GATE ショッカー 彼の地にて、斯く戦えり


 

設定 組織

 
前書き
今回、紹介する組織が全て登場するわけではありません。また、作者のオリジナル設定が多分に盛り込まれております。予めご了承ください。 

 
組織紹介


・ショッカー

原作と異なり本郷猛(仮面ライダー1号)を破って世界征服を成し遂げた悪の秘密結社。
世界征服後は世界中でテロ活動を行い、これをアンチショッカー同盟と一文字隼人(仮面ライダー2号)の仕業に見せかけ、ショッカー(正義)vs不穏分子(悪)の構図を作ったことで人民から絶大な信頼を勝ち得た。さらにコード制という日本でいうところのマイナンバー制度がある。これで多種多様な異種族を含む人民の管理を行っている。

また、世界統一政府という側面も持ち合わせており、国家元首に当たる総統は永遠にショッカー大首領が務めるが行政の長として首相という役職があり、こちらは4年の任期がある。現首相は地獄大使。

 

ショッカー直轄管理組織編



・大ショッカー党

ショッカー大首領を総統とした一党独裁体制を取る。優れた人間を改造人間に改造し、エリートが導く明るい世界を謳っている。
支持率は99%。




・ショッカー警察

ショッカー世界の警察組織。世界の治安を守り、大首領に忠誠を誓う。
不穏分子の検挙や粛清の際は防衛軍と共に行う。
また、対テロ特殊部隊として「シェード」という組織がある。


・ショッカー防衛軍

陸軍、海軍、空軍、戦略ロケット軍、幼年軍の5つからなる。
軍事ドクトリンは物量による包囲殲滅戦
戦車や攻撃ヘリで粗方、敵に攻撃を仕掛けた後、戦闘員や怪人による人海戦術を行う。

陸軍の主な武装は量産型キングダークやAI搭載戦車。 
海軍は省略。
空軍は量産型クライス要塞、鬼の戦艦。
戦略ロケット軍は弾道ミサイルなど。

幼年軍は小学生〜中学生が義務的に1ヶ月間入隊する組織で装備も旧式品が殆どを占める。


極秘ではあるが防衛陸軍はNEVERという特殊部隊を有している。


主人公の千堂は陸軍に属している。

 


・大首領武装親衛隊

厳しい入隊条件をクリアした者のみ入隊できる大首領やショッカー要人の警護を行う組織。いわば大首領の私兵。ショッカー防衛軍が防衛省の管轄下であるのに対して、こちらは大ショッカー党の直轄管轄下にある。

最新兵器と高い練度を誇り、事実上のショッカー世界最強の軍事組織。



・ショッカーライダー部隊

ミラーワールド侵攻後に制定された「ショッカーライダー登録法」により設置された部隊。

なお、ショッカーライダーになるとショッカーライダー登録証が発行され消費税を含む免税特権などの社会的な優遇を受けることができる。

著名なショッカーライダー変身者に朝倉猛、牙王、ネガタロス、バットファンガイアなどがいる。




・GOD秘密警察

GOD州に本部を構える諜報・防諜組織。日本でいうところの公安警察。
長官はGOD州の代表でもあるアポロガイスト。
ショッカー警察とは独立した指揮系統を持っており世界各地の不穏分子の情報のみならず、国民の個人情報すら体内ナノマシンを通じて全て把握している。
またショッカー内の監視も行っており裏切り者を独断で粛清する権限も持っている。
なお、この組織の存在を知る者は大ショッカー党の中でもごく僅かしかいない。
 


・ガランダー帝国

帝国と名乗っているが実態は獣人達の組合組織。まだ獣人に対する差別感情が強かった時代にショッカーが獣人に社会貢献を行わせる為に設立した。会長はゼロ大帝。近年では獣人のみならずアマゾンに対しても社会貢献を行っている。



・ブラックサタン

デルザー州にある人間の脳髄に寄生し、宿主を操る怪虫 サタン虫を扱う秘密組織。サタン虫の研究もほぼ調べ尽くしており組織としては形骸化しつつある。
 


・ジンドグマ

ドグマ自治区にあるドグマ拳法というオリジナル拳法を広める格闘技団体。
会長は悪魔元帥。



・ZECT(ゼクト)

ショッカーに忠誠を誓わず、人類に危害を与える野良ワームの駆除を目的とした武装組織。ワームのクロックアップに対応できるマスクドライダーシステムの開発の他、歩兵部隊「ゼクトルーパー」を有する。
しかし、時に彼らにも手に負えないほど強力なワームが出現することもあり、その際はNEVERに駆除を依頼している。






・世界統治委員会

ショッカー及びその下部組織であるゲルダム団、GOD機間、ゲドン、デルザー軍団、ネオショッカー、バダン、ゴルゴムの8つが世界の統治をやりやすくする為に世界を分割し、それらの統治に関わる人物の会議の元、設置された委員会。
多くの不可解な事件や事故に関与していると言われており、そして存在自体も極秘である。近年では『財団X』や『スマートブレイン社』、『ノバショッカー』などの大企業や『クライシス自治区』や『グロンギ自治区』などのミラーワールドにある異種族自治区のトップも参加するようになった。
GOD秘密警察以上に知る者は少なく、大幹部クラスでないと知る者はいない。



企業編

・スマートブレイン社

飲食業から家電事業に至るまでありとあらゆる事業を行う大企業。財団Xの傘下の企業とマトモに闘える数少ない企業。
上層部の殆どがオルフェノクであるからかオルフェノク化した人民の生活援助などの社会貢献も行っている。 

ヒット商品はファイズフォン。
勿論、民間用は銃に変形することは出来ないように造られている。しかし後年、飛電インテリジェンス社の携帯、飛電ライズフォンが発売されてからは販売数が減った。これに対抗してファイズフォンXという物を近年発売し、世間からは飛電インテリジェンス社のライバル企業として認知されている。



・財団X

ショッカーの財務部門から独立して出来た科学研究財団。
彼らの資金提供を受けて傘下となった企業や団体は多く、著名なものを挙げるとミュージアム、鴻上ファウンデーション、ホロスコープス、ユグドラシル・コーポレーション、幻夢コーポレーション、難波重工、飛電インテリジェンス、野座間製薬などがある。



・ノバショッカー


ノバエネルギーによるエネルギー事業を手掛ける電力会社。セルメダルによるエネルギー事業を進める財団X傘下の鴻上ファウンデーションとは真っ向から対立している。
最近ではゲーム事業にも参入しており、同じく財団X傘下の幻夢コーポレーションの市場を脅かしている。代表作に「集まれ!怪人の森」、「大乱闘!ショッカーライダーブラザーズ!」がある。

 

 

現時点の登場人物(ショッカー)※随時更新

 
前書き
現時点までのショッカー側の主要登場人物です。
ネタバレ防止の為にあえて紹介していない人物もいますがタイトルにある通り、随時更新していきます。 

 
登場人物 


千堂印一
日本エリア出身の男性。ショッカー防衛陸軍大尉。
幼い頃に両親を亡くすが祖父母、曽祖父等の周囲の人間のフォローで真っ直ぐな人間に育つ。
その後、戦闘員志望だったがショッカーの改造人間に選ばれてそのまま軍の士官学校に入学する。

また、とある人物からオリジナルガイアメモリを渡されたことから怪人だけでなくドーパントにも変身できる。





加頭秀明 
風都出身の男性。第1小隊では副隊長を務める。防衛陸軍少尉。
財団Xの加頭順とミュージアムの園咲冴子の子供であり、周囲からはミュージアムの後取りと期待されているが本人は嫌がっている。
感情が出せない父親とは違って明るい性格で思ったことがすぐに表情に出る。

改造人間ではないがミュージアムの関係者である為、オリジナルガイアメモリを持っている。



坂田龍四郎

ゴルゴム州火星エリア出身の防衛海軍少佐。量産型クライス要塞 854番艦艦長である。
また、クライシス人と地球人のハーフであり、父親はゴルゴムのメンバーでもある坂田龍三郎。
非改造人間である。


千堂院

変身直前の本郷猛のベルトにククリナイフを差し込み、本郷を凍結させたという伝説のショッカー戦闘員。この戦い以降、彼は戦闘員でありながら上級怪人と同じ権力を持つようになった。
千堂印一は彼のひ孫である。

元ネタは仮面ライダーオーズ/OOOに登場したショッカー戦闘員の生き残り。

 



ショッカー大首領


赤い三角頭巾とマントを着用しているショッカーの最高指導者。
本名は「JUDO」
普段は各基地のショッカーレリーフかテレビ越しに指令をするのみで、その素顔を直に見た者は大幹部クラスでも数えるほどしかいない。
ショッカーだけではなくゲルダム団〜ゴルゴムの首領達を介してこれらの組織を裏で操っていた。目的達成の為なら非人道的な行為すら躊躇なく行える冷酷さをもつ。
怒りが頂点に達した時に真の姿である岩石大首領になる。身長4000mの巨体を誇り、隕石や溶岩を放つ。この姿になることは"世界の崩壊"を意味し、世界中のありとあらゆるものを破壊し尽くすまで止まらない 

 

設定 ショッカー世界の地理

 
前書き
遅くなってすみません。
ショッカー世界の地理が知りたい。
ゾル大佐以外の大幹部やショッカー以外の組織の首領がどうなっているか知りたいという意見があったので急いで作りました。
年表も見たいと言う感想もありましたがそれに関してはもう少しお待ちください。 

 
ショッカー直轄州


文字通りショッカーが統治する地域。
ウラル山脈以東を含む東アジア、東南アジア、中東までの広大な面積を誇る。ショッカーが直接統治している為、州知事が存在しない。さらに政治・経済の中心地でもある。州都は日本エリア
人口比は人間が50%、改造人間が12%、オルフェノクが18%、アンノウンが1%、クライシス人が9%、ドグマ人が3%、アマゾンが10%である。


各エリアの統治者は以下の通り


日本エリア       死神博士       
中国エリア        ドクトルG
チベットエリア      ツバサ大僧正
東トルキスタンエリア    暗闇大使
モンゴルエリア      ヨロイ元帥
ロシアエリア        キバ男爵
中近東エリア        ゾル大佐
東南アジアエリア      地獄大使
インドエリア        ウルガ
インドネシアエリア     ザンジオー



ゲルダム州 


アフリカ大陸にあるゲルダム教を信じるゲルダム団が統治する州。州知事はブラック将軍。
民族間の争いを防ぐ為に各エリアの境界線を新たに引き直した。州都はコンゴエリア


各統治者は以下の通り

コンゴエリア      ブラック将軍
エジプトエリア     クラゲウルフ
ガーナエリア      イソギンジャガー
南アフリカエリア    サソリトカゲス
アルジェリアエリア   イノカブトン




GOD州


GOD機関が支配する地域。北米大陸に相当。州知事は呪博士、副知事はアポロガイスト。州都はアメリカエリア。
人間や改造人間の他にファンガイア、ロイミュード、ファントム、アンデッドなど他の州と比較して多くの異種族が住んでいる。


各統治者は以下の通り


アメリカエリア      アポロガイスト
カナダエリア       キングダーク
メキシコエリア      ネプチューン
キューバエリア      ヒトデヒットラー



ゲドン州

ゲドンが統治する地域で南米大陸を支配している。人口比は人類が30%、獣人が40%、アマゾンが20%、グロンギ族が10%。州知事は十面鬼ユ厶・キミルで州都は戦後、ナチス残党が多く亡命していた歴史があるアルゼンチンエリア。


各統治者は以下の通り


アルゼンチンエリア   ユ厶・キミル
ブラジルエリア     ゼロ大帝
ペルーエリア      アマゾンシグマ
ベネズエラエリア    十面鬼ゴルゴス
 


デルザー州


デルザー軍団が統治する地域でオセアニアを支配している。他の州の州知事の任期が6年なのに対して、デルザー州のみ州知事の任期は2年となっている。というのも改造魔人はプライドが強いので嫉妬心も人一倍強い。任期が短いのは改造魔人同士の仲間割れとショッカーに対する反乱を防ぐ目的があるためである。さらに役職を増やす為に統治者枠を多くしたのでデルザー州は他の州よりエリア数が比較的多い。
現在の州知事はジェネラルシャドウ。州都はオーストラリアエリア。


各統治者は以下の通り


オーストラリアエリア  ジェネラルシャドウ
ニュージーランドエリア  鋼鉄参謀
フィジーエリア     荒ワシ師団長   
クック諸島エリア     ドクロ少佐
タスマニアエリア     ドクターケイト
キリバスエリア      狼長官
サモアエリア       岩石男爵
トンガエリア       ヘビ女



ネオショッカー州


ウラル山脈以西のヨーロッパにあるネオショッカーが統治する州。州知事はネオショッカー大首領だが余りの巨大さに執務を行うことが不可能なので仕事はいつも副知事であるゼネラルモンスターが行っている。元々、ヨーロッパはECとしてある程度まで統合が進んでいたので統治がやりやすいのでゼネラルモンスターと魔神提督がいくつものエリアの統治者を掛け持っている。
またドイツことゲルマニアエリアが広大なのはショッカーがナチス残党なのが関係してるという噂がある。


各統治者は以下の通り

イギリスエリア          魔神提督
ゲルマニアエリア    ゼネラルモンスター
イタリアエリア          魔神提督
スペインエリア     ゼネラルモンスター
デンマークエリア        魔神提督



ゴルゴム州 


地球外惑星を統治している暗黒結社ゴムゴムの州。州都は月エリアであり、州知事は大神官ダロム。副知事は大神官ビシュム。地球への往来はクライス要塞を利用している。


各統治者は以下の通り


月エリア      大神官ダロム
火星エリア     シャドームーン
水星エリア     大神官バラオム
木星エリア     侍女怪人マーラ
金星エリア     剣聖ビルゲニア
土星エリア     侍女怪人カーラ



バダン州

世界中の地下都市や深海都市を統治している州。地下帝国バダンが支配している。支配領域が地下なので州都は存在しない。
州知事はバダン総統。副知事はショッカー直轄州東トルキスタンエリアの統治者も兼ねる暗闇大使。ミラーワールドの地下や深海も管理している。




ミラーワールド
 

ミラーワールドには異種族の自治区が設置されている。勿論、ミラーワールドでも太陽系惑星に植民している。




クライシス自治区

滅亡に向かっていた怪魔界から逃げてきた50億人ものクライシス帝国人がショッカーとの交渉の末、設置してもらった自治区。
現在の人口は80億人。自治区長官はクライシス皇帝だが彼もまた他の組織の首領と同じくショッカー大首領の傀儡に過ぎない。副長官はジャーク将軍。
クライシス人と地球人の混血化が進んでいる。



ドグマ自治区


旧ドグマ王国のメンバーがショッカーとの交渉の末、設立してもらった自治区。
自治区長官はテラーマクロ。彼もまたクライシス皇帝のようにショッカー大首領の傀儡。副長官はメガール将軍。
一応、ドグマ憲法という独自の掟がある。ドグマ拳法という格闘技が盛んである。テラーマクロとネオショッカー大首領が同じB52暗黒星雲出身ということもあってネオショッカー州との交流も盛ん。



グロンギ自治区


ミラーワールドの日本エリアの屋久島にあるグロンギ族の自治区。自治区長官はン・ダグバ・ゼバだが彼は書類仕事をほったらかしにしてゲゲルを行いたがるのでショッカー党から自治区長官代理が派遣される。
グロンギ自治区内でのみゲゲルは許可されているの死刑囚はここに送り込まれている。
また原則、アンノウンの立ち入りは禁止している。



イマジン・グリード自治区


イマジンとグリードが共存する自治区。自治区長官は恐竜グリード、副長官は人工イマジン イヴ。現在の人口は50人でありショッカー世界で最も人口が少ない地域である。というのも住人であるグリードは6体しかおらず、イマジンに至っては人間と契約しなければ肉体を得られないからである。しかしラスベガスのようにカジノやクラブがあり、多くの人が一攫千金を求めて詰めかけるのでショッカー世界屈指の歓楽街と評判である。 
 

 
後書き
いかがでしょうか?
今回、少しだけでもショッカー世界のことが分かっていただければ幸いです。

 

 

ショッカー世界の歴史年表

 
前書き
長らくお待たせしました!!!
ショッカー世界の歴史です!!

「この組織どうなったの?」とか「この幹部どうしてるの?」といった質問は今後のネタバレにならない限りで受け付けていきます。 

 
紀元前数万年前  
ショッカー大首領こと「JUDO」がB52暗黒星雲より地球に降り立つ。日本を聖地として猿をベースに人類を創造する。
しかしその最中、大首領は不慮の事故で自らを封印してしまう。



1919年 
大首領が復活。アドルフ・ヒトラーを介してナチスを設立し、世界征服を目論む。大首領の支援のおかげでナチスは第一次世界大戦敗戦後のドイツを瞬く間に復興させ、支持を集める。



1935年     
ショッカー大首領がナチスにヨーロッパを征服させるため、第二次世界大戦を起こす。



1940年
アウシュビッツ収容所で改造人間の研究が進む。これに目をつけた大首領は改造人間を主体とした秘密結社ショッカーを設立。



1942年
大日本帝國がアメリカに宣戦布告し、大東亜戦争が幕を開ける。アメリカがドイツにも宣戦布告したことを受け、大首領はナチスを見限り始める。



1943年
イタリアが降伏。連合国に寝返ったことで大首領はナチスを捨ててショッカーの他にアフリカにゲルダム団を設立してショッカーのサポートを行わせる。
またゲルダム団の幹部にはロシア出身のブラック将軍を採用する。



1945年 
ドイツと日本が降伏。
死神博士をショッカーに勧誘したことでショッカーの改造人間技術が飛躍的に成長した。
 


1947年
戦犯となっていたドイツ軍のゾル大佐、ドクトルG、ゼネラルモンスターらナチス出身の敗残兵の改造人間をショッカーに招く。これによりショッカーの勢力は遥かに巨大になり、世界各地に支部を置いた。



1950年
アメリカのスラム出身で新興国家のゲリラ軍の大佐で革命の指揮をしていたダモンとガモンをショッカーにスカウトする。後に彼らはそれぞれ、「地獄大使」、「暗闇大使」と名乗る。



1952年
死神博士の尽力でソ連政府に改造人間を送り込むことで東側諸国の政府を裏から操ることに成功する。東欧の征服完了。



1954年
ゾル大佐がショッカー中近東支部に着任。反ショッカー勢力を全員駆逐して事実上、中近東征服は完了した。



1960年
ゲルダム団が秘密裏に支援したことでアフリカ諸国が次々と独立する。その結果、アフリカ諸国の政府要職をショッカーとゲルダム団の関係者が占めることになり、アフリカ大陸が秘密裏にショッカーの支配下に置かれることとなった。



1965年
地獄大使が東南アジア支部に着任。
東南アジア諸国の開発支援を条件でショッカーが裏で支配する構図を作った。
 


1969年
ショッカーの支援を受けたアメリカのアポロ11号が月面着陸に成功。
米ソの宇宙開発競争を煽ることにも成功。



1971年
サボテグロンの活躍でメキシコを90%征服完了。
一方、日本支部では本郷猛を拉致しバッタ男に改造しようとするも逃げられ、仮面ライダーになってしまう。ここから仮面ライダーとショッカーの戦いが幕を開ける。



1972年
改造中の一文字隼人に逃げられ、仮面ライダー2号が誕生してしまう。日本において仮面ライダー側がますます優勢になってしまった。



1973年
ショッカーの科学者ディー博士が仮面ライダーの弱点を発見する。
変身の瞬間の0.5秒の間にベルトの風車を止めることができれば変身不可能にできることが判明する。これを知った大首領は仮面ライダー抹殺作戦立案を命令。

まず白昼の東京でショッカーライダーに要人を襲わせ、本郷猛と一文字を誘い出して本郷が変身途中の瞬間に戦闘員の1人が背後からククリナイフをベルトに挿し込んだ。これにより本郷猛は凍結。ショッカーライダーにトドメをさされて死亡した。一文字隼人は逃亡。

これでショッカーと本郷猛の因縁は終わりを告げた。




同年
突如、世界各地で無差別テロが起きる。日本、韓国、北朝鮮、中国では武装ゲリラによる大虐殺が起き、アメリカやヨーロッパ諸国、オーストラリアでは新型ウイルスによるバイオテロ、東南アジアとアフリカと南米では大規模な爆弾テロが起きた。

そしてショッカーはようやく公の場に姿を現し、このテロは「一文字隼人を首領とするアンチショッカー同盟の仕業である」と公表した。ショッカーは世界各地の被災地で医療・食料などの人道支援を行い、瞬く間に人々から絶大な支持を集める。

しかしこれはショッカーがアンチショッカー同盟と一文字隼人を孤立させるための工作であり、世界各地で頻発したテロ事件の真犯人はショッカーである。
だから欧米諸国で蔓延したウイルスは未知の新型であったにも関わらず迅速な医療支援ができた。




同年
ショッカーが世界統一政府の発足を国連と各国政府に提案。すでにショッカーの息がかかっていた各国の政府はこれを了承し、ショッカーに統合された。
また軍隊も解散させられ、ショッカー防衛軍が発足した。各国の王族や国家元首は軒並み脳改造されショッカーに従順な"人民"となった。
さらに人民の発言と行動を密かに監視する為にGOD秘密警察を創設。



1974年
生き残っていたアンチショッカー同盟と一文字隼人が地下組織的に活動を再開。少年ライダー隊なども巻き込み、ショッカーに対するレジスタンス組織として再スタートを切る。
またショッカーは月と南極を領有化。そして世界の統治をやりやすくするためにGOD、ゲドン、デルザー軍団、ネオショッカー、バダン、ゴルゴムの6つの下部組織を設立し、それぞれの組織に世界各地を分轄した。



同年
ショッカーの圧力を受けて世界中の宗教の聖典から『神』の部分が『ショッカー大首領』に書き直される。
反発する者もいたが既に宗教界にもショッカーの手の者がいたため、密かに暗殺された。

これにより世界中の宗教は『神や来世への信仰』から『大首領へ敬愛を伝える数ある手段の内の1つ』に変わった。



1979年
地球外生命体フォッグ・マザーがショッカーと接触。密かにバダン州に彼らの居住地を作る。その1ヶ月後にロイミュードが誕生し、ショッカーの戦力となる。



1982年
世界中で行方不明事件が多発。ショッカー警察の粘り強い捜査でも真相が判明。
鏡の中の世界ミラーワールドを発見し、行方不明事件は人食いの化け物、ミラーモンスターの仕業だと判明した。パニックを避けるためショッカーはこの情報を秘匿。極秘にミラーワールド遠征を行う。しかしミラーワールドは生物が入ると光の粒子となって消滅してしまう『死の世界』であり、ミラーモンスターと戦わずして先遣隊は壊滅する。ショッカーはミラーワールド侵攻を諦める。


同年
第1次ミラーワールド出兵の数ヶ月後、日本エリアの東京上空にクライス要塞が静止。中から数名のクライシス帝国の使者が降り立ち、50億もの臣民の移民を許可してもらうべくショッカーと交渉する。クライシス帝国は地球の環境に適応する為、強化細胞を移植しておりこの事を知ったショッカーはこの強化細胞を応用すればミラーワールドにも適応できるのではと考え、クライシス帝国にミラーワールド侵攻の際に共闘すること、そして帝国の技術を開示することを条件にミラーワールドに自治区を設置することを確約した。


1983年
ショッカー・クライシス同盟軍がミラーワールド侵攻を開始。ミラーモンスターを駆逐しながら破竹の勢いで進軍していった。1ヶ月後にはミラーワールドのショッカー直轄州がショッカーに解放された。



1984年
ミラーワールド全土を完全に占領。
ショッカー・クライシス同盟軍は解散し、本格的な自治区設置に向けて交渉が始まる。
また、一部の兵士の中にはミラーモンスターと契約して仮面ライダーになる者が出た為、ショッカーは『ショッカーライダー登録法』を制定。社会的に優遇することでミラーワールドの仮面ライダーがアンチショッカー同盟の味方になることを防いだ。



1985年
ミラーワールドのショッカー直轄州、GOD州、ネオショッカー州にクライシス自治区が誕生。



1986年
火星を領有化。続けて水星、木星、金星、土星も領有化した。これらの惑星をテラフォーミングを行い、1990年までの植民を目指す。



1989年
ドグマ王国がB52暗黒星雲から地球に亡命する。
そうしてミラーワールドのオセアニアにドグマ自治区が誕生。



1992年
ショッカー財務省の財団部門が独立して財団Xになる。財団Xはミュージアムや鴻上ファウンデーション、クオークス、幻夢コーポレーションなどに資金援助をして大企業を育て上げ、それによってガイアメモリの開発、セルメダルの発見、アストロスイッチの開発などの多くの技術革新を生んだ。



1993年
新種のコンピューターウィルス『バグスターウィルス』と『ゲーム病』の関連を研究中、新たな怪人バグスターが誕生した。以降、バグスターはショッカー防衛軍の戦力となる。
また同時期に眼魔の存在が判明し、ショッカーの軍門に下る。


1994年
死者が復活する現象が世界各地で多発。死者蘇生者 通称オルフェノクに市民権が与えられる。
また不死の生命体アンデッドが現代に復活し、ショッカーの傘下に加わる。



1995年
日本エリアの九郎ヶ丘遺跡発掘に伴い古代戦闘民族 グロンギが復活。それに呼応するように同じ場所でグロンギの天敵のアンノウンも復活する。
その後、仲裁に入ろうとしたショッカー大首領とン・ダグバ・ゼバ、水のエルとで戦闘が起こる。
結果、ショッカー大首領が無双してン・ダグバ・ゼバと水のエル、そしえそれを見た他のグロンギ族とアンノウンは皆、平伏してショッカーに忠誠を誓った。



同刻
グリードが復活。彼らの生存していた古代の頃と違ってセルメダルが豊富にある現代を気に入り、ショッカーの傘下に入る。彼らが復活したことでセルメダル研究が大幅に進み、セルメダルには莫大なエネルギーがあることが判明する。
以降、セルメダルは火力・水力・原子力に代わるエネルギーとして開発が進められる。



1995年
ゴルゴム州火星エリアの極秘研究所にて当時、ショッカーが研究中だった新型ドライバーが何者かによって盗まれる。
その数日後、謎の軍勢がゴルゴム州に襲来。瞬く間にゴルゴム州全域が占領される。軍勢はブラッド軍を自称し、ブラッド星の国王の命令を受けてショッカーに宣戦布告した。ゴルゴムの指導者や怪人は占領地でレジスタンスとなり、ショッカーがゴルゴム州奪還作戦を行うまで各地でゲリラ戦を展開する。



同年
ブラッド軍が隕石に乗って地球に侵攻。ゲルダム州のエジプトエリアに落下する。ブラッド軍は瞬く間にエジプトエリアを占領。ショッカーはグロンギ族やイマジン、グリードらに協力を要請。自治区設置を条件に彼らはショッカーと共闘することになる。
こうして地球は1つになり、侵略者に立ち向かうことになる。



同年末
エジプトエリア解放作戦発令
アンノウンやグロンギ族、アンデッドらの活躍でエジプトエリアを解放し、ブラッド軍地球侵攻軍を壊滅させる。
この時、火星で盗まれた新型ドライバーがブラッド星の王族の手に渡っていることをショッカーが知り、危機感を募らせる。



1996年
ゴルゴム州解放作戦発令。
量産型キングダークやグロンギ族、ショッカーライダー部隊を動員して進軍した。そこでブラッド星の王子エボルトが現れ、ショッカーから盗んだビルドドライバーを使って仮面ライダーエボルに変身。これと戦闘になり激戦の末、ン・ダグバ・ゼバや仮面ライダー王蛇の活躍で仮面ライダーエボルを倒すことに成功する。
防衛軍はそのまま進軍を続け、ショッカーはゴルゴム州奪還に成功する。



同年
ブラッド星に逆侵攻を行う。クライス要塞による空挺降下を行い、ブラッド星は国王キリバスのいる王都を残してショッカーの占領下に置かれた。占領地ではブラッド星人とスマッシュによるゲリラ攻撃に苦しめられた。



同年末
国王キリバスは戦況を覆す為、地球にワームを投下する。ワームは隕石に乗ってGOD州アメリカエリアのグランドキャニオンに落下するもワームが羽化する前に改造人間に軒並み駆除又は捕獲された。



1997年
王都にて国王キリバスが変身した仮面ライダーキリバスがスマッシュの軍団を従えてショッカー防衛軍と激突。最終決戦が幕を開ける。
仮面ライダーエボル以上の強敵だったが激闘の末、倒すことに成功する。しかしキリバスがショッカーを倒す為に惑星ごと自爆しようとした為、仮面ライダーオーディーンはタイムベントを使用し、時間を巻き戻してキリバスを処刑した。

ショッカー初の対外戦争はこうして幕を下ろした。
 


同年
ショッカーはブラッド星を植民地化しようとするがキリバスを処刑したのが仇となった。ブラッド星の進んだ技術を接収したまでは良かったが国王を殺したことで治安が悪化し、数名のブラッド星人が国王の後継者を名乗ってショッカーに徹底抗戦を宣言する。ショッカーはこれ以上、ブラッド星に留まってもメリットは無いと判断。
ブラッド星から撤退し、クライス要塞による飽和攻撃を仕掛けて同星を滅ぼした。



2007年
遥か未来からイマジンがやって来る。
イマジンの多くは記憶を失っており、未来がどうなっているかを知ることはできなかった。やむなくショッカーはイマジンをグリード自治区に移民させることにした。



2015年
新たなショッカーライダーを開発中に偶然、アナザーライダーが誕生。ショッカーの戦力となる。



2020年
ファントムと魔化魍が復活。ショッカーはファントムを新たな異種族として社会の歯車に組み込む。魔化魍の方は生態系に寄与していることを加味して、存在を敢えて公表しないことにした。



2025年
財団X傘下企業の飛電インテリジェンスが人工知能ヒューマギアを開発。
軍民問わず様々な種類が開発される。



2051年
沢芽市にて謎の異空間、通称ヘルヘイムの森を発見。財団Xの参加企業ユグドラシル・コーポレーションを中心に極秘研究が進み、来たるべき人口問題解決の為に植民することが世界統治委員会で決定していたがヘルヘイムの森の怪物、インベスとヘルヘイムの果実の関係が判明した途端、決定は取り下げられた。
それ以来、世界統治委員会の中で余程の事がない限り、未知の世界では慎重な対応を行うことが暗黙の了解となる。



2052年
沢芽市でアンチショッカー同盟がユグドラシル・コーポレーションの研究所を襲撃。その影響で偶然、研究所の隔離エリアにいたインベスが脱走。バイオハザードが発生。死者1000人、重症者3000人の大事件になる。
沢芽市には防衛軍とNEVERが投入され、最終的にインベスを駆逐。ショッカーはアンチショッカー同盟に『対テロ戦争』を宣言。アンチショッカー同盟のアジトを強襲し、9代目指導者の南光太郎を逮捕した。



2064年
野座間製薬にて人工生命体アマゾンが誕生。獣人に準ずる新たな異種族として多くのアマゾンがゲドン州で暮らすことになった。



2070年
不穏分子の一斉検挙が行われる。
千堂印一はこの時の功績で曹長から少尉に昇進する。


2073年
日本エリアの銀座に異世界の門が開き、帝国が侵攻してくるが返り討ちにあい、逆侵攻される。



同年
ショッカーがもう1つの異世界勢力、日本国と接触。


現在 

 

第2話 接触

 
前書き
今回からようやく主人公が出てきます!! 

 
事の始まりは帝国領内の聖地「アルヌス」と「オ・ンドゥルゴ」に帝国の世界と別の世界を繋ぐ『門』が二つも出現したことであった。

何をしても八方塞がりで行き詰まっていた内政に関する不満を外に向ける為にも帝国がこれを利用しない手は無かった。
ましてや帝国はこの世界では「最強の国家」と言われており、誰もが帝国の勝利を確信していた。

しかし、結果は惨敗――。
生き残った帝国軍は『門』から撤退した。

その後、帝国はアルヌスの異世界軍と
オ・ンドゥルゴの異世界軍(ショッカー)に逆侵攻され、『門』は奪われた。

勿論、帝国は双方の『門』の奪還を目指してアルヌスとオ・ンドゥルゴに進軍したが返り討ちにあっていた。


数週間後。

帝都にある帝国の政治を司る場所、帝国元老院では元老院議員のカーゼル侯爵が皇帝モルトに物申していた。

「…大失態でありましたな、皇帝陛下。
帝国の保有するなんと6割の喪失!!
いかなる対策をおこうじになりますか?皇帝陛下は我が国をどのようにお導きになるおつもりか!」

モルトは玉座に座ったままで答える。


「…カーゼル侯爵、卿の心中は察するものである。
此度の戦闘で帝国が有していた軍事的な優位が失せたことは確かだ。
外国や帝国に伏している諸国が一斉に反旗を翻し、帝都まで進軍して来るのではないかと不安なのであろう


……痛ましいことである。」


最後のモルトの放った言葉を聞いて、議員達はざわめく。


「我が帝国は危機に直面する度に皇帝、元老院、そして国民が心を一つにして立ち向かい、さらなる発展を成し遂げてきた。戦争に百戦百勝は無い!!故に此度の戦いの責任は追及せぬ。」


モルトは玉座からカーゼルを見下ろして、ニヤリと笑い、冷徹に言い放つ。


「まさか他国の軍勢が帝都を包囲するまで『裁判ごっこ』に明け暮れようとする者はおらぬな?」

その言葉を聞いてクスクスと笑う議員も出てきた。


(自分の責任を不問にするつもりか…。)
カーゼルは心の中で毒づく。


「しかし、いかがなされる?」

参戦して逃げ帰った1人であるコダセン議員が議席から立ち上がった。

「『門』の向こう側に送り込んだ帝国軍は壊滅してしまいました。アルヌス方面の世界は敵の反撃から3日、オ・ンドゥルゴの世界では侵攻初日で!!しかも双方の『門』は奪われ、敵はこちらに陣を気づこうとしているのですぞ!!」

「無論、我らも2つの『門』を奪還せんと敵に迫りました!
だがアルヌスではパパパ!遠くでこんな音がすると我が兵がなぎ倒されるのだ!
オ・ンドゥルゴの方はそれに加えてヒト種の敵兵が怪異に変身して攻撃してくるのだ!!
あんな魔法、私は見たことがありませぬ!!」


「戦えばいい!兵が足りぬなら属国から集めればいい!!」

元老院議員でもあり帝国軍将軍でもあるポダワンがわめき散らかす。
また、それに反論するかのようにざわめく議員を見た皇帝は右手を上げ、彼らを鎮める。

「事態を座視することを余は望まん

ならば戦うしかあるまい……。」

!!!!!

議員達は驚き、皇帝であるモルトの方を向き静まり返る。

「属国と周辺諸国に使節を派遣せよ!
大陸侵略を狙う異世界の賊徒を撃退する為、援軍を求めるとな!
我らは連合諸王国軍(コドゥ・リノ・グワバン)を結成して、アルヌスとオ・ンドゥルゴへと攻め込む!!」


「皇帝陛下万歳!!」
「偉大なる帝国よ永遠なれ!!」

議員達は立ち上がり、口々に皇帝と帝国に対する恭順の姿勢を見せる。

「皇帝陛下……アルヌスとオ・ンドゥルゴは人馬の躯で埋まりましょうぞ。」

カーゼルの言葉を聞いたモルトは薄ら笑いを浮かべた。 

夜も更け、オ・ンドゥルゴは闇に包まれ静まり返る。
それに乗じてモルトの呼びかけに応じた連合諸王国軍が音を立てないように注意してオ・ンドゥルゴの平野を進む。
この平野を進むと、ショッカーの陣地があるのだ。


しかし、既に門を越えて防衛線を構築していたショッカーは彼らの姿を捉えていた。

「敵を視認!戦闘配置につけ!繰り返す!戦闘配置だ!!」

「今度は夜襲か!?何度目の襲撃だ?」
「敵は学習能力がないのか!?」
「お前らボヤくな!早く位置につけ!」

「全部隊に告ぐ!命令があるまで撃つな!!敵を引きつけろ!」

敵がキルゾーンに入ったことを合図する照明弾が放たれ、指揮官が叫ぶ。


「よし!攻撃開始ィィ!!」


戦車の主砲や機関銃が火を吹き、前列の重装歩兵をなぎ倒す。

生き残った敵兵を掃討する為、戦闘員と怪人軍団が畳み掛けるように防衛線から突撃する。抵抗する意志の無い者は捕虜となり、まだ戦おうと剣を持った者は容赦なく殺された。

結果、この戦いで連合諸王国軍、数十万人は破れ、一部は敗残兵となった。




「失礼します。」

ナチス時代のドイツの将校の様な黒い軍服と軍帽を着用した男が『門』が開かれたオ・ンドゥルゴの丘の一角に仮設された指揮テントの中に入る。

テントの奥には軍服を着た眼鏡を掛けた上官がテントに入ってきた男の経歴が書かれた書類を読みながら煙草を吹かしていた。


千堂印一(せんどういんいち) 大尉。

防衛軍所属、士官学校を主席で卒業した軍きってのエリート候補。卒業後は不穏分子検挙の指揮を取り、曹長から少尉に昇進。『銀座動乱』ではあの混乱の中、逃げ惑う市民の避難誘導を行い、ショッカー警察の警官隊に明確な指示をして共に戦ったことから大幹部であらせられるゾル大佐から賞詞を賜り、大尉に昇進する………か。

さて、そんな君を見込んで新たな任務を任せたい。」


改めて千堂はバシッと姿勢を整える。


「隣にアルヌスと呼ばれる丘があるな?その周辺の調査及び偵察を頼みたい。この世界に来たばかりだからな。
それと敵との戦闘は自衛目的を除き極力避けろ。」


「人数は?私、1人ですか?」


「そう言いたいことだが、流石にそれはないな。」


ニヤニヤと上官は笑いながら答える。


「とりあえず深部情報偵察隊を六個編成する。君の任務はその内、1個の指揮だ。
現地住民と接触する可能性もある為、いらぬ警戒心を持たれては困る。よって偵察隊は通常の『戦闘服』ではなく、貴様が着ているような『軍服』で行くように。」


「分かりました。」


「では、千堂印一少佐!第一偵察隊の指揮を命ずる!!」

千堂は右手を上に掲げて「イーッ!」とショッカー式敬礼を行って退室する。


数日後


千堂は基地内の講堂で第一偵察隊の全部隊員を集めた。

「今から我々は防衛軍初の異世界の偵察を行う。
諸君らと共に偉大なるショッカーと大首領様の為に他のどの部隊よりも先に異世界を駆けることができることを誇りに思う。
偉大なる大首領様 万歳!!!」

そう言うと先程と同じく右手を空の方へ掲げてショッカー式敬礼をした。

それに続いてドイツ国防軍風の鉄ヘルメットと軍服を着た部下達も同じく敬礼をする。


「偉大なる大首領様 万歳!!!」
「「「万歳!!万歳!!万歳!!」」」

そうして隊員達は二台の偵察用装甲車に乗り込み、基地を出る。


「しかし、こういう広い草原と蒼い空を見ると異世界に来たんだと思うな。」

異世界ならではの澄んだ蒼い空と広い草原に千堂は装甲車の天井のハッチから乗り出して呟く。
千堂の呟きを聞いて装甲車の運転をしている部下の加頭秀明(かずひであき)は言う。

「そうですか?私の生まれ故郷ではこの程度の景色は高い建物を除けばよく見れますよ?」


「俺は東京育ちなもんでね。お前の生まれはどこだ?ゲドン州?グロンギ自治区?」

「いや、私の生まれは風都です。隊長と同じく、日本エリアの出身です。」


日本エリアで風都と聞いて知らない者はいない。
東京、大阪、風都と言われるほどの知名度を誇り、あの「財団X」の本部がある企業城下町でもある。


「おっ、加頭、この先の小川を右折すればアルヌスを一望できる丘に着くらしいぞ。」


帝国兵の捕虜から奪った…もとい、押収した地図を見た千堂が加頭に指示する。


「了解、隊長。」


車列が丘に着くと、隊員達は降車する。
隊員達がここから一望できるアルヌスの丘の方を見る。

その時、信じられない光景が千堂達の目に飛び込んできた。

なんとアルヌスの丘に『門』が立っていたのだ。


「どういうことだ!?なぜ、『門』がアルヌスに!?おい、加頭!双眼鏡で確認しろ!!」


慌てて、加頭が双眼鏡で門と周辺を見る。

すると双眼鏡を覗いた加頭の呼吸が次第に激しくなる。


「た、たた、隊長!あれを!あれを見てください!!」


「どうした!?!?」


千堂は双眼鏡を取り上げ、アルヌスの門を見る。 

千堂の目に映ったのは『門』と謎の軍勢だった。戦車や攻撃ヘリなども見えたので帝国軍でないのは分かった。そして彼らは北海道の五稜郭のような星型の基地を建設していた。さらに基地の上部からは「白地に赤い丸」の旗がはためいていた。


千堂は理解が追いつかず、冷や汗をかく。


(どういうことだ!?あれは何だ!?
『門』はもう1つあったのか!?)


とにかく、上層部に報告しなければと思った矢先に横の林から突如、深緑色の装甲車がやって来て停車する。 
中には緑色の迷彩服を着た兵士が乗っており、銃で武装していた。


「何だ!?お前達は!?」


部下の1人が叫んでライフルを構えて威嚇しようとしたので、彼らも装甲車上部に搭載された機関銃を構えて一触即発といった状態になる。


「待て!武器を下ろせ!!」


(戦闘だけはマズい!!!)


千堂はこの場を収めようと謎の迷彩服の兵士と話し合おうとする。

「我々はショッカー 防衛陸軍第1偵察隊だ!戦闘の意志は無い!!
貴官らの所属と目的を聞こう!」


すると指揮官とおぼしき人物が装甲車から降りてきて言う。


「我々は日本国 陸上自衛隊の者です。その…『しょっかー』とは何ですか?」



「…………は?」


これがショッカーと日本国のファーストコンタクトであった。
 
 

 
後書き
いかがでしたでしょうか?
まさかの日本国との接触。これから、物語はドンドン進んでいきます。
ショッカー世界の様子も今回、少しだけ分かったのではないでしょうか?




次回予告

ファーストコンタクトで混乱するショッカーと日本国。

ひとまず、お互いに帝国と共闘することが決定したが色々と問題が起きて……………。

次回、乞うご期待!!!! 

 

第1話 銀座動乱

時は2073年!!!
仮面ライダーがショッカーに破れ、世界が征服されてから100年もの年月が経過していた。

ショッカーが世界を征服してからというもの、ショッカーの卓越した科学力で社会は著しく発展し、地球温暖化や公害などの環境問題も世界から駆逐された。さらに人民の誰もが政府から与えられた適職についているので失業者はゼロ。また、教育は誰もが平等に行われ、医療費もかからない。このように生活の殆どをショッカーが面倒を見てくれることから「歴史上最高の福祉政府」と称賛する者が後を絶たない。
当たり前ではあるが世界中がショッカーの治める統一政府の元にある為、国家・民族間の紛争は征服後、起きていない。

まさに誰もが求めた「ユートピア(理想郷)」が実現しているのであった。


今日も銀座では高層ビルとビルの間を黒色を基調としたショッカーの飛行船が飛び交い、街頭ではドカドカとショッカーの宣伝ポスターが貼られ、道を行き交う市民は互いに右手を掲げて「イーッ!」と挨拶しているように見えた。



しかし、その日の銀座は何かが違った………。


「おい何だ?あの門は?」
「さぁ?さっきは無かったよ。」

銀座の中心地に突如として巨大な西洋風の門が現れたのだ。

やがて古代ローマ風の鎧と剣や弓、槍を装備した歩兵や騎士。おまけに、ゴブリン、オーク、ワイバーンなどといった空想上の怪物達が門から現れた。


彼らは雄叫びを轟かせると躊躇せずに市民達の方へと駆け出し、虐殺を開始した。
勿論、市民を守ろうとしたショッカー警察や戦闘員の面々も例外ではなかった。

黒いマスクと骸骨タイツが特徴的なショッカー戦闘員は常人の数倍の力を持つとはいえ、数も少なかった上、突然の事態に慌てふためき、人数も少なかったので、オークやゴブリンの人海戦術の前に次々と倒れていった。

あちこちで火の手が上がり、悲鳴が響き渡る。


「助けてくれーー!!」
「ギャアアアーー!!!!」
「緊急事態発生!応援を…グエッ!!」


彼ら…帝国軍は門の付近にあった時計台の前に死体の山を築くと、2〜3人ほどの兵士が墨色の旗を突き立てた。


「蛮族どもよ、聞くがよい!!
我が帝国は!!!
皇帝 モルト・ソル・アウグスタスの名においてこの地の征服と領有を宣言する!!!」



それからは帝国軍は二手に別れて殺戮と略奪を行いながら銀座を進軍していた。



ある程度、進むと骸骨模様の全身黒服の集団が横隊を組んで待ち構えているのが見え、足を止める。

黒服集団の戦闘には緑色のカニのシルエットの怪異とコブラの様な頭をした怪異が立っていた。


「俺はガニコウモル! 
偉大なるショッカーの改造人間だ!」

「俺はコブラ男だ!
貴様らが何者か知らんがショッカーに仇なす罪は重いぞ!!」

ガニコウモルとコブラ男が数千人の骸骨戦闘員を引き連れて帝国軍にジリジリと近づく。

「なんだ!?あの化け物は!?」
「この世界も怪異の類がいるのか!」

帝国軍兵士はショッカーの改造人間の恐ろしい姿に驚き、足がすくむ。



「フハハハハハ!!
偉大なるショッカーに敵対したことをあの世で後悔するがいい!!」
「よし!!戦闘員共!!不穏分子を迎撃せよ!」


「「「イーーッ!!!!」」」

ククリナイフやショッカー190型自動小銃などの銃火器で武装した骸骨戦闘員が帝国軍兵士に向かって突撃する。

仮面ライダー相手ならいざ知らず、戦闘員はキックやパンチを放つだけで非怪人なら簡単に吹き飛ばしてしまう。それに武器が加わればどうなるかは想像にするに難しくない。


怪人や戦闘員達は無慈悲であった。


戦闘員に剣を向けて立ち向かおうとした者はナイフで切り裂かれ、逃げようと背を向けた者は銃で身体中に風穴を開けられた。

一番悲惨だったのは改造人間を相手にした者達だった。


コブラ男は伸縮自在のコブラ状の右腕を伸ばして兵士やオークをなぎ倒し、ガニコウモルは口から吐いた溶解液でワイバーンごと竜騎士を生きながら溶かし、同時に別の兵士を両腕の鋭いハサミで八つ裂きにしていった。





また別の場所では―――――。


数台の軍用の装甲トラックが車列を組んで進軍する帝国軍の方へと進み、帝国軍の兵士の一群の前まで来ると急ブレーキをかけ、一斉にトラックの荷台から白いスーツを来た数百人の男達が次から次へと降りて横一列に並んでいく。

その中でサングラスを掛けたオールバックの男が横隊の前に立つ。


「偉大なる大首領様の為に!!!」


そう叫ぶと、赤紫色のUSBメモリのような形状の物体を取り出し、メモリ下部のスイッチを押す。


『コックローチ!!』


男は自身の手のひらにある生体コネクタにその物体…ガイアメモリを突き刺してコックローチドーパントに変身した。


『『『『『マスカレイド!!』』』』』


それに続いて背後にいた残りの男達もガイアメモリを起動して首に挿入してマスカレイドドーパントに変身した。

それだけにとどまらず、マスカレイドドーパント達はそれぞれ懐から1枚の銀色のメダル……セルメダルを取り出すと突然、額に発生したメダル投入口に投げ入れる。

すると彼らの額からミイラのような包帯巻きの怪人達が這い出てきた。
更に怪人達は崩れるように包帯が取れ、ヤミーと呼ばれる怪人に変異した。

カマキリの姿をしたカマキリヤミー、ネコの姿をしたネコヤミー、プテラノドンの姿をしたプテラノドンヤミーなど
数え上げればきりがない。


これを見た帝国軍側は混乱していた。
目の前に立ちふさがった敵が怪物に変身したと思ったら、あっという間に敵の数が倍以上に膨れ上がったのだ。
明らかに兵士達は怯えていた。


「ええい!怯むな!所詮、敵は蛮族!我々、栄えある帝国の敵ではない!
突撃しろ!!行け!!」


重そうな鎧を身に纏った指揮官が士気を取り戻すべく、兵士達を鼓舞する。

兵士達は次第に落ち着きを取り戻し、隊伍を組み直して盾を構えた重兵を先頭に突撃を開始した。


「お前達、行け!」

指揮官であるコックローチドーパントが命令すると、ショッカー側のドーパントとヤミーも帝国軍目指して走り出した。


「ギャーーー!!」「グェーー!!」
「ウォォォーー!!」


雄叫びと肉がぶつかり合う鈍い音がなるが早いか、両軍が激しく衝突した。

しかし、ショッカー側はドーパントとヤミーという二種類の怪人の混合軍団で帝国側はショッカーから見れば、ただの人間の寄せ集めでしかない。

どちらが勝つかなどは火を見るより明らかである。


帝国兵士より圧倒的に強力な身体能力を持つマスカレイドドーパントが盾とぶつかっただけで余りの衝撃に盾を構えていた兵士が後ろ向きに倒れる。

それからはショッカー側の独壇場だった。



ある兵士は剣を振り上げた途端、カマキリヤミーの鎌に腹を切りつけられ、ある兵士はネコヤミーの放つ黄色のエネルギー弾の前に倒れていった。
プテラノドンヤミーは空を飛び、ワイバーンを叩き落として、敵の後方にダメージを与える。


改造人間の軍団とドーパント・ヤミーの混合軍団は帝国軍を門の方へと追い詰めていった。

こうして帝国軍は僅か数時間の戦闘でショッカーの怪人・戦闘員軍団により各個撃破され、全滅した。



こうして後に『銀座動乱』と呼ばれる帝国による虐殺事件及びショッカーとの戦闘は収束した。





1週間後…………………………





「これより、ショッカーの決定を放送します。
市民の皆さんはテレビの前に集合してください。
繰り返します――――。」


各家庭、街頭にあるテレビの画面にショッカーレリーフがアップで表示される。
そこに赤い三角頭巾とマント姿の人物がゆっくりと現れる。

ショッカー大首領その人である。


「……………設立時、ショッカーの唱えた未来とは、優秀な人間を選んで、動植物の特性を持った改造人間に改造し、人民に心の平和を与え、新世界を築くことであった。
それを実現して百年、現在ではショッカーは改造人間のみならず、グロンギ族やオルフェノクなどの多くの種族と共に新世界を歩むまでになった。」

大首領は一息、間をおいて続ける。

「さて、本題に移るが…銀座での敵の虐殺による犠牲者の数は数万人にものぼったという……つい、数日前のことである。

当然ながら、侵略者共がやって来たその土地は地図に載ってはいない。
門の向こうがどうなっているのかも分からない。よって『門』を破壊しても何も解決しない。それは『門』が世界の何処かにまた現れるかもしれないからだ。さらに連中は自らを『帝国』と名乗り、一般市民を平気で虐殺し、この平和で完璧な新世界を乱そうとする悪の化身である。向こう側に存在する悪のテロリストを懲罰すべきなのだ。


このような事態が二度と起きぬようにする為にも我々は『門』の中に踏み入る必要がある。危険は承知だ。


我々、ショッカーは今回の敵の悪辣なる侵略行為に断固抗議し、敵を懲罰する為……………




門の向こう側に兵を送ることを決定した!!!」


事実上の宣戦布告が終わった。
こうしてショッカーと帝国の血塗られた戦争が幕を開けたのであった。
 
 

 
後書き
次回予告 

門の向こう側へ踏み込んだショッカーは帝国軍と連合諸王国軍との戦闘を開始する。

しかし、「門」は1つだけではなくて…………。



乞うご期待!!! 

 

第3話 外交

ファーストコンタクトの後、アルヌスの自衛隊基地にて、双方の外交官が国交開設に向けた事前協議を行うということなった。とりあえずは両国及び両世界の紹介程度にすませる予定だ。


一見、世界征服したショッカー世界には他国との交渉が仕事の外務省など、不要だったのではないのかと思うだろうが、実際は世界征服後の方が多忙だった。最初こそ、外務省など不要として廃止が検討されていたが、1988年に異次元よりクライシス帝国が50億人もの人民の移住を求めて交渉を要求したことで政府は外務省に交渉を要請。外務省の巧みな交渉で当時、問題となっていた鏡の中の世界、ミラーワールドに生息する人食いの化け物、ミラーモンスターによる神隠し問題をクライシス帝国と共闘することによって解決し、その見返りとしてミラーワールドにクライシス自治区を設置したことでなんとか存続させることができた。その後もグロンギ族を始めとする人類とは異なる異種族と初めて接触した際に交渉をする為、今でも政府の主要機関として残っていた。


陸上自衛隊アルヌス基地 会議室 

「日本国 外務省外交官の菅原浩治(すがわらこうじ)です。」

「ショッカー 外務省外交官のクリス・ピーターソンです。」 

菅原はクリスと名乗る白人の外交官が流暢な日本語を話したことに驚いた。

「!!日本語を話されるのですか!?」

「いえ、喉に埋め込んである超小型自動翻訳装置のおかげです。大きさはミジンコほどですが、これのおかげで相手が未知の言語を話していても会話が成立するのです。」

菅原はショッカー世界の科学力の高さを垣間見たような気がした。


菅原は日本側の世界と日本国を紹介した映像をノートパソコンで再生してクリスに見せてプレゼンする。

「我々の世界は人口73億人、200以上の国家があり、我が国、日本国はユーラシア大陸の東側に位置しており、37万8000キロメートルと1億2600万人の人口を有する島国です。豊かな自然と長い歴史を誇り、国花は桜、通貨は円です。さらに政治体系は民主主義であり、国と国民の象徴でもある天皇と呼ばれる方もおります。北アメリカ大陸にあるアメリカ合衆国とは安全保障条約を結んでいます。」



しかしクリスは菅原の予想に反して、表情一つ変えなかった。そんなことは知っていたからだ。むしろ征服前の日本国から何も変わっていないことに安心感と呆れを覚えそうになっていた。

だがそれと同時に………

(日本側の世界……あの映像、やや古くないか?いつ頃の映像だ?)

クリスは映像に映っていた日本側の世界がショッカー世界の水準から見てややレトロに見えたことに違和感を感じた。

そしてクリスは恐る恐る菅原に尋ねる。

「Mr.菅原、貴国の世界の現在の西暦は何年ですか?」

「西暦2016年ですが……そちらはどうですか?」

2016年と聞いて、何かを察したような顔をしたクリスを見て菅原が尋ね返す。

「…我々の世界の西暦は2073年です。」

一気に会議室の雰囲気が重くなる。

菅原はショッカーとの技術格差がどれくらい離れているのか気になり、質問した。

「……1つ質問したいのですが……あなた方から見て我々の技術力は西暦何年頃と同じくらいですか?」 

「……その、失礼ですが貴国の技術力は我々から見て…総合的に……1990年代レベルです…はい。」

「我が国の……技術力が……1990年代レベル………。」

菅原は卒倒しそうであった。ショッカー世界とは軽く半世紀以上は差があることを知ってしまったからだ。

それから、菅原は顔面蒼白のまま、日本側の世界の紹介を始めた。
アメリカやロシア、中国などの大国の話やEUなどの国家間の共同体、その他にも世界や経済の情勢の話をした。
クリス達、ショッカー世界の人間からすれば、偉大なる大首領様がいなかった「ifの世界の話」であり、統率の取れていない混沌とした世界のように感じた。

「では日本国は何故、この世界に?」

しばらくしてからクリスは菅原に質問した。この回答によってはショッカーは日本国との全面戦争を覚悟しなければならなかった。

「我が国は『門』から現れた『帝国』と名乗る武装勢力に銀座を攻撃され、一般市民を虐殺されました。よって、この世界へは容疑者首謀者の逮捕と補償獲得の強制執行、並びに調査の為、来ました。あなた方と敵対するつもりはありません。」

クリスは菅原が帝国を武装勢力、皇帝を首謀者と呼んだことを疑問に思った。
しかし、1つのことを思い出した。

(そうか、日本国はまだ憲法9条を守っているのか……。)

ショッカー世界での日本国は1973年に滅亡し、ショッカーが直々に統治する日本エリアとなった。そして当たり前ではあるがその時に日本国憲法は消滅していた。

確かに交戦権の否認を謳った憲法9条を守ったまま帝国軍と戦うには帝国を武装勢力として「逮捕」の名目で軍を…もとい自衛隊を送るしかない。

(難儀なこった。さしずめ国内ではまだ自衛隊の派遣に賛否が別れてるな。
これは使えるぞ。)

クリスが今後の対日外交に頭を巡らす。


「そろそろ休憩時間ですね。日本国の皆様、ありがとうございました。」

「ええ、次はショッカーの紹介ですね。お手柔らかにお願いします。」

菅原はハハッと苦笑いしながら退室した。


数十分後……………。


「次は我々、ショッカーの番です。」

(どんな国何だ?SFチックな世界なのか?それとも……。)

菅原は覚悟を決める。心の中では相手が平和的な勢力であることを祈っていた。

「まず初めに私達、ショッカーには国名に当るものが存在しません。なぜなら我々の世界はショッカーによって統一されており、他に国がないからです。」

「なっ!?世界を統一!!??」

「ええ、我々の世界はショッカーによって1973年に世界統一政府が発足しました。各国の軍隊は防衛軍として統合され、それ以来、民族間の争いは起こっていません。」

「そんな馬鹿な!!それに世界を統一しているとしたら人口はどれくらいいるのですか!?!?」

「人口は550億人おります。」

「はぁッ!?!?550億人!?!?地球に550億人もどうやって住んでいるのですか!?!?」
 
とうとう菅原が取り乱して、立ち上がる。

「えーと、居住地域としましては、まずは地球。地表、地下及び深海の3つですね。さらにミラーワールドや火星などの宇宙空間も加えると…。」

「ちょっと待ってください。ミラーワールドとは何ですか!?それに火星!?あなた方はテラフォーミングまで行っているんですか!?」

!!!!!!!

(我が世界で常識となっているミラーワールドを知らないだと!?それに火星移住にそこまでの反応を見せるとは、日本国の技術力はどこまで低いのだ!?)

今度は逆にクリスが驚かされることになった。ミラーワールドと言えばショッカー世界では1980年代にはその存在が判明しており、さらに火星の地球化に至っては1990年代には完了して移住が始まっていたからだ。2016年になってもミラーワールドを未だ発見していない日本世界に完全に呆れ果てていた。

「ミラーワールドというのは、簡単に言えば鏡の中の世界のことです。我々はそこに数ある異種族の自治区を設置しております。そしてミラーワールドには250億人が植民しています。さらに宇宙空間では火星のみならず水星、木星、金星、土星など、及びそれらの衛星にも植民しております。」


菅原は開いた口が塞がらなかった。
鏡の中の世界や太陽系の惑星の植民などと言われてもあまりにSF過ぎてにわかに信じられなかった。さらに菅原は1つだけ分からない単語が出てきたので恐る恐る訪ねた。今度は明らかに生気が抜けたような声だった。

「……先程から異種族という言葉が出てきますが、あなた方の世界には人類以外の種族がいるのですか?」

「はい、代表的なものを挙げるならば
異次元空間である怪魔界の滅亡から逃れようと移住を求めてやって来た『クライシス人』。古代の戦闘民族『グロンギ族』。死者が蘇った存在『オルフェノク』。他にも、動植物が巨大化して人間並みの知能を持った『獣人』などがいます。彼らの中には人間社会で共存している種族もいますし、自治区を作ってそこの中だけで生活を営んでいるものもいます。」


ここまで聞いて菅原は口をパクパクさせながら放心状態のまま立ち尽くしていた。


(本国にどう報告すればいいんだよ!
ここまでの技術格差があるなんて!!
それに異次元人!?死者の復活!?
国内だけじゃなくてアメリカに中露、それにEU諸国が何て言うか!?)

菅原はこれから待ち受けるであろう出来事に嫌気がさした。

その後、クリスは帝国と戦争に至った経緯を説明した。菅原は納得し、ようやく席に着いた。

(絶対にショッカーと対立してはいけない!!
もし戦端を開けば我が世界への『門』は奪われ、日本は負ける……いや滅びてしまう!!)

菅原はポーカーフェイスのまま、決心した。

そして以下の4つが同意事項として決定した。


ショッカーと日本国の同意事項

〇日本国とショッカーは互いに国交樹立に向けた話し合いを継続すること

〇日本国とショッカーは不可侵条約締結に向けた話し合いを継続すること

〇為替レートを早急に整備すること

〇共通の敵である帝国との戦争を比較的速やかに終結させるべく、共闘すること





数日後、日本政府が緊急記者会見を開き、ショッカーの存在と同意事項の内容を公開した。

「我々は『特地』にて、我々と同じく帝国に侵攻されたもう1つの『門』の異世界勢力『ショッカー』と接触し、国交樹立に向けた協議を行いました。」

「……………………。」

少しの間、カメラのフラッシュすらやみ、沈黙が訪れる。
そして、記者達が一斉に質問をした。


「それはどういうことでしょうか!?」
「特地とは別の異世界があったということですか!?」
「ショッカーについて詳しく教えて下さい!!」
「国会の承認無しにそんなことを行ったのですか!?」


また、この会見でショッカー側の世界の情報、特に技術格差や政治体制などがオブラートに包んで公開された。
またショッカーと日本国との交流の為、ショッカー側の人物数人が日本側に送られることが決定していることが発表され、大きな話題を呼んだ。
また、米中露などの諸外国は特地とショッカーに関する情報収集を強化した。



国会議事堂前

「独裁国家との国交締結に反対!!」
「ショッカーとの共闘はかつての軍国主義への道だ!!」
「自衛隊は異世界の侵略軍と手を組むな!!戦争より友好を!!!」

群衆が首相官邸や各省庁の前に集まり、プラカードを掲げて怒号をあげる様は正に狂気そのものだった。

東京ではいつものようにプロ市民達が的外れな平和デモを行っていた。
行われているのは国会議事堂だけでなく首相官邸及び各省庁の前でも行われていた。

国内メディアも彼らを英雄視する報道を行い、日本国とショッカーとの国交樹立を邪魔するような報道を垂れ流していた。

これらの国内世論が複雑に絡み合い、恐ろしい結果を招くことになるとはこの時、誰も知る由もなかった。




日本エリア 東京 ショッカー本部ビル
極秘地下20階 

  

     『世界統治委員会』

1975年に日本エリアにて世界中を世界征服後に東アジア以外の地域の統治をやりやすくする為、アフリカを『ゲルダム団』に、北米大陸をGOD機関に、南米大陸を『ゲドン』、ヨーロッパを『ネオショッカー』、オセアニアを『デルザー軍団』、地球の地下及び深海は『バダン』、月や火星などの地球外惑星は「ゴルゴム」等の6つのショッカーの下部組織にそれぞれ管轄区を振り分け、統治を行わせた。それからそれらの統治に関わる人物の会議の元に設立されたのが「世界統治委員会」である。
多くの不可解な事件や事故に関与していると言われており、そして存在自体も極秘である。
なお、その後は5つの下部組織のみならず、「財団X」等の大企業やクライシス自治区を始めとした異種族の自治区のトップも参加するまでになった。
 

「第257回世界統治委員会議を開始する。今回の議題は『門』の向こうの勢力、帝国との戦争についてだな。さて我がショッカーはどうするべきだろうか?さて、諸君、意見を。」

白いスーツの上から裏地が赤い黒マントを羽織った白髪の老人が会議の開始を宣言した。

すると白い服を来た透明なカプセルを被った血管が浮き出た顔した紳士が手を上げる。

「では、『デルザー州』のジェネラルシャドウ、意見を。」

「はい、死神博士。我がデルザー軍団は帝国の占領、帝国軍の解体、そして彼の地に一部の人民の移住を求めます。なぜなら我が州の人口は数年後にはピークに達する見込みだからです。」

すると赤い兜と黒い服、白マントを纏った怪人……アポロガイストが挙手した。

「GOD機間もそれに賛成だ。我がGOD州も同じく増加の一途を辿る人口問題を抱えている。
異世界に我が州の人口の少しでも送り出したいところだ。さらに異世界の調査の結果、ミラーワールドの存在も確認できた。これを利用しない手はないのではないか?」

ショッカー側の調査では異世界にもミラーワールドがあることが判明しており、さらにいいことにミラーモンスターやそれに類する存在も確認されていなかった。よってこの委員会や防衛軍でも異世界はショッカーが世界各地で抱える人口問題を一気に解決できる唯一の方法として見ていた。


「我々、クライシス自治区としても移民は賛成なのだが……不確定要素が1つだけあるぞ?
日本国だ。彼の国が我々の邪魔をする可能性はないのか?」

黒マントを羽織った金色に輝く鎧とマスクを身に纏った将軍と呼ばれる男、旧クライシス帝国将軍であり、クライシス自治区副長官のジャーク将軍が発言した。

「それに対しては大丈夫でしょう。
彼の国に送った工作員からの情報では
日本軍……いや、ジエイタイでしたかな?彼らは憲法で軍隊の保有と交戦を禁じられているのです。」

ゲドン州長官の十面鬼ユル・キミルが両腕を組んで言う。

「何!?帝国に一般市民を虐殺されておいてか!?!?では異世界に逆侵攻してきたのは何故だ!?さらに軍隊を否認だと!!それではどうやって国を守るというのだ!!??彼らに誇りはないのか!?」

「クリス外交官の報告によると彼らは異世界を『特地』と呼び、それまで未確認だった土地と住民がいた日本国内として、特例法を制定してジエイタイを派遣したようですね。
強弁もいいところですが…………。」



まさか国を守るはずの自国軍を否認する……そんな国家があろうとは。
会議室になんとも言えない呆れた空気が流れる。

「しかし我々は帝国とは違い、日本国から見れば圧倒的な技術力を誇る未知の勢力です。武力衝突するようなことにはならないかと。
仮に我々に挑んできたとしても特地にある日本国の戦力は3個師団程です。ここで我々と戦えば、我々は傷1つ負うことはありませんが、日本国は自衛隊の師団を3個も失い、最悪、『門』を奪われて侵攻され、国家そのものが消滅することを考えるでしょう。だから対立ではなく、共闘を選んだのでしょう。」


すると、白い詰襟の無表情の男がドアを開け入室する。

「遅れてすみません。
財団Xから参りました。
加頭順(かずじゅん)と申します。」

そう言うと加頭と名乗る男は席に着こうと円形テーブルに近づくが、その際、持っていたアタッシュケースを落としてしまった。
だがすぐにヒョイと拾い上げる。

加頭は表情一つ変えずに謝罪する。

「貴様!遅刻とはたるんどる!!
それにさっきの謝罪、本気なのか!?
悪びれた様子は見られなかったぞ!!」

アポロガイストが立ち上がり激昂する。

「本気です。
よく言われるんですよ。感情が込もってないから本気だと思わなかったって。」

「じゃあ、感情を込めて誠意を見せろ!!常識だろ!!??」

アポロガイストが立ち上がって剣を加頭に向ける。

加頭も通常のガイアメモリより強力なゴールドメモリをアタッシュケースから取り出すと立ち上がりメモリを起動する。


『ユートピア!!』


するとメモリが勝手に動き出し、専用装着式ベルトに刺さってユートピア・ドーパントに変身した。

一触即発の空気が会議室を包む。

「そこまでにしろ!!仲間割れとは嘆かわしい!!席につくのだ!!」

死神博士が2人を制止し、2人は渋々、席に着いた。


会議はその後も続き、その議題はいつしか、帝国から日本国、そして日本世界の国々との外交に関するものに変わっていった。
 
 

 
後書き
次回予告 

連合諸王国軍が倒され、ショッカーと日本国は合同で異世界の調査を行う。
その際、異世界の怪物……炎龍が襲ってきて………。


乞うご期待!! 

 

第4話 共同偵察

 
前書き
オリジナル怪人募集します!!

ショッカー怪人に限らず何でもあり!!
※能力と容姿を書いてください。

オリジナル怪人のアイデアは感想又はメッセージでお願いします。 

 
2台の軍用トラックがオ・ンドゥルゴ北東の村に入る。
そしてそのトラックは村の中央にある広場に停車すると、荷台から次々に骸骨戦闘員と軍服姿の兵士を吐き出していく。

ショッカーは既にオ・ンドゥルゴの丘から出て、付近の街や村の占領を開始していた。

ある戦闘員は広場に掲揚台から帝国国旗を下ろして、黒を基調とした地球儀を掴んだ鷲の旗を掲げた。

「住民をこの広場に集めなさい!」

ナチス風の将校服を着た隊長とおぼしき、狐目の女性が戦闘員と兵士に指示すると、トラックの荷台に積んであったスピーカーから予め、異世界語で録音された放送を流す。 

「我々はショッカー。ここは完全に我々に占領された。住民に告ぐ、武器は捨てて広場に集合せよ。繰り返す――。」


戦闘員と兵士達は家々の戸を叩いて住民を引っ張り出し、広場に集める。

「これはどういうことじゃ!?」

広場に集められ、座らされた村人の中から村長とおぼしき老人が出てきた。

「ん?貴方はこの村の村長ですか?
ひょっとして帝国と我々、ショッカーが戦争状態にあることをご存じない?」

「それは知っているが……まさかここまで来るとは……。」

「この村は我々が接収しました。貴方方、村人は大人しくしていればショッカーの立派な構成員としてその生命と財産を尊重するつもりです!」
 
村人達は絶句した。この世界の常識からすれば、占領下の住民は奴隷となるか、その場で殺されるかの選択肢しかないからだ。しかし、異世界軍であるショッカーは「生命と財産を尊重する」と言った。住民はショッカーの隊長の言葉に束の間の安心感をおぼえた。


ショッカーが恐れていたのは占領地の住民がレジスタンスとして、防衛軍に盾突くことであった。
異世界である以上、ショッカーの知らない未知の技術があるかもしれないし、ガイアメモリやアストロスイッチのように非戦闘員すら怪人となる機械があるかもしれない。
そんな不安がショッカーにはあった。
また、ショッカー世界からすれば魔族であるファントムしか使えないはずの「魔法」を人間が使えること、エルフやキャットピープルなどの創作物でしか見ることがなかった種族がいるなどの数々の不確定要素もショッカーの占領政策を慎重にさせていた。

さらに慎重になる理由にショッカー世界の歴史も関係していた。
1991年から1993年の間に発生したショッカー初の対外戦争、「ショッカー・ブラッド戦争」である。これは火星や水星などの太陽系惑星の開発に乗り出したショッカーと「星狩り族」ことブラッド星人との間に発生した全面戦争のことである。

最初こそ、ショッカーはブラッド星の改造人間「スマッシュ」を使役するブラッド軍の奇襲攻撃を受け、地球のゲルダム州の一部を占領されてしまうが、その前年にグロンギ族やアンノウン、アンデッドなどの異種族がショッカーの傘下となっていたことで彼らと共闘して、ブラッド星地球侵攻軍を撃退した。その後は彼らの占領下となっていた太陽系惑星も『解放』し、ブラッド星国王 キルバスとの最終決戦でキルバスを処刑。戦争は終結する。
ちなみにキルバスこと仮面ライダーキルバスとの闘いでショッカーライダー部隊が奮戦したのはまた別の話。

しかしブラッド星本土侵攻の際、占領地でブラッド星人とスマッシュによるゲリラ攻撃が発生し、少なくない損害を被っていた。
さらに国王が死亡したことで治安が急激に悪化。中には我こそがブラッド星国王の次期後継者だと騒ぐ者まで出始めた。

結局、ブラッド星はショッカーにとってお荷物となったことで、防衛軍はブラッド星から撤退、クライス要塞による飽和攻撃で同星を滅ぼした。

この経験から占領地では一番に人心掌握と宣伝工作を行ってショッカーとの敵対意識を削ぐこと、不必要に敵の元首を殺害しないことが、防衛軍の中では暗黙の了解となっていた。




オ・ンドゥルゴ 防衛軍基地 司令室


「司令官、報告書です。」

「ここ、オ・ンドゥルゴの近隣の村は全て占領しました。これで近隣の村々がここ、オ・ンドゥルゴ奪還の帝国軍のゲリラの拠点となる心配は消えました。」


「うむ、そうだな。」

「我がショッカーが次に占領するならイタリカでしょう。」 

地方都市イタリカ この都市は帝国の交易の中心地であり、この都市を占領すれば帝国の物流に大打撃を与えることができ、戦争終結に一歩近づく。

「しかし……。」

司令官は地図を見てため息をつく。

イタリカはアルヌスと帝都の直線上のド真ん中にあったのだ。自衛隊と共闘関係にある以上、彼らに敵対行動と取られないように行動する必要がある。
ここでイタリカを占領すれば自衛隊に警戒され、ショッカーと日本国との国交樹立交渉に水をさすことになる。

「とりあえず、上層部に相談だな。」

司令官はこの件の判断を上層部に委ねることにした。




帝都 皇城 謁見の間

「皇帝陛下、諸王国軍の損害は死者、行方不明合わせ、数十万に達する見込みです。」

謁見の間では皇帝が玉座に座り、内務相であるマルクス伯から報告を受けていた。


「ほう、想像以上の被害が出たな。」

アルヌスの自衛隊だけでなくオ・ンドゥルゴのショッカー防衛軍とも戦ったため、連合諸王国軍の損害は非常に多かった。 

「さらに敗残兵は統率を失い、散り散りに帰途についたようです。」


「まあ、これで周辺諸国が我が帝国に反旗を翻す心配は失せたな。」

マルクスはその後の敵に対する対策をどうすべきかを聞いた。

「しかし陛下、『門』より出でた2つの敵の動向が気になります。
アルヌスの敵は丘から一歩も出ておりませんが、オ・ンドゥルゴの敵は周辺の村々を占領しております。」

「たかだか地方の村々の心配をするとはそなたもいささか神経質じゃな。
マルクス内務相。」

「は……。生来のもの故………。」

モルトは座っている姿勢を整えるとマルクスに指示した。

「よかろう。はらば股肱(ここう)の民を安堵させてやるとしよう。
アルヌスとオ・ンドゥルゴの占領地より帝都に至る全ての街・村を焼き払い、井戸には毒を撒け。食糧・家畜は全て運び出すように命じよ。さすればいかなる軍勢でも立ち往生しよう。そこに付け入るのだ。」

「……焦土作戦でございますか。
……しばし税収が低下しそうですな。」

「致し方あるまい。園遊会をいくつか取りやめ、離宮の建設を延期すればよかろう。」

モルトは勘違いしていた。確かに防衛軍と自衛隊が中世ヨーロッパの軍隊のように占領地での略奪で物資の補給を賄っていればモルトの思惑通り、立ち往生していただろう。
しかし、ショッカーと日本国には兵站の概念があり、いくら焦土作戦を行おうと意味がない。焦土作戦など行っても民から恨まれ、帝国に対する愛国心や敵に対する戦意を奪うだけである。そもそも彼らは異世界軍の現代軍であり、この世界の戦争の常識は通用しないのだった。

マルクスがモルトに小さく発言する。

「しかし、焦土作戦はカーゼル侯あたりがうるさいかと存じますが……。」

モルトは唐突にカーゼル侯爵の名前が出たことが意外で、マルクスに尋ねる。

「なぜ余がカーゼル侯にまで気を配らねばならぬのか?」

「は……怖れ多きことながら、陛下罷免の為の非常事態勧告を発動させようとする動きが見られます。」

「ふむ、おもしろい。元老院にはしばし、好きにやらせておけ。
枢密院には"よきにはからえ"とな。」

「はっ……。」

(このあたりで元老院を整理せねばなるまい。)

モルトがそう考えていると……。


「陛下!!!」

謁見の間の扉を派手に開け、赤毛の女性がズカズカと入ってくる。
モルトの娘であり、帝国第3皇女のピニャ・コ・ラーダであった。


「ピニャ・コ・ラーダどうしたのか?」

ピニャはひざまずき、頭を垂れて言う。

「陛下は帝国が危機的状況にある今、何をなされているのか!?
耄碌(もうろく)なされたか!?」

マルクスはピニャの暴言とも取れる発言に驚き、たじろぐ。

「で、殿下!いったいなにを―。」

「無論、アルヌスとオ・ンドゥルゴの丘のことだ!」

「マルクス。そなた、陛下にありのままを申し上げたか?」

「も、勿論ですとも!
異世界の蛮族共は諸王国軍の猛攻撃で一歩も外には―。」 

「この佞臣(ねいしん)め!
それはアルヌスの敵の話だろう!
オ・ンドゥルゴの敵は既に幾つかの村を占領しているのだぞ!!」
         
「現在、両方の丘を奪還するため軍の再建を急ぎ―。」

「何年かかると思っておるのだ!
そんな悠長なことではさらなる敵の侵攻を招くだけ…。」

「ピニャよ、もうよい。」

モルトがマルクスを責めるピニャを制止する。

「なるほど、悠長にかまえてはおれん。丁度よい。そなたの『騎士団』、あれと共に双方の丘に(たむろ)する敵を見てきてくれぬか? そなたのしていることが兵隊ごっこでなければ……な。」 

そして最後にモルトは威厳を込めた目付きでピニャを睨むと「よいか?」と付け加えた。

「……確かに承りました。では行って参ります―――父上。」

「うむ、成果を期待しておるぞ。」

そうしてピニャは退室し、アルヌスとオ・ンドゥルゴ偵察の支度に取り掛かった。




アルヌスでのショッカーと日本国の外交交渉以来、日本国はショッカーと対立を恐れ、諸外国や野党からの反発を抑え、共闘を申し出た。

その時、自衛隊はまだ『門』を越えたばかりで異世界…「特地」の情勢や文化、地理などの情報を把握しておらず、偵察を行い、現地の住民との交流を通して情報収集を行うことから始めようとしていた。
ショッカーとしてもアルヌス付近の詳しい状況を知るため、自衛隊と共同作戦を展開する方針を日本政府に提案した。
お互いに友好的な印象を与えることができ、ショッカー側の軍事力の一端を知れる。日本政府はこれを快諾し、自衛隊の偵察隊とショッカー防衛軍の偵察隊とで合同偵察隊が4つ編成された。

また、ショッカー側は異世界の住民と体内ナノマシンによる自動翻訳による意思疎通がとれることから、この共同作戦では防衛軍の偵察隊は自衛隊と住民の通訳も務めることとなっている。


「ショッカー防衛陸軍少佐 千堂印一です。日本国陸上自衛隊第3偵察隊の皆様、よろしくお願いします。」

「日本国陸上自衛隊2等陸尉の伊丹耀司です。こちらこそよろしくお願いします。」


そしてお互いの偵察隊のメンバーが正面を向いて整列し、敬礼する。

(うわぁ、まんまナチスドイツだよ。)

伊丹は千堂の軍服とショッカー式敬礼を見て、心の中で呟く。

防衛軍は右手を空に掲げる独自の敬礼をする以上、どう見てもナチス式敬礼に見えてしまうし、何より軍服のデザインがモロそのまんまなのである。

今回の合同偵察隊に骸骨戦闘員はいない。…というのも住民との意思疎通による情報収集であるため、強力な敵との戦闘や粛清を目的に養成された存在である骸骨戦闘員をメンバーにいれる必要はないという上層部の判断である。
もし、この場に骸骨戦闘員がいたら伊丹は余りのシュールさに笑ってしまっていただろう。


千堂は自衛隊の車両に乗り、伊丹達と交流を兼ねた異世界語のレクチャーをしていた。ショッカーの体内翻訳装置を駆使して、伊丹が異世界語を話して、おかしければ千堂が訂正するという方法をとっていた。

「サヴァール(こんにちは) ハルウグルゥー(ご機嫌いかが)。」

「そうそう、その感じです。棒読みなのが気になりますが発音は問題ありませんよ。」

(ショッカーの翻訳装置ってすごすぎるんだよぁ。俺ら自衛官が現地の言葉を覚えるのに苦労してるってのに…。)

伊丹はショッカーの科学力の高さを改めて痛感した。

「あなた方の世界は便利ですね。未知の言語にも対応可能な万能翻訳装置があるなんて。」

「いやいや、これもまだ改良の余地があります。」

千堂は伊丹の羨望に謙遜で返す。
ここで千堂は話題を変えた。

「それにしても、まだエルフやドワーフの様な異世界定番の異種族は見かけないですね。」

千堂がエルフ、ドワーフなどの異種族を「定番」と言ったことに驚き、伊丹が反応した。

「おっ、詳しいですね。向こうでもサブカルチャーは盛んなんですか?」

「ええ、我が世界、とりわけ日本エリアはアニメや漫画で有名ですね。
その中でも異世界モノは人気ジャンルの1つです。」

「それはいいですね。国交樹立したら行ってみたいものです。」

傍から見て一見、堅物そうな千堂も例外ではなかった。人並みに漫画やアニメを観て育ち、成人した今でも私物の飛電ライズフォンのマンガアプリで異世界モノをたまに読んでいた。尤もここ数ヶ月は「リアル」で異世界で戦争をしているので異世界モノの漫画を読む気にもなれなかったが。



一方、ショッカー側の車列の先頭車には女性自衛官の栗林と黒川が乗っていた。

栗林と黒川はショッカーの兵士達と話をして交流を深めていた。


「おもしろいものを見せましょう。」

赤を中心とした派手な色合いをしたオウムの入った鳥籠を助手席から持ってきて栗林達に見せる。

「コンニチハ!コンニチハ!」

「わぁー!可愛いオウム!」

「コンゴウオウムですね。加頭少尉のペットですか?」

装甲車の運転席にいた加頭はオウムの方をチラッと見ると笑いながら答えた。

「いえ、我が小隊の切り札です。」

(切り札?こんなオウムが?
おかしいな。ショッカー世界ではペットのことを切り札っていうのかなぁ。)

「名前は何ていうんですか?」

すると加頭は困ったような顔をして、少し考えこんで栗林に言った。

「……オーちゃんです。」

「…それってオウムだからオーちゃんなんですか?」

「そうです。…オウムだからオーちゃんです。小隊長がつけたんです。」

小型犬にチビ、猫にタマと名付けるぐらい安直な千堂のネーミングセンスに自衛隊員は吹き出しそうになっていた。




やがて伊丹と千堂が向かうはずの村のある森が見えたがそこは黒煙が立ち上り燃え、伊丹達は停車する。

その森を双眼鏡で覗いて、詳しく状況を確認しようとすると、そこでは赤いドラゴンが火炎を吐いて、木々を焼き払っていた。


「伊丹中尉……いえ、2等陸尉、あのドラゴンですが、何もない森を焼き払う習性があると思いますか?」

「いえ、千堂大尉。あのドラゴンは明らか何かを狙って火を吐いてますね。」

伊丹と千堂は分かっていた。ドラゴンが何に対して火炎を吐いているのかを。


「では適当な所に隠れて、ドラゴンがいなくなったら生存者の確認の為に森に入りましょう。」

「ええ、そうしましょう。」

翌朝になってドラゴンが去り、千堂達はドラゴンが焼き払っていた森に入り、生存者の捜索を開始した。

「これで生存者がいたら奇跡っすよ。」

自衛官の1人である倉田が心の中で思ったままをぼやく。
しばらく歩き、やっと村らしき集落についたかと思えばそこも焼け焦げた残骸の山と化しており、水分が抜けきってミイラ化した焼け焦げた死体が辺りには複数、転がっていた。

「伊丹隊長、これって……。」

「倉田、言うなよ。
うへ……吐きそう……。」

自衛官達が意気消沈する中、千堂ら防衛軍の兵士達は力強く進んでいく。

千堂達の所属する防衛軍はショッカーに対する不穏分子、いわばテロリストと戦うことも多く、第1小隊のほぼ全員が実戦経験のある者達であった。ましてや、千堂は不穏分子検挙・掃討の任務を任されることが多く、ミンチ状態の死体を見てもその場でハンバーガーを食べられるくらいに馴れてしまっていた。

「二手に別れましょう。その方が効率的ですし。」

千堂は伊丹に提案し、焼け野原となった村の西側をショッカー、東側を自衛隊と二手に別れ、歩いていく。


結局、千堂の捜索していた東側に生存者は見つからなかった。千堂達が捜索を打ち切ろうとしていたその時―。


「生存者!生存者がいたぞー!!」

自衛隊のいた西側から声が聞こえた。

「何!?生存者が!?」



第1偵察隊が声のした方に駆けつけるとそこには――


気を失って倒れたエルフの少女がいた。



 
 

 
後書き
次回予告

接触したコダ村の村人との逃避行が始まる。
そんな中、自衛隊第3偵察隊とショッカー第1偵察隊に炎龍が迫り、ショッカーは切り札を発動する。


乞うご期待!!
 

 

第5話 VS炎龍

 
前書き
オリジナル怪人募集します!!
ショッカー怪人に限らず、獣人でも、ドーパントでも、ロイミュードでも、アナザーライダーでも何でもあり!!

能力や姿などを記載の上、感想欄またはメッセージでお書きください! 

 
コダ村に到着した伊丹の第3偵察隊と千堂の第1偵察隊は早速、村長にエルフの村を焼き払った赤いドラゴンのことを知らせた。

「なんじゃと!全滅したのか!?」

「はい、我々が駆けつけた時には既にこの赤いドラゴンに………。」

そう言って千堂は森を焼き払っている炎龍の写真を村長に見せた。

「こっ、これは古代龍!?それも炎龍じゃ!?」

「よく知らせてくれた。感謝するぞ!
おい、村中にふれてまわれ!隣の村にも使いを出すのじゃ!」

ここで千堂は村長を救助したエルフの少女の元へ連れて行き、彼女と出会った経緯を話した。

「痛ましい限りじゃ……この娘1人残して全滅してしまったのじゃな。」

「この村でこの娘の保護を……。」
 
「習慣が違うでな、エルフの村に頼め。それに儂らは逃げねばならん。」

「村を捨てるのですか?」

「そうじゃ、エルフやヒトの味を覚えた炎龍はまた村や町を襲うのじゃよ。」

そう言うと村長は他の村人と一緒に荷車に荷物を載せ始めた。



それを見た千堂と伊丹はコダ村の住民を安全な場所まで護送することを決めたが、今の人員だけでは足りないということに気づき、増援を呼ぶことが提案されたが………。

「増援を要請したいのですが……今、自衛隊基地が増援を許可してくれるかどうか……。」

「やはり、そうですか……我々もダメ元でオ・ンドゥルゴの基地にさらなる増援を頼みます。」



数分後、部下の1人が装甲機動車から降りて報告にやって来た。

「小隊長!本部から少数ではありますが戦闘員の増援を取り付けました。」

「やったな!それも戦闘員か!
頼もしい限りだ!!」

伊丹は戦闘員という言葉が気になり、千堂に尋ねる。


「戦闘員?兵士とは違うのですか?」


伊丹達、自衛隊員にとって戦闘員とは軍人と同義語であり、違いがわからなかったのだ。事実、日本世界の戦時国際条約である「ハーグ陸戦規約」や「ジュネーブ条約」にも『「正規軍の構成員」は無条件に戦闘員とする』とある。
ショッカー世界にこれらの条約があるかは伊丹は知らないが、防衛軍という正規軍がある以上、兵士と戦闘員は同じものを指すはずと考えていた。

「我らがショッカーにおいて戦闘員と兵士は全くの別物です。戦闘員とは簡易型改造人間の兵種の1つで文字通り戦闘のエキスパート集団です。作戦遂行の補佐、威力偵察などその役割は多岐に渡ります。それに対して兵士はその殆どが非改造人間。つまり一般人が大部分です。」

「簡易型…改造人間?」

「はい、戦闘員はその性質上、過酷な任務に着くことが多いです。ショッカー創設期に生み出された戦闘員は強化された兵士達でしたが世界を統一した後の戦闘員達は隊長クラスを除きクローン技術で培養された人造の兵士ですね。」

(クローン技術による人間の創生か。
倫理観が俺達の世界と違うのか。)

(それにしても戦闘のエキスパートでショッカー世界の人造兵士……か。
きっと屈強そうな見た目をしてるんだろうな。)



そして1時間後、1台の装甲機動車に乗ってやって来たのは――。




「「「イッーー!!!」」」

骸骨風の模様が入った黒タイツを着用した10人程の一団が千堂にショッカー式敬礼をしている。

「千堂大尉、失礼ですが彼らがあなたの仰っていた戦闘員なのですか?」

「はい、そうですが……。」

自衛官達は呆気に取られていた、というのも戦闘のエキスパートと聞いてターミ○ーター風のサングラス男やラ○ボー風の巨漢を想像していたからだ。
こんな子供向け番組に出てくる悪の組織の下っ端みたいな格好をした集団が来るとは思わなかったし、それ以前に役に立つとは思えなかった。


「戦闘員第205小隊、到着しました。」

骸骨戦闘員のうち1人が前に出て千堂に報告する。

「よし、貴官の戦闘員番号と名前、
階級を教えてくれ。」

「ハッ!No.842576、イワン。
階級は軍曹であります。」

「イワン軍曹だな。君ら戦闘員第205小隊にはコダ村の避難民の避難支援を頼む。何かあったら我々に報告するように。」

するとイワン軍曹含めた戦闘員達は姿勢を整えてショッカー式敬礼をした。

「「「イッー!!」」」

そして戦闘員達は村人達の馬車への荷物の積み込みや交通整理などを始めた。
 


伊丹ら自衛官達も戦闘員らと共に荷物の積み込みなどを行っているが戦闘員達が散らばり、住民の避難を手伝っているというとてつもなく奇妙な光景のシュールさに正直、引いていた。その空気を察した千堂は戦闘員達の印象を少しでも変えるべく伊丹に話しかける。

「伊丹2等陸尉、ああ見えても彼らは頼りになりますよ。なんたって常人の10倍の力を持った改造人間なのですから。」

「は?常人の10倍?」

「そうです。10倍です。証明してみせましょう……君、ちょっとこっち来て。」


千堂は馬車への荷物の積み込みが一段落ついた戦闘員の1人を呼んだ。
そして目の前にあった大きめの岩を指差して言った。

「あの岩を砕いてくれるかな?」

「イッー!!」

戦闘員は敬礼をして、岩の前に立つ。

「本当にあの岩を割るのですか!?
どう考えても無理でしょう!!」

「まぁ、見ていてください。」


戦闘員は岩の前で深呼吸すると手刀を造って

「イッーーー!!」

奇声を上げて腕を振り落として文字通り、岩を真っ二つに割った。

「そんな…こんなことが……。」

伊丹ら自衛官は目の前で起きたことが信じられずに狼狽する。

「これで分かったでしょう。戦闘員も立派な戦士であり、決して舐めてかかってはいけないということを。」

「そうですね…彼が味方で頼もしい限りです………。」

伊丹達は戦闘員という存在を畏怖し始め、同時に彼らショッカーと共闘していることに安心感を覚えた。もし、敵対していたらと考えるとゾッとした。



コダ村の人々を護送してから既に3日が経過した。その日、エルフの少女が目を覚ました。

「黒川、どうだ?少女の様子は?」

伊丹は医官でもある黒川にエルフの少女の様子を聞いた。

「伊丹2等陸尉…血圧は安定していますし、意識も回復しつつありますわ。今も薄っすらと開眼しています。」

「それにしてもまいりましたね。
遅々として進まない避難民の列、次々と
湧き起こる問題。増えていく一方の傷病者と落伍者、おまけにこの前の雨で道路状況も最悪。
逃避行というものがここまでツラいものだとは………。」

助手席にいた千堂が後方の避難民の馬車の隊列を見て呻くように呟く。
避難民達は皆、極度の暑さと疲労で勢いがなくなっていた。



―とある馬車では荷車の車輪がぬかるみにはまって動けなくなっていた。

「メリザ、行くぞ!それっ!」

ハイヤッと手綱を引くが馬は動かない。

「こんな所で動けなくなったら野垂れ死にしちまうよ。だ、誰か!手を貸しておくれ!!」

しかし皆、自分のことで精一杯であり、誰も助けに行かない。

(神様なんて在るだけで誰も救われない―誰か助けて、誰か。)


「はまっているだけだ!押すぞ!」

イワンが戦闘員を2,3人引き連れて、後ろから荷車を押す。

急なことでその馬車に乗っていた一家は呆気にとられる。


「もっと気合を入れろー!!!」

「「「イッーー!!!」」」

やがて荷車はぬかるんだ道から抜け出した。

「次の馬車のところに行くぞ!」

「あんた達!ありがとう!」

それを聞いた戦闘員の1人はショッカー式敬礼をして行ってしまった。


「…誰だい?あの人らは?」
「さぁ、どこの兵隊だろうね。」  
「ホラ、炎龍が出たって村に伝えに来た妙な黒服の方の仲間さ。異国の人らしいが人が良すぎやせんかね。」




避難民の隊列は先頭に千堂と伊丹が乗った自衛隊の装甲機動車、避難民らの馬車、そして最も後方にイワンら戦闘員の装甲車と続いていた。


先頭車に乗っていた伊丹がチラリとバックミラーを見る。
そこには荷台から不思議そうにバックミラーを覗き込む少年が映っていた。
荷台では負傷者や妊婦、子供といった逃避行の際に足手まといとなるような人を乗せていた。

また、千堂は双眼鏡で前方を見る。

「伊丹2等陸尉、前方にカラスかな?やけに黒い鳥が飛び交ってますね。」

「そうですね、おっ!?何だ?あれ?」

「何だ!?あの少女は!?」

千堂が覗いた先にはフリルのついた黒服を着た少女がいた。格好はどことなく西洋人形を思わせ、外見に似合わず大きな黒光りする斧を持っていた。

「ちょっと何をしているのか聞いて来ますね。」

千堂は車から降りて、その少女に話しかけようと近づいた。

「ねぇ、貴方達は何処からいらして、どちらに行かれるのかしらぁ?」

先に話しかけたのは少女の方だった。

「我々はショッカー 防衛軍と日本国陸上自衛隊の共同偵察隊、炎龍からコダ村の避難民を安全な場所まで護送している途中です。
貴方こそ誰ですか?」

「へぇー、噂の異世界の軍隊ねぇ。
私はロウリィ・マーキュリー。
暗黒の神、エムロイの使徒。」 

「エムロイ?この世界の神か?」

千堂の答えが返ってくる前にロウリィの姿を見た子供達が車を降りてロウリィの方へと群がる。

「神官様だ!」
「エムロイの使徒様だ!」


「ふーん、嫌々連れて行かれるって訳じゃな刺そうねぇ。」

子供達の様子を見て、そう呟くとロウリィはさっきまで千堂の乗っていた自衛隊の装甲機動車に近づく。

「コレどうやって動いてるのかしらぁ?」

「分かんない。僕も知りたいけど黒い服の人達以外、言葉通じないし。でも乗り心地は荷車よりずっといいよ。」

「へぇ〜、乗り心地良いのぉ〜。私も感じていたいわぁ〜。これの乗・り・ご・こ・ち。」

そう言うとロウリィは千堂の座っていた助手席に座ろうとする。

「ちょっと待て。そこは俺の席だ。
それにその車は負傷者や子供を優先に…」

「いいじゃない、1人くらい〜。あなたの座るっていうこの席は開けといてあげるからぁ。」

千堂が注意するも、ロウリィは強引に乗り込んだ。

「おいおい待て待て!小銃に触るな!」

「こんなでっかい斧を持ち込むなー!」

使徒 ロウリィを乗せた装甲機動車はひと悶着ありながらも出発した。



ギラギラと照りつける太陽と雨でぬかるんだ地面が避難民達の体力を少しずつ削り取っていく。

「おかーちゃん、のど乾いたよー。」

(ああ……せめて息子だけでも……あの「緑の人」か「漆黒の人」に………。)


そんな中、避難民達の頭上に大きな影が過ぎ去る。
炎龍の登場だった。
炎龍は避難民に襲いかかる。


「伊丹2等陸尉!千堂大尉!
赤いドラゴン…炎龍出現!!隊列後方が襲われてます!」

「「戦闘用意っ!!」」

伊丹と千堂の下した指示で即座に第3偵察隊と第1偵察隊(戦闘員含む)が瞬時に戦闘態勢に移行した。



先に駆けつけたのは自衛隊の方だった。彼らは炎龍に向けて射撃を開始するが幾ら撃っても炎龍の強靭な鱗に弾丸は弾かれてしまう。
自衛隊は炎龍の火炎攻撃を何とか回避するのが精一杯だった。

(このままじゃ避難民もろとも全滅してしまう!!どうすれば……!!) 

その時、千堂は車窓からとある親子の姿が見えた。倒れて動かなくなった母親を子供が泣き叫びながら、迫る炎龍から逃げる為、懸命に母親の手を引っ張っていたのだ。

それを見た瞬間、千堂の脳裏にとある光景がフラッシュバックした。


―――――――――――――――――――――――――――――――

真っ白の隔離病室のベッドの上で隣り合った2人の男女がもがき苦しんでいた。男女はそれなりに若く、さらに男女の身体のあちこちには植物のツタが絡みついていた。

隔離病室の透明ガラスの向こう側では幼い少年と初老の老夫婦が悲しげに男女を見つめていた。

すると突然、2人は苦しみの余りうめき声を上げ、胸を押さえてシーツの中でもがいた。

「お父さん!お母さん!」

少年は窓ガラスを叩いて叫ぶ。しかし、それも虚しく2人の動きは徐々に弱々しくなっていき、やがて動かなくなった。そしてほぼ同時に2人の心電図モニターが「ピー」という音と共に心停止を告げる。

やがて防護服を着た2人組の男達が男女の脈と瞳孔の反射具合を調べる。

「21時32分……ご臨終です。」

それを聞いた老夫婦は泣き崩れ、少年は窓ガラスをさらに力いっぱい叩き続けて泣き叫んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――

千堂は頭を押さえてうずくまっていたがすぐに顔を上げる。そして避難民を救う為に"とあること"を決意する。

(彼らを救うにはこれしかない!)

「伊丹2等陸尉!後は頼みます!!」

「あっ……ちょっと待っ…。」

千堂は自衛隊の軽装甲機動車のドアを開け広げると車の外へと勢いよく飛び出した。
そして地面に転がるようにして着地すると体内ナノマシンを通じて加頭の乗っている装甲機動車に無線を送る。

「加頭!!切り札だ!オーちゃんをトカゲ(炎龍)の方に放て!!!」

「え!?マジですか!?
それに切り札ですよ!?もう使ってしまうんですか!?」

「いいから早くしろ!!!!」

「わ、わわ、分かりました!」

加頭は鳥籠の鍵を解錠して扉を開け広げる。

「イッテキマス!イッテキマス!」

オーちゃんは鳥籠を抜け出して翼を広げると装甲車の車窓から炎龍の方へと強く羽ばたいた。


オーちゃんが飛び立ったのを確認した千堂は軍服の内ポケットから、翼のついた金色のガイアメモリを取り出してメモリ側面のスイッチを押して起動する。

「ケツァルコアトルス!」


「よし、いくぞ!!全員、オウムから離れろ!!」

そう叫ぶとメモリを飛び立ったオーちゃんに向けてダーツのように投げた。

するとオーちゃんにメモリが突き刺さって吸収されると光に包まれ急速に巨大化したのだった。

そこにはオーちゃんと名付けられていたあの可愛らしいオウムの姿はなかった。
そこにいたのは3つに分かれるくちばしを持った翼長12メートル程の大きさを誇る禍々しい姿をした巨大な翼竜だった。
 

「キャァァァーーーー!!!!」
「何ですか!?あれは!?」


「落ち着いてください!あれは先程、我々が放ったオーちゃんです!」

パニクる自衛官達を鎮めようと無線機の向こう側から加頭は必死に説明する。


「あれこそがオーちゃんのもう1つの姿!天空の支配者!ケツァルコアトルス・ドーパントです!!」

「ド、ドーパント!?」

「我々、ショッカーが炎龍と戦いますので自衛隊の皆さんは住民の避難誘導をお願いします。」

「りょ、了解しました!!」

自衛隊は避難民の方へと装甲機動車を走らせ避難誘導を開始した。



ケツァルコアトルス・ドーパントは空中で羽ばたきながら静止すると甲高い咆哮を上げて炎龍を威嚇する。

そして全身から高威力のエネルギー弾を放ち、炎龍を翻弄する。


「加頭、イワン軍曹、それぞれの装甲機動車を炎龍を取り囲むようにして走らせろ。そして、イワン軍曹!俺の合図で車両上部のレールガンを撃て!!」

「「了解!!」」

ケツァルコアトルス・ドーパントは自慢の鉤爪で炎龍の翼を鷲掴みにすると力づくで押し倒して引きずりまわす。
炎龍はこれに対し、火炎(ブレス)を吐いて抵抗しようとするが、ケツァルコアトルス・ドーパントはそれを察して、自身のくちばしで炎龍の口を塞ぎ、火炎を吐けなくした。


「イワン軍曹!今だ!レールガン!!」


イワンは装甲車に搭載されていた小型レールガンの照準を炎龍の腹部に合わせた。


「食らえ!トカゲ野郎!!」


レールガンの銃口から出たまばゆい稲光色の砲弾が超高速で炎龍の腹部めがけて進む。

しかし、炎龍がとっさにもがき、ケツァルコアトルス・ドーパントを振り払ったので砲弾は炎龍の腹部ではなく、左腕に直撃し爆発した。 

「グゥゥゥォォォーーーンンン!!!」

炎龍の左腕が胴体から引きちぎれ、あまりの苦痛に咆哮を上げる。

そして左腕を失った傷だらけの炎龍は千堂達とケツァルコアトルス・ドーパントを睨みつけると空高く舞い上がり、飛び去った。


ケツァルコアトルス・ドーパントは追撃しようとするが千堂が静止する。

「終わったんだ…。追撃する必要はないぞ。元の姿に戻るといい。」

ケツァルコアトルス・ドーパントは千堂の方を向くと渋々、変身解除してオーちゃんの姿に戻った。オーちゃんから排出されたメモリは千堂の方に飛んでいき、千堂の手の中に収まった。

「タダイマ!タダイマ!
ドラゴン、ヤッツケタ!ヤッツケタ!」

オーちゃんは千堂の腕にとまって報告をする。

「うん、お帰り。よくやったね。」

千堂はニッコリと微笑んだ。



自衛隊は終始、ショッカーの戦い方に驚きっぱなしだった。

「伊丹隊長、これ…どう報告したらいいんすか?」

「さぁな、俺も分からん。」


炎龍を退治する際に犠牲になった村人が数十名出てしまった。そこで防衛軍と自衛隊は協力して墓地を作り、黙祷を捧げた。


「村長、身寄りを亡くした子供や怪我人、年寄りはどうするんですか?」

「神に委ねる……。」

千堂と伊丹は黙って聞いていた。

「薄情に思うじゃろうが儂らは自分の世話で精一杯なのじゃ。理解しておくれ。そなた達には感謝しておる。もう、護衛は必要ないよ。」

そう言うと村長達、避難民は子供や怪我人、老人を残して行ってしまった。

(さて、どうしたものか………。)

本来ならばコダ村避難民の護衛はこの時点で終了した訳だが、残された者達をどうするかという問題が出てきた。
彼らを助けるために基地で避難民の受け入れをしてあげたいところだが、ショッカーに彼らを助ける義理はない。下手したら自分や部下が「反逆罪」で粛清される危険すらあった。




その時、今後の対応を思案する千堂の側に残された子供の1人が近づいて来た。そしてか細い声で―。

「僕達、置いて行かれたの?これからどうなるの?」

千堂はそれを聞いた途端、かつての自分とその子供が重なって見えた。そして目を見開き、その子供と目線を合わせる為に膝まずいた。

「大丈夫だよ、安心して。
何とかする。あそこのお姉さんの所で待っててくれるかな?」 

そう言うと、防衛軍の女性兵士の所を指差して子供がそこに行ったのを確認すると体内ナノマシンを通じて"とある有力者"に連絡をとる。

「〇〇様ですか?突然で申し訳ございません。炎龍からのコダ村避難民の受け入れを許可していただきたいのです。はい、はい、…………!!!ありがとうございます!!!では、またいつか!!」

そしてもう1人の有力者とも連絡を取る。

「◎◎様、お久しぶりです。単刀直入に頼みます。コダ村避難民をオ・ンドゥルゴ基地で受け入れて挙げられないでしょうか?すでにご友人の〇〇様の許可は頂いております。後は貴方の許可さえあれば…はい………!!ありがとうございます!!」


伊丹は千堂が誰に連絡をとっているのか、何をしようとしているのか分からず困惑する。
そんな伊丹に連絡を終えた千堂が話し始めた。

「伊丹2等陸尉、残された避難民は我々が受け入れます。」

「えっ!?オ・ンドゥルゴの基地が許可したのですか!?」

「いえ、基地の許可はとってません。
伊丹2等陸尉、基地は彼らを決して受け入れようとしないでしょう。しかし、私にはどうしても残された彼らを放っておくことができません。なので基地より上の権限を持つ方々に頼み込んで許可をたった今、とってきました。」


(いち地方基地より上の権限を持つ方ってどんな人だよ!?政治家か?いや国務大臣とかか!?いずれにせよ、千堂大尉はどんなコネクション持ってんだよ!)

伊丹は心の中で千堂に容赦なくツッコむ。

「とりあえずオ・ンドゥルゴの我々の基地に向かいましょう。」

「そ……そうですね。」

伊丹は千堂らショッカーの底知れぬ力と未だ完全に明らかになっていない科学力、そして千堂個人のコネクションなどに若干、引きながら返事をした。


そうして千堂達は装甲機動車に避難民達を乗せて、ゆっくりと帰投した。


 
 

 
後書き
どうでしたでしょうか?
主人公 千堂の過去が少しだけ明らかになりました。
また、千堂が連絡していた御方、誰でしょうねー?
後々、登場させます。 

次回予告
ショッカーとの接触を日本国が公表したことで
米中露などの諸外国は様々な反応を示す。
各国はどんな行動を取るのか!?!?

次回、乞うご期待!!! 

 

第6話 それぞれの思惑

 
前書き
オリジナル怪人募集します!!
ショッカー怪人に限らず、獣人でも、ドーパントでも、ロイミュードでも、アナザーライダーでも何でもあり!!

能力や姿などを記載の上、感想欄またはメッセージでお書きください!  

 
ショッカーと接触したことを日本が公表すると日本世界の国々はショッカーの世界の数々のオーバーテクノロジーに驚愕した。

そして大抵の国々はショッカーを非難する声明を発表した。
というのもショッカーによって自分達の国が支配されることを恐れたからだ。ショッカー世界はショッカーによって統一されており、他に国家がない。もしかすると『門』の仕組みを解析して自分の国に攻めてくるかもしれない。
そんな恐怖が現実としてあったのだ。

しかし数ヶ国だけは少し違った反応をしていた。


アメリカ合衆国 ホワイトハウス


「特地とショッカー。この二つをアメリカの市場とする為にも、ショッカーとは
協調しなければならない。」

「その通りです。間違っても彼らと対立するようなことは避けなければなりませんね。」

大統領執務室でショッカーとの協調路線を語った大統領デュレルに対して黒人の補佐官が答える。

「対立だけは絶対に避けるべきだな。
何しろ連中の技術力は我々より圧倒的に勝っている上に世界まで統一しているというじゃないか。変に対立するよりも市場として利用する方がいい。」
 
世界の警察として、世界最強の国という立ち位置を我が物としているアメリカでも『ショッカー』は当初、自国の国際的な地位を脅かしかねない存在としてホワイトハウスでも脅威論が唱えられたが、泥沼化する中東情勢や中国との経済戦争などを加味した結果、対立するよりも市場として利用する協調論がジワジワと勢力を伸ばしていた。

「チャイナやロシアの様子はどうだ?」

「はっ、大統領。チャイナは依然、銀座に開いた『門』の国際的な管理を要求し続けております。また、日本の尖閣諸島への領海侵犯を繰り返しており、注意が必要です。
ロシアに関しては不気味なほど静かですね。」

「ロシアの動きも気になるところだがまずはチャイナだ。奴ら、『門』の奥の権益を全て奪う気だぞ。チャイナを牽制しつつ、先を越されないように日本にショッカーとの国交樹立を急がせろ!」


デュレルは自衛隊の後方支援を強化し、日本とショッカーとの国交開設を後押しすることを決めた。



ロシア連邦 クレムリン

「ヤポンスキー(日本人)共はショッカーと共闘すると言っているがそんなことは実際にできるのか?」
  
ホワイトハウスとは打って変わってクレムリンの執務室ではロシア大統領のジュガノフがウォッカを片手に工作員からの報告書を読んでいた。

特地の自衛隊に潜り込ませた工作員の情報でショッカーのことが少しずつではあるが分かってきた。

ショッカー世界はショッカーによる独裁政治(ファシズム)が続いていること。
優秀な「カイゾーニンゲン」なる身体能力を人為的に強化した兵士がいるというし、「セントーイン」という人造人間も軍用に実用化しているそうだ。

つまり技術進歩と倫理観がこの世界と異なる訳だ。ジュガノフはこんな世界と国交を持っても後々、とんでもないデメリットを招くだけだと考えていた。


ジュガノフとしては『門』が開いた当初、資源輸出国の自国の発言力低下を恐れたがある意味覇権的ともいえるショッカーの行動に安心感をおぼえていた。万が一、日本が特地に根を下ろそうとすればショッカーは当然、抗議するだろう。そうなれば日本は特地を巡ってショッカーと対立し、特地の資源開発どころではない。

「まぁ変にショッカーと我が連邦が対立してもメリットはないしな。我が連邦は静観させてもらおうか……。特地よりチェチェンやウクライナの方がよっぽど我が連邦にとってやっかいだ。」

ジュガノフは空になったグラスにもう1度、ウォッカを注ぎ始めた。



中華人民共和国 北京


北京の道路を一台のベンツが走っている。その車内では眼鏡を掛けた大柄な男とその秘書が話をしていた。


「全く、ショッカーのせいで当初『門』に関る工作を全て白紙に戻さなくてはいけなくなったじゃないか。」

「腹立たしい限りです。(トウ)徳愁(トクシュウ)主席。」

その男、中国国家主席である薹徳愁は不満を漏らしていた。彼の思惑としては国内の膨れ上がった人口とエネルギー需要に対応するために可能ならば、移民を特地に送り出し、第二の中国を作りたいと考えていた。だがショッカーという日本、帝国と続く、第三の勢力があらわれたことによって状況は一変する。
仮に国連や日本が特地に中国移民を送ることを賛成してもショッカーが反対すれば意味がない。ショッカーは中国移民がくる前にこちら側の『門』を破壊するだけで済むのだ。

「ともかく、日本とショッカーが友好ムードを築くのはマズい。日本にはショッカーとの共闘を制限するように工作したまえ。そしてあわよくば、我が国がショッカーの進んだ技術を獲得し、この世界で独占するのだ。」

その後、中国政府は秘密裏に日本のマスコミや自衛隊に送る工作員の数を倍に増やした。



ドイツ連邦 ベルリン 連邦首相府


「一体いつまで続くのよ!!」

ドイツ初の女性首相のメロケルは余りの事態に焦り、部下に問いただす。
3日ほど前からベルリンを含むドイツ国内のあちこちで暴動が発生していたからだ。

「メロケル首相!ベルリンの機動隊から救援要請!!」

「だから!!何でこうも安々と機動隊が負けるのよ!?」

「暴徒の人数が多すぎるからですよ!」

これだけに留まらず、首相の元に各地からも応援・救援要請が立て続けに舞い込んでくる。

「ミュンヘンから応援要請です!ミュンヘンの難民施設の前で暴動が発生し、火災により建物が焼け落ちました!!重症者多数!!」

「ヤルタからも!!!」


少し前から国内ではネオナチによる反移民運動が活発になっていた。

現在のドイツには一年間に十万人ものアラブ・アフリカ系移民が押し寄せており、治安は悪化。
警察も事件の容疑者が移民となると捜査を消極的に行い、メディアも容疑者を守る。さらに移民に対してあらゆる福祉や雇用が優先されるため、子供や老人に至るまで貧しく、失業者に溢れ、おまけに出生率はまるで地を這うようにまでなってしまった。
そんな状態が続き、国民は民主主義に限界を感じていた。いわゆる政治不信だ。

それに加えてベルリンで移民によるテロ事件が起きたことで国民の怒りはピークを越えていた。
ただでさえ、マズいその状況は自衛隊が『門』に踏み入れ、ショッカーと接触したことで悪化する。

見るからににナチ式敬礼そっくりなショッカー式敬礼。
一部の軍人が着ている軍服が旧ドイツ国防軍そっくりであるなど世界中の誰が見てもショッカーをナチス・ドイツの末裔だと答えるだろう。


それもそのはずショッカー自体、ナチス・ドイツ (それと一部の過激な旧日本軍関係者)の残党が世界の覇権を握るべく組織した秘密結社なのだから仕方がない。だがそんなことはこの世界では知られてはいなかった。ショッカーがあえて隠していたからだ。

日本が公表したショッカー世界の情報によるとショッカー世界は世界統一政府が実現しており、民族間の紛争は無く、教育や医療などの福祉サービスは誰もが平等なのだという。

これを聞いたドイツ国民の反応は様々であったが大半のものはショッカーとの国交樹立を望むものだった。
それらの中には「ナチズムは間違ってなかった」という極端なものまで見られるようになった。

ネオナチ団体はこういった世論を大いに利用した。こうしてデモという名の暴動が幕を開けたのだった。

連日、連邦首相府を取り囲むように覆面を被った市民がデモを行っている。
しかし、日本で行われるような「平和デモ」と違うのは参加者からは明らかに殺気がこもっていることだ。

ベルリンでは首相官邸に至るまでの通りにある商店のガラスは全て割られ、炎と煙が立ち上り、先程まで車が行き来していた道路にはバリケードが築かれていた。
デモ隊員は鉄パイプや火炎瓶、拳銃を持って機動隊を攻撃していた。中にはどこから手に入れて来たのか手榴弾を投げつける者までいて機動隊員の被害は拡大する一方だった。

昼夜を問わず怒号が響き、アスファルトは鮮血で染まる。ベルリンの中心地を怒号や悲鳴、銃声が支配する様は正に修羅場だった。

彼らは行進しながら口々に主張する。


「移民ではなく国民に権利を!!!」 
「移民共を故郷に送り返せ!!」
「ゲルマン人の為だけの国家建設を!」
「異世界の同志(ショッカー)との国交開設を!」




その様子を首相官邸のバルコニーから遠目に見ていたメロケルは歯ぎしりしながらデモ隊を睨みつけていた。
 
「ヤーパン(日本)がショッカーと接触さえしなければこんなことには……!!おのれヤーパン!!」


ドイツは国家非常事態宣言を発令。暴動鎮圧の為に軍の出動を要請。その5日後、双方に多くの犠牲者を出しながらも暴動を鎮圧した。

しかし、ドイツ国民は軍や警察が国民に銃を向けたことを恨んだ。政府は自分達、国民より移民の方を守るのかと……。
これが後に大きな火種となるとはこの時はまだ誰も知る由も無かった。





日本国 首相官邸 総理執務室


日本国総理大臣 本位(もとい)慎三(しんぞう)と各省大臣らは『特地』に関して会合を行っていた。


先に口を開いたのは防衛大臣である嘉納(かのう)太郎(たろう)だった。

「防衛省としてはショッカーと共闘するのに賛成だ。万が一、彼らと戦えば自衛隊に勝ち目はない。それなら帝国という共通に対して共闘する方がよっぽどいいと思うぜ。」

外務大臣も手を上げて発言する。

「外務省としても同意見です。世界からの批判はありますが、ショッカーとは協調すべきです。そのせいで国連や諸外国が反発したとしても無視すべきと思います。それにアメリカからは国交開設を応援するとのコメントが来ております。」



本位は頭を抱えた。
アメリカが国交開設に賛成なのだけが救いだった。これまで中国や韓国、北朝鮮だけが公式に反対を表明をしていた。
しかしつい先日、それだけに留まらず国連も国交開設に反対する旨を日本政府に通告してきた。中国や韓国などの近隣諸国の反発はまだ無視できるが流石に国連の反発は無視できない。


本位は「特地」と「ショッカー」に国連を敵にまわしてまで得られるメリットがあるのかを考える。


そして結論が出た。

 
「ある」


特地は宝の山である。公害や汚れのない手つかずの自然、世界経済をひっくり返しかねない膨大な地下資源。
これらが少しでも手に入れば日本は資源大国になれる。


ショッカー世界は未知の技術の宝庫である。未だ構想の域を出ていない「ナノマシン技術」、動植物の特性を活かした人体強化技術「改造人間」。

さらに自衛隊の報告では彼らは炎龍との戦闘に生物を怪物にする「小箱(ガイアメモリ)」や重機関銃サイズのレールガンを使用したという。レールガンは現在、米軍が開発中だがそれでも駆逐艦の艦砲と同じぐらいだ。

それら技術の僅かでも彼らの技術を独占できれば日本の世界的な影響力は確実に高まる。

「あと外務省からもう1つ。ショッカーとの国交開設交渉ですが……。」


外務大臣の報告に本位が注意して聞く。
ショッカーとの国交開設は何としてもしなければならない事案だからだ。


日本とショッカーの国交開設交渉は難航していた。ショッカーとして今後の人口問題解決の布石として日本とはなんとしても国交を持ちたいのだが、日本としては国内からの反発や近隣諸国、国連からの反発もあって中々、国交樹立に関してハッキリとした回答ができていなかった。

ショッカーからすればそれらの日本の対応は想定内だった。
そこで国交樹立の対価にある物を提示した。 
それは……………



「ショッカーはエイズの特効薬とナノマシン技術の一部を輸出すると言ってきました。」


「「「何だと!?!?」」」


ショッカーは日本世界に送った工作員からの情報で日本国内だけでなく諸外国までも国交樹立に反対していることを知った。そこでエイズの特効薬とナノマシン技術の出番なのである。エイズの特効薬はショッカー世界では1980年代に、ナノマシンの方は世界統一後すぐに開発された技術だ。
つまりショッカー世界からすれば当たり前どころか旧式の技術であるが日本世界ではどちらも開発には至っていない。
この2つは日本国民のみならず諸外国も喉から手が出る程欲しいはずなので、表立った批判はしなくなるだろうとショッカーは考えたのだ。


「エイズ特効薬とナノマシンですか……。これはショッカーに関する内外の世論が大きく変わりそうですね。」


会合は終了して本位を残して大臣達は退室する。会議室が静まり返る。


「世論か……変わってくれるといいが………。」

本位が椅子から立ち上がり、カーテンをめくって窓の外を見る。
今日も首相官邸を取り囲むように数千人もの活動家がデモを行っていた。
彼らは大声でシュプレヒコールを叫び、プラカードを掲げていた。

「本井政権の横暴を許すなー!」
「極右総理は退陣しろー!!!」
「ヘイト総理は異世界侵略をやめろ!」
「ショッカーとの国交開設に反対!」
 

公安からの情報で彼らが中韓北の工作員から支援を受けてデモを行っていることは判明している。しかしデモという形をとっているために彼らを逮捕することは出来ない。
野放しするしかないのである。

「どうしたものか………。」

本位は彼らを見つめながら日本の将来を憂えた。 









一方、ショッカー世界では……。
 

某市 某アパート

やや暗いアパートの1室では窓から当たる夕陽に赤く染まった畳の上で数名の男女達が身を寄せ合って会合を行っていた。

征服者達(ショッカー)は日本と国交を結ぶつもりらしいな……。」

「そのようね、ショッカーの無い平和な世界にまで魔の手を伸ばそうだなんて…征服欲の塊ね。」

「それを防ぐ為にも俺達は行動を起こさねばならない。」

男達は反ショッカー組織、アンチショッカー同盟日本支部のメンバーだった。
日本支部のメンバーの総数も激減し、今では日本中に数百人ほどしかいない。これは長年に渡るショッカー警察や防衛軍による掃討作戦、一斉検挙のせいであった。



「2052年の4・13闘争では我々、アンチショッカー同盟は多くの同志を失ったが、輝かしい勝利も手に入れた。今度もやれるさ。」
 

「今度の計画は世界各地の同志達も賛同してくれている。俺達が世界を解放するんだ!」

そして男達は次なるテロを計画する。

「いいか……まず、政府機関をハッキングし、同時に発電施設とテレビ局に奇襲をかけて……」

リーダー格の男が地図を取り出して、ペンで攻撃地点を指していると玄関のドアが乱暴に開け放たれて、慌てた様子で仲間が入ってくる。


「大変だ!ショッカー警察が来るぞ!」

「何だと!?」

その瞬間、ショッカー警察が来ることを告げた仲間は頭を押さえて苦痛の表情を浮かべ、その場にうずくまった。
何事かと仲間達の視線が仲間から玄関のドアの方に集まる。

すると、拳銃を逆さに持ったスーツ姿の男が玄関先に立っていた。このスーツ男が拳銃のグリップで仲間を殴りつけたのだろうと彼らには容易に想像出来た。

男は警察手帳を広げた。

「ショッカー警察だ!貴様らには不穏分子の疑いがある!抵抗するなよ!」

するとスーツ姿の男が警察手帳から拳銃に持ち替え、ライオットシールドを持った武装警察官を引き連れてせまい室内になだれ込む。

「検挙ーーー!!!」

アンチショッカー同盟のメンバーは武装警察官に殴られ、蹴られ、電磁手錠をかけられていく。


「離せ!離せーー!!」
「この!クタバレ、独裁者の犬共め!」

メンバーは武装警察官に引きずられる形で外に停めてある囚人護送車に連行される。外にはマイクを持ったリポーターやテレビカメラを持った集団が集まっていた。ある記者はカメラを構えて、不規則にフラッシュを焚いていた。

「えー、只今、ショッカー警察により
テロリストの隠れ家の検挙が行われたようです!あ、容疑者が出てきました!」

「不穏分子こと、アンチショッカー同盟は2052年の沢芽市バイオテロ事件で組織の9代目指導者、南光太郎(みなみこうたろう)が逮捕されたことで、組織は瓦解。今回、検挙されたのは地下で活動を続ける残党の一部と見られております。」


そしてその場にたまたま通りかかった市民達はアンチショッカー同盟の逮捕者に地面にあった石を拾って投げつける。

「この悪のテロリストめ!!」
「ショッカーは正義だ!お前らは昔からずっと人を殺してばかりじゃないか!」

「ち、違う!それは悪のショッカーから世界を解放する為に………」

「ええい、黙れ!!」

弁明しようとする男の頬に巡査の1人が
平手打ちを食らわせて黙らせる。

「さっさと乗れ!」

そうやって護送車の車内にメンバーを押し込んで座らせると警察署に向けて発進した。

別の場所ではショッカー警察の刑事が記者達のインタビューに答えていた。

「今回の逮捕者達はまだテロ集団残党の一部に過ぎません。奴らはショッカーの掲げる新世界秩序建設を妨害する恐ろしい悪の秘密結社です!
今後も不穏分子は1匹残らず逮捕していく所存ですので目撃次第、通報ください!貴方の通報が世界を救うんです!」

拍手喝采。その場にいた記者や市民の
中には涙を浮かべて「ショッカー万歳!」、「偉大なる大首領様万歳!」
と叫ぶ者もいた。



その後、ショッカー警察が発表した情報によると逮捕者全員が取り調べ中に隠し持っていた青酸カリで自殺したという。
ショッカー世界のメディアはこぞってこれを「狂信的な不穏分子の自害」と報道し、世界に不穏分子の恐ろしさを改めて認識させる結果となった。

だが逮捕者の遺体は自殺にしては傷跡が多く、本当の死因が警察の拷問によるものであることは明白だった。
しかし政府による検閲済みの新聞やニュースサイト、テレビなどのメディアが報じることはなかった。 
 

 
後書き
次回予告

コダ村の避難民を受け入れたショッカー防衛軍は避難民の自立を目的に翼竜の鱗を商業都市イタリカに売りに行く。だが千堂らには別の目的があるようで……。 

 

第7話 オ・ンドゥルゴ基地

 
前書き
オリジナル怪人募集します!!
ショッカー怪人に限らず、ドーパントでも、ヤミーでも、ゾディアーツでも、マギアでも何でもあり!!

能力や姿などを記載の上、感想欄またはメッセージでお書きください!  

 
ある街の酒場では命からがら炎龍から生還したコダ村避難民の話で持ちきりだった。


「炎龍が撃退された!?」

「嘘だろ!?」

「魔道士やエルフだってそんなの不可能だ。本当に炎龍だったのか?新生龍や翼龍の間違いだったんじゃないのか?」

「しかし現にコダ村避難民は5分の1の犠牲で済んだんだぜ!?」


その噂話をひっそりと聞いていた四人組…ピニャ率いる隠密偵察隊も炎龍から生き延びた避難民のことを話題にした。

「黒色の服と緑色の服を着たヒト種の兵士…ピニャ殿下、どう思われますか?」

ピニャの側近の女騎士、ハミルトンがピニャに尋ねる。

「分からん、だがこうして炎龍に遭遇してコダ村の避難民が無事なのがなによりの証拠だ」

口々にコダ村避難民の話をする4人に噂を流している張本人である避難民の1人、メリザが話しかけた。


「おっ、騎士さん達、あんたらも興味あるのかい?私は目の前で見たんだ。あれは只者じゃなかったね」


「その緑の人と黒の人の話、詳しく教えてくれるか?」


ピニャは金貨を取り出して、メリザに渡す。

「ありがとうよ騎士さん。それじゃあとっときのやつを1つ」


メリザはコホンと咳払いをして話し始めた。


「コダ村から逃げる私らを助けてくれた緑の人は12人、黒の人は24人いたよ」


「ふむ、黒の人の方が多いな」


「黒の人達は途中から骸骨みたいな格好をした兵士を連れてきてね。これがまたすごい力持ちの連中で、うちの荷車がぬかるみにはまった時なんか、たった3人で助けてくれたんだよ」


「炎龍が来た時はどうだったんだ?」


肝心の炎龍が襲いかかってきた時のことをピニャが質問する。


「炎龍が現れた時もものすごい速さの荷車で助けに来てくれたよ。緑の人らは魔法の杖で攻撃を始めたんだけど炎龍には効きぁしない。そんな中、緑の人の荷車に乗ってた黒の人の頭目が荷車から飛び出してね。ついに"アレ"が出たんだよ」


「アレって?」


「長いくちばしを持った龍さ……。
炎龍と同じくらいの大きさで組み付いたり、光の玉を放ったりして炎龍と戦ってたよ。最終的には黒の人の荷車が特大の魔法の杖を向けて雷を放って炎龍の左腕を吹き飛ばしたんだ」


話は終わりメリザは酒場の女給の仕事に仕事に戻った。


「とにかくすごい人達のようです。いかがでしょう、ピニャ殿下?」


「そうだな、そんな者達が帝国内にいたとはな……驚きだ」


ピニャは杯の中の酒を飲み干して考えにふけった。




千堂のショッカー防衛軍第1小隊と伊丹達、自衛隊第3小隊は身寄りのない避難民を乗せてオ・ンドゥルゴ基地にやってきていた。基地の機密保持の為、第3小隊には避難民を基地の前に降ろしてもらい、それぞれ帰還するという形をとった。



「ようこそ、我がショッカー防衛軍オ・ンドゥルゴ基地へ」

千堂らショッカーの兵士が並んで温かく出迎える中、基地についた避難民は驚愕しっぱなしであった。

超強化素材で出来た基地、AI搭載戦車や攻撃ヘリ、電気・水道などの生活インフラなど、異世界では考えられないようなものばかりで戸惑っていた。

コダ村の避難民の中で1番の年長者であるカトー老師とその弟子の少女レレイ・ラ・レレーナも避難民達の家屋の建設工事の様子に目を奪われていた。


しかしカトー老師は見飽きたのか家屋が完成するまでの仮設テントに戻って寝てしまった。
一方、レレイはジッと工事の様子を見ていた。


そこではモグラを赤くしてそのまま大きくしたような姿の怪異が建設工事の指揮を執っていた。
ゴブリンやオークとも違う今まで見たこともないその怪異が気になり好奇心でレレイは近づく。

ある程度、その怪異に近づくと向こうの方もレレイに気づいて声をかけた。


「避難民の1人か?危ないから離れてろ、チチューン」


その怪異……モグラ獣人に注意され、仕方なくレレイはその場から離れた。そして次に注目したのは屋外にあった調理場だった。


そこでは奇妙な腕輪をした兵士の1人がミンチを捏ねてハンバーグのタネを作っていた。レレイが調理場を除き込みあれこれ質問する。


「これは何?」


「あ?ああ、獣人・アマゾン用のハンバーグだよ。ハンバーグ。」


レレイら目の前の男がハンバーグという異世界の肉料理を作っていることは分かったが『獣人』や『アマゾン』という言葉が引っかかった。


「獣人?ヴォーリアバニーやキャットピープルと違う?それにアマゾンとは?」


不思議そうな顔をするレレイに小太りの男は工事の監督を行っているモグラ獣人の方を指さす。


「アイツらみたいに動物がそのまま大きくなったのが獣人、アマゾンっていうのはいわば人工の獣人だよ


……俺みたいにね」


レレイは驚き、後ずさりする。
それを見た男はフッと微笑む。


「お嬢ちゃん、驚いてるのかい?」


「ヒトと同じ姿をしてるから……」


「俺らアマゾンは獣人と違って人間と同じ姿になることもできるからね。アマゾンとしての姿に戻ることもできるけどね……」


そう説明すると男は再びミンチを捏ね初めた。


獣人やアマゾンは例外なく人肉を常食とする。しかしショッカーとしてもさすがに人間を襲わせる訳にもいかないため、財団X傘下の企業である野座間製薬が獣人・アマゾン用に開発した人工肉が提供されている。


「アマゾンとしての姿……見てみたい」


今度は男が驚き目を見開いてレレイの方を向く。てっきりアマゾンと聞いて恐れおののいて逃げていくものと思っていたからだ。オルフェノクやロイミュードなどの他の異種族と違い、アマゾンは比較的最近になって市民権を得た存在のためショッカー世界でも未だ差別する者は少なくなく、アマゾンレジスターというアマゾンがつけている腕輪を隠すようにして着用している者も多い。

男はレレイをまじまじと見つめた。


(この子になら見せてもいいかもな…)


「……分かったよ、少し離れてな」


すると男は調理を中断し、一呼吸置いて強烈な熱風と蒸気が放つ。そしてアマゾン態、カニアマゾンに変身する。


「これがアマゾン………」


レレイはカニアマゾンをまじまじと見つめる。


「怖くないのか?」


「未知との遭遇を恐怖しては先には進めない。だから貴方のことも怖がらない」


「お嬢ちゃん、変わってるな」


そう言うとカニアマゾンは人間態に戻って調理に戻る。その時、レレイには男の口元は明らかに微笑んでいるように見えた。


(獣人、アマゾン、戦闘員、ショッカー……彼らを知るには彼らの文化や風習、種族構成を学ぶのが先決)


レレイはショッカー世界について知ろうと決意するのであった。



数時間後、レレイらは加頭に避難民達の住民登録をしてもらっていた。


「儂はカトー・エル・アルテスタン。こっちは弟子の……」

「レレイ・ラ・レレーナ」


「はい、カトー・エル・アルステンさんに……レレイ・ラ・レレーナさんね。年齢と性別、前の住所をこの紙に書いてください」


そして千堂らが救助したエルフの少女の番になった。


「私はコアンの森、ホドリューの娘、テュカ・ルナ・マルソー 165歳」


「コアンの森の……テュカ…ルナ…マルソーさんね……年齢は165……165!?」


加頭はテュカの年齢に驚く。どう見てもテュカは10代ぐらいにしか見えなかった。しかし改造人間に成ればかなり長寿になるケースは多数報告されるし、グロンギ族やオルフェノクのように不死身な種族もいるのでこの世界のエルフもその類だと思い、加頭は自分の脳を無理矢理納得させようとする。


そして加頭は年齢や性別などをカタカタとコンピュータに名前や年齢等の個人情報を打ち込む。



「それでは1人ずつ並んでこちらを覗いてください」


加頭に言われてレレイらは訝しげにコンピュータのカメラを覗きこむ。そして加頭は1人1人の顔や虹彩を撮っていった。


そしてコンピュータの側の印刷機から先程の写真付きの住民票を印刷して住民に渡す。


「すごい!精巧な絵!?」


住民達は住民票の自分の写真に驚愕する。写真を知らないのでそっくりに描かれた絵が出てきたと思っているのだ。しかしその説明はない。




「ではこの装置に手を当ててください。」


タブレット状の装置に手を当てると装置が自動的に指紋と静脈をスキャンした。しかしレレイらはさっきのカメラと同じで何をされているのか分からないまま進められることが不思議でならなかった。

そして加頭は住民にカードを配る。日本人が見たらICカードと間違えそうであるが実際にはそれより遥かに高性能である。

「これはこちらの世界で言うところの財布のような物です。このカードの中にはポイントという通貨が入っています。このポイントを使って基地内で食材などを購入できます。そして―」


加頭は基地で生活する上でのルールなどの説明をした。

そんな時、レレイは避難民の人数が1人足りないことに気づいた。


(ロウリィはどこ?)







一方、千堂は基地施設内で机の上の書類の山を1枚ずつ目を通していた。身寄りのない避難民を受け入れたことで彼らの生活に必要な物資の調達や住民登録など多くのモノが必要となったからだ。

そんな千堂の元に戦闘員がやって来る。


「千堂大尉、あの御方から司令室へ来いとの御命令です」


「あの御方?…!分かった、すぐ行く」


千堂は書類を放り出して長い廊下を急ぎ足で向かった。そして重厚感のある赤い扉を開けて司令室に入る。

司令室は薄暗く所々に設置された燭台のおかげでようやく足元のレッドカーペットが見えるくらいである。
しかし千堂は司令室の中央に移動すると壁にある地球儀を掴む鷲を象ったレリーフに向かって膝まづく。そしてレリーフの鷲の目が赤く光ってそこから威圧的で低い声が発せられる。


「よく来たな、千堂印一」


「この私めに何の御用でしょうか?親愛なる"大首領様"」


「うむ、貴様を呼んだのは他でもない。日本国に交流の為に我々の使節団を派遣することになっているのは知っているな。」



日本国派遣団。
これはショッカーと日本国が外交交渉を行っていた時に割と早い段階で決まったことである。1ヶ月後、ショッカーは日本国へ、日本国はショッカーへとそれぞれ、使節団を派遣し交流を行うこととなっていた。


「貴様には護衛武官として日本国使節団に随伴してもらいたい」


「えっ!?」


千堂は驚いた。まさか大首領様直々に指令が下るとは思っても見なかったからである。


「何か不満か?嫌と言うなら他の者に……」


「いえ、大首領様!この千堂印一、大首領様直々の御命令、確かに承りました!使節団は私の命に換えてもお守り致します!!!」


大首領は少しの沈黙をあけて言葉を続ける。


「さらに…大幹部を1人、オ・ンドゥルゴ基地に送った。今後は彼の指揮の元、行動してくれ」


すると千堂の背後からコツコツという足音と共にその大幹部は現れた。


「久しぶりだな千堂。2ヶ月前の勲章授与式以来だな」


右手に短鞭を携え、ドイツ国防軍の軍服に軍帽。威厳を感じさせる眼帯と口ひげをした男が後ろに立っていた。


「ゾル大佐!!いつこの基地に!?」


「つい昨日だ。今後は俺がこの基地の指揮を執ることとなった」


「はい、こちらこそよろしくお願いしま……」

そんな時、突然司令室のドアが乱暴に開かれて1人の少女が入ってきた。


「千堂ゥ、迷っちゃったァ。ここ広くって広くって。どう戻ったらいいのォ?」


「ロウリィ!?どうやってここに!?」


「分かんないわぁ、適当に歩いてたらここに来ちゃったぁ」


ロウリィは悪びれる様子もなく司令室内を見回しながら言う。


「その女は誰だ?千堂大尉」


「ハッ、避難民の1人です。現地の神官らしいのですが……」


「ほう貴様、名はなんという」


ゾル大佐が短鞭でロウリィを指して尋ねる。ロウリィは臆することなく答えた。


「ロウリィ・マーキュリー。戦の神エムロイの使徒。
そういうおじ様は誰かしらぁ?」


「俺の名は"バカラシン・イイノデビッチ・ゾル"。ゾル大佐で結構だ」


「ふーん、貴方といい、千堂といい、何だかヒトの魂の他に『獣』の魂も混じっているように感じるのだけれど何故かしらぁ?」


(ロウリィ!?お前…改造人間を見分けられるのか!?)


「フッ、面白い。よく分かったな。
貴様には特別に俺の正体を見せてやろう………フンッ!!!」


ゾル大佐が鞭を振り上げると辺りに白い煙が少量、立ち込め、狼の遠吠えが司令室に響き渡った。そこにいたのはゾル大佐ではなく
黄金に輝く狼の改造人間…黄金狼男の姿があった。


「これが俺の正体、ショッカーで1番の改造人間、黄金狼男だ。」


「改造……ふーん、なるほどぉ、ヒトの手で姿を変えているのねぇ」


ロウリィはくるりと千堂の方を向いて聞いた。


「千堂もおじ様みたいにもう1つの姿に変身できるのぉ?」


「ああ、できるさ」


即答した。ショッカー世界において改造人間であることはショッカーから世界中の人的資源(人民)の中でも「エリート」であると選ばれた証であり、誇るべきことだからだ。

千堂は立ち上がり両腕を交差させ怪人態に変身しようとする……その時。


「もうよい、千堂」


ショッカーレリーフが妖しく光って大首領が千堂を静止する。千堂はそれを聞いてもう1度膝まづく。


「分かりました。大首領様」


「ロウリィ・マーキュリー、貴様は我がショッカーに何を望む?何を求める?」


「別に何かを求めたりなんかしないわぁ。エムロイの神官として貴方達が何をするのか、何を成すのかを見たいだけなの」


「つまり我々が何をしようと邪魔しないということか?」


「んー、それは少し違うわねぇ。この世界のバランス、とりわけ命の尊厳や世界の理を急速に乱すようなことをしたら我が主神エムロイの名において正し、摘み取るわぁ」


ロウリィは異世界の神の一柱として特地を急速に変えてしまうような因子を排除する使命も負っている。異世界からこの世界のバランスを著しく破壊するような勢力は潰すのが彼女ら使徒の役割であった。それを聞いて大首領は少しだけ間をあけて尋ねた。


「では我々がこの世界の理に干渉しない程度なら君は関知しないのか?」


「どういうことぉ?」


「我々、ショッカーが技術・価値観を危険なレベルで持ち込まなければ我々の行動を邪魔しないのかと聞いているのだ」


「そうねぇ、それなら邪魔しないわぁ。貴方達、帝国と戦争中みたいだし…」


このやり取りを聞いてゾル大佐は内心、安心した。ロウリィの発言を聞く限り、今のところの防衛軍の戦力は改造人間なども含めて彼女の中の『危険なレベル』に当てはまらないようであったからだ。
これなら世界統治委員会で決定した特地の征服も容易に行える。
最悪、ショッカーが帝国を併呑することにロウリィが反対したとしても帝国を属国化して異世界征服を肩代りさせるなど方法はいくらでもある。
こうしてロウリィとショッカーの間である程度の不干渉が約束された。



一方、夜も更け避難民達は完成したコンテナハウスの中で今後の生活について話し合っていた。


「彼らには何から何まで世話になってしまっておるな……じゃがせめて生活費ぐらいは自立したい。しかし、年寄りと子供と怪我人ばかりではなぁ……」


「彼らに仕事があるか聞くのは?」


ため息をつくカトー師匠にレレイが提案する。


「そうじゃな。見たところ丘の周りには翼竜の死骸が転がっておる。翼竜の鱗は高値がつくからあれをどうにか……」


翌日、カトー老師とレレイは千堂に翼竜の鱗を貰えないかと聞いた。


「いいですよ、皆さんの自立に役立つのなら幾らでも……」


正直にいってショッカーは竜の死骸に頭を悩ませていた。鱗や肉片を2,3枚程、研究用に採った後は射撃訓練ぐらいにしか使っていなかったので避難民がそれをどうしようと構わなかった。

早速、避難民達は多数の竜の死骸から鱗を剥がし、血や泥を洗い流してきれいに磨く。

翼竜の鱗は1枚につき銀貨30枚〜70枚で取引される。銀貨5枚で1日暮らせるこの世界でコダ村避難民達はものの数日で大金持ちになったわけである。


「鱗200枚、爪が300本、換金するならちゃんとした大店に任せたい」


「まだ鱗は山程あるからのぅ、おおそうじゃ!テッサリナ街道の先にあるイタリカに旧い友人の店がある。ショッカーの兵に運んでもらおう」






ショッカー世界 ゲドン州 アマゾン川流域


「なっ…何なんだよ!?アイツら!?」


男は密林の木々をかき分け全力で走っていた。男はアンチショッカー同盟アマゾン支部のメンバーだった。今日もいつものように密林の中の小屋を装った武器製造工場の監督をしていた……はずだった。
正午過ぎに突然、黒いジャケットを着た奴らが入ってきて次々と部下を殺していった。恐らくショッカーの刺客だろう。
男は刺客達が工場に入って来たのとほぼ同時に外に逃げることが出来たのでなんとか難を逃れた。


(どうしよう!?どこに逃げれば……)




そんな彼の後ろ姿を工場側の崖から見下ろす者が1人いた。その人物はM24のスコープで男の後頭部に照準を合わせる。


「ゲーム・オーバー」


男はそう言い放つとスコープに映る男めがけて引き金を引く。
彼は7.62ミリ弾に頭を撃ち抜かれて永遠に意識を失った。




「任務終了だ。全員集まれ」


リーダー格の青年……大道克己が連絡すると他のメンバーに連絡すると赤いパイピングの入った黒いジャケットを着た5人の男女が1箇所に集まる。


彼らは「NEVER」
大道克己をリーダーとしたショッカー防衛軍の特殊部隊である。
メンバーの殆どが犯罪者である上に忠誠心の欠片もない者ばかりなので普段は地図にも載っていない極秘収容所に閉じ込められている。
しかし、戦力としては申し分ないどころか怪物レベルであり、彼らの戦力は防衛陸軍の機甲師団20個と量産型キングダーク3体に相当すると言われている。

今回の任務は不穏分子の銃器製造工場を襲撃し、工場の人間を殲滅することである。


大道克己は飛電ライズフォンを取り出して"とある男"に電話をかける。ジョン・ドゥと克己が呼んでいるその男はいつもNEVERに電話を通じて指令を送ってくる。そしてNEVERはその指令通りに任務をこなすという形を取っていた。これにより防衛軍所属の特殊部隊でありながら独自の指揮系統を保っていた。


「ジョン・ドゥか……任務は完了したぞ。今から帰還する」


『そうかぁ、そんな中悪いけど君らにはこのまま新たな戦場に向かってもらうよ。戦争好きの君らにはピッタリな仕事だ』



「全く人使いが荒いな。で?次は誰だ?また不穏分子か?それともミラーモンスターか?」



電話の向こうで男はヤレヤレと言った口調で否定する。


『死体の君らの人使いなんか気にしても無駄だろ?それに次の敵は不穏分子でも野良ミラーモンスターでもないぞ。勿論、野良ワームでもない』


「ん?じゃあどこに行けと?」


いつの間にか仲間の視線が克己に集まる。どうやらミラーモンスターでもワームでもない敵と戦えというので皆、電話の内容に聞き耳を立てているようだった。


『君の行き先は大首領様に仇なす蛮族共のいる世界。つまり"異世界"だ』


「異世界?あぁ『門』の向こうか…」

幾ら大道克己といえどもショッカーと帝国が戦争状態にあることくらいは知っていた。


「でも何で俺達なんだ?聞いた話では快進撃だそうじゃないか」
 

『"想定外"のことが起きてね。NEVERには念の為に異世界に行ってもらいたい』


ショッカーにとって想定外のこと……それは炎龍である。タングステン並みの強度を誇る鱗に超高温の火炎を吐くドラゴン。
遭遇した部隊はケツァルコアトルスのメモリとレールガンで迎撃したがそれでも逃げられている。

そんな怪物を倒すには怪物をぶつけるしかない。そこでショッカーは2つの怪物を異世界に派遣することにした。
その内、1つがNEVERなのである。



「ねぇ異世界にもイケメンいるかしら?克己ちゃん似のエルフとかもう最高よネェ♡」


ヤ〇ザのような風貌でオネエ口調を話す男が隣にいるロッドを持った筋肉隆々の肉体の男に擦り付きながら自身の妄想を語り続ける。


「異世界の清らかな森の木漏れ日の人知れず湧き出る聖なる泉♡そこに克己ちゃんとワタシ♡スッゴク楽しみィ」


ニヤつきながら妄想を語りバシバシと男の腕を叩く。それにとうとう男がキレた。


「アーー!!暑苦しいし、うるせぇよ!キョォォォスイ!!頼むから黙れ!!」


「そうよ、あんた暑苦しすぎ」


傍から見ていたロングヘアーの女性も同調する。


「イイじゃないの!!じゃあアンタらは楽しみじゃないの!?」


「オメェとは違えんだよ!オカマ!」


「誰がオカマよ!レディに失礼ね!!この脳筋!!」


「何ィ!!!」


それを見かねた克己が止めに入る。

「まぁお前ら、喧嘩はそこまでにしてもう行くぞ。異世界の戦場が俺達を待ってるんだ」


「克己ちゃんがそう言うなら……」
「そうだな……ここで暴れてもな…」


克己をよそにジョン・ドゥは電話を続ける。


『後、君の母親から荷物を預かってる』


「お袋から荷物?分かった。どこで受け取ればいい?」


『武器と一緒に異世界の基地内で渡すよ。じゃあ、異世界を楽しんでね』


それだけ言うとジョン・ドゥは通話を切ってしまった。


NEVER全員はこのまま最寄りの飛行場へと移動して輸送機に乗り込んだ。



新たな戦場……もとい"地獄"を目指して。
 
 

 
後書き
オリジナル怪人のアイディアを応募してくださったユーザーの皆さん、ありがとうございます。
まだまだ募集しておりますのでお待ちしております。


次回予告

レレイらと共にイタリカに向かった千堂達。
イタリカを占領したいショッカーとさせたくない日本。両者の目的が複雑に絡み合う。
しかしイタリカは盗賊の襲撃にあっており………

次回、乞うご期待!!!
 

 

第8話 イタリカへ!そして新たな問題

 
前書き
オリジナル怪人募集します!!
ショッカー怪人に限らず、ドーパントでも、ヤミーでも、ゾディアーツでも、マギアでも何でもあり!!

能力や姿などを記載の上、感想欄またはメッセージでお書きください!  

 
GOD州 ニューヨーク GOD秘密警察 本部

執務室では窓ガラスに映るニューヨークの摩天楼を背景に机に座る白いスーツの男がいた。男は机の上の受話器を取り部下に電話をかける。


「私だ。単刀直入に言う。日本世界に送る工作員を3倍に増やせ。例の委員会でついさっき決まったんだ」


『分かりました、3倍ですね。手配します。どの国に潜入させますか?』


「送る国は日本、中国、韓国、北朝鮮、アメリカ、ロシア、それとEU各国だ」


白いスーツの男はリストを取り出して国名を読み上げる。どれも今後の対日外交に影響しそうな国ばかりだ。


「それと工作員とは別にワームを連れていけ……。向こうの世界の各国の政治家や自衛隊上層部、マスコミ関係者に擬態させろ。ただし、国家元首には手を出すな。万が一正体がバレた時にまずいからな」


『了解しました。』



"元"地球外生命体 ワームはクロックアップという人間を遥かに超えるスピードで活動する能力を持っている。しかしワームの真骨頂は人間に擬態する能力であり、襲った人間の記憶や人格、所持品、果ては性癖に至るまでコピーしてしまうのである。

GOD秘密警察ではこのワームの特性を活かして不穏分子の1人に擬態して紛れ込ませ、アンチショッカー同盟中東支部を壊滅させた実績がある。


やがて白いスーツの男は部下に粗方のことを指令した後、電話を切って室内の壁に掛かっていたショッカーレリーフに敬礼した。


「GOD秘密警察の長官としてショッカー大首領の名のもとに………!」



イタリカ フォルマル伯爵領であり、テッサリア街道とアッピア街道の交点に位置した交易都市である。
現当主のミュイは11歳。前当主の急死を受け、他家に嫁いでいた長姉と次妹がミュイの後見人を巡って争っていたのだが帝国の異世界出兵に参加した両家の当主が戦死。
フォルマル家にかまう余裕のなくなった両家が兵を引き揚げた結果、不正がはびこり治安が悪化した。そして―


イタリカは現在、盗賊の襲撃を受けていた。


「クソッ!!引け!引け!」


市民兵の必死の猛攻を受けて盗賊団の頭領らしき男が叫ぶと盗賊達は逃げていく。



「ノーマ、ハミルトン!無事か!?」


「ハァ、生きてま〜〜す。ハァ」


ピニャが叫ぶと騎士ノーマは疲れ果て手を上げて無事を知らせ、ハミルトンは息を荒くしながら答える。


「殿下、小官の心配はしてもらえんのですか?」


「グレイ、貴様が無事なのは分かりきってる」


「姫様〜、どうして私達、盗賊なんかと戦ってるんですか〜?」


「異世界の敵がイタリカ侵略を企んでいると思ったんだ!アルヌスとオ・ンドゥルゴに向かう途中でイタリカが襲われていると聞いてみれば、まさか異世界の敵と戦った連合諸王国軍の敗残兵崩れの盗賊団とは……!!」


ピニャは疲れ果て地面に座り込む市民兵に叱責する。


「お前達!休むのは後だ!盗賊共はまた来るぞ!!3日だ!!3日持ち答えれば妾の騎士団が到着する!!それまで頑張るんだ!!」


それを聞いた市民兵達は疲れ果て死んだような目のまま死体を片付け、柵を補強する。
ピニャはさっきの盗賊の襲撃で破壊された門を直せるかグレイに尋ねる。


「グレイ、どうだ?門の調子は?」


「駄目ですなぁ、いっそのこと材木で塞いで敵が来たら火でもかけますか」


「そうか……グレイ、そなたは休め。妾も館で仮眠をとってくる」


皇帝モルトの5番目の子供であるピニャ・コ・ラーダは側室の子であるが皇位継承権10位を持つ。やんちゃで周りを困らせていた彼女が「騎士団ごっこ」を始めたのは12歳の頃、女優だけの歌劇を見たのがきっかけといわれる。

帝都郊外の使用していない建物で貴族の子女を集めた彼女のごっこ遊びは子供の教育にもいいと回を重ねるごとに親達には好評になり数年後には「訓練」は2ヶ月〜3ヶ月に及ぶようになった。あげくに正規軍教官による本物の軍事教練。

騎士団では自立 規律心 敬愛 愛護 連帯感が育まれ、義理の兄弟姉妹関係を結ぶ儀式さえあって独自の気風が確立されていた。

ピニャが16歳の時の薔薇の咲く頃、男性団員がそのまま軍人への道を進んでいく中、彼女は女性団員を主とする『薔薇騎士団』を設立した。
周囲から儀仗兵のような存在と思われていたがピニャはあくまで実戦を希求。
その騎士団がイタリカへ向かっていた―。



仮眠中のピニャはメイド長に水をかけられて飛び起きた。


「何だ!敵か!?」


「さぁ何とも…。果たして敵か味方か…ともかく東門にてご自身の目でご覧ください」


東門に到着したピニャは扉の覗き窓を通じてそれを見た。
外には千堂達の乗ったショッカーの高機動車が停まっていた。しかし自動車を見たことがないピニャは戸惑う。


「何だあれは?攻城用の木甲車の類か?
前の2台の屋根には長弩(ちょうど)があるな……どれも鉄製か?」



「何者だ!?姿を見せろ!!」


城壁の上からノーマが叫んで市民兵達はボウガンを構える。



千堂達は困り果てていた。
避難民達の自立資金を得る為にイタリカに向かい、ショッカーとしてもとにかく異世界の情報が欲しいので偵察のため出向くことになったが状況を最悪そのものであった。
盗賊と戦っていたことなど知らない千堂達でさえ市民兵達の鬼気迫る表情で何が起きたのか察する。


「大歓迎だな……」


「明らかに戦闘か何かあった後ですね…どうします?」


「どうしたものか、今日のところはやめておくべきじゃ…」


「却下」


千堂の呟きをレレイが却下する。


「入口は他にもある。ここがだめなら他に回ればいい。センドウ達は待っていてほしい。私が話をつける」


「えっ!?君が?」


「ちょっと待ってレレイ!」


驚く加頭を他所にテュカが割って入る。


「なんでこの街にこだわるの?私達を助けてくれてるこの人達を私達の都合で巻き込んでいいの?」


「だからこそ行く。私達は敵でないと伝える。恩を受けているセンドウ達の評判を落とさないために。」


「……分かった、私も行く。」


そう言うとテュカは矢除けの精霊魔法を唱えて2人は車から降りた。それに続くようにロウリィも降りる。

それを見た千堂もいても立ってもいられなくなり、車から降りた。


「加頭、俺も降りる。なんかあったらこの小隊を頼む」


「分かりました。お気をつけて」






「誰か出てきたぞーーー!!」


市民兵の1人が叫ぶとピニャが高機動車から降りてきたレレイ達に注目する。


「魔導師…あの杖はリンドン派の正魔導師だ。それに金髪のエルフ……一体、何をするつもりなのだ?もし敵だとしたら精霊魔法はやっかいだ。今の内に弓で――!」


しかし、ピニャは彼女らに続いて3人目に降りてきた少女に驚いた。


「あ……あれは…ロウリィ・マーキュリー!!」


「あれが噂の死神ロウリィですか?」


「あぁ以前、国の祭祀で見たことがある」


「ここのミュイ様と変わりませんな」


「あれで齢900を超える化け物だぞ!使徒に魔導師にエルフ……何なんだ?この組み合わせは……本当に敵ならば――」


すぐにピニャは首を降って最悪の可能性を否定する。


(いや、ロウリィ達が盗賊の味方をしていればとっくに街は陥ちているはず…ということは彼らはまだ敵ではない)


周りの者我驚く中、ピニャは扉のついたてを外す。


(何用で来たかは知らぬが敵ではないのなら強引に仲間にするまでだ!!!)


そうしてピニャは勢いよく扉を開けた。
しかしその扉は突然、何かに阻まれてそれ以上開かなくなった。


よく見ると扉のへりを掌が掴んでおり、丈夫な木製であるにもメリメリとめり込んでいる。


「ヒッ!」


ピニャは思わず後ろに後退った。


そして千堂がヌッと姿を現した。後ろにはレレイ、テュカ、ロウリィを連れている。


「お嬢さん、そんな乱暴に扉を開けたら危ないじゃないか……顔にぶつかったらどうする」


そして千堂は堂々と扉を越えてイタリカに入城した。



「誰か今の状況を説明してくれます?」


千堂以外の全員がピニャを見た。


「妾………?」





ネオショッカー州 ネス湖底 ネオショッカー大神殿


ネス湖は日光が当たらないのでバクテリアが育たず、それに伴って魚などの水生生物がいない。
そんな死の湖、ネス湖底にはギリシャ風の神殿が建っていた。

神殿の中をゾル大佐によく似た軍服を纏い、ヤモリの絵が刻印された眼帯をつけた男が大きめの箱を抱えて神殿奥の巨大な魔神像に向かう。


「ネオショッカー大首領様、貴方様のお好きな人間の耳が届きました。今回はゲルダム州産のようです」


魔神像にひざまずくと魔神像の中に眠る自身の主人、B26暗黒星雲から来たドラゴン型巨大宇宙大怪獣 ネオショッカー大首領に報告する。すると像の巨眼が赤く光り、ネオショッカー大首領が反応する。


「ふむ、そこに置いておけ」


ネオショッカー大首領は魔神像から答える。そして男は魔神像に箱ごと供えると「失礼しました。」と神殿から出ていこうとする。


「待て、ゼネラルモンスターよ。異世界には余程の身の程知らずがいるようだな?」


「ええ、帝国の蛮族共はなかなか降伏しようとしませんね。戦力差を理解しているのでしょうか」


「違う!!帝国のことではない!!!」


ネオショッカー大首領に一喝され、ゼネラルモンスターはたじろぐ。


「ゼネラルモンスターよ、余は怒っているのだ……確か日本国とかいったな?彼の民は我らショッカーを相当に侮辱しているそうではないか?」


ゼネラルモンスターは黙って聞く。


「彼の世界のことは工作員を通じて入ってきておる。マスコミが我々のことをどう民衆に伝えているかもな!『恐怖の独裁国家』?『倫理観が欠落した狂人集団』?ふざけておるのか日本は?」


この時、日本のマスコミの反ショッカー報道はピークに達していた。ショッカーが周辺の村々を占領した際は『ショッカー、村民を虐殺!!』、『村民の強制連行!』などとありもしない戦争犯罪を報道していた。これを知ったショッカー外務省はアルヌスを通じて日本政府に抗議して非公式に政府が謝罪したがマスコミ側は報道の自由を盾に一向に変わる気配を見せない。それどころか最近は先程のように誹謗中傷に近い内容を垂れ流していた。


「それに自衛隊はアルヌスから出ず、帝国と積極的に戦おうとしない。
それに奴らが現れたせいで本来とっくに終わっていたはずの帝国戦に大幅な遅れが生じている!」


ショッカーは日本国とは友好ムードを構築することを至上命題とし、日本と日本世界の国々に警戒されないように注意を払っていた。しかしそれが原因で当初の対帝国戦のプランから大幅に遅れていた。警戒されないようにすることに重点を置きすぎているため、大規模な帝国領内侵攻ができずにいたのだ。


「嘆かわしい限りです。本当なら今頃、人民の入植が始まって人口問題も解決していたはずなのに……」


「その通りである!人口問題解決の為には対帝国戦に時間をかけていられない!!日本が対帝国戦の障害になるなら日本世界ごと征服すべきである!!!」



後にネオショッカー大首領は世界統治委員会の中で日本に反感をもつ同志達を集めて「対日強硬派」と呼ばれる派閥を誕生させるのだった。

 
 

 
後書き
次回予告

ピニャから依頼されて盗賊団からイタリカを防衛することになった千堂達。しかし人数が足りずに増援を呼ぶ…… 

 

第9話 イタリカ戦 前半戦

 
前書き
オリジナル怪人とは別に主人公、千堂の怪人態を5月末まで募集します。ドーパント、ゾディアーツ、ショッカー怪人のいずれかでお願いします。

アイディアは感想欄、またはメッセージにお書きください。 

 
「なるほど…我々、ショッカーが倒した連合諸王国軍の残党が盗賊になってここ、イタリカを攻撃してきてると」


千堂らは会議室で現在のイタリカの最悪な状況についてピニャとフォルマル伯爵家から説明を受ける。


「では、お前達は妾に力を貸すというのだな?」


「ええ、こんな状況では龍の鱗を売るどころではないですしね」


千堂はソファにドッカリと座ってテーブルの上に置かれた紅茶を優雅に飲みながら答える。


「で?敵の数はどれくらいですか?」


「千人といったところだ」


千堂達の小隊は10人、イタリカの市民兵は2000人。どう考えても攻撃箇所を決められる分、敵の方が有利だ。


千堂は少し考えて後ろに控えていた加頭に指示する。


「加頭、基地に応援を要請しろ。こちら側の人数が足りないからとな!」


「了解しました!」 


「援軍か?今から呼んでも間に合わないであろう?」


ピニャは不思議に思う。今から伝令を送って基地に伝えても数日はかかる。援軍となると到着にどれくらいかかるかも分からない。


「大丈夫ですよ。ここなら色々手間取ったとしても夜明けまでには到着するでしょう」


超短時間に驚くピニャを無視して千堂は紅茶に口をつけ、お茶菓子を美味しく頂いた。



加頭はオ・ンドゥルゴ基地のゾル大佐に応援を呼ぶように通信していた。


「事情は分かった。今からそっちに精鋭部隊を送る」


「精鋭部隊……ですか?」
 

「そうだ。今日、異世界入りした精鋭部隊がいるんだ。異世界での戦闘データ収集の為に実戦投入させるぞ」


「了解しました。ありがとうございます」


加頭は基地との通信を切った。





「ねぇ、センドウ」


「何だ?」


千堂は戦闘準備を終え、万が一に備えて城壁で防御陣地を構築しようとしている時にロウリィに話しかけられた。


「どうして敵のはずの帝国の姫様を助けるのぉ?あのコ、イケすかないわぁ」


「……街の人を守るためさ」


「本気で言ってるのぉ?」


「本気だ」


ロウリィは呆れたような素振りを見せた。


「その帽子貸して」


「お、おう」


ロウリィは千堂の軍帽を受け取ると祈りを込めた。その様子を見て千堂が尋ねる。


「理由が気になるか?」


「エムロイは戦いの神、人を殺すことを否定しないわぁ。ただ…それだけに動機は重要なの。偽りや欺きは魂を汚すことになるのよぉ」


「ここの住民を守りたいんだ」


「それだけぇ?」


千堂は観念したようにため息をついてもう1つの理由を話し始めた。


「…俺のひいじいさんは戦闘員だった」


「戦闘員ってあの骸骨みたいな服の奴?」


「そうだ。幼い頃、両親を亡くして孤独だった俺を元気づける為にひいじいさんは戦闘員の事をよく話してくれた。昔の戦友の話、初めて昇進した時の話、仮面ライダーとの戦いの時の話、そして話の最後に決まってこう言うんだ。

『戦闘員は雨の日も風の日も仲間達と共に戦い、強敵が立ちはだかったとしても怯まずに立ち向かう尊敬すべき立派な戦士だ』とね。
幼い頃、それを聞いてそういう大人になりたいと思った。」


千堂は沈みゆく太陽を見つめながら話す。ロウリィにはその姿がどこか悲しげに見えた。それを察した千堂はロウリィの方を向いてニカッと笑って言った。


「だからあのお姫様には俺達が『立派な戦士』であることを見せつけてショッカーとケンカするより仲良くした方がいいとわかってもらうんだ」


「気に入った!気に入ったわぁ、それ!そういうことならぜひ協力したいわぁ」



それからしばらくたって夜が更け、やがて朝日が昇った。



盗賊達の先遣隊200人は早朝の朝焼けと共に襲撃しようとイタリカの東門に向けて馬を走らせていた。


するとイタリカの東門の外に黒い軍服を着た集団が集まっているのが目に入った。


「てめぇら!何もんだ?」


「我々はショッカー!無様な敗走をしたのみならず、罪のない人々を苦しめ体制に刃向かう不穏分子と化した貴様らに慈悲はない。降伏しろ!さもなくば死あるのみ!」


「舐めやがって!クソがぁぁぁ」




怒り狂い野次を飛ばす盗賊を前にして隊員達はガイアメモリを起動して腕に浮き出た生体コネクタに挿入する。


『スイーツ!』
『バイオレンス!』
『ビースト!』


また別の兵士達はゾディアーツスイッチを押してゾディアーツに変身する。



小隊長である千堂と副隊長の加頭以外の全員が変身して横一列に並ぶ。



怒号を上げていた盗賊達は凍りついた。オ・ンドゥルゴで自分達を破った怪物達が目の前にいるからだ。



「また…あのバケモノ共だ!」
「まさか……イタリカにまで!」


「さっきまでの威勢はどうした!?バケモノの数は我々より少ない!人数で畳み掛けるのだ!」 



盗賊の中の誰かがそう言うと盗賊達は血気盛んに千堂達の方に向かって走り出す。



「総員、イタリカの不穏分子を片付けるぞ……殲滅しろ!!」



千堂が命令するとドーパントやゾディアーツに変身した部下達は盗賊に攻撃を開始する。


盗賊達は一方的に数を減らしていった。


千堂の小隊員は盗賊達を馬ごと切り刻み、吹き飛ばしていく。
ドーパントやゾディアーツが体当たりをすると体が凹んで全身骨折を起こした。
中には剣や弓で必死に抵抗する盗賊もいたがドーパントやゾディアーツに効果があるわけもなく反撃され無慈悲に死んでいった。1番悲惨だったのは千堂を相手にした者だった。彼は改造人間なのでドーパントやゾディアーツよりも強力でありそのパンチ力は最大20トン、キック力に至っては最大40トンである。
一応、千堂なりに人間態のままで"手加減"はしているのだがそれでも悲惨な死屍累々を築いてしまった。
しかし千堂はそれに罪悪感など一切感じていなかった。
むしろイタリカの市民を不穏分子から守ることができたという満足感でいっぱいだった。


「……とりあえずこれで先遣隊は壊滅。あとは後方にある本隊を潰すだけだな」


「そうですね……」



ビー、ビー、ビー


突然、オ・ンドゥルゴの基地から通信が入って加頭が慌てて応答する。


「はい、はい……!?…りょ、了解しました」


通信を終えた加頭が恐る恐る千堂に報告する。


「……間もなくオ・ンドゥルゴ基地から増援が到着するとのことです」


「そうか!間もなくか!そういえば精鋭部隊だそうじゃないか」


「はい……そうなのですが……その精鋭部隊というのは……」



説明しようとする加頭を他所にイタリカ上空を1基の武装ヘリコプターが飛来し、盗賊の本隊のある平野のど真ん中で静止する。



「おいおい…あのヘリコプター……精鋭部隊ってまさか…」 


「そうです……"奴ら"です」



ヘリコプターは盗賊本隊の上空で静止する。そしてヘリコプターの扉が乱暴に開け放たれ、5人の男女が降下して、固い大地に着地する。



「だっ、誰でぃ!?てめぇらは!?」


リーダー格の男が口を開く。


「俺達はNEVER」


「ね、ねばぁー?」


リーダー格の男は親指を下げてニヤリと微笑んで言い放つ。

「さあ、地獄を楽しみな!」 
 

 
後書き
次回予告

盗賊を圧倒するNEVER。少しでも一矢報いるために盗賊達は怪異を使う。だがそれを受けたNEVERは"変身"する。


ショッカー世界の人民の生活が分からないという意見が多数、寄せられたので人民目線の番外編を製作中です。お楽しみに! 

 

第10話 イタリカ戦 後半戦

 
前書き
オリジナル怪人とは別に主人公、千堂の怪人態を5月末まで募集します。ドーパント、ゾディアーツ、ショッカー怪人のいずれかでお願いします。

アイディアは感想欄、またはメッセージにお書きください。  

 
『NEVERが来るところ…それは必ず地獄になる』


世界統治委員会でミュージアム代表の園咲琉兵衛が言った言葉である。


そして今、イタリカの平原は盗賊にとって文字通り地獄と化していた。



「オラァ、オラァ」
 

堂本剛三はロッドを振り回して向かってくる盗賊達をなぎ倒していく中、NEVERのスナイパーである芦原は向かってくる盗賊に対して援護射撃を開始する。


「ゲーム・スタート」


芦原はアサルトライフルであるG36を盗賊に向かって構え冷徹に引き金を引く。

盗賊達は次々と放たれる銃弾の撃ち抜かれて絶命する。


「くそ!!なんでこんな目に!?」


そう言って剣を持った盗賊はすぐさま剣を芦原に突き出して突撃するが芦原はその盗賊に向けて引き金を引き、放たれた銃弾は左胸を撃ち抜く。
盗賊は力なく跪くが芦原は更に眉間に撃ち込んで息の根を止める。


「ゲーム・オーバー」




別のところではNEVERの女性メンバー、羽原レイカが盗賊と戦っていた。


「へっ、小娘が!取り囲んで殺っちまえ!!」



盾でレイカの周囲を取り囲んで突進してくる盗賊を素早い身のこなしでジャンプし、ヒラリヒラリと避け、盗賊達にまとめて回し蹴りを食らわして気絶させる。



それを見て恐れをなした盗賊の女性が逃げる。その女性は腕や手首辺りに羽が生えていた。彼女はセイレーンだった。


するとある程度走ったところで突然―


「逃さないわョ♡」


彼女の前にNEVERのサブリーダーである泉京水が現れてオーバーな動きをしながら立ちふさがる。


「ウッ、ウワァ!!変なオッサンだ!」



「あんた!言ってくれたわネ!レディに対してサイテーの侮辱を!ムッキーーーー!!!」


京水は酔拳のようにクネクネと動きながらで怒りを表すと素振りを見せ、どこからともなく鞭を取り出す。


「悪い子には!お仕置きよォーー!」

 

そして鞭を使って足元を締め上げて転倒させる。するとセイレーンは固い地面に頭を打ちつけて気絶してしまった。


「ふん!レディに侮辱を言った罰よ♡」



それらの惨状を後方から見ていた盗賊団の首領は驚き、部下達は慌てふためく。


「何だよ!?アイツら何者だ?」


「うろたえるな!こうなったらあれを出せ!!」


首領は冷静に部下に指示を出す。


「分かりやした!!」


部下は後方に下げてあった幕のかかった数台の馬車の荷台の幕を下ろす。


「グルルルル…」
「ヴィヒヒ……」


中にはオークやゴブリンが数十匹入っていた。


「フハハハハ!数十匹の怪異の群れだ!これには奴らも敵うまい!」


部下は檻の鍵を開けてオークやゴブリン達を外に出す。


「さぁ、行け!奴らを皆殺しにするぞ!生き残った奴も俺に続け!」


「「「ウォォォーーー!!」」」
「「「ヴィヒィィーーーー!!!」」」


怪異と生き残った盗賊達は首領を先頭に半狂乱でNEVERの面々に突撃する。



遠目からそれを確認したNEVERのメンバーは1箇所に集まって懐からガイアメモリを取り出す。それもただのガイアメモリではない。一般的なドーパントメモリとは違って装飾のないクリスタルパーツで出来ており、端子の色が青みがかっている。


「ウォーーー!いくぞーーー!!!!」


『メタル!』



「そろそろこの子の出番ね」


『ヒート!』



「じゃあワタシも♡いこうかしら♡」


『ルナ!』



「ゲーム・スタート」


『トリガー!』


克己を除くNEVERのメンバーはメタル・ドーパント、ヒート・ドーパント、ルナ・ドーパント、トリガー・ドーパントに変身する。



そこからは戦闘というより虐殺だった。


ヒート・ドーパントはオークを火だるまにし、ルナ・ドーパントは腕を伸ばしてゴブリンの数匹まとめて空高く投げ飛ばし、メタル・ドーパントは盗賊の体を殴りつけて穴ボコにする。


「何故だ!?何故なのだ!?こんなはずではっ」


オークと共に突撃した盗賊団の首領はうろたえる中―


パァン  


盗賊団の首領の眉間に穴が空いて倒れる。


「ゲーム・オーバー」


芦原ことトリガー・ドーパントの精密射撃で首領は息絶えた。




盗賊団とオーク、ゴブリンの勝ち目はゼロ。


そんな中、生き残った盗賊とオークとゴブリン10匹程が固まって克己の方に突撃する。

オークと盗賊らはこう思っていた。
克己以外のメンバーは怪物に変身したのに克己は人間の姿のままだから1番弱いに違いないと。そして、どうせ死ぬなら1人でも多く敵を道連れにしてやろうと。

それが大間違いだということも知らずに―。

 

「フッ、なめられたもんだな。豚なんかに向かってこられるとはな」


克己はオークと生き残りの盗賊達を睨みつけながらロストドライバーを懐から取り出して腰に着けた。
そしてドライバーから自動的にベルトが伸びて巻き付いたのを確認すると次にエターナルT2メモリを取り出した。


『エターナル!』


「変身!」


克己は起動したエターナルメモリをロストドライバーに突き刺すと白い鎧が克己の体を覆って青い衝撃波が迫りくるオーク達を吹き飛ばす。


大地にクレーターができ、その中央に黒いマントをたなびかせる白い仮面の騎士がいた。


仮面ライダーエターナルである。


そしてエターナルはドライバーからエターナルメモリを抜き取り、自身のコンバットナイフ型の専用武器…エターナルエッジのスロットに挿入した。


『エターナル・マキシマムドライブ!』


エターナルエッジを包み込むようにして青い炎が発生する。


「踊れ、死神のパーティータイムだ!」


そう言うと大道克己……仮面ライダーエターナルはエターナルエッジを空中で振るい、青い炎の斬撃をオークの集団の方に向けて飛ばす。オークの集団に直撃した青い炎は弾着と共に爆発した。


オークは殲滅され、盗賊の方も数人程度の捕虜を残して全滅した。




この戦いをイタリカの城壁から眺めていたピニャとその仲間達、フォルマル伯爵家の顔ぶれは呆然としていた。


「ピニャ殿下……私達は悪夢でも見ているのでしょうか?」


「こんなの……もはや戦いではない……虐殺だ……」



その後、オ・ンドゥルゴ基地から来たヘリにNEVERのメンバーは強制的に乗せられ帰っていった。それをよそに千堂らは捕虜を1箇所に集めて拘束していく。


そんな千堂の元にイタリカの住民の1人が駆け寄ってきて尋ねる。



「あんたらいったい…どこの軍隊かね?」


「私達はショッカーです」



「しょっかー……」




その後、千堂ら率いるショッカー第1小隊はフォルマル伯爵家の面々と交渉した。主な内容は帝国領であるイタリカとの停戦、そしてイタリカの今後についてである。
謁見の間で千堂は1枚の書類を当主ミュイに渡した。その書類にはショッカー側の停戦条件が書かれていた。伯爵家の面々は戦々恐々とショッカーの提示してきたイタリカとの停戦の条件内容を読む。



1.治安維持の為、ショッカー防衛軍はイタリカ及びフォルマル伯爵領内に進駐する

2.フォルマル伯爵家は存続するが当主のミュイは11歳である為、ショッカーが派遣する教師から15歳までの義務教育を受けること

3.イタリカではショッカーの法律が適用される

4.今回の捕虜の権利はショッカーにあるものと認めること

5.ショッカーの企業とコダ村避難民の運営するオ・ンドゥルゴ生活組合はフォルマル伯爵領内とイタリカ市内で行う交易において関税、売上、金銭の両替等に負荷される各種の租税一切を免除される

6.オ・ンドゥルゴとイタリカまでの往来の安全を保障すること



ミュイを始め、フォルマル伯爵家は驚く。彼らからすればショッカーの提示した条件は寛大過ぎたからだ。王族は追放、或いは処刑して民は軒並み奴隷化するのが当たり前のこの世界の戦争の常識からすれば"超"好条件もいいところであった。


しかしそんな"超"好条件に異を唱える者が1人だけいた。
 

「なっ、何だこれは!?!?」


ピニャは立ち上がって叫んだ。3つ目や6つ目の条件に関して異論はないがそれ以外はイタリカを占領するものであり、帝国の"皇女"として飲めるものではなかった。ましてやイタリカは帝国の交易の主要都市であり穀倉地帯としての役割も担っている。ここを失えば最悪、帝国が干上がる可能性があるので絶対に譲ることができなかったのだ。


「何か問題でも?」


千堂はピニャの方をジロリと見る。千堂からすればこれはショッカーとイタリカとの交渉であるわけなので本来、帝国の皇女であるピニャが介入する道理はないと思っていた。


「問題大アリだ!治安維持の為に進駐するとあるが実際にはイタリカが占領されるということではないか!?こんなもの到底飲めない!!」


「"姫様"、お忘れですか?我々ショッカーと帝国は戦争状態にあるのですよ?これぐらいの要求は当然です」


「し、しかし……」


「不満があるようなら我々と戦いますか?それならそれで我々は構いませんが……」


千堂はにこやかに微笑みながら冷徹に言い放つ。


(拒んでも武力で占領するというのか…先程の力を振るわれたらイタリカなぞ容易く陥落してしまう)



ピニャは説得を諦めて悔しそうに書面に自身のサインをした。その下の空欄に領主であるミュイのサインもし、ショッカー側の代表として千堂もサインする。ショッカーとイタリカの"話し合い"はその場で終了した。



「それでは当主ミュイ様並びにフォルマル伯爵家の皆様、我々ショッカーとイタリカの末永い友好を期待します」


にこやかに千堂は微笑むと部下を引き連れて謁見の間から出ていった。




千堂の微笑みがフォルマル伯爵家の面々にはこれからの希望に満ちたものに見え、ピニャには帝国を滅ぼさんとする悪魔の微笑みに見えた。 
 

 
後書き
次回予告

オ・ンドゥルゴ基地へ帰投中にピニャの騎士団と遭遇してしまった千堂達、協定のことなど知らない騎士団は千堂に暴力を振るう。
そのことを謝罪しにピニャはオ・ンドゥルゴ基地に向かう

次回、乞うご期待!! 

 

第11話 協定違反

 
前書き
オリジナル怪人とは別に主人公、千堂の怪人態を5月末まで募集します。ドーパント、ゾディアーツ、ショッカー怪人のいずれかでお願いします。

アイディアは感想欄、またはメッセージにお書きください。  

 
「ハイヤッ!」


「ボーゼス!急ぎすぎだ!後続が落伍しているぞ!」


薔薇騎士団が全速力で馬を走らせイタリカに向かっていた。
先頭の騎士達のあまりの速さに土煙が舞い上がり、後方の歩兵達が置いてけぼりを食らう。


「まだ遅い!ピニャ殿下が私達を待っておられるのよ!!」


そう言い放つ薔薇騎士団副団長ボーゼスだったが―



「パナシュ……私達、間に合うかしら」


ボーゼスが不安に負けてつい呟く。



「姫様なら保たせるさ……きっとな」





ショッカーの占領下に置かれたイタリカには地球儀を鷲掴みにする鷲の旗が翻り、ショッカーの戦闘員を乗せた装甲車が次々と入城した。市民達は盗賊達を追い払ったショッカーの軍勢を複雑そうな顔で見つめる。




当初、帝国の物流に打撃を与える目的で占領する予定だったイタリカだが文明レベルが判明してくるにつれて財団Xやノバショッカーなどの企業や財務省などが『物流を抑える』という占領目的が見直すように要請し、新たな占領目的に置き換わっていった。その新たな占領目的とは―






翼龍の鱗をカトー師匠の知り合いの商人リュドーに売り終えたレレイ達と入れ替わるように白服の男が2人、リュドーの商談部屋に入る。


「突然ですみません、リュドーさんはいますか?」


レレイが売って行った翼龍の鱗を眺めるリュドーに男達が話しかける。


「リュドーは私のことですが……失礼ですが貴方達は何者ですか?」


「申し遅れました。私共はこういう者です」


そう言うと異世界語で書かれた名刺を取り出して商人に手渡す。


「財団X?どういった団体ですか?」


「なんと言いますか…ショッカーの商人ギルドのような物とお考えください」


ショッカーと聞いて動きが止まる。ショッカーといえばイタリカに攻めてきた盗賊団を返り討ちにし、イタリカを占領している異界の軍勢。その商業ギルドがわざわざ自分のところに来たのだ。只事ではないと腹を括った。


「で…その商人ギルドが私に何の用ですかな?」


「私共としましては衣類や食料、生活用品をイタリカを通じて帝国の商人に流そうと考えています。これらはその輸出品の種類と価格が載った目録です」


予想外だった。てっきり商人としての家業を畳まされイタリカから追放されるのかと思っていたからだ。
ショッカーが何故、敵であるはずの帝国に自国の商品を輸出したがるのかは分からないが商談と聞いて応じることにする。


しかしショッカーには協定で得た関税を含むありとあらゆる免税特権がある。普通に考えて関税が無ければショッカーの輸出品は高く買われ、イタリカ側の商品を安く買い叩かれてしまう。


そう思うとゾッとした。彼は恐る恐る手渡された目録を見る。



実際はその反対だった。




ショッカーの輸出品が"超"低価格だったのだ。


リュドーは驚きの余り、声を上げそうになった。それほどショッカー側の品々が安かったのだ。


(だ……だがこれほど安いということはきっと粗悪な物に違いない!騙されるな!)


リュドーはそう心に言い聞かせる。


「それとこちらは商品の見本なのですが……」


そう言うと職員は大きめのスーツケースを開けてリュドーに見せる。

中にはショッカーが特別に製造した帝国製よりもずっと精巧な短剣、象牙、香辛料、木材やろうそく、そして衣服等の布製品などありとあらゆるものがズラリと入っていた。職員の男達はそれらの見本を机の上に並べていく。


「こっ……これは……!!」



(なんて精巧なんだ!!短剣なんかまるで鏡のようじゃないか!?それに衣服は丈夫だし、象牙は今まで見たことがないほど美しい!)


特にリュドーの目を引いたのは香辛料だった。
文明レベルが中世程度のこの世界では香辛料は"超"どころか"超超"高級品である。それを『"超"低価格』でショッカーから購入し、『低価格』で市場に流す。それだけでどれだけの莫大な利益が見込めるかは想像に難くない。



(これはすごい!かなり大きな商機だぞ!!)



リュドーの商人としての勘が彼にそう告げる。


「して…我々は何を帝国から"輸入"し、ショッカーに"輸出"すればいいのですか?」


「奴隷を売って頂きたい。できるだけ亜人種をお願いします。敵である帝国が我々に売ってくれるとは思えませんからリュドー氏の名義で仕入れ、それを我々に売って頂けるようお願いします」


リュドーはまた頭をかしげた。何故、ショッカーが亜人の奴隷を欲しがるのか分からなかった。
しかし職員の次の言葉でその疑問も吹き飛ぶ。


「男女問わず亜人種の奴隷なら1人につき20シンク金貨でどうでしょう?」


「20シンク金貨!?!?」
  

リュドーは驚きの余り、椅子から転げ落ちた。


転げ落ちるのも無理はない。前回も書いたが銀貨5枚で1日暮らせるこの世界で奴隷1人に20シンク金貨は相場の数倍以上の値であるからだ。それも1人につきである。"超"低価格で高品質の品々を仕入れられる上、奴隷を"超"高価格で買ってもらえる。こんなにおいしい話はないし、それに飛びつかないほどリュドーも馬鹿ではなかった。


「分かりました。この商談、喜んでお受けしましょう!」



「ありがとうございます。これからも末永いお付き合いをしていきましょう」


財団Xの職員は握手しようと手を差し出す。
リュドーは何をしようとしているのかが分からなかった。


「これはそちらの世界の儀式か何かですか?」


「いえ、儀式というほどのものではないのですが……これは握手というものです。お互いの手を握ることで友好を深めようという私達の世界の習慣です」

 
「ほう、いい習慣ですね」



両者共に握手して円満ムードで交渉は終わった。






だがリュドーは分かっていなかった。



外国製の安くて質のいい製品が一旦、市場に入れば質の悪い自国製を誰も買わなくなるということを―。
そしてそれは自国経済の"侵略"行為であるということを―。
亜人種の奴隷を買ったのも研究目的とは別に帝国の労働力を少しでも減らすという"悪意"があることを―


数年後、いや早くて数ヶ月後にはショッカー製の安くて質の良い製品が帝国の市場を席巻するだろう。そしてその時には帝国製の製品には誰も見向きもしなくなってしまう上に奴隷という貴重な労働力が減り、帝国の経済は壊滅的な打撃を負うことになる。
 



ショッカーは密かに帝国を内部から崩壊させようと暗躍するのだった。






「これより……オ・ンドゥルゴ基地へ帰還する」


千堂の第1小隊はレレイらと共に装甲機動車に乗り、イタリカからアルヌスを周回してオ・ンドゥルゴに帰投する。


しかし、その道中で加頭が双眼鏡を取り出して叫んだ。


「騎馬を数騎発見!こちらに向かってきます!」


「何だと?」


千堂は目を凝らして見る。金髪と銀髪の女騎士を先頭に騎馬隊がこちらに向かってくる。


「姫様の言っていた騎士団か……遅いな、中世レベルなら仕方ないか…」


そう言っている間に金髪と銀髪の騎士達が高機動車に近づく。


「貴様らどこから来てどこへ向かう?」


金髪の女騎士…ボーゼスが千堂に尋ねる。千堂は車から降りて答える。


「イタリカから来て、オ・ンドゥルゴの丘へ帰る」


「オ・ンドゥルゴの丘だと!?貴様ら異世界の敵か!!」


銀髪の騎士……パナシュが叫ぶと後ろに控えていた女騎士達が剣を抜く。


「降伏しなさい!」


パナシュは千堂の首筋に剣を向けるが千堂は臆することなく言う。


「……これはピニャ殿下並びにイタリカ政府と結んだ協定の違反行為と受け取るがそれでもいいのか?」


「協定だと!?姫様が敵と協定など結ぶものか!!!」


「どうやら知らないようですね。いいですか、殿下はわれわ―」



千堂が言いかけた時に


「ええい、黙りなさい!!」


ボーゼスは千堂に殴りつけて言葉を遮った。



「敵対行動だ!このバカ女共を拘束して小隊長をお守りしろ!!」


加頭が小隊員に指示すると兵士の1人がネット銃を取り出してボーゼスに発射する。するとネットがボーゼスに覆い被さる。


「なっ、何だ!?卑怯も…グワァァ!」


ネットから逃れようとするボーゼスにネットから電流が流され彼女は気絶する。


「ボーゼス!おのれ!」


剣を抜こうとするパナシュに別の小隊員がゴム銃を発砲する。パナシュの胸部にゴム弾が直撃し落馬する。  


「グワッ!」


パナシュを援護しようとした他の騎士達にもゴム弾を食らい次々と悶絶して倒れる。


辺りに気を失った騎士達が転がっている。




「誰がここまでしろと言った!」



千堂は加頭に怒鳴りつける。


「しかし……これは正当防衛です!それに相手は隊長に剣を向けたのみならず暴行に及びました!明らかな協定違反です!」


「ったく、取り敢えず基地に通信してこの事を報告しろ。そしてイタリカにこの騎士達を送り届けるぞ」



千堂達はボーゼス達、騎士団を捕縛し、イタリカにいるピニャに送る為、そして協定違反を告げる為にイタリカに戻るのだった。 





その頃、ショッカー世界の世界統治委員会は真っ二つに割れていた。

事の始まりは日本との外交を決める会議で委員会の3分の1のメンバーが対日強硬派を自称し、日本世界に宣戦布告して侵攻すべきと主張したのだ。残りの3分の2…いわゆる対日穏健派とぶつかることになった。


ショッカー世界は急速な人口爆発が起こっておりこれ以上、人の住める土地がないのだ。食料自給率は100%超えといえど人の住める土地がなければ意味がない。かといって日本世界の中国の「一人っ子政策」のような出生制限をすれば少子高齢化が待っている。何をしようにも八方塞がりなのだ。

そこで対日強硬派は日本世界へ進軍し、占領した上で大量植民を行って征服すべきと考えたのである。同時に反ショッカー報道を潰せるので一石二鳥でもあった。


「宣戦布告などすべきではない!!日本との国交開設交渉がようやく進んだというのに―」


「日本、日本、日本、いつから我々は日本の属国になったのだ!?!?攻め滅ぼしてしまえば彼の国にも植民できるのだぞ!?メリットだらけじゃないか!!」


「派兵した後、どうするのだ?兵站は?占領統治は?それに進行中に自衛隊や在日米軍に『門』を破壊されたら意味がないだろ!!」


「それなら蝙蝠男ウィルスを使えばいい!秘密裏にあれを日本に撒けば理論上僅か11時間で日本人全員がショッカーのシンパになるぞ!!」


「"理論上"はな!あのウィルスには感染者の指令の為に蝙蝠男がある程度の位置にいなきゃならんし、そもそも個々に応じた指令ができんだろうが!!」





対日強硬派の主なメンバーはネオショッカー大首領、テラーマクロ、ジャーク将軍など地球出身でない者が多い。
対して対日穏健派は地球出身が多数を占め、いくらか日本の事情が分かる者が多い。


対日強硬派の主張を簡単にまとめると
「人口問題はショッカーの支配体制崩壊の可能性を孕んでおり、異世界は人口問題解決の鍵である。にも関わらず日本と共闘したばかりに大規模な軍事侵攻が不可能となってしまった。障害となっている日本国及び日本世界を即刻、征服しつつ、帝国領内の進撃を再開し、彼の世界と帝国のある異世界の両方植民すべきだ」というものである。


対して対日穏健派は「使節団派遣を控えているのに日本世界に侵攻して心象を悪くするなど愚策。時間はかかるが日本世界は裏工作で影から支配し、帝国に関しては経済を通じて傀儡化してショッカーの代わりに異世界を征服させる方が効率的」というものである。


戦争というのはすごい勢いで金と人命を吸い上げていく。それはショッカーにおいても例外ではない。武器弾薬の製造は勿論、新たな改造人間の作成・訓練費用が財政を蝕むことは確実。さらに当たり前ではあるが日本世界に宣戦布告すれば同時に198ヶ国相手にしなければならない。帝国戦以上に広大な戦線を維持しなければならない上に占領地での行政の執行や治安維持の手間を考えれば日本世界に対しての軍事行動は余程の挑発行為でもない限り極力、控えるべきだ。

仮に日本世界の国々に攻め入ってショッカーが誇る最新兵器や改造人間で圧倒したからといってそこで「戦争」が終わるわけではない。征服者が戦闘の終結を宣言しても占領民が納得しなければレジスタンス化し、本当の戦闘も戦争もそこから始まることは歴史が証明している。

「最強」を自称するショッカー防衛軍でさえ泥沼の長期戦となると戦い方としてはつらい。
最悪、米軍が中東で経験しているような兵隊と民間人の区別がつかないゲリラ戦に巻き込まれていくことは容易に想像できる。


尤も対日強硬派がそんなことさえ分からなくなっていたのにはショッカーが世界を征服してしまい、仮想敵らしい仮想敵がいなかったことと、ショッカーに楯突く者を「不穏分子」として1人残らず粛清してきたことが関係しているのは言うまでもない。


「死神博士、発言の許可を求める」


対日強硬派の1人であるネオショッカー州の魔神提督が挙手した。


「ではネオショッカー大首領代理 魔神提督。発言を許可する」


「穏健派の諸君は現在のネオショッカー州の人口がどれだけかご存知か?」


対日穏健派のメンバーが静まり返る中、魔神提督が立ち上がって発言する。



「20億人だ……ただでさえ狭いあのヨーロッパにそれだけの人間や獣人、異種族がひしめきあっておるのだ!すぐさま移民を送らねばネオショッカー州で反乱が起きるぞ!!!」


それを聞いていたジャーク将軍とテラーマクロが発言する。


「ネオショッカー州だけではない!我がクライシス自治区の人口は80億人とピークを迎えようとしているのですぞ!」


「我がドグマ自治区も限界だ!!せめて異世界の占領した地域だけでも植民を認めろ!!」


「しかし……それでは日本世界の諸国に警戒されてしま―」


「警戒されたところで何だと言うのだ!?我々は日本国の奴隷になったつもりはないぞ!!!」




会議はその後も続いた。



(対日強硬派は現実が見えていない。それにGOD秘密警察からは軍上層部の一部が自身の出世の為の手柄欲しさに日本と戦争したくてウズウズしてるという情報も入っている……はて、どうしたものか)


議長である死神博士は頭を抱え、何とか折衷案はないかと模索し始めた。 
 

 
後書き
次回予告

協定違反を知ったピニャはショッカーに謝罪しにオ・ンドゥルゴ基地に向かう。
そこでショッカーとの戦力差を思い知ることになり……

次回、乞うご期待!! 

 

第12話 動き出す世界と陰謀

 
前書き
オリジナル怪人とは別に主人公、千堂の怪人態を5月末まで募集します。ドーパント、ゾディアーツ、ショッカー怪人のいずれかでお願いします。

またオリジナル怪人も募集中です!こちらはショッカー怪人以外でも構わないのでドンドン送ってきてください。
アイディアは感想欄、又はメッセージにお書きください。 

 
「お前達はなんてことしてくれたんだ!!」


ピニャは捕縛された騎士団を見るなり全員の頬に平手打ちをした。


「我々は協定で往来の自由を認めていたのだぞ!!それを知らないとはいえお前達はー!!!!」


ピニャがボーゼスらを叱りつける中、千堂は冷静に言い放つ。


「今回の行為は明らかな協定違反です」


「それは分かっているが……彼女らは協定のことを知らなかったのだ……。だから許してやってはくれないだろうか?」


ピニャが千堂に懇願する………が


「ふざけてるな!!」
「死人が出てたかもしれないんだぞ!」


千堂の部下の隊員達が口々に言う。


「ピニャ殿下……私個人としては部下に被害が無かったのでよかったのですが……一介の軍人としては今回の協定違反は到底、見過ごすことができません。それにこの事は既に基地に報告済みです。帝国にはこれ以上無いほど厳しい目が向けられることでしょう。潔い態度をとった方が帝国の為ですよ」


ピニャは落胆した。事案発生から数時間しか経っていないのに既に基地に報告がいっていることに落胆する。それもそのはず、この世界ではありえないぐらいの連絡伝達速度だからだ。


「この始末、どうしてくれよう……」


(協定破りを口実に居丈高な外交を行うのは帝国の常套手段。ショッカーが同じことをしないとは限らない)


そんな中、フォルマル家のメイド長が千堂の前に出てきた。


「センドウ様、盗賊からイタリカを救ってくださりありがとうございました。改めてお礼を言わせてもらいます。この恩を当家は決して忘れません。
そして今回の協定違反でイタリカや帝国を滅ぼすというのなら我々も力を貸す所存です。ただ当家のミュイ様には矛先を向けぬよう伏してお願いします」



メイド長が千堂の前に頭を下げて懇願した。


(そうか……フォルマル家にとって帝国なんて関係ない。この人達の忠誠心はミュイ様にあるのか……)


千堂は感心した。そしてメイド長にやさしく言う。


「頭を上げてください。今回の協定違反にフォルマル伯爵家の皆様は関与していませんのでイタリカやフォルマル家に報復攻撃を行うようなことはしないはずです。
"フォルマル家"や"イタリカ"にはね………」


そう言うと横目でピニャとボーゼスの方を見た。千堂と目が合うとピニャ達は顔を反らした。



「では、犯人を引き渡したので我々は基地に帰ります。後のことは追って連絡します」


千堂らが帰ろうとするとピニャが引き止めた。少しでも時間を稼ごうと思ったのだ。基地に知られてしまっている以上、無駄だと分かってはいるが何もしないよりはマシであった。


「そうだっ!和解の意味を込めて騎士団と懇談の場でも―」


「結構です!!」


時間稼ぎすら失敗したのでピニャはどうすべきか考えた。


(センドウ次第でショッカーが大きく動く!クッ!……こうなったら!!)



「―では妾も行こう!!妾もオ・ンドゥルゴに同行させてもらう!」


「は?」


「此度の協定違反、上位の指揮官に正式に謝罪しておきたい。よろしいか?センドウ殿」


第1小隊の面々は驚いた。敵国の皇女がショッカーの基地に出向きたいと言い出したのだ。


「御自身の立場を理解されてますか?貴方は敵国の皇女なのですよ?」


「それでも……妾は皇女として帝国軍人の起こした失態の尻拭いをする務めがある!だからお願いだ!どうか妾だけでもオ・ンドゥルゴに連れて行ってくれ!」


「殿下1人、敵地に行かせるわけにはゆきません!私も同行を!」


ボーゼスがピニャの足にすがりついて頼み込む。


「……分かった、ボーゼス!自らの失態を挽回せよ」


「ハッ」



ピニャ達が勝手に話を進める様子を見た千堂は呆れ果てた。


「基地に迎えを寄越すよう伝えてくれ。もう知らん……」


「了解しました!」






数時間後………



千堂達は身支度を終えたピニャとボーゼスを連れてフォルマル家の中庭に集まっていた。


「間もなく迎えが到着するそうです」



千堂イタリカからオ・ンドゥルゴ方面の遥か上空から何かがやって来る。ピニャは目を細めて見る。すると次第にはっきり見えてきて、その姿にピニャは戦慄する。


「なッ!!何だッ、あのバケモノは!?」



ショッカー防衛空軍が誇る移動空中要塞 クライス要塞が咆哮をあげながらイタリカ上空にやって来る。やがてクライス要塞はピニャ達の頭上で静止し、中庭に巨大な日陰を作った。


その禍々しい姿にピニャ達は勿論のこと、イタリカ市民全員が恐れおののいた。



「龍だ…鉄の龍だ…それも空に浮かんでいる…」
「こんなのを操る軍勢と戦っているのか……帝国は……」


ピニャ達だけでなくレレイ達も驚愕を通り越して畏怖していた。


「これがショッカーの力………」
「すごい……空を飛ぶなんて」


ただ1人、ロウリィだけが神妙な顔でクライス要塞を眺めていた。


(ロウリィは神官だからなぁ、新しい技術には保守的になるのも当然か。)



千堂は一同にクライス要塞について簡単に説明する。


「このクライス要塞はショッカーが誇る空中要塞です」


「要塞だと!?しかし空をとんでいるのだぞ!!」


「なんというか……貴方方異世界の機械式移動式要塞だからでしょうか……」


「機械式!?これが機械なのか!?」


「ええ、機械ですよ……」


ピニャはショッカーと帝国の技術格差の一端を垣間見たような気がした。しかし、こんなものはまだ序の口だった。



突然、クライス要塞の腹部から千堂達に向けて緑色の光が千堂達に照射された。

ピニャは何をされるのか分からず、警戒するが千堂が一言、「大丈夫ですよ」と言うと少しだけ落ち着いた様子を見せた。



「それでは行きましょうか」


「へ?行くとはどこに?」


質問の答えが返ってくる間もなく、ピニャらは一瞬にして光に包まれてクライス要塞に吸い込まれた。


そして、ピニャ達の眼前にはさっきまでいた緑豊かな中庭ではなく、SF映画に出てくるような宇宙戦艦の司令室のような光景が広がっていた。


「イーッ!!ようこそ、クライス要塞へ。
私はこのクライス要塞の艦長をしています、防衛空軍少佐、坂田龍四郎です!
千堂大尉!以後、お見知りおきを…」


坂田はワープ装置で転送されて来た一行に挨拶した。


「イーッ!!どうも、私は防衛陸軍大尉の千堂です。こちらこそよろしくお願いします」



坂田に対してショッカー式敬礼をする千堂を他所にピニャ達は突然、クライス要塞にワープしたことに慌てふためく。


「何だ!?一瞬で場所が変わったぞ!」


これにはレレイ達も驚きを隠せなかった。


「どんな魔法を使ったの!?」
「ショッカーは魔法が使えないはず…どうやって……」


「あー、皆さん、落ち着いて。今のはですね―。」


坂田はワープについて簡単に説明する。



「つまり、地面からこの司令室にへと瞬間移動できるのか?」


「そういうことです」



(『クライス要塞』が空を飛ぶというだけで驚くのはまだ早かった……!!どれだけ技術力が隔絶しているのだ!ショッカーとやらは!!)


ピニャはとうとうその場にへたりこんでしまった。


坂田はそれを無視して部下に命令する。


「これより本艦はオ・ンドゥルゴ基地に帰投する!クライス要塞………発進せよ!」



航行を命じるとクライス要塞は動き出した。


「わ、妾達…空を飛んでいるぞ!!!」
「恐ろしい技術ですね…………」


異世界側の一同はただ呆然としていた。


しばらく飛行し、オ・ンドゥルゴ基地に近づくとクライス要塞のモニターにオ・ンドゥルゴ基地の様子が映し出される。


「なんだこれは!?動く絵か!?」


「違う、これはモニターという物。カメラという魔道具から外の景色を映し出しているだけ。つまりこれはショッカーの基地の様子…」


ピニャはレレイから理解半ばに説明を聞いて映像を眺める。


「オ・ンドゥルゴか……聖地とはいえただの丘だったはずだ……それが今や…」

「ええ、ショッカーに丘を掘り返されて基地まで造られてます」


オ・ンドゥルゴにそびえる巨大な軍事基地の映像を見て、ピニャとボーゼスの周りの空気が一気にお通夜ムードになる。ショッカーに勝てる気がしなかったからだ。


やがてモニターの映像が外で訓練をする兵士達の映像に切り替わった。
ピニャはでショッカーの兵士の持っている銃が気になり、レレイに尋ねる。


「先程から兵士達が持っている杖……ショッカーには魔道士を大量に養成する方法でもあるのか?」


「違う、あれは魔導ではない。ジュウと呼ばれる武器」


「武器!?」


「原理は簡単。炸裂の魔法が封じられた筒で鉛の塊をはじき出している」



(ほう、短時間でよくそこまで見抜いたもんだな………すごいよ、レレイは)


ピニャはショッカーの技術力に驚いていたが千堂は多少の違いはあれど短時間で銃の原理を見抜いたレレイに驚いていた。


そんなことはつゆ知らず、ピニャとレレイは話を続ける。


「武器であるなら作ることができる……とすると全ての兵に持たせることもできる―」


「そう、帝国軍と戦った時もショッカーは銃による攻撃で蹂躙した後、このクライス要塞で大量の兵を投下して生き残った兵を殲滅したらしい」


ピニャは考え込んだ。


(戦い方が根本的に違う。我々の戦意と戦技を磨いた戦列も「ショッカーの技術力」を前にしては無意味に違いない)


ピニャはクライス要塞に乗っている戦闘員の持っているM16A4をチラリと見る。


「戦況を一方的にしないために『ジュウ』だけでも手に入れなければ……」


「それでは無意味」


「なに!?」



そう叫ぶピニャにレレイはモニターに映っている屋外訓練を行う怪人達の様子を指差した。
蜘蛛のような姿の者、蝙蝠のような姿の者……彼らの禍々しい姿にピニャとボーゼスは凍りつく。


「彼らはカイジン。ショッカーは人間に動植物の特性を植え付ける技術があり、植え付けられた人間を『カイジン』と呼ぶ。彼らにはジュウによる攻撃が通用しない上にすごい力持ち」


「イタリカで盗賊団を追い払った怪物達か…」 




(ジュウ、カイジン、稲光を撃てる弩、鉄の龍、鉄の巨人……あんな物を作れる職人などドワーフの匠にもいない!あれはまさしく異世界の怪物だ)




「何故こんな連中が攻めてきたんだ?」



その言葉をすぐ近くで聞いていた千堂はピニャの言葉に腹が立ち、すぐさま言い返す。


「被害者面しないでください。帝国が先に我が世界に侵攻したのをお忘れなのですか?」


「ウッ!それはそうだが……」


「それともあれですか?自分達が攻める時は官軍、異世界で多くの人民を虐殺しても官軍、その報復に逆侵攻されれば被害者ですか?えらく都合がいい論理ですね」


千堂の皮肉にピニャとボーゼスは何も言えなくなる。
帝国は自ら悪魔を怒らせ、招き入れてしまったのだ。



「帝国はグリフォンの尾を踏んだ。それに帝国の敵はショッカーだけではない。アルヌスの丘の異世界の軍勢、ニホンコクジエイタイもいる。ショッカーは現在、彼らと共闘して帝国と戦っている」



レレイは現在の帝国の状況を冷静にピニャに伝える。


(最悪だ。異世界の敵同士が手を結び、帝国を攻め滅ぼそうとしているとは…)


実際には自衛隊は特殊な政治事情があるので対帝国戦に消極的なのだがそんなことをピニャは知らない。


ピニャはレレイを見る。さっきの言葉からレレイは帝国に対して愛国心のようなものを一切、抱いていないことは簡単に想像がついた。それに対して千堂らショッカーはレレイやエルフだけでなく亜神であるロウリィまで味方につけている。つまり軍事面だけでなく人心掌握の観点でも負けているのだ。



(帝国は国を支配すれども人心は支配できず……か)






基地に着くとピニャとボーゼスは戦闘員に案内され、基地内の応接室に連れてこられた。

 
応接室の中でピニャ達がしばらく待っているとドアが開かれてゾル大佐が入室する。それに続くように古代エジプトのツタンカーメンのような被り物をした男が入ってくる。


「待たせたな、ピニャ殿下」


(この地味な黒服の男がショッカーの軍を率いる長か?)



ピニャはゾル大佐を見てそう思った。


「報告は聞いている。"我々"を煩わせるようなら協定や帝国の扱いを見直さなければならない…そうは思わんか?」


(見直す!?協定が守られねば帝国内にさらに侵攻するというのか!?) 


「今回の一件で帝国に対する見方はますます厳しいものになった。そのことを覚悟していもらいたい」


隣に座っていたツタンカーメン風の男……暗闇大使がようやく口を開いた。


「千堂から聞いたぞ。そちらのご婦人にひどくあしらわれたそうだな…」


ピニャとボーゼスは冷や汗をかき始める。


「その事について聞きたいことがいくつかあるのだが……奴が暴行を誘発するような言動をしたのか?なぜ奴に暴行したのだ?どういう状況で暴行に及んだのだ?」


「それは……」


ピニャが説明しようとすると―。


「殿下に聞いていない!目の前の騎士に聞いているのだ!!!さぁ答えろ!」


暗闇大使は高圧的な態度でボーゼスに質問した。

ボーゼスは千堂が異世界の敵であること。なにより協定のことを知らなかったことを告げた。


それを見た暗闇大使は軽く鼻で笑った。



ピニャとボーゼスは暗闇大使が納得してくれたものと思った。
しかしキッと暗闇大使はピニャ達を睨みつけて口を開いた。


暗闇大使はボーゼスの説明を聞いて内心、怒り狂っていた。連絡手段がないとはいえ、理由も聞かずに自軍の兵士を暴行するとはショッカーの存在を軽視していることにほかならない。ショッカーを軽視すること……即ち、その頂点である大首領様を侮辱することである。
そしてショッカー世界ではショッカー大首領は全知全能の御方であり、万物の王であり、神そのものである。

ボーゼスはそんな御方を侮辱し、ショッカーのメンツを潰したということになる。



はっきり言って『万死に値する行為』であった。



暗闇大使の拳が怒りでプルプルと震え、顔からは青筋が浮き上がる。


「余りふざけるなよ、連絡が行き届かなかった?そんなの理由になるか!!貴様らは我がショッカーと我らが偉大なる大首領様を愚弄しているのか!?」


「い……いえ、そんなことは……」


「この"事件"は講和交渉にも響くことを覚悟しろ!!何しろ我が軍の兵士に暴行を行い、ショッカーのメンツを潰したのだからな!!
そして帝国人を皆殺しにする御聖断をなされない大首領様の御慈悲に感謝しろ!!!」



ピニャは「たかだか平手打ちで大袈裟な…」と思ったが反論しなかった…いや、出来なかった。暗闇大使の背後から漆黒のオーラが溢れ出ていたからだ。その前では皇族といえどただ許しを乞うことができなかった。



ゾル大佐も暗闇大使と同意見だったが言いたいことは粗方、暗闇大使が言ってくれたので今後の対応について話すことにした。


「とにかく今後はよく考えて行動することだ。これからの行動次第で帝国、または帝国に代わる"新政府"が困ることになるからな」



ゾル大佐の放った『帝国に代わる新政府』という言葉にピニャは驚いていた。この言葉をピニャは講和交渉が思うように進まなければいつでも帝国を攻め滅ぼしてショッカーに従順な新政府を作ることができるというふうに受け取った。




こうして会談はショッカーからピニャらに講和に協力する"お願い" をして問題なく終わった。





オ・ンドゥルゴ基地の屋上で千堂は沈みゆく夕日を見ながら黄昏れていた。すると後ろからピニャ達と会談を終えたばかりのゾル大佐に声をかけられた。


「大変だったようだな……千堂」


「ゾル大佐……!全くですよ、できることなら2度と彼女らと関わりたくないですね。どうも苦手なタイプのようです」


千堂はボーゼスにぶたれたことを思い出したくないようだった。


そこから少し、2人の間を沈黙が包み込む。


そして先に口を開いたのはゾル大佐の方だった。



「千堂、貴様があの女騎士共を捕縛している間に上層部でこの世界のミラーワールドへの植民が決まった」



ゾル大佐の言葉に千堂は驚く。ミラーワールドへの植民は帝国を制圧した後で行うものと思っていたからだ。


「思ったより早いですね。帝国戦を終わらせてからと思っていたのですが…」
 

ゾル大佐はため息混じりに答える。


「ハァ、突然、政府上層部の中で日本を制圧して人口問題を解決しようとする勢力…対日強硬派が台頭してきてな……。奴らは人口問題解決の為と大口を叩いてはいるが実際は反ショッカー報道を続ける日本を倒したいだけだ」
 

前回の世界統治委員会の後、対日強硬派の意見の非現実さに困り果てた死神博士はショッカー大首領に謁見し、意見を求めた。そこでショッカー大首領は植民しても比較的、影響がないと思われるミラーワールドに植民するように命令したのだ。これなら人口問題解決に一歩近づく上に対日強硬派が暴走することを防ぐことができる。
それに誰もが心酔する大首領からの命令なら対日強硬派も多少の不満はあっても聞き入れるだろうと思われた。事実、対日強硬派はミラーワールドへの植民を快諾した。


しかし、そもそも世界統治委員会の存在すら知らない千堂には疑問しか湧かなかった。


「そんな現実の見えていない派閥の主張なんか無視すればいいでしょう?」


「それが無視もできないのだ。軍上層部の一部が自身の出世の為に先制攻撃を仕掛けたがっているからな。少数とはいえ、それなりの影響力はある」


ゾル大佐は葉巻の煙を吐き出しながら答える。



「しかし……対日強硬派の殆どは人口問題解決を急いで解決したい奴らばかりだ。はやまった連中を1人でも減らす為にガス抜きの意味も込めて異世界のミラーワールドだけでも植民をするのが決定したんだそうだ」


何とも言えない空気が流れる。
暫くの沈黙の後、千堂がボソリとつぶやいた。



「それで収まればいいですがね……」


千堂はこれからの未来のことを憂うことしかできなかった。







日本世界 アメリカ合衆国 ホワイトハウス



大統領 デュレルは大統領執務室の卓上に載せられた数枚の資料に目を通す。


その資料はCIAから送られたものであり、題名は『我が国とショッカーとの国交開設及び利益独占に関する報告』。


それにはこう書いてあった。
『ショッカーの日本使節団派遣後に中国やロシアがショッカーと独自に接触しようとする動きあり。中国は既に国連に対して工作を開始しており、ショッカーの技術を独占する為に動いているようです。
ショッカーとの交易による利益は莫大なものになることは明らかであり、中露に独占されない為にも我が合衆国も動き出すべきです。
            CIA長官』とあった。



「ファッキンチャイナとファッキンロシアンめ!ショッカーが日本に急接近して技術の輸出が判明した途端にこれだ!」


ディレルは怒りの余り、血眼になり髪を逆立て報告書を引き破り、ぜぇぜぇと荒い息を吐く。


「……本当なら今頃、日本と共にショッカーに接触していたはずなんだ!!!」


そう言うとディレルは執務室の窓の外の群衆を睨みつける。



「異世界征服しようとするナチスもどきを倒せー!!」
「ショッカーは新たな悪の枢軸だ!!」
「ショッカーに民主主義の力を見せつけろ!!」


ホワイトハウスを取り囲むようにして学生がデモを行っている。彼らは中国が提携している大学に通っている学生だ。よく見ると白人の学生の中に混じってアジア人がいるのが分かる。おそらくは中国人だろう。


中国がアメリカに対してショッカーとの接触を妨害するような裏工作を仕掛けているのは明白だった。




「チャイナめ……姑息な真似をしおって」


デュレルの眉間がピクピクと痙攣する。


彼らのデモのせいでショッカーとの国交開設に国民の理解が得られずにいたのだ。国民の理解が得られないままショッカーと接触しようとすれば次の大統領選挙での再選は難しいだろう。


デュレルは独裁国家であるはずの中国がアメリカの民主主義を利用して自分を苦しめていることに腹が立って仕方がなかった。



「フフ……だが甘いなチャイナよ」


デュレルは1人、不適な笑みを浮かべる。普通の人間が見れば頭がおかしくなったと思うだろう。
しかし、あんな学生デモで怖じ気づくほどデュレルは弱くなかった。


「ワーキングプア予備軍のガキ共め、貴様らの思うよりもショッカーと接触したがる者は多いのだ………それも学生のお前らと違って影響力が桁違いだ!!!」



デュレルの言う『彼ら』とは……ゴーグルやヤマゾンなどのアメリカが誇る超巨大企業のことである。彼らはショッカー世界のことを知るや否や、進出すれば莫大な利益が見込めるとしてホワイトハウスに連日、ショッカーとの国交開設を求める請願の電話をしていた。


ショッカーと接触し、550億人もの市場を独占できれば中国との貿易赤字やラストベルトなどで落ち込んだアメリカ経済は回復する。
そうなれば国民の現政権に対する支持率は急上昇し、次の大統領選でも再選されるだろう。


デュレルの決断は早かった。


「国務省か?日本大使館にこう伝えろ。『今度のショッカー使節団に会わせろ』とな。もし断ってきたら自衛隊の後方支援をやめると言え。何としてもチャイナやロシアンより先にショッカーと接触するんだ!!!」



世界最強の国家アメリカはショッカーとの接触に向けて本格的に動き出した。




中華人民共和国 中南海 主席公邸


 
「では日本とショッカーの外交についての報告を」


中国国家主席 蓋徳愁が執務室で葉巻を吸いながら補佐官から報告を受ける。


「はい、ショッカーと日本の国交開設交渉ですが難航しているそうです」


「意外だな……日本はショッカー側の提示してきたナノマシン技術とエイズ特効薬だけでは不満なのか?」


「いえ、日本側は国交開設に意欲を燃やしていますが問題はショッカーです。マスコミにどう書かれているかを知ったようでして……連日、ショッカーの外交官がアルヌスにやってきたは日本に訂正を求めているようです」


「訂正か……日本は民主主義国家だ。それは難しいだろうな……」


蓋徳愁が皮肉混じりにフッと笑いながら言う。

ショッカーと日本が共闘するのはマズいとマスコミを煽り立てたのはいいが日本だけではなくこちらの世界全体に敵意を持たれては厄介だ。最悪、ショッカーがこちら側に侵攻してくる可能性がある。それに中国としてもショッカーの進んだ技術は欲しい。中国単独のルートでショッカーとは接触したいのが本音だがそれが現状、不可能である以上、日本にはショッカーと友好や共闘までいかなくとも険悪になりすぎても困るのだ。



「我が中国としてもショッカーと接触する必要がある。国家安全部に伝えろ。『日本のマスコミの"支援"をしばらくやめろとな』。これで少しはマシになるだろう」


「了解しました。それでは失礼します」


補佐官は一礼して執務室を出た。


無人と化した執務室で蓋徳愁はブツリとつぶやく。


「ショッカーには日本より我が国の方が国交を開設してメリットある大国と思わせる必要があるな……どうしたものか……」





そしてその日の夜―


補佐官はスーツ姿のまま、北京の一角にあるバーにやって来た。店内に盗聴器などが無いのは事前に確認済みであり、入店後に周辺に中国政府の者はいないのも確認した。


補佐官はバーの隅にある奥の個室に入る。中には不自然にもスマートフォンが置いてあった。補佐官はそのスマートフォンの指紋認証のロックを解除するとテレビ電話を使ってとある人物に繋げる。



『報告せよ』


「はい。どうやら中国は我々と接触する気のようです」


『なるほど……とうとう中国も本腰を入れ始めたか……それで話は変わるが中国国内で改造人間の素体候補は見つかったか?』


「いえ……その代わりに中国国内の反体制派のリストのコピーを入手しました。彼らなら自ら志願して改造人間になるはずです」

 
『分かった。後で使いの者を送る。その者にコピーしたリストを渡せ』


「了解しました」


話し相手が通話が切ったことで通話が終了し報告を終える。  


蓋徳愁主席の補佐官であるこの男は既にこの世にいない。本物はGOD秘密警察が送り込んだワームに殺されたからだ。
今、補佐官として中国政府にいるのはそのワームが擬態している偽物である。彼は補佐官に擬態することで中国国内のありとあらゆる国家機密を閲覧し、必要とあらばショッカーに転送しているのだ。


補佐官に擬態しているワームことスコルピオワームは怪しまれないようにカクテルを注文し、飲み干すと会計を済ませて店を出る。


そして彼は北京の夜の闇に消えるのだった。





同刻 日本国 東京



女の名前は福井瑞穂。衆議院議員であると同時に某国が送り込んだ工作員である。現在の任務は日本とショッカーの友好に水を指すべく、国会で反ショッカー発言を連発することである。


「ショッカーは国民を強制的に改造するという非人道的行為を行っています!!これはホロコーストと並ぶ狂気の人権問題です!」
「狂気の独裁国家と国交を結ぶことはかつての軍国主義に戻ることですよ!」
「近隣諸国に反省が足りないと言われますよ!!ショッカーとの共闘を解消しなさい!!!」


福井はその夜、野党党首同士の会合を終えて帰宅しようと公道を黒塗りのベンツで走らせた。


車内で携帯をいじりながら福井はぶっきらぼうに運転手の悪口を言う。これは福井にとっていつものことであった。国会で思うように事が進まないと運転手に悪口を言い、八つ当たりをするのである。


「ホント、あんたって辛気臭いわね。あんたが運転してるってだけでこの高いベンツも軽トラ同然になるわ!」


「…………」


運転手が無言なのを見て面白くなかったのか、ダメ押しに車内の中で大声で叫ぶ。


「全く!無視だけはいっちょ前ね!運転技術もそれくらいならいいのになーー!!」


運転手は無視して車を走らせ続ける。だが内心では怒りまくっていた。しかし、ここで殴りかかっても全く意味がないので無視することしかできなかった。


やがて車は本来の帰宅ルートから外れ、人気のない建設中のトンネルの中に入って停車する。
福井は車が停車するまで携帯をいじっていた為、気付くのが遅かった。


「どこよここ?私はね!あんたみたいなドブネズミと違ってトンネルじゃなくて、家に帰りたいの!!」


「………………」


「早く戻れ!!戻れって言ってんだ!!!」


「…………」


「何とか言いなさいよ!!!」


「福井先生、いや福井。彼らから言われたんだ……お前を連れてきたら難病に苦しむ俺の娘の命を助けてやるって……。悪く思うなよ」


「はぁ!?なんのまね……」




「おめでとう!!福井さん!!」


甲高いその声が外から聞こえたと同時にスポットライトのような強烈な光を浴びせられた。
声の主はキリスト教の祭服を来た白人の老人でありその後ろには骸骨風のタイツと覆面の男達がいた。


「君は神聖なるショッカーのメンバーに選ばれました!!さぁ皆さん!盛大なる拍手を!!!」


白人の男性がそう言うと骸骨風のタイツと覆面の男達は一斉に拍手をする。



「しょ…ショッカー!?異世界の連中が何故!?」


「貴方と同じですよ……我々も対日工作員として送り込まれたんです……」


その老人……ペトレスク神父はジリジリと福井の乗っているベンツに近づく。


「本当なら反ショッカー発言をする貴方は我々に始末される筈だったんですが、貴方は知力だけは優れている……よって我がショッカーに選ばれました。これから我々の改造手術を受けてもらいます」


「かっ、改造!?冗談じゃないわ!!」


ペトレスク神父は黒マントを覆いかぶさるように翻すと甲高い奇声を上げた。そこには蝙蝠のような顔と巨大な翼を持った怪人がいた。しかし蝙蝠男ではない。蝙蝠男の強化体……大コウモリ怪人である。


「キキィィィィーーーーーーー!!!!」


福井は危険を感じてベンツを降りてトンネルの入口の方へ走り出すが、大コウモリ怪人は空を舞い、福井に追いついてトンネルの壁に叩きつける。

余りの衝撃と激痛に福井はもだえ、次第に意識が途切れていく。


「ヨウコソショッカーヘ、フクイサン」


大コウモリ怪人男はバラの花束を気絶している福井に投げ捨て、戦闘員にトンネル奥に隠すように停めてあるトラックに積み込むように命じる。


数日後、数名の野党議員が行方不明になった。いずれも反ショッカー発言を繰り返していた者ばかりである。
さらに今まで国会答弁で今まで行ってきた福井瑞穂があらゆる反ショッカー発言を撤回、ショッカーとの国交開設に賛成する発言を行って与党を驚かせた。




「午前5時になりました。ニュースの時間です。
数名の野党議員が行方不明がなってから数日が経過しました。警察は依然、誘拐の線で慎重に捜査を進めており―。」
「会社党の福井瑞穂代表はこれまでの反ショッカー発言を撤回し、ショッカーとの国交開設に賛成する発言を行いました。これに与党は動揺を隠せず―」

「ショッカーの使節団来訪まで残り3週間となり、世界中が注目しています。改造人間などの人権問題を抱えるショッカーの代表が来るとして、本位総理は歓迎する声明を発表し―。」




同刻 大韓民国 青瓦台


韓国の政治は複雑そのものだ。

例えば北朝鮮と関係1つとっても明らかである。分断国家である以上、「南北統一」というお題目は唱え続けなければならないが、本気でそんなことを思っている国民は全くいない。明らかに自国より数十倍も経済的に劣っている北朝鮮を統一しても何のメリットもないどころか大損害を食らってしまう。それは一時的な株の暴落どころでは済まない。韓国国民全員が世界中から大借金するような状況になってしまう。しかし、そんな本音を口にすれば袋叩きにあう。

おまけに近年の不景気で国民は暴走寸前、政府はお決まりの反日外交に舵を切っていた。

 
ここ、青瓦台韓国大統領府の執務室では韓国初の女性大統領、(キム)槿恵(クネ)が椅子にドッカリと座っていた。そんな槿恵の元に首相が駆けつけて媚び諂いながら肩を揉み始める。


大統領(デトンニョン)、独島への上陸、大成功でございました。これで世界は独島が韓国領であることを認めるでありましょう。これも大統領閣下のお陰です」


「そうね、これで国民の目が外に向いてくれたのならいいのだけど……」


「外に向いたに決まってますよ!国民は愚かですからね!
で、次は何をします?新たな慰安婦像を建てますか?あっ!それとも次の国連総会で反日演説でもしますか?」


槿恵は目をつぶって考え込み、しばらく黙り込むと首相に尋ねる。


「確かショッカーって第二次世界大戦まではこっちの世界と全く同じ歴史を歩んだのだったわね?」


「そうですが……それがどうかされましたか?」


槿恵はニヤリと気色の悪い笑みを浮かべた。

首相は身震いした。
槿恵がこの表情を見せる時は大抵、ロクなことを指示しないからだ。友人の兵役逃れの裏工作を指示した時も、裏口入学の斡旋を指示した時も、自身に都合の悪い記事をもみ消させた時もこの顔をしていた。





「いいこと思いついちゃった♡
ショッカーに賠償を要求しましょう!!」

「え?」 
 

 
後書き
現在、番外編を製作中です。もうしばらくお待ちください。

次回予告

日本使節団派遣直前、千堂は一時的にショッカー世界に"帰国"する。そこで日本との外交に大きく巻き込まれていく事となる。 

 

第13話 改造手術

 
前書き
前回の次回予告には今回、千堂がショッカー世界に帰るとありましたが長くなりそうなので次に回します。
ご迷惑をおかけしてすみません。
 

 
日本国 東京 とあるレストラン地下


民衆党代表 鳩川由紀夫はゆっくりと意識が戻り、目を開ける。気づけば仰向けの状態で寝かされて、身体を起こそうにも手足をガッチリと金属製の枷でX状に拘束されていた……一糸まとわぬの生まれたままの姿で。



「………ここはどこだ?」


確か、自分は会社党の福井瑞穂に誘われてレストランで会食していた筈だ。それから突然、眠気が襲ってきて……目の前が真っ暗に……。


鳩川は仰向けの状態のまま、周囲を見渡すと薄暗い室内の中で様々な機械が小さく電信音のような音を鳴らしていた。どうやら手術室にいるらしい。



「私はなぜ、こんな場所に………」


なんとか頭を巡らせるが鳩川に思い当たる節はなかった。




すると暗かった室内に眩しく無影灯の光が鳩川の身体を照らす。



「うッ、眩しい!!!」



白い覆面と白衣を着た2人組の男達が鳩川に近づき、手術台の上の彼の身体を見下ろす。




「これより改造手術を始める!」



「素体はどうしますか?原田佳彦(はらだよしひこ)の時はドジョウだったし、韓内人(かんないと)の時はイラガだし……」


執刀医は少し黙り、考える素振りを見せる。


「ん〜、本部からは『ある程度は科学班に任せる』って言ってくれてるからなぁー」


科学戦闘員は悩んでいるようだったが鳩川は冷や汗をかく。最初こそ何を言っているか分からなかったが『改造』とか『手術』とか言っていることからこいつらがショッカーの一員だということは分かった。つまり、自分はショッカーに拉致されて改造人間に改造されるらしい。


(冗談じゃない!私はあの鳩川由紀夫だぞ!)


「お、お前達……ショッカーか!私を誰だか知っているのか?東大を主席で合格し、あの民衆党代表の鳩川由紀夫だぞ!こんなことしてただで済むと思っているのか!?」



しかし鳩川の威圧も意味なく、男は無視して助手に言う。


「うーん、こいつの名前は『鳩川』だし素体は『ハト』にするか!よし、すぐキジバトのゲノムを持ってきてくれ!」


「了解しました!」



「ハトだと!?そんなのは嫌だ!!や、やめろーー!!!」


その言葉を聞いてようやく科学戦闘員が鳩川の顔を見てにこやかに答える。


「分かるぞー、未知の存在になるのに不安なんだろ?助手が戻るまでちゃんと説明するからな……」


コホンと咳払いをすると拘束され怯える鳩川を見下ろして言う。


「貴方には改造手術を受けて改造人間になってもらう。素体は先程、言ったが『キジバト』だ。ハトというのは最高時速157kmで飛ぶことができるんだ!すごいよな」


科学戦闘員は楽しそうに笑顔のまま続けた。


「それと貴様には偉大なるショッカーを侮辱する発言をした罰として"麻酔無し"で手術をするから安心してくれ」


鳩川は残酷なことを平然と言い放つ目の前の科学戦闘員に恐怖したと同時に、自分の身体が切り刻まれる苦痛を想像して鳩川は発狂する。


「いやだぁぁぁぁ!!!!いくらなんでもやりすぎだろ!!!やめてくれぇぇ!」


そんな鳩川の元に助手がハトゲノムが入った薬瓶を持って駆けつける。


「ハトゲノム、持ってきました!すぐ準備します!」


助手はハトゲノムが入った薬瓶から液体を注射器を使って吸い上げていく。
それを見た鳩川は必死に彼らを説得しようとする。


「そうだ!反ショッカー発言をしたことなら謝る!なんなら多額の『お詫び』もするから許してくれ!やめてくれー!」


許しを乞いながら必死にジタバタと暴れながら叫ぶが鳩川の抵抗も虚しく、緑色の液体が入った注射針が鳩川の腕に突き刺さる。


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


液体が注入され、血管を通じて体内を循環する。



「うぁ……あ…あ……あ…!!!」


鳩川に今までの人生で感じたことのないほどの苦痛が襲いかかる。顔に青筋が浮かび上がり、苦しそうにうめき声を上げる。



液体の中にはキジバトのDNAゲノムの他にナノマシンが混ざっており、これが体内のヒト遺伝子を変異させる役割を行う。
そしてこれで肉体を変化させる下地が整った。


「それでは第2段階の肉体改造を行う。メス!」



「もう……やめてくれ……頼む……。痛いのは嫌だ!!!」


鳩川は大人気なく目に涙を溜めて科学戦闘員に懇願する。しかし科学戦闘員らは無視してメスを鳩川に向ける。

それを見てこれから行われる行為に震えた鳩川は手術台の上でよじりながら必死に抵抗を続けるが科学戦闘員もプロである。すぐに鳩川を押さえつけると拘束バンドを鳩川の腰と首に巻きつけた。


第2段階の肉体改造は体中の細胞の1つ1つすら改造するのでかなり大掛かりな工程になる。ショッカー世界ならこの時点で手術ロボットによる自動手術に切り替わるのだがここは日本国内である。さすがにショッカーといえど『門』を越えて手術ロボットを運ぶわけにもいかないので前時代的な科学戦闘員による外科手術を行うことにした





………というのも理由としてはあるが実際は反ショッカー発言をした議員をなるべく長時間に渡って苦痛を与える為の『私刑』という意味合いの方が強い。こうすることで対日強硬派の勢いを少しでも削ぐことが1番の目的であった。逆に言えばこうでもしなければならないほどに対日強硬派は暴走寸前なのだ。



「まず、小腸をハトのものに変異させる為、下腹部を切開する!!」
 


そして科学戦闘員はゆっくりと鳩川の下腹部にメスを近づけると鳩川の顔が恐怖に歪む。


「や……やめ―。ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」



断末魔が手術室に響き渡った。
肉体改造手術は数時間にも及んだ―。
 


最終的に手術は成功し、鳩川の肉体は完全に別物になった。


手術台の上にいたのは想像を絶する苦痛にゼエゼエと息を荒げる虚ろな目をした人間大のハトの化け物だった。身体中が灰色の羽毛に覆われ、背中には翼が生えている。さらに拳が鳥類特有の細い鉤爪を持つ細いものに変わると同時に顔も変異する。口部がくちばしになり、鳩川の特徴的なギョロ目もハトの様なクリっとした目に変わっていた。


肉体改造中、余りの苦しみに途中からショック死寸前までいったが改造人間になりかけているので簡単に死ねる訳もなく、腹を割かれる痛みに苦しみ続けたのだ。



「では第3段階の脳改造に移る!脳改造装置を装着するのだ!」


助手の科学戦闘員は鳩川の頭部にヘッドギアを被せる。
するとヘッドギアは自動的に動作を開始し、鳩川は眠りに落ちる。このヘッドギアから流れる音波によって鳩川の脳は眠りに落ち、洗脳にかかりやすい状態になるのだ。そしてそれと同時に音波から流れる洗脳情報により鳩川の意識は『某国への忠誠』から『ショッカー大首領への忠誠』に変わり、完全にショッカーのメンバーとして染め上げられてしまった。


「第3段階完了。これにて改造手術を終了する!」


そして科学戦闘員達は眠りに落ちた鳩川を残して手術室から立ち去ってしまった。



―しばらくして。


ハトの怪人はギロリと目を開けて覚醒する。そして手足を拘束していた枷を破壊し、ムクリと起き上がるとバサッと翼を広げて鳴き声を上げた。



「クルッポーー!!!!」


それを見ていたかのように手術室上部のレリーフが緑色に妖しく光り、複数のスピーカーを通して低い声を発する。


「目覚めたようだな、鳩川よ!!」



「はい、大首領様。私、鳩川由紀夫は偉大なるショッカーの改造人間でございます。どうぞ、何なりとご命令を………そして―」



そして鳩川は一旦、人間態に戻って膝まづく。頭を地面にこすりつけ、勢いよく土下座をする。


「誠に申し訳ございませんでした!偉大なるショッカーを愚弄するような発言を繰り返したこと!これは万死に値する蛮行でございます!」


「鳩川よ、貴様の罪を許そう。だが今後は我がショッカーの一員としてこの国を裏から操る為に励むのだ!」


「ハッ!!!」


「そしてその時こそ、この国に真の平和と優愛がもたらされるだろう!!」


それを聞いた鳩川はえらく感銘した様子だった。


「なるほど!平和と優愛!それこそ私の望んだ理想の国家でございます!」
  

鳩川は立ち上がってビシッとショッカー式敬礼をする。


「偉大なるショッカー、そして大首領様の為に永遠の忠誠を!!クルッポ!」



こうして反ショッカー発言を繰り返した野党議員達はショッカーによって殺害、或いは改造されショッカーのメンバーになった。


鳩川や福井などのショッカーの改造人間議員らは後に自身らの党を離党し、ショッカーの支援を受けて"世界平和"を公約とする新政党『EP党』を結党するのだった。
主要な党員がEP党に流れたことにより民衆党や会社党、共生党などの主要野党は弱小政党に成り下がったのは言うまでもない。



その頃、オ・ンドゥルゴ基地では―。


「はぁーーー、大変だぁ」   


月明かりの書室に千堂は意気消沈して机に突っ伏していた。

そもそもの始まりは千堂が机の上に置かれた訪日使節団の訪日日程表を見つけたことから始まった。どうやら自分がいない間に誰かが置いていったらしい。ショッカー世界の誰もが訪れたことのない未知の国、日本国で自分がどのように過ごすのか気になり軽い気持ちで目を通した。
千堂はそれを見て軽く目が飛び出しそうになった。余りのハードスケジュール過ぎたのだ。
  

それらをまとめるとこうだ。
初日は首相官邸で総理と会談、その後は首都東京の観光地を総理と共に練り歩き、視察を行う。

2日目は日本世界のマスコミの記者会見に外国大使達と会談。その後は再び、総理と落ち合い晩餐会を行う。

そして最終日の3日目は皇居で日本国の皇帝(天皇)に謁見した後、『銀座事件』犠牲者の鎮魂を込めて銀座で献花と黙祷を行って帰るというのだ。


このハードスケジュールの中で四六時中、使節団の警護を行うのを想像すると気が遠くなりそうだった。
さらに悪いことに使節団の中での千堂の役割にいつの間にか『護衛』だけでなく『対日親善大使』という訳の分からない取ってつけたようなものがついていたことだ。


この事をゾル大佐に聞くとショッカーの印象を少しでも良くする為に作った役職らしくショッカーの中で適任を探したところ、「やはり自衛隊と"友好的な"ファーストコンタクトを行った千堂大尉が適任では?」という意見が出たらしく満場一致で自分に決まったとのことだ。


偉大なるショッカーの上層部に選ばれたことは名誉なことだが、こうも頼られては体が持たない。さらに親善大使の仕事には2日目のマスコミ記者会見の応答が任せれているらしく、それがまたプレッシャーとなって千堂の胃腸を締め付けていた。


「くそ……どうすりゃいいんだぁぁーー!!!」


千堂は1人、誰もいない暗い夜の部屋で吠えた。 
 

 
後書き
鳩川の改造手術を行ったレストランは『仮面ライダーTHE NEXT』にでてきたシザースジャガーのレストランをイメージしてます。

あとリアルが忙しくなってきたので更新が遅れると思います。ご了承ください。 

 

第14話 ようこそ!ショッカー世界へ!! 

 
前書き
お待たせしました!
更新が遅くなり申し訳ございません。

それと誠に勝手ながら作中の対日穏健派の目的を「日本と帝国を影から支配する」に変更します。
私のミスで対日穏健派の目的とショッカーの行動に矛盾が生じてしまい、申し訳ございません。 

 
『帝国主要都市を解放!!』
『我が軍、時代遅れの帝国軍を圧倒!!』



今日もショッカー世界では対帝国戦での快進撃を伝える勇ましい記事がズラリと並んでいる。主要都市とは間違いなくイタリカのことだろう。

どの記事も非常に分かりやすく、大衆の心に訴えかけるようなものばかりである。




ショッカーが異世界に逆侵攻し、日本と接触する前までショッカーは捕虜や占領地の住民から帝国の内情、種族構成、政治体型などを聞き出し、調査していた。

その結果、判明したのが排他主義的ともとれる帝国のヒト至上主義や覇権主義だった。

帝国の所業にはさすがのショッカーも耳を疑った。第一皇太子が自身の気分で亜人種の国を攻め滅ぼしたり、気に食わない属国があれば軍事力をちらつかせて恫喝する。


ショッカーから見て帝国がいかに残虐で恐ろしいか、そして今回の戦争目的がいかに正しいかを伝えるプロパガンダにこれ以上いい材料はなかった。


いつの時代でも政治において重要なのはどれだけ心に広く響き渡る「ストーリー」を作れるかどうかである。民衆とは往々にして「目の前の事実」に興味はなく、それよりも心に響くセンセーショナルな言葉を含んだ「ストーリー」によってこそ動かされる。


そして『異世界で圧政を敷く帝国から民衆を解放する為に決死の戦いをするショッカー』という非常に分かりやすく心に響くストーリーを目にした人々は『銀座動乱』での一般市民に対する虐殺も相まって帝国を『悪の権化』、皇帝モルトを『邪悪なる愚帝』として見るようになり、それに対して戦いを挑んでいる防衛軍を『正義の官軍』として見ていた。




しかし、ちょうどイタリカ戦が行われた頃からショッカーの想定以上に帝国に対する憎悪や敵意が増長されていた。
その中には異世界人の人間性を否定する意見があり、政府は正直に言って手を焼いていた。



というのもここでも対日強硬派が一枚噛んでいたからだ。



対日強硬派は日本世界と帝国、両方の世界を武力で征服することを掲げている一派であるため、帝国に対する"より大規模"な攻勢を求めたがっているのだ。



その中で彼らが市民に言うのは決まって『偉大なる大首領様の子供たる優秀なる我々は日本・帝国という劣等異世界を征服し、殲滅すべき』だとか『ショッカーに仇なす敵は帝国人だろうが日本人だろうと追いつめて殺せ』といったようなもので、さすがのショッカーから見ても過激だと思うようなものばかりであった。


これは元々、ショッカーが創設時から唱えていた『大首領に選ばれた改造人間がその他大勢の人民を率い、支配する』という超エリート主義の少数支配を肯定する為の選民思想から派生したものだ。

彼らの活動を規制しようにもショッカーの思想から派生したものなので『危険思想扇動罪』はおろか『反ショッカー罪』にすら問えない野放しの状況が続き、対日強硬派の多いネオショッカー州やクライシス自治区で支持を得つつあった。


特地のミラーワールドへの移民が決定してから次第に彼らは勢いを失ってはきたが委員会の有力者の3分の1が対日強硬派なのを考えれば油断はできない。
 
派閥としての生き残りをかけて市民レベルでの扇動により力を入れる可能性もある。  
 

このままではショッカー世界内部で軋轢が生まれ、円滑に移民を行うことが難しくなる。それに帝国を恨むのは結構だが異世界の人民まで憎悪されてはこれからの占領政策や異世界への植民・親ショッカー化に支障がでる。


そこで政府は千堂の保護したコダ村避難民の一部をショッカー世界に招待し、友好的な様子を見せることで民衆の憎悪の矛先を『帝国と異世界人』から『帝国政府と帝国軍』に変えさせることを決定した。



少しずれるが、対日穏健派が日本とあまり事を構えたがらないのにはこれらの事情が多少、関係している。それにようやく落ち着きを見せた対日強硬派を再び増長させない為にも日本世界と戦うことで異世界人に対する憎悪をこれ以上、蔓延させたくないというのが本音であった。







「門の向こうに行くの!?」


「そう、こっちの世界にも『友好的』な人や種族がいることを伝えるためにね」


ある朝、オ・ンドゥルゴ基地の一室で千堂はテュカやレレイにこれからショッカー世界へ行く旨を話した。


「へぇ、門の向こうってショッカーの世界なんだよね?楽しみー」




テュカは自分を救ってくれた兵士達の世界がどんなところなのか想像し、わくわくした様子を見せた。



「ねー、私はー?」


ロウリィが千堂に尋ねる。自分だけ仲間外れにされてるんじゃないかと顔に書いていた。


「あー、勿論、ロウリィも招待されてるぞ」
 

「♫」


千堂の言葉を聞いてロウリィはふと嬉しそうな顔をして鼻歌を歌いながら自身のハルバートを磨き始めた。
余程、嬉しかったのだろう。


「センドウはどうするの?」


「俺もついていくよ。尤もその後もしばらく向こうに残ることになりそうだけどね」


千堂は彼女らの"付き添い"が終わった後、対日使節団の事前打ち合わせの為にショッカー世界に留まらなければならない。そしてそのまま日本国へと向かうのだ。
 

まさにハードスケジュールである。


その場に居合わせた部下達はそのことを知ってか千堂に対して純粋に哀れみの顔を向けていた。


((大尉、ご愁傷さまです………))






数十分後、千堂達はショッカー世界へと向かう準備を終え、門が収容されているドーム状の建物の前に集まっていた。




「ねェ、これ外しちゃダメェ?」


ロウリィはハルバートの刃に巻きつけられた布を千堂に見せつけながら文句を言う。


「ダメに決まってるだろ!向こうは聖地だぞ!それに俺達の世界じゃ武器の取り扱いには厳しいんだ!そんな刃物むき出しのままじゃ捕まるぞ!置いていって欲しいくらいだ!」


「神威の象徴を置いていけるわけないじゃない!!」


「じゃあ言うことを聞け!!」


千堂は正直、このロウリィへの注意だけで疲れ果てそうだった。そんな中、ふと1人足りないことに気づいた。


「あれ?加頭はどこにいった?」


千堂が辺りを見回すと1台の装甲車が近づいてきた。
運転していたのは加頭だった。



「遅れてすみません!」


「遅いぞ、どこに行ってた?」


「本当にすみません、ゾル大佐から急遽、新たな客人をお連れするようにいわれまして」 


「新たな客人?」



後部座席の方に目をやると意外な人物が乗っていた。



「………で、お姫様達も来ると……勘弁してくれ」



そう、後部座席にいたのはピニャとボーゼスだった。千堂はボーゼスに殴られたことを思い出し、バツが悪そうな顔をする。



「…まさか連れて行くのか?」


「はい、捕虜の返還や今後の講話の為に我々の世界のことを知りたいのだそうです」


「よく上層部が許可したな」


ピニャは帝国、つまりショッカーの敵国の皇女である。常識的にそんな危険人物を"本国"、それも政治・経済の中心地であり、大首領様のおわす聖地 日本エリアに連れて行くのはどこか不安があった。



「全く、政治ってのはよく分かりませんね」


加頭がやれやれと言った様子でため息がちに言った。そしてピニャの乗っている後部座席のドアを開けた。2人はゆっくりと降りる。



「センドウ殿、よろしく頼む」


「ハァ、それでは行きましょうか」


千堂はピニャにむかってあからさまに面倒くさそうにため息をつくと踵を返し、レレイ達と共にドームの中へと入っていった。


一方、ピニャとボーゼスはこれから『敵国の首都』に乗り込むとあって息を呑む。


「………殿下」


「ウム…………」



(ショッカーの統治する世界…いかなる場所か…)







一行がオ・ンドゥルゴ基地内の門を収容されているドームの中に入るとそこで科学戦闘員らによる身体検査を受けた。


異世界由来の未知の病原菌やウィルスに感染している可能性もあるので検温は勿論、検尿や血液検査などありとあらゆる検査が念入りに行われた。
何かしらの病原菌を持ち込まれてパンデミックでも起こされたら戦争どころの騒ぎではなくなるからだ。


またこの時、ピニャとボーゼスが注射や見慣れない医療機器を怖がって中々、検査が進まなかったのはまた別の話である。



検査の結果、全員に異常が無いことが分かるとようやく門をくぐってショッカー世界へと続く長く薄暗いトンネルのような空間に入る。
かなり距離があるその空間をある程度、進むとやっと光が見えてきた。


そして―


  
ピニャ達の目に門の向こうに広がるショッカー世界の光景が勢いよく飛び込んだ。

そして彼女達はその光景に愕然とした。

見渡す限りの高層建造物や飛び交う民間の飛行機、自動車。

どれも帝国の技術水準ではどうやって作ったのかすら分からないものばかりだった。



(天を貫かんばかりの巨塔や摩天楼、空を飛ぶ鉄の塊、自走する箱……帝国がここまで発展するのに何十年…いや何百年かかるだろうか)




これにはピニャやボーゼスだけでなくレレイやロウリィ、テュカも目を丸くしていた。


「かなり驚いてる様子ですね」


「中世レベルの文明からいきなり現代に来たんだ。無理もない」




すると黒塗りの高級車がやって来て千堂達の前で停車し、後部座席のドアが開いて1人の男が出てくる。



「情報本部から参りました増沢です。皆様の警護役という大役を任されました」


その男の姿をひと目見ただけで千堂と加頭は彼の正体に気づいた。優しそうな声と低い物腰で接してきてはいるが目の前の男からは何かを隠そうとしているオーラが漏れ出ていたからだ。



((コイツ……GOD秘密警察の人間だな))

 

男の正体を察して千堂と加頭が増沢の耳元に近づいてカマをかける。



「GOD秘密警察の人間だよな?ご苦労さま」


「それもかなりのベテラン、しかも放つオーラが普通の諜報員のそれとは違う……あなた、難波重工の難波チルドレン出身ですよね?」



増沢は一瞬、驚いたような顔をしたがすぐにフッと諦めたように笑った。


「何で分かった?今まで1度たりとも見破られたことなんてなかったんだが」


先程までとは打って変わって低い声と冷たい目で増沢は千堂達に尋ねる。それを見た千堂達はニヤッと笑い腕を組んで答えた。


「諜報員なんて俺達みたいに場数を踏んだ人間が見れば簡単に見破れるよ」


「私はこう見えても元財団Xの人間なんでね。難波チルドレンぐらい見分けられます。それに貴方達って異常なまでに"普通"や"一般的"を演出したがるからすごく分かりやすいですよ。まぁ一般市民や不穏分子には全く見分けがつかないでしょうけどね」



「はぁ、やっぱりあんたらは噂通りの優秀な人間らしい」


増沢は1冊の手帳を懐から取り出して読み上げた。


「千堂印一、優秀な成績で士官学校卒業後、陸軍曹長に任官。勤務成績の方も優秀で改造手術をこの時に受ける。
不穏分子の掃討作戦で名を挙げるとその優秀さを買われ、少尉に任官されると共に党からガイアメモリとアストロスイッチも授かる。
そのままでも将来は軍の上級幹部に昇格確定なのに銀座動乱での功績が讃えられ、ゾル大佐から賞状と2つの勲章を賜われ、異例の2階級特進して大尉になる……すごい経歴じゃないか」


「よくもまぁ、そこまで調べましたもんだ」
 

「同期からの評判は『一族の七光り』、『嫉妬の対象』……こりゃまた……フフッ…酷い言われようだな」


皮肉混じりに増沢が笑うと千堂は不愉快というような顔をした。


増沢は次に加頭の経歴を読み上げた。


「加頭秀明、財団X傘下のミュージアムの御曹司として何不自由なく育つ。
祖父はあの園咲琉兵衛。20歳の時に財団Xに入社し、キャリア組の筆頭と言われ、将来はミュージアムの跡取りになるはずが……」


増沢はそこで経歴を読むのをやめた。続きには『財団Xから防衛軍に転身』と書いてあったかだ。


増沢は不思議に思った。
ミュージアムの御曹司なのだから財団では相当な地位にいたはずだ。何故、それを捨ててわざわざ軍に入ったのかと。


増沢にはどうしても加頭が輝かしい出世の道を自ら捨てたことが理解できなかった。


「なぁ、なんで好き好んで軍なんかに入ったんだ?あのままミュージアムの後取りになればよかったのに」


加頭はバツが悪そうに少しだけ困った顔で答えた。


「どうも自分には財団特有の堅苦しい雰囲気が合わなくて……それをお祖父様に相談したら―」


「軍に入れられた……と?」


「"入れられた"んじゃない、"入れてくれた"んです。お祖父様もあそこで僕が窮屈そうにしてるのを感じてくれて別の場所を用意してくれたんだと思います…他の家族はまだ僕を跡取りにするのを諦めてないでしょうけどね」





やがて千堂達は用意された大型バスに乗り、大ショッカー党本部へと向かった。増沢は黒い高級車に再度、乗り込むとバスの背後にピッタリとついて周囲に危険がないかを監視する。




バスが大通りに入った後も異世界の客人達…特にピニャにとっては驚きの連続だった。


ピニャは帝国の皇族であり、幼い頃から帝国が世界で1番繁栄しており、他国は文明的に劣り、野蛮であると教え育てられてきた。


だが目の前に広がる光景は何だ。



通りには先が見えないほどに高層建造物が建ち並び、無数の人民が行き来していた。さらに市民やサラリーマンで歩道はいつものようにごった返していた。
皆、一様に目に力がこもっており、表情はどこか自信に満ち溢れている。


歩道にゴミは一つも落ちておらず、道脇に浮浪者や物乞いの類はいない。
普通、大都市ともなるとその逆が当たり前なのだがここではそんな様子は全く見られない。


街頭の動く絵(大型スクリーンによる党営放送)がショッカーの素晴らしさを伝え、民衆はそれに対してショッカー式敬礼をしてショッカーに対する忠誠心を示していた。

さらに街の至るところで地球儀を掴む鷲のマークが描かれた旗やスローガンが書かれた広告を目にする。


目の前に映る全てが帝国とは隔絶していた。


「帝国は……勝てるのか?こんな世界を相手に帝国はどう立ち向かえば……」


目の前の光景に呆然とし、力無く自信のない言葉を吐いてしまう。








そうこうしている間にバスは大ショッカー党本部に到着した。





「なっ!!??」


ピニャは自身の目を疑った。
目の前の建築物は900メートルはあろうかという帝国からすれば超超超超規格外の大きさの高層ビルだった。さらにビルの屋上にはショッカーのシンボルである地球儀を鷲掴みにする鷲の巨大な彫刻が鎮座していた。



これにはピニャも言葉を失った。


(大きさなんだ!!!さっきまでの摩天楼が小さく感じるぞ!!)
 


「センドウ殿!ここがショッカーの元老院なのか!?」


「うーん、元老院といえばそうですね。民主制はとうの昔に放棄したので厳密には違いますが……」




そう言うと千堂はレレイ、テュカ、ロウリィの3人を連れてバスから降りた。 


「じゃあ加頭、あとはよろしく」


「わかりました」


加頭が了承するとバスの扉が閉まった。
バスの車内は運転手を除いて加頭、ピニャ、ボーゼスの3人だけとなる。


「妾達はセンドウ達と一緒ではないのか?」


「別の会合場所に向かいます。
殿下は非公式の訪問ですので…」



再びバスは発進し、党本部から離れてショッカー外務省に向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――――
大ショッカー党本部……ショッカーが世界統一直後に旧日本国の国会議事堂を接収し、増改築工事を行って建設された大ショッカー党の本部。旧国会議事堂の背後に地上33階、地下5階建てのビルを増築したことで旧日本国時代の面影を僅かに残しつつ、竣工時の人民にショッカーによる新時代の到来を感じさせる作りとなった。

なお、本部の土地を上空から見ると羽を広げた鷲の地上絵が見えるという。

            ショッカーペディアより抜粋
――――――――――――――――――――――――――――――――


大ショッカー党本部の記者会見室ではいくつものカメラが並べられ、記者達がところ狭しとひしめき合っていた。


記者達が今か今かと異世界の客人であるレレイ達を待っているとホールの奥のドアが開かれた。そして、レレイ達が姿を現す。傍らにはいつものように軍服に身を包んだ千堂が控えていた。


パシャパシャとカメラのフラッシュが点滅する中、レレイ達は記者達の正面にあるテーブルの席につく。


「これより記者会見を開始します。質問のある社は挙手してください」
 

一斉に手が上がり、進行役が指名する。



「毎朝新聞です。レレイさんは魔法が使えると聞きました。できれば見せて頂きたいのですが可能ですか?」



それを聞いたレレイが指先で緑色のつむじ風の渦を作り、それを見た記者席でどよめきとまばゆいフラッシュが起こる。



次の質問に移り、女性の記者が手を上げる。


「フリージャーナリストの滝川です。
テュカさんはエルフとのことですが…その耳は本物ですか?」


「本物ですよ、触ってみます?」


そう言ってテュカが髪をかき分けて耳をヒョコヒョコと動かす。またも記者達は驚いた。

 


しかし、次の質問で1人の記者が爆弾発言をしてしまった。



「ロウリィさんは肉体のある神…亜神とのことですが……その…これは事実ですか?」



この質問を聞いて千堂は内心、焦った。今まで幾度も異種族と接触し、社会の歯車として組み込んできたショッカーだったがこれまで接触してきたものの中に『神』を自称する存在はなかった。


ここでロウリィの発言が原因でショッカー世界の宗教を刺激することになればゲルダム教をはじめとする宗教界は大混乱に陥り、彼らが対日強硬派に賛同する可能性がある。


それだけならまだましな方で、ショッカーの最高指導者であり、全知全能の至高の存在であり、まさに『神』そのものといっても過言ではない大首領様の権威を失墜させかねない。そんなことになれば本当に世界の終わりだ。


(言葉には気をつけてくれよ…ロウリィ!!)


祈るようにロウリィを見つめる。
そんな千堂の様子を見て察したのか記者達に向かって話そうとするロウリィを遮ってレレイが話し始めた。



「その説明をするには私達の世界の種族について説明する必要がある。

まず私は門の向こうではヒト種と呼ばれる種族。寿命は60歳〜70歳前後。住民の多くはヒトである。

テュカは不老長命のエルフ。その中でも希少な妖精種で寿命は一般のエルフより遥かに長く、永遠に近いと言われる。……そして」
 

レレイは一息おいてロウリィについて話し始めた、


「ロウリィもヒトではなく亜神…肉体をもつ神とされる。
元はヒトで昇神したときの肉体年齢で固定されている。通常、1000年ほどで肉体を捨て霊体の使徒に、そして真の神になる。したがってロウリィがこの世界における『神』と同じものということではない。ロウリィはこの世界では神官……あるいは改造人間に近い」


元はヒトでありながら超人的な力を持ち、長命になる。日本世界ならともかくショッカー世界においては別に珍しいことではない。

事実、改造手術を受けて怪人になり長命になった例など数多ある。怪人の中には5万年以上、昔から存在していた者もいるし、アンデッドやオルフェノクのように死の概念すら超越している例すらある。それにただ神官というだけならゴルゴムの幹部の肩書は『大神官』である。


記者達は身近なそれらの事例を思い浮かべ、レレイの回答に納得した。



レレイは彼らを引き合いに出すことでショッカーと帝国の間で新たに宗教的な争いが起こることを防ごうとしたのだ。


ロウリィが改造人間に当たるかどうかはこの際、置いておくとしても詭弁ではあったがなんとか記者達の疑問に対して余計な波風を立てることなく答えることができ、千堂は安堵する。


ロウリィの方は自分の言葉を遮られて不満そうではあったが。



また、次の質問に移った。


「OREジャーナルの者です。レレイさん、現在、防衛軍基地内で生活しているとのことですがヒト種の貴方から見て我々の世界はどう思われますか?」
 


レレイは少し困った顔をしつつも答えた。千堂には慎重に言葉を選んでいるように見えた。



「進んだ技術力を持ち、様々な種族と共存している世界。帝国ではこうはいかない」

 

その後もレレイ達に向けて様々な質問が行われ、記者会見は落ち着いた雰囲気のまま無事終了した。

 
余談だがこの会見はショッカー世界のネット、新聞、テレビなどのメディアでトップを飾り、ショッカーの思惑通り、帝国に対する人民の怒りの目線から異世界人民を除くことに成功した。 
 

 
後書き
千堂の怪人態ですが思いの外、応募が少なかったのでアンケートに切り替えようと思います。
すみません。


次回予告 
ピニャとボーゼスは外務省で講話の仲介をすることを約束する。そして2人はショッカーの頂点とも言える人物と謁見し、ショッカーの真の強さ、そして恐ろしさを知る。

乞うご期待!! 

 

第15話 会談〜そして謁見〜

 
前書き
今回はショッカーの思想が話を通してのメインとなっています。
いわゆる説明回的なやつです。

※本作は全体主義や選民思想を肯定するものではありません。 

 
ショッカー外務省 会議室


千堂達が記者会見を行っている裏ではピニャとボーゼスが加頭と共にショッカー外務省に来ていた。

彼女らの目的はショッカー側の外交官と会談を行うことである。

今回の会談はあくまで講話を目的としたものではなく、講話に向けてのピニャ個人の意見や帝国のより詳しい内情、ショッカーが確保している捕虜などについて話す予定だ。
現在、戦況は帝国にとって不利ではあるが今回の会談で少しでもそれを挽回しようと意気込んだ。
     

やがてショッカー側の外交官が入室し、事実上の帝国とショッカーの極秘会談が始まった。最初の口火はショッカー側の外交官が切り出した。


「ようこそ、ピニャ殿下。ここまで来てくださったことをショッカー外務省を代表して感謝します」


外交官は微笑みを浮かべて歓迎の言葉を述べているが目元は一切、笑っていなかった。外交官からすれば敵国の皇女に対して俄然とした態度で接しているだけなのだがピニャからすれば相手が何を考えているのか分からず、ただただ不気味なだけだった。
外交官はここで本題に入った。


「しかし、帝国はとんでもないことをしてくれましたねぇ。帝国の銀座侵攻で死亡が確認されたこちら側の人民の総数はおよそ6000人。これについて帝国は我々にどう対応されるおつもりですか?」



(そんなこと自分に聞かれても…)


これがピニャの正直な反応だった。そもそもショッカー・日本という両世界の侵攻を決定したのは皇帝と元老院であってピニャではないし、自分に今後の帝国の戦争方針や戦後補償を決めることはできない……が。


「ギンザで働いた此度の帝国軍による蛮行、誠に申し訳ございませんでした」


ピニャは深々と頭を下げて謝罪した。帝国に非があるのは明らかだったからだ。自分にはそれしかできないし、それが精一杯だった。


通常、敵国の皇族が自国軍の蛮行について頭を下げたというだけで『誠意ある謝罪』としてはかなり大きな意味を持つのだが外交官はそれを見ても依然、厳しい姿勢のままだった。


「ピニャ殿下、我々が求めているのは貴方個人の謝罪ではなく、帝国という国家による謝罪と賠償です。今、ここで貴方が謝罪したところで情勢は何も変わりません」


ピニャがうなだれるが外交官はそれを無視してショッカー側が確保している捕虜を議題に上げた。

 
「まず捕虜の取り扱いに関してですが…捕虜は日本エリア内の無人島の臨時収容所に収容しています」


(きた……身代金の話だな)


帝国に限らず異世界側の国家にとって捕虜とは捕らえた側がその処遇を自由に決めるものであった。大抵は奴隷にするか、敵方に捕まっていた味方或いは身代金と引き換えにする等々、その扱い方には人道意識の欠片もない。
ピニャは帝国がショッカーの兵士を一人でも捕らえることができたという情報を聞いたことがなかった為、ショッカーの外交官が捕虜の話を切り出したのは身代金を要求するためだと思ったのだ。


「現在の収容者は約7千人です」


(7千人だと!!そんなにいるのか!?身代金が幾らになるか想像もつかない!)


「身代金はいくらですか?」


ピニャは震える声で尋ねた。
それに対して外交官は意外という顔で答えた。


「いえいえ、我々は身代金など要求したりしませんよ。この世界にはそういった習慣はありませんから」


外交官は続けた。


「彼らの待遇に関してですが…比較的、人道的に扱ってるので安心してください……反抗的な者を除いてですが」


するとさっきまでの反応が嘘のようにピニャは急に立ち上がって叫ぶように言った。



「数人だけでも返還してもらえますか?門に出征した兵士に貴族の子息が多いのです」


これには外交官も驚いたのか表情が強張った。
ピニャからすればこの提案は有力貴族の子息の返還を優先して行うことで彼らに恩を売ることができ、それによって講話交渉もスムーズに進む。そう考えてピニャは提案したのだった。
しかし、ショッカー側の返答はピニャの予想を裏切るものだった。



「この場では決断することができないので上層部に仰ぐ必要がありますが……現状での返還はおそらく無理でしょうね」


「え?」


狼狽するピニャを他所に外交官はさらに衝撃的な言葉を告げた。


「さらに…このままの状況が続けば我々は彼らを処刑しなければなりません」


「「な、なぜですか!?」」


ピニャとボーゼスは外交官の口から『捕虜の処刑』というとんでもない言葉が出てきたことに驚いた。


「当たり前です。帝国との間に捕虜に関する取り決めがないですから。そもそも国交すら結んでませんしね。それに彼らは我々、ショッカーに反抗的な思想を持つ『不穏分子』です。国内法に基づいて処刑するのは当然だと思いますが?」



ショッカーに世界が征服されてから既に100年。旧クライシス帝国や旧ドグマ王国などのごく稀な例外を除いてショッカーの他に『国家』は存在せず、ましてや『国際法』や『国際条約』などに至っては歴史用語でしか聞くことがなくなっていた。

よってショッカー世界に戦時国際法や国際条約はない。世界統一直後に全ての国際条約は「ショッカーの掲げる新世界には不要」として政府によって段階的に破棄されたからだ。
そしてその国際条約の中には捕虜の人道的な取り扱いを定めた『ジュネーブ条約』も含まれていた。

したがってこのままでは国内法に基づいて捕虜達は強制収容所に送られ一生をそこで過ごすか、思想犯として処刑されるかどこかの研究所で使い捨てのモルモットになるかの三択しかない。



余談ではあるがショッカーが生物兵器や化学兵器、生体兵器の開発を容易に行えるのは彼らの科学技術のレベルの高さの他に国際条約による縛りを受けていないことやショッカーを咎める"対等な他国"の存在がないことも関係していた。



「そんな…彼らは国の為に戦った兵士なのに…。残酷な……」 
 

「残酷?他所の世界に汚い土足で乗り込んでショッカーの"人的資源"たる人民、それも無抵抗の市民を虐殺するよりはマシだと私は思いますがね」


尤も帝国に対する貴重な外交カードである捕虜をショッカーが処刑する可能性はほぼ無いが外交官は言葉に含みを持たせることでピニャに圧力をかける。


「もうここからはお互い本音で話しましょうか。我々、ショッカーは帝国を極めて危険な思想を持つ国家ないしテロ組織と見なしています」


「え……?」


ピニャは外交官の言っていることが理解できなかった。


(帝国が……危険…だと……!!??)


「帝国はヒト至上主義を掲げて亜人を虐げ、貴族や皇族による専制政治を行っています。また勝手に皇帝を立て、異世界の覇者を気取り、他国に対して横柄な態度をとっているそうじゃないですか。そんな政治状況では貴国と講話したところで反ショッカー的な態度を変わらず取り続けるでしょう。それでは状況はなんら変わりません」


「そ、そんな!貴方方は帝政を廃止しろとでも言うのですか!?」



「そこまでは言いません……が、我々から見れば帝国は覇権主義的で好戦的な亜人差別国家なわけです。そんな国家が隣にいて安心できるわけがないじゃないですか。せめて覇権主義的な政策やヒト至上主義は改めてもらわないと」


確かに民主主義や人道観念のない異世界では帝政や王政で民衆を締め付け、その不満のはけ口を亜人差別へと向けるのが『当たり前』なのだがその当たり前はショッカー世界では到底、通用するものではなかった。


ほんの一握りの指導層が広大な領土を少数で支配するという点では帝国とショッカーは同じでもその支配の方法が根本的に異なる。 
帝国はヒト至上主義による亜人の差別意識で貴族から平民までを半ば強引にまとめあげている。それに対してショッカーは人民を『人的資源』と見なし、その中でも特に優秀な者をより優秀な存在…すなわち改造人間にしてショッカーの意のままに世界のあるゆる分野を支配するという支配方法をとっている。

一見すれば、ショッカーの方が冷酷な恐怖政治を行っているように見えるが逆に言えば『人的資源』として優秀なら性別や出自、種族に関係なく出世・活躍することができ、その反対に当人が無能ならいくら親が有能でも要職から更迭されるのである意味、徹底した平等主義を貫いているという見方もできる。

奴隷制度が存在し、皇族や世襲議員によって政治的腐敗が進んでいる帝国よりも反対勢力の粛清こそすれど異種族すら人的資源として公平に扱うショッカーの方が人道的で公平かつ合理的なのは言うまでもなかった。


それからも会談はショッカー側のペースで進んでいった。やがて会談も終わりに差し掛かると外交官は急に優しい口調になった。


「まあ、我々も鬼畜ではありません。殿下が"我々の望む"講話に向けて働いてさえくれれば助けることもできるかも知れませんね……帝国も、捕虜も」


ピニャは外交官の言った『我々の望む』という部分が引っかかったがそれを聞く勇気がなかった。
果たして彼らの望むのは領土の割譲だろうか、政治体制の変革だろうか……。





やがて会談は終わり、全員が会議室から退室する。ピニャとボーゼスは未だに呆然としていた。それを見かねた加頭が声をかけようとしたそんな時、加頭の電話がなった。

加頭が携帯を取り出して電話に出る。


「はい、加頭です」


電話の相手は政府高官だった。そしてその高官は加頭にやんごとなき連絡をする。


「……はい、はい……!?それは本当ですか!!??」



さっきまでとは明らかに打って変わって驚き、震える声で加頭は答える。



「はい、はい………わ、分かりました。本人達に伝えます」


加頭は通話を終えると内容のあまりの衝撃に呆然としてしまった。それを見たピニャが不思議そうに尋ねる。


「加頭殿?どうされたのだ?」


「ピニャ殿下……落ち着いて聞いてください。先程、政府上層部から連絡があり……だ、だ…だい」


緊張のあまり、うまく言えない。ピニャはそれを見て余程の事態なのだと理解した。


「だ、だだ、だ………フゥ、ハァハァ」


加頭は落ち着きを取り戻そうと深呼吸をする。そしてゆっくりとその驚愕の内容を話し始めた。



「"大首領様が殿下にお会いしたい"と連絡がありました!!!」



その言葉に今度はピニャが凍りつく。



ショッカー大首領……ショッカーの頂点に君臨するこの世界の支配者。帝国で言うところの皇帝に当たる者に突然、謁見することになり、動揺を隠せなかった。今度はピニャ達が慌ててしまった。


「加頭殿!妾達は、妾達はどうしたらいいのだ!!」


「と、とにかく既に親衛隊所属の送迎車がここに向っているそうです!私も途中までは付き添いができるそうですからどうかご安心を…!!」



加頭がなんとかピニャをなだめてから数分後、黒塗りの政府専用の公用リムジンが数台並んでショッカー外務省の前に停車した。
黒いサングラスをつけ、スーツを着た警護係が乗っていた。彼らは無表情のまま3人を乗車させ、車を発進させた。





「して、加頭殿、大首領とはどのような人物なのだ?」


車内でピニャは加頭に尋ねた。これから会う人物……それもショッカーの指導者がどんな人物なのか知りたかったからだ。それに対して加頭は少し考える素振りを見せた。


「そうですね、誰もが敬愛する偉大なる神の如き至高の御方とでも言いましょうか。全人民及びこの世界の絶対的なリーダーであり、『正義の化身』として世界中で崇められている御方でもあります」


「そ、そんなに……!!!」


軍人ならともかく一般の民衆までもが一国の君主にそこまでの忠誠を見せるものだろうか。帝国では皇帝が民衆からそこまでの支持を集めることがないため、ショッカー大首領の統率力、指導力の高さを伺い知った。思えばオ・ンドゥルゴ基地で会談した男(暗闇大使)も首領をまるで神のように崇めるような発言をしていた。



そして加頭は一息おいてピニャの方を向いて言った。


「しかしこれだけははっきり言えます。これから殿下が大首領様に謁見するということは殿下、いえ帝国にとってまさしく未知の体験になるでしょう。くれぐれも言動には気をつけてください」

 
――――――――――――――――――――――――― 


やがてリムジンの車列は大首領の住まう宮殿に到着した。
ローマのパンテオン宮殿をモチーフとしたその宮殿は直径250メートル、高さ220メートル。容積2500万立方メートルというとてつもなく巨大な作りであった。


大ショッカー党本部とはまた違った巨大さにピニャ達、異世界の客人は驚きを隠せなかった。帝国の皇城でもここまでの荘厳さは持ち合わせていない。ショッカー大首領の莫大な権力の一端を知り、ピニャはあんぐりと口を開け、ボーゼスは目を回した。



また、一見、平然としているように見える加頭も内心ではかなり緊張していた。ピニャ達の手前、動揺を見せるわけにはいかないので落ち着き払った様子ではあるがここは世界の支配者…大首領の住む宮殿である。ここに入るのが許されているのは世界広しといえど大幹部や武装親衛隊などショッカーの中でも限られた者しかいない。ここで何か失態を犯せば文字通り、首が飛ぶことになる。


リムジンを降りた一行はボディチェックを始めとした厳しいセキュリティチェックを受けてようやく巨大な正門を潜って敷地内に入った。

ピニャ、ボーゼス、加頭のそれぞれが意を決して宮殿の内部に入る。内部に入るとそこは半球状のメインホールとなっており、世界中から集めたであろう美術品やショッカーの名だたる大幹部達の禍々しい胸像が隅々にかつ無数に置かれている。


まるで神の根城。そんな雰囲気が漂っていた。


それから廊下を渡り、宮殿のちょうど中腹地点まで歩くとスーツ姿の親衛隊員の一人が3人に話しかけた。


「ここから先は帝国皇女、ピニャ・コ・ラーダ殿下とボーゼス・コ・パレスティー殿のみお通しすることとなっております。また、金属類はここで預からせてもらいます」


「加頭殿は来ないのか?」


ピニャはどこか不安気に加頭を見た。
しかし正式に招待されているのがピニャとボーゼスだけである以上、ただの付き添いに過ぎない加頭にはどうすることもできない。


「残念ですが自分はここで待つしかないようです。ここから先は正式に招待されている殿下しか行けません……どうかお気をつけて」


加頭という心強い味方を失ってしまい、ピニャは失意の中、進む羽目になった。


 


それからピニャとボーゼスは長く続く廊下をたった二人だけで歩いた。廊下は奥に進むにつれて薄暗くなっていった。それだけでも不快なのにここは敵国の指導者の宮殿であるという事実……それを女性だけで歩いているというだけで不安感が増し、生きた心地がしなかった。

しばらく歩くと重厚そうな豪華な装飾の扉が見えてきた。そしてその扉の前では白いスーツの上に黒いマントを羽織った白髪混じりの男が待ち構えていた。


「ピニャ殿下だな?私は怪人作りの名人、死神博士。この奥の部屋が大首領様の謁見の間だ。ついてこい」



死神博士は簡単な挨拶を済ませると重厚な扉を開けて謁見の間に入る。

室内はさっきの廊下以上に薄暗く、レッドカーペットが敷かれ、その周囲に等間隔に配置された燭台の炎が辺りをボンヤリと照らしていた。そして部屋の奥には赤と黒を基調とした玉座があり、玉座の頂点には羽を広げた鷲の彫刻が鎮座していた。

さらに部屋の両端には武装親衛隊所属の怪人達も数十人、整列しており、敵国の皇女であるピニャ達に向けて強烈なまでに敵意のこもった視線を放っていた。


殺意にも似た視線を向けられ、ピニャは恐怖を押し殺しながら玉座の前まで案内され、死神博士による大首領と謁見する際の礼儀作法講座を聞いていた。


「いいか?大首領様がお話になっている時は話を遮ってはいけない。さらに、重要なことだが素顔を見ようとしないこと。失礼無きようにな」



死神博士がピニャ達をジロリと睨むように見て念を押した。すると謁見の間の扉を勢いよく開け、黒い軍服を纏った親衛隊員の1人が叫んだ。



「大首領様がお入りに!!!」


その言葉と共にピニャ達以外の室内にいた全員がかかとを打ち合わせてピシッと姿勢を整えたのを見て、ピニャ達も少し遅れて同じように姿勢を整えた。



(来たか!ショッカーの支配者が!どのような人物なのだ?)
 


ドン!!!!


突如としてドス黒い漆黒のオーラが室内を包み込み、ピニャとボーゼスはそれに飲み込まれそうになる。思わずたじろいでしまった。親衛隊員達が放っていた殺気とではミジンコと富士山くらい明確かつ圧倒的な差があった。


ピニャ達はすぐに下を向き、まるでお辞儀のような体勢をとった。とてもじゃないがこのオーラを放つ張本人を直視することなどできなかった。 

例えるならば"抗うことの出来ない絶対的な恐怖"。まるで心臓を絶対零度の手で握りつぶされているのではないかと思うぐらいに身体が硬直してしまった。

あまりの恐ろしさにここが外交の場でなければ恥も何もかもかなぐり捨てて裸足で逃げ出すほどだ。


コツ、コツ―。


大首領の足音が室内に響き渡り、ピニャの数メートル前の玉座でピタリと止まった。



「「「「イッー!!!!」」」」


死神博士や親衛隊員らがショッカー式敬礼をして忠誠を示すがピニャ達は背筋を凍らせて下を向いたままだった。



「面をあげよ」
 

大首領が低い声でそう言うとピニャとボーゼスはビクリと肩を跳ね、恐る恐る顔を上げた。
そこには依然、強大な漆黒のオーラを放ち続けるショッカー世界の支配者の姿があった。

立て襟付の赤いマントに同色の三角巾というそのミステリアスな出で立ちは帝国の皇帝が纏うようなきらびやかな衣装とは大きく異なっていたが首領の放つ"覇気"も相まって恐怖心を何倍にも煽り立てた。


大首領は三角頭巾で素顔を隠してはいるがジッとピニャ達を見つめているのが視線を胸元に移していても分かった。
ピニャとボーゼスの身体は小刻みにカタカタと震え、決して言葉にはできないが失禁する一歩手前まで来ていた。




「さて……ピニャ殿下よ、遠路はるばる大義であった」


一番最初にかけられた言葉が労いの言葉だったことにピニャは拍子抜けした。大首領は意外と優しい性格なのではと思い、恐怖に怯えながら小さな希望を抱いてしまった。しかし、それもすぐに現実に引き戻された。


「……だがな、私にはどうしようも許せないことがあるのだ」


「ぇ?」


「帝国は"私"の世界に土足で踏み込み、ショッカーの貴重な"人的資源"を奪っていった。低文明の異世界人の分際でありながらこれがどれほど身の程知らずなことか分かるか?」


ピニャは答えられなかった。大首領の声は明らかに怒気を孕んでいたからだ。
ここで何か言えばこの場で無惨に殺されてしまうのではないかとすら思った。そして―、ツゥッとピニャの頬を冷たい液体が伝う。恐怖のあまり、涙が出ていたのだ。


「私の世界で最も価値のある資源は人的資源…つまり人間だ。我がショッカーは選ばれた優秀な人間を改造し、怪人にすることであるゆる分野で常に進歩を続けているのだ」


(狂ってる……!!人間が資源だというのか。それではまるで消耗品ではないか……やはりショッカーと帝国では価値観や倫理観が違い過ぎる!!)
  


「よって帝国がその資源を虐殺したことはこの世界にとって大きな損失となったわけだ。それ相応の埋め合わせはさせてもらうぞ」



生きとし生きる者の命を安安と資源と断じる大首領の言葉でショッカーがやはり異世界国家なのだと改めて実感させられた。そしてそう感じたのと同時にショッカーの真の強さ…そして恐ろしさを理解した。



(妾は勘違いをしていた……ショッカーの真の恐ろしさは圧倒的な軍事力や技術力なんかではない!!)



ピニャは生唾を飲み干す。



ショッカーの真の恐ろしさ、それは―




(大首領の放つ絶対的な恐怖だ!!)





恐怖や畏怖……それは時としてカリスマ性や指導力と同じくらい国家の指導者に必要な要素の1つである。
ヒトや獣人、グロンギ、オルフェノク、アンデッドなどなど……。帝国と同じく様々な種族がひしめくこの世界を統一し、ここまでの独裁体制を築いて統治できているのはひとえにショッカーの指導者…すなわち大首領の指導力、統率力の高さにあると思っていた。


だが実態はそんなものではないとこうして実物を目にして理解した。
彼の持つそれは到底、カリスマ性や指導力という言葉では形容してもしきれないぐらい禍々しく、遥かに強大なものだった。強いて言うならば『絶対的な恐怖観念の塊』といったところだろうか。


そしてこのショッカーの世界では大首領はカリスマ性のある強権的な指導者の恐怖による"権威"で怪人達をコントロールし、その怪人達が人民を支配しているのだ。ところがその支配されているはずの人民達はこのショッカー大首領に恐怖心を抱くどころか『正義の化身』として敬愛し、奉り、忠誠を誓っているという。ピニャにはそれが信じられなかった。


(狂ってる…!!こんなバケモノをどう見たら正義の化身に見えるというのだ!)


自分達を資源扱いする存在を崇め奉るこの世界の人民の思考が理解できなかった。いや、理解できてしまえば既にショッカー側の狂ってしまった人間になってしまうような気がした。


ピニャは目の前の"怪物"が帝国、ひいては異世界全ての生殺与奪権を握っているのではないかと考えると恐ろしくてたまらなかった。
 
 

 
後書き
次回、ショッカー世界滞在最終日!
千堂は訪日に向けて動き出す。

そしてその裏では……。

千堂の怪人態のアンケートですが今のところ、『狼』に票が集まっているようですね。まだ受け付けるのでドンドン応募してください。 

 

第16話 千堂のパーフェクトしょっかー教室

 
前書き
新作ライダー『仮面ライダーセイバー』がとうとう発表されましたね!!! 
本作にも登場させたいけど……どう繋げるか……。


それと今回は今更ながら捏造設定がひどいですが…それでもいいと言う方はどうぞ!
 

 
ピニャとボーゼスが大首領と謁見している頃、千堂は記者会見を終えたレレイ達と博物館に来ていた。ちなみに自称「案内役」の増沢は博物館の外で戦闘員達と不審な人物がいないか警備をしている。

そもそも千堂達が博物館に来ているのはロウリィがショッカーの歴史や宗教について知りたいと言ったためだ。

上層部からはよほどの機密に関わる場所でなければ彼女達の望む場所に連れて行くようにと言われていたので意外とスムーズに手配は進んだ。
敵国の皇女であるピニャ達と異なり、いわゆるお客様待遇である。


最初こそ千堂はこの世界の歴史的建造物や宗教施設を訪れようかとも思ったがすぐに脳内で却下した。

歴史的建造物はともかくとしても宗教に関してはキリスト教や仏教、イスラム教を始め、ゲルダム教やドーブー教、卍教など日本世界以上に様々な宗教・宗派が乱立している。そのためそれら全ての宗教施設を見て回るのは不可能と千堂は判断した。それにそれらの宗教団体が異世界の亜神であるロウリィを快く迎えてくれるとは考えにくかったからだ。



(なんというか……大ショッカースクール時代の修学旅行を思い出すなぁ)


博物館前で千堂はレレイ達を見てそう思った。
少女達を連れて博物館や名所を巡る。それはまるで修学旅行を思わせた。
少女達が生徒ならさしずめ自分は引率の教師といったところなのだろうが。



「それにしても…ショッカーライダーと大幹部展ねぇ。いつの間に開催されたんだか……」


普段は日本エリアやショッカーの歴史に重きを置いた展示をしているこの博物館は今回、特別展を開催しているようだった。

子供達の憧れでもあるショッカーライダー関連の展示ともなれば本来なら子供や家族連れやコアなライダーファンでいっぱいになるであろう筈のこの特別展も異世界からの来賓が来るということで政府が急遽、この近辺の人払いをしたためスタッフなどを除けば殆ど貸切状態である。


館内に入ってすぐ、ショッカーライダーの展示が始まった。
順路通り展示物を見て回るがどれも見る者の興味をそそるものばかりだった。ライダー達の専用マシン、変身ベルトだってある……全て本物ではなくレプリカだが。
しかも見ていて飽きない展示のされ方や分かりやすい解説をしているのでついつい引き込まれてしまう。
それはレレイ達も同じようだった。

レレイはショッカーライダーについての説明書きを注意深く読んでいた。

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ショッカーライダー

ショッカー最強クラスの存在であり、秩序の守護者達。
元々はショッカー最大の裏切り者であり大罪人である本郷猛と一文字隼人に使われた技術をベースにして作られたエリート怪人のみを指す言葉だったが現在ではミラーモンスターと契約して変身する者やガイアメモリで変身する者、アストロスイッチで変身する者、フルボトルで変身する者など様々なライダーが現れた。

彼らの強さは大幹部に匹敵するとも言われており、子供達の憧れの的でもある。変身者の中には普段は一般市民として過ごす者もいれば、警官としてショッカー警察に所属している者もいる。
また彼らの権利や生活は「ショッカーライダー登録法」で保護・保証されており、軍やショッカー警察の要請が入ればすぐに現場に駆け付け、不穏分子と戦うのだ。
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「そんなに強いの?このショッカーライダーって?」


ロウリィが千堂に尋ねた。戦いの神に仕える使徒ゆえに気になったのだろう。千堂はそれに対して少し、神妙な顔つきで答えた。


「ああ、ライダーによって能力や強さは違うけど『時間経過で防御力が上昇し、時間操作ができる』のもいれば『自身の力を自由に設定できる』のもいるし、『他のライダーを召喚できる』のもいるな。それに『パンチ一撃で一帯を無に返すことができる』なんてザラにいるぞ?」


それを聞いえロウリィは勿論、レレイやテュカですら口をパクパクとさせる。
彼らの性能が魔法・ドラゴンありの異世界から見ても規格外を通り越して、『超超超ド級チート』レベルの強さを誇っていたからだ。



「え?ライダーってこの世界の亜神か何か?」
「それを生み出したショッカーはもはや神では?」


レレイとテュカが狼狽える中、ロウリィが少し意地悪な笑みを浮かべて尋ねた。
 

「千堂と戦ったらどっちが強いのォ?」


「ハ…ハハ……どうだろうなぁ?」


千堂は困ったような引きつった笑みを浮かべて苦笑してしまう。


旧型のショッカーライダーやナノロボットで作ったショッカーライダーなら苦戦しつつも倒せるかもしれないが他のライダー達は別格だ。
さっき言ったように超超超ド級チート性能を持つ彼らを相手に戦ったとしたら自分なんか即座に瞬殺されてしまうだろうし、そもそも大幹部クラスでないとマトモに戦うことすらままならないのではないかとさえ思う。

まぁ、政府や大首領様に『戦え』と命令されれば絶対に勝つように戦略を磨いたり、正面からぶつからずに"工夫"を凝らして戦ってみせるが……。



それから千堂達は大幹部のコーナーに移動した。そこでは大幹部達の所持品(レプリカ)や直筆の手紙や命令書などが展示されていた。

特にショッカーの全大幹部の肖像画が壁一面にズラリと並んでいる様は圧巻の一言に尽きる。

 

「なんか、皆、怖い顔してるけど…」
「ねぇ、ここに飾ってある人達ってひょっとしてショッカーの偉い人の絵?」


「そう、『大幹部』という大首領様の次にこの世界で崇められている御方達だ」


千堂は尊敬と崇拝の眼差しでそれらの肖像画を見つめる。彼ら、大幹部はいわば大首領様に仕える『神官』。この世界ではそんな方々に尊敬の念を抱かない方がおかしいのだ。



「ふーん、じゃあ、あの変わった頭の飾りをした人は何ていうの?」


ロウリィはツタンカーメンを思わせる被り物をした男が描かれた肖像画を指差して尋ねた。


「ああ、その御方達は地獄大使と言って…」


「地獄!?なんか怖い名前!!」


「いやいやそんなことないぞ!!それに『地獄大使』っていうのはあくまで公式の"敬称"であって本名はダモン様というからな!!」


千堂は偉大なる大幹部、地獄大使のイメージを守るべく必死に熱弁する。
確かに大幹部達は見た目や名前が多少、恐ろしい方多いがショッカー、ひいてはこの世界にに与えた功績は計り知れない。そのことを知ってもらいたかった。


「でどんな人なの?」


ちょうどロウリィが尋ねてきたのでこれはチャンスだと思い、説明しようとする。


「この話をする時には彼の従兄弟である『暗闇大使』ことガモン様の話もセットでする必要があるが……」


千堂は顎に手を当ててどう話せば分かりやすく地獄大使の『偉業』が伝わるかを考えた。

一方、レレイ達、異世界の3人の少女達は『地獄』や『暗闇』という明らかに不穏な単語が連発していることにこれからの説明に一抹の不安を感じていた。


「うーん、俺は軍人だからな。断片的だったり、大まかにしか話せないから地獄大使様の凄さを上手く伝えることができるかは分からない……が」


これは異世界人のショッカーのイメージに関わる重大な仕事である。また、ここでレレイ達相手に分かりやすい説明ができないようならこれから日本世界で行われる記者会見の質疑応答役など到底、不可能だろう。

千堂は自分を奮い立たせると少し咳払いをしてから静かに語りだした。


「……これから話すのは2人の男が自分達の運命を…そして世界を変えるべく立ち上がった話」
 

レレイ達にとっては意外だった。
もっとおどろおどろしい感じの話かと思ったが千堂が思いの外、面白そうな始まり方をしたからだ。いい意味で思っていたのとは違っていた。


「地獄大使ことダモン様と暗闇大使ことガモン様は従兄弟同士だったんだ」


なるほど、親戚同士なのか、どうりで名前が似てる訳だ。レレイは納得した。だがこの時点ではまだそこまで関心を持っていないようだった。


「彼らはスラム…異世界でいうところの貧民街で生まれ育ったんだ。それ故に幼い頃から侮蔑と迫害にまみれた生活をしてきたらしい。また、彼らの両親は幼い頃に既に他界していて頼れる相手は互いを除いていなかった。
だから2人は……どんなに辛い時でも従兄弟同士で、唯一の肉親として一緒に力を合わせて生きていこうと決意したそうだ」


帝国にも帝都に"悪所"と呼ばれる貧民街があるため、幾分か想像しやすかった。
幼い2人の少年が手を取り合って懸命に貧民街で生きる様を思い浮かべると異世界から来た3人はなんとも言えない哀しい気持ちになった。想像以上に過酷な暮らしをしていたのだろう。
気づけば3人は千堂の話に引き込まれていた。


「更に彼らは貧しいながらも独学で勉学に励んでいた。特にダモン様は現在でも毒蛇の研究に関しては並の学者じゃ太刀打ちできない程の博識らしい」


勉学にも秀でていたのか……。レレイの脳裏には明日を生きられるかも知れない貧しい環境にも関わらず涙ぐましい努力で勉学に打ちこむ少年達の姿が浮かんだ。だが千堂はまだ続けて話そうとした。どうやらそれ以外にも凄い逸話があるらしい。


3人の視線が一気に千堂に集まる。


「それから数年後、彼らは大人になると故郷を捨てて某国に渡った。その国はとんでもない圧政を敷いてて、民衆はいつも苦しめられていた。それを見かねたダモン様はガモン様と共に革命を成すべく解放軍に参加したんだ。そして2人は解放軍の中で将軍にまでに成り上がったそうだな。
……人から差別され、苦しみ続けた彼らだからこそ他人の苦しみに人一倍敏感だったのかもな」


貧民街出身の少年達が正義に燃えて民衆を助けるために革命を起こすべく将軍にまで成り上がるなんて。テュカが感嘆の声を漏らした。彼女だけではない。ロウリィやレレイも地獄大使とその従兄弟…暗闇大使のサクセスストーリーに興奮しているようにも見えた。


「また、彼らはめちゃくちゃ強かったらしくて敵からは『力の悪魔』、『知恵の悪魔』と呼ばれていたらしい」


なるほど、地獄大使や暗闇大使と呼ばれる所以はきっとそこにあるのだろう。レレイはそう思った。


「…でもそんな彼らにも終わりの時がやってきたんだ。ある日、いつものように民衆の為に前線で戦闘の指揮を取っていると密かに敵側に寝返っていた側近の裏切りにあって二人共、亡くなってしまったんだ」


「「「え!?!?」」」


いきなり話の主人公であるダモンとガモンが死んでしまい、テュカとレレイは唖然と目を丸くする。これからどうなるのか想像もできなかった。
また、ロウリィの方は恐らく最も信頼していたであろう側近に殺された彼らの心情を推し量っていた。

最期に2人は何を思って亡くなったのだろうかと。



「2人の死後、その崇高で気高い精神は解放軍の全将兵に受け継がれ、破竹の勢いで首都に向けて進軍し、圧政を敷いていた独裁者を打倒することに成功した。ちなみに今でもその国…ガモン共和国のあった地域は2人を軍神と崇めてるそうだ」


千堂の目はどこか明後日の方向を向いていた。彼の目には革命達成で歓喜に湧く"旧ガモン共和国"の民衆達が映っていた。


「そして彼らの功績を知り、『優秀』と判断された大首領様は創設してまだ間もないショッカーの技術力を使い、2人を蘇生させて大幹部の地位をお与えになった」


戦の神の使徒であるロウリィは曲がりなりにも戦死者である地獄大使と暗闇大使を蘇生させたことに複雑そうな表情をしていたが残りの2人はえらく関心している様子だった。


「そして地獄大使、暗闇大使となった彼らは幼い頃の自分達や某国の民衆達を苦しめた世界中に蔓延る権力社会を打倒すべく立ち上がったというわけだ。彼らの卓越した指揮もあってショッカーの進める世界統一事業や不穏分子との戦闘では多くの成功や勝利を収めたというから驚きだな」


それから千堂は少し身振り手振りを加えて少し、芝居がかった感じで話しのラストパートを語った。


「そして世界統一後、ショッカーの世界統一宣言式典で大幹部達にそれまでの功績を讃えられて称号が贈られたんだが…。地獄大使・暗闇大使の2人には『どんな逆境にも挫けない誠実な忠臣』の称号が贈られた。……そして2人はかつてのスラム出身の少年としてではなく……腐敗した世界から人々を解放した英雄として世界から崇められるようになったのだった」


千堂がふと、レレイ達の方に向き直るとロウリィを除いて彼女達は俯いた状態で肩を震わせていた。
途端に千堂は不安になってしまった。自分の説明が分かりづらかったのだろうか。


「どうした?説明が教科書的過ぎて分かりにくかったかな?」


よく見るとレレイは少しだけ苦い物を噛んだような神妙な顔をしており、テュカに至っては感極まって涙を流していたのである。
静かな語り口で話された大幹部の知られざる過去は彼女らのショッカーに対するイメージを爆上げしていた。
尤も千堂からすればこの世界の一般常識を語ったに過ぎないのだが…。


「分かりにくくなんてない!彼らの偉業がなぞるように分かった!」


「あっちの白い服と黒マントのおじいさんは!?どんな人なの!?」


テュカは別の肖像画を指差して、少し興奮気味に千堂に尋ねる。余程、地獄大使の説明が面白かったらしく、他の人物についても聞きたいのだろう。
千堂はその肖像画に描かれている人物をジッと見つめて話し始めた。


「その御方は『肉親を守る為に戦った悲劇の賢者』。イワン・タワノビッチ様、公式の敬称は『死神博士』。旧日本国の首都 東京に生まれ、病弱な妹を救うためにはどんな努力も惜しまなかったとか…」


妹を救う為に戦った賢者か……。先程の地獄大使や暗闇大使が世界を変える為に戦ったのに対してこちらは親族の為とより親近感と好感が持てた。
きっと素晴らしい人徳者なのだろう。


「それに妹を救う目的の為なら医学や生物学は勿論、占星術や催眠術などのオカルト方面も貪欲に学んでいたと言う。またショッカーに招かれた後は得意の改造技術で多くの優秀な人材を怪人にしたそうだ」


努力を惜しまず、ありとあらゆる学問を学ぶ進取の精神にレレイは感銘を受けた。
尤も医学、生物学ならまだしも占星術や催眠術で妹の命を救えるとは到底、思えなかったが……。


「ちなみに改造人間となってからは宇宙から隕石を降らせることができるって話だが…」


「「「プッ!!」」」


これには3人とも吹き出した。いきなり非現実なパワーワードが飛び出したからだ。





それからロウリィがふと、『規律を重んじる厳格な完璧主義者』の肖像画に視線を移して「あら?」と少し高い声を上げた。
というのもその絵にはロウリィ達がオ・ンドゥルゴ基地で何度か会ったことがある人物が描かれていたからだ。


「あれ?このおじさまは基地にいた…」


「ああ、ゾル大佐だ」


「え!?あのおじさんも大幹部なの!?」


レレイやテュカからすればゾル大佐は服装の乱れや風紀に小うるさい少し偉いおじさんくらいにしか見えないが千堂ら、ショッカー側の人間にしてみれば人間国宝、いやそれ以上の人物である。



「ゾル大佐は昔あった西の大国(ナチスドイツ)に仕えていた軍の大佐で祖国を守る為に必死に戦った英雄だ。その当時、自ら志願して改造人間となり、鬼将として敵軍に俄然と立ち向かった。
彼が変身した黄金色の狼男の姿は敵を震え上がらせたというからいかに大佐が強いかが分かるな。結局、大佐の祖国は敗戦し、滅んでしまったが大首領様に『優秀』と判断された大佐は生き残った部下達と共にショッカーに招かれたそうだ。
今、着ている軍服と階級もその時のものを引き継いでるんだとか」


「なるほどォ、オジサマもかなり強かったのねェ。それに軍服と階級をそのまま使うなんて余程、自分の祖国に誇りを持っていたのねェ」


そうだな…、と千堂は落ち着いた優しい口調で言って続けた。


「統一直前までは敗戦国側の将ということもあって戦勝国側による一方的な情報操作で極悪人扱いされていたんだそうだ…が、統一後はショッカーの尽力で厳格に規律を重んじ、対侵略勢力から祖国を守ろうとした英雄として名誉回復が果たされたわけだ」



『極悪人扱いをされていた戦争の英雄が名誉挽回し、人々からまた崇められるようになった』


地獄大使らに勝るとも劣らない成功譚である。それを聞いて彼女らのゾル大佐に対する尊敬度が上がった。 

自らの預かり知らぬところで評価が爆上がりしていると知ったらさすがのゾル大佐も面食らうかも知れないが……。


その後も千堂達は展示を見て周り、時に『解説』を挟みながら一行は楽しい一時を過ごした。
――――――――――――――――――――――――
外に出ると戦闘員達の乗った数台の白バイを先頭として政府公用車が停車していた。よく見ると助手席には増沢がいち早く乗り込んでいた。


「ここでお別れのようだな」


博物館の外で千堂はレレイ達に別れの言葉を言った。
レレイとテュカは驚いたような顔をした。


「「えっ?センドウは?」」


「俺は日本に行く用事があるからこの世界に留まるよ、またオ・ンドゥルゴで会おうな」


レレイは少し、不安げで残念そうな顔をした

「次はいつ、会える?」と小さな声で尋ねた。
 

「次は日本から帰ってからになるから1週間ぐらいかな」


一瞬、レレイはいっそう残念そうな顔をしたがらすぐに気を取り直していつものようなクールな調子に戻った。
……ロウリィはまるで面白いものを見ているかのようにニヤニヤと笑っていたが。


一時の沈黙がその場を支配する。


「……そう、じゃあまたその時に会おう」


「ああ!じゃあ、またな!!」


千堂は手を降って優しく見送る。
レレイ達が静かに乗り込むと車列は発進し、みるみる内に遠くに行ってしまい、小さくなって見えなくなる。



―――――――――――――――――――――――

数十分ほど千堂は博物館前の広場を散歩しながら深呼吸をして背伸びをした。


ふと、空を見上げる。 


やはり自分が生まれ育ったこの世界が一番、落ち着く。 
確かにレレイ達の住む異世界も魅力はあり、刺激や驚きには尽きないが慣れ親しんだ空気や価値観、そして偉大で何よりも正しく公平なショッカー(正義)があるこの世界が自分には合っていると思う。
 

それまで当たり前であったこの世界の常識も異世界に行ってその目で見て比較したからこそ、自分のいる世界……ひいてはショッカーという存在のありがたみや素晴らしさに改めて気づけた。


ショッカーのあるこの世界を誇る気持ち……統一前の昔風の言葉で言うなら『愛国心』というやつだろうか。


向こうの世界では本来、尊いはずの人の命がまるで紙のように簡単に飛ぶ。それは炎龍との戦いやイタリカでの戦いで犠牲になった異世界の民衆のことを思い出せばよく分かることだ。

だが炎龍に襲われたコダ村避難民の生き残りや占領下のイタリカ市民達はショッカー(正義)の下で徐々に希望を取り戻し、前を向いて幸せに生きているという。


そう、ショッカーが関わることで世界の悪い部分は取り除かれ、人々は平和で公平に、そして何より幸せに生きることができるのだ。



自分は数十日後に日本国へと向かう。しかもショッカーの素晴らしさ・公正さを彼の世界に伝えるという使命を背負って。 


日本国のある世界は未だに200ヶ国以上の国々に分裂し、争いを繰り返している混沌の世界だ。傲慢と取られるかも知れないがショッカーが日本と交わることでイタリカやコダ村避難民のように少しでも彼の世界が『正義』の名のもとによりよい方向に進んでくれたらいい。


千堂はそう思っていた。







ビー!ビー!ビー!




突如、飛電ライズフォンがけたたましく鳴って現実に引き戻された。この音は軍の非常通話を表す音で緊急時にはこれを使って通話するようになっていた。



「た、隊長ですか!?!?」


電話の向こうの相手は加頭だった。息せき切った様子でかなり慌てているのが声から伝わった。


「加頭か?どうした?軍の非常通話まで使って…」


「大変なんです!!レレイさん達の乗った政府公用車の車列が不穏分子(テロリスト)の襲撃を受けているそうです!!!」


その内容に千堂は驚き、目を剥いた。


「何だとッ!?」


「既に戦闘員の多くが倒されているそうです!!自分はピニャ殿下とボーゼスさんを安全な場所に避難させてから向かいますから隊長は先に向かってください!!!」


「分かった!!すぐに向かう!!!」


千堂は飛電ライズフォンの通話をブチッ!と切ると2,3メートルほど高く飛び跳ねると歩道から車道に出て、車と車の間を器用に避けながら物凄い速さで走り出した。


……その時の千堂の表情は歪み、怒りに満ちているのが誰の目からも明らかだった。 
 

 
後書き
はい、お待たせしました!!怪人態が決定したので次回ようやく千堂が力の一端を見せます!!
多くの回答、ありがとうございました!!


ここから先、長文です。すみません。↓

補足説明
今回、大幹部達やショッカーが美化されている描写や千堂がショッカーを正義と信じてやまない描写を多く書きましたが、
ショッカーを絶対正義と考えるのはあの世界の『一般常識』であり、大首領の忠臣たる大幹部を讃えるのもあの世界では『当たり前』です。
そのため、あの世界の人民からすればショッカーが行ったのは世界征服ではなく、『世界統一』ないし『腐敗していた旧世界秩序からの解放』となるわけです。

またショッカー世界の人民達は政府による幼い頃からの洗脳教育により、征服前の世界について悪い側面ばかり取り上げたねじ曲がった見方をするように仕向けられています。
1+1が2であることや林檎が赤色であることが当たり前で疑ってかかる人がいないようにショッカー世界ではショッカーが行うこと、話すことが正しいということを疑う人民はいません。

よって一般の民衆から見てショッカーが征服する前の旧世界といえば
『いくら優秀でも公平に評価されず出身や性別で差別され、民主主義と言う名の衆愚政治がまかり通りっており、各国の無計画な工業化の為に自然環境に毒を垂れ流し、超大国同士が自国の面子の為に核ミサイルを向け合った狂った世界』でしかないわけです。

さらに歴史教育では若者の不穏分子化を防ぐ為に旧世界の悪行・蛮行をより特筆して教育するようになっています。

しかしショッカーの統治にもいい点はあります。
政府が強大なリーダーシップを発揮し、『正義』の名のもとに思想統一がなされ、独裁的にスピーディーに政策・軍事行動を行える。また人民を人的資源と称して公平に評価・監理をしている。
それらの点が作中の日本国との決定的な違いです。


国民が自由に政治的発言ができるが自国の歴史や国防政策を否定し、スパイ天国な「日本国」と独裁的で政府が認める思想以外の一切の思想的自由を許さないが文明レベルが高くて人的資源として皆、平等な「ショッカー世界」、どっちに生まれればより、幸せなんでしょうか……。未だに私自身、答えが出せていません。 

 

第17話 千堂の力 前編

 
前書き
千堂の怪人態ですが『狼』に決定しました。
今回は長くなるので前編と後編に分けます。
後編はもう少しお待ちを……
早くて今週中、遅くとも今月末までには投稿します。
 

 
帰りの車内にて、レレイの頭の中は千堂のことでいっぱいだった。

千堂は私達、コダ村避難民をたまに変な目で見る。
それは故郷と家族を失った者に対する哀れみの目でもなければ、奇異の目でもない。
まるで逆境から立ち上がろうとする者を応援するときのような優しさの込もった目だ。

その目を向けられる度、彼が一体何を想い、何を感じているのか知りたくなる。
最初はただの興味だった。相手は異世界から来た軍人。ただそれだけだった……はずなのに。

レレイは後悔していた。
もっと彼と…千堂と話していたかった、同じ空間にいたかった。
数週間後にまた会おうと彼は別れ際に言ったが正直、数週間も待てない。
いますぐにでも会いたい……。


そんなことを考えながら車窓の外を眺める。沿道には異世界からの客人を一目見ようと沢山の人だかりが出来ていた。
圧倒的な視線の数に最初こそ驚いたが千堂と別れた直後からずっとこんな調子だったため、もう慣れきってしまった。

そんな中、沿道の人々の中から一人の男が姿を見せた。
その男は大きめのゴルフバッグのような袋を肩に担いでいた、
ただの見物人にしてはどこか妙だった。
レレイは男を注視した。男は人影に隠れてこっそり袋から¨茶色の太い棒状のもの゙¨を取り出した。
それに見覚えがあった。オ・ンドゥルゴ基地に似たものがあった。確か『ロケットランチャー』とかいったはずだ。

そして男はさり気なく、ごく自然な動きでその先端をこちらに向けた。


レレイは男が何をしようとしているかやっと理解した。


その刹那―。


バシュッ!!!


男が何かを発射すると前方を進行していた戦闘員の乗った白バイが突如、爆発に見舞われ、そのまま路上に横転した。


不穏分子(テロリスト)だ!!!」

沿道にいた人々はパニックになり、散り散りに逃げ回る。制服の警官達は突然のことに慌てふためいた。逃げ惑う市民の波が警官の行動を邪魔した。
そのせいで警備に僅かな隙が生まれ、レレイ達の政府公用車の周囲の守りが緩くなってしまった。
そこにどこからともなく大型トラックが数台、白バイの車列に勢いよく突っ込んできた。辺りに金属やガラスが捻じ曲がる音が響き渡る。
さらにトラックの後方には灰色のワンボックスカーが一台、随伴していた。

「伏せてろ!!!」

公用車の助手席にいた増沢が叫ぶとレレイ達はサッと席にうずくまるようにして伏せた。


それぞれのトラックの荷台が開け放たれ、中から自動小銃を構えた四十〜五十人程の男達が飛び出してくる。
彼らは政府公用車を護る戦闘員達や警官隊に対して銃撃戦を開始した。


彼らの目的はただ1つ、「レレイ達の身柄を奪うこと」である。


「行け!!征服者から異世界の少女達を解放するのだ!!!」

「「「ウォォォォォォォォ!!!」」」


パパパパパパパ!!!!


「イィーーッ!!」
「ギィィッーー!!」


警官達は勿論、流石の戦闘員達も小銃の弾幕射撃を受けてはマトモに抵抗することすらできなかった。ましてや敵は対改造人間用の銃弾を使用していたのだ。怪人より戦力的にも能力的にも格下な戦闘員達は次々と断末魔を上げて倒れていく。


「く、くそう!何だってこんな事に!」


増沢は車内から勢いよく降りて、瞬時にジャケットの下に隠していた拳銃を抜くと、男の1人を撃ち抜く。


パァン!!


「グワァ!」


増沢は全身に返り血を浴びながらもなんとか1人を射殺することに成功する。しかし敵は人海戦術で次から次へと湧いてくる。


「このショッカーの犬めぇぇ!!!」


タァーーーン!!!


「ウッ!!!」

不穏分子の1人に増沢は肩を撃たれった。真っ赤な血が放射状に飛び散る。生身の人間にも関わらず改造人間用の銃弾で撃たれてしまった増沢はその場でうずくまるようにして倒れて意識を失ってしまった。


「マスザワ!!!」

ロウリィが叫ぶ。


気づけば公用車は不穏分子達に取り囲まれていた。


「大人しく出てこい。我々も手荒なことはしたくない」

そう言いながら男達はジリジリと近づいてくる。


「「ロウリィ……」」


テュカとレレイは不安そうな顔をしてロウリィを見つめる。


「私に任せて……」


ロウリィはハルバードを構える車のドアを乱暴に開けて外に飛び出した。
危機を感じたメンバーの一人は即座に車から距離を置いた。それから即座に対改造人間用の銃弾をロウリィに叩き込む。
しかし亜神であるロウリィは凶弾を喰らってもすぐに再生する。
そしてその男との距離を詰めて……

バシュッ!!!


「ヒィィィィ!!腕がァァ!!」

腕を切りつけられ、男は血を吹き出しながら倒れこむ。


「よ、よくも部下を!!このアマぁ!!」


仲間が殺されて逆上した別の男が飛び出す。彼はこの襲撃部隊の隊長だった。彼は切り札であるガイアメモリを取り出して起動すると自分の首筋に突き刺した。


『ライアー!!』


彼はライアー・ドーパントに変身した。そして口から吹き出しのような形をした針をロウリィに放つ。
言葉の針がロウリィに刺さると突如として彼女の足がガクガクと震える。足元がおぼつかず、必死で踏ん張ってないとすぐに転んでしまいそうだった。


「な、何で……??」


ロウリィ自身、訳が分からなかった。

恐ろしい……目の前の男達が恐ろしい…。そんな感情に心が支配されていた。
あまりの恐怖にハルバードをその場に落とした。


「あの女には『我々が怖くて本能的に抵抗できない』という嘘の針を刺した!これで抵抗できまい!!」


そして隊長は苦し気に呻くロウリィにヅカヅカと近づくと喉を鷲掴みにした。


「このクソ女!よくも!よくも俺の部下を!」


『亜神』だか何だか知らないが目の前の少女に自由と闘争心に燃えるかわいい部下が殺された。
そのことに怒りが抑えられなかった。
隊長はそのままロウリィに殴る蹴るの暴行を加えた。


隊長の蛮行を見かねた部下の1人が止めに入る。


「隊長!殺さないでくださいよ!!」


「わ、分かってるさ……畜生!!」

バッとロウリィの喉から手を放した。しかし怒りは収まらず八つ当たりと言わんばかりに戦闘員の死体に蹴りを入れる。
ライアー・ドーパントは忌々しい忌々しい物を見る目でロウリィを見ると一旦変身解除して部下に命じた。


「運び出せ!!!」


不穏分子達はロウリィとレレイ、テュカを無理矢理、ワンボックスカーに乗せるとトラックと共に去って行ってしまった。



―――――――――――――――――――

数分後……人の気配がなくなった襲撃地に¨高速¨で駆け付けた者がいた。
―千堂である。

千堂は現場を見回し…そして激怒した。
現場は予想以上に凄惨だった。
銃痕が空いたバイクが転がり、辺りには戦闘員達が死屍累々と倒れていた。
皆、一様に血の海に溺れており、周囲にはむせ返るような鉄の匂いが充満していた。

レレイ達の姿はすでになく、連れ去られたことは明白だった。
千堂は道路を見つめる。一体の戦闘員の遺体が目に入った。

"彼"は体中が銃弾で蜂の巣になっていた。必死にレレイ達を守ろうとしたのが見ただけで伝わった。
彼に駆け寄ると開いた瞳を閉じさせ、手を握る。


「君達の無念は俺が晴らす……安心して眠るといい」


そう、優しく声をかけるとその場にいた戦闘員達はほぼ同時に泡となって消えた。


次にレレイ達の乗っていた政府公用車の方へと近づく。公用車の傍には増沢が血を流して倒れていた。
千堂は増沢の首筋に手を当てて脈を測る。脈はまだあった。

―生きている。だが虫の息だ。


(助けるにはこれしかない!!)


千堂は増沢の腕を乱暴に掴むと間髪入れずに噛みついた。
尖った犬歯が肉に食い込み、鮮血が口内に流れる。

すると傷口がみるみる塞がっていった。
身体の免疫力・再生力が急速に向上していっているのだ。
増沢は重たそうに目を開けて意識を取り戻した。

突然のことに最初、目の前の男も敵かと思い、増沢は倒れた状態のまま銃を向けるがその姿を見て千堂だと分かるとゆっくりと銃を下ろした。


「千堂か……俺に何をした?」


「ウルフビールスを注入したんだ。瀕死のお前を救うにはこれしかなかった」


「ウルフ……ビールスだと?」


ウルフビールス。大幹部のゾル大佐が変身する黄金狼男が保菌する特殊ウィルスだ。
しかもそれを注入された人間は人狼化し、保菌者の犬笛に操られるという恐ろしい特性を持っていた。それを持つということ…それは千堂が『狼の改造人間』である。


「そう。俺の能力の一つだ。尤もゾル大佐の持つウルフビールスとは違って新型なもんで特性が少し違うがな……」


そう言うと千堂はどこからともなく注射器を取り出して自身の血液を抽出すると増沢の首筋に注射する。


「痛ッ!?何をする!?」


「何って……血清だよ」
 

「血清?」


「そう。よく言うだろ?『生物兵器を作る時にはワクチンも一緒に作れ』ってな。このウィルスの場合、感染しても俺の血液中に流れる血清成分を抽入すれば人狼化は防げる」

増沢は不思議そうに腕の噛み跡を見つめる。


「それで……レレイ達はどこに?」


「すまない。気を失っていたもんで俺にもさっぱり……」


「そうか……」


千堂は失意の中、公用車の隅に目をやった。そして"とある物"を見つけた。



「増沢さん、あれは……ロウリィの…」


千堂は地面に打ち捨てられたロウリィのハルバードを指差す。


「ああ、間違いなく神官のお嬢ちゃんの斧だ。奴らめ、さすがに武器だけは置いていったか「ちょっと失礼するぞ!!」ッ!?何をする!?」
  

千堂はハルバードの元に駆寄ると、なんと取手の匂いを嗅ぎ始めた。いや、より正確にいえば取手に付着したロウリィの匂いを嗅いでいた。


「千堂!お前、この非常時になんてハレンチな!!」


増沢は顔を真っ赤にしてまくし立てる。


「勘違いするな!!これは必要なことなんだ!!」
 

「何をどう必要としたら斧の取手を嗅ぐんだ!!」

増沢がもっともらしいことを言う中、ひとしきり匂いを嗅いだ後、千堂は立ち直って深呼吸をするように大きく周囲の空気を吸い込む。

実は千堂は風によって運ばれてくるその匂いの源を自身の"嗅覚"を頼りに少女達の現在地を探っているのだ。
そして目をカッと見開くとボツリと呟いた。



「見つけた……。南西の方角、時速90キロで移動中……か。」


そう言うと千堂はまたも"高速"で駆け出し、不穏分子の追跡とレレイ達の救出に向かった。 


「………結局、何がしたかったんだ?あいつは?」


増沢は一人、大きな勘違いをしたまま取り残されてしまった。 
 

 
後書き
次回!!とうとう千堂が怪人態に変身します!!独自設定多めですが……お楽しみに!!
それと今回がこんなちょい胸糞回なので次回はカタルシス多めでお送りします。


千堂の能力 その1

新型ウルフビールスa型。

ゾル大佐の黄金狼男の保有するウルフビールスに改良を加えて制作した新型のウルフビールス。
これに感染したものは人狼化し、保菌者である千堂の脳波を通じて思うがままに操られる。しかし、あまり距離が離れすぎるとコントロール不能に陥り、暴走してしまうというデメリットがある。
また感染を防ぐには血清を打つ必要があるが人狼化を防げたとしてもごく稀に『身体能力の上昇』や『保菌者に対する異常なまでの崇拝』などの副作用が起こる場合がある。 

 

第18話 千堂の力 後編

 
前書き
投稿が遅くなりすみません。
千堂の怪人態の命名や第2章、第3章のプロットを作ってたら遅くなりました。
しかしその分、2章、3章の投稿はよりスムーズになると思います。

今回で第1章は終わりです。
それとようやく千堂の怪人態が登場します!
それではどうぞ!!! 

 
襲撃者達はショッカーの支配に反対するレジスタンス組織、アンチショッカー同盟の人間だった。

同組織は先のショッカー警察による検挙で日本支部の幹部のアジトが強襲され、貴重な同志達が殺された。また南米ではアマゾン支部の武器製造工場が破壊されたという。そこでは銃器だけでなく闘争用のガイアメモリやアストロスイッチも製造していたために組織にとって大きな損失となってしまった。

このまま敗北続きでは世界各地に散らばる2号〜Jまでの仮面ライダー達やショッカーに不当に投獄されている仮面ライダーBLACK RXこと南光太郎様に会わせる顔がない。
そこで彼らはこの世界を訪れているという異世界の来賓を人質にとり、ショッカーにこれまでに逮捕された同志達や南光太郎様の解放を要求する計画を立案した。
異世界で『正義ヅラ』するショッカーにとって来賓の少女達の身に何かあったとなればこれからの『異世界征服』に甚大な影響を及ぼしてしまう。最悪、占領地で住民の反乱が起き、撤退を余儀なくされる事態になる。


それを防ぐ為ならどんな要求でも奴らは飲む。それが彼らの"ヨミ"だった。


この作戦は日本支部と東南アジア支部のの一部の幹部の独断であり、アンチショッカー同盟全体の意思ではない。
当然、仮面ライダー達が聞けば「何の罪もない異世界の少女を利用するなんて…ゆ"る"さ"ん"!!」と怒りを顕にして嘆き悲しむだろうがショッカーに勝つためには手段を選んでられない。
これは自由を取り戻す為の聖戦なのだ。


「あの娘らはこれからどうするんですか?」


アジトである廃工場内で部下が襲撃部隊の隊長に尋ねた。


「ん?ああ、俺もよくは知らされてはないんだが、これから湾内に停泊しているフェリーに運び、そこから東南アジア支部のアジトに運ぶ手筈らしい……」


男達の密談は続く。


一方、レレイ達は後ろ手に縛られ、この廃工場の隅に寝転がされていた。ロウリィは未だにライアー・ドーパントによる精神支配を受けており、頼りにならない。3人の心は恐怖や焦燥感で覆い尽くされていた。逃げ出すことも考えたがすぐに諦めた。この廃工場内だけでも30人程の男達がいたからだ。
仮にこの拘束を解いて逃げたとしてもすぐに捕らえられ、今以上に酷い目に合うのは確実だった。




しばらくすると男達の内、数人が近づいて来た。


「手荒なまねしてごめんねー。でも君らがいればショッカーも下手な真似できないでしょ?」


「あとちょっとの辛抱だと思うからさぁ。耐えてくれるよね?俺らの要求をショッカーが飲んでさえくれれば大丈夫だから」


男達は一方的な会話は進む。
レレイは振り絞って声を出す。


「……私達なんかでショッカーは要求を飲んだりしない。あの人達は……」


レレイはあの人達と言ったが脳裏には千堂が浮かんでいた。しかし、おそらくショッカーは要求を飲まない。異世界人……それも敵国の人民を助けるメリットなどない。そう分かっているのにどうしても脳裏に浮かぶ"あの人"に助けを求めてしまう。


「何、こいつ。俺らより独裁者の味方なわけ?」


「ねー、暇だからコイツらで遊ばね?そもそも異世界から来て安全に帰れるとか思ってたの?」


男の1人がレレイの顎を掴み、上を向かせる。
レレイの恐怖が最高潮に達した。


(助けて!!!)


その時―。



ドガァァァァン!!!!



もはやそれは破壊音というより破裂音だった。
"その男"の強烈な一蹴りは頑丈そうな鋼鉄製の壁をいとも容易く粉砕した。
薄暗い工場内に突然、光が差し込む。
逆光を浴び、千堂はそこに立っていた。


不穏分子の男達はレレイ達から手を離し、千堂の方を向く。


「し、ショッカーの手の者か!?なぜここが分かった!?」


そう言ったのは先程、レレイの顎を掴んでいた男だ。男はナイフを腰から引き抜くと千堂に向けて突進する。


「「危ない!!」」


レレイとテュカが叫ぶ。



ゴキッ!!!


骨が大きく折れる音が鳴り響いた。
無論、男のナイフが千堂に刺さった音ではない。千堂が向かってくる男の顎をかかとで蹴り上げたのだ。
男は千堂に蹴り上げられ、頭蓋骨が砕け、そのままの勢いで天井に叩きつけられた。


「なぜここが分かったかだと?そんなの俺が改造人間だからに決まってるからじゃないか」


不穏分子達は千堂の「改造人間発言」に軽くパニクるが千堂はレレイ達の方を見ると優しい口調で言った。


「遅くなってすまない。助けに来たぞ」


ようやくレレイ達の恐怖心が薄れていった。
するともう1つの影が工場内に入る。


「隊長!レレイさん!ご無事ですか!?」


千堂に続いて加頭も工場内に突入したのだ。


「加頭か……ショッカー警察は?呼んだのか?」


「はい。もう10分ほどで到着するようです」


警察が来ると聞いて不穏分子達がざわつく。逃げようとしているのだ。千堂はそんな彼らの様子を軽蔑と怒りの籠もった目で一瞥した。


「10分ねえ……この人数を無力化するには十分過ぎる時間だな」


!!!???


千堂のその言葉は不穏分子達だけでなく加頭まで驚かせた。しかし、千堂の力の籠もった態度や溢れ出る雰囲気がそれがただの虚言ではないことを表していた。


「加頭、あの娘達を頼んだ。俺は目の前のクズ共を片付ける」


「……分かりました。お気をつけて」


加頭はレレイ達に駆け寄って縄を解いた。


「少しの間、目をつむって下さい。あと耳も塞いでいてください………危険ですから」


優しく諭すようや加頭の言葉にレレイ達は「分かった」と自由になった両手で耳を塞ぎ、ぎゅっと目をつむった。
千堂はそれをチラリと目をやって確認するとゆっくり息を吐くように不穏分子達に言った。





「全く……異世界の少女達でさえ偉大なるショッカーの思想や理想に感動したってのに……」



「お前ら不穏分子ときたら!!!」



軍服の男…千堂は怒りに顔を歪ませ、容赦のない視線を"敵"に向けた。
それと同時に周囲にただならぬ緊迫感と迫力を撒き散らした。


「大首領様のお作りになった平和で公正な世界秩序を破壊すべく暗躍し、そのために平和に暮らす人々を利用する!!」


千堂は両腕をクロスさせ、顔の前まで持ってきて目を強く瞑った。
そして―


「俺はそんなお前らを許さない!!!」




ドンッッ!!!!


目をカッと見開いてクロスしていた両腕を腰元までグッと引き、"リミッター"を解除する。
すると突如、発生した衝撃波が不穏分子(アンチショッカー同盟員)達を襲い、ズンと大気を震わせた。同時に千堂の身体をドス黒い黒雲のような靄がモクモクと包みこむ。


「変身ッ!!!」


稲妻の様な赤黒い閃光が靄の中で起こると、千堂の姿は変わり、黒い靄は晴れていく。
そこには"人間態"の千堂はいなかった。




不穏分子達は『白銀色の狼男』を見た。



それは素体となった『狼』の能力を十分に使う為のショッカー怪人としての恐ろしいまでのいかめしい姿。

狼男の象徴ともいえる鋭い犬歯を口から覗かせ、頑丈そうな全身の肉体を覆うのは銀色のゴワゴワとした固い毛。
右胸部にはショッカーのシンボルである鷲のマークが赤く彫られ、腰にはショッカー怪人であることを示す銀色の鷲のベルトをしていた。


そしてこの姿となった今、千堂印一という人間態の時の名前を一時的に捨てる。そして怪人態としての名前を名乗るのだ。


「平和を乱すその野望!偉大なる大首領様に代わって打ち砕く!!聞け!
我が名はアングヴォルフ!!偉大なるショッカーの秩序の守護者である!!」


千堂もといアングヴォルフは名乗り口上を上げると脚をドっと開いて目を見開き、獣の威嚇のような臨戦態勢を取る。


「う、うわぁぁぁぁ!!!」


恐慌状態になった不穏分子の1人が持っていた自動小銃を千堂に発砲する。


パパパパパパ!!!
 

全弾命中するもアングヴォルフはまるでポップコーンでも投げつけられているかのように全く動じない。


「嘘だろ!?これは対改造人間用の銃弾なんだぞ!?何故死なない!?」


「何故かだと!?俺のこの力は偉大なる正義(ショッカー)の恩恵に日々感謝し、鍛錬を積んでいるおかげだ!!お前らとは根本から違うんだよ!!!」


ヴォルフは彼らの中に踵落としを食らわせるとそのまま近くにいた固まっていた2人組の不穏分子に鋭い爪を持つ手で貫手を放った。合計3人。3人もの人間が一瞬にして固い地面に転がる。


それからは正に一方的な攻勢だった。無謀にも突撃をしてくる者が数名いたがそういった者は拳を叩きつけられ、吹き飛ばされた。
次々と不穏分子達が宙を舞う。


アングヴォルフは千堂"だった"頃には見せなかったニヒルな笑みを浮かべた。特有の細長い口から犬歯が覗く。


「な、何が改造人間だ!!これでも食らえ!!」


『コックローチ!!』


男の1人はコックローチ・ドーパントに変身し、千堂を窒息させようと勢いよく粘液を飛ばした。
それを見たヴォルフは飛んでくる粘液弾をスルリと避け、そして空間を断つかの如く、高速でコックローチ・ドーパントの背後へと周る。


「速いッ!?」


「お前が遅えんだよ!!」


ドスッ!!


鋭い爪を持った腕で手刀を作るとコックローチ・ドーパントの胴体に貫通させる。そこまでの一連の動作はとりまきの不穏分子達にとって肉眼で捉えるのがやっとであり、アングヴォルフは煩わしそうに蹴りを入れてドーパントの肉体から腕を引き抜いた。
ドーパントは爆発を起こし、変身前の姿に戻って倒れるとメモリが排出される。



絶句。



不穏分子達はパニックに陥る。改造銃だけでなくガイアメモリで超人的な力を手に入れたはずの仲間ですらロクな抵抗もできずに瞬殺されたのだ。

  

(撤退すべきだ。目の前の怪人は強すぎる。このままでは皆殺しにされる!!)



しかし、その直感を必死に隊長は追い払う。異世界の少女達という交渉材料を得ておきながらみすみす逃げるという愚行はできない。



「ひ、怯むなァ!!一斉に攻撃すれば流石に奴も倒せるはずだ!!!」


それを聞いた男達は一斉に持っていたガイアメモリを起動して変身する。


『スイーツ!!』
『アームズ!!』
『アイスエイジ!!』


隊長も例外ではなくガイアメモリを取り出して変身した。


『ライアー!!』



スイーツ・ドーパントは凝固性のクリームを千堂の足元に放って見動きできないように拘束し、アームズ・ドーパントは腕を機関銃に変えて弾幕を張り、アイスエイジ・ドーパントは冷凍ガスを放射した。ライアー・ドーパントも杖から黄色の光弾を放った。


多種多様な攻撃が混ざりあったことによって爆発が起き、その余波で地面のコンクリートが砕けて周りに飛び散る。黒煙が辺りを包み込んだ。



「やったか!?」


いくら改造人間といえど、あれだけの集中砲火を受けて生きていられるはずがない。即死だ。誰もがそう思った。
―そうなるはずだった。






「ウオオオオオオオーーーンンン!!!」


"遠吠え"が聞こえ、ドーパント達は目を剥く。次第に煙が晴れて全貌が明らかになる。
その狼男は大地に何事もなかったかのように道路のアスファルトに両足で立っていた。ダメージを受けた様子は見られなかった。



「う、嘘だ……生きているだと?それも無傷で?」


「おいおい、痛くも痒くもなかったぞ。やはりお前ら不穏分子の力なんてこんなものなのか?」



余りの光景にドーパント達は狼狽える。
こちら側のありとあらゆる攻撃がまるで意味をなさないことに絶望し、膝をつく者も出てきた。


「ありえない!!あってはならない!!量産型のメモリとはいえ、あれだけの集中攻撃を受けて無傷でいられるなんて!!!」


「ク、クハハハハ!!!悪いな。俺は生命力は高い方でね!この程度の攻撃じゃ死なないんだよ!!」
   

そんな中、ドーパントの1人がハッとした顔をして我に返ったように叫ぶ。


「分かったぞ……お前の正体を!!第4世代!!お前は第4世代の改造人間だな!?」



その言葉に隊長ことライアー・ドーパントはふと昔、聞いたとある情報を思い出した。




新型改造人間。通称『第4世代』。


確か、アンチショッカー同盟日本支部が数年前に財団Xの通信網をクラッキングして手に入れた極秘情報の中にそんな文言があったはずだ。


それまでショッカーが作る改造人間には大きく分けて3種類がいた。

1種類の生物素体で造られた"ショッカー怪人"な2種類を掛け合わせた"合成怪人"、生物と機械を融合させた"機械合成怪人"などの創設期に造られた「第1世代」。
メカニックなスーツを装着し、汎用性は高いが拒絶反応(リジェクション)という欠陥がある「第2世代」。
機械合成怪人をコンセプトにナノロボット技術で造られた「第3世代」。



しかし「第4世代」はそれまでの改造技術の粋を集めて作られたという。
さらにその情報には「それまでに造られた同タイプの改造人間や異種族を研究、改良を加えて設計された」や「仮面ライダー達の息の根を完全に止められる改造人間をコンセプトに造られた」などといった突拍子もないとしか言いようがないような内容が続いていた。



その情報を聞いた時、自分や日本支部の幹部達はいくらショッカーといえど、仮面ライダーを倒せるなど、そんなバケモノじみた怪人を作り出せるわけがない。きっと自分達を騙すための欺瞞情報だと思っていたのだが……。


しかし、その情報が真実で、目の前に立ち塞がっているのがその第4世代なのだと考えれば今現在の惨状も最も納得がいく。
だとすれば勝てるはずがない。


「そうだ。俺はその第4世代の改造人間だ。偉大なるショッカーが作り給うた改造技術の塊だ。正直、貴様ら、クズにこの力を使うのが勿体ないくらいだ」


静かに息を吐くような、そして殴りつけるような口調で不穏分子を嘲笑った後、千堂はドーパント達の方へと駆け出した。



一瞬。
本当に僅か1〜2秒ほどの一瞬のことだった。
まるで瞬間移動でもしたかのようにドーパント達との距離を詰めた。


アングヴォルフは勢いよく、スイーツ・ドーパントに強烈な蹴りをいれた。するとスイーツ・ドーパントはいとも容易くボールのように蹴り転がされてしまった。
隣にいたアイスエイジとアームズのドーパントも巻き込まれる形でなぎ払われた。3人は折り重なるようにして地面に倒れ伏す。


「う、うう……」
「グ、グハァ!!」


地面に倒れた3人は何故か不自然なまでに身体を痙攣させた。よく見るとその身体は『ボドボド』で時々、"青白い電流"が走っていた。そしてその電流は次第に全身を支配し―。


「「「グゴワァァァァ!!!!」」」と情けのない声を上げて爆発し、コックローチ同様にメモリブレイクされた。


「余りにも弱すぎる…まぁ、粗悪な量産型のメモリならこんなものか」


アングヴォルフが呆れたような態度を見せるとライアー・ドーパントが急に怒りの声を上げた。


「キ、キサマ!アイツらに何をした!?」


ライアー・ドーパントは叫ぶ。部下を殺されて情緒不安定になっているように見えた。


「別に……ただ蹴り上げた時に電流を流しただけだ」


「電流だと!?」


「そう、第1世代のクラゲウルフ先輩の持つ放電能力。それを多少、強化して奴にスイーツに流しただけだ。まぁ、他の奴も巻き込んで感電するのは予想外だったがな」


「クラゲウルフ……?……!!!まさかお前、過去の怪人の能力を!!!」


「その通り!ショッカーに属する全ての狼型怪人、狼型異種族を研究して造られた俺は彼らの能力を全て、使えるんだ!」


「そ、そんな………」



(勿論、欠点はあるがな……)


ヴォルフは内心でそう独白する。
確かに千堂ことアングヴォルフはこれまでに造られた狼型怪人や狼型異種族の能力を使えるが、それはあくまで理論上の話。
実際には1度の変身で使えるのは3つまでが限度だ。もしも1度の変身中に何種類も能力を乱発すれば肉体や精神の許容量を大幅に越えてしまい、よくて『暴走状態』、最悪の場合は死に至る。
そのため、戦闘中といえどむやみやたらに能力を使うことができず、まっぱら肉弾戦となってしまうのである。

今回の場合は先程、クラゲウルフの能力を使ったのでそれ以外の能力を使うとなると残り2種類ということになる。
しかし、アングヴォルフにとって目の前にいる雑魚共は他の能力を使うまでもなかった。



ジロリとライアー・ドーパントの方を見る。ドーパントは思わず後ろ向きに倒れる。


「『ライアー』か……確か、相手に嘘を信じ込ませる能力だったな……」


だとすればロウリィを傷つけた張本人。
仇敵でも見つけたかのようにその腹に飛びかかった。
暴風を生み出しそうな勢いで千堂はライアー・ドーパントの顔面を容赦なく殴りつけ、頭を掴んで勢いよく地面に叩きつけた…電流を流しながら。



「ギャアアアアア!!!痛ァァ!!」


ライアー・ドーパントは激しい痛みに泣き叫ぶが千堂は無視し、さらに片足で頭を踏んで見動きを取れないようにする。それどころか踏みつけていた足を上げては何度も踏みつけた。


「安心しろ、お前もお前の部下も殺しはしない。ショッカー警察に引き渡さなければならないからな……だが異世界の少女を傷つけた罪、それだけはここで償ってもらおうか」


やがてぐったりとして動かなくなったライアー・ドーパントを担ぎ上げると、宙高くに放り投げた。
そして爪先に電流を溜め、ドーパントの方に向けた。


「……爆ぜろ」


千堂が静かに呟く。すると起こったのは―。

閃光―。
青白い稲妻がまるで意思を持ったかのようにライアー・ドーパントに直撃し、空中で爆ぜる。


ドォォォーーーン!!!


ドサッ!

隊長はメモリブレイクされて部下同様、固い地面に叩きつけられた。ピクピクと痙攣し、白目を向いて気絶している。

残りの不穏分子達は僅か10人ほどだった。頼みの綱である隊長やドーパント達が負けてしまい、絶望しているようにも見えた。彼らをキッと睨みつけるとその内の1人が恐怖に顔を歪ませながら叫んだ。


「何故だ!?何故、貴様らショッカーは俺達の意見を聞こうとしない!?何故、『自由』を求める俺達を一方的に弾圧するんだ!?」


「そうだ!俺達が悪いんじゃない!!俺達は改造人間の少数支配を変えようとしてるだけだ!人民の為なんだよ!!」
 

生き残るために、見逃してもらおうと不穏分子達は必死に目の前の狼男を説得しようとする。内心ではこんなことしても無駄なのは分かっていたが何もしないよりはマシだった。
しかし、アングヴォルフは怒りに拳をプルプルと震わせ、叫んだ。


「黙れぇぇ!!愚か者がぁぁ!!!」


!!!!!!!!!!!!


一瞬、その場がシンと静まり返った。まるで狼の遠吠えのように響き渡ったその怒声にその場の誰もが凍りついた。
アングヴォルフは続けた。


「何が『自由』だ!何が『少数支配の打倒』だ!その為に一般市民をテロに巻き込むのか!?その為に何の罪もない異世界の少女を拉致するのか!?矛盾してるじゃないか!!
お前らはいつもそうだ!!矛盾だらけの独りよがりな正義を掲げ、暴力に走る。そのせいで罪のない人が苦しんでも『聖戦』と言って知らん顔!
そんな奴らの話など誰が聞こうとするか!!」


「でも!ショッカーは人間のことを人的資源と呼んでるじゃないか!!
『資源』だぞ!『資源』!まるでパーツや道具みたいにモノ扱いだ!人間はもっと自由で気高い存在なんだ!それに改造人間なんか生命に対する冒涜だ!!」


「『人的資源』と呼ぶことの何が悪い!!この世界に生を受けた以上、ショッカー世界を構成するパーツとして大首領様の為に働くのは当然だ!!
それにショッカーは旧世界の政府と違い、人民を肌の色や性別、種族で差別しないじゃないか!!全人民がショッカーの前では公平!!その中で学問やスポーツで、競い、争い、勝ち残った『優秀』な人間を改造し、その他大勢の人民を正しく導く!! 

これこそがショッカーの理想とする社会(ユートピア)だ!!!
それを生命への冒涜だぁ!?侮辱するのも大概にしろ!!!」


アングヴォルフは怒りの余り、血管という血管が浮き出て千切れそうだった。改造人間であるため、そんなことは実際には起こらないが…。
しかし、不穏分子達は反省の色を全く見せず、なおも説得しようとする。


「もういい!お前らと話した俺が馬鹿だった!!大人しく降伏しろ!!」


そう言って不穏分子達の方へとゆっくりとにじりよる。


「く、来るなぁぁぁ!!!」


1人が叫んだのをきっかけに次々と他の不穏分子も叫び始める。


「ウワァァァ!!!」
「このバケモノがぁぁ!!」
「このショッカーの犬めぇ!!」


おまけに彼らはこれ以上の抵抗は無駄だというのに懲りずに小銃を乱射する。中にはまだ隠し持っていたガイアメモリを起動してドーパントに変身するまで現れた。


『マスカレイド!!』
『ナイトメア!!』
『ダミー!!』
『マネー!!』


そろいもそろって戦闘向きではないドーパントばかりである。皆、それぞれの遠距離技を放つ。
しかしヴォルフにはそれらの攻撃がポップコーンどころか発泡スチロールの欠片でも投げつけられているかのように何も動じない。


「煩わしい……さっさと終わりにするか…」


爪先から広がった青色の稲光が全身を覆い尽くす。
強力な電流が千堂の体内を駆け巡る。
片腕をソッとドーパント達に向けると静かに祈るように言い、そして叫んだ。


「全ては栄えあるショッカーと偉大なる大首領様の為に………喰らェ!!!」


その瞬間、千堂の片腕から丸太ほどの大きさの真っ白な電光が蛇のようにうねりながら打ち出された。
美しい閃光の花がドーパント達に直撃し、その過剰なまでの電気エネルギーのせいで周囲に強烈な爆風が起きる。



「グワァァァ!!」
「ギャアアア!!」
「じ、自由…バンザァァイ!!」



ドーパント達は強烈な高圧電流と衝撃に火花を散らしながら爆発を起こして変身が解除される。変身前の人間の姿となった彼らは気絶し、硬い地面に倒れ、メモリは体外にはじき出されて粉々に砕け散った。


「終わったな」


そうしてアングヴォルフは瞬時に変身を解除して人間態の千堂に戻った。






(さすが隊長。圧倒的なまでの強さだ俺なんか遠く及ばない)
加頭はそう思いながら死屍累々となった周囲を見渡す。全員、重症ではあるが死んではいない。

あの戦闘の中でも死なない程度に手加減をしていた。そしてそれをするだけの余裕が千堂にあったということが実践経験の少ない加頭にも分かった。ショッカー警察に引き渡すという思惑があったにせよ、数十人も殺さずに無力化するのは至難の業だ。
しかし当の隊長はそんなことを気に留めていない様子で
「レレイ、テュカ、ロウリィ、もう目を開けてもいいぞ」
と大声で言った。


思えば千堂隊長は常に誰かの為に行動していた。炎龍戦にしても、今回の戦いにしても誰かを救う為だけに力を使っている。
その気高い姿に加頭は心の中で感動した。そして自分がそのような人物の部下として働いていることに誇りを持つのだった。そして少しでもこの人に近づけたらと加頭は思わずにはいられなかった。






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レレイside

ドンという激しい打撃音やドォーーンという爆発音がしたと思ったら「もう目を開けてもいいぞ」というセンドウの声が聞こえて、私はゆっくりと目を開く。
視界が光を取り戻す。
しかし、センドウを見て背筋が凍るような感覚に見舞われた。
千堂の身体におびただしい血が付着していたからだ。


「ち、血が!!怪我してるんじゃ!?」


テュカが心配の余り、叫んだ。


「俺のじゃない。気にするな」


チラリと工場の片隅に目をやると先程の男達が重なるように倒れていた。
あれだけの人数をたった1人でやっつけたというの?
どれだけ強いの、センドウは?
そして私達の為に単身、助けに来てくれた。あの恐怖で動けなかったあの状況から。
色々な感情や思いが駆け巡る。


「どうした?何で泣いてるんだ?もしかしてさっき俺が声を荒げてしまったのが聞こえたのか?もし、そうならすまない。」


泣いてる?言われてから目元を拭ってようやく気づいた。1度、気づいてしまうと堰切ったように涙が止まらなくなる。


「怖かったよな。あんな目にあって。もう2度とこんなことが起こらないように悪い奴は捕まえていく。だから、どうかこの世界のことを……ショッカーのことを嫌いにならないでくれ」


優しさの籠もったと同時に懇願するようなセンドウの声に余計に涙が出てくる。優しく頭を撫でる手にジンワリとした暖かみがあった。


「あ、ありがとう……助けに…来てくれて」


「ああ、どういたしまして」


やがてセンドウは立ち上がった。センドウにはそのつもりはないのかもしれないが、私にはセンドウが私達を置いてどこかに行ってしまう気がした。
そう思った私は大きな声で呼び止めた。


「ちょっと待って…!もう少し一緒にいてくれる?」


私の問いに千堂は少し、考えている様子で手を口元に当てて黙って立つ。そして—。


「門までな…基地内なら安全だ」


そう言って目深に被り直した千堂の口元は優しい微笑みを浮かべているかのように見えた。
 
 

 
後書き
・アングヴォルフ (変身者 千堂印一)

ニホンオオカミの改造人間。
第4世代の怪人であり、ゾル大佐の黄金狼男を始めとするこれまでに造られた狼型怪人やウルフオルフェノクなどの狼型異種族を徹底的に研究・改良を加えて制作された。改造手術の執刀医はハインリッヒ博士。

ニホンオオカミの改造人間ということもあり、元々は赤茶色の毛並みをしていたがウルフオルフェノクの因子の影響で改造手術中に銀色に変色してしまった。そのおかげで人間態でも高速移動が可能となっている。

新型ウルフビールスa型という未知のウィルスを体内で生成する能力も持ち併わせており、これの作用で千堂は驚異的な再生能力を持つ。
詳しくは前回、後書きの『新型ウルフビールスa型』についての解説を参照。


作者から……
次回は第1章と第2章を繋ぐ『間章』を予定しております。また第2章からはオリキャラが2、3人登場予定です。お楽しみに。 

 

間章1 虜囚の嘆き

 
前書き
間章編スタートです。
今回の出来事は時系列的には第9話〜第11話の間、つまりイタリカ戦ぐらいの出来事です。途中、回想シーンがあり、そちらの方は第2話前半の時の出来事です。
分かりにくかったらすみません。

注意書き 
・ショッカーの非人道的な面が出てきます。
・放射能及び放射能障害に拒否感、トラウマを持つ方は閲読時、不快感を持たれるかもしれません。
それでも読みたいという方はショッカー敬礼をしてからどうぞ!!

「イッー!!!」
 

 
日本エリア 四国地方 極秘収容所


ここは四国地方某所にある帝国軍や連合諸王国軍の捕虜が収容されているショッカーの極秘の捕虜収容所の一つである。この捕虜収容所は各エリアに点在する帝国戦の捕虜収容所の中でもショッカーに対して『反抗的』という烙印を押されたものが集められていた。(従順な捕虜は別の収容所に移送済み。)
そこでは収容者達はA、Bの2つのグループに分けられ、それぞれ待遇が異なっていた。



「おら!手を止めるな!働けぇ!!汚らしい愚帝の駄犬がぁ!!」


「何を休んでいるのだ!!帝国の卑しいクズ共が!!さっさと歩け!!」



闇夜の薄暗い鉱山の坑道に戦闘員達の怒号が響く。首輪を付けられた収容者はそれを聞いて鶴橋をより強く握りしめて戦々恐々と黒色の鉱石を採掘する。


この収容所の中には鉱山があり、Aグループに入れられた捕虜達がここで強制労働をさせられていた。Aグループは「平民や奴隷の出身」の者達……つまり、帝国との講話交渉において『利用価値の無い』と判定された捕虜が集められ、ここで強制労働をさせられていた。


今日も坑道ではAグループに属する何百人もの収容者が灰色のボロ切れのような作業服で虚ろな目をして採掘を行っている。
その光景ははっきりいって異常だった。―というのも彼らの表情が暗いからでも、栄養失調でガリガリにやせ細っているからでもない。皆、一様に手をプルプルと痙攣させ、貧血や極度の倦怠感からフラフラと歩いていたのである。
それだけならまだいい方で中には作業中に吐瀉物を撒き散らす者や血便を垂れ流す者までいた。


「鉄の味がする……何でなんだ……しかも髪の毛まで抜け落ちるし…おかしいぞ」
「まただ……また吐き気が……おげぇぇぇ!!」


現在、採掘しているこの鉱山は収容者達には『石炭の鉱山』と説明してるが実際はそうではない。ここは幻の超放射能原子……サタンニウムの鉱山なのである。
サタンニウムはウランの数百倍もの放射能を持つ非常に危険な物質である。重度の被爆の危険性があり、本来なら高性能AIアンドロイドであるヒューマギアにさせる仕事なのだが「ただでさえ『お荷物』となっている利用価値のない捕虜を処刑する位なら。」とAグループの収容者に採掘させているのである。
そしてショッカーの思惑通り、既に作業を行っている収容者の内、実に7割が体調不良を訴えており、その内なんと半数が既に死亡していた。

もしも収容者達がショッカー世界や日本世界出身だったら自分達を襲っている症状が「放射能障害」によるものと気づけただろうが、放射能どころか物理学すらあまり発展してない異世界出身の彼らにそのことを見抜けるはずもなかった。



「看守の奴らめ、絶対に何か隠してやがる!でなきゃこんなにバタバタと人が死ぬわけがない!!こんなところすぐに脱走してやる!!」


「やめとけ……逃げたとしてもすぐに捕まって拷問にかけられるぞ」



何人もの捕虜が脱走を試みたが徹底的な監視体制を敷いている収容所側の方が数枚も上手であり、すぐに捕らえられてしまう。捕まってしまえば火炙りや電流を流されるなどの徹底的な拷問を受けて牢屋に戻される。拷問する側もプロであり、簡単に死ねないように加減をしているので逆に収容者達の苦痛を煽っていた。
余りの拷問に耐えかねて舌を噛み切って自殺してしまった捕虜も出ていた。
 

「あんな拷問をされる位ならいっそ死んだ方がマシだ」
  

「クソ!クソ!異世界侵攻でおいしい思いができると思ったのに……こんなことなら帝国軍になんか入るんじゃなかった」

  
「歯向かっても余計な体力を使うだけだ。何も考えず与えられた仕事をこなした方が身のためだよ。たとえ明日、死ぬとしてもな」


そう言って2人の捕虜は再び黙って採掘を続けた。


そんな非人道的な扱いを受けているこの収容所の捕虜達の中にも例外が存在していた。それがBグループである。



「ショッカーか……よくあんな悪魔のような軍勢と戦って生き残れたものだ……」


そう言うのは帝国の属国、エルベ藩王国の国王、デュランである。同捕虜収容所の独房で鉄格子の窓越しに月を見上げながら呟く。今夜は半月であり、デュランにまるで戦に破れてしまった自分の心そのものを眺めているような気分にさせた。


彼のいるBグループは反抗的な者の中でも「貴族や王族の出身」と判断されたものが選ばれた。彼らは講話交渉や異世界征服計画においてショッカー側にとって『利用価値のある捕虜』であるため、ほぼ一日中、薄暗い独房で過ごす生活を強いられるだけで済んでいる。私的感情で拷問や暴行を加えようとする看守が後を絶たないという点さえ除けば命まで取られることはないため、Aグループとは天と地ほどの差があった。



デュランは右手と左足を失っていることから強制労働や人体実験のモルモットにも適さないので本来ならBグループ以前にガス室にいてもおかしくないのだが属国とはいえ国王という非常に高い身分にいる人間のため、戦後を見据えて生かされていたのだ。
 


「儂はあの猛攻を生き延びた……いや、生き延びてしまったというべきか」


ため息をつきながらデュランはここに至るまでの出来事を思い返す。







数か月前―。



「連合諸王国軍か………」


デュランは青銅の鎧に身を包み、軍馬の上から30万人もの大軍団を見下ろしていた。
日本世界とショッカー世界に侵攻したもすぐに敗退し、逆侵攻を受けた帝国 皇帝モルトは属国から招集し、連合諸王国軍をアルヌスとオ・ンドゥルゴを奪還すべく組織した。
異世界の歴史上、多国の軍が連合を組み、大軍を組織することなど異例中の異例であった。それだけに1箇所に30万もの軍勢がひしめく様は壮観の一言に尽きる。



「これはこれはデュラン殿。お久しぶりです」


「リィグゥ公か……久しぶりだな」


デュランに声をかけたのは同じく帝国の属国であるリィグゥ公国のリィグゥ公だ。


「敵はアルヌスとオ・ンドゥルゴの2箇所におり、両者共に陣を築き、そこに亀のように立て籠もって兵力を増強している様子。しかし我ら二十一ヶ国、三十万の連合諸王国軍がかかれば外鎧一触でしょう」


「リィグゥ公、戦場で楽観論は禁物ですぞ?ましてや敵は異世界軍。何をしてくるか分かりませんぞ」


「ハハ、これは手厳しい。さて、まずはどこから陥としますかな?」


「オ・ンドゥルゴからにしましょう。ここからならオ・ンドゥルゴの方が近いですからな」


「了解しました。我が国軍にもそう伝えます。では」


そう言ってリィグゥ公は自軍の方へ去って行った。だがデュランは疑問でしかなかった。


なぜ皇帝は連合諸王国軍などを招集したのかと―。
そして、その答えは後に判明することとなる。





「進めぇ!!!」



前衛の騎馬隊とゴブリンやオーク、歩兵の軍団が隊列を組んで前進を開始する。
やがてその軍団はオ・ンドゥルゴの丘の近くまで到達した。


後衛にいたデュランは自陣に近い高台のオ・ンドゥルゴが一望できる地点で待機さそ、前衛の軍団を見下ろしていた。
そこへ前衛の軍団の伝令兵が報告にやって来た。


「報告!前衛のアルグナ王国軍、モゥドワン王国軍、リィグゥ公国軍、オ・ンドゥルゴへの前進を開始!」


「うむ、帝国軍とは合流できたか?」


「それが……帝国軍の姿が一兵も見えません!」


「何だと!?」
 



リィグゥ公らがいる前衛の軍団にも動揺が走る。本来ならここで帝国軍と合流している筈だったからだ。


「帝国軍はどこだ!?後衛すら残さぬとは……。まさか既に敗退して―。」


突然、「ドォォン!」という轟音や「パパパパ」という連続した音が鳴り響き、地面の土と共に生き残った連合諸王国軍の将兵達を文字通り、吹き飛ばし、なぎ倒す。



彼らは何が起こったか分からずにただ右往左往するしかできなかった。
その間にも爆発音と悲鳴がこだまする。もはや一方的な殺戮である。


「何だ!?敵の魔法攻撃か!?」


「こんな魔法、見たことがない!!敵の姿も見えておらんぞ!!」


「亀甲隊形だ!!はやく!!」


リィグゥ公の合図で盾を掲げた歩兵が互いに集まって密集隊形をとる。この世界の常識からすれば大盾を持った歩兵が密集する亀甲隊形は弓矢などの"飛び道具"には絶大な防御力を発揮する完璧な防御陣形なはずだった。


しかし、今度は密集した歩兵達の近くで爆発が起き、リィグゥ公が吹き飛ばされる。


「う……何が…何が起こったんだ?」


起き上がろうと顔を上げたリィグゥ公が目にしたのは爆発の衝撃と爆風で臓物を撒き散らしながら千切れ飛ぶ自軍の兵士達だった。


「こんなもの……こんなもの戦ではない!!戦であってたまるか!!」

 
刹那。


ドォォォーーーン!!!


リィグゥ公のいたちょうどその地点に砲弾が飛んできてリィグゥ公の肉体はバラバラに吹き飛ばされてしまった。



一方その頃、オ・ンドゥルゴの陣地では―。
 

「ワッハハーー!!下賤な異世界人めが!このマシンガンスネーク様からの洗礼を喰らえ!!」


ズダダダダダ!!!!


「バァーフォー!!この俺、タイホウバッファローの砲撃を生きて帰れるかなぁ!!」


ドォォォーーーン!!!
 

「ズゥーーカーー!!大首領様に見放された哀れな異世界軍将兵はさっさと肉塊になってしまぇぇ!!」

 
ドーーン!!ドーーン!!


オ・ンドゥルゴ基地の陣地ではマシンガンスネークやタイホウバッファロー、カメバズーカなどの遠距離攻撃が可能な怪人達の制圧射撃が生き残った兵士達の命を容赦無く摘み取っていく。砲撃地点には泥土に埋もれた人間だった物と金属の山が出来上がっていた。
     

「敵に慈悲はいらん!!皆殺しにしてしえぇぇ!!!」


「「「「イーッ!!!!」」」」



後衛にいたデュランはもはや戦闘ではなく虐殺と呼ぶべき、一方的な攻撃を目にした。震える声でポツリと呟く。


「丘が噴火でもしたのか…?これが…敵の攻撃だというのか?」


それからこの地獄のような光景を眺めて―。 


「一旦、自陣の方へ退くぞ。体制を立て直すのだ」


デュランは生き残った数少ない前衛の軍団と共に命からがら自陣の方へ撤退した。中には錯乱状態からかまともに歩けず、獣のように地べたを這いずり回る者もいた。


その夜、自陣の天幕の中で昼間の戦いでなんとか生き残った少数の将軍や王族達を集めて軍議を行った。
軍議に出席した者達の表情は一様に暗く、未知の敵に対する怯えと恐怖が見てとれた。


「リィグゥ公とモゥドワン王は死亡。その他の我ら以外の王は行方不明。軍全体の士気の低下が著しい。おまけに敵に傷一つ与えられておらん」


「三十万はいた諸王国軍が既に半数を下回っている……おまけに敵は遥か遠くから未知の爆裂攻撃をしてきた……これではどうやって敵陣に近づけばいいのだ……」


「……目の効く者の証言ではあの爆裂攻撃は怪異達が放っていたという……」
 

「なんと!?敵の怪異は爆裂攻撃まで使えるのか!?」


「きっと帝国軍は先に奴らに既に負けていたのだ!奴らめ、反旗を翻すかもしれない我らの始末を敵に任せたのだ!!ここは撤退すべきだ!!」


様々な意見が飛び交う中、デュランが口を開く。


「このまま逃げて帰るわけにはいかん!!せめて一矢報いてやらねば……」


軍議に参加していた者達がざわめく。
そんな中、デュランは目を見開いて宣言した。


「夜襲を仕掛ける。幸い、今日は新月だ。この闇夜に乗じて敵の背後をつくのだ。万が一を想定して軍の一部はここで待機。いいな?」



それからデュラン達は新月の闇夜に紛れてでオ・ンドゥルゴまで迂回して奇襲を仕掛ける作戦を立て、それを実行に移した。軍の一部を自陣に残したのは万が一、自分達が敗退した時に少しでも生きて敵の情報を国に持ち帰るためだ。




「いいか……音を立てるな、気づかれたらお終いだぞ」


丘の中腹を行進しながら百人隊長が静かに歩兵達に告げる。一寸先すら見えない闇夜の中、諸王国軍は歩をすすめる。
  

しかし突如、紅い火の玉(照明弾)がゆっくりと空から降ってきた。


極めて異常な事態に諸王国軍の将兵達は恐れおののき、訓練された軍馬でさえ恐慌をきたして暴れまわる。
そんな中、デュランだけが冷静に状況を分析していた。


「まさか!!我々の動きが見抜かれていたのか!?!?」


この明るさでは奇襲を意味をなさない。
デュランは馬の腹を蹴り、一気に速度を上げて前進する。


「全軍突撃しろ!!走れェ!馬は駆けよ!!人は走るのだ!!とにかくあの爆裂攻撃が行われる前に……」



ドォォォーーーン!!!
ドパパパパパパ!!!!


一瞬にして連合諸王国軍の戦列が爆炎と発砲音の中に姿を消した。
爆炎の中にいた大半の将兵は贓物と骨と肉と血を撒き散らしながら何が起きたかも分からず死亡することができたが中途半端に重症だけを負った者は長く激痛に苦しみながら息絶えることとなる。

狂気とも言えるその爆裂攻撃は大地を焦がし、周囲の空気が真っ黒になるまで行われた。
しかしそんな猛攻も急にピタッとやみ、辺りがシンと静まり返る。静か過ぎて耳が痛くなるほどだ。


(終わった……のか?)


デュランがそう思い、安堵してしまった矢先―。


「行けぇぇぇ!!異世界の不穏分子を皆殺しにしろぉぉ!!!」


「イーッ!!」
「ギーッ!!」
「キョー!!」 


戦場のあちこちで不気味な寄声が起きた。驚き、辺りを見回すと怪異達が骸骨風の模様の珍妙な黒服や青と黃と赤の派手な服を着た異世界兵を何万人も引き連れてこちらに向かって四方八方から突撃してきた。
敵が突撃してきている。ただそれなのにで空気は振動し、地響きが起こる。


突撃してきた異世界兵の軍勢が連合諸王国軍と激突し、連続した爆発音や断末魔、負傷者の悲鳴や呻きが大地を支配する。
爆裂攻撃から生き残り、ショッカーの戦闘員達と戦うことになった兵士達はそれぞれ違った反応を見せた。
足を引きずりながら逃げ惑う者、無謀にも立ち向かおうとする者、神に助けを請う者、怨嗟を吐露する者、耳を抑えてうずくまる者、恐怖で動けなくなり、命乞いをする者……。


「神様、神様、助けてくださ……グワァ!熱ィィ!!」
「蛮族が!正々堂々と戦え!!」
「ご慈悲を!ご慈悲をください……ギャアア!!」
「溶ける!!顔が溶けるぅぅ!!」


兵士達はそれぞれの思いを口々に叫びながら為すすべなく異世界兵の持つククリナイフやレイピアで切りつけられ、怪異達に溶かされ、焼かれ、引き千切られ
バタバタと倒れていく。



「酷い……我が兵達がこんなにも無残に…」


デュランと兵士達は敵との余りの戦力格差におののき、逃げるべく後方に下がる。しかし自陣との中腹地点まで到達したところで何故か自陣に待機するように進軍していた友軍と鉢合わせした。
友軍の顔には焦りや恐怖が浮き出ており、中には鎧を脱ぎ捨て、何かから逃げてきたように息を咳切った者までいた。
  

「何故、貴様らがここにいる!?自陣で待つように言ったはずだ!!」

 
「そ……それが敵が我が陣に奇襲を仕掛けてきたのです!!陛下こそ、なぜこちらに!?」



(ま、まさか…!!!!)


デュランは自陣の方を見る。丘の向こうにある自陣からは赤赤とした煙が上がり、敵の「イーッ!」という奇声が聞こえてくる。
そしてデュランはやっとある事に気づいてしまった。
連合諸王国軍の兵士達全員が無意識のうちにこの中腹地点に追い立てられていることに。


(包囲しているのか!?奴ら、我々を殲滅するために!?!?)

 

そして後ろを振り向くと異世界兵の一部が何千人も奇声を上げながらデュラン達のいる方に向かって走ってくるのが見えた。

さらにその前には装甲に覆われた騎士らしき"異形"と赤い目とクリーム色の両生類のような"怪異"が先陣を切って行進していた。デュラン達は逃げようにも周囲を包囲されているため、逃げられなかった。


ズン……ズン……ズン………!!
ガシン!ガシン!グゥィィィーーン!!


まるで甲冑を着た騎士が歩くような音とモーターの駆動音のような音、そしてズン…ズンと力ずくにじり寄る音にデュランは目の前に迫る異形の怪異を注視した。
おそらくはあの2人が現場指揮官なのだろう。2人は追い詰められたデュラン達を前に名乗りを上げる。
それに反応するかのように部下の騎士達は国王であるデュランを守ろうと一歩前に出る。


「俺は日本アルプスに住む人食いサンショウウオの怪人、ザンジオー様だ!!至高なるショッカーに歯向かったことをあの世で後悔するがいい!!!」


「俺はクライシス最強の戦士…怪魔ロボット、シュバリアン!!偉大なる大首領様とクライシス皇帝陛下からの勅令により貴様らを始末する!!!」


するとザンジオーと名乗った怪異はシュバリアンと名乗った鉄の人形に対して呆れたような様子を見せた。


「全く、これだからクライシスの奴らは……。最強、最強ってよく自分から言えるな……言ってて恥ずかしくならないのか?」


「うるさい!実際に最強なのだからいいではないか!!」


こちらを無視して会話を続ける。我ら連合諸王国軍のことなど眼中にないようだった。それに対してデュランを護る騎士が拳を握りしめて怒りの声を上げる。


「蛮族が舐めやがって!!我らのことなど取るに足らぬと言うのか!!??」


その騎士の言葉がシュバリアンの神経を逆撫でしてしまった。シュバリアンは叫ぶようにして早口でまくし立てる。


「蛮族だと!?愚劣な異世界人風情が!!??クライシス最強の俺を!?死にたいのか!?そんなに殺して欲しければ今すぐ殺ってやる!!」


すると金属製のカギ爪状の腕を広げ、黄色の光がシュバリアンの胸部に一気に貯められる。


キュイイイイイ………!!!!



「死ねぇぇぇ!!!」


ズガンッ!!!


黄色の閃光がシュバリアンの胸から打ち出され、デュランの前にいた部下達は一瞬にして消し炭となる。衝撃波でデュランも地面に背中を打ちつけて倒れてしまった。


(一体何が起きたんだ?……兵達は何処に消えた…?)


突然のことに何をされたのか分からず唖然とする。さらに頭を強く打ちつけたせいで次第に意識が朦朧としてくる。



「ん?貴様の着ている鎧……異世界人にしては不相応なほど豪華だな……もしや指揮官か?」


「かなり高い身分の者のようだな、戦闘員共!コイツを捕らえよ!!」


もはやこれまでか………。


朦朧とする意識の中、両脇を戦闘員に固められ、拘束される。

こうしてエルベ藩王国、国王デュランはショッカーに捕らえられたのだった。



そして現在に至る。
 

「帝国属国の国王ということもあって他の捕虜に比べればそれなりには厚遇されている。しかし奴らは帝国だけでなくその属国である我が王国も滅ぼす気だ……」



今頃、国では息子である王太子が政務をとっているだろう。だがこのままでは王国がショッカーに為すすべなく蹂躙され、焦土にされてしまうのは時間の問題。
したがって国を救うにはショッカーの実力を知っている自分が王政に返り咲き、有力貴族をまとめて国を取り戻す他ない。

だが現状、頼れるのは宗主国であった帝国ではなく、自分を捕らえている謎の異世界の敵、ショッカーしかいない。

ショッカーに協力を要請すれば見返りとして何を要求されるか分からない。領土の割譲や軍の駐留を認めさせられ、半永久的に支配されてしまう可能性すらある。その場合は最悪、属国以下の植民地同然の扱いを受けることとなる。


(だがそれも皆殺しにされるよりはマシか……国と国民さえ残ればいつかは独立できる)


それに属国として『利用価値』があると
分かればさすがのショッカーでも容易には手出ししてこないだろう。あわよくば自分達の世界で優位な地位に立つこともできるかもしれない。帝国の支配から脱する好機でもある。


敗残の王であるデュランに選択肢は残されていなかった。
後に彼はショッカー側の外交官との面会し、大首領の臣下になることを希望するのだった。
 
 

 
後書き
いかがでしたでしょうか? 
申し訳程度ですがクライシス名物『今週の最強』ネタを入れたました。

今回、ショッカーの非人道的な面が出てきましたが従順な者には福音を、敵対勢力には地獄を与える。そんなショッカーを描きたかったんです。
それと今回でエルベ藩王国属国ルートが確定しました。

次回は帝国視点とショッカーのイタリカ、オ・ンドゥルゴの村々に対する占領政策について書いていきます。それでは……「イッー!!!」 

 

間章2 解放軍の光と影

 
前書き
今回はショッカーの占領政策と帝国の反応についてです!!時系列的には第14〜18話の千堂とレレイ達がショッカー世界に行った辺りの出来事です。


注意!!
・残酷かつ非人道的な描写があります。
・目線がコロコロ変わって読みにくいかも……。
それでも読みたい!という方は下記のポーズと掛け声をしてから読んでください!!

それではッ! (`゚皿゚´)/イーッ!! 

 
イタリカ


この街からオ・ンドゥルゴに至る一帯は現在、ショッカーの占領下に置かれている。

圧倒的な戦力で盗賊を撃退し、イタリカを救った異形の軍勢に占領されたことで彼らの技術力、軍事力をまざまざと見せつけられ、今になって帝国がどんな相手と戦争しているのかをイタリカ市民は実感させられていた。

占領直後はショッカーの改造人間や獣人の姿を見て恐れおののき、「奴隷にされるのではないか」という噂が独り歩きしたことで市民達の混乱が起きたが数日も経てば市民生活は平穏を取り戻した。
占領民達からすれば信じられないことにショッカーの世界には奴隷制度が存在しないらしく、またありとあらゆる種族がショッカーの前では公平なのだという。

またショッカーが強制しているものがあるとすれば『帝国国旗の掲揚禁止』と『公共の場でのショッカー式敬礼の義務化』ぐらいなものであり、どれもこの世界の占領政策の常識からすれば比較的、楽で意味不明なものばかりであった。


イタリカの市民の殆どはフォルマル家に忠誠を誓う者ばかりで帝国に対して愛国心を一切、抱いていなかった。そのため国旗の掲揚の禁止など全然、気にならなかったし、ショッカー式敬礼も最初こそどこか恥ずかしさがあったが数日間も続けると何とも言えない不思議な団結感が生まれ、ショッカーの一員としていることに誇りを持つようになった。



そんなある日―。


黒人系と白人系の2人組の軍人がイタリカに入城し、街並みを眺めていた。
街の目利き通りに目を移せばショッカーの軍人や戦闘員が闊歩し、市民は日常の生活を続ける。


「ここがイタリカか…」


「どことなくゲルマニアエリアのミュンヘンやドレスデンに雰囲気が似てるな」


「それでも中世レベルの都市と現代都市じゃ大違いだけどな」



占領直前の盗賊の出現による社会的混乱と物資不足の状態は改善されていた。
イタリカを始めとした占領地では現在、定期的にオ・ンドゥルゴ基地から往来するトラックに物資によりインフラ整備が着々と進められ、かつてないほどの繁栄を迎えている。街頭が整備されたことで往来する軍の車両も増え、それに子供が群がって飴などの菓子をねだる光景も見られるようになった。
また、財団Xやノバショッカーなどの企業では占領地の若者を中心に職業研修を行っており、ゆくゆくは占領地の人民を低コストで雇うことを検討しているという。


勿論、ショッカーもこれらの支援を可愛そうだからとか人情だとかで行っているわけではない。曲がりなりにも元『世界征服を狙う悪の秘密結社』である。
イタリカを対帝国の為の工作拠点にする為というのもあるが、インフラ整備などの都市開発や医療支援は占領に不満を持った市民が団結し、レジスタンス化されるのを警戒してのことであり、企業による職業訓練に至ってはイタリカ市民の人的資源としての価値を高めるために行っているのである。


はっきり言ってショッカーは異世界征服の野望の為にイタリカ市民を利用しているのだが、結果的に市民達は街の発展を促進してくれるショッカーに大きな感謝をせずにはいられなかった。

実際、住民による大規模な抵抗を覚悟してやって来た兵士や戦闘員が市民達から頭を下げて礼を言われて拍子抜けしたという報告があちこちで起こっていた。



「しかし、あれだな。ここに住んでる連中、一応、敵国人だろ?この世界の通例に倣って奴隷化するなり、粛清するなりしてもよさそうなのものだが……」


「非人道的に扱い過ぎても占領政策の支障にしかならないという政府の判断らしいがな……でも俺はあの亜神の嬢ちゃんが一枚噛んでいると思うんだよな」 
 

「……?……どういうことだ?」


「噂だがお前も聞いただろ?あの亜神にはこの世界のバランスを乱す因子を摘み取る役割があるって……それにこの世界にも『神』の存在があるらしいからな。そんな奴らに介入されると面倒なことになる…政府はそう判断したって話だ」


これは事実であった。
千堂がロウリィと接触したことでショッカーの異世界征服計画は大幅な修正を余儀なくされた。当初の計画では占領地の人民は人心掌握をして全員、洗脳。その後は奴隷化、或いは粛清するはずだった。
しかし脅威的な身体能力と再生能力を持つ亜神の登場により、その計画は大規模な修正を余儀なくされた。
ゾル大佐や暗闇大使がオ・ンドゥルゴ基地に派遣されたのも万が一、ショッカーが亜神と戦闘になったとしても無力化できるほど強力な基地司令官の存在が異世界征服計画に求められたからだ。
ちなみにゾル大佐、暗闇大使以外にも対亜神要員は複数人、基地に待機している。



「まぁ政府、いや、大首領様がそうご判断されたのなら仕方がないか……。俺達はそれに従うまでだ。大首領様の御判断に間違いは無いからな」



2人はそのまま市内を巡回し、やがて城門の外に出た。
イタリカの外には奴隷を積んだ馬車と軍の灰色バスが停まっていた。馬車の中にはヒトもいたがエルフやドワーフなどの亜人種の奴隷が多かった。
彼らが目にしたのはちょうど、ショッカーの軍人が奴隷商人に金貨が大量に入った袋を手渡しているところだった。奴隷商人に代金を支払ったのでこれから奴隷達をバスに乗せ、基地に連れて帰るのだろう。


「奴隷か……そういえばショッカーはイタリカの商人から帝国の奴隷を購入して彼らをショッカーの人民として再教育してるんだったな」

  
黒人系の兵士が呟く。彼は購入された奴隷達がオ・ンドゥルゴ基地内で教育を受け、コダ村避難民のようにショッカー人民になるべく努力しているのを見かけていた。
さらに再教育後はイタリカなどの占領地で就職させるか、軍に入れると上官から聞かされていた。


ふと黒人系の兵士が相方の白人系の兵士の方を向いた。急に静かになったので気になったのだ。
相方の反応は奇妙なものだった。

というのも白人系の兵士の1人がマズイものでも見たかのように奴隷の乗ったバスから顔を背けていたからだ。
身体はガクガクと震え、顔は真っ青でまるでブルーベリーを思わせた。



「どうした?顔色が悪いぞ?」
 

「ああ、大丈夫だ。何でもない」


「大丈夫なわけあるか……どうした?理由を話してみろ」


すると白人系の兵士は観念した様子でため息をついてゆっくりと話し始めた。


「あのな……俺、見ちまったんだよ……」


「はぁ、何を?」


「基地で見たんだよ……夜中に俺が便所に行ってたらよ…。血まみれで動かなくなった元奴隷達が袋に詰められて基地の地下室から運び出されるのをな……」


「なッ!?それってまさか!!」


黒人系の兵士が叫びそうになったところで白人系の兵士が口元に指を当てて黙らせる。


「余計な詮索はしない方がいい。じゃないと俺達の身が危なくなる……」


そういう白人系の兵士はチラチラと辺りを見回して聞き耳を立てている人間がいないか探していた。 


―――――――――――――――――――――――――――――――
オ・ンドゥルゴ基地 極秘地下研究所  



「ギャァァァァ!!!」
「やめてくれぇぇ!!!」


今日も極秘地下研究所では哀れなモルモットが死の断末魔を上げた。
そしてその音に続くのは鋭利な刃物で肉を切り刻む音、或いは悶苦しむ声、はたまた被験者を"処分"する音である。


「どの実験も順調。ほんと、モルモットが多くて助かるわ」


様々な機械や実験器具、薬品、書物や論文の所蔵されてある手狭な部屋では黒いレオタードの上に白衣を纏った女性が実験の様子を監視カメラを通じてテレビで見ていた。


「綾小路博士!デッドマンガス使用実験の結果が出ました!それとこれがウルフビールス感染実験の経過報告書です!」


部屋に科学戦闘員が入室し、綾小路博士に報告書の挟まったファイルを手渡す。
ショッカーの女科学者、綾小路律子はファイルに書かれた実験結果に目を通すと満足したのか薄っすらと笑みを浮かべた。


「ふーん、この世界でも化学兵器や生物兵器は猛威を奮うようね。デッドマンガスやウルフビールスも絶大な効果を見せている……。フフ、次はどんな実験をしようかしら」



そう言うと彼女は重い金属製の扉を開けて、廊下に出る。
彼女の歩いている無機質なコンクリートの廊下には左右に巨大な檻があり、中にはショッカーの購入した奴隷達が何十人も入れられていた。


「出して!!何でもするから!!」
「俺達を解放してくれるんじゃなかったのか!?!?」  
「この悪魔!さっさと俺を出しやがれ!!」


うるさく喚く奴隷達を戦闘員達や怪人が檻の中に入り、殴りつけて黙らせる。


「諦めな。お前らは購入した奴隷の中でもショッカーにとって『無能』な人的資源と判断されたんだ。無価値な奴隷は我が世界の科学の発展に寄与できることを喜ぶんだな」


ショッカーは連合諸王国軍や帝国軍の捕虜達を『利用価値の有無』で分けたように購入した奴隷を『優秀』、『無能』という基準で選別していた。
『優秀』と判断された奴隷は地上で再教育を受け、『無能』と判断されたものが地下でモルモットになる……非常に明快かつ残酷な論理だった。


この奴隷購入作戦の利点は帝国の主要な労働力となっている奴隷を合法的に奪える上、優秀な人的資源とモルモットも手に入れられることである。ショッカーにとって一石二鳥どころか一石三鳥の素晴らしい作戦であった。



さらに、この研究所ではオ・ンドゥルゴ基地の広大な土地を活かして、地下に科学者一人一人に実験室を設けていた。そうすることで様々な専門分野の実験を一気に、より効率的に行うことができるからだ。



「♪〜♬〜♫〜」


とある実験室ではサングラスを掛け、返り血で血まみれの白衣を着た初老の白人男性がワーグナーのクラシック音楽をレコードでかけながら踊るように手術台の上にいるモルモットにメスを走らせていた。

薄暗い室内にはホルマリン漬けにされた臓器や腕。さらに人一人ほどの大きさのガラス管が何個も置かれ、中には標本と化したエルフやキャットピープルなどの異世界異種族が謎の液体に満たされて入っていた。



「うーん、分からん。どうしてなんだ?」


男は解剖を終え、手術台の上に寝転がる人間"だった"肉の塊を前にして頭を悩ませていた。


「なぜだ?なぜなんだ?肉体の構造や細胞はこちらの世界の人類と変わらんのになぜ、魔法なんて大逸れたものが使えるんだ?」


元ナチスの老科学者であり、悪名高きアウシュヴィッツ収容所でヨーゼフメンゲレと共に人体実験の限りを尽くしたショッカーの狂科学者(マッドサイエンティスト)、ハインリッヒ博士は困ったように呟いた。


ここまで来れば誰もが分かるように、ショッカー オ・ンドゥルゴ基地には2つの顔がある。1つは帝国の支配から異世界を解放する解放軍の拠点という表の顔。もう1つは異世界征服のため、占領民や千堂ら表で活動する人間が知らないところで人体実験や暗殺などの非人道的行為を行う裏の顔。
光が強まる程、影もまた強まるようにショッカーが異世界で帝国を打ち負かし、占領地の人民に希望を与えれば与えるほど、裏での顔もより醜悪に、より残虐性を増していった。


ハインリッヒ博士も表では改造人間達やコダ村避難民の医師として健康管理を行い、軍の防疫任務に従事する一方、裏ではショッカーが購入した奴隷の一部を使った人体実験を行っており、本来のマッドサイエンティストとしての顔を見せていた。
尤も、コダ村避難民の診察を行うのも異世界人の健康データ及び異世界特有の疾病に関するデータ採取という思惑もあるのだが……。


「ハインリッヒ博士。そちらの進捗状況はどうですかな?」


実験室のドアが開き、蝶ネクタイに白スーツ姿の男が部屋に入ってきた。この男もまたショッカーの誇るマッドサイエンティストであった。


「プロフェッサー・ドクか……。はぁ、こっちは正直言って余り進んでいない。ヒトにエルフにドワーフ……何種類も生体解剖してあらゆる細胞も採ったが、何故、魔法なんていう未知のものを使えるのか全く分からんのだ。もっとモルモットと時間が必要だ」


「よろしければ手伝いましょうか?こっちの研究は一段落着きそうなんです」


「いいのか?それは有り難いが……確か、プロフェッサーは異世界生物の研究だったか」


「はい、ゴブリンやオーク、ワイバーンなどですが……すごいですよ!奴らは!我々の世界では考えられないほど高い生殖能力と生存本能、そして凶暴性!特に炎龍!!炎龍の特性と能力を利用すれば最強の怪人が出来ますよ!!千切れた左腕とはいえ、貴重なサンプルを持ってきてくれた千堂大尉には感謝です」


ハインリッヒはフッと笑って得意な顔になった。


「当然だ。彼は私が造った最高傑作だからな。紅いトカゲモドキの腕くらいは簡単に取って来てみせるさ」


プロフェッサー・ドクには軽く興味のないように言い放ったが内心では自分の最高傑作である『最高傑作』である千堂印一ことアングヴォルフの活躍を讃えられ、まるで自分の息子が学校のテストで百点を採って親戚に褒められたかのように喜んでいた。

 
「それにしても……奴隷か…。安定的にモルモットが手に入るとは……。最近では不穏分子がめっきり減ってモルモットに困っていたところだ。それに比べて奴隷制のある異世界は我々、科学者にとって楽園のような場所だな」


「全くです。犬神博士にリモート会議で同じ事を言ったら悔しそうな顔をして『俺も異世界の異種族奴隷で機械合成怪人を作ってやる!』って叫んでましたよ」


「ほう、犬神博士もか……。黒松教授がゴルゴム州で『マグロやゴルゴメスの実を食べなくてもいい異世界のゴルゴム怪人を作って見せる!』と啖呵を切ったという噂は知ってたが…」


「皆、自分の研究が上手く行かなくて焦ってるんですよ……」


そう言うと2人はガラス管に入った若いエルフのホルマリン標本を眺める。
プロフェッサー・ドクはガラス管を撫でると―。


「この世界はいい。魔法といい、異世界生物といい、未知のものに溢れていますからね…。科学者としては興味に尽きません」


「そうだな。我々は科学者だ。未知のものを解き明かすのが仕事だ。そのためには手段は選ばん……ショッカーのためにもな」


綾小路博士、ハインリッヒ博士、プロフェッサー・ドク……ショッカーの誇る狂科学者(マッドサイエンティスト)達は今日も残虐な研究を続ける。全ては自らの探求心と偉大なるショッカー、そして大首領様の為に……。

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帝国 帝都 元老院



「イタリカが占領されただと!?!?」


円形の壁面に沿って並べられたひな壇に座っている元老院議員達が興奮気味にざわめく。平時なら月に数度しか開かれない元老院も国家の非常時ということでほぼ毎日のように開かれていた。



「帝国軍は何をしていた!?蛮族如きに手も足も出ないとは!!」


「うるさい!!壊滅寸前の状態でこちらの常識が通じない異世界軍相手にどう戦えというのだ!!」


元老院議員のみならずこの場にいる誰もが後悔していた。
そもそも開戦前に2つの『門』の向こうから住民を数人ばかり攫ってきて、片方を「軟弱で戦う気概のない怯懦な民族」、もう片方を「ダイシュリョウなる邪神を盲信する愚鈍な民族」と判断して攻め込んだこと自体が間違いだった。
攻め込んだ先にまさか怪異に変身できるヒト種の悪魔の軍勢がいるとは思ってもみなかった。
こんなことになるならもっと長い時間をかけて偵察し、与し易い相手かどうか調査すべきだった。

現在、アルヌスとオ・ンドゥルゴを陣取るこれらの敵がこれ以上、侵攻してきても何もできないように帝国軍は自滅覚悟で焦土作戦まで行っているが今のところ、十分な効果は確認できていない。



戦争の行く末について議員達が紛糾する。帝国の穀倉地帯であるイタリカが占領されたことは確実に帝国上層部に激しい動揺を産んでいた。
当初は主戦派が多数だった議員達だが戦況が悪化するにつれて講話派の議員が増え、今や元老院の半分が講話派である。



「この辺で講和すべきだ!」

 
講話派議員の1人が勢いよく立ち上がって演説をする。


「なにしろ兵士が足りない!アルヌスとオ・ンドゥルゴでいきなり50万人も死亡したのだ!それを再建させる為に植民地の維持兵や各都市の治安維持部隊まで引き抜いている!!」


ここまでの戦いで帝国軍は総兵力の6割を損失していた。それを補うべく植民地の維持兵から主要都市の治安維持部隊、はたまた何の訓練も施していない平民まで徴兵している始末だった。
それらに追い打ちをかける形で治安維持部隊や都市を守る男手がいなくなったことによる盗賊の台頭で治安の悪化が帝国各地で起こっていた。 
   


「物資を確保する為の属国での徴収、収奪も限界に近い!!ニホンとショッカーだったか?そのどちらか一方とだけでも講和を検討すべきだ!!」




「何を言うか!!」
「ふざけるな!」



軍人や主戦派の議員からヤジがとぶ。
中には「帝国内の帝国軍全軍でアルヌス、オ・ンドゥルゴに総突撃すべき!」と叫ぶ乱暴な末期論者まで出てきた。



「そうだそうだ、連中は攻めあぐねているに違いない」
「世界に冠たる帝国が蛮族と講話など寝言も寝てから言え!!」


しかし講和派も負けじと反論する。


「希望的観測で戦況を語るな!!」
「連中はこちらが降伏するのを待っているんだ!」
「今ならまだ幾らか権益を残したまま戦争を終結されることができる!!」




それから間もなくして、主戦派と講和派の双方から猛烈な言葉の応酬が始まる。



「イタリカを奪還せよ!!」
「どうやってだ!?まともな方法があるのか!?」
「この愚か者が!帝国軍全軍をかき集めればまだ勝機はある!!」
「帝国が今すぐ滅ぶかもしれないんだぞ!そんな悠長なこと言ってられるか!」
「今までだって負けたことはないんだ!時間さえかければ勝てる!」
「そんな時間はない!早く講話すべきだ!」
「異世界の蛮族に講話など出来るか!」
「面子を気にしている場合か!?このままでは敗けるぞ!?」



両陣営共に立ち上がり、議場は掴み合いになりかねない雰囲気に包まれた。
中には押し合いに発展している議員もいた。



(内政を司る議員同士で争いを始めるとは……帝国ももう終わりかもしれんな……)


玉座に座る帝国の皇帝 モルトは頭を抱えてその光景を眺めていた。
モルト自身はどちらかと言えば主戦派に近い考えをしていた。
現状での講話は帝国にとって『敗北』と変わらない。ここで敗北と同義な講話を結んでしまえばこの世界に覇を唱える最強の国家としての帝国の権威は失墜してしまい、積年の恨みから属国や植民地で大規模な反乱が起きる可能性があった。
連合諸王国軍をアルヌス、オ・ンドゥルゴに差し向けたのも反旗を翻す可能性のある属国の始末を敵にさせるためである。
仮に100歩どころか1000歩譲って講話するにしても『異世界の敵を屈服させた!』と喧伝できるほど帝国に有利な条件でなければならなかった。



尤も、日本はともかくショッカーとしては『増えすぎた人民の植民』、そしてそのための『異世界征服』が至上命題であるので帝国に対して一歩も譲るつもりはないのだが。




一方、講話派議員達は「イタリカを奪還すべきだ!」、「帝国の名誉にかけて講話はできない!」と主戦派がずっとオウムのように具体的な方法もないまま繰り返し叫んでいるのを聞いて飽き飽きしていた。
勿論、主戦派の言うとおり、穀倉地帯のイタリカを占領されているということは敵にこちらの胃袋を握られているということであるため、奪還せよというのはもっともな意見である。同都市の占領は帝国の威信に泥を塗る行為でもあるからすぐに奪還すべきというのも分かる。


しかし、帝国軍は壊滅寸前、焦土作戦による税収の著しい低下、行き過ぎた徴兵による治安の悪化及び盗賊の台頭、周辺国からの憎悪。おまけに敵に傷一つ与えられていない。
それが今の帝国の現状だった。

見ての通り、帝国は国家としては末期状態であり、このままでは戦争に関係なく帝国という国家が内側から滅びかねなかった。


(速やかに講和して立て直しを行わなければ帝国が滅ぶ!!!)


講和派議員達はこの現状を冷静に見抜いており、焦っていた。
主戦派の議員達や軍人達を少しでも目を覚まさせようと必死に説得しようとするも彼らは依然として受け入れようとしない。


そんな中で突然、皇帝であるモルトが意を決したように立ち上がった。
さっきまで罵り合っていた主戦派と講話派の議員も口を噤んで静かになった。


「まだ講話は時期尚早だ。講話するにしてもせめて敵に打撃を与えてからにしようではないか」


モルトはそう言うと一方的に元老院を閉会した。その余りの横暴さに講話派議員達から抗議の声が上がるがすぐに周囲の主戦派議員達が黙らせたことで不満を残しながらも議場は落着きを取り戻し、講和派議員達を残して次々と退室していった。





「全く!何なんだ!さっきの議会は!?本当に帝国の将来を憂いているのか!?」


先程の元老院での出来事に不満をこぼしながら昼間の帝都を散歩しているのは講話派議員であるキケロ卿である。彼は一方的に元老院を閉会した皇帝、そして現状を見ようとしない主戦派議員達に憤慨していた。

彼がこんな昼間から散歩しながら思索にふけっているのも余りの怒りに中々、落着きを取り戻せず気分転換に帝都内を散歩することにしたからだった。
今日も帝都では青空の下で小鳥が囀り、吟遊詩人が詩を歌う。傍から見ればいつもの覇権国家たる帝国の帝都の日常であり、とても滅亡に向けて走っているようには見えない。だがキケロ卿には目に映る物すべてが空虚に、色あせて見えていた。



「なんだこりゃ!!!」


突然、白昼の目利き通りに男が騒ぎ立てる声がし、キケロ卿は思わず声のした方を見る。何事だろうか?



「この虫だらけの穀物が銅貨10枚!?1週間前はもっと質のいいやつがこの半額だったじゃないか!!」


「仕方ないだろう!何故か帝都のあちこちの商会や問屋が潰れちまって供給が追いつかないんだ!それに質のいいやつは片っ端から軍や貴族が持っていきやがる!」


「なぁ、頼むよ。これじゃあ生活できないんだ。安くしてくれ」


「いくらお得意さんでも無理だ。俺達だって売らなきゃ生活できん」



通りにある店では店主と客が争っていた。確かに店の主人の言うとおり、ここのところ帝都にある商会や問屋が数軒、潰れていた。貴族や元老院議員の御用商人達も何人も家業を畳んだ。





実はこの現象にキケロ卿は心当たりがあった。というより自ら関わっていた。


遡ること数週間前、行商人を名乗る男が自身の屋敷を訪れ、象牙や宝石などの装飾品、酒などの嗜好品、はたまた鮮やかな刀身を持つ刀剣などを見せてきた。
どれもこれも貴族出身であるはずの自分が今まで見たこともない位、高品質で美しく、それまでの御用商人と関係を持つのが馬鹿らしくなった。


始めは美術品、次に嗜好品と徐々に御用商人との取引を減らしていくうち、とうとう完全に手を切ることになってしまった。それから間もなく、御用商人の商会は顧客不足で潰れたらしかった。
どうも行商人は自分だけでなく、他の議員や貴族の元にも訪れ、御用商人達から顧客を奪って回っていたようだ。


しかし、そんなこと自分には関係ない。自分の満足のいく商品を卸せなかった御用商人達の方が悪いのだ。
そう思っていたのだが……。


その影響がこんな平民の店に現れるとは……。本来、栄えある帝国の元老院議員である自分がわざわざ平民の生活にまで気を使う必要はない……がにしても自分のせいで彼らが苦しんでいるのならば心が痛む。


せめて御用商人達も"謎の商人達"に負けず劣らず高品質な商品を仕入れることができればここまでの事態にはなっていなかっただろう。


自分も彼ら、謎の商人がこのような品々をどこから入手しているのか気になるところではあったが聞く度に「企業秘密です」とはぐらかされてしまい、いつしか聞く気すら無くした。



「おら!どけどけぇい!!」


突如、豪華な服装の男が他の客との間にズカズカと割り込んで貨幣が大量に入った袋を投げるように店主に渡した。


「その穀物は俺がもらった!見ての通り、金ならたんまりある!さあ売ってくんな」



彼はキケロ卿の顔見知りの奴隷商人である。顔見知りといっても数人程、彼から奴隷を買っただけの仲だが……。
どうも彼の取り扱っている奴隷が高額で、それも大量に売れているらしく最近では贅沢三昧な生活を送っているようだった。


いや、彼だけではない。今や帝国の奴隷産業全体が謎の好景気を迎えていた。何故か奴隷が飛ぶように高く売れるらしく、帝国中の奴隷商人達が腕をふるって売りまくっていた。
これまで労働力を奴隷に頼っていた鉱山や農場などの生産現場からこれ以上、奴隷を売らないで欲しいと苦情が入るほどに……。


今の帝都で羽振りの良さそうな者といえば謎の新参者の商人と奴隷商人ぐらいなものである。


(気分転換中なのに嫌なものを見てしまった)


キケロ卿はため息をついてその場から去ろうと足を進めたがふと、足を止めた。


(それにしても…あの謎の商人から買った宝玉は美しかったな……妻へのプレゼント用にもう2つ程買っておくか)


そう思うと自分の屋敷の方へと歩みを進めた。


キケロ卿、いや元老院議員達は気づいていなかった。


彼の買った宝石や嗜好品が帝国の経済を徹底的に破壊する為にショッカーがイタリカの商人経由で送り込んだものだということも……、

奴隷を見かける数が減ったのは帝国の労働力を奪うためにショッカーが買い漁っているからだということも……、

既に帝国内には相当数、ショッカーの息のかかった人間がいることも……。



 

帝国の気づかない間にショッカーの静かなる侵略は行われていた。 
 

 
後書き
いかがでしたでしょうか?
今回はショッカーの悪の秘密結社としての漆黒のDNAは異世界でも健在という話でした。
まぁ元々、世界征服の野望の為に拉致、洗脳、暗殺なんでもありの組織ですからね……。これくらい裏でやります。

次回は舞台が日本世界に移ります!
「イッー!!!」