さすがお兄様な個性を持っていたけどキモい仮面のチートボスにやられた話


 

プロローグ

最強と聞いて何を思い浮かべようか?
FateのAUO? ワンパンマンのサイタマ?みんな知ってるアンパンマンにドラえもん?
この世界には最強と言える二次元のキャラクターがめちゃくちゃ多い。最近では、ドラゴンボールのウィスっていう話がある。
だが、俺は並みいる最強キャラの中でこの人を、いや、この人を推したい!



「さすおに」でお馴染み!
スーパーシスコンなお兄様!
「魔法科高校の劣等生」の主人公!
司波達也だ!


ルックスもクールで、声もイケボ。さらに着痩せする細マッチョで運動神経抜群。
普通の魔法が使えない?それが、どうした!?こっちには原作最強能力がある!
そう、『分解』と『再成』がな!
物質ならどんなものも『分解』にどんなものも完璧に直す『再成』。
『再生』じゃない『再成』だから!(重要)
こんなチート能力があって最強でないはずがない!これにパネェ目にスゲェ頭の良さ、ヤベェ体術使い(小並感)。確かに、他の最強キャラに比べると見劣りする点があるかもしれない。でも、いろいろ集めた最強よりも最強の2つの能力を使う方が格好いいと思った。異論はもちろんあるはずだ。実際、俺だってアニメと劇場版とLost Zeroと原作を少ししか読んでないにわかだ。
でも、お兄様はめちゃくちゃかっこよくて憧れた。

で、いつの間にか俺は、死んだ。どうやって死んだかは思い出せない。だけど気付いたら「司波達也」そっくりになっていて同じく「分解」と「再成」が使えた。

転生した先は、団地暮らしの夫婦、父はリーマン、母は専業主婦だ。普通の家庭環境で生活に不自由はしていない。原作のように四葉とかのヤバい一族の生まれだったらさすがに耐えられないだろうと思っていたので良かった。
だが、この家族には重大な問題が存在した。それは俺にとっては司波達也の存在を危うくするほどのものが。
そう、それは・・・・・・・・妹がいないことだ!

3歳の頃、我が家は父、母、俺の三人家族。俺は上にも下にも兄弟姉妹のいない一人っ子。これは、俺にとって非常に不味い事態だった。
なぜって?それはもちろん、妹がいなければ『さすおに』出来ないじゃないか!!
『さすおに』ができない司波達也なんてそんなの司波達也じゃない!!

故に、俺はさっそく行動を始めた。
『さすおに』となるためにはまずそれ相応の能力を兼ね備えている必要がある。実のところ、体術や知識といったものは既に身についていたため後は強靭な肉体づくりやら勉学に励むやら『分解』と『再生』を使いこなせるようになるよう訓練を始めた。
原作の司波達也は、他の魔法が使えるようにする代わりに感情が欠落してしまっていたが俺は他の魔法がまったくもって使えないが感情表現が苦手だ。

そのためか、周りからは不気味がられたこともあったため両親には苦労を掛けてしまった。
妹である深雪がいない以上、原作の「深雪への感情」という部分もないため、傍から見たら枯れている人間だった。

そんな俺を育ててくれたことには感謝しかなかった。といっても感情表現が乏しいことにしているからストレートに「ありがとう」くらいしか言えないのだ。

問題は、他の魔法が使えない以上それを補うために身体能力を向上させるしかなかった。

だから、体の成長に支障がでないくらいに鍛え、格闘技とかも習い事でやらせてもらった。


更に、近くに最適な練習場があった。家の近くにある海林公園。そこは不法投棄によるゴミでめちゃくちゃだった。だが、『分解』と『再成』の練習に好都合だった。
それに汚いことで有名なため、あまり人も立ち寄らない。俺は、毎日通い自分磨きに勤しんだ。
そう、すべては『さすおに』のため。





「おめでとうございます。達也君は個性因子が活性化、つまり、個性が発現しています」




・・・・・・は?


病院の診察室で眼鏡をかけ白衣を着た医師と母、そして、俺。
ある日、いつもの通り海林公園で訓練に励んでいた。『再成』と『分解』の練習をしていたら・・・・・・・・・・




『達也・・・・・・? あなた、何してるの・・・・・?』


いつまでも帰らない俺を心配してか母が探しに来たのだ。それも『分解』と『再成』二つ同時にしている間に、

そのまま練習がばれてしまいそのまま病院に連れてかれた。
それはそうだろう。いつまでも帰らない息子が何をしているかといえば、触らずにものを消したり、直したりしていたのだから、

俺はどんなことを言われても知らぬ存じずで通すつもりだった。実際、うちの母親は日頃の家事で疲れている。きっと医者も「過労でしょう」くらいしか言わないと思った。

病院に来てすぐに検査をする事になった。それも血液検査やレントゲン、CTスキャンなどもやらされた。なぜ、ここまでされるのかわからなかったがきっと母があまりにも血相を変えた顔をしていたので色々受けさせるよう頼んだろう。


医者の言ったことの意味が分からなかった。
「特に異常はありませんでしたよ。きっと過労で見間違えたのでしょう」というはずだ。それがどういうことだ?
 個性因子? 個性? 発現? いままでずっとどうやって「さすおに」するかだけに思考のほとんどを回していたため頭がついていかなかった。


「・・・・・しかし、奥さん。失礼ですが、あなたは第4世代でしたね。個性の方は?」

「え、ええ・・・・私は物を吸い寄せることができます。夫は火を噴きます。それが何か?」

「ふむ・・・・・そうですか・・・・・」

医者が少し黙り込む。何かイレギュラーなことが起きたのだろうか。ついでに、俺はイレギュラー続きで会話を聞いて情報収集に努めている。

「普通、4歳児までに両親のどちらかの個性、もしくは、両方の個性に近いものが発現するのですが達也君の場合は違う。旦那さんとも奥さんとも個性が似ていない個性。聞くからに物体に何らかの変化をもたらすタイプのものが発現した」

「じ、じゃあ、もしかして達也は・・・・・?」

そうだ。この医者の話が本当だとすれば俺はこの家族の本当の息子じゃないことになる。『個性』というものが遺伝するのであれば俺の力『分解』と『再成』は親からの遺伝ということになる。

「ご安心ください。申し訳ありませんが、前に奥さんと旦那さんがうちで採血したものが残っていまして、個性を特定するためにDNAを調べさせていただきました所、間違いなく達也君はあなた方のお子さんです」

「突然変異の個性を発現させたか、もしくは、旦那さんか奥さんの家に似ている個性の持ち主の方が過去にいて先祖返りをした可能性があります。どちらにしても、個性自体いまだにわからないことか多い突然変異の産物ですから深刻に考えないで下さい。」

診察が終わり、帰宅中に母は俺に対して泣きながら謝ってきた。きっと俺と同じように血のつながりを疑ったのだろう。感情をあまり表さないことや個性が似ていないことなど不気味な息子だ。
仕方のないことだ。俺は心配させてしまったことを謝り、気にしてないことも伝えた。
俺のために涙を流している母に対して申し訳ないと思った。
その後、家に帰ってきた父に『個性』のことを打ち明けた。父は『個性』が発現したことに喜んでいた。似ていないことは気にしていないらしい。母の話では父は火を噴く『個性』を、母は物を引き寄せる『個性』の持ち主らしい。俺自身、二人が能力を使うのを見たことがなかった。

いや、多分、周りを気にせず『さすおに』めざして猪突猛進していたからだろうか。
まぁ、テレビで頻繁にド派手なアクション映画の戦闘シーンがニュースで紹介されていたがあれは映画じゃなくて『個性』によるものだったのだろう。


しかし、『個性』、『ヒーロー』・・・・・どこかで聞いたような気がする。



それから少し経った後、俺が5歳の頃だ。

新しく家族が増えると両親から聞いた。


ついに、・・・・・ついにこの時が・・・・・・!!

『さすおに』のために必要な存在、そう、『妹』の存在だ。
司波深雪は同年齢の妹だったが、生まれ変わってすでに5年の月日がたち兄妹がいない時点で同年齢は諦めていた。
しかし、ついに俺を兄と呼ぶ家族は誕生する。
これで最低条件は満たされた。後は、『さすおに』のために自分を磨き続けるのみ!

最高に、「ハイ!」ってやつだああああああははははははははッー!!






6歳の頃、『弟』が生まれた。

え、『妹』じゃないの!?
今まで『さすおに』するためにずっと頑張ってきたのにまさかの『妹』じゃなくて『弟』!?
これじゃ『さすがはお兄様です』じゃなくて、『さすがだぜ!兄貴!』になっちまうだろう!
ウワアァァァァァァァァァァァ!!
って思っていたけど・・・・・・・



『この子が、あなたの弟よ』

その日、俺は出産後、初めて母の病室に父と訪れた。
ベッドの上で入院着を身に纏い、その腕に新しい命を抱えながら愛おしそうに見る母は言った。
妹じゃないことは知っていた。だから、血を分けた家族でも愛せないだろうと思った。
だが、俺は初めて『弟』を見た時、心の中にあった空白が埋まった感じがした。

この子のためなら俺は全てを投げ出していい。
この子のためにどんなことでもしよう。
この子の行く末を見守りたい。
この子に誇られる兄になりたい。



この子に、・・・・・・『さすが、お兄ちゃん!』って言われたい!!

結果として、俺の『さすおに』への情熱は消えることはなかった。というより、もはやフルスロットル状態だった。

それからも、俺は鍛え続けた。弟に誇れる兄になるために『さすおに』するために!

だが、俺には問題があった。友達がいない。

小学生になるとみんな休み時間や昼休みになれば、仲のいい友達とともに遊んだり楽しく話をしていた。だが、俺はいつも一人。感情表現ができない俺は、いつも一人。
ぶっちゃけ、小学生にしてボッチ。
まだ、「枯れている」なんて言われなかったがそれでも変人扱い。休み時間は読書。昼休みは図書室に入り浸り、すべて読みほしてしまえば放課後には町の図書館もしくは海林公園に直行していた。
最終的にはとある学者の研究論文を図書館で借りたり自分でコピーして読んでたりしていた。
一日の流れとしては、起床→筋トレ→朝食→登校(休み時間・昼休みは読書)→図書館or海林公園→帰宅→夕食→勉強→入浴→勉強→就寝。
『さすおに』のためと全ての時間をできる限り訓練や知識を蓄えることに集中していた。もちろん学業は、決して疎かにしなかった。小学生ですでに中学、高校の範囲は予習していた。
そんなこともしていたせいで友だちと呼べる人間は少なかった。

そんな学校生活を過ごしていた時、俺によく話しかける人間がいた。それも、女子。
赤毛混じりの白髪のそのメガネっ子は、俺とは違い友達も多くクラスの中心的な存在、陽キャラだった。
そんな陽キャラな彼女がなぜ俺に話し掛けるようになったかと言えば少し前に理科室での実験で二人一組になってからだ。
その後、彼女は時折、俺と話すようになった。



それから少し経った後、彼女の父親をフルボッコにした。


クラスメートの父親をリンチしたなんてイかれていると思うがこれには理由がある。


『弟』が、『ヒーロー』を目指していたからだ。

ヒーロー、この世界の職業の一つ。災害現場での救助活動や犯罪行為を行う敵、ヴィランに対して『個性』を行使することが許される存在。

その活躍はまさに英雄、ヒーローと言える。
子供たちがなりたい職業ではぶっちぎりのトップ。俺はといえば愛しのマイブラザーに手を出すゴミどもをぶちのめすのに個性なんて使わないから個性使用許可はいらないし他の奴らがどうなろうとどうでもいい。
現代はヒーロー飽和社会だからヒーローなんて腐るほどいる。

俺としては弟が、家族が幸せならそれでいい。

しかし、弟は『ヒーロー』に憧れた。
正確に言うのであれば平和の象徴、オールマイトにだ。
No.1ヒーロー オールマイト。
彼はこの社会での真の『ヒーロー』だ。
どんな悪にも屈せず、勝利する。
絶望を希望に変え、多くの人間を救ってきた男。

弟はそんな男に憧れた。毎日、俺はパソコンでオールマイトのデビュー動画を見せるようねだられオールマイトのコスチュームを模した子供服を着た弟とオールマイトごっこをして遊んだ。
ヴィラン役はいつも俺だが、それでよかった。

『ボクも個性が出たらオールマイトみたいなヒーローになりたいな!』


そんな中、弟は現実を知った。

『諦めた方がいいね』

母に連れられ俺も病院に行った。そこで告げられた現実。
曰く、弟は個性を持たない旧世代、『無個性』でありこれから個性が発現することがないという。確かに弟のことを試しに見てみようとした時、今まであった人間とは違う何かがあるのはわかったがそれが無個性ということを示していたことを初めて知った。
その日の夜はお通夜状態。弟は一人パソコンでいつも見ているオールマイトのデビュー動画を狂ったように巻き戻しと再生を繰り返していた。
そして、俺を見ながらヒーローになれるか訊いてきた。
だから言った。

『お前は最高のヒーローになれる』

それからというもの、俺は『個性』について調べるようになった。人がなぜ、超常の力を手に入れたのか?どうやって事象を変化できるのか?
『個性』の謎を解けば、弟に個性を与えられるのではと思った。

その過程でプロヒーローやヴィランについても調べた。
個性を頻繁に使う彼らは個性が強力になる。出来なかったことができるようになる。

中でも興味が沸いたのはオールマイトだった。
彼のパーソナルデータを役所のPCをハッキングして見たところ彼の個性は親による遺伝ではなく突然変異の類いだった。それも、彼は中学生まで無個性だった。高校入学前に個性が発現なんて調べた限り前列がない。それこそ彼が第一号だった。
だから、調べる必要があった。
個性の後天的な発現がこれからも増える事例なのか?
それとも彼のみ特別なのか?

もしくは、誰かに個性を発現されたか?
何れにしても興味深い人物だった。

で、ついでに二位について調べた。
彼自身はそこまで特別じゃない。
鍛練と経験などによって今の地位に上り詰めたと言っていい。

だが、オールマイトに比べれば見劣りしてしまう。実際、人気もオールマイトが断然上。
弟はヒーローヲタクだから聞いてみると色々話してくれたしめちゃくちゃ興奮していた。

けど、俺にはわかる。
オールマイトの話の時の方がもっと興奮している!!

で、そのうちその万年NO.2が眼鏡っ子の父親であることが発覚した。興味はあったが、流石に女子に「家に連れてけ」なんて、言えないしそんなのドン引きされると思った。

そしたら、なんとその眼鏡っ子が学校を休んだのだ。まぁ、それぐらいは普通なんだけど先生に「お前、アイツと仲いいから今日のプリント持っていてくれ」なんて頼まれた。拒否しようとしたが先生はすぐにどこかに行ってしまいプリントを彼女に渡しに行く破目になった。

もちろん眼鏡っ子の家なんて知らないので『精霊の眼』で本人特定してから行ったら無茶苦茶でかい武家屋敷だった。


えっ、なにこの豪邸。ヒーローって儲かるらしいけどヤバすぎでしょ!こりゃ、人気な職業ナンバーワンだわ。と思いながら、インターフォンを押す。出てきたのは眼鏡っ子だった。風邪で休んだにしては声が普通だなと思いながら、プリントを渡して帰ろうとする。


家から出てきた眼鏡っ子はなぜかひどく怯えていた。
今にも泣きそうで体が震えていた。俺が何かあったか聞いても「何もない」「早く帰って」しか言わない。
仕方ないから、失礼だけど家の中を『精霊の眼』で視させてもらった。

結論から言って、道場みたいなところで万年NO.2が男の子を殴っていた。腹パンしていた。男の子は苦しそうに這いつくばって泣いていた。

これは、警察と児童相談所案件ですね~。と思いケータイ取り出して通報しようとした。

しかし、思ってしまった。
もし、NO.2とはいえヒーローが子供を虐待しているのがばれたら『弟』はどう思うだろう?
やはり、悲しむだろうか?
そして、自分から助けに行こうとしない俺をどう思うか?
誰かが助けを求めているのに自分自身で助けに行こうとしない俺をどう思うか?



『お兄ちゃん・・・・・・最低』

そんなのは嫌だああああああああ!!

だから、俺は彼女の家に乗り込んだ。

もちろん万年NO.2は『誰だ、キサマ!』とかギャアギャアわめいているので言ってやった。

通りすがりの弟だけのヒーローだこのヤロー!

で、なんで紅白饅頭の子供を虐待しているか聞いても答えないし、止めようともしないから。ちょーっと、挑発したら逆切れ。
殴りかかってきたので分解で能力を消して、あとはボコ殴りにしました。

個性と分解について調べているうちにそういう使い方が出来るようになっていた。

もちろん男の子の傷は治してあげたし、這いつくばってるおっさんの傷もついでに治してやった。
目を覚ましたおっさんに訴えたら虐待のことばらすぞって念を押していったから裁判沙汰にはならなかった。

帰ったら、『再成』衝撃で二日三日寝こんで休日無駄にしたけど。

それから眼鏡っ子はやけに親しげに話しにくるし、朝とか起こしに来るし、いつの間にか家でご飯作ってるしなんか様子が変だった。
まあ、眼鏡っ子が連れてきた彼女の弟、紅白饅頭君がマイブラザーと仲良くなってくれたのは良かった。


 その後も色々あった。そのまま眼鏡っ子と同じ中学に行き、高校はどっかの普通科に行く予定だったのにあの万年二番親父が勝手に倍率がヤバすぎる高校に出願を変更させやがった。それを知ったのが受験三日前。他の高校に変えることはできず中卒も厳しいから行く破目になった。
無事に合格してまたボッチ生活か~と思えばなんと眼鏡っ子がいた。違う科だけど。知り合いがいたから良かったし少し友人が増えた。
 職業体験とかでNO.1の事務所に行かされたりその元相棒の科学者の下でアルバイトしたり、秘密を知ったり、そこから色々研究したり、ヒーロー名をシルバーにしたり、弟をヒーローにする方法を見つけたり、大学生活で眼鏡っ子とお金ないからルームシェアすることになったりした。



そして今、



「やぁ、シルバー。会いたかったよ・・・・・」

キモい仮面をしたラスボスみたい奴に殺されかけています。
お腹から血が出て止まらないし、周りは火の海で息も苦しいし、もう力は実験に使ってあげちゃったし。

 こりゃ、また死にますわ。

「シルバー、僕は初め、君の個性にとても興味があった。けど今は違う。君という存在に興味がある!君の発明は素晴らしい。それが弟のために作ったのならなおさらだ。弟思いである僕たちはきっと気が合うはずだ・・・・・。どうだい、僕たちの仲間にならないかい?」

俺はノンケじゃあ!違うやつにしろ!

「そうかい、とても残念だよ」

そう言って変態はこっちに手をかざす。そこにどんどんヤバすぎるエネルギーが集まってくるのが分かった。

「本当に残念だよ、シルバー。いや、・・・・・緑谷達也くん。君ならきっと素晴らしい魔王になれると思ったのに」

その言葉を最後に俺はまた死んだ。でも、まぁ、弟の願いを叶えられるならそれでいいや。
 

 

1話

『ひどいよ、かっちゃん・・・・!泣いてるだろ!? これ以上は、僕が許さゃないへぞ!』

暑い夏の晴れた日、セミの鳴き声と怪我をしてうずくまりすすり泣いている声が聞こえる公園。僕はかっちゃんたちにイジメられていた友達を助けようと立ち向かった。
恐怖で震え、上ずった声を出しながらも、ファイテイングポーズを取る。
怖かった。かっちゃんが強いことは知っていた。なんでも出来て、強個性で、今思えば暴君だ。

『“無個性”のくせに、ヒーロー気取りか、デク!!』
手のひらを爆発させながら、目が笑ってない笑顔で威圧してくる。後ろにいた二人もそれぞれ大きな翼を広げたり指を伸ばしたりして個性を使う。

無個性である僕は木偶の坊。だから、デクとかっちゃんに呼ばれた。

『ひっ!!』

三人が飛び掛かって来る。無個性である僕は後ろの子の代わりに殴られるくらいしか出来なかっただろう。戦う力なんて無かった。
でも、逃げるのは嫌だった。逃げたら、後ろにいる子を守れない。

『おらぁあ!』

爆発させながらかっちゃんが殴りかかってくる。僕は目をつぶってしまう。
それはだめだと兄さんに言われたばかりだったのに。

来る!殴られる!

『ヘグッ!』
『ゲボッ!』
『ガハァッ!』
聞こえたのは僕が殴られる音、ではなく、向かってきたはずの三人が殴られた音だった。
僕は、恐る恐る目を開けた。


『迎えに来たぞ、出久』

『お兄、ちゃん・・・・?』
目の前に立っていたのは、三人を殴り倒した僕からみて背の高い上級生。僕の兄さん、緑谷達也だった。

僕にとって兄さんは、初めて憧れた人だった。

オールマイトよりも先に憧れて、近くにいるのにオールマイトよりも遠い存在。
勉強も運動もなんでもできてどんなことも簡単にこなしてしまう。
イジメられていた僕をいつも助けてくれる。まぁ、やりすぎてしまうのがしょっちゅうだけど。

どこまでも遠くてどこまでも大きい背中だ。
普通なら嫉妬して嫌ってしまうかもしれない。
でも、無個性だとわかった僕に他の大人やお母さんすら言ってくれなかったことを言ってくれた。

『お前は、最高のヒーローになれる』

嬉しかった。たとえ叶わなくてもその言葉で僕は救われた。
それからは兄さんの特訓に付き合って一緒に鍛えたり体術を教えてもらったりした。自分で言うのも烏滸がましいけど学校じゃ喧嘩を挑まれたら必ず勝っていいた。もちろん喧嘩したかったわけじゃないけど。
それから、兄さんの友達とその兄弟とも遊ぶようになったり、あのオールマイトとも会わせてくれたりした。

誕生日に生オールマイトはすごかった。すごくうれしかった。

中学入学祝いにはあのI・アイランドに連れて行ってもらって、更にオールマイトの元相棒であるデヴィット・シールド博士にも会わせてくれた。兄さんは博士の所でアルバイトをしているらしいがほぼ助手みたいな感じだった。
島で色々なアトラクションや発明品とか見せてもらって滅茶苦茶楽しかった。最高の入学祝いだった。

そしてその日の夜、僕は兄さんに連れられて博士の実験室に行った。

何故行くのかと訊けば『最後の贈り物だ』と兄さんは答えた。こんな最高のプレゼントをもらってまだあるなんて、すごすぎると思い何があるのか楽しみにしていた。


そこで、僕の記憶は途絶えた。


目が覚めたのは日本の病院のベッドの上だった。隣にはお父さんとお母さんがいた。
なんでも僕は一週間もの間眠り続けていた。なにがあったのかわからなかった。目が覚めた僕に気付いたお母さんが気を失って倒れたことにさらに混乱した。お父さん曰く、お母さんはまともに寝ておらず、食事もとっていなかったらしい。
しかし、回りを見ても兄さんの姿が無かった。兄さんのことをお父さんに聞けば気難しい顔をしてこう答えた。





「達也は、もう、・・・・居ないんだ」



これは僕が、最高のヒーローになる物語じゃない。

これは俺が、復讐をなそうとする物語だ。




「緑谷、おまえこの進路でいいのか?」

中学校の職員室、教職員の机が合わさってできた島のデスクに座り男性教師は呼び出した受け持ちの生徒にそう問いかける。

「はい、これが自分の進路です。何か不備でもありましたか?」
そう答えるのは放課後呼び出された男子学生。中学生にしては背が高く既に175は越えているだろう。黒髪に碧眼の青年は大人びていて顔も整っているが少し近寄りがたい空気を放っている。

「いや、確認だ。にしても、うちから自衛隊の学校に行こうとするヤツは初めてでな。お前の成績なら雄英も士傑も行けるだろ?個性もお兄さんと同じだしな」

「ご助言、ありがとうございます。しかし、自分はヒーローになるつもりはありません」
ヒーローになるつもりはない。その言葉は、同年代の人間にとっては異質なものだ。誰だって子供のころはヒーローを目指している。それを否定することはとても珍しい。

「そ、そうか、わかった。まだ、春だから気が変わったらいつでも言ってくれ。気を付けて帰れよ」

その言葉に感じたのか担任は少したじろいだ。

では、失礼しました。という言葉とともに男子学生 緑谷出久は職員室を退出した。



「今の、緑谷出久君ですよね?」

「ええ、そうですよ」

出久が退出した後、担任に話しかけたのは同僚の女性教師だった。一学年下のクラスを受け持っているが出久のことを知っていた。

「成績優秀。運動もできる。この前の体力テストで新記録を出して、さらに全国模試でも一位だとか」

「体力テストでは全科目同世代の記録を大幅に上回り、一年の後期からは全国模試トップ10。二年からはずっと一位。運動部からは助っ人に呼ばれ引っ張りダコ。まぁ、少し近寄りがたいのが欠点ですがね」



夕方、帰宅部である出久は独りで帰路についていた。

大会や試合の時には出久争奪戦になるほど、出久の身体能力はずば抜けていた。
野球では球速150km越えの球を平然と投げ、バスケではどんな場所からもゴールを決めしつこいマークもすぐに振り払う。陸上では全競技で、中学のみならず高校を含めた記録を全て塗り替えた。
他にも水泳、サッカーと様々な部活からの争奪戦。一つの部活に所属するとさらに問題が起きるため、帰宅部となった。

一部の人間は個性を使ったのではと疑ったが、出久には違う“個性”があった。
個性は一人に対して一つ。
このことから、出久の疑惑は晴れ純然たる彼の生まれつきと努力によるものということになった。


突如、出久の学ランにいれていたスマホが震えだす。
表示されたのは非通知の電話。

出久はそれに迷わず、電話に出た。

「はい」

『“ナイトウォッチ”、今夜こちらに来い。会長がお呼びだ』
出てきたのは低い男の声。自分を緑谷出久ではなく違う呼び名で呼び、要件だけ伝え一方的に切った。

「招集か、久しぶりだな」

出久はただそう呟き、SNSで帰りが遅くなることを家族に知らせた。





「久しぶりね、“ナイトウォッチ”。急な呼び出しで申し訳ないわね」

「いえ、自分は構いません」

ヒーロー公安委員会 会長室
街を一望できるその部屋で、立派なデスクに座る白髪交じりの女性。その前に足を肩幅に開き手を後ろで組んだ“休め”の姿勢で立っていた。

「ナイトウォッチ、お前に指令がある」

そう言ったのは目の前の女性 会長の隣に立つのは幹部の男だった。
この男こそ出久に招集を掛けた人物だった。

「指令とは?」

「緑谷出久くん、あなたの進路は?」

「・・・・・・自衛隊幹部候補高等学校に志願しています」

「なら、雄英にしなさい」

「・・・・は?」

いきなり、緑谷出久としての質問に疑問を感じながらも答えると志願先を変えろと言われた。

「理由を、聞いても?」

「近いうち、いえ、一二年の間に雄英高校ヒーロー科が襲撃される可能性があるの」

「襲撃、ですか?」

国立雄英高校。そのセキュリティーは国内でも最高レベル。それを掻い潜って襲撃される。そんなことがあり得るのだろうか?
「情報源は?」

「それは言えん」

幹部の男がそう言った。確かに情報源が漏れるのはまずい。公安委員会も組織的なヴィランや危険人物にマークをし、所属のスパイも存在している。
出久もその一人。約二年前、委員会にスカウトされ訓練と任務として内偵調査や裏からヒーローのバックアップをしていた。

“ナイトウォッチ”はそのコードネーム。夜警の名を得た。

「首謀者には“あの男”がいるわ」

「!?・・・・・目的は?」

“あの男”という言葉に動揺するも、冷静さを取り戻す。“あの男”、それは緑谷出久の目的でもあった。

「オールマイトだ」

オールマイト。日本の平和の象徴。ヒーローの本場、アメリカでも人気がる男。かつては自分も動画をよく、いや、しょっちゅう見ていた。

「オールマイトは来年の春から教師として雄英高校に赴任する」

「つまり、奴の狙いはオールマイトの抹殺」

平和の象徴を殺すこと。オールマイトとの戦いで弱ったとはいえこの日本を裏から支配した存在。可能性は十分にある。

「オールマイトはこれからのヒーロー育成のために、赴任する。お前には、雄英高校に入学し問題が起きた際対処してもらう」

「承知しました」

その命令を受諾し、出久は休めから敬礼をする。