ミカド法幢流し台に緊急念力は通じるのか?【完結】


 

ミカド法幢流し台に緊急念力は通じるのか?

 
前書き
私利私欲のために支配欲を満たそうとした男は… 

 
『うむ。いかなる状況も通じる』
「ならば、頼む」
『うむ』
と言ってミカドが念じた。
「霊核破壊の念力。霊脈の破壊力は霊子結晶で対抗しきれない! ゆえに霊核破壊の念力は通じないことを承知したまえ、フィジカルボディの霊脈とフィジカルブレードの霊脈、両方を破壊する!」
『霊核破壊の霊波を通じる!』
霊法の発動を悟った、というより霊法を発動するための思念思念エネルギーが、霊核破壊の念力となって、空の彼方の霊脈にも、地の底の霊脈にも、この宇宙の底の霊脈にまで届いた。
「霊子結晶ごと! お前ごと。今ここで切り離せ!」
巨大な青い水晶の塊が空中に出現して光になった。霊子結晶は青い水晶とは思えないほどに真っ赤になる。そして、そのまま地の底の霊脈にまで届く。
霊子結晶から発する強烈な霊力を感じた。そして、これまでの霊動が嘘のように、あっという間に霊子結晶は青い水晶の中心にまで到達した。だが、青い水晶の中心は誰も反応していない。
「霊子晶?」
霊子晶に異変が起きた。霊域が赤い光と共に青く発光し、赤い光は青い水晶の中心から上に突き立っている! 青い水晶の中心が溶けている! これは一体!
『どうする、霊子晶は光に溶けるのか。それとも赤に溶けるか』
「まさか!」
『霊子晶の中心に、その存在を認識し、その存在に通じる道を開くだろう!』
「ならば止めねば!」
赤い水晶の中心が青い水晶に飲み込まれ、青い水晶の中心も青い水晶の中心の一部となり、青い水晶の中心が透明な水晶に変化して、青い水晶の中心が溶けた。青い水晶は黒から緑に、緑が赤に変化し、元の白い水晶にも戻る。青い水晶は透明度が回復し、透き通った紫に変化する。
「どうしたのですか?」
「ここの壁は透明なんだな」
「透明だからどんどん青さが増していってますね」
「赤と緑。そして、濃紫と青。それで霊子晶を封印しろ! そして、霊子晶と赤く照らし、ここの壁を作ってくれ!」
「なんとか出来るのか」
「できるよ。霊子晶を見つけて、俺の思い通りに動かせばいい」
「よし、わかった」
青い水晶の中央から淡く光る光が漂い、透明だった青色の水晶が青い水晶に変化し、光る透き通った紫の水晶に変化して、光る赤い水晶に変化する。それを観察して思った。なんだこの光景は。霊子晶が青く発光してる! これが霊子晶の力か! 光る水晶は青い球体に変化して、壁にぶつかり、透明度の上がった赤い水晶に戻る。これは……。
「どうだ、光る水晶ってのは、青だ。これは、透き通った紫。いや、紫だろう? でも透明で透いてるな」
「これはどれ程、霊子晶を封印しにくいんだ? 」
「これは霊子晶を封印するための霊器でない……?」
「俺が試している、霊器でない!?」
「いや、待て……。まさか、透明な白い水晶と、透明な透き通った紫を、霊器にしているのか……」
「だが、それだけではないな。この透き通った紫が、青い水晶ではどうしようもないから、霊器として……?」
「透き通った紫の……まさか、霊器が……」
「そうだ! 透明な透き通った紫の水晶は、誰かに頼んで使わせる為に用意されていたんだ」
「頼まれて、ですか……」
透明な透き通った紫は、白い水晶で封印され、透明な透き通った紫は青い水晶として……というように、この物語の設定から受け継がれている。しかし、それだけではない。
もし、透き通った紫があの透き通った水晶になったら、物語の主人公はどうなってしまうのだろう。
主人公の目は、どうなってしまうのだろう。
その為、もし、主人公にその水晶が封印されてしまったなら。
もし、主人公が何かしらの悪用されてしまう。
そんなことになったらマニピュレータ大帝国が一瞬にして滅んでしまうだろう!
国破れて山河在りて臣民の屍累々。大帝国の栄華は歴史年表の一行にまとまってしまう。
「よいですかな?大王様。そなたは王の中の王として頂点に立つもの。しかし滅亡した帝国に君臨して何になるというのです?」
「うぬう!痴れ者め。私は民を統べ導くべくその地位を神授されたのだ。たとえ最後の民が倒れようとも天が私に王者たれと命じている。民ならば、民ならばっ、いくらでも連れてくればよいわ!」
「それは立派な志で、しかし、もう一つお聞かせください。その民とやらは大王様を慕いますか?」
これは聞き捨てならない台詞だった、いかな異星の客とて言ってよい事と悪いことがある。
激高した大王はミカドをバスタードソードで一刀両断した。
「無礼者めが!」
肩で息を整える大王の足元に鮮血の池が広がっていく。ミカドはまだ生きていた。
息も絶え絶えに大王を責める。「良いのですか? 大王様、契約内容を憶えておいでですか?」
シャン!、と刃が鳴った。
「しぶとい奴め。この期に及んでまだ私を愚弄するか! とどめを刺してやるわ」
しかしミカドは大王に私利私欲の愚を突き付けた。
「世界を折半すると合意しましたよね。既にその呪文が効果を発揮しております。そして半分の受け取り手である私が死ねばどうなるか、あなたはご存じで無い」
「なにおう?戯言を」
大王はバスタードをミカドの口にねじ込んだ。彼の頭蓋は崩れ、べちゃあっと嫌な音を立てて散った。
「知れたことよ。世界は私の手中に収まる」
シャンっと剣が鞘に収まる。
しかし、大王がその後の世界を支配することはなかった。
「ヲ?」
珍獣のような断末魔を遺して彼は肉片に帰した。
天安門星から都市型マザーシップの大編隊が押し寄せたのだ。
ミカドは地球に派遣された唯一の天安門星人である。星の権益を代表する大使ともいえよう。
それが蛮族の王に咎なく殺されたのだから外交問題になる。
大人しくマニピュレータ大帝国は地球を異星人と折半していればいいのだ。
ミカドは律儀にも大王の良い面を母星に報告し、外交関係の樹立を準備していた。
それがゆえの戒めであった。
しかし今となっては大王の人となりが知れ渡ってしまったので和平はありえない。
「大王、もしそなたが土壇場で悔い改めていればミカドの緊急念力が契約の成就をキャンセルできていたものを」
都市型マザーシップのAIは大陸にビームを照準した。
おわり