜しみと判断したのか鼻で笑うだけだ。

「知りたいもんだ…人造人間でも恐怖に怯えるのかどうか…」

ベジータも気合を入れて超化し、超サイヤ人となる。

「あいつもか…!」

「流石、ベジータさん。あの時の手合わせ以上のパワーだ。」

クリリン達は驚いているが、一度ベジータと手合わせする際に知っている悟林はあの時以上のパワーに感心する。

「ご、悟林ちゃん知ってたのか!?ベジータが超サイヤ人になれるってことを!?」

「うん、お父さんも知ってるよ?」

クリリンが悟林に尋ねるが、隠すことでもないので即答する。

ついでに悟空も知っていることを暴露した。

「で…でも超サイヤ人は、お…穏やかな心を持ってないとなれないんじゃ…」

「穏やかだったさ…穏やかで純粋だった…ただし、腑抜けているこいつら親子と違って純粋な悪だがな…ただひたすら強くなることを願った…そして凄まじい特訓を繰り返したさ…ある時俺は自分の限界に気付いた…自分への怒りで突然目覚めたんだ…超サイヤ人がな!俺は喜びに打ち震えたぜ…やっとこいつら親子を超え、サイヤ人の王子に戻る時が来たんだ…」

「悪いけど私は負けるつもりはないよ?お父さんだってそう、ベジータさんが私とお父さんを超えるって言うなら私もお父さんもベジータさんを超えてやる」

ベジータがどれだけ強くなろうと悟林も負けるつもりはないし、悟空もそうだろう。

負けても修行して必ず追い抜いてみせる。

「ほう、同じ超サイヤ人とは言え、下級戦士一族が超エリートに勝てると思うか?」

「やってみないと分からないよ?でもその前にこの2人を解体しよっか!」

互いに好戦的な笑みを浮かべながら視線を2人の人造人間に戻した。

「戯言はそれぐらいにしておくんだな。何に変化したところで所詮は私達人造人間には敵うものではない。さっきの孫悟空のようにな…」

「ほほほ…ひゃーほほほ!!」

高笑いしながらベジータとの距離を殴りつけるものの、僅かに後退させた程度で終わる。

「カカロットのエネルギーを吸収してこれか…やはりこんな程度だろうな…」

「あーあ…知ーらない」

ベジータの気の昂りに気付いた悟林は20号との距離を詰めて腹に拳をめり込ませた。

「うぐっ!?」

そして怯んだところ連続で殴り付ける。

そんな悟林の横でベジータは笑みを深めた。

「言わなかったがな…超サイヤ人になると大猿程ではないが、凶暴性が増すんだ…軽い興奮状態になるんでな…俺はあいつら親子のように甘くはないぞ、痛みを感じなくてラッキーだったな」

次の瞬間、ベジータの蹴りが19号の腹にめり込み、横っ面に肘打ちを叩き込んで怯んだところを蹴り飛ばした。

「な…何…!?」

「どこを見ている!!」

余所見をしている20号の横っ面に悟林の鉄拳が炸裂した。

「どうした、てめえらガラクタ人形の計算が狂ったか?」

19号は起き上がるとベジータに突進するが、ベジータはそれを上体を反らしてかわし、両腕を支えにして上空に蹴り上げる。

上空に吹き飛ばした19号を追い掛けると、19号はエネルギーを奪い取ろうとするが、かわされて逆に顔面を殴られる。

「ぐ…!」

「良く出来てるじゃないか。そいつは血か?オイルか?」

鼻から垂れる液体に無駄に良く出来ていることにベジータは笑った。

19号が目からビームを放つがベジータがかわして組んだ拳を脳天に叩き込んで地面に叩き付けた、あまりの威力にクレーターが出来る。

「ば、馬鹿な…!ベジータと孫悟林がここまで…!」

「私達を見くびり過ぎたのがお前達の敗因だよ」

気合砲で20号を吹き飛ばす。

流石にこれは吸収出来ないようだ。

ベジータが19号の前に降り立つと、19号は起き上がってベジータの両腕を掴んだ。

「ふほほほほ!捕まえた!貴様のエネルギーを吸い尽くすまで放さないぞ!蹴っても無駄だぞ。絶対に放さない!」

「絶対に…だな?」

不敵な笑みを浮かべるベジータ。

向こうで悟林が20号を蹴り飛ばし、そして真上を取るのと同時に地面に蹴り落とした。

「う…ぐぐぐ…」

「私も全然本気出してないんだけど…人造人間ってこの程度なのかな?それとも私達が強くなりすぎちゃったのか…」

「お、己…孫悟林がここまで…」

何かが折れるような音が聞こえて振り返るとベジータが19号の両手をもぎ取っていた。

「なるほど、手のひらのここから吸い取るわけか…結構吸い取られちまったが、これでもうそいつも出来なくなっちまったな…」

手のひらに埋め込まれたレンズを見つめながらベジータが呟き、両手を捨てた。

「ひ…」

「恐怖を感じるのか、人形野郎でも…」

怯える19号に笑みを強めるベジータに19号は逃走する。

ベジータは舞空術で上昇し、片手を逃走する19号に向けた。

「くっ…己…!」

「おっと、邪魔はさせないよ」

ベジータに飛び掛かろうとする20号の前に悟林が立ちはだかり、そしてベジータが気を解放して手のひらに高密度の気弾を作り出す。

「喰らえ!こいつが超ベジータのビッグバンアタックだ!!」

放たれた気弾は凄まじいスピードで19号に迫り、そのまま直撃した。

直撃を受けた19号は頭部だけ残して転がる。

人工頭脳も破損しているため、完全に機能停止している。

「…確かに計算違いだったようだ…だが、相変わらず貴様らの勝利する可能性は全くないぞ…!」

「へっ!」

ベジータは着地すると超化を解いて通常の状態に戻る。

「さて、私もそろそろ決着をつけるかな…」

「ぬう…!」

「さっき俺達の勝利する可能性は全くないとほざいていたが…悟林にさえ勝てんようではとてもそうは思えんがどういう意味だ?」

「ふふ…貴様らがいくら想像以上に強くても…その程度では人造人間には絶対に勝てんと言うことだ…」

「ふん…やっぱり単なる負け惜しみだったか…悟林、さっさと始末してしまえ。何なら俺がやっても良いんだぞ?」

「ベジータさん、自分だけ良い思いしようなんて駄目だからね」

片腕を振り回しながら20号を破壊しようと歩み寄る悟林だが、目からビームが放たれ、それをかわした隙を突かれて逃げられてしまう。

「しまった!!」

悟林が逃走した20号を追い掛けるが見失ってしまい、周囲を見渡しても岩ばかりだ。

近くにベジータの気を感じる。

仙豆を食べたのか気が全快している。

「よーし、こうなったら周囲を吹き飛ばしてやる」

邪魔な岩を吹き飛ばそうと、両手から魔閃光を放ちながら回転し、周囲の岩を吹き飛ばしていく。

途中で違和感を感じて攻撃を中断すると20号が両手を前に出していた。

「げっ!しまった!」

「ふははっ…エネルギーは貰ったぞ!」

「こんの…!」

「ご、悟林ちゃん…」

クリリンの声に振り返ると鼻血を流したクリリンが仰向けになって倒れていた。

「クリリンさん!?どうしたの!?」

「ベジータならともかく…ご、悟林ちゃんがあんな強引な方法を使うとは思わなくってさぁ…」

「あ、吹き飛ばした岩がぶつかっちゃったんだね…ごめんクリリンさん、まさかクリリンさんが近くにいるとは思わなくて…」

「ま、まあ…俺も避けるの遅れたからな…」

「と言うかクリリンさん、鼻がないのに鼻血出るんだね…あ!?逃げられちゃった…」

鼻がないのに鼻血が出ると言う矛盾しているクリリンの姿に疑問を抱きながら20号に逃げられたことに気付く。

「ご、ごめんな…足引っ張っちゃって…」

3年間、必死に修行したと言うのに役に立つどころ足を引っ張ってしまっていることはかなりクリリンにとってきついことだった。

「そんなことないよ、クリリンさんがいてくれて心強いと思ってんだからさ…まだ遠くへ離れてないはずだよ。探そう」

落ち込むクリリンを元気付けながら悟林は20号を探すのであった。 

 

第23話

 
前書き
未来悟飯の見た目はゲームでお馴染みの姿です。

左腕は健在です。 

 
クリリンと共に20号を探していたが、クリリンが口を開いた。

「それにしても信じられないぜ…ベジータとブルマさんがなあ…あんなののどこが良いんだか…」

地球最強クラスの悟林が近くにいる安心感からか、幼いトランクスを見た時から思っていたことを呟くクリリン。

「まあ、普通なら驚くよね。でもブルマさんは自分には出来ないことが出来る人に惹かれるところがあるしね。ヤムチャさんやお父さんとか正にそれでしょ?ベジータさん、宇宙の最先端技術も知ってたりするから…修行の機材を作らせる際の指示でも結構助かってる部分があるんだって、ベジータさんの戦闘服だってブルマさんのお手製みたいだし、カプセルコーポレーションの技術力って結構上がってんじゃない?」

「そう言えばランチさんも昔、天津飯に…女ってああ言う危険な男が好みなのか?」

「私は強い人は大好きだけど。人それぞれじゃないかな?大丈夫だよクリリンさん、クリリンさんは良い人だから良いお嫁さんを手に入れられるよ」

「だと良いなぁ…」

会話をしながら20号を探していると、途中からピッコロからの念話が聞こえてきた。

「(聞こえるか…悟林…!来てくれ、すぐだ!人造人間が…)」

「(ピッコロさん…微かな気の乱れ…あっちだな!)」

ピッコロの窮地に気付いた悟林は超スピードで向かうと、同じように呼ばれた悟飯がピッコロを羽交い締めにしていた20号を叩き落とし、悟林が蹴り飛ばした。

「お姉ちゃん!」

「でかした!悟飯!後はお姉ちゃんに任せろ!」

ニヤリと笑いながら言うと他の仲間も気付いてこちらに集まってきた。

「く…」

「クリリンさん、ピッコロさんに仙豆を!」

「お、おう!」

クリリンが仙豆をピッコロに投げ渡すと、ピッコロはそれを受け取って咀嚼して飲み込むと全快する。

そして降下するとターバンとマントを脱ぎ捨てた。

「俺にやらせろ悟林!絶対に手を出すな!ベジータも良いな!」

「えー、そんなぁ…私が倒そうとしてたのにぃ…!」

膨れながらも譲る悟林。

悟林も悟林でピッコロのことは大好きなのだ。

「死ぬのは貴様の勝手だが、また余計なエネルギーを与えてしまうだけじゃないのか?」

20号に殺されかけたピッコロに対して笑いながら言うベジータ。

しかし、これ以上言わないことから譲るようだ。

もしくはピッコロのエネルギーが吸われても勝てる自信があるからだろうが。

ピッコロと20号の闘いが始まり、ピッコロの膝蹴りが20号の顎を蹴り上げた。

「ほう…」

ピッコロの動きと攻撃の重さにベジータはピッコロの評価を上方修正する。

「ば…馬鹿な!あいつを倒せないわけはないんだ!第一あいつのエネルギーを私にプラスしたんだぞ…!」

「超サイヤ人になった私とお父さんを相手にしてたからね。あの人造人間程度になら勝てるよ」

ピッコロに向かっていく20号をピッコロは肘打ちを脳天に叩き込んで岩に叩き付ける。

「超サイヤ人になった悟林ちゃんと悟空を相手に修行してたのか!?つ、強くなるわけだな…」

クリリンは悟林の言葉にピッコロのパワーアップの理由に納得してしまうのだった。

一方、最初に訪れた島の方では未来のトランクスと悟飯が20号によって滅茶苦茶にされた島を見下ろしていた。

「何てことだ…島が…人造人間め…!」

「悟飯さん、今は悟林さん達と合流しましょう!」

「ああ…姉さん達の気を感じる!あまり離れていない…急ごう!」

自分の片割れの姉の気が存在していることに一瞬目頭が熱くなったが、今は泣くよりも闘う時だと2人の未来の戦士は飛び出した。

そこで歴史を変えたことによる代償を見ることになるとは知らずに。

場所は闘いの場に戻り、ピッコロが手刀で20号の右腕を切断していた。

「!!」

「覚えておけ、俺達は闘いで一気にお前達で言うエネルギーを増幅してそいつを爆発させるんだ。そういうわけでさっき貴様が俺から奪ったエネルギーは知れたものだったのだ…」

「勝った…!」

そして20号は再び岩に叩きつけられる。

「ぐ…ぐぬぬぬ…お…己…ピッコロまでもがここまで力をあ…上げていたとは…」

「本来の歴史では2人の人造人間に悟林と悟飯以外は全滅させられるはずだったらしいがな…どうやら未来は変わってしまうようだな…貴様らが思ったほどの強さではなかったのか、それとも俺達が強くなりすぎてしまったのか…」

「やったな!おい、悟空抜きでやっつけちまうぜ」

「はい!」

「後で埋め合わせしてよねピッコロさん…!」

不完全燃焼なのか悟林が恨めしげにピッコロを見つめる。

「ピッコロとベジータのあの異常なパワーアップは気に入らないが、取り敢えずはほっとしたぜ…」

「ピッコロ!さっさと片付けてしまえ!それともこの俺にやって欲しいか!」

「へっ、お断りだ。俺は元々神と別れた悪の化身なんだ。悟空のように甘くはない」

ベジータの言葉にそう返すと、とどめを刺そうとするピッコロだが、こちらに向かってくる2つの大きな気に全員に目が向けられる。

1人はトランクス…そしてもう1人は…。

「お、おい…あいつ…悟空にそっくりだ…もしかしてあいつ…!」

「み、未来の…僕…!?」

「未来の…悟飯だと…!?」

「それにトランクスさん…!」

悟林の呟きを聞いたベジータの視線が悟林からトランクスに向けられる。

「(トランクス!?トランクスだと…!?お…俺のガキと同じ名前…同じ名前だ…!未来から来た…そうか!)」

「み、皆さん!あいつは何者なんです!?あいつも人造人間なんですか?」

未来悟飯の言葉に全員が驚き、ベジータが叫ぶ。

「何…!?誰って…貴様らも闘ったことのある人造人間だろう!」

「ち、違います!俺達の知っている人造人間はこんな奴じゃありません!17号と18号は若い男女…」

「馬鹿な…何故貴様が17号と18号を知っておる!?」

未来悟飯の言葉に20号が反応し、全員の視線が20号に向けられた。

「……?お前…ドクター・ゲロか!?」

20号の顔を改めて見た未来悟飯の表情が憤怒に歪む。

以前ブルマに資料を見せてもらったことがあり、諸悪の根源であるドクター・ゲロの顔はしっかり覚えていた。

「ドクター・ゲロ…!?あいつがですか!?あいつは人造人間に殺されたんじゃ…」

トランクスの表情が驚愕で見開かれる。

「ちょ、ちょっと待ってよ…!もう何が何だか…」

トランクスからの情報との違いに悟林は混乱していた。

「…恐らく、トランクスと姉さんがフリーザを倒したことと父さんが生きていることで何かが変わったのかもしれない」

しかし、未来悟飯は歴戦の戦士らしくすぐに状況を整理する。

歴史を変えれば状況も本来の物とは異なることになるのは当然だと思えた。

「歴史そのものがズレてしまったって言うんですか…!」

「い、いくらズレたからってあなたが言っていた時間に現れたんだから、2人のいた未来の人造人間に相当するのが、あの2人なんじゃないの?」

「そ、それだけなら良いのですが…」

悟林が落ち着かせるために言うと、向こうから機械音が聞こえ、振り返ると見覚えのある飛行機。

「あれはブルマさんの!?」

「来ちゃ駄目だ!離れて!」

悟林とトランクスの声が響いた瞬間。

「何人集まろうが無駄だ!17号と18号が今に貴様らを殺しに来るぞ!!」

全員の視線が20号に向けられた直後、眩しい光と共に左手のレンズから吸収したエネルギーが放出された。

ブルマとチビトランクス、そして何故か乗っていたヤジロベーが吹き飛ばされる。

「母さん!」

「大丈夫ー!トランクス君は無事だよー!!」

間一髪で悟林がチビトランクスを助けていた。

「か、母さんは…!?」

「ベジータさんが掴んでるよ」

全員の視線がベジータに向けられるとブルマの服を掴んでいるベジータの姿があった。

「(ベジータさんがブルマさんを…何か俺の知ってるベジータさんより丸くなっているような…)」

「あ、ありがとう…ベジータ…」

まさかブルマもベジータが助けてくれるとは思っていなかったのか驚きながら礼を言う。

ベジータは着地と同時にブルマを放り投げた。

「ぶっ!?」

「「ぷっ」」

顔面から着地したブルマに悟林とクリリンが吹き出し、泣いていたチビトランクスはブルマの姿に笑った。

「(……違うか)」

未来悟飯は気のせいだと思うことにした。

「だ、大丈夫ですか?」

トランクスが慌てて駆け寄って起こすと、ブルマは顔を押さえながら立ち上がった。

「あ、ありがとう君……ちょっとベジータ!?こんなか弱い美人妻を放り投げる馬鹿がどこにいるのよ!?」

「黙れ!貴様のせいで人造人間を逃したんだぞ!!」

「何よーっ!だったらさっさとあんたが倒してれば良かったんじゃない!何みんなで集まってトロトロ遊んでたのよ!!」

「何だと貴様!?」

「そ、そりゃないよな…ベジータも苦労してんだな…」

ブルマの言い分にクリリンはベジータに同情した。

「あ、あの落ち着いて下さい!子供の前で喧嘩は…」

「「貴様(あんた)は黙って(なさい)いろ!!」」

「は、はい!」

過去の両親からの怒声に思わず背筋を伸ばすトランクス。

「まあまあ、2人共。夫婦喧嘩してる場合じゃないよ。それにしても凄いねベジータさん、顔をぶつけたブルマさんを見てトランクス君、一発で泣き止んだよ。流石パパ」

「ちょっとトランクス~?ママの不幸を笑うんじゃないわよ~?」

「す、すみません…」

「何であんたが謝るのよ?」

「はい、ベジータさん」

謝るトランクスに首を傾げるブルマの横を通ってチビトランクスをベジータに差し出す悟林。

「何だ?」

「トランクス君、抱っこしてあげてよ」

「何故俺がそんなことを…」

「トランクス君のパパでしょ?」

「サイヤ人は子育てなどせんのだ」

「じゃあどうやって赤ちゃんのお世話するの?」

「サイヤ人は一定の年齢になるまで保育カプセルに入れられる。そこで必要な栄養と体調管理、排泄も管理されるのだ。その間、親に当たる者は戦地に向かう」

「「へえー」」

初めてのサイヤ人の新事実にブルマと悟林は興味深そうにベジータを見つめる。

「因みにそれってサイヤ人だけの子育てなの?」

「文明のある星では保育カプセルでの育成など一般的だ。何度も言うが地球は文明が低すぎる。」

「(親子が一番触れ合う時期も闘ってんなら妙に情が薄いわけだな)」

クリリンは妙にサイヤ人の情が薄い理由の1つが分かった気がした。

「でもさ、お父さんにも出来ることがベジータさんには出来ないってことだよね」

「何!?」

その言葉はベジータにとってかなり癪に障ったようだ。

「下級戦士のはずのお父さんは私達のことをすっごく面倒見てくれたのになー。下級戦士のはずのお父さんに出来るのになー。下級戦士のお父さんに出来ることが超エリートのベジータさんには出来ないのかー」

「黙れ!カカロットに出来ることが俺に出来んわけがない!貸せ!」

「はいはーい」

チビトランクスをベジータに渡すと後ろを向いてニヤリと笑った。

しかし、ベジータの顔を見た瞬間にチビトランクスが泣いた。

「くそ…黙れ…泣き止め…!」

「ベジータさん、超サイヤ人だから怖がるんだよ。普通に戻って」

「(超サイヤ人とかそれ以前の問題なような…)」

未来悟飯は泣き喚くチビトランクスを見つめながら胸中で呟く。

「…仕方ないなあ。トランクス君」

悟林が声をかけるとチビトランクスは泣きながらこっちを向いた。

「この人はトランクス君のパパだよ。何となく分かるでしょ?怖がることなんてないんだよ」

チビトランクスの手を開いてベジータの指を持っていくとチビトランクスはそれを掴んだ。

サイヤ人の野生の勘なのか、触れたことで何となく理解したのだろう、自分の父親だと。

チビトランクスは警戒を解いてベジータに笑った。

その顔に面食らったような表情を浮かべるベジータだが、次の瞬間ブルマに押し付けてそっぽを向いた。

未来悟飯はそっとトランクスの方を見ると嬉しそうな羨ましそうな寂しいような複雑な表情を浮かべていた。

「さーて、トランクス君もベジータさんに懐いたことだし。まずは状況を整理しよう。未来の悟飯はあのお爺さんをドクター・ゲロって言ってたよね?確かなの?」

「あれってやっぱりドクター・ゲロだったのね。科学者じゃ結構有名よ。嫌な奴らしいけど天才だったらしいし。生き続けたくて自分を改造したってとこかしら?」

「恐らくは…俺達の時代のブルマさんに見せてくれた資料に写っていたのとそっくりだった。多分、姉さん達がフリーザを倒したことで歴史そのものがズレてしまったのかもしれない」

「悟飯…未来の方だ。17号、18号と言う人造人間の特徴を教えろ。もう間違えるのはごめんだ」

ピッコロが呼ぶと現代、未来の悟飯が振り返ったため、未来悟飯の方と訂正すると情報提供を求めた。

「そ…そうですね。17号は長い黒髪の少年で首にスカーフを巻いています。18号は金髪の少女で服装は彼みたいな感じで…共通の特徴は冷たい目と丸いイヤリングそして服にレッドリボン軍のマークがあるのですぐに分かるはずです」

「お、女の子の人造人間かよ…」

未来悟飯が18号の説明の際に近い服装のトランクスを指差しながら説明すると、クリリンがやりにくそうな声を出す。

「ねえ、やっぱり手からエネルギーを吸い取るの?19号とドクター・ゲロは私達のエネルギー…気を吸収してパワーアップしてたんだけど」

「そ、そんな人造人間まで…17号と18号は気を吸収したりはしませんが、それ以上に厄介な存在です。エネルギーが無限で底がないんです。未来の悟林さんも奴らの無限のエネルギーに負けてしまったんです」

「そ、そっか…」

超サイヤ人の超パワーを上回る無限のエネルギーに全員の表情が若干強張る。

「それより孫悟空さんは?どうしてここに…」

「例の心臓病さ、君の言っていた…今さっきなっちまったんだ。」

「そ…それまで時間がズレてしまっていたのですか…」

「ブルマ、ドクター・ゲロの研究所の場所が分かるか!?奴は必ずそこに戻るはずだ」

ベジータがブルマを尋ねる。

科学者の間で有名だったのなら同じ科学者であるブルマならばドクター・ゲロの居場所が分かるのではないかと思ったのだ。

「え?場所?…え…と…確か北の都の近くの山じゃなかったかしら…洞窟を改造した研究所って噂があったはずよ…今もその場所が変わってなけりゃね。それにしてもドクター・ゲロがレッドリボン軍のお抱えだってのは知らなかったわ…」

「よーし!早速その研究所に行こうよ!」

「待て、お前はブルマとトランクスを連れて西の都に向かえ」

早速飛び出そうとした悟林をベジータが止めた。

「あ、そっか…ブルマさんとトランクス君を置いておくわけにはいきませんもんね」

悟飯が今のブルマには飛行機がないことを思い出す。

「…何で私がブルマさん達を…?さてはベジータさん、私にブルマさんとトランクス君を押し付けて自分だけ人造人間達と闘っていい思いをする気だね!?」

「…さあな?」

悟林の問いにニヤリと笑みを返すベジータに悟林は膨れた。

「嫌だよっ!私も人造人間と闘うの!ピッコロさんに横取りされたから今度こそ最後まで闘うの!!」

「人聞きの悪いことを言うな!お前も同意したろう!ベジータの思惑はともかく、お前は一度悟空の所に戻れ。悟空の意識が戻るまではお前が悟空を守るんだ」

悟林の言い方が誤解を招きそうだったのでピッコロが怒鳴り、万が一に備えて超サイヤ人になれる悟林は悟空の傍にいさせるべきだと考える。

「うう…不完全燃焼だよ…」

「姉さん、無理は止めてくれ。」

「2人をお願いします悟林さん」

「うぐぐぐ…むうううう…わ、分かったよ」

未来組からの懇願に悟林は悩みに悩んでブルマを西の都に連れていくことに。

「ところでベジータさん…本気ですか?人造人間と闘うなんて…無謀です」

「ほう?俺に意見をするのか?図体だけはでかくなったようだが、臆病なところは変わらんようだな。貴様も悟林と同じくサイヤ人の血を引いているのなら強い敵と闘いたいとは思わんのか?」

未来悟飯の言葉を一蹴するベジータ。

しかし、未来悟飯も引くわけにはいかない。

チビトランクスの父親である彼を死なせるわけにはいかないからだ。

「俺はそんなことに興味はありません…!あなたが死んだらトランクス君やブルマさんはどうなるんです!?あなたは人造人間の力を見くびり過ぎている!」

「…やはり貴様は見た目はカカロットに似ていても中身は弱虫ラディッツにそっくりだな、あいつも自分より強い存在にいつも怯えていやがったからな…そう言われればますます闘いたくなるのが本物のサイヤ人だ。臆病者はさっさと元の時代に帰りやがれ、目障りだ」

「ベジータさん!やっぱり駄目なのか…」

いくら自分の知っているベジータより穏やかにはなっていても闘いを求めるサイヤ人には弱い者の言葉は届かないのか。

「大丈夫じゃないの?私達が闘った人造人間より古いんだからベジータさんなら倒せるんじゃない?」

「姉さん…姉さん達は知らないんだ。あいつらの恐ろしさを…」

「とにかく追いかけましょう!二度とお父さんを失うわけにはいかない…!」

未来悟飯とトランクスが飛び出していく。

「お…お父さん?お父さんって言ったの?ど…どういうことかしら…あの子のお父さんも人造人間に殺されたっていうこと…」

「ブルマさん、何で気付かないの…?あの人は未来のトランクス君だよ。」

「え?」

「トランクス君がおっきくなった姿だよ。そして私の未来の弟子!分かった?トランクス君が私の弟子になるのは決まってるんだよ!トランクス君、おっきくなったら一緒に修行しようね?」

「駄目だって言ってるでしょ!?それにしてもトランクス!あんた結構良い男になるんじゃない!良かったわー!ベジータに似て目付きが悪いから心配しちゃったわよお母さん!」

「ケチ!まあ、ブルマさんの子供で良くあそこまで礼儀正しくなったよね。きっと未来の私と悟飯が色々頑張ったに違いない」

「何ですって!私ほど美しく上品な人間はいないわ!」

「自分で言うんだ…まあ、その辺りは後でゆっくり話すとして、西の都まで送るよ」

「気を付けてよ」

「大丈夫大丈夫、未来の可愛い弟子なんだから」

悟林がブルマを抱えると全員が飛び出していき、直後にヤジロベーが這い上がってきた。

「おい!俺もだ。忘れるな!」

「え?」

「早くしろ早く!」

「しょうがないなぁ…ヤジロベーさんも舞空術使えるようになれば?便利なのに」

「俺は闘わねえから必要ねえんだよ」

仕方なくヤジロベーも一緒に西の都に向かうのであった。 
 

 
後書き
ベジータは前の話で悟林に勝ったことで原作よりも精神的な余裕がある状態。

ブルマを助けたのは本人にとっては気紛れです(ただ本人に妻子への想いの自覚がまだ薄いだけで)。 

 

第24話

 
前書き
人造人間編のラスボス。 

 
状況は最悪と言っても良い程だった。

17号と18号は起動してしまい、おまけに未来悟飯もトランクスも見知らぬ人造人間16号まで起動してしまう始末。

ベジータが未来悟飯とトランクスの制止を無視して人造人間に闘いを挑み、最初は互角の闘いを繰り広げるが、人造人間の無限のエネルギーに押されてしまい、未来の姉のように一方的にやられ始めた。

ベジータの左腕を18号に折られたのを切欠に未来悟飯とトランクスも超化して超サイヤ人となって18号に飛び掛かるものの、未来悟飯の攻撃はあっさりとかわされて逆に18号の裏拳を喰らってしまい、トランクスがその隙を突いて気を乗せた剣で18号を切断しようとしたが…信じられない物を見た。

未来の技術を込めて鍛えられた剣が、超サイヤ人の気を乗せているはずの剣が受け止めた人造人間の腕を切断するどころか、皮膚の薄皮1枚切れず、逆に切りつけた剣が刃こぼれする始末だった。

トランクスの剣は未来悟飯達の時代の人造人間達でさえ直撃を避けようとする威力があるのにだ。

そして17号も参戦してトランクスを一撃で大ダメージを与え、加勢しようとした幼い悟飯やピッコロ達をあっさりと返り討ちにしてしまう。

自惚れではないが、未来悟飯には今の自分とトランクスならば未来の人造人間とそこそこ闘える自信がある。

それなのに全く歯が立たないということはこの時代の人造人間は自分達の時代の人造人間より遥かに強い。

未来悟飯は父亡き後に師匠から伝授された魔貫光殺砲で17号を狙うが、片手で受け止められてしまった。

「少しは効いたぞ」

その言葉を最後に腹に衝撃が走って自分の意識は刈り取られた。

目を覚ますとクリリンが仙豆を食べさせてくれたおかげで助かった。

屈辱に震えるベジータが飛び立ち、トランクスが追いかけようとしたがピッコロに止められた。

天津飯は仮に悟空の病気が治って悟空と悟林が加わっても2人の実力もベジータとほぼ同格と判断し、勝てる見込みがないと言う。

その言葉に空気が重くなる。

取り敢えずは悟空を安全な場所にまで避難させることにして、ピッコロは何かを考えているようだったが。

「何か作戦でもあるんじゃないのか?教えろよピッコロ。仲間じゃないか」

クリリンがピッコロの変化に気付き尋ねるとピッコロは反論した。

「ふざけるな!!俺は魔族だ!!世界を征服する為に貴様らをただ利用しているだけだという事を忘れるな!!」

未来と現代の悟飯の視線から逃げるようにピッコロはこの場を去っていった。

だけどクリリンは分かっていた。

ピッコロの考えている事…神との同化を。

それぞれが自分の出来ることをやるためにこの場を去った。

因みに未来悟飯がパオズ山に向かうと父親そっくりに成長していた未来悟飯にチチは驚きつつも喜んだと言う。

一方、悟林はブルマとチビトランクスを西の都に送るとパオズ山に戻っていた。

そこでは母のチチが両手を振って声を張り上げた。

「悟林ちゃーん!」

「おお、お母さん!どうしたの?」

「お姉ちゃん!早くここを離れないと!人造人間がここに来るかもしれないんだ!」

悟飯が悟林に説明する。

目覚めた人造人間達が悟空を殺しにやって来るとのことだ。

「…そっか、それは大変だねえ」

「姉さん…他人事みたいに…」

姉の能天気な声に未来悟飯は脱力した。

悟林と未来悟飯は飛行艇を守るように舞空術で移動する。

「それにしても悟飯、本当にお父さんにそっくりになったね。」

「そうかな…?ベジータさんには見た目だけって言われたけど…」

「超サイヤ人になれるんでしょ?大したもんだよ。」

「未来の姉さんが教えてくれたんだ。姉さんが死んでから…後悔ばかりだ…父さんが死んだ時…沈んでないで一緒に姉さんと修行すれば良かったんだ…一緒に修行して超サイヤ人のなり方を教えてもらえば…俺が…甘ったれで弱かったから…ピッコロさん達も人造人間に…トランクスやブルマさんもベジータさんを…そして挙げ句の果てには姉さんまで死なせて……」

「悟飯」

未来悟飯の頭を撫でると涙でぐしゃぐしゃになった顔が上がった。

「姉さ…ん…っ」

「本当に悟飯は泣き虫だなぁ。体だけってのは間違いじゃないようだね。大丈夫大丈夫、こっちじゃお父さんも私も生きてるんだから後は私達に任せなさい。何だったら私達が未来に乗り込んで人造人間達をやっつけてあげる。だから今は頑張ろ?」

「そうだね…」

大きくなっても本質は全く変わっていない弟の頭を泣き止むまで撫でるのであった。

飛行艇内でトランクス達が今後のことを話し合っていた最中、チチがトランクスに尋ねてきた。

「ところでおめえ、前に悟空さから聞いただよ。おめえ悟林ちゃんの弟子だそうだな?」

「あ、はい。悟林さんには凄くお世話になりました。」

「……おめえがまさかブルマさんの息子だとはなあ…正直びっくりだべ。悟空さもそこまでは教えてくれなかったしなあ…」

確かに良く見れば髪の色や目の色はブルマに似ており、チラリと見たことがあるベジータの面影があった。

「あはは…何となく分かります…ああいう母ですから…」

「礼儀正しいべ…ブルマさんが教育しただか?」

「いえ、母さんはタイムマシンや他の研究で忙しかったから、悟林さんと悟飯さんが色々教えてくれたんです」

「そうだか……未来の悟林ちゃんは…良い師匠だっただか?」

「…はい、最高の…師匠……でした。」

チチは一瞬言い淀んだトランクスを見て、トランクスにとって未来の悟林はそれ以上の存在だったのではないかと思ったが、話の続きを促す。

「未来の悟林ちゃんはどんな子だったんだべ?」

トランクスや未来悟飯のいた未来は悟空から少しのことしか聞いてないが、人造人間のせいで酷い状態なのは分かる。

そんな酷い時代で未来の娘はどんな風に育って、どんな女性になったのだろう。

「どんな時も優しかったんです。あんなに酷い時代なのに俺や母さんのことを凄く気にかけてくれて、自分だって生きていくのが大変だったのに小まめにパオズ山の山菜や木の実を持ってきてくれたり、魚も獲ってきてくれました。そりゃあ、修行の時は物凄く厳しかったです。片腕でも俺と悟飯さんを同時に相手にしていましたし、俺も悟飯さんも何度荒れた海に落とされたり岩に叩き付けられて生き埋めにされたか分かりません。」

「そ、そうだか…」

酷い時代でも優しさを失わないでいてくれたのは素直に嬉しかったが、ピッコロ並み、もしくはそれ以上の厳しい指導をトランクスと未来悟飯に叩き込んだ未来の娘にチチは顔を引き攣らせた。

「修行が終わると悟林さんはたくさんのことを教えてくれました。武道だけじゃなくて動物や食べられる植物や薬草のこと。修行で怪我をするとその薬草を使って手当てをしてくれました。そうそう、一緒に恐竜を仕留めて丸焼きにして食べたりしましたね。」

トランクスは未来の悟林との修行や勉強の日々を思い返しながら語っていく。

「俺…悟林さんが人造人間に殺されてから、必死に修行して悟飯さんと一緒に何度も人造人間に挑んだんです。何度挑んでも勝てなくて…悔しくて堪らなかった。父さん達を殺して母さん達を悲しませている奴らに勝てない自分が情けなくて仕方なかったです……そう思うと悟林さんは本当に強かったんだなって思ったんです。悟林さんは俺達を庇いながら闘っていたせいでいつも傷だらけでした。片腕になったせいでパワーが落ちて思うように闘えなくて…人造人間にはどうしても敵わなかったんです。今の俺みたいに。きっと悔しかったりしたと思うんですよ…。何度も何度もそういう目に遭って…。なのに小さい時からずっと闘い続けてきたんです…。何で悟林さんは挫けないで闘って来れたんだろうと思ったんです…でも、今なら俺にも何となく分かります…彼女に…俺を支えてくれて…守りたいと思う人が出来て…初めて、自分がどれだけ大事にされてきたか分かったんです。悟林さんが俺と悟飯さんを気絶させて1人で人造人間の元へ向かった理由を…出来ることなら悟林さんが生きているうちに分かってあげたかったけど…」

話を聞きながら、チチは一切口を挟まなかった。

時折息を詰め、ハンカチで涙を拭いながらそれでも一言も聞き漏らすまいと顔を上げていた。

「…未来の悟林ちゃんにとっておめえは大事だっただな…」

「チチさん…」

「ありがとうな、トランクス…おめえがいてくれて本当に良かっただよ…きっと悟林ちゃんは幸せだったはずだべ」

「………」

チチの言葉にトランクスは悲しげに微笑んだ。

「おーい、カメハウスの近くまで来たから入るよー…って、みんなどうしたのさ?」

未来悟飯と共に飛行艇の中に入ってきた悟林はどこかしんみりしている母親達に困惑した。

「何でもありません、見張りをしてくれてありがとうございます悟林さん、悟飯さん」

「これくらい平気だよトランクスさん。それにしても大変なことになっちゃったね」

「そうだよなあ…取り敢えずブルマに事の成り行きを伝えておいた方が良いんじゃないか?」

悟林の言葉に同意しつつ、ヤムチャが一応ブルマにも詳細を伝えた方が良いのではないかと言う。

「そ…そうすね…でも俺が連絡するんすか?…やだなあ…お前のおっかさん、きついんだよな言うことが…」

「はは…未来でも変わってませんよ」

「クリリンさん、冷静に考えてみよう。お淑やかで大人しいブルマさんなんて想像出来る?」

「………何でだろうな、想像したら寒気がしてきた」

悟林の言う通り、お淑やかで大人しいブルマを想像してみたものの、違和感がありすぎて逆に寒気がしてきた。

「人はあるがままが一番だよね。」

「そ、そうですね…」

悟林の呟きにトランクスが同意すると、クリリンはカプセルコーポレーションに通信を繋げる。

「あ、あの、クリリンと言いますが、ブルマさんおられますか?え?あ、はい。ブルマお嬢様です………あ、ブルマさん?あの、クリリンすけど…」

ブルマが出てくれたのかクリリンが事情を説明しようとした時であった。

『クリリン!?何よ無事だったわけ!?今どこから連絡してるわけ!?悟林ちゃん、帰った頃だと思って家に電話しても誰も出ないしさ!ねえっ!そこにでかくなった未来の私の息子のトランクスいない!?』

「え?あ…はい、丁度いますが…」

『いる!?』

「声でかいよブルマさん…お父さん寝てるんだから声を小さくしてよ…」

スピーカーから聞こえるブルマの声に悟林は耳を塞ぐ。

『良かったあ!ちょっと変わってくんない!?』

「あ、そのまま喋ってもいいすよ。スピーカーから聞こえてますから」

「ブルマさん、声小さくして。お父さん薬が効いて寝てるんだから」

『あ、あらごめんなさいね…何日か前にさ、西の方の田舎の人からうちの会社に問い合わせがあったらしいのよ。山を歩いてたら不思議な乗り物が捨ててあったから貰っちゃおうと思ったんだってー。でも全然動かし方が分かんないから教えてくれってね…』

「は…はあ…」

「ブルマさん、それじゃあ分かんないよ。乗り物がどうかしたの?捨てられた乗り物なんてどうでもいいじゃない」

『ああもう、慌てないの悟林ちゃん。これを聞いてそんなことが言えるのかしら?その乗り物…トランクスのタイムマシンなのよ。しかも壊れてるの…』

「え!?そ…そんな…!まさか…い…いえ、ありますよ。俺、カプセルに戻してここに持ってますから」

ポケットからケースを取り出してタイムマシンのカプセルを確認する。

「ちゃんとあるって言ってますよ」

「ブルマさん、もしかして…“更年期障害”って奴?」

さらりと酷いことを言う悟林にスピーカーからブルマの怒声が飛んできた。

『失礼ね!まだまだ若くて美しいわよ!』

「時々さ、ブルマさんにこういうことを平気で言うところは悟林ちゃん、本当に悟空にそっくりだと思うんだ」

「ま、まあ、こういうはっきり言うところも姉さんの良いところですよ。なあ、過去の俺」

「そ、そうですね、未来の僕」

クリリンの言葉に両方の悟飯は苦笑しながら言う。

『コホンッ!とにかくこれはあんたのじゃなかったのね。苔とかついてて古っぽい感じがしたからおかしいと思ったのよ。ねえ、未来の私ってタイムマシンをいくつ作ったのかなあ…』

「トランクスさん、ひょっとして試作機?」

「い、いえ、悟林さん…試作機を作る余裕もありませんでした。あれを1機作るのだけでもやっとだったんです」

『試作機でもないのね…でもこれ絶対にタイムマシンだと思うのよ。前に乗ってたのを見たことあるんだから見間違えるはずがないわ…ねえ、そこファックスある?写真送るから』

送られてきた写真をクリリンが手に取り、トランクスに渡すとトランクスの目が見開かれた。

「え!?」

ブルマから送られてきた写真は確かにトランクスと未来悟飯が未来と過去を行き来するために使うタイムマシンにそっくりであった。

「苔まみれでガラス部分に穴が開いてるけど…」

「ええ、間違いありません。俺達が乗ってきたタイムマシンそのものだ…い…一体どういうことなんだ…こ、この写真の詳しい位置分かりますか!?」

悟林が写真のタイムマシンと一度見たことのあるタイムマシンを比べながら言うとトランクスは同意し、この写真の正確な位置を尋ねる。

「そのタイムマシンのある詳しい場所分かりますかって」

『詳しくはないけど…西の1050地区の辺りのどこかだと思うわ。行くの?』

「はい…!この目で見てみたいんです…」

『じゃあ私も行くわ。そんなに遠くないから』

「わ、分かりました」

『じゃあ後でね』

通信が切れると、悟林が尋ねてきた。

「本当にタイムマシンってトランクスさんとでっかい悟飯が乗ってきた奴しかないの?」

「ええ、未来では物資が少ないので、タイムマシンもジャンクパーツを利用して作ったんです。それでも1機作るのがやっとでしたから」

「とにかく、そこに向かってみよう。考えるのはそれからだ」

「はい」

未来悟飯の言葉に頷くとこの時代の双子が声をかけてきた。

「私も行くよ。物探しなら人が多い方がいいでしょ?」

「僕も一緒に行きます。物探しなら僕も役に立てるでしょうし」

「ありがとうございます。悟林さん、過去の悟飯さん」

「お母さん、行ってくるよ」

悟林がチチにタイムマシン探しに向かうと言うと、チチの眉間に皺が寄る。

「駄目だ!…つっても無駄だべ、仕方がねえな…トランクスも未来の悟飯ちゃんも行くんだろ?ちっせえけど、こっちの悟林ちゃんとたくさん話すと良いだ」

「「はい」」

4人が飛行艇から飛び出し、タイムマシンがあるらしい場所に向かう。

「あの…未来の僕やトランクスさんのいた未来の世界はそんなに酷い目に遭っているんですか?」

飛びながら悟飯は未来の事を聞いてきた。

「ああ…世界の人口はたったの数万人にまで減ってしまった。西の都はまだマシだけど、他の町は壊滅状態で人々は地下のシェルターに隠れて何とか凌いでいるんだ」

「そ…そんなに…」

未来悟飯から未来の事実を聞くとその悲惨さに悟飯は思わず息を飲んだ。

「見つかるといいですね…人造人間の弱点が…」

「ああ…」

「弱点…そう言えばドクター・ゲロって人造人間に殺されたんでしょトランクスさん?」

「ええ、あの2人はドクター・ゲロに逆らって、そのまま…」

「そっか、つまり人造人間はドクター・ゲロにとって失敗作だったってことなんだよね」

悟林の言葉にトランクスも頷いた。

「失敗作だった2人の危険性はドクター・ゲロもテスト段階で分かっていたはず…」

「うん、だから人造人間をそのテストの時にどうやって止めたのか…もしかしたら人造人間を止める装置があったんじゃないかな?」

「俺もそう思います。そういう物が無ければ恐らくドクター・ゲロは人造人間を目覚めさせずに姿を眩ましたでしょうし…どこまで可能性があるか分かりませんが…」

「少なくても0じゃないよ?頑張ろう?トランクスさん」

「はい…この辺りのはずです」

悟林の言葉に頷き、トランクスは座標を確認して止まる。

この周辺にタイムマシンがあるはず。

「手分けして探しましょう!」

「久しぶりに競争だ!でっかい悟飯とトランクスさんも!」

「はは、分かったよ姉さん」

「頼りにしていますよ」

4人は散開してタイムマシンを探し、しばらくして悟飯が声を上げた。

「あった!タイムマシンありましたよーっ!!」

「良く見つかりましたね悟飯さん!」

「うわあ、本当にタイムマシンだ」

「…これは血の痕か?」

未来悟飯がタイムマシンのボディに付いているへこみと血痕に顔を歪める。

それを見た全員が沈黙するが、飛行機の機械音が聞こえたことでハッとなる。

「きっとブルマさんですよ!僕が案内して来ます!」

「俺も行こう」

「2人共ー、転ばないでよー」

「こ、転ばないよ!」

「姉さんからすれば俺はいくつになっても手のかかる弟なんだろうな…」

2人の悟飯がブルマを呼びに行っている間にトランクスがケースからタイムマシンを出す。

無傷のタイムマシンとボロボロのタイムマシンの差が激しい。

「はーい、トランクス。美しいお母さんですよー!」

「ど…どうも…」

「自分で自分を美しいって言うのはどうなんだろうね…」

ブルマの登場に空気が緩んだのを感じてトランクスと悟林は苦笑した。

「見て下さい。そっちのが俺達の乗ってきてカプセルにしておいたタイムマシンです。」

「あら!じゃあ確かにこいつはあんた達のじゃないわけだ…」

「い…いえ、あなたは未来でタイムマシンをたった1機しか作らなかった…こ…こいつも俺達の乗ってきたタイムマシンその物なんです…」

「…そんな…」

「これを見て下さい。これはトランクスが最初に過去に向かう前に書いた“希望”と言う文字です。」

未来悟飯が“HOPE”と書かれている部分を見せた。

「ねえ、こんなボロボロで苔まみれってことは随分長い間野晒しにされてたんじゃない?調べてみようよ」

「そうですね」

トランクス達が舞空術でタイムマシンを調べる。

「お姉ちゃん、この穴…変じゃないかな?」

「うん、内側から高熱で溶かされたって感じ」

「取り敢えず中を調べてみよう」

「ええ、皆さん少し離れて下さい」

トランクスがスイッチを押してタイムマシンのコックピットを開き、中に入ると、座席には妙な物体があった。

「…!?」

「こっちにもあるよ」

悟林も物体を発見し、悟飯と未来悟飯は悟林とトランクスが持つ物体を見つめる。

「な…何ですか?それは…未来の僕は知りませんか?」

「いや、俺もこんな物は見たこともないな」

「何!ちょっと見せてよ!」

2人が物体をブルマに渡すと、ブルマは裏を見たり、断面をくっつけたりした。

「どうですかブルマさん?」

「多分、何かの卵の殻だと思うわ」

未来悟飯の問いにブルマが答えるが、学者を目指している悟飯も学者を目指していた未来悟飯もそんな卵など見たことがない。

「そんな卵、どんな図鑑にも無かったよ……この穴を開けたのは、その卵から生まれた生き物なのかな?」

悟林が卵の殻を見つめてからガラスの穴を見つめる。

「…エネルギー残量はほとんど0…やって来たのは…エイジ788…!お…俺達がやって来た未来より3年…さ…更に未来から…」

「え…!?」

「トランクスさん達がやって来た未来より更に未来から!?」

トランクスの言葉にブルマと悟林が目を見開く。

「こ…この時代にやって来たのは…今から…や…約4年前…こ…この前、俺が来た時より1年も前にこ…こいつは来ていた…い…一体…何が…何のためにやって来たんだ…!れ…歴史が随分か…変わってしまったのは…まさか、こいつのせいでは…!?」

そうとしか考えられなかった。

いくら自分が悟林と共にフリーザ親子を倒し、悟空の心臓病を防いだからといってここまで変わるはずがない…。

しばらく色々と考えてみたが謎の卵の殻の正体が分かるはずもない。

「…私は更に未来のトランクスさんと悟飯がどうなったのかが気になるよ…このタイムマシンについてるへこみや血の痕…このタイムマシンがやって来たトランクスさん達は一体どうなったんだろう……」

悟林の険しい表情に誰もが言葉を出せないでいた。

「…取り敢えず、タイムマシンをこのままにはしておけないな。カプセルに戻そう」

「…そうですね」

未来悟飯の言葉にトランクスはタイムマシンのスイッチを押してカプセルに戻すとそれをしまった。

しまう際にポケットから1枚の写真が落ちてしまい、悟林がそれを拾った。

トランクスとブルマと…長い黒髪の女性が写った写真。

「ブルマさんと…誰?」

「…あ!?」

悟林の手にある写真に気付いたトランクスが慌てる。

「あらー可愛い娘じゃない。恋人?あんた悟林ちゃんのこと慕ってるから片想いしてたのかなーって思って独身を貫くのかって心配してたらちゃんと恋愛してるじゃない。うん、中々の美人ね。まあ、私ほどじゃないけど」

「え…と…彼女は幼なじみみたいな物で…悟林さんについては…その片想いと言うか…その…」

悟林達がブルマの発言に呆れ、この場合はどう言えば良いのかとトランクスが恥ずかしそうにしながら頭を悩ませていたが…。

未来悟林に関しては今でも師匠としても…1人の女性としても慕っている。

しかし、目の前に過去とは言え悟林本人がいるので恥ずかしい。

「それにしても辛い未来って聞いてたから恋愛どころじゃないと思っていたわ」

「それは…」

ブルマの言葉に俯くトランクスだが、ブルマはそれを見て微笑む。

「冗談よ。辛い時代だからこそ、そう言う支えみたいなのって必要だと思うから」

そう言うとトランクスの頭をくしゃくしゃと掻き撫でた。

「う…その…そ、そうだ。悟飯さんにも相手がいるんですよ。名前は言えませんけど」

「いっ!?」

まさか自分に飛び火してくるとは思わなかった未来悟飯が父親の悟空みたいな反応をする。

「え!?えーーっ!?ご、悟飯にも相手が…トランクスさん、でっかい悟飯の相手は教科書か辞典か何か?」

「いえ、人間の女性ですよ」

「な…あ…っ!?悟飯に…人間の彼女…ひょっとしたら奥さんかもだし……そうか、だから私達の時代の人造人間は強くなっちゃったんだ…ああー…何てこと…」

「…姉さん、姉さんは俺を何だと思ってるんだ…?」

この世の終わりのような顔をする悟林を横目で睨む未来悟飯に悟林は頭を掻きながら口を開いた。

「勉強にのめり込むと一歩も外に出ようとしない勉強マニアだけど?」

「………」

「お、お姉ちゃん…酷い…僕…そんなに外に出ないかなあ?」

「最近ハイヤードラゴンが構ってもらえなくて寂しがって拗ねてたからね。あれは相当怒ってたよ悟飯」

父親譲りの素直さで即答で返された姉の答えにショックを受ける2人の悟飯であった。

新たな敵の存在を知る前の数少ない安らぎの一時である。

穏やかな空気が流れていたが、取り敢えず悟林は自分達の現状をブルマに話していた。

「私達は亀仙人のお爺ちゃんの所にいるんだ。」

「カメハウスへ?何で?」

「何でも3人の人造人間がお父さんを殺そうとしてるらしいんだ。でもお父さんは病気だからお父さんをカメハウスに隠したんだ。」

「ふーん、それなら悟林ちゃんが倒しちゃえば良いじゃない。不完全燃焼だったんでしょ?」

「姉さんに無理はさせないで下さいブルマさん。姉さんと父さんとヤムチャさん以外のみんなでかかったのにこの時代の人造人間には勝てなかったんですから」

ブルマの言葉に未来悟飯が自分達が挑んだ時の結果を告げた。

「…あら…そんなに凄いんだ…で、ベジータは大丈夫だったの?ベジータもカメハウスへ?」

「ベジータさんはカメハウスにはいないよ。多分人造人間を倒すために修行してるよ。人造人間に負けたからって負けっぱなしじゃ終われない…ベジータさんはそう思ってる…きっと」

「…それにしても…父さんは1人で何をするつもりなんでしょうか?修行するにしろ、1人でやるより対戦しながらやった方が遥かに効率が良いのに…」

トランクスは未だに合流する気配がないベジータが気になっていた。

人造人間を起動させようとしたこと、その前にブルマを助けてくれたことでトランクスのベジータに対する感情は複雑だろう。

「ベジータさんはプライドの塊だからね…多分超サイヤ人を超えるつもりだよ」

「「ス、超サイヤ人を…超える!?」」

「お、お姉ちゃん…超サイヤ人を超えるなんて…そんなこと出来るの?」

悟林の言葉に未来悟飯とトランクスが目を見開き、悟飯が超サイヤ人を超えられるのか疑問の声を上げる。

「何言ってるの、普通の超サイヤ人じゃ勝てないなら新しい力を手に入れればいいじゃない。お父さんの界王拳も当時のお父さんより強かったベジータさん達サイヤ人を倒すために習得した技だよ。私も目指すつもりだよ、超サイヤ人よりも強い力を手に入れる。体が壊れるかもしれないけど色々考えてるんだ。超サイヤ人を超える方法もまだ朧気なイメージしかないけど…未来の私は超えようと考えてなかったの?」

「…そう言えば未来の姉さんは“お前達には超サイヤ人より強くなってもらう”って言ってたな…組み手以外にも瞑想にも力を入れていた…」

「もしかして未来の悟林さんは俺達に超サイヤ人を超えさせようとしていたんでしょうか…」

「未来のお姉ちゃんはひょっとしてトランクスさん達が未来のお姉ちゃんが考えているのを理解しているのを前提で鍛えてたんでしょうか?」

悟飯が何となく呟く。

こっちの姉にも言えるが、悟林は自分の考えていることを相手も理解している前提でやることがある。

もしそうなら、空回りをしていたのではないか?

「あはは…私の悪い癖だなあ…」

「分かってるなら直そうよお姉ちゃん…ん?」

悟飯の視界に入った物体に向かって歩く。

それが気になったのか全員が悟飯に着いていく。

そこには異形な何かがあった。

「きゃっ!なっ、何よあれ…!」

「虫…にしてはでっかいなあ…ねえ、ダブル悟飯は知らないの?」

「いや、俺もこんなのは未来でも見たことないな」

「僕も…」

「一体何なんでしょうかこいつは…」

取り敢えず学者志望の悟飯と学者を目指していた未来悟飯が異形を調べる。

「これは脱け殻だな…虫に近いようだ…」

未来悟飯が異形の脱け殻を見ながら言うとブルマが驚く。

「脱け殻!?こ、こんなでっかいセミがいるの!?」

「見た目はセミに近いけど…違うでしょ?」

悟林が悟飯に尋ねると、悟飯は首を振る。

動物などの知識は悟飯が誰よりも持っている。

「こ…こんなセミはいないよ…こ…これは…」

「た…多分…タイムマシンに残っていた卵の中身。」

トランクスが恐らくあの卵から孵った生物だと予想する。

「ああ、恐らくこいつが成長して脱け殻から出たんだろう。」

トランクスの言葉に未来悟飯も同意する。

「一体何だろうねこいつ?地球の生き物じゃないなら宇宙生物かな?」

「多分、それが一番可能性が高いと思うよ姉さん。地球にはこんな生き物は存在しなかった。新種だとしても3年で現れるとは考えにくい」

「し…しかし…どうやってこの時代へ…誰かがタイムマシンで卵を送り込んだのか…それとも何者かが卵と一緒に来たのか…そ…それにしても何故なのかさっぱり分からない…」

「ごめん、トランクスさん。ちょっといいかな?」

悟林が脱け殻の状態を更に調べるために脱け殻の中に手を突っ込むと、脱け殻はまだ乾いておらず、悟林の手にはベタベタとした液体で濡れた。

「脱け殻が乾いてないということは、中身は出てあまり時間が経っていないと言うことか…」

「え!?え!?」

未来悟飯が悟林の手に付いた液体を見つめながら周囲を見渡し、ブルマも慌てて周囲を見渡す。

「ねえ、みんな…この生き物…何かやばい感じがするんだけどさ…みんなはどう思う?」

「嫌な予感が凄くするよ…」

悟林の言葉に悟飯が答えると、全員が同意するように頷いた。

「な、なら早くこの場から消えた方がいいわね!あんた達はカメハウスにいるのね!何かあったら連絡するわ!」

「うん、分かった。ブルマさん気をつけて」

悟林が頷くと、ブルマは飛行機に乗って飛び去った。

「暇だったら遊びに来なさいトランクスー!お祖父さんやお祖母さんも喜ぶわよー!!」

悟林達も長居は無用とばかりに飛び去る。

「(い…一体何がどうなってるんだ…わ…分からない…さっぱり分からない…)」

「みんな、取り敢えずカメハウスに急ごう」

「「「はい!」」」

悟林達は全速力でカメハウスに向かった。

そしてカメハウスに着くと悟林が代表して声を上げた。

「亀仙人のお爺ちゃーん、お邪魔しまーす」

悟林達がカメハウスの中に入ると、そこには大人達がテレビを凝視していた。

それを見た悟林達は不思議そうな表情を浮かべる。

「お…お前達、こ…このニュースを見て答えてくれ…何があったのか…」

「ニュース?」

悟飯が不思議そうにするが、取り敢えず悟林達もテレビを観た。

「…ねえ…トランクスさん…」

「…はい…恐らくさっきの…」

「さっきのってなんだ?」

ヤムチャがトランクスに尋ねると深刻な顔をした。

「…俺達よりも更に未来から何者かがこの世界にやってきたみたいなんです…タイムマシンに卵の殻があって近くに大きな脱け殻がありました…」

「…その脱け殻から出た奴だってのか…?」

「多分そうだと思います…場所も近いですし…」

「よし、トランクス。行って調べてみよう」

「はい!」

「私も行くよ!」

未来悟飯の言葉にトランクスと悟林が向かおうとする。

「お、おい!大丈夫なのか!?」

「いくら超サイヤ人3人でも…」

「大丈夫です、例え中身がどんな恐ろしい奴でも逃げることくらいは出来ます。自分よりも強い相手との立ち回り方は人造人間との闘いで理解してますから…」

ヤムチャとクリリンが心配するが、未来悟飯は自嘲するように言うと外に出ようとする。

「ぼ、僕も行きます!」

「過去の俺はここに残るんだ。君は超サイヤ人になれない…もし中身がとんでもない化け物だった場合は君を庇いながら闘うことになる。そうなると俺達がやられる可能性が高くなるんだ…父さんを守る意味でも君はここに残るんだ」

「は…はい…」

未来の自分からの戦力外通告に悟飯は落ち込む。

それを聞いたチチは息子には悪いと思いながらも安心した。

どんなに修行して強くなっても悟飯はチチにとって可愛い息子だからだ。

「未来の悟飯ちゃんも気を付けるだぞ!?危なくなったらすぐに逃げるだ!悟林ちゃん達もだぞ!」

「分かっています。俺達はまだ死ねませんから」

「悟飯、私達がいない間は悟飯がお父さんを守るんだよ」

「では、俺達は行きます。大体の位置は分かりますから」

未来悟飯に続いて悟林とトランクスがカメハウスを出た。

そして飛び立とうと砂浜に出た時ありえない気を感じ、それに気付き悟飯達も外に出てきた。

「ちょっと待って…!何なのこの気は…!?」

その気は驚くべき事にたくさんの人間の気が混じっていた。

その中にはフリーザ親子、そして悟空やピッコロ、ベジータの気と悟林達が知る者の気も存在した。

「間違いない…フリーザとフリーザの父親の気だ…!」

未来悟飯が最も強い気の正体に気付く。

自分にとってはかなり昔の相手だが、フリーザに与えられた恐怖は簡単には消えない。

「そ…孫悟空さんのも…ピッコロさんも…そ…それに俺の父さんのまで…」

トランクスは困惑したように呟く。

こんな複数の気が一緒になっている存在など普通は有り得ないからだ。

「た…確かに感じる…し…しかしそんなはずはない…フ…フリーザもその父親もし…死んだんだ…」

ヤムチャもフリーザ親子の気を感じたが、信じられなかった。

フリーザ親子は目の前にいるトランクスと悟林によって倒されたからだ。

「お父さんは確かに寝ています!」

悟飯が窓から悟空の存在を確認した。

「この方角はニュースにあったジンジャータウンだな…」

「行ってみようよ!怪物の正体を暴いてやる!!」

未来悟飯、悟林、トランクスの3人は事件の現場であるジンジャータウンに向かって飛び立った。 
 

 
後書き
未来悟飯の体の災難は未来の悟林がある程度受けてくれました。

因みに未来悟飯に相手がいる際のリアクションは娘のブラに髭が似合わないと言われたベジータと同じような世界終了のような顔です。

勉強マニアの弟が恋をしたりするなど信じられない戦闘マニアの姉 

 

第25話

 
前書き
未来悟林は自分の師匠であるピッコロや父親の悟空がある程度自分の考えを察知してくれるからその感覚で未来悟飯とトランクスを鍛えていたので、それが裏目に出た感じですね。 

 
カメハウスを飛び立ってどれくらい経つだろう…トランクスが新たな気を感じる。

それは想像もつかない位大きな気だった。

「ま、また新たに凄まじい気が…!もう1人何者かが現れた…!それも知らない奴が…」

「これ、ピッコロさんじゃないかな?」

「え!?し、しかしこの気は…」

ピッコロとは既に出会ってるがその時の気とは全く別物であり、なのに何故悟林はこの気をピッコロと言うのかトランクスは理解出来なかった。

「多分、クリリンさんが言っていたように神様と融合したんだ。」

未来悟飯がピッコロの不思議なパワーアップについて推測する。

「え…!融合…って、例の神様とですか…!?元々1人から別れたって言う…」

「ああ…やっぱり凄いな…ピッコロさんは…」

未来悟飯が尊敬している師匠のパワーアップに表情を輝かせた。

「(す…素晴らしい…!…ここまでパワーアップ出来るものなのか…)」

神との同化により手に入れた力はトランクスの想像を遥かに超えたものだった。

「もしかしたら今のピッコロさんなら人造人間を倒せるんじゃないかな?」

悟林はピッコロの気にそう感じた。

その時大きな衝撃波が悟林達の所まで届いてくる。

「いっ、今の衝撃波は…!?」

「何て強さだ…ピッコロさん…!」

遥か遠くの光を確認すると未来悟飯は拳を握った。

「姉さん!トランクス!急ごう!!」

「うん!」

「はい!」

自分達が力になるか分からないが、この目で脱け殻から出た化け物を確認しなければならないと未来悟飯は感じた。

そして自分のいた時代で自分が弱かったせいで死なせてしまったピッコロの助けになりたい。

「あれ…ピッコロさんの気が…急に減った…」

「…あの怪物が何かしたのかも知れませんね…」

悟林とトランクスがピッコロ気が減ったことに気付く。

未来悟飯も当然気付いており、2つの気の様子を伺いながら闘いの起こっている場所に近付き、そしてその正体を確認した。

「やっぱりピッコロさんだ!本当に神様と合体したんだよ!!…そしてあっちの奴は…もしかして」

「多分あいつでしょう…!!例の脱け殻から出た…!!」

悟林の言葉に対して初めて見るその姿にトランクスはそうとしか思えなかった。

怪物はトランクスと未来悟飯の存在に気付いて2人を見つめていた。

ピッコロの近くに降りると怪物の姿を見る。

悟空やフリーザ達の気を持つ怪物の姿はあまりにも醜い姿でこの世の物とは思えない。

「うわあ、化け物だね…こいつ…」

「孫悟林か…」

「うわっ!喋った…何で私の名前を知ってるの?」

「知っているとも…私の中の孫悟空の細胞が私に教えてくれているからな…お前の生体エネルギーはかなり魅力的だが…」

「悟林には指一本触れさせんぞ…尾に気を付けろ、この町の人間達はそいつで消されたんだ…」

怪物を睨み付けるピッコロの気の圧力が更に増した。

凄まじい殺気を怪物に向けている。

「ピッコロさん、何故こいつから父さん達の気を感じるんですか?」

「未来の悟飯、その理由は後で話す。こいつを片付けるのが先だ…」

「片付けるだと?そう上手く行くと思うのか?」

怪物の言葉にピッコロは冷徹に言い返す。

「この状況ではお前にとても勝ち目があるとは思えんがな」

「確かにこの場は退散するしかないだろうな」

「逃がしはせん…もうさっき程度のかめはめ波ではどうしようもない」

ピッコロの言葉に悟林が反応した。

「かめはめ波!?こいつはお父さんの気を感じるだけじゃなくてかめはめ波まで!?」

「かめはめ波だけではないぞ孫悟林。その気になれば元気玉やお前が孫悟空から伝授された界王拳も多分出来るだろう」

「元気玉や界王拳まで知ってるなんて…お父さんが聞いたら驚くかもね…」

悟林の言葉に怪物が反応する。

「ほう…お前の父親は生きているのか?」

「勝手に殺さないでよ」

悟林の言葉に怪物は笑みを浮かべた。

「そうか、まだ生きていたか…やはり私の知っている歴史とは些か違ってきているようだな…17号・18号は必ず手に入れてみせる!お前達には私が完全体になるのを邪魔しようとしてもどうにもなるまい!17号達と少しはマシに戦えるのがピッコロ1人ではな!」

「完全体…?」

悟林が呟いた直後に怪物は技の印を結び、それにすぐ気付いたが遅かった。

「太陽拳!!」

発する言葉と共に怪物から眩い光が放たれた。

それを回避する事が出来ずにその光を受けてしまい、それによって目は眩み視界が遮られてしまった。

「く…そ…」

激しい光で目の眩みはなかなか取れず眩んだ状態でトランクスや未来悟飯達は辺りを見回す。

「しまった…逃げられた!!」

「逃げるな卑怯者ーっ!!」

未来悟飯と悟林が怪物が逃げたことにそれぞれ叫ぶ。

「畜生!た…太陽拳は天津飯の技じゃなかったのか!」

「ピッコロさん、太陽拳はそれほど難しい技じゃありません。悟飯さんや未来の悟林さん、俺も使えるんです…」

太陽拳は気の力で全身を発光させる技。

気のコントロールさえ出来れば簡単に出来る技なのだ。

トランクスの説明にピッコロは舞空術で飛び上がった。

「気も感じない…あいつ…気も消せるんだ…」

あいつは危険だと、悟林の本能が訴えていた。

しばらくすると上空で探していたピッコロが悟林達の前に降りてくるのと同時に怒りで気を解放した。

「くそ~~~っ、油断した…!!あっさり倒しておくべきだったんだ…!!己…!完全体には絶対させんぞ…!」

そう叫ぶピッコロの気は悟林達の想像を遥かに超えたレベルであり、その気の大きさに声も出なかった。

「………うん?」

ある人物の気を感じて空を見上げるとベジータがいた。

ベジータも気の異変を感じたのだろう。

様子からして、超化して全速力で飛んできたのが手に取るように分かり、そして超化を解き地上に降りた。

「は…話せ…今ここで何があったのか…」

尋ねるベジータの表情は優れない。

それはそうだろうと悟林は思う。

少し前までベジータは超サイヤ人に変身出来るようになったことでプライドを取り戻したのだ。

それなのに人造人間に敗北し、その上ピッコロにまで上を行かれてしまったベジータの心境は複雑だろう。

「天津飯もこっちに向かっているようだ…奴が着いたら纏めて話す…」

「…ではその前に、これだけは聞いておきたい…貴様は本当にピッコロなのか…!な、何故急にそれほどの戦闘力をつけたんだ…!」

「神様と再び合体したんだそうです…」

ベジータの疑問に対してトランクスが代わりに答えた。

「な…何だと…合体…?そ…それだけで…(あ…あの時感じた戦闘力はこ…この超サイヤ人の俺を確かにこ…超えていた…ば…馬鹿な…あいつはたかがナメック星人だぞ…)」

「あ、天津飯さん来たよ!」

悟林が天津飯の姿を認識して叫ぶ。

「(…どうするか…17号と18号、更に16号までいては確かにいくら俺がスーパーパワーを得たとしても手には負えんだろう…やはりセルそのものを倒すしか…)」

「おーい、神コロ様…あ、ネイルさんってナメック星人さんとも合体しているから神コロイルさん?天津飯さん来たよ?」

「名前まで合体させるんじゃない。基本はピッコロだ、今まで通りピッコロと呼べ…よし、悟飯達には後で話すとして…全てを話そう。ベジータと天津飯は見ていないが、さっきの化け物はドクター・ゲロのコンピュータが独自に造り出した人造人間だ…」

「な…何っ…!?」

「ドクター・ゲロのコンピュータですって?またドクター・ゲロか…!!」

「…あれも人造人間なんだ…」

「化け物の名はセル…奴は俺達の細胞を集めて合成させた人造人間だ」

ピッコロの言葉に全員が息を飲んだ。

「お…俺達の細胞を…!?」

「そうだ…だからセルは様々な気を持っていたんだ…」

「でもどうしてセルが未来から?」

悟林の問いに対してピッコロは少しの間を置いてから答えた。

「…セルの狙いは17号と18号だ。あの2人を吸収することで完全体になるらしい。奴のいた未来の世界にはその2人は存在してなかったそうだ…トランクスと未来の悟飯が何らかの方法で倒した事によってな…」

「俺達が…倒した…?俺達の世界より3年後には人造人間は倒せているというのですか?」

「恐らくな…それで倒した報告をすべくタイムマシンを出したのだろう…その時セルにタイムマシンの存在を知られ、お前達を殺してタイムマシンでこの時代に来た…この時代の人造人間を吸収して完全体になる為にな…」

トランクスの問いにピッコロが答えると、タイムマシンの状態を思い出した3人。

あのへこみと血の痕はセルと闘った更に未来のトランクスと未来悟飯との闘いによる物だったのだろう。

「セルね…あいつよくも私の弟と未来の弟子を…!見つけ出して粉々にしてやりたいよ…!」

「お前の気持ちは分かるが落ち着け…セルが完全体になるのを阻止するには…奴を何とか探して殺すか、17号、18号をやはり探して殺すか…そのどちらかだ…俺としてはまだそれほどでもないパワーの内にセルを倒すしかないと思うが…」

ピッコロはそういうがその場にいた者は浮かない顔だ。

セルの強さは今のところピッコロとベジータ、悟林、そして今も眠っている悟空でないと敵わないと分かっていたからだ。

ベジータに関しては悔しさの表情も浮かんでいた。

「(ふ…ふざけやがって、どいつもこいつも…!宇宙一の超サイヤ人をあっさり出し抜きやがって…!頭に来るぜ…!なあ、カカロット…)」

今この時…ベジータは悟空を仲間と認めたのだ。

同じように超サイヤ人になれる純粋なサイヤ人である悟空を。

セルの正体。

壊れたタイムマシン。

セルに殺された更に未来のトランクスと未来悟飯。

完全体のための素材である17号と18号との合体阻止。

様々なことが起こりすぎて混乱しそうになる。

「…何とかセルと言う怪物を見つけて倒さないと…」

「探せるでしょうか…あいつもピッコロさんの予想以上の強さを知って上手く気配を殺しながら人々を襲うんじゃないでしょうか…」

「な…何としてもセルと17号・18号との合体を避けないと…とんでもないことに…」

「地球だけではない…宇宙の星々も大変なことになるはずだ…奴にはフリーザ親子の血も流れていることを忘れるな…」

未来悟飯やトランクス、天津飯とピッコロが険しい表情を浮かべる。

「お父さんの血や…」

「俺の血もな…せこい作戦ばかり立てやがって…合体したいならさせてやれば良いだろう!倒す相手が減って手間が省けるってもんだ…俺は敵がどうなろうと構わん…ぶっ殺すだけだ。」

悟林の言葉を遮るように言うベジータ。

「甘く見るなベジータ、あの全く手に負えなかった17号達をセルは遥かに超えると言うのだぞ」

険悪な空気になったピッコロとベジータの間に悟林が割り込む。

「まあまあ、喧嘩しないでよ……ピッコロさんが強くなってセルみたいな化け物やトランクスさん達の未来よりも強い人造人間…やばい状況なのにワクワクしてきたよ。よーし、決めた!私はしばらく修行するよ!超サイヤ人よりももっと強い力を手に入れて来る!」

「超サイヤ人を超えるだと…?そんなことが可能なのか?」

「何となくだけど…出来ると思うんだ。みんなが強くなるなら私だって負けてられないよ!」

ピッコロの問いに悟林は曖昧な答えを返す。

何しろ超サイヤ人自体伝説と言われている状態なのだ。

それを超えると言うのは並大抵のことではない。

ドラゴンボールもないのだから何もかもが手探りの状態となるだろう。

「…貴様だけじゃない…俺も超えてやる…必ず超えてやるぞ…!超サイヤ人を更に…!カカロットもそうなろうとするはずだ…必ずな…」

「うん、お父さんもきっと超えようとするよ。超サイヤ人を…ねえベジータさん、私と一緒に修行しようよ。お父さんが起きるまで相手がいないしさ」

「ふざけるな、貴様は臆病者の弟のお守りでもしてるんだな」

そのまま飛び去っていくベジータに悟林は頬を膨らませた。

「ちぇっ!ケチッ!」

「「………」」

そんな2人を見ていたトランクスと未来悟飯。

超サイヤ人を超える…もしそんなことが出来るのなら…。

「うーん、まあいいか…ねえ、トランクスさんとでっかい悟飯。この時代のセルを破壊しに行こうと思うんだけど…一緒に来る?」

「そうですね…少なくともこの次元の未来ではもうセルは誕生出来なくなります」

「お前達3人で研究所に行ってくれ。俺と天津飯はもう少しこの付近を探ってみる…」

「はーい、セルが見つからなかったらカメハウスで合流しようよ。お父さんのこともあるしさ」

3人はドクターゲロの研究所に向かう。

「(超サイヤ人を…超える…俺は…考えたことさえなかった…)」

今ある力でどうにかしようとした自分と更なる力を追求した姉。

未来悟飯は自分と姉の違いを改めて理解した気がする。

北の寒さに悟林はあまりの寒さに身震いした。

「うわあ…寒いなあ…」

身震いする悟林を見て、未来の悟林も寒さに弱かったことを思い出して笑うトランクスと悟林。

「ここのどこかに地下に通じる場所があるはずなんだ」

「見つからないね、周囲の瓦礫を吹き飛ばそうか」

「あ、悟飯さん。悟林さん、ありましたよ」

トランクスが地下室への入り口を発見し、3人はゆっくり降りていくと、そこには大きなコンピュータと大型のカプセルの培養液に浸かった小さな生物がいた。

「何て機械だ…」

機械に関しては専門外だが、未来悟飯にはこれが凄まじい技術であることは理解出来た。

同時にこれだけの技術を持ちながら私欲のために使い続けたドクター・ゲロに怒りを覚える。

「もしかしてこのカプセルの小さいのがセルなのかな?」

「恐らく」

悟林とトランクスがまだ手のひらにも満たないその生物を見つめる。

この小さな生物がいずれ大きくなり混沌の世界へと導くのだろう。

危険な芽であるセルの幼体を今の内に摘んでおかなければと、そう思い破壊の決意をする。

その時ふと机にあった設計図が目に入った。

「よーし、壊しちゃおうか」

「ああ!」

「待って下さい2人共」

トランクスは悟林と未来悟飯を止めるとその設計図に目を通し、機械に関して勉強していたがその設計図の凄さにトランクスは驚いた。

正直自分では理解出来ない位だったのだ。

「何、その設計図?セルの奴?」

悟林がトランクスに尋ねていたがトランクスはしばらく答えずに設計図に目を通していた。

「…いえ…ここに17号って書いてありますよ。俺には理解出来ませんが、これを母さんに見てもらえばもしかして17号達の弱点が掴めるかも知れませんよ!!」

「本当?」

「はい…母さんならきっとこの設計図を解読出来ます」

「そう、取り敢えずここを破壊しようか。」

「「はい!」」

トランクスは設計図をクルクルと丸めると小脇に抱えた。

「「「魔閃光ーーーっ!!」」」

3人が周囲に気功波を放つ。

これでこの時代のセルは誕生出来ない。

トランクスと未来悟飯は気功波一発一発に願いを込めて放った。

もう人々を苦しめる人造人間を造り出さないようにと願いを込めて。

研究室の内部を粉々に破壊すると勢いよく地上に飛び出した。

「これで終わりだーーーっ!!」

未来悟飯は自分の時代の仲間達の無念を込めた渾身の気弾を叩き込んだ。

そして大きな爆発を背に3人は飛び去った。

「思いがけない収穫があったな!!」

「はい!!」

「じゃあ、早速ブルマさんの所へ行こう!!」

そういう未来悟飯の言葉にトランクスはしばらく黙り込む。

「それじゃあ、私は修行に向かうけど…でっかい悟飯とトランクスさんはどうする?一緒に修行する?」

「良いのか姉さん…?俺、姉さんの修行の邪魔になるんじゃ…」

「私も可愛い弟に死んでほしいわけじゃないしね」

「ありがとう姉さん…」

「トランクスさんは?」

「…………俺…父さんと一緒に修行をしてみようと思うんです…もし超サイヤ人を超えられるなら俺も…」

悟林との…過去とは言え師匠との修行もしたかった。

しかし、脳裏にベジータの姿が過ぎった。

「そっか」

「トランクス、ベジータさんが一緒に付き合ってくれるとは限らないんだぞお!?」

未来悟飯の脇腹を殴って強引に黙らせると悟林はトランクスを促した。

「行ってらっしゃいトランクスさん、応援してるよ。じゃあ、この設計図は私が持っていくから」

「はい、ありがとうございます」

トランクスはベジータの気を探してその方向へ向かう。

そしてトランクスがいなくなったところで痛みに悶えている未来悟飯を睨む。

「…馬鹿!馬鹿悟飯!泣き虫悟飯!弱虫悟飯!お父さんより老け顔!中身ラディッツ伯父さん!他にはえーとえーと…と、とにかく!お父さんだってそんなこと言わないよ!本っ当にデリカシーないんだから!」

「痛っ!?痛いよ姉さん!!」

「手加減してるんだから我慢しなさい!」

未来悟飯の頭をポカポカと叩く悟林。

因みにこれを普通の地球人が受けたら木っ端微塵になる。

「だ、だってベジータさんが修行を受けてくれるなんて思えないし…」

「だからって…ベジータさんはトランクスさんのお父さんでしょうが!!あんたがどう思おうが口にして良いことじゃないでしょ!!」

「痛てててて!姉さん!止めて!姉さん!!」

耳を引っ張り、次は腕を捻り上げると未来悟飯は悲鳴を上げる。

その姿は夫婦喧嘩中の2人の両親にそっくりであった。

「よーし!図体だけの悟飯!私がみっちり鍛えてやる!目標は最低でも未来の人造人間なんてデコピンで倒せるくらいにね!!」

「お、お願いします姉さん…(俺、死ぬかも…)」

未来悟飯は悟林に首根っこを掴まれて引っ張られていく。

「(トランクスさん、頑張れ)」

悟林は何となく自分ではなくベジータの元に行った理由が分かる。

トランクス自身は気づいていないかもしれないが、トランクスは少しでも良いから父親との思い出が欲しかったのだろう。

だからこそ付き合ってくれるか分からなくともベジータの元に向かったのだ。

トランクスはベジータの姿を見つけると近くに降りた。

「…何の用だ」

振り返ることもせずにベジータは一点を見つめたまま。

「ベジータさん…俺と一緒に修行をしましょう…」

「失せろ…邪魔だ…」

「しかし…一緒にした方が伸びが…」

「…俺は誰とも組むつもりはない。修行なら貴様の師に頼め」

「……悟林さんは、悟飯さんの指導を…」

「ふん、あんな臆病者の世話など同情するぜ」

それだけ言うと無言になって一点を見つめる。

「ベジータさん!お願いします!俺は強くなりたいんです!俺の師匠の悟林さんのように!あなただって超サイヤ人を超えて強くなりたいなら…!」

「貴様の超サイヤ人を超えた姿とは何だ?」

「え?」

トランクスの言葉に振り返りながら問うベジータ。

その言葉の意味が分からないトランクス。

「超サイヤ人を超えるにはただ闇雲に修行したところでなれはせん。貴様の師の教えとやらをもう一度全て思い出してみるんだな。ガキのあいつが超サイヤ人を超えると考えついたなら未来のあいつが考えついていないなどあり得ん」

ベジータは再び一定の方向を見つめたまま立ち尽くす。

父親からのアドバイス…なのだろうか?

トランクスは戸惑いながらもベジータの近くに座り、未来の師匠との修行を一から思い返すことから始めるのであった。

そして超サイヤ人達がそれぞれの行動をしてから3日。

岩ばかりが広がる荒野。

ここは孫姉弟がピッコロと対サイヤ人のための修行をした場所であり、2人にとって大事な場所である。

そこで未来悟飯と悟林は超化して超サイヤ人となると、戦闘と勘違いするほどの組み手を行っていた。

「姉さん!」

「何!?」

悟林からの拳を腕で受け止めながら未来悟飯は問う。

「どうやって超サイヤ人を超えるんだ?」

「イメージは何となく出来てるんだ。でも今の私じゃそれになれる自信がない…多分基本的な力が足りないんだと思うから…まずは修行して戦闘力を上げる!まず自信を持てるまで強くならないと超えることも出来ない!」

つまり超サイヤ人を超えるには相応の実力が必要なのだろう。

自分より強い姉でさえなれなかったのだから、今の自分の実力ではなれないのも当然だ。

「姉さん!もっと、もっと本気で来てくれ!俺はもっと強くならないといけないんだ。俺の奥さんと娘のためにも!」

「奥さん!?娘!?…お付き合いどころか結婚したの?」

「え、えーっと、出会ったのは姉さんが死んでからなんだけど…人造人間に殺されそうになってたのを助けたことが縁になって……あ、でも結婚は出来なくて…式場とか、人造人間に壊されたし…」

「じゃあ、何で連れてこなかったの…ここで結婚式とか…あ、悟飯がいるしね……」

こっちの悟飯には関係ないとは言え、もし未来悟飯の嫁と会ってしまえば悟飯の人生に支障が出るのではないだろうか?

「か、彼女は気にしてないんだけど…」

「そっか…悟飯もお父さんか…だったら尚更強くならないとね。悟飯、もっともっと本気で行くよ!死なないでよね!」

「ああ!」

気を解放してフルパワーとなった悟林に対して未来悟飯もまた必死に食らい付くのであった。

因みに久しぶりに恐竜の尻尾ステーキを堪能することになり、サイヤ人2人分と言うことで結構な量を食われてしまった。

数年かけて治って伸びてきた尻尾がまた数年前の状態に戻されて号泣した恐竜は御愁傷様としか言えない。

一方カメハウスでは悟空が起き、風に当たっていた。

「あれ?悟空さ!気が付いたのけ!」

「チチ…心配かけて悪かったな…すっかり病気は治ったさ」

顔色も良いし、その言葉に嘘はなさそうだと判断したチチは安堵した。

「良かっただ~」

悟空は道着を手に取るとすぐに着始めた。

「なっ、何してんだ!?も、もう服なんか着ちまって…!」

「ご、悟空!治ったのか!?お、おいおい何を…!」

様子を見に来た亀仙人も道着を着ている悟空に戸惑う。

「もっと寝てねえと駄目だって!」

「夢の中でみんなの話を聞いていた…大体のことは分かってる…またえれえことになっちまったみてえだな。」

「ご…悟空…」

「もう闘う気なんか!?死んじまうだよ!」

心配するチチに悟空は微笑む。

「心配すんな…まだ闘わねえ…今のベジータや悟林に勝てねえならオラにも勝てねえから…オラも上を目指そうと思うんだ…超サイヤ人の上をな…!」

悟空の言葉に亀仙人は驚愕する。

今の超サイヤ人でさえ亀仙人にとっては別次元の物なのにそれ以上となるとまるで想像がつかない。

「ス、超サイヤ人の更に上を目指すじゃと!?そ、そんなことが可能なのか…!?」

「分からねえ…だが今度のはそれぐれえじゃねえととても勝てる相手じゃなさそうだ…1年ほど修行して駄目だったら諦める」

「1年!?…そ…そんなにかかっては…」

「大丈夫、1年だけど1日で済む所があるんだ」

「へ?」

悟空の言葉にポカンとなる亀仙人。

「チチ…悟林と未来の悟飯…こっちの悟飯も連れてってやりてえんだが、良いか?」

「じょ、冗談じゃねえ…と言いてえとこだが止めたって無駄だべ。しょうがねえな…」

「チチ!」

「ただし条件があるだ…うんと強くしてやってけれ!特に悟林ちゃんをな!どうせやるなら悟空さより強くしてやるだ!」

意外な条件を聞いた悟空と亀仙人が驚く。

いくら認めても娘が強くなっていく姿を複雑そうに見ていたのは悟空や仲間達も周知のことだ。

「悟林をか?」

「未来のトランクスから聞いただよ…未来の悟林ちゃんが死んだのは23かそこらだって…いくら何だって早すぎるべ…まだ若えし、人生これからだってのによ…どうせあの子はこれからも厄介事が起きれば自分から飛び込んで行くべ?なら何があっても生きて帰ってこれるくれえ強くしてやって欲しいだよ…オラはお淑やかな子になって欲しいのに…あの子は武道にのめり込んで…あの無駄に頑固なとこは誰に似たんだべ?」

「そりゃあ、おめえだ」

即答するとチチに頭を叩かれた。

本当のことを言ったまでなのに理不尽である。

「とにかく!未来の悟飯ちゃんに関しては仕方ねえけんど…オラ達の悟飯ちゃんは別だ!これが終わったら今度こそ悟空さにも悟林ちゃんにも邪魔はさせねえだぞ。悟空さと悟林ちゃんは畑に専念してもらう!」

娘の性格上、必要以上の勉強は嫌がるだろうからいっそのこと農作業を任せることにしたようだ。

「…ああ、サンキュー!じゃあ行ってくる」

瞬間移動でまずは近くの悟林と未来悟飯を連れていくことにする。

「はっ!だあっ!」

「よーし、大分パワーが上がってきたね!少し休憩しよう!」

未来悟飯の拳を捌きながら悟林は休憩を言い渡すと悟空がいきなり姿を現した。

「よっ!」

「と、父さん!?」

「あー、お父さん!?瞬間移動で来たの?」

「ああ、おめえが未来の悟飯か…でっかくなったな悟飯。良く生き延びたな!オラは嬉しいぞ!」

久しぶりの父親の声と顔に未来悟飯は泣きそうになり、表情を歪めた。

「ね、姉さんのおかげです…すみません父さん…俺が弱いばかりに…!姉さんやみんなを死なせて…!」

「情けねえ面をすんな悟飯。泣くのは今じゃねえ、人造人間を倒してからだ…おめえ達。超サイヤ人を超えるために修行してんだろ?良い所に連れてってやる。」

「「?」」

悟林と未来悟飯は不思議そうに父親を見つめるのであった。

次は悟飯がいる飛行艇だ。

「お父さん!お姉ちゃんに未来の僕も!」

「やっほー」

「よっ!」

飛行艇内に突然現れた悟空達にクリリン達は驚く。

「もうすっかり良いのか?」

「まあ腹は減ってっけどな。神コロ様」

「親子揃って名前まで合体させるんじゃない…!基本はほとんどピッコロなんだ…ピッコロと呼べば良い」

悟林と同じく名前まで合体させる悟空にピッコロは呆れる。

「オラ今のままじゃ人造人間にもセルって奴にもとても勝てやしねえ。みんなで修行に行ってくる。たった1日で1年間の修行が出来る所へ…」

それを聞いたピッコロは神の知識から答えを導き出す。

「そうか!“精神と時の部屋”へ行く気だな!なるほど…しかし、あの部屋で1年間過ごし通せた者は誰もいない。昔のお前も精々1ヶ月がやっとだったな…」

「え?お父さんが1ヶ月しか保たなかったの?」

悟林が意外そうに悟空を見上げ、娘からの視線に悟空は笑みを浮かべる。

「部屋に入れば全て分かるさ…ベジータとトランクスも連れていく。あいつ達ならきっと耐えられる」

「早く行くんだ。セルは人間を殺し、どんどん力を付けてきている…」

「ああ!」

「悟飯、私の手を掴んで」

「あ、うん…」

悟林と悟飯が手を繋いだのを確認した悟空はベジータとトランクスの元に瞬間移動しようとした時、クリリンが声をかけた。

「悟空、聞かせてくれ。フリーザよりもとんでもねえ敵が現れて怖いか?それとも嬉しいか?」

「…両方だ」

それだけ答えると悟空達は瞬間移動をしてベジータとトランクスの元に向かう。

瞬間移動で移動した先にはベジータとトランクスがいた。

「やっほー、トランクスさん」

「悟空さん!それに悟林さん達も…」

「どうだ?特訓の成果は」

「ベジータさんに修行付けてもらえた?」

「どう…でしょうか…一応アドバイスはしてくれたんですが…」

悟林の問いにトランクスは困ったように言うと、未来悟飯が首を傾げた。

「ベジータさんがアドバイス?」

「あ、はい…悟林さんの教えを一から思い出してみろと…」

「こっちの悟林が考え付いたことを未来の悟林が考え付かねえわけねえもんな…ベジータも流石だ…ぼんやりと超サイヤ人の更に先が見えてきているらしい…」

悟空がベジータの近くまで移動するとベジータが振り返ることなく口を開いた。

「邪魔だカカロット…失せろ…」

「そう言うな、修行に良い場所を知ってんだ。たった1日で1年分の修行が出来る部屋が神様んちの神殿にあるんだ」

その言葉にベジータが振り返る。

「本当か…」

「ああ、ついて来いよ。別にオラや悟林と一緒に修行しようってんじゃねえから。だけど部屋の定員は2人までだ。時間がねえからおめえはトランクスと一緒に入ってもらうぞ」

その言葉にベジータは少しの沈黙の後に口を開いた。

「…良いだろう、ただし俺達が先に入る。良いな…」

「ああ」

悟空とベジータが悟林達の元に向かう時には既に悟林がトランクスに説明を終えていたようですぐに瞬間移動で神殿に移動出来た。

そしてポポに悟空が説明するとポポは了承した。

「…分かった。ついて来い。風呂とトイレと食料とベッドだけはある。頑張って修行しろ」

ポポについていく最中、ベジータが口を開く。

「カカロット…何故俺にも修行を勧める…俺の最終目標は貴様ら親子なんだぞ…」

「今度の敵は多分1人だけじゃ倒せる相手じゃない…そいつはおめえも感付いてるはずだ」

「…後悔することになるかもしれんぞ…」

悟空の言葉にベジータは不敵な笑みを浮かべ、部屋の前に来るとポポが確認する。

「ここだ。誰から使うか?」

「ベジータとトランクスが先に入る」

「次は私とお父さんだからね!」

「…お先にすみません、悟空さん、悟林さん。」

ベジータは仏頂面で部屋に入り、それを聞いたトランクスが次に入る2人に一言断った。

「頑張れ!仲良くしろ!」

「トランクスさん、メキメキ強くなってベジータさん驚かしちゃいなよ!」

2人の言葉にトランクスは頭を下げて部屋に入った。

「よーし、それじゃあ私達はやれるだけのことをやろうよ。まずは悟飯を超サイヤ人にしないと。」

「え!?僕が!?」

悟林の言葉に驚く悟飯。

娘の考えを察した悟空が頷いた。

「そうだな、おめえは未来の悟飯と入ってもらう。おめえの足りねえ部分を未来のおめえに叩き込んでもらえ。未来の悟飯とまともに修行するにはおめえも超サイヤ人になれるようにならねえとな」

「そうですね…俺も君が超サイヤ人に変身出来れば色々助かる」

「ぼ、僕が超サイヤ人に…なれるかなあ?」

「なれるに決まってるでしょ。でっかい悟飯がなれてるんだから」

自信無さそうな悟飯に呆れながら悟林は超サイヤ人なっても問題ないように外に出るのであった。 
 

 
後書き
未来悟飯の妻子は当然あの2人。

しかし、結婚時期と誕生時期が遅いです。

因みにトランクスのベジータ知識は未来悟林がブルマ達が黙っていたことも全て話しているのである程度ベジータへの接し方を理解しています。 

 

第26話

 
前書き
精神と時の部屋って悟空達は平然としてるけど普通なら気が狂う環境だよな…寧ろ良く1ヶ月もいられたな… 

 
悟林の発案によって未来悟飯の修行相手として最低限の力を得るために超サイヤ人への変身を会得することに。

悟飯はとにもかくにも超化するために、必死になって気を高めている。

「違うぞ過去の俺、それじゃあただ気を高めているだけだ。超サイヤ人になるための条件は未来の姉さん曰く、高い戦闘力と穏やかな心と怒りだ。俺は過去にクリリンさん達を人造人間に殺された時のことを思い出しながら姉さんに教えてもらった変身のコツで変身出来た。」

悟空も未来悟飯も大切な物を失ったことによる怒りで超化が出来るようになった。

しかし元々の性格が温和な悟飯。

それでなくとも、いきなりキレろと言われても難しい。

「そ…そんなこと言われても…」

「悟飯、背中の…肩甲骨辺りに気を集中してざわついたら集中させた気を爆発させてみて?」

悟林が超化に苦戦している悟飯の肩甲骨に触れながら言うと悟飯は一気に気を集中させる。

「はああああ…!」

悟飯の目付きが鋭い物になり、オーラも金色に変化し始めるものの、途中で気が霧散した。

「おー、中々やるじゃん悟飯」

「む、難しいよお姉ちゃん…」

「大丈夫だよ、初めて試した時の私よりずっといい線行ってたよ。私なんか最初は界王拳で戦闘力を底上げして高めた気を背中に集中させてたんだけど、悟飯は界王拳使えないから、やっぱり怒りでS細胞を刺激させるしかないんだろうね」

「何だそりゃあ?」

聞き慣れない単語に悟空は不思議そうに見てくる。

「神龍から聞いたんだけど、超サイヤ人になるには高い戦闘力と穏やかな心の他にS細胞を強く刺激する怒りが必要らしいの、私達サイヤ人は怒ると肩甲骨辺りに気を集中させる習性があるみたいなんだ。私は界王拳で気を高めて強引に変身したんだけどね。はい、悟飯怒って」

「お、怒ってって言われても…」

「じゃあ、ナッパにピッコロさんが殺された時のことを思い出してみなよ。それかフリーザに私が殺された時のこととかさ」

未来悟飯の表情が複雑そうになる。

フリーザまでは共通した歴史なので、どちらも未来悟飯にとっても嫌な記憶だ。

「あ、あの時の…」

「過去の俺、俺達サイヤ人は超サイヤ人になった時が最も強くなる。超サイヤ人になれなければ守りたいものも守れない。俺達が闘っている相手はそれほどの次元の相手だ。敵は冷酷な殺人鬼だってことを忘れるな!父さんやピッコロさんも姉さんも殺すだろう。君の大切な物は奴にとってゴミ屑でしかない。あの時の怒りを、悔しさを思い出すんだ!」

「は、はい!はああああ…!!」

悟飯が過去の師匠の死や姉の死を思い出しながら怒りを募らせていく。

「そうだ!それでいい!怖がらなくて良い。全てを解き放つんだ!怒りを感じることは悪いことじゃない。手段として利用するんだ。」

悟飯の髪が逆立ち始め、オーラが金色に変化し、髪が黒から金色へと交互に変化する。

「悟飯!もっと気を上げるんだ!」

悟空が言うと悟飯は気を高めてそのまま気を解放した。

「うああああ…!!」

「よーし、早速超サイヤ人になれたじゃない!後はそのままゆっくりと興奮を抑えて!」

「うううう…!はあっ!」

黒髪に戻った悟飯。

悟林は膝をついている悟飯の背を強く叩いた。

「よーし、悟飯!それでいいの!後は未来の悟飯と一緒に入った時に練習しとけばいいから!」

少しだけ超サイヤ人になれたのだからもう今はこれで充分だ。

後は未来悟飯と一緒に頑張ってもらおう。

一方精神と時の部屋ではベジータは既に超サイヤ人の壁を超え、更なる鍛練に励んでいたが、トランクスの方はあまり良くない。

トランクスの戦闘力自体はこの部屋の過酷な環境もあって大幅に上がっている。

今なら未来の人造人間を瞬殺することなど容易に出来る程だが、トランクスはベジータが到達した姿に至れずにいた。

「(超サイヤ人の壁…早く超えなくては…)」

ベジータが先に到達したことにより、焦りが出始めているトランクス。

「(落ち着け…焦るな…)」

未来悟林の教えを思い出し、瞑想をして自分の中にある力を感じ取ろうとする。

父であるベジータと同じようにだ。

ここに来てからずっとベジータの行動を見ていたトランクス。

入る前もそうだったがベジータはただ何かを考えている様な感じだった。

何もせずじっと何かを見つめていた。

そして何かに気付いたような反応をしたかと思えば激しい修行をし始めた。

“馬鹿でもいないよりはマシだったか”

そしてこの部屋に入って2ヶ月後にこの言葉の後に超サイヤ人の壁を超えた姿を見せた。

父親の沈黙と未来悟林の教えを照らし合わせると、トランクスはようやく超サイヤ人の壁を超えるための入り口に立つことが出来るようになったのだが、焦りがそれを邪魔してしまうのだ。

「おい…」

そんな時ふと声をかけられ、トランクスは目をゆっくりと開いて視線を声の方へと向けた。

そこには何か言いたそうにしているベジータが立っていた。

「と…ベジータ…さん…?」

この部屋に入ってからまともな会話などしていなかったのに、まさかベジータの方から話しかけてくるとは思わなかった。

「そんな様では超サイヤ人を超えることなど出来んぞ」

「え?」

トランクスの反応にベジータは溜め息を吐く。

「表面だけ落ち着いていても意味はない。超サイヤ人を超えたければ余計なことなど考えるな。強くなることだけ考えるんだな」

「は、はい…」

「…貴様にはサイヤ人王族の血が流れているんだ。何時までもあんな下級戦士のガキである悟林の下にいるんじゃない」

その言葉にトランクスは目を見開く。

「え…?」

「気付いていないと思っていたのか?もう純粋なサイヤ人は俺かカカロットしかいない。俺達のどちらかのガキでなければ超サイヤ人になれるわけがないだろう!ブルマの血を引いてるんだ、どおりでサイヤ人でありながら黒髪じゃないわけだぜ。」

ベジータはそのまま修行に戻り、残されたトランクスは父親の姿を見つめていた。

「父さんが…俺のことを気付いてくれていた…」

今まで言わずにいた自分の素性だが、ベジータは気付いてくれていた。

たったそれだけだが、トランクスにとっては嬉しかった。

“確かに良い人ってわけじゃないけど、良い所もあるんだ。自他共に厳しいから最初は苦労するかもしれないけど…あの人の誇り高さや純粋な姿勢を私は誰よりも尊敬している…あのブルマさんが伴侶に選んだ人だ。信じろトランクス”

未来悟林から未来悟飯や未来ブルマが言わなかったベジータの過去のことを聞いてショックを受けていた自分に未来悟林が自分の頭を撫でながら言ってくれた言葉を思い出した。

「そうだ…父さんの言う通りだ。ここは外とは時間が違う…俺達の時代や外とは違って余裕があるんだ…」

トランクスは深呼吸をすると瞑想を再開し、意識を自分の奥深くに眠る力を探り始めるのであった。

その表情にはもう焦りなどなかった。

しばらくするとトランクスは目を開け、立ち上がると超化して超サイヤ人となり、更に気を解放した。

「これが…悟林さんが俺達に到達させようとしていた超サイヤ人を超えた姿…」

未来悟林が死んでから数年経ち、ようやく到達出来た。

もっと早くこの姿になることが出来ていればと思うが、今は悔いている場合ではない。

この姿は確かに凄まじいパワーだがどこか腑に落ちないところがある。

ベジータもきっとそう感じており、だから壁を超えた今も厳しい修行をしているのだ。

「…きっと、まだ強くなれるんだ…俺もまだまだ強くなれるはず…時間はまだある。やってやる……悟林さん、俺…もっと強くなります…そして悟林さんの大事な物を守り続けます…だから安心して見ていて下さい」

トランクスは亡き未来悟林に誓うように言うと、更なる強さを求めて2人のサイヤ人は更に過酷な修行に打ち込むのであった。

混血なだけあり、成長速度が凄まじいトランクスは相当な勢いでベジータに迫る戦闘力に成長し、それによりトランクスを認めたのか、少しずつベジータの対応も柔らかい物になっていく。

認めた存在の名前しか呼ばないベジータがトランクスの名前を呼んだり、組み手で気絶したトランクスを乱暴にではあるがベッドにまで運んだりするなど、ベジータからすればかなり優しい対応である。

少しずつだが、ベジータとトランクスは歩み寄れているのかもしれない。

「トランクス、未来で貴様とカカロットの息子を鍛えたのは悟林だったな?」

「はい」

「そうか、貴様は以前、悟林のように強くなりたいと言っていたが、強くなりたいのなら悟林を目標にするのは止めろ。貴様の知っている悟林の力は人造人間に殺される前の物だ。死んだ奴の力などいつか超えられる。そんなことで自分の限界を作るな、貴様の師だった悟林は少し強くなったくらいで満足するような奴だったか」

「…いいえ、常に…常に上を目指していました」

「ならば貴様も上を、ナンバーワンを目指せ。尤も、この俺がいる限り、その座につかせる気はないがな。貴様はサイヤ人王族の血が流れているんだ。せめて下級戦士一族のあいつなど足元にも及ばないくらいに強くなってみせろ」

「父さん…はい!」

そして外では悟林達が時々組み手をして天界でベジータ、トランクスを待ちながら、もう直ぐ丸1日が過ぎようとしていた。

突然膨れ上がった気に休んでいた悟林達が感覚を研ぎ澄ませる。

「この気はピッコロさんだね…闘っている相手の気は感じられないからセルじゃなさそう。恐らく人造人間だと思う」

セルのあの気は一度間近で感じると絶対に間違えたりはしない。

「…そんなっ!ピッコロさん殺されちゃう!」

「駄目だ!」

助けに向かおうとした悟飯を未来悟飯が強引に止める。

「どうして止めるんですか!」

「今の君は超サイヤ人の変身が完璧じゃない!それに君が行ったところでピッコロさんの足を引っ張るだけだ!」

「取り敢えず落ち着け悟飯。今のままじゃレベルが違いすぎる…」

「きっと、もうすぐベジータさんとトランクスさんが出てくるよ。正直言って助けに行っても私達が足手まといになるだけだよ」

悟空達でさえレベルが違うと言えるのだから今の悟飯にどうにか出来る次元ではないのだ。

悔しげに拳を握り締める悟飯に未来悟飯は屈んで目線を合わせた。

「悔しいなら、強くなろう。人造人間やセルにも負けないくらいに。今はピッコロさんを信じよう」

「…分かりました」

悟飯が落ち着いたことに悟空は安堵して扉を見つめる。

「(…まだかベジータ…!やっぱ超サイヤ人を超えるのは無理なのか…!?)」

「(2人共…信じてるよ)」

悟林は今も部屋で修行している2人を黙って待つのであった。

途中でセルの気が動き出し、2人が出てこないままセルの気が大きくに膨れ上がった。

人造人間のどちらかが吸収されたとしか思えない。

ピッコロが既に倒され、天津飯が気功砲を撃つ。

けれど一発撃つごとに、どんどん天津飯の気が落ちていく。

どう考えても並みの減り方ではない。

こんなに急激に減らし続けては命が危ういのに、それでも天津飯は撃ち続け、ついには力尽きて動かなくなった。

悟空が瞬間移動で天津飯を、そして辛うじて生きていたピッコロを助け出した。

ピッコロ達に仙豆を食べさせて悟空からセルのことを聞くと空気が重くなるが、ようやくベジータとトランクスが部屋を出たようで、全員が部屋の前に向かう。

悟林達が部屋から出てきたトランクスとベジータを出迎える。

「どうもすみません。お待たせしました」

出てきたトランクスを見て、悟林は少し驚いた。

明らかに1日前とは髪が長くなり、身長が伸びている。

たった1日…いや、精神と時の部屋にいたから1年経っているのだからその過程で成長したと思われる。

顔つきも部屋に入る前とは全然違う。

「本当に待ったぞ~」

「父は中に入って2ヶ月ほどで既に超サイヤ人の限界を超えたようでしたが…それでも納得がいかないらしくて今まで時間がかかってしまったんです…」

「トランクス!余計な事は言うな!」

ベジータがトランクスの名前を呼んだことから悟林はトランクスとベジータの距離が縮まっていることに気付いた。

悟林はトランクスを手招きすると不思議そうにしながらも彼の方から寄ってきてくれた。

「修行もそうだけど、お父さんと仲良くなれたんだね」

「どうでしょうか…仲良くなれたかは分かりませんが…少しだけ…父さんのことが分かったような気がします……父さんを信じて良かったです」

トランクスがベジータと早く歩み寄れたのはサイヤ人の性質を強く持った未来悟林が最初の師匠だったのもあるし、未来悟林から前以てベジータのことを詳しく聞いていたと言うのも大きかった。

“地球人の常識とサイヤ人の常識を一緒にしちゃ駄目だぞ”

この一言のおかげである意味価値観の違いから自分とベジータはあまり衝突しなかったのだから未来の師匠に感謝である。

「本当に強くなったねトランクスさん。背や戦闘力だけじゃなくてたくさんたくさん大きくなった」

「ありがとうございます、悟林さん。悟林さんにそう言ってもらえると自信がつきますよ」

微笑むトランクスに悟林も満面の笑みを返した。

「上手く行ったんだなベジータ」

「分かるよベジータさん。レベルの桁が違うことにさ、期待して良いんだよね?」

「さあな…だが、貴様らがこれから中に入って特訓しても無駄になる…この俺が全てを片付けてしまうからだ。セルも人造人間共も…」

「な、何ですって?」

未来悟飯がベジータの言葉に驚く。

「オラはさっき17号って奴を吸収して進化したセルをチラッとだけ見てきたが…とんでもねえ化け物だったぞ」

悟空がそう言ってもベジータの余裕の笑みは変わらない。

それだけ超サイヤ人を超えた自分の力に自信があるのだろう。

「ちょっとー!みんなここにいるー!?」

「ブルマさんの声だ!」

ブルマの声に全員が外に出ると、ブルマがカプセルのケースを持って待っていた。

「いたいた!」

「ブルマ!何でここに?」

「クリリン君に聞いてきたのよ。みんなここだって…ハッ!?」

悟空の後ろにいるトランクスの姿を見るとブルマは驚く。

ブルマからすれば最後に会ってから数日しか経っていないのに大きく成長した未来の息子に驚く。

「ねえねえちょっと!あんたトランクスじゃないの!?そうでしょ!?」

「え…ええ」

「何で髪型が変わってんの!?鬘!?あらー!?背も伸びてない!?」

鬘はないだろうと悟林は思ったが、何も知らないブルマからすれば仕方ないのだろう。

「あ…こ、ここには不思議な部屋があってそこでの1年は外のたったの1日なんです…その部屋で俺と父さんは修行して…」

「へえ…!ねえ、でもそのわりにベジータは髪の毛伸びてないじゃん」

そう言えばそうだ。

悟林もベジータを見るが、全然伸びている気配がない。

ああいう髪型だから伸びれば直ぐに分かりそうなものだが、そもそも悟空といいベジータといい、伸びたら大変そうな髪形だ。

尋ねられたベジータはどうでも良さそうに質問に答える。

「純粋なサイヤ人は頭髪が生後から不気味に変化したりはしない…」

「へ~」

「生まれた頃からその髪型なんだ。私も生まれた時からこの髪型なんだよねー。私はどうやらサイヤ人の血が濃いみたい」

「なるほど、どおりでオラも全然変わらねえわけだな」

「そんなどうでもいいようなことを喋っている時ではないはずだ!一体何しに来たのだブルマ!!」

ベジータの苛立ちにブルマはあっけらかんとした顔をしながらケースを開けて1つのカプセルを取り出した。

「そうそう。ほら、ベジータに頼まれて作ったその戦闘服さ、凄い防御力高いじゃない。だからみんなの分も作らせてさ、持って来たってわけよ」

カプセルを投げると大型のケースが出た。

ブルマが持ってきた戦闘服を悟林達は早速着る。

悟林のみブルマに引き摺られて別の場所で着替えさせられたが。

「久しぶりだね、この服。気のせいかナメック星の戦闘服より着心地がいいよ」

これは悟林達が着ることを前提に作られた戦闘服だ。

大勢が着ることを考えているフリーザ軍の物とはフィット感がまるで違う。

因みに悟空とトランクスは初めて袖を通す戦闘服の軽さ、動きやすさに驚いた。

「さっきも言ったが…貴様らがその服を着ても無駄だ…。活躍の場がない」

戦闘服を着終えたベジータが悟空と悟林に向かって言う。

「おめえがセルを倒しちまうからだろ?そんならそれが一番いいさ」

「もしセルや人造人間が倒されても超える相手は確実にいるからね」

2人の言葉にベジータは何も言わずに笑うだけだった。

「さあ行くか」

「オラの瞬間移動で連れてってやる」

「ふざけるな、貴様の力なんぞ借りはしない」

帰ってきたのはベジータらしい返事。

悟空もそれが分かっており、ベジータは1人神殿から飛び出すと下界へと降りていく。

「気をつけてねベジータさーん!トランクス君とブルマさんのためにもねー!」

「もーこの子ったらやあねー」

「ブルマさん、顔が緩んでるよ凄く」

「…では俺も行きます」

トランクスもベジータの後を追うべく悟空に告げる。

「あ、ちょっと待った」

行こうとするトランクスを止めると脱いだ服から皮袋を取り出してそこから仙豆を取り出した。

「ベジータとおめえの分の仙豆だ。持ってけ」

「どうもすいません」

「頑張れ。だが、無理はすんなよ。やばくなったら逃げろ。いいな」

「トランクスさん、超サイヤ人を超えたパワーでセルと人造人間なんかぶっ飛ばしちゃいなよ!」

「はい。色々ありがとうございます。悟空さんと悟林さんも修行頑張ってください!」

受け取った仙豆をしまいながら2人からの言葉にトランクスは笑みを返す。

「絶対に死んじゃ駄目よ2人共、分かったわね!」

トランクスはブルマの言葉に頷き、ベジータを追って飛んだ。

「よし、悟林!今度はオラ達親子の修行の番だ!」

「おーっ!!」

やる気満々な娘の声に悟空は満足そうに精神と時の部屋に向かう。

部屋の中に入ると熱気が襲ってきた上に酸素が少ないのか、何だか息苦しくもある。

視界はほとんどが白で占められており、はっきり言って体にも目にも良くはないが、精神的な修行の意味合いもあるのだろう。

入口の扉の上に大きな時計があり、外とは違う進みをしているのだろう。

入る時に見た時刻とは全く違うので、そもそも時間を示しているのではなく、月を示しているのかも知れない。

「部屋の扉を閉めてしまえば、完全に外界の情報は届かなくなる。セルの気も、ベジータの気も感じねえだろ?」

「そうだね」

言われてみれば、確かに自分と悟空以外の外部情報が全くなくなっている。

「左っかわが風呂とトイレ。あっちが食料庫だ」

確かにポポが言っていた通り、とりあえず生きていけるだけの備えはあるみたいだ。

「食べ物ってどんな物なの?」

こんな凄い環境では保存食も意味はないだろう。

「食い物は粉だ。そのまま食うのもいいけど、食いにくいと思ったら水で固めて食うんだ」

「ご飯まで厳しくしなくても良いのにね。」

「はは、悟林。表出てみろ、オラがガキの頃気が狂いそうで1ヶ月もいられなかったって意味が分かるぞ」

「どれどれ…わあ…どうなってんのこれ?」

建物内も白いと感じたが、表に出たらそれがより顕著で建物と、その脇に大きな砂時計が2つ。

それ以外は全く何もない白い世界が、ただ見る者に何の感慨も与えず広がっている。

「ねえ、ここどれくらい広いのかな?」

「地球と同じ広さらしいぞ。気を付けろ、遠くに行きすぎるとここを探せずに迷って死んでしまうかもしれない。気温は50度からマイナス40度まで変化するんだ。空気は地上の4分の1ぐらい、重力は10倍の真っ白な世界…」

「へえー、砂漠の暑さや極寒の寒さ、空気の薄さに重力の高さ…地上の辛そうなのを一纏めにしたような修行場じゃない!よーし!早速修行しようよ!ベジータさんが2ヶ月で超えたなら私はそれよりも早く超えてやるんだから!!」

「はは、おめえは本当に負けず嫌いだな。オラの理想としてはオラも超サイヤ人を超える力を手に入れて、そしておめえはそのオラを更に超えてもらうつもりだ。チチとの約束もあるしな」

「お母さんが?お母さんがそんなこと言うなんて…お母さん、熱でもあるんじゃないの?」

認めてくれていてもどんどん強くなっていく自分に苦い表情をしていた母親がそんなことを言うとはどういう考えなのだろう。

「母さんも未来のおめえが人造人間に殺されたってことに色々思うとこがあったんだろ。無理して死なれるくらいならとんでもなく強くなってでもおめえに生きていて欲しいんだろ」

「そっかあ…平和になったらお母さん孝行しないとね」

「そうだな。よし、悟林。修行を始めるぞ!まずは基本的な特訓と組み手をしながら瞑想に力を入れていこう。まずは組み手だ!掛かってこい悟林!!」

「はーい!」

2人は超化して超サイヤ人となると、早速組み手を開始したのであった。

「だあっ!」

悟林の回し蹴りが悟空に繰り出されるが、その蹴りを腕で受け止める悟空。

「ぐっ…!」

その蹴りの重さに悟空の表情は歪む。

自分が寝ている間も悟林は修行していたのだから実力差はもうほとんどないようだ。

悟空の焦りが見える表情に笑みを浮かべると、悟林は次は拳を繰り出す。

それを悟空は掴み止める。

「どうしたのお父さん?余裕がないよ?」

「へへ、俺は嬉しいぜ悟林。おめえが修行を続けててくれていたおかげで良い修行になりそうだ!」

互いに膝蹴りを繰り出し、何度も激突させる。

埒が明かないと判断した悟林は気を爆発させて悟空を吹き飛ばすと腹に向かってラッシュを叩き込む。

「でやあっ!」

「っ!」

大振りの拳が叩き込まれる直前に悟空は瞬間移動で回避し、背後を取るのと同時に強烈な蹴りを悟林に叩き込んで吹き飛ばし、床に転がした。

悟林は何事も無かったように起き上がったが、その表情には笑みが浮かんでおり、悟空もまた笑みを返したのであった。 
 

 
後書き
未来悟飯と悟飯は歳の離れた兄弟感を出していきたいです 

 

第27話

 
前書き
超サイヤ人2は超サイヤ人の状態でそれを重ねがけすることで到達する変身なので、コツを掴んでいれば変身は難しい物ではないのだろうな… 

 
組み手や基本的な修行を繰り返しながら瞑想をすること2ヶ月ほどで悟林は超サイヤ人を超えることか出来た。

悟林は早速残りの時間を修行に回そうと考えていた。

「おーい!悟林、飯にしようぜー!」

「はーい!」

超化を解いて早速父親と一緒に食事を摂る。

食事と言っても器に粉を盛って、飲み物は水だ。

粉に水を混ぜて練って食べる。

あまり美味くはないが、必要な栄養はある上に力が出るような感覚を覚える。

戦闘服は既に脱いで洗濯しており、悟空も悟林も下着姿だ。

気温がマイナスの時はともかく、気温が高い時は汗がとにかく出るのでこまめな洗濯や掃除をしている。

一応、悟飯と未来悟飯も使うわけだし。

「飯食ったら少し休んで修行再開すっぞ」

「うん」

2人は粉を黙々と食べながら時折水を飲んで腹を膨らましていく。

この場所は気温の上下が物凄く辛いものがある上、建物から少し離れた場所では何がどうなっているのか、突然氷柱が乱立したりするかと思えば突然炎が燃え盛ったりと、一体どうなっているのか分からない事もある。

「ずーっと昔の神様も良くこんな修行場を考えたもんだよね」

「そうだなー、でも今は滅茶苦茶助かってっぞ」

食休みを入れて再び修行を再開する2人だが、途中で悟空は座り込んで再び瞑想をし始めた。

きっと何か考えがあるのかもしれないと、悟林は少しでも戦闘力を高めようと1人で修行を繰り返すのであった。

しばらくして悟空は超化して超サイヤ人となり、そこから超サイヤ人を超えた姿となる。

「お父さん」

組み手をするのだろうかと思って歩み寄る。

「悟林、おめえは更にもう一段階の変身が出来ることに気付いてるか?」

「うん、筋肉達磨みたいな変身でしょ?」

超サイヤ人を超えた姿となると筋肉が膨張したので、次の変身もより筋肉が膨張するのだろうことくらいは察しがついた。

娘の言い方に悟空は微笑むと更に気を入れ、それを解き放つと先程よりも筋肉が膨張した姿となる。

「悟林、少しやるか?」

「良いけど…前の変身の方が絶対良いよ」

悟林は少し気を抜いて普通の超サイヤ人に戻ると悟空は嬉しそうに微笑むと拳を振るった。

悟林はそれをかわして少し後退すると、悟空の振るった拳の拳圧で床が吹き飛ぶ。

悟空は悟林を追い掛けるが、悟空の動きはどこか鈍い。

これなら普通の超サイヤ人の方がずっと速い。

それもそのはずであり、異常に膨れ上がった筋肉のせいで間接の可動域が制限されてしまい、スピードが激減してしまうのだ。

「お父さん、その変身は止めた方が良いよ。防御力が上がるから使い道がないわけじゃないけど、普通に闘う分には前の変身の方がずっと良いよ」

「だろうなあ、やっぱりおめえも気付いてたか。パワーや防御力は確かに凄え。だが、こんなに膨れ上がった筋肉ではスピードが殺されてしまう。最初なら通用するかもしれねえが、エネルギー消費も激しいから長期戦には向かねえ…それにさっきなった変身もエネルギーの消費も激しいからな…バランス的には普通の超サイヤ人が一番良い。そいつが良く分かった」

超化を解きながら言うと、悟林は修行はどうするのかと首を傾げる。

「…それでどうするの?」

「オラ達は別のやり方で強くなっぞ。まず寝る時以外はなるべく超サイヤ人でいてそれが当たり前の状態に持っていくんだ。前におめえがナメック星に行く時に言ってくれた界王拳を使いながらの修行を超サイヤ人でやるんだ。まずは超サイヤ人になったら落ち着かねえ気分をどうにかして、超サイヤ人が当たり前の状態になったら基本的な修行からやり直そう。遠回りのような気がするけど、それが一番だとオラは思う」

「うん……」

「どうした?」

娘の表情が浮かないことに気付いた悟空が首を傾げる。

「トランクスさん、この変身の欠点に気付いてるのかな?ベジータさんは気付いてそうだけど」

確かに2人の距離は部屋に入る前に比べて格段に距離は縮まっていたが、最大変身の欠点まで話し合っているのだろうか。

「分からねえな…でもベジータ達の今の実力なら大丈夫だろ、修行を再開すっぞ」

「うん」

2人は早速、超サイヤ人での状態で日常を過ごすことになる。

やはりと言うべきか超サイヤ人になると興奮状態となるため落ち着かない。

しかし、この姿で過ごしていると分かることがある。

どれだけ無駄にエネルギーを使っていたのかだ。

「(少しずつだけど、疲れなくなってきてるのが分かる。もし超サイヤ人の状態でも普段通りになれば冷静に闘えるもんね。やっぱりお父さんは凄いや…でもただこれだけじゃつまんないよな…あの変身も今となっちゃ欠陥変身だけど。超サイヤ人の強化版だってことには変わらない。あれは体中に気を入れて体を大きくすることでパワーアップする。もし超サイヤ人で平常心でいられる状態で超サイヤ人の要領で変身したら超サイヤ人の重ねがけが出来るんじゃ…まあ、もし無理だったら界王拳を改良していって超サイヤ人の状態でも使えるようにすればいい…お父さんだって界王拳使えるんだもん。改良のしようだってある!!)」

悟空は食事の用意をしながら1人で考えている悟林に微笑む。

その表情は子供の成長を喜ぶ父親の顔であった。

「悟林、飯にしようぜ」

「うん」

超サイヤ人の状態の影響で口数は少ないが、最初の頃と比べればずっと穏やかになった方である。

「お父さん、お父さんの考えは何となく分かったよ。お父さんは超サイヤ人の状態で普段通りのままでいる状態で超サイヤ人の変身をする…それがお父さんの理想の超サイヤ人を超えた姿なんだね」

「…正解だ。」

自分の考えの答えを出されたことに嬉しそうに笑う。

「よーし!だったら私が一番最初に変身してやる!」

早速粉に水を混ぜて練って食べ始める悟林。

悟空もまた同じように水を混ぜて練って食べ始めた。

そして1年までまだ少し猶予がある時、とうとう悟空が膝を着き始めた。

理由は悟林の成長速度だ。

悟飯にも部屋を出てきた未来のトランクスにも言えたが戦闘力の成長が伸び盛りであるにしても速すぎるのだ。

「凄いパワーがみなぎってくるよ…」

スパークが走る激しいオーラがすぐに緩やかに戻った。

修行の中で娘は掴んだのだろう、超サイヤ人を超えた変身を。

元々超化に関しては誰よりもコツを理解していた娘なので、超サイヤ人の状態での超サイヤ人の変身の重ねがけは容易だったのだろう。

混血の成長速度もあって、誰よりも早い変身を遂げたのだ。

「(何だろうなこの気持ちは…いつかはオラを超えるかなと思ってたけど、この歳で悟林がオラより強くなって…悔しい気持ちもあんのに、それ以上に凄え嬉しいや)」

これが子供の成長に喜ぶ親の気持ちと言うのかもしれない。

悟空が手招きすると悟林は不思議そうにしながら悟空に近付くと思いっきり髪を両手でグシャグシャにされた。

「わっ!?ちょっ!お父さん何するの!?」

「強くなったなー!悟林!!今のおめえなら絶対にセルに勝てっぞ!」

超サイヤ人を超えた超サイヤ人…長ったらしいので超サイヤ人2と言おうか。

未だに超サイヤ人2に変身出来るだけの基礎がない自分では逆立ちしても勝てっこない。

界王拳と超サイヤ人を併用すれば一時的には対抗出来るだろうが、危険性も高い上にもし成功したとしても体力が保たないだろう。

「ありがと、お父さん。でも私が強くなるのは当然だよ。お父さんの子供なんだから」

笑う悟林に対して悟空もまた笑顔を返した。

「はは、よーし!少し休んだらもう1回組み手だ!」

「うん!負けないよお父さん!」

この修行で特筆すべきは悟空の頑張りだろう。

悟林は修行でどんどんパワーを上げていき、悟空も何とか悟林のパワーに対して足りない戦闘力を技術でカバーしながら食らいついていく。

それにより親子の戦闘力は凄まじく伸びたものの、悟空はしばらく激しい修行はしたくないと思ったのであった。

悟空の部屋を出る宣言を聞いて悟林も充分すぎるくらいの修行をしたつもりなので、大人しく部屋を出た。

扉を開けると、体にかかっていた10倍重力の負荷が一瞬にしてなくなり、自分は今まで確かに負担のある場所にいたのだと感じた。

大きく息を吸って吐くと、空気が冷えている気がするのは精神と時の部屋内部の空気が高熱で蒸していたからだろう。

中にいる時は慣れていたのもあってそれほど気にならなかったが、こうして表に出てみるとよく分かる。

そして感じられる強大な気はセルで間違いないだろうが……外では丸1日経っていないはずなのに、部屋に入る前とは随分と気の大きさが違う。

「お父さん、これってセルの気かな?」

「多分な、ベジータやトランクスの気も感じるし…どうなってんだ?」

あれだけ意気込んでいたのにセルが生きていることや、ベジータやトランクスの気が健在であることに2人が不思議そうにしながら神殿を出たのであった。

神殿を出ると、ベジータ達の視線が悟空と悟林の2人に向けられた。

「あ、やっぱりベジータさん達いるよ。」

「そうだな、どうなってんだ?一体…」

超化した状態で出てきた2人に誰もが驚く。

「(あ…あれが悟林か…!見違えた…)」

特に悟林の変化は実力的にも外見的にも顕著であり、背も伸びていた。

「何があったのか教えてくれ」

「じ…実は…」

一番近くにいたトランクスに聞くと、つまりセルは既に完全体になっており、物凄い強さでパワーアップしたベジータとトランクスをものともしなかった。

完全体になるのにベジータが一役買ってしまったようである。

まあ、これはサイヤ人の基本思考もあるだろうが、彼の場合は純粋にプライドが絡んでいるし、強い相手と闘いたい欲求は理解出来るのでまあいいとして。

そしてそのセルは、勝手に天下一武道会に似せたゲーム、“セルゲーム”とやらを開催すると、わざわざそれをテレビ放送し、それが9日後に迫っているという。

「(…何だ!?あいつら…あれは超サイヤ人か…!?いや…雰囲気が少し違う…ごく自然にあの状態でいやがる…)」

ベジータはまるで普段と変わらないような状態の2人に驚いていた。

「いやー、大変だったねトランクスさん。でもセルゲームか…面白くなってきた!完全体のセルってどこまで強いのか楽しみだよ」

「確かにな、武道大会か…面白えこと考えやがったな…」

「お、お前ら正気か…?」

2人の発言にピッコロがぴくりと耳を動かす。

闘う力のない者からしてみれば、セルゲームという名の武道大会など命を縮めるものでしかないだろうが。

「ミスター・ポポ、オラの道着捨ててねえか?」

「あ、ああ、捨ててない」

「それ着なくても母さんに言えば新しいのをくれますよ」

悟空が着慣れた道着を着るとトランクスが戦闘服の新品はブルマに頼めば新しいのをくれるとのことだが、悟空は断った。

「いいや、オラはやっぱこれでいい。地球人として闘いてえし」

「ピッコロさん、私も新しい道着が欲しい。手袋と靴はこのままでお願い」

「お安いご用だ」

ピッコロが悟林に手を翳すと戦闘服が悟空の道着と同じになり、手袋と靴も新品に変化した。

どうやら手袋と靴を少し弄ったのかサイズが合っている。

「ありがとうピッコロさん!」

「…で、どうなんだ。セルを倒す自信があるのか?」

着替え終わった悟空にベジータが尋ねる。

「分からねえさ、完全体って奴になったあいつには会ってねえからよ。これからちょっと見てくっから」

「ん…と…」

すぐに悟空はセルのいる場所に瞬間移動する。

雑談をしていると悟空が戻ってきた。

「どうだったお父さん?完全体のセルは?」

「…正直あそこまで凄くなっているとは思わなかった…その気になったらどこまで強くなるのかちょっと見当がつかねえ…やってみなきゃ分かんねえが、まあこのままじゃオラは多分勝てねえだろうな」

「……」

「そ…そんな…そうですか…」

悟空の返答にトランクスは少しばかり乾いた声を出す。

「もう一度精神と時の部屋を使うがいい。時間はあるんだ。今順番を決めた。悟飯と未来の悟飯の後に俺が入り、次はベジータが1人で入るらしい。次はトランクス…それからまたお前達が入れ」

「すまん…俺はパスさせてもらった…とても闘える相手じゃない…」

天津飯はパスをするらしい、修行の成果とも言える気功砲の連射も完全体になる前のセルに足止めにしかならなかったのだ。

それ以上となると、天津飯がパスしたくなる気持ちも分からなくはない。

「いや、オラと悟林はもういい。外界で修行する。9日間もありゃ何とかなるさ」

「私とお父さんは残りの時間をゆっくりペースでやるよ」

2人のその言葉に誰もが驚く。

「な…何…!?もういいだと!?お前達、精神と時の部屋にはもう入らないと言うことか!?」

「ああ、そうだ」

「何故だ…まだ丸1日は充分に入っていられるのに」

ピッコロの言う通りなのだが、セルゲームまで外界で修行するという2人の考えは変わらなさそうだ。

「私もお父さんも精神と時の部屋でギリギリまで修行してきたつもりだよ」

「これ以上部屋に入っていても劇的に強くなれるわけじゃねえしな。体にもきついし、充分に体を休めて万全な状態で挑むつもりだ。オラも悟林もな」

「そういうこと」

「やれやれ…流石のカカロットさんとその娘さんも、部屋の過酷さにとうとう音を上げたか…」

嫌味たらしく言うベジータに悟空と悟林は互いを見合わせて小さく笑った。

「かもな……だがこれ以上、体を無理に鍛えてもただ辛いだけだ。そんなのは修行じゃねえ。でもおめえ達がまたあの部屋に入るのに、文句を言ってるわけじゃねえ。まだ鍛える余地は残ってるみてえだし」

その言葉に癪に障ったのか、ベジータの声に険が混じった。

「何だと…?気に入らんな……今の言い方だと、貴様の方が俺より実力が上だと言っているように聞こえる…」

「ああ、オラも悟林も随分上を行ったと思う」

「何…!?」

「じゃ、お互い頑張ろうな!武道大会でまた会おう!行くぞ悟林!」

「うん!みんな、またね!」

天界を後にすると悟空が悟林に振り向く。

「ちょっと寄り道してくぞ」

「分かった」

勢いを止めて2人はカリン塔の頂上に着地する。

「こんちは、カリン様!」

「久しぶりカリン様!病院以来だね!」

「うむ、大きゅうなったな」

カリンの隣にはヤジロベーがおり、無事にカリン塔に戻れたようだ。

まあ、ヤジロベーの場合は下手なところよりここの方が安全かもしれないと思っているのかもしれないが。

「久しぶり、ヤジロベーさん。怪我は?」

「仙豆で治した…何しに来たんだおめえら…俺はあんな大会になんて出ねえからな…!」

「大丈夫だよ。用があるのはカリン様にだから…カリン様、下界の方はどうなってるの?」

ピッコロと神が合体したので、今や下界を広く見渡しているのは今のところカリンだけだ。

「……うむ。大騒ぎになっとるが、今のところセルは動いておらんからのう」

「つまり今のところは無事なんだね」

「セルは凄い奴だ。完全体になって更に完璧になっちまった。」

呟くように悟空が言うとカリンは不思議そうに悟空を見上げた。

「そう言うわりにはやけに落ち着いておるのう…何じゃ、精神と時の部屋で素晴らしい大発見でもしたのか?」

「でへへ~。まあな!カリン様、こっから見ててセルの強さは大体分かるだろ?」

「う、うむ…真の力を見せておらんので何とも言えんが、大体の予想は付く…」

「ちょっと比べてみてくれ。オラ、これから気を入れてみるから」

悟空は足を肩幅に開いて一気に気を入れると爆風のように気が発せられ、塔全体が振動した。

「!!」

「ういっ!!」

「も、もう止せっ、こっ、ここが壊れるっ!!」

「ひいい!!」

カリンが叫ぶと気の暴風が収まり、息を吐いて悟空はカリンに向き直った。

「今ので大体半分ぐらいだ。どう思う?」

「は…半分じゃと…!?な…何とまあ、恐ろしい奴じゃ…お、お前は、どこまで強くなりゃ気が済むんじゃ…!」

「セルと比べてどうかな」

悟空の問いにカリンは困ったような表情になる。

「う~む……厄介なことを聞くのう…さっきも言ったように推測でしか答えられんが…はっきり言って…それでもセルの方が僅かに上だと思う」

「と…とんでもねえ野郎だな。そ、そのセルってのは…」

ヤジロベーが、悟空の気の風圧で転がったために付いた服の汚れを叩き落としながら言う。

「やっぱそうか!オラの予想は間違ってなかった。サンキュー、カリン様!」

「へ?」

唖然となるカリンに構わずに悟空は悟林の背に触れる。

「さて、悟林。行こうぜ」

「うん、カリン様。またね」

悟空の瞬間移動でカメハウスに移動する。

「母さんを連れて家に帰ろう。あそこの方がのんびり落ち着く。セルゲームまでは3日休んで3日特訓。そんでもってまた3日休むぞ。無理して体を壊しちゃ意味ねえかんな」

「はーい」

カメハウスに入って中に入ると悟林を見たチチが驚愕の後に膝を着いて悲痛な声を上げた。

「ふ、服が…今までの服が入らなくなっちまっただ…!」

「あ、ああー」

「ピッコロに頼んで出してもらうか…?」

「そ、そうだね。それとお母さん、悟飯も結構大きくなって帰ってくると思うよ」

「何だってー!?」

成長期の子供が精神と時の部屋に入った時の意外な弊害が発覚した瞬間であった。

一方、精神と時の部屋に入った悟飯と未来悟飯はかなり順調に修行をこなしていた。

いくら未来とは言え自分自身であるために考えがある程度理解出来る上に自分の動きの悪い部分を客観的に知ることが出来る。

自分自身であるにしても未来悟飯は悟飯よりも長く闘い続けていたために、戦闘センスを含めて今の悟飯の遥か上を行っていた。

力押しでは絶対に勝てないために悟飯は少しずつ未来の自分の技術を吸収していった。

「よし、過去の俺。今日はここまでにしよう」

「は、はい!」

未来悟飯の言葉に悟飯は慌てて戦闘体勢を解いて休むことにした。

今の2人は超サイヤ人状態で過ごしていた。

父の編み出した修行法の戦闘力上昇率に思わず未来悟飯は舌を巻いた。

「やっぱり父さんは凄いな…」

ベジータも悟林も思い付かなかった修行法。

変身による負担を利用するなど考えもしなかった。

「あ、あの…お父さん達…セルに勝てるんでしょうか?」

食事である粉を器に盛りながら不安を未来悟飯に尋ねる悟飯。

「…分からない。でも父さんは無策で闘うような人じゃない。勿論姉さんもね、俺達に出来ることは、最終手段の総力戦で父さんと姉さんの足を引っ張らない程度には強くなるんだ。取り敢えず父さん達と同じように1年修行したら父さん達と合流しよう。入ってみて分かったけど、この部屋は体だけじゃなくて精神的にも相当にきつい。これ以上劇的に強くなれそうになかったら体を休めてベストの状態でセルに挑もう。無理をして体を壊してセルと闘えないなんて笑えない」

「わ、分かりました」

悟飯と未来悟飯は共に修行し、まるで兄弟が出来たような不思議な気持ちを抱きながら修行をするのであった。 
 

 
後書き
未来悟飯はゲームでは多少救済されてますが、肝心のドラゴンボール超が… 

 

第28話

 
前書き
サイヤ人って基本的に対人関係が素っ気ないので、悟林もそんな感じです。 

 
悟飯と未来悟飯も精神と時の部屋を出て、これ以上の劇的な伸びは見込めないと判断してパオズ山の自宅に向かったのだが。

「うわーん!悟空さや悟林ちゃんに続いて悟飯ちゃんまで不良になっちまっただーっ!!おまけに今までの服が入らなくなっちまっただよーっ!!」

「はは…やっぱり超サイヤ人は不良扱いなのか…」

超サイヤ人の状態で帰宅したために悟飯の金髪やら体格の変化による服の一新やらで号泣された。

「よお、おめえ達。お帰り」

「あ…た、ただいま…父さん」

「ただいま、お父さん」

未来悟飯は一瞬戸惑いながら、悟飯はすぐにしっかりと返事を返した。

「やっほー、ダブル悟飯。修行終わらせてきたんだね…分かるよ、レベルが大きく上がったのが」

「俺達も部屋で限界まで鍛えてきたんだ。残りの時間はここで修行しながらベストな状態で挑もうと思って」

「そうか、おめえ達も相当腕を上げたみてえだな」

見ただけで分かる。

精神と時の部屋での修行で2人の潜在能力が解放され始めていることに。

悟林と潜在能力は同じくらいだが、それ以上に高い爆発力を発揮する悟飯。

もし、今の悟飯が怒りでその潜在能力を解放したらどうなるのか…少しの興味が湧いたものの、すぐにその考えは止めた。

悟飯は実力があっても性格的な問題があるので、悟林に任せた方が良いだろう。

「やっほー、ダブル悟飯。良いタイミングで来たね。これから畑仕事するけどダブル悟飯はどうする?家でのんびりする?」

「ああ、手伝うよ…手伝わせて欲しいな…」

「こっちの悟飯ちゃんは勉強するだ」

「は、はい」

悟飯以外は畑仕事に向かい、未来悟飯は久しぶりの畑作業に懐かしそうに手を動かしていた。

「未来じゃしてないの?」

未来悟飯の表情を見て、未来ではこの畑はないのだろうか?

「ああ、みんなが死んでから畑の整備なんかしてないから荒れ放題だよ…人造人間を倒したらパオズ山に戻って畑を元に戻そうと思う。未来の地球に必要なのは食料だから」

「そっか…学者…諦めちゃったのか…よし、可愛い弟のために野菜の種とかたくさんあげるよ。この時代の野菜も果物もお裾分けしないとね」

未来の環境では学者よりもこういう食べ物を生産する仕事の方がずっと良いだろう。

夢を諦めることになった弟のために色々渡す物を考えないといけない。

「よーし、おめえ達。今日はこれくれえでいいだろ。帰ろうぜ」

「はい」

「うん!あ、ちょっと待って!お父さん、何か入れ物ない!?」

木に登って木に生っている果実を採る。

それは悟林とチチが好んで食べているパオズ山でしか採れない果実であった。

未来の地球では環境の劇的な変化により、採れなくなってしまったが。

「おっ!パオズザウルスじゃねえか!チチに唐揚げにしてもらおうぜ!」

近くで暴れているパオズ山にしか生息していない恐竜を発見し、悟空は早速狩りに向かおうとする。

「じゃあ、私は七色イボガエルと百足鰻を探してくるよ。パオズヤモリもね。今夜は御馳走だよ悟飯。私とお母さんが腕によりをかけて作るから期待しててね。でっかい悟飯は悟飯の相手をしてて」

「分かったよ…夕飯楽しみにしてる」

未来悟飯は自宅に戻るとかつての自分の部屋…この部屋の主である悟飯の勉強を見ていた。

「随分難しい問題をやってるんだな」

「未来の僕もやっていたでしょ?」

「…いや、この問題をやる前に人造人間が現れて…そこからずっと闘っていたからな……押し付けるつもりはないけど、俺も学者になりたかった。だから頑張ってくれ」

「…はい!」

未来悟飯からの応援に悟飯はより真剣に勉強に没頭した。

「(何だか悟飯ちゃんの兄ちゃんが出来たみたいだべ…)悟飯ちゃん達ー。おやつだぞー」

「「はい」」

おやつの中華まんを食べながら悟飯は勉強に、未来悟飯は懐かしそうに過去の自分を見つめていた。

「おー、チチの中華まんじゃねえか」

「お母さん、私達の分はー?」

「ちゃんとおめえ達の分も用意してるだよ」

犬並みの嗅覚である悟空と悟林に嗅ぎ付けられたことにチチは苦笑しながら部屋を出た。

そして今夜の夕食は本当に豪華だった。

パオズザウルスと七色イボガエルの唐揚げ。

百足鰻のスープ。

パオズヤモリの姿焼き。

人によってはゲテモノだが、これはパオズ山でしか採れない食材で2人の料理の腕もあってとても絶品なのである。

手始めに悟空と未来悟飯がパオズザウルスの唐揚げを同時に頬張ると一気に米を掻き込む。

掻き込み方や食いっぷりが悟空に似ているものだから2人を除いた全員が笑ってしまい、2人は不思議そうに家族を見渡していた。

「明日は魚を捕ってくるから」

「オラと悟飯達とおめえだからでけえのを4匹捕らねえとな」

「あ、僕も手伝います」

「俺も手伝いますよ父さん」

「あれー?魚にビビってお父さんの後ろに隠れてた悟飯ちゃん達に捕れるかなー?お姉ちゃん心配だなー?流されたり溺れたりしないように近くで見ていてあげようか?何なら一緒に潜ってあげてもいいよ?」

からかい気味の姉の言葉にムッとなる悟飯と未来悟飯。

「ぼ、僕が本気になったらお姉ちゃんよりずっと早く捕れるよ!」

「子供の頃と同じだと思ってたら痛い目に遭うよ姉さん?」

「ほほう、それは楽しみだねえ。悟飯ちゃん達の成長をお姉ちゃんが見てあげようか」

今日は姉弟で雑魚寝をし、未来悟飯は久しぶりの両親や姉の気配に安堵しながら眠りについた。

「…寝たか?」

「ぐっすりだよ…」

悟空とチチは眠っている娘達をこっそりと見つめると互いに見合わせて笑った。

セルゲームが始まるまでは普通の家族として過ごせれば良いと思っている。

リビングに行き、チチが出してくれた茶を啜る悟空。

「なあ、近いうちにみんなで出掛けようぜ。」

「修行しねえだか?」

「ああ、オラ達は限界まで鍛えてきたしな。ゆっくり休んで万全の状態で挑むさ」

「それでセルに勝てるだか?」

「大丈夫だ…ちゃんと勝算はある。最初はオラが闘って…全てを悟林に託すさ」

「悟林ちゃんに…?まだあの子は子供だぞ!?」

まだ9歳の悟林に世界の命運という重い物を背負わせようとする悟空にチチは声を荒げた。

「…落ち着いて聞いてくれチチ。悟林はな…オラを超えちまったんだ」

「は?悟空さ…つまらねえ冗談は…」

確かに悟空以上に鍛えてくれと言ったが、意気込みの意味合いが大きかったチチからすれば、悟空の半分も生きていない娘が悟空を超えたとは信じられなかったが、悟空の心底嬉しそうな表情に真実だと気付かされた。

「凄かったんだぜチチ、悟林が超サイヤ人を超えた姿になってよ。とんでもねえパワーだった。今のオラじゃ逆立ちしたって敵わねえ。ちょっと前まで…あんなに小さかったのによお…」

悟空の脳裏には修行をねだっていた今よりももっと幼い娘の姿が過ぎっているのだろう。

「悟空さ…」

「なあチチ。オラもいつか悟林がオラを超えると思ってた。でもあの歳で超えられちまった…子供ってよ、でかくなるの早えな…悟飯もそうだ。昔は小せえ川にも怖がってぴーぴー泣いて悟林に無理やり引き摺り込まれてよ。覚えてっか?」

「覚えてるに決まってるべ、流石にあれはオラも格好つかねえなと思っちまっただ。」

流石に悟飯を溺愛していたチチも保護者同伴で小川に怖がるのは呆れるしかなかった。

“大丈夫だって、流されねえよ悟飯。ほら、姉ちゃんと遊んでこいよ”

“いやだ!こわいよ~!”

“悟飯ちゃん、こんな小せえ川で怖えなんて格好つかねえべ…”

“ごはーん!はやくはいりなよー!さかながいっぱいだよー!”

“わっ!?わ~っ!!”

2人の脳裏に小川で遊んだ4歳の頃の双子の姿が過ぎる。

「それが今じゃでけえ川に飛び込んで魚を捕ったり、猪を捕ってくるんだぜ?でかくなったよなー」

「んだ、子供はすぐに大きくなるだよ。そしていつかオラ達の所から離れちまう…」

「どんなにでかくなったって悟林と悟飯はオラ達の子供だぞ。」

「だな………明日のお弁当は何にするだか…」

「オラ肉まんが良いぞ。」

「じゃあ、肉まんと…悟林ちゃんの好物の餡まんも用意しねえといけねえな…」

明日の弁当を考えるチチに、悟空はどこに連れて行くかと悩み始めるのであった。

そして翌日、悟空の運転で湖の近くにシートを敷き、チチは弁当の用意をしていた。

「捕まえたーっ!どうだ悟飯!」

「僕も大きいの捕まえたよ!」

「俺も負けてないぞ!」

「これならオラ達のでけえ胃袋でも大丈夫だな」

サイヤ人4人分と言うことで、足りない分を補うために湖の魚を捕獲した。

「むう、まさかダブル悟飯に負けるとはね」

「「へへ」」

4人が捕獲したのは相当な大型で、悟飯と未来悟飯の魚の方が大きかった。

悟林は早速近くの木を4本切って串代わりにする。

「はっ!」

そして悟林が気功波で適度に焼くと魚の香ばしい匂いが食欲を刺激する。

「悟空さー!魚が焼けたならお弁当にするだぞー!」

「うほーっ!美味そうだなー」

「最近ちょっと贅沢過ぎる気もしなくはないけど、でっかい悟飯は未来に帰ったらたくさん食べられないし、この時代で思いっきり食べなさい」

「ありがとう姉さん。これ、母さんの分です」

小さく切った魚の切り身を差し出す未来悟飯にチチは有り難く受け取った。

「ありがとな未来の悟飯ちゃん」

「それじゃあ、頂きまーす!」

「「「頂きまーす!」」」

悟林の言葉を合図に悟空と2人の悟飯も弁当と魚にありつく。

姉の魚の焼き加減も絶妙で加減を間違えて炭にしてしまう自分達とは違う。

「おめえ達、食べる時ぐらい超サイヤ人は止めてけれよ」

不満を言いながらチチも自分の分を取って食べ始める。

「お母さん、今日の夕飯は私が作るからお母さんはゆっくりしていいよ」

「そうだか?じゃあお言葉に甘えるべ」

家族の時間を満喫した孫家は悟空の運転する車で買い物をしようとしていたが、やはりと言うかほとんどの店が休みである。

「どの店もやってないねえ」

「ああ、みんな休みだ。」

「仕方ないですよ、後7日で死んでしまうかもしれないと思うと誰も働く気はしないでしょう。」

悟林と悟空が閉まっている店を見ながら呟き、未来悟飯も閉まっている店を見ながら言う。

店を出しているのは老人達が堂々と経営している店だけであり、やはり年季が違うのだろう。

若者は大量の荷物を持って山に向かったりしている。

恐らく隠れようとしているのだろう。

「セルがその気になったら隠れても無駄じゃねえか?」

「まあ、普通の人は気なんて分かんねえから仕方ねえべ?」

悟空の言葉にチチがそう返すとラジオからニュースが流れてきた。

『番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えします』

「臨時ニュースだって」

「お父さん、聞いてみましょう」

「そうだな」

双子の言葉に頷いて悟空は車を一時停車させる。

『セルと名乗る怪物を倒すべく、28KSの5地点に向かった王立防衛軍ですが、間もなく攻撃が始まる模様です』

「何っ!?ば、馬鹿!!何考えてんだ!!無駄に殺されるだけだって分かんねえのか!!」

思わずラジオに向かって叫ぶ悟空。

「行っても返り討ちにされるだけって分からないのかな…?」

「彼らは普通の人間だ…気なんて分からないから相手の強さが分からない…」

王国防衛軍…一般の人々はセルが爆撃や銃撃で倒せると本気で思っているのだ。

人は撃たれれば致命傷を負うが、それは常人の世界の話であって、セルや自分達のような、超人クラスの強さを持つ者には意味がないことに気付かないのだ。

『物凄い一斉攻撃が始まりました!こっ、この轟音をお聞き下さい!す…凄まじい攻撃です。まだ、まだ続いています!これほどまでの攻撃をまともに受けては、とっくに肉片すら残っていないでしょう!』

「に…逃げろ…早く…」

轟音が続いたが、しばらくして攻撃が止んだ。

しかし結果は言うまでもなく残酷な結果となる。

『しっ、信じられません!!生きています!!セ、セルは…まるで、な…何事もなかったかのように……』

一際でかい轟音が聞こえた。

それからは何も聞こえない。

セルによって放送していたクルーも軍隊ごと消し飛ばされてしまったのだ。

「ち…畜生…」

ラジオを切ると悟空は未来悟飯に振り返る。

「未来の悟飯、母さん達を連れて家に帰ってくれねえか?オラはピッコロに用事が出来た」

「…分かりました。父さん、気をつけて下さい」

未来悟飯に運転を任せて悟空はピッコロのいる天界に瞬間移動で向かう。

「な…なあ…ピッコロに用事って…何だべ?」

「さあね、お父さんには何かの考えがあるんじゃないかな?ねえ、でっかい悟飯。車の運転出来る?パオズ山の近くの村で買い物しようよ」

「勿論、未来のブルマさんに厳しく手解きを受けたからね」

「ブルマさん直伝って…お母さん!お姉ちゃん!しっかり捕まって…」

「「うわああああ!?」」

悟飯が言い終わる前に未来悟飯がアクセルを踏み、車を動かす。

安全運転であった悟空とは正反対でとても荒い運転であり、悟林とチチの悲鳴が響き渡った。

パオズ山付近の山村に着いた頃には悟林もチチも酔ってしまい、顔色が真っ青になっていた。

「だ、大丈夫?お姉ちゃん?」

「これが大丈夫に見える…?」

フラフラになりながら店に入って買い物を済ませる。

「おばちゃん、これ下さーい」

酔いを紛らわせるためのお茶を数本買うとテレビの方に視線が向いた。

テレビに映っているアフロの男が何やかんや言っている。

「何あれ?」

「ミスター・サタンって言う格闘技の世界チャンピオンらしいよ。前にテレビに出てた」

「格闘技の世界チャンピオン?」

修行にのめり込んで世間に疎い悟林に悟飯は苦笑した。

店主の老婆も苦笑しながら双子にお菓子をおまけでくれた。

「世界チャンピオンだから確かに強いと思うんだけどあたしはミスター・サタンが出たくらいであの化け物が止まるとは思えないんだよねえ…はっきり言って悟林ちゃんと悟飯君のお父さんの方が強そうだしねえ…ところでお父さん髪切ったのかい?似合ってるじゃないか」

「「え!?あ、ははは…」」

まさか悟飯の未来の姿とは言えないので苦笑いするだけにした。

「それにしてもミスター・サタンさんね…あれが世間で普通の強い人なのかな?」

「世間一般じゃそうだべ」

店を出て近くのベンチに座り、悟林からお茶を貰って啜るチチ。

「正直お母さんの方が強そうなんだけど」

「そりゃあオラはおっ父の娘で亀仙流の修行をしたんだから当然だべ」

牛魔王の娘で亀仙流のハードな修行をこなせる時点でチチは普通の地球人としてはクリリンやヤムチャ、亀仙人を除けば間違いなくトップクラスだろう。

「…出来ればジッとしていて欲しいんだけどな…」

「未来の僕?どうしたんですか?」

複雑そうにテレビに映るサタンを見つめる未来悟飯。

そんな未来悟飯を悟飯は不思議そうに見上げた。

「あ、いや…何でもない」

「それにしてもあの人、本気でセルゲームに出るつもりなんでしょうか?止めた方が…」

見ていて痛いが、やはり放っておけないのか悟飯が言う。

「いや、無理でしょ。絶対に説明しても聞かないタイプだよ」

悟飯の呟きを悟林が断言して返すと複雑そうにテレビを見つめた。

家に戻ると悟空が帰ってきてナメック星人のデンデが地球の神様になってくれるらしいとのこと。

悟飯と未来悟飯が連れて行かれ、悟空に悟林もどうだと聞かれたが、別にデンデとは悟飯ほど親しくはないので悟林はブルマにドラゴンレーダーを借りて復活したドラゴンボールを回収しに向かったのであった。 
 

 
後書き
悟空は5年も原作では仲間と会っていなかったから、サイヤ人は基本的に自分から用がなければ会いに来ないんだろうな… 

 

第29話

 
前書き
遂にセル戦に突入

ついでにサタンも 

 
地球の神となってくれたデンデによってドラゴンボールはより高性能となって復活し、それぞれが最終調整を終えると悟林は亀仙流の道着を着て戦闘服の手袋と靴を身につけた。

「よーし!待ってろセル!」

「悟林ちゃん!気いつけるだぞ!絶対に生きて帰ってくるだぞ!」

「分かってるよお母さん。私も死にたくないから全力でセルを迎え撃つよ」

「悟空さも気いつけるだぞ、死なねえでけれ」

「おう、分かってるさ」

2人はチチを安心させるように笑うと親指を立てて悟空の瞬間移動で天界に向かった。

チチはどうしようもない不安を感じた。

悟空の強さは知っているし、その悟空を超えた娘の力はチチの理解を超えている次元だ。

それでも自分にとっては悟空は夫で、悟林は可愛い娘なのだから心配しないわけがない。

出来ることなら悟空がセルを無事に倒してくれることを願う。

天界に行くと全員の表情が優れなかった。

復活したドラゴンボールは複数の願いと大勢を生き返らせることが可能となったが、大勢を生き返らせると言うことを可能にした結果、一度死んだ人間は生き返れない。

つまりトランクスと未来悟飯、悟飯の3人以外は生き返れない。

しかし、悟空と悟林は気にする様子もなくセルゲーム会場に向かい、サタンの茶番で全員の緊張は程好く緩んで開催された。

未来悟飯はサタンを安全な場所へ運んでいた。

「本当にあいつってお人好しだよなあ…」

未来悟飯がセルに吹っ飛ばされたサタンに一目散に駆け寄ったのを見てクリリンが思わず呟いた。

「……さあ、早くセルゲームを始めるぞ。どいつからやるんだ。やはり孫悟空、お前からやるのか」

セルからすれば始まってすらいなかったようだ。

「ああ、そうだ。」

悟空がリングに上がり、外野がごちゃごちゃ言う中、悟空とセルの闘いが始まろうとしていた。

「いきなり貴様からか…一番の楽しみは最後に取っておきたかったのだがな…」

気の量からして両者揃って最初から全力でやるつもりはないようだ。

恐らく準備運動レベルだ。

「来い!」

セルの言葉に悟空が攻撃を仕掛け、勢いよく地面を蹴る。

そのまま体重を乗せて蹴りを繰り出し、それをセルは難なく左腕で受け止める。

すかさず悟空が拳を打ち込むが、そちらも右手で防ぎ、セルが左腕で攻撃する。

悟空は頭を下げてかわし、衝突音を立てながら、互いに攻撃を繰り返している。

いったん離れた悟空に、セルが頭突きを繰り出す。

悟空は両腕でそれを受け止め、その反動を利用して両足でセルを蹴り飛ばした。

「かめはめ波っ!」

上空へ打ち上げたセルに追撃の気功波を放つが、セルはそれを弾き飛ばす。

しかし、その隙に悟空はセルの背後を取り、背中に拳を叩きつけるが、セルの反撃を受けて地面に叩き付けられそうになったが、悟空は体勢を整えて着地する。

「準備運動はこれくらいで良いだろう…」

再び向かい合う両者。

「い…いよいよ本格的に死闘が始まるぞ…」

クリリンの言葉によってより全員の神経が2人に向けられた。

「(孫悟空か…流石に戦い慣れている…他の奴らとは一味も二味も違う…)」

「(こいつは想像以上に強えようだ…ほんのちょっとでも気を抜くとあっという間にやられちまうぞ…)よし!」

「(悟空さんの目付きが変わった!)」

超サイヤ人に馴れたことで穏やかだった目付きが鋭い物になる。

「(フルパワーで来るな)」

悟空の体から気が放たれ、悟空を中心に暴風が吹き荒れ、その放たれる気にほとんどの者達が圧倒される。

「(こ…これが今のあいつの…真のパワーか…)」

「す…凄い…やっぱり悟空さんはとてつもなく凄い…」

「ほ、本当に凄え気だ…!さ…流石に抜けてるよな」

一部を除いた者達それぞれが悟空の気に圧倒される中、3人はそれぞれの思いを胸に悟空を見つめていた。

「(あれが本当に父さんのフルパワーなんだろうか?)」

「(…ど…どうしてみんな、そんなに驚いてるんだろう…確かに凄いとは思うけど…)」

「(お父さんのフルパワーでセルがどれだけパワーを見せるのかな…カリン様はセルが僅かに上だって言ってたし…)」

双子が無言で悟空とセルを見つめると、セルも動きを見せる。

「は!!」

セルは不敵な笑みを浮かべて気を入れると、悟空と同様のことが起きた。

リングの中央に歩み寄った2人は静かに対峙する。

「来いよ」

「ああ…」

悟空の拳がセルの腹に叩き込まれ、更に肘打ちが頭に炸裂する。

そして蹴り上げて浮いたセルを殴り飛ばした。

リングに叩き付けられて場外に落ちそうになるが、舞空術を使える物にとって場外負けはほぼないに等しい。

「…良いぞ孫悟空!これだ!闘いはこうやってある程度実力が近くなくては面白くない」

「ああ…オラもそう思う」

互いに笑みを浮かべ、セルが口元の血を拭いながらリングに戻るとかめはめ波の体勢に入った。

「か…め…」

それを見た誰もが焦りの表情を見せた。

「や、止めろ!そんなにパワーを上げた状態でかめはめ波を…」

今のセルのパワーならば地球を破壊するだけの威力を出すのは容易いことだ。

例え地球が壊れてもフリーザ親子の血を引くセルならば宇宙空間でも生存出来るだろうが悟空達はそうはいかない。

「は…め…」

セルの手のひらに集まる気。

まともに放たれれば地球が消し飛ぶ。

「よ、止せ…!」

「波…」

ベジータの声を掻き消すようにセルがかめはめ波を撃とうとしたが、その直前に悟空が上空へ。

「こっちだセルーッ!!」

上空へ移動した悟空に向けて放たれたかめはめ波。

それは真っ直ぐ悟空に迫り、このままではかわしようがないが、悟空は瞬間移動を使う。

「くっ…!」

「はっ!」

瞬間移動でセルの背後を取って強烈な蹴りを喰らわせて吹き飛ばす。

リングに手を付いてバク転して体勢を整えてセルは悟空を睨みつけ、悟空もまたセルを睨みつけた。

「何故だ…あのかめはめ波なら間違いなく当たっていた……。貴様は以前にも突然現れ、消えた事がある……」

静かに問うセルに、悟空は答えてやった。

「瞬間移動だ…オラはそいつが出来る……」

「瞬間移動…!?そうか…そいつは厄介な技だな…」

様々な人の技を細胞の採取によって得ているセルではあるが、ここ最近の悟空の技はインプットされていない。

悟空の細胞は数年前にベジータが地球を攻めに来た時の物であるためだ。

もしセルが瞬間移動まで身に付けられていたら、更に厄介なところだったが、悟空は静かに聞き返す。

「オラも聞きたい……。オラが空に飛び上がらなければ、そのままかめはめ波を撃って、地球を破壊していたか…?」

その問いにセルはニヤリと笑みを返した。

「さあ、どうかな…だが、貴様は飛び上がるしかないと分かっていた…」

「なるほどな。おめえは頭も良さそうだ……」

「だが、これだけは言っておく…私は地球を破壊することなど何とも思っていない。ただ楽しみが減ってしまう。それだけだ…」

セルの言葉を聞いて、改めてセルがフリーザ親子の血を引くことを理解した。

フリーザ親子の冷酷さを持つ怪物には星を壊すことに躊躇はない。

そしてセルは悟空に向かって一直線に飛んだ。

先程よりも速いスピードに一瞬悟空の対応が遅れてしまい、顔を殴られた悟空は反撃に出る。

「ぐっ!!」

しかしその反撃は空を切り、セルが悟空の後頭部を打つ。

悟空は地に伏せてから反動を利用して体勢を立て直そうとするが、背後から更なる攻撃を喰らった。

背中からリングに落ち、すぐに起き上がったその後ろにセルは腕組みをして立っていた。

「私もスピードには自信があるんだ。瞬間移動とまではいかないがね」

楽しげに笑うセルは、本当に死闘を楽しんでおり、連撃を繰り出して悟空を痛めつけていく。

「くっ……!」

よろけた隙にセルが追撃を繰り出すが、悟空はそれをかわして上空に蹴り上げてセルの背後を取ってリングに叩き付けようと拳を振り下ろすが、セルはそれをかわして悟空の背後を取り、逆に叩き付けてやろうとしたが、悟空も咄嗟にそれをかわす。

即座にセルとの距離を取る悟空。

「やるじゃないか本当に…ここまで楽しめるとは正直思わなかったぞ。この闘いを場外負けなどで終わらせるのは惜しい」

「え?」

「場外負けと言うのは…ルールから外そう。私達には何の意味もない」

セルがリングに向けて手を向けた。

「何だ!何をする気だ!?」

悟空はセルの手のひらに集まる気に、セルが何をするつもりなのかを理解して地上の仲間に向かって叫んだ。

「みんな、リングから離れろーっ!!」

次の瞬間、セルゲームのリングが破壊された。

セルによってリングは破壊され、大地全体がリングとなった。

場外負けが敗北条件から失われたことにより、敗北条件は降参か死の二択となる。

因みにサタン達は未来悟飯と16号によって助かっている。

「お姉ちゃん…お父さんはどうして本気で闘わないんだろう…?」

「…お父さんはフルパワーで闘ってるよ。もし、今のお父さんを見て手を抜いてるように見えるなら、今の悟飯がお父さんより強いってこと」

悟林は悟飯の言葉を聞いて、恐らく悟飯も父親を超えてしまったのだろう。

父親を超えたことが信じられないのか、悟飯は困惑したような表情を浮かべている。

闘いの方を見ると、セルの気弾をかわしながら悟空は上空に飛び上がった。

「かめは…」

「ふはははは!貴様にその位置からかめはめ波は撃てはせんぞ!撃てば地球そのものが大変なことになる!」

セルの言う通り、今の悟空が位置関係を考慮せずに全力で気功波を放てば大変なことになる。

「め…」

「お…おい…!」

しかし悟空は更に気を高めたことにセルは驚く。

「お父さん、かめはめ波を撃つつもりのようだね」

「何だと!?フルパワーでか!?」

悟林の呟きにピッコロが反応し、クリリンが引き攣った笑みを浮かべる。

「ば、馬鹿なことを言うなよ悟林ちゃん!あんな位置関係で撃ったら地球が…!」

「大丈夫だよ、みんな。お父さんには瞬間移動があるんだからさ」

「波ーーーっ!!」

次の瞬間、悟空の姿が消えてセルの目の前に現れるのと同時にかめはめ波を放った。

「ごあっ!」

不意を突かれたセルはまともにかめはめ波を喰らって上半身が吹き飛んだ。

大地に転がるセルの半身を見て喜ぶヤムチャ達とは逆に険しい顔をトランクス達はする。

セルがどういう生物なのか分かっているからこそ安心は出来ないのだった。

終わったと思いながらも妙な気の残りが気になり息を上げながら転がるセルの半身を見つめる悟空。

「(…どういうことだ…こんな状態なのに気が随分残っている…)」

気は分かりやすく言えば生命エネルギー。

死ねば気が失われるはずだと言うのにセルからはまだ気が感じられた。

「気を付けろ悟空ーっ!!セルは多分復活する!!」

「復活?」

あんな状態でどうやって復活するのだろう。

悟林が改めて目を向けた次の瞬間にセルの下半身が起き上がり、上半身が再生された。

「そういや再生出来るんだったな…」

「そういうことだ。ピッコロのようにな…」

「ちぇ…やけにあっさり勝てたと思った…だが今ので流石のおめえも随分気が減ってしまってるぞ」

残念そうに言うが、流石に再生には相当気を消耗することを察する悟空。

「ふん、お互い様だ。貴様も随分息が上がっているぞ。忠告しておくが、同じ手は二度と通用せんぞ。無駄な攻撃で体力を減らしてつまらん闘いにだけはするな」

「分かってる!」

「そうかな!?」

気を入れて再び戦闘を再開する2人。

2人の気の絶対量は確実に落ちているが、それでもハイレベルな戦闘を繰り広げる。

セルの拳を受けて吹き飛ばされ、岩に叩きつけられる悟空。

悟空は岩を気で吹き飛ばすとセルに向かって気弾を連射する。

放つ気弾の威力は凄まじく、セルにダメージを蓄積させていくが、堪らずセルは巨大なバリアーを展開した。

「この私にバリアーを張らせた貴様の攻撃は評価に値する…思いの外ダメージは大きかったぞ…」

悟空の気弾によってセルも相当なダメージを受けたようだが、悟空の消耗はそれ以上だ。

「はあっはあっはあっ」

「相当に体力が低下してしまったようだな…仙豆とやらを食うがいい孫悟空…更に素晴らしい試合になるはずだぞ」

「………」

仙豆は食べればどんな怪我も疲労も完全回復し、疲弊している悟空を全開状態にまで回復させるだろう。

闘いをもっと楽しみたいセルは悟空に仙豆を食べるように求めた。

悟空が完全回復してもそれでも自身の方が上回っていると余裕があるからこそだ。

「あ、あいつの言う通りだ!悟空さんに仙豆をあげて全員でかかれば今のセルならきっと倒せる!」

今の疲弊したセルならば自分の攻撃も通用すると判断したトランクスは悟空に仙豆を与えて総攻撃を仕掛けるべきだと考えたようだ。

「………」

「クリリンさんっ!早く仙豆を…!」

クリリンに仙豆を悟空に渡す様に促すが誰もそれをしようとしない。

トランクスにベジータの怒号が飛んだ。

「黙ってろトランクス!てめえにはサイヤ人の誇りがないらしいな。そんな勝ち方をするぐらいならあいつは死を選んだ方がマシだと思うだろうぜ…今のあいつは地球のためになんか闘ってるんじゃない。そいつを覚えとけ…」

戦闘民族サイヤ人。

闘いに喜びを感じる存在。

こうして悟空が闘っているのは地球のためであり、自分のためでもあるのだ。

「…し…しかし、このままでは…」

「やられるだろうな確実に…あ…頭に来るが、認めてやる…俺はあれだけ特訓したが、カカロットを超えられなかった…あ…あの野郎は天才だ…だが、セルはそんなカカロットを一歩も二歩も更に上回ってやがるんだ…」

「だ、だったらどうしろと言うんですか…!?黙って、み、見ていろと…!?」

「てめえも言ってただろ!あいつには何かきっと作戦があるはずだと。そいつに期待するんだな…」

ベジータの言葉に全員の視線が悟空に向けられる。

悟空の視線が悟林に向けられ、その意味を理解した悟林は微笑んで頷いた。

それを見た悟空は笑みを浮かべて身に纏っていたオーラが消える。

「参った!降参だ!おめえの強さは良ーく分かった!オラはもう止めとく」

悟空の突然の降参宣言にほとんどの者が耳を疑った。

それはクリリン達だけではなく、今まで闘っていたセルも例外ではない。

「…孫悟空…その言葉の意味することが分かるか?…セルゲームで闘う者がいなくなればこの地球の人間共は1人残らず死ぬことになるんだぞ」

「勘違いすんな。闘う奴がいなくなったわけじゃねえだろ」

「同じことだ。ベジータやトランクス、未来の孫悟飯では力を上げたとは言え貴様より劣っているはず…」

セルの予想ではベジータとトランクス、未来悟飯は悟空未満の実力であり、悟林と悟飯は年齢的に戦力外だと思っているようだ。

「じゃあ、次に闘う奴をオラが指名しても良いか?」

「貴様、本当に降参する気か…!」

悟空の発言に敵であるセルすら困惑の表情を浮かべ、そんなセルに笑みを見せながら悟空は言葉を続ける。

「今度の試合で、多分セルゲームは終わる。そいつが負ければ、もうおめえに勝てる奴はいねえからだ…。だがオラは、さっきおめえと戦ってみてやっぱりそいつならおめえを倒せると思ったんだ」

「何!?」

悟空の確信を持った言葉に興味を惹かれたのかセルの顔つきが変わり、それに気付いた悟空は更に笑みを深め言葉を続ける。

「だから、オラは全てを任せて降参した……」

「ということは、そいつは貴様はもちろん私より強いとでもいうのか?」

「ああ」

「くっくっく……では聞こうか。その存在するはずもない者の名を……」

セルの言葉に応えるように悟空の視線は向けられた。

「おめえの出番だぞ!悟林!!」

悟空の娘である悟林に。

全員の視線が向けられると、既に悟林は手袋と靴をしっかりと身につけ直し、普段の明るい活発な少女とは思えないくらいに鋭い眼差しをリングとなった大地に向けていた。

「あ、あの馬鹿、何を言ってやがるんだ…!自分の娘をみすみす殺す気か!」

悟林の隣に悟空が近付き、声をかける。

「やれるな?悟林」

「大丈夫だよ、お疲れ様お父さん」

「無茶を言うな悟空!貴様でさえ敵わなかったセルなんだぞ!悟林を死なせるつもりか!」

苦虫を噛み締めた様な表情を浮かべたその表情は、心の底から悟林の身を案じて反対しているのが分かる。

しかし、そんなピッコロを諭す様に悟空は口を開く。

「ピッコロ、悟林はオラ達が思ってる以上に凄え力を持ってるんだ。考えてみろよ、こいつはもっとチビの頃からみんなと同じように闘った。ベジータやフリーザとも闘って、オラが地球に帰ってきた頃には超サイヤ人にもなれてたんだぜ…オラがそれぐらいのガキだった頃はてんで大したことなかったさ…悟林なら絶対にセルを倒せる…それを確かめるためにオラは一番手で出たんだ。」

「で、でもよ…!確かに悟林ちゃんの素質は俺達も分かってるさ…でもよ、未来の悟林ちゃんは超サイヤ人でも人造人間にやられちまったんだろ?」

未来悟林のことだから修行自体はしていたはずだ。

それなのに人造人間には勝てなかった。

「トランクス、未来の悟飯。未来の悟林は精神と時の部屋に入ったのか?」

「いえ、存在すら知りませんでした…」

「そもそも天界の宮殿自体が破壊されてしまっていましたから…」

トランクスと未来悟飯の言葉に悟空はクリリンの方を振り返る。

「だろ?だから今の悟林と未来の悟林は根本的に違うんだ。悟林はオラの実力を遥かに超えてる」

悟空の言葉に誰もが驚く中、悟空はまだ小さい娘の肩に手を置いた。

「お父さん?」

「セルを倒してくれ。おめえにしか出来ねえ」

「任せてよ」

力強く明るく笑い返す悟林。

「お、お姉ちゃん…」

不安そうに悟林に歩み寄る悟飯に悟林は笑った。

「大丈夫、私は絶対負けないから」

それだけ言って何の迷いもなくセルと闘うためにセルの前へと降り立った。

「クリリン、仙豆持ってるだろ?一粒くれるか」

「え!?あ、ああ…」

「サンキュー…セル!」

悟空がクリリンから仙豆を受け取ると、セルに仙豆を渡したのだ。

「そいつが仙豆だ。食え!」

「ば、馬鹿!お、お前何を!」

「奴は体力を消耗している。そんな闘いはフェアじゃねえし、消耗しているセルを倒したって悟林は満足しねえさ」

その言葉に全員が悟林の方を見ると全く動こうとしない。

セルが仙豆で回復するのを待っているのだ。

「生意気なガキだ。すっかりその気か…後悔しろ、孫悟空。貴様の甘さにな」

仙豆で回復するとセルは地面に降り立ち、悟林は目付きを更に鋭くさせ、そして笑みを浮かべて構えを取った。 

 

第30話

 
前書き
超サイヤ2で大暴れさせますが、流石にセルをあっさり倒させるわけにはいきません。

悟空の理想としては昔みたいにすぐに怒ってパワーアップするって感じだったんでしょうね、実戦では結構な頻度でキレてたから修行中は無理でも実戦ならと思ってたんでしょう。 

 
セルが仙豆によって回復すると、悟林と相対した。

「幸運かもしれんぞ、真の恐怖を知った途端に死ぬことになるんだ」

「じゃあ、その真の恐怖ってのを教えてもらおうかな?…来なよ」

「やれやれ、サイヤ人と言うのは自信過剰のようだ。半端な者ほど死を早めることを理解出来ないのだからな!」

悟林の挑発にセルの回し蹴りが繰り出されるが、悟林はそれを片手で掴み止めた。

「もっと真剣にやってくれないかな?」

「チッ!」

舌打ちしながらセルは足を放し、ラッシュを繰り出す。

悟林は危なげなくセルの猛攻をかわし続ける。

「くっ…すばしっこいチビだ。スピードだけは本気になってやるか」

先程とは段違いのスピードで悟林に迫るが、悟林もまたスピードを上げてセルの突き出された腕を支えに逆に強烈な蹴りを顔面に叩き付ける。

「ぐうっ!?」

「だりゃあっ!!」

仰け反ったセルに追撃の回し蹴りを喰らわせて尻餅を着かせた。

「セ、セルが尻餅を着いたぞ!」

「先制攻撃を決めたのは姉さんか…!」

クリリンと未来悟飯が先制攻撃を決めた悟林にもしかしたらと希望を持ち始める。

「なるほど、孫悟空の言っていたことも満更出鱈目ではなかったようだ。」

口元の血を指で拭うとセルは悟林の評価を上方修正する。

「行くぞ!」

地面を蹴ってセルとの間合いを詰め、セルが上空に飛び上がり、悟林もそれを追い掛けるとセルの尻尾が勢い良く伸びた。

「うわあああ!?」

尻尾の先端はかわしたものの、足に絡み付いて岩に向かって振り落とされた。

間の抜けた声と共に悟林は岩に激突した。

「ご、悟林…!」

岩に激突した悟林に焦るピッコロに悟空は思わず笑ってしまった。

このピッコロの心を大きく揺るがせるのは悟林と悟飯だけなのだから。

「心配すんなピッコロ。悟林の気は全然減ってねえだろ」

次の瞬間、岩が気によって吹き飛ぶ。

そこにはほぼ無傷の悟林が痛む頭を擦りながら歩いていた。

「痛たた…その尻尾って退化してたんじゃないんだ…」

「使う必要がないからしまっているだけだ。」

「ずるいなあ…でも、大分体が温まってきたぞ…悪かったね、私はスロースターターなんだ。これからが本番だよ!」

「ほう?そうでなくては困る。孫悟空の代わりに闘うのだ。こんなにもあっさり終わってしまっては拍子抜けも良いところだ。」

「お楽しみはこれからだよ」

深呼吸をして気を解放すると地面を蹴って距離を詰めるのと同時にセルの顔面に悟林の拳が突き刺さり、怯んだ隙に連擊を叩き込んで最後には蹴りを繰り出して吹き飛ばす。

「魔閃光!!」

吹き飛んでいるセルに追撃の気功波を放ち、直撃させると爆発が起きる。

下にいるサタン達が余波で吹き飛んでいるが、気にしない方向で行こう。

「き…貴様…!」

「さっさと再生しなよ。それくらいすぐに治せるでしょ」

体の所々が吹き飛んでいるがセルが気合いを入れると即座に損失した部位が再生した。

「…っ…調子に乗るなよ小娘。まさか本気でこの私を倒せると思っているのか?」

「勿論」

「…ふん、大きく出たな…では見せてやろう、この私の恐ろしい真のパワーを…」

悟林の断言に一瞬セルは目を見開いたものの、すぐに笑みを戻し、体に気を充実させていく。

「(気が膨れ上がって充実していく。ついにセルのフルパワーが拝めるわけだね)」

次の瞬間、セルが気を解放し、凄まじい暴風が吹き荒れる。

「つ…ついにセルがフルパワーの闘いを見せる」

「ち…地球全体が震えるような、も…物凄い気だ」

上空の悟空とクリリンがセルのフルパワーに戦慄する。

「悟林…」

ピッコロはセルのフルパワーの気を間近で受けている弟子を心配そうに見下ろしていた。

「どうだ…これが本気になった私だ…」

「それがお前のフルパワーなんだ…ちょっと前まで私達が使っていた変身に似てる。それじゃあ私もフルパワーで相手してあげるよ……はああっ!!」

気合いを入れて気を解放するとオーラの勢いが激しくなり、スパークが混じる。

「っ…!」

「これが超サイヤ人を超えた超サイヤ人…長ったらしいから超サイヤ人2って呼ぶよ。お前を倒すには二度と元に戻らないよう…完全に消し飛ばしてやる…!!」

「何!?」

「はっ!!」

気合砲を繰り出してセルを吹き飛ばし、それを追い掛ける。

すぐに距離を詰めて連続で攻撃を入れていき、途中で何度かセルの反撃が繰り出されたが容易く捌いて、最後には組んだ拳を脳天に叩き付けて地面に沈めた。

「そらそらそらっ!!」

気弾を連射し、セルが沈んだ地面に放つと、大爆発が起こる。

「す、凄え…あれが悟空との修行の成果なのか…!」

「しかも悟林はセルの動きを完全に見切っている…悟空、お前が最初に出たのはセルの力を確かめるだけではなく、セルの動きを悟林に学習させるためだったんだな」

「まあな、でもそんなのは関係ねえ。今の悟林はセルを完全に上回っている。全てな」

「そうか…俺は悟林のためと想って反対したが…あいつの成長を信じてやれなかった…」

「す、凄い…あれが悟林さんの本気…!」

トランクスは過去の師匠のフルパワーに驚く。

「………」

驚く周囲を他所に悟飯は何も言わずに悟林を見つめていた。

悟林は地面から飛び出し、何度も殴り掛かるセルの攻めを受け流し、逆に手痛い反撃を与える。

鳩尾に悟林の鉄拳が叩き込まれ、怯んだ隙に強烈な回し蹴りが炸裂し、セルを吹き飛ばす。

「複雑か?」

「え?」

隣から聞こえてきた声に振り返ると、カプセルコーポレーションによって修理された人造人間16号が隣に佇んでいた。

「お前の姉があれほど強大な力を躊躇することなくセルにぶつけている姿が複雑か?俺はデータでしか孫悟林のことは知らんが、お前達の姉弟仲が悪くないのは分かる。お前に対して優しい姉が悪人とは言え力を振るうことが複雑なのだろう?」

「……」

16号の言う通り、それは図星だった。

時々からかってくることはあっても自分にとって悟林は優しい姉であった。

だからこそ、何の躊躇もなくセルに強大な力をぶつける姉の姿がまるで自分の知る姉ではなくサイヤ人のように見えて嫌だった。

もしかしたら母親であるチチが超サイヤ人を嫌う理由は金髪以外にもこれが原因なのかもしれない。

超サイヤ人に変身すればまるで戦闘を好むサイヤ人であることを突き付けられているような。

次の瞬間、16号の大きな手が悟飯の頭に乗せられた。

「じゅ…16号さん…」

「孫悟飯…正しいことのために闘うことは罪ではない。セルのように話し合いなど通用しない相手もいるのだ。お前の気持ちは分かるが、守るためには闘わなければならないこともある。奴にとってはお前の守りたい存在も取るに足らない存在だ。邪悪な存在から守るためには優しさだけでは何も守れない。相応の力が必要だ。その相応の力が今の孫悟林なのではないか?」

「……はい」

「力に善悪などない。使う者の心によって決まる。お前の姉は正しいことのために使っている…俺にはそう見える」

「…16号さん……ありがとうございます…」

16号に礼を言うと悟飯は再び悟林とセルの闘いを見た。

闘いの流れは完全に悟林に向いており、セルは気円斬を放った。

「はあっ!!」

悟林は気円斬の面を殴ることで砕き、続いて放たれた特大の魔貫光殺砲も真横から殴ることで弾き飛ばした。

「パワーに傾倒し過ぎたせいで魔貫光殺砲の強みのスピードが潰されているな。」

「ピッコロさんの技はあんな物じゃありません」

未来悟飯と悟飯が弾き飛ばされた魔貫光殺砲を冷静に分析する。

確かに直撃すればただでは済まないだろうが、パワーに傾倒し過ぎたせいで気功波が巨大化してしまい、スピードが大きく落ちているせいで防ぎやすくなってしまっている。

「ならば…これならばどうだ!か…め…は…め…」

「あ…あの野郎…!」

上空に移動したセルがかめはめ波の体勢を取る。

セルの意図を理解した悟空が焦りの表情を浮かべる。

「喰らえ!全力のかめはめ波だ!避ければ地球が吹っ飛ぶ…!受けざるを得んぞ…!」

「よ、よしやがれ…!冗談じゃねえぞ!」

「波ーーーっ!!」

クリリンの叫びが響くが、セルは悟林に向けて高密度の気の特大のかめはめ波を放った。

「お…終わった…」

悟林は無言で指を額に当て、指先に気を集中させる。

界王拳による気のコントロールを繰り返した成果か、ほとんど時間をかけずに気は溜まった。

「これが…本物の魔貫光殺砲だーーーっ!!」

指先から放たれた細い気功波はセルの気功波を貫き、容易く霧散させるとセルの腹に風穴を開けた。

「うぐ…ぐぐぐ…な…何故だ…何故あれほどのパワーが奴に…」

「どう?ピッコロさん直伝の本場の魔貫光殺砲の威力は?」

貫かれた腹を押さえながら痛みに悶えるセルに冷徹な笑みを浮かべる悟林。

「ご…悟林の奴…セルの馬鹿でかいかめはめ波を…」

「あれが本当の魔貫光殺砲です。姉さんは更に気を集中させて攻撃の範囲を狭める代わりに破壊力と貫通力を上げたんでしょう」

ベジータの呟きに未来悟飯がセルを見上げながら言う。

先程の気功波はあまりにも細すぎるせいで派手さに欠ける一撃だったが、点に於ける威力は凄まじいの一言だ。

「ぐっ!ぬああっ!!」

気合を入れて風穴の開いた部分を再生し、地上の悟林を見下ろす。

「ち…畜生…畜生…!畜生おおおお…!ぬおおお…!かあっ!!」

血走った目で叫びながらセルは体に気を更に入れて体を巨大化させる。

だがそれは酷く偏りのあるものでセルの体は通常の2倍ほどに巨大化していた。

勢いよく地面に足をつければ、ドズンとやたら重たい音が響き、血走った目を悟林に向け、セルは完全に逆上していた。

「…そんなパワーアップのためだけの変身で私に勝てるつもり?馬鹿にするんじゃないよ」

「き…貴様なんか…貴様なんかに負けるはずはないんだああ…!があっ!!」

悟林の言葉に聞く耳持たず、大振りで殴りかかった拳はあっさり避けられ、地面に大きな穴が開いて衝撃により、周囲に亀裂も入っていた。

セルはがむしゃらに殴り掛かるが、悟林のスピードには全くついていけていない。

「パ、パワーを気にしすぎた変身でスピードがついていってない…俺に言ったミスをセル自身が…!あ…あいつ逆上している…」

元々勝てる見込みのない戦いが更に勝てない状況に陥っており、それは地球に住む者にとっては嬉しい事なのだが、ある種、滑稽とも言える展開だ。

「ふん!!」

悟林は飛び上がると、セルの顔面に強烈な蹴りを喰らわせた。

「あ…ぐっ!」

しかし巨大化の影響か耐久力が上がっているのか、セルはすぐに持ち直した。

しかし、スピードが激減しているセルでは悟林の超サイヤ人2のスピードにはついていけない。

「怒りに身を任せた図体と変身じゃ、私の今のスピードにはついてこられないんだ!!」

腹にラッシュを叩き込み続けるが、セルは何とか反撃の拳を繰り出す。

悟林はそれをかわして顔面を殴り、更に回し蹴りを繰り出して岩に叩き付ける。

「これでおしまいだ!!魔閃かめはめ波ーーーっ!!」

魔閃光のフォームからのかめはめ波。

特大の気功波がセルに直撃し、大爆発が起こる。

悟空やベジータでさえ爆風の勢いに抗えずに吹き飛ばされてしまう。

煙が晴れると体のほとんどが失っているセルの姿。

「あ…がう…」

何とか再生が終了して、よろめいて立ちあがった時だった。

猛烈な吐き気がセルを襲い、外から見ていて分かるほどに食道が膨れ、人間を1人吐き出した。

それは人造人間18号だった。

「18号!」

「18号だ!18号を吐き出した…!」

16号とクリリンが叫んだ直後にセルの姿が変化する。

悟林の与えたダメージはセルが完全体でいることを許さない。

完全体から一段階退化し、明らかに完全体時と比べて気の総量が大きく減っている。

これなら悟林を含めたサイヤ人とピッコロで一蹴出来る。

「終わりだよ。お前はもう私達には勝てない」

「達…?」

「そうだよ、私だけじゃない。お父さんや悟飯や未来の悟飯、ベジータさん、トランクスさん、ピッコロさんにも勝てない」

「おめえの負けだセル!!」

セルが周囲を見渡すと、完全体の時は取るに足らない存在であったはずのベジータやトランクス、ピッコロでさえもセルを大きく上回っていた。

悟空が断言するように言う。

「許さん…!貴様らは絶対に許さんぞ!!んぬぬぬぬぬ…ぬいいいいい…!!」

体が膨らみ始め、体内の気が増大し始めた。

ただ事ではないと判断した悟林は即座に顔面を殴って中断させた。

「ぐっ!!」

殴り飛ばされたセルの膨らんだ体が元に戻る。

「何をする気か知らないけど、お前が何かをやらかすのを待つほどお人好しに見える?最後に特大のをお見舞いしてやるよ。吹き飛べセル!!」

とどめを刺すために超サイヤ人2のフルパワーで気弾を放とうとする悟林。

凄まじい気が手のひらに集まっていくのであった。

悟林の手のひらに溜まっていく気を見ながらセルは必死に思考を巡らせた。

ピッコロとフリーザ譲りの明晰な頭脳によって様々な案は浮かぶものの、悟林との実力差を考えると無意味な物となる。

「(何か…何かないのか!?戦闘力を大きく上げる方法は!?)」

ピッコロとフリーザの記憶が駄目ならば悟空とベジータの記憶を頼りにする。

そこであることに気付いて不敵な笑みを浮かべる。

「これで…」

「太陽拳!!」

「うあっ!?」

視界を潰されたことにより、思わず悟林の手のひらに溜めていた気が霧散する。

セルの気が悟林から多少離れたが、そこまでではない。

視界が回復した時にはセルは手のひらを上に掲げて気弾を作り上げていた。

「ふははは!これで貴様も終わりだ!!」

「…?何それ?」

どう見ても大したことのない気弾だが、しかしそれが何を意味するのか悟空とベジータは知っている。

「まさかあれはパワーボールか!?」

「悟林!早くそいつを壊すかセルを倒せーーーっ!」

「もう遅い!弾けて混ざれ!」

パワーボールが星の酸素と混じりあったことで人工的な月を作り出す。

「し、しまったーっ!!」

セルがパワーボールを見つめることでセルの体が大きく変化を始める。

体が巨大化し始め、下半身が蜘蛛のような4本足になり、上半身もより屈強な物となる。

「ま、まさか…あいつ…大猿に相当する姿になったのか!?」

クリリンがどことなく大猿を彷彿とさせる変身に、幼い頃やベジータとの最初の闘いを思い出して戦慄した。

超サイヤ人に悟空達が変身出来るようになってから大猿への変身は過去の変身として見られたが、それをセルのような怪物がやるとなると、どれだけ恐ろしいのか。

ただの巨大化ではないのはピッコロやフリーザ親子の細胞が混じっているからなのか。

「はっ!!」

取り敢えず様子見も兼ねて気弾をセルに当てる。

顔面に直撃したにも関わらず、セルはニヤリと笑うと拳を振り下ろした。

「うわっ!?」

慌てて拳を避ける悟林にピッコロはクリリンから仙豆の入った皮袋を奪うと仙豆を悟空に押し付けた。

「おい、孫。これはもうフェアだのなんだの言っている場合じゃないぞ」

「ああ、分かってっさ。すまねえ、まさか月でパワーアップしちまうなんて思わなかった」

仙豆を噛み砕いて飲み込むと悟空は全快してセルの攻撃をかわしている悟林の元に向かう。

「悟林!」

「お父さん!危ないから離れてて!」

セルの拳が迫るが、悟空は悟林の腕を掴むと瞬間移動で離脱する。

「悟林、仙豆だ」

仲間達の所に移動した悟林はピッコロから仙豆を渡されてそれを噛み砕いて飲み込む。

「あれって何なの?」

「恐らくサイヤ人の大猿だろう。奴には俺とカカロットの細胞がある。そしてピッコロやフリーザの細胞もあるせいであんな姿になったんだろうぜ」

「完全体の時より凄い気だ…」

トランクスの呟き通り、完全体の時の数倍の気。

もしこれを完全体の状態でやられたなら危なかった。

「奴は体が大きくなったせいで動きが鈍くなっているはずです。素早く動いて撹乱し、同時に攻撃しましょう!!」

「ああ!」

未来悟飯が作戦を言い渡すと悟空は体に気を入れた。

「よーし!行くぞ!!」

「貴様らはここにいろ!良いな!」

悟林が気合を入れるように叫び、ピッコロがクリリン達にそう言うと悟林達は気を入れ、ベジータとトランクスも超サイヤ人となる。

悟林が最初に飛び出し、全員が悟林に続くように飛び出す中、ベジータが複雑そうに悟林の後ろ姿を見つめていた。

セルの猛攻を掻い潜り、高速で動き回る悟林達。

「(未来の悟飯の言った通りだ。体がでかくなったせいでパワーは凄えがスピードが遅い!!)」

「(俺達のスピードについていけていない。やっぱり凄いな悟飯さんは…!)」

「今だ!!」

悟林達が勢い良くセルに突っ込んで同時攻撃を当てようとしたが、セルが4本の足に力を入れて一気に飛び上がった。

予想外の行動に悟林達の表情が驚愕に染まる。

セルの口からエネルギー波が放たれた。

「うわあああ!!」

「あぐっ!!」

直撃は避けたが、小柄な悟飯と悟林が勢い良く吹き飛ばされ、悟空達も勢い良く地面に叩き付けられた。

「う…く…だ、大丈夫!?みんな!?」

「な、何とかな…」

この中で一番戦闘力が低いピッコロのダメージが酷い。

「ピッコロさん!」

未来悟飯がピッコロを助け起こす。

「すまんな…未来の悟飯…」

「いえ…それにしてもあれだけの巨体であんな動きが出来るなんて…」

「あの巨体をあの4本の足で支えることでスピードが落ちないんでしょう。何とかセルを元に戻す方法はないんでしょうか?」

トランクスがセルを見上げながらどうすれば良いのかと焦りを見せる。

「あれがサイヤ人の大猿と同じなら尻尾を切れば元に戻るだろうが…」

「セルにはピッコロと同じことが出来っからな。尻尾を切っても再生されちまうのがオチだろ」

「じゃあ、何としてもあいつを自力で倒すしかないわけだね」

セルが動き出し、口から連続でエネルギー波を放った。

「「「「魔閃光ーーーっ!!」」」」

「波ーーーっ!!」

「ギャリック砲っ!!」

「爆力魔波っ!!」

連射していることで単発より威力が落ちており、何とか全力の気功波で相殺する。

しかしセルは無差別にエネルギー波を放ち、悟林達は少しずつ押されていく。

「みんな、オラに捕まれ!」

このままでは埒が明かないと判断し、悟空は全員を瞬間移動でセルの目の前に移動し、全員で気弾を至近距離で放った。

しかし、いくらか後退させただけでセルにはまるでダメージが入っていない。

再び悟林達はセルの重い攻撃を喰らって吹き飛ぶ。

「くそったれーっ!!」

何とか岩を足場にすることで踏ん張ったベジータはセルに突撃し、顔面を連続で殴るものの、戦闘力に差があり過ぎる上に巨大化の影響で防御力も相応に上がっているセルには蚊に刺されたような物だ。

ベジータを頭突きで吹き飛ばし、口からエネルギー波を放った。

まともに喰らえば即死。

それが分かるほどのエネルギーが込められていた。

「父さーんっ!!」

トランクスが助けようとするも間に合わない。

「(駄目だ、瞬間移動でも間に合わねえ!!)」

瞬間移動で助けようにもあんな一瞬では瞬間移動は出来ない。

誰もがベジータの死を確信した時、間に誰かが割り込んだ。

爆煙が上がり、煙が晴れた時には生きているベジータの姿と…。

「だ…大丈夫?ベジータさん…」

左腕が肩から失った悟林の姿があった。

「ご、悟林……よ、余計な真似を…俺は貴様に助けてもらう気など…」

「うん、分かってるよ…でも私がしたいからしたんだから…」

ベジータの言葉に笑みを浮かべる悟林だが、痛みで引き攣った笑みが痛々しい。

「クリリンさん!仙豆を!」

「す、すまん…仙豆が…」

悟飯が仙豆を持っているクリリンに仙豆を要求するが、仙豆の入った皮袋がない。

セルの無差別攻撃を18号を庇いながらかわしていたので、仙豆を落としてしまい、セルの攻撃で消えてしまった。

仙豆がないと言う最悪の状況だ。

「父さん!姉さんを連れてデンデの所に!!」

「デンデ?」

「そっか!デンデなら怪我を治せる!」

「そうか!よし…」

息子2人の言葉に悟空は悟林を連れて天界に瞬間移動し、ついでに新たな仙豆を補充しようとしたが、セルの巨体がこちらに向かってきた。

「大丈夫…お父さん!私はまだ闘えるよ!」

隙を見せたらその瞬間に殺されると判断した悟林は左腕を欠いた状態で戦闘を続行する。

「くそ…すまねえ…こんなはずじゃなかった…!」

「気にするな、誰も奴の行動など読めはせん。」

悟空の謝罪にピッコロは答えながらセルに向かうのであった。

「父さん、大丈夫ですか?」

「余計なことをするな…トランクス…!」

トランクスに助け起こされたベジータは何とか息を整えてセルを見上げた。

「父さん、俺は先に行きます!」

悟林に迫る拳にトランクスは横から蹴りを入れて軌道を逸らす。

「ありがとうトランクスさん!」

「いえ、それより悟林さん!来ます!」

「分かってるよ!」

ベジータは悟林の後ろ姿を見ながら複雑な心境を抱いていた。

左腕を欠いてバランスが崩れているにも関わらず、そのパワーは自分は愚か悟空すら超えている。

不思議に思っていた。

サイヤ人は己の強さに固執する種族だ。

それなのに何故、悟空は悟林が自分を超えるように仕組んだのか、何故、混血のサイヤ人はあのようなとんでもないパワーと戦闘力の伸び代を併せ持つのか。

トランクスにしても2人の悟飯にしてもそうだ。

再び未来から来た時には自分より遥かに劣る戦闘力しかなかったというのに、今ではトランクスは自分とほとんど変わらない戦闘力で、2人の悟飯は本人達は気付いていないかもしれないが、超サイヤ人2に変身する前の悟林に迫る戦闘力を発揮している。

もし、自分がトランクスと共に精神と時の部屋に入ってもう一度修行をすれば、トランクスの足りない部分を教えてやったなら、トランクスも自分を超え、悟林達のような強大なパワーを持てたのだろうか?

あの爆発的な力を…。

「魔貫光殺砲ーーーっ!!」

悟林が渾身の魔貫光殺砲で尻尾を切断するが、セルは一瞬硬直した程度ですぐに再生された。

「やっぱり駄目か…でも負けてたまるか!!」

動き回ってセルの攻撃をかわしながら攻撃を繰り出す悟林。

初めて会った時には少々戦闘力が高いだけの子供でしかなったというのに、今ではこの中の誰よりも強い戦士となった。

「(あれが…ガキってもんなのか…)」

自分を助ける暇があるのならセルに攻撃すればいいものを。

しかし、悟林にはそれが出来ないのだろう。

きっとトランクスにも…。

ベジータは深く息を吐くと、気を入れてセルに向かっていった。

悟林達は必死に応戦するが、パワーボールの月によって変身したセルのパワーは想像を遥かに超えた物だった。

こちらが何度も攻撃を当ててもセルはびくともしない。

するとトランクスは複雑な印を結び、印を結ぶ際に拡散した気を突き出した手のひらの前に集め、自身の気と合わせて凝縮させると絶大な威力の気弾を発射した。

「これでどうだ!!」

放たれた気弾はセルに直撃し、大爆発が起きるもののセルは大したダメージを受けていない。

「畜生…このままじゃじり貧だ…」

仙豆もない状況ではただこちらの体力が消耗していくだけ、このままではやられるのも時間の問題だ。

「(何かないの…?奴を超えるパワーを出す方法は…!)」

記憶を辿り、何か方法はないのかと考える。

すると、あることを思い出した。

昔ベジータと闘った時に餃子がナッパにしたこと、そして未来の自分が人造人間を道連れにしようと自爆したことを。

「(普通にやってもあいつは倒せない。なら、全てをこの一撃に込めればいい)」

セルがとどめとばかりに口にエネルギーを溜めている。

誰もが焦りを見せる中、悟林は気を限界を超えて高めていく。

「みんな、ここから離れて…!」

「ご、悟林!?お前…何を…!?」

「私の命を力に変えてセルをぶっ飛ばす!!」

「な、何ですって?」

ピッコロの疑問に悟林は覚悟を決めた顔で即答し、トランクスが絶句する。

悟林の纏うオーラが尋常ではない程の威圧感を発していく。

まるで例えるなら空気が入りすぎた風船だ。

「お、お姉ちゃん!そんなの駄目だよ!」

「他にあいつの攻撃を防ぎながら倒せる方法ある?危ないからみんなはここから離れて!!」

「何を馬鹿なことを言ってるんだ姉さん!早まっちゃ駄目だ!」

「未来の悟飯とトランクスさんは万が一のためにタイムマシンで未来に帰って、もし私の一撃でセルを倒せなかったら…2人はこの時代の人じゃない。この時代のことは私達でケリを着ける!!」

「そんな!みんなを置いて逃げるなんて出来るわけ…」

未来悟飯は仲間が自分達を生かすために死んでいったことを思い出して必死に悟林を止めようとする。

「2人にもしものことがあったら誰が未来を守るの?未来のブルマさんは?2人には大切な人達だっているんでしょ?」

「そんな…!嫌です悟林さん!そんなことは聞けません!俺も…俺も最後まで一緒に闘う!!」

まるで自分達を生かすために1人で闘った未来悟林を思い出してトランクスは悟林の言葉を拒否する。

「大丈夫」

限界を超えた気が今にも溢れそうになって辛いはずなのに、悟林はトランクスを安心させるように笑った。

「私は絶対にあんな奴には負けないから」

片手がないせいで少々不格好なフォームになってしまうが構わない。

魔閃かめはめ波。

ピッコロと悟空から教わった2つの技を合わせた自分だけで出せる技の中でも最高の技だ。

「魔閃…か…め…は…め…!」

手のひらに溜めていた黄金の気弾に蒼の気が混じる。

セルの気も尋常ではないほどに高まっている。

もう止められないとこの場にいる誰もが理解した。

「波ーーーっ!!」

そして、セルが放ったエネルギー波に対して悟林もまた、最大最後の一撃で迎え撃った。

2つの気が激突し、悟林とセル以外は激突の余波で吹き飛ばされてしまう。

「ぐ…ぐぐ…っ!」

少しずつだが、悟林の気功波が押されている。

万全の状態なら押し切れたが、左腕の欠損と気の低下によってセルのエネルギー波を抑えるので精一杯だ。

限界を超えた悟林の体の灰化が始まっている。

「悟林…!ピッコロ!オラ達もセルを攻撃するんだ!!」

「あ、ああ…」

「俺達も手伝うぞ!」

「俺達でどこまで力になれるのか分からんが…」

「まあ、いないよりはマシでしょ」

悟空達がセルを攻撃しようとした時、今まで離れていたヤムチャ達も加勢してくれた。

「かめはめ…波ーーーっ!!」

悟空達の渾身の気功波がセルに直撃するものの、セルは全く意に介さず攻撃を続ける。

「く、くそ!少しでも…少しでも奴の気を逸らせれば…!」

未来悟飯がかめはめ波を撃ちながら何とかセルの意識をこちらに向けることが出来ればと歯軋りする。

「ち、畜生!恨むぞ…俺達の力のなさを…!!」

自分の力が全く通用しない現実にピッコロは自分の無力さを呪う。

体の灰化が進むに連れて気功波の勢いが衰えていく悟林に、悟飯は必死に姉を助けようと気功波の威力を上げようとした。

「(昔、ピッコロさんが言ってた…もし僕にもお姉ちゃんにも負けない力があるなら…その力を出したい…!でもどうやったらその力が出せるのか分からない…!)」

この地球には母親も祖父もいるのだ。

だからセルに滅ぼされるわけにはいかない。

それなのに焦りばかりが募っていく。

少しずつセルのエネルギー波が悟林に迫り、後少しと言うところでセルの尻尾が円盤形の気弾…気円斬で切り落とされた。

「っ!」

悟林がある方向を見遣るとベジータが気円斬を投擲してくれたようで、そのおかげでセルの攻撃が弱まった。

「うわあああああっ!!!」

体の灰化が一気に進んでも構わずに気功波の威力を押し上げる。

どうせ死ぬのならと自壊覚悟で超サイヤ人2状態での界王拳を使って威力を底上げする。

次の瞬間、悟林の意識は途切れた。 
 

 
後書き
超サイヤ人2界王拳、使えば死にます

悟林

超サイヤ人2に覚醒してセルを圧倒するものの、パワーボールの詳細を知らなかったために大猿ならぬ大ゼル化を許してしまい、未来の自分のように片腕を欠損してしまうものの、その尻拭いは自分の命で何とかした。

悟空

悟林の超サイヤ人2を見て、娘の成長を誇らしく思っていたが、まさかの大ゼルに焦ることに。

最後の悟林のサポート中では自分の力不足を悔やむ。

ピッコロ

まさかの悟空の棄権と悟林が代わりに闘うことに驚きながらも弟子を想って反対するが、悟林の超サイヤ人2を見て弟子の成長を信じてやれなかった自分を恥じる。

悟林のサポート中では自分の非力を悔やんだ。

未来悟飯

悟空を超えた戦士の1人、生きていた時代が時代なので姉のフルパワーに尊敬の念を抱く。

大ゼルと化したセルとの闘いに参戦して指示を出すものの、常識を超えたセルには通じなかった。

最後は未来の姉よりも早くに死んでしまう姉にショックを受ける。

悟飯

悟空を超えた戦士の1人だが、超サイヤ人2の力でセルを叩きのめす悟林の姿に複雑な想いを抱く。

だが、その想いは16号の言葉で霧散し、大ゼルとなったセルとの闘いに参戦したが、敵わず、悟林のサポートの際には潜在能力の引き出し方が分からず何も出来ずに終わってしまう。

因みに戦闘力に関しては未来の自分自身との修行であるために効率が良く、丸1年入っていたこともあり、原作よりは多少上がっている。

トランクス

未来悟林の弟子なので悟林のフルパワーに尊敬の念を抱く。

大ゼルと化したセルとの闘いでは悟林への攻撃を逸らしたりはしたものの、太刀打ち出来なかった。

最後の一撃の際には未来の悟林の姿が重なって見えた。

この作品で、初めてバーニングアタックを放つ。

この作品では複雑な印を結ぶ際に拡散した気を集めて自身の気と合わせて凝縮して放つトランクスが独自で編み出した格上殺しの気弾技となっている。

威力はいくら金縛りで動けなかったとは言え、バビディの魔術でタフになっており、悟飯を戦慄させた魔人ブウの攻撃を受けても生きていたダーブラを容易く消し飛ばしたので当たりさえすればトランクスの技の中では最高クラスなようだ。

複雑な印を結ばなければ威力を発揮出来ない都合上、主に不意打ちか、動けない相手へのとどめに使われる。

ベジータ

悟林の超サイヤ人2への覚醒と、それを見守る悟空の影響を最も受けた人物。

セルからの一撃を悟林から救われたことで罪悪感と共に人としての情が芽吹き始める。

精神と時の部屋でトランクスと共に過ごした時間と、自分よりも遥かに強くなった次世代のサイヤ人の悟林を見て再起した。

最後の攻防では気円斬でセルの尻尾を切断することで気を逸らして悟林の気功波を直撃させることに成功した。 

 

第31話

 
前書き
原作では本当にこれが悟飯のピークだったな…

悟空の代わりに死んでもらいました。

セルを書いていて思うのはセルは本当に可能性の塊なんだなと思います。

いくら弱い時期の物でもメインキャラの細胞があるせいで色々出来るから多少の無茶のパワーアップもすんなり出来ることです。

何せ細胞元の彼らがまだまだ伸び代のある時期だし、だからこそ公式も扱いに困るんでしょうね斑点とか含めて 

 
悟林の体から赤いオーラが出た瞬間、悟空達は気功波の余波で吹き飛ばされてしまい、気がついた時には焦土が広がっていた。

「お、俺達…生きているのか…?」

クリリンが吹き飛ばされる直前に18号を庇っていたのか、庇われている18号には外傷はない。

サタン達も16号によって守られていたために外傷はなかったが、気絶していた。

「…セルの気は感じねえが…」

「悟林の気も…感じられん…」

悟空もピッコロの沈んだ声にトランクスと未来悟飯は俯き、悟飯は膝を着いて涙を流し、ベジータはどこか複雑な表情であった。

「終わったな…」

「クリリン…」

落ち込む悟空の背を叩いたのはクリリンだった。

「悟林ちゃんが…お前の子供が終わらせてくれたんだ。どんなにピンチでも食い下がって逆転勝ちなんてお前の子供らしいよ。そっくりだ…」

今までの悟空との付き合いからそう呟くクリリン。

どんなにピンチでも悟空は必ず何とかしてくれた。

そして今回、このピンチを何とかしてくれたのは悟空の娘の悟林だった。

「………」

「無理ないけど、元気出せよ悟空。お前がそんな顔したって悟林ちゃんは喜ばないぞ。一度天界に戻って何とか生き返らせる方法を考えよう」

クリリンも悟林のことは悟林が小さい時から知っているのだ。

何とか生き返らせてやりたい気持ちはある。

「ああ…悟飯、一度デンデのところに戻ろう。ドラゴンボールでセルに殺された人達を生き返らせてやらねえとな」

「はい…」

悟空に促された悟飯は暗い表情で立ち上がり、天界に行こうとした時であった。

背後から凄まじい気の圧力を受けた全員の表情が戦慄する。

「こ、この気は…」

「そ、そんな…あり得ない…」

「ま、まさか…」

ベジータと未来悟飯、悟空が気の発生源に視線を向けた直後。

「かはぁっ!」

トランクスが吹き飛び、そのまま地面に力なく倒れた。

強力な気の力で貫かれた胸部は周囲の細胞組織を焼き殺しており、血こそ流れていなかったが確実に致命傷であった。

「トランクスーーーっ!!」

未来悟飯がトランクスに駆け寄る。

「……くっくっく……トランクスに当たったか」

未来悟飯の叫びに意地の悪そうな笑みを浮かべて立っていたのは死んだはずのセルだった。

悟林は確実に死んでしまったのに何故セルだけが。

悪夢を見つめるような目で、ヤムチャが戦慄きながら呟く。

「な、何故だ……何故、セルが…あのとんでもない気功波をまともに喰らったはずだ…!」

「良いだろう、教えてやる。この事は私にとっても嬉しい誤算だった……私の体には小さな塊があり、それが私の核なのだ。核が破壊されない限りこの体は再生され続ける。孫悟林のあの執念の一撃を受けても奇跡的に核が無傷だった。正直言って運が良かった。そして再生したこの体は18号抜きでも完全体として復活していた。ただの完全体ではない、あのような醜い姿にならずとも孫悟林の超サイヤ人2のように大幅なパワーアップを遂げていたのだ…これは恐らく生死の狭間から救われた時、大きく力を上げると言うサイヤ人の細胞がそうさせたのだろう。」

それを聞いたピッコロはセルに使われているサイヤ人…悟空とベジータの細胞が採取された時期のことを考える。

2人の細胞はサイヤ人として大きな伸び代があった時期の物であり、今の2人はサイヤ人の限界まで鍛えたことにより失われた特性だが、セルにはそれ以前の細胞が使われているために2人分の特性の発動があったのだろう。

2人分の瀕死からのパワーアップにより、セルは18号の不足分のパワーを補って余りある力を手に入れたのだ。

「くっくっくっ…想像以上の素晴らしいパワーだ…孫悟空、貴様の娘の執念は私を倒すどころか私のパワーアップに大きく貢献してくれたようだぞ」

「くっ…!」

悟林の死を嘲笑うセルに怒りで拳を強く握り締める悟空。

「私を虚仮にしてくれた孫悟林は勝手に死んでくれたようだし、父親の貴様で我慢するとしよう。あっさり死んでくれるなよ孫悟空?」

悟空に向けられるセルの殺気に誰もが動けなかった。

1人を除いて。

「くっそおーーーっ!!」

セルの行動に最初に動いたのは悟空ではなくベジータだった。

精神と時の部屋で過ごした時間で2人の間に出来た本人達も気付いていない絆。

セルの攻撃を受けて息絶えたトランクスを目の当たりにしたら黙ってはいられなかったのだろう。

「(ふざけるな…!カカロットだけを見るな…俺を見ろ…!貴様が殺したのはカカロットの娘だけじゃない…!俺の息子もなんだぞ…!!)」

頭に血が上っても今のセルにまともな闘いなど出来ないことはベジータも理解していた。

渾身の気功波を放つと追撃の気弾を連射し、セルの再生速度を上回る勢いでセルを破壊しようとする。

セルを倒すにはそれしかないと判断したベジータ。

それは確かに再生し続けるセル相手の闘い方としては正解だっただろう。

「邪魔をするなベジータ」

しかしそれは実力がかけ離れていなければの話だ。

セルはまるで虫を払うかのように余裕の顔でベジータに近付いて手刀を繰り出した。

たった一発の攻撃でベジータは身動き出来ないほどの深手を負ってしまう。

「ベジータ!」

瞬間移動で助けようとした悟空だが、直前にセルによって弾かれ、ベジータの近くに倒れる。

「瞬間移動をするには僅かな時間が要る。それさえ知っていれば阻止は容易い。」

「ご、悟空とベジータが…た…たったの一撃で…!」

超サイヤ人2人を一撃で戦闘不能に追い込んだセルにクリリンは恐怖で震える。

「さて、終わりだ孫悟空、ベジータ。あの世の孫悟林とトランクスの後を追うがいい」

倒れている2人にとどめの気弾を放つセル。

「止めろーーーっ!!」

未来悟飯が割って入り、気弾を体で受け止める。

「ほう…」

気弾の直撃を受けた未来悟飯はボロボロではあったが生きていた。

「く…っ…」

膝を着いた未来悟飯にセルは興味深そうに見つめる。

「こいつは驚いた。孫悟空とベジータを殺すつもりで撃ったんだがな…未来の孫悟飯。私は貴様を過小評価していたようだ。詫びておこう」

しかしすぐに興味を失い、次は悟飯に迫る。

「っ!」

「次は貴様だ孫悟飯。」

セルの拳が悟飯の腹に突き刺さる。

「が…は…っ!」

腹を押さえて呻く悟飯にセルは愉快そうに笑うと胸倉を付かんで頭突きを額に喰らわせる。

「あ…うう…!」

「ふん、やはり貴様は未来の孫悟飯と比べても弱いな。」

セルの背中にピッコロの魔貫光殺砲が直撃し、セルは後ろのピッコロに顔を向ける。

「邪魔だ」

「ぐあっ!!」

軽い気合をピッコロに浴びせて吹き飛ばし、再び持ち上げている悟飯を見る。

「どうした?孫悟林の弟ならもう少し抵抗してみろ…それと結果が分かっていながら無駄な努力は止すんだな16号。貴様が何をしようと私には傷一つ付けられんぞ」

身を隠しながら機会を窺っていた16号にセルの冷たい言葉が向けられた。

そして悟飯は放り投げられ、岩に叩き付けられた。

「お…姉…ちゃん…」

痛みで意識を失いそうになった時であった。

『悟飯』

姉の悟林の声が悟飯に届いたのは。

悟林の声を聞いた悟飯の意識は覚醒し、目を見開いた。

「お、お姉ちゃん…!?ど、どこに…」

『あの世だよ。界王様の力を借りて悟飯に語りかけてるの』

「あ、あの世に…じゃあやっぱり…お姉ちゃんは…」

姉の死を姉自身から告げられた悟飯はショックを受ける。

『悟飯、お願いがあるの…私の代わりにセルを倒して』

その言葉に悟飯は驚愕で目を見開いた。

悟林と同等のレベルにまで戦闘力が上がっているセルに自分が倒せと。

「む、無理だよ…僕じゃ…僕はお姉ちゃんみたいに強くないんだ…!」

組み手でも悟林に勝ったことがないのに、悟林よりも強いかもしれないセルに自分が倒せるとは到底思えなかった。

『ねえ、悟飯。昔、ピッコロさんに岩に叩き付けられそうになった時に岩を吹っ飛ばした時のことを覚えてる?』

「…うん」

『悟飯は今までちょっとしたきっかけで力を出してた。怒りや焦りとかでさ…追い詰められた時の悟飯が発揮する力に私がどれだけ悟飯を羨ましいと思ったと思う?』

「お姉ちゃんが…僕を…?」

今までずっと上だと思っていた姉が自分を羨ましがっていたと言うことに悟飯は驚く。

『うん、私だって負けてないけどさ。追い詰められた時の馬鹿力には流石の私も敵いそうにないって思ったなー。ねえ、悟飯…私のこと、信じてくれる?』

「何言ってるのお姉ちゃん…僕は何時だってお姉ちゃんのことを信じてるよ」

『そう…悟飯…界王様を通じて私がサポートする。双子の私達ならより深く繋がれるらしいから…悟飯、超サイヤ人2は超サイヤ人の状態でもう一度超サイヤ人に変身することで変身出来るの。超サイヤ人に初めて変身した時のことを思い出して、怒りを感じることは悪いことじゃないよ。悟飯のセルを倒したい気持ちに素直になるの、未来の悟飯も言っていたでしょう?手段として利用してって…頑張れ悟飯!セルを倒せ!!』

「うん…分かった…頑張るよ…」

悟飯は立ち上がるとセルを力強く見据えた。

「ほう、こいつは驚いた。ことのほかタフじゃないか…」

「…お姉ちゃんが僕を信じてくれた…」

「?」

悟飯の体を金色のオーラが纏われ、そして徐々に気が大きく膨れ上がっていく。

「そして僕に…お前を倒せと言っていた!!」

オーラの勢いが増し、オーラに鋭いスパークが混じる。

そして超サイヤ人でも変化が乏しかった髪が逆立った。

「超サイヤ人…2…!」

悟飯の超サイヤ人2の変身を見た悟空。

精神と時の部屋で悟飯の潜在能力が解放され始めていたことは薄々感じていたが、悟飯は性格的な問題で本当の意味で実力を発揮出来ないタイプであった。

しかし、悟飯の表情には何時もの甘さがない。

セルを倒すと言うたった1つの意志を持った戦士であった。

「本当にでかくなっちまったな…」

何があったのかは知らないが、悟飯の力が目覚めたのはまたとない好機であった。

「まさか孫悟林と同じ変身をするとはな。だが、同じ変身が出来たくらいで私に勝てると思うか?」

「さあね…」

セルの言葉を一蹴するように低く言う悟飯。

「では、貴様の力を見せてもらおう」

セルは悟飯に突撃し、拳と蹴りを繰り出していき、悟飯もまたそれを捌いていく。

フェイントも混ぜた攻撃にも悟飯は冷静に対処していく。

「(このガキ…!)」

信じられないことに悟飯はセルの動きを完全に見切っていた。

悟飯は悟空と悟林の闘いを見たのだ。

どれだけセルが強くなろうと戦い方は変わらないため、それが悟飯を優勢にしていく。

「はあっ!」

裏拳をセルの顔面に叩き込む。

「がっ!?」

想像以上の威力にセルが仰け反った。

そしてがら空きになった腹に鉄拳を叩き込む。

更に腹を押さえて前のめりになるセルの顎に拳を叩き込んで吹き飛ばす。

途中でセルは体勢を立て直したものの、想像以上のダメージに悟飯を睨む。

「貴様…!」

「その程度か…」

「何!?」

「お姉ちゃんやトランクスさん、たくさんの人達を殺して手に入れた力がその程度なのかって聞いてるんだっ!!」

怒りに呼応するように悟飯の気は大きく上昇していく。

地球人の穏やかな性質を強く持った悟飯だからこそ、感情によって戦闘力を変動させるサイヤ人の細胞は怒りによって大きく戦闘力を増大させる。

潜在能力と怒りの相乗効果によって悟飯の気の上昇は止まることを知らず、セルの気を上回り始めていた。

「お、己…」

「お前だけは…絶対に許さない…お姉ちゃんとトランクスさんの仇を取ってやる…!!」

「くっ…!私の究極のパーフェクトパワーを見くびるなあーーーっ!!」

セルはかめはめ波の体勢を取ると悟飯に向かって言い放つ。

「喰らえ!私の究極のかめはめ波を!!今の私ならば太陽系を破壊するほどの威力を放つことなど容易い!貴様が避ければ全てが消し飛ぶぞっ!!」

「…か…め…は…め…」

セルの手のひらに集まる気は凄まじく、太陽系破壊を可能とするほどの気力が溜まっていた。

しかし悟飯はそれを鋭く見据えて自分もかめはめ波の体勢に入った。

「無駄な足掻きを!くたばれーーーっ!!」

「波ーーーっ!!」

セルが放った全力のかめはめ波に対して悟飯も全力のかめはめ波で迎え撃つ。

2つのかめはめ波は激突するのと同時に相殺され、その隙にセルが飛び出して悟飯の息の根を止めようとしたが、それよりも速く悟飯がセルの懐に入ってセルの全身に無数の鉄拳を浴びせ、体のどこかの核が潰れたのか、セルはふらついてそのまま倒れた。

そして念のためにセルの死体を気功波で消滅させると、悟飯はオーラを鎮めて通常の状態に戻ると空を見上げた。

『良くやったよ悟飯!!』

「うん…ありがとう…お姉ちゃん…」

闘いのために造られた人造人間セルを倒した悟飯。

双子の絆の勝利である。

セルを悟飯が倒したことで誰もが歓喜の表情を浮かべた。

「やったな…悟飯……悟林…おめえが悟飯に力を貸してくれたんだな?」

悟飯と同じく空を見上げると悟空は隣のベジータに振り返る。

「ベジータ、おめえも来いよ。一緒にトランクスと…悟林を生き返らせようぜ」

「俺は行かん…貴様らだけで行け」

素っ気なく言うベジータに悟空は微笑む。

「ベジータ…おめえトランクスが殺されて本気で怒っただろ」

「………」

「おめえなら良い親父になれっぞ」

勝手なことを抜かすなと言いたかったが、悟空は既に悟飯の元に向かっていた。

「さあ、みんな神殿に行くぞ」

「おい、ベジータは良いのか?」

「ああ」

ヤムチャがベジータを連れていかなくて良いのかと尋ねるが、悟空は首を横に振るだけ。

「でもよ…あいつ、トランクスのためにセルと…」

「1人にしてやれ。あいつにも思うところがあるんだろう」

ヤムチャの言葉を止めたのは意外にも天津飯だった。

「何だよ、お前あいつのこと嫌ってた癖に」

「…俺もあいつがただの嫌な奴じゃないと分かっただけさ」

天津飯が苦笑しながら言うと、クリリンが16号に尋ねる。

「本当に一緒に来ないのか?」

「ああ、俺はしばらく世界を見て回ろうと思う。救われたこの世界の自然と動物達を見てみたい」

「16号さん…」

「孫悟飯…孫悟林のことは残念だったが、礼を言わせてくれ。ありがとう…自然や動物達を守ってくれて…」

16号の大きい手が悟飯の頭を撫でると、その優しい手つきに思わず泣きそうになった。

「孫悟空、俺はお前を殺すために造られた…だが、今ここで闘うのは無粋だろう。孫悟林が生き返ることを願っている」

「サンキュー」

16号はこの場を飛び立ち、悟空達も瞬間移動でデンデの元に向かうと、気絶から復帰したサタンが自分がセルを倒したと法螺を吹いたのであった。

天界に着いた悟空達は途中でクリリンと18号のことで騒ぎが起きたものの、ドラゴンボールを使ってトランクスを含めたセルに殺された人々を生き返らせることが出来た。

しかしナメック星での闘いで一度死んだ悟林は生き返ることは出来なかった。

「…やっぱり悟林の気は感じられねえ…」

「やはり駄目か…」

「神龍…姉さんを生き返らせることは出来ないんですか…?どうしても生き返らせて欲しいんです…」

「孫悟林は既に死んで生き返ったことがある。それは不可能だ。他の願いを言え」

一度死んで生き返った悟林には生き返る権限がないと言われた一同は表情を曇らせる。

「やっぱり不可能だってよ…」

「…いや、きっと何か良い方法があるはずだ。考えろ」

まだ幼く未来ある子供である悟林。

出来れば生き返らせてやりたいと思うピッコロ達は考えを巡らせる。

『おーい、みんなー』

「姉さん!?」

突如聞こえた悟林の声に目を見開く未来悟飯達。

『ちょっとあの世から喋ってるんだけどちょっと聞いてね。前にある人に言われたことがあるんだよね…お父さんも大概だったけど、私が生まれてから厄介事ばかり起きてるってさ。まあ、良く考えてみればそうなのかもね…私がいない方が地球は平和そうだし。界王様とも話してみたけど、界王様も認めてる…あ、でも別に犠牲になろうとかそんなんじゃないよ!私は地球のためやらフリーザとセルと闘った功績から特別扱いで体を付けてくれたんだ!しかも死んでるからあの世じゃ修行し放題だし、あの世にはお父さんのお祖父ちゃんもいるようだし、色々交流してみるよ。達人もたくさんいるみたいだしね!!…だからさ、みんなやお父さん達には悪いと思うけど…生き返らせてくれなくていいよ。みんながいれば現世は大丈夫だと思うしね』

「お姉ちゃん…」

『…それじゃあ、みんな数十年経ってあの世に来たら色々土産話聞かせてよね。悟飯は無駄に長生きして幸せになるんだよ。良いね?未来の方も』

「姉さん…でもそれじゃあ、姉さんが…」

自分の時代の姉よりも遥かに早く死んでしまった姉のことを思うと未来悟飯は複雑な心境だ。

『とにかく!また会える日を楽しみにしてるよ。バイバイみんな!!』

それだけ言うと悟林からの声は聞こえなくなった。

「悟林……あいつらしいな…」

「本当にお前の子供なんだって分かるよ。それを考えると悟飯があんなに大人しく育ったのが奇跡だな」

クリリンの言葉に悟空は苦笑を浮かべて空を見上げた。

「あ…あの…3つ目の願いを待ってんだけど…ず~っと…」

神龍に言われて慌てる悟空達であった。

一方、あの世では界王の背に触れていた手を離す。

「ふう、ありがとう界王様」

「うむ…悟林よ…本当に良いのか?確かにお前の言葉に同意はしたが…」

「良いんだよ、私だってブルマさんの言っていたことに何となく納得してたし…それに、生きてる時に良いことをやって体を付けてもらってる人ってのは私だけじゃない。お父さん達がドラゴンボールのことを知るまでは事故や病気で死んだ人達だっているのに私が何度も生き返るってのはね…それに!あの世にはたくさんの達人の人達がいるんでしょ?ワクワクしてきたぞー!」

蛇の道をかっ飛んで行く悟林の姿に界王は唖然としたが、次の瞬間に苦笑を浮かべた。

「やれやれ…悟空の娘じゃな…」

隣のバブルスも同意するように頷いた。

こうして地獄の未来を振り払うための闘いは終わりを迎えた。

トランクスと未来悟飯も未来に帰り、未来の人造人間とセルを倒して平和を取り戻した。

こうしてそれぞれの時代で平和の時間が訪れる。

その途中で…。

「えーーーっ!?」

「ほ、本当かーーーっ!?」

悟飯と悟空の叫び声がパオズ山に響き渡る。

「んだ!もう1人家族が増えるだ!悟飯ちゃんはお兄ちゃんになるだぞぉ!?」

途中で2人に手を握られてブンブンと上下に振られた。

あまりの勢いにチチは転びそうになったものの、喜んでもらえて何よりだ。

「それにしても子供かー」

「そうだべ…そう言えばおめえは悟飯ちゃんと悟林ちゃんの時は…」

双子の出産の時は修行で不在だった悟空を睨むチチに悟空は慌てる。

「わ、悪かったって…今度は最後までいっから許してくれよ…」

「当ったり前だべ!!…ん?どうしただ?悟飯ちゃん?」

チチに謝る悟空にチチは目を吊り上げながらもどこか落ち込んでいるような悟飯に気付いた。

「うん…赤ちゃん…お姉ちゃんに会えないんだね…」

悟飯の言葉に悟空とチチもハッとなる。

あの世の住人となってしまった悟林はこのことを知らない。

悟空曰く、よほどのことがない限りあの世と現世が関わることなどあってはならないため、悟空の瞬間移動で界王星を経由してもあの世…天国にいる悟林の所へ行くことは出来ないらしい。

悟林が死んだと聞いた時はショックだったが、悟空からセルゲームの内容を聞いた時は悟林らしいと思った部分もある。

だが、自分と悟空は何となく受け入れることは出来るが、生まれた時からずっと一緒だった悟飯の心情は複雑だろう。

「全く…悟林ちゃんに会えるまで何十年も待たなきゃなんねえなんて…悟空さ以上に家に寄り付かねえ子だべ。でもあの子は生き返らなかったことを後悔するだよ。弟か妹が出来るんだからな!」

チチのその言葉に2人はポカンとなったが、次の瞬間笑ってしまった。

「ははは、確かに悟林の奴少し残念がるかもな」

「赤ちゃんをたくさんたくさん可愛がろうよ。お姉ちゃんにまた会った時のために」

「んだ。悟林ちゃんへの土産話をたくさん作ってくぞ!」

あの世にいる悟林を想いながら悟空達は日常を過ごし、そして待望の次男坊が産まれた。

名前は孫悟天。

父親の悟空そっくりな子供であった。 
 

 
後書き
悟林

セルを倒せないまま死んでしまったが、あの世から悟飯をサポートして超サイヤ人2への覚醒を促した。

因みに生き返らない理由についての原因については向こうへ持っていくつもりである。

悟飯

姉のサポートもあって超サイヤ人2への変身を成し遂げ、怒りと冷静さを保ちながらその潜在能力の一端を見せた。

悟空

娘を死なせてしまったことを悲しみ、娘の死を侮辱したセルに怒りを抱くもののセルの復活パワーアップの前では何も出来なかったが、息子や娘の成長を間近で見て誇らしさを抱いた。

未来悟飯

セル相手に何も出来なかったが、復活パワーアップを果たしたセルの殺す気で放った気弾を受けても生きていたことで現代同様のポテンシャルの高さを見せる。

最後はトランクスと共に未来へ帰還する。

ピッコロ

弟子の死を嘆くものの、後任の神となるデンデの育成に力を注ぐ。

トランクス

セルによって殺されたが、帰る際にヤムチャからベジータのことを聞いたことで本当の意味で親子になれた。

過去での思い出を胸に、未来へ帰還する。

ベジータ

セルには手も足も出なかったが、精神的に大きく成長するきっかけを得る。

未来へ帰還する息子に無言の別れを告げた。

クリリン

娘の死に落ち込む悟空に、最も悟空の近くで悟空の闘いを見てきた男として悟空を励ます。 

 

第32話

 
前書き
悟天登場

悟飯祖父ちゃんも登場 

 
悟天が生まれてからはまるで悟林が抜けた穴を埋めるかのように賑やかになった。

孫家の末っ子として生まれた悟天はトランクスと言う幼なじみにも恵まれて伸び伸びと育ち、今ではもう4歳だ。

「お父さーん、お弁当だよ」

「お、サンキュー。悟天」

畑仕事で一区切りが付いていたのか近くの小川で手を洗っていた悟空が悟天の持ってきてくれた弁当箱を開く。

「うひゃー!美味そうだなー、頂きまーす!」

サイヤ人の悲しい特性なのか、凄い勢いで食べていき、大量の弁当の中身が瞬く間に無くなった。

「ぷはーっ!食った食った。ご馳走様ー。よーし!」

満足そうに腹を擦りながら立ち上がると、気合を入れて超サイヤ人に変身する悟空。

「お父さん修行するの?」

「ああ、いつセルみてえな奴が現れるか分かんねえからな。時間が空いてるうちに修行しとかねえと。あん時は悟林がいたけど悟林はもういねえし、悟飯は学者さんになるために勉強しねえといけねえしな!」

本当は悟飯にも修行してもらってその強さを伸ばしてもらいたい気持ちもあるが、本人は元々学者を目指していたのだから無理強いは出来ない。

「オラにも目標があるからな。超サイヤ人2を極めて、もっと先へ行く!」

この4年間の修行で悟空は双子が到達した変身である超サイヤ人2に変身出来るようになっていた。

しかしそれはベジータも同じで、今や悟空とベジータはセルゲーム時の双子を超える戦闘力に到達している。

セルゲーム以降、時々悟天とトランクスの付き合いもあり、カプセルコーポレーションに向かうことが多いためにベジータと対戦することもあるため、やはり畑仕事がある分段々とベジータとの実力差が縮まっていることを実感している。

悟空との実力差を更に縮めるためにベジータは更なる過酷な修行を、悟空も負けないためにピッコロに色々と無茶な要求をして畑仕事を修行となるように超重量装備でしていたりする。

「ねえ、お父さん」

「ん?何だ悟天?」

頭の中で敵のイメージをしながら修行していた悟空に悟天が声をかける。

修行を止めて悟天に振り返ると、悟天が何か聞きたそうにしていた。

悟天は少しの躊躇の後に口を開いた。

「あのね、僕の姉ちゃんってどんな人なの?」

「…おめえの姉ちゃん…か…母さんや兄ちゃんから聞いてねえのか?」

「聞いたんだけど…お母さんも兄ちゃんも辛そうだったから…」

悟天は2人の表情を見て聞けなくなってしまい、悟空に弁当を届けるついでに悟林のことを聞けたらと思ったのだろう。

2人は悟林のことを聞かれれば色々と教えてやっていたが、時折辛そうなのは知っている。

悟飯もチチも悟天が会うこともなくあの世の住人になってしまった悟林のことをたくさん知って欲しいと思うのと同時に、悟天にとって悟飯と同じくらい身近な存在になるはずだった悟林に会わせてやったことがないと言う苦しさがあったのだろう。

「そっか…悟林か…そうだなあ、強くて明るくて優しい奴だったな。母さんと同じで努力家でよ。怒らせると怖えんだ。でも…もし悟林が生きてたら、おめえはあいつのこと好きになってたと思うぞ」

明るくて優しく、きついところはあるがきっと悟天なら悟林に懐いてくれただろう。

「そっか…ねえ、姉ちゃんってあの世にいるんでしょ?」

「ああ、そうだ。父さんより強かったあいつに超されたままあの世に逝かれちまった。」

きっと悟林のことだからあの世でも修行をしていることだろう。

セルゲームの時よりは確実に強くなっているだろうが、どこまで強くなっているのか想像つかない。

倍か、それともそれ以上か…少なくとも生者である悟空に知る権限はない。

生きていれば悟林の成長を見て追い掛けて追い抜くという事が出来る。

だが死んでしまえばそれは出来ない。

「あの世ってどうやって行くの?」

「歳食ってオラやおめえが爺ちゃんになってようやく行けるんだ。何十年も先だなあ」

「お父さんの瞬間移動でも行けないの?」

悟天からすれば悟空の瞬間移動ならあの世に行けるのではないかと想ったのだが。

「行けねえことはねえけど、駄目なんだ。あの世は死んだ奴じゃねえと行けねえ。オラが行けるのは閻魔のおっちゃんのとこと界王星までだ。ピッコロにも駄目出し喰らってるしな」

元神であるピッコロでさえあの世に干渉は許されない。

星の神よりも高位の神でなければあの世への干渉は基本的に許されない。

「ピッコロさんか…お弁当返してくるね」

「おう、母さんにありがとなって伝えといてくれ」

修行を再開した悟空に悟天は空になった弁当箱を持って帰宅した。

そして数日後にピッコロの気を感じた悟天はこっそりと家を抜け出してピッコロの元に向かった。

「こんにちはピッコロさん、どうしたの?」

「悟天か、丁度良い。悟飯は家にいるのか?」

「うん、家で勉強してるよ」

悟飯の部屋の窓を指差しながら言う悟天にピッコロは持っていた本を悟天に差し出す。

「そうか、ならばこの本を悟飯に返してやってくれ。デンデが借りていた物だ。」

「分かった」

少し大きめの…図鑑だろうか?

ピッコロからそれを預かると、悟天は口を開いた。

「ねえピッコロさん」

「何だ?」

「あの…その…」

「どうした?言ってみろ」

高圧的な口調であっても決して悟天は怖がることはない。

ピッコロは兄と写真でしか知らない姉の師匠で、自分達のことを大切に思っていることを知っているからだ。

「すぐにあの世に行くって…本当に出来ないの?」

それを聞いたピッコロは表情は変わらないが驚く。

あの世は悟飯と悟天の姉である悟林がいる場所だ。

「何故あの世に行きたいんだ?」

「あのね…僕…姉ちゃんに会いたいの…お父さん達から姉ちゃんの話を聞いて…僕も会ってお話してみたいし、姉ちゃんと一緒に遊びたい…」

両親や兄から姉の話を聞く度に膨らんでいく感情。

強くて優しい姉。

出来ることなら会ってみたいと、接してみたいと思ったのだろう。

「悟天………残念だが、生きている人間があの世に行くことは出来ない。あの世というのはこの世に生きてる者が年齢を重ねてその命を終えた時にならないと行けない所だ…だが、ごく稀にお前達の姉…悟林のように幼くしてそこへ行く者もいる…」

それを聞いた悟天の顔がみるみる歪むが、悟天は涙をグッと堪えて服の袖で顔を拭った。

「……じゃあ…姉ちゃんに会えないの……?」

「……いや……いつかは悟林に会える。お前が年齢を重ねてあの世に行った時にな。」

実は死んだ人間は1日だけ現世に行くことが出来るという掟があるが、それを言うつもりはない。

悟林が現世に1日だけとは言え帰るつもりになるかは分からないし、幼い悟天を変に期待させることは出来ない。

「悟林は幼くても善行を何度も積んできた武道家だ。特別に体を与えられ、今でも修行していることだろう。お前があの世に行った時でも悟林はあの世にいるはずだ」

「本当?」

「ああ、あいつは父親の血が濃いのか強い相手との闘いを望んでいる。数多くの達人がいるあの世から去るのはお前の父親が修行をサボるのと同じくらい考えられん」

ピッコロが悟林の性格を思い出しながら不敵に笑った。

「そっか!じゃあいつかは姉ちゃんに会えるんだ!でも僕がお爺ちゃんになったら姉ちゃん分からないんじゃないかな?」

「どうだろうな、あいつは何だかんだで勘が良い。自分の父親に似ているお前を見れば弟だと気付くかもしれん。だが、もし会えたとしても羽目を外しすぎるなよ。あいつはお前の父の強さだけではなくお前の母の気の強さも受け継いでいる。怒らせると恐ろしいことになるぞ」

「う、うん…」

それを聞いて身震いした悟天にピッコロは笑うと悟天と共に空を見上げた。

この空の向こうにいる悟林の姿を思い浮かべて。

そして話題となっている悟林は弟が生まれていることなど知る由もなく、天国を歩き回っていた。

「えーっと、この居住区のはずなんだけど…」

生前、武道家だったり戦士であった者達が暮らす天国の居住区。

ここでは生前の癖と言うべきか、天国での穏やか過ぎる生活に馴染めなかった者達が集まっているのだ。

閻魔大王に尋ねて、ある人物が暮らしている場所を訪れたのだが、全く見当たらない。

目の前に老人がおり、目当ての人物を知っているかもしれないと尋ねた。

「あの、すみません。ここに孫悟飯さんって言うお爺さんを知りませんか?」

「む?孫悟飯は儂じゃが…その道着は…」

振り返った人物がいきなり目当ての人物だったことに悟林は喜ぶ。

悟飯は悟林が着ている道着が孫の悟空が着ていた亀仙流の道着であることに気付く。

「この道着はお父さんとお揃いなんだ。初めまして、曾お祖父さん。私は孫悟空の娘、孫悟林です」

一礼しながら言うと悟飯は硬直した。

悟空の娘、つまり目の前の少女は自分の曾孫なのだ。

「悟空の娘…つまり儂の曾孫か…!」

「そうだよ、因みにお母さんは牛魔王お祖父ちゃんの子供なんだ」

「牛魔王の娘!?」

悟飯は悟空が兄弟弟子の牛魔王の娘と結婚し、子供を授かったことに驚きながらも喜んだ。

「後、私に双子の弟がいるんだけど、名前は曾お祖父ちゃんの名前なんだ。」

「悟空が息子に儂の名前を…こんなに嬉しいことはないの……。遅くなったがおめでとうと悟空と牛魔王の娘に伝えておいてくれんか?」

「いやー、伝えたいのは山々だけど私も死んでるから無理だよ曾お祖父ちゃん」

「は?」

悟飯は改めて悟林の頭を見た。

頭の上には死人の証である輪があり、目の前の曾孫が死人であることを示していた。

「な、何故こんなに早く死んでしまったんじゃ!?まさか病か!?」

「うーん、話せば長くなるんだけどねぇ」

取り敢えず悟林は悟飯に今までのことを話した。

悟空がサイヤ人と言う宇宙人であり、満月を見れば大猿になる種族であること。

そしてフリーザ、人造人間…特にセルとの闘い。

悟林が悟空を超えたことも話し、そして自分のことのように喜んでくれたことを伝えると悲しそうに笑った。

あの幼かった孫が子供の成長を心から喜べる父親になれたことを喜び、そして娘をこんなに早く失ってしまった悟空に悲しみを抱いた。

「悔しいのう…本当だったらお前さんもまだまだ家族と楽しく過ごせたはずなのに…その大切な時間を…儂の孫と曾孫から奪った悪党が許せんわい…」

「……」

「じゃが、良くやった!良くぞ地球を守ってくれた…お前達は儂の誇りじゃよ」

曾孫の頭を撫でる悟飯。

それにしても髪型も顔立ちも悟空に全く似ていない。

母親に似たのだろうか?

「どうしたの曾お祖父ちゃん?」

「いや、お前さんは全然悟空に似とらんなと…母親に似たのかのう?」

「私はお父さんのお母さん…つまり、お祖母ちゃんに似てるんだよ。お父さんのお兄さん…伯父さんが言ってた」

「悟空の母親に…うーむ、残念じゃ…生きておればピチピチギャルになれたじゃろうに」

悟空の母親に似た顔立ちはとても整っており、生きて成長していれば美人になっただろうと悟飯は改めて惜しいと思った。

悟林は流石、亀仙人の一番弟子だと苦笑する。

「そう言えば悟空に兄がいたのか?」

「そうだけど、ただの悪党だったからお父さん達がやっつけたよ。お父さんに全然似てないし…多分、お父さんも忘れてるんじゃないの?まあ、伯父さんなんてどうでもいいけど」

「う、うむ…」

嫌そうに顔を顰める悟林に悟飯はこの話題を止めて別の話題をすることにした。

悟林が悟空と過ごした思い出のことを。 
 

 
後書き
この作品の悟空とベジータのブウ編での力関係はほぼ互角です。

悟飯祖父ちゃんの五行山はアニオリなので、原作では会っていないことになっています。 

 

第33話

 
前書き
グレートサイヤマンはマントとかヘルメットとかを無くせば充分実戦向きな装備なんですよね…だってアンダースーツや手袋や靴って戦闘服の奴でしょう? 

 
セルとの闘いから7年が経過し、悟飯は16歳となっていた。

背も相応に伸びて父親に近い体格となっており、現在は高校に通っていた。

住んでいる田舎には近くに学校その物がなく、これまで自宅での自主的な勉強と通信教育で過ごしていたのだが、母であるチチがそれだけではと、サタンシティにあるオレンジスターハイスクールに通わせてもらうことになった。

そして父である悟空はと言うと、畑仕事を終えて残りの時間を修行に回していた。

「うーん、やっぱり修行相手がいねえのはな」

7年前までは娘である悟林が率先して修行相手になってくれていたので色々と助かっていたのだが、悟飯は勉強で体が鈍っているので、本気の修行が出来ない。

いくら世間に疎い悟空でも高校に入学したばかりで大怪我で休みなんてあってはならないことくらいは分かる。

仙豆もあまりないようだから乱用は出来ない。

どうしたものかと悩んでいると悟天が現れた。

「お父さーん」

「おー、悟天」

「修行してるの?」

「ああ、でもオラだけじゃ限界があってな」

それを聞いた悟天が手を挙げた。

「じゃあ僕が手伝うよ!」

「え?でもおめえ、組み手とか出来んのか?」

「うん!お母さんがお父さんが畑に行ってる時に色々教えてくれたんだ!」

「チチが!?」

それを聞いた悟空が目を見開く。

チチが自ら武術を教えるとは何があったのか。

「お母さんね、組み手とか教えてくれた時、怒りながらそんなんじゃあの世の姉ちゃんに顔向け出来ないって言ってたんだ」

「ふーん…」

悟林が死んでからチチは悟飯と悟天に対して強く言うことは少なくなった。

いや、娘が強い存在に強い関心を示すからこそ悟天を強くしなければならないと思ったのかもしれない。

もしかしたら悟天が弱ければ悟林に弟として認められないかもしれないと思っているのかもしれない。

「んー、じゃあこの石を父さんに投げてくれるか?距離はこんくれえで」

「え?こんなに近くて良いの?」

悟空が足で線を引いて悟天から少々距離を取る。

しかし、あまりにも近すぎるので悟天は驚く。

「オラはおめえがどんくらいのパワーがあるのか分かんねえからな。取り敢えずこんくれえかな?」

もっと近くても良いのだが、取り敢えず様子見も兼ねてだ。

「良いの?怪我しない?」

「大丈夫だ。思いっきり来い!」

「分かった!ほいっ!」

悟天の全力投球。

「おっと!?」

思っていた以上のスピードに驚くものの、悟空は難なくかわしてみせた。

「凄ーい!流石お父さんだ!」

「おどれえたな…ガキの頃のオラどころか昔の悟林や悟飯以上じゃねえか」

このパワーは今の悟天と同じ年齢の時の双子以上だ。

どうやら次男は自分の知らないところで成長しているらしい。

「ねえ、お父さん。僕もなって良い?超サイヤ人に」

「え?い、良いけどよ。でもおめえにはまだ…」

なれないと言おうとした時、悟天の髪が逆立ち、オーラが吹き出すのと同時に金色に染まる。

何の苦もなく超化した悟天に悟空は目を見開いた。

「びっくりした?」

「あ、ああ…信じらんねえや。オラも悟林も悟飯も超サイヤ人に変身するのに結構苦労したのによ」

「姉ちゃんと兄ちゃんも?」

「ああ、悟飯は9歳で、確か悟林は6歳の頃だったな。おめえはいつなれるようになったんだ?」

「んー、忘れちゃった。お母さんと組み手してる時になっちゃったのは覚えてるけど」

「んじゃあ、最近か…ん?チチとの…組み手で?おめえ、超サイヤ人で母さんに攻撃してねえよな?」

「う…実はお母さんを思いっきり吹っ飛ばしちゃって…」

「いいっ!?だ、大丈夫だったんか!?」

それを聞いた悟空は昔ヤードラット星から帰還した後に強くなりすぎてチチに軽く触れたつもりが吹っ飛ばしてしまった過去を思い出す。

「け、怪我はなかったよ!ただ…」

「ただ?」

「不良になったって泣かれちゃった…」

それを聞いた悟空は思わず脱力しながら苦笑した。

「チチの超サイヤ人嫌いは相変わらずだなぁ…よし、悟天。オラと組み手してみねえか?」

「本当!?トランクス君がおじさんと修行してるから僕もしたかったんだ!」

「へえ、ベジータが…」

今では主な修行場所はカプセルコーポレーションの重力室らしいから、ベジータもベジータなりに家族が大事になったようだ。

「行くよ!」

「おう!来い!」

「たっ!」

地面を強く蹴って悟空に鋭い蹴りを繰り出す。

それを悟空は右腕で難なく防御して悟天の連擊を軽く捌いていく。

攻撃が当たらないことにムッとなる悟天はスピードを上げていくが、悟空は舞空術で上空に移動する。

「あーっ!ずるいよお父さーん!」

「どうした悟天?超サイヤ人になれるなら舞空術くれえ使えるだろ?」

「飛べないよー!!」

「…超サイヤ人にはなれんのに舞空術が使えねえのか…チチは舞空術使えねえからなあ…」

順序が出鱈目な次男に悟空は苦笑したものの、相手をしていたチチが舞空術を使えないのだから仕方ないと思った。

「でもやるじゃねえか悟天。オラや悟林も悟飯もおめえくらいの歳の時はそれほどじゃなかったぞ。本気で修行すればオラ達より強くなれるんじゃねえか?」

実際、次男の戦闘力はフリーザと戦っていた時の双子どころか自分さえ遥かに超えている。

このまま修行を続けているとどれだけ化けるのやら。

「本当!?でも僕、トランクス君と対決ごっこしてるけど全然勝てないんだ」

「へえ、そうなんか…こりゃあ悟天とちっこいトランクスの将来が楽しみだ」

未来のトランクスが伸び悩んだのは師匠と荒れ果てた未来の修行環境によるところが大きいのでベジータに鍛えられているこちらのトランクスは伸び盛りなのもあって強くなるだろう。

「悟飯もうかうかしてたらおめえ達に抜かれちまうかもな。よし、悟天、兄ちゃんより強くなってビビらせちまえ」

「にしし…」

同じ顔で悪戯っ子な笑みを浮かべて2人は帰宅する。

そして夕食の時間までのんびりしていたのだが。

「ただいまー」

「おう、お帰り…」

家でのんびりしていると長男が帰ってきたのだが、学校とやらに行っていたはずの息子がおかしな格好をして帰ってきた。

「おめえ何だその格好?」

「正義の味方!グレートサイヤマンです!」

そして悟空の前でポーズを決める悟飯。

悟空は悟飯の服装を見つめる。

緑色の道着の下は色は違うが、恐らく自分も着たことがある戦闘服のアンダースーツだろう。

そして戦闘服の手袋と靴を見ればかなり戦闘向きな格好なのは分かる。

実際に悟林も亀仙流の道着に戦闘服の手袋と靴を着けていたのだからこの組み合わせはかなり似合ってる方だろう。

ヘルメットとマントさえ無ければの話だが。

「なあ、悟飯。おめえそれギャグでやってんのか?」

あまりにも凄い格好の息子にギャグでやっているのかと聞いてしまう。

「ギャ、ギャグ!?嫌だなあ、お父さん。これ格好良いと思いませんか?」

「いや、だせえな」

「んな!?」

父親にダサいと一蹴された悟飯はショックで硬直する。

しかし、気を取り直して悟飯は悟空を見返そうとしたのか、新たなポーズを見せようとする。

「なら、このポーズを見てもそんな言葉が言えますか!?天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!悪を倒せと僕を呼ぶ!正義の味方!グレート!サイヤマン!!」

「………」

悟空は唖然としながら悟飯を見ていた。

まるでギニュー特戦隊みたいなポーズにどう反応すれば良いのか分からないのだろう。

「どうですかお父さん!?」

自信満々に尋ねる悟飯に悟空は優しく息子の肩を叩いた。

「悟飯、おめえ勉強で頭が疲れてんじゃねえのか?今日は風呂入って早く寝ろ。母さんにはオラが言っといてやるから」

「お、お父さん!?」

渾身のポーズが通用しなかったことにショックを受ける悟飯だったが、悟空はチチの元に向かった。

こうして悟飯は悟空を唸らせるポーズを編み出そうとあれこれ考えを巡らせて普段よりも遅く寝て起きてしまい、悟空の気遣いは無駄になってしまったのだが。

因みにこのことをカプセルコーポレーションに行った際にベジータに言ったら初めてベジータから悪感情抜きの哀れみの視線を頂戴した悟空であった。

きっと悟飯は勉強のし過ぎで頭がおかしくなってしまったのだろうから、近いうちに悟飯を修行に連れ出そうと思った悟空であった。

体を目一杯動かせばきっと頭がスッキリするだろう。

そして悟飯が奇抜な格好で登校してから悟空はトラックを運転しながらカプセルコーポレーションが経営しているレストランに野菜を出しに向かい、その後にベジータと対戦をしていた。

「なあ、ベジータ。聞いてくれよ。悟飯の奴、止めろって言ってんのに聞かねえんだぜ?」

「…あのおかしな格好か?ブルマが有り合わせの物で用意した物らしいが」

「ねえ、おじさん。本当に悟飯さんにあれ止めさせた方が良いよ。ダサいって」

「オラもそう言ったのに格好良いって言って聞かねえぞ」

「ふん、平和ボケしたせいで頭までボケたか」

悟飯に対してトランクスも加えてかなり酷い会話になっているが、グレートサイヤマンの格好がダサいのだから仕方ない。

しばらくすると悟飯の気を感じたので悟空はそちらに向かった。

するとヘルメットを外してバンダナとサングラスを身につけた悟飯の姿があった。

「悟飯…」

「あ、お父さん!仕事お疲れ様です!どうですかこれ!?格好いいでしょ!?」

「だせえな」

「んな!?」

「なあ、ブルマ。悟飯に変なもんやるなよ」

悟飯の格好を一言で一蹴すると目の前にいる元凶のブルマに息子に変な物を渡すなと言う。

「孫君たら、本当にセンスがないわね。あたしが有り合わせの物と言っても悟飯君に似合うように選んだのよ。変なわけないわ」

その堂々とした発言に悟空は唖然となる。

「あ、そうだ。お父さん…お父さんも1ヶ月後に開催される天下一武道会に出てもらえませんか?」

「へ?天下一武道会?何でだ?」

久しぶりに聞いた懐かしい大会の名前に悟空は不思議そうに首を傾げた。

「何でも悟飯君、クラスメイトの娘に正体がバレちゃって、天下一武道会に出るように言われたらしいのよ。ミスター・サタンの娘でミスター・サタンの前のチャンピオンの孫君にも出て欲しいそうよ」

「ミスター・サタン?あいつって確かセルに吹っ飛ばされた奴だろ?おめえそいつの娘とクラスメイトっちゅう奴なんか」

聞き覚えのある名前で、一度見たら忘れられそうにない濃くて愉快な男を思い出した悟空。

「はい、でもビーデルさんは悪い奴は放っておけないみたいで良い子なんです。お父さん、駄目でしょうか?」

「うーん、チチに聞いてみねえとなあ…。」

「あ、そうですね…母さんを説得しないと」

「でも孫君と悟飯君なら優勝と準優勝はほぼ確定よねー」

実際悟空と悟飯は地球では最強クラスの実力者であり、そんな2人が出ては優勝と準優勝は確定したようなものだ。

「そいつはどうかな?その何とかって大会…貴様らが出るなら俺も出る」

「「え?」」

「悟飯…あの時は貴様ら姉弟とは大きな力の差があったが、今はどうかな?貴様が平和に浮かれている間も俺はトレーニングを続けていた。」

実際に今やベジータと悟空との間に大きな実力差はないが、7年間、勉強に傾倒していた悟飯はセルゲーム時とはかなり力が衰えている。

「はは!悟飯、おめえやべえかもな?」

「そ、そうですね…」

「凄いや!お父さん達が闘うの!?」

悟空、ベジータ、悟飯。

地球では間違いなく最強の3人の試合が見られることにトランクスは興奮する。

『その天下一武道会、私も出るよーっ!!』

聞き覚えのある少女の声に全員の目が見開かれた。

「ね…姉さん…姉さんの声だ…!」

「ああ、久しぶりに聞いたなー。悟林の声…」 

「悟林…!?」

悟飯も悟空もベジータも7年ぶりとなる悟林の声に耳を傾ける。

『久しぶりみんな!』

「元気だった?姉さん!?」

『え?あーうん…元気だよ。うん、元気…死んでるけどさあ…』

悟林は悟飯の問いに対して界王の背に触れながら苦笑を浮かべていた。

「本当に…本当に天下一武道会に来られるの姉さん!?」

『うん!占いババさんに頼んでたった1日だけ戻れる日はその日にするよ!お父さんとベジータさんが出るんなら私も絶対に出る!!久しぶりに2人と手合わせしたいもんね!!』

「え?姉さん、僕は?」

『私は悟飯のお姉ちゃんだよ?悟飯が修行サボって勉強漬けの毎日を送ってることくらい予測してるよ。どうせセルと闘った時より弱くなってんだから最初から期待なんかしてないから安心して、大体悟飯の戦い方はワンパターン過ぎて飽きたから相手にするの面倒臭い。』

「んなあっ!?」

7年間修行をサボっていたことを見破られている上に眼中にない扱いを受けた悟飯はショックを受けた。

「天下一武道会、楽しみにしてっぞ悟林。」

「当日までに覚悟を決めておけ、俺は随分腕を上げた…」

ショックで硬直している悟飯を放置して、好戦的な笑みを浮かべながら言う純血のサイヤ人の2人。

『それは私も同じだよ。言っとくけど私も7年前とは比べ物にならないくらい強くなってんだからね。お父さん、ベジータさん、天下一武道会で試合出来ることを願ってるよ!それじゃあ2人共、またね!!』

「おう!界王様達にもよろしくな!」

「良かったじゃない!早くチチさんや悟天君に教えてあげなさいよ」

「そうだな」

特にチチは悟林とは7年ぶりの再会となるのだから、早めに教えてやらねば。

「悟林か…良いぞ、面白くなってきた」

7年前に死んだ悟林との再戦が出来る機会が訪れたことにベジータは静かに闘志を燃やす。

「…あ、そうだ。お父さんやベジータさんも正体がバレないようにこういうコスチュームを着なければ。姉さんにも勧めた方が良いかな?」

「オラ、絶対にそんな変な格好したくねえ」

「貴様と意見が合うとは珍しいな。俺もそんな格好をするくらいなら死んだ方がマシだ。悟飯…貴様、本気でその格好で悟林に会うつもりか?」

グレートサイヤマンのコスチュームを勧める悟飯に悟空とベジータは当然のように却下する。

「え?そうですけど?姉さんもグレートサイヤマンの格好良さに驚くだろうなあ」

「…カカロット、貴様の息子なら止めろ。再会直後に殺されても知らんぞ」

ベジータの脳裏には奇抜な格好の悟飯が悟林の怒りを買い、悟飯が殺されそうになる光景が簡単に浮かんだ。

「そんなことオラに言われたってな…」

当然悟空も悟林がグレートサイヤマンの格好の悟飯を見た時の光景が簡単に想像出来たのだが、グレートサイヤマンの格好を格好いいと言っている悟飯には通じないのだ。

「あの人が悟飯さんのお姉さん?」

「そうよー、あんた滅茶苦茶可愛がられてたんだから。とにかく伝えられる人には伝えてきたら?」

「そ、そうだな。よし、行くぞ悟飯」

「は、はい!」

悟空はトラックをカプセルに戻すと、舞空術で早速師匠と親友夫婦が暮らすカメハウスに向かう。

「へえ、悟林ちゃんか…懐かしいな。良かったじゃないか、久しぶりに家族が揃うんだし」

1日だけとは言え、7年前に死んだ親友の愛娘が帰ってくることをクリリンは素直に喜んだ。

「ああ、クリリン。おめえも天下一武道会に出ねえか?」

「え?俺も?どうするかなあ…悟空達が出るんじゃ絶対優勝出来ないしな~」

若い頃を思い出して久しぶりに出てみたい気持ちがあるが、サイヤ人の面子が出場するのなら優勝出来る可能性は0なのでクリリンは悩んでしまう。

「出場するべきですよ!5位まで賞金が貰えるらしいですよ!」

「どれぐらいの賞金が出るんだ?」

悟飯の言葉に反応したクリリンの妻となった人造人間18号が賞金額を尋ねる。

「え…と…優勝が1000万ゼニーで2位が500万…3位、300万…4位、200万…5位で100万ゼニーかな」

「出場しろクリリン!私も出る!!」

「そ、そうだな」

賞金額に目の色を変えた18号がクリリンに出場を勧めると、クリリンも同意する。

「うーん、天津飯は場所が分かんねえし…ピッコロのとこに行くか」

天津飯は居場所が分からないのでピッコロのいる天界に向かうことにした。

「やっぱりピッコロを誘うか………ところで悟空…悟飯のあのダサい格好は何だ?」

悟飯に聞こえないように小声で尋ねると、悟空も悟飯に聞こえないように小声で答えた。

「それがよー、正体がバレるのが嫌だからってあんな格好してんだぜ?」

「そうか…悟飯、あんまりその格好で町を彷徨くなよ?警察に追われるぞ」

「え?な、何でですか?」

「何でもだよ。ピッコロによろしくな」

正直、あんな格好をするくらいならば普通に正体がバレた方が良いのではとクリリンは思ったのであった。

そして悟空はピッコロに天下一武道会のことを、そして悟林も参加することを伝えた。

「なるほど、悟林か…よし、あの世であいつがどれだけ腕を上げたのか興味がある。出てみるか」

「デンデはどうする?」

「いや、出ませんよ。僕は戦闘タイプのナメック星人じゃありませんから」

「ところで悟空。悟飯のおかしな格好は一体何だ?」

「それがよー」

「やだなあ、ピッコロさんまで…これ格好良いと思いませんか?」

悟飯の言葉に微妙な空気になるが、ピッコロの参加を確認した悟空は天界を後にする。

「んー、ヤムチャにはブルマが言うだろうし…もう呼ぶ奴はいねえな」

「それにしても姉さんが1日だけでも帰ってきたらお母さん喜ぶだろうなー。悟天は初めて姉さんと会うことになるのかー!」

「そうだなあ…チチの奴、オラ達の出場許してくれっかなー?悟林の奴も相当強くなってんだろうから、オラも相当修行しねえと…」

最低でもセルゲーム時の倍くらいは強くなっているだろう。

悟空は修行内容と同時にチチへどうやって説得するべきかと頭を悩ませるのであった。

「(僕だってどうせ出るなら優勝したいしな~…姉さんに情けない奴だって思われるのも嫌だし、体も鈍っちゃってるから学校休んでみっちり修行しないと危ないと思うし…)」

悟飯も悟飯で姉に眼中にない扱いをされたことは少しショックと同時にムッとなったらしく、見返してやりたい気持ちが出たのであった。

そして2人が帰宅して1ヶ月後の天下一武道会のために悟林のが帰ってくることをチチに伝えた。

「えーっ!悟林ちゃんが天下一武道会のためにあの世から帰ってくるって!?そったらビッグニュースなしてもっと早く言わねえんだよ!!良かったなー悟天!姉ちゃんと1日だけ会えるってよ!!」

「?」

初めて悟林と会うことになる悟天に言うとチチは更に言葉を続けた。

「あの子と会うのは何年ぶりだ!?…7年か!?こうしちゃいられねえ!悟林ちゃんが家に帰ってきた時のために悟林ちゃんの好きなもんたくさん用意してやらねえとな~パオズザウルスの唐揚げは絶対に用意しねえと…後はパオズヤモリの…」

「なあ、チチ。オラと悟飯も天下一武道会に出て良いか?」

「え?悟空さと悟飯ちゃんが?」

「う、うん…優勝すると1000万ゼニー貰えるんだけど…2位が500万と3位が300万…」

賞金額を聞いたチチが目の色を変えた。

「1000万ゼニー!?出場しろ2人共!悟空さとおめえと悟林ちゃんで1800万ゼニーも貰えるんだべっ!?」

「んー?もしかしたら途中で試合するかもしんねえぞ?」

「いいや!最低でも1000万ゼニーは貰えるはずだべ!」

「じゃあベジータ達も出るから修行してえんだけど?」

「構わねえ修行しろ!畑のことはオラに任せるだ!いやー、天の恵みだべ!悟空さの稼ぎとお父の残りの財産じゃ悟天の大学費まで出るか心配だったからなー」

逆に悟天の大学までは大丈夫なところに牛魔王の財産の凄さが分かる。

悟飯はホッとなって胸を撫で下ろした。

「1ヶ月後に姉さんに会えるのかー」

「姉ちゃんに会えるの?僕、姉ちゃんと遊ぶの楽しみ」

翌日の朝、悟空と悟飯、そして悟天の3人が道着を着て外に出た。

「よーし、やるぞおめえ達!」

「はい!」

「おー!」

親子3人での1ヶ月後の天下一武道会のための修行が始まったのであった。

修行を始めてからしばらくして悟飯が息切れを起こし、バテている間に悟空は悟天に舞空術を教えていた。

「あ、少し浮かんだよお父さん。」

「よーし、良いぞー。それくらい出来るようになりゃあ自由に飛べるようになっぞ。それにしても悟飯、おめえ体力がガキの頃より落ちてんじゃねえか?」

苦笑しながらチチが持たせてくれた水筒を悟飯に渡す。

「ど、どうも…はああ…全然思い通りに体が動かないや…」

水を飲んで深く深呼吸すると、予想以上に体が鈍っていることに悟飯は溜め息を吐いた。

「超サイヤ人2にもなれねえんだろ?大丈夫なんかおめえ?」

正直ここまで鈍っていたとは悟空も思っていなかったらしく、表情にはどこか呆れが見えた。

「あはは…そ、それにしても悟天が超サイヤ人になれるなんて知りませんでした」

「そうだな、オラもちょっと前まで知らなかったし、オラ達の知らねえとこで悟天も成長してるってことだろ」

「そうですね…ん?」

悟飯の視線の先には1機のジェットフライヤーが飛んでいた。

「何だありゃあ?」

「飛行機だ!」

「まさか…」

よーく見ると操縦者は悟飯のクラスメイトのビーデルであった。

「や…やっぱり…悟天、ここに兄ちゃんと同じ学校に通っている女の人が来るけどその人にはあんまり強いとこを見せちゃ駄目だぞ。特に超サイヤ人には絶対になっちゃいけない。お父さんもお願いします」

「別に良いけどよ」

「不良だと思われるから?」

「うん…まあ、そんなところだ…」

取り敢えず修行は中断して一度自宅に戻ることに。

一方界王星では悟林が赤いオーラを放ちながら界王の指導を受けて両腕両足に錘を着けた状態で突きと蹴りを繰り出していた。

「ふふん、何だか古臭いトレーニングをしておるのう。」

界王の後ろから界王と同じ服を着た人物、南の界王が現れた。

「ふん、南の界王か…」

「相変わらず小さい場所だな…彼女が北エリアで1、2の実力を持つと言う孫悟林か…ふふふん…着けている錘の重量はどれくらいなんだ?」

「なあに、大したことはない。1つたったの2tさ」

「に、2t…!!」

両腕両足、しかも界王星の重力も考えると1つ20t、合わせて80tと言うとんでもない重量に南の界王は驚く。

「ふふん、どうやら驚いたようだな」

「ば、馬鹿言え。驚かないよーだ!我が南エリアにはパポイっ言うすっげー強い奴がおるのだ!そいつに比べりゃあんなのぜーんぜん大したことはないさ!!」

「ほう…!どうだ、今度北エリアの地球と言う星で格闘技の大会があってあいつも特別に参加するんだ。そのお前さん自慢のパポイって奴も出場させてはどうかな?」

「くっくっく…良いだろう。ぜーったいにびびるぞ!優勝間違いなし!」

界王は南の界王を見て何かを思い付いたのか悟林に声をかける。

「おーい悟林。もうちょっと重い錘に変えてみるか」

それを聞いた悟林は修行を中断して界王を見下ろす。

「い、良いけど…どれくらいの重さにするの?」

「そうだな、10tぐらい行ってみるか」

それを聞いた悟林と南の界王が目を見開く。

「10tっ!?さ、流石に無理だよ。10倍界王拳でもキツいのに一気に5倍なんてさ」

「しかも界王星の重力も合わせて1つ100tだ!相変わらずつまらん冗談が好きだな北の界王。」

界王星の重力も合わせれば重量がとんでもないことになるので、悟林も無理だと言う。

「超サイヤ人2なら余裕だろう?」

「へ?ま、まあなってもいいなら平気だけどさ」

その後、錘1つの重量を10tに変更。

界王星の重力を合わせて合計400tの重量となったが、超サイヤ人2へと変身することで楽々修行をする姿に南の界王は唖然としながら去っていった。

「ねえ、界王様…私を使って対抗するの止めてよ」

錘を外しながら上機嫌の界王に呆れながら言うと、界王は何も言わずにスキップしながら家に戻っていった。

そして場所は現世に戻り、パオズ山の自宅に戻った悟空達は自宅に戻ると、チチとビーデルの間でいざこざがあったものの、何とかチチを静かにさせて悟空がどうしたものかと頭を掻いた。

「んーと、おめえ舞空術使いてえんだろ?」

「あ、はい」

悟空が確認するとビーデルは頷いた。

父親の前のチャンピオンである悟空を見ると、本当に自分の父親と同年代なのだろうかと思う。

寧ろ悟飯の兄と言われた方が納得する若さである。

「じゃあ、おめえは気のコントロールは出来んのか?舞空術は気をコントロール出来ねえと使えねえんだ」

「気…?あの、おじ…さん…?気って何ですか?」

悟空の若々しい姿に若干躊躇したが、取り敢えず“気”の説明を求めた。

「やっぱり分かんねえか。んー、どう言やあ良いのかなあ…?」

“気”に関しては悟空はほぼ感覚で使っているのだ。

幼少期にも初めてかめはめ波を放った時も何となくで出来たのだ。

これは戦闘に特化したサイヤ人だからだろうが。

「こればっかりはコツを掴むしかありませんからね。えっと…“気”って言うのは体の中にある隠されたエネルギーと言うかパワーと言うか…」

「ええっ…!?何よそれ…隠されたパワー!?」

「こういう奴だ。」

悟空が軽く気弾を作り出すとビーデルに見せた。

「これが…気」

「触るんじゃねえぞ、危ねえからな」

いくら悟空からすれば軽くでもビーデルが触れれば大怪我に繋がるのだ。

ビーデルは触らないように気をつけて手を伸ばすと熱を感じる。

「熱い…気ってこんなことも出来るんだ。」

「こいつは気弾って言ってな。オラ達は離れた相手と闘う時にこいつを良く使うんだ。こんな風にな」

近くの岩に気弾をぶつけると岩が粉々になる。

「す、凄い…私にも撃てるかしら…」

「気ってのはおめえにもあるんだ。動物にも植物とかにもな。コントロール出来るようになりゃあこれや舞空術を使えるようになっぞ。まずおめえは気のコントロールを覚えねえとな。悟天と悟飯もやっぞ。特に悟飯は気の練り方が雑になってっからな」

ビーデルと一緒に悟飯と悟天の気のコントロールも一緒にやってしまおうと思ったのか、まずは瞑想をやらせることに。

悟飯と悟天は元々気の扱いは出来ているので、悟空は焦って気が乱れているビーデルに注意する。

「あー、駄目だ駄目だ。気が乱れてっぞ。あんま体に力入れんな。落ち着いて集中しろ」

「は、はい…」

取り敢えず今日は何とか浮くくらいにはなれた。

やはり武道をやっているだけあって習得が早い。

「じゃあ後はおめえが教えろよ」

「え!?僕がですか?」

「おめえの恋人っちゅう奴なんだろ?おめえが面倒見ろよ」

「ちょっ!?お父さん何言ってるんですか!?お父さーん!?」

昼食の時にビーデルがお嬢様だと知った時のチチの言葉を信じたらしい悟空の言葉に悟飯は慌てて訂正に向かうのであった。

悟空達がパオズ山でビーデルを交えて修行している時、ベジータもまた天下一武道会に備えてカプセルコーポレーションの重力室で修行していた。

セルゲームの時よりも格段に強くなっているであろう悟林と、ライバルである悟空との対戦のことを考えると自然とベジータの修行に熱が入った。

そんな父親であるベジータを見ながらトランクスは高重力に耐えながらゆっくりと足を動かす。

そんなトランクスを見て、ベジータは口を開いた。

「無理をするなトランクス。部屋から出ていった方がいい。お前にこの150倍の重力はとても無理だ。」

戦闘力は高くとも、まだ幼いトランクスを案じて部屋を出ていくように促すが、トランクスは必死に足を動かす。

「夕べ、悟天君から電話があったんだ。悟天君も天下一武道会に出るって…だ、だから僕も出ようと思って…」

「ふふん…まるでお祭り気分だな」

笑みを浮かべるベジータだが、次の瞬間にトランクスから信じられない言葉が出た。

「や…やっぱり、このままじゃ辛いや…超サイヤ人になろっと…」

「何!?」

その言葉に驚いた直後にトランクスが超化して超サイヤ人に変身した。

それを見たベジータは我が目を疑う。

「あ…あいつ…何時から…伝説の戦士と言われた超サイヤ人に……いや、あいつのような前例があるんだ。有り得んことではない…か……トランクス」

「はい」

驚きはしたベジータだが、悟林も6歳と言う年齢で超サイヤ人に変身した例があったことを思い出し、重力室を軽々と動き回るトランクスを呼ぶ。

「カカロットの下の息子もなれるのか?…超サイヤ人に…」

「はい…」

ベジータの問いにトランクスが素直に答える。

「…まるで超サイヤ人のバーゲンセールだな…悟林の時といい、どうなってやがる…」

「ねえ、お父さん。悟天君のお姉さんってどんな人なの?」

「何故そんなことを聞く?」

「だってお母さんが赤ちゃんだった僕を凄く可愛がってくれたって言ってたし。弟子にされそうだったって愚痴ってたもん」

「………」

そう言えば未来のトランクスの最初の師匠は未来の悟林であることに影響された悟林がトランクスに修行をつけてやると言っていたのをブルマから聞いた。

「ねえ、お父さん。悟天君のお姉さんってどんな人なの?」

「闘いが好きで甘いサイヤ人だ」

ベジータにとっての悟林の人物像はこれである。

サイヤ人の血を濃く引いたことにより、サイヤ人の性質を強く持ちながらも地球人の甘さを持つ悟林。

超サイヤ人に変身出来るようになってからはサイヤ人の性質がより強く出たが、それでも純粋のサイヤ人のベジータからすれば充分甘いと言える存在だった。

その後、ベジータはトランクスと対戦し、トランクスを反射的に殴り飛ばしてしまうが、一撃を当てた褒美に遊園地へ連れていくことになった。 
 

 
後書き
ベジータは悟空と対戦する機会があり、ある程度の心の折り合いはつけた模様。

悟林

あの世での修行で大幅パワーアップ。

因みに悟飯の夢には全面的に認めており、修行サボリは悟飯を弄るネタとして使っているだけである。

現世に戻って絶望するまで後1ヶ月。

悟空

次男の出産に立ち会ったことで本人なりに父性が確立された。

悟飯のグレートサイヤマン姿に頭を悩ませている。

原作とは違い、超サイヤ人2までは変身出来るものの、超サイヤ人3にはなれず、戦闘力は原作より多少劣っている。

悟飯

何がどうしてこうなったのか、グレートサイヤマンへの変身が出来るようになったことで仲間や弟の友達、師匠、果ては父親の悟空にまでドン引きされてしまっている。

界王からの通信で悟林が天下一武道会に参加することに喜ぶものの、修行をサボっていたのがバレており、眼中にない扱いをされてショックを受ける。

悟林に殴られるまで後1ヶ月。

悟天

生まれた時には死んでいた姉に会えることに喜ぶ。

ピッコロから悟林の人物像を聞いているので怒らせないようにしようと心に決めている。

ピッコロ

弟子の悟飯の変貌ぶりに驚きながらも悟林が現世に戻ってくることに喜ぶ。

クリリン

1日だけとは言え悟林が帰ってくることを心から喜びながら悟飯が警察に追われないことを祈るのであった。

ベジータ

悟林が戻ってくることに闘志を燃やす。

悟飯のグレートサイヤマン姿に引きながらも悟林と悟空との試合のために激しい修行を繰り広げる。

因みに悟空が生きているために修行の密度が高く、悟空との実力差は大きく縮まっている。

トランクス

赤ん坊時代の自分を可愛がってくれていたと言う人物と聞いて悟林に興味を抱く。 

 

第34話

 
前書き
悟林、将来の義妹に会う。

久しぶりに会う弟が変質者になっていたことに嘆く。 

 
修行開始から翌日、髪を切ってショートカットになったビーデルが舞空術で大分浮くようになるのを見て悟天の相手をしていた悟空が声をかける。

「おー、大分浮くようになったじゃねえか」

「はい、でもおじさん達みたいに速く飛べないわ…」

「そうガッカリすんな。オラだって舞空術が出来るようになっても最初は大して速く飛べなかったんだぜ?」

「おじさんも?個人差があるってことですか?」

「こじん…さ…?」

「お父さん、人によって違うってことですよ」

疑問符を浮かべる悟空に分かりやすく悟飯が説明する。

「おお、そうだ。それにおめえは気のコントロールが出来るようになったばっかだしな。充分だ」

それでも納得してないビーデルを見て、どこか悟林と似ていると思った悟空は思わず笑った。

「おめえは悟林みてえだな。よーし、悟天。かめはめ波教えてやっから向こうへ行くぞ」

「はーい!」

「悟林…って誰なの?」

悟天を連れていく悟空の後ろ姿を見ながら隣の悟飯に尋ねる。

「あ…僕の姉さんなんです。双子の」

「悟飯君、お姉さんもいるの?良いな、私一人っ子だから姉弟がいるのが羨ましいわ。お姉さんも強いの?」

「うん、物凄く強かった。」

今でも覚えている。

姉が父親達と一緒に最前線で闘った姿を。

「へえ、同じ武道家の女の子として手合わせしてみたいわ。昨日もいなかったし、今日も姿が見えないわね。他の都の高校に通ってるの?」

「あ…姉さんは7年前に…死んじゃったんだ。」

それを聞いたビーデルは自分の失言に表情を歪めた。

「ご、ごめんなさい…」

「いや、ビーデルさんは知らなかったんだし仕方ないよ」

「…ねえ、悟飯君。悟飯君のお姉さんってどんな人なの?」

悟飯の姉である悟林がどんな人物なのかビーデルは気になったのか尋ねた。

「え?姉さん…ですか?そうですね、怒らせると凄く怖かったけど、優しくて明るい人でした。組み手でもいつも勝てなくて、からかわれてばかりだったけど…お父さんや師匠と同じくらい憧れてました」

「そっかあ…亡くなった時…辛かったわよね…やっぱり」

「最初は…でも姉さんのことだからあの世で元気にやっているでしょうし、いずれ会えますから」

「え?あ、そうね…きっと会えるわ」

悟飯の言葉に驚くビーデルだが、あの世のことを指していることに気付いて空を見上げた。

解釈は異なっているが、あの世の存在を知っているかの違いである。

因みにビーデルは10日ほどでかなり自由自在に飛べるようになり、悟飯もようやく悟空からの本格的な修行を受けることが出来るようになった。

因みに悟飯はある程度力を盛り返したものの、超サイヤ人2への変身はかなり不安定であり、変身にはそれなりの怒りが必要となるようだ。

正直、即変身出来ないようでは実戦では使えないというのが悟空からの評価である。

一方、界王星では修行の合間で悟林と界王が睨み合っていた。

「行くよ、界王様!」

「うむ!来い!」

どちらも凄まじい覇気を放ち、今にも激しい闘いを繰り広げそうな雰囲気だった。

「お金をそこにおかねー!!」

悟林の口から出たのはダジャレであった。

しかし、界王は頬を引き攣らせながらも余裕の表情を浮かべた。

「ふ、ふふん!儂もお前が来てから修行をして徹底的に鍛え直したんじゃ!そう簡単には笑わんぞ!」

「カレーはかれー!!バッタがふんばった!!ちゃんと野菜をたべやさい!!つくしはうつくしー!!」

「ぬうう!?」

怒涛の連続口撃。

口元が引き攣り、いくらか後退する界王。

「とどめだ!猫がねこんで猿がさる!!布団がお山にふっとんだ!おやまー!!」

「……ぷ、ぷぷぷ!だ、駄目じゃ…もう我慢出来ん…!」

腹を抱えて転げ回る界王に悟林は勝ち誇った表情で胸を張る。

「ふふん、今日も私の勝ちだねー。私にダジャレで勝とうなんて甘いよ界王様?」

「く、くそー…まさかダジャレ界王と恐れられた儂が手も足も出んとは…これで100戦100敗…まさか儂が全敗とはなー…うむ、認めてやろう。ダジャレ神としてな!」

「あ、別にダジャレ神になるつもりはないから」

あくまで退屈しのぎにやっているだけなので、ダジャレ神とやらになるつもりはない。

そして1ヶ月後の天下一武道会が始まった。

「よーし、それじゃあ行ってきます界王様!」

「うむ、気をつけてな」

占いババと共に現世へ戻る悟林。

「それにしてもサイヤ人と言うのは本当にとんでもない奴らじゃな。超サイヤ人2にも相当驚かされたが、本当に強さに際限がない。」

悟林があの世での修行の成果を発揮してくれることを願いながら界王は昼寝をすることにした。

占いババと共に現世に1日だけ戻ってきた悟林は久しぶりの現世の空気を堪能すると、受付の近くにいる両親と仲間達に声をかけた。

「おーい!みんな、久しぶりー!!」

「悟林!」

振り返ったのは父親の悟空で次の瞬間、母親のチチから抱き締められ、ベジータ等を除いた大人達からもみくちゃにされた。

そして…。

「姉さーん!」

興奮した様子のバンダナとサングラスを着けた変質者が勢い良く迫ってきたので問答無用で拳による高速乱打で殴り飛ばしておいた。

一方の悟飯は訳が分からなかった。

久しぶりに再会した姉に駆け寄ろうとしたら一瞬のうちに何十発も殴られた。

「だから言ったじゃねえか止めとけって」

「ふん、当然の結果だな」

父親とベジータの呆れたような声が聞こえる。

「ねえ、お父さん、お母さん。この変態は誰?」

倒れている変質者(悟飯)を指差しながら両親に尋ねる悟林。

「何言ってるだ、悟飯ちゃんだぞ。おめえの弟の」

「……ごめん、よく聞こえなかった」

「悟林ちゃん、気持ちは痛いくらいに分かる。でも現実から逃げちゃ駄目だぞ」

クリリンがあまりにも痛いグレートサイヤマンの姿の悟飯を認められない悟林の肩を優しく叩いた。

「…何でこうなっちゃったのかなあ」

「(悟飯さんのお姉さんもダサいと思うんだ)」

空を見上げながら嘆く悟林を見て姉の方の美的感覚はまともであったことをトランクスは知る。

「ん?」

悟林とトランクスの目線が合い、悟林はトランクスに歩み寄る。

「な、何?」

「ねえ、君…トランクス君だよね?」

身長差があるために悟林が見下ろす形になる。

「は、はい…」

「あー!やっぱり!大きくなったねトランクス君。ちょっと前まで赤ちゃんだったはずなのに」

「悟林ちゃんが死んでから7年経つのよ。大きくなって当然でしょ」

「そっか…もう7年か…そこにいる君は…お父さんにそっくり…私の弟なんだね…名前は?」

チチの後ろに隠れていた悟天を発見した悟林は目線を合わせながら声をかけた。

「ほら、おめえの姉ちゃんだぞ。」

悟空によって悟林の前に押し出された悟天。

「ほら、姉ちゃんにちゃんと挨拶するだ」

「ご、悟天です…」

チチに促された悟天は緊張しながら悟林に自己紹介した。

「うん、よろしくね。1日しかいられないけどさ」

父親そっくりの髪質の頭を優しく撫でると安心したのか、悟天もくすぐったそうにしている。

「姉さん!!」

「取り敢えず悟飯は今すぐ着替えてきて、その格好、ダサいし恥ずかしいから」

「なっ!?グレートサイヤマンのどこがダサいって言うんですか!?」

その問いに悟林はかつて地球に襲撃してきた頃のベジータが戦闘不能になったナッパを見下ろしていた時のように悟飯をゴミのように見遣りながら吐き捨てる。

「全部だよこの愚弟。何がグリーンヤサイマン?私が死んでる7年間に何があったの?良い、悟天。あの愚弟みたいにダサい格好で人前に出たら大恥をかくから絶対にしないように」

「兄ちゃんダサいの?」

「うん、宇宙一ダサい」

悟飯の言葉を一蹴して悟天と共に受付に向かう悟林であった。

受付を終えると悟林は落ち込む。

何と現在の天下一武道会は大人と子供で分かれており、享年9歳の悟林は子供の部行きとなってしまった。

これには悟空やベジータ、ピッコロが残念がっていた。

「うーん、お父さんとベジータさんの試合になったら乱入しよっかなー?」

良からぬことを考えている悟林にクリリンが止める。

「駄目だ。大会が滅茶苦茶になるし、悟空とベジータの失格も有り得るし。2人が同時失格なんてしたらチチさんとブルマさんが怒るぞ」

「冗談だよ冗談…半分くらいは……ちぇー、お父さんとベジータさんと試合したくて帰ってきたのにこれじゃあ帰ってきた意味ないじゃない」

「あのー、姉さん。僕も修行してきたんですけど」

「仕方ない、試合になったら悟天とトランクス君に稽古をつけてあげよう。今日くらい末の弟とトランクス君との交流に力を入れて…」

「姉さん!」

「ん?何さ?」

悟天とトランクスとの試合を待ち遠しそうにしている悟林に悟飯は声を張り上げる。

「僕も大会のために修行してきたんですよ。どうですか?」

「昔より弱い。それだけだね」

「んなあ!?」

天下一武道会に出場するためにそれなりに鍛えてきたが、あっさりと一蹴されたことに悟飯は驚愕する。

「ねえ、お父さん。ベジータさん、勉強マニアの悟飯ちゃんは7年間修行サボってたんでしょ?どうせ」

「ん?ああ」

「平和なのを良いことに大したトレーニングはしていなかったようだ。今では俺達の方が上だ」

悟空とベジータの返答に悟林は悟飯を見つめる。

「本当に予想を裏切らないね悟飯ちゃんは?」

「うくくく…だって勉強があるし…」

「良いなー、悟天。悟飯さんだけじゃなくて悟林さんみたいな可愛いお姉ちゃんがいるんだし。と言うか悟林さん、おじさんやおばさんにも似てないな」

「姉ちゃんはお父さんのお母さんに似てるって聞いたことあるよ」

姉弟のじゃれあいを見つめながら悟天とトランクスは試合を楽しみにしている。

「ところで、何で18号がいるの?賞金稼ぎ?」

視界に入った18号を見つめながら首を傾げるとクリリンが自慢気に口を開いた。

「ふふん、実は18号は俺の嫁さんなんだ。」

「え?結婚したの?おめでとうクリリンさん」

「おう、サンキュー」

敵であり人造人間である18号と結婚したことに驚きはしたが、幼い頃から世話になったクリリンなので、悟林は素直に祝福する。

「あ、もしかして近くにいた女の子って…」

「そ、俺と18号の子供さ。名前はマーロン。可愛かっただろ?」

「うん!すっごく可愛かった。クリリンさんみたいに人懐っこそうな顔立ちだったね」

「そうだろ可愛いだろ?良い歳になってから生まれたのもあるけど可愛くて仕方ないんだよ」

デレデレと幸せそうなクリリン。

そんなクリリンに18号は溜め息を吐くものの、悪くなさそうな表情である。

途中で悟飯が友人を探しに行き、取り敢えず大人と子供に分かれるようなので悟林はトランクスと悟天を引き連れて行こうとする。

途中で悟飯がビーデルと共に戻ってきた。

「おや、悟飯。その女の子がお友達なの?へー、意外に悟飯も学校生活満喫してるじゃない。」

「クラスメイトのビーデルさんだよ姉さん」

「姉さん!?あなたお姉さんは死んだって…」

「うん、私は7年前に死んじゃったんだ。だから頭の上に輪があるの」

「な…何者なの…あなた達って…」

「んー、普通より強い武道家だよ。それじゃあ悟飯、最低でも5位になれることを祈ってるよ」

からかうように言うと悟飯は悔しそうにしながら叫んだ。

「ね、姉さんがいなかったら僕が3位くらいになれる可能性があるんですからね!」

「それって私がいないから命拾いしたって言ってるようなもんじゃない。このお馬鹿」

「いった!?」

頭を殴られ、鈍い音と共に悟飯が地面に沈んだ。

その威力にビーデルは目が飛び出そうになるくらいに驚いている。

「それじゃあ、ビーデルさん。おかしな格好してるけど私の弟をよろしくね」

「は、はい…」

悟天とトランクスを引き連れて子供の部に向かう悟林であった。

「…大丈夫?悟飯君?」

地面に沈んだ悟飯を引っ張り上げるビーデル。

「だ、大丈夫です…」

殴られた頭を擦りながら悟飯は起き上がった。

軽く殴ったつもりなのだろうが、信じられないくらいに重い一撃であった。

セルとの闘いの時よりも遥かに強くなっていることを身を以て感じた悟飯である。
 
 

 
後書き
久しぶりに会った弟が変質者になってたら嘆く以外の選択肢はない。

因みに悟林は原作のブウ編悟空より強いです。

死んだのが伸び盛りの頃だし。 

 

第35話

 
前書き
チビッ子達に力を見せてやりましょう 

 
子供の部に出場した悟林は思ったよりも良い経験を積めたと思う。

何せ悟林は今までこれほどまでの手加減などしたことがあまりない。

正確には母親のチチに触れる際に吹っ飛ばしてしまわないようにはしていたが、チチもチチで地球人としては強い方だったので普通の地球人とは話が違ってくる。

チチと同じくらいの手加減では大怪我、下手をしたら死人を出してしまうかもしれないので、これは良い経験になったかもしれない。

そして瞬く間に準決勝となり、末の弟との試合になった。

「それじゃあ、よろしくね悟天。良い試合をしようか」

「よ、よろしくね姉ちゃん」

一礼をしてから互いに構えを取る。

「(姉ちゃんって兄ちゃんより強いのかな?)」

悟天にとって兄の悟飯は父親の悟空ほどではないが、とても強く、頼りになる存在である。

ならば目の前にいる姉はどこまで強いのか。

「(…考えてもしょうがないや、姉ちゃんをビックリさせてやる!)行くよ!」

「おいで!」

「うん!」

姉の言葉に促された悟天は足に力を入れて全力で地を蹴って悟林に突撃し、拳を振り上げた。

そして迫る拳を悟林は片手で掴み止める。

「(へえ…)」

受け止めた直後に衝撃が悟林の体をすり抜けるように背後に発生する。

悟天の実力は同い年だった頃の自分を超えている。

「やるねえ、悟天。初めて会ったとは言え弟が成長してるなんて嬉しいよっと!」

「ぎっ!?」

指先に気を集中させたデコピンが悟天の額に直撃し、音と共に悟天は大きく吹き飛ばされた。

「(まずい、やり過ぎたかな…?)」

勢い良く地面に叩き付けられた弟を見てまずいと感じたが、悟天は痛がりながらも起き上がり、再度構えを取った。

「(流石、サイヤ人の血を引いてるだけあってタフだね。もう少し強くしても良さそうだ)」

「だあああっ!!」

「おっと」

一瞬、悟林の姿が揺らいで悟天の蹴りが空振りする。

「え!?」

「後ろだよ。それ!」

後頭部に蹴りを入れて悟天を吹き飛ばす。

危うく武舞台から落ちそうになったが、何とか落ちずに済んだ。

「あ、当たったはずなのに…」

「残像拳だよ。残像拳くらい見切れるようにならないとね。大事なのは気の強さと流れを掴むこと、悟天はまだ無意識に目で追う癖があるね…でも大したもんだよ、その歳でそれくらい強くなるなんてね」

「へへ、お父さんに色々教えてもらったんだ」

後頭部を擦りながら、悟天は姉に褒められたからか嬉しそうに笑う。

「よし、姉ちゃんも少しずつパワーを上げてくから、あっさりやられないでよ悟天?」

「う、うん!」

今でも実力差を感じていると言うのに更にパワーを上げるとあっさりと言ってくる姉に悟天は唖然となるが、サイヤ人の血が闘争心を沸き上がらせる。

「それじゃあ…行くよ」

次の瞬間、悟林は悟天との間合いを詰めて悟天の腹に拳を深く突き刺した。

「が…っ!」

腹への激痛と衝撃に一瞬頭が真っ白になり、次の瞬間には足払いをかけられて体勢を崩した悟天は足を掴まれて上空に投げ飛ばされる。

そして追撃の気弾が容赦なく放たれた。

「悟天!避けろーーー!!」

観戦していたトランクスの声に反応した悟天は自分に迫る気弾を認識すると慌てて離脱する。

そして悟林の方を向いた時には姉の姿はない。

「良く避けたね。」

「えっ!?」

既に悟林は先回りをしており、悟天の背後を取っていた。

「でも残念、これで終わりだよ」

締め上げて落とそうとする悟林だが、悟天は咄嗟に超化して抜け出した。

「え!?」

予想外の超化に悟林は驚く。

「あはは…超サイヤ人になっちゃった…」

観客席で悟飯が慌てているが、構わず悟天を褒めた。

「凄いじゃない悟天。その歳で超サイヤ人になれるなんて大したもんだよ。」

「へへ」

「なら私も変身するかな」

「え?」

悟林も超化して超サイヤ人に変身すると一瞬で腹に蹴りを叩き込んで気絶させた。

「そっちが先に超サイヤ人に変身したんだから私も変身して良いよねえ!?」

悟飯が悟林を抱えて観客席に移動された。

「ちょっと何!?離してよこの変質者!!」

「誰が変質者ですか!?何で姉さんまで超サイヤ人になるんですかもう!」

「悟天は変身したんだから問題ないじゃない?と言うか超サイヤ人禁止だったの?」

「いや、姉さんはセルとの闘いでテレビに映っていたから超サイヤ人になったら……大会では超サイヤ人は禁止なんですよ」

「えー、何でそんな面倒臭いことを…」

超化は悟林を含めたサイヤ人の力の一部だ。

それなのに禁止などと言うのはストレスが溜まる。

「とにかく超サイヤ人は禁止なんだ。悟林ちゃん達はセルとの闘いで超サイヤ人の姿を知られてるだろ?もしバレたらテレビとかうるさくなるぞ」

クリリンも説得に加わってくれたことで悟林も渋々ながら同意してくれた。

「はあ…こんなことになるんだったらもっと別の日にすれば良かったな…これは何が何でもお父さんとベジータさんと闘えるようにしないと」

「本当に悟林ちゃんは闘いが好きなんだな…」

「私が帰ってきたのはお父さんとベジータさんと試合するためなんだからねクリリンさん!とにかく私は戻るよ。次のトランクス君との試合に備えなきゃ」

「超サイヤ人にならないで下さいね!」

「はいはい」

「絶対にならないで下さいね!?」

「はいはいはいはい」

「分かってんのかなあ…」

舞空術で戻っていく悟林をクリリンは心配そうに見つめる。

7年前の時よりも欲求に忠実になっているような気がするのは気のせいだろうか。

まあ、あの世では現世ほどの縛りはないらしいので、そこで7年も過ごしていれば変わるのかもしれない。

「な、何か姉さん…変わりましたね…」

「別におかしなことじゃない。あれくらいの年齢のサイヤ人は闘いたい盛りだからな、サイヤ人として見ればおかしいのは寧ろ貴様だ」

そしてトランクスの試合が終わり、悟林とトランクスの決勝戦となる。

「それじゃあ、よろしくねトランクス君」

「は、はい!悟林さん!」

悟天との試合を観たことで圧倒的に格上であることを思い知らされたトランクスは緊張していた。

「そんなに緊張しないで、緊張すると何時ものパワーが出せないよ。勝てなくてもいい、全力で来なよ。情けない闘いをしたらベジータさんも怒るよ?」

「パパ…」

観客席を見るとトランクスを見つめるベジータの姿。

その姿にトランクスはやる気を出す。

「(パパが見てくれてるんだ。勝てなくても情けない闘いだけは絶対しないぞ!)」

頬を叩いて気合いを入れて構えを取るトランクス。

その姿にベジータと未来のトランクスの姿が重なる。

「良い目をしてるよ。流石ベジータさんの子供だね。出来ることなら私が君の才能を伸ばして上げたかったけど…まあ、今更しょうがないし…おいで!ほんのちょっとだけど稽古を付けてあげる!」

「俺の本気を見せてやる!」

トランクスは悟飯との約束を忘れたのか超サイヤ人に変身して悟林に迫る。

悟飯が焦るような声が聞こえて悟林は苦笑した。

「20倍界王拳!」

一応弟との約束を守るために界王拳を使い、トランクスの拳を受け止めた。

戦闘力の上昇では下回る界王拳だが、基本戦闘力の差で覆して見せる。

「さあて、始めるよ!」

早速反撃とばかりにトランクスの頬を殴り飛ばすが、超化しているために耐え、トランクスも悟林の頬を殴り付けた。

「っ…やるね…流石ベジータさんの息子だ。」

トランクスのラッシュを防ぎながらその実力に驚く。

これから修行を積み続けていけばどれだけ戦闘力が伸びていくのか楽しみだが、トランクスはブルマの子供でもあるのでいずれは修行が出来なくなることも分かっている。

「トランクス君、良いものを見せてあげるよ」

「え?」

両手を額の前に翳し、全身の気を手のひらに集中させる。

「魔閃光!!」

「うわっ!」

悟林が放った気功波を跳び上がることでかわすトランクス。

観客席に当たる前に気功波を曲げて上空に上げ、トランクスの真上を取ると、組んだ拳で叩き落とす。

武舞台に叩き付けられる前に舞空術で急停止し、上昇して悟林に向かっていく。

2人は拳と蹴りをぶつけ合い、その衝撃が撒き散らされるが、観客席にいる悟空達は平然としながら観戦している。

悟飯はハラハラしているが。

「ピッコロさん直伝の魔貫光殺砲…どうかわす?」

額に指を当てて、そのまま周囲を駆け回る。

すると無数の残像が現れる。

「悟天に使った残像拳って奴か…!」

試しに気弾を放つものの、残像に当たるだけで本人には当たらない。

がむしゃらに撃っても気を無駄に消費するだけ、どうすればと悩んだ瞬間。

「魔貫光殺砲!!」

トランクスに向けて絶大な威力を誇る気功波が放たれた。

「!!」

咄嗟に横に飛び退いたことで魔貫光殺砲をかわした。

それを確認した悟林は指を上に向けて軌道を変えて気功波を上空に上げた。

「良い反応だね。流石ベジータさん、柔な教え方はしてない」

「悟林さん、今の当たってたら死んでたよ…」

「大丈夫。直前で曲げるから」

引き攣った笑みを浮かべるトランクスに悟林はさらりと言い放つ。

一歩ずつトランクスに向かう悟林にトランクスは構えを取りながら必死に考えを巡らせる。

「(駄目だ、力の差がありすぎて勝負にならないや…このままあっさり負けたら…パパ怒るだろうな…)」

何とかならないかと考えを巡らせた時、一つの策が浮かんだ。

「(…そうだ!実力じゃ敵わなくても…)」

「(あの顔…何か企んでるね…)」

どのような策を考えたのか興味が湧いたため、悟林はトランクスに向かって正面から向かっていく。

トランクスは舞空術で上昇し、上空に逃げると手のひらに気弾を作り出した。

「何をする気か知らないけど小細工なんか通用しないよ!」

「ていっ!」

トランクスは何を考えたのか気弾を空いている手で叩くと閃光が迸った。

「っ!?」

視界が焼かれた悟林は急停止してしまう。

「(こ、これ…太陽拳と同じ…!)」

「たあああっ!!」

「うわああああっ!?」

動けなくなっている隙にトランクスが悟林の背に全力の蹴りを喰らわせて吹き飛ばす。

突然のことに対処出来なかった悟林は場外に落下した。

「やったあっ!!」

「え?…ああっ!!」

視界が回復した悟林は自分が場外であることを認識して目を見開く。

子供の部の優勝はトランクスに決定し、トランクスの奇策に敗れることになった悟林は溜め息を吐きながら武舞台に戻って勝者であるトランクスを讃える。

「いやー、まさか太陽拳もどきをしてくるとは思わなかったよ。流石だねトランクス君、流石ベジータさんの息子だよ」

「悟林さんも凄く強かったよ。正直あれが駄目だったらどうしようって思ってたんだ」

「素直で良いね。でも最後まで諦めなかったのは偉いよ…優勝おめでとう」

「うん!」

悟林からの賛辞にトランクスは嬉しそうに頷いた。

「はっはっは、おい!残念だったな。どうやら俺の息子の方が悟林よりも一枚上手だったらしい」

因みに悟林にトランクスが勝ったことで観客席のベジータは悟空の背中を叩きながら上機嫌であった。

後にサタンとトランクスの試合が行われ、当然トランクスが勝ったものの、サタンは子供だからわざと勝たせてあげたといったようなパフォーマンスをしたのである。

子供の部を終えた悟林は試合を終えたトランクスを迎えた後に、悟天とトランクスを連れてブラブラとしていた。

「んー、お父さん達の試合が始まるまで何しようか…お腹が空いたし食堂に行こうかな?……ん?」

「………」

トランクスが物陰に隠れながら何かを見ていた。

「何してるのトランクス君?」

「いっ!?」

背後から話しかけるとトランクスは肩を震わせて振り返る。

「な、何だ…悟林さんか…」

「何を見てたの?」

「あれ」

トランクスが指差した先にはおかしな覆面の戦士。

「ぷっ!おかしな格好だね」

「そうだね!」

孫姉弟が覆面戦士・マイティマスクの格好に吹き出す。

「ねえ、悟林さん。あいつ使えないかな?」

「?」

「あいつに一発喰らわせて伸びてる間に服を頂いてさ、俺達3人で出ようよ」

「…大人と試合したいの?」

「うん!」

悟林の問いにトランクスは頷くと悟林は苦笑しながらトランクスの母親譲りの髪質をした頭を撫でる。

「トランクス君の気持ちは分かるけど駄目だよ。あの人は実力で予選を抜けたんだ。だからそんなことしちゃ駄目。トランクス君だって同じことされたら嫌でしょ?」

「それは…」

「ベジータさん達も大会が終わったら好きなだけ付き合ってくれるよ。今は大人しく観戦しよ?」

「はーい」

不満そうに頷くトランクスにどうしたものかと頭を悩ませた時、悟林はあることを閃いた。

「そうだ、ご飯食べ終わったら私が技を教えてあげるよ。それじゃ駄目?」

「え?良いの?」

「勿論、悟天もどう?」

「僕も良いの?」

「勿論、私も悟天とトランクス君との思い出が欲しいな。よし、修行の前に腹拵えだよ!」

「「はーい!」」

食堂に行くとそこには既に悟空達がいた。

「やあ」

「よう、悟林。おめえも飯食いに来たんか?」

「うん、もうお腹空いちゃったよ。すいませーん!ラーメン、カレー、スパゲッティ…中華まん全種類…面倒臭いな…このメニューにある料理を全種類を10人前で!」

「俺もー!」

「僕もー!」

それを聞いたクリリンは苦笑し、ビーデルは目が飛び出そうになるくらいに驚き、料理人達やウェイトレスの悲鳴が飛び交う食堂。

そしてしばらくしてやってきた料理に3人は掻き込む。

「うーん!美味しい!やっぱりご飯は材料からしてこっちの方が良いなー」

「だよなー、あの世の飯はあんまり美味くねえもんな」

あの世での食事経験者である悟空が悟林の言葉に同意する。

「あの世のご飯って美味しくないの?」

「やっぱり質かな?基本的に死人はご飯なんか食べないから食べ物はこっちより美味しくないかな?料理の腕である程度は誤魔化せるけど、同じ料理でもこっちの方が美味しいね」

悟天の問いに悟林はあの世の食べ物のことを思い出しながら言う。

「まあ、悟天があの世に来ることになるのは大分先だし、それまでこっちの料理を味わってるんだよ」

現世にいられるのは1日で、それが終われば二度と現世には戻れないので今のうちに堪能しておこう。

「女子供含めてどうなってんだサイヤ人の腹は…」

クリリンの呟きが食堂の喧騒によって消えた。

凄まじい勢いで食事を終えたサイヤ人達。

悟林達は2人の相手をしながら観戦することに。

対戦表を見て、いきなり悟空とベジータの試合に目を輝かせる。

「いきなりお父さんとベジータさんか…事実上の決勝戦だね。」

「パパとおじさんか…どっちが勝つんだろ?」

「お父さんが勝つよ絶対」

「なーに言ってんだ!俺のパパに決まってるだろ!」

「だってお父さんは宇宙で一番強いんだよ!」

「まーまー、落ち着いて。多分お父さんとベジータさんとの間に実力差はほとんどないね…どっちも天才だからどっちが勝つか分かんないよ。それにどっちが勝っても負けても、2人はそれをバネにして強くなるよ。負けた方は私と勝負してもらえるしワクワクが止まらないよ私は」

喧嘩する2人を宥めながら悟空とベジータの試合を楽しみにし、こう言ってはあれだが、負けた方とは自分とすぐに試合をしてもらうつもりである。

尻尾が健在なら嬉しそうに振っていたことだろう。

「悟林さんってパパと闘ったことあるんだよね?」

「ん?うん、2回ね」

「どっちが勝ったの?」

「んー、1回目はお父さん達と一緒だったからな…実力じゃほとんど負けてたし。2回目は完敗だった。」

「本当!?やっぱりパパは凄いや!」

はしゃぐトランクスに微笑みながら悟林は何を教えようかと頭を悩ませる。

「うーん、やっぱり簡単な技からだよね…よし、2人に魔閃光を教えてあげよう。」

使い勝手が良い技と言ったらこれであろう。

かめはめ波は使えるだろうし。

「「魔閃光?」」

「ピッコロさんから教わった技でかめはめ波より威力は低いけどすぐに撃てる利点があるんだ。主に追撃に使うね…悟飯も使えるんだけど、悟飯は修行をサボってるから使うことなかったろうしね」

ピッコロは後任の神であるデンデの育成に忙しいのだろうし、悟飯は勉強漬けだから見る機会がなかったのだろう。

人気のない場所に移動して早速技の見本を見せる。

「良い?それじゃあ、まずは両の手のひらを額の上に翳して」

「「うん」」

悟林が見せたように両手を動かしていく2人。

「そして手のひらに全身の気を集める」

手のひらに気が集まっていき、充分な量になると溜めるのを止める。

「そして相手に向かって手を突き出す」

そして放たれた気功波はかめはめ波に比べれば地味ではあるものの、かめはめ波よりも早く出せた。

「これが魔閃光。私と悟飯がピッコロさんから教わった最初の気功波。さっきも言ったけど、かめはめ波より威力は劣るけど溜めがあまり必要ないからすぐに撃てる利点があるから上手く使い分けてね」

「「はーい」」

「本当ならもっと威力のある技を教えたいけど…この技は殺傷力が高いから別の技にしようか…うーん、2人に教えても大丈夫そうな技は…」

魔貫光殺砲などの殺傷力の高い技を教えたらブルマやチチから苦情が来る可能性がある。

まあ、かめはめ波を覚えてる時点でアレだが。

「気円斬…も駄目だな。あれも殺傷力高いし…」

次は何を教えようかと頭を悩ませた時、会場から歓声が上がった。

気になって見てみるとクリリンが対戦相手を一蹴したようだ。

次の対戦はピッコロがするようなのだが、ピッコロは棄権してしまう。

「え?ピッコロさん、棄権しちゃったの?」

「らしくないね、ピッコロさん。確かに気は感じられないけど少しも闘わないなんて…」

「具合が悪いんじゃないの?まあ、ピッコロさんの顔色だと分かんないけどさ」

「こらこらトランクス君。そんなこと言っちゃいけないよ?顔色が悪いのは事実だけど」

ピッコロの後に武舞台を降りる謎の少年を見遣ると次のビーデルの試合を観戦する。

「ビーデルのお姉ちゃんだ!」

「ふーん、悟飯の彼女…結構やるじゃない…ミスター・サタンの娘か…全然似てないね」

「確かに」

トランクスがサタンの顔を思い出して吹き出す。

最初はビーデルが圧倒していたものの対戦相手のスポポビッチが妙だ。

あまりにもタフだし、気功波や舞空術を使ったりしている。

「妙だねあいつ…あんなに攻撃を受けているのにタフ過ぎる。気功波や舞空術にしてもそう、強さと技術が噛み合ってない」

「それ、どういうことなの悟林さん?」

「あいつ…どうも自分の限界を超えた力を持っているようだね…どうやったのかは分からないけど…」

そしてビーデルはスポポビッチに一方的に嬲られ、流石にこれはと思った悟林が乱入しようとした時であった。

ヤムーと言う男がそれを止め、スポポビッチはビーデルを場外に放り投げ、そして悟飯が医務室に運んでいった。

「何なんだろうね、この違和感は…」

途中で悟空の気が会場から離れたので、恐らくカリン塔に瞬間移動に向かったのだろう。

仙豆を取りに行ったのならビーデルは大丈夫だ。

悟林はスポポビッチとヤムーに鋭い視線を送りながら大会を観戦するのであった。 

 

第36話

 
前書き
ブウ編は一気に駆け抜けます。

悟飯とダーブラって持久戦に持ち込まれれば確実に悟飯負けてましたよね、戦闘力はともかく、バビディの魔術でスタミナが上昇してるわけだし。 

 
ビーデルの小さかった気が元に戻ったのを感じ、どうやら無事に仙豆は届けられたようだ。

そして悟飯の試合になったのだが、頭のバンダナが取れたことで正体が観戦に来ていたクラスメイトにバレた上に中々行われないことで観客から野次が飛んでいる。

「悟飯の奴…人には超サイヤ人になるなって言っておいて自分はなるのか…」

しばらくして超サイヤ人を超えた超サイヤ人へと変身した悟飯だが、超サイヤ人2であるにも関わらず、迫力があまりない。

どうやら思っていたよりも力が落ちているようだ。

そして悟飯はスポポビッチとヤムーからの奇襲でやられてしまう。

「おかしいな、いくら弱っててもあんな奴らにやられそうにないんだけど…ちょっとお父さん達のとこに行ってこようか」

「「はーい」」

チビッ子2人を連れて大人達の所に向かい、話を聞いてみる。

何でもピッコロの対戦相手は界王よりも高位の神である界王神であり、ある目的のためにこの大会に潜り込んで悟飯を利用したとのことだ。

「これってもしかして私達も行くの?」

「勿論だ。どうしてこうなったのか知りてえしな」

「…ねえ、私が何のために下界に戻ってきたか忘れた?せめて、私と勝負してからにしてくれない?」

自分が下界に戻ってきたのはこの7年間の修行の成果を下界の強者である父親とそのライバルにぶつけるためだ。

なのに大会では享年9歳であることを理由に子供の部、そして界王神とか言う会ったこともない人物に時間を取られることに流石に焦りを覚える。

「え?いや、でもよ…」

「俺も同じ意見だ。俺はこの大会で貴様や悟林と闘うために来たんだぞ。」

悟林を援護してくれたのは私情もあるだろうがベジータだった。

この日のために鍛えてきた力を振るう機会を無にされそうになっているためか、どことなく苛立っているように見える。

「界王神様のことは悟飯に任せようよ。ピッコロさんもいるんだし…終わったら手伝いに行くからお願い。私と闘ってよ」

悟空は娘の欲求不満に満ちた目を見た。

昔の娘はもっと我慢出来ていたはずなのだが、やはりあの世でのあらゆる束縛のない7年間の生活でやはり娘の性格に変化が起きているようだ。

「うーん…しょうがねえな。オラ達は悟林と手合わせしてから行くからおめえ達は先に行っててくれ」

「やった!じゃあみんなは後でね!」

悟空とベジータと共に離れていく悟林。

その目にはやっとここまで鍛え上げてきた自分の全開の力を解き放てることへの興奮が宿っていた。

「なあ、悟天。パパ達と悟林さんの闘いだってよ!」

「うん!凄そうだね!」

「俺達も見に行こうぜ!」

チビッ子2人も父親と憧れになりつつある人の勝負に興味を惹かれて追い掛ける。

そしてしばらくして着いた場所は、この3人からすれば懐かしい場所だ。

「良い趣味してやがる」

ベジータが周囲を見渡しながら吐き捨てる。

それは地球に来るまで自身の実力に絶対の自身を持っていたベジータが初めて敗北した荒野であった。

そして当時のベジータの相手であった2人にとっても特別な場所でもあった。

「あの時の私は弱かったからベジータさんには最初の闘いは勝てなかった。2回目の時も完敗した。だけど、今はどうかな?お父さんも手加減なんかしないでよね?」

「おめえ相手に手加減なんか出来ねえさ…どっちからやる?」

「当然俺からだ。」

「おいおい、待てよベジータ。悟林はオラの子だぞ、だからオラが最初にやる!」

「ふざけるな!貴様はあいつが生きている時に散々やっただろうが!ここは俺からだ!」

「いやオラだ!」

順番で揉める2人に悟林は一瞬だけ微笑むと超サイヤ人2へと変身する。

「「!!」」

「どっちでもいいよ?…私が2人同時に相手すればいいからさ!!」

足に力を入れて地を蹴り、一気に距離を縮めると口喧嘩している2人に拳を突き出した。

即座にそれを避ける2人。

そして2人もまた超サイヤ人2へと変身する。

「チッ!じゃじゃ馬が!」

「しょうがねえな、久しぶりに…思いっきりやっか!!」

「そらっ!!」

悟林がベジータに向かって回し蹴りを繰り出し、ベジータはそれを左腕で受け止める。

「ふん!こんなものか!?」

腕に痺れが走るが、構わずに反撃とばかりに殴りかかるベジータの拳を掴み止めた瞬間。

「後ろだ!」

瞬間移動で背後を取った悟空が悟林を蹴り飛ばし、近くの岩に叩き付けた。

「カカロット!余計なことをするな!」

「そう固えこと言うなよベジータ。そんなことより来るぞ!」

岩を吹き飛ばしながら2人に突撃する悟林に、対してベジータは構える。

「よーし!行くぞベジータ!」

「俺に指図するなカカロット!」

「楽しい勝負の始まりだー!」

3人が再び激突し、チビッ子2人が目を輝かせながら観戦している一方で、悟飯達は界王神と共に悟飯を襲ったスポポビッチとヤムーを追い、海や山を越えながら界王神から彼らの目的を聞いていた。

魔導師ビビディが作り出した魔人ブウの恐ろしさと、ビビディの息子のバビディが地球に封印されたブウの復活を目論んでおり、スポポビッチとヤムーは魔術で操られてその尖兵にさせられていること。

そして魔人ブウを蘇らせる為に必要なエネルギーを得る為に天下一武道会を狙うと予測し、悟飯のエネルギーを手に入れさせ、それを追って居場所を突き止めることであった。

しかし、話を聞いたピッコロは悟林達を無理にでも引き摺って来るべきだったと考えていた。

何しろここにいるのは自分も含めてサイヤ人に大きく実力に差を付けられている。

この中で最も強いであろう悟飯も、7年間もの間に勉学に傾倒していたので実力がセルとの闘いの時よりも大分落ちている。

もしバビディの仲間にセルと同等かそれ以上の手下がいた場合は最悪の事態となるだろう。

そしてピッコロの不安は的中することとなる。

何とバビディの手下には暗黒魔界の王であるダーブラがいたのだ。

スポポビッチとヤムーは用済みとばかりに殺され、バビディ達が宇宙船に戻っていくのと同時にダーブラが突然こちらに襲い掛かり、キビトを瞬殺し、ダーブラの唾によってクリリンとピッコロが石化してしまう。

悟飯はクリリンとピッコロを助けようとして宇宙船に乗り込み、界王神も仕方なく宇宙船に乗り込んだ。

最初に立ちはだかったのはプイプイと言う惑星ズンと言う星の戦士だった。

流石に鈍っていてもこの程度の敵ならば超サイヤ人に変身せずとも倒せた。

途中で惑星ズンへと移動させられたものの、精神と時の部屋での修行経験がある悟飯は突然の重力変化に驚きはしたものの、難なくプイプイを倒した。

悟飯は優しさからかプイプイを見逃そうとしたが、バビディによって役立たずと判断されたか、スポポビッチのように破裂された。

次のステージの相手はヤコンと呼ばれる怪物。

見た目によらずかなりのスピードで悟飯を攻撃するものの、それらをかわし、ヤコンの得意な暗黒星に飛ばされ、真っ暗で視界を閉ざされてもギリギリでかわしながら反撃する。

超サイヤ人へと変身して視界を確保するが、ヤコンによって超サイヤ人のエネルギーを喰われて通常の状態に戻ってしまう。

界王神の神通力でサポートしてもらい、少々手こずりながらもヤコンを倒す。

そして次のステージでダーブラと戦うことになるのだが、セルと同等のダーブラとの闘いは久しぶりの気の抜けない実戦である。

プイプイ、ヤコンの連戦の後であることもあり、悟飯は徐々に追い詰められていく。

7年間もの修行をサボっていたツケは想像以上に大きかった。

ダーブラの魔術を絡めた戦法に翻弄され、バビディの魔術によってタフネスを大きく向上させたダーブラにあらゆる面で劣っている悟飯はスタミナ切れを切欠に不利になっていく。

界王神も加勢してくれているが焼け石に水。

時間が経過するごとに悟飯のダメージは蓄積していき、焦りが募っていく。

修行をサボるのではなかったと、改めて後悔する。

界王神はいっそフルパワーで復活させてしまうよりはと思ったのか、下の階に繋がる入り口を破壊しようとするものの、ダーブラの気弾で吹き飛ばされて重傷を負ってしまう。

気絶している界王神を見て駆け寄ろうとするも、ダーブラに妨害されて弾き飛ばされてしまう。

ダーブラも決して無傷ではないが、まだまだ体力的に余裕がある。

闘いは一方的になり、最後に悟飯が見たのはダーブラが放った禍々しい気弾であった。

『フルパワーになったー!魔人ブウがフルパワーになったぞー!!』

意識が遠退く直前にバビディの歓喜の声が聞こえた。

そして場所は戻り、荒野で行われている戦闘も佳境に入っていた。

「ふんっ!」

「ぐうっ!?」

悟林の拳が悟空の腹に突き刺さり、動きを止めた悟空を蹴り飛ばす。

「つあっ!!」

しかしベジータはその隙を突いて悟林の顔面に肘打ちを叩き込んで吹き飛ばす。

「痛…っ…へへ…やっぱりお父さん達と闘うのは楽しいや…」

満足そうに鼻血を拭うと、深く深呼吸をした。

「凄く楽しい時間をありがとう…少しだけ見せてあげるよ…私の7年間の修行の成果…超サイヤ人を超えた超サイヤ人を…更に超えた力をね!!」

「超サイヤ人2を…超えただと!?」

「へ…へへ…凄えな…見せてくれよ!」

ベジータは驚愕し、悟空は超サイヤ人2を超えた…自分が目指した領域に悟林が到達していたことに悔しさと同時に誇らしさが混じった笑みでそれを促す。

「これが…超サイヤ人2を超えた変身…超サイヤ人3の変身だーーー!!」

悟林が膨大な気を放出し、放出した気が地球全体を揺らし始めた。

「くそったれ…超サイヤ人3だと…?人が苦労して変身した超サイヤ人2をあっさり乗り越えやがって…超えてやる…必ずな…!」

ベジータも凄まじい勢いで上昇していく戦闘力に震えながらも、まだまだ超サイヤ人の力には先があるのだと理解して笑みを浮かべて変身を待つ。

「す、すっげー…!」

「姉ちゃん…凄いや…!」

チビッ子達も未知の領域の変身に体と心を震わせながら変身を待つ。

「はああああ…!」

髪が更に逆立ったかと思えば髪がどんどん伸びていく。

そして一気に気合いを入れて戦闘力を超サイヤ人2とは別次元の戦闘力へと上昇させ…ようとした直後に別の場所から凄まじい気が爆発して全員の気が逸れてしまうのであった。

悟飯はダーブラの攻撃で意識を失ったものの、魔人ブウ復活による気の放出の影響で意識をすぐに取り戻すことが出来た。

「くっ…」

現れたブウは太っちょで、桃色の肌の魔人。

見た目はどこかコミカルだが、ブウの放つ気の強さに体が強張る。

悟飯が感じるブウの戦闘力はどうしようもないと言うほどのレベルではない。

悟飯が万全の状態で超サイヤ人2に変身さえ出来れば充分対処出来るレベルであった。

変身出来ればであるが。

今の悟飯はダーブラの攻撃でボロボロであり、修行不足による鈍りで超サイヤ人2への変身が出来ないのだ。

万全の状態でもある程度の怒りがなければ超サイヤ人2にはなれないのでこの状況は絶望的である。

そしてブウの怒りを買ったダーブラは更に気を上げたブウによって瞬殺され、それを見た悟飯は驚愕する。

自分では勝てない。

それを感じた悟飯は自分よりも強い3人がいる場所に界王神を連れて逃走しようとしたが、ボロボロの悟飯ではブウにあっさり追い抜かれてしまい、蝿を払うかのように叩き落とされた。

そしてブウの更なる気の上昇を感じ取った残ったサイヤ人達。

「何なのこの馬鹿でかい気は…?」

「とんでもねえ気だ…悟飯の気も小さくなってやがる…」

「チッ…悟飯め…怠けていやがるからそうなるんだ…」

ただ事ではないと判断した3人は戦闘を中断する。

「お父さん、仙豆は?」

「後2粒だけだ。」

「じゃあ、半分に出来るね…お父さん。瞬間移動お願い、トランクス君と悟天は…」

「俺も行くよ!」

「僕も!」

悟林が言い終わる前にトランクスと悟天が立候補した。

「えーっと、2人にはお母さん達の所に戻って欲しいんだけど」

「えー、俺達の強さは悟林さんも分かるよね」

「うんうん、絶対に姉ちゃん達の邪魔にはならないよ」

「いや、でも……危ないしなあ…でも置いていっても来そうだし……気を消して隠れてるなら良いよ」

このチビッ子達の性格を理解した悟林は隠れてるのなら連れていくと条件付きで承諾した。

「よし、みんなオラに捕まれ!」

2粒の仙豆を半分にして飲み込み、残りの半分のみを持って全員が悟空に触れるのと同時にブウの元に瞬間移動する。

そこにはブウとボロボロの界王神と悟飯がいた。

「悟飯!」

「ね、姉さん…!」

目を開けると悟林がいることに安堵した。

「頑張ったじゃない。ほら仙豆」

「ぼ、僕より界王神様を…!僕より酷い怪我なんです…!」

「あ、本当だ」

死にかけの界王神に仙豆を与えて悟飯を任せると、チビッ子が隠れたのを確認して気を高める。

「何だ?お前達…ブウと遊びたいのか?」

「そうだよ、私達が君の遊び相手だ」

油断せずに構える3人。

遊び相手が出来たブウは嬉しそうに笑って…駆け出した。

「「「!?」」」

「どーん!!」

「「「がっ!?」」」

ブウの突進をまともに喰らった3人は勢い吹き飛ばされながらも空中で体勢を整えて更に目付きが鋭くなる。

先程の一撃でブウの底知れぬ何かを感じた3人は更に気を高めてブウに突撃する。

「だあああ!!」

「うおりゃあああ!!」

「はああああ!!」

3人がかりでの猛攻。

流石のブウも3人がかりでの攻撃には手も足も出ないのか一方的に攻撃を受けている。

攻撃からベジータが抜け、悟空と悟林が絶え間なく攻め続けると、少しの間を置いてベジータの怒声が飛んだ。

「退け、貴様らーーー!」

その声に応えるように2人は距離を取った。

次の瞬間、ブウの体を金色の気功波が飲み込んだ。

ベジータのファイナルフラッシュがブウに直撃したのだ。

「やった!」

「まともに喰らったぞ!」

悟林と悟空も笑みを浮かべながら様子を見る。

チビッ子達もブウを倒したと思ったのだろうが、別の離れた場所にいる界王神と悟飯の表情は険しい。

下半身が吹っ飛んだブウは顔だけ動かすと笑いながら下半身を再生した。

「いっ!?元に戻っちまったぞ!?」

「再生…まるでセルみたいだね…」

「不死身か…奴は…」

再生を終えたブウは体を動かすとピタリと止まってこちらを見た。

ブウが笑みを浮かべた次の瞬間に悪寒が走る。

「ちょっと…痛かったぞ…へへへ…お前らなんか…」

怒りが籠った低い声とどんどん膨れ上がっていく気に全員の体が硬直する。

「あ、あいつ…どこまで気を上げやがんだ…!?」

「化け物め…!」

「や、やばい!みんな、逃げ…」

「嫌いだーーーっ!!!」

ブウの気が広範囲に放出された。

強烈な気爆破に咄嗟に防御体勢に入ったものの、抗うことも出来ずに3人は吹き飛ばされる。

ブウの強烈な気爆破をまともに受けた3人は死は免れたものの、かなりの深手を負ってしまう。

ダーブラの石化から解放されたピッコロも超サイヤ人2の3人が雑魚扱いされていると言う悪夢のような光景に絶句する。

「(ご、悟空達が3人でかかってもまるで相手になっていない…このままでは全滅だ…!)」

しかもあれだけの攻撃をしたと言うのにブウは息が全く乱れてはいないため、誰がどう見ても悟空達の不利であった。

「う…く…」

3人の中でダメージが浅かった悟空が何とか立ち上がろうとするが、自分にかかる影に目を見開いて顔を上げると、ブウがニヤリと笑いながら悟空に手のひらを向けていた。

「消えちゃえ~」

直後にブウが悟空に気弾を放った。

「うわあああああ!!」

まともに喰らった悟空は絶叫しながら気弾に飲まれて吹き飛ばされていき、ここから大分離れた場所で小規模な爆発が起きた。

「お…お父さん…」

その光景を見ていた者が誰もが絶句する。

地球最強の男があっさりとやられてしまったことに。

「あ…ああ…」

「お父…さん」

悟天は父親がやられたショックで座り込んでしまい、悟飯もあまりのショックに呆けていた。

しかし、界王神が悟飯を担ぎながら悟林に向かって叫ぶ。

「孫悟林さん!孫悟空さんは私が助けます!」

悟飯を連れて悟空が吹き飛ばされた場所に向かう界王神。

それを見逃さないブウが界王神を攻撃しようとした時、ベジータと悟林がそれを気功波を放つことで妨害する。

体に風穴が空いてもすぐに損傷箇所を再生するブウに流石のベジータも苦笑を浮かべる。

「ちくしょう…強い上に不死身じゃ話にもならねえ…」

「あはは…本当にどうしよう…」

ダメージによって大分気が落ちている悟林とベジータ。

ブウはそんな2人に襲い掛かろうとした時。

「「止めろーーー!!」」

ショックから復帰した悟天とトランクスが超化と同時にブウを蹴り飛ばした。

「ふ、2人共!?」

「大丈夫姉ちゃん!?」

「パパ、大丈夫!?」

怪我をした2人を心配する幼い子供達。

「ば、馬鹿が!何で出てきたんだ!」

助けられたものの、想像以上の怪物であるブウの前で2人の参戦はベジータとして望ましい物ではない。

「2人共、危ないから逃げて」

「嫌だよ!僕達だって闘えるよ!」

「そうだよ!このままだと2人共殺されちゃうよ!!」

悟林が逃げるように言っても2人は聞き入れようとはしない。

そんな頑固な子供達にベジータは深く息を吐くと悟林に1つ尋ねた。

「おい、悟林…超サイヤ人3とやらで奴を倒せるか?」

変身直前だったので詳しい力は分からないが、あれはブウにも劣らない力だった。

超サイヤ人3ならブウを倒せるのかと尋ねる。

「…多分…倒せると思う…」

答える悟林は少々自信が無さそうであった。

「超サイヤ人3ってのはね?あの世でしか使えない変身なの…時間の概念がある現世じゃ使うエネルギーが多くて一気に疲れちゃうの…一撃で倒せるなら良いけどあいつの回復力を考えると…」

単純な戦闘力なら上回れるが、不死身のブウを一撃で倒せる自信がないと言う。

強大なパワーと引き換えに燃費が恐ろしく悪い短期決戦に特化した超サイヤ人3はブウとの相性がどこまでも悪い。

「そうか…」

それを聞いたベジータは覚悟を決めた。

命を捨てる覚悟を。

「お前達はどこか遠くへ避難しろ。魔人ブウとは俺1人で闘う」

その言葉に3人は目を見開く。

「そ、そんな!ベジータさん!私も残って…」

「馬鹿が、貴様は一度死んでいるんだぞ。そんな状態で死ねばどうなるか分からんだろうが」

ベジータは知らないが、一度死んだ状態で死ねば完全に消滅して現世とあの世から存在が消えてしまう。

それでも死んでいる状態で死ねば取り返しのつかないことになるくらいは想像出来る。

「い、嫌だ!俺達も闘う!パパ1人じゃ殺されちゃうよ!」

「無理だ…あいつには何人で掛かっても…普通の闘い方をしていては…」

「ベジータさん…まさか…」

「悟林…トランクスを任せたぞ…トランクス…ブルマを…ママを大切にしろよ」

ベジータのしようとしていること理解した悟林は目を見開く。

「トランクス、お前は人造人間との闘いの時以外で一度も抱いてやったことがなかったな…」

「パパ?」

「……抱かせてくれ」

ベジータはトランクスを引き寄せ、片手で抱き締めた。

ぎこちない抱き方だが、それはベジータの息子への精一杯の愛情表現。

「姉ちゃん…」

不安そうに悟林を見上げる悟天。

少ししてベジータがトランクスを放した。

「ベジータさん」

「こいつらを連れていけ。分かっているな、お前のやるべきことは…」

「分かってる………ごめんね、2人共…」

ブウの気が少しずつ近付いているのに気付いた悟林はトランクスと悟天を抱えた。

2人は抵抗するが、実力差によって離れることは出来ない。

「ベジータさん…ごめんね。そしてありがとう」

謝罪と礼を言いながら悟林はこの場を離脱した。

「パパーーーっ!!」

離れていく息子の声を聞きながら。

「頼んだぞ、悟林……初めて会った時は弱かったガキがあそこまで強くなるとはな……俺ともあろう者が奴ら親子や仲間の影響を受けて穏やかになっていき、家族を持って居心地のいい地球を好きなっていくなど昔の俺を思えば考えられなかった。」

サイヤ人の王子として星を滅ぼしてきたベジータ。

当時の自分なら地球で暮らし、妻子を得るなど考えられなかっただろう。

「ピッコロ、さっさと貴様も逃げろ。巻き添えを喰らうぞ」

バビディを始末したピッコロに逃げるように促すと、ピッコロは複雑そうにベジータを見つめる。

「貴様…死ぬ気だな…」

「…最後に1つだけ教えてくれ。俺が死んだらあの世ではどうなる?」

「……善行を積んだ者は肉体を与えられるが、お前は罪もない人々を殺しすぎた…死ねば肉体は無となり、魂も悟林とは違う世界に運ばれる…そこで魂は洗われ、記憶もなくし、新しい生命体に変えられる…」

「…そうか…残念だ…」

どれだけベジータが穏やかになろうが生前の罪は消えない。

生前に善行を積んだ悟林とは違うのだ。

それを聞いたベジータは少々残念そうに呟いた。

ピッコロとクリリンが去っていくのを見たベジータはブウを見据える。

思い返せば、闘いばかりの人生だった。

サイヤ人の王子として力を求め、フリーザによって惑星ベジータが破壊されてもフリーザの下で働いた日々。

ドラゴンボールを求めて地球にやってきた時に悟空達と闘い、ナメック星での共闘。

そしてフリーザに殺されたことは昨日のように思い出せる。

帰って来た悟空と悟林と未来のトランクスの超サイヤ人に奮起し、超サイヤ人に目覚めた時のことは決して忘れることはないだろう。

そして人造人間との闘いでセルを完全体にしてしまい、結果的に悟林を死なせる遠因になったことは本人は気にしておらずともベジータの心の奥に残り続けた。

「さらばだ…ブルマ…トランクス…悟林…カカロット……」

心に強く刻まれた存在の名を呟きながらベジータは限界以上の力を振り絞った。

遠く離れた場所でトランクスと悟天を抱えながら飛んでいた悟林だが、抱えられている2人は必死に抵抗する。

「放して!放してよ悟林さん!パパが…パパが!」

「駄目だよ。2人を天界に連れていく」

「そんな!おじさん死んじゃうよ!」

「いい加減にしなさい!!!」

抜け出そうともがく2人だが、悟林の怒声によって硬直する。

「ベジータさんがどれだけの覚悟で私達を逃がしてくれたと思う?ベジータさんの気持ちを無駄にする気?」

「でも…でも…!」

悟林の言葉は理解出来ても納得は出来ない。

トランクスにとってベジータは大好きな父親なのだ。

直後に背後で大爆発が起き、ベジータの気が消えたのを知ったトランクスは泣いた。

悟林は怒りで目の前が真っ赤になるのを感じながら天界へと向かった。

天界に行くとデンデが沈痛な表情で3人を出迎え、悟林の治療をしてくれた。

後にピッコロとクリリンが来てブウがベジータの捨て身の自爆でも生きていたと知らされ、絶望的な状況に頭を悩ませることになる。

「姉ちゃん…これからどうすればいいの?」

悟天とトランクスが不安そうに悟林を見つめる。

悟空と悟飯はおらず、ベジータは死んでしまった。

頼りになる大人が一気にいなくなってしまったことに幼い2人は不安で押し潰されそうになる。

「どうする?情けない話だが、俺には何も策が思い付かん」

超サイヤ人2すら一蹴するブウの強さには流石のピッコロも希望を見出だせずにいた。

「でも悟林ちゃんが生きてるのが不幸中の幸いだ。魔人ブウを倒せるのは悟林ちゃんだけだよ。悟林ちゃんがこの世にいられるのは1日だろ?…まだ少し時間が残ってる…」

「クリリンさん…確かに倒せる可能性はあるよ…2つだけ…まず、1つは私が超サイヤ人2を超えた変身…超サイヤ人3で挑むこと」

「ス、超サイヤ人3だと…!?まだ上の変身があるのか!?」

「うん」

超サイヤ人2でも想像絶する力だと言うのに更に上の段階が存在することにピッコロは驚愕する。

「でもね、超サイヤ人3は凄く変身にエネルギーを使うの。使ったらこっちにいられる時間が極端に短くなる…だから倒しきれなかったらアウト」

「そ、そうなのか…2つ目の可能性は?」

「…フュージョンだよ」

「「フュージョン?」」

クリリンの問いの答えに悟天とトランクスの声が被る。

ピッコロもクリリンも2人と同じ気持ちなのか疑問の表情を浮かべている。

「フュージョン…!融合ですね!メタモル星人の得意な術だ!」

「知ってるの神様?そうだよ、あの世で会ったメタモル星人に教えてもらったんだ。気と体格が近い場合だけに出来る術。2人の力を合わせただけじゃなくて大幅にパワーアップするんだ。本当に凄かったんだ…メタモル星人の2人は弱くて大人しかったんだけど、フュージョンを使ったら相当な戦士に変身したんだ。だからお父さん達の3人のうち誰かがフュージョンしてくれれば…」

「な…なるほど…悟空、悟飯にベジータのうち2人がいればフュージョンをして…とてつもない戦士となり魔人ブウと闘えたわけだな!」

「そういうこと、でも術は教えてもらえたけど試したことないんだ。あの世で私と同じくらいの人はいなかったし…おまけに術を覚えるのにかなり時間がかかったから…無理だったね…お父さんがどうなったのか分からないし、悟飯はいつ戻れるか分からないし…ベジータさんは………最悪の事態だよ」

空気が重くなり、ピッコロとクリリンが何も言えなくなる。

「だったら俺達がやるよ!」

「うん!」

しかし、そこに2人の声が響き渡る。

全員の視線が向けられ、トランクスと悟天が悟林を見上げる。

「俺と悟天なら体も気の大きさも同じだよ。俺達ならそのフュージョンが出来るよね!?」

「2人共…」

「お願いだよ悟林さん!俺達にフュージョン教えてよ!パパの仇を取るんだ!!」

トランクスの決意に満ちた表情にベジータの面影を見た悟林は少し目を閉じると頷いた。

「…分かった。でも時間がないから厳しく行くよ!クリリンさんはお母さん達をここに連れてきて!ここなら少しの間は安全なはず。良いよね神様?」

「…どうでしょう…」

「神はお前だ。自分の考えで判断しろ…」

ピッコロの言葉にデンデは少し沈黙した後に口を開いた。

「…僕は構わないと思います。今この地球があるのは皆さん達のおかげなのですからそれぐらいは…」

「ありがとう神様!ピッコロさん、ギリギリまで私が教えるけどそれだけじゃ時間が足りないから、私があの世に帰ったらピッコロさんが引き継いで教えてあげて」

「よし、分かった!」

「良いぞ良いぞ!希望が出てきた!」

クリリンが見えてきた希望に喜ぶが、ブウのことを考えると不安も覚えるピッコロである。

「ただし…トランクスと悟天がフュージョンとやらを完成させるまでかなり時間がかかりそうだ…それまでには相当な数の人間が魔人ブウの犠牲になるだろう…もしかしたら絶滅…いや、地球そのものが消滅させられるかもしれん…これは賭けだ…堪えねばならんぞ…」

「もし絶滅させられてもピッコロさん達が生き残ってドラゴンボールさえあれば元に戻せる…悟天、トランクス君…頑張ろうね」

「「はい!先生!!」」

幼さ故の真っ直ぐさを秘めた声に悟林は微笑むと目付きを鋭くしてブウの気を感じる場所を見据えた。 
 

 
後書き
力を見せたためにチビッ子達も素直にフュージョンを学んでくれます。 

 

第37話

 
前書き
悟林の超サイヤ3は悟空より短いです。 

 
取り敢えずクリリンが他の仲間を連れてくるまでの間に簡単な説明をする。

「まずフュージョンについて軽く教えるね。フュージョンするには2人の気を同じの大きさにしないといけないの。手合わせした時に分かったけど、トランクス君と悟天の場合はトランクス君の気が大きいから少し下げてくれる?」

「え?これくらい…かな」

「小さくし過ぎ、もうちょっと上げて」

何度か注意をすると、トランクスの気が悟天と同じになる。

まだ幼い2人には細かい気の調節は難しいのだろう。

「うん、その感覚を覚えておいてね。いきなり超サイヤ人でのフュージョンは難しいし」

「ふう、何で俺が悟天に合わせなきゃならないんだよ…」

「文句言わないの。トランクス君の方が悟天より歳上でしょ?」

頭を撫でてやると照れるトランクスに悟林は可愛いと思う。

「それじゃあポーズを…」

フュージョンのポーズを教えようとした時、多くの気が来たのを感知した3人は外に出るとそこにはチチ達がいる。

「みんな!」

「悟林!悟天!一体何が起きてるんだべ!?」

娘と息子に駆け寄るチチ。

母親の姿に悟天は思わずしがみつく。

トランクスの方を見るとブルマを辛そうに見つめていた。

「ねえ、何があったの?ベジータは?孫君や悟飯君は?」

ベジータや悟空、悟飯がいないことに気付いたブルマが悟林に尋ねる。

「………どうせ言わなきゃいけないことだから言う…魔人ブウって奴にやられてお父さんは生死不明。悟飯は界王神様といたから多分無事だと思うけど、地球にはいない。ベジータさんは…私達を逃がすために1人で闘って…死んだ。」

「「え!?」」

悟空が生死不明、悟飯は行方不明、ベジータは死亡。

信じたくない言葉に全員が驚愕する。

「ご、悟空さ…悟飯…」

「お母さん!お父さんがそう簡単に死ぬわけないでしょ?悟飯だって大丈夫だからしっかりして!」

夫と長男の身に起きたことにショックを受けて気絶しそうになったチチを悟林は支えながら言う。

「ベジータが…そ…そんな………うわあああ~~~っ!!やだ~~~っ!!」

ブルマの泣き叫ぶ声に全員が悲しげな表情を浮かべる。

トランクスと悟天の様子を見て、少し休憩させるかと思ったが、バビディの魔術によってバビディとブウによって多くの人々が菓子にされ、町が破壊されてしまうのを見せつけられてしまい、フュージョンの修行を再開する。

どうやらあの闘いで生き残った悟林、悟天、トランクス、ピッコロを探しているようだ。

早めにフュージョンを覚えてもらわなければ自分達のために死ぬ人々が増える。

「悟天、トランクス君。少しくらい休ませたかったけど、そうはいかないみたい。これからフュージョンのポーズを見せます!みんなもよーく見るように!!まず、2人がある程度の距離を取って立つ。そして、こうする!腕の角度に気をつけて」

悟林は体を正面にしたまま、両腕を体の右側に向かって向けている。

「フュー…」

腕を反対にしながら、微妙な足運びを3歩分。

「ジョン!」

左側になっている手を、勢いよく右にしつつ、手をグーの形に変え、ついでに腰を捻りながら膝を曲げる。

「足の角度に気をつけて!はっ!!」

右腿を左足に寄せ、最後に右足を真横に伸ばし、左足を踏ん張り、そして両手は逆側にいる相手に向けて人差し指を伸ばし、指の先を相手の指先にくっつければフュージョンは完成。

「足の角度に気をつけてね!特に外の足をしっかり伸ばすのを忘れないように!」

フュージョンのポーズを見せられた面々は困惑する。

本当にこれがブウに対抗する術なのかと。

「…みんなの言いたいことは分かるよ?でもメタモル星人の人からすれば凄く大真面目な技なんだからね?一応効果は保証するから…これを左右対称でやるの。やってみて?」

「…左右対称って何?」

「あ、ごめん。難しかったか…口で説明するより見せた方が早いね。クリリンさんお願い」

「え!?お、俺ー!?」

トランクスの疑問に悟林は見本を見せることにして、あのフュージョンのポーズの見本に抜擢されたのはクリリンであった。

「私と体格が近いのクリリンさんしかいないじゃない。さあ、クリリンさん」

フュージョンのポーズをするクリリンはこの時ほど自分の小柄な体格を恨んだことはなかった。

そしてフュージョンの見本を見せると2人にやらせる。

「なあ、悟林ちゃん。フュージョンを悟空達にやらせるつもりだったようだけど、悟空と悟飯はともかくベジータがやってくれるとは到底思えないぞ」

「私もそう思うよ。あのプライドの塊のようなベジータさんだもん…まあ、ベジータさんのプライドは置いといて、一番の理想はお父さんとベジータさんの組み合わせなんだけど、お父さんはリズム音痴なとこあるからもしかしたら悟飯とベジータさんの組み合わせになってたかも」

「あいつこういうの苦手なのか…」

親友の意外な面にクリリンは思わず呟いた。

2人は幼なじみで良く遊んだりすることもあって息がかなり合っている。

フュージョンの完成は自分の予想より早そうだ。

しかし、希望を持てそうだった時、再びバビディの魔術による声が聞こえてきた。

「あいつ…!遊び半分で…!」

今度は人々がチョコレートにされ、町を消し飛ばされてしまう。

死人で1日しかいられないという事情さえなければ超サイヤ人3で始末に向かっている。

トランクスと悟天も家族をやられた怒りもあってバビディと会話してしまったが、ピッコロによって中断される。

しかし、状況の悪化は止まることを知らない。

何者かがトランクスの住所を教えてしまい、バビディが西の都に向かうようだ。

「トランクス君のお母さんのブルマさんが有名人だからね…流石にバレるか…」

「く…くっそ~!誰がチクリやがったんだ!家にはお祖父ちゃんとお祖母ちゃんがいるんだぞ!!」

「悟林ちゃん!今の聞いた!?パパとママも殺されちゃうわ!」

「…悪いけどブルマさん。今は魔人ブウを倒すことに専念させて。ブルマさんのお父さんとお母さんはドラゴンボールで生き返れるから」

「西の都も破壊されちゃうわ!」

「それも2つ目の願いで元に戻せるでしょ?」

「違うの!研究所が吹っ飛ばされちゃったら置いてきたドラゴンレーダーもパアよ!あのレーダー、特殊な部品が使ってあるからそこいらじゃ出来ないのよ!つまり二度と神龍は呼び出せないってわけ…」

「ええ!?何でドラゴンレーダー置いてきちゃったの!?」

「しょ、しょうがないじゃない!こんなことになるなんて思わなかったし…」

ブルマの言葉に悟林は少し悩んだが、覚悟を決めた。

「よし!私がブウと闘って時間を稼ぐ!トランクス君は大急ぎで家に戻ってドラゴンレーダーを取って来て!」

「え!だ…大丈夫?悟林さん…食い止められるの…?」

「時間稼ぎなら何とかなるよ。いざとなったら超サイヤ3に変身する。さあ、急いでトランクス君!」

「は、はい!!」

悟林に促されたトランクスは急いで西の都に向かい、悟林も超サイヤ人2に変身する。

「姉ちゃん…!」

「悟天はここにいること!良いね?何があっても絶対に動かないで。悟天とトランクス君が死んだらアウトなんだから…大丈夫、ちゃんと戻るからさ」

不安そうに悟林を見上げる悟天の頭を撫でて安心させるように言うと、ブウがいる方向を睨みながら超スピードで移動で向かう。

超サイヤ人2であるため、瞬く間にブウとバビディの真正面に移動することが出来た。

「やあ」

「き、貴様は…ようやく見つけたぞ。他の奴らはどこかな?」

「教えるわけないでしょ馬ー鹿。可愛い弟を売る姉がどこにいるっての?随分とお調子に乗ってるようだからお仕置きをしに来たのさ」

「お仕置きだって?へっへっへ…馬鹿な奴だねー。3人でも勝てなかったのに1人で僕の魔人ブウと闘うつもりなんてさ」

「はんっ、魔人ブウや手下がいなきゃただの雑魚が何を言ってるんだか」

「…おい!ブウやってしまえ!今度こそ殺されたいらしいぜ!」

悟林の挑発にカチンと来たのかブウに命令するが、ブウは乗り気でないようだ。

「あははは!これはお笑いだ!天下の魔導師様の唯一の頼みの綱が全然言うことを聞いてないなんてね!」

「うるさい!おい!ブウ!玉に封印されたくなかったら言うことを聞け!!」

「…分かった分かった」

「へー、脅されてるようだけどあんな雑魚に従うなんてもしかしてお人好し?」

意外そうにブウを見るとバビディが喚く。

「魔人ブウは僕の家来なんだから言うこと聞いて当然だ!」

「お前、身の程知らずの発言ばかりしてると寿命縮めるよ…お前も大変だねえ、あんな奴の命令を聞かないといけないなんて」

バビディが言う度にブウの雰囲気が変化していることに気付いた悟林は呆れたように言う。

「何をしてる魔人ブウ!そいつを殺してしまえ!玉に封印するぞ!」

「俺を封じ込めたらお前あいつに殺されるぞ」

ブウの言葉に歯軋りするバビディ。

「でも、あいつ殺してやる。良い子みたいで嫌いだもーん」

「はあ……しょうがないなあ……まあ、慣れないことをするよりはマシだね」

会話による時間稼ぎはこれ以上の続行は不可能。

これからは戦闘で時間を稼ぐしかない。

「どうやって殺そっかな~」

「ふふ、超サイヤ人2じゃ相手にならないから…特別に見せてあげるよ…超サイヤ人2を超えた変身を…!」

気合を入れ、気を上昇させていく。

悟林は超サイヤ人3となってブウと闘い、時間稼ぎを行う。

一瞬で距離を詰めて頭の触角を掴むと横っ面を殴り飛ばし、ゴムのような体質を利用してブウを何度も殴り付ける。

そしてブウを海に向かって蹴り落とすが、すぐに飛び出して気弾を連射してくる。

「(ダメージは与えられているけど…すぐに回復するか。思ったより厄介な奴だね…それにさっきの気弾の撃ち方はベジータさんと同じだ。あいつ…見せてない技や動きも闘っただけで学習出来るの?)」

攻撃を弾きながら海から飛び出したブウを見ると、ダメージはあるようだが、致命的なダメージには程遠い。

そしてブウが腕を伸ばしながら悟林の横っ面を殴るが、超サイヤ人3の気で守られた肉体にはダメージはほとんどない。

そのまま肉弾戦を再開するが、悟林は殴り飛ばされた勢いを利用して距離を取り、魔閃光を放つ。

放った気功波はブウの体を貫通するも、すぐに再生して魔閃光を真似て撃ってきた。

「あっさり真似ないでよ…!自信なくすなあ!!」

ブウの気功波を弾き返すとブウは弾かれた気功波を後方へ弾いた。

弾いた気功波は大爆発を起こして余波が悟林を襲う。

「くっそぉ…!」

ブウが弾いた気功波に当たりそうだったバビディが喚いているが、気にせずに口を開いた。

「いやあ、正直ここまでだとは思わなかったよ。お前天才だね…ここまであっさり技を真似られたら結構ショックだよ」

悟林の言葉に鼻高々になるブウ。

トランクスの気が動き出したのを見て悟林は超サイヤ人3を解除する。

「おい!何故戻る。お前と闘うの面白い、もっとやるぞ!」

「それは嬉しいね。でも私にはあまり時間が残されてないんだ…ブウ、今から2~3日後に私より強い奴が現れる。お前もどうせならもっと強い奴と闘いたいでしょ?それまで地球を壊すのは止めなよ」

「強いのか…?そいつ?」

「まあね…惜しいな…私も時間制限がなかったらもっと楽しめたのにさ…もしお前が死んだら楽しく遊べるように頼んどくよ……それじゃあさよなら…太陽拳!!」

太陽拳で目眩ましをして、即座に天界へと逃げ帰る。

逃げ帰る途中でバビディの気が消えたのを感じた悟林はブウがバビディを殺したのだと理解した。

「そのうちやりそうだったけどさ」

自分が復活させた魔人に殺されたバビディだが、同情はしない。

そんなことよりも今は急いで天界へと向かうのであった。

魔人ブウとの時間稼ぎを終えた悟林が天界に戻るとピッコロが迎えてくれた。

「悟林、バビディが死んだ」

「うん、呆気なかったね」

ピッコロに言われるまでもなく、バビディの気が消えたことには気付いていたが、あれだけやりたい放題だったバビディがあっさり死んだことには少し拍子抜けした。

「だが、バビディがいなくなったことでブウのしていることは更に酷くなったがな」

統制する人物がいないだけ、全てにおいて遊び半分で性質が悪い。

「…少なくても2~3日の間はここなら大丈夫だと思う。下界の人達には気の毒だけど……やっぱり超サイヤ人3じゃ倒しきれそうにないね。倒す前にあの世に帰るところだった…今の私に残された時間は1時間もないだろうし」

「ならばデンデにエネルギーを復活させてもらえ」

「これはあの世に戻らないと駄目」

少しでも悟林に現世に残ってもらうようにするピッコロだが、このエネルギーはあの世に戻ることでチャージされる。

デンデの力でも仙豆でも駄目で、つまり何をしても短くなった時間は変わらない。

占いババによって残り30分しかないことを知らされる。

「トランクス君はまだ戻らないのかな?」

「あいつのことだ…すぐに戻るだろう…今回のことは残念だったな…」

「うん、久しぶりに家でお母さんの料理が食べられると思ったのにさ。残念…お父さん達との勝負も半端に終わっちゃったし…色々と残念だなあ!」

やり残したことがあるのに出来ないのは不満なのか空を見上げながら愚痴った。

「相変わらずだなお前は」

7年前と比べてあの世での生活に慣れたせいか、多少ズレてしまったが、本質は全く変わっていない。

「ピッコロさんも相変わらず変わってないじゃない。変わらないのはピッコロさんの弟子らしくて良いんじゃない?」

「…まだ俺を師だと思っているのか?」

随分と実力に差をつけられてしまったと言うのに今でも師匠だと言ってくれる悟林にピッコロは目を見開いた。

「当たり前じゃない。ピッコロさんがいなかったら魔閃光も魔貫光殺砲も使えなかったんだから」

この2つの技には随分助けられている。

ピッコロがいなければ今の自分はない。

「そうか…後は俺達に任せておけ。お前はあの世に戻っても修行を怠るな」

「するわけないじゃない。やることはまだまだ山ほどあるし」

自分には課題が山ほどあるのだ。

修行を怠る余裕などない。

少ししてドラゴンレーダーを取りに行っていたトランクスが戻ってきた。

「悟林さん!取ってきたよドラゴンレーダー!」

「ありがとうトランクス君!」

「凄かったよな悟天!超サイヤ人3!」

「うん!凄い気だった!」

最初に見せようとした超サイヤ人3の変身は途中で中断してしまったので完全な変身のパワーに幼い2人はすっかり憧れを抱いてしまったようだ。

「そんなに喜んでもらえたなら7年間の修行は無駄じゃなかったわけだ…どうせ30分ならもう一度見せてあげよう!」

「おい!そんなことをすれば残りの時間が…」

「どうせ30分しかないなら大した違いはないよピッコロさん。それならこの変身を間近で見せて2人の糧にさせた方がブウを倒す大きな力になる。2人も見たいよね?」

「「見たい!」」

ピッコロの制止に笑みを浮かべると2人に確認を取る。

2人も当然、間近での変身が見たいのか即答であった。

「それじゃあ、しっかり見とくんだよ!」

最後の力を振り絞って超サイヤ人3へと変身する悟林。

しかし、変身出来たのはほんの僅かな時間で30分の残り時間を使いきってしまった。

それにより現世からあの世に戻ることになるのであった。

「それじゃあ私は帰るよ。後は頼んだよ悟天…トランクス君。ドラゴンボールでナメック星に飛ばしてもらってナメック星のドラゴンボールを使わせてもらいなよ。ナメック星のドラゴンボールならベジータさんも生き返れるから」

「ほ、本当に!?パパが!?」

「勿論、だから頑張ってブウを倒して…お父さんと悟飯が戻ってくるまで…悟天のこと頼んでいいかな?」

「うん!分かった!」

「ほら!お母さんも元気出して!2人のことだから生きて帰って来るし…お母さんにはまだ悟天がいるじゃない!」

「で、でもよ…もし魔人ブウに殺されちまったら…」

夫の悟空は生死不明で長男の悟飯も行方不明、長女の悟林はこれからあの世に帰ってしまう。

残るは次男の悟天のみなのだから寂しくて仕方ないだろう。

「大丈夫、2人なら必ず魔人ブウを倒せる。フュージョンさえすれば私を超える戦士になれる。一応閻魔大王様にお父さんと悟飯について聞いてみる。もし死んでたら界王様を通じて連絡を寄越すから」

「あの…お姉さん。」

「何?」

ビーデルに話しかけられた悟林は彼女の申し訳なさそうな表情に首を傾げた。

「7年前のセルのことを悟飯君から聞きました。お姉さんと悟飯君がセルを倒してくれたんですよね?それなのに私のパパが…」

「ああ、サタンさんがセルを倒したってこと?別に良いよそんなこと。テレビとかそんなの迷惑なだけだし、寧ろサタンさんがスケープゴートになってくれて助かってるよ。有名になりたくて闘ってるわけじゃないし、私は強い相手と闘いたかっただけだから。だからビーデルさんはそんなこと気にしなくていいの、これからもサタンさんには私達の都合の良いスケープゴートでいてくれないとねぇ…それよりもし悟飯が帰ってきたら悟飯をよろしく。帰ってきて再認識したけど、あの子…まだまだ甘ったれなとこあるからさ。よろしくね彼女さん」

「か、彼女…!?わ、私達はそんな仲じゃ…!」

「照れない照れない」

ニヤリと笑いながらからかってくる悟林にビーデルは何も言い返せなかった。

「…姉ちゃん」

不安そうに見上げてくる悟天。

頼りになる存在が一気にいなくなり、不安で一杯なのだろう。

まずはブウを倒すことが先決であり、それさえ乗り越えれば地球とナメック星のドラゴンボールで完璧に元に戻せる。

分かってはいても、せっかく会えた姉と遊べもしないうちに別れてしまうことは嫌だ。

「悟天、お父さん達が帰るまでお母さんを頼むよ」

「うん…」

「長生きして、下界を満喫してからあの世に来るんだよ。お姉ちゃんは天国で待ってるから」

悟林に抱き上げられると最後となる触れ合いに頑張って泣かないようにしている悟天は、我慢のしすぎで顔が赤くなっている。

抱き締めて頭を撫でると今度こそあの世に帰ることになった。

「それじゃあみんな!死んだらまた会おうねー!」

「悟林さーん!俺達頑張るよー!」

トランクスの声に笑みを浮かべて悟林はあの世に戻り、早速閻魔大王に悟空と悟飯の生存を確かめる。

閻魔大王は名簿を調べてくれたが、悟空と悟飯の名前はなかった。

「来とらんぞ、お前の父や弟ならすぐに分かるはずだしな」

「そっか…ありがとう閻魔大王様!」

2人は無事に生きていることを確認した悟林は、界王星に向かおうとした時であった。

「あー、やっぱり悟林じゃねえか!」

「え!?お父さん!?」

目の前に現れたのは父親の悟空であり、体の包帯が痛々しいが元気な姿であった。

「お父さん、生きてたんだ。どこにいたの?」

「オラと悟飯は界王神様に助けられてな、今まで界王神界にいたんだ。それよりどうしておめえがあの世に戻ってんだ?まだ1日はまだ過ぎてねえだろ?」

「実は…話すよりお父さんに見てもらった方が早いね」

「おう」

悟空が悟林の頭に触れると記憶を覗いていく。

バビディや魔人ブウのこと、超サイヤ人3への変身で現世にいられる時間が極端に縮んだこと。

そして悟天とトランクスが最後の希望となってフュージョンを習得するために修行に励んでいること。

ベジータが3人を守るために命を散らしたこと。

悟林の頭から手を放すと悟空は複雑な表情で空を見上げた。

「そうか…ベジータが…」

「ベジータさんが助けてくれたから何とか今の状況があるんだ。感謝しても足りないよ」

「そうだな、よし…悟林。おめえも界王神界に来てくれ。悟飯が修行してる間に組み手とかしてえし」

「分かった。お父さん達のことも聞かせてね」

悟空の手を握ると、瞬間移動で界王神界に。

そこにはピッコロと同じ道着を着た悟飯が何故か剣を振っていた。

「ね、姉さん!本当に姉さんだ!」

「おー、悟飯。ようやくまともな格好になったね。グリーンヤサイマンの服だったら殴ってたよ」

「オラが頼んだんだ」

「お父さんナイス」

流石の悟空もグレートサイヤマンの格好はダサいと思っていたようで、悟飯が幼少期から着ていたピッコロの道着を界王神の力で出してもらったのだ。

「グリーンヤサイマンじゃなくてグレートサイヤマンです!格好いいのに…それより姉さんはどうしてここに?まだ1日経ってないでしょ?」

「私もどうして悟飯が剣を持ってるのかを聞きたいね」

取り敢えず互いの情報を交換することに。

悟空と悟飯は界王神によって救出され、界王神界で手当てをされていたようだ。

界王神界で採れる薬草だからか効果は素晴らしく、酷い怪我をしていた2人が短時間で自由に動き回れるくらいには回復したらしい。

「そうだったんだ…あの、お父さんと弟を助けてくれてありがとう。界王神様」

「いいえ、キビトがいれば復活パワーで完治出来たのですが」

「キビト?」

「天下一武道会で僕と試合するはずだった人ですよ。ダーブラって奴に殺されたんです」

「ふうん、じゃあドラゴンボールで生き返らせてあげないとね。ところで悟飯、剣なんて珍しいじゃない。お前が剣を使ったのは4歳くらいの時が最後だよね。」

「えっと、この剣はゼットソードって言う界王神界に伝わる凄い剣で…手にした者に凄いパワーを与えてくれるらしいんだけど…」

「へー」

悟林から見ればどこにでもありそうな剣にしか見えない。

凄いパワーを与えると言う割には悟飯の気は全く変わっていない。

「ねえ、何でお父さんじゃなくて悟飯なの?はっきり言って凄いパワー手に入れた方が良いのはお父さんじゃ…」

「潜在能力は悟飯が上だからな。もしかしたらセルと闘った時みてえな力を引き出せるんじゃねえかなって…思ったんだけどよ」

頭を掻きながら全く肝心の戦闘力に変化がない悟飯に悟空もどうしたもんかと頭を悩ませる。

「どれどれ、悟飯。お姉ちゃんにそれ貸して」

「あ、うん」

「いいっ!?け、結構重たいね…!もしかしてこれを自由自在に使えるようになって初めてとんでもないパワーを手に入れられるのかな!?」

悟林はゼットソードを振り回しながら界王神に尋ねる。

「あの、界王神様。悟飯の修行が終わるまでここにいて良いかな?」

「構いませんよ。」

「ありがとう界王神様…あの、出来れば何か食べたいんで調理場を貸してもらえないかな?材料も使わせてもらえれば…超サイヤ人3に変身したらお腹空いちゃって…久しぶりに腕振るっちゃうよーっ!!」

「本当か!?オラも腹減ったぞー」

やる気満々な悟林の表情に腹を擦りながら期待する悟空。

「悟飯も食べる?」

「うん…」

恥ずかしそうに鳴る腹を擦りながら頷く悟飯。

それを見た界王神は苦笑しながら案内してくれた。

早速調理場を借りて料理を作り始める。

「……こ、これは凄い」

界王神は目の前で展開されている料理に純粋に驚いた。

次々と作られては皿に載せられる料理。

数も多いが、盛られている量が凄まじい。

「2人共、並べてくれる」

「へーい。あ、悟林。オラ炒飯食いてえ」

「はいはい、悟飯は?」

「僕は酢豚を」

「ほーい」

2人のリクエスト品を作り、自分は食べたい餃子を山盛り作って終了である。

「さあ!お腹一杯食べてね!」

「おおっ!頂きまーす!」

「姉さんの手料理久しぶりだ…!」

「………」

界王神は目の前の光景に唖然としていた。

とんでもない数と量の料理が瞬く間に無くなっていくことに。

そして全ての料理が空になった時、3人は満足そうにしていた。

「ぷはーっ!食った食った!」

「ご馳走様でしたっ!」

「はい、お粗末様」

食器を全て片付けて食後のお茶で一息。

「それにしても凄そうだよね。超サイヤ人3って…」

「興味あるの?よし、悟天やトランクス君には見せたのに悟飯だけ見せないのもあれだし、お父さんにもしっかり見せてなかったし。丁度良いや、外に出よう!超サイヤ人3を見せてあげる!」

超サイヤ人3を見せるために外に出るのであった。

そして場所は現世に戻り、フュージョン修行の休憩中にトランクスは共に休憩していた悟天に呟いた。

「なあ、悟天」

「何?トランクス君?」

「悟林さん…強かったな…」

「うん!凄く強かった!」

「強くて優しくて格好良くて…」

「うん!」

「……可愛かったよなあ…」

「…トランクス君。顔赤いよ?」

トランクスの変化に悟天は暑くなったのかと思い、水を貰いに行くのであった。 
 

 
後書き
トランクスが最大速度でレーダー回収。

フュージョンの犠牲者はクリリン。 

 

第38話

 
前書き
超サイヤ人3リストラ

超サイヤ人3

原作最強の形態なのだけども、強力な反面、燃費が最悪過ぎて本領発揮出来る時間が限りなく短い。

超サイヤ人3よりも強力な形態を手に入れる悟林はこれを封印することになる。 

 
悟林は早速超サイヤ人3への変身を見せる。

拳を握り、見る間に気を高めていき、悟林の気の力で界王神界の大気が震えている。

超サイヤ人になった姿が徐々に変化を始めた。

「……ね、姉さん凄い……まだ気が上がっていく」

「ああ…」

悟飯も悟空も少々興奮した様子で拳を握り、変貌を遂げていく悟林を見つめていた。

どういう事なのかは良く分からないが、悟林の髪が伸び始め、超化時独特の、逆立つ金髪が伸びて悟林の腰より下にまで来る。

気もそれと共に成長するみたいに上がり、ただ立っているだけで、空気が震えるほどの気を発している悟林。

「これが、超サイヤ人3ですか……」

界王神も冷や汗を流しつつ、超サイヤ人3になった悟林を見つめる。

「す、凄いよ、姉さん!」

「苦労したんだからね、これになるのは。悟飯、お父さん。いっちょやる?」

「え?や、止めておくよ……今の僕じゃあ、すぐダウンさせられちゃうだろうし……」

「はあ、お前って子は…子供の頃より根性が無くなっちゃって…お父さんは?」

「そうだな、じゃあ軽くやってみっか」

悟空も超サイヤ人2に変身して軽く手合わせしてみるが、やはり超サイヤ人3の力は圧倒的で、あっさりとやられてしまうが、悟空はどこか満足そうだった。

悟飯も悟飯でゼットソードを振り回し、修行を再開する。

「因みにお父さん、これがフュージョンだよ。ポーズが少しでも間違ってたら失敗しちゃうから気を付けてね」

悟空は悟林からフュージョンの修行を受けていた。

後にポーズは形になったものの、やはりと言うか相手に合わせるのに問題があるようだ。

フュージョンする際は相手に合わせてもらうしかないだろう。

そして修行し始めてから1日が経過した。

元々武術の素養がついているだけあって、剣術も自己流ではあるがめきめきと上達し、ゼットソードの重量に振り回される事もなくなっていた。

剣の重みで腕力が相当ついたようで、上手く剣の重みを使い、手元で細かい操作をして、素晴らしい剣術を目の前で披露してくれている。

完全に片手で扱えるようになったそれの切っ先を、悟飯は地面につき、悟飯は息を吐いて汗を拭った。

岩に腰かけている悟空と悟林が同時に拍手を送る。

「凄え凄え!よく1日でそこまで使いこなせるようになったなあ!」

「うんうん。剣に振り回されてる感じだったけど、今は使ってるって感じだよ…肝心の戦闘力は大して変化ないみたいだけどね…もしかして切れ味が凄いだけとか?」

もしそうならブウには全く通用しなさそうだが。

「よし!じゃあ試してみようぜ!まずはこの岩だ」

悟空は悟林と共に岩から下りると座っていた岩を持ち上げる。

「行くぞっ!ほれーっ!!」

大きなボールを、一直線に投げるように大岩を放り、悟飯は剣を持つ手に力を入れ、剣の重みと力で岩に振った。

「たーっ!」

大岩はゼットソードに斬られ、真っ二つに割れて悟飯の背後に飛んで地面を削った。

「へー、中々の切れ味…次は何にしようかなー」

次に投げる物を探す悟林に界王神が待ったをかけた。

「どうせなら、もっと硬い物で試してみましょうよ」

そう言って手の平を空に向けると界王神の頭上に微かな歪みが生じ、小さい音がして、空中に線が走る。

光の線が正方形を形作ると、黒くて鈍い光を放つ重量のありそうな石が宙に浮いていた。

「悟林さん、これを」

手を振ると、悟林の方へ放物線を描いて飛ぶ。

受け取った悟林は、先ほどよりもやはり重量があるらしいそれを、一瞬踏ん張って受け止めた。

「これって、ダイヤより硬いのかな?」

「ダイヤなんて、目じゃない位に硬いですよ。何しろ、宇宙で一番硬いと言われている“カッチン鋼”という物ですから」

「へえ!じゃあ早速やるよ!空振りなんて止めてよね悟飯!」

「よし!良いよ姉さん!」

「そおれっ!!」

先程の悟空と同じようにカッチン鋼を放り投げると悟飯もゼットソードを振りかぶったが、あっさりと折れてしまった。

「…界王神様…自慢のゼットソード折れちゃったけど?」

悟林がポツリと呟くと、界王神は顎を外しそうな状態であった。

「そそ……そんな……ゼ、ゼ、ゼ……ゼットソードが……折れ、折れ……さ…最強の剣が…」

「あーあ。界王神様があんな硬いので試してみろって言うから……」

「だ、だって……手にした者は……世界一の力を持つ事が出来ると……こ、この聖域の、伝説の剣なのですよ……?」

「でも、実際折れたし」

情け容赦のない事実を言う悟林。

伝説というのはどこかしらで歪曲されていたりする事が往々にしてあるため、これもそうなのだろう。

ばっきり折れている剣を見つめ、悟飯がそれを下に落とすと相変わらず重たそうな音を立てて、剣は地面にめり込んだ。

「ちょっと大げさな伝説だったみたいですね……でもまあ、おかげで腕力は随分と上がりましたよ。あのゼットソード、すんごく重かったから。もしかしたら、そういう事で世界一の力が手に入るってことかもしれませんよ」

悟飯の言葉に救いを得たように、拳を握り込む界王神。

「な、なるほど……普段で力がそこまでついたのなら、超サイヤ人になれば更に相当のパワーアップになっているはず…!う…うん!そうですよ……きっとそれが世界一の力…!」

「単純な腕力で倒せるとは到底思えないよね」

「ああ、魔人ブウ以上ってのはちょっとなあ…」

確かに強くはなるだろうが、あの魔人ブウに腕力がついたからって勝てるとは思えない。

悟飯が変身出来るのは良くて超サイヤ人2までで、超サイヤ人3の攻撃にも耐える魔人ブウに通用しないだろう。

全員が唸っていると、界王神の背後から声がかかった。

「へっへ~、違いますよ~~だ」

先ほどまで全く気配がなかった人物に、それぞれ驚く。

見れば、界王神と格好が似ている老人。

「ありゃ?何だ、あの爺ちゃん……」

悟空の疑問に老人が答える。

「儂ゃあよ、おめえのよ、15代前のよ、界王神なんだな~これが」

「え…!?じゅ…15代前の界王神様ですか!?」

「そうなんだな~、むかーし昔よ、やたらめったら強くてよ、悪ーい奴がおってよ。まあ今の魔人ブウほどじゃあないがな~、そいつによ、あの剣に封じ込められちまったんだな~~これが。儂の恐ろしさにビビってよ。そうしたんだな~」

「あのーお爺さん界王神様…封じ込められるくらい恐れられるって…お爺さん、そんなに強いの…?」

「んー、お前さん。サイヤ人じゃな?戦闘力で判断するのはサイヤ人の悪い癖じゃな、そいつが恐れたのは儂のパワーではない。儂の恐ろしい“能力”なんじゃ」

「え?恐ろしい能力?何それ?」

「聞きたいか?」

「それはもう」

「ふふ~、聞いて驚け。儂ゃあよ、超能力でよ、どんなに凄い達人でもよ、隠された力をよ、ど~んとど~~んと限界以上に引き出すことが出来るんだな~。これが、うへへへへ…聞いたことあるか?こんな能力」

「おおーっ!!」

「あー、悟飯が昔してもらったナメック星の最長老様に潜在能力を引き出してもらったのと同じ能力ね」

界王神が感心している隣で悟林は悟飯から聞いたナメック星の最長老にしてもらったことを思い出し、それを口にした。

「馬鹿もーん!ナメック星人の能力と一緒にするな~っ!儂の能力はそんなのとは比べ物にならん威力なんじゃからな~っ!!」

「でも見てないし、受けてもいないから比べようがないしね」

「むっ!よーし、そこまで言うのなら仕方ないのう。儂がお前の潜在能力を引き出してやるわい!後、あの剣を抜いたお前も来い!」

「え?僕もですか?」

「あの剣を抜いて振り回せるような者ならよ。儂にかかればよ。ぜ~ったい現世一になれるぞ。しかしよ……あの剣抜いてよ、儂を出してくれるのはよ、界王神の誰かだと思ってたらよ……サイヤ人とは言え下界の人間だとはな~、世も末じゃの~」

「も…申し訳ありません…」

老界王神の言葉に気まずそうに返す界王神。

「本当なら1人ずつなんじゃが…あそこまで馬鹿にされては黙っとれんからな~。今回は超フルパワーでやってやるわい。では行くぞ!魔人ブウを倒してこい!」

手を上下に振り振り、腰を振り、悟林と悟飯の周りをハイペースで踊り出したのをしばらく見ていたが、ずっとその行動を続けている。

「あ…あの…それは…」

「静かに!大切な儀式なのだっ!!」

「どれだけかかるの?」

「2人いっぺんにするから本来は倍の儀式に10時間、パワーアップに40時間だっ!!しかし今回は超フルパワーでやっとるから半分の時間じゃ!」

つまり儀式に5時間、パワーアップに20時間というわけだ。

「オ…オラ、ちょっと修行してくる。頑張れよおめえ達」

「そ…そんな…姉さん、どうしよう…姉さん?」

「すう…すう…」

隣の悟林を見遣ると、立ったまま寝ている悟林であった。

「ね、姉さん…!」

始まって早々に寝てしまった図太い姉の姿に悟飯は起こそうにも大きな声を出すわけにはいかないため、1人で老界王神の儀式を見ることになるのであった。

そして長ーい儀式がようやく終わり、パワーアップの時間となるわけだが、既に悟林は座りながら中華まんを齧っていた。

「ね、姉さん…行儀が悪いよ…真面目にやった方がいいんじゃ…」

「それ、漫画読みながらやってる界王神様に言ってくれる?」

「で、でもブウが変化したようだし…」

魔人ブウの気が大きく変化したのだ。

今までの無邪気な気から邪悪な気に。

少しくらい危機感を持った方が良いのではないか?

「悟天達にはフュージョンを教えたし、やばくなったらピッコロさんが動くよ。ピッコロさんは少なくても平和ボケしたお前より遥かに頼りになるからね」

「うぐ…」

隣で呻く悟飯に構わず食べ続け、食べ終えるのと同時に瞑想をする。

現世でやるべきことはやってきた。

もしこのパワーアップが駄目だった場合は現世の希望である2人が何とかしてくれることを祈るしかない。

しかし、潜在能力と言っても相当修行した後なのでどれだけの力が眠っているのか。

父親の悟空や仲間からは悟飯と同じく潜在能力が高いと言われてきたが、悟飯みたいな火事場の馬鹿力を発揮したことなどない。

「(少しだけ解放してみるかな)」

気を解放すると予想以上のパワーが吹き出して隣の悟飯を吹き飛ばしてしまった。

「え?嘘ぉ…」

唖然としながら大きく吹き飛んだ弟の姿に思わず呟き、老界王神はニヤリと笑った。

「どうじゃ?儂の能力は?」

「す、凄い…少し気を解放しただけなのに…」

超サイヤ人3を超える勢いに悟林は自分にまだこれほどの力が眠っていたのかと驚く。

「お前の度重なる修行の賜物じゃよ。お前も戻ってさっさと座れ、時間が長引くぞ」

「は、はい…」

吹き飛ばされた時にぶつけた頭を擦りながら再び座る。

悟飯の表情には老界王神への不信はもうなかった。

「なあ、潜在能力って元々持っている隠された…本当の力…だよな」

「え…ええ…そうだと、お…思いますが…」

悟空の問いに界王神は驚きながらも答えた。

「そ…そりゃねえだろ…あいつどれだけ強くなりゃ気が済むんだ…ってことは悟飯も相当強くなるってことだろ…あいつら揃ってどれだけの力を隠してやがったんだよ…」

双子の潜在能力の高さは悟空も理解していたつもりだが、いざそれを見せられると唖然となる。

しかし、状況はますます悪化していき、変化したブウによって人類はほとんど絶滅してしまい、終いにはブウに天界に乗り込まれ、精神と時の部屋で闘うことになってしまう。

精神と時の部屋で修行したことでパワーアップした悟天とトランクスの融合戦士であるゴテンクスは超化と独特な必殺技で応戦する。

しかし、超パワーアップによる影響か高飛車な性格となってしまったゴテンクスは調子に乗ってしまい、ブウを精神と時の部屋から抜け出すきっかけとなってしまい、外に出た直後に仲間はチョコレートにされて食べられてしまう。

直後に出てきたゴテンクスは超サイヤ人3に変身しており、そのパワーでブウと互角以上に渡り合うものの、超サイヤ人3はフュージョンの融合のエネルギーを大きく消費してしまい、後一歩のところで超化が解けてしまい、フュージョンが解けてしまう。

誰もが慌てるものの、老界王神のパワーアップは既に完了しており、それについて尋ねても呆れる理由が返ってきた。

「ピンチになってから行った方がドラマチックじゃろうが」

「どうすればパワーアップした力を引き出せるの?」

「お前達、良くスーパー何とかに変身するじゃろ。あの要領じゃ、気合いを込めりゃあええ」

「超サイヤ人の要領ですね……分かりました」

拳を握り、気を入れた悟飯を中心に、爆発が起きた。

目の前にいた老界王神に至っては、悟飯から大きく離れた場所に飛ばされていた。

「す、凄い…!凄いよ姉さ…」

「ふんっ!!」

悟林も同様に潜在能力を解放し、悟飯よりも数段上の気を放出した。

これには界王神どころか悟空も堪えきれずに吹き飛ばされてしまう。

「へえ!これは良いや!私の力が究極に高まった感じ!!」

「ご、悟飯以上のパワーだ…もう滅茶苦茶だ…」

あまりのパワーに呆れたように笑う悟空。

「…そりゃそうじゃろ。儂の能力は全ての力を解放する。それはスーパー何とかも含めてじゃ。生まれついての潜在能力は同じでも肉体の強さや力の引き出しも悟林の方が上なんじゃから悟飯より強くて当然じゃ」

起き上がった老界王神の説明に誰もが納得する。

「…なるほど」

悟飯よりも強い力と聞いて完全な超サイヤ人2と超サイヤ人3が思い浮かんだ。

それに至れるくらいに強いなら悟飯より強くて当然だと言うのだろう。

「と、とにかく終わったなら急ぐぞ!オラの瞬間移動で地球に戻るぞ悟飯!」

「は、はい!…でも…」

「悪いね悟飯。私はあの世の人間だから行きたくても無理なの…これでもう悟飯やみんなに会うことはないよ。お前やみんながあの世に来るまでは…頑張れ悟飯。お父さんに迷惑かけないようにするんだよ。」

「姉さん…僕のこと昔みたいに信用してくれないの…?」

「子供の頃なら信用してた。お前はまだ勘が戻ってないんだから心配で仕方ない。信用して欲しかったら鈍らない程度の修行すれば?」

からかいながらそう言って悟飯の横を通りすぎると父親の悟空に抱きつき、悟空もそれを受け入れる。

「お父さん、悟飯をお願いね?あの子危なっかしいから」

「ああ、大丈夫だ。オラも出来るだけのことはするさ…死んでるおめえにこんなこと言うのも変だけどよ。元気でな」

「うん、死んだらまた会おうね」

縁起でもないが、2人が会うには悟空が死んであの世に行くしかないのでこう言うしかない。

悟飯は父親と自分の扱いの差に複雑な表情を浮かべていた。

そして悟空の瞬間移動で地球に戻った悟飯。

そして闘いの行く末を水晶玉で見つめる悟林。

「頑張れ悟飯…」

現世で一番強い戦士となった弟を応援する。

悟飯とブウの闘いが始まったのだが、結果として悟飯はブウには勝てなかった。

いいところまで行ったのだが、潜在能力を開放して強くなった自分の力に慢心してしまい、ブウに逃げられてしまう。

それだけならまだしも、次に現れたブウの挑発によって悟天達がフュージョンしてしまい、そのパワーと足りない頭脳を補うためにピッコロと一緒にゴテンクスが吸収されてしまい、一気に逆転されてしまう。

悟空も援護してくれているが、実力差もあって焼け石に水だ。

時間稼ぎをしようにも悟飯の動きは師匠であるピッコロを吸収したことで完全に見切られており、時間稼ぎすら出来ない。

「ま、まずいですよ悟林さん。このままでは悟飯さんが…」

「いや、最初の様子見の攻防の時に悟飯の攻撃は確かに効いていた。多分、そこまで隔絶とした実力差はない…悟飯の鈍りとブウがピッコロさんを吸収したからだ。あんの、馬鹿…」

魔人ブウの体質を考えればそれなりの実力差があればほとんどの攻撃を受け流せる。

回避していると言うことは直撃を受ければブウもダメージを受ける。

だが、そんなのは何の慰めにもならないわけで。

「7年も修行サボったツケが出てるじゃない…ゴテンクス君のフュージョンが解けるまで保つかな…?」

「これは計算違いじゃったのう…まあ、これで儂の努力が無にならんで済んだわけじゃが。悟林、お前助けに行ってやれ」

「へ?あ、私はもう現世に行っちゃったから…」

「…そうですご先祖様。実は孫悟林はもう二度と現世には行けないのです…」

「んなこたあ、知っとるわい。代わりに儂の命をくれてやるんじゃ、それでお前は生き返れる」

老界王神の命を人間である悟林に託す。

それを聞いた2人は驚愕で目を見開く。

「か、界王神様の命を私に!?」

「ま、待って下さい!そ、それならせめてこの私の命を…私もそれぐらいは役に立ちたい…!」

地球に来てからほとんど役に立てていないことを気にしていたのか、界王神が代わりに自分の命を差し出そうとする。

「無理せんでいい。お前はまだ若い…儂はどうせ後千年ぐらいしか生きられんじゃろから…」

「か、界王神様…」

そして老界王神が座り、悟林に自分の命を渡してくれた。

「…では、さらばじゃ。う…!」

「か、界王神様…!」

命を悟林に渡したことで死亡し、力なく倒れる老界王神。

頭の輪が消えたことで自分が生き返ったのを確認する。

「ありがとう界王神様…!必ず魔人ブウを倒してみせるから…!」

「よし!早く行け!!」

「へっ!?」

頭に死人の証である輪が現れた途端に起き上がった老界王神に悟林は唖然となる。

「ほれほれっ!儂の死を無駄にする気か!」

「あ…はい…分かりました…」

「ほれ、お前が悟林を地球に連れていってやれ」

「わ、分かりました」

死んでも元気な老界王神に2人は唖然となりながら地球へ向かおうとしたのだが。

「あ、そうだ。潜在能力を解放した状態で超サイヤ人に変身すればもっと強くなれるかな?」

「いや、儂の能力は超サイヤ人の力も秘められた力として解放しておる。超サイヤ人に変身などしたら逆に弱くなるばかりか疲れるだけじゃぞ」

「あ、超サイヤ人含めてのパワーアップなんだっけ」

「まあ、お前ならもう超サイヤ人に変身する必要はないじゃろ。儂はお前の潜在能力を引き出したが、それをどう伸ばすかどうかはお前次第じゃ。精進を怠るんじゃないぞ」

「勿論!ありがとう界王神様!この恩は一生忘れないよ!今度地球のお煎餅とか羊羮とかのお茶菓子を贈るから!」

「あ、それよりも儂は若い娘の…」

「では行きますよ!カイカイ!」

「おい!」

老界王神が言い終わる前に界王神が瞬間移動し、悟飯とブウが闘っている場所から大分離れた場所に現れる。

「それじゃあ界王神様!ありがとう!もう1人の界王神様にもよろしく!」

「分かりました。遥か遠い界王神界であなたの武運を祈っています!頑張って!」

「よーし、待ってろーっ!!」

界王神が瞬間移動で界王神界に戻るのを確認した悟林は一直線に闘いの場へ向かった。

因みに戻った界王神は老界王神に説教を喰らうことに。

そしてブウが悟飯にとどめを刺そうとした直前に背後からの奇襲を仕掛け、ブウを岩に叩き付ける。

「ご、悟林さん!?」

悟飯の治療に駆け付けたデンデがもう二度と現世に戻れないはずの悟林の登場に驚いている。

「やあ、神様。数日ぶり」

「お、おめえ、どうしてここに!?」

同じくデンデの治療を受けて全快している悟空も困惑している。

「えーっと、生き返っちゃった。詳しい話は後でするよ…。まずは…」

岩から飛び出してきたブウが悟林を視界に入れる。

「…貴様…確か前に会ったな…そうだ、妙な変身をした奴だ…何だ、助けに来たつもりか?馬鹿な奴だ…あの時の魔人ブウとは根本的に次元が違うのが分からんのか?」

「そう言うお前もピッコロさんを吸収したにしては馬鹿なままじゃない。私が何の勝算もなく駆け付けたと思ってるの?」

見下すブウに不敵な笑みを向ける悟林。

「口が過ぎるぞ…ハッキリ言うが、貴様なんぞが何をしようと絶対にダメージすら与えられはせんぞ」

「ふん、逆だよ。お前程度じゃあ、どうしようと私にダメージを与えられない」

「雑魚が…余程死にたいらしいな…良かろう!貴様から先に殺してやる!」

ブウが早速殴り掛かってくる。

悟林は潜在能力を解放し、ブウの腕を掴んだ。

「ぬうっ!?」

「あ、ごめんね。あんまり遅いから掴み止めちゃったよっ!!」

腕を支えにしながらブウの顔面に蹴りを入れた。

それによりブウの鼻から鼻血が流れる。

「鼻血出てるよ。太っちょの時とかみたいに鼻がない方が良かったんじゃないの?」

「……粋がるなよ!!」

体の穴から蒸気を噴き出して怒りを露にしながら今度は気弾で攻撃してくる。

「てりゃあっ!!」

それを足で蹴り返し、ブウが頭を亀のように引っ込ませながらかわした隙を突いて顔面を殴り飛ばし、吹っ飛んだブウを超スピードで追いながら滅多打ちにし、そして触角を掴むと再び岩に叩き付け…。

「ほい」

穴に気弾を落として大爆発が起きる。

「こらー、出てこいブウ。時間稼ぎで不利になるのはお前なんだよ?」

フュージョンの時間制限は30分。

悟飯との闘いで経過した時間を考えるともう10分もないはずだ。

場所は界王神界に戻り、老界王神からの説教を受けていた界王神は水晶の中を覗いて興奮していた。

「す、凄いっ!悟飯さんでさえ敵わなかった吸収してパワーアップしたはずの魔人ブウが手も足も出ないなんて!!」

「当然じゃ、元々飛び抜けた潜在能力を持ち、その上で地道な修行を続けて来たんじゃ。おまけに儂の能力でパワーアップしたんじゃから多少の吸収じゃどうにもならんくらいに最強に決まっとるわい」

次の瞬間、ブウの手が悟林の足を掴んで引きずり込もうとするが、それよりも早く足を上げてブウを引きずり出し、触角を掴んでブウの横っ面を殴り飛ばす。

それを数回繰り返すと上空に蹴り上げて気弾を当てた。

煙が晴れるとボロボロのブウの姿があった。

「ぐぐぐ…き、効かんなあっ!」

「その割には顔に余裕がないけど?もっと真剣にやってくれない?私を殺したいならもっと強い攻撃をしなくちゃ…おっと、お前はそれで精一杯“お強い”攻撃をしてるんだったねぇ…これは失敬しちゃったよ」

「ぬううう…!はあっ!!」

気合を入れて再生を完了させると青筋を浮かべて悟林を睨むが、悟林はそんなブウを褒めながら拍手する。

「おおー、無事に治せたねー。偉い偉い」

「ち、畜生…こんな…」

「ゴテンクス君を吸収して最強になったと思ったのにあっさり覆されちゃったから悔しいだろうねえ」

挑発しながら距離を詰めて腹に拳をめり込ませると、ブウが蹲る。

そして無防備な顔面に数回拳を叩き込み、仰け反った直後に蹴り飛ばして気弾を連射し、ダメージを与えていく。

しかしブウもやられっぱなしではないのか、攻撃を掻い潜りながら迫ってくる。

「死ねーーーっ!!」

「死ぬのはお前…」

「うっ!?」

途中でブウが急停止し、苦しみ出す。

「え?」

「う…うおおお…し…しまっ…あうっ!!」

ブウの気と服装が変化し、気が大きく下がってピッコロの要素が強く出た格好となる。

「あ、時間切れね。ピッコロさんが強く出てる!パワーが大きく落ちたよ、それなら悟飯でも倒せるけど…念には念を…」

かめはめ波の体勢に入り、手のひらに気を充実させていくが、ブウは笑みを浮かべた。

「…もしもの時のために保険をかけておいて良かったよ…」

「は?保険?」

「うあっ!!」

離れた場所で悟飯の声が聞こえた。

振り向くと、そこにはブウの一部に覆われた悟飯の姿。

「貴様に岩に叩き付けられた時に少しな…はあっ!!」

悟飯はそのまま吸収され、悟飯の特徴が強く出たブウの姿がマントから紫の道着のみの姿となる。

「ちょ…悟飯…何あっさり吸収されてるの…」

「ふ…ふはははは…!これは良い!前より更にパワーアップしてしまったぞ!しかも今度は時間制限なしだ!!」

悟飯を吸収したことでゴテンクス吸収時よりもブウの気が上がっている。

「(ピッコロさんと悟天とトランクス君には悪いけど悟飯と比べればちょっとした誤差みたいなもんだし、実質ブウと悟飯の戦闘力を足し合わせたようなもんか)…あんの馬鹿…終わったらお仕置きだからね…」

悟飯へのお仕置きを考えながら悟林は再び構えを取るのであった。
 
「見るがいい!これがかつてない究極の魔人の姿…ぐおっ!?」

「隙ありぃっ!!」

跳ね上がったパワーに陶酔しているブウの顔面を殴り飛ばし、倒れたブウをボールのように蹴り飛ばす。

「ごめんごめん、隙だらけだったからさ。さあ、第二ラウンドと行こうじゃない。さっさと起きて掛かってきなよ自称・究極の魔人さん?」

「…俺を怒らせれば怒らせるほど、貴様は苦しんで死ぬことになるぞ。分かってやってるのか?」

「だったらさっさと本気を見せてくれないかな?はっきり言ってこのままじゃつまらないからさ。それともパワーが大きすぎて使いこなせないのかな?違うのなら…さっさと掛かってきなさい?悟飯ちゃんを吸収した魔人ブウちゃん」

「良いだろう…後悔するなあっ!!」

「いっ!?」

憤怒の表情のまま突撃してきたブウ。

それは悟林に回避を迷いなく選択させるほどで悟林の表情から余裕が消えた。

横に跳んでかわした悟林にブウは腕を一薙ぎする。

舞空術で急上昇するとそれをかわす。

気を溜めた腕を一薙ぎすることで爆発を起こすこの技はピッコロの技だ。

ブウは煙に紛れながら悟林に襲い掛かるが、それを受け止める。

「何っ!?」

「いくら視界が悪くてもお前の場所くらい分かるさ!!」

拳と蹴りが何度もぶつかり合い、最後に頭突きのぶつけ合いとなる。

頭突きのぶつけ合いに勝利したのは悟林であった。

「この…石頭が…!」

「お父さん譲りなんでね!」

「チッ!」

蹴りを繰り出すブウだが、足を掴んで勢い良く地面に放り投げる。

ブウは途中で停止するが、それを読んでいた悟林がブウを急降下の勢いを利用して踏み潰す。

「どうしたのかな!?悟飯達を吸収して手に入れたパワーはそんなもんなの!?」

「調子に乗るな…!チョコになるがいい!!」

「うわっと!?」

触角が動いて悟林に光線を浴びせようとするが、咄嗟にかわして距離を取るが、ブウはある技を繰り出す。

口から白い何かを吐き出すと、幽霊のようなブウとなる。

「さあ、行け!ゴースト共!スーパーゴーストカミカゼアターック!!」

「ああ、それ吸収したゴテンクス君の技ね」

「ほう!知っていたか!ならば恐ろしさも知っているだろう!少しでも触れれば爆発するぞ!」

「それっ!」

ゴースト達が悟林に襲い掛かるが、悟林は手のひらから巨大な気弾を発射する。

それをゴースト達はかわそうとするが、かわした直後に気弾は分裂してゴースト達を爆砕する。

「何っ!?」

「2人の才能は凄いけど、まだ子供だよ。やりようはある…ブウ、相当余裕が無くなってるようだね…うん、もう少し本気出そうかな?」

「くっ…!ならばっ!」

指先を額に当てて気を集中させていくブウ。

「今度はピッコロさんの魔貫光殺砲か」

「流石の貴様もこれを喰らえばひとたまりもあるまい!魔貫光殺砲!!」

「はっ!!」

師匠であるピッコロの技ならば精神的に動揺するかと思ったが、片手でシールドを張り、それを回転させて悟林もまた魔貫光殺砲を放った。

「何っ!?」

ブウの魔貫光殺砲は押し切られ、逆に右肩を消し飛ばされると言う手痛い一撃を喰らってしまう。

「こっちは本場の魔貫光殺砲だよ。ついでにこれも喰らえ!!」

追撃の気弾の連射。

ブウは即座に損傷箇所を再生し、気弾を掻い潜りながら蹴り飛ばす。

「この技であの世に送ってやる!魔閃光!!」

「っ…お返しだ!!」

ブウが放った気功波の直撃を受けるが、耐え抜いて腕を動かすと、放った気弾がブウに直撃する。

悟林は、ブウを追い詰めるためにあの技の使用を決意したのであった。 
 

 
後書き
悟林がブウと闘ったことで気が抜けて吸収された悟飯。 

 

第39話

 
前書き
原作終了…。

フュージョンとポタラのこの作品内での設定

パワーアップの幅は同じでブロリー映画でゴジータが言っていたようにどちらも足し合わせて大幅アップな感じでお願いします。

その大幅アップの部分が潜在パワーとか超サイヤ人とかの変身含めてとなります。

ノーマルゴジータがブロリーと張り合えたのは多分そんな感じだと思うのでフュージョンやポタラにはアルティメット同様決まった倍率が存在しない。

この作品でのポタラ

耳飾りを着けるだけで合体でき、合体時間は人間の場合フュージョンの倍の1時間。

戦闘力を合わせる必要がないので、両者の戦闘力そのままで足し合わせて大幅アップ。

原作悟空が10でベジータが8ならそのまま足し合わせて大幅パワーアップするのでブウ編の時点ではフュージョンよりもポタラの方が強い。

欠点は合体を維持する力が底をついて一度合体が解除されると使用済みのポタラでの再合体が不可能で別のポタラを調達する必要があるって感じです。

エネルギーの消耗が激しいと合体が短時間で解除されてしまうのは元々強い人間が扱うことは前提にされていないので仕方ない面はあるが。 

 
悟林と魔人ブウの闘いは悟林の方が有利ではあったが、長引かせるとブウが何をするか分からないため、奥の手を使うことに決めた。

「そろそろ終わりにしようか」

「何?」

「正直この技を使わなくても今の私ならお前を倒せるんだけどね…特別に見せてあげるよ…界王拳をね…!」

赤いオーラを身に纏い、気の感知が拙いところがあるブウにも気の上昇率を理解させる。

「こ、これは…気が5倍…10倍…いや…!」

「究極界王拳!!」

潜在能力を解放した状態での現在最大倍率の20倍の界王拳。

あの世で界王拳の練度を高めており、安定性や完成度では父親を上回っていると断言出来る。

「ははー!出来た!超サイヤ人じゃ無理でもこれなら界王拳を使えると思ったんだ!」

ただでさえ負担のある超サイヤ人に界王拳を重ねるのは命を捨てるような物であり、今まで戦闘では封印していた界王拳を復活させたのだ。

しかも通常状態と全く変わらないまま肉体の強度も大きく上がるこの状態なら20倍以上の倍率も不可能ではなさそうだ。

この闘いが終わったら界王拳に改良を重ねて更に倍率を上げる修行をしようと決めた。

「それがどうしたーーー!!!」

飛び掛かるブウだが、次の瞬間に顔面を数回殴られて吹き飛ばされる。

最低でも戦闘力差が20倍なので、最早ブウの攻撃はスローモーションのように見える。

「今の私の力はお前の遥か上だよ」

強烈なラッシュ攻撃をブウに叩き込み、上空に蹴り上げると魔閃光を直撃させた。

煙が晴れると下半身が消し飛び、ボロボロのブウの姿が現れた。

「ハッ、仕留め損ねたか」

「お、己ぇ…かあっ!!」

体を再生するとブウが向かってくる。

「汚いぞ貴様!わけの分からん技を使いやがって!」

「そっちは吸収しまくった癖に汚い言うな。私をとやかく言う資格はないよ」

界王拳と言うのは戦闘力を倍化させる技なので、多少の実力差を簡単に覆せる技だ。

なのでブウが汚いと思うのは無理もないが、これは修行で習得した技なので吸収して知識とパワーを得たブウには絶対に言われたくはないだろう。

ブウの攻撃を捌きながら逆に手痛い一撃を顔面に叩き込む。

「さっさと吸収したみんなを返せ。そうすれば一瞬で消してあげる。お前だって痛い思いするくらいなら一思いの方が良いでしょ?」

「ほざけ!キャンディになれ!!」

「おっと」

放たれた光線をかわすと触角を掴んで引き寄せると気弾を撃ち込んだ。

気弾に飲み込まれたブウは爆発に巻き込まれてボロボロになるが、手を緩めるつもりなど一切ない。

触角を掴んだまま何度も殴り飛ばし、ダメージを蓄積させて気合砲を叩き込んで吹き飛ばし、追撃の魔閃光が直撃する。

「そろそろやばいんじゃないの?体が崩壊してるじゃない」

ブウの体は度重なるダメージで崩壊し、崩れた肉片は再生することなく消えていく。

「ぐうう…!があっ!!」

気合いを入れて崩壊していた体を再生し、ブウは疲弊しながらも笑みを浮かべる。

「あらら、治っちゃった」

「はあ…はあ…無駄だ。お前がどんな小細工を使おうが、お前にこの俺を倒すことなど無理なんだ!どんなに攻撃しようが俺には効かん!」

「そうでもなさそうだよ。お腹に風穴開いてるし」

「何っ!?」

悟林が指差した自分の体を見下ろすと、再生しきれずに風穴が開いたままの腹が視界に入った。

「流石のお前もダメージが蓄積しすぎて再生が追い付かないようだねぇ」

「ぐうう…ぬああっ!!」

何とか再生すると悟林を睨む。

今のブウは肉体的にも精神的にも弱っていたが、手を緩めれば何かをやらかすのはゴテンクスとピッコロと悟飯で良く理解している。

「さて、治ったようだから遠慮なく行くよ!!」

「ま、待て!俺を殺せばお前の師も弟達も死ぬことになるぞ!お前に師や弟達を殺せるのか!?」

「心配してくれるの?ありがと、だけどそれがどうかした?」

「何!?」

「お前の一部のままでいるくらいならピッコロさんも悟天もトランクス君も死んだ方がマシだと思うだろうさ。お前、ベジータさんを殺して、母さんやお祖父ちゃん。ブルマさんやみんなも殺した。そんな奴の一部になってまで生き延びようとするヘタレじゃないんだよ!!」

腹に拳を叩き込み、そして顎を蹴り上げ、滅多打ちにする。

ブウを肉体的に精神的に限界まで弱らせてからあることを試すのだ。

「いい加減目を覚ましなさい!この馬鹿悟飯!!ピッコロさん!何時までブウの中で眠ってんの!?悟天とトランクス君も起きて!!」

触角を掴んでブウの耳に怒声を叩き込む。

怒りの矛先はブウに吸収されている悟飯達だ。

ゴテンクスのフュージョンが解けたことから恐らく吸収された悟飯達は生きたまま閉じ込められているはず。

もし意識があるなら抵抗しているはずなので眠っている可能性が高い。

この怒声にブウの体内の4人が反応したのか、ブウの動きが鈍くなる。

「お前体はでかくなっても根性は子供の頃より無くなってんじゃないの!?違うんならとっとと目を覚ましなさいこの馬鹿弟!!」

目に見えて苦しみ始めたブウ。

どうやら4人が拒絶反応を起こし始めたようだ。

「お…おああああ…ぐがあああ…お!!」

「もう一押しか…さっさと…起きろーーー!!!」

目一杯の怒声にブウは堪えきれずに逃走してしまった。

「あっ!おい待て!!」

悟林は慌ててブウを追い掛ける。

近くで様子を窺ってた悟空達もそれを追いかけようとするが、何故か助かっていたサタンに駄々をこねられて連れていくことに。

するとブウの気が大きく減り、同時により恐ろしさが増したような性質の物に変化した。

ブウの近くに向かうと、そこにはブウの体内から吐き出された4人と…一番最初の太っちょのブウがいた。

「……?何で一番最初の奴までいるの?」

悟林は知らないが、あの悪のブウは太っちょのブウから分かれたブウが太っちょのブウをチョコレートにして補食すると言う変わった方法で吸収されていた。

恐らく悟飯達を吐き出す時に一緒に吐き出されてしまったのだろう。

ブウは吐き出した悟飯達に手を翳すと気弾を撃とうとするが、それよりも先に悟林が蹴り飛ばした。

「危なかった…ちょっといきなり何を…」

「ウホーッホッホッホッ!!」

起き上がったブウは奇声を上げながらドラミングする。

「え?何?何なの?」

しばらくドラミングしてたかと思えば突然ピタリと止まり、次の瞬間突撃してきた。

「!?」

突然の突撃に虚を突かれながらも攻撃を受け流しながら反撃する。

顔面を殴っても驚異的なスピードで再生する。

パワーとスピードは悟飯達を吸収してきた時よりは大きく落ちているものの、動きや攻撃が不規則と言うか、本能的な物になっている。

「(対処出来ないわけじゃないけど、やりにくいな…!)」

背後に回り込んで組んだ拳で殴り飛ばし、そのまま追撃を仕掛けようと追い掛けるが、ブウが足を地面に突き刺すのと同時に悟林の顎を蹴り飛ばす。

「ぐっ!」

不意を突かれた悟林は大きく吹き飛ばされるが、何とか態勢を整えて連続で飛び出す足をかわしていく。

途中でブウが気功波を放ってきたが、それを片腕で払うと仕返しとばかりにかめはめ波でブウを粉々する。

粉々になり、飛び散った破片が蠢いたかと思えばブウが無数になって復活した。

「えーーー!!?嘘でしょーーー!!?」

小さな破片がかめはめ波で粉々になる前と同じサイズで再生されており、しかも気は全員1人の時と同じである。

「ギャアアアアッ!!」

無数のブウが気弾を撃ち込んできたために、咄嗟に防御する。

「あんなに分裂してるのに全然気が落ちてないし…!こんにゃろうっ!!」

全身から気を放出し、気功波が無数に放たれた。

その気功波により、大半のブウが消し飛ばされ、追撃での連続気弾によって残りのブウは粉砕されるものの、即座に元通りとなった。

「…どうなってんの、パワーとスピードは間違いなく落ちてるのに何で回復力はパワーアップしてるの…ん?」

「キッ!!」

「うわっ!?」

足をプラプラさせていたブウは突然足を伸ばして攻撃してきた。

ギリギリでかわしたが、心臓に悪い。

再び突撃してくるブウの猛攻をかわしながら一撃を確実に当てていく。

「ウギャギャギャオ~~~ッ!!!」

顎を殴り飛ばして上空に打ち上げるとブウはムスッとした表情の後に雄叫びを上げた。

「っ!!?」

突然の雄叫びに耳を咄嗟に塞ぐが、ブウが腕を上げた直後に巨大な気弾が手のひらの上に作られた。

時間経過と共に気弾の規模が凄まじく巨大となり、戦闘力では遥か上を行く悟林でも跳ね返せない程となった。

「ちょ、ちょっと!それを撃つつもり!?」

普通ならば限界以上の気を込めると大きく疲弊するものだが、ブウにはそれがない。

避けることは出来ない。

避ければ地球が消滅し、下にいる弟達が巻き込まれてしまう。

「こうなったら!真正面から吹き飛ばしてやる!!」

20倍界王拳を維持しながらの最大の必殺技。

「魔閃!!」

手のひらに気を集中させていると、ブウが気弾を放ってきた。

「かめはめ波っ!!」

気功波がブウの放った気弾に直撃するものの、少しずつ押されている。

「ぐっ!こいつ…どこまで気を入れたの!?」

悟林は気弾を貫こうとするが、ブウが駄目押しとばかりに追加の気弾を放ち、魔閃かめはめ波と競っている気弾に撃ち込むと更に気弾が巨大化した。

「ちょ、ちょっとおっ!!?」

押し込まれていく魔閃かめはめ波に悟林の表情が強張った。

一方、闘いを見守っていた悟空はブウに気付かれないように移動し、悟飯達を瞬間移動でデンデの近くに移動させていた。

「信じられねえ…ブウの奴…限界なんてあっさり超えてる気を使ってんのに全然疲れてねえ…」

恐怖はあるが、同時に感じるのは感嘆だ。

最強の戦士になった娘をあそこまで追い詰めるなんて。

最早、悟飯が目を覚ましてもどうにもならないほどにブウの気弾は強大になっていた。

「オラじゃ全く力が足りねえ…どうすりゃいい…」

加勢したいが、力の差がありすぎて役には立てないだろう。

何か別の方法を考えるが…。

「おい、カカロット!」

後方から感じた馴染みの気に振り向くと、超スピードで向かってくるベジータの姿。

「ベジータ!?おめえ……あ、そうか!閻魔のおっちゃんがおめえを!」

死んでいるはずのベジータの姿に驚くものの、頭の輪を見て1日だけ生き返ってきたのだろう。

「おい、聞きたいことは山ほどあるが、ブウの奴はどうなってやがる?何だあのチビの姿は」

「あ、ああ…吸収していた悟飯達と太っちょのブウを吐き出したらあんな姿になっちまったんだ。」

「…あれがまともに落ちたら地球など消し飛ぶぞ…!」

「ああ、悟林が何とか耐えてくれてっけどよ。あれじゃ……あ、そうだ!!」

「?」

焦っていた悟空だが、何かを閃いたのか声を上げた。

それに嫌な予感を感じたベジータ。

「実は悟林にある技を教えてもらってよ。あれを使えば」

「断る」

「オラまだ何も言ってねえぞ」

「フュージョンと言いたいんだろう!俺は知ってるぞ、それが何だか!!」

「え?知ってんの?」

「俺はあの世で悟林がチビ共に教えるのを見ていたんだ…!冗談じゃない!あんなみっともないポーズが出来るか!悟飯を叩き起こして悟飯とやれ!」

「いや、あいつ全然起きねえし…た、頼むベジータ!このままだとトランクスも殺されちまうぞ!それに…ブルマやみんなも生き返らせることが出来ねえ!ブルマ達はブウに食われちまったんだ!!」

「…!!」

「地球が無くなっちまったら、もう終わりだ!頼むベジータ!」

「…………くそったれ…!やってやる!カカロット、早くしろ!」

「ベジータ…!」

「貴様はポーズに専念しろ!俺が合わせる!!」

悟林のフュージョン修行の際に悟空がリズム音痴だと聞いているため、自分が合わせるしかないと判断し、集中力を研ぎ澄ませる。

「行くぞベジータ!」

「俺に指図するな!」

「「フュージョン…はっ!!」」

場所は戻って悟林は必死に気弾を押し返そうとしていたが、そろそろ界王拳が限界に近付いてきた時であった。

「ま、まずい…そろそろ限界…」

「「ビッグバンかめはめ波!!」」

隣に聞き慣れた2人の声が重なったような声が聞こえ、放たれた気功波が一気に押し返された。

隣を見遣ると、そこにはメタモル星人の民族衣装を纏った男がいた。

「え?お父さん…ベジータさん!?」

男から感じる気に悟林は目を見開く。

「「悟空とベジータが融合して、ゴジータだ。さっさと終わらせるぞ」」

ゴジータと名乗った融合戦士は一気に気を解放すると、超サイヤ人3へと変身した。

フュージョンによって基本戦闘力が上がったことにより、変身可能になったのだろう。

「…へへ、やっぱりお父さん達は最高だ!」

「「フッ、さあ…行くぞ!!」」

「はい!!」

「「「波ーーーーーっ!!!!」」」

一気に気を入れて気弾を粉砕し、2つの気功波をまともに喰らったブウは悲鳴を上げることなく一瞬で消滅した。

潜在能力解放状態での20倍界王拳の魔閃かめはめ波と、超サイヤ人3状態のゴジータによるビッグバンかめはめ波を真正面から受けたブウは細胞1つ残さずに消滅した。

そして先ほどのビッグバンかめはめ波に全力を使ったことと、超サイヤ人3に変身したことでエネルギー切れを起こしたのか、ゴジータの融合は解除されてしまい、2人は初めての超サイヤ人3への変身の影響で座り込んでしまう。

「お父さん、ベジータさん。お疲れー」

「おう、おめえも頑張ったな…」

「フン」

座り込んだ悟林が2人を労うと、悟空は笑いながら応え、ベジータは相変わらず素っ気ない態度だ。

「それにしてもブウは強かったね」

「ああ、一対一じゃ勝てなかった」

「フン…次はフュージョンなどしなくても勝ってみせる」

「まあ、ブウのことだから地獄行きは確定だろうし、良い奴に生まれ変わると良いなー!」

ブウの生まれ変わりなのだからきっと強い個体として生まれ変わるだろう。

何となくそんな気がした。

「はは、そん時は思いっきり闘いてえな。今度は一対一で闘いてえ」

悟空も楽しみなのかそんなことを言い出す。

「おい、トランクス達の所に行くぞ」

立ち上がったベジータは気絶している悟飯達の元に向かい、悟林達も急いで向かった。

悟林達は早速悟天とトランクス、ピッコロを起こした。

「おはよう」

「え…?姉ちゃん!?」

「悟林さん!?それに…パパ!」

もう現世にいないはずの2人の姿に悟天とトランクスは驚くものの、次の瞬間2人は飛び付いた。

「パパ!何時生き返ったの!?」

「…生き返ったわけじゃない。頭に輪があるだろう、1日だけ生き返っただけだ。」

「そっか…でもドラゴンボールを集めてナメック星って所のドラゴンボールで生き返らせるよ!」

「…そうか」

父子の会話に悟林は微笑みながら2人を褒める。

「はは、2人共。良く頑張ったね、超サイヤ人3に変身したのを見た時は驚いたよ…本当に良く頑張った…私は2人を誇りに思う」

「「へへ…」」

照れる2人だが、次は起こされたピッコロが歩み寄る。

「すまん、迷惑をかけたな」

「良いよピッコロさん。だったらまた私の修行に付き合ってよ」

「お前の修行にか?良いだろう、俺も基本から鍛え直すとするか」

師弟の会話に悟空が微笑み、悟飯を起こそうとする。

「ほれ、悟飯。早く起きろ、悟林も帰ってきたぞ」

「う…うう…」

他の3人より意識が深く落ちているのか、悟空が揺すっても起きない。

「あー、駄目だよお父さん。悟飯はこう起こさなきゃ」

「「あ!?」」

近くの川に放り投げると悟飯は水の中に沈み、悟空と悟天が慌てて駆け寄り、気泡が浮かんだかと思うと悟飯が飛び出してきた。

「殺す気か姉さん!!」

「ほーら、起きた。ピッコロさん直伝の悟飯の手っ取り早い起こし方だよ」

「ねえ、パパ…ピッコロさん…悟林さんと悟飯さんって…もしかして仲悪いの…?」

「…さあな」

「悪くはない…はずだ」

ずぶ濡れの悟飯を指差して笑う悟林に、トランクスは姉弟仲が悪いのかと2人に尋ねるものの、微妙な返答が返ってきた。

「ところで…」

デンデの治療を受けて回復を終えると、次は吐き出された最初のブウの元に歩み寄る。

「さーて、こいつどうする?」

「決まっている、さっさと始末してしまえ!」

悟林が問いかけるが、ベジータからはブウの始末の声が出た。

「そ、そうだよ!起きたらこいつ絶対襲ってくるよ!」

ベジータが死ぬ原因となったブウに対してトランクスも警戒しながら同意する。

「うーん」

「ま、待ってくれ!」

悩む悟林に今まで蚊帳の外だったサタンがブウに駆け寄って庇うように立ち塞がった。

「サタンさん?」

「ブ、ブウを殺さないでやってくれ!こいつはそんなに悪い奴じゃないんだ!わっ、悪い奴に命令されて、あっ、あんなことを…!」

「え?確かにバビディは死んだけど…どうなのピッコロさん?」

地球の状況は自分よりもピッコロの方が理解しているだろう。

尋ねてみるとピッコロは少しの間を置いて口を開いた。

「…ブウが分離したのは馬鹿な地球人の行動によるものだ。それさえなければブウはミスター・サタンによって改心する手前だった」

「うーん、どうしようピッコロさん?」

「この中で一番強いのはお前だ。お前が決めろ」

「………よし!じゃあ今回だけ見逃すよ!ただし、悪いことしたらその時は必ず倒すから!!」

「な、何だと!?貴様正気か!!」

「まあまあ、良いじゃねえかベジータ…もしそん時が来たらオラ達がまた闘やいいさ。オラ達もブウが暴れても一対一でやっても負けねえように修行しようぜ。それにどうしようもなく悪い奴じゃねえんだろこいつ?ピッコロやおめえみたいになるかもしれねえじゃねえか…だろ?」

悟林の判断に反対しようとしたベジータを宥める悟空。

「チッ…どうなっても知らんぞ…」

「と言うわけでサタンさん。今回は特別に見逃すけど次はないよ?」

「あ、ありがとう…本当にありがとうっ!!」

「ついでに悟飯とビーデルさんの交際を認めてくれれば私としては嬉しいんだけど」

「いいっ!?」

「ね、姉さん!何てこと言ってるんだよ!僕達はまだ付き合ってないんだから!」

「へえ、ビーデルさんにお姉さんって呼ばれたからてっきり…と言うか両想いなんだからくっついちゃいなよ。悟飯が結婚してくれれば私は結婚とか恋愛とか面倒な思いしなくていいしさ」

「僕のためと言いつつ自分のために行動してない?」

「当たり前でしょ」

愛娘に恋人発覚と言う地獄を味わって放心しているサタンを余所に姉弟喧嘩をする2人に笑う者と呆れたように見つめる者がいた。

その後、ドラゴンボールを回収して悟空の瞬間移動でナメック星に向かい、ナメック星のドラゴンボールと併せて願いを叶えた。

嬉しい誤算はナメック星のドラゴンボールはフリーザのことがあってから最長老がパワーアップしており、何人でも生き返らせることが可能となっていたことだ。

地球とナメック星のドラゴンボールの神龍を同時に見て同時に願いを叶えるなどこれが最初で最後だろう。

1つ目の願いはボロボロになった地球を元通りにすること。

2つ目はバビディが地球にやって来てから現在にかけて殺された者達を極悪人を除いて復活させること…ベジータは無事に生き返った。

3つ目はブウの記憶を人々から消し去ること。

4つ目はナメック星人達の好意によって地球に悟林達を送ってもらった。

5つ目は…使われることなく、ポルンガは消えたのだろう。

神の神殿に向かうと、そこには仲間達がおり、1人も欠けずにそこにいた。

ブウが現れたことで一悶着あったものの、ピッコロが説明してくれたことで落ち着きを取り戻した。

「まさか7年経ってから帰ることになるなんて思わなかったよ。私ね、老界王神様の命を貰って生き返ったんだ!」

「じゃ、じゃあ!また一緒に暮らせるだか!?オラや悟空さと、悟飯と悟天とおめえの家族5人で…」

「勿論!あー、お腹空いた。早く家に帰ってご飯にしようよ!」

「全く…おめえは変わんねえべ…」

7年前と全く変わらない娘の性格にチチは笑った。

「あ、あのー…今日、俺も泊まっていいかな?」

「へ?…ああ、そういうこと」

ベジータとブルマをチラチラと見ながら尋ねてくるトランクスに悟林は納得すると同意した。

勿論家族全員了承してくれたので、トランクスを含めた孫家は久しぶりに全員が帰宅することに。

「はーい、みんな!お待たせー!!」

久しぶりの自宅に帰宅してトランクスも来たので料理を追加することになったのだが、悟林も料理に参加したのでチチは楽チンだ。

「おー、悟林の飯だ!」

「美味しそう!!」

「やっぱり悟林ちゃんがいると楽だべ!」

「お腹一杯食べてね!トランクス君も!」

「は、はい!」

料理にがっつくサイヤ人達。

サイヤ人が5人もいることでテーブルに並んでいた特盛料理は瞬く間に減っていく。

「ねえねえ、姉ちゃん。」

「何?悟天?」

「食べ終わったら一緒に遊ぼうよ!」

「良いねえ、トランクス君もどう?」

「え?じゃあ俺も」

「悟天、今日くらいゆっくりするだよ。姉ちゃんも悟天もトランクスも疲れてるべ?」

悟天の誘いに乗り、トランクスも誘う悟林だが、ブウとの闘いの後のためにチチが止める。

「別に私は平気だよ、神様に治してもらったし」

「そうだよ!」

「心配しすぎだよおばさん!」

「(悟天、嬉しそうだな…昔から姉さんと遊びたいって言ってたもんな。トランクスも…未来のトランクスさんみたいに姉さんが死んでなかったら絶対に仲良くなってただろうし…)」

早速色々と考えている3人を見て悟飯は食器を置いた。

「おーい!悟飯、久しぶりにお姉ちゃんと遊ぼう」

「え!?い、良いよ僕は!」

「なーに言ってんの!久しぶりにお姉ちゃんが相手してやるから!」

「ぼ、僕は勉強があるから!じゃあ!!」

悟林の手を避けて悟飯は逃げるように自室へ引っ込んだ。

「何?あいつ?グリーンヤサイマンと言い本当におかしくなっちゃって」

「悟飯もお年頃なんだべ、おめえも何時か分かるだよ」

「ふーん、お年頃ねえ?2人共、外に出よう。2人の実力を見せてもらうよ!!」

「「はーい!」」

外に出る子供達を見ながら悟空は茶を啜り、チチは苦笑しながら皿洗いを始めた。

逃げるように自室に戻った悟飯は勉強机の椅子に座り込んだ。

外の悟林達の気が異常に膨れ上がって一際でかい轟音が響いてフュージョンしたのであろう、ゴテンクスの悲鳴が聞こえたことに苦笑した。

「はあ…(姉さんがいるだけでこんなにも家の雰囲気が変わるのか…姉さんが生き返るなんて…あの時は思いもしてなかったもんな…)…ん?これは…懐かしいな」

地球にラディッツが来る前に家族全員で撮った写真であった。

初めて撮る写真を怖がっていた自分とそんな自分を笑う姉の姿。

「(父さんは昔と全然変わらないなあ…サイヤ人って歳を取るのが遅いのかな?今度ベジータさんに聞いてみよう)」

「ちょっと悟飯、布団敷かせてよ」

「いっ!?姉さん!?」

「静かに、2人共気絶してるんだから」

「あ、うん」

悟飯の部屋に布団を敷くと、そこに2人を寝かせる。

「いやー、修行で気絶してお休みなんて昔の悟飯ちゃんみたいだよね。ところで何見てんの?…うわ、懐かしい写真。悟飯ちゃん泣いてるー。いやあ、今も昔も変わんないね」

「…これ、何年前の写真?」

「多分、私達が4歳になったばかりのじゃない?」

「4歳か…悟天も…それくらいから姉さんと遊びたかったかな…僕がもっと強かったら…姉さんはセルとの闘いで死ななかったのかな…」

「どうだろうね、もしかしたら死ななかったかもしれないし、死んでたかもしれない。まあ、今更どうにもならないよ。今は過去のことよりも今に目を向けなよ。大丈夫大丈夫、今度はいなくなったりしないから多分」

「そこは絶対って言ってよ」

7年の空白を埋めるように笑いながら会話する姉弟に様子を見に来た両親が笑いながら退散したのであった。

「ところで姉さん」

「何?」

「姉さんが家に帰ってきた時のためにやりたかったことがあるんだ」

「やりたかったこと?」

嫌な予感を覚えながら聞き返すと悟飯は机から見覚えのある時計を取り出した。

「念のために予備を貰っていて良かった。」

「ま、まさか…」

「そのまさかだよ!姉さんに見せるために練習していたとっておきのポーズを披露しようと…」

グレートサイヤマンの姿となり、早速悟林にポーズを見せようとする悟飯だが、弟の痛い趣味は姉として全力で矯正しなければなるまいと悟林は心を鬼にして潜在能力を静かに解放した。

「どうやら悟飯ちゃんは私が死んでる7年間ですっかり忘れちゃったようだねぇ…私がそんなグリーンヤサイマンみたいな下らないジョークが嫌いだってことを…少し頭冷やそっか?」

次の瞬間、部屋の窓から勢い良く吹き飛んでいく物体があり、翌朝、早速悟林との修行のためにパオズ山に訪れたピッコロが水を飲みに川に降りたところを流れてきた悟飯を発見し、ピッコロが回収して悟空に渡されたのであった。 
 

 
後書き
安定の青年悟飯ちゃん。

GSマンは受ける人には受けるが、受けない人にはとことん受けない。

最後のブウの攻撃はどでかい気弾に更に気弾を追加して威力アップしていく感じ 

 

第40話

 
前書き
ドラゴンボール超…書こうかな… 

 
悟林が生き返り、悪の魔人ブウが倒されてから数ヶ月後。

それぞれ自分の居場所に戻り、平和を謳歌していた。

ブウの記憶は消し去られたが、恐ろしい存在がいたと言うことは何となく覚えているらしく、きっとサタンが倒してくれたのだと人々は思い込んでサタンは更なる名誉を得ることになる。

善のブウはミスター・ブウとしてサタンの弟子として活躍することになり、孫家に遊びに来ていたビーデルはそんなサタンに溜め息が尽きなかった。

「はあ…」

「どうしたのかな?ビーデルさん?悟飯が何かやらかしたのかな?」

「!?」

振り返ると悟飯の姉である悟林が悟天とトランクスと共に立っていた。

セルとの闘いで死んだ彼女は悟飯よりも見た目が幼く、妹のように見えるが。

「えっと、あの…そういうわけじゃ…トレーニングしてたんですか?」

「そうだよ、私がある程度力を発揮しながら闘えるのが今のとこゴテンクス君だけだからね。」

潜在能力を解放した状態での悟林の修行相手になるのはゴテンクスくらいなので2人を誘って修行するのが当然となっていた。

「そうですか……あの、お姉さん。私と手合わせしてくれませんか?」

「え?良いよ、義理の妹の頼みくらいは聞いてあげるよ」

「い、義妹って…」

「だって悟飯の彼女さんでしょ?だったら将来は私の義妹じゃない。悟天、後数年すればお義姉ちゃんが増えるからね」

「ホント!?」

「良いよなー、悟天は。悟飯さんや悟林さんだけじゃなくてお義姉ちゃんが増えるんだし」

悟天はビーデルが義姉になることに喜び、トランクスは一人っ子であるために不満を言う。

からかわれてるとビーデルは思いながらも悟林と手合わせをするのであった。

悟林は早速力を加減しながらビーデルの相手をする。

「たあっ!」

ビーデルの拳を受け流して流れるように裏拳をビーデルの後頭部に当てて吹き飛ばす。

「動きが大振りだよ。」

「くっ、まだまだ!」

ビーデルはラッシュを繰り出すが、悟林は一発一発を捌いて軽めの気合砲で吹き飛ばす。

まともに受けたビーデルは吹き飛ばされながらも空中で体勢を整えて悟林に向かっていく。

「お姉ちゃん頑張れー!」

「ビーデルの姉ちゃん大丈夫だよな?もしうっかり大怪我させちゃったら止めなかった俺達も悟飯さんに怒られるかも…」

悟天は暢気に応援するが、悟飯のガールフレンドであるビーデルに何かあったら悟飯は烈火の如く怒るであろうことを考えて不安そうに2人を見つめるトランクス。

「うん、良いね…その負けん気。お父さんも認めるわけだ…」

「本当に、お姉さんは強いですね!」

自分の全力がまるで通用せず、寧ろ修行をつけてもらってるような感覚だ。

「そりゃあ、私は4歳の頃から修行してきたからね。それに修羅場もそれなりに潜り抜けてきたからあっさりとやられるつもりはないよ。さあ、こっちも軽く行くよ」

“軽く”と称した攻撃は凄まじく重く、ビーデルの攻撃を防いだ腕が痺れる程である。

「真正面から受けない、重い攻撃は受け流して反撃に繋げなさい。最初の私のようにね」

悟林はビーデルの悪いところを指摘し、ビーデルもまた無意識にそれに従うことで動きが洗練されていく。

こうしてビーデルは一撃も当てられないまま、体力切れで倒れた。

「はあ…っ…はあ…や、やっぱりお姉さんは強いですね…」

「そりゃあ、サイヤ人だからね。」

あれだけ強いと手加減すら難しいはずなのに自分に合わせて手合わせをしてくれた悟林に同じ武道家として尊敬する。

「昔、テレビでセルと闘ったお姉さんを見た時…凄いなって思ったんです。私と同じ女の子なのにあんな化け物に恐れないで闘っていたのが」

「セルねえ、そう言えばあいつを倒すの悟飯に任せちゃったから勝ってないんだよね」

「悟飯君とお姉さんがセルを倒したのにパパが…私、本当に恥ずかしくて…」

「なるほど、溜め息の理由はそれか。まあ、気にしない気にしない。私達は有名になってもやりにくくなるだけだし。これからもサタンさんにはスケープゴートになってもらわないとね。私達は鬱陶しいテレビから逃げられる。サタンさんは名誉を得る。どっちもお得じゃない」

悟空も悟飯も有名になりたいわけではないし、チチもそんなものに興味はないだろう。

「パパもそんな奴らぶっ飛ばせば良いって言ってたしね」

実際にやられたら困るが、サイヤ人からすれば地球での名誉など困るものでしかないだろう。

「とにかくビーデルさんは気にしなくて良いよ。そうそう、ビーデルさん。君は中々やるね、流石悟飯の彼女さん」

「あ、いや…私は……そ、そう言えばお姉さんは悟飯君と修行しないんですか?悟飯君ならお姉さんとの修行が出来そうですけど」

「悟飯は学者になるのが夢だからね。勉強に夢中だよ…」

「そうですか…でも少し勿体無いな…あんなに強いのに」

「確かに、悟飯さんはあんなに強いのに修行はしないんだよな」

トランクスもあれだけ強いのに修行をしない悟飯を不思議に思っているようだ。

「元々悟飯は武道に興味なかったしね。私みたいに腕を競う相手もいないし、今までのことがあれだから闘いが楽しいって思える気持ちもないんだから。闘う理由がなかったら修行はしないで勉強に時間を割くよ」

子供の時に修行していたのだってしなければならない責任感によるものなので、悟飯にとって“強さ”とはそんなに重要な物ではないのだろう。

悟空もピッコロもそれが分かっているし、ベジータは数少ないサイヤ人と言うことでサボっている現状に不満があるようだが。

だが、地球で平和に暮らす上では強すぎる力は確かに邪魔だろう。

闘いは嫌いで平和に暮らしたい悟飯の気持ちも分かる。

「だったら兄ちゃんの代わりに僕達が強くなるよ!」

「それは頼もしいね。まあ、私は悟飯よりもビックリ箱みたいな2人と修行してる方が楽しいしね」

悟飯の闘い方は言ってみれば高い戦闘力によるごり押しのような物なので正直ワンパターンで飽きるのだ。

それならゴテンクスとの修行の方が刺激的だ。

「悟林さんとの修行で俺達強くなったんだぜ!今なら超サイヤ人2にだってなれそう!」

「うーん、もう少し強くなってからだね。でも2人が強くなればなるほどゴテンクス君のパワーも強くなるから私としてはそうなってくれれば嬉しいかな」

フュージョンは変身する2人が強くなればなるほどに効果が上がる。

より強くなった2人と修行を想像して微笑む悟林にトランクスは背を向けた。

「っ、よ、よーし!悟天!修行だ!修行するぞ!」

「トランクス君、顔真っ赤だよ?」

走り去ってしまったトランクスに悟林は首を傾げた。

「どうしたのかな?トランクス君?」

「微笑ましいですね…あ、でももしお姉さんとトランクス君がくっついたら…」

物凄く複雑な状況になりそうで笑ってしまいそうになる。

「そう言えばさー、悟飯ちゃんとはどこまで進んだの?お姉ちゃんに教えてよ義妹さん?」

「ちょ、ちょっとお姉さん!?」

逃げようとするビーデルだが、逃げられるわけもなく大して進展がないと言うことを吐かされた。

そして夜、勉強していた悟飯に悟林がコーヒーと夜食を持っていった。

「頑張ってるね悟飯」

「あ、姉さん。ありがとう」

「今日、ビーデルさんと会って手合わせしたよ」

「いっ!?姉さんと!?ビーデルさんは大丈夫なんですか!?」

「私を何だと思ってんの?ちゃんと手加減してるよお馬鹿」

慌てる悟飯に悟林は冷たく言い放つ。

「ところで悟飯ちゃん、ビーデルさんとあんまり進展ないみたいだねー?」

「な、何で姉さんがそれを…」

「ビーデルさんから聞いた」

それを聞いた悟飯は頭を抱える。

「まあ、勉強一筋だった悟飯ちゃんに恋愛は少しハードルが高いかなー?」

「ね、姉さんはどうなんですか?」

「私?私は恋愛とか興味ないし…結婚が必要なら誰かとやるよ」

「か、軽いですね…」

サイヤ人にとって恋愛は大した意味がないため、その性質が強い悟林は当然恋愛と結婚への興味は薄い。

「私のことは良いんだよ。それより悟飯、ビーデルさんを逃がすんじゃないよ?お前のことを理解してお付き合いしてくれる人なんて滅多にいないんだからね」

「うっ…そ、それは分かっているけど…」

悟飯の反応を見ると、ビーデルを目の前にすると緊張してしまうのだろう。

しかし、悟飯が躊躇してる間に横から狙っている男もいるはずだ。

何せビーデルは世間では世界を救った英雄のサタンの娘で容姿も良い、そのビーデルの相手になれば相応の名誉を得ることが出来るだろう。

流石に弟が失恋する姿は見たくないので背を押してやる。

「でも悟飯。お前がウジウジしてたらビーデルさん盗られちゃうよ?」

「え!?」

「ヤムチャさんを思い出してみなよ。私とお父さんはトランクスさんから聞いてたから驚かなかったけど、ヤムチャさんはベジータさんにブルマさんを盗られたようなもんでしょ?」

「た、確かに…」

今だからこそベジータとブルマの関係は受け入れられているが、当時は驚いたものだ。

ヤムチャが死んだ時にナメック星にまで行ったのだからブルマがヤムチャと別れてベジータと結婚し、トランクスを授かるなど夢にも思わなかった。

「ヤムチャさんがベジータさんにブルマさんを盗られたのははっきりしなかったから…悟飯、ビーデルさんのことが大事なら気持ちはちゃんと伝えなさい?悟飯もビーデルさんに寂しい思いをさせたくないでしょ?」

「はい…」

「大丈夫だよ、お前ならサタンさんをぶちのめせるし、ビーデルさんはお前に夢中だから…頑張りなよ悟飯…」

「姉さん…で、でもサタンさんと闘うことになったら…もしかしたら殺してしまうかも…」

ビーデルとの進展の後の壁はサタンなのだ。

悟空とチチは認めてくれているのだが、サタンは自分より強い男でなければビーデルとの交際は認めないと豪語するほどの親馬鹿なのだ。

当然進展すればサタンとの激突は避けられないわけで…。

「サタンさんなら少しくらい力加減を間違えても大丈夫な気がするけど…」

何せセルの攻撃にも一応耐えた謎の耐久力があるのだから。

しばらくして、悟飯とビーデルの仲が進展し、サタンに挨拶に行った際に勝負したらしいのだが、悟林の予想通りサタンは悟飯の攻撃に耐えきって見せたのであった。 
 

 
後書き
悟林は結婚するとしても見合い結婚みたいな感じになるだろうな。

必要ならするって感じ。

いつの間にか弟の恋愛相談になってしまった。 

 

第41話

 
前書き
取り敢えず、神と神と復活のFはあっさりと行きます 

 
魔人ブウとの闘いから数年が経ち、少しだけ変化があった。

悟飯がビーデルと結婚したことだ。

ビーデルは悟空とチチの義理の娘になり、悟林にとっては義妹、悟天にとっては義姉だ。

それ以外は大した変化はない。

驚いたのは大金を持った悟空が帰ってきたことだが、それはサタンからの口止め料らしい。

1億ゼニーが口止め料とはかなり奮発したものだと悟林は思う。

「なあ、チチ。明日界王様のとこで修行してきて良いか?」

「明日はブルマさんの誕生日だべ?パーティーに行かねえのか悟空さ?」

「んー、オラはパーティーには興味ねえしなぁ…」

「私も行かないよ、畑のことは私がしとくから安心して行ってきなよ」

「でも、せっかく招待してくれたってのに…」

「大丈夫だよ、ブルマさんとは4年前に会ったばかりじゃない」

「悟林…4年はちょっとじゃねえ…おめえが会うのは遊びに来るトランクスかビーデルさんくれえだし…」

4年もブルマのような知り合いに会っていないことにチチは娘の対人関係に何か言うべきかと頭を悩ませることになる。

しかし、ブルマの誕生日当日、悟天の付き添いでチチは早速ブルマの元へ向かうのであった。

そして悟林は悟空に弁当と世話になった界王への手土産…饅頭などのお茶菓子を持たせて自分は早速畑の作業に取り掛かったのであった。

重りの服を着ながら素手で畑を耕しながら何の野菜を植えるか頭を悩ませた。

「うーん、ヨカッタネ大根、ヨカッタネ人参、ヨカッタネ牛蒡、ヨカッタネ葱も良いけど…」

このヨカッタネ種は育ちが早いのもあるが、パオズ山の豊かな土壌もあり、とても美味なのだ。

「昼は…たまには焼き魚にしようかな?」

川に向かい、潜って巨大な怪物魚を捕まえると早速それを焼いて食べていく。

たまにはこんな簡単な食事も悪くない。

「やっぱり新鮮な魚は美味いねぇ…よーし!」

界王拳を発動し、それを維持しながら拳を蹴りを繰り出していく。

こうして界王拳を慣らしていき、今では大した負担も感じなくなるくらいにはこの技は自分の物となっている。

フリーザ、セル、そしてブウと言った仮想敵との戦闘をし、そして修行の成果を発揮するために潜在能力を解放しようとした時、ゴテンクスと悟飯の気を感じた。

そして2人の気が小さくなり、ベジータの気が大きく跳ね上がった。

悟空どころかゴテンクス、悟飯すら大きく超える気だが、次の瞬間にはベジータの気が小さくなった。

「何が起こってるの…?」

ブルマの誕生日パーティーだと言うのに何故こうも気が大きく変動するのか…喧嘩にしては妙だ。

悟林がパーティーの主催場所に向かうと、紫の猫のような男が宙に浮いていた。

「ん?また来たね…うん、君は今までの奴よりは強そうだ」

「(気を感じない…?)あの3人をやったのは、お前なの?」

「お前とは失礼だね、破壊神に向かって」

「悟林…奴は破壊神ビルス…宇宙最強の存在だ」

ベジータがふらつきながら悟林に目の前の男をの名前を言う。

「……思い出した!確か、界王様の星を小さくしたって…あなたが破壊神様なの…」

「界王…もしかして北の界王かい?そこにもサイヤ人がいたけど…お目当ての超サイヤ人ゴッドは見当たらないし…君もどうせ知らないんだろう?」

「超サイヤ人ゴッド?」

聞いたことのない名だが、超サイヤ人の変身の1つなのだろうか?

“神”の名を冠していることから強そうな感じがするが。

「やっぱり知らないか…プリンも食べられないし…もうこんな星…破壊しちゃおうかなー?」

「そうはさせるか!!」

潜在能力を解放するとビルスの興味が向けられた。

「それはさっきのサイヤ人も使ったね…もしかして君も老いぼれ界王神から力を引き出してもらったのかな?」

「だあっ!!」

全力を込めた拳を繰り出す悟林。

ビルスは片手でそれを受け止める。

「っ!!」

「へえ、さっきのサイヤ人よりは強いね。でもその程度じゃ僕の相手は務まらない」

軽めの掌底を悟林に喰らわせて吹き飛ばすビルス。

「ぐっ!究極界王拳!!」

あまりの威力に意識が飛びかけたが、すぐに体勢を整えて界王拳を発動した。

「戦闘力が格段に上がった…随分面白い技を使うね」

「調子に乗らないでよ!」

今度はラッシュを繰り出す悟林だが、ビルスは界王拳で強化されている攻撃を両手で簡単に捌いて見せた。

「驚いたよ、人間でここまでのレベルとは。1割の力しか使ってないとは言え僕に両手を使わせるとはね…でも、僕には通用しない」

「がっ!?」

悟林の額にデコピンが炸裂し、勢い良く吹き飛ばされた悟林の真上を取ったビルスは指で悟林に触れるとクルーザーの甲板に叩き落とす。

「姉ちゃん!」

「姉さん!」

「悟林さん!」

弟達とトランクスが慌てて駆け寄り、ビルスが此方に手のひらを向け、地球を破壊しようとする。

「どうやら超サイヤ人ゴッドはいないようだね。もうこの星に用はない。破壊して帰ることにする」

「くそ…ここまでか…」

ベジータが小さく呟いた。

パワーアップしたベジータもフルパワーの悟林の力も通用しなかったビルスに誰もが諦めかけた時。

悟空が瞬間移動で現れ、ビルスに話しかけた。

「ちょっと待ってくんねえかビルス様!」

「何だ、また君か…」

手を下ろして悟空の言葉に耳を傾けるビルスに悟空は続けて話す。

「ビルス様は超サイヤ人ゴッドってのを探してるんだろ?」

「何だ?見つかったのか?」

「そうじゃねえけどさ、良いアイデアを思い付いたんだ。もしかしたら見つかるかもしんねえぞ!ブルマ!ドラゴンボールを用意してくれ!!」

悟空がブルマにドラゴンボールを用意させると、早速神龍を呼び出した。

神龍に超サイヤ人ゴッドについて聞き、神龍によると超サイヤ人ゴッドとは“6人の正しい心を持つサイヤ人によって一時的に生み出されるサイヤ人の神”とのことだった。

地球上にいるサイヤ人は混血含めて6人。

早速、超サイヤ人ゴッドを誕生させようとするが、誰をゴッドにさせるかだ。

「それじゃあ、お父さん。行くよ」

「おう!」

話し合いの結果、悟空をゴッドに変身させることにした。

本当なら悟林の方が戦闘力が高いので悟林の方が良いのかもしれないが、ダメージや混血であることを考えると確実性を求めて純血の悟空が良いことになったのだ。

そして5人の気を受けた悟空の気が感じられなくなり、不思議な威圧感を放ちながら赤髪の超サイヤ人である超サイヤ人ゴッドへと変身する。

「お父さんの気が感じられなくなった…」

「ええ、まるで感じられない…」

「それは悟空の気が高位の神の次元にまで至った証拠だ。神の放つ気は我々には感じられない」

「良くご存知で」

悟林と悟飯の疑問に対して悟空の気が感じられなくなった理由をピッコロが説明すると、付き人のウイスが感心する。

「よーし!勝負だビルス様。オラが勝ったら地球を破壊しねえでくれよな!」

「良いだろう、ただしこの宇宙に破壊神に勝てる者などいない。僕が勝てば地球を破壊する」

悟空が構え、ビルスも即座に動ける体勢となると、悟空が足に力を入れてビルスに拳を構えて突撃した。

「だあっ!!」

突き出された拳をビルスが片手で受け止めると凄まじい衝撃が迸る。

「どうだ?ゴッドになった感想は?」

「びっくりだ。こんな世界があったなんてよ!」

「僕も驚いてるよ」

ビルスが片手を突き出し、衝撃波を悟空に喰らわせると悟空は一気に遠くまで吹き飛ばされていく。

それを追い掛けるビルス。

「くっ!!」

悟空は体勢を整えると、ビルスから距離を取る。

ビルスもそれを追い掛けると、2人は瞬く間に市街地にまで移動した。

「きええっ!!」

ビルスの繰り出した回し蹴りを悟空がクロスさせた両腕で受け止めると、その勢いを利用しながら距離を取り、ビルスとの距離を一気に詰めて肘打ちを繰り出す。

それをビルスは受け止め、悟空の追撃の蹴りもかわす。

そして2人は乱打戦に突入する。

「くっ」

「はああっ!!」

ビルスの頬に悟空の一撃が掠る。

掠り傷とは言えビルスにダメージを与えたことに悟空は更に激しく攻め続けるが、目の前の病院を見て同時に離れて素通りする。

しかし、悟空よりも速く病院を通り過ぎたビルスの頭突きを受けて荒野にまで吹き飛ばされる。

何とか立ち止まったものの、悟空の体力の消費が激しく、息切れを起こしている。

「大分ゴッドのパワーを使いこなせるようになってきてるようだね。でもやっぱり僕には届かない」

「まだまだだぁっ!!」

再び激突する両者。

その衝撃波は宇宙中を迸るほどで、あの界王神界にまで届くほど。

そして闘いは宇宙へと移り、そこでも激しい闘いを繰り広げるものの、悟空の動きが鈍り始め、とうとう動きを止めてしまった。

「君も結構頑張ったと思うけど…ここまでかな。既にパワーが落ち始めている。」

「…ちきしょう…超サイヤ人ゴッドになったってのにそれでもビルス様には勝てねえのか…」

「まあ、充分楽しめたよ。ここまで力を出したのは久しぶりだ。ではもう終わりにしようか、約束通り地球を破壊する。地球と運命を共にするが良い」

絶大なエネルギーを込めた破壊の玉を作り出し、それを悟空と地球に向けて放つビルス。

しかし、それを見ても悟空は焦るどころか笑みさえ浮かべていた。

「わりいなビルス様。超サイヤ人ゴッドのパワーがオラに言ってるんだ。上に…まだ上に行けってよ!かめはめ!!波ぁーーーーっ!!!」

悟空はかめはめ波を体勢を取り、全ての力を振り絞った一撃を放つ。

ビルスの破壊玉と激突した瞬間、一瞬だけ悟空の気が飛躍的に上昇したのをビルスは感知した。

2人の技は相殺され、悟空は通常状態へと戻り、舞空術を維持することしか出来ない程にまで疲弊する。

そこにウイスが現れた。

「やれやれ…決着はつかず…と言ったところでしょうか」

「ククク…面白い奴だな君は…仕方がない。君に免じて破壊は次の機会にしておいてやるよ」

「ほ…本当か!ビルス様」

「その時まで精々力をつけておくんだな。そうだ、最後に良いことを教えてやろう。この世界は第7宇宙だ。僕は第7宇宙の破壊神、宇宙は全部で12個あるんだ。もっと凄い奴だっているとは思わないか?」

12個の宇宙。

そしてビルスよりも強いかもしれない奴がいるかもしれないことに悟空は目を見開く。

「…!」

「因みにこのウイスは僕の付き人でもあるけど師匠でもあるんだ。当然僕よりも強い」

それを聞いた悟空は思わず苦笑してしまう。

「は…はは…はははは…」

ゴッドでようやくある程度食らい付けたビルスよりも強いウイスに他の宇宙にいる強い存在。

どこまで強い奴がいるのか分からなくなり思わず笑ってしまった。

「ではさらばだ」

こうしてビルスはウイスと共に自分の星へと帰っていった。

そして悟空も地球に戻り、悟林と話していた。

「お疲れお父さん。それにしてもゴッド凄かったね、私も変身してみようかな?」

「でも、あれはかなり疲れっぞ」

「でも出来るならしたいよ。お父さんに負けっぱなしは嫌だし…私もゴッドに変身したい…だからみんなも手伝って」

「ふん、冗談じゃない…俺は手伝わんぞ」

ベジータはそれを却下すると、悟林はムッとなる。

「あの、お義姉さん」

「ん?何?ビーデルさん」

「赤ちゃんでも出来るか分かりませんけど、やってみますか?」

「え?」

「へっ!?」

「い、今…何て…!?」

ビーデルの爆弾発言に悟林と悟空、悟飯…そしてこの場にいる全員が驚くことになるのであった。

「いやー、あの泣き虫悟飯ちゃんがパパになるのか…絶対泣き虫な子供だよ。そして怒ったら何をしでかす分からないだろうね」

「そんなことはありません!きっと天使よりも天使らしい子供が生まれて来ますよ!!やったーっ!!」

悟飯が歓喜し、悟林も苦笑しながらも喜び。

一応出来るのかを確かめるために悟林もゴッドへの変身を試すのであった。 
 

 
後書き
ゴッドまでは混血での変身は確認出来るけどブルーはいないってどういうことなの? 

 

第42話

 
前書き
取り敢えずブルーには変身はしません。

因みにこの作品のフリーザ地獄

ギニュー特戦隊が全滅しているので、力を奪われたギニュー特戦隊はミノムシフリーザを救出出来ないので、せめてもの慰めと思って時たまフリーザのエリアに入って妖精達とスペシャルファイティングポーズすると言う究極の領域の精神的責め苦となっている。

「良いか、お前達!ここにいる妖精達も力を貸してくれる!身動きの取れないフリーザ様のために究極のスペシャルファイティングポーズをお見せするぞーっ!!」

「「「「おーーーっ!!」」」」

「NOーーーーっ!!」 

 
破壊神ビルスとの闘いからしばらく経ち、悟空と悟林、ベジータの3人はビルスの星で修行することになり、悟空とベジータはゴッドの力を自分の物にし、新