英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~


 

プロローグ

エレボニア帝国内戦―――

「四大名門」と呼ばれる大貴族を中心とし、その莫大な財力によって地方軍を維持し、自分たちの既得権益を守らんとする伝統的な保守勢力である《貴族派》の軍である通称”貴族連合軍”によって勃発した内戦。

オリヴァルト皇子の計らいによってトールズ士官学院に留学したメンフィル帝国の貴族の子息であるリィン・シュバルツァーも内戦に巻き込まれ、様々な辛い経験をし、最後は大切な友を失う事になったが、それでも友の遺言に従って前を向いて生き続けた。そしてエレボニアの内戦終結から二日後に異変が起こる。

それは―――メンフィル帝国大使リウイ・マーシルンの名の下でリィンと、数奇な出会いをして”パートナードラゴン”の契約を結び、また恋人の一人でもあるセレーネ・L・アルヘイムのメンフィル帝国本国への”帰還命令”の書状が来た事だった。突然の出来事に困惑したリィンとセレーネだったが、初代メンフィル皇帝にして現メンフィル皇帝の父親であるリウイの命令に逆らう訳にはいかず、書状が来たその日にクラスメイトであるアリサ達に説明をした後翌日、トリスタから去り、異世界にあるメンフィル帝国の本国へと向かった。

すぐに帰って来ると思われた二人だったが、4日経っても帰って来ず、その事にアリサ達が心配し始めている中リィンとセレーネのクラスである”Ⅶ組”にある人物が訪れた。



ゼムリア歴1205年1月7日

同日、AM8:20―――

~Ⅶ組~

「―――失礼します。」
「アルフィン殿下…………!?こんな朝からどうなされたのですか…………!?」
教室に入ってきた人物―――アストライア女学院の制服を身にまとったアルフィン皇女の登場に驚いたラウラはアルフィン皇女に要件を訊ねた。
「実はリィンさんに訊ねたいことがありまして…………あの、リィンさんはまだ登校していらっしゃらないのでしょうか?」
「そ、その…………実はリィンさんもそうですけど、セレーネさんもメンフィル帝国から来た”帰還指示”によってメンフィル帝国の本国に帰還していて、まだ帰ってきていないんです…………」
「リィン達がメンフィル帝国の本国に向かってもう4日は経っているんですけど、何の連絡も来ないんです…………」
「え…………それじゃあリィンさんとセレーネさんもメンフィル帝国の本国に帰還して、戻っていらっしゃっていないのですか…………」
自分の問いかけにそれぞれ不安そうな表情を浮かべて答えたエマとエリオットの説明を聞いたアルフィン皇女も二人同様不安そうな表情を浮かべた。

「”リィンとセレーネも”?」
「その口ぶりでリィンに用があったって事は、もしかしてエリスも同じ状況なの~?」
アルフィン皇女が口にした言葉が気になったフィーは真剣な表情を浮かべ、ミリアムはアルフィン皇女に訊ねた。
「はい…………5日前にリベールのロレント地方にあるメンフィル帝国大使館より、リウイ陛下によるエリスに対する異世界にあるメンフィル帝国の本国への”帰還指示”の書状が届いた為、翌日にメンフィル帝国の本国へ向かったのですが、4日も経っていますのに、帰って来るどころか何の連絡も来ないんです…………」
「エリスもリィンとセレーネと同じ状況か…………」
「リィン達の話だと、異世界にあるメンフィル帝国の本国へ向かうにはリベールのロレント地方にあるメンフィル帝国の大使館に設置されてある異世界への転移魔法陣を使えばすぐにメンフィル帝国の本国の帝都近辺に到着するって言っていたから、メンフィル帝国とエレボニア帝国との往復の時間がかかっているという訳でもないしな…………」
アルフィン皇女の説明を聞いたガイウスとマキアスはそれぞれ考え込んでいた。

「…………殿下、帝都(ヘイムダル)にあるメンフィル帝国の大使館に問い合わせ等はしたのですか?」
「それが…………元々帝都(ヘイムダル)―――いえ、”エレボニア帝国の領土にはメンフィル帝国の大使館は存在しない為”、メンフィル帝国と連絡を取り合う為には唯一大使館が存在しているリベール王国に仲介してもらうしかないのです。」
「ええっ!?帝都どころか、エレボニア帝国の領土のどこにもメンフィル帝国の大使館は本当にないんですか!?」
「そういえば帝都でもメンフィル帝国の大使館は見た事がないな…………リベール王国やレミフェリア公国は当然として、エレボニアと犬猿の仲のカルバード共和国の大使館すらもあるのに、”百日戦役”時に現れたメンフィル帝国の大使館が”百日戦役”後に建てられたという話は聞いたことがないな…………」
ユーシスの質問に不安そうな表情で答えたアルフィン皇女の答えを聞いたエリオットは驚き、マキアスは考え込んでいた。
「…………元々メンフィル帝国はメンフィル帝国にとっての異世界であるわたくし達ゼムリア大陸の国家への接触は慎重にしているようでして…………現状メンフィル帝国の大使館が存在しているのはリベール王国にある大使館のみなのですわ。実際、メンフィル帝国―――いえ、異世界に存在している人間以外の種族である”異種族”の方々もリベールや、リウイ陛下の正妃であられるイリーナ皇妃陛下の縁で親交ができたクロスベル以外の国家や自治州などに姿を現していないそうなのです。」
「…………確かに私達、今までの”特別実習”もそうだけど、内戦でもエレボニアの様々な場所を回ったけど、異種族の人達とはセレーネやリフィア殿下、それにエヴリーヌさんとメサイアを除けば一度も会ったことがないわよね?」
「ええ…………リィンさん達の話では異世界にはそれこそ”ゼムリア大陸には存在しない空想上の種族”―――森人(エルフ)鉱人(ドワーフ)、それに悪魔や天使、神々や魔王すらも存在しているとの事ですし…………」
アルフィン皇女の話を聞いたアリサとエマはそれぞれ不安そうな表情を浮かべて考え込んでいた。
「た、大変だよ、みんな!ヴァリマールが…………ヴァリマールがメンフィル帝国軍に徴収されようとしているよ!」
するとその時トワが慌てた様子で教室に入ってきてアリサ達にある事を伝え
「ええっ!?」
トワの言葉にアリサは驚きの声を上げ、周りの者達もそれぞれ血相を変えた。その後アリサ達はエマの連絡を聞いて合流したセリーヌと共にヴァリマールが保管されている技術棟の近くの外に向かった。

~技術棟付近~

「ですからさっきから何度も言っているように、ヴァリマールはリィン君を起動者としている為、メンフィル帝国軍が回収しても誰も扱えませんし、そもそも他国の軍がエレボニアの士官学院であるトールズ士官学院が保管している機体を徴収するなんて、おかしいですよ!」
アリサ達が格納庫に到着するとメンフィル帝国兵達を引き攣れた機械仕掛けの人と思わしき存在―――メンフィル帝国軍の機工軍団を率いるシェラ・エルサリス元帥にジョルジュが必死に反論していた。
「ジョルジュ先輩が反論している女性は一体…………」
「―――メンフィル帝国軍”機工軍団”団長シェラ・エルサリス元帥。”百日戦役”時、シェラ・エルサリス元帥率いる”機工軍団”はエレボニアの軍どころか砦や基地も易々と破壊し続けたことから”破壊の女神”の異名で恐れられている。」
「あの女性がかの”破壊の女神”…………」
「げ、”元帥”だって!?」
「そ、そんな軍でもトップクラスの立場の人がメンフィル帝国軍を率いてどうしてヴァリマールを…………」
ガイウスの疑問に答えたフィーの説明を聞いたラウラは真剣な表情でシェラを見つめ、マキアスは驚き、エリオットは不安そうな表情を浮かべた。そこにアンゼリカから騒ぎを知らされたサラがヴァンダイク学院長とアンゼリカと共に姿を現した。
「サラ教官…………!それに学院長とアンゼリカ先輩も…………!」
「あんた達もトワから連中の件を聞いてこっちにやってきたのね。…………状況から考えてリィン達の件とも恐らく無関係ではないのでしょうね…………」
「うむ…………エレボニアとメンフィルの関係が”最悪の事態”に陥っている事を覚悟せねばならぬかもしれぬな…………」
二人の登場にエマが明るい表情を浮かべている中、サラはアリサ達を見回した後厳しい表情を浮かべてシェラ達を見つめ、サラの言葉に重々しい様子を纏って頷いたヴァンダイク学院長はサラと共にシェラ達に近づいた。

「サラ教官…………!ヴァンダイク学院長も…………!」
「よく頑張ったわね、ジョルジュ。ここからはあたし達に任せなさい。」
「はい、お願いします…………!」
そしてシェラ達の応対をしていたジョルジュと交代したサラとヴァンダイク学院長はシェラ達と対峙した。
「”Ⅶ組”の担当教官のサラ・バレスタイン並びにトールズ士官学院長ヴァンダイク名誉元帥を確認。私はメンフィル帝国軍”機工軍団”団長シェラ・エルサリス元帥です。」
「貴女があの”破壊の女神”と名高いエルサリス元帥閣下ですか………我々の事もご存じのようですから、自己紹介は省かせて頂き、早速本題に入らせて頂きますが…………何故何の連絡もなく突然ヴァリマールを徴収すると言った暴挙をメンフィル帝国は行おうとしているのですか?」
「それ以前に今回の件、エレボニア帝国政府に話は通しているのですか?」
シェラが名乗るとヴァンダイク学院長は重々しい様子を纏ってシェラを見つめた後表情を引き締めてシェラに問いかけ、サラもヴァンダイク学院長に続くように真剣な表情でシェラに問いかけた。

「メンフィル帝国政府が”灰の騎神”の徴収の件でのエレボニア帝国政府への通達をしている事については不明ですが、リウイ・シルヴァン両陛下より”灰の騎神”の回収を命じられている為、我々は本日この場に現れました。」
「よりにもよって”英雄王”と現メンフィル皇帝の命令とはね…………幾らメンフィル帝国の皇帝の命令であろうと、他国の士官学院が保管している”騎神”―――いえ、”兵器”を徴収するなんて、そんな非常識な事がまかり通ると思っているのですか?」
シェラの説明を聞いたサラは厳しい表情を浮かべたままシェラに指摘した。
「”灰の騎神”の起動者(ライザー)であるリィン・シュバルツァーは我が国に所属している為、”灰の騎神”の所有権は当然我が国にあります。そして”騎神”を操縦が可能なのはその”騎神”に適応している”起動者”のみとの事。よって、エレボニアの”灰の騎神”の所有権の順位はリィン・シュバルツァーが所属しているメンフィル帝国よりも下になります。」
(チッ…………”騎神”についても随分と情報を集めていたみたいですね…………)
「(うむ…………)…………そのリィン・シュバルツァーの事で伺いたいことがあるのですが…………今回の件、リィン君にも伝え、了承の答えをもらっているのでしょうか?」
「そ、それに…………リィンさんとセレーネさんは、それにエリスさんはいつトールズとアストライアに戻ってくるんですか?リィンさん達が帰還命令に従って異世界にあるメンフィル帝国の本国に向かってもう4日は経っていますよ!?」
シェラの正論に反論できないサラは舌打ちをし、ヴァンダイク学院長は静かな表情でシェラに質問し、エマも続くように必死の表情で質問をした。

「リィン・シュバルツァー、セレーネ・L・アルヘイム、そしてエリス・シュバルツァーの3名は、別命あるまで本国の帝城の客室にて待機指示が出ています。」
「ええっ!?リィン君達がメンフィル帝国のお城の客室に…………!?」
「それってどう考えても”軟禁”じゃないですか!?」
「そ、それにエリスまで…………!」
シェラの説明を聞いたトワは驚き、マキアスは真剣な表情でシェラを見つめて反論し、アルフィン皇女は不安そうな表情を浮かべた。
「どうしてあの子達がそんな状況に陥っているのよ!?」
「…………まさかとは思いますが、彼らがメンフィル帝国の許可もなくエレボニアの内戦終結に貢献した件でしょうか?去年の夏至祭での帝国解放戦線の襲撃でエリス君が拉致されかけた件で、エリス君とアルフィン殿下がリウイ陛下より注意を受けたと聞いておりますが…………」
サラは怒りの表情でシェラに問いかけ、心当たりがあるヴァンダイク学院長は真剣な表情でシェラに訊ねた。

「―――メンフィル帝国が問題としている点はその件ではありません。」
するとその時その場にエリゼが現れ
「あ…………」
「エリゼ…………!」
エリゼの登場にアリサは呆け、ラウラは驚きの表情を浮かべた。そしてエリゼはヴァンダイク学院長達に近づいて上品な仕草で挨拶をした。
「―――お初にお目にかかります、ヴァンダイク学院長。私の名はエリゼ・シュバルツァー。若輩の身ではありますがリフィア皇女殿下付き専属侍女長を務めさせて頂いております。」
「うむ…………エリゼ君の噂もかねがね聞いておる。それでエリゼ君…………本当にメンフィル帝国はヴァリマールを回収する為に、エルサリス元帥閣下たちを派遣したのか?」
「はい。これがその指示書です。―――どうぞ。」
「拝見させてもらおう…………―――!?何と…………」
「『現メンフィル皇帝シルヴァン・マーシルン並びにメンフィル大使リウイ・マーシルンの名の下、エレボニア帝国トールズ士官学院に保管されている”灰の騎神”ヴァリマールを回収せよ。なお、回収の際学院の関係者達が拒めば、”強制徴収”――――学院の関係者達を制圧し、回収する事も許可する』ですって!?」
エリゼから渡された指示書の内容を読んだヴァンダイク学院長は血相を変えた後信じられない表情を浮かべ、サラはその場で指示書の内容を読んだ後厳しい表情で声を上げた。

「が、”学院の関係者達を制圧して回収する事も許可する”って事は………!」
「まさかとは思いますが、貴女方は私達を殺してでも、ヴァリマールを回収するつもりなのですか?」
指示書の内容を読んだサラの話を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中トワは信じられない表情をし、アンゼリカは厳しい表情でシェラ達を見つめて問いかけた。
「―――その必要があるのならば、貴女方を”殲滅”するだけです。」
アンゼリカの問いかけに淡々とした様子で答えたシェラは腕の一部を変形させて砲口をヴァンダイク学院長達に向け、シェラに続くようにシェラの背後にいる兵士達もそれぞれの武装を構えた!
「う、腕が砲口に…………!?」
「まさかとは思うが”破壊の女神”も”劫焔”のような化物の類なのか!?」 」
「まあ~、ユーシスの言っている事は一応当たっているね~。”破壊の女神”は生きた人間じゃなくて、異世界の古代兵器らしいよ~?」
「ええっ!?それじゃあエルサリス元帥閣下は人形兵器の類なのですか!?」
「それにしては今まで戦った人形兵器とは何もかもが”格”があまりにも違いすぎる…………」
「ミリアムの話から推測して”破壊の女神”は間違いなく”存在自体が古代遺物(アーティファクト)”レベルなのでしょうね。」
シェラが腕を砲口に変形させた事にエリオットは驚き、ユーシスの疑問にミリアムは真剣な表情で答え、ミリアムの答えを聞いたエマは驚き、ガイウスとセリーヌは厳しい表情でシェラを見つめた。

「―――私もできれば兄様達がお世話になった方々を”斬る”事はしたくありません。ヴァリマールを回収すれば、私達は何もせずこの場から去りますので大人しく回収を見守って頂けませんか?」
そしてエリゼも太刀を鞘から抜いてシェラ達と共にヴァンダイク学院長達と対峙し、それを見たアリサ達は血相を変え
「エリゼ君、君まで…………」
「………っ!エリゼさん、どうしてメンフィル帝国は突然このような事を―――いえ、一体メンフィル帝国とエレボニア帝国の間に何があったのですか!?」
エリゼの行動を見たジョルジュが複雑そうな表情をしている中、アルフィン皇女は悲痛そうな表情でエリゼに問いかけた。
「…………よりにもよって貴女自身がそれを仰るのですか――――ユミルが”北の猟兵”達に襲撃された原因であったアルフィン殿下、貴女が。」
「え…………」
「ユ、ユミルが”北の猟兵”達に襲撃された原因がアルフィン殿下って………」
「っ!!やはり…………メンフィル帝国は父の愚行を見逃していなかったのだな…………」
厳しい表情を浮かべているエリゼの指摘にアルフィン皇女が呆けている中マキアスは不安そうな表情をし、心当たりをすぐに思い出したユーシスは息を呑んだ後辛そうな表情で肩を落とした。

「ユーシスのお父さんの”愚行”って………」
「まさか…………メンフィルは内戦時アルフィン殿下を拉致する為にアルバレア公が雇った”北の猟兵”達によるユミル襲撃を今更蒸し返して、エレボニアに戦争を仕掛けるつもりなの!?」
「あ…………」
「そ、そう言えばクレア大尉もユミルの件でメンフィル帝国が国際問題にしてエレボニアに賠償や謝罪とかを求めてこない様子を不思議に思っていたけど…………」
ユーシスの話を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、厳しい表情を浮かべて声を上げたサラの推測にアリサは呆けた声を出し、トワは不安そうな表情を浮かべたてエリゼ達を見つめた。
「正確に言えばメンフィルが問題としている件は一度目の襲撃―――アルバレア公が雇った”北の猟兵”達による襲撃だけでなく、一度目の襲撃の際のエリスの拉致監禁やユミルの領主である父様の負傷、”二度目の襲撃”―――パンダグリュエルによる襲撃によって兄様を脅迫してパンダグリュエルに向かわせ、軟禁した事も問題としています。―――それとメンフィルは”一度目の襲撃が判明してから、既にリベールの王都にあるエレボニアの大使館に抗議や謝罪、賠償を求め続けてきました。”」
「い、”一度目の襲撃が判明してからずっと抗議や謝罪、賠償を求め続けてきた”だって!?だったら何で今頃動き出したんだ!?」
「いや、むしろ”今”だからなんだろう。恐らく内戦の最中貴族連合軍が大使館に対してまともな対応をしていなかった事もあるだろうが、内戦によって正規軍、貴族連合軍共に疲弊している”今”のエレボニアが戦争を仕掛けられれば一溜まりもない。―――ましてや12年前の”百日戦役”でエレボニアを圧倒したメンフィルならば、ただでさえ高い勝率はほぼ100%に近い勝率になって自国の被害をできるだけ少なくしてエレボニアに勝利できると思われるだろうからね。」
「後はエレボニアの新兵器――――”機甲兵”の性能を探る為にも内戦中は様子を伺っていたかもしれないね。」
「あ…………」
「そ、それじゃあリィンさん達をメンフィル帝国の本国の帝城に軟禁している理由は…………」
「リィン達―――自国の貴族の関係者達がメンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争に巻き込まれない為か…………」
「後は戦争の件を知ったリィンが”騎神”―――ヴァリマールを使って何らかの介入をする事を防ぐためかもしれないわね…………」
エリゼの説明に仲間達と共に驚いた後反論したマキアスの指摘に対して答えたアンゼリカとフィーの推測を聞いたトワは呆けた声を出し、ある事に気づいたエマは不安そうな表情を浮かべ、ラウラとサラは重々しい様子を纏って推測を口にした。

「…………っ!―――誠に申し訳ございません、エリゼさん、エルサリス元帥閣下!ユミルの件は先程エリゼさんも仰ったように、ユミルが襲撃される原因となったわたくしも”元凶”の一人です!わたくしの身はどうなっても構いませんので、どうかメンフィル帝国にエレボニア帝国との戦争を考え直して頂けるよう取り計らって頂けませんか!?」
「ユミルの件は皇女殿下の責任ではございません!全ては父―――”アルバレア公爵家”と貴族連合軍の”主宰”であるカイエン公と”総参謀”の兄上です!俺達”アルバレア公爵家”はどうなっても構わん!だから、皇女殿下にまで責任を追及しない事と俺達”アルバレア公爵家”の首や財産をメンフィル帝国に対する”謝罪の証”として戦争を止める事を俺自身が強く望んでいる事をリフィア殿下を通じてリウイ陛下達に伝えてくれ!―――頼む!!」
「アルフィン殿下…………ユーシス…………」
メンフィルとエレボニアの戦争を止める為にアルフィン皇女とユーシスはそれぞれその場で頭を深く下げて自分達の意思をエリゼ達に伝え、その様子を見たガイウスは辛そうな表情を浮かべた。
「…………一応お二人の意志はリフィア殿下やシルヴァン陛下達に伝えてはおきます。ですがもはや”手遅れ”でしょう。今頃、メンフィル・エレボニア両帝国間の戦争へと勃発させない為のエレボニア帝国に対するメンフィル帝国の要求内容が帝都(ヘイムダル)の帝国政府にも伝わっている頃です。奇跡的な生還を果たして政府に復帰したエレボニア帝国政府の代表者の性格を考えると、とてもメンフィル帝国の要求を呑むとは考えられません。」
「き、”奇跡的な生還を果たして政府に復帰した帝国政府の代表者”って………!」
「”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンだね。」
「た、確かにオズボーン宰相の性格を考えるとどんな内容なのかは知らないがメンフィル帝国の要求をそのまま呑むとは思えないけど、クロスベルの件もまだ終わっていない上内戦でエレボニアは疲弊している状況なんだからさすがに他国との戦争は避ける交渉とかはするんじゃないのか…………?」
「んー……………」
エリゼの答えを聞いたトワは不安そうな表情で声を上げ、フィーは真剣な表情で呟き、マキアスは不安そうな表情を浮かべながら推測を口にし、ミリアムはエリゼを見つめながら真剣な表情で考え込んでいた。

「そういう訳ですので、ヴァリマールは回収させて頂きます。その指示書は今回の件の”証拠”としてそちらに差し上げますので、どうぞそのままお持ちになってヴァリマールが回収された件で政府や軍に追及された際に、その指示書によってメンフィル帝国が”トールズ士官学院の関係者達との戦闘が起こる事も承知の上でヴァリマールをトールズ士官学院から強引に回収した”という内容で政府や軍に説明してくださって結構です。」
「…………あいわかった…………皆、そういう訳ですまないがメンフィル帝国軍の回収作業を決して邪魔したりしてはならぬぞ。」
「が、学院長…………」
「…………っ!エリゼ、あんたは本当にそれでいいの!?メンフィルとエレボニアの戦争なんて、リィン達は絶対に望んでいないし、もし知ったら猛反対するわよ!?」
エリゼの説明に目を伏せて重々しい様子を纏って頷いたヴァンダイク学院長はアリサ達に指示をし、ヴァンダイク学院長が自分達にとっても大切な仲間であるヴァリマールを強引に回収しようとするメンフィル帝国の要求に従った事にトワが悲痛そうな表情を浮かべている中サラは唇をかみしめた後怒りの表情でエリゼに問いかけた。
「いいも何も、リウイ陛下どころか現メンフィル皇帝であられるシルヴァン陛下が決定した以上メンフィル帝国政府内の発言権を持たない”メンフィル皇族専属侍女長如き”の私ではどうする事もできませんし、それに…………―――(エリス)の拉致監禁や兄様への脅迫、父様が北の猟兵達によって重傷を負わされた事、2度に渡るユミル襲撃、挙句の果てにはそれらの件に対して何の謝罪や賠償もしなかった”貴族連合軍を含めたエレボニア帝国”に対して私が”怒り”を抱いていないと思っていたのですか?」
「………………っ!」
「エリゼさん…………」
しかし全身に静かなる闘気を纏わせて答えたエリゼの意志を知り、エリゼのエレボニアに対する”怒り”が故郷の為に猟兵稼業を続けている”北の猟兵”もその原因である事にサラは辛そうな表情で唇をかみしめ、自分達にとってクラスメイトであり、大切な仲間でもあるリィンの妹であるエリゼが自分達の祖国であるエレボニアに対して怒りを抱いている事にアリサは悲しそうな表情を浮かべてエリゼを見つめた。

「―――ヴァンダイク学院長達への説明の為の時間を取って頂きありがとうございました、エルサリス様。―――それでは始めて下さい。」
「了解。―――転移陣の準備を。」
「ハッ!」
闘気や太刀を収めて気を取り直したエリゼに視線を向けられたシェラは頷いた後メンフィル兵達に指示をし、指示をされたメンフィル兵達はヴァリマールの周囲で作業を始め
「―――自己紹介が遅れましたが、私はリィンの義妹にして婚約者の一人でもあるエリゼ・シュバルツァーと申します。急な事で申し訳ございませんがヴァリマールさんはしばらくの間、メンフィルが用意する保管場所にて待機して頂きます。」
メンフィル兵達が作業している間エリゼはヴァリマールの正面に近づいてヴァリマールに挨拶と説明をした。
「エリゼノ事は、リィンやセレーネカラモ聞イテイル。ドウヤラリィンハ準起動者達ト決別セネバナラヌ状況ノヨウダガ、アリエナイトハ思ウガ、メンフィルトヤラハ、我ニリィン以外ノ起動者ヲ用意スルツモリナノカ?」
「ヴァリマールさんを兄様以外の方が操縦するような事は絶対にない事はシルヴァン陛下やリウイ陛下も確約なさってくださっていますので、この場でお約束できます。そして兄様が再びヴァリマールさんを駆り、その刃を向ける相手は…………兄様次第でしょう。」
「…………ソウカ。」
エリゼの答えを知ったヴァリマールは何も反論する事なく目を光らせて淡々とした様子で答えた。そしてエリゼはヴァンダイク学院長とアルフィン皇女に近づいてヴァンダイク学院長には二通の封筒を、アルフィン皇女には一通の封筒を手渡した。

「この封筒は一体…………?」
「エリスのアストライア女学院の退学届けです。ちなみにヴァンダイク学院長に渡した二通の封筒は兄様とセレーネのトールズ士官学院の退学届けです。」
「!!」
「そ、そんな!?」
「…………リィン君達の退学の理由は…………やはり戦争勃発になりかけているメンフィルとエレボニアの国家間の問題が関係しているのかの?」
エリゼの説明を聞いたアルフィン皇女は目を見開き、アリサは悲痛そうな表情で声を上げ、ヴァンダイク学院長は重々しい様子を纏ってエリゼに訊ねた。
「…………―――”メンフィル帝国政府の政治的判断によるものです。”――――それでは私達はこれで失礼します。本日はお騒がせしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」
ヴァンダイク学院長の問いかけに静かな表情で答えたエリゼは既に作業を終えたメンフィル兵達やシェラと共にメンフィル兵達が用意した転移魔法陣によってその場から消え、トールズ士官学院から去って行った!

「き、消えた……」
「まさか”騎神”を転移魔法陣で移送するなんて…………」
「あんな大規模な転移陣…………それも一度しか使えない片道のみとはいえ、転移陣が一般兵にも伝わっているって事は、メンフィル帝国は相当魔法技術に長けているようね…………」
エリゼ達が去った後エリオットは呆けた声を出し、エマは信じられない表情で呟き、セリーヌは目を細めて転移の際にエリゼ達と同時に跡形もなく消滅した魔法陣があった場所を睨み
「わたくしが…………軽はずみにも他国の領土であるユミルに滞在し続けたせいで、こんな事に…………っ!」
「皇女殿下の責任ではございません…………!全ては”アルバレア公爵家”の責任です…………っ!」
アルフィン皇女は悲痛そうな表情でその場で崩れ落ち、ユーシスはその場で土下座をしてアルフィン皇女に謝罪し続けていた――――

そして1週間後、アリサ達は更なる衝撃の事実を知る事になる。それは―――クロスベル占領の為にクロスベルへと侵攻した”パンダグリュエル”をエレボニア軍の旗艦とするルーファス・アルバレア率いる正規軍と領邦軍の混合軍がクロスベルによって”返り討ち”に遭って”全滅”すると共に”パンダグリュエル”は奪われ、ルーファス達の全滅にはクロスベルと連合を組んだメンフィルも関わっており、ルーファスを討ち取った人物はメンフィル帝国軍に所属するリィンであるという新聞の内容であった――――
 
 

 
後書き
この話は光と闇の軌跡シリーズの設定の一部は同じですが、運命とも灰とも設定が異なります。まず閃2終章終了時点でのリィンの使い魔は運命や灰と違ってベルフェゴール、リザイラ、アイドスはいなく、トールズに来る前に出会って契約したという設定のメサイアのみで、閃1のヘイムダルでの特別実習でのセレーネとの出会いやリウイ達の乱入の件、ローエングリン城で出会ったアイドスの件を除けば全て原作通りで、エリゼは運命同様既に”剣聖”の一人にして運命で登場した”ヴァイスリッター”の操縦者でもあり、リィンの恋人(もとい肉体関係を結んでいる女性)は現時点ではエリゼ、エリス、セレーネ、メサイアの4人のみで、アリサやアルフィン達とはまだアリサ達の片想いで、恋人関係にはなっていない設定です。また、プリネ達も留学していない為、ケルディックもエレボニアの領土のままで原作通りになっている状況です。なお、次にこの話を書く内容はリィン達側で、リィン達がメンフィルに軟禁されてからルーファス殺害へと結びつく経緯の予定です。それと、この話はアリサ達からは戦死者を出すつもりはありませんが、アリサ達の関係者達からは戦死者が出る予定となっており、恐らくリィン達とアリサ達は最後まで、もしくは最終決戦直前までずっと敵対関係にする事を考えています(ぇ)また、この話は3や4のイベントをフライング発生させる予定ですので、3や4で初登場となるキャラがフライング登場して仲間になったり敵になったりすることも考えています。…………少なくても現時点でアルティナとミュゼ、クルトはリィン側、ユウナはロイド側の仲間としてそれぞれ加入させることは決定しています(ぇ) 

 

第1話

1月7日、AM11:30―――

~メンフィル帝国・マルーダ城・客室~

「「「……………………」」」
リウイの指示によってメンフィル帝国の帝城の客室の一室にて待機し続ける羽目になったリィン達はそれぞれ黙ってエヴリーヌと同じ”客将”扱いの為、リィン達と違って身動きが可能と思われメサイアによる情報収集の結果を知る為にメサイアを待っていた。
「―――お待たせいたしましたわ。」
「メサイア…………!それで、今どういう状況なんだ…………!?」
部屋に入ってきたメサイアの登場に血相を変えたリィンはメサイアに訊ねた。
「…………まず結論から申し上げますわ。エリゼ様も仰ったように、やはりメンフィル帝国はユミルの件を理由にエレボニア帝国に戦争を仕掛けるつもりです。一応戦争に勃発させない為の要求――――ユミルで起こった様々な国際問題に関する”謝罪の証”である”賠償”をリベールの王都(グランセル)のエレボニア帝国の大使館に突き付けたようですが…………要求内容もそうですがエレボニア帝国政府の代表者の性格を考えると、どう考えてもエレボニア帝国政府はメンフィル帝国政府の要求を絶対に呑まない事を”確信”した上で既に戦争の準備を始めていますわ。」
「そ、そんな…………軽はずみにも私が姫様の潜伏先としてユミルを選んだばかりにこんな事に…………っ!」
「エリスのせいじゃない!悪いのは貴族連合軍と結社、そして襲撃されたとはいえ、死者は出なかったユミルの件をメンフィル帝国は軽く見ていたと勝手に判断していた俺の迂闊さだ…………!」
「エリスお姉様…………お兄様…………あ、あの、メサイアさん!先程メンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争に勃発させない為にメンフィル帝国はエレボニア帝国に賠償を要求したと仰っていましたわよね?その賠償内容はどのようなものなのですか?」
メサイアの報告に悲痛そうな表情をしているエリスに指摘をしたリィンは辛そうな表情で唇をかみしめ、二人を心配そうな様子で見つめたセレーネはある事に気づいてメサイアに訊ねた。

「…………正直な所を申しまして、エレボニア帝国政府の代表者であるオズボーン宰相でなくてもエレボニアの政府の代表者なら誰でも絶対に呑まない要求内容ですわよ?それでも知りたいのですか?」
「あのオズボーン宰相でなくても、エレボニア帝国政府の代表者なら誰でも絶対に呑まない要求内容ですか………」
「…………それでも教えてくれ。当事者である俺達も知るべきなんだ。」
メサイアの答えを聞いたエリスは不安そうな表情を浮かべてリィンに視線を向けた後メサイアを見つめ、リィンは辛そうな表情でメサイアに続きを促した。
「…………わかりましたわ。メンフィルがエレボニアに突き付けた要求内容はこの要求内容の写しに書かれていますわ――――」
そしてメサイアはリィンの意思を知るとリィンに一枚の書状を渡し
「な――――」
「こ、これは…………」
「そ、そんな…………」
渡された書状の内容を読んだリィンは絶句し、セレーネは信じられない表情をし、エリスは悲痛そうな表情を浮かべた。


メンフィル帝国によるエレボニア帝国に対する戦争勃発を中止する為の賠償内容は以下の通り。


1、”四大名門”の当主全員―――ヘルムート・アルバレア、クロワール・ド・カイエン、ゲルハルト・ログナー、フェルナン・ハイアームズ並びに”貴族連合軍”の”総参謀”だった”アルバレア公爵家”の長男ルーファス・アルバレア、エレボニア帝国宰相ギリアス・オズボーン、エレボニア帝国皇女アルフィン・ライゼ・アルノールの身分を剥奪し、更に全員の身柄をメンフィル帝国に引き渡し、メンフィル帝国がそれぞれに与える処罰内容に反論せずに受け入れる事。

2、クロイツェン州全土とラマール州全土、残りの”四大名門”の本拠地、そしてノルティア州とサザーランド州からはメンフィル帝国が指定する領地の統治権、”ザクセン鉄鉱山”の所有権をメンフィル帝国に贈与する事

3、内戦の影響でメンフィル帝国領に避難してきた難民達の生活費等の支払いとその利息の支払い(難民達に対して消費したメンフィル帝国の財産は1000億ミラ相当で、利息は10割として1000億ミラとして、合計2000億ミラ)

4、メンフィル帝国に贈与した元エレボニア帝国領地に住んでいる貴族達は”アルゼイド子爵家”のような内戦に加担していない貴族以外は全てメンフィル帝国への帰属を許さない。よって贈与された元エレボニア帝国領内に引き続き住むのならばメンフィル帝国は爵位を剥奪して”平民”に落とし、貴族としての”爵位”を維持し続けたい場合はエレボニア帝国が引き取り、エレボニア帝国領内に住まわせる事

5、ユーゲント・ライゼ・アルノール皇帝はユミルに自ら赴き、”シュバルツァー家”にメンフィル帝国領であるユミルを自分の不徳によって起こったエレボニア帝国の内戦に巻き込んだ事を誠心誠意謝罪し、エレボニア皇家の財産からシュバルツァー家に謝罪金並びに賠償金を支払う事

6、エレボニア人がメンフィル帝国領に入国する際、平民は入国料金一人1万ミラ、貴族、皇族は一人10万ミラを入国時に毎回支払う事を承認する事。更にメンフィル帝国領内でエレボニア人(貴族、平民問わず)が犯罪を犯した場合、通常の判決より厳しい判決が降される事を承認し、メンフィル帝国領内で犯罪を犯したエレボニア人がエレボニア帝国の領土に逃亡した場合は犯人逮捕に積極的に協力し、犯人の引き渡しをする事


「アルバレア公やカイエン公、それにルーファスさんの引き渡しは予想していましたが、まさか他の”四大名門”の当主の方々に加えてアルフィン殿下やオズボーン宰相の引き渡し、その他にもエレボニアにとって絶対に受け入れられない要求内容だなんて…………メサイアさんの仰った通り、エレボニア帝国政府の代表者がオズボーン宰相でなくても、誰も絶対に受け入れられない内容ですわね…………」
「ああ…………第三項に書かれている難民達の生活費等の支払いの件を除けば、どれもエレボニア帝国政府は絶対に受け入れられない要求内容だ…………っ!」
「姫様は…………姫様はメンフィル帝国に引き渡された後、一体どういう処罰内容が降されるのですか!?」
メンフィルがエレボニアに要求している賠償内容を知って複雑そうな表情を浮かべて呟いたセレーネの言葉に頷いたリィンは辛そうな表情で身体を震わせ、ある事が気になっていたエリスは真剣な表情でメサイアに訊ねた。
「四大名門の当主とルーファス・アルバレア、それにオズボーン宰相に対する処罰内容は既に”処刑”に決定していて、アルフィン皇女に対する処罰内容は…………メンフィル帝国に所属している貴族の使用人兼娼婦として、その貴族に一生仕える事との事ですわ…………ちなみにその貴族はまだ詮議中の為、現時点では決定してはいないようですが…………」
「”娼婦”だって!?…………っ!どうしてメンフィル帝国政府はアルフィン殿下にまでそこまで過酷な処罰内容を求めているんだ…………!?身分剥奪もアルフィン殿下にとってあまりにも厳しい処罰内容の上アルフィン殿下も被害者なのに…………っ!」
メサイアの説明を聞いたリィンは血相を変えて声を上げた後辛そうな表情で唇をかみしめた。

「あ、あの、兄様…………”娼婦”とは初めて聞く言葉なのですが、一体どういう存在なのでしょうか…………?」
「わたくしも初めて耳にしましたが…………もしかして、メンフィル帝国―――いえ、異世界特有の存在なのでしょうか…………?」
「それは…………」
「…………”娼婦”とは”身体を売って賃金を得る女性”――――つまり、”売春行為を行う女性”の事ですわ。ちなみにゼムリア大陸では売春行為は犯罪のようですが…………私達の世界であるこのディル=リフィーナでは犯罪でない所か、”娼婦”を集めて売春行為をさせる施設―――”娼館”が公共施設として各国の都市には必ずある施設ですわ。」
一方”娼婦”の意味がわからないエリスとセレーネの疑問にリィンが複雑そうな表情を浮かべて答えを濁しているとメサイアが代わりに答えた。
「ええっ!?」
「そ、そんな…………それじゃあ例えエレボニア帝国がメンフィル帝国の要求を呑んでも姫様が…………っ!」
メサイアの答えを聞いたセレーネは驚き、エリスは悲痛そうな表情を浮かべた。

「何か…………何かないのか!?メンフィル帝国の要求をもっと穏便な内容にする方法は…………!?」
「…………リィン様には申し訳ありませんが、ディル=リフィーナで生き続け、かつてメルキア皇族としてメルキアと戦争した結果敗北した国がどうなったかを知っている身からすれば、メンフィル帝国―――いえ、ディル=リフィーナの国々にとってはこの要求内容でも相当穏便な内容ですから、これ以上の譲歩は不可能だと思いますわ…………」
「こ、この条約でもこの世界にとっては穏便な内容なのですか!?」
「あの…………メサイアさん…………異世界で戦争が起こった際、敗戦した国々は普通どのような待遇を受ける事になるのでしょうか…………?」
悲痛そうな表情を浮かべて叫んだリィンに対して複雑そうな表情で指摘したメサイアの指摘を聞いたセレーネは信じられない表情をし、エリスは不安そうな表情でメサイアに訊ねた。
「皇族に関しては皇は当然として、皇以外の男性の皇族は全員処刑された後”晒し首”にされ、妃等の女性の皇族は”娼婦”にされて娼館に売られたり、兵士達への褒美として兵士達に下賜された後死ぬまで兵士達の慰み者として犯される事になりますわ。更にその国を占領した国家が非人道的な国家ですと、占領された国家の民達も”奴隷”や”娼婦”落ちしてしまう事もありえますわ…………」
「そ、そんなあまりにも惨い事が異世界で行われているなんて…………」
「その…………メサイアさんがいた国―――”メルキア”という国も戦争で勝利した際、今仰ったようなことを実行していたのですか…………?」
メサイアの説明を聞いたエリスは信じられない表情をし、セレーネは不安そうな表情でメサイアに訊ねた。

「いえ…………お父様は”簒奪王”と恐れられた方でもありましたが、同時に”賢王”としても名高く、混乱の極みであった国内をまとめあげ、中原東部の国々を平定し、メルキア帝国の全盛期を築いた偉大なる王として称えられていましたし、実際お父様の存命時自国の領土として占領した領土の民達を虐げるような政策は行わず、メルキアの軍や貴族の関係者達が民達を虐げている者達が判明すれば、容赦なく処刑しましたわ。…………最も、占領した国家の女王や妃、女性将校の方々は妾にしたり娼婦として娼館に売ったりしていて、私の母はその占領された国―――”アンナローツェ王国”の女王だった方でアンナローツェ滅亡後お父様の妾として生涯後宮で過ごしていましたけどね…………」
メサイアの答えを聞いたエリスとセレーネはそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「…………話は変わるがメサイア。今気づいたんだが、よくメサイアは”客将”の立場でありながら、こんな短期間にこれ程の情報を収集する事ができたな?幾ら”客将”とはいえ、戦争勃発直前の時点でこれ程の情報が開示されたよな?」
「言われてみればそうですわよね?特に写しとはいえ、賠償内容が書かれている書状まで手に入れていますし…………」
「メサイアさんは一体どなたからこの写しを頂き、要求内容について伺ったのでしょうか?」
リィンの疑問を聞いたセレーネは目を丸くし、エリスは不思議そうな表情を浮かべてメサイアに訊ねた。

「戦争の件を私に教えて頂いた方達はルクセンベール卿とプリネ皇女殿下ですわ。」
「ツーヤお姉様とプリネ様が!?という事はお二人は今帝城にいらっしゃっているのですか?」
「ええ、お二方も戦争の準備で多忙との事でしたが、運よく帝城内を歩いている所を見つけてダメ元で会談を申し込んだ所承諾して頂き、そして戦争の件を私に説明してくださったのですわ。」
「お二方も戦争の準備で多忙という事はお二方もエレボニア帝国との戦争に参戦なさるのか?」
「あ…………」
セレーネの疑問に答えたメサイアの説明を聞いてある事に気づいたリィンは複雑そうな表情でメサイアに訊ね、リィンの問いかけを聞いて姉も戦争に参戦するかもしれない事にセレーネは呆けた声を出した後複雑そうな表情をした。

「ええ。それにお二方が私に教えて頂いた戦争に参加なさるメンフィル帝国の皇族や武将の方々を考えると今回の戦争、12年前の”百日戦役”と違って”本気”でエレボニアを滅ぼすおつもりだと思いますわ。」
「…………ちなみにその皇族や武将の方々は何ていう名前の方々だ?」
「…………メンフィル帝国によるエレボニア帝国征伐軍はリウイ陛下を”総大将”として、皇族で参戦なさるのはリフィア皇女殿下、プリネ皇女殿下、レン皇女殿下、エフラム皇子殿下、エイリーク皇女殿下、ヒーニアス皇子殿下、ターナ皇女殿下で、武将は”百日戦役”でもその名をゼムリア大陸に轟かせ、今回の戦争ではエレボニア帝国征伐軍の”副将”も命じられているファーミシルス大将軍とエルサリス元帥、それにルース将軍に加えて戦争に参加なさる皇族の親衛隊を率いる将軍の方々、”総参謀”はシルヴァン陛下の名代も兼ねているセシリア将軍を中心としたメンフィル軍に所属する参謀達、そして私と同じ”客将”の立場である魔神エヴリーヌ様も参戦なさるとの事です。」
「そんなにも多くの皇族や武将の方々がエレボニア帝国との戦争に参加なさるなんて…………」
「最悪だ…………皇族の方々もそうだが、皇族の親衛隊を率いる将軍の方々もみんな武勇でその名を轟かせる方々だし、セシリア教官まで参戦なさるなんて…………」
「お兄様はそのセシリア将軍という方をご存じなのですか?その方の事を”教官”と仰っていましたが…………」
メサイアの情報を聞いたエリスは辛そうな表情で顔を俯かせ、疲れた表情で肩を落として呟いたリィンのある言葉が気になったセレーネはリィンに訊ねた。

「…………セシリア教官は俺の訓練兵時代の担当教官としてお世話になった方なんだ。」
「え…………ではその方もサラ教官と同じ、お兄様にとっては”恩師”にあたる方なのですか…………」
「ああ…………ちなみにセシリア教官は参謀としての能力は当然として魔術師としての能力もメンフィル軍でトップクラスで、メンフィル軍に所属する魔道の使い手としては5本の指に入ると言われている。それとセシリア教官はシルヴァン陛下の側妃の一人だ。多分教官がシルヴァン陛下の”名代”として選ばれたのはその件も関係しているんだと思う。」
「そんな凄い方が訓練兵時代の兄様の恩師だったなんて…………」
リィンとある人物の関係を知ったセレーネとエリスはそれぞれ驚いていた。
「それと…………戦争に参加なさる武将の件で他にもお伝えすべきことがありますわ。―――ちなみにその方々はリィン様とも浅からず縁がありますわ。」
「え…………一体誰だ?」
「…………”神速のデュバリィ”を始めとした結社の”鉄機隊”の方々もメンフィル帝国軍に所属してエレボニア帝国の戦争に参加なさるとの事ですわ。」
「え…………」
「!?一体どういう事だ、それは!?まさか…………メンフィルと結社は協力関係を結んだのか!?」
メサイアが口にした驚愕の事実にセレーネは呆け、リィンは血相を変えて信じられない表情で訊ねた。

「いえ、プリネ皇女殿下達の話では内戦の間にメンフィル帝国は結社の”盟主”もそうですが最高幹部である”蛇の使徒”もほぼ全員抹殺し、数少ない生き残りにして結社の”盟主”達の居場所等を申告した上リウイ陛下達と共に”盟主”を抹殺した元蛇の使徒の”第七柱”率いる”鉄機隊”は親衛隊とは別にリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下を守る独立部隊としてメンフィル帝国軍に所属しているとの事です。」
「な―――――――」
「ええっ!?結社のトップである”盟主”に加えて最高幹部もほとんど抹殺したという事は結社は…………!」
「事実上崩壊した事になるわよね…………?そのメンフィル帝国に寝返った”第七柱”という方は一体どうしてそんなことをなさったのかしら…………?」
更なる驚愕の事実を知ったリィンは絶句し、セレーネは驚き、エリスは困惑していた。
「それと…………戦争の件で他にも判明した事実をお伝えしておきます。今回の戦争、メンフィル帝国は”クロスベル帝国”と連合を組んでエレボニア帝国と戦争するおつもりのようですわ。」
「な―――”クロスベル帝国”って、あのクロスベル自治州の事か!?猟兵達に襲撃された件がエレボニア、カルバード、メンフィルの三国のせいだと主張してその報復と独立の為にIBCによる資産凍結を行わせた…………!?」
「そもそもクロスベルには皇族は存在しない上、何故”自治州”であったクロスベルが突然”帝国”の名を名乗るのようになったのでしょうか…………?」
クロスベルの政変までも大きく変わった事にリィンは信じられない表情で声を上げ、エリスは困惑の表情で訊ねた。
「…………そのクロスベルの”皇族”の事なのですが―――」
そしてメサイアはクロスベル帝国やクロスベルの皇を名乗る人物はかつての”西ゼムリア通商会議”にて、テロリスト達の襲撃を利用してクロスベルの警備隊を解散させて自国の軍を駐屯させようとしたオズボーン宰相とロックスミス大統領の狙いを未然に防ぐどころか反撃までして、二人に政治的ダメージを与えた”六銃士”の一人にして転生したメサイアの父親でもあるヴァイスハイト・ツェリンダーとメルキアの宿敵の国家の皇であったギュランドロス・ヴァスガンである事を説明した。

「ええっ!?メサイアさんのお父様の件も話には伺っていましたが、まさかクロスベルを”国”として建国した上、自ら”皇”を名乗るなんて…………」
「ですが”国”を名乗るにしても”自治州”であったクロスベルが僅かな領土しかない状況で何故”帝国”を名乗ったのでしょう…………?」
「…………話によりますとお父様たちは”クロスベル帝国”建国後”二大国”―――エレボニア帝国とカルバード共和国に戦争を仕掛け、その結果勝利し、占領した領土が広大になる為、予め”王国”や”独立国”ではなく”帝国”を名乗るようにしたとの事ですわ。」
「幾ら何でも無謀過ぎる…………普通に考えれば警備隊や警察の武装じゃ二大国が保有する兵器に対抗できないのに、メサイアのお父さん達―――”六銃士”はどうしてそんなことを…………」
「…………今の状況を考えると恐らくですが、お父様たちがクロスベル警備隊、警察の上層部の椅子についた時からメンフィル帝国よ何らかの約定を既に結んでいたかもしれませんわ。実際、お父様達が”クロスベル帝国”の建国や二大国に対して戦争を仕掛ける事を宣言した際にリウイ陛下もその場にいて、メンフィルは”クロスベル帝国”と共に”覇道”を歩む―――つまり、クロスベルと連合を組んで二大国に戦争を仕掛ける事を断言していたとの事ですし…………」
「え…………」
「何だって!?という事はメンフィルはユミルの件がなくても最初からエレボニアに戦争を仕掛けるつもりだったのか!?」
メサイアの話を聞いたエリスは呆け、リィンは血相を変えてメサイアに確認した。

「…………恐らくは。そしてクロスベル帝国建国から僅かな日数で”カルバード共和国征伐”を行ったメンフィル・クロスベル連合軍はカルバード共和国を占領―――つまり、”カルバード共和国は既に滅亡しているとの事ですわ。”」
「な――――」
「ええっ!?」
「長年エレボニアの宿敵であったあのカルバード共和国が既に滅亡していたなんて…………あ、あら…………?そう言えば帝国を名乗るようになったクロスベルの”皇帝”の一人がメサイアさんにとっての並行世界の生まれ変わったお父様という事は、その方のご息女であるメサイアさんはクロスベルの皇女殿下という事になりますが…………!?」
カルバード共和国が既に滅亡している事を知ったリィンは絶句し、セレーネは驚き、エリスは呆然とした後ある事実に気づいて信じられない表情でメサイアを見つめた。
「………ええ。実はプリネ皇女殿下達が”客将”とはいえ、身動きができないようにしているリィン様の使い魔である私にそこまでの情報を開示した上その写しも用意した理由は、こちらの世界の今の時代に生まれ変わったお父様が並行世界とはいえ、私の事を正式に”娘”として認めてメンフィル帝国にもその事を伝えた為、メンフィル帝国は既に私の扱いを”客将”から”同盟国であるクロスベルの姫君”―――つまり、メンフィルにとっての”最高クラスの他国のVIP”へと変えた為、私が城内で情報収集をしても特に咎める事もせず、それどころか戦争の経緯を含めた様々な世間の今の動きについての情報を開示したとの事ですわ。」
「そ、それじゃあメサイアさ―――いえ、メサイア皇女殿下は本当にクロスベル帝国の皇族になったのですか…………」
「ふふっ、今まで通り”メサイア”で構いませんわよ。プリネ皇女殿下達の話ですとこの時代に生まれ変わったお父様は会った事もない私を”娘”として認知したどころか私の”意志”を尊重している為、クロスベル皇女になった今もリィン様の”使い魔”を続ける事やセレーネさん達同様私とリィンさんが婚約の関係を結んでいる事も容認しているとの事ですし。」
信じられない表情で自分を見つめて呟いたセレーネにメサイアは苦笑しながら答え、次から次へと判明した青天の霹靂の出来事にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「えっと………という事は私達”シュバルツァー家”は将来、セレーネの縁でメンフィル皇家の分家であられる”ルクセンベール家”だけでなく”クロスベル皇族とも縁戚関係になる”という事ですよね…………?」
「あ、ああ…………何から何まで突然過ぎて現実だと今でも思えないが…………―――そうだ!クロスベル皇帝の一人であられるヴァイスハイト陛下に将来縁戚関係を結ぶことになる俺達―――いや、”娘”のメサイアが何とか面会して、メンフィルと共にエレボニアとの戦争を止めるように説得する事はできないか!?」
表情を引き攣らせながら呟いたエリスの推測に疲れた表情で頷いたリィンはある事を思いついて真剣な表情でメサイアに訊ねた。
「いえ、面会まではできるでしょうけど、お父様の性格を考えると”娘の嘆願如きで、戦争を中止するような事は絶対にありえませんわ。”」
「ぜ、”絶対にありえない”って………そのヴァイスハイト陛下という方は一体どういう性格をされている方なのでしょうか…………?」
複雑そうな表情で首を横に振ってリィンの推測を否定したメサイアの答えを聞いたセレーネはメサイアにヴァイスの性格を訊ねた。

「お父様は民思いで”好色家”であり、女性にはとても優しい方ですが常に”上”を目指す向上心や”皇族”としての自覚を人一倍持っている方ですから、”私情”では決して”国”の運命を決めるような事はなさらない方ですわ。―――例え心から愛する方の頼みやお父様にとって大切な方が人質に取られても、お父様自身が決めた”覇道”を変えるような事は絶対にありえませんわ。」
「それは…………」
「確かに皇族―――”皇”としては文句なしの性格ではありますが…………」
「…………っ!ちなみにもう一人のクロスベル皇帝―――ギュランドロス陛下はどんな性格をしている方なんだ…………?」
ヴァイスが決して自分達の嘆願では決して戦争を止めるような性格ではない事を知ったエリスとセレーネが複雑そうな表情をしている中、辛そうな表情で唇をかみしめたリィンはギュランドロスの事について訊ねた。
「ギュランドロス陛下については私もあまり詳しくはないのですが…………少なくともお父様よりも遥かに”野心”に溢れた”皇”である事は断言できますわ。実際、メルキアの宿敵の国家である”ユン・ガソル連合国”の”皇”であったギュランドロス陛下はご自身の代で”宿敵”であるメルキアを滅ぼす為に何度もメルキアに戦争を仕掛けた方ですから…………」
「という事はむしろギュランドロス陛下の方がヴァイスハイト陛下やリウイ陛下よりも遥かに危険な性格の人物という事か…………俺達は何もできず、ここでただエレボニアが滅ぶのを待つしかないのか…………?」
「……………………姫様……………………」
「お兄様…………エリスお姉様…………」
ギュランドロスの好戦的な性格を知って八方塞がりである事に気づいて辛そうな表情を浮かべたリィンとエリスをセレーネは心配そうな表情で見つめた。

「……………………その事ですが…………プリネ皇女殿下達に戦争を止める事は無理でも、せめてエレボニアを滅亡させずに済む方法を訊ねた所、決して”ベスト”ではなく”ベター”―――いえ、”何もしないよりはマシ”な結果でエレボニアを滅亡させずに済む方法がある事を教えて頂きましたわ。」
リィン達の様子を見て少しの間黙り込んだメサイアは決意の表情を浮かべてリィンを見つめてある事を伝え
「え……………………」
「!?一体どんな方法だ、それは!?」
メサイアの話にエリスが呆けている中リィンは血相を変えてメサイアに訊ねた。
「先程も口にしたように”ベスト”や”ベター”ではなく、あくまで”何もしないよりはマシな結果”の上エレボニアの内戦を終結させた時よりも遥かに茨の道ですわよ?それでも知りたいのですか?」
「ああ…………アリサ達が…………クロウが守ろうとしたエレボニアが滅亡する事をここで黙って見てはいられない!」
「わたくしもお兄様と同じ気持ちですわ…………!アリサさん達―――”Ⅶ組”を始めとしたわたくし達がお世話になった多くの方々の為にも…………そしてクロウさんの犠牲を無駄にしない為にも、わたくしもお兄様と共にその方法に賭けますわ!」
「私も姫様の為にも兄様たちと共にその方法に頼ります…………!」
メサイアの確認に対してリィン達はそれぞれ決意の表情で答えた。

「……………………わかりましたわ。メンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”でエレボニアを滅亡させずに済む方法…………―――それはメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に私達も参戦し、”戦場”で数多の手柄を挙げる事―――つまり、”戦争の英雄”になる事ですわ。」
「え……………………」
「ええっ!?わ、わたくし達がエレボニアとの戦争に…………!?」
「メサイアさんは私達が”戦場で数多の手柄を挙げる必要がある”と仰っていましたが、それがエレボニアの滅亡阻止や姫様を助ける事にどう繋がるのでしょうか…………?」
メサイアが口にした提案にリィンが呆け、セレーネが驚いている中、エリスは不安そうな表情で訊ねた。
「メンフィル帝国は”尊き血”を重視―――つまり、”血統主義”であるエレボニア帝国と違い、貴賤問わずその人自身の能力を公平に評価し、その能力に相応しい地位や褒美を用意する”実力主義”との事。プリネ皇女殿下達の話では実際、過去”戦場”で様々な手柄を挙げた方々やメンフィル皇族の方々が”恩”と感じた事を行った方々が様々な希望が叶えられたり出世したりした事もあったとの事ですわ。プリネ皇女殿下によればリィン様もその方々の一部をご存じとの事ですが…………」
「ああ…………リフィア殿下の親衛隊を率いるゼルギウス将軍閣下やシグルーン副将軍閣下、それにセシリア教官もその例に当てはまるし、”ブレイサーロード”の異名で呼ばれていて遊撃士を務めているカシウス師兄のご息女もかつて結社がリベールで暗躍を行っていた時の出来事でメンフィルの重要人物を助けて、その”褒美”として貴族の爵位を授けられた話をサラ教官から聞いたことがある…………それを考えるとエリゼもその一人になるのか…………」
「エリゼお姉様は若輩の身でありながらも、次代のメンフィルの女帝になる事が内定しているリフィア殿下の専属侍女長を務めている事で、リフィア殿下を始めとした多くのメンフィル皇族達からの信頼を勝ち取り、リウイ陛下御自身もエリゼお姉様を重用していらっしゃっている様子でしたから、夏至祭での”帝国解放戦線”によるテロの際誘拐されかけたエリスお姉様の救出の為に自ら剣を取って、クロウさん達と刃を交えましたし、その後もエリスお姉様とアルフィン殿下が陛下達に許可も取らずにアルフィン殿下のお付きを務めていた事も”注意”で済ませて、多めに見て下さりましたものね…………」
「あ…………」
メサイアの指摘にリィンは静かな表情で頷き、セレーネが呟いた推測を聞いたエリスはかつての出来事を思い出した。

「リィン様達が”戦場”で手柄を挙げ続ければ、自ずとリィン様達の地位も高くなるでしょう。―――それこそ、”戦後のエレボニアの処遇について口出しできる権限の地位”に就ける可能性もありえますわ。」
「た、確かにその方法ならばエレボニアを滅亡させる事を防ぎ、アルフィン殿下を救う事もできると思いますが、その為には…………」
「……………………俺達が”エレボニア帝国征伐”で手柄を挙げる――――領邦軍、正規軍関係なくエレボニアの多くの兵達や軍の上層部に貴族、更には”アルノール皇家”の方々を殺害、もしくは捕縛する必要があるという事か…………」
「そ、それは…………」
メサイアの推測を聞いたセレーネは不安そうな表情をし、複雑そうな表情で呟いたリィンの推測を聞いたエリスは辛そうな表情を浮かべた。
「…………リィン様達の場合皇族はともかく、兵や軍の上層部、貴族に関しては”殺害”でなければメンフィル帝国はリィン様達の忠誠を疑う可能性も考えられますわ。リィン様達はメンフィル帝国に許可も取らずに”他国”であるエレボニアの内戦終結に貢献した事から、リィン様達を親エレボニア派―――戦争相手であるエレボニアの為にメンフィルを裏切る可能性がある人物達として見ているかもしれませんし…………」
「そ、そんな…………確かにエレボニアの方々は私達にとって大切な方々ですが、幾ら何でも祖国であるメンフィルを裏切るような事は私達はしません…………!」
「…………だけど、それをメンフィルに証明する”方法”は今の俺達にはない。そして俺達の事を信用してもらい、エレボニアの滅亡を防ぎ、アルフィン殿下を救う為には”エレボニア帝国征伐”にメンフィル帝国軍の一員として参戦して、数多のエレボニアの兵士達や軍の上層部、貴族の命を奪わなければならないという事か…………」
メサイアの指摘を聞いて悲痛そうな表情を浮かべたエリスは反論し、複雑そうな表情で呟いたリィンは静かな表情になってその場で考え込んだ。

お前らは……まっすぐ前を向いて歩いていけ……ただひたすらに…………ひたむきに…………前へ…………へへ…………そうすりゃ…………きっと……………………

「…………………………………………」
「兄様…………?一体何を―――」
”煌魔城”でのクロウ―――”大切な友”の”遺言”を思い出したリィンはその場で目を伏せて黙って考え込んだ後決意の表情になって、懐から”Ⅶ組”の生徒手帳とARCUSを取り出して取り出した手帳とARCUSを見つめ、それを見たエリスが不思議そうな表情を浮かべて声をかけたその時
「八葉一刀流―――”四の型”紅葉切り。」
手帳とARCUSを放り投げた後その場で太刀を抜いて二つに向かって剣技を放った。すると手帳とARCUSはそれぞれ真っ二つに分かれて絨毯に落ちた!
「お、お兄様!?どうして生徒手帳とARCUSを…………!?」
「…………俺自身に発破をかけて、覚悟を決める為さ。―――Ⅶ組と…………アリサ達と決別する事を恐れていたかつての俺と決別する為にも…………」
「に、兄様…………」
「……………………リィン様は本当にそれでよろしいのですね?”エレボニア帝国征伐”に参戦すれば、Ⅶ組の方々を始めとしたトールズ士官学院の生徒達の親族や関係者である軍人や貴族の方々の命を奪う事もそうですが、最悪の場合”Ⅶ組”とも刃を交える事が起こるかもしれませんわよ?」
自身の行動に驚いているセレーネに答えたリィンの決意を知ったエリスは辛そうな表情でリィンを見つめ、メサイアは真剣な表情でリィンに確認した。

「ああ…………いざ、その時が来た時にクロウのように割り切って戦えるかどうかは今でもわからないけど…………それでも、その方法でしか残されていない以上、俺はメンフィル・クロスベル連合側として”エレボニア帝国征伐”に参戦する――――!」
メサイアの問いかけに複雑そうな表情を浮かべて答えたリィンは決意の表情を浮かべて窓から見える景色を見つめた――――

 
 

 
後書き
この話の最後でキャラ紹介のOPが入ると思ってください。なお、OPのBGMは閃Ⅳの”変わる世界 -闇の底から-”で、最初に映る仲間キャラはリィン、エリゼ、エリス、セレーネで、その後リィン側の仲間として現時点で予定しているキャラ達が仲間になる順番(ステラ、フォルデ、アルティナ、”鉄機隊”全員、アルフィン、ミュゼ、クルト、プリネ、ツーヤ、エヴリーヌ、レーヴェ、リフィア、ゼルギウス、シグルーン、リアンヌ、ローゼリア)に映った後、リウイ達、ヴァイス達、セリカ達、ユウナを加えたロイド達、エステル達、エイドス達が映った後Ⅶ組と対峙しているシーンのリィン(ガタガタブルブル)が映り、リィン達にとっての敵陣営であるⅦ組やその協力者達、結社の残党、”鉄血の子供達(アイアンブリード)”、ルトガーを含めた”西風の旅団”メンバー、アルベリヒとゲオルグとジークフリード、そしてギリアス・オズボーンが映り、最後は戦艦の甲板から景色を見つめているそれぞれの起動者の背後にヴァリマール、ヴァイスリッター、アルグレオン、(もしかしたら)テスタ=ロッサが映ると思ってください♪) 

 

第2話

1月7日、PM4:30―――


メンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に加わる事を決めたリィン達は毎日様子を見に来ているエリゼが来訪するのを待っていた。

~メンフィル帝国・マルーダ城・客室~

「兄様、今よろしいでしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。」
「……………………失礼します。」
リィンの許可を聞いたエリゼは部屋に入り、リィン達を見回して誰一人抜け出す事もせずに大人しく客室にいる事に僅かに安堵の表情を浮かべた。
「…………その様子だと、メンフィル帝国は俺達がここを抜け出してエレボニアに向かう事も警戒しているのか?」
「いえ…………兄様達の性格を熟知している私の独断によるものですから、毎日この部屋に来ている事にメンフィル帝国からの指示等ではありません。」
静かな表情を浮かべたリィンの問いかけにエリゼは複雑そうな表情で答えた後少しの間黙り込み、決意の表情を浮かべてある事を伝えた。
「―――兄様。本日メンフィル帝国軍によるトールズ士官学院からのヴァリマールの回収を終えました。ちなみに騒ぎを聞きつけたその場に現れたのはⅦ組の方々だけでなく、ヴァンダイク学院長とアルフィン殿下もいました。」
「え…………どうして、姫様がトールズ士官学院に…………」
「…………恐らく何の連絡もなく中々帰ってこないエリスお姉様が心配になって、お兄様が何か知っていないかを訊ねる為だと思いますわ…………」
「あ…………」
エリゼの話を聞いてアルフィン皇女がトールズ士官学院にいた理由を不思議に思ったエリスだったがセレーネの推測を聞くと辛そうな表情を浮かべた。

「そうか…………戦争状態になるとわかっている国にみすみすヴァリマールの保管を任せる事はしないと思っていたが、既に回収していたのか…………」
「…………?それでⅦ組の方々にもそうですがヴァンダイク学院長とアルフィン殿下にもメンフィルはユミルの件を理由にエレボニアを征伐するつもりである事を伝え…………――――ヴァンダイク学院長とアルフィン殿下には”メンフィル帝国政府の政治的判断”により兄様、セレーネ、そしてエリスの退学届けを渡しました。」
「…………っ!そう、ですか…………」
「メンフィル帝国とエレボニア帝国が戦争状態に陥ってしまう事を想定している以上、そうなってしまいますわよね…………」
ヴァリマールをトールズ士官学院から無理矢理回収した事に怒るどころか、冷静な様子で答えたリィンを不思議に思ったエリゼだったがすぐに気を取り直してリィン達に退学の件を伝え、エリゼの説明を聞いたエリスは息を呑んだ後セレーネと共に辛そうな表情を浮かべた。
「…………ヴァリマールがメンフィル帝国軍に回収されたのはちょうどよかった…………戦場でエレボニア帝国軍を圧倒して手柄を挙げる為にはヴァリマールの力も必ずいると思うしな…………」
「え……………………――――!?に、兄様…………まさかとは思いますが、メンフィル帝国軍による”エレボニア帝国征伐”に参戦なさるおつもりなのですか!?」
静かな表情で呟いたリィンの言葉を聞いたエリゼは一瞬呆けた後血相を変えてリィンに訊ねた。
「その”まさか”だ。」
「その…………エリゼお姉様。お兄様だけでなく、わたくしとエリスお姉様もメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に参戦したいので、どうかリフィア殿下に待機指示からメンフィル帝国軍に加わる事ができるように取り計らって頂けないでしょうか?」
「な――――兄様だけでなく、セレーネとエリスまで”エレボニア帝国征伐”に…………!?―――いえ、それよりもどうしてメンフィルがクロスベルと連合を組んだ事をご存じなのですか…………!?」
リィンの後に答えてある事を頼んだセレーネの言葉に一瞬絶句したエリゼは信じられない表情でリィン達を見つめて問いかけた。そしてリィン達はメサイアに情報収集をさせて、その結果様々な状況を知る事ができた事や戦争に参戦する理由を説明した。

「そうですか…………プリネ皇女殿下達がメサイア様に…………そして兄様達はエレボニアの方々の為に、敢えてエレボニア帝国征伐に参戦なさるおつもりなのですか…………」
事情を聞き終えたエリゼは疲れた表情で溜息を吐き
「それでエリゼ。何とか待機指示が出されている俺達をメンフィル帝国軍の一員として加える事はできないか?」
「…………可能か不可能かで言えば”可能”です。元々兄様は待機指示が解かれた際はエレボニアの内戦を終結に貢献した事で実力が訓練兵時代よりも飛躍的に上がった事を考慮してでリフィアの親衛隊に所属する事が内定しています。それにメンフィル帝国人であるセレーネとエリスも”エレボニア帝国征伐”の為に現在メンフィルの民達に呼びかけている”義勇軍”の一員としてメンフィル帝国軍に所属する事が可能の上、編成の際は兄様と同じ部隊として配置する事は可能です。」
「そうか…………リフィア殿下の親衛隊に所属する事が内定していた話には驚いたが、それはそれで更に都合がいいな…………シルヴァン陛下の跡継ぎであられるリフィア殿下がすぐに俺達が挙げた手柄を知る事ができるしだろうしな…………」
エリゼの答えを聞いたリィンは静かな表情で呟いた。
「兄様、確かにメサイア様やプリネ皇女殿下達が仰ったようにエレボニア帝国征伐で様々な手柄を挙げる事ができれば、エレボニアの滅亡を防ぎ、アルフィン殿下の本来の処遇を軽くすることも可能でしょう。ですがその為には内戦の時とは比べ物にならないくらいの辛い道を歩まなければならない事は理解していらっしゃっているのですか?場合によってはⅦ組の方々と刃を交える事があるかもしれませんよ?」
「覚悟の上だ。そしてこれがその証拠だ。」
エリゼの問いかけに頷いたリィンはエリゼに太刀による斬撃によって二つに分かれた生徒手帳とARCUSを手渡した。

「これは……………………―――わかりました。兄様がその道を決めた以上、その背中を守り、そして支えるのが妹の…………婚約者の務め。エレボニア帝国征伐が始まるよりも前に兄様がリフィアの親衛隊に所属できるように取り計らいましょう。」
リィンから手渡された生徒手帳とARCUSを見て驚きつつリィンの”覚悟”をすぐに悟ったエリゼは真剣な表情で頷いて答えた。
「ああ、頼む…………!」
「セレーネに関してはルクセンベール卿が確かめるのが”筋”だから…………――――エリス、貴女までエレボニア帝国征伐に…………”戦争”に参戦するなんて、”本気”なの?」
「―――はい。姫様の為…………兄様を支える為に、私も剣を取って兄様達と共にエレボニア帝国征伐に参戦します…………!」
エリゼの確認に対してエリスは決意の表情で答えた。
「戦争に参戦するのだから当然敵国―――エレボニア帝国の軍人や貴族達の命を奪わなければならないのよ?”人と命の奪い合い”をすることは魔獣との戦闘とは訳が違う事はわかっているの?」
「勿論理解しています。…………と言っても実際にその状況に陥った事もない私の言う事では信用できないかもしれませんが…………それでも、もう私だけ兄様達に置いて行かれるのは嫌なんです…………!」
「エリスお姉様…………」
エリスの想いを知ったセレーネは辛そうな表情でエリスを見つめ
「本当は、戦争が終わるまで兄様達と共にユミルで待機してもらえるように手配しようとしていたのだけどね………………………………」
エリゼは複雑そうな表情でエリスを見つめて少しの間黙って考え込んだ後ある事をエリスに伝えた。

「―――一つ条件があるわ。」
「え…………”条件”ですか?」
「ええ。さっきも説明したようにメンフィルはエレボニア帝国征伐の為に民達も参戦できる”義勇軍”を臨時的に結成することを決めたわ。そして明日その”義勇軍”の所属を申し出た民達や新たに配属予定の訓練兵達に”人の命を奪う経験”をさせる為に、正規軍と共にメンフィル帝国の領土内に潜伏している賊の討伐を行うわ。貴女もそれに参加して一人でいいから賊の命を奪って、その戦いを経験してもなお、エレボニア帝国征伐に参戦すると言えるのだったら、貴女も参戦できるように取り計らうわ。」
「”あれ”か…………」
「お兄様はエリゼお姉様が仰った件をご存じなのですか?」
エリゼが口にした条件を聞いたリィンは複雑そうな表情で呟き、リィンの言葉を聞いたセレーネはリィンに訊ねた。
「ああ…………メンフィル軍はいつ”戦場”に配属されてもいいように訓練兵の内に”人の命を奪う事”を経験させるために、正規軍が定期的に行っている賊や盗賊団の討伐に参加させているんだ。…………勿論その討伐戦は今まで失敗した事がない上、どの討伐戦も圧倒的な勝利で賊達を殲滅しているけど、それでも”本物の実戦”だから、当然メンフィル軍からも死者が出る事はある。前から聞こうと思っていたけど…………やっぱりエリゼも既に”あれ”に参加して、賊の命を奪っているんだな?」
「はい。兄様はどうなされますか?訓練兵時代に経験しているとはいえ、その件以降今まで人の命を奪った事がないのですから、その感覚を思い出す為にも参加なさりますか?」
「そうしてくれ。エリスを傍で守る為にも…………そして、エレボニア帝国征伐に参加する前にもう一度人を”斬る”感覚を取り戻しておく必要があるだろうしな。」
「わかりました。…………恐らくルクセンベール卿も今の件を聞けば、その戦いにセレーネも参加する事を条件とすると思うから、セレーネもその戦いに参加する覚悟を今の内にしておいた方がいいと思うわ。」
「わかりましたわ。」
そしてエリゼはリィン達の件をリフィアに相談する為にリフィアがいる執務室を訊ねた。


~リフィア皇女専用執務室~

「リフィア殿下、よろしいでしょうか?」
「む?エリゼか。――入ってよいぞ。」
「…………失礼します。」
部屋の主であるリフィアの許可を取ったエリゼが部屋に入ると部屋にはリフィアの他にもツーヤがいた。
「ルクセンベール卿?リフィアに何か用があったのでしょうか?」
「ええ、例の戦争の件でマスターがリフィア殿下に用がありましたので。」
「…………そうですか。ルクセンベール卿もいらっしゃっているのでしたら、ちょうどよかったです。」
「???えっと………エリゼさん、あたしに何か用があるのでしょうか?」
エリゼが呟いた言葉の意味がわからないツーヤは首を傾げた後エリゼに訊ねた。

「その件についてはすぐにわかります。―――リフィア。兄様達の件だけど…………」
「む?ああ、待機場所をマルーダ城からユミルに変える件か。それならばリウイと父からも既に許可が下りたから、リィン達はいつでもユミルに帰郷してもよいぞ。」
「いえ――――兄様、エリス、それにセレーネの三人もメンフィル帝国軍の一員として、メンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に加わる事を希望しているとの事だから”エレボニア帝国征伐”時の兄様達が三人とも一緒の部隊に所属させたいから、その件についての相談をしたいの。」
「何じゃと!?」
「ええっ!?リィンさんとエリスさん、それにセレーネが!?エリゼさん、本当にリィンさんとエリスさんもそうですが、セレーネも”エレボニア帝国征伐”に参戦する事を自分の意志で決めたのですか!?」
エリゼから聞かされた驚愕の報告にリフィアと共に驚きの声を上げたツーヤは信じられない表情でエリゼに確認した。

「はい。兄様の”パートナードラゴン”として、そしてセレーネ個人としても今回の戦争に参戦する事を決めたとの事です。」
「―――すみません、リフィア殿下!今からセレーネに会って確認したい事がありますので、少しの間失礼します!」
そしてエリゼの答えを聞いたツーヤは血相を変えて部屋から退出し
「…………エリゼよ。何故リィン達はエレボニア帝国征伐に参戦する事を決めたのじゃ?余もそうじゃが父やリウイ達もトールズやアストライアに留学している件でエレボニア人達と親しくなったリィン達がエレボニア帝国征伐の件を知れば、戦争を止める為に何らかの行動を移す可能性が確実じゃと思ったから、予めエレボニアからリィン達を離して戦争が終わるまで一か所に待機させ続けるつもりだったのに、何故そのリィン達が参戦の意思を…………」
ツーヤが部屋から退出するとリフィアは困惑の表情でエリゼに訊ねた。そしてエリゼは事情を説明した。

「…………なるほどの。プリネ達が”方法”を教えたとはいえ、まさか本当にその”方法”を取る事に決めるとは…………」
「…………ちなみにこれが兄様の”覚悟”よ。」
事情を聞き終えたリフィアがその場で考え込んでいるとエリゼがリィンから渡された手帳とARCUSをリフィアの目の前の机に置いた。
「二つに斬られた手帳と戦術オーブメント…………?」
「―――兄様のトールズ士官学院の生徒手帳とARCUSよ。」
「なぬっ!?そんな大切な物をこのような有様にしたという事はリィン達は”本気”という事なのか…………」
エリゼの答えを聞いたリフィアは驚いた後真剣な表情で手帳とARCUSを見つめた。
「それで早速で悪いのだけど、その件で相談があって――――」
こうして…………リィン達はエリゼの手配によって義勇兵や訓練兵も同行するメンフィル帝国軍による賊の討伐戦に参加する事になり、翌日



1月8日、同日12:00―――

~メンフィル王公領セルノ・バルジア統合領・街道~

街道を十数両の馬車が駆けていた。そして先頭の馬車が先に進む道が倒木によって先に進めない事に気づくと馬車を止め、先頭の馬車が停車すると後続の馬車達も次々と停車した。そこに両側から無数の矢が襲い掛かり、馬車の周囲や馬車に矢が刺さった!
「ヒハハハハハ!メンフィル軍や領主共は”エレボニア”とかいう国との戦争の準備で俺達みてぇな連中に構う暇はねぇらしいからな。今が稼ぎ時だぁ!野郎共、金目の物と女を根こそぎ奪え!男は皆殺しだぁっ!!」
すると両側にある森から人相の悪い男―――主に街道を通る商人の馬車等を襲撃する賊が出てきて部下達に号令をかけ
「オオオオオォォォォ――――ッ!!」
号令に対してそれぞれの武器を掲げた部下達はそれぞれ下卑た笑みを浮かべて馬車に襲い掛かった。するとその時馬車の幌の中から次々と姿を現した銃口から銃弾が襲い掛かった!
「え”…………」
「い、一体何が…………?」
「ぐふっ…………!?」
「いてぇよぉ…………!?」
「俺の足がぁぁぁぁぁっ!?」
銃弾に心臓や頭を撃ち抜かれた賊達はその場で絶命し、運悪く手足に命中した賊達は痛みに呻いていた。

「なっ、一体何が…………!?」
「!?お、お頭…………!う、上…………!」
「上だと…………?な――――」
突然の出来事に呆然とした賊のリーダーは部下の言葉を聞いて空を見上げて雲の中から現れた戦艦――――”マグナニム”を見ると絶句した。
「誰が戦争の準備で忙しくてお前達のような外道共を討伐する暇がないって?」
するとその時馬車から槍を持つ碧髪の青年が現れて不敵な笑みを浮かべて賊達に問いかけ、青年に続くように馬車から次々とメンフィル兵達が現れ、更に”マグナニム”の甲板に整列していたリィン達を含めた多くの兵士達が予め描かれていた転移魔法陣によって賊達を包囲するように次々と転移で現れた!

「テ、テメェは領主の息子の…………!?」
「し、しかもメンフィルの兵士達があんなにたくさん…………!?」
「畜生!?罠か…………!」
青年―――セルノ・バルジア統合領の領主の息子にしてメンフィル皇家の分家の一員であるエフラム・ファラ・サウリン・マーシルンの登場に賊達は狼狽え始め
「エレボニア帝国征伐を行う為に戦争の隙を突いて民達に危害を加える後顧の憂いはとっとと絶たせてもらう!」
エフラムは自身の得物である槍を構え
「―――――これより賊の討伐を始めます!総員、一人残らず殲滅しなさい!決して一人も逃がしてはなりません!!」
「オオオオオォォォォォ――――ッ!!」
エフラムに続くように鞘から細剣(レイピア)を抜いた蒼髪の娘―――エフラムの妹であるエイリーク・ファラ・サウリン・マーシルンの号令に力強く答えたメンフィル兵達は賊達に向かい、戦闘を開始した!

「クソ―――ッ!!」
「お、お頭!?」
「一人だけ逃げようとするなんて、ずるいっすよ!?」
メンフィル兵達との戦いによって一気に総崩れになって次々と討ち取られて行く部下達を見て勝ち目はないと判断した賊のリーダーは森に向かって逃亡し始め、それを見た部下達もリーダーの後を追って行ったが森の前には予め転移によって配置されていたリィン達が立ち塞がった!
「―――あんた達には俺達に”戦場に出る覚悟”を決めさせる為の”糧”になってもらう。エリス、セレーネ、行くぞ!!」
「「はいっ!!」」
リィンは賊のリーダー達に太刀を向けて宣言した後号令をかけ、リィンの号令にエリスとセレーネは頷き
「ガキ共が!舐めやがって…………!やっちまうぞ、テメェ等!!」
「オオオォォォ―――ッ!!」
一方リィンの言葉に表情を歪めた賊のリーダーは部下達に号令をかけたが
「二の型―――疾風!!」
「へ――――」
「速い――――」
部下達の一部はリィンのカマイタチを纏った電光石火の攻撃によって首を刈り取られて絶命し
「ヤァァァァァ………ホーリーインパクト!!」
「ぐぎゃああああああっ!?」
「がああああああああっ!?」
残りの部下達はセレーネの光の魔力を込めた薙ぎ払い攻撃によって身体を横に真っ二つにされた後絶命した!

「なああああああああっ!?何なんだよ…………何なんだよ、テメェ等は!?」
一瞬で部下達が絶命した事に驚いた賊のリーダーは信じられない表でリィン達を見つめ
「…………後は貴方だけです。――――――御覚悟を。」
「ガキが…………舐めるなぁぁぁぁぁぁっ!!」
自分と対峙して細剣を構えたエリスの言葉に怒り心頭になり、自身の得物である斧を大きく振りかぶってエリス目がけて振り下ろした!
「…………!ヤァァァァァァァ――――ッ!!」
自分目がけて振り下ろされた斧をエリスはよく見て回避した後斧を地面に叩き付けた事ですぐに態勢を戻せない相手の後ろに回って背後から相手の心臓目がけて細剣で力を込めた突きを放った!
「ガハッ!?…………こ、この俺が…………こ、こんな女子供にやられる…………だと…………ぐふっ!?」
背後から心臓を貫かれた賊のリーダーは口から大量の血を吐いた後自分の心臓を貫いている細剣を信じられない表情で見つめながら絶命して地面に倒れた!

「ハァ…………ハァ…………わ、私………………人を…………」
「これが…………人と人が命を奪い合う…………戦なのですわね…………」
「エリス…………セレーネ…………」
初めて人の命を奪った事でそれぞれ顔色を悪くしているエリスとセレーネをリィンは辛そうな表情で見つめたが
「よくも、お頭を――――ッ!」
「ぁ――――」
「させるかぁぁぁぁぁぁ――――ッ!!」
距離が離れた場所にいた他の賊が憎悪の表情を浮かべて弓に番えた矢をエリスに放とうとし、初めて人の命を奪った事によるショックと咄嗟の出来事にエリスの反応が遅れ、リィンがエリスを守る為に瞬時に”鬼の力”を解放してエリスに矢を向けた賊に向かおうとしたその時!
「ぐぎゃああああああっ!?」
賊は突如炎に包まれ、炎は賊を骨まで残さず焼き尽くした!

「エリスお姉様、大丈夫ですか!?」
「え、ええ…………よくわからないけど、助かったみたいね…………」
賊が焼き尽くされた後すぐに我に返ったセレーネに心配されたエリスは戸惑い気味に答え
「(今の炎は一体…………味方の魔術師によるものか…………?)…………とにかく、これでエリゼとルクセンベール卿の条件は果たした。二人ともよく頑張ったな…………」
元の姿に戻ったリィンは炎を放った使い手について考え込んだがすぐに気を取り直してエリスとセレーネに優しく声をかけて抱き締め
「兄様…………私…………私…………っ!」
「う…………あああああぁぁぁぁ…………っ!?」
リィンに抱き締められた二人は緊張が解けた事や初めて人の命を奪った事によるショックによって泣き始めた。

(二人とも本当によく頑張ったわね…………だけど、今の炎の魔術――――――”メルカーナの轟炎”は誰が放ったのかしら…………?”メルカーナの轟炎”のような上位魔術が使える人物で今回の討伐戦に参加なされているのはエイリーク皇女殿下のみの上、そもそも”エイリーク皇女殿下は火炎属性魔術は扱えないはず”だけど…………)
リィン達の様子を物陰から見守っていたエリゼは安堵の溜息を吐いた後リィン同様エリスを助けた人物の事について考えていた。
「うふふ、純粋無垢な女の子がピンチだったから気まぐれに助けてあげたけど、中々面白そうな男の子がいるじゃない♪何やら色々と”訳あり”のようだし、久しぶりに気まぐれにするあの”勝負”を申し込んであげようかしら♪」
一方高位火炎魔術を放ってエリスを助けた人物――――下着としか思えないような扇情的な服を身に纏った妖美さを漂わし、撫子色の髪を腰までなびかせ、まさに”絶世の美女”と言ってもおかしくない美しい容姿とセレーネと同格の豊満な胸を持つ睡魔族の女性が空から興味ありげな様子でリィン達を見守っていた後転移魔術でその場から消えた―――― 
 

 
後書き
という訳で今回の話の最後で登場したキャラは皆さんご存じのキャラですwwこの物語のリィンの使い魔は多分3人で、リザイラとミルモは原作通りセリカの使い魔として登場させると思います。(まあ、他の物語と違って使い魔がたった3人でもその内の二人がいれば、リザイラがいない穴は十分補えると思いますがww)ちなみにリィンの使い魔は割と早い段階で揃う予定です。…………まあ、もしかしたら今までいなかったリィンの使い魔枠である天使キャラが新たに加わるかもしれませんが、今の所その可能性はほとんどありません。ちなみに出せるとしたらユリーシャあたりですかね…………?あ、でも元々いるリィンの使い魔(?)の一人の性能考えたら、そのキャラの下位互換のユリーシャはいらねぇ…………(そんな所まで原作と同じww) 

 

第3話

その後―――賊の殲滅を終えたメンフィル軍は戦後処理を行って帰還した後義勇兵や訓練兵の為の打ち上げをし、打ち上げに参加したリィン達は明日に備えて休む前に城内にある大浴場で身体を清めて湯につかって一日の疲れを癒していた。そしてセレーネの念話で先に上がって部屋に戻って欲しいとの内容を受け取ったリィンは大浴場から上がって客室に戻っていた。


同日、PM9:30――――――

~マルーダ城・客室~

(なんとかみんな無事に終える事ができたけど…………まだまだだな、俺は…………)
部屋に入ったリィンは討伐戦の事を思い返して反省していた。するとその時部屋内は結界に包まれた!
「!?これはまさか…………”結界”…………!?」
「―――構えてください、リィン様!これ程の結界を瞬時に展開できるなんて、相当の使い手ですわ!」
突然の出来事にリィンが驚いているとリィンの傍にメサイアが現れて得物である聖剣を構えて周囲を見回しながらリィンに警告した。
「あら、既に使い魔もいたなんてね。」
するとその時、討伐戦の際にエリスを影ながら助けた睡魔族の女性が転移魔術によってリィン達の目の前に現れた!

「うっ…………その格好…………睡魔族か…………?」
「…………何者ですか?これ程の結界を瞬時に展開できる上、転移魔術までできるなんて、少なくとも貴女はただの睡魔族ではありませんね?」
女性の扇情的な格好を見て思わず顔を赤らめたリィンは気まずそうな表情で女性に訊ね、メサイアは女性を最大限に警戒しながら訊ねた。
「ま、睡魔族とはいえこれでも一応”魔神”だから、この程度朝飯前よ。」
「!!」
「な――――”魔神”って、”闇夜の眷属”の中でも”最強”を誇るエヴリーヌさんと同じ…………!」
女性の言葉を聞いたメサイアは目を見開き、リィンは一瞬絶句した後信じられない表情で女性を見つめた。

「うふふ…………睡魔族の女王種――――”リリエール”にして”七大罪”の”怠惰”を司る”魔神”―――ベルフェゴールよ。」
「っ!その”魔神”が俺に何の用だ…………?」
女性―――”七大罪”の”怠惰”を司る”怠惰”のベルフェゴールが名乗り上げるとリィンは息を呑んだ後厳しい表情でベルフェゴールに問いかけた。
「や~ね、そんな怖い顔をしちゃって。賊の矢に射られかけようとしていた貴方の愛しの妹を助けてあげたんだから、むしろ私は貴方に感謝される側なのよ♪」
「え…………という事はあの炎の魔術は貴女が…………」
ベルフェゴールの話を聞いてすぐに心当たりを思い出したリィンは驚きの表情でベルフェゴールを見つめた。

「そういう事♪」
「…………一体何故”魔神”の方がただの人間のエリス様を?」
「私は純粋無垢で可憐な女の子が大好きなのよ♪あの時たまたま空を散歩していた時に、貴方達が目に入ってあの黒髪の女の子がピンチっぽかったから、気まぐれで助けてあげたのよ。」
「…………そうだったのか。あの時、エリスを助けてくれて本当にありがとう。」
メサイアの質問に笑顔で答えたベルフェゴールにリィンは静かな表情で感謝の言葉を述べた。
「ふふっ、さっきも言ったようにただの”気まぐれ”だから気にする必要はないわよ。――――それよりも、私、貴方に興味があるのよね~。」
「ええっ!?」
「…………俺に?俺はどこにでもいるような普通の人間だが…………」
「クスクス、あの黒髪の子を助ける為に魔族のような力を解放しかけた貴方のどこがただの人間なのかしら?」
「!…………”あれ”も見られていたのか…………」
「リィン様…………」
ベルフェゴールの指摘に目を見開いたリィンは複雑そうな表情をし、リィンの様子をメサイアは心配そうな表情で見つめた。

「ま、それも私にとっては大した事じゃないから別にどうでもいいわ。今日貴方に会いに来たのは”勝負”を申し込んであげるためよ♪」
「…………俺に”勝負”?一体何の…………というか一体何の為に、そんな事を…………」
「暇つぶしも兼ねた私の趣味みたいなものよ。もし私に勝てたら、私にして欲しい事を私ができる範囲で叶えてあげる♪―――どう?とっても魅力的な話でしょう?」
「…………確かに”魔神”の協力を得る事は魅力的だけど、当然それを得る為に負わなければならないリスクはあるだろ。負けた時俺はどうなるんだ?」
ベルフェゴールの提案にリィンは真剣な表情で考え込みながらベルフェゴールに問いかけた。
「負けてもせいぜい、明日一日動けなくなるくらい精気を奪われるだけだから、そんなに怖がる必要はないわよ♪」
「”魔神”の方ですのに、随分とこちらにとって有利な条件を出されましたわね?睡魔族の方ですから、てっきり負ければ精気全てを奪ってリィン様の命を奪ったり、リィン様を貴女の性奴隷にでもするつもりなのかと警戒していたのですが。」
「失礼ね~。まあ、この世界の人達にとって”魔神”は恐怖の対象であるし、実際大概の”魔神”は残忍な連中も多いけど、私はこれでも”魔神”の中でも結構穏便な性格だと自負しているわよ?私の敵でもない人達を殺すなんて悪趣味な事はしないし、気持ちいいコトをする事や面白い物を見る事の方がよっぽど好きだし、”魔神”の中では”人間”という種族自体も好きな方よ?」
メサイアの指摘に対して呆れた表情で反論したベルフェゴールはリィン達にウインクをした。

「…………それで”勝負”の内容は?」
「うふふ、それは勿論――――性行為(セックス)に決まっているじゃない♪」
「え”―――ちょっ!?」
「予想はしていましたが”やはり”ですか…………」
ベルフェゴールは勝負内容を口にした後僅かに隠していた布を取って豊満な胸を完全に顕わにし、ベルフェゴールの答えに表情を引き攣らせたリィンはベルフェゴールが胸を顕わにすると慌てて視線をそらし、メサイアは疲れた表情で呟いた。そしてベルフェゴールは指を鳴らした。するとリィンとベルフェゴールは転移魔術によって近くのベッドに転移し
「へ――――なっ!?」
「ふふっ、勝てば”魔神”である私に協力してもらえることができるし、負けてもスタイルが自慢の睡魔族の中でも極上の身体の私の身体を気絶するまで味わえて、私は貴方の精気をたくさんもらえるからお互いにメリットがある”勝負”でしょう?」
「い、いやいやいや…………っ!?睡魔族の貴女はそんな軽い気持ちでそういう事をすることに抵抗がないかもしれないけど、人間の俺にとっては色々と問題がある勝負内容だ!それに俺にはメサイアも含めて既に4人も将来を共にする事を決めた女性達がいるんだから、メサイア達を裏切るような事はできないって!」
妖艶な笑みを浮かべて迫って来るベルフェゴールにリィンは必死の様子で反論した。

「あら、てっきりその娘と合わせて3人の女の子を落としていると思っていたけど、まさかまだいたなんてね。なのにそんな初心な反応…………ふふっ、ますます気に入ったわ♪―――という訳で少しの間、この子を借りるわよ♪」
「…………例えリィン様が”勝負”に負けても、本当にリィン様に何もしませんわよね?」
「さっきも言ったように私に対して明確な敵意を向けてこない限り、無差別に命を奪ったりするような事はしないわよ。勿論純粋にこの子の事を想っている貴女達からこの子を寝取るような趣味の悪い事もしないわよ。ちょっとだけ”火遊び”をするだけよ♪」
「…………わかりましたわ。エリス様を助けた件もありますから、その言葉、一応信じておきますわ。」
「ちょっ、メサイア!?」
ベルフェゴールの意志を知ってベルフェゴールが自分に対してしようとする行為を止めるどころか自分の身体の中に戻ったメサイアを見たリィンは慌て
「それじゃ、お邪魔虫もいなくなった事だし、お互いに気持ち良くなりましょうか♪」
ベルフェゴールはリィンを押し倒して、”性行為”を始めた。

1時間半後”全て”が終わり、お互いに脱いだ服を着終えると、そこには理性が戻った事でエリゼ達に対する罪悪感等で後悔しているリィンと満足げな様子のベルフェゴールがいた。

「ううっ、押し倒されたとはいえ、エリゼ達以外の女性としてしまうなんて…………!」
「あら、その割には途中からノリノリで私を犯して躊躇う事無く何度も中に出した上、最後の”お掃除”も貴方が私の意志を確認する事もなく無理矢理私にさせたじゃない♪」
「う”っ…………!い、いやでも、睡魔族の貴女の事だから行為の最中に俺に魅了魔術とかを使ったんじゃ…………?」
後悔していたリィンだったがベルフェゴールに図星を突かれると唸り声を上げた後ある事に気づいてベルフェゴールに指摘したが
「まあ、前戯の時に使ったから魅了魔術を使った事は否定しないけど、私が使ったのは興奮をちょっとだけ高めるやつだけよ?完全に意思を奪って自分が干からびるまで私を犯させる相当強力な魅了魔術も使えないこともないけど、セックスで昂っていたとはいえ、落ち着いた後に貴方はちゃんと自分の意志で私を犯した事を自覚しているじゃない♪」
「そ、それは…………」
ベルフェゴールに正論を突かれると答えを濁した。

「うふふ、それにしてもセックスでこの私を満足させても続けられるくらいの絶倫だなんて驚いちゃったわ♪既にご主人様が落とした4人の女の子達との経験もあるでしょうけど、一番の要因はあの”魔人”みたいな姿になる何らかの”異能”のお陰かしら♪」
「ぐっ…………(ひ、否定できない…………)―――って、”ご主人様”?それって、どういう意味だ?」
ベルフェゴールの指摘に唸り声を上げたリィンだったがベルフェゴールが自分を”主”呼ばわりした事を不思議に思ってベルフェゴールに訊ねた。
「そのままの意味よ?あのメサイアって女の子同様、さっきの性魔術(セックス)で私をご主人様の”使い魔”として契約を結んだから、今日から私はご主人様の”使い魔”よ♪もしくは”性奴隷”とでも言うべきかしら♪」
「せ、”性奴隷”だなんて人聞きの悪い事を言わないでくれ!―――じゃなくて!何でベルフェゴールは俺の”使い魔”になる事を承諾したんだ!?”魔神”のような凄まじい存在がどうして人間の俺に…………」
「うふふ、私を満足させたあの時はただご主人様の頼みを聞いて、それを叶えればお別れするつもりだったのだけど、私を満足させても続けたご主人様の絶倫さに驚くと共に直感で感じたのよ―――ご主人様は私にとって最高のセックスパートナーだってね♪」
「…………そ、そんな理由の為だけに俺の使い魔になったのか…………!?」
ベルフェゴールが自分の使い魔になった理由を知って大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせたリィンは我に返ると疲れた表情でベルフェゴールに訊ねた。

「あら、睡魔族の女王種でそれも”魔神”の私自身が”最高のセックスパートナー”だと思えるような人物なんて今まで出会えたことがなかったのだから、私にとってご主人様は気が遠くなるような年月を生きてきて初めて出会ったとても貴重な人物よ?」
「え、えっと………(誉めてはいるんだろうけど、喜んでいいのかわからない…………)」
ベルフェゴールの指摘に対してリィンはどう答えればいいかわからない為答えを濁した。するとその時ベルフェゴールが展開した結界が突如解かれた。
「あら、私の結界を解くなんて一体どんな術者かしら?」
「へ。」
結界が解かれた事にベルフェゴールが目を丸くし、リィンが呆けていると扉は勢いよく開けられ、扉からはリフィアの親衛隊長と副長を務める伯爵夫妻――――――ゼルギウス・カドール、シグルーン・カドール、そしてエリゼを先頭に部屋に突入し、ゼルギウス達に続くようにエリス、セレーネ、リフィア、ペテレーネも部屋に突入した!

「お兄様、ご無事ですか!?」
「部屋が強力な結界に包まれていた為、姉様がペテレーネ様を呼んで何とか解いて頂けました!」
「それに援軍も連れてきました!ゼルギウス様とシグルーン様もいらっしゃってくれましたから、もう大丈夫…………で……す……?」
部屋に突入したセレーネとエリスは声を上げ、二人に続くように声を上げたエリゼはリィンとリィンの傍にいるベルフェゴールを見つけると固まり
「あわわわわわわ…………っ!?エリゼ達どころかリフィア殿下、それにゼルギウス将軍閣下やシグルーン副将軍閣下、ペテレーネ神官長までどうしてここに…………!?」
「へえ…………そこの混沌の女神(アーライナ)の神官、”神格者”ね?なるほど、私の結界を解いたのは貴女だったのね。」
エリゼ達どころかリフィア達まで登場した事にリィンは表情を青褪めさせて慌て、ベルフェゴールは興味ありげな表情でペテレーネに視線を向けた。

「…………先程の強力な結界といい、私を一目見て”神格者”だとわかる上、貴女から感じるこの膨大な魔力や異質な気配…………まさか貴女は”はぐれ魔神”なのですか?」
「大正解♪睡魔族の女王種――――リリエール族にして”七大罪”の”怠惰”を司る魔神ベルフェゴールよ。よろしくね♪」
警戒の表情を浮かべるペテレーネの問いかけに対してベルフェゴールはウインクをして答え
「やはり”魔神”か…………!」
「まさか帝城内―――それも、皇族の方々の寝室がある手前の階層に位置する客室への侵入を許すとは。城の警備体制を見直す必要がありそうですわね…………」
「”魔神ベルフェゴール”と言ったか…………何の為に余達の城に侵入し、余の下僕に接触した!?」
ベルフェゴールが名乗るとゼルギウスとシグルーンはそれぞれの得物である大剣と細剣を構えて警戒の表情でベルフェゴールを睨み、リフィアは聖杖を構えてベルフェゴールに問いかけた。

「や~ね、みんな揃ってカリカリして。私はご主人様に用があったてこの城に忍び込んだだけだから、別にこの城にいる人達をどうこうするつもりは毛頭ないわよ。」
「え…………ご、”ご主人様”ってもしかして…………」
「……………………」
ベルフェゴールの答えを聞いたペテレーネは呆けた声を出してリィンに視線を向け、ペテレーネに続くようにその場にいる全員もリィンに視線を向け、視線を向けられたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「そういう事♪今日から私はあのメサイアって娘みたいにご主人様の使い魔の一人になったからよろしくね♪」
そしてベルフェゴールが口にした驚愕の事実にその場は凍り付いた!

「という訳でご主人様、後は説明お願いね~。」
「ちょっ、ベルフェゴール!?戻るならもっと詳しい説明をしてから戻ってくれ…………!」
その場にいる全員が我に返る前にベルフェゴールはリィンの反論を無視してメサイアのようにリィンの魔力と同調してリィンの身体の中に入り
「…………リィン・シュバルツァー。一体どういう事なのか、詳しく説明してもらおうか?」
「はい…………」
ベルフェゴールがリィンの身体の中に戻ると大剣を鞘に収めたゼルギウスがリィンに近づいて真剣な表情でリィンに事情の説明を要求し、要求されたリィンは疲れた表情で頷いた。そしてリィンはエリゼ達にベルフェゴールとの使い魔契約の経緯を”勝負内容”である”性魔術”の部分を誤魔化して説明した。

「ええっ!?という事は本当に先程の魔神――――ベルフェゴール様がリィンさんの”使い魔”になったのですか!?それも戦闘が発生することもなく…………」
「は、はい…………いや、ある意味”戦闘”と呼ぶべき”行為”を行った事は否定できませんが…………」
事情を聞き終えて驚いているペテレーネにリィンは疲れた表情で答え
「え…………?――――――!は、はわわわわわわ…………っ!?そ、その”行為”って、もしかして…………!」
「…………まあ、ベルフェゴール殿が睡魔族であることを考えると、確かにその”行為”はある意味”戦闘”と呼ぶべきかもしれませんわね…………というか、睡魔族の中でも王族種で、それも”魔神”の彼女相手にその”行為”で勝利して彼女を従えたリィンさんは驚嘆に値する存在かもしれませんわね…………」
「やれやれ…………とんだ人騒がせな話だ。」
「そのような細かい事は気にするな!―――それよりもよくぞ”魔神”を従えた!余もお主のような下僕をもって誇らしいぞ!」
リィンの話を聞いてリィンとベルフェゴールが性魔術をした事をすぐに察したペテレーネは顔を赤らめて慌て、シグルーンは苦笑し、ゼルギウスは呆れた表情で溜息を吐き、リフィアは自慢げに胸を張ってリィンを称賛し
「殿下直々よりお褒めの言葉を頂き、恐縮です…………」
称賛されたリィンは気まずそうな表情で答えた。

「―――リフィア殿下、今回の騒ぎに関しての陛下達への報告や警戒態勢を解く必要がありますので、後の事は当事者達同士に話し合ってもらいましょう。」
「ぬ?――――――!!そ、そそそそ、そうじゃな…………!という事でリィンよ、此度の騒ぎ、お主に非はない事は理解しているから罰するつもりはないから安心してよいぞ!行くぞ、ゼルギウス、シグルーン!」
シグルーンに指摘されたリフィアは一瞬何の事かわからなかったがそれぞれ顔を俯かせて膨大な威圧を纏い始めているエリゼとエリスに気づくと血相を変え、慌てながらリィンに今後についての事を伝えてシグルーンとゼルギウスに指示をした後部屋から退出し
「御意。…………殿下の寛大な御心に感謝し、その恩をエレボニア帝国征伐による活躍で返す事を期待しているぞ、リィン・シュバルツァー。」
「え、えっと………色々と頑張って下さいね、リィンさん…………」
リフィアの言葉に会釈して答えたゼルギウスはリィンに一言伝えた後シグルーンと共にリフィアの後を追い、ペテレーネは気まずそうな表情でエリゼ達に視線を向けた後リィンに声をかけて部屋から退出した。

「「に・い・さ・ま~~~~~~~!?」」
「お兄様…………突然の事だった為ベルフェゴールさんと”そういう事”をした事は仕方なかったかもしれませんが、せめてわたくし達が部屋に戻ってくるまで時間を稼いでいて欲しかったですわ…………」
「すいません…………」
そしてその場がリィンとエリゼ達だけになるとエリゼとエリスはそれぞれ膨大な威圧を纏ってリィンに微笑み、セレーネは疲れた表情でリィンに指摘し、リィンは言い訳をすることもなくまず謝罪の言葉を口にした。

こうしてリィンは新たなる心強くて頼もしき仲間を手に入れた――――!
 

 

第4話

クロスベル動乱――――IBCの創始者の家系にして世界一の資産家であり、そして遥か昔から自らの手で失われた”至宝”を造りだす事を目論んでいた錬金術師の一家によって起こされた動乱。

動乱の中心地であったクロスベル自治州で活動するロイド達”特務支援課”もクロスベル動乱に巻き込まれ、一度は仲間達全員が離れ離れになり、自分達にとって大切な存在―――”零の御子”キーアもクロイス家側につく事になってしまったが、ロイド達は多くの協力者達の手を借りてクロイス家によって支配されたクロスベルを解放し、そしてクロスベル解放後に突如現れた謎の大樹―――”碧の大樹”に突入し、大樹内に待ち構えていた強敵達を退け、キーアを取り戻した。

キーア奪還後クロスベルに帰還したロイド達はクロスベルでの役目を終えてアルテリア法国に帰還する事になったワジや山林地帯に戻るツァイトと別れた後、ヴァイス達”六銃士”によって建国された”クロスベル帝国”の帝都となったクロスベルにてかつてのように”特務支援課”としての活動をしつつ、クロスベルの復興にも協力していた。

そんなある日、ロイド達は”特務支援課”の課長であるセルゲイとルファディエルからある知らせについての説明を受けていた。


1月9日、AM9:55―――

~クロスベル帝国・帝都クロスベル・特務支援課~

「”特務支援課”の”追加人員”ですか?」
「ああ…………知っての通り、ワジが”特務支援課”から抜けたからな。その抜けた穴を補強する為に、人員が新たに1名追加される事になった。」
「ちなみに追加される人員は警察学校出身で、まだ卒業の単位を取れていない学生よ。」
「ええっ!?」
「おいおい…………新人どころか警察学校を卒業もしていない雛鳥が何でウチに配属される事になったんっスか?」
ロイドの疑問に答えたセルゲイとルファディエルの説明を聞いたエリィは驚き、ランディは疲れた表情で呟いた後二人に自身の疑問を訊ねた。

「ま、ぶっちゃけて言ってしまえば人材不足を補う為だ。」
「貴方達も知っての通り、”クロスベル帝国”の件で警察、警備隊共に人手が足りない状況よ。そしてその足りない人手を少しでも補う為に警察、警備隊学校で履修中の一部の生徒達も臨時の追加人員として様々な部署に配属される事になったのよ。」
「…………なるほど。確かに今のクロスベルは”猫の手も借りたい”状況ですから、警察や警備隊学校で学んでいる生徒達の手も借りる事にしたのですか。」
「ほえ?猫ならコッペがいるよ~?」
「みゃおん?」
「アハハ…………ルファディエルが言っているのはそういう意味じゃないよ。」
セルゲイとルファディエルの説明を聞いたティオは静かな表情で呟き、キーアは首を傾げて自分の近くで丸まって休んでいたコッペを抱き上げ、キーアの言葉にロイド達が冷や汗をかいて脱力している中未来のキーアは苦笑しながら指摘した。

「その…………課長。追加人員の件も、やはりエレボニア帝国との戦争も関係しているのですか?実際クロスベル帝国軍はカルバード共和国との戦争が終わっても市民達からも”義勇兵”という形で臨時の兵士達を募集し続けていますし…………」
「まあ…………な。クロスベル政府からの情報によると、内戦が終結したエレボニア帝国はクロスベル侵攻に向けて大急ぎで侵攻軍を編成していて、クロスベル侵攻も数日以内という見立てだ。」
「まだ勉強中の警察や警備隊の”雛鳥”でも、専門の知識を学んでいない素人を使うよりはよほど効率はいいって考えで、まだ”雛鳥”の連中の配置も決めたんだろうな、あのリア充皇帝共は…………」
「そうね…………」
複雑そうな表情をしたノエルの質問に答えたセルゲイの説明を聞いてヴァイス達の考えを推測したランディの推測にエリィは複雑そうな表情で頷いた。

「それにしてもエレボニア帝国は内戦が終結したばかりなのに、クロスベルに侵攻しようとするなんて、何を考えているんだろうね~?普通に考えたらまずは内戦で疲弊した自国の立て直しを最優先すべきだと思うのに。ましてや”神機”も破壊した兵器をたくさん保有している今のクロスベルに戦争を仕掛けるなんて、ホント何考えているんだろうね~。」
「エレボニア帝国にはメンフィル軍の諜報関係者達の暗躍によってカルバード共和国に潜入しているエレボニア帝国の諜報関係者が一人残らず暗殺された事で、カルバード共和国の滅亡が未だ伝わっていない為”今の”クロスベルの戦力を以前のクロスベルと同じである事を誤解している事と…………恐らく”宗主国”に逆らったクロスベルを占領する事で、内戦で被害を受けたエレボニアの民達の政府に対する不満を解消する為や他国からクロスベルの件で介入される前に早期にクロスベルを占領しようと考えているのでしょうね。」
「後は資源、経済面共に豊富なクロスベルを占領する事で内戦で疲弊した自国の早期の立て直しを考えているかもしれませんね。」
「恐らく二人の推測はどれも当たっているでしょうね…………」
シャマーラの疑問に対して答えたエリナとセティの推測を聞いたエリィは疲れた表情で同意し
「…………それで追加される事になった人員はいつこちらに?」
ロイドも複雑そうな表情で黙り込んだ後気を取り直して訊ねた。
「もうそろそろ来るは『おはようございます!クロスベル警察学校よりこちらの追加人員として派遣された者です!』…………どうやらちょうど来たみたいね。」
「あら?今の声は確か…………」
ロイドの疑問にルファディエルが答えかけたその時、玄関から少女の声が聞こえ、声を聞いたエリィは自分達にとって聞き覚えのある声である事に気づき目を丸くした。そしてロイド達が声が聞こえた玄関に視線を向けるとそこにはピンク髪の少女がいた。

「あら、貴女は…………」
「ユウナじゃないか…………!まさか君が課長たちの話にあった”追加人員”なのか?」
「は、はい…………っ!まだ勉強中で未熟の身ですが、クロスベル警察学校からの指示によって臨時的に”特務支援課”に配置される事になったユウナ・クロフォードです!警察学校も卒業できていないあたしがワジ先輩が抜けた穴を補うなんて分不相応ですが、全身全霊を持って職務に就かせて頂きます!」
仲間達と共に自分に近づいてきて声をかけたセティとロイドに少女――――ユウナ・クロフォードは緊張しつつも、嬉しさを隠せない様子で答えた。
「ハハ、堅くなりすぎだぜ、ユウ坊。ここは他の部署と違って緩いから、もっと肩の力を抜いていいぜ?」
「ランディさんは肩の力を抜き過ぎだと思いますが。」
ユウナの様子にランディは苦笑しながら指摘し、ティオはジト目でランディに指摘した。

「ふふっ、今思い出したけどそう言えばユウナが”特務支援課”に来たのは今頃だったよね。」
「むー。未来のキーアばかり、キーア達の知らない事ばかり知っていてズルい~。」
「それは仕方ないかと…………」
「むしろ、私達は彼女が知る知識を知っていはいけない立場ですし…………」
微笑みながら答えた未来のキーアに対して頬を膨らませて指摘したキーアの言葉にロイド達が冷や汗をかいている中、セティとエリナは苦笑しながら指摘した。
「え、えっと………そちらのキーアちゃんに物凄く似ていて凄い美人でスタイル抜群の癒しの女神(イーリュン教)のシスターさんはもしかして、キーアちゃんのお姉さんなんでしょうか…………?」
一方唯一未来のキーアを知らないユウナは不思議そうな表情で未来のキーアの事を訊ね
「ハハ…………”彼女”についてはこの後すぐに説明するよ。まあ、それはともかく…………―――ようこそ、”特務支援課”へ。これからよろしくな、ユウナ。」
「あ…………はい…………っ!」
そしてロイドの歓迎の言葉に一瞬呆けたユウナは嬉しそうな表情で頷いた。その後ユウナを加えたロイド達は再び席についてユウナに未来のキーアの事を紹介した。

「じゅ、”10年後のキーアちゃん”…………!?キーアちゃんに似ているからお姉さんかと思っていたけど、まさか”本人”だなんて…………それにしてもキーアちゃんは今でも凄く可愛いのに、10年経ったらこんなにも素敵な女性になるんだ…………!」
事情を聞き終えたユウナは驚きの表情で未来のキーアを見つめて未来のキーアを誉め
「エヘヘ、10年後のユウナもとっても綺麗でおっぱいもすっごく大きいよ~。あ、でもユウナの場合確か2年後には既におっぱいが今とは比べ物にならないくらい凄く大きくなったはずだよ~?」
「ふえ~…………ユウナもキーアみたいにおっぱいが大きくなるんだ~。」
「10年後の方のキーア、何気に未来のネタバレをしないでください。」
ユウナの賛辞に未来のキーアは照れながら答え、未来のキーアの発言にロイド達が冷や汗をかいている中キーアは無邪気な様子でユウナを見つめ、ティオはジト目で未来のキーアに指摘した。

「コホン。ユウナ、臨時派遣の事情はどのくらい聞いているのかしら?」
「えっと………”クロスベル帝国”建国の件で警察、警備隊共に今までとは比べ物にならないくらい忙しくなった事とその…………エレボニア帝国との戦争に向けて、人手不足なクロスベル警察や警備隊にあたしみたいなまだ警察や警備隊の学校を卒業していない学生達も臨時の人材として派遣される事になった事までは聞いています。」
ルファディエルの問いかけにユウナは自分が”特務支援課”に派遣された事情を思い出しながら答え、戦争の件を思い出すと複雑そうな表情をした。
「そう…………既に全て聞かされているのね。」
「ま、そういう訳だ。警備隊の連中はともかく、警察である俺達の方は”戦場”に”兵士”として送り込んでエレボニア帝国軍と戦わすような予定は一切ない事はヴァイスハイト皇帝からも言質を取っているから、その点は安心していいぞ。」
「あ、はい。その件も校長先生から教えられています。…………その、局長―――いえ、ヴァイスハイト皇帝陛下がギュランドロス皇帝陛下と一緒に宣言した”クロスベル帝国”を宣言通り、クロスベルを独立させる所か”帝国”にしてカルバード共和国に勝って共和国の領土をたくさん手に入れたのに、どうしてエレボニア帝国とまで戦争をするのですか…………?確かに宣言の時に二大国と戦争するみたいな事は言っていましたけど、共和国を滅ぼしたんですからもう十分だと思うんですが…………」
セルゲイの言葉に頷いたユウナは自身の疑問をセルゲイ達に訊ねた。

「ヴァイスハイト陛下達の野心がその程度で終わらない事もそうだけど、クロスベルにその気がなくても元々エレボニア帝国がクロスベルを占領するつもりでいるから、どの道戦争は避けられないのよ。IBCによる”資産凍結”の件に対する”報復”もそうでしょうけど、内戦の影響で混乱していた自国の経済を回復する為にもエレボニア帝国にとってクロスベルの占領は既に”確定事項”なのよ。」
「あ…………」
エリィの話を聞いたユウナは複雑そうな表情を浮かべた。
「それともう一つ。――――――クロスベル帝国と連合を組んでいるメンフィル帝国も、エレボニア帝国に戦争を仕掛けなければならない事情ができたから、建国したばかりのクロスベル帝国と現在唯一国交があるメンフィル帝国との関係をより強固な関係にする為にもエレボニア帝国との戦争は避けられないわ。」
「え…………ルファ姉、”メンフィル帝国がエレボニア帝国に戦争を仕掛けなければならない事情ができた”って一体どういうことだ?」
「もしかして”ラギール商会”のチキさんから何か聞いたんですか?」
「ええ。発端は内戦での出来事なのだけど――――」
ロイドとノエルの疑問に頷いたルファディエルはロイド達にメンフィル帝国がエレボニア帝国に戦争を仕掛ける事情を説明した。

「エレボニア帝国の内戦の最中にそのような事が…………」
「しかもその”ユミル”って所を一度目に襲撃した人達は”猟兵”だなんて…………その”猟兵”を雇った人はエレボニアの大貴族の人なのにどうして他国の領土を襲撃したら、国際問題に発展する事を考えなかったのでしょうか?」
「ま、内戦を引き起こして自国の皇女を拉致する事を考えたバカな大貴族なんだから、他国との関係とか最初から気にしなかったか…………もしくはいざとなったら、”猟兵”に責任を全て押し付けるつもりだったかもな。」
「ランディ…………」
事情を聞き終えたエリィは驚き、ユウナの疑問に目を伏せて答えたランディをロイドは複雑そうな表情で見つめ
「クロスベルはともかく、メンフィル帝国を本気で怒らせたエレボニア帝国はご愁傷様としかいいようがないですね…………メンフィル帝国の場合、リウイ陛下達みたいに生身で兵器以上の威力をたたき出す奥義や魔術を扱える方達がいますから、どんな最新兵器を使っても絶対に勝てないでしょうし。」
「そうですね…………特にエヴリーヌさんのような”魔神”が”戦場”に出れば、エレボニア帝国軍は蹂躙されて”虐殺”されるだけでしょうね。」
「「………………………………」」
ティオとセティの推測を聞いた二人のキーアはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「メンフィル帝国で気になったけど、エリゼさんも戦争に参加するのかな~?」
「…………クロスベル解放の際に自らエリゼさんを操縦者に選んだ”神機”があれば、例え”零の至宝”による加護がなくても”戦場”を圧倒できるでしょうね。――――と、すみません、キーア。」
「ううん、キーアは別に気にしていないから大丈夫だよー。」
シャマーラの疑問に答えたエリナはすぐにある事に気づいてキーアに謝罪し、謝罪されたキーアは暢気な様子で答えた。
「へ…………”神機”って、クロスベル独立国の頃にディーター元大統領が結社とキーアちゃんの力を借りてクロスベルの”力”の象徴としていた人形兵器の事ですよね?あれって人が乗って操縦できたんですか!?」
「ああ…………実際ディーターさんも”神機”に乗って抵抗してきたんだが…………ディーターさんに勝利した後、何故か”神機”は突然自我が芽生えて自らを操縦する人物をクロスベル解放時に俺達に協力してくれたリフィア殿下の専属侍女長であるエリゼさんを選んだんだ。」
「ちなみにエリゼさんはアリオスさんと同じ”八葉一刀流”の剣技を修めていて、それも”皆伝”―――”剣聖”の一人なのよ?」
「そういや、エリゼちゃんは15歳って聞いたからユウ坊と同い年だな。」
「えええええええええええっ!?あ、あたしと同い年の女の子がそんな色々と凄い存在だなんて…………よーし、あたしもその人みたいになれるように、もっと頑張らないと…………!」
ロイド達の説明でエリゼの事を知ったユウナは驚いた後、まだ見ぬエリゼを目標にし、それを聞いたロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ちょ、ちょっと目標が高すぎるような気がするのですが…………」
「…………まあ、エステルさん達がクロスベルに来てからエステルさん達を”ライバル”認定した当時のロイドさんよりはマシな気がしますが。」
「うっ…………」
我に返ったノエルは苦笑し、静かな表情で指摘したティオの指摘にロイドは唸り声を上げた。
「そういえば…………確かエレボニア帝国がメンフィル帝国に対して作ってしまった戦争勃発の原因である”ユミル襲撃”が起こった地である”温泉郷ユミル”はエリゼさんの故郷だったわよね…………?」
「あ…………っ!」
「ええ。チキの話だと不幸中の幸いにも2度に渡る襲撃でどちらも死者は出なかったけど、一度目の襲撃では領主が猟兵によって重傷を負わされた挙句エリゼの双子の妹―――エリス・シュバルツァーはアルフィン皇女と共に貴族連合軍の協力者に拉致されて、救出される内戦の終盤まで皇帝を含めたエレボニア皇家やレーグニッツ知事と共に監禁されて、二度目の襲撃ではエリゼの兄のリィン・シュバルツァーが貴族連合軍の”主宰”であるカイエン公爵による脅迫――――貴族連合軍は2度とユミルに手を出さず、その場を退く事を条件に彼自身に貴族連合軍の元に向かうように誘導させられたそうよ。」
「おいおい…………どれも戦争を仕掛ける口実のオンパレードじゃねぇか…………つーか、その貴族連合軍とやらは何で2度も戦略的価値もないと思われる山郷のユミルって所を襲撃したんだ?」
「1度目の襲撃はともかく、2度目の襲撃の目的は一体何だったのか意味がわからないですよね…………?話を聞いた感じ、そのエリゼさんって人のお兄さんが目当てだったようですけど…………」
不安そうな表情で呟いたエリィの言葉を聞いたロイドは声を上げ、ルファディエルは頷いた後自分の知る情報をロイド達に伝え、それを知ったランディは呆れ、ユウナは不思議そうな表情で疑問を口にした。
「…………その、リィン・シュバルツァーがまた”特別な存在”のようでね―――」
そしてルファディエルはリィンが”騎神”と呼ばれるエレボニア帝国に伝わる”巨いなる騎士”の起動者(ライザー)の一人で、またオリヴァルト皇子が発足したトールズ士官学院特科クラス”Ⅶ組”のリーダー的存在であったことを説明した。

「エレボニア帝国に伝わる”巨いなる騎士”ですか………私もエレボニア帝国に留学していた頃、そのような伝承が書かれている書物を読んだ事もありましたけど、まさか実在していたなんて…………」
「その”騎神”って一体どんな存在なんだろうね~?」
「”神機”のように操縦する事ができる上、自我まであるとの事ですから、ひょっとしたら結社の”神機”はその”騎神”とやらを参考にして作られたかもしれませんね。」
「ええ…………それを考えるとひょっとしたらレンさんが結社から奪い取った”パテル=マテル”の誕生も関係しているかもしれませんね。」
”騎神”の存在を知ったエリィやシャマーラ、エリナとティオはそれぞれ考え込み
「しかもそのリィンって人はあのオリヴァルト皇子が発足した士官学院の特別クラスの生徒達のリーダー的存在か…………もしかしたら、2度目の襲撃の目的はその”騎神”という戦力を手に入れる事と”Ⅶ組”のリーダー的存在である彼を”Ⅶ組”から離す事で、自分達に反抗する勢力の一つである”Ⅶ組”の動きを封じ込める事だったかもしれないな。まあ、貴族連合軍がその”Ⅶ組”という存在をそこまで脅威に思っていたかどうかに疑問は残るが…………」
「ま、少なくとも貴族連合軍にとっては無視できない存在だったんだろうな。実際、内戦終結の鍵はその”Ⅶ組”だったらしいしな。そういや未来の方のキー坊はそのリィンって野郎の事を知っているのか?」
ロイドの推測に同意したランディは未来のキーアにリィンの事を訊ねた。

「うん。リィンは内戦とこれから起こる戦争を経験して”剣聖”になるんだ。あ、それとリィンはロイドみたいにたくさんの女の人達と結婚していて、その相手の中にはエリゼやエリゼの妹のエリスもいるよ~?」
未来のキーアはリィンの事について答え、何気に未来を口にしたキーアの発言にロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「またさり気なく未来のネタバレをしていますよ、未来のキーア…………というか兄妹揃って”剣聖”とか、アネラスさんが知ったら驚くでしょうね。」
「つーか、ロイドみたいにハーレムを築いている上、そのハーレムの中にはエリゼちゃんとエリゼちゃんも含めた兄貴族―――いや、シスコン兄王だと~~!?畜生、要するに女関係はロイドやリア充皇帝達みたいなリア充野郎かよ!?」
「いや、そこで俺まで例に出すとか意味わかんないだが…………そ、それよりもキーア。そのリィンって人がこれから起こる戦争―――メンフィル・クロスベル連合とエレボニアとの戦争に参加するって事はまさかそのリィンって人はエレボニアとの戦争に参加するのか?」
我に返ったティオはジト目で指摘した後自分が知る”八葉一刀流”の人物の一人を思い浮かべ、ランディはリィンの女性関係に嫉妬して悔しそうな表情で声を上げ、ランディに疲れた表情で指摘したロイドはある事に気づいて未来のキーアに訊ねた。
「…………うん。キーアはその場面を見た事がないけど、リィンはこれから起こる戦争でリィンにとっての大切な仲間―――”Ⅶ組”の人達とも戦った事があったそうだよ。」
「ええっ!?」
「…………そもそもそのリィンさんはどうしてその戦争に参加する事にしたのでしょうね?その戦争によってエレボニア帝国に所属している”Ⅶ組”の人達と戦う可能性がある事は目に見えていますのに…………」
複雑そうな表情で答えた未来のキーアの説明にセティは驚きの声を上げ、かつてロイド達と敵対した事もあるノエルは複雑そうな表情で呟いた。

「…………ま、アリオスのように昔の仲間とやり合う覚悟を持ってまで”戦争”に参加するんだからいろいろと”事情”があるって事だろ。話が色々と逸れちまったが、エレボニア帝国との戦争での特務支援課(ウチ)の役割は今まで通りでいいそうだが、”緊急支援要請”という形で戦争に関連する支援要請は出すそうだ。」
「”戦争に関連する支援要請”はどんな内容になるんでしょうね…………?」
「ま、普通に考えればクロスベルに潜入したエレボニアのスパイ狩りやクロスベルにいるエレボニア人が起こすかもしれないトラブル関連だろうな。」
「スパイの件はともかく、エレボニア人関連のトラブルはできれば起こって欲しくないわね…………彼らの大半は観光や商売の目的でクロスベルに訪れてくれているのでしょうし…………」
話を戻して今後の事に伝えたセルゲイの話を聞いてある事が気になったエリナの疑問にランディは静かな表情で答え、エリィは複雑そうな表情で呟いた。
「…………わかりました。確かにそういう事であれば、支援課として”緊急支援要請”を受ける事に異存はありません。ちなみに遊撃士協会も戦争中は俺達と同じような動きになるんでしょうか?」
「ええ、場合によっては遊撃士協会との合同作戦を行う事もありえるかもしれないとの事よ。」
静かな表情で頷いた後に訊ねたロイドの疑問にルファディエルが答えた。

「後でミシェルさんやエステルさん達とも情報を交換した方がよさそうですね。」
「ああ、特にエレボニアでは活動が制限されている遊撃士協会にとってはもしかしたら、メンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争勃発に関する情報を入手していないかもしれないし、メンフィル帝国の関係者で親しい人達が多いエステル達なら俺達も知らない戦争の件に関する情報を知っているかもしれないしな。――――――っと、配属されたばかりなのに不安を思わせるような話をしてすまないな、ユウナ。」
ティオの提案に頷いたロイドはユウナに視線を向けて謝罪し
「いえ、あたしの臨時派遣は戦争が関係している事だとわかっていますし、ようやく”自由”を手に入れたクロスベルを守りたい気持ちはロイド先輩達と同じですから、気にしないでください。それとその…………不謹慎ですが嬉しくも思っているんです。戦争のお陰で憧れのあの”特務支援課”に期間限定とはいえあたしまで配置されてロイド先輩達と一緒に働けるんですから…………!」
謝罪されたユウナは謙遜した様子で答えた後表情を輝かせながらロイド達を見回した。

「ハハ…………いつも言っているが、ユウナは俺達の事を持ち上げ過ぎだよ。」
「ま、最初からやる気満々なのははいい事だし、顔見知りの後輩だったらすぐに俺達も馴染めるだろうから、いいんじゃないか?」
「…………ですね。もしかしたら、ヴァイスさんはその点も考えてユウナさんの配置を”特務支援課”にしたのかもしれませんね。」
「フフ、そうね。―――それよりも新しいメンバーも増えたことだし、支援要請を確認した後市内や市外を回りながら知り合いの人達に挨拶をしていかない?」
「賛成~!それとユウナの歓迎パーティーもしないとね!勿論メインの料理はダブルキーアちゃんお手製の鍋で!」
「シャマーラ…………未来のキーアはともかく、私達よりも年下のキーアに歓迎パーティーの料理を作らせる事に何とも思わないのですか…………」
「えへへ、キーアもみんなみたいに新しく来たユウナの為に何かしたいと思っていたから、シャマーラの提案はむしろ大歓迎だよ~♪」
「フフ、後で一緒にお買い物に行こうね♪」
エリィの提案に続くようにある事を提案したシャマーラにエリナが呆れた表情で指摘している中二人のキーアはそれぞれ無邪気な笑顔を浮かべた。

「わあ…………っ!噂のキーアちゃんの手料理―――それもお鍋はあたしも機会があれば食べたいと思っていたの!ありがとうね、キーアちゃん♪」
「えへへ………」
ユウナは嬉しそうな表情を浮かべて隣に座っているキーアを抱き締め、抱き締められたキーアは嬉しそうな表情を浮かべ
「ハハ…………―――さてと。まずは端末に来ている”支援要請”を確認するか。」
ユウナの様子を微笑ましそうに見守っていたロイドは仲間達に仕事の開始を告げた後新たなメンバーであるユウナを加えていつものように”特務支援課”としての活動を開始した――――
 
 

 
後書き

という訳でまずユウナがフライング登場&ロイド側にパーティーインですww閃3以降から登場するキャラ達も次々と登場させる予定ですが、唯一アッシュをどうしようか迷っています。下手したら全部が終わるまでずっと監禁されたままかも(ぇ)そして仲間になるとしても、アッシュが仲間になる勢力は味方の戦力が戦力過剰と言ってもいいほど充実しているリィン達、ロイド達、エステル達と違って、”暁の女神”のミカヤ側のように貧弱なⅦ組側だと思います(酷っ!)それとシルフェニアの18禁版にてこっちの物語のリィンとベルフェゴールのシーンを更新しましたので興味のある方はそちらもどうぞ。 

 

第5話

3日後、ルーファス・アルバレア率いる領邦軍と正規軍のエレボニア帝国軍が貴族連合軍の旗艦であった”パンダグリュエル”を中心とした飛行艦隊がクロスベル侵攻の為にクロスベルへと向かい、対するクロスベルは連合を組んだメンフィルと共に魔導兵器製の飛行戦艦――――”ヴァリアント”と”フォーミダブル”を二艦ずつとその周囲に”ルナ=ゼバル”を十数機ずつ滞空させた状態でエレボニアとクロスベルの国境門であるベルガード門の遥か高度でエレボニア帝国軍が侵攻してくるのを待ち構えていた。そしてメンフィル帝国軍に所属したリィン達も”ヴァリアント”の中で迎撃作戦が始まるまで準備をして、準備を終えた後ヴァリマールに会いに行った。


1月12日、同日AM10:50――――――


~メンフィル帝国軍・魔導戦艦”ヴァリアント”・格納庫~

「こうして実際に会って話すのは10日ぶりになるな、ヴァリマール。今まで心配をかけてしまってすまなかったな。」
「気ニスルナ。ソレヨリモメンフィルノ紋章ガ刻マレタソノ軍服ヲ身ニ纏ッテイルトイウ事ハ、”Ⅶ組”トノ決別ノ覚悟ヲ決メタノダナ?」
リィンに話しかけられたヴァリマールはメンフィル帝国軍の軍服を身に纏ったリィン達を見て、リィン達がどういう決断をしたのかをすぐに悟った。
「ああ…………悩んだ末、俺達の”目的”を果たす為にはメンフィル・クロスベル連合によるエレボニア帝国征伐に参加するのが、エレボニアの滅亡を防ぐ唯一の手段だから、俺達はエレボニア帝国と戦う事を決めた。…………今後戦争で活躍するためには内戦の時とは比べ物にならないくらいヴァリマールを頻繁に運用する事になると思う。」
「ソウカ。戦デ起動者(ライザー)デアルオ前ト共ニ剣ヲ振ルウ機会ガ頻繁ニアル事ハ、”騎神”デアル我ニトッテハ腕ガ鳴ル話ダ。」
「フフ、心強いお言葉ですわね。」
「…………改めて兄様の事、よろしくお願いします。」
ヴァリマールの言葉を聞いたセレーネは苦笑し、エリスはヴァリマールに会釈をした。

「それにしても…………話には聞いていたが、まさかエリゼが本当に俺と同じ起動者(ライザー)になっていたとはな…………」
「それもエレボニア帝国の機甲師団を壊滅に追いやった結社の”神機”ですものね…………」
「確かそちらの”神機”―――ヴァイスリッターさんは姉様が名付けられたのですよね?」
「ええ。”至宝”の加護は受けていませんから、さすがに当時程の戦闘力はありませんけど、それでもスペックは機甲兵よりも数段上ですし、障壁にグレネード、それに霊力の集束砲も搭載していますからヴァリマールさんを操縦する兄様の助けになると思います。」
リィン達はヴァリマールの隣に待機している”白の神機”ヴァイスリッターに視線を向け、エリスの問いかけに頷いたエリゼはリィンを見つめて答えた。
「ありがとう、エリゼ。ヴァイスリッターもよろしくな。」
「我ノ主タルエリゼガ、オ主ノ力ニナルト決メタ以上、我ハ主ノ意志ニ応エルダケダカラ、礼ハ不要ダ。」
「―――話には聞いていましたが、まさか”神機”に”騎神”のように自我がある所か、起動者(ライザー)まで存在した事には驚きましたわ。」
リィンの言葉にヴァイスリッターが答えるとリィン達にとって聞き覚えのある娘の声が聞こえ、声が聞こえた方向にリィン達が視線を向けるとデュバリィ、アイネス、エンネア―――結社の”鉄機隊”全員がリィン達に近づいてきた。

「あ、貴女方は…………」
「…………結社の”鉄機隊”の方々ですわね。」
デュバリィ達の登場にエリスは目を丸くし、セレーネは複雑そうな表情で呟いた。
「結社の前に”元”がつきますわよ、アルフヘイム。マスターが結社と決別して”英雄王”―――メンフィル帝国に所属する事を決めた以上、マスターに仕える事を至上としている私達もマスターの意志を組んでメンフィル帝国に所属し、メンフィル帝国からも正式に認められていますわ。」
「とはいっても、この間まで我々はメンフィル帝国にとっての”敵”である”結社”の所属であったのだから、一部の者達は我々の事をあまり歓迎していないがな。」
「まあ、”新参者”である私達が隠居の立場とは言え、”英雄王”と”聖皇妃”直属の独立護衛部隊なんていう親衛隊とは別の部隊として配属されたのだから、私達の事を面白く思っていない人達がいるのは仕方のない事だとわかっているから、早く新しい組織であるメンフィル帝国軍に馴染む為にも貴方達同様私達もこの戦争で活躍する事を決めたのよ。」
セレーネの指摘にデュバリィは静かな表情で答え、アイネスとエンネアはそれぞれ苦笑しながら自分達の現状を伝えた。

「…………貴女達が結社からメンフィル帝国軍に所属を変えた事も話に聞いている。”神速”――――いや、デュバリィさんとは内戦では色々あったが…………今は味方同士の関係になったのだから、改めてよろしく頼む。」
「別に私は貴方とよろしくするつもりはありませんが、私も鬼ではありませんから、”戦場”で窮地に陥っていたところに私がいれば、救援くらいはしてさしあげますわ。」
静かな表情で自分達を見つめた後に握手をする為に利き手を差し出したリィンに対してデュバリィは握手をせずにリィンから顔を背けて答えた。
「フフ、いくらかつて刃を交えた関係とはいえ、今は味方同士なのだから握手くらいしても罰は当たらないと思うぞ?」
「クスクス、きっと”灰色の騎士”が言った”色々”が関係しているのではないかしら♪」
「関係していませんから!勝手な憶測をしないでください!」
苦笑するアイネスの後にからかいの表情で指摘したエンネアの指摘にデュバリィは必死に否定し、その様子を見ていたリィン達は冷や汗をかいて脱力した。

「え、えっと………訊ねるのが遅くなりましたけど、お二人がデュバリィさん以外の残りの”鉄機隊”の方々でいいんですか?」
「うむ、名乗るのが遅れてしまって失礼したな。”鉄機隊”が隊士、”剛毅のアイネス”だ。」
「同じく”鉄機隊”が隊士、”魔弓のエンネア”よ。”守護の剣聖”とも実際に会うのはこれが初めてになるわね。」
「…………そうですね。私はセリカ様達と共に”月の僧院”側を担当していましたから、”星見の塔”にいた貴女方とは会う事もありませんでしたね。」
セレーネに訊ねられたアイネスとエンネアはそれぞれ軽い自己紹介をした後エンネアに視線を向けられたエリゼは静かな表情で答えた。

「そういえばエリゼはクロスベルをディーター・クロイス元大統領による独裁から解放する為に、ディーター・クロイス元大統領に抵抗する勢力に加勢したんだったな…………」
「はい。クロスベルを覆う結界の解除の為に”星見の塔”に向かったロイドさん達―――”特務支援課”の方々の話ではデュバリィさんを含めた”鉄機隊”の方々も”星見の塔”で阻んだとの事です。」
「そうだったのか…………あれ?そういえばオーロックス砦で戦った時は最初からやけに疲労している様子だったが…………」
「もしかしてその”特務支援課”という方々との戦いの直後だった為、疲労していらっしゃったのですか!?」
エリゼの話を聞いてある事に気づいたリィンとセレーネはそれぞれ驚きの表情でデュバリィを見つめ
「フ、フン!今頃気づくなんてまだまだ未熟な証拠ですわね!」
二人の推測にデュバリィは否定することなく鼻を鳴らしてリィン達に指摘し、デュバリィの態度にその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。

「コホン。…………それよりも、”灰色の騎士”。貴方までメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に加わった理由は人伝で聞いていますが…………貴方、本当に”それでよろしいんですの?”」
気を取り直したデュバリィは複雑そうな表情でリィンを見つめて問いかけた。
「?一体何の事を聞いているんだ?」
「とぼけないでください!”エレボニア帝国征伐”に参加すれば、貴方の仲間である”Ⅶ組”と刃を交える日もそうですが、彼らの関係者をその手にかけるかもしれない日が必ず来るとわかっていて、何故”エレボニア帝国征伐”に参加したのですか!?」
「デュバリィさん…………」
デュバリィが真剣な表情でリィンに問いかけている中、デュバリィのリィンに対する気遣いに気づいて驚いたセレーネは目を丸くした。
「そうだな…………貴女の言う通り”Ⅶ組”の関係者―――子爵閣下やシャロンさんはわからないが、エレボニア帝国軍に所属しているクレイグ将軍やナイトハルト教官、それに”Ⅶ組”の関係者ではないけどログナー侯爵やハイアームズ侯爵、そして今から行われるエレボニア帝国軍の迎撃戦でルーファスさんを”斬らなければならない事になるだろう。”そしてそれらの出来事によって、俺は”Ⅶ組”を含めた”トールズ士官学院の仲間達”の恨みを買う事になる。――――だけど、俺は”それら全てを承知の上でここにいる。”」
「…………っ!」
「「兄様…………」」
「既に覚悟は決まっている、という事か。」
「ひょっとしたら”灰色の騎士”の方がNo.Ⅱ―――”剣帝”よりも”修羅”の道を歩むことになるかもしれないわね…………」
決意の表情を浮かべたリィンの答えにデュバリィは息を呑み、エリゼとエリスは辛そうな表情でリィンを見つめ、アイネスとエンネアは重々しい様子を纏って呟いた。

「フ、フン!その覚悟がエレボニア帝国征伐が終わるまで続けば、一人前であることを認めてあげますわ!で・す・が、このエレボニア帝国征伐で最も活躍するのは私達”鉄機隊”です!それをお忘れなきよう!」
「ああ…………―――ありがとう、デュバリィさん。俺の事を気遣ってくれて。」
「な、な、な…………っ!?」
我に返ったデュバリィは鼻を鳴らして答えた後真剣な表情でリィンを指差して宣言し、デュバリィの宣言が遠回しに自分の事を気遣ってくれている事に気づいていたリィンは感謝の言葉を述べ、リィンの言葉を聞いたデュバリィは口をパクパクさせた。
「ハハ、面白い若者だ。」
「ふふ、デュバリィがよろめくのも無理ないかもしれないわね。」
「気遣ってもいませんし、よろめいでもいません!」
リィンの答えにアイネスが感心している中、エンネアはデュバリィをからかい、デュバリィは必死に反論し、その様子を見ていたリィン達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。

「ああもう…………何故私ばかりがこのような目に…………それはともかく。リィン・シュバルツァー。先ほどパンダグリュエルに潜入している諜報部隊による報告が回ってきたマスターの話によりますと、”黒兎(ブラックラビット)”もパンダグリュエルにいるようですわよ。」
「え…………その方は確か…………」
「…………ユミルでアルフィン皇女と共にエリスを拉致した”黒の工房”のエージェントね。」
「はい…………”オライオン”の名前といい、あの黒い傀儡といい、ミリアムさんと何らかの関係があるようですが…………」
デュバリィが口にした情報にエリスは目を丸くし、エリゼは厳しい表情を浮かべ、セレーネは不安そうな表情で呟いた。
「…………そうか。”煌魔城”の件を考えると彼女もオズボーン宰相達と繋がりがあるようだから、彼女も同行していてもおかしくはないな…………」
「マスターの話では”英雄王”達としては”黒兎(ブラックラビット)”に関してはルーファス・アルバレアを始めとした敵将達と違って”捕縛”が望ましいとの事ですわ。彼女がまだ幼い少女である事もそうですが、”黒の工房”についての情報を持っている可能性がある貴重な存在との事ですから。」
「そうなのか…………でも、どうしてそんな貴重な情報を俺達に?」
ある人物―――かつて内戦で何度か戦った事がある黒の工房のエージェントにしてミリアムとも何らかの関係がある少女―――アルティナ・オライオンを殺す必要がない事に安堵の溜息を吐いたリィンはデュバリィに自分達にアルティナの件を伝えた意図を訊ねた。

「貴方方は戦場での戦功を狙う私達にとって、一番の”好敵手”になりそうですから、教えただけですわ。勝負は公平に行うべきですので!―――それでは私達はこれで失礼しますわ。」
リィンの疑問に対して答えたデュバリィはその場から去りかけたが
「ふふ、あんな事を言っているけど、デュバリィはエレボニア帝国征伐に”灰色の騎士”まで参加する事になった原因は自分も関わった内戦が関係していたから、そのせめてもの”お詫び”としてまだメンフィルの上層部しか知らない最新の情報を伝えたのよ。」
「それとエリス・シュバルツァーの拉致監禁の件もそうだな。我ら”鉄機隊”の中でも最も”外道”な真似を嫌うデュバリィの性格を考えると、女学生の一人として平穏な生活を過ごしてきたエリス・シュバルツァーの拉致監禁を行った事には内心想うところはあっただろうしな。」
「エンネア!アイネス!何を吹き込んでいるのか知りませんが、これ以上”灰色の騎士”達に勝手な憶測を吹き込まないで、とっとと行きますわよ!」
エンネアとアイネスが残ってリィン達にある事を伝えている所に気づくと立ち止まった後振り返って声を上げて二人にその場から離れるように指示し
「はいはい。」
「―――それでは我らもこれで失礼する。お互いにとっての”初陣”…………お互い無事に生き残って戦功を稼げるといいな。」
デュバリィの指示を聞いた二人はデュバリィの後を追ってその場から去っていった。

「フフ、内戦の時から薄々感じてはいましたが、やはり他の”執行者”達と違って悪い方ではありませんでしたわね。」
「…………そうね。兄様を心配してくださっていた事や情報の件もそうだけど、わざわざ挨拶までしてくれたものね。」
「ああ…………それを考えると結社が崩壊したのは彼女たちにとっていい契機だったかもしれないな。」
デュバリィ達が去ると微笑みながら呟いたセレーネの意見にエリゼとリィンは頷いた。
「挨拶といえば…………兄様、私達と同じ小部隊に配属される他の二名の方達にまだ挨拶をしていないのですが…………」
「そうだな…………そういえばエリゼ。俺達と同じ小部隊に配置されることになった二人の事は連絡が来てから知ったが、二人とも俺にとっては顔馴染みなんだが、もしかしてエリゼがゼルギウス将軍閣下かシグルーン副長に進言とかをしたのか?」
「いえ、私は部隊の編制の際は私とエリス、そしてセレーネを兄様と同じ部隊にして頂く事しかリフィア達に頼んでいません。お二人の配置を決めたのはゼルギウス様とシグルーン様の判断かと。」
「お兄様はわたくし達と同じ小部隊に配置されるお二人をご存知なのですか?」
エリスの疑問に答えたリィンはエリゼにある事を訊ね、訊ねられたエリゼは静かな表情で答え、リィンとエリゼの会話を聞いてある事が気になったセレーネはリィンに訊ねた。
「ああ、実はその二人は――――」
「フフ、久しぶりですね、リィンさん。」
「おーおー、少し見ない内に綺麗所を侍らすようになるなんて、随分と成長したじゃねぇか。」
そしてセレーネの疑問にリィンが答えかけたその時、貴族の令嬢のような雰囲気を纏った黒髪の女性騎士と軽そうな雰囲気を纏った金髪の青年騎士がリィン達に近づいて声をかけた。

「ステラ、それにフォルデ先輩も。―――お久しぶりです。」
「え…………」
「兄様はそちらのお二人とお知り合いなのでしょうか?」
親しげに二人の騎士に声をかけたリィンの様子を見たセレーネは呆け、エリスは不思議そうな表情で訊ねた。
「ああ。女性騎士の方はステラ――――俺の訓練兵時代、”パートナー”として組んでいた訓練兵時代の俺の同期だ。」
「―――メンフィル帝国軍リフィア皇女親衛隊に所属しているステラ・ディアメルと申します。以後お見知りおき願います。」
リィンの紹介に続くように女性騎士―――ステラは軽く会釈をして自己紹介をした。

「お兄様の”パートナー”、ですか?それは一体どういう…………」
「…………メンフィル軍は訓練兵を指導する方法として、まずグループごとに指導する担当教官が存在して、更にそのグループ内で二人一組のペアを組ませて、ベアごとに既に一人前の軍人として務めているメンフィル帝国軍の人達が指導する事になっているのよ。」
「で、その二人を指導した”先輩”が俺―――フォルデ・ヴィントだ。よろしくな。」
セレーネの疑問にエリゼが答えると、フォルデは自己紹介をした。
「兄様の訓練兵時代の…………―――リィンの妹にしてエリゼの双子の妹のエリス・シュバルツァーと申します。この(たび)未熟の身ではありますが”義勇兵”という形で、兄様と共にエレボニア帝国征伐に参加する事になりましたので、もし私に至らない点があればその時はご指摘して頂けると幸いです。」
「わたくしはお兄様―――リィン・シュバルツァーの”パートナードラゴン”のセレーネ・L・アルフヘイムと申します。わたくしもお兄様を支えるために”義勇兵”の一人として今回の戦争に参加する事になりましたので、エリスお姉さま共々よろしくお願いしますわ。」
二人の事を知ったエリスとセレーネもそれぞれ自己紹介をした。

「おう、よろしくな。ま、俺は細かい事にいちいち口出しするような堅苦しい軍人じゃないし、ステラはリィン同様クソ真面目だがキツイ性格って訳でもないから、安心していつも通りのかる~い雰囲気でいこうぜ。」
「”戦場”に軽い気持ちで挑むのはさすがに問題はあるかと思いますが………訓練兵時代にお世話になったリィンさんの”身内”であるお二人とは、エリゼさんのように親しい仲になれることができればいいと思っていますので、もし何かわからない事があれば遠慮なく訊ねてください。」
「は、はい。あの…………ステラさん、”ディアメル”と名乗っていらっしゃっていましたが、もしかしてステラさんはエレボニア帝国貴族の…………?」
フォルデと共に親しげに話しかけたステラの言葉に頷いたエリスは自身の疑問を遠慮気味にステラに訊ねた。
「ふふっ、やはり気づかれていましたか。エリスさんの仰った通り、私はかつてエレボニア帝国貴族―――”ディアメル伯爵家”の一員でしたが、”ディアメル伯爵家”の一員であり続ける事が嫌になってメンフィル帝国に亡命、そしてメンフィル帝国軍に入隊したのです。」
「ええっ!?それじゃあステラさんはエレボニア帝国の貴族の方だったのですか…………」
「ちなみにステラの実家―――”ディアメル伯爵家”は”四大名門”に次ぐエレボニア帝国の名門貴族の一角なんだぜ~?」
ステラの話を聞いて驚いているセレーネにフォルデはからかいの表情でステラの説明を補足した。

「フフ、それを言ったらフォルデ先輩もエレボニア帝国では”武”の名門貴族として有名な貴族の家系の出身ではありませんか。」
「俺の場合は遠い先祖がそうだっただけで、昔から”平民”だし、”本家”の連中とも特に交流とかはないぜ?」
「え…………フォルデさんがエレボニアでは”武”の名門貴族として有名な貴族の家系、ですか?」
「…………フォルデ先輩とフォルデ先輩の弟で俺と同期のメンフィル帝国軍に所属している軍人―――フランツの先祖は”ヴァンダール家”なんだ。」
ステラの指摘に反論したフォルデの話が気になったエリスの疑問にリィンは静かな表情で答え
「え…………」
「ええっ!?それじゃあ、フォルデさんがアルノール皇家の守護役である”アルノールの懐刀”と呼ばれている”ヴァンダール子爵家”と縁戚関係にあたる方なんですか…………!?」
リィンの説明を聞いたエリスは呆け、セレーネは驚いた。

「遠い先祖がそうだっただけで、俺やフランツは”ヴァンダール”の連中とは会った事もないぜ?ま、そんな事よりもリィン。エレボニアでは色々と大変だったらしいな。」
「いえ…………セレーネも含めて多くの大切な人達との貴重な出会いができましたから、オリヴァルト殿下の頼みを承諾したリウイ陛下の指示によってトールズ士官学院に留学した事は後悔していません。」
「お兄様…………」
フォルデの気遣いに答えたリィンの様子をセレーネは静かな表情で見つめ
「シグルーン副長から説明がありましたが、そちらの灰色の機体がエレボニアの伝承で出てくる”巨いなる騎士”なのですか?」
「ああ…………―――紹介が遅れてすまない。彼はヴァリマール。トールズ士官学院の旧校舎の地下の奥深くで眠っていたエレボニアの伝承の”巨いなる騎士”―――”灰の騎神”だ。ヴァリマール、二人は俺達と同じ小部隊の一員だから、今後の戦いで共に戦う事になる仲間だ。」
「フム、トイウ事ハリィンヤ我ニトッテノ新タナル”戦友”カ。」
ヴァリマールに視線を向けたステラの疑問に答えたリィンはヴァリマールにステラとフォルデを紹介し、ヴァリマールは目を光らせて答えた。するとリィン達が持つメンフィル帝国軍から支給された戦術オーブメント――――ARCUS特有機能であった”戦術リンク”と”リンクアビリティ”が搭載されている改良型のENIGMA(エニグマ)―――”ENIGMA(エニグマ)R(リメイク)”が光を放ち始めた!

「え…………」
「この光は…………!」
それぞれ光を放ち始めたオーブメントに気づいたエリスは呆け、リィンが驚いて仲間達同様戦術オーブメントを取り出すとそれぞれの戦術オーブメントのリンクはヴァリマールと繋がった。
「戦術リンクがヴァリマールさんと繋がったという事は…………!」
「まさか…………エリゼ達も”準起動者”として認められたのか?」
「ウム、ドウヤラソノヨウダ。ソレニ、ヴァイスリッタートノ繋ガリモ感ジル為、ヴァイスリッターニモ効果ガアルダロウ。」
「…………ヴァリマールトノリンクヲ把握。準起動者ノ機能―――”EXアーツ”ノ発動モデキル。」
ヴァリマールとリンクする様子を見てすぐに察しがついたセレーネは驚き、信じられない表情で問いかけたリィンの推測にヴァリマールとヴァイスリッターはそれぞれ答えた。

「…………一体どうなっているんだ?エリゼ達はアリサ達と違って、俺と一緒に旧校舎での”試し”を受けていないのに…………」
「…………もしかしたら、お兄様―――起動者(ライザー)にとっての”戦友”と認識されれば、”準起動者”として認められるのでは?実際、サラ教官という実例がありますし…………」
困惑しているリィンの疑問にセレーネは自身の推測を答え
「…………なるほど。―――何にせよ、準起動者がセレーネ以外にも増えた事はありがたい事だな。今回の戦争ではセレーネ以外の準起動者達―――アリサ達の協力は無理だろうしな…………」
「兄様…………」
「…………私では”Ⅶ組”の方々の代わりにはなれませんが、それでも”Ⅶ組”の皆さんのように”準起動者”に認められた事は嬉しいです。兄様がヴァリマールさんを駆って戦う時も支える事ができるのですから…………」
静かな表情で呟いたリィンの言葉を聞いたエリゼが複雑そうな表情をしている中、エリスは真剣な表情でリィンを見つめて答えた。

「ハハ、”代わり”だなんてそんな寂しい事を言うな。エリスは誰の”代わり”でもない俺にとって大切な妹の一人で、将来を共にすることを決めた伴侶の一人なのだから…………」
「に、兄様…………セレーネやステラさん達がいる目の前で子供扱いするのは止めてください…………!」
微笑みながら優しく頭をなでてきたリィンに対してエリスは頬を赤らめて答え
「フフ、さすが双子の妹だけあって、そういう所もエリゼさんとそっくりですね。」
「というかリィン、マジで恋人を作ったみたいだな~?それもその口ぶりだと複数だから、お前のハーレムメンバーにはエリゼちゃんもそうだがセレーネもそうなのか?」
リィンとエリスの様子をステラは微笑ましく見守り、フォルデはからかいの表情でリィンに問いかけた。

「そういう言い方をしてほしくはないんですが…………まあ、否定はしません。それと将来を共にすることを決めた女性は後二人―――俺の使い魔として協力契約を結んでいる女性達もそうです。」
「ほ~…………5人も侍らすとは、”娼館”に誘っても必死に拒否したあのリィンが成長したもんだね~♪」
リィンの答えを聞いたフォルデは口元をニヤニヤさせながら指摘し
「ちょっ、先輩!?」
「…………やっぱり娼館に誘われた事があるのですか。」
「…………兄様?今の話はどういう事なのか、詳細な説明をして頂きたいのですが。」
(なんだかクロウさんと似ている方ですわね…………)
フォルデの指摘にリィンが慌て始めるとエリゼとエリスはそれぞれ膨大な威圧を纏って微笑み始め、セレーネが苦笑している中それを見たリィンが冷や汗をかいて表情を引き攣らせたその時格納庫に放送が入った。

―――これよりエレボニア帝国クロスベル侵攻軍の迎撃並びに殲滅を開始する。パンダグリュエル突入組に選ばれた部隊は10分以内に甲板に集合し、整列せよ。なおヴァリマール並びにヴァイスリッターは出撃し、迎撃開始と共に戦闘を開始せよ。繰り返す―――

「―――時間のようですね。」
「ああ…………先輩、合流するまではエリスとセレーネの事、お願いします。」
「任せときな。お前は内戦で受けた鬱憤を思い切り晴らしてきな!」
「兄様、姉様、ご武運を…………!」
シェラの声による放送を聞いたステラは表情を引き締め、リィンの言葉にフォルデは静かな表情で頷き、エリスはリィンとエリゼに応援の言葉を送り、二人はエリスの言葉にそれぞれ頷いた後それぞれヴァリマールとヴァイスリッターの中へと入り、格納庫のハッチの一部を開閉させるスイッチの場所までエリス達と共に移動したフォルデがスイッチを押すとハッチが開いた!
「出るぞ、ヴァリマール!」
「行きましょう、ヴァイスリッター!」
「「応――――!!」」
そしてヴァリマールとヴァイスリッターはそれぞれ”戦場”に向かう為にハッチから飛び出した―――― 
 

 
後書き
という訳でまずリィン側はフォルデとステラがパーティーインし、エリゼもメンフィル帝国軍による作戦の際は常にパーティーキャラとして同行する事になっています(まあ、この物語は今までの軌跡シリーズと違ってリィン側の行動のほとんどは戦争に関連する作戦活動ばかりの予定ですけどね(苦笑))それとリィン達のオーブメントはARCUSではなくレンちゃん達の改造によって生まれた戦術リンクやリンクアビリティもある特殊なエニグマになっているという設定です。また、準起動者は他にも増える予定でそのキャラは今の所アルティナ、アルフィン、ミュゼ、クルトを予定しています。それと次から作戦が終わるまでのイベント兼フィールド兼戦争BGMは閃1の”Atrocious Raid”、閃3の”solid as the Rock of JUNO”、碧の”To be continued!”、VERITAの”衝突する魂”、魔導巧殻の”不退転の決意を以って”のどれかだと思ってください♪ 

 

第6話

同日、PM12:00――――――


正午になる頃、ルーファス率いるクロスベル侵攻軍がメンフィル・クロスベル連合による迎撃態勢が整っている事も知らずにクロスベルに向かっていた。

~パンダグリュエル・ブリッジ~

「後10分で所定の位置に到着します。」
「所定の位置に到着後速やかに機甲兵、アハツェンを地上に降ろした後空挺部隊と共にベルガード門に同時侵攻する。今のクロスベルに”神機”はもはや存在しないとはいえ、思わぬ反撃を受ける可能性は十分に考えられる。決して油断はするな。」
「イエス・コマンダー。」
「フン、あの不可思議な能力を持っていた巨大な人形兵器―――”神機”とやらを失ったクロスベルに機甲兵も加えた我が軍に抵抗するような力は残っていないと思うがな。」
パンダグリュエルのブリッジで報告を受けたルーファスが指示を終えると、侵攻軍の”副将”としてルーファスと共にいるかつての”クロスベル独立国”の際、クロスベルに侵攻して第五機甲師団の多くを壊滅に追いやってしまった第五機甲師団の団長―――ワルター中将は貴族連合軍の”総参謀”を務めていたルーファスが侵攻軍を率いる”将”としての任務に就いている事に対する不満を隠さない様子で指摘した。

「いえいえ、クロスベルにはまだ例の”六銃士”とやらが残っているのですから油断はできません。何せ彼らは生身で”アハツェン”を破壊する所か、警備隊を僅かな期間で正規軍でも精鋭揃いである”第四機甲師団”を圧倒する程の実力をつけさせた指導力、そして”西ゼムリア通商会議”で宰相閣下とロックスミス大統領の考えを悟り、猛反撃をしてお二方の政治生命に少なくないダメージを与える事ができる程の策謀にも長けているのですから決して油断はできません。確か中将閣下は例の”合同演習”で彼らの実力の一端を知る事ができたはずですが?」
「ぐっ…………フン!幾ら連中がどんな”化物”であろうと空からの攻撃はどうしようもあるまい。人は鳥のように空を飛べないのだからな。今思い出すだけでも腹が立つ…………クロスベルを占領した後は連中を一人残らず捕まえて”合同演習”で受けた屈辱を倍返しにしてくれる…………!」
ルーファスの指摘に唸り声を上げたワルター中将はかつて自分に屈辱を与えた人物たち――――ギュランドロスやルイーネの顔を思い浮かべて表情を歪め
「フフ、彼らの能力は優秀であり、今後のエレボニアの繁栄の為には彼らを上手く使う必要もあるのですからほどほどにしてください。ただでさえ、わが国は12年前の”百日戦役”で大敗させられて一部の領土が奪い取られる原因となったメンフィル帝国と緊張状態に陥って、いつ戦端が開かれてもおかしくはない状況なのですから。」
ワルター中将の様子を見たルーファスは苦笑しながら指摘した。

「そのメンフィル帝国からの要求によると、メンフィル帝国と我が国がそのような状況に陥った原因である”ユミル襲撃”の件で貴族連合軍の”総参謀”であり、アルバレア公の長男でもある貴殿の身柄も求めているようだがな?メンフィル帝国と我が国の間で戦端が開かれる事を望んでいないのならば、エレボニアや皇帝陛下への忠義の為にも貴殿は大人しくメンフィル帝国に自首すべきではないのか?」
「ハハ、これは手厳しい…………―――ですが、メンフィル帝国は傲慢にも私や父達どころか、貴族連合軍とは無関係のアルフィン殿下や宰相閣下の身分剥奪に加えてメンフィル帝国にて私達同様殿下達に処罰を与える事やその他にも死者も出ていないユミル襲撃に対する賠償としてあまりにも理不尽な内容ばかりを要求しているのですから、アルフィン殿下の為、そしてエレボニアの為にも彼らの要求を受け入れる訳にはいきませんよ。」
ワルター中将の皮肉が混じった指摘に対して苦笑したルーファスは表情を引き締めて答えた。

「フン…………ん?前方の上空から何かが降りてきていないか?」
ルーファスの指摘に対して反論がないワルター中将は鼻を鳴らして目の前の景色を見つめたが何かに気づいて呟き
「ハハ、ご冗談を。クロスベルは飛行戦力を保有していませ――――!!??」
ワルター中将の言葉に苦笑したルーファスはワルター中将が視線を向けている方向に視線を向けてワルター中将の言葉は杞憂である事を指摘しかけたが、目の前に映る景色―――上空から自分達の行く手を阻むように降りてきたメンフィル・クロスベル連合による飛行艦隊を見ると血相を変えた。

~メンフィル帝国軍・魔導戦艦”ヴァリアント”・ブリッジ~

「―――これよりエレボニア帝国クロスベル侵攻軍の迎撃・殲滅を開始する。”パンダグリュエル”以外の飛行戦力は全て撃破せよ。」
「イエス・コマンダー!!」
一方その頃ブリッジの艦長席に座っているシェラは端末を操作しながら部下たちに指示を出していた。

~クロスベル帝国軍・魔導戦艦”ヴァリアント”・ブリッジ~

「さぁてと…………内戦で疲弊した自国の為にオレ様達のクロスベルを手に入れようとする自分勝手なエレボニアのバカ共に生まれ変わったクロスベルの”力”を思い知らせてやるぞっ!!」
「イエス、マイロード!!」
同じ頃ブリッジにいるギュランドロスは号令をかけ、ギュランドロスの号令にクロスベル帝国軍の兵士達はそれぞれ力強く答え
「―――これよりメンフィル・クロスベル連合によるエレボニア帝国軍の迎撃並びに殲滅を開始する。作戦通りまずは”パンダグリュエル”以外の敵戦力の殲滅を開始せよ!」
「イエス、マム!!」
エルミナは軍人達に指示を出していた。

そして空での戦端が開かれた。ルーファスはメンフィル・クロスベル連合による飛行戦力の登場に驚きつつも、すぐに立ち直って敵戦力の制圧の為の指示を出し始め、ルーファスの指示によって”パンダグリュエル”の周りにいた空挺部隊は指示通りの戦列を組んで敵戦力の制圧を開始しようとしたが、そこにルーファスを含めたエレボニア帝国軍にとってあまりにも想定外の”敵”が現れた。その”敵”とは――――

~クロスベル領空~

「おぉぉぉぉぉぉ…………!龍炎撃!!」
”エレボニア帝国軍にとっての想定外過ぎる敵”――――リィンが操縦する”灰の騎神”ヴァリマールは戦列を組んでいるエレボニアの空挺部隊の内の一機を上空からの奇襲で一刀両断し、一刀両断された飛行艇は飛行艇の中にいる軍人達を巻き込んで大爆発を起こして空の藻屑となった。
「―――下がれ!!」
続けてヴァリマールは渾身の力を込めた抜刀で広範囲を一閃するクラフト―――孤月一閃で自分の周囲にいる空挺部隊を一閃して撃破した!

「なああああああああああっ!?」
「あ、あの騎士は確か内戦時アルフィン殿下を旗印とした”紅き翼”の…………!」
「”灰の騎士”だと!?」
ヴァリマールの登場にまだ撃墜されていない空挺部隊は混乱していたが、そこに上空から複数のグレネードが襲い掛かって空挺部隊に命中した!
「うおっ!?」
「い、一体何があった!?」
「伍の型――――光鬼斬!!」
グレネードが命中した事でそれぞれ怯んでいる様子の空挺部隊目掛けてヴァイスリッターが居合の一撃を放って撃破した!

~パンダグリュエル・ブリッジ~

「”灰の騎士”にあの時ガレリア要塞を丸ごと消滅させた白い”神機”だとぉっ!?一体何がどうなっている!?」
「バ、バカな…………メンフィル帝国とクロスベルが連合を組んだことはアランドール少佐の報告にあったが、もう既に本格的な連合を組んだ上クロスベルがあれ程の飛行戦力を保有しているだと!?しかも何故”神機”に加えて”灰の騎神”まで…………くっ…………!」
ブリッジで味方戦力が次々と撃墜される様子をワルター中将と共に信じられない思いで見ていたルーファスはリィンが何を考えているのかを知るためにARCUSを取り出してリィンのARCUSに通信をしたが、リィンのARCUSは既にリィン自身の手で破壊されていた為通信は繋がらなかった。

「こんな時に限って…………!一体何を考えているんだ、リィン君――――!」
リィンのARCUSに繋がらなかった事に唇を噛み締めたルーファスは表情を歪めて空でヴァイスリッターやメンフィル・クロスベル連合の”ルナ=ゼバル”の部隊と協力してエレボニア帝国の空挺部隊を次々と撃墜し続けるヴァリマールを睨んだ。


~貴賓区画~

「”灰の騎神”ヴァリマール…………何故リィン・シュバルツァーがクロスベル侵攻軍を…………」
「――――――?」
同じ頃貴賓区画の一室で戦況を見ていたアルティナは呆け、アルティナの言葉に続くようにアルティナの背後に現れた漆黒の傀儡―――クラウ=ソラスはアルティナとミリアムにしかわからない独特の機械音を出していた。


~特務支援課~

「あの灰色の機体がエレボニア帝国の伝承の”巨いなる騎士”―――”騎神”…………」
「あ、圧倒的ですね…………」
「は、はい…………エレボニア帝国軍が何もできないまま次々と撃破され続けていますし…………」
「”神機”と違ってグレネードのような遠距離武装は搭載されていないようですが、その不足した部分は”八葉一刀流”の剣技で補っているようですね。」
「ああ…………話には聞いていたが、まさかディーターさんと違って機体に乗った状態で”まるで人が剣を振るっているようにしか見えない動作で操作する事ができる”なんてな…………」
「”神機”を操縦するエリゼちゃんもなかなかだが、それでもあの”灰の騎神”とやらと比べると操縦は僅かに劣っているから、機体に乗った状態での戦闘はあの”灰の騎神”ってのが上だな。」
一方その頃端末に映る”戦場”の戦況を見ていたエリィとノエル、ユウナは驚き、ティオの推測にロイドは頷き、ランディは真剣な表情でヴァリマールを見つめていた。

「”騎神”や”神機”も凄いけど、”魔導技術”によって作られた飛行艇も凄いよね~。」
「ええ…………かつては”大陸最強”と恐れられていたエレボニア帝国の空挺部隊を圧倒していますし…………」
「あのような物を作りだす事ができるメルキア帝国の”魔導技術”は一体どれほどの技術力なんでしょうね…………?」
シャマーラやセティ、エリナは端末に映る”魔導技術”によって作られた戦艦や飛行艇を見て考え込み
「「………………………………」」
二人のキーアはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。


~遊撃士協会・クロスベル支部~

「まさに一方的な戦い(ワンサイドゲーム)ね…………」
「ああ…………メンフィル・クロスベル連合の戦艦や飛行艇の性能がエレボニア帝国の空挺部隊を上回っている事もそうだが、何よりもあの2体の”騎士”に対してエレボニア帝国の空挺部隊は何の対策もできていないようだしね。」
「無理もないわ…………ただでさえメンフィル・クロスベル連合軍の登場はエレボニア帝国軍にとって想定外過ぎるのに、かつてクロスベルに侵攻しようとした機甲師団を壊滅に追いやった”神機”と内戦終結の鍵となった”騎神”まで”敵”として現れているのだから、今頃エレボニア帝国軍は色々な意味で混乱していると思われるもの…………」
「この戦い、どう考えてもエレボニア帝国軍に勝ち目はないな。」
「それにこの戦いに限らずメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”もカルバードの件同様、エレボニア帝国の勝ち目は絶望的と言ってもいいだろうな…………」
同じ頃ロイド達のように端末に映る”戦場”の戦況を見ていたミシェルは疲れた表情で溜息を吐き、リンとエオリアは重々しい様子を纏って呟き、スコットは静かな表情で呟き、ヴェンツェルは複雑そうな表情で今後の展開を推測した。するとその時ミシェル達同様ロカとサティアと共に戦況を見守っていたセリカは立ち上がった。

「セリカ、どうしたの?」
セリカの突然の行動にロカは不思議そうな表情で声をかけたが
「―――”既に勝敗は決している”のだから、これ以上見ていても時間の無駄だ。無駄な時間を過ごすくらいなら、依頼を請けていた方がよほど効率的だ。―――行くぞ、ロカ、サティア。」
「わかったわ。」
「それじゃあ私達は先に失礼するわね、みんな。」
セリカの意志を知ると立ち上がり、セリカとサティアと共にギルドから出ていこうとした。

「ちょっと待って。リタちゃんや貴方の”使徒”達もそうだけど、エステル達も”どうしても外せない用事がある”からって理由でクロスベルから離れたみたいだけど…………一体何の為にエステル達がいなくなったのかを教えて欲しいのだけど。」
出ていこうとした三人を見たミシェルは制止の言葉を口にしたが
「…………エステル達がクロスベルから離れた理由は”第二のハーメルが生まれる事を阻止する為”で、その為には人手がいるとの事だからマリーニャ達にエステル達の加勢をさせている。」
「なんですって!?」
セリカが口にした驚愕の事実に血相を変えた周りの遊撃士達同様血相を変えて声を上げた。


~帝都クロスベル・中央通り~

「おお…………っ!」
「あのメンフィル帝国が味方にいるとはいえ、まさかクロスベルがエレボニア帝国軍を圧倒する日が来るなんて…………!」
「さすがはヴァイスハイト陛下達―――”六銃士”よね…………!」
街に設置されている臨時用の巨大なモニターに映る戦況を見ているクロスベルの市民達は興奮し
「う、嘘だ…………エレボニアがクロスベルに負けるなんて…………!?」
「わ、私達悪夢でも見ているの…………!?」
「エレボニアはどうなってしまうんだ…………?」
観光や商売等の目的でクロスベルを訪れていたエレボニア人は絶望や不安の表情を浮かべていた。

「あの灰色の騎士を駆るローエングリン城で出会った黒髪の少年―――リィンがキーア達の話にあった”私が復活したいずれの世界軸でも必ず私が生涯を共にすることを決めた人”………………………………」
市民達がモニターに夢中になっている中、かつてリィン達が”特別実習”での”ローエングリン城”で出会った謎に満ちた女性でその正体はセリカの身体の持ち主である”正義の大女神アストライア”の妹神であり、並行世界のキーアの”因果”を操る能力によってゼムリア大陸で復活した”慈悲の大女神アイドス”――――アイドス・セイルーンは静かな表情でモニターに映るヴァリマールを見つめ
「エステルのように多くの”絆”に溢れながらも、何故その”絆”を断つような事をしているのかを確かめてから…………”並行世界の私のように”彼を私と生涯を共にしてくれる人にするかどうかを決めたほうがよさそうね。」
ローエングリン城で出会ったリィンや周りの人物達の様子を思い浮かべながら呟いた後その場から去っていった――――
 
 

 
後書き
という事で今回の話の最後でベルフェゴールに続いて”彼女”も早期登場しましたwwなので予告通り、リィンと”彼女”との(使い魔?)契約ももうすぐの予定です。また、エステル達の件は後に判明し、エステル達がどのようにしてその情報を手に入れたかも後の話で判明するようにするつもりです。更にエステル達の話を書く際、ひょっとしたら暁の軌跡のメインキャラ達も登場し、活躍するかもしれません。何故ならエステル達の話を書く際に、エステル達が戦う敵を率いるリーダー格は暁の軌跡で登場するアイリにしようかなとも考えていますので(ぇ)

 

 

第7話

そして空の戦いはエレボニア帝国軍の空挺部隊はヴァリマールとヴァイスリッターを加えたメンフィル・クロスベル連合の猛攻によって次々と撃破され、残るはパンダグリュエルのみとなり、ヴァリマールとヴァイスリッターがパンダグリュエルに近づくと甲板に待機していたアハツェンが砲口をヴァリマールとヴァイスリッターに向けた。

~パンダグリュエル・甲板~

「これ以上この艦に近づかせるな!撃ち落とせ―――ッ!」
「イエス・サー!!」
指揮官の指示によってアハツェンの砲口は一斉に火を噴いて砲弾はヴァリマールとヴァイスリッターに襲い掛かり、爆発による煙に包まれた。
「やったか…………!?」
ヴァリマールとヴァイスリッターが爆発に巻き込まれる様子を見た指揮官は自身の望み通りの展開になっている事を口にしたが爆発による煙が晴れるとそこにはヴァリマールの前に出て障壁を展開しているヴァイスリッターの姿があり、障壁によって砲撃を全て防がれたことによって2体は無傷であった!
「ば、馬鹿な…………!?無傷だと…………!?」
「く…………っ、もう一度集中砲撃だ!」
無傷で現れた2体を見た軍人が驚いている中指揮官は再び指示を出そうとしたが
「八葉一刀流七の型―――無想覇斬!!」
「あ――――」
ヴァリマールが一気に詰め寄って抜刀によって無数の斬撃波を発生させる奥義をアハツェンの部隊に叩き込んだ。するとアハツェンは一台残らず大爆発を起こして炎上し始めた!
「ど、どうして”灰の騎士”が…………敵に…………」
「ううっ…………」
爆発に巻き込まれたりヴァリマールの斬撃によって多くの正規軍の軍人達の命が失われた中、辛うじて生き残った数人の軍人達はそれぞれ重傷を負った様子で甲板に倒れて呻いていた。その後ヴァリマールとヴァイスリッターがそれぞれ甲板に降り立つと”ヴァリアント”や”フォーミダブル”の甲板に待機していたメンフィル・クロスベル連合軍が甲板に描かれていた巨大な転移魔法陣によってパンダグリュエルの甲板に転移した!

「よぉし、鬱陶しい蠅共は片づけた!次はエレボニアの連中の生身に俺達クロスベルに手を出そうとした愚かさを思い知らせてやるぜぇぇぇぇ―――ッ!」
「メンフィルもクロスベルに後れを取るな!この戦いは同胞達に手を出した挙句謝罪すらもしなかった傲慢なエレボニアの愚か者共に余達メンフィルの”怒り”を思い知らせる戦いの始まりだ!誇り高きメンフィルの(つわもの)達よ!その”力”、存分に震うがいい!!」
「「総員、突撃!パンダグリュエルを制圧せよ!!」」
「オオオオオォォォォォォォ――――――ッ!!」
軍人達と共に甲板に現れたギュランドロスとリフィアは号令をかけ、二人の号令にメンフィル・クロスベル連合はそれぞれの武装を空に向けて掲げて力強く答えた後次々とパンダグリュエルの艦内に突入した!


~ブリッジ~

「て、敵軍、艦内への侵入を開始しました!」
「…………く…………っ…………(やむを得ん、か…………)」
メンフィル・クロスベル連合軍が艦内に突入する様子を部下が慌てた様子で報告している中唇を噛み締めて端末を睨んでいたルーファスはその場から離れ始めたが
「こんな時にどこにいくつもりだ、ルーファス卿!?」
ルーファスの行動に気づいたワルター中将が呼び止めた。
「…………今回のクロスベル侵攻、誠に遺憾ではありますが我が軍の敗北、並びにクロスベル侵攻は”失敗”という結果になってしまう事は目に見えています。ならば私はクロスベル侵攻軍を率いる将として今回の失態の責任を取るために、中将閣下を含めて一人でも多くの兵達をエレボニアに生還させ、今回の件で知った情報を持ち帰って頂くために私自身も前線に出て兵達に脱出用の飛行艇が待機している格納庫へと続く撤退ルートの確保の指揮をし、中将閣下達が撤退を終えるまで死守するつもりですので、中将閣下は撤退ルートの確保の連絡が来るまでこちらで指揮を取ってください!」
「ルーファス卿、そなた……………………―――よかろう、エレボニアに帰還した際は皇帝陛下や宰相閣下達にそなたのエレボニアと皇帝陛下に対する真の忠誠心をお伝えしておこう。―――そなたの武運を祈っている。」
「ありがたき幸せ。中将閣下にも女神達のご加護を。」
そしてワルター中将に自分がブリッジから離れる理由を説明してワルター中将が納得すると急いでブリッジを出てARCUSを取り出してある人物に通信をした。


~通路~

「―――こちら、”黒兎(ブラックラビット)”。」
「私だ。これよりパンダグリュエルからの離脱を開始する。君は急いで私に合流し、合流後はクラウ=ソラスのステルス機能を発動させて私を離脱用の飛行艇を待機させている格納庫まで同行してくれ。もちろん、君も私と共に脱出用の飛行艇に乗ってパンダグリュエルから離脱してもらうから安心してくれ。」
「…………了解しました。これより行動を開始します。」
「…………ようやく、宰相閣下の”子供達”の”筆頭”として動けるようになった私がこんな異国の地で果てる訳にはいかないのでな。―――すまないが貴方は私の為にこの艦と運命を共にしてくれ、ワルター中将。」
ある人物―――アルティナに通信でワルター中将に説明した内容とは全く異なる内容の指示をしたルーファスはブリッジに続く扉を見つめて不敵な笑みを浮かべた後急いでその場から離れ始めた。


~甲板~

一方その頃メンフィル・クロスベル連合軍が艦内への突入をしている中セレーネ達はヴァリマールとヴァイスリッターの元へと向かった。すると二体からそれぞれリィンとエリゼが光に包まれて出てきた。
「ご無事ですか、兄様、姉様…………!」
「ああ、問題ない。それにしてもさっきの障壁は助かったよ、エリゼ。」
「いえ、兄様のお役に立てて何よりです。」
「それで?戦場での”手柄”を狙っているお前さんとしては、この小部隊でどういう戦いをするつもりだ?」
「―――決まっています。戦場の”手柄”として最も評価されるのは”敵軍を率いる敵将の撃破”です。そしてこのクロスベル侵攻軍を率いる”敵将”は………」
「…………元貴族連合軍の”総参謀”にして”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”――――”翡翠の城将(ルーク・オブ・ジェイド)”であるルーファスさんですわね。」
フォルデの問いかけにリィンは静かな表情で答え、リィンに続くようにセレーネは真剣な表情で答えた。

「あのルーファス卿が”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”―――”革新派”を率いるオズボーン宰相直属の”子供達”を率いる人物である話には驚きましたが…………彼の首を狙うのですから、やはり艦内の様子を見て指揮を取れる場所であるブリッジを目指すのですか?」
「いや…………―――ベルフェゴール!」
「はいは~い、早速私に何か頼みたい事でもあるのかしら、ご主人様♪」
ステラの問いかけに首を横に振って答えたリィンはベルフェゴールを召喚し、召喚されたベルフェゴールはリィンにウインクをした。
「この艦内のどこかに離脱用の飛行艇があるはずだから、ベルフェゴールはその飛行艇がある格納庫を探って、その場所を見つけたら俺達をそこに転移魔術で連れて行ってくれ。」
「了解♪それじゃあ私は一足先に艦内に入らせてもらうわね♪」
リィンの指示に頷いたベルフェゴールは転移魔術で艦内に移動した。

「兄様、何故ベルフェゴール様に脱出用の飛空艇を…………?」
「多分リィンはそのアルバレアの長男はこの戦場から離脱すると睨んでいるから、あんな指示を出したんだと思うぜ?」
「ええ…………”Ⅶ組”での”特別実習”、そして内戦でルーファスさんの性格をある程度把握する事ができましたが…………あの人は決して自分が劣勢になっても、自分が敗北―――”死”に至る最後まで戦い抜くような諦めの悪いタイプではありません。ましてや彼は今まで戦闘もそうですが、戦場での”敗北”を経験していないのですから。」
「言われてみればルーファスさんは内戦時、常に有利な立場でいられた”貴族連合軍”の”総参謀”でしたから、”敗北”は経験していないはずですわよね…………?ユミルでわたくし達と戦った時もルーファスさんが勝ちましたし…………」
「そんなルーファス卿にとって経験する初めての”戦場での敗北”…………更に彼の正体が”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”である事を考えると、オズボーン宰相が考えている今後の”計画”に大きな支障となる私達メンフィル・クロスベル連合に対する対策をたてるためにも、この戦場からの離脱を考えてもおかしくありませんね。」
エリスの疑問に答えたフォルデの推測に頷いたリィンの説明を聞いたセレーネはルーファスの事を思い返し、ステラは静かな表情で呟いた。
「それに”煌魔城”でのオズボーン宰相に対する忠誠心を考えると、あの人はようやくオズボーン宰相の子供達の”筆頭”として堂々と動けるようになったのに、”想定外の出来事によって異国の地であるクロスベルに敗北して命を失う”という事は絶対に受け入れられないだろう。―――だから俺はルーファスさんのそういった性格を利用し、今回の戦での一番の”手柄首”である彼を”討つ”。」
「お兄様…………」
「……………………」
クラスメイトであり、大切な仲間の一人であるユーシスが慕っていた兄でもあるルーファスを討つ事を口にしたリィンをセレーネは複雑そうな表情で見つめ、エリゼは重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んでいた。

「―――ベルフェゴールが格納庫を探しているとはいえ、俺達が先に見つける可能性もある。俺達はベルフェゴールの合流を待ちつつ、艦内の緊急離脱用の飛行艇がある格納庫を探す。勿論途中で出会う敵兵は全員殲滅するぞ!」
「「「「はいっ!」」」」
「おうっ!」
リィンの号令にエリゼ達は力強く答え
「―――来い、メサイア!メサイアはエリスのサポートを頼む。」
「わかりましたわ。」
更にメサイアを召喚してメサイアに指示を出した後エリゼ達と共に艦内に突入した。


~通路~

「き、貴様は…………!?」
艦内の緊急離脱用の飛行艇がある格納庫を探す為に艦内の探索をしつつ、時折出会う正規軍の兵士達を殲滅しながら進んでいたリィン達だったが突如聞こえた声に足を止めて武装を構えて声が聞こえた方向に視線を向けると、そこには武装を構えたクロイツェン州の領邦軍がいた。
「あの軍装は確か領邦軍でしたね…………」
「ええ…………それもあの色はクロイツェン州の領邦軍ですわ…………」
兵士達の軍装を見たステラとセレーネはすぐに相手が正規軍ではなく、領邦軍である事に気づいた。
「貴様は確か”特別実習”とやらでバリアハートに訪れて、レーグニッツ知事の息子の脱走を手助けしたユーシス様の同期生…………!」
「何だと…………!?」
「という事はケルディックやバリアハートで我らを邪魔した”Ⅶ組”とやらの一員か…………!」
「……………その口ぶり、バリアハートの地下水道で俺達を包囲した領邦軍の兵士の一人か…………」
「お知り合いなのですか?」
領邦軍の一人が口にした言葉を聞いた他の領邦軍がリィンを睨んでいる中静かな表情で呟いたリィンにエリスが訊ねた。

「ああ。”特別実習”でバリアハートを訪れた際、俺のクラスメイトの一人―――レーグニッツ知事の息子であるマキアスがレーグニッツ知事に対する脅迫を考えたアルバレア公による指示で不当な理由で逮捕されて領邦軍の詰所の地下の牢屋に監禁されたんだが…………俺達が地下水道を使って牢屋から解放したマキアスと共に脱出しようとしたんだ。まあ、途中で領邦軍が放った軍用魔獣で足止めをされて領邦軍に包囲されたんだが…………その時はサラ教官が呼んできたルーファスさんがサラ教官と共に現れて俺達を捕えようとした領邦軍を撤収させたんだ。」
「バリアハートでそのような事が…………」
「バリアハートでの”特別実習”…………わたくしとお兄様達が出会う前にあった”特別実習”で当時仲が相当悪かったユーシスさんとマキアスさんが和解するきっかけになった件ですか………」
「おいおい…………ユミルの件以外でもそんなアホな事をしていたのかよ、アルバレア公爵は。仮にも”四大名門”の一角の当主だろ?」
「”四大名門”以前に帝国貴族として相応しい方ではなかった人物のようですね、アルバレア公爵は。」
リィンの説明を聞いたエリゼは厳しい表情で領邦軍を睨み、セレーネは静かな表情で呟き、フォルデとステラはアルバレア公爵の愚かさに呆れていた。

「黙れ!公爵閣下に対するその口のきき方、不敬であるぞ…………!」
「ユーシス様の同期生―――エレボニアの名門士官学院であるトールズの学生であった何故貴様がこの場に…………―――!そのメンフィル帝国の紋章が刻み込まれた軍装…………まさか貴様、祖国を裏切ってメンフィル帝国に寝返ったのか!?」
アルバレア公爵に対して悪く言うステラとフォルデを領邦軍の一人が睨んでいる中、かつてバリアハートでリィン達を拘束しようとした領邦軍の一人はある事実に気づいてリィンを睨み
「そもそもトールズの学生だからとはいえ俺がエレボニア帝国の出身であると思っていた時点で大きな間違いだ。俺は元々”メンフィル帝国の貴族”だから、祖国を裏切るような事はしていない。―――みんな、行くぞ!」
「おおっ!」
睨まれたリィンは静かな表情で反論した後号令をかけてエリゼ達と共に領邦軍との戦闘を開始した!

「喰らえ――――!」
「風よ、散れ―――ウィンドバレット!!」
「ぐあっ!?」
「ががっ!?」
領邦軍の数人はリィン達に銃口を向けて銃撃を放とうとしたがそれよりも早く既にライフルの銃口に風の魔力エネルギーを溜め終えていたステラが放った風の魔力を込めた弾丸で範囲攻撃するクラフト―――ウィンドバレットを受けて怯み
「そこだ!二の型―――疾風!!」
「二の型・改―――雷鳴剣!!」
「ぐふっ!?」
「があ…………っ!?」
ステラの攻撃で敵達が怯むとリィンとエリゼはそれぞれ電光石火の斬撃で敵達の急所を突いて絶命させた。

「「アークス駆動―――エアリアル!!」」
「吹き荒れよ―――ハリケーンブリザード!!」
後方でオーブメントを駆動させていた領邦軍の兵士達はリィン達の後方にいるセレーネ達に竜巻を発生させるアーツを放ったがセレーネは瞬時に自身の周囲に猛吹雪を発生させる魔術を発動させて二重の竜巻を吹き飛ばし
「ついてこれるか?そらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ぐああああああっ!?」
セレーネが竜巻を吹き飛ばすとフォルデが領邦軍の一人に華麗な槍舞を叩き込むヴァンダール流の槍のクラフト―――スピアダンサーを放って絶命させ
「漆黒の闇槍よ―――死愛の魔槍!!」
「ぐうっ!?」
「今ですわ!」
「はい!―――セイッ!!」
「ぐ…………あ…………っ!?」
メサイアは漆黒の闇槍を放つ魔術でもう一人の領邦軍の兵士を怯ませ、メサイアとリンクを結んでいるエリスが怯んでいる兵士に詰め寄って細剣(レイピア)による斬撃で兵士の首筋を切り裂いて絶命させた!

「いっちょ上がりっと。領邦軍がこっちにいたって事はもしかしてこの周辺が”アタリ”か?」
「…………そうですね。領邦軍の中でも”アルバレア公爵家”に忠誠を誓っているクロイツェン州の領邦軍がいたのですから、その可能性は十分に考えられると思うのですが…………」
「―――うふふ、まさにその通りよ♪」
フォルデが呟いた推測にリィンが考え込みながら答えかけたその時ベルフェゴールが転移魔術でリィン達の目の前に現れた。
「ベルフェゴールさん、”まさにその通り”という事は緊急離脱用の飛行艇がこの近くに…………?」
「ええ、既に兵士達が脱出の準備をしていたから、敵将が来る前にまずは兵士達の殲滅をした方がいいと思うわよ。」
「わかった。すぐに頼む、ベルフェゴール。」
「了解。」
「みんな、いつでも戦闘が始められるようにだけしておいてくれ!」
「「「「はいっ!」」」」
「おう!」
そしてリィン達はベルフェゴールの転移魔術でその場から消えて脱出用の飛行艇が停泊している格納庫に現れた後脱出の準備をしていた兵士達に奇襲して殲滅した。

一方その頃デュバリィ達”鉄機隊”はメンフィル・クロスベル連合がエレボニア帝国軍の兵士達と艦内での戦闘を繰り広げている中、戦場を駆け抜けて自分達の先を阻む兵士達を凄まじい速さで撃破しながらブリッジに突入していた。

~ブリッジ~

「ルーファス・アルバレア!その命、”鉄機隊”である私達がもらい受けますわ!」
「な、なんだ貴様らは!?」
「て、”鉄騎隊”だと…………?」
「”槍の聖女”が率いていたというあの…………?」
ブリッジに突如現れて宣言したデュバリィに対してワルター中将を始めとしたブリッジにいたエレボニア帝国軍は困惑していた。

「へ…………ルーファス・アルバレアがいない…………?」
「あら?艦内の戦況を見て指揮をしているだろうから、てっきりブリッジにいるのだと思っていたのだけど。」
「フム、アテが外れたのか?」
周囲を見回してルーファスがいない事に気づいたデュバリィはは呆け、デュバリィの後から入ってきたエンネアとアイネスはそれぞれ首を傾げていた。

「!その紋章…………メンフィルか!総員、戦闘態勢に入れ!」
「くっ、ここまで突入されるなんてまさか中将閣下の脱出の為に前線で指揮を取っておられるルーファス様はもう討たれたのか!?」
デュバリィ達が身に着けているメンフィル帝国軍を表す紋章に気づいたワルター中将は自身の武装を構えてブリッジ内にいる兵士達に指示をし、指示をされた兵士達はそれぞれ戦闘態勢に入っている中一人の兵士が唇を噛み締めてある事を口にした。

「”脱出の為に前線で指揮を取っている”…………―――なるほど、まさか”その行動を真っ先に取る”とはね。まあ、”将”として決して間違った選択とは言えないけど…………」
「仮にも軍を率いる総大将ならば、最後まで戦い抜くべきなのに、我が身可愛さに真っ先に離脱を選ぶとは”武”を誇っていたエレボニアの”将”の面汚しだな。」
「くっ…………貴賓区画にいると思われた黒兎(ブラックラビット)が見当たらない時点で気づくべきでしたわ…………!」
兵士の一人が呟いた言葉を聞いてすぐにルーファスが離脱行動をしている事に気づいたエンネアとアイネスは厳しい表情をし、デュバリィは自分の迂闊さに唇を噛み締めて呟いた。

「フン、たった3人でここに辿り着いた事には褒めてやるが所詮は小娘共!貴様ら如き、第五機甲師団団長にしてクロスベル侵攻軍の”副将”である私にとっては造作もない相手だが、この場に辿り着いた褒美として特別に相手をしてやろう。総員、まずは包囲せよ!」
「イエス、コマンダー!!」
一方デュバリィ達の様子を気にしていないワルター中将は嘲笑をした後兵士達に指示をしてデュバリィ達を包囲させ
「私達が小娘で、”如き”ですって…………?」
「フフ、ルーファス・アルバレア程ではないとはいえ”副将”―――それも正規軍の機甲師団団長の撃破もそうだけど、ブリッジを制圧した事も戦功として評価されるでしょうから、ちょうどよかったじゃない。」
「ああ…………!我ら”鉄機隊”を侮辱した事を心の底から後悔させてやろう…………!」
ワルター中将の言葉を聞いたデュバリィは表情を厳しくし、エンネアは口元に笑みを浮かべていながらも目は笑っていなく、アイネスはエンネアに続くように不敵な笑みを浮かべて答え
「当然ですわ!アイネス、エンネア!”星洸陣”でとっとと殲滅して、ルーファス・アルバレアを探しますわよ!」
「あの程度の相手に”星洸陣”まで使うなんてさすがに大人げないような気もするけど…………」
「まあ、我らへの侮辱は”至高の武”の存在たるマスターに対する間接的な侮辱でもあるのだから、その”報い”を受けてもらう必要はあるな。」
デュバリィの指示にエンネアとアイネスは苦笑した後それぞれ足元から光を放ち始め、互いに戦術リンクのようなもの――――様々な身体能力の上昇に加えて体力や傷も自動的に回復させるデュバリィ達”鉄機隊”の”本気”である証の特別な戦術リンク―――”星洸陣”を発動させ、ワルター中将達に襲い掛かった!


~格納庫~

「脱出の準備はできているであろうな!?――――――な。」
「これは…………」
同じ頃、緊急離脱用の飛行艇を待機させている格納庫に到着したルーファスは周囲の惨状―――血を流して地面に倒れている絶命した領邦軍の兵士達を見ると絶句し、アルティナは驚いた。
「―――予想通り、やはり戦場からの離脱を選んだようですね。」
するとそこにリィン達が近づいてきてルーファス達と対峙した。

「リィン・シュバルツァー…………それにエリス・シュバルツァーやセレーネ・L・アルフヘイムに加えて”守護の剣聖”―――エリゼ・シュバルツァーまで何故この艦に…………」
「君達が”英雄王”の指示によってメンフィルの本国に帰還させられた事は聞いていたが…………まさかリィン君に加えてセレーネ君やエリス君までメンフィル軍に協力―――いや、入隊していたとはね…………リィン君、何故エレボニアを―――”Ⅶ組”を裏切った!?」
リィン達の登場にアルティナが驚いている中、ルーファスは厳しい表情でリィン達を見回した後リィンに問いかけた。
「何故もなにも、俺は元々メンフィル帝国軍の訓練兵として所属していて、オリヴァルト殿下の要請を受けたリウイ陛下の指示によってトールズに留学していたのですから、元いた場所に戻っただけですし、そもそも俺達は”最初からエレボニア帝国ではなくメンフィル帝国に所属しているメンフィル帝国人”なのですから、ルーファスさんの”エレボニアを裏切った”というその指摘は間違っていますよ。」
「…………確かに君達はメンフィル帝国人だ。だが、トールズに入学してから君とセレーネ君はずっとエレボニアの為に特別実習で様々な活躍をし、内戦も乗り越えた。それにエリス君はアルフィン殿下のお付きの侍女として、殿下を支えてくれていた。なのに何故大切な仲間達や殿下を裏切る行為であるメンフィル帝国軍に所属してエレボニアに刃を向けたんだ…………?」
静かな表情で答えたリィンの指摘に対してルーファスも静かな表情で答えた後困惑の表情でリィン達を見つめた。

「…………っ!貴族連合軍の”総参謀”として、エレボニアに対して反乱を起こして姫様達に刃を向けた貴方にだけは言われる筋合いはありません…………!」
「エリスお姉様の言う通りですわ。例えオズボーン宰相の指示があって敢えて貴族連合軍の”総参謀”として動いていたとはいえ、内戦では貴族連合軍の”総参謀”としてカイエン公達の悪事に加担していたのですから、どんな言い訳があろうと貴方は”反逆者”ですわ!」
ルーファスの言葉に対して唇を噛み締めたエリスは怒りの表情で指摘し、セレーネもエリスに続くように怒りの表情でルーファスを睨んで指摘した。
「やれやれ…………随分と嫌われてしまったものだ。それでリィン君、君達の真意について答えてもらいたいのだが?」
二人に睨まれたルーファスは苦笑した後リィンに問いかけた。

「―――エレボニアの滅亡を防ぐ為ですよ。」
「え…………」
「何…………?それはどういう意味だ…………?」
リィンの答えを聞いたアルティナが呆けている中、ルーファスは眉を顰めて指摘した。
「ルーファスさんでは理解できな―――いや、理解したくないでしょうけど、今回のメンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国との戦争…………どう考えても”エレボニア帝国に勝ち目は一切ありませんし、メンフィル帝国は決して和解の為の要求内容を妥協する事はありません。”だったら、戦争で活躍して昇進し、戦後のエレボニア―――”メンフィル・クロスベル連合によって占領されたエレボニアについて口出しできる立場”になって、せめてエレボニア帝国が滅亡する事だけは防ぐ為に…………そしてメンフィル帝国から厳しい処罰が求められているアルフィン殿下の処罰を可能な限り穏便な内容にしてもらえる進言ができる立場になる為にも、今回の戦争は敢えて”メンフィル帝国側として”参加する事にしたのですよ。―――幸いにもメンフィル帝国は”実力主義”ですから、戦争で手柄を立てれば立てる程その手柄に相応した立場を用意してくれるとの事ですし。」
「………理解できません。何故そこまでして、エレボニアを…………」
「な…………あ…………っ!?」
リィンの真意を知ったアルティナが困惑している中、ルーファスは信じられない表情で口を大きく開けてリィンを見つめた。

「―――そしてその手柄の一つとしてまずはメンフィルの同盟国であるクロスベルに侵攻しようとするエレボニア帝国軍を率いる”総大将”にして”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”でもある貴方をここで討たせてもらいます。」
ルーファスに太刀を向けたリィンはそのまま”鬼の力”を解放した姿になった!
「くっ…………早まった事は止めるんだ、リィン君!そんな無謀な事、Ⅶ組は絶対に望んでいないし、メンフィル帝国側として戦争に参加すればいずれはⅦ組の関係者達の命を奪う事になるかもしれないし、何よりも君にとって唯一の血が繋がった父君であられる宰相閣下にまで刃を向ける事になるのだぞ!?」
「え…………リィンさんがあのオズボーン宰相の息子…………」
「今の話は本当なのか、リィン?」
リィンが本気で自分の命を狙っている事に唇を噛み締めたルーファスは何とかリィンを説得しようと言葉を続け、ルーファスが口にしたある事実を聞いたステラは驚き、ステラ同様驚いたフォルデは目を丸くしてリィンに訊ねた。

「ええ、最近判明した事ですけどね。―――確かにオズボーン宰相は俺と血の繋がった父親なのでしょう。ですが、俺にとっての本当の両親はオズボーン宰相が冬山に捨てた俺を拾ってエリゼ達と区別せず自分達の子供同様に育ててくれた父さんと母さん―――シュバルツァー男爵夫妻だ!幼い俺を捨て、自分の野望の為だけにクロウを含めた多くの人達の人生を歪めた挙句、今更父親面をして俺を利用しようとするオズボーン宰相の事は俺の”父親”として絶対に認めない!いずれはオズボーン宰相も討ち、真の意味で親子の縁を断つ!」
「「兄様…………」」
リィンがルーファスに向けて口にした決意の言葉を聞いたエリゼとエリスは静かな表情でリィンを見つめ
「くっ…………宰相閣下の事も含めて”何も知らない身”で、愚かな事を…………!飛行艇での離脱が厳しい以上、君のクラウ=ソラスで戦場から離脱する!何とかこの場を切り抜けてハッチを開けるスイッチがある場所まで撤退し、ハッチを開けた後はクラウ=ソラスに君と私を保護させてそのまま空に離脱する!」
「了解しました。クラウ=ソラス。」
「――――――」
一方唇を噛み締めてリィンを睨んだルーファスは自身の得物である騎士剣を構えてアルティナに指示をし、指示をされたアルティナは自分の背後にクラウ=ソラスを現させた。

黒兎(ブラックラビット)の相手は私が担当します。彼女にはユミルでエリスを拉致した事に対する私の”怒り”もぶつけたいので。」
「クク、エリゼちゃんもリィンと同じ”シスコン”だったとはな。―――そんじゃ、俺とステラはエリゼちゃんに加勢させてもらうから、アルバレアの長男と因縁があるお前達は内戦で積もり積もった今までの恨みつらみをぶつけて来い!」
黒兎(ブラックラビット)は私達に任せて、リィンさん達はルーファス・アルバレアの撃破をお願いします。」
「わかった…………!メサイアはエリゼ達に加勢してくれ!」
「わかりましたわ!」
アルティナとクラウ=ソラスの相手を申し出たエリゼ、フォルデ、ステラにアルティナ達の事を任せる事にしたリィンはメサイアにエリゼ達の加勢をさせ、アルティナ達と対峙したエリゼはメサイアと、ステラはフォルデとの戦術リンクを結び、ルーファスと対峙したリィンはベルフェゴールと、セレーネはエリスとの戦術リンクをそれぞれ結んだ。

「――――――これよりエレボニア帝国クロスベル侵攻軍の”総大将”ルーファス・アルバレアの討伐並びに”黒の工房”のエージェント、アルティナ・オライオンの捕縛を開始する。行くぞ、みんなっ!!」
「おおっ!!」
そしてリィンの号令を合図にリィン達はそれぞれが相手をする敵に向かって行き、戦闘を開始した―――――!
 
 

 
後書き
次回のルーファス&アルティナ戦の戦闘BGMは神のラプソディの”指揮者はこの地に降り立つ”、グラセスタの”あの日の誓いを胸に秘め”、VERITAの”宿業”、閃ⅡのOP”閃光の行方”の歌がないver、碧の”Inevitable Struggle”のうちのどれかだと思ってください♪ 

 

第8話

~パンダグリュエル・格納庫~

「ブリューナク起動、照射。」
「――――――」
「「「「!!」」」」
アルティナの指示によってクラウ=ソラスにエリゼ達目掛けて集束レーザーを放ち、放たれたレーザーをエリゼ達は散開して回避した。
「ヤアッ!」
「バリア展開。」
「―――――」
レーザーを回避したステラは反撃に冷気と閃光を発する手榴弾――――A(アイス)グレネードをアルティナの足元へと投擲したが、クラウ=ソラスが展開した障壁によってグレネードの爆発と冷気は防がれた。
「喰らいなぁ!風雷神槍!!」
「――――――」
更にフォルデが風と雷を宿した一撃を放つヴァンダールの槍技―――風雷神槍でクラウ=ソラスに攻撃したが、クラウ=ソラスは両腕を交差してガードした。
「お返しです!」
「――――――」
「おっと!」
フォルデは攻撃を防がれた後に反撃してきたクラウ=ソラスの攻撃を軽やかに側面に跳躍して回避した。

「二の型―――洸破斬!!」
「あうっ!?」
クラウ=ソラスの注意がフォルデに向かっている隙を突いたエリゼが無防備になっているアルティナの側面から神速の抜刀による鋭い衝撃波を放って命中させるとアルティナは怯み
「崩しました!」
「続きますわ!」
アルティナの態勢が崩れるとエリゼとリンクを結んでいるメサイアがアルティナに追撃をした。

「メーザーアーム――――斬!!」
「――――――!」
「「「!!」」」
体制を立て直すためにアルティナはクラウ=ソラスの両腕を光の刃と化させて周囲を切り刻まさせ、エリゼ達はクラウ=ソラスの反撃を回避する為に後ろに跳躍して一端アルティナから距離を取った。
「回復します―――アルジェムヒール!!」
「――――――!」
エリゼ達が自分達との距離を取るとアルティナはクラウ=ソラスに回復エネルギーを自分達に降り注がせて自分達のダメージを回復した。
「アークス駆動―――」
「させません―――シュート!!」
「あうっ!?」
続けてアルティナはアーツを放つためにARCUSを駆動させ始めたがステラの正確無比な狙撃によってARCUSの駆動は中断させられた。

「闘技―――月影剣舞!!」
「あぁっ!?」
「!?」
続けてメサイアは再びアルティナ達との距離を一気に詰めた後広範囲を攻撃する美しき剣舞でアルティナ達に攻撃し
「クク、見切れるものなら見切ってみな?ハァァァァァァ…………ッ!!」
メサイアに続くようにフォルデは広範囲に無数の連続突きを放つヴァンダール流の槍技―――スラストレインで追撃した。

「エニグマ駆動―――ダークマター!!」
「あぁぁぁっ!?何故、エニグマで”戦術リンク”が…………」
「――――――!?」
二人が攻撃している間にオーブメントの駆動を終えたステラは重力でアルティナとクラウ=ソラスを一か所に固めてダメージを与えつつ動きを制限し、ステラのアーツを受けたアルティナはステラの戦術オーブメントがARCUSでないにも関わらず戦術リンクを発動している事に困惑していた。
「闇を切り裂く金耀の一刀――――セイッ、ヤアッ!ハァァァァァァァ……!
そこに太刀に闘気による凄まじい光を纏わせたエリゼが光の長剣と化した太刀で閃光の速さでアルティナとクラウ=ソラスに十字架を刻み込むように十字(クロス)に斬った後、太刀に闘気を溜め込みながら空高くへと跳躍し
「絶―――閃鳳剣!!」
「あぁぁぁっ!?ミッション失敗…………理解…………できません…………」
「――――――!?」
空高くへと跳躍したエリゼが閃光の速さで太刀を振るうと光の鳳凰が凄まじいスピードでアルティナとクラウ=ソラスを襲って光の大爆発を起こし、エリゼが放ったSクラフトをその身に受けたアルティナとクラウ=ソラスは戦闘不能になり、戦闘不能になったアルティナは地面に崩れ落ち、クラウ=ソラスは地面に倒れた。

「光よ――――」
ルーファスは先制攻撃に騎士剣に光を纏わせてリィン達に突撃して騎士剣を振るい
「させるか!」
「斬!!」
リィンはルーファスが放ったクラフト―――アークブレイドを正面から受け止めた。
「何っ!?…………!」
自身の技を正面から受け止めたリィンに驚いたルーファスは反撃を警戒してすぐに剣を引いてリィンから距離を取ったが
「うふふ、どこに逃げているのかしら?」
「な――――」
「すごいねこアッパー!!」
「ガッ!?」
転移魔術でルーファスの背後を取ったベルフェゴールによるアッパーカットを受けて怯んだ。

「崩したわよ!」
「もらった!秘技―――裏疾風!斬!!」
「ぐうっ!?」
ルーファスが怯むとリィンはカマイタチを纏った電光石火の斬撃を叩き込んだ後更なる追撃に斬撃波を放ってルーファスに電光石火の2回攻撃を叩き込んだ。
「七色の光の矢よ――――プリズミックミサイル!!」
「エニグマ駆動――――カラミティエッジ!!」
「エニグマだと…………!?く…………っ!」
リィンとベルフェゴールの攻撃の間に魔術の詠唱とオーブメントの駆動を終えたセレーネとエリゼはそれぞれ七色の光の矢と漆黒の刃をルーファス目掛けて放ち、ルーファスはエリスが叫んだ言葉からリィン達がエニグマを使っていながら戦術リンクを発動させている事に驚きつつ自分に襲い掛かって来た魔術とアーツを間一髪のタイミングで回避した。

「(”鬼の力”を解放したリィン君と”転移”による奇襲をしてくる上一撃が重いあの女性とまともにやり合う訳にはいかない…………!)フフ、君には少しの間人質になってもらうよ!」
リィンとベルフェゴールの戦闘能力を警戒したルーファスはリィン達の中で圧倒的に実力が一番低いと思われるエリスを人質に取るためにエリスに向かってエリスの細剣(レイピア)目掛けて騎士剣を振るった。
「!甘く見ないでください!モータルクレッシェンド!!」
「何…………っ!?(バカな…………!ただの女学生だったエリス君が私の攻撃を見切っているどころか、これ程の反撃までできるとは一体どうなっている…………!?)」
しかしクロスベル侵攻が起こるまで予めベルフェゴールとの性魔術で身体能力等も上昇させたリィンがエリゼ達とも性魔術をしたことでエリゼ達もそれぞれ身体能力や魔力等も強化されていた為、リィンの性魔術によって身体能力等も強化されていたエリスはルーファスの攻撃を見切って回避した後反撃に荒々しいリズムで連続突きを放ち、ルーファスはエリスの実力の高さに困惑しながらエリスの攻撃を防いでいた。
「―――失礼!」
「っ!!」
そしてエリスの攻撃が終わるタイミングでセレーネはルーファスに冷気を纏った足払いで奇襲し、セレーネの足元からの奇襲にルーファスはギリギリのタイミングで回避した。

「―――緋空斬!!」
「聖なる盾よ―――守護せよ!!」
更にリィンが炎の斬撃波を放つとルーファスは結界―――― プラチナムシールドを展開して防いだ。
「レイ=ルーン!!」
「!!」
しかしベルフェゴールが放った極太の純粋魔力のエネルギーは直感で防ぐ事は不可能と悟ったルーファスは側面に跳躍して回避したが
「四の型・改―――紅蓮切り!!」
「グアッ!?アークス駆動……!」
「崩れなさい!」
「ぐっ!?しまった、ARCUSが…………!?」
リィンの魔力の炎を宿した太刀による一撃離脱技を受け、ダメージを受けたルーファスは状況を立て直す為に戦術オーブメントを駆動させたがエリスの狙いすました針の穴を通すような一撃のクラフト―――ブレイクニードルで戦術オーブメントの駆動は中断させられると共に”封魔”状態に陥った為、ルーファスはアーツを使えなくなってしまった。

「お兄様、エリスお姉様、下がってください!」
「「!!」」
その時全身に凄まじい魔力を纏い始めたセレーネはルーファスの近くにいるリィンとエリスに警告し、警告された二人はすぐにルーファスから距離を取った。
「ユミルで戦ったあの時にも貴方の命を奪う事を躊躇ったばかりに使わなかった事で後悔したこの力…………もう、躊躇いませんわ!グオオオオオオオオォォォォォォォッ!!」
「な―――――――」
全身に凄まじい魔力を纏ったセレーネは竜化し、竜化したセレーネを見たルーファスは驚きのあまり絶句した。

「氷金剛破砕撃 (ダイヤモンドアイスバースト)――――ッ!!」
「聖なる盾よ―――バカな!?」
竜化したセレーネは口から無数の氷の礫が混じった猛吹雪をルーファス目掛けて放ち、セレーネのドラゴンブレスを防ぐ為にルーファスは再び結界を展開したがドラゴンブレスは易々と結界を破壊してルーファスに襲い掛かった!
「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!?」
セレーネのドラゴンブレスを受けたルーファスは無数の氷の礫で全身から血を噴出させ、更にルーファスの全身のほとんどは凍結して、ルーファスは身動きすらできなくなった!
「明鏡止水――――我が太刀は生。見えた!――――うおおおおおっ!斬!!」
セレーネのドラゴンブレスを受けて瀕死かつすぐに動けない状態を見て好機と判断したリィンはその場で一瞬集中した後縦横無尽にかけながらルーファスに何度も斬撃を叩き込んだ後強烈な威力の回転斬りを放った。
「灰ノ太刀――――滅葉!!」
そしてリィンが太刀を鞘に収めた瞬間、鎌鼬が発生してルーファスに襲い掛かり、鎌鼬はルーファスの全身を切り裂いた!
「……………………?」
ルーファスは何故か一瞬で景色が変わった事に不思議そうな表情をしたが、眼下に頭部を失った自分の身体を見つけ―――
「おのれぇぇぇぇ―――!この私が”黄昏”が起こる前にこんな異国の地で果てるというのかぁぁぁぁ―――ッ!」
最後に絶命の言葉を口にし、憤怒と無念が混じったルーファスの生首はルーファスの遺体の傍に落ちた!

「ぁ……………………」
「―――エレボニア帝国クロスベル侵攻軍総大将ルーファス・アルバレア、メンフィル帝国軍リフィア皇女親衛隊所属にしてユミル領主の息子、リィン・シュバルツァーが討ち取ったり。」
ルーファスの絶命にアルティナが呆然としている中ルーファスの遺体の背後にいるリィンは静かな表情で宣言して太刀を鞘に収めた。するとその時ワルター中将達の殲滅とブリッジの制圧を終えたデュバリィ達が突入してきた。
「なっ!?こ、これは…………」
「…………どうやら今回の戦いの一番の大手柄は”灰色の騎士”達のようだな。」
「フフ、恐らくここに先回りしてルーファス・アルバレア達を撃破した様子だから、彼らの方はルーファス・アルバレアは離脱する考えに賭けて、その”賭け”に勝ったみたいね…………」
絶命しているルーファス達や戦闘不能に陥ったアルティナの様子を見たデュバリィが驚いている中、アイネスは感心した様子でリィン達を見つめ、エンネアは苦笑していた。

「ハハ…………これで正真正銘二度と”Ⅶ組”に戻れなくなったな…………”C”の仮面を取って素顔を表す事を決めたクロウもこんな気持ちを抱いていたのかもしれないな…………」
「「兄様…………」」
「お兄様…………」
「シュバルツァー…………」
寂しげな笑みを浮かべて呟いたリィンの様子をエリゼ、エリス、セレーネは心配そうな表情で見つめ、デュバリィは複雑そうな表情でリィンを見つめていた。
「オラ!何をしけたツラしてやがる!」
するとその時フォルデがリィンに近づいてリィンの背中を強く叩いた。

「フォルデ先輩………?」
「お前はエレボニアでできた大切な仲間達の為にメンフィル軍の一員として、今回の戦争でエレボニア帝国の連中をお前の踏み台にして”上”にのし上がる事を決めたんだろうが!そしてその第一歩として、お前はメンフィルが最も怒りを抱いている人物の一人にして今回の戦での”総大将”も務めている奴を討ち取って大手柄をその手に掴んだのだから、お前はもっと胸を張っていいんだぜ!」
「………先輩…………」
フォルデの励ましの言葉を聞いたリィンが驚きの表情でフォルデを見つめると一瞬フォルデとクロウが重なったように見えた。
「……………………ありがとうございます、先輩。そうだ…………こんな事でヘコんでいる場合じゃない…………戦争はまだ始まったばかりなんだ…………ルーファスさんを俺の”踏み台”にしたことを無駄にしない為にも、俺はもっと戦場で活躍して”上”を目指す…………!」
静かな笑みを浮かべてフォルデに感謝の言葉を述べたリィンは決意の表情を浮かべた。

「フフ、その意気です。」
「…………兄様に”喝”を入れていただき、ありがとうございます、フォルデさん。」
リィンの様子を見たステラは微笑み、エリゼはフォルデに会釈をした。
「ま、これも先輩の義務ってやつだよ。―――例えば”娼館”に連れて行って、”男”にしてやることとかもな♪」
「最後のその発言が全てを台無しにしていますよ、先輩…………」
エリゼの感謝の言葉に対して軽い様子で答えたフォルデが答えたある言葉にエリゼ達と共に冷や汗をかいて脱力したリィンは疲れた表情で指摘した。そしてすぐに気を取り直したリィンはアルティナに近づいて声をかけた。

「―――君にはメンフィル帝国が色々と聞きたいことがあるからルーファスさんと違って”捕縛”して、君が持つ情報を話してもらう事になる―――主に”黒の工房”について。」
「…………ルーファス卿が討たれ、クラウ=ソラスも無力化されて何もできなくなった私には抵抗の手段はありません。これよりメンフィル帝国軍に”投降”します。」
リィンの宣言に対してアルティナは少しの間目を伏せて黙り込んだ後目を見開いて投降を申し出た。
「ありがとう。リウイ陛下達も幼い君の命を奪う事までは考えていないとの事だし、”捕虜”になった君の身の安全についても何とかするから安心してくれ。―――エリゼ、早速で悪いが…………」
「―――それ以上は仰らなくてもわかっております。リフィア達にアルティナさんの身の安全をしてもらえるように後で頼んでおきます。」
「ああ、頼んだ。」
「………………………………」
敵であった自分の身の安全をする為の会話をしているリィンとエリゼの様子をアルティナは黙って見つめていた。

「フ、フン!敵だった者の為にメンフィルの皇族と近しい関係にある妹に頼るとはやはり甘い男ですわね!」
リィン達の様子を見守っていたデュバリィは鼻を鳴らして呆れた表情でリィン達に指摘したが
「フフ、そんな事を言っているけど、貴女も”黒兎(ブラックラビット)”を自分の手で捕える事ができれば、”灰色の騎士”のようにマスターに彼女の身の安全を頼むつもりだったのだからお互い様じゃない♪」
「ふっ、貴賓区画に突入した時はまさにその二つ名通り”神速”のような速さで全ての部屋を見て回っていたな。」
「や、やかましいですわ!」
エンネアとアイネスに茶化されると必死に反論し、その様子を見たリィン達は冷や汗をかいて脱力していた。

「ハハ…………今回の戦、デュバリィさん達には悪いが、アルティナの捕縛と今回の戦の大手柄であるルーファスさんの討伐は俺達が取らせてもらった。アルティナの件をわざわざ教えてくれたのに、それを横から掠め取るような事までして悪いとは思っているが…………」
「別に私達に謝る必要はありませんわ。公平な勝負の結果なのですから、それを否定するような愚かな事はしませんわ。」
「それに私達もクロスベル侵攻軍の”副将”の討伐とブリッジの制圧という手柄があるから、私達は私達で手柄があるから、あまり気にしなくていいわよ。」
「ルーファス・アルバレアの行動を読んだ上での待ち伏せと撃破…………―――見事だった。さすがは我らが”好敵手”と認めた者達だ。」
我に返ったリィンはデュバリィ達に近づいて声をかけ、リィンの謝罪に対してデュバリィは静かな表情で答え、エンネアは苦笑しながら浮かべながら答え、アイネスは口元に笑みを浮かべてリィン達を称賛した。
(うふふ、この戦争でご主人様がどれだけ素敵な男に成長するのか、楽しみね♪)
(はい…………不謹慎ではありますがこの戦争でリィン様は間違いなく様々な意味で大きく成長なさるでしょうね…………それこそ、かつてのお父様のように………)
一方リィン達の様子を見守っていたベルフェゴールの念話にベルフェゴールの隣にいたメサイアは頷いた後微笑ましそうにリィン達を見つめていた。

こうして…………エレボニア帝国による再度のクロスベル侵攻は失敗に終わり………エレボニア帝国はルーファスを含めた数人の貴重な優秀な人材に加えて、クロスベル侵攻に従軍した正規軍、領邦軍の兵士達を失うという大損害を被ることになった…………

また…………リィンは今回の戦の大手柄であるルーファスの討伐を評価されて、17歳という若さでありながら”少佐”へと昇進した――――
 
 

 
後書き
という訳でこの物語でもルーファスは早期退場しましたwwリィンの昇進は灰と違って控えめにはしてありますが、この調子でどんどん昇進させ続ける予定です。(というかもうこの時点でメンフィルが考えているエレボニアのある人物の処遇は決まっていて、それに関しては灰とほぼ同じですが)次回はクロスベルでの祝勝会と”彼女”との契約の予定ですが、もしかしたらリィンの使い魔陣営初である天使枠のキャラを出すかもしれませんw

 

 

第9話

メンフィル・クロスベル連合軍によるエレボニア帝国のクロスベル侵攻軍の迎撃・殲滅が終わった数時間後ロイド達はセルゲイとルファディエルからある説明を受けていた。

同日、PM4:30―――

~特務支援課~

「”祝勝会”、ですか?」
「ああ…………本日の夜19:00からメンフィル・クロスベル連合のお偉いさん達と今回の迎撃戦で活躍した連中をオルキスタワーに集めて祝勝会をするんだとさ。」
「内容は今回の迎撃戦で活躍した人物達への表彰と今回の迎撃戦の勝利を祝うパーティーよ。」
ロイドの疑問にセルゲイとルファディエルはそれぞれ説明し
「おいおい、勝ったのはあくまで侵攻軍の連中であって、エレボニア帝国にまだ侵攻すらもしていないのに”祝勝会”をするなんて、幾ら何でも早すぎねぇか?」
「まあ、メンフィルが味方についている時点で勝利は確定しているようなものではありますが…………」
二人の説明を聞いたランディは呆れ、ティオは静かな表情で呟いた。

「”クロスベル帝国”の建国から電撃的な速さで共和国を占領したとはいえ、クロスベル帝国はクロスベルの有力者達と正式な顔合わせ等をしていなかったから、その顔合わせも兼ねて”祝勝会”を開くそうよ。」
「後はまあ、エレボニア帝国との決着がつくまで戦争状態が続く事になるから、その合間に一息入れる事で戦争が続いている事で内心不安を感じているクロスベルの市民達を安心させる為でもあるそうだ。その証拠にクロスベル政府は今日限定でクロスベル中の飲食店に酒を含めたドリンクの類を一杯だけ無料にするように通達している。―――もちろん、その無料にする一杯分はクロスベル政府が負担するという内容でな。」
「ええっ!?一杯だけとはいえ、お酒を含めたドリンクが無料になるんですか…………」
「今頃飲食店は大忙しでしょうね…………一杯だけとはいえ、お酒が無料になるんですから、お客様も当然それを目当てにお店に足を運ぶと思いますし。」
「クロスベルがかつては”大陸最強”で呼ばれていたエレボニア帝国軍相手に勝利した事によるクロスベルの市民達の興奮も相まって市民達の財布のひもも緩くなるでしょうから、クロスベルの経済、市民達の感情を考えた上での合理的な政策でもあるわ。」
ルファディエルの後に説明したセルゲイの説明を聞いたノエルは驚き、セティは苦笑し、エリィは静かな表情で呟いた。

「え、えっと………その”祝勝会”?でしたっけ。その話を今、あたし達にもしたって事はもしかしてあたし達、”祝勝会”の警備とかを担当することになるんですか!?」
一方ルファディエルとセルゲイの話を聞いてある事を推測したユウナは興奮した様子で二人に訊ねた。
「ふふ、残念ながら”特務支援課”は”祝勝会”の警備を担当しないわ。」
「警備を担当するのは警備隊と一課の刑事達だ。――――――むしろ、支援課は”祝勝会”に関連する支援要請で今夜は大忙しになると思うぞ。」
「”祝勝会”関連で普段よりも大忙しになっている飲食店に関連する支援要請やトラブル、エレボニア人関連の支援要請に酔っ払いの保護等考えただけでもキリがありませんね。」
「ったく、下手したら今日は日をまたいでも仕事が終わらないんじゃねぇのか?」
「当然遊撃士協会も大忙しになるでしょうね…………」
「う~…………今日は寝る事ができるのかな…………?」
ユウナの期待に対してルファディエルは苦笑しながら否定し、口元に笑みを浮かべて答えたセルゲイの指摘に続くように推測を口にしたティオはジト目になり、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、エリナは苦笑し、シャマーラは疲れた表情で頭を抱えた。

「えっと………キーア、疲労を回復させるイーリュンの治癒術も使えるから疲れたらいつでもロイド達の疲れを癒してあげるよ!」
「えっと、えっと………それじゃあキーアはロイド達の仕事の合間に食べられるような軽食やエリィのおじいちゃんが大好物の”特製にがトマトシェイク”を作っておくね~♪」
二人のキーアの申し出を聞いたロイド達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引きつらせ
「え、えっと、キーアちゃん?軽食はともかく、あのジュースは確かに疲れがとれるかもしれないけど私達はどちらかというと苦手だから、別のジュースにして欲しいのだけど…………」
「しかも未来のキーアの治癒術による疲労回復も何だか無理矢理働かされるような感じもして、少々ブラックな気がするのですが…………」
我に返ったエリィは苦笑しながら、ティオはジト目でそれぞれ指摘した。

「クク…………―――それで話を”祝勝会”の件に戻すが…………まずはセティ、シャマーラ、エリナ。お前達はヴァイスハイト皇帝から”祝勝会”の参加を要請されている。」
「ほえ?どうしてあたし達が…………」
「多分私達がお父様―――ユイドラ領主の娘だからでしょうね。」
「私達はクロスベルにとっては他国から来ている有力者の関係者ですから、呼ばれてもおかしくないかと。」
セルゲイの話に首を傾げているシャマーラにセティとエリナはそれぞれ苦笑しながら説明し
「それとエリィ。できれば貴女も”祝勝会”に参加して欲しいと、ヴァイスハイト皇帝から要望が来ているわ。」
「え…………私もですか?一体どうして…………」
「それはやっぱりエリィ先輩がマクダエル議長の孫娘だからじゃないですか?既に議長から引退されたとはいえ、マクダエル議長は市長に当選してきた時からずっとクロスベルの人達が慕っていた政治家なんですから、マクダエル議長や議長のご家族であるエリィ先輩をそんな大事なパーティーに呼ばない方がおかしいと思いますし。」
ルファディエルに名指しされたエリィが呆けている中、ユウナが自身の推測をエリィに伝えた。

「ユウナの推測通り、マクダエル元議長も祝勝会に招待されているわ。…………まあ、エリィに関してはユウナが言っていた事もあるでしょうけど、かつての”特務支援課”の仲間としての気遣いで、将来政治や外交の道を進む事に決めているエリィの”社会勉強”やメンフィルとクロスベルの有力者達と顔見知りになって、様々な方面のコネクションを作る足掛かりにしてもらう為でもあると思うわよ?」
「あ……………………」
「……………………わかりました。せっかくの機会ですし、私も参加させて頂きます。」
ルファディエルの推測を聞いたロイドは呆けた声を出し、エリィは目を伏せて考え込んだ後目を見開いて答えを口にした。
「フフ、そう言うと思っていたわ。―――という事でロイド、貴方もエリィの付き添いとして”祝勝会”に参加しなさいね。」
「ええっ、俺が!?何で!?」
「あら、貴方は私と正式に婚約を結んでいるんでしょう?”黒の競売会(シュバルツオークション)”の時と違って今は偽の恋人関係どころか、本物の恋人―――いえ、婚約者同士の関係なのだから、今回の”祝勝会”に参加する私の婚約者として”祝勝会”に私と参加するのは当たり前じゃない。」
「そ、それは…………」
自分まで祝勝会に参加する事になるとは思わなかったロイドだったが、笑顔を浮かべたエリィの説明を聞くと反論をなくした。

(エリィさん、何気に自分がロイドさんの”正妻”であることを私達にアピールしている気がするのですが…………)
(アハハ、それはあたしも思ったよ~。)
(別に私達は”正妻”の座を奪うような事は考えていないのですが…………)
(さすがはエリィさん。やはり一番最初にロイドさんと恋人になっただけはありますね…………)
(アハハ、そうだね。これ見よがしに私達がいる目の前で堂々とロイドさんと婚約者同士である事も宣言しているし…………)
一方その様子を見守っていたセティ、シャマーラ、エリナは苦笑し、真剣な表情で呟いたティオの言葉に続くようにノエルは苦笑しながら答えた。
「それに貴方の事だから、例の”灰色の騎士”の事も気になっているのでしょう?彼と直接会って話す機会でもあるのだから、貴方にとってもちょうどいい機会だと思うわよ?」
「!あの”灰の騎神”を操縦していたエリゼさんのお兄さん――――”灰色の騎士”リィン・シュバルツァーか…………さっき、今回の迎撃戦で活躍した人達も参加するって言っていたけど、彼もやはり”祝勝会”に?」
ルファディエルの指摘に血相を変えたロイドは真剣な表情でルファディエルに訊ねた。

「ええ。―――というか、”祝勝会”のメインは彼よ?迎撃戦で侵攻軍の多くの空挺部隊を撃破した事に加えて侵攻軍の”総大将”まで討ち取ったから、表彰されるのは”灰色の騎士”―――リィン・シュバルツァー少佐だとの事だし。」
「ええっ!?そのリィン少佐って人はクロスベル侵攻軍の”総大将”まで討ったのですか!?」
「ああ、その手柄を評価されて”少佐”に昇進したとの事だ。」
ルファディエルのリィンの事についての説明に驚いたノエルにセルゲイがルファディエルの説明を補足した。
「おいおい…………空中戦での大活躍どころか”総大将”まで討ったのかよ、そのリィンって野郎は…………」
「そのクロスベル侵攻軍を率いていた”総大将”がどんな実力なのかはわかりませんけど、あの銀色の大きな戦艦―――”パンダグリュエル”でしたっけ?さすがにパンダグリュエルの中ではあの”騎神”って存在を操縦して戦う事はできないでしょうから、その”総大将”とはあたし達みたいに生身で戦って勝ったんですから、凄いですよね…………」
「「………………………………」」
セルゲイの話を聞いたランディは目を細め、ユウナは驚きの表情で呟き、二人のキーアは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「それとその表彰式の際にリィン少佐とヴァイスハイト皇帝の娘―――メサイア皇女の正式な婚約も発表するそうよ。」
「へ…………」
「む、娘!?やっぱりあの人、既に子供がいたんですか!?」
ルファディエルが口にした驚愕の事実に仲間達がそれぞれ驚いている中ロイドは思わず呆けた声を出し、ノエルは真剣な表情で声を上げた。そしてルファディエルはメサイアの事について説明した。
「並行世界の昔に生きていたリア充皇帝の娘の一人とか色々と無茶苦茶だな、オイ…………」
「そしてそんな人物がこちらの世界の現代に現れてそのリィンさんと出会った原因はどう考えても、”並行世界のキーア”の仕業でしょうね…………」
「「アハハ…………」」
説明を聞き終えたランディは疲れた表情で呟き、推測を口にしたジト目のティオに視線を向けられた二人のキーアは苦笑していた。

「それにしてもどうしてわざわざそのメサイア皇女殿下とリィン少佐の婚約を発表するんですか?ルファディエル警視の話によりますとヴァイスハイト陛下は元々お二人の婚約を認めていたとの事ですし…………」
「…………恐らく今回の戦で新たに生まれたメンフィル帝国の”英雄”であるリィン少佐と自国の皇女の婚約を世間に発表する事で、世間にメンフィルとクロスベルの関係がより強固になった事を知らしめて戦争で不安な気持ちを抱えているクロスベルの市民達の安心させる為だと思うわ。それとメンフィルと関係を深めている事で”クロスベルはゼムリア大陸最大にして最強の国家であるメンフィル帝国に国として認められて、既に国交を行っている事”で他国―――特にリベールやレミフェリアとの国交を開く足掛かりにする為でもある事も考えられるし、後は…………内戦終結の鍵となった事で恐らくエレボニア帝国でも”英雄”扱いされているであろうリィン少佐がメンフィル・クロスベル連合に所属している事をエレボニア帝国にも知らしめて、エレボニア帝国に混乱を起こす為でもあるかと思うわ…………」
「ったく、並行世界とはいえ自分の娘の婚約をそんなキナ臭い事に使うとか何考えてんだ、あのリア充皇帝は…………―――いや、向こうにはルイーネ姐さんもいるから、ひょっとしたらルイーネ姐さんの考えかもしれねぇが…………」
「どっちにしても、戦争や政治的な理由で婚約を利用されるお二人は可哀想ですよね…………」
ユウナの疑問に答えたエリィの推測を聞いたランディとノエルはそれぞれ疲れた表情で溜息を吐いた。

「――――表彰式は”祝勝会”の最初に行われるとの事だから、表彰式が終わって彼に対するマスコミの取材が終われば、彼も他の参加者達のようにパーティーに参加する事になっているから、もし彼に接触するのだったらその時に接触しなさい。」
「………わかりました。ロイド、有力者達が参加するパーティーに参加するのだから当然フォーマルな恰好に着替えてね。」
「あ、ああ。というか、そういった場で着る服は”黒の競売会(シュバルツオークション)”に潜入するために買ってもらった服しかないんだが…………ハハ、まさかこんな形で再び着る事になるなんてな。…………そういえばフォーマルな恰好で気になっていたけど、セティ達はどうするんだ?今からそう言った服が売っている店で買って、その場で着て行くのか?」
ルファディエルの説明に頷いたエリィはロイドに助言し、助言されたロイドは当時の事を思い返して苦笑した後ある事に気づいてセティ達に訊ねた。
「いえ、私達は既にユイドラからそれぞれ自分達のドレスを持ってきていますから、それを着て行きます。」
「ちなみにドレスは全部あたし達の手作りだよ♪」
「フフ、当時徹夜をしてまで作った事が懐かしく思えますね。」
ロイドの疑問にセティが答え、シャマーラとエリナの説明によってドレスをセティ達自身で用意した事実を知ったロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「さすがは”工匠に不可能はない”を公言しているウィルさんの娘さん達ですよね…………セティさん達の事ですから、その内自分達の家や本格的な工房も自分達だけで作るんじゃないんですか?」
「しゃ、シャレになっていないよ、ティオちゃん…………」
静かな表情で呟いたティオの推測にノエルは冷や汗をかきながら苦笑した。
「やれやれ…………ロイド達がパーティーを楽しんでいる間、俺達の方は仕事かよ。」
「普段以上の”残業”をする事は確実なのですから、臨時ボーナスを出しても罰は当たらないと思うのですが。」
「あ、あのなぁ…………」
「クク、パーティーに参加しないお前達の方は後日”臨時ボーナス”としてどの飲食店でも一回だけどれだけ注文を頼んでもヴァイスハイト皇帝達――”六銃士”の連中が負担するクロスベル中の全ての飲食店で使える特別無料券がそれぞれ支給され、更に”臨時休暇”として1日だけ有給休暇とは別の休暇がとれる事になっているぞ。」
疲れた表情で呟いたランディとジト目のティオの文句にロイドが疲れた表情で溜息を吐いている中セルゲイが口元に笑みを浮かべてランディ達にとって朗報となる情報を口にした。

「マジっすか!?それならやる気が出るってもんだぜ~♪」
「どの飲食店でもどれだけ注文を頼んでも無料になる特別無料券に加えて有給休暇とは別の休暇もくれるなんて、太っ腹ですね。」
「もう、二人とも幾ら何でもあからさま過ぎよ…………」
セルゲイの話を聞いてやる気になったランディとティオの様子を見たエリィは呆れた表情で溜息を吐いた。

「え、えっと………パーティーに参加しない人達って事はあたしもですか?」
「ええ、ユウナも支援課の一員なんだから当然ユウナにも特別無料券の支給と臨時休暇が与えられることになっているわよ。」
「そ、そうなんですか…………でも本当にいいんでしょうか…………?あたしは人手不足になっている特務支援課を手伝う為に警察学校から派遣されているのに…………」
臨時に派遣されている自分までランディ達と同じ扱いである事を肯定したルファディエルの答えを聞いたユウナは謙遜した様子で答え
「ふふっ、せっかくのご褒美なんだから遠慮せずもらっておいた方がいいと思うよ。」
「ええ…………それにユウナも今から一番忙しくなる時期に私達の分も働いてくれるのですから、そのくらいのご褒美があっても当然だと私も思いますよ。」
「ノエル先輩…………セティ先輩…………」
ノエルとセティの答えを聞くと嬉しそうな表情をした。

「さてと…………そうと決まれば私達は準備を始めないといけませんね。」
「メンフィルとクロスベルの有力者達がたくさんいるパーティーに参加しなければならないから、軽くシャワーは浴びておいた方がいいもんね~。」
「そうね。”黒の競売会(シュバルツオークション)”の時とは訳が違うもの。―――そういう訳だから、ロイドも着替える前にシャワーを浴びておいてね。」
「ハハ、わかったよ。」
エリナの言葉に続くように呟いたシャマーラの言葉に頷いたエリィはロイドにも自分達と同じ事をするように伝え、ロイドは苦笑しながら答えた。

その後、ランディ達が仕事を再開する為に行動を開始している中ロイド達はシャワーを浴びてフォーマルな服装に着替えた後――――”祝勝会”が開かれるオルキスタワーへと向かった―――
 
 

 
後書き
予告とは違う内容にしてしまってすいません(汗)ロイド達の話もちょっとだけ書こうと思って書いたのですが、気づいたら結構長く書いてしまったので一つの話として更新する事にしました(汗)なので前の話で予告した内容は次の更新です………… 

 

第10話

同日、19:00―――

エレボニア帝国によるクロスベル侵攻軍を殲滅したその日の夜、オルキスタワーにて”祝勝会”が開かれていた。


~オルキスタワー・35F~

「―――リィン・シュバルツァー少佐、今回のエレボニア帝国によるクロスベル侵攻軍に対して行われた迎撃作戦での貴殿の活躍を評し、感謝状を与える。」
「―――謹んで頂戴致します。」
メンフィルとクロスベルの有力者達が注目している中リィンがヴァイスから感謝状を受け取るとその場にいる全員が拍手をしている中マスコミ達はそのシーンを写真にする為に一斉にフラッシュをたいた。
「本当ならば感謝状の他にも勲章や褒美も与えたい所だが、メンフィル帝国軍に所属している貴殿にクロスベルから過度の褒美等を与える訳にもいかないのでな。与えるのが感謝状だけになってすまないな。」
「いえ、メンフィル帝国軍からも既に今回の迎撃戦での活躍の件で若輩の身でありながら”少佐”に任命して頂きましたし、何よりも陛下にとって大切なご息女であられるメサイア皇女殿下との婚約も許して頂いたのですから、自分にとっては貰い過ぎだと思っているくらいです。」
苦笑しながら答えたヴァイスの謝罪に対してリィンは謙遜した様子で答えた。

「フッ、”上”を目指している割には欲がない男だ。―――まあ、そんな所もメサイアが惹かれているのかもしれないな。―――メサイア、リィン少佐の隣に。」
「―――はい。」
リィンの答えを聞いたヴァイスは静かな笑みを浮かべてルイーネ達と共に見守っているメサイアに視線を向け、視線を向けられたメサイアは静かな表情で会釈と共に返事をした後リィンの隣に移動した。
「皆に紹介しよう。彼女の名前はメサイア。俺の側妃の一人―――マルギレッタの親類に当たる人物だが様々な事情があって俺とマルギレッタの”養子”にする事にした。そしてそのメサイアはリィンと数奇な出会いを得て将来を共にする事を誓い、俺達も娘の意志を組んで二人の婚約を認める事にした。」
「この婚約もまた我らメンフィルの盟友たるクロスベルとの関係を強化する切っ掛けにもなるであろう。また、メサイア皇女自身もリィンと共に今まで戦場を共にしてきたのじゃから、メサイア皇女はメンフィルにとっても”戦友”である!」
「エレボニア帝国との戦争はまだ始まったばかりだが…………今夜はクロスベルを侵攻しようとしたエレボニア帝国に勝ったメンフィル・クロスベル連合による勝利とメンフィルの新たなる”英雄”とクロスベルの皇女の婚約を祝ってやってくれ!」
ヴァイス、リフィア、ギュランドロスの宣言にその場にいる全員は拍手をし、マスコミ達はフラッシュをたいてヴァイス達の写真を撮っていた。

「―――それでは皆、グラスを手に持ってくれ。」
そしてヴァイスの言葉を合図にその場にいる全員は酒やソフトドリンクが入ったグラスを手に持ち
「「「メンフィル・クロスベル連合の輝かしい未来と二人の婚約に乾杯!!」」」
「乾杯!!」
ヴァイス、ギュランドロス、リフィアが掲げたグラスを乾杯させるとその場にいる全員もグラスを上げた。

「リィン少佐!今回の迎撃戦による活躍を評価され、昇進した今のお気持ちをお願いします!」
「リィン少佐!メサイア皇女殿下との出会い、婚約まで発展した経緯をお願いします!」
「リィン少佐はエレボニアの内戦終結の鍵となったエレボニアの若き英雄―――”灰色の騎士”と同一人物であるという情報が入っているのですが、真偽をお願いします!」
「リィン少佐はヴァイスハイト皇帝陛下のように、メサイア皇女殿下以外にも複数の婚約者がいらっしゃっているという情報もありますが、その真偽についてもお答えいただきたいのですが!?」
「え、えっと………」
パーティーが始まるとグレイスを含めたマスコミ達は一斉にリィンに集まってインタビュー等を求め、マスコミ達に迫られて冷や汗をかいたリィンが困惑しながら答えを濁していたその時
「――――――これより、リィン・シュバルツァーに対する取材の時間を設けるが、取材の時間は30分に制限させてもらう。」
「マスコミの皆さんもご存知のように、リィンさんは迎撃戦を終えたばかりの為疲れもまだ残っていますので取材の時間はこちらの判断で30分と決めさせていただきましたので、ご理解の方をお願いします。」
「その代わりと言ってはなんですが、メサイア様と同じ兄様の義妹の一人にして婚約者の一人でもある私―――エリゼ・シュバルツァーで答えられる事でしたら答えますので、兄様への取材時間を制限させる件はそれでお許しください。」
ゼルギウス、シグルーン、エリゼが横に入ってマスコミ達の応対を始めた。その後ゼルギウス達の応対のお陰で無事にマスコミ達による取材を終えたリィンはマスコミ達から離れた。

「つ、疲れた…………迎撃戦の時よりも疲れた気がする…………(ゼルギウス将軍閣下達やエリゼには感謝しないとな…………)」
マスコミ達から距離を取ったリィンは疲れた表情で溜息を吐いた後マスコミ達による自分への取材時間を短くした代わりに自分達がマスコミ達の取材に答えている様子のゼルギウス、シグルーン、エリゼを見つめてゼルギウス達の気遣いに感謝した。
「全く…………あの程度で疲れるなんて、まだまだ未熟である証拠ですわよ。」
するとその時デュバリィがリィンに声をかけ、アイネスとエンネアと共にリィンに近づいた。
「デュバリィさん。それにアイネスさんとエンネアさんも。」
「フフ、マスコミ達の取材、お疲れ様。」
「まあ、其方同様今回の迎撃戦で活躍した我等もこの後マスコミ達への取材が待っているとの事だから我らも他人事ではないから、他人の事は言えないがな。―――特に我らの場合、クロスベル動乱時は一応ディーター元大統領側に協力していたからな。その件も突いてくる可能性があることを考えると、ある意味我らの方がマスコミ達に対する発言を慎重にすべきかもしれんな。」
エンネアはリィンを労い、アイネスは苦笑していた。

「ハハ…………それにしても、デュバリィさんもそうだが、”鉄機隊”の人達の甲冑姿以外の恰好を見るのは新鮮だな…………」
アイネスの発言に冷や汗をかいて苦笑したリィンは気を取り直してそれぞれフォーマルな格好をしているデュバリィ達を見回した。
「まあ、馬子にも衣裳というものだからあまり気にしないでくれるとありがたい。」
「フフ、でも元”貴族”のデュバリィはシュバルツァー少佐のように自然に着こなしいるけどね。」
「え…………」
「ちょっ、他人の過去を許可もなく言わないでください!」
リィンの言葉に対してアイネスが苦笑している中デュバリィに視線を向けたエンネアの言葉にリィンが呆けている中デュバリィはジト目で反論した。

「えっと………もしかして聞いたら不味い内容だったか?」
「………別に不味くはありませんわ。隠しているという訳でもありませんし。貴方に教える機会が偶然なかっただけですわ。」
「偶然以前に、我らはついこの間までは敵対関係であったのだから、そのような機会がある方がおかしいのだがな。」
苦笑しながら聞いていたリィンに対してデュバリィが気まずそうな表情で答え、アイネスが苦笑しながら答えたその時
「――――フフ、ですが今では肩を並べて共に剣を振るう”戦友”の関係となったのですから、自然とお互いの事をよく知る事になると思いますよ。」
リアンヌがリィン達に近づいて声をかけた。

「え――――――」
「マスター!」
リアンヌの登場にリィンが呆けている中デュバリィは嬉しそうな表情で声を上げ
「こうして顔を合わせるのは初めてになりますね。―――我が名はリアンヌ・ルーハンス・サンドロット。かつては結社の”蛇の使徒”の一柱でありましたが…………私にとっての真なる主たるリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下への忠誠の為に陛下達と共に結社の”盟主”を討伐し、お二方の身を守る騎士となった者です。」
「という事は貴女がデュバリィさん達の主である”鋼の聖女”…………――――お初にお目にかかります。自分はユミル領主の息子、リィン・シュバルツァーと申します。かつてはエレボニア帝国のトールズ士官学院――――”Ⅶ組”に所属していましたが、諸事情によってトールズを辞め、メンフィル帝国軍に所属する事になりました。」
リアンヌが自己紹介をするとリィンは呆けた表情でリアンヌを見つめた後自己紹介をした。

「ええ、勿論貴方がドライケルス殿が建てた学び舎で”放蕩皇子”がエレボニアの”新たなる風”の一員になる事を期待していた者の一人である事は存じています。」
「…………恐縮です。その…………失礼を承知でサンドロット卿について伺いたいのですが…………サンドロット卿は250年前ドライケルス大帝と共に”獅子戦役”を終結させたエレボニアの英雄である”槍の聖女”なのでしょうか?」
リアンヌの言葉に対して謙遜した様子で答えたリィンは真剣な表情でリアンヌに問いかけた。
「フフ、正確に言えばこの身体の持ち主はそうなのですが、私自身は違いますよ。」
「へ…………」
「マ、マスター!何もシュバルツァーにそこまで教えなくても…………!」
リアンヌの答えを聞いたリィンが呆けている中デュバリィは慌てた様子で指摘した。

「いえ、彼に関しては構いません。この身体の持ち主である”リアンヌ・サンドロット”も彼の事を随分と気にしていましたので。」
「へ。」
「え…………サンドロット卿――――”槍の聖女”がシュバルツァーの事を?」
「一体何故…………」
リアンヌの答えを聞いたデュバリィは呆けた声を出し、エンネアとアイネスは戸惑っていた。
「…………その件については後で教えます。それよりも私の”正体”の事についてですが――――」
そしてリアンヌはリィンに自身の正体を教えた。

「ええっ!?あ、貴女が”メンフィルの守護神”と称えられていた伝説の聖騎士――――シルフィア・ルーハンス卿の生まれ変わりだったなんて…………!しかもその生まれ変わり先がエレボニアの伝説の”槍の聖女”だと仰いましたが、一体何故250年以上前の人物が今も生きているのでしょうか…………?」
「フフ、それについては機会があれば答える時があるでしょう。―――貴方との邂逅を望む者達が他にもいるようですし、我々はこれで失礼します。――――行きますよ、デュバリィ、アイネス、エンネア。」
「「「ハッ!」」」
自分の正体を知って驚いているリィンに対して答えたリアンヌはある方向に視線を向けた後デュバリィ達と共にリィンから離れた。
「ハハ…………やっぱり俺達が君に話しかける機会を伺っていた事に気づいていたようだね。」
「さすがは結社最強の”鋼の聖女”にしてエレボニアの伝説の英雄―――”槍の聖女”よね…………」
するとリアンヌが視線を向けた方向からロイド達が現れてリィンに近づいた。

「貴方達は一体…………」
「―――初めまして。俺はロイド・バニングス。クロスベル警察”特務支援課”のリーダーをやっている者だ。よろしく。」
「同じくクロスベル警察”特務支援課”のサブリーダーを務めているエリィ・マクダエルです。以後お見知りおきを、リィン少佐。」
「私はユイドラから”特務支援課”に出向しているユイドラ領主の娘の長女――――セルヴァンティティ・ディオンです。親しい人達からは”セティ”という愛称で呼ばれていますので、よければリィン少佐も私の事を”セティ”と呼んでください。」
「あたしの名前はシャマーラ。シャマーラ・ディオン!セティ姉さんの妹の一人でーす!よろしくね♪」
「………同じくセティ姉様のもう一人の妹のエリナ・ディオンと申します。お初にお目にかかります、”灰色の騎士”――――リィン・シュバルツァー少佐。」
初対面の自分達を呆けた様子で見つめているリィンにロイド達はそれぞれ自己紹介をした。

「”特務支援課”…………それじゃあ貴方達がクロスベル動乱時、エリゼが協力していたディーター・クロイス元大統領に抵抗していた勢力の…………」
「ああ、エリゼさんにはその節もそうだけど”西ゼムリア同盟会議”でもお世話になったよ。」
「そして今回の迎撃戦ではエリゼさんに加えてエリゼさんの妹であるエリスさん、そしてお二方の兄君のリィン少佐にお世話になったのだから、クロスベルは”シュバルツァー家”と奇妙な縁ね。」
「ハハ、こちらの方こそ(エリゼ)が世話になったんだからお互い様さ。…………それと俺の事は”リィン”でいい。お互いそう年も離れていないし、俺自身”少佐”になったのが今日からでまだ呼ばれ慣れていない事もそうだが、メンフィル軍の所属でもないロイドさん達にまでそう呼ばれると何だか別人のようにも感じるしな。」
「だったら俺達の事も呼び捨てでいいよ。――――改めてよろしく、リィン。」
「ああ、こちらこそよろしく、ロイド。」
そしてリィンとロイドは互いに握手をした。

「ねえねえ、リィンさん!”灰の騎神”だっけ?もしリィンさんがよかったら、今後の”工匠”としての技術力を高める為に”灰の騎神”のデータを取らせて欲しいんだけどやっぱりダメかな?」
「シャマーラ、”灰の騎神”はリィンさんにとって大切な存在であり、メンフィル軍にとっても重要な兵器なのですから、幾ら何でも無理な注文ですよ、それは。」
「妹が無茶な事を言ってすいません、リィンさん。」
興味ありげな様子で聞いてきたシャマーラにエリナは指摘し、セティはリィンに謝罪をした。
「いや、別に気にしていないから大丈夫だよ。それに俺の方が、君達――――”工匠”に用があったから、ここで会えて何よりだよ。」
「ほえ?リィンさんがあたし達に?」
「もしかして我々に何か作って欲しい物でもあるのでしょうか?」
リィンの話を聞いたシャマーラは首を傾げ、エリナは不思議そうな表情で訊ねた。

「作って欲しいというか改良かな?君達”工匠”の技術力はゼムリアだけでなくディル=リフィーナでも秀でている話は噂には聞いているし、実際ヴァイスリッターの太刀は君達の父親――――”匠王”ウィルフレド卿が作成した上エリゼの武装も君達が作ったと聞いているから、君達ならヴァリマールの”太刀”をより強力な物に仕上げる事ができると思っているんだ。」
「”ヴァリマール”というと…………あの灰色の機体――――”灰の騎神”の事だよな?」
「どうしてセティちゃん達に改良の依頼を?端末で戦況を見ていたけど、特に問題ないように見えたけど…………」
リィンの依頼を聞いたロイドとエリィはそれぞれ不思議そうな表情をした。
「”エレボニア帝国征伐”が本格的になれば、当然内戦時に出てきたエレボニアの新兵器――――”機甲兵”とも何度もやり合う事になるだろうから、なるべく時間をかけずに”機甲兵”を撃破できる程の威力の武装ができれば欲しいと思っているんだ。機甲兵とは内戦時にもやり合ったが、ゼムリアストーンで加工された特製の”太刀”でも”大破”に持っていくことすらそれなりに時間がかかったんだ。―――だから、俺は今より強力な武装が手に入る機会があれば手に入れたいと思っている。――――”戦場”で素早く敵を撃破する事で味方への損害を減らす事もそうだが…………何よりも戦争を少しでも早く終わらせる事で、内戦、そしてメンフィル・クロスベル連合との戦争で苦しんでいるエレボニアの人達を戦争による苦しみから解放する為さ。…………まあ、エレボニア帝国に侵略する側であるメンフィル軍に所属している俺がそんな事を言える筋合いはないけどな…………」
「リィンさん…………」
「…………一つだけ聞いていいかい?」
リィンの答えを聞いたエリィが複雑そうな表情をしている中、目を伏せて黙って考え込んでいたロイドは目を見開いて静かな表情でリィンに問いかけた。

「?」
「君がエレボニアの内戦の件も含めてエレボニアで起こった様々な問題をエレボニアの仲間達と共に乗り越えた話は人伝で聞いている………その君が今回の戦争にメンフィル・クロスベル連合側として参加した理由は君達の故郷である”ユミル襲撃”の件に対する怨恨等ではなく、エレボニアで結んだ”絆”―――仲間や知り合いの人達の為なのか?」
「……………………――――ああ。例えアリサ達――――”Ⅶ組”と敵対関係になったとしても、今回の戦争に参加した事はエレボニアの人達の為でもある事は断言できる。」
ロイドの問いかけに一瞬目を丸くして驚いたリィンはすぐに静かな表情で頷いて答えた。
「それで話を戻すけど、ヴァリマールの”太刀”の改良の件はどうかな?予めメンフィル軍にも話を通して許可を取っているから、太刀の改良の際に必要となるヴァリマールの情報を君達が収集する許可も出ているし、”報酬”もメンフィル軍が支払ってくれることになっているから、後は君達が承諾してくれるだけでいいんだが…………」
「「「……………………」」」
リィンに問いかけられた三姉妹はその場で少しの間黙り込んで互いの視線を交わしてリィンを見つめて答えを口にした。

「―――その依頼、喜んで受けさせて頂きます。」
「本当だったら”戦争”に直接関わる”兵器”に関する依頼を請けるつもりはなかったんだけど…………武器の改良や強化だったら、ギリギリ許容範囲だからね。」
「―――”騎神”の武装の改良に限らず、リィンさん自身や今回の戦争で一緒に戦う事になるリィンさんの仲間の方達の武装の開発や強化等も請け負いますので、時間ができれば中央通りにある支援課のビルを訊ねてください。」
「ありがとう。だったら明日早速訊ねさせてもらうよ。幸いにも今回の迎撃戦で参加したメンフィル軍の一部は俺も含めて次の軍事作戦が行われるまでクロスベルに待機する事になっているしな。―――それじゃあ、俺は他にも挨拶する人達がいるからこれで失礼するよ。」
セティ達の答えを聞いたリィンは感謝の言葉を述べた後ロイド達から離れた。

「…………それでどう感じたのかしら、ロイド。”灰色の騎士”―――リィンさんと実際に話してみて。」
「そうだな…………―――少なくても彼は今回の戦争、”メンフィル人として”でもなく”軍人として”でもなく、”エレボニアで結んだ絆を大切にしているリィン・シュバルツァー自身として”参加している事はよく理解できたよ。」
リィンがその場を離れた後のエリィの問いかけにロイドは静かな表情でリィンに関する事を答えた。

その後パーティーで食事を取りながら談笑しているエリス達、メサイアと談笑しているマルギレッタとリ・アネスへの挨拶回りをしながら食事をとったリィンはパーティーの空気で火照った身体を冷やす為に人気のない場所で外の空気を吸おうと思い、パーティー会場を出てエレベーターで屋上に向かって屋上に出るとそこにはある人物が屋上で夜空を見上げていた。


~屋上~

(?あの女性はどこかで見たような…………)
夜空を見上げている人物――――アイドスの後ろ姿を見たリィンが眉を顰めたその時、アイドスは振り向いてリィンを見つめた。
「こんばんわ。こうして会うのはローエングリン城以来になるわね。」
「え…………――――!アイドスさんですか………!お久しぶりです。一体どうしてこちらに?」
(ん?”アイドス”って古神――――”慈悲の大女神”と同名だけど、本人である訳…………ないはずよね?確か”慈悲の大女神”は”神殺し”との戦いに敗れて滅んだって話だし。)
自分に近づいてきて声をかけたアイドスの言葉に一瞬呆けたリィンはすぐにアイドスの事を思い出して驚き、二人の会話を聞いていたベルフェゴールは不思議そうな表情をしていた。

「星々の導きによると、今夜ここに貴方が必ず来る事がわかったからここでずっと待っていたわ。」
「??えっと………俺に用があってここにいたみたいですけど…………一体俺に何の用なのでしょうか?」
アイドスの答えが理解できなかったリィンは不思議そうな表情でアイドスに訊ねた。
「それを答える前にまずは今回の迎撃戦で活躍して、”英雄”と呼ばれるようになった事…………”おめでとう”と言っておくわ。」
「ハハ、”英雄”だなんて俺には過ぎた異名ですよ。まだ最初の戦いで他の人達より多少活躍した程度で戦争は始まったばかりですし…………エレボニアでも”英雄”と呼ばれるような偉業もしていないんですけどね…………」
「フフ、リィンは自分に対する評価は低いのね。―――それも、エレボニアで結んだ”絆”を断とうとしている事に関係しているのかしら?」
「!…………どうしてそんな質問を俺に?」
アイドスの指摘に目を見開いたリィンは複雑そうな表情でアイドスにアイドス自身の意図を訊ねた。

「―――それを答える前にまずは私の”正体”について教えるわね。」
「へ…………」
そしてアイドスの言葉を聞いたリィンが呆けたその時、アイドスは一瞬で屋上全体を結界で覆った。
「”結界”!?それも一瞬でこんな大規模なものを…………!アイドスさん、貴女は一体…………」
「―――”慈悲の大女神アイドス”。それが私の”正体”よ。」
(ハアッ!?まさか本当に”慈悲の大女神”自身だなんて…………一体どうなっているのよ!?)
「”慈悲の大女神”って………ええええええええええええっ!?じゃ、じゃあまさかアイドスさん―――いえ、アイドス様は本物の”女神”なのですか…………!?」
アイドスが自己紹介をするとベルフェゴールは驚き、一瞬呆けたリィンは驚きの声を上げた後信じられない表情でアイドスを見つめた。

「ええ、そうなるわね。」
「えっと………今更な質問ですけど、どうして”女神”であるアイドス様が”ローエングリン城”に?」
「フフ、そのことも含めて”私”について教えてあげるわ――――」
そしてアイドスはリィンにかつての自分が歩んだ”軌跡”や自分が現世に蘇った理由を説明した。

「…………………………その…………正直、何て言ったらいいかわかりません…………」
アイドスの壮絶な過去を聞き終えたリィンは申し訳なさそうな表情で謝罪した。
「フフ、気にしないで。貴方の反応は当然だし、それにキーアのお陰で、私はこうして蘇り……私のせいで運命が狂ったアストライアお姉様とセリカ(お姉様が愛する人)が”(エステル)”によって救われたんだから。かつて裏切られた”人”によって”神”が救われ、そしてエステル―――”人”が多くの異種族に加えて女神と共に生き、笑い合っているんだから。……それだけでも私にとっては心から嬉しい出来事だわ。私の目指した”道”は決して間違っていない事が証明されたのだから。」
一方謝罪されたアイドスは優し気な微笑みを浮かべて答えた。

「そうですか…………カシウス師兄のご息女であるエステルさん…………色々と話は伺っていますが、本当に凄い人物ですね…………それに比べて俺は…………」
「…………今度は私が貴方に聞く番ね。ねえ、リィン。どうして貴方は自らが結んだ”絆”を断とうとする事――――今回の戦争に貴方が結んだ”絆”と敵対する関係を選んだのかしら?」
辛そうな表情を浮かべたリィンに対してアイドスは静かな表情で問いかけた。
「…………それは――――」
そしてリィンはアイドスに戦争に参加した理由を説明した。

「…………そう。貴方は貴方自身が結んだ”絆”の為に今回の戦争は、その人達とは別の道を歩むことにしたのね…………―――でも、リィンはわかっているの?その道は辛く険しく、例え貴方の目的であるエレボニアの滅亡を防げたとしても、その人達と以前のような関係に戻れる可能性はほとんどない事に…………」
事情を聞き終えたアイドスは静かな表情で呟いた後リィンに問いかけた。
「―――はい。全て覚悟の上です。」
「………………………………うん、例え世界は違っても貴方は貴方であることがよくわかったわ。」
リィンの決意の表情を少しの間見つめたアイドスは納得した様子で頷き
「へ…………」
アイドスの答えを聞いたリィンは呆けた声を出した。

「………そう言えば私がここに来た理由をまだ言ってなかったわよね。―――私がここに来た理由は一つ―――”人”を良く知る為に貴方と共に”道”を歩む為に来たのよ。」
「お、俺と共に”道”を歩むって、ま、まさか……!」
アイドスの答えを聞いてアイドスが自分と”契約”しようとしている事に気付いたリィンは信じられない表情をしてアイドスを見つめたその時、アイドスは身に纏っている服のボタンを外してなんと下着もつけていない胸を顕わにした。
「あわわわわわわっ!?―――んんっ!?」
そしてアイドスは自分の扇情的な姿を見て混乱しているリィンの唇を口付けで封じ
「フフ、貴方がここに来た時に認識障害の結界を展開したから、私が結界を解くまでこの場には誰も来ないから、慌てなくていいわよ。それじゃあ始めるわね?”契約”の”儀式”を――――」
リィンに”性魔術”を施してリィンと契約し、リィンが装備していた太刀――――利剣『緋皇』に宿り、女神であるアイドスが宿った事によって太刀は形態を変えると共に”慈悲の大女神アイドス”の膨大な神力を纏わせた”神剣”―――『神剣アイドス』に生まれ変わり、更にアイドスとの性魔術によってリィンを長年苦しめていたリィンの心臓に秘められていた”鬼の力”は浄化され、その代わりに”慈悲の大女神”であるアイドスの神力による加護でリィンの”神気合一”が強化された!

「フフ、まさか復活した私が”処女”だったなんて、私自身も驚いたけど……よかった……私が選んだ人に”処女”を奉げる事が出来て……”処女”の身体を持つ私を復活させた”並行世界のキーア”に感謝しないとね……アストライアお姉様……ようやく私もお姉様のように心から信頼できる人を見つたわ…………これからよろしくね、リィン………ん……」
契約を終え、リィンが持っていた太刀に宿った後すぐにリィンの傍に現れたアイドスは優しげな微笑みを浮かべて迎撃戦の疲れに加えて自分との”性魔術”による疲労で眠っているリィンに膝枕をしてリィンの頭を優しく撫でながら見つめた後リィンの唇に口付けをした。
「あ…………!お兄様がいましたわ…………!」
「リィン様の他にも女性がいらっしゃるようですが、あの女性は一体…………」
するとその時リィンがパーティー会場からいなくなった事を心配してリィンを探していたエリゼ、エリス、セレーネ、メサイア、フォルデ、ステラがリィンとアイドスに近づいてきた。

「リィンの仲間の人達や恋人の人達かしら?」
「は、はい…………貴女は一体…………」
アイドスの問いかけにエリスは戸惑いながら答えた後アイドスの正体を訊ねた。
「―――私はアイドス。”慈悲の大女神アイドスよ”。リィンと”契約”を交わしてリィンの太刀として、貴女達のようにリィンと将来を共に歩むことに決めたからよろしくね。」
アイドスの答えを聞いたその場にいる全員は衝撃のあまり石化したかのように固まり
「…………あ~…………ちょいと酒を飲み過ぎたか?今、俺の耳に”女神”がリィンと”契約”を交わした上リィンの新たなハーレムの一員になったと聞こえたんだが…………」
「い、いえ…………フォルデ先輩の気のせいじゃないです。アルコールを飲んでいない私の耳にもハッキリとそう聞こえましたし…………その証拠にリィンさんの太刀から凄まじい聖なる魔力まで感じますし…………」
逸早く我に返ったフォルデは疲れた表情で呟き、ステラは冷や汗をかいて表情を引き攣らせながら『神剣アイドス』を見つめて答えた。

「ちょ、ちょっと待ってください!先ほど貴女は”慈悲の大女神”と名乗りましたわよね!?という事は貴女は私達の世界の神――――それも”古神(いにしえがみ)”なのですか!?」
「ええ、一応そうなるわね。―――あら?貴女達は確か”セレーネ”と”エリゼ”だったわよね?フフ、久しぶりね。特にセレーネは前に会った時と比べると随分と見違えたわね。」
「は、はい…………あの後、色々あって”成竜”と化した為、このような姿に成長したのですが…………」
「…………お久しぶりです、アイドス様。不躾な質問で申し訳ないのですが…………何故アイドス様が、兄様とそのような関係に?レグラムでの特別実習の際にローエングリン城で兄様たちと邂逅した話は伺っておりますが…………」
一方アイドスの正体に心当たりがあるメサイアは血相を変えてアイドスに確認し、メサイアの問いかけに頷いたアイドスはセレーネとエリゼに気づくとエリゼに微笑み、声をかけられたセレーネは戸惑いながら答え、エリゼは戸惑いの表情でアイドスに問いかけた。
「そうね…………一言で言い表すならば”押しかけ女房”と言うべきかしら?」
アイドスの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「フフ、そういう訳だからこれからよろしくね。それじゃあ私は一端太刀に戻るからリィンの事、お願いね。」
そしてアイドスはリィンの太刀に戻った。
「…………………え、えっと………とりあえずリィンさんはベルフェゴール様に続いて心強い仲間ができたと思うべきなのでしょうか?」
「”心強い”ってレベルじゃねぇだろ…………”魔神”を使い魔にしている時点ですでに”チート”と言ってもおかしくない戦力なのに、そこに”女神”まで加わるとか、こいつの女運は一体どうなっているんだと俺でも突っ込みたいくらいだぜ…………しかし、リィンが女神と”契約”を交わした話をゼルギウス将軍閣下達が知れば、間違いなく驚くだろうぜ。いや~、あの将軍閣下達が驚く顔が今から楽しみだぜ~。」
「そしてゼルギウス将軍閣下達からアイドス様の件がリフィア殿下やリウイ陛下達にも伝わって、メンフィル皇族の方々まで驚かせることになるのでしょうね…………」
我に返って苦笑しながら呟いたステラの言葉に疲れた表情で溜息を吐いて答えたフォルデは口元に笑みを浮かべ、セレーネは苦笑し
「ハア…………ちょっと目を離した隙に増やすなんて…………それもその相手が”古神”だなんて…………」
「ベルフェゴール様の件といい、メンフィル軍に所属してからの兄様の”悪い癖”が明らかに酷くなっていますよね…………」
エリゼとエリスはそれぞれ疲れた表情で頭を抱えて溜息を吐いた。

~帝都クロスベル・中央通り~

「速報です!今回の迎撃戦での活躍を評されて、メンフィル帝国軍の少佐に”昇進”し、ヴァイスハイト陛下から感謝状を授与されると共にメサイア皇女殿下との婚約が発表されたメンフィル帝国の新たなる英雄―――リィン・シュバルツァー少佐はエレボニアの内戦終結の鍵となったエレボニアの若き英雄”灰色の騎士”と同一人物との事です――――」
「え…………い…………ゆ…………う…………?」
中央通りに設置されている臨時の巨大モニターに市民達の一部が注目している中、天使の女性――――天使階級第七位”権天使(プリンシパティウス)”ユリーシャは虚ろな目でモニターに映るリィンの写真を見つめてグレイスの解説を聞いていた。
(けが)されなければ…………我が主がいる世界すらからも追放され…………我が主の為に…………この身を(けが)す事すらできなくなった…………壊れた天使である…………この身に唯一できる”英雄”への役割は…………”英雄”にこの身を(けが)されること…………」
そしてうわ言を呟きながらユリーシャはその場から去っていった――――
 
 

 
後書き
という訳でアイドスも予告通り早期に仲間になりました!!そして今回の話の最後でまさかのエウシュリー最新作――――”封緘のグラセスタ”の天使枠にしてポンコツ天使(コラッ!)ことユリーシャが初登場しました!なお、ユリーシャの発言から既にお察しと思いますが今回出てきたユリーシャは正史ルート(?)ではなく、もう一つのルートのユリーシャです(ぇ)なので別にリィンが原作主人公からユリーシャを寝取ろうとしている訳ではないと思ってもらえれば幸いかと(冷や汗)ちなみに最初からもしユリーシャを登場させるとしたら、アイドスが仲間になってからにするつもりでした。…………え?何でそのつもりだったかって?なんせ”古神”であるアイドスがいないと、ユリーシャの運命の分岐点となる”例のスキル”を消滅させる事ができませんのでwwまあ、それを考えるとセリカでもいいのですが、セリカには既に天使枠のメティサーナがいる上、セリカ陣営だとユリーシャと色々な意味での役割が被っているキャラが多数いる為、ユリーシャがあまりにも哀れなので(ぇ)