ロックマンZXO~破壊神のロックマン~


 

プロローグ

 
前書き
ロックマンZXではやっぱりヴァン編が薄いなと感じてしまう。

ヴァン自体は王道主人公で好きなんだけども

 

 
科学技術の発達した未来世界。

人間と、人間が作り出した機械生命体“レプリロイド”の、長きに渡る戦争から数百年……。

復興した世界は人々(人間とレプリロイド)が暮らす安全地帯“インナー”と、メカニロイドや野生化したレプリロイド“イレギュラー”の出没する危険地帯“アウター”とに分断されていた。

アウターの遺跡から発掘された技術を保有する巨大企業“セルパン・カンパニー”。

人々はその恩恵を受けながら、都市中心部で平和に暮らしていた。

そして、運命の物語に二人の少年と少女が巻き込まれる一年前、少しでも運命が違っていたら…。

「あーもう!!後少しでインナーなのにバイクが動かなくなるなんて!!」

「元々古いのを使い回してたし。修理に使うパーツだってジャンク屋で買った安物だからなぁ。先輩も自分のバイクを見て、そろそろ“新しいのにした方が良いかもな”って言ってたし…どうせならもっと早く考えて欲しかったよな…」

インナー付近のアウターの森で壊れたバイクを押しながら青い制服を着た十代前半くらいのショートカットの少女が同じ制服を着た少年に動かなくなったバイクに愚痴をこぼしていた。

少年も仕方ないと思いつつも、新しいバイクを仕入れるのを渋っていた自分達の先輩に恨み言を胸中で呟いていた。

「本当よねヴァン…ジルウェって貧乏性って言うか…」

「流石に仕事中に十回も壊れたって知ったら、先輩も新しいのを調達してくれるって。早く帰ろうぜエール……あ…」

「どうしたのヴァン?」

ヴァンの視線の先を追うとインナーの都市中心部に聳え立つ、セルパン・カンパニーのビルが見えた。

「セルパン・カンパニーのビル…ここからでも見えるんだな。」

「うん…あれだけ大きくて…たくさんの警備隊がいるのに…九年前のあの時、アタシ達の家族を守ってくれなかった…」

この二人には一つの共通点があった。

今から九年前のイレギュラーの襲撃を受けた遊園地で家族を失い、共にジルウェと言う先輩に引き取られてジルウェ・エクスプレスと言う合法・非合法問わずの運び屋として働かせてもらっているのだ。

同じ過去を持つ者同士のためか共に行動することが多く、殆ど兄妹同然に育った幼なじみである。

「………帰ろうぜ、遅くなったら先輩が心配するし」

「……うん」

バイクを押して近くのトランスサーバー(転送装置)のある場所に向かおうとした時であった。

「エール!!」

「え!?」

いきなりヴァンに押し倒されたエールは驚くものの、ヴァンのバイクが爆発したことでようやく事態を理解した。

「もしかして…インナーに近い場所にイレギュラーが!?」

エールの言う通り、野生化した人型メカニロイドの“ガレオン”が姿を現した。

「逃げるぞエール!」

エールの手を引いて逃げようとするヴァン。

バイクが壊れているため、自分の足で逃げるしかないからだが、イレギュラーも見つけた標的を逃がすはずがない。

イレギュラーが二人に飛び掛かった時、ヴァンは咄嗟にエールを横に突き飛ばした。

「え…?」

突き飛ばされたエールが見たのはイレギュラーに飛び掛かられ、崖から落下していくヴァンの姿であった。

咄嗟に手を伸ばしたが、最早手遅れであった。

「嘘…ヴァン…」

顔色を真っ青にしてヴァンが落下した崖から身を乗り出したが、ここは下までかなりの高さがある。

体勢も変えられない状態で落ちたら生きている可能性は低い。

「嫌…そんなの嫌…っ!」

急いで下に降りてヴァンを捜すものの、姿は見つからず、ジルウェに通信を入れてジルウェ・エクスプレスのメンバー全員でヴァンを捜索するものの、痕跡すら見つからない状況にエールは母親を喪った過去の記憶が蘇って号泣した。

「エール…」

腰にまで届く金髪の眼鏡をかけたレプリロイドの青年が悲痛な表情でエールの背を撫でた。

「ジルウェ…」

「大丈夫だ…ヴァンは生きている。あいつを信じろ」

後輩の無事を祈りながらジルウェはエールを励ましつつ、足を動かした。

そしてある地下遺跡。

そこでヴァンは頭から血を流して倒れていた。

ヴァンが落ちた場所は地盤が脆く、先に激突したイレギュラーの爆発によって穴が開き、そこから現在いる地下遺跡に落ちたのだ。

光が差さないことから穴は埋まってしまったようで、このままではヴァンは出血多量で死んでしまう可能性が高かったが、近くに浮かぶ禍々しい輝きを放つ石がゆっくりと気絶しているヴァンに近付いていく。

石がヴァンに触れた瞬間にヴァンの体は光に包まれた。 
 

 
後書き
この話ではヴァンはモデルXの適合者ではありますが、モデルXで変身はしません。

一日か二日置きに投稿します 

 

第一話 モデルX

 
前書き
物語開始 

 
ヴァンが行方不明になってから一年が経過し、ジルウェ・エクスプレスのエールを含めたメンバーは悲しみを背負いながらも日々の仕事をこなしていた。

そしてエールはヴァンが行方不明となった崖の上で先輩のジルウェと共に休憩していたのだが…。

ジルウェの通信機に通信が入り、それに対応するジルウェをエールは一瞥すると、再びある方向に視線を向けた。

「はいはい!依頼とあらばどんな物でも どこにでも!こちら運び屋、ジルウェ・エクスプレスでございます!」

『…運び屋のジルウェさんですね?』

通信越しから聞こえてきたのは女性の声。

それを聞いたジルウェは表情を引き締めた。

「…その声はガーディアンの…いや、今は依頼主と呼んだ方が良いんでしたっけ?」

『…遺跡の調査隊から依頼の荷物は受け取りましたか?』

「ええ、確かに」

エールのバイクにある依頼の荷物を再確認しながらジルウェは答える。

『こちらの部隊を先程指定したポイントに向かわせました。予定より早いですが合流しましょう』

「分かりました」

そう答えるとジルウェは通信を切り、エールの方に振り返る。

「おい!エール!そろそろ行くぞ!」

休憩は終えて仕事を再開しようとするジルウェだが、エールの視線は前を向いたままだ。
 
「聞こえてるのか?エール!」

動かないエールに歩み寄るジルウェ。

そしてジルウェはエールの見つめている方向に視線を遣る。

「………」

そこからはインナーの都市に聳え立つセルパン・カンパニーのビルが見えた。

「セルパン・カンパニーのビル、こんなとこからでも見えるんだな。あの会社のおかげで、この国も随分大きくなって救われた。」

「…大きければ良いってわけでもないでしょ?十年前の時も…一年前の時も…カンパニーの警備隊は母さんもヴァンも救ってくれなかった。どっちもいきなりイレギュラーが現れて、二人共アタシを庇って…イレギュラーはアタシから大事な物を奪っていったんだ。」
 
「……そういや、俺が十年前の事件の時にヴァンとお前を見つけた時にはもう…どっちも一人ぼっちだったんだよな…そしてヴァンが行方不明になってからもう一年か…早いもんだ。気持ちは分かるが、街ではセルパン・カンパニーを悪く言うなよ?エネルギー不足やイレギュラー問題で苦しんでいたこの国はあの会社のおかげで色々と救われたんだ。セルパン・カンパニーはこの国にとって英雄なのさ」

「英雄…」

複雑な表情を浮かべるエール。

今でこそ元気…とは言い難いが、一年前にヴァンが行方不明になって捜索が打ち切られた時のエールはもう目を当てられないくらいに塞ぎ込んでいた。

母親の喪失が原因で目の前で大事な存在を喪うことを誰よりも恐れていたのに、運び屋の仲間達と共通の過去を持つヴァンや慕っているジルウェとの九年間で漸く生来の明るさを取り戻していた時に幼なじみのヴァンが自分を庇って目の前で行方不明になった。

塞ぎ込んでいたエールをジルウェと仲間達が支えてくれたことで何とか立ち直ることが出来た。

ジルウェも自分を慕ってくれた後輩であったヴァンのことを思い出したのか端正な顔立ちが悲しげに歪んだものの、エールの頭を優しく撫でた。
 
「辛いのは分かるが…そんな顔してても、お前の母さんもヴァンも喜んでくれないぞ?二人は命懸けでお前を守ったんだ。お前が悲しそうにしてるより、楽しく笑ってる方がずっと嬉しいに決まってる。お前だって普通にしてればそこそこいけるんだ。知ってるか?報告のついでにヴァンから聞いたんだけどお前、結構客には評判良いんだぞ?」

「ちょっ…!ジルウェ!?そこそこって何さ!そこそこって!大体ヴァンも余計なことを…」

「はははっ、行くぞ、依頼主は先に合流ポイントへ向かったそうだ。」

元気な反応を返したことにジルウェは安堵しつつも、仕事を再開し、二人は停車させている自分のバイクの元に向かった。

「…ねえ、ジルウェ。依頼主のガーディアンって一体何者なの?運んでる荷物の中身は何も聞かされていないしさ」

「ガーディアンってのは、イレギュラーと戦うために集まった連中のことさ。各地を転々としながらイレギュラー出現の原因を調べているらしい…荷物のことは…余計な詮索はするな、どうせヤバい物に決まってる。厄介事に首を突っ込むのは止めておけ」

「分かった…でも最近、イレギュラーの数が減ったよね…今日もアタシ達が通る場所でイレギュラーの残骸が沢山あったし」

「そりゃあ…一年前にアウターとは言えインナーの近くでイレギュラーが出たんだ。セルパン・カンパニーの警備隊もようやく本腰を入れたのかもな」

エールの疑問は当然ジルウェも抱いていたものの、一年前にインナーの近くでイレギュラーが現れたことでセルパン・カンパニーも警備の範囲を広げたのかもしれないと予想していた。

二人がバイクに乗り込もうとした時、バスターの光弾がバイクに直撃した。

咄嗟にバイクに身を隠す二人。

「な…何!?」

「こいつら…イレギュラーか!もしかして生き残りの奴らか!?うわっ!」

ジルウェのバイクに弾が当たり、煙が噴き出る。

そしてイレギュラーの攻撃はバイクに集中していき、そのことに気付いたジルウェはイレギュラーの狙いを悟る。
 
「まさか…俺達の荷物を狙ってるのか!?」

次の瞬間にエールのバイクが攻撃を受け、爆風でエールが崖下に転落する。

「きゃああああぁぁぁぁ!」

「エールッ!」

転落していくエールにジルウェは叫ぶが、イレギュラーからの攻撃は増していく一方。

「くっ、エール…無事でいてくれよ…!」

ジルウェはイレギュラーから逃走し、イレギュラーもまたジルウェを追い掛けた。

少し離れた場所で顔以外を布で覆った人物がエール達がいた場所に振り返った。

次の瞬間、胸を手で押さえながら上を見上げる。

「っ………まさか」

その人物は布を取り払う。

腰にまで届く金髪に真紅のアーマーに逆三角形のクリスタルが填められているヘルメット、そして翡翠色の瞳が特徴の少年。

少年は残像を残しながら森を駆け抜けた。

そして崖から転落したエールは意識を失っていたものの、意識を取り戻すと痛む体を擦りながら起き上がる。

「うっ…うう…!い…たた…随分落ちちゃったな…」

起き上がると、ジルウェから通信が入った。

『エール!大丈夫か!?依頼の荷物がお前の近くに落ちてるはずだ!そこから見えるか!?』

「…あれかな…?」

周囲を見渡すと、それらしい物を見つけた。

それは青を基調とした石で、エールはそれに近付く。

『いいか、お前は荷物を回収したらその先にあるガーディアンとの合流ポイントに行くんだ!俺もこいつらを撒いたらそっちに向かう!それまで荷物を頼んだぞ!』

ジルウェとの通信が切れると、エールはジルウェの身を案じながらも石を回収して合流ポイントに向かおうとするが、その直前に武装した集団と出会す。

「誰だ!?こんな所で何をしている!?」

突然バスターを向けられたエールは慌てる。

「ま、待ってよ!アタシはその荷物に用があるだけなんだって」

「みんな、銃を下ろして」

エールが相手に事情を説明しようとした時、良く通る少女の声が聞こえたかと思えば、長い金髪の桃色の制服を纏ったレプリロイドの少女が前に出た。

見た目はエールと同じか少し上くらいか。
 
「もしかして…運び屋の方ですか…?」

「うん、そうだけど…あなた達がガーディアンなの?」

「ええ…遠くで爆発が聞こえたので様子を 見にきたのですが…」

取り敢えず事情を話そうとエールが口を開いた時、突如大型の蛇型のメカニロイドが出現した。

「な、何だこいつは!?」

「蛇のメカニロイド…!こいつもさっきのイレギュラーの仲間!?」

「プレリーさん!ここは危険です!早くそれを…ライブメタルを持って逃げて下さい!」

武装したガーディアンのメンバーがメカニロイドをバスターで攻撃するが、頑強な装甲には傷一つ付かず、逆に弾き飛ばされて返り討ちにされてしまう。

「ぐあああっ!」

「み、みんな!」

プレリーと呼ばれた少女は倒れた仲間に駆け寄る。

「は…早く…ライブメタルを…」

「早く立って!ここから逃げるの!あいつの狙いはあの荷物よ!あんな物を持って逃げたら、追って来るに決まってる!」

「……嫌…!…ライブメタルは…誰にも渡さない…!」

エールがプレリーに駆け寄って逃げるように促すものの、プレリーはそれを拒否する。

「馬鹿言わないで!あのライブメタルっていうのがそんなに大事だって言うの!?」

「だって…あれは…お姉ちゃんが…あれはお姉ちゃんが私達に残した…大切な物だから…!」

それを聞いたエールはプレリーを庇おうとして前に出た。

幼なじみの彼も今の自分と同じ立場ならきっと、もう後悔したくないと言いながらこうするだろう。

「……もうっ!首を突っ込むなって言われたけど…!こんなの 放っておけるわけないじゃない!でも…どうすれば…!」

「…大丈夫、僕が力を貸してあげる…適合者確認、R.O.C.K.システム起動開始」

石が光を放ちながら浮かんだかと思えば、石はエールに向かっていき、エールの体を光が包み込む。

次の瞬間にはエールの姿は変わっており、青いアーマーに赤いクリスタルが填められているヘルメット、そして右腕が変形した武器…Xバスターが特徴の姿となっていた。

そして無意識にチャージされていたバスターを構え、チャージバスターを命中させると、ダメージを受けて怯んだメカニロイドはこの場から逃走する。

「はあっ…はあっ…!アタシの体…どうしちゃったの?ライブメタルのせい…!?」

メカニロイドは追い払えたものの、自身の体の変化に戸惑うエール。

「恐れないで……僕はライブメタル・モデルX…」

「モデル…X…?ライブメタルが、アタシの中で喋ってる!」

「このままじゃ、あの女の子を戦いに巻き込んでしまう…ここを 離れるんだ…君と僕が力を合わせれば…奴らと戦える!」

「………!」

「…変身した……!?この人がライブメタルに選ばれたというの…!?」

プレリーはエールの変化を見て、彼女がライブメタルに選ばれたことを悟った。

「とにかくこのライブメタルを合流ポイントまで持っていけばいいんでしょ!?危ないからあなたはここでじっとしてて!…こんなことまでさせて…後で追加料金、毟り取ってやるんだから!」

「ま、待って!…助けてくれてありがとう……私の名前はプレリー…!」

愚痴を言いながら駆け出したエールを呼び止め、感謝と自己紹介をしてきたプレリーにエールも笑う。

「…ハハッ、アタシはエール…!“運び屋”のエールっていうの、待ってて…今、助けを呼んでくる…!」

「…うん…気をつけて…エール!」

エールはプレリー達から離れて合流ポイントに向かう。

イレギュラー化したメカニロイドがエールに向かってくるのを見て攻撃を回避しつつ、バスターを構えて連射する。

エールは戦いの経験は皆無だが、モデルXのサポートがあるために弱いメカニロイドなら問題もなく戦える。

「当ったれーっ!」

最大までチャージしたバスターから二発の光弾が発射され、目の前を塞ぐメカニロイドを粉砕していく。

これがモデルXの最大の特徴であるダブルチャージ。

威力の高いチャージバスターを連続で発射して、敵に大ダメージを与えることが出来る。

バスターで弾幕を張りつつ、ダッシュによる高速移動を駆使して突き進むと合流ポイント付近に到達した。

次の瞬間、再び蛇型のメカニロイドが姿を現す。

「来た…こいつを倒さないと助けを呼べない…」

「大丈夫だよ…あのメカニロイドはどうやら頭部が弱点のようだ。頭部を集中して狙えば充分勝てる」

「うん……(母さん…ヴァン…アタシに力を貸して…!)」

モデルXの言葉に勇気を出してエールは戦いに挑む。

メカニロイドは大型なだけあり、パワーは相当なものだ。

一撃でも受ければ小柄なエールはひとたまりもないだろう。

しかし小柄でダッシュによる高速移動を使えるエールに大振りな攻撃は当たらず、動きを止めた直後にダブルチャージバスターでダメージを受ける。

尻尾による攻撃とそれによる石の礫、そして口から発射される弾にさえ気を付ければ回避は容易である。

「これで終わりよ!」

ダブルチャージバスターを何度も頭部に受けたことで亀裂が入り、煙が噴き出ている。

とどめのダブルチャージバスターを頭部に叩き込むと、頭部が爆発して沈黙した。

「何とか…倒せた…確かモデルXって言ったっけ…?何でアタシを助けたのさ?」

「人の命を救うのに理由なんて要るのかい?君だって会ったばかりのあの女の子を助けようとしたじゃないか。僕は君の勇気に力を貸しただけだよ」

「…力…か、そうだよね…あなたのおかげで助かったよ…勇気だけじゃ、誰も助けられないもんね…」

「……?」

エールの言葉に不思議そうにするモデルX。

もし彼が人間かレプリロイドなら首を傾げているだろう。

「…合流ポイントは、この先だっけ?さ、行こう」

モデルXに伝えると、先にあるトランスサーバーのある扉を潜ると、ガーディアンのメンバーらしき人々がいた。

エールが入ってきたことに気付き、ガーディアン達の視線が向けられる。

「依頼を受けた“運び屋”の者よ、荷物を持ってきたわ。向こうで プレリーっていう女の子が助けを待ってるの、行ってあげて」

「何だって!?おい、みんな!プレリー様達の救助に行くぞ!」

プレリー達の救助のために小柄な老人レプリロイドを除いた全員が向かっていく。

「プレリー…様?あの子、ガーディアンじゃそんなに威張ってるのかな…?」

「驚きました…その様子だと…ライブメタルを使いましたね?でも無事に届けてくれたようでホッとしました」

「あれ?ジルウェは?もう一人の運び屋はまだこっちには着いてないの?」

辺りを見回してもジルウェの姿が無ければ、ここに来た形跡もない。

「いえ、ここにきたのはあなただけですけど…」

老人が答えた次の瞬間、救護班からの通信が入った。

『こちら救護班!仲間を発見しました!怪我人を保護した後、ガーディアンベースへ帰還します』

「待って下さい、もう一人の運び屋が行方不明のようです。そちらで何か確認出来ませんか?」

『…あれは…!隣のエリアから煙が上がっています!隣のエリアで何者かが襲われているようです!』

「…そんな…ジルウェ…!?」

それを聞いたエールは自分が使っているモデルXの力を思い出し、ジルウェを助けに向かおうとする。
 
「…悪いけど このライブメタル、もう少し借りていくよ!ジルウェを助けにいかないと…!」

「何ですって!?あなたも、ライブメタルもこれ以上危険な目に遭わせるわけには…!」

「何さ!荷物さえ届けばジルウェがイレギュラーにやられてもいいっていうの!?」

「で、ですが…!」

エールと老人の口論を止めたのは向こうで保護されているプレリーであった。

『待って!フルーブ!エールを行かせてあげて!』

「プレリーさん!?」

フルーブと呼ばれた老人はプレリーの言葉に慌てるが、プレリーは言葉を続ける。

『大丈夫よ、フルーブ。彼女ならイレギュラーとも戦えるわ…エール、あなたはあの時、出会ったばかりの私を助けてくれた…あなたのその勇気を信じるわ。ガーディアンベースへは私が話を通すから…あなたの大切な人を助けてあげて』

「…ありがとう、プレリー」

それを聞いたフルーブも説得を諦め、エールのサポートをすることにした。

「…仕方ありませんね…では、私達であなたのサポートをします。ご存知かもしれませんが、このトランスサーバーはこの国のあちこちにあります。これを使えばミッションの確認が出来るのですよ…ベースのオペレーターからミッションの発令を受けました。現在、あなたに出されているミッションは二つです。ミッションの一つは行方不明になったもう一人の運び屋の捜索、一つはガーディアンベースへの転送許可を貰うテストのようなものです。二つのミッションをこなして、ライブメタルをベースまで届けてくれればあなた方“運び屋”への依頼は完了ということになります。」

「十年前…イレギュラーに襲われたアタシ達を助けてくれたのはジルウェだった…今度はアタシがあの人を助けるんだ!待ってて!ジルウェ!……もう、何も出来ないで後悔なんかしたくないから…!」

決意を胸に早速トランスサーバーでジルウェ捜索のミッションを受け、隣のエリア、エリアBにエールは向かうことにした。 

 

第二話 謎の存在とモデルZ

 
前書き
ジルウェ唯一の見せ場が…でも仕方ないね 

 
モデルXのダッシュ移動を駆使して、通常ならばかなり時間がかかって到着するであろう、エリアBに短時間で着いた。

エリアBへの扉を潜ると、そこには無数の残骸が転がっていた。

バスターのショットで撃ち抜かれた物や真っ二つにされた物だけでなく、殴打や握り潰された痕跡のある物まである。

「これは…戦いの…跡?…イレギュラーとは言え、ここまで酷いやられ方だと少し気分が…」

『エール?聞こえる?私達を襲ったイレギュラーのことだけど…ちょっと気になることがあるの、散らばっている残骸にイレギュラーの手掛かりが残っているかもしれないわ。残骸の傍に何か落ちてないか、調べてみて……それから…未知のエネルギー反応があるの…もしかしたらイレギュラーの可能性もあるから気を付けて』

「分かった…と言われても、こんなに滅茶苦茶だと手掛かりを探すのも一苦労だよ…」

溜め息を吐きながら、残骸を調べて先へ進む。

しばらく進むと、転がっている残骸からコンピューターチップを発見する。

「何これ…コンピューターチップ?」

『多分、イレギュラーに使われていた部品ね。ガーディアンベースで解析すれば何か分かるかも…他にもあるようなら集めてもらえるかしら?』

「分かった…本当なら追加料金にしてやりたいけど、ライブメタルを貸してもらってるからチャラね」

無数の残骸からコンピューターチップを見つけ出す作業に、エールはガーディアンから更に追加料金を毟り取りたい気持ちがあるものの、ジルウェのためにライブメタルを貸してもらっている立場のためにそれは出来なかった。

生き残ったイレギュラーがエールに襲い掛かるものの、森の時よりも数が少ないために対応は容易であった。

残骸のコンピューターチップを回収しながら奥に進むと、影がエールを覆う。

上を見上げると、エイ型の巨大輸送機。

操縦席にはイレギュラーが乗り込んでいた。

「あいつがジルウェを攻撃しているの!?なら、あいつを倒せば…行っけーっ!!」

フルチャージしていたXバスターを上空に構えて輸送機を墜とそうとするが、距離があるためにダブルチャージバスターが二発とも外れてしまう。

そして反撃と言わんばかりに下部ハッチが開き、トーテムポール型の砲台が落としてきた。

「エール、あれを破壊するんだ!」

「わ、分かった!」

モデルXの指示を受けてダブルチャージバスターを砲台に当てて破壊すると、無数の砲台の残骸が輸送機に直撃する。

「当たった!?」

「あれなら確実にダメージを与えられる!エール!あれを砲台のある場所まで誘導してダメージを与えるんだ!」

「うん!」

他に置かれている砲台の場所まで誘導し、バスターで破壊した残骸をぶつけるものの、放置された砲台はなく、後一撃で倒せるのだが、モデルXの力に慣れていない上に実戦慣れもしていないエールでは動き回る的を狙うのは厳しかったが…。

突如、紅がエールの真上を通り過ぎた。

「え?」

紅い何かは太股のホルスターから柄を抜くと紫色の刃が発現し、そのまま輸送機を叩き斬った。

両断された輸送機は半分がそれぞれ別方向に落下していき、爆散した。

「…………」

「この気配…エール、気を付けて…ただ者じゃない…エール?」

モデルXが目の前にいる存在の異質さに気付き、エールに警戒を促すが、エールは目の前の存在が放つ雰囲気に懐かしさを感じていた。

体つきからして男で、年齢はエールと同じくらいか…紅いアーマーの少年はセイバーをホルスターに戻し、ある方向を見遣るとモデルXと同じダッシュ移動でこの場を去った。

「あ、待って!」

手を伸ばしながら叫ぶが、少年は振り返ることなくいなくなってしまった。

「…行っちゃった……」

「知り合い、なのかい?」

「分からない…でも……」

モデルXの問いにエールは答えられなかったが、少年の放つ気配は異質さはあれど、イレギュラーのような恐ろしいものではなく、どこか優しさを感じさせた。

「あの感じ…どこかで…」

「どうやら、ライブメタルに触れたようだなエール」

「え?」

聞き慣れた声に振り返ると、先程の少年よりも明るい赤のアーマーを纏っている青年の姿。

「…あいつがモデルXに選ばれた奴か…」

「…そうさ、モデルZ。俺の大切な後輩だ」

変身を解除し、赤のライブメタルと共にエールに歩み寄るジルウェ。

「エール…モデルZが異質な気配を感じると言うから急いで来てみたら…どうやら、お前もライブメタルに認められたようだな」

「…ジルウェ!それにそのライブメタルは…!一体何がどうなってるの?」

色々なことが起きすぎて混乱しているエールにジルウェは優しく説明を始めた。

「こいつは俺の相棒…ライブメタル・モデルZさ…黙っていて悪かったな、実は俺もガーディアンのメンバーなんだ。ライブメタルで変身出来るのは俺達のようなライブメタルに認められた者だけ……その力を狙っている奴らから、お前と……そして…ヴァンを守るのが、俺の使命だったのさ…結局ヴァンは守れなかったけどな」

自嘲するようにジルウェが言うと、エールはジルウェの言葉に引っ掛かりを覚えた。

「アタシとヴァンが選ばれた者…?」

「騙すつもりはなかった…一年前のヴァンの件もあったから、話すタイミングが見つからなかったんだ…あの人から依頼を受けた時、良い機会だと思ってな。この依頼が終わったら全部話すつもりだったんだ。エール…俺と一緒にガーディアンに来ないか?ガーディアンに来れば俺が守ってやれるし、ヴァンの時のようなことは絶対にさせない。それにライブメタルはイレギュラー発生の謎を解く鍵でもあるんだ。」

「…そんなこと…急に言われても分からないよ…」

ライブメタルに選ばれたとかジルウェがガーディアンのメンバーであっても、十年間過ごしてきた運び屋にも自分なりの愛着があるのだ。

いきなり言われても即決出来るわけがない。

「…無理強いをするつもりはない。エール、お前が自分で決めてくれ。俺はこの奥にあるトランスサーバーで、先にガーディアンベースまで戻ってる。お前もすぐに来いよ」

そう言うと、ジルウェはトランスサーバーのある場所まで向かおうとするが、その前に聞きたいことがあった。

「ねえ、ジルウェ」

「何だ?」

「その、ライブメタルに選ばれた人って…ガーディアンに何人かいたりする…のかな…?」

「いや?今のところ…お前と俺だけだな…それがどうかしたのか?」

強いて言えば一年前に行方不明になったヴァンもエールと同じく適合者の最有力候補の一人だったが。

「…その、さっきのジルウェに似たような姿の…アタシくらいの男の子がいたから、あの子もガーディアンなのかなって…」

「モデルZに似た姿……もしかして、途中で追ってきたイレギュラーの数が減ったのは…お前じゃないのか?」

「アタシもちょっと前に来たばかりなんだ…だから多分、あの子がしたんだ」

「そいつがモデルZの言っていた異質な気配の奴か…そいつが倒したイレギュラーからメモリを回収してみるか…正体が分かるかもしれない…エール、お前も気を付けろよ」

ジルウェはそう言うと少年が破壊したらしいイレギュラーの残骸がある場所に向かうのであった。

そしてプレリーからも通信が入った。

『エール、未知のエネルギー反応が消失したようだけど…』

「ジルウェが…あの子が倒したイレギュラーのメモリを回収してくるって…」

『そう…分かったわ。後はトランスサーバーでミッションレポートを選んでミッションの終了をベースに報告してね』

「…ジルウェがアタシ達の傍にいたのは…アタシ達が選ばれし者だったから…なの…?……何かそれって…寂しいな…」

ヴァンもどうやら自分と同じだったような理由だったらしいし、ここにヴァンがいればこの寂しさも和らいだのだろうか?

答えの出ない疑問を胸に抱きながらエールはベースにミッション完了の報告をし、次のガーディアンベースに向かうためのテストを受けることにした。 

 

第三話 ガーディアンベース

 
前書き
かくれんぼミッションは飛ばします 

 
無事にジルウェを見つけ出し、ジルウェが隠していた様々な事情を知ったことで少々困惑しながらもガーディアンベースに向かうためのテストを難なくクリアした。

そしてトランスサーバーのある場所に向かい、装置を起動させてガーディアンベースへと転送した。

「…ここが…ガーディアンベース…?ビックリしたぁ…まさかガーディアンベースが空飛ぶ船だったなんて」

窓から見えた光景と僅かな揺れに、自分が飛行艇にいることが分かったのだ。

「ガーディアンは世界各地の調査をしているから、移動出来る方が便利なのよ。とにかく、お二人共ご無事で何よりでした」

プレリーがガーディアンの拠点が飛行艇であることの理由を説明するとエールは納得したように頷き、そして思い出したようにある物を渡す。

「そうだ、プレリー。拾ったコンピュータチップを渡しておくね。それと…テスト合格の証明って……これで良いの?」

イレギュラーの残骸から発見した複数のコンピューターチップと、テストの終わりに合格証明として渡された可愛らしいぬいぐるみをプレリーに渡す。

「うん…これもお姉ちゃんから貰った大切な物なの。持ってきてくれてありがとう」

エールからぬいぐるみを受け取ると、プレリーはぬいぐるみを何時もの位置にくっつける。

「おい、エール!いくら何でも呼び捨ては不味いだろ!いいか?この方はなぁ…」

一応依頼主への礼儀は知っているはずのエールがプレリーに対してタメ口を利いていることにイレギュラーのメモリを回収して先にガーディアンベースに来ていたジルウェが慌ててプレリーのことを教えようとするが…。

「良いんです、ジルウェさん。とにかく、お二人を危険な目に遭わせてしまいすみませんでした。今から全てをご説明いたします。この部屋を出て、左にあるブリッジまで来て下さい」

「はあ…」

「………?」

何が何だか分からないエールは不思議そうにジルウェとプレリーを見るしかなかった。

取り敢えず出るように促されたので、言われた通りにブリッジに向かい、その中に入る。

「改めてようこそ、私達の本拠地…ガーディアンベースへ。そして…私がガーディアンの司令官…プレリーです」

プレリーの正体を聞いたエールは一瞬言葉の意味を理解出来なかったが、次の瞬間には瞠目した。

「…え?ええっ!?プレリーが司令官!?そ、それじゃあ…」

「今回の仕事の依頼主様、だ…だから呼び捨ては止めろって…お前、ヴァンのことを言えないぞ…」

「でも…プレリーだってアタシと同じくらいの女の子だよ?何で司令官なんかに…?」

「人々を襲う謎の機械生命体…イレギュラー、それらは本来なら存在しないはずのものです。数百年前の戦争が終わった時、人と機械は争いあうことを止めたのですから……そこでガーディアンはイレギュラー発生の原因を調べ続けてきました。そして…調査の途中、私達はある科学者の研究所を見つけたのです」

「ある科学者…?」

エールが不思議そうに首を傾げるが、続きを話そうとしたプレリーの表情が曇る。

「…調査中に行方不明になった…初代の司令官………私の…お姉ちゃんです…」

「…そ…そうだったんだ…」

初代司令官が行方不明になったからプレリーが後を継いだということなのだろう。

「で、その研究所で見つかったライブメタルを俺達が運んだってわけだ。」

そしてあの時にイレギュラーの襲撃を受けて現在に至るということだ。

「遥か昔…人間と機械のために戦い、世界を救った伝説の英雄達…その魂を宿す、意思を持った金属…それがライブメタルなのです。そこに記録されているデータから、イレギュラー発生の原因が分かるかもしれません。トランスサーバーの部屋の隣にフルーブのラボがありますので…彼にライブメタルのデータを渡してあげて下さい、私はここで、エールさんとジルウェさんが拾ってきたチップとメモリの解析をしています」

ジルウェが先に出て、エールが慌てて追い掛ける。

二人がブリッジを出たのを確認すると、解析を始めた。

最初は謎の人物によって破壊されたイレギュラーのメモリからだ。

「(それにしてもジルウェさんがモデルZに選ばれたようにエールもモデルXに選ばれるなんて…運命的な物を感じるわね…)」

モデルZとモデルXのことを多少知っている者からすれば何らかの縁を感じずにはいられない。

メモリの解析は難しいものではなく、ただ破壊される直前の映像を映すだけなので大した手間ではなかったが…内容がプレリーを驚愕させるものであった。

司令官としてある程度の胆力は身につけているつもりだったが、この内容はそれを容易く上回る。

破壊される寸前で映っていたのは紅だった。

炎に照らされる紅いアーマー、たなびく黄金の髪、そして見覚えのある二つの装備。

「嘘…そんな…」

信じられないと言う表情を浮かべるプレリー。

彼女の遠い遠い記憶を刺激する姿に一瞬、歓喜の色が宿るものの、モニターに映った顔を見て悲しみへと変わる。

「あの人じゃなかった…」

あの人がいなくなってからもう、長い時が過ぎたのだ。

最早生存は絶望的でプレリー自身ですら諦めたはずなのに、一瞬だけ沸き上がった希望に、自分はまだ心の中で諦めていなかったことが分かって苦笑した。

しかし、ならばモニターに映る彼は何者なのか。

「未知のエネルギー反応の正体は彼で間違いなさそうね…エールとジルウェさんを助けて、イレギュラーのみを狙う…」

モニターに映る彼は自分達の敵か味方なのか…現状では判断がつかなかった。

そしてフルーブのラボにエールが入ると、既にジルウェがモデルZを渡しており、データのコピーを終えたところだった。

「やあ、お待ちしていましたよ。早速ですが、ライブメタルを貸してもらえますか?」

エールはモデルXをフルーブに渡すと、フルーブはモデルZ同様にデータをコピーする。

「…………………………これでよしと、ありがとうございました。データはコピーしたので、これはお返していたします」

コピーを終えて返してもらったモデルXを受け取ると次の瞬間、ベース内で警報が鳴った。

『エリアDにイレギュラー反応出現!戦闘要員は地上への転送後、ベースからの指示を待て!繰り返す!エリアDにイレギュラー反応出現!戦闘要員は地上への転送後、ベースからの指示を待て!』

「エリアDと言えば…セルパン・カンパニー本社の近くじゃないか…!」

「お二人共、今、街に戻るのは危険です。とにかく司令室へ行きましょう」

動揺する二人にまずブリッジに向かうように促すと、エールとジルウェはブリッジに向かった。

ブリッジに入ると、プレリーが迎え入れた。

「どうやら…“敵”が本格的に動き出したみたいですね」

「敵…?ただのイレギュラーじゃないってことか?」

プレリーの言葉にジルウェが反応すると、彼女も頷いた。

「エールさんが拾ったチップからイレギュラーを操るためのプログラムを発見しました。恐らく何者かがイレギュラーを操り、襲撃に見せかけて…あなた方が運んでいたライブメタルを 奪おうとしているのでしょう。」

「警備隊は…セルパン・カンパニーの警備隊は何をしてるのさ!?」

イレギュラーから市民を守るべき警備隊は何をしているのかとエールが尋ねるが、プレリーから返ってきた言葉はあまり良いものではなかった。

「街でパトロールしている警備隊が戻るには時間がかかります。今、ガーディアンの地上部隊がエリアDへ向かっていますが…」

エリアDに向かった地上部隊のメンバーから通信が来た。

『こちら地上部隊!イレギュラーが居住区に向かってきています!現在、エリアDハイウェイ上で交戦中!』

「…このままじゃ…街の人達が…!」

通信を聞いたエールはブリッジを飛び出そうとし、それを見たフルーブが慌てる。

「エールさん!?一体どこへ!?」

「ライブメタルがあれば…アタシだってあいつらと戦えるんだ…!」

「落ち着け、エール!ライブメタルを持っていったら真っ先に狙われるぞ!お前はまだ戦いの経験が浅いんだ!危険すぎる!」

「それじゃジルウェはこのまま何もせず見てろっていうの!?このままじゃ街の人達がまたイレギュラーに襲われちゃうんだよ!?アタシやヴァンが母さん達を失ったみたいに…沢山の人が傷付くんだよ!?そんなの見てられない!イレギュラーなんか…全部倒してやるんだから!アタシはもう…何も出来ないで後悔したくないの!」

そう言ってブリッジを飛び出し、トランスサーバーのある部屋に向かうエール。

「エール!」

「…後悔したくない…か…」

「ジルウェさん、彼女は…」

「…あいつには同い年で同じ境遇の幼なじみがいたんです。以前司令官に報告した一年前のイレギュラー襲撃でそいつが行方不明になってから、以前よりも喪うことを恐れてるんですよ……俺も行きます。あの時、俺はヴァンを守れなかった。今度こそ守り通すつもりです」

そう言うとジルウェもまたブリッジを飛び出した。

ジルウェはトランスサーバーを使い、エールがいるエリアDへ向かい、モデルZで変身して追い掛けた。

「おい!エール!」

走っているエールの背中を見つけ、声をかけるとエールは足を止めた。

「ジルウェ…アタシは………!」

「………何もしないで後悔するくらいならしてから後悔した方がマシ…」

「え?」

「覚えてるかエール?ヴァンがお前と一緒に俺に引き取られてからあいつが何か無茶する度に言っていた言葉だ」

「うん、覚えてる…」

その度にヴァンは怪我をしたり、危ない目に遭っていたりして、ジルウェを含めた運び屋の年長組に叱られていた。

「…止めても無駄だってのは分かってるよ。お前一人にだけ格好つけさせたりなんかしないさ…ライブメタルが使えようと使えまいと、お前は俺の大切な仲間だ…お前は俺が守る…行くぞ!エール!」

「……うん!」

エールとジルウェがハイウェイを駆け出した。

これが運命の戦いの始まりとなることを知らずに。

そしてガーディアンベースのブリッジでも動きがあった。

「エリアDにエネルギー反応!あの反応です!」

「モニターに映して!」

プレリーの指示により、エネルギー反応のある場所がモニターに映し出される。

そこにはエリアDのハイウェイを高速で駆け抜ける紅の少年がいた。

敵か味方なのか…ブリッジにいる全員が不安そうにモニターに映る少年を見つめるのであった。 

 

第四話 運命

 
前書き
イレハンのVAVA編のオープニングステージの要素も含んどります 

 
エリアDのハイウェイでエールは息を切らしながら自分に襲い掛かるイレギュラーを返り討ちにしていた。

戦い慣れていない自分と、被害に遭っている人々のためにジルウェには先行してもらっていた。

ジルウェはガーディアンのメンバーだからか、エールよりも戦い慣れており、多くのイレギュラーを倒していたのでエールに襲い掛かるイレギュラーの数はそれほどでもない。

しかし逆に言えば殆どの負担はジルウェが負っていることになる。

「エール、飛ばし過ぎだよ。君はまだ僕の力に慣れていないんだ」

「大丈夫…少しでもジルウェに追いつかなきゃ…!」

遅れれば遅れる程にジルウェの負担は増していく。

エリアDのセルパン・カンパニー付近に行くためのシャッターの前に負傷したガーディアンの地上部隊の一人がいた。

「大丈夫!?」

駆け寄ると負傷した彼はエールを見ると目を見開いた。

「君は運び屋の…!?君も来ていたのか…!私を逃がすために…ジルウェが…一人でこの先へ行ってしまった…助けに行ってやってくれ…!」

「ジルウェが…分かった。ありがとう!」

どうやらジルウェは随分奥へと行ってしまったようだ。

早く追い付かなくてはと、エールは自分を鼓舞しながらシャッターを潜って奥へと向かった。

足場は所々崩れており、不安定な場所が多い。

「エール、崩れそうな場所はダッシュかダッシュジャンプで移動するんだ。いくら変身した状態でもこの高度から落ちたら一貫の終わりだからね」

「あまり怖そうなこと言わないでよ…」

モデルXの指示通りに進んでいくと、途中で大型の蝿型のメカニロイドが立ち塞がる。

「どけぇーっ!」

チャージを終えたXバスターを構えると、ダブルチャージバスターからのショットの連射でメカニロイドを破壊する。

機能停止したメカニロイドは地面に落下し、そのまま道路ごと落下する。

「きゃあああぁぁっ!」

「大丈夫だよエール」

モデルXの言う通り、崩壊した道は多少の罅は入ったものの、道路を支える柱に挟まる形で止まる。

「び、びっくりした…」

「これなら壁蹴りで上に登れるね。エール、急ごう」

「う、うん…」

一度落ち着くために深呼吸をした後、壁蹴りで上に登って再び奥へと向かう。

するともう一体の大型メカニロイドが出現する。

再びダブルチャージバスターとショットの連射で迎撃してメカニロイドを破壊すると、急いで奥へと向かった。

前のように柱に挟まってくれる保証などないからだ。

「モデルZの気配がする…でも他にも反応がある…かなり離れた場所に一つ…他はモデルZの近くだ…」

「それってどういうこと?」

「分からない……でも嫌な予感がする。急ごうエール」

モデルXの言葉に不安を感じて走るペースを上げ、セルパン・カンパニーの本社前に傷だらけになって倒れているジルウェと、見覚えのある男と二人の男女。

「……ジルウェッ!?」

「来たか…モデルX、青のロックマン…その力、試させてもらおうか」

男が何かを持った手を倒れているジルウェに翳す。

「ぐ…ううっ……来る…な、これ…は…罠…ぐっ…!うああああああああっ!」

男が持っている何かから妖しい光が放たれ、ジルウェの体を呑み込み、光に呑み込まれたジルウェは苦しそうに絶叫した。

そして光が消えた直後にジルウェはゆっくりとした動作で立ち上がる。

「ジルウェ!一体どうしたの!?」

「……エール…!オレヲ…オレヲ、ウテ…!」

ジルウェは落ちていたZセイバーの柄を掴むと、光刃を発現させる。

そして目が赤く光った瞬間、セイバーを構えてジャンプ斬りを仕掛けてきた。

「エール!」

モデルXがエールの体を動かし、ジルウェの攻撃をギリギリで回避させる。

「ジ、ジルウェ…?」

いきなり攻撃してきたジルウェにエールは動揺する。

「ダアッ!!」

しかしそんなエールに構うことなくダッシュからの突きを繰り出してくるジルウェ。

ダッシュジャンプで何とか回避するエール。

「エール、ジルウェは操られているんだ!モデルZ!聞こえるかい!?モデルZ!ジルウェの変身を解くんだ!」

モデルXがモデルZに語りかける。

変身が解ければ今のエールなら暴れようとジルウェを押さえることが出来るのだが、肝心のモデルZからの反応がない。

「モデルZ!?まさか、意識を封じられている…これではジルウェを倒すしかない…」

「そんな!?ジルウェを…ジルウェを倒すの!?」

「変身が解除されるくらいのダメージを与えれば、彼を死なせずに済む…」

「…ジルウェ……」

「ヌウッ!!」

チャージを終えたセイバーによる一撃、チャージセイバーが繰り出される。

衝撃波とそれによる地面の破片がエールに襲い掛かる。

「っ!やっぱり駄目!ジルウェを攻撃なんて出来ない!」

「エール!?」

「ジルウェ、お願い止めて!!」

エールが必死にジルウェに呼び掛けるが、操られているジルウェにエールの叫びは届かず、縦横無尽に飛び回りながらセイバーによる突きを繰り出し、エールはそれを何とか回避する。

ここに来るまでの戦闘で経験も積んだものの、それでもライブメタルに触れるまでは一般人であったエールとガーディアンのメンバーであるジルウェでは簡単には埋められない程の経験の差があるのは言うまでもないが、今のジルウェは操られており、動きが大振りになっているので隙が多くなっているので経験が浅いエールでも回避出来た。

その隙を突けばエールがジルウェを倒せる可能性は充分にあるが、もしダメージを与えすぎればジルウェを殺してしまう。

ただでさえ敵にボロボロにされていたのだから、これ以上のダメージは変身状態でも耐えられるのか分からないからこそエールはバスターを撃てなかった。

「ジルウェ…!」

「グ…ウオオオオオオッ!!」

ジルウェがセイバーを地面に突き刺すと、複数の光の柱が飛び出した。

「きゃあああ!?」

回避出来ずに直撃を受けたエールは地面に叩き付けられるが、何とか耐えることが出来たが、このまま反撃もしなければやられてしまう。

痛みと恐怖に震えるバスターを構えて必死にジルウェに呼び掛ける。

「止めてよ…!ジルウェ!目を覚まして!」

「グ…オオオオッ…!」

次の瞬間、上空から雷撃が降り注ぎ、雷撃の直撃を受けて倒れるジルウェ。

「……ジ…ジルウェ…ッ!」

「…モデルX、青のロックマン……モデルZ、赤のロックマン…この程度とは残念だ。どうやらガーディアンが見つけたライブメタルはただのゴミ屑だったようだな。

「だ…誰!」

声に反応したエールは咄嗟にバスターを向けると、先程の男達が姿を現した。

「…私の名はセルパン、全てを支配するライブメタル・モデルVのロックマンだ…!」

それを聞いたエールは驚愕で目を見開いた。

「セルパン…!?お前がセルパン・カンパニーの社長…!?」

「そうだ…覚えておきたまえ…モデルX…青のロックマン!」

「まさか…イレギュラーやジルウェを操ったのも、全部お前の仕業なの!?」

震えるバスターを構えながらチャージする。

それを見た少女は小さく呟いた。

「腕…震えてる…怒り…?それとも…恐れ…?」

「…フンッ、これならさっきの赤のロックマンの方がまだマシだったな」

「…よくも…ジルウェをっ!」

チャージバスターが撃てるくらいにまでエネルギーがチャージされたバスターを発射しようとするエールに対して、セルパンは少年の方を見遣る。

「…プロメテ」

「青のロックマン…お前のそれは勇気じゃない……ただの無謀だ」

「うるさいっ!」

「ふんっ!」

プロメテと呼ばれた少年の言葉にエールは叫びながらチャージバスターを放った。

しかし放った一撃は、容易く跳ね返されてエールに直撃する。

「くっ…!」

「ライブメタルの変身機能…R.O.C.K.システムで変身出来る選ばれし者、君のような者達を私はロックマンと呼んでいる。ライブメタルに選ばれた、我らロックマンこそ新たな世界の王となる者。だが…その程度の力ならば王となる資格はない」

セルパンはモデルVを掲げると、雷撃をエールに落とす。

「う…あ…!」

ジルウェから受けたダメージと先程の跳ね返されたチャージバスターのダメージもあって変身が解除され、力なく倒れる。

「パンドラ、パスコードのデータだけは吸い出しておけ」

「…分かった…」

パンドラの頭部パーツが射出され、モデルXとモデルZのデータを吸い出していく。

「拍子抜けだな、後始末はどうする?」

「イレギュラー共に彼らを始末させたら、後はいつもと同じだ。街を襲うイレギュラーと、街を守って戦う我が社の警備隊…人々にはいつもの風景にしか見えんさ。この国にはもう少し平和な日常を演じていてもらおう。いずれは我がライブメタル…モデルVの生け贄となってもらうがね…」

「な…何ですって…!?」

セルパンの言葉に目を見開くエールだが、パンドラのパーツが離れていく。

「…パスコードのデータ……吸い出し…終わったわ……」

「フッフッフッ…これで全てのパスコードは揃った…行くぞ。プロジェクト・ヘヴンを次の段階に移す…む?」

倒れているエールとジルウェの上を通るように巨大な光弾がセルパンに迫る。

「せやあっ!!」

プロメテが間に入り、先程よりも勢い良く振るった鎌で両断した。

「……くそ、防がれたか…」

エールとジルウェを守るように立ち塞がったのは、以前エールをイレギュラーから助けた真紅のアーマーと腰まで伸びている金髪が特徴の少年であった。

「何者だ?」

今まで余裕の表情を浮かべていたセルパンに初めて警戒の色が浮かんだ。

「…プロメテ…ライブメタルの反応…でも、あの女の作ったライブメタルとも…モデルVとも…違う…」

「俺達も知らない…未知のロックマン…見た目は赤のロックマンに近いが…お前、何者だ?」

「……ライブメタルで変身出来る奴をロックマンって言うんだったな?俺は…ライブメタル・モデルOのロックマンだ…」

少年の言葉にセルパンは自身のライブメタルに関する記憶を思い起こした。

「モデルO…私が知る限りではライブメタルにそのような物はない……恐らくそれは偶発的に出来た代物と言ったところか…つまり君はこのゲームの想定外のロックマンと言うことだな」

「そんなことはどうでもいい、さっきの話は本当なんだな?お前が…イレギュラーを操って、この街の人達を襲わせていたんだな…?」

「その通りだ、私の計画に必要な犠牲になってもらった」

「貴様…!」

少年の表情が怒りと憎しみに染まり、殺気が溢れ出す。

「ほう…」

「…………」

今までつまらなそうな表情を浮かべていた二人が初めて関心を向けた。

少年の殺気は戦い始めの者やそこらの者が簡単に出せるような物ではなかったからだ。

「なるほど、青のロックマンと赤のロックマンよりは楽しませてくれそうだな…そいつらのようにあっさりとやられないでくれよ?」

「プロメテ…ずるい…私もやる」

鎌を構えてプロメテも臨戦体勢を取り、パンドラも杖を構えて頭部パーツを再び射出した。

「やってみろよイレギュラー…」

少年もホルスターからセイバーを抜くといつでも斬り掛かれるように構えた。

「……き、君…」

「っ…………」

エールの声に反応した少年は振り返らなかったが、殺気がいくらか和らいだ。

「………本当ならここで倒してやりたいけど…今は退かせてもらう」

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるが、少年はエールとジルウェの救出を優先する。

「逃げられると思っているのか?」

「逃げられないとでも?」

セイバーを構えて突撃し、プロメテに斬り掛かる。

プロメテはそれを鎌で受け止めるとセイバーを弾き、少年に斬り掛かるが、少年はチャージしていた拳を地面に叩き付け、その衝撃と閃光でプロメテを弾き飛ばしつつ、セルパン達の目眩ましをする。

少年はエールとジルウェを肩に担ぎ、転がっているモデルXを掴むとこの場を離脱した。

「……いない…」

「チッ、逃げられたか…」

「ふむ、私のモデルVともあの女のライブメタルとも違う謎のライブメタルのロックマンか…だが所詮、私のモデルVの力には及ばん…我々も戻るぞ」

セルパンが消えて、ここに残ったのはプロメテとパンドラ。

「モデルO…そんなライブメタルは存在しない…あの二人以外にライブメタルを作るのは不可能だ。あの男が“アレ”以外のライブメタルを作るとは考えられん…」

「あの男にとっても…想定外のライブメタル…そしてロックマン…」

「ふふふ、面白くなってきたじゃないか……あいつの名前を聞いておくんだったな。まあいい、あいつもこのゲームに参加する以上…俺達は必ず戦う運命にある。」

「ええ…」

意味深な言葉を残しながらプロメテとパンドラもこの場から消えた。

そして少年は気絶している二人を担ぎながらハイウェイを駆け抜ける。

「君は…どうしてエール達を助けてくれたんだい?…知り合いなのかな?」

モデルXは少年に尋ねる。

少年は意識を失う前のエールの声に明らかに反応していたため、モデルXは彼がエール達を知っていることに気付いたのだ。

「……………」

少年はモデルXの問いに答えることなく、ハイウェイを駆けるとガーディアンの地上部隊を発見した。

「エールさんに…ジルウェさん!?」

ボロボロの二人を見て部隊長らしい人物が目を見開く。

二人の知り合いらしい彼を見て少年は安堵の息を吐いて傷に障らないようにゆっくりと地面に横たわらせる。

「知り合いなのか?知り合いなら…二人を頼む」

そのまま少年はダッシュによる高速移動でこの場を離れた。

「君!…いや、それよりも二人を…酷い怪我だ。早く簡易転送装置の用意を!急げ!!」

少年を呼び止めようとしたが、二人の怪我を見て、優先するべきなのは二人だと判断した部隊長は部下に簡易転送装置を用意させてガーディアンベースへと転送させた。 
 

 
後書き
今作では出ませんが、最初はチャージバスターすら撃てなかった初期モデルO 

 

第五話 ダブルロックオン

地上部隊によってガーディアンベースに運ばれた二人は即治療室行きとなった。

特にジルウェのダメージは酷く、モデルZが変身を維持していなければ体がダメージに耐えきれずに消滅してしまう程であった。

逆にエールはダメージは酷かったがジルウェ程ではなく、モデルXがエールの自己治癒能力を促進させていたことで体に巻かれた包帯が痛々しいものの、現在は意識が戻っており、エールに与えられたベースの一室のベッドに横になっていた。

「大丈夫、エール?」

「アタシは…大丈夫…アタシよりもジルウェは?」

「…今、ミュゲさん達が治療してるわ……ジルウェさんは酷いダメージを受けていて、ライブメタルの力で生命維持している状態らしいの」

「そっか…」

それを聞いたエールは自分が突っ走ったせいでジルウェが生死の境をさ迷っていることに対して自責の念に駆られる。

「…アタシ…馬鹿だよね…ジルウェが止めてくれたのに…強がって…格好つけて…あの時、あの子が助けてくれなかったらアタシだけじゃなくてジルウェも…」

「彼…ね…セルパンとの会話は聞いていたけど、彼もライブメタルの適合者らしいわ。私達もセルパン達も知らないライブメタルの適合者……会話を聞く限りでは彼はセルパン達と敵対している……」

「それから…彼は…多分、僕の適合者でもあるんだと思う」

モデルXの言葉にエールとプレリーの視線が向けられる。

「彼に触れられた時、彼からエールに触れられた時の感覚と同じ物を感じたんだ…」

「二つのライブメタルの適合者…そんなことが有り得るの?」

プレリーの問いにモデルXは少し沈黙するものの、ゆっくりと言葉を発した。

「…複数のライブメタルの適合者は今のところ彼くらいしかいないから詳しいことは分からないけれど……彼に触れて分かったことがある。彼はライブメタルに取り憑かれている」

「…取り憑かれている?」

「…どういうことなの?」

物騒な言葉にエールとプレリーが不思議そうにモデルXを見つめる。

「普通の変身はライブメタルの力を一時的にアーマーとして纏い、そのライブメタルの力を行使する。だけど彼の場合はライブメタルとの境界線が全くない…つまりライブメタルと完全に一体化している…恐らく変身の解除も出来ないと思う」

「だから彼はアウターかイレギュラー発生現場でしか姿を見せないのね…」

インナーではセルパン・カンパニーの警備隊がいるから変身した状態では攻撃を受けてしまう。

彼がアウターかイレギュラー発生現場にしか姿を見せなかった理由が分かったプレリーが納得したように呟いた。

「エール達を助けたことから、彼自身は優しい人なんだと思う…だけど、彼のライブメタルから感じるものは…危険だ。あの力は恐ろしい…破壊の力だ…彼に悪影響を及ぼさないとも限らない」

「………」

モデルXの言葉を聞いたエールは彼を助けてあげたいと思った。

自分やジルウェを助けてくれた恩返しがしたい…だが、どうやったらいいのか分からない。

そして自分の感情で突っ走ったら、また誰かを傷つけるのではないかと思うと、エールは動けなかった。

「エール、あなた…自分の気持ちのままに進んだらまた誰かを傷つけるんじゃないかって思ってる?」

「え?」

心の内を読んだようなプレリーの言葉に俯いていた顔を上げるエール。

「確かにあなたが、あの時に飛び出さなければジルウェさんは傷つかなかったかもしれない…」

「………」

プレリーの言葉にエールの表情が曇る。

「でも、あなたがいたから私も…マクロー達も助かったの…エリアD付近の居住区の被害も最小限に抑えられたわ。悪いことばかりに目を向けてばかりでは駄目、あなたの勇気で救われた人達がいることを忘れないで」

「そうだよエール、君の勇気で救われた人が目の前にいるじゃないか…自分のしてきたことを全て否定してはいけないよ」

「………うん……」

プレリーとモデルXの言葉にエールの瞳から涙が溢れ出す。

そんなエールをプレリーは落ち着くまで背を撫でてやった。

しばらくしてエールは泣き止み、入ってきた紫髪の女性…ローズがジルウェの意識が戻ったことを報せてくれた。

「ジルウェさんの意識が戻りました…エールさんに会いたがっていましたわ。顔を見せて安心させてやって下さい」

安堵と苦笑が混じったローズの表情。

それは自分よりもエールを心配していた過保護な姿を見たためか。

「う、うん…」

エールはローズに支えられてジルウェのガーディアンベースでの部屋に通された。

「エール…」

「ジルウェ…」

扉が開いた音に気付いたジルウェはゆっくりと振り返る。

顔色は青白く、声にいつもの力がないが、確かにジルウェは生きていた。

「良かった…無事…だったか……悪かったな…エール…守るって言った癖に、俺はあいつに操られてしまっただけじゃなくて…お前に辛い思いをさせた…」

「違う…!ジルウェは何も悪くない…!あの時、ジルウェの言う通りにしていれば…アタシが強がったりしなきゃ…」

「………良いんだよ、お前の性格は十年の付き合いで良く分かってる…それに俺も無茶やったからな…」

泣くエールに優しく笑うジルウェ。

そして部屋にモデルZを持ったフルーブが入ってきた。

「ジルウェさん、モデルZのチェックは終わりました。何も問題はありません…ですが……」

言葉を濁らせるフルーブにジルウェとエールの視線が向けられる。

「ジルウェさんはもう戦えません」

「え…?」

「そう…か…」

フルーブの言葉にエールは目を見開き、ジルウェは何となく理解していたのかショックはあまり無いようだ。

「ライブメタルが無ければジルウェさんの体は消滅してしまう程の深刻なダメージを受けてしまいました。変身しようとしてもジルウェさんの体が保たないでしょう。普通に運び屋としての生活をすることくらいは出来るでしょうが…二度と戦えはしないでしょう」

「ジルウェ…」

「そんな顔をするなエール。戦えなくてもやれることはあるさ……お前の力になれる方法もな……モデルZ…エールに力を貸してやってくれないか…?」

ジルウェの言葉にモデルZはジルウェの元へ向かう。

「…俺は構わん、エール…お前はどうだ?」

モデルZの言葉に全員の視線がエールに向けられる。

「これからガーディアンはセルパンと戦うことになる。つまり、奴らのような強敵が現れるだろう…お前に戦う勇気があるか?」

「…………」

モデルZの言葉にエールは沈黙する。

セルパン達の自分との圧倒的なまでの力の差を思い知らされたエールはすぐに答えは出せなかった。

「………とにかくそれはエールの怪我が治ってからよ」

「プレリーさん」

フルーブが振り返り、全員が部屋に入ってきたプレリーに振り返った。

「エール、無理強いはしないわ。あなたが運び屋としての生活を選ぶのならそれでもいいの…ただ後悔だけはしないでね」

「……うん」

プレリー達は退室し、残されたジルウェもゆっくりと眠りに落ちた。

エリアDでのイレギュラー襲撃事件から数日後、治療班による治療とライブメタルの力によってエールは普段通りに動けるようになり、ジルウェも日常生活を送れるくらいには回復した。

そして今はプレリーに呼ばれて司令室であるブリッジにいる。

「エール、ジルウェさん。無事に回復して良かったわ」

「心配をかけました」

自分達の回復を喜ぶプレリーにジルウェは頭を下げた。

「二人に見て欲しいものがあるの、ジルウェさんが回収したイレギュラーのメモリの映像よ」

モニターに映るのは何度もエールを助けてくれた紅のアーマーの少年。

背後から襲おうとしたイレギュラーに振り返った時、少年の顔が映し出された。

「これが、イレギュラー発生現場に現れる彼の顔…なんだけど…二人共、どうしたの?」

「………………嘘……ヴァン…?」

エールの見間違いでなければ、少年の顔は一年前に行方不明となったヴァンであった。

ジルウェの方を見ればエールと同じように驚いているため、見間違いと言うわけではなさそうだ。

「あの、司令官。彼が現れたアウターの場所を教えてもらっても?」

「え?ええ、大体の位置なら」

モニターに彼が現れたアウターの場所が映し出される。

「………これは俺達、運び屋が通っているルートだ。インナーまでの近道に使っている道も俺達しか知らない…本当にあいつなら最近、イレギュラーと遭遇しないのも納得がいく」

「じゃあ、あれはヴァンなの!?…生きていてくれてたんだ……」

行方不明だった幼なじみが生きていたことに、エールは喜ぶものの、モデルXの言葉に我に返る。

「だけど、彼はあの戦いでセルパン達に存在を知られてしまった…もしかしたらセルパン達に追われているかも」

「………」

「どうするんだ?お前の幼なじみとやらにセルパンとの戦いを任せるのか?」

モデルZの言葉にエールは沈黙するが、ゆっくりとモデルXとモデルZに向き直る。

「モデルX、モデルZ…アタシ、ヴァンを助けたい。だからもっと力が欲しい…あの時もエリアDの時も、ヴァンはアタシを何度も助けてくれた…だから今度はアタシが助ける番!だからアタシに力を貸して欲しい!」

「…良いんだな?」

「うん」

エールの目に宿る意思の強さにモデルZは自身の力を託すことに決めた。

「よし、エール。僕とモデルZの力を合わせることで新しい力を生み出せるかもしれない。でもこれは賭けでもある…二つのライブメタルの力にまだ完治していない君の体が耐えられるのか…」

「待って下さい!二つのライブメタルのエネルギーをその身に受けるのは自殺行為です!」

フルーブが慌てて止めようとする。

ライブメタル単体の力でも強大な物だと言うのに複数のライブメタルを一人の…しかもまだ子供の域を越えていない上に怪我が完治していないエールが耐えられるとは到底思えないのだ。

「だが、この先の戦いを生き延びるにはそれしかない。ジルウェが戦えない以上な」

モデルZの言葉にフルーブは黙った。

ジルウェが戦えない今、エールしか戦えるロックマンはいない。

経験が浅いエールがセルパン達と戦って生き延びるには時間も残されていない以上、これしか方法がないのである。

「それしかないなら、アタシはやる!これ以上あいつらの好きにはさせない!」

エールはモデルXとモデルZを手にした。

「ロックオン!」

「「適合者確認、R.O.C.K.システム起動開始」」

エールの体が光に包まれ、体にモデルXとモデルZの力が流れ込んでいく。

光が消えた時、そこにいたのはロックマン・モデルXでもモデルZでもない。

赤いアーマーに腰にまで伸びる金髪を模したコードが特徴のモデルXとモデルZの面影を持つ姿へとなっていた。

「凄い…これがモデルXとモデルZの力を合わせた力…これならセルパン達に対抗出来るかもしれないわ…」

ベースのエネルギー感知器もライブメタル単体変身時とは比較にならないエネルギー値を示していた。

プレリーもこれならセルパンに対抗出来ると希望を抱き、エールに今までのライブメタルの解析結果を伝える。

「エール、ジルウェさん。ライブメタルのデータを解析していくつか分かったことがあるの。機械や人々を狂わせる力を持つライブメタル・モデルV…それこそが イレギュラー発生の原因だったのよ。でも、セルパンが持っているライブメタルはその欠片でしかないわ。本当のモデルV本体は今もどこかの遺跡で眠っているはずよ」

「欠片だけで、ジルウェや、あれだけのイレギュラーを操っていたって言うの?」
 
「セルパンの言う、プロジェクト・ヘブンが何なのかは分からないけど…恐らく彼はモデルV本体を目覚めさせるつもりだわ。自らが全ての支配者となるために…」

「あいつはこの国の人々をモデルVの生け贄にするって言ってた。そんなこと…絶対させない…!モデルVの本体は今どこに?」

「落ち着けエール、場所が分かるならとっくに向かってるさ」

焦るエールを宥めるジルウェ。

痛い経験の直後だからか、今度はすぐに大人しくなった。

「ええ、それが…データの一部が壊れてしまっていて、詳しい場所は分からないの。ただ、モデルV本体が封印された扉を開けるには、お姉ちゃんが遺したライブメタルに記録された六つのパスコードが必要になるらしいわ。私達はモデルXとモデルZを見つけたけど…」

「後の四つは全てセルパン・カンパニーが持っているはずだ…だったら…戦って全部奪い取るしかない…!」

「ライブメタルとイレギュラーの反応を元にシミュレートしてみるわ。ミッションプランが決まったら、トランスサーバーに追加しておくわね」

「分かった」

「まずは本格的な戦いになる前にヴァンを見つけないとな。あいつ一人でセルパンと戦うのは無謀過ぎる…流石に一年間もイレギュラーと戦い続けていたならその辺は分かっていると思うけどな…」

「ジルウェさん…彼は味方になってくれるかしら?」

セルパンとの来るべき戦いのためにも、色々と曰く付きそうなライブメタルのとはいえ、貴重なロックマンであるヴァンは果たして自分達の味方になってくれるのだろうか?

「大丈夫ですよ、俺とエールが事情を話せば分かってくれると思います。俺も会ったら色々とヴァンに説教もしたいですしね、あいつなりの事情があるんでしょうけど、一年間も心配させられましたし」

取り敢えず今はミッションが始まるまでの間にエールに訓練をつけてやることにする。

少しでも早くライブメタルの力に慣れてもらわねばならないからだ。

戦えなくても自分に出来る方法でエールをサポートするのが、今の自分の戦いだ。 

 

第六話 発電所の調査

 
前書き
幼なじみだからこそ遠慮のない連携が取れそうですよね。

ZXの隠し要素もメインに入れていきたいです。 

 
ガーディアンベースが今後の方針を決めている中、話題の一つとなっている少年…ヴァンはエリアDでの事件以来、絶え間ないイレギュラーからの攻撃を受けていた。

エリアEに強力なイレギュラーの気配を察知して向かおうとしたが、エリアEへの近道となる場所はインナーにあるため、ヴァンは遠回りをしながらエリアEに存在する発電所に向かうことになったのだ。

しかし流石にイレギュラーからの攻撃をかわしながら進むのは無理であり、モデルOのアーマーには小さくない損傷が入っている。

「くそ…しつこい奴らだ…!」

振り返ったヴァンの表情には疲労の色が濃く出ており、まともに休んでいないことが分かる。

しかし、ホルスターからモデルOの装備であるアルティメットセイバーを抜き、背中に取り付けていたバスターショットを引き抜く。

「そこを退けぇっ!」

即座にチャージバスターを放つ。

巨大な光弾は複数のメカニロイドを破壊し、残りが怯んだ隙にセイバーで斬り込んだ。

戦闘によって徐々にモデルOのエネルギーが高まっていき、それをガーディアンベースのエネルギー感知器は捉えた。

「これは…!?」

「どうしたの?」

オペレーター達の様子に気付いたプレリーが尋ねる。

「エリアEの発電所付近に巨大なエネルギー反応…これは、例のライブメタル・モデルOの反応です!そして周囲にイレギュラーの反応も多数!」

それを聞いた全員の表情は喜びから緊張へと変わった。

「エリアE…好都合だわ。エール、エリアEの発電所にはモデルO以外のライブメタルの反応があるの…だから…」

「分かってる、ヴァンを助けてそこにいるイレギュラーからライブメタルを取り返せばいいんでしょ?」

「ええ、その通りなんだけど…」

「無理をするなよエール。もし逃げられそうなら逃げろ、生きていれば必ずチャンスはある…でも死んだらそれすらないんだからな」

「分かってる…もうあんな無茶はしないから」

ジルウェの言葉に苦笑しながらエールはモデルEに向かうためにトランスサーバーへと向かう。

まずはエリアCの居住区の地下にあるトランスサーバーへ転送し、噴水近くにある黄色い扉を潜ればすぐだったはずだ。

「こういう時にトランスサーバーって不便だよね…」

トランスサーバーの悪用を防ぐためとは言え、トランスサーバー間での移動しか出来ないのは辛い。

外に出るためにはロックマン状態でなければ出られないため、警備のメカニロイドに気付かれないように地下から抜け出し、エリアEに繋がる扉を潜り抜けた。

目的地である発電所に辿り着いた時には無数のイレギュラーの残骸が転がっていた。

「これ…全部、ヴァンがやったのかな…」

『恐らくは…そして、この施設…まだエネルギーを作り出しているみたい。記録によるとここはイレギュラーの襲撃を受けて、放置されたはず…気をつけて、エール。この施設…何か秘密があるはずよ。』

「分かってる」

ヴァンがイレギュラーの大半を倒してくれたのか残っている数はそれほどでもない。

遠距離ならばZXバスターで、近距離ならZXセイバーで攻撃し、生き残ったイレギュラーを倒しながら施設内部に潜入する。

内部はかなり荒らされており、足の踏み場もないくらいにメカニロイドの残骸が転がっていた。

『この施設内部ではほとんどの機能が停止しているわ…多分、彼が電源装置を破壊したのかもしれない…今なら侵入者用の罠も作動しないわ。』

「よし、急いでヴァンに追い付こう」

エールもダッシュ移動で施設内を駆け回る。

移動を妨げる罠も電源が入っていないので飾り同然。

生き残りのイレギュラーが迎撃するものの、新しいロックマンの力の前では足止めにもならない。

『エール、新しい力はどう?』

複数のライブメタルのロックオンは誰も試したことがない。

何らかの副作用があるかもしれないので、プレリーが不安になるのも無理はない。

「大丈夫だってば、寧ろ体に力がみなぎってきて怖いくらいだよ」

モデルXでは不利だった近接戦闘もこれなら迅速に対応出来るし、ダブルロックオンは二つのライブメタルと一つになっているためか、どこか不思議な安心感を覚える。

停止したベルトコンベアの床をダッシュで駆け抜け、奥にある梯子を駆け上がると、扉の向こうから爆発音と衝撃が響き渡った。

「い、今のは…!?」

『ライブメタル・モデルOの反応…恐らく彼だわ…』

「分かった…」

扉を潜ると、大型のメカニロイドの残骸が転がっており、その周囲に真紅のロックマン・モデルOが立っていた。

「ヴァン…?」

エールの声に反応した彼は振り返るが、すぐに前を向いた。

ほんの少しだったが、少年の顔を見間違えたりはしない。

「ヴァン…だよね…?」

「…………久しぶりだなエール。エリアBやエリアDで会ったけどな」

「やっぱりヴァンなんだ!生きていてくれたんだ…」

「…怪我、大丈夫か?先輩は?」

「この通り大丈夫!ジルウェも元気よ、ここの調査が終わったらアタシと一緒にガーディアンベースに行こう?ヴァン、酷い怪我してるし…」

良く見ればヴァンの状態は酷いものだった。

初めて見た時と比べてアーマーは傷だらけでヘルメットも内部のパーツが露出している。

あの日から、ヴァンへのイレギュラーの攻撃の激しさを物語っていた。

「ごめん、俺はエール達と一緒には行けない。俺がいるとみんなに迷惑がかかる」

「そんな、何で!?イレギュラーのこと?それならアタシも一緒に戦うし、ガーディアンだってアタシ達を助けてくれる。遠慮なんて…」

まさかの拒否にエールは動揺するが、何とか落ち着きを取り戻してヴァンを説得しようとする。

「そうじゃない…そうじゃ…うう…っ」

突如、苦しそうに頭を押さえて膝をつくヴァンにエールが駆け寄ろうとする。

「ヴァン!?どうし…」

「来るなっ!」

ヴァンの怒声にエールの足が止まる。

「ヴァン…」

「頼む…来るな…来ないでくれ…俺は…お前を攻撃したくないんだ…っ…くうっ!」

苦しそうに呻きながらヴァンはこの部屋から飛び出す。

その姿をエールは呆然となりながら見送るしかなかった。

「一体…ヴァンに何が起きてるの…?」

「エール、あの時、ヴァンのライブメタルから異様な力を感じた。恐らくあいつに取り憑いたライブメタルがあいつを乗っ取ろうとしているのもかもしれん」

「乗っ取るって…ライブメタルがヴァンをイレギュラーにしようってこと!?」

「モデルVと同じくらい危険な力だ…彼をガーディアンベースに連れていこう。助けられるかは分からないけれど、あのままでいいはずがない」

モデルZの言葉にエールは目を見開き、モデルXはガーディアンベースに連れていくべきだと判断する。

「そうだよね、今度はアタシがヴァンを助けるんだから!」

エールも部屋を飛び出し、ヴァンを追い掛ける。

次の扉を潜ると、幾つもの光球が施設内を巡っていた。

「何これ…光の球が施設内を巡ってる…?」

不思議そうにエールが足を止めて光球を見つめていると、プレリーからの通信が入った。

『この反応は…まさかサイバーエルフ?』

「サイバーエルフ?何なのそれ?」

聞いたこともない単語にエールは疑問符を浮かべる。

『プログラム生命体と呼ばれる電子で出来た妖精よ。でも、どうやってこんな大量に…?もしかして、ここの施設は…このサイバーエルフ達からエネルギーを作り出しているのかもしれない…!』

「それがこの施設の秘密ってわけね」

『酷い…!サイバーエルフだって命を持った生き物なのに…!エール…お願い!この施設を止めて…!」

命を道具のように扱うセルパンにプレリーは怒りを覚え、エールに施設を止めるように頼む。

「勿論、これ以上セルパンの好きにはさせないんだから!」

奥にある穴に飛び込み、下に降りていくと砲台がこちらに砲弾を撃ってくる。

バスターで砲台の砲門の位置をずらしてこちらに当たらないようにする。

梯子を登るエリアでは時にはそれを利用してメカニロイドを破壊し、上へと登っていく。

「あれは…」

「どうやらこの施設の動力炉のようだな」

エールの視界に入ったのは人間の心臓のような形状をした動力炉だ。

「なら、あれを壊せば!」

チャージを終えたバスターを動力炉に向けて、チャージバスターを発射するエールだが、光弾はバリアに阻まれて掻き消されてしまう。

「効かない!?」

「やはり対策はされているようだね。仕方ない、動力炉は後回しにしよう。」

モデルXの言葉にエールは渋々ながら動力炉の破壊は諦め、足場を利用して向こう側へ移動する。

そして、奥にあるシャッターを目指す。

一方で、エールから逃走したヴァンは発電所の外に出ており、周囲を見渡していた。

「ここにいるんだろイレギュラー?早く出てこい。モデルOが騒いで仕方ないんだ」

融合しているモデルOが騒いでいるのをヴァンは表情を顰めながら言うと、上空から一体のレプリロイドが舞い降りた。

「ふん、威勢のいい小僧だ。流石はセルパン様が多少は気にかけているだけのことはある…そしてこの施設のサイバーエルフ達を見た以上、生かして帰すわけにはいかないな」

「お前もセルパンの部下だな?イレギュラーにしてはお喋りな奴じゃないか」

「なるほど…そこまで知っているのなら話は早い。だが、俺をイレギュラーのような操り人形とは一緒にしないでもらおう。俺はライブメタルの力を引き出すために作られた、謂わば疑似ロックマン…モデルHのフォルスロイド、ハイボルト。何、怯えることはない…今からお前が感じるものは…一瞬の閃光と…永遠の死だけなのだからな!」

バーニアを噴かしてヴァンに襲い掛かるハイボルト。

「怯える?寧ろ逆だよ。モデルOがお前の力を感じて騒いでる…お前を叩き潰せってなっ!」

突進をダッシュでかわしながらバスターを構えると、ハイボルトにチャージバスターを当てる。

「チィ!そのボロボロの体で良くそこまで動ける!」

「モデルOは底無しなんでね。特に強い相手にはな!」

ヴァンはセイバーを抜いて怯んだハイボルトに斬りかかり、ハイボルトも翼のセイバーで受け止める。

「てやあっ!」

即座にセイバーによる連続攻撃を仕掛けるが、ハイボルトもセイバーで捌く。

「ハアッ!」

そしてヴァンを弾き飛ばすと、追撃でセイバーによる衝撃波を連続で放つ。

バスターをチャージしながらダッシュとジャンプを駆使して衝撃波を回避しながら距離を詰める。

「喰らえ!」

「ヌウッ!」

至近距離でのチャージバスターを喰らったハイボルトはたまらず空中へ逃げる。

「叩き落としてやる!」

即座にチャージセイバーで叩き落とそうと、ダッシュジャンプで距離を詰めようとするが、ハイボルトも簡単にはやられてはくれず、バーニアを噴かしてヴァンに体当たりする。

「ぐっ!?」

不意を突かれたヴァンは弾き飛ばされるが、何とか着地して反撃の機会を狙う。

しかし次の瞬間、ハイボルトとは別の方向から攻撃を受ける。

振り返ると、ハイボルトの脚部が独立して動いており、ヴァンを狙撃していた。

「本体を潰してやる!」

「甘いな!」

即座に脚部を戻し、ヴァンの動きを阻害する。

「なら、撃ち落とす…ガッ!?」

「むっ!?」

バスターを向けた瞬間に背後から雷撃がヴァンに突き刺さる。

「ヴァン!」

外に出てきたエールが、目を見開きながらヴァンを受け止めて上空を見上げる。

「貴様…何者だ?」

ハイボルトが警戒しながらヴァンを不意討ちした敵に構える。

そこには神話に出てくる天馬を模したレプリロイドが自分達を見下ろしていた。

「おやおや、数百年の時が経っているとはいえ…私の美しい名を知らぬ者がいるとは…私の名はペガソルタ・エクレール!小娘、その破壊神の器を渡してもらおう」

エールを見下ろしながらペガソルタはヴァンを自分に渡すように言い放つ。

「破壊神の…器!?何を言ってるの!?数百年の時がどうのこうの…」

「貴様がそれを知る必要はない。さあ、早くその器をよこせ。そうすれば見逃してやらなくはないがね?」

「嫌っ!器だか何だか知らないけど、ヴァンはアタシの大事な幼なじみよっ!ヴァンを狙うって言うならアタシが相手になってやる!!」

セイバーを構えてペガソルタを睨むエールに対して、ペガソルタは呆れたように溜め息を吐く。

「ふう、愚か者はこれだから醜い。それで君はどうするかね?潔く退くか…それともここで死に、私の美しさの引き立て役となるか…」

「その小僧などどうでもいいが、この施設に現れた以上は貴様を生かしておくわけにはいかない。セルパン様のためにその命を捧げるがいい」

「セルパンか…ククク…」

「何がおかしい…!?」

「いやいや、あのような小物に忠義を誓う君の姿が滑稽でね。あの方の魂の破片をこの身に受け、私達は世界の全てを知っている…無論、セルパンとか言う小物もね…あのような臆病者があの方の魂の破片を手にしているなど、嘆かわしいよ」

ペガソルタの言葉の終わりと同時にハイボルトが突撃する。

「セルパン様の侮辱は許さん!!」

「フフフ、愚か者には愚か者が集まるようだ。」

ハイボルトが翼のセイバーで斬りかかるが、ペガソルタも両腕の電撃槍で迎え撃つ。

「っ…エール…」

「ヴァン、大丈夫?」

「ああ、あいつは…俺がモデルOに取り憑かれた場所にいた奴らの一人なんだ。何でかは分からないけど、モデルOに取り憑かれた俺はあいつらに必要らしい」

ゆっくりと立ち上がるヴァンはエールの方を向く。

顔色も明らかに悪く、限界が近いのが分かる。

「エール、俺があいつらを何とかするから、ガーディアンベースってところに帰るんだ。今のうちに早く」

「ヴァンが残るのなら絶対に嫌」

「は?」

振り返ると目に涙を溜めながらヴァンを睨むエール。

「ヴァンがいなくなってジルウェやみんながどれだけ寂しい思いをしたか分かる?アタシも辛かったんだから…!」

「エール…」

「ガーディアンはライブメタルの研究もしてるらしいから、ヴァンの体も何とか出来るかもしれない。だからヴァン、アタシと一緒にガーディアンベースに行こう。あいつらを倒して!」

エールの顔を見て、ヴァンは自分が何を言っても聞かないことを悟る。

「(…相変わらずだな、エールの奴。一度決めたら絶対に曲げないところとか)」

この胸中の言葉をジルウェやエールが聞いていたら絶対にヴァンが言えることじゃないと言われただろう。

「………あいつらが動きを止めた時にチャージバスターを撃ち込むぞ」

「ええ!」

タイミングを見計らう二人に気付かずにハイボルトとペガソルタはセイバーと槍を、そして互いの雷撃をぶつけ合う。

「ふん、多少はやるようだが…その程度では私は倒せん。まあ、特別な存在である私と貴様のような愚か者とでは隔絶とした力の差があるのだよ」

「ぐっ!貴様…」

同じ属性であるにも関わらず、ハイボルトの機動力も攻撃力もペガソルタは上回っており、徐々にハイボルトが防戦一方となる。

「足掻きたまえ、貴様のような醜い愚か者が足掻けば足掻くほど私の美しさは際立つのだから」

「ほざくなっ!」

両翼のセイバーをペガソルタを振るうが、ペガソルタも両腕の槍で受け止めた。

次の瞬間。

「今だ!」

「当たれーっ!」

ヴァンとエールのバスターから放たれたチャージバスターがハイボルトとペガソルタに迫る。

「「む!?」」

二人は咄嗟に回避行動を取るが、完全に不意を突かれたこともあり、ハイボルトは顔面に、ペガソルタは左肩に直撃を受けた。

「っ、貴様ら…」

「流石は破壊神の器、回復が早いな…だが、よくも私のボディに傷を付けてくれた…死なない程度に痛め付けてやろう」

ハイボルトとペガソルタがエールとヴァンを見下ろす。

「エール、行くぞ」

「OK、ヴァンは無理しないでね」

互いにターゲットを決め、セイバーを構えて突撃する。

「ハアッ!!」

ヴァンはチャージセイバーを叩き込もうとするが、ペガソルタは槍を交差させて受け止める。

「破壊神の器とはいえ、人間風情が私に寄るな!穢らわしい!」

弾き飛ばして槍で串刺しにしようとするが、エールが死角からペガソルタにセミチャージバスターを放って牽制する。

「小娘め…」

「余所見してたら危ないよ?」

「貴様がな!」

背後からハイボルトがセイバーでエールを斬り裂こうとするが、真上を取っていたヴァンが回転斬りを繰り出してハイボルトの背に大きな傷を付けた。

「エール!」

「OK!!」

エールが予めセイバーのチャージをしており、ヴァンの合図に合わせてチャージセイバーをハイボルトに叩き込んで地面に落とす。

「合わせてくれエール!」

「任せて!」

両者はダッシュでペガソルタを撹乱し、攻撃の狙いを定めないようにさせる。

「小賢しい真似を!」

槍の電撃を飛ばしてくるも、二人には掠りもしない。

「やあっ!」

エールがダッシュで距離を詰め、チャージバスターを直撃させると間髪入れずにヴァンがセイバーによる連続斬りを叩き込む。

「舐めるなぁっ!」

発電所の電気エネルギーを吸収し、そのエネルギーを纏って突進してくる。

「かわせっ!」

二人は瓦礫を利用して突進を回避すると、近くの貯水タンクに目を遣る。

「ヴァン!あれ!」

「使えそうだな…」

ペガソルタは電気属性なので、当然使っている部品は他のレプリロイドよりも精密な物が多い。

ショットを貯水タンクに放って破壊し、ペガソルタを水濡れにすると傷口から水が入り、ペガソルタの体がショートする。

「ぬっ!私の体が…!」

「「終わりだ!」」

二人のチャージセイバーがペガソルタを叩き斬った。

「馬鹿な…!?こんな…私が人間風情に…!ヌオオオオッ!?」

「やった!後はあいつを…」

残るはハイボルトのみのために、エールがとどめを刺そうとハイボルトの方を向いた時には…。

「いない!?」

ハイボルトの姿はどこにもなかった。

「…上だっ!」

ヴァンが上空を見上げると、エネルギーを最大まで溜めているハイボルトの姿があった。

「消えろっ!!」

二人目掛けて発射される高出力レーザー。

地面に着弾するのと同時に大爆発を起こす。

「ふー、ふー…跡形もなく消し飛んだか…予想よりもダメージを受けたが…ガーディアンとは別の勢力がいることも分かった…早くこの事をセルパン様に伝えなくては……!?」

自分の真上に影がかかり、上を見上げるとヴァンとエールがそれぞれの武器を構えていた。

「終わりだハイボルト!」

「痛っ!?」

そしてヴァンはエールの頭を踏み台にして接近し、チャージセイバーの一撃を振り下ろしてハイボルトを真っ二つにする。

「ば、馬鹿な…翼を…飛行能力を持たない貴様らが何故、俺の真上を…!?」

「痛たた…答えはこれよ」

頭を擦りながらバスターを見せるエール。

ハイボルトのレーザーが着弾する直前にチャージバスターを真下に撃って、その勢いを利用してレーザーをかわしつつ、ハイボルトの真上を取ったのだ。

「ぐっ…だが…ここのエネルギーのほとんどは…既にセルパン様の元へ送られた…後は…セルパン様が…モデルV本体を発掘するだけだ…哀れなロックマン達よ…新たな世界で…裁きの雷に打たれるがいい…!セルパン様…新たなる…新世界を…っ!」

両断されたハイボルトはセルパンの理想の実現を願いながら大爆発を起こす。

「勝った…痛たた…ちょっとヴァン!女の子の頭を踏み台にするなんて酷いじゃない!」

「…………」

「ちょっと聞いてるのヴァン!?……ヴァン!?」

反応がないことにエールは怒って近寄るが、力なく倒れてしまったヴァンに慌てて駆け寄る。

「大丈夫だ。どうやら気絶しているだけのようだ…」

「でも随分弱っているようだね、早くガーディアンベースに連れていかないと」

モデルZとモデルXの言葉に安堵すると、早くガーディアンベースへと連れていかねばとヴァンを支えながら立ち上がると、ハイボルトの残骸から一つの金属が姿を現した。

それはモデルXとモデルZに良く似た物だ。

「もしかして、あれ…ライブメタル?」

「…俺の名は風のライブメタル…モデルH。ようやく自由になれた…英雄の力を受け継ぐ者よ…礼を言おう。」

モデルHが名乗った瞬間に、モデルZとモデルXが変身を解除してモデルHの元へ向かう。

「モデルH、エールにお前の力を貸して欲しい」

「モデルVを持つセルパンの力に対抗するには、僕達も力を合わせて戦う必要があるんだ…モデルH、君も手伝ってくれないかい?」

「モデルX様のご命令ならば喜んで…しかし、その者に俺の力を貸し与えるのに相応しいのかどうか…エール…だったな?お前は何のために戦う?」

「え?」

モデルHの問いにエールはきょとんとするものの、自分が戦う理由を言う。

「それは、セルパンを倒してモデルVの復活を止めたい…そしてヴァンを狙う奴らからも助けてあげたい…」

気絶しているヴァンを見遣りながら言うエールに対して、モデルHはヴァンに僅かだけ視線を遣ると、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「それで…争いは終わるのか?全てはモデルVの力に魅入られた、一人の男が始めたことだ。モデルVを破壊し、セルパンを止められたとして…人々が再び過ちを繰り返さないと言い切れるのか?」

「…………先のことは分からないよ。でも、アタシはセルパン達からジルウェやヴァンやプレリー達、運び屋の仲間、そしてアタシが会ってきたみんなを守りたい!今、みんなを守れるのはアタシ達しかいないんだ!何もしないで後悔なんてしたくないから!!」

その問いにエールは少しだけ言葉を詰まらせるものの、自分の気持ちをモデルHにぶつける。

「………今…か、フッ…数百年前…俺達のオリジナルが守ろうとした人間達は、偽りの平和に飼い慣らされた抜け殻のような存在だった。だが、お前とその仲間達のような者がいるのなら、俺達のオリジナルの戦いは無駄ではなかったらしい…勇気ある者よ、お前に力を貸そう。セルパンは本体である俺と力の大半とパスコードを含めたデータを二つに分けて、もう一体のフォルスロイドを作り上げた。そいつを倒せば、俺のパスコードをお前に託すことが出来るだろう」

そう言うとモデルHはエールの手に収まる。

「エール、モデルHは高い機動力を誇るライブメタルだよ。彼と僕がダブルロックオンをすれば今まで行けなかった場所にも空中(エア)ダッシュで行けるようになる。ベースに戻ったら要練習だよ」

「うん、分かった。さあ、ガーディアンベースへ戻ろっか…アタシも疲れたし…」

奥にあるトランスサーバーに向かうエールに気付かれないようにモデルHはモデルXに尋ねる。

「モデルX様…あの者は…」

モデルHの視線はヴァンに注がれていた。

「君も気付いたかい?モデルH?」

「ええ、俺に刻まれているオリジナルの過去のデータが確かならば…あの者は危険です。」

「………でも、彼自身は善人だよ。エールやジルウェを助けてくれた…僕は彼の優しさを信じたい。彼なら必ず過去の呪いを乗り越えてくれることを…僕の適合者でもあるようだから僕も彼に力を貸すつもりだよ」

「………分かりました。モデルX様がそう仰るのならば、俺も出来る限りのことはします」

「ありがとうモデルH」

「どうしたのー?早く来なよー」

モデルXとモデルHが遅いことに気付いたエールが呼ぶ。

二つのライブメタルもエールの元へ行くと、トランスサーバーでガーディアンベースに一時帰還した。 
 

 
後書き
ゼロ2のオープニングステージ要素ありです。

あれは本当に格好良いですよね 

 

第七話 真紅のロックマン

 
前書き
おぎのしんロックマンZXA漫画の後日談で出たモデルOのおかげですよね…正直モデルO単体だとモデルZみたいになる可能性があったわけだから公式でモデルO単体のロックマンの姿を出してくれたのはありがたい。

というか単体も合体変身もオメガそっくり。

この作品でモデルOXは出ませんが、オメガの狂暴性を抑えつつ出来るだけの力を出せるようにしたのがモデルOXの設定です。

そして作品内で明かされることは多分ありませんが、モデルOはモデルVの欠片にオメガのサイバーエルフが憑依して誕生したライブメタルと言う設定にしています。

何かこういうのが一番ヤバそうな設定になりそうなので。 

 
ガーディアンベースに帰還したエールは直後にプレリーから休息を言い渡され、そしてヴァンはガーディアンベースの医務室行きとなった。

「どう?彼の様子は?」

プレリーがモデルXを伴って医務室に行くと、遠い記憶を刺激する真紅のアーマーと金髪が目に入り、一瞬目頭が熱くなったが司令官の顔でヴァンの容態を尋ねる。

ライブメタルの研究者でもあるフルーブと看護師であるミュゲとローズに尋ねる。

「ダメージは既に回復していますよ。ライブメタル達から話は聞いていましたが、完全に一体化しているだけあって回復力は高いようです。」

運ばれてきた時はボロボロだったと言うのに僅か一日で傷一つない状態に戻っている。

「体の傷よりも、肉体と精神的な疲労が原因かもしれません…恐らく、行方不明になられてから食事も満足に摂っていなかったのでしょう」

「ずっとアウターにいたからまともな物なんて食べられなかっただろうね。まだ育ち盛りの男なのにこんなに痩せてんだから」

ローズとミュゲがエールと同い年の少年の痩せ細った体を見て心配そうに呟く。

「そう…それでフルーブ、彼に取り憑いているライブメタルについて何か分かった?」

「いえ、現段階ではあまり大したことは分かりませんでしたが、ヴァンさんの脳波に異常が見られます。恐らくは取り憑いているライブメタルの影響でしょう」

「そう……ならモデルX、彼について何か分かりそう?」

ヴァンはモデルXの適合者でもあるらしいので、モデルXならヴァンの状態が分かるのではと思い、ヴァンに同調を試みているモデルXに尋ねる。

「………モデルOを突き動かしているのは狂気的なまでの好戦欲と破壊衝動…エリアEでヴァンが言っていたことと、戦っている時にはモデルOの狂気が働かないところを考えると、恐らくヴァンが戦っている時だけはモデルOの狂気から解放されるんだと思う。」

「あの…まさか、ヴァンさんが起きた時…私達に襲ったりは…」

ローズは恐る恐るモデルXに尋ねる。

今の戦闘員もエールもいない状態でヴァンが暴走したらひとたまりもない。

「その可能性はあるかもしれない。だからヴァンはエール達の元に帰らなかったんだ…行方不明になってからずっと」

「そう…」

モデルXの言葉に、悲しそうにヴァンを見つめるプレリー。

エールからヴァンの話を聞いたこともあり、彼女の幼なじみがこんな理不尽に遭っていることに同情は隠せない。

「う…」

身動ぎするヴァンに全員の体が強張るものの、ヴァンの目がゆっくりと開かれた。

その目はイレギュラー特有の狂気はなく、今は正常な状態であることが分かる。

「ここは…」

「ここはガーディアンベース。私達、ガーディアンの本拠地よ」

状況を理解出来ていないヴァンにプレリーが説明すると、ヴァンが視線をプレリー達に移して姿を認識した途端にヴァンの体が震え始める。

「う…ああ…っ!」

「!?」

「ライブメタルの反応が強くなりました!」

頭を押さえながら震えるヴァンにプレリーは驚き、フルーブが原因を報告する。

「あ、あんた達…早く…逃げ…」

一瞬、瞳の色が赤く染まり、ヴァンの手がセイバーの柄に触れようとした直後であった。

「いけない!」

モデルXが光を放ってヴァンに触れた。

するとヴァンの異変は治まり、息を荒く吐きながらベッドに再び倒れた。

「お、お前は…」

酷い倦怠感に襲われているヴァンが、モデルXを見つめる。 

「大丈夫かい?今、僕がモデルOに干渉してモデルOの破壊衝動を抑えているんだ。エールが使っているダブルロックオンの要領だね」

これはヴァンがモデルXの適合者だからこそ出来たことだ。

「あ、ああ…少し楽になった…ありがとな」

今まで騒がしかったモデルOが静かになっていることに驚きながらもモデルXに礼を言うと、プレリー達に振り返る。

「あんた達もありがとな、治療とかしてくれたんだろ?後…怖がらせて悪かった…」

助けてくれたのにプレリー達に危害を加えそうになったことにヴァンは謝罪した。

「いいえ、私達は気にしてないわ。あなたのことはエールやジルウェさんから聞いているわ」

「エールと先輩から?エールはともかく先輩もいるのか?」

「ええ、エールは今、私達に協力してくれているの…そしてジルウェさんは…」

「それについては俺から話しますよ司令官。」

医務室に入ってきたのはエールとジルウェだった。

「エール…先輩…」

久しぶりに間近で見た後輩にジルウェは目頭が熱くなったが、最後に会った時よりも細くなった気がするヴァンの姿を見て、相当な無茶を行方不明の期間中にやっていたことを察することが出来た。

「エリアDでは助けてくれたそうだなヴァン…ありがとな…少し痩せたか?」

「先輩は…大丈夫なのか?」

「ああ、お前が助けてくれたおかげでな……さてと、お前にも話す時が来たな…俺はお前達を引き取る前からガーディアンのメンバーなんだ。ライブメタルで変身出来るのは俺達のようなライブメタルに認められた者だけで、その力を狙っている奴らから、お前とエールを守るのが俺の使命だったんだ。」

「そうだった…のか…」

「騙すつもりはなかった…いつかは話すつもりだったんだが…」

話す前にヴァンはイレギュラーに襲われて行方不明になってしまったので仕方ない部分はある。

「いいさ、それを知ったって先輩が俺の命の恩人なのは変わらないんだしさ。母さんがいなくなって泣いていた俺を励ましてくれたり…このペンダントも…先輩には本当に感謝してる」

「まだ持っていたのか」

それはまだ今より幼かったヴァンに渡した自分のペンダントであった。

「ああ、一人でイレギュラーと戦っていた時…辛くて挫けそうになった時もこのペンダントを見て、先輩の言葉を思い出してた…俺は一人じゃない…みんながいるんだって…」

ペンダントとジルウェの言葉を支えにして戦ってきたヴァン。

モデルOの狂気に恐怖を抱きながらも自分を支えてくれた大事な物である。

「そうか…」

自分の言葉とペンダントがヴァンを支えていたことに喜びを覚えて微笑むジルウェだが、エールがヴァンに近寄る。

「そう言えばヴァン、お腹空いてない?林檎を採ってきたんだけど」

エリアAの森にある林檎の木から採ってきた林檎が置かれた皿をヴァンに渡すエール。

綺麗に剥かれている林檎を見て、ヴァンの腹の虫が鳴る。

「そう言えば、まともな物食ってなかったな…」

苦笑しながら林檎の皿を受け取る。

「近いうち、ジルウェと一緒にガーディアンベースの補給も兼ねてエリアGの街に行くつもりなの!お土産買ってくるから欲しい物とか食べたい物とかある?」

「ん?」

林檎を食べていたヴァンがエールの言葉に少し悩む。

一年前なら色々と頼むところだが、正直人里から離れて過ごしていたのもあって最近のインナーの流行には疎くなっている。

「肉まんが良いな。ほら、エリアGにある美味い中華料理店の肉まん。あの店、まだあったっけ?」

「まだあるまだある。OK、肉まんね。お腹一杯になるくらい買ってきてあげるわ………ジルウェの奢りでね」

「俺!?」

二人の会話を微笑ましく聞いていたジルウェだが、エールの発言に目を見開く。

「あ、ジルウェ。アタシは餡まんね?勿論、こし餡!粒餡は却下だから!!」

「お前もか!あそこの肉まんと餡まんは高いんだぞ!?それを腹一杯とか…」

「だってー、ジルウェがケチケチしないで新しいバイクを仕入れてくれてればイレギュラーに襲われても逃げられたし、ヴァンは行方不明になんてなってないんですけどー?」

「まあー、俺は気にしてないけど、荷物を運んでる途中でバイクが故障して目的地やインナーまでバイクを押して歩いていくことが結構あったからそこは恨んでるかなー?」

「ううっ!?分かった…分かったよ…奢ってやるよ…はあぁ…」

二人からの冷たい視線と声に深い溜め息を吐いて財布の中身を確認するジルウェ。

その姿はどこか哀愁を帯びていた。

「コホン…とにかくヴァンさん?」

「ヴァンで良いよ。年も変わらなそうだし…」

「おい!ヴァン!この方は…」

タメ口を利いているヴァンに注意しようとしているが、プレリーが止める。

「良いんですよジルウェさん、ヴァン…セルパンから…モデルVの脅威から人々を守るために…私達に力を貸してくれませんか?」

「……………俺はセルパン達を許さない。あいつらを倒すためなら協力は惜しまないさ……それに、俺を狙うあいつらのこともあるしな」

「確か…ペガソルタ・エクレールって言ってたよね…あいつの仲間がヴァンを狙ってる…」

「ペガソルタ・エクレール…?」

聞き覚えのある名前にプレリーは目を見開く。

「どうしたのプレリー?」

プレリーの変化に気付いたエールが首を傾げる。

「その名前はどこかで見たことがあるわ…初代司令官が保管していたデータファイルで…後で調べてみる…」

「………それにしても驚いたな、ガーディアンベースが空飛ぶ船だったなんて」

窓から見える景色にヴァンは思わず呟いた。

「でしょ?アタシも最初に来た時は驚いたわ。でもそれ以上にびっくりすることがあるのよ?ね、プレリー?」

「は?どういうことだ?」

「それでは改めて…ようこそ、ヴァン。私達の本拠地…ガーディアンベースへ。私はガーディアンの司令官、プレリーです」

「へえ、司令官…あんたが司令官…え!?あんたが司令官なのか!?隣の爺さんじゃなくて!?」

てっきり隣のフルーブが司令官かと思ったのだが、自分と大して年齢が変わらなそうなプレリーが司令官であることにヴァンは驚く。

「失礼過ぎるぞヴァン…」

「やっぱり驚くよね、アタシもプレリーが司令官だって知った時も驚いたし」

溜め息を吐くジルウェに自分と同じ反応をするヴァンに苦笑するエール。

「驚いた?」

「そりゃあね…まあ、とにかくよろしくなプレリー」

手を差し出すヴァンにプレリーは一瞬、“あの人”の姿が重なって見えたが、それを何とか隠して握手をした。

「こちらこそよろしくね…ヴァン…フルーブ、後であなたに渡す物があるから、後で司令室に来てくれる?後で通信を寄越すから」

「え?はい」

そう言って医務室を出ていくプレリーにエールはどこか違和感を感じた。

「どうしたんだろうプレリー…泣きそうだったけど」

「そうか?いつも通りに見えたけどな…」

「ジルウェ、鈍すぎ」

鈍感なジルウェの発言にエールは溜め息を吐いた。

しかし、それでも今日は久しぶりに穏やかに休めそうだと、体から力を抜くエールであった。 

 

第八話 エレメントチップ

 
前書き
ゼロ1~3で大活躍したアイテムです…何で4でリストラされたんだろうか…あっても良くない?

オメガの技の数々が無属性なのはオメガにエレメントチップがないからなんだろうけど… 

 
ヴァンがガーディアンに加わって、ジルウェが抜けた穴を埋めることが出来たことにより、ガーディアンベースは以前よりも活気付いていた。

エールとジルウェが運び屋の仕事のために外出する際はモデルXをヴァンの傍にいてもらっているために久しぶりにヴァンは比較的穏やかに休むことが出来た。

「ああ、ありがとう。倉庫の整理を手伝ってもらって…やっぱりロックマンのパワーは凄いんだな」

暇潰しに倉庫の整理を手伝っていたのだが、モデルOのパワーがかなり役に立っていた。

重たい荷物も片手で軽々と持ち上げているヴァンの姿にガーディアンの兵士も感嘆している。

「ああ、こいつの力は正直…怖いくらいに凄い…でも俺はモデルOの力を全て出し切っているとは思えないんだ…」

フルーブに体を検査をしてもらった時、モデルOの持っている力はまだまだこんなものではないらしい。

戦っているうちに眠っている力が目覚めていくのではないかと言われたが、最初はアルティメットセイバーはまともに振れないわ、バスターショットを扱うのも苦労してチャージバスターすら撃てなかったことを考えると妙に納得した。

「もっと強くならないといけない…俺は…」

「……協力してもらっているのに何だけど、君は少し気負い過ぎてる。ここにはエールやみんながいるんだ…君一人で背負い込む必要はない」

「ああ、分かってるよ。」

倉庫を出て、自分に与えられた部屋に向かう途中でプレリーに出会った。

「あ、ヴァン…丁度良いところに…」

「どうした?近くでイレギュラーでも出たか?」

自分に用があると言うことはイレギュラーが近くに現れたのだろうかと思ったが、プレリーの様子からしてそうではないらしい。

「そうじゃないの…あなたに渡す物があるの」

プレリーがヴァンに差し出したのは雷のマークが刻まれたチップである。

「これは?」

「これはエレメントチップと言って、昔の戦闘用レプリロイドが武器やボディに属性を付加させるために使っていた物なの…この先、セルパンのフォルスロイドと戦うには、このままでは大変だと思って…フルーブに頼んでモデルO…ライブメタル用に壊れていたチップを修理して調整してもらったのよ。他にもあるんだけど、今はこれ…サンダーチップしか出来てないの」

「良いのか?これ、凄く貴重なんじゃないのか?」

「…そのチップは私の恩人だった人が使っていた物なんだけど、私達では使えないし、このまま壊れたまま保管されているよりもあなたが使ってくれた方が良いと思うの」

今のガーディアンでも完全には解明出来ていないライブメタルのためにこういう強化アイテムを用意するのは調整だけでも中々大変だったはずだ。

そしてプレリーが“恩人”と言った時に寂しそうな表情をしていたので、きっとその人物はもういないのだろう。

「分かった、大事に使う。こいつで必ずセルパンを倒してみせるからな」

自分にプレリーの恩人の形見とも言える品を渡してくれたのだから、プレリーの期待に応えようとヴァンは意気込む。

「プレリーお姉ちゃ……あ…」

向こうから聞こえた子供特有の高い声に二人が振り返る。

「あら?サルディーヌ、どうしたの?」

「子供?まさか、あの子もガーディアンなのか?」

「ええ、非戦闘員だけど…」

プレリーとヴァンの視線がサルディーヌと呼ばれた男の子に向けられた時、ヴァンの視線から逃げるように物陰に隠れた。

「サルディーヌ…どうして隠れるの?」

隠れているサルディーヌに歩み寄り、プレリーがどうして隠れるのか尋ねる。

「だって、怖いお兄ちゃんがいるんだもん…」

モデルOの異質さはこの場にいる誰もが感じているが、まだ幼い上に実戦経験もないサルディーヌはそれを強く感じ取ってしまっているのだ。

「ああ…大丈夫よサルディーヌ。彼はヴァン、エールの幼なじみでとても優しい人なのよ。特殊なライブメタルを使っているから少し怖いと思うのかもしれないけど、私達に協力してくれてるの…彼は必ず私達を助けてくれるわ」

「うう…」

それでも恐怖は消せないのかヴァンにどうすれば良いのか悩んでいるようだ。

「おい、プレリーに何か用があったんじゃないのか?」

サルディーヌはプレリーを呼んでいたので、プレリーに用事があったんじゃないかと尋ねると、思い出したようにプレリーの方を向いた。

「プレリーお姉ちゃん、実は僕のオモチャがなくなっちゃって…」

「そうなの…でも…」

この後、自分も用事があってサルディーヌの探し物に付き合うことが出来ない。

「プレリー、俺がサルディーヌの探し物に付き合うから…プレリーは自分の仕事をしてこいよ」

「ヴァン…良いの?」

「良いさ、エール達が帰るか、イレギュラーが現れるまでやることもないしな」

「それじゃあ、お願い出来る?サルディーヌ、ヴァンが手伝ってくれるそうだから迷惑をかけちゃ駄目よ?」

「う、うん…」

「ほら、行くぞ」

オモチャを探しに行くヴァンとサルディーヌの姿を見て、プレリーの脳裏に昔の自分とあの人との思い出が甦る。

「(懐かしいな…私も今のサルディーヌの時みたいな頃…お姉ちゃんから貰ったぬいぐるみをなくしちゃって、あの人に一緒に探してもらったっけ………お願い、ヴァンを助けてね)」

懐かしい思い出を振り返りながらも、プレリーはもういない彼に願った。

「サルディーヌ、お前が最後にオモチャを持って遊んだ場所はどの倉庫なんだ?」

「え?」

「通路で落としたならメンバーの誰かが拾って持ってきてくれるだろうし、だからお前が遊んだ場所に落ちてるはずだ。そしてこのガーディアンベースで広くて遊べそうなのは倉庫くらいだしな…」

流石にガーディアンベースの動力部に幼いサルディーヌを入れはしないだろうし。

「あ、そっか…えっと…この倉庫」

サルディーヌに案内された倉庫は放置されているからなのか、かなり汚れている。

「これは随分と散らかってるな…片付けながら探すしかないな」

溜め息を吐きながら、サルディーヌのオモチャを探す。

しばらくして埃を被りながらもサルディーヌのオモチャを発見し、サルディーヌに渡した。

「あったぞ…埃まみれだけどな」

「あ、ありがとう!これ、シリュールおじさんに作ってもらったんだ」

「そっか…ここも片付けた方がいいな…暇潰しにやるか。サルディーヌ、プレリーにここの倉庫の片付けをするって一応伝えてくれないか?」

「分かった!ありがとう、ヴァン!」

満面の笑顔を浮かべながら倉庫を出ていくサルディーヌにヴァンも思わず微笑った。

「プレリーお姉ちゃん!」

「あら、サルディーヌ…って、どうしたの埃まみれになって?」

司令室のブリッジに駆け込んできたサルディーヌの姿にプレリーが驚く。

「えへへ、ヴァンがオモチャをなくした廃材置き場の倉庫の片付けをしながら探してくれたんだ。僕も手伝ったんだ」

「ああ、あの倉庫ね…」

使えなくなった機材を置いておいた場所だが、ガーディアンベースの中でも最も重要度が低い場所なのもあって整理の手が入っていなかった場所だ。

「そこにあったと言うことはサルディーヌ、あなたはそこで遊んでいたのね?駄目じゃない、危ないから遊んでは駄目だって言ったでしょ?」

「う…ごめんなさい」

プレリーに叱られてシュンとなるものの、用件を思い出したサルディーヌがヴァンからの伝言を伝える。

「あの倉庫、ヴァンが片付けてくれるんだって」

「え?そうなの?」

「うん、お姉ちゃんに伝えてくれって」

「そうなの…ありがとうサルディーヌ。ヴァンにも後でお礼を言いに行くからね」

「分かった。僕もヴァンを手伝ってくる!」

勢い良くブリッジを出ていくサルディーヌに、プレリーとオペレーター達のクスクスと言う笑い声が漏れた。

「そう言えばあの子、さっきヴァンのことを名前で…もう仲良くなったのかしら?」

そう言えばあの人も何故かあの時の自分も含めて子供に懐かれることがあった。

「良いお兄さんになりそうですねプレリー様」

オペレーターの一人が微笑みながら言うと同意するようにプレリーも頷いて微笑んだ。 
 

 
後書き
サルディーヌの名前はプレリーが付けたらしいんで、本来ならロクゼロのアルエットポジションになるはずだったんじゃないかな? 

 

第九話 エリアG

 
前書き
漫画版キャラを出します。

それにしてもプレリーの部屋のベッドを占領しているぬいぐるみはでかいな…。 

 
数日後、エリアGの港に補給に立ち寄ったガーディアンベース。

エールとジルウェはヴァンへのお土産も含めての買い出しに出掛ける準備をしていた。

「来たわよエリアG!ここの中華料理店の餡まんは絶品だから来る度に楽しみにしてるんだから」

ホカホカモチモチの生地の中にしっとりとして口の中で蕩けるような熱々の餡を思い出して涎を垂らすエール。

「本当に俺が奢るのか?」

「勿論」

ジルウェの問いに即答するエール。

ヴァンとエールの育ち盛りの二人が満足する量となると、かなりの額になるだろうと落ち込むジルウェであった。

一方でヴァンは使わなくなった機材を置いてある倉庫をライブメタル達の協力を得ながら整理をしていた。

と言っても、エールのようにダブルロックオンが出来るような体ではないのでただ指示を出してもらっているだけだ。

「ヴァン、それはここに置いた方が良いよ」

「それなりの大きさの物は下の方に置いた方が良いだろう。出す時に苦労するぞ」

「小さめの物は一纏めにした方が良い。場所を取らずに済む」

「了解」

モデルXもモデルZもモデルHも適切な指示を出してくれたので、初めて来た時は汚かった倉庫も大分整理がついたようだ。

「少し休憩するか」

倉庫を出てガーディアンベースの休憩スペースに向かうと、そこに見覚えのあるぬいぐるみがあった。

「これはプレリーのぬいぐるみ…?忘れたのか?」

「なら、届けてあげよう。それは彼女が先代の司令官…お姉さんから貰った物らしいから」

「お姉さん…か…確か、プレリーのお姉さんは行方不明なんだったな…」

大切な人がいなくなる寂しさを自分は良く知っている。

そんな人から貰った物を忘れるとはプレリーも疲れているのかもしれない。

「確か、プレリーは休憩の時以外はブリッジにいるんだったな」

届けてやろうとブリッジに足を運ぶヴァン。

「あら、ヴァンさん。どうしたんですか?」

オペレーターの一人がヴァンに気付いて振り返った。

「プレリーが休憩室にぬいぐるみを忘れてたんだ。届けに来たんだよ」

「プレリー様なら自室にいますけど…」

「そうか」

目的の人物が自室にいることを聞いたヴァンは扉を開けようとするが、もう一人のオペレーターが声をかける。

「あ、ヴァンさん。プレリー様の部屋はフルーブさん以外は入室出来ないんです」

「何でだ?」

「さあ、私達もガーディアンに入って大分経ちますけど…」

どうやら常にブリッジにいるオペレーター達もプレリーの部屋のことを知らないらしい。

「なら、まずはノックをしよう。部屋にいるプレリーにぬいぐるみのことを教えないと…」

モデルXがヴァンにノックをするように言うと、ヴァンは扉をノックした。

「おい、プレリー。忘れ物だぞ、おーい……返事がない…寝てるのか?」

「ならば扉の前に置けば良いだろう」

「そうだな」

モデルZの言葉にヴァンも同意してぬいぐるみを扉の前に置こうとした時であった。

「う…うう…」

「プレリー!?」

「「「どうしました!?」」」

部屋から微かに聞こえてきた呻き声にヴァンは部屋の中にいるプレリーの名前を呼んだ。

ただ事ではない様子にオペレーター達も振り返る。

「部屋の中からプレリーの苦しそうな声が聞こえたんだ…まさか何かあったのか?」

「え?いや、そんなはずは…!?」

不審者がこのガーディアンベースにいるはずなどないし、自分達は常にベース内を監視しているからそんなことはあり得ない。

「とにかく、プレリーに何かあったのは確かだ。扉をぶち破るぞ!」

「「「お、お願いします!」」」

扉を殴ってぶち破った直後にヴァン達の視界に入ったのは、色とりどりのふわふわした物体であった。

「は?」

「「「え?」」」

次の瞬間、それによる雪崩が起きてヴァンとオペレーター達はそれに押し流されてしまう。

「ヴァン、大丈夫かい?」

ライブメタル達は空中に避難していたから無事であった。

「これはぬいぐるみ…だな…」

「何故、司令官の部屋に大量のぬいぐるみがあるんだ…」

モデルZとモデルHが物体の正体を告げると、ヴァン達も起き上がってフルーブ以外見たことがないというプレリーの部屋を覗いた。

そこはぬいぐるみで埋め尽くされていると言っても過言ではない状態であった。

プレリーの自室はぬいぐるみで一杯であり、全て妖精シリーズと呼ばれる女子に大人気なぬいぐるみしかない。

エールも同じようなぬいぐるみをいくつか部屋に飾っていたが、部屋が埋め尽くされる程のものではない。

小さいサイズやそれなりに大きいサイズ、そしてプレリーが押し潰されている目が隠れた犬のぬいぐるみに至っては自分の倍くらいかそれ以上の大きさだ。

ここまででかいとどうやってこの部屋にこのぬいぐるみを入れたのかが気になるところだ。

「大丈夫か?」

「ええ、ありがとう…」

しばらくしてぬいぐるみを掻き分けて押し潰しているぬいぐるみからプレリーを救出したヴァン。

「それにしても凄い量のぬいぐるみだな。普通雪崩が起きるまで部屋に飾るか?」

「コホン、これは私が初代司令官だったお姉ちゃんのお手伝いをしていた時にお世話をしていたサイバーエルフ達にそっくりなぬいぐるみ達だったから、あの子達を忘れないように飾っているの…」

「………嘘だな」

女の子と言う生き物はエールや運び屋の後輩達で良く分かっているからだ。

「う、嘘じゃないの!本当に嘘じゃないの!この子達は本当に私がお世話をしていたサイバーエルフにそっくりなんだから、証拠ならこのエルフのファイルに…」

「悪いなんて一言も言ってないだろ?寧ろプレリーにもそういうところがあるんだって分かってホッとしてる。」

「…どういうこと?」

「俺は運び屋だったからな。引っ越しの手伝いなんて良くやったし、お前のようにぬいぐるみを沢山ある家に行ったこともあるんだぜ?まあ、ここ程じゃないけどな…ぬいぐるみだけじゃなくて部屋に飾ってある写真とか、古い服とかを見てると、プレリーが大切にしてる物だってことくらい分かるさ…」

足元に転がっている魔法使いのぬいぐるみを拾う。

「お、このぬいぐるみは俺がまだ小さい頃にエールにプレゼントした奴と同じ奴だな…懐かしいな」

昔の…ジルウェに引き取られてからしばらく経ってようやく母の死から立ち直ったヴァンはまだ母の死から立ち直れていなかったエールにジルウェから貰った小遣いで買ったぬいぐるみと同じ物だ。

流石に子供だった頃の小遣いでは限定品ではなくて安物が精々だったが、渡した時のエールは少し元気を取り戻してくれた。

行方不明になる前から部屋に飾っていてくれていたので、多分今でも飾られていると思う。

「………」

「俺が言えたことじゃないけど、プレリーのこと少し心配だったんだ。初めて会った時からいつも真面目な顔ばかりしてガーディアンのみんなことを考えていて行方不明のお姉さんのこととか色々あるのにプレリーは何もないように振る舞ってるじゃないか…だからこういう女の子らしいところがあるって分かってホッとしてるんだよ……プレリーも少しは肩の力を抜けよ。大丈夫だ、セルパンを必ず倒してモデルVも壊してみせる」

「ありがとう、ヴァン…」

心配をかけていたことに申し訳ないと思う反面、ヴァンの優しさに心地よさを感じた。

「さて、プレリー。これからお前がやるべきことは分かってるよな?イレギュラーやセルパン、モデルVのことよりも大切なことだぞ」

「え?」

「部屋の整理だよ整理。ぬいぐるみが好きなのは分かったけど流石にこれは集め過ぎだって、もし俺達が気付かなかったらお前生き埋めになったままだったんだぞ?ガーディアンの司令官の死因がぬいぐるみの雪崩で圧死だなんて笑えないぞ。押し入れとか空いているロッカーとかないのか?」

「ええ!?そんな、この子達を暗い場所に押し込めるなんて可哀想…」

足元のぬいぐるみをギュッと抱き締めるプレリーにヴァンは困り顔になる。

「……そういうもんか?女の子って分からないな……じゃあ、せめて雪崩が起きないようにするか。」

とりあえずオペレーター達も巻き込んでのぬいぐるみの整理をするヴァンの後ろ姿に、プレリーは昔の出来事を思い出す。

“お姉ちゃん”は研究者で研究に没頭すると面倒臭がって身の回りのことが雑になって研究室でもある部屋は散らかり放題。

それは基本的に実害がなければ気にしないはずの兄のように慕っていた“あの人”も見かねる程だったので、時々自分と一緒に部屋を片付けてくれていた。

幼かった自分は二人と一緒にいられるのが何よりも楽しくて幸せだったことを今でも覚えている。

「(ヴァンはあの人じゃないのに…私ったら…駄目だなぁ…お姉ちゃんみたいに強くならなきゃいけないのに…)」

「なあ、プレリー」

「え!?何?」

思い出と思考に浸っていたプレリーをヴァンの声が呼び戻す。

「ロッカーや押し入れに押し込むのが駄目なら空き部屋をコレクション部屋にして入れたらどうだ?空き部屋がないなら新しく作ればいいし、司令官なんだから部屋の一つや二つ自由に使えるくらいの権限はあるだろ?」

「コレクション部屋…でも…すぐにもふもふ出来なくなるし…」

「別に全部入れろとは言ってないし、自分の部屋に飾るのは一つか二つでいいだろ」

ヴァンの正論にプレリーは苦渋の決断を迫られることになるのであった。

一方、エリアGの中華料理店に直行したエールとジルウェ。

そしてエールは瞳をキラキラと輝かせながらお目当ての湯気が立っている餡まんを口にした。

「はふはふ…ん~っ!美味し~っ!!」

ホカホカモチモチの生地の食感に、口の中で蕩けるようなこし餡にエールは頬に手を添えながらご満悦だ。

「(ヴァンが加わってから元気になったようだな…)」

ヴァンのお土産の肉まんと、エールが食べたい分の餡まんの紙袋を受け取ったジルウェは微笑む。

自分の財布の中身は悲惨なことになっているが。

「おいエール!」

「むぐっ!?」

背中を叩かれて餡まんを喉に詰まらせたエールは水を一気飲みして窮地を脱した。

「ケホッケホッ…誰!?今、背中を叩いたの!?」

「俺だよエール!久しぶりだな」

「あんたはシュウ!?何であんたがここにいるの!?」

犯人はエールとヴァンが働いているジルウェ・エクスプレスの従業員であった。

「ふっ、俺も同じさ…ここの中華を食いに仕事をサボって…」

「その話、俺に詳しく聞かせてもらおうか?」

背後からシュウの肩を叩くジルウェ。

優しい声色だが、眼鏡が光を反射してジルウェの表情を隠しているので恐ろしく怖い。

「ジルウェさん!?冗談です冗談!ちゃんと有給手続きしました!ほらっ!」

有給休暇手続きの書類を渡すと、ジルウェの雰囲気は穏やかなものに戻った。

「確かに…あまり変なことを言うなよ?後で酷い目に遭うのはお前なんだからな」

「はーい…それにしてもエール、ジルウェさんとここでデートか?」

「デ、デート!?そ、そんなわけないじゃない!」

デートの単語に過剰に反応して否定するが、それはからかう理由を増やすだけである。

「そーかそーか、お前ずっとジルウェさんに片想いしてたもんな。良かった良かった。きっとヴァンも空の上で安心してるぞ」

「そんなんじゃないって言ってるでしょ!それからヴァンを殺すな!ヴァンは…」

生きてガーディアンベースにいると叫びたかったが、今のヴァンのことを言って良いのだろうかと口を閉ざす。

「…何だよ?」

「べ、別に…」

不自然に黙ったエールにシュウは訝しげな表情を浮かべるが、ジルウェの紙袋を見た瞬間に飛び付いた。

「おっ、ここの肉まんと餡まん!?これどっちも美味いんだよな~一個貰…」

「ふんっ!」

「ごふっ!?何すんだよエール…」

「意地汚いことするんじゃないわよ!」

肉まんと餡まんを取ろうとしたシュウの脇腹に肘打ちを喰らわせたエールは怒鳴る。

「そんなにあるんだから一個くらい良いだろ…もしかしてお前それ一人で食う気か?そんなに食ったら太るぞ~」

「…………」

次の瞬間、店内はシュウの失言によって怒り狂ったエールによって人々の悲鳴が迸る阿鼻叫喚の地獄絵図となった。

「ひぃっ!ジルウェさん助けて!」

怒り狂うエールにボコボコにされて泣きながらジルウェに縋りつくシュウ。

「待て、落ち着けエール!シュウを殺す気か!後、お前も余計なこと言うな!」

「ジルウェ、退いて…それ潰すから」

「嫌だーっ!!」

イレギュラーよりも恐ろしい存在と化したエールに、シュウは泣き叫び、ジルウェは最終手段を取る。

「エール!シュウを許してくれたら、ここの杏仁豆腐を奢ってやる!」

「分かった♪」

「早っ!?むぐっ!?」

「頼むから余計なこと言わないでくれ…」

これ以上エールを暴れさせないで欲しいとジルウェが思った直後であった。

付近の建物が吹き飛び、人々の悲鳴が聞こえてきたのは。

「な、何!?」

エール達が外に出ると、大量のイレギュラーが現れて人々を襲い始めたのであった。 
 

 
後書き
怒り狂った女子はイレギュラーよりも怖し。 

 

第十話 イレギュラーの撃退

 
前書き
多分ここまで調子良く書けるのは今日くらいだと思います 

 
プレリーの部屋の整理をしていたヴァンだが、街の非常警報が鳴り響いたことに気付いてブリッジに出ると、モニターにイレギュラーに襲われている街が映っていた。

「街が…!?」

「イレギュラーか…!街には先輩とエールが!!」

モデルXさえ持っていない今のエールは常人よりも体力があるくらいの女の子でしかない。

ジルウェはもう戦えるような体ではないので、早くライブメタルを届けなければまずい。

「プレリー!出るぞ、エールにライブメタルを届けに行く!!」

「お願いヴァン!それから街にライブメタルの反応があるの…恐らくフォルスロイドよ…イレギュラーはフォルスロイドの命令で動いている可能性が高いわ。それから謎のエネルギー反応もあるから気をつけて…発電所に現れた反応と同じ…」

「ペガソルタみたいな奴も混じっているってことか…分かった、気を付ける」

「あ…」

プレリーに背中を向けて街に飛び出そうとするヴァンに思わず手を伸ばした。

「…何だ?」

伸ばされた手に気付いたヴァンが不思議そうにプレリーが伸ばしている手を見つめる。

「…ごめんなさい、何でもないの…気を付けて…みんなで一緒に帰ってきてね…」

「?ああ、分かってる」

プレリーの態度に首を傾げるが、今はそれどころではないことを思い出して、今度こそ急いで街に飛び出した。

「………お兄ちゃん…」

オペレーター達が作業に集中していたため、誰もプレリーの呟きを聞いた者はいなかった。

街に飛び出したヴァンは逃げ遅れた親子に襲い掛かろうとしているイレギュラーをアルティメットセイバーで両断した。

「あ…」

「早く逃げろ!」

「は、はい!」

目の前のイレギュラーを瞬殺したヴァンを見る目には恐怖が混じっていたが、最初からこうなると分かっていたヴァンは早くエール達を助けに向かおうと駆け出した時だった。

「お兄ちゃんありがとう!」

母親に抱かれた女の子がヴァンに礼を言う。

それを聞いたヴァンは軽く手を振ると、急いで人々が集められているビルへと向かうのであった。

ビルのシャッターの前まで来ると、外出していたガーディアンのメンバーが怪我をして座り込んでいた。

「君は、ヴァンか…沢山の人達がこの中にいるんだ。ジルウェやエールもこの中にいる。助けに行ってやってくれ…!」

「ああ、分かってる…待ってろよエール!先輩!」

シャッターを潜り、ビル内部へと侵入するヴァン。

入った瞬間に凄い熱を感じたが、ロックマンの状態なので大した影響はない。

「エールと先輩はどこだ…?」

「ヴァン、エールは一番下のフロアにいるようだよ」

「どうやらジルウェも一緒のようだな」

それぞれの適合者の位置を察知したモデルXとモデルZの言葉を信じて一番下のフロアに向かう。

「エール!シュウ!下がってろ!」

イレギュラーに囲まれたが、二人を庇うようにジルウェは前に出た。

「ジルウェ!」

自分達を守ろうとするジルウェにエールは思わず叫ぶ。

ジルウェは以前の戦いのダメージで普通に過ごす分には問題ないが、戦えるような体ではないのだ。

しかしそんなことなどお構い無しに一体のイレギュラーがジルウェに襲い掛かる。

ジルウェはそれをかわして近くの鉄パイプでイレギュラーの頭部を殴打して機能停止させる。

ライブメタルを失っても体に染み付いた戦いの癖は残っているので、ジルウェがまともな状態なら切り抜けられたかもしれないが…。

「ぐ…う…っ!」

胸を押さえて苦しげに膝をつくジルウェ。

「ジルウェさん!?」

「ジルウェ!しっかりして!」

突然苦しむジルウェに驚くシュウと、急いでジルウェに駆け寄るエール。

「くそ…なんてザマだ…元ロックマンとは思えないな」

動けないジルウェを攻撃しようとするイレギュラーだが、それに気付いたエールがジルウェの前に立った。

「ジルウェはアタシが守る!!」

「エール!俺に構わず逃げ…」

自分の盾になろうとするエールにジルウェが自分に構わず逃げろと言おうとした時であった。

「アタシ“達”だろエール」

紅い残像が瞬く間にイレギュラーを瞬殺する。

「ま、また出た!?」

「「ヴァン!」」

事情を知らないシュウが驚いているが、ヴァンの姿を見た二人が安堵の表情を浮かべた。

「遅くなって悪かった…モデルX達も一緒だ……それと、お前…シュウだよな?」

一年ぶりに会う悪友にヴァンはどう説明したものかと頭を悩ませるが、シュウはわなわなと震えていた。

「(やっぱり今の俺は怖いか…)」

インナーの人々はアウターでイレギュラーハントや遺跡発掘などで生計を立てているハンターの人々と違って武装している相手への警戒心が非常に強いことはヴァンは痛いほどに分かっている。

「お前…生きてたのかよ!?今までどこにいたんだよ!?その格好良いアーマーは何だよ!?お前たった一年で何でそこまで髪伸びてんだよ!?ジルウェさんみたいに金髪になってんだよ!?そのアーマーは何処で手に入れたんだよ!?」

「最初のはともかく、残りの質問はどうでもいいな…あいつ怖くないのか?」

「ほら、ジルウェ。あいつ馬鹿だから」

シュウとそれなりの長い付き合いであるエールは彼がどのような人物なのかは良く知っている。

「あー…うん、そうだな。お前にはそんな心配いらなかったな…今からガーディアンベースに残っていたメンバーも来るから、俺達はみんなが救助しやすくなるように火を消しながらイレギュラーの親玉のフォルスロイドを倒すぞ。」

電気属性のエレメントチップを使って武器に属性を付加させながらエールに自分達のやるべきことを伝える。

「うん、分かった…モデルX、モデルZ。行くよ、ダブルロックオン!」

エールもまた変身し、モデルZXとなるとヴァンが持ってきた簡易転送装置でジルウェとシュウを転送しようとする。

「気を付けろよエール、ヴァン。」

「ちょっと待って下さいよジルウェさん!それ、どうやって手にいれたのかくらい…」

「分かった分かった、後で説明してやるから大人しくしてくれ!」

暴れるシュウを宥めながら、二人はガーディアンベースへと転送された。

「本当に変わらないなあいつ」

「そうでしょ?」

二人が消えた場所に呆れた視線をよこしていたが、自分達のやるべきことをするために飛び出した。

「熱っ!?火が広がってる…!」

「はあっ!!」

ヴァンが炎に向けてチャージセイバーを繰り出すと、電気属性の力によって消滅する。

「エール、この炎はただの炎ではない。これを消すには電気属性の攻撃でなければ消せん。俺の力を使え」

「分かった!ダブルロックオン!モデルHX!!」

モデルHの指示に従い、モデルZからモデルHに変更して電気属性を持つモデルHXに変身する。

「この姿で戦う場合、電気属性の攻撃を扱う方法はチャージ攻撃とオーバードライブだ。」

「オーバードライブ?」

「正式名称はオーバードライブ・インヴォーク・システムだが、モデルX様とのダブルロックオン時に一時的にリミッターを解除することで武器に属性が付加され、攻撃力が通常時の二倍となる。」

「本当に!?」

「だが、その代わりにオーバードライブ発動中はエネルギーを常に消費する。チャージ攻撃も使う度にエネルギーを消費してしまうことになるので、エネルギーがゼロになればどちらも使えなくなるので注意しろ」

やはり強い力には代償があるようで、モデルXとのシンクロ率が高いモデルZと比べてシンクロ率が低いモデルHをベースにしたモデルHXで戦う場合は常にエネルギーに気を配らなければならないということだ。

「エール、急ぐぞ!」

「分かってるーっ!」

先を進むヴァンをモデルHXの高い機動力で追い付くエール。

途中の炎を消しながら一番上のフロアに入って先に進むと、イレギュラーの攻撃によって出来た大穴があった。

「アタシだけなら何とか飛び越えられそうだけど…」

「俺は行けそうにないな…」

エールだけならばエアダッシュとホバーで飛び越えられそうだが、エアダッシュもホバーも使えないヴァンが残ることになるが、だからと言ってヴァンを置いていくわけにもいかない。

「…あの窓から向こうに行けそうだな」

「じゃあ、アタシが先に行って安全を確保しとくよ」

ヴァンは窓の奥から向こう側に渡ることにして、エールは無事に飛び越えてメカニロイドを倒していく。

「待たせたな」

窓の奥から爆発音がしたかと思えば、ヴァンがセイバーを片手に飛び出してきた。

「そんなに待ってないから平気。行こう!」

ヴァンとエールは奥のシャッターを潜り抜けて屋上に出た。

「…酷いな」

屋上から見たエリアGの街は火の海となっていた。

ガーディアンが消化しようとしても、フォルスロイドを倒さない限り終わらない。

「エール、奥のビルからライブメタルの気配がする。ヴァンも気を付けて」

自分の適合者と、適合者になるはずだった二人に注意を促すモデルX。

「「分かってる」」

攻撃をかわして返り討ちにしながらライブメタルの気配がするという向こう側のビルへ行き、シャッターを抉じ開けて部屋に入ると、獅子を思わせるフォルスロイドがいたのだが…。

「むっ?邪魔者が現れたか」

「ああ?」

既にフォルスロイドと戦っている存在がいたのだ。

エリマキトカゲを思わせるレプリロイドでブーメランを構えながらこちらを睨んできたが、ヴァンの姿を認識するとニヤリと笑った。

「見つけたぜぇ…破壊神の器ぁ…っ!」

「こいつ、あいつの仲間!?」

「多分な、お前は何者だ?」

「俺はブレイジン・フリザード!俺と一緒に来てもらうぜ!お前には世界をぶっ壊して、絶望と恐怖を撒き散らしてもらわなきゃならねえんだからなぁ!!」

その発言に驚きと共に怒りを感じたエールがダブルセイバーを握り締めて叫んだ。

「ふざけないで!ヴァンにそんなことはさせないんだから!」

「死にたいのか小娘?なら、望み通り消し炭にしてやるぞ…!」

「このような坊主が破壊神か…確かに強者の気配を感じる…満更戯言というわけでもないらしいな…そして隣の小娘が噂に聞いたロックマンか…イレギュラー共に選ばれた者達よ」

エールとフリザードが一触即発の雰囲気となるが、フォルスロイドの方は興味深そうにヴァンとエールを交互に見つめた。

「俺達がイレギュラーに選ばれただと?どういうことだ!?」

フォルスロイドの言葉に反応したヴァンがセイバーを構えながら問い詰める。

「元々イレギュラー共はただ好き勝手に暴れていたわけではない。奴らはモデルVの主に相応しい器を選んでいたのだ。ライブメタルの力を引き出せる選ばれし者…ロックマンの資格をもつ者をな。恐らくお主らも、イレギュラーの襲撃から生き長らえた者であろう?」

「俺達がイレギュラーに生かされた…!?ふざけるなよ…!」

怒りの表情を浮かべるヴァンにフォルスロイドは満足そうに笑う。

「ほう…いい目をするな…儂のライブメタルが疼きよるわ…!儂の名はモデルFのフォルスロイド、フィストレオ!そやつが言っていた破壊神の器とやらの力を見せてもらうとしよう!」

フィストレオは全身に炎を纏ってヴァンに突っ込んでいき、凄まじい拳のラッシュを繰り出してきた。

「ーーーっ!!?」

ヴァンはセイバーでラッシュを全て防ぎ切るものの、フィストレオの猛攻の凄まじさに目を見開く。

「ほう!?儂の拳を全て見切るとはなっ!」

「(こいつ、速い!!)」

全て防ぎ切ったヴァンにフィストレオは満足そうな笑みを浮かべて瓦礫を吹き飛ばす。

吹き飛ばされた瓦礫は炎を纏っているため、受けたらダメージは免れない。

背中からバスターショットを引き抜き、チャージを終えるのと同時にチャージバスターで瓦礫を粉砕して、フィストレオにセイバーで斬り掛かる。

「ふっ!はっ!たあっ!!」

セイバーでの連続攻撃を繰り出すが、フィストレオは全て見切って受け止めてみせた。

「中々やるではないか小僧。躊躇うことなく急所を狙うとは、かなりの修羅場を潜ったと見える」

「お前らイレギュラーのおかげでな!!」

突進してくるフィストレオにチャージセイバーで迎え撃つヴァン。

「ヴァン!」

「チッ…仕方がない。器は後回しだ…まずは目障りな小娘から始末してやるぜ!少しは俺を熱くさせてくれよぉっ!!」

腕のバーナーから火炎放射を放ってくるフリザードに対してエールは上へエアダッシュすることで回避してホバーで背後に回るとセイバーで攻撃する。

「ほう、やるじゃないか…人間の小娘にしてはな」

「何、その言い方?前の奴もそうだったけど人間を馬鹿にするつもり!?」

「ハッ!人間なんてのは俺達レプリロイドの力を借りねえと何も出来ないゴミ共なんだよ!お前の力もまたレプリロイドの力だろうが!なあ、石コロに成り果てた賢将様ぁ!?」

「………」

「知り合いなのモデルH?」

「データでは知っている。正確に奴との接点があるのは俺のオリジナルだ…数百年前の偽りの理想郷で審官をしていたレプリロイドなのだが、モデルZのオリジナルと戦って死んだはず…」

モデルHはエールの疑問に答えながらも、目の前の過去に死んだはずのレプリロイドがいることに疑問を抱いていた。

「俺は死なねえよ!あの方の力がある限り何度でも蘇ってやるぜ!」

「なるほど、貴様…モデルVの欠片でボディが再構築されたのだな?ということは、あの男が関わった者が他にも復活していると見て良いな……死してなお、あの男の呪縛から逃れられないとは哀れだな」

「哀れなのはどっちだ!そんな姿になってまで人間やゴミ共を守ることに固執するとはあんたの方が頭がイカれてるぜ!」

モデルHを侮辱する言葉に、エールがフリザードが投擲したブーメランをかわして、セイバーで尻尾を斬り落としながら叫んだ。

「モデルHを馬鹿にしないで!モデルHはアタシ達の大事な仲間なんだから!!」

「エール…フッ……フリザード、お前の言う通りだ。今でも人間は弱く、そしてレプリロイドの力は俺達のオリジナル達とは比べ物にならないくらいに劣っている。だが、今の人間とレプリロイドには昔の人間とレプリロイドにはない強さがある。それに気付けんようではお前に未来はない!俺の力は弱き者のため!俺の信じる正義のために!!」

「行くよモデルH!オーバードライブ!!」

オーラを纏ってセイバーに電気属性を付加させると、エアダッシュで距離を詰めてセイバーによる連続攻撃を浴びせる。

「ぐおおおおっ!?この、小娘ぇ!!」

再生した尻尾から広範囲に渡って炎が吹き出すが、モデルHXの機動力の前には掠りもしない。

「これで終わりだ、エール…過去の亡霊を断ち斬れ!!」

「これで終わりよ!」

オーバードライブ状態でのセイバーによる三連撃とソニックブームをまともに受けたフリザードは信じられないという表情を浮かべていた。

「そ、んな…馬鹿な…!俺が…俺が人間如きに…!?」

「人間だからって馬鹿にしないでよね」

「くそおおおおっ!!」

敗北を認められないまま、フリザードは爆散すると、セルパンが持っている物よりも一回り小さいモデルVが飛び出たが、次の瞬間には罅割れを起こして粉々となった。

「モデルV?」

「ふむ、やはりモデルVの力で復活していたようだな。イレギュラーに寄生し、モデルVに刻まれたデータを受け継いでいるようだ…エール、気を付けろ…モデルVのオリジナルは他にもレプリロイドを改造し、洗脳していた…これだけとは到底思えん」

粉々になったモデルVを見つめるエールに、モデルHが推測を口にしながら注意を促す。

「セルパンの他にも大昔のレプリロイドとも戦わないといけないんだね」

やることが山積みであることを実感したエールは思わず溜め息を吐いたが、ヴァンのことを思い出して向こうを見ると、まだ戦いは続いていた。

モデルOは攻撃力は高いが、機動力はモデルHXほどではないため、フィストレオの猛攻を凌ぐので手一杯のようだ。

「助けないと…!」

「待つんだエール」

加勢しようとするが、モデルXに止められてしまう。

「何で止めるの!?」

「今、ヴァンは戦いの中で成長しようとしている。」

本来の適合ライブメタルであるモデルXは気付いているのだ。

ヴァンが新たな力に目覚める寸前であることに。

「これから先、あのフォルスロイドよりも強い敵と戦うことがあるかもしれん。奴を一人で倒せるくらいにはならないと生き残れないだろう」

モデルZの言葉にエールは思わず黙ってしまう。

これから先の戦いはより激しくなっていくのは間違いない。

ならば少しでも強くなるための機会は逃すわけにはいかない。

ヴァンやエールのためにもだ。

「(速く…もっと速く!!)」

フィストレオの猛攻を凌ぎながら、少しずつ少しずつ反応速度が上がっていくヴァン。

そしてその変化を感じ取ったフィストレオは笑みを浮かべる。

「(儂の攻撃を凌ぎながら坊主は確実に成長している。セルパンに従ったのは間違ってはいなかった!)」

強さを求めて己を鍛え続けてきたフィストレオ。

ライブメタルの力を得てからはますますその強さは洗練され、自分とまともに戦える者など限られていた。

だから今この瞬間にも成長し、自分を追い越そうとしている強敵に歓喜を覚えた。

「光芒一閃!!」

「っ!!」

腕から何度も衝撃波を放つフィストレオ。

ヴァンはそれを何とかかわして、最後の一撃はジャンプでかわしたが、フィストレオはそれを狙っていた。

「甘いな坊主!空中では避けられまい!これで終わらせてもらう!!霊央拳奥義!阿鼻叫喚!!」

フィストレオが全身に炎を纏って突進してくる。

しかも複数の火炎弾を伴ってだ。

空中での移動の術を持たないヴァンでは直撃を受けるが、フィストレオはヴァンの成長速度を見誤っていた。

フットパーツのダッシュバーニアの推進力を使って空中でジャンプして、フィストレオの突進をかわしたのだ。

「空中で跳躍しただと!?」

「動かなきゃ負けるってんなら…空中で動くまでだ!これで終わりだフィストレオ!」

チャージセイバーでは間に合わないために、Ωの文字が刻まれた掌を突き出してフィストレオの胸を貫いた。

「ぐあ…!?この儂がこんな坊主に…これが破壊神の器とやらの力か…!フ、フフフフ…だが、悪くは、ない…な…フハハハハッ!!」

満足そうに大笑しながらフィストレオは爆散し、フィストレオの残骸から炎属性のライブメタル・モデルFが姿を現した。

「あれがモデルFか?」

「そうだよ、頼りになるライブメタルだよ」

ヴァンの問いにモデルXが答えると、モデルFは他のライブメタルとは違って気さくな態度で話しかけてきた。

「へへっ!ありがとよ!助かったぜ!俺様は炎のライブメタル・モデルF!さあ、次行こうぜ!今度は誰をぶっ飛ばしに行くんだ?」

「モデルF…」

「変わらんな…」

モデルFの態度にモデルHが不機嫌な声を出し、モデルZはどこか呆れたような雰囲気を出していた。

「ま、待ってよ。アタシ達はまだ何も言ってないでしょ?」

モデルXやモデルZ、そしてモデルHとは全く違う態度のモデルFに困惑するエール。

「セルパンって奴がモデルVで何かやらかそうとしてるってんだろ?だが、そんな難しい話は俺の知ったことじゃねえ。俺様の力を勝手に使って、変なことやらかそうとしてるのが気に食わねえのさ。連中とやり合うんなら力は貸してやるぜ、文句はねえだろ?」

「う、うん…」

「今までのライブメタルとは全然違うな…」

戸惑う二人だが、モデルFはあることを思い出したので二人に伝える。

「それと…俺のパスコードが必要ってんなら、わりぃが今すぐには渡せねえ。セルパンは俺本体と大半のデータを二つに分けて、別のフォルスロイドに入れやがった。そいつをぶっ倒してくれりゃあ、パスコードをお前らに教えてやるよ」

そう言ってエールの手に収まるモデルF。

「ねえヴァン…アタシさ、ライブメタルって威厳がありそうな感じなのばかりだって思ってた」

「俺もだよ」

「モデルFはまだマシな方だ。氷のライブメタルはある意味ではモデルF以上に問題な奴だからな…」

「「?」」

疲れたように言うモデルHに氷のライブメタルはどのような人格の持ち主なのだろうかと、疑問符を浮かべる二人であった。 

 

第十一話 束の間の休息

 
前書き
プレリー=アルエットなので、モデルOの姿のヴァンは思いっきりゼロを彷彿とさせますよね…。

 

 
ヴァンはプレリーの部屋で休憩も兼ねてエール達からのお土産である肉まんを温め直して食べていた。

ほとんどがイレギュラーの襲撃で駄目になってしまい、無事な数個を頂いている。

因みにお土産の件で懐が致命的なダメージを受けただけではなく、そのほとんどが駄目にされてしまったジルウェは仕事中に密かにイレギュラーとセルパンに対して怒りを燃やしていたのであった。

金の恨みは恐ろしいのである。

「ヴァン」

「ん?」

声がした方を振り返ると、飲み物を持ってきてくれたらしいプレリーがいた。

「えっと、お疲れ様」

「プレリー…おう、ありがとな。」

飲み物はどうやら林檎ジュースのようで、一口飲むと林檎の酸味と甘さが疲れた体に染み渡る。

何故ミッションもないのにヴァンがプレリーの部屋にいて、その上疲れているのかというと、プレリーの部屋の整理と片付けがまだ終わっていないのである。

話し合いの結果、空き部屋の一つにほとんどのぬいぐるみを保管して、お気に入りのぬいぐるみを二つか三つだけ部屋に置いておくと言うことになったのだが、今まで溜め込んでいた量が量なだけに、かなりの時間が掛かっている。

「ふう、なあ…本当にこの量は異常だぞ?エールも驚いてたしな」

エールもヴァンと一緒に運び屋の仕事が始まる前までは手伝ってくれていたのだが、あまりのぬいぐるみの量に“可愛い”の認識の前に驚愕していた。

「う…」

「ところで回収したアイテムは本当に俺達が持っていて良いのか?」

ミッションではイレギュラーを破壊した際にEクリスタルや回復エネルギーを落とすことがあるのだが、時間経過で無くなってしまう回復エネルギーはともかくEクリスタルはガーディアンでも使うことがある物なので自分達が使って良い物なのだろうか?

「ミッション中に回収したアイテム類はヴァンとエールが使って良いのよ。確かに今はヴァンとエールもガーディアンの一員となっているから本来なら戦利品はみんなで共有するべきなのかもしれないけれど、ガーディアンのメンバーで最も危険なミッションに向かうあなた達に優先的に回すべきだと思ってるわ」

「そうか、分かった。なら、これからもありがたく使わせてもらうさ」

「……ヴァン、フルーブが二つ目のエレメントチップの調整を終えたから、あなたにこれを渡しておくわ」

プレリーが手渡してくれたのは炎属性のエレメントチップであった。

「これを使えば炎属性の攻撃が出来るようになるんだよな?」

「ええ、でもちゃんと使えるかどうかはチェックしておいてね」

「分かってるさ、フルーブを信じてないわけじゃないけど」

ミッション…特に戦闘中に動作不良を起こしてしまうなんてことはヴァンとて遠慮したい。

「それから、ヴァン…あなた達が戦った敵のことなんだけど…」

「何か分かったのか?」

「お姉ちゃんが残してくれた資料によると、ペガソルタ・エクレール、ブレイジン・フリザードは今よりずっと昔の時代に存在したレプリロイドなの」

「それは知ってる。モデルH達が教えてくれたからな…ん?でも、何でガーディアンベースにそんな大昔のデータがあるんだ?ライブメタルの研究のためか?」

ヴァンの問いにプレリーは首を横に振る。

「今からずっとずっと昔…人間と機械が戦争していた時代があるのは知ってる?」

「ああ、正直モデルH達に聞くまではただの昔話だと思ってたけどな」

「どうしてガーディアンベースに彼らのデータがあるのかと言うと、当時存在した組織が前身だからなの…私もお姉ちゃんも当時、その組織にいた…」

それを聞いたヴァンの目が見開かれる。

プレリーの言葉が真実ならば、プレリーは今から数百年前の存在ということになる。

「じゃあ、プレリーも…」

「ええ、私もその時代に作られたレプリロイドよ。でも初代司令官のお姉ちゃんは人間よ。数百年前の戦争で、モデルZのオリジナルと一緒に私達を守ってくれた人間の科学者なの…お姉ちゃんがモデルZのオリジナル……私にとってお兄ちゃんみたいだったレプリロイドを目覚めさせた。目覚めたお兄ちゃんはお姉ちゃんや私達のために戦って…人間と機械の戦争を終わらせてくれた……最後の戦いで、お兄ちゃんはいなくなってしまったけれど…」

あの時は“お兄ちゃん”を知る誰もが悲しんだ。

“お姉ちゃん”は最後まで信じていたが、本当は誰よりも辛くて苦しかったはずなのに。

「そうか…」

「それとね、モデルOのオリジナルについて少しだけ分かったの」

「モデルOのオリジナル?」

正直こんな厄介なライブメタルのオリジナルなのだから、ろくな存在ではないことは何と無く分かる。

「と言っても、ガーディアンベースに僅かだけ残っていたデータと昔、モデルXのオリジナルが教えてくれたことくらいしか分からないんだけど…」

「それでもいいさ、教えてくれ」

モデルOのことを少しでも知りたいヴァンはプレリーに頼む。

「私が作られるよりもずっとずっと昔にあった戦争の出来事の話なんだけど、モデルOのオリジナルらしき破壊神と恐れられたレプリロイドによって、世界は滅びかけ…人間とレプリロイドの大半の命が失われたの…そして、お兄ちゃんとモデルXのオリジナルが一緒に戦って鎮めて宇宙に飛ばした…そして私が作られた時代でそのレプリロイドが再び現れて…お兄ちゃんやライブメタルのオリジナル達によってたくさんの犠牲を出しつつも倒された…私がモデルOのオリジナルのことで知っているのはこれくらい…後はお兄ちゃんの本来のボディを使っていて…今のヴァンのような姿ということくらいよ」

「そう、か…」

プレリーの話からして、自分に取り憑いたライブメタルは自分の想像以上に恐ろしい存在なことくらいしか分からない。

「ごめんなさい、役に立てなくて…私、当時は幼いこともあって戦いから遠ざけられていたの…私もお姉ちゃんやお兄ちゃんに甘えてばかりだった…私にも、何かお姉ちゃん達のために何か出来たかもしれないのに」

二人がいなくなってから、プレリーはいつも後悔していた。

自分にイレギュラーと戦う力や何かを作り出すような技術があるわけではないが、出来ないなりに何か二人の力になれたのではないかと。

「なあ、プレリー」

「……?」

後悔で俯いていた顔を上げると、ヴァンが優しく微笑んでいた。

「俺がいた運び屋に、俺やエールを含めて先輩が引き取った奴がたくさんいるのは知ってるだろ?」

「ええ、ジルウェさんから聞いているわ」

「その中には当然、俺達よりも年下の奴らもいるんだ。まあ、俺やエールにとっては弟や妹みたいな感じだな。あいつらも引き取られたばっかりの時は塞ぎ込んでた。そんなあいつらを知ってるから、俺達のことを本当の兄さん姉さんのように懐いて笑ってくれるのが嬉しいんだ…あいつらが元気に笑ってくれるなら嬉しくて安心する…多分、プレリーのお姉さんとモデルZのオリジナルのお兄さんも俺達と同じだと思うぞ?」

「お姉ちゃんとお兄ちゃんがヴァン達と同じ?」

「きっとプレリーのお兄さんもお姉さんも、小さかったプレリーが戦いのことで傷付いて悩んでる姿を見るくらいなら、元気でいて笑って自分の傍にいてくれる方がずっと嬉しいに決まってる」

自分はプレリーの“お兄ちゃん”と“お姉ちゃん”のことは知らないが、二人が優しい人物なことくらいは分かる。

プレリーが慕い、モデルX達を作った人とモデルZのオリジナルになったレプリロイドならばきっと優しかったことくらいは理解出来る。

「そう…かしら…」

「ああ、プレリーはお兄さんとお姉さんの力になれていたと思う。大事な人が傍にいてくれるのって結構ありがたいんだぞ?こんな体になったから余計にそう思う」

自分の胸を擦るヴァン。

もう自分はこのライブメタルが離れない限りは以前の生活は出来ない。

だからこそ、大事な人が傍にいてくれることのありがたさを理解しているのだ。

「破壊神だとか言われたり、とんでもないことをやらかした奴がオリジナルとかとんでもないライブメタルだけど、力はあるんだ…この力を使って、絶対にセルパンを倒す。母さんや運び屋のみんな…そしてプレリー達のためにもさ」

「ヴァン……ありがとう…」

瞳を潤ませたプレリーが笑顔を浮かべながら礼を言う。

その笑顔は今まで司令官としてのプレリーが浮かべていたものと違ってどこか幼さを感じさせる笑顔だった。 
 

 
後書き
辛い時や寂しい時に傍にいてくれる存在って本当にありがたいですよね 

 

第十二話 遭難者の捜索

ガーディアンベースで待機していたヴァンとエールは突如、呼び出され、司令室のブリッジに入った。

「プレリー、来たぞ」

「だからヴァン、タメ口は止めろって…」

「良いんです、ジルウェさん。実はあなた達に頼みたいことがあるの」

「頼みたいこと?」

プレリーの言葉に首を傾げるエール。

「イレギュラーか?」

「それもあるんだけど、エリアFで何者かの救難信号をキャッチしたの。そして付近にライブメタルの反応も…恐らくイレギュラーに囲まれて身動きが取れなくなった民間の遭難者だと思うの、だからあなた達にはエリアFに向かってもらって遭難者の救助をして欲しいの。ライブメタルはもし可能なら回収してもらえる?」

「エリアFって確か、雪山だったよな。氷属性のイレギュラーが沢山いる場所だな」

「ええ、二人なら大丈夫だと思うけど…それから湖の中に入ることになるかもしれないから、小型の酸素ボンベと…後は……ヴァン、後ろを向いて」

「?ああ」

後ろを向くとプレリーが髪ゴムを取り出して背中に伸びる髪の毛先を纏めてくれた。

「これで泳ぐ時の邪魔にはならないはず…気をつけて…行ってらっしゃいヴァン」

「ああ、行ってくる」

プレリーの言葉に頷きながら、ヴァンはトランスサーバーのある部屋に向かった。

「ジルウェ…何かプレリー、変わったかもしれない」

「何が変わったんだ?いつも通りだと思うけどな…」

「何て言うか…ヴァンを見る目が前と少し違う気がするんだ。何となくだけど…それじゃ、ジルウェ。アタシも行ってくるよ」

「ああ、気を付けろよ」

エールもジルウェに出撃を伝えると、ジルウェもまた頷いて送り出した。

トランスサーバーを使ってエリアFへの最短ルートを辿っていき、しばらくしてエリアFの雪山に到着した。

「さ、寒い…!」

「雪山だしな…」

ロックマンの状態でなければとても耐えられそうにないくらいに寒い。

現にヴァンもあまりの寒さに表情が引き攣っている。

「寒いならモデルFをロックオンしろよ。炎属性なんだから今よりマシになるんじゃないか?」

「そ、そうね…ダブルロックオン!!モデルFX!!」

エールはヴァンの提案を受け入れてモデルFXに変身すると、何となく寒さがマシになったような気がする。

「プレリー、エリアFに着いたぞ」

通信を繋いで、これからどうすればいいのかの指示を聞く。

『救難信号は確かにこのエリアからだわ。でも、電波が弱いから信号の発信場所が特定出来ないの』

「こっちも何も受信出来ない…もっと奥に進んでみる」

「…もしかして湖に飛び込むなんてことないよね……?」

『可能性はあるかも…だから湖に飛び込む時はしっかりと小型の酸素ボンベを口に含んでおくこと。あなた達はレプリロイドじゃないから水中での活動時間が限られてるもの』

「やっぱりー…どうせ飛び込むならもっと暖かい場所の海がいい…」

「文句言うなよエール、行くぞ!」

ボンベを口に含んでヴァンは先に進み、エールも慌ててボンベを口に含んだ。

「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

二人はダッシュで雪山を駆け抜けていき、下に向かって飛び降りると、イレギュラーと化したメカニロイドが行く手を阻む。

「はああっ!!」

ヴァンはホルスターからアルティメットセイバーを抜いて、メカニロイドをチャージセイバーの一撃で粉砕し、エールも後方からモデルFXの装備であるナックルバスターを構えてショットを連射して破壊する。

途中で氷のブロックとジャンクのブロックが積み重なって道を塞いでいたが、ヴァンはオメガナックルのエネルギーを拳に纏わせて殴り砕き、エールもエネルギーを纏わせたナックルバスターによるパンチで殴り砕いて道を作った。

そして奥のシャッターを潜った先には湖が広がっており、ヴァンとエールは一瞬硬直した。

「仕方ない、潜るぞエール」

「ええ!?そんなぁ…」

湖に飛び込んだヴァンの後をエールも泣く泣く湖に飛び込んだ。

「つ、冷たい…!」

「雪山の湖だからなぁ…」

さっさと抜け出して体を温めたいと言うヴァンとエールの共通した気持ちである。

湖を地上と全く変わらない速度で移動するヴァンだが、エールは水の抵抗をまともに受けており、地上と比べて明らかに鈍くなっている。

「遅いぞエール」

「ヴァンが速すぎるだけでしょ!」

しばらく泳いでいると、光が差す場所を見つけて一気に浮上すると、シャッターを発見する。

「あそこだ…行くぞエール!」

「う、うん…寒…寒い…」

寒さにガタガタと震えながら、エールは先を行くヴァンを追い掛ける。

シャッターを潜り抜けると、発信源の近くまで辿り着いた。

「ねえ!助けにきたよ!誰かいるんでしょ?位置を教えて!」

エールがどこかにいるらしい遭難者に向かって叫ぶものの、遭難者からの返事はない。

「…おかしいな…返事がない…」

警戒しているにしても何の反応がないのはおかしいとヴァンは思ったのだが、直後にプレリーからの通信が来た。

『でも確かに発信源はその辺りだわ。救難信号を出している機械が近くにあるはずよ。探してみて』

「分かった……上が怪しいな。行ってみるかエール?」

「うん!」

壊れた道を伝って上を目指す二人だったが、途中でメカニロイド達の妨害を受ける。

「邪魔だ!!」

炎属性のエレメントチップを使ってチャージ攻撃に属性を付加させると、メカニロイド達の大半は一撃で沈んでいく。

エールも上空の動きを阻害してくるメカニロイドにショットを放って撃墜していき、二人は順調に頂上へと登っていくと、氷とジャンクのブロックによって塞がっている場所を見つけた。

「反応が近いな…もしかしたらここの奥か?」

「もしかしたら、閉じ込められて出られなくなったのかも!」

ヴァンとエールがブロックを殴り砕いていくと、思った通りに扉があった。

扉が開いたので、部屋に入ると発電所で見たメカニロイドが道を塞いでいた。

「こいつはあの発電所でも見たな。」

「ヴァンが倒したんだっけ?どういう敵なの?」

「下のビーム砲と突進にさえ気を付ければ大丈夫…」

メカニロイドがキャタピラを動かした瞬間、ベルトコンベアの床も同時に動く。

「「っ!?」」

突然のことに二人は体勢を崩してそのままメカニロイドの元まで運ばれる形となり、ローラーの真下まで行った直後に振り下ろしてきたので、咄嗟にダッシュジャンプで回避して、壁に張り付いた。

「あ、危なかった…」

「今のは少しヒヤッとしたぞ…ここから攻撃だ!」

壁に張り付きながらヴァンはバスターショットを、エールはナックルバスターを構えてショットを連射した。

二人の同時攻撃によってメカニロイドはあっさりと破壊され、沈黙した。

「はあ、びっくりした…」

「向こうに扉があるな…行こうエール」

扉を潜ると、部屋の中には誰もいない。

強いて言うなら大型の端末があるくらいで、この機械が救難信号を発信していたようだ。

取り敢えずプレリーに通信を繋ぐヴァン。

「…プレリー、救難信号を出している古い端末を見つけた。だけど、周りには誰もいないみたいだ。」

『誰もいないなんて…一体どういうことなのかしら…』

「あっ!でも、端末にデータディスクが入ったままになってる」

端末を調べていたエールが端末を操作してデータディスクの内容を見る。

《私も、もう長くはない…このデータが心正しき者の手に渡ることを祈る…我々ガーディアン調査隊はこのエリアで不思議な金属の欠片を発掘した。まるで生きているかのように意志を持ち、我々の意識に語りかけてきたそれを、司令官は“ライブメタル・モデルV”と名付けた。司令官の指示の下、ライブメタルの研究は続けられたが…調査隊のほとんどの者が体の痺れや、頭痛などの異常を訴え始め、それを知った司令官は我々をライブメタルから遠ざけ、一人調査を続けた。》

「ヴァン…これって…レポート?」

「そのようだな、でもまだ続きがある…見てみよう」

レポートの続きを読んでいく二人。

恐らくプレリーもモニターから内容を読んでいるはずだ。

《研究も終わろうかというある日…仲間の一人が暴走し、彼によって我ら調査隊は全滅させられた。彼は調査隊のデータを全て消去した後、モデルVと共に姿を消した。彼の名はセルパン、最も研究熱心で、最もモデルVの欠片に興味を示していた男だ。一体彼に何が起きたのか…残された僅かなデータから分かったことを、ここに残そう。》

レポートを読み終えた二人の目は驚愕で見開かれていた。

「データはこれで終わってるな…」

『これは、お姉ちゃんが…初代司令官がいた調査隊のレポートだわ…!…救難信号はこのデータを誰かに発見させるために出され続けていたのね。でも…お姉ちゃんの調査隊が全滅してたなんて…』

「…しっかりしろ、プレリー。敵のライブメタルの反応がどこにあるか教えてくれ」

動揺しているプレリーを落ち着かせるように言うと、ヴァンはライブメタルの位置を尋ねる。

『…ヴァン…?』

「セルパン・カンパニーの奴らがこのデータの続きを持っているかもしれないだろ…プレリーのお姉さんのことだってまだ駄目だと決まったわけじゃない…プレリー、最後まで諦めるな」

『……そうよね…ありがとう…ヴァン(“最後まで諦めるな”…か、お兄ちゃんも、お姉ちゃんが諦めかけた時、そう言ってたっけ…そうだよね、諦めちゃ駄目だよね…お兄ちゃん…お姉ちゃん…)』

通信越しのプレリーの声は少し掠れていた。

蚊帳の外にされていたエールが咳払いを一つする。

「コホンッ、それにしてもセルパンがガーディアンのメンバーだったなんて…」

「プレリーも知らなかったようだしな」

『ええ、私も知らなかったわ。そんなデータはベースには残されていなかったもの…』

何故、セルパンは暴走してしまったのか?

その答えは恐らくこのレポートのデータの続きに残されているはずだ。

「取り敢えず、ライブメタルの反応を追ってみよう。もしこのエリアのフォルスロイドが持ってるなら奪えばいいしな」

『そうね、ライブメタルの反応はロックのかかった扉の先よ。扉のロックはガーディアンベースからハッキングして、開けておくわ』

「分かった、エール。ミッションを続行するぞ!データの続きを取り戻す!」

「うん!」

二人は部屋を飛び出し、ロックがかかっていた扉へ向かう。

場所はオペレーター達が教えてくれたので、すぐに到着出来た。

扉を潜ると再び湖が広がっているが、ヴァンもエールも躊躇することなく飛び込み、ヴァンが先行してもらいながらエールも追い掛けた。

しばらく泳ぐと、奥の方にシャッターが見えた。

『待って、二人共…ライブメタルの反応の他にもエネルギー反応…きっと復活したレプリロイドだわ!気を付けて!!』

「「了解」」

復活した過去のレプリロイドもいると言うことは、今回も激しい戦いになるだろうと判断した二人はシャッターを潜り抜けた。

「ヒャッハアアアアッ!!」

「てめえ!待ちやがれ!!」

狼のようなレプリロイドと、小さなレプリロイドが既に交戦している。

小さい方のレプリロイドが攻撃を飛ばすものの、狼のレプリロイドの機動力はそれを容易く回避してしまう。

恐らく狼のレプリロイドも水の抵抗を全く受けないのだろう。

「おいおい、そんな攻撃なんざ遅すぎて欠伸が出ちまうぜ。もっと速く攻撃を…っと、わりぃわりぃ。あんたそれで速く攻撃してるんだったな?」

「てんめえっ!このルアール様を何度も馬鹿にしやがってぇ!!」

「あー、あー、うっせえうっせえ。あのオッサンも相当なもんだったが、あんたはそれ以上だなっ!!」

一瞬でルアールとの距離を詰めたかと思えば両腕の刃で斬り刻む。

「舐…めんなあーーーっ!!」

突如地面に潜んでいた巨大な本体が飛び出してレプリロイドを噛み潰そうとするが、あっさりと距離を取られてかわされる。

それどころか、本体に巨大な氷の刃を叩き込んでダメージを与える。

「わりぃな、俺のお目当ての奴が来ちまったようなんでな。お前と遊ぶのはおしまいだ。よう、初めましてだな破壊神の器様よ。あんまり遅ぇからこいつで遊んでたんだよ」

「お前が復活したレプリロイドだな?」

「ああ、俺はフェンリー・ルナエッジ。あの方に仕えていたレプリロイドだ…それにしても破壊神様ってのは英雄様に似てるんだな…いや、破壊神様が英雄様のボディを使ってたんだから当たり前なんだけどよ」

「そして、そこにいる奴がライブメタルを持ってるフォルスロイドってわけね」

「ああ、奴からライブメタルの…あいつの気配を感じる」

モデルZが姿を現し、ルアールの疑似餌部分を見ながらエールに言うと、ルナエッジがモデルZを見て笑みを浮かべた。

「何だい英雄様じゃねえか?宇宙の塵になっちまったのかと思ってたらあの方のようにライブメタルになってたのかよ?」

「モデルZ、あいつのこと知ってるの?」

「データでは知っているが、俺自身は会ったことはない…俺のオリジナルに破壊された奴なのだろう」

「なるほどね」

モデルZの言葉に納得すると、今まで放置されていたルアールが口を開いた。

「てめえら…」

「「「「ん?」」」」

この場の全員が振り返ると、怒り心頭といった様子のルアールがこちらを見下ろしていた。

「随分と楽しそうだなぁ?おい、アタシを無視して立ち話たあなぁっ!!しかもそのデータは…っ!使えねえ部下共っ!どいつもこいつもアタシを苛つかせやがってぇ!!アタシの本体の餌にしてやらぁ!!」

本体が飛び出してヴァン達に襲い掛かるルアールの本体。

三人とモデルZはそれをかわして、体勢を整える。

「あれがあいつの本体…でも喋ってるのは疑似餌の部分のようだし、本体が下半身みたいなもんなのか?」

「え?た、多分…」

ヴァンの問いにエールは肯定してしまった。

「ふーん、ルアールだっけ?あいつ滅茶苦茶下っ腹が肥えてるんだな」

ルアールの本体を見つめながら爆弾発言するヴァン。

「………~~~っ!!!てんめえ!アタシがデブだって言いてえのかあっ!!?」

怒りが臨界点を突破し、本体がヴァン達に突撃して疑似餌が氷の攻撃を繰り出してくる。

「何であいつ、あんなに怒ってるんだ?」

「当ったり前でしょ!?昔からそうだったけど、あんたデリカシーなさすぎ!!」

女の子のタブーを口にしたヴァンにエールが怒鳴る。

「ギャハハハッ!最高のギャグだぜ破壊神様よぉっ!!」

ルナエッジもまた腹を抱えて爆笑しており、更にモデルZとモデルFが追撃する。

「エール、あれは下っ腹が肥えているのではないのか?」

「だよなぁ、あれが下半身だってんなら相当太ってるぜ」

「ちょっ!?」

「殺す!てめえ殺す!!」

標的をエールにしたルアールは本体の口を大きく開けて突進してきた。

「ちょっ!?ア、アタシじゃないでしょーっ!!?」

「何故あんなに怒る?情緒不安定か?」

「おかしな野郎だな」

「あんた達のせいよっ!!」

女の子のタブーを口にしたモデルZとモデルFに怒鳴りながらも、自棄になったエールはナックルバスターを構えて迎撃するのであった。

「ギャハハハッ、いやー笑ったぜ。面白れぇギャグだったぜ破壊神様よ……さて、あんたをぶちのめして、俺達と一緒に来てもらうぜ」

ヴァンとルナエッジが睨み合い、ヴァンはセイバーを構えるとルナエッジに突撃する。

「喰らえっ!!」

見た目と戦い方から氷属性だと判断したヴァンはフレイムチップを起動させてチャージセイバーを繰り出す。

「遅ぇよっ!!」

ジャンプでかわし、水中であることを利用して複数の氷の分身を作り出すと、ヴァンに向かわせる。

背中のバスターを引き抜いてショットを連射するが、氷の分身はかなりの耐久力があり、いくらかは削れたものの破壊には至らなかった。

「ぐっ!?」

「そらそらぁっ!!」

巨大な氷の刃を発射してくるルナエッジ、何とかかわそうとするが、ルナエッジは体を高速回転させてバウンドしながら体当たりを仕掛けてくる。

「くそっ!!」

両手にエネルギーを纏わせてそれを受け止めると、ルナエッジの動きが止まった。

そしてそのまま殴り飛ばすが、属性は付加されていないので決定打にならない。

「へへ…やるなぁ、破壊神様よ…伊達に英雄様と同じ姿はしてねぇってことか。持ってる武器もあいつを思い出させやがる」

「……………」

「…懐かしがってる場合じゃねえな。あの嬢ちゃんもあの魚を追い詰めてるようだし、さっさとカタをつけさせてもらうぜ」

次の瞬間にはヴァンの背後に現れていた。

「何!?」

「俺の最速についてこれるかな?」

振り下ろされる氷の刃をセイバーで受け止める。

「グルオオオオオッ!!!」

雄叫びを上げながらルナエッジはヴァンの周囲を動き回り、両腕の刃と牙で傷を負わせていく。

「ぐっ!?」

何とかチャージバスターかチャージセイバーを当てたいものの、動きが速すぎて当てられない。

ルナエッジの体当たりをまともに受けたヴァンが吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。

「(あいつのスピードさえ、何とか出来れば…!!)」

ルナエッジは機動力に特化したレプリロイドのようなので、炎属性のチャージセイバーかチャージバスターを当てることさえ出来れば勝機は出てくる。

「とどめだぁっ!!」

右腕の氷の刃が振り下ろされ、ヴァンは意を決して利き腕ではない左腕で受け止めると、アーマーが砕けて血が溢れ出し、内部の機械が露出した。

「ぐ…おおおおおっ!!!」

激痛に顔を歪めながらも左腕を犠牲にしてルナエッジにチャージセイバーを叩き込む。

「ぐあっ!?(こいつ、左腕を盾にしやがった!?肉を切らせて骨を断つって奴か!!)」

よく聞く言葉だが、本当にやる奴など珍しい。

炎属性の攻撃をまともに受けたことで傷口から炎が発火し、炎に弱いルナエッジにダメージを与えていく。

「これでお前の自慢のスピードは出せないだろ?」

「へ、へへ!やってくれるじゃねぇか…今の時代にはヘタレな奴らばかりだと思ってたらお前みたいにイカれた奴もいるなんてな!!」

好戦的な笑みを浮かべながらルナエッジはヴァンに飛びかかるものの、以前のようなスピードがない。

「(スピードが半減…イケる!!)」

攻撃をかわしながらセイバーをチャージし、ルナエッジに当てていく。

「ぐ…おおおおお…っ!!」

体が発火して悶えるルナエッジにヴァンは大きくジャンプして空中からの回転斬りを喰らわせ、着地と同時に三連擊を叩き込むと、ダメージを受けすぎたルナエッジのボディが崩壊していく。

「ふう…っ」

勝利を確信したヴァンは左腕を庇いながら崩壊していくルナエッジを見つめる。

「へ、へへ…流石だな…破壊神様の器だけあってそれなりに強ぇ…ってわけだ…でも忘れるなよ…そいつの力は…本来はあの方の…っ」

言葉を言い切る前にルナエッジは爆散してしまい、最後まで聞くことは出来なかったが、向こうを見るとエールもルアールを倒したらしく、ルアールの本体から煙が出ている。

「畜生…畜生…何でアタシがこんな目にーーーっ!!」

納得がいかない最期にルアールは叫びながら爆散したのであった。 

 

第十三話 乙女達の心理

 
前書き
乙女のタブーに触れたヴァン達の未来は如何に… 

 
ルナエッジとルアールを倒した二人は安堵の息を吐いた後、エールは乙女のタブーを口にしたヴァンの頭を叩いた。

「何すんだよ?」

何故叩かれたのか分からないヴァンが疑問符を浮かべながら顔を顰めた。

「モデルX、何故エールはヴァンを叩いたんだ?」

「あの野郎も変だったけどエールもおかしな奴だな」

「君達…」

「無駄ですモデルX様、説明したところでこの二人に理解など出来るわけがありません」

モデルZとモデルFの疑問にモデルXはどう説明すればいいのかと頭を悩ませるが、モデルHは溜め息を吐いてモデルXに進言した。

「まさか、キザ坊やと意見が合うとはね」

ルアールの残骸から姿を現したライブメタルはどことなくモデルXに近い姿をしているが、モデルXとは違ってどうやら女性の人格のようだ。

モデルHがモデルLに気付き、彼女に尋ねる。

「…久しぶりだな、モデルL。あいつらの代わりに尋ねるが、ガーディアンの初代司令官の調査隊に関するデータディスクのことについて何か知らないのか?」

「ああ、あのデータね…。あれならもうここにはないわ。どこかに運ばれてしまったもの…全く…あの戦争から数百年も経ったっていうのに…また騒がしくなってるのね」

モデルHの問いにモデルLはルアールに組み込まれていた時のことを思い出し、データはここにはないことを告げる。

そして自分達のオリジナル達が戦っていた戦争から大分時が過ぎたと言うのにまた騒がしくなっていることに呆れる。

「そうなんだ、セルパンという男がモデルVを目覚めさせようとしている…それを止めるために、彼女達に力を貸してくれないか?」

エールから聞こえてくるモデルXの声にモデルLは断る理由もないので快諾した。

「…分かりましたわモデルX様、ところでセルパン達の会話を聞きましたけど…借り物の体とは言え、モデルX様とモデルZがセルパン達に敗北したと聞きましたわ」

「…うん、僕達の力が足りなかったせいでエールは酷い怪我を負って、モデルZの適合者だったジルウェという人は戦えない体になってしまった。今は…彼女と…彼が残された希望なんだ」

「………あの、モデルZのオリジナルに酷似した子が…ですか…あの子から感じるのは…」

「モデルL、力に善も悪もないんだ。一番大事なのは力を使う者の“心”だよ…僕は信じてる…ヴァンならきっと、僕とモデルZのオリジナルの宿命を乗り越えてくれる」

「分かりましたわ、モデルX様。あの女の子に力を貸せば良いのですね?」

「ありがとうモデルL」

こうして喧嘩している…一方的にエールがヴァンを怒鳴っているだけだが、二人にモデルXが声をかける。

「エール、モデルLが僕達に力を貸してくれるそうだよ」

「え?いつの間に?」

「あなた達がじゃれあってる間によ。私は氷のライブメタル・モデルL。私の力の使い方は後で教えてあげるからまずはここを出ましょう。あ、因みにパスコードは私の力を持ったフォルスロイドを倒さないと教えてあげられないから…覚えておいてね」

奥のトランスサーバーを使ってガーディアンベースに帰還し、そして司令室のブリッジに戻ったヴァン達を待っていたのはプレリー達からの非難の視線であった。

直後にヴァン、モデルZ、モデルFがブリッジの床に正座させられ、“デリカシーがない”、“敵とは言え女の子に言っていい言葉ではない"などの説教を受けた。

モデルZとモデルFは浮いたままだが、全く微動だにしないので、恐らくこれがライブメタルの正座なのだろう。

「何で敵を倒してライブメタルも取り戻したのに俺達が怒られるんだ?」

「全くだ。先程のミッションにデータ以外の致命的なミスはなかったはずだ。」

「そうだぜ!敵をぶっ潰したのに帰っていきなり正座と説教とか理不尽じゃねえか!!」

ヴァンは帰還早々いきなり怒られ、正座をさせられていることに渋面を浮かべている。

隣のモデルZは普段通りだが、もし表情があれば“解せぬ”という表情を浮かべているのは間違いない。

モデルZの隣のモデルFも帰還早々のいきなりの説教と正座に文句を言う。

「怒られて当たり前でしょ!あんた達はあまりにもデリカシーがなさすぎ!!」

「どうして、こうもデリカシーがないところも似てるのかしら…」

モデルZは“お兄ちゃん”が基になったのでまだ分かるのだが、まさかヴァンまで失言を言うとは思わなかった。

昔のサイバーエルフの名付けの件を思い出しながら怒鳴っているエールの隣でプレリーは額に手を置いた。

「あなた達って本当に女心が分かってないわね。モデルZも戦闘馬鹿も相変わらずで呆れるわ」

モデルLが心底呆れ果てたように言うと、ムッとなったモデルFがあることを思い出してモデルLに向かって言い放った。

「そういや、お前のオリジナルのパワーアップした姿も下っ腹が出てたよな。もしかしてあいつに親近感…いでえっ!?」

乙女のタブーに触れた大馬鹿者のモデルFにモデルLの体当たりが炸裂した。

「あれは水の抵抗を少なくするために設計されてるのよ!あんたのオリジナルの火力だけの欠陥馬鹿と一緒にしないで!!」

「んだとぉっ!?上等だモデルL!表に出ろ!!」

「良いわよ!馬鹿のあんたにきっちりと教育してやるわ!!」

二つのライブメタルはブリッジを飛び出していき、それを見たプレリーが溜め息を吐いた。

「とにかくヴァン、モデルZ…女の子はそういうのを気にするの…だからそういうことは言わないであげて」

「「?…分かった」」

理解したようでしてないヴァンとモデルZにプレリーは溜め息を吐いた。

「でもヴァン、お前エールにはそういうことは一切言わないよな?」

「ジルウェ?」

ギロリとジルウェを睨むエール。

「落ち着け落ち着け、お前は時々失言するけどエールには言わないじゃないか」

「ああ、太るとか?エールが太るわけないだろ?ミッションとか運び屋の仕事とか毎日してるのに太る暇なんかあるのかよ」

「あ、なるほど…そういうことか」

確かにミッションやら運び屋の仕事で毎日動き回っているエールが太るのは想像出来ない。

「確かに、太るのは基本的に動かない者だからな」

モデルZの言葉が基本的に持ち場から動けないプレリーとオペレーター達に深々と突き刺さった。

「ふ、ふうん…まあ、今回は許してあげるけど次はないからねヴァン!!」

「分かったよ」

「取り敢えず飯にするか?二人共、腹が減ってるだろ」

「「はーい」」

ジルウェと共にヴァンとエールがブリッジを出ていき、残されたプレリーは密かに怯えていた。

「(わ、私も言われないように気をつけなきゃ…!座ってばっかりだし…!!)」

特にヴァンとモデルZに“プレリー、太ったな”と言われた日には立ち直れない気がするガーディアン司令官であった。 

 

第十四話 安らぎの時間と憧れ

 
前書き
モデルOってオリジナルがあれだから多少の抑制なんて時間経過でどうにかしてしまいそう。

漫画版のキャラクターを再び。

サルディーヌはこの小説のアルエットポジションにしたいですね 

 
最後のライブメタルの居場所が分かるまで、ヴァンはガーディアンベースで待機して時折現れるイレギュラーを排除し、エールはジルウェと共に街に出て運び屋としての仕事をしている。

「はあっ!!」

冷気を纏ったアルティメットセイバーによるチャージセイバーがメカニロイドを両断する。

「流石フルーブだ。アイスチップも問題なく使える…聞こえるかプレリー?ここら辺にいるイレギュラーは全て倒したぞ」

『お疲れ様、ヴァン。一度ガーディアンベースに戻ってきて』

「ああ、分かった」

近くのトランスサーバーまで行き、ガーディアンベースへと帰還すると、プレリーが迎えてくれた。

「お帰りなさい、ヴァン…いつもごめんなさい…あなたに頼りきりで…」

ロックマンは個人差はあれど高い機動力を誇るので、他の隊員よりも素早く現場に迎えるヴァンにアウターからインナーに向かおうとするイレギュラーの掃討を任せているのだが、ミッションだけでなく、待機中の時にも戦っているヴァンを見て、申し訳なさを抱いていたのだ。

「別に、イレギュラーは倒さないといけないし…最後のエレメントチップのテストも兼ねてるからな」

強大な力を持つモデルOの影響なのかあれだけ動いても息を切らさないヴァン。

本人も大人しくしているというのが性に合わないと自覚しているので、ある意味ではヴァンとモデルOの相性は良いのだろう。

「……ヴァン、その…疲れてるとか、具合が悪いとかないかしら?大事な体なんだから…」

セルパン・カンパニーと戦うにはヴァンの力は必要不可欠であり、プレリー個人からしてもヴァンにはあまり無理して欲しくはなかった。

「………体か…別に何ともないさ。変身が解けないこと以外に今のところは何ともない」

「でも、少しくらいは休んでくれないかしら?次にイレギュラーが現れたら地上部隊のみんなに頼むから…」

「分かった。じゃあ、俺はベースで待機してるから…何かあったら通信をくれ」

それだけ言うと、ヴァンはトランスサーバーのある部屋から出ていく。

「…………」

「あいつの反応速度…普段よりも落ちていたな」

「モデルZ…」

一人部屋に残されたプレリーに話しかけたのはモデルZであった。

「今のあいつは昔のジルウェと同じだ。いや、心の拠り所があったあいつよりも苦しいかもしれん」

エールとヴァンが現れるまでは唯一のロックマンだったこともあり、ジルウェはイレギュラー現場を駆け回っていた。

終わる頃には疲弊していたが、帰りを待ってくれている運び屋のみんながいるジルウェ・エクスプレスという帰る場所があった。

しかし変身が解けないヴァンはインナーで暮らすことが出来ないため、実質帰る場所がない。

「………お姉ちゃんなら、ヴァンのことをどうにかしてあげられたのかしら……」

モデルZ達を作った“お姉ちゃん”なら、きっとヴァンをどうにか出来たのではないかと思えてしまう。

「プレリー、俺の記憶データにはそいつのことはないが…恐らくそいつはお前に出来ることをしろ…と言うかもしれん……何となく、だがな…記憶はなくとも、オリジナルから受け継いだ何かがそいつのことを覚えているのかもしれん…」

「モデルZ………ありがとう」

モデルZに礼を言うと、プレリーも部屋を出た。

一方、暇潰しも兼ねて倉庫に来ていたヴァンだったが…。

「……………」

“破か………我は…”

“全…を…ゼロ…す…ために…”

モデルXが抑えてくれているはずのモデルOの声が頭に響く。

流石に頭痛があったり、意識を失うほどではないが…。

「あまり良くない…か?」

「そうだね、あまり良い傾向じゃなさそうだ。肉体的にはまだ大丈夫なのかもしれないけど、精神的に弱ってきているのかもしれない。少し仮眠を取ったらどうかな?それとも何か食べるか…それだけでも大分違うと思うよ」

「………」

“でも、少しくらいは休んでくれないかしら?次にイレギュラーが現れたら地上部隊のみんなに頼むから…”

脳裏にプレリーの言葉が過ぎったヴァンは倉庫のコンテナに背中を預けながら座った。

「少し寝る…イレギュラーが出たら起こしてくれないかモデルX」

「分かったよヴァン。良い夢を」

少しして、ヴァンは眠りについた。

モデルXはモデルOの介入を抑えていたが、通路から聞こえた声に気付いて、倉庫を出た。

「君」

「あ、モデルX!どうしたの?」

オモチャを片手に遊んでいたサルディーヌにモデルXは注意する。

「今、ヴァンは寝ているんだ…少し静かにしてもらえるかな?」

「え?」

そっと、サルディーヌが倉庫の中を見つめるとコンテナに背中を預けながら座って寝ているヴァンの姿があった。

「ホントだ…ぐっすり寝てる…起こしちゃ駄目?」

「寝たばかりだからね…最近イレギュラーの相手ばかりしているからたまには休ませてあげないと」

「一緒におやつ食べる約束してくれたのになー…そうだ!」

「…?」

走り出していくサルディーヌにモデルXは不思議そうに去っていく背中を見つめていた。

「ヴァン…どこに行ったのかしら…?」

ベース内のヴァンの部屋にはいなかったので探していたプレリーだが、向こうから現れたサルディーヌの抱えている物に目を見開いた。

「どうしたのサルディーヌ?その毛布とお菓子?」

サルディーヌが抱えているのは毛布と、一人で食べるには多い量のお菓子であった。

「あ、プレリーお姉ちゃん…シィー…」

「………?」

人差し指を口に当てて言うサルディーヌにプレリーは疑問符を浮かべる。

「ヴァン…ここでお昼寝してるんだ。ぐっすり寝てるからおやつの時間まで一緒にいようと思って…後、風邪引いたらいけないから」

プレリーはサルディーヌが見つめている倉庫の扉を少し開けて中を見ると、寝ているヴァンの姿を発見した。

「本当に…ぐっすりと寝ているのね……ヴァン…」

プレリーはサルディーヌから毛布を受け取って、そっとヴァンにかけてやる。

「起きないかな…?」

「静かにしてれば大丈夫よ…(ロックマンの状態で起きないなんて…やっぱり、相当無理をしていたんだわ…何ともないなんて言ってても本当は……どうしてもっと早く気付いてあげられなかったの私は……)」

「プレリーお姉ちゃん…?大丈夫?どこか痛いの?」

辛そうな表情を浮かべているプレリーを心配したサルディーヌが見上げると、ハッとなったプレリーはすぐに笑顔を浮かべた。

「いいえ、何でもないわ…そのお菓子…もしかしてヴァンと食べるの?」

「うん、一緒に食べるって約束したんだ。プレリーお姉ちゃんも一緒に食べようよ」

「……良いの?私まで…?」

「うん、だって二人は僕のお姉ちゃんとお兄ちゃんだもん。あ、勿論エールやジルウェもだよ」

サルディーヌの言葉にプレリーは優しく微笑んで自室に向かった。

「それじゃあ、ヴァンと待ってて…美味しいミルクティーを用意するから」

プレリーが倉庫から去って、しばらくしてヴァンの意識が浮上し始めた。

「んん…(何だ…?良い匂いがする…これは…)」

目を覚ますと、自分の前に簡易テーブルが置かれてあり、テーブルの上にはお菓子とミルクティーのカップが三つ置かれていた。

「起きたのねヴァン?疲れは取れた?」

「プレリー…?それにサルディーヌ…?あっ!?サルディーヌと一緒におやつ食べるって約束…」

「大丈夫よヴァン。丁度おやつの時間だわ」

「まさか、この毛布…」

「ええ、かけたのは私だけど持ってきてくれたのはサルディーヌよ」

「そっか…ありがとなサルディーヌ」

「へへ」

ヴァンが頭を撫でると、サルディーヌも嬉しそうに笑った。

それを見たプレリーは胸に暖かなものが灯るのを感じて、更に笑みを深めた。

「さあ、二人共、食べましょう」

「ああ」

「うん」

サルディーヌが持ってきてくれたお菓子と、プレリーが淹れてくれた甘いミルクティーを頂きながら、三人は穏やかな時間を過ごしたのであった。

ガーディアンベースでヴァンが穏やかに過ごしている一方、エールもまた仕事が一息吐いたので、いつもの店で休憩をしていた。

ショートケーキを一口分にフォークでカットして口に運ぶと、疲れたエールの体が糖分の侵入に気付いて体をプルプル震わせた。

「うーん、やっぱり疲れた時はここのケーキよね」

「お前は本当にここのケーキ好きだな」

「女の子にとって甘い物はエネルギー源なの!!」

ジルウェは苦笑すると、自分のケーキのチーズケーキを差し出してそれをエールは喜んで受け取った…ヴァンや他の運び屋の仲間がこれが見ていたらまた甘やかしてると見られるだろう。

どうも自分は他の運び屋のメンバーで特にエールを甘やかしてしまう。

「(まあ、それでエールが笑えるのなら悪くないよな)」

「このチーズケーキも美味しい!!」

コーヒーを啜りながら目の前で美味しそうにケーキを頬張るエールを見て、ある意味これも自分の幸せなのだと思う。

「(ヴァンに感謝だな)」

あの時、エリアDでのイレギュラー襲撃事件の際にヴァンが駆けつけてくれなければ、恐らく自分は生きてはいなかった。

エールを助けるために自分の命を繋いでくれていたモデルZを託そうとしていたのだ。

だからこそ、こうやって戦えなくなってもエールを身近で見守ることが出来る現在に感謝していた。

「どうしたのジルウェ?アタシの顔をジッと見て?」

「いや、な…こうしていると、当たり前のことが幸せに感じられるんだって思っただけさ」

「そっか」

どことなく良い雰囲気を漂わせるが、それを木っ端微塵にする明るい声が響き渡った。

「よっ!エール!ジルウェさん!」

「「ん?」」

聞き覚えのある声に振り返ると、ジルウェにとって後輩、エールにとって同僚のシュウがいた。

「シュウじゃないか?」

「何?サボリ?」

「あの、エールさん。俺が現れる=サボリみたいに考えるの止めてくれないか?」

「そう思うなら、仕事をサボるの止めたら?」

シュウの言葉を一蹴するエール。

「ちぇっ、まあいいや」

「いや、俺としては全然良くないんだけどな?」

ジルウェも時々サボるシュウに手を焼いているため、頭に手を置いて溜め息を吐いた。

「あのさ、エリアGでお前とヴァンに助けられたろ?ジルウェさんがやられそうになった時、ヴァンが現れてイレギュラーをあっさり倒していく姿を見てさ、思ったんだよ。ヒーローみたいだなって」

「ふーん、あんたでもそんな風に思うのねー。珍しいこともあるもんだわ」

「明日は嵐…いや、隕石が降るかもな。遥か昔の流星の再来になるかもしれないな」

「エールもだけど、ジルウェさんも酷くね?」

カフェオレとコーヒーを啜りながらの二人の感想にシュウは落ち込みそうになりながらも話を続けた。

「そう思うなら真面目に仕事をしなさいよ。それで、そんなことをアタシ達に話したかったの?お礼なら前に聞いたじゃない」

「おう、良く聞いてくれた。俺さ…考えたんだ。お前やヴァンみたいなヒーローになりてえって」

「ん…?」

それを聞いたジルウェは嫌な予感を感じた。

「俺もガーディアンに入るぜ」

「「!?」」

それを聞いて驚いた二人は思わず飲み物が気管に入って噎せてしまう。

「ケホッ!ケホッ!あ、あんた…本気なの!?止めときなさいよ!!」

「っ……シュウ、エールの言う通りだ。悪いことは言わないから考え直せ」

何とか立ち直ったエールとジルウェがシュウを止めようと説得を始める。

「だってジルウェさんやエール、ヴァンもガーディアンなんだろ?だったら俺も入ったって…」

「駄目よ!ガーディアンはね!イレギュラーと戦うのよ!あんたが思ってるよりずっと危険だし命懸けなの!!あんたそれ分かってる!?」

「それにな、ヴァンとエールがイレギュラーと戦えるのは特別な装備があるからなんだ。その装備はきっとお前には使えない。だからな、考え直せシュウ」

「でも!俺だってあの日からずっと考えてたんだ!俺は強くなりてぇ!あの時のお前らみたいに強くなってヒーローになりてぇんだ!!」

「何…それ…?そんな気持ちでガーディアンに入らないでよ…ガーディアンにいるみんなはヒーローになりたいから戦っているんじゃない…プレリーやヴァンも…いなくなった大切な人のためや、守りたいものがあるから戦ってるの…そんな軽々しく考えないでよ!!」

カフェオレを一気に飲み干すと、店を後にするエール。

「エール!悪いな、シュウ…だけど、そんな気持ちで入るつもりなら止めておけ…みんなはヒーローになりたいから戦っているんじゃない。守りたいものや譲れないものがあるからイレギュラーと戦っているんだ。お前は俺達の帰る場所を守っててくれ。後であいつにも言っとくからな」

シュウの肩を優しく叩くと、ジルウェも店を後にした。

そしてインナーの廃ビルの屋上でそのやり取りを観ていた者がいた。

「あのガキが、他のライブメタルを持ってんのか…なら、あのガキの知り合いのあいつ…使えそうだな!」

邪悪な笑みを浮かべてチャンスを待つ。

ヴァンとエールの因縁の戦いまで後…。 
 

 
後書き
このまま一気に…と言いたいんですが…風邪引きました…微熱で喉が痛いくらいでコロナじゃないだけ良いですけど…三日間くらい休みますね… 

 

第十五話 十年前の記憶

 
前書き
思ってたより早く回復した…体調が悪い時は無理せずに休むのも大事ですね… 

 
それぞれの休息からしばらくして、ヴァンとプレリーは司令室のブリッジにムスッとしながら入ってきたエールと、それに苦笑するジルウェを不思議そうに見つめていた。

「ジルウェさん、エールはどうしたの?」

何故エールがこんなに不機嫌なのか分からず、隣で苦笑しているジルウェにプレリーが尋ねる。

「その…実は…」

「何でもない!!」

「何でもないって顔じゃないだろ」

ジルウェの言葉を遮るように叫ぶエールに思わずヴァンは呆れてしまう。

「……?とにかく、最後のライブメタル…正確には本体の位置が分かったわ。」

「本当に!?」

「ええ、場所はエリアHの遊園地。そこでライブメタルの反応があるわ…そして復活したレプリロイドの反応もね」

それを聞いた三人の表情が強張った。

「エリアH…」

「まさか…そこにいるなんてな…」

エールとヴァンが複雑そうな表情を浮かべる。

「大丈夫か?お前達?」

事情を知るジルウェは二人を心配するが、二人は首を軽く振って頷いた。

「大丈夫だ。エリアHなら昔行ったことがあるからすぐに行ける…」

「うん…それじゃあ行ってくるね」

普段なら勇ましく出撃するはずの二人がどこか沈んでいる様子にプレリーは不思議そうに見つめていた。

トランスサーバーに乗り込んでエリアAへと転送し、そしてエリアHへと繋がる道を駆け抜けていく。

そして、エリアHへの扉を開くと、荒れ果てながらもいくつかの遊具が寂しく動いている遊園地が視界に広がった。

『このエリアのどこかに、ライブメタルの反応と復活したレプリロイドの反応があるわ。二人共、気をつけて』

「「…………」」

プレリーの言葉に無言のまま遊園地を見つめるヴァンとエール。

『聞こえるか?ヴァン、エール…辛いのは分かるが…今はミッション中だ。気を引き締めろ、敵はお前達の心中なんて理解してくれないぞ』

「…あ、ああ…分かってるさ先輩」

「とにかく、前に進んでみるよ…まさか、またここに来ることに…しかもここが戦いの場所なんて…」

『二人共…?』

ジルウェの言葉でここに来た理由を思い出した二人は遊園地をダッシュで駆け抜ける。

ヴァンはアルティメットセイバー、エールはZXバスターでメカニロイドを迎撃しながらしばらく突き進んで奥のシャッターを抉じ開けて、更に奥へと進んでいくと、巨大なメットールが姿を現した。

「でかいっ!?」

「もしかしたらこいつの中に!?」

他のメカニロイドとは全く違うことから、この巨大メットールがライブメタルを持っているのではないかと思った二人は即座に攻撃を仕掛けた。

「こういうデカブツには俺様に任せろ!オーバードライブでぶっ飛ばしてやるぜ!!」

「行くよ!ダブルロックオン!モデルFX!!」

モデルFXへと変身し、オーバードライブも発動してナックルバスターからショットを高速連射。

ヴァンもセイバーで連続で攻撃すると、瞬く間に巨大メットールは爆散した。

「ヒャハッ!あれがあっさりとやられやがった。あいつの持っているライブメタルさえ手に入れりゃあ俺様は無敵だぜ。このガキを利用してな」

ある場所で簡単に設置された簡易モニターで戦闘を見届けていたイレギュラーが後ろをチラリと振り返ると、檻の中にシュウが囚われていた。

エールと喧嘩別れしてから帰路に着こうとしたところを拐い、エールが持つモデルH、F、Lのライブメタルを手に入れるための人質なのだ。

「どうせ、パスコードとやらは手に入れてんだし。俺様が使っても問題ねぇよな…」

ニヤリと笑うイレギュラーにシュウはビクリと震える。

「ひ…っ」

「おいおい、てめえはあいつらの仲間なんだろ?肝が小せえなぁ」

檻の中で震えているシュウに呆れるイレギュラー。

「フフフ、でもその恐怖に引き攣った表情…とても素敵ではなくて?」

「あん?」

床から聞こえた声にイレギュラーが振り返ると、そこから一体のレプリロイドが姿を現した。

「ま、また増えた…!」

「何だ姉ちゃん?見たところイレギュラーのようだけどよ。俺様に何か用か?」

イレギュラーとしての勘なのか、目の前のレプリロイドがイレギュラーだと言うことに気付いたようだ。

「あら、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね。私はノービル・マンドラゴ。破壊神の器を求めてやって来たの…あなたのお目当ての子の隣の…ね…」

「破壊神?大層な呼び方だなぁ、あんなガキにそんな力があるってのか?」

「今はまだ目覚めてはいないけれど、力を解き放った時…全てがゼロとなるでしょうね…悪いけどあの子は私に譲ってもらえないかしら?」

「ほーん、まあでも流石にライブメタル三つ分の力なんてねぇだろ。好きにしな、姉ちゃんが心変わりしてそっちを狙うってんなら…」

ギラリと、イレギュラーの鋭い視線がマンドラゴに注がれるが、彼女は平然としている。

「まあ、怖い。安心して頂戴、私の目的はあの子だけ…隣の子は煮るなり焼くなりあなたの好きにして結構よ」

「ヒャハハッ!良いねぇ、姉ちゃん!姉ちゃんみたいなのは嫌いじゃねえぜ!」

イレギュラーの狂気に曝されたシュウは怯えていることしか出来なかった。

一方、そんなイレギュラー側の思惑を知らずにヴァンとエールは巨大メットールの残骸を調べていた。

「くそっ…ライブメタルを持っているのはこいつじゃないのか…!」

「一体どこに…!」

『…二人共、どうしたの?このエリアに来てからずっと様子がおかしいわ』

「…プレリー!ライブメタルの反応はどこ!?早く教えて!」

『エール!!』

焦っている様子のエールにジルウェの良く通る声が通信機越しに響いて二人をハッとさせた。

『落ち着けエール、ヴァン…気持ちは分かるが、焦っては駄目だ。』

「「………」」

『あの、どういうことなんですか?』

ジルウェの言葉に沈黙する二人。

プレリーは気になっていた疑問をジルウェに尋ねようとした。

『ここは…』

「いいよ先輩。自分で話す…俺とエールは十年前にここに来たことがある。母さん達に連れられて遊びに来てたんだ」

「その時、アタシ達はここでイレギュラーに襲われた…その時…母さんとおばさんとはぐれたアタシ達を助けてくれたのがジルウェなんだ」

二人の過去を改めて知って息を飲むプレリー。

『…それじゃあ…十年前のイレギュラー襲撃って…まさかここで…!』

「ここにいるとあの時の自分を思い出してしまうんだ…。もしかしたら…また俺は何も出来ずに終わってしまうんじゃないかって…でも」

「それ以上にここはアタシ達にとって大事な思い出のある場所なんだよ…だから…誰にも荒らされたくない…そっとしておきたいんだ」

『…そうだったの…ごめんなさい、私…』

何も知らなかったとは言え、二人を辛い場所に行かせたことにプレリーは罪悪感を抱く。

「プレリーは悪くない、俺達も何も言わなかったんだからな」

「アタシ達も母さん達のことを思い出して熱くなってた…ごめんプレリー」

二人がプレリーに何も言わなかったこともあり、知らなかったのは無理もないだろう。

寧ろ熱くなっていたことをエールが謝罪した。

『二人共…今更かもしれないけど、あなた達だけで全部背負おうとしないで、私やジルウェさん、そしてガーディアンのみんながきっと見守ってくれてる。私達みんなでこの国のみんなを守るのよ』

『そうだ、お前達だけで戦っているんじゃない。一緒に戦えなくても、俺はお前達と一緒だ。忘れるなよ』

「「…ありがとう…プレリー、先輩(ジルウェ)。ミッションを再開する!」」

プレリーとジルウェの言葉に二人の表情に余裕が戻り、ダッシュで駆け抜けた時には既に普段の二人であった。 
 

 
後書き
ジルウェって結構動かしやすい…やはり公式エールのヒロインは伊達ではないということか 

 

第十六話 因縁の存在

 
前書き
ゲームでは意外と印象に残るボスだからなのか漫画版でも意外な活躍をしたフォルスロイド。

モデルPの手裏剣はシールドブーメランのようにしてくれよと思った私でした。 

 
シャッターを開いて潜り抜けた先は大型UFOキャッチャーの中であり、UFOが未だに動いて景品のぬいぐるみやお菓子を穴に落としていた。

「思い出すな、昔…エールが欲しいぬいぐるみが取れないって泣いておばさんに金をねだってたよな」

「ちょっと!何で今になってそんなこと思い出すの!?」

ジルウェとプレリーが聞いていると言うのにそんな幼い頃の黒歴史を暴露するとは。

『それで、お目当てのぬいぐるみは取れたの?』

「プ、プレリー!そんなこと聞かないで!!」

「十回くらいやって駄目だった。俺が景品のお菓子を取る時に偶然…本当に偶然引っ掛かったから、それをエールにやったんだ」

『ふふ、そうだったの』

小さいエールが欲しいぬいぐるみを取れずに泣いて、それを偶然手に入れたヴァンがそれをエールに渡す姿を想像して笑ってしまった。

『ああ、お前を引き取る時にお前が暮らしていた家の物を回収する時に部屋に妙に他と扱いが違うぬいぐるみがあったけどそれだったのか』

ジルウェもエールの部屋に現在でも飾られている他のぬいぐるみの中でも一際古いぬいぐるみを思い出した。

「~~~っ!もう!ほら、ヴァン、行くよ!!」

「ん?何怒ってんだよエール?」

「あんたが怒らせるからでしょ!?」

「怒ると腹が減るぞ?飴玉でも食って落ち着けよ」

景品のキャンディをヴァンは一つ口に含んで、もう一つ差し出すとエールの頬が更に膨らんだ。

「な、何いきなりキャンディって!?子供扱いしないでよ!」

「要らないのか?じゃあ俺が食う…あ」

「…要らないなんて言ってない」

ヴァンからキャンディを奪い取るとそのまま口に放り込む。

ムスッとした表情でキャンディを口の中で転がしていたが、自然とキャンディの甘さで緩んでいく。

その幼なじみ特有の微笑ましさにプレリーとジルウェの小さい笑い声が聞こえた。

すると、ヴァンの足元にある一つのぬいぐるみにエールが気付いた。

「あ、それって妖精シリーズのパッシィじゃない?」

「パッシィ?」

『何ですって!?』

「「!?」」

『し、司令官…?』

プレリーの声に二人とジルウェは驚く。

『ね、ねえ…ヴァン…パッシィのぬいぐるみ…回収してくれない?』

「お前…まだ溜め込むつもりなのか?」

「流石にあれ以上は…」

『お願い!パッシィは思い出のサイバーエルフなの!そしてパッシィで妖精シリーズはコンプリート出来るの!だからお願い!!運び屋への依頼として出すから…お願い…』

「う……了解」

「俺、もう運び屋じゃないんだけどな…まあいいか、一匹だけなら…」

パッシィのぬいぐるみを回収して先に向かう。

ちゃっかりと景品のお菓子も回収しながらだが。

「(あれ、妖精シリーズって確か限定品や季節限定品を合わせて何百種類ものぬいぐるみがあったような…あれでコンプリートってことはプレリーの部屋があんな状態だったのも納得かも)」

途中で妖精シリーズの種類を思い出してエールは何故プレリーの部屋がぬいぐるみで埋め尽くされていたのかをエールは理解した。

途中のメカニロイドをヴァンがアルティメットセイバーを構えて突撃して両断、後方からエールがZXバスターでヴァンが仕留め損ねた敵を狙撃しながら突き進む。

邪魔なメットールはダッシュジャンプで飛び越えながら先に進み、梯子を駆け登って上へ行くと更にメカニロイドが道を阻む。

「邪魔をするなっ!!」

ヴァンがチャージを終えたバスターショットを構えてチャージバスターを発射する。

「ダブルロックオン!モデルHX!!」

モデルHXのエアダッシュで攻撃をかわしながらダブルセイバーでヴァンが仕留め損ねたメカニロイドを真っ二つにする。

そして奥の梯子を降りると、凄まじい突風が吹き荒れる。

「凄い風…!」

「モデルHXのエアダッシュやモデルOのダブルジャンプでも届かないから…あの気球を使って向こうまで行くぞ!」

「分かった!行こう!!」

エアダッシュとダブルジャンプで気球を乗り継いでいき、奥のシャッターを潜ると、子供の遊具が散乱している場所に一体のイレギュラーがいた。

「ヒャハッ!良くここまで来たな。歓迎してやるぜガキ共、これから思い出の場所で無敵の力を手に入れる手伝いをしてくれんだからなぁ。ヒャハッ!最高だぜ!」

「…思い出の場所?」

イレギュラーの言葉に引っ掛かる物があったが、更に気になったのはこのエリアがあのイレギュラーにとって特別な場所らしいことが気になったヴァン。

イレギュラーは上機嫌なのかあっさりと白状した。

「十年前、イレギュラーだった俺はここで大暴れして、セルパン様の目に留まったのさ。今じゃセルパン・カンパニーの幹部の一人ときた!サイコーだぜ!ヒャッハァ!」

「何ですって…十年前に…?」

それを聞いたエールの表情が怒りで染まる。

「じゃあ、あんたなの…?ここでみんなを…母さんやおばさんを…許さない…っ!!」

「…良いことを聞いたよ…俺達はここで…十年前の借りを返せるってわけだ!」

ヴァンも激しい怒りを抱きながらイレギュラーを睨む。

二人は、一気にイレギュラーを仕留めようとしてイレギュラーに飛び掛かるが…。

「ヒャハ?俺とやろうってのか?面白え!フォルスロイドに生まれ変わったパープリル様の力、見せてやるぜ!ところで俺ばかり見ていて良いのかぁ?足元が危ねえぜ?」

「「!?」」

パープリルの言葉と同時に二人の足が地面から飛び出した手に掴まれ、二人は勢い良く転倒した。

「あら、ごめんなさい?でも足元には気を付けないと駄目よ?」

飛び出してきたマンドラゴにヴァンとエールは何とか手を払って距離を取るが、パープリルとマンドラゴに挟み撃ちにされたような状況になってしまう。

「お前…復活したイレギュラーだな?」

「ええ、その通りよ。私はノービル・マンドラゴ。破壊神の器であるあなたを迎えに来たわ。さあ、私達と共に行きましょう。そして破壊神となって世界に絶望と恐怖に満ちた理想郷を創りあげましょう?」

ヴァンに手を差し出すマンドラゴにエールはZXセイバーを構えて突撃した。

「どいつも…こいつも…っ!アタシ達の思い出の場所を汚すなぁ!!」

「ふふ、可愛い子ね」

床に穴を開けて潜るマンドラゴ。

エールが振るったセイバーは容易くかわされてしまう。

「!?どこから…」

「そんなあなたにはこれをご馳走するわ」

「きゃあっ!?」

蜜を飛ばしてエールに付着させると次の瞬間、虫型のメカニロイドが大量にエールに迫る。

「何!?」

「ヒャハッ!こりゃ凄え」

ヴァンは何が起きているのか分からず目を見開き、パープリルは感心したように呟く。

「…っ、こんのぉっ!!」

メカニロイドとは言えあまりにも大量の虫に一瞬生理的嫌悪を抱いて顔が恐怖で引き攣るが、バスターを構えてチャージバスターで一掃する。

「エール!そいつの蜜にメカニロイドが引き寄せられてるんだ!早くそれを振り払え!!」

「余所見たぁ、余裕だなぁっ!!」

「チッ!!」

こちらに爆弾を放り投げるパープリル。

それをかわしながらバスターを向けてチャージバスターを放つが、見た目によらず身軽でトリッキーな動きでヴァンの攻撃をかわしていく。

「よくもこんな物をかけてくれたわね!許さないんだから!!ダブルロックオン!モデルFX!!」

モデルFXに変身して蜜を蒸発させるとマンドラゴにナックルバスターを構えてショットを連射する。

マンドラゴは何度も地中に逃げてショットをかわしていき、飛び出した瞬間に高速回転しながら突進してきた。

「…来なさい!真っ向から受け止めてやるわ!!モデルF!フルパワーよ!!」

「おう!」

両手を前に突き出して突進を真っ向から受け止める。

いくらか後退したものの、マンドラゴの動きを止めることに成功した。

「メガトン…クラッシュ!!」

チャージを終えたナックルバスターによるパンチを勢い良く突き出してマンドラゴを吹き飛ばす。

「きゃあっ!?」

吹き飛ばされたマンドラゴは勢い良く壁に叩き付けられた。

「そらあっ!!」

パープリルはヴァンに勢い良く砂を投げつける。

たかが砂だが、フォルスロイドのパワーで投げつけられた砂はまるで散弾のような威力を持っている。

まともに受ければダメージは免れないが、ヴァンはダブルジャンプでパープリルの真上を取り、セイバーによる回転斬りを繰り出してパープリルの体を削った。

「ヒャハァッ!やってくれるじゃねえか!!」

体を変形させて巨大円盤となって縦横無尽に動き回る。

「っ……」

ヴァンはダッシュジャンプとダブルジャンプを上手く使ってパープリルの突進をかわしていく。

ダメージから復帰したマンドラゴも種を植え付けてハエトリソウとテッポウユリを咲かせる。

ハエトリソウがエールの動きを制限し、テッポウユリが弾を発射して狙撃してくる。

「てえいっ!!」

モデルHXに変身してダブルセイバーでそれらを破壊しながらマンドラゴとの距離を詰めようとするが、マンドラゴは再び高速回転しながら浮上してエールの真上を取り、そのまま落下してきた。

「っ!!」

それをかわそうとしたが、遅く成長したハエトリソウがエールの足を拘束し、動きを封じた。

「残念でした」

「ああっ!?」

高速回転中のマンドラゴの急降下攻撃をまともに受けたエールは勢い良く吹き飛ばされて地面に叩き付けられる。

「エール!!」

「どこ見てやがんだぁ!?」

エールに気を取られたヴァンにパープリルの爆弾が直撃する。

「ぐあっ!!」

吹き飛ばされはしなかったが、ダメージを受けるヴァン。

パープリルとマンドラゴはどちらもトリッキーな動きで相手を撹乱しながら戦うことを得意とするためか、今までのフォルスロイドや復活レプリロイドと比べてどこかやりにくかった。

「(くそ、今までは正面から挑んでくる奴ばかりだったけど、こいつらは戦いにくいな…でも、負けるわけにはいかない!!)」

家族の仇を討つために、そしてこれ以上自分達のような人を出さないためにも。

ヴァンはセイバーのチャージをしながらパープリルに突撃した。

「ヒャハハハッ!勝てねえからって自棄になりやがったかぁ!?」

パープリルはヴァンを嘲笑いながら爆弾と砂を連続で投げつける。

爆弾の直撃を受けてアーマーの一部が破損し、砂を浴びて更に傷が広がるが、ヴァンはダッシュでパープリルとの距離を詰めた。

「ヒャハッ!?」

「うおおおおおおっ!!!」

捨て身のチャージセイバーがパープリルに炸裂した。

そして一方のエールも痛みに体を震わせながら立ち上がる。

「負ける…もんか…っ!ここはアタシ達の思い出の場所…あんた達なんかに荒らされてたまるもんか!モデルL!力を貸して!!」

「ええ、勿論よ。強烈なのをお見舞いしてやるわ」

「ダブルロックオン!モデルLX!!オーバードライブ!!」

モデルLXに変身するのと同時にオーバードライブを発動し、専用武器のハルバードを一閃すると、冷気が迸った。

「あらあら…まるで着せ替え人形だわ…もう一度あなたにご馳走してあげるわ」

蜜を飛ばそうとしてきたが、次の瞬間に蜜が凍り付いた。

「!?」

「私の氷の力を舐めてもらっちゃ困るわ。あなたの汚物を凍らせるなんてわけないわ」

モデルLの不敵な声が響き、ダッシュで距離を詰めたエールは動揺しているマンドラゴの胸をハルバードで貫いた。

「がは…っ!?」

「これで終わりよ…!!」

オーバードライブで氷属性が付加されたハルバードの冷気によってマンドラゴの体は瞬く間に凍結し、エールはモデルZXに変身するとチャージを終えたバスターを向けた。

「いっけええええっ!!」

チャージバスターがマンドラゴの氷像に直撃し、木っ端微塵にする。

一方のヴァンも捨て身のチャージセイバーを受けて動きが鈍っているパープリルに怒濤の攻めを喰らわせていた。

「はあっ!!せいっ!はっ!とうっ!!」

セイバーによる空中での回転斬りから三連擊をまともに受けたパープリルは膝をついた。

「ヒャハハッ…やるじゃねえか…流石、破壊神の器と言われてるだけのこたぁあるな…」

「終わりだパープリル」

セイバーを振り下ろそうとしたヴァンだが、パープリルは目を発光させると、天井が開いて一つの檻が降りてきた。

その檻の中にいる人物に二人は驚愕することになる。 
 

 
後書き
次回は…破壊神の力の片鱗 

 

第十七話 破壊神の力

 
前書き
モデルOXとの違いを出すためにオーバードライブ中でもチャージセイバーが使えますよ。

寧ろOXよりO単体の方が強いです。 

 
マンドラゴを破壊してパープリルを追い詰めた二人だが、目の前に現れた檻に閉じ込められたシュウの姿に二人は動きを止めた。

「シュウ!?」

「何でシュウが!?」

ヴァンとエールは何故シュウが囚われているのか分からず、困惑してしまう。

「ヒャハッ!人質さ。おい、女のガキ。こいつの命が惜しかったらてめえの持ってるライブメタル…モデルH、L、Fを俺様に寄越しな。そうすりゃ助けてやるぜ?」

「何!?」

「そんな…」

パープリルの要求にヴァンとエールが目を見開く。

「外道が…!」

「汚ぇ真似しやがって…!」

「最低ね…」

要求された三人もパープリルの外道なやり方に吐き捨てる。

「嫌なら良いんだぜ?こいつがどうなっても良いならよぉ!!」

爆弾を取り出し、シュウの檻に投げつけようとするパープリル。

「ひいっ!!」

「や、止めて!!」

いくら喧嘩してても付き合いが長い知り合いを失いたくはないエール。

しかしライブメタルはプレリーの“お姉ちゃん”が作った大切な物なのだ。

苦悩するエールにモデルH達は前に出た。

「……俺達がお前の手に渡れば、その者の命は保証するのだな?」

「ヒャハッ!約束してやるぜ!ライブメタルさえ手に入りゃこんなガキに用なんかねえよ!!」

「………良いだろう」

「モデルH!?」

シュウとの交換に応じるモデルHにエールは驚く。

「確かに俺様達はあのガキとは何の関わりもねえが…」

「人間を…自分達が信じる正義のために戦い続けてきたオリジナルから受け継いだ誇りって物があるのよ」

「……ごめんっ!!」

エールが謝罪すると、モデルH達はパープリルの手に渡った。

「ヒャハハハッ!これさえ手に入りゃあ、このガキは用済みだぜ!!」

「うわあっ!?」

「シュウ!!」

檻ごと蹴り飛ばされたシュウをヴァンが受け止めた。

「ヴァン…」

「大丈夫か?」

「あ、ああ…またお前らに助けられちまったな…」

「ヒャハハハハッ!!お優しいこったなぁ!だがよ、てめえらには実験に付き合ってもらうぜぇ?」

「実験…?」

ヴァンと共にシュウを背後に庇っているエールがパープリルの言葉に表情を顰めた。

「こいつらを使った同時ロックオンだぁ!!」

「「ぐあああああっ!!」」

「きゃあああああっ!!」

無理やり力を引き出されているモデルH達の悲鳴にヴァンとエールの目が見開かれる。

「モデルH!モデルL!モデルF!!」

「くそおっ!!」

チャージを終えたバスターショットを構えてヴァンはチャージバスターを放つが、パープリルはそれを凄まじいスピードでかわした。

「何!?」

「ヒャハハッ!凄え…これがモデルHのスピードかよ!」

パープリルのボディは元々持っていたライブメタルを含めて合計四つのライブメタルのエネルギーで金色に染まっていた。

「ぐうう…エール!ヴァン!俺達に構うな!早くこいつを倒せ!!」

「で、でも…こいつを攻撃したらモデルH達まで…!!」

「遠慮は…いらん…っ…こいつを生かしておけば…どういうことになるかは…お前達が誰よりも知っているはずだ!!」

「そうだぜ…こんなクソ野郎に取り込まれたままでいるくらいなら…いっそぶっ飛ばされた方がマシってもんだぜ…っ!!」

「早くこいつを…倒しなさい…っ!私達の意志が…残っているうちにっ!!」

「次はモデルFのパワーを見せてやるぜぇっ!!」

「まずい!!」

チャージを終えたZXバスターを構えてエールはチャージバスターで迎え撃つ。

しかし炎を纏わせた拳がチャージバスターをあっさりと掻き消してしまった。

そしてパープリルの拳はエールの体に叩き込まれた。

「ごふっ!?」

あまりの威力にエールは口から血を吐きながら吹き飛ばされる。

「エール!!よくも!!」

ヴァンはアルティメットセイバーを抜いてパープリルに斬り掛かるが、パープリルはモデルHのスピードでヴァンの攻撃を容易くかわしてしまう。

「次はモデルLの力を見せてやるぜぇっ!!」

「使う前に叩き斬ってやる!!」

チャージを終えたセイバーでチャージセイバーを繰り出すが、パープリルのボディの表面に強固な氷の膜が出来ており、モデルOのセイバーですら突破出来ない程の防御力であった。

「凄え…凄えぞぉっ!!今の俺様は無敵だーーーっ!!」

モデルHのスピードとモデルFのパワー、そしてモデルLの防御力を得たパープリルの猛攻に二人はまともな抵抗も出来ずに吹き飛ばされるだけ。

「がは…っ!」

「うう…くっそぉ…」

倒れ伏しているエールはモデルLの力をまともに受けたのか全身が凍り付いていた。

ヴァンもモデルFの炎に全身を焼かれて相当のダメージを負っている。

「っ………」

エールは悔しげに涙を流している。

このままでは確実に負け、パープリルは人々を襲って自分達のような存在を増やし続ける。

倒さねばならないのに全く敵わない自分が悔しくて仕方がない。

「…………何が………だ……」

「あん?」

ヴァンの呟きが聞こえなかったのか、パープリルの視線が向けられる。

「(何が、破壊神のライブメタルだ…何が…世界を滅ぼしかけただ…こんな奴に…手も足も出ないなんて…力が…欲しい……母さん達を…殺した…こいつだけは…)」

「はっ、動けねえのかよ。それにしてもこのパワーは凄えぜ、まだまだ試し足りねえし、これから街で一暴れするか?」

ヴァンを嘲笑しながらパープリルは自らを破滅へと導く言葉を口にした。

「(ああ…こいつを………)」

“全てをゼロにするために”

“全て破壊し、無へと帰せ”

“力を求めよ”

“我は…”

頭の中に響くモデルOの声が鮮明になっていく。

体はどんどん熱くなっていくのに寧ろ心地がいい。

体の内側から力が溢れて来るようだ。

もう、抑えられない。

「(粉々にしてやりたい)」

“我は救世主(メシア)なり”

その言葉を最後にオーラを纏ったヴァンはゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと目を開いた。

瞳の色は、いつもの翡翠ではなく鮮血を思わせる紅であった。

「ヒャハッ!まだ立てるのかよ!面白ぇ、もっとこのパワーを試させてくれよぉっ!!」

炎を纏わせた拳で殴り掛かろうとするが、掌に刻まれたΩの文字が煌めき、手にエネルギーを纏わせるとそれを容易く受け止めた。

「は…?」

「消えて無くなれ」

呆然とするパープリルに言い放たれた言葉はヴァンのものとはとても思えない冷たさだった。

ヴァンの振るったセイバーがパープリルの両腕をあっさりと斬り落とした。

モデルLの氷の膜でパープリルのボディの防御力が格段に上がっているにも関わらずだ。

「ギャハアアアアアッ!!!」

「ふん」

あまりの激痛によるパープリルの悲鳴に何の感慨も抱かずにヴァンはセイバーを振るった。

右足

左足

右肩

左肩

ヴァンがセイバーを振るうごとにパープリルのパーツがあっさりと宙を舞う。

「嘘…だろ…俺様は…四つのライブメタルを使ってん…だぞ…?たった一つのライブメタルのロックマンのガキに…最強無敵の俺様がぁ…」

「うるさい」

チャージを終えたバスターを倒れ伏すパープリルに向け、チャージバスターで胴体を吹き飛ばすと頭部だけが転がる。

そして残った頭部をゆっくりとした動作で踏みつけると、少しずつ力を入れていく。

ミシミシと嫌な音が鳴り、パープリルの頭部が変形していく。

「ち…畜生…!俺は幹部なんだぞ…!強いんだぞ…!強い…はずだろ……!?」

次の瞬間、パープリルの頭部は踏み潰された。

「ひ、ひいっ!?」

パープリルの凄惨な最期に一部始終を見ていたシュウは腰を抜かして震えていた。

「ヴァン…?」

「は…ははは…」

あまりにも惨いパープリルの最期、そしてそれを与えたヴァンに呆然としながらエールは立ち上がった。

ヴァンは自分の両手を見つめながら凶悪な笑みを浮かべた。

「凄い…力が溢れてくる…!今の俺ならどんなイレギュラーでも倒せる!!何もかも壊せる…全てをゼロに…っ!!」

「何言ってるのヴァン!?何か…変だよ!?正気に戻ってよ!!」

エールがヴァンに触れながら正気に戻そうと呼び掛けるが、振り返ったヴァンの表情は険しく、とても幼なじみの彼女に向けるような物ではなかった。

「うるさい…っ…雑魚が俺に指図するな!!」

「…っ…ヴァン!!!」

ヴァンの言葉にショックを受けたが、明らかに正気ではないヴァンをこのままには出来ず、先程よりも声を大きくして名前を呼んだ。

「………え?」

瞳の色が紅から翡翠に戻り、自分の失言に気付いたヴァンは慌ててエールに謝罪する。

「エール…ごめん、悪かった…そんなつもりじゃ…」

「…いいよ、アタシが弱いのは事実だし…それよりもあの力は何なの?オーバードライブみたいだけど…」

いくらライブメタルのリミッターを外したからとは言え、あそこまで豹変するものだろうか?

「………分からない…頭の中でモデルOの声がはっきりと聞こえた瞬間に力が溢れ出してきて……でも、こんな状況だし使える物は使おうと思う」

「ヴァン、お願い…アタシ、もっと強くなるから…だからあの力は使わないで…凄く嫌な予感がするの…ヴァンが、アタシの知ってるヴァンじゃなくなりそうで…」

「…………分かったよ、でも本当にやばいと感じたらこの力を使うぞ」

「…………」

不安そうにするエールにモデルXが助け船を出してくれた。

「大丈夫だよエール。僕がヴァンのオーバードライブの制御を手伝うよ、出力は大幅に下がるけれどこれでヴァンも安心して使えるはずさ」

「……サンキュー、モデルX…そうだ、モデルH達は!?」

二人はパープリルに取り込まれたモデルH達を探すと、残骸から罅だらけの状態となったモデルH達を発見した。

「大丈夫!?酷い…」

「先程の無理なロックオンのせいだ。」

あまりにも酷い状態にエールは絶句するが、聞き慣れない声に気付いて振り返ると、パープリルの腕から一つのライブメタルが飛び出した。

「あなたは?」

「拙者は影のライブメタル・モデルP。ようやく自由になれたが、モデルH達は力を無理に引き出されたせいでこのような状態となってしまった…意識はあるかモデルH?モデルF?モデルLよ?」

モデルPが声をかけると、何とか意識が覚醒したモデルHが答えた。

「…っ…モデル…P…か…あのロックオンで相当な負荷がかかったようだ。変身なら何とかなるが、オーバードライブとチャージが使えん…」

「俺様もだ…」

「私もよ…女の扱いを戦闘馬鹿以上に理解してないわね……あの猿…っ!」

モデルFもモデルLも意識はハッキリとしているようで、何とか声を出してくれた。

それに安堵してヴァンはシュウの方を振り返った。

「ひ…っ…」

パープリルの最期を見たシュウの表情は恐怖で歪んでいた。

「おい、シュウ…お前も大丈…」

「く、来るな!化け物!!」

「…………」

その言葉を聞いたヴァンの言葉は止まってしまい、体も止まってしまった。

「あ……」

「シュウ…っ!あんたねぇ!!」

「良いんだよ別に…俺は先にトランスサーバーの所に戻ってる…待ってるからシュウを街まで送ってやってくれエール…」

ヴァンの表情を見て自分の暴言に気付いたシュウ。

暴言を吐いたことに怒って掴み掛かろうとしたエールを抑えると出口のシャッターではなく、この部屋の入り口となるシャッターへ向かった。

そして二人は別行動を取り、ヴァンは先にトランスサーバーへ行き、エールはシュウを街に送った。

「あ、あのさ…エール…」

「ガーディアンに入るってのはああいうことだよ。とんでもないイレギュラーと戦うこともあるし、下手したら死んじゃうかもしれない…ねえ、シュウ…もう、仕事以外でアタシ達に関わらないで、巻き込まれても知らないから」

それだけ言い残してエールもまたトランスサーバーのある所へと向かったのであった。 

 

第十八話 ベースの防衛

 
前書き
ベースの防衛戦ですが、内容はかなり変わるかと 

 
シュウを街に送り、ガーディアンベースに戻った二人は破損したモデルH達をフルーブに任せて司令室のブリッジに向かった。

ブリッジに入るとモニターで状況を見聞きしていたプレリーとジルウェが痛ましげにヴァンを見ていた。

「ヴァン、エール…お帰りなさい………その、ヴァン…私…何て言えばいいのか…」

「良いんだよ…あの時の俺は…本当に化け物…イレギュラーだった。」

本当に快感だった。

パープリルの体を斬り刻んでいくことに自分は確かな悦びを感じていた。

それは明らかに普通ではない感情であり、あの時の自分はシュウに化け物と言われても仕方がなかった。

「そんなことないっ!あいつ…今回は見逃したけど今度会ったらアタシがボコボコにしてやるんだから…!」

拳を鳴らして憤るエールにヴァンは首を横に振る。

「良いって…寧ろこれで良かったんだ。俺みたいな奴がガーディアンにいることが分かれば、あいつもガーディアンに入りたいなんて思わないだろ」

「ヴァン…お前…」

「ここに帰る前にエールから聞いたんだ。あいつ、ガーディアンに入ろうとしてたんだろ?…これから先…もっと強い敵と戦うことになるから…これで良かったんだ。あいつを死なせないために…」

「そうか…なら、俺が言いたいことは一つだけだ。頑張ったなお前ら」

ヴァンとエールの頭に手を乗せて労いの言葉をかけるジルウェ。

「先輩…」

「ジルウェ…」

「辛かったな…お前らが家族を喪った場所でその仇と向き合わないといけないってのは…こんな時、お前達と一緒に戦えない自分が情けないな」

「そんなことないよジルウェ…アタシが…乗り越えられたのは……ヴァンやプレリー達……ジルウェが…いて…くれたから…だよ…」

「あ、そうだ。プレリー…依頼のぬいぐるみだ。これ以上溜め込むなよ?」

何だかあまり邪魔してはいけないような雰囲気を何となく感じたヴァンはプレリーに依頼のぬいぐるみを渡した。

「……ありがとう…ヴァン、お疲れ様…あなたも辛かったわよね。あの場所であなたのお母さんの仇と向き合わなければならなかったのは…それに彼のことも」

彼らの会話を聞く限り、シュウと言う少年はヴァンがジルウェ・エクスプレスにいた頃からの知り合いらしい。

そんな彼にあのようなことを言われて傷付かないはずがない。

ヴァンは優しい人だからだ。

「良いんだ。もうこれで覚悟は決まったからな」

「え?覚悟って…」

ヴァンの言葉の意味を聞こうとしたプレリーだったが、それを遮るようにガーディアンベースが揺れた。

「!?」

「きゃあっ!?」

突然のことにヴァンは驚き、エールは体勢を崩しそうになったが、何とか堪えた。

「オペレーター、報告を!」

「レーダーにセルパン・カンパニーの飛行艇の反応があります!恐らくそれによる攻撃です!!」

プレリーの指示にオペレーターはレーダーがキャッチした飛行艇の反応を言うと、ジルウェが表情を歪めた。

「セルパンの奴…ガーディアンベースを沈めるつもりだな…自分がいた組織を躊躇わずに攻撃するなんてな」

「丁度良いじゃないか先輩…セルパン・カンパニー自慢の飛行艇を一隻も残さず叩き墜としてやる!!」

甲板に出て迎え撃とうとするヴァン。

それを見たエールは慌ててフルーブに通信を入れる。

「ヴァン!待って!フルーブ、モデルH達は!?」

『無理です!破損が酷すぎて本来の力が出せません!!』

「…仕方ない…残ったライブメタルで切り抜けるしか…」

モデルX、モデルZを握り締め、唯一無傷のモデルPを見遣る。

「モデルP…アタシに力を貸してくれないかな?ベースのみんなを守るために…」

「拙者もまたお主と同じく弱き者のための刃…今一度(ひとたび)、弱き者の刃となろう」

「ありがとうモデルP!!ダブルロックオン!モデルPX!!」

新たなるダブルロックオンの変身、モデルPXとなったエールもヴァンを追い掛けて甲板に飛び出した。

「ヴァン…エール…無事に帰ってこいよ…」

「お姉ちゃん…お兄ちゃん…二人を守って…」

残されたジルウェとプレリーは戦いに向かったヴァンとエールの無事を祈った。

甲板に出た二人はセルパン・カンパニーの飛行艇に攻撃を仕掛けていた。

正確にはヴァンが飛行艇をバスターショットで狙撃し、エールがチャージ攻撃の十字手裏剣からのクナイの連続投擲で敵の飛行艇から射出されるコンテナを破壊しながらだ。

モデルPXのチャージ攻撃である十字手裏剣はモデルZXの一段階チャージと同じ時間であり、セミチャージバスターよりも高威力なので本来ならコンテナのような物の破壊に適したモデルFが使えないが、これならモデルZXよりも早く破壊出来る。

時には十字手裏剣を展開したまま回転させて簡易的な盾にすることで敵からの攻撃を防御する。

「墜ちろ!!」

ヴァンが放ったチャージバスターが飛行艇を貫き、残りの飛行艇も残り一隻となった時、複数のコンテナが射出され、エールは即座に破壊しようとするが、間に合わずにメカニロイドの出撃を許してしまう。

「「っ!?」」

コンテナから飛び出したイレギュラーの中には大鎌を担いだ死神のようなレプリロイドのプロメテと、杖を持った神官のようなレプリロイドのパンドラ。

エリアDで見た二人はメカニロイドを引き連れてベース内に侵入した。

「…あいつらは…あの時の……!」

エールが呟いた直後にプレリーからの通信が入った。

『敵の部隊がガーディアンベースに侵入してきたわ!一番下にある動力部に向かってる!中に戻って動力部を守って!』

「くっ!やらせるか!」

ヴァンとエールはベース内に戻るが、メカニロイドがベース内を徘徊しており、このままでは非戦闘員が巻き込まれてしまう。

「エール、動力部は俺が何とかするからこいつらを頼む」

「で、でも…」

「心配するな、死ぬつもりなんかない…アースクラッシュ!!」

エールにメカニロイドを任せてヴァンは近道をしようと、拳にエネルギーを纏わせて床を殴り付けて穴を開けた。

「(後でプレリーに謝るか)」

アースクラッシュで作った穴に飛び込んで一気に動力部に向かう。

一方、動力部ではプレリーとジルウェがプロメテとパンドラから動力部を守ろうとしたのだが、ジルウェはプロメテに一蹴され、プレリーの喉元に鎌の刃が翳されていた。

「っ…」

「赤のロックマン…確かジルウェと言われていたな?あのエールとか言う小娘がモデルZを持っていたと言うことは、お前…戦える体ではないようだな?戦えないロックマンなど必要ない。こいつを始末したら次はお前だ」

「ぐっ…止め…ろ…」

「弱い奴の言葉など虚しいだけだ」

ジルウェの言葉に耳を貸さず、プロメテはプレリーの首を斬り落とそうとした直前に天井が吹き飛んだ。

「その手を放せ」

天井を破壊して現れたヴァンは躊躇なくプロメテの脳天にアルティメットセイバーの切っ先を突き刺そうとしたが、プロメテは咄嗟に鎌で受け止めた。

そしてヴァンは距離を取るついでにプレリーとジルウェを抱えて大きくバックステップする。

「大丈夫か二人共?」

「ヴァン…!」

「すまない、助かった」

二人の無事を確認したヴァンはプロメテとパンドラに鋭い視線を向ける。

プロメテは不敵に笑い、パンドラは無表情のままだ。

「…来た…あの時の…少年……想定外のライブメタル……モデルOの…真紅のロックマン」

「ようやく会えたな、小僧。確か…ヴァンと呼ばれていたな?俺達はお前と会えるのを楽しみにしていた。」

「イレギュラーにそう思われても嬉しくもなんともないな」

「フフフ…イレギュラーか…だが、お前もまたイレギュラーな存在だぞ?本来このゲームにモデルOと呼ばれるライブメタルは存在しない。そのモデルOで変身したお前は想定外のロックマン…そしてお前を中心に次々と想定外のことが起きている。数百年前に滅んだ存在が蘇り、お前を求めて猛威を振るっている。これはこのロックマン同士が殺し合い、王の座を巡るゲームを仕組んだあの男すら予想していなかったことだ。」

「………つまり、セルパンの他にも倒さないとならない奴がいるってことか…そのゲームを仕組んだ奴は必ず見つけてやる…!その前にお前達だ…っ!!」

セルパンの他にも倒さないとならない存在がいることを知ったヴァンはまずは目の前の敵に集中する。

「良い目だ…セルパンにはガーディアンを潰すように言われたが……まあいいだろう。お前の力を見せてもらうぞ…古の戦争で破壊神と恐れられた悪魔のレプリロイドの力をな」

「……プロメテ……ずるい……」

「何、楽しみは残しておいてやる。モデルOのオリジナルの破壊神の肩書きが偽りでなければの話だがな」

「(こいつらもモデルOのことを知っている…モデルOのオリジナルのこと調べたのか?ガーディアンベース以外で…?)」

つまり“あの男”とやらは大昔の戦争の歴史を知っていることになる。

プロメテが鎌を構えたことでヴァンもセイバーを構えた。

「ヴァン…」

「プレリー、先輩を連れて下がってろ…こいつらは…イレギュラーは全て倒す………何があってもだ」

その言葉に強い決意を感じたプレリーは妙な胸騒ぎを覚えたが、このままいても邪魔になるだけなので動力部を出た。

シャッターが閉じた瞬間、ヴァンとプロメテのセイバーと鎌の刃が激突した。

力は拮抗、ヴァンは拳にエネルギーを纏わせたオメガナックルでの一撃をプロメテに叩き込もうとするが、プロメテは不敵に笑うとワープした。

「こっちだっ!」

拳が空振りし、プロメテはヴァンの真上を取って鎌を構えながら急降下した。

「当たるかっ!」

即座にヴァンはダッシュでかわし、バスターを構えてチャージバスターを発射する。

「ぬんっ!!」

プロメテは振り返り様に鎌で薙ぎ払うと、そのままヴァンに斬り掛かるが、ダブルジャンプで斬擊と衝撃波をかわす。

「はあああああっ!!」

「せぇやああああっ!!」

セイバーによる回転斬りをプロメテに繰り出しながら急降下するヴァンに対して、プロメテも鎌を高速で回転させながら上昇する。

互いの刃が何度も激突し、このままでは埒が明かないと判断したヴァンは回転斬りを中断して殴り掛かり、それをプロメテは鎌の柄で受け止めた。

「くそっ!!」

プロメテを強引に弾き飛ばし、その勢いを利用して距離を取り、チャージを終えたバスターを構えてチャージバスターを放った。

「焼き尽くせっ!!」

それをプロメテはワープで回避、再びヴァンの真上を取ると、髑髏を思わせる紫色の炎を四発発射した。

髑髏の炎からヴァンに向かって火球が放たれ、最初はかわせたが、回避後の隙を突いてきたために数発喰らってしまう。

それを見たプロメテは笑みを浮かべるが、次の瞬間のヴァンの変化に僅かだけ瞠目した。

火球を受けたアーマーの損傷が瞬く間に直っている。

いや、直っていることはいい。

ロックマンのアーマーには自己修復機能があるのだから直るのは当然なのだが、ヴァンの場合はあまりにも速すぎるのだ。

そしてその驚きは隙となってヴァンのセイバーによる三連擊を受けてしまう。

「ぐっ!!」

アーマーが裂傷を負うが、先程のヴァンと同じスピードで修復されていく。

「うおおおおっ!!」

至近距離でチャージバスターを放つヴァンに、プロメテはジャンプで回避するとヴァンに向かっていく。

「(なるほど、こいつ…そういうことか)」

ヴァンの状態を理解したプロメテは笑みを深めてヴァンのセイバーを防いでいく。

「オーバードライブ!ダブルチャージバスターを喰らえ!!」

バックステップで距離を取ってオーバードライブを発動し、この状態時のみ使えるダブルチャージバスターでプロメテを攻撃する。

「ふんっ!せやあっ!!」

鎌で防ぎ、ヴァンはオーバードライブを発動した状態でプロメテに向かっていく。

「でやああああっ!!!」

再び互いの刃がぶつかり合うが、オーバードライブによる出力上昇のためか、プロメテが力負けする。

「フ…ハハハッ!!俺が力負けするのは一体何百年ぶりだろうなぁ!?もっとだヴァン!もっと力を引き出せ!このゲームを生き残り、あの男が仕組んだゲームの流れを崩していく…それが想定外の存在であるお前の存在理由なんだっ!!」

「俺の生き方は俺が決めるっ!お前が決めることじゃない!!」

ヴァンとプロメテの戦いを見つめていたパンドラは小さく呟いた。

「モデルO…私達と同じ…呪われたロックマン…」

その呟きは戦っているヴァンには聞こえなかった。

「フハハハハッ!もっとだ!もっと…楽しもうじゃないかぁっ!!」

プロメテの髪が硬質化して伸びて床に刺さった次の瞬間に壁と床に鋭利な刃となって生えた。

「ぐっ!?」

刃によって体にいくつもの傷が刻まれたが、ヴァンはダメージに構わずオーバードライブで強化したチャージセイバーをプロメテに叩き込んだ。

「ぐはっ!……フフフッ…!良いぞっ!!破壊神の肩書きは伊達ではなかったらしい」

吹き飛ばされたプロメテは体勢を立て直して鎌をしまった。

「……プロメテ……怪我してる……」

「ふん、こんな傷はすぐに治る…あいつと同じようにな」

「………どういうことだ?」

「お前と同じだ。俺達もライブメタルに呪われたロックマン…お前の同類だ」

同類と呼ばれたことにヴァンの表情が歪んだ。

「お前はライブメタルと一体化しているな?つまり変身の解除も出来ないだろう。そんな状態となったらもう人としての人生を迎えることなど出来ん。モデルOのオリジナルを考えれば…お前の未来は絶望しかない」

「………だからどうした?こんな体になった時点でまともに生きられるなんて思っていない。だったらこの力で全てのイレギュラーを倒してやるだけだ!セルパンも、お前達も、そしてお前達の言うあの男って奴もだ!!」

「フフフ…大きく出たな…認めよう、お前はこのゲームに参加する資格がある。もっと強くなることだ。強くなって…ライブメタルのオリジナルのような存在になればあの男に会えるかもな…」

「……あの少女も…来る…」

「何?」

パンドラの呟きにプロメテが反応すると、モデルZXへと変身したエールが駆け込んできた。

「ヴァン、大丈夫!?」

「…プロメテ…あれは…あの時の…少女……モデルZと…モデルXの……融合体……」

「さしずめ…モデルZX(ゼクス)というところか。複数のライブメタルを組み合わせることで更なる力を引き出す…あの女が作ったライブメタルにそんな機能があったとはな」

プロメテの言葉にプレリーが動力部に駆け込んできた。

「待って!あの女って…!もしかしてお姉ちゃんのことを知ってるの!?」

「…そうか、あの女の仲間ということは…お前、この時代の者じゃないな…?フフフッ…これも因縁という奴か!面白いことになってきた…!おい、小娘」

プロメテは笑みを浮かべながら宙を浮き、エールを見下ろす。

「っ……」

自分を見下ろすプロメテをエールは睨み返した。

「あの男の仕組んだゲームに参加する資格があるかもう一度試してやろうと思ったが…今日はとても気分がいい。見逃してやる…次に会う時まで腕を上げておくことだな。お前も俺達の仲間として認められるように頑張ることだ」

「お前達の仲間に…?何を言ってるの!?」

エールが叫ぶが、プロメテは気にせずにヴァンとエールに向かって口を開いた。

「もっと強くなれ、そして俺達を追ってこい…モデルVがお前達を待っているぞ…!ハァーッハッハッハッ!!」

高笑いしながらプロメテはパンドラと共にガーディアンベースから去っていった。

『プレリー様!敵の飛行艇が離れていきます!』

「…敵は撤退しました、被害状況の確認をして下さい。それと…怪我人の手当てを優先してあげて」

『了解しました』

「…二人共…司令室に戻りましょう…」

オペレーターとの通信を終えたプレリーはヴァンとエールにブリッジに向かうように促し、二人はブリッジに向かうのであった。 

 

設定 序盤~中盤まで

 
前書き
作者のオリジナルが混じってます。 

 
“キャラクターの設定集”


ヴァン


この小説の主人公の一人。

本来ならばエールと同じくモデルXの適合者となるはずが、運命の悪戯か運命の日の一年前にイレギュラーに襲われて崖から落下し、モデルOが安置されていた遺跡に落ちてしまい、気絶しているところを狙われて寄生されてしまう。

そのため、モデルXのロックマンではなくモデルOのロックマンとなってしまい、変身の解除が出来ない上に常に襲う破壊衝動からエール達を守るために一年間行方を眩ましていた。

本編前や序盤からエール達を助けていたが、エリアEの発電所で再会、共闘後に仲間に加わる。

本来の適合ライブメタルのモデルXの力によってモデルOを抑えてもらうことで普通の生活を送れるくらいには落ち着けるようになったが…。

一年間も一人だったためか、性格は原作よりも大人しくなっているが、女の子へのデリカシーのなさや相手へのタメ口は健在らしく、ジルウェの頭を悩ませる。

そして何もしないで後悔するくらいならしてから後悔した方がマシを体現する生き方は行方不明となった後にエールやジルウェにも影響を与えた。

因みにヴァンはバスターよりもセイバーを好んで扱う。

何故ヴァンをモデルOのロックマンにしたかと言うと、ダブル主人公となると、やっぱりヴァンはエールよりも影が薄くなりがちだからです。

片やありきたりな男性主人公、片や初の女性ロックマンで先輩キャラへの恋愛感情など、他にはない印象がありましたから。

ヴァン編はロクゼロの続編としての意味合いが強いので、何ならヴァンをゼロそっくりにして前作のラスボスの一人を主人公にしてエールのインパクトを相殺してしまえと言う考えに至ったわけです。


モデルO


原作をやっている人なら説明不要のロクゼロ3のラスボスのライブメタル。

この作品ではモデルVの欠片にオメガの魂が憑依したことで誕生したライブメタル。

オリジナルがオリジナルなので変身した際の戦闘力は通常状態でも単体ロックオンでありながらダブルロックオンと同等であり、数百年前のエレメントチップにも対応しているため、遠近に秀でた万能型ロックマンだが、ヴァンに取り憑いた直後はまともに戦えなかったらしい。

変身後の見た目はオメガであり、公式でも単体モデルOのロックマンもオメガそっくりである。

因みにオメガの狂暴性を抑えつつ、出来る限りの力を発揮出来るようにしたのがモデルOX(オリジナルで言うとあの拘束具みたいな感じ)と言うこの小説での裏設定がある。

技はオーバードライブなしで使える上にエレメントチップによって技の使い勝手が大幅に向上しているので実質モデルOXよりもモデルO単体の方が強い。


武装


アルティメットセイバー×2


ゼロが使っていたZセイバーをオメガ用に改修した物、オメガのセイバーはX5以降のゼロが復活した際に新調したセイバーだと思われる。

X5以前のセイバーはエックスが所持しており、妖精戦争の際に一時コピーボディで丸腰状態のゼロに返却し、妖精戦争後に再びエックスに託していたと作者は予想している。

セイバーは予備の物があり、予備は基本的にバスターショットのマガジンに使われる。


バスターショット


何故かオメガも持っていたバスター。

ロクゼロ本編でも旧式と記されていたので、少なくとも妖精戦争時代には既に存在していたと思われる。

記憶を失っていたゼロが目覚めた直後で記憶喪失であるにも関わらずあっさりと使いこなしていたため、恐らくロクゼロ次元のゼロは破損したゼロorZバスターの代わりにこれを使用していたと思われる。

セイバーの柄をマガジンとして取り付けることで強力なチャージバスターが撃てるようになるが、セミチャージの時点でモデルXのチャージバスター(ダブルチャージの一発目)と同威力。

年月が年月なので本来なら骨董品扱いされてもおかしくないのだが、ロクゼロから数百年経ったはずのゼクスでも未だに通用する名銃である。

このバスターを作った製作者が気になるところである。


オメガナックル


ゼクスのオメガのイラストにあった武器。

ゼロ4のゼロナックルの同系統の武器であり、“Z”ではなく“Ω”の文字が刻まれている。

ゲームではこれ単体での使用はないが、滅閃光や裂光覇はこれを使って発動すると思われる。

ロックマンXのゼロが落鳳波などを使う際の武器チップ系統をオメガ用に改修した物かは不明。

若しくは岩本ロックマンXのゼロのアースクラッシュのチップのようにゼロナックル自体はコピーボディには用意されなかっただけで本来はゼロの標準装備だったのかもしれない。

因みに武器の奪取はオメガの能力を考えれば不要なので出来ない。


オーバードライブ


パープリル戦後に使用可能となった。

モデルOX…原作と違ってエレメントチップと単体ロックオンの影響でエネルギーに余裕があるためか、モデルOXと違ってチャージセイバーが可能となっている。

衝撃波の攻撃範囲が増大して巨大な破片を吹っ飛ばすこともあり、よりオリジナルに近い戦い方が出来るようになった。

通常時よりも若干攻撃力が上がっている。

エール


もう一人の主人公。

ヴァンの幼なじみであり、モデルXの適合者。

孤児になる前から家族ぐるみの付き合いで十年前のイレギュラー襲撃の際にヴァンと同じく母親を喪っている。

本編前にヴァンが自分を庇って行方不明になったことで自閉気味だったが、ジルウェや運び屋の支えもあって何とか立ち直った。

本編では原作通りにモデルXの適合者となってプレリーを助けるが、原作以上に喪うことへの恐怖を抱いている。

経験不足もあってエリアDでプロメテ達に大敗を喫するが、ヴァンが駆け付けたことで難を逃れる。

そして同じく生き残ったジルウェからモデルZを受け取り、二つのライブメタルを使って戦う唯一のロックマンとなる。

基本のダブルロックオンであるモデルZXは遠近両用の万能型だが、彼女はセイバーよりもバスターの扱いが得意。

セイバーは現在でもジルウェの指導を受けており、ヴァンと比べて踏み込みが浅いらしい。

因みに運命の悪戯による変化によってジルウェが生存しているため、少しずつお洒落にも気を遣っている。


モデルX


エール(ヴァン)の適合ライブメタル。

性格はオリジナルとなったレプリロイド同様に温厚。

オリジナルの部下達を基にしたライブメタル達のロックマンと違って特殊能力や属性攻撃は持たないものの、その分攻撃性能に回されており、強力なチャージバスターを行動が制限されることなく二連続で撃てる上に射程制限もないため、距離を置いての最大火力はライブメタルの中でもかなりの物。

また、ライブメタルの出力を一時的に高めて攻撃力上昇・属性付加を行うオーバードライブ・インヴォーク・システムは一部を除いての各ライブメタルの単体ロックオンでは使えず、モデルXとのダブルロックオンでのみ扱える事から、モデルXのオリジナルの特徴である高い拡張性も引き継いでいる事が伺える。


モデルZ


ジルウェの適合ライブメタル。

遠距離での戦闘を得意とするモデルXの対となるライブメタルでセイバーを使用した近接戦闘が得意とする。

特殊な能力は持たないものの、ロックマンの高い機動力とセイバーの使い勝手の良さもあって多少の距離なら対応出来るために素の能力はライブメタルの中でも高い方。

元々はジルウェが所有していたが、ジルウェが戦えなくなったことでエールが所有することに。

モデルXとのダブルロックオンの相性が抜群なことから、オリジナル達の関係も考えてモデルXとの連携を前提にしていたのかもしれない。

性格は至ってクールだが、オリジナルと同様に少々デリカシーに欠けるところがある。


モデルZX


モデルXとモデルZのダブルロックオンのロックマンにしてエールの基本のモデル。

モデルXの射撃能力とモデルZの近接戦闘能力が融合しており、遠中近のあらゆる距離の敵と状況にも対応出来る。

しかし、あらゆる面でモデルXとモデルZを上回るわけではなく、ダブルチャージの使用不可とチャージセイバーの衝撃波の範囲と威力が下がっている。

モデルX、Zと同様に特殊な移動系能力は使えず、現時点ではオーバードライブも使えないが、モデルXとモデルZのシンクロ率が高いために他のダブルロックオンよりも安定した強さを発揮する。


武装


ZXセイバー×1


モデルZXの近接武器。

基本性能はモデルOのセイバーと同性能だが、チャージセイバーの威力と衝撃波の範囲で負けている。

しかし、刀身の強度は上回っており、ZXバスターへの変形機構を持っているために敵に距離を詰められた際の対応能力も上回っている。


ZXバスター×1


モデルZXの射撃武器。

基本的にモデルOのバスターと同性能だが、チャージバスターの性能は上回っている。

ZXセイバーへの変形機構を持っているので、距離を詰められた際の対応能力は上。


他のライブメタル達


モデルX達同様に基本的に原作寄りだが、完全にオリジナルとなるエックス達を基にした物と言うことになっている。

そのため、モデルX達は当然としてモデルZさえガーディアン初代司令官を自分の創造主くらいにしか認識していない。

しかし、それぞれのモデル達にはオリジナル達から継承した気持ちが幾分かある模様。

関係のイメージとしてはレジスタンスとネオ・アルカディアとの抗争がなかったらのイメージ。


モデルH


風のライブメタル。

モデルXとのダブルロックオンにより、適合者ではないエールでも使えるようになった。

性格はオリジナルと同じでキザだが、激情家な面があったオリジナルと比べて性格は穏やか。

オリジナルが経験した出来事をデータと言う形で継承しているためか、最初はエールの戦う理由に疑問を抱いていたが、エールの覚悟に触れて協力した。


モデルHX


モデルXとモデルHのダブルロックオンのロックマン。

エアダッシュとホバー能力を持つ関係上、地上では他のロックマンの追随を許さない程の機動力を誇り、エールが近接戦闘があまり得意ではなくとも、この機動力を頼りにしているためこの形態をかなりの頻度で使う。


武装


ダブルセイバー×1(セイバー×2)


モデルHXの武器。

基本的に二刀流で使うものの、柄を連結させた状態で使うことも可能(実際にヘリオスが変身した際も連結状態だった)。

セイバーからのソニックブームとチャージ攻撃もかなり追尾性能を持った電撃弾と電磁竜巻と、かなり使い勝手が良いためにゲーム同様にこの作品でも過労死確定。


モデルF


炎のライブメタル。

性格は至って快活で、モデルL曰く戦闘馬鹿。

他のライブメタルが基本的に穏やかな性格であるが、モデルFのみ子供っぽい性格をしている。

モデルZ同様にデリカシーがないためにモデルLと喧嘩になることもしばしば。


モデルFX


モデルXとモデルFのダブルロックオンによるロックマン。

高い火力を持つロックマンでナックルバスターを駆使することで遠近問わずの戦いが出来る。

特筆すべきはナックルバスターのショットの軌道を変更出来る能力であり、射程制限もないために、これによってモデルFXの攻撃の命中率は他のモデルとは比較にならない。

作者はダブコレではプロコンの連射機能もあって使い勝手が良くなっているために中ボスキラーとして活躍させている。


武装


ナックルバスター×2


モデルFXのメリケンサック型のバスター。

バスターではあるものの、相手を殴り付けることも出来るために近接戦闘にも対応出来るが、大型の武装のためにセイバー程の小回りが利かないが、モデルFXにはそれを補って余りあるパワーがあるためにあまり気にはならない。

使わない場合は背中に設置される。


モデルL


氷のライブメタル。

性格はオリジナル同様にクールだが、モデルZ(オリジナル)への執着心を引き継いでいる。

水中での戦闘に特化しており、他のロックマンのほとんどが水の抵抗を受ける中、モデルLのみは水中の影響を全く受けない上に自在に泳げる。

陸上での戦闘力も低くはなく、ハルバードのリーチもあって近~中距離戦では中々の強さを発揮する。


モデルLX


モデルXとモデルLのダブルロックオンのロックマン。

氷の属性を利用しての動きの拘束からの攻撃が中々に強力。

しかし、モデルHXやモデルFXと比べれば変身回数は少なめ。


武装


ハルバード×1


リーチの長い鉾。

HXのセイバーのようにソニックブームも出せないので距離のある敵にはチャージ攻撃を使わなくてはならない。

しかし、柄の前後に刃があるために取り回しが良い。


モデルP


影(闇)のライブメタル。

性格はオリジナル同様に温厚であり、仁義と精神を重んずる高潔な性格。

特殊能力は天井にぶら下がることが出来る鉤爪・ハンギングウェッジと暗闇も視認可能になるナイトスコープ、更に現地の構成、敵の配置が把握出来るレーダーサーチがあり、更に足音がしなくなるなど隠密能力に特化している。


モデルPX


モデルXとモデルPのダブルロックオンのロックマン。

攻撃力は低いがトリッキーな立ち回りが出来る。

特筆すべきはオーバードライブ発動時に使えるシャドウダッシュであり、大抵の攻撃と物質をすり抜けることが出来る。

チャージ攻撃の十字手裏剣は腕に展開したまま高速回転させると敵弾を防ぐ簡易的な盾となる。

一応バリアも使えるが攻撃に転じられる正規ではないこちらの使い方が使われる。


武器


両腕の手甲×2

クナイ、十字手裏剣、鉤爪を出す都合上、他のロックマンの手甲よりも遥かに頑丈であり、攻撃を受け止めることも可能。

ゲームでは使えないがクナイを発射する際に手甲からエネルギー刃が発現されるため、それで格闘戦も可能な模様。


プレリー


ヴァンのヒロイン。

ガーディアンの二代目司令官であり、この作品ではあの子に確定しているので、ロックマン状態の姿がゼロに似ているヴァンに少し複雑な感情を抱きつつ、ヴァン自身を見つめていく。

ヴァンに渡したエレメントチップは形見として遺していたゼロが使用していた物をモデルOに対応するように調整したもの。

因みに無類のぬいぐるみ好きで部屋は一時期ぬいぐるみだらけでフルーブ以外のメンバーは立ち入り禁止であったが、後にぬいぐるみの下敷きになったところをヴァンに救助されて、今では部屋はかなりすっきりしたようである。

ヴァンとサルディーヌのやり取りを見て、昔の自分を思い出していることがある。


ジルウェ


エールのヒロイン(!?)にして元モデルZのロックマンにしてガーディアンのメンバー、そして主人公達の仕事の先輩。

運び屋のジルウェ・エクスプレスの社長であり、ガーディアンのメンバー。

ヴァンとエールの良き先輩だが、貧乏性なところがあり、それが結果としてヴァンの行方不明に繋がった。

モデルZとはガーディアンベースで勤務していた頃からの相棒であり、戦闘経験は豊富。

しかしエリアDでプロメテ達と交戦するが敵わず洗脳されてしまい、終いには変身を解除すると体が消滅するほどのダメージを負うものの、ヴァンが駆け付けたことで一命を取り止めた。

ある意味、自身の貧乏性に救われた形となった。

しかし体のダメージは凄まじく二度と戦えない体となってしまい、モデルZをエールに託した。

それ以来は後方支援に徹している。 
 

 
後書き
昔あるRPGゲームをしていて、男がヒロインなのかー…って結構印象に残っていたのを思い出し、これは使えると思った執筆前の作者です。 

 

第十九話 やるべきこと

 
前書き
一応アドベント編もやる予定なのでアドベントに上手く繋げられるようにしたい 

 
ブリッジに集まったヴァン達。

取り敢えず情報を整理することにして、ヴァンはプロメテから聞いたことをプレリー、ジルウェ、エールの三人に教えた。

「………つまり、セルパン以外にも黒幕がいて、そいつがロックマン同士の戦いをゲームと称して戦いを起こしてるってことか」

ヴァンが得た情報を纏めたジルウェが呟くと、ヴァンも頷いて肯定する。

「ああ、どこにいるかも分からないけど…セルパンを倒してもそいつがいる限り戦いは終わらない…まずはセルパンを倒して、そいつを必ず見つけ出す!」

倒すべき存在はセルパンだけではなく、他にもいる。

どこにいるかも分からないが、諦めると言う選択肢は存在しない。

「うん…でも、あいつの言っていた言葉の意味…アタシ達があいつらの仲間って…どういう意味なんだろ…」

「多分、同じロックマンって意味じゃないのか?あいつらもロックマンらしいから…そう言えば前から気になってたんだけど、どうして俺達はロックマンになれたんだ?」

モデルOは特殊だが、ライブメタルには変わりない。

何故自分達はライブメタルでロックマンになれるのか、今になって気になってきた。

「詳しいことは私にも分からない…でも、あなた達を守るように命令したのは初代司令官なの。」

「ガーディアンの初代司令官……プレリーのお姉さんの…?」

エールの言葉にプレリーは頷くと、話を続けた。

「命令はイレギュラー襲撃の生存者を保護すること…最初は何でそんな命令を送ってきたのか分からなかったけど…モデルZで、ジルウェさんがロックマンに変身出来た時、やっと分かったの…ライブメタルで変身出来る者はイレギュラー襲撃の生存者だけ…そう、あなた達や…ジルウェさんのようにね。分かっていることは…本当にそれだけなの…普通の人と、ロックマンとを分ける条件は一体何なのか」

「そう言えば、エリアGで戦ったフィストレオが言ってたな…」

“元々イレギュラー共はただ好き勝手に暴れていたわけではない。奴らはモデルVの主に相応しい器を選んでいたのだ。ライブメタルの力を引き出せる選ばれし者…ロックマンの資格をもつ者をな。恐らくお主らも、イレギュラーの襲撃から生き長らえた者であろう?”

ヴァンの頭にエリアGで戦ったモデルFのフォルスロイド・フィストレオの言葉が蘇る。

「イレギュラーはライブメタルの力を引き出せる奴らを…モデルVの主に相応しい奴らを選んでいるらしい。だから俺達も…」

「もしかしたらセルパンのようにモデルVの適合者になってたかもしれないってことか…モデルVの主に相応しい奴か…一体俺達と他の奴らのどこが違うんだ?」

ヴァンの言葉にジルウェも眉間に皺を寄せながら自分達と他の人々との違いは何なのかを考え始める。

「……恐らく…全てを知ってるのはセルパン達だけでしょう。」

「…全ての答えは、この戦いの先に…ってことね…分かったわ。ミッションを再開しよう!アタシ達が何でロックマンになれるのか…そしてどうしてアタシ達がイレギュラーに選ばれたのか…その答えを知るために!」

決意を胸に、次のミッションへのやる気を滾らせるエール。

それを聞いたプレリーも同意するように頷いた。

「そうね、まずはセルパンを止めなくてはいけないもの…それから、エール…あなたに話しておきたいことがあるの」

「え?話しておきたいこと?」

「プロメテが言っていたプレリーがこの時代の者じゃないってことだよ」

エールがプレリーの言葉に疑問符を浮かべると、ヴァンがプレリーの話したいことを理解してエールに言うとプレリーも頷いた。

「ヴァンにも少し話したけど、今からずっとずっと昔…人間と機械が戦争していた時代があったのは知ってる?」

「う、うん。モデルX達から聞いているし…ヴァンを狙ってる奴らもその時の奴らなんでしょ?」

最初に聞いた時は驚いたものだ。

モデルX達から聞いた戦争の歴史は今の時代では昔話程度でしか残っていなかったからだ。

「私もその復活したイレギュラーと同じ…その時代に作られた機械生命体…限りなく人間に近いロボット…レプリロイドなの…」

「…プレリーも…数百年前のレプリロイド…!?」

身近にいた彼女の意外な正体にエールは驚愕した。

「でもお姉ちゃんは…初代司令官は人間よ…数百年前の戦争で、私達レプリロイドを守ってくれた人間の科学者なの。戦争が終わり…人間とレプリロイドが仲良くなって、世界は平和になったのに…人々を襲う機械生命体…イレギュラーはいなくならなかった…。お姉ちゃんはガーディアンを創って、イレギュラー発生の原因を突き止めようとしたの…でも…お姉ちゃん…いなくなっちゃって…それで…それで…!」

最後の方は涙声になっており、エールはそんなプレリーにハンカチを渡した。

「プレリーが後を継いだのね…そんなに長い間イレギュラーと戦ってきたんだ…アタシ達と…ううん、アタシ達よりもずっと長い間、大切な人のために…ねえ、プレリー…ヴァン…アタシ達で終わらせようよ。セルパンやこのふざけたゲームを始めた奴を倒してさ!!」

エールが心強い笑顔を浮かべて言うと、プレリーもまた笑みを浮かべて頷いた。

「ええ、ありがとうエール」

「そうだな、俺達の大切な人達を守るためにも…俺達は負けられない」

ヴァンもまた決意を固めて拳を握り締める。

「だけど、現実問題…これから先は大変になるな、ガーディアンベースのダメージも相当なもんだし…次に攻撃を受けたらおしまいだぞ…」

決意を固める三人だが、ジルウェは冷静にガーディアンベースが受けたダメージを考えて深刻な表情になる。

「あ、そうか…甲板もボロボロだし…俺が開けた穴もあるし…プレリー…悪い」

ガーディアンベースのダメージの要因の一人でもあるヴァンが謝罪する。

「良いの、あなたは私達を助けてくれた。この船も穴の一つや二つでどうにかなるほど脆い作りはしていないわ」

「でも流石に修理しないわけにはいかないよね。でも街に行くのも……」

この国のインナーでパーツを扱っている所はセルパン・カンパニーの息がかかっている可能性が高い。

だから船の修理をしようにも敵に自分達の現状がバレるのは避けたい。

「仕方ない、倒したメカニロイドのパーツやスクラップ置き場にあるジャンクパーツでどうにかするしかないな」

「「流石ジルウェ(先輩)、貧乏性なだけある」」

流石は運び屋の移動の要であるバイクの入荷をケチってジャンクパーツで騙し騙し使ってきたジルウェである。

「んんっ!た、確かガーディアンの保養施設の近くにスクラップ置き場がありましたね。そこで一旦休息を取りつつ使えそうなパーツを回収しましょう」

後輩二人からの冷たい視線から逃げるように咳払いしながらジルウェは提案し、プレリーは苦笑と共に頷いた。

「そうですね、ヴァンとエールにも休んでもらいたいですし…ライブメタル達のリペアもしなくてはいけませんしね」

パープリルの無理なロックオンのせいでモデルH達のリペアは終わっておらず、これからの厳しくなるであろうミッションには彼らの力も必要不可欠だ。

「取り敢えず、今はその保養施設に向かおう。まずはそれから!!」

「そうね、ガーディアンベースをガーディアンの保養施設へ。そこで船を修理します」

エールの言葉に全員が頷き、プレリーはスクラップ置き場の近くにあるガーディアンの保養施設へと向かうよう指示を飛ばすのであった。 

 

第二十話 保養施設

 
前書き
少なくても壊れた状態で空を飛ばすなんて怖くないですかね? 

 
相当なダメージを受けたガーディアンベースはインナーに近いアウターの保養施設に辿り着いた。

元々は誰かの別荘だったらしいのだが、イレギュラーの襲撃を受けて放棄したらしい。

ガーディアンがイレギュラーを掃討したものの、イレギュラーの襲撃を受けた場所にいたいと思う者は誰もいなかったらしく、今まで身を休める場所を持っていなかったガーディアンが買い取ったとのことだ。

「はあっ!!」

「ていっ!!」

いくらインナーに近いからと言ってやはりアウターであるためか、迷い込んだイレギュラーも何体かいた。

アルティメットセイバーを抜いてイレギュラーを斬り捨てるヴァンと、ZXバスターでヴァンを援護するエールが周囲の安全を確認してから施設に入った。

「ここがガーディアンの保養施設よ。修理が終わるまではここが拠点となります」

「うわあ、凄い!ドラマで見た別荘みたい!」

普通ならば足を踏み入れることすら出来ないであろう大きな施設にエールは興奮する。

「元々別荘だったんだって…でもこれだけでかい別荘を持てるなら警備隊くらい雇えそうだけどな」

「ロックマンの状態で過ごしてたから感覚が麻痺してきてるなヴァン?そこらの装備じゃイレギュラーは相手に出来ないぞ」

常時ロックマンの状態だからかヴァンのイレギュラーの脅威度が下がっていることにジルウェは苦笑した。

「そうか…そうだった…」

「取り敢えず、俺達は使えそうなパーツを探してくる。お前達は今くらいゆっくり休め」

「分かった…プレリー、イレギュラーが出たら呼んでくれ。すぐに出るからな」

「駄目よ、今日一日。あなたは休むこと」

「は?」

プレリーにイレギュラーが出たら呼ぶように頼んだが、断られてしまったことにヴァンは驚く。

「あなたはガーディアンベースに来てからもあまり休んでないじゃない…頼りきりなのにこんなことを言うのも何なんだけど…せめて今くらいは休んで…お願いヴァン」

「…………じゃあ、俺は地下にいる。」

「え?部屋は用意…」

「地下の方が落ち着く…外が見えると何だか落ち着かないんだ。悪い、プレリー」

プレリーは部屋を用意しようとしていたが、ヴァンはそれだけ言うと部屋から出ていった。

「………それじゃあ俺はパーツを集めてきます。エール、お前も今日一日くらい休め」

「分かった、ジルウェも頑張って」

外に出ていくジルウェを見送ると、残されたエールとプレリーは互いに笑った。

「何か、アタシとプレリーの組み合わせって珍しくない?だってプレリーはいつもヴァンやサルディーヌと一緒にいるし」

「そういうあなたもいつもジルウェさんと一緒じゃない?」

「ア、アタシは仕事だから…」

「ふふ、そういうことにしてあげる」

微笑むプレリーにエールは悔しげに膨れる。

見た目は同じくらいでも生きてきた年月の長さが違う。

「…エールはジルウェさんが好きなのね」

「え!?あ、いや…アタシは…」

「隠さなくて良いのよ…好きな人が身近にいてくれるのはとても幸せなことよ。いつか気持ちを伝えられると良いわね……後悔だけはしないで」

プレリーの表情はエールをからかうようなものではなく、心から応援しているものだった。

「……ありがと…あのさ、聞いていいプレリー?」

「何かしら?」

「プレリーってさ、いつもヴァンのこと見てるけど…もしかしてヴァンのこと好きなの?」

「え?」

驚くプレリーにエールは他の可能性も尋ねる。

「それとも、今のヴァンが好きだった人に似てる…とか?最初はジルウェに気があるのかなって思ってたんだけど、ヴァンが仲間になってから、プレリー…ずっとヴァンのこと目で追ってたじゃない?懐かしそうに…大切な人の面影を見てるような…」

二人をプレリーはどこか懐かしそうに、そして寂しそうに見つめていたのをエールは覚えている。

「…ジルウェさんとヴァンは……お兄ちゃんに似てるの」

隠すようなことでもないため、プレリーは二人を見ていた理由を話した。

「え?プレリーのお兄さんに?」

「ええ、モデルZのオリジナルになった人で見た目がジルウェさん…特にヴァンにそっくりなの」

古い写真を取り出してエールに見せると、初代司令官らしい少女とプレリーの面影がある少女、そして二人の隣に立つ真紅のアーマーと腰にまで伸びる金髪が特徴の男性型レプリロイド。

「うわあ、本当にアーマーとかヴァンそっくり…でもプレリーのお兄さん…とても綺麗だね。お姉さんも可愛い人だし」

ヴァンも顔立ちは整っている方だが、モデルZのオリジナルとなったレプリロイドは中性的な顔立ちをしており、芸術と言っても過言ではないくらいに整っていた。

「ありがとう、お兄ちゃんはとても無口な人だったけど優しい人だった。幼かった私がお姉ちゃんから貰ったぬいぐるみをなくしちゃった時も私と一緒に探してくれた…まあ、デリカシーがないところもあるんだけど。昔…サイバーエルフに名前をつけようとして、お兄ちゃんにも考えてもらおうと思ったんだけど、サイバーエルフを回収する際の敵との戦闘話になっちゃうし、最後は“不気味な奴だったな”の一言だし…」

「さ、流石…モデルZのオリジナルだね…」

幼かったプレリーにそんなことを言ってのけたモデルZのオリジナルに顔を引き攣らせるエールを見てプレリーは苦笑した。

「あの時の私はお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒にいるだけで幸せだった…人間と機械の戦争が終わったらお兄ちゃんやお姉ちゃんと私や当時の仲間のみんなでエネルギー不足に怯えることもなく幸せに暮らせると思ってた。でも、戦争の最後でお兄ちゃんいなくなっちゃって…お兄ちゃんのために平和な世界にしようとしていたお姉ちゃんもいなくなっちゃった…私は見ていることしか出来なかった…お兄ちゃんにとってお姉ちゃんはきっと大切な人で…いなくなったお兄ちゃんの代わりに私がお姉ちゃんを守らなきゃ、支えなきゃいけなかったのに…」

いなくなってしまった。

“お兄ちゃん”や“お姉ちゃん”だけではなく、世話になった温厚で父親のような技術者の彼も。

戦いで傷ついたみんなの手当てをして、自分の面倒を見てくれたおばさんも。

気持ちが先走りして失敗する事もあったけれど組織の部隊長を任されたりして頼りになるお兄さんだった彼も。

話をするのが大好きで一度話し出すとなかなか終わらなかったけれど、昔話をたくさん聞かせてくれたお爺ちゃんも。

苦手だった人の部下だったけれど、明るくて気さくなお姉さんと生真面目で堅いけれど優しかったお姉さんも。

いつも自分に悪戯したり、仕事をサボったりしてみんなを困らせていた彼も。

みんないなくなってしまった。

頼りになる人はみんないなくなって、役立たずだった自分だけが生き残ってしまった。

過去の仲間や出来事を思い出してか、徐々に声が掠れていき、写真に落ちていく涙を見てエールはプレリーにハンカチを差し出した。

「これ使って」

「…っ、ありがとうエール」

プレリーは差し出されたハンカチを受け取って涙を拭くとエールに礼を言う。

「……プレリー、一人で背負い込まないでね?プレリーは一人じゃない。アタシやヴァン、ジルウェだっているんだから」

「ええ」

「ねえ、プレリーのお兄さんとお姉さんのこと…聞かせてくれる?」

「ええ、勿論よ。その代わり…私もあなたやヴァンのことを聞きたいわ」

「勿論!たくさん話そうよ!それで、プレリーのお兄さんって性格の方はヴァンかジルウェのどっちに似てるの?」

「そうね…お兄ちゃんはクールだったけど、内面はとても熱い人で負けず嫌いなところがあったからどちらかと言えばヴァン…かしら?」

ガーディアンの保養施設で、エールとプレリーの楽しげな会話が響いていた。 

 

第二十一話 民間人の救出

 
前書き
モデルFXのお世話になったボス。 

 
ガーディアンの保養施設で時折現れるイレギュラーを撃退しながらプレリー達はライブメタルの反応、もしくはインナーで何か事件が起きていないかを調べていた。

そしてようやくリペアが完了したモデルHと酷似した反応をキャッチしたのだ。

「エリアIの廃墟でライブメタルの反応をキャッチしたの。ライブメタルの他に複数の生命反応も確認されていて、多数の民間人がこのエリアの施設に捕らわれている可能性があるわ。エリアⅠへと向かって民間人を救出して欲しいの。」

「「了解」」

ガーディアンベースのトランスサーバーを使ってエリアEの発電所へ行き、そこからエリアIに繋がるシャッターを潜り抜けると、雨風に叩きつけられる。

『街の人の生命反応はずっと奥にあるわ。発電所のボスを倒したから施設の中は、一部機能が働いていないみたいね電気を送ることが出来れば何とかなるかもしれないのだけれど…』

「電気か…電気属性の攻撃で何とか出来ないかな…」

「試してみる価値はありそうだね」

「恐らく内部は暗闇に閉ざされている場所があるはず、その場所に出たならば拙者の力を使えば比較的楽に移動出来よう」

「ありがとうモデルP、頼りにしてるよ。ダブルロックオン!モデルPX!!」

廃墟ということで入り口が埋まっているかもしれないので、エールはモデルPXに変身して先に進む。

メカニロイドをヴァンがアルティメットセイバーでメカニロイドを両断し、エールがクナイを投擲してヴァンをサポートする。

しばらく進んで建物の前に立つと、エールの表情が渋くなる。

「どうした?」

急に表情を変えたエールにヴァンが尋ねると、エールは建物を少し見つめた後に口を開く。

「入り口がいくつかある。一つは屋上、そして二つ目は隠し扉。多分、隠し扉の方が早い」

モデルLXに変身して軽く内部を探ると、他のルートよりも比較的距離が短い。

「…だったら隠し扉の方に行ってみよう。近道出来るならそっちの方がいい」

「分かった。ついてきて」

エールは再びモデルPXに変身して壁を蹴り登り、まずは浮遊するリフトを利用して屋上に向かう。

屋上に到達すると、奥の方に梯子がある。

「ヴァン、あの大砲の反対側の壁が丁度隠し扉の近くなんだ。」

エールが下の方を指差したので見下ろすと、確かに定期的に弾を発射する大砲が配置されており、そこの反対側の壁が脆いのが分かった。

「なら、あそこに弾を当てれば壊せるかもな」

ヴァンが飛び降りてダブルジャンプで大砲の後ろに回り込むと、反対方向に砲門を向けると、弾が発射されて壁に命中。

あと少しなのだが、弾の威力が足りないのか破壊まで至らない。

なら、最後の一押しは自分でやるしかない。

ヴァンがオメガナックルのエネルギーを拳に纏わせて一気に壁を殴り付けると、壁はあっさりと崩れた。

それを確認したエールは壁に敷き詰められたトゲに触れないように着地し、一緒に建物に入る。

「隠し扉は…この下だね」

「ここか」

梯子を降りると、錆びた扉がある。

電気が通っていないのでヴァンがバスターショットを構えてチャージバスターで破壊して先に進むと室内は真っ暗であった。

「っ!暗いな…」

「アタシが先に行くよ。モデルPXなら暗い場所でもへっちゃらだし」

「そうか、じゃあ頼んだぞエール」

エールが先に進み、ヴァンはそれについていく。

途中の穴に落ちないように進み、奥の扉を開いて更に奥へと進んでいく。

途中にメカニロイドや天井の一部にトゲが敷き詰められていたが、エールのおかげでヴァンは攻撃も当たることなく先へと進めた。

そして扉を潜り抜けた先は行き止まりだったが、罅が入っているので容易に破壊出来そうだ。

壁を壊すと、奥から多数の生命反応と強力なエネルギー反応がある。

「……行くぞ」

「うん」

シャッターを潜って広い場所に出た直後、姿を現した鼬型のフォルスロイドが姿を現した。

「現れたな、お前がもう一体のモデルHのフォルスロイドだな」

「ご名答。大方、隣の部屋にいる奴らを助けに来たってとこだろうが、そうはいかないよ。奴らは大事なモデルVの生け贄…サイバーエルフの元なんだ。恐怖のデータに染まったサイバーエルフがモデルV覚醒の鍵なのさ!アタシはモデルHのフォルスロイド…ハリケンヌ!良い生け贄が育つよう、あんたの悲鳴を奴らに聞かせてやりなよ!」

「ヴァン、そっちは任せていいかな?」

「ん?」

ヴァンと背中合わせになるように立つエールにヴァンは不思議そうにする。

「そこに隠れてるのは分かってるんだよ。出てきたら?」

「何だって?」

モデルPXのスコープ脳裏の前ではいかなるステルスも通用しない。

エールが上を見上げながら言うと、ハリケンヌの視線もそちらに向かう。

「キキキ…ッ!おやおや、名乗り出る前にバラすとはこの時代の者達はマナーがなっていませんな」

「あんた何者だい?まさかあんたが最近アタシらの周りをウロチョロしてる奴らの仲間かい?」

「私が用があるのは破壊神の器のみ。あなた方のような品のない者達に用などありません。ああ、申し遅れました。私はヘルバット・シルト。私の姿を見た以上は生き残ることはあり得ませんが、私からのせめてもの慈悲ですよ」

「それはこっちの台詞さ!」

ハリケンヌがヘルバットに襲い掛かるが、ヘルバットは嘲笑と共に姿を掻き消した。

「なっ!?」

「下僕よ!!」

翼を広げた瞬間に蝙蝠型のメカニロイドが飛び出してハリケンヌを地面に叩き落とす。

「ぐっ!」

「下品な戦い方です。どうやら数百年の経過と共にマナーを忘れてしまったようですね。私があなた方への冥土の土産にマナーを教えて差し上げましょう。紳士と淑女の戦いのマナーその一、攻撃の際は無駄な動きはしないことです。いくら速かろうと動きに無駄があればその速さを殺してしまいますからね。曲がりなりにもあの賢将の力を持つ者がそれを理解していないとは…あの方の魂の破片を持つ小物も適材適所と言うものを理解していませんね」

「ぐうう…っ!」

嘲笑と共に言われたハリケンヌの表情が屈辱に歪む。

「…なるほど、こいつは確かにエールに任せた方が良さそうだな…頼めるか?」

「任せて、ヴァンはそいつをお願い」

エールはモデルPXの状態でヘルバットに挑み、ヴァンはハリケンヌと相対した。

「退きな、あんたはあいつの後で斬り刻んでやるよっ!」

「そいつは無理だな。あいつはエールが倒すし、お前は俺に倒されるからな」

アイスチップを起動して武器のチャージ攻撃に氷属性を付加させると、バスターショットを構えた。

「どいつもこいつもアタシを馬鹿にしてくれちゃって…舐めてんじゃないよっ!!」

二発同時に竜巻を発射してくるハリケンヌだが、壁を蹴り登ってからのダッシュジャンプでかわしてチャージバスターを当てるとハリケンヌの体は瞬く間に凍結する。

「この…っ!!」

氷を砕いてヴァンの真上にジャンプし、足元に竜巻を起こしながら降下してくる。

ヴァンはギリギリまでタイミングを見計らって一気に壁に向かってダッシュし、急降下をかわすとセイバーを抜きながらダブルジャンプで距離を詰めてチャージセイバーをぶつける。

「がはっ!?」

「こんなもんか?これなら同じモデルHのフォルスロイドでもハイボルトの方が強かったぞ」

「っ!生意気なんだよっ!!」

氷を砕いて首のカッターを高速回転させて真空波を放ってきた。

「ふっ!!」

ダッシュでそれをかわすと距離を詰めながらチャージバスター、それからナックルによるアッパーカットを叩き込む。

「ごはっ!?」

「ふっ!!はっ!!たあっ!!」

追撃のセイバー三連擊によってハリケンヌの体に痛々しい傷が刻まれる。

「ば、馬鹿な…アタシがこんなガキに…一方的に…!?」

「…………」

パープリルとの戦いから徐々に力が増していき、体の使い方が以前以上に分かるようになってきた。

これはモデルOの侵食が深刻化していることを意味するのだが、今はそれでも構わない。

「認めるかーーーっ!!」

再び竜巻を発射し、次は真空波を発射してくるハリケンヌに対してヴァンはそれを全てかわしながら距離を詰めて回転斬りからの三連擊をお見舞いした。

「がは…っ!?」

「終わりだな、斬り刻まれるのはお前の方だったようだな。」

怒声と共にセイバーで首を斬り落とし、残ったハリケンヌの体をチャージバスターで消し飛ばした。

「あの世でセルパンを待ってろ」

少し時間を戻してエールはヘルバットの攻撃をかわしながらクナイを投擲していた。

「フフフ…先程の者よりはやりますね。ですが、この程度の攻撃では私の防御は崩せませんよ?淑女のマナーその一、無駄な抵抗はせずに殺されることです。足掻いても醜いだけですよ」

「確かにモデルPXの攻撃力じゃ崩せないけど!!」

モデルPXのチャージ攻撃の十字手裏剣を投擲してヘルバットに防御させるとモデルLXに変身する。

「お願いモデルL!!」

「行くわよ!!」

オーバードライブを発動して攻撃力を倍加させて氷属性を武器に付加させると、ハルバードでヘルバットを斬りつける。

「ヒヒッ!?中々…効きますね…!ならばこれならどうです!!」

電撃弾が連続で発射されていくが、エールはモデルHXに変身するとエアダッシュで電撃弾をかわしていく。

「良いぞエール。そのまま奴の背後を取り…」

「このまま…斬る!!」

背後を取ってダブルセイバーによる三連擊とソニックブームによる攻撃を浴びせるエール。

「キキッ!?」

「アタシだっていつまでも弱いままじゃない!みんなから色々教わってるんだから!!」

ジルウェとモデルZからは剣による接近戦を、モデルXからは射撃を、モデルHからは二刀流の扱い方と空中機動のコツを、モデルLからハルバードの扱いと水中での立ち回り方、モデルPからは如何なる状況にも対応出来るように体の動かし方を、モデルFは…説明が感覚的過ぎて分かり辛かったが、高火力による制圧方法を。

「戦闘馬鹿は教官には向いてないわよねー。ねえ、キザ坊や?」

「全く同感だ…こいつに理論的な説明が出来るとは思えん」

「うるせーっ!とにかくパワーだ!パワー!!パワーで相手を押し潰すんだよ!!」

「モデルF…お主はもう少し冷静な立ち回りを学べ」

「無理だろうな」

「ふふふ、エール…君には僕達がいる。仲間と協力して困難を打ち破る、それが君の強さだ!!」

モデルL、モデルH、モデルF、モデルP、モデルZ、モデルXの声がエールの中で響く。

ヴァンだけでなくライブメタル達も一緒に戦ってくれていることがエールの中で力となる。

ヘルバットが上空に移動して分身すると、今度はモデルFXに変身してナックルバスターからショットを連射する。

「キキキ…闇雲に撃っても当たりません…何!?」

ショットの軌道が変化して部屋全体にショットが飛び交い、直撃を受けた本物が揺らいだ。

「そこだっ!!」

モデルZXに変身してヴァンが好んで使う回転斬りからのセイバー三連擊をお見舞いする。

「っ!何とマナーのなっていない…この音色を聞くがいい!!」

壁や地面に反射する超音波を発射し、エールは回避しようとするがかわしきれずに何発か受ける。

「っ!!」

「さあ、私の下僕の餌食となるがいい!!」

無数の蝙蝠型メカニロイドがエールに迫る。

「モデルP、力を貸して!!」

「承知した」

オーバードライブを発動すると、エールはモデルPXの特殊ダッシュで攻撃をかわすと、その状態で右腕をチャージする。

「とどめっ!!」

十字手裏剣を投擲すると、ヘルバットの胴体を両断した。

「キ、キキキキ…まさか私がこのような愚か者に…っ!?」

「今の人間を舐めないでよね」

「確かに一人では非力かもしれぬ。しかし仲間の力が合わされば貴様に負ける道理はない」

エールとモデルPがヘルバットに言うものの、ヘルバットはそれを認めようとはしなかった。

「キキ…仲間…?認めない…そんなものに私が負けるなどーーーっ!!」

ヘルバットの爆発を見届けると、ハリケンヌの残骸からデータがモデルHに戻っていく。

「どうモデルH?」

「ああ、パスコードと共になくした力を取り戻すことが出来た…礼を言おう。だが…パスコードの自動修復には時間が必要だ。少し待っていてくれ」

「流石にすぐには直らないか…奥の部屋に行くぞエール」

「うん」

閉じ込められている人々を助けるために奥のシャッターを抉じ開けて、奥の部屋に向かう二人であった。

奥の部屋に入ると、中は薄暗かった。

『その部屋に囚われた人々がいるのね。助けてあげて』

プレリーの指示に従って電磁シャッターの装置を破壊し、人々を救出し、ヴァンは少しでも恐怖を与えないように距離を取った。

「た…助かったぁー!後少しで、僕達も奴らにサイバーエルフにされてしまうとこだったよ…本当にありがとう!」

「あんた達がサイバーエルフにされる?」

「どういうことなの?」

ヴァンとエールが彼の言葉に疑問符を浮かべながら尋ねる。

距離を取っていたことが幸いしたのか、モデルOの異質な気配に怯えることなく事情を話してくれた。

「奴らは…僕らから全ての記憶のデータを抜き出して、サイバーエルフを作ってるんだ。それも、散々僕らを怖がらせてからさ。目の前で、仲間がどんどんサイバーエルフにされていくのをここで見せつけられてたんだ…」

『それで…あんなに大量のサイバーエルフを作ることが出来たのね…何て酷いことを…この人達は、私が街まで転送するわ。お疲れ様』

次の瞬間に、人々は街に転送されていき、それを確認したヴァンとエールは近くのトランスサーバーで帰還する。 

 

第二十二話 特訓

ヴァンとエールはハリケンヌとの戦いで得たヒントや力で新技をガーディアンベースのトレーニングルームで練習していた。

「良いかエール、力を全て取り戻した俺のチャージ段階が一段階上がったのは分かるな?」

「うん、モデルZXのチャージのようになったのが分かるよ」

感覚的だが、エールもモデルHXの変化を感じ取っていた。

今まではモデルZXのセミチャージくらいのエネルギーしか発揮出来なかったが、今ではフルチャージくらいのエネルギーは発揮出来るはずだ。

「エネルギーをフルチャージした状態で放つ技をプラズマサイクロンと言う。この技は射程制限はあるが威力は保証する。炎属性の敵と戦う際に当てることさえ出来れば絶大な効果を発揮するだろう」

「分かった。モデルZXのフルチャージの要領で良いんだよね?」

「そうだ。片方ずつのセイバーでチャージが出来るのは変わらんからプラズマビットと同じように連続で放つことが出来る……が、プラズマサイクロンはプラズマビットよりもエネルギーの消費が激しいので使用には気を付けろ」

モデルHはプラズマサイクロンの利点と注意点を説明すると、エールも頷き、ヴァンもまたセイバーを構えて技を練習した。

ハイボルトとハリケンヌの攻撃を見て頭に浮かんだ…恐らくはモデルOのオリジナルが使っていた技なのだろうそれを繰り出した。

「…はあっ!!」

セイバーを横薙ぎに振るうと、ソニックブームが放たれた。

モデルHXの物よりも射程が長く、セイバーで距離を取られた際に使えそうだ。

属性に対応しているかを確かめるためにヴァンはエレメントチップを起動させる。

フレイム、アイスチップを試すが変化はなし。

サンダーチップを起動させてセイバーを振るうと電気属性がソニックブームに付加された。

「使えそうだな…」

エールが今使っているプラズマサイクロン程の威力はないが、使い勝手は良さそうだ。

頭の中にどんどん浮かぶ技。

しかし残りのはまだ朧気でイメージが掴めないので、これからも他の属性の敵と戦っていけば自ずと分かっていくだろう。

「凄い威力…これがモデルHの本当の力なんだ…」

早速プラズマサイクロンを使ってみたエールはその威力に下を巻いた。

「そうだ。オーバードライブも上手く使えば更なる威力の向上が見込める。使いこなせるように努力することだ」

「へっ!俺様の本当の力はこいつよりも凄いんだぜ!その気になりゃこいつの出番なんて…」

「戦闘馬鹿ー?あんた属性の相性って知ってる?どう足掻いても炎属性の相手はキザ坊やに不利だからあんたに勝ち目ないわよ」

「うるせーっ!そんなもん気合いでカバーすんだよ!!」

「出来るわけないでしょ戦闘大馬鹿」

モデルLの言葉にムキになったモデルFが喚くものの、モデルLに一蹴された。

「モデルFよ。お主にはお主の戦い方があるように拙者達にも拙者達なりの戦い方がある。拙者は動きには自信はあるが、お主のような力はない。互いの足りない部分を補いながら戦う…今拙者達に求められているのはそれなのだ」

「うぐ…っ…わ、わーってるよ。んなことくらい」

モデルPの論するような言葉にモデルFは呻いた後に黙り込んだ。

「モデルPって慣れてるね?」

「モデルPのオリジナルも逸っていた時の私達のオリジナルを宥めてたのよ。キザ坊やはあいつの挑発に乗っかっちゃうし、本当に子供で参ったわ」

「聞こえてるぞモデルL…」

苦虫を噛み潰したような声を出すモデルHにモデルLは口笛を吹きながら言い返す。

「聞こえるように言ってるんだから当たり前でしょ」

「何だか、モデルH達って仲間って言うより兄弟みたい」

モデルXやモデルZに接するのと違い、この四つのライブメタル達の間には遠慮が存在しない。

「私達のオリジナルはモデルX様のオリジナルのデータを基にして作られたレプリロイドなの。だから私達が兄弟と言うのはあながち間違いではないわね」

「え!?モデルXのオリジナルを基にしたってことは…四人共、モデルXの子供なの!?」

「えーっと…オリジナルに関してはそうだけど私達に関してはどうなのかしら…」

あくまでも自分達はオリジナル達のコピー。

だから自分達はモデルXの子供かと聞かれれば疑問符が浮かぶ。

「じゃあモデルZとは何なの?」

ライブメタル達のオリジナルの関係が気になってきたエールはモデルLにモデルZとの関係を尋ねる。

「モデルZは私達とは何の関係もないわ。モデルX様のオリジナルとは親友だったけど、私達のオリジナルとは寧ろ敵同士だったし」

「て、敵!?」

確かにモデルHからのモデルZへの反応がやや冷ややかだったりするが、まさか敵対していたとは。

「ガーディアンの初代司令官のいたガーディアンの前身となる組織と私達がいた国家が敵対していたのよ。モデルZのオリジナルと私達のオリジナルは何度も戦ったわ…一度も勝てなかったけど……」

「へー」

モデルLの溜め息を含んだ言葉にエールは昔のモデルL達のオリジナル達のことが気になり始めた。

「………」

隣で話を聞いていたヴァンは呆れていたが、そんなに大昔の話ならどうして初代司令官は生きていたのか?

少なくてもセルパンが所属していた時までは確実に生きている。

「そう言えば…何でプレリーのお姉さん…ガーディアンの初代司令官って…プレリーのようにレプリロイドじゃなくて人間…なんだよな?」

「そうだよ?詳しい記憶データはないけれど、彼女は人間だよ」

モデルXがそう言うと、ヴァンは疑問を口にした。

「何でそんな大昔の人間なのにセルパンが裏切る前まで生きてるんだ?いや、今も生きているのかもしれないけど」

「あ」

プレリー達の話す内容の深刻さもあってか初代司令官がどうして人間なのにそんなに長生きしていたのかエールは気にしていなかった。

「確かにそうだよね…プレリーのお姉さんってどうやって長生きしてたんだろ?」

「………止めようエール、何か気にしちゃいけない気がする」

「うん、そうしよう」

デリカシーが欠けるヴァンもこの話題はあまりしない方が良いと判断して特訓を再開した。

「正解よ、女の子の年齢を気にするなんて最低のことよ」

「いや、お前らもう女の子の年齢じゃねえ…ぐはっ!?」

「黙りなさい戦闘超馬鹿」

失言を言いかけたモデルFにモデルLの体当たりが炸裂した。

「あいつは頭が良いからな、延命措置など簡単だろう」

オリジナルからの初代司令官への信頼を受け継いだモデルZの言葉で会話はこれで打ち切られた。 

 

第二十三話 プレリー

 
前書き
ガーディアン司令官にアカルイミライヲー 

 
新しく覚えた新技である真空刃の練度を上げるためにトレーニングルームに引き籠っていたヴァンだが、フルーブに呼び出され、司令室のブリッジに向かうと手渡されたチップを凝視していた。

「なあ、フルーブ。何だこれ?」

「モデルXのエネルギーを共有するためのチップです。これを組み込めばモデルXから離れていてもモデルOの暴走はしないはずです」

「エリアGのイレギュラー襲撃の際にヴァンの手元にモデルXがあったからエールが丸腰の状態だったでしょう?このままじゃ不便だと思ってフルーブに頼んで作らせていたの」

ヴァンは自分の手の中にあるチップを見つめる。

最近はモデルXが近くにいてもモデルOの声が鮮明に聞こえるようになったので、あまりモデルXの抑制があまり意味を成さなくなってきた。

しかし、無いよりはあった方がいいだろう。

「ありがとな二人共」

自分のために作ってくれたことが嬉しく、ヴァンは笑みを浮かべて礼を言うとブリッジを出ていく。

「…………」

「さて…プレリーさん、私はガーディアンベースの修理がどこまで済んだか確認してから戻ります。あなたも休まれた方が…」

「ええ、そうね…」

そんなヴァンの背中をプレリーは少し寂しそうに見ていたが、やがて意を決したようにブリッジを後にした。

「…ふう」

そして、一方で特訓を切り上げて部屋で休んでいたエールはヴァンのことを考えていた。

最近、ヴァンに元気がない。

悩んでいるように見えるし、シュウのことを引き摺っているのかもしれない。

運び屋の仕事の際にシュウと会った時、あの時の言葉通りにシュウをボコボコして反省(と言ってもシュウ自身後悔していた)させた。

あまりのタコ殴りに運び屋に興味を持って一緒に来ていたモデルHとモデルLはドン引き、モデルFは笑いながらエールを応援、モデルPは無言だった。

後でシュウに謝る機会を設けなければとエールは考えると、保養施設のキッチンに向かった。

「(久しぶりにヴァンの好きな物を作ってあげようかな?)」

ガーディアンの食事も悪くはないが、時々自分で作りたくなる時がある。

「エール、これから飯でも食べないか?」

「あ、ジルウェ…今日はアタシが作ろうと思うんだ。最近ヴァンも気が滅入ってるようだし」

「そうか、そうだな。よし、あいつの好きな物でも作ってやるとするか」

ヴァンのために二人で作るのも悪くない…と思った直後であった。

キッチンの方から爆音が聞こえたのは。

「な、何事!?」

「まさか、セルパン・カンパニーの襲撃か!?」

二人が慌ててキッチンに入ると、そこには黒い煙を発しているフライパン。

「コホッコホッ!!」

煙を吸って咳き込んでいるプレリーの姿があった。

「プレリー、何してるの?」

「コホッ…あ、エール…その…最近、ヴァンの元気がないから…何か作ろうとして…」

恥ずかしそうに料理本を見遣りながら言う。

ハンバーグのレシピのページであることからハンバーグを作ろうとしていたのは分かる。

「何でハンバーグで爆発するの?」

「そ、その…失敗しちゃって…」

「は、はあ…」

どういう失敗をすればハンバーグが爆発するのか…気になるが後が怖いのでジルウェは黙ることにした。

「それにしても、“ガーディアンで騒動ある所にプレリーあり”だね…」

初めて会った時といい、ぬいぐるみ騒動といい、そして今回のハンバーグ騒動。

ガーディアンで何かの騒動がある時は必ずと言っていいほどにプレリーがいた。

「そ、そんな風に言わなくても…」

ショックを受けるプレリーにジルウェは苦笑しながら黒い塊となったハンバーグを見つめる。

「何というか…プレリーって料理苦手なんだね」

「うう…」

「よし、アタシ達もヴァンに何か作ってやろうと思ってたし。一緒に作ろう!」

こうしてプレリーを含めた三人で料理をすることになったのだが…。

「プレリー、包丁をそんな持ち方したら危ない!あ、そんな切り方も駄目っ!!」

「司令官、塩も入れすぎですよ!」

包丁の持ち方が危なっかしく、調味料も入れすぎになりそうになり、エールとジルウェは普段の料理とは比べ物にならないくらいに疲弊した。

「ご、ごめんなさい…」

「も、もしかしてプレリーって…料理したことないの…?」

「クッキーとか、簡単なお菓子作りなら何とか出来るんだけど…お料理は…ないの」

「それでよく作ろうと思えたね…」

「だってお姉ちゃんが指を切ったりするからって言って教えてくれなくて…」

“お姉ちゃん”が料理を作る度に幼かったプレリーもやってみたいと言ってみたのだが、“お姉ちゃん”は危ないから駄目と言って触らせてくれなかった。

「プレリーのお姉さん、過保護すぎでしょ」

「うう…」

初代司令官の過保護にエールは呆れてしまった。

とにかく何とか夕食の時間までに間に合わせるために三人は料理を再開した。

そして夕食の時間。

“我に全てを委ねろ”

“全てを滅ぼす”

“我は…”

「…………?」

通路を歩いていたヴァンは頭に響いていたモデルOの声が途切れたことに気付き、後ろを振り返るとそこにはエールがいた。

モデルXが近付いたことでチップによるエネルギーの共有が良くなり、一時的にモデルOが黙ったのだろう。

「ヴァン、一緒にご飯食べない?今日はヴァンの好きなハンバーグだよ」

「おお、そうか…って、何でお前…そんなに所々焦げてるんだエール?」

「そこは気にしないで」

あの後は苦戦の連続でプレリーに料理の基本を教えつつ、何とか夕食の時間までに間に合わせることが出来たのだ。

時間に間に合わせた自分を褒めてやりたい。

そして食堂に行くと、ヴァンの席には少し身が崩れたハンバーグ。

「何で崩れてるんだ?」

「気にしないで食べて、味は保証するから」

物陰でジッと見ているプレリーとジルウェ。

ヴァンはハンバーグを口に入れて咀嚼する。

「………美味い」

「っ!!」

ヴァンの一言にかつてない勝利感を覚えたエールはガッツポーズを取る。

「でも味付けがいつもと違う…エールや先輩でもない…誰がこれをが作ったんだ?」

「プレリー…もがもが」

すぐに駆け付けてエールの口を塞ぐプレリー。

しかしその慌てぶりからこのハンバーグはプレリーが作った物なのだと分かった。

「このハンバーグ…プレリーが作ったのか?」

「え?」

「そうだぞヴァン、司令官が最近お前に元気がないからってエールと俺に教わって作ったんだぞ」

「ちょっとジルウェさん!?」

せっかくエールを黙らせたのにジルウェが喋ってしまった。

「そうなのか、プレリーありがとな」

そう言うとエール同様にプレリーとジルウェの所々焦げた格好を見つめる。

「何で三人揃って焦げてるんだ?」

「プハッ、実はプレリーは料理したことなくてね。何回も料理を爆発させちゃったの」

「爆発?」

「エール!」

何とかプレリーの手から抜け出せたエールが理由を暴露し、プレリーは顔を真っ赤にした。

「どうやらプレリーはお姉さんに子供の頃から危ないから包丁を持たせてもらえなかったみたいなの」

「…少し過保護すぎないか?」

過保護すぎる初代司令官に流石のヴァンも呆れてしまう。

因みに経験が全くないから失敗したわけで、エールに付きっきりで特訓してもらった結果、プレリーは料理を爆発させる頻度は減り、無事な作品はヴァンに振る舞うことが出来るようになった。

しかし爆発はなくなったわけではないので、時々爆発に巻き込まれて真っ黒になるエールの姿がガーディアンの保養施設で見掛けられた。 

 

第二十四話 発掘部隊の襲撃

 
前書き
ここのボスはlevel4は諦めました。

ZXはこちらの火力が高い分、弱点さえ気にしなければあっさりと倒せてしまう 

 
ガーディアンベースの修理も終わりに近付いた時、プレリーから呼ばれた二人はブリッジに入った。

「来たぞプレリー」

「アタシ達を呼んだってことは、セルパン・カンパニーで何か動きがあったの?」

二人の入室に気付いたプレリーは司令官の表情で頷いた。

「エリアKでセルパン・カンパニーの部隊を発見したようなの、何か、大規模な発掘作業をしているようなんだけど、モデルFと同じ反応を持ったフォルスロイドがこの部隊を指揮しているから、あなた達に向かってほしいの。エリアKへと向かい、この部隊からライブメタルを奪還して…それから復活したイレギュラー反応もあるわ…二人共、気を付けて」

「「了解」」

ブリッジを出てトランスサーバーのある部屋に向かうと、街に行き、エリアKに繋がる扉の前に行く。

「エリアKって確か元々は温泉で賑わってた場所なんだっけ?アウターになってなかったらなぁ。景色のいい場所での温泉…」

「俺は温泉よりも美味い物が食える場所がいい」

「あんたって昔から花より団子よね」

「景色じゃ腹は膨れないからな」

ムスッとなるエールにヴァンは扉を抉じ開けてエリアKに向かった。

そしてエリアKに到着すると凄まじい熱気が二人を襲う。

「うえー…」

「火山の噴火とかのせいで温泉が煮えたぎってるな…エール、入れそうにないぞ」

「入った瞬間に茹で蛸になりそう」

『ロックマンのアーマーなら温泉くらいの熱に耐えられるわ。でも長時間浸かっているとダメージを受けるから気を付けて…発掘原発はそこからずっと地下にあるみたいね。どこか下に降りられる場所がないか探してみて?』

プレリーの指示を受けてミッションを開始し、二人は温泉や間欠泉を避けて移動する。

「大丈夫かエール?」

「大丈夫よこれくらい。暑さよりもこいつらが鬱陶しい!!」

こちらに急降下してくるメカニロイドをヴァンはアルティメットセイバーで、エールはモデルHXに変身してダブルセイバーで迎撃した。

そして洞窟の中に入り、間欠泉に気を付けながら先に進むとロープウェイがあったが、温泉が噴き出ている影響からか向こう岸にある。

「向こう岸に行けないね」

「いや、ここから地下に行けそうだ。温泉が止まったら飛び降りるぞ」

温泉の噴出が止まった瞬間にヴァンとエールは飛び降りた。

途中に足場があり、そこに着地するとメカニロイドが一体佇んでいた。

「ガレオン?」

「一体だけだ。さっさと倒して…何!?」

次の瞬間、溶岩がガレオンを飲み込んだ。

あまりにも呆気ない最後に二人は呆然となるが、次の瞬間にメカニロイドの頭部のみが残り、溶岩を纏って獣のような姿となる。

「溶岩を纏った!?」

「恐らくは溶岩を液体金属のように纏えるのだろう。エール、プラズマサイクロンで蹴散らせ。ヴァンはサンダーチップを使ってあの技を頭部に当て、エールのチャージ時間を稼げ」

驚くエールにモデルHが冷静に分析すると、即座に撃破のための指示を出す。

「分かった。はあっ!!」

セイバーを横薙ぎに振るうと電撃を纏ったソニックブームが放たれた。

ソニックブームは見事にメカニロイドの頭部に当たり、感電して動きを止める。

「喰らえ!プラズマサイクロン!!」

そして感電している間にセイバーのチャージを終えたエールはオーバードライブを発動直後にプラズマサイクロンを放った。

強化された電磁竜巻は頭部をズタズタに引き裂き、敵に何もさせないまま破壊した。

「良いぞエール」

「見事だ。オーバードライブを攻撃の一瞬のみに発動させることでエネルギーの消費を抑えるとはな」

「へへ、ありがとうヴァン、モデルH。二人のおかげだよ」

ヴァンが時間を稼いでくれたのもあるし、そもそもモデルHの指示がなければ苦戦していた可能性が高い。

「礼には及ばん。それよりも足場が崩れるぞ」

次の瞬間にモデルHの言う通りに足場が崩れ、ヴァンとエールは落下したが、エールはホバーで、ヴァンはダブルジャンプを上手く使って着地した。

次の足場に着地すると、そこにはガーディアンのメンバーの一人がいた。

「まさか上から来るなんてね…私達はこのエリアに仕掛けられたラップの調査に来たんだ。報告によるとここから先のエリアでは溶岩が流れ出して侵入者を排除してしまうらしいんだ。流れ出る溶岩に触れると、いくらロックマンの状態でもただじゃすまないから注意してくれ!」

「分かった」

「ありがとう!」

苦笑しながら教えてくれた彼に礼を言うと二人はダッシュで駆け抜けた。

「どうかあの二人に赤の英雄の加護がありますように…」

初代司令官が誰よりも信じ続けた赤の英雄が二人を守ってくれるように祈るガーディアンのメンバーであった。

溶岩を避けながらメカニロイドを蹴散らし、シャッターを抉じ開けて次のエリアに入ると、先程のガーディアンメンバーが言っていたように溶岩が流れてきた。

「二人共、急いで!!」

モデルXが二人に言うと、ヴァンとエールはモデルOとモデルHXの高い機動力を活かして溶岩に呑まれないように進んでいく。

すると奥のシャッターを潜り抜けて一息吐き、後ろのシャッターから溶岩が流れる音が聞こえなくなったので、どうやら侵入者がいなくなったと認識したのか排出されたようだ。

「はああ…もうこんな所に来たくないな…」

「同感…」

溶岩が流れるようなエリアになど出来ることなら二度と来たくない気持ちとなった。

奥から二つの巨大なエネルギーを感じるが、何か物音がする。

「戦ってる?」

「…待て、何か聞こえるぞ」

「キャハハハハハッ!!」

「こ、こらーっ!俺の仕事場を荒らすんじゃねえ!!」

「「………」」

シャッターの奥から聞こえてくるのは女の高笑いと男の困ったような声。

どういう状況だと思ってシャッターを潜り抜けると、そこには蝶型のレプリロイドと土竜型のフォルスロイドが部屋を駆け回っていた。

「「ん?」」

自分達に向けられる視線に気付いたのか振り返ると困惑したようなヴァンとエールが見つめていた。

「あーーーっ!見つけた破壊神の器っ!こんなに早く見つけられるなんて滅茶苦茶ラッキーッ!!あんたをさっさと回収して今の人間と弱ーいレプリロイドを燃やしてやるんだから!!」

それを聞いたヴァンとエールの表情が険しくなる。

「やれやれ…今日は客が多いなぁ…おめえらだな?うちらのライブメタル奪って回ってる奴らは…モデルVは見つからねえし、こんな小娘が仕事場を荒らすし、踏んだり蹴ったりだ…こうなったらこのモデルFのフォルスロイド、フランマールの面子にかけておめえらをぶっ倒して、うちらのライブメタル全部取り返したる!」

「ふざけないで、あれはプレリーのお姉さんが作った物よ!あんた達の物じゃない!!」

少なくともモデルH達はセルパンのような者が手にしていい物ではない。

あれはガーディアンの初代司令官が平和のために残したのだから。

「速攻で倒してやる!」

「モデルFのデータは…両腕にあるようだな…そこにあまり攻撃するな」

モデルHの指示を聞きながらエールはダブルセイバーを構えて突撃した。

「お前、復活したイレギュラーだな?」

セイバーを構えながらイレギュラーを見上げる。

「キャハハハッ!アタシにはソル・ティターニャンの名前があるんだけどー?アンタ、チョー気合入ってんじゃん!あ、でも生意気そうな顔はチョーむかつくー、もっとこう、汗とか涙とか、ズルズルに垂らしてさっ!ヒーヒー言って命乞いしてみせてよ!」

「誰がするか、お前を倒させてもらう!!」

ヴァンはサンダーチップを起動させた状態でティターニャンに向かっていった。

「チョーうざいんだけどー!?破壊神の器じゃなかったら燃やしてたのにーっ!!」

火炎放射を放ちながらティターニャンは前進する。

それをかわしながらチャージセイバーで攻撃すると感電して仰け反る。

「キャアッ!?ホントにむかつくーっ!その姿、あいつにそっくりだから余計にむかつくんだけどーっ!!」

「あいつって…モデルZのオリジナルか?」

復活したイレギュラーはモデルZのオリジナルに破壊された者ばかりだそうなので、恐らくティターニャンもモデルZのオリジナルに破壊されたのだろう。

「バラバラになっちゃえ!!」

爆弾を設置して動きを阻害してくるが、ダッシュジャンプで爆弾を飛び越え、オーバードライブを発動する。

「ダブルチャージバスター!!」

バスターショットを構えて電気属性のチャージバスターを二連続で発射すると、一気にダメージを受けるティターニャン。

「キャアアアアッ!!?」

「はっ!!」

感電して仰け反っているティターニャンに回転斬りで追撃するヴァン。

ティターニャンのボディがセイバーで削られていく。

「こんのぉっ!!」

高速回転するブーメランを発射してくる。

オーバードライブを解除してチャージセイバーでブーメランを破壊し、至近距離でチャージバスターを当てる。

「こいつでとどめだ!!」

チャージセイバーで叩き斬ろうとしたが、ティターニャンは大きく上昇してかわした。

「マジで頭に来たっ!!もう破壊神の器とかどうでもいい!こいつで吹っ飛ばしてやるんだから!!」

頭上に巨大な火球を作り出すティターニャン。

「ちょっと!この部屋を吹き飛ばすつもり!?」

フランマールにプラズマサイクロンを当てていたエールが驚く。

「流石のあんたもこれなら終わりよ!!このまま燃えちゃえーっ!!」

「や、止めろーっ!ここを吹き飛ばされたら地下が…いや、ここら一帯が吹き飛んじまうっ!!」

感電しているフランマールも顔色を変えるがティターニャンは知らぬ顔だ。

「キャハハハハハッ!丁度良いじゃん!ここら一帯の人間とレプリロイドなんかみんな吹っ飛んじゃえーっ!!」

「龍炎刃!!」

セイバーのエネルギーが炎のように揺らめき、高くジャンプしながらの斬り上げによって振り下ろす前にティターニャンは両断された。

「あ…れ…何で…アタシの視界…こんなおかしなことになってるの…?まさか、やられちゃったの…?マジで…あり得ないんだけど…っ!?」

両断されたティターニャンは爆発を起こし、火球は使い手が破壊されたことで消えた。

そしてエールの方を見ると、プラズマサイクロンで感電しているフランマールをオーバードライブを発動してる状態でのダブルセイバーでの連続攻撃とソニックブームの攻撃でバラバラにしていた。

「大分俺の力の使い方に慣れてきたようだな。プラズマサイクロンで奴の動きを封じつつ、オーバードライブで強化したセイバーで確実に仕留めるとはな」

「ありがとう、モデルHの教え方が良いからだよ」

「フッ…当然だな」

「なーにがフッ…よ。煽てられると調子に乗るなんて本当に子供ね~キザ坊や」

「そうだぜ、あいつをぶっ倒したことで俺の力も元通りになったからよ。へへっ!あいつなんかには俺様の力は勿体ねーぜ!わりぃがパスコードの修復にちょっと手間がかかりそうだ。もう少し待っててくれよな」

「残るは拙者とモデルLのデータと言うことになるか…気を引き締めよ」

「分かってる、心配しないでモデルP…ねえ、モデルF。力が元通りになったからきっと新しい技が使えるようになったんだよね?」

「おう!俺の技はグラウンドブレイク!地面にいる敵にかなり役に立つぜ!フルチャージ状態でナックルバスターを地面に叩き付けてみな!!」

モデルFXの言われた通りにやると地面から火柱が吹き出し、部屋全体が揺れて天井が崩れてきた。

「あれ?これもしかしてヤバい?」

「エールさん、流石にボロボロの地下室で試すのはヤバかったんじゃないのか?」

「モデルF…」

「戦闘馬鹿…」

「なっ!?おめえらも止めなかったじゃねえか!こういうのは連帯責任って奴だろ!?」

「せめて外に出てから試させようという考えは思い浮かばなかったのかモデルFよ?」

モデルHとモデルLの責めるような視線にモデルFは慌て、モデルPは溜め息を吐きながら呟いた。

「とにかく脱出だ。」

「生き埋めにならないうちにね」

モデルZとモデルXの言葉通りに部屋を飛び出し、奥のトランスサーバーで命からがらガーディアンベースに帰投する二人。 

 

第二十五話 モブ視点と嫉妬

 
前書き
今回の話で、少しの間…休ませてもらいます。

家族のことで少々問題が発生しまして…来週には復帰します!

だからこの作品を読んで下さっている人達には申し訳ありません…! 

 
俺はガーディアンベースで勤務しているメンバーの一人だ。

俺も昔、イレギュラーに襲われて死にかけたけど、ガーディアンの一員だったジルウェに助けられたことで何とか助かった。

まあ、俺はライブメタルの適合者じゃなかったけどな。

俺は自分みたいな奴をこれ以上出さないためにガーディアンに入った。

ジルウェみたいにライブメタルを持って戦えるわけじゃないし、セードルみたいに重火器が使いこなせるわけでも、副司令みたいに頭も良くねえ、トンみたいにでけえ体や馬鹿力があるわけでもねえ、だけど何かしたかったんだ。

そして一番の理由は…。

“司令官、イレギュラー掃討のミッションは終了しました。”

モデルZのアーマーを纏ったジルウェがミッションから帰ってきてガーディアンベースの司令官であるプレリー様にミッション終了の報告をしていた。

ジルウェはガーディアンベースでは最高戦力で、イレギュラー掃討ミッションでは確実にお呼びがかかる。

しかし、声には疲れが感じられる。

無理もねえ、イレギュラー掃討ミッションってことは当然被害者もいる。

きっと今回のミッションでも救えなかった人達がいるんだろう。

いくらライブメタルの力が強力でもジルウェは一人。

行動するにも限界があるし、せめてライブメタルの適合者がもう一人か二人いれば違うんだろうけどな。

“お疲れ様、ジルウェさん。今日もありがとうございます…ごめんなさい、あなたに保護した子供達のお世話をさせているのに、こんなことまでさせて”

プレリー様の麗しい顔が申し訳なさで翳る。

普段ならプレリー様になんて顔させてるんだと突っ掛かりたいところだが、状況が状況だ。

流石に理解出来ない程、俺はガキじゃない。

俺がガーディアンに入った理由はプレリー様だ。

美少女なのに組織の司令官。

司令官なのに俺達みたいな下っ端にも気をかけて下さる方だ。

惚れない方がおかしい。

あ、勿論イレギュラー関連のこともあるから勘違いするなよ?

“良いんですよ。最近あいつらも少し元気が出てきたみたいですしね”

ジルウェは初代司令官からの指示…正確にはその指示を引き継いだプレリー様からイレギュラー襲撃の被害にあった人物を保護してジルウェ・エクスプレスって言う自営業の運び屋を営んでいる。

保護するのが子供ばかりだからガーディアンベースに来る度に子育ての愚痴やら、少しずつ成長していく子供達のことでガーディアンのメンバーに話していた。

ジルウェは戦場よりどちらかと言えば保育所とかそういう所で働いてるのが似合いそうだよな。

子供達の成長を自分のことのように喜んでいるところにそういうのを感じる。

でもジルウェだって最初はこんな風に穏やかじゃなかったらしい。

ジルウェも俺みたいにイレギュラーの被害者で唯一の生き残りだったんだ。

だから最初は荒れていてイレギュラー狩りに誰よりも精を出していたらしい。

それが今ではこんな穏やかになってんだから保護した子供達との触れ合いはジルウェにとって良い方向に向かったらしい。

“それでは、俺はこの辺で失礼します。あいつらも腹を空かせてるだろうし、エール達だけじゃ大変ですから”

保護した子供達には幼いなりにジルウェを手伝おうとする健気なのもいるらしく、急いでジルウェは自分の会社に戻っていく。

あいつ絶対保育士向きだろ、仮就職先を間違えてるよ。

そしてあれから数年経ち、モデルZの対のライブメタル・モデルXが発見され、ジルウェがいつも話題にしていた一人の女の子を連れてきた。

名前はエール…イレギュラー襲撃で家族を失い、更に一年前に兄妹同然の幼なじみを喪った。

最初は自閉気味だったらしいのに今じゃあんなに元気なんて強い娘じゃねえか。

そしてエリアDへのイレギュラー襲撃事件。

エールがガーディアンベースを飛び出してエリアDに向かった。

気持ちは分からなくもないが、実戦経験が少ないあの娘が行くなんて危険すぎだ。

もし死んじまったらお袋さんや幼なじみの犠牲が無駄になっちまうぜ。

俺も地上部隊の一員として出撃したが、やっぱりライブメタルを持つ奴と持たない奴の実力差は大きく、ほとんどあの二人が持っていったから俺達は確実に連携を取って戦うことが出来た。

やっぱり凄えのなライブメタルって、何故にライブメタルは俺を適合者に選んでくれないのか……やっぱり顔か?

すると、俺達の前にモデルZよりも深い赤…真紅のアーマーを纏った子供が現れた。

何だこりゃ?何て言うかこいつから得体の知れない不気味さを感じられる。

傷だらけのジルウェとエールを連れてきて労るようにそっと地面に寝かせたことから悪い奴じゃねえんだろうけど。

“知り合いなのか?知り合いなら…二人を頼む”

隊長に二人を任せる子供…。

む、年上に対してタメ口とは礼儀がなってねえな。

いや、俺も礼儀正しいわけじゃねえけど。

そいつは俺達に二人を任せて今でもイレギュラーがいるポイントへ向かっていった。

俺達は改めて二人の状態を確かめる。

エールは酷い怪我だが、命に関わる程じゃねえ。

だけどジルウェはエールより酷え、どうやったらこんなダメージを受けるんだ?普通なら死んでるぞ。

二人をガーディアンベースに転送して、二人の状態を報告すると俺達はイレギュラーが暴れている次のポイントに向かった。

そしてイレギュラー襲撃からしばらくして、エールが再起して俺達の仲間になってくれた。

ジルウェが戦えなくなってしまったのは痛いが、エールがモデルXとモデルZのダブルロックオン…合体変身で新しい力へと目覚めた。

それからエールは危険度が最も高いミッションに身を投じることになった…。

チッ、あんなか弱そうな女の子が最後の希望だなんて俺達の方が情けないぜ。

でも、何でか最近のプレリー様は様子が変だ。

あの紅い奴の姿をモニターで見て以来様子がおかしいと、オペレーター達から聞いた。

おいおい、まさかプレリー様は赤系統の色が好きなのか?金髪が好きなのか?

するとミッションから帰ってきたエールが例の紅い奴…生きていたらしい幼なじみを連れて帰ってきた。

あの時のジルウェは大層喜んでいた。

そりゃそうだろうな、死んだと思っていた後輩が生きてたんだからな…気持ちは良く分かる。

それにしても顔色が悪い上に凄えボロボロだな…。

……もしかしてあの日からずっとセルパン・カンパニーの奴らと戦ってたのか?…たった一人で?

エールもそうだが、少しくらいは大人に甘えても良いだろうに。

そしてエールの幼なじみであるヴァンが仲間になったことでガーディアンの戦力は大きく増強。

しかし俺には捨て置けないことがある。

それはどことなくプレリー様と良い雰囲気だと言うことだ。

今まで副司令しか入室が許されなかった禁断の地であり、聖域でもあるプレリー様への部屋の出入りを許されたらしい。

何度も色とりどりのぬいぐるみを持ってベースの通路を歩き回るヴァンと時々エールの姿が目撃されたが、け、けしからん!実にけしからん!!

時々プレリー様はヴァン(とサルディーヌ)と一緒にお茶(しかもプレリー様お手製)をしてたりするそうじゃねえか!

しかもエリアFへと向かうミッション前にわざわざ髪ゴムを用意してヴァンの髪を纏めてやったそうだ。

そしてガーディアンベース襲撃の際にはヴァンは颯爽と現れて敵からプレリー様(ついでにジルウェ)を颯爽と助けたらしい。

何で俺の知ってる赤はこういう風に美味しいとこかっさらってくんだよ…。

そしてガーディアンの保養施設ではプレリー様が何と、初めての手料理をヴァンに振る舞ったらしい…プ、プ…プレリー様のて、手料理…っ!ち、畜生~~~っ…!!

血の涙を流す俺に周囲は引いているが知ったこっちゃねぇ。

それから時々施設やガーディアンベースのキッチンで謎の爆発が起こるものの、プレリー様がヴァンに…て、手料理を…振る舞う姿が…目撃…された…っ!!

「ねえ、セードル。どうしてあの人は目から血を出してるの?」

「ああ、気にすんじゃないよサルディーヌ。醜い男の嫉妬さ…あんたはあんな風になるんじゃないよ」

サルディーヌとセードルの会話を聞きながら俺は恨めしげにヴァンを見つめていた…。 
 

 
後書き
プレリーって結構美人だからベースでもファンの一人や二人はいそう。

雰囲気の幼さはありつつも、スタイル良し性格良しの人として悪い部分はないのでヒロインとして充分やっていける…そう言えばZXAのヒロインって誰なんだ?

ZXでは漫画版のこともあってプレリーなんだろうけど…復刊版の特別書き下ろしの二人の雰囲気…良いな 

 

第二十六話 モデルOの侵食

 
前書き
ようやく落ち着いたので復帰します。

 

 
ガーディアンベースの修理が完了し、再び空を飛んだ。

と言ってもスクラップのジャンクパーツで補っているので度々調整が必要となるだろうが、エール達も保養施設でゆっくり出来たので丁度いい骨休めとなっただろう。

しかしヴァンは一人倉庫でコンテナに背中を預けながら座り込んでいた。

“全てを滅ぼせ”

“破壊せよ”

“我こそは真の…”

「(うるさい、いい加減に黙れよ)」

あの忌々しい怨敵のパープリルとの戦い以降、ずっと頭の中に響き渡るモデルOの声。

モデルXが近くにいようが、チップの効力があろうが関係なく響いてくるようになったが、今回は特に酷い。

“破壊こそが救済”

“我は真の救世主”

“我に…よこせ…器を”

「(うるさい…うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい…っ)」

苛立ちながら立ち上がり、倉庫から出て体を動かせば黙るかと思ってトレーニングルームに向かおうと通路を歩いているとプレリーから声をかけられた。

「ヴァン」

振り返るとプレリーが不思議そうに自分を見つめていた。

「どうしたプレリー?」

「ごめんなさい、あなたの姿が見えたからつい……」

どことなく不機嫌そうに見えるヴァンにプレリーは不思議そうに見つめる。

「ヴァン、どうしたの?」

「別に何でもないさ」

“壊せ、この女を”

「そんな風には見えないわ、顔色が…」

「(うるさい…!!)本当に何でもないんだ。トレーニングルームに行きたいからもういいか?」

「………ヴァン、あなた…無理してない…?」

様子がおかしいヴァンを心配して尋ねるプレリー。

「プレリー…」

本当に人のことを良く見ていると思う。

ガーディアンは組織である以上、かなりの人員がいる。

それなのにプレリーは一人一人への気配りは決して忘れない。

初代司令官は…プレリーの“お姉ちゃん”は本当に優れた人格者だったのだろう。

“壊せ”

“邪魔ならば始末してしまえ”

モデルOの声が響く度に甘い破壊衝動が芽生えていく。

その破壊衝動はプレリーに向けられていくのは何となくヴァンにも分かった。

“女の四肢を引き裂け”

“内部の機構を引き摺り出せ”

“この女の眼球を硝子玉に変えろ”

”女の人工肉を、眼球を、電子の頭脳を、人工血液を辺りにばら蒔け”

“この女が貴様によって絶望と恐怖のうちに死んでいく姿を見てみたくはないか?”

「…………」

俯いたヴァンの瞳の色が紅に染まる。

「ヴァ…っ!?」

黙ってしまったヴァンを不思議そうに見つめたプレリーだが、次の瞬間に顔を強張らせた。

表情の変化に気付かないヴァンは狙いをプレリーの喉元に定めた。

いや、騒がれても面倒だから口を塞ごう。

それだと彼女の悲鳴が聞こえないのが残念だけれど。

指先に力が籠る。

この手でプレリーの顔面を掴んでそのまま頭蓋を砕くと、きっと軽快な破砕音が響くだろう。

甘く陶酔しそうな甘美な音色、至上の快感。

「(うるさい!止めろ!!俺はそんなことはしない!!)」

ギリギリで意識を取り戻し、咄嗟に手をずらした先で触れたのはプレリーの頬。

「ヴァ…ン…?」

自分に触れるヴァンを見つめるプレリー。

強張る彼女の頬から伝わる体温が不思議と全身に回っていくような錯覚を覚える。

もしあのまま、衝動のままにプレリーの頭か喉を握り潰してしまっていたら……想像もしたくない嫌な感覚が落ちる。

「何でもない、心配してくれてありがとなプレリー…」

そして足早にこの場を後にするヴァン。

ヴァンの姿が見えなくなった直後に体を震わせながらプレリーは座り込んだ。

あの時のヴァンの発していた物は仲間に向けるような物ではなかった。

まるで、目障りな物を払うかのような…。

「ヴァンに…何が起きているの…?」

不安そうにヴァンが去っていった方向を見つめるプレリー。

不安が胸中を支配するが、オペレーターから通信が入ってブリッジに急いで戻るのであった。 
 

 
後書き
モデルOの侵食が深刻化していくヴァン 

 

第二十七話 データディスクの奪還

 
前書き
ロクゼロ4のミニゲームもやりこんだけど、ゼロ3のミニゲームの方が好きかな 

 
プレリーはヴァンの異変に不安を抱きながらも一日かけて情報を集め、以前のエリアFで敵に奪われたガーディアン調査隊のデータディスクがセルパン・カンパニーの部隊により輸送中であることが分かり、急いでヴァンとエールを呼んだ。

「悪い、遅くなった」

普段と何も変わらないヴァンの態度と姿にプレリーは安堵した。

「もー!コングルの馬鹿!高いとこが駄目なら屋上の草刈りなんて安請け負いしないでよ!!」

どうやら運び屋…草刈りが運び屋としての仕事なのかは置いておいて、どうやら予想以上に雑草が生い茂っていたのかエールは大分苦戦していたようだ。

「俺にインナーに来て欲しいって言うから何事かと思ったら、まさか草刈りなんてな…」

「誰もいない屋上くらいなら平気でしょ?」

二人はアルティメットセイバーとZXセイバーでせっせと草を刈っていたらしい。

英雄と破壊神の力が草刈りに使われることになるとは初代司令官の“お姉ちゃん”も思っては…いや、“お兄ちゃん"も武器で薪を割ったり、草を引き千切ったりしていたから大した問題ではない…か。

“……っ!後残り十本よ!頑張って!”

“頑張れーっ!”

“……了解した………。”

「(ああ、懐かしい…出来ればヴァンには掌の武器を使って欲しかった……って、そうじゃなくて)」

遠い過去の薪割りをしていた自分や二人の姿が脳裏を過ぎったプレリーは一瞬遠い目をしたが、即座に司令官の顔に切り替えた。

「二人を呼んだのは以前、敵に奪われたお姉ちゃんの調査隊のレポートのデータディスクのことよ。」

「前に、救難信号を追っていて見つけたデータの続きか」

「敵の部隊はエリアJにある海底トンネルを使って、データディスクを輸送しているようなの。エリアJへ向かってデータディスクを取り戻して欲しいの。敵の輸送部隊と一緒にライブメタル…モデルLの反応も見つけたわ。あの中にはきっと、重要な秘密が記録されているはずよ。」

「なるほど…私の力が完全に戻るってことね。悪いわねモデルP」

「構わぬ、今は任務を優先せねばならん」

力を取り戻すのが最後となるモデルPに対してモデルLは謝罪するものの、モデルPは気にしていないようだ。

「しかし司令官、エリアJと言えば水中にあるじゃないですか…どうやって向かうんです?流石に酸素ボンベの供給が追い付きませんよ」

水中にあるエリアJに向かうには泳ぐしかないが、人間…ヒューマノイドである二人は水中での行動時間が限られている。

ジルウェはどうやって二人を向かわせるのかが、気になるようだ。

「エリアAにある洞窟と繋がっているらしいの、そこからなら短時間で辿り着けるし、警備もまだ薄いと思います」

「エリアJに繋ぐ洞窟…アタシも運び屋の仕事の途中で見たことある!アタシ、場所分かるよ」

プレリーとエールの言葉にヴァンは頷いた。

「俺もアウターにいた時にそこで隠れていたこともある。」

アウターにいた時、雨風を凌げる場所としてそこを利用していたようだ。

「どうやら行きは問題ないようだな、二人共…気を付けろよ」

「データディスクを回収したらこの小型端末で調べてみて」

「「分かった」」

二人はプレリーから小型端末を受け取ると、ブリッジを飛び出してトランスサーバーに向かう。

「…………ジルウェさん」

「?はい」

二人がガーディアンベースからエリアAの森に転送された直後、プレリーがジルウェに話しかける。

「ヴァンのこと…なんですけど」

「ヴァンが何か……まさかあいつまた失言でもしましたか?あいつ悪い奴じゃないんですが、少々デリカシーが…」

まさかプレリーに対して失言をしたんじゃないだろうかとジルウェは顔を引き攣らせるが、プレリーは首と両手を慌てて振る。

「いいえ、違います!…何か変化はありませんでしたか?雰囲気とか…些細な…」

「いいえ、普段通りでした………いや、俺達と少し距離を取っていたような気がしたような…でもそれ以外は何も…」

「そう…ですか…」

「あの、ヴァンに…何か?」

真剣な表情を浮かべて尋ねてくるジルウェ。

ヴァンの保護者である彼に隠し事はしてはならないだろうと判断したプレリーは前に起きたことを話した。

当然それを聞いたジルウェは絶句する。

「ちょっと待って下さい…ヴァンがあなたを…殺そうとした…?そんな…馬鹿なことが…」

「本当…です…途中でヴァンが踏み止まってくれたから無事でしたけど…」

もしあの時にヴァンの意識が戻らなかった場合、自分は死んでいただろう。

「ですが、あいつはモデルXの力でモデルOの干渉は抑えられているはずじゃ…」

「多分…モデルXの力でも抑制が効かなくなってきたのかもしれません…」

「………そんな、それじゃあ…あいつは…」

最悪の場合はイレギュラーとなる可能性が高い。

「……その時は、私達で全力で彼を助けましょう。彼は私達のために戦ってくれている…だから、ジルウェさん…万が一の時はあなたも力を貸して下さい」

「…勿論です。ようやく再会出来た後輩を、また失うわけにはいきませんからね」

プレリーとジルウェは決意に満ちた表示で頷くと、二人から通信が来た。

『プレリー、エリアJに着いたぞ』

「ええ、分かったわ。ライブメタルの反応はヴァン達がいるエリアから大分離れた場所にあるわ。エール、もしヴァンだけでは進めない場所に出たら助けてあげて」

『うん、分かった。任せて…モデルLもいい?』

『任せなさい、水中でなら誰にも負けないわ』

エールとモデルLの頼もしい声に二人は微笑むと、プレリーは二人に話し掛ける。

「二人共、何があっても私達はあなた達の味方よ。私達はあなた達を信じてる…だから、必ず帰ってきてね」

『?』

『急にどうしたの?』

いきなり言われた二人は疑問符を浮かべていたが、プレリーは微笑みながら口を開いた。

「何でもないの…でも二人に聞いて欲しくて」

『プレリー…』

『大丈夫だ。俺達だってまだ死にたくないし、やらなきゃいけないことだってある。簡単に死んだりなんかしないさ』

『そうだよ、アタシ達でみんなを守るんだから』

ヴァンとエールがそう返すと、プレリーも笑みを浮かべて頷いた。

「二人共、気を付けて」

『『了解』』

そうして通信を切った二人。

プレリーとジルウェはモニターに映るエリアJの海底トンネルを進む二人を見守るのであった。

エリアJの海底トンネルを進む二人だが、今回はエールの…正確にはモデルLXの力が頼りとなる。

水中でも地上と同じように行動出来るモデルOでも水の浮力によって普段よりも大きくジャンプしてしまうため、トゲに接触してしまうことになる。

それをエールに手を引いて泳いでもらうことで何とかトゲにぶつかることなくシャッターに向かうことが出来た。

「ありがとなエール」

「気にしないで…本当に大変なのはここからだと思う」

シャッターを潜ると広い場所に出てメカニロイドがかなりの数がいる。

流石にこの数だとエールに引っ張ってもらうわけにはいかず、別々に動くことになる。

運良く足場はあったので、ヴァンは壁蹴りを使って移動し、エールはそのまま水中を泳いで先に向かう。

途中で合流してメカニロイドも返り討ちにすると、奥のシャッターを潜り抜けると狭い部屋に出た。

青い魚のメカニロイドが飛び出した直後、今まで動く気配を見せなかったメカニロイドが起動して触手が飛び出す。

「あれは…」

「ヴァン、あれは触手が弱点みたい!」

モデルHXに変身して弱点を調べていたエールがそう言うと、ヴァンはオーバードライブを発動した。

バスターショットを構えてセミチャージバスターを連射して触手を粉砕していく。

エールはモデルFXに変身し、二丁のナックルバスターを構えると、軌道を変化させながら触手を撃ち抜いていく。

二人の攻撃によって全ての触手が瞬く間に粉砕されたことで機能停止を起こす。

それにより、奥のシャッターのロックが解除された。

「よし、奥へ進むぞエール」

「ええ」

複数のシャッターを潜り抜けると、再び広い場所に出た。

先程と同じようにヴァンは壁蹴りを駆使して上の足場を利用しながら奥へ進み、エールも同じように泳いで進む。

上と下のメカニロイドを返り討ちにしながら先に進み、安全地帯まで来ると合流する。

「思ったより早く着いたね」

「ああ、プレリー。ライブメタルの反応は?」

『そこのシャッターを潜ればすぐよ…そして復活したイレギュラーもね…』

「そうか…エール、準備はいいか?」

「いつでもOKだよ」

シャッターを抉じ開けると、そこには兎を彷彿とさせるレプリロイドと海月を思わせるフォルスロイドがいた。

珍しく争っている様子はない。

「ファッファッファッ…我らに敵対するロックマンとは君達のことだね。その若さでは我らの理想を理解することは出来まい。若者は大人の言うことを聞くべきだと思うがね」

「データディスクの中身を見られたくないからって隠そうとするのは随分大人げないんじゃない?」

「年寄りを邪魔者扱いするのもあれだけど、年寄りがでしゃばり過ぎるのも問題なんじゃないのか?」

フォルスロイドの言葉を一蹴すると、ヴァンとエールはそれぞれの武器を構えた。

「ファッファッファッ…知らぬ方が良い真実もあるということだよ。儂の名はモデルLのフォルスロイド…レグアンカー。どうやら…君達には厳しい躾が必要なようだ!」

「何が躾だ。笑わせるなよ…お前が復活したイレギュラーだな?」

「そうだ!ようやく来やがったなこのノロマーっ!オイラはあの方に仕えていたチルドレ・イナラビッタ!待たせてくれた礼に少しボコボコにさせてもらうぜーっ!!おい、爺さん!手を貸してやるからオイラが破壊神の器を回収するの邪魔すんなよーっ!?」

「ふむ、この娘の持っているライブメタルは儂が全て回収しても構わんのだな?」

「ああ、そんな能無しの石コロ共なんて興味ねえよ」

「石ころですって…?言ってくれるじゃない…」

「抑えてモデルL、今回はモデルFに頑張ってもらうから」

「仕方ないわね、負けるんじゃないわよ戦闘馬鹿」

「おう!任せときな!!」

闘志を燃やすモデルF。

ヴァンはイナラビッタを見据えると、エールの方を向いた。

「エール、あの小さいのは俺に任せてでかいのを頼む。」

「分かった、気を付けてね」

エールはレグアンカーを見上げると、ナックルバスターを構えた。

「てめえ、小さいって言ったなーっ!?人を馬鹿にしやがって!自分が器だからって調子に乗ってねえか!?そのムカつく面、恐怖で凍り付かせてやるよ!!」

即座にミサイルを発射してくるイナラビッタにヴァンはダッシュジャンプでかわしながらフレイムチップを起動させると、セイバーでのチャージセイバーを叩き込む。

「うぐっ!?」

「喰らえ!」

一方のエールもオーバードライブを発動させながらレグアンカーに攻撃を当てていく。

「ぬうう…伊達に他のフォルスロイド達を破っていないということか…」

レグアンカーは四本のスピアをエールに伸ばし、エールは即座にモデルLXに変身してそれを回避する。

「戦いは体の大きさで決まるものではないわよ…それにしても、何で私の力を持つフォルスロイドはこんな醜い奴ばかりなのかしら…」

「へっ、お似合いじゃねえか…強烈な一撃をぶちかますぜ!」

「メガトンクラッシュ!!」

チャージを終えたナックルバスターによるパンチと火炎弾を共に叩き込み、レグアンカーにダメージを与える。

「爺さん、合わせな!スーパーイヤーショット!!」

巨大な氷塊を発射し、ヴァンとエールを同時に狙うが、二人はそれをジャンプでかわすと、レグアンカーが左右のプロペラを回転させて水流を作り出して二人を引き寄せる。

「「っ!?」」

「うむ、今だ少年よ」

「オラオラァッ!!」

水流に引き寄せられた二人にミサイルが直撃する。

「やってくれたなっ!!」

バスターを構えてイナラビッタにチャージバスターを放つ。

それをイナラビッタはかわすが、それを狙っていたヴァンはダッシュで距離を詰めてセイバーによる回転斬りからの三連擊をお見舞いする。

「ええいっ!」

エールも負けじとオーバードライブで強化したショットでレグアンカーを攻撃する。

そしてレグアンカーが二体の氷龍を発射してきたのでエールはショットで迎撃するが、氷龍はショットをかわしてエールに迫る。

「え!?」

「エール!」

オーバードライブを発動してヴァンはバスターを構えてセミチャージバスターの連射で氷龍を破壊するが、イナラビッタが氷塊を発射した。

「ノロマーっ!」

直撃を受けた二人を馬鹿にしながら壁蹴りで天井に向かうイナラビッタ。

そして天井からイナラビッタが離れた直後にレグアンカーが急降下して部屋全体を揺らして二人の態勢を崩し、次に急降下してきたイナラビッタが地面に着地するのと同時に氷の突起物を飛ばしてくる。

「ふんっ!」

「えいっ!」

ヴァンはチャージセイバー、エールはメガトンクラッシュで氷を砕いて立ち上がると思っていたよりも手強いと感じた。

互いの攻撃が絶妙に噛み合ってヴァンとエールに確実にダメージを蓄積させていく。

「向こうがコンビネーションなら…」

「アタシ達も!行くよ、モデルZ!」

「ああ」

モデルOとコンビネーションを取るなら戦い方が近いモデルZXの方が良いと判断したエールはモデルZXに変身する。

まずはエールがチャージを終えたZXバスターを構え、イナラビッタにチャージバスターを発射した。

「遅っせーよ!このノロマーっ!!」

「お前がな」

背後に回ったヴァンがオーバードライブを発動しながらバスターを構え、至近距離からのダブルチャージバスターを放つ。

「ぐあっ!?」

「龍炎刃!!」

追撃でフレイムチップによって炎属性を得たジャンプしながらの斬り上げはイナラビッタの背中に深い裂傷を刻んだ。

「ていっ!!」

そしてエールはセイバーでヴァンが得意とする回転斬りからの三連擊をお見舞いする。

そして距離を取ると、前後からのチャージバスターがイナラビッタに炸裂した。

「チィッ!!」

レグアンカーが氷龍を発射したが、ヴァンとエールが同時にチャージバスターを発射して氷龍を砕き、ヴァンがイナラビッタにとどめの一撃のチャージセイバーを叩き込んだ。

「うわあっ!?」

チャージセイバーを受けて真っ二つになったイナラビッタ。

「終わりだ」

「ぐ…っ…でもよ、どれだけ足掻いたってお前の運命は変わらねえんだ…いっそのこと破壊神の意志に呑まれちまえば…楽にななれるのによぉ…あいつの力は…あの方の…オ…メ…ぐああああああっ!!!」

「…………」

イナラビッタの爆発を見届けると、レグアンカーに視線を向ける二人。

ここからは殆ど一方的だった。

元々イナラビッタとの即席のコンビネーションで何とか互角に渡り合えていたのだ。

片割れがいなくなれば大した脅威ではない。

「「これで!!」」

モデルFXに再度変身したエールはオーバードライブを発動してショットを連射し、ヴァンもオーバードライブを発動してダブルチャージバスターを発射した。

左右から放たれた高火力の攻撃を受けたレグアンカーのボディが崩壊を始める。

「ぐっ…何故…そこまで戦える…!何故…そこまで命を懸けられる…!……………これが………若さと言う物…なのか…………!」

その言葉を最後にレグアンカーは爆発した。

そして部屋に浮かぶ残骸からデータが飛び出してモデルLに吸い込まれていく。

「あんな気味の悪い奴に私の力を与えるなんて本当にどうかしてるわ。悪いけど、パスコードの修復にちょっと時間がかかるの。モデルVとの対決までには間に合わせるから、ちょっと待っててくれるかしら」

モデルLは文句を言いながらエールとヴァンにそう言うと二人は頷いた。

「ところでモデルL、力が元通りになったってことは新しい技が使えるようになったんでしょ?」

「ええ、フルチャージでさっきの奴が使ったような氷龍を召喚出来るようになったわ。威力はあるし、敵への追尾能力が高いからそれを利用して相手の動きを制限出来るから上手く使ってね」

「分かった、ありがとうモデルL」

そしてヴァンはエール達の会話を尻目に、落ちていたデータディスクを回収した。

『ヴァン…そのデータディスクは…!』

「ああ、あの調査隊のレポートが入っているデータディスクだ。エール、こっちに来てくれ。まずはここを出よう」

酸素ボンベの酸素も心許なくなってきたので、酸素を補充する意味も含めてここを出ることにした。

シャッターを潜って部屋を出て水中から出ると、エールは酸素ボンベを取り出して新鮮な空気を吸った。

「はあーっ、新鮮な空気ってこんなに美味しいんだ」

「特にエールはずっとボンベで呼吸してたもんな…」

ヴァンはプレリーから受け取った小型端末にデータディスクを挿し込むと、あの時のレポートの続きが記されていた。

《セルパンは調査隊を全滅させ、調査隊のデータを全て消去した後、モデルVの欠片と共に姿を消した。だが、イレギュラーにそこまでの知能があったというケースはない…ならば…彼はモデルVによってイレギュラー以外の“何か”になったということになる。そう、モデルVはイレギュラーを超える、恐るべき敵を生み出す力を持っているのだ。我らが盾となっている内に司令官は上手く逃げ切れただろうか…》

『お姉ちゃん…この時はみんなに助けられて逃げられたんだ…』

「良かったなプレリー、お姉さんが生きているかもしれないんだからな」

『ええ…お姉ちゃん…絶対に見つけるから…』

プレリーの声は掠れていたが、ヴァンとエールは気付かない振りをする。

「それにしても、イレギュラーを超えた恐ろしい敵って…」

「セルパンはモデルVの適合者だから、多分、イレギュラーを超えた敵って言うのはモデルVのロックマンって意味じゃないのか?」

「あ、そうか」

レポートで見た内容でさえ、モデルVがとんでもない代物だと分かるので、そう思うのが自然だろう。

「続きを読むぞ」

「うん」

再びレポートの続きを読む二人。

《…それにしても、モデルVの欠片には他の仲間も触れていたのに何故彼だけがこんなことに…?私の記憶が正しければセルパンが他の者とは違っていた点が一つある。彼はイレギュラー襲撃に遭いあがらも、奇跡的に助かった生存者なのだ。彼はその恐怖を振り払うかのように、誰よりも熱心に研究していた。恐らくは、その心の隙をモデルVに利用されていたのではないだろうか…?だが…今となっては、モデルVの目的が何なのか知る術はない。私ももう長くはない…このデータが心正しき者の手に渡ることを祈る…》

「データはこれで終わりだな…まさかセルパンもイレギュラー襲撃の被害者だったなんて…」

憎い敵だが、まさかセルパンも自分達と同じ境遇だったことに驚きを隠せない。

『セルパンは、このデータが外に漏れるのを恐れていたのね。この国の人々が知ったら大変なことになってしまう…』

この国の中心はセルパン・カンパニーだ。

その社長であるセルパンの正体を知ってしまえば確実に大混乱を招いてしまうだろう。
 
『データディスクはミッションレポートと一緒にこっちに送って、このデータは…まだ公開するのは危険だわ』

「ああ、そうしてくれ…取り敢えず、ここから出ようエール…どうしたエール?」

このデータは最低でも全てを片付けてから公開すべきだろう。

立ち上がってエリアAのトランスサーバーに戻ろうとしたが、エールは思い詰めたような表情を浮かべていた。

「あ、ごめん…セルパンもアタシ達と同じようにイレギュラーに襲われて生き残っていた…もしかしたら…アタシもセルパンみたいになってしまうかもしれないってことなんじゃ…痛っ!?」

馬鹿なことを言うエールにヴァンはチョップを頭に叩き込んだ。

オメガナックルのエネルギーも込められていたので、かなりの威力があったのか痛みに思わず頭を押さえたまま屈んでしまうエール。

「馬鹿」

「痛たたた…いきなり何すんの!?」

涙目でヴァンに掴みかかるエールにヴァンは溜め息を吐いた。

「お前こそ何してるんだよ馬鹿」

「ま、また馬鹿って言ったわね!?」

殴りかかるエールだが、ヴァンにかわされてしまう。

「お前がセルパンみたいになるわけないだろ。お前はお人好しで頑固で時々憎たらしい俺の幼なじみだ。お前のことは誰よりも知ってる自信がある。お前がお前である限り、お前はセルパンみたいにならないさ……寧ろお前がセルパンだったら、こんなややこしいことになってないって」

「ヴァン……って、それ!どういう意味!?それから憎たらしいって何!?」

「ああ、それは俺はお前が憎いからだよ」

「え!?」

『ヴァ、ヴァン!?』

『おい、ヴァン…それって…』

まさかのエールが憎い発言にエールとプレリー、ジルウェの声と表情に緊張が走る。

「………運び屋時代、俺が重たい荷物を運んでる時に背中を叩いたりとかの悪戯してくるわ…」

「『『え?』』」

「……他には夏の暑い日の中、俺が汗だくで倉庫の整理をしている中、冷たいジュース飲んでるわ…外で飯食う時に、俺のホットドッグやハンバーガーにマスタードを大量にぶっかけるわ。運び屋全員で海に行った時はまだ着替えていないなのに水をぶっかけられるわ、そしてビーチバレーしてた時は服を乾かしながら昼寝してた俺の顔面にビーチボール叩き込まれるわ。買い物に付き合ったら大量の荷物の荷物持ちをさせられるわ。クリスマスの時はバイクが故障して疲れながら何とか帰ってきた俺に雪玉を投げるわ…秋は特に楽しみにしていた焼き芋や栗とか一番でかいのを横取りしやがって…春の時は…」

運び屋時代とそれ以前の出来事を思い返し、ブツブツブツブツとエールへの恨みを述べると唖然となる三人。

「後はお前が昔、悪戯で先輩の椅子に音が鳴るクッションを置いて客と交渉しようとした先輩に恥をかかせたりとか…あ、これは俺は関係ないか」

「ちょっ!?」

『エール、ガーディアンベースに戻ったら後で俺の部屋に来い。ヴァン、その時の話を後で詳しくな』

どことなく冷たい声でエールに言うジルウェにエールは慌てる。

「ちょ、ちょ、ジルウェ。ごめん!ちょっとヴァン!余計なことを言わないでよっ!!」

「とまあ、こんな感じでお前がセルパンみたいになるなんて無理だよ。俺にとってお前は憎たらしくて大事な妹分だな」

「もう少しまともな話をしてよ!そしてアタシが下!?どう見てもアタシがヴァンのお姉さんでしょ?ねえ、二人共?」

『ノーコメントだ』

『ごめんなさいエール』

それだけ言うと二人からの通信が切れた。

「ほら、帰るぞエール。ガーディアンベースで先輩のありがたーいお説教が待ってるぞ」

「そ、そんな~」

ガックリしながら歩き出すエールにヴァンは苦笑した。

「(………それにもしセルパンみたいになるって言うなら…多分、俺の方だろうしな)」

一時はプレリーを殺しそうになったくらいにモデルOに体を奪われそうになったのだ。

もしセルパンのような存在になるとしたら、エールではなく自分であろうと言う確信がヴァンにはあった。

「(エール…もし俺がイレギュラーになったら…その時は…)」

酷いことを考えている自覚はあるが、もし自分がイレギュラーになったら止められるのは同じロックマンであるエールだけ、勿論そうならないようにはするつもりだが、未来のことなど分からないのだから。 

 

第二十八話 見守る者達

 
前書き
コングルって本当に何でガーディアンに入ったんだろうか 

 
ミッションから帰ったエールは問答無用でジルウェにこってりと説教されて不貞腐れていた。

休憩スペースで頬を膨らませながらジュースを啜る彼女の姿にプレリーは思わず苦笑してしまう。

「何を怒ってるんだよエール?大昔に絶滅したフグって毒魚みたいな顔をして」

「誰のせいだと思ってんの!?」

怒られた元凶であるヴァンを睨むエールだが、肝心の睨まれているヴァンはどこ吹く風である。

「さあ、誰だろうなー?」

「むうううっ!!」

ヴァンの態度に更に膨れるエール。

運び屋時代ではどことなくエールが優位だったが、一年間アウターの荒波に揉まれたヴァンとは現在では力関係が逆転していることにジルウェは苦笑していた。

「本当にあの二人は兄妹みたいに仲が良いんですね…」

「司令官、ええ…あいつらは俺に引き取られる以前から一緒にいましたからね」

「それにしても、ヴァンの身に付けているあのペンダント…元々ジルウェさんの物じゃ…」

あのペンダントはジルウェがガーディアンベースで勤務していた時から身に付けていた物であり、ジルウェもあのペンダントを大切にしていたはずだ。

「ええ、あいつが俺に引き取られてから三年くらい経った頃でしょうか…エールのことを元気付けながら、あいつは弱いところを見せたくなくて…いつも人気のない場所で泣いていたんです。」

あの時のヴァンはまだ十歳にもなっていない子供だ。

まだまだ親に甘えたい盛りだったろうに、イレギュラーの襲撃によって家族を目の前で殺された。

たった数年で完全に立ち直れるはずがないのだ。

“母さん…寂しいよぅ…”

“………また一人で泣いてるのかヴァン?”

目を閉じればレプリロイドであることもあって昨日のことのように思い出せる。

塞ぎ込んでいたエールを元気付けるために、彼女の前では明るくしていたヴァンだが、エールや同じく自分に引き取られた年下の子供達…謂わば弟分や妹分が眠った時に一人で蹲って泣いていたヴァン。

“だって…だって…”

“ほら、顔を上げな”

そして自分はヴァンに、自分が幼い頃から身に付けていたお守りのような物であるペンダントを手渡した。

“ペンダント…お前にやるよ。”

“それ…何時も先輩が着けてる…”

“辛いことや悲しいことがこの先あったら、それを見て思い出すんだ”

ペンダントを受け取ったヴァンの頭を撫でながら自分は更に言葉を続けた。

“お前は一人じゃない。俺やエール…みんながいるってな。だから泣くな、頑張れヴァン”

あの日から徐々にヴァンの一人で泣く回数が少なくなってきて、運び屋から他の仕事を選んだり、自分から自立していった年長組の代わりに運び屋の年長組の一人としてエールと共に頑張っていった。

…あの一年前の事件までは。

「そうだったんですね…ヴァンが一年間、一人でも戦ってこれたのはジルウェさんのペンダントと言葉のおかげだったんですね…」

「ええ…あの時は、まさかこんなことになるとは思っていませんでしたが…」

あの時、本当に小さかったヴァンが…今ではエールと同じでセルパン・カンパニーとモデルVの脅威に対する希望なのだ。

まだ子供の域を越えていない二人がだ。

「もし、こんな体じゃなければ…あいつらと一緒に戦ってやれるのにな…」

外見は普通でも、内部にガタが来ているためにジルウェは戦える体ではないのだ。

二人の家族の代わりに自分がヴァンとエールを守ると、二人を引き取った時に誓ったはずなのに。

「よう、辛気臭い顔してるなジルウェ」

「あんたがそんな顔してるとあいつらが心配しちまうよ?ほら、眉間にこんなに皺寄せちゃって」

「トン…セードル…」

大柄な体格のガーディアンメンバーのトンがジルウェの肩に手を置き、トンの後ろから赤髪の女性メンバーのセードルが苦笑しながらジルウェの眉間を指で突ついた。

「まあ、分かる気はするけどね。争いを起こすのは何時だってセルパンみたいな身勝手な奴さ。そして被害を受けるのは決まってヴァンやエール、そしてサルディーヌみたいな優しい子供達だよ。」

カルレも飲み物を片手に此方にやって来た。

「で、ですが…ぼ、僕達では…フォルスロイドの相手は…荷が重いです…し…」

「いや、それ以前にお前は怖がって部屋に引き籠ってんだろうがコングル」

スコンブレソスがコングルの言葉に呆れながら言うと、全員が再度喧嘩する二人を見つめた。

「儂らがどう思おうと敵はそんなことお構いなしに攻めて来る。雑魚なら儂らでもどうにかなるが、フォルスロイドクラスとなるとヴァンとエールに頼らなきゃならん…子供に頼らなきゃならないとは…揃って無能な大人達だ…」

トンが二人を見つめながら呟き、それを聞いたこの場にいるメンバーが俯いた。

「…………」

プレリーはそんな会話を聞きながら昔のことを思い返していた。

まだ“お兄ちゃん”が目覚めたばかりの頃、“お姉ちゃん”が率いていた組織は戦闘は素人の集まりだったこともあり、“お兄ちゃん”にばかり負担がかかっていた。

あの時の“お兄ちゃん”を見送っていた“お姉ちゃん”達も今の自分達と同じ気持ちだったのだろうか…。

「(お姉ちゃん…お兄ちゃん…お願い…二人を守ってあげて…)」

今はここにいない姉と兄にプレリーは願った。

「ところでエール。これからトレーニングルームで特訓に付き合ってくれないか?新しい技が浮かんだんだ。」

「それ、アタシに実験台になれってこと?」

「まあ、身も蓋もない言い方をすればな。実験台になってくれエール」

「少しはオブラートに包んで言いなさいよっ!」

幼なじみだからとは言え、少しは考えて発言して欲しいと思わずにはいられないエールであった。

後に氷属性の技であるアークブレードを編み出し、直撃を受けて氷付けになったエールの姿が発見された。

「悪いエール」

「ううう…寒…寒い~ヴァンの馬鹿~…」

何とか救助されて毛布に包まり、温かい飲み物を啜るエールであった。 

 

第二十九話 研究所の防衛

 
前書き
武装にツッコミたいフォルスロイド。

何で単機に核ミサイル装備させてるんだ… 

 
ヴァンはプレリーの指示を受けてインナーの近くに現れたイレギュラーの掃討をしていた。

「…………」

アルティメットセイバーを振るうだけでイレギュラーはあっさりと沈んでいく。

モデルOに取り憑かれたばかりの時は使われていると言う感覚が抜けなかったが、今では自分とモデルOの動きが完全に一つになっている錯覚さえ覚えた。

そしてイレギュラーを斬る度にどうしようもない快感を覚える自分もいる。

「ここらのイレギュラーは全て…倒したな……今までよりイレギュラーの数が多い気がするな」

トランスサーバーに戻り、司令室のブリッジに行き、プレリーの部屋に入る。

「お疲れ様、今日は良い茶葉が手に入ったの」

プレリーが淹れてくれたのは紅茶だった。

一口啜ると砂糖が入っていて少し動いた体に心地良い気がして、何らかのハーブが使われているのか香りを嗅ぐと心が落ち着くような気がした。

「美味い…」

「良かった…」

安堵したプレリーの表情にイレギュラー掃討完了の報告をして、感じたことを伝える。

「何というか…今までよりもイレギュラーの数が増えているような気がするんだ。」

「やっぱりそうなのね…エールに向かってもらった場所にいたイレギュラーもかなりの数なの…セルパンがモデルVの本体に近付いていると言うことなのかしら」

「エールは?」

「ヴァンより少し前に終わらせて戻ってきているわ」

「そうか…あいつも強くなったよな」

「ええ、ライブメタルの力を…ダブルロックオンの力を完全に使いこなして来ているわ」

最初はライブメタルの力に振り回されていたエールも今では完璧に力を使いこなしている。

しかもまだモデルPの完全修復が終わっていないのだから、まだまだエールには強くなる余地がある。

「一体どこまで強くなるんだろうな」

強くなっていくエールに対して頼もしいと思うが、楽しみにしている自分がいる。

正直、彼女の力の矛先が自分に向けられる可能性がある以上、もっと強くなければ楽しめない…そこまで考えて何を考えているのかと頭を横に振る。

「(何で俺がエールと戦わないといけないんだよ)」

正直時々、自分とモデルOの思考の境界が分からなくなることがある。

今もまるで最高に強くなったエールと戦うことが自分の本心であるかのように。

「どうしたの?」

「いや、何でもない。サルディーヌは?最近相手してやれてないなって…」

「あの子は大丈夫よ。全てが終わったらたっぷりとあの子の相手をしてあげましょう」

そう言って微笑むプレリーに、全てが終わった時に自分がいるのかと考えながら頷き、部屋を後にしてプレリーがブリッジにエールを呼ぶとミッションを言い渡す。

「エリアLで古い研究所らしき施設を発見したの、施設の構造はモデルXが発見された初代司令官の研究所と似ていて、ライブメタルに関する手掛かりが残されているかもしれないの。二人共、エリアLに向かって研究所にあるデータを回収してもらえないかしら」

「エリアLってどうやって行くの?」

「そうね…エリアHの紫の扉を通れば短時間で辿り着けるはずよ…以前大型メカニロイドを倒した場所になかったかしら?」

「あったな、そう言えば」

エールの問いにプレリーがエリアLまでの最短ルートを教えると、ヴァンも頷いてエールと共にブリッジを出ようとした。

「あ、待って、エリアLには特殊な電波兵器があるの。スコンブレソスが気付け薬を持っていたから彼から譲ってもらってね」

「「了解」」

因みにスコンブレソスは男女差別を地で行く人物であり、エールの倍のEクリスタルを譲ることになった。

後でこのことは必ずプレリーに報告しようと心に誓うヴァンであった。

まずはエリアAに向かい、そこから遊園地のあるエリアHに向かって遊園地に入る。

そして復活した巨大メットールを破壊して紫の扉を発見した。

「多分この扉だな」

「何で遊園地の近くに作ったんだろ?」

「さあな」

いや、遊園地の近くだからこそ気付かれないと思ったのかもしれない。

二人は扉を潜って先に進むと研究所らしい場所に出た。

しかしここでは大規模な爆撃が行われており、絶え間なく爆音と地響きが起きている。

『大変よ!敵がそのエリアに攻撃を始めたわ!このままじゃ研究所に残っているデータや施設を破壊されてしまう!データが残されている部屋はその先にあるはずよ!急いで!』

「全く、セルパン・カンパニーの連中は働き者が多いことで」

「何でその労働力をもっとマシなことに使わないのかな?」

プレリーからの通信にヴァンとエールは辟易したような表情を浮かべながら研究所内を駆け抜ける。

道を塞ぐコンテナなどの障害物を壁蹴りで突破し、ヴァンがバスターショットを引き抜き、ドラム缶をショットで壊していく。

そしてエールはモデルHXに変身し、上空のリフターに乗ったメカニロイドをエアダッシュとホバーを駆使してダブルセイバーで両断しながら進んでいく。

二人が上と下の敵を請け負うことでスムーズに進んでシャッターを抉じ開けて更に奥へと進んでいく。

「あれが、プレリーの言っていた電波兵器か?」

この通路にはいくつかのアンテナがあり、青い電波と赤い電波を発していた。

『そうだ。俺も昔あれで痛い目に遭ったからな…あの電波を受けると体の感覚がおかしくなって思うように進めなくなる。スコンブレソスから気付け薬を貰ってるだろ?あれを飲めば一回電波を受けてもすぐに回復出来る…後はアンテナに攻撃を当てれば少しの間だけ機能停止するぞ』

「なるほど、ありがとうジルウェ」

早速モデルZXに変身してZXバスターを構えながらヴァンと共に駆け抜けるエール。

メカニロイドを破壊しながら電波を浴びないようにアンテナに攻撃を当てながら進んでいくが、途中でエールが青い電波を浴びて正反対の方角へ進んでしまう。

「エール、気付け薬だ!」

「あ、ありがとう……に、苦~っ!!」

渡された薬を早速飲んだが、あまりの苦さにエールのおかしくなっていた方向感覚が一発で治った。

そのあまりの苦そうな表情を見たヴァンは絶対に電波を浴びないと心に誓った。

電波を浴びないように気を付けながらメカニロイドを迎撃し、エールがこのエリアの最後の一体をZXセイバーで破壊する。

そして奥のシャッターを潜ると、空からミサイルが降り注いでいる。

上を見上げるといくつかの飛行艇があり、バスターで撃ち墜とそうとしても完全に射程外なのでこのまま進むしかない。

「あいつら本気でここを壊すつもりなんだね」

「ここにいるフォルスロイドを倒せば静かになるだろ…行くぞ」

「………ねえ、ヴァン。何かどんどん口数が少なくなってない?」

「は?」

「何て言うか…時々…ヴァンの雰囲気がガラリと変わることがあるからさ…」

不安そうに言うエールにヴァンは動揺を隠しながら笑った。

「悪い、そろそろセルパンとの戦いが近付いているから緊張してたのかもな。心配させたなら悪かったよ」

「そっか、ならいいの」

そう言ってミサイルをかわしながら進む二人。

しかし、量が量なのでアイスチップを起動して空中での単発回転斬りを繰り出すと氷属性の衝撃波を広範囲に放った。

「アークブレードの攻撃範囲ならミサイルを破壊出来るし、属性を持たせれば空中の敵も氷付けにして叩き落とせる。」

「後はアタシが!!」

氷付けになったメカニロイドをエールがセイバーとバスターで破壊しながら途中のアンテナの電波に当たらないように気を付けながら攻撃を当てつつ進んでいく。

障害物もアークブレードの衝撃波で破壊されていき、エールはヴァンが氷付けにしたメカニロイドを破壊しながら追いかけていくと、シャッターの前に出た。

「大丈夫かエール、まだ走れるか?」

「平気よ!それよりも急がないと!!」

シャッターを抉じ開けて奥に進むと、先程と同じような光景が広がり、ヴァンがアークブレードでミサイルとメカニロイドを蹴散らし、途中のトゲ地帯は敵のリフターを利用して進んでいく。

「……強い力を二つ感じるな」

「うむ、片方は拙者の力のようだ」

ヴァンが奥のシャッターから感じる強い力はどうやらモデルPのフォルスロイドのようだ。

そしてもう片方は復活したイレギュラーなのだろう。

「よし、だったらモデルPの力を取り戻しちゃおうか」

フォルスロイドがいるなら寧ろ好都合だ。

倒してモデルPのデータも回収してしまおう。

シャッターを潜り抜けると、サイ型のフォルスロイドと蟷螂型のレプリロイドが争っていた。

フォルスロイドの発射する爆弾やミサイルをレプリロイドは軽々とかわしながら両手の鎌で傷をつけていく。

「ふん、この程度では俺を倒せんぞ」

「ハッ!その威勢がどれだけ保つか楽しみだな…!」

「おい」

「「ん?」」

ヴァンの声に戦闘を中断して振り返る二体。

「あんた達がモデルPのフォルスロイドと復活したイレギュラーだね?」

「ギチギチギチ…!破壊神の器か…騒がしい野郎の相手が終わったら探そうと思っていたがツイてるぜ…俺はあの方に仕えていたデスタンツ・マンティスク!そこの女を細かく刻んでからお前を回収してやる…!」

「来たな…ガーディアンに与する愚かなロックマン共…ここのデータは俺様の体内データディスクに全て記録した。後はお前達とこの目障りな奴ごとこの部屋を踏み潰してしまえば全て終わりだ。俺様の名はモデルPのフォルスロイド、プロテクタス!我らの理想を阻む者はこの俺様が全て踏み潰してやる!」

「……このでかいのは俺がやるからエールはもう一人を頼む」

「分かった、任せて」

プロテクタスと名乗ったフォルスロイドと戦って無傷と言うことは、機動力が高いと言うことなのだろう。

セイバーを構えながら何時でもチャージバスターを撃てるようにしておきながら突撃する。

「………随分とでかいな…頑丈そうだし……………試し斬りがいがありそうだ…」

目の色が紅く染まり、凶悪な笑みを浮かべるヴァンにプロテクタスは思わず冷たい物を感じた。

「(な、何だこの殺気は…!?俺様がこんな小僧に怯んだというのか…!?)ええい!舐めるな小僧!!」

感じた恐怖を振り払うようにプロテクタスは爆弾とミサイルを発射した。

「そらよ!」

鎌を高速回転させながら放ってくるマンティスク。

それをかわしてバスターを構えてチャージバスターを発射するが、片方の鎌で両断されてしまう。

「こいつっ!」

バスターが駄目ならチャージセイバーで攻撃するが、それをジャンプでかわして壁に張り付くとこちらに急降下してくる。

エールはそれをモデルHXのエアダッシュでかわしてプラズマサイクロンで着地したマンティスクを攻撃する。

「ギチギチ…やるじゃねえか人間の癖にな…っ!」

「もう聞き飽きたよそれ…人間だからって馬鹿にしないでくれる?確かにレプリロイドと比べれば出来ないことが多いかもしれないけどさ…!」

両手の鎌で斬り掛かるマンティスクをダブルセイバーで受け止め、受け流しながら反撃に転じる。

「セルパンやあんたみたいな奴からみんなを守りたいと思う気持ちは誰にも負けない!」

「ほざくなよ小娘!」

距離を取って鎌を発射したマンティスクに対してエールはモデルPに呼び掛ける。

「モデルP、行くよ!」

「うむ」

モデルPXに変身するのと同時にオーバードライブを発動してシャドウダッシュを駆使してマンティスクの背後を取り、クナイ投擲からの十字手裏剣が炸裂する。

「ぐおっ!?」

「畳み掛ける!!」

モデルZXへと変身するとバスターを構え、チャージバスターからのセイバーでの三連擊をお見舞いした。

「調子に乗るなよっ!!」

マンティスクは近くのスクラップを鎌で両断しながらエールに飛ばす。

「モデルF!」

「任せな!!」

ナックルバスターを構えてショットを連射してスクラップの破片を破壊する。

「ちぃっ!!」

マンティスクは鎌でエールを両断しようと直接攻撃を仕掛けるが、即座にモデルLXに変身してハルバードで受け止める。

「モデルL!!」

「分かっているわ」

オーバードライブを発動し、ハルバードから放たれる冷気がマンティスクの体を凍らせていく。

「か、体が…っ!?」

「モデルX!!」

エールの基本モデルとなるモデルXに変身し、チャージをしながらXバスターを構える。

「チャージ完了!」

「ダブルチャージバスター!!」

必殺のダブルチャージバスターがマンティスクの胸を貫いた。

「お、俺が…人間如きに負けるのか…!?あり得ない…嫌…だ…死にたくない‥死にたくないぃぃ‥!ギチッ‥ギギギギギギーーーーッ!!!」

エールはマンティスクの爆発に巻き込まれないようにダッシュで離れた。

そして一方、プロテクタスと戦っているヴァンは後一歩と言うところまで追い詰めていた。

頭部をセイバーでズタズタにされてよろめきながらもプロテクタスはヴァンを睨み付けていた。

「ぐ…ぬうううう…こんな小僧に俺様が…っ!」

「…………弱いな、お前」

紅い瞳でプロテクタスを見据えながら無機質な声で呟くヴァン。

「調子に乗るな小僧!こいつを喰らってもその減らず口が叩けるか!?」

ミサイルの発射体勢に入ったプロテクタスだが、ヴァンはオーバードライブを発動し、拳を握り締めてオメガナックルのエネルギーを極限まで集中させる。

「裂光霸」

地面を殴り付けた瞬間に無数の光が降り注いでプロテクタスを貫き、そして発射寸前のミサイルが破壊されたことで大爆発を起こした。

煙が晴れると無傷のヴァンが無表情で佇んでいたが、エールが近付いたことで瞳の色が紅から翡翠に戻る。

「ヴァン…大丈夫!?」

「エール…あ、ああ…大丈夫だ。」

「大丈夫なわけないでしょ!?爆発をまともに受けたじゃないの!後で医務室に行きなよ!!」

「分かった分かった…それより…」

プロテクタスがいた場所にデータの塊が浮かび、それはモデルPへと吸い込まれていく。

「どう?」

「うむ…失われた力を取り戻すことが出来た。しかし、取り返したパスコードは修復にしばしの時を必要とする。来るべき時がきた時、パスコードをお主達に託そう」

モデルPも力を取り戻したことで全てのライブメタルが完全体となったので、後はパスコードの修復を待つのみだ。

ヴァンは近くに落ちている二枚のデータディスクを回収して、小型端末に挿し込むが、まるで読めない。

「……駄目だ。破損が酷すぎて読めない…少しやり過ぎたからな」

頑丈なディスクだから原型は保てているが、内部データが破損してしまっており、内容がさっぱり分からない。

『ガーディアンベースでなら修復出来るかもしれない。ミッションレポートと一緒に、こっちに送ってもらえるかしら?』

「分かった。近くにトランスサーバーがあればいいんだけどな」

奥のシャッターを抉じ開けて進むと、トランスサーバーがあり、早速ミッションレポートと共にデータディスクを送った。

そして二人もガーディアンベースへと帰還した。 
 

 
後書き
もうほとんどヴァンとモデルOの意識の境界線がないです 

 

第三十話 時間の合間に

 
前書き
寝坊してしまった。

許してください 

 
ガーディアンベースに帰還したヴァンとエールはプレリーから労いの言葉を貰った。

「六つのライブメタル…ついに揃ったわね。これでセルパン達と渡り合えるようになったかもしれないわ。お疲れ様二人共…あなた達が回収してくれたデータディスクは急いで修復してるから、それまでの間は体を休めていてもらえる?」

「良くやったなお前ら…お前らのおかげでここまで来れたんだ。後は来るべき時まで体を休めておけ…肝心な時に倒れたんじゃ話にならないからな」

プレリーとジルウェの言葉にヴァンとエールは頷く。

「…エール、少し付き合ってくれないか?」

「トレーニング?今日くらい休んだら?」

「いや、そうじゃない。エリアAに行こう…セルパン・カンパニーのビルが見えるあの場所で」

「………分かった」

ヴァンのやりたいことが分かったのだろう。

エールは頷くと一緒にブリッジを出た。

「先輩、バイク借りるぞ」

「ああ、壊すなよ?」

「イレギュラーに襲われなきゃね」

トランスサーバーに置かれてあるジルウェのバイクを借りて装置にまで押していき、エールも自分のバイクを押して装置にまで運んでいく。

そして座標をエリアAに指定して転送すると、バイクに跨がってトランスサーバーの部屋から飛び出した。

「…………」

エールは自分の前を走るジルウェのバイクに乗るヴァンの背中を見つめていた。

何と言うか…モデルOのアーマーの配色があってかなり赤いバイクで走る姿が様になっている。

「エール、イレギュラーだ」

「あ、うん」

バイクの騒音に反応したイレギュラーが飛び出し、ヴァンはアルティメットセイバーを抜くと擦れ違い様に両断した。

エールもZXセイバーを抜くと、ヴァンと同じように擦れ違い様に両断していく。

こうして改めてエールは不思議な気分になる。

昔はただ怯えて逃げるだけの対象だったイレギュラーが自分がセイバーを振るうだけであっさりと破壊されていくのがだ。

そして目的地までバイクを走らせると、目的地にすぐに着いた。

「やっぱり良いな、新しいバイクは…前のオンボロはいつ止まるのか分からなくて僅かなことにもビクビクしてたからな」

「でしょー?アタシも初めて新しいバイクに乗った時、思わず感動しちゃった。それにしてもヴァン、赤いバイクに乗るの様になってるじゃん」

「そうか?」

「うん、昔なら絶対に似合わなかった」

「怒るぞ」

遠慮のない言い合いをするヴァンとエール。

こうして穏やかに言い合えるのは本当に久しぶりな気がする。

「………ここから見える景色は全く変わらないな」

「うん、あの時と全く同じ…変わらないね」

変わったのはあの時と違って自分達がロックマンと言う強大な力を手にしているということだけだ。

「そう言えば助けた人達はどうしてる?」

「ほとんどの人達は元気に暮らしてるよ…ただ、トラウマになった人もいて、家から出ない人もいるみたい…どうやら街の人達にも薄々気付いている人がいるみたい。セルパン・カンパニーが何か悪事を働いてるんじゃないかって」

「そうか…」

無言になって景色を見つめるヴァンとエール。

あの頃と全く変わらない景色でも、見つめている自分達の気持ちが変わればこんなにも違うように見える。

「ライブメタルは揃ったし、後はパスコードの修復を待つだけ。待ってなさいセルパン!絶対にぶちのめしてやるんだから!!」

「そうだな、今までの借りを数十倍にして返してやろうぜ」

セルパン・カンパニーのビルを指差しながら言うエールにヴァンが同意する。

「勿論、今のアタシとヴァンなら絶対にセルパンなんかに負けないんだから!!」

ライブメタルは全て揃った上にヴァンもいるのだから負ける要素などないとエールは確信する。

「モデルV本体の力がどれだけの物なのかによるけどな……なあ、エール…もしも…俺が」

イレギュラー化したらお前が俺を倒してくれ。

そう言おうとしたが、言葉が出なかった。

「どうしたの?」

不思議そうにエールがヴァンを見つめるが、ヴァンは少しの沈黙の後に口を開いた。

「…………いや、何でもない。そろそろ暗くなってきたし…今日はもうガーディアンベースに戻って寝よう」

今こんなことを言ってもエールを不安にさせるだけだ。

不安にさせてエールがやられたら大変なことになる。

「そうねー、アタシももうクタクタ…今日はベッドに横になった瞬間に寝れそう」

「居眠り運転だけはするなよー」

「するわけないでしょ!どれくらいバイクに乗ってると思ってんの?」

軽い口喧嘩をしながら二人は再びバイクを走らせてトランスサーバーのある場所に向かうのであった。

ガーディアンベースへと戻り、二人は疲れを取るようにぐっすりと眠った。

そしてプレリーはフルーブからの通信を受けて、比較的破損が軽かった一枚目のデータディスクを受け取った。

「ありがとうフルーブ、早速中身を確認してみるわね」

部屋に戻って早速データディスクの内容を読むと、それはライブメタル・モデルVの正体に関するレポートであった。

モデルVの正体はプレリーが幼い頃…“お兄ちゃん”や“お姉ちゃん”が健在だった頃に存在した兵器だったのだ。

プレリーは黙々とレポートを読んでいく。

しばらくして全てを読み終わったのか、プレリーはコーヒーを啜った。

「まさかモデルVの正体がお兄ちゃんが壊した衛星兵器の残骸だったなんて……」

ライブメタル達から話を聞いて何となくモデルVのオリジナルについては見当はついていたが、流石にモデルVの基となった物には驚いた。

当時のことを思い出したのか、プレリーの声には疲れが混じっていた。

宇宙空間で崩壊していく衛星兵器…そしてその残骸による流星。

今でもあの時のことは昨日のことのように鮮明に思い出せる。

“お兄ちゃん”がしたことは結果的に後の世にイレギュラーを生み出すことだったのだろうか?

いや、そんなことは決してない。

彼がいたからこそ、今の人間とレプリロイドが共存する世界が生まれたのだから、彼のしたことは決して間違ってはいない。

「そうだよね、お姉ちゃん…」

プレリーの呟きは静かに部屋に響いて、消えていった。 

 

第三十一話 モデルVの正体

ヴァンはどことなく不貞腐れたような表情でテーブルをトントンと指で叩いていた。

エールに髪を弄られている同じ立場のジルウェも苦笑しつつも、久しぶりに見られたヴァンの年相応な表情にホッとしていた。

今まで思い詰めた表情を浮かべることが多く、最後にヴァンが笑ったのは何時だったろうか。

プレリーから一つ目のデータディスクの修復が完了したので、部屋に来て欲しいと言われたのだが、ヴァンが部屋に入室した途端にヴァンの髪が痛んでいることに気付いて椅子に座らされた。

「おい…プレリー…まだか?」

腰にまで届く金髪を触れられて落ち着かないヴァン。

この髪はモデルZXのように髪を模したコード…オプションパーツではなく、ヴァン本人の髪が変化した物なのだ。

モデルOと一体化した影響なのか、髪は例え切られようが焼かれようがすぐに元に戻ってしまう。

一度特訓中にエールに髪を斬られても一瞬で元通りになった時は流石にエールは驚いた。

「後少しだからジッとしてて…」

ヴァンの嫌そうな視線にも気に掛けず、プレリーは微かに水分を含んだヴァンの髪を丁寧に梳き、一本一本毛先まで真っ直ぐに伸びるまで櫛を動かして一つに纏めて整える。

「何かアタシだけ疎外感を感じる…」

一人だけショートヘアーのエールはジルウェの髪を弄りながらも何となくだが、疎外感を感じていた。

「そんな良いもんじゃないぞ…動く時に邪魔だし、髪を切ってさっぱりしようとしてもすぐに再生するし…モデルOのオリジナルは何で髪が長いんだよ。」

「そんな風に言わないで…それにしてもやっぱりヴァンは人間…ヒューマノイドだからか、髪質は私やジルウェさんとは全然違うわ」

プレリーとジルウェはレプリロイドのために髪は特殊な繊維で出来ているのだが、やっぱりヒューマノイドの生まれ持った髪とは違うのが分かる。

そして“お兄ちゃん”の髪は自分達と比べても特殊な繊維で出来ていたが、やはりヒューマノイドの髪とは違うのだ。

「そんなのどうでもいいよ。どうせミッションで乱れるし」

「身嗜みには気を配れって前に教えたろ?」

「それ、運び屋時代の話だろ?俺はもう…運び屋じゃないし戻れないし…」

ジルウェの注意にヴァンはそれだけ言うと顔を逸らした。

「でも少しは大事にしたら?あなたは嫌かもしれないけど、とても綺麗な髪なんだもの」

「そんなこと気にしてたらろくに動けなくなるだろ…それに俺の髪よりプレリーの髪の方がずっと綺麗じゃないか」

「え…?」

「「…………」」

部屋が沈黙で支配される。

エールとジルウェも色気より食い気のヴァンがこのような言葉を言ったことに目を見開いていた。

「ん?何だ?俺、何か変なこと言ったか?」

「「いいえ、何も…」」

「…?それよりプレリー、早く話を聞かせてくれよ」

どことなく顔が赤いプレリーにヴァンはここに呼んだ理由であるデータディスクの内容を語り始めた。

「コホン…一枚目のデータディスクはモデルVの正体についてのレポートよ…数百年前の戦争の時…世界の全てを支配しようとした一人の男がいたの。彼は野望を果たすべく、宇宙にラグナロクと呼ばれる巨大な要塞を作り、自らもその一部となって融合して…お兄ちゃんに戦いを挑み…そして敗れたの。」

「それが以前プレリーが言っていたプレリーのお兄さんの最後の戦いか」

プレリーが話してくれた昔話で、プレリーの“お兄ちゃん”が最後の戦いで消息不明となったと言っていたが、最後の戦いがそれなのだとヴァンは悟った。
 
「ええ、お兄ちゃんが一部と融合した男を倒したことでラグナロクは崩壊して、その破片は流れ星となり世界中に降り注いだ…その時の光景は私も覚えているわ」

「それじゃあ、モデルVは…」

モデルVの金属部分の基となった物に気付いたエール。

「そう、その男の意志が宿ったラグナロクの破片…それがモデルVだったのよ。」

それを聞いたヴァンは嫌な予感を感じた。

降り注いだ破片が一つだけとは限らない…もしかしたら…。
 
「そしてお姉ちゃんはモデルVに対抗するためその研究データを基に、お兄ちゃんを含めた英雄達の力を収めたライブメタルを作って…」

「作って…その後は?」

「分からない……このディスクの内容はここで終わっていたから…二枚目に続きがあるのかもしれないし…」

ヴァンが続きを促そうとするがプレリーの表情は暗く、首を横に振った。

「そう…なんだ…ねえ、モデルX、モデルZや他のみんなもプレリーのお姉さんのこと知らないの?」

「…ごめん、何も覚えていない…僕らが作られた直後の記憶データは消されているんだ…」

「俺も初代司令官については人間であり、俺達を作った存在であることしか知らない…後は俺達全員が感覚的にあいつの人となりを覚えているくらいだ」

エールの問いにモデルXが申し訳なさそうに言う。

一番初代司令官との繋がりが深いプレリーの“お兄ちゃん”が基となったモデルZでさえ感覚的にしか覚えていないと言う。

これでは他のライブメタル達の答えも期待出来ないだろう。

「残るデータディスクの修復を待つしかないってことか」

「ええ、でもお姉ちゃんはきっとどこかで生きてる…私はお姉ちゃんを信じるわ…お姉ちゃんならきっと…最後の最後まで諦めたりなんてしないだろうから」

「司令官…」

ジルウェはそれを聞いて、本当にプレリーは強い人だと思う。

本当なら今すぐにでも初代司令官の捜索に行きたいだろうに。

「…強いなプレリー」

「ありがとう…でもヴァン…あなたのおかげよ」

「え?」

「エリアFで私がお姉ちゃんのことでショックを受けていた時、あなたが言ってくれたじゃない…“最後まで諦めるな”って…あの言葉のおかげで私…最後まで諦めずに頑張ろうって思えたのよ。ありがとう、ここまで来られたのもあなたがいてくれたおかげだわ」

「プレリー…そうか…」

「……ねえ、ジルウェ…アタシ達、思いっきり邪魔じゃない?」

「そうだなぁ…退散するか…」

見つめ合う二人に気付かれないようにジルウェとエールは部屋を後にしたのであった。

「でも、ジルウェ…何かあの二人ってお似合いじゃない?」

「ヴァンと司令官がか?まあ、ヴァンも無茶するような奴だから…あいつには司令官みたいな包容力のある人が良いのかもな」

「でも、プレリーのファンがうるさそうだよ」

エールもこのガーディアンベースに所属してからプレリーにはファンがいることは知っている。

流石にロックマンであるヴァンに難癖をつけるような者はいないと思うが…。

「まあ、とにかく俺はヴァンの幸せを祈るか。エールも早く良い人が見つかると良いな」

「むっ…………ジルウェの馬鹿」

鈍感な先輩に小さい声で悪態を吐くエールであった。

そして残されたヴァンとプレリーは、エールとジルウェがいないことに気付いた。

「あれ、先輩とエールがいないぞ…せっかくみんなで食おうと菓子を持ってきたのにな」

取り出した袋にはキャンディ、一口サイズのチョコレート、スナック菓子がたんまりと入っていた。

「ヴァン、それって遊園地のクレーンゲームの景品よね」

「まあ、腐ることはなくてもあのまま放置しとくのも勿体ないからな。どうせなら俺達の腹に収めようと」

「スナック菓子…初めて」

スナック菓子に興味津々なプレリーにヴァンは一つプレリーに差し出した。

「スナック菓子食べたことないのか?」

「飴やチョコレートは食べたことはあるけど、スナック菓子は初めて食べるわ」

サクサクとスナック菓子を食べていくプレリー。

ヴァンはチョコレートを口に運びながら、後でサルディーヌに分けてやる分を考えていた。 

 

第三十二話 モデルV本体の発掘阻止

一枚目のデータディスクの修復から数日後、二枚目のデータディスクの修復が完了したとのことで司令室であるブリッジに足を運んだ。

「二枚目のデータディスクの内容は何だったんだ?」

早速データディスクの内容を尋ねるヴァン。

「………二枚目のデータディスクにはモデルX達の所有者へのお姉ちゃんからのメッセージが残されていたわ。モデルX達の所有者であるエール…あなたへよ」

「アタシに…?」

「一応お前も聞いとけヴァン、お前もモデルXの適合者なんだからな」

「そういう先輩もモデルZの適合者だろ」

「それじゃあ、再生するわね」

プレリーが端末を操作すると、データディスクの内容がモニターに映された。

《ライブメタル・レポート》

《分類No.555913―力を受け継ぎし者へ―》

《私が作ったライブメタルを手にするであろう、選ばれし者達にこのメッセージを送ります。私はイレギュラーを生み出す恐るべきライブメタル…モデルVに対抗するべく、英雄達のデータを込めたライブメタル…モデルXやモデルZ達を作りました。けれど…ライブメタルは未知の部分が多く、モデルX達はモデルVの研究データを基にして作らざるを得なかったのです。つまり、モデルX達の真の力を引き出せる者は…モデルVの真の力をも使いこなすことが出来るということ…あなたは世界を守ることも出来れば、世界を支配することも出来るのです。どうか、その力で人々をより良き世界へと導いて下さい…》

「「「………」」」

メッセージから伝わる初代司令官の願いを感じ取った三人は無言であった。

「ライブメタルを使える者は英雄にも…支配者にもなれる…だから、プロメテ達はヴァンを仲間と言って、あなたが仲間に相応しいのかを確かめようとしたのね」

「……俺達の力は仲間や仲間の信じるものを守るための力だ。プロメテ達とは違う…そうだろエール?」

「ヴァン…そうだね…アタシのこの力は…みんなに託された、大切なものを守る力なんだ…アタシは絶対…プロメテ達のようにはならない…!」

「……その言葉を聞けて安心したな…今のお前達なら何があっても道を踏み外したりなんかしない。例えこの先何があってもお前達には俺達がいる…だから頑張れエール…ヴァン」

「ジルウェ…」

「分かってるよ先輩…ありがとう…俺、先輩に会えて良かったよ」

「おいおい、まるで全て終わらせたように言うなよ。セルパンを倒してもまだまだやることはたくさんあるんだ…お前にもミッチリ働いてもらうからな」

「やること…か…そうだな……………手伝えたら良いな…」

「ヴァン?」

最後のヴァンの呟きが小さすぎて聞こえなかったエールは首を傾げた。

「いや、何でもない…モデルH達のパスコードの修復は?」

「…………ヴァン…いや、何でもない…どうやらみんなのパスコードの修復が終わったようだ。これで、モデルV本体が眠る遺跡の奥に入ることが出来るはずだ(君は覚悟してるんだよね…もう僕ではモデルOの干渉を止められない。モデルVと対面すればモデルVの狂気によって今度こそモデルOの破壊衝動に呑まれてしまうかもしれない。でもそれでも君は行くんだね…守るために…僕に刻まれたオリジナルのデータ……僕のオリジナルもモデルZのオリジナルが自分を犠牲にした時…こんな気持ちだったんだろうか…)」

「モデルVの本体があるのは以前、エリアJに向かった時に通った洞窟のどこかにあるみたいなの」

「あそこね……急ごう!モデルV本体の発掘は相当進んでいるはずよ」

「ええ…!ミッションをトランスサーバーに追加しておくわ!二人共…気を付けてね。あなた達を信じているわ…!」

早速トランスサーバーのある部屋に向かい、エリアAに向かうと早速エリアJに向かう際に利用した洞窟へ向かった。

「ここの洞窟のどこかにあるんだって言うんだけど…」

周囲を見渡しながらモデルVの封印場所を探すエールだが、やはりモデルVの封印場所なだけあって簡単には見つからない。

「………あそこだ」

ヴァンは何かに引き寄せられるように駆け出した。

それを見たエールが慌ててヴァンを追い掛ける。

「モデルX…あいつは…」

「うん…モデルOとの人格の境界線が薄れ始めている。」

モデルZとモデルXの会話はエールには聞こえないようにしているため、内容はエールには分からない。

「…そうか、だが…今は時間がない…」

「彼は僕の適合者だから、本当は僕が力にならないといけないのに…」

「お前のせいじゃない。どこまでやれるかは分からんが…今の俺達に出来ることをするしかない…お前も少しは俺達を頼れ」

「モデルZ…ありがとう」

ヴァンを追い掛けると、そこには古い扉があった。

「ここだな」

「…この先に…モデルVが…!」

二人が扉を抉じ開けると、他の場所とは全く雰囲気が違う洞窟に出た。

そして奥には厳重な封印が施された扉がある。

「覚悟はいいか、扉を開けるぞ」

「うん…お願い!」

モデルZの言葉にエールが頷くと、モデルXが他のライブメタルに指示を出す。

「みんな…パスコードの入力を」

エールのモデルZXの変身が解除されるのと同時にライブメタル達が飛び出す。

「我が言の葉は、風となり空を巡る……ウェントス・アルス…」

パスコードの言葉を言い終えたモデルHからパスコードのデータが飛び出してモデルHのパスコードに対応したロックに吸い込まれた。

それにモデルL、モデルF、モデルP、モデルX、モデルZが続いた。

「我が言の葉は、水となり大地を潤す……グラキエス・パッシオ…」

「我が言の葉は、炎となり命を燃やす……フランマ・ウィース…」

「我が言の葉は、影となり忠義を誓う……ウンブラ・プロフェス…」

「我が言の葉は、光となり無限の可能性を照らす……ルーメン・インフィニタス…」

「我が言の葉は、勇気となり信念を支える……フォルティトゥード・クレド…」

最後のモデルZのパスコードのデータがモデルZのパスコードに対応したロックに吸い込まれたことで扉のロックが解除された。

「さあ、行こう!」

「後は…お前達次第だ」

モデルXとモデルZの言葉に二人は頷くと、エールは再びモデルZXへと変身して、扉を潜っていった。

扉を潜った先は今まで通ったエリアとは全く違っていた。

入ったばかりなのに微かに感じるモデルVのプレッシャー。

モデルV本体から相当離れているはずなのに感じると言うことは相当な力を宿している証拠だ。

「…………」

「ヴァン、大丈夫?」

「いや、大丈夫だ…急ごう」

モデルVのプレッシャーによってモデルOが刺激されたのか、今までとは比較にならないくらいにモデルOが騒がしい。

顔色が悪いヴァンをエールは心配するが、時間はあまり残されていないのでここで時間を潰すわけにはいかない。

途中で鷹を彷彿とさせるメカニロイドが出現して襲い掛かってくるが、モデルHXに変身したエールがエネミーアナライジングで弱点を調べる。

「あいつの弱点は頭部みたい」

「ならそこを集中攻撃だ」

オーバードライブを発動したヴァンがバスターショットを構えてセミチャージバスターを連射し、エールもオーバードライブで強化したダブルセイバーで連続で斬りつけると、あっさりとメカニロイドは沈んだ。

二人はメカニロイドが沈黙したことを確認すると、急いで奥へと進んでいく。

敵を蹴散らしながら進んで奥の古びたシャッターを抉じ開けると、何かの建造物だったのか、切断されたコードが動いていたり、未だに機能している部分がある。

「何だこれは?」

「遺跡と言うよりも壊れた建造物って感じ…もしかして、この遺跡ってラグナロクの残骸なのかな?」

「……多分、そうかもな。大きめの残骸が遺跡化したのかもな」

周囲を見渡すと、歴史の教科書や博物館で見たことのある旧世代のメカニロイドやレプリロイドの残骸がチラホラと見える。

確かあれはバリアントだっただろうか?

今では考えられないが、メカニロイドに近い簡易的な電子頭脳を持ち、電子頭脳を簡略化する代わりに戦闘力を大きく向上させ、装備変更を可能にすることで汎用性に特化させた戦闘用レプリロイドだ。

昔話と言われるくらいに過去のことは歴史には残っていないものの、後にこのバリアントの技術を流用して作られたのが現在の目の前で自分達を攻撃してくる人型メカニロイドのガレオンなのだ。

「………数百年経ったのにまだ機能してるのか…」

それだけ世界の支配に本気だったということなのだろう。

ラグナロクには当時最先端の技術が使われていたのだろうし。

「何か不気味よね…取り敢えず進もうよ」

モデルPXに変身してレーダースコープで隠し通路がないかを調べながら進むと、ブロックで塞がれた場所に出た。

「このブロックの先に細い道があるみたい」

「よし、下がってろエール」

ヴァンがオメガナックルでブロックを壊すと、確かに細道はあった。

「これは変身を解かないと行けそうに…あっ!?」

ヴァンはスライディングで細道を強引に突破した。

「良いのかな…?」

エールもスライディングを真似して下に降りていく。

すると降りた場所はシャッターの前だったらしく、目の前のメカニロイドをエールがモデルZXに変身してZXバスターのショットを連射して破壊した。

「それにしてもこの中は見覚えがあるな……」

「そうなの?」

「ああ、モデルOに取り憑かれてロックマンになった場所もこんな感じの場所だった。」

「…もしかしたら、モデルOのあった場所はここに近かったのかもね」

二人がシャッターを潜ると、海水が満ち引きを繰り返している。

ここは少しヴァンでは通りにくいだろうから、エールがモデルLXに変身してヴァンの手を引きながら進み、海水の満ち引きに注意を払ってトゲに当たらないように進む。

安全な場所まで移動すると、エールはモデルZXに再度変身する。

ヴァンがアルティメットセイバーを抜き、エールがバスターをZXセイバーに変形させてメカニロイドを両断しながら進む。

そして奥のシャッターを潜り抜けてメカニロイドを片付けながら下の方に降りていくと、モデルVのプレッシャーが一際強くなった。

「どうやらここだな…」

一瞬意識を失いかけたが、何とか耐えてシャッターを抉じ開けると、そこにはセルパンとパンドラがいた。

「とうとうここまで辿り着いたか…破壊神のロックマン。そしてあの時の少女よ…まさか君達がここまでやるとは思いもしなかった。」

セルパンの口ぶりから、恐らくプロメテ達からモデルOのことを聞いたようだ。

ヴァンを破壊神のロックマンと呼んでいることからそれが分かる。

「セルパン…!」

「丁度良いな、ここでお前を倒させてもらうぞ!!」

セイバーの切っ先を向けるヴァンにセルパンは不敵な笑みを浮かべた。

「そう慌てるな破壊神のロックマンよ。これを見たまえ…」

セルパンが頭上を見上げたので、ヴァンとエールの視線もそれを追う。

見上げた先には禍々しい強大なプレッシャーを放つ巨大な金属の塊があった。

「まさか…これが本体のモデルVなのか…!?」

「ライブメタルなの…!?これが!?」

「そう!これが世界を支配する力…本当のモデルVの姿だ!!」

通常のライブメタル…モデルX達とは桁違いの大きさに二人はきょうがくし、その表情を見たセルパンは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「感じるかね!?このプレッシャーを!少女の持つライブメタル達…そして古の破壊神の力すら、このモデルVの前では霞んで見えるだろう!この力が今!全て!ついに我が物となる!パンドラ!!」

後ろに控えていたパンドラを呼ぶセルパン。

「…………」

パンドラはヴァンとエールを交互に見ながら前に出た。

「あの二人は大切なお客様だ…もてなしてやってくれ」

「………分かった……」

「いよいよプロジェクト・ヘヴンは最終段階的に入る!そこで しっかりと見ていたまえ…新たな時代の幕開けをな…!」

転送の光に包まれたセルパンはこの場から消えた。

「待て!」

「モデルO…ロックマン………邪魔は……させない…」

「邪魔をするなら叩き斬る!!」

チャージセイバーを振るうヴァンに対してパンドラは杖の柄で受け止めるが、あまりの威力に表情が微かに歪んだ。

「ヴァン!こいつはアタシに任せて、セルパンを追って!!」

バスターを構えてチャージバスターをパンドラに放ってシャッターの前から退かすエール。

「任せた!」

ダッシュで移動し、シャッターを潜って奥へと向かうヴァン。

「……モデルOの…ロックマン…彼は…プロメテの……獲物………彼はプロメテに…任せる……あなたが私達の…仲間に……このゲームに参加する資格があるのか…テストするわ」

「アタシはお前達の仲間になんかにはならない!あんたを倒してセルパンを倒す!それだけよ!」

チャージバスターを発射するエールだが、パンドラは杖に乗ると不規則な動きをしながらかわしてエールにぶつかる。

「…どうしたの?…当たらないわ…」

「っ!」

咄嗟にセイバーで反撃しようとするが、すぐに間合いから離脱して属性を電気に変えると追尾性能を持った電撃を発射する。

「かわせる?」

「ダブルロックオン!モデルHX!!」

壁蹴りとモデルHXのエネミーアナライジングとエアダッシュを駆使してパンドラを解析しながら距離を詰めると再度変身する。

「ダブルロックオン!モデルLX!!」

オーバードライブを発動してハルバードで斬りつけると、パンドラの体が凍結した。

「っ…」

「どう!?」

「…調子に乗らないで…潰してあげる」

自身を電気属性から氷属性に変えると巨大な氷達磨を作り出してエールに向けて滑らせる。

壁蹴りでかわそうとするが、壁にぶつかるとエールの壁蹴りが阻害されてしまい、落ちそうになる。

「ダブルロックオン!モデルFX!!」

壁蹴りを維持しながらオーバードライブを発動し、ナックルバスターを構えながらショットを連射する。

それをパンドラはかわそうとするが、ショットの軌道を変えることが出来るモデルFXにはそれはかなり困難だ。

「…やるわね…」

「初めて会った時のようにはいかないわよ」

パンドラから見ても初めて会った時よりも遥かに成長しているエール。

「……訂正するわ…青の英雄のライブメタル…それに選ばれただけのことはあるわ」

今のエールの強さは自分が本気を出さねばならないくらいだと認識を改める。

「あんたにそんなこと言われても全然嬉しくないわ!!」

パンドラはビットを射出し、属性を電気と氷を交互に変えながら電撃と氷弾の攻撃を繰り返すが、エールはモデルZXに変身して的確にチャージバスターを当ててビットを無力化し、壁蹴りからのダッシュジャンプで回転斬りをパンドラに浴びせる。

「……逃がさない…」

距離を取ったエールに再び杖から電撃が放たれた。

ギリギリまで引き付けて回避し、チャージバスターを当てた。

多種多様な変身を可能にし、あらゆる状況への対応力を他のライブメタルとの融合で得ているエール。

これらの力を使いこなすのにどれだけの努力を重ねたのか…。

氷達磨を作り出してエールに向けて滑らせながら、パンドラ自身も杖に乗って突進してくる。

エールはモデルFXに変身して二丁のナックルバスターをチャージしながらタイミングを待ち、ジャンプで氷達磨の上を取ると、ナックルバスターを真下の氷達磨に叩き付ける。

その反動で高くジャンプし、パンドラの真正面に移動した。

「っ……!?」

「メガトンクラッシュ!!」

炎を纏ったナックルバスターでのパンチを喰らったパンドラは大きく吹き飛ばされたものの、空中で体勢を立て直した。

「……合格よ」

「!?」

破損したアーマーが瞬く間に修復されていく。

エールはこの現象を見たことがある。

「それは…ヴァンと同じ…」

「私達とモデルOのロックマンは…同胞…ライブメタルと一体化し…もう二度と人としての生を望めない存在…元には戻れない…」

「何…?何を…言ってるの…?」

パンドラの言葉の意味が分からないエールは困惑していたが、モデルV本体が浮上していくのを見たエールはハッとなってそちらを見る。

「くっ…!モデルVが…!」

「……運命は…動き出した……滅びの運命は…誰にも止められない…あなたにも…彼にも…セルパンにも……そう……誰にも……」

「…え…!?」

目を見開くエールだが、パンドラは転送の光に包まれて消えてしまう。
 
「……滅びの運命…?あいつらは一体………いや、考える前にヴァンを追いかけなきゃ!!」

エールもまたダッシュで奥のシャッターを潜り抜け、ヴァンの後を追い掛けたのであった。 

 

第三十三話 少女達

パンドラを退けたエールはヴァンがいる場所へ向かう。

幸い、ヴァンが破壊したメカニロイドの残骸が目印となってくれたので迷うことなく進むことができ、遺跡の真上に位置する場所で何かが激しくぶつかり合う音がした。

そこではヴァンとプロメテが激しい戦闘を繰り広げており、ヴァンがアルティメットセイバーのチャージセイバーを繰り出すのと同時にプロメテも鎌を振るって衝撃波を繰り出す。

衝撃波同士がぶつかり合った反動で両者は吹き飛ばされるが、難なく体勢を整えた。

「ヴァン!モデルVが!!」

「エール…」

「ほう…モデルZXのロックマン…お前がここに来たと言うことはパンドラを退けたか…認めよう、お前も俺達の仲間だ小娘。お前もこのゲームに参加する資格がある。モデルOのロックマン…今回はここまでだ。」

「逃げるつもりか?」

鋭くプロメテを睨み付けるヴァンだが、プロメテは笑みを深めるだけだ。

「逃げる?そんなわけがないだろう。こんな狭い場所じゃ楽しめないからな…もっと広い場所で戦おうじゃないか…安心しろ、すぐにその機会が来る…絶望と怒りに満ちた良い舞台を用意してやる…楽しみに待っていろヴァン…!」

好戦的な笑みをヴァンに向けながら言い放ち、プロメテもパンドラ同様に転送の光に包まれて消えた。

すると向こうでセルパン・カンパニーの飛行艇が上昇していくのが見えた。

「くそっ!!」

それに気付いたヴァンがバスターショットを飛行艇に向けてチャージバスターを発射するが、距離が離れすぎていて届かない。

「あそこまで飛ばれたらモデルHXでも間に合わない…!」

モデルHXの速度を持ってしても最新鋭のセルパン・カンパニーの飛行艇の最高速度には敵わない。

徐々に見えなくなっていく飛行艇にヴァンとエールは悔しげに見ていたが、プレリーからの通信に我に返る。

「「プレリー?」」

『ヴァン!エール!今、セルパン・カンパニーの飛行艇が飛んでいったわ!』

「悪い、プロメテとパンドラに邪魔されたせいでモデルVの発掘を阻止出来なかった」

「飛行艇がどこに向かったのか…そっちで追跡出来る?」

『分かった。反応を追ってみるわ!ちょっと待ってて…!…こ…これは…!?』

「どうしたの!?」

ただ事ではなさそうな様子にエールが尋ねた。

『二人共、一度ガーディアンベースに戻ってきて…!』

「「…?」」

プレリーの様子に疑問符を浮かべるが、取り敢えず指示に従うことにして二人は近くのトランスサーバーを利用してガーディアンベースへと帰還した。

「ヴァン!」

「エール!」

「どうしたプレリー?」

「顔色が悪いよジルウェ?」

ブリッジに入ると、慌てた様子のプレリーとジルウェの様子に二人は目を見開く。

「モニターを見て二人共!」

「とうとう奴が…セルパンが動き出したんだ!!」

『繰り返す!全国民に告ぐ!!』

モニターから聞こえたセルパンの声にヴァンとエールの視線がモニターに向けられた。

『私の名はセルパン!!これよりロックマンによる人々の救済…プロジェクト・ヘブンを実行する!!究極のライブメタル・モデルVが間もなく復活する!!その時こそ新たな世界の幕開けとなる!!そして……モデルVの力で私は新世界の王となる!!』

「とうとう、この国の人達にまで本性を見せたか…」

「新世界の王…あんな奴が…ふざけないで!!」

セルパンの野望に怒りを覚える二人。

二人の後ろでモニターを見ていたプレリーとジルウェも表情を険しくする。

「あいつの好きにさせない…そうだよなエール?」

「ヴァン…ええ、セルパンはアタシ達が必ず止める!!」

『モデルVは進化を促す力だ!進化についていけぬ者はモデルVの糧となり私の力となる!進化についていけぬ者に生きる意味を与えてやろう!!お前達の怒りと恐怖…絶望が…負の感情がモデルVのエネルギーとなるのだ!!』

「プレリー様!エリアOの市街地にイレギュラーが大量発生しました!」

オペレーターからの言葉に全員の表情が緊迫したものになる。

「エリアO…近くだ…すぐに行ける!!」

「プレリー!アタシ達をエリアOに!!」

「分かったわ、私達ガーディアンも人々の救助とイレギュラーの侵攻を阻止するわ。あなた達はイレギュラーを指揮しているリーダーを倒して…ガーディアンベースをエリアOに向かわせて!!」

「「「了解!!」」」

プレリーの指示にオペレーター達は頷く。

「フォルスロイドは全て倒したから…あいつらだな」

ヴァンの脳裏にモデルVの遺跡で言い残したプロメテの言葉が脳裏を過ぎる。

“逃げる?そんなわけがないだろう。こんな狭い場所じゃ楽しめないからな…もっと広い場所で戦おうじゃないか…安心しろ、すぐにその機会が来る…絶望と怒りに満ちた良い舞台を用意してやる…楽しみに待っていろヴァン…!”

「そっか…プロメテの言っていたことはこれのことだったんだ…」

エールもプロメテの言葉を思い出したらしく、エリアOはプロメテの言う、自分達との戦いの舞台と言うことなのだろう。

「取り敢えず、今は休んで…落ち着かないかもしれないけど…少しでも疲れを取ってね」

プレリーの言葉に頷いてブリッジを後にするヴァンとエール。

「ヴァン!」

「サルディーヌか?」

「良かった…無事だったんだ…」

「ああ、心配かけてごめんな。それから最近相手にしてやれなくて悪かった」

自分に懐いてくれているサルディーヌの相手をしてやれないことにヴァンは申し訳ないと思っていた。

「良いよ、ヴァンが忙しいのは知ってるし…エールもお疲れ様」

「うん、ありがとうサルディーヌ」

ヴァンと一緒にいることが多いが、エールとも比較的会話するのでサルディーヌとエールの仲も悪くない。

「ヴァン、絶対セルパンをやっつけてね。この国を救えるのはヴァンとエールだけだから!」

「ああ、任せとけ」

「でも無理しちゃ駄目だからね!ヴァンに何かあったらプレリーお姉ちゃん悲しむんだから!!」

「…?そりゃあ、仲間だからな」

「………あんたそれ本気で言ってる?」

「違うのか?」

ジルウェと同じく色恋沙汰に疎いヴァン。

色気よりも食い気なヴァンに色恋沙汰はまだまだ難しいのだろうか?

「………まあ、プレリーもはっきりしないし…それにお兄さんのこともあるしねぇ…こればかりは時間かなぁ?」

「???」

一人で納得しているエールにヴァンはサルディーヌの相手をしながら疑問符を浮かべるしかなかった。

そしてしばらくの間、エリアOに向かう前にプレリーは地上部隊への指示を出していた。

「ふう…」

「プレリー様?」

プレリーの溜め息に気付いたオペレーターが振り返る。

「あ、ごめんなさい…つい…」

「良いんですよ。プレリー様…ここ最近あまり休んでいないじゃないですか…少し休まれては…」

プレリーはこのガーディアンベースの司令官なのだ。

レプリロイドなので多少の無理は平気と言ってもやはり限界が存在する。

もし倒れられたりしたらと思うとオペレーター達の不安も分かると言うものだ。

「平気よ、これから先…ヴァン達が私よりももっと危険な目に…」

「アタシ達のことを思うなら少しくらい休憩してよプレリー」

「え?」

振り返ると、ヴァンと共に退室したはずのエールの姿があった。

「それじゃあ、アタシはプレリーを休ませるからエリアOに着いたら教えてね」

「分かりました、プレリー様をお願いします」

「ちょ、ちょっとエール!?」

プレリーの自室に引っ張っていくエール。

逃げようにもロックマンの腕力に勝てるはずがなく、あっさりと自室に連行されてしまった。

「エール…」

「実はヴァンやジルウェには内緒で買ってたんだー。このフルーツタルト。今時珍しいフルーツてんこ盛り!」

「わー、美味しそう…そうじゃなくて…」

フルーツタルトを見て瞳を輝かせたプレリーだが、すぐに正気に返った。

「後少しで、最後の戦いだからさ…今のうちにプレリーと話しておきたいと思ったの」

「……………」

エールの言葉にプレリーは沈黙した。

エリアOに着けば大量のイレギュラーとの戦闘になり、そしてそれが終わればセルパンとの決戦だ。

無事に帰ってこれるか分からない危険なミッションである。

「ねえ、プレリー」

「あ…何?」

「最後の戦いの前にヴァンに何か言わなくていいの?プレリー…ヴァンのこと…好きなんでしょ?」

「………え?」

レプリロイドの高度な情報処理能力を持ってしてもエールの言葉を理解するのに時間がかかった。

「一応言っておくけどLIKEじゃなくてLOVEの方だからね」

それを聞いたプレリーの表情が真っ赤になる。

「あ、いや…その…」

「最初はプレリーのお兄さんの面影を見てたんだろうけど…今は違うでしょ?そうでなきゃ、初めての手料理とか振る舞おうとか思わないもんね」

今でこそ失敗して爆発する頻度は少なくなったが、最初は本当に酷かったものだ。

正直、自分の教え方が悪いのかとエールは自信喪失しかけたこともある。

それなのに諦めずに成功品を作り上げてご馳走し、そして時々手料理をご馳走してヴァンのことを度々気にかけている態度を見てエールは確信した。

プレリーはヴァンのことが好きになったのだと。

「その……」

「プレリー、余計なお節介かもしれないけどさ…伝えたいことがあったら言った方がいいよ。プレリーだって言ってたじゃない。“後悔だけはしないで”って…あいつさ、デリカシーがないけど良い奴よ。」

「………ヴァンのこと…だけど…」

「うん」

プレリーは細々と語り始めた。

「…最初はお兄ちゃんに姿がそっくりで複雑だったけど…彼と交流を重ねて、彼を知っていけばいくほど気になってた…優しくて鈍くて…凄く勇気のある人…」

「へえー…想像以上に夢中って感じ…言わないの?気持ち…」

「…………怖いの」

「怖い?フラれるかもしれないから?」

「それも…あるけど…もし、ヴァンがお兄ちゃんみたいに帰ってこなくなったら…」

「そっか…」

プレリーの“お兄ちゃん”は最後の…モデルVのオリジナルとの戦いで消息不明となった。

心から慕った存在が帰ってこなくなると言う辛さはエールには痛いほどに分かる。

下手をしたら自分だって母親と同じように…。

「アタシも、分かるよ。プレリーの気持ち…大事な人が帰ってこなくなるかもしれないって思うと…気持ちを伝えない方が良いかもしれないって思うかもしれない……下手をしたらジルウェも母さんと同じようになってたかもしれないからさ」

「え?」

「少し前にジルウェとね…あの時…ヴァンがアタシとジルウェの前に現れなかったら、モデルZをあの時に渡そうとしてたみたいなの」

「それって…」

あの時のジルウェはモデルZが変身を維持してくれなければ本当に危なかったのだ。

そんな状態でモデルZを託すと言うことは、もし少しでも運命が違っていればジルウェは死んでいたことになる。

「アタシさ…この戦いが終わったら…ジルウェに気持ちを伝えたいと思うんだ。」

「エール…」

「子供扱いされて終わりになるかもしれないけど、だったら振り向いてもらえるように努力して攻めて攻めまくる!アタシ…何もしないで後悔したくないからさ…」

「……強いのね」

「そんなことないよ…プレリー…あの時言ってくれたプレリーの言葉を返すよ…“後悔だけはしないで”ね」

「…………ええ、エール……今更かもしれないけど、私達とジルウェさんがあなたとヴァンを監視していたことを黙っていてごめんなさい…でも…何もみんなであなた達を騙そうとしていたわけじゃないの。ジルウェさんは報告の時、いつもあなたのことを楽しそうに話していたわ。きっと…ジルウェさんもあなたのことを…」

「そう…かな…そうだといいな…大丈夫、アタシは誰も恨んだりなんかしてないよ。だってアタシはみんなのおかげで誰かを守るために戦うことが出来るんだから…きっとヴァンも同じ気持ちだと思う…きっと、ヴァンもプレリーのことを気にしてると思う…あいつ、アタシとプレリーとじゃかなり扱いが違うんだよ?プレリーのことあいつなりに女の子として扱ってる感じ…だからプレリーも頑張って…あいつは自分を信じてくれる人を裏切らないから」

「………」

それでもプレリーの表情は晴れない。

もしヴァンが“お兄ちゃん”のようにミッションから帰ってこなくなったらと思うと…。

それに気付いたエールが口を開いた。

「アタシはさ、プレリーのお兄さんのことは良く知らないけどさ…モデルZのオリジナルになったんだから凄く優しい人なのは分かるよ…そんな人がプレリーのお姉さんを悲しませたいなんて思うわけない…プレリーのお兄さんも帰るつもりだったんだよ。プレリーのお姉さんの所に……凄いよね…プレリーのお兄さん…自分が死ぬかもしれないのに自分が信じるもののために戦い続けたなんて…そしてプレリーのお姉さんもきっとその人を信じ続けていた…プレリーは二人の妹なんでしょ?だったらヴァンを信じてあげて…」

「…………」

「……さて、食べよ?甘い物を食べれば元気出るから」

「ええ…ありがとう…エール…私、勇気を出してみるわ」

微笑むプレリーの言葉にエールはタルトを頬張りながら微笑んだ。

「大丈夫!プレリーは可愛いからきっと上手く行くって!」

「ありがとう、エールも頑張って…気持ち…伝わるといいわね」

エリアOに着くまでの間、二人は親睦を深めた。

最後の戦いまで、後僅か…。 

 

第三十四話 イレギュラー軍の撃退

エリアOに着陸したガーディアンベース。

そこは既にセルパン・カンパニーの攻撃を受けて火の海となっていた。

「何て酷いことを…!ヴァン、エール…二人はイレギュラーを指揮しているリーダーを倒して!居住区に向かうイレギュラーの大軍は地上部隊のみんなで抑えるわ!!」

「「了解!!」」

ガーディアンベースを飛び出した二人はイレギュラーを指揮しているリーダーを探すために街へ飛び出した。

途中で遭遇するイレギュラーを一蹴しながら奥へ奥へと進んでいくのであった。

そして、ガーディアンベースの停まっている場所から大分離れた…エリアOの市街地の中心では…。

「モデルVの反応が大きくなってきたな」

「あの計画…上手くいってるみたいね…」

イレギュラーの指揮を執りながらプロメテとパンドラは人々の悲鳴が飛び交い、火の海に包まれた街を見つめていた。

「かなり前からの計画だからな…モデルOのロックマンとモデルZXのロックマンと言うイレギュラーな存在がいても止まらないだろう」

「人々の負の感情……恐怖と絶望、そして怒り。どんなに正義を振りかざす人も持つエネルギーよ。」

どれだけ精神的に強い人物であろうが、誰もが持つ感情。

モデルVのエネルギーとするために長い時間をかけてきたプロジェクトは確実に進んでいた。

「連合政府・レギオンズからの支援をあまり受けられずにイレギュラーやエネルギー問題に苦しんでいたこの国を豊かにしたセルパン・カンパニーの社長であるセルパンは英雄だった。だが、あの演説と今回の襲撃で人々は一気に絶望のどん底だ。奴らの信じた英雄が実は悪の親玉だったんだからな。セルパン・カンパニーに回収されている絶望と恐怖に染まったサイバーエルフのエネルギーと人々の負のエネルギーがあればモデルVの復活は目前だ…。中々良く出来たシナリオじゃないか…セルパンのプロジェクト・ヘブンは…使い捨ての小心者の駒にしては上出来だろう」

「…そうね……少しずつだけど、あの男の計画にも少しの乱れが生じている…」

秘密裏にモニターで見たあの男の表情には多少の苛立ちがあったように思える。

「ククク…あの男のあんな面白い面は初めて見た…まあ、あいつもあの女と同じように当時の時代の者だからな。モデルOのオリジナルの恐怖を良く知っているはずだ。あいつには感謝してやっても良いかもな」

「随分と楽しそうじゃないか」

二つの足音が聞こえてプロメテとパンドラが振り返ると、そこには鋭い目付きでプロメテとパンドラを睨むヴァンとエールの姿があった。

「やっぱりあんた達の仕業だったのね…プロメテ!パンドラ!」

「ククク…待っていたぞ…さあ…クライマックスだ!ヴァン!エール!我らロックマン…力を持った者同士が殺し合う滅びの運命…!そう…俺達は呪われた運命に魅入られた同じ仲間なんだよ!」

「…アタシ達はあんた達の仲間なんかじゃない!」

「いいえ…あなた達も私達と同じ…ライブメタルの…真の力を引き出せる…特別なロックマン…あなたが否定しようと事実は変わらない…全てはモデルVの意志のままに…」

「モデルVの意志だと?と言うことはセルパンは…」

「そう、ライブメタルは……意志を持つ生きた金属…心弱き者は…ライブメタルに支配される…」

その言葉にヴァン自身もモデルOに乗っ取られかけた経験があるために理解出来た。

「セルパン如きにモデルVを制御仕切れるわけがないだろう!奴ではモデルVを扱うどころか取り込まれるのがオチだ!だが、セルパンは良くやってくれたよ。モデルVを振り当て、イレギュラーロックマンと強力なロックマンの二人を誕生させる切っ掛けを作っただけでも充分役に立った。」

「つまりお前達は初めからセルパンを利用していたのか…!」

「何を企んでるのか知らないけど…絶対に許さない!」

ヴァンがアルティメットセイバーを抜き、エールもZXバスターを構えながらプロメテとパンドラを睨み据えた。

「…もう遅いわ…モデルVは…もうすぐ覚醒する…」

「もう少し俺達に付き合ってもらうぞ…破壊神と英雄のロックマン!!」

プロメテが鎌を構え、パンドラも浮遊しながら杖を構えるとヴァンとエールは同時に飛び出した。

「てやあっ!!」

「ふんっ!!」

「当たれっ!!」

「受けなさい…」

ヴァンのセイバーとプロメテの鎌が激突し、エールのチャージバスターとパンドラの電撃がぶつかり合う。

ヴァンとプロメテは燃え盛るビルを足場にしながらセイバーと鎌の光刃を高速で動き回りながらぶつけ合い、エールはモデルFXに変身して二丁のナックルバスターを構えた。

「行けっ!」

ナックルバスターの銃口から発射される変幻自在のショットをパンドラも電撃を放って相殺する。

「……強くなったわ」

初めて会った時は相手との実力差も理解出来ぬ少女だったというのにだ。

「良い手応えだヴァン!あのオンボロ船を襲撃して大して時間が経っていないのにここまで強くなるとはな!!」

「お前達が余計なことばかりしてくれたおかげでな!!」

鋭い目で自分を睨むヴァンにプロメテは笑みを深める。

「良い目だ…俺の目に狂いはなかった。お前は本当に強くなった…破壊神のロックマンに相応しいくらいになぁっ!!」

「チッ!!」

プロメテが強引にヴァンを弾き飛ばすと、空中で体勢を整えてバスターショットを引き抜くのと同時にチャージバスターを発射した。

「はっ!!」

プロメテが鎌を振るって光弾を両断する。

「プロメテ……楽しそう……」

元々好戦的なプロメテだが、あそこまで機嫌が良いのはこの体になってから初めてな気がする。

「どこ見てるの!?」

パンドラに迫るモデルFXのショット。

それをパンドラは氷達磨を作り出して盾にする。

「……私も少しだけ…プロメテ……お兄ちゃんのように楽しませてもらうわ」

「!?」

無機質だったパンドラの瞳に鋭さが混じり、頭部のビットを射出して交互に属性を変化させながらエールに猛攻を加える。

まるでプロメテを彷彿とさせる攻撃の激しさ。

「(あの遺跡で戦った時とは比べ物にならない速さ…!もしかしてあいつ…エンジンが入ったの!?)」

「ほう…珍しいな…あいつがあんな戦いをするなんてな…あいつも乗ってきたようだ。俺達も楽しもうじゃないかぁ!!」

「吹き飛べぇ!!」

オーバードライブを発動し、ダブルチャージバスターからのセイバーによる真空刃の遠距離での三連擊。

「フンッ!灰になれぇ!!」

ワープしてかわし、髑髏の形をした炎を発射する。

更に炎から火球が発射し、このままではヴァンに直撃するかと思われたが、ヴァンはオメガナックルのエネルギーを拳に纏わせて地面を殴る。

「滅閃光!!」

火球と炎を蹴散らし、プロメテに突撃するヴァン。

プロメテとパンドラは互いに見遣るとプロメテはエールに、パンドラはヴァンに突撃した。

「「!?」」

不意を突かれたエールはプロメテの斬擊を、ヴァンは杖に乗ったパンドラの突進をまともに喰らった。

「くっ!」

「やってくれたな!」

エールはモデルZXに変身してZXセイバーを構え、ヴァンはセイバーのチャージをしながらパンドラの攻撃をかわす。

「モデルZXのロックマン!パンドラを退けたんだ…少しは楽しませてくれよ!」

プロメテの猛攻をエールはセイバーで必死に捌いていく。

「(こいつ、こんなでかい武器使ってるのにヴァンと同じくらい速い!!)こいつぅっ!!」

距離を取ってセイバーをバスターに変形させ、チャージバスターを発射する。

「射撃は正確だが、剣の扱いはまだまだだな!」

ジャンプしてかわし、エールの真上を取るとそのまま急降下。

「ダブルロックオン!モデルPX!!オーバードライブ!!」

シャドウダッシュで回避し、クナイを投擲してからのチャージ攻撃の十字手裏剣を投擲する。

「モデルP…攻撃性能が低いライブメタルかと思ったら…意外にやるじゃないか…」

クナイを抜くと、十字手裏剣によって受けたアーマーの損傷が瞬く間に修復されていく。

「何なの…それ…?ヴァンもあんた達も…」

「フンッ、俺とパンドラはヴァンと同じ…ライブメタルと一体化したことで普通のロックマンとは桁外れの力を手にしている…ダブルロックオン…だったな?ライブメタルで強くなる方法がそれ以外にもあると言うことだ。代償は勿論ある…二度と元に戻れないということがなぁっ!!」

「くっ!!」

プロメテの放つ炎に対して十字手裏剣を展開して投擲せずに高速回転させて盾の代わりにする。

一方、ヴァンはバスターを構えてショットを連射してパンドラを墜とそうとする。

「ちょこまかと動くな!!」

「……プロメテと渡り合えるだけあって剣の腕は凄いけれど…射撃はそれほどでもないわね……」

近接戦闘が得意なヴァンを相手にパンドラは最初の一撃以外は距離を取って攻撃していた。

「滅閃光!!」

「当たらないわ」

拳を地面に叩き付けて放射状にエネルギー弾を放つが、パンドラは隙間を縫うように回避し、逆に電撃を浴びせる。

「ぐっ!まだイケる…!」

どれだけ攻撃を受けようとヴァンの闘志は決して衰えない。

ダブルジャンプでパンドラとの距離を詰めようとするが、パンドラはそれを読んでいたのか更に上昇する。

「…無駄よ」

「それはどうかな?」

真下にバスターを向けてそのままチャージバスターを撃ち、更に上に飛ぶ。

「っ!?」

「墜ちろ!!」

チャージセイバーを喰らわせて地面に叩き落とすと、パンドラはすぐに起き上がった。

「…………」

「見た目によらずにタフな奴だな」

あっさりと立ち上がるパンドラにヴァンは少し呆れたように見つめる。

「………どうしてあなたは…憎まないの…?」

パンドラには不思議で仕方がなかった。

モデルOに取り憑かれたヴァンはもう元には戻れない。

人としての一生は望めず、穏やかに街で暮らすことも出来ない体なのにどうしてあそこまで澄んだ目が出来るのだろう。

「…?」

「ライブメタルと一体化して…人としての人生を失って……どうして憎まないでいられるの…この世界を…」

「…何を言ってる…イレギュラーに人々を襲わせているのはお前達だろう!!」

「この世界は…狂ってる…この世界はあの男を楽しませるために都合良く作られた玩具箱…モデルVの主に相応しい者を選び…ロックマンを生み出して殺し合わせる…あの男を満足させるゲームのための…」

「パンドラ!!」

「っ!!」

プロメテの声にパンドラはハッとなって口を閉ざした。

「らしくないな、珍しく熱くなったせいでお喋りになったようだな…少し物足りないが…今回はここまでだ。」

溜め息を吐きながらエールとの戦闘を中断するプロメテ。

「……お前達は一体何なんだ?セルパンに従っているのかと思えばそうでもない。だからってあの男とやらのために戦ってるわけでもなさそうだしな」

さっきのパンドラの声には底知れぬ怒りと憎悪を感じた。

だからプロメテ達はこのゲームを仕組んだ黒幕に従っているわけではないと理解出来た。

「さあな、全てを知りたければ勝ち続けろ。今のところ最もあの男に警戒されているのはお前だ。お前が全てのロックマンを倒し…王となる直後に現れるだろうよ…それまでお前自身が生きていればいいな」

それだけ言うとプロメテはパンドラを連れて去って行き、直後にプレリーから通信が入った。

『イレギュラー達の勢いが弱まったわ。敵のリーダーを倒したのね!』

「まだだよ、プレリー…まだ終わりじゃないよ…」

「残るセルパンだけだ。あいつはどこにいるんだ?」

『ごめんなさい、もう少し時間がかかりそうだわ。ヴァン、エール…一度ガーディアンベースに戻ってきて…』

プレリーの言葉に従い、ヴァンとエールはガーディアンベースへと帰還する。

一方、プロメテとパンドラは並びながら火の海となった街を歩いていた。

「……ごめんなさい…プロメテ」

「本当にらしくなかったな、まるで昔のお前のようだった」

「分からない…自分でも言葉が抑えられなかった……ごめんなさい」

俯きながら謝罪するパンドラにプロメテはメットに手を遣ると溜め息を吐いた。

「別に謝る必要はないだろう、大体お前は喋らなさすぎる。寧ろ、あれくらいで丁度良い…行くぞパンドラ、この国がどんな結末を辿るのか見てやろうじゃないか」

手を差し伸べるプロメテにパンドラはそっと握り返した。

「うん……行こう…お兄ちゃん」

手を繋いだ二人はそのままセルパン・カンパニーへ向かって行くのであった。 

 

第三十五話 それぞれの誓い

ガーディアンベースに戻ったヴァンとエール。

ブリッジに入ると、プレリーとジルウェの二人が振り返った。

「二人共…モデルVの反応が見つかったわ…この国の中心にある一番大きな建物…セルパン・カンパニーの本社よ。本社の内部から強力なエネルギー反応も見つかっているの、あの襲撃で捕まった人々もあそこに連れていかれているみたい。あの中で 何かが起ころうとしているわ…」

「危険なのは分かってるさ…だけど逃げるわけにはいかないだろ?」

「うん!何があろうと行くしかないよ…!行こう!!」

二人はセルパン・カンパニー本社に向かうために、トランスサーバーのある部屋に向かおうとする。

「…………エール、少し時間が取れないか?」

「?」

「話があるから…甲板に行こう」

ジルウェに連れられていくエールはヴァンの方を振り返る。

「良いんじゃないか?今のうちに話しておきたい人と話せばいい。それくらいの時間はあるんじゃないか?俺は先にトランスサーバーで待ってるよ」

「うん、ありがとうヴァン」

そのままジルウェとエールはブリッジを後にして甲板に向かい、それを見たヴァンはプレリーに振り返る。

「それじゃあ、俺も行ってくる」

それだけ言うとヴァンはブリッジを後にした。

「あ………」

何か言おうとしても緊張で言葉が出なかったプレリーにオペレーターが口を開いた。

「プレリー様、行った方が良いですよ」

「そうですよ、これが最後になるかもしれないんですから」

「伝えたいことがあるなら伝えた方が良いです」

三人の言葉にプレリーはブリッジを出た。

トランスサーバーの部屋の近くまで来ていたヴァン。

「ヴァン!!」

「っ!シュウか?お前、エリアOにいたのか…サボリか?」

「……何で幼なじみ揃って俺が現れる=サボリになるんだよ…有給取ってたんだよ。まさかこんなことになるなんて思わなかったけどな…でも丁度良かったぜ……ヴァン!悪かった!!」

「っ!?お、おい…」

土下座して謝ってきた悪友にヴァンは目を見開く。

「助けてくれたのに…俺がイレギュラーに捕まったせいでお前らが危険な目に遭ったのに…なのに俺はお前に酷いことを…」

「別に…あの時の俺は本当に化け物って言われても仕方なかった。気にしてない…それにこれで最後だ。もう、会うこともないと思う」

「何を弱気なこと言ってんだよ!あの時のイレギュラーを倒した時みたいにパパっと倒して帰ってこいよ!そして前みたいに仕事を一緒にサボってゲームしようぜ!!」

「俺は休憩時間にやってただけだからな?お前のサボリに付き合ってた覚えはないからな?」

どうも自分はシュウにサボリ仲間として認識されているらしい。

「そ、そんな冷たいことを言うなよ親友!辛く苦しい仕事の隙を掻い潜ってサボるのが一番良いんじゃないか~!」

「お前いつか先輩にクビにされるぞ」

近い将来、本当にジルウェにクビにされそうな未来が容易に想像出来る。

「ヴァン!!」

向こうからプレリーが駆け寄ってきた。

「び、美人の司令官さん!ヴァンを名指しで呼んだってことは…お前って奴は…ヒーローになっただけじゃなくてこんな可愛い彼女まで…裏切り者…!」

「彼女?何のことだよ?」

嫉妬に狂いそうになったシュウだがヴァンの言葉を聞いて、ヴァンは色気よりも食い気だったことを思い出してプレリーに同情の視線を向けた。

「あ、あなたは…」

「いやー、何度も助けてくれてありがとうございます……こいつが相手だと滅茶苦茶苦労するだろうけど頑張って下さい…こいつ超が付くほどに鈍感なんで…」

「え…ええ!?何であなたまで…」

「見てりゃモロバレだから…気付かないのジルウェさんとこいつくらいでしょ」

片手を振りながら生暖かい視線を向けながら去っていくシュウにヴァンは疑問符を浮かべた。

「何だったんだあいつは?」

「さ、さあ…」

顔の熱が治まるまで待つと、ヴァンに向き直るプレリー。

「俺に何か用かプレリー?」

「その…最後にあなたに言いたいことがあって…」

「言いたいこと?」

「ええ、今更かもしれないけど…あなたを危険な目にばかり遭わせてしまって……ごめんなさい。私達とジルウェさんがあなた達を監視するためにジルウェさんの近くにいさせたことも…監視するにしてももっと安全な場所があったのに…」

例えば施設に預けていればヴァンもエールも運び屋で働いているよりもずっと安全に過ごせていただろう。

ライブメタルの適合者の可能性があるかもしれないからといって、被害者の人達の安全を軽視し過ぎていた。

「あなたは一年前のイレギュラーの襲撃でそんな体になって…私達、ガーディアンは…あなたから人としての人生すら奪ってしまった……ヴァン…あなた…モデルXの抑制が効かなくなっているんでしょう?」

「やっぱり気付くか……まあ、気にするなよプレリー。お前が気にすることじゃない。先輩がケチってないでとっとと新しいバイクを用意してくれれば防げたことなんだし…それに先輩と会えて…運び屋のみんなと過ごした時間…プレリー達と過ごした時間があるから今の俺があるんだからな…少なくても幸せだったと思う……」

「ヴァン……」

「…行ってくる。セルパンに今までの借りを返しにな…!」

「ええ…気をつけてね………ヴァン……」

「プレリー?」

声が震えているプレリーにヴァンは首を傾げた。

「本当は…行って欲しくない…散々危険なミッションに向かわせておいて今更何を言ってるんだと思うかもしれないけど…あなたに死んで欲しくないのは私の本心だから……」

「…………」

「死なないでね?モデルVを破壊出来なくてもいい。セルパンを倒せなくてもいい…あなたさえ、生きていてくれたら…死なないで、お願い…ヴァン…」

ヴァンの手を両手で包みながら懇願するプレリーにヴァンも空いた手でプレリーの手を包み返した。

「当たり前だろ、死ぬつもりなんかない。俺は全てのイレギュラーを倒して…こんな下らないゲームを企んだ奴を倒すまで死ぬわけにはいかないんだ…エールや先輩…運び屋やガーディアンのみんな……そして…プレリー…お前を守るためにもだ」

「ヴァン……」

「何度でも約束する。必ず全てを片付けて帰ってくるってな」

「ええ…」

プレリーはヴァンの耳元に顔を近付かせると、ヴァンにしか聞こえないくらいの小声で呟く。

「………?何だ?名前か?」

「ええ、私が“プレリー”になる前に…お姉ちゃんが幼かった私に名付けてくれた私の本当の名前……ヴァン…あなたを信じるわ…あなたが帰ってくるまで何時までも待ってるから…約束よ。絶対に、帰ってきて…あなたに…私の本当の名前を呼んで欲しいの…」

いくら鈍感のヴァンでもここまで言われれば流石に気付く。

こういう時に何と答えればいいのか分からないが…。

「…………ああ、分かった。お前の本名…帰ったら言うよ」

今はこれしか言えなかったが、プレリーはそれで頷いて名残惜しそうにブリッジに戻っていった。

「…………負けるわけにはいかなくなったな…セルパンにも…そしてこいつにも」

今でも自分の体を乗っ取ろうとするモデルO。

プレリーの元に帰るためにはセルパンとモデルOに勝たなくてはならない。

ヴァンはエールが来るのを待つ。

一方、ジルウェに連れられたエールは甲板に出て最初にジルウェの体調を尋ねた。

「こんな風の強い場所にいたら体に良くないんじゃない?」

「年寄り扱いするなよ。これくらい平気だ」

「そう、なら良いけど…何?話って?」

「いや…な…本当に強くなったなエール…最初は俺が守ってやろうとしていたのに…今じゃお前はこの国の希望だ。」

初めて会った時はヴァンにしがみついて泣いていた小さな女の子が今やこんなにも強くなった。

嬉しいと思う反面、寂しいと感じる。

「あはは、本当に前のアタシは弱かったもんね…アタシ…ジルウェには感謝してる…ジルウェに助けられて、たくさんのことを教わって…いつも傍にいてくれて…アタシが頑張れたのも…ジルウェが見守ってくれてたからなんだよ」

「そうか…」

微笑むジルウェだが、意を決したエールがジルウェを見据えた。

「ジルウェ、アタシは絶対にセルパンを倒すよ…セルパンを倒して…モデルVを破壊して…ここに帰ってこれたら…ジルウェに伝えたいことがあるの…」

「伝えたいこと…?今じゃ駄目なのか?」

「うん、駄目…絶対にジルウェの所に帰るために…今は言えない…だからジルウェ…待っててくれる?」

「……ああ、分かった。お前の帰りをここで待ってる…だから、必ず帰ってこい。勝てそうになかったら逃げろ、生きてさえいれば必ずチャンスはやってくるんだからな」

「分かってる…それじゃあ、ヴァンを待たせてるから行ってくるね」

「ああ、頑張れよエール…」

エールは甲板から船内に戻り、そのままトランスサーバーの前で待つヴァンと合流する。

「お待たせ!」

「そんなに待ってないから大丈夫だ。さあ、決着をつけに行くぞ!」

「うん!」

トランスサーバーに乗り込んで、セルパン・カンパニー本社があるエリアDへと向かったヴァンとエール。

全てに決着をつけるために。 

 

第三十六話 ライブメタル・モデルVの破壊

エリアDに転送されたヴァンとエールはセルパン・カンパニー本社の前で佇んでいた。

「行くぞエール」

「何時でもOKよ」

「あまり外の近くで派手に暴れるわけにはいかない。ここに捕らわれた人達がいるからな」

外には簡易的な檻の中に捕らわれた人々がいるため、ここで見つかるのは避けなければならない。

「なら、モデルP…モデルL…力を貸して」

「うむ、上の階に強大なエネルギー反応が複数ある。」

「私達の力があなた達を導くわ」

モデルLとモデルPの力を使ってエールはヴァンと共にセルパン・カンパニーに内部へと潜入した。

そして外では檻の中で人々の絶望と恐怖といった感情が人々からエネルギーとして吸い上げられていた。

「こ、これは!?」

「モデルVの復活のためのエネルギー回収でしょう……ヴァン…エール…気をつけて」

人々を救助しているガーディアンの地上部隊に指示を出していたジルウェとプレリーが今起きている現象に驚く。

「モデルVのプレッシャーが大きくなっていく…」

「うん、アタシにも分かる…急がないと…」

「って思ってんのに邪魔者が来たか」

「ゲッ」

広い場所に出たかと思えば倒したはずのフォルスロイドが立ち塞がる。

「何で倒したのに生き返ってるの…」

「モデルVの影響で復活したんだろ…流石に昔のイレギュラー連中は復活してないようだけどな」

流石に奴らまで復活されたら手が足りない。

「一人四体だ。さっさと片付けるぞ」

「OK」

復活したフォルスロイドとの戦いが始まったが、数多くの強敵との戦いと一度戦った相手に今の二人が負けるわけもなく、モデルH達に遠慮していた初戦と違って全力で弱点を突き、そして動きを見切られたフォルスロイド達は瞬く間に沈んだ。

「行くぞ」

「うん」

フォルスロイド達を片付けたヴァンとエールはセルパンの元へ向かう。

やはり敵の本拠地なだけあって警備は厳重だったが、今の二人には大した問題ではない。

奥へ奥へと進んでいくと無数のカプセルが乱雑に置かれており、その中には見覚えのある物があった。

「これ…エリアEで見たな」

「そっか、ヴァンは知らないんだっけ?これはサイバーエルフって電子の妖精なの…エリアIで街の人達がサイバーエルフにされるって言ってたでしょ?これがそれなの」

「…まさか、これも…」

「考えたくないけど…でもこんなにたくさん…」

カプセルに閉じ込められたサイバーエルフに嫌な予感を感じながらも扉を蹴り飛ばす。

そこにはヴァンとエールにとって忌々しい存在であるセルパンがいた。

「(プロメテとパンドラはいないようだけど…近くに気配を感じる…高みの見物か…)」

「何故…モデルVの覚醒にこれだけのサイバーエルフを必要とするのか……君達に分かるかね…?それは、人々の恐怖と絶望を取り込み…自らの力とするためだ…!」

モデルVの本体の妖しい輝きとプレッシャーが更に増していく。

「「……!?」」

「さあ…モデルV…!この国の恐怖と絶望を喰らい尽くせ!」

カプセルに閉じ込められたサイバーエルフ達がモデルVに吸収されていく。

「サイバーエルフがモデルVに吸収されていく!?」

「酷い…!」

ヴァンとエールは知らないが、既に外に捕らわれている人々も同じようにエネルギーを吸収されており、これが二度目の吸収となる。

「弱き者は我らと一つになることで、苦しみから解放される!選ばれし者…ロックマンによる人々の救済!これがプロジェクト・ヘブンだ!」

「ロックマンによる人々の救済…?この国の人々を犠牲にして
それでも救いだと言うの!?」

「それにこのサイバーエルフ達は何だ!?これだけのサイバーエルフを一体どこから集めてきた!?」

「…少女よ…いつまで自分達だけ正義を気取るつもりだ?我らは多くの犠牲者から選ばれた、新世界の王…その候補者なのだよ。モデルVは滅びをもたらす物ではない…進化を促す物だ!私は、進化についていけない人々に、生きる意味を与えてやろうとしているのだ!そして少年よ…君の疑問にも答えてやろう…十年前…イレギュラーの襲撃により、この国の人々がその犠牲となった…そして、我が社の警備隊がイレギュラーを倒し、私は英雄として国に迎えられた。あれから 幾度となくこの国はイレギュラーに襲われ、その度に我が社が救ってきた。こうして私は人々の信頼と共に、その魂をも手に入れてきたのだ!この国の歴史そのものがプロジェクト・ヘヴンの一部なのだよ!」

それを聞いたヴァンとエールの表情に驚愕が走った。

「じゃあ、このサイバーエルフは…十年前に襲われた人達の…母さんやおばさん達の物なのか!?結局…お前が全て…!母さんも…!おばさんもっ…!…プレリーのお姉さんも……!」

「あんたはただ、過去の自分に…イレギュラーの恐怖に怯えてるだけよ!恐怖から逃げようとするために人の上に立とうとする!こんなものが進化だって…あんたの理想だって言うの!?」

怒りに震えるヴァンとエールの言葉にセルパンは嘲笑を浮かべるだけだ。

「理想だと…?戯れ言だ!強き者が生き残り、弱き者はその糧となる!それは自然の摂理だ!私はこの国の人々の魂を喰らうことで、モデルVの力を得た!少年は人としての肉体と一生を失うことで破壊神のライブメタルのロックマンとなり、少女もまた赤のロックマンからモデルZを受け継ぎ、我が部下達からモデルH達を奪ったからこそここにいるのだろう!?犠牲無くして、人に進化はない!それを証明する者が、我らロックマンだ!ロックオン!!」

モデルVの欠片で変身したセルパンは禍々しい笑みを浮かべながら二人を見つめた。

「最後に…君達の恐怖と絶望を…私の勝利の喜びを…最高の感情をモデルVに捧げよう!!」

「「っ!!」」

「長らく待たせて申し訳なかった…さあ、始めようか!!」

本体に吸収されたエネルギーがセルパンにも影響を与えているのか、あまりにも凄まじいエネルギーを纏っている。

「……うおおおおおおおっ!!!」

オーバードライブを発動し、アルティメットセイバーを抜いてチャージセイバーでセルパンに斬りかかる。

「セルパンッ!!」

エールもまたチャージを終えたZXバスターを構え、チャージバスターを発射した。

「ぬんっ!!」

チャージセイバーとチャージバスターをそれぞれ片手で受け止め、ヴァンを弾き飛ばしてチャージバスターをヴァンに弾き返した。

「チッ!!」

ダブルジャンプで光弾を回避するとセルパンの追撃に備えた。

「ずあっ!!」

体勢を整えた直後に迫るセルパンの豪腕。

それをギリギリでかわして距離を取りつつ、バスターショットを構えてセミチャージバスターの連射をセルパンに繰り出す。

「甘いわっ!!」

予めチャージしていたのか指先のバスターから巨大なエネルギー弾が発射され、セミチャージバスターを防いだ。

「舐めるなぁっ!!」

背後を取ったエールがZXセイバーで斬りかかるが、セルパンは片腕で受け止めて見せた。

「軽いぞっ!!」

腕の一振りでエールは吹き飛ばされ、ヴァンはオメガナックルでの肉弾戦を仕掛ける。

セルパンも拳を握り締め、モデルVの出力に物を言わせて拳を繰り出した。

互いの拳が何度も激突し、ヴァンは凄まじい形相でセルパンを睨んだ。

「イレギュラーが…!」

「イレギュラーか…私からすれば君の方がイレギュラーらしい顔に見えるがね!!」

再び弾き飛ばされるヴァンだが、何とか受け身を取ることに成功してセイバーを構えた。

「………」

「来い!破壊神と青のロックマン!見せてやろう、我がモデルVの力を!!受け取れ!!」

両手の指先のバスターから放たれる弾幕。

それをエールがモデルPXに変身し、十字手裏剣を盾にしながら突き進む。

「くっ!」

「足掻け!そして怒れ!そして絶望せよ!人々の負の感情が私の力を高めてくれる!!見たまえ!このエネルギーの高まりを!!」

「黙りなさい!どれだけあんたが強くなろうとアタシ達が必ず止めて見せる!!アタシがみんなを守る!そしてジルウェの所に生きて帰るの!!」

「笑わせるな小娘!!」

足にエネルギーを纏わせたスライディングを繰り出すセルパンに対してエールは瞬間的にオーバードライブを発動してシャドウダッシュで回避する。

「今のお前には…逃げてばかりのお前には分からないだろうな!自分を信じて帰りを待ってくれている人がいることの幸福(しあわせ)が!イレギュラーの恐怖から逃げるために人の心との繋がりから逃げ続け、裏切りを続けてきたお前には!!」

「ほざくな小僧!心の繋がり?そのようなものに何の価値があると言うのだ?そのような虚弱な物は強大な力の前ではゴミ屑同然!!見よ、これが王の力だ!!」

紫の禍々しいオーラを纏うセルパンにヴァンとエールの目が見開いた。

「「オーバードライブ!?」」

「驚くことではあるまい?破壊神のロックマンである君も単体でのロックオンでオーバードライブを発動しているではないか?私も同じくそれが出来る。ただそれだけのこと!!」

再びスライディングを繰り出してくるセルパン。

しかしそのスピードは最初の比ではなく、強化されたスピードに対応出来なかったエールがまともに受けて体勢を崩し、その直後に強烈な蹴り上げを喰らった。

「ごはっ!?」

「エール!?」

「君にはこれをプレゼントしよう。受け取りたまえ!!」

再び放たれたバスターからの五発同時ショット。

しかし、その威力と速度も大幅に強化されており、ヴァンはショットをまともに浴びてしまう。

「ぐああっ!?」

「まだだ!!」

ショットを絶え間なく連射し続け、エールが離れた場所に落下し、ヴァンはあまりの威力に倒れた。

「例え破壊神と英雄の力だろうと我がモデルVの前では無力。そこで寝ていたまえ…君達は本当に運が良い…君達は私が王となる瞬間を…新世界の王が誕生を目の当たりにする最初の存在となるのだ!!」

「ふざ…けるなよ…!」

「勝手に決めないで…!アタシ達はまだ負けてない…!!」

「ふん…まだ足掻くのかね…ならば君達には少しばかり罰を与えよう」

セルパンがスイッチを押すとモニターが現れ、モニターにはガーディアンベースが映った。

「「!?」」

「ガーディアンベース…あのようなオンボロな船には君達の大切な者達がいるのだろう?ならばあの船を墜とせば君達はとても素晴らしい絶望を味わうことになるだろう。」

「何!?」

「そ、そんな!止め…」

「やれ」

ガーディアンベースをイレギュラーが取り囲み、セルパンが合図を送った瞬間、ガーディアンベースは一斉攻撃を受けて撃墜された。

「あ…」

「ガーディアン…ベースが…」

「これが王に逆らった者の末路だと言うことだ。覚えておくといい」

「「…セルパンッ!!!」」

ガーディアンベースを撃墜したセルパンにかつてない怒りを爆発させたヴァンとエール。

「よくも…よくもプレリー達をっ!!」

「あんただけは…絶対に許さないっ!!」

怒りがライブメタルの出力を上げ、オーバードライブも発動していないにも関わらずオーラが迸る。

「己の無力さを思い知るがいい!!」

「ダブルロックオン!モデルHX!!」

セルパンがバスターを構えた瞬間にダッシュジャンプからのエアダッシュでの超加速でセルパンの懐に入ったエール。

「速いっ!?」

「喰らえっ!!」

ダブルセイバーによる連撃を叩き込み、最後のソニックブームがセルパンの体に深い傷を刻んだ。

「ぬうっ!?」

「ダブルチャージバスター!!」

オーバードライブを発動したヴァンがバスターをフルチャージし、ダブルチャージバスターをセルパンに直撃させた。

「ぐうううっ!?」

「まだだぁっ!!真空刃!!」

セイバーを居合いの要領で振るうと、電撃を纏ったソニックブームがセルパンに直撃する。

「っ、調子に乗るな!!」

再びバスターから巨大なエネルギー弾を発射しようとするが、それよりも速くヴァンとエールは準備を終えていた。

「モデルF!!特大のをお願い!!」

「おう!とびっきりのを喰らわせてやるぜ!!」

「終わりだセルパン!!」

エールはモデルFXに変身し、チャージを終えた二丁のナックルバスターを、ヴァンはオメガナックルのエネルギーを拳に極限まで収束させ、地面に叩きつけた。

「ダブルグラウンドブレイク!!」

「裂光覇!!」

炎柱と光柱が同時に立ち昇り、セルパンを飲み込んだ。

「はあ…はあ…」

「どうだ…?」

自分達の渾身の一撃は確かにセルパンに直撃したが、倒せたかまでは分からない。

「まだだ…まだ終わらんよ…!」

爆煙から傷だらけの状態でありながらセルパンはしっかりとした足取りで現れた。

「セルパン…!」

「しぶとい奴だな…だけど、これで終わりだ…!」

二人が武器を再び構えた時、セルパンは絶体絶命の危機であるにも関わらずに不敵に笑ったのであった。 

 

第三十七話 破壊神の覚醒

ガーディアンベースを墜としたセルパンへの怒りによって増大したライブメタルの出力に任せてセルパンに怒濤の攻めを浴びせ、二人は何とかセルパンを追い詰めはしたものの、セルパンの不敵な笑みに得体の知れない何かを感じた。

「フッ…フフフ…」

「…何がおかしい!セルパン!」

「追い詰められて気でも狂ったか!?」

「…プロメテ達の…言っていた通りだ…君達が最後の鍵だったのだよ。君達は今……とても強い感情に……突き動かされている…この私の力を…上回る程の…強い感情にだ…!」

「「っ!?」」

二人の体から紫の光が飛び出し、それはモデルVに吸い込まれ、エールは変身が解除されて倒れ伏し、ヴァンはモデルOと一体化しているためか、変身は解除はされなかったものの膝を着いた。

「な…んだ…?体から急に力が…」

「フフフ…素晴らしい…君達の怒りと憎しみのエネルギーがこれほどまでとは…十年間もの長い時間をかけただけあってエネルギーの質がこれ程までに違うとは…」

「何を…言ってるの…?」

「忘れたのかね?モデルVの力の源は負の感情。つまり十年前から君達が抱いていた負の感情がモデルV復活のための鍵だったのだ…君達をここまで突き動かしてきたのはそれは勇気でも、正義でもない…君達の大切な…愛する者達を奪った私への…そう、憎しみの心だよ…!」

ヴァンとエールのエネルギーを吸収した影響か、セルパンのダメージも回復している。

「そんな…アタシ達が…モデルV復活の鍵だったって言うの…?…それじゃ……アタシ達の戦いは…一体…何のために…!」

「簡単なことだ。君達は私を王にするために戦ってくれたのだよ。感謝しよう…私から君達への贈り物だ。私が王となる瞬間を見届けたまえ…!」

モデルV本体に向かおうとセルパンだが、ヴァンはふらつきながらも立ち上がる。

「ふざ…けるな…!!」

「?」

「モデルVが覚醒しようと…関係ない…覚醒したモデルVごとお前を倒す!!」

「諦めの悪い子供だ。負けると分かっていてまだ足掻くかね?エネルギーを吸収されたことで立っているのもやっとではないのかな?いや、寧ろ君を目の前で始末して更に彼女からエネルギーを奪うと言うのも悪くはない!!」

ヴァンに殴りかかるセルパン。

重たい体を何とか動かしながらヴァンは攻撃を回避する。

「ふざけるなセルパン!俺は諦めたりはしない!お前を含めたイレギュラーを全て倒すまでは絶対にな!!」

「イレギュラー…か…君のように変化を拒み、人の進化を拒む君のような存在が私にはイレギュラーに見えるがね!!人は変わるべきなのだよ!憎しみを生む心と苦しみを受ける体を捨ててでも!!」

セルパンの言葉にヴァンは怒りを覚えながら言い返す。

「ふざけるな!そんなものただの人形と変わらない!俺達ヒューマノイドとレプリロイドに心があるのは、そんな未来のために…モデルVの餌となるためじゃない!!」

「星に命が芽生え、人と機械が生まれ、助け合いながら争い合う!この度に君やあの愚かな女のような者達が勝利してきたのだろう!誰も傷付けたくない、大切な物を守りたい、何も失いたくない、そうやって少しでも自分が傷付かない方へ甘えた選択を繰り返す!聞こう少年よ!戦ってまで変わらぬ運命を、光無き未来を守って何の意味がある!?」

「意味か…生憎、俺は頭が良い方じゃなくてね。誰かさんがイレギュラーをばら蒔いてくれたおかげで一日を生きるのも大変だったんだ。運命とか未来とか俺にはどうでもいい…定められた運命なんてごめんだし、予想もつかない未来も要らない。今、俺に必要なのは現在(いま)だけだ。俺が戦う理由はお前達イレギュラーを倒すこと、そして俺が信じるものを守るためだ!!(そう、俺の存在を感じられる現在を信じるだけだ…)」

セルパンから距離を取りつつ、バスターショットを構えてショットを連射していく。

「逆に俺からも聞きたいな。憎しみや苦しみを…心を捨て去った先に何が残るんだ!?何も残らない!そんなの死んでるのと同じだからな!!例え俺達を倒してもそれを否定する奴が必ず現れる!!」

「黙れ!」

「ぐはっ!」

スライディングからの蹴り上げを喰らったヴァンは大きく吹き飛ばされる。

「ヴァン…!ロックオン!!」

モデルXとモデルZを握り締めて変身しようとしても、モデルVにエネルギーを取り込まれたことによる虚脱感がまだ抜けておらず、モデルZXへの変身が出来なかった。

「エール、駄目だ。まだ君に変身出来るだけの力が戻ってない…!」

「そんな…!」

このままではヴァンが殺されてしまうと思ったエールは絶望するが、ヴァンは頭を揺さぶられたことで意識が混濁しており、頭の中でモデルOの声が響いていた。

“我は救世主なり”

“破壊こそ救済の力”

「あの世で見ていると良い、私の創る新世界を!!」

そして倒れているヴァンに振り下ろされるセルパンの拳。

“破壊する…全てをゼロにするために”

「(止め…ろ…)」

しかし、モデルOの声が強く響いた瞬間にヴァンの瞳の色が翡翠から紅に変わると、難なくそれを受け止めた。

「何!?」

「え…?」

セルパンの拳を受け止めたヴァンは凄まじい殺気を纏ってセルパンを投げ飛ばす。

元々弱っていた状態で意識を失いかけたところをモデルOによって意識を乗っ取られてしまうヴァン。

「…エ…ール…後は…頼…む…」

完全に意識を失う寸前にエールに言うと、真紅のオーラを纏ったヴァンはアルティメットセイバーをホルスターから抜くと、一気にセルパンとの距離を詰めた。

「オリャアアアアッ!!」

強化されたチャージセイバーがセルパンに直撃し、セルパンの巨体を吹き飛ばす。

「ぬうっ!?」

エネルギーを吸収されてフラフラだった者とは思えないくらいに強烈な一撃に防御も出来ずに吹き飛ばされる。

「ヤッ!ヤッ!オリャアッ!!」

吹き飛ばされたセルパンにほとんどノーチャージのダブルチャージバスターと真空刃のソニックブームが放たれた。

「ぬおおおっ!!?」

吹き飛ばされた状態では満足な防御も出来ずに全撃当たってしまう。

「アークブレード!!」

一回転しながらセイバーを振るうと広範囲に衝撃波が放たれ、セルパンの足に直撃してセルパンの身動きを封じた。

「しまっ…」

「はあっ!」

低速ダッシュジャンプしながらの超加速で回転斬りからの三連撃、そしてとどめの龍炎刃の斬り上げが炸裂した。

「ぐあああああっ!!?」

「ふ…ははは…」

無表情だったヴァンの表情にセルパン以上の狂気が宿る。

それを見たエールの表情に怯えが浮かび、モデルXの方を見遣る。

「モデルX!もう充分だよ、早くヴァンを止めて!」

「………」

「モデルX!?」

止めるように頼んでもモデルXは沈黙するだけ、エールは急かすように呼んだ。

「駄目なんだ…もう、僕ではモデルOの抑制は出来ない」

「え…?」

モデルXからの信じたくない言葉に、エールは呆然となった。

「モデルOの力が最早、僕でも抑えきれない程に増大しているんだ。」

「そんな…何時から…」

「モデルHの力が完全に戻ってから…かな…?深刻化し始めたのは…」

「どうして黙ってたの!?」

「それは…」

「あいつが望まなかったからだ。お前に余計な心配はかけたくなかったらしい」

モデルXの代わりにモデルZが答えた。

「そんな…」

絶句するエールを他所にセルパンは傷付いた体を何とか起き上がると、モデルVに両腕を掲げた。

「調子に乗るな小僧!その殺意のエネルギー、モデルVの餌としてやろう!!」

「…………」

ヴァンの体から再び紫の光が飛び出してモデルVに吸い込まれていき、それを確認したヴァンは目を閉じた。

「ヴァン!」

「ハーッハッハッハ!!また地面に這いつくば…」

エールの叫びとセルパンの笑い声が響いた直後、モデルVが爆発した。

「!?」

「は……?」

呆然となるセルパンだが、モデルVの随所で小規模な爆発が起こり始めたことに改めてヴァンを見遣る。

「どんな物にも限界は存在する。なら、モデルVの限界以上のエネルギーを喰らわせてやるだけだ」

目を閉じた状態で平然と言うヴァンにセルパンは驚愕する。

「ば、馬鹿な…我がモデルVの破片と同程度の質量で本体のエネルギー許容量を遥かに上回るエネルギー量だと!?減るどころか寧ろ増して…モデルOのエネルギーには限界がないのか!?」

そして閉じていた目を見開くのと同時にモデルVが一際大きな爆発を起こした。

「どうしたセルパン?」

「うう…」

「足が震えてるぞ、潔く負けを認めるか…?それとも、負けると分かっていてまだ足掻くのか?」

嘲笑と共に先程のセルパンの言葉を言うと、セルパンの表情が屈辱に歪んだ。

「くっ!舐めるな小僧!!私の最大の一撃の前に散れ!!」

バスターから放たれた巨大なエネルギー弾をヴァンはバスターを構えてセミチャージバスターを連射する。

エネルギー弾は容易く弾かれて見当違いの方向に飛んでいき、ヴァンはセイバーをセルパンに投擲した。

「!?」

「ああっ!」

それをセルパンは顔を逸らしてギリギリで回避し、回避されたことにエールは目を見開く。

そしてモデルOの主武装であるセイバーを投擲すると言う暴挙にセルパンは嘲笑った。

「フ、フフフ…セイバーは君にとって主な武器のはず…その武器を投げるとは血迷ったのかね!?」

「馬鹿かお前は…俺の腕をよく見ろ」

「「!?」」

ヴァンの右腕をよく見ると、腕のアーマーからワイヤーフックが射出されており、先端のフックが投擲したセイバーの柄を挟んでおり、ワイヤーはセルパンを拘束した。

「しま…っ!?」

「終わりだ」

力強く引っ張るとセルパンは抵抗すら出来ずに引っ張られ、ヴァンはワイヤーを振り回して壁、地面に何度もセルパンを叩きつけるとそのままワイヤーを引いて極限までエネルギーを収束させた拳を叩き込んだ。

「裂光覇」

光に呑まれたセルパンは絶叫すら上げることすら出来ずに吹き飛んだ。

「そん…な…馬鹿…な…」

「雑魚が」

ワイヤーを腕に元に戻してセイバーを回収すると、冷たく見下ろしながらモデルOの狂気的な好戦欲と破壊衝動に支配されたヴァン。

「まだだ…私には…モデルV本体がある…貴様に…貴様に見せてやろう!王の真の力をーーーっ!!」

「で、でかい!?」

モデルV本体と融合し、巨大化したセルパンがヴァンに向けてありったけの攻撃をする。

「…………」

「死ね!死ぬのだ小僧!新世界の王たる私に歯向かった罰を…」

「うるさい」

拳を地面に叩き付けて裂光覇を繰り出す。

無数の光の柱が立ち昇り、セルパンの全身を貫いた。

「ぐおおおおっ!?」

「弱点はそこか」

頭部に攻撃が当たった瞬間にセルパンが悲鳴を上げたので、そこを弱点と判断したヴァンはダブルジャンプからの回転斬りを浴びせた。

「ぬあああああっ!!まだだぁっ!!」

セルパンが更に巨大化し、両肩の目を思わせるパーツが露出し、そしてヴァンに炎による攻撃を仕掛けるが、それをかわしながらジャンプする。

「アークブレード!!」

回転斬りによる広範囲に放たれた衝撃波が体全体に直撃し、両肩に直撃した瞬間に怯んだ。

「今度はそこか、ダブルチャージバスター!!」

即座に両肩にチャージバスターを一発ずつ当てると、セルパンは激痛に悶えた。

「ぐあああああっ!!?」

「期待外れだな、ただの木偶の坊か」

「舐めるな小僧ぉっ!!」

更に巨大化してヴァンに今使える全ての攻撃を繰り出した。

「終わりにするぞ」

とどめとばかりにチャージを終えたセイバーを大上段に構えて一気に振り下ろした。

「な、ば、馬鹿なああああっ!!?」

強烈なチャージセイバーの衝撃波をまともに受けたセルパンは沈黙した。

「……嘘…セルパンをこんなにあっさり…」

「…………」

呆然としているエールに視線を遣ると、興味を無くしたかのようにこの場を去ろうとする。

「いけないエール!彼は街に出るつもりだ!!」

「え!?」

モデルOに乗っ取られている今のヴァンが街に出たりしたら…人々に圧倒的な力を振るうヴァンの姿が脳裏を過ぎる。

「どうするエール…ヴァンと戦えるか?」

モデルZの言葉にエールは目を見開いた。

「戦うって…ヴァンと倒せってこと!?」

「そうだ、このままヴァンを街に出してしまえば確実に被害が出るぞ」

「こうなってしまっては、ヴァンと戦う以外はない」

モデルHとモデルPの言葉にエールの表情は絶望に染まった。

「何で…何でアタシとヴァンが戦わないといけないの…?さっきまで一緒に…」

「エール…」

悲しげにエールを見下ろすモデルXだが、モデルFは焦れったそうに叫んだ。

「だああ!おい、エール!良く聞け!あいつは意識を失う時にお前に“後は頼む”って言ってただろ!これは幼なじみのお前じゃねえと止められねえんだよ!!」

「良く聞きなさいエール。あなたには今、二つの選択肢があるわ…ヴァンを倒して救うか…このままヴァンとの戦いから逃げて取り返しのつかない事態になるのを静観するか…あなたはどっちを選ぶの?」

モデルFとモデルLの言葉に俯くエールだが、少しの沈黙の後に顔を上げた。

「………分かった、アタシ…ヴァンと戦うよ」

「エール…」

「アタシがもっと強かったら…こんなことにはならなかった。ヴァンはアタシが止めてくれるのを信じてくれたのなら…アタシはヴァンと戦う!」

モデルXの気遣うような視線にエールは頷くと、モデルZと共に掴んだ。

「みんな、アタシに力を貸して…!」

「勿論だ。俺達もあいつを失いたくはない」

「俺達も出来るだけのサポートをする。多少の負荷はあるが、奴に勝つにはこれしかない」

モデルZとモデルHの言葉にライブメタル達も覚悟を決めたらしく、エネルギーを全開の状態となる。

「ロックオン!!」

モデルZXへと変身し、ヴァンにZXバスターを向ける。

「………」

「ヴァン、あんたは絶対にここから出さない」

「邪魔をするつもりか?」

「…そうだよ、ヴァンに街を滅茶苦茶にさせるわけにはいかないから」

不機嫌な表情を浮かべるが、次の瞬間には挑発的な笑みを浮かべた。

「お前が俺に勝てるつもりか?」

「……分からない…でも、逃げるわけにはいかない!」

バスターのチャージをするエールにヴァンもまたバスターのチャージをするのであった。

まるで数百年前の再現と言うかのように。 

 

第三十八話 青の英雄と紅の破壊神

エールとヴァンが睨み合い、天井の破片が地面に落ちるのと同時にZXバスターとバスターショットによるチャージバスターを放った。

「はあっ!!」

アルティメットセイバーを抜き、エールとの距離をダッシュで詰める。

「っ!」

「龍炎刃!!」

炎を纏ったセイバーによる斬り上げを繰り出すヴァンにエールは咄嗟にバスターをZXセイバーに変形させて受け流す。

そして龍炎刃を中断してチャージセイバーを繰り出してきたが、エールはバックステップで回避する。

「くっ!!」

「ダブルチャージバスター!!」

バスターから発射されるチャージバスター二発と真空刃のソニックブーム。

「ダブルロックオン!モデルHX!!」

上方向へのエアダッシュで回避するが、それをヴァンは読んでいた。

「アースクラッシュ!!」

拳を地面に叩きつけると、瓦礫が吹き飛んでエールに直撃する。

「うっ!?」

「龍炎刃!!」

「きゃあっ!?」

怯んだ隙に龍炎刃を叩き込み、アークブレードで追撃するが、エールも簡単にはやられずに衝撃波の隙間を掻い潜ってダブルセイバーによる連続攻撃を浴びせる。

最後のソニックブームによってヴァンはいくらか吹き飛ばされるものの、即座に反撃する。

「チッ!滅閃光!!」

地面に拳を叩きつけて放射状にエネルギー弾を発射する。

「ダブルロックオン!モデルPX!!」

十字手裏剣を発現させ、それを高速回転させて盾代わりにすることでエネルギー弾を防ぐとそのままヴァンに投擲するが、セイバーで弾かれる。

しかし、十字手裏剣に気を取られたヴァンにエールはクナイを連続で投擲していく。

「ぐっ!オリャアアアアッ!!」

「きゃああああっ!!」

チャージセイバーからのダブルチャージバスター。

まともに受けたエールは壁に激突し、瓦礫の生き埋めになったかと思ったが…。

「メガトンクラッシュ!!」

モデルFXへと変身し、瓦礫をナックルバスターによるパンチで吹き飛ばし、炎を纏った瓦礫がヴァンに迫るがバックステップでかわしていく。

そしてモデルZXへと変身し、ダッシュしながらバスターを連射するエールに対してヴァンはセイバーでショットを弾き返す。

「ていっ!!」

その隙にエールはヴァンの懐に入ってセイバーで攻撃し、ヴァンの体に裂傷を刻んだ。

「はあっ!!」

反撃のチャージセイバーを繰り出すヴァンだが、エールは咄嗟にセイバーをバスターに変形させて真下にチャージバスターを発射すると高く上昇した。

「喰らえーーーっ!!」

セイバーを大上段に構え、落下の勢いを加算したチャージセイバーを繰り出すエール。

咄嗟に後ろに下がったが、衝撃波をいくらか喰らってしまう。

「……やるな」

ダメージは与えたものの、短時間で回復してしまうので一気にカタを付けなくてはならない。

「…たあっ!!」

「ふんっ!!」

同時にダッシュで駆け、セイバーをぶつけ合う両者。

エールは腕が痺れる感覚を覚えながらもセイバーを振るってヴァンのセイバーを受け止める。

「モデルH!」

そして片手にモデルHXのダブルセイバーを出現させるとそれを連結させた状態で回転させながら斬り付ける。

「ぐあっ!?」

モデルZXの状態でモデルHXの武器を使ったことが予想外だったヴァンはダブルセイバーの斬撃をまともに受ける。

「やった…!」

ほとんどのミッションを共同でやっていたため、ヴァンもエールも互いの手の内は知り尽くしているため、だからエールは多少の無茶をしてでもヴァンの知らない戦法で攻めようとしている。

先程のダブルセイバーもそれだ。

「ダブルチャージバスター!!アークブレード!!」

「モデルL!!モデルF!!」

今度はモデルLXのハルバードを取り出し、それでチャージバスターを弾き飛ばし、アークブレードの衝撃波をハルバードを回転させて弾いた。

着地後の隙を突いてモデルFXのナックルバスターを構えるとショットを連射する。

「ぐっ!はああっ!!」

反撃のチャージセイバーを繰り出し、エールを吹き飛ばす。

「っ!まだまだぁっ!!」

「消えろ!!」

ダッシュで距離を詰めようとするエールに裂光覇を繰り出すヴァン。

「ダブルロックオン!モデルPX!!」

オーバードライブを発動してシャドウダッシュで攻撃を無効化する。

そして腕の部分のみがモデルFXとなり、ナックルバスターをヴァンに叩き込んだ。

「ぐあっ!」

ナックルバスターによるパンチをまともに受けたヴァンはアーマーが破損し、そのまま膝を着いた。

「今だエール!撃て!!」

モデルHがとどめの一撃を急かす。

モデルOのオリジナルのことをデータとして知っているため、出来るだけ早く終わらせるつもりなのだ。

「分かってる!行けえっ!!」

そんなことはエールも分かり切っているため、バスターを構えてチャージバスターを発射した。

パワーもスピードも元々モデルOのヴァンの方が上なのだ。

今、多少優勢なのは全てのライブメタルの力を無理して扱っているからであり、無理な使い方にエールとライブメタル達もかなり消耗している。

放たれたチャージバスターはヴァンの纏っていたオーラが肥大化して弾き飛ばされた。

「!?」

「エール…」

オーバードライブのエネルギーが増し、狂気に満ちた視線を射抜かれたエールは背中に冷たいものが走るのを感じた。

「あの時、エリアHで雑魚と言って悪かったな…お前は俺の最高の敵だ…叩き潰しがいがある…!真のオーバードライブでケリをつけてやるよ…!!」

エールに向けて再びダブルチャージバスターを発射し、エールはセイバーでそれを弾き、放たれたソニックブームをジャンプで回避するとチャージバスターを当てる。

「十字手裏剣!!」

腕をモデルPXの物に変えると十字手裏剣を追撃で投擲するが、ヴァンは回転斬りで弾くと再びダブルチャージバスターとソニックブームを繰り出してエールに直撃させる。

「喰らえっ!!」

「ううっ!…出てきて氷龍!!」

三連撃をまともに受けたエールを大きく吹き飛ばされるが、モデルLXに変身して氷龍を召喚する。

「邪魔だ!!」

「本命はこっちよ!」

チャージセイバーで氷龍を砕くが、エールはダッシュで距離を詰めてモデルZXに変身するとセイバーによる三連撃を繰り出した。

「チッ!!」

「十字手裏剣!!」

そしてバックステップで距離を取り、腕をモデルPXに変えると再び十字手裏剣を投擲した。

それをダブルジャンプで回避してアークブレードの衝撃波をエールに当てて動きを封じると裂光覇を繰り出してエールに直撃させ、とどめにチャージセイバーを叩き込んで吹き飛ばした。

「きゃああああっ!!」

吹き飛ばされたエールは壁に叩き付けられて力なく倒れる。

「終わりだな」

動かなくなったエールに関心を失ったヴァンはこのまま去ろうと、背を向けた。

「(つ、強い…これがモデルOの…本当の力…アタシじゃ…ヴァンを止められないの…?アタシには何も…守れ…ない…の…?)」

ダメージとライブメタルの無理な使い方をした反動はエールの体を蝕んでおり、エールの意識はそのまま闇の底に沈む直前であった。

『エ…ール…エール…エール!聞こえる!?聞こえるなら返事をして!!』

「プレリー…」

意識を失う寸前に通信機から聞こえてきたのはプレリーの声であった。

『エール、しっかりしろ!』

「生きて…る…の?」

『勿論だ!約束しただろ?お前の帰りを待ってるってな…辛うじて生きていたモニターで大体のことは理解してる…しっかりしろエール!ヴァンを正気に戻せるのはお前しかいないんだ!!』

ジルウェの言葉にエールの体に少しだけ力が戻る。

「でも…アタシだけじゃ…」

『弱気になるなエール!お前は一人で戦ってるんじゃない!お前には俺がいる!司令官やガーディアンのみんな…そしてお前が助けてきた人々もお前を応援しているぞ!!』

『エール頑張れ!』

『ヴァンの目を覚ましてやれー!!』

『立てーっ!エール!!』

「みんな…!!」

『聞こえるエール?ガーディアンのみんなだけじゃない…あなたが救ってきた人達があなたを応援しているわ…お願いエール…ヴァンを…助けて…!!』

プレリー達の想いがライブメタル達に吸収されていき、エールの体に力がみなぎっていく。

「エール、最後まで諦めるな…自分を信じろ」

「セルパンを倒して、そして幼なじみのあいつを助けてガーディアンベースに帰る…最高のミッション終了じゃねえか。」

「そうよエール、ここまで来て最悪のエンディングなんて要らないわ。どうせなら最高のエンディングを作ってやろうじゃない。」

「どのような深い闇の中にいようと、目指すべき光は必ずある…」

「お前がモデルX様に選ばれたのは、ちゃんとした理由がある…だからこそ我らはお前に力を貸したのだ。」

「エール、僕は君の勇気を信じているよ…あの時、初めて会ったばかりのプレリーを助けた時の君の心を…!」

「………うあああああああっ!!!」

モデルZ

モデルF

モデルL

モデルP

モデルH

モデルX

無茶な使い方をしたことで小さくない破損をしていてもそれを感じさせないライブメタル達の力強い言葉に押されたエールは赤いオーラを放出し、金髪を模していたコードが六枚羽のようになり、光輪を背負う。

全てのライブメタルの力を解放し、仲間達の想いを力にしてモデルZXのオーバードライブが発動したのだ。

「!?」

強大なエネルギー量に驚愕するヴァンだが、エールがチャージバスターを発射した。

それをヴァンはセイバーで両断しようとするが、出来ずにいくらか喰らって吹き飛ぶ。

「ヴァンッ!!」

エールはセイバーを構えて突撃する。

ヴァンも同じようにセイバーを構えて突撃し、両者は互いに斬撃をぶつけ合う。

凄まじい攻撃の応酬はセルパン・カンパニーを一撃がぶつかり合うごとに破壊していく。

ダメージ覚悟でエールは一歩踏み込んでヴァンに斬撃を見舞い、そして追撃の三連撃。

ヴァンの反撃も受け流し、大振りの横薙ぎは屈んでかわして逆に横薙ぎの一撃を喰らわせて連撃に持ち込む。

「ぐっ!!はああっ!!」

しかしヴァンもやられっぱなしではなく、セイバーを振るってエールにダメージを負わせていき、ダッシュしながらのチャージセイバーを直撃させるが…。

「てやあああああっ!!!」

「ぐあっ!!」

ダメージに構わずにエールは更に踏み込んで強烈な一撃を叩き込んでヴァンを吹き飛ばす。

互いにボロボロになりながら睨み合う両者。

「うわあああああっ!!」

「うおおおおおおっ!!」

ダッシュジャンプでヴァンにチャージセイバーを繰り出そうとするエールに対してヴァンもチャージセイバーで迎え撃とうとするが、激突した瞬間にヴァンのセイバーの光刃が砕け、ヴァンはチャージセイバーをまともに喰らう。

エールはバックステップで距離を取り、モデルZXからモデルXに変身し、全てのライブメタルと人々のエネルギーを両腕のXバスターにチャージした。

「エール!!」

「「「「「撃て!!」」」」」

「これで終わりよっ!ダブルチャージバスター!!!」

モデルX達から促され、両腕から同時に放たれた巨光。

まともに受けたヴァンは光に呑まれた。 
 

 
後書き
漫画版要素も含めてのラスボス戦でした。 

 

第三十九話 ファイナルストライク

全てのライブメタルと人々のエネルギーがチャージされたダブルチャージバスターの威力は凄まじく、あれほどの威力以上の攻撃はないと断言出来る。

エールはモデルXからモデルZXに変身すると、重い体を引き摺ってヴァンに近寄る。

「ヴァンはどう?」

「……生きてはいるが…妙だな、以前から感じていたモデルOの邪悪な気配を感じない…」

「うむ、完全に沈静化しているようだ」

モデルZとモデルPがヴァンとモデルOの状態を見て言うと、モデルHが口を開いた。

「これは俺の推測だが、恐らく先程の人々のエネルギーを吸収したことでモデルX様の力の上限がモデルOの支配力を上回ったのかもしれん」

「じゃあ!?」

モデルHの言葉にエールの表情が明るくなり、モデルLが頷いた。

「ええ、流石に完全に一体化している影響で変身は解けないみたいだけど、流石に毎日モデルOに悩まされることはないでしょうね」

「良かったぁ…」

「お前が頑張ったからだぜエール!胸を張りな!!」

「君が最後まで諦めなかったから、彼を救えたんだよ」

モデルFとモデルXの言葉にエールは笑顔を浮かべて頷くと、ヴァンがゆっくりと目を開いた。

「うう…」

「ヴァン!大丈夫?」

「エール……その怪我は………ああ、俺がやったんだな…」

途中のことはほとんど覚えていないが、セイバーによる斬り傷は確実に自分がやったのだと言うのは理解出来た。

「良いよ、気にしてないし…ヴァン…気分はどう?」

「今まで騒がしかったモデルOが静かになった。ここまで静かなのは初めてかもしれない」

ヴァンの表情に嘘偽りはなく、どうやら本当のようだ。

こうして見ると、モデルVやセルパンのことに頭が一杯になってヴァンのことを良く見ていなかったのが自分でも分かる。

「そっか…もう隠し事なんかしないでよね。次にそんなことしたら許さないから」

「…分かったよ」

「さ、セルパンも倒したし…そろそろガーディアンベースに…」

「ぐ…おおおお…!」

立ち上がってガーディアンベースに帰還しようとした時、今まで沈黙していたセルパンが動き出した。

「「!?」」

「小僧!小娘!良くもやってくれたものだな!!」

「う、嘘!?あれだけやられたのにまだ動けるの!?」

「あの程度では死なぬわ!モデルV本体と一体化した私の回復力を舐めるなぁっ!!」

「チッ…ゴキブリ並みの生命力だな…」

立ち上がってアルティメットセイバーを構えようとするヴァンだが、ダメージによってふらついた。

「ヴァン!?大丈…っ!」

エールは駆け寄ろうとしたが、エールも無茶をした反動によってまともに動けない。

それを見たセルパンは醜悪な笑みを浮かべた。

「どうやら勝利の女神は私に微笑んだようだな!!」

再生した両肩からビームが放たれ、ヴァンとエールに迫る。

「チィッ!!」

モデルHがエールをモデルHXに強制変身させてバーニアを噴かしてヴァンに体当たりする形で回避した。

「っ…ありがとう…モデルH…」

「礼を言うのは後にしろ、次が来るぞ!!」

「ふはははは!!無駄な足掻きを!!」

再び放たれるビームをエールとヴァンはダッシュで何とかかわしていく。

「畜生!てめえ汚えぞ!!」

「ダメージでろくに動けない二人を狙うなんてまるでハイエナのようだわ」

モデルFとモデルLもセルパンの卑怯なやり方を非難した。

「戦いとは勝利こそが全てだ!それは貴様らとて同じことだろう!!」

巨大な手に挟み撃ちにされ、ヴァンとエールはそのまま挟まれる。

「「がはっ!?」」

防御も意味を成さない攻撃に二人は一瞬、意識を失いかけたがヴァンは残る力を振り絞って拳を手に振り下ろし、エールもモデルFXに変身してナックルバスターを手に叩きつけた。

「アースクラッシュ!!」

「グラウンドブレイク!!」

「ぬう!?」

普段より威力が下回っているが、弱っているセルパンにはかなり効いたようだ。

「くっ!何とか…抜け出せたか」

「ほ、本当にしつこいんだから…!」

満足な着地も出来ずに倒れる二人。

「どこまでも諦めの悪い子供だ…!だが、君達にはもう反撃するだけの体力は残っていまい…このまま朽ち果てるがいい!!」

再び二人に放たれたビームに対して、二人はまともな回避行動も出来ずに吹き飛ばされた。

「ぐわあああああっ!!」

「きゃあああああっ!!」

「滅べ!滅んでしまえええっ!!」

吹き飛んでいる二人に更に追撃を加えるセルパン。

その映像はガーディアンベースのモニターにも映っていた。

「ヴァン!エール!」

「くそっ!セルパンめ!何て汚い奴なんだ!!」

プレリーとジルウェが傷付き、吹き飛ばされている二人の姿を見て悲痛な表情と怒りの表情をそれぞれ浮かべるが、こうしていても何も始まらない。

「おい、誰かサブタンクを持っているのはいないか!?」

「駄目だよ、救助活動でガーディアンベースが保有している全てのサブタンクを使ってしまったからね…」

トンが誰か回復アイテムのサブタンクを持っている者はいないかと聞くものの、カルレから返ってきた答えは良いものではなかった。

「治療物資もほとんど使ってしまいました…」

ローズの言葉に誰もが言葉を出せなかったが、セードルはあるものを二つ取り出した。

「ここに丁度E缶が二つあるんだ。」

「E缶!?そんな貴重な物をどうしてあなたが…」

E缶とは遥か昔から存在する高密度なエネルギーの液体が入った物であり、昔はレプリロイド専用のアイテムであったが、機械化した人間…ヒューマノイドも飲めるようになっている。

「アウターでハンター業をしている知り合いから貰ったのさ、後でこっそりと飲もうとしてたんだけど…二人に使ってやってくれよ」

E缶ならば即座の回復も可能だし、形勢逆転も夢ではないが…ここで一つの問題がある。

「どうやってセルパン・カンパニーにまで行けば…この船はまだ動けないし…」

「なら、俺が行きます。バイクに乗っていけば短時間で着ける」

「ジルウェさん……分かりました…お願い」

「ジルウェさん、俺にも手伝わせてくれよ」

「シュウ!?」

聞き覚えのある声にジルウェが振り返ると、そこにはシュウがいた。

「話は聞かせてもらったぜジルウェさん、悪の親玉を倒すための手伝いに行くんだろ?俺も行くぜ」

「駄目だ!危険すぎる!」

まさか、以前と同じような気持ちで言っているのではないかと思って止めようとするが、シュウの表情はいつもと違っていた

「危険なのは分かってるよ、俺はヴァンやエールみたいに強くないし特別な存在じゃない。でもさ、俺もみんなを守りたいと思う気持ちは一緒だよ。やっぱり俺…ガーディアンに入りたい。あいつらとは違うやり方で戦うって決めたんだ。だから俺にも行かせてくれジルウェさん」

「……分かった。ただし危険だと判断したら逃げろよ」

「おう!!」

ジルウェとシュウはバイクに乗り込むとセルパン・カンパニーへと向かっていった。

そして場所はセルパン・カンパニーに戻り、ヴァンとエールはセルパンの猛攻に何度も吹き飛ばされて地面に倒れ伏していた。

「フフフ…この王を決める戦いは私の勝利だ!」

「へっ…ほんの少し前までモデルOに支配されてたヴァンにボコボコにされてた奴の言葉とは思えねえな。てめえはただダメージで動けねえ二人を嬲ってるだけじゃねえかよ」

「全く同感だな…復活したイレギュラーが貴様を小物と言っていた理由が良く分かった」

モデルFとモデルHが言ってもセルパンは鼻を鳴らすだけ。

「フン、言い残すことはそれだけかね?ならばこの一撃で朽ち果てるがいい!!」

ヴァンとエールに向けて放たれるビームだが、ジルウェとシュウの乗ったバイクが二人に直撃する前に救出した。

「シュウ…!?お前…」

「待たせたなヴァン!こいつを飲め!」

E缶を差し出すシュウにヴァンは疑問符を浮かべた。

隣のエールを見るとエールもまた信じられないと言うような表情を浮かべている。

「…何でお前がこんな高級品を持ってるんだよ…まさか盗んだのか?」

「ジルウェがこんな高級品をあっさり渡してくるなんて…アタシ…やっぱり死んじゃったんだ…」

二人の言葉にシュウとジルウェはガクッとなった。

「お前達は俺達を何だと思ってるんだ…」

「「サボリ魔とケチな先輩」」

「「ぐう!?」」

二人の言葉がシュウとジルウェの胸に深く突き刺さった。

「でも、助かったぜ!!」

「ありがとう、ジルウェ!!」

E缶を一気に飲み干すと、体に力が湧いてくる感覚を覚えた。

そして放たれたビームをヴァンがセイバーで斬り裂き、エールがZXバスターを構えてチャージバスターを放ってセルパンに直撃させた。

「ぐおおおおっ!?」

「よくも好き放題にやってくれたわねセルパン!」

「だけどお前の下らないプロジェクトもこれで終わりだ。この一撃で消し去ってやる」

エールは全てのライブメタルの力を解放するとバスターを構えてオーバードライブを発動し、コードが六枚羽状態となって光輪を背負う。

ヴァンも真のオーバードライブを発動してセイバーを大上段に構えると、セイバーの光刃を巨大化させた。

「お、己ーーーっ!!」

最後の悪足掻きにビームを放つが、ヴァンとエールの表情は平静そのものだった。

「これで何もかも終わりよセルパン!あんたとの因縁は!!」

「消え失せろ!お前が執着していたモデルVと一緒にな!!」

極限までチャージされたエールのバスターとヴァンのセイバーから必殺の一撃が発動した。

「「ファイナルストラーーーイクッ!!!」」

かつてモデルXのオリジナルである青の英雄とモデルZのオリジナルである赤の英雄が古の戦争でモデルOのオリジナルを打ち破る時に使用した最大の必殺攻撃がセルパンに直撃する。

「馬、鹿な…モデルVの力を得た私が!?だが、忘れるな…ライブメタルの適合者である君達には…モデルVを作った男の血が流れている…例え…私を倒したところで…またどこかでゲームの続きが続行されるだろう…!」

「アタシ達に…モデルVを作った奴の血が…!?」

「…だったらその時は、俺達が何度でも止めてやるさ…お前のようにな……」

「みんな、ここはもう保たない!脱出するんだ!!」

モデルXがファイナルストライクの影響で崩壊しかけた部屋を見て脱出を促す。

「ヴァン!エール!乗れ!!」

「ああ!!」

「うん!って、それアタシのバイクじゃない!?丁寧に乗りなさいよ!!」

「少しくらい荒くてもいいだろ!行くぜ!!」

ジルウェとシュウの乗るバイクに乗り込み、ヴァンとエールは崩壊していくセルパン・カンパニーから脱出したのであった。 

 

第四十話 誓いを果たす時

セルパン・カンパニーから脱出したヴァンとエールは迎えの通信をジルウェに任せて瓦礫に座って休んでいた。

「…終わったね」

「セルパンのことは…だけどな」

まだモデルVを作った男がいる。

その男が生きている限り、この下らないゲームに終わりは来ない。

「アタシ達にはモデルVを作った男の血が流れてる…アタシの…アタシ達の力は…」

「セルパンのように世界を支配する力だって言いたいのか?」

それを聞いたエールが慌ててヴァンの方を振り返る。

「何で…」

「分かるのは当たり前だろ、何年の付き合いだと思ってるんだよ…不安になる気持ちは分かるさ、でもお前はセルパンのような力の使い方は絶対にしない。理由はあいつなら絶対にしないようなことがお前には出来たからだよ」

「アタシに?」

「ああ、お前はモデルOに意識を乗っ取られた俺を助けてくれたろ?あれはセルパンには絶対に出来ないし、しないだろうしな…そしてお前は必死にみんなを守ろうと戦ってきた。俺はそんなお前を見てきたから確信を持って言える。お前の力は支配するための物じゃない。お前が守りたいと思う人達を守るための力だ…力なんて使い方なんだよ使い方。それに、定められた運命に従うなんて俺はごめんだ」

ヴァンの力強い言葉にエールの胸中の不安が消えていくのを感じ、エールは微笑んだ。

「ありがと、ヴァン」

「でも、お前が支配する世界もそれはそれで退屈しなさそうで良さそうだけどな…もしお前が世界を支配したらエリアGの中華料理店の肉まん食い放題にしてくれよ」

「………プッ!なあにそれ!?じゃあ、ヴァンが世界を支配したらアタシのお気に入りのケーキ店のショートケーキを食べ放題にしてよね」

「乳製品食いまくったら腹壊すから駄目だ。」

腹を壊すエールを想像したヴァンは駄目出しをし、エールは頬を膨らませた。

「壊さないわよ!」

「昔々、ある所に運び屋の従業員の女の子がいました。女の子は同じ職場の男の子とその悪友のケーキをこっそりと盗み食いし、お腹を壊してケーキを盗み食いしたことが発覚してその職場の先輩にこってりと説教を受けましたとさ」

「ちょっ!?もう馬鹿ーーーっ!!何でそんな昔のことを覚えてるのよぉっ!?」

黒歴史を掘り返されたエールは顔を真っ赤にしながらヴァンの背をポカポカと叩いた。

「そりゃあ、俺がその被害者だからですが何か?」

「う…っ」

ジト目で見られたエールは呻き声を上げて口を閉ざした。

「ただ、もし世界を好きに出来るならこれだけはしたいな」

「これだけ?……ああ…」

「「ジルウェ・エクスプレスの経済面をもっと良くしたい」」

二人は先輩である誰かさんのケチのせいで苦労してきたので、出来れば後輩にはしっかりと整備された最新のバイクやら設備で仕事をやってもらいたいものである。

「お前達は結局そこなのか…」

呆れながらやってきたのはケチな先輩こと、ジルウェであった。

「そりゃそうだろ先輩?先輩のケチのせいで俺達は本当に苦労したんだからな」

「オンボロのバイクに乗せられていつ壊れるか分からなくてビクビクしていたアタシ達の心労は計り知れないわよ…」

「むっ、それを言ったら俺だってお前達に言いたいことがあるぞ?仕事の依頼主にタメ口を利くわ、俺の注意も聞かずに突っ走るわ。言いたいことなんてたくさんあるぞ!!」

「「こっちだって!!」」

「あーあー、何やってんだろあの三人…」

三人の子供染みた口論をシュウは呆れた表情を浮かべながら見つめていた。

「ヴァン!エール!ジルウェさん!シュウ!」

「「プレリー!?」」

プレリーの四人の名前を呼ぶ声に反応した四人が一斉に振り返ると、そこにはガーディアンのメンバーと共に迎えに駆け付け、四人…正確には一人の元へと涙を流して時折転びそうになりながら駆け寄ろうとしている。

「ヴァン、行ってあげなよ」

エールに背を押されたヴァンはプレリーの元へ向かうと、プレリーは勢い良くヴァンの胸に飛び込んだ。

「おっと」

「ヴァン!もう…あなたは…本当に心配かけて…」

「悪かった…でも約束は守ったぞ…あ、もう一つあったな。ただいま、………………」

プレリーの耳元に顔を近付けて囁いた。

たった五文字の単語。

それは彼女が“プレリー”となる前に初代司令官の“お姉ちゃん”に名付けてもらった彼女の本名。

それを聞いたプレリーは綺麗に微笑んだ。

「お帰りなさい…ヴァン」

「ああ…この戦いで俺はたくさんのことを知った…モデルVを作った奴の血が俺に流れていたってそんなこと関係ない…俺には…守るべき物がある。守ることの出来る力がある。プレリー、俺は戦う…俺が信じる物のために……!」

「ええ…あなたなら、きっと守れるわ…私もあなたを支えるから…あなたはあなたの信じる道を進んで」

微笑み合う二人を見たエールはジルウェの腕を掴んでモデルHXに変身すると、ジルウェの腕を掴んで大空へ飛翔した。

「お、おいエール!?いきなり……!?」

ジルウェの腕を引っ張って自分の真正面になるようにすると、エールはジルウェの胸に顔を埋めながら、彼に助けられた十年前から育んできた想いを口にした。

「ジルウェ………アタシね…ジルウェのこと…」

続きの言葉は突風で掻き消されてしまったが、降りてきたエールの表情はとても可愛らしかった。

「(…セルパンが言ってた…アタシとヴァンにはモデルVを作った男の血が流れていて、アタシ達の力は…たくさんの犠牲の上にある物だって…けど…受け継いだのは力だけじゃない…ライブメタルを作った初代司令官のプレリーのお姉さん。アタシ達を見守ってくれていたジルウェとプレリー…それにガーディアンのみんな…この世界を守って欲しいって想いもみんなはアタシ達に託してくれたんだ…!…だからアタシは………みんなを守りたい…!…だってアタシ達には…みんなに託された物がある。母さん…アタシはヴァンと一緒に戦うよ…!みんなの大切な物のために……!)」

着地と同時にエールが変身を解除したことでダメージが特に酷いモデルH達はガーディアンベースへ運ばれていったが、モデルXとモデルZは少し無理を言ってこの場に残してもらった。

「…………」

「随分と上機嫌だなモデルX?」

表情がないために分かりにくいが、モデルXの纏っている雰囲気が普段よりも明るい気がしたモデルZは彼の隣に浮かぶ。

「うん、モデルZ…人の力は凄いんだね。僕達のオリジナルの宿命すら打ち破ったんだから…オリジナル達が存在していた時代に比べれば確かに今の人間やレプリロイドは弱いかもしれない…でもだからこそ人に手を差し伸べる強さをこの時代の人々は持っているんだろうね」

「だが、これからあいつらには長い戦いが待っているぞ。モデルVを作った男の存在もあるからな」

モデルVを作った男の所在が一切分からないため、見つかるまでは気を抜くことは出来ない。

「うん、でも僕は信じてる…彼らならきっとモデルVを作った人物にも勝てるってね」

「…フッ、お前らしい根拠のない甘ちゃんな言葉だな」

「そうかもね、でもさっきの奇跡を見たら彼らならどうにかしてしまうんじゃないかって思ってしまうんだ」

「……そうだな、例え個々の力は弱くとも多くの力が集まれば決して勝てないことはない…それを実感させられた戦いだった」

モデルZに蓄積されたデータを検索してもこのような奇跡を起こした戦いは存在しない。

昔のオリジナル達の存在していた世界には存在しなかった強さがこの時代にはある。

「運命に立ち向かい、未来を切り開くのがこの世界を生きる者全ての戦い…俺達に出来ることはそれをサポートすることのみ」

「うん、そうだね」

人類とレプリロイドを、そして信念を貫いて戦い抜いた英雄二人を基にしたライブメタルは騒ぐ仲間達の姿を優しく見守っていた。

そしてヴァン達から離れた場所でプロメテとパンドラが結果を見届けていた。

「やっぱりセルパンでは勝てなかったわ」

「ふん、所詮はモデルVの操り人形だ…だが、面白い物が見られた。モデルOとモデルZXの究極の力…あの男も警戒せざるを得ないだろう……それに次がある」

「ええ、モデルOとモデルZXの覚醒したモデルVをも一蹴する力…あの男が動き始めたわ…」

「そして各地のロックマンも目覚め始めた…モデルH、モデルF、モデルL、モデルPに適合するヒューマノイドとレプリロイドがな…」

モデルHの適合者にして平民達の暴動により争いの絶えぬ国に属する剣士にして上流階級のヒューマノイドの少年。

モデルFの適合者にしてイレギュラーによって祖国を滅ぼされ、仲間達の墓標を後にするヒューマノイドの軍人の少女。

モデルLの適合者にして紛争地帯で戦火から逃れつつ争いによって汚れていく海を見つめるレプリロイドの少年。

モデルPの適合者にして暗殺を請け負うハンターであり、仲間の裏切りにより心を閉ざしたレプリロイドの青年。

「ええ…そして彼とあのライブメタルの完成も近付いているわ…始まるのねプロメテ…」

手を差し出すパンドラにプロメテは一瞬、昔…幼い頃を思い出しながらその手を握り返す。

「ああ、そうさ…これから始まるぞ…ロックマンによる本格的な戦争がな…!今は束の間の平和を楽しむんだなヴァン、エール…!」

不敵な笑みを浮かべたプロメテはパンドラと共に姿を消した。 

 

第四十一話 少年が選ぶ道

セルパンを倒し、墜落したガーディアンベースの修理が終わるまでガーディアンの保養施設で過ごすことになったヴァン達。

施設内で静かに過ごす者と外で出された料理を摘まみながら騒ぐ者…誰もがヴァンとエールの勝利を喜んでいた。

「賑やかだな…」

「あなた達がセルパンを倒したからよ。」

「プレリー」

声に反応して振り返ると、料理を持ってきてくれたプレリーがヴァンの隣の椅子に座る。

「はい、あなたの分よ」

「ありがとう、わざわざ持ってきてくれてさ」

料理を受け取るとプレリーに礼を言うと彼女は柔らかく微笑んだ。

「この国周辺のイレギュラーは?」

「この国のイレギュラー発生の原因だったセルパンを倒してモデルVを破壊したから徐々に減少傾向にあるわ。アウターがイレギュラーの巣窟なのは変わらないけれど、原因を取り払ったことで少しずつ改善していくはずよ」

「そうか、少なくても十年前の俺達のようなことは無くなるといいな…インナーの方はどうなってるんだ?セルパンの演説のせいで大混乱だったじゃないか」

あの時のセルパンの演説のせいで、セルパンを英雄視していた人々は絶望し、モデルVの覚醒を促すほどの大混乱となった。

「…インナーの方はまだまだ落ち着いてはいないわ。モデルVにエネルギーを吸収された人々のこともそうだけど、この国の中核となるまでに勢力を広めていたセルパン・カンパニーの本社ビルの崩壊……セルパンの企みはどうあれ、人々の精神的支柱であったことは確かだもの」

「カンパニーの機能が止まって国が傾いたりはしないよな?」

「まだ分からないわ…でもあの演説から立ち直った人々が新しい国の運営体制のことで色々と話し合っているみたいだから心配はいらないと思うわ」

それを聞いたヴァンは安堵の溜め息を吐いた。

この国には辛い思い出だけではなく、亡き母親との楽しかった思い出があるのだ。

国が荒れるのだけはどうしても避けたかったが、国の運営に関してはヴァンには何も出来ない。

「セルパンがいなくても国は動くか…ほとんどセルパンの都合の良い箱庭同然の状態だったのに…やっぱり人はそんなに弱くないんだな」

「ええ、その通りよ。私は長い年月を生きてきて…人の弱さや強さを見てきた…だから、簡単に終わったりなんてしないわ」

プレリーは幼い頃からずっと見てきたのだ。

人の強さと弱さを。

弱いからこそ、他者に手を差し伸べることが出来る強さがあることを“お姉ちゃん”達が教えてくれたからだ。

これからきっとこの国はいくつもの問題や試練が待っていることだろう。

それは辛く苦しいことなのかもしれないが、滅びてしまってはそれと向き合うことさえ出来ず、家族や親しい人達、愛する者と手を取り合うことも、笑いあうことも、意見の違いでぶつかることすら出来ない。

「…そうだな」

「きゃはははははっ!!ジルウェ~、このジュース美味し~よ~♪」

「ジュース?………って!?これ果実酒だぞ!?誰だエールに酒を飲ませた奴は!?」

ヴァンとプレリーは互いに微笑み合い、ジュースと間違えて果実酒を飲んで酔っ払ってるエールとそれに絡まれてるジルウェの姿にプレリーは改めて口を開いた。

「あの時に二人をあなたが助けてくれなかったら…きっとあんなに幸せそうな二人は見れなかったと思うわ」

「そっか……エールって酒に弱かったんだな…」

「絡み上戸ね…」

「プレリー、カメラあるか?記念に残しておこう」

「賛成」

二人はカメラにジルウェに絡んでいるエールを映した。

勿論映像にも残しているので、酒を飲めるようになったら笑い話のために隠しておこう。

黒歴史の一つがまたここに誕生した。

「プレリー、しばらく休んだら俺は旅に出ようと思うんだ」

「え?」

予想していなかった言葉にプレリーの目が見開かれた。

「セルパンとの戦いでプロメテとパンドラが出てこなかったのが気になる。それにあいつらのことだからこのままで終わるとは思えない。」

「なら、私達と一緒に…」

「一人の方が動きやすい。それにプロメテ達の言葉を信じるなら俺はかなり警戒されているようだからな…一人で大暴れしてれば向こうから動くだろ。イレギュラーが多く出現している国に行けばいずれ…ガーディアンベースだと他のことにも気を配らないといけなくなるからな…だから……」

決意を固めたヴァンの表情を見たプレリーは少し寂しそうに微笑みながら頷いた。

「分かったわ……でも…無茶だけはしないでね?」

「ああ、俺の帰る場所はお前のいるガーディアンベースだからな。定期的に連絡は入れる」

それだけ言うと二人の間に会話は無くなり、数日後の夜。

エールとかに知られると止められそうなので寝静まった夜に出発することにした。

見送る相手はプレリーだけだ。

「気をつけてねヴァン」

「ああ、プレリーも気を付けろよ…エールがいるから基本的には大丈夫なんだろうけどさ」

「……ええ」

「大丈夫だ。何があっても俺はプレリーの所に帰る。だから、ガーディアンベースで…俺の帰りを待っててくれ」

「ええ…行ってらっしゃい…ヴァン」

「行ってくる」

ダッシュでこの場を去っていくヴァン。

プレリーはヴァンの背中を、今は自分だけが見られる大切な人の背中を誇らしい気持ちで見つめていた。

モデルOの機動力もあってヴァンの姿は瞬く間に見えなくなるが、プレリーは動かずにずっとヴァンが去っていった方角を見つめていた。

「…お姉ちゃん、シエルお姉ちゃんもお兄ちゃん…ゼロがミッションに出る度にこんな気持ちでゼロを送り出していたのかな?」

思い出すのは何時も“お姉ちゃん”が“お兄ちゃん”がミッションに行く際に見せていた不安そうな表情。

幼い頃の自分も“お兄ちゃん”を心配していたが、きっと“お姉ちゃん”は自分より遥かに心配していただろう。

そして不安を抱えながらも誰よりも“お兄ちゃん”を信じていたことも。

「今ならシエルお姉ちゃんの気持ちが分かるよ。世界で一番大好きな人が危険な場所に行くんだから心配で仕方ないよね…本当は行かせたくなくても状況がそれを許してくれないことの苦しさや理不尽さも…でもね、シエルお姉ちゃん…ヴァンのことが心配なのは確かなの…でも、何でかな?私ね…もう不安じゃないの。約束を守って…セルパンを倒して、モデルVを破壊して私の所に帰って私の名前を呼んでくれたヴァンが、イレギュラーなんかに負けるはずがないって信じられるの…根拠も何もないのにね。見てるシエルお姉ちゃん?私の大好きな人はとっても優しくて、少し鈍くてデリカシーがないけど、強い心と勇気を持った人だよ。シエルお姉ちゃんが大好きだったゼロにも負けないくらいに。 」

この場にいない“お姉ちゃん”にプレリーは語りかけ、プレリーは手を組んでヴァンの無事を祈った。

「行ってらっしゃいヴァン…私はガーディアンベースでいつでもあなたの帰りを待ってるからね…何年かかっても…私はあなたを…ヴァンを信じてる…!」

朝になるまでにエール達にどう説明するかを考えながら、プレリーはガーディアンベースでヴァンの帰りを待つことにしたのであった。 

 

第四十二話 灰色の少女

ガーディアンベースを後にしてから一年後。

一月に一度はプレリーに通信を寄越しながら(もう少し連絡の頻度を上げろとエールの怒声が聞こえてきたので、二週間に一度に通信を入れることになった)、ヴァンはイレギュラーを狩りながら旅をしていた。

「ここ一帯のイレギュラーはいなくなったか…」

イレギュラーが大量発生している場所を目印にして進んでいるが、やはり向こうも簡単に姿を現してはくれないらしい。

向こうから人の気配がする…どうやらここのイレギュラーを討伐しに来たハンターだろう。

どうも自分は違法ハンターとして見なされているようで出会い頭にバスターを向けられることが多い。

「違法ハンターにもハンターにもなるつもりなんてないんだけどな」

しかし戦闘経験のあるハンター達には自分との実力差を理解しているのか、向こうから仕掛けてくることはない。

まあ、ハンターで扱っている武装ではモデルOのアーマーにはあまり効かないのだが。

「とにかく…他のイレギュラーが出現する場所を探してみるか」

ダッシュでこの場を去ると、慌ててハンター達が自分がいた場所に駆け寄る気配を感じたが、もう既に距離が大分離れたので追い掛けることも出来ないだろう。

しばらく移動して森の奥まで到達すると、丁度良い時間でもあるので食事の用意をする。

と言ってもこの体に完全に慣れてから食事の必要はあまりなく、普通のヒューマノイド時代の名残みたいなものだが。

焚き火をし、湯沸かし用の小型の鍋で湯を沸かすとインスタントスープの粉末をマグカップに入れ、それを湯で溶かした物。

そして少し前にイレギュラーの攻撃を受けていた街のイレギュラーを始末した時、街の人から(恐々とされながら)礼として貰ったパン。

木に生っている木の実だ。

食事と言うには貧相だが、旅をしていることを考えれば上等な食事だろう。

旅をしていて誤算だったのは、故郷の国と比べて外の方が自分を怖がったりはしないと言うことだ。

故郷はセルパン・カンパニーの警備隊によって(一応)安全を保てられていたからなのかもしれない。

外の国は連合政府・レギオンズの支援は受けているものの、イレギュラーの襲撃に関しては自分の故郷ほどの警備隊はないのかもしれない。

イレギュラーを倒してさえくれればヒーローということなのかもしれないが。

「もう少し、イレギュラーのいる国に向かうべきかな………ん?」

人の気配を感じて振り返ると、自分よりも年下の少女が茂みに隠れていた。

「何してるんだ?」

「うひゃ!?」

服を掴んで持ち上げると、少女の姿が露になる。

灰色の髪をポニーテールにし、腰のホルスターには珍しい型のレーザーショットと呼ばれるレーザー銃である。

「こんな所に小さい女の子…?何でここに?おまけにこんな小さい子供にレーザーショットを持たせるなんてな…」

レーザーショットの銃は単発の威力はバスターショットの銃を上回るものの、連射性能が低いために小回りがバスターより利かないためにそれを嫌う者はバスターを選ぶ傾向がある。

「し、仕方ないじゃない!アタシのこれはハンターのみんなが使ってたお下がりなんだから!!」

「お下がり…?ハンターに所属してるのか?」

「そっ、今はまだ十二歳にもなってないから見習いにもなれてないんだけどね」

「そうか…護身用ならもう少し使いやすい銃を渡せば良いのにな…君の所属してるハンター達はどこにいるんだ?」

近くには人の気配がないので、少女に保護者となる者達がどこにいるのかを尋ねる。

「う……」

「あ、迷子になったのか」

「し、仕方ないでしょ!次の目的地に向かう途中でみんな一目散にイレギュラーのいる場所へ向かって行ったんだから!!」

「そうか…」

少女の言葉にヴァンは頷いた直後、少女のお腹が盛大に鳴った。

「…………腹減ったのか?」

「…………うん」

昔のエールを思い出しながら、パンの残りとスープを出してやると少女はパンとスープを食べ始めた。

「美味しい!」

「普通のパンとインスタントスープだけどな…君の家族もハンターなのか?」

「ううん、アタシには両親はいないの。物心つく前にイレギュラーに襲われたどこかの町で一人だけ生き残ってたんだって」

「そうか、君もイレギュラーの襲撃で…」

「君も?」

「俺も君と同じだよ、俺もイレギュラーの襲撃で母さんを喪った。俺の幼なじみもな」

「ふーん…そっか…」

初めて会った二人が同じ境遇であることに奇妙な親近感を覚えた。

「もう暗いから、明日の朝に君の所属してるハンターの所に連れていくよ」

「良いの?」

「ああ」

マグカップのスープにパンを浸してヴァンはそれを口にして咀嚼する。

「俺はヴァン…君の名前は?」

「アタシはアッシュ!一流で世界一のハンターになる予定で、いつかは世界中にアタシの名前を轟かせるのが夢!」

「世界中か、スケールがでかいな」

「でしょ?」

アッシュと名乗った少女とは色々な話をした。

ハンターとしての生活や自分にライバル心を抱いて突っ掛かってくる暑苦しい同期のハンター。

初めてレーザーを渡された時の嬉しさ、簡単なお使いのようなものとは言え、ミッションをクリアした時の感動。

「(エールも昔はこんな風だったな)」

しばらくして寝静まったアッシュ。

体が冷えないように焚き火は維持出来るようにする。

「(運び屋のみんなは元気かな?後輩のみんなはちゃんとしたバイクに乗れてるのかな?先輩ケチだしなー)」

ガーディアンベースで夜勤勤務していたジルウェがくしゃみをしていたりするなどヴァンは知る由もない。

翌日の朝、出発の前に周辺にイレギュラーがいないか見ていたヴァンだが、バスターとは違う銃声を聞いてそちらに向かうとアッシュが小石を積み上げて作った的に片手で構えたレーザーを向けていた。

「えい!」

引き金を退いてショットを撃っていくが、弾は的に当たるどころか掠りもしない。

「特訓か」

「あ、ヴァン!!」

「いきなり呼び捨てかよ…俺、一応君より年上なんだけどな…それにしてもこんな早くから特訓なんて頑張るな」

「そりゃあアタシは一流で世界一のハンターになるんだからこれくらい当然!でも全然当たらない…」

自分のレーザーを睨むように見つめるアッシュにヴァンは苦笑した。

「貸してみろ」

アッシュのレーザーを借りて的に向けて引き金を引き、一発一発を的確に的に当てて粉砕していく。

「う、うわあ!同じ銃なのに何でこんなに違うの!?」

「レーザーはバスターより出力が強いから反動も強い。君の力じゃまだ完全には扱えないんだ。撃った瞬間に腕がブレてたからそれじゃあ的に当たらない。もう少し力が付けば当てられるようになるさ」

「そっか」

レーザーを返すとヴァンは自分のバスターを取り出した。

「(モデルOのこのバスターってプレリーから聞くとプレリーのお兄さんがモデルH達のオリジナルと戦っていた数百年前の戦争時よりも大昔の武器なんだよな…それなのにまだまだ現役で使えるってこのバスターを作った奴って何者なんだ…?)」

「何その古いバスター?」

「数百年前の戦争よりも更に大昔の時代からあったバスターらしい」

「骨董品じゃん!!売れば高値で売れそう」

「止めてくれ」

数百年前の骨董品と言うことで目がゼニーになっているアッシュからバスターを庇うヴァン。

そしてアッシュから目的地を聞いて、大体の位置を知っているヴァンはアッシュを背負ってダッシュ移動をする。

「大人達が乗るマシンより速ーいっ!」

ハンター達が乗っているマシンより速いことにアッシュはまるで遊園地のジェットコースターに乗っている気分になる。

「そりゃ良かった」

本気を出せばもっと速いスピードを出せるが、アッシュを背負っているのでそうはいかない。

しばらくしてハンター達の仮のハンターキャンプを発見した。

「あれだな、後は帰れるよな?」

「うん、ありがとヴァン」

ヴァンの背中から下りると、アッシュは楽しそうに笑いながら礼を言う。

「別に構わない…」

ヴァンが言い切る直前にハンターキャンプから爆発が起きた。

「「!?」」

二人が慌てて振り返ると、イレギュラーの大軍による襲撃を受けていた。

「ハンターキャンプが!?」

「イレギュラーの襲撃を受けているようだな…アッシュ、ここにいろ。すぐに片付ける」

「嫌!アタシも行く!イレギュラーなんか怖くない!こいつでやっつけてやるんだから!」

アッシュの言葉に一瞬、困ったような表情を浮かべるが、置いていってもついて来そうなので一緒の方が安心だろう。

「分かった、ただし…俺から離れるなよ?」

「うん!」

アッシュを抱えてハンターキャンプに向かうヴァンはそこで予想もしていなかった発見をすることになるなど知る由もなかった。 

 

第四十三話 新たなモデルV

ハンターキャンプに向かったヴァンは一度アッシュを下ろしてアルティメットセイバーとバスターショットを抜き、ハンターの人々を襲っているイレギュラーを両断、撃ち抜いていく。

下ろされたアッシュもレーザーショットを構えてショットを連射していく。

初めて見た時よりも命中精度が上がっている気がするので、どうやら腕が少しでもブレないように両手で撃っているようだ。

悪い部分をすぐに改善出来るようにした辺り、アッシュには戦闘の才能があるのかもしれない。

「あ、あんたは…」

「下がってろ…さっさと片付ける」

ハンターの一人が何か言う前にイレギュラーがヴァンを囲むが、そのようなことなど想定内であり、オメガナックルのエネルギーを纏わせた拳を地面に叩き付けた。

「滅閃光!!」

放射状に放たれたエネルギー弾がイレギュラーを貫き、そしてヴァンがダッシュで距離を詰めてセイバーで瞬く間に斬り捨てていく。

「ウオリャアアアアッ!!!」

チャージセイバーで前方のイレギュラーを粉砕し、チャージバスターで密集しているイレギュラーを一網打尽にする。

「アークブレード!!」

アイスチップを起動した状態で一回転斬り。

それによって放たれた衝撃波をまともに受けたイレギュラーは凍結してしまう。

そして最後には大型のメカニロイドなのだが…。

「雑魚の癖に図体がでかいな、邪魔だ。裂光覇!!」

エネルギーを極限まで込めた拳を地面に叩き込むと無数の光の柱がイレギュラーを飲み込んだ。

かなりのイレギュラーの大軍がたった一人であっさりと壊滅したことにこの場にいたハンター達は愕然となる。

「朝の準備運動にもならないな」

セイバーをホルスターに戻し、バスターを背中に戻すと近くにいたハンターに歩み寄る。

「ひっ!?」

イレギュラーの大軍を一蹴したことで警戒されてしまったようでバスターを向けられたが、それよりも聞きたいことがあるのでバスターを奪って尋ねた。

「別に攻撃なんてしない。何でこんなイレギュラーに狙われるような場所でキャンプしてるんだ?」

「そ、それは…その…」

「ヴァン!どうやらさっきのイレギュラーはいきなり地面の下から飛び出して来たんだって!」

他のハンター…恐らくアッシュの同期らしき少年達らしき者達が近くにいるので彼らから聞いたのだろう。

「地面…と言うことは地下か…アースクラッシュ!!」

地面に大穴を開けて飛び込むヴァンをアッシュと同期達はまるでヒーローを見たような表情を浮かべていた。

「よっと…」

地面に着地すると、そこには大量のメカニロイドが徘徊していた。

「まるで何か引き寄せられているかのようだな…それにこのプレッシャーは……」

感じたことのあるプレッシャーにヴァンは表情を歪めながら前進する。

勿論、襲い掛かるイレギュラーを返り討ちにしながらだが。

奥へと進むと、見覚えのある物を発見した。

「モデルV…」

セルパンが掘り起こしたモデルVと比べれば一回り小さいが、このプレッシャーは忘れようがない。

「やっぱりセルパンが掘り起こした物だけじゃなかったか…ラグナロクの破片は世界中に降り注いだ…」

「当然、それを基にしたモデルVも相応に存在する」

「…セルパンが掘り起こしたモデルVは…その一部でしかないわ」

聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはプロメテとパンドラがいた。

「久しぶりだな、破壊神のロックマン。大活躍じゃないか」

「あの男も…あなたを警戒して動き始めたわ」

「そうか、それは良いことを聞かせてもらったな…お前達もここで倒されるか?」

オーバードライブを発動し、プロメテとパンドラを睨みつけ、セイバーを構えるヴァン。

「フン、それは出来ない相談だ。俺達には目的があるんでな」

「あなたに発見された以上…ここのモデルVは諦めるわ」

「逃がすか!!」

チャージセイバーが繰り出されるが、プロメテとパンドラは飛翔してそれをかわす。

「そう焦るな、お前がイレギュラーを狙って暴れてくれているおかげで俺達の予想よりも早く事が進みそうだ。いずれあの男が姿を現した時、俺達の野望を完遂した時、呪われた者同士による最高の宴をしようじゃないかぁっ!!」

「また…会いましょう」

二人はこの場を去り、ヴァンは舌打ちすると休眠状態とモデルVを見つめる。

「………チッ、まあいい…このモデルVを破壊するか」

チャージセイバーを繰り出してモデルVを破壊するヴァン。

バラバラになったモデルVを念には念を入れて更に攻撃を加えて粉微塵にする。

「……脱出するか」

入ってきた場所に戻ると足に力を入れて大きくジャンプして壁蹴りを駆使して脱出する。

「…………」

アッシュはヴァンが入っていった穴を凝視していた。

「おい、アッシュ。危ないぞ」

「ニコル、でもさ…助けてくれた人がこのまま帰ってこなかったら嫌じゃない?」

「それはそうだけどな…」

「それにしても凄かったよなぁ、さっきの人!イレギュラーがバッサバッサ斬っていく姿なんて痺れたぜ!!」

「ラザラス…まあ、確かに格好良かったよな…正にヒーローって感じ…少し怖いけどさ」

アッシュの同期のハンター見習いであるニコル、ラザラス、レッドもヴァンの飛び込んだ穴を見つめるが、次の瞬間にヴァンが飛び出したことで尻餅を付いた。

「「「「うわあっ!?」」」」

「よっと…何してるんだ尻餅を付いて?」

「ヴァンが飛び出したからでしょ!どうだった?」

頬を膨らませながら文句を言うアッシュだが、地下の方が気になったのか尋ねてきた。

「イレギュラーの発生の原因のモデルVは破壊したからここはもう大丈夫だろ。でも生き残りがいないとは限らないから早くここから去った方が良い…それじゃあ、俺はここでな」

「え!?行っちゃうの?」

背を向けて去ろうとするヴァンにアッシュは目を見開く。

「俺はある奴を探している最中なんだ。そして全てのイレギュラーを倒すまでは俺の旅は終わらない。他にもあるらしいモデルVの破壊まで目的に加わっちゃったしな」

「そっか…」

助けてくれた恩人がいなくなることに少々の寂しさを感じるが、ヴァンが微笑みながら振り返った。

「でも、また会えるといいな。」

「何時でも会えるよ!アタシはいつか一流のハンターになるんだから!もしかしたらミッションで会ったりしてね!!」

「そうだな…成長した君と会えるのを楽しみにしてる。それからアッシュ、戦闘中にはあまり目は閉じない方がいいぞ。隙が出来るからな…一流のハンターに…なれるといいな!」

「勿論!世界中のどこにいてもアタシの名前が聞けるようにしてやるんだから!」

「ははっ!それは楽しみだ!頑張れよ!!」

ダッシュで移動し、この場を去っていくヴァン。

彼女は宣言通りに数年後に凄腕のハンターとして連合政府・レギオンズにも噂されるほどのハンターとなるのであった。

そしてイレギュラー狩りの他にモデルVの破壊も加わることになった旅だが、ガーディアンベースへの通信も忘れずにした。

「あ、プレリー…俺なんだけど…」

『ヴァン!もう少し連絡頻度を上げなさいよーっ!』

エールの怒声に通信を切ろうとしたヴァンだが、それを何とか堪えて内容を話す。

『エール、落ち着いて…それよりどうしたのヴァン?』

「プレリー、実は今日のイレギュラー狩りの最中にハンターキャンプに寄ったんだけど…ハンターキャンプの地下でモデルVを発見した」

『何ですって!?』

「プレリーも言ってたろ?ラグナロクの破片は世界中に降り注いだって……だからいくつかあっても不思議じゃない。俺は旅の途中でモデルVを発見したら破壊する。そっちも見つけ次第頼んだ」

『…分かったわ、でもヴァン…あなたも無理しないでね』

「分かってる。それじゃあ、エール…そっちは任せたぞ」

『分かってるけど…ヴァンももっと連絡頻…』

エールの小言が続きそうだったので通信を切って、ヴァンは旅を続けるのであった。 

 

設定 中盤~終盤まで

“キャラクターの設定集”


ヴァン


モデルOのロックマンであり、主人公の一人。

パープリル戦でのパープリルへの強い殺意によるオーバードライブ発動が引き金となり、徐々にモデルXの抑制が意味を成さない状態となっていく。

モデルOの意識の表面化はヴァンですら違和感を感じないほどに自然と出ることもあり、途中で何とか意識を浮上させたことで回避したもののプレリーを殺しかけた。

その後は自然と仲間から多少の距離を取って接することにし、何とか意識を繋ぎ止めた状態でセルパンに挑んだものの、途中でモデルVに負のエネルギーを吸収され、更に意識を攻撃を受けたことで失いかけたことでモデルOの意識が完全浮上。

モデルOの狂気的なまでの好戦欲と破壊衝動に支配され、セルパンを圧倒、モデルVのエネルギー吸収すら物ともせずに本体と一体化したセルパンを相手にしても圧倒するほど。

後にエールと交戦し、複数のライブメタルを無茶をしながら駆使して戦うエールに押されるが、オーラが通常より肥大化した真のオーバードライブを発動して形勢逆転するが、全てのライブメタルと人々の正のエネルギーでパワーアップし、前代未聞のモデルZXのオーバードライブを発動したエールと激戦を繰り広げるが、ヴァンを助けたい一心で挑んだエールの勇気による猛攻でとうとう倒され、人々の正のエネルギーを受けたモデルXの力の上限が跳ね上がったことでモデルOの支配から解放された。

後に生きていたセルパンと再び交戦し、ジルウェとシュウのサポートによってエールとのファイナルストライクで決着をつけ、プレリーの元へと帰った。

セルパンが噛ませ犬化したので、実質ZX編のラスボス。

エレメントチップやオーバードライブが使えるだけあって、強化されたモデルZX以外ではまともに太刀打ち出来ないくらいに強い。

現在は“あの男”を引き摺り出すためにイレギュラー大量発生の現場に赴いてイレギュラーを狩りつつ、モデルVの破壊に専念している。


モデルO


ヴァンが所有(寄生とも言う)しているライブメタル。

単体変身でありながら合体変身のモデルZXなどを上回るほどの力を持ち、最終決戦ではヴァンの意識を乗っ取ってセルパンを圧倒する。

圧倒的な力を誇ったが強化されたモデルZXの力に敗北し、力の上限が跳ね上がったモデルXに完全に意識を封印される。


武装or能力(追加)


ワイヤーフック


モデルOの腕のアーマーに装備されているワイヤーフック。

ロクゼロのイラストにもゼロの武器の没として出ており、今回の最終決戦で利用された。

敵の拘束は勿論、射出したフックの先端を敵にぶつけたり天井に突き刺して軸にすることで空中移動も可能。

性能的にはチャージが出来ないチェーンロッドに近いか。


真のオーバードライブ


パープリル戦とセルパン戦、エール戦…そしてセルパンへのとどめを刺す時に使用された強化能力。

効果は攻撃力二倍…ただこれだけだが、攻撃力が高いモデルOにとってこれは強烈な効果である。

一応原作の魅せ技である裂光覇なども影響を受けるために攻撃力や範囲がとんでもないことになっている。


龍炎刃


炎属性の対空技。

フレイムチップを起動した状態で使うことでセイバーに炎を纏わせることが可能。

エレメントチップ無しでも使用出来るが、その場合は無属性となる。


真空刃


電気属性の遠距離攻撃。

サンダーチップを起動した状態のセイバーを振るうことで電気を纏ったソニックブームを繰り出す。

龍炎刃と同じく無属性との切り替えが可能。


アークブレード


氷属性の空中技。

回転斬りを繰り出して広範囲に衝撃波を繰り出す技。

無属性との切り替えが可能で広範囲に衝撃波を発射するため、他の技の中でも使い勝手が良い。


ダブルチャージバスター


オーバードライブか真のオーバードライブ時にバスターショットで使用可能。

真空刃と合わせることにより、モデルXのダブルチャージバスターを上回る攻撃力を発揮する。


アースクラッシュ


オメガナックルを使った技。

地面に拳を叩き付けて瓦礫を吹き飛ばすが、一番弱い技なので頻度はそこまで多くない。


滅閃光


オメガナックルを使った技その二。

裂光覇のチャージが間に合わなかった時に使われることが多い。

放射状にエネルギー弾を発射するので、敵に囲まれた時などに使える。


裂光覇


オメガナックルを使った技その三。

広範囲に光の柱を出現させる大技。


エール


もう一人の主人公であり、モデルXの適合者にしてモデルZXのロックマン。

数多くの強敵との戦いで戦闘能力は完成し始め、最初は相手にもされなかったパンドラやプロメテと互角に渡り合うほどに成長した。

セルパンとの最終決戦ではガーディアンベースを撃墜したセルパンに対する怒りと憎しみと言った負のエネルギーを吸収されたことで動けなくなるが、モデルOに乗っ取られたヴァンを救うために再度変身。

複数のライブメタルを部分変身など強引な使い方をして何とか戦闘を優位にしていたが、本気を出したヴァンの猛攻で倒れる。

その後、人々のエネルギーを受けたライブメタルの力でモデルZXのオーバードライブを発動して反撃、全てのライブメタルのエネルギーを集束させたモデルXのダブルチャージバスターでヴァンを倒して救出し、最後にジルウェに自分の想いを伝えた。


モデルX


エールの適合ライブメタル。

セルパンとの最終決戦で人々のエネルギーを受けたことで力の上限が上昇してモデルOの意識を封印する。

ヴァンとの戦いで放ったダブルチャージバスターは間違いなく最強の一撃。

モデルZと今後のことを話し合う。


モデルZX


モデルXとモデルZのダブルロックオンによるロックマン。

ヴァンとの戦いでオーバードライブが使えるようになり、最強クラスの強さを誇るレベルとなった。


武装or能力


オーバードライブ


元々、モデルXとの相性が抜群であるために安定した強さを誇っていたモデルZXが人々のエネルギーを受けたことで全てのライブメタルの力も合わせて発動した。

金髪を模していたコードは六枚羽のような形状となり、背に光輪を背負う。

効果は攻撃力二倍のみだが、元々の攻撃力の高いモデルZXにとってこれは凶悪なまでの効果である。

ゼロ4のガラクタセットのデメリットなしを想像してもらえれば分かるかもしれない。


モデルZを含めたライブメタル


連戦と無理な使用の影響でかなりのダメージを受けてしまうが、本人(物?)達は戦いの結果にそれなりに満足な模様。


プレリー


ヴァンのヒロイン。

ガーディアンベース襲撃後に保養施設でヴァンに初めての手料理(料理経験がないために何度も失敗しているので厳密には初めてではない)を振る舞ったり、二人でお茶をしたりと中々良い雰囲気に。

途中でヴァンの異変に気付き、何とかしようとするものの司令官としての立場からそちらにばかり目を向けるわけにはいかないために不安になる。

セルパンとの最終決戦前にはヴァンに本心を伝えながら自身の本名を教え、戦いの終わりと共にヴァンが自身の本名を囁き、綺麗な笑顔をヴァンに見せた。

そして旅立ったヴァンを想いながらガーディアンベースの司令官として指示を飛ばしている。


ジルウェ


エールのヒロイン(!?)。

プレリーと比べて目立つところはあまりないが、決める時は決める頼れる貧乏性な先輩。

基本的に後方支援に徹していたが、ダメージで動けないヴァンとエールを助けるために後輩のシュウと共にセルパン・カンパニーに乗り込んでエールを救い出して勝利へと繋げた。

最後にはエールから想いを伝えられた。


シュウ


漫画版のキャラにしてヴァンとエールの悪友。

仕事を良くサボるサボリ魔であり、ジルウェの頭を悩ませる。

エリアGでイレギュラーの襲撃に巻き込まれるが、ヴァンとエールの活躍を見てヒーローへの憧れを抱く。

最初にジルウェとエールに打ち明けた時はまだ少年特有の憧れでしかなかったために二人から却下され、イレギュラーに捕らわれた時には怯えていることしか出来ず、咄嗟だったとは言え、パープリルを惨殺したヴァンを化け物呼ばわりしてしまう。

それからしばらく出番はなかった(一応エールからボコボコにされたらしい)が、エリアOのセルパン・カンパニーの襲撃でガーディアンベースに保護され、ヴァンに謝罪してセルパンとの最終決戦では完全に覚悟を決めてセルパンと戦っているヴァンとエールを救うためにジルウェと共にセルパン・カンパニーへと突入してヴァンを救出し、勝利へと繋げた。


セルパン


一応ロックマンZXにおいてはラスボスなのだが、この作品ではオーバードライブ・モデルOの噛ませ犬でオーバードライブ・モデルZXにも当然ながら勝てない(ただでさえ強い二人の強化状態なのだから当たり前だが)。

復活したイレギュラー達から小物と言われていた通り、根は小心者であるために使いこなすには良くも悪くも強靭な精神力を必要とするモデルVを扱い切れずに二人のファイナルストライクの前に消滅した。


プロメテ&パンドラ


モデルVのロックマンとして世界中で暗躍する。

セルパンを利用してモデルVを覚醒させるが、モデルV覚醒よりもモデルOとモデルZXの覚醒を外から見つめており、個人的には満足な模様。

これからヴァン達の持つ四天王ライブメタルとの適合者へのコンタクトを取るつもりのようだ。


復活したイレギュラー


原作の隠し要素達。

ヴァン達のいる国は最もラグナロクの破片の被害を受けた場所であり、そして最もラグナロクの残骸が大きい。

過去のイレギュラーのデータベースでも残骸に残っていたのか、モデルVの力とイレギュラーの残骸で復活したが、この国のモデルVを破壊したことで復活はもうしないだろう。 

 

第四十四話 四人のロックマン

 
前書き
次でZXAです。

そして主人公交代です 

 
アッシュと言う少女との出会いとモデルVが複数存在したと言う衝撃の事実から更に一年後。

ここ一帯のイレギュラーを狩っていた時、ガーディアンベースから通信が入り、その内容は数日前にガーディアンの研究所からモデルH、モデルF、モデルL、モデルPが何者かに盗まれたということであった。

「新年早々に何やらかしてるんだお前は?」

『うう…返す言葉もございません…』

『面目ない…』

エールとジルウェの呻くような声にヴァンは溜め息を吐いた。

「まあいいさ、俺も探してみるさ。ここのモデルVを破壊したらな…」

通信を切ると目の前にあるモデルVを見つめ、そしてアルティメットセイバーを構えるヴァンだったが。

背後から見覚えのあるソニックブーム、氷龍、火炎弾、クナイが飛んできた。

「これは…」

「不意を突いたと言うのにかわしたか。プロメテの奴が言っていたイレギュラーのロックマン…どんな奴かと思えばアタシと同じくらいの奴じゃないか」

現れたのはどこか見覚えのある装備をした四人。

最初に口を開いた少女が構えているのはナックルバスター。

恐らく彼女はモデルFのロックマンだろう。

他の三人も形状が異なるが、間違いなくモデルH、モデルL、モデルPのロックマンだ。

「その姿…モデルH達のロックマンだな」

「正確なる認識…我が名はヘリオス…風のロックマン・モデルH」

「アタシはアトラス。炎のロックマン…モデルFの適合者だ。」

「僕はテティス。氷のロックマン…モデルLの適合者さ」

「コードネーム・シャルナク。闇ノロックマン・モデルP」

「なるほど、ガーディアンの研究所からモデルH達を盗んだのはお前達か」

「正確には違うんだよね。僕達はこのライブメタル達をプロメテ達から受け取っただけさ」

テティスからそれを聞いたヴァンは納得するが、モデルH達から何の反応もないことに気付く。

「モデルH達からの反応がないのを見ると…意識を封じているな」

「ライブメタル共はアタシ達に反抗するんでな、意識を封じることで力のみを使っている」

「そうか……今すぐライブメタル達を返せ。そうすれば痛い目に遭わせずに帰してやるぞ…お前達もわざわざ痛い思いはしたくないだろ?」

低く冷たい声で言うヴァンの言葉を挑発と受け取ったのかシャルナクを除いた三人が顔を顰めた。

「大いなる傲慢…我々四人を同時に相手にして勝てると思っているのか?」

「ヘリオス、そして残りの奴にも良いことを教えてやるよ。相手との実力差が分からないようじゃ…早死にするぞ」

「言ってくれるな!」

アトラスがダッシュしながらのナックルバスターでのパンチ…メガトンクラッシュをヴァンに直撃させる。

「(手応えはあった)」

モデルFのパワーは四天王モデルの中でもトップクラス。

如何に頑強な相手だろうと当てれば相当なダメージは免れないが…それは普通の敵が相手だった場合だ。

「アトラス、お前のそれは勇気でも何でもない。ただの無謀な馬鹿だ」

「なっ!?がはっ!?」

何事もなかったようにヴァンは拳を握り締め、アトラスの腹部にオメガナックルでの強烈な一撃が入った。

何かが砕けるような嫌な音がし、勢い良く壁に叩き付けられて動かなくなった。

「まず一人。次に殴られたいのは誰だ?…と…もういたか」

「ギッ!?」

突如何もない空間に裏拳を繰り出すと、闇に潜んでいたシャルナクの顔面にエネルギーを纏った拳が叩き付けられ、モデルPの大型バイザーが砕け散ってシャルナクの顔が露になる。

「背後から襲い掛かるならせめてもう少し気配の消し方を覚えてこいよ」

とどめの蹴りを繰り出してアトラスと同じように壁に叩き付けた。

「ダメージ…超過…戦闘続行…不…可能…」

ダメージによって意識を失うシャルナクを見て、テティスは表情を引き攣らせた。

「ちょっと、アトラスとシャルナクがあっさりとやられちゃったけど…」

「…恐るべき力…これが破壊神と呼ばれたロックマン・モデルOの力…やむを得んテティス…力を貸せ」

「そうだね、一対一じゃ勝てそうにないからね」

いくら敵対関係とは言えアトラスとシャルナクがあっさりと打ち負かされたことにヘリオスとテティスはタッグを組んで戦うことに。

「タッグを組んで戦うか、それくらいのことは考えられるようだな」

ヘリオスとテティスが同時に襲い掛かる。

モデルHとモデルLの本来の適合者であるだけあってエールが使っていた時と比べて素の能力は高いように感じる。

無論オーバードライブが使えないために瞬間的な攻撃力は低くなっているだろうが。

両手にエネルギーを纏わせてヘリオスのダブルセイバーとテティスのハルバードによる攻撃を捌いていく。

「(他はともかくモデルHは特にエールが使っていた時より変化が激しいな。プラズマサイクロンの射程距離とホバーによる滞空時間が長くなっている)」

「(大いなる屈辱…!私とテティスが同時に攻撃を仕掛けても顔色一つ変えんだと!?)」

「(確かプロメテから聞いた話だとモデルOの主な武器ってセイバーとバスターじゃなかったっけ?こいつはどっちも使っていない…完全に手を抜かれてる…!!)」

「アースクラッシュ!!」

二人の攻撃を屈んでかわすのと同時に地面に拳を叩き付けて衝撃波と瓦礫がヘリオスとテティスに直撃して怯ませる。

「どうした?二人がかりでこの程度か?」

「愚者が舐めるな…!プラズマサイクロン!!」

「出てこい!フリージングドラゴン!!」

二つの電気を纏った竜巻が上下に放たれ、テティスは見覚えのある氷龍を召喚してきた。

ヴァンはまずダッシュで竜巻をかわして氷龍を殴り砕くと、ヘリオスに殴りかかる。

「くっ!」

ヘリオスは上空にエアダッシュすることでそれをかわす。

しかしそれはヘリオスの敗北を数秒遅らせたに過ぎなかった。

「はっ!!」

「がっ!?」

ダブルジャンプでのアッパーカットが炸裂し、ヘリオスを叩き落とす。

「終わりだ!!」

「うあっ!!」

そのままヘリオスにダッシュストレートを叩き込んでテティスを巻き込んで壁に叩き付けた。

「お前達の持つモデルH達は俺の仲間でもある。返してもら…」

ヘリオス達から奪われたライブメタルを力ずくで取り返そうとした時、モデルVが反応を起こして近くの採掘用のメカニロイドと同化した。

「メカニロイドと同化しただと!?」

メカニロイドと同化したモデルVは削岩機を動かしながら部屋を飛び出す。

「チッ!」

あのモデルVを放置すれば大変なことになるため、ヴァンはモデルH達の回収を諦めてモデルVを追い掛けようとする。

「ま、待て…」

「ん?」

声に反応して振り返ると、そこにはモデルFの回復機能によって何とか意識を取り戻したアトラスだった。

「何故…とどめを刺さない…」

「見てないのか?あのモデルVを放置すれば大きな被害を出す。放っておくわけにはいかない」

「ふざけるな…!アタシ達に…とどめを刺す価値もないと言いたいのか!?…ぐうっ」

痛む腹部を押さえて呻くアトラスを見遣りながらヴァンは背中を向けた。

「悪いな、また会えたら相手をしてやるよ。次はモデルH達を返してもらう」

「っ…くそおっ!」

そのままダッシュ移動で去るヴァンを見て、アトラスは拳を地面に叩き付けた。

そしてある場所ではプロメテとパンドラが会話をしていた。

「四人のロックマンが敗れたわ…」

「ふん、当然の結果だな。ライブメタルを手にして日が浅い連中では奴には勝てん」

「プロメテ…勝てないと分かっていて…何故行かせたの?」

「人が強くなるにはある感情が必要だ…憎しみ…そして憤怒。ただライブメタルを渡してそれで終わりはつまらないからな…このゲームを楽しくするためにしてやったのさ」

後に力不足を痛感したヘリオス達はこれより長い特訓期間へと入ることになる。

本格的なロックマン同士による戦争も間もなくである。 

 

第四十五話 飛行艇の追跡

 
前書き
主人公交代です。

でも所々でヴァンは出てきます…と言うか出したい 

 
ある国で起きたセルパン・カンパニーの暴挙から四年の年月が経過し、世界は大きく変化を起こそうとしていた。

ある場所では一人でイレギュラーを狩り続ける真紅のアーマーを纏い、破壊神の力をイレギュラーに振るうヒューマノイドの青年。

ある場所では大型の飛行艇で、そのメンバーと共にある物を探しながら戦う青の英雄と赤の英雄の力を持ったヒューマノイドの女性。

ある場所では高みから暴動を起こす人々を見下ろしながら嫌悪しながらも己の理想の成就を目指す風の四天王の力を持つヒューマノイドの青年。

ある場所ではかつての屈辱を晴らすために過酷な特訓を続けながら、故郷であった滅びた祖国に眠る仲間や家族達に花と酒を手向ける炎の四天王の力を持つヒューマノイドの女性。

ある場所では愛する海に身を任せながら、年々深刻化している海の汚染とそれを気にしようとしない人々への怒りを募らせていく氷の四天王の力を持つレプリロイドの少年。

ある場所では自身を裏切って瀕死の重傷を負わせた仲間の生き残りを発見し、全て始末して無表情から狂喜の表情を浮かべる影の四天王の力を持つレプリロイドの青年。

そしてロックマン達の戦いに介入しながら見つめる二人の少年と少女。

この時の騒動をきっかけに世界は大きく変化することとなる。

一隻の飛行艇が、離れた場所を飛んでいる飛行艇を追い掛けていた。

飛行艇の中にはハンターの一人がミッションの始まりを待っており、そして一人の青年が入ると仲間達に確認を取る。

「さて、お前達!準備はいいな?」

青年…かつてのハンター見習いの少年だったニコルが聞くと、興奮した青年が前に出てきた。

「まだ違法ハンター共の飛行艇は見えてこないのか?こっちはウズウズしてんだ!」

その言葉通りに青年…かつてのハンター見習いの少年だったラザラスが熱くなっていた。

「そう焦るなって、今のうちにミッションの確認をするぞ。依頼主はかの有名な連合政府・レギオンズだ。世界を治めるお偉い様が俺達ハンターギルドに依頼を申し込んできた。お前ら、ライブメタルって知ってるか?」

「人の魂を喰らう呪われた石…って噂なら聞いた事あるけどな」

荒唐無稽な噂話程度ならかつてのハンター見習いの少年だったレッドも聞いたことがある。

「ハッ、そりゃ傑作だ!確かレギオンズがそれに凄え賞金をかけてたな」

確かライブメタル一つにつき、レギオンズがかけた賞金は百万ゼニーと言う大金である。

「そのライブメタルがとある遺跡から見つかったらしい。ハンターギルドに入っていない違法ハンター共が勝手に掘り起こしたそうだ。そのライブメタルを取り返し、レギオンズ本部に持っていくのが今回のミッションだ」

「お宝の話はそれぐらいでいいだろ?さっさとおっ始めようぜ!今度こそアッシュより先にお宝ゲットしてやるんだ!…で、アッシュの奴はどこだ?」

ラザラスが周囲を見渡すと、自分達を引っ張る存在であり、自分にとってライバル的存在である同期の少女が見当たらない。

尤も、ライバルと思っているのは彼だけでありアッシュにとってはただの暑苦しい同期くらいにしか思っていないのだが。

『あー、あー…オホン。落ち着きたまえ!諸君!!』

ニコル達の通信機から聞こえてくる少女の声に全員の意識が通信機に回る。

「この声は…アッシュか?お前、今どこにいるんだ!」

通信機越しから聞こえてくる風の音からアッシュはどうやら甲板にいるようだ。

場所は甲板へと変わり、愛用の銃であるレーザーショットを握りながら風を浴びていた少女…。

かつてはハンター見習いだったが、現在では一流のハンターとして成長したアッシュがからかうように口を開いた。

「何か熱くなっちゃってる奴がいるからねー、外で涼んでたのよ。そろそろお宝を載せた違法ハンターの飛行艇に追い付く頃よね。ついでだからアタシ、このままお宝ちゃんと対面してくるわ」

飛行艇が違法ハンターの飛行艇の真上を飛ぶと、アッシュは下から様子を見る。

『おい、アッシュ!ずりぃぞ!フライングかよ!たまには俺にも出番をだな…って、聞いてるのか!?大体お前はいつもいつも一人で勝手に行動してんじゃねえか!!』

「うーん……ビンゴ!さて、それじゃあ張り切って参りますか!!」

ラザラスの怒声を無視して着地出来る飛行艇を発見し、腰のホルスターにレーザーを納めて甲板から飛び降りる。

普通なら落下死の危険があるが、約束通りに一流のハンターへと成長したアッシュはこれくらいのことは朝飯前である。

狙った飛行艇に着地するように体を動かして他の飛行艇をかわしていき、見事に甲板に着地した。

「こちらアッシュ。飛行艇との接触に成功~っと。お宝ちゃんの位置情報をよろしく」

アッシュの報告を聞いたニコルは溜め息を吐きながら返答した。

『全く…お前って奴は…お宝はずっと先、先頭の飛行艇にあるはずだ。俺達もすぐ後を追う、調子に乗ってしくじるんじゃないぞ!』
 
「あんた達も気をつけてね。さあ、ミッションスタートよっ!」

腰のレーザーを取り出して飛行艇の甲板を駆け出すアッシュ。

アンカーによって飛行艇が繋がっているので、それを足場にして次の飛行艇に向かうとそこには人型メカニロイド・ガレオンが徘徊していた。

「……!?こちらアッシュ。ちょっと、レーダー何してるの?イレギュラーがいるじゃない」

『野生化したメカニロイドの船も紛れてるってことか!そいつらもライブメタルを狙ってんのかよ!?』

「みたいね、みんな気をつけて。今回は競争率高そうよ」

通信機から聞こえてきたラザラスの言葉にアッシュは同意するとレーザーを構えてイレギュラーにショットを放った。

放たれたショットは的確にガレオンの頭部と胸を撃ち抜き、破壊する。

幼い頃はレーザーのショットの反動もあって使いこなせなかったが、成長と特訓によって片手でも正確な射撃が出来るようになった。

「どんなもんよ!」

襲い掛かるメカニロイドを物ともせずにアッシュはリフトに乗り込んで次の飛行艇に着地し、先頭の飛行艇へと急いでいくが…。

「ん?」

自分を巨大な影が覆い、上を見上げると土偶を彷彿とさせる大型メカニロイドが攻撃を仕掛けてきた。

「ふーん、雑魚の癖に図体がでかいじゃない。」

不敵な笑みを浮かべて近くのリフトに乗り込んで迎撃するアッシュ。

「生憎あんたみたいなメカニロイドとはね、嫌ってほど戦ってんのよ!!」

メカニロイドのビームの発射口である目を集中的に狙うとメカニロイドは煙を噴き出し、最後には大爆発を起こした。

そして爆発に巻き込まれないようにリフトから飛び降りたアッシュは目的の飛行艇に着地した。

「到着…っと!さーて、お宝ちゃんはこの中かしら~?」

飛行艇内部に侵入しようとするアッシュだが、先客がいた。

紫を基調としたアーマーに自分の背丈ほどの大鎌を持った少年…プロメテだ。

「何だ…またライブメタルに集る蝿が増えたか…邪魔だ…雑魚は失せろ」

「へえ…このアッシュ様を雑魚呼ばわりなんて、大きく出たわね。見たところ、ハンターってわけでもなさそうだけどアンタもライブメタルが狙い?」

「金目当ての貴様らハンター共と一瞬にするな。ライブメタルは貴様らには過ぎた代物だ。大人しくここで死んでおけ」

「おっと!そうはいかないぜ!」

「やっと追い付いたぜ!俺もパーティに混ぜてくれよ!」

「何だ…こいつは…ハンター…いや、イレギュラー…なのか?」

アッシュにようやく追い付いた同期の三人がバスターを構えながら現れた。

「みんな気をつけて!こいつ、ただ者じゃないわ!」

「フンッ…鬱陶しい奴らだ。良いだろう…冥土の土産に覚えておけ、俺の名はプロメテ…そしてこれがライブメタルの力を操る者…ロックマンの力だ!」

鎌を構えてアッシュ達に突撃するプロメテ。

そして一方では、ある施設に向かっていた片割れのパンドラもプロメテのエネルギーが増したことに気付いて上を見上げる。

「プロメテ…?」

そして場所は違法ハンターの飛行艇の甲板に戻り、プロメテの一撃を受けたアッシュはギリギリで急所を外しながらも勢い良く吹き飛ばされた。

「あうっ!」

「ほう、他の雑魚共よりはマシな動きをするじゃないか。だが、それでも俺からすれば雑魚と変わらんがな」

他のアッシュの同期達は既に倒されており、アッシュも立てるだけの体力を失っていた。

「少し楽しませてもらった礼だ。この一撃で消し飛べ!!」

鎌を大上段に構えてアッシュに振り下ろそうとするプロメテにアッシュは目を閉じたが、何者かが間に入ってプロメテの鎌を受け止めた。

「簡単に諦めるんだな?一流で世界一のハンターになるんじゃなかったのかアッシュ?」

聞こえてきた低い声に目を開くと、そこには真紅のアーマーと腰にまで届く金髪が特徴的な青年が立っていた。

「…ヴァン!!」

「久しぶりだなアッシュ…ふん!」

アルティメットセイバーを勢い良く振るってプロメテを弾き飛ばすと、アッシュの方を振り返る。

「ヴァン、どうしてここに…」

「相変わらず呼び捨てと敬語なしか…まあ、その辺は俺も似たようなもんだし…イレギュラーが上でわらわら集まってたからな…イレギュラー狩りに来たんだよ。そしたら君がやられそうになっててな。大きくなったなアッシュ…個性的な頭がそのままだったからすぐに分かったよ」

「個性的な頭って…ポニーテールなんて珍しくないし女の子に言う言葉じゃないでしょ!?」

「久しぶりだな、モデルOのロックマン。相変わらずイレギュラー狩りに精が出ることだな。遥か昔のイレギュラーハンター気取りか?」

「そうかもな、プロメテ…お前もここにいるとは好都合だ。ここで決着をつけるか?…アッシュ…そいつらを連れて逃げろ。良いな」

「お宝をゲットしたらね!そしたらこの飛行艇の小型艇か何かで逃げるわよ!」

「させるか!」

同期三人を運びながら飛行艇内部に侵入しようとするアッシュにプロメテが妨害しようとするが。

「邪魔はさせないぞ、行け!アッシュ!!」

「ありがと!ヴァン!!」

ヴァンがセイバーで斬りつけることでプロメテの妨害を阻止する。

「チッ…まあいい。奪われたライブメタルなどすぐに取り戻せる。少しの間だけ楽しもうじゃないかぁ!!」

ヴァンとプロメテが同時に駆け出してセイバーと鎌の光刃が激突し、そしてお宝のライブメタルを回収したアッシュは違法ハンターの小型艇を奪って脱出した。

「死なないでよ…ヴァン…それにしても…結構ギリギリだったわ…自動操縦に切り替えて、座標を…これ…で…」

座標を近くのハンターキャンプに指定した直後に限界が来たのかアッシュは気絶してしまった。

ヴァンとプロメテは近くの飛行艇を飛び回りながら何度も高速で動き回ってぶつかり合う。

イレギュラーの飛行艇がある施設の真上を通り過ぎようとした時、事情を察したパンドラが思わず呟いた。

「プロメテ…やりすぎ…」

そして戦闘の影響で落下したと思われる飛行艇のコンテナが施設に落下した。

「……っ!」

それを見たパンドラは急いで施設内に入っていく。

コンテナが落下した場所には複数のカプセルがあり、その中央には一際大型のカプセルがあった。

カプセルには一人の少年型のレプリロイドが眠っていたが、落下の衝撃で少年のカプセルのケースが破壊され、少年とカプセルを繋いでいたコネクターが外れた。

そして床に倒れた少年は目を開くと、赤く染まっていた瞳が翡翠色となる。

そして滅茶苦茶になった部屋と散乱するコンテナの中身と思わしき様々な武器。

「…これはっ…!?一体…何が起きたんだ…!?……ここは…どこだ…?…僕は……誰だ…?……駄目だ…何も思い出せない…」

頭を抱える少年に突然、少年の背後にパンドラが出現する。

「き、君は…!?」

「私は…パンドラ……グレイ……あなたを処分する……」

稼働している少年…グレイを見てパンドラは計画の邪魔になると判断して処分することに決めた。

「グレイ…?それが僕の名前なのか…?処分って…いきなりどういう事だよ!?」

出会ったばかりのパンドラにいきなり処分の宣告を受けたグレイは困惑する。

「あなたは…私と同じ…ロックマンの一人…でも……目覚めが早すぎた……まだ…マインドコントロール…済んでいない…」

「ロック…マン…?マインドコントロールって…!?僕に一体何をしたんだ!?」

「………」

パンドラは無言で杖を構えて電撃をグレイに放つ。

「うわっ!」

「失敗作は…処分する…」

突然の攻撃に吹き飛ばされて尻餅をつくグレイだが、コンテナから散乱している武器の一つが足元にあることに気付いた。

「…この武器…使える…!うわああああああああ!!」

バスターショットを拾ってパンドラに向けてショットを放つが、弾は容易く弾かれ無力化される。

しかしグレイはその隙を突いて、その場を走り去る。

「はあ…はあ…!僕が失敗作だって…!?何だよ…何なんだよ!とにかく出口を見つけなきゃ!このままじゃ…殺される……!!」

出口を求めて通路を駆けるグレイ。

そして外に出たのは良いものの、大型メカニロイドの襲撃を受けて滝に落ちることとなる。

こうして新たな物語が始まりを迎えた。 

 

第四十六話 コンテナの輸送

久しぶりに会ったヴァンに助けられたことで何とか命からがら帰還したアッシュは小型艇を海岸の近くに停めて重たいコンテナを運びながら医務室に向かう。

「あー、重たい…後はこれをレギオンズ本部に持っていくだけね…ほら、あんた達。まずはここのハンターキャンプの医務室で手当て受けたら向かうわよ…」

「「………」」

「どうしたラザラス?レッド?」

無言の二人にニコルが振り返ると、レッドが口を開いた。

「悪い…俺はこのミッションから降りる」

「俺もだ…」

「はあ!?」

レッドとラザラスから出た言葉にアッシュが勢い良く振り返ると、良く見れば二人の表情は青い。

「今回は助かったけど…ライブメタルの近くにいたらあんな奴がまた出てくるかもしれないだろう?」

「あんな化け物を相手にしてたら命がいくつあっても足りねえよ…悪いが続けるんだったら続けたい奴だけやってくれ」

「お、おい!?」

逃げるように去っていく同期二人を止めようと追いかけていくニコル。

それを見たアッシュは頬を膨らませた。

「何よこの根性なし!良いわよ、だったらアタシだけでやるわよ!!ニコル、先に医務室行ってるわよ!!」

痛む体を動かしてハンターキャンプに向かおうとした時、アッシュの視界に一人の少年…グレイの姿が入った。

「子供!?あんた、大丈夫!?」

呼び掛けてもグレイは意識を失っているので返事がない。

「あーもう…これ…絶対…女の子のすることじゃないでしょ…」

コンテナと少年を引き摺って、アッシュはハンターキャンプの医務室へと向かうのであった。

「はあ、クタクタだわ…全くあいつらは!」

適当に道具を手にして自分で手当てをするアッシュ。

するとグレイが身動ぎした。

「うわああっ!……あれ…?ここは……?」

悲鳴を上げて飛び起きたグレイにアッシュは道具を落としそうになるが、何とか落とさずに済んだ。

「ちょっと、いきなり何よ!?医務室で大きい声出さないでよ」

アッシュの姿を認識したグレイはバスターショットを構えた。

「!?お前、僕を殺しに来たのか!?」

「はあ!?何でアタシがあんたを殺さないといけないわけ!?あんたが打ち上げられてた海岸からハンターキャンプまで重ったい荷物を抱えながら運んだのに随分な挨拶じゃない!?」

「僕を…運んでくれた?」

アッシュの言葉にグレイはバスターを下ろした。

「ええ、アタシもここのハンターキャンプのハンターじゃないけど、命からがらここまで逃げてきて、医務室に向かう途中であんたを拾ったのよ。あんたって見た目によらず重いわね~…それで?あんたの名前は?一体何があったのよ?初対面の怪我人のアタシに銃を向けたんだからそれなりの理由がないと怒るわよ」

「僕は…グレイって呼ばれてた…。気が付くと何かの建物の中で…パンドラって奴に、いきなり殺されそうになって…それで逃げてきたんだ。後は何も分からない…何も覚えてないんだ。」

「ふーん、なるほどね…確かにそれならいきなり銃を向けてきたのも納得出来るわね…いいわ、許してあげる。あんたも訳ありみたいだしね」

ハンター稼業を営む人の多くは“訳あり”であったりする。

ハンターの一人一人には何かの理由があり、イレギュラーによって故郷を滅ぼされたり、アウターで大きなお宝を発見してかつての大悪党のセルパンのような地位と財を得ようと故郷を飛び出した者。

そしてそもそも家族がハンターであったりするので、自分もなろうとする者もいたりする。

比較的安全なインナーではなく危険を冒してまでアウターで活動する事情は、大きい理由や小さな理由を含めて人の数だけ存在するのだ。

「その…お前の名前は?」

「あんたねぇ…初対面の女の子相手にお前はないでしょ?まあいいけどね。年齢(とし)は近そうだし…アタシはアッシュ。こことは違うハンターキャンプで活動していたハンターよ。ここはハンターの活動拠点のハンターキャンプで、世界中のアウターに存在するわ。その様子だと、グレイはハンターキャンプのこと知らないでしょ?アタシについて来なさい。隣の部屋にトランスサーバーがあるらしいからね」

「あ…あの…!」

「ん?何よグレイ?」

外に出ようとするアッシュを呼び止めるグレイにアッシュは振り返った。

「…その…助けてくれて…ありがとう…」

「ああ、別に良いわよ。困った時はお互い様ってね。あのまま放っていても気分が悪いしね」

それだけ言うとアッシュはトランスサーバーがある隣の部屋にグレイを連れていき、トランスサーバーにグレイを乗せてアクセスさせる。

「アッシュ?これは?」

「この機械はトランスサーバーって言う転送装置よ。インナーにある物と違って特定の行きたい場所に行くにはEクリスタルが必要になるけど、これからこの機械に世話になるだろうから覚えときなさい。えーっと…発行完了。はい、あんたのハンターライセンスよ」

アッシュがトランスサーバーから一枚のカードを抜き取ると、それをグレイに手渡す。

「ハンターライセンス?これは?」

「文字通りよ。あんたがハンターキャンプのトランスサーバーにアクセスしたことで正式なハンターとして認められたわ。ハンター認定の年齢ギリギリだったらしいからあんた十四歳なのね…アタシの一個下ね」

「そうなんだ…十四歳…でも僕はハンターになるつもりは…」

自分の年齢が分かったことに不思議な気分を感じながらもハンターになるつもりはないグレイは慌ててライセンスを返そうとする。

「あんた、ここ以外に行く宛てなんかないでしょ?最近迷惑なことに違法ハンターが増えててねー。そのライセンスがないとどこのハンターキャンプでも施設を利用出来ないのよ。ハンターキャンプで過ごしていくためには、ハンターライセンスは必要不可欠よ。トランスサーバーで再発行出来るけど…出来るだけ無くさないでね」

「分かった…ありがとう…」

「素直でよろしい。そうだ、グレイ…あんた戦える?その銃…飾りってわけでもないんでしょ?」

「え?う、うん…建物から逃げ出す時に…でかい奴とも戦った」

「そう、最低限の経験はあるってわけね…グレイ、アタシのミッションを手伝ってくれない?」

「ミッション?」

「そう、これからアタシは連合政府・レギオンズからの依頼でライブメタルを渡しに本部に向かうんだけど…同期の連中がねぇ…」

ラザラスとレッドが抜けたことを考えると、ニコルも抜けてしまうだろう。

流石に怪我をした自分一人だけでライブメタルを守り切る自信はなかった。

「レギオンズ?何か分からないことだらけだ…」

「本当に重症ねえ…まあ、あんたにとっても悪い話じゃないわよ?レギオンズはライブメタルを高値で引き取ってくれるらしいし、賞金は百万ゼニー。手伝ってくれればあんたに半分あげるわ、生きていくためには色々と必要でしょ?五十万ゼニーあれば当分は生活に困らないわよ?」

「…分かった…行くよ。でもどうしてアッシュは会ったばかりの僕にここまでしてくれるんだ?」

「言ったでしょ?困った時はお互い様ってね………それに自分のことが分からないって言うあんたの気持ち…分からないでもないしね」

「え?」

最後の辺りが聞こえなかったグレイは不思議そうにアッシュを見つめるが、アッシュはコンテナをグレイに押し付けた。

「はい、これ。ここのハンターキャンプの輸送列車のあるステーションまで運んでね」

「ま、待ってくれよ…アッシュ…!」

いきなり持たされた重たいコンテナにグレイはフラフラになりながら先を行くアッシュを追うのであった。

そして目的地のステーションに到着する頃にはグレイはヘトヘトになっていた。

「コンテナ運びご苦労様♪」

「酷いよアッシュ…先に行くなんて」

輸送列車に乗り込んだアッシュとグレイ。

アッシュはニヤニヤと笑いながらグレイに冷たいジュースと軽食のサンドイッチを渡した。

「別に意地悪したわけじゃないわよ。アタシはまだご飯食べてないし、あんたもまだでしょ?あんたが来るまでにステーションの売店で買ってたのよ。腹が減っては戦は出来ぬってね!ほら、食べましょ」

動き出した輸送列車。

コンテナに背を預けながら座ったアッシュとグレイは食事をしながら会話をした。

「そうそう、これからアタシ達が向かうレギオンズは数百年前の戦争の後に、各国の代表が集まって作った連合政府の事よ。人間とレプリロイドのための法律を作った…ようするにこの世界で一番偉い組織なの」

「一番偉い…そんな組織が欲しがる物って何なんだ?」

「ライブメタルって言う珍しいお宝よ。レギオンズはそれに莫大な賞金をかけてるのよ。アタシの手に納まるサイズで百万ゼニーもするのよ。」

「ライブメタル…どこかで聞いたことがあるような…ところでアッシュ…アッシュはどうしてハンターをしてるんだ?」

“ライブメタル”と言う単語に聞き覚えがあるような気がしたが、全く思い出せないのでアッシュにどうしてアッシュはハンターをしているのかを尋ねた。

「ん?アタシがハンターをしてる理由?……まあ、手伝ってくれてるんだし…いいか…アタシさ、ハンターに拾われて育ってきたんだ。イレギュラーに襲われたどこだかの町で、一人だけ生き残ってたんだって…だから、本当のアタシを知っている人は誰もいない…アタシ自身も知らないの…だからなのかもね、自分のことを何も分からないって言うあんたが…放っておけなかったのよ。アタシ、お節介だからさ」

「そう…なんだ…ごめん、アッシュ」

酷いことを聞いてしまったことに気付いたグレイは表情を暗くしながら謝罪した。

「別に気にしなくていいわよ。だからアタシは世界一のハンターになるって決めたんだ。あいつと約束したしね…歴史にアタシの物語を刻み込んで、みんなに知ってもらうのよ。アッシュって奴がいたってね、だ・か・ら!レギオンズからの依頼は絶対に成功させないとね!!」

「そっか…凄いなアッシュは…僕にはそういう生きるための理由がない…」

「だったらアタシとチームを組む?過去が分からなくても歴史に名前を刻むことくらいは出来るんじゃない?世界中にグレイって凄い奴がいるんだって轟かせちゃいなさいよ。道を歩けばみんなあんたに頭を下げるかもよ?」

「はは…何だよそれ………ありがとう…アッシュ」

アッシュの言葉に少しだけ気持ちが軽くなったグレイは初めて笑顔を浮かべた。

「こいつらもオイラと同じ…自分のことを…知らないのか…?」

「「?」」

突如聞こえてきた声に二人は周囲を見渡した。

「グレイ、あんた何か言った?」

「僕は何も…アッシュこそ何か言ったんじゃ…」

「ん?お前ら、オイラの声が聞こえるのか?」

「やっぱり聞こえる…!」

「アッシュにも?実は僕にも…」

コンテナの方を振り返った瞬間、先頭車両の方で爆発が起こり、イレギュラーが現れた。

「イレギュラー!?もしかしてライブメタルを狙ってきたの!?」

「……あっ!?」

二人の前に現れたのはプロメテとパンドラだった。

それを認識した二人はライブメタルの入ったコンテナを守るように立ちはだかる。

「…プロメテ!あんた生きてたのね…ヴァンはどうしたの!?」

「…見つけた…ロックマンの…失敗作…それに…ライブメタル…モデルAの…コンテナ…」

「ふん、俺は簡単には死なん。あいつも同じように生きてるだろうよ…それにしてもまさかあいつの知り合いだったとはな」

「…ロックマン…モデルOの…関係者?」

「ふん、それはどうでもいいことだ。どうせここで死ぬ…それにしてもパンドラ、こんなガキ一人処分出来てないのか」

「ごめん…プロメテ」

パンドラの謝罪にプロメテは大鎌を構えながらアッシュとグレイを見つめる。

「まあいい、さっさとこいつらを始末してライブメタルを取り返すか」

「そうはさせないわよ!アタシのハンター人生に懸けて、こいつは渡さない!グレイ、こいつらはアタシが食い止めるからあんたはライブメタルを持って逃げるのよ!!」

「そんな、アッシュ!」

レーザーショットを抜いてプロメテとパンドラを攻撃するが、二人からすれば蚊に刺された程度でしかない。

「せやあっ!!」

「きゃあっ!?」

プロメテが鎌を振るって衝撃波を繰り出すと、アッシュを吹き飛ばしてコンテナに叩き付ける。

そしてアッシュと一緒に衝撃波を受けたコンテナに大きな亀裂が入った。

「アッシュ!」

力なく倒れたアッシュを抱き起こすグレイ。

「屑が…そこで大人しく死んでいろ。次はお前だ」

プロメテが次の標的をグレイに定めた。

「くっ…このままじゃ…嫌だ…!僕は…僕は…っ!」

「っ…アタシは…こんな所で…」

何も分からないまま死にたくないと願うグレイと、志半ばで死にたくないと願うアッシュ。

そんな二人の想いに応えるかのように壊れたコンテナから一つの金属が飛び出した。

「おい!お前ら!死にたくなかったらオイラの言う通りにしろ!オイラの声が聞こえるなら、お前らのどっちかが変身出来るはずだ!力を貸してやる!」

「だ…誰だ…?」

「あんたは…一体…?」

「オイラはライブメタル・モデルA!意識を集中して、叫べ!ロックオンって!」

「「っ…!!」」

モデルAの声に導かれるまま、アッシュはグレイに支えられながら立ち上がり、二人は同時に叫んだ。

「「ロック…オーンッ!!」」

「適合者確認!R.O.C.K.システム、起動開始!!」

二人の体は光に包まれ、見た目に少々の違いはあれどほとんど同じ姿の二丁拳銃を携えたロックマンへと姿を変えた。 

 

第四十七話 輸送列車

 
前書き
プロメテ達にとって優先度が高いのはやっぱりアルバートのスペアボディのグレイよりも想定外のロックマンのアッシュかもしれない。 

 
モデルAの力で変身したアッシュとグレイは体の内側から力がみなぎってくるような感覚に驚いた。

「…この感じ…力が…アタシの中でどんどん強くなってる…これがライブメタルの…!」

「…力が湧いてくる…何でだろう…僕はこの力を知っている…これが…ロックマンの力…!」

握り締めている銃は初めて使う形状の物なのに不思議と手に馴染んだ。

「…ロックマン…モデルA…!」

一つのライブメタルによる二人のロックマンの同時誕生と言う前代未聞の光景に流石のパンドラも驚きを隠せない。

最初は驚いていたプロメテもロックマンへと変身したアッシュを見て高笑いした。

「フフッ…ハーッハッハッ!こいつは驚いた!失敗作はともかくあいつまで変身しやがった!モデルOのロックマンに続くこのゲームの想定外…二人目のイレギュラーロックマンか!良いぞ…認めよう!お前達はこのゲームに参加する資格がある!」

「プロメテ…あの…もう一人のモデルAの適合者の女の子は…」

「別に大したことじゃない。モデルOのロックマンも調べたところじゃ元々はモデルXの適合者だった。一つのライブメタルの適合者が複数同時に現れると言うのは有り得ないことじゃない。モデルAに関しては完全に予想外だったがな…さて…アッシュとか言ったな…モデルAはお前とグレイとか言う失敗作にくれてやる。これからお前達の前に何人ものロックマンが現れるだろう!そいつらと戦い、勝ってみせろ!最後まで生き残った時、お前達は自分の正体を…世界の全てを知るだろう!さあ…楽しもうじゃないか!あの男が仕組んだ運命のゲームを!」

プロメテとパンドラが転送の光に包まれてこの場から姿を消し、アッシュとグレイは呆然となりながら見つめる。

「アタシ達の正体…?運命のゲーム…?何なのよそれは!?」

しかし向こうの車両で起きた爆発に状況を思い出した二人。

「しまった!このままじゃみんなが!」

アッシュが先頭車両に向かおうとした時、モデルAが慌てたように叫ぶ。

「ちょっと待てよ!ここから逃げるんじゃないのかよ!?」

「格好つけて出てきた癖にいきなり逃げ腰!?しっかりしなさいよ!」

モデルAの言葉を一蹴するアッシュにモデルAは隣のグレイに語りかけた。

「あーもう!おい、お前!ここから逃げるぞ!」

「僕も行く!僕達と一緒にいるのが嫌なら変身を解け!」

そしてグレイもまたモデルAの言葉を一蹴する。

グレイには恩人であるアッシュを一人で行かせると言う選択肢はない。

「分かった、分かった!ついてくよ!また、さっきの奴らに捕まって、どっかの遺跡に埋められるのはごめんだぜ!力を貸してやるからオイラを置いていかないでくれよ!」

「当たり前じゃない!あんたはアタシのお宝なの!どこまでも付き合ってもらうわよ」

「…よし!行くぞ!」

二人は先頭車両に向けて駆け出した。

イレギュラーが飛び出して二人に襲い掛かるが、アッシュとグレイが銃を向けて引き金を引いた。

すると銃口から見慣れたショットが発射される。

「これは…アタシのレーザーじゃない!」

「僕のはバスターだ…」

どうやらそれぞれの銃は変身前に使っていた武器を基にしているようでモデルAの力でこの姿で戦うのに相応しい形状に変化した物らしい。

「助かるわ、使い慣れた武器があれば大分戦いやすくなる」

「それだけじゃない、オイラの力でお前達の持っていた武器の性能が底上げされてるんだ。エネルギーをチャージすればグレイは強力なチャージバスター、アッシュは数回反射するレーザーを発射出来るぜ。後はホーミングショット、グレイとアッシュじゃ性能が違っていてグレイはレーザーサイトの縦のサーチ範囲が広くて追尾する複数のレーザーが撃てる。アッシュは横のサーチ範囲がグレイより少し広い代わりに縦のサーチ範囲が狭いんだ。ロックした敵を連鎖して攻撃するレーザーが撃てるんだ。」

「ふーん」

モデルAの解説を聞いたアッシュが解説内容を総合するとロックマン・モデルAの状態ではグレイの武器は速度が遅いが扱いやすく、アッシュの武器は速度は速いが癖が強いということになっているわけだ。

取り敢えず今の武器を上手く使ってイレギュラーを破壊していく。

「あ、そうだ!一つ忘れてた…エネルギーがフルの状態の時はギガクラッシュって言う大技が使えるぜ?大量の敵に囲まれた時に使ってみな。ただし一度使うとエネルギーが空になるから良く考えて使えよ。」

「分かった。」

グレイはチャージバスターとホーミングショットのディフュージョンレーザーを上手く使って攻撃していく。

アッシュもレーザーのチャージ攻撃であるリフレクトレーザーの反射を上手く使って複数のイレギュラーを射抜き、ホーミングショットのコネクションレーザーで攻撃する。

そして先頭車両に繋がるシャッターを抉じ開けて奥へと進むと、何者かの雄叫びが聞こえてきた。

「アオアオアオーッ!モデルA…!お前、掟破った!ロックマン、選ばれし者!その女、俺達の敵!その少年、失敗作!力貸す、良くない!」

「掟も何も、オイラはお前らの事なんか知らないっての!」

「何だこいつ…!?他のイレギュラーとは何か違う…!」

「あいつは確か…賞金首のイレギュラーだったような…」

グレイは突如現れたイレギュラーの異質さに気付き、アッシュは以前のハンターキャンプの指名手配されていたイレギュラーの姿と酷似していることに気付いた。

「俺、イレギュラー違う!俺、フォルスロイド・ディアバーン!プロメテとパンドラ、お前逃がした!でも俺、逃がさない!俺、掟従う!お前達、蹴り砕く!」

「来るわよ!」

ディアバーンが広範囲に炎の矢を発射し、アッシュとグレイはダッシュでかわしながらショットを連射する。

ディアバーンは大ジャンプをしながらグレイに狙いを定めて急降下しながら蹴りを繰り出す。

「うわあっ!?」

まともに蹴りを喰らったグレイは吹き飛ばされる。

「グレイ!?」

「でやあっ!!」

次にディアバーンが発射したのは二つのブーメラン。

「危ないわね!」

「アッシュ!」

アッシュはブーメランをかわし、グレイがバスターを構えてレーザーサイトを出し、ディアバーンをロックするとホーミングショットを発射した。

しかし、ディアバーンは炎の矢を発射して全て相殺する。

「俺、遅い攻撃、当たらない!!」

「なら今度はこっちを喰らってみなさい!!」

「やっ!!」

ダッシュで距離を積めようとすらアッシュにディアバーンは炎の矢を再び発射する。

アッシュは軌道を見切って回避しながらレーザーをフルチャージし、リフレクトレーザーを発射した。

当然ディアバーンは大ジャンプで回避するが、レーザーは壁を反射してディアバーンに命中する。

「ぬっ!?」

「流石に反射の軌道は読みにくいでしょ?更に!!」

レーザーサイトを出してディアバーンをロックすると稲妻を思わせるアッシュのホーミングショットがディアバーンの足に直撃した。

「うあっ!?」

「もう一発プレゼントよ!!」

コネクションレーザーからの時間差でリフレクトレーザーを放ち、更にダメージを与える。

アッシュ達は知らないが、モデルAは他のロックマンと比べて武器のチャージ時間が短いと言う長所がある。

足にダメージを受けたことで動きが鈍っているディアバーンに連続で攻撃を加える。

「グレイ!あんたも攻撃しなさい!」

「分かった!」

アッシュに続くようにグレイも攻撃に加わり、ディアバーンにダメージを与えていく。

「俺、負けない!お前達、蹴り砕く!!」

片足でジャンプして蹴りを繰り出すが、ダメージによって動きが鈍くなっており、見切れない程ではない。

「これで!」

「終わりだ!」

アッシュのリフレクトレーザーとグレイのチャージバスターがディアバーンに直撃し、ディアバーンの体を崩壊させていく。 

「お前…裏切る…か…!俺達の…未来…!俺達の…世界を…!うおおおおおおっ!」

ダメージに耐えきれなかったディアバーンは爆散した。

そしてディアバーンの残骸から何かが飛び出し、アッシュとグレイに吸い込まれていく。

「……へ?」

「い…今のは?」

アッシュとグレイは何事かと自分の体のあちこちを見るが、今のところ変化はない。

「へっへーん!良いこと教えてやろうか?意識を集中して頭の中でディアバーンの姿をイメージしてみろよ。」

「ディアバーン…」

グレイがイメージすると、体が光に包まれてディアバーンへと変身した。

「へ!?」

突然姿を変えたグレイにアッシュは目を見開く。

「驚いたか!?これがオイラの力!コピーした相手に変身出来るトランスオンだ!変身すれば変身相手の能力をいくつか使うことが出来るんだ。完全じゃないけどな…アッシュとグレイが二人で使ってるからトランスオンが不安定なんだ。同じ姿に変身しても使える攻撃が違うこともあるかもしれないから気を付けろよ」

「ところでこれってどうやって戻ればいいんだ?」

ディアバーンの口からグレイの声が出た…恐らくこれも一つのライブメタルの力を二人で使っている弊害か。

「体から力を抜いてみろよ。そうすれば戻れるから」

「こ、こう…?」

ディアバーンの姿で変なポーズを取っているグレイにアッシュは溜め息を吐いた。

「それ、逆に力が入ってるってば…深呼吸しなさい深呼吸。そうすれば自然に力が抜けるわよ」

「スーーー…ハーーー…あ、戻った…これがライブメタルの力なのか…」

深呼吸して体から力が抜けるとグレイはロックマン・モデルAの姿に戻る。

「このトランスオン、アタシにも使えるの?」

「勿論、ただしオイラの力を二人で使ってるからトランスオンは不安定なんだ。もしかしたら完璧な変身は出来ないかもしれないからそこんとこは覚えといてくれよな」

「分かったわよ…それにしてもあんたが狙われるのはこの能力のせいなの?」

「さあね、オイラが何のために作られたかなんて、オイラも知らないよ。列車も壊れちまったし、これ以上は進めないな。キャンプまで戻ろうぜ、何とかしてレギオンズの所まで行く方法を見つけないとな」

「…へぇ~モデルA、あんた少しは分かってきたじゃない」

「じゃなきゃここに置いていくんだろ?…わけ分かんねぇことばっかだけどよ、これも何かの縁だ。仲良くやろうぜアッシュ、グレイ」

「ハハッ、よろしく、モデルA。さて…まずは怪我人の手当てをしないとね…あら?」

気が抜けたことで変身が解除され、アッシュは膝をついた。

「アッシュ!?プロメテにやられた怪我が…」

「あー…無理したツケが来たかしら…」

「まずはアッシュの手当てをしないと、他の怪我をした人達は僕がするから」

「はあ?アッシュはともかく他のハンター共までやるのかよ?ハンター共は放っておいてさっさとキャンプに戻ろうぜ」

自身の適合者であるアッシュはともかく、無関係なハンター達まで助けようとするグレイとアッシュに呆れるモデルA。

「そんなこと出来るわけないだろ」

「そういう事言うんだ?…ライブメタルに名前彫ったら歴史に残るかしら…」

「分かった、分かったってば!…ったく、何でこんな奴らがオイラで変身出来るんだよ…」

二対一なので基本的にモデルAに勝ち目はない。

モデルAはブツブツと文句を言いながらアッシュを背負って怪我人の元へ向かうグレイを追い掛けた。

「ごめんねー、運んでもらって」

「いいさ、アッシュだって僕を医務室に運んでくれたじゃないか…見ず知らずの僕を何度も助けてくれた…だから今度は僕が助ける番だ」

「律儀ねー、グレイ。あの三馬鹿も見習って欲しいくらいだわー」

こうしてアッシュとグレイの共同ミッションは完遂出来ず、レギオンズに向かうための手段を得るために取り敢えず手当てをした後にハンターキャンプへと帰還するのであった。 
 

 
後書き
フォルスロイドは声はアッシュとグレイのまま、ロックマンはアーマーのみのコピーです。

原作通りだとアッシュがギャグみたいにしてしまうんで 

 

第四十八話 レギオンズ三賢人

取り敢えずアッシュと怪我をしたハンター達に手当てをしたグレイはこれからどうするべきかと悩んでいた。

「とにかく、モデルAはアタシ達が持ってるべきね。アタシのお宝なこともあるけど、モデルAの適合者のアタシ達が持っていた方が他のハンターに任せるより安心だわ」

「分かった…壊れた列車はどうするんだ?」

「そこはアタシ達にどうこう出来ることじゃないわね。アタシ達に出来ることはトランスサーバーでミッションレポートを出して報酬を受け取ることだけ。一応ライブメタルは守り切ったわけだからそこそこの報酬は貰えるでしょ」

ハンターキャンプのトランスサーバーのある部屋に入り、アッシュがアクセスしてミッションレポートを提出する。

輸送列車の修理が終わるまで待って欲しいと言うのをレポートに付け足して。

レポートを提出して報酬を受け取ろうとした時、こちらに通信が割り込んだ。

『今、ミッションレポートを出したのは君だね?レギオンズの専用回線をトランスサーバーに繋げる。そのまま、アクセスしていてくれ。君達がライブメタルに選ばれた者…ロックマンか』

「…お前達は…?」

「随分と一方的ね、レギオンズなら何をしても良いってわけ?」

グレイとアッシュの反応にモニターに映った三人の老人の中で最も小柄な老人が笑った。

『はははっ、我らを前にしてもその態度か。噂通りだな…それにそちらのお前さんは記憶がないとは聞いていたが本当らしいな』

『止めろ、ミハイル。彼女の言う通り、失礼なのは私達の方なんだ。彼に関しても仕方ないだろう』

穏やかな表情を浮かべる老人がミハイルと言う小柄な老人を諌めると、大柄な老人が口を開いた。

『我らはレギオンズの最高権威者…三賢人と呼ばれている者だ。私は三賢人の一人、マスター・トーマス』

『儂の名はマスター・ミハイルだ。よろしく、ロックマン』

『すまない、ミハイルはああいう性格でね…私はマスター・アルバートだ。初めまして、アッシュ君、グレイ君』

「へえ、レギオンズのトップに知られてるだなんて光栄だわ」

『噂話程度はな、中々優秀なハンターだそうじゃないか』

レギオンズのトップである三賢人に名前を知られていることにアッシュは満更でもない表情を浮かべる。

しかしグレイには自分の名前を知っていることに引っ掛かることがあるようだ。

「何で僕の名前を…!?僕のことを知っているのか!」

少なくても自分はアッシュのように長い間ハンターをしていたわけではない。

だから噂話になるような存在ではないはずなのに知られていることが引っ掛かったようだ。

『落ち着きたまえ、君の事はハンター達のレポートで知っている程度だ。今、レギオンズのデータベースで調べている。直に君が何者か分かるだろう。』

「へえ、良かったじゃないグレイ。少しはあんたのこと分かるかもよ」

「う、うん…」

『君達に改めて頼みたいことがある。そこで待っていると言うのも辛いだろう。君達にハンターとして我々のミッションを受けてもらいたい』

『お前さん達二人で、ライブメタルをレギオンズの本部まで持ってきてもらいたいのじゃ。どうやらイレギュラー共もそのライブメタルを狙っているようなんじゃ、大人数だと見つかりやすいのでな。仮にもロックマンなんじゃから腕は立つのじゃろう?』

ミハイルが何かを弄るような仕草をすると、アッシュとグレイの元に一枚のカードキーが送られてきた。

「このカードキーは?」

アッシュが送られたカードキーを手に取ると、アルバートが説明してくれた。

『レギオンズ本部へ向かう列車は壊れてしまったそうだね。そのカードキーで、ロックされている扉の奥にある新たなエリアへ行けるようになるはずだ。実は君達のいるキャンプからそう遠くないエリアに、違法ハンターの飛行艇が墜落している。その飛行艇からなら列車の修理に必要なパーツを確保出来るだろう』

「その違法ハンターの飛行艇ってアタシがモデルAを取り戻した連中の物よね。なら、大丈夫そうだわ。侵入した時にチラリと見たけど結構、良いパーツ使ってそうだったし」

プロメテのせいで酷い目に遭ったものの、結果的に列車の修理に使えそうだから良かった…のだろうか?

「アッシュ、違法ハンターって何なんだ?前から気になってたんだけど」

「ん?違法ハンターってのはハンターギルドに正式登録していないハンターのことよ。お宝…ロストテクノロジーの盗掘や、違法な物品の売買、他にも問題事を起こしてる困った連中なの…まあ、一言で言うなら“悪い奴”ね」

「なるほどー、違法ハンターってのはアッシュみたいな乱暴者ってわけだな。痛ぇ!?」

失礼な発言をするモデルAにアッシュの鉄拳が飛ぶ。

「アタシと違法ハンターを一緒にするんじゃないわよ!アタシのどこが乱暴者なのよ!?」

「そ、そうやってすぐに手を出すからじゃんか…それで乱暴者じゃなかったら何なんだよ…はうっ!?」

「お黙り!」

二発目の拳骨。

勢い良く床に叩き付けられたモデルAは怒りマークを浮かせながら浮上した。

「あーーーっ!もう怒ったぞ!喰らえアッシュ!!」

怒ったモデルAがアッシュに体当たりする。

突然のことにアッシュは反応出来ずに喰らってしまうが当たった場所が悪かった。

「あ」

「…あれ、何か柔らかい…」

「この…この…っ」

こめかみに青筋を浮かべて拳を震わせるアッシュ。

モデルAが体当たりした場所は不運にもアッシュの胸だったのだ。

「このドスケベメタルーーーッ!!!」

怒りが最高潮に達したアッシュの鉄拳がモデルAに叩き付けられた。

「ぎゃあーーーーっ!!!」

本日最大の轟音が響き渡り、モデルAは部屋の壁に埋まり、それを見ていたグレイは顔を真っ青にした。

『…話を戻そう、ライブメタルには我々も知らないような技術やデータが記録されている。君達をロックマンに変身させている技術、R.O.C.K.システムや…』

『数百年の時で失われた…或いは意図的に葬られた歴史の真実の姿とかな。もしかしたらそこのスケベメタルにも記録されておるかもしれんしな』

『止めろ、ミハイル…とにかく、私達はライブメタルを調べる義務がある。その技術やデータを悪用されないためにね。アッシュ君、グレイ君。頼めるかい?』

三賢人からの頼みにアッシュとグレイは互いを見遣る。

「…レギオンズまで行けば僕やモデルAの事を教えてくれるんだな?」

「良いわよ、面白くなってきたわ。勿論、賞金は弾むんでしょうね?アタシはタダ働きはごめんだわ」

『ああ、考えておこう。君達が来るまでには調べ終えておくので、まずは飛行艇の墜落現場を目指してくれ。だが道中は危険が多いだろう。ハンター達に話を聞くといい、これは前金だ。君のアカウントに振り込んでおくからこれで必要な物を揃えるといい』

そう言ってモニターから三賢人が消え、アッシュは早速自身のアカウントを確認する。

「どれどれ………あーーーっ!?」

「ど、どうしたんだアッシュ!?」

アカウントを確認していきなり大声を出したアッシュにグレイは驚く。

「ひゃ、ひゃ、百万ゼニーが振り込まれてる!前金!?これが前金!?こんなドスケベメタルを届ける仕事で!?」

「誰がドスケベメタルだ!!」

「百万…って、そんなに凄いのか?」

「凄いも何も…これで必要な物を全て揃えても余裕があるわ!よーし!まずは腹ごしらえよーっ!!」

アッシュはグレイを引っ張って腹ごしらえのためにハンターキャンプの食堂に向かう。

「おーい!オイラを忘れないでくれよーっ!」

壁に埋まったモデルAを放置して。 

 

第四十九話 深緑のタワー

アッシュはレギオンズから貰った前金で店で食事を購入して腹ごしらえをした後に必要な装備を整える。

「えーっと、食料に最新型の酸素ボンベ…銃のメンテナンス用のパーツ…今はこれくらいで良いわね」

「そんなに少なくて大丈夫なのか?」

「大荷物にすると逆に動きにくくなるからねー、これくらいが丁度良いのよ。さてと、墜落現場に行くにはまず古いタワーのあるエリアを越えて極寒のエリアを抜けないといけないわ」

どうやらハンター達から得た情報によると違法ハンターの飛行艇はここから大分離れた油田にあるらしい。

タワーのあるエリアはともかく、極寒のエリアは装備がないと厳しい。

特に水中はヒューマノイドであるアッシュには辛いので酸素ボンベは必須だ。

「よーし、行くわよグレイ!モデルA!」

「うん」

「はいはい」

グレイとモデルAを連れて早速、深緑のタワーと呼ばれる建物があるエリアへと向かった。

普通ならかなりの時間がかかるが、ロックマンの状態ならかなりの短時間で到着出来る。

何度かの休憩と食事を経て辿り着いたタワーにアッシュは口を開いた。

「いやー便利ねぇ、ロックマンの力って。遠い場所にもあっさり到着しちゃうし。これでライブメタルがスケベメタルじゃなかったら文句ないんだけど」

「スケベスケベ言うな!あれは事故なんだから仕方ないだろ!?」

「事故で済む問題じゃないでしょ!このスケベ!」

「二人共、落ち着いて…近くに村があるけど、休憩していく?」

「村?あー、この村にはもう誰もいないのよ。昔は人工栽培していた薔薇を使ったローズティーが評判でそれを飲みに来る人達もそれなりいたんだけど、イレギュラーの襲撃を受けて今はイレギュラーの巣窟よ」

つまり元々はインナーの村だったが、今では完全なアウターとなってしまっているのだ。

「えーっと、確か極寒のエリアに出るためにはここのタワーを通り抜けないといけないわけね」

ハンターキャンプで譲ってもらえた地図を確認すると、まずはタワーを通らなければ次のエリアには向かえない。

まずはタワー内部に入って奥の次のエリアに続くシャッターに向かうアッシュとグレイとモデルA。

広い場所に出た瞬間に警報が鳴り、セキュリティシステムが警告する。

《アラート!アラート!セキュリティシステムニ異常発生!警戒レベル3ヲ発動!外部ヘノルートヲ封鎖スル!》

次のエリアに続く道が塞がれてしまい、それを見たモデルAが慌てる。

「お、おい、何かまずくないか!?」

「慌てるんじゃないの!グレイ、変身よ!!」

「分かった!」

アッシュとグレイがロックマン・モデルAに変身し、さっき潜ったシャッターに向かうが叩いても蹴っても開かない。

「扉にロックが掛かってる…やられたわね…」

「攻撃で吹き飛ばせないかな?」

「止めた方が良いわ。このタワー…結構古いから、破壊の衝撃で崩れるかもしれないし」

途方に暮れる二人にアルバートからの通信が入る。

『こちら、アルバート!大丈夫か!?アッシュ君!グレイ君!その古いタワーは、付近の環境を調べるために建てられた物なんだ。イレギュラー用にセキュリティが強化されているのだけど、何か異常があったみたいだな。タワーの天辺にセキュリティを管理するコンピュータがあるはずだ。そこまで行って、ロックを解除するしかない。気をつけてくれ、アッシュ君、グレイ君』

「こんなタイミングで異常……イレギュラーが原因としか思えないわ…あの蔦を登って上に行けそうね」

突如伸びてきた蔦の足場に飛び移り、アッシュは上を目指して駆け出し、グレイもアッシュを追い掛けた。

「天辺に管理コンピュータがあるんだっけ?」

「ええ、だから急いでロックを解除しましょ」

蔦を伝って上へと登っていき、現在行ける場所まで行くとシャッターを発見して潜り抜ける。

すると壁にトゲが敷き詰められている場所に出た。

次の瞬間に上から大型の蜘蛛型のメカニロイドが出現する。

「でかい!」

「こいつとは戦ったことがあるわ!グレイ、こいつの弱点は頭部よ!集中的に狙って!!」

「分かった!!」

アッシュの指示通りにグレイはバスターショットを向け、アッシュもレーザーショットを向けてショットを頭部に集中攻撃する。

メカニロイドも小型の蜘蛛メカニロイドを出し、ドリルで反撃するも二人掛かりの攻撃に耐えられるはずもなく爆散した。

破壊されたメカニロイドは防衛機能の一つだったのか、壁の一部が吹き飛んでシャッターが露になる。

「ラッキー!このまま奥に行けそうね」

シャッターを潜り抜けて奥に進むと外の景色が見える。

気付かないうちにかなりの高さまで登っていたようだ。

「もう、ここまで登ってたんだ…」

「ロックマンのスピードって便利ねー。普通ならどれくらいの時間がかかるのか…想像したくもないわ…一応言っとくけど、落ちないでよグレイ」

「分かってるよ」

壁蹴りを駆使して上に向かうための入り口を探し、建物内部に入れそうな穴を発見したのでそこから再び内部に戻る。

襲い掛かるイレギュラーを返り討ちしながらアッシュとグレイはダッシュと壁蹴りを駆使して天辺まで向かうと、シャッターを発見する。

「ここに管理コンピュータがあるのね」

「…?アッシュ、中で声がする」

「イレギュラーかしら…?」

シャッターを抉じ開けると、そこには傷だらけの違法ハンターらしき男と…球根のようなレプリロイドがいた。

「ここまで辿り着くとは違法ハンターながら見所のある男だ…フッフッフッフッ…気に入ったぞ!我が茨の腕に抱かれ、我らのためにその魂、散らせるがいい!」

「ひいいっ!こ、こっちへ来るなぁ!」

怯えながらバスターを構える男だが、震えによってバスターの引き金が引けないようだ。

「ストーップ!あんたの相手はこっちだよ!」

アッシュの制止の声にイレギュラーは振り返るが、すぐに興味を無くした。

「…何だ、女か。今私は忙しいのだ。この男の魂を抜いたら、適当に相手してやる。そこで待っていろ」

そして男に蔓を伸ばそうとするが、グレイがショットを放って妨害する。

「止めろ!」

「む…ほう…甘い罠に誘われ、迷い込んだ蜜蜂がここにも…か。なかなか素敵な少年じゃないか……気に入ったぞ」

「ちょっと、アタシとグレイの扱いの差が激しくない?」

「ええい、喧しい女だ。私と少年の甘い一時を邪魔するとは…」

「何か…あいつ…気持ち悪いぞ…」

「気が合うわねモデルA…アタシも同感よ」

声が引き攣っているモデルAにアッシュも同意する。

「うわあああっ!」

男は隙を突いてこの部屋から脱出した。

グレイはバスターを構えてイレギュラーに問い詰める。

「セキュリティを狂わせたのはお前か!ここで何をしている!」

「種を育てているのだよ。新たな世界、新たな王の礎となる種をね、このタワーに迷い込んだ者の恐怖心を喰らうことでその種は成長するのだ。私の名はローズパーク…君も我が胸で鳴きたまえ!恐怖と苦痛の声を上げてな!」

柱に体を固定して変形するローズパーク。

「何かグレイがヤバそうだぞ!」

「そうね…グレイの教育に悪いわ、さっさと倒しましょう!!」

グレイの身の危険を感じたモデルAとアッシュは速攻でローズパークを撃破しようとする。

「喰らいなさい!!」

アッシュがショットを連射してローズパークを撃ち墜とそうとするが、ローズパークは蔓を伸ばして他の柱に素早く移動してかわしていく。

「鬱陶しい小娘めっ!私と少年の甘く熱い時間を邪魔しないでもらおう!!」

「グレイに何する気よこの変態!!」

「変態とは失礼な!少年をこの茨の腕で抱き、少年を鳴かせたいだけなのだよ!!」

「モデルAとは別ベクトルの変態だわ!!」

ローズパークは柱を次々と移動し、電撃とトゲを発射してくる。

グレイはアッシュのサポートをするために隙を突いてホーミングショットからのチャージバスターを当てる。

「ぬおおっ!?しょ、少年…なるほど…君も私と一つになりたいのだね!良いだろう少年!!」

「ストーップ!!」

リフレクトレーザーでローズパークの動きを阻害し、ディアバーンに変身すると飛び蹴りをお見舞いした。

「ぬああああっ!?こ、これがモデルAの能力…しかし、小娘!私と少年が一つとなる瞬間を妨害するとは…っ!その罪、死を以て購え!!」

電気エネルギーをチャージして強烈な電撃を発射してくるローズパーク。

アッシュは咄嗟に屈んでかわすと、モデルAが話し掛けてくる。

「おい、アッシュ!!」

「何よモデルA!?戦闘中に話しかけないで!!」

「あいつはどうやら電気属性のようだ。電気属性の敵には氷属性の攻撃が良く効くぜ。何か氷属性の武器はないのか?」

「そんな武器、都合良くないわよ!……あ、でも……」

「アッシュ!どうしたんだ?」

ローズパークの攻撃をかわしながらアッシュに尋ねるグレイ。

「確か、良い物が……グレイ、少しだけ時間稼いで!!」

「分かった!!」

「何をするつもりかは知らないが、これで終わりだ小娘!!」

アッシュに向けてトゲを発射するローズパークだが、グレイが間に入って防御する。

「アッシュはやらせない!!」

「お…おお…少年…美しい…そのような小娘を守ろうとするとは、何と美しい心の持ち主なのだ!そんな君と私は…一つとなりたい!!」

グレイに襲い掛かるローズパーク。

それをかわしてグレイはチャージバスターを当てて少しでもダメージを稼ぐ。

「アッシュ急げよ!このままじゃグレイが!」

「あーもう!うるさいわね!………あったわ!!」

鞄から取り出したのは複数の手榴弾。

「グレイ、そいつから離れなさい!!」

安全ピンを外してローズパークに手榴弾を投擲する。

「忌々しい小娘め…そのような物が私に効くわけがないだろう!!」

蔓で手榴弾を弾こうとするが、手榴弾が爆発を起こして周囲の気温が冷気によって一気に冷えた。

「え…?冷たい?」

「あれは液体窒素が入った爆弾なのよ。ローズパークは電気属性だから…」

冷気による煙が消えるとローズパークは完全に凍結しており、身動き出来ないでいる。

「氷付けになってる!!」

「電気属性は冷気に弱いらしいからね。足止めくらいであまり使えないなーって思ってたけど役に立ったわ。それじゃあとどめよ!!」

アッシュとグレイが二丁のレーザーとバスターを構え、ホーミングショットからのリフレクトレーザーとチャージバスターを命中させて跡形もなく粉砕した。

そして残骸からローズパークのデータが飛び出し、モデルAがコピーしようとするが…。

「ねえ、モデルA…あんたそいつをコピーするの?」

「ん?ああ、勿論だ。こいつおかしな奴だけど強力な奴だからな」

「………こいつ、グレイに手を出そうとした変態よ?」

「…………性格まではコピー出来ないから安心しろよ。癖が強そうな性能なようだけど、無いよりはマシだって」

モデルAはローズパークのデータをコピーし、これでアッシュとグレイはローズパークへの変身が可能となるのであった。 

 

第五十話 ライブメタル・モデルV

ローズパークを倒して、そのデータをコピーしたモデルAは早速ローズパークの能力の説明をする。

「ローズパークは柱に体を固定して腕の蔓で他の柱に移動することが出来るんだ。一応地上での活動も出来るようだけど、動きが鈍いからあまりおすすめはしないぜ。チャージすることで電気属性の蔓の鞭やトゲを発射出来るようになる。一応炎属性の相手には有効だから覚えておいてくれよな…素早い敵に使えるかは別として」

説明していたモデルAもローズパークのあまりの癖の強い性能に渋い声を出した。

「苦労したわりにはあまり旨味がないわねー。これならディアバーンの方がまだ使いやすいわ」

「まあ、コンセプトの違いって奴だな」

「とにかく、逃げた違法ハンターを追ってみよう」

逃げた違法ハンターを追い掛けるためにシャッターを抉じ開けて奥の部屋に入るとアッシュとグレイに気付いた。

「ひいっ!お前達も俺達の飛行艇を襲った奴の仲間か!畜生…止めろっ…!来るなーっ!」

バスターを構える男だが、震えによって全く照準が定まっていない。

あれでは例え撃ったとしても当たらないだろう。

「駄目だな、こりゃ…完全にパニクってやがる」

「そりゃあ、飛行艇を襲われてあんな奴にやられそうになったんだから理解出来るけどね…」

「落ち着けよ!僕はお前を助けに来たんだ!」

モデルAがパニックを起こしてまともな会話が出来そうにないと判断してアッシュはどうしたものかと頭を悩ませる。

グレイが落ち着かせようとして一歩前に出るが、それは逆効果である。

「く、来るな…!来ないでくれぇ!ぐあっ…!うあああああっ!」

男は突然苦しみだし、紫色のエネルギーが飛び出して奥の物体に吸収され、男は崩れ落ちて消滅した。

「な…何…!?何が起きたの!?」

「…完全なる敗北…その男は恐怖に耐えきれず、モデルVの生け贄となった。」

「モデルV…!?この馬鹿でかいのがライブメタルだってのか!?」

そこに現れたのは二人の青年であり、一人はヒューマノイド、もう一人はレプリロイドだ。

そしてヒューマノイドの青年の言葉にモデルAが驚愕する。

「データ照合、該当データ有リ、ロックマン・モデルA発見。ライブメタル・モデルV…古代兵器ヨリ作ラレシ王ノ為ノライブメタル…」

もう一人の青年がグレイとアッシュを見比べながら機械的な口調でモデルVのことを語る。

「あんた達は一体…!?」

「……ロックオン!」

「ロックオン」

二人がライブメタルを取り出して変身する。

風が吹き荒れ、闇が蠢いたかと思った瞬間、二人は別の姿となっていた。

「大いなる失望…奴に続く二人目のイレギュラーロックマンが誕生したと聞いて来てみれば…お前のようなハンターの小娘か…失敗作も含め、お前達のような者達がモデルAの適合者とはな。我が名はヘリオス。風のロックマン・モデルH」

「コードネーム・シャルナク。闇ノロックマン・モデルP」

二人はかつてヴァンに挑んで敗北したロックマンのうちの二人だった。

モデルHのロックマンであるヘリオスとモデルPのロックマンであるシャルナクはかつてとは比較にならない程の力を身につけてこのゲームに戻ってきたのだ。

「モデルHにモデルP…こいつらがプロメテの言っていたロックマンか!」

「作戦時間超過、モデルVヲ回収スル」

モデルVの元へ向かおうとするヘリオスとシャルナクだが、グレイとアッシュが呼び止める。

「ま、待て!逃げる気か!」

「敵を目の前にして逃げちゃうわけ?」

「愚かなる間違い…我らが逃げるのではない、お前達を見逃してやると言っているのだ。今はモデルVの育成が最優先…お前達などいつでも消せる。今の我らの目的は王となる前にロックマン・モデルO…忌々しいあの男を葬ることだ。お前達に無駄な時間など使えん」

「現在ノ優先目的ハ、ライブメタル・モデルVノ育成ト回収。ロックマン・モデルAトノ戦闘ハ作戦行動ニ含マレナイ」

「へっ!眼中にないってか!」

全く相手にしようとしないヘリオスとシャルナクにモデルAが叫ぶ。

「正確なる認識…お前達如き、いつでも始末出来る。次に会う時まで、精々ロックマンとして腕を磨くがいい」

傲慢な発言だが、言葉だけではない。

ヘリオス達は過去の痛い経験もあって言葉に見合うだけの力を手にしているのだ。

「作戦時間、超過増大…迅速ナ行動ヲ要求スル。モデルV、覚醒レベル2。イレギュラー生成マデ5717秒ト推定」

モデルVがイレギュラーを生み出すと言うシャルナクの言葉にアッシュが食いついた。

「ちょっと…!?イレギュラーの発生はモデルVのせいなの!?」

それを聞いたヘリオスが呆れたように口を開いた。

モデルVがイレギュラーを生み出すと言うのは疑似ロックマンであるフォルスロイドを含めてロックマンならば誰でも知っていることだからだ。

「果てしなき無知…そんな事も知らないとは、やはりお前達にロックマンは務まらん。その命、預けておこう。次に会う時が、お前達の最期だ」

二人はモデルVを回収し、転送の光に包まれてこの場を去り、そしてモデルVが無くなった瞬間にアルバートからの通信が入った。

『やっと通信が繋がったよ。そっちは無事かい?こちらでもタワーのセキュリティ解除を確認した。これで先のエリアへ進む事が出来るはずだ』

セキュリティが解除されたことを知ったアッシュとグレイは奥のシャッターを抉じ開けて床にトゲが敷き詰められた場所に出るが、ローズパークに変身して二人はパイプを利用して奥へと移動し、トランスサーバーに乗り込んで油田へと続く道のある部屋に戻るのであった。

「……あ」

「アッシュ、どうしたんだ?」

「思い出したわ、昔…アタシを助けてくれた人が言ってたわ…イレギュラーの発生原因はモデルVだって…」

今ならヴァンが使っていた力がロックマンの力なのが分かる。

しかし、ヴァンはヘリオス達と違ってイレギュラーの破壊やモデルVの破壊が目的のようだ。

出来ることなら戦いたくはないが…。

「(正直、まともにやり合えそうにないのよねー)」

幼い頃に見たヴァンの戦いぶりを思い返して、自分達二人で勝てるのだろうかと考えて…止めた。

勝てるビジョンが浮かばなかったのだ。

取り敢えず、今はレギオンズ本部に向かうために極寒のエリアに向かうのであった。

まず、タワーを抜けたら野宿の準備をして腹ごしらえをしようと決めた。

一方、極寒のエリアでは真紅のアーマーを纏った青年…ヴァンが辺りを見回していた。

「違法ハンターの飛行艇から何とか脱出出来たけど、とんでもない場所に落ちたな…しかもフォルスロイドの気配まで……モデルVのフォルスロイドなら、今のうちに破壊しておくべきか」

それだけ言うと水の中に飛び込むヴァン。

ここで新たな出会いと再会があるとは知らずに。 

 

第五十一話 極寒の流氷

タワーを抜けて野宿をした後にしばらく歩いたアッシュとグレイは氷のある極寒のエリアへと到着したのだが、あまりの寒さに体を強張らせた。

「寒っ!?」

ロックマンの状態だからこそ、死ぬほどの寒さは感じないものの、それでも寒いものは寒い。

するとミハイルから通信が入った。

『聞こえるかね?儂じゃ、ミハイルじゃ。またえらい所に足を踏み入れたのう。あちこちにある氷の塊を壊せれば道も拓けるのじゃが…とはいえ、墜落現場へ繋がるエリアは限られておる。何とかして、そのエリアを突破してくれたまえ。頼んだぞ、ロックマン』

「簡単に言ってくれるわねー、あの爺さんは…酸素ボンベの出番ね」

アッシュは小型の最新型の酸素ボンベを口に含むとグレイには携帯食を渡す。

「これは?」

「ハンター御用達の携帯食よ。あんたはレプリロイドだから水の中でも酸素の心配はしなくてもいいけど、エネルギーの消耗が激しくなるから水から出てヤバいと感じたらすぐに食べなさい。良いわね」

レプリロイドは完全な機械だが、食物摂取が可能なのだ。

それをエネルギーとして変換することが可能なので、アッシュはグレイに携帯食を渡したのだ。

「ありがとう」

「不便だよなー、ヒューマノイドもレプリロイドも」

水の中にいても何も変わらないモデルAからすれば理解不能だ。

「とにかく、こんな所はさっさと出るに限るわ!行くわよグレイ!!」

「うん、行こうアッシュ」

先に進んで襲い掛かるイレギュラーを蹴散らしながら進むが、氷の足場に慣れていないグレイは足を滑らせて水の中に落ちてしまう。

「ちょっとグレイ!大丈夫!?」

「だ、大丈夫…冷たい…」

「そりゃあ、極寒のエリアだからね」

水から顔を出したグレイの言葉にアッシュは頷きながら答え、アッシュも一瞬戸惑ったものの、意を決して水の中に飛び込んで移動する。

「あ、そうだ。ディアバーンに変身すれば少しは寒さが和らぐんじゃないか?あいつは炎属性だし」

「それ採用!トランスオン!!」

「トランスオン!!」

アッシュとグレイがディアバーンに変身すると水の抵抗を受けることなく進めるだけでなく、炎の矢で氷のブロックを破壊出来る。

そして水から出て奥のシャッターを潜り抜けて次のエリアに出ると、氷のブロックが行く先を塞いでいたので早速ブロックを飛び蹴りで蹴り砕く。

そして水の中に入ると、地中からメカニロイドが飛び出して触手が二人に遅い掛かる。

二人はトランスオンを解除してグレイはバスターショットを構えてホーミングショットのレーザーサイトを出して触手を一網打尽にし、触手が破壊されたことでコアが飛び出し、そこをアッシュがレーザーショットを構えて至近距離でショットを連射していく。

レーザーの連射性能の低さも至近距離なら大した問題にはならない。

コアを破壊されたメカニロイドは沈黙し、急いでアッシュとグレイは水の中から飛び出して氷の足場でイレギュラーと接触しないようにしながら移動する。

そして奥のシャッターを抉じ開けると氷のブロックで通路が塞がれた場所に出た。

「あれ?ここのブロック、一部だけ壊されてるわ」

「他にもイレギュラーの残骸がたくさんある…」

「これは…相当なやり手だな…何か強力なセイバーで斬られたような傷がある…ほとんど一撃だぜ」

「もしかしたらロックマンかもしれない、気をつけて進もう」

グレイがそう言うと二人は慎重に先を進んでいくが、先に進んだ先客が相当暴れたのか所々壊れており進みにくい場所が多い。

途中でいくつかの扉を見つけて中を確認するが、何らかの装置があり、全て破壊されていた。

「本当に何なのかしら…きゃあっ!?」

「アッシュ!?」

床が崩れてそのまま落ちていくアッシュにグレイは手を伸ばすが間に合わず、イレギュラーの生き残りが現れ、氷弾を発射して氷が床の穴を塞いでしまう。

「くそっ!」

グレイは咄嗟にチャージバスターで破壊し、床の氷を砕こうとするが、アッシュに止められた。

「アタシに構わないで先に進んでて!アンタ結構長い時間、水の中にいたからエネルギーが少なくなってるはずよ!急いで出なさい!!アタシのボンベの酸素にはまだ余裕があるから、何とか別のルートを探して追いかけるわ!!」

アッシュは結構深い場所に落ちたらしく、壁もないので壁蹴りで上に登ることも出来ないので何とか出口を探すことにした。

「…分かった、先に行ってる!」

「ええ」

グレイは奥にあるシャッターと扉を抉じ開けると、広い部屋に出た…のだが、行き止まりであった。

「行き止まり…道を間違えたのか…」

「誰だ?」

「!?」

声に反応して飢えを見上げると、部屋の浸水していない場所で自分を見下ろす真紅のアーマーの青年がいた。

「その姿…お前、ロックマンか!?」

「ああ、そうだ。お前もロックマンだな?ヘリオス達以外にも妙なロックマンがいたなんてな」

青年…ヴァンはグレイを見た。

見たこともないライブメタルのロックマン。

プレリーからこのようなライブメタルの存在など聞いたことがないため、敵が作った物かモデルOのように突然生まれた物か。

しかしモデルAはライブメタルであるためか、ヴァンの異常性に気付く。

「なあ、グレイ!逃げた方が良くないか!?こいつ…何かヤバいぞ!?」

「逃げるわけにはいかない!こいつや他のロックマンを倒せば僕は自分の正体を知ることが出来るんだ!」

チャージバスターを発射するも、ヴァンはそれを腕の一振りで弾き飛ばす。

「なっ!?」

「腕の一振りで弾きやがった!?」 

「………なら!」

信じられない事態に唖然となるが、グレイはバスターを構えてレーザーサイトを出してホーミングショットを発射、更に時間差でチャージバスターを撃つ。

「…………」

ホーミングショットもチャージバスターも腕の一振りで弾かれ、それを見たグレイは威力よりも手数を重視してショットを連射する。

ヴァンは両腕を動かして全て弾き、グレイとの距離を詰めると強烈なダッシュストレートを叩き込んだ。

「がっ!?」

強烈な拳をまともに喰らったグレイは壁に叩き付けられる。

一瞬、意識が飛びそうになるが何とか耐えて反撃に出る。

「トランスオン!!」

「………っ!」

ディアバーンへと変身し、それを見たヴァンが一瞬目を見開いて足を止めるが、すぐにグレイに向けて前進する。

炎の矢を連射し、更に両腕のブーメランを発射するが、どれもこれも腕の一振りで弾かれてしまう。

「だったら!」

遠距離での攻撃が通用しないなら接近戦に持ち込もうとするグレイ。

大ジャンプしてヴァンに飛び蹴りを繰り出すが、ヴァンが大きく腕を振るってグレイを強く弾き飛ばして壁に叩き付け、落下するグレイに対して大ジャンプからのアッパーカットと、床に落下してからのダッシュストレートで再び壁に叩き付けられた。

「あぐっ!?つ、強い…!」

「こいつ、武器も使ってないのに何て強さなんだ…!」

モデルAの言う通り、太股のホルスターに納められているアルティメットセイバーも背中に取り付けているバスターショットも使っていない。

更に言うとオメガナックルも使っていないので本当にかなり手を抜いているのが分かる。

「悪いけど、俺には弱い者いじめをする趣味はないんだ。これ以上痛い目に遭いたくないなら早く帰った方がいい」

「馬鹿にするな!僕は…最後まで諦めない!」

自分のことを知りたいと願うグレイには簡単に諦めると言うことはしない。

「………分かった。ならこの一発で楽にしてやる」

退こうとしないグレイに何かを感じたのか、武器の一つであるオメガナックルのエネルギーを拳に纏わせてグレイに殴り掛かるヴァンだったが…。

「ストーップ!ヒーローは遅れてやってくる!アッシュ参上ってね!!」

何とか出口を発見して脱出し、タイミング良く部屋に入ってきたアッシュにグレイとヴァンが硬直した。

「……アッシュじゃないか、どうしたんだそれ?」

「あれ?グレイがイレギュラーに襲われてるかと思ったらヴァンじゃない。無事で何よりだけど…あんた達…何してんの?」

「「え?」」

ヴァンからすればグレイが纏っている見慣れないアーマーを纏うアッシュの姿に困惑。

アッシュからすれば知り合い同士がぶつかり合っていると言う謎の状況。

グレイとモデルAからすればこの二人は知り合いなのかと疑問符を浮かべている。

微妙な空気になって戦いと言う空気ではなくなったので、取り敢えず話し合うことになった。

アッシュから大体の事情を聞いたヴァンは頷く。

「なるほど、あの時の飛行艇でプロメテの奴が言っていたライブメタルはモデルAのことだったのか」

「そういうこと、それでレギオンズ本部に運ぼうとしてプロメテとパンドラに襲われて今は改めてのレギオンズからの依頼でモデルAのロックマンとして列車を直すためのパーツを手に入れるために違法ハンターの飛行艇のある墜落現場に向かおうとしてたとこ」

「なるほど、そして別行動をしていたこいつに襲われたのか俺は」

「ご、ごめん。アッシュの知り合いだなんて知らなかったんだ」

「知り合いと言っても付き合いなんてほとんどないけどな」

「まあ、恩人ではあるわね…それで、ヴァンはどうしてここにいるの?」

飛行艇でプロメテと戦っていたヴァンがどうしてこのような極寒のエリアにいるのだろうか?

「落下した飛行艇の一部がここに落下したんだよ。全く…落ちた場所がこんな酷い所なんてツイてない。それにしても連合政府からの依頼を受けてるとはな。昔は一緒にいたハンター達とはぐれて迷子になってた君がなあ…」

「ちょっ!?今更そんなこと言わなくても良いでしょ!?」

今より幼い頃の失敗をバラされたアッシュは顔を真っ赤にして叫んだ。

「ははーん、なあ、ヴァンだっけ?もっとアッシュの面白おかしいことは…うげえっ!?」

「お黙り」

壁にめり込むモデルAに白けた視線を寄越しながらヴァンは二人に振り返る。

「それにしても、ガーディアンの初代司令官が作った物以外にも喋れるライブメタルがあるなんて知らなかったな。」

「ガーディアンって、イレギュラーの発生原因を調べたり、イレギュラーと戦ったりする組織…だったわよね?」

「ああ、君達が話してくれたヘリオスとシャルナクが持っているライブメタルはガーディアンの研究所から盗み出された物なんだ。モデルH達はちょっと癖が強いけど正義感の強い奴らで、本当ならヘリオス達みたいなこそ泥ロックマンに協力するはずがないんだけど、モデルH達は意識を封じられてるんだ。あいつらは俺の仲間なんだよ…適合者ではないけどな」

「仲間…ヴァンはどうしてロックマンに?どうしてイレギュラーと戦ってるんだ?」

グレイは何故ヴァンがロックマンになったのか、何故イレギュラーと戦っているのかが気になったようだ。

「いきなり呼び捨てか…まあいいか、俺も君達と同じだ。イレギュラーに襲われて死にかけたところをライブメタルの適合者になってロックマンになった…こいつの厄介なところは一度変身すると二度と元には戻れないんだ。おかげでインナーにはあまり入れないし参ったよ。まあ、それから色々あって俺はイレギュラーを狩りながらモデルVを破壊して、ヘリオス達からモデルHたちを取り戻すために戦っている。後は生き残った者が世界の王となるなんてふざけたゲームを仕組んだ黒幕を倒すためにね…」

「そうか…アッシュもヴァンもちゃんとした目的があるんだな…僕にはまだない…」

「別に焦る必要はないだろ、俺だってロックマンになる前までは先のことなんて考えてなかった。ただ今を生きるので必死だったからな。お前もいずれ生きるための目的が見つかるさ、案外近くにあったりするかもしれないぞ?生きる理由とかそんなのは…ただ、先輩のロックマンとしてこれだけは言いたいかな?ロックマンの力は強大だ。それこそ世界を滅ぼしたりすることが出来るくらいには、だけど使い方を変えればそれは頼りになる守るための力になる。アッシュ、グレイ。力の使い方を間違えるなよ?もし間違えたら俺がお前達を倒すことになるからな」

「……怖いこと言わないでよ、ヴァンと戦うなんて考えただけでゾッとするわ。」

グレイがボコボコにされているので、アッシュが加わったところで勝てないのは明白。

個人的な感情も含めて戦いたくない相手だ。

「そうかそうか、なら気を付けろよ。俺に狙われないように…お前達の力がお前達の信じるもの、守りたいもののために使われることを願ってるよ。じゃあな」

水の中に飛び込んでいくヴァンの後ろ姿を見つめながらアッシュとグレイも立ち上がった。

「さあて、アタシ達も行きますか」

「うん」

壁に埋まってるモデルAを手に取って変身するアッシュとグレイも水の中に飛び込んで今度こそ墜落現場に続く道を進む。

奥のシャッターを二つ抉じ開けて上に登り、更にシャッターを潜っていくと氷のブロックの足場があるが行き止まりだ。

「下から水が流れる音がするわね、もしかして下かしら?」

「じゃあ、ディアバーンに…」

グレイがディアバーンに変身しようとした時、二人のヒューマノイドの女性とレプリロイドの少年が現れた。

「何だプロメテが面白い奴らを見つけたと言うから見に来たが…テティス、お前と同じくらいのガキ達じゃないか」

「酷いや、アトラス。君だってそう変わらないじゃないか」

失礼な言葉にテティスは溜め息を吐いたが、グレイとアッシュは突然現れた二人にそれどころではない。

「な…何だ、お前達は!?」

「…ロックオン!」

「ロックオン!」

火柱が発生し、氷が出現したかと思えばアトラスとテティスの姿が変わっていた。

「プロメテから聞かなかったかい?君の前に、何人ものロックマンが現れるって。僕の名前はテティス、氷のロックマン…モデルLの適合者さ」

「アタシはアトラス。炎のロックマン…モデルFの適合者だ。戦いに生き残った者が世界の王となる運命のゲーム…失敗作とは言え知らないとは言わせない……そしてお前が二人目のイレギュラーロックマン…思想も理想もないハンターがロックマンになってどうする?」

「ヴァンから話は聞いてたけど、本当にスケールがでかい話だな」

「なるほどね、あんた達もヴァンの仲間からライブメタルを奪ったロックマンってわけ…理想はなくてもプライドはあるわ。プロメテやあんたみたいに、人を見下す奴は許せないのよ」

「ははっ、流石だね。でも今はまだ君達と戦う気はないんだ。それにしてもさっき気になることを言ってたね。ヴァン…それはモデルOのロックマンの名前だ。彼はここにいるのかい?」

「…それがどうした!?」

構える二人にテティスは朗らかに笑うが、ヴァンの名前を尋ねる時にほんの少しだけ口調に鋭さが混じる。

グレイが答えるとアトラスも拳を握り締めた。

「なるほど、奴め…こんな所にいたのか。あの時の屈辱を晴らすまたとない機会だ。お前達はここで氷付けになってな!!」

邪魔をされないようにアトラスはナックルバスターを構えてそれを氷のブロックに叩き付けるとブロックが一斉に砕けてアッシュとグレイは水の中に落ちる。

アトラスとテティスはヴァンを探しに向かうのであった。

「くーっ!あいつらムカつくわねー!」

「アッシュ…今はそんなことを言ってる場合じゃ…」

眼中にないかのような扱いにアッシュは怒り、グレイが宥めようとするが、不愉快な笑い声が聞こえた。

「シャーッシャッシャッシャッ!時間すらも凍り付く、氷点下の世界へようこそ!お前達のような奴らがロックマンを名乗るなど烏滸がましい!貴様らのライブメタル…このクロノフォスが貰い受ける!」

突如現れたイレギュラーにアッシュとグレイは驚きながらもレーザーショットとバスターショットを構えて迎撃するのであった。

一方、アッシュ達と別れたヴァンは外に出ることに成功していたが、次の瞬間には目を鋭くした。

「…殺気が駄々漏れだぞ?出てきたらどうだ?」

「ようやく見つけたぞロックマン・モデルO」

「あの時のリベンジに来たよ」

ヴァンの背後に現れたのはアトラスとテティスであった。

「お前達か、ライブメタルを返しに来てくれたのか?」

「そんなわけがないだろう。テティスが言ったようにお前にあの時の屈辱を返しに来たんだ。」

「……出来るのか?」

「あの時のアタシと同じだと思うな!!」

メガトンクラッシュを叩き込もうとするアトラス。

掴み止めるヴァンだが、腕に走る僅かな痺れに顔を顰めた。

「なるほど、流石にあの時よりは強くなってるか」

「アトラスだけじゃないよ!僕も含めて全員があの時より強くなってるんだ!出てこいフリージングドラゴン!!」

二匹の氷龍を召喚し、ヴァンはかわそうとするがアトラスが地面に爆弾を設置して行動を制限した。

それによりヴァンはアルティメットセイバーを抜いてチャージセイバーで氷龍を砕き、バスターショットを引き抜いてチャージバスターで爆弾を一網打尽にする。

「やるな」

「チッ、相変わらずの化け物め。」

「でも、あの時は抜かせられなかったセイバーとバスターを抜かせたよ」

ほとんど素手であしらわれたあの時と比べれば格段の進歩と言える。

「あの時と比べれば相当なレベルアップだ…その努力を何で別の方向に使えないのか…」

二人の成長は認めるものの、その努力する方向音痴さにヴァンは呆れるしかない。

「ほざけ!」

ダッシュしながらのメガトンクラッシュをヴァンはジャンプでかわすとサンダーチップを起動して電気属性のチャージセイバーを叩き込む。

「ぐっ!?」

それにより感電したところをセイバーによる回転斬りからの三連撃を喰らわせようとするが、三連撃を繰り出す前にテティスからの妨害が入る。

「アイススティッカー!!」

巨大な氷塊を作り出し、ハルバードで粉砕すると破片を飛ばしてくる。

攻撃を中断してそれをダブルジャンプでかわし、テティスにチャージバスターを当てる。

「うわっ!」

「龍炎刃!!」

フレイムチップを起動してジャンプしながらセイバーの斬り上げを繰り出す。

まともに喰らったテティスの全身は炎に包まれた。

「この程度で!!」

「負けるか!!」

アトラスとテティスが同時に襲い掛かるが、テティスを腕のワイヤーフックを射出すると拘束する。

そしてそのまま引き寄せてアトラスのメガトンクラッシュの盾にする。

「何!?」

「うあああっ!!」

炎に再び焼かれたテティスの悲鳴が響き渡り、目を見開いたアトラスには電気属性のチャージバスターが直撃し、更に追撃の真空刃のソニックブームが直撃したことで膝をつく。

「ぐっ!?」

そしてテティスをアトラスの隣に投げ飛ばすと一歩前に出る。

「悪いけど、ロックマンの先輩としてまだまだお前達に負けるつもりはないんだ。さあ、モデルFとモデルLを返してもらうぞ」

「…っ…それは出来ない相談だ…これはアタシの理想のために必要な物だ…」

「それは、ガーディアンの初代司令官が平和のために作った物だ。お前達みたいな奴らが持っていていい物じゃない」

セイバーを構えて一歩ずつ距離を詰めるヴァンにアトラスは地面に爆弾を複数設置して爆発させる。

「!?」

爆風によって視界が塞がれたヴァンは一瞬目を閉じてしまい、アトラスとテティスの逃亡を許す。

「逃がすか!!」

逃げた二人を追い掛けるヴァンだが、水中では圧倒的な機動力を誇るモデルLには勝てずに逃げられてしまうことになる。

しかし、それでも諦めるわけにはいかず、追い掛けるヴァン。

一方、アッシュとグレイはクロノフォスと戦い、追い詰められていた。

最初はアッシュとグレイの連携によって追い詰めていたものの、クロノフォスのタイムボムによって動きを鈍くさせられたことで一気に追い込まれてしまったのだ。

「シャーッシャッシャッ!!貴様らにロックマンの器は大きすぎたようだな!さあ、これで終わりだ。そして時の流れによって忘れ去られるがいい!!」

とどめとばかりに繰り出されるクロノフォスの突進だが、真横からのチャージバスターで軌道が逸らされた。

「!?」

「え!?」

何事かとアッシュとグレイがチャージバスターが放たれた方向を見つめるとヴァンがバスターを構えて立っていた。

「ヴァン!?どうして!?」

「いや、アトラスとテティスを探してたらここに辿り着いてな…」

「ロックマン・モデルO…破壊神のロックマン…まさか貴様が現れるとはな…だが、例え破壊神であろうとこの力の前では無意味!!タイムボム!!」 

アッシュとグレイを苦しめたタイムボムが発動し、そしてクロノフォスはヴァンに突進を繰り出す。

「「ヴァン!」」

緩慢な動きでレーザーとバスターを構える二人だが、ヴァンは通常時と全く変わらない様子で腕を動かして片手で突進を受け止めた。

「なっ!?」

「悪い、何をしたかったのか分からない」

ヴァンからすれば妙なモーションをしたかと思えばただの突進であり、そのまま炎を纏ったチャージセイバーが繰り出され、クロノフォスは一刀両断された。

「(ば、馬鹿な…タイムボムが…効かない…?ば、化けも…)」

モデルOの異常なまでの強さに戦慄しながらクロノフォスは爆散し、データはモデルAにコピーされたのであった。 
 

 
後書き
ゲームでは隠しボスのオメガなんだからタイムボム耐性くらいあってもいいかなと、アルバートだってバリア付き時だけとはいえタイムボム耐性あるんだから 

 

第五十二話 墜落現場へ向かうために

 
前書き
漫画版では肉まん推しが凄い 

 
クロノフォスを一撃で倒してしまったヴァンにアッシュとグレイは唖然としてしまう。

「ば、化け物だ…」

自分達が苦戦したタイムボムをものともせずにクロノフォスを倒してしまったヴァンにモデルAは引き気味だ。

「何がだ。あいつは何をしようとしてたんだ?」

「あいつはさっき、敵の動きを遅くする能力を使ったのよ。アタシ達が苦戦したのはそれのせい。」

「ヴァンには効かなかったみたいだけど」

アッシュとグレイも驚きやら呆れやらが混じった複雑な表情を浮かべている。

「そうだったのか…そんなことよりアトラスとテティスに逃げられたか…くそ」

「もし、アタシ達がアトラス達を捕まえたら取り返してあげるわよ。ただし、その時はきっちり報酬は頂くけどね」

「それはガーディアンに請求してくれ。別行動中の俺に言われても困る」

「了解、モデルH達四個で四百万ゼニー…ウハウハよーっ!!」

「四百万ゼニー?」

「レギオンズじゃ、ライブメタルは一個百万ゼニーの賞金をかけてるんだって」

「ガーディアンって組織、アッシュから金を絞り取られるんじゃないか?」

目がゼニーになってはしゃいでいるアッシュを他所にヴァンとグレイとモデルAが会話する。

四百万ゼニーと聞いてガーディアンに支払える額なんだろうかと疑問に思ったヴァンだったが、取り敢えずこのままヘリオス達に奪われたままよりはマシだ。

「それじゃあ、俺は引き続きアトラス達を追う…じゃあな」

「うん、助けてくれてありがとうヴァン」

グレイは助けてくれた先輩ロックマンに礼を言うとヴァンも笑みを浮かべてこのエリアを今度こそ後にした。

「四百万ゼニーあったら、ご馳走に、バカンス…うふふふ…」

「グレイ…アッシュを引き摺って行こうぜ…」

「うん…」

強欲な仲間を引き摺ってグレイは何とかこのエリアを後にしたのであった。

しばらくして正気に帰ったアッシュはグレイと共に先を進んだが、荷物の整理をしていた時に食料が心許なくなってきたことに気付いて渋面を浮かべていたが…。

「仕方ない、墜落現場までまだまだかかるし、一旦ハンターキャンプに戻りましょう」

「え?ここまで来たのに?来た道を戻るくらいならこのまま…」

グレイの言葉にアッシュは笑みを浮かべて隣の装置を指差す。

「大丈夫よ、この装置はワープポイントと言って…これが置いてあるエリアにはトランスサーバーから何時でも行けるのよ。これはエネルギー切れで動かなくなってるみたいだけど、充分なEクリスタルを補充すれば再起動出来るの」

早速Eクリスタルを入れてワープポイントを起動させて極寒エリアに戻ってトランスサーバーに乗り込むとハンターキャンプに転送された。

ローズパークとクロノフォスも賞金首のイレギュラーだったようで、トランスサーバーから賞金が送られてきた。

「うーん、まあまあね…よし、買い物は明日にして今日は休みましょうか…さあて、何を食べようかしら?」

「アッシュ…あれ何?」

「あれ?」

グレイが指差した先には熱々の湯気を発している中華まんであった。

「ああ、あれは中華まんよ」

「中華まん?」

アッシュの答えに疑問符を浮かべるグレイにアッシュは簡単に説明する。

「熱々のふわふわの生地の中に肉やら甘い餡子が入った食べ物よ。因みにあれは肉まんと餡まんね……食べたい?」

「え?あ、いや…そういうわけじゃ…」

「良いの良いの、食べたいって顔に出てるわよ?食材買って作るのも良いけど、たまにはこういう簡単なご飯も良いってね。アタシは肉まんにー餡まんにーピザまんー…あ、カレーまんもある。全種類買おっと!!」

「アッシュー太るぞー?へぶうっ!?」

アッシュの鉄拳が炸裂し、何らかのスクラップ(恐らくメカニロイド)にめり込んだモデルA。

グレイはドン引き、周囲もドン引きである。 

そしてアッシュは紙袋を受け取ってグレイに全種類の中華まんを渡すと早速カレーまんにかぶりついた。

「んー、久しぶりに食べるけど美味しいわ。グレイも食べなさいよ」

「う、うん…」

スクラップにめり込んだモデルAの心配をしつつも肉まんにかぶりつくと目を見開いた。

「…美味しい!」

「でしょー?」

二人は中華まんを全て平らげると満足そうにお腹を擦った。

「御馳走様」

「やっぱり中華まんは美味しいわ。アタシはピザまんが好きだけどグレイは?」

「僕は肉まんかな?」

「男って肉まん好きよねー」

他愛もない話をしながらグレイはふと、あることを思い出した。

「肉まんも美味しいけど、僕はアッシュが作ってくれたスープが一番好きかな?」

「へ?あんな簡単なスープが?」

それはタワーを抜けて極寒のエリアに向かう前の野宿で作ったスープ。

それは安く買った野菜を使ったコンソメスープで、野菜くずで出汁を取ったそれこそ誰にでも作れるような簡単なスープ。

「うん、アッシュからすれば簡単なのかもしれないけど、僕は誰かが作った物を初めて食べたんだ。だから、あれが一番印象に残ってるんだ。また食べたいな」

「……あんなので良かったらいくらでも作ってあげるわよ。さあて、買い物して準備を終えたらぐっすり寝て明日は墜落現場に向かうわよ!だからあんたもゆっくり休んどきなさいよ」

「うん」

そして買い出しを終えた二人はハンターキャンプの部屋を借りて眠りにつくのであった。

墜落現場で違法ハンター達に大きな災難が降りかかることなど露知らずに。

そして一方、極寒エリアでテティスと別れたアトラスは傷ついた体をモデルFの回復機能で癒していた。

アトラスの表情は傷付いているにも関わらずに冷静であった。

約二年間もの特訓で得た力が通用しなかったことにはショックを受けたものの、再び叩きのめされたことで逆に冷静になれたのだ。

「やはりモデルF単体では奴には及ばんか」

アトラスの言葉は間違っていない。

モデルFの力を馬鹿にするわけではないが、破壊神と呼ばれる力は伊達ではなく、モデルF単体の力ではやはり遠く及ばない。

アトラスは知らないが、以前の所有者であったエールも全てのライブメタルの力と人々のエネルギーを使ったオーバードライブを発動したことでようやく勝てたのだ。

モデルFと心を通わせていないアトラスではエールのようにはなれないであろうし、そもそもあれは他のライブメタルと比べて高い拡張性を誇るモデルXの適合者であるエールだからこそ出来た芸当だ。

ライブメタルを道具として扱うアトラス達には不可能であり、アトラスは何とかモデルFの力を高める方法を模索するのであった。

一方のテティスはアトラスと別れた後に何とか極寒のエリアを抜け出し、何もない遺跡付近にまで来ていた。

「あ…これヤバいかも…」

意識が朦朧として倒れかけた時、自分を誰かが支えてくれた。

「完全なる誤算…ここにお前がいるとは…何があったと言うのだ?テティス」

「ヘリオス……」

ヘリオスからしてみれば本当に偶然だった。

シャルナクと別れて新たなモデルVを探していたのだが、てっきり海のあるエリアにいると思っていたテティスがこのような何もない遺跡にいたのは本当に意外だったようだ。

「はは…モデルOのロックマンを見つけてアトラスとリベンジしようと思ったんだけど…まだまだ敵わなかったようでさ…返り討ちにされちゃったんだ」

「…完全なる理解…そうか、お前も私と同様成長したようだが、奴には敵わなかったか…無事で何よりだ」

ヘリオスの表情はアッシュ達に向けていたものとは違い、穏やかでテティスの身を案じる物であった。

思想が正反対のアトラスや感情のブレがある者を見下す傾向があるヘリオスだが、テティスに対しては穏やかな表情と口調を見せる。

テティスは他のロックマンよりも感情のブレが少なく、そして彼の抱く理想にヘリオス自身も感じる物があったからだ。

母なる海を救いたいと言う理想。

初めて敵として相対した時に語ったテティスの純粋な願い、そして海を汚そうとする愚者を葬るためならば手を汚すことも辞さない覚悟にヘリオスは珍しく他者を認めた。

「ありがとう、でも僕は諦めるつもりは全然ないけどね。彼を倒して僕は王となり、自分勝手な人々から海を…この世界を救うために」

「…美しき覚悟…一つ提案がある。テティス…乗ってみる気はないか?」

「提案?」

ヘリオスの提案にテティスは首を傾げるものの頷いた。

少しでも強くなれるのならヘリオスの提案に乗ってみようと考えたのだ。

テティスの手を掴んでヘリオスは自身が保管してあるモデルVの在処に連れて行くのであった。 
 

 
後書き
一応原作よりは強い四天王ロックマン。

ヘリオスの策は二人のオプション攻撃に関係してます。 

 

第五十三話 油田

 
前書き
アトラス戦

中ボスキラー・モデルF登場

ダブコレではプロコンの連射機の存在もあって中ボスキラーに相応しい強さになった。

連射機は偉大 

 
ハンターキャンプを出てトランスサーバーに乗り込み、起動させたワープポイントに転送すると、アッシュとグレイは先に進んだ。

そして極寒エリアと墜落現場の中間エリアに到達したものの、簡単には先に進めないらしい。

《当エリアニテ、墜落事故発生ノタメ、セーフティロック作動中デス。ロックヲ解除スルニハ、三ツノエレメントスイッチヲ停止サセテ下サイ。各エレメントスイッチハ、弱点属性ノ攻撃ヲ当テルト停止出来マス。炎スイッチニハ電気攻撃、電気スイッチニハ氷攻撃、氷スイッチニハ、炎攻撃ガ効くヨウニ設定サレテイマス。》

「…やっぱり簡単にはいかないわね。二手に分かれるわよグレイ」

「分かった」

運良く各属性に対応するフォルスロイドへの変身が出来るために解除は滞りなく終わらせた。

因みにアッシュは二つのスイッチを停止させることになったが、ローズパークへの変身は避けられたので良しとする。

《エレメントスイッチノ停止ヲ確認。セーフティロック解除》

墜落現場は砂漠なので、油田のエリアに到着すると凄まじい暑さに顔を歪めた。

「暑…っ」

「砂漠だからね…ロックマンだからこれくらいの暑さにも耐えられるけど」

「暑いとか寒いとか、オイラはライブメタルだから分からないからお前ら不便だな」

「こんな暑い所はさっさと用事を済ませて帰るに限るわ。往くわよグレイ」

二人が先に進もうとした時、違法ハンターらしい男が倒れているのを発見し、グレイが駆け寄り、アッシュも遅れて駆け寄る。

「おい!大丈夫か!?」

「うっ…うう…助けてくれ…俺達の飛行艇がとんでもない奴に襲われている…奴は飛行艇を破壊して俺の仲間達を皆殺しにする気だ…」

「皆殺しですって!?」

違法ハンターの言葉に驚く中、トーマスからの通信が入る。

『私だ、マスター・トーマスだ。墜落現場に着いたようだな。そのエリア一帯は地下資源の採掘資源になっている。飛行艇が 爆発すれば施設に誘爆し、そのエリア全てが吹き飛んでしまうぞ』

「全て吹き飛ぶって…じょ、冗談じゃない!おい、早く逃げようぜ!」

トーマスの言葉にモデルAはアッシュとグレイに逃げるように呼び掛ける。

「…飛行艇はこの先にあるのよね…?」

「あのなあ!こいつら違法ハンターなんだろ?言ったらお前達の敵だぞ!?他の連中ならともかく、こんな奴らまで助ける気か!?」

「人の命に あんな奴もこんな奴も関係ないわよ!助けるっていったら助けるの!これはアタシの物語なんだ!自分に悔いが残るような生き方なんてしたくない!」

「…あーもう!グレイも止めろよ!」

「僕も行く!アッシュやハンターのみんなは見ず知らずの僕を助けてくれたんだ。だから僕もそうする!人の命を救うのに理由なんていらない!」

「……駄目だ。こいつらこうなっちゃ、もう手がつけられない…仕方ねえな、もう!ついてきゃいいんだろ!行こうぜ!アッシュ!グレイ!」

説得を諦めたモデルAは自棄になったかのように叫んだ。

するとトーマスはアッシュ達の話が纏まったと判断したのか話を再会する。

「飛行艇が破壊されてしまえば修理パーツも回収出来なくなってしまう。ともかく、最悪の事態は避けねばならない。急いでくれ、アッシュ君、グレイ君。」

「「了解!」」

アッシュとグレイは急いで飛行艇へと突き進む。

パイプの道を上手く伝って行き、こちらに襲い掛かるイレギュラーを返り討ちにしながら奥の数本の柱が建っている谷の場所はロックマン・モデルAの状態では越えられないためローズパークに変身(アッシュはローズパークへの変身にかなり抵抗があったが、移動のためにやむを得ず変身)して谷を越える。

更に奥へと進むと大型の蛇型のメカニロイドが出現し、オイルを吐き出したかと思えば火球を発射してきた。

咄嗟にアッシュがレーザーショットを向けてレーザーサイトを出し、ロックをするとホーミングショットを発射する。

ホーミングショットはメカニロイドの頭部に直撃すると仰け反らせる。

「なるほど、あそこが弱点なわけね」

ホーミングショットの利点はレーザーサイトのロックした敵に確実に必中する点。

このような初見のメカニロイドでも攻撃が通用する位置を割り出してもくれるので、かなり便利な攻撃である。

頭部と胴体を振り下ろしてきたところを上手くかわして頭部に向けてグレイがバスターショットを向けてショットを連射する。

後一歩で倒せるくらいにまで追い詰めたが、メカニロイドは体勢を戻す。

しかし、グレイもまたレーザーサイトを出してメカニロイドをロックし、ホーミングショットを発射。

ホーミングショットの直撃を受けたメカニロイドは爆散し、アッシュとグレイはダッシュで違法ハンターの飛行艇に乗り込むと、怪我をした違法ハンターの一人が二人に気付いた。

「ちょっとあんた、大丈夫?しっかりしなさい」

「君達は俺達を助けに来てくれたのか?俺以外にも何人か逃げ遅れた仲間が部屋に閉じ込められているんだ。どうやら電力が足りなくて一部の扉が開かないみたいだ…お願いだ…仲間達を全員、部屋から出してやってくれ」

「分かったわ、任せなさい。電力が足りないってんなら動力部に向かうわよ」

電力の供給が追い付かないのなら動力部を何とかした方がいいと判断したアッシュは動力部に入ると、複数の動力のうち、いくつかが落下の衝撃で停止状態となっていた。

「これは無理矢理にでも電気を送って再稼働させた方が手っ取り早いわ。気が進まないけどローズパークの出番ね」

「二人でやろう、二人でやった方が早い」

二人はローズパークに変身し、威力を最小限にしたチャージ攻撃を動力に当てて強引に再稼働させる。

すると通路から複数の足音が聞こえたので、動力部を出ると先程の男が礼を言ってきた。

「ありがとう!この恩は忘れないよ…この先にも仲間がいるんだ…助けて欲しい…」

「分かった分かった、あんたはさっさと逃げなさい。良いわね」

アッシュとグレイは奥のシャッターを抉じ開けると、次の瞬間に爆音が聞こえたのでそちらに目を向けると、そこではアトラスが穴を見つめながら佇んでいた。

「…違法ハンター共め、こんな所に逃げ道を残してたか。お前達のはモデルVの生け贄となってもらう…一人残らずな」

そしてアトラスが穴に飛び込み、それを見たアッシュとグレイも追うように飛び込んだ。

「待てっ!」

「アトラス、また会ったわね」

二人の声にアトラスは足を止めて振り返る。

「生きていたか、ロックマン・モデルA。まさか違法ハンター共を助けに来たとでもいうのか?お前達の仲間でもないのに」

「僕のように何も知らないまま傷付く人が増えていくのは見過ごせない!」

「何も知らないんじゃない、お前達が知ろうとしていないだけだ。世界の歴史は戦いの歴史…人々は戦いの中にあってここまで進化してこれた。今、世界はこれから決まるロックマンの王によって新たに進化しようとしている。ロックマンもまた戦うための力だ。力無き者に進化はない、何も知らずに死ぬ者は進化についてこれなかった…ただそれだけの事だ。」

「だったらモデルVの餌にしちまえってか!?随分と野蛮な進化だな!」

「自分の力の意味も知らないお前達に、何が分かる!それでも 間違っていると言うのなら、アタシに勝ってみせろ!ロックオン!!」

アトラスはモデルFを取り出してロックマン・モデルFに変身し、背中に取り付けていたナックルバスターを構えた。

「来るわよ!グレイ!」

「これをかわせるか!?」

ナックルバスターから放たれるショット。

レーザーやバスターのショットよりも高威力だが、かわせない速度ではないと二人は動いたが、突然軌道が変わった。

「「!?」」

軌道が変わったショットに不意を突かれた二人は直撃を受け、そこから追撃でショットが放たれる。

「遠距離からの変幻自在の圧倒的な火力で敵を制圧することを得意とする。それがロックマン・モデルFだ。」

「喰らえ!」

グレイがバスターを構えてチャージバスターを発射するが、同じくチャージを終えていたアトラスがメガトンクラッシュを繰り出し、火炎弾でチャージバスターを相殺する。

「吹き飛べ!!」

ダッシュしながらのメガトンクラッシュ。

グレイは咄嗟に壁蹴りでかわすが、それを見たアトラスは壁にメガトンクラッシュを繰り出してまず一発目のパンチでグレイを壁から叩き落とし、そして二発目をグレイに直撃させる。

「うあ…っ!」

まともに受けたグレイは吹き飛んで壁に叩き付けられるが、すぐに起き上がる。

「ほう、立ち上がるか。タフさだけは認めてやろう」

「ヴァンのパンチと比べればこれくらい…!」

「奴と戦ったのか?その程度の実力で良く生き延びられたものだな」

「その台詞、あんたにそのままお返しするわ」

「何!?ぐあっ!!」

死角からのホーミングショットからのリフレクトレーザーの時間差攻撃が直撃し、そのままチャージを行いながらアトラスとの距離を取るアッシュ。

「あんたの相手はアタシよ!かかってきなさい!!」

「やってくれたな!」

再びナックルバスターを構えてショットを放つアトラスだが、アッシュはダッシュで回避する。

「何だと!?」

「予想通り!どうやらモデルFの弾は急な動きに対応出来るわけじゃないようね!ほら、喰らいなさい!!」

「そんなものに!」

アトラスはジャンプでかわしてナックルバスターで殴りかかるが、リフレクトレーザーは壁や天井を反射してアトラスに直撃する。

「どう?流石に反射の軌道は読みにくいでしょ?」

「っ…なるほど、まぐれとは言えロックマンになれたのは伊達ではないと言うことか。お前、名前は?」

「アタシはアッシュ。一流のハンターで、いつか世界中にアタシの伝説を轟かせる!だからあんたみたいなのに世界を滅茶苦茶にされるわけにはいかないのよねー。あんたのライブメタルも回収したいし、さっさと倒されちゃってよね!!」

「アッシュか…覚えておこう。だが、それは出来ない相談だな!」

アトラスがダッシュと壁蹴りを駆使して縦横無尽に動き回り、床に爆弾を設置していく。

それにより、アッシュの行動範囲を狭めようと言うのだろうが、レーザーサイトを出して爆弾をロックするとホーミングショットで一掃する。

グレイが援護しようとするが、頭の中にアッシュの声が響く。

「(ちょっとグレイ、聞こえる?)」

「(アッシュ?)」

同じモデルAのロックマンだからか、声を出さずとも意思疎通が出来るらしくアッシュは今回それを利用させてもらった。

「(あいつはアタシが抑えとくから、あんたはクロノフォスに変身して“アレ”を使いなさい。あれを使えばあいつを一気に畳み掛けられる)」

「(…タイムボム)」

敵の動きを鈍くするクロノフォスの能力。

モデルOのロックマンであるヴァンには実力差からなのか、それとも耐性があったのかは分からず通用しなかったが、自分達二人の動きを鈍くした能力の威力は自分も身を以て知っている。

「(正直、モデルAの火力じゃ押し切れないわ。あいつ、ホーミングショットの弱点に気付いたのかアタシと距離を取りながら撃ってくるし)」

モデルAの火力は全てのロックマンの中でも低めに位置する。

それを手数で補っていたのだが、アトラスはホーミングショットの弱点であるレーザーサイトからの範囲外から攻撃し、リフレクトレーザーを火炎弾で相殺しながらショットを連射してくるためにジリ貧状態になっていた。

「(分かった、アッシュ。気を付けて)」

「(誰に言ってるのよ、アタシは一流のハンターよ。心配ご無用!!)」

グレイとの作戦会議を終了し、グレイはクロノフォスに変身してチャージを開始する。

「これで終わりだ!吹き飛べ!!」

二丁のナックルバスターを構えて溜め動作の後に巨大な火球を二発発射し、それをかわすが壁に着弾した瞬間に無数に分裂してアッシュに迫る。

「こんの…ギガクラッシュ!!」

対するアッシュもモデルAの奥の手を使い、銃身を高速回転させながら交互に存在する銃口から広範囲にショットを乱射するギガクラッシュを繰り出す。

分裂した弾を全て相殺するが、アッシュは特殊攻撃に必要なエネルギーを一気に消費してしまう。

「奥の手を隠していたか。だが、その様子だと連続での使用は出来ないようだな。これで終わりだ」

「………それはどうかしら?」

ダッシュしながらメガトンクラッシュを繰り出そうとするアトラスだが、不敵な笑みを浮かべるアッシュの言葉に疑問を抱く前に徐々に自分の動きが鈍くなっていることに気付いた。

「何…!?体が…」

「アタシに夢中になってグレイのことを無視していたのが仇になったわね」

「っ……!」

グレイの方を緩慢な動きで見遣ると、クロノフォスのタイムボムを発動してアトラスの動きを鈍くしているグレイの姿があった。

そしてグレイはロックマン・モデルAに変身してバスターを構えてレーザーサイトを出した。

「喰らえっ!!」

ホーミングショットとチャージバスターの同時攻撃。

「ぐあっ!?」

「あんたの敗因はアタシ達を舐めすぎていたことよ。チェックメイトってね」

とどめにリフレクトレーザーを発射し、タイムボムの影響が抜けていないアトラスに直撃した。

そしてダメージに耐えきれずに膝を着いた瞬間にタイムボムの効果が切れたのを感じた。 

 

第五十四話 第一の封印

苦戦しながらもアトラスを倒したアッシュとグレイ。

ダメージに膝を着き、肩で息をしながらもアッシュとグレイを鋭く睨むアトラスの姿に彼女のプライドが分かった。

「さあ、ヴァンの仲間から奪ったライブメタルを返してもらうわよ」

「ふん、断る。モデルFを取り返したいならとどめを刺して奪えばいい」

「…………」

それを聞いたアッシュの表情が歪み、それを見たアトラスが鼻で笑う。

「とどめを刺さないのか?甘いな」

「アタシは人殺しじゃないからね。物心ついた頃からハンターのみんなを見てきたから世の中綺麗事じゃ済まないのも知ってる。でも踏み外しちゃいけない人としての一線があることぐらい弁えてるつもりよ」

「……良いだろう、ここは退いてやる。けどね…相手が生きている限り、この運命のゲームは終わらないんだ。アタシを生かしておいた事、いつか後悔させてやるよ。そしてそこのお前」

「っ…!」

アトラスに声をかけられたグレイは目を見開いた。

「お前は言ったな?何も知らないまま傷付く者が増えていくのは見過ごせないと…これからもお前に戦う意志があるなら、いつか自分の正体を知る時が来るだろう。きっとお前は後悔する、何も知らずに死んだ方が良かったとな…!」

それだけ言うとアトラスは転送の光に包まれてこの場を去った。

恐らくは傷付いた体を休める場所に転送したのだろう。

そしてアトラスの立っていた場所にはモデルFのデータが残っており、それはアッシュとグレイに吸い込まれていき、二人の中で何かが外れるような音がした。

次の瞬間、体の内側から一気に溢れ出すような感覚を覚え、アッシュとグレイは苦しみだして膝を着いて、倒れた。

「くぅ…モデルA!?な…に?急に…苦しく…きゃあああああぁぁっ!」

「ぐっ…うああああっ!?何だ…どうしたんだ!?モデルA…!?うあああああぁぁっ!」

体の内側から襲う苦痛に苦しみながらも、二人の脳裏にその原因が映し出される。

《コードAW15からCE70までを解放、レポートデータ展開》

《……おめでとう。私が作ったこのモデルAは戦いの中で他のロックマンと戦っていく事に解放されていくプロテクトを施してある。一つ目のプロテクトを解いた君には、真実を知る権利と力を継ぐ資格がある…私はロストテクノロジーの研究を経て、ついに新たな進化の扉を開く、鍵を作り上げた。ライブメタル・モデルV…これを手にした者は、何者をも支配する力を手にするだろう。だが、人々が私の研究を理解するにはまだまだ時間が必要だ。そして、モデルVを覚醒させるための、生け贄も…私はモデルVを世界のあちこちに隠し、覚醒の時を待つ事にした。私の研究を理解し、力を受け継ぐ者が現れる、その時を…》

レポートの展開が終わるのと同時にアッシュとグレイは苦しみから解放されたことで荒い呼吸を繰り返す。

「はあ…はあ…何なのよ…あれは…」

「ううっ…モデルA…今のは一体…?」

倒れながらも何とか息を整えた二人は変身を一旦解除してモデルAを見上げる。

「今のが三賢人のおっさん達が言ってた、オイラに記録されているデータ…なのか?モデルVと…オイラを作った奴のデータか…」

「モデルA、大丈夫か?」

「とにかく今は逃げ込んだ人達を助けよう」

グレイがモデルAのことを案じるが、この部屋の奥にいる違法ハンター達を助けねばならないことを思い出したアッシュがシャッターを抉じ開ける。

「ひいっ!?また誰か来やがった!こいつはセラミカルチタンで出来たシールドだ!てめえの攻撃なんかにゃビクともしねえぞ!諦めて帰りやがれ!」

「セラミカルチタンねぇ、超レア物の金属じゃない。売ればいくらになるかしら?」

「アッシュ…」

早速セラミカルチタンのシールドの値踏みを開始するアッシュにグレイは呆れ、モデルAは溜め息を吐いた。

「守銭奴アッシュは置いといて……オイラ達の事をいちいち説明するのも面倒臭えな。さっさとご自慢のシールドとやらをぶっ壊そうぜ」

「そうだな…アッシュ、早く壊そう」

「そうね」

モデルAを手に取ってディアバーンに変身してアッシュとグレイは同時に飛び蹴りを繰り出すが、あっさりと弾かれてしまった。

「効かない!?」

様々な障害物を壊してきたディアバーンの飛び蹴りが通用しないことにグレイは驚くも、アッシュはロックマン・モデルAに戻ると、シールドに入った傷を見つめる。

「もっとパワーがないと駄目なようね」

「ディアバーン以上のパワーか……おい、モデルFに変身して、チャージ攻撃をぶち込んでやろうぜ。モデルFのパンチなら壊せるだろ」

「「トランスオン!!」」

アッシュとグレイがモデルFに変身するが、コピー出来たのはアーマーのみでフォルスロイドのように見た目を完全コピー出来るわけではないようだ。

「あら?今までと違ってアーマーしかコピー出来ないの?」

「前にも言ったろ?オイラの力を二人で使ってるからトランスオンが不安定だって…やっぱりアッシュとグレイじゃ、使える攻撃が違うな…でも共通する攻撃はあるし、説明は後でするからチャージ攻撃のパンチをぶちこんじまえ」

モデルAのセミチャージに相当するエネルギーをチャージしてからアッシュとグレイは同時にナックルバスターによるエネルギーを纏ったパンチ、メガトンクラッシュを叩き込むとご自慢のシールドは粉々となり、高笑いしてた違法ハンターのリーダーらしき人物は怯え始めた。

「うわああああ!?い、命だけはお助けをーっ!」

「結局こうなるのか…変身を解除して、誤解を解こうぜ…」

変身を解除して誤解を解くと、取り敢えず違法ハンターのリーダーと話をすることになった。

「いやー、ホント助かった!礼を言うぜ!アッシュの姐さん!グレイの兄貴!」

「姐さんとか兄貴とかどうでもいいからさ」

「えっと…それで列車の修理に飛行艇のパーツを使いたいんだけど…」

溜め息を吐くアッシュと慣れない礼に戸惑うグレイだが、用件を伝えるとリーダーの男は快く頷いてくれた。

「ああ、その話なら任せてくれ。さっき、ハンターキャンプへ仲間を修理へ行かせたとこだ。みんな、アンタ達の強さと勇気に惚れちまったのさ。これからは心を入れ替えて全うなハンターとして協力するぜ!」

「へへっ、何か子分が出来たみたいだな。感謝されるってのも悪い気分じゃない」

「もうじき列車の修理も終わってることだろう。ハンターキャンプに行ってみな、兄貴達の事、レギオンズで何か分かるといいな!姐さん!旅の無事を祈ってるぜ!」

「ありがと、それじゃあここのトランスサーバー使わせてよ。次に会う時はお宝を巡るライバルね」

それだけ言うと飛行艇のトランスサーバーを使ってハンターキャンプに帰還すると、早速モデルAからモデルFの説明を受ける。

「んー、モデルFは遠近に対応した炎属性のオールラウンドタイプのロックマンのようだな…少し遠距離向きか?基本的な能力はほぼ共通なようだけど、フルチャージ攻撃が違うな。アッシュは爆弾、グレイは炎の弾を発射するようだな。アッシュのフルチャージのメガトンクラッシュBは爆弾の射程距離が長いけど攻撃範囲がグレイより狭い上に貫通性能がない。まあ、爆弾だから仕方ないけどな…フルチャージ攻撃にナックルバスターを地面に叩きつけるグランドブレイクBがあるんだけど、アッシュは爆弾を設置してトラップのように扱えるようだな。逆にグレイのフルチャージのメガトンクラッシュWは炎の弾の貫通性能と攻撃範囲は上回るけど、射程距離が短いな。炎を当てたいならある程度距離を詰める必要があるぞ。もう一つの技であるグランドブレイクWは火柱を発生させるようだな。」

つまりモデルFの場合、アッシュは爆弾を発射する都合上、射程距離が長いが貫通性能と僅かに攻撃範囲がグレイに劣り、逆にグレイは貫通性能と僅かに攻撃範囲が勝る代わりに射程距離が短いと言う欠点があるということだろう。

「ところで、アトラスがしたように弾の軌道を変えるなんてこと出来る?」

「ああ、出来るぞ。頭の中で弾の軌道をイメージするんだ。それで大体の軌道変更はしてくれる。」

「他には?アトラスは分裂する弾を発射したり、ダッシュしながら殴ったりしてたじゃないか?」

グレイの問いにモデルAは渋い声を出す。

「うーん、無理っぽいなー。オイラのトランスオンはコピー元の基本データをコピーするだけだから、適合者が独自に編み出したり、発展させた技とかはコピー出来ないんだよ。ディアバーンくらい単純なら出来るかも知れないけどさ…そもそもアッシュ達はモデルFの適合者でもないから完璧にコピー出来ても使いこなせないんじゃないのか?」

「…そうね、取り敢えず戦力が増えたことだし。さっさとステーションに向かいましょうか!!」

「うん」

ステーションに到着すると違法ハンターだった男が二人に気付いて声をかける。

「よお!待ってたぜ!姐さん!兄貴!見てくれよ!列車の修理は完璧だ!いつでも発車出来るぜ!レギオンズ本部へ行くかい?」

「ええ、お願い」

「よっしゃ!さあ、乗ってくれ!」

輸送列車に乗り込み、レギオンズ本部のステーションに到着するまで列車の旅を楽しむことにしたアッシュとグレイであった。 

 

第五十五話 第二の封印

列車での旅を楽しみながらアッシュはグレイと共にレギオンズ本部のステーションに到着し、そのままレギオンズ本部へと向かおうとしたのだが、凄まじい轟音に二人は足を止めた。

「…何!?さっきの音は!」

「凄い音がしたぞ!」

ただ事ではない様子にアッシュとグレイは目を見開く。

「どこかでドンパチやってるな。イレギュラーに先を越されたか?三賢人のおっさんにも通信が繋がらない…こいつはまずそうだぜ」

「レギオンズの本部はこの先だな…!」

「ええ、レギオンズ本部へ急ぐわよ!」

「「ロックオン!!」」

アッシュとグレイはモデルAを掴んでロックマン・モデルAに変身すると襲い掛かってきたイレギュラーを返り討ちにしながら突き進む。

「そこを退きなさいよ!」

レーザーショットを構えてレーザーサイトを出すと敵全員をロックし、ホーミングショットで粉砕する。

そして奥のシャッターを潜り、建物内部に入ると、建物にはイレギュラーが徘徊していた。

「イレギュラーがたくさんいる…!」

「レギオンズの警備隊は何やってんのよ全く…追加料金を毟り取らないと割りに合わないわ」

アッシュはあまりの大量のイレギュラーに辟易するが、グレイは二丁のバスターショットを構えて奥の手を使う。

「ギガクラッシュ!!」

広範囲へのショット乱射で近くにいたイレギュラーは瞬く間に殲滅される。

「でかしたわグレイ!」

「でもこれでしばらくはギガクラッシュは使えない。ホーミングショットは少し時間が経てば使えるようになるけど…」

「これだけ減らせば充分!行くわよ!!」

アッシュが先行してグレイが追い掛ける。

レギオンズ本部へはアッシュも初めて来たが、取り敢えず上を目指して進む。

途中でバイクに乗ったイレギュラーが現れたが、急な方向転換が出来ないようなので相手にせずにかわした。

後ろで爆発が起こったが気にせずに進む。

最上階に着くとシャッターを発見して抉じ開けると、次の建物に繋がる通路に出たので、奥のシャッターに向かうが、固定砲台のメカニロイドが妨害してきた。

「邪魔をするんじゃないわよ!トランスオン!!」

モデルFに変身し、ナックルバスターを構えてショットを連射するとメカニロイドはあっさりと破壊されていく。

「流石、モデルF!爽快なパワーだわ!このままガンガン行くわよ!!」

モデルA以上の火力に気を良くしたアッシュがシャッターを抉じ開けて次の建物に進むと、先程と同じような構造の建物に入る。

襲い掛かるイレギュラーだが、アッシュはナックルバスターを構えてショットを連射し、弾の軌道を変更しながらこの建物内のイレギュラーを殲滅していく。

「ああー…快・感……」

「何て顔してやがるんだ…」

単発火力が低いモデルAでは出来ない戦法にアッシュは恍惚な表情を浮かべており、モデルAは呆れた。

「あんたの火力が低いのに問題があるのよ。」

「んなっ!?それを補って余りあるトランスオンって能力があるだろ!?」

「今のところ役に立つのディアバーンとモデルFしかないじゃない…クロノフォスはタイムボムが強力だけど地上じゃ動けないしローズパークは鈍いし」

「……それはオイラのせいじゃないだろ」

「本物より強くコピーしなさいよ」

「無茶言うなぁ!」

コピー元の短所なのにアッシュの理不尽な言葉に対してモデルAは怒るが、アッシュはどこ吹く風である。

馬の耳に念仏。

「二人共、それよりも急ごう!!」

喧嘩をしている二人に呆れながらグレイは最上階のシャッターを抉じ開けると広い部屋に出た。

「三賢人の会議室…かしら?」

椅子が三つあるところからアッシュはそう予測するが、今は一刻も早く三賢人の元へ向かうために部屋を出ようとした時、一人の男が現れた。

それは深緑のタワーでヘリオスと共にモデルVを回収していたモデルPのロックマンであるシャルナクであった。

「目標捕捉、情報分析開始。計画ニ従イ、コレヨリ戦闘行動ヲ 開始スル。回答ノ入力ヲ」

「うへえ…一番不気味な奴が出てきたよ…」

モデルAがシャルナクの不気味さに引き気味に言うが、シャルナクは引き続き機械的な言葉を返す。

「ソノ入力ハ認メラレナイ。回答ノ入力ヲ」

「グダグダうるさいわね!さっさと道を開けなさい!」

「僕は…自分の正体を知るためにここまで来たんだ!邪魔はさせない!」

アッシュとグレイがレーザーとバスターを構えると二人の言葉と態度にシャルナクもモデルPを構えた。

「回答ノ入力ヲ確認…戦闘ヲ開始スル…!ロックオン…!」

シャルナクはロックマン・モデルPに変身し、腕を一振りするとクナイを数本投擲した。

二人はそれをかわし、シャルナクに攻撃を加えようとするが、シャドウダッシュによってかわされてしまい背後に回られてしまう。

「破壊スル」

腕を振るうと十字手裏剣が複数投擲され、手裏剣は壁を反射してアッシュとグレイの動きを妨害し、その隙に鉤爪を出して部屋の天井付近の足場に移動する。

「この…!逃げるな!」

グレイがレーザーサイトを出してシャルナクをロックしようとするが、シャドウダッシュで距離を取られる。

「そこよっ!」

僅かな気配に気付いたアッシュがレーザーを構えてリフレクトレーザーを発射する。

「曼荼羅手裏剣」

しかし、それをシャルナクは自身の周囲に小型の手裏剣を複数展開して防いでみせた。

「っ!?」

「射出」

そして手裏剣を射出し、広範囲を斬り裂く手裏剣をまともに受けた二人は仰け反る。

「ハッ」

そして追撃のクナイ投擲。

それをかわして反撃に移ろうとしてもシャルナクはシャドウダッシュでレーザーサイトのサーチ範囲外に逃げてしまい、ホーミングショットが使えない。

「こいつ、モデルAの弱点を的確に突いてくるわね!!」

ホーミングショットが使えないのならリフレクトレーザーとチャージバスターを当てるしかないのだが、それも曼荼羅手裏剣で防がれてしまう。

ギガクラッシュは一度使えばチャージ・特殊攻撃に必要なエネルギーが枯渇するために無闇に使えない。

クロノフォスに変身してタイムボムを使うことも考えたが、シャルナクがそんな隙を与えるとは思えない。

「そうだわ、トランスオン!グレイ、あんたもモデルFに変身しなさい!」

「分かった!トランスオン!」

二人はモデルFに変身したことにより、シャルナクの動きが一瞬鈍くなる。

「該当データ無シ、モデルA特有ノ能力ト推定」

「グレイ、あんたが突っ込んで!アタシがサポートするわ!!」

珍しく役回りが反対となるアッシュとグレイ。

グレイはナックルバスターを構えて肉弾戦を仕掛ける。

「機動力、オリジナルノモデルFト同等。回避スル」

メガトンクラッシュのパンチを繰り出すが、シャルナクはシャドウダッシュでかわす。

しかし、移動した先で爆発が起こった。

「っ!?」

「グランドブレイクよ。時間経過で爆発するタイプの爆弾を設置する技…ライバルの技は調べとくべきじゃない?それともアトラスはあんたとの戦いで使わなかったのかしら?」

「ダメージ軽微…戦闘ヲ続行スル…!」

十字手裏剣を再び投擲するが、アッシュはナックルバスターを構えてショットを発射し、弾道を操作しながらシャルナクに当てる。

「グレイ、今よ!!」

「喰らえっ!」

「グハッ!」

ダメージによって硬直したシャルナクにフルチャージのメガトンクラッシュが炸裂し、吹き飛ばす。

火炎弾をまともに受けたシャルナクの全身を炎が包むが、何とかそれを振り払うと紫の分身を複数出してきた。

「捕捉」

分身と本体からクナイが投擲され、二人は攻撃を中断して回避を余儀なくされる。

「どれが本物なんだ!?」

「分からないわ…気配も完全に消えてる…でも…」

「ロックマン・モデルA、破壊スル…!」

とどめとばかりに分身に紛れたシャルナクがアッシュとグレイに十字手裏剣と曼荼羅手裏剣を繰り出して来た。

「本物が分からないなら…全部潰すまでよ!!グレイ、伏せなさい!!ギガクラッシュッ!!」

アッシュはロックマン・モデルAに戻り、二丁のレーザーを構えると銃身を回転させて広範囲にショットを乱射する。

手加減なしのギガクラッシュの破壊力にレギオンズ本部の一部が吹き飛んだ。

爆煙に部屋が包まれるが、煙が晴れると膝を着いたシャルナクが荒い息を吐いていた。

「ダメージ…危険域…!…現状デノ戦闘続行ハ危険…!………撤退スル…!」

次の瞬間にシャルナクが転送の光に包まれ、この場を去る。

そしてシャルナクがいた場所にモデルPのデータが浮かんでおり、二人に吸い込まれていく。

「きゃあああああぁぁっ!」

「うあああああぁぁっ!」

モデルFのデータをコピーした時と同じようにモデルPのデータをコピーした瞬間に苦痛に苦しむアッシュとグレイだが、脳裏に例のレポートデータが展開される。

《コードCE71からFC60までを解放。レポートデータ展開》

《…二つめのプロテクトを解いた君は今、運命の分かれ道に立っている。このデータを読み進めるならばもう後戻りは出来ない、君もこの計画の一部となるのだ。ライブメタルには適合者に力を与え、新たな生命体へと作り変える機能がある。ロックマンへの変身機能…いや、最早これは変身ではない。進化と呼べるほどのものだ。モデルVを作った私は次に進化に相応しい適合者を選び出す事にした。世界中の人々から進化するに相応しい者を見つけ出すのは不可能に近い、だが…私には出来る。何故なら、私は世界の全てを知る者…レギオンズの三賢人の一人なのだから…》

こうしてモデルVとモデルAを作った人物のレポートの一部の展開は終わった。

衝撃の事実と共に。

「モデルVを作ったのは…三賢人の誰か…!?」

「それってつまり、裏でそいつとプロメテ達が繋がってるって事だよな…こうなると三賢人の奴らも信用出来ないぜ。それでも行くのか?グレイ?アッシュ?」

「…行こう、モデルA!アッシュ!僕とモデルAの事を知ってるのは三賢人だけなんだ…!」

「逃げたって何も変わらないものね、三賢人の誰かが黒幕ならそいつを締め上げてやるわ!」

「やれやれ…オイラに記録されてるデータってのはとんでもないもんばっかだな…」

部屋を出ると明かりが点いておらず、真っ暗な状態に二人は足を止めた。

「何だ、この部屋は…暗くてほとんど何も見えないじゃねえか!さっきコピーしたモデルPにトランスオンすれば少しはマシになりそうだ…モデルPにはナイトスコープとレーダースコープって機能があって暗い場所での行動や敵の位置や地形、隠し扉とかの場所が分かるようになるぞ!攻撃は…チャージの性能が違うな。アッシュは敵の攻撃を防ぐバリアの効果を持つ曼荼羅手裏剣、グレイはでかい手裏剣を投げる十字手裏剣だ。どっちもシャルナクみたいな使い方は出来ないから気を付けてくれよ」

二人は早速モデルPに変身してこの部屋を後にするのであった。 

 

第五十六話 “あの男”の正体

アッシュとグレイが三賢人の元へと向かっている時、当の三賢人はレギオンズ本部の最上階にいた。

「ええい、忌々しい…!イレギュラー共め…!」

「奴らが組織的に行動するとは…信じがたい話だな」

ミハイルが苦々しい表情でモニターに映るイレギュラーを見つめ、トーマスは自分が知る限りではこのような統率の取れた動きをするイレギュラーに疑問を抱く。

「イレギュラーを指揮する者がいるのかもしれませんね」

「だが、その者の狙いは何だ!全ての国家を敵にしようというのか!」

「理由ですか…例えば、この世界に愛想が尽きた、とか」

その言葉を呟いた瞬間にアルバートの雰囲気が一変したことにトーマスは察する。

「…何だと?」

次の瞬間にはアルバートの周囲に隠し持っていたモデルV…かつてのセルパンも持っていた欠片が複数出現する。

「新たな支配者…究極のロックマンへと進化するため……そして、一人の科学者として進化の行く着く先を見たいがため…ですかね」

「それは…一体!?まさか貴様…!」

初めて見る物質だが、永い時を生きてきたことにより培った経験と直感がミハイルにアルバートを囲む物質の正体を気付かせた。

「これは提案ですよ、数百年かけて導き出したこの世界への提案です。我ら三賢人は、三人の協議を以て、公平な答えを導き出すためのシステム。否定をするのなら、あなた方二人で止めてみせたらどうです?そう、三賢人として」

次の瞬間に扉は開かれ、グレイとアッシュが部屋に入り、そして視界に入る物体に二人は目を見開く。

「お、おい!あれ、ライブメタルじゃないか!」

同じライブメタルだからか、すぐにアルバートを囲う物の正体に気付く。

「解かれたプロテクトは二つ……どこまでバレてしまったかな?早めに君を処分したかったのだけど…裏目に出てしまったようだね」

「僕らを殺そうとしていたのは…お前だったのか…!」

「…そう怖い顔するなよ、レギオンズへようこそ……失敗作君…そして…アッシュ。出来れば君は真っ先に始末したかったのだが、君はそれさえ容易く乗り越えてしまった。予想以上の成長だ……素晴らしい。アッシュ、私は嬉しいぞ!」

グレイに嘲笑を浮かべた後にアッシュを見遣ると嬉しそうに笑いながら言う。

アッシュはアルバートのまるで実験動物を見るような目に恐怖を感じながらもそれを押し殺してアルバートを睨む。

「何よ…あなたは…アタシの何を知ってるっていうのよ!」

「全てさ、私は君の全てを知っている。そう…我が子のようにね。成長しろ!進化しろ!その力を…私に見せてくれ!」

「そんなにお望みなら…見せてあげるわよ!!」

「マスター・アルバート!!」

二人が同時に駆け出し、レーザーショットとバスターショットを構えてレーザーサイトを出すとアルバートをロックし、ホーミングショットを放つものの、アルバートを囲むモデルVが全て防いでしまう。

余波によってアルバートの背後のガラスが砕け、アルバートの体が浮かぶとそのまま建物の外に出た。

「「っ!」」

「また会えるさ、君は私の影であり…君は私の…」

グレイに意味深な言葉を言うと、アッシュに向けて放たれた言葉は本部の外の爆音によって掻き消されてしまう。

そして、アルバートはそのまま降下していった。

「っ…待ちなさいよ!今なんて言ったのよ!?アタシは一体何なのよーっ!?」

レギオンズ本部にアッシュの叫びが響き渡った。

しばらくしてアッシュとグレイが落ち着いたのを見計らってトーマスが二人から話を聞く。

「…なるほど、君達の話は分かった。我らは機械の体を持ち、数百年の時を生きる事を許されている。アルバートは三賢人となる数百年前に、既にモデルVを作りあげていたのだな。それから…アッシュ君、グレイ君、データベースで君達の事を調べさせてもらったよ」

「それじゃあ…僕の事が分かったの!?」

「アタシの事…?アタシのデータもここに残ってるの!?」

二人の問いにトーマスから返ってきたのは精神的に弱っていた二人にとって残酷な答えであった。

「君達のデータはなかった…君達はこの世界には存在しない者という事になる」

「そ…そんな馬鹿な!嘘だっ!」

「な…何よそれ…だって…だってアタシ達はここに…!」

「落ち着きたまえ、そうだ、君達はここに確かに存在する。となれば、レプリロイドのグレイ君はともかく、ヒューマノイドであるアッシュ君のデータが無いと言うことはアルバートがデータベースからデータを消したと考えるべきだろうな。その理由は分からんが…奴にとって、君が特別な存在である事は確かだ。そしてアルバートはグレイ君を自分の影と言った。君が何者なのかは分からないが、恐らく、君が現れたために計画を早めなければならなかったのだろう。その理由も分からんがね…」

「そんな…ここまで来たのに…あんなに苦労したのに…何も分からないなんて…」

レギオンズ本部に行けば自分のことが分かるかもしれないと思ってここまで来たと言うのに何も得るものがなかったことにグレイは落胆する。

「…アタシが…アルバートにとって特別…?」

アッシュは別に自分のことを知りたくて来たわけではないが、全ての元凶と自分に何らかの関わりがあることに動揺する。

「…………」

そんな二人にモデルAは何も言えずに黙ってしまうが、世界各地の状況を調べていたミハイルが最悪の報せを持ってきた。

「諸君、悪い報せだ。世界の各地にイレギュラーが現れている。アルバートめ、モデルVの生け贄を集めるために、狩りを始めおったのだ」

「くそっ、ここぞとばかりにやりたい放題かよ!行こうぜ、アッシュ!グレイ!」

「う…う、うん…」

モデルAの言葉に頷くアッシュだが、声にいつもの力強さがない。

「さっさと行くぞ!アルバートにオイラ達の事を全部吐き出させてやるんだ!その…人助けは…ついでだけどな!…どうした?ビビってるのか?」

「な、何よそれ!このアタシがそんな事…!」

モデルAの言葉にムッとなったアッシュは勢いよく俯いていた顔を上げるとモデルAを掴んだ。

「そうさ、それがオイラの知ってるアッシュだぜ。アルバートがお前の何を知っていようが、お前自身が変わっちまうわけでもないだろ。大切なのはこれからをどうするのかじゃねぇのか?」

「……!」

「オイラと初めて会った列車で言ってたよな。歴史に名前を残してやるって、過去を捨てて、未来に生きるヒーローなんて、最高の物語じゃねえか!」

「…まさかあんたに励まされるなんてね…アタシ…どうかしてたよ。行こう、モデルA!アタシ達の物語はまだ、終わってないんだ!…で?あんたはどうするのグレイ?」

「え?」

モデルAの励ましで持ち直したアッシュは隣で俯いているグレイを見遣る。

「アタシはこれからアルバートを探してぶちのめすわ。あんたはどうしたいの?アタシと一緒に行く?それともハンターキャンプで待ってる?好きな方を選びなさい。アタシはあんたがどっちを選んでも責めないわ」

「僕は…」

「何ウジウジしてんだよグレイ!…人助けはついでだけどよ…アルバートを倒さないとヤバいんだぜ!?」

動こうとしないグレイにモデルAは苛立ちながら尋ねる。

「…無理だ…僕は自分の事も世界の事も何も知らない…そんな僕が…世界の全てを知ってるアルバートに敵うはずが…」

今までグレイは自分の正体を知るために戦ってきた。

レギオンズ本部に来てもそれが叶わず、アッシュのような信念も強さも持たないグレイは精神的に弱っていた。

「…お前の事ならオイラやアッシュが知ってるぜ。ガキの癖に強がりで、意地っ張りで…何の得にもならねえのにどんな奴でも助けようとするアッシュと同じくらいの大馬鹿のお人好しだ!」

「……!」

「あんた少し言い方を考えなさいよ…少なくてもアタシはあんたのことを良く見てきたつもりよ。自分のことも世界も知らない?別に良いじゃない。知らなくてもあんたがあんたであることに何の偽りもないんだから!」

「見えないとこで苦しんでる奴らは放っとくのか!?大した正義感だな!人の命を救うのに理由はいらないってのはありゃ嘘だったのかよ!」

アッシュとモデルAの言葉にグレイはグッ…と拳を握り締めて顔を上げた。

「そうだ…まだ僕にはやれる事がある……行こう…アッシュ!モデルA!勝てないかもしれない…それでもアルバート達と戦えるのは僕達だけなんだ!」

「そうこなくちゃね!」

「ありがとう、アッシュ君、グレイ君。改めて君達にミッションを頼みたい。アルバートの計画を阻止し、各地の人々を救って欲しい。トランスサーバーに新たな転送先を追しておこう…頼んだぞ」

決意を新たに二人はレギオンズ本部のトランスサーバーを使い、まずは市街地に向かうことにしたのであった。 

 

設定 ZXA序盤~中盤まで

“キャラクター設定”


アッシュ


アドベント編の主人公にしてライブメタル・モデルAのロックマン。

若冠十五歳でありながら凄腕のハンターであり、レーザーを発射する銃であるレーザーショットを愛用している。

性格は明るく勝ち気な女の子であり、ミッションでは豊富な経験による機転のよさと行動力で突破する。

金にがめついが、根はお人好しで初対面のグレイを助けたり、戦力のためと言う打算もあるが、自分のミッションに付き合わせて生活保障をさせようとするなど優しい面を見せる。

イレギュラーの襲撃によって両親を失っており、親の顔を覚えていないことから赤ん坊くらいの時期かもしれない。

自分のことを何も知らない、他人も何も知らないことから自分の名前を世界中に轟かせてやりたいと思っており、世界一のハンターになることを夢見ており、つまり自分の存在の証明が彼女の本質的な願いとも言える。

セルパンを倒してからアウターを旅していたヴァンと出会った時はハンター見習いの十一歳であり、最初はレーザーの反動や幼さ故の非力さもあって動かない的に当てることも出来なかったが、ヴァンの言葉を聞いて即座に改善しようとするなど才能が光った。

正式なハンターとなってからは単独行動が多いながらも数多くのミッションをこなして連合政府・レギオンズにも噂話で名前を聞くほどのハンターとなる。

十五歳となって違法ハンターによって遺跡から掘り起こされたモデルAを回収し、レギオンズ本部に運ぶミッションに参加してイレギュラーをあっさりと倒すなど高い実力を身に付けた。

しかし流石にロックマンであるプロメテには敵わずにやられそうになるが、イレギュラー狩りのために訪れていたヴァンに再会し、助けられて違法ハンターの小型艇を奪って近くのハンターキャンプに逃走する。

ロックマンの実力に怖じ気づいて身を引いた同期に不貞腐れながらも海岸で倒れていたグレイを救助して医務室に運んだのが、グレイとの初対面。

医務室で目を覚ましたグレイにいきなりバスターを向けられたりしたが、事情を説明してグレイの事情を聞くとそれを許すなどの度量を見せる。

その後のレギオンズ本部へ向かう途中にプロメテとパンドラの襲撃を受けて重傷を負うものの、モデルAに助けられ、ロックマン・モデルAとなり、イレギュラーを指揮していたディアバーンをグレイと共に撃破する。

その後はレギオンズ本部にグレイとモデルAを送り届けるために飛行艇のパーツを入手するための旅に出るが、四天王モデルのロックマンであるヘリオス達と邂逅し、ヴァンと再会。

出会ったロックマン達からロックマン同士による運命のゲームのことを知るが、この時点ではあまり関心はなかったが、油田でのアトラスの件とレギオンズ本部での出来事をきっかけに自分の正体とアルバートを締め上げるために運命のゲームに本格的に参戦する。


武装


レーザーショット


アッシュの愛用の銃。

単発の威力と弾速はバスターを上回るが、連射性能は劣る。

幼い頃から使っているが、幼い頃はショットの反動故にまともに的に当てられなかった。


モデルA


“変異”の力を秘めるライブメタル。

とある遺跡で違法ハンターに発掘され、飛行艇で運ばれている所をアッシュに回収された。

その後はアッシュとグレイによってレギオンズ本部に運ばれるところをプロメテとパンドラの襲撃を受け、自分の声が聞こえるらしい二人に変身を持ち掛けた。

偶然にもアッシュとグレイはモデルAの適合者なので、同じライブメタルのロックマンが同時変身すると言う前代未聞の事態を引き起こした。

モデルX達と違って幼い性格をしており、どこか幼さ故の自己中心的な面もあるが、何だかんだ言いながらアッシュとグレイを見捨てないので充分お人好しの部類。

特殊能力として敵をロックし追尾するホーミングショット、エネルギーを全て消費して画面全体の敵へ攻撃する必殺技のギガクラッシュがある。

二丁の銃は同じ物なので、どちらからもレーザーとバスターが放てる。

アッシュとグレイは両利きではないので、基本的に利き腕は通常攻撃、もう利き腕ではない方はホーミングショット用に使い分けている。

ロックマンへの変身時の特殊能力である“トランスオン”は倒したボスの姿、能力をコピーするという驚異的なものである。

この機能により一部の相手を除いたロックマンや戦ったフォルスロイドの能力を使用することが出来る。

一度戦えば、たった一つのライブメタルで複数のロックマンへの変身が出来るためにモデルXのダブルロックオンの上位互換能力。

しかし、オリジナルの能力を全てコピー出来ず、あくまで基本的な能力のコピーであるためにオリジナルが独自に編み出したか、発展させた技はコピー出来ない上にモデルXとのダブルロックオンのロックマンが使えるオーバードライブが使えないと言う欠点もあるが、それでも充分強力な能力である。

因みに二人で一つの力を使ってる影響か、フォルスロイドは声がアッシュとグレイのまま、他ロックマンはアーマーのみの変身になっている。


グレイ


アドベント編の主人公、アッシュのヒロイン(!?)。

謎の研究所で眠っていたレプリロイドの少年だが、違法ハンターの飛行艇が積んでいたコンテナが落下したことで完成前に稼働してしまい、パンドラや他のロックマン曰く失敗作。

パンドラに殺されかけたことで警戒心が強いが、性格は困った人物を放っておけない優しく勇気のある少年。

記憶喪失であり、自分のことが全く分からない状態に不安を抱き、レギオンズ本部での出来事で完全に意気消沈するものの、アッシュとモデルAの励ましで再起する。

自分の正体を知るためとアルバートを止めるために運命のゲームに本格参戦する。


武装


バスターショット


違法ハンターの武器コンテナに入っていた武器。

扱いやすく癖がない武器なので愛用するハンターやガーディアンのような者達は多い。

攻撃力は低いが連射性能が高い。


ロックマン・モデルA(アッシュ)


アッシュがモデルAでロックマンに変身すると、基本的にグレイと見た目は共通するが、ヘルメット部分に彼女のトレードマークであるポニーテールがある。


武装


レーザーショット×2


ロックマン・モデルA時のアッシュの武器は二丁のレーザーショットであり、アッシュの物をロックマン時に最適化した物。

ノーマルショットは通常時と同性能。

モデルAの力でチャージが可能となり、セミチャージでチャージレーザー、フルチャージで壁や床(地面)に反射するリフレクトレーザーとなり、攻撃範囲と威力がグレイのチャージバスターと比べて狭く、低い。

ホーミングショットはグレイと比べてレーザーサイトの縦の範囲が狭い代わりに横の範囲が僅かに長く、ロックした逆の順に電撃を思わせる連鎖するレーザーを発射するコネクションレーザー。


ロックマン・モデルA(グレイ)


グレイがロックマン・モデルAに変身すると、コネクタ部分が特徴として残る。

他はアッシュとほとんど共通。


武装


バスターショット×2


グレイが使っていたバスターショットをロックマン・モデルA用に最適化した物。

ノーマルショットは通常時と同性能。

セミチャージでセミチャージバスター、フルチャージでチャージバスターとなる。

アッシュのリフレクトレーザーと比べて反射能力はないが、単純な威力と攻撃範囲が若干広く、強い。

ホーミングショットはレーザーサイトの縦の範囲が広く、横の範囲が僅かに短く、ロックした敵に複数のレーザーを発射するディフュージョンレーザー。

総合すると、グレイは速度が劣る代わりに扱いやすい武装、アッシュは速度が勝る代わりに癖が強い武装となっている。


ヴァン


ZX編の主人公であり、ライブメタル・モデルOのロックマン。

セルパンを倒してから旅をしており、モデルVを破壊し、イレギュラーを狩りながらガーディアンが奪われたモデルH達を探している。

飛行艇のイレギュラーを狩っている最中にプロメテにやられそうになっていたアッシュを助ける。

極寒のエリアでグレイと邂逅し、グレイは敵のロックマンとばかり会ってきたので敵と勘違いして襲ってきたので素手で返り討ちにするが、アッシュの割り込みで戦闘は中断された。

その後は二人と別れたが、アトラスとテティスの襲撃を受けたが返り討ちにしたものの逃げられる。

途中でクロノフォスと戦闘になるが、タイムボムに耐性があったので一撃で撃破した。

強さは間違いなく最強クラスのロックマンであり、アッシュとグレイの味方である。

二人にとっては頼りになる先輩ポジションにしたい。


四天王ロックマン


ヘリオス、アトラス、テティス、シャルナク。

ライブメタル・モデルH、モデルF、モデルL、モデルPの適合者であり、ガーディアンの研究所から盗まれた彼らを使っている。

四人揃って歪んだ思想をしているために、モデルH達の協力は得られておらず、反抗的なモデルH達の意識を封じ込めてその力を使っている。

入手して間もない時にヴァンに挑んで返り討ちにされた過去があり、打倒のためにしばらくは特訓していたらしい。


エール


ZX編の主人公であり、ライブメタル・モデルXのロックマン。

アドベント編から二年前にモデルH達を盗まれ、オーバードライブが使えなくなったりと大きく弱体化はしたものの、ロックマンでは上位に位置する。


プロメテ&パンドラ


アドベント編でも色々暗躍している。

ヴァンにヘリオス達を差し向けたりしてヘリオス達のレベルアップを促したり、二人目のイレギュラーロックマンであるアッシュの登場に喜んだりと現時点では不明な点が多い。 

 

第五十七話 ハイウェイ

 
前書き
モデルLさえ取っておけば何気に楽な所がある 

 
アルバートを止めるためにアッシュとグレイはまず、被害が最も酷いハイウェイに向かった。

予想していた通り、かなりの数のイレギュラーがおり、人々を襲っていた。

『その先のハイウェイでイレギュラーに追われる人々がパニックになっておる。車で逃げ出した連中が渋滞を起こし、逃げるに逃げられん状態じゃ。イレギュラーを撃退して、何とか彼らが避難する時間を稼いでくれ』

「簡単に言ってくれるわね」

「それでもやるしかないよアッシュ。行こう!」

ミハイルからの指示にアッシュは溜め息を吐いたが、グレイは表情を引き締めて駆け出した。

「やれやれ、さっきまでの落ち込みはどこ行ったのかしら?」

アッシュも苦笑しながら駆け出し、それぞれがレーザーショットとバスターショットを構えながらイレギュラーを破壊しながら先に進む。

イレギュラーの攻撃によって道が陥没しており、それに落ちないように気を付けなくてはならない。

「全く、やりたい放題ね!少しは手加減しなさいよ!」

特に浮遊しているタイプのメカニロイドは地味に耐久力が高く、火力が低いモデルAでは倒しきれないことが多いが、敵はそれだけではないので複数の敵を攻撃出来るモデルAを維持するしかなかった。

奥のシャッターを抉じ開けると、ミハイルが言っていた車が渋滞している場所に出た。

上空にはイレギュラーが操縦する四年前の輸送機を改良した爆撃機が空爆を仕掛けていた。

「ひいっ!?は、早く進んでくれよ!このままじゃ狙い撃ちだ!」

「イレギュラーはアタシ達に任せて!攻撃が止んだら、車を移動させるのよ!」

「だ、誰だか知らないけど助かるぜ!後ろにもまだ車が止まってるんだ!頼んだぜ!」

「任せなさい!グレイ、イレギュラーはアタシに任せてあんたは攻撃からみんなを守るのよ!」

「分かった!アッシュ、気を付けて!」

爆撃機の流れ弾はアッシュよりも攻撃範囲の広いグレイに任せてアッシュはモデルFに変身する。

「トランスオン!さあ、掛かってきなさい!スクラップにしてジャンク屋に売り払ってやるわ!!」

両腕にナックルバスターを構えてショットを連射し、爆撃機にダメージを蓄積させ、グレイはバスターを構えてレーザーサイトを出し、流れ弾をホーミングショットで処理する。

「アッシュ!撃て撃て!撃ちまくれ!!後少しで倒せるぞ!」

「分かってるわよ!これで終わりよ!!」

とどめの一撃とばかりにナックルバスターの銃口から発射された爆弾は爆撃機に直撃し、ダメージによって飛行を維持出来なくなり、墜落した。

「よし、これで片付いたわ」

「どうやら連中、逃げられたみたいだな」

モデルAの言う通り、あれだけ渋滞を起こしていた車が一台もない。

「先へ進もう、追ってくるイレギュラーを食い止めるんだ」

いくらここのイレギュラーを倒したからといって、向こうからやってこないとは限らないので、二人は奥のシャッターを潜り、奥へと進んでいく。

初めは最初の時と同じようにイレギュラーを倒しながら進んでいたが、途中で大型ビットを複数展開している大型メカニロイドが現れる。

「トランスオン!」

グレイもモデルFへ変身し、ナックルバスターを構えると、メカニロイドがハイウェイを破壊しながらこちらに突撃してくる。

「それっ!!」

アッシュがナックルバスターでのパンチを叩き込み、ビットをメカニロイドに叩き付けると動きを止めたところをグレイがショットを連射して攻撃していく。

ハイウェイが破壊されていくが、二人は後退しながら攻撃していくとメカニロイドは蓄積していくダメージに耐えきれずに爆散した。

「よし、片付いたわ。先へ進むわよ」

「分かった」

「落ちるなよ?オイラが引っ張り上げても良いけど凄く疲れるんだからな」

モデルAに言われたようにメカニロイドに破壊されたハイウェイから落ちないようにジャンプを繰り返して奥に進み、奥のシャッターを抉じ開けて更に奥へと向かうと、そこには先客がいた。

「…テティス!この騒ぎはあんたが仕組んでたのね!」

アッシュがこの騒動を引き起こした原因であるレプリロイドの少年、テティスを睨む。

「嬉しいね、僕の名前、覚えてくれたんだ。ロックオン!!おいでよ、君達に見せたい物があるんだ。」

ロックマン・モデルLへと変身し、テティスは手招きすると水の中に飛び込み、アッシュとグレイも飛び込んだ。

すると海の底にモデルVが浮かんでいた。

「…モデルV!?ハイウェイを襲ったのもこいつの生け贄のためか!」

「正解、だけど見せたいのはもっと下…この汚い海の底さ。昔、戦争があった頃の海は生き物がいられるような場所じゃなかった。戦争が終わって、一度は綺麗になった海も、人々が増えたらまたこの始末さ。分かるかい?結局人々はこの世界を汚さないと生きていけないんだ」

周囲を見渡すと、確かにハイウェイの道の残骸や廃棄物が山積みの状態となっている。

確かにここまで汚れているとテティスの言い分は正しく聞こえるかもしれないが。

「だからって、何も知らない人の命を奪うのか!人同士で殺し合うのか!」

グレイの言葉にテティスは一瞬、不思議そうな顔を浮かべたが、次の瞬間には笑みを浮かべた。

「人同士?僕らは普通の人々じゃない、ロックマンに進化したんだ。そして…僕は君達を倒して更に進化する…。ロックマンの王になって、自分勝手な人々からこの世界を救うんだ!」

テティスの言葉に今まで黙っていたアッシュが口を開いた。

「へえ…偉そうな事言っても、やってる事はイレギュラーと同じじゃない」

「僕がイレギュラー?ハハッ、面白いね、君は。けどね、ロックマンの王を決める、この運命のゲームは元々僕らだけでやるつもりだったんだ。偶然変身した君は予定外のロックマン…イレギュラーは君の方なのさ。予定外なのはモデルOのロックマンも同じだけど、彼自身は選ばれていたからね…君はある意味彼以上のイレギュラーだよ。流石に強さは及ばないだろうけど」

アッシュの言葉を笑いながら言い返すと、テティスはハルバードを出現させると頭部の推進器を噴かして一気にアッシュ達との距離を詰める。

「「速い!?」」

「遅いよ!!」

驚いた二人にテティスはハルバードで一閃する。

「キャッ!?」

「うわっ!?」

ダメージを受けた二人はよろける。

それを見たテティスはハルバードの先端に巨大で鋭利な氷の刃を作り出して二人に向けて発射する。

「バミューダトライアングル!!」

放たれた刃を二人はジャンプしてかわすが、テティスからすればあまりにも遅い。

ウォーターダッシュで距離を詰められてハルバードでの攻撃を受けることになる。

「くそっ!何であいつは水の中の影響を受けないんだ!?」

「モデルLは水中戦に特化したロックマンだからね、速いのは当然でしょ?さあ、おまけだよ!」

グレイの言葉に呆れながら言うテティスは自分の前に氷塊を出してハルバードで叩き割り、複数の氷の破片を放つ。

「調子に乗るんじゃないわよ!」

何とか破片を掻い潜ってチャージを終えたレーザーを向けるとリフレクトレーザーを発射する。

「おっと!やるね、流石二人目のイレギュラーロックマン。ハンターだけあって戦い慣れてるようだね」

「あんたに褒められても全然嬉しくないわ」

「酷いなぁ、今度はこれだ!出てこい!!」

氷龍を二匹召喚し、アッシュとグレイに向かわせる。

「「トランスオン!!」」

アッシュはディアバーン、グレイはクロノフォスに変身し、二人は氷龍をかわしながらそれぞれの攻撃で氷龍を破壊する。

「炎属性のフォルスロイドと氷属性のフォルスロイドね…そんな奴らに変身出来るなんてずるいなぁ。ずるいのはいけないよ?」

「あんたに言われたくないわ!!」

テティスに向けて炎の矢を発射すると、テティスは矢をかわしてアッシュに斬り掛かるものの、ディアバーンは水中でも素早く動けるので今度はかわした。

「え!?」

「喰らいなさいーーーっ!!」

飛び蹴りを繰り出し、背中に飛び蹴りが直撃したテティスは吹き飛び、グレイが追撃で氷弾を連射して当てる。

「痛たたたたっ!?やってくれるね!アイススティッカー!!」

「させないわよ!」

炎の矢を連射して氷塊を破壊してテティスに直撃させると弱点の炎属性を受けたテティスの全身が炎に包まれる。

「うわ…っ!」

「喰らえ!!」

その隙にグレイが氷弾を発射してダメージを与えていく。

「流石に二人を同時に相手にするのは欲張り過ぎたかな…でも、僕にも取って置きの秘策があるんだよね」

「「取って置き?」」

「そういうこと、出てこい!僕のサポートマシン!メイルストロム!!」

モデルVが妖しい光を放った瞬間に磯巾着のようなメカニロイドが複数設置される。

「メカニロイドが!?」

「何でいきなり!?」

「驚くことじゃないよ、モデルVのイレギュラー生成能力を利用しているだけさ。いやあ、流石ヘリオス。まさかモデルVにこんな使い方があるなんて頭が良いよね。それ!!」

メカニロイドが竜巻を発生させ、氷塊を発射する。

テティスのサポートマシンと言うだけあって、テティスは竜巻を物ともせずに移動する。

「この…っ、汚いぞお前!」

「二対一の時点で汚いも何もないでしょ。」

モデルAの言葉に呆れたような表情を浮かべながら氷龍を召喚するテティス。

「動きにくいわね…なら、全てぶっ壊すわ!ギガクラッシュ!!」

広範囲攻撃のギガクラッシュでメカニロイドを破壊していくが、爆発によって泥が巻き起こり、視界が最悪の状況になる。

「良いのかい?わざわざ攻撃しやすいようにしてくれて!」

「それくらい予想してたわよ!トランスオン!」

ハルバードでアッシュを両断しようとしたが、アッシュはモデルPに変身するとクナイを投擲した。

完全に不意を突かれたテティスはクナイを数本受けてしまう。

「モデルP…!そうか、モデルPの能力なら視界なんて関係ないか…!」

「そうよ、そしてアタシばかりに目を向けていて良いの?」

「何だって?」

「タイムボム!!」

グレイがクロノフォスのタイムボムを発動し、アッシュと自分以外の動きを遅くする。

「なっ!?体が…」

「これで終わりよテティス!!」

「とどめだ!!」

ロックマン・モデルAに戻り、アッシュはレーザーを構えてレーザーサイトを出してテティスをロックし、ホーミングショットとリフレクトレーザーを当て、グレイもまたロックマン・モデルAに戻ると、バスターを構えてギガクラッシュを炸裂させた。

「うわああああっ!!」

二つのレーザーとギガクラッシュのショットをまともに受けたテティスは変身は解除されなかったものの、戦闘続行が不可能な状態となるのであった。 

 

第五十八話 第三の封印

 
前書き
四天王モデルが優秀だからどうしてもロックマンの優先度が高い 

 
膝を着いているテティスにレーザーショットを向けながらアッシュは口を開いた。

「終わりよテティス、あんたのライブメタルを渡しなさい」

「…嫌だね…モデルLは僕の適合ライブメタル…つまり僕の物だ……はっきり言って残念だよ。君達なら僕の言う事を分かってもらえると思ったのに…僕は諦めないよ。モデルVを覚醒させて、この世界を変えてみせる!」

それだけを言い残してテティスは転送の光に包まれて、モデルVと共にハイウェイから去っていったのであった。

テティスを倒したことでモデルLのデータが残り、そのデータはアッシュとグレイに吸い込まれていく。

「きゃあああああぁぁっ!」

「うあああああぁぁっ!」

モデルLのデータをコピーした直後に二人を苦痛が襲い、何時ものようにモデルAに封印されたアルバートのレポートデータが脳裏に展開された。

《コードFC61からUC79までを解放、レポートデータ展開。》

《ライブメタル・モデルVに相応しい適合者を探し出すため、私はまず、二人の兄妹レプリロイドを作り上げた。彼らにはモデルVの力の一部を与えると同時に一つの命令を与えた。それは…最強のロックマンを決める事、私が選び出した適合者達にライブメタルを与え、最後の一人となるまで戦い合わせる…という命令である。この戦いに生き残った者がモデルVの力を手にし、究極の進化を遂げる。そう、新たな世界の王…ロックマンの王となるのだ。》

レポートの展開が終わるとアッシュとグレイは大分この苦痛に慣れてきたらしく、息を荒くしながらもすぐに落ち着いた。

「これでまた一つプロテクトが解けたか…ロックマンが戦い合う理由は分かったけどよ、オイラの事はいつ出てくるんだよ。それに…兄妹のレプリロイドってのは一体何の事なんだ?」

「「………」」

モデルAの疑問にアッシュとグレイは何も答えずに俯いたままだ。

「おい、聞いてるか?どうしたんだ難しい顔して」

「「え?いや(ううん)、何でもないよ…」」

何でもないと言ったが、二人の表情は優れない。

そしてハイウェイにいた人々の状況を確認していたミハイルから通信が入った。

『どうやらこのエリアの人々の避難が終わったようじゃ、流石は選ばれし者と言ったところかの。ご苦労じゃったな』

そして、ミハイルの言葉にアッシュとグレイは自分のことに疑問を抱く。

「(…選ばれし者…?けど…テティスの言う通り、アタシは偶然変身しただけ、でも…本当に偶然?アルバートにとってアタシは特別だって言うし…アタシは一体…何者なんだろう…)」

「(テティス達は、世界を変えるために、ロックマンとして戦う理由を持っていた。僕は自分の事を知るために…自分のために戦っている。でも、それでいいんだろうか…ロックマン…選ばれし者だけが使える強大な力…か)」

それぞれが自分の存在、自分の在り方を悩み、それに気付いたモデルAがそれを逸らすように口を開いた。

「あー…そう言えばコピーしたモデルLなんだけどよ。知ってると思うけど水中戦に特化したロックマンなんだ。水中では他のロックマンより動けるし、図体がでかくなるクロノフォスより動きやすくなると思うぜ。氷属性のロックマンだから氷の床でも滑らないし、凍らなくなる。氷属性の攻撃を喰らって動きを止められて集中攻撃ってこともなくなる。後はハルバードで接近戦が出来るぜ、ハルバードは単発の威力が高い上にリーチがあるから充分使えるはずだ。後はチャージ攻撃、アッシュはでかい氷の塊を出してそのままぶつけるか、ハルバードで壊して破片をぶつけるアイススティッカー。グレイは追尾性能を持った高い威力の氷龍を召喚してぶつけるフリージングドラゴン。アイススティッカーは攻撃力がフリージングドラゴンに劣る反面、攻撃範囲と速度が速いのが特徴で、フリージングドラゴンは攻撃力が高い反面、遅いから素早い相手には当たらねえかもしれねえから気を付けろ…あー、後はテティスが使っていたアイススティッカーとは違う氷の刃を飛ばす奴はテティスが独自に編み出したのか発展させた物だからなのか使えねえ、それからあのメカニロイドを出す奴もモデルVの力を利用していたようだからそれも使えないぞ」

「……そう、分かったわ。」

「…ありがとうモデルA」

モデルAの説明にアッシュとグレイは頷いたものの、何時もの覇気がない。

「…アッシュ、お前が何者なのかはオイラが良く知ってるぜ、アッシュは金にがめつくて口うるさくて、ちょっとしたことで暴力振るう鬼女だ。」

「………モデルA…あんた、アタシに喧嘩売ってんの?なら、三倍で買うけど?」

モデルAの言葉にアッシュはこめかみに青筋を浮かべてこぶしを震わせながらモデルAに言うと、モデルAの言葉はまだ続いた。

「話は最後まで聞けよ、それでも何だかんだで困った奴は見過ごせなくて大金が手に入る依頼でも違法性のあるものは受けない良いところもある。自分が何者なのかなんて、自分のことを知っていて欲しい奴にさえ知ってもらえればそれでいいんじゃないか?」

「モデルA………あんたが初めて良い奴に見えたわ。ちょっと前まで我が儘な奴だったのにねぇ…」

初めて会った時と比べてモデルAは本当に変わったと思うアッシュである。

心を持つライブメタルも人と同じように成長、変化すると言うことなのだろうか。

「う、うるせえな!放っとけよ!それからグレイもさ、別に理由なんてどうでもいいと思うぜ。グレイだって戦うには充分な理由があるだろ、自分のためもあるだろうし、何より困ってる奴を助けるために…戦うには充分な理由だと思うけどな」

「モデルA…ありがとう、そうだね…今はイレギュラーを止めることを優先しなくちゃいけない。悩んでる暇なんかないんだ…行こうアッシュ」

「ええ、さっさとイレギュラーを鎮めて、アルバートをとっちめるわよ!!」

話が纏まったところでミハイルから通信が入った。

『話は纏まったようじゃな、このハイウェイから然程離れていない古代遺跡からイレギュラーが更に数を増やして大量発生しておる。今からそちらに向かってもらえんか?』

「分かった、今から行くよ」

「全く、世界規模でのゴミ掃除なんて、あんたらお偉いさん達はアタシ達を過労死させたいわけ?報酬は弾むんでしょうね?」

『分かった、分かった。全てが片付いたら千万ゼニーを報酬としてくれてやるわい。だから頼んだぞ正義のロックマン達』

「千万ゼニー…!?これは頑張るしかないわねー、正義のためにってね」

「アッシュ、顔面崩壊してるぞ」

報酬の金額を聞いて鼻息を荒くし、端正な顔立ちが崩壊しているアッシュにモデルAがツッコんだ。

そして水の中から飛び出し、奥のトランスサーバーでミハイルが既にレギオンズ本部から設定してくれていたのか、二人はトランスサーバーに乗り込むと、すぐに古代遺跡へと転送された。

一方、ある空域ではガーディアンベースと呼ばれる飛行艇がアッシュとグレイの拠点であるハンターキャンプ付近を飛んでいた。

「プレリー、本当にこの辺りにモデルVの反応があるの?」

「ええ、間違いないわエール」

プレリーが振り返ると、そこには成長し、心身共に大きく成長したエールがいた。

「ハンターキャンプかあ、余所者のアタシ達はあまり歓迎されないかな?最近は違法ハンターが増えたせいでハンターライセンスがないと施設が使えないらしいし」

「物資の補給を済ませたかったが、無理かもしれないな」

「うーん、久しぶりに買い物したかったけど無理かあ…ねえ、ジルウェ、何とか交渉出来ないかしら?」

「うーむ、やってはみるけど無理かもしれないぞ?」

エールの問いにジルウェは渋い表情で言う。

それを聞いたエールは深く溜め息を吐きながら、最近連絡頻度が落ちている幼なじみを思い浮かべた。

「ヴァンは今、どうしてるかな?」

「きっと元気にしているわ。」

ヴァンからの連絡や帰りを毎日待っているプレリーに対してエールはむすっとなった。

「プレリーはヴァンを甘やかし過ぎじゃない?もう少し連絡よこせとか言ったら?」

「大丈夫、私はヴァンを信じてるから…あの人は必ず帰ってくるって信じてる」

「う~、そう言われたら何も言えないじゃない…」

大人の余裕を見せられたような形となったエールは近付いているハンターキャンプにあるらしいモデルVのことを考えて拳を握り締めるのであった。 

 

第五十九話 浮遊遺跡

 
前書き
浮遊遺跡のハイボルトのテクノロジーを使ったメカニロイドに殺意が湧く、ダメージならまだ我慢出来るが行動制限はないだろう…。 

 
ハイウェイから古代遺跡へと転送されたアッシュとグレイは前に進もうとしたのだが、突然地面が大きく揺れ動いた。

「な、何だ!」

「わわっ!地面が…!?」

あまりの酷い揺れにアッシュとグレイは立っていられなくなり、膝を着いてしまう。

「うわあああっ!」

「きゃあああっ!?」

二人の悲鳴が響き渡り、地面に亀裂が入って浮かび出していく。

揺れが終わった時には、周囲の地面は浮かび上がっており、アッシュとグレイは慣れない感覚に戸惑いながらも立ち上がった。

「ふう…やっと止まったようね…」

「何が…起きたんだ!?」

「地面があちこちに浮いてる…どうなってんだ?」

あまりにも非現実的な光景にモデルAは呟き、アッシュもグレイも周囲を見渡すと、トーマスからの通信が入った。

『大丈夫か。今、そのエリア全体に重力の異常が起きている。それと同時に強大なエネルギー反応も発見した。恐らく、それがこの重力異常の原因だろう。エネルギー反応はこの先にある。調べてくれ』

「「了解」」

「こういう場所じゃモデルLの出番だな、モデルLにはサーチ能力があってモデルPよりも広範囲に地形の把握が出来るぜ…その代わり隠し通路とか敵の位置とか分からないけどな」

「なら早速使うわよ!トランスオン!グレイ、ついてきて!」

モデルLに変身したアッシュはグレイにサポートを頼みながら進む。

向かってくるイレギュラーをハルバードで両断し、巨大な茸を思わせるメカニロイドには至近距離からのアイススティッカーを繰り出した。

「アイススティッカー!それっ!!」

巨大な氷塊をハルバードで砕いて破片を飛ばす。

破片一発の威力は低いが全弾当たれば相当な威力となってメカニロイドを破壊した。

途中でグレイがバスターショットを構えてこちらに向かってくるイレギュラーにホーミングショットで迎撃するが、一体だけ破壊出来ないメカニロイドがいた。

緑色の砲台を思わせるような形状をしており、センサーの範囲内に入ったら移動を阻害する弾を発射する。

破壊しようとしても特別な合金の装甲なのか、攻撃を当ててもビクともしない。

「攻撃が全然効かないわ…こいつを倒すのは諦めましょ」

破壊は諦めて弾にだけ当たらないように気を付けてアッシュとグレイはシャッターを抉じ開けて奥へと進む。

次に出た場所は突風が吹き荒れる場所であり、足場がかなり限定された場所である。

何とか追い風を利用して足場を飛び写ろうとするが、隠れていたイレギュラーが姿を現すことがあるために、アッシュはハルバードを振るえるように構える。

こんな時、接近戦用の武器があるモデルLは非常に助かった。

そして竜巻やリフトを上手く利用し(最初は上手く竜巻を利用出来ずに落下して落花死しそうになったのは秘密だ)、何とか奥のシャッターのある方まで辿り着く。

シャッターを抉じ開けて奥のエリアに出ると、そこは更に最悪の状態であった。

上下に動く地面に竜巻、そして突風、更に行く手を阻むイレギュラーの大軍にアッシュとグレイは一瞬足を止めそうになったが、すぐに駆け出した。

足場を飛び移り、リフトを利用して移動すると次は竜巻に吹き飛ばされないようにしながら進み、不安定な足場やリフトを飛び移ると再び大型のメカニロイドが行く手を阻む。

「アッシュ!」

「分かってるわ!ていっ!」

グレイがチャージバスターを当て、アッシュがハルバードを一振りすると、メカニロイドは容易く両断された。

そして竜巻を突破して奥のシャッターを抉じ開けると、祭壇らしき場所に出て、リフトに乗って移動すると、祭壇の上にはモデルVが浮かんでいた。

「「こんな所にモデルVが!?」」

「重力異常の原因はこいつか!」

アッシュとグレイはモデルVの存在に驚くものの、すぐに破壊か回収をしようとするが、二人の前に一人の青年が姿を現した。

「逃れえぬ運命…やはり来たか、ロックマン・モデルA。だが…このモデルVは私が回収する」

それはモデルHの適合者であり、最後の四天王モデルのロックマンのヘリオスである。

「ヘリオス!モデルVを集めてどうする気!」

モデルLのアッシュの姿にこれがプロメテ達から聞いたモデルAの能力であり、同時にテティスも敗れたことにも気付いたヘリオスだが、アッシュの問いに溜め息を吐いた。

「愚かなる問い…モデルVの価値も分からずロックマンを名乗るか。理解出来ぬからと恐れ、恐れるから排除する…お前のような愚か者がいるから、この世界から争いが絶えぬのだ。」

ヘリオスは上流階級のヒューマノイドであり、その立場から何も知らない、知ろうとしない者達の姿を何度も見ており、その者達が争いの原因だと考えている。

だからこそロックマンとなり、モデルVを覚醒させて王になろうとしているのだ。

「へっ!天才様の考える事は分かんねえな。オイラには“邪魔する奴は死ね!”って言ってるようにしか聞こえないぜ!」

「そう、私が目指す世界に愚か者の居場所はない。行くぞ、ロックマン・モデルA!愚者に死を!ロックオン!」

モデルHを構え、風が吹き荒れたかと思えばヘリオスはロックマン・モデルHへと変身すると、連結状態のダブルセイバーを双剣状態にする。

「グレイ!来るわよ!」

「分かってる!」

アッシュはモデルHの弱点である氷属性のモデルLのままで、グレイはロックマン・モデルAのままでアッシュのサポートに徹する。

「はあっ!!」

エアダッシュで距離を詰めてセイバーで斬り掛かるヘリオス。

「くっ!」

アッシュがハルバードで受け止めると、何とかヘリオスに斬り掛かろうとするが、ヘリオスは咄嗟に上空へのエアダッシュで回避する。

「斬れ!舞え!そして散れ!!」

そして距離を取ると、セイバーをチャージして三連擊とソニックブームを繰り出す。

しかもただの三連擊ではなく、一撃目と二擊目に性質が違うプラズマサイクロンを飛ばしてくる。

一撃目の横薙ぎは上下に二つの縦の竜巻を繰り出すプラズマサイクロンV、二擊目の上段斬りは前後に横の竜巻を繰り出すプラズマサイクロンH。

ソニックブームを繰り出すために少々性能が落ちているが、攻撃範囲の広さは厄介である。

二人は軌道や性質が異なる攻撃に対処出来ずにまともに喰らってしまう。

「この、喰らえ!」

バスターを構えてホーミングショットを発射するが、アッシュのものと比べて弾速が遅いため、ヘリオスにセイバーで掻き消されてしまう。

「愚かなる行為…無駄だと理解出来ずにこのような足掻きをする…貴様のような失敗作にはやはりロックマンは務まらん」

「だー!ムカつく奴だな本当に!」

どこまでも見下すヘリオスにモデルAは激怒するが、ヘリオスはどこ吹く風だ。

距離をダッシュで距離を詰めて通常の三連擊を繰り出してくるヘリオス。

ソニックブームの射程が長く速いため、グレイは完全に回避出来ずに掠ってしまう。

「斬り裂け!!」

セイバーを横薙ぎすると先程と少々軌道が異なるプラズマサイクロンVが繰り出された。

「アイススティッカー!!」

アッシュは氷塊を作り出して盾代わりにし、そして残った氷塊をハルバードで砕くと破片をヘリオスに当てる。

「ぐあ…っ!」

モデルHの弱点であるである氷属性をまともに受けたヘリオスの全身が凍結する。

そこにアッシュがダッシュジャンプで距離を詰めてジャンプ斬りからの通常斬りの連続攻撃でヘリオスにダメージを与えていく。

「グレイ!あいつ相手にはモデルLの方が良いぞ!アッシュと連携して戦うんだ!」

「よし、トランスオン!」

モデルLに変身してグレイもチャージを開始すると、ヘリオスが氷を砕いてセイバーを構える。

「愚者が舐めるな…!舞い散れ!!」

上段斬りを繰り出すとプラズマサイクロンHが放たれる。

縦の範囲が劣る分、横の範囲に優れているこの攻撃は少々かわしにくい。

「よっと!」

「ふん」

それでもアッシュはタイミングを見計らってジャンプで回避するが、ヘリオスはエアダッシュで距離を詰めてセイバーで攻撃する。

「っ痛!?」

「はあっ!!」

着地すると更にエアダッシュをして再び斬り付けてくる。

「速い…!アイススティッカー!!」

「甘い」

上空へのエアダッシュで破片を避けるが、背後から氷龍がヘリオスに直撃する。

「何っ!?」

弱点属性である氷を受けたヘリオスは地面に落下するが、その隙にアッシュはハルバードで攻撃する。

「アッシュの攻撃に気を取られた今なら当たると思ったけど…」

「良いぞ!上手く二人の技を使ってヘリオスを追い込むんだ!」

「恥ずべき失態…!このような失敗作の攻撃を受けるとは…!ただでは済まさん…!モデルVよ…!力を貸せ…!」

エアダッシュで上昇し、モデルVに干渉してヘリオスは大型のビットを二つ生成すると、電撃を放射させる。

「「!?」」

「かわせるか…!プラズマビット!!」

ビットが回転しながら電撃を放射するため、グレイは回避を余儀なくされる。

そしてビットが消え、二人が次の攻撃に備えた時には既にヘリオスは次の攻撃に移行していた。

「斬り裂け!!」

プラズマサイクロンVが二人に直撃するが何とか耐え抜いてチャージ攻撃を繰り出す。

「フリージングドラゴン!!」

グレイが氷龍を召喚してヘリオスに向かわせるが、ヘリオスはセイバーで砕くとアッシュにエアダッシュで距離を詰めて斬り掛かる。

「アイススティッカー!!」

「チッ!!」

氷塊を出してヘリオスを動きを僅かに止めることができ、そしてハルバードを突き出してヘリオスの肩に突き刺した。

「このまま凍らせてやるわ!」

「ぐっ!?」

ハルバードのチャージが始まり、穂先に冷気が集まるのと同時にヘリオスの傷口から凍り付いていく。

このままでは腕が使い物にならなくなると判断したヘリオスは後ろに後退すると、既にロックマン・モデルAに戻っていたグレイは二丁のバスターを構えていた。

「ギガクラッシュ!!」

「馬鹿な…!」

ロックマン・モデルAの必殺のギガクラッシュが炸裂し、ヘリオスに大ダメージを与えると、戦闘続行が不可能な状態となったヘリオスは膝を着いた。 
 

 
後書き
プラズマサイクロン二連発からのソニックブーム。

もしゲームでもされたら回避困難なのは間違いない…プライドが高い分、ヴァンに一蹴されたのが誰よりも悔しかったヘリオスでした。 

 

第六十話 第四の封印

 
前書き
コントロールセンターって使い回しなんでしょうけど、この作品集では前作のラスボスステージです。 

 
弱点である氷属性を受けて弱っていたところをギガクラッシュの直撃を受けたヘリオスは息を荒くしながら二人を睨む。

「…恥ずべき誤算…この私がハンターと失敗作如きに遅れを取るとは…!何も知らぬ貴様らがロックマンであるなど、私は認めない!!愚者に死を!この世界は私が変えてみせる!」

それだけを言い残してヘリオスはモデルVと共にこの場を去った。

そしてヘリオスがいた所にモデルHのデータが残り、アッシュはロックマン・モデルAに戻ってグレイと共にデータを取り込んだ。

そして次の瞬間に二人の体を激痛が襲う。

「きゃあああああぁぁっ!」

「うわあああああぁぁっ!」

激痛と共に次に解かれたプロテクトのレポートデータが展開される。

《コードUC80からAC195までを解放、レポートデータ展開》

《ライブメタルの力は誰もが手にしていい物ではない。選ばれし者、世界を変え得る者こそが手にすべき力である。そこで私はライブメタルを作った時、あるプロテクトを施した。選ばれし者のみがライブメタルの力を引き出せるというプロテクト…すなわち、適合者を設定したのだ。全てのレプリロイド達は寿命を設定し、ヒューマノイド達は体の一部を機械へ交換する時、レギオンズのチェックを受ける。このチェックの時、私が寿命の設定、体の一部の交換に関わったレプリロイドとヒューマノイド達には、私のDNAデータを組み込んだ。それこそがプロテクトの鍵であり、適合者の証なのである。そう、このデータを見ている君もまた、私のDNAを、私の血を受け継ぐ者なのだ》

レポートの展開が終了すると、モデルAが苦虫を噛み潰したような声を出した。

「…何て奴だ…おい…アッシュ、グレイ」

「僕が…アルバートの血を継ぐ者…?」

「アタシにも…ううん、アタシ達だけじゃない…ヴァンやヘリオス達にもアルバートの血が流れてる…って事?」

思わず自分の手を見つめる二人。

このデータがもし世界中に公表されたら大混乱は確実だ。

何せ今、ロックマンになっている者以外でアルバートの介入を受けた者など分からないのだから。

「…気にすんな…ってのも無理な話だろうけどよ、アルバートの野郎が、勝手に付けたラベルみたいなもんだ。あんまり深く考えるなよ」

「「う…うん…」」

モデルAの言葉に二人は頷くが、全ての元凶であるアルバートの血が流れていると知れば穏やかではいられないだろう。

「アルバートの野郎…自分がレギオンズの三賢人ってのを良い事に、やりたい放題か」

自分の地位を利用してやりたい放題をするアルバートにモデルAは苛立ちながら呟いた。

『確かに技術的な事はアルバートが最も優れていた。だが…まさかそんなところまで奴の手が及んでいようとは…すまない、我らの責任だ』

展開されたレポートのデータはレギオンズに送られており、内容を見たトーマスが通信を繋げて謝罪してきた。

「…大丈夫、覚悟はしてたわ。でも、ロックマンになれるってだけならヘリオス達も同じよ。アルバートがアタシを特別扱いする理由がまだあるはず…」

「僕やモデルAにもまだ秘密があるはずだ。そしてそれを知っているのは…」

「全てを知ってるのはアルバートってわけだ」

取り敢えずやるべきことは今までと変わらない。

「…絶対に見つけ出して締め上げてやるわ、アルバート!!」

拳を握り締めるアッシュにグレイも頷いた。

『直にそのエリアの重力異常も収まるだろう。次の目的地へ向かってくれ』

「と、次の目的地に向かう前にモデルHの説明をするぞ。どうやらモデルHに変身するとエアダッシュが出来るようになるらしいな、後はホバーで滞空出来るから機動力は他のロックマンとは比べ物にならないぞ。チャージ攻撃はプラズマサイクロンだけどよ、アッシュとグレイだとやっぱり性質が違うな。アッシュのプラズマサイクロンは前後に横の竜巻を繰り出すプラズマサイクロンH、横の範囲に優れる反面、縦の範囲が狭いのが特徴だ。グレイは前に斜め上と斜め下に縦の竜巻を繰り出すプラズマサイクロンV。前方の攻撃範囲は広いけど後ろと竜巻の間はがら空きになるから注意しろよ。他にも敵のデータをスキャンして調べることが出来るようだ。弱点のある敵に便利そうだ…相手の弱点が分からない時はモデルHでいるのが良いかもな」

「分かったわモデルA、それじゃあ次のエリアへ行くわよ!!」

リフトに乗って奥のシャッターを抉じ開けてトランスサーバーを起動させてイレギュラーが発生している場所であるコントロールセンターへと向かうのであった。

一方、二人が目指したコントロールセンターが見える崖の上にヴァンが立っていた。

「久しぶりだな、ここに来るのも……」

この四年で自分の故郷も随分と変わったものだ。

連合政府・レギオンズの支援をようやく本格的に受けられるようになったものの、やはりセルパン・カンパニーが健在だった頃と同じとはならず、四年前と比べて故郷も随分と変わっていた。

「まあ、ジルウェ・エクスプレスは健在のようだけどな」

エールとジルウェもガーディアンに所属しながら運び屋業は続けているようだからあまり心配はしていないが。

「セルパン・カンパニー…いや、コントロールセンターで何かあったな…」

人々が避難しているところを見ると、イレギュラーの襲撃があったのかもしれないとヴァンは久しぶりにセルパン・カンパニーだった場所に足を運んだ。

そしてコントロールセンターへと足を運んだものの、テティスやヘリオスとのダメージや疲労があったためにワープポイントのある部屋で少し休憩していたアッシュとグレイ。

「ここってどういう場所なんだろう」

「ここは火力プラントのコントロールセンターよ。結構最近に出来た物らしいけど」

「最近に出来たにしちゃボロすぎないか?」

壁が無くなって外が見えるし正直こんな状態の建物を何故火力プラントにしたのだろうか?

「ここは元々セルパンって言う大悪党の会社の建物だったんだけど、四年前の騒動の際に社長のセルパンが死んだことでカンパニーは解散。レギオンズがセルパン・カンパニーのビルを接収して火力プラントとして再利用したのよ。取り壊すにしても結構な大きさだから時間が掛かるし、だから国民の生活のエネルギーのことも考えて火力プラントに再利用したのよ。まあ、アタシもどうしてこのビルがこんな有り様なのか知らないけどね」

「へえ…」

「こんなでかいビルを滅茶苦茶にするくらいなんだからきっととんでもない戦いがあったんだろうな」

モデルAが周囲を見渡しながら言う。

それは正解である、何故ならここで四年前に大きな戦いがあったのだから。

そしてその当事者の一人と既に会っていることもアッシュ達は知らないのであった。 

 

第六十一話 コントロールセンター

ワープポイントの部屋で休んだ二人は先に進もうとシャッターを潜ったものの、油田のあった砂漠エリアにも勝るとも劣らない暑さに二人は思わず表情を歪めた。

「何、ここ!物凄く暑くない!?」

「一体何が起きてるんだ!?」

火力プラント施設の内部は確かに暑いとは感じるが、これほどではないはずなのだが、アッシュとグレイの疑問に通信を繋げてきたトーマスが答えてくれた。

『そのビルは周りの都市部にいくつかあるエネルギー炉のコントロールセンターだ。しかし、今はイレギュラー共の仕業で熱暴走を起こし、制御が利かないのだ』

「放っときゃエネルギー炉も暴走して、“ボカーン!”…か。いちいち派手な奴らだな」

『エネルギー炉はいつまで保つか分からない、何とかコントロールセンターの制御を取り戻してくれ』

「了解、早速モデルHの出番よ!トランスオン!」

「トランスオン!」

アッシュとグレイはモデルHへと変身すると、モデルAがアドバイスをくれた。

「アッシュ、グレイ!炎のせいで進み辛いと感じたら電気属性の攻撃を当てて見ろよ!特にグレイのプラズマサイクロンVなら範囲の広さもあって一気に消せるぞ!」

「よし、グレイ。鬱陶しい炎を蹴散らしてあげなさい!」

「分かったプラズマサイクロンV!!」

チャージを終えたダブルセイバーを一振りすると縦の電撃を纏った竜巻が斜め上、斜め下の上下に放たれる。

竜巻に巻き込まれた炎は消えていき、進みやすくなったので奥に進むとシャッターを発見したが…。

「あそこが怪しいわねぇ…」

細い柱が伸びており、あそこからローズパークで移動出来そうである。

「エレベーターがあるのにわざわざそっちを登るのアッシュ?」

「何て言うかさ…ハンターの感かしら…ほら、ここって大悪党の元会社じゃない…?もしかしたら溜め込んでいた金銀財宝のお宝があるかもしれないじゃなーい?」

「アッシュって本当にお金が好きなんだね」

目がゼニーの形となっているアッシュにグレイは思わず溜め息を吐いた。

「逆に聞くけどお金が嫌いな人っているの?」

「少なくてもがめつい奴は嫌われると思うぜ」

「むっ!?アタシのどこががめついのよ!?」

「全部」

モデルAの言葉にアッシュは後で殴ろうと心に決めた。

「まあ、確かに寄り道してる場合じゃないわね」

エレベーターに乗り込むと上昇するものの、侵入者用の砲台から火炎放射が発射され、更にエレベーターに隙間から入ってきたメカニロイドの攻撃を受けることになる。

「危ない!」

「分かってるわよ!」

モデルHのエアダッシュを駆使して攻撃をかわしながら最上階を目指す二人。

そして最上階に着くとシャッターを抉じ開けて奥へと進む。

ここも妨害するイレギュラーがいる上に火炎放射の砲台が複数設置されているが、モデルHの機動力の前では形無しであり、一気に奥のシャッターに辿り着けた。

「いやー、やっぱりモデルHって速いわねー」

「うん、これがあるだけで全然違うよ」

空中での移動手段があると言うのは本当に便利であり、敵として戦う分には厄介だが、自分が使うとなるとかなり頼りになる。

シャッターを抉じ開けると大型の砲台が複数出現して行く手を阻んでくる。

砲門から光弾が放たれるが、突如軌道を変えたことに驚く。

「弾の軌道が?」

「こいつはどうやらモデルFのテクノロジーが使われてるようだな。」

アッシュの疑問にモデルAがこの砲台にモデルFのテクノロジーが使われていることを説明する。

「なら、モデルFの力で返り討ちにしてやる!トランスオン!」

グレイがモデルFに変身してナックルバスターを構えるとショットを連射し、一台目を破壊するとショットの軌道を変更しながら砲台を破壊していくと、あっという間に全滅する。

「どんなもんよ」

「倒したのグレイだろ」

「あんた、うるさいわよ」

口うるさいモデルAに眉間に皺を寄せるアッシュだが、シャッターが開いたので奥へ進むと上にイレギュラー達がおり、どうやら登っていくしかなさそうだ。

グレイは再びモデルHに変身してアッシュと共にエアダッシュを駆使して上に登っていく。

「それ!プラズマサイクロンH!!」

横の竜巻を繰り出すプラズマサイクロンHがイレギュラーに直撃して爆散した。

そして一番上まで到達するとシャッターを発見して抉じ開けて奥へと進むと、トゲが敷き詰められた床のある通路の奥に重厚そうなシャッターが見えた。

「厳重そうね…あそこかしら?」

「行ってみようアッシュ」

セイバーでイレギュラーを斬り払いながら進んでシャッターを抉じ開けると広い部屋に出た。

そこは天井が無く、大空が広がっている。

「ここで凄い爆発でもあったのかしら?」

「部屋がボロボロだ…」

「ここは今から四年前…二人の究極の戦闘力を誇ったロックマンとモデルVに操られた道化が戦った場所だ。」

聞き覚えのある声にアッシュとグレイが振り返るとプロメテが佇んでいた。

「アンタ…プロメテ…」

「久しぶりだな、アッシュ。そしてグレイ…運命のゲームにまだ生き残れているようじゃないか、どうだ?少しは自分の事が分かったか?」

「ええ…とりあえずアンタ達とは絶対にソリが合わないって事は分かったわ」

少なくても世界を滅茶苦茶にしようとするヘリオス達やプロメテのような者達はアッシュの性格上、許せるものではなかった。

アルバートのことや個人的なことも色々含めてだ。

「クククッ…そうか?俺とお前は似た者同士だと思っていたのだがな、お前は俺に仲間とプライドを傷付けられた。お前は俺が憎いはずだ。お前は俺への復讐のために戦っている、そう…俺と同じようにな」

「アンタが何のつもりで戦ってるかなんて知らないけど、アタシはそんなのじゃないわ。全部知った風な顔で、人を弄んでるアンタが気に入らないだけよ」

「詭弁だな、そうやって自分を正当化して、ヒーロー気分に浸ってるだけだ。まだ気付いていないんだろう?お前は決してヒーローなんかじゃないって事を」

「…何ですって?」

「そうだ、その目を忘れるなよ。今日のところはこのモデルVを回収しに来ただけだ。焦らなくても、お前はいずれ失敗作共々この俺が斬り刻んでやる…楽しみに待っていろ!」

「いや、その時は一生来ないぞプロメテ」

「っ!!」

背後から感じた殺気にプロメテは即座にジャンプして光弾をかわした。

「チッ、来たか…いや、ここはお前の故郷だ。来て当然か…久しぶりだなヴァン」

「久しぶりに故郷の近くにいたから様子を見に行こうと思ったらイレギュラーが出てるわ、セルパン・カンパニーのビルの様子がおかしいからイレギュラー達を倒しながら来たらお前がいるわ…いい加減お前の顔も見飽きてきたところだ。そろそろ決着をつけないか?」

この四年間、イレギュラー狩りとモデルVの破壊の最中にちょっかいをかけられてきたヴァンからすればプロメテとパンドラは最早憎しみを通り越して鬱陶しい存在でしかない。

「フン…まあ、そう言うな。このゲームが行われているからこそお前は存在を許されている。もしこのゲームが終わればお前の居場所など何処にもないぞ。世界を滅ぼしかねない強大な力を単体で持っている上に元の体に戻れないお前はどこにも必要とされない。」

「………俺が必要のない世界なら、とても平和な世界だろうな。そしてお前達がいない世界もな」

アルティメットセイバーを抜いてプロメテに斬りかかるヴァンだが、プロメテはそれを鎌で受け止めるとモデルVの所まで後退する。

「フン、俺達ロックマンがいなかろうと争いは終わらない。争いのない世界が欲しいなら貴様が全てのロックマンを始末して王になるしかないな。その破壊神の力で全てを平伏してな」

「貴様…!」

「安心しろ、すぐに最後の戦いが始まる。そこの二人のおかげでな」

ヴァンの視線がアッシュとグレイに向けられる。

「………」

「お前は僕達のことを何か知ってるのか!?答えろ!」

グレイがセイバーを構えるがプロメテはそれを鼻で笑うだけだ。

「フン、吠えるなよ、屑が。無闇に牙を剥いても命を落とすだけだぞ失敗作」

「アンタね…」

アッシュがプロメテのグレイの侮辱の言葉に怒り、前に一歩出た。

「慌てるな…もうすぐだ…もうすぐ俺達の悲願が達成されるんだ…それが終わればお前達は用済みだ…その時は…」

全てを言わずにプロメテは転送の光に包まれてモデルVと共に姿を消した。

「…くそっ!むかつく奴だな!」

「…もうすぐか…思ってたよりもずっと早かったな…」

プロメテの言葉にいよいよ最後の戦いが近付いていることを感じ取るヴァンであった。

「あら…プロメテの坊やはもう行ってしまったの?せっかちな子ね。後少しでエネルギー炉が爆発して、この国に綺麗な炎の花が咲きますのに。甘くて…蕩けるような、“恐怖”という名の蜜が採れる花が…ウフフフッ」

突然現れた蜂を彷彿とさせるイレギュラー…恐らくモデルVのフォルスロイドにアッシュとグレイは身構えた。

「おい」

しかし、それはヴァンから発せられた絶対零度をも下回るような声によって二人は口を開けなくなった。

「お前、人の故郷で何を馬鹿な真似をしようとしてるんだ?」

「あら?あなたはモデルOのロックマン…破壊神がここに何の用かしら?」

「決まってるだろう、このふざけた騒動を止めに来たんだ。今すぐエネルギー炉を停止させろイレギュラー」

「お断りよ、せっかく綺麗な花を咲かせようとしているのに無粋ね…それから私はカイゼミーネよ」

「そうか、なら今すぐ叩き斬ってやる」

「出来るかしら?私の武器コンテナを落とせばすぐにここを吹き飛ばせますのよ?」

カイゼミーネが脅すように言うがヴァンはセイバーを構えた。

「ちょ、ちょっと!?」

「やってみろよ、やれるものならな」

一歩前に出たヴァンにアッシュは慌て、カイゼミーネはモデルOのプレッシャーに気圧されながらも武器コンテナを落とそうとした。

「わ、私を甘く見ないでもらえるかしら?なら、お望み通りエネルギー炉の爆発よりも前にこのビルを…!」

カイゼミーネが武器コンテナを落とそうとしたが、武器コンテナが落ちない。

「あれ?」

「落ち…ねえぞ…?」

グレイとモデルAが全く落ちる気配のない武器コンテナに驚く。

「な、何故落ちないの!?いえ、それどころか機能しない!?」

「気付いてないのか?お前の体が既に動かせる状態じゃないからだ」

「な…ん…ですって…?」

次の瞬間、カイゼミーネの体は縦一文字に真っ二つに裂けた。

「俺の踏み込みと居合いの速度は風よりも速い。ダブルチャージバスター」

そして機能停止した武器コンテナが床に落ち、更に追撃でダブルチャージバスターを受けて空中で爆散するカイゼミーネ本体にアッシュとグレイは唖然となるしかなかった。 
 

 
後書き
こいつはモデルHよりもモデルFの方が倒しやすいんだよね… 

 

第六十二話 先輩の助力

 
前書き
ヴァンは滅茶苦茶強いお助けキャラクターです。 

 
カイゼミーネを瞬殺したヴァンに思わずアッシュとグレイは引いていた。

因みにカイゼミーネのデータはしっかりとコピーしており、二人にカイゼミーネのデータは吸い込まれていく。

「化け物だ…」

「化け物は酷いぞ、助けたのに」

モデルAの引いたような言葉にヴァンは呆れた視線をモデルAに向ける。

「ヴァンみたいな存在をチートって言うのね」

「いつ斬ったのかも分からなかった」

「伊達に四年間もイレギュラーと戦い続けてない。どういう風に動けばより速く動けたりするのか…こういうのは経験しないと分からないだろうな…まだまだお前達、後輩のロックマンに負けるつもりはないぞ」

「勝てる気がしないんだけど…って、それよりもエネルギー炉を止めないと!」

ここに来た目的のもう一つを思い出したアッシュは奥のシャッターを抉じ開けてエネルギー炉のある部屋を見る。

グレイとヴァンもアッシュに続いて部屋の中を見ると、明らかに異常だと言うのは三人にも分かった。

『そこにあるのは、エネルギー炉を制御しているメインコンピュータだな?…いかんな、冷却機能が追いつかず、熱暴走が止まらないようだ。コアモジュールを抜き出して、メインコンピュータを無理やりにでも止めるしかない』

モニターで状況を見ていたトーマスは通信を繋げてメインコンピュータを停止させる方法を伝えると、アッシュとグレイは戸惑う。

「コアモジュールを抜き出すって…あんな大きい物をどうやって…!?」

グレイはコアモジュールを見ながら言う。

何せコアモジュールの重量は凄まじく、ロックマン三人でも持ち上げられるか分からない。

「…なあ、さっきのフォルスロイドに変身出来ないのか?」

「「え?」」

ヴァンの問いに二人は目を見開いたが、質問の意図を理解したモデルAが口を開いた。

「そうか、あの馬鹿でかい武器コンテナをぶら下げていたカイゼミーネならコアモジュールも持ち上げられるかもしれないぞ!」

「よーし、やってみますか!トランスオン!」

カイゼミーネに変身してコアモジュールとドッキングすると、飛翔の要領でコアモジュールを抜き出すと、メインコンピュータが停止した。

「止まったな」

『…どうやら正常にサブシステムへ切り替わったようだな、熱暴走は止められた。後では自動修復システムが働くはずだ。ありがとう、君達のおかげだ。二人を助けてくれたことを感謝しよう、ありがとうモデルOのロックマン…私はレギオンズ三賢人の一人、マスター・トーマスだ。』

「…まさか、連合政府・レギオンズの三賢人に礼を言われる日が来るなんてな」

自分にとって雲の上の存在であったレギオンズ三賢人の一人に礼を言われる日が来るとは人生分からないものである。

「アタシ達からも礼を言うわ。ありがとう、助かったわ」

「ここは俺の故郷だからな、止めに来るのは当たり前だろ」

「故郷…この国が?」

「ああ、四年前に俺は仲間と一緒にセルパンと…モデルVの適合者と戦った。それからずっと戦っていたんだよ…さて、最近世界各地でイレギュラーが暴れ回ってるんだけど、君達…何か知ってるのか?」

「それは…」

アッシュはヴァンに話すべきかと悩ませたが、モデルAが口を開いた。

「実はレギオンズ三賢人の一人のアルバートって奴がな…」

「モデルA…!」

バラそうとしているモデルAに慌てるアッシュに、それを見たモデルAは溜め息を吐いた。

「遅かれ早かれバレるぞ、だったらさっさと話して味方になってもらった方がいいんじゃないのか?」

正直自分達だけではきついと感じているモデルAは一緒に戦ってくれる仲間が欲しいと思っていた。

それならヴァンは知らない相手ではないし、実力もあることから一番仲間になってもらいたい。

「………そうね、グレイも良いわよね?」

「うん」

アッシュはヴァンに自分の知ることを、今まで他のロックマンを倒して得たアルバートのレポートの内容。

そしてヴァン達がロックマンになれる理由を。

「…まさか、モデルVを作ったのが三賢人の一人のマスター・アルバートだったなんてな」

「信じてくれるの?」

「信じるさ、君達は嘘を吐くような奴らじゃないだろ?」

「「ヴァン…!」」

「それにもし嘘なら君達を倒せばいいし」

「「ガク…」」

ヴァンの言葉に感動した二人だが、次のヴァンの言葉にガクッと肩を落とした。

「冗談だよ…でも君達はアルバートにとって特別か…俺達の体にアルバートのDNAが組み込まれていたなんて…体を機械に取り替える時か、何か気持ち悪いな…」

自分の体にアルバートのDNAデータ…つまり異物が混入されていることに不快感を覚えるヴァン。

「言われてみれば確かに…」

アッシュはヒューマノイドで、特に女性であるためかヴァンの気持ちが分かる。

レプリロイドは定期的なメンテナンスを受けるからあまり違和感は感じないのだろうが、人間でありヒューマノイドである二人は嫌悪感を抱くのだ。

「………とにかく、俺もアルバートを倒すのに協力する。」

「ありがとうヴァン!戦力一気に増大だわ!」

「次のイレギュラー発生現場に行ってみよう」

ヴァンを仲間に加えたアッシュとグレイは最後のイレギュラー発生現場に向かうのであった…次の目的地で大変なことになるとは知らずに。

そして奥のトランスサーバーに乗り込んでスクラップ置き場に向かうのだが…。

「ここは…」

「ヴァン?」

トランスサーバーのマップに出た次の目的地にヴァンが反応したのを見て、グレイは首を傾げる。

「次の目的地はあまりここから離れていないようだな。ここはこの国のエリアF、雪が積もってるから寒いぞ」

「へえ、でも流石にクロノフォスがいたエリア程じゃないでしょ。モデルLにも変身出来るしね」

「へへ、地元の奴が仲間だと頼もしいぜ!」

「ここはモデルLが仲間になってくれた場所なんだ。大切な場所だ…そこを荒らすのなら全て叩き斬る」

「………今度、モデルL達のこと教えてくれよ」

「時間があればな」

自分と同じく明確な自我を持つライブメタル達に興味を抱いたモデルAはヴァンに今度教えてくれるように頼んだ。

アッシュが転送座標を設定すると、三人はエリアFへと転送されたのであった。 

 

第六十三話 スクラップ置き場

 
前書き
漫画版の設定のアッシュの音痴を採用 

 
エリアFの雪原に着いた三人…だったのだが。

「ねえ、ヴァン。ここ雪が積もってるんじゃなかったの?」

「そのはずなんだけどな」

周囲を見渡すと雪など少しもない。

アッシュ達の疑問に答えるようにミハイルが通信を繋げてきた。

『地元のお前さんなら知っておるかと思うが、そこはスクラップ置き場じゃ。捨てられた機械が山のように積み重なっておる…ついこないだまでは雪に埋もれてたんじゃがな。よくもまぁ、積み上げたもんじゃ』

ミハイルもモニターで現在のエリアFの姿に感心半分、呆れ半分の声を出した。

「雪なんてどこにもないじゃないか」

グレイの言う通り、周囲にはスクラップばかりで雪などどこにもありはしない。

『機械の熱で溶けてしまったのじゃよ、動かなくなって棄てられたはずの機械達が、イレギュラーとなって、動き始めておるのじゃ』

「スクラップが動き出した!?そんな事ってあるのか!?」

機能停止、もしくは稼働不能になったスクラップが一斉に動き出すなどあり得ないことだ。

言ってみれば死人が動いているようなものである。

『だからお前さんらに来てもらったんじゃろが、この奥にスクラップを操っている奴がいるはずじゃ。そいつを倒してイレギュラー共を黙らせてくれ、地元の者がおるんじゃから簡単じゃろう』

「簡単に言ってくれるな」

「あー、ヴァン?この爺さんはいつもこんな感じだから気にしない方が良いわよ」

「そっか…とにかく先に進んでみるか…」

とりあえず先に進んでみることにしたものの、機械の熱で雪が溶けたことにより、氷によって塞がれた道が出現し、更に四年の経過によって塞がった道もあるために、一度来たことのあるヴァンも少々手こずっていた。

「ねー、ヴァン。何よこの迷路みたいなの?」

「氷で塞がっていた道と四年の経過で駄目になった道があるからほとんど俺が通った時とは別物になってる」

ヴァンがかつての記憶を頼りに進んでいるが、塞がっている道があるために思い通りに進めない。

「とりあえずヴァンがトラップを壊してくれるから助かるわ」

「うん」

アッシュとグレイはモデルHに変身しており、何とか先を行くヴァンを追い掛けていく。

「モデルHでも置いてかれるなんて本当に反則だよなぁ」

モデルAが思わず愚痴る。

モデルHの機動力は水中以外なら他のライブメタルやフォルスロイドを上回るくらいに高いと言うのにだ。

急にヴァンは足を止め、必死に追い掛けていた二人がぶつかる。

「~~っ、ちょっとヴァン、何よいきなり立ち止まって…」

「っ…しっ、誰かいる…」

「何の音だ?」

鼻をぶつけたアッシュが涙目で睨むが、向こうから聞こえてくる音に全員が聞き耳を立てた。

「これギターじゃないの?」

「どれどれ」

シャッターの隙間から覗くと、ハゲ鷹型のフォルスロイドがモデルVの生け贄らしき人々に歌を聞かせていたが、その歌は最初は人々が雑音に苦しんでいたものの、フォルスロイドの能力なのか暴走を始めていた。

「う…うう…!」

「ちょ、グレイ…大丈夫!?」

「少し気持ち悪くなってきたな…」

「ヴァンも!?」

苦しそうにするグレイに不快感に表情を歪めるヴァン。

どうやらあの歌はレプリロイドとヒューマノイドを操る効力があるようだ。

ロックマンの状態だからこそ耐性があるのだろうが、あまり長時間聞いていると良くなさそうなので、グレイを部屋の隅で休ませながら止めることにした。

そしてフォルスロイドがアッシュ達に気付く。

「イレギュラー共を掻き分けて俺様のステージを特等席でかぶり付きか?中々ロックな事しやがるじゃねぇかロックマン共」

「人の故郷で傍迷惑なコンサートごっこは止めるんだな」

「あんたの曲はうるさいわよ下手くそ!歌うのは止めなさい!!」

ヴァンとアッシュが抗議するとフォルスロイドがショックを受けた。

「下手くそだと!?このコンドロック様の歌のどこが下手くそなんだ!?」

「うるさくて喚いてるようにしか聞こえないんだよ」

「ヴァン、あんた歌える?」

「…俺は歌ったことなんてない。カラオケにも一度も行ったことないしな…先輩が仕事人間でケチだったからなー。あまり休暇が取れなかったんだよ。十四年前に遊園地行ってからまともに遊んだ記憶がないな」

「寂しい青春ねー。ケチ臭い先輩なんて同情するわ」

灰色の青春を送っていたヴァンにアッシュは同情すると、懐からある物を取り出す。

「マイク?」

「そう!アタシ専用のマイク…マイマイクよ!」

「マ…マイマイク!?」

「あんたは歌を分かっていないようね!ならアタシの上手い歌を聞かせてあげるわ!」

「頼もしいなアッシュ」

マイクを翳しながらコンドロックに言い切るアッシュにヴァンは頼もしさを覚える。

「任せなさい!上手い歌ってのはこういうものよ!」

ボエ~♪

「す、凄い音痴だ…!」

「う…ううん…」

「ギャ~ッ!!耳がぁ~!!」

凄まじい音痴っぷりを発揮するアッシュにヴァンとグレイは苦しみ、コンドロックの聴覚器が爆発した。

「得点を付けるとしたらマイナス六万点だな…」

「こ…こんなに音痴じゃ、俺様の歌の良さが分かるわけがねぇ…」

アッシュのあまりの音痴な歌によって気絶したコンドロック。

「一応倒しとくか…」

一応人々を拐ってモデルVの生け贄にしようとしていた訳だから生かすわけにはいかず、取り敢えずヴァンがバスターショットを引き抜いて、チャージバスターでとどめを刺したのであった。

「どう!?アタシの歌は?誰にも真似出来ないくらいに見事な歌だったでしょ!」

コンドロックのデータをコピーしながら胸を張るアッシュにヴァンは目を細めた。

「ああ、色んな意味で凄かったよ」

あれは誰にも真似出来はしないだろう…いや、出来ないで欲しい。

「アッシュの奴…とんでもない音痴だったぜ…」

「しっ、あまりでかい声で言うな…気付かれるぞ」

変身を解除してフラフラになりながら浮かんでいるモデルAに注意しながら、アッシュみたいな音痴が増えないことを歌を聞いて気絶しているグレイや拐われた人々を起こしながらヴァンは祈った。

そして、ミハイル達に頼んで人々を安全な場所まで転送してもらうと、三人は奥へと向かっていった。

奥の部屋には浮遊するモデルVと、それを見上げるパンドラの姿があった。

「…聞こえる…捨てられた機械達の…メカニロイド達の…悲しみ…憎しみ…怒りの声…全てが…モデルVの…糧になる…」

「「パンドラ…!」」

「こんな所で何をしてるんだ?」

「ロックマン・モデルO…モデルVに吸収させていただけ…ここに捨てられた機械の…メカニロイド達の負のエネルギーを…メカニロイドにも“心”がある…私達ほどではないにしても…既に…運命は動き始めている…あなた達…イレギュラーロックマン達の…目覚めと共に…」

そして、パンドラはアッシュとグレイを見遣る。

「あなた達には…聞こえないの…?世界の…この星の悲鳴が…」

パンドラの問いにグレイがバスターショットを構えた。

「…聞こえるさ!聞き逃すもんか!悲鳴の中心には必ずお前達がいるはずだからな!」

グレイの言葉にパンドラは少しの沈黙の後に首を横に振った。

「…違う」

「な、何がだ!?」

「この悲鳴は…あなた達と…あの男の…アルバートのためのもの…」

アッシュとグレイに向けて言い放たれたこの言葉に二人は動揺する。

「な…何を言ってるんだ…?」

モデルAもパンドラが何が言いたいのか分からず、困惑してしまう。

「いつか…全てを知る時が来る…そしてきっと…あなた達二人はは全てに絶望する…」

それだけ言うとパンドラは転送の光に包まれて、モデルVと共に姿を消した。

パンドラが姿を消したのと同時にミハイルが通信を繋げてきた。

『フンッ…モデルVごと消えよったか…気味の悪い奴じゃ。ご苦労じゃったな、そのエリアのイレギュラーも静かになりつつあるようじゃ。もう大丈夫じゃろう、ミッションレポートをよろしくな』

そしてコンドロックの力を使って仕掛けを突破してトランスサーバーに乗り込んで、全てのミッションを片付けたので、一度ハンターキャンプに戻るのであった。 

 

第六十四話 久しぶりの再会

 
前書き
ZXAでは何でプレリー出さなかったんだろうか?

一応前作のヒロインなのに 

 
一度ハンターキャンプに戻ったアッシュ達だが、休もうとした時にトーマスからの通信が入った。

『トーマスだ。アルバートめ、各地に残したモデルVを集めているようだな。実は先ほど、ハンターキャンプの採石場から、モデルVの反応が確認されたそうだ。イレギュラーはハンター達が食い止めているが、道が険しく奥へは進めないでいるらしい。そこで、君達には採石場の奥へと向かって、モデルVを回収してもらいたい。情報では、謎の大型飛行艇が採石場へ接近しているそうだ。既にアルバート達に感づかれたのかもしれん。気をつけてくれ』

「……大型飛行艇…そいつは一体どんな船なんだ?色は?形状は?」

『…?全体的な色合いは白と薄紅色で、女性の像が見えたとのことだが』

「なるほどな…アッシュ、グレイ、飛行艇のことは俺に任せて君達はモデルVを頼んだ」

「一人で大丈夫なのか?」

飛行艇と言うことはかなりの数のイレギュラーがいるかもしれないと言うのに。

「ああ、心配いらないさ……ただ少し説教は覚悟しないといけないかな…」

「「説教?」」

「いや、何でもない…とにかくそっちは任せた」

ヴァンは即座に飛行艇が着地出来そうな場所に向かう。

トーマスから聞いた飛行艇の特徴を聞いて、接近中の飛行艇とは間違いなく四年前に自分も乗っていたガーディアンベースのことだろう。

ここ最近イレギュラーの大量発生で彼女への通信が滞っていたため、説教は覚悟しなければならないだろう。

「行っちゃった…」

「そんなに飛行艇のことが気になるのかしら?」

「まあー、俺達は採石場に行こうぜ。そこにあるモデルVがイレギュラーに奪われる前にな!」

「よーし、早速採石場に向かうわよ!!」

採石場に繋がるエリアに向かうアッシュとグレイ。

そして飛行艇が着地出来そうな場所に到着したヴァンは予想が見事に的中したことで溜め息を吐いた。

ガーディアンベースが着地し、ハッチが開いた。

そこから懐かしいガーディアンのメンバーの面々が警備として出てきた。

「久しぶりだな…俺のこと…覚えてるかな…?まあ、こんな体の奴を忘れるとは思えないけど…」

「誰だ!?」

ヴァンに気付いたメンバーの一人がバスターを向けてきた。

懐かしさに笑みを浮かべながら姿を見せると、それぞれの面々が目を見開いた。

「君は…ヴァンか!?」

「…久しぶりだな、プレリーと話がしたいんだ。中に入れてくれないか?」

「久しぶり…じゃないだろう!この四年の間、一度も戻ってこないで、おまけに最近は通信も…プレリー様がどれだけ寂しがっていたことか…」

「ああ、分かってる。だからそれも含めて話したいことがあるんだ。入れてくれ」

渋々道を開けてくれたので、それに感謝しながらヴァンはベース内に入っていった。

司令室のブリッジに入ると、メンバーから通信が入っていたのかこちらを顔を見て安堵するプレリーの姿があった。

「…ヴァン……」

「久しぶりだな…昔より小さくなった気がする」

「…違うわ、あなたが大きくなったのよ」

ヴァンの呟きにプレリーは微笑みながら言う。

旅に出た時のヴァンは十五歳であり、あれから四年も経っているのだからヴァンの背が伸びるのは当然である。

「そっか……何か不思議な気分だな」

ガーディアンベースにいた時はほとんどなかった身長差が今ではそれなりに差があり、ヴァンの声も少年特有の高い声から変声期を終えたことで低い男性の声になっている。

通信で徐々に高かった声が低くなっていくことにプレリーは気付いていたが、こうやって向かい合うとヴァンが少年から青年になったのだと改めて認識した。

「モデルVの反応を察知してここに来たんだよな?」

「ええ、最近イレギュラーが大量発生してモデルVの破壊する前に既に無くなっていることが多いんだけど」

「そうか、エールは?エールがいるのなら大事な話があるんだけど…部屋か?」

「エールなら、モデルVの反応があった採石場に一足先にトランスサーバーで向かったわよ」

それを聞いたヴァンはエールの部屋に向かおうとしていたのだが、それを聞いて足を止めた。

「本当か?」

「え、ええ…エールに何か用でもあったの?」

どことなく寂しそうな表情を浮かべるプレリーだが、あまりのタイミングの悪さにヴァンは溜め息を吐いた。

「あいつら、鉢合わせして戦ってないだろうな…」

「え?」

首を傾げるプレリーだが、ヴァンに説明されて納得することとなった。

一方、採石場に到着したアッシュとグレイはロックマン・モデルAに変身して中に入ると、斬り刻まれ、高エネルギーの弾丸に貫かれた大型のメカニロイドの残骸を目撃した。

「ここまで派手にやるなんて、相当なやり手だな。やっぱロックマンか?けど…アルバートの仲間ならイレギュラーを倒す必要はないよな…」

アッシュはメカニロイドのボディに刻まれている傷を見た。

「これはセイバーとバスターによる傷ね…まるでモデルOみたい…まあ、誰が出てきても同じ。敵なら戦うまでだわ、先に進めば分かる事よ」

強力なセイバーとバスターによる攻撃はまるでモデルOを彷彿とさせるが、今はメカニロイドを倒した存在を気にかけている場合ではない。

「これをやった奴もモデルVを狙ってるのかもしれない、先を急ごう」

二人は採石場の中を進んでいく。

幸いにも先客が粗方イレギュラーを倒してくれていたので、難なく進むことが出来た。

そして場所はガーディアンベースに戻り、ヴァンはプレリーにアッシュ達から聞いたことを全て伝えた。

「何てことなの…連合政府・レギオンズの三賢人の一人であるマスター・アルバートがモデルVをラグナロクの破片から作っていたなんて……でも、同時に納得したわ…三賢人はあの戦いからの存在で、彼はかつての理想郷…ネオ・アルカディアでも並ぶ者のいない科学者だったわ…それこそお姉ちゃん以上の…ね…」

「会ったことがあるのか?」

プレリーの口振りからして、プレリーは自分の知らないアルバートのことを知っているかのようだ。

「まだ数百年前に…レギオンズが結成される前に…ね…お姉ちゃんと彼が話していたのを遠目で何度か見たくらい…でも、お姉ちゃんが提案したレプリロイドと人間の差を縮めるための案を彼と話していたのは覚えているわ」

「…………ひょっとしたらプレリーの姉さんがその案を出してきた時からアルバートの計画は始まっていたのかもな」

「………お姉ちゃんは、そんな計画のために提案したんじゃないのに…!」

いつか“お兄ちゃん”が帰ってきた時のために、レプリロイドと人間が平等に、手を取り合えるように“お姉ちゃん”は考えに考え抜いた案だと言うのに、それを私欲のために利用したアルバートに唇を噛み締める。

「…それでな、ちょっとした縁で知り合ったんだけど…あいつらエールのことを知らないだろ?だから事前にエールに会ってあいつらのことを教えようと思ってたんだけど…通信は?」

「モデルVの影響なのかエールと通信が繋がらないわ」

「嫌な予感しかしない…採石場に行ってくるよ……」

エールとアッシュ達の性格を考えると早とちりからの戦闘も充分あり得るからだ。

そして、その予感は当たっていたことになるのであった。

「気を付けてね、ヴァン」

「ああ、行ってくる」

ブリッジを後にするヴァンの背中を見つめながらプレリーは無事に帰ってくることを願ったのであった。

「よう!ヴァン!!」

「っ!お前はもしかしてシュウか?」

大分背丈が伸びて雰囲気が変わったものの、間違いなく悪友のシュウである。

「久しぶりだなぁ!俺、ガーディアンになったんだぜ!」

「ガーディアンに……サボってないだろうな?」

「サボってねえよ!俺はいつだって真面目に仕事してるぜ!」

「どの口がそれを言うんだ」

ジルウェ・エクスプレスに所属していた時に何度もサボってジルウェを困らせていた問題児が何を言うのか。

「シュウ!そこにいたのか!?いい加減レポートを提出しろ!」

「あ、ちょっと待ってジルウェさん!今ヴァンと…」

「それよりも提出期限を守れ!あ、ヴァン。久しぶりだな」

「ああ、久しぶり先輩…シュウは相変わらずだな」

久しぶりに会った先輩にヴァンは笑みを浮かべた。

「相変わらず過ぎて困ってるくらいだ…背が伸びたな…今じゃあ、俺よりも高いんじゃないか?……雰囲気も落ち着いて…大人になったな」

「そう…かな…そうだといいな…エールも変わったのかな?」

「背も伸びて髪も伸ばして大分変わったな、雰囲気も変わって大人になったよあいつも」

「まあ、一部分は全く変わってな…!?」

「「どうした?」」

急に黙りこんだシュウにヴァンとジルウェが振り返ると、シュウが真っ青な顔で震えていた。

「い、いやー…何か凄まじい悪寒を感じてさ…」

「?まあいいや、俺も採石場に向かうんだ。それじゃあ」

「ヴァン!」

外に向かおうとしているヴァンを呼び止めるジルウェに、ヴァンは不思議そうに振り返った。

「たまには顔を見せろよ。司令官もエールもお前に会いたがってたからな」

「ああ、うん…分かったよ」

アルバートを倒せば、きっと全てが片付くのだろう。

それまでは頑張らねばならないと、ヴァンはガーディアンベースのトランスサーバーを利用してハンターキャンプの採石場に向かうのであった。 

 

第六十五話 モデルVの回収

 
前書き
ゲームのモデルZXって弱いですよね。

オメガみたいに全体的にスピードアップすればかなりの強いボスになれたでしょうに。 

 
場所は採石場に戻り、アッシュとグレイはイレギュラーの残骸を道標にしながら奥へと進み、シャッターを抉じ開けると、そこにはモデルVと、近くに青い制服を着た女性が佇んでいた。

「誰!?」

アッシュとグレイは万が一のことを考えて一度変身を解いてレーザーショットとバスターショットを構える。

そしてアッシュが問い詰めると、女性はゆっくりと振り返った。

「…こんなところに女の子に男の子…?一体どうやってここまで…」

振り返った女性は四年の経過で成長したエールであった。

そして彼女の所有しているライブメタル…モデルXとモデルZが飛び出した。

「エール…気をつけて、彼女達からライブメタルの気配がする」

「…感じた事のない気配…何者だ…?」

「ライブメタルを二つも!こいつもロックマンか!」

本来なら一つしか所有していないライブメタルを二つも持つ今までにない存在にモデルAが驚く。

「…くっ!モデルVから離れろ!」

自分達のミッションの目的を思い出したグレイがエールを牽制しようとする。

「どうやら先客みたいね、悪いんだけどそのモデルV、譲ってくれない?」

アッシュは一応対話での解決を試みるが、エールの表情は少し険しくなる。

「君達もこれに用があるみたいね。モデルVをどうするつもり?」

「これは僕らが回収する!お前らなんかには渡さない!」

「言い方を変えようかしら?アタシ達の邪魔をするなら力ずくでも退いてもらうわ」

それを聞いたエールは溜め息を吐いた後、再び二人を鋭く見据えた。

「…やっぱりか、じゃあ…仕方ないわね。モデルX!モデルZ!」

モデルXとモデルZがエールの元に向かい、二つのライブメタルを掴んだ。

「…行くよ!ダブルロックオン!」

「「適合者確認、R.O.C.K.システム起動開始」」

「一人で二つのライブメタルを!」

複数のライブメタルを同時に使うエールに驚くグレイ。

「悪いけどアタシも、モデルVを渡す気は無いの。君達がロックマンなら尚更…ね!」

光が収まった時には赤いアーマーと金髪を模したコードを靡かせたロックマン・モデルZXへと変身したエールの姿があった。

そしてZXセイバーをZXバスターに変形させるとそれを構えた。

「この姿は…!」

「ロックマン・モデルOに似てる…!」

モデルZXとなったエールの姿は二人にとって頼りになる先輩ロックマンであるロックマン・モデルOの姿のヴァンに似ていた。

そしてそれを聞いたエールは目を細める。

「モデルO…君達、あいつを知ってるのね。あいつはどこにいるの?答えてもらえるかしら?」

エールから放たれる凄まじい怒気にアッシュとグレイは顔を強張らせた。

「(こいつ…かなりヤバい相手ね…でもアタシ達だって相当レベルアップしてきたんだから!今ならヴァンにだってそこそこ戦えるはずよ!)さあ?それを聞きたいならアタシ達を倒すしかないわね」

「そう、なら力ずくで聞かせてもらうわよ!」

チャージを終えたセイバーを構えて突撃してくる。

「うわっ!」

咄嗟にかわすが、チャージセイバーの衝撃波の余波を受けたグレイが吹き飛ばされる。

「グレイ!」

エールに向けてレーザーを向けてリフレクトレーザーを発射するが、エールはセイバーでそれを両断して回転斬りを繰り出し、直後に地面に向けての下突きを繰り出す。

「エナジーフィシャー!!」

回転斬りはかわしたものの、追撃の下突きとそれによって吹き飛ばされた瓦礫の直撃を受ける。

「アッシュ!大丈夫か!?」

「ええ、大丈夫よ。ダメージは大したことないわ」

下突きは掠っただけであり、吹き飛ばされた瓦礫も大した威力ではない。

「スピードで撹乱しよう!トランスオン!!」

「トランスオン!!」

モデルHに変身したアッシュとグレイにエールは眉間に皺を寄せる。

「モデルH…!他のライブメタルの力を使えるって言うの?」

エアダッシュで距離を詰め、一撃を繰り出しては離脱していくアッシュ達にエールは間違いなくモデルHの力だと確信した。

エールもモデルHのこの機動力には何度も助けられたが、敵対するとかなり厄介だ。

「それっ!プラズマサイクロンH!!」

「当たれ!プラズマサイクロンV!!」

アッシュとグレイがダブルセイバーを振るって、前後に放たれる竜巻と、上下に放たれる竜巻がエールに迫る。

見覚えのある攻撃だが、エールがモデルHを使っていた時とは攻撃力が落ちている代わりに射程距離が伸びているようだ。

ダッシュジャンプでそれをかわすと、グレイとの距離を詰めて三連撃からのジャンプしながらの斬り上げを繰り出す。

「ライジングファング!!」

「うわっ!」

斬り上げと同時に正面に放たれる衝撃波をまともに受けたグレイは吹き飛ばされる。

「グレイ!」

「そこっ!!」

エールがバスターを構えてセミチャージバスターを発射し、そこからショットを連射していく。

アッシュはモデルLに変身し、チャージを終えたハルバードを振ると巨大な氷塊を作り出して攻撃を防ぐ。

「アイススティッカー!!」

そしてそれを砕いて破片をエールに直撃させると、直後に直撃した部分が凍結する。

「しまった…!」

「今よグレイ!」

「喰らえ、メガトンクラッシュ!!」

モデルFに変身したグレイがナックルバスターを構えて少しチャージするとエネルギーを纏ったパンチを繰り出す。

「くっ!」

何とか耐え抜いて、逆にチャージセイバーをグレイに叩き込んで吹き飛ばし、そしてアッシュにチャージバスターを当てる。

「っ!こいつ、強いわ…」

一つの武器で即座に遠近に対応出来るためかほとんど攻撃に隙がない。

「えいっ!!」

「よっと!」

ジャンプでエールのショットをかわしていくが、弾幕が激しくなり、アッシュの表情が険しくなる。

「(男の子のグレイって子の方よりもこの子の方が強いわね、多分戦闘の経験がアッシュって子の方が多いんだわ)」

「避けきれないわね…曼荼羅手裏剣!!」

即座にモデルPに変身して曼荼羅手裏剣による手裏剣のバリアを展開する。

「その技は…」

自分がモデルPを使っていた時には使えなかった技だ。

先程のモデルHとモデルL、モデルF、モデルPに変身した時も自分が使っていた時とは攻撃性能に差があるので、自分の知識を当てにしない方が良いと判断する。

「アッシュ、大丈夫か?」

「ええ、でもこいつ…他のロックマンの力を使ってようやく戦えるくらいに強いわ…そして全然本気を出してない」

アッシュの勘だが、恐らく当たっているだろう。

こちらが息を切らしてるのに対して向こうはまだ余裕がある。

「行くわよ!」

セイバーを構えて突撃するエールに対してグレイはモデルHに変身して迎え撃つ。

「下がるんだアッシュ!」

グレイが前に出てエールのセイバーを何とか受け流していく。

まともにやり合えば力負けするからだ。

アッシュはモデルFに変身し、ナックルバスターを構えてショットを連射する。

「っ!」

放たれたショットの軌道が変化し、エールは一旦攻撃を中断して距離を取ると、かわしきれない物はセイバーで両断する。

「今だ!」

エアダッシュで距離を詰めてセイバーを振るうグレイだが、エールはグレイの腕を掴んで防ぎ、そしてセイバーを横薙ぎする。

「残念」

「グレイ!」

胸に深い傷を負ったグレイが倒れる。

「確かに中々のコンビネーションだけど、まだまだ無駄が多いわね。君達よりももっと厄介なコンビネーションをする連中と戦ったことがあるしね」

脳裏に過ぎるのはプロメテとパンドラ。

あの二人の連携と比べればアッシュとグレイの連携は対処しやすい。

「(まずいわね…このままじゃ…)」

「早くこの場から去りなさい。もう二度とモデルVには近寄らないことね。これは君達のような子供が触れていいものじゃないわ」

エールの子供扱いするような言い方にアッシュはカチンと来た。

「あーら、ちょっと年上で強いからって上から目線?偉そうに…生憎アタシはね…負けられないのよ!」

ロックマン・モデルAに戻ってレーザーを向けると、レーザーサイトを出してエールをロックし、ホーミングショットを発射する。

「(速い!)」

弾速の速さに目を見張るが、エールはセイバーでホーミングショットを両断して次の攻撃に備えた。

「なら、これでどう!?」

次々にエールの知らないフォルスロイドに変身して攻撃を繰り出していく。

しかしエールもまた歴戦のロックマン。

例え知らないフォルスロイドの攻撃であろうとも難なく捌いて見せた。

「……無駄撃ちは止めなさい。先にガス欠を起こすのは君の方よ」

ディアバーンの炎の矢をセイバーで弾きながらエールはアッシュに告げる。

「涼しい顔して…!頭に来るわね…!」

どんな攻撃を繰り出そうが、容易く攻撃を捌いていくエールにアッシュは圧倒的なまでの経験の差を感じた。

そしてエネルギーが底を尽き、特殊・チャージ攻撃が使えなくなってしまい、エールはセイバーを構えてアッシュに突撃した。

「悪いけど、気絶してもらうわ」

「っ!!」

「アッシュ!!」

セイバーの光刃がアッシュに迫り、アッシュは思わず目を閉じたが、いつまで経っても痛みは感じなかった。

目を開けると、紫色のセイバーの光刃がエールのセイバーを受け止めていたのだ。

「ギリギリ間に合った…!」

「「「ヴァン!?……え?」」」

エールとアッシュ達がいきなりのヴァンの乱入に驚き、そして三人が同時にヴァンの名前を叫んだことに三人は更に驚くことになる。

「あー、取り敢えず三人共、落ち着いてくれ」

「落ち着けるわけないでしょ!!」

久しぶりの幼なじみの登場にエールは今までの鬱憤を晴らすかのように爆発した。

「勝手にいなくなったかと思えば旅に出てるし、プレリーへの通信が最近滞ってるし!一体どこで遊んでたのよあんたはぁっ!あの子達と一緒にいるの!?この忙しい時に一体今まで何してたのよぉっ!?」

武器を手放してヴァンに掴みかかり、頬を思い切り引っ張るエールにアッシュとグレイとモデルAは引く。

「あー、分かった分かった。分かったから頬を引っ張らないでくれ。痛い痛い」

「…な、なあ…知り合い…か?」

混乱しているアッシュとグレイに代わってモデルAが尋ねる。

「ああ、こいつはエール。四年前の戦いで一緒に戦ったロックマンで俺の幼なじみだ。」

ヴァンがエールとの関係を伝えると、アッシュは目を見開いて驚愕する。

「幼なじみーっ!?……ヴァンにも幼なじみっているんだ。そして幼い時代もあったんだ。意外」

「…どういう意味だ?お前は俺を何だと思ってるんだ?」

アッシュの失礼な言葉に表情を顰めるヴァン。

“幼なじみ”の意味が分かっていないグレイは疑問符を浮かばせている。

「幼なじみって何だ?」

「小さい子供の頃からの付き合いってことよ」

グレイの疑問にアッシュが答えると、エールが武器を手放したことで戦意喪失と見なされたのか、モデルZXのデータがモデルAに吸い込まれていくのであった。 
 

 
後書き
モデルOのデータはコピー出来ません。

ライブメタルと一体化した存在からはデータを抜き取れない設定。 

 

第六十六話 二人の先輩ロックマン

ヴァンの乱入によって誤解が解け、モデルAにモデルZXのデータが吸い込まれた途端に四人の脳裏にアルバートのレポートデータが展開された。

次の瞬間、四人の体が苦痛に襲われる。

「きゃあああああぁぁっ!」

「うあああああぁぁっ!」

「ぐあっ…な…何だ…これは…!?」

「きゃああっ!な…何…これ…!?」

アッシュとグレイは苦痛に絶叫し、絶叫はしなかったが突然のことに動揺するヴァンとエール。

「共鳴している…!?奴のライブメタルのせいか!」

「気をつけて!エール!彼女達のライブメタルからデータが流れこんでくる…!」

モデルXの声が聞こえるが、それどころではない。

《コードAC196からTC2343までを解放、レポートデータ展開》

《これが最後のプロテクトとなる。計画の全てを知った君は、究極のライブメタルを手にする権利がある。各地で眠るモデルV達は、人々の恐怖を喰らいつつ覚醒の日を待っている。そして、全てのモデルVが一つとなった時…究極のライブメタルが誕生する。その名はウロボロス…ウロボロスを手にした者こそが、人と機械を超える進化の果てにいる者…私が追い求める究極のロックマンとなるのだ。我が名はマスター・アルバート、世の理を定める三賢人の一人にして…新たな世界、新たな命を創造せんとする者。いつの日か、私の研究が進化の地平を切り開かん事を願う》

レポートデータの展開が終わるのと同時にヴァンを除いた全員の変身が解け、四人は膝を着いた。

「「ウロボロスと究極のロックマン…それがアルバートの計画…!」」

「これが…他のロックマンを倒すと展開されるアルバートのレポートか」

アッシュとグレイから前回のレポートの内容を全て聞いていたのでヴァンは混乱することはなかった。

しかしエールからすれば突然苦痛に襲われてわけの分からないレポートを見せられたので混乱している。

「今のは…?」

「マスター・アルバート…レギオンズ三賢人の一人でモデルVを作った男だ。そして、今のイレギュラーの大量発生は奴が原因なんだ…とうとう今までの黒幕が動き出したんだよ」

ヴァンの説明を聞いてエールの表情が引き締まり、最後の戦いが近付いていることを悟った。

「そうか…やっと分かった…何でオイラが作られたのか、何でアッシュとグレイが、オイラで変身出来るのか…」

それを聞いたアッシュとグレイがモデルAに振り返った。

「モデルA…?今、何て…?」

「モデルA!?思い出したのか!?僕の事も知っているのか!?」

自分の正体が分かるかもしれないと言う期待からか、モデルAに詰め寄るアッシュとグレイ。

「そ…それは…」

言いにくそうにするモデルAだが、直後にモデルVが戦いの衝撃に耐えきれずに落下してしまう。

「しまった…!モデルVが」

「戦いの衝撃に耐えきれなかったか」

モデルXとモデルZの言葉にエールとヴァンは表情を顰めたが、アッシュとグレイはモデルAを問い詰めていた。

「教えて!モデルA!あんた一体何を知っているの!?」

「モデルA!僕は一体誰なんだ!」

「ごめんよ…今は…まだ言えない…」

「「モデルA!」」

モデルAは答えようとはせず、アッシュとグレイは更にモデルAに詰め寄りそうになったが、エールとヴァンに止められた。

「止めなさい!ライブメタルが可哀想よ。今はそれどころじゃないでしょ?こうしてる間も、モデルVはイレギュラーを増やしているわ。また近付くのが大変になる」

「モデルAにも話したくない理由があるんだろ、無理やり聞き出すような真似は止めるんだ。相棒の意志を無視するようならお前達もモデルH達を利用しているヘリオス達と何も変わらないぞ。今、俺達がやらないといけないことは何だ?」

「…………」

「マスター・トーマスに言われたようにモデルVをアルバートの手に渡らないように回収すること…」

エールとヴァンの言葉にグレイは沈黙し、アッシュは自分達がここに来た理由を呟く。

「ここから先は俺とエールで行く。お前達はここで頭を冷やしていろ…エール、手を貸してくれ」

「勿論、アタシに遠慮なんかしないでよ」

「ありがとな…アッシュ…グレイ…お前達の正体っていうのは、相棒の意志さえ無視してまで知らないといけないことなのか?お前達はお前達だ。わけの分からない“過去”や予想のつかない“未来”よりも、今必要なのは“現在(いま)”じゃないのか?」

アッシュとグレイを残してヴァンとエールはモデルVの元へ向かっていった。

「それにしても…昔と変わらないなエール」

「む、どういう意味よ?アタシだって髪を伸ばしたり背が伸びたり大人になったんだからね!」

「ああ、大人になったよ。昔のお前ならきっとアッシュとグレイをきつく怒鳴っていただろうしな」

四年前のエールならば、先程のような対応ではなく、感情的になって怒鳴っていただろう。

あのような大人の叱り方が出来るようになったことに時の経過を感じた。

「……あんたが旅に出てから、運び屋にも新しい後輩が来たのよ…アタシ達のような子もね…そういう子と接するには感情的になるのは駄目なのよ。」

「ああ、分かってる。俺が言いたいのは…昔と変わらず優しいままでいてくれたってことだよ。大人になって優しさに磨きがかかったって言うか」

「ふふ、ヴァンは落ち着いた大人の男性って感じになったわね。でも根っこの方は変わってないのは分かるわ」

「そうか?とにかくモデルVを破壊してアッシュ達の所に戻るぞ」

「ええ」

ヴァンとエールがそれぞれアルティメットセイバーとZXセイバーでイレギュラーを薙ぎ払いながら採石場を駆け抜けて行った。

一方、残されたアッシュとグレイは地面に座って二人の帰りを待っていた。

二人に言われたことで、少しだけ冷静になれたアッシュとグレイは気まずそうにしているモデルAに振り返った。

「アッシュ…グレイ…オイラ…」

「さっきはごめんね、モデルA…アタシ、どうかしてた。ヴァンの言う通りだわ。アルバートにとってアタシがどうだろうと、アタシはアタシだもの、知らない過去なんてどうでもいい。これからのアタシの物語はアタシが作るんだ」

「僕もごめん、僕が何者かとか、そんなのは関係ない事だったんだ…僕はこの力で…僕を助けてくれたアッシュやみんなのために戦いたい。モデルA…僕達の事は話したくなった時に話してくれれば、それでいいよ」

程無くして採石場全体が震えたかと思えば、しばらくしてヴァンとエールが戻ってきた。

「モデルVは?」

「跡形もなく破壊した…メカニロイドと融合したから回収は出来なかった…頭は冷えたか?」

グレイの問いにヴァンはさらりと答える。

尤もヴァンは依頼に関係なく、モデルVを元から破壊するつもりだったのだ。

口にするつもりはないが、レギオンズはアルバートがいた組織なのだからモデルVを安心して渡せるわけがない。

「そっか……頭なら冷えたわよ…ごめん」

ヴァンの考えなど知らないアッシュは納得すると、先程の件を詫びた。

「僕もごめん」

「ふふ、二人共意外に素直なんだね」

「“意外に”は余計よ」

「…馬鹿にするなよ」

からかわれたと思ったのかアッシュとグレイはむっとなるが、エールからすれば怖くもなく、寧ろ可愛いものである。

「それにしても、ヴァンの幼なじみだっけ?あんたは何でモデルVと戦ってるの?」

「あのねえ、初対面の相手に“あんた”はないでしょ?後、人を指差さない。アタシの名前はエール、この青いライブメタル…モデルXのロックマンよ。こっちの赤いのはモデルZ、これはアタシのじゃなくて大切な人の預かり物なの…ヴァンから聞いたけど、アタシも君達と同じ。わけの分からないうちに戦いに巻き込まれてね、イレギュラーやモデルVとの戦いで大切な人をたくさん失ったの」

自分を指差して尋ねてくるアッシュに溜め息を吐きながらかつての過去を語るエール。

「復讐…か」

「ううん…アタシ達のように苦しむ人を増やしたくないだけ、だから決めたの。運命のゲームを終わらせるためにモデルVを全て破壊しようって、みんなを守るためのロックマンになろうって決めたんだ………お節介かもしれないけど、一人の人としての、ロックマンの先輩として、君達に一つアドバイス…君達の運命は君達だけが決められる。正体が何者でも関係ない、君達の力は、君達だけの未来を掴む力なんだよ」

「僕の運命…僕だけの未来…」

「ヴァンにも言えるけど、よくそんな台詞を真顔で言えるわよねぇ…でもそうね…ありがと」

「あ、そうだ。君達にこれをあげるわ」

エールが渡したのは緑色のカードキー。

「「これは?」」

「そのキーで行けるエリアにフォルスロイドの反応があるわ。後でアタシが調べようと思ってたんだけど、君達が持っていた方が良さそうね。アタシ達は仲間のところに戻るわ、奪われたライブメタル…モデルH達を追わなきゃ、お互い、同じ敵を追っているなら、またどこかで会うかもね…さあ、ヴァン。アタシと一緒にガーディアンベースに……あれ?」

ヴァンをガーディアンベースへと連れていこうとしたのだが、幼なじみであるためにエールの考えなど気付いており、ヴァンはこの場から去っていた。

「ヴァンならお前が語ってる間に外に出ちまったぞ」

「何ですって!?またあいつは勝手に~っ!今度こそ逃がさないんだから!!」

モデルAの言葉に今までの大人びた表情は失せ、エールは顔を真っ赤にして飛び出していった。

唖然となる二人だったが、トーマスから通信が来た。

『ミッションご苦労だった。回収出来なかったのは残念だが…モデルVの一つが破壊された事で、アルバートの計画にも狂いが出ているはずだ。何とか、このチャンスに奴を追い詰めたいのだが、残念ながら手掛かりはない。新しいキーを使ってまだ行っていないエリアへ行けば何か分かるかもしれん。頼む、アッシュ君、グレイ君。後は君達だけが頼りなのだ』

トーマスからの通信が切れ、このままここにいても何なので、採石場を後にするのであった。

そして採石場を後にしたアッシュとグレイはヴァンがどこに消えたのかと、周囲を見渡したがどこにもいないことに疑問符を浮かべた。

「ヴァン、どこにいったんだろう?」

「エール、凄い形相だったからねぇ。きっとどこかで隠れてやり過ごしてんじゃない?」

「化け物みたいに強いけど幼なじみって奴には弱いんだな。ある意味最強のロックマンってエールじゃないのか?」

モデルAの言葉に思わずアッシュとグレイは吹き出した。

「言えてる~っ!」

「確かに…」

「楽しそうだな」

「「「え?」」」

背後からの冷たい声に全員の表情は強張るが、次の瞬間に頭に衝撃が走り、目の前が一瞬真っ白になった。

「「~~~っ」」

「ア、アッシュのパンチより強烈だぜ…」

頭を抱えて蹲るアッシュとグレイ、そしてフラフラしているモデルA。

「少し姿を消していただけで良くそこまで言えるな」

「……な、何で姿を消してたんだ?」

「…これ以上エール達と一緒にいたら名残惜しくなるからな……会いたい奴には会ったし、話したいことも話しておいた。最後のレポートに関してもエールがプレリーに話してくれるだろ」

「…別に一緒にいてもいいんじゃない?」

「別行動をしている方が色々と動きやすいからな。プレリーの…あいつの所に帰るのは全てが片付いてからだ。アッシュ、グレイ。俺は俺なりにアルバートの居場所を探ってみる。お前達は他の場所を頼んだぞ」

ダッシュでこの場を去るヴァン。

取り敢えず頼りになる先輩が味方でいてくれるという事実はアッシュとグレイにどこか安心を与えた。

「あー、そうだ。モデルZXのデータをコピーしたからモデルZXに変身出来るようになったぞ。特殊な移動能力や属性は持たないけどエネルギーの燃費や攻撃力、セイバーとバスターのおかげで攻撃の範囲が広いからどの状況でも問題なく戦えるぞ。セイバーのチャージ攻撃はチャージセイバー、バスターのチャージ攻撃はチャージバスターだ。能力差はほとんどないけど、使える技が違うな、アッシュは滞空技のライジングファング、高い所にいる敵に有効だ。正面に衝撃波を飛ばすから前にいる敵の足止めも出来るぞ。グレイは対地技のエナジーフィシャー、自分の真下にいる敵に攻撃出来る技なんだ。威力が低いけど周囲に瓦礫を吹き飛ばすから囲まれた時にも使えるかもな」

ようするに他のロックマンよりバランスが良く、状況を選ばずに戦えるオールラウンダーと言うことなのだろう。

使い勝手の良い変身が出来るようになったことは素直にありがたいと思う。

実質敗北のようなものだが、エールがヴァンに注意が向いたことで戦意喪失したと見なされたのが助かった。

早速、アッシュとグレイはモデルZXに変身すると、ZXセイバーを数回振ってZXバスターの試射をする。

「うーん、かなり使い勝手が良さそうね。おまけにこの髪みたいなコードって本当に髪のようだわ。結構お洒落なロックマンなのね」

試しに触れると本当に髪の毛のように感じるくらい上手く再現されている。

「アッシュ、このカードキーを使って早速行ける所に行こう」

「まあ、待ちなさい。急いでは事を仕損じるわ…まずは腹ごしらえよ」

良く良く考えれば最近はまともな休息を取っていない。

食事だってほとんど携帯食で済ませているし、たまには温かい物が食べたい。

「……そうだね」

グレイも同意見なのか、アッシュに何も言わずに頷いた。

「さーて、今日は何を食べようかしら」

今まで頑張ったのだから今日くらいは贅沢してもいいだろう。

今日のハンターキャンプの食堂のメニューは確か…。

オムライス。

カレーライス。

パスタ系。

ラーメン系。

日替わり定食…etc。

デザートにアイスなども頼むのもいいかもしれない。

二人は吸い込まれるようにハンターキャンプの食堂へ向かっていった。

そして時間は少し戻り、ガーディアンベースに戻ったエールは不機嫌そうな顔で司令室であるブリッジに入り、上機嫌のプレリーに迎えられた。

「嬉しそうだね」

「そう?久しぶりにヴァンに会えたからかしら?」

そうやって頬を微かに赤らめながら言うプレリーは同性のエールから見ても素直に可愛いと思った。

「ヴァンったら、ここに来たんだからそのまま残れば良いのに」

「一人の方が動きやすいようだから仕方ないわ」

「プレリーはヴァンに甘すぎ!もう少し厳しくしないと!!」

「う~…でも…」

頭を抱えるプレリーにエールは溜め息を吐きながら端末を弄ってハンターキャンプにいるアッシュとグレイの二人の姿をモニターに映す。

「あ、映った映った」

「この子達がヴァンの言っていたロックマンなのね」

モニターに顔を向けるプレリーの言葉にエールは頷いた。

「ええ、頼りになりそうな子達だったわ」

そして二人がトランスオンでモデルZXに変身した時、司令室がざわついた。

「これは…」

「アタシも初めて見た時は驚いたわ、まさかダブルロックオンまでコピー出来るとは思わなかったけ…」

「エール?」

不自然に言葉を切ったエールにプレリーが疑問符を浮かべるが、エールの視線を見るとモデルZXに変身したアッシュに向けられていた。

やはり自分の使っている力をコピーされると言うのは複雑なのだろうか?

いや、それならグレイにも視線が向けられているはずなので、良くモニターを見てみるとアッシュの一部分をエールが凝視していることに気付いて赤面した。

「<●>ω<●>…あの子…見た目からして多分、アタシがロックマンになったのと同じくらいの年齢だよね…」

「え、ええ…多分」

エールの表情が怖く、プレリーの表情が引き攣っているが、エールは構わずアッシュの一部分を凝視する。

「<●>ω<●>…あの時のアタシと同じくらいなのに何なのこの差は?黒幕の…アルバートにとって特別だから?体も特別だって言うの?」

「い、いや…それは個人差だと思うけど…あ、あまり気にしない方が良いわ。人それぞれだもの」

「<●>ω<●>…ねえ、プレリー…プレリーが言うと嫌味にしか聞こえない」

出るところは出てて、締まるところは締まってるプレリーが言うとエールからすれば嫌味にしか聞こえない。

「なあ、エール?何を見てんだよ?」

「<●>ω<●>…うるさい、あんたには関係ないわよ」

運び屋時代からの悪友であるシュウを一蹴するが、シュウがモニターを見ると、エールの不機嫌な理由を察したようだ。

「ああ、胸か。気にするなってエール、サイズがどうだろうとジルウェさんはそんなの気にしないって!あの子が肥えた土地だとすればお前は枯れた土地だからどうしようもない…イギャッ!?」

シュウの顔面にエールの鉄拳が炸裂し、エールは鬼のような形相でシュウの頭を鷲掴み、そのままブリッジを後にした。

残されたプレリー達は連れていかれたシュウの冥福を祈るばかりである。 

 

第六十七話 滝の遺跡

 
前書き
アーゴイルとウーゴイル戦 

 
腹ごしらえを終え、ガーディアンベースでの騒動など知ったことではないアッシュとグレイは早速エールから受け取ったカードキーを使っていくつもの滝が流れているために“滝の遺跡”と呼ばれる遺跡へと足を運んでいた。

「流石、滝の遺跡と呼ばれるだけあってたくさんの滝があるわねー」

大小の差はあれど、いくつもの滝があるのは壮観だ。

「水場もあるからモデルLへのトランスオンを使う必要がありそうだ」

グレイが周囲を見渡しながら言うと、ミハイルからの通信が入った。

『儂じゃ、ミハイルじゃ。以前にレギオンズで調べた、お前さん達のデータの事じゃが…どうもデータベースを外部からハッキングして、データを消した者がいるようじゃ』

「どうせアルバートの仕業だろ」

二人のデータを外部から消すような真似など、アルバートかその仲間くらいのものだろう。

『恐らくな、ハッキングの元を出来る限り辿ったんじゃが、今、お前さん達がいるエリアのネットワークの反応が消えているんじゃ。その辺りで、大きなコンピュータ施設は見えんかね?』

「コンピュータ施設?ここからじゃ分からないな」

周囲を見渡しても、見えるのは滝くらいでそれらしいものは見当たらない。

『ふむ…こちらでの追跡はこれ以上は無理じゃ、後はお前さん達に頼るしかない。ハッキングに使ったコンピュータになら、まだデータが残っとるかもしれん。お前さん達のデータはアルバートを追うための、数少ない手掛かりなんじゃ。』

「アタシ達のデータが残されたコンピュータか…とにかく、怪しそうな場所を探してみるわ」

しばらく進むと社のような場所に入ると、二人の前に二体の…恐らくフォルスロイドが姿を現した。

「待たれよ!ここから先は何人たりとも通る事は許さぬ!」

「………うぬ!」

「フォルスロイドが二人…!アルバートの仲間ね!?」

アッシュとグレイはロックマン・モデルAに変身してレーザーショットとバスターショットを構えた。

「左様!我が名はアーゴイル!そして!」

「………うぬ!」

「我が半身、ウーゴイル!我らはアルバート様の命により、この地を守りし者なり!」

アーゴイルとウーゴイルと言うフォルスロイドが二人の前に立ちはだかる。

「なるほど、って事はハッキングに使ったコンピュータはこの先だな」

「笑止!貴様らに我らの守り、崩せると思うてか!」

「………うぬ!」

「さあ、参られよ!ロックマン・モデルA!冥土への旅路、我らが案内してやろう!」

「………死ねい!」

アーゴイルとウーゴイルが脚部のローラーで駆け回り、アッシュとグレイにエギーユグローブと言う球を蹴り飛ばしてくる。

「グレイ!新戦力の試運転よ!」

「うん!」

モデルZXに変身し、ZXセイバーを構えていつでもチャージバスターを放てるようにチャージしておく。

球をかわしながら、突撃してくる二体にセイバーによる回転斬りを叩き込む。

「ぬあっ!?」

「うぬっ!?」

背中に深い裂傷を受けたアーゴイルは体勢を崩し、ウーゴイルは何とか耐える。

「「当たれっ!」」

即座にセイバーをZXバスターに変形させてそれぞれにチャージバスターを直撃させる。

「(凄い…二つのライブメタルを使ったロックマンだけあって凄く戦いやすいし…何より強いわ)」

「(これだけ強い力を使いこなしていたのかエールは…手加減されてなかったら簡単に負けていたな)」

モデルZXの攻撃性能と武器の使い勝手の良さにアッシュとグレイは舌を巻いたが、とにかく目の前の敵を倒すことに集中する。

「それっ!!」

セイバーで球を弾きながらアッシュがアーゴイルに連続で斬りつけ、グレイがウーゴイルにチャージバスターでダメージを与えていく。

「己!」

「ライジングファング!!」

三連擊に耐えてアーゴイルは球を蹴ろうとするが、直後にジャンプによる斬り上げを繰り出して回避と同時にダメージを与える。

グレイはこちらに飛んできた球をジャンプでかわしながら地面にセイバーを向けて降下する。

「エナジーフィシャー!!」

地面を穿ち、衝撃によって瓦礫が吹き飛んでウーゴイルが球を受け止めるのを妨害する。

「うぬっ!?死ねいっ!」

ローラーダッシュによる体当たりを繰り出してくるウーゴイルに、グレイはセイバーで迎え撃つ。

「(こいつらは二体掛かりで戦うことを前提にしているんだ!だからコンビネーションさえ取らせなきゃ弱い!!)」

グレイの予想はアッシュもついていたのか、アーゴイルと合流させないようにしている。

「グレイ!纏めて倒すわ!」

「分かった!トランスオン!」

グレイがローズパークに変身し、両腕の蔓を伸ばしてアーゴイルとウーゴイルを拘束して一纏めにする。

「「ぬうっ!?」」

「これで、とどめぇ!!」

セイバーを構えてダッシュジャンプからの回転斬りで二体同時に両断するアッシュ。

「己っ…!我らの…連携が破られるとは…!」

「………ぬうっ…!」

「だが…所詮、出来損ないの貴様らに…この戦いは生き残れん…ぐっ…ぐぐっ…!」

「ぐあああああああっ!」

グレイは二体が爆発する前にローズパークの変身を解除し、即座に距離を取ったことで爆発に巻き込まれることはなかった。

アーゴイルのデータをコピーしたモデルAはアーゴイルの残骸を見ながら口を開いた。

「番人にフォルスロイドを置いておくなんて、余程この先は見られたくないらしいな」

「一流ハンターの勘を甘く見ないで欲しいわね。さあ、行くわよっ!グレイ!」

「ああ、コンピュータはこの先だ。行こう!」

アッシュとグレイはコンピュータ施設へと向かっていく。

しかし、アルバート側も侵入を予想していたのか、遺跡はかなり複雑であり、中々思うように先には進めなかった。

陸でも水場でもかなりイレギュラーやトラップが進路を塞いでおり、先に進むだけでも一苦労である。

広範囲のサーチが可能なモデルLへの変身が出来なければ確実に目的の施設へは到達出来なかったであろう。

イレギュラーとトラップを掻い潜り、いくつものシャッターを抜けた先にコンピュータ施設らしき場所に到着した。

「ここね…」

「ここに僕達のデータがあるのか…」

シャッターを抉じ開けて施設内に入ると、木の形状をしたメカニロイドが立ち塞がる。

「そこを…」

「どけえっ!!」

アッシュとグレイがモデルFへと変身し、ナックルバスターを構えてメカニロイドが落としてくる葉や自分達を拘束する根をかわしながらメカニロイドのコアに当たるように軌道を変化させたショットを絶え間なく浴びせると、メカニロイドはあっさりと沈黙した次の瞬間、奥から爆発音が聞こえた。

「い…今のは…爆発音!?」

「まさか…!」

「この先から聞こえたわ!行ってみよう!」

部屋の奥にあるシャッターを抉じ開けて次の部屋…メインコンピュータルームに入ると、二人の視界に壊れたコンピュータと、プロメテとパンドラがいた。

それを見たアッシュとグレイはモデルZXへと変身してアッシュがセイバーを、グレイはバスターを構えた。

「コンピュータが…!…あんた達がやったの!?」

振り返ったプロメテはアッシュとグレイのモデルZXの姿に意外そうな表情を見せた。

「ほう、どんな方法を使ったのかは知らないが、モデルZXのロックマンにも勝ったのか。余程手を抜かれていたか、それとも不意を突いたのか…まあいい、その通りだ。計画は最終段階に入った…。もうハッキングの必要はないが…お前達に自分の事を知られるわけにもいかないんでな、奴以外の五人ものロックマンに勝ったお前達に、今更リタイアは許されないのさ」

「何だと…!」

表情が険しくなる二人だが、それに意を介さずにパンドラが口を開いた。

「…あなた達を生かしておいたのは…全て…私達の計画のため…もうすぐ…全てが終わる…滅びの運命が…終わる…全てが…滅ぶ…」

「クックックッ…そうだ…アルバートが始めた…下らんゲームがついに終わるんだ…奴自身の死を以てな!」

プロメテの言葉にアッシュとグレイの目が驚愕で見開かれる。

「アルバートの…死!?何であんた達が…!?」

「お前達は…アルバートの仲間じゃないのか!?」

困惑する二人をパンドラは冷たく見据え、プロメテは嘲笑を深めた。

「全てが終わったら話してやるさ…お前達の死に際にでもな!ハーッハッハッハッハッ!」

「…また…会いましょう…」

二人は転送の光に包まれてメインコンピュータルームから去っていった。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!…あいつら…何をするつもりなの…!?」

「何だろう…凄く嫌な予感がする…」

不吉な何かが起こりそうな予感がしたグレイは不安そうにプロメテとパンドラがいた場所を見つめる。

そしてモニターで様子を見ていたミハイルが二人に通信を繋げる。

『何じゃ、何じゃ?奴らはアルバートの手先じゃなかったのか?コンピュータの方はどうなんじゃ?何も残っておらんのか?』

破壊されたコンピュータを調べると、唯一無傷のデータファイルがあった。

「…これは…?データファイル?…他には何もないみたい」

『…そんなに気を落とすな。データなどなくとも、お前さん達は紛れもなくこの世界の住人じゃ。奴らがお前さん達に見られまいとデータを消したのが一番の証拠じゃろう。残っていたデータはこちらで調べてみるとしよう、後でミッションレポートと一緒にこちらへ送ってくれ』

皮肉屋であるミハイルが珍しく二人を慰めるように言い、ミッションレポートと共にデータを送るように伝えた。

「「了解」」

奥の部屋のトランスサーバーを使ってレギオンズ本部にデータをレポートと共に提出し、一度ハンターキャンプに戻るのであった。 

 

第六十八話 謎の研究所

 
前書き
謎なのに何で序盤とかでハンターに見つかるんだろうか? 

 
滝の遺跡から戻ったアッシュとグレイは他に緑のカードキーで通れるエリアはないのかとハンターの人々に尋ねたのだが、あまり良い結果は得られなかった。

「はあ、まさかこのカードキーで通れるエリアってあの遺跡だけなんてないわよね」

「どうだろう…もしかしたら封鎖されてしまったのかもしれないし…」

あまり良い状況ではないために二人は溜め息を吐いた。

「仕方ないわね、歩いて見つからないなら空から探しましょう。違法ハンターだった連中から拝借した小型艇でね」

「…そうだね」

小型艇のある海岸に行き、二人は乗り込んで空から探すことになった。

「…プロメテとパンドラ…何を企んでるのかしら?」

「どうせ、ロクでもないことに決まってるだろ」

アッシュの言葉にモデルAが答える。

「そうだね…あいつらは何かを企んでる…とてつもなく恐ろしいことを…」

グレイが俯きながら言うと、トーマスから通信が入った。

『こちらトーマスだ。聞こえるかねアッシュ君、グレイ君』

「マスター・トーマス?何の用なの?悪いけどアルバートの手掛かりになりそうなのは見つからないわ」

『そうか…だが、私が君達に通信をよこしたのはそれだけではない。君達の近くで特殊な電波が発せられている場所があってな。レギオンズの最新のレーダーでようやく探知出来る特殊な妨害電波がね…君達の近くにそれらしい建物は見当たらないか?』

「「「建物………あ!?」」」

下の島の異変に気付いたアッシュはモニターをクローズアップし、落下した異邦人ハンターの飛行艇の残骸や見覚えのある土偶型メカニロイドの残骸を発見した。

「怪しいわねー、ここに何かがあるってアタシの一流のハンターの勘がそう言ってるわ」

「アッシュ、小型艇をあそこに降ろしてくれ」

「OK」

小型艇を降下させてロックマン・モデルAに変身すると、辺りを探し回る。

すると、イレギュラーの群れを発見した。

「イレギュラーだわ」

「追い掛けよう」

ステルス性能の高いモデルPに変身してイレギュラーを追いかけると、そこには橋が破壊された建物があった。

「…っ!見覚えがある…あれは僕が眠っていた建物だ…」

「へえ…お前、こんなとこに閉じ込められていたのか」

「でも橋が壊れてるわね、何があったのかしら?」

「橋の上で、大型のメカニロイドと戦ったんだ。倒して、そのメカニロイドの爆発で橋が壊れて…僕は…」

「あの海岸に打ち上げられたってわけね」

この建物がグレイがいた場所だと言うのなら確実にアルバートに関係がありそうだ。

調べてみる価値は充分あり、モニターから様子を見ていたトーマスが通信を繋げてきた。

『なるほど、グレイ君がここでロックマンとしての調整を受けていたのならば、アルバートの秘密の研究所…と言ったところか。我々に見られては困る物があるのかもしれんな、アルバートの計画に関する手掛かりがあるかもしれん。調べてみてくれないか?』

「秘密と聞いたらハンターとして黙ってられないわね。宝探しと行こうじゃない」

「見つかるのが宝だと良いんだけどな…何か嫌な予感がするぜ…」

奥のシャッターを抉じ開けると、古い建物であるためか、パイプから有害なガスが噴き出している。

「うわ…臭いわ」

「アッシュ、このガスに触れるとダメージを受けるから気を付けて」

一度この建物から逃げる時、油断してガスを浴びてしまった経験者が言うと、アッシュも頷いた。

「取り敢えず穴を塞いで進みましょう」

アッシュはモデルLに変身し、氷でガスが噴き出ている穴を塞ぐ。

グレイはバスターショットを構えて自分達に攻撃してくるイレギュラーを返り討ちにしながらアッシュと共に先へと進んでいく。

そしてモデルLのサーチ能力で迷うことなく次の場所に繋がるシャッターを発見し、開けて通ると、そこには二つの大型のカプセルがあった。

「これ…僕が入っていたカプセルと同じだ…」

「おい、パネルに何かメッセージが出てるぜ」

「本当?どれどれ、DANー001:プロメテ。再調整までの活動限界時間、246924秒。DANー002:パンドラ。再調整までの活動限界時間、246939秒…プロメテとパンドラの名前があるわね」

メッセージにはプロメテとパンドラの名前があり、それを聞いたグレイもパネルを凝視する。

「と言うことは、これはプロメテ達のカプセルか!あの二人もここで作られたのか」

「なあ、もしかして…オイラのデータにあった兄妹のレプリロイドって…アルバートが最初に作った二人のロックマンってプロメテ達の事じゃないか?」

「「…!」」

モデルAの言葉に二人は目を見開き、モニターで状況を見ていたトーマスが通信を繋いできた。

『…それで間違いないだろう。このカプセルは恐らく、彼らを繋ぎ止める鎖だ。アルバートの計画に逆らえないようにするためにな』

「「鎖?」」

『パネルのカウントはプロメテ達の寿命だろう、かなり短く設定されている。定期的にカプセルでの調整を受けなければ、死んでしまう…そういう仕掛けだ』

「調整を受けるにはアルバートに従うしかないって事か、酷い事するぜ」

それを聞いたモデルAが苦々しげに吐き捨てると、トーマスが指示を飛ばす。

『建物はまだ奥に続いているようだな、まだ何か残されているかもしれん。調査を続けてくれ』

奥のシャッターを開けて、立ち塞がるイレギュラーを返り討ちにしながら更に奥のシャッターを抉じ開けて部屋に入ると、何かが転がるような音が聞こえてきた。

そして二人の前に黄色い針鼠型のフォルスロイドが姿を現した。

「何よ何よっ!この先は閉鎖中なのよっ!誰も通すなってアルバート様からの命令を遂行中なのよっ!」

「へえ、アルバートが…良いことを聞いたわ。そう言われるとますます気になるのよね!そこを退いてもらうわ!」

「何よ何よっ!何このテスラット様の忠告を無視してるのよっ!あんたなんか処刑よっ!電気ショックの刑なのよっ!アルバート様の命令は絶対なのよっ!」

テスラットは電気を纏いながらアッシュとグレイに襲い掛かるのであった。

一方、ある場所でアルバートを探していたヴァンはアルバートに回収されていないモデルVを破壊したが、何か胸騒ぎを感じた。

「嫌な予感がするな…何が起ころうとしているんだ?」

気のせいかもしれないが、一体化しているモデルOが反応している。

流石にもう以前のことのようなことはないが、それでも嫌な予感を感じるのだ。

「始まるの…アルバートの計画が…」

「……プロメテじゃなくてお前が来たのかパンドラ…何の用だ」

アルティメットセイバーを構えながらパンドラを睨むが、パンドラに戦う意志はないのか構える気配がない。

「あなたは…アルバートにとって最初の想定外…最初は小さい穴でも…あなたは異常な早さで強くなり…モデルVとイレギュラーを破壊していった…」

「…………」

「そして…アルバートは計画を早めて、私達の予想よりも早く動き出した…感謝するわ」

ヴァンはパンドラの目を見た。

表面上は平静だが、目からはプロメテに勝るとも劣らない激情が感じられた。

「………何をするつもりなんだ。俺に何の用があるんだ」

「あなたに…聞きたいことがあった…あなたはこの世界を憎いとは思わないの?」

「………」

「この世界は…狂ってる…この世界はアルバートを楽しませるために、アルバートの手で都合良く作られた玩具箱…モデルVの主に相応しい者を選ぶために人々にイレギュラーを襲わせ…ロックマンを生み出して殺し合わせる…アルバートを満足させるゲームのための世界…あなたは…憎いとは思わないの…?」

以前、四年前の戦いで問われたことであり、そして今なら分かることがある。

パンドラ達はアルバートを憎んでいることを。

「………正直、憎くないと言えば嘘になるな。俺達の人生も母さん達の犠牲も、全てあいつの遊びのためだったなんてな……人として生きるのも難しいし、もし目の前にアルバートがいたなら叩き斬ってる………でも、世界を滅ぼしたいとは微塵も思わないな…こんな世界でもエールや先輩、運び屋の後輩達。そしてガーディアンのみんなやプレリーに出会えたのもこの世界だからだ………お前にはそういうのはいないのか?プロメテ以外に」

「………ないわ…もうずっと昔に無くしてる…いるのはプロメテ…お兄ちゃんだけ…」

「………お前がプロメテに会えたのも、兄妹になれたのもこの世界だからじゃないのか?お前が憎んでいる世界で生きていられたのはアルバートへの憎しみだけじゃない。兄貴がいたからなんだろ。」

「……それでも…こんな世界に生まれたくはなかったわ…私も…お兄ちゃんも…」

パンドラの体が転送の光に包まれ、パンドラは姿を消し、地面には一枚のメモリが落ちていた。

「………プロメテ以外に…自分の身近な存在がいなかったのか…俺もエールや先輩達がいなかったら、そうなってたのかもな」

メモリを回収しながら、今の自分は幼なじみや先輩やプレリー達がいたからこそであり、自分に寄り添ってくれる存在のありがたさを噛み締めるのであった。

一方、場所は研究所に戻り、テスラットをアッシュがモデルLのチャージ攻撃で凍らせた後にグレイがモデルZXのZXセイバーでの連続攻撃で倒してテスラットのデータをコピーしていた。

そして奥の部屋に向かい、カプセルのある部屋に出た。

「カプセルが一つだけ…?」

「でも中は空っぽかこっちもパネルに何か映ってるぜ」

グレイとモデルAがカプセルに近付き、アッシュがパネルに映っているメッセージを読む。

「どれどれ、DANー000:オリジナル。最終調整完了、ファイナルフェイズ発動。オリジナルって…どういう意味かしら?これもアルバートの計画の一部なんだろうけど…」

「ん?おい、スロットにデータディスクが挿さってるぞ。」

モデルAに言われた通り、スロットにはデータディスクがあり、アッシュはディスクを抜き取ると、トーマスからの通信が入った。

『ご苦労だった、見つかったのは空のカプセルに謎のデータの一部のみか。まだ…我々の知らないロックマンが残されているのかもしれんな。そのデータはこちらで調べよう、ミッションレポートと一緒に送ってくれ』

トーマスからの通信が切れ、二人はトランスサーバーか出口を探して部屋を後にするのであった。 

 

第六十九話 バイオラボ

 
前書き
個人的に最弱ボス。

漫画版でもヴァンに一刀両断されていた。 

 
アルバートの研究所にあったトランスサーバーから、ミッションレポートと共にデータディスクをレギオンズ本部に送り、そのままハンターキャンプに帰還した。

ハンターキャンプに戻ると、どこか通ったことがない場所はないかと探していた所、ある噂を聞いた。

地下にロックされた扉があり、そこの近くが子供達の遊び場になっていたのだが、危険と言う理由で封鎖された場所があるとのことだ。

その場所をハンターから聞いたアッシュとグレイは教えられた場所に向かい、封鎖用のブロックをモデルFで破壊すると、地下水路に降りることが出来るようになった。

地下水路には緑色の扉があり、早速扉を開けて中に入ると、悪臭が二人を襲う。

「うわっ…凄い臭いだ…。ただの下水じゃないぞ、この奥から流れてきてるのか?」

「オイラには臭いって良く分からないな…ライブメタルで良かったよ」

「これ、オイルか何かの臭いよね、こんな所にいたら臭いが付いちゃうわ。早いとこ調べて帰るわよ!」

あまりの悪臭にアッシュは顔を歪めながらもモデルLに変身し、グレイはモデルHに変身する。

モデルLのサーチ能力を使って進み、アッシュはハルバードで、グレイはダブルセイバーでイレギュラーを斬り伏せながら前進する。

奥のシャッターを抉じ開けると、明らかに人の手が入っている工場が目に入り、そして、あの悪臭の原因を理解した。

「ここから流れた工業排水があの臭いの原因だったようね」

「しっかり整備されてるし、どう見ても遺跡って感じじゃないな。行くか、この施設の正体を暴いてやろうぜ」

先に進んでいくと、見覚えのある規格の穴がある。

グレイが少し先を調べると塞がっており、アッシュはカイゼミーネに変身して下半身部分を穴に入れると、勢い良く持ち上げると通れるようになった。

他にもカイゼミーネの能力が必要になるところがあり、それを何とか突破して奥へと進むことになる。

途中の工業排水の中に飛び込むのは少々躊躇したものの、意を決して飛び込み、カイゼミーネで障害物を退かし、次のスライムのような物を発射する砲台も何とか突破する。

そして氷のトゲをかわしながら奥に進むとシャッターを発見してそれを潜り抜けると、信じられない光景が目に入った。

土偶型の大型メカニロイドが大量に製造されていたのだ。

戦闘力に関してはアッシュやグレイが生身の状態でも倒せるくらいだが、それでも一般市民からすれば一溜まりもない物だ。

「…大型メカニロイドがこんなにたくさん!」

「奥にもたくさんあるぞ!」

もし、これだけのメカニロイドが解き放たれれば大変なことになる。

完成する前に破壊してしまおうと、二人がロックマン・モデルAに戻り、ギガクラッシュで全てを粉砕しようと、それぞれがレーザーショットとバスターショットを構えた時であった。

「驚いたか?彼らはこの施設で生まれた兵士だ。いつの日か現れるであろう、ロックマンの王に仕える兵士達なのだ!」

声に反応して振り返ると、大型の鰐を彷彿とさせるフォルスロイドの姿があった。

「アルバートの奴、こんな所にまで研究所を作ってやがったか!」

「儂の名はバイフロスト…眠れる兵士立場の番人だ。新たな世界が生まれる時、彼らは目覚め、古き者達を滅ぼすという役目がある。ロックマン・モデルA…彼らに代わり、この儂が貴様を滅ぼしてくれよう!骨一本、螺一つ残さずこの儂が噛み砕いてくれる!」

バイフロストと名乗ったフォルスロイドは巨大な口を開いてアッシュとグレイに襲い掛かる。

咄嗟にかわす二人だったが、バイフロストは二人がいた場所の分厚い壁を容易く噛み砕いてしまった。

もし命中したらと思うと、思わずゾッとする。

しかし、初擊でバイフロストの属性が分かった。

牙に触れた瓦礫が凍結しており、バイフロストは氷属性のフォルスロイドなのだろう。

アッシュとグレイはモデルFに変身してバイフロストを迎え撃つ。

「メガトンクラッシュB!!」

アッシュがナックルバスターを構えてフルチャージ攻撃の爆弾を発射し、バイフロストに直撃させる。

「やったのか……うわっ!?」

爆煙を切り裂いて飛んできたのは巨体な丸鋸である。

グレイは咄嗟にナックルバスターのショットを連射して破壊する。

しかし、それは囮であり、バイフロストは見た目に寄らずに高く飛んでグレイを踏みつけた。

「グレイ!?」

「ぐうう…!」

バイフロストが踏みつけた床は陥没しており、見た目に相応しい重量があり、グレイがロックマンの状態でなければ即死の威力であった。

アッシュが助けに向かおうとするが、バイフロストは口を大きく開いて牙の氷弾を発射して妨害してくる。

しかしグレイもこのままではない。

「メガトン…クラッシュW!!」

ナックルバスターのフルチャージ攻撃をバイフロストに叩き込むと、バイフロストの巨体が火柱に呑み込まれる。

「ぬ