転生したらビーデルの妹だった件
第一話
前書き
オリ主転生物です。ドラゴンボールの二次タイトルと言えばもうこれしか無いでしょう。書きたい事だけを書いたような作品ですが楽しんでもらえれば幸いです。
うっすらと眠気を抑えて目を開けると、そこにはこちらを見つめ返す髭面のもじゃもじゃ頭の男性が見返していた。
は?
キモっ!
落ち着け…落ち着くんだ…
あたふたした手が視界に入った瞬間更に発狂。
手、ちっちぇーっ!!
あ、意識が…
ガクリと頭が左に倒れると落ちる意識に幼児の顔が写りました。
何度が気絶を繰り返して現実を確認すると、生前の記憶は曖昧だがどうやら自分は幼女に生まれ変わっていたようだ。
最初に見上げたもじゃもじゃがマーク、隣に寝ていた幼児がビーデルと言うらしい。
自分の名前も苗字はなくモンテと言うらしい。ついでにビーデルの双子のようだ。
ん…ビーデル……?
……
………
…………
ビーデルっ!?
ビーデルと言う幼女の名前と格闘家の父、マーク。
うーん、うーん…うーん…
知恵熱が出るほど悩んで認めたくない現実を思い知る。
まぁ、一番の決定打はテレビでホイポイカプセルのCMを見た時なのだが…
そう、どうやらここはドラゴンボールの世界らしい。
それもどうやら自分はビーデルの双子転生と言うまぁ、アレな感じの存在だ。
ドラゴンボールにモンテと言うビーデルの妹は登場しない。
完全なイレギュラーか…
「魔人ブウ編までに死んでいるかだよね…はぁ…」
もしかしたらセル編ですでに死んでいるのかもしれない。
この世界、結構モブに厳しい世界なのだ。
ナッパのクンッで東の都はクレーターに変えられ、魔人ブウには飴玉に変えられて貪り食われ、悪の魔人ブウには普通に一瞬のうちに全滅させられたり…そもそも地球そのものが木っ端みじんになる事もある。
それにドラゴンボール本編ならばまだ生き残れる可能性も有るのだが、未来トランクスの世界に続くのならばもう生き残る芽は無いに等しい。
人造人間に遊びついでに殺されたり、それを何とかしてもゴクウブラックに全滅されられる。そして最後は全王様が全て消し去って終了。
「もう開き直るわ。わたしはわたしの生きたいように生きるっ!」
幼女が天に手を突き出して空を見上げていた。
「なにやってるのー?」
「あ、いや…なんでもないよ、ビーデル」
隣に居たビーデルが不思議そうな顔をしていた。
とりあえずこの世界がドラゴンボールの世界なら、誰でも気を持っていて訓練次第では舞空術を使えるようになるはず。
原作のビーデルでも十日ほどで自在に飛んでいたし。
父のマークは武術の訓練に忙しそうにしているし、ビーデルはそんな父を見ているのが好きなのか結構ついて行っている。
自分はそこまで興味も無いので自室にこもって舞空術の練習だ。
あぐらをかき両手を丹田の辺りで包み込むように構えると集中する。
集中し、体中に有る気を一か所に集めるイメージ。
武術の鍛錬をしていないのが理由なのかは分からないが、気球(きだま)を一瞬表せるようになるまでに三か月もかかってしまった。
やはり一朝一夕と言う訳にはいかないらしい。
赤ちゃんで空を飛んでいたパンちゃんとかどうなんだろう…才能の差に泣きそうになるわ…
だけど気を感じる事は出来た、後はコントロールを磨けば浮けるようになるだろう。
「お、お…おおっ!」
ふよっ
「あいたっ」
どてっと床に激突。
ほんのちょっとだけだが浮けた事のに感動して集中力を切らしたのがいけなかったのだろう。
「次からはベッドでやろう…」
気のコントロールの修行方法ってどんなのがあるだろうか。
むぅこんな時こそ前世知識をフル動員する時っ!
あ、同じジャンプなら念とかもあったよねっ!
纏、練、絶、凝、発…うん、この着眼点はいいかもしれないっ!
流、周、堅、硬が使えれば死ににくくなるしねっ!
よしっ!そっちの方向で修行だぁ!
モンテちゃん、三歳。舞空術をマスターしました。
飛べるようになったので、泥棒します。
え?意味が分からない?
現在わたしはカプセルコーポレーションに侵入しているのです。
ピラフ一味も容易に侵入できるくらいザルセキュリティ。
大丈夫だろうか、この大豪邸…まぁ楽で良いのだけれど。
ソロリソロリ…フヨリフヨリと音をたてないように探索を続ける。
見つかっても三歳のわたしはすごい罪には問われないだろうと言う打算のもと、結構大胆に捜索。
どうにかブルマの部屋を見つけ出し、整理されていないガラクタを押しのけ目当ての物…ドラゴンレーダーを見つけ出すと借りパクしてトンズラ。
ドドドドドと心臓が早鐘を打っている。
「やった、やったっ!ドラゴンレーダーだっ!それに盗んでない、借りただけっ!本人の許可は取って無いけど、後で返せば多分大丈夫っ!」
空を飛べるようになったわたしは精力的にドラゴンボールを集めていく。
赤いヒトデマークが入ったオレンジの玉を見つけた時の感動と言ったらもうっ!
え、星マークじゃ無いのか?バカめこれはヒトデマークだ。ズノー様もそう言っている。
そう言えば、このどこから見てもヒトデマークが正面に見える様になる仕掛けは特許申請されているらしいけれど、神様大丈夫なのかな?特許料払っているとか?
パオズ山に反応が有るのは分かっているのだが、四星球は最後だ。
ドラゴンボールと言う作品で憧れるのは多々あるだろう。
今探しているドラゴンボールは願いを叶えてくれると言う反則チートで誰もが一度は夢を見るやつだ。
それ以外にもかめはめ波の練習をした人は多いだろう。
出ないかめはめ波を湯舟のお湯で再現してお風呂場かめはめ波なんかは誰もが通った道だ。
後は「はぁっ!」とか言いながらスーパーサイヤ人ごっことかね。
そしてやはり最後はあれだ。
そう、フュージョンだ。
部屋で一人フュージョンの練習とかしただろう?え、してない?あ、そう…
と言う訳でフュージョンだ。
「ビーデルちょっと来て」
「なぁに、モンテ」
最近格闘に目覚めたのかキックの練習をしていたビーデルを呼んでフュージョンごっこを開始。
「なに、そのポーズ」
「いいからいいから」
まだ恥ずかしさを覚えない年頃のビーデルにあの究極に恥ずかしいフュージョンポーズを教え込む。
先ず中心から三歩分距離を取り、腕を水平状態から半回転。
一気に反対側に手を振って、「はっ!」の掛け声でお互いの両の人差し指をくっつける。
ま・さ・にっ!恥ずかしいポーズなのだ!
「「ヒューーーーーーー、ジョン…はっ!」」
すると視界が混濁し始め…
…
……
………
「あれ…?」
気が付くと四星球が無かったが集めていたはずの全てのドラゴンボールが無くなっていてました。
そしてなんかお尻がムズムズするような…?
「モンテ、しっぽはえてるよ?」
と言うビーデルの言葉に…
「なんじゃぁこりゃあああぁぁぁぁぁっ!?」
全力で吼えたのだった。
どうやらこの尻尾、自分の意思で動かせるようだ。
色は赤み掛かった茶色で長さは腰から地面に着く程度には長い。
これってどう見ても…
「うわぁ、なんかへんなかんじ」
「び、ビーデル…なんでビーデルにも尻尾が…?」
「わかんないけど…あ、このしっぽものを掴めるよっ!」
机の上に有ったリンゴを掴んで遊んでいるビーデル。
「お行儀が悪いからやめなさい」
「えー?いいじゃんけち」
しかし、どうしてこうなったかが思い出せない。
可能性としてはフュージョン中に何かあった…いや確実に何かあったな…
だってドラゴンボール無くなってるもの…
と言う事は冷静に分析すればドラゴンボールは使われてしまったのだろう。
ドラゴンレーダーを起動しても反応が返ってこない所を見ると確実だ。
そして尻尾が生えている自分。
何かを叶えたのかは確実に自分達…そう達だ。
「シェンロン…見たかった…初めてのフュージョンで記憶が曖昧で覚えてないのはショックだ…シェンロン…」
しかしフュージョン中に何かを叶えて、分裂した後もその状態が維持されているとしか考えられない。
まぁ、叶える願いとしたら自分だったら多分アレなのだが…シェンロンの力を超える願いは叶えられないから無理かもしれないと思っていたアレだろう。
ドラゴンレーダーは後日カプセルコーポレーションに送り付けるとして…
この尻尾…どうしよう…?
確証が持てるまでは絶対に満月を見てはいけない。絶対にだっ!
ビーデル、夜大人しく寝てくれると良いのだけれど…
パパにはなんて言えば…まぁビーデルが可愛く言えば何とかなるかな…たぶん。
そんな事よりこの生えた尻尾の考察だ。
夜、手鏡をもって家を抜け出すと裏山まで舞空術で移動して人目を避けるとアレの練習をする。
首の後ろ辺りにぞわぞわを集めて…
「むりーーーーー…」
そう、このシッポがサイヤ人の証であるのなら超サイヤ人になれれば確定すると思ったのだが…
「そう簡単じゃなかった…もしかしてただ尻尾が生えただけ?もう一つ確実に分かるかもしれない方法はあるけど…満月を見るのはなぁ…怖いなぁ…」
大猿になって巨大化して暴れまわったなどと言えばシャレにならない。
「それに確か穏やかな生活で増えるS細胞とかなんとかが無いと超サイヤ人にはなれないんだっけ?種族変化?したばかりの自分じゃまだ無理か…」
それからしばらくはダラダラと過ごしていたのだが…
モンテちゃん、四歳になりました。
そろそろ出来るだろうかと裏山で気を高め超サイヤ人になる練習をしている。
首の後ろにゾワゾワを集めて…
「はーーーーーーーーっ……はぁっ!」
ブワリと髪が逆立つ感覚と共に金色に染まる。
手鏡で確認するとどうやら超サイヤ人になれたようだ。
「おおっ!マジかマジかっ!超サイヤ人っ!うわっカッコイイっ!テンションあがるぅっ!」
と言う事はシェンロンにお願いしたのはそう言う事だったのだろう。
ハイテンションで騒いでいると頭上から誰かの気配が。
「何者だコイツ…戦闘力500だと」
その声に見上げるとフリーザ軍のプロテクターを身に纏ったロン毛のサイヤ人が…
「ラ…ラ…ラ……」
いや待て…戦闘力500…だと…?
モンテは膝を着き頭を辛うじて突っ張った両腕で支えている。
皆さまはご存じだろうか。
超サイヤ人はおよそ戦闘力を50倍にするのだ。
それでいて頭上からの声は戦闘力を500と言ったのだ。
つまりわたしの戦闘力って10…
染まった金色も黒髪に戻りショックで立ち直れていないモンテ。
「戦闘力10…気のせいか?」
「はっきり言うなよぉ~っ!!あ…」
視線があう。
目の前には初めて見るサイヤ人が浮かんでいた。
ラディッツーーーーーっ!?
なんで、どうして?
混乱するモンテ。
「その尻尾…お前サイヤ人か?」
「いえ、生まれも育ちも地球です」
ミゲルママとマークパパから生まれたのは間違いありません。
完全に地球人です。
「まぁいい。スカウターの故障でないのならお前には見どころがある。一緒に来てもらうぞ」
「お断りしま…」
と言う言葉を最後まで言う事は出来ずにサイヤ人…ラディッツに尻尾を掴まれてつるし上げられてしまった。
「ち…力が…はいらにゃい…」
片手で乱暴に持ち上げるラディッツを睨み返す事も出来なかった。
「お前、…やはりサイヤ人ではないのか?だが、飛ばし子だとしても年齢が合わんな、ハーフか?」
くそう…よわむしラディッツのくせにぃ…
「なんにしても珍しい女サイヤ人だ、何かに使えるだろう。少し寝ておけ」
やめろ18禁展開はまだ早いっ!こちとら幼女だぞ、幼女っ!
ドンと首元に手刀を喰らったらしい。
ヤバイ…意識が…
「どこだろう、ここ…」
意識が戻ると目の前には何かカプセルの球体の様な物があり、その奥で煙がもくもくと上がっていた。
「何、どこっ!?狭い所怖いんだけどっ!」
パニックになりつつ目の前の扉らしき部分を叩くとミシリとひびが入った後に盛大に吹っ飛んだ。
無意識に超サイヤ人になっていたらしい。
慌てて狭苦しい所から舞空術で浮き出ると周りを見渡す。
「本当にどこっ!?」
見渡すと荒野のようだが、遠くから何か飛んで来る物体が見えた。
飛行物体から出て来たのは何だろう…ピンクのリトルグレイ型の宇宙人…?それとぷっくりとまんまるな宇宙人?だ。
抵抗の意思が無い事を示す為に地面に降りて状況を見守るモンテ。
「やぁ、いらっしゃい。ヤードラット星にようこそ」
「………はい?」
天国のお母さん。どうやらわたしはどこか知らない星にいつの間にか来ていたようです。
どうにもラディッツのアタックボールに乗せられて気絶させられていたわたしは、恐らくラディッツの死後次の目的地に設定されていたこのヤードラット星に飛ばされてきたらしい。
たどり着いたはいいのだけれど、アタックボールは壊れていて(壊したのはモンテだが)直すのに時間が掛かるし、地球に帰るにはここで瞬間移動を覚えた方が早いとの事…
ヤードラット星人の人たちの好意に甘えたわたしは地球に帰る為に修行する羽目に。
まぁ瞬間移動は覚えたかったから良いのだけれどもっ!
地球のビーデル大丈夫かな…ラディッツ襲撃後、悟飯が大猿化したために月をピッコロが破壊するはずだから大猿化する事は無いと思うけれど…心配だ…
どうせ帰れないのだ。超サイヤ人の状態に慣れる修行もついでにしておこう。
まぁ、戦闘力は500なのだけれどねっ!
常時超サイヤ人状態を維持しつつ瞬間移動を教えてもらう。
これが結構難しい。
針の山の頂上で精神修行とか、どちらかと言えばスピリチュアルな修行をこなすモンテ。
あれだ、フォースを感じるんだ的ななにかだ。すべてはフォースと共にある。
ついでに大猿に変身した時に理性を保つ修行だと思ってがんばりました。
半年かけてどうにか瞬間移動と不完全だが大猿化時意識を保つ事が出来るようになったので、地球に帰る事に。
だって、このままここに居て悟空とか来ちゃうと面倒だしね。
さらにこの一年で戦闘力も十倍ほどに伸びたようだ。
ふっふっふ、これでわたしをザコとは呼ばせない。
超サイヤ人のわたしの戦闘力は5000だっ!
…
……
………
ナッパより少し強いくらいですね…
いいのよ…くんっ…じゃ死ななくなったし?
まぁサイヤ人は死にかけて強くなるらしいのだけど、死にかけた事なんてないしね。これからよ、これから。
モンテちゃんたぶん五歳。地球に帰ります。
「えっと、北の銀河で気が強そうなのは…」
それでは右手の人差し指と中指を額に当てて…
「あったあった」
シュン
一瞬でヤードラット星から地球に現れたモンテが一番最初に見たのは左右から迫る閃光。
「ちょ、ちょっとちょっと!わたし戦闘タイプじゃないのよっ!瞬間移動は…間に合わないっ!ぜ、全力防御っ!」
左右からの気功波を気を全部防御力に回して何とか耐えきれたモンテは爆風に飛ばされて地面を転がる。
「いてーーーーーっ!死ぬ…死んじゃうっ!」
サイヤ人の体じゃなかったら多分死んでるよっ!
「何だ貴様はっ!」
腕を組みながら叫んでいるのは多分ベジータ。
「その尻尾、サイヤ人か?」
禿のおっさんは多分ナッパだろう。
「バカめ、金髪のサイヤ人など居るものかっ」
あ、そう言えばずっと超サイヤ人だったから金髪なのわすれてました。
サイヤ人って基本黒髪ですものね。
「おめぇ、どっから来たんだ、あぶねぇだろう」
あ、悟空さん初めてみました。ちょっと感動しています。
て言うか、わたしまさか悟空とナッパが気功波を撃ち合っている真ん中に瞬間移動してきたの?
なんて運のない…
「あ、はい…すぐにどきます」
「バカめ。お前とカカロットの撃ち合いで生き残ったヤツが普通の訳無いだろうっ。すぐに殺せ」
ベジータがナッパをけしかける。
「あ、ああそうだな」
「まてよ、お前らの相手はこのオラだろう」
ジリっと構えを取る悟空さん。素敵です。
「ちっ」
ベジータは悪態は吐いているが自分で殺しに来るつもりは無いようです。…よかった。
邪魔にならないように岩陰に移動。
ビーデルやパパの気はまだよくわかってないから適当に大きな気を目当てに飛んできたのが完全に裏目に出てしまった。
飛んで逃げたら流石にベジータも逃がしてくれないだろうな。
普通に気功波が飛んできそうな雰囲気だ。
目の前で繰り広げられる悟空とナッパ、それからベジータとの戦いを感動して観戦していたのがいけなかったのだろう。
わたしは油断していたのだ。
ナッパの後に悟空と戦っているベジータは不利を悟ると何やらエネルギーボールの様な物を作り出すと空へと放り上げたそれを直接見てしまったのだ。
ベジータの放ったパワーボールが酸素と交じり合うと大量のブルーツ波を放ち始める。
1700万ゼノを超えるブルーツ波を眼から取り込んだ尻尾の有るサイヤ人はその体を大猿へと姿を変えてしまう。
そう、尻尾の有るサイヤ人を。
ドクン…ドクン…
血流が上昇し、動悸が速まる。
着ていた服は膨れ上がる肉体に勝てる訳もなく引き裂かれ巨体は毛に覆われていき…
ヤバい理性が…持っていかれる…くぅ…
「何っ貴様やはりサイヤ人っ!?」
大猿になっても意識を保っているベジータが驚きの声を上げている。
「ウォオオオオオオオオオ」
理性の欠片も無い遠吠え。
「うわああぁああああ」
振るった右手が界王拳の後遺症で動きの鈍い悟空を吹き飛ばし、呆気に取られているベジータと取っ組み合いの戦闘を開始する。
「なめるなっ!」
ベジータの開いた口から炎が吐き出される。
それをモンテは迎え撃ち相殺。
「な、ばかなっ!?」
確かに戦闘力の数値ならベジータの方がモンテよりも何倍も上だ。
だが、モンテはヤードラット星での修行の結果瞬時に戦闘力を引き上げる事が出来るようになっていたのだ。
殆ど持っていかれている理性の中でどうにか攻撃の瞬間だけ戦闘力を引き上げて迎えうっているモンテ。
結果、ベジータとモンテは互角の戦いになってしまっていた。
ここに来て理性の有る分メンタルの弱さがあだとなり、ベジータの一瞬の不意を突いたモンテがベジータの尻尾を掴んで振り回す。
「ぐあああああっ」
振り回されたベジータはその負荷に耐えられず尻尾が根元からちぎれてしまい、元の姿に戻って地面を転がっていった。
ヤバイ…本当に理性が…
破壊衝動になんか負けるかーっ!
くぅ…!
ヤードラット星での精神修行も役に立ったようで、大猿の力を制御するとだんだん体がしぼんでいった。
倒れ込む寸前、モンテの眼前の腕は紅い毛で覆われているような気がしたが、そこで完全に意識を手放した。
次に目を覚ますと病院で、悟空さんの仲間のブルマさんが運んでくれたようだ。
そこでわたしの事を調べてくれたのかビーデルとパパが病室に着いたところだったようで…
「モンテ、一年もどこに行っていたんだ…パパは…パパは本当に心配したんだぞっ!」
ちょっと引くくらいの涙目で語るマーク。
「ご、ごめんなさい…パパ」
「帰ってきてくれてよかった。なぁビーデル」
「本当に、どこに行っていたのよバカ…モンテは本当にバカなんだから」
「ビーデルもごめんね」
適当に記憶が無い事にして話をはぐらかすのが精いっぱいだった。
だいたいわたしも一年も家を空けるつもりはこれっぽっちも無かったんだよっ!それもこれもすべてラディッツのせいだ…たぶん。
第二話
前書き
モンテの名前の由来はデモンを入れ替えて女の子なので球を二つ無くした感じです。つまり立派なサタンファミリー。
そう言えば、悟空とベジータが地球で戦っていたと言う事はもうすぐ悟飯とクリリンはナメック星に旅立つのだろう。
うむ、スルーだな。
スルー推奨。
戦闘力53万な初期フリーザ様にすら勝てる気がしない。
悟飯の気や悟空の気を辿れば一瞬でナメック星に行けるけど…ゆ…誘惑がっ!
しかし最終決戦の悟空VSフリーザなど余波だけで多分死ぬ。
が、我慢だ。
………我慢…だぞ?
その後何度か空が暗く染まったのを見るにドラゴンボールを使ったのだろう。
一年の内に何回かあったのを確認しているので恐らくナメック星人達も地球に居てナメックボールを使っているのだと思う。
ナメックボールは地球時間で130日で回復するからね。
今の内にカプセルコーポレーションに居るナメック星人の気を覚えておこう。
記憶さえしておけば宇宙のどこに居ても探し出して見せる。
戦闘では悟空に勝てる気もしないけど、この面に関しては負けないよう努力している。
見つけられるよね…がんばってるよね?わたし…
今も凶悪な気が空の彼方からこちらに来ているのを感知してるし、大丈夫なはず…
そしてこの凶悪な気はメカフリーザのものじゃないかな。時期的に考えて。
誘惑に負けて今回は見に行く事にした。
トランクスが見たかったのだ。
だって、ねえ?分かるでしょう?
未来トランクスだよ、未来トランクス。
ここが一つのターニングポイント。
未来からトランクスが来ないと詰みます。
よしんば人造人間から逃げ延びていてもゴクウブラックで終わりです。
お願い来てくれっ!と念じているとフリーザ一味以外の気が感じられません。
未来トランクス…来ませんでした…
なんだろう、命中率99%なのに回避されてしまったような何とも言えない感情は…
グッバイわたしの怠惰な生活…ようこそ、死と隣り合わせの世界。
うああああああああっ!あほかっ!普通来るよね!?トランクスっ!アババババババババ…fごあうhふぁおいwjgpさk
落ち着くまで数十分…地面を転がっていました。
あfほあがpじぇおjgtくぁghjくぁjk;
く…発作のようににまた理性が……落ち着け…わたし…ヤードラット星の修行を思い出せっ!なんなら素数でも数え…素数ってなんだっけ…えっと…
地球にやって来たフリーザ一味はZ戦士達が時間を稼いでるうちに瞬間移動で駆けつけた悟空がどうにか撃退したようだ。
だが、未来からトランクスがやってこない以上悟空は心臓病で死ぬ。そして張り合いの無いベジータはトレーニングをサボり誰も人造人間を止められずに世界が終了する。
今のわたしは生まれ変わったなんて言うボーナスステージだ。最悪死んでしまっても…
そう考えた時、パパが、ビーデルの顔が浮かんだ。
死なせたくない…死なせたくないな…
わたしにやれる事は全部やろう。
先ず悟空が心臓病で死ななければ原作漫画の世界に進む可能性も出てくる。
ドラゴンボールで悟空が病気にならない体にしてもらえばいいか。なんだ、結構簡単か。
それならまたカプセルコーポレーションに忍込んでドラゴンレーダーを借りてこよう。うむ、これで万事解決だ。
なんて考えていたら空が急に暗くなりましたとさ。
「え、これってまさかシェンロンっ!?」
バカなっ!ここでシェンロンが願いを叶えたら次に願いを叶えられるのは一年後だぞっ!
トランクスが来なかった時空の悟空がどのタイミングで心臓病を発症するか分からないのだぞっ!?
漫画みたいに人造人間と戦っている最中のギリギリ三年の猶予が有るかも分からない。いや多分無いだろう。
なんて事を考えている内に空は再び明かりを取り戻した。
がk:jhg;あhぎおjtがgfkj
くっ…発作が…落ち着け、落ち着くんだ。
もう最後の手段しかないかもしれない。
「モンテ、お風呂入ろう…モンテ?」
ビーデルがモンテの部屋に入ってくると書置きが一枚あるだけでモンテの姿は無かった。
『旅に出ます、探さないでください』
「なんて書いてあるんだろう」
プライマリーにすらまだ通ってないビーデルにはまだ読めなかった。
家を飛び出したモンテは舞空術を使って一路パオズ山へ。
そう悟空のいるあの山だ。
人気のない山に一軒の家がある。
気を感じ取るに確実に悟空さんの家だろう。
わたしは今、悟空さんの家の中で土下座をしている。
「天下一武道会の優勝者だと聞きました。弟子にしてください。出来れば住み込みで修行を付けてください」
繰り返す事もう五回くらい同じセリフを繰り返している。
「チチ…めえったぞ」
困った顔でチチさんを振り返る悟空さん。
悟飯くんはチチさんの後ろで不思議そうに見返している。
「いつまでも女の子がそんな事してんじゃねえっぺ」
「そ、それじゃあっ!」
「悟空さもボケっとしてんと、この子の部屋さつくってけろ」
「あ、ああ…分かったよ。悟飯手伝ってくれ」
「うんーわかった」
わたしが取った作戦は悟空さんに四六時中張り付く事だ。
その傍に居る理由が修行を付けてもらうと言う事だったのだが…
ブルマたちがあまり興味が無かったのか後で回収しようとしてたのかは定かでは無いが、フリーザの乗って来た宇宙船からメディカルマシーンを拝借、ホイポイカプセルにしまっておいたのだが…
なんでメディカルマシーンの説明をしているかって?
最近の寝床がメディカルマシーンだからです。
勉強に時間を取られる悟飯の代わりにわたしの修行に熱が入った結果、毎日生死をさまよってたりする。
まぁ、幸運な事なのか分からないが、瀕死からの回復で大幅に戦闘力を向上させるサイヤ人の特性は持っていたらしく、一度間違えて瀕死のダメージを負ったわたしがなんとかメディカルマシーンで完治した時にパワーアップした事を悟空も感じたらしくもう修行が鬼畜の域に達しています。
それからはこのカプセルがわたしの安住の地なのでした…とほほ。
悟空さん、加減してっ!
しばらくはそんな生活をしていたのだが、ついに…
「ぐあああぁ…胸が…胸がいてぇ」
食事中、悟空さんがいきなり心臓を抑えて苦しみ始めました。
「悟空さ、どうしただ?どこかいてぇだべか?」
「お父さんっ!しっかりして」
「ぐぅ…うぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
呼吸が荒くなっていく悟空さん。
「近づかないでっ!」
「モンテさっ!」
「チチさんは悟飯くんをつれてお医者様を呼んで来てください」
「だども…」
「早くっ!悟飯くん、チチさんを抱えて飛んでっ」
「分かった。すぐにお医者様を連れてくるからっ!」
そう言って悟飯くんはチチさんを連れて家を飛び出していった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
わたしはと言えば、苦しむ悟空さんに跨るとその両手を彼の首にそっと添えた。
「モンテ…?」
両目から滴った涙が当たって一瞬悟空さんの意識がこっちに向く。
「悟空さん、お願いですから…………死んでください」
「ふっ…くっ…………」
「モンテさっおめぇ何してっだかっ」
「チチさんっ近づかないでっ」
「悟空さに何してんだべっ!」
心配になって引き返して来たのだろう。確かに飛んでいくなら悟飯くんだけの方が速い。
フォン
近づいて来るチチさんを気功波で吹き飛ばす。
「あぐっ…」
壁に激突して気絶したようだ。
悟空さんの体を気功波で完全に消失させる。ウィルスをまき散らす可能性が有る以上、ウィルス事消失させねばならない。涙が止まらなかった。
涙が治まるのを待ってホイポイカプセルにしまっておいた大量のアルコールを頭から浴びるようにふりかけ、ついでにチチさんも消毒し悟空さんの寝ていたベッドは運び出して燃やしておいた。
「どれだけ効くか分からないけどね」
それでもやらないよりはマシだろう。
パオズ山の山頂で宙に向かって気を探る。
深く、ゆっくり、一つの生命の息吹も見落とす事もないように慎重に。
そしてとてもとても遠い所にナメック星人の新しい長老の気をようやく見つける事ができたのは一時間後の事だった。
「っはぁ…でも…みつけた」
そして新ナメック星に辿り付いたのは良いのだけれど、ドラゴンボールを使うためには試練が必要らしいです。
き、聞いてないよ?必殺のドゲザじゃ…あ、だめ?
今ほど悟空さんの地獄の特訓に感謝した事はありません。
試練の幾つかに武力を使うものがあったので、前のわたしじゃ多分無理だったかも…
時間は掛かったけどナメックボールを集めきったわたしは意気揚々と召喚の呪文を口にする。
「タッカラプト ポッポルンガ プピリットパロ」
バルスの次くらいに覚えておきたい呪文だろう。
ドラゴンボールファンだったモンテも勿論この呪文は知っていた。
空が暗転し巨大な竜が現れる。
「おおっ!ポルンガっ!」
とと感動している場合じゃないね。
「すみません長老さま、通訳お願いできますか?ナメック語じゃ無ければ願いは叶わないのでしょう」
「むぅ、知っておったか…」
その為に長老様に来ていただいているんですよ。まぁ周りに多数のナメック星人も居ますが。
「大丈夫ですよ。不幸にする願いじゃない事だけは保証します」
と居すまいを正す。
「わたしが殺した孫悟空を心臓病に侵される前、健康な状態で復活させてほしい」
「なっ!?孫悟空が死んでおるじゃとっ…それよりもお主が殺したじゃとっ!?」
「悟空さん…心臓病を患って…病死のような自然死の場合ポルンガの力をもってしても生き返れないでしょう?でもわたしが殺した場合は自然死じゃないから生き返れるチャンスがある」
だからわたしはそこに賭けた。だからわたしは悟空さんをこの手で殺した。
「良かろう」
そう言うと長老様はナメック語でポルンガにお願いを伝えてくれた。
キューンとポルンガが発光する。
「願いは叶えた。二つ目の願いを言え」
叶えた…良かった…よかったよぅ…
悟空の魂は地球に有るからきっとパオズ山で甦っているはずだ。
「本当によかった…ぐす…ぐす…」
「それで、二つ目はどうするんじゃ?ポルンガさまも待っておるようじゃが」
あ、そうね…泣いてる場合じゃあないね。
「とは言っても特に願いは無いかなぁ」
サイヤ人にしてくれっ!とかもう叶えたし。不老も今のまま不老になったら永遠にコナン君だし、不死はそれこそカーズになったらお終いだろ。死にたいと思っても死ねないので考えるのをやめた…とかねっ!
「お主、存外欲のないやつじゃな」
「そんな事ないよ。強欲な方だよ」
悟空を生き返らせたのだって人造人間をどうにかして欲しいからだしね。
「強欲な奴は他者の救済は望まん」
「とは言っても他に願いなんてねぇ…あ、そうだ」
「何じゃ?」
「二つ目の願いでこの宇宙のどこかに居るズノー様の所に連れて行ってほしい。だから…三つ目は今度ナメック星に来た時にまた残り一つのお願いを使わせて欲しいのだけど」
「まぁ試練は乗り越えたのだ。三つまでは良かろう。それじゃ二つ目の願いを叶えてもらったらポルンガさまには還っていただくがいいかのぅ」
「お願いします」
そうして二つ目の願いで一瞬でどこかに飛ばされるわたし。
紅葉樹林がきれいな和式のような建造物のたもとに飛ばされたようだ。
「ここにズノー様が」
ズノー様は貢物を対価に質問になんでも答えてくれる存在だ。
貢物と言ってもほっぺにチュッってするだけなので気楽だ。…顔のでかさを気にならなければ、ね。
屋敷の入り口で付き人の様な人に案内されてズノー様の元へ。
「さ、プレゼントを」
と言うのでズノー様のほっぺにキスをする。
「女性であるが、幼女である事を加味し将来性を考えて三回」
うへぇ、質問は三回までか。
まぁいい。ここからはうかつな事は言えないから慎重に。
「地球と言う惑星に未来からセルが来るまたは来てる可能性は何パーセント?」
と言う質問に間髪入れずにズノー様が答える。
「100パーセント」
な、なんだってーっ!?
どうして悟空が心臓病で死んじゃう世界にセルが居るのよっ!ふざけんじゃないわよっ!
gfjl;あじゃうぃ9がkhgv:kじゃsdj
ぐっ…深呼吸だ…まだ慌てる時間じゃないわ。
「さ、次の質問を」
くそう…付き人さんもズノー様も結構たんぱくだ…
後二つの質問は慎重に考えないと…
残りの質問でどうにか原作の流れに修正できるよう質問しないと…くぅ…どう質問すれば…
…
……
………
瞬間移動で地球へと帰ってくる。
「家…帰ろう。もう寝たい。すべてをなげうって眠り付きたい」
久しぶりに我が家のベッドで眠りにつくと、次の日久しぶりに会ったパパとビーデルにこってりと絞られた。
心配かけてごめんて…
界王星にて
「悟空よ、死んでしまうとは情けない。しかもあんな幼子に殺されるなんて」
「だってよ界王さま、なんかこう体がいきなり言う事をきかなくなってしまってよ」
悟空がトレーニングをしながら答える。その頭には天使の輪が存在していた。
「その事なんじゃがな、恐らくお主はあの娘っこに殺されんでも死んでいたじゃろうて」
「えええっ!?なんでだっ!?」
「それは知らんよ。恐らく何かの病気じゃろう」
「そりゃあモンテには悪い事をさせちまったな、なんで殺されたかは全くわからねぇんだが」
「それなんじゃがな、恐らくわざとじゃろうよ」
「はぁ、どう言う事だよ界王様」
「ドラゴンボールでは自然死は生き返らせられん。生き返れるのは寿命が残っておるものだけじゃ」
「それは分かってっけどもよ、そもそもオラもう一度シェンロンで生き返っちまってんかんな、どの道生き返られねぇぞ」
「それがなどう言う訳か、あの娘っ子いま新しいナメック星におるんよ」
「はぁ!?」
これにはさすがの悟空も驚いたようだ。
「ど、どうやって?」
「瞬間移動じゃろう。あれは悟空、お主が使うものとそっくりじゃ」
「ええっ!?」
「ナメック星のドラゴンボールならお主を生き返らせることができるが…まぁ、生き返ったあとまた病気で死ぬだけじゃがな」
「それじゃ生き返る意味もねぇぞ」
「それを考えてナメック星のドラゴンボールなのじゃろう。ナメック星のドラゴンボールなら願い事は三つ。生き返った後に病気を治してほしいとお願いすればどうじゃ?」
「もしかして生き返られるんか?」
「少ない可能性じゃがな。あの娘っ子が何のためにナメック星に居るのかは分からんのだし」
「それでもオラは信じてみるよ。あの子は何の理由もなくオラを殺すような子じゃねぇんだ。だったらそれまでみっちり修行してらぁ」
「はぁ、悟空は相変わらずじゃな。まぁいい。問題はなんであの娘が悟空が病死をする事を知っていたのかと言う事じゃな…まぁ今考えても分からんのだが…っておい悟空や、やめろ界王星が壊れてしまうじゃろうがっ!」
慌てて悟空を止めに行く界王さまだった。
トランクスは来ない、セルは居る。どうしろっちゅうねん。
ベッドでゴロゴロと転がっているモンテ。
あの世で特別待遇になっている悟空は、死んでもあの世で肉体を持っている。肉体を持っていると言う事は気を持っていると言う事で、それを探れば界王星の位置を掴むことができる。
正確には悟空の気の傍にあった界王様の気だけど。
ドラゴンボールの世界で一番強い技が何かと問われれば何と答える?
わたしは元気玉と答えるわ。
どんな強敵も倒せるジョーカー的な技、それが元気玉だ。
わたしはパパとビーデルの為になんでもすると決めた。だからまず元気玉からだ。
「と、言う訳で」
「何がと言う訳でか分からんが、なんじゃ」
「元気玉を教えてください」
界王星の十倍の重力の中、ドゲザは結構キツイ。頭が地面にめり込んでいる。
「そもそもお主、ここにどうやって来たのだ」
「それは界王様の気を探って瞬間移動で。あ、瞬間移動は昔ヤードラット星人に教えてもらいました」
「はぁ~本来ここはそんなズルで来れる場所じゃないんじゃがなぁ。それに元気玉の存在をどうやってしったのじゃ?」
「それは色々なルートから。ズノー様とかいらっしゃいますしね」
漫画知識からですとは言えないよね。ごめんズノー様。
「お願いします元気玉を教えてください」
「そうじゃなぁ…良くは分からんが悟空が世話になってようだしの、特別にこのギャグの天才である界王さまを笑わせられたら教えてやっても良いぞ。まぁ無理じゃと思うがな」
なるほど、ギャグか…
「隣の塀に干してあった布団がふっとんだてね、へぇ」
「ぷくく…ぷくくくく」
ちょろい。
瞬間移動が出来るため、界王様の修行は日帰りだ。
…
……
………違うっ!ドラゴンボールで真の最強技っ!
界王拳、元気玉も強いし覚えたいけど、最恐最悪の技が一つだけあるじゃないかっ!
保険の保険で最悪自分が死ぬかもしれないけれどあの技も覚えなければっ!
亀ハウスってどこにあるかな…
第三話
三年後。
この三年間、色々な事があったが割愛する。
直接関係ある事と言えばパパが第24回天下一武道会で優勝していた。
名前がいつの間にかリングネームであったサタンになってしまっているのだが…まぁミスターサタンの方がわたしもしっくりくるし良いか。
ついでに子供の部でビーデルが優勝していた。
…もしかしてわたし、普通に格闘技で戦ったらビーデルに負けるんじゃないか?
そして人造人間編が始まる。
気を感知する事は得意なのだが、気を発しない人造人間を発見する事はやはり難しく、起動前に倒す事はモンテには無理だった。
休眠状態のセルも同様だ。
とは言えわたしの灰色の脳細胞がズノー様に聞けば保存場所は分かったんじゃないかと気が付いたのは大分後になってからの事。
…わたしがドクター・ゲロに勝てるかどうかと言う問題もあるけれど。
まぁ、ここで悟空達がレベルアップしなければブウ編で死ぬ。
しかし、心配していた人造人間編も悟空が生きている、たったそれだけで事態は好転していた。
確かに初動は遅れたがその後は事態の収拾に悟空達が動き、セルが暗躍し、セルゲームが行われた。
悟空さんは死んでしまったがセルは悟飯くんが倒したようだ。
ありがとう。悟飯くん。
パパの映ってるテレビ映像と一緒に永久保存しておくわ。そしてビーデルの結婚式で流してあげる。
表向きパパによって倒されたことになっているセル。
セルゲームで英雄になったパパは調子に乗って住んでいる街をサタンシティにする事に同意してしまうし、はぁ、お調子者ここに極まるってね…まぁお金持ちになったのは嬉しいんだけどね…部屋数いくつあるか分からない豪邸とかね。
自分の部屋は一番狭い角部屋を貰っている。何となく落ち着くのだ。
そんな感じで七年後。
料理はお手伝いさんが作ってくれるのだが味気ない。
自分好みにするべく基本わたしが作っていた。
パパはおいしいおいしいと言って食べてくれるのだが…
「ビーデル、たまには手伝おう?そんなんじゃ結婚出来ないよ?」
「だって、パパが自分以上の男じゃないと結婚させないなんて言ってるでしょ?世界最強のパパに勝てる相手なんていないんだから私、一生独身なんじゃないかな?」
「だから料理はしないって?」
「料理はモンテがしてくれればいいもん」
いいもんって…おーい、ビーデルさん。あなた悟飯くんと結婚しますからー。
そんなこんなでサタンシティでオレンジハイスクールに通っている。
ある日、黒髪の少年が転校してきた。
孫悟飯その人である。
その日、ビーデルはピリピリしていた。
なんか銀行強盗を捕らえそびれたらしい。
現着すると噂の金髪の戦士に先を越されたとか。
次の日から金髪の戦士の噂の代わりにグレートサイヤマンなる変た…いや戦士が現れたそうだ。
悟飯くん…わたしはあのかっこどうかと思うよ?
「あれ、ビーデルどこか行くの?」
「ちょっと悟飯くんの家に」
「え、男の子の家に行くの?」
あーそう言えば舞空術を習いに行くんだっけ?
「うーうー…そんなんじゃないからっ!あ、そうだ」
「何?」
「モンテも行こう。うんそれが良いわ」
「はい?」
なぜかジェットフライヤーに乗って悟飯くんの家に向かっている。
「何しに行くの?」
「飛び方を教えてもらいに」
だよねー
真剣な表情でジェットフライヤーのハンドルを握っているビーデルにそれ以上つっこみを入れる事は出来なかった。
パオズ山のふもとに到着すると悟飯くんの家に突撃を仕掛けるビーデル。
出迎えてくれたチチさんの機嫌が悪い悪い。
慌てて駆けつけて来た悟飯くん。ごめんなさいうちの姉が…
そしてその隣には小さな悟空さん…じゃなくて悟天くんが居る。
社交辞令的な約束を鵜呑みにしてやって来た我が姉はさっそく悟飯くんに舞空術を習っているようだ。
ビーデルは気の存在でトリックを疑い、悟天くんの気功波で驚愕の表情を浮かべていた。
気の扱い方を知らないビーデルは先ず気の扱い方から悟飯に習っている。
「あーっ難しいわっ!ちょっとモンテもやりなさいよ」
のほほんと草むらに寝転がっていたのがいけなかったのだろうか、ビーデルが突っかかって来た。
わたしは教えてもらいに来たわけじゃないのだけれど…
「ごめんビーデル、実は黙っていたのだけど」
「何よっ」
「わたし、出来るから」
「は?」
キュポっと音を立てて気の塊が指の先に集まっている。
「えええっ!」「はぁああああっ!?」
「い、いつの間にそんな事が出来るようになったのよっ!」
「ビーデルが格闘技の練習している間に練習した。何となく出来るようになった」
「はぁあああ!?」
驚愕のビーデル。
「あ、じゃあモンテさんに教えてもらえば…」
「わたし教えるのには向いてないから無理」
「えー…」
悟飯くんがガックリしていた。
「ま、負けないんだからねっ!絶対絶対出来るようになって見せるし、モンテより早く浮ける様になるんだから」
「ごめん、わたし飛べるから」
「うっうう…」
フワリと浮き上がるともうビーデルは涙目だった。
しばらくするとビーデルが気球(きだま)は作れるようになったところでひと休憩。
「さすがビーデルさん、格闘技をやってるだけあってのみ込みがが早いな」
「そう?もう飛べるようになる?」
「そ、それはもうちょっと気のコントロールが上手くならないと無理かな~なんちゃって」
困ったように返す悟飯くん。
「そう言えば、気になってたんだけどソレ」
と言って悟飯くんはビーデルさんの臀部を指さした。
「悟飯くんのえっち」
「ち、違うよビーデルさんっ!そうじゃなくてっ」
「じゃあ何よっ」
「モンテさんもだけど、その…そこに何を隠しているのかなって」
「ああ、別に隠している訳じゃ無いんだけどね」
そう言うとビーデルはTシャツの裾の中からするりと尻尾を取り出した。
「し、しっぽぉ!?」
「や、やっぱり変かな…尻尾のある女の子って」
「い、いやっそう言う訳じゃ無いけど」
「だからビーデル切っちゃおうって言ったのに」
とわたしが言う。
「でもモンテは切らないんでしょ?」
「それは勿論」
するりと取り出した尻尾を伸ばしながら答えた。
「それに切るのは痛そうだしね」
「と言うか悟飯くん、獣人系の人なんて結構いるし珍しいかもしれないけど普通だと思うけど?」
「そ、そうなんだけど…えっと…ボクも昔は尻尾があったから」
「え、悟飯くんにも尻尾が?…無いじゃない」
ビーデルが悟飯くんの臀部をまさぐりながら言う。やめてあげて。
「子供の頃に切っちゃったから…ってそれよりもその尻尾は生まれつきなの?」
「え?うーん…どうだろ、昔は無かったような?でもいつの間にか生えてたわね」
「いつの間にか生えてたって…サイヤ人じゃないんだから」
「サイヤ人?」
「あ、いやいや、何でもないっ」
悟飯くん、迂闊すぎです。うちのビーデルって結構鋭いんだからね。
それと正解です。うちのビーデルさんエセだけどサイヤ人だから。
主にわたしが迂闊だった為に…う、頭が…思い出したくない過去が…
「ビーデル、わたし帰るね。逢引の邪魔しちゃ悪いし」
「あ、逢引じゃ無いわよっ!って言うかジェットフライヤー持っていかれると困るんだけどっ!」
「大丈夫。わたし飛べるから。もうバレちゃったしいいかなって」
「あーなーたーはーっ!」
「ははは」
「待ちなさいっモンテっ!降りて来なさいっ!」
「ビーデルが上がってきなよ」
「あ、ちょっと待ってください」
悟飯くんだ浮かんできた。
「何?」
「モンテさんって昔お父さんに弟子入りしていたモンテさんですよね?」
「違うわ…」
それだけ言うとギューンと舞空術で帰路に着いたのだった。
後で瞬間移動した方が速いと気が付いて再びへこんだんだけどね。
帰って来たビーデルは美容室に直行。戻って来たビーデルはショートカットになっていた。
ああ、悟飯くん…言ってしまったのね。
十日ほどしてビーデルは自在に舞空術を使いこなせるようになっていた。
自分の時との差に才能の差を感じてしまってイヤになる。悲しい…
と言う訳で天下一武道会である。
え、訳が分からない?
ブウ編が始まるのだから天下一武道会でしょう。ねぇ?
ブウも居るのよね…ズノー様に聞いたから確定している。助けてください…
まぁ、冗談はさておき。ここ数日ビーデルはいつもよりも増してトレーニングに励んでいたのはこの為だったのだ。
悟飯くんにも発破をかけて出場するようにせがんでいたのだ。結構本気である。
本気で優勝を狙っているのである。
お願い、実力差に気が付いてー…悟飯くん、人の皮を被った化け物だから。
それくらい実力差が有るからっ!
観客席から子供の部を眺めている。
まぁ子供のお遊びだ。
しかしその中で決勝戦だけその様相が違っていた。
悟天VSトランクスの一戦は昔の悟空VSマジュニアよりもレベルが高いんじゃないかな?
子供の部はトランクスが優勝で決定。惜しくも悟天は場外負けをきしてしまった。
とは言え、舞空術、気功波、超サイヤ人と突っ込みどころ満載だったのだけど…原作を知っているとただただ感動ががががが…ふぅ…
予選が終わったビーデルに付き合って控え室について行くと合流した悟飯くんを伴って進む。
すると当然の様に悟空一派が控室でご飯を食べていた。
悟空と一緒にメシを食べているベジータ。プライドとかはどこに行ったのだろうか?まぁ彼も地球生活も長いしね。
「む、お前は…」
気付かれたか?
「いや、そんなはずはないな。あの女は金髪だったはずだ」
それ、気のせいです。ベジータさん。
あの時はずっと超サイヤ人状態だっただけです。
天下一武道会の試合も進みビーデルとスポポビッチの試合が始まる。
種族変化をしてるしもしかしたら善戦するかも?
…
……
確かに善戦はしていた。
だけど…
くっ…
「きゃあああああっ」
ズザザーと武舞台を転がるビーデル。
しかし場外に出る事は無く、その寸前で追いついたスポポビッチに蹴り上げられた。
いったん傾いた戦闘をビーデルは立て直す事は出来ず、しかし負けを認めない彼女は失格になる事もなくただただ武舞台の上で一方的な残虐ファイトが続けられている。
「もういいだろ、ビーデルっ!」
「ま…まだ…」
傷つきながらも立ち上がるビーデル。
「きゃああ」
しかしすぐに拳で吹き飛ばされて武舞台を転がる。
「ビーデルさんっ!」
隣の悟飯くんも叫んでいた。
「きゃあああ…」
あ…
子供の頃から一緒だったビーデルがスポポビッチに頭を踏みつけられるのを見てわたしの中で何かが煮えたぎる。
「超サイヤ人…だと?」
金色に染まったモンテの周りにスパークが散っている。
「モンテさん、その姿は?」
ベジータの呟きと悟飯の問いかけを無視したわたしは夢中になって武舞台へと翔ける。
そこには今まさにその巨体でビーデルを踏み潰そうとしているスポポビッチの姿があった。
武舞台に一迅の風が舞う。
「なんだ?」
踏み潰さんと繰り出されたその足を右腕一本で受け止めビーデルを抱き起しているのはモンテだ。
「なんだオメェ、邪魔するのかっ?」
それを無視してわたしはビーデルの向き直った。
「ごめんね、お姉ちゃん…我慢出来なかった」
「なっ…潰れねぇ…」
ギリギリと力を掛けてくるスポポビッチだが、超サイヤ人状態のわたしにその程度は効かない。
「ぐあっ!?」
そのまま無造作に振り払うとスポポビッチは場外へと吹き飛ばされ壁に激突してようやく止まった。
「モンテ、その姿は?」
「今は医療室、行こう?」
「私、負けちゃったのね」
「ごめんね」
「何でモンテが泣いてるの?ぐふっ…泣きたいのは…私の方なのにモンテが泣いてたら泣けないじゃない」
涙を涙腺に溜めながら必死に零すまいとしているビーデルを抱きかかえると武舞台を降りて医務室へと駆けこむ。
『ビーデル選手、反則により…勝者はスポポビッチ選手です』
ウォオオオオオオオオオ
歓声とも怒声とも聞こえる声を背にモンテは走って行った。
医務室に駆け込んでベッドにビーデルを寝かせると、意識は朦朧としつつもしっかりしているようだった。
「ビーデルさんっ!」
次に駆け込んできたのは悟飯くん。
「悟飯くん…あいつを…やっつけて」
「二回戦に勝ち上がったら絶対に勝ちます、それよりもこれを」
「何…?それ」
「こ、これを食べてください」
仙豆ですね。
「こら君、おやつを食べている場合では…」
医務室の担当医が悟飯を制止するが…
「わたし、もらうわ…」
悟飯くんの事だからきっと不思議な事が起こるのでしょう?とビーデル。
まぁ、仙豆ですしね。
「うん…」
神妙な顔つきで仙豆を食べさせた悟飯くんは次の試合が有るからと医務室を出て行った。
「な、治ってるーっ!」
シャキーンとベッドの上に立ち上がるビーデル。
「戦闘力が上がっているな」
「だ、誰?」
振り返るといつの間にか壁にもたれ掛かるように立っているベジータさんが居た。
「サイヤ人は瀕死から復活すればするほど戦闘力が上がる。やはり…」
あ、本当だ。ビーデルの戦闘力上がっているや。
も、もしかしてだけどノーマル状態だとわたしより戦闘力高かったり…?うそだぁ…
「それにそっちの女、お前さっきのは超サイヤ人だろ」
げぇっ!バレてるっ!
「そ、そうよ。あの金髪の変身は何?モンテが金色の戦士だったの!?」
「ち、違うよっ!金色の戦士はわたしじゃ…あ、そうだ悟飯くんの試合みないとっ!回復したみたいだし、行こうよ」
そう言ってビーデルを医務室から押し出す。
「仙豆の効果になんの疑問も浮かばん事も後で聞かせてもらうぞ」
あっ…そうね。そうよね…原作知識ェ…
ベジータも悟飯くんの試合は気になるようでそれ以上ここでの追及はしなかったのは幸いだ。
舞台袖に戻ると、悟飯くんの試合が始まろうとしていた。
武舞台上でキビトに挑発されて超サイヤ人をさらに超えた超サイヤ人になってやろうと言っている悟飯くん。
どうしてサイヤ人ってここぞと言う時にこう…偉そうと言うかナメプと言うか好きなのだろうか。
まぁ、かっこいいけど…
悟飯くんの髪が金色に逆立ち体をスパークが覆っていた。
「悟飯くんが金色の戦士だったの?」
ビーデル…今更だよ。金色の戦士とグレートサイヤマンが一緒に居るとこ見たことないでしょ?
変身したかと思ったら悟飯くんは二人の禿の選手…えっと…スポポビッチと……ヤムに取り押さえられて何かを押し付けられていた。
ランプの魔人でも入っていそうなそんな何かだ。
すると急激に悟飯くんの気が吸い取られたかのように減衰していきついには倒れ込んでしまう。
スポポビッチとヤムは空を飛んでどこかへと飛び去りそれを追う様に界王神さまと悟空、ベジータ、ピッコロが飛んでいく。
「ご、悟飯くーん!」
駆け寄っていくビーデル。
怒っているのか毛が逆立ちし始めてるような…?
悟飯くんはキビトさんに回復してもらうと悟空さんを追ってキビトさんと供に飛んでいく。
「モンテも行くわよ」
「はい?」
なぜかこっちに駆け寄って来たビーデルに引かれて連れていかれるモンテ。
腕を掴まれるとふわりと宙吊りに…
「うわっとと」
慌ててわたしは舞空術を使い並走する。
「そう言えば、先ほどの変身ですが」
とキビトさんが飛びながらこっちを見て言う。
げ、それを今蒸し返すの!?
「悟飯さんと同種の変身でしたよね?」
ぐぅ
「そうです、あれは確かに超サイヤ人…いや、超サイヤ人を超えた超サイヤ人でしたっ!」
「悟飯くん。もうそれ何を言っているか分からないから超サイヤ人2って事でお願い」
超サイヤ人をさらに超えた超サイヤ人…ながいよっ!
超サイヤ人ゴッドの力をもったサイヤ人の超サイヤ人とかねっ!いいよサイヤ人ブルーでっ!
「え?あ、…はい」
「つまりあなたもサイヤ人と?」
とキビトさん。
「えええっ!そうなんですかっ!?じゃ、じゃあビーデルさんもっ!?」
「えええっ!」
「なんでビーデルさんが驚いているんですかっ!」
「だって私も知らなかったものっ!と言うかサイヤ人って何?」
「別の惑星で進化した人類だ。特徴としては猿の様な尻尾が有る事だな。純粋なサイヤ人はもう数えるほどしか生き残っていないはだが…ふむ」
と考え込むキビト。
「尻尾って…」
ニュルンとスパッツの上に巻かれていた尻尾をはだけるビーデル。
「でもパパは純粋な地球人だよ。尻尾もないし」
「ではハーフと言う事か」
キビトさん、わたしハーフじゃないんだ。純サイヤ人?なんだ。
シェンロンも戦闘力がゴミの子供をサイヤ人にする事は出来たようなんだ…たぶん。
と心の中でだけ呟いた。
「でも死んだママにも尻尾は無かったよ?」
「お父さんもベジータさんもボクも尻尾は有ったはずですけど、切ったらなぜか生えてこなかったし、切っちゃってたのでは?」
「そうかなぁ」
「それで超サイヤ人2ですが」
そっちに話を戻すなよぉ…
「あ、そうですよ。モンテさんは超サイヤ人になれるんですね、それも超サイヤ人2に」
その問いかけにはぁとため息を一つ。
「まぁ、なれるね…はっ!」
一瞬で髪の毛が金色に染まり逆立ち、スパークが体を覆っている。
「すごい…こんな短時間で超サイヤ人2に…ってあれ?」
「どうしたの悟飯くん」
「あ、ビーデルさん…えっとあの…確かに超サイヤ人2なんですが…えっと」
「あんまり強くない?」
「あ、…はい」
わたしの問いかけにすまなそうに答える悟飯くん。
「そりゃね。わたし格闘技とかしてる訳じゃ無いから、素の戦闘力なんて悟飯くんの何十倍も下だもの。いくらわたしの戦闘力を100倍にした所で普通の超サイヤ人の悟飯くんにも勝てないわ」
「いいっ!?じゃ、じゃあ何で変身できるんですかっ」
「修行したの。変身のっ!かっこいいからっ!」
「カッコイイからってそれだけで超サイヤ人2に…」
「モンテ、お姉ちゃん変身できるって聞いてないんだけど…?」
げ、ビーデルが自分の事をお姉ちゃんと呼んでいるときは結構本気で怒っている時っ!ご、悟飯くん助けてっ…って首を振るなっ!
「と言うかどうしてモンテはそんな事を知っているのかしら?」
「う、うーん…」
あ、そうだっ!
「昔わたしが一年くらい居なかったことあったじゃない」
「あの時ね」
「う、うん…実はねあの時悪い宇宙人に攫われて他の星に行っててね、そこで色々教えてもらったんだ」
どうよこの完璧?な言い訳はっ!
「まぁいいわ。その…私もなれるのよね、その超サイヤ人に」
「悟飯くんに教えてもらって」
「ええっ!ボクっ!?ちょっとモンテさんっ」
バカ話はここまで。
一連の騒動でどうやらビーデルは父親の幻想に気が付いたようだ。
そう、セルを倒したのは悟飯くんだって事に。
超サイヤ人2状態のわたしが悟飯くんにはグーパン一発でやられるのだ。パパなんてデコピン一発で脳みそ飛び出しちゃうよ。
そしてこの衝撃が憧憬になり恋心になる訳だ。うんうん。間近で見ているわたし、役得だわ。
何の役ももらってないけど。
途中で悟飯くんとキビトの飛ぶスピードに付いていけなくなったビーデルはあとを悟飯くんに頼み離脱する事に。
「モンテまで残る必要な無かったのよ?あなたなら追いつけるんでしょ?」
「あー…あはははは…でもまぁ行ってもやれる事少ないしね」
「?…いいけどね」
武道会の会場へと戻ったわたし達は、突然現れた悟空さんとベジータさんの戦闘で吹き飛ぶ観客を空から見ていた。
「何…なんで…?」
「ビーデル…大丈夫だから…ね?」
「大丈夫ってっ!どうしてよっ!」
「大丈夫だからブルマさん…ベジータさんの奥さんの所に行こう?」
第四話
ブルマさんはわたし達が悟飯くんの友達だと言うと同行を認めてくれた。
ジェットフライヤーで一同カプセルコーポレーションへむかうと、こんな事も有ろうかとブルマがドラゴンボールを集めていたようだ。
中庭に転がるように取り出された七つのドラゴンボール。
「いでよシェンロン、そして願いをかなえたまえ」
周囲が暗く染まっていく。
ドラゴンボールから巨大な龍が立ち昇っていくのが見える。
「どんな願いもみっつかなえてやろう ねがいを言え」
どう言おうか悩んでいるブルマ。
「一つ目の願いで今日死んだ人間を生き返らせて。二つ目の願いでビーデルの潜在能力を解放して、三つ目の願いでわたしの潜在能力も解放して」
「ええっ!?」
驚いている一同。
一気に三つの願いを言い終えた直後悟空さんが瞬間移動してきた。
「あー、間に合わなかったかっ!」
「願いはかなえた…さらばだ」
シェンロンは消え、ドラゴンボールは四方に散っていった。
「何…これ…」
突然引き上げられた力に戸惑いを隠せないビーデル。
「悟飯の彼女の戦闘力が上がっているぞ…これはサイヤ人並じゃないか?」
解説ありがとうございますヤムチャさん。そしてビーデルはサイヤ人ですよ?
「とりあえずみんなで神様の所に来てくれっか」
と言う悟空の言葉で一同手をつなぎ悟空の瞬間移動で神様の神殿へ。
そこで悟空から語られたのは魔人ブウの復活とベジータ、悟飯の死亡だ。
「私、悟飯くんは生きていると思います」
「ビーデルさ…うわぁあああん」
悟飯の死にショックを受けていたチチにはビーデルの確信を込めた言葉は力強かった。
「そう言えばおめぇモンテだろ、おっきくなったな。おめぇに殺されて以来か?」
「あー、確かにそうだべ、おめさ悟空さに何しただっ」
チチさんしょうがなかったんだって。
「殺された?殺されたのか、悟空がこいつに?」
クリリンさんも余計な事を言わない。えー…今頃こっちに飛び火しないでよぉ。
「どうやら殺した後にナメック星のドラゴンボールで生き返らせてくれたんだけどよ」
「とりあえず魔人ブウの事もあるしそんな事は後回しでお願い」
こんな会話をしている間にも一方的に魔人ブウの非道がバビディの魔法を通じて一方的に脳裏に流れてくる。
打開策としては悟天とトランクスにフージョンを教え込みブウと戦ってもらうと言う事らしい。
しかし、ここで大ポカが発生。死んだ人間を生き返らせるために必要なドラゴンレーダーをカプセルコーポレーションに忘れて来たために悟空が魔人ブウの足止めをする事に。
ここで超サイヤ人3を披露した悟空だが、その為に現世に居られる時間を大幅に失ってしまった。
その残りのわずかな時間でフュージョンを伝授するしかない。
「あれ…?それって」
珍妙な踊りのようなフュージョンポーズ。ビーデルが何かを思い出したようだ。
「知っている、知ってるわ。それ」
「いやいや、オラもあの世で教えてもらったんだ。知ってる訳ねぇって」
と悟空さん。
「モンテちゃん?」
「ひゃいっ!」
「あれって子供の頃に私に教えた変な踊りよね?」
「そうです…」
「今思い出したけど、ドラゴンボールも子供の頃に多分見たことあるわ。どうして今まで忘れていたんだろう」
出来ればそのまま忘れていてほしかったです。
「そう言えば昔無くしたと思ったドラゴンレーダーが送られてきた事があったっけ?おかしいとは思ってたんだけど」
ブルマさーん…
「あの踊りを踊った後の記憶は曖昧なんだけど、その後かな、尻尾が生えたの。そしてドラゴンボールは無くなっていた。ねぇ、何が起こったのかしってる?」
こーわーいー。だけどっ!
「ごめんちょっと言えない。そして尻尾の事とドラゴンボールで何を願ったのかはわたしもしらない」
「はぁ、まあいいわ。それよりも」
とビーデル。
「あのフュージョンって言うの、私達も出来るわよね?」
「たぶん…」
シェンロンに願って潜在能力解放した今の状態ならば双子だし戦闘力は殆ど一緒だろう。
悟天とトランクスの隣でわたしとビーデルもフュージョンを習う。
わたしはともかくビーデルは忘れているからだ。
「は、恥ずかしい…」
「止める?」
「…やるわ」
そう言えば精神と時の部屋は……ダメだな。シェンロンの潜在能力解放である意味無理やり戦闘力をそろえている状態だ。そのバランスを崩すのは今は怖い。
それに悟天とトランクスが精神と時の部屋を使うはず。
入れる人数にも制限があったような気がするから迂闊に使って彼らが使えない何てことだけはしないようにしなければならない。
「「フューーーー、ジョン…はっ!」」
さすが双子。息はピタリだ。
二人の指先が合わさると光に溶ける輪郭。
合体して浮かび上がるのは一人の戦士。
「おお、そっちが先に成功か?」
「すげー気だ…」
「確かにこれは…」
ピッコロさん、ヤムチャ、クリリンさんが冷汗をかいていた。
合体したモンテとビーデルの戦闘力は確かにクリリンたちを圧倒していた。
だが…
「ダメだな…ガキどもの方がまだ強い」
超サイヤ人でもない人間のフュージョンなどそんな評価だ。
「名前は…モンデルってとこかな」
「うわー、すげーや。オレ達も早く合体しような」「うん、頑張ろう、トランクスくん」
その後地上に居られなくなった悟空とお別れし、トランクスと悟天はフュージョンの特訓を再開したようだ。
世界に悪の気があふれ出る。
「これは…悪ブウか…」
悪ブウは気を感じ取ることが出来るようで…
次の瞬間、神様の神殿に現れる魔人ブウ。
「マズイぞ、悟天とトランクスの修行はまだ終わってない」
ピッコロさんが焦りの表情を浮かべていた。
二人は最後の仕上げと精神の時の部屋にこもっていたのだ。
「だせーーーーーーっ!」
魔人ブウが絶叫する。どうやら悪ブウになっても悟空との約束を覚えているらしい。
悟空が強い奴と戦わせてやると言う約束。それを果たしに来たらしい。
「時間だけでも稼がないとっ」
「お前では無理だっ」
前に出ようとするビーデルを止めるピッコロ。
やっば、やる気のビーデル…このままじゃ殺されちゃうっ!し、しかたないっ!
「ビーデル、フュージョンだよ。ピッコロさん30分だけ時間稼ぐから」
「無理だと言ってるっ」
それを無視してビーデルを呼び寄せる。
「「フューーーー、ジョン…はっ!」」
光が収まるとその中から合体した女性が現れる。
「再び登場、モンデルちゃんっ!降臨っ!」
「お前か?強いやつ…」
「違うよっ!戦わせてあげるからもうちょっとまって、それまで私がつき合ってあげるからっ」
「ダメだーっ!超サイヤ人でも無い奴が魔人ブウに敵う訳ないぃ」
「ピッコロさん、私がいつ超サイヤ人になれないと?」
「なにぃっ!?」
「はっ!」
気合を込めると髪が金色に染まり逆立つ。
「サイヤ人…だったのか?サタンの娘では無いのか?」
いえ、ちゃんとパパの娘です。
「しかも超サイヤ人2だ。行けるぞっ」
とクリリンさん。
「やぁーーっ!」
「にぃ」
バシバシバシと互いの拳を繰り出しながら嫌らしい笑みを浮かべたブウと対峙している。
モンテの気の扱いの上手さとビーデルの格闘センスが合わさってどうにか戦えているモンデル。
シェンロンに願った潜在能力解放してもらえていたのはやはりでかく、大幅にパワーアップされているが…
「お前、弱い。前の奴の方が強かった」
バシっと払われたブウの拳で弾かれて距離を取る。
ズザザーと土埃を立てて制動を掛けるとようやく止まった。
「んー…出来れば使いたくないんだけど仕方ない…」
「なんだ…?奥の手でもあるのか…?」
とピッコロさん。
「はぁぁああ、つぁ!」
気合と共に気を練り上げると爆発的に膨れ上がる。
「なにぃっ!超サイヤ人3だとぉっ!貴様どうやって」
後ろに長く伸びた髪。眉毛は無くなりはしなかったが眼窩上隆起が起き猛々しい。
「カッコイイから練習したっ!練習したら変身できるようになった」
「このアホ娘がっ!」
中々ひどい事を言うピッコロさん。
地面を踏みこみブウに接近すると拳を突きあげる。
「あがっっ!」
そのまま空中に並走して蹴り上げつつ右手から気弾を放出
ドウン
爆炎が上がり吹き飛ばされるブウ。
「かーめー」
腰を落とし両手で球を包み込むように被せる。
「まさか、そいつは」
さらに気を集中しつつ腰を引いて行き…
「はーめー」
圧縮した気を一気に放出。
「波ーーーーーーーーーーーーーっ!」
巨大な閃光がブウを襲いブウの体を弾けさせる。
「これは…やったか」
ピッコロさん、それはダメなフラグっ!
「あ」「え?」
「はぁ!?」
「やっば、やっぱり超サイヤ人3状態では融合できる時間が少なかったかっ!」
分裂したわたしとビーデル。
かめはめ波も中断され再生能力でブウが完全に修復されて行く。
「もう一度合体だー」
無茶言わないでよピッコロさーん。
「きゃぁっ!」
ビーデルがブウの攻撃で吹き飛ぶ。
「ビーデル」
何とか追いついてビーデルを支えるが、目の前には既に魔人ブウが。
「終わりだ」
「この変身はあんまり見せたくは無かったけど…仕方ないっ!」
「何をする気だっ!モンテの奴」
膨れ上がるサイヤパワー。
「何っ!?」
ブウの振るった拳を受け止めたのは紅い体毛に覆われたモンテの腕だった。
「モンテ?」
「なんだその変身は…」
変身を終えたモンテの体は上半身は紅い体毛に覆われ、目は紅い隈取が覆い、変身したにもかかわらず黒髪の超サイヤ人がそこに居た。
「超サイヤ人4」
「超サイヤ人4だとっ!バカなっ」
「ビーデル、ちょっと離れてて」
「う、うん…モンテ…負けないで」
「それは無理っ!」
「ええ!?」
「だってぶっちゃけ強さだけならさっきのモンデルの超サイヤ人3の方が強いもの」
慣れないフュージョンに変身時間さえ減らされなければこの一人で変身した超サイヤ人4よりは上だった。
だが贅沢も言ってられない。
「来るっ」
ブウの猛攻を何とか弾く、逸らす、かわす。
少しでも気を抜けば殺されてしまいそうだ。
気をコントロールして攻撃と防御に使う気を調節する事によってどうにか相手の攻撃を耐えているだけだ。
「カァっ!」
殴り合いに飽きたのか口から気功波を撃ち出す魔人ブウ。
「うわっとと」
回避が間に合わず瞬間移動で距離を取る。
「波っ!」
抜き撃ちかめはめ波がブウを直撃するが…
「ぐぉおおおおお…」
体を削りはするが致命傷にはならない。
再び接近戦。
が、やはり強さは向こうが上。
「くぅ…うう…がはっ」
一発良いのを貰ってからはだんだん戦況が傾き始めてしまう。
一度傾いたバランスを覆す事が出来ず…
「はぁ…はぁ…くぅ…」
肩で息をしているモンテの背後に回った魔人ブウは両手を振り下ろしモンテを空中に打ち上げる。
「くっ…」
痛みをこらえてブウを見ればすでに口に気功波を溜めているようだ。
「ヤバいっ!」
わたしもかめはめ波の構えを取って気を集中させ始め…
「かーめー」
「モンテっ!」
ビーデル!?
「馬鹿者、戻れーっ!」
ピッコロさんが叫んでいる。
「はーめー」
バカッ!こっち来るなよっ!
「波ーーーーーーーーっ!」
ブウの気功波が放たれ、最大に溜めれなかったがかめはめ波で撃ち返す。
「くそ…勝てない…っ!」
が、底力は向こうが上なのか均衡はすぐに崩れ、ブウの気功波に飲み込まれる直前…
「死ぬときは一緒だよ」
「お姉ちゃん…」
モンテはビーデルが背後から抱きしめられた感覚を最後にブウの気功波が二人を飲み込んだ。
「バカ娘が…だが確かに時間は稼いだ。必ずドラゴンボールで生き返らせてやる」
ピッコロの呟きがむなしく響いた。
ところ変わって界王星
「ぐぁ…」
「し、死んでないっ!?何ここ、体が重い…」
気功波に飲み込まれる寸前、瞬間移動で界王星に瞬間移動してきたのだ。抱き着いていたビーデルも一緒に。
もしかしたら地上では気功波に飲み込まれて死んだように見えたかもしれないが、好都合だ。
「こりゃお主、なんじゃその変身は」
「この顔色の悪いおじいさんは誰?」
とビーデル。
「あ、界王さまお久しぶりです」
「界王?」
「一応この北の銀河で一番偉い人。と言っても上に大界王さま界王神さまと居るのだけれど」
あと破壊神さまとか全王さまとか。
シンドイので超サイヤ人4状態を解く。
「それとビーデル、もうちょっとソフトに触って、わたしけっこう怪我しているんだけど…そう言えばここなら悟飯くんの気も感じられるかな」
「悟飯くんっ生きているの?」
「ちょっと待って…えっと…あった」
「おい、お前達どこへ行こうと言うのだ」
シュン
「おーい…」
シュンと音を立てて瞬間移動。
「あれ、オメェもきたのか?瞬間移動かそう言えばオメェも使えたんだっけ」
と悟空さん。
「いぃっ!?ビーデルさんっ?」
なんか変なじいさんと向かい合っていた悟飯くんが驚いた表情をしていた。
あれは老界王神さまか。
「また人間が…それも今度は生身の人間が二人も…」
キビトさんが嫌そうな顔で言う。
「ご、悟飯くんっ!い、生きていた…生きていたんだ」
「び、ビーデルさんっ!」
ガバリと抱き合う二人
「おーおー、お熱い事で…だけど…」
ジロリと幾つもの視線が二人に注がれる。
「そう言う事は家でやれ」
カアっと赤くなって距離を取る悟飯くんとビーデル。
「家ならいいんかーっ!?」
悟空さん。秀逸な突っ込みをありがとうございます。
「それより悟飯くん、ここは何処でいったい何をしているの?」
とビーデル。
「えっとここは界王神界で、ここで老界王神さまにパワーアップの儀式を受けてます」
悟飯くんがそう説明した。
「それよりもです。あなた方はどうやって来たのですか?」
そう界王神が問う。
「そ、そう言えば気付いたらここに居たのだけど…モンテちゃん?」
おっと…
「えと、まぁわたし瞬間移動とか出来ますし…界王星からなら界王神界に居る悟飯くんの気も感じられたから瞬間移動してきました、的な?」
「しゅんかんいどうー?私、長い事あなたと一緒に居るのに最近結構知らない事がある気がするわ」
「あはは…はは…」
笑ってごまかせっ!
「まぁ一応目的もある」
「目的?」
「ちょうどそこに仙豆さん…おっと…界王神様の従者さんがいるじゃん…えっと」
「今不遜な発言をしなかったかサイヤ人。…キビトだ」
「そうそう、キビトさんって復活パワー使えるでしょう?」
「何故それを知っているっ!」
「それはズノー様に質問したからね」
ごめん、便利な言い訳に使ってしまってズノー様…今度いっぱいプレゼント(ほっぺにチュウ)しますから許して。
「むぅ…」
と、言う訳で…
「結構しんどいんで回復してください…黙ってたけど、結構死にそうです…」
「キビト」
「分かりました…」
不承不承ながらも界王神さまの言葉で治療してくれるキビト。
キビト界王神はサイヤパワーを復活させる事は出来ないとか言われていたが、考えてみれば当たり前だ。
この後ポタラで合体するキビト界王神は界王神なのだ。
復活パワーを持っているのは界王神の弟子や従者で界王神になると使えなくなるのだからそもそも使えないのだ。
「ふぅ…たすかっ…たぁ」
ゴロンと寝転がるモンテ。
「それにしてもすげぇなオメェのあの変身、オラにも出来っかな」
「そうです、あの変身はいったい…」
悟空さんと界王神さまが問いかけて来た。
「超サイヤ人4の事?」
「そう、それそれ」
「あれは大猿のパワーを人の姿で制御しているような物だから、基本的に尻尾のないサイヤ人じゃあの変身はムリ」
一応すごい量のブルーツ波を浴びれば変身は可能だろうが、現状は不可能だろう。
「いぃっ!?そうなんかー…めぇったな」
悟空の尻尾は神様による特殊な処置で二度と生えてこないようにされていた。
「超サイヤ人4…」
「スーパーなんちゃらなんて邪道じゃわい」
老界王神さまが言う。
いえ…あの超サイヤ人4はあなたのお墨付きだと思ったのですが?
「悟飯くん、そう言えばこんな所で何やっているの?」
「老界王神さまが潜在能力の解放させてくれるらしく、その儀式をですね…えーっと」
悟飯くんは今パワーアップの最中なんです、ビーデル邪魔しちゃダメだよ?
その後、地上の様子は老界王神さまが出した水晶で確認していると、ゴテンクスが超サイヤ人3で戦っているたのだが、あと一歩の所で変身が解けてしまったようだ。
パワーアップはまだ終わらないのかと焦る悟飯くんにもう終わっていると言ってのけた老界王神さまをビーデルがぶっ飛ばしていた。
まぁ地球のピンチにそんな事されれば、ね?
「すごい気だ…」
超サイヤ人の要領で気を開放した悟飯くんは超サイヤ人にならずともそのパワーは段違いに上昇していた。
「うん…わたしの超サイヤ人4の何倍も強いんじゃない?」
「頑張って、悟飯くん。地球のみんなの仇を取ってきて」
「行ってきます、ビーデルさん」
なんだろう種の保存の本能的な何かが働いているのか自然と抱き合っている悟飯くんとビーデル。
「そう言う事は家でやれ」
「「はっ!?」」
わたしの突っ込みに慌てて離れると、意を決して悟飯くんはキビトさんに送ってもらって地球へ、ブウと戦いに赴いた。
さて、ここまで来ればわたしに出来る事は無いかな。
もし、何かが起きてみんな負けてしまったその時は…
取り出したのはトックリと大魔王封じと書かれたお札。
超サイヤ人4ならギリギリ封印出来るかな…ただその場合相手が格上過ぎて多分わたしも死ぬなぁ…
それって自然死…だよね…はぁ…
その後、本当にギリギリの綱渡りの後、漫画通りに悪ブウは倒された。
まぁ、地球が一度爆発したりとかなかなかショッキングだったけどね…
第五話
最大の死亡フラグの二つをどうにか乗り越えたわたし!
もう何も怖くないっ!
あ、まてまてそれはヤバイフラグだ…
オレンジハイスクールを卒業するとビーデルは悟飯くんと結婚して家を出て行った。
パパのお金で生活しているわたしが言うのもなんだけど、稼ぎの無い男と結婚する姉、大丈夫かしら…
「モンテ、オレ腹へった」
「はいはい、今作りますよ」
家には今パパとブウ、あとワンちゃんが住んでいる。
食事は基本わたしの仕事でこうやってブウが時間を問わずたかりに来るのだが、もう諦めた。
なんだかんだで美味しそうに食べてくれるのは嬉しいしね。
で、わたしに無理難題を押し付けてくるのは何もブウだけじゃない。
食事を作り終えてまったりしているといつの間にかブウと一緒に食べている不法侵入者。
「よっ!チチには負けるけど相変わらずうめーな」
「悟空さん…また勝手に上がり込んで…」
「わりーわりー…悟飯も最近修行に付き合ってくれなくてな」
そりゃ新婚さんですよ?当然だよ。
「で、わたしの所に来た、と」
「そう言う事、じゃいっちょやっか」
そう言って有無を言わさず超サイヤ人になる悟空さん。
「ま、まってよっ!だからなんでわたしなのよぉ」
周りに悟空の修行に付いていける存在が居なかった所に目をつけられたのがわたし。
超サイヤ人4を見せてしまったの運の尽き。
「モンテ、頑張れ。オレ、応援している」
「ブウさん、応援しないで助けてー」
家の敷地は広い為、相当打ち合っても周りに被害は出ないのは幸いだが…毎回修行につき合うわたしの身にもなってっ!
基本的にわたしと悟空さんの力の差は歴然なので、わたしの変身は悟空さんの一段階上の状態だ。
弱いのよ、わたし…
悟空さんが超サイヤ人ならわたしは超サイヤ人2。
悟空さんが超サイヤ人2ならわたしは超サイヤ人3。
「やるなモンテ、ならオラもっとギア上げていくぞっ!」
「やめてっ!わたしはもう超サイヤ人3なのよぉっ!」
「はぁっ!」
悟空さんの髪の毛が伸びる。
「悟空さん他人の話きーいーてーなーいっ!」
超サイヤ人3だ。
「だりゃぁっ!」
「死ぬってっ!くそぅっこの戦闘バカはぁっ!」
もうやけくそだぁっ!
「お、今日はサイヤパワーって言うのも復活していたかっ!ついてっぞ」
「わたしは不幸だぁーーーーーーっ!」
超サイヤ人4になって悟空さんの拳を受け止める。
「だりゃりゃりゃりゃりゃ」
「おりゃーっ…くぅ…やっぱ無理ぃ…たーすーけーてー」
攻める悟空、迎え撃つモンテ。
もはや涙目である。
「かーめー」
「わ、ちょっとちょっとっ!」
超サイヤ人3状態でかめはめ波のモーションに入る悟空さん。
空中で迎え撃つべくわたしも構える。
「「はーめーーーーー」」
「「波ーーーーーーーっ!」」
空中で閃光がぶつかり合う。
数秒拮抗するが、悟空さんのパワーに押し流された。
ジュ
「またモンテの負け」
「うう、ブウさん…治療ありがとう…うう」
ポヨポヨのブウさんのお腹に抱き着いて泣いているわたし。傷はすっかり元通りになっている。ついでに服も。
ブウさんの不思議パワーで死んでなければ治療も可能だ。
これが頻繁にわたしをボコりに来る理由だろう。
余りにもボコられ続け、サイヤ人特有の復活強化が強制的に発生し、わたしの戦闘力が上がった事に喜んだ悟空さんがまたボコりに来ると言う負のスパイラル。
くそう、いつか十倍かめはめ波をお見舞いしてやるっ!
マジ誰か助けて…
「うーん、まだ修行したりねぇな。仕方ねぇ、界王さまのとこにいってくらぁ。じゃーなモンテまたやろうな」
「二度と来るなっ!」
次の日。
「昨日はカカロットの修行に付き合ったそうだな。今日はオレさまに付き合ってもらうぞ」
ベジーターーーーーっ!?
超サイヤ人3にもなれないベジータのコンプレックスを刺激しまくっているモンテ。
そう、ベジータも頻繁にモンテをボコりに来ているのだった。
くそう、いつまでもボコられているわたしじゃ無いぞっ!
こうなったら最終手段っ!
「弟子にしてくださいっ!」
界王神界に瞬間移動したわたしは界王神さまにドゲザしていた。
どうやって来たのかって?星と言うのは命で満ちているんです。元気玉とかでも星から分けてもらえるし、星その物の気を頼りに飛んで来たんです。
「はぁ…弟子…ですか?」
「このままじゃ死んじゃうんですよっ!」
「地球にまた魔人ブウのような存在がっ!」
「いえ、悟空さんとベジータさんに……毎回毎回…サンドバッグになってるわたしの気持ち…分かります?」
「え、ええ…」
「あと、復活パワーとか便利なんで。いつもいつも仙豆に頼ってばかりいられませんし」
「自分の怪我は治せないのですが…」
「それでも良いんですっ!お願いしますっ!界王神さまの弟子になればきっとなんかアレな不思議パワーが宿るかもしれないじゃないですかっ!」
ついでに絶対止めるであろうキビトさんが合体しちゃっている今が丸め込むチャンスなんです。
もうテコでも動かない勢いでドゲザをし続けると最後はどうやら界王神さまが折れたようだ。
「たしかに今の私には従者も弟子も居ませんしね。仮免ですがよろしいでしょう」
「あ、ありがとうございますっ!」
三日間、わたしの周りを変なおどりを踊り続ける界王神さま。その苦行の果てにどうにか界王神さまの弟子になったのである。
「豪華客船でおッ誕生日会ー」
今日はブルマさんの誕生日、その会場の豪華客船にお呼ばれしたのだ。
普段ベジータが迷惑を掛けているお礼も兼ねて豪華な食事でもして楽しんでくれとの事。
ビンゴ大会も行われ、豪華景品ももらえるらしい。
「久しぶり、ビーデル」
「モンテ、久しぶり」
「お久しぶりです、モンテさん」
ビーデルと悟飯くんもブルマさんの誕生日に呼ばれていたようだ。
周りを見ると悟空さんとベジータ以外のZ戦士の皆が集まっている。
っ!?
この感じって…何か途轍もない者が近づいてきている。
えーっとなんだっけなんだっけ……まぁまだ遠いから大丈夫だろう。
なんて思っていたこともありました。
ブルマがどこからともなく連れてきた新客に震えが止まりません。
何で忘れていたのだろうか…
スフィンクスのような宇宙人。
そう破壊神ビルスが来訪したのだ。隣にはガイド天使のウィスも居るようだし間違いない。
なんだ…どうしてだろうか…普通の人は神の気を感じる事が出来ないはずなのに、こうも力の差がはっきり分かってしまう。
もしかして界王神さまの弟子になったから神の力を感じられる…とか?
ともかくいい気分じゃない。
いつの間にか居たベジータも震えている。
ベジータさんがなんかもう面白いほどうろたえてビルス様のご機嫌取りをしている姿は心のメモリーに永久保存するとして…
ビンゴダンスっ!最高っ!永久保存っ!
あとたこ焼き焼いてる姿も笑えたわっ!にゅふうっふふ、ここまで生き抜いて来た価値がっ!
ふぅっ…発作が…それと安い価値だわ、わたし…
それからブウが独り占めにしていたプリン。まさかビルスがブウからそれを譲ってもらえなくて大変な事になるなんて…
プリンが食えないからと癇癪を起すのは止めて頂きたい。
あの魔人ブウですらビルスさま相手には子供同然に吹き飛ばされてしまった。
「ああっ!わたしのもちもちポンポンが…」
だがしかし、ただの気弾だったようで、死んだと思ったブウさんは無事に再生されたようだ。
「よ、よかった。わたしのもちもちポンポンは無事だった…」
「君もサイヤ人だよね」
げぇ、ビルスっ!
話しかけてくるんじゃねぇっ!
「超サイヤ人ゴッドって知ってる?」
「わたしは超サイヤ人ゴッドには変身できませんよ?」
「超サイヤ人ゴッドって変身するものなの?」
しまったーーーーーーっ!?
「君、何か知っているね」
「し、知りませんし?」
「神さまに嘘を吐くのはいけない。ちょっと痛めつければ何か出てくるかもしれないな」
何でそう言う結論になるーっ!?ちょ、ちょっと悟空さんは何処っ!
こう言うのの相手は悟空さんの担当でしょうっ!
と言うか悟空さんが居ないと超サイヤ人ゴッドを作り出しても意味ないしっ!
ビルスの右手がゆっくりと迫る。しかしその脅威は途轍もない。
「なんで避けちゃうの?」
「避けなきゃ死ぬでしょうっ!」
「君が死ぬか地球が破壊されるか何か思い出すか選べ」
うーわー…
シュンと不意を突いて瞬間移動するとビーデルの隣へと現れる。
「ビーデルっ!超サイヤ人、なれるっ!?」
ガシッとビーデルの両肩を掴む。
「一応悟飯くんと修行してなれるようにはなったけど?」
なんとっ!結婚してイチャイチャしているだけじゃぁ無かったのねっ!
今できる事は悟空さんが来るまで時間を稼ぐのみっ!
「上等っ!フュージョンするよ、フュージョン」
「ええ?あの踊りやるの?」
「っやるの!」
恥ずかしがらないっ!
「何をやるつもりか分からないけれど早くしないと地球ごと破壊しちゃうからね」
ビーデルと左右に立って距離を取る。
「気はこっちで合わせるから、全力でっ!」
「もう、しょうがないなぁ」
ビーデルの髪の毛が金色に染まり体にスパークが走る。
と言うか超サイヤ人を超えた超サイヤ人になれてたのね、ビーデル!
「ほう、超サイヤ人2とか言うやつか。でもまだまだだね」
とビルス。
「はっ!」
こっちも超サイヤ人2になって左右で対象の動きで精神を同一化。
「「フューーーーーーーージョン、はっ!」」
「合体とは…サイヤ人のくせに器用だねぇ」
「久しぶりにモンデルちゃん登場っ!」
周りの観客がどよめいていた。そう言えば見せた事ない奴も居たか。
「とりあえず、一発ビルスさまに攻撃を入れれたら見逃してください」
モンデル渾身のドゲザ。もうプライドなど無かった。
「ほう、面白い事を言うね。まぁ良いよ」
よかった。それならばもしかしたら何とかなるかも?
「でもその状態じゃあねぇ。孫悟空は超サイヤ人3と言うのを見せてくれたのだけど?」
「悟空さんのバカーっ!」
「そうそう、それそれ」
悟空への怒りで超サイヤ人3へと変身するモンデル。
空中に浮かぶと近づかせてなるものかと気弾をばら撒く。
「でも、その状態でも二発で沈んだけどね」
ドンッ!
「ぐあっ!」
いきなり背後に現れたビルスの手刀に海へと向かって落ちていく。
背中で海を割り開き、海水が巻きあがり、水しぶきが収まると…
「ほう、面白いね君。フリーザを倒した孫悟空が出来ないと言うのにまだ上の変身が出来るんだ」
現れた人影は上半身を赤い毛で覆われ目元は紅く隈取されている女性。
金色だった髪は黒髪に戻っている。
「超サイヤ人4」
「なんだ、それでもまだ超サイヤ人ゴッドじゃないんだ。残念」
脱力して本当に残念そうなビルスさま。
「はぁっ!」
裂帛の気合でビルスとの距離を詰めると拳を何十も繰り出すモンデル。
「速度は…まぁまぁか。まぁボクには止まって見えるが」
「はっ!」
抜き打ちのかめはめ波をビルスは軽く腕を振るって弾くと、弾かれた光弾が海を割いた。
「これならどうだっ!」
両手に現れた気円斬を投げ飛ばす。
左右から放物線を描いてビルスに襲いかかるがそれもデコピン一発で破壊された。
「ふん、子供だましだな」
しかし、それでも数秒の時間は稼げた。
モンデルはその隙をついて気を集中し始めていた。
気を極限までコントール、圧縮して放たれるその必殺技。それは…
「10倍かめはめ波ーーーーーーーーーーっ!」
「ほう…これはなかなか」
月の10個や20個は破壊できそうな10倍かめはめ波をビルスは片手で受け止めて割いた。
ビルスの後ろで10倍かめはめ波の余波が切り裂かれた海水で顕になった海底の地形を変えている程なのにビルス本人に焦りの色は見られない。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「今のは中々凄かったよ。ボクも二割くらい本気を出したくらいだ。誇っていいよ」
でもまぁとビルス。
「これで終わりだ」
一瞬で背後に回るとモンデルが振り返るよりも速く手刀が繰り出された。
が、その瞬間合体に耐えきれなくなったモンデルが分離。空振りに終わる。
「運のいいやつめ」
気を失っているビーデルをモンテが蹴り上げると豪華客船から悟飯が飛び出して受け止める。
「ビーデルさん、しっかりしてくださいっ!」
くそぅ…
「はぁ…はぁ…わたしも…気を失って良いですか?」
「んーー、君は面白いからダメ」
不幸だーーーーっ!違う、不公平だーーーーーっ!
フュージョンでの超サイヤ人4でもダメだとなるともう最終手段しかないだろう。
落ち着け。
もうどうせ次の攻撃で最後だ。
集中しろ。すべてを研ぎ澄ませ。まるで大海が凪いだ海面の様に。さざ波一つ立たない静かな…静かな…
そしてモンテは動いた。
「ぐぅ…」
一瞬、モンテの姿がブレたかと思ったらビルスのカウンターを腹に喰らい悶絶していた。
打ち付けられた拳の上で死に体をさらすモンテはそれでも意識を繋いでいるようで、しかしそれもあと数秒か。
「その変身は何だい?」
モンテの髪の毛は銀色に染まりかけていた。
「さあ?…火事場のクソ力…的な…?もう、本当に…これ以上は……」
そう言ってモンテは意識を手放してしまった。
「ふんっ…約束だ。お前の事は見逃してやろう」
そう言ったビルスを見れば、ピシっと彼の衣服の一部が切り裂かれていたのだった。
そして暗転。
はっ!何か見落としてはいけないもの感じたわたしは瞬時に覚醒する。
甲板のリクライニングチェアに寝かされいたわたしはベジータの怒号で起き上がった。
「よくも……よくも俺のブルマをーーーーーーーーーっ!」
ビルスさまに愛妻を傷つけられた怒りで限界を突破するベジータ。
ただ…もう、ね?前世記憶があると男の人が俺のブルマと言うセリフはもう犯罪者のそれな訳だ。
え、もうハーフパンツの時代だからブルマなんて知らない?何てことだ…
「俺のブルマ…くく…わらっちゃダメだけど…くくく…くく…俺のブルマ…くく…あはははははははははっ!…もうダメ…もうダメだ…ははははははっ!!」
シリアスな雰囲気の中、腹が寄りれるほど一人笑っていたモンテちゃんなのでした。
まぁ限界突破したベジータもビルスさまには敵わなかったのだけれどもね。
あわや地球を破壊されると言う所で悟空さん登場。
ドラゴンボールに頼んで超サイヤ人ゴッドを出してもらうから待ってほしいとビルスに持ち掛けると待ってもらえることに。
「願いを言え、どんな願いもみっつかなえてやろう」
現れたシェンロンに出してもらおうとしても出せず作り方だけ教えるとシェンロンはその場に居た破壊神ビルスにおののいて願いをかなえ切る前にドラゴンボールに戻って飛び散って行った。
「善の心を持つ五人のサイヤ人の心を一人に注ぐ、ね」
ビーデルさんは気絶中。わたしは笑い転げていて気絶している事になっていた。
悟空、悟飯、悟天、ベジータ、トランクスでゴッドを作り出す儀式をするが…
「止めておけ、孫。それはゴッドではない」
とピッコロさん。
戦闘力は上がったがそれだけで、ゴッドとは程遠い。
「やっぱりかー」
「みなさん、よく思い出してください」
ウィスさんが儀式の間違いを指摘する。
五人のサイヤ人が一人に心を注ぐ。つまり必要なサイヤ人は六人だ。
「わ、私が…」
気絶から回復したビーデルが立候補。
「うぅ…」
「ビーデルさ、しっかりするだ」
駆け寄るチチさん。
「けほけほ…うぇ…」
「あれま、これは…もしかして」
「ええ、まぁ」
頬を赤らめるビーデル。
「悟飯ちゃーん、ビーデルさんはダメだべ。お腹の中に赤ちゃんがいるだ」
「ほ、ホントですかビーデルさんっ!」
悟飯が駆け寄り一同祝賀ムード。
確かにめでたい事だし、体の事を気にするなら儀式に参加させる訳にも行くまいが…
「サイヤ人ならもう一人居るだろう。こら、バカ娘いつまでそこで笑い転げているっ」
ピッコロさんの怒声が豪華客船のデッキを駆ける。
「ピッコロさんってわたしに辛辣じゃないっ!?」
ウッドチェアで倒れ込んでいたわたしは飛び跳ねて起き上がった。
「バカ娘の自覚が有るから応えるのだ。さっさと来いっこのバカ娘がっ!」
「えー?」
バカ娘の自覚とな。
「早くしないと約束とか関係なしに君から破壊しちゃうよ?」
「た、ただいまっ!」
ビルスさまの脅しに屈服したわたしはデッキを駆ける。
悟飯くんも空気を察して戻って行った。
「はい」
「早くにぎれば」
手を差し出された悟天くんの手を握り、反対側はトランクスくんの手を握った。
そして超サイヤ人ゴッド降臨の儀式。
気を送るのではなく心を注ぐ。
六人を温かい気が包み込み、ゆっくりと悟空さんへと流れて行った。
これは高純度の神の気…
「これが超サイヤ人ゴッド…」
誰かが呟き皆息を飲む。
悟空の体は引き絞られ髪は赤く染まり真っ赤な神気を纏っていた。
それから始まる悟空さんとビルスさまの戦いはもう、筆舌しがたい。
もう勝手にやってくれと言う感じで大暴れ。
「なんかすごく嫌な感じがするんだけど…」
衝突して漏れる神どうしの戦いに世界が悲鳴を上げている。
なんかてんぱった界王神さまから届けられた声を聴くに後何度かぶつかると世界が無に帰すそうだ。
マジかっ!
神と神ってもっとソフトな戦いじゃ無かったっけ?
そんな世界が終わる系の話じゃなかったよねっ!?
ヘロヘロな体に鞭打って両手を天に向けるとわたしは元気玉の要領で気を集め始める。
集める気など地球上空にこれでもかと散らばっていた。
悟空とビルスの戦いの残滓だ。
成層圏で力比べの果てに生み出された高エネルギー結晶体の押し付け合いに悟空が負ければもはや世界は終わる。
せめてそれだけは何とかしないと本当にもうっ!
やるならステゴロだけにしろよっ!
集めた神気を吸収し始めるわたし。
体がすぐに悲鳴を上げている。
「あら、そんな事をしてはあなたの体がもちませんよ?」
といつの間にか隣に居たのはウィスさんだ。
「まかり間違っても神の気ですからね」
「わたし、これでも気のコントロールだけは悟空さん達にも負けない自信があるんですよ。それと…」
溢れる神気を取り込んだ結果、髪の毛が赤く染まり始めた。
「わたし、一応…界王神さまの…弟子なんで」
体のあちこちが痛い。バラバラにはじけそうだ。
「あらぁ…神の力ですか。これは興味深い」
超サイヤ人ゴッドになれないと言ったな。あれは嘘だっ!
いや、なれなかったのは本当。ただ、界王神さまに弟子入りした結果、神の気のコントロールは出来るようになっていたのだ。
結果、これだけの神気が有れば超サイヤ人ゴッドくらいなれる。
「ですがやはり体がバラバラになりそうですね」
ウィスさーんっ!?そんなはっきり言わないでくださいっ!
世界が滅ぶほどのあれを何とかしないとヤバイのだからなりふり構っていられない。
「体が…耐えられないの…なら…耐えられる…体に…つぁ!」
神の気を持ったまま超サイヤ人4へと変身。
体毛は真紅に燃え上がり黒かった髪も紅くなっていた。
「ほほう、これはまさしく超サイヤ人ゴッドの力を持ったサイヤ人の超サイヤ人4って所ですかね」
ウィスさん。なんか別の名前でお願いします、長いんで。
「長くはもたないけど、一発くらいは逝ける…かな?」
「いけるの文字が違う様に聞こえたのは気のせいですかね?」
気のせいですよ?
わたしは瞬間移動で成層圏へと飛び上がると集めていた神気を掌にさらに集めて悟空さんとビルス様が押し付け合っている球体へと向けた。
「破壊っ!」
「いいっ!?」「なんだとぉ!?」
驚く悟空さんとビルスさま。
破壊のエネルギーはぶつかり合っていたエネルギーを跡形もなく消滅させた。
ぶっつけ本番だけどうまく行ったようだ。
ビルスさまの神気を吸収していたから使えた荒業だ。
一瞬呆気に取られている隙に二人に近づくとゲンコツを二発。
「喧嘩は素手でやれっ!」
エネルギー弾は禁止だっ!
「「は、はい…」」
反射的に頷いた二人のバカども。
だが、威勢が良かったのここまで。
限界はすぐに訪れた。
急激に意識は闇に飲み込まれ、重力に引かれて地球へと落下していく。
あー…これは死ぬかな。
自身の力以上の事をやってのけたのだ。もう体に力が入らず指の一本も動かせない。
そして完全に意識を手放した。
「まったく、サイヤ人と言うのは本当に想像を超えたことをしますね。破壊神でも無いのにまさか破壊のエネルギーを使うなどど」
空中でモンテを抱き留めたのは天使のウィスだ。
「ビルスさまもこの方は破壊しないと約束していましたし、死なれても困りますからね」
スススと豪華客船へと降りていくウィス。
「その娘は何をしたんだ?」
「おや、分かりませんか?」
とベジータの問いに逆に問いかけるウィス。
「ちっ」
モンテの気が途中から感じられなくなっていたことには気が付いていたベジータは悪態で返したのだ。
そして何をしたのかまでは分からないが、上空の圧を消して来たのだろう、と。
モンテに水を差された悟空とビルスは先ほどよりも格闘戦に重視を置くようになり世界の危機はほんのちょっとだけ遠ざかった。
結局悟空はビルスに負けてしまったが、ビルスは満足したのか地球を破壊することなく帰って行ったのだった。
帰路の途中の宇宙空間にて。
「そう言えば、モンテとか言うサイヤ人が放ったあの技。あれ、破壊のエネルギーだったよね。あれどうやったの?」
とビルス。
「どうやら悟空さんとの戦いで飛散したビルス様の神気を取り込んだようでして」
「無茶をするなぁ…でもそれなら破壊神の仕事はあの娘に任せてしまってもいいか?」
「あらビルス様、破壊神を引退するおつもりで?」
「そんな訳あるか。ただの思い付きだよ」
「そうですか。気が変わったら早めに言ってくださいね。モンテとか言う娘に破壊神としての修行をつけるの、私なんですから」
「あーあー。気が変わった。次会ったら破壊しよう」
「ダメですよ。一度見逃すって決めたことなんですから」
「きこえなーい」
とか言う会話があったとかなかったとか。
第六話
最近パパがまた調子に乗ってます。
なんと先日の地球規模の異変を止めたのはパパのおかげと言う事になっているらしい。
と言う事で今日記者会見をするそうだ。
それもまたパパが地球を救った事にするそうだ。
そのホラもここまで突き通せるのなら身内ながら大したものだよ。
「モンテ、準備出来てるか。行くぞ」
「はいはい」
ママが死んでいる為かパパはこう言う式典に結構わたし達を連れまわしたがる。
以前はビーデルが居たので被害は半分半分だったのだが、ビーデルが家を出てからはわたし一人に回ってくるのです。
記者会見会場にパパと一緒に青のマーメイドドレスを着て降り立つと、周りはすでにサタンファンに埋め尽くされていた。
もうパパの大法螺大爆発。
うんうん、今日も絶好調だ。
と、そんな時空からまさかの宇宙船が降りて来た。
宇宙人が現れたと言うのにこの世界の人は結構驚かないものだな。もっとパニックになるかと思ったのに。
現れたライオンの様な姿をした宇宙人はパパを破壊神ビルスを退けた英雄として勲章を贈りたいそうだ。
それを調子のいいパパは当然と受け取ってしまう。
うん、そんな事をしているとその内バチが当たるよ?
と、そのバチはすぐに降りかかったようで、宇宙船から新たに現れた巨漢のライオンの宇宙人がパパと戦いたいと言い出したのだ。
「よろしい、だが私への挑戦はこの私の娘を倒してからにしてもらおう」
「ぱ…パパ?」
「モンテちゃん、お願いだよぅ、パパを助けると思って」
最近パパは娘たちの異常な強さを自覚したようで、虚勢を張る時に傍に居るとこういう事も多々あった。
「もう、今度何か奢ってもらうからね」
「あ、ありがとうモンテちゃん」
『おっと、対戦者はミスターサタンの娘、皆さまご存じモンテちゃんのようです』
記者が勝手に実況を初め、いつの間にか宇宙人の技術か武舞台が用意されていた。
「こんな小娘なぞと戦えと言うのかっ」
「んー…じゃやっぱパパ頑張ってっ!」
「モンテちゃんっ!お願いっ」
パパ、涙目で娘に懇願するってどうなのよ…
「一撃で終わらせてやる」
拳を握りしめ振り上げるとモンテ目がけて振り下ろす。
左手を前に出して肘で拳を受け止め、力を武舞台へとにがすと、ガルビと名乗った大柄なライオンの宇宙人は驚愕の表情を浮かべた。
スルリ。
スカートの中からマーメイドドレスの切れ目に覗く猿の様な尻尾。
「な…ま、まさか…サイヤ人…なのか?」
「…一応」
「ひぃいいいいいいっ!?」
ガルビは全身を震え上がらせると宇宙船へと直行、他の搭乗員を置いてでも離陸の準備を始めてしまい、うやむやの内に終わってしまった。
サイヤ人…未だに悪名を轟かせているなぁ…
しばらく穏やかな時間が続き、ついにパンちゃんが生まれました。
あまりの可愛さに週七で会いに行ってます。え、毎日じゃん?瞬間移動出来るから実質移動時間なんてないし、隣の部屋に行く程度の感覚しかないですよ?
「うー、あうー」
ベビーベッドに寝かされているパンちゃん。
動く物が気になるのか、尻尾を振っているとすごく喜んでいる。
わたしの尻尾が掴めないと分かると自分の尻尾に噛みついていた。
そう、このパンちゃんには尻尾があるのだ。
夜泣きで疲れている為か、ビーデルは結構昼間訪れるわたしにパンちゃんの面倒を見るようにお願いして来る。
まぁ可愛いからいいんだけどさ。
「べろべろべろばぁ~」
わたしよりもかわいがる髭もじゃの男。
「きゃっきゃ」
「パンちゃんはおじいちゃんの事がだいちゅきですからね~」
おじいちゃん?ちょっと気持ち悪いですよ。年を考えて。
「あー、パンちゃんはパパの方が大好きなんです」
パンちゃんにメロメロなパパと、学会から帰って来た悟飯くんがパンちゃんの取り合いを始めてしまうがいつもの事。
「そう言えばパンちゃんってサイヤ人のクォーターになるのかしら?それとも四分の三?」
「あ、それはボクも気になってました」
と悟飯くん。
「まぁわたしとビーデルは多分わたしの悪ふざけでドラゴンボールに願った結果なんだけど…」
「フュージョンで記憶が曖昧なときね。と言うか今更なんだけど、モンテの存在が一番のなぞね。ドラゴンボールを知っていた事しかり超サイヤ人しかり、フュージョンもね」
「…ズノー様に教えてもらったんで」
前世の記憶が云々は未だに言えないでいる。
こう言うと何か思っていても皆だまくらかされてくれるから好き。
「特徴だけ見ると完全にサイヤ人だけどね。黒髪黒目、尻尾もあるし。ほら悟空さんとベジータさんみたいな純血サイヤ人にそっくりでしょう?」
「確かに」
「でも尻尾があると大猿に変身するのよね」
とビーデル。
「それじゃ思いきって切っちゃいます?」
「あ、そうか悟飯くんも子供の頃は尻尾が生えてたんだっけ」
「はい。いちいち満月で大猿になる訳にもいかないですしね」
「私、満月って一回も見た事無いのよね。映像ではあるわよ?でも子供の頃は有ったはずなのに絶対にモンテが邪魔してきて」
「本当に見なくて良かったです…」
ビーデルの言葉に悟飯くんがため息を吐く。
「モンテさんはサイヤ人には詳しいみたいですが、切ろうと思わなかったんですか?」
「むしろ詳しいから切らなかった」
「は?」
「わたしは変身と言う行為に憧れていたの。それはもう産まれる前から」
「産まれる前って」
あきれ顔のビーデル。だが事実だ。
「わたしにしてみれば大猿も変身の一つだし、超サイヤ人4は尻尾が無いとなれないからね」
「だから父さんでも変身できないんですね」
「そう言う事」
今のままでは悟空さんは天地がひっくり返っても超サイヤ人4には変身できない。
「まぁでも別に切る必要は無いんじゃない?」
「確かに有れば便利だし、無ければ無いで不便だしなぁ」
ああ、ビーデル結構尻尾でドライヤーやら髪を梳いたりやらしてるものね。
もはや三本目の腕のようだ。
「でもパンちゃんには大猿はやっぱり危ないですし」
「悟飯くんは切った方がいいと思っているんだ」
「ボクは無くても困ってませんしね」
「でも親のエゴで選ばせてあげられないのはなぁ」
とビーデル。
「そもそも月って直ってたっけ?」
「「あっ!」」
悟飯くんが大猿になった時に破壊されて以降再生されて無いよ。余りにも満月に過敏になりすぎて見ないようにし過ぎてない事を忘れていたらしい。バカばっかなサイヤ人達だった。
それから再開されるパパと悟飯くんのパンちゃん争奪戦。
空中に投げられてはキャッチされる間の奪い合いに発展するも、さすがにサイヤ人の血が濃いのか笑っているパンちゃん。
そこに様子を見に来たチチさんが乱入。
バカどもからパンちゃんを強奪すると部屋の奥に立てこもってしまった。
立てこもりの理由がパンちゃんには武道家になってサタンの後を継いでもらうと言う会話がきっかけでおしとやかなレディになってもらいたいチチさんに火が付いたようだ。
どっちも大人のエゴだし、パンちゃん本人が決める事だとはわたしは思うのだけど…
「なぁビーデルさも思うだろ、こっただアホ娘に育っちゃったらパンちゃんがかわいそうだ」
なぜかこちらを指さすチチさん。
「アホ娘って…一応あなたの義娘の妹なんだけど…もっと言うと双子なんだけどな…」
立てこもりの方に連れてこられたわたしはさらになぜか説得に現れたブルマさんとヒートアップしていくチチさんとブルマさんママさん談義もしくはサイヤ人を旦那に持つ会に巻き込まれた上にアホ娘扱いである。
「わたし、泣いてもいいよね?」
ライフがゼロになったわたしはブウさんの気を頼りに瞬間移動で飛んで帰ってベッドで号泣していましたとさ。
最近体の調子が悪い。
「ぐぅ…」
突然心臓がキュと締まったかと思うと急に体の自由が利かなくなったりする。
一応数分程度で収まるのだが、何かの病気かと検査したが地球の医学では原因が分からず。
どうする事も出来ずにまた体の不調に苦しんでいる。
「はぁ…はぁ…ぐぅ…」
今回は長いなぁ…
ズルっと体の力が抜けて転げ落ちた。
「モンテっ!いったいどうしたのっ!」
そう言えば、パンちゃんに会いに来ていたんだっけ…
「はぁ…はぁ…大丈夫…大人しくしていれば治まるから…」
「救急車っ!」
「無駄だから…ね?」
それだけ言うと余りの痛みに意識を失った。
気を失っているモンテを心配するように取り囲むのは悟空一家と悟飯一家、ブルマとトランクス、何だかんだでピッコロも居る。一番うろたえているのはやはりミスターサタンだろう。
「ブウの治癒能力も効かないんですね」
「うん、体、どこも悪くない」
悟飯の問いにブウが答えた。
「モンテ、死んじゃうのか?」
「大丈夫ですよ、皆で考えればきっと…」
ブウの弱々しい問いかけに勇気付けるように悟飯が言った。
「モンテ…」
「うわわぁぁああん、モンテーーーーーっ!」
「パパはもう少し落ち着いて、うるさくてモンテが起きちゃうでしょう」
ビーデルがサタンを宥めているが彼女自身が泣きそうだ。
「確かに、呼吸は正常です」
「そうね。色々調べてみたけれど確かに体に異常は無いみたい」
「異常がねぇのに何でモンテは苦しそうなんだ?」
悟空がどういう事だとブルマに問いかけた。
「それがまったく分からないのよね」
ブルマが調べた結果も体には特に異常がない。
体に異常は無いが確かにモンテは衰弱していた。
「ドラゴンボールを使うってのはどうだ?」
「それです父さんっ!」
「ダメよ」
と悟空と悟飯を止めるブルマ。
「なんでだ?」
「もうそれしか方法が…」
「だって理由が分からないんだもの、いったい何てお願いするつもりなのよ」
「そりゃおめぇモンテを健康な状態に治してくれってよぉ」
「彼女、体は健康なのよ。それ以外の何かが彼女を蝕んでいる。その原因が分からなければドラゴンボールでも治らないわ」
「クソ…お手上げか…」
「せめて理由がはっきりしていればね」
「そう言えば」
と言ったビーデルに一同の視線が向かう。
「いつもモンテちゃんが言い訳に使っているズノー様って」
「ズノー様?」
とブルマ。
「何でも知ってる宇宙人らしいんだけど、あ、そう言えば地球からはそれほど遠くない所に居るんだって。そのズノー様に聞く事が出来れば」
「アホ娘のホラ話では無いのか?」
「そうかも知れないけど、もうそれくらいしか頼れるものが…」
「ピッコロさん、あまりビーデルさんを責めないで下さいよ」
「悟飯…俺は別に責めてる訳じゃ無いのだが」
「どの道どこに居るのかもわからない宇宙人に会いに行ける訳ねぇべ」
「あ、そう言えば」
「どうしただ?」
チチの言葉で何かを思い出したブルマは携帯電話と取り出しどこかに電話を掛けている。
「あ、お姉ちゃん。そう、そうアイツ今どこにいるか分かる?うんそう、ちょっと急用でね。うん、あ、ありがとう」
「誰に電話してんだ?」
「ちょっとね」
悟空の問いをはぐらかし待つこと数十分。
空から宇宙船に乗った何者かが現れブルマはその何者かと飛び去って行った。
数時間経って帰って来たブルマは再び深刻な顔をしている。
「なんか分かったんかっ!」
「一応ね」
「むしろ俺はアホ娘のホラが本当だった方がビックリだが」
「ピッコロさんは黙ってて下さいっ!」
「むぅ…」
悟飯にたしなめられて唸るピッコロ。
「どうやらね、モンテは神の気とサイヤパワーのバランスが崩れた上でその両方がせめぎ合っている状態みたいなの」
「神の気だぁ?まさか超サイヤ人ゴッドと同じヤツか」
「それ以上ね。この娘、あなたがビルスさまと戦った時世界崩壊の危機を止めたでしょう?その時大量に吸収した超サイヤ人ゴッドのパワー、そしてビルス様から放出されていた破壊エネルギーを吸収した上で超サイヤ人4なんてものになっていたの。そして体の中から排出できずに残ったエネルギーが活性化して苦しんでいるのよ」
「何とかなんねぇのかっ!オラ昔コイツに命救われてっからよ。何とかしてやりてぇんだ」
「いや、話を聞くに悟空さはモンテさに殺されてんだぞ」
「それでも生き返らしてくれたのもモンテだかんな、だから何か手があるなら何とかしてやりてぇ」
「残念だけど孫君じゃ無理ね。どうにか出来るとしたらウィスさんくらいかしら」
「いいっ!?そんなぁ…ウィスさんってのはビルス様と一緒に居た人の事だろ?今どこにいるのか…気も読めなかったしな」
「タイミングよく恐らくそろそろ地球に来る頃だとは思うのだけれども…」
「ええ?どうしてそんな事が分かるんですか?」
と悟飯。
「私、ウィスさんとは友達だから。たまに会ったりしているのよ?」
「「「「えええっ!?」」」」
「そうですねぇ、わたし達友達ですからねぇ」
「ウィスさんどっから…」
何処からともなく現れたウィス。
「いえいえ、ちょうど今日はブルマさんの所にお伺いしようと思ってましたので…ところでそちらのモンテさんですが」
「そうだったっ!いきなりモンテが苦しみだしてよ。ウィスさん、どうにかなんねぇか?」
と悟空。
「ふむ」
「後で美味しい物ありったけあげるからお願いウィスさん」
「今回も期待していますよぉ。まぁその駄賃くらいならばっと。ほい」
ブルマの一押しでウィスが動きモンテの体を軽く杖で小突いた。
「かはっ……スゥ…」
苦しそうにしていたモンテの寝息が聞こえる。
「これで治ったんか?」
「いえ、私はほんのちょっとモンテさんの体の中をめぐる神の気を調整しただけ。もう一つ暴れているものが有りますがそっちは私ではどうにも」
「ちょっと、何とかならないのっ!?」
とブルマ。
「ふむ…こればかりはモンテさん自身に克服していだだけなければ。そのお手伝いくらいなら出来ますけどねえ」
「お願いします、モンテちゃんを治してください、お願いします」
ウィスに懇願するビーデル。
「仕方ありません。美味しい物はまた今度と言う事で私は一度モンテさんを連れて帰ります」
モンテを小脇に抱えると現れた時と同じようにしてウィスが飛び去って行く。
「まってくれウィスさんオラも行く」
悟空は飛び去るウィスに急いで抱き着き一緒に光の筋となって上空へと消えた。
「悟空さっ!?」
チチの驚いた言葉はもう悟空達には届いていなかった。
…
……
………
「どこ?ここ」
目を覚ますとどこかも分からない所に寝かされていたようだ。
「ここはアレを言うべきだろうか…うぉっほん」
一度喉の通りを良くして、と。
「知らない天じ」
「起きましたか、モンテさん」
「最後まで言わせてー」
ウィスさんが様子を見に来てくれた感じだ。
ウィスさんが居ると言う事はここはもしかして…
「ウィスさん、ここってビ」
「ここはビルス様の星ですよ」
「最後まで…いわせて…?」
まあいい。
「それで、どうしてわたしはこんな所に居るんですか?」
「ほっほ。ブルマさんに頼まれましてね、あなたに修行をつけて差し上げるためですよ」
「……はい?」
どうやらわたしは大変の事になっているらしい。
以前、超サイヤ人ゴッドの神気やら破壊神ビルスさまの破壊のエネルギーやらを吸収した結果そのエネルギーをどうにかしないと死んでしまうらしい。
それも星の一つくらい破壊してしまうほどの大爆発を起こして。
「え、リアルに人間爆弾?」
「はい、ですのでここでその力を制御出来るようになってもらいますよ」
そして始まる悟空さんベジータさんと一緒の修行。
「死ぬ死ぬ死ぬっ死んじゃうっ!」
両手に重りを通し持ち上げつつ星の外周を走らせられていた。
「叫んでいる暇が有ったらさっさと走れこのバカ娘がっ」
ベジータさん、何だかんだで激励してくれるところとか、ツンデレですね。
走るとは言ったが歩くよりは早い程度の速度しか出せていない。
しかも鬼畜な事に後ろの道はどんどん消されていて、間に合わなければ永遠に次元の間とやらを彷徨う事になるらしい。
ギルガメッシュはイヤァァアァアっ!!
両隣には悟空さんとベジータさんも同じ修行をしているが、当然重りの重さは個々人で違うため大差はない。
「と言うか、なんでわたしはむしろフィジカル面を鍛えられているのぉ!?」
「モンテさんは気のコントロールは中々見どころが有るのですがやはり耐久面が貧弱ですからね。それでは神の気のコントロールなどとてもとても」
そう言ったウィスさんは後ろの道をどんどん消していく。
「しぬぅ!死んじゃうーー」
死と隣り合わせの修行と家事手伝いを続ける事数か月。
「すぅ…はっ!」
気合を込めると高まる神気。髪は紅く染まりどことなく赤いオーラを放っていた。
その状態でさらに神の気を操りそれでいて気を内側でのみ高めていく。
「超サイヤ人ゴッド。もう自在に操れるようになったのですねぇ。向こうで殴り合っている二人もあなたほど覚えが良いと楽なのですが」
「あの二人は多分殴り合っていた方が覚えやすいタイプだと思う」
「まったくです。そこらの河原の土手ででも殴り合っていればそれで良いのではないか、と思ってしまうほどです」
キチンと神の気を操れるようになってどうにか人間爆弾からは卒業したらしい。
超サイヤ人ゴッドの状態からさらに超サイヤ人へと変身すると髪が青く染まり始めた。
「あなたも器用ですね。もうそんな変身を」
「超サイヤ人ゴッドの力をもったサイヤ人の超サイヤ人って所ですね」
そう、一般的に超サイヤ人ブルーと呼ばれる変身だ。
「あなたは気のコントロールは素晴らしい、ですが…」
すっとウィスの視線が悟空とベジータに向く。
「格闘センスや戦闘経験においては悟空さんとベジータさんに遠く及びません。それに同じ変身状態ならばお二人の方が数段上の実力でしょう」
「まぁ、そうですね。敵いませんよ、二人には。あの二人は純粋なサイヤ人ですよ?」
「いえいえ、そうとも言えないのですがね」
「……?」
何を言っているのだろうかウィスさんは。わたしがあの二人に勝てる訳ない。
「ふぅ…修行もひと段落したのでそろそろ一度地球に戻って良いですか?」
「一人で帰れるならご自由に」
「はーい」
ビーデルの気はっと。
「本当、気のコントロールはお上手ですねモンテさんは」
あったあった。
シュン
瞬間移動すると驚いた顔をしているビーデル。その手に持っていた哺乳瓶をうっかり落としたようで床に転がっていた。
「モンテっ!」
「ただいま、ビーデル」
「無事だったんだ…本当に…本当に…もう大丈夫なの?」
抱き着いて来たビーデルを抱き返す。目元に涙を溜めて力の限り抱き着いて来る彼女の力に…
「ギブ…ギブ…背骨…折れる…」
「はっ!?」
強烈なハグから抜け出すとソファーに座りパンちゃんを抱かせてもらう。
ようやくまったりしていると上空から嫌な気が。
「この気は…」
「ねぇ、モンテ…何か嫌な気配が」
このレベルの嫌な気を感じるとなるともうどこに居ても一緒だ。
パンちゃんを抱いたまま舞空術で空を飛ぶとビーデルもついて来た。
途中で悟飯くん、ピッコロさん、クリリンさんと合流。
天津飯と合流した時には…
「チャオズは置いて来た」
ヤムチャの事も思い出してください。
亀仙人は居るのにヤムチャぇ…
情報を纏めるとどうやらなぜか復活してしまったフリーザが千人の部下を引き連れて地球に攻めてくるそうだ。
情報元はブルマさんのお姉さんのお友達の銀河パトロールのジャコだ。
「モンテさんお久しぶりです。無事だったんですね」
「まぁね」
「それより」
悟飯くんから気迫が発せられる。
「どうしてビーデルさんとパンちゃんを連れて来たんですかっ!フリーザが来ているんですよ」
「下手な所に居るより近くに居た方が守りやすいでしょ。ビーデルもそこそこ強いし」
「そんなぁ…モンテさんも気が付いているでしょう。このフリーザの途轍もない気を」
「これ、第一形態の状態とかだったらやだなぁ」
「モンテさんはフリーザが変身型宇宙人だって知っているのですか?」
「はっ!?…ズノー様に聞いたのよ」
と言う訳で到着したフリーザ軍を迎え撃つ。
ゾロゾロと蟻の様に飛び出してくる戦闘員の数は多い。
悟空への復讐をするために現れたフリーザは、悟空が居ないと言うとそれまでに地球を壊滅させるのも一興と行動を開始。
「ビーデル」
「モンテ、パンちゃん」
あ、パンちゃん抱っこしたまま戦闘で離されてしまった。
ビーデルは…うん、フリーザ軍の戦闘員くらいじゃ問題ないな。
悟飯くんの近くで連携して戦えている。
「はっ…よっと」
ウィスさんの修行は伊達じゃないみたいでわたしも戦闘員など物の数にならない。
「きゃっきゃっ」
だが、わたしよりも撃墜数を稼いでいるのはパンちゃんだ。
「パン…ちゃん?」
わたしの腕を離れたパンちゃんは空を飛んで戦闘員に体当たり。それだけで結構の数の戦闘員を倒していた。
「きゃーう」
ふよふよと飛んで帰って来たパンちゃんをキャッチ。
「流石サイヤ人…末恐ろしいわ」
「なんですかっ!その赤ん坊はっ!!」
ムムムとにらみつけるフリーザ。
いくら寄せ集めなフリーザ軍と言えど赤子に倒されてフリーザのプライドを刺激しない訳無かった。
「サイヤ人めっ」
まぁ尻尾で普通に気付くよね。
「死ねぇっ!」
チュンとフリーザから放たれるレーザーの様な気功波。
こんなものパンちゃんが喰らえばひとたまりもない。わたしも生身では弾けないような威力だ。
「はっ!」
気合を入れると髪が金色に染まる。超サイヤ人に変身しフリーザのレーザーを振るった腕で弾くと地面に大穴が空いていた。
「パンちゃーん。くそっ邪魔だぁっ!」
近寄ろうとした悟飯くんだが、なんか禿のどことなく肌の感じが卵っぽい宇宙人に阻まれていた。
ブウと戦った時の悟飯くんなら一撃で倒せそうな敵だが、修行をサボっていた所為か苦戦していて近づけず。
「その髪、その変身…超サイヤ人ですか…いまいましいものですね」
なんかいきなりヤル気になっているフリーザさま。サイヤ人に恨み骨髄のようだ。
「悟空さんが来る前の肩慣らしです。いたぶってから殺して差し上げましょう」
やーめーてー。
「だうだーぁ」
この状態で笑っていられるパンちゃん。やっぱり将来大物になるよ。
フヨフヨと乗っていた浮遊ポットから飛び出してくるフリーザ様。
「勘違いしては困るから最初に言っておくけど」
「何ですか?」
「わたしはね、悟空さんの何倍も…」
ゴクリと誰かが唾をのみ音が聞こえた。
「いいや何十倍も……」
ジリっとした気配。そして…
「……弱いよ?」
「はい?」
真顔で言い切った。これにはさすがのフリーザ様も呆気に取られていた。
「それにわたしは非戦闘タイプだっ!」
と自分では思っている。
「ホッホッホッホ。非戦闘タイプが超サイヤ人になれるのならば惑星ベージタは超サイヤ人で溢れかえっていた事でしょうねぁ」
クックックと笑うフリーザ。だが地球組は笑えない。
割と超サイヤ人で溢れていたからだ。
「面白い事も聞けましたし、特別に優しく殺してあげましょう」
次の瞬間フリーザの姿がブレた。
「くぅっ」
パンちゃんを後ろに放り投げると腕をクロスして全力ガード。
パンちゃんはビーデルがキャッチしてその胸に抱いていた。
「ほう、死にませんか」
「その赤い髪…超サイヤ人ゴッド…だと?」
とピッコロさんが驚愕の声を上げた。
「超サイヤ人ゴッド、ですか。その程度でサイヤ人の神とはまたチンケなネーミングですね」
互いに距離を取るとモンテは構えを取った。
「準備運動くらいにはなりそうですね」
特に力むようなこともないフリーザ。
「モンテさんっ!」
慌てて悟飯が駆け寄ろうとするが…
「止めろ悟飯っ、修行をサボっていたお前がいっても足手まといだっ」
「ピッコロさん…」
フリーザとの戦闘が始まる。
53万なフリーザ様はいったいどこに行ったのか。第一形態ですら超サイヤ人ゴッドのわたしより強いんだけどっ!?
空気が振るえるほどの打ち合いに海が割けて海水が舞う。
「面白い、面白いですよあなたっ!」
「わたしは面白くないーーーーっ!」
悟空にボコられ、ベジータにボコられ、ついでにウィスさんにボコられた結果何とかフリーザ様と戦闘が出来ているに過ぎない。
「キェエエエッ!」
「だりゃあああっ!」
互いの気功波がぶつかり合い、爆発。
「全く戦闘力を感じられないのにその強さ。それが神の気ですか。興味深いですね」
「はぁ…はぁ…もう少し疲れてくれるとわたしは…うれしいのだけれども。…こうまで実力の差があると神の気どうのの問題にはならない…」
悟空さんとベジータさんはまだ来ないし、迎えに行こうにもその隙を与えてもらえない。
ビルスさまの星は遠すぎて気を感じるためにはかなり集中しなければ行けないのだ。
「はーっダダダダダダっ!」
「ほっほ、良いですよ。なかなかいい攻撃ですね」
わたしの拳の応酬もそよ風を受けるがごとく、まるで暖簾に腕押し、柳に風だ。
そしてわたしはフリーザ様の軽く振りぬかれる回し蹴りで吹き飛んで海水を巻き上げる始末。
「けほ…けほ…」
「おや、殺したと思ったのですが、存外ダメージが有りませんね」
蹴りが当たる瞬間、その部分にのみ気を手中させてガードしたのだ。全身を守っていたのでは多分大ダメージを受けていただろう。
「はぁ…はぁ…」
純粋に力勝負じゃ逆立ちしたって勝てないのは分かった。殺されないのも相手が遊んでいるからだ。
だが逆にフリーザを殺せるチャンスが有るのは今だけだ。
別に悟空のパワーアップに今のフリーザは必要ないし…何かが有って取り返しのつかない展開になるくらいならばここでわたしが破壊する。
この時わたしはフリーザを破壊すると言う事がどういう事になるか忘れてしまっていたのだが、後の祭りだった。
距離を開けていたわたしは神の気をクリアに保ったままさらに一段階引き上げる。
「はぁっ!」
全身が青いオーラに包み込まれると髪を逆立てた少女が現れた。
「超サイヤ人だとっ!?」
「でも髪が青いわよ」
「あれはいったい…」
ピッコロさんの言葉をビーデルが否定し、悟飯も分からないと呟いた。
「その変身はなんですか?」
神の気を感じられないフリーザはまだ余裕そうにしている。そのまま油断していてほしい。
「これが最新の超サイヤ人…超サイヤ人ブルーだ」
「ふん、所詮は見掛け倒しでしょう」
第一形態のフリーザは上回ったが最終形態に変身されると多分勝てない。ゴールデンフリーザなど足元にも及ばないだろう。
だが、この気のコントロールを極めた変身形態だからこそ使える技がある。それは…
「はっ!」
気を放出せずに内側に内側に高めていく。
余裕の表れか攻撃を出すまでは待ってくれるようだ。正直ありがたい。
その気を右腕にすべてを収束すると掌に紫色の気が立ち昇り始めた。
「なんですか、それはっ!」
さすがのフリーザもその異様さは感じ取れたらしい。
しかし構わない。
シュンとモンテの姿が消える。
「ヤードラット星人の瞬間移動っ!どこにっ!」
飛んだのはフリーザの真後ろだ。そして気の高まった右手を突き出し…
「破壊っ!」
神の気を感じられないためフリーザは虚を突かれ
「何いっ!それは破壊神のっ!バカなッ!バカなーーーーーっ!?」
直撃した破壊のエネルギーはフリーザを塵に変え、魂ごと再生不可能なまでに砕いたのだった。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
破壊に相手が強いも弱いも関係ない。当たれば破壊される。それが破壊神の破壊だ。
変身を解くと一気に倦怠感が襲って来た。
「ぐぅ…」
次いでアドレナリンが切れたのか右手に大激痛。
破壊のエネルギーなんてものを使った反動か。肉体面では超サイヤ人4の方が強靭だからなぁ…
「仙豆だ、食え」
ピッコロさんが一番で飛んできて仙豆を渡してくれた。
そう言えば初めての仙豆だ。
カリっと歯で齧って嚥下する。
「ぐっ…」
一瞬で体力が戻り、負傷していた肉体は修復される感覚は何とも言いようがないし例えが浮かばない。
「倒したの?」
ビーデルがパンちゃんを抱っこしながら飛んできた。
他の人たちは残った戦闘員を雑に宇宙船に詰めているらしい。
あ、まってまって。送り返す前に最新式のメディカルポッドだけはパクらせてっ!
「倒したと言うか、破壊した。魂までバラバラにしたからもうドラゴンボールでも復活しないかな」
「破壊神の技か」
なるほど、とピッコロさんが腕を組む。
「それになりに反動の有る技のようだな」
ズタボロになっていた右手を見れば分かるだろう。
「はい。それにフリーザも油断していてくれてよかった。あれで第三形態とか最終形態とかに変身されていたらまず間違いなく勝てませんからね」
「フリーザって変身したの?」
ビーデルが問いかける。
「フリーザは変身型宇宙人だ。だがどうしてお前が知っている」
「あはは…いつもの奴と言う事で」
ズノー様バンザイ。
第七話
復活したフリーザも倒されたと言うのにどうしたまたわたしはこんな所に居るのでしょうか?
ビルス様の星で気太りした宇宙服のような物を来て親指立てをさせられているわたし。
隣にはもういつものメンバー。悟空さんとベジータさんが居ます。
「19999」
「20000」
「死ぬぅ」
二万回とかやってる悟空とベジータ、バカなのっ、死ぬのっ!?
しかもこのスーツすごく重いのよっ!
「グベッ」
重みでつぶれるモンテ。
「ホラそこサボらない」
「おにぃ」
悟空さんとベジータさんはまだまだいけそうだけどわたしは無理ぃ。
「そもそもなんでわたしが修行に付き合わされているのよっ!もう神の気ならコントロール出来てるもんっ」
「ふむ。私、破壊神候補の訓練も仕事の内ですので」
職務を遂行しているだけと答えるウィスさん。
「はい?」
どう言う事?
「ホラホラ、それ以上サボるとスーツの重さを倍にしますよ。ただでさえ悟空さん達よりも何倍も軽いのですからね」
「いーやーだー」
わたしはフィジカルなんてどうしても悟空さんとベジータさんには及ばない。
だからわたしがこの修行で重点を置くのはそこじゃない。
意識を内側に集中させる。
体の細胞の一つ一つの気を感じ取りバラバラに向いている意思を統一していく。
そうする事で無駄を省きどうにか悟空達の修行に付いて行くだけの下地を得ていたのだった。
これは前世知識にあった猿武を元にしたモンテ独自の手法で、最近はそのレベルがどんどん上がっている。
おそらくウィスの修行の内容が知らず知らずの内に能力を引き上げられているのだがモンテは気が付いていなかった。
モンテがこの極意に思い至ったのはフリーザとの戦闘でボコボコにされたからだ。
今まであそこまでボコボコに殴られた事など無かったのだ。
殴られれば痛い。当たり前だがやっぱり痛いのは嫌だ。だったら攻撃のダメージを受け流せばいい。そう考えてもしかしたらと始めたのがこの猿武の修行なのだ(修行内容はオリジナルの思い付きだが)。
けしてサイヤ人って猿っぽいから出来るんじゃないか?なんて単純な事では無い…はずだ。
猿武が完成に近づくにつれてむしろ悟空さんとベジータさんのスパーリング相手になる回数が増えている気がするのはどう言う事なんだ?
後で気付いたのだけれど、猿武によりわたしの耐久力が上がりサンドバッグ率が上がった結果だった。気がついたら泣けてきた。
だがその結果更に猿武の完成度が上がり、さらにサンドバッグになると言う正のスパイラルから抜け出す事が出来ない。
だれか…助けて…
「本当モンテさんは変わっていますね」
「何がだ?」
隣に立つウィスの呟きに悟空達の修行をリクライニングチェアでピザを頬張りながら食べていたビルスが聞き返す。
「単純な強さなら悟空さん、ベジータさんに遠く及ばないくせに気を…いいえ今は細胞の一つ一つをコントロールする事でどうにかくらいついています。本当に面白い存在ですね。そのうちアレも出来るようになるのでは、と思ってしまいます」
「ふん、確かにあれは単純な強さの先にあるものではないからな」
「強さの先に有るのでしたらビルスさまも使えるはずですからね」
「ウィス」
「おっと、おほほほほ」
そんな修行を続けていたある日、ビルスさまの星に一筋のほうき星が降り注いだ。
それが新たな騒動の幕開けになろうとはこの時のモンテは完全に忘れていた。
ほうき星に乗って現れたのは第六宇宙の破壊神シャンパ様だ。
シャンパ様は事あるごとにビルス様とうまいもの勝負なるものを繰り広げているそうで、今回の来訪もその勝負の為だったのだが、シャンパ様が持ってきたドンドンドリのゆで卵に対してビルス様が取り出したのはカップ麺。
うん、まぁゆで卵とカップ麺じゃ勝負にならないよね。わたしなんてどちらかと言えばゆで卵は半分に切ってカップラーメンに乗せる派だし。
第六宇宙と第七宇宙は双子の宇宙で互いの宇宙は似通っている為に第七宇宙にある物は第六宇宙に有ると言う法則はあるのだが、どいう訳か第六宇宙の地球は滅んでいたようで、シャンパ様が癇癪を起し第七宇宙の地球と自分の所の地球を入れ替えると言う始末。
当然面白くないビルス様に対して持ち掛けたのがスーパードラゴンボール。
どんな願いでも叶うと言う惑星ほどに大きいドラゴンボールを商品に格闘試合をしようと言う事。
負ければ地球を交換、勝てばスーパードラゴンボールが手に入る。
出場選手は本人ではなく互いの世界から5人を選抜しての勝ち抜き戦らしい。
ゴクリ…
わたしは今生唾を飲み込んでいた。
あのシャンパ様のふっくらポンポン…触ってはダメだろうか…最近家に帰れてなくてブウさんのモチモチポンポンを触れていないのよっ!
「はぁ…はぁ…」
「おや、そちらの方の動悸が激しいようですがどうかなさいましたか」
とシャンパ様の隣に立っていたヴァドスさんが不穏な空気を醸し出してシャンパ様に近づくモンテをけん制。
重いスーツを着たままだったのでゆっくりとした動きだがどうやら無意識にシャンパ様に近づいていたようだ。
「いえ、ちょっと…その魅惑のポンポンを触ってみたいな…と」
「あら、シャンパ様の無駄なぜい肉に魅力を感じる奇特な方がいらっしゃるとは」
「何だとっ!ヴァドス、それはどう言う事だ?」
「そのままの意味ですが」
も、もう…限界っ!
「おい、やめろこのバカ娘がっ!」
「へにゃ…尻尾を掴むのはやーめーてー」
ベジータに尻尾を掴まれると全身の力が抜けてその場に倒れ込むわたし。
「うるさいっ!なぜ尻尾を鍛えていないっ」
わたしだって鍛えたわっ!どうしてか分からないけどどうにもならなかったのよっ!
「ベジータさん。それは女サイヤ人の種族的特性ですので不可能ですよ」
とウィスさん。
「なにっ!?どう言う事だ」
「どうもこうも種族保存の本能です。総じて気の強い女性が多いサイヤ人はそのままでは種が保てません。ですので男性が優位に立てるように種族進化したのですよ」
な、なんだってーっ!?
「ど、どう言う事だぁ?オラさっぱり分かんねぇぞ」
悟空さんは分からないで良いんですよ。
「なっ…そんな…バカなぁ…」
あ、真っ赤になってショックを受けているベジータさん。正確に理解できたんですね…だったら尻尾は離してください、エッチですよ。ブルマさんに言いつけ…やめておこう…こっちに飛び火するかもしれん。
その後、宇宙代表格闘試合を開催する事が決定し地球に戻り選手集めをする事に。
悟飯くん、ブウさん、悟空さん、ベジータさん、あとはまぁピッコロさんで良いでしょう。うむ。
「お前も参加な」
ビルス様の非情な宣言。
「なん…だと…?」
地球に戻って来たわたし達。
しかしスパードラゴンボールは6個しか発見されていない。もう一つ見つけ出さなければ願いは叶わない。
それをどうにかするために地球のドラゴンボールを使うと言う本末転倒な事態に。
まぁパシらされたのはベジータなので良いのだけれど。
しかも呼び出したシェンロンでもどこにあるのか分からないと言う。
それにビルス様が呆れなんか場が白けたのか解散ムード。
願いも叶えられずその場でビルス様相手に恐縮そうにしているシェンロンがあまりにも可哀そうなので願い事を使ってあげる事にしよう。
「永遠の若さを下さい」
「良かろう」
キューン
「二つ目の願いを言え」
「あらゆる病気、毒に対する耐性を下さい」
キューン
「さあ、最後の願いを言え」
三つ目か…うーん…あ、そうだ。
「ブルマさんを若返らせてあげて。ブラちゃんがちゃんと生まれるように母体に危険が無い様に」
高齢出産は危険だしね。
「願いは叶えた。さらばだ」
四散するドラゴンボール。
「ちょっとちょっと、私にいったいなにしたのよっ!」
ドタドタと駆け戻ってくるブルマ。
どうやら急激に服が合わなくなったのか少しゆったり気味だ。
「貴様っ!俺のブルマに何をしたっ!」
止め、ベジータっ!そのフレーズはわたしの心の中に封印した爆笑の扉を開いてしまうぞっ!
「いいじゃないのベジータさん。若返ったブルマさん、美人でしょう?」
「お、おう…」
「あら、そう…まんざらでもないようね」
照れるベジータをからかうブルマ。
「でもなんでそんな事を願ったのよ。まぁいつかは願おうと思ってたけども。五歳くらい若返らせて、とかね」
思ってたんだ。
「しかし若返らせ過ぎよ。これじゃ二十歳そこらじゃない」
ええ、それほどっ!?
「で、なんでこんなことをしたのよ」
ふむ…
「元気なブラちゃんを産んでください」
「はい?ちょ、ちょっと、ねぇっ!?いったい何のことっ!?」
それだけ言ってわたしは瞬間移動で逃げだした。
五日後の格闘大会の日。
悟飯くんは学会の発表で出る事が出来ず、ブウさんは寝ちゃってました。
結局第七宇宙の代表選手は悟空、ベジータ、モンテ、ピッコロとビルスが連れて来た第七宇宙最強のモナカの五人で出場する事に。
ウィスさんに連れられて名前も無い星へとやって来たわたし達。
そこで選手達は最低の知性が有る事を証明する筆記テストを受け…ここで手を抜けば出なくても良くなるのでは…ひぃっ!?
ゾワワと背中に嫌な気配が…び、ビルス様っ!?やります、しっかりやりますっ!
あ、試合の順番はみなさん先にどうぞ。
悟空さんとベジータさんで全部やっちゃってくだせぇ!
ああっ!ボタモさんのもっちりポンポン、ぜひ触りたい…あの方は何番目に出てくるのっ!
あ、一番目でした…
相手の二人目はフロストと言うフリーザの2Pカラー。
あ、悟空さんが負けた…
え、ピッコロさんも…
ただここでフロストの使った毒針の存在をジャコが見破り反則負けと言う事に。
反則負けだと言うのになぜかベジータさんがフロストを試合でぶっ飛ばしてた。
…ベジータさんって基本的に弱い者いじめ好きだよね。強い者には巻かれる主義だし。
いくら最終形態のフリーザと同じ姿をしていてもナメック星編のフリーザ様などもはや超サイヤ人で一撃だろう。
次の選手は第六宇宙のサイヤ人、キャベ。
なんだろうね、この綺麗なベジータみたいな感じ。
そしてベジータの驚きの発言。
「ノーマル状態じゃ俺様と互角か」
な、なんだってーーーーーっ!
ベジータさんと互角とか超すごいんですけどっ!
超サイヤ人になれないキャベをベジータが残虐ファイトで追い詰めて超サイヤ人の覚醒を促していた。
あ、確かに超サイヤ人状態でまた互角になってる。
それを大人げも無くベジータは超サイヤ人ブルーで沈めていた。
まったく本当に大人げないサイヤ人だ。
第六宇宙最後の選手、ヒット。
この選手はもう本当に向こうの宇宙の最終兵器なのだろう。
ベジータさんが何をされたかも分からず瞬殺。
反則により復活した悟空さんとの戦いでさらにその潜在能力を伸ばし悟空さんの裏技である超サイヤ人ブルー界王拳をも互角の戦いを繰り広げ、悟空さんの界王拳による時間切れ。悟空が場外へとリングアウト。
「おい、分かっているんだろうな?」
わたしの出番が回ってきてしまった…
「ひぃっ!?」
ビルス様からのプレッシャーがががががっ!!
「絶対に勝て、さもないと…破壊しちゃうよ?」
むーちゃーなーっ!?
「だう、だぁーう」
「うう、パンちゃんわたしを慰めてくれるのね」
パンちゃんが飛んできたので抱きしめていた。ほのかにミルクの香り。
「モンテ、大丈夫?」
とビーデルも駆けつけてくれたようだ。
「うう、頑張ってみるけど…悟空さんに勝っちゃうような人だよっ!?」
「まぁでも相手の体力は悟空さん達が減らしてくれたし、頑張って」
うううぅ…
不承不承と武舞台へと降りる
「尻尾があるが…お前もサイヤ人と言うやつなのか?」
とヒット。
「一応…」
「超サイヤ人と言うものには」
「…なれる」
「ほう…それは面白そうだな」
「それではー、ヒット選手対モンテ選手の試合開始ですっ」
レフリーがそう宣言して試合開始。
「そら、超サイヤ人ブルーと言うやつになってみろ」
「あのですねぇ…キャベ君を見てください。ふつうのサイヤ人は超サイヤ人ですら限界を突破しているんですよ?超サイヤ人ブルーがどれほど限界を突破しているか知っているのですかっ!」
「知らん、なれ」
だよねー…
「だが、断るっ!」
「おいっ」
ズザザーと見物人たちが盛大にこけた。
「変身は1つずつ。それが美学っ!」
ブォンと髪が金色に染まり逆立った。
「これが超サイヤ人、そして」
ビリビリと稲妻が走る。
「これが超サイヤ人2」
「ほう」
「超サイヤ人2…」
呟いたのはキャベ。
だがまだ勝てそうもないな…
「さらに…はぁああああああっ!」
髪の毛が伸びる。
「これが、超サイヤ人3だーーーーーーっ!」
ヒュンと体が消えるとモンテに拳を振るう。
バシっと軽々と受け止められてしまった。
「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!」
連打ラッシュ連打、パンチ、キック。
「ふんっ!」
腕をふっただけでリングへと打ち払われてしまった。
「弱いな」
「あんたが強いんだっ!超サイヤ人3だよっ!分かってるっ!?3っ!これになれるの悟空さんとわたしだけなんだからねっ!」
「ゴクリ、超サイヤ人3…ですか」
キャベくんくらいだよ…驚いてくれるの。
「本当なの?ベジータ」
「フンッ!」
ビルスの問いかけにベジータが鼻を鳴らして答えた。
「そんな態度だと破壊しちゃうよ?」
「あああっあの…はい…ですが超サイヤ人ブルーの方が何倍も上の変身でしてっ!」
「そうなの?じゃあなんであの子はそんな変身をしているんだ?」
「ふん、どうせあのアホ娘の事だ。ただカッコイイからとかそんな理由に違いない」
ぶえっくしゅ…ぐしぐし
誰か噂してるかな?
シュウと髪が紅く染まり体が絞られて行く。
「ほう、その変身は見たことないな」
ヒットが関心している。
「気がまったく感じられない」
「あらこれは」
「ヴァドス様、何か分かるのですか?」
キャベがヴァドスさんに問いかけていた。
「あれは神の気です」
「神の気…」
「さしずめ超サイヤ人ゴッドとでも言う所でしょうか」
「超サイヤ人ゴッド」
正解ですヴァドスさん。
「ほう、少しは面白くなってきた」
「ッ!時飛ばしかっ!」
体力の消耗で0.1秒しか止められないとしてもその一瞬がとてつもなく優位なのはベジータの戦いを見ていれば分かる。
「なにっ?」
時を飛ばしたはずなのにヒットの攻撃をしっかりとガードしているモンテ。
「ふむ」
再び時飛ばしを使うヒット。しかしやはりモンテは防御していた。
ドウンドウン
消えては現れるヒットにモンテはきちんと対応していた。
「お前、何をした。まさかお前も時飛ばしを…」
「いや、わたしも流石にキングクリムゾンなんて使えないよ」
「キング…クリムゾン?」
「あ、いやこっちの事」
あぶねー、このネタは通じないよねやっぱり。
「使えないのならばどうして」
シュンと消えるヒット。
「なるほどな」
何かを納得したようなヒット。
「何々っ!いったいどう言う事だよ」
シャンパ様がどうなってるんだとがなり立てた。
「あれは…信じられません」
ヴァドスも何か気が付いたようで…
「何か知っているのかヴァドス」
「いったいどうなってんだよっ!」
「ほっほっほ、恐らく時飛ばし中に体が勝手に判断して動いているのではないかと」
「おいおい、それって…」
「はい。ですから信じられないと言っているのです」
「むぅ、だがそんなはずは無いだろう?」
「ですが、それしか考えられません。時飛ばしの中で動いているとしか」
ドン、ドン、バシ
「面白いな、お前も」
「わたしは面白くなーい」
「時飛ばしを無効化して来るとはな。これは普通にやるしかないか」
スっと構えを取るヒット。
時飛ばしは時が動いていない訳では無い。人間には認識できないだけだ。
その間叩く一瞬を猿武で無理やり体を動かして対応しているのだ。
「モンテのやつすげーな。時飛ばしの中で動けるんか…っていたたたたた」
悟空が痛むか体を乗り出して応援していた。
「かーめーはーめー波っ!」
「むぅんっ!」
かめはめ波もヒットには通じず。
ただ天井のバリアを壊すだけだった。
「こらーっ!遊んでいるんじゃない。絶対勝つんだー。さっさとブルーを出せっ!」
「ひぃっ!?」
ビルス様の激励にビクリと肩を震わせシッポがピンと立ち上がった。
その油断した瞬間。抜けたバリアの先にある超巨大なドラゴンボール。
それはほんの偶然。本来なら有り得ないであろう事象が重なった結果だった。
幾つもあるドラゴンボールに乱反射したブルーツ波が一点に集まりたまたま壊したバリアを抜けてモンテに視界に入ってきてしまったのだ。
ドクンッ!
1700万ゼノを超えるブルーツ波を眼から吸収したモンテは急激にの体を膨れ上がらせる。
「これは何だ一体…」
膨れ上がる体に戸惑うヒット。
「ヤバいぞカカロット」
「パンちゃんとビーデルは空を見上げちゃなんねぇっ!」
「なんだなんだ、あんなの反則じゃないかっ!」
「あら、まぁ」
「おい、ウィス。これは何だ」
「元来サイヤ人と言うものは満月を見ると大猿に変身する種族でして、変身にはサイヤ人の特徴である尻尾が必要であるようですよ」
「ふーん、それじゃあ悟空とベジータは変身できない訳?」
「そう言う事になりますねぇ」
変身を終えたモンテは全身から金の毛を逆立てた巨大な大猿へと変身していた。
「おまえぇっ!サイヤ人はあんな大猿にも変身できるのかっ!」
興奮しているシャンパ様がキャベの肩を揺らしている。あまりに高速なので死なないと良いのだけれど…
「僕たち惑星サダラのサイヤ人は大猿になんて変身できませんよっ!」
「本当かぁ!じゃあなぜあっちのサイヤ人は変身しているっ!」
「知りませんってばぁ」
キャベ涙目である。
「ふん、いくら変身しようともただ体が巨体になっただけでは無いか」
殴りかかったヒット。しかしモンテは逆にその巨体に見合わない速度で平手を振ってヒットを叩き落した。
そのまま踏みつける残虐ファイト。
「ぐおおおおおおおおっ!」
全体重で踏み抜かれるモンテの攻撃をヒットはどうにか耐えていた。
「なめるなーーーーっ!」
「グァアアアアっ!」
気合と共に起き上がると踏みつける足を払いのけそのまま転がる巨体へと渾身の蹴りを放ち宙に放り出されたモンテはあわやリングアウトと言う所でその巨体が急激に縮まっていく。
「今度はなんだぁっ!」
絶叫するシャンパ様。
クルっと回転するとリングの淵にストっと着地するモンテ。
その姿は上半身は紅い毛に覆われ髪の色は逆立っているバラ色で、目元は紅い隈取がみえた。
その気は恐ろしくクリアで、常人には感じられない。
「お前達サイヤ人はどれだけ変身するんだよっ!」
「だ、だから知りませんってっ!」
「なんだその変身は、超サイヤ人ブルーではないのか」
ヒットが構える。
「超サイヤ人ゴッドの力をもったサイヤ人の超サイヤ人4と言った所だね」
「長いな」
「適当な名前がなくてね」
「ふ、まあいい…俺にはお前の気は感じられないが…」
グッと踏み込んむ。
「この変身は結構強いよっ!」
互いの拳が空気の震えを置いて激突。
ドンッ ドンッ ドンッ
「ふっ…お前達サイヤ人は俺の限界をことごとく突破させえてくれる」
幾重にも繰り返される激突に武舞台がきしみ始めた。
「連戦でこの強さとかっ!勘弁してよぉっ!」
悟空がヒットの体力を大幅に削っているはずなのに互角の勝負で拳を振るってくる。
「面白い技を使っているな。まるでダメージが入らん」
「わたし、タフさには自信があるんだよ!」
ペロリと舌をだして悪態を吐き
「よく悟空さんとベジータさんにサンドバッグにされるからこっちも必死なんだよっ!」
その後ズーンと落ち込んだ。
第六宇宙第一試合に出て来たボタモほど無敵と言う訳では無いが、わたしは猿武でダメージを受け流している。
パンチ、キック、連打。
そして猿武は攻撃の時にも応用され、わたしの攻撃は常に全力の威力がこもっている…のだが、それと打ち合えるヒットさんマジ凄まじい。
「そうだ、その女には弱点があったな。ヒット、尻尾だ。尻尾を狙えっ!」
シャンパ様、なんて事をっ!
「エッチ」
「エッチとはなんだっ!エッチとは」
HENTAIの頭文字だよっ!
「フンッ」
どうやらヒットは弱点を狙うつもりはないらしい。
再び空気が震える衝撃が辺りに響く。
ラッシュ、ガード、連打。
互いに弾けて距離を取った。
「でもそろそろ決着をつけないと地力で負けてしまうから…」
腰を落とし右手を引いて左手でその拳を包み込むと拳に気を溜め始める。
「おいおい、ちょっとあれシャレにならねぇんじゃねえか?」
「はい。ものすごい神の気が右手に集まっていますね。ただ防御にまわす気まで右手に集めてしまっては相手に先に倒されてしまいますよ」
「最初はグーっ」
ドドンと圧縮される神の気。
「何をしているか分からんが、そんな暇は与えん」
神の気を感じられないヒットは脅威だとは感じてもその度合いを見誤った。
迫るヒットの右拳。
「ここだっ!」
「何っ!?」
ヒットが右手を振りぬいた瞬間に瞬間移動でヒットの拳を空を切らせ…
「ジャンケン、グーーーーーーーっ!」
星の一つくらい破壊しかねない一撃。
「ぐわーーーーーっ」
わたしのカウンターはヒットを武舞台の外へと吹き飛ばした。
「あ…」
「ジャンケンって…モンテさんの最後の技…」
「うん、ジャンケンって言っていたねトランクスくん」
「ジャンケンってそう言う技だっけ?」
「そんな訳あるか、あのアホ娘が」
呆気にとられる観客たち。
「すげー一撃だったな。オラもさすがにあの一撃は耐えられねぇぞ。やっぱモンテはすげーやつだな」
「フンッ」
「勝った…のか?」
「ええ、その様です」
「ふう…ルールがあって助かった…落とすだけで良いんだもんね」
変身を解き武舞台へと崩れ落ちる。
「つ、疲れた。もう二度とごめんだ」
「勝者は第七宇宙モンテさんです」
わぁあああああっ!
レフリーの宣言に湧きたつ歓声。
「今の試合は無効だ無効。神の気を持つものが試合をやるなんて不公平だろ」
「何を言っているのかな?勝ったのは我々だよ」
シャンパ様がいちゃもんをつけてビルス様が負けじと対抗。
結局最後は二人の争いになりかけた時、この宇宙を作り上げた全能の存在である全王さまが来訪し、急激に態度の変わるシャンパ様とビルス様の二人。
まぁ、超越者の登場に慌てるのは無理のない事。
全王さまがその気になれば宇宙丸ごとを消滅させることも訳が無い事なのだ。
デコピンをかます様に世界を消せる存在に立ち向かう者は居ない。
宇宙同士の争いに釘をさすために来ていた全王さまは、この格闘試合が殊の外面白かったらしく、特別にお咎め無しと言う事に。
次いでい全宇宙で格闘試合を今度催すと宣言された。
それに喜ぶのは悟空さん。もう勘弁して…
その後スーパーシェンロンを目の当たりにしてそのデカさに感動し、格闘大会は終了した。
神の言語じゃないと願いを聞いてもらえないようでビルス様が何をお願いしたかは分からなかったけれど、たしか第六宇宙の地球の復活を願ったんだったかな。
そんなこんなでようやく格闘大会は終了を迎えたのだった。
…わたしに関しては特に益がなさすぎる事件だった。とほほ…
第八話
あれ…?なんでまたわたしはビルス様の星に…?
格闘大会の後の祝賀会が終わるとウィスさんに拉致された後の記憶が…あれ?
「ほらほら、サボっていると落ちちゃいますよ」
「ぐぎぎぎぎぎ」
着膨れした宇宙服のようなものを着てビルス様の星の外周を走っているわたし。
その服がやはりとてつもなく重い。
気をコントロールして操るとどうにか動けるくらいで、集中してもものすごい負荷がかかっている。ちょっとでも気を抜くと潰れてしまいそうだ。
「ぐぅ…くぅう……」
隣を同じようにして負荷トレーニングに励んでいるベジータ。
あ、そうね…ちょうどいいサンドバッグ代わりにわたしを拉致って来たのね…
このクソ男、毎度毎度わたしをサンドバッグ代わりにしやがってっ!
そう言う事は悟空さんとやってよっ!
とは怖いので言えません。
しばらく修行を受けていると悟空さんも合流。
もうわたし必要ないよね?
修行を再開し、小腹がすいたのでベジータが持参したバケツラーメンを頂く。
この待っている五分が長い長い。
バケツラーメンを食べ終わるとウィスさんに地球のブルマさんから連絡が。
何かカプセルコーポレーションで異変が起きたらしい。
急用だから帰って来いとの事。
急いで戻ろうとするとビルス様とウィスさんもわたしの肩を掴んだ。
ベジータさんはともかく悟空さんは自分で瞬間移動をして欲しい。
「にっひっひ、オラには地球は遠すぎて気を感じるのが難しいんだ」
あ、そう。
まぁいいや。それじゃ…ブルマさんの気を辿って…
瞬間移動しカプセルコーポレーションに現れると青髪の青年が東屋にある長椅子に横たえられていた。
「孫君、仙豆持ってない?」
「げ、持ってねぇや」
「かりん様の所で貰ってきてよ。なんでこんな所に現れたのか聞きたいし」
んっと…
「わたし回復出来ますよ」
「なにっ!?」
「なんで、どうして?」
まあ色々と。
「何でもいいじゃない。それより早く」
はいはい。
えっと…
「え?」
寝かされている青年を見てわたしは絶句する。
「トラン…クス…?」
驚いたわたしだが、無意識にもしっかりトランクスを回復していたらしい。
「うっ…」
傷が治り体力が回復したトランクスは意識が覚醒し始める。
「はっ!…貴様っ!」
意識が覚醒するといきなり気を高めてその拳を突きつけて来た。
「おっと」
その腕を掴み捻り上げるとトランクスからくぐもった声。
「モンテ…貴様…っ!」
トランクスから怒気が放たれる。
「お前の、お前だけはっ!はぁっ!」
髪が金色に逆立って超サイヤ人に変身するトランクス。
「超サイヤ人だとっ!」
周りから驚きの声が上がる。
「お前だけは許さないっ!」
「それはわたしのセリフだっ!」
気合一発超サイヤ人2へと変身。
「お前がっ!」
「ぐぅ」
ドスッ
「未来からっ!」
「かはっ」
ドカッ!
「来ないからっ!」
「うぅ…」
バキッ!
「わたしが苦労するハメになったんだぞっ!」
「ぐはっ!」
地面にクレーターを作って倒れ込むトランクス。
「もう、ダメじゃない…自分で回復させておいて自分で倒しちゃったら」
「あ…」
ブルマに怒られた。
「孫君、やっぱりカリン様から仙豆貰ってきて」
「お、おう、分かった」
瞬間移動で仙豆を貰って来た悟空さんが青年に仙豆を食べさせる。
「あんたは離れてなさい」
「はいはい」
ブルマに言われて東屋の外、人垣の一番後ろに移動して様子をうかがう。
「はっ…母さん…」
再び意識を取り戻したトランクスは目の前のブルマに気が付いて言葉を漏らした。
「はい?」
「お前ぇっ!こんなに大きな子供が居ただとっ!?」
「居るわけないじゃないベジータ。私の子供はトランクスだけよっ!」
夫婦喧嘩勃発の危機。
最愛のブルマにこんな大きな子がいたら確かに怒るよね、ベジータも。
「父さんも落ち着いて」
「ほら、あんたが父親じゃないのっ!」
「な、そんなバカなっ!?」
「一体どうなっているんだ」
と言うピッコロの呟き。うん、確かにどうなっているんだ?
「で、話を纏めると。あなたは未来から来た私たちの息子のトランクスで、一度私たちに会いに来たことが有る、と」
一番理解力が有ろうブルマがトランクスの話を聞いてまとめた。
「はい」
「でもごめんなさいね。トランクス、で良いのかしら。私達はあなたに会った事はないのよね」
「そんなバカなっ!それじゃあ悟空さんの心臓病は?人造人間はどうなったんですかっ」
「孫君は心臓病?とか言うのにはなってないし、人造人間?えっとセルの事は倒したわよ。十七号さんと十八号さんは改心して生きているわ。十八号さんなんてクリリンの奥さんなのよ、ビックリよね」
あんたがベジータの妻になるくらいにはビックリだな。
「そんな…そんなはずは…」
どうにか理解しようとするトランクス。
「じゃ、じゃああの人は誰なんですかっ!」
ビシっと指した方向に居るのは…てわたしか。
「モンテちゃんの事?」
「そうですっ」
「うーん、あれ?…誰か詳しい人居る?説明しようにもああいう生き物としか説明できないわ」
おい、天才っ!
「ほれ、自己紹介しろアホ娘」
ピッコロさんはいつも私に辛辣だ。
「モンテです。マークの娘で悟飯くんの奥さんになったビーデルの妹、パンちゃんの叔母さん……おば…さん…」
おばさんという言葉にショックを受けて地面に倒れ込んだ。
「誰だ、マークって」
悟空さんが分からんと唸る。
「わたしのパパよ」
「オメェの父ちゃんってミスターサタンじゃねえのか?」
「パパの本名はマークって言うの」
「知ってたか?」「知らなかった」
そこかしこでどよめきが起きた。
パパェ…
「そうですか…すみません…しかし無関係にしては似すぎている」
そうして語られたトランクスの未来の世界。
そこではモンテと名乗る女性一人で地球が壊滅させられているそうだ。
勿論トランクスも応戦したのだが敵わず、少しでも戦力をと以前飛んだ過去の時代へと再び時間移動してきたそうだ。
「たぶんその時なにか不慮の事態が起こったのね。あなたが飛んだ時代よりもさらに先で別れた世界に間違えて出ちゃったのよ」
「そんなっ」
「で、あなたの時代で暴れている存在があそこにいるモンテちゃんとそっくり、と。やめてよねモンテちゃん悪落ちはあなたに似合わないわよ?」
「するつもりなーーいっ!」
と言うか、え?わたしそっくりなのっ!?悟空さんじゃなくてっ!?
さて、そんな話なのだが…ここには神様関係の方…まぁ破壊神さまが居る訳だけど…
時間移動、取り分け過去への干渉は重罪らしい。
それなのにそれを目の前で告白するのだから、タイミングが悪いとしか言いようがないね。
未来が大変と言う事で悟空さんもベジータさんも助けに行くらしい。
そんな相談をしていると、丁度トランクスが現れたらしい空間から一人の女性が現れた。
「モンテ…」
「うわ、たしかにモンテそっくりだなっ!」
うへぇ…まるで鏡を見ているようだよ。
「おい、カカロット貴様っ」
「へへへ、速い者勝ちだろう」
「チッ」
現れたモンテに向かっていく悟空。どうやら戦いに行くようだ。
「あっちのアイツもモンテって言うのよね、なんかゴチャゴチャしそうね。あっちのわたしはモンテブラックって言うのは」
止めてよ。
「オルタでお願いします」
「オルタ?…ああ、オルタナティブか。じゃあモンテ・オルタでいいか」
オルタと戦い始める悟空さん。
最初から本気で戦わない悟空の悪い癖が発動し、倒すに至らない間に何かに引っ張られるようだ。
恐らく未来に戻ったのだろう。
帰る駄賃にとタイムマシンを破壊しようとするオルタのエネルギー弾。
「はっ!」
「ちぃ…」
エネルギー弾を気功波で弾き飛ばすとどうにかタイムマシンは破壊されずに済んだようだ。
悪態を吐いたモンテはそのまま時空の間に消えて行った。
「ふぅ…」
「で、結局あのオルタはこのモンテなの?」
「いいや、違う。気の質が違いすぎるからな」
「はい。それにあの感じは以前どこかで…」
ブルマの問いにビルス様とウィスさんが答えた。
とりあえず、情報を纏める時間を取る為にいったん解散となった。
わたしはどうするかな…
と言うかどうしてゴクウブラックがわたしに変わっているの?
いやいや、まてまて…と言う事はもしかして最悪な事態がっ!?
うーそーだーっ!?
その後、悟空さんとベジータさんがトランクスと一緒に未来へと行ったようだ。
部屋でくつろいでいると一瞬で視界が移り変わった。
「どこ、ここ?」
目の前に手を持ってくる緑色の肌をしていた。
近くに水場を見つけたわたしはのぞき込むとモヒカンの様な変な髪形の男が一人。
何と言うか界王神みたいな見た目だ。
あれ…?
も…
も……
もしかして…
ザマスになってるーーーーーーっ!?
「スーパードラゴンボールで中身を入れ替えられたっ!?ひぃいいいいいっ!?」
いやそれは無いはず…だってスーパードラゴンボールは一年間のクールタイム中だ。
まぁギニューですら悟空とボディチェンジ出来るのだ、他のドラゴンボールでも可能だろう。
ドラゴンボール自体はナメック星人なら作り出せるし第六宇宙とかにも有るかもしれないし、第七宇宙のナメック星のポルンガを呼び出したのかもしれない。
やばい…やばい…やばい…やばい…
でもスーパードラゴンボールよりは力は大分弱いようで、魂の方を入れ替えたのだろう。
「入れ替わったって事は殺しにくるよね!?」
オルタがわたしの姿をしていたと言う事はやはりこうなる訳だ。
と言う事はここは第十宇宙の界王神界…
くそ…なんて事だ…
「ゴワス様はっ!?」
神殿内を探し回ると血を流して倒れているゴワス様。
ポタラは奪われているが微かだが息は有るようだ。
「おねがい…」
祈る気持ちで復活パワーを注ぎ込む。どうにか持ち直してくれると良いのだけれど…
それにしてもシェンロンを出しっぱなしにして入れ替わるとはね。
目線の先には未だ待機中のポルンガの姿がある。
願い事はまだ残っているようだ。これはチャンスだ。
ナメック語はある程度喋れるように勉強しているしポルンガの残りの願いを消費してしまおう。
再び体を入れ替えても意味は無い。だったら…
ドラゴンボールがただの石へと変化してポルンガが消え去った第10宇宙の界王神界。
もう迷ってられない…
「何処に行くのですか?」
振り返るとそこにはわたしが居た。
「わたしの体…」
「ええ、あなたの体は実に具合が良い」
「この変態がっ!」
「酷い事を言いますね」
キューンと収束する気弾。
「くっ…ご丁寧に力封じを…」
こちらも気功波を出そうとして体の中で何かが邪魔をしているのを感じる。
ドン
「ぐぁああっ!」
「ほらほら無様に逃げなさい」
今の一撃ですでに死に体だ。
「ぐぅ…」
界王神界が同じような作りなら、せめてあの場所へ…
神殿内を這いずり回りながら移動する。
「ぐぁぁぁああっ」
気弾が当たる事にわたしの悲鳴が響く。
ズリズリと這うが…もうすでに意識がもうろうとしている。
「これで最後です」
ザマスの放った気弾に吹き飛ばされる体。
「………」
ドボンと浮かぶ球体の水の中に飛ばされるとそこで意識を失った。
意識が覚醒する。
「あ、う……」
「気が付いたか?」
「ここ…は?」
「ここはわたしの家だよ。あんたはわたしの家の前で倒れてたんだ」
目の前にかざした掌は最後に見た緑色ではなく黄色だった。
髪の毛もどうやら黒いらしい。
腰のあたりに意識を集中するとどうやら尻尾も有るようだ。
「何処の部隊の者だか分からないけど、そんな所で倒れているんじゃないよ」
目の前の女性を見る。
「サイヤ…人?」
「変な事を言う娘だね。あんたもサイヤ人だろう?」
「どこ、ここ…地球じゃ、無い?」
「あんたもしかして戻し子かい?まぁサイヤ人は放任主義だからなぁ、仕方ない、あんたしばらく家に居な。バーダックはしばらく帰ってこないし大丈夫だろう」
「バーダック………え?」
サイヤ人の女性…ギネさんと言うらしい。
それからモンテは彼女の家に居候している。
乱暴で粗野なサイヤ人が多い中、彼女はやさしさで溢れ周りからは浮いているようだが、わたしはすぐに懐いてしまった。
彼女の家に一部屋借りて生活をしていて、衣食住のすべてを面倒見てもらっていた。
とは言え、服装と言えばフリーザ軍の戦闘服なのだが…
部屋の片隅に保育器が有り、その中には三歳ほどのサイヤ人の男の子が眠っている。
「毎日毎日、カカロットを眺めて…飽きないのか?」
ギネさんが問いかけた。
「うーん…なんか不思議で」
「あんたもサイヤ人ならおんなじ感じだっただろうさ」
いえ、わたしは地球人です。
どうやらギネさんには小さいころに飛ばし子として異星に飛ばされ、最近になって回収されたはいいが放置されたサイヤ人と言う事で落ち着いたらしい。
正直説明するのが面倒くさいので訂正しないで厄介になっている。
とは言え、カカロットだとぉっ!
つまりここは過去の惑星ベジータと言う事なのだろう。
奇跡…と呼ぶにはチープだ。
本来わたしはあの界王神界でザマスに殺されている。その死の間際、生きぎたなく模索した結果、アディショナルタイムを生きているようなものだ。
それが何故過去に、それも惑星ベジータに居るのかは謎なのだが、それも奇跡と言う事にしておこう。
この体はまがい物だ。勿論肉体はあるが、魂が物質化したような状態で、何もしなくても消耗していくし回復もしない。
時々手が透けているのが見える。
本当にただの走馬灯の如き時間しか許されない体なのだが、それはもうしょうがないと諦めた。
勿論受け入れるのに三日位掛かって今も時々鬱になり駆けるが…死ぬのはやはり怖い。
そう言えば、悟空がここに居るって事はブロリーってどうなっているのだろうか。
いや、わたしは会った事無かったからこの世界には居ないのかな?
まぁ、確かめようもないか。
最近外が慌ただしい。
フリーザからサイヤ人全員に召集命令が出たらしく異星に行っていた者達も急いで帰ってきているようだ。
これはもう時間も無いな。このタイミングでの招集命令と言えばあれだ。
「ギネ、誰だこいつは」
外からギネさんと一緒に入って来た男の人がわたしを見てそう誰何した。
「ああ、その娘はモンテ。ちょっと訳ありでわたしが面倒みているんだ」
「まったくおめぇは…サイヤ人らしくねぇな」
「そうかな…それよりもカカロット見るだろう」
そう言って家の奥へと向かっていく男。うん悟空さんにそっくりな所をみるとバーダックなのだろう。
それを見て本当に惑星ベジータ消滅のカウントダウンを肌で感じた。
次の日、保育器に入っていたカカロットが居なくなっていた。
どうやら飛ばし子として地球に飛ばしたらしい。
「カカロット…大丈夫だろうか」
心配そうに空を見上げているギネさん。
「大丈夫ですよ。わたし大きくなった悟空さん…カカロットに会った事ありますから」
「はは、モンテは偶に面白い事を言うね」
悟空が飛ばされたと言う事は惑星ベジータ消滅まで本当に時間がない。わたしはどうしようか…
待っていても、例え生き抜いてもあとほんの少しの命なら、やれる事が他にもあるはずだ。
過去は変えられない、変えてはいけないと言うけれど、わたしが認識する過去が変わらなければここで何かをしても良いのではないか?
そうと決まればアタックボールを一つ盗んでこよう。
「あんたまでバーダックみたいにそんな物盗んで」
アタックボールを盗んできたらギネさんが呆れていた。
「これでどうするんだ?フリーザさまの招集命令が出ているんだよ」
「勿論ギネさんが乗るんですよ」
「はい?」
疑問を浮かべたギネさんに訥々と語る。
「フリーザによって惑星ベジータは消滅します。その前に逃げてください」
「言ってる意味が分からないよ、それにバーダックは…」
それにフルフルと首を振るとそのままギネさんの鳩尾を殴り気絶させると無理やりアタックボールに詰め込みパネルを操作。
「えっと、行先は…ヤードラット星でいいか。コールドスリープを使用して…げ、推進剤不足で到着予想がかなり遅れるな…まぁしょうがないか」
パネルを操作し終えると扉が閉まり勝手に飛び去って行くアタックボール。
生命活動が停止しているし、スカウターをすり抜けてくれれば良いのだけれど。
もう手が薄れているのを誤魔化す事もしない。
空を見上げれば巨大な熱量の塊が降ってきているのが見える。それを見上げつつ、今度こそ自分の死を受け入れた。
どう言う事だろう。
再び意識が浮上する。
どうやら死に損なったようだ。
いや、そんな訳が無い。ポルンガに叶えてもらった願いのおかげだろう。
「だうっ」
あれ、上手くしゃべれないぞ?体も上手く動かせないし…
どうにか手を目の間に持ってくると…
ちぃっちぇーーーーーーーっ!?
「なんだ、モンテ起きたのか」
ベビーベッドを見下ろしているのはギネさんだった。
「バーダックの様な強い娘になりなよ。わたしの赤ちゃん」
な、なんだってーっ!?
どうやらわたしは死んだと思ったら生まれ変わっていたようだ。
しかもギネさんの娘として。
ポルンガに頼んだ願いで死んだら第七宇宙にサイヤ人として生まれ変わらせてくれと頼んだのだらこう言うことになったらしい。
モンテと言う名前は自分をこの星、ヤードラットに飛ばしたサイヤ人からもらったとママが言っていた。
…わたしだよね。
モンテちゃん、12歳になりました。
ヤードラット星にて健やかに成長したわたしはそろそろ行動を開始する事にする。
ママのコールドスリープが意外と長期だったためにこの年でようやく時間軸が死ぬ直前に追いついたのだ。
成長した姿は若くは有るが以前のモンテとそっくりである。どうしてなのか分からないけれど。
「地球に行きたい?どうして」
そろそろヤードラット星を旅立つ時だ。
「ダメかな?ママもカカロットお兄ちゃんに会いたいでしょう?」
「そりゃぁ…でも多分覚えていないだろうし」
「それじゃはじめましてをやりに行こう。それに瞬間移動ならすぐだし。ママも瞬間移動だけは覚えたよね?」
わたしはスピリット修行でいろいろな技が使えるようになったりしたのだけれど、ママは結構不器用だったみたいで瞬間移動くらいしか覚えられなかったのだ。
「そうだけど、カカロットの気なんて覚えていないよ」
「大丈夫、その辺はわたしが何とかするから」
育ててもらったヤードラット星に別れを告げて地球へと瞬間移動すると、ブルマの家でトランクス達がタイムマシンで未来に旅立とうとしている最中だった。
集まった中には当然のようにモンテが居て…
ガシッ
「な…」
「何者だっ!」
今まさに背後から悟空の胸を貫こうとしていたモンテの腕を横から現れた少女が掴んで止めていた。
「はぁっ!」
少女はモンテを蹴り上げると追ってモンテに迫る。
「お前は…まさかっ」
モンテは超サイヤ人に変身すると少女の攻撃を凌ぐ。
「調子に乗るなよっ!」
攻撃に転じるモンテにたまらず少女は身を引いた。
「はっ!」
少女の髪が金色に染まり逆立つ。
「超サイヤ人…だと?」
とベジータ。
「だが、モンテの気は変だ。これではまるでオルタの様では無いか」
どす黒い気がモンテを覆っている。その気は以前感じたオルタの気そのもので…
「はぁああっ!」
モンテが掌から気功波を撃ち出す。
「かめはめ波ぁあああっ!」
少女が撃ちだした気功波が撃ち合いになって相殺。
「かめはめ波だとぉっ!」
驚きの声をあげるピッコロさん。
「この先邪魔になるであろう最大の邪魔ものをこの機に始末しておこうと思ったのだが…どうやら失敗したらしいな、だが…」
その右手にいつの間にか一つの指輪が嵌りその両耳に緑色のポタラが嵌っていた。
「この体は素晴らしい…」
「やめろ変態っ!わたしの体で何をするっ!」
「もう私の体だ…それにこの時間軸では私の目的は叶いそうにないな…ならば」
そう言ったモンテの体が一瞬で消えて行った。
空中から降りて来た少女に駆け寄る妙齢の女性。
「モンテ、いきなり飛び出して行って…大丈夫だっだ?」
「モンテだと…?」
「それにあの女性も尻尾がある…サイヤ人か?」
「いぃ!?サイヤ人の生き残りって結構いるんだな。オラびっくりしたぞ」
少女を抱きしめた妙齢の女性はその懐かしい声色に視線を彷徨わせた。
そして一人の人物を見つけるとぽつりと呟いた。
「カカロット…カカロットだろ」
「え、どうしてオラの名前を知っているんだ?」
困惑する悟空。
「カカロットォっ!」
ガシっと悟空に抱き着く妙齢の女性。
「ちょ、ちょっとどうなってんだ…まいったな」
泣きじゃくる妙齢の女性に対応に困っている悟空。
「いったい何がどうなっている訳?モンテちゃんはどうなちゃったの、そしてそっちのその娘は?」
女性が泣き止むのをまってブルマが説明を求める。
「わたしはギネ。カカロットとこの娘、モンテの母親です」
「いいっ!?オラの母ちゃんって事か?」
「何だと!?どう言う事だ」
ギネは惑星ベジータが爆発する前に何者かにアタックボールに乗せられて飛ばされたと語った。
長期コールドスリープが掛けられたまま飛行していて13年前にようやくとある惑星に着陸、解凍されたと説明した。
「まって、孫君のお母さんの娘って事は孫君の妹って事?」
「オラの妹かぁっ!っておめぇモンテじゃねえか。え、でもさっきどっかに行ったあいつもモンテで…だめだオラこんがらがってきたぞ」
「なんでカカロットがモンテを知っているんだ?」
「いや、だってよぅ…なぁ?」
「俺に聞くな」
「そうだよ、モンテ。どうなっているんだい?」
ママが問いかけてきた。
「うーん、説明すると長いんだけど」
と前置き…
「つまり第十宇宙の界王神見習いのザマスってやつに体を入れ替えられた後殺されたモンテはなぜか過去の惑星ベジータに居て、ギネさんを助けたら生まれ変わっていたと…あなた本当にモンテなの?」
「ええ、まぁ…」
「まぁ、見た目もどうしてかモンテそっくりだしね…信じるしかないか。でもどうして今の今まで姿を見せなかったのよ」
「わたしが認識する過去を変えないためです。じゃないとわたしは戻ってこれないじゃないですか」
「なるほど、じゃぁギネさんの事は?」
「過去改変者であるわたしが先ほどまで認識している過去にママの生死は重要じゃ無かったんですよ。地球やナメック星に関わらない所なら歴史的改ざんされる可能性は低いだろうと思いました。わたしがここに居る以上、この世界では最初からママは生き残っていてわたしがこうして生まれ変わってくると言う事は確定しています」
「卵が先か鶏が先かの問題ね…まぁいいわ」
それで、とブルマ。
「それでオルタの正体は…」
「体を入れ替えた第十宇宙のザマス。その彼が先ほど界王神だけが使える時の指輪で未来に行った存在が先日現れたオルタです」
「オラもう何がなんだか…なぁベジータお前は分かってるか?」
「ブルマが分かっていれば何も問題はないっ!」
「つまりは分かってねぇって事か」
「うるさいっ!黙っていろカカロット」
「え、ベジータって…まさかベジータ王子?」
ママがベジータと言う名前に戸惑う。
「そう言えばお前王子様だったんだっけなぁ」
「今はブルマの夫でトランクスの父親だ。それだけで良い」
「おめぇも言う様になったじゃねぇか、へへ」
言って悟空がニカっと笑う。
「で、結局未来のおめぇはどうすりゃいいんだ?あれがモンテってんなら倒す訳にもいかねぇだろう」
「いえ、わたしは今ここでこうして生きていますからね。オルタはわたしではありません。問題なくぶっ飛ばしてきてください」
「なるほど、行くぞトランクス」
「待ってくださいよ、父さん」
「待て待て、オラも行くぞ」
「あ、カカロット…」
「ちょっと待っててくれ母ちゃん。ちょっと悪い奴をぶっ飛ばしてくるからよ」
そう言って軽くママに手を振ってタイムマシンへ向かう悟空さん。
「早くしろ」
「いけねぇ、待ってくれよベジータっ!」
出発するタイムマシンを見送るとする事も無くなる。
「それで、あなたはどうするのモンテ」
とブルマが言う。
「久しぶりにビーデルに会いたいし、ママも悟飯さんと悟天くんに会わせたいから」
「その、モンテ…その悟飯と悟天って?」
「悟空さん…お兄ちゃんの子供です」
「カカロットに子供がいるのかっ!」
「孫も生まれましたしもう立派におじいちゃんですよ」
「なんだってーっ!」
コールドスリープの期間が長かったためママの年齢は結構若い。それなのにもうひいおばあちゃんなのだ。そりゃショックも受けるか。
「あなた、ミスターサタンの事は?」
ブルマが問いかけてきた。
「大丈夫です。わたしは悟空さんの妹。ビーデルは悟飯くんの嫁。つまり家族には変わりないですからね」
「それであなたが良いなら、別に良いのだけれど」
ブルマさんに頼んで悟飯くんの家にチチあんと悟天くんを呼んでもらった。
「モンテ、見ない内にちっちゃくなったね」
「ビーデル…それだけなのっ!反応薄いよっ!」
「まぁモンテだしね」
魔法の言葉みたいだな、それ。
「で、そちらの方は」
「ほら、ママ入って」
「で、でも…」
「ママ?」
「尻尾が有るね。サイヤ人みたいだ」
「そうだな、悟天」
悟天くんが目ざとく見つけた尻尾。悟飯くんも見ていたようだ。
「あの…はじめまして。ギネと申します、カカロットの…えと悟空の母親です」
「悟空さの母親だべかっ!?」
驚くチチさん。
「いいぃ」
悟飯くんも驚いているらしい。
「え、どう言う事なの、ねえお兄ちゃん」
「つまり僕たちのおばあちゃんって言う事だよ」
「おばあちゃん?にはは」
とてとてとママに寄っていく悟天くん。
「わーい、おばあちゃんだっ!」
「これ悟天っ!」
嬉しそうにギネに抱き着く悟天を止めれないチチ。
そう言えば悟天には牛魔王というおじいちゃんはいてもおばあちゃんは居なかったな。
「本当に子供の頃のカカロットそっくりだな。名前は?」
抱き上げつつ名前を問いかけたギネ。
「ボク悟天って言うんだ、おばあちゃんは?」
「わたしはギネだ。よろしく悟天」
「うん、若いおばあちゃんでボクも嬉しいよ」
それから悟飯も自己紹介をして玄関先ではなんだからと夕食に誘われたギネとモンテ。
「え、モンテ、ギネさんの子供になっちゃったの?」
「まぁ色々あってね」
「まぁモンテだしね。じゃあどう呼べばいいかしら?伯母さん?」
「ぶーーーーーーっ!」
食べていたものを吹き出した。
「モンテ汚い」
モンテって言ってるじゃん。
「パパになんて説明しよう」
「わたしは悟飯くんのおばあちゃんの娘、ビーデルは悟飯くんの嫁だから家族には変わりはないよわたしも嫁にでも行ったと思って諦めてもらうしかないかな」
「モンテがそう言うならばそれで良いか。パンちゃん、大叔母さんですよ」
「だうぅたうっ!」
「やーめーてー」
食事が終わるとビーデルが一言。
「そう言えばモンテって今地球で住むところ有るの?」
「あー…そうね。ない…かな。まぁ別にヤードラット星に帰れば良いだけだから別に気にしてないのだけれど」
「でもそれは寂しいわ。部屋もいっぱいあるのだしモンテとあとギネさんは家に住まない?」
「良い考えですよビーデルさん」
悟飯くんが賛同する。
「新婚さんの家にお邪魔するのも…」
「今日は居ないけど、ほとんど毎日パパは来てるけどね」
そうでしたね。
「まぁ考えておく」
そう言えば、未来に向かった悟空さんってどうなっただろうか。
ママはパンちゃんの相手をしていたので1人瞬間移動でカプセルコーポレーションを訪れる。
悟空さん達の気が戻ってきていたからだ。
「倒したの?」
「いやぁ負けた負けた」
マジでっ!?ゴクウブラックじゃなくてモンテちゃんですよ!?
「超サイヤ人…なんて言ったっけ?」
「ロゼだ、超サイヤ人ロゼ」
と悟空の問いに答えるベジータ。
「そのモンテ・オルタのネーミングセンスはどうなんでしょうね」
「大体カカロット、お前が仙豆を忘れるからだ」
「わりーわりー」
「悪いですむかっ!」
しかも悪い事にオルタだけじゃなくて不死身のザマスまで現れたらしい。
「オルタってザマスじゃ無かったのっ!?なんでザマスが出てくるのよっ!」
ブルマが癇癪気味に叫んだ。
「この世界の未来はボクの未来に繋がってはいません」
とトランクス。
「なるほど、オルタの方はモンテちゃんの体を乗っ取ったこっちの世界のザマス。もう一人はもともとトランクスの居た世界のザマスって事ね。それもどう言う訳か不死身になっていると。不死身の奴なんてどうやって倒せばいいのよっ!」
うーん…
「幾つか方法は有るよ」
「有るのかっ!?」
「まね、勝てないなら動けなくするだけでも良い。つまり封印してしまえば死のうが死ぬまいが関係ない」
「なるほど」
「後は破壊神さまに魂まで破壊してもらう。いくら不死身でも破壊されたら無くなるでしょ」
「うーむ、だがどっちも一筋縄では行かねぇぞ」
そりゃそうだ。
「ふん、封印の方はカカロットに任せた。俺はオルタを倒す」
「あ、ずりーぞベジータっ!」
「早いもの勝ちなのだろう?」
勝ち誇った表情を浮かべるベジータ。
「しょうがねぇ、亀仙人のじっちゃんの所に行ってくっかな。たしか封印技を使えたはずだ」
そう言った悟空さんは瞬間移動で飛んでいった。恐らく亀仙人の住んでいる亀ハウスへと飛んだのだろう。
「お前は俺様と来いっ」
「はい?」
ベジータに首根っこを掴まれたわたしは引きずられるように神様の神殿へ。
そのまま精神と時の部屋へと投げ入れられてしまた。
「え、ええっ!?なんで、どうしてっ!」
「フン、俺様の修行のついでにお前のその鈍った体を鍛えなおしてやる」
「まってまって、それってただサンドバッグ代わりに連れて来たって事でしょうっ!?」
「いくぞっ!ついでにその顔を見ているとムカムカしてくるんだっ!」
オルタの事でしょうっ!?それわたしだけどわたしじゃ無いっ!
ベジータがホイポイカプセルを投げると現れたのは最新式のメディカルポッド。フリーザの宇宙船から拝借した奴だ。
ボコボコにする準備万端と言う事っ!?
いったい何度メディカルポッドのお世話になった事か…
そしてオルタとの再戦の時を迎える。
タイムマシンで未来トランクスの世界へと移動。
「お前も来いっ!元はと言えばお前だろうっ」
ベジータに首根っこを掴まれ分投げられた。
「いーやー…ぎゅむ」
ギュウギュウのタイムマシンに詰め込まれ未来へ。
トランクスの居た未来。
それはもう滅亡の一歩手前と言う惨状。
「ひどい…」
タイムマシンをカプセルに戻すと凶悪な気配が穹を割いて現れる。
モンテ・オルタとザマスだ。
悟空さんはしっかりと封印壺を持っているが…
「悟空さん、封印のお札は?」
「え、札っ!?あれ、めぇったな…忘れてきたみってえだぞ」
バカーーーーっ!
「な、バカがっ!不死身のザマスをどうする気だ」
「忘れて来た物は仕方ねぇだろっ!」
ベジータと悟空が口喧嘩。
「畜生、やるしかないか」
「わりぃブルマ、持っていてくれ」
悟空さんとが封印壺をブルマさんに渡すとベジータさんと二人でオルタとザマスに向かっていく。
ついでにトランクスくんも。
「あなたも行きなさいよっ!」
今回は同乗してきていたブルマが加勢しろとがなり立てるが…
「紙と筆持ってる?」
「そんな物持っている訳無いでしょっ!」
「まじかーっ」
仕方ない、最終手段だっ!
「ちょと壺貸して」
「こんなもの要らないわよっ!」
貰った壺の表面を気で削って文字を書いていく。
「何々、なんて書いてあるの?」
「大魔王封じってね」
「へぇ、ちょっと見せて。あなたそんな事も出来るのね。これ封印のお札の代わりでしょ」
はい。
「へーふーん」
「ちょっとそんな持ち上げても裏側になんて何も書いてませんよ」
「確認よ確認…て、うわっ」
突然襲った爆風。悟空さん達の戦いの余波でブルマがよろける。
そして…
ガシャン
「「あーーーーーーーっ!!」」
転げたブルマの手から滑り落ちた封印壺は音を立てて割れてしまう。
「なんて事をっ!ブルマさーーーん」
「だ、大丈夫よ…接着剤は持ってきているし」
「そんな物より紙と筆を持ってきててくださいよっ!」
「しょうがないでしょ割れちゃったものわっ!くっつければ直るわよっ!あんたはそれまで孫君に加勢してきなさい」
「くっ…行くしか…ないか…」
オルタは超サイヤ人ロゼの状態で、悟空さんとベジータさんは超サイヤ人ブルーに変身して戦っていた。
つまりそれ以下の変身では勝負にすらならないのだろう。
「…やっぱダメだな」
飛び立つ寸前に思いとどまった。
魔封波には相当の体力を使う。下手に今減らすと魔封波で自身が死にかねない。
それでは本末転倒だ。
戦闘はトランクスが加勢するも劣勢。
元はモンテのくせに強いな、アイツ。
ビルに三つ何かが当たり粉塵を上げている。
どうやら悟空さん達が吹き飛ばされたようだ。
「あの三人の止めを刺す前に」
「お前の事もいたぶって殺してやろう」
スタリと眼前に降り立つオルタのザマス。
ジリっと嫌な汗がにじみ出る。速くしてくれ、ブルマさーん…
覚悟を決めて変身を決意した瞬間後方からブルマさんの声が。
「モンテ、ほら出来たわよ」
「ナイスっ!」
壺の接着が完了したらしい。
戦闘は他の三人に任せていたから体力は十分。
「そんな壺を持ち出して何になる」
何になるって?
ドラゴンボールの世界の最強技を知らんのかっ?
説明してやる事は無いが、くらって見ろっ!
「魔封波っ!」
「「なにっ!?」」
放たれた気がオルタとザマスを捉え渦を巻く。
「「ヤメローーーっ!神であるこのザマスにっ!」」
「はぁっ!」
気合を入れて気をコントロール。
その本流に二人は逆らえずに流されたオルタとザマスはブルマの持つ封印壺へと閉じ込められていった。
「きゃあっ」
「ブルマさん、蓋っ!」
「ああ、蓋ねっ!」
カチャンと音を立てて壺の蓋を閉めるブルマ。
しばらくガタガタ震えていたがどうやら封印に成功したようだ。
「つ、疲れたー…良かった死んでないっ!わたしっ」
魔封波で死んだとか後悔しか残らないわっ!
「封印したのですか?」
「なんだオメェも魔封波使えたんかぁ」
「最後はあっけないものだな」
ぶっ飛ばされていたトランクス、悟空、ベジータが飛んできて口々に言った。
ガタガタガタ
「え?」
封印が完了したはずの壺が震えだす。
シューとどこかに穴が開いていたのだろうか、沸騰した水蒸気のように何かが噴出されている。
「ブルマさん、穴塞いでっ!」
「え、きゃあっ!?」
ショックでブルマさんが封印壺を取り落としてしまった。
「穴完全にふさいでなかったからっ!」
ガチャン
「げっ!」
「ブルマさん、こっちに」
小気味よい音を立てて壺が割れ、中から煙が立ち上る。
「なんだ、これはっ!?」
トランクスの驚愕の声。
中から現れたのはオルタでもザマスでもない、怨念の様な何かだった。
それは上空に立ち昇ると体積を増やし星を覆っていく。
その邪悪さに身震いする。
「これは勝てない…」
「馬鹿者、来るぞっ!」
ベジータの叱責。
上空から巨大なビームが地表に幾重にも降り注ぐ。
「はっ」
「はぁっ!」
「くっ!…サボるなよ、モンテ」
分かってますってっ!
「はぁああああああっ!」
気功波を上空目がけて目いっぱい放出。
しかし力負けして吹き飛ばされてしまった。
煙が晴れると更なる絶望がトランクスを襲う。
地球上で感じられる気がもう感じられないのだ。
生き残っているのはここに居る自分達だけだった。
もう、この状況になってはどうしようもない。
過去に帰るか、それまでに時間稼ぎはしなければならない状況。正に絶体絶命の状況で、悟空さんが仙豆を探す様に自分の道着をまさぐると現れたのは1つのスイッチ。
「そういや、これここの全王様にも効くかな?」
…はい?
ポチっと押すと現れるのはあの絶対的存在、全王様。
「なに、これ?」
余りにも醜いこの現状に全王様も戸惑っているようだ。
そこに悟空さんが空を覆いつくすザマスを消す様に誘導。
しかし…
「やべぇ、みんなタイムマシンに乗れーっ!」
ひぃぃっ!?
もちろんわたしはブルマさんと一緒に一番で乗り込んでますぜっ!
全王様のあれはザマスを消す訳じゃ無いんだ。世界そのものの消滅なんだ…
急いで過去の世界に逃げなければ巻き込まれて消滅してしまう。
結局、世界を救う事など出来なかった。
出来たのは元凶の消滅のみである。救いは何処にもない。
未来の世界で生き残ったのはトランクスのみで、その姿もいつの間にか消えていた。
そう言えば、悟空が一度タイムマシンで未来の世界に行って来たらしいけれど…アレだよね…全王様、連れて来たんだよね?
まぁ、二人に増えようがわたしに被害が無ければどうでも良いのだけれど…どうやらこの世界は超越者を二人抱える世界になったようだった。
第九話
もうアレだ…わたしはダラダラと過ごしたいのだけれど…どうやらそう言う星には生まれていないらしい。
「力の大会?」
カプセルコーポレーションに集められた面々。
もうそんな時期か、などとのんきに考えているモンテ。
「当然、お前はメンバーの一人に決定だな」
「はいぃっ!?」
ヴィルス様からの非情な一言。
あの人外の戦いの場にわたし出なきゃいけないのっ!?
力の大会とは12有る宇宙から逆に選ばれた8つの宇宙の生き残りをかけたサバイバルバトルだ。
1宇宙10人の選手が一つの武舞台から落とされたら負けのサバイバル。
そして10人すべての選手が武舞台から落とされると宇宙そのものが全王様に消滅させられるとんでもない大会なのだ。
悟空さんが大会の発案者と思われているようだが実情は全王様が消そうとしていた宇宙に最後のチャンスが与えられたと言う方が正しい。
つまり悟空が何とかしなかったら問答無用で消滅していたのだが、そこを理解していない宇宙も多い。
取り合えず第七宇宙のメンバーを集める悟空さん。リーダーは悟飯くんが務める事になったらしい。
まぁ悟空さんでは頭を使う事は難しいから当然の人選と言えるだろう。
第七宇宙の戦士は地球に居るメンバーから集める事にしたようで…
悟空さん、ベジータさん、悟飯くんは当然の事17号さん18号さんの人造人間コンビ、クリリンさん、武天老師さまの亀仙流代表、ピッコロさんとブウさんとわたしで10人となる予定だったのだが、ブラが生まれるまでベジータさんは大会など出ないと言ったりするしブウさんは寝ちゃって起きないと問題は続出。
そしてここで思い出したのだが…
「そう言えばフリーザの奴ってまだ地獄にいっかな?」
「いいえ、フリーザなるものはモンテさんが破壊してしまったのでもう地獄にも存在しませんよ」
と言う悟空の呟きを即ウィスさんが否定してくれたものだから大変。
子供達を抜かすと残りはビーデルとギネお母さんが候補にあがったのだが、宇宙の存亡をかけていると悟飯くんの反対を押し切ったビーデルが参加する事でどうにか10人の戦士が集まった。
さて、このメンバーで最大の問題はわたしが居てフリーザが居ないと言う所だろうか。
天津飯?あんな四身の拳とか言うビックリ技しか見せ場が無かった彼より超サイヤ人2にまでなれるビーデルの方が強いよ?
ただゴールデンフリーザよりわたしが強いかと言われればNOと言わざるを得ない。
ならせめてビーデルのパワーアップは急務だった。
「ビーデル、精神と時の部屋に行くよ」
「え、今から?」
「パンちゃんはもう離乳食でしょっ!おっぱい出なくなってもいいじゃないっ」
「ちょちょっとっ!何言ってるのよモンテっ」
「はーやーくーっ!」
ビーデルに触れると瞬間移動で神様の神殿へ移動。
なにやら瞬間移動の直前にベジータの声が聞こえた気もするが気にしない。
精神と時の部屋は一日が一年になる時間加速の別空間だ。空気は薄くさらに重力は地球の10倍と重い為に修行には最適であった。
引き延ばされた時間でどれだけビーデルを強化できるかが第七宇宙存続の要と言っても過言では無かった。
え、自分も修行しろ?
勿論やるだけはやってみるけどゴールデンフリーザを期待してもらっては困るというもの。
「さて、先ずは神の気を感じる事が出来るようになってもらわないとね。修行はキツイよ、ビーデル」
「大丈夫。パンちゃんの為にも負けられないわ」
母は強しと言う事だろう。
元々はわたしとビーデルは双子としてこの世界に生まれた。同個体では無いが今でもビーデルのスピリットはわたしと似ているようだ。
だからだろうか。スピリットを同調させてゆっくりと神の気を送ると徐々に髪の毛が紅く染まっていった。
さて、時間いっぱいまで修行して精神と時の部屋を無理やり出る頃にはモンテの身長はおおよそ昔の身長に追いついていた。
サイヤ人は青年期になると急激に成長するのだ。
集合場所に戻ると皆修練を怠らなかったのか精悍さを増したメンバーが揃っていた。
「ビーデルさん…なんか感じ変わりました?」
と悟飯くん。
「そう?自分では分からないのだけれども」
「何と言うか…ちょっと前のボクでは負けてしまいそうです」
「今でも負けちゃわないか心配よ」
自信満々に挑発するビーデル。
「大丈夫です、ピッコロさんとみっちりと修行しましたからね、負けませんよ」
「本当ね」
逞しくなった悟飯の腕を抱くビーデル。
あー、…そう言う事は家でやれ。
全員集まると大会会場である無の界へと移動。
ほかの宇宙も戦士たちも時間を置かずに現れたようだ。
80名の選手と各宇宙の破壊神と界王神、ガイド天使が揃うと大神官様が全王様二人をお連れして力の大会が始まった。
負ければ宇宙事消滅ともなれば皆必死にもなる。
そしてどう言う訳かこの力の大会の発端は孫悟空であり宇宙消失は悟空の所為だと言う間違った認識が各宇宙に広がっていて第7宇宙は目の敵にされているようで悟飯くんは固まって背中合わせで戦おうと言っていたのだが悟空さんやベジータさんがそれに倣うはずもなく、十七号さん十八号さんも離れて行った。
固まっているよりは各個撃破される可能性も有るもののリスクカットの効果もある一定は認められるし悟空さん達にはぜひとも頑張ってもらいたい。
わたしもサボりたい所だけれどじっとしている訳にもいかずに個人行動をする事に。
「あ、モンテどこ行くのよ」
「ちょっと偵察」
ビーデルに呼び止められたがとりあえず武舞台の上を気配を殺して駆ける。
さて、先ず一番気にかけるべきは第11宇宙だろうか。
ジレンは別格の存在感を放っているしトッポは油断ならないしディスポは厄介なほどに素早い。
ジレン、トッポは難しくてもディスポは隙を見て落としてしまいたい所だが…動く気配すらないのよね。
次に面倒なのは第2宇宙の面々だろう。
特にヤードラット星人がなぜか混ざっているし瞬間移動は出来るものと見て先ず間違いないだろう。
「と言う事で悪いんだけど脱落第一号になってもらわないとね」
超サイヤ人に覚醒するとジリっと右半身を引く。
顔合わせの時にヤードラッド星人のジーミスの気は覚えたし、奇襲するなら早いうちだ。
そのまま瞬間移動でジーミスの正面に移動すると高速の回し蹴りでジーミスの頭を蹴り飛ばす。
「はぁっ!」
「な、そのわずぁああああああああああ」
その技はまさかとでも言いたかったのだろうか。最後まで言わせずに意識を刈り取って武舞台の外まで吹き飛ばしリングアウト。
「しゃっ!まずは一人目」
自分で使っておいてなんだけど瞬間移動は卑怯だと思うよ。
それとヤードラット星人は瞬間移動以外も油断がならない。本当に一番最初にリングアウトさせれてよかったと思う。
「いいぞモンテその調子だっ!」
観客席のビルス様の激励。
さて、次はどうしようかと思っていたら…なぜか第6宇宙の女サイヤ人であるカリフラに突っかかられている。
「キャベから聞いたんだけど、お前もあの青い超サイヤ人になれるんだってな」
「はぁ…まぁ」
超サイヤ人ブルーの事だろうか。試合が始まってしばらく過ぎたしどこかで悟空さんが超サイヤ人ブルーになっているのを見たのだろう。
「なり方を教えろ。お礼にあたしがそれになってお前をぶっ飛ばしてやる」
お礼になってなーーーいっ!
「教えろって言われてもねぇ…逆立ちしても今のままじゃどうあがいても無理だし」
「なにぃバカにしてんのかっ!ちょっとまってろっ」
さて瞬間移動で逃げようかとおもっているとカリフラの気が膨れ上がった。
「はぁあああああぁああぁあぁ」
黒かった髪は金色に染まり更に気が高まっていくと同時にパンプアップ。
「はぁ…はぁ…どうだ…ビビったかっ!」
変身が終わると身長すら伸び、筋骨隆々のカリフラがこちらを睨みつけていた。
「ムキンクスっ!ムキンクスじゃないかっ!」
むっはーと興奮するモンテ。
しまった、ムキンクスに興奮して逃げるのが遅れた。
「いくぜーーーっ!」
美人さんが筋骨隆々の体格で迫ってくると若干怖い。
「ちょっま…」
モンテも超サイヤ人になってカリフラの攻撃をかわしていく。
「当たらねぇっ」
「その変身はパワーは凄いけどスピードが落ちるからあまりお勧めしないよ」
悟空さんもベジータさんもそれが分かっていたからその変身は実戦で使う事は無かったのだ。
「くっそーーーっ!」
大振りに振られた拳を瞬間的に超サイヤ人2に変身して殴り返す。
「ぐああぁあ」
モンテの細身の体で繰り出された拳にカリフラが吹き飛ばされた。
ザザーと煙を上げて制動を掛けて何とか踏ん張ったカリフラは、興奮気味に変身を解除してモンテに走り寄って来た。
「それが超サイヤ人2かっ!一度なった事はあったんだけどあれ以来なれなくてな。コツはやっぱり背中のゾワゾワか?」
「……まぁそんな感じ?」
なんだろう…この悟空さんを相手にしている感じは…
「なるほど、やっぱそうかー」
そう納得するとカリフラは再び気を高めてく。
「はぁああああぁぁぁあああっ!」
金色の髪の毛は更に逆立って体からスパークが飛び散っている。
「これが超サイヤ人2かっすげー力だっ!」
ええー…あんな適当なアドバイスだけで超サイヤ人2に変身とか…どんだけ才能あるのよ…
「それじゃいくぜーっ!」
嬉々として迫ってくるカリフラ。
格闘戦メインで殴り合う。
「だりゃりゃりゃりゃ」
「ちょっまっええっ!」
どちらも有効打に欠けていて一進一退の攻防が続いている。
「姐さん、援護しますっ」
カリフラと一緒に居たケールが弱々しいエネルギー弾を飛ばしてくるがモンテが肘を払って弾き飛ばすとどちらともなく戦闘を中断するモンテとカリフラ。
「今いいとこだったんだ、邪魔すんなケール」
「あ、姐さんっ」
「さあ、続きと行こうぜっ!」
「妹分ほっといていいの!?」
「アイツもサイヤ人だ、構わねぇよ」
ええーーー…これだからサイヤ人は…戦うのが好きで、更に戦いの邪魔をされるのは嫌い。厄介だよまったく。
カリフラの攻撃をさばいていると近くで爆発的に気が高まるのを感じてカリフラともども視線を向けるとそこには暴走状態に陥ったケールの姿があった。
その髪は緑金に輝き肉体は先ほどのカリフラの様にパンプアップされていて、しかしその力の高まりは絶大だった。
「すげーじゃねーか、ケールっ!」
「げぇ…ブロリーっ!?」
興奮するカリフラとは対照的に驚愕するモンテ。
「気が…高まる…あふれる」
理性の無い眼でモンテを捉えるケール。
「モンテ…モンテーーーーっ!」
「やっぱりーーーーっ!?」
暴走状態のまま真っすぐにこちらへと走ってくるケールに恐怖を感じる。
ブロリーと言えば足を掴んで地面に叩きつけたり、頭を握って岩肌で削岩したりと残虐ファイトで相手を追い詰める伝説の超サイヤ人の事だ。
そのパワーは絶大で、パンプアップした肉体からは信じられないほどに高速に動くチートな存在なのだ。
だがわたしはそんな痛そうなバトルは御免こうむる。
なので逃げさせてもらうっ!って…
「速いっ!」
「ああぁあっ!」
振りかぶった拳は次の瞬間眼前に迫っていた。
粉塵が舞い散る。
「ぬぅ…」
何故吹っ飛ばないとでも言いたそうな呟き。
粉塵が晴れるとしっかりとクロスした両腕でケールの拳を受け止めているモンテの姿が。
その姿は超サイヤ人2の時よりも髪の毛が伸びていて力強さも上がっているようだ。
「それが超サイヤ人3かっ」
変身したモンテに嬉しそうなカリフラの声が響く。
「はぁっ!」
拳を受け止めたまま地面を蹴ると回し蹴り。しかしケールの太い首を狙ったその一撃はダメージを与えている様子は無い。
しかし少しはよろめいてはくれたようですぐさま距離を取るモンテ。
すぐにケールを見ると巨大な気が胸元に集まっているのが見えた。
「げぇっ!?ブラスターメテオっ!?」
無差別範囲攻撃じゃないのさっ!
今ここでかめはめ波を撃ったとしてもキャンセルは間に合わないっ!って事でおさらばっ!
シュンっと瞬間移動でビーデルの所へと飛ぶとすぐさまビーデルに覆いかぶさった。
「モンテ?」
「ふせてーっ!」
次いで武舞台の上に巻き散らかされる流星雨の如き気弾の雨。
「な、何が起こったんですかっ」
と悟飯くん。
「ケールがブロったんだよっ!」
「い、意味が分かりません」
うるせー、フィーリングで感じろっ!
絨毯爆撃をどうにか凌いでいると突如ケールを超えた気を発する存在が暴走状態のケールの前に現れ気弾の一撃で吹き飛ばしていた。
あれ程の脅威を誇ったケールを一撃とはジレン恐るべし。
それを見ていてもたっても居られなくなったのだろう悟空がジレンの所へと駆けて行く。
武舞台の一段高い所に陣取った第2宇宙のリブリアン達三人は観衆の面前でなぜか魔女っ娘変身をお披露目…していたのだが、大人げない17号さんが途中で砲撃。変身を中断させるとどう言う訳か逆切れすると言う始末。
気を取り直して変身バンクの様に二回目に突入するリブリアン、カクンサ、ロージィの三人娘。
「か・め・は・め・波ーーーーーーっ!」
「「「きゃーーーー」」」
ジュ
二回目の変身はモンテがかめはめ波で吹っ飛ばした。
「モンテ…」
「モンテさん…」
ビーデルと悟飯くんが呆れている。
「良かったのか?」
と言う十七号さんは結構優しいのではないだろうか。
「良いですか?変身魔法少女の変身は邪魔をしてはいけないのではなくて実際は0.1秒で変身しているんです」
「そうなのか?」
そうなんです。
「なのにあんなちんたらと…しかも中断されたら最初からやり直しとか、許しませんよ。あれが許されるならわたしが変身するたびに待ってもらいますからねっ!」
「それもそうだな」
そして変身前は普通の女の子と言う設定を忠実に守っているのかズタボロになって武舞台を落下し観戦席へと転送させられるリブリアン達三人娘。
何やら外野でワーワー言っているが…
「うるせーっ!変身シーンが見せたかったのなら力の大会が始まる前にやっておけよっ!変身シーンと宇宙の存亡のどっちが大事か分かってればそんなバカな事は出来なかっただろう、知るかっバーカバーカ!そして何よりリブリアン、オメーの変身後は地球の美的感覚ではブサイクなんだよっ!誰がブサイク変身など許すかっ!変身前が美人なだけにすげーショックなんだぞっ!」
「ブサイク……それは本当なのか?」
と若干ショックを受けた第2宇宙の破壊神ヘレス様が問う。
それに第7宇宙の一同(悟空をのぞく)が首を縦に振った。
その事に第2宇宙の面々は相当ショックを受けたようで言葉が激減。ようやく静かになったようだ。
ジレンに突っかかって行った悟空が力負けして最後の手段に元気玉を選んだのか元気を分けてくれと言っているのだが回復が難しいし永久エネルギー炉のある十七号さんと十八号さんに頑張ってもらえば良いだろう。
巨大な元気玉を作り出した悟空だが、ジレンには押し返されて当てる事も敵わずに元気玉は爆散してしまった。
その中心地に落下していた悟空さんの気は感じられなくなり周りも自爆で消滅したのではないかと言う始末。
しかし、消滅せずに現れた悟空さんは銀色のオーラが立ち込めているもののその気は感じ取れない。
「身勝手の極意…か」
急に強くなった悟空はジレンに迫るが届かず。しかしリングアウトすることなく一度お互いの距離は離れた。
身勝手の極意・兆しが途切れてしまった事も関係あるだろう。あのまま戦っても悟空さんは勝てなかったのだ。
力の大会の半分が過ぎた頃、もう幾つかの宇宙は全王様の手によって消滅させられていた。
否応にも消滅の危機を身近に感じ皆決意を新たに力の大会に全力を投じている。
さて、わたしも簡単そうな敵から落としていこう。
先ずは第6宇宙のナメック星人からかな。
ザッとモンテは武舞台を踏みしめるとその気配でナメック星人であるサオネルとピリナの二人はモンテと向かい合う。
「ようやく力も安定してきたところだ」
「ああ、同化した同胞の為にもこの試合負けられぬ」
隙の無い構え。
ナメック星人は同化する事で力を増し強力になる。
この力の大会の為に二人は殆どの同胞と同化を試みて来たらしい。
「試合に負けられないのはこちらも同じ。だから弱点を突かせてもらう」
「弱点だと…我らナメック星人に弱点など」
いや、もう何て言うかゴメン。きっと知らないんだろ思うけどナメック星人ってさ…
ぴーぴぴぴーぴぴぴーぴぴぴ、ぴーぴぴぴーぴぴぴーーーーーー、ぴーぴぴーぴぴぴぴぴーぴーぴーぴぴぴぴぴー
「ぐぁあああ」
「なんだこの不快な音はっ!?」
「あ…頭が割れる…」
口笛に弱いんだ。聴覚だから力の差とか関係ないし。
「おい、なんだそれ、ズリーぞっ!」
シャンパ様、種族的弱点を対策してこない方が悪いんです。
苦しみ悶えるサオネルとピリナを口笛を吹きながら武舞台の外へと投げ飛ばす。
腕を伸ばす気力も出なかったのか二人は呆気なく落ちて行った。
なんか遠くでピッコロさんも苦しんでいたけどしーらない。
あ、もしかしてピッコロさんの弱点が知れ渡っちゃってヤバいかな…?まぁしょうがないと言う事で。
「キェエッ!」
「おっと、不意打ちですか」
第6宇宙のフロストが不意を突いて尻尾で足を払いに来たがフロストなぞ所詮ナメック星編のフリーザ様程度だ。
鍛錬を重ねてゴールデンフリーザ様になるくらいの実力ならまだしも超サイヤ人になったばかりの悟空にやられる程度の実力に負ける訳にはいかない。
「ぐぁああっ!」
逆にカウンター気味の回し蹴りで武舞台から落っことしてやった。
「モンテ、大丈夫?」
「ああ、ビーデル。どうしたのこっちに来て」
スタっと音を立てて現れたのは悟飯くんの所に居るはずのビーデルだった。
「悟飯くんの所に居ると悟飯くん戦い難そうだったから」
「ああ、自然にビーデルを守る体勢になってしまうのか」
「そう言う事」
それでは悟飯の実力が100%発揮できるはずも無い。それならと逆に悟飯から離れる選択をしたようだ。
「お、良いね。今度は尻尾付きが二人か」
「あ、姐さんっ」
「おらケール、ビビってんじゃねぇぞっ!」
「で、でもぉ」
バカな…せっかく距離を取ったのにまたしてもこの二人組と遭遇とか運が悪い。
「モンテ?」
「第6宇宙のサイヤ人。強いよ」
「なるほど」
ジリと半身を引いてビーデルは拳を構える。
「2対2か。やるぞケールっ」
「姐さん…」
不承不承と構えを取るケールとやる気満々なカリフラと対峙するビーデルとモンテ。
「いくぜっ!」
カリフラが超サイヤ人2に変身してモンテへと迫る。
「それじゃあ私の相手はあなたね」
「ひっ…」
ビーデルはケールを相手をするようだ。
「他の宇宙の戦士を落としに行けよっまったくもうっ!」
カリフラを迎え撃つモンテは超サイヤ人3だった。
モンテには悟空やベジータと戦った時に染みついた悪い癖がある。
それは相手よりも一段階上の変身で戦おうとする癖だ。これは地力の差が激しかったモンテでは悟空とベジータに食らいつくための苦肉の策ではあったのだが、あのサンドバッグの日々は魂にまでこびりついてしまっていたのだ。
「超サイヤ人3か。ついてるぜっ!」
確かに悟空とベジータとの地力の差は大きかった。が、しかしそれでもモンテは一段上の変身と言えど何とかかじりついていたのだ。
そこに着て生まれなおしたモンテは修行を欠かさなかった。
「がっ」
「姐さんっ…きゃぁっ!」
モンテの攻撃がカリフラを、ビーデルの攻撃がケールを吹き飛ばす。
カリフラは何とか耐えたがケールは場外目がけて飛んでいくが…
「ケールさんっ!」
途中で勢いを殺す様に受け止めた第6宇宙のサイヤ人であるキャベがケールを場内へと押し戻し一緒に着地した。
「うぅっ」
「ケールさんはここに居てください。ボクが行きますっ」
地面を蹴ってビーデルへと向かうキャベは気合を入れると超サイヤ人へと変身していた。
キャベはノーマルの状態でベジータとタメを張る実力者である。
つまり超サイヤ人になったキャベもベジータの超サイヤ人と同程度の強さと言う事だ。
そこにきてビーデルはと言えば確かに強くなったがベジータに追いついているかと言えばいくら潜在能力をシェンロンに願って覚醒しているとは言え程遠い。
「はぁあああぁああっ!」
「くっ戦いの中で成長しているって言うのっ!?」
堪らず超サイヤ人2へと変身するビーデルだが、キャベの攻撃が鋭さを増していき自分でも気が付いていないだろうが限界を突破し超サイヤ人2へと至っていた。
同じ変身ならビーデルよりもキャベの方が強い。
追い込まれているのはビーデルの方だった。だが…
ビーデルの髪の毛が紅く染まる。
「くっまさかアナタもその変身が出来たとはっ」
「モンテの特訓のおかげでね」
悔しそうなキャベ、再び天秤はビーデルに傾く。
「おいおい、なんだよその赤い変身はっ!気を感じねぇぞっ」
「超サイヤ人ゴッド。あの変身は超サイヤ人3より強いよ」
キャベの攻撃はもうビーデルには届いていない。
「モンテ、いつまでも遊んでいないで。宇宙の存亡が掛かっているのよっ。私たちが負けちゃったらパンちゃんが消えちゃうんだからね」
それは何処の宇宙も同じだと思うけれど…仕方ない。
「はぁああっ!」
伸びていた髪は元に戻り、金色だった髪色は赤く染まっている。
「ちくしょうっ!ズリーぞっ!」
カリフラの攻撃も空を切り始めた。
それほど超サイヤ人ゴッドと超サイヤ人2は隔絶しているのだ。
「はぁっ!」
「ぐぁっ……」
蹴り上げたカリフラに気弾で追撃しようとして、膨れ上がる気にとっさに視線を巡らせた。
「よくも姐さんををうぅぅぉっ」
「ぎゃーっ!ケールがまたブロってるっ!?」
「何…あれ…」
「ばっか、ビーデル逃げるよっ!」
「ケールさん落ち着いてっ!」
「うぅぅうううっ」
宥めようとして迂闊に近づいたキャベを横殴りで弾き飛ばすケール。
「うわああああっ!」
「ケール、おいあたしの事が分かんねぇのかよっ!ケールっ」
「うううううぅっうああああっ!」
「ってまたブラスターメテオっ!?」
逃げ場も無いほどに気弾が散りばめられる範囲攻撃にモンテもビーデルも避けるのがやっとだ。
武舞台が砕かれた為に盛り上がったカチカッチン鋼の影に二人で身を隠す。
「何が起こっているのよっ」
「伝説の超サイヤ人…」
ビーデルの呟きにモンテが呟きで返した。
「はぁ?それって超サイヤ人とどう違うのよ」
「ブロリー状態だって事だよっ!」
キレ気味に言ったモンテを誰が責めよう。それほどまでに今のケールはサイヤ人を逸脱していた。
瞬間移動で距離を取るべきかと思案していると暴走状態にあったケールの気が制御され始めた。
「治まった…?」
「ちがう、制御されたんだ」
カチカッチン鋼の影から視線を向けると一回り小さくなった超サイヤ人状態のケールの姿が見える。
暴走状態よりは気の強さは感じられないが、見境が無かった先ほどよりも脅威度は上だろう。
「さすがケール、あたしの妹分だぜっ!」
「はい、姐さんっ」
「あたしとケールががっちり組んだら」
「最強ですっ!」
超サイヤ人ゴッド状態のわたしとビーデルの気は感じられないはずだが、野生の勘だろうかカリフラとケールの視線がこちらを向き視線が交じり合う。
「行くぜケールっ」
「はい、姐さんっ!」
前に出たカリフラを気弾で援護するケール。
「行くよ、ビーデル」
「分かってるっ!」
抜き打ちでかめはめ波を放つとケールは身を捻って避けた隙にビーデルがカリフラと格闘戦に持ち込んだ。
「くっ」
「姐さん、今行きますっ」
地面を蹴って一息で距離を詰めたケールがビーデルを狙う。
それを横目に見ていたビーデルはケールに腕を絡ませてそのまま地面に叩き付けた。
「ぐはっ」
生憎と何年姉妹やっていると思っているんだ。ブランクは長いかもしれないがわたしとビーデルの息はピッタリだ。もちろん連携の訓練も精神と時の部屋で重ねて来たのだ。付け焼刃のコンビ技に負けるはずがない。
「くそ、ケールっ!」
「はぁっ!」
更にビーデルは倒れ込んだケールに自身も宙に浮きながら体重を掛けて肘うち。
「うわあああっ!」
ケールの絶叫が木霊した。
「このヤロウっ!」
「波っ!」
駆けつけようとしたカリフラに地面に打ち付けたケールに覆いかぶさるように肘うちを仕掛けたビーデルの頭上を掠めて気弾が飛びカリフラを襲う。
「あああああっ!」
「っ…!」
無理やり立ち上がったケールがビーデルを払いのけ、エネルギー弾で追撃しようとした所にモンテが接近し回し蹴り。
「はぁっ」
「きゃぁっ」
吹き飛ぶケール。
「大丈夫か、ケール」
「姐さんっ…はいっ」
吹き飛んだケールをキャッチしたカリフラだが…
「「かーめーはーめー…波ぁーーーーーっ!」」
モンテとビーデルがⅤの字になる様にかめはめ波で狙い撃つ。
「姐さんっ!私の後ろにっ!」
「ケールっ!」
「ぐぅぅぅぅううううわあああぁぁあああぁっ!」
カリフラを後ろにかばったケールは腕をクロスさせてモンテとビーデルのダブルかめはめ波を受け必死に踏ん張っている。
げぇっ!超サイヤ人ゴッド二人のかめはめ波を受けきるってのかっ!これだからブロリーはっ!
「「はぁっ!」」
だがここで落としてしまいたいとビーデルとモンテは気合を入れなおした。
「きゃああああっ!」
踏ん張っていたケールの足が武舞台を離れる。
よしっ!今の一撃でケールを武舞台の外まで吹き飛ばす勢いだぞっ!
「ケールさんっ!」
げぇっ!何処に居たのかキャベがインターセプトしてケールを押し戻したっ!?
「ケールっ!」
すぐにカリフラが駆け寄った。
「ここはボクが時間を稼ぎます。なので、お二人はシャンパ様から預かったアレをお願いします」
「アレかぁ…本当は嫌だけどな…今のままじゃ勝てそうに無いし。おいケール、アレ出せ」
「は、はいっ!」
そう言って取り出したのは一対のポタラだ。
「おいっ!あれは良いのかっ!道具だろっ!」
とビルス様が抗議しているが面白そうだから全王様はOKとの事。
「ヤバイっ!ビーデルっ!」
「う、うんっ!」
「させませんよっ!」
キャベがカリフラとケールを守る様に立ちはだかる。
だが、違うんだよなぁ。もうポタラ合体を止める事は諦めている。なので…
ケールとカリフラが融合し途轍もない気を内包した戦士が現れた。
「ケールとカリフラでケフラっ!」
「ケフラ…さん。すごい気だ…これなら」
新しく表れた戦士ケフラとその尋常じゃない気に驚くキャベ。
「うぉおおがったいした」「がったいしたね」
「「すごいねー」」
全王様はかなりお喜びのようだ。
「わははははっ!悔しいかビルスよぉっ」
「うるさいっ!合体くらいで騒ぐな。それにこっちも良く見てみろっ!」
観戦席ではシャンパ様がビルス様を煽っていたがビルス様は涼しい顔をしている。
「すげぇすげぇぜこれはっ!これならあいつらをぶっ倒せるぜっ!」
「「フューーーーーーーージョン、はっ!」」
「はい?」
呆気にとられるケフラの前で恥ずかしいポーズで指先を合わせるモンテとビーデル。
二人の姿が融合し一人の戦士が現れた。
「おおおぉぉこっちもがったいした」「がったいしたね」
「すごい」「すごいねー」
「どっちが勝つかな?」「どっちだろう」「どっちもがんばれー」「がんばれー」
まさかの合体戦士同士の戦いに表情からは伺えないが全王様はすごく興奮しているようだ。
超サイヤ人ゴッドのままフュージョンしたからだろうか、ケフラ、キャベにはその気は感じられないが観客席にいる破壊神や天使はその気配にジリっと汗を流していた。
「ひっさしぶりにモンデルちゃん登場っ!」
「合体…した…?」
「わははははっ!バカめっ!ポタラだけが合体じゃないんだよっ!」
ポソリと言葉を漏らしたシャンパ様に勝ち誇ったように言うビルス様。
「おいっ!合体なんて卑怯だぞっ!」
「どの口が言うんだバーカバーカっ!」
「くぅぅうううっ!ぶっ飛ばしてやるぜっ!」
口では敵わないとなると地面を蹴ってモンデルへと駆けるケフラ。
その姿を目で追うのもやっとの速度ではあったのだが…
「あ、ぐあっ!」
すれ違いざまに首の後ろを手刀で弾かれ吹き飛ばされたケフラは隆起したカチカッチン鋼に当たってようやく止まった。
「ちくしょうっ!」
岩肌から抜け出したケフラは怒りからか一気に超サイヤ人2へと変身しその気を更に膨れ上がらせていた。
「はぁああああああっ!オララララララっ!」
ケフラは手を突き出すたびに気弾を撃ち出し無数の気弾がモンデルを襲う。
その攻撃をモンデルは後ろではなく前に出る事でかわしていく。
「なにぃっ!?」
まさか前にかわされると思っていなかったケフラは焦り、その一瞬を見逃さずにモンデルは瞬間移動してケフラの背後へと回り込み拳を突き出した。
「なっ!?後ろかっ…ぐあ」
思い切り振り返った顔面を殴られ吹き飛ぶケフラ。
さらに吹き飛んでいるケフラに瞬間移動で追いつくと追撃とばかり殴る殴る殴る。
最後は気弾を生成すると至近距離でケフラにぶち当てようと迫ったが…
「なめるなよっ!」
ケフラの胸元に圧縮された気が収束しているのが見える。
「なっ!」
互いの気弾がぶつかり合い合い、爆風で互いに飛ばされて距離が開いた。
「っあ!!」
足元のカチカッチン鋼がめくりあがるくらい踏み込んで距離を詰めてくるケフラは、超サイヤ人ゴッドとの戦いで自分の限界をさらに超えてしまったようでその金色の髪は腰ほどまで伸びて体からはスパークが散っていた。
「なっ!超サイヤ人3だとっ!?」
「だりゃりゃりゃらりゃらっ!はぁっ!」
「くっ…」
先ほどよりも力強いケフラの攻撃にモンデルが押され始める。
ドウゥンドゥン
しかしモンデルも負けてばかりは居られない。殴られれば殴り返し押されれば押し返す一進一退の攻防は音を置き去りにして続いた。
ズザザー
ザザーっ
互いに距離を取って制動。
「なんだ時間切れか?」
そう挑発するケフラが言う様にモンデルの髪は黒髪に戻っていて気も感じられるようになっていた。
「いや、冥途の土産にサイヤ人としての究極を見せてやろうと思ってね」
「はっメイドに行くのはお前の方だろっ!」
ドンッと地面を蹴ると一瞬で距離を詰めるケフラ。
繰り出した拳はしかし…赤い体毛に覆われたモンデルの腕で受け止められていた。
「なんだよ、それはっ!」
「超サイヤ人4…そっちのサイヤ人が変身できるかは知らないけれど…ねっ」
神の気を抜かせばサイヤ人としての限界は間違いなく超サイヤ人4だろう。
「ぐあっ」
ドンと肘うちでケフラを空中へと打ち上げるモンデル。
両手に気を集中させると合わせて腰を落とし半身を引いた。
「かーめー」
更に気を圧縮させていく。
「はーめー…」
「くそっやられてたまるかよっ!」
ケフラも気を集中させている。
「波ぁーーーーーっ!」
「あああああああっ!」
互いに打ち出した必殺の気功波は拮抗し、その余波は武舞台を削っていく。
その均衡は中々崩れず先に気を緩めた方が負けると誰もがそう思った時…モンデルは自身のかめはめ波に乗りケフラの気功波を割いて進んで行く。その進みは一瞬で互いの距離をゼロにして…
「龍拳、爆発っ!」
「ぐああああっ!!」
モンデル渾身一撃はケフラを捉えケフラを武舞台から弾き落とした。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
肩で息をしているモンテ。
「勝ったぞーっ!」
ケフラがケールとカリフラに分離して観覧席に戻ったのを確認すると両手を突き上げた。
「な、このやろうっ!ズリーぞ更に上の変身とかっ!」
外野でカリフラが吼えているが、答える気力もない。
「「あっ…」」
モンテとビーデルに別れて地面に降り立つ二人。
フュージョンでの超サイヤ人ゴッド、そして超サイヤ人4への連続変身でフュージョンで合体していられる時間を使い切ってしまったようだ。
力の大会もだいぶ佳境を迎えすでにいくつかの宇宙が全王様に消滅させられている。
第7宇宙のメンバーもクリリン、亀仙人、17号、ピッコロと悟飯と脱落し残り5人にまで減っていた。
え、悟飯くん落ちたの…?…え?
もしかしてわたしが口笛を吹いたせいでピッコロさんが脱落したから?…いや、まさかね。
しかし他の宇宙よりも人数は多いのでこれから先は優先的に狙われる事だろう。
「次はどうするの」
「んー…第11宇宙のディスポを落としに行って来る。最悪それでわたしは落ちても構わないでしょう」
悟飯くんは確かディスポと相打ちだったはずだし。
「それほどの相手なのね…ならフュージョンして行けば良いんじゃない?」
「それだと失格が二人になるしね、わたし一人で行くよ」
それに不意打ちならば落とせる可能性は高い。
「わかったわ。頑張って来てねモンテ」
「まかせて」
コツンとビーデルと拳を合わせると武舞台を駆ける。
さて、案ずるより産むが易しとはこの事だろうか。
ディスポに瞬間移動で近づいたモンテだったのだが、当然奇襲は失敗し突き出した拳は軽々とディスポに受け止められたのだがそのままモンテは瞬間移動。武舞台の外、観客席手前へと現れると別に触れていただけで握っていた訳ではないディスポはモンテと離れて落下していく。
「きたねぇぞっ!」
「知らない言葉ですね」
足場の無い状態ではいくら足が速かろうが空を切るばかり。
「か・め・は・め・波ーーーーーーーっ!」
衝撃波を出して武舞台へと戻ろうとするディスポに上を取ったモンテが気功波で落としにかかる。
「バカなっ!」
観客席に戻ったディスポを確認すると瞬間移動でビーデルの傍へと瞬間移動で武舞台の上へと戻ってくるモンテ。
「モンテ…あなた、あんな簡単に落とせるならもっと頑張りなさいよね」
「ビーデルも分かっているでしょ。一度見せれば誰も警戒する。あの方法は二度は通用しないよ…それに…」
少し間をおいて続けた。
「さすがにジレンやトッポには最初から通用する手では無かったよ」
それほどまでにその二人の実力は隔絶していた。
最終話
力の大会も終盤。
残っている宇宙はあとわずかだ。
残っているのは第3宇宙が四人、第11宇宙が二人そして我らが第7宇宙が五人だ。
ジレンとトッポはまだ動かない。
そんな中、第7宇宙の面々の前に現れたのは数の優位を無くしてまで合体して現れたまさかの四体合体の超巨体戦士のアニラーザ。
巨体に見合わないスピードとその重量から繰り出される高威力の攻撃、衝撃波を飛ばし更にはジャネンバの如くパンチがワープして飛んでくる。
「ぐあっ」「うわっ」「何ッ!?」
これには悟空さん達も対処が難しかった。
隙を突かれてしまったのが17号さんがリングアウト。
「これはヤバイな…」
「モンテ…どうしよう…」
ビーデルが不安がるのも無理はない。
「悟空さん、ベジータさん何とかあの巨体をかく乱してください、あとはわたしが何とかしますっ!」
「何だとっ!?」「気を引くだけでいいんか?」
「ちょっと奥の手を使って来る。ビーデルは隠れてて」
「私も行くわっ!」
「ビーデルがやられたら合体出来ないからね…残り二人はアレよりも強いんだから」
「なら今っ…」
フルフルと首をふるモンテ。
「大丈夫。かめはめ波の準備だけしてて」
さて、そろそろ悟空さん達が取り付いたころかな。
「モンテーっ!」
悟空さんからの合図で瞬間移動でアニラーザへと飛ぶ。
「わたしの前で巨体合体など無意味っ!」
殴りつけた右拳。
ダメージが少なかったのかニヤっと笑うアニラーザ。しかし…
「な、なんだっ!?」
急に巨体が光り出したかと思うと合体が解除されて元の四人へと分裂した。
「悟空さん、ベジータさん今ですっ!」
モンテの意図を察したのかすぐさま気を集中させる悟空とベジータ。
「ビーデルっ!」
「分かってるっ!」
次の瞬間四つの極光が瞬く。
「「「かめはめ波っ!」」」「ギャリック砲っ!」
分裂した第三宇宙のパンチア、ボラレータ、コイツカイとパパロニはそれぞれ気功波で場外へと押し出されリングアウト。
多分食べ物の名前が元ネタのはずだけどパンチア、ボラレータ、コイツカイと並べるとキャバクラかどこかでパンチラでボられたのこいつかいっ!みたいでマジ笑える。
パンチラでボられるって…恥ずかしい。
スタッっとモンテの隣に着地する悟空とベジータ。
「何をした」
とベジータさん。
「スピリットの強制分離です。ヤードラット星人の技ですよ」
「ふんっなるほどな」
「うへぇ…もしかしたらポタラ合体も解除できんか?」
「攻撃が当たれば、ですね」
そう悟空さんの質問に答えた。
さてと。
「最終決戦ですからね悟空さん、ベジータさんちょっとこっちに」
「なんだ」「どうしたんだモンテ」
「いいから」
二人の腕を掴むと二人の体力を回復させる。
「なっ…」「体力がもどったぞ」
力の大会で負ったダメージと失った体力が戻ってきた事に驚く悟空とベジータ。
「何故もっとはやく使わんっ!」
ちょっと不機嫌そうにベジータが言う。
「最初の頃に体力が回復できると知られれば一番狙われるのはわたしになるじゃないですか。ヒーラーを最初に狙うのはどんなゲームも一緒です」
回復役を残しておくと敵が回復されて倒しずらくなるのは常識ですよ。
だから最後の最後まで使わずに隠しておいたのだ。
しかしもう最終局面だ。
残っている敵はジレンとトッポの二人だけ。
数の上では逃げ切れば勝ちだが、そんな勝ち方をサイヤ人が許せる訳もなく。
「じゃあオラはジレンの所に行ってくっぞ」
「まてカカロット、オレが先だ」
「ちょ、ま…トッポは誰が相手するんだよっ!」
「そんなものお前達で何とかしろ」
おーい…ベジータェ…悟空さんもだけどそんなにジレンと戦いたいのか。二番じゃダメですか…そうですか。
「まぁ、何にせよ残り時間もあとわずか。ビーデル」
「はいはい、フュージョンね」
「出し惜しみは無しだ」
次の敵は悠長に合体の時間を待ってくれないだろうしね。
距離が開いている今の内にフュージョンでビーデルと融合合体。
「本日二度目のモンデルちゃん登場っ!はっ!」
すぐに超サイヤ人ゴッドへと変身。準備は万端だ。
悟空とベジータはジレンへと駆けて行き残ったモンデルの前に巨漢のトッポが立ち塞がる。
「正義の為にお前には落ちてもらうぞ」
掲げるは正義の信念。プライドトルーパーのリーダー。
「んー…わたし他の宇宙の人たちって割と好きだったよ。あの卑怯な第9宇宙や第4宇宙もね。だが第11宇宙、あなた達だけはキライだ」
「ほう、何故だ」
「どの選手も正義正義とバカの一つ覚えの様に口にして」
「正義のどこが悪い」
「正義の味方はね、所詮味方した者の正義でしかないんだよ」
「何を言っている」
外野からもヤジが飛ぶ。
そう、そんな事すらこの宇宙の人たちは分からないんだ。
「正義の味方であるのなら、負ければ消される第7宇宙の無辜の民を救う存在でしょう?」
「それは…」
言葉に詰まるトッポ。
「正義の味方と言う存在が本当に有るのなら、全ての無辜の民を救う存在じゃなくてはならい。けっして他者の犠牲を許容してはならない。あなたはそれが出来ないから自分の手に収まるもの以外を悪と断じているだけ。有体に言えば…」
「やめろ…それ以上は…」
「ただの大量虐殺者と何も変わらない」
「あああああああっ!!」
モンテやビーデルならこんな事を言わなかったのかもしれない。しかし融合で正確が若干変わっているモンデルはモンテのひねくれている所とビーデルの清廉潔白さが合わさってしまった。
それがポットに会い悪い所として出てしまったのだ。
「ただの人殺しが正義の味方とか笑えもしないわ」
「ああああああああああああっ!」
トッポの苦悩の声が武舞台を轟かせる。
「おいバカ余計な事を言って、様子が変だぞこの気はまるで…」
ビルス様がトッポの変容に驚愕していた。
「要らぬ…もう何も要らぬ…正義など…要らぬ」
巨漢が絞られ突如として気が感じられなくなった。
「破壊神トッポの誕生だ」
その言葉は観客席の誰の言葉だっただろう。
「都合が悪くなると癇癪を起す子供かあんたは」
破壊神と化したトッポを子供と評するモンデル。
「ぬぅんっ」
手に光球が現れたかと思うと撃ちだされたそれはまっすぐモンデルへと向かって来る。
「破壊のエネルギーだとっ!くっ…」
寸前で避けたモンデルの後ろではカチカッチン鋼が抉れるように消滅していた。
「しかも躊躇いも無しに撃ってくるとは…なるほど…」
ジレンが居るし例えモンデルを殺してしまっても失格になっても構わないと言う事なのだろう。
「だりゃりゃりゃりゃっ!」
先発で気弾を飛ばしてみるが、破壊のエネルギーで体表を覆っているのか触れた瞬間に消滅してしまいダメージが無い。
大き目の気弾は極小の破壊のエネルギーを飛ばして消し飛ばした上で飛んでくるそれに当たればこちらが消失するだろう。
「さすがにあれは卑怯じゃない?」
格闘戦に持ち込んでも触れればこちらが消滅する。
「ルール上、殺せば失格というペナルティしかありません」
そう大神官様からのお言葉。
つまりトッポが失格になるのと同時にわたし達が消滅してもルール上問題は無い。
やってられるかっ!
相手はなりたてとは言え破壊神。もう超サイヤ人ゴッドでは相手取るのは難しい。
最低同じステージに立たなければ…
「ぬぅんっ!」
トッポの少し大きめの破壊のエネルギーがモンデル目がけて飛んでくる。
それを避けずに包み込まれてしまうモンデル。
「くっ…」
「なっ!?」
「バカなっ!」「ビーデルさんっ!」
破壊のエネルギーのより消失するはずのモンデルはしかしそのエネルギーを全身から吸収する事で消滅させていた。
そして…
「この技はあまり見せたくなかったんだけどね」
「あら、まぁ…これはこれは」
「破壊神…だと…?」
モンデルがした事は以前ビルスが最初に地球に来た時にモンテがやったようにそのエネルギーを集めてその身に吸収したのだ。
「おおおおおおっすごいねぇ」「うん、すごいねぇ」
「モンデルも破壊神になったね」「うん、なったー」
全王様はきゃっきゃと喜んでいるようだ。
「破壊神モンデル…」
そうして吸収した破壊のエネルギーを糧にして自分の中の殻を打ち破り、ここに破壊神として再臨したモンデルが中空からトッポを見下ろしていた。
モンデルが破壊神になろうがトッポの気迫は変わらず。
もうここに来て言葉などは必要なかった。
どちらともなく駆けるモンデルとトッポ。
「はぁっ!」「むぅんっ!」
同じレベルの者同士、ただ拳を振るうのみ。
ドウゥン、ドゥンと空気を震わせる音が武舞台に響く。
「まだだ、まだわたしはこんなもんじゃねぇぞーーーっ!」
赤かった髪が逆立ちピンクに染まった。
「なっ!?超サイヤ人・ロゼだとっ!?」
ジレンとの戦いの中一瞬だけ止まったベジータが驚愕の声を上げていた。
神の領域に立ったものが更に超サイヤ人に覚醒する事で変身できる未だかつてただ一人しか成功した事の無い変身を遂げたモンデル。
互角だった戦いが一気にモンデルへと傾いた。が、しかし…
「髪の色が変わったくらいで舐めるなっ!」
トッポもまだ成長途中なのだろう。
さらに神の気を膨れ上がらせると突き出した五本の指先から破壊のエネルギーを連射する。
「くっ…」
かわし、弾き、避けて応戦するモンデル。
「はぁっ!」
「ぬぅんっ」
隙をみて気功波を放つがトッポが振るった逆水平チョップに切り裂かれ武舞台を削るだけに終わった。
その後も激しいぶつかり合いは続く。
「くっ…まだ押し切れないのかっ…」
ならば界王拳か?
いや…わたしが好きなのは変身だ。変身する事に人生を賭けて来たと言っても過言では無い。
ならば…
ドドドドッ
気功波をまき散らしトッポの視界を奪うとバク転しながら距離を取るモンデル。
「子供騙しよ」
トッポの振った拳で粉塵諸共吹き飛ばされてしまうが、時間は稼いだ。
「はあぁぁあぁあああぁぁぁぁぁああああああっ!」
神の気もサイヤ人のパワーも限界まで高め、自身の殻をさらに破るイメージで…
成功例は既にベジータが見せているだろっ!
ジレンと戦っているベジータは超サイヤ人ブルーを更に進化させすがすがしいオーラを纏っている。
そう、あれだ。わたしが変身するのは…
「はぁーーーーーーーーぁっ!!!」
一瞬、足元に銀河を幻視した。
ピンクに逆立っていた髪の毛は鮮やかさを増し、体からは銀の粒子を乗せた薄桃色のオーラが立ち昇っている。
「はぁ…はぁ…はぁ…ふっ」
武舞台を蹴ると破壊神と化したトッポでも知覚できない速度で距離を詰めると拳を突き上げるモンデル。
「なにっ!ぐはぁっ」
鳩尾に拳を喰らい吹き飛んでいくトッポ。
細身で巨漢を軽々と吹き飛ばすその力に観客席が騒めいた。
「ぬぅ…がぁあっ!」
瓦礫を払いのけて立ち上がったトッポは近づけれまいと無数の破壊のエネルギーを飛ばすが、モンデルは涼しい顔で一歩一歩前へと歩いて来る。
最小限の動きで最大限の効果を得ているかのように弾く破壊は最小に、かわす動きすらまるで暖簾をくぐっているように軽やかだ。
「おいウィス、あれは」
「はい。あれはベジータさんと同種の変身と言う訳じゃありませんね。本人に自覚が有るのかは分かりませんが、もともとその素養は有りました」
「結論を言えウィス」
「ビルスさまもお気づきの通りですよ」
「身勝手の極意を身に着けた神になったサイヤ人の超サイヤ人」
「差し詰め超サイヤ人ロゼ・極と言った所でしょうか」
大技に切り替えようとしたトッポに一瞬の内に懐に入り回し蹴り。
「ぐっ」
吹き飛ばされながら繰り出したトッポの拳は空を切るばかり。
逆にモンデルの攻撃は確実にトッポへダメージを与えていた。
モンデルはトッポの顎を打ち上げ吹き飛ばしてから気を溜め始める。
「かーめー」
「ぐっ…」
「はーめー…」
「舐めるなっ!」
巨大な破壊のエネルギーを作り出したトッポは振り下ろす様にモンデルへと射出した。
「波ぁーーーーーっ!」
それと同時に撃ちだされるモンデルのかめはめ波。
モンデルのかめはめ波はトッポの破壊のエネルギーを上回る威力で押し流し…
「ぐわぁああああぁああああああっ!」
トッポを場外へと押し出す事に成功した。
「はぁ…はぁ…はぁ…ぐっ…」
今の攻撃で融合時間を使い切ってしまったようでモンテとビーデルの二人に分離してしまった。
モンデルとトッポの攻防がすさまじかったのだろう。足場にした武舞台はついに耐えきれなくなって落下。
分離と同時に意識を失ったビーデルともども落下していった。
わたしも意識を失っていたい…わたしも自由落下している事だしこのまま…
「モンテっ!狸寝入りは分かっているぞっ!」
「ひぃっ!?」
ビルス様の激に反射的に意識が覚醒し咄嗟に武舞台へとしがみついてしまった。
「はぁ…はぁ…ぐぅ……はぁ…」
体の中で暴れる気は分離の寸前にビーデルではなくわたしが全て抱え込んでいる。
こう言うものの制御は慣れているのだ。だてにウィスさんの地獄の特訓を受けていない。
体がとても痛かったが気力で受け流すと武舞台を上る。
向こうの戦況はと伺えばどうやら三人とも満身創痍のようだが、まだジレンの方が余力を残しているようだ。
途中感じた悟空さんの気は熱を帯びていて横目に見た時には髪の毛が銀色に染まっていたから恐らく身勝手の極意・極を発動したはいいが、それでも倒しきれずに満身創痍なのだろう。身勝手の極意はとっくにきれているようで黒髪に戻っている。
ベジータさんも限界を超える力の行使で二人とも超サイヤ人にも変身出来ないほどに消耗していた。
二人の体力を回復させようにもそもそもそれをするだけの力がわたしにも残されていない。
今もジレンの気弾をどうにか二人でバリアを張って凌いでいた。
バリアかぁ…偶にあの二人って器用な真似するよね。
超サイヤ人に変身できるだけの余力は無い。
しかし、やはりわたしは最後まで変身に拘るのだろう。
右手に残った気を集中させるとそれを上空へと打ち上げる。
ぐわっと振り上げた手を握り込み…
「弾けて混ざれっ!」
「……?」
見上げたジレンは意味が分からず。
「あれって」
「何っ!…パワーボールだとっ!?」
一回見た事がある悟空と自身も作り出せるベジータは驚愕する。
作り出したのは幻影の月。
その光る球体を見上げるとドクンドクンと鼓動が早くなっていくのが分かった。
更に体が膨れ上がり、手は毛で覆われ着ていた服ははじけ飛ぶ。
「すごーい」「モンテ大きくなったね」「うん、大猿だぁ」「すごーい」
突如巨大化したモンテに全王様は大喜びだ。
「カカロット、避けろっ!」
「くっ!」
「グォオオオオオオオオオオオっ!」
その巨体に似合わない俊敏さで走るとそのままジレンに倒れ込むモンテ。
「おおおおおおおおっ!」
「ごぁあっ!?」
下敷きになっていたジレンが繰り出した拳に弾き飛ばされ悶絶しながら吹き飛んでいくモンテ。
「カカロットっ!今だっ!」
「ああ、わかってっさっ!」
体勢を崩したジレンに最後の力を振り絞り超サイヤ人へと変身するとジレンの胴へと二人がかりでタックルして武舞台から押し出す。
「おおおおおおっ!」
「はぁああああああっ!」
「まだだっ!」
必死の抵抗を試みるジレン。
「俺達サイヤ人をなめるなよっ!」
ここで落とさなければ勝機は無い。
「勝のはオラたちだあぁああああっ!」
抵抗するジレンを悟空とベジータが二人がかりで今度こそ武舞台から突き落としたのだった。
「悟空さん、ベジータさん、ジレンさん、失格です」
大神官様の声が響く。
今武舞台に居るのは瓦礫の上でうずくまっているモンテただ一人。
「優勝は第7宇宙です」
歓声は少ない。もともと観客の少ない試合だ。
喜びの声を上げているのは第7宇宙のメンバーくらいのものだろう。
ジレンが落とされた事で第11宇宙も全王様により消滅させられてしまった。
「さて、優勝者であるモンテさん願いをどうぞ」
「…その前に服貰っていいですか?全裸なんで」
大猿化したから服が破れちゃったんです。
「あら、私とした事が」
ビーと大神官様から光線のような物がモンテに放たれると綺麗なドレス姿に変わっていた。
優勝者へのサービスと言う事なのだろう。
「さて改めて願い事を」
優勝者に与えられるスーパードラゴンボール。その願い事はおおよそ叶えられないものは無い。
だからモンテがモンテになる前の世界に戻りたいと言えば恐らく叶うだろう。
そこは地球が一瞬で無くなると言う事も、世界が次の瞬間には消滅してしまう事も無い世界。
当然、願い事は決まっていた。
「わたしの…願いは…」
…
……
………
「ほら、モンテ。そんなに暇しているのならパンちゃんの面倒を見ててちょうだい」
悟飯くんの家でゴロゴロしているモンテ。
結局モンテは現実世界には帰らずに未だドラゴンボールの世界に居る事を選んだ。
記憶の薄れた過去の自分に完全に別れを告げたのだ。
モンテはスーパードラゴンボールには消えてしまった宇宙を復活させてくれと願い、終わってみればただの徒労に過ぎない力の大会は終わったのだ。
「きゃっきゃ」
「いだだだだっ!さすがサイヤ人…侮りがたし」
抱いたパンちゃんが引っ張ったモンテの頬は赤くはれていた。
「平和が一番。この時の為に頑張れるわ」
「なんだろう…モンテと居ると絶対その言葉からは程遠いと感じてしまうのは」
「失礼なっ」
「ふふ…冗談よ。それよりも良かったの?スーパードラゴンボール」
とビーデル。
「良かったんだよ。あの大会は全王様が各宇宙の人間レベルを確認するためのもので、あの回答以外じゃきっと第7宇宙を消していたはずだからね」
「おっかないのね、全王様って」
「まぁ、しばらくはゆっくりしようよ」
「はいはい。まぁ絶対に騒々しくなるとは思うけどね」
バタンと家の扉が開く音と共に道着を着込んだ悟空さんがあらわれた。
「モンテいっかな」
「悟空さん。ちょうどモンテは来てますよ」
そろーと逃げようとしていたモンテを捕まえるビーデル。
「え、ちょ…」
「ズルいぞカカロット。今度はオレ様がモンテをボコる番だろうっ」
「硬い事いうなよベジータ」
遅れて現れたベジータがひどい事を言っている。
「わたしの平穏無事な人生って…」
「私、絶対にモンテは平穏無事な人生はおくれないと思うな」
ビーデルの止めの一撃にモンテは撃沈。
「やっぱり帰っていればよかったーーーーーーーっ!!」
モンテの騒がしい日常はまだまだ続いて行くのであった。
後書き
これにて一応の終了となります。書きたいから書いた。そんな作品ですが楽しんでいただけたのなら幸いです。
番外編 ゼノバース
前書き
年末年始の暇つぶしになれば幸いです。
さて力の大会も終わり、部屋でだらだらと過ごしていたはずのわたしは、気が付くと全く知らない場所に転位していた。
辺りを見渡せば小さなドーム状の建物が二つ。今わたしは管理された竹林と草原のような地面を踏みしめて立っている状態。
正面を見ればどこか殴りたくなってくる衝動が抑えきれない紫色の髪を切り揃えた少年の姿が見えた。
「驚いてますよね。説明は後でゆっくりさせていただきます。まず今はあなたの実力を試させてください」
といきなり背中の剣を抜いて襲い掛かってくる少年。
襲い掛かられて無抵抗でいられるほどサイヤ人を止めていない。
「行きますっ!」
剣を振りおろす少年。
「こっちは素手だぞっ!おらぁっ!」
ドンッ
「うわっ!」
「わたしはっ!」
ガシッ
「ぐっ!」
「その顔にっ!」
ドドンッ
「ぐふっ!」
「遠慮はしないと決めているっ!」
モンテの回し蹴りが炸裂する。
いつか未来から来たトランクスをぶん殴った時の様に遠慮しないで蹴り飛ばしたモンテ。
「ぐはっ!」
ガランガシャンッ
吹き飛ばされた少年は2,3回地面を転がって剣を取り落とし横たわる様に気絶した。
「ちょっ!ちょっとストップストーーーーップっ!」
慌てて奥の建物から10歳くらいだろうか、可愛らしい少女が現れた。
薄ピンクの素肌にエルフのような耳。その両耳にポタラを付けている所を見るにどこかの界王神だろうか。
「あーあー、トランクス完全に伸びちゃっているわね。説明はトランクスにさせようと思ってたのに」
モンテがぶっ飛ばした少年はやはりトランクスと言うらしい。
「面倒だけど代わりに私が説明するわね」
彼女の説明を纏めると、この今いる所は時の巣と呼ばれるところでその外延をトキトキ都と呼ばれる施設が覆っているらしい。
彼女は時の界王神さまで時間の流れの管理をしているのだそう。
そしてどう言う訳か過去の改変が行われてしまって大変な事態が起こっているらしい。
本来はこのトキトキ都に居るタイムパトローラーが任務遂行に当たるのだが、事の重大さに今いるタイムパトローラーの手に余りそうだったので彼らのまとめ役であるトランクスがドラゴンボールに願って強い戦士を呼んでもらったと言う事らしい。
それがどういう基準だったのかわたしだったと言う事なのだそうだ。
モンテには過去の世界に飛んでもらい歴史の修正をしてもらいたいとの事。
ふむ、なるほど。
「なので、どうかお願いす…」
「お断りします」
「はやっ!」
速攻で時の界王神さまのお願いを断るモンテなのだが…
「あなたには拒否権はないわ」
「ええ!?」
「トランクスが都合よく気絶しているから説明するわね。歴史の改変が行われた最初の一巻はあなたの事変なのよ」
「はい?」
そう言って取り出されたのはひとつの巻物のようなもの。
「これは終わりと始まりの書と呼ばれる物で過去の出来事が記されているのだけれど、これにはもう改変がなされているの」
「えーっと?」
「この記録はあなたがラディッツと会った時の物。そこであなたはラディッツに殺されているわ」
「な、…なんだってーっ!?」
「あなたの存在はトランクスが使ったドラゴンボールで奇跡的にこの世界に存在しているだけで歴史の中には存在していないのよ」
「じゃ、じゃぁその巻物をさっさと修正してですね…」
時の界王神さまはその巻物を胸元にしまい込んでしまった。ナイチチのくせに…
「残念。この巻物は一番最後に修正しないといけないの。でないとあなたの歴史は存在できなくなってしまう」
「はいぃっ!?」
驚愕の事実に心底驚いてしまうモンテ。
時の界王神さまの説明を聞くに、ラディッツにわたしが殺された後の歴史は本来のドラゴンボールの世界へと進み、結果本来の歴史と融合しかけているらしい。
分離させようにもその歴史も改変されていてその修正をしなければおそらく元に戻らないだろうとの事。
なるほど…わたしは呼ばれるべくして呼ばれたと言う事なのだろう。
「ほら、いい加減起きなさいトランクス」
「うっ…はっ!時の界王神さま」
ゲシっとトランクスを時の界王神さまが蹴り起こした。
「まったくいつまで寝てる気?しょうがないから説明は私がしておいたわ」
「あ、ありがとうございます…その…この方がとても強くてですね…」
「それでもあなたはサイヤ人なの?」
「面目次第もございません…」
時の界王神さまの言葉に肩を落とすトランクス。
「まぁ、そうしょげる必要もないわよ。彼女もサイヤ人らしいもの」
「そうなんですか?」
「サイヤ人の尻尾があるじゃない」
と言うか、わたし尻尾を隠しているつもりも無いのだけれど。
「ああ、そう言えば純粋なサイヤ人は尻尾が有るのでしたね」
失念してましたとトランクス。
「どうりで強いわけです。えっとこの方はいつの時代から?」
「あなたとそう違わないわ。ただ、ちょっと別の歴史からかしらね。まぁ今回の事件には最適な人材である事には変わりは無いわ。私はこのあとトキトキのお世話があるから後の事は頼んだわよトランクス」
「わ、分かりました時の界王神さま」
去っていく時の界王神さまを見送ると刻蔵庫と呼ばれるドームへと案内された。
途中お互いに自己紹介を終える。
そして到着した刻蔵庫でトランクスが取り出したのはやはり終わりと始まりの書と呼ばれる物だ。
「モンテさん、これを見てください」
スルスルと巻物を解いて中を覗き込むとどうやら記された刻を垣間見れるようだ。
その内容は地球に来たラディッツが強化されていて羽交い絞めにした悟空ごとピッコロの魔貫光殺砲で貫かれるはずが悟空の拘束を振りほどき悟空だけが魔貫光殺砲で殺されてしまっていた。その後気功波でピッコロも殺されてしまうと言う盛大なバッドエンドへと改変されていたのだ。
「あなたにはこの歴史の修正をお願いしたいのです。訳あってボクはこの時代には関われません。お願いします、このままでは歴史の流れが狂ってしまう」
まぁ、トランクスが直接この時代に行ってしまうと人造人間編の事も有り歴史に大きな矛盾を孕んでしまうのだろう。
「まぁ歴史を修正しないとわたしも帰れませんしね…不承不承ながら了解しました」
「……?」
気絶していたので時の界王神さまの説明はトランクスは聞いていなかった為にモンテの言葉はトランクス理解できなかったらしい。
ラディッツの手前だ。今回は尻尾は出来るだけ隠した方が良いだろう。あまり好きでは無いが腰に巻いて服で隠してしまおう。
道着は…うーむ…昔ビーデルが着ていたトレーニングウェアで良いか。
ピッと念じると服装が一瞬で変わる。
「うわ、そんな事も出来るんですね」
「まぁ、ね。昔取った杵柄でね」
主にヤードラット星での精神修行の結果だ。
準備も整った所で終わりと始まりの書を手に取る。
「それでは歴史の修正、お願いしますね」
「強すぎるラディッツをボコって悟空さん諸共に魔貫光殺砲で殺されるように調整しろって事ね…難くね?」
「…お願いします」
おいーっ、トランクスっ!難いの分かってんなっお前もっ!
終わりと始まりの書を握りしめると視界が暗転。次の瞬間地球に転位していました。
さて、状況はっと…はい!?
悟空さんとピッコロさんが吹き飛ばされた状況で悟飯くんに向かってラディッツの気功弾が撃ちだされている。
キレた悟飯の頭突き攻撃もきっと今のラディッツなら避けてしまったのだろう。
邪魔と判断した悟飯くんに容赦のない攻撃。これを喰らえばいくらサイヤ人ハーフと言えど死にそうだ。
慌てて悟飯くんの傍に瞬間移動でジャンプ。
間一髪飛んでくる気弾の前に現れると右手を振って気弾を弾き飛ばした。
巻き上がる粉塵。
「きさまっ何者だっ」
ラディッツの誰何する声。
「通りすがりの一般人だっ!」
「一般人がオレの気弾を弾けるはずないだろうっ!」
あー…そうね。
「孫悟空、あいつはお前の知り合いか?」
「いや、…だが悟飯を助けてくれたみたいだな。すまねぇ」
ピッコロさんと悟空さんがよろよろと立ち上がった。まだ心は折れてないようで上々だ。
「わりぃけんど、悟飯を連れて遠くに行ってくれっか」
「あー…はい、分かりました」
悟空さんとピッコロさんが再びラディッツに向かっていく。
わたしは悟飯くんを抱き上げると岩陰に隠れながら状況を見守る。
正直、超サイヤ人になってラディッツを一発ぶん殴ればラディッツを倒す事は造作もない事だ。
だが、それでは歴史の修正は出来ない。
禍々しいオーラを纏った瞬間にヤムチャさんのトレードマークであ繰気弾を使ってチャチャを入れ、どうにか悟空がラディッツを羽交い絞めにした所で気弾を連射。
「バッバカなっ!」
振りほどこうと力を込めたラディッツの体力を削り、ピッコロの魔貫光殺砲をアシスト。
結果、悟空さん諸共に魔貫光殺砲は二人を貫いた。
ラディッツは死の間際に一年後に二人のサイヤ人が現れると負け惜しみのように伝えて倒れた。
「何とかなったか…そう言えば先ほどのアイツは」
見渡したピッコロの視界に入らないように注意しながらわたしは帰還の徒に着いたのだった。
「…ラディッツの死体が消えている?どう言う事だ…」
時の巣に戻るとトランクスが出迎えてくれた。
「ありがとうございます。無事歴史は修正できました…ですが…」
労いの言葉もほどほどにトランクスの視線が下を向く。
「その方は…」
モンテがズルズルと長い黒髪を掴んで引きずっている誰か。
「ラディッツじゃないですかっ!どうして連れて来たんですかっ!」
そう、引きずられているのはダメージは負っているが死んではいないラディッツだった。
死んだと思っていたのだが、モンテが回復術を掛けると息を吹き返したので連れ帰って来たのだ。
「逆に聞こう。兄を助けない妹がいると思うか」
「……はい?」
トランクスが面白い顔をしていた。
「あちゃー…やっぱり連れ帰って来たのね」
何処からか現れた時の界王神さまが呆れた声を出した。
「時の界王神さまっ!良いんですかっ!?」
「良くはないわね。でも歴史上これ以降ラディッツが関わる場面は無い。悟空くんさえ相打ちで死んでくれればラディッツの生死は不明でも問題は無いわ」
うわー…我が兄ながら扱いが酷い…
「はっ!そう言えば兄と言うのは…」
「わたし、バータックとギネの娘だからね。悟空さんとラディッツはわたしの兄よ」
「え、…ええーーーーーっ!?」
「トランクスうるさい」
「あ、すみません時の界王神さま…あまりにも衝撃的な事実だったもので…」
「とは言え、それは別の歴史なのだけれどね」
それよりもと時の界王神さま。
「連れ帰って来たソイツどうするの?」
「今回の件で実感しました。わたしじゃこの後の歴史の修正は難しいと。なのでラディッツに頑張ってもらおうかなと」
「タイムパトローラー候補として連れて来た、と?」
「ちょ、ちょっと待ってください…あなたの実力はボクが一番分かっています。あなたは強い、なのに…」
「トランクス、強いのが問題なのでは無いわ。強すぎるのよ、彼女。その気になれば今のあなたなんて超サイヤ人になっても一撃ね」
「……はい?」
「さすが、破壊…」
「わーわーわーっ!」
「何よ」
「知っていたのですか?」
こそっと時の界王神さまに耳打ちをするモンテ。
「まぁね」
あ、そう…
「んっん。さて気を取り直して…わたしが行くより鍛えたラディッツが行く方がうまく行く場面もあるでしょう。正直手加減とか…あんまり上手じゃないんですよね、わたし。超サイヤ人だ2だ3だとかで騒げる時代はとうの昔に過ぎ去ってますし…ね」
「あなたの経験した歴史はどうなっているんですか…」
と若干トランクスが引いていた。
ゴッドとかブルーとか身勝手の極意のある歴史デスが何か?
まぁ、人造人間すらどうにもできなかったトランクスの世界のパワーバランスなど大きく超越している事は確かだね。
「それで、ラディッツを説得するの?暴れたりしたら大丈夫なの?」
「戦闘力1500程度のラディッツに負けると思いますか?ナメック星編のクリリンの方が何倍も強いわっ!」
それに、と一拍置いて続ける。
「昔から妹に勝てる兄など存在しない」
さて、起こしますかね。
傷は既に塞いであるし体力も戻っているはず。
ゲシっと足で気付けをするとウッと唸ってラディッツは意識を取り戻した。
「こ、ここは…オレは生きているのか?…お前はっ!」
どうやら魔貫光殺砲で致命傷を受けた事は覚えているようで、ついでにモンテの顔も覚えているようだ。
「ここは時の巣。あなたを助けたのはわたし。だからお兄ちゃんはわたしには逆らわない事、いい?」
「ちょ、ちょっとモンテさん」
「トランクス、こう言う事は最初が肝心なのよ」
「け、知った事か。ぶっ殺されたくなければその生意気な口を閉じな」
死にそうだった割には好戦的な態度を崩さないラディッツ。
「同じ言葉を返してあげよう。ぶっ殺されたくなければ黙って従え」
モンテの腰からスルリと尻尾が現れる。
「な、お前サイヤ人かっ!?」
驚くラディッツ。
「それが拳を収める理由になるの?」
「なる訳が無いなっ」
地面を蹴ってラディッツが迫る。
「ちょっと、あんまり派手に壊さないでよねっ!」
時の界王神さまが何か言っているが、とりあえずラディッツだ。
死の淵からよみがえったラディッツは確かに戦闘力を増したようで先ほどとは別人のようだったが…
「がっ!」
モンテのグーパンがラディッツの顔面を捉えた。
「聞いてっ」
「ぐっ」
「無かったっ」
「がっ」
「ようだからっ」
「あべしっ」
「もう一度言うけれどっ!」
「ぐっふぅ…」
「妹に勝てる兄など存在しないわっ」
モンテの容赦のない攻撃に吹き飛ぶラディッツ。
「…それって妹のおねだりに勝てる兄がいないって事…ですよね?けして力で敵わないと言う事じゃないと思いますけど」
容赦のないモンテの攻撃、先ほど自分もあれで沈められたのかとトランクスが茫然としてツッこんでいた。
「うっ…ぐぐぐ…くそぉ…なぜ勝てない…妹に兄が負けるなどど……………いもうと…?」
あ、ようやく気が付いたのか。
「まて、妹だと…弟ならともかくオレには妹などは居ないはずだ」
膝立ちで起き上がるとこちらを見つめるラディッツ。
「残念、わたしは正真正銘バータックとギネの娘よ。つまりカカロットとラディッツの妹と言う訳」
「なん…だと…妹にまで負けたのか…オレは…」
あ、脱力して腕で体重を支えている。おーてぃーえる、いただきました。心のメモリーに永久保存しておこう。いや、確かスマホがどこかに…
カシャリと写真を撮っているとどうやらラディッツは正気に戻ったようだ。
「なぜオレを助けた。血縁の情などサイヤ人には無いからな」
使えなければ身内でも殺す。それがサイヤ人だ。
「別に…本来の歴史で死んでいるあなたをどうしようがわたしの勝手よ」
「死んでるだと?」
「むしろあのまま放置されて生きていられると思ってたの?ピッコロさんが止めを刺す前に回収してあげたんだから感謝しなさい。トランクス、説明」
「ええ、ここでオレに丸投げですか…」
そして落ち着いたラディッツにトランクスが説明する。
本来の歴史ではラディッツはあそこで死ぬはずだった。死んで以降ドラゴンボールで復活するでもなく完全にフェードアウト。歴史の表舞台からは忘れ去られてしまっていた。
「…歴史通りならオレはあそこで死ななければいけなかったのか」
「今は生きているんだから良いじゃない」
「軽いなっお前は!」
ラディッツの心の叫びをサラっと無視をして時の界王神さまが言葉を繋げた。
「まぁ、歴史は修正されたしラディッツくんの生死はそれほど重要じゃない。この場面で重要だったのはベジータとナッパの襲来の予告と悟空くんの死だから。まぁ元の時間軸に戻してあげる事は出来ないけれどね」
「ぐぅ…」
暴力に訴えようにも今のラディッツではモンテに敵わない。悔しそうにうめくのがやっとだった。
「なんでオレを助けたんだ…」
「まぁ肉親の情ってのも有るわよ?わたし地球育ちのサイヤ人だし」
生まれ変わってからの殆どはヤードラット星だと言う事実はややこしくなるので伏せておこう。
それに肉親の情と言われてちょっと赤くなったラディッツ可愛かったし。
「とは言え一番の理由はわたしのかわりに歴史の修正をしてもらおうかと思って」
「は?」
「だから歴史の修正」
「いやまて、説明されたから何となく歴史の修正の事は分かった、だがなぜオレがやらねばならん」
「だってラディッツくらいが丁度いいじゃない?強さ的に」
「ふ、それほど俺の強さを…」
「ごめん言い間違えた。ラディッツくらい弱くないと修正する歴史に負荷を与えてしまいそうで」
「なぜ言い換えた…」
「え、今のラディッツがわたしに敵うとでも?寝言は超サイヤ人になってから言って」
「寝言…だと…」
ズーンと再び沈み込んだラディッツ。超サイヤ人と言う言葉には反応せず。
「確かにねぇ、歴史を修正するにしても序盤にラスボスを投入する訳にも行かないわよね」
「時の界王神さままで…ラスボス…?モンテさんがですか」
「だってこの娘、破か…」
「わーわーわーっ!」
「何よ、言っちゃダメなの?」
ダメなんですっ!なんかそのワードは更なる面倒事が引き寄せられそうなのでっ!
「で、次の修正点は何処なの?」
「次はここになります」
そうトランクスが持ってきた終わりと始まりの書にはサイバイマンに苦しめられるZ戦士たちの姿があった。
「…なんかサイバイマン多くね?しかも色違いとかいない?」
「ええ、はいそうなんです。戦闘力もこの当時の悟空さんでも恐らく手こずるレベルです」
うーわー…
「これは引くわー…仕方ない…トキトキ都にある武舞台貸してもらっていい?ちょっとラディッツをボコってくるわ」
「…ほどほどにしてあげてくださいね」
でえじょうぶだ。純粋なサイヤ人は死の淵から蘇れば戦闘力がアップするのだ。ベジータさんとかクリリンさんにわざと致命傷を負わせてデンデに回復させてもらうとかもう意味の分からない事をしているレベルだぞ。
「えーっと…この頃のベジータさんの戦闘力は18000だから…せめてそれくらいにはなってもらわないとね」
「…詳しいですね、モンテさん」
「まねー」
言葉を濁したモンテ。
あぶねー。戦闘力はこの頃のドラゴンボールが旬だっただけに覚えていたんだけど普通は分からない情報だったわ。
そしてその後はインフレにスカウターがついてこれず…まぁスカウターで測れるのは気だけだしゴッドになってしまえば分からずじまいだものね。
「と言うかそもそもラディッツが行ったら面識が有るんじゃないかしら」
と時の界王神さま。
「んー、ラディッツの髪を切って仮面でも付ければ大丈夫だと思うけどね」
「何ですか、その髪の毛が本体みたいな言い方は」
呆れているトランクス。
「あー…確かに髪の毛しか印象が残らないわね…彼」
時の界王神さまも頷いている。
「まぁ後は尻尾を切り落とせば完璧でしょう」
「ええ、切っちゃうんですか?それは余りにも…」
可哀そうとトランクス。
「この時間軸ってベジータがパワーボールを作り出すわよね。ラディッツまで大猿になってしまったら面倒じゃない」
「…本当、詳しいですねモンテさん」
そりゃファンですから。
そしてわたしはラディッツを引きずって武舞台へと移動するととりあえずボコる。
瀕死のダメージを負ったラディッツを回復するとやはり戦闘力が上昇した。
戦闘技術は長年の経験で十分に玄人の域だが、いかんせん戦闘力だけは低かったラディッツ。
「ふははははっ!凄まじい力を感じるぞっ!」
そりゃ今までの二倍の戦闘力にもなれば凄まじく感じるだろう。
回復させると調子に乗って襲い掛かって来たので再びボッコボコに沈める事3回。
「すみません…不甲斐ない兄ですみません」
ラディッツーっ!!生来のよわむし根性が出てるーーーーっ!
戦闘力は初期の10倍を超えていてもモンテに軽くあしらわれるラディッツが凹んでいた。
ヤバイ、勇気づけないと…
「お兄ちゃん」
「な、なんだ妹よ…」
あ、妹と認めてはいるのか。
「蟻がバッタになった所で人間には敵わないんだよ?」
「おっふぅ…所詮オレは虫ケラです…すみません…すみません…」
あ、更に凹ませてしまった…
「大丈夫、お兄ちゃんは強くなったよ。ほら戦闘力もナッパを超えているでしょ?」
スカウターで測った所15000は越えていた。
「そ、そうだよなっ!」
「お兄ちゃんは出来る子なんだよ。なんて言ったってゴボウファミリーなんだものっ!潜在能力は高いはずだよっ!」
やる気を出してもらった所で髪の毛をバッサリと切り、尻尾をちょん切って服装を地球風の適当な物に着替えなおさせると歴史修正へと出発。
「だ、大丈夫ですよね…ラディッツさん」
トランクスが心配そうに耳打ちしてきた。
「大丈夫大丈夫。ベジータより少し弱いくらいに仕上げたから」
「仕上げたって…調教師じゃ無いんですから言葉を選んでください」
終わりと始まりの書を握りしめるとZ戦士たちがサイバイマンと戦っている所へと出た。
悟空はまだ到着していない様だ。
「そこの岩陰に居るやつ、巻き込まれたくなければさっさと逃げろ」
そうピッコロさんがこちらを睨んで忠告してくれた。
「とは言え、さすがにサイバイマンを間引かないと勝ち目はないか、行ってらっしゃいお兄ちゃん」
「ぬっ…ぬぅ…お兄ちゃんなどと気色悪い呼び方をするなっ!」
岩陰から出ていくラディッツ。
「お前は…どこかで会った気はするが…気のせいか?」
ピッコロさんは髪の毛を切って仮面を着けただけでラディッツだとは気が付かなかったらしい。
「戦闘力15843だと!?」
「なんだとっ!壊れているんじゃねぇか?」
ベジータとナッパもその戦闘力に驚くだけでラディッツとは気が付かなかった。
「き、気づかないのだが…」
岩陰に隠れるわたしを見てラディッツが言う。
「お兄ちゃんの印象は髪の毛が八割だったから…」
「マジか…」
「マジ」
それを切ってしまえば途端に気が付かれなくなるだろうと言う見込みは当たっていたが、相当ラディッツも精神的ダメージを負ったようだ。
とは言え、歴史を修正するためにはサイバイマンをまねがねば。
始まるサイバイマンとの戦闘。
ふつうに考えれば今のラディッツが負ける訳無いのだが、数の多さと強化されている事で一進一退の攻防が続いていた。
その内に大量のサイバイマンを引き連れて戦線を離れてしまったラディッツ。
「ここなら本気でやれるってもんだっ!」
張り切るラディッツは確かに強かった。
襲い掛かるサイバイマンを蹴散らして確実に止めを刺していく。
「うう、本当に強くなって…ほんのちょっと前までサイバイマンに毛が生えた程度の戦闘力しかなかったのに」
「う、うるさいっ!お前も戦えっ!」
えー…
とりあえず面倒くさそうなテンネンマンとジンコウマンにケンカキックをかますと粉みじんに吹き飛んでいった。
「化け物め…」
ひどっ!?
『すみません、どうやらナッパも何者かによって強化されているようです。悟空さん到着までに体力を減らしてください。流石の悟空さんも今のあの二人と連戦するのは負担が大きすぎます』
そうトランクスから通信が入った。
「だって、頑張って来てお兄ちゃん」
「どいつもこいつもカカロットカカロットと…まぁいい。ナッパに一泡吹かせられるんだ、行ってやろう」
「正体に気が付かれないようにね…まぁ、髪の毛と尻尾が無いから多分大丈夫だと思うけどっ!」
あと仮面もつけてるし。
「お前は…はぁ…行って来る」
ナッパの戦闘力は4000だったはずだけど、持ち前のタフさと強化でラディッツといい勝負をしていた。
Z戦士たちが全員やられた頃、ようやく悟空さんが登場。
「ナッパ、お前はその仮面ヤロウを倒せっ!カカロットはオレ様が相手をしてやるっ!」
そう言って後ろで見ていたベジータが悟空さんと対峙する。
「おめぇは…どこかで会った気がすっぞ」
「ふん、今だけはお前の味方をしてやる。感謝するんだな」
「誰だかわかんねぇけどありがとよっ!」
そうして始まる兄弟による共闘。
ナッパは無事にラディッツが倒したようだ。
悟空さんの方を見ればかめはめ波とギャリック砲の撃ち合い。
界王拳を使える悟空が撃ち勝ったが、倒すには至らず。
「はじけて、まざれっ!」
ベジータが作り出したパワーボールでベジータは大猿化。戦闘力も10倍に伸びていた。
「おいっ、モンテっ!」
岩陰で影に入りながら地面を向いて両手で顔を覆っているモンテにラディッツが声を掛けて来た。
「ごめん、無理。後は任せたっ!」
「なぜだっ!ってそうか尻尾か…」
パワーボールが浮かんでいる以上わたしは上を向けない。
「ひとの尻尾は遠慮なくちぎったくせに自分のは切って無いのかよ」
仕方が無いんだ。尻尾が無いと超サイヤ人4になれないんだもの。切る訳にはいかないのよ。
「ちぃっ!役に立たんヤツめ」
ラディッツは悪態を吐きながら大猿ベジータへ向かって行った。
ゴメンて。
いくらベジータが何者かによって強化されているとは言えこちらの戦力はラディッツの分増えている。
悟空さんとラディッツの共闘も息が合い始めた。
生き残っていたクリリンさんと悟飯くんも到着し、どうにかベジータの尻尾を切る事に成功。
後の流れは本来の歴史どおりに進むだろう。
それを見届けるとわたし達はトキトキ都へと帰還するのだった。
どうやら本格的に歴史を改変して、更に歪めている存在が居るようだ。それも敵を強化するなどと言う手段を取っている事から歴史そのもの時間そのものを破壊しかねない行為らしいのだ。
黒幕の存在は今の所分からない。
それとわたし達は改変された歴史を戻す事でしか対処が出来ないのだからアクションをしてもらわない事には黒幕にもたどり着けないのだ。
「と、父さんがギニューにっ!?」
新しい巻物を確認するとベジータがギニュー特戦隊スペシャルファイティングポーズを決めていた。
なるほど、今度はボディチェンジでベジータさんと入れ替わってしまったと言う感じなのか。
てかヤバイっ!ギニュー特戦隊のスペシャルファイティングポーズがががががががっ!…ふぅ…落ち着け、わたし。
「父さんだと?ベジータがか?」
「ら、ラディッツさん…」
終わりと始まりの書を見ていたトランクスが慌てていた。今回の歴史改変はナメック星編…フリーザ編のようだ。
「兄さん知らなかったの?トランクスはベジータさんの息子だよ」
「なん…だと…ヤツに息子が居る…だと?」
なんだろう、ラデイッツは結構ショックを受けているようだ。
「すみません…父さんをお願いします」
頭を下げるトランクス。
「まぁ、その前にラディッツはまた武舞台だね」
「うっ…まさか…」
「そのまさかです」
ニヤリといやらしい笑みを浮かべるモンテに若干引いているラディッツ。
「ちなみに今回はどの位に」
とトランクス。
「ギニューが120000だからまぁ、それより弱いくらいかな」
ギニューにボディチェンジされても面倒だし。
「……何故知っているのか…と言うツッコみは二度目ですね…お願いします」
ラディッツをボコり終えると終わりと始まりの書を握りしめナメック星へと降り立つモンテとラディッツ。
「ここがナメック星か」
「ドラゴンボールを奪ってやろうなんて思っちゃダメだからね。わたし達は歴史の修正に来ているんだから」
「分かっている。そもそも今のオレではお前には敵わないのだ、そのような事はせん」
さて、と。
「ギニューの気はあっちかな。近くにベジータさんの気も感じるし」
あとクリリンさんと悟飯くんの気も。
「そのスカウターも無しに相手の位置を探るのはどうやっているのだ?」
「そんな難しくは無いよ。ベジータさんも出来る事だしね」
「ちっ」
スカウターに頼り切ったラディッツには難しいのだろうが、出来るようになってもらわねば困る。要修行だ。
現場に到着すると、やはりギニュー特戦隊の強さが強化されているようだ。
対峙するギニュー特戦隊とクリリンさんと悟飯くん。
「そこに居るやつ、姿を見せろ」
スカウターでその存在を見破ったらしいギニューが岩陰に隠れていたラディッツとモンテを呼んだ。
ザッと地面を踏みしめて岩陰から出るラディッツ。
「誰だお前は」
「…やはり分からんのか…ショックだ」
髪の毛が本体だもんね、ラディッツって。
「あ、あなたは…どうしてここに?」「地球で助けてくれた」
とクリリンさんと悟飯くんがラディッツを見て呟いた。
「まぁこっちにもこっちの理由が有るんでな、助太刀してやる」
「助かるが…」「あ、ありがとうございます」
「…もう一人いた気がするのだが…スカウターの故障か?」
面倒な事になりそうだったのでゴッド化してスカウターの目を誤魔化したモンテだった。
戦闘はラディッツに任せるっ!がんばれお兄ちゃんっ!
「な、なんだ?」
ゾクリと身を震わせるラディッツ。
ギニュー特戦隊との戦闘が始まった。
「まさかオレがギニュー特戦隊といい勝負が出来るようになるとはなっ!」
「貴様、なにものだっ!」
誰何するギニュー。
「さあな、誰でも良いだろう」
そうしてリクームを追い詰めた所で遅れてやって来た悟空さんが登場。悟飯とクリリンをフリーザの宇宙船にドラゴンボールを取りに行かせた。
先にグルドが戻っているはずだが…まぁクリリンさんと悟飯くんも弱くないし何とかなるだろう。
「わりぃなまたつき合わせちまって」
「いや、かまわん」
「じゃあ、いっちょやってやっか」
悟空さんとラディッツがギニュー特戦隊と戦闘を開始する。
悟空さんがリクームを倒し、グルドは抜けた為に不在。残りはギニュー、バータ、ジースの三人。
ギニューは悟空さんが相手をしていて互角。バータとジースはラディッツが相手をしていた。
追い詰められたギニューはボディチェンジを使うが…
「えー…」
『これは…どうしたものでしょうか…』
モンテとトランクスの若干あきれたような戸惑いの声。
偶然ジースに蹴られたラディッツがボディチェンジの直線上に割り込んでしまい中身が入れ替わってしまったのだ。
本来入れ替わるはずの悟空さんでもなく、歴史改変の為に入れ替わるはずだったベジータさんでもなくまさかのラディッツ…
「こ、これは…入れ替わったのかっ!?このオレがっ!」
ギニューと入れ替えられて慌てているラディッツ。
「なんて事をしてくれたんだジースっ!」
「す、すみません隊長っ!」
「この体と孫悟空では潜在能力が違うのだっ!」
ギニューはギニューで不満のようだ。
「ふざけやがってっ!ならば返せっ!」
「返せと言われて返す奴が居るかっ!」
「えっと…あっちがアイツでこっちが…オラこんがらがって来たぞ」
悟空さーんっ!
「貴様らっ!」
キレたラディッツがギニューの体でバータとジースを襲い始めた。
「ほう、この体も中々鍛えられているな」
「くそ、お前が敵なんかっ!入れ替わったと言う事かっ!」
悟空さんとラディッツの体に入ったギニューも戦闘を開始。
「はぁ…はぁ…はぁ…ざまぁ見やがれ」
すごい、ギニューの体に入ったラディッツがバータとジースを倒してしまった。
「すまねぇ、その体なら怪しまれないだろうから宇宙船に行ってドラゴンボールを取ってきてくれねぇか。、おめぇの体はオラが何とかしておくからよ」
「何とかって…クソっ!覚えていろよカカロット」
「やっぱオメーどこかで会った気がすっぞ」
ギニューの体に入ったラディッツが飛び去る。
「クソッ」
「おっとオメーの相手はオラだろう」
追いかけようとしたギニューを遮る悟空。
あー、結構容赦なくラディッツの体をボコってるわー…わが兄ながらヒドイものだ…
え、お前も変わらんだろう?そう言う事は言ってはいけない。わたしのは修行だ。
ギニューが突如悟空さんの隙をついて宇宙船へと飛んでいく。それを追いかけるように悟空さんも飛んでいった。
「さて、と」
二人が居なくなったのを確認して岩陰から出るモンテ。
「そこに居るんでしょう」
「あら、中々勘が良いわね」
現れたのは二人の人影。
魔族の女性と筋肉質な男性だ。
「あなたが歴史を改変している存在って事でオーケー?」
「たいしたキリも感じない存在で威勢だけは良いな。ここで消えてもらうぞ」
と大柄の男が言う。
「弱いくせに追われるのは面倒だわ、やっちゃってミラ」
「了解した。トワ」
気を開放する大柄の男、ミラ。
中々の気でこの時代のフリーザなど完全に圧倒している。
「せめて苦しませないで殺してやろう」
シュンと高速移動すると抜き手がモンテを襲う…が、しかし。
モンテは冷静にミラの腕を取り、返す力で締め上げて骨を折った。
「ぐわわあああっ!」
「ミ、ミラっ!?」
慌てるトワだが、遅い。
こっちは最初から超サイヤ人ゴッドなのだぞっ!まぁ、スカウターを誤魔化す為にゴッドだっただけだけど。
更に足を引っかけて地面に転がすとそのまま体重を掛けた肘打ちで肺を強打。
「がぁっ!」
骨が折れる音が聞こえたので肋骨が折れているかもしれない。
「くっ」
援護のつもりだろうか、トワからエネルギー弾が飛んでくる。
それを立ち上がったと同時に持ち上げたミラの巨漢を盾にして受けるモンテ。
「ミ、ミラ…なんて卑怯な…」
攻撃してきた相手に卑怯もクソも無い気がするんだけどなぁ…
少し大きめのエネルギー弾を準備しているトワと、意識を取り戻したミラがモンテに肘打ちをして来ようとした所をトワへとミラを蹴り飛ばしエネルギー弾の収束を中断させるとすぐさま半身を引いて腰を落とす。
「か・め・は・め…波ぁーーーーーーーーっ!」
極光がトワとミラを飲み込んだ。
周りの地面を抉って襲い掛かるかめはめ波を正面から受けるミラがトワを守っているようだ。
「ち、逃がしたか」
かめはめ波を撃ち終わるとそこには二人の姿は無かった。どうやら転位で逃げたらしい。
すぅっと髪の毛が赤から黒に戻ったモンテ。
その後ろにズタボロのラディッツが降りて来た。
「こんな所で何をしていた…こっちは大変だったのだぞ」
「…無事に戻れて良かったじゃない」
『はい、歴史も無事に修正されました。二人とも帰ってきてください』
モニターしていたトランクスの通信。
ラディッツの話を聞けば、追い詰められたギニューは悟空さんとのボディチェンジをしようとした所に割り込んで元に戻ったラディッツ。
しかし、そこにグルドが助太刀に現れ金縛りで悟空さんの動きを止めると悟空さんと入れ替わったらしい。
そしてここで機を窺っていたベジータさんが登場。遠慮なく悟空の体に入ったギニューをボコり、焦ったギニューがベジータさんと入れ替わろうとした所を悟空さんがインターセプト。
もう一度と使ったボディチェンジは悟空さんの投げたナメックガエルに当たり入れ替わってしまったそうだ。
まぁ大局を見れば確かに原作通りと言う事…なのかな?
時の巣に戻れば今回の黒幕の報告だ。
ミラとトワと名乗った二人組。
時の界王神さまによれば、二人はわたし達の世界よりも未来の世界の暗黒魔界の住人らしい。
そしてトワはなんとあのダーブラの妹らしいのだ。…ダーブラに妹が居たなんてビックリだわ。
今後の目的は改変されるだろう歴史を修正しつつ歴史を改変するミラとトワを捕まえる事が目的となる。…のだが。
「まさかこんなに近い時間軸で改変が行われるとは…」
トランクスが持ってきた終わりと始まりの書は先ほどとほぼ同一時間軸のナメック星。
どうやらフリーザが強化されて強すぎるらしい。このままでは悟空さんが回復を待たずにメディカルポットを出てきてしまい万全の状態では無い為に負けてしまうのだと言う。
「フリーザさま…だと…」
恐怖にラディッツの体が震えていた。
「ラディッツさんはどうしたんですか?」
「いやほら、フリーザさまの戦闘力は530000だから…」
ギニューより少し弱いくらいのラディッツでは恐怖の対象なのだろう。
いやまぁ、ナメック星でボコられたせいかもう少し戦闘力は上がって入るのだが、焼け石に水だ。
それにフリーザさまは変身型宇宙人だ。最終形態の戦闘力はすさまじい。
「そんなに強いですかね」
「ちょ、おま…っ!!」
トランクスの言葉に動揺するラディッツ。
「あー…まぁトランクスにはザコでしょうよ」
あれだけナメック星編で苦労したフリーザ様なのに未来から来たトランクスがメカフリーザさまを瞬殺するのは読者として驚いたものだ。
トレーニングを重ねたフリーザさまじゃなく今の状態ではトランクスにしてみれば何ら脅威ではない。
超サイヤ人に覚醒したばかりの悟空さんに倒されたんだしねフリーザさまって。
とは言え今のラディッツではフリーザに敵わない。
ラディッツの強化が急務となれば…どうしようか。
未だスカウター頼りなラディッツではこの後の戦闘にはついていけなくなる。
繊細な気のコントロールを身に着けてもらわねばならないだろう。
そのついでに界王拳を覚えてもらえば…うん、ラディッツのレベルアップになるね。
修行方法は…うーん…スピリットの同調が一番近道か。
こういう時血縁はいろいろと楽だわ。魂は似てないかもしれないがその入り口である肉体は確かに似た遺伝子を持っているのだ。
スピリットを同調させてモンテの経験値を送り付けて習得させる。
ラディッツには苦しいかもしれないけれど短時間で界王拳を覚えてもらわないとね。
「ぐぅ…がぁ…」
無様に瓦礫をまき散らして武舞台の上を転がるラディッツ。
ちくしょう、オレはこの武舞台の上で何度あの女に殺されそうになった事か…数えるのもバカらしくなるほどだ。
「ほい、回復っと」
その都度あの女…モンテはオレを回復させてサイヤ人特有だと言う超強化で戦闘力を上げている。
オレの戦闘力も20万を超え、モンテに覚えさせられた界王拳とやらを使って倍々に戦闘力を増やしていると言うのに全く敵う気配すらない。
「くそぉ…」
再び立ち上がるとグッと四肢に力を込める。
「界王拳…3倍だぁっ!」
赤いオーラがオレを包み込み戦闘力がアップしたのを確かに感じられる。
「つぁっ!」
武舞台を蹴ってモンテへ迫ると拳を連打。
「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!」
こっちは全力で攻撃しているにもかかわらず涼しい顔ですべて受け止めやがる。
「よっはっほいっと」
今の俺の状態ならフリーザ様より強いと言うのにこんなに差があると言うのかっ!
「これならどうだぁっ!」
やけくそ気味にダブルサンデーを放つが…
「かめはめ波っ!」
モンテの半身を引いて押し出された両手から放たれたほぼ抜き打ちの気功波に相殺どころか押し負けてしまう。
「ちくしょうぅっ…!」
ゴロゴロと武舞台の上を転がりどうにか立ち上がるが、すでに満身創痍だった。
「なぜ敵わないっ!」
だんと武舞台を殴りつけると石が飛び散ったようだ。
「まぁカピバラくらいにはなったかな」
「カピバラとはなんだ」
「地球最大のげっ歯類…えっとこのくらいの」
そう言って楕円を描くモンテ。
「くそーーーーーーっ!」
最初の蟻よりは大分マシになったが、これでまだそれだけの差があると言うのかっ!
「まぁでもこれで次の歴史の修正は大丈夫でしょう。10倍界王拳を使えばフリーザさまの第三形態までなら互角に戦えるわ」
「……ちなみにお前がフリーザさまと戦えばどうなるんだ?」
「えっと…トレーニングを積んでいないあのフリーザさまなら拳一撃で倒す自信はあるわ。最終形態になっても苦労しないわね」
「なん…だと…」
トレーニングを積んでいないとか言う言葉が出たのが気になるがフリーザさまを赤子扱いだと…?
いや、逆に考えるんだ。サイヤ人の可能性はそこまでのポテンシャルを持っていると。
だからいつかはオレも…
「さて、じゃあ回復したらちゃっちゃと歴史修正に行くわよ」
「あ、まってくれ…やっぱりちょっと…」
「生来のよわむし根性はなかなか治らないなぁ…はぁ」
ため息を吐くなっ!それにオレは弱虫じゃねぇっ!
「よし、すぐに行くぞっ!フリーザさまがなんぼのもんじゃいっ!」
「…?どうしたの、いきなりやる気をだして。まぁいいわ。それじゃ行きましょうか」
終わりと始まりの書を握りしめたモンテと一緒にナメック星へと降り立つ。
「そこにまだハエが隠れているようですね」
「何だ、また貴様かっ!」「あ、あなたは…」「今までどこに…」
ベジータ、カカロットの息子、髪の毛の無い小さな地球人を岩の影から覗いていたのだが、フリーザ様にはバレていたようだ。
ジリっと岩陰を出るが、モンテが付いてこない。
視線をやればなぜかモンテの気が感じられなくなっていた。
どう言う事だ、という疑問は目の前のフリーザ様からのプレッシャーに追いやられる。
「私の不老不死の夢をあと一歩と言う所で見事に打ち砕いてくれましたね」
確かにドラゴンボールはただの石へと変容してしまっていてこれでは願いは叶えられないのだろう。
そもそもベジータはポルンガが現れた事で駆けつけ、願いを強要していたのだが、願いをかなえる前に最長老様の命が尽きてしまったと言う事なのだ。
さらにどうもフリーザさまもムシャクシャしているようで、イライラした気が威圧として周囲へと伝染していた。
「なぶり殺しにしてやるっ!」
始まる戦闘。
戦闘力と言う視点では絶対に敵わないだろうが…
ベジータは全員で掛かれば勝てると踏んだようだ。
確かに皆で掛かれば善戦出来ていた。
しかしそれにイラだったのか…
「わたしは変身を後三回残しているんですがね」
と指を三つ立てるフリーザ様。
変身…だと?そう言えばモンテが言っていたか、フリーザ様は変身型宇宙人だ、と。
「一気に見せてやるっ!」
突如フリーザ様の気が膨れ上がったと思うとその姿を変えていた。
角などは無くなりシンプルだが力強さを感じるフォルムにオレもベジータも他二人も驚愕していた。
「この姿をみて生きていたヤツは居ませんよ」
次の瞬間フリーザ様の姿が消えた。
速いっ!
「なにっ!」
フリーザ様の攻撃に飛ばされて行くベジータ。
均衡を保っていた戦いがまたフリーザ様へと傾く。
畜生…ブルっちまうぜ…
どうやら地球に居たナメック星人が駆けつけてきたが、焼け石に水だ。
強い…流石フリーザ様だぜ…
ベジータなど超サイヤ人にさえなればとクリリンに攻撃させて小さなナメック星人に回復させサイヤ人特有の超回復による戦闘力の強化を使うと言う技を使っていたが、ふん、そんな物で超サイヤ人とか言うものにはなれんさ。
そんな物でなれるのならモンテに半殺しにされているオレなど既に超サイヤ人だろう。
「あなた、面白いですよ。この私に着いてこれるとは。まだ実力の10分の1も出していませんがねっ!」
フリーザ様の攻撃を受け止める腕が痺れる。
既に界王拳も5倍を超えている。
戦闘力で言えば最初のフリーザ様を超えているが…
クソッ
「10倍界王拳っ…」
「ほう、まだ上がりますかっ」
クソッ体が痛ぇ…
ドンッドンッドンッ
空気が震える音が響く。拳と拳がぶつかり合っていた。
だが、悪くねぇ。このオレがフリーザ様と打ち合えるとはなっ!
怖ぇ、怖ぇな…ベジータなど超サイヤ人と粋がってみたがフリーザ様に一撃でやられて自信を喪失してしまっていた。
まぁオレの場合身近にモンテと言う化け物が居たせいで慣れていたと言う事も有ってまだ心は折られていないが、それもいつまで持つか。
まぁ、サイヤ人のオレとしてはその本能の赴くままにこの戦いを楽しんでしまっていると言うのもほんの少しだが存在しているが…勝てねぇな。
その事を素直に認めるくらいにはオレも成長できたのだろう。
今回の任務は強化されてしまったフリーザ様の体力を減らす事とカカロットのガキと地球人の命を守る事、悟空がメディカルポッドで回復する時間を稼ぐことだ。
10倍界王拳を使ってようやく互角の勝負なのだが、フリーザ様は全力からは程遠いのだろう。
地力で押され始めた。
「ぐっ…」
一瞬の隙に腹部にいいものを貰ったらしい。
幾つかの岩山を貫いてようやく止まった頃には全身が死ぬほど痛かった。
「ちくしょう…」
「ほっほっほ、中々楽しませてもらいましたよ」
フリーザ様の手がこちらを向いている。止めをさすつもりか…
「それではおさらばですよ…おや、あなたは」
ちっようやく登場かよカカロットの奴め。
「わりぃ、みんな待たせたな」
「悟空」「お父さんっ!」
カカロットの息子と地球人が呼んだように遅れて現れた孫悟空。
ギニューとの戦いで負った傷は完治したようだ。しかも戦闘力も上げて来てやがる。
「うっ…ぐっ…」
這うように岩山から抜け出した。
「お疲れ、ラディッツ」
「モンテ…貴様っ!」
偶然なのか、ラディッツのめり込んだ岩山の影にモンテは隠れていたようだ。
「ほいっと」
先ほどまで痛みを訴えていた四肢から傷が消え、体力も元に戻ったようでからだが軽い。
「歴史は何とかなったのか?」
「ああ、ラディッツがフリーザ様の体力を減らしてくれたからね。おおよそ歴史通りだよ」
始まったカカロットとフリーザ様の戦いを眺める。
「ちっ…やつは天才か」
「悟空さんだからね」
フリーザ様にどうにか食らいつき、カカロットは元気玉でフリーザ様を倒しやがった。
「終わりか?」
「…まだだよ」
ほら、とモンテが向けた先を見れば生きていたフリーザ様とイラ立ちで爆死させられた地球人の姿が。
「お、おいっ!アレは良いのか?」
パラパラとクリリンだったものが舞っている。
「あまり見たいものでも無いけど…歴史通りだから。クリリンさんの死はどうしても必要だったんだ」
「必要な死…だと?オレですら生死は不明でも問題ないと言われたのだが」
納得がいかんぜ。
「ほら」
「なっ!?」
カカロットの気に世界が震えていた。
怒りと共に膨れ上がったカカロットの気は潜在能力の壁を越え…
「なんだアレは…」
「超サイヤ人」
「アレが…ベジータが言っていた…伝説の…」
「あ、それはブロリーかケールなので。まぁサイヤ人の変身の一つだよ」
膨れ上がったカカロットの気は圧倒的だった。オレが界王拳で気を引き上げた所で敵うまい。それほどまでに隔絶していた。
「勝ったね」
ボソりとモンテが呟く。
「帰ろうか」
「超サイヤ人……モンテなら勝てるのか?いや、愚問だな」
確かにカカロットはフリーザ様にギリギリ勝てるだろう。だがギリギリだ。モンテはなんて言っていたか。
…最終形態になっても苦労しない。
「化け物め」
「そだね。悟空さんはとんでもないから」
お前に言ったのだが、理解されなかったようだな。
「今回もお疲れさまでした。歴史は無事に修正されましたよ」
時の巣に戻って来た二人を出迎えるトランクス。
「本当に、何とかなってよかったよぉ」
「おい、お前は何もやって無いだろうがっ!」
「そうだっけ?」
としれっと答えるモンテにラディッツは呆れる。
「それよりもだ…あの超サイヤ人と言うのは」
「ああ、そう言えばこの歴史で初めて悟空さんは超サイヤ人になったんでしたっけ」
「そそ。これがまさかのバーゲンセール並のレア度になるとは読者も思わなかったわ」
「ちょっとまて、伝説の超サイヤ人がどうしてバーゲンセールになる」
不思議そうな表情を浮かべるラディッツ。
「え、そりゃ…ね?」
「えっと、はい。ボクも超サイヤ人になれますし…おそらくモンテさんも」
「あ、うん。そう言えば見せて無かったね。なれるよ、わたしも」
はっ!と気を高めたモンテの髪の毛が金色に染まって逆立った。
「なん…だと…?」
「まぁ、トランクスと悟天はおかしいにしても、キャベやカリフラ、ケールなんかも普通に変身出来るしわりとフツーフツー」
「超サイヤ人のバーゲンセールですか…」
「トランクス…父親の真似をしない」
「は、はい」
「まぁ、これから先の時間を修正するとなればラディッツも最低超サイヤ人くらいにはなってもらわないとね」
「なれるのか…オレが?」
そう呟くラディッツに胡乱な視線を向けるモンテ。
「うーん…微妙?」
「おい」
「いや、カードでは見た事あるからっ!うん、超サイヤ人3くらいにはなれるよ…たぶん」
「あの、モンテさん先ほどから読者とかカードとかいったい何の事ですか?」
「いや、こっちの事。気にしないでトランクス。それよりも」
とモンテはラディッツに向き直る。
「まぁ実際超サイヤ人になる為に必要なのはS細胞の量だから」
「そのS細胞と言うのは…?」
「ああ、トランクスも知らなかったか。まぁ良いんだけど…簡単に言えば超サイヤ人に変身するのに必要なファクターかな」
「サイヤ人であると言う事が条件なのでは無いのですか?穏やかな心を持ったサイヤ人が怒りをきっかけに覚醒すると教わりましたが…」
「まぁその認識であ合っているよ。ただ、その穏やかな精神で増えるのがS細胞と呼ばれる因子でこれが必要数値に達していないと超サイヤ人にはなれない。だからラディッツは微妙、…まぁ一応戦闘力を高める事でもS細胞は増えるらしいけど、難しいかな。これを増やすのは…まぁギネお母さんがサイヤ人にしては突然変異で愛情深い性格をしているからラディッツにも遺伝していれば必要量のS細胞はあると思うのだけれどもね」
「なれる…のか?…オレが超サイヤ人に…」
「弟に出来て兄に出来ない何て事は無いでしょ…たぶん」
武舞台でラディッツの修行が始まる。
「ゾワゾワを背中に集める、ですか。確かにそんな感じですね」
何故か付いて来たトランクスがモンテの言葉にうなづいた。
「そんな事で超サイヤ人になれるのか?」
「ラディッツの場合感情の爆発による後押しが出来なそうだからなぁ」
「た、たしかに…」
とトランクスも同意する。
「怒りによる超サイヤ人化。まぁ、精神的に打たれ弱いラディッツができるかなぁ…」
なんて言ってもよわむしラディッツだぞ?
「むしろ褒めて伸ばす方がいけるんじゃないかと」
「…なるほど」
ラディッツの気が膨れ上がる。
チリチリと空気が震え毛が逆立ち始め…そして…
「はぁ…はぁ…はぁ…ダメ…か…やはりオレでは超サイヤ人にはなれないのか」
落ち込むラディッツ。
「そうでも無いよ。いい線行ってると思う。後はほんの些細な切っ掛けだけなんだけど…」
もしくは…
「ショック療法かなぁ…」
「ショック療法ですか?」
「一度死ぬ寸前までボコってみるとか。覚醒物の漫画みたいに」
「ああ、アレですね。確かに、それは良いかもしれません」
ラディッツのあずかり知らぬところで覚醒か死かの天秤にかけられているようだ。
「しかし、ラディッツさんの修行は時間が掛かるでしょう」
「なんで?」
とモンテがトランクスに聞き返す。
「次の歴史の修正はセルゲームなんです」
「おふぅ…わたしが行かないとダメかぁ…」
「すみません…」
しかしやはりモンテはあまり気が進まないようで、別の案を思いつく。
「よし、ラディッツを精神と時の部屋か次元断層かどっかその辺に突っ込もう」
時の界王神さまにお願いして精神と時の部屋に似た施設をトキトキ都に作ってもらいラディッツを蹴り入れる。
「モンテー、貴さまーっ!!」
「ラディッツさん、頑張って来て下さい」
「何を言っているの?あなたも行くのよ」
と言うモンテの言葉の後トランクスも蹴り入れて扉を閉め始めるモンテ。
「ぐわぁっなぜボクもなんですかっ」
「トランクスー、せめてラディッツを超サイヤ人フルパワー状態にくらいなれるようにしておいて」
「そ、そんなっ!!」
「あ、ムキンクスは駄目だよ、ムキンクスは」
そう言い終えるとモンテは精神と時の部屋の扉を硬く閉めるのだった。
2日後。
2年の修行を終えて出て来た二人。
「モンテ、…きさまぁっ!許さんぞっ!」
「ええ、今度ばかりはラディッツさんに同意します」
出て来たラディッツの伸びた髪の毛は逆立ち金色に染まっている。
「無事に超サイヤ人になれたのねっ!やったじゃん」
「ああ、だからきっちりお礼しなければとトランクスと話していたんだ」
「はいっ!行きましょう、ラディッツさんっ!」
トランクスを見れば彼もすでに超サイヤ人だった。
「行くぞモンテっ!」
ラディッツが武舞台を蹴ってモンテに襲い掛かる。
ラディッツは拳を振りかぶりモンテを襲う。
「くっ…」
モンテは寸での所でラディッツの拳を弾き格闘戦へともつれ込んだ。
「オラオラオラッ」
「ちょ、ちょっと…何で怒っているのか分かんないんだけどっ!」
「そう、その理不尽さだっ!その理不尽さへの怒りが俺を超サイヤ人に覚醒させたっ!」
「覚醒理由しょっぱいなっ!」
「うるせーっ!いいから俺様に殴られろ!」
ドンドンと言う組手の圧で互いに距離を取った。
キュピンと音を立てて上空から気弾が飛んで来る。
どうやらトランクスが放ったようだ。
「はっ!」
溜まらずとモンテは超サイヤ人に変身しそれを弾いた。
「俺様たちの怒りを受けろっ!」
「そうですよっ!モンテさんは初対面なのに手加減も無くボクを殴りましたしねっ!」
2対1で交互に組手を挑んでくるラディッツとトランクス。
「くっ…」
超サイヤ人フルパワー同士の戦いではいくらウィスとの修行で地力が上のモンテであっても少し苦しい。
劣勢になりモンテはギアを上げた。
「超サイヤ人フルパワー程度で調子に乗るなよっ!…はぁっ!」
気合一発。左右から放たれたラディッツとトランクスの拳を受け止めるモンテの髪の毛は更に逆立ち体からはスパークが迸っている。
「それはっ悟飯さんのっ!」
「知っているのかトランクスっ!」
とラディッツがトランクスの方を向く。
「がっ」
「ぐぁっ!」
その隙にモンテは二人の手首をつかむと両手を振り上げ地面に叩き付けた。
砂塵を巻き上げた二人から距離を取るモンテ。
「くそぉ…何がどうなってやがる」
両手をついて起き上がるラディッツ。
「アレは…あの姿は…悟飯さんが見せた超サイヤ人を超えた超サイヤ人…そんな…まさか…」
トランクスも起き上がり驚いているようだ。
ジジッ、ジジッとスパークが弾ける。
「超サイヤ人2…二人には少しお灸が必要みたいね」
ボキリボキリと掌に押し当てた拳から小耳良い音が響く。
「はは…は…」
トランクスの笑いは引きつっている。
「少しくらい姿が変わったくらいでっ!」
超サイヤ人になれた事で調子づいているラディッツはモンテに襲い掛かり…
「ぐぁあっ!」
ドンと一撃で武舞台へと沈み意識を失った。
「さて、トランクスは…」
「ははは…僕はこの辺で遠慮しておこうかなぁ……ダメですか?」
「ダメ、ね」
モンテはヤる気だ。
「こうなれば僕もサイヤ人の血を引く者です…強者との戦いに興味が無いかと言われれば嘘になります」
構えを取るトランクス。
「行きますっ!」
そう言って先に動いたのはトランクスだ。
「ハァッタァっ!」
「さっきよりも気合が入ってるわわよ、トランクス」
二人の拳が交差する。
数十を超える攻防に空気も震えているようだ。
「くっ…」
しかし押されたトランクスは一度距離を取り手の平を向けると気功弾を放つ。
「はぁっ!」
「ふっ」
ブンと振った腕で軽々と気功弾を弾くモンテ。
トランクスはそのまま飛び上がりさらに気功弾を連発。
ドドドと上がる土煙の中心にモンテを釘づけると両掌を重ねて半身を引いて気を溜めるトランクス。
「見よう見まねの…ギャリック砲っ!」
その技はトランクスの父、ベジータの必殺技だ。
対するモンテも土煙が薄れる中手を合わせて腰を引く。
「かーめーはーめー…」
「っ!!!!」
その掛け声に驚くトランクスだが、気の集中は一瞬トランクスの方が早く腕を回転させて手のひらを打ち出した。
「はぁっ!」
降り注ぐ気の本流。
しかし慌てずにモンテも手のひらを突き出した。
「波ぁーーーーーーーーっ!」
互いにぶつかる気功波の衝撃で地面がめくれる。
「うわぁあーーーーーーっ!」
ジュッ
拮抗は一瞬で、モンテのかめはめ波がトランクスのギャリック砲を押し流した。
しばらくすると二人を回復させたモンテは正座させつつ反省させている。
その間彼女の口からは小言が溢れていた。
「トランクスはなれるのか?その…超サイヤ人2とやらに」
「いえ、…僕もまだ…でもいつかは…」
モンテを前にしてコソっと二人で内緒話。
「ちょっとそこ聞いているのっ!」
「「は、はいっ!」」
びくっと背筋を伸ばすラディッツとトランクス。
はぁとため息を吐くモンテ。
「大体、超サイヤ人なんてようやく小指程度の変身なのよ。親指までどれくらいあると思っているの?」
「「はい?」」
意味が分かりませんと二人の表情が固まった。
「2だ3だの時限の話ではないのよ」
と再びため息を吐く。
「まぁいいわ。セルゲームくらいなら運が良ければ死なないでしょう。行きましょうか、お兄ちゃん」
「は、はい……え?」
ラディッツを連れて再び歴史の修正へ。
この時間へはそれこそトランクスを連れて行くことは出来ない。
セルゲームの為に集まる戦士の中に何食わぬ顔で混ざる。
リングの上には完全体のセルが腕を組んでいるのが見えた。
「くっ…」
ラディッツもセルの強さを感じているようだ。
そしてその武舞台の上で啖呵を切っている大柄の格闘家風の男。
「誰だあのもじゃもじゃの一般人は…大した戦闘力も感じないが…」
「パパ…」
そうおなじみのミスターサタンだ。
「パパだとっ!?お前の父親はバータックでは無いのか!?」
「こっちにもいろいろ事情が有るのよ…」
「ぐおー、でやーっ!!」
ミスターサタンは勇猛果敢にセルに挑みかかるがまるで蚊に刺されてるかの様。
鬱陶しくなったセルに殺気が籠る。
流石に剣呑な気配にモンテが動いた。
武舞台を蹴りミスターサタンを弾き飛ばす。
「ほう、流石にこの舞台に上がるだけは有るな」
とセル。
「ご、ごめんなさい…お邪魔しました」
と言ってモンテはそそくさと武舞台を降りた。
そのまま気絶したミスターサタンをずるずると引きずるモンテ。
「なぜ庇ったりしたんだ」
とラディッツ。
「こんなんでもパパが死んじゃうと大変な事になるんだからね。それこそ地球滅亡の危機よ」
「この男がか?」
「あのね、英雄って言うのは戦闘力が高ければなれるってものじゃないのよ」
「意味が分からん」
フンと舞台を見るラディッツはもう興味を失ったようだ。
セルゲームは進み、悟空さんがリタイアして悟飯くんが武舞台に上がる。
このまま終わってくれればと思っていたのだが…
悟飯を怒らせるために生み出したセルジュニアが強化されてしまっていてこのままではZ戦士たちが死んでしまう。
一度死んでしまっている彼らは地球のドラゴンボールでは生き返れずこのままでは歴史の変革が起きてしまう。
「どうするんだモンテ」
「あー、もう。お兄ちゃん、ちょっとあのセルジュニアを間引いてきて」
「簡単に言ってくれるなっ!畜生ッお前はどうするんだっ」
「わたしはパパを守りながら、よ」
「畜生、ブルっちまうぜっ…はぁっ!」
超サイヤ人に変身したラディッツだが、周りのZ戦士たちも各々セルジュニアに纏わりつかれ気にしている余裕がないようだ。
「キキーッ!」
「やってやる、やってやるよっ!」
ラディッツがこちらを標的にしたセルジュニアへと向かう。
「わたし達が居るからか、数が多いな…」
「くそぉっ!なんて化け物だっ!本体でもないくせによっ…」
「なかなかいい勝負しているじゃん、お兄ちゃん」
「ちょっとは手伝えよなっ!」
ラディッツはどうにかセルジュニアに食らいつき、戦況を押し戻していた。
「うんうん、強くなったねぇ」
「キキーッ」
「しまっ…」
数が多い為ラディッツをすり抜けてモンテの前までやって来るセルジュニア。
涙をぬぐうそぶりを見せているモンテに襲い掛かった。
ドンッ
「キキッギィ…」
何が起こったのかも分からないセルジュニアはその体をくの字に曲げていた。
そして遅れて衝撃で吹き飛んでいくその体は上空に打ち上げられた後爆散。
真下を見ると髪を赤く染めたモンテが涙を拭っている手の反対の拳をただ突き出しているだけだった。
「ば…化け物め…」
「こらー、お兄ちゃん、それってセルジュニアの事だよねっ!」
「も…もちろんだ…」
怯んだラディッツは言葉を濁した。
その後、キレた悟飯くんが覚醒するのだが、どこかおかしい。
「これは…なんてパワーだ…これがあの時のガキか」
とラディッツ。
「なん…だと…イキリ飯じゃない…?」
何者かによってセル同様強化された悟飯くんがセルと激突、死闘を繰り広げる。
「なんだ、どうした。予定どおりじゃないのか?」
とラディッツ。
「マズイ状況だけど、ここは見守るほかない…多分わたし達の敵が近くにいるんだ。お兄ちゃん、周囲を探してきて」
「俺がか?…いぇ、はい。分かりました」
モンテが睨みつけると慌てて飛び去るラディッツ。
後で聞いた話だが、ミラとトワが現れてトランクスと一緒に撃退したらしい。
セルと悟飯くんの勝負はどうにか悟飯が勝ち、最後の手段と自爆を計ったセルを悟空さんが瞬間移動で飛ばす。
その後帰って来たセルは正気に戻った悟飯くんがかめはめ波で吹き飛ばし、どうにか歴史は守られたのだった。
セルゲーム編が終わると予想通りなのが嫌なのだが魔人ブウ編の歴史改変だ。
「でもさぁ…魔人ブウが相手ともなるとどれほどラディッツを強化しないといけないの?と言うか、トランクスが行った所で勝てる要素がないんだけど…?」
「す、…すみません…」
とトランクスが謝る。
トキトキ都にある武舞台でラディッツとトランクスをボコりながら一人ごちるモンテ。
「はぁ…はぁ…はぁ…ば、バケモノめ…」
肩で息をしながらラディッツが呟いた。
「せめて二人とも超サイヤ人2くらいには変身してもらわないと死んじゃうわね」
「ですが、悟飯さんも苦労して超サイヤ人2になったくらいですし。僕たちがなれるかどうか…」
そんな話をしているとモンテの視界に写るトランクスがぼやける。
「ん…?見間違い…」
「トランクス、お前、透けているぞっ!」
「見間違いじゃないっ!?」
ラディッツが言う様に体が透けているトランクス。
「こ、これは…!?」
急いで時の界王神さまの元へと向かうと、原因はトランクスの過去への改変でその存在が揺らいでいると言う事だった。
どうやら改変された歴史で人造人間に倒されてしまった為にトランクスの存在があやふやになってしまっているらしい。
あやふやな存在のまま自身の過去への介入などもってのほかと、この件にトランクスは関わる事が出来ず。
「わたしも行かないわ。お兄ちゃん行ってらっしゃい」
「なん…だと…?」
「どうしてですか、モンテさん」
とラディッツとトランクス。
「まぁちょっとね。良いから行く」
と無理やり巻物を持たせラディッツを送り出す。
「本当にどうしたの?」
と、トランクスが居なくなってから時の界王神さまが問いかけて来た。
「お兄ちゃんもトランクスとは打ち解けたようですから、トランクスのピンチなら覚醒しやすいかと思って。お兄ちゃんには誰かの為に必死になると言う経験が足りてませんから」
「なるほど。誰かを思いやれる心、ね。でも大丈夫かなぁ…彼、純粋なサイヤ人でしょ?」
「ですか、生来のよわむし根性はギネお母さんから引き継いだ愛情深い一面の現れですよ」
「そうかなぁ」
「そうですよ」
たぶん…そうであったらいいなぁ。
結果としてラディッツは超サイヤ人2に覚醒し、トランクスは生還。
そこでドミグラなる者と相対して来たと言う。
「ドミグラですって」
驚く時の界王神さま。
「誰?」
「さあ、分かりません。しかし僕たちは僕たちに出来る事をしましょう」
次は魔人ブウだとトランクス。
「ちょっとまて」
そうラディッツが言う。
「お兄ちゃん?」
「モンテよ。お前の暴虐も今日ここまでよっ!超サイヤ人2に覚醒した今となっては戦闘経験の差で俺様の方が強いっ!」
「ふっ…小指が薬指になった程度で何を言っているの?」
と鼻で笑ったモンテに切れたラディッツが襲い掛かる。
「うるせぇ、今までの恨みっ!」
ビリビリとスパークを纏って超サイヤ人になったラディッツが飛び掛かる。
「つぁっ!」
「ぐぉおっ!??」
ラディッツの拳が当たるより速く、モンテの拳がラディッツを吹き飛ばしした。
「ぶけらっ!?」
吹き飛ばされたラディッツは白目をむいていた。
「モンテさん…その変身は…?」
とトランクス。
「超サイヤ人3」
垂れ下げた髪の毛はその毛量を増し、モンテの気は力強さを増していた。
「まぁでもこれで次の修正もラディッツに任せておけば大丈夫でしょう」
「そ、そうですかね?」
若干トランクスが引いていた。
ブウ編の修正が終わるとミラとトワの影に隠れていた真の敵であるドミグラが襲撃して来た。
時の狭間に封印されているはずの彼が長い時間で力を溜め、本体の封印を破るべく時間を歪めているとの事。
「あー、ドミグラのやつ、なんて時代に目を付けているのよっ!」
ドミグラの襲撃の後ゆがめられた歴史に絶叫をあげる時の界王神さま。
「なんかイヤな予感がするんだけど」
とモンテ。
「しかし、魔人ブウも何とかしましたし流石にもうあれ以上の強敵は居ないんじゃ…」
「ばかね、トランクス。この時代にはねっ!破壊神ビルスさまが地球にやって来た時の事が収められているのっ!」
な、なんだってーっ!!
「破壊神?誰だソイツは」
「破壊神、ビルスさまっ!さ・まっ!」
すぐさまラディッツの発言を修正する時の界王神さま。
「で、でもその破壊神ビルスさまってそんなに強いんですか、ねぇモンテさん…モンテさん?」
キョロキョロと辺りを見渡すトランクス。
「まさか、モンテのやつ逃げ出したのか?」
とラディッツ。
「まさか、あれだけ強いモンテさんが逃げ出すなんて…」
しかしいくら探せどもモンテの姿は見当たらず。
「そりゃあ逃げ出すでしょうよ…彼女には少なからず因縁があるようだもの」
はぁ、とため息を吐く時の界王神さま。
「まぁ、今回も彼女の助力は諦めなさい。ううん、今回は彼女が行くとおそらく大変な事になるわ」
「そんなに?」
「なぜか一気に不安になって来たんだが…」
とラディッツ。
「ともかく、歴史の修正は頼んだわよ。精々死なないように…ううん、死んでも良いから破壊されないように気を付けてね」
「それって同じ事じゃ?」
「ち・が・う、のよ。いい、破壊されるくらいなら死になさい」
そう言った時の界王神さまはあきらめ気味にラディッツを送り出すのだった。
一方、逃げ出したモンテはトキトキ都を散策していた。
右手にはお気に入りのソフトクリームを片手に花壇に腰を掛けている。
「あー、ソフトクリーム、美味しい。いやぁ、ビルスさまが居る時間…神と神の時間軸なんて一度で十分」
まぁ…
「ビンゴダンスはもう一度見たかったかもだけどね」
ふふと思い出し笑いをするモンテ。
「ボクがなんだって?」
「うひぃっ!?」
後ろから掛けられた声にビクッと尻尾が逆立つモンテ。
恐る恐る声のした方を振り返る。
手にしたソフトクリームは地面に落ちていた。
「び…び…び……ビルス…さま?」
「ほう、ボクの事知っているんだ。君とは初対面のはずだけどなぁ」
「あはは……ど、どうしてここに…?」
「久しぶりの時の巣になんて来たから迷子になってしまってね。君、時の界王神の所まで案内してくれない?」
「は、はいー。かしこまりましたっ!」
こちらですっ!とモンテは丁寧な態度で刻蔵庫まで案内すると、そこにはトランクスとラディッツ、時の界王神さまとビルスの付き人であるウィスさんまで揃っていた。
「あら、ビルスさま。勝手に居なくなってはこまります」
とウィス。
「お前が急ブレーキ掛けたせいで落っこちてしまったんだろうが」
「あらー、そうでしたかねぇ」
オホホととぼけるウィスさん。
「び、ビルスさま、どうしてこちらに?」
時の界王神さまが前に出て下手に理由を聞いた。
「あのドミグラってヤツが最後に言っていた事が気になってね」
話を纏めるとドミグラがビルスさまを操ろうとちょっかいをかけに来たらしい。
もちろん、操られるほど破壊神の肩書は柔じゃない訳で、だが気に入らない事があったと原因を探りにラディッツ達に着いて来たと言う訳のようだ。
それとドミグラの事はムカつくから破壊してくれるらしい。
良かった。万事解決だーっ!
と喜んでいるモンテにトランクスが自分達が必ずドミグラを倒すを啖呵を切った。
「待てこらトランクス、てめー殆どなにもしてねーじゃねぇかっ!」
「え、ええ?そ、そうですかね?」
「おめーが何をしたよ、言ってみろやっ!」
「えっと…刻蔵庫の管理とか…あはは…」
「あははじゃねーっ!」
キレたモンテは二三発トランクスを殴りたかったが、ビルスさまの手前手が出ない。
「面白い事を言うねぇ。じゃあボクと戦ってみようか。多少でもボクを楽しませてくれたら考えてあげてもいいよ」
「わ、分かりました…ラディッツさん、頑張りましょう」
「お、…おう…」
「ばかーーーーっ!!ラディッツなんて腰が引けてるじゃんっ!」
もういいっ!
「わ、わたしは関係ないんでっ!」
そう言って逃げようとするモンテ。
「君は強制参加だよ。そのイヤリングが本物かどうか、知りたいしね」
ビルスさまの視線がモンテの左耳にあるイヤリングに向けられた。
急いで左耳を手で隠すが既に遅い。
「ひぃっ!!」
「ちょっとまったーーーー。ここで暴れられては困りますからっ!ここで戦われては時その物が壊れてしまいますっ!」
時の界王神さまっ!
そのまま説得してっ!
「で、ですので…適当な場所を提供しますわ。おほほ…おほほほ」
ちょおっとーーーっ!
「ウィスも参加な」
「ええ、わたくしもですか?」
仕方ないですねとウィスさん。
ウィスさんも参加とか、ただのムリゲーですからっ!!
ウィスさんにつかまってやって来たのは極力外界に影響が出ないであろう次元断層の下層付近。
「ふむ、ここなら確かに影響は少なそうだ」
とビルス様。
「絶対にボク達を認めさせてみせます。ね、ラディッツさん、モンテさん」
「お、…おう」
「こんのっ!不感症がっ!!」
モンテがワナワナと震えた。
神の気が感じられないトランクスは怖いもの知らずだ。
「それでは、はじめ」
ウィスさんの宣言で試合が開始される。
「はぁっ!」
「はっ!!」
トランクスは超サイヤ人フルパワー、ラディッツは超サイヤ人2へと変身。
「なんだ、超サイヤ人ゴッドじゃないのか。ウィス」
「仕方ありませんね」
ビルスさまの言葉で二人の相手はウィスさんがする事になったようだ。
必然ビルスさまの相手は自分になる訳で。
「行きますっ」
「行きますよっラディッツさんっ」
「もうどうにでもなれだっ!」
左右に挟む形でウィスへ攻撃を仕掛けるトランクスとラディッツ。
バシバシと空気を裂く音が聞こえる。
「はぁっ!」
「はあああっ!」
二人かかりでウィスを責めるトランクスとラディッツだが、幾ら攻めても有効打が与えられず。
「がっ」「ぐっ…」
逆にウィスの持つ杖で吹き飛ばされてしまう。
「中々鍛えられてますね。特にラディッツさんは良い師に恵まれたようで」
「師などと良いものじゃ無いがな」
これでどうだとばかりに気功波を飛ばすラディッツ。
「おっと」
次の瞬間ウィスはラディッツの背後に回り込んでいた。
「くっ…」
その動きにラディッツはギリギリ反応するが、攻撃は回避できなそうだ。
「はぁっ!」
そこにトランクスの気功波がかすめる。
「あら」
バシと杖を振り気功波を弾くウィス。
「オラッ!」
「はっ、たっ」
すかさず繰り出すラディッツの右拳をひらりとウィスは避け、そこに追随するように迫ったトランクスの拳も空を切った。
「つ、強いです…僕達の全力がまるで赤子のようだ…」
とトランクス。
「強さの次元が違う…」
とラディッツ。
「そうですね。あなた達はまだまだこれからと言った所ですか。ですので」
と杖を下ろすウィス。
「今日の所は見て学ぶと言う事で」
「は?」
「ほら、ビルスさまとモンテさんでしたっけ?彼女の方も始まりますよ」
スススとウィスは二人に近付くとモンテ達の戦いを見るように促した。
ラディッツとトランクスは変身を解いてモンテを見ると今まさに二人の戦いが始まろうとしていた。
「気が…」
感じられなくなったと呟くトランクス。
「あらまぁ」
そう感嘆の声を出すウィス。
「超サイヤ人ゴッド…」
とラディッツ。
モンテの髪が紅く染まっていた。
「ほう、面白いじゃないの。あれだけ探すのに苦労したと言うのに、こんな所にも変身出来るやつが居るとはね」
「行きますっ!」
次の瞬間、モンテは空気を置き去りにしたようにビルスに迫る。
拳圧が空気を震わせる。
「少しは骨が有りそうじゃない」
ビルスがモンテと打ち合う。
「けど、こんなものじゃ面白くないね。超サイヤ人ゴッドとはさっき遊んできたしね」
「くっ…」
振りぬかれたビルスの拳にモンテは後ろに下がった。
「つぁっ!」
気合を入れなおしたモンテの毛は逆立ちその色を青く染めた。
「なんだ、あの変身はっ…」
「あんな変身、見た事ありませんよっ!」
「さしずめ超サイヤ人ゴッド超サイヤ人とでも言いましょうかねぇ」
「ウィスさーん、長いんで超サイヤ人ブルーでお願いします」
聞こえていたらしいモンテから修正が入る。
「へぇ、器用なものだねぇ」
再開されるモンテとビルスの組手。
「はぁっ!」
地面を蹴るとその威力に砕けるように捲り上がった。
「中々やるようになったね、これなら力の半分くらいは出せそうだ」
「くっ…」
拳はビルスに届くようになったがそれでもビルスにダメージらしいダメージは与えられていない。
ドンとビルスの尻尾に弾き飛ばされて距離が開く。
「面白いけど、そう言う事じゃ無いんだよね」
「と、言いますと?」
「そのイヤリングをどうして君が付けているの」
「あはは」
笑って誤魔化したいモンテ。
「イヤリング?」
とトランクスは回答を得ようとウィスを見た。
「イヤリングがどうしたと言うのだ」
ラディッツは余り気にしていないのかもしれない。
「あのイヤリングは破壊のエネルギーを使える者の証ですからね。ほらビルスさまもしているでしょう」
「ほ、本当だ…」
「な、それじゃあモンテは…」
トランクスとラディッツの呟きは聞こえていたのかは分からないが、モンテは苦い顔をすると変身を解いた。
「あのー…この辺りで終了と言う訳には…」
「いくと思う?」
「思いません…」
とほほと肩を落とすモンテ。
そして何かを悟ったように再び真剣な面持ちになる。
「中途半端じゃ納得してくれなそうだから…ね」
仕方ないと気を集め始めた。
「はぁーーーーーっ!」
筋肉が盛り上がり髪は紫に染まり逆立つ。
「ほう…」
ビルスから余裕の表情が消え、鋭い目つきに変わった。
「それは?」
「我儘(わがまま)の極意です」
「大層な名前だけど、どの程度強くなったか」
「行きます…」
ドンと加速するモンテ。
繰り出す右手はしかしビルスには当たらず、カウンターを貰い苦痛に表情が歪む。
「くっ…」
「おや?」
しかしそれを気合で押しのけ繰り出すモンテの攻撃。
「いいねぇ、面白くなってきたよ。でも防御が少し雑じゃないか?」
「たぁっ!やぁっ!く…」
「む?」
ビルスの攻撃を受けつつ放つモンテの攻撃。
それを受けたビルスの表情が険しくなり受けた腕に視線を向けた。
「やるじゃないか」
ドンッドンッと空気を震わせて繰り出される激突。
三発ビルスを攻撃を受け、どうにか当たる様になってきたモンテの攻撃。
「モンテさんが盛り返している?」
「どう言う事だ?あの力はいったい…」
「我儘の極意とはよく言ったものですねぇ。本能のままの力には上限がありませんから」
「上限が無い?」
「ええ、その証拠に、ほら」
そうラディッツの言葉にウィスが返したその先で、モンテの攻撃で怯むビルスの姿があった。
「いいねぇ、でもこれならどう?」
そう言って振り上げた手の先から振り下ろされる巨大な破壊のエネルギーの塊。
「はぁーーーっ!」
モンテの放つ同規模の破壊玉がビルスのそれを相殺した。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「ほんと、君には驚かされるねぇ」
でもとビルスさま。
「そろそろ限界のようだねぇ」
「はぁ…はぁ…」
ダメージの蓄積でモンテは苦しそうに息を吐いている。
しかし、極限がモンテの力を更に昇華させていく。
「ふぅ…」
パンプアップしていた筋肉は無駄のないように洗練されしなやかさと強靭さを持つ肢体へと変化し、高ぶった神の気は堰を切られるのを待っているよう。
「はい、そこまで」
ウィスの言葉に正気に戻ったモンテが黒髪に戻った。
「ウィスさん?」
「おい、ウィス、邪魔をするな」
「ビルスさま、これ以上は世界の崩壊を招きかねません。それに」
とウィス。
「破壊神同士の本気の戦いは禁止されてますからねぇ」
それはビルスさまもお分かりでしょう、と。
「ち、興が覚めた。帰るぞ、ウィス」
「ほっ…」
ビルスさまからも気勢を殺がれたかのように態度が緩んだのをみてモンテは安堵する。
「はい、ビルスさま。みなさんもお疲れさまでした」
ウィスの宣言でこのモンテにとっては不毛な戦いは幕を下ろした。
ビルスさまが満足した為、ドミグラの対処は任せてもらえる事になったようだ。
任せてもらわなくてもいいと思っていたモンテはトランクスが満足気に頷いていたのでとりあえず殴って置いた。
最大の危機を乗り越えたモンテ。
こうして歴史の修正は無事完了した。
ドミグラ?
歴史の修正と言う手加減が必要ないのなら相手になりませんが?
モンテは今地球での居候先である悟飯くんの家の前に居る。
「な、なぁ…やっぱりオレは帰るぜ。今更どんな顔をして会えって言うんだ」
とモンテの隣にいるラディッツが挙動不審気味に呟いた。
「さあ?」
「ひどいな、妹のくせに」
「肝っ玉が小さい」
「う、うるさいっ!」
「いくらサイヤ人とは言え、親孝行くらいするものよ。お兄ちゃん」
この扉を潜れば何も知らない母さんが待ってる。
「いきなり生きていたと言って誤魔化して大丈夫なのか?」
「大丈夫。なんて言ったってこの世界にはドラゴンボールが有るんだから」
後書き
急ぎ足で無理やり終わらせたような話で申し訳ありません。
半分ほど書いて放置していたものを年末と言う事で急きょ形にした感じです。
と言いますか、書きたかったのはナメック星くらいまでで、後半のパワーインフレは物語としても書くのが厳しかったです。
テーマを上げるなら、ラディッツって可哀そうだから何とかならないかなぁと言う感じですかね。
半端な作品になってしまいましたが楽しんでもらえたのなら幸いです。