ファンキー鉄板とかしとブロンズベリーの夜


 

ファンキー鉄板とかしとブロンズベリーの夜

電撃結婚がなし崩し的に決まり式場の予約や結納など名曲メドレーのような毎日だった。黒柳は耳掃除職人の仕事を休み(本人は産休明けに復帰したい)今日は花屋、明日は髪結いという足の踏み場もないスケジュールをこなしている。そんななか壁の街から謎の結婚案内状が届いた。幸い黒柳に見つかる前に受け取ったが土浦厳はこわばった。差出人はかつてのバンド仲間で通称「コンクリ女」だ。黒柳の一個下で同じ女子高の出身だ。土浦は自分の音楽性が壁の街に固着する理由はコンクリ女との清算が終わってないからだと悟った。かつて黒柳の紹介でコンクリ女と情の通わぬ一夜を過ごした。土浦にとって行きずりの相手だったがコンクリ女は本気の交際を望んでいたようだ。その後、目立ったアプローチもなく関係は自然消滅したと思われた。しかしコンクリ女が泣いているというエピソードを黒柳から聞いた。土浦は思春期にありがちな情緒不安定だと一笑に付したがコンクリ女は自殺未遂するほど悩んだようだ。その後の噂で音楽出版社の御曹司と交際を始めたという。コンクリ女は宴席に土浦夫婦を招きたいというがなぜか壁の写真が挟まっていた。「ファンキー鉄板対決か」土浦はよく知っていた。壁の街には巨大な銅鑼の残骸がある。それを叩いて鳴らすものはいるが未だに音楽にできた者はいない。「俺と組むな」土浦はピアノをひっさげて一人でバトルに向かうが「私にも弾かせて」と黒柳が縋る。土浦夫婦はファンキー鉄板とかしの対バンに勝利できるのか考えるだけ無駄だ。壁の街に眠る巨大な陰謀を握るコンクリ女との一夜が終わると黒柳と共にコンクリ女のもとを離れて帰宅した。そのままアパートに帰り、翌朝黒柳は目覚めるなり黒柳が眠る玄関に入った。
黒柳は翌朝から何か言いたげだが今は我慢しておいてほしい。また会いたい。その時に黒柳にコンクリ女のこれまでを謝るために、またコンクリ女のもとに行けるのだろうか。土浦は疑問に思う。やはり鉄板が仮死状態から復活した。「これは銅鑼太鼓の出番だ」土浦は身重の黒柳に出撃を命じた。コンクリ女は男には倒せない。


「俺は音楽をやる。音楽をやっていた時は女は何もしなかったんだ。黒柳は女を守れるか」土浦は黒柳を励ます。
「守るけど、あんまり無茶しちゃって」黒柳は土浦に寄ると、「私が、俺が守る」黒柳は力強く頷く。
土浦と黒柳はお互いに思いやった。2人で力を合わせた後、黒柳は「あんたならコンクリ女の思いに応えてくれる」と言った。黒柳は音楽出版社に入りたがったが音楽出版社は金がないことに気づきなかった。土浦はそれを知りながら黒柳とコンクリ女を手放したいと思わない黒柳は土浦にとって特別な存在だ。男の情情もコンクリ女に委ねられる。黒柳の男の情情も音楽出版社に委ねられる。黒柳はそのためにコンクリ女を失う心配はない。土浦はどこでも行くことができる頼りない存在だ。黒柳の思いが土浦の思いを変えることは絶対にない。 コンクリ女の人生のことは黒柳に任せるしかない。黒柳には土浦が音楽出版社に入りたがる理由を知る権利がある。黒柳はいつか土浦と共に音楽出版社に入りたいと思う。音楽出版社も黒柳がコンクリ女のもとから離れるよう土浦に懇願してきたはずだ。土浦は黒柳にコンクリ女の思いに応えることができると土浦は信じた。土浦の思いは黒柳をコンクリ女のもとで守ることにある。黒柳はコンクリ女を守るために黒柳のもとに向かうのだ。この二人の想いがこの世界を繋げている。土浦の心に土浦の思いが流れ込んできた。
黒柳は「僕が君に届けて上げたいと思っているよ。土浦君」黒柳は土浦の思いを汲み取った。黒柳は言った。「お願いする、君の思いを少し僕の人生の上に降ろして。僕が君を想う気持ちからコンクリ女の想いになるなら」コンクリ女からの言葉を聞いた土浦は、自分は本当に黒柳に届けて、コンクリ女のもとに連れていくのかと疑問を感じた。この言葉は黒柳の思いの一部であると感じた。でも黒柳に言葉はいらないと感じた。
黒柳の心の中にあった思いが一つになった気がした。黒柳はコンクリ女に思いを寄せる黒柳はコンクリ女への想いに少し(ころは)がついた。
「でも僕は全てのコンクリ男と一緒にはできなかった。だから君に聞きたいんだ」
黒柳は自分たちのことではない。土浦のことを想っていてくれているのだ、と黒柳は思った。そう感じた土浦は、彼女に対する想いを感じた。
「黒柳は土浦君をコンクリ男として愛しているのね。なんだか嬉しいわ」
心を読んでか見てはいけないと感じた黒柳は土浦に向かって笑顔を見せた。
「こんな感じで、僕と共にコンクリ女の想いを受け取ろう」黒柳は黒柳の手を握った。「いいかな、黒柳さん。僕は土浦君のことはずっと好きだったよ」
「嬉しいわ、嬉しいわ、嬉しいですわ」黒柳はうれしそうに、黒柳が嬉しそうにすると、頬に口紅がついてきた。
「これからは自分が愛している人から、その愛情を受け取ることになるわ」黒柳はまっすぐ黒柳の瞳を見つめた。
これから二人の関係は、土浦が黒柳に自分のもとに戻ってきて欲しいので、大切にしていくようにと言う黒柳の思いのこもった言葉であると感じた。
黒柳は自分の想いを土浦の心に届けたいと感じた。黒柳は言った。「お願いする、土浦君」
「黒柳さんは愛していますわね。土浦君の大切なところに私はいますわ」
「ありがとう、黒柳さん」土浦は優しく黒柳の手を両手で握り、その手も黒柳の手に重ねあわせた。
「本当に、ごめんなさい。こんなことを言って」
黒柳は本当に心から黒柳を思った。土浦の言葉は黒柳の胸に響いたと確信した。
この時、黒柳は彼が今どんな想いでいたのか、それがどうかしたのだろうか、という気持ちになった。
しかし、今はそれも言えない。