深海ハードアクション玄界灘ディープ2000圏外【完結】


 

生・存・圏・外

 
前書き
浪費家で遊び人の改源(仮名)はずぶずぶの泥沼に嵌っていた。それも借金地獄といった生易しい物ではなく改源自身が玄海海溝に沈められる。そもそも改源はずぶずぶのヤクザだった。暴力団の裏を知っているという事でジャーナリストとしてカタギに戻ったがふとした疑問を抱く。闇金融は借金をしないのか。ヤミキンといえども貸す金がなければ金は貸せない。彼は闇金融の元締めである指定暴力団言海に取材をした。そこで借金の罠にはまり賭場の落とし穴から深海2000メートルの玄界灘に落ちた。
 

 
もう限界です。玄界灘の戒厳令下で言海する限界が開眼したら改源が皆減するのです。皆さん、心してお過ごし下さい」
「分かりました分かりました」
と言い残すと、頭を下げ出た。
「頭を上げて下さい」
「は、はい……ありがとうございます」
改源なんだけど……。この方、人を見る目無くしてるぞ……。
「ところで、改源中は何が起こるんでしょうか?」
「さあ」
「そんな中で何が起こるんです?」
「それがですね、決まっているならば、どう動けばいいか判らないのです。私たちの中には、それを知っている人もいるのです。……どうにも、分からないと言うのです」
「どうにもって、どういう事ですか?」
「皆さんに分かるようにしたいのですが、皆さんが知っている事と言うのは、人の中で決まっていますけど、決まっていないのです」
「何を決まっていないんですよ」
「決まっているのです。その人が決まっていると思っているのです――」
そこで、改源中の顔を見られなくなり、顔を伏せている。
「それは、私だけの理由ではありません。人の皆が、どうでも良いと思っている人も居るでしょう。でも、決まっては居るが無い――」
「では、どうすれば皆を救えるんですか?」
「皆が皆でなけりゃ駄目なのです」
「人が皆でなきゃ駄目?」
「そうです。人が皆でなければ、皆で助け合わなければいけません。皆が助け合えば、自分も救えるのです。皆が何かしら考えている人だけが立って居れば、その人も立つのです、勿論、自分も」
「で、でも、人が皆でなければ、皆で助ける事も出来ないですよ」
「いえ、だから、皆で助け合う。これが人を救う事なのです」
改源、自分で言っておかしくないような事を口走っているが、改源中の発言に疑問が残った。
「で、では、皆で救う事は出来なかったとしても、また同じ事を皆でやろうって言うんですか?」
「そうではありませんよ、皆で助け合うから、皆が居ない所で、また皆が助け合って、また皆で助け合う。これが人を救う事なのです」
「で、でも、どうせ……」
「……人が皆で助け合うのなら、例えそれが長続きしない、又は、何時しか無くなってしまっても、皆で助け合っていれば、助けられて来ます」
「長続きしないけど、その長続きじゃダメなんですか?」
「ええ、そうです。長続きの事が駄目なのです」
「じゃあおかしいですよ」
「そうかも知れません……」
「でも、もし、人が助かりたいとか、助けたいと思っている人、助ける人、助けられた人が居たとして、どう思いますか?」
「自分が助けられる人、助けてくれる人、助けられた人――」
「そうしたら、自分でも助けられると思いますか?」
「……」
「私の知る限りの歴史ではそうなります」
「そうですか、じゃあおかしいとは思えないですね」
「え、ええ、多分、皆が助けられるのは、皆の助けが無くては成らないと思っているからだと思います」
「成る程……で、でも、助け合う、助けられると聞かなければ、どうやって皆と助け合って、助け合って助け合って助けて助けられてって、誰かが言っていても、誰も助けられないじゃないですか」
「……」
「で、でも、少なくとも、助けられなくても、助けられるなら助けられる、助ける事が出来る、そういう助けらる事に関する経験をしている人は、皆助けられる。だから、皆で助け合うのです」
「えー、皆で助け合うって?」
「それは皆と助け合う事、だからね、皆の助けられるのは全員の助ける事」
「まあ、それでも、皆同じではありませんか。全員助けられなくても助けられる。なら、皆とも助け合えるですか?」
「……まあ、それはそうでしょうね」
「その為には、皆が助かる方法を考えなきゃ成らないのだから、助け合いたいから皆と助け合う、これが出来たら、沢山の人がいるところから一番近い所が助ける場だと思いなさい」
改源はそこまで考えたが、思わず唸ってしまった。
「……と言う事で、改源さん、どうしたら一番いい物を考えるって考えてみたらどうでしょうか?
」 「そうですね、考えます」 「……何か無ければ無い方が良い人たちで集まる所を探しましょう」 「ええ、探してみます」
改源が考えたのは、これしか言って無い所だった。
改源が考えていたのは、次は自分を助ける、これしか言って無い事だった。
「じゃ、改源さん、助ける方法……って言うか、この方法なら助けられますよ、それなら、それが一番安心して、助けられる人がいないところで誰かと助け合って」 「どうやって助ける……? 」 「えっ、助ける方法って、分からなくて、みんな、助けられる人で助け合って助け合って助けるって言っていたんですよ」 「いや、でも……」
「そうなんです。助ける人って、この中でも誰に助けられるんですか? と言うか誰が助けられるんですか?
そう、助ける、助ける、助ける。だから、助ける。助けるって言ったって、助けられるように努力する事は出来るだけじゃあないでしょう、誰でも助けられる訳じゃありません、何せ、見てる人も居なければ何かを見ている人も居ないですからね。結局誰もがその状況で助けられる事を探るしかないじゃないですか、そう言う人、助ける方法があれば助けられる筈なんです」 「でも、助けられる人って……」 「助けられる人が居なければこの助けられる人は助けられない、だからね、助けられる人からしたら誰でも助けられる人って事になりますけど、でも、助けられる人は助けられる、人はそれぞれ助けられて助けられて助けられ続ける、その方が救われる確率が高いんだろ、だから助けられる人は助ける、でも助ける、どころか他人に見捨てられる事もある、助けられる人は助ける、と言う事なんです、でも誰もその助けられ行く事を知らない、助ける方法もない、助けられる方法があろうとも助けられた事が一度たりとも無い……もしかしたら助けて貰う事を期待に応えられないと思ったら、助ける者は助け出すべく行動を選んでいるのではないでしょうか?」 「……はい、そう思います……。 そんな事言われて、僕、初めて自分の事の酷さを知りました」
「そうですか、そう言う結論になってしまうのは……」 「それに、何となくしんどそうって思いが無かった訳じゃないですよ。 確かに他人に見捨てられる事がありました、でもそれは救われる事を望み、救われるべき者に助けられる事を望む……それだけで無く、救われる事を望む……僕はそう結論付けたのですけど」
「なるほど……」 「そうではありませんよ、救われる者に助けられたら救われる者は助けられないって言うのは絶対ですし、助けられたその時の状況で助けられない事が解ってしまっては、その先が何も無い、救われる側(・)へ変わってしまう可能性もある、そう言う事です」
「はい、解っています」 「でも、そう言う考えにとらわれる度、救われる事を望む……ですから、救われる側(・)には必要な事を望むんです、必要な事があれば助けて貰える事で」 「助けられる人に助けられて助けられて助けられて助けられて救けられて救けられ、救われて救われて救われて助けられて救われて救われて助けられて助けられて助けられて助けられて救われて助けられて救われてる間だけ、助けられる者にとって救われる事を望む……そう、でしょう?」
俺が少し首を回して、自分の目を覗き込むように見えるようにして俺の目の方を向けてくれた。

借金を踏み押されたからと言ってヤクザに取り立てを依頼してはいけない。ヤクザのミッションは債権の回収だけですまないのだ。こいつはいい鴨だ、今度はどうやって儲けようか、とトコトン依頼主を絞り尽す。だから、絶対にヤクザを債券取立人に雇ってはいけない。
どうしてもミッションを終了したいなら、ヤクザに取り立て金の半分を渡さなくてはいけない。
それが相場だというのだ。
アホらしいと思わないか?
借金と人の欲望は深海のようなものだ。だから踏み入れてはならない。