英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~


 

プロローグ

エレボニア帝国内戦―――

「四大名門」と呼ばれる大貴族を中心とし、その莫大な財力によって地方軍を維持し、自分たちの既得権益を守らんとする伝統的な保守勢力である《貴族派》の軍である通称”貴族連合軍”によって勃発した内戦。

オリヴァルト皇子の計らいによってトールズ士官学院に留学したメンフィル帝国の貴族の子息であるリィン・シュバルツァーも内戦に巻き込まれ、様々な辛い経験をし、最後は大切な友を失う事になったが、それでも友の遺言に従って前を向いて生き続けた。そしてエレボニアの内戦終結から二日後に異変が起こる。

それは―――メンフィル帝国大使リウイ・マーシルンの名の下でリィンと、数奇な出会いをして”パートナードラゴン”の契約を結び、また恋人の一人でもあるセレーネ・L・アルヘイムのメンフィル帝国本国への”帰還命令”の書状が来た事だった。突然の出来事に困惑したリィンとセレーネだったが、初代メンフィル皇帝にして現メンフィル皇帝の父親であるリウイの命令に逆らう訳にはいかず、書状が来たその日にクラスメイトであるアリサ達に説明をした後翌日、トリスタから去り、異世界にあるメンフィル帝国の本国へと向かった。

すぐに帰って来ると思われた二人だったが、4日経っても帰って来ず、その事にアリサ達が心配し始めている中リィンとセレーネのクラスである”Ⅶ組”にある人物が訪れた。



ゼムリア歴1205年1月7日

同日、AM8:20―――

~Ⅶ組~

「―――失礼します。」
「アルフィン殿下…………!?こんな朝からどうなされたのですか…………!?」
教室に入ってきた人物―――アストライア女学院の制服を身にまとったアルフィン皇女の登場に驚いたラウラはアルフィン皇女に要件を訊ねた。
「実はリィンさんに訊ねたいことがありまして…………あの、リィンさんはまだ登校していらっしゃらないのでしょうか?」
「そ、その…………実はリィンさんもそうですけど、セレーネさんもメンフィル帝国から来た”帰還指示”によってメンフィル帝国の本国に帰還していて、まだ帰ってきていないんです…………」
「リィン達がメンフィル帝国の本国に向かってもう4日は経っているんですけど、何の連絡も来ないんです…………」
「え…………それじゃあリィンさんとセレーネさんもメンフィル帝国の本国に帰還して、戻っていらっしゃっていないのですか…………」
自分の問いかけにそれぞれ不安そうな表情を浮かべて答えたエマとエリオットの説明を聞いたアルフィン皇女も二人同様不安そうな表情を浮かべた。

「”リィンとセレーネも”?」
「その口ぶりでリィンに用があったって事は、もしかしてエリスも同じ状況なの~?」
アルフィン皇女が口にした言葉が気になったフィーは真剣な表情を浮かべ、ミリアムはアルフィン皇女に訊ねた。
「はい…………5日前にリベールのロレント地方にあるメンフィル帝国大使館より、リウイ陛下によるエリスに対する異世界にあるメンフィル帝国の本国への”帰還指示”の書状が届いた為、翌日にメンフィル帝国の本国へ向かったのですが、4日も経っていますのに、帰って来るどころか何の連絡も来ないんです…………」
「エリスもリィンとセレーネと同じ状況か…………」
「リィン達の話だと、異世界にあるメンフィル帝国の本国へ向かうにはリベールのロレント地方にあるメンフィル帝国の大使館に設置されてある異世界への転移魔法陣を使えばすぐにメンフィル帝国の本国の帝都近辺に到着するって言っていたから、メンフィル帝国とエレボニア帝国との往復の時間がかかっているという訳でもないしな…………」
アルフィン皇女の説明を聞いたガイウスとマキアスはそれぞれ考え込んでいた。

「…………殿下、帝都(ヘイムダル)にあるメンフィル帝国の大使館に問い合わせ等はしたのですか?」
「それが…………元々帝都(ヘイムダル)―――いえ、”エレボニア帝国の領土にはメンフィル帝国の大使館は存在しない為”、メンフィル帝国と連絡を取り合う為には唯一大使館が存在しているリベール王国に仲介してもらうしかないのです。」
「ええっ!?帝都どころか、エレボニア帝国の領土のどこにもメンフィル帝国の大使館は本当にないんですか!?」
「そういえば帝都でもメンフィル帝国の大使館は見た事がないな…………リベール王国やレミフェリア公国は当然として、エレボニアと犬猿の仲のカルバード共和国の大使館すらもあるのに、”百日戦役”時に現れたメンフィル帝国の大使館が”百日戦役”後に建てられたという話は聞いたことがないな…………」
ユーシスの質問に不安そうな表情で答えたアルフィン皇女の答えを聞いたエリオットは驚き、マキアスは考え込んでいた。
「…………元々メンフィル帝国はメンフィル帝国にとっての異世界であるわたくし達ゼムリア大陸の国家への接触は慎重にしているようでして…………現状メンフィル帝国の大使館が存在しているのはリベール王国にある大使館のみなのですわ。実際、メンフィル帝国―――いえ、異世界に存在している人間以外の種族である”異種族”の方々もリベールや、リウイ陛下の正妃であられるイリーナ皇妃陛下の縁で親交ができたクロスベル以外の国家や自治州などに姿を現していないそうなのです。」
「…………確かに私達、今までの”特別実習”もそうだけど、内戦でもエレボニアの様々な場所を回ったけど、異種族の人達とはセレーネやリフィア殿下、それにエヴリーヌさんとメサイアを除けば一度も会ったことがないわよね?」
「ええ…………リィンさん達の話では異世界にはそれこそ”ゼムリア大陸には存在しない空想上の種族”―――森人(エルフ)鉱人(ドワーフ)、それに悪魔や天使、神々や魔王すらも存在しているとの事ですし…………」
アルフィン皇女の話を聞いたアリサとエマはそれぞれ不安そうな表情を浮かべて考え込んでいた。
「た、大変だよ、みんな!ヴァリマールが…………ヴァリマールがメンフィル帝国軍に徴収されようとしているよ!」
するとその時トワが慌てた様子で教室に入ってきてアリサ達にある事を伝え
「ええっ!?」
トワの言葉にアリサは驚きの声を上げ、周りの者達もそれぞれ血相を変えた。その後アリサ達はエマの連絡を聞いて合流したセリーヌと共にヴァリマールが保管されている技術棟の近くの外に向かった。

~技術棟付近~

「ですからさっきから何度も言っているように、ヴァリマールはリィン君を起動者としている為、メンフィル帝国軍が回収しても誰も扱えませんし、そもそも他国の軍がエレボニアの士官学院であるトールズ士官学院が保管している機体を徴収するなんて、おかしいですよ!」
アリサ達が格納庫に到着するとメンフィル帝国兵達を引き攣れた機械仕掛けの人と思わしき存在―――メンフィル帝国軍の機工軍団を率いるシェラ・エルサリス元帥にジョルジュが必死に反論していた。
「ジョルジュ先輩が反論している女性は一体…………」
「―――メンフィル帝国軍”機工軍団”団長シェラ・エルサリス元帥。”百日戦役”時、シェラ・エルサリス元帥率いる”機工軍団”はエレボニアの軍どころか砦や基地も易々と破壊し続けたことから”破壊の女神”の異名で恐れられている。」
「あの女性がかの”破壊の女神”…………」
「げ、”元帥”だって!?」
「そ、そんな軍でもトップクラスの立場の人がメンフィル帝国軍を率いてどうしてヴァリマールを…………」
ガイウスの疑問に答えたフィーの説明を聞いたラウラは真剣な表情でシェラを見つめ、マキアスは驚き、エリオットは不安そうな表情を浮かべた。そこにアンゼリカから騒ぎを知らされたサラがヴァンダイク学院長とアンゼリカと共に姿を現した。
「サラ教官…………!それに学院長とアンゼリカ先輩も…………!」
「あんた達もトワから連中の件を聞いてこっちにやってきたのね。…………状況から考えてリィン達の件とも恐らく無関係ではないのでしょうね…………」
「うむ…………エレボニアとメンフィルの関係が”最悪の事態”に陥っている事を覚悟せねばならぬかもしれぬな…………」
二人の登場にエマが明るい表情を浮かべている中、サラはアリサ達を見回した後厳しい表情を浮かべてシェラ達を見つめ、サラの言葉に重々しい様子を纏って頷いたヴァンダイク学院長はサラと共にシェラ達に近づいた。

「サラ教官…………!ヴァンダイク学院長も…………!」
「よく頑張ったわね、ジョルジュ。ここからはあたし達に任せなさい。」
「はい、お願いします…………!」
そしてシェラ達の応対をしていたジョルジュと交代したサラとヴァンダイク学院長はシェラ達と対峙した。
「”Ⅶ組”の担当教官のサラ・バレスタイン並びにトールズ士官学院長ヴァンダイク名誉元帥を確認。私はメンフィル帝国軍”機工軍団”団長シェラ・エルサリス元帥です。」
「貴女があの”破壊の女神”と名高いエルサリス元帥閣下ですか………我々の事もご存じのようですから、自己紹介は省かせて頂き、早速本題に入らせて頂きますが…………何故何の連絡もなく突然ヴァリマールを徴収すると言った暴挙をメンフィル帝国は行おうとしているのですか?」
「それ以前に今回の件、エレボニア帝国政府に話は通しているのですか?」
シェラが名乗るとヴァンダイク学院長は重々しい様子を纏ってシェラを見つめた後表情を引き締めてシェラに問いかけ、サラもヴァンダイク学院長に続くように真剣な表情でシェラに問いかけた。

「メンフィル帝国政府が”灰の騎神”の徴収の件でのエレボニア帝国政府への通達をしている事については不明ですが、リウイ・シルヴァン両陛下より”灰の騎神”の回収を命じられている為、我々は本日この場に現れました。」
「よりにもよって”英雄王”と現メンフィル皇帝の命令とはね…………幾らメンフィル帝国の皇帝の命令であろうと、他国の士官学院が保管している”騎神”―――いえ、”兵器”を徴収するなんて、そんな非常識な事がまかり通ると思っているのですか?」
シェラの説明を聞いたサラは厳しい表情を浮かべたままシェラに指摘した。
「”灰の騎神”の起動者(ライザー)であるリィン・シュバルツァーは我が国に所属している為、”灰の騎神”の所有権は当然我が国にあります。そして”騎神”を操縦が可能なのはその”騎神”に適応している”起動者”のみとの事。よって、エレボニアの”灰の騎神”の所有権の順位はリィン・シュバルツァーが所属しているメンフィル帝国よりも下になります。」
(チッ…………”騎神”についても随分と情報を集めていたみたいですね…………)
「(うむ…………)…………そのリィン・シュバルツァーの事で伺いたいことがあるのですが…………今回の件、リィン君にも伝え、了承の答えをもらっているのでしょうか?」
「そ、それに…………リィンさんとセレーネさんは、それにエリスさんはいつトールズとアストライアに戻ってくるんですか?リィンさん達が帰還命令に従って異世界にあるメンフィル帝国の本国に向かってもう4日は経っていますよ!?」
シェラの正論に反論できないサラは舌打ちをし、ヴァンダイク学院長は静かな表情でシェラに質問し、エマも続くように必死の表情で質問をした。

「リィン・シュバルツァー、セレーネ・L・アルヘイム、そしてエリス・シュバルツァーの3名は、別命あるまで本国の帝城の客室にて待機指示が出ています。」
「ええっ!?リィン君達がメンフィル帝国のお城の客室に…………!?」
「それってどう考えても”軟禁”じゃないですか!?」
「そ、それにエリスまで…………!」
シェラの説明を聞いたトワは驚き、マキアスは真剣な表情でシェラを見つめて反論し、アルフィン皇女は不安そうな表情を浮かべた。
「どうしてあの子達がそんな状況に陥っているのよ!?」
「…………まさかとは思いますが、彼らがメンフィル帝国の許可もなくエレボニアの内戦終結に貢献した件でしょうか?去年の夏至祭での帝国解放戦線の襲撃でエリス君が拉致されかけた件で、エリス君とアルフィン殿下がリウイ陛下より注意を受けたと聞いておりますが…………」
サラは怒りの表情でシェラに問いかけ、心当たりがあるヴァンダイク学院長は真剣な表情でシェラに訊ねた。

「―――メンフィル帝国が問題としている点はその件ではありません。」
するとその時その場にエリゼが現れ
「あ…………」
「エリゼ…………!」
エリゼの登場にアリサは呆け、ラウラは驚きの表情を浮かべた。そしてエリゼはヴァンダイク学院長達に近づいて上品な仕草で挨拶をした。
「―――お初にお目にかかります、ヴァンダイク学院長。私の名はエリゼ・シュバルツァー。若輩の身ではありますがリフィア皇女殿下付き専属侍女長を務めさせて頂いております。」
「うむ…………エリゼ君の噂もかねがね聞いておる。それでエリゼ君…………本当にメンフィル帝国はヴァリマールを回収する為に、エルサリス元帥閣下たちを派遣したのか?」
「はい。これがその指示書です。―――どうぞ。」
「拝見させてもらおう…………―――!?何と…………」
「『現メンフィル皇帝シルヴァン・マーシルン並びにメンフィル大使リウイ・マーシルンの名の下、エレボニア帝国トールズ士官学院に保管されている”灰の騎神”ヴァリマールを回収せよ。なお、回収の際学院の関係者達が拒めば、”強制徴収”――――学院の関係者達を制圧し、回収する事も許可する』ですって!?」
エリゼから渡された指示書の内容を読んだヴァンダイク学院長は血相を変えた後信じられない表情を浮かべ、サラはその場で指示書の内容を読んだ後厳しい表情で声を上げた。

「が、”学院の関係者達を制圧して回収する事も許可する”って事は………!」
「まさかとは思いますが、貴女方は私達を殺してでも、ヴァリマールを回収するつもりなのですか?」
指示書の内容を読んだサラの話を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中トワは信じられない表情をし、アンゼリカは厳しい表情でシェラ達を見つめて問いかけた。
「―――その必要があるのならば、貴女方を”殲滅”するだけです。」
アンゼリカの問いかけに淡々とした様子で答えたシェラは腕の一部を変形させて砲口をヴァンダイク学院長達に向け、シェラに続くようにシェラの背後にいる兵士達もそれぞれの武装を構えた!
「う、腕が砲口に…………!?」
「まさかとは思うが”破壊の女神”も”劫焔”のような化物の類なのか!?」 」
「まあ~、ユーシスの言っている事は一応当たっているね~。”破壊の女神”は生きた人間じゃなくて、異世界の古代兵器らしいよ~?」
「ええっ!?それじゃあエルサリス元帥閣下は人形兵器の類なのですか!?」
「それにしては今まで戦った人形兵器とは何もかもが”格”があまりにも違いすぎる…………」
「ミリアムの話から推測して”破壊の女神”は間違いなく”存在自体が古代遺物(アーティファクト)”レベルなのでしょうね。」
シェラが腕を砲口に変形させた事にエリオットは驚き、ユーシスの疑問にミリアムは真剣な表情で答え、ミリアムの答えを聞いたエマは驚き、ガイウスとセリーヌは厳しい表情でシェラを見つめた。

「―――私もできれば兄様達がお世話になった方々を”斬る”事はしたくありません。ヴァリマールを回収すれば、私達は何もせずこの場から去りますので大人しく回収を見守って頂けませんか?」
そしてエリゼも太刀を鞘から抜いてシェラ達と共にヴァンダイク学院長達と対峙し、それを見たアリサ達は血相を変え
「エリゼ君、君まで…………」
「………っ!エリゼさん、どうしてメンフィル帝国は突然このような事を―――いえ、一体メンフィル帝国とエレボニア帝国の間に何があったのですか!?」
エリゼの行動を見たジョルジュが複雑そうな表情をしている中、アルフィン皇女は悲痛そうな表情でエリゼに問いかけた。
「…………よりにもよって貴女自身がそれを仰るのですか――――ユミルが”北の猟兵”達に襲撃された原因であったアルフィン殿下、貴女が。」
「え…………」
「ユ、ユミルが”北の猟兵”達に襲撃された原因がアルフィン殿下って………」
「っ!!やはり…………メンフィル帝国は父の愚行を見逃していなかったのだな…………」
厳しい表情を浮かべているエリゼの指摘にアルフィン皇女が呆けている中マキアスは不安そうな表情をし、心当たりをすぐに思い出したユーシスは息を呑んだ後辛そうな表情で肩を落とした。

「ユーシスのお父さんの”愚行”って………」
「まさか…………メンフィルは内戦時アルフィン殿下を拉致する為にアルバレア公が雇った”北の猟兵”達によるユミル襲撃を今更蒸し返して、エレボニアに戦争を仕掛けるつもりなの!?」
「あ…………」
「そ、そう言えばクレア大尉もユミルの件でメンフィル帝国が国際問題にしてエレボニアに賠償や謝罪とかを求めてこない様子を不思議に思っていたけど…………」
ユーシスの話を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、厳しい表情を浮かべて声を上げたサラの推測にアリサは呆けた声を出し、トワは不安そうな表情を浮かべたてエリゼ達を見つめた。
「正確に言えばメンフィルが問題としている件は一度目の襲撃―――アルバレア公が雇った”北の猟兵”達による襲撃だけでなく、一度目の襲撃の際のエリスの拉致監禁やユミルの領主である父様の負傷、”二度目の襲撃”―――パンダグリュエルによる襲撃によって兄様を脅迫してパンダグリュエルに向かわせ、軟禁した事も問題としています。―――それとメンフィルは”一度目の襲撃が判明してから、既にリベールの王都にあるエレボニアの大使館に抗議や謝罪、賠償を求め続けてきました。”」
「い、”一度目の襲撃が判明してからずっと抗議や謝罪、賠償を求め続けてきた”だって!?だったら何で今頃動き出したんだ!?」
「いや、むしろ”今”だからなんだろう。恐らく内戦の最中貴族連合軍が大使館に対してまともな対応をしていなかった事もあるだろうが、内戦によって正規軍、貴族連合軍共に疲弊している”今”のエレボニアが戦争を仕掛けられれば一溜まりもない。―――ましてや12年前の”百日戦役”でエレボニアを圧倒したメンフィルならば、ただでさえ高い勝率はほぼ100%に近い勝率になって自国の被害をできるだけ少なくしてエレボニアに勝利できると思われるだろうからね。」
「後はエレボニアの新兵器――――”機甲兵”の性能を探る為にも内戦中は様子を伺っていたかもしれないね。」
「あ…………」
「そ、それじゃあリィンさん達をメンフィル帝国の本国の帝城に軟禁している理由は…………」
「リィン達―――自国の貴族の関係者達がメンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争に巻き込まれない為か…………」
「後は戦争の件を知ったリィンが”騎神”―――ヴァリマールを使って何らかの介入をする事を防ぐためかもしれないわね…………」
エリゼの説明に仲間達と共に驚いた後反論したマキアスの指摘に対して答えたアンゼリカとフィーの推測を聞いたトワは呆けた声を出し、ある事に気づいたエマは不安そうな表情を浮かべ、ラウラとサラは重々しい様子を纏って推測を口にした。

「…………っ!―――誠に申し訳ございません、エリゼさん、エルサリス元帥閣下!ユミルの件は先程エリゼさんも仰ったように、ユミルが襲撃される原因となったわたくしも”元凶”の一人です!わたくしの身はどうなっても構いませんので、どうかメンフィル帝国にエレボニア帝国との戦争を考え直して頂けるよう取り計らって頂けませんか!?」
「ユミルの件は皇女殿下の責任ではございません!全ては父―――”アルバレア公爵家”と貴族連合軍の”主宰”であるカイエン公と”総参謀”の兄上です!俺達”アルバレア公爵家”はどうなっても構わん!だから、皇女殿下にまで責任を追及しない事と俺達”アルバレア公爵家”の首や財産をメンフィル帝国に対する”謝罪の証”として戦争を止める事を俺自身が強く望んでいる事をリフィア殿下を通じてリウイ陛下達に伝えてくれ!―――頼む!!」
「アルフィン殿下…………ユーシス…………」
メンフィルとエレボニアの戦争を止める為にアルフィン皇女とユーシスはそれぞれその場で頭を深く下げて自分達の意思をエリゼ達に伝え、その様子を見たガイウスは辛そうな表情を浮かべた。
「…………一応お二人の意志はリフィア殿下やシルヴァン陛下達に伝えてはおきます。ですがもはや”手遅れ”でしょう。今頃、メンフィル・エレボニア両帝国間の戦争へと勃発させない為のエレボニア帝国に対するメンフィル帝国の要求内容が帝都(ヘイムダル)の帝国政府にも伝わっている頃です。奇跡的な生還を果たして政府に復帰したエレボニア帝国政府の代表者の性格を考えると、とてもメンフィル帝国の要求を呑むとは考えられません。」
「き、”奇跡的な生還を果たして政府に復帰した帝国政府の代表者”って………!」
「”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンだね。」
「た、確かにオズボーン宰相の性格を考えるとどんな内容なのかは知らないがメンフィル帝国の要求をそのまま呑むとは思えないけど、クロスベルの件もまだ終わっていない上内戦でエレボニアは疲弊している状況なんだからさすがに他国との戦争は避ける交渉とかはするんじゃないのか…………?」
「んー……………」
エリゼの答えを聞いたトワは不安そうな表情で声を上げ、フィーは真剣な表情で呟き、マキアスは不安そうな表情を浮かべながら推測を口にし、ミリアムはエリゼを見つめながら真剣な表情で考え込んでいた。

「そういう訳ですので、ヴァリマールは回収させて頂きます。その指示書は今回の件の”証拠”としてそちらに差し上げますので、どうぞそのままお持ちになってヴァリマールが回収された件で政府や軍に追及された際に、その指示書によってメンフィル帝国が”トールズ士官学院の関係者達との戦闘が起こる事も承知の上でヴァリマールをトールズ士官学院から強引に回収した”という内容で政府や軍に説明してくださって結構です。」
「…………あいわかった…………皆、そういう訳ですまないがメンフィル帝国軍の回収作業を決して邪魔したりしてはならぬぞ。」
「が、学院長…………」
「…………っ!エリゼ、あんたは本当にそれでいいの!?メンフィルとエレボニアの戦争なんて、リィン達は絶対に望んでいないし、もし知ったら猛反対するわよ!?」
エリゼの説明に目を伏せて重々しい様子を纏って頷いたヴァンダイク学院長はアリサ達に指示をし、ヴァンダイク学院長が自分達にとっても大切な仲間であるヴァリマールを強引に回収しようとするメンフィル帝国の要求に従った事にトワが悲痛そうな表情を浮かべている中サラは唇をかみしめた後怒りの表情でエリゼに問いかけた。
「いいも何も、リウイ陛下どころか現メンフィル皇帝であられるシルヴァン陛下が決定した以上メンフィル帝国政府内の発言権を持たない”メンフィル皇族専属侍女長如き”の私ではどうする事もできませんし、それに…………―――(エリス)の拉致監禁や兄様への脅迫、父様が北の猟兵達によって重傷を負わされた事、2度に渡るユミル襲撃、挙句の果てにはそれらの件に対して何の謝罪や賠償もしなかった”貴族連合軍を含めたエレボニア帝国”に対して私が”怒り”を抱いていないと思っていたのですか?」
「………………っ!」
「エリゼさん…………」
しかし全身に静かなる闘気を纏わせて答えたエリゼの意志を知り、エリゼのエレボニアに対する”怒り”が故郷の為に猟兵稼業を続けている”北の猟兵”もその原因である事にサラは辛そうな表情で唇をかみしめ、自分達にとってクラスメイトであり、大切な仲間でもあるリィンの妹であるエリゼが自分達の祖国であるエレボニアに対して怒りを抱いている事にアリサは悲しそうな表情を浮かべてエリゼを見つめた。

「―――ヴァンダイク学院長達への説明の為の時間を取って頂きありがとうございました、エルサリス様。―――それでは始めて下さい。」
「了解。―――転移陣の準備を。」
「ハッ!」
闘気や太刀を収めて気を取り直したエリゼに視線を向けられたシェラは頷いた後メンフィル兵達に指示をし、指示をされたメンフィル兵達はヴァリマールの周囲で作業を始め
「―――自己紹介が遅れましたが、私はリィンの義妹にして婚約者の一人でもあるエリゼ・シュバルツァーと申します。急な事で申し訳ございませんがヴァリマールさんはしばらくの間、メンフィルが用意する保管場所にて待機して頂きます。」
メンフィル兵達が作業している間エリゼはヴァリマールの正面に近づいてヴァリマールに挨拶と説明をした。
「エリゼノ事は、リィンやセレーネカラモ聞イテイル。ドウヤラリィンハ準起動者達ト決別セネバナラヌ状況ノヨウダガ、アリエナイトハ思ウガ、メンフィルトヤラハ、我ニリィン以外ノ起動者ヲ用意スルツモリナノカ?」
「ヴァリマールさんを兄様以外の方が操縦するような事は絶対にない事はシルヴァン陛下やリウイ陛下も確約なさってくださっていますので、この場でお約束できます。そして兄様が再びヴァリマールさんを駆り、その刃を向ける相手は…………兄様次第でしょう。」
「…………ソウカ。」
エリゼの答えを知ったヴァリマールは何も反論する事なく目を光らせて淡々とした様子で答えた。そしてエリゼはヴァンダイク学院長とアルフィン皇女に近づいてヴァンダイク学院長には二通の封筒を、アルフィン皇女には一通の封筒を手渡した。

「この封筒は一体…………?」
「エリスのアストライア女学院の退学届けです。ちなみにヴァンダイク学院長に渡した二通の封筒は兄様とセレーネのトールズ士官学院の退学届けです。」
「!!」
「そ、そんな!?」
「…………リィン君達の退学の理由は…………やはり戦争勃発になりかけているメンフィルとエレボニアの国家間の問題が関係しているのかの?」
エリゼの説明を聞いたアルフィン皇女は目を見開き、アリサは悲痛そうな表情で声を上げ、ヴァンダイク学院長は重々しい様子を纏ってエリゼに訊ねた。
「…………―――”メンフィル帝国政府の政治的判断によるものです。”――――それでは私達はこれで失礼します。本日はお騒がせしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」
ヴァンダイク学院長の問いかけに静かな表情で答えたエリゼは既に作業を終えたメンフィル兵達やシェラと共にメンフィル兵達が用意した転移魔法陣によってその場から消え、トールズ士官学院から去って行った!

「き、消えた……」
「まさか”騎神”を転移魔法陣で移送するなんて…………」
「あんな大規模な転移陣…………それも一度しか使えない片道のみとはいえ、転移陣が一般兵にも伝わっているって事は、メンフィル帝国は相当魔法技術に長けているようね…………」
エリゼ達が去った後エリオットは呆けた声を出し、エマは信じられない表情で呟き、セリーヌは目を細めて転移の際にエリゼ達と同時に跡形もなく消滅した魔法陣があった場所を睨み
「わたくしが…………軽はずみにも他国の領土であるユミルに滞在し続けたせいで、こんな事に…………っ!」
「皇女殿下の責任ではございません…………!全ては”アルバレア公爵家”の責任です…………っ!」
アルフィン皇女は悲痛そうな表情でその場で崩れ落ち、ユーシスはその場で土下座をしてアルフィン皇女に謝罪し続けていた――――

そして1週間後、アリサ達は更なる衝撃の事実を知る事になる。それは―――クロスベル占領の為にクロスベルへと侵攻した”パンダグリュエル”をエレボニア軍の旗艦とするルーファス・アルバレア率いる正規軍と領邦軍の混合軍がクロスベルによって”返り討ち”に遭って”全滅”すると共に”パンダグリュエル”は奪われ、ルーファス達の全滅にはクロスベルと連合を組んだメンフィルも関わっており、ルーファスを討ち取った人物はメンフィル帝国軍に所属するリィンであるという新聞の内容であった――――
 
 

 
後書き
この話は光と闇の軌跡シリーズの設定の一部は同じですが、運命とも灰とも設定が異なります。まず閃2終章終了時点でのリィンの使い魔は運命や灰と違ってベルフェゴール、リザイラ、アイドスはいなく、トールズに来る前に出会って契約したという設定のメサイアのみで、閃1のヘイムダルでの特別実習でのセレーネとの出会いやリウイ達の乱入の件、ローエングリン城で出会ったアイドスの件を除けば全て原作通りで、エリゼは運命同様既に”剣聖”の一人にして運命で登場した”ヴァイスリッター”の操縦者でもあり、リィンの恋人(もとい肉体関係を結んでいる女性)は現時点ではエリゼ、エリス、セレーネ、メサイアの4人のみで、アリサやアルフィン達とはまだアリサ達の片想いで、恋人関係にはなっていない設定です。また、プリネ達も留学していない為、ケルディックもエレボニアの領土のままで原作通りになっている状況です。なお、次にこの話を書く内容はリィン達側で、リィン達がメンフィルに軟禁されてからルーファス殺害へと結びつく経緯の予定です。それと、この話はアリサ達からは戦死者を出すつもりはありませんが、アリサ達の関係者達からは戦死者が出る予定となっており、恐らくリィン達とアリサ達は最後まで、もしくは最終決戦直前までずっと敵対関係にする事を考えています(ぇ)また、この話は3や4のイベントをフライング発生させる予定ですので、3や4で初登場となるキャラがフライング登場して仲間になったり敵になったりすることも考えています。…………少なくても現時点でアルティナとミュゼ、クルトはリィン側、ユウナはロイド側の仲間としてそれぞれ加入させることは決定しています(ぇ) 

 

第1話

1月7日、AM11:30―――

~メンフィル帝国・マルーダ城・客室~

「「「……………………」」」
リウイの指示によってメンフィル帝国の帝城の客室の一室にて待機し続ける羽目になったリィン達はそれぞれ黙ってエヴリーヌと同じ”客将”扱いの為、リィン達と違って身動きが可能と思われメサイアによる情報収集の結果を知る為にメサイアを待っていた。
「―――お待たせいたしましたわ。」
「メサイア…………!それで、今どういう状況なんだ…………!?」
部屋に入ってきたメサイアの登場に血相を変えたリィンはメサイアに訊ねた。
「…………まず結論から申し上げますわ。エリゼ様も仰ったように、やはりメンフィル帝国はユミルの件を理由にエレボニア帝国に戦争を仕掛けるつもりです。一応戦争に勃発させない為の要求――――ユミルで起こった様々な国際問題に関する”謝罪の証”である”賠償”をリベールの王都(グランセル)のエレボニア帝国の大使館に突き付けたようですが…………要求内容もそうですがエレボニア帝国政府の代表者の性格を考えると、どう考えてもエレボニア帝国政府はメンフィル帝国政府の要求を絶対に呑まない事を”確信”した上で既に戦争の準備を始めていますわ。」
「そ、そんな…………軽はずみにも私が姫様の潜伏先としてユミルを選んだばかりにこんな事に…………っ!」
「エリスのせいじゃない!悪いのは貴族連合軍と結社、そして襲撃されたとはいえ、死者は出なかったユミルの件をメンフィル帝国は軽く見ていたと勝手に判断していた俺の迂闊さだ…………!」
「エリスお姉様…………お兄様…………あ、あの、メサイアさん!先程メンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争に勃発させない為にメンフィル帝国はエレボニア帝国に賠償を要求したと仰っていましたわよね?その賠償内容はどのようなものなのですか?」
メサイアの報告に悲痛そうな表情をしているエリスに指摘をしたリィンは辛そうな表情で唇をかみしめ、二人を心配そうな様子で見つめたセレーネはある事に気づいてメサイアに訊ねた。

「…………正直な所を申しまして、エレボニア帝国政府の代表者であるオズボーン宰相でなくてもエレボニアの政府の代表者なら誰でも絶対に呑まない要求内容ですわよ?それでも知りたいのですか?」
「あのオズボーン宰相でなくても、エレボニア帝国政府の代表者なら誰でも絶対に呑まない要求内容ですか………」
「…………それでも教えてくれ。当事者である俺達も知るべきなんだ。」
メサイアの答えを聞いたエリスは不安そうな表情を浮かべてリィンに視線を向けた後メサイアを見つめ、リィンは辛そうな表情でメサイアに続きを促した。
「…………わかりましたわ。メンフィルがエレボニアに突き付けた要求内容はこの要求内容の写しに書かれていますわ――――」
そしてメサイアはリィンの意思を知るとリィンに一枚の書状を渡し
「な――――」
「こ、これは…………」
「そ、そんな…………」
渡された書状の内容を読んだリィンは絶句し、セレーネは信じられない表情をし、エリスは悲痛そうな表情を浮かべた。


メンフィル帝国によるエレボニア帝国に対する戦争勃発を中止する為の賠償内容は以下の通り。


1、”四大名門”の当主全員―――ヘルムート・アルバレア、クロワール・ド・カイエン、ゲルハルト・ログナー、フェルナン・ハイアームズ並びに”貴族連合軍”の”総参謀”だった”アルバレア公爵家”の長男ルーファス・アルバレア、エレボニア帝国宰相ギリアス・オズボーン、エレボニア帝国皇女アルフィン・ライゼ・アルノールの身分を剥奪し、更に全員の身柄をメンフィル帝国に引き渡し、メンフィル帝国がそれぞれに与える処罰内容に反論せずに受け入れる事。

2、クロイツェン州全土とラマール州全土、残りの”四大名門”の本拠地、そしてノルティア州とサザーランド州からはメンフィル帝国が指定する領地の統治権、”ザクセン鉄鉱山”の所有権をメンフィル帝国に贈与する事

3、内戦の影響でメンフィル帝国領に避難してきた難民達の生活費等の支払いとその利息の支払い(難民達に対して消費したメンフィル帝国の財産は1000億ミラ相当で、利息は10割として1000億ミラとして、合計2000億ミラ)

4、メンフィル帝国に贈与した元エレボニア帝国領地に住んでいる貴族達は”アルゼイド子爵家”のような内戦に加担していない貴族以外は全てメンフィル帝国への帰属を許さない。よって贈与された元エレボニア帝国領内に引き続き住むのならばメンフィル帝国は爵位を剥奪して”平民”に落とし、貴族としての”爵位”を維持し続けたい場合はエレボニア帝国が引き取り、エレボニア帝国領内に住まわせる事

5、ユーゲント・ライゼ・アルノール皇帝はユミルに自ら赴き、”シュバルツァー家”にメンフィル帝国領であるユミルを自分の不徳によって起こったエレボニア帝国の内戦に巻き込んだ事を誠心誠意謝罪し、エレボニア皇家の財産からシュバルツァー家に謝罪金並びに賠償金を支払う事

6、エレボニア人がメンフィル帝国領に入国する際、平民は入国料金一人1万ミラ、貴族、皇族は一人10万ミラを入国時に毎回支払う事を承認する事。更にメンフィル帝国領内でエレボニア人(貴族、平民問わず)が犯罪を犯した場合、通常の判決より厳しい判決が降される事を承認し、メンフィル帝国領内で犯罪を犯したエレボニア人がエレボニア帝国の領土に逃亡した場合は犯人逮捕に積極的に協力し、犯人の引き渡しをする事


「アルバレア公やカイエン公、それにルーファスさんの引き渡しは予想していましたが、まさか他の”四大名門”の当主の方々に加えてアルフィン殿下やオズボーン宰相の引き渡し、その他にもエレボニアにとって絶対に受け入れられない要求内容だなんて…………メサイアさんの仰った通り、エレボニア帝国政府の代表者がオズボーン宰相でなくても、誰も絶対に受け入れられない内容ですわね…………」
「ああ…………第三項に書かれている難民達の生活費等の支払いの件を除けば、どれもエレボニア帝国政府は絶対に受け入れられない要求内容だ…………っ!」
「姫様は…………姫様はメンフィル帝国に引き渡された後、一体どういう処罰内容が降されるのですか!?」
メンフィルがエレボニアに要求している賠償内容を知って複雑そうな表情を浮かべて呟いたセレーネの言葉に頷いたリィンは辛そうな表情で身体を震わせ、ある事が気になっていたエリスは真剣な表情でメサイアに訊ねた。
「四大名門の当主とルーファス・アルバレア、それにオズボーン宰相に対する処罰内容は既に”処刑”に決定していて、アルフィン皇女に対する処罰内容は…………メンフィル帝国に所属している貴族の使用人兼娼婦として、その貴族に一生仕える事との事ですわ…………ちなみにその貴族はまだ詮議中の為、現時点では決定してはいないようですが…………」
「”娼婦”だって!?…………っ!どうしてメンフィル帝国政府はアルフィン殿下にまでそこまで過酷な処罰内容を求めているんだ…………!?身分剥奪もアルフィン殿下にとってあまりにも厳しい処罰内容の上アルフィン殿下も被害者なのに…………っ!」
メサイアの説明を聞いたリィンは血相を変えて声を上げた後辛そうな表情で唇をかみしめた。

「あ、あの、兄様…………”娼婦”とは初めて聞く言葉なのですが、一体どういう存在なのでしょうか…………?」
「わたくしも初めて耳にしましたが…………もしかして、メンフィル帝国―――いえ、異世界特有の存在なのでしょうか…………?」
「それは…………」
「…………”娼婦”とは”身体を売って賃金を得る女性”――――つまり、”売春行為を行う女性”の事ですわ。ちなみにゼムリア大陸では売春行為は犯罪のようですが…………私達の世界であるこのディル=リフィーナでは犯罪でない所か、”娼婦”を集めて売春行為をさせる施設―――”娼館”が公共施設として各国の都市には必ずある施設ですわ。」
一方”娼婦”の意味がわからないエリスとセレーネの疑問にリィンが複雑そうな表情を浮かべて答えを濁しているとメサイアが代わりに答えた。
「ええっ!?」
「そ、そんな…………それじゃあ例えエレボニア帝国がメンフィル帝国の要求を呑んでも姫様が…………っ!」
メサイアの答えを聞いたセレーネは驚き、エリスは悲痛そうな表情を浮かべた。

「何か…………何かないのか!?メンフィル帝国の要求をもっと穏便な内容にする方法は…………!?」
「…………リィン様には申し訳ありませんが、ディル=リフィーナで生き続け、かつてメルキア皇族としてメルキアと戦争した結果敗北した国がどうなったかを知っている身からすれば、メンフィル帝国―――いえ、ディル=リフィーナの国々にとってはこの要求内容でも相当穏便な内容ですから、これ以上の譲歩は不可能だと思いますわ…………」
「こ、この条約でもこの世界にとっては穏便な内容なのですか!?」
「あの…………メサイアさん…………異世界で戦争が起こった際、敗戦した国々は普通どのような待遇を受ける事になるのでしょうか…………?」
悲痛そうな表情を浮かべて叫んだリィンに対して複雑そうな表情で指摘したメサイアの指摘を聞いたセレーネは信じられない表情をし、エリスは不安そうな表情でメサイアに訊ねた。
「皇族に関しては皇は当然として、皇以外の男性の皇族は全員処刑された後”晒し首”にされ、妃等の女性の皇族は”娼婦”にされて娼館に売られたり、兵士達への褒美として兵士達に下賜された後死ぬまで兵士達の慰み者として犯される事になりますわ。更にその国を占領した国家が非人道的な国家ですと、占領された国家の民達も”奴隷”や”娼婦”落ちしてしまう事もありえますわ…………」
「そ、そんなあまりにも惨い事が異世界で行われているなんて…………」
「その…………メサイアさんがいた国―――”メルキア”という国も戦争で勝利した際、今仰ったようなことを実行していたのですか…………?」
メサイアの説明を聞いたエリスは信じられない表情をし、セレーネは不安そうな表情でメサイアに訊ねた。

「いえ…………お父様は”簒奪王”と恐れられた方でもありましたが、同時に”賢王”としても名高く、混乱の極みであった国内をまとめあげ、中原東部の国々を平定し、メルキア帝国の全盛期を築いた偉大なる王として称えられていましたし、実際お父様の存命時自国の領土として占領した領土の民達を虐げるような政策は行わず、メルキアの軍や貴族の関係者達が民達を虐げている者達が判明すれば、容赦なく処刑しましたわ。…………最も、占領した国家の女王や妃、女性将校の方々は妾にしたり娼婦として娼館に売ったりしていて、私の母はその占領された国―――”アンナローツェ王国”の女王だった方でアンナローツェ滅亡後お父様の妾として生涯後宮で過ごしていましたけどね…………」
メサイアの答えを聞いたエリスとセレーネはそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「…………話は変わるがメサイア。今気づいたんだが、よくメサイアは”客将”の立場でありながら、こんな短期間にこれ程の情報を収集する事ができたな?幾ら”客将”とはいえ、戦争勃発直前の時点でこれ程の情報が開示されたよな?」
「言われてみればそうですわよね?特に写しとはいえ、賠償内容が書かれている書状まで手に入れていますし…………」
「メサイアさんは一体どなたからこの写しを頂き、要求内容について伺ったのでしょうか?」
リィンの疑問を聞いたセレーネは目を丸くし、エリスは不思議そうな表情を浮かべてメサイアに訊ねた。

「戦争の件を私に教えて頂いた方達はルクセンベール卿とプリネ皇女殿下ですわ。」
「ツーヤお姉様とプリネ様が!?という事はお二人は今帝城にいらっしゃっているのですか?」
「ええ、お二方も戦争の準備で多忙との事でしたが、運よく帝城内を歩いている所を見つけてダメ元で会談を申し込んだ所承諾して頂き、そして戦争の件を私に説明してくださったのですわ。」
「お二方も戦争の準備で多忙という事はお二方もエレボニア帝国との戦争に参戦なさるのか?」
「あ…………」
セレーネの疑問に答えたメサイアの説明を聞いてある事に気づいたリィンは複雑そうな表情でメサイアに訊ね、リィンの問いかけを聞いて姉も戦争に参戦するかもしれない事にセレーネは呆けた声を出した後複雑そうな表情をした。

「ええ。それにお二方が私に教えて頂いた戦争に参加なさるメンフィル帝国の皇族や武将の方々を考えると今回の戦争、12年前の”百日戦役”と違って”本気”でエレボニアを滅ぼすおつもりだと思いますわ。」
「…………ちなみにその皇族や武将の方々は何ていう名前の方々だ?」
「…………メンフィル帝国によるエレボニア帝国征伐軍はリウイ陛下を”総大将”として、皇族で参戦なさるのはリフィア皇女殿下、プリネ皇女殿下、レン皇女殿下、エフラム皇子殿下、エイリーク皇女殿下、ヒーニアス皇子殿下、ターナ皇女殿下で、武将は”百日戦役”でもその名をゼムリア大陸に轟かせ、今回の戦争ではエレボニア帝国征伐軍の”副将”も命じられているファーミシルス大将軍とエルサリス元帥、それにルース将軍に加えて戦争に参加なさる皇族の親衛隊を率いる将軍の方々、”総参謀”はシルヴァン陛下の名代も兼ねているセシリア将軍を中心としたメンフィル軍に所属する参謀達、そして私と同じ”客将”の立場である魔神エヴリーヌ様も参戦なさるとの事です。」
「そんなにも多くの皇族や武将の方々がエレボニア帝国との戦争に参加なさるなんて…………」
「最悪だ…………皇族の方々もそうだが、皇族の親衛隊を率いる将軍の方々もみんな武勇でその名を轟かせる方々だし、セシリア教官まで参戦なさるなんて…………」
「お兄様はそのセシリア将軍という方をご存じなのですか?その方の事を”教官”と仰っていましたが…………」
メサイアの情報を聞いたエリスは辛そうな表情で顔を俯かせ、疲れた表情で肩を落として呟いたリィンのある言葉が気になったセレーネはリィンに訊ねた。

「…………セシリア教官は俺の訓練兵時代の担当教官としてお世話になった方なんだ。」
「え…………ではその方もサラ教官と同じ、お兄様にとっては”恩師”にあたる方なのですか…………」
「ああ…………ちなみにセシリア教官は参謀としての能力は当然として魔術師としての能力もメンフィル軍でトップクラスで、メンフィル軍に所属する魔道の使い手としては5本の指に入ると言われている。それとセシリア教官はシルヴァン陛下の側妃の一人だ。多分教官がシルヴァン陛下の”名代”として選ばれたのはその件も関係しているんだと思う。」
「そんな凄い方が訓練兵時代の兄様の恩師だったなんて…………」
リィンとある人物の関係を知ったセレーネとエリスはそれぞれ驚いていた。
「それと…………戦争に参加なさる武将の件で他にもお伝えすべきことがありますわ。―――ちなみにその方々はリィン様とも浅からず縁がありますわ。」
「え…………一体誰だ?」
「…………”神速のデュバリィ”を始めとした結社の”鉄機隊”の方々もメンフィル帝国軍に所属してエレボニア帝国の戦争に参加なさるとの事ですわ。」
「え…………」
「!?一体どういう事だ、それは!?まさか…………メンフィルと結社は協力関係を結んだのか!?」
メサイアが口にした驚愕の事実にセレーネは呆け、リィンは血相を変えて信じられない表情で訊ねた。

「いえ、プリネ皇女殿下達の話では内戦の間にメンフィル帝国は結社の”盟主”もそうですが最高幹部である”蛇の使徒”もほぼ全員抹殺し、数少ない生き残りにして結社の”盟主”達の居場所等を申告した上リウイ陛下達と共に”盟主”を抹殺した元蛇の使徒の”第七柱”率いる”鉄機隊”は親衛隊とは別にリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下を守る独立部隊としてメンフィル帝国軍に所属しているとの事です。」
「な―――――――」
「ええっ!?結社のトップである”盟主”に加えて最高幹部もほとんど抹殺したという事は結社は…………!」
「事実上崩壊した事になるわよね…………?そのメンフィル帝国に寝返った”第七柱”という方は一体どうしてそんなことをなさったのかしら…………?」
更なる驚愕の事実を知ったリィンは絶句し、セレーネは驚き、エリスは困惑していた。
「それと…………戦争の件で他にも判明した事実をお伝えしておきます。今回の戦争、メンフィル帝国は”クロスベル帝国”と連合を組んでエレボニア帝国と戦争するおつもりのようですわ。」
「な―――”クロスベル帝国”って、あのクロスベル自治州の事か!?猟兵達に襲撃された件がエレボニア、カルバード、メンフィルの三国のせいだと主張してその報復と独立の為にIBCによる資産凍結を行わせた…………!?」
「そもそもクロスベルには皇族は存在しない上、何故”自治州”であったクロスベルが突然”帝国”の名を名乗るのようになったのでしょうか…………?」
クロスベルの政変までも大きく変わった事にリィンは信じられない表情で声を上げ、エリスは困惑の表情で訊ねた。
「…………そのクロスベルの”皇族”の事なのですが―――」
そしてメサイアはクロスベル帝国やクロスベルの皇を名乗る人物はかつての”西ゼムリア通商会議”にて、テロリスト達の襲撃を利用してクロスベルの警備隊を解散させて自国の軍を駐屯させようとしたオズボーン宰相とロックスミス大統領の狙いを未然に防ぐどころか反撃までして、二人に政治的ダメージを与えた”六銃士”の一人にして転生したメサイアの父親でもあるヴァイスハイト・ツェリンダーとメルキアの宿敵の国家の皇であったギュランドロス・ヴァスガンである事を説明した。

「ええっ!?メサイアさんのお父様の件も話には伺っていましたが、まさかクロスベルを”国”として建国した上、自ら”皇”を名乗るなんて…………」
「ですが”国”を名乗るにしても”自治州”であったクロスベルが僅かな領土しかない状況で何故”帝国”を名乗ったのでしょう…………?」
「…………話によりますとお父様たちは”クロスベル帝国”建国後”二大国”―――エレボニア帝国とカルバード共和国に戦争を仕掛け、その結果勝利し、占領した領土が広大になる為、予め”王国”や”独立国”ではなく”帝国”を名乗るようにしたとの事ですわ。」
「幾ら何でも無謀過ぎる…………普通に考えれば警備隊や警察の武装じゃ二大国が保有する兵器に対抗できないのに、メサイアのお父さん達―――”六銃士”はどうしてそんなことを…………」
「…………今の状況を考えると恐らくですが、お父様たちがクロスベル警備隊、警察の上層部の椅子についた時からメンフィル帝国よ何らかの約定を既に結んでいたかもしれませんわ。実際、お父様達が”クロスベル帝国”の建国や二大国に対して戦争を仕掛ける事を宣言した際にリウイ陛下もその場にいて、メンフィルは”クロスベル帝国”と共に”覇道”を歩む―――つまり、クロスベルと連合を組んで二大国に戦争を仕掛ける事を断言していたとの事ですし…………」
「え…………」
「何だって!?という事はメンフィルはユミルの件がなくても最初からエレボニアに戦争を仕掛けるつもりだったのか!?」
メサイアの話を聞いたエリスは呆け、リィンは血相を変えてメサイアに確認した。

「…………恐らくは。そしてクロスベル帝国建国から僅かな日数で”カルバード共和国征伐”を行ったメンフィル・クロスベル連合軍はカルバード共和国を占領―――つまり、”カルバード共和国は既に滅亡しているとの事ですわ。”」
「な――――」
「ええっ!?」
「長年エレボニアの宿敵であったあのカルバード共和国が既に滅亡していたなんて…………あ、あら…………?そう言えば帝国を名乗るようになったクロスベルの”皇帝”の一人がメサイアさんにとっての並行世界の生まれ変わったお父様という事は、その方のご息女であるメサイアさんはクロスベルの皇女殿下という事になりますが…………!?」
カルバード共和国が既に滅亡している事を知ったリィンは絶句し、セレーネは驚き、エリスは呆然とした後ある事実に気づいて信じられない表情でメサイアを見つめた。
「………ええ。実はプリネ皇女殿下達が”客将”とはいえ、身動きができないようにしているリィン様の使い魔である私にそこまでの情報を開示した上その写しも用意した理由は、こちらの世界の今の時代に生まれ変わったお父様が並行世界とはいえ、私の事を正式に”娘”として認めてメンフィル帝国にもその事を伝えた為、メンフィル帝国は既に私の扱いを”客将”から”同盟国であるクロスベルの姫君”―――つまり、メンフィルにとっての”最高クラスの他国のVIP”へと変えた為、私が城内で情報収集をしても特に咎める事もせず、それどころか戦争の経緯を含めた様々な世間の今の動きについての情報を開示したとの事ですわ。」
「そ、それじゃあメサイアさ―――いえ、メサイア皇女殿下は本当にクロスベル帝国の皇族になったのですか…………」
「ふふっ、今まで通り”メサイア”で構いませんわよ。プリネ皇女殿下達の話ですとこの時代に生まれ変わったお父様は会った事もない私を”娘”として認知したどころか私の”意志”を尊重している為、クロスベル皇女になった今もリィン様の”使い魔”を続ける事やセレーネさん達同様私とリィンさんが婚約の関係を結んでいる事も容認しているとの事ですし。」
信じられない表情で自分を見つめて呟いたセレーネにメサイアは苦笑しながら答え、次から次へと判明した青天の霹靂の出来事にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「えっと………という事は私達”シュバルツァー家”は将来、セレーネの縁でメンフィル皇家の分家であられる”ルクセンベール家”だけでなく”クロスベル皇族とも縁戚関係になる”という事ですよね…………?」
「あ、ああ…………何から何まで突然過ぎて現実だと今でも思えないが…………―――そうだ!クロスベル皇帝の一人であられるヴァイスハイト陛下に将来縁戚関係を結ぶことになる俺達―――いや、”娘”のメサイアが何とか面会して、メンフィルと共にエレボニアとの戦争を止めるように説得する事はできないか!?」
表情を引き攣らせながら呟いたエリスの推測に疲れた表情で頷いたリィンはある事を思いついて真剣な表情でメサイアに訊ねた。
「いえ、面会まではできるでしょうけど、お父様の性格を考えると”娘の嘆願如きで、戦争を中止するような事は絶対にありえませんわ。”」
「ぜ、”絶対にありえない”って………そのヴァイスハイト陛下という方は一体どういう性格をされている方なのでしょうか…………?」
複雑そうな表情で首を横に振ってリィンの推測を否定したメサイアの答えを聞いたセレーネはメサイアにヴァイスの性格を訊ねた。

「お父様は民思いで”好色家”であり、女性にはとても優しい方ですが常に”上”を目指す向上心や”皇族”としての自覚を人一倍持っている方ですから、”私情”では決して”国”の運命を決めるような事はなさらない方ですわ。―――例え心から愛する方の頼みやお父様にとって大切な方が人質に取られても、お父様自身が決めた”覇道”を変えるような事は絶対にありえませんわ。」
「それは…………」
「確かに皇族―――”皇”としては文句なしの性格ではありますが…………」
「…………っ!ちなみにもう一人のクロスベル皇帝―――ギュランドロス陛下はどんな性格をしている方なんだ…………?」
ヴァイスが決して自分達の嘆願では決して戦争を止めるような性格ではない事を知ったエリスとセレーネが複雑そうな表情をしている中、辛そうな表情で唇をかみしめたリィンはギュランドロスの事について訊ねた。
「ギュランドロス陛下については私もあまり詳しくはないのですが…………少なくともお父様よりも遥かに”野心”に溢れた”皇”である事は断言できますわ。実際、メルキアの宿敵の国家である”ユン・ガソル連合国”の”皇”であったギュランドロス陛下はご自身の代で”宿敵”であるメルキアを滅ぼす為に何度もメルキアに戦争を仕掛けた方ですから…………」
「という事はむしろギュランドロス陛下の方がヴァイスハイト陛下やリウイ陛下よりも遥かに危険な性格の人物という事か…………俺達は何もできず、ここでただエレボニアが滅ぶのを待つしかないのか…………?」
「……………………姫様……………………」
「お兄様…………エリスお姉様…………」
ギュランドロスの好戦的な性格を知って八方塞がりである事に気づいて辛そうな表情を浮かべたリィンとエリスをセレーネは心配そうな表情で見つめた。

「……………………その事ですが…………プリネ皇女殿下達に戦争を止める事は無理でも、せめてエレボニアを滅亡させずに済む方法を訊ねた所、決して”ベスト”ではなく”ベター”―――いえ、”何もしないよりはマシ”な結果でエレボニアを滅亡させずに済む方法がある事を教えて頂きましたわ。」
リィン達の様子を見て少しの間黙り込んだメサイアは決意の表情を浮かべてリィンを見つめてある事を伝え
「え……………………」
「!?一体どんな方法だ、それは!?」
メサイアの話にエリスが呆けている中リィンは血相を変えてメサイアに訊ねた。
「先程も口にしたように”ベスト”や”ベター”ではなく、あくまで”何もしないよりはマシな結果”の上エレボニアの内戦を終結させた時よりも遥かに茨の道ですわよ?それでも知りたいのですか?」
「ああ…………アリサ達が…………クロウが守ろうとしたエレボニアが滅亡する事をここで黙って見てはいられない!」
「わたくしもお兄様と同じ気持ちですわ…………!アリサさん達―――”Ⅶ組”を始めとしたわたくし達がお世話になった多くの方々の為にも…………そしてクロウさんの犠牲を無駄にしない為にも、わたくしもお兄様と共にその方法に賭けますわ!」
「私も姫様の為にも兄様たちと共にその方法に頼ります…………!」
メサイアの確認に対してリィン達はそれぞれ決意の表情で答えた。

「……………………わかりましたわ。メンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”でエレボニアを滅亡させずに済む方法…………―――それはメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に私達も参戦し、”戦場”で数多の手柄を挙げる事―――つまり、”戦争の英雄”になる事ですわ。」
「え……………………」
「ええっ!?わ、わたくし達がエレボニアとの戦争に…………!?」
「メサイアさんは私達が”戦場で数多の手柄を挙げる必要がある”と仰っていましたが、それがエレボニアの滅亡阻止や姫様を助ける事にどう繋がるのでしょうか…………?」
メサイアが口にした提案にリィンが呆け、セレーネが驚いている中、エリスは不安そうな表情で訊ねた。
「メンフィル帝国は”尊き血”を重視―――つまり、”血統主義”であるエレボニア帝国と違い、貴賤問わずその人自身の能力を公平に評価し、その能力に相応しい地位や褒美を用意する”実力主義”との事。プリネ皇女殿下達の話では実際、過去”戦場”で様々な手柄を挙げた方々やメンフィル皇族の方々が”恩”と感じた事を行った方々が様々な希望が叶えられたり出世したりした事もあったとの事ですわ。プリネ皇女殿下によればリィン様もその方々の一部をご存じとの事ですが…………」
「ああ…………リフィア殿下の親衛隊を率いるゼルギウス将軍閣下やシグルーン副将軍閣下、それにセシリア教官もその例に当てはまるし、”ブレイサーロード”の異名で呼ばれていて遊撃士を務めているカシウス師兄のご息女もかつて結社がリベールで暗躍を行っていた時の出来事でメンフィルの重要人物を助けて、その”褒美”として貴族の爵位を授けられた話をサラ教官から聞いたことがある…………それを考えるとエリゼもその一人になるのか…………」
「エリゼお姉様は若輩の身でありながらも、次代のメンフィルの女帝になる事が内定しているリフィア殿下の専属侍女長を務めている事で、リフィア殿下を始めとした多くのメンフィル皇族達からの信頼を勝ち取り、リウイ陛下御自身もエリゼお姉様を重用していらっしゃっている様子でしたから、夏至祭での”帝国解放戦線”によるテロの際誘拐されかけたエリスお姉様の救出の為に自ら剣を取って、クロウさん達と刃を交えましたし、その後もエリスお姉様とアルフィン殿下が陛下達に許可も取らずにアルフィン殿下のお付きを務めていた事も”注意”で済ませて、多めに見て下さりましたものね…………」
「あ…………」
メサイアの指摘にリィンは静かな表情で頷き、セレーネが呟いた推測を聞いたエリスはかつての出来事を思い出した。

「リィン様達が”戦場”で手柄を挙げ続ければ、自ずとリィン様達の地位も高くなるでしょう。―――それこそ、”戦後のエレボニアの処遇について口出しできる権限の地位”に就ける可能性もありえますわ。」
「た、確かにその方法ならばエレボニアを滅亡させる事を防ぎ、アルフィン殿下を救う事もできると思いますが、その為には…………」
「……………………俺達が”エレボニア帝国征伐”で手柄を挙げる――――領邦軍、正規軍関係なくエレボニアの多くの兵達や軍の上層部に貴族、更には”アルノール皇家”の方々を殺害、もしくは捕縛する必要があるという事か…………」
「そ、それは…………」
メサイアの推測を聞いたセレーネは不安そうな表情をし、複雑そうな表情で呟いたリィンの推測を聞いたエリスは辛そうな表情を浮かべた。
「…………リィン様達の場合皇族はともかく、兵や軍の上層部、貴族に関しては”殺害”でなければメンフィル帝国はリィン様達の忠誠を疑う可能性も考えられますわ。リィン様達はメンフィル帝国に許可も取らずに”他国”であるエレボニアの内戦終結に貢献した事から、リィン様達を親エレボニア派―――戦争相手であるエレボニアの為にメンフィルを裏切る可能性がある人物達として見ているかもしれませんし…………」
「そ、そんな…………確かにエレボニアの方々は私達にとって大切な方々ですが、幾ら何でも祖国であるメンフィルを裏切るような事は私達はしません…………!」
「…………だけど、それをメンフィルに証明する”方法”は今の俺達にはない。そして俺達の事を信用してもらい、エレボニアの滅亡を防ぎ、アルフィン殿下を救う為には”エレボニア帝国征伐”にメンフィル帝国軍の一員として参戦して、数多のエレボニアの兵士達や軍の上層部、貴族の命を奪わなければならないという事か…………」
メサイアの指摘を聞いて悲痛そうな表情を浮かべたエリスは反論し、複雑そうな表情で呟いたリィンは静かな表情になってその場で考え込んだ。

お前らは……まっすぐ前を向いて歩いていけ……ただひたすらに…………ひたむきに…………前へ…………へへ…………そうすりゃ…………きっと……………………

「…………………………………………」
「兄様…………?一体何を―――」
”煌魔城”でのクロウ―――”大切な友”の”遺言”を思い出したリィンはその場で目を伏せて黙って考え込んだ後決意の表情になって、懐から”Ⅶ組”の生徒手帳とARCUSを取り出して取り出した手帳とARCUSを見つめ、それを見たエリスが不思議そうな表情を浮かべて声をかけたその時
「八葉一刀流―――”四の型”紅葉切り。」
手帳とARCUSを放り投げた後その場で太刀を抜いて二つに向かって剣技を放った。すると手帳とARCUSはそれぞれ真っ二つに分かれて絨毯に落ちた!
「お、お兄様!?どうして生徒手帳とARCUSを…………!?」
「…………俺自身に発破をかけて、覚悟を決める為さ。―――Ⅶ組と…………アリサ達と決別する事を恐れていたかつての俺と決別する為にも…………」
「に、兄様…………」
「……………………リィン様は本当にそれでよろしいのですね?”エレボニア帝国征伐”に参戦すれば、Ⅶ組の方々を始めとしたトールズ士官学院の生徒達の親族や関係者である軍人や貴族の方々の命を奪う事もそうですが、最悪の場合”Ⅶ組”とも刃を交える事が起こるかもしれませんわよ?」
自身の行動に驚いているセレーネに答えたリィンの決意を知ったエリスは辛そうな表情でリィンを見つめ、メサイアは真剣な表情でリィンに確認した。

「ああ…………いざ、その時が来た時にクロウのように割り切って戦えるかどうかは今でもわからないけど…………それでも、その方法でしか残されていない以上、俺はメンフィル・クロスベル連合側として”エレボニア帝国征伐”に参戦する――――!」
メサイアの問いかけに複雑そうな表情を浮かべて答えたリィンは決意の表情を浮かべて窓から見える景色を見つめた――――

 
 

 
後書き
この話の最後でキャラ紹介のOPが入ると思ってください。なお、OPのBGMは閃Ⅳの”変わる世界 -闇の底から-”で、最初に映る仲間キャラはリィン、エリゼ、エリス、セレーネで、その後リィン側の仲間として現時点で予定しているキャラ達が仲間になる順番(ステラ、フォルデ、アルティナ、”鉄機隊”全員、アルフィン、ミュゼ、クルト、プリネ、ツーヤ、エヴリーヌ、レーヴェ、リフィア、ゼルギウス、シグルーン、リアンヌ、ローゼリア)に映った後、リウイ達、ヴァイス達、セリカ達、ユウナを加えたロイド達、エステル達、エイドス達が映った後Ⅶ組と対峙しているシーンのリィン(ガタガタブルブル)が映り、リィン達にとっての敵陣営であるⅦ組やその協力者達、結社の残党、”鉄血の子供達(アイアンブリード)”、ルトガーを含めた”西風の旅団”メンバー、アルベリヒとゲオルグとジークフリード、そしてギリアス・オズボーンが映り、最後は戦艦の甲板から景色を見つめているそれぞれの起動者の背後にヴァリマール、ヴァイスリッター、アルグレオン、(もしかしたら)テスタ=ロッサが映ると思ってください♪) 

 

第一部~灰色の決別と新たなる絆~ 第2話

1月7日、PM4:30―――


メンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に加わる事を決めたリィン達は毎日様子を見に来ているエリゼが来訪するのを待っていた。

~メンフィル帝国・マルーダ城・客室~

「兄様、今よろしいでしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。」
「……………………失礼します。」
リィンの許可を聞いたエリゼは部屋に入り、リィン達を見回して誰一人抜け出す事もせずに大人しく客室にいる事に僅かに安堵の表情を浮かべた。
「…………その様子だと、メンフィル帝国は俺達がここを抜け出してエレボニアに向かう事も警戒しているのか?」
「いえ…………兄様達の性格を熟知している私の独断によるものですから、毎日この部屋に来ている事にメンフィル帝国からの指示等ではありません。」
静かな表情を浮かべたリィンの問いかけにエリゼは複雑そうな表情で答えた後少しの間黙り込み、決意の表情を浮かべてある事を伝えた。
「―――兄様。本日メンフィル帝国軍によるトールズ士官学院からのヴァリマールの回収を終えました。ちなみに騒ぎを聞きつけたその場に現れたのはⅦ組の方々だけでなく、ヴァンダイク学院長とアルフィン殿下もいました。」
「え…………どうして、姫様がトールズ士官学院に…………」
「…………恐らく何の連絡もなく中々帰ってこないエリスお姉様が心配になって、お兄様が何か知っていないかを訊ねる為だと思いますわ…………」
「あ…………」
エリゼの話を聞いてアルフィン皇女がトールズ士官学院にいた理由を不思議に思ったエリスだったがセレーネの推測を聞くと辛そうな表情を浮かべた。

「そうか…………戦争状態になるとわかっている国にみすみすヴァリマールの保管を任せる事はしないと思っていたが、既に回収していたのか…………」
「…………?それでⅦ組の方々にもそうですがヴァンダイク学院長とアルフィン殿下にもメンフィルはユミルの件を理由にエレボニアを征伐するつもりである事を伝え…………――――ヴァンダイク学院長とアルフィン殿下には”メンフィル帝国政府の政治的判断”により兄様、セレーネ、そしてエリスの退学届けを渡しました。」
「…………っ!そう、ですか…………」
「メンフィル帝国とエレボニア帝国が戦争状態に陥ってしまう事を想定している以上、そうなってしまいますわよね…………」
ヴァリマールをトールズ士官学院から無理矢理回収した事に怒るどころか、冷静な様子で答えたリィンを不思議に思ったエリゼだったがすぐに気を取り直してリィン達に退学の件を伝え、エリゼの説明を聞いたエリスは息を呑んだ後セレーネと共に辛そうな表情を浮かべた。
「…………ヴァリマールがメンフィル帝国軍に回収されたのはちょうどよかった…………戦場でエレボニア帝国軍を圧倒して手柄を挙げる為にはヴァリマールの力も必ずいると思うしな…………」
「え……………………――――!?に、兄様…………まさかとは思いますが、メンフィル帝国軍による”エレボニア帝国征伐”に参戦なさるおつもりなのですか!?」
静かな表情で呟いたリィンの言葉を聞いたエリゼは一瞬呆けた後血相を変えてリィンに訊ねた。
「その”まさか”だ。」
「その…………エリゼお姉様。お兄様だけでなく、わたくしとエリスお姉様もメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に参戦したいので、どうかリフィア殿下に待機指示からメンフィル帝国軍に加わる事ができるように取り計らって頂けないでしょうか?」
「な――――兄様だけでなく、セレーネとエリスまで”エレボニア帝国征伐”に…………!?―――いえ、それよりもどうしてメンフィルがクロスベルと連合を組んだ事をご存じなのですか…………!?」
リィンの後に答えてある事を頼んだセレーネの言葉に一瞬絶句したエリゼは信じられない表情でリィン達を見つめて問いかけた。そしてリィン達はメサイアに情報収集をさせて、その結果様々な状況を知る事ができた事や戦争に参戦する理由を説明した。

「そうですか…………プリネ皇女殿下達がメサイア様に…………そして兄様達はエレボニアの方々の為に、敢えてエレボニア帝国征伐に参戦なさるおつもりなのですか…………」
事情を聞き終えたエリゼは疲れた表情で溜息を吐き
「それでエリゼ。何とか待機指示が出されている俺達をメンフィル帝国軍の一員として加える事はできないか?」
「…………可能か不可能かで言えば”可能”です。元々兄様は待機指示が解かれた際はエレボニアの内戦を終結に貢献した事で実力が訓練兵時代よりも飛躍的に上がった事を考慮してでリフィアの親衛隊に所属する事が内定しています。それにメンフィル帝国人であるセレーネとエリスも”エレボニア帝国征伐”の為に現在メンフィルの民達に呼びかけている”義勇軍”の一員としてメンフィル帝国軍に所属する事が可能の上、編成の際は兄様と同じ部隊として配置する事は可能です。」
「そうか…………リフィア殿下の親衛隊に所属する事が内定していた話には驚いたが、それはそれで更に都合がいいな…………シルヴァン陛下の跡継ぎであられるリフィア殿下がすぐに俺達が挙げた手柄を知る事ができるしだろうしな…………」
エリゼの答えを聞いたリィンは静かな表情で呟いた。
「兄様、確かにメサイア様やプリネ皇女殿下達が仰ったようにエレボニア帝国征伐で様々な手柄を挙げる事ができれば、エレボニアの滅亡を防ぎ、アルフィン殿下の本来の処遇を軽くすることも可能でしょう。ですがその為には内戦の時とは比べ物にならないくらいの辛い道を歩まなければならない事は理解していらっしゃっているのですか?場合によってはⅦ組の方々と刃を交える事があるかもしれませんよ?」
「覚悟の上だ。そしてこれがその証拠だ。」
エリゼの問いかけに頷いたリィンはエリゼに太刀による斬撃によって二つに分かれた生徒手帳とARCUSを手渡した。

「これは……………………―――わかりました。兄様がその道を決めた以上、その背中を守り、そして支えるのが妹の…………婚約者の務め。エレボニア帝国征伐が始まるよりも前に兄様がリフィアの親衛隊に所属できるように取り計らいましょう。」
リィンから手渡された生徒手帳とARCUSを見て驚きつつリィンの”覚悟”をすぐに悟ったエリゼは真剣な表情で頷いて答えた。
「ああ、頼む…………!」
「セレーネに関してはルクセンベール卿が確かめるのが”筋”だから…………――――エリス、貴女までエレボニア帝国征伐に…………”戦争”に参戦するなんて、”本気”なの?」
「―――はい。姫様の為…………兄様を支える為に、私も剣を取って兄様達と共にエレボニア帝国征伐に参戦します…………!」
エリゼの確認に対してエリスは決意の表情で答えた。
「戦争に参戦するのだから当然敵国―――エレボニア帝国の軍人や貴族達の命を奪わなければならないのよ?”人と命の奪い合い”をすることは魔獣との戦闘とは訳が違う事はわかっているの?」
「勿論理解しています。…………と言っても実際にその状況に陥った事もない私の言う事では信用できないかもしれませんが…………それでも、もう私だけ兄様達に置いて行かれるのは嫌なんです…………!」
「エリスお姉様…………」
エリスの想いを知ったセレーネは辛そうな表情でエリスを見つめ
「本当は、戦争が終わるまで兄様達と共にユミルで待機してもらえるように手配しようとしていたのだけどね………………………………」
エリゼは複雑そうな表情でエリスを見つめて少しの間黙って考え込んだ後ある事をエリスに伝えた。

「―――一つ条件があるわ。」
「え…………”条件”ですか?」
「ええ。さっきも説明したようにメンフィルはエレボニア帝国征伐の為に民達も参戦できる”義勇軍”を臨時的に結成することを決めたわ。そして明日その”義勇軍”の所属を申し出た民達や新たに配属予定の訓練兵達に”人の命を奪う経験”をさせる為に、正規軍と共にメンフィル帝国の領土内に潜伏している賊の討伐を行うわ。貴女もそれに参加して一人でいいから賊の命を奪って、その戦いを経験してもなお、エレボニア帝国征伐に参戦すると言えるのだったら、貴女も参戦できるように取り計らうわ。」
「”あれ”か…………」
「お兄様はエリゼお姉様が仰った件をご存じなのですか?」
エリゼが口にした条件を聞いたリィンは複雑そうな表情で呟き、リィンの言葉を聞いたセレーネはリィンに訊ねた。
「ああ…………メンフィル軍はいつ”戦場”に配属されてもいいように訓練兵の内に”人の命を奪う事”を経験させるために、正規軍が定期的に行っている賊や盗賊団の討伐に参加させているんだ。…………勿論その討伐戦は今まで失敗した事がない上、どの討伐戦も圧倒的な勝利で賊達を殲滅しているけど、それでも”本物の実戦”だから、当然メンフィル軍からも死者が出る事はある。前から聞こうと思っていたけど…………やっぱりエリゼも既に”あれ”に参加して、賊の命を奪っているんだな?」
「はい。兄様はどうなされますか?訓練兵時代に経験しているとはいえ、その件以降今まで人の命を奪った事がないのですから、その感覚を思い出す為にも参加なさりますか?」
「そうしてくれ。エリスを傍で守る為にも…………そして、エレボニア帝国征伐に参加する前にもう一度人を”斬る”感覚を取り戻しておく必要があるだろうしな。」
「わかりました。…………恐らくルクセンベール卿も今の件を聞けば、その戦いにセレーネも参加する事を条件とすると思うから、セレーネもその戦いに参加する覚悟を今の内にしておいた方がいいと思うわ。」
「わかりましたわ。」
そしてエリゼはリィン達の件をリフィアに相談する為にリフィアがいる執務室を訊ねた。


~リフィア皇女専用執務室~

「リフィア殿下、よろしいでしょうか?」
「む?エリゼか。――入ってよいぞ。」
「…………失礼します。」
部屋の主であるリフィアの許可を取ったエリゼが部屋に入ると部屋にはリフィアの他にもツーヤがいた。
「ルクセンベール卿?リフィアに何か用があったのでしょうか?」
「ええ、例の戦争の件でマスターがリフィア殿下に用がありましたので。」
「…………そうですか。ルクセンベール卿もいらっしゃっているのでしたら、ちょうどよかったです。」
「???えっと………エリゼさん、あたしに何か用があるのでしょうか?」
エリゼが呟いた言葉の意味がわからないツーヤは首を傾げた後エリゼに訊ねた。

「その件についてはすぐにわかります。―――リフィア。兄様達の件だけど…………」
「む?ああ、待機場所をマルーダ城からユミルに変える件か。それならばリウイと父からも既に許可が下りたから、リィン達はいつでもユミルに帰郷してもよいぞ。」
「いえ――――兄様、エリス、それにセレーネの三人もメンフィル帝国軍の一員として、メンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に加わる事を希望しているとの事だから”エレボニア帝国征伐”時の兄様達が三人とも一緒の部隊に所属させたいから、その件についての相談をしたいの。」
「何じゃと!?」
「ええっ!?リィンさんとエリスさん、それにセレーネが!?エリゼさん、本当にリィンさんとエリスさんもそうですが、セレーネも”エレボニア帝国征伐”に参戦する事を自分の意志で決めたのですか!?」
エリゼから聞かされた驚愕の報告にリフィアと共に驚きの声を上げたツーヤは信じられない表情でエリゼに確認した。

「はい。兄様の”パートナードラゴン”として、そしてセレーネ個人としても今回の戦争に参戦する事を決めたとの事です。」
「―――すみません、リフィア殿下!今からセレーネに会って確認したい事がありますので、少しの間失礼します!」
そしてエリゼの答えを聞いたツーヤは血相を変えて部屋から退出し
「…………エリゼよ。何故リィン達はエレボニア帝国征伐に参戦する事を決めたのじゃ?余もそうじゃが父やリウイ達もトールズやアストライアに留学している件でエレボニア人達と親しくなったリィン達がエレボニア帝国征伐の件を知れば、戦争を止める為に何らかの行動を移す可能性が確実じゃと思ったから、予めエレボニアからリィン達を離して戦争が終わるまで一か所に待機させ続けるつもりだったのに、何故そのリィン達が参戦の意思を…………」
ツーヤが部屋から退出するとリフィアは困惑の表情でエリゼに訊ねた。そしてエリゼは事情を説明した。

「…………なるほどの。プリネ達が”方法”を教えたとはいえ、まさか本当にその”方法”を取る事に決めるとは…………」
「…………ちなみにこれが兄様の”覚悟”よ。」
事情を聞き終えたリフィアがその場で考え込んでいるとエリゼがリィンから渡された手帳とARCUSをリフィアの目の前の机に置いた。
「二つに斬られた手帳と戦術オーブメント…………?」
「―――兄様のトールズ士官学院の生徒手帳とARCUSよ。」
「なぬっ!?そんな大切な物をこのような有様にしたという事はリィン達は”本気”という事なのか…………」
エリゼの答えを聞いたリフィアは驚いた後真剣な表情で手帳とARCUSを見つめた。
「それで早速で悪いのだけど、その件で相談があって――――」
こうして…………リィン達はエリゼの手配によって義勇兵や訓練兵も同行するメンフィル帝国軍による賊の討伐戦に参加する事になり、翌日



1月8日、同日12:00―――

~メンフィル王公領セルノ・バルジア統合領・街道~

街道を十数両の馬車が駆けていた。そして先頭の馬車が先に進む道が倒木によって先に進めない事に気づくと馬車を止め、先頭の馬車が停車すると後続の馬車達も次々と停車した。そこに両側から無数の矢が襲い掛かり、馬車の周囲や馬車に矢が刺さった!
「ヒハハハハハ!メンフィル軍や領主共は”エレボニア”とかいう国との戦争の準備で俺達みてぇな連中に構う暇はねぇらしいからな。今が稼ぎ時だぁ!野郎共、金目の物と女を根こそぎ奪え!男は皆殺しだぁっ!!」
すると両側にある森から人相の悪い男―――主に街道を通る商人の馬車等を襲撃する賊が出てきて部下達に号令をかけ
「オオオオオォォォォ――――ッ!!」
号令に対してそれぞれの武器を掲げた部下達はそれぞれ下卑た笑みを浮かべて馬車に襲い掛かった。するとその時馬車の幌の中から次々と姿を現した銃口から銃弾が襲い掛かった!
「え”…………」
「い、一体何が…………?」
「ぐふっ…………!?」
「いてぇよぉ…………!?」
「俺の足がぁぁぁぁぁっ!?」
銃弾に心臓や頭を撃ち抜かれた賊達はその場で絶命し、運悪く手足に命中した賊達は痛みに呻いていた。

「なっ、一体何が…………!?」
「!?お、お頭…………!う、上…………!」
「上だと…………?な――――」
突然の出来事に呆然とした賊のリーダーは部下の言葉を聞いて空を見上げて雲の中から現れた戦艦――――”マグナニム”を見ると絶句した。
「誰が戦争の準備で忙しくてお前達のような外道共を討伐する暇がないって?」
するとその時馬車から槍を持つ碧髪の青年が現れて不敵な笑みを浮かべて賊達に問いかけ、青年に続くように馬車から次々とメンフィル兵達が現れ、更に”マグナニム”の甲板に整列していたリィン達を含めた多くの兵士達が予め描かれていた転移魔法陣によって賊達を包囲するように次々と転移で現れた!

「テ、テメェは領主の息子の…………!?」
「し、しかもメンフィルの兵士達があんなにたくさん…………!?」
「畜生!?罠か…………!」
青年―――セルノ・バルジア統合領の領主の息子にしてメンフィル皇家の分家の一員であるエフラム・ファラ・サウリン・マーシルンの登場に賊達は狼狽え始め
「エレボニア帝国征伐を行う為に戦争の隙を突いて民達に危害を加える後顧の憂いはとっとと絶たせてもらう!」
エフラムは自身の得物である槍を構え
「―――――これより賊の討伐を始めます!総員、一人残らず殲滅しなさい!決して一人も逃がしてはなりません!!」
「オオオオオォォォォォ――――ッ!!」
エフラムに続くように鞘から細剣(レイピア)を抜いた蒼髪の娘―――エフラムの妹であるエイリーク・ファラ・サウリン・マーシルンの号令に力強く答えたメンフィル兵達は賊達に向かい、戦闘を開始した!

「クソ―――ッ!!」
「お、お頭!?」
「一人だけ逃げようとするなんて、ずるいっすよ!?」
メンフィル兵達との戦いによって一気に総崩れになって次々と討ち取られて行く部下達を見て勝ち目はないと判断した賊のリーダーは森に向かって逃亡し始め、それを見た部下達もリーダーの後を追って行ったが森の前には予め転移によって配置されていたリィン達が立ち塞がった!
「―――あんた達には俺達に”戦場に出る覚悟”を決めさせる為の”糧”になってもらう。エリス、セレーネ、行くぞ!!」
「「はいっ!!」」
リィンは賊のリーダー達に太刀を向けて宣言した後号令をかけ、リィンの号令にエリスとセレーネは頷き
「ガキ共が!舐めやがって…………!やっちまうぞ、テメェ等!!」
「オオオォォォ―――ッ!!」
一方リィンの言葉に表情を歪めた賊のリーダーは部下達に号令をかけたが
「二の型―――疾風!!」
「へ――――」
「速い――――」
部下達の一部はリィンのカマイタチを纏った電光石火の攻撃によって首を刈り取られて絶命し
「ヤァァァァァ………ホーリーインパクト!!」
「ぐぎゃああああああっ!?」
「がああああああああっ!?」
残りの部下達はセレーネの光の魔力を込めた薙ぎ払い攻撃によって身体を横に真っ二つにされた後絶命した!

「なああああああああっ!?何なんだよ…………何なんだよ、テメェ等は!?」
一瞬で部下達が絶命した事に驚いた賊のリーダーは信じられない表でリィン達を見つめ
「…………後は貴方だけです。――――――御覚悟を。」
「ガキが…………舐めるなぁぁぁぁぁぁっ!!」
自分と対峙して細剣を構えたエリスの言葉に怒り心頭になり、自身の得物である斧を大きく振りかぶってエリス目がけて振り下ろした!
「…………!ヤァァァァァァァ――――ッ!!」
自分目がけて振り下ろされた斧をエリスはよく見て回避した後斧を地面に叩き付けた事ですぐに態勢を戻せない相手の後ろに回って背後から相手の心臓目がけて細剣で力を込めた突きを放った!
「ガハッ!?…………こ、この俺が…………こ、こんな女子供にやられる…………だと…………ぐふっ!?」
背後から心臓を貫かれた賊のリーダーは口から大量の血を吐いた後自分の心臓を貫いている細剣を信じられない表情で見つめながら絶命して地面に倒れた!

「ハァ…………ハァ…………わ、私………………人を…………」
「これが…………人と人が命を奪い合う…………戦なのですわね…………」
「エリス…………セレーネ…………」
初めて人の命を奪った事でそれぞれ顔色を悪くしているエリスとセレーネをリィンは辛そうな表情で見つめたが
「よくも、お頭を――――ッ!」
「ぁ――――」
「させるかぁぁぁぁぁぁ――――ッ!!」
距離が離れた場所にいた他の賊が憎悪の表情を浮かべて弓に番えた矢をエリスに放とうとし、初めて人の命を奪った事によるショックと咄嗟の出来事にエリスの反応が遅れ、リィンがエリスを守る為に瞬時に”鬼の力”を解放してエリスに矢を向けた賊に向かおうとしたその時!
「ぐぎゃああああああっ!?」
賊は突如炎に包まれ、炎は賊を骨まで残さず焼き尽くした!

「エリスお姉様、大丈夫ですか!?」
「え、ええ…………よくわからないけど、助かったみたいね…………」
賊が焼き尽くされた後すぐに我に返ったセレーネに心配されたエリスは戸惑い気味に答え
「(今の炎は一体…………味方の魔術師によるものか…………?)…………とにかく、これでエリゼとルクセンベール卿の条件は果たした。二人ともよく頑張ったな…………」
元の姿に戻ったリィンは炎を放った使い手について考え込んだがすぐに気を取り直してエリスとセレーネに優しく声をかけて抱き締め
「兄様…………私…………私…………っ!」
「う…………あああああぁぁぁぁ…………っ!?」
リィンに抱き締められた二人は緊張が解けた事や初めて人の命を奪った事によるショックによって泣き始めた。

(二人とも本当によく頑張ったわね…………だけど、今の炎の魔術――――――”メルカーナの轟炎”は誰が放ったのかしら…………?”メルカーナの轟炎”のような上位魔術が使える人物で今回の討伐戦に参加なされているのはエイリーク皇女殿下のみの上、そもそも”エイリーク皇女殿下は火炎属性魔術は扱えないはず”だけど…………)
リィン達の様子を物陰から見守っていたエリゼは安堵の溜息を吐いた後リィン同様エリスを助けた人物の事について考えていた。
「うふふ、純粋無垢な女の子がピンチだったから気まぐれに助けてあげたけど、中々面白そうな男の子がいるじゃない♪何やら色々と”訳あり”のようだし、久しぶりに気まぐれにするあの”勝負”を申し込んであげようかしら♪」
一方高位火炎魔術を放ってエリスを助けた人物――――下着としか思えないような扇情的な服を身に纏った妖美さを漂わし、撫子色の髪を腰までなびかせ、まさに”絶世の美女”と言ってもおかしくない美しい容姿とセレーネと同格の豊満な胸を持つ睡魔族の女性が空から興味ありげな様子でリィン達を見守っていた後転移魔術でその場から消えた―――― 
 

 
後書き
という訳で今回の話の最後で登場したキャラは皆さんご存じのキャラですwwこの物語のリィンの使い魔は多分3人で、リザイラとミルモは原作通りセリカの使い魔として登場させると思います。(まあ、他の物語と違って使い魔がたった3人でもその内の二人がいれば、リザイラがいない穴は十分補えると思いますがww)ちなみにリィンの使い魔は割と早い段階で揃う予定です。…………まあ、もしかしたら今までいなかったリィンの使い魔枠である天使キャラが新たに加わるかもしれませんが、今の所その可能性はほとんどありません。ちなみに出せるとしたらユリーシャあたりですかね…………?あ、でも元々いるリィンの使い魔(?)の一人の性能考えたら、そのキャラの下位互換のユリーシャはいらねぇ…………(そんな所まで原作と同じww) 

 

第3話

その後―――賊の殲滅を終えたメンフィル軍は戦後処理を行って帰還した後義勇兵や訓練兵の為の打ち上げをし、打ち上げに参加したリィン達は明日に備えて休む前に城内にある大浴場で身体を清めて湯につかって一日の疲れを癒していた。そしてセレーネの念話で先に上がって部屋に戻って欲しいとの内容を受け取ったリィンは大浴場から上がって客室に戻っていた。


同日、PM9:30――――――

~マルーダ城・客室~

(なんとかみんな無事に終える事ができたけど…………まだまだだな、俺は…………)
部屋に入ったリィンは討伐戦の事を思い返して反省していた。するとその時部屋内は結界に包まれた!
「!?これはまさか…………”結界”…………!?」
「―――構えてください、リィン様!これ程の結界を瞬時に展開できるなんて、相当の使い手ですわ!」
突然の出来事にリィンが驚いているとリィンの傍にメサイアが現れて得物である聖剣を構えて周囲を見回しながらリィンに警告した。
「あら、既に使い魔もいたなんてね。」
するとその時、討伐戦の際にエリスを影ながら助けた睡魔族の女性が転移魔術によってリィン達の目の前に現れた!

「うっ…………その格好…………睡魔族か…………?」
「…………何者ですか?これ程の結界を瞬時に展開できる上、転移魔術までできるなんて、少なくとも貴女はただの睡魔族ではありませんね?」
女性の扇情的な格好を見て思わず顔を赤らめたリィンは気まずそうな表情で女性に訊ね、メサイアは女性を最大限に警戒しながら訊ねた。
「ま、睡魔族とはいえこれでも一応”魔神”だから、この程度朝飯前よ。」
「!!」
「な――――”魔神”って、”闇夜の眷属”の中でも”最強”を誇るエヴリーヌさんと同じ…………!」
女性の言葉を聞いたメサイアは目を見開き、リィンは一瞬絶句した後信じられない表情で女性を見つめた。

「うふふ…………睡魔族の女王種――――”リリエール”にして”七大罪”の”怠惰”を司る”魔神”―――ベルフェゴールよ。」
「っ!その”魔神”が俺に何の用だ…………?」
女性―――”七大罪”の”怠惰”を司る”怠惰”のベルフェゴールが名乗り上げるとリィンは息を呑んだ後厳しい表情でベルフェゴールに問いかけた。
「や~ね、そんな怖い顔をしちゃって。賊の矢に射られかけようとしていた貴方の愛しの妹を助けてあげたんだから、むしろ私は貴方に感謝される側なのよ♪」
「え…………という事はあの炎の魔術は貴女が…………」
ベルフェゴールの話を聞いてすぐに心当たりを思い出したリィンは驚きの表情でベルフェゴールを見つめた。

「そういう事♪」
「…………一体何故”魔神”の方がただの人間のエリス様を?」
「私は純粋無垢で可憐な女の子が大好きなのよ♪あの時たまたま空を散歩していた時に、貴方達が目に入ってあの黒髪の女の子がピンチっぽかったから、気まぐれで助けてあげたのよ。」
「…………そうだったのか。あの時、エリスを助けてくれて本当にありがとう。」
メサイアの質問に笑顔で答えたベルフェゴールにリィンは静かな表情で感謝の言葉を述べた。
「ふふっ、さっきも言ったようにただの”気まぐれ”だから気にする必要はないわよ。――――それよりも、私、貴方に興味があるのよね~。」
「ええっ!?」
「…………俺に?俺はどこにでもいるような普通の人間だが…………」
「クスクス、あの黒髪の子を助ける為に魔族のような力を解放しかけた貴方のどこがただの人間なのかしら?」
「!…………”あれ”も見られていたのか…………」
「リィン様…………」
ベルフェゴールの指摘に目を見開いたリィンは複雑そうな表情をし、リィンの様子をメサイアは心配そうな表情で見つめた。

「ま、それも私にとっては大した事じゃないから別にどうでもいいわ。今日貴方に会いに来たのは”勝負”を申し込んであげるためよ♪」
「…………俺に”勝負”?一体何の…………というか一体何の為に、そんな事を…………」
「暇つぶしも兼ねた私の趣味みたいなものよ。もし私に勝てたら、私にして欲しい事を私ができる範囲で叶えてあげる♪―――どう?とっても魅力的な話でしょう?」
「…………確かに”魔神”の協力を得る事は魅力的だけど、当然それを得る為に負わなければならないリスクはあるだろ。負けた時俺はどうなるんだ?」
ベルフェゴールの提案にリィンは真剣な表情で考え込みながらベルフェゴールに問いかけた。
「負けてもせいぜい、明日一日動けなくなるくらい精気を奪われるだけだから、そんなに怖がる必要はないわよ♪」
「”魔神”の方ですのに、随分とこちらにとって有利な条件を出されましたわね?睡魔族の方ですから、てっきり負ければ精気全てを奪ってリィン様の命を奪ったり、リィン様を貴女の性奴隷にでもするつもりなのかと警戒していたのですが。」
「失礼ね~。まあ、この世界の人達にとって”魔神”は恐怖の対象であるし、実際大概の”魔神”は残忍な連中も多いけど、私はこれでも”魔神”の中でも結構穏便な性格だと自負しているわよ?私の敵でもない人達を殺すなんて悪趣味な事はしないし、気持ちいいコトをする事や面白い物を見る事の方がよっぽど好きだし、”魔神”の中では”人間”という種族自体も好きな方よ?」
メサイアの指摘に対して呆れた表情で反論したベルフェゴールはリィン達にウインクをした。

「…………それで”勝負”の内容は?」
「うふふ、それは勿論――――性行為(セックス)に決まっているじゃない♪」
「え”―――ちょっ!?」
「予想はしていましたが”やはり”ですか…………」
ベルフェゴールは勝負内容を口にした後僅かに隠していた布を取って豊満な胸を完全に顕わにし、ベルフェゴールの答えに表情を引き攣らせたリィンはベルフェゴールが胸を顕わにすると慌てて視線をそらし、メサイアは疲れた表情で呟いた。そしてベルフェゴールは指を鳴らした。するとリィンとベルフェゴールは転移魔術によって近くのベッドに転移し
「へ――――なっ!?」
「ふふっ、勝てば”魔神”である私に協力してもらえることができるし、負けてもスタイルが自慢の睡魔族の中でも極上の身体の私の身体を気絶するまで味わえて、私は貴方の精気をたくさんもらえるからお互いにメリットがある”勝負”でしょう?」
「い、いやいやいや…………っ!?睡魔族の貴女はそんな軽い気持ちでそういう事をすることに抵抗がないかもしれないけど、人間の俺にとっては色々と問題がある勝負内容だ!それに俺にはメサイアも含めて既に4人も将来を共にする事を決めた女性達がいるんだから、メサイア達を裏切るような事はできないって!」
妖艶な笑みを浮かべて迫って来るベルフェゴールにリィンは必死の様子で反論した。

「あら、てっきりその娘と合わせて3人の女の子を落としていると思っていたけど、まさかまだいたなんてね。なのにそんな初心な反応…………ふふっ、ますます気に入ったわ♪―――という訳で少しの間、この子を借りるわよ♪」
「…………例えリィン様が”勝負”に負けても、本当にリィン様に何もしませんわよね?」
「さっきも言ったように私に対して明確な敵意を向けてこない限り、無差別に命を奪ったりするような事はしないわよ。勿論純粋にこの子の事を想っている貴女達からこの子を寝取るような趣味の悪い事もしないわよ。ちょっとだけ”火遊び”をするだけよ♪」
「…………わかりましたわ。エリス様を助けた件もありますから、その言葉、一応信じておきますわ。」
「ちょっ、メサイア!?」
ベルフェゴールの意志を知ってベルフェゴールが自分に対してしようとする行為を止めるどころか自分の身体の中に戻ったメサイアを見たリィンは慌て
「それじゃ、お邪魔虫もいなくなった事だし、お互いに気持ち良くなりましょうか♪」
ベルフェゴールはリィンを押し倒して、”性行為”を始めた。

1時間半後”全て”が終わり、お互いに脱いだ服を着終えると、そこには理性が戻った事でエリゼ達に対する罪悪感等で後悔しているリィンと満足げな様子のベルフェゴールがいた。

「ううっ、押し倒されたとはいえ、エリゼ達以外の女性としてしまうなんて…………!」
「あら、その割には途中からノリノリで私を犯して躊躇う事無く何度も中に出した上、最後の”お掃除”も貴方が私の意志を確認する事もなく無理矢理私にさせたじゃない♪」
「う”っ…………!い、いやでも、睡魔族の貴女の事だから行為の最中に俺に魅了魔術とかを使ったんじゃ…………?」
後悔していたリィンだったがベルフェゴールに図星を突かれると唸り声を上げた後ある事に気づいてベルフェゴールに指摘したが
「まあ、前戯の時に使ったから魅了魔術を使った事は否定しないけど、私が使ったのは興奮をちょっとだけ高めるやつだけよ?完全に意思を奪って自分が干からびるまで私を犯させる相当強力な魅了魔術も使えないこともないけど、セックスで昂っていたとはいえ、落ち着いた後に貴方はちゃんと自分の意志で私を犯した事を自覚しているじゃない♪」
「そ、それは…………」
ベルフェゴールに正論を突かれると答えを濁した。

「うふふ、それにしてもセックスでこの私を満足させても続けられるくらいの絶倫だなんて驚いちゃったわ♪既にご主人様が落とした4人の女の子達との経験もあるでしょうけど、一番の要因はあの”魔人”みたいな姿になる何らかの”異能”のお陰かしら♪」
「ぐっ…………(ひ、否定できない…………)―――って、”ご主人様”?それって、どういう意味だ?」
ベルフェゴールの指摘に唸り声を上げたリィンだったがベルフェゴールが自分を”主”呼ばわりした事を不思議に思ってベルフェゴールに訊ねた。
「そのままの意味よ?あのメサイアって女の子同様、さっきの性魔術(セックス)で私をご主人様の”使い魔”として契約を結んだから、今日から私はご主人様の”使い魔”よ♪もしくは”性奴隷”とでも言うべきかしら♪」
「せ、”性奴隷”だなんて人聞きの悪い事を言わないでくれ!―――じゃなくて!何でベルフェゴールは俺の”使い魔”になる事を承諾したんだ!?”魔神”のような凄まじい存在がどうして人間の俺に…………」
「うふふ、私を満足させたあの時はただご主人様の頼みを聞いて、それを叶えればお別れするつもりだったのだけど、私を満足させても続けたご主人様の絶倫さに驚くと共に直感で感じたのよ―――ご主人様は私にとって最高のセックスパートナーだってね♪」
「…………そ、そんな理由の為だけに俺の使い魔になったのか…………!?」
ベルフェゴールが自分の使い魔になった理由を知って大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせたリィンは我に返ると疲れた表情でベルフェゴールに訊ねた。

「あら、睡魔族の女王種でそれも”魔神”の私自身が”最高のセックスパートナー”だと思えるような人物なんて今まで出会えたことがなかったのだから、私にとってご主人様は気が遠くなるような年月を生きてきて初めて出会ったとても貴重な人物よ?」
「え、えっと………(誉めてはいるんだろうけど、喜んでいいのかわからない…………)」
ベルフェゴールの指摘に対してリィンはどう答えればいいかわからない為答えを濁した。するとその時ベルフェゴールが展開した結界が突如解かれた。
「あら、私の結界を解くなんて一体どんな術者かしら?」
「へ。」
結界が解かれた事にベルフェゴールが目を丸くし、リィンが呆けていると扉は勢いよく開けられ、扉からはリフィアの親衛隊長と副長を務める伯爵夫妻――――――ゼルギウス・カドール、シグルーン・カドール、そしてエリゼを先頭に部屋に突入し、ゼルギウス達に続くようにエリス、セレーネ、リフィア、ペテレーネも部屋に突入した!

「お兄様、ご無事ですか!?」
「部屋が強力な結界に包まれていた為、姉様がペテレーネ様を呼んで何とか解いて頂けました!」
「それに援軍も連れてきました!ゼルギウス様とシグルーン様もいらっしゃってくれましたから、もう大丈夫…………で……す……?」
部屋に突入したセレーネとエリスは声を上げ、二人に続くように声を上げたエリゼはリィンとリィンの傍にいるベルフェゴールを見つけると固まり
「あわわわわわわ…………っ!?エリゼ達どころかリフィア殿下、それにゼルギウス将軍閣下やシグルーン副将軍閣下、ペテレーネ神官長までどうしてここに…………!?」
「へえ…………そこの混沌の女神(アーライナ)の神官、”神格者”ね?なるほど、私の結界を解いたのは貴女だったのね。」
エリゼ達どころかリフィア達まで登場した事にリィンは表情を青褪めさせて慌て、ベルフェゴールは興味ありげな表情でペテレーネに視線を向けた。

「…………先程の強力な結界といい、私を一目見て”神格者”だとわかる上、貴女から感じるこの膨大な魔力や異質な気配…………まさか貴女は”はぐれ魔神”なのですか?」
「大正解♪睡魔族の女王種――――リリエール族にして”七大罪”の”怠惰”を司る魔神ベルフェゴールよ。よろしくね♪」
警戒の表情を浮かべるペテレーネの問いかけに対してベルフェゴールはウインクをして答え
「やはり”魔神”か…………!」
「まさか帝城内―――それも、皇族の方々の寝室がある手前の階層に位置する客室への侵入を許すとは。城の警備体制を見直す必要がありそうですわね…………」
「”魔神ベルフェゴール”と言ったか…………何の為に余達の城に侵入し、余の下僕に接触した!?」
ベルフェゴールが名乗るとゼルギウスとシグルーンはそれぞれの得物である大剣と細剣を構えて警戒の表情でベルフェゴールを睨み、リフィアは聖杖を構えてベルフェゴールに問いかけた。

「や~ね、みんな揃ってカリカリして。私はご主人様に用があったてこの城に忍び込んだだけだから、別にこの城にいる人達をどうこうするつもりは毛頭ないわよ。」
「え…………ご、”ご主人様”ってもしかして…………」
「……………………」
ベルフェゴールの答えを聞いたペテレーネは呆けた声を出してリィンに視線を向け、ペテレーネに続くようにその場にいる全員もリィンに視線を向け、視線を向けられたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「そういう事♪今日から私はあのメサイアって娘みたいにご主人様の使い魔の一人になったからよろしくね♪」
そしてベルフェゴールが口にした驚愕の事実にその場は凍り付いた!

「という訳でご主人様、後は説明お願いね~。」
「ちょっ、ベルフェゴール!?戻るならもっと詳しい説明をしてから戻ってくれ…………!」
その場にいる全員が我に返る前にベルフェゴールはリィンの反論を無視してメサイアのようにリィンの魔力と同調してリィンの身体の中に入り
「…………リィン・シュバルツァー。一体どういう事なのか、詳しく説明してもらおうか?」
「はい…………」
ベルフェゴールがリィンの身体の中に戻ると大剣を鞘に収めたゼルギウスがリィンに近づいて真剣な表情でリィンに事情の説明を要求し、要求されたリィンは疲れた表情で頷いた。そしてリィンはエリゼ達にベルフェゴールとの使い魔契約の経緯を”勝負内容”である”性魔術”の部分を誤魔化して説明した。

「ええっ!?という事は本当に先程の魔神――――ベルフェゴール様がリィンさんの”使い魔”になったのですか!?それも戦闘が発生することもなく…………」
「は、はい…………いや、ある意味”戦闘”と呼ぶべき”行為”を行った事は否定できませんが…………」
事情を聞き終えて驚いているペテレーネにリィンは疲れた表情で答え
「え…………?――――――!は、はわわわわわわ…………っ!?そ、その”行為”って、もしかして…………!」
「…………まあ、ベルフェゴール殿が睡魔族であることを考えると、確かにその”行為”はある意味”戦闘”と呼ぶべきかもしれませんわね…………というか、睡魔族の中でも王族種で、それも”魔神”の彼女相手にその”行為”で勝利して彼女を従えたリィンさんは驚嘆に値する存在かもしれませんわね…………」
「やれやれ…………とんだ人騒がせな話だ。」
「そのような細かい事は気にするな!―――それよりもよくぞ”魔神”を従えた!余もお主のような下僕をもって誇らしいぞ!」
リィンの話を聞いてリィンとベルフェゴールが性魔術をした事をすぐに察したペテレーネは顔を赤らめて慌て、シグルーンは苦笑し、ゼルギウスは呆れた表情で溜息を吐き、リフィアは自慢げに胸を張ってリィンを称賛し
「殿下直々よりお褒めの言葉を頂き、恐縮です…………」
称賛されたリィンは気まずそうな表情で答えた。

「―――リフィア殿下、今回の騒ぎに関しての陛下達への報告や警戒態勢を解く必要がありますので、後の事は当事者達同士に話し合ってもらいましょう。」
「ぬ?――――――!!そ、そそそそ、そうじゃな…………!という事でリィンよ、此度の騒ぎ、お主に非はない事は理解しているから罰するつもりはないから安心してよいぞ!行くぞ、ゼルギウス、シグルーン!」
シグルーンに指摘されたリフィアは一瞬何の事かわからなかったがそれぞれ顔を俯かせて膨大な威圧を纏い始めているエリゼとエリスに気づくと血相を変え、慌てながらリィンに今後についての事を伝えてシグルーンとゼルギウスに指示をした後部屋から退出し
「御意。…………殿下の寛大な御心に感謝し、その恩をエレボニア帝国征伐による活躍で返す事を期待しているぞ、リィン・シュバルツァー。」
「え、えっと………色々と頑張って下さいね、リィンさん…………」
リフィアの言葉に会釈して答えたゼルギウスはリィンに一言伝えた後シグルーンと共にリフィアの後を追い、ペテレーネは気まずそうな表情でエリゼ達に視線を向けた後リィンに声をかけて部屋から退出した。

「「に・い・さ・ま~~~~~~~!?」」
「お兄様…………突然の事だった為ベルフェゴールさんと”そういう事”をした事は仕方なかったかもしれませんが、せめてわたくし達が部屋に戻ってくるまで時間を稼いでいて欲しかったですわ…………」
「すいません…………」
そしてその場がリィンとエリゼ達だけになるとエリゼとエリスはそれぞれ膨大な威圧を纏ってリィンに微笑み、セレーネは疲れた表情でリィンに指摘し、リィンは言い訳をすることもなくまず謝罪の言葉を口にした。

こうしてリィンは新たなる心強くて頼もしき仲間を手に入れた――――!
 

 

第4話

クロスベル動乱――――IBCの創始者の家系にして世界一の資産家であり、そして遥か昔から自らの手で失われた”至宝”を造りだす事を目論んでいた錬金術師の一家によって起こされた動乱。

動乱の中心地であったクロスベル自治州で活動するロイド達”特務支援課”もクロスベル動乱に巻き込まれ、一度は仲間達全員が離れ離れになり、自分達にとって大切な存在―――”零の御子”キーアもクロイス家側につく事になってしまったが、ロイド達は多くの協力者達の手を借りてクロイス家によって支配されたクロスベルを解放し、そしてクロスベル解放後に突如現れた謎の大樹―――”碧の大樹”に突入し、大樹内に待ち構えていた強敵達を退け、キーアを取り戻した。

キーア奪還後クロスベルに帰還したロイド達はクロスベルでの役目を終えてアルテリア法国に帰還する事になったワジや山林地帯に戻るツァイトと別れた後、ヴァイス達”六銃士”によって建国された”クロスベル帝国”の帝都となったクロスベルにてかつてのように”特務支援課”としての活動をしつつ、クロスベルの復興にも協力していた。

そんなある日、ロイド達は”特務支援課”の課長であるセルゲイとルファディエルからある知らせについての説明を受けていた。


1月9日、AM9:55―――

~クロスベル帝国・帝都クロスベル・特務支援課~

「”特務支援課”の”追加人員”ですか?」
「ああ…………知っての通り、ワジが”特務支援課”から抜けたからな。その抜けた穴を補強する為に、人員が新たに1名追加される事になった。」
「ちなみに追加される人員は警察学校出身で、まだ卒業の単位を取れていない学生よ。」
「ええっ!?」
「おいおい…………新人どころか警察学校を卒業もしていない雛鳥が何でウチに配属される事になったんっスか?」
ロイドの疑問に答えたセルゲイとルファディエルの説明を聞いたエリィは驚き、ランディは疲れた表情で呟いた後二人に自身の疑問を訊ねた。

「ま、ぶっちゃけて言ってしまえば人材不足を補う為だ。」
「貴方達も知っての通り、”クロスベル帝国”の件で警察、警備隊共に人手が足りない状況よ。そしてその足りない人手を少しでも補う為に警察、警備隊学校で履修中の一部の生徒達も臨時の追加人員として様々な部署に配属される事になったのよ。」
「…………なるほど。確かに今のクロスベルは”猫の手も借りたい”状況ですから、警察や警備隊学校で学んでいる生徒達の手も借りる事にしたのですか。」
「ほえ?猫ならコッペがいるよ~?」
「みゃおん?」
「アハハ…………ルファディエルが言っているのはそういう意味じゃないよ。」
セルゲイとルファディエルの説明を聞いたティオは静かな表情で呟き、キーアは首を傾げて自分の近くで丸まって休んでいたコッペを抱き上げ、キーアの言葉にロイド達が冷や汗をかいて脱力している中未来のキーアは苦笑しながら指摘した。

「その…………課長。追加人員の件も、やはりエレボニア帝国との戦争も関係しているのですか?実際クロスベル帝国軍はカルバード共和国との戦争が終わっても市民達からも”義勇兵”という形で臨時の兵士達を募集し続けていますし…………」
「まあ…………な。クロスベル政府からの情報によると、内戦が終結したエレボニア帝国はクロスベル侵攻に向けて大急ぎで侵攻軍を編成していて、クロスベル侵攻も数日以内という見立てだ。」
「まだ勉強中の警察や警備隊の”雛鳥”でも、専門の知識を学んでいない素人を使うよりはよほど効率はいいって考えで、まだ”雛鳥”の連中の配置も決めたんだろうな、あのリア充皇帝共は…………」
「そうね…………」
複雑そうな表情をしたノエルの質問に答えたセルゲイの説明を聞いてヴァイス達の考えを推測したランディの推測にエリィは複雑そうな表情で頷いた。

「それにしてもエレボニア帝国は内戦が終結したばかりなのに、クロスベルに侵攻しようとするなんて、何を考えているんだろうね~?普通に考えたらまずは内戦で疲弊した自国の立て直しを最優先すべきだと思うのに。ましてや”神機”も破壊した兵器をたくさん保有している今のクロスベルに戦争を仕掛けるなんて、ホント何考えているんだろうね~。」
「エレボニア帝国にはメンフィル軍の諜報関係者達の暗躍によってカルバード共和国に潜入しているエレボニア帝国の諜報関係者が一人残らず暗殺された事で、カルバード共和国の滅亡が未だ伝わっていない為”今の”クロスベルの戦力を以前のクロスベルと同じである事を誤解している事と…………恐らく”宗主国”に逆らったクロスベルを占領する事で、内戦で被害を受けたエレボニアの民達の政府に対する不満を解消する為や他国からクロスベルの件で介入される前に早期にクロスベルを占領しようと考えているのでしょうね。」
「後は資源、経済面共に豊富なクロスベルを占領する事で内戦で疲弊した自国の早期の立て直しを考えているかもしれませんね。」
「恐らく二人の推測はどれも当たっているでしょうね…………」
シャマーラの疑問に対して答えたエリナとセティの推測を聞いたエリィは疲れた表情で同意し
「…………それで追加される事になった人員はいつこちらに?」
ロイドも複雑そうな表情で黙り込んだ後気を取り直して訊ねた。
「もうそろそろ来るは『おはようございます!クロスベル警察学校よりこちらの追加人員として派遣された者です!』…………どうやらちょうど来たみたいね。」
「あら?今の声は確か…………」
ロイドの疑問にルファディエルが答えかけたその時、玄関から少女の声が聞こえ、声を聞いたエリィは自分達にとって聞き覚えのある声である事に気づき目を丸くした。そしてロイド達が声が聞こえた玄関に視線を向けるとそこにはピンク髪の少女がいた。

「あら、貴女は…………」
「ユウナじゃないか…………!まさか君が課長たちの話にあった”追加人員”なのか?」
「は、はい…………っ!まだ勉強中で未熟の身ですが、クロスベル警察学校からの指示によって臨時的に”特務支援課”に配置される事になったユウナ・クロフォードです!警察学校も卒業できていないあたしがワジ先輩が抜けた穴を補うなんて分不相応ですが、全身全霊を持って職務に就かせて頂きます!」
仲間達と共に自分に近づいてきて声をかけたセティとロイドに少女――――ユウナ・クロフォードは緊張しつつも、嬉しさを隠せない様子で答えた。
「ハハ、堅くなりすぎだぜ、ユウ坊。ここは他の部署と違って緩いから、もっと肩の力を抜いていいぜ?」
「ランディさんは肩の力を抜き過ぎだと思いますが。」
ユウナの様子にランディは苦笑しながら指摘し、ティオはジト目でランディに指摘した。

「ふふっ、今思い出したけどそう言えばユウナが”特務支援課”に来たのは今頃だったよね。」
「むー。未来のキーアばかり、キーア達の知らない事ばかり知っていてズルい~。」
「それは仕方ないかと…………」
「むしろ、私達は彼女が知る知識を知っていはいけない立場ですし…………」
微笑みながら答えた未来のキーアに対して頬を膨らませて指摘したキーアの言葉にロイド達が冷や汗をかいている中、セティとエリナは苦笑しながら指摘した。
「え、えっと………そちらのキーアちゃんに物凄く似ていて凄い美人でスタイル抜群の癒しの女神(イーリュン教)のシスターさんはもしかして、キーアちゃんのお姉さんなんでしょうか…………?」
一方唯一未来のキーアを知らないユウナは不思議そうな表情で未来のキーアの事を訊ね
「ハハ…………”彼女”についてはこの後すぐに説明するよ。まあ、それはともかく…………―――ようこそ、”特務支援課”へ。これからよろしくな、ユウナ。」
「あ…………はい…………っ!」
そしてロイドの歓迎の言葉に一瞬呆けたユウナは嬉しそうな表情で頷いた。その後ユウナを加えたロイド達は再び席についてユウナに未来のキーアの事を紹介した。

「じゅ、”10年後のキーアちゃん”…………!?キーアちゃんに似ているからお姉さんかと思っていたけど、まさか”本人”だなんて…………それにしてもキーアちゃんは今でも凄く可愛いのに、10年経ったらこんなにも素敵な女性になるんだ…………!」
事情を聞き終えたユウナは驚きの表情で未来のキーアを見つめて未来のキーアを誉め
「エヘヘ、10年後のユウナもとっても綺麗でおっぱいもすっごく大きいよ~。あ、でもユウナの場合確か2年後には既におっぱいが今とは比べ物にならないくらい凄く大きくなったはずだよ~?」
「ふえ~…………ユウナもキーアみたいにおっぱいが大きくなるんだ~。」
「10年後の方のキーア、何気に未来のネタバレをしないでください。」
ユウナの賛辞に未来のキーアは照れながら答え、未来のキーアの発言にロイド達が冷や汗をかいている中キーアは無邪気な様子でユウナを見つめ、ティオはジト目で未来のキーアに指摘した。

「コホン。ユウナ、臨時派遣の事情はどのくらい聞いているのかしら?」
「えっと………”クロスベル帝国”建国の件で警察、警備隊共に今までとは比べ物にならないくらい忙しくなった事とその…………エレボニア帝国との戦争に向けて、人手不足なクロスベル警察や警備隊にあたしみたいなまだ警察や警備隊の学校を卒業していない学生達も臨時の人材として派遣される事になった事までは聞いています。」
ルファディエルの問いかけにユウナは自分が”特務支援課”に派遣された事情を思い出しながら答え、戦争の件を思い出すと複雑そうな表情をした。
「そう…………既に全て聞かされているのね。」
「ま、そういう訳だ。警備隊の連中はともかく、警察である俺達の方は”戦場”に”兵士”として送り込んでエレボニア帝国軍と戦わすような予定は一切ない事はヴァイスハイト皇帝からも言質を取っているから、その点は安心していいぞ。」
「あ、はい。その件も校長先生から教えられています。…………その、局長―――いえ、ヴァイスハイト皇帝陛下がギュランドロス皇帝陛下と一緒に宣言した”クロスベル帝国”を宣言通り、クロスベルを独立させる所か”帝国”にしてカルバード共和国に勝って共和国の領土をたくさん手に入れたのに、どうしてエレボニア帝国とまで戦争をするのですか…………?確かに宣言の時に二大国と戦争するみたいな事は言っていましたけど、共和国を滅ぼしたんですからもう十分だと思うんですが…………」
セルゲイの言葉に頷いたユウナは自身の疑問をセルゲイ達に訊ねた。

「ヴァイスハイト陛下達の野心がその程度で終わらない事もそうだけど、クロスベルにその気がなくても元々エレボニア帝国がクロスベルを占領するつもりでいるから、どの道戦争は避けられないのよ。IBCによる”資産凍結”の件に対する”報復”もそうでしょうけど、内戦の影響で混乱していた自国の経済を回復する為にもエレボニア帝国にとってクロスベルの占領は既に”確定事項”なのよ。」
「あ…………」
エリィの話を聞いたユウナは複雑そうな表情を浮かべた。
「それともう一つ。――――――クロスベル帝国と連合を組んでいるメンフィル帝国も、エレボニア帝国に戦争を仕掛けなければならない事情ができたから、建国したばかりのクロスベル帝国と現在唯一国交があるメンフィル帝国との関係をより強固な関係にする為にもエレボニア帝国との戦争は避けられないわ。」
「え…………ルファ姉、”メンフィル帝国がエレボニア帝国に戦争を仕掛けなければならない事情ができた”って一体どういうことだ?」
「もしかして”ラギール商会”のチキさんから何か聞いたんですか?」
「ええ。発端は内戦での出来事なのだけど――――」
ロイドとノエルの疑問に頷いたルファディエルはロイド達にメンフィル帝国がエレボニア帝国に戦争を仕掛ける事情を説明した。

「エレボニア帝国の内戦の最中にそのような事が…………」
「しかもその”ユミル”って所を一度目に襲撃した人達は”猟兵”だなんて…………その”猟兵”を雇った人はエレボニアの大貴族の人なのにどうして他国の領土を襲撃したら、国際問題に発展する事を考えなかったのでしょうか?」
「ま、内戦を引き起こして自国の皇女を拉致する事を考えたバカな大貴族なんだから、他国との関係とか最初から気にしなかったか…………もしくはいざとなったら、”猟兵”に責任を全て押し付けるつもりだったかもな。」
「ランディ…………」
事情を聞き終えたエリィは驚き、ユウナの疑問に目を伏せて答えたランディをロイドは複雑そうな表情で見つめ
「クロスベルはともかく、メンフィル帝国を本気で怒らせたエレボニア帝国はご愁傷様としかいいようがないですね…………メンフィル帝国の場合、リウイ陛下達みたいに生身で兵器以上の威力をたたき出す奥義や魔術を扱える方達がいますから、どんな最新兵器を使っても絶対に勝てないでしょうし。」
「そうですね…………特にエヴリーヌさんのような”魔神”が”戦場”に出れば、エレボニア帝国軍は蹂躙されて”虐殺”されるだけでしょうね。」
「「………………………………」」
ティオとセティの推測を聞いた二人のキーアはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「メンフィル帝国で気になったけど、エリゼさんも戦争に参加するのかな~?」
「…………クロスベル解放の際に自らエリゼさんを操縦者に選んだ”神機”があれば、例え”零の至宝”による加護がなくても”戦場”を圧倒できるでしょうね。――――と、すみません、キーア。」
「ううん、キーアは別に気にしていないから大丈夫だよー。」
シャマーラの疑問に答えたエリナはすぐにある事に気づいてキーアに謝罪し、謝罪されたキーアは暢気な様子で答えた。
「へ…………”神機”って、クロスベル独立国の頃にディーター元大統領が結社とキーアちゃんの力を借りてクロスベルの”力”の象徴としていた人形兵器の事ですよね?あれって人が乗って操縦できたんですか!?」
「ああ…………実際ディーターさんも”神機”に乗って抵抗してきたんだが…………ディーターさんに勝利した後、何故か”神機”は突然自我が芽生えて自らを操縦する人物をクロスベル解放時に俺達に協力してくれたリフィア殿下の専属侍女長であるエリゼさんを選んだんだ。」
「ちなみにエリゼさんはアリオスさんと同じ”八葉一刀流”の剣技を修めていて、それも”皆伝”―――”剣聖”の一人なのよ?」
「そういや、エリゼちゃんは15歳って聞いたからユウ坊と同い年だな。」
「えええええええええええっ!?あ、あたしと同い年の女の子がそんな色々と凄い存在だなんて…………よーし、あたしもその人みたいになれるように、もっと頑張らないと…………!」
ロイド達の説明でエリゼの事を知ったユウナは驚いた後、まだ見ぬエリゼを目標にし、それを聞いたロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ちょ、ちょっと目標が高すぎるような気がするのですが…………」
「…………まあ、エステルさん達がクロスベルに来てからエステルさん達を”ライバル”認定した当時のロイドさんよりはマシな気がしますが。」
「うっ…………」
我に返ったノエルは苦笑し、静かな表情で指摘したティオの指摘にロイドは唸り声を上げた。
「そういえば…………確かエレボニア帝国がメンフィル帝国に対して作ってしまった戦争勃発の原因である”ユミル襲撃”が起こった地である”温泉郷ユミル”はエリゼさんの故郷だったわよね…………?」
「あ…………っ!」
「ええ。チキの話だと不幸中の幸いにも2度に渡る襲撃でどちらも死者は出なかったけど、一度目の襲撃では領主が猟兵によって重傷を負わされた挙句エリゼの双子の妹―――エリス・シュバルツァーはアルフィン皇女と共に貴族連合軍の協力者に拉致されて、救出される内戦の終盤まで皇帝を含めたエレボニア皇家やレーグニッツ知事と共に監禁されて、二度目の襲撃ではエリゼの兄のリィン・シュバルツァーが貴族連合軍の”主宰”であるカイエン公爵による脅迫――――貴族連合軍は2度とユミルに手を出さず、その場を退く事を条件に彼自身に貴族連合軍の元に向かうように誘導させられたそうよ。」
「おいおい…………どれも戦争を仕掛ける口実のオンパレードじゃねぇか…………つーか、その貴族連合軍とやらは何で2度も戦略的価値もないと思われる山郷のユミルって所を襲撃したんだ?」
「1度目の襲撃はともかく、2度目の襲撃の目的は一体何だったのか意味がわからないですよね…………?話を聞いた感じ、そのエリゼさんって人のお兄さんが目当てだったようですけど…………」
不安そうな表情で呟いたエリィの言葉を聞いたロイドは声を上げ、ルファディエルは頷いた後自分の知る情報をロイド達に伝え、それを知ったランディは呆れ、ユウナは不思議そうな表情で疑問を口にした。
「…………その、リィン・シュバルツァーがまた”特別な存在”のようでね―――」
そしてルファディエルはリィンが”騎神”と呼ばれるエレボニア帝国に伝わる”巨いなる騎士”の起動者(ライザー)の一人で、またオリヴァルト皇子が発足したトールズ士官学院特科クラス”Ⅶ組”のリーダー的存在であったことを説明した。

「エレボニア帝国に伝わる”巨いなる騎士”ですか………私もエレボニア帝国に留学していた頃、そのような伝承が書かれている書物を読んだ事もありましたけど、まさか実在していたなんて…………」
「その”騎神”って一体どんな存在なんだろうね~?」
「”神機”のように操縦する事ができる上、自我まであるとの事ですから、ひょっとしたら結社の”神機”はその”騎神”とやらを参考にして作られたかもしれませんね。」
「ええ…………それを考えるとひょっとしたらレンさんが結社から奪い取った”パテル=マテル”の誕生も関係しているかもしれませんね。」
”騎神”の存在を知ったエリィやシャマーラ、エリナとティオはそれぞれ考え込み
「しかもそのリィンって人はあのオリヴァルト皇子が発足した士官学院の特別クラスの生徒達のリーダー的存在か…………もしかしたら、2度目の襲撃の目的はその”騎神”という戦力を手に入れる事と”Ⅶ組”のリーダー的存在である彼を”Ⅶ組”から離す事で、自分達に反抗する勢力の一つである”Ⅶ組”の動きを封じ込める事だったかもしれないな。まあ、貴族連合軍がその”Ⅶ組”という存在をそこまで脅威に思っていたかどうかに疑問は残るが…………」
「ま、少なくとも貴族連合軍にとっては無視できない存在だったんだろうな。実際、内戦終結の鍵はその”Ⅶ組”だったらしいしな。そういや未来の方のキー坊はそのリィンって野郎の事を知っているのか?」
ロイドの推測に同意したランディは未来のキーアにリィンの事を訊ねた。

「うん。リィンは内戦とこれから起こる戦争を経験して”剣聖”になるんだ。あ、それとリィンはロイドみたいにたくさんの女の人達と結婚していて、その相手の中にはエリゼやエリゼの妹のエリスもいるよ~?」
未来のキーアはリィンの事について答え、何気に未来を口にしたキーアの発言にロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「またさり気なく未来のネタバレをしていますよ、未来のキーア…………というか兄妹揃って”剣聖”とか、アネラスさんが知ったら驚くでしょうね。」
「つーか、ロイドみたいにハーレムを築いている上、そのハーレムの中にはエリゼちゃんとエリゼちゃんも含めた兄貴族―――いや、シスコン兄王だと~~!?畜生、要するに女関係はロイドやリア充皇帝達みたいなリア充野郎かよ!?」
「いや、そこで俺まで例に出すとか意味わかんないだが…………そ、それよりもキーア。そのリィンって人がこれから起こる戦争―――メンフィル・クロスベル連合とエレボニアとの戦争に参加するって事はまさかそのリィンって人はエレボニアとの戦争に参加するのか?」
我に返ったティオはジト目で指摘した後自分が知る”八葉一刀流”の人物の一人を思い浮かべ、ランディはリィンの女性関係に嫉妬して悔しそうな表情で声を上げ、ランディに疲れた表情で指摘したロイドはある事に気づいて未来のキーアに訊ねた。
「…………うん。キーアはその場面を見た事がないけど、リィンはこれから起こる戦争でリィンにとっての大切な仲間―――”Ⅶ組”の人達とも戦った事があったそうだよ。」
「ええっ!?」
「…………そもそもそのリィンさんはどうしてその戦争に参加する事にしたのでしょうね?その戦争によってエレボニア帝国に所属している”Ⅶ組”の人達と戦う可能性がある事は目に見えていますのに…………」
複雑そうな表情で答えた未来のキーアの説明にセティは驚きの声を上げ、かつてロイド達と敵対した事もあるノエルは複雑そうな表情で呟いた。

「…………ま、アリオスのように昔の仲間とやり合う覚悟を持ってまで”戦争”に参加するんだからいろいろと”事情”があるって事だろ。話が色々と逸れちまったが、エレボニア帝国との戦争での特務支援課(ウチ)の役割は今まで通りでいいそうだが、”緊急支援要請”という形で戦争に関連する支援要請は出すそうだ。」
「”戦争に関連する支援要請”はどんな内容になるんでしょうね…………?」
「ま、普通に考えればクロスベルに潜入したエレボニアのスパイ狩りやクロスベルにいるエレボニア人が起こすかもしれないトラブル関連だろうな。」
「スパイの件はともかく、エレボニア人関連のトラブルはできれば起こって欲しくないわね…………彼らの大半は観光や商売の目的でクロスベルに訪れてくれているのでしょうし…………」
話を戻して今後の事に伝えたセルゲイの話を聞いてある事が気になったエリナの疑問にランディは静かな表情で答え、エリィは複雑そうな表情で呟いた。
「…………わかりました。確かにそういう事であれば、支援課として”緊急支援要請”を受ける事に異存はありません。ちなみに遊撃士協会も戦争中は俺達と同じような動きになるんでしょうか?」
「ええ、場合によっては遊撃士協会との合同作戦を行う事もありえるかもしれないとの事よ。」
静かな表情で頷いた後に訊ねたロイドの疑問にルファディエルが答えた。

「後でミシェルさんやエステルさん達とも情報を交換した方がよさそうですね。」
「ああ、特にエレボニアでは活動が制限されている遊撃士協会にとってはもしかしたら、メンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争勃発に関する情報を入手していないかもしれないし、メンフィル帝国の関係者で親しい人達が多いエステル達なら俺達も知らない戦争の件に関する情報を知っているかもしれないしな。――――――っと、配属されたばかりなのに不安を思わせるような話をしてすまないな、ユウナ。」
ティオの提案に頷いたロイドはユウナに視線を向けて謝罪し
「いえ、あたしの臨時派遣は戦争が関係している事だとわかっていますし、ようやく”自由”を手に入れたクロスベルを守りたい気持ちはロイド先輩達と同じですから、気にしないでください。それとその…………不謹慎ですが嬉しくも思っているんです。戦争のお陰で憧れのあの”特務支援課”に期間限定とはいえあたしまで配置されてロイド先輩達と一緒に働けるんですから…………!」
謝罪されたユウナは謙遜した様子で答えた後表情を輝かせながらロイド達を見回した。

「ハハ…………いつも言っているが、ユウナは俺達の事を持ち上げ過ぎだよ。」
「ま、最初からやる気満々なのははいい事だし、顔見知りの後輩だったらすぐに俺達も馴染めるだろうから、いいんじゃないか?」
「…………ですね。もしかしたら、ヴァイスさんはその点も考えてユウナさんの配置を”特務支援課”にしたのかもしれませんね。」
「フフ、そうね。―――それよりも新しいメンバーも増えたことだし、支援要請を確認した後市内や市外を回りながら知り合いの人達に挨拶をしていかない?」
「賛成~!それとユウナの歓迎パーティーもしないとね!勿論メインの料理はダブルキーアちゃんお手製の鍋で!」
「シャマーラ…………未来のキーアはともかく、私達よりも年下のキーアに歓迎パーティーの料理を作らせる事に何とも思わないのですか…………」
「えへへ、キーアもみんなみたいに新しく来たユウナの為に何かしたいと思っていたから、シャマーラの提案はむしろ大歓迎だよ~♪」
「フフ、後で一緒にお買い物に行こうね♪」
エリィの提案に続くようにある事を提案したシャマーラにエリナが呆れた表情で指摘している中二人のキーアはそれぞれ無邪気な笑顔を浮かべた。

「わあ…………っ!噂のキーアちゃんの手料理―――それもお鍋はあたしも機会があれば食べたいと思っていたの!ありがとうね、キーアちゃん♪」
「えへへ………」
ユウナは嬉しそうな表情を浮かべて隣に座っているキーアを抱き締め、抱き締められたキーアは嬉しそうな表情を浮かべ
「ハハ…………―――さてと。まずは端末に来ている”支援要請”を確認するか。」
ユウナの様子を微笑ましそうに見守っていたロイドは仲間達に仕事の開始を告げた後新たなメンバーであるユウナを加えていつものように”特務支援課”としての活動を開始した――――
 
 

 
後書き

という訳でまずユウナがフライング登場&ロイド側にパーティーインですww閃3以降から登場するキャラ達も次々と登場させる予定ですが、唯一アッシュをどうしようか迷っています。下手したら全部が終わるまでずっと監禁されたままかも(ぇ)そして仲間になるとしても、アッシュが仲間になる勢力は味方の戦力が戦力過剰と言ってもいいほど充実しているリィン達、ロイド達、エステル達と違って、”暁の女神”のミカヤ側のように貧弱なⅦ組側だと思います(酷っ!)それとシルフェニアの18禁版にてこっちの物語のリィンとベルフェゴールのシーンを更新しましたので興味のある方はそちらもどうぞ。 

 

第5話

3日後、ルーファス・アルバレア率いる領邦軍と正規軍のエレボニア帝国軍が貴族連合軍の旗艦であった”パンダグリュエル”を中心とした飛行艦隊がクロスベル侵攻の為にクロスベルへと向かい、対するクロスベルは連合を組んだメンフィルと共に魔導兵器製の飛行戦艦――――”ヴァリアント”と”フォーミダブル”を二艦ずつとその周囲に”ルナ=ゼバル”を十数機ずつ滞空させた状態でエレボニアとクロスベルの国境門であるベルガード門の遥か高度でエレボニア帝国軍が侵攻してくるのを待ち構えていた。そしてメンフィル帝国軍に所属したリィン達も”ヴァリアント”の中で迎撃作戦が始まるまで準備をして、準備を終えた後ヴァリマールに会いに行った。


1月12日、同日AM10:50――――――


~メンフィル帝国軍・魔導戦艦”ヴァリアント”・格納庫~

「こうして実際に会って話すのは10日ぶりになるな、ヴァリマール。今まで心配をかけてしまってすまなかったな。」
「気ニスルナ。ソレヨリモメンフィルノ紋章ガ刻マレタソノ軍服ヲ身ニ纏ッテイルトイウ事ハ、”Ⅶ組”トノ決別ノ覚悟ヲ決メタノダナ?」
リィンに話しかけられたヴァリマールはメンフィル帝国軍の軍服を身に纏ったリィン達を見て、リィン達がどういう決断をしたのかをすぐに悟った。
「ああ…………悩んだ末、俺達の”目的”を果たす為にはメンフィル・クロスベル連合によるエレボニア帝国征伐に参加するのが、エレボニアの滅亡を防ぐ唯一の手段だから、俺達はエレボニア帝国と戦う事を決めた。…………今後戦争で活躍するためには内戦の時とは比べ物にならないくらいヴァリマールを頻繁に運用する事になると思う。」
「ソウカ。戦デ起動者(ライザー)デアルオ前ト共ニ剣ヲ振ルウ機会ガ頻繁ニアル事ハ、”騎神”デアル我ニトッテハ腕ガ鳴ル話ダ。」
「フフ、心強いお言葉ですわね。」
「…………改めて兄様の事、よろしくお願いします。」
ヴァリマールの言葉を聞いたセレーネは苦笑し、エリスはヴァリマールに会釈をした。

「それにしても…………話には聞いていたが、まさかエリゼが本当に俺と同じ起動者(ライザー)になっていたとはな…………」
「それもエレボニア帝国の機甲師団を壊滅に追いやった結社の”神機”ですものね…………」
「確かそちらの”神機”―――ヴァイスリッターさんは姉様が名付けられたのですよね?」
「ええ。”至宝”の加護は受けていませんから、さすがに当時程の戦闘力はありませんけど、それでもスペックは機甲兵よりも数段上ですし、障壁にグレネード、それに霊力の集束砲も搭載していますからヴァリマールさんを操縦する兄様の助けになると思います。」
リィン達はヴァリマールの隣に待機している”白の神機”ヴァイスリッターに視線を向け、エリスの問いかけに頷いたエリゼはリィンを見つめて答えた。
「ありがとう、エリゼ。ヴァイスリッターもよろしくな。」
「我ノ主タルエリゼガ、オ主ノ力ニナルト決メタ以上、我ハ主ノ意志ニ応エルダケダカラ、礼ハ不要ダ。」
「―――話には聞いていましたが、まさか”神機”に”騎神”のように自我がある所か、起動者(ライザー)まで存在した事には驚きましたわ。」
リィンの言葉にヴァイスリッターが答えるとリィン達にとって聞き覚えのある娘の声が聞こえ、声が聞こえた方向にリィン達が視線を向けるとデュバリィ、アイネス、エンネア―――結社の”鉄機隊”全員がリィン達に近づいてきた。

「あ、貴女方は…………」
「…………結社の”鉄機隊”の方々ですわね。」
デュバリィ達の登場にエリスは目を丸くし、セレーネは複雑そうな表情で呟いた。
「結社の前に”元”がつきますわよ、アルフヘイム。マスターが結社と決別して”英雄王”―――メンフィル帝国に所属する事を決めた以上、マスターに仕える事を至上としている私達もマスターの意志を組んでメンフィル帝国に所属し、メンフィル帝国からも正式に認められていますわ。」
「とはいっても、この間まで我々はメンフィル帝国にとっての”敵”である”結社”の所属であったのだから、一部の者達は我々の事をあまり歓迎していないがな。」
「まあ、”新参者”である私達が隠居の立場とは言え、”英雄王”と”聖皇妃”直属の独立護衛部隊なんていう親衛隊とは別の部隊として配属されたのだから、私達の事を面白く思っていない人達がいるのは仕方のない事だとわかっているから、早く新しい組織であるメンフィル帝国軍に馴染む為にも貴方達同様私達もこの戦争で活躍する事を決めたのよ。」
セレーネの指摘にデュバリィは静かな表情で答え、アイネスとエンネアはそれぞれ苦笑しながら自分達の現状を伝えた。

「…………貴女達が結社からメンフィル帝国軍に所属を変えた事も話に聞いている。”神速”――――いや、デュバリィさんとは内戦では色々あったが…………今は味方同士の関係になったのだから、改めてよろしく頼む。」
「別に私は貴方とよろしくするつもりはありませんが、私も鬼ではありませんから、”戦場”で窮地に陥っていたところに私がいれば、救援くらいはしてさしあげますわ。」
静かな表情で自分達を見つめた後に握手をする為に利き手を差し出したリィンに対してデュバリィは握手をせずにリィンから顔を背けて答えた。
「フフ、いくらかつて刃を交えた関係とはいえ、今は味方同士なのだから握手くらいしても罰は当たらないと思うぞ?」
「クスクス、きっと”灰色の騎士”が言った”色々”が関係しているのではないかしら♪」
「関係していませんから!勝手な憶測をしないでください!」
苦笑するアイネスの後にからかいの表情で指摘したエンネアの指摘にデュバリィは必死に否定し、その様子を見ていたリィン達は冷や汗をかいて脱力した。

「え、えっと………訊ねるのが遅くなりましたけど、お二人がデュバリィさん以外の残りの”鉄機隊”の方々でいいんですか?」
「うむ、名乗るのが遅れてしまって失礼したな。”鉄機隊”が隊士、”剛毅のアイネス”だ。」
「同じく”鉄機隊”が隊士、”魔弓のエンネア”よ。”守護の剣聖”とも実際に会うのはこれが初めてになるわね。」
「…………そうですね。私はセリカ様達と共に”月の僧院”側を担当していましたから、”星見の塔”にいた貴女方とは会う事もありませんでしたね。」
セレーネに訊ねられたアイネスとエンネアはそれぞれ軽い自己紹介をした後エンネアに視線を向けられたエリゼは静かな表情で答えた。

「そういえばエリゼはクロスベルをディーター・クロイス元大統領による独裁から解放する為に、ディーター・クロイス元大統領に抵抗する勢力に加勢したんだったな…………」
「はい。クロスベルを覆う結界の解除の為に”星見の塔”に向かったロイドさん達―――”特務支援課”の方々の話ではデュバリィさんを含めた”鉄機隊”の方々も”星見の塔”で阻んだとの事です。」
「そうだったのか…………あれ?そういえばオーロックス砦で戦った時は最初からやけに疲労している様子だったが…………」
「もしかしてその”特務支援課”という方々との戦いの直後だった為、疲労していらっしゃったのですか!?」
エリゼの話を聞いてある事に気づいたリィンとセレーネはそれぞれ驚きの表情でデュバリィを見つめ
「フ、フン!今頃気づくなんてまだまだ未熟な証拠ですわね!」
二人の推測にデュバリィは否定することなく鼻を鳴らしてリィン達に指摘し、デュバリィの態度にその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。

「コホン。…………それよりも、”灰色の騎士”。貴方までメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に加わった理由は人伝で聞いていますが…………貴方、本当に”それでよろしいんですの?”」
気を取り直したデュバリィは複雑そうな表情でリィンを見つめて問いかけた。
「?一体何の事を聞いているんだ?」
「とぼけないでください!”エレボニア帝国征伐”に参加すれば、貴方の仲間である”Ⅶ組”と刃を交える日もそうですが、彼らの関係者をその手にかけるかもしれない日が必ず来るとわかっていて、何故”エレボニア帝国征伐”に参加したのですか!?」
「デュバリィさん…………」
デュバリィが真剣な表情でリィンに問いかけている中、デュバリィのリィンに対する気遣いに気づいて驚いたセレーネは目を丸くした。
「そうだな…………貴女の言う通り”Ⅶ組”の関係者―――子爵閣下やシャロンさんはわからないが、エレボニア帝国軍に所属しているクレイグ将軍やナイトハルト教官、それに”Ⅶ組”の関係者ではないけどログナー侯爵やハイアームズ侯爵、そして今から行われるエレボニア帝国軍の迎撃戦でルーファスさんを”斬らなければならない事になるだろう。”そしてそれらの出来事によって、俺は”Ⅶ組”を含めた”トールズ士官学院の仲間達”の恨みを買う事になる。――――だけど、俺は”それら全てを承知の上でここにいる。”」
「…………っ!」
「「兄様…………」」
「既に覚悟は決まっている、という事か。」
「ひょっとしたら”灰色の騎士”の方がNo.Ⅱ―――”剣帝”よりも”修羅”の道を歩むことになるかもしれないわね…………」
決意の表情を浮かべたリィンの答えにデュバリィは息を呑み、エリゼとエリスは辛そうな表情でリィンを見つめ、アイネスとエンネアは重々しい様子を纏って呟いた。

「フ、フン!その覚悟がエレボニア帝国征伐が終わるまで続けば、一人前であることを認めてあげますわ!で・す・が、このエレボニア帝国征伐で最も活躍するのは私達”鉄機隊”です!それをお忘れなきよう!」
「ああ…………―――ありがとう、デュバリィさん。俺の事を気遣ってくれて。」
「な、な、な…………っ!?」
我に返ったデュバリィは鼻を鳴らして答えた後真剣な表情でリィンを指差して宣言し、デュバリィの宣言が遠回しに自分の事を気遣ってくれている事に気づいていたリィンは感謝の言葉を述べ、リィンの言葉を聞いたデュバリィは口をパクパクさせた。
「ハハ、面白い若者だ。」
「ふふ、デュバリィがよろめくのも無理ないかもしれないわね。」
「気遣ってもいませんし、よろめいでもいません!」
リィンの答えにアイネスが感心している中、エンネアはデュバリィをからかい、デュバリィは必死に反論し、その様子を見ていたリィン達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。

「ああもう…………何故私ばかりがこのような目に…………それはともかく。リィン・シュバルツァー。先ほどパンダグリュエルに潜入している諜報部隊による報告が回ってきたマスターの話によりますと、”黒兎(ブラックラビット)”もパンダグリュエルにいるようですわよ。」
「え…………その方は確か…………」
「…………ユミルでアルフィン皇女と共にエリスを拉致した”黒の工房”のエージェントね。」
「はい…………”オライオン”の名前といい、あの黒い傀儡といい、ミリアムさんと何らかの関係があるようですが…………」
デュバリィが口にした情報にエリスは目を丸くし、エリゼは厳しい表情を浮かべ、セレーネは不安そうな表情で呟いた。
「…………そうか。”煌魔城”の件を考えると彼女もオズボーン宰相達と繋がりがあるようだから、彼女も同行していてもおかしくはないな…………」
「マスターの話では”英雄王”達としては”黒兎(ブラックラビット)”に関してはルーファス・アルバレアを始めとした敵将達と違って”捕縛”が望ましいとの事ですわ。彼女がまだ幼い少女である事もそうですが、”黒の工房”についての情報を持っている可能性がある貴重な存在との事ですから。」
「そうなのか…………でも、どうしてそんな貴重な情報を俺達に?」
ある人物―――かつて内戦で何度か戦った事がある黒の工房のエージェントにしてミリアムとも何らかの関係がある少女―――アルティナ・オライオンを殺す必要がない事に安堵の溜息を吐いたリィンはデュバリィに自分達にアルティナの件を伝えた意図を訊ねた。

「貴方方は戦場での戦功を狙う私達にとって、一番の”好敵手”になりそうですから、教えただけですわ。勝負は公平に行うべきですので!―――それでは私達はこれで失礼しますわ。」
リィンの疑問に対して答えたデュバリィはその場から去りかけたが
「ふふ、あんな事を言っているけど、デュバリィはエレボニア帝国征伐に”灰色の騎士”まで参加する事になった原因は自分も関わった内戦が関係していたから、そのせめてもの”お詫び”としてまだメンフィルの上層部しか知らない最新の情報を伝えたのよ。」
「それとエリス・シュバルツァーの拉致監禁の件もそうだな。我ら”鉄機隊”の中でも最も”外道”な真似を嫌うデュバリィの性格を考えると、女学生の一人として平穏な生活を過ごしてきたエリス・シュバルツァーの拉致監禁を行った事には内心想うところはあっただろうしな。」
「エンネア!アイネス!何を吹き込んでいるのか知りませんが、これ以上”灰色の騎士”達に勝手な憶測を吹き込まないで、とっとと行きますわよ!」
エンネアとアイネスが残ってリィン達にある事を伝えている所に気づくと立ち止まった後振り返って声を上げて二人にその場から離れるように指示し
「はいはい。」
「―――それでは我らもこれで失礼する。お互いにとっての”初陣”…………お互い無事に生き残って戦功を稼げるといいな。」
デュバリィの指示を聞いた二人はデュバリィの後を追ってその場から去っていった。

「フフ、内戦の時から薄々感じてはいましたが、やはり他の”執行者”達と違って悪い方ではありませんでしたわね。」
「…………そうね。兄様を心配してくださっていた事や情報の件もそうだけど、わざわざ挨拶までしてくれたものね。」
「ああ…………それを考えると結社が崩壊したのは彼女たちにとっていい契機だったかもしれないな。」
デュバリィ達が去ると微笑みながら呟いたセレーネの意見にエリゼとリィンは頷いた。
「挨拶といえば…………兄様、私達と同じ小部隊に配属される他の二名の方達にまだ挨拶をしていないのですが…………」
「そうだな…………そういえばエリゼ。俺達と同じ小部隊に配置されることになった二人の事は連絡が来てから知ったが、二人とも俺にとっては顔馴染みなんだが、もしかしてエリゼがゼルギウス将軍閣下かシグルーン副長に進言とかをしたのか?」
「いえ、私は部隊の編制の際は私とエリス、そしてセレーネを兄様と同じ部隊にして頂く事しかリフィア達に頼んでいません。お二人の配置を決めたのはゼルギウス様とシグルーン様の判断かと。」
「お兄様はわたくし達と同じ小部隊に配置されるお二人をご存知なのですか?」
エリスの疑問に答えたリィンはエリゼにある事を訊ね、訊ねられたエリゼは静かな表情で答え、リィンとエリゼの会話を聞いてある事が気になったセレーネはリィンに訊ねた。
「ああ、実はその二人は――――」
「フフ、久しぶりですね、リィンさん。」
「おーおー、少し見ない内に綺麗所を侍らすようになるなんて、随分と成長したじゃねぇか。」
そしてセレーネの疑問にリィンが答えかけたその時、貴族の令嬢のような雰囲気を纏った黒髪の女性騎士と軽そうな雰囲気を纏った金髪の青年騎士がリィン達に近づいて声をかけた。

「ステラ、それにフォルデ先輩も。―――お久しぶりです。」
「え…………」
「兄様はそちらのお二人とお知り合いなのでしょうか?」
親しげに二人の騎士に声をかけたリィンの様子を見たセレーネは呆け、エリスは不思議そうな表情で訊ねた。
「ああ。女性騎士の方はステラ――――俺の訓練兵時代、”パートナー”として組んでいた訓練兵時代の俺の同期だ。」
「―――メンフィル帝国軍リフィア皇女親衛隊に所属しているステラ・ディアメルと申します。以後お見知りおき願います。」
リィンの紹介に続くように女性騎士―――ステラは軽く会釈をして自己紹介をした。

「お兄様の”パートナー”、ですか?それは一体どういう…………」
「…………メンフィル軍は訓練兵を指導する方法として、まずグループごとに指導する担当教官が存在して、更にそのグループ内で二人一組のペアを組ませて、ベアごとに既に一人前の軍人として務めているメンフィル帝国軍の人達が指導する事になっているのよ。」
「で、その二人を指導した”先輩”が俺―――フォルデ・ヴィントだ。よろしくな。」
セレーネの疑問にエリゼが答えると、フォルデは自己紹介をした。
「兄様の訓練兵時代の…………―――リィンの妹にしてエリゼの双子の妹のエリス・シュバルツァーと申します。この(たび)未熟の身ではありますが”義勇兵”という形で、兄様と共にエレボニア帝国征伐に参加する事になりましたので、もし私に至らない点があればその時はご指摘して頂けると幸いです。」
「わたくしはお兄様―――リィン・シュバルツァーの”パートナードラゴン”のセレーネ・L・アルフヘイムと申します。わたくしもお兄様を支えるために”義勇兵”の一人として今回の戦争に参加する事になりましたので、エリスお姉さま共々よろしくお願いしますわ。」
二人の事を知ったエリスとセレーネもそれぞれ自己紹介をした。

「おう、よろしくな。ま、俺は細かい事にいちいち口出しするような堅苦しい軍人じゃないし、ステラはリィン同様クソ真面目だがキツイ性格って訳でもないから、安心していつも通りのかる~い雰囲気でいこうぜ。」
「”戦場”に軽い気持ちで挑むのはさすがに問題はあるかと思いますが………訓練兵時代にお世話になったリィンさんの”身内”であるお二人とは、エリゼさんのように親しい仲になれることができればいいと思っていますので、もし何かわからない事があれば遠慮なく訊ねてください。」
「は、はい。あの…………ステラさん、”ディアメル”と名乗っていらっしゃっていましたが、もしかしてステラさんはエレボニア帝国貴族の…………?」
フォルデと共に親しげに話しかけたステラの言葉に頷いたエリスは自身の疑問を遠慮気味にステラに訊ねた。
「ふふっ、やはり気づかれていましたか。エリスさんの仰った通り、私はかつてエレボニア帝国貴族―――”ディアメル伯爵家”の一員でしたが、”ディアメル伯爵家”の一員であり続ける事が嫌になってメンフィル帝国に亡命、そしてメンフィル帝国軍に入隊したのです。」
「ええっ!?それじゃあステラさんはエレボニア帝国の貴族の方だったのですか…………」
「ちなみにステラの実家―――”ディアメル伯爵家”は”四大名門”に次ぐエレボニア帝国の名門貴族の一角なんだぜ~?」
ステラの話を聞いて驚いているセレーネにフォルデはからかいの表情でステラの説明を補足した。

「フフ、それを言ったらフォルデ先輩もエレボニア帝国では”武”の名門貴族として有名な貴族の家系の出身ではありませんか。」
「俺の場合は遠い先祖がそうだっただけで、昔から”平民”だし、”本家”の連中とも特に交流とかはないぜ?」
「え…………フォルデさんがエレボニアでは”武”の名門貴族として有名な貴族の家系、ですか?」
「…………フォルデ先輩とフォルデ先輩の弟で俺と同期のメンフィル帝国軍に所属している軍人―――フランツの先祖は”ヴァンダール家”なんだ。」
ステラの指摘に反論したフォルデの話が気になったエリスの疑問にリィンは静かな表情で答え
「え…………」
「ええっ!?それじゃあ、フォルデさんがアルノール皇家の守護役である”アルノールの懐刀”と呼ばれている”ヴァンダール子爵家”と縁戚関係にあたる方なんですか…………!?」
リィンの説明を聞いたエリスは呆け、セレーネは驚いた。

「遠い先祖がそうだっただけで、俺やフランツは”ヴァンダール”の連中とは会った事もないぜ?ま、そんな事よりもリィン。エレボニアでは色々と大変だったらしいな。」
「いえ…………セレーネも含めて多くの大切な人達との貴重な出会いができましたから、オリヴァルト殿下の頼みを承諾したリウイ陛下の指示によってトールズ士官学院に留学した事は後悔していません。」
「お兄様…………」
フォルデの気遣いに答えたリィンの様子をセレーネは静かな表情で見つめ
「シグルーン副長から説明がありましたが、そちらの灰色の機体がエレボニアの伝承で出てくる”巨いなる騎士”なのですか?」
「ああ…………―――紹介が遅れてすまない。彼はヴァリマール。トールズ士官学院の旧校舎の地下の奥深くで眠っていたエレボニアの伝承の”巨いなる騎士”―――”灰の騎神”だ。ヴァリマール、二人は俺達と同じ小部隊の一員だから、今後の戦いで共に戦う事になる仲間だ。」
「フム、トイウ事ハリィンヤ我ニトッテノ新タナル”戦友”カ。」
ヴァリマールに視線を向けたステラの疑問に答えたリィンはヴァリマールにステラとフォルデを紹介し、ヴァリマールは目を光らせて答えた。するとリィン達が持つメンフィル帝国軍から支給された戦術オーブメント――――ARCUS特有機能であった”戦術リンク”と”リンクアビリティ”が搭載されている改良型のENIGMA(エニグマ)―――”ENIGMA(エニグマ)R(リメイク)”が光を放ち始めた!

「え…………」
「この光は…………!」
それぞれ光を放ち始めたオーブメントに気づいたエリスは呆け、リィンが驚いて仲間達同様戦術オーブメントを取り出すとそれぞれの戦術オーブメントのリンクはヴァリマールと繋がった。
「戦術リンクがヴァリマールさんと繋がったという事は…………!」
「まさか…………エリゼ達も”準起動者”として認められたのか?」
「ウム、ドウヤラソノヨウダ。ソレニ、ヴァイスリッタートノ繋ガリモ感ジル為、ヴァイスリッターニモ効果ガアルダロウ。」
「…………ヴァリマールトノリンクヲ把握。準起動者ノ機能―――”EXアーツ”ノ発動モデキル。」
ヴァリマールとリンクする様子を見てすぐに察しがついたセレーネは驚き、信じられない表情で問いかけたリィンの推測にヴァリマールとヴァイスリッターはそれぞれ答えた。

「…………一体どうなっているんだ?エリゼ達はアリサ達と違って、俺と一緒に旧校舎での”試し”を受けていないのに…………」
「…………もしかしたら、お兄様―――起動者(ライザー)にとっての”戦友”と認識されれば、”準起動者”として認められるのでは?実際、サラ教官という実例がありますし…………」
困惑しているリィンの疑問にセレーネは自身の推測を答え
「…………なるほど。―――何にせよ、準起動者がセレーネ以外にも増えた事はありがたい事だな。今回の戦争ではセレーネ以外の準起動者達―――アリサ達の協力は無理だろうしな…………」
「兄様…………」
「…………私では”Ⅶ組”の方々の代わりにはなれませんが、それでも”Ⅶ組”の皆さんのように”準起動者”に認められた事は嬉しいです。兄様がヴァリマールさんを駆って戦う時も支える事ができるのですから…………」
静かな表情で呟いたリィンの言葉を聞いたエリゼが複雑そうな表情をしている中、エリスは真剣な表情でリィンを見つめて答えた。

「ハハ、”代わり”だなんてそんな寂しい事を言うな。エリスは誰の”代わり”でもない俺にとって大切な妹の一人で、将来を共にすることを決めた伴侶の一人なのだから…………」
「に、兄様…………セレーネやステラさん達がいる目の前で子供扱いするのは止めてください…………!」
微笑みながら優しく頭をなでてきたリィンに対してエリスは頬を赤らめて答え
「フフ、さすが双子の妹だけあって、そういう所もエリゼさんとそっくりですね。」
「というかリィン、マジで恋人を作ったみたいだな~?それもその口ぶりだと複数だから、お前のハーレムメンバーにはエリゼちゃんもそうだがセレーネもそうなのか?」
リィンとエリスの様子をステラは微笑ましく見守り、フォルデはからかいの表情でリィンに問いかけた。

「そういう言い方をしてほしくはないんですが…………まあ、否定はしません。それと将来を共にすることを決めた女性は後二人―――俺の使い魔として協力契約を結んでいる女性達もそうです。」
「ほ~…………5人も侍らすとは、”娼館”に誘っても必死に拒否したあのリィンが成長したもんだね~♪」
リィンの答えを聞いたフォルデは口元をニヤニヤさせながら指摘し
「ちょっ、先輩!?」
「…………やっぱり娼館に誘われた事があるのですか。」
「…………兄様?今の話はどういう事なのか、詳細な説明をして頂きたいのですが。」
(なんだかクロウさんと似ている方ですわね…………)
フォルデの指摘にリィンが慌て始めるとエリゼとエリスはそれぞれ膨大な威圧を纏って微笑み始め、セレーネが苦笑している中それを見たリィンが冷や汗をかいて表情を引き攣らせたその時格納庫に放送が入った。

―――これよりエレボニア帝国クロスベル侵攻軍の迎撃並びに殲滅を開始する。パンダグリュエル突入組に選ばれた部隊は10分以内に甲板に集合し、整列せよ。なおヴァリマール並びにヴァイスリッターは出撃し、迎撃開始と共に戦闘を開始せよ。繰り返す―――

「―――時間のようですね。」
「ああ…………先輩、合流するまではエリスとセレーネの事、お願いします。」
「任せときな。お前は内戦で受けた鬱憤を思い切り晴らしてきな!」
「兄様、姉様、ご武運を…………!」
シェラの声による放送を聞いたステラは表情を引き締め、リィンの言葉にフォルデは静かな表情で頷き、エリスはリィンとエリゼに応援の言葉を送り、二人はエリスの言葉にそれぞれ頷いた後それぞれヴァリマールとヴァイスリッターの中へと入り、格納庫のハッチの一部を開閉させるスイッチの場所までエリス達と共に移動したフォルデがスイッチを押すとハッチが開いた!
「出るぞ、ヴァリマール!」
「行きましょう、ヴァイスリッター!」
「「応――――!!」」
そしてヴァリマールとヴァイスリッターはそれぞれ”戦場”に向かう為にハッチから飛び出した―――― 
 

 
後書き
という訳でまずリィン側はフォルデとステラがパーティーインし、エリゼもメンフィル帝国軍による作戦の際は常にパーティーキャラとして同行する事になっています(まあ、この物語は今までの軌跡シリーズと違ってリィン側の行動のほとんどは戦争に関連する作戦活動ばかりの予定ですけどね(苦笑))それとリィン達のオーブメントはARCUSではなくレンちゃん達の改造によって生まれた戦術リンクやリンクアビリティもある特殊なエニグマになっているという設定です。また、準起動者は他にも増える予定でそのキャラは今の所アルティナ、アルフィン、ミュゼ、クルトを予定しています。それと次から作戦が終わるまでのイベント兼フィールド兼戦争BGMは閃1の”Atrocious Raid”、閃3の”solid as the Rock of JUNO”、碧の”To be continued!”、VERITAの”衝突する魂”、魔導巧殻の”不退転の決意を以って”のどれかだと思ってください♪ 

 

第6話

同日、PM12:00――――――


正午になる頃、ルーファス率いるクロスベル侵攻軍がメンフィル・クロスベル連合による迎撃態勢が整っている事も知らずにクロスベルに向かっていた。

~パンダグリュエル・ブリッジ~

「後10分で所定の位置に到着します。」
「所定の位置に到着後速やかに機甲兵、アハツェンを地上に降ろした後空挺部隊と共にベルガード門に同時侵攻する。今のクロスベルに”神機”はもはや存在しないとはいえ、思わぬ反撃を受ける可能性は十分に考えられる。決して油断はするな。」
「イエス・コマンダー。」
「フン、あの不可思議な能力を持っていた巨大な人形兵器―――”神機”とやらを失ったクロスベルに機甲兵も加えた我が軍に抵抗するような力は残っていないと思うがな。」
パンダグリュエルのブリッジで報告を受けたルーファスが指示を終えると、侵攻軍の”副将”としてルーファスと共にいるかつての”クロスベル独立国”の際、クロスベルに侵攻して第五機甲師団の多くを壊滅に追いやってしまった第五機甲師団の団長―――ワルター中将は貴族連合軍の”総参謀”を務めていたルーファスが侵攻軍を率いる”将”としての任務に就いている事に対する不満を隠さない様子で指摘した。

「いえいえ、クロスベルにはまだ例の”六銃士”とやらが残っているのですから油断はできません。何せ彼らは生身で”アハツェン”を破壊する所か、警備隊を僅かな期間で正規軍でも精鋭揃いである”第四機甲師団”を圧倒する程の実力をつけさせた指導力、そして”西ゼムリア通商会議”で宰相閣下とロックスミス大統領の考えを悟り、猛反撃をしてお二方の政治生命に少なくないダメージを与える事ができる程の策謀にも長けているのですから決して油断はできません。確か中将閣下は例の”合同演習”で彼らの実力の一端を知る事ができたはずですが?」
「ぐっ…………フン!幾ら連中がどんな”化物”であろうと空からの攻撃はどうしようもあるまい。人は鳥のように空を飛べないのだからな。今思い出すだけでも腹が立つ…………クロスベルを占領した後は連中を一人残らず捕まえて”合同演習”で受けた屈辱を倍返しにしてくれる…………!」
ルーファスの指摘に唸り声を上げたワルター中将はかつて自分に屈辱を与えた人物たち――――ギュランドロスやルイーネの顔を思い浮かべて表情を歪め
「フフ、彼らの能力は優秀であり、今後のエレボニアの繁栄の為には彼らを上手く使う必要もあるのですからほどほどにしてください。ただでさえ、わが国は12年前の”百日戦役”で大敗させられて一部の領土が奪い取られる原因となったメンフィル帝国と緊張状態に陥って、いつ戦端が開かれてもおかしくはない状況なのですから。」
ワルター中将の様子を見たルーファスは苦笑しながら指摘した。

「そのメンフィル帝国からの要求によると、メンフィル帝国と我が国がそのような状況に陥った原因である”ユミル襲撃”の件で貴族連合軍の”総参謀”であり、アルバレア公の長男でもある貴殿の身柄も求めているようだがな?メンフィル帝国と我が国の間で戦端が開かれる事を望んでいないのならば、エレボニアや皇帝陛下への忠義の為にも貴殿は大人しくメンフィル帝国に自首すべきではないのか?」
「ハハ、これは手厳しい…………―――ですが、メンフィル帝国は傲慢にも私や父達どころか、貴族連合軍とは無関係のアルフィン殿下や宰相閣下の身分剥奪に加えてメンフィル帝国にて私達同様殿下達に処罰を与える事やその他にも死者も出ていないユミル襲撃に対する賠償としてあまりにも理不尽な内容ばかりを要求しているのですから、アルフィン殿下の為、そしてエレボニアの為にも彼らの要求を受け入れる訳にはいきませんよ。」
ワルター中将の皮肉が混じった指摘に対して苦笑したルーファスは表情を引き締めて答えた。

「フン…………ん?前方の上空から何かが降りてきていないか?」
ルーファスの指摘に対して反論がないワルター中将は鼻を鳴らして目の前の景色を見つめたが何かに気づいて呟き
「ハハ、ご冗談を。クロスベルは飛行戦力を保有していませ――――!!??」
ワルター中将の言葉に苦笑したルーファスはワルター中将が視線を向けている方向に視線を向けてワルター中将の言葉は杞憂である事を指摘しかけたが、目の前に映る景色―――上空から自分達の行く手を阻むように降りてきたメンフィル・クロスベル連合による飛行艦隊を見ると血相を変えた。

~メンフィル帝国軍・魔導戦艦”ヴァリアント”・ブリッジ~

「―――これよりエレボニア帝国クロスベル侵攻軍の迎撃・殲滅を開始する。”パンダグリュエル”以外の飛行戦力は全て撃破せよ。」
「イエス・コマンダー!!」
一方その頃ブリッジの艦長席に座っているシェラは端末を操作しながら部下たちに指示を出していた。

~クロスベル帝国軍・魔導戦艦”ヴァリアント”・ブリッジ~

「さぁてと…………内戦で疲弊した自国の為にオレ様達のクロスベルを手に入れようとする自分勝手なエレボニアのバカ共に生まれ変わったクロスベルの”力”を思い知らせてやるぞっ!!」
「イエス、マイロード!!」
同じ頃ブリッジにいるギュランドロスは号令をかけ、ギュランドロスの号令にクロスベル帝国軍の兵士達はそれぞれ力強く答え
「―――これよりメンフィル・クロスベル連合によるエレボニア帝国軍の迎撃並びに殲滅を開始する。作戦通りまずは”パンダグリュエル”以外の敵戦力の殲滅を開始せよ!」
「イエス、マム!!」
エルミナは軍人達に指示を出していた。

そして空での戦端が開かれた。ルーファスはメンフィル・クロスベル連合による飛行戦力の登場に驚きつつも、すぐに立ち直って敵戦力の制圧の為の指示を出し始め、ルーファスの指示によって”パンダグリュエル”の周りにいた空挺部隊は指示通りの戦列を組んで敵戦力の制圧を開始しようとしたが、そこにルーファスを含めたエレボニア帝国軍にとってあまりにも想定外の”敵”が現れた。その”敵”とは――――

~クロスベル領空~

「おぉぉぉぉぉぉ…………!龍炎撃!!」
”エレボニア帝国軍にとっての想定外過ぎる敵”――――リィンが操縦する”灰の騎神”ヴァリマールは戦列を組んでいるエレボニアの空挺部隊の内の一機を上空からの奇襲で一刀両断し、一刀両断された飛行艇は飛行艇の中にいる軍人達を巻き込んで大爆発を起こして空の藻屑となった。
「―――下がれ!!」
続けてヴァリマールは渾身の力を込めた抜刀で広範囲を一閃するクラフト―――孤月一閃で自分の周囲にいる空挺部隊を一閃して撃破した!

「なああああああああああっ!?」
「あ、あの騎士は確か内戦時アルフィン殿下を旗印とした”紅き翼”の…………!」
「”灰の騎士”だと!?」
ヴァリマールの登場にまだ撃墜されていない空挺部隊は混乱していたが、そこに上空から複数のグレネードが襲い掛かって空挺部隊に命中した!
「うおっ!?」
「い、一体何があった!?」
「伍の型――――光鬼斬!!」
グレネードが命中した事でそれぞれ怯んでいる様子の空挺部隊目掛けてヴァイスリッターが居合の一撃を放って撃破した!

~パンダグリュエル・ブリッジ~

「”灰の騎士”にあの時ガレリア要塞を丸ごと消滅させた白い”神機”だとぉっ!?一体何がどうなっている!?」
「バ、バカな…………メンフィル帝国とクロスベルが連合を組んだことはアランドール少佐の報告にあったが、もう既に本格的な連合を組んだ上クロスベルがあれ程の飛行戦力を保有しているだと!?しかも何故”神機”に加えて”灰の騎神”まで…………くっ…………!」
ブリッジで味方戦力が次々と撃墜される様子をワルター中将と共に信じられない思いで見ていたルーファスはリィンが何を考えているのかを知るためにARCUSを取り出してリィンのARCUSに通信をしたが、リィンのARCUSは既にリィン自身の手で破壊されていた為通信は繋がらなかった。

「こんな時に限って…………!一体何を考えているんだ、リィン君――――!」
リィンのARCUSに繋がらなかった事に唇を噛み締めたルーファスは表情を歪めて空でヴァイスリッターやメンフィル・クロスベル連合の”ルナ=ゼバル”の部隊と協力してエレボニア帝国の空挺部隊を次々と撃墜し続けるヴァリマールを睨んだ。


~貴賓区画~

「”灰の騎神”ヴァリマール…………何故リィン・シュバルツァーがクロスベル侵攻軍を…………」
「――――――?」
同じ頃貴賓区画の一室で戦況を見ていたアルティナは呆け、アルティナの言葉に続くようにアルティナの背後に現れた漆黒の傀儡―――クラウ=ソラスはアルティナとミリアムにしかわからない独特の機械音を出していた。


~特務支援課~

「あの灰色の機体がエレボニア帝国の伝承の”巨いなる騎士”―――”騎神”…………」
「あ、圧倒的ですね…………」
「は、はい…………エレボニア帝国軍が何もできないまま次々と撃破され続けていますし…………」
「”神機”と違ってグレネードのような遠距離武装は搭載されていないようですが、その不足した部分は”八葉一刀流”の剣技で補っているようですね。」
「ああ…………話には聞いていたが、まさかディーターさんと違って機体に乗った状態で”まるで人が剣を振るっているようにしか見えない動作で操作する事ができる”なんてな…………」
「”神機”を操縦するエリゼちゃんもなかなかだが、それでもあの”灰の騎神”とやらと比べると操縦は僅かに劣っているから、機体に乗った状態での戦闘はあの”灰の騎神”ってのが上だな。」
一方その頃端末に映る”戦場”の戦況を見ていたエリィとノエル、ユウナは驚き、ティオの推測にロイドは頷き、ランディは真剣な表情でヴァリマールを見つめていた。

「”騎神”や”神機”も凄いけど、”魔導技術”によって作られた飛行艇も凄いよね~。」
「ええ…………かつては”大陸最強”と恐れられていたエレボニア帝国の空挺部隊を圧倒していますし…………」
「あのような物を作りだす事ができるメルキア帝国の”魔導技術”は一体どれほどの技術力なんでしょうね…………?」
シャマーラやセティ、エリナは端末に映る”魔導技術”によって作られた戦艦や飛行艇を見て考え込み
「「………………………………」」
二人のキーアはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。


~遊撃士協会・クロスベル支部~

「まさに一方的な戦い(ワンサイドゲーム)ね…………」
「ああ…………メンフィル・クロスベル連合の戦艦や飛行艇の性能がエレボニア帝国の空挺部隊を上回っている事もそうだが、何よりもあの2体の”騎士”に対してエレボニア帝国の空挺部隊は何の対策もできていないようだしね。」
「無理もないわ…………ただでさえメンフィル・クロスベル連合軍の登場はエレボニア帝国軍にとって想定外過ぎるのに、かつてクロスベルに侵攻しようとした機甲師団を壊滅に追いやった”神機”と内戦終結の鍵となった”騎神”まで”敵”として現れているのだから、今頃エレボニア帝国軍は色々な意味で混乱していると思われるもの…………」
「この戦い、どう考えてもエレボニア帝国軍に勝ち目はないな。」
「それにこの戦いに限らずメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”もカルバードの件同様、エレボニア帝国の勝ち目は絶望的と言ってもいいだろうな…………」
同じ頃ロイド達のように端末に映る”戦場”の戦況を見ていたミシェルは疲れた表情で溜息を吐き、リンとエオリアは重々しい様子を纏って呟き、スコットは静かな表情で呟き、ヴェンツェルは複雑そうな表情で今後の展開を推測した。するとその時ミシェル達同様ロカとサティアと共に戦況を見守っていたセリカは立ち上がった。

「セリカ、どうしたの?」
セリカの突然の行動にロカは不思議そうな表情で声をかけたが
「―――”既に勝敗は決している”のだから、これ以上見ていても時間の無駄だ。無駄な時間を過ごすくらいなら、依頼を請けていた方がよほど効率的だ。―――行くぞ、ロカ、サティア。」
「わかったわ。」
「それじゃあ私達は先に失礼するわね、みんな。」
セリカの意志を知ると立ち上がり、セリカとサティアと共にギルドから出ていこうとした。

「ちょっと待って。リタちゃんや貴方の”使徒”達もそうだけど、エステル達も”どうしても外せない用事がある”からって理由でクロスベルから離れたみたいだけど…………一体何の為にエステル達がいなくなったのかを教えて欲しいのだけど。」
出ていこうとした三人を見たミシェルは制止の言葉を口にしたが
「…………エステル達がクロスベルから離れた理由は”第二のハーメルが生まれる事を阻止する為”で、その為には人手がいるとの事だからマリーニャ達にエステル達の加勢をさせている。」
「なんですって!?」
セリカが口にした驚愕の事実に血相を変えた周りの遊撃士達同様血相を変えて声を上げた。


~帝都クロスベル・中央通り~

「おお…………っ!」
「あのメンフィル帝国が味方にいるとはいえ、まさかクロスベルがエレボニア帝国軍を圧倒する日が来るなんて…………!」
「さすがはヴァイスハイト陛下達―――”六銃士”よね…………!」
街に設置されている臨時用の巨大なモニターに映る戦況を見ているクロスベルの市民達は興奮し
「う、嘘だ…………エレボニアがクロスベルに負けるなんて…………!?」
「わ、私達悪夢でも見ているの…………!?」
「エレボニアはどうなってしまうんだ…………?」
観光や商売等の目的でクロスベルを訪れていたエレボニア人は絶望や不安の表情を浮かべていた。

「あの灰色の騎士を駆るローエングリン城で出会った黒髪の少年―――リィンがキーア達の話にあった”私が復活したいずれの世界軸でも必ず私が生涯を共にすることを決めた人”………………………………」
市民達がモニターに夢中になっている中、かつてリィン達が”特別実習”での”ローエングリン城”で出会った謎に満ちた女性でその正体はセリカの身体の持ち主である”正義の大女神アストライア”の妹神であり、並行世界のキーアの”因果”を操る能力によってゼムリア大陸で復活した”慈悲の大女神アイドス”――――アイドス・セイルーンは静かな表情でモニターに映るヴァリマールを見つめ
「エステルのように多くの”絆”に溢れながらも、何故その”絆”を断つような事をしているのかを確かめてから…………”並行世界の私のように”彼を私と生涯を共にしてくれる人にするかどうかを決めたほうがよさそうね。」
ローエングリン城で出会ったリィンや周りの人物達の様子を思い浮かべながら呟いた後その場から去っていった――――
 
 

 
後書き
という事で今回の話の最後でベルフェゴールに続いて”彼女”も早期登場しましたwwなので予告通り、リィンと”彼女”との(使い魔?)契約ももうすぐの予定です。また、エステル達の件は後に判明し、エステル達がどのようにしてその情報を手に入れたかも後の話で判明するようにするつもりです。更にエステル達の話を書く際、ひょっとしたら暁の軌跡のメインキャラ達も登場し、活躍するかもしれません。何故ならエステル達の話を書く際に、エステル達が戦う敵を率いるリーダー格は暁の軌跡で登場するアイリにしようかなとも考えていますので(ぇ)

 

 

第7話

そして空の戦いはエレボニア帝国軍の空挺部隊はヴァリマールとヴァイスリッターを加えたメンフィル・クロスベル連合の猛攻によって次々と撃破され、残るはパンダグリュエルのみとなり、ヴァリマールとヴァイスリッターがパンダグリュエルに近づくと甲板に待機していたアハツェンが砲口をヴァリマールとヴァイスリッターに向けた。

~パンダグリュエル・甲板~

「これ以上この艦に近づかせるな!撃ち落とせ―――ッ!」
「イエス・サー!!」
指揮官の指示によってアハツェンの砲口は一斉に火を噴いて砲弾はヴァリマールとヴァイスリッターに襲い掛かり、爆発による煙に包まれた。
「やったか…………!?」
ヴァリマールとヴァイスリッターが爆発に巻き込まれる様子を見た指揮官は自身の望み通りの展開になっている事を口にしたが爆発による煙が晴れるとそこにはヴァリマールの前に出て障壁を展開しているヴァイスリッターの姿があり、障壁によって砲撃を全て防がれたことによって2体は無傷であった!
「ば、馬鹿な…………!?無傷だと…………!?」
「く…………っ、もう一度集中砲撃だ!」
無傷で現れた2体を見た軍人が驚いている中指揮官は再び指示を出そうとしたが
「八葉一刀流七の型―――無想覇斬!!」
「あ――――」
ヴァリマールが一気に詰め寄って抜刀によって無数の斬撃波を発生させる奥義をアハツェンの部隊に叩き込んだ。するとアハツェンは一台残らず大爆発を起こして炎上し始めた!
「ど、どうして”灰の騎士”が…………敵に…………」
「ううっ…………」
爆発に巻き込まれたりヴァリマールの斬撃によって多くの正規軍の軍人達の命が失われた中、辛うじて生き残った数人の軍人達はそれぞれ重傷を負った様子で甲板に倒れて呻いていた。その後ヴァリマールとヴァイスリッターがそれぞれ甲板に降り立つと”ヴァリアント”や”フォーミダブル”の甲板に待機していたメンフィル・クロスベル連合軍が甲板に描かれていた巨大な転移魔法陣によってパンダグリュエルの甲板に転移した!

「よぉし、鬱陶しい蠅共は片づけた!次はエレボニアの連中の生身に俺達クロスベルに手を出そうとした愚かさを思い知らせてやるぜぇぇぇぇ―――ッ!」
「メンフィルもクロスベルに後れを取るな!この戦いは同胞達に手を出した挙句謝罪すらもしなかった傲慢なエレボニアの愚か者共に余達メンフィルの”怒り”を思い知らせる戦いの始まりだ!誇り高きメンフィルの(つわもの)達よ!その”力”、存分に震うがいい!!」
「「総員、突撃!パンダグリュエルを制圧せよ!!」」
「オオオオオォォォォォォォ――――――ッ!!」
軍人達と共に甲板に現れたギュランドロスとリフィアは号令をかけ、二人の号令にメンフィル・クロスベル連合はそれぞれの武装を空に向けて掲げて力強く答えた後次々とパンダグリュエルの艦内に突入した!


~ブリッジ~

「て、敵軍、艦内への侵入を開始しました!」
「…………く…………っ…………(やむを得ん、か…………)」
メンフィル・クロスベル連合軍が艦内に突入する様子を部下が慌てた様子で報告している中唇を噛み締めて端末を睨んでいたルーファスはその場から離れ始めたが
「こんな時にどこにいくつもりだ、ルーファス卿!?」
ルーファスの行動に気づいたワルター中将が呼び止めた。
「…………今回のクロスベル侵攻、誠に遺憾ではありますが我が軍の敗北、並びにクロスベル侵攻は”失敗”という結果になってしまう事は目に見えています。ならば私はクロスベル侵攻軍を率いる将として今回の失態の責任を取るために、中将閣下を含めて一人でも多くの兵達をエレボニアに生還させ、今回の件で知った情報を持ち帰って頂くために私自身も前線に出て兵達に脱出用の飛行艇が待機している格納庫へと続く撤退ルートの確保の指揮をし、中将閣下達が撤退を終えるまで死守するつもりですので、中将閣下は撤退ルートの確保の連絡が来るまでこちらで指揮を取ってください!」
「ルーファス卿、そなた……………………―――よかろう、エレボニアに帰還した際は皇帝陛下や宰相閣下達にそなたのエレボニアと皇帝陛下に対する真の忠誠心をお伝えしておこう。―――そなたの武運を祈っている。」
「ありがたき幸せ。中将閣下にも女神達のご加護を。」
そしてワルター中将に自分がブリッジから離れる理由を説明してワルター中将が納得すると急いでブリッジを出てARCUSを取り出してある人物に通信をした。


~通路~

「―――こちら、”黒兎(ブラックラビット)”。」
「私だ。これよりパンダグリュエルからの離脱を開始する。君は急いで私に合流し、合流後はクラウ=ソラスのステルス機能を発動させて私を離脱用の飛行艇を待機させている格納庫まで同行してくれ。もちろん、君も私と共に脱出用の飛行艇に乗ってパンダグリュエルから離脱してもらうから安心してくれ。」
「…………了解しました。これより行動を開始します。」
「…………ようやく、宰相閣下の”子供達”の”筆頭”として動けるようになった私がこんな異国の地で果てる訳にはいかないのでな。―――すまないが貴方は私の為にこの艦と運命を共にしてくれ、ワルター中将。」
ある人物―――アルティナに通信でワルター中将に説明した内容とは全く異なる内容の指示をしたルーファスはブリッジに続く扉を見つめて不敵な笑みを浮かべた後急いでその場から離れ始めた。


~甲板~

一方その頃メンフィル・クロスベル連合軍が艦内への突入をしている中セレーネ達はヴァリマールとヴァイスリッターの元へと向かった。すると二体からそれぞれリィンとエリゼが光に包まれて出てきた。
「ご無事ですか、兄様、姉様…………!」
「ああ、問題ない。それにしてもさっきの障壁は助かったよ、エリゼ。」
「いえ、兄様のお役に立てて何よりです。」
「それで?戦場での”手柄”を狙っているお前さんとしては、この小部隊でどういう戦いをするつもりだ?」
「―――決まっています。戦場の”手柄”として最も評価されるのは”敵軍を率いる敵将の撃破”です。そしてこのクロスベル侵攻軍を率いる”敵将”は………」
「…………元貴族連合軍の”総参謀”にして”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”――――”翡翠の城将(ルーク・オブ・ジェイド)”であるルーファスさんですわね。」
フォルデの問いかけにリィンは静かな表情で答え、リィンに続くようにセレーネは真剣な表情で答えた。

「あのルーファス卿が”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”―――”革新派”を率いるオズボーン宰相直属の”子供達”を率いる人物である話には驚きましたが…………彼の首を狙うのですから、やはり艦内の様子を見て指揮を取れる場所であるブリッジを目指すのですか?」
「いや…………―――ベルフェゴール!」
「はいは~い、早速私に何か頼みたい事でもあるのかしら、ご主人様♪」
ステラの問いかけに首を横に振って答えたリィンはベルフェゴールを召喚し、召喚されたベルフェゴールはリィンにウインクをした。
「この艦内のどこかに離脱用の飛行艇があるはずだから、ベルフェゴールはその飛行艇がある格納庫を探って、その場所を見つけたら俺達をそこに転移魔術で連れて行ってくれ。」
「了解♪それじゃあ私は一足先に艦内に入らせてもらうわね♪」
リィンの指示に頷いたベルフェゴールは転移魔術で艦内に移動した。

「兄様、何故ベルフェゴール様に脱出用の飛空艇を…………?」
「多分リィンはそのアルバレアの長男はこの戦場から離脱すると睨んでいるから、あんな指示を出したんだと思うぜ?」
「ええ…………”Ⅶ組”での”特別実習”、そして内戦でルーファスさんの性格をある程度把握する事ができましたが…………あの人は決して自分が劣勢になっても、自分が敗北―――”死”に至る最後まで戦い抜くような諦めの悪いタイプではありません。ましてや彼は今まで戦闘もそうですが、戦場での”敗北”を経験していないのですから。」
「言われてみればルーファスさんは内戦時、常に有利な立場でいられた”貴族連合軍”の”総参謀”でしたから、”敗北”は経験していないはずですわよね…………?ユミルでわたくし達と戦った時もルーファスさんが勝ちましたし…………」
「そんなルーファス卿にとって経験する初めての”戦場での敗北”…………更に彼の正体が”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”である事を考えると、オズボーン宰相が考えている今後の”計画”に大きな支障となる私達メンフィル・クロスベル連合に対する対策をたてるためにも、この戦場からの離脱を考えてもおかしくありませんね。」
エリスの疑問に答えたフォルデの推測に頷いたリィンの説明を聞いたセレーネはルーファスの事を思い返し、ステラは静かな表情で呟いた。
「それに”煌魔城”でのオズボーン宰相に対する忠誠心を考えると、あの人はようやくオズボーン宰相の子供達の”筆頭”として堂々と動けるようになったのに、”想定外の出来事によって異国の地であるクロスベルに敗北して命を失う”という事は絶対に受け入れられないだろう。―――だから俺はルーファスさんのそういった性格を利用し、今回の戦での一番の”手柄首”である彼を”討つ”。」
「お兄様…………」
「……………………」
クラスメイトであり、大切な仲間の一人であるユーシスが慕っていた兄でもあるルーファスを討つ事を口にしたリィンをセレーネは複雑そうな表情で見つめ、エリゼは重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んでいた。

「―――ベルフェゴールが格納庫を探しているとはいえ、俺達が先に見つける可能性もある。俺達はベルフェゴールの合流を待ちつつ、艦内の緊急離脱用の飛行艇がある格納庫を探す。勿論途中で出会う敵兵は全員殲滅するぞ!」
「「「「はいっ!」」」」
「おうっ!」
リィンの号令にエリゼ達は力強く答え
「―――来い、メサイア!メサイアはエリスのサポートを頼む。」
「わかりましたわ。」
更にメサイアを召喚してメサイアに指示を出した後エリゼ達と共に艦内に突入した。


~通路~

「き、貴様は…………!?」
艦内の緊急離脱用の飛行艇がある格納庫を探す為に艦内の探索をしつつ、時折出会う正規軍の兵士達を殲滅しながら進んでいたリィン達だったが突如聞こえた声に足を止めて武装を構えて声が聞こえた方向に視線を向けると、そこには武装を構えたクロイツェン州の領邦軍がいた。
「あの軍装は確か領邦軍でしたね…………」
「ええ…………それもあの色はクロイツェン州の領邦軍ですわ…………」
兵士達の軍装を見たステラとセレーネはすぐに相手が正規軍ではなく、領邦軍である事に気づいた。
「貴様は確か”特別実習”とやらでバリアハートに訪れて、レーグニッツ知事の息子の脱走を手助けしたユーシス様の同期生…………!」
「何だと…………!?」
「という事はケルディックやバリアハートで我らを邪魔した”Ⅶ組”とやらの一員か…………!」
「……………その口ぶり、バリアハートの地下水道で俺達を包囲した領邦軍の兵士の一人か…………」
「お知り合いなのですか?」
領邦軍の一人が口にした言葉を聞いた他の領邦軍がリィンを睨んでいる中静かな表情で呟いたリィンにエリスが訊ねた。

「ああ。”特別実習”でバリアハートを訪れた際、俺のクラスメイトの一人―――レーグニッツ知事の息子であるマキアスがレーグニッツ知事に対する脅迫を考えたアルバレア公による指示で不当な理由で逮捕されて領邦軍の詰所の地下の牢屋に監禁されたんだが…………俺達が地下水道を使って牢屋から解放したマキアスと共に脱出しようとしたんだ。まあ、途中で領邦軍が放った軍用魔獣で足止めをされて領邦軍に包囲されたんだが…………その時はサラ教官が呼んできたルーファスさんがサラ教官と共に現れて俺達を捕えようとした領邦軍を撤収させたんだ。」
「バリアハートでそのような事が…………」
「バリアハートでの”特別実習”…………わたくしとお兄様達が出会う前にあった”特別実習”で当時仲が相当悪かったユーシスさんとマキアスさんが和解するきっかけになった件ですか………」
「おいおい…………ユミルの件以外でもそんなアホな事をしていたのかよ、アルバレア公爵は。仮にも”四大名門”の一角の当主だろ?」
「”四大名門”以前に帝国貴族として相応しい方ではなかった人物のようですね、アルバレア公爵は。」
リィンの説明を聞いたエリゼは厳しい表情で領邦軍を睨み、セレーネは静かな表情で呟き、フォルデとステラはアルバレア公爵の愚かさに呆れていた。

「黙れ!公爵閣下に対するその口のきき方、不敬であるぞ…………!」
「ユーシス様の同期生―――エレボニアの名門士官学院であるトールズの学生であった何故貴様がこの場に…………―――!そのメンフィル帝国の紋章が刻み込まれた軍装…………まさか貴様、祖国を裏切ってメンフィル帝国に寝返ったのか!?」
アルバレア公爵に対して悪く言うステラとフォルデを領邦軍の一人が睨んでいる中、かつてバリアハートでリィン達を拘束しようとした領邦軍の一人はある事実に気づいてリィンを睨み
「そもそもトールズの学生だからとはいえ俺がエレボニア帝国の出身であると思っていた時点で大きな間違いだ。俺は元々”メンフィル帝国の貴族”だから、祖国を裏切るような事はしていない。―――みんな、行くぞ!」
「おおっ!」
睨まれたリィンは静かな表情で反論した後号令をかけてエリゼ達と共に領邦軍との戦闘を開始した!

「喰らえ――――!」
「風よ、散れ―――ウィンドバレット!!」
「ぐあっ!?」
「ががっ!?」
領邦軍の数人はリィン達に銃口を向けて銃撃を放とうとしたがそれよりも早く既にライフルの銃口に風の魔力エネルギーを溜め終えていたステラが放った風の魔力を込めた弾丸で範囲攻撃するクラフト―――ウィンドバレットを受けて怯み
「そこだ!二の型―――疾風!!」
「二の型・改―――雷鳴剣!!」
「ぐふっ!?」
「があ…………っ!?」
ステラの攻撃で敵達が怯むとリィンとエリゼはそれぞれ電光石火の斬撃で敵達の急所を突いて絶命させた。

「「アークス駆動―――エアリアル!!」」
「吹き荒れよ―――ハリケーンブリザード!!」
後方でオーブメントを駆動させていた領邦軍の兵士達はリィン達の後方にいるセレーネ達に竜巻を発生させるアーツを放ったがセレーネは瞬時に自身の周囲に猛吹雪を発生させる魔術を発動させて二重の竜巻を吹き飛ばし
「ついてこれるか?そらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ぐああああああっ!?」
セレーネが竜巻を吹き飛ばすとフォルデが領邦軍の一人に華麗な槍舞を叩き込むヴァンダール流の槍のクラフト―――スピアダンサーを放って絶命させ
「漆黒の闇槍よ―――死愛の魔槍!!」
「ぐうっ!?」
「今ですわ!」
「はい!―――セイッ!!」
「ぐ…………あ…………っ!?」
メサイアは漆黒の闇槍を放つ魔術でもう一人の領邦軍の兵士を怯ませ、メサイアとリンクを結んでいるエリスが怯んでいる兵士に詰め寄って細剣(レイピア)による斬撃で兵士の首筋を切り裂いて絶命させた!

「いっちょ上がりっと。領邦軍がこっちにいたって事はもしかしてこの周辺が”アタリ”か?」
「…………そうですね。領邦軍の中でも”アルバレア公爵家”に忠誠を誓っているクロイツェン州の領邦軍がいたのですから、その可能性は十分に考えられると思うのですが…………」
「―――うふふ、まさにその通りよ♪」
フォルデが呟いた推測にリィンが考え込みながら答えかけたその時ベルフェゴールが転移魔術でリィン達の目の前に現れた。
「ベルフェゴールさん、”まさにその通り”という事は緊急離脱用の飛行艇がこの近くに…………?」
「ええ、既に兵士達が脱出の準備をしていたから、敵将が来る前にまずは兵士達の殲滅をした方がいいと思うわよ。」
「わかった。すぐに頼む、ベルフェゴール。」
「了解。」
「みんな、いつでも戦闘が始められるようにだけしておいてくれ!」
「「「「はいっ!」」」」
「おう!」
そしてリィン達はベルフェゴールの転移魔術でその場から消えて脱出用の飛行艇が停泊している格納庫に現れた後脱出の準備をしていた兵士達に奇襲して殲滅した。

一方その頃デュバリィ達”鉄機隊”はメンフィル・クロスベル連合がエレボニア帝国軍の兵士達と艦内での戦闘を繰り広げている中、戦場を駆け抜けて自分達の先を阻む兵士達を凄まじい速さで撃破しながらブリッジに突入していた。

~ブリッジ~

「ルーファス・アルバレア!その命、”鉄機隊”である私達がもらい受けますわ!」
「な、なんだ貴様らは!?」
「て、”鉄騎隊”だと…………?」
「”槍の聖女”が率いていたというあの…………?」
ブリッジに突如現れて宣言したデュバリィに対してワルター中将を始めとしたブリッジにいたエレボニア帝国軍は困惑していた。

「へ…………ルーファス・アルバレアがいない…………?」
「あら?艦内の戦況を見て指揮をしているだろうから、てっきりブリッジにいるのだと思っていたのだけど。」
「フム、アテが外れたのか?」
周囲を見回してルーファスがいない事に気づいたデュバリィはは呆け、デュバリィの後から入ってきたエンネアとアイネスはそれぞれ首を傾げていた。

「!その紋章…………メンフィルか!総員、戦闘態勢に入れ!」
「くっ、ここまで突入されるなんてまさか中将閣下の脱出の為に前線で指揮を取っておられるルーファス様はもう討たれたのか!?」
デュバリィ達が身に着けているメンフィル帝国軍を表す紋章に気づいたワルター中将は自身の武装を構えてブリッジ内にいる兵士達に指示をし、指示をされた兵士達はそれぞれ戦闘態勢に入っている中一人の兵士が唇を噛み締めてある事を口にした。

「”脱出の為に前線で指揮を取っている”…………―――なるほど、まさか”その行動を真っ先に取る”とはね。まあ、”将”として決して間違った選択とは言えないけど…………」
「仮にも軍を率いる総大将ならば、最後まで戦い抜くべきなのに、我が身可愛さに真っ先に離脱を選ぶとは”武”を誇っていたエレボニアの”将”の面汚しだな。」
「くっ…………貴賓区画にいると思われた黒兎(ブラックラビット)が見当たらない時点で気づくべきでしたわ…………!」
兵士の一人が呟いた言葉を聞いてすぐにルーファスが離脱行動をしている事に気づいたエンネアとアイネスは厳しい表情をし、デュバリィは自分の迂闊さに唇を噛み締めて呟いた。

「フン、たった3人でここに辿り着いた事には褒めてやるが所詮は小娘共!貴様ら如き、第五機甲師団団長にしてクロスベル侵攻軍の”副将”である私にとっては造作もない相手だが、この場に辿り着いた褒美として特別に相手をしてやろう。総員、まずは包囲せよ!」
「イエス、コマンダー!!」
一方デュバリィ達の様子を気にしていないワルター中将は嘲笑をした後兵士達に指示をしてデュバリィ達を包囲させ
「私達が小娘で、”如き”ですって…………?」
「フフ、ルーファス・アルバレア程ではないとはいえ”副将”―――それも正規軍の機甲師団団長の撃破もそうだけど、ブリッジを制圧した事も戦功として評価されるでしょうから、ちょうどよかったじゃない。」
「ああ…………!我ら”鉄機隊”を侮辱した事を心の底から後悔させてやろう…………!」
ワルター中将の言葉を聞いたデュバリィは表情を厳しくし、エンネアは口元に笑みを浮かべていながらも目は笑っていなく、アイネスはエンネアに続くように不敵な笑みを浮かべて答え
「当然ですわ!アイネス、エンネア!”星洸陣”でとっとと殲滅して、ルーファス・アルバレアを探しますわよ!」
「あの程度の相手に”星洸陣”まで使うなんてさすがに大人げないような気もするけど…………」
「まあ、我らへの侮辱は”至高の武”の存在たるマスターに対する間接的な侮辱でもあるのだから、その”報い”を受けてもらう必要はあるな。」
デュバリィの指示にエンネアとアイネスは苦笑した後それぞれ足元から光を放ち始め、互いに戦術リンクのようなもの――――様々な身体能力の上昇に加えて体力や傷も自動的に回復させるデュバリィ達”鉄機隊”の”本気”である証の特別な戦術リンク―――”星洸陣”を発動させ、ワルター中将達に襲い掛かった!


~格納庫~

「脱出の準備はできているであろうな!?――――――な。」
「これは…………」
同じ頃、緊急離脱用の飛行艇を待機させている格納庫に到着したルーファスは周囲の惨状―――血を流して地面に倒れている絶命した領邦軍の兵士達を見ると絶句し、アルティナは驚いた。
「―――予想通り、やはり戦場からの離脱を選んだようですね。」
するとそこにリィン達が近づいてきてルーファス達と対峙した。

「リィン・シュバルツァー…………それにエリス・シュバルツァーやセレーネ・L・アルフヘイムに加えて”守護の剣聖”―――エリゼ・シュバルツァーまで何故この艦に…………」
「君達が”英雄王”の指示によってメンフィルの本国に帰還させられた事は聞いていたが…………まさかリィン君に加えてセレーネ君やエリス君までメンフィル軍に協力―――いや、入隊していたとはね…………リィン君、何故エレボニアを―――”Ⅶ組”を裏切った!?」
リィン達の登場にアルティナが驚いている中、ルーファスは厳しい表情でリィン達を見回した後リィンに問いかけた。
「何故もなにも、俺は元々メンフィル帝国軍の訓練兵として所属していて、オリヴァルト殿下の要請を受けたリウイ陛下の指示によってトールズに留学していたのですから、元いた場所に戻っただけですし、そもそも俺達は”最初からエレボニア帝国ではなくメンフィル帝国に所属しているメンフィル帝国人”なのですから、ルーファスさんの”エレボニアを裏切った”というその指摘は間違っていますよ。」
「…………確かに君達はメンフィル帝国人だ。だが、トールズに入学してから君とセレーネ君はずっとエレボニアの為に特別実習で様々な活躍をし、内戦も乗り越えた。それにエリス君はアルフィン殿下のお付きの侍女として、殿下を支えてくれていた。なのに何故大切な仲間達や殿下を裏切る行為であるメンフィル帝国軍に所属してエレボニアに刃を向けたんだ…………?」
静かな表情で答えたリィンの指摘に対してルーファスも静かな表情で答えた後困惑の表情でリィン達を見つめた。

「…………っ!貴族連合軍の”総参謀”として、エレボニアに対して反乱を起こして姫様達に刃を向けた貴方にだけは言われる筋合いはありません…………!」
「エリスお姉様の言う通りですわ。例えオズボーン宰相の指示があって敢えて貴族連合軍の”総参謀”として動いていたとはいえ、内戦では貴族連合軍の”総参謀”としてカイエン公達の悪事に加担していたのですから、どんな言い訳があろうと貴方は”反逆者”ですわ!」
ルーファスの言葉に対して唇を噛み締めたエリスは怒りの表情で指摘し、セレーネもエリスに続くように怒りの表情でルーファスを睨んで指摘した。
「やれやれ…………随分と嫌われてしまったものだ。それでリィン君、君達の真意について答えてもらいたいのだが?」
二人に睨まれたルーファスは苦笑した後リィンに問いかけた。

「―――エレボニアの滅亡を防ぐ為ですよ。」
「え…………」
「何…………?それはどういう意味だ…………?」
リィンの答えを聞いたアルティナが呆けている中、ルーファスは眉を顰めて指摘した。
「ルーファスさんでは理解できな―――いや、理解したくないでしょうけど、今回のメンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国との戦争…………どう考えても”エレボニア帝国に勝ち目は一切ありませんし、メンフィル帝国は決して和解の為の要求内容を妥協する事はありません。”だったら、戦争で活躍して昇進し、戦後のエレボニア―――”メンフィル・クロスベル連合によって占領されたエレボニアについて口出しできる立場”になって、せめてエレボニア帝国が滅亡する事だけは防ぐ為に…………そしてメンフィル帝国から厳しい処罰が求められているアルフィン殿下の処罰を可能な限り穏便な内容にしてもらえる進言ができる立場になる為にも、今回の戦争は敢えて”メンフィル帝国側として”参加する事にしたのですよ。―――幸いにもメンフィル帝国は”実力主義”ですから、戦争で手柄を立てれば立てる程その手柄に相応した立場を用意してくれるとの事ですし。」
「………理解できません。何故そこまでして、エレボニアを…………」
「な…………あ…………っ!?」
リィンの真意を知ったアルティナが困惑している中、ルーファスは信じられない表情で口を大きく開けてリィンを見つめた。

「―――そしてその手柄の一つとしてまずはメンフィルの同盟国であるクロスベルに侵攻しようとするエレボニア帝国軍を率いる”総大将”にして”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”でもある貴方をここで討たせてもらいます。」
ルーファスに太刀を向けたリィンはそのまま”鬼の力”を解放した姿になった!
「くっ…………早まった事は止めるんだ、リィン君!そんな無謀な事、Ⅶ組は絶対に望んでいないし、メンフィル帝国側として戦争に参加すればいずれはⅦ組の関係者達の命を奪う事になるかもしれないし、何よりも君にとって唯一の血が繋がった父君であられる宰相閣下にまで刃を向ける事になるのだぞ!?」
「え…………リィンさんがあのオズボーン宰相の息子…………」
「今の話は本当なのか、リィン?」
リィンが本気で自分の命を狙っている事に唇を噛み締めたルーファスは何とかリィンを説得しようと言葉を続け、ルーファスが口にしたある事実を聞いたステラは驚き、ステラ同様驚いたフォルデは目を丸くしてリィンに訊ねた。

「ええ、最近判明した事ですけどね。―――確かにオズボーン宰相は俺と血の繋がった父親なのでしょう。ですが、俺にとっての本当の両親はオズボーン宰相が冬山に捨てた俺を拾ってエリゼ達と区別せず自分達の子供同様に育ててくれた父さんと母さん―――シュバルツァー男爵夫妻だ!幼い俺を捨て、自分の野望の為だけにクロウを含めた多くの人達の人生を歪めた挙句、今更父親面をして俺を利用しようとするオズボーン宰相の事は俺の”父親”として絶対に認めない!いずれはオズボーン宰相も討ち、真の意味で親子の縁を断つ!」
「「兄様…………」」
リィンがルーファスに向けて口にした決意の言葉を聞いたエリゼとエリスは静かな表情でリィンを見つめ
「くっ…………宰相閣下の事も含めて”何も知らない身”で、愚かな事を…………!飛行艇での離脱が厳しい以上、君のクラウ=ソラスで戦場から離脱する!何とかこの場を切り抜けてハッチを開けるスイッチがある場所まで撤退し、ハッチを開けた後はクラウ=ソラスに君と私を保護させてそのまま空に離脱する!」
「了解しました。クラウ=ソラス。」
「――――――」
一方唇を噛み締めてリィンを睨んだルーファスは自身の得物である騎士剣を構えてアルティナに指示をし、指示をされたアルティナは自分の背後にクラウ=ソラスを現させた。

黒兎(ブラックラビット)の相手は私が担当します。彼女にはユミルでエリスを拉致した事に対する私の”怒り”もぶつけたいので。」
「クク、エリゼちゃんもリィンと同じ”シスコン”だったとはな。―――そんじゃ、俺とステラはエリゼちゃんに加勢させてもらうから、アルバレアの長男と因縁があるお前達は内戦で積もり積もった今までの恨みつらみをぶつけて来い!」
黒兎(ブラックラビット)は私達に任せて、リィンさん達はルーファス・アルバレアの撃破をお願いします。」
「わかった…………!メサイアはエリゼ達に加勢してくれ!」
「わかりましたわ!」
アルティナとクラウ=ソラスの相手を申し出たエリゼ、フォルデ、ステラにアルティナ達の事を任せる事にしたリィンはメサイアにエリゼ達の加勢をさせ、アルティナ達と対峙したエリゼはメサイアと、ステラはフォルデとの戦術リンクを結び、ルーファスと対峙したリィンはベルフェゴールと、セレーネはエリスとの戦術リンクをそれぞれ結んだ。

「――――――これよりエレボニア帝国クロスベル侵攻軍の”総大将”ルーファス・アルバレアの討伐並びに”黒の工房”のエージェント、アルティナ・オライオンの捕縛を開始する。行くぞ、みんなっ!!」
「おおっ!!」
そしてリィンの号令を合図にリィン達はそれぞれが相手をする敵に向かって行き、戦闘を開始した―――――!
 
 

 
後書き
次回のルーファス&アルティナ戦の戦闘BGMは神のラプソディの”指揮者はこの地に降り立つ”、グラセスタの”あの日の誓いを胸に秘め”、VERITAの”宿業”、閃ⅡのOP”閃光の行方”の歌がないver、碧の”Inevitable Struggle”のうちのどれかだと思ってください♪ 

 

第8話

~パンダグリュエル・格納庫~

「ブリューナク起動、照射。」
「――――――」
「「「「!!」」」」
アルティナの指示によってクラウ=ソラスにエリゼ達目掛けて集束レーザーを放ち、放たれたレーザーをエリゼ達は散開して回避した。
「ヤアッ!」
「バリア展開。」
「―――――」
レーザーを回避したステラは反撃に冷気と閃光を発する手榴弾――――A(アイス)グレネードをアルティナの足元へと投擲したが、クラウ=ソラスが展開した障壁によってグレネードの爆発と冷気は防がれた。
「喰らいなぁ!風雷神槍!!」
「――――――」
更にフォルデが風と雷を宿した一撃を放つヴァンダールの槍技―――風雷神槍でクラウ=ソラスに攻撃したが、クラウ=ソラスは両腕を交差してガードした。
「お返しです!」
「――――――」
「おっと!」
フォルデは攻撃を防がれた後に反撃してきたクラウ=ソラスの攻撃を軽やかに側面に跳躍して回避した。

「二の型―――洸破斬!!」
「あうっ!?」
クラウ=ソラスの注意がフォルデに向かっている隙を突いたエリゼが無防備になっているアルティナの側面から神速の抜刀による鋭い衝撃波を放って命中させるとアルティナは怯み
「崩しました!」
「続きますわ!」
アルティナの態勢が崩れるとエリゼとリンクを結んでいるメサイアがアルティナに追撃をした。

「メーザーアーム――――斬!!」
「――――――!」
「「「!!」」」
体制を立て直すためにアルティナはクラウ=ソラスの両腕を光の刃と化させて周囲を切り刻まさせ、エリゼ達はクラウ=ソラスの反撃を回避する為に後ろに跳躍して一端アルティナから距離を取った。
「回復します―――アルジェムヒール!!」
「――――――!」
エリゼ達が自分達との距離を取るとアルティナはクラウ=ソラスに回復エネルギーを自分達に降り注がせて自分達のダメージを回復した。
「アークス駆動―――」
「させません―――シュート!!」
「あうっ!?」
続けてアルティナはアーツを放つためにARCUSを駆動させ始めたがステラの正確無比な狙撃によってARCUSの駆動は中断させられた。

「闘技―――月影剣舞!!」
「あぁっ!?」
「!?」
続けてメサイアは再びアルティナ達との距離を一気に詰めた後広範囲を攻撃する美しき剣舞でアルティナ達に攻撃し
「クク、見切れるものなら見切ってみな?ハァァァァァァ…………ッ!!」
メサイアに続くようにフォルデは広範囲に無数の連続突きを放つヴァンダール流の槍技―――スラストレインで追撃した。

「エニグマ駆動―――ダークマター!!」
「あぁぁぁっ!?何故、エニグマで”戦術リンク”が…………」
「――――――!?」
二人が攻撃している間にオーブメントの駆動を終えたステラは重力でアルティナとクラウ=ソラスを一か所に固めてダメージを与えつつ動きを制限し、ステラのアーツを受けたアルティナはステラの戦術オーブメントがARCUSでないにも関わらず戦術リンクを発動している事に困惑していた。
「闇を切り裂く金耀の一刀――――セイッ、ヤアッ!ハァァァァァァァ……!
そこに太刀に闘気による凄まじい光を纏わせたエリゼが光の長剣と化した太刀で閃光の速さでアルティナとクラウ=ソラスに十字架を刻み込むように十字(クロス)に斬った後、太刀に闘気を溜め込みながら空高くへと跳躍し
「絶―――閃鳳剣!!」
「あぁぁぁっ!?ミッション失敗…………理解…………できません…………」
「――――――!?」
空高くへと跳躍したエリゼが閃光の速さで太刀を振るうと光の鳳凰が凄まじいスピードでアルティナとクラウ=ソラスを襲って光の大爆発を起こし、エリゼが放ったSクラフトをその身に受けたアルティナとクラウ=ソラスは戦闘不能になり、戦闘不能になったアルティナは地面に崩れ落ち、クラウ=ソラスは地面に倒れた。

「光よ――――」
ルーファスは先制攻撃に騎士剣に光を纏わせてリィン達に突撃して騎士剣を振るい
「させるか!」
「斬!!」
リィンはルーファスが放ったクラフト―――アークブレイドを正面から受け止めた。
「何っ!?…………!」
自身の技を正面から受け止めたリィンに驚いたルーファスは反撃を警戒してすぐに剣を引いてリィンから距離を取ったが
「うふふ、どこに逃げているのかしら?」
「な――――」
「すごいねこアッパー!!」
「ガッ!?」
転移魔術でルーファスの背後を取ったベルフェゴールによるアッパーカットを受けて怯んだ。

「崩したわよ!」
「もらった!秘技―――裏疾風!斬!!」
「ぐうっ!?」
ルーファスが怯むとリィンはカマイタチを纏った電光石火の斬撃を叩き込んだ後更なる追撃に斬撃波を放ってルーファスに電光石火の2回攻撃を叩き込んだ。
「七色の光の矢よ――――プリズミックミサイル!!」
「エニグマ駆動――――カラミティエッジ!!」
「エニグマだと…………!?く…………っ!」
リィンとベルフェゴールの攻撃の間に魔術の詠唱とオーブメントの駆動を終えたセレーネとエリゼはそれぞれ七色の光の矢と漆黒の刃をルーファス目掛けて放ち、ルーファスはエリスが叫んだ言葉からリィン達がエニグマを使っていながら戦術リンクを発動させている事に驚きつつ自分に襲い掛かって来た魔術とアーツを間一髪のタイミングで回避した。

「(”鬼の力”を解放したリィン君と”転移”による奇襲をしてくる上一撃が重いあの女性とまともにやり合う訳にはいかない…………!)フフ、君には少しの間人質になってもらうよ!」
リィンとベルフェゴールの戦闘能力を警戒したルーファスはリィン達の中で圧倒的に実力が一番低いと思われるエリスを人質に取るためにエリスに向かってエリスの細剣(レイピア)目掛けて騎士剣を振るった。
「!甘く見ないでください!モータルクレッシェンド!!」
「何…………っ!?(バカな…………!ただの女学生だったエリス君が私の攻撃を見切っているどころか、これ程の反撃までできるとは一体どうなっている…………!?)」
しかしクロスベル侵攻が起こるまで予めベルフェゴールとの性魔術で身体能力等も上昇させたリィンがエリゼ達とも性魔術をしたことでエリゼ達もそれぞれ身体能力や魔力等も強化されていた為、リィンの性魔術によって身体能力等も強化されていたエリスはルーファスの攻撃を見切って回避した後反撃に荒々しいリズムで連続突きを放ち、ルーファスはエリスの実力の高さに困惑しながらエリスの攻撃を防いでいた。
「―――失礼!」
「っ!!」
そしてエリスの攻撃が終わるタイミングでセレーネはルーファスに冷気を纏った足払いで奇襲し、セレーネの足元からの奇襲にルーファスはギリギリのタイミングで回避した。

「―――緋空斬!!」
「聖なる盾よ―――守護せよ!!」
更にリィンが炎の斬撃波を放つとルーファスは結界―――― プラチナムシールドを展開して防いだ。
「レイ=ルーン!!」
「!!」
しかしベルフェゴールが放った極太の純粋魔力のエネルギーは直感で防ぐ事は不可能と悟ったルーファスは側面に跳躍して回避したが
「四の型・改―――紅蓮切り!!」
「グアッ!?アークス駆動……!」
「崩れなさい!」
「ぐっ!?しまった、ARCUSが…………!?」
リィンの魔力の炎を宿した太刀による一撃離脱技を受け、ダメージを受けたルーファスは状況を立て直す為に戦術オーブメントを駆動させたがエリスの狙いすました針の穴を通すような一撃のクラフト―――ブレイクニードルで戦術オーブメントの駆動は中断させられると共に”封魔”状態に陥った為、ルーファスはアーツを使えなくなってしまった。

「お兄様、エリスお姉様、下がってください!」
「「!!」」
その時全身に凄まじい魔力を纏い始めたセレーネはルーファスの近くにいるリィンとエリスに警告し、警告された二人はすぐにルーファスから距離を取った。
「ユミルで戦ったあの時にも貴方の命を奪う事を躊躇ったばかりに使わなかった事で後悔したこの力…………もう、躊躇いませんわ!グオオオオオオオオォォォォォォォッ!!」
「な―――――――」
全身に凄まじい魔力を纏ったセレーネは竜化し、竜化したセレーネを見たルーファスは驚きのあまり絶句した。

「氷金剛破砕撃 (ダイヤモンドアイスバースト)――――ッ!!」
「聖なる盾よ―――バカな!?」
竜化したセレーネは口から無数の氷の礫が混じった猛吹雪をルーファス目掛けて放ち、セレーネのドラゴンブレスを防ぐ為にルーファスは再び結界を展開したがドラゴンブレスは易々と結界を破壊してルーファスに襲い掛かった!
「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!?」
セレーネのドラゴンブレスを受けたルーファスは無数の氷の礫で全身から血を噴出させ、更にルーファスの全身のほとんどは凍結して、ルーファスは身動きすらできなくなった!
「明鏡止水――――我が太刀は生。見えた!――――うおおおおおっ!斬!!」
セレーネのドラゴンブレスを受けて瀕死かつすぐに動けない状態を見て好機と判断したリィンはその場で一瞬集中した後縦横無尽にかけながらルーファスに何度も斬撃を叩き込んだ後強烈な威力の回転斬りを放った。
「灰ノ太刀――――滅葉!!」
そしてリィンが太刀を鞘に収めた瞬間、鎌鼬が発生してルーファスに襲い掛かり、鎌鼬はルーファスの全身を切り裂いた!
「……………………?」
ルーファスは何故か一瞬で景色が変わった事に不思議そうな表情をしたが、眼下に頭部を失った自分の身体を見つけ―――
「おのれぇぇぇぇ―――!この私が”黄昏”が起こる前にこんな異国の地で果てるというのかぁぁぁぁ―――ッ!」
最後に絶命の言葉を口にし、憤怒と無念が混じったルーファスの生首はルーファスの遺体の傍に落ちた!

「ぁ……………………」
「―――エレボニア帝国クロスベル侵攻軍総大将ルーファス・アルバレア、メンフィル帝国軍リフィア皇女親衛隊所属にしてユミル領主の息子、リィン・シュバルツァーが討ち取ったり。」
ルーファスの絶命にアルティナが呆然としている中ルーファスの遺体の背後にいるリィンは静かな表情で宣言して太刀を鞘に収めた。するとその時ワルター中将達の殲滅とブリッジの制圧を終えたデュバリィ達が突入してきた。
「なっ!?こ、これは…………」
「…………どうやら今回の戦いの一番の大手柄は”灰色の騎士”達のようだな。」
「フフ、恐らくここに先回りしてルーファス・アルバレア達を撃破した様子だから、彼らの方はルーファス・アルバレアは離脱する考えに賭けて、その”賭け”に勝ったみたいね…………」
絶命しているルーファス達や戦闘不能に陥ったアルティナの様子を見たデュバリィが驚いている中、アイネスは感心した様子でリィン達を見つめ、エンネアは苦笑していた。

「ハハ…………これで正真正銘二度と”Ⅶ組”に戻れなくなったな…………”C”の仮面を取って素顔を表す事を決めたクロウもこんな気持ちを抱いていたのかもしれないな…………」
「「兄様…………」」
「お兄様…………」
「シュバルツァー…………」
寂しげな笑みを浮かべて呟いたリィンの様子をエリゼ、エリス、セレーネは心配そうな表情で見つめ、デュバリィは複雑そうな表情でリィンを見つめていた。
「オラ!何をしけたツラしてやがる!」
するとその時フォルデがリィンに近づいてリィンの背中を強く叩いた。

「フォルデ先輩………?」
「お前はエレボニアでできた大切な仲間達の為にメンフィル軍の一員として、今回の戦争でエレボニア帝国の連中をお前の踏み台にして”上”にのし上がる事を決めたんだろうが!そしてその第一歩として、お前はメンフィルが最も怒りを抱いている人物の一人にして今回の戦での”総大将”も務めている奴を討ち取って大手柄をその手に掴んだのだから、お前はもっと胸を張っていいんだぜ!」
「………先輩…………」
フォルデの励ましの言葉を聞いたリィンが驚きの表情でフォルデを見つめると一瞬フォルデとクロウが重なったように見えた。
「……………………ありがとうございます、先輩。そうだ…………こんな事でヘコんでいる場合じゃない…………戦争はまだ始まったばかりなんだ…………ルーファスさんを俺の”踏み台”にしたことを無駄にしない為にも、俺はもっと戦場で活躍して”上”を目指す…………!」
静かな笑みを浮かべてフォルデに感謝の言葉を述べたリィンは決意の表情を浮かべた。

「フフ、その意気です。」
「…………兄様に”喝”を入れていただき、ありがとうございます、フォルデさん。」
リィンの様子を見たステラは微笑み、エリゼはフォルデに会釈をした。
「ま、これも先輩の義務ってやつだよ。―――例えば”娼館”に連れて行って、”男”にしてやることとかもな♪」
「最後のその発言が全てを台無しにしていますよ、先輩…………」
エリゼの感謝の言葉に対して軽い様子で答えたフォルデが答えたある言葉にエリゼ達と共に冷や汗をかいて脱力したリィンは疲れた表情で指摘した。そしてすぐに気を取り直したリィンはアルティナに近づいて声をかけた。

「―――君にはメンフィル帝国が色々と聞きたいことがあるからルーファスさんと違って”捕縛”して、君が持つ情報を話してもらう事になる―――主に”黒の工房”について。」
「…………ルーファス卿が討たれ、クラウ=ソラスも無力化されて何もできなくなった私には抵抗の手段はありません。これよりメンフィル帝国軍に”投降”します。」
リィンの宣言に対してアルティナは少しの間目を伏せて黙り込んだ後目を見開いて投降を申し出た。
「ありがとう。リウイ陛下達も幼い君の命を奪う事までは考えていないとの事だし、”捕虜”になった君の身の安全についても何とかするから安心してくれ。―――エリゼ、早速で悪いが…………」
「―――それ以上は仰らなくてもわかっております。リフィア達にアルティナさんの身の安全をしてもらえるように後で頼んでおきます。」
「ああ、頼んだ。」
「………………………………」
敵であった自分の身の安全をする為の会話をしているリィンとエリゼの様子をアルティナは黙って見つめていた。

「フ、フン!敵だった者の為にメンフィルの皇族と近しい関係にある妹に頼るとはやはり甘い男ですわね!」
リィン達の様子を見守っていたデュバリィは鼻を鳴らして呆れた表情でリィン達に指摘したが
「フフ、そんな事を言っているけど、貴女も”黒兎(ブラックラビット)”を自分の手で捕える事ができれば、”灰色の騎士”のようにマスターに彼女の身の安全を頼むつもりだったのだからお互い様じゃない♪」
「ふっ、貴賓区画に突入した時はまさにその二つ名通り”神速”のような速さで全ての部屋を見て回っていたな。」
「や、やかましいですわ!」
エンネアとアイネスに茶化されると必死に反論し、その様子を見たリィン達は冷や汗をかいて脱力していた。

「ハハ…………今回の戦、デュバリィさん達には悪いが、アルティナの捕縛と今回の戦の大手柄であるルーファスさんの討伐は俺達が取らせてもらった。アルティナの件をわざわざ教えてくれたのに、それを横から掠め取るような事までして悪いとは思っているが…………」
「別に私達に謝る必要はありませんわ。公平な勝負の結果なのですから、それを否定するような愚かな事はしませんわ。」
「それに私達もクロスベル侵攻軍の”副将”の討伐とブリッジの制圧という手柄があるから、私達は私達で手柄があるから、あまり気にしなくていいわよ。」
「ルーファス・アルバレアの行動を読んだ上での待ち伏せと撃破…………―――見事だった。さすがは我らが”好敵手”と認めた者達だ。」
我に返ったリィンはデュバリィ達に近づいて声をかけ、リィンの謝罪に対してデュバリィは静かな表情で答え、エンネアは苦笑しながら浮かべながら答え、アイネスは口元に笑みを浮かべてリィン達を称賛した。
(うふふ、この戦争でご主人様がどれだけ素敵な男に成長するのか、楽しみね♪)
(はい…………不謹慎ではありますがこの戦争でリィン様は間違いなく様々な意味で大きく成長なさるでしょうね…………それこそ、かつてのお父様のように………)
一方リィン達の様子を見守っていたベルフェゴールの念話にベルフェゴールの隣にいたメサイアは頷いた後微笑ましそうにリィン達を見つめていた。

こうして…………エレボニア帝国による再度のクロスベル侵攻は失敗に終わり………エレボニア帝国はルーファスを含めた数人の貴重な優秀な人材に加えて、クロスベル侵攻に従軍した正規軍、領邦軍の兵士達を失うという大損害を被ることになった…………

また…………リィンは今回の戦の大手柄であるルーファスの討伐を評価されて、17歳という若さでありながら”少佐”へと昇進した――――
 
 

 
後書き
という訳でこの物語でもルーファスは早期退場しましたwwリィンの昇進は灰と違って控えめにはしてありますが、この調子でどんどん昇進させ続ける予定です。(というかもうこの時点でメンフィルが考えているエレボニアのある人物の処遇は決まっていて、それに関しては灰とほぼ同じですが)次回はクロスベルでの祝勝会と”彼女”との契約の予定ですが、もしかしたらリィンの使い魔陣営初である天使枠のキャラを出すかもしれませんw

 

 

第9話

メンフィル・クロスベル連合軍によるエレボニア帝国のクロスベル侵攻軍の迎撃・殲滅が終わった数時間後ロイド達はセルゲイとルファディエルからある説明を受けていた。

同日、PM4:30―――

~特務支援課~

「”祝勝会”、ですか?」
「ああ…………本日の夜19:00からメンフィル・クロスベル連合のお偉いさん達と今回の迎撃戦で活躍した連中をオルキスタワーに集めて祝勝会をするんだとさ。」
「内容は今回の迎撃戦で活躍した人物達への表彰と今回の迎撃戦の勝利を祝うパーティーよ。」
ロイドの疑問にセルゲイとルファディエルはそれぞれ説明し
「おいおい、勝ったのはあくまで侵攻軍の連中であって、エレボニア帝国にまだ侵攻すらもしていないのに”祝勝会”をするなんて、幾ら何でも早すぎねぇか?」
「まあ、メンフィルが味方についている時点で勝利は確定しているようなものではありますが…………」
二人の説明を聞いたランディは呆れ、ティオは静かな表情で呟いた。

「”クロスベル帝国”の建国から電撃的な速さで共和国を占領したとはいえ、クロスベル帝国はクロスベルの有力者達と正式な顔合わせ等をしていなかったから、その顔合わせも兼ねて”祝勝会”を開くそうよ。」
「後はまあ、エレボニア帝国との決着がつくまで戦争状態が続く事になるから、その合間に一息入れる事で戦争が続いている事で内心不安を感じているクロスベルの市民達を安心させる為でもあるそうだ。その証拠にクロスベル政府は今日限定でクロスベル中の飲食店に酒を含めたドリンクの類を一杯だけ無料にするように通達している。―――もちろん、その無料にする一杯分はクロスベル政府が負担するという内容でな。」
「ええっ!?一杯だけとはいえ、お酒を含めたドリンクが無料になるんですか…………」
「今頃飲食店は大忙しでしょうね…………一杯だけとはいえ、お酒が無料になるんですから、お客様も当然それを目当てにお店に足を運ぶと思いますし。」
「クロスベルがかつては”大陸最強”で呼ばれていたエレボニア帝国軍相手に勝利した事によるクロスベルの市民達の興奮も相まって市民達の財布のひもも緩くなるでしょうから、クロスベルの経済、市民達の感情を考えた上での合理的な政策でもあるわ。」
ルファディエルの後に説明したセルゲイの説明を聞いたノエルは驚き、セティは苦笑し、エリィは静かな表情で呟いた。

「え、えっと………その”祝勝会”?でしたっけ。その話を今、あたし達にもしたって事はもしかしてあたし達、”祝勝会”の警備とかを担当することになるんですか!?」
一方ルファディエルとセルゲイの話を聞いてある事を推測したユウナは興奮した様子で二人に訊ねた。
「ふふ、残念ながら”特務支援課”は”祝勝会”の警備を担当しないわ。」
「警備を担当するのは警備隊と一課の刑事達だ。――――――むしろ、支援課は”祝勝会”に関連する支援要請で今夜は大忙しになると思うぞ。」
「”祝勝会”関連で普段よりも大忙しになっている飲食店に関連する支援要請やトラブル、エレボニア人関連の支援要請に酔っ払いの保護等考えただけでもキリがありませんね。」
「ったく、下手したら今日は日をまたいでも仕事が終わらないんじゃねぇのか?」
「当然遊撃士協会も大忙しになるでしょうね…………」
「う~…………今日は寝る事ができるのかな…………?」
ユウナの期待に対してルファディエルは苦笑しながら否定し、口元に笑みを浮かべて答えたセルゲイの指摘に続くように推測を口にしたティオはジト目になり、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、エリナは苦笑し、シャマーラは疲れた表情で頭を抱えた。

「えっと………キーア、疲労を回復させるイーリュンの治癒術も使えるから疲れたらいつでもロイド達の疲れを癒してあげるよ!」
「えっと、えっと………それじゃあキーアはロイド達の仕事の合間に食べられるような軽食やエリィのおじいちゃんが大好物の”特製にがトマトシェイク”を作っておくね~♪」
二人のキーアの申し出を聞いたロイド達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引きつらせ
「え、えっと、キーアちゃん?軽食はともかく、あのジュースは確かに疲れがとれるかもしれないけど私達はどちらかというと苦手だから、別のジュースにして欲しいのだけど…………」
「しかも未来のキーアの治癒術による疲労回復も何だか無理矢理働かされるような感じもして、少々ブラックな気がするのですが…………」
我に返ったエリィは苦笑しながら、ティオはジト目でそれぞれ指摘した。

「クク…………―――それで話を”祝勝会”の件に戻すが…………まずはセティ、シャマーラ、エリナ。お前達はヴァイスハイト皇帝から”祝勝会”の参加を要請されている。」
「ほえ?どうしてあたし達が…………」
「多分私達がお父様―――ユイドラ領主の娘だからでしょうね。」
「私達はクロスベルにとっては他国から来ている有力者の関係者ですから、呼ばれてもおかしくないかと。」
セルゲイの話に首を傾げているシャマーラにセティとエリナはそれぞれ苦笑しながら説明し
「それとエリィ。できれば貴女も”祝勝会”に参加して欲しいと、ヴァイスハイト皇帝から要望が来ているわ。」
「え…………私もですか?一体どうして…………」
「それはやっぱりエリィ先輩がマクダエル議長の孫娘だからじゃないですか?既に議長から引退されたとはいえ、マクダエル議長は市長に当選してきた時からずっとクロスベルの人達が慕っていた政治家なんですから、マクダエル議長や議長のご家族であるエリィ先輩をそんな大事なパーティーに呼ばない方がおかしいと思いますし。」
ルファディエルに名指しされたエリィが呆けている中、ユウナが自身の推測をエリィに伝えた。

「ユウナの推測通り、マクダエル元議長も祝勝会に招待されているわ。…………まあ、エリィに関してはユウナが言っていた事もあるでしょうけど、かつての”特務支援課”の仲間としての気遣いで、将来政治や外交の道を進む事に決めているエリィの”社会勉強”やメンフィルとクロスベルの有力者達と顔見知りになって、様々な方面のコネクションを作る足掛かりにしてもらう為でもあると思うわよ?」
「あ……………………」
「……………………わかりました。せっかくの機会ですし、私も参加させて頂きます。」
ルファディエルの推測を聞いたロイドは呆けた声を出し、エリィは目を伏せて考え込んだ後目を見開いて答えを口にした。
「フフ、そう言うと思っていたわ。―――という事でロイド、貴方もエリィの付き添いとして”祝勝会”に参加しなさいね。」
「ええっ、俺が!?何で!?」
「あら、貴方は私と正式に婚約を結んでいるんでしょう?”黒の競売会(シュバルツオークション)”の時と違って今は偽の恋人関係どころか、本物の恋人―――いえ、婚約者同士の関係なのだから、今回の”祝勝会”に参加する私の婚約者として”祝勝会”に私と参加するのは当たり前じゃない。」
「そ、それは…………」
自分まで祝勝会に参加する事になるとは思わなかったロイドだったが、笑顔を浮かべたエリィの説明を聞くと反論をなくした。

(エリィさん、何気に自分がロイドさんの”正妻”であることを私達にアピールしている気がするのですが…………)
(アハハ、それはあたしも思ったよ~。)
(別に私達は”正妻”の座を奪うような事は考えていないのですが…………)
(さすがはエリィさん。やはり一番最初にロイドさんと恋人になっただけはありますね…………)
(アハハ、そうだね。これ見よがしに私達がいる目の前で堂々とロイドさんと婚約者同士である事も宣言しているし…………)
一方その様子を見守っていたセティ、シャマーラ、エリナは苦笑し、真剣な表情で呟いたティオの言葉に続くようにノエルは苦笑しながら答えた。
「それに貴方の事だから、例の”灰色の騎士”の事も気になっているのでしょう?彼と直接会って話す機会でもあるのだから、貴方にとってもちょうどいい機会だと思うわよ?」
「!あの”灰の騎神”を操縦していたエリゼさんのお兄さん――――”灰色の騎士”リィン・シュバルツァーか…………さっき、今回の迎撃戦で活躍した人達も参加するって言っていたけど、彼もやはり”祝勝会”に?」
ルファディエルの指摘に血相を変えたロイドは真剣な表情でルファディエルに訊ねた。

「ええ。―――というか、”祝勝会”のメインは彼よ?迎撃戦で侵攻軍の多くの空挺部隊を撃破した事に加えて侵攻軍の”総大将”まで討ち取ったから、表彰されるのは”灰色の騎士”―――リィン・シュバルツァー少佐だとの事だし。」
「ええっ!?そのリィン少佐って人はクロスベル侵攻軍の”総大将”まで討ったのですか!?」
「ああ、その手柄を評価されて”少佐”に昇進したとの事だ。」
ルファディエルのリィンの事についての説明に驚いたノエルにセルゲイがルファディエルの説明を補足した。
「おいおい…………空中戦での大活躍どころか”総大将”まで討ったのかよ、そのリィンって野郎は…………」
「そのクロスベル侵攻軍を率いていた”総大将”がどんな実力なのかはわかりませんけど、あの銀色の大きな戦艦―――”パンダグリュエル”でしたっけ?さすがにパンダグリュエルの中ではあの”騎神”って存在を操縦して戦う事はできないでしょうから、その”総大将”とはあたし達みたいに生身で戦って勝ったんですから、凄いですよね…………」
「「………………………………」」
セルゲイの話を聞いたランディは目を細め、ユウナは驚きの表情で呟き、二人のキーアは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「それとその表彰式の際にリィン少佐とヴァイスハイト皇帝の娘―――メサイア皇女の正式な婚約も発表するそうよ。」
「へ…………」
「む、娘!?やっぱりあの人、既に子供がいたんですか!?」
ルファディエルが口にした驚愕の事実に仲間達がそれぞれ驚いている中ロイドは思わず呆けた声を出し、ノエルは真剣な表情で声を上げた。そしてルファディエルはメサイアの事について説明した。
「並行世界の昔に生きていたリア充皇帝の娘の一人とか色々と無茶苦茶だな、オイ…………」
「そしてそんな人物がこちらの世界の現代に現れてそのリィンさんと出会った原因はどう考えても、”並行世界のキーア”の仕業でしょうね…………」
「「アハハ…………」」
説明を聞き終えたランディは疲れた表情で呟き、推測を口にしたジト目のティオに視線を向けられた二人のキーアは苦笑していた。

「それにしてもどうしてわざわざそのメサイア皇女殿下とリィン少佐の婚約を発表するんですか?ルファディエル警視の話によりますとヴァイスハイト陛下は元々お二人の婚約を認めていたとの事ですし…………」
「…………恐らく今回の戦で新たに生まれたメンフィル帝国の”英雄”であるリィン少佐と自国の皇女の婚約を世間に発表する事で、世間にメンフィルとクロスベルの関係がより強固になった事を知らしめて戦争で不安な気持ちを抱えているクロスベルの市民達の安心させる為だと思うわ。それとメンフィルと関係を深めている事で”クロスベルはゼムリア大陸最大にして最強の国家であるメンフィル帝国に国として認められて、既に国交を行っている事”で他国―――特にリベールやレミフェリアとの国交を開く足掛かりにする為でもある事も考えられるし、後は…………内戦終結の鍵となった事で恐らくエレボニア帝国でも”英雄”扱いされているであろうリィン少佐がメンフィル・クロスベル連合に所属している事をエレボニア帝国にも知らしめて、エレボニア帝国に混乱を起こす為でもあるかと思うわ…………」
「ったく、並行世界とはいえ自分の娘の婚約をそんなキナ臭い事に使うとか何考えてんだ、あのリア充皇帝は…………―――いや、向こうにはルイーネ姐さんもいるから、ひょっとしたらルイーネ姐さんの考えかもしれねぇが…………」
「どっちにしても、戦争や政治的な理由で婚約を利用されるお二人は可哀想ですよね…………」
ユウナの疑問に答えたエリィの推測を聞いたランディとノエルはそれぞれ疲れた表情で溜息を吐いた。

「――――表彰式は”祝勝会”の最初に行われるとの事だから、表彰式が終わって彼に対するマスコミの取材が終われば、彼も他の参加者達のようにパーティーに参加する事になっているから、もし彼に接触するのだったらその時に接触しなさい。」
「………わかりました。ロイド、有力者達が参加するパーティーに参加するのだから当然フォーマルな恰好に着替えてね。」
「あ、ああ。というか、そういった場で着る服は”黒の競売会(シュバルツオークション)”に潜入するために買ってもらった服しかないんだが…………ハハ、まさかこんな形で再び着る事になるなんてな。…………そういえばフォーマルな恰好で気になっていたけど、セティ達はどうするんだ?今からそう言った服が売っている店で買って、その場で着て行くのか?」
ルファディエルの説明に頷いたエリィはロイドに助言し、助言されたロイドは当時の事を思い返して苦笑した後ある事に気づいてセティ達に訊ねた。
「いえ、私達は既にユイドラからそれぞれ自分達のドレスを持ってきていますから、それを着て行きます。」
「ちなみにドレスは全部あたし達の手作りだよ♪」
「フフ、当時徹夜をしてまで作った事が懐かしく思えますね。」
ロイドの疑問にセティが答え、シャマーラとエリナの説明によってドレスをセティ達自身で用意した事実を知ったロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「さすがは”工匠に不可能はない”を公言しているウィルさんの娘さん達ですよね…………セティさん達の事ですから、その内自分達の家や本格的な工房も自分達だけで作るんじゃないんですか?」
「しゃ、シャレになっていないよ、ティオちゃん…………」
静かな表情で呟いたティオの推測にノエルは冷や汗をかきながら苦笑した。
「やれやれ…………ロイド達がパーティーを楽しんでいる間、俺達の方は仕事かよ。」
「普段以上の”残業”をする事は確実なのですから、臨時ボーナスを出しても罰は当たらないと思うのですが。」
「あ、あのなぁ…………」
「クク、パーティーに参加しないお前達の方は後日”臨時ボーナス”としてどの飲食店でも一回だけどれだけ注文を頼んでもヴァイスハイト皇帝達――”六銃士”の連中が負担するクロスベル中の全ての飲食店で使える特別無料券がそれぞれ支給され、更に”臨時休暇”として1日だけ有給休暇とは別の休暇がとれる事になっているぞ。」
疲れた表情で呟いたランディとジト目のティオの文句にロイドが疲れた表情で溜息を吐いている中セルゲイが口元に笑みを浮かべてランディ達にとって朗報となる情報を口にした。

「マジっすか!?それならやる気が出るってもんだぜ~♪」
「どの飲食店でもどれだけ注文を頼んでも無料になる特別無料券に加えて有給休暇とは別の休暇もくれるなんて、太っ腹ですね。」
「もう、二人とも幾ら何でもあからさま過ぎよ…………」
セルゲイの話を聞いてやる気になったランディとティオの様子を見たエリィは呆れた表情で溜息を吐いた。

「え、えっと………パーティーに参加しない人達って事はあたしもですか?」
「ええ、ユウナも支援課の一員なんだから当然ユウナにも特別無料券の支給と臨時休暇が与えられることになっているわよ。」
「そ、そうなんですか…………でも本当にいいんでしょうか…………?あたしは人手不足になっている特務支援課を手伝う為に警察学校から派遣されているのに…………」
臨時に派遣されている自分までランディ達と同じ扱いである事を肯定したルファディエルの答えを聞いたユウナは謙遜した様子で答え
「ふふっ、せっかくのご褒美なんだから遠慮せずもらっておいた方がいいと思うよ。」
「ええ…………それにユウナも今から一番忙しくなる時期に私達の分も働いてくれるのですから、そのくらいのご褒美があっても当然だと私も思いますよ。」
「ノエル先輩…………セティ先輩…………」
ノエルとセティの答えを聞くと嬉しそうな表情をした。

「さてと…………そうと決まれば私達は準備を始めないといけませんね。」
「メンフィルとクロスベルの有力者達がたくさんいるパーティーに参加しなければならないから、軽くシャワーは浴びておいた方がいいもんね~。」
「そうね。”黒の競売会(シュバルツオークション)”の時とは訳が違うもの。―――そういう訳だから、ロイドも着替える前にシャワーを浴びておいてね。」
「ハハ、わかったよ。」
エリナの言葉に続くように呟いたシャマーラの言葉に頷いたエリィはロイドにも自分達と同じ事をするように伝え、ロイドは苦笑しながら答えた。

その後、ランディ達が仕事を再開する為に行動を開始している中ロイド達はシャワーを浴びてフォーマルな服装に着替えた後――――”祝勝会”が開かれるオルキスタワーへと向かった―――
 
 

 
後書き
予告とは違う内容にしてしまってすいません(汗)ロイド達の話もちょっとだけ書こうと思って書いたのですが、気づいたら結構長く書いてしまったので一つの話として更新する事にしました(汗)なので前の話で予告した内容は次の更新です………… 

 

第10話

同日、19:00―――

エレボニア帝国によるクロスベル侵攻軍を殲滅したその日の夜、オルキスタワーにて”祝勝会”が開かれていた。


~オルキスタワー・35F~

「―――リィン・シュバルツァー少佐、今回のエレボニア帝国によるクロスベル侵攻軍に対して行われた迎撃作戦での貴殿の活躍を評し、感謝状を与える。」
「―――謹んで頂戴致します。」
メンフィルとクロスベルの有力者達が注目している中リィンがヴァイスから感謝状を受け取るとその場にいる全員が拍手をしている中マスコミ達はそのシーンを写真にする為に一斉にフラッシュをたいた。
「本当ならば感謝状の他にも勲章や褒美も与えたい所だが、メンフィル帝国軍に所属している貴殿にクロスベルから過度の褒美等を与える訳にもいかないのでな。与えるのが感謝状だけになってすまないな。」
「いえ、メンフィル帝国軍からも既に今回の迎撃戦での活躍の件で若輩の身でありながら”少佐”に任命して頂きましたし、何よりも陛下にとって大切なご息女であられるメサイア皇女殿下との婚約も許して頂いたのですから、自分にとっては貰い過ぎだと思っているくらいです。」
苦笑しながら答えたヴァイスの謝罪に対してリィンは謙遜した様子で答えた。

「フッ、”上”を目指している割には欲がない男だ。―――まあ、そんな所もメサイアが惹かれているのかもしれないな。―――メサイア、リィン少佐の隣に。」
「―――はい。」
リィンの答えを聞いたヴァイスは静かな笑みを浮かべてルイーネ達と共に見守っているメサイアに視線を向け、視線を向けられたメサイアは静かな表情で会釈と共に返事をした後リィンの隣に移動した。
「皆に紹介しよう。彼女の名前はメサイア。俺の側妃の一人―――マルギレッタの親類に当たる人物だが様々な事情があって俺とマルギレッタの”養子”にする事にした。そしてそのメサイアはリィンと数奇な出会いを得て将来を共にする事を誓い、俺達も娘の意志を組んで二人の婚約を認める事にした。」
「この婚約もまた我らメンフィルの盟友たるクロスベルとの関係を強化する切っ掛けにもなるであろう。また、メサイア皇女自身もリィンと共に今まで戦場を共にしてきたのじゃから、メサイア皇女はメンフィルにとっても”戦友”である!」
「エレボニア帝国との戦争はまだ始まったばかりだが…………今夜はクロスベルを侵攻しようとしたエレボニア帝国に勝ったメンフィル・クロスベル連合による勝利とメンフィルの新たなる”英雄”とクロスベルの皇女の婚約を祝ってやってくれ!」
ヴァイス、リフィア、ギュランドロスの宣言にその場にいる全員は拍手をし、マスコミ達はフラッシュをたいてヴァイス達の写真を撮っていた。

「―――それでは皆、グラスを手に持ってくれ。」
そしてヴァイスの言葉を合図にその場にいる全員は酒やソフトドリンクが入ったグラスを手に持ち
「「「メンフィル・クロスベル連合の輝かしい未来と二人の婚約に乾杯!!」」」
「乾杯!!」
ヴァイス、ギュランドロス、リフィアが掲げたグラスを乾杯させるとその場にいる全員もグラスを上げた。

「リィン少佐!今回の迎撃戦による活躍を評価され、昇進した今のお気持ちをお願いします!」
「リィン少佐!メサイア皇女殿下との出会い、婚約まで発展した経緯をお願いします!」
「リィン少佐はエレボニアの内戦終結の鍵となったエレボニアの若き英雄―――”灰色の騎士”と同一人物であるという情報が入っているのですが、真偽をお願いします!」
「リィン少佐はヴァイスハイト皇帝陛下のように、メサイア皇女殿下以外にも複数の婚約者がいらっしゃっているという情報もありますが、その真偽についてもお答えいただきたいのですが!?」
「え、えっと………」
パーティーが始まるとグレイスを含めたマスコミ達は一斉にリィンに集まってインタビュー等を求め、マスコミ達に迫られて冷や汗をかいたリィンが困惑しながら答えを濁していたその時
「――――――これより、リィン・シュバルツァーに対する取材の時間を設けるが、取材の時間は30分に制限させてもらう。」
「マスコミの皆さんもご存知のように、リィンさんは迎撃戦を終えたばかりの為疲れもまだ残っていますので取材の時間はこちらの判断で30分と決めさせていただきましたので、ご理解の方をお願いします。」
「その代わりと言ってはなんですが、メサイア様と同じ兄様の義妹の一人にして婚約者の一人でもある私―――エリゼ・シュバルツァーで答えられる事でしたら答えますので、兄様への取材時間を制限させる件はそれでお許しください。」
ゼルギウス、シグルーン、エリゼが横に入ってマスコミ達の応対を始めた。その後ゼルギウス達の応対のお陰で無事にマスコミ達による取材を終えたリィンはマスコミ達から離れた。

「つ、疲れた…………迎撃戦の時よりも疲れた気がする…………(ゼルギウス将軍閣下達やエリゼには感謝しないとな…………)」
マスコミ達から距離を取ったリィンは疲れた表情で溜息を吐いた後マスコミ達による自分への取材時間を短くした代わりに自分達がマスコミ達の取材に答えている様子のゼルギウス、シグルーン、エリゼを見つめてゼルギウス達の気遣いに感謝した。
「全く…………あの程度で疲れるなんて、まだまだ未熟である証拠ですわよ。」
するとその時デュバリィがリィンに声をかけ、アイネスとエンネアと共にリィンに近づいた。
「デュバリィさん。それにアイネスさんとエンネアさんも。」
「フフ、マスコミ達の取材、お疲れ様。」
「まあ、其方同様今回の迎撃戦で活躍した我等もこの後マスコミ達への取材が待っているとの事だから我らも他人事ではないから、他人の事は言えないがな。―――特に我らの場合、クロスベル動乱時は一応ディーター元大統領側に協力していたからな。その件も突いてくる可能性があることを考えると、ある意味我らの方がマスコミ達に対する発言を慎重にすべきかもしれんな。」
エンネアはリィンを労い、アイネスは苦笑していた。

「ハハ…………それにしても、デュバリィさんもそうだが、”鉄機隊”の人達の甲冑姿以外の恰好を見るのは新鮮だな…………」
アイネスの発言に冷や汗をかいて苦笑したリィンは気を取り直してそれぞれフォーマルな格好をしているデュバリィ達を見回した。
「まあ、馬子にも衣裳というものだからあまり気にしないでくれるとありがたい。」
「フフ、でも元”貴族”のデュバリィはシュバルツァー少佐のように自然に着こなしいるけどね。」
「え…………」
「ちょっ、他人の過去を許可もなく言わないでください!」
リィンの言葉に対してアイネスが苦笑している中デュバリィに視線を向けたエンネアの言葉にリィンが呆けている中デュバリィはジト目で反論した。

「えっと………もしかして聞いたら不味い内容だったか?」
「………別に不味くはありませんわ。隠しているという訳でもありませんし。貴方に教える機会が偶然なかっただけですわ。」
「偶然以前に、我らはついこの間までは敵対関係であったのだから、そのような機会がある方がおかしいのだがな。」
苦笑しながら聞いていたリィンに対してデュバリィが気まずそうな表情で答え、アイネスが苦笑しながら答えたその時
「――――フフ、ですが今では肩を並べて共に剣を振るう”戦友”の関係となったのですから、自然とお互いの事をよく知る事になると思いますよ。」
リアンヌがリィン達に近づいて声をかけた。

「え――――――」
「マスター!」
リアンヌの登場にリィンが呆けている中デュバリィは嬉しそうな表情で声を上げ
「こうして顔を合わせるのは初めてになりますね。―――我が名はリアンヌ・ルーハンス・サンドロット。かつては結社の”蛇の使徒”の一柱でありましたが…………私にとっての真なる主たるリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下への忠誠の為に陛下達と共に結社の”盟主”を討伐し、お二方の身を守る騎士となった者です。」
「という事は貴女がデュバリィさん達の主である”鋼の聖女”…………――――お初にお目にかかります。自分はユミル領主の息子、リィン・シュバルツァーと申します。かつてはエレボニア帝国のトールズ士官学院――――”Ⅶ組”に所属していましたが、諸事情によってトールズを辞め、メンフィル帝国軍に所属する事になりました。」
リアンヌが自己紹介をするとリィンは呆けた表情でリアンヌを見つめた後自己紹介をした。

「ええ、勿論貴方がドライケルス殿が建てた学び舎で”放蕩皇子”がエレボニアの”新たなる風”の一員になる事を期待していた者の一人である事は存じています。」
「…………恐縮です。その…………失礼を承知でサンドロット卿について伺いたいのですが…………サンドロット卿は250年前ドライケルス大帝と共に”獅子戦役”を終結させたエレボニアの英雄である”槍の聖女”なのでしょうか?」
リアンヌの言葉に対して謙遜した様子で答えたリィンは真剣な表情でリアンヌに問いかけた。
「フフ、正確に言えばこの身体の持ち主はそうなのですが、私自身は違いますよ。」
「へ…………」
「マ、マスター!何もシュバルツァーにそこまで教えなくても…………!」
リアンヌの答えを聞いたリィンが呆けている中デュバリィは慌てた様子で指摘した。

「いえ、彼に関しては構いません。この身体の持ち主である”リアンヌ・サンドロット”も彼の事を随分と気にしていましたので。」
「へ。」
「え…………サンドロット卿――――”槍の聖女”がシュバルツァーの事を?」
「一体何故…………」
リアンヌの答えを聞いたデュバリィは呆けた声を出し、エンネアとアイネスは戸惑っていた。
「…………その件については後で教えます。それよりも私の”正体”の事についてですが――――」
そしてリアンヌはリィンに自身の正体を教えた。

「ええっ!?あ、貴女が”メンフィルの守護神”と称えられていた伝説の聖騎士――――シルフィア・ルーハンス卿の生まれ変わりだったなんて…………!しかもその生まれ変わり先がエレボニアの伝説の”槍の聖女”だと仰いましたが、一体何故250年以上前の人物が今も生きているのでしょうか…………?」
「フフ、それについては機会があれば答える時があるでしょう。―――貴方との邂逅を望む者達が他にもいるようですし、我々はこれで失礼します。――――行きますよ、デュバリィ、アイネス、エンネア。」
「「「ハッ!」」」
自分の正体を知って驚いているリィンに対して答えたリアンヌはある方向に視線を向けた後デュバリィ達と共にリィンから離れた。
「ハハ…………やっぱり俺達が君に話しかける機会を伺っていた事に気づいていたようだね。」
「さすがは結社最強の”鋼の聖女”にしてエレボニアの伝説の英雄―――”槍の聖女”よね…………」
するとリアンヌが視線を向けた方向からロイド達が現れてリィンに近づいた。

「貴方達は一体…………」
「―――初めまして。俺はロイド・バニングス。クロスベル警察”特務支援課”のリーダーをやっている者だ。よろしく。」
「同じくクロスベル警察”特務支援課”のサブリーダーを務めているエリィ・マクダエルです。以後お見知りおきを、リィン少佐。」
「私はユイドラから”特務支援課”に出向しているユイドラ領主の娘の長女――――セルヴァンティティ・ディオンです。親しい人達からは”セティ”という愛称で呼ばれていますので、よければリィン少佐も私の事を”セティ”と呼んでください。」
「あたしの名前はシャマーラ。シャマーラ・ディオン!セティ姉さんの妹の一人でーす!よろしくね♪」
「………同じくセティ姉様のもう一人の妹のエリナ・ディオンと申します。お初にお目にかかります、”灰色の騎士”――――リィン・シュバルツァー少佐。」
初対面の自分達を呆けた様子で見つめているリィンにロイド達はそれぞれ自己紹介をした。

「”特務支援課”…………それじゃあ貴方達がクロスベル動乱時、エリゼが協力していたディーター・クロイス元大統領に抵抗していた勢力の…………」
「ああ、エリゼさんにはその節もそうだけど”西ゼムリア同盟会議”でもお世話になったよ。」
「そして今回の迎撃戦ではエリゼさんに加えてエリゼさんの妹であるエリスさん、そしてお二方の兄君のリィン少佐にお世話になったのだから、クロスベルは”シュバルツァー家”と奇妙な縁ね。」
「ハハ、こちらの方こそ(エリゼ)が世話になったんだからお互い様さ。…………それと俺の事は”リィン”でいい。お互いそう年も離れていないし、俺自身”少佐”になったのが今日からでまだ呼ばれ慣れていない事もそうだが、メンフィル軍の所属でもないロイドさん達にまでそう呼ばれると何だか別人のようにも感じるしな。」
「だったら俺達の事も呼び捨てでいいよ。――――改めてよろしく、リィン。」
「ああ、こちらこそよろしく、ロイド。」
そしてリィンとロイドは互いに握手をした。

「ねえねえ、リィンさん!”灰の騎神”だっけ?もしリィンさんがよかったら、今後の”工匠”としての技術力を高める為に”灰の騎神”のデータを取らせて欲しいんだけどやっぱりダメかな?」
「シャマーラ、”灰の騎神”はリィンさんにとって大切な存在であり、メンフィル軍にとっても重要な兵器なのですから、幾ら何でも無理な注文ですよ、それは。」
「妹が無茶な事を言ってすいません、リィンさん。」
興味ありげな様子で聞いてきたシャマーラにエリナは指摘し、セティはリィンに謝罪をした。
「いや、別に気にしていないから大丈夫だよ。それに俺の方が、君達――――”工匠”に用があったから、ここで会えて何よりだよ。」
「ほえ?リィンさんがあたし達に?」
「もしかして我々に何か作って欲しい物でもあるのでしょうか?」
リィンの話を聞いたシャマーラは首を傾げ、エリナは不思議そうな表情で訊ねた。

「作って欲しいというか改良かな?君達”工匠”の技術力はゼムリアだけでなくディル=リフィーナでも秀でている話は噂には聞いているし、実際ヴァイスリッターの太刀は君達の父親――――”匠王”ウィルフレド卿が作成した上エリゼの武装も君達が作ったと聞いているから、君達ならヴァリマールの”太刀”をより強力な物に仕上げる事ができると思っているんだ。」
「”ヴァリマール”というと…………あの灰色の機体――――”灰の騎神”の事だよな?」
「どうしてセティちゃん達に改良の依頼を?端末で戦況を見ていたけど、特に問題ないように見えたけど…………」
リィンの依頼を聞いたロイドとエリィはそれぞれ不思議そうな表情をした。
「”エレボニア帝国征伐”が本格的になれば、当然内戦時に出てきたエレボニアの新兵器――――”機甲兵”とも何度もやり合う事になるだろうから、なるべく時間をかけずに”機甲兵”を撃破できる程の威力の武装ができれば欲しいと思っているんだ。機甲兵とは内戦時にもやり合ったが、ゼムリアストーンで加工された特製の”太刀”でも”大破”に持っていくことすらそれなりに時間がかかったんだ。―――だから、俺は今より強力な武装が手に入る機会があれば手に入れたいと思っている。――――”戦場”で素早く敵を撃破する事で味方への損害を減らす事もそうだが…………何よりも戦争を少しでも早く終わらせる事で、内戦、そしてメンフィル・クロスベル連合との戦争で苦しんでいるエレボニアの人達を戦争による苦しみから解放する為さ。…………まあ、エレボニア帝国に侵略する側であるメンフィル軍に所属している俺がそんな事を言える筋合いはないけどな…………」
「リィンさん…………」
「…………一つだけ聞いていいかい?」
リィンの答えを聞いたエリィが複雑そうな表情をしている中、目を伏せて黙って考え込んでいたロイドは目を見開いて静かな表情でリィンに問いかけた。

「?」
「君がエレボニアの内戦の件も含めてエレボニアで起こった様々な問題をエレボニアの仲間達と共に乗り越えた話は人伝で聞いている………その君が今回の戦争にメンフィル・クロスベル連合側として参加した理由は君達の故郷である”ユミル襲撃”の件に対する怨恨等ではなく、エレボニアで結んだ”絆”―――仲間や知り合いの人達の為なのか?」
「……………………――――ああ。例えアリサ達――――”Ⅶ組”と敵対関係になったとしても、今回の戦争に参加した事はエレボニアの人達の為でもある事は断言できる。」
ロイドの問いかけに一瞬目を丸くして驚いたリィンはすぐに静かな表情で頷いて答えた。
「それで話を戻すけど、ヴァリマールの”太刀”の改良の件はどうかな?予めメンフィル軍にも話を通して許可を取っているから、太刀の改良の際に必要となるヴァリマールの情報を君達が収集する許可も出ているし、”報酬”もメンフィル軍が支払ってくれることになっているから、後は君達が承諾してくれるだけでいいんだが…………」
「「「……………………」」」
リィンに問いかけられた三姉妹はその場で少しの間黙り込んで互いの視線を交わしてリィンを見つめて答えを口にした。

「―――その依頼、喜んで受けさせて頂きます。」
「本当だったら”戦争”に直接関わる”兵器”に関する依頼を請けるつもりはなかったんだけど…………武器の改良や強化だったら、ギリギリ許容範囲だからね。」
「―――”騎神”の武装の改良に限らず、リィンさん自身や今回の戦争で一緒に戦う事になるリィンさんの仲間の方達の武装の開発や強化等も請け負いますので、時間ができれば中央通りにある支援課のビルを訊ねてください。」
「ありがとう。だったら明日早速訊ねさせてもらうよ。幸いにも今回の迎撃戦で参加したメンフィル軍の一部は俺も含めて次の軍事作戦が行われるまでクロスベルに待機する事になっているしな。―――それじゃあ、俺は他にも挨拶する人達がいるからこれで失礼するよ。」
セティ達の答えを聞いたリィンは感謝の言葉を述べた後ロイド達から離れた。

「…………それでどう感じたのかしら、ロイド。”灰色の騎士”―――リィンさんと実際に話してみて。」
「そうだな…………―――少なくても彼は今回の戦争、”メンフィル人として”でもなく”軍人として”でもなく、”エレボニアで結んだ絆を大切にしているリィン・シュバルツァー自身として”参加している事はよく理解できたよ。」
リィンがその場を離れた後のエリィの問いかけにロイドは静かな表情でリィンに関する事を答えた。

その後パーティーで食事を取りながら談笑しているエリス達、メサイアと談笑しているマルギレッタとリ・アネスへの挨拶回りをしながら食事をとったリィンはパーティーの空気で火照った身体を冷やす為に人気のない場所で外の空気を吸おうと思い、パーティー会場を出てエレベーターで屋上に向かって屋上に出るとそこにはある人物が屋上で夜空を見上げていた。


~屋上~

(?あの女性はどこかで見たような…………)
夜空を見上げている人物――――アイドスの後ろ姿を見たリィンが眉を顰めたその時、アイドスは振り向いてリィンを見つめた。
「こんばんわ。こうして会うのはローエングリン城以来になるわね。」
「え…………――――!アイドスさんですか………!お久しぶりです。一体どうしてこちらに?」
(ん?”アイドス”って古神――――”慈悲の大女神”と同名だけど、本人である訳…………ないはずよね?確か”慈悲の大女神”は”神殺し”との戦いに敗れて滅んだって話だし。)
自分に近づいてきて声をかけたアイドスの言葉に一瞬呆けたリィンはすぐにアイドスの事を思い出して驚き、二人の会話を聞いていたベルフェゴールは不思議そうな表情をしていた。

「星々の導きによると、今夜ここに貴方が必ず来る事がわかったからここでずっと待っていたわ。」
「??えっと………俺に用があってここにいたみたいですけど…………一体俺に何の用なのでしょうか?」
アイドスの答えが理解できなかったリィンは不思議そうな表情でアイドスに訊ねた。
「それを答える前にまずは今回の迎撃戦で活躍して、”英雄”と呼ばれるようになった事…………”おめでとう”と言っておくわ。」
「ハハ、”英雄”だなんて俺には過ぎた異名ですよ。まだ最初の戦いで他の人達より多少活躍した程度で戦争は始まったばかりですし…………エレボニアでも”英雄”と呼ばれるような偉業もしていないんですけどね…………」
「フフ、リィンは自分に対する評価は低いのね。―――それも、エレボニアで結んだ”絆”を断とうとしている事に関係しているのかしら?」
「!…………どうしてそんな質問を俺に?」
アイドスの指摘に目を見開いたリィンは複雑そうな表情でアイドスにアイドス自身の意図を訊ねた。

「―――それを答える前にまずは私の”正体”について教えるわね。」
「へ…………」
そしてアイドスの言葉を聞いたリィンが呆けたその時、アイドスは一瞬で屋上全体を結界で覆った。
「”結界”!?それも一瞬でこんな大規模なものを…………!アイドスさん、貴女は一体…………」
「―――”慈悲の大女神アイドス”。それが私の”正体”よ。」
(ハアッ!?まさか本当に”慈悲の大女神”自身だなんて…………一体どうなっているのよ!?)
「”慈悲の大女神”って………ええええええええええええっ!?じゃ、じゃあまさかアイドスさん―――いえ、アイドス様は本物の”女神”なのですか…………!?」
アイドスが自己紹介をするとベルフェゴールは驚き、一瞬呆けたリィンは驚きの声を上げた後信じられない表情でアイドスを見つめた。

「ええ、そうなるわね。」
「えっと………今更な質問ですけど、どうして”女神”であるアイドス様が”ローエングリン城”に?」
「フフ、そのことも含めて”私”について教えてあげるわ――――」
そしてアイドスはリィンにかつての自分が歩んだ”軌跡”や自分が現世に蘇った理由を説明した。

「…………………………その…………正直、何て言ったらいいかわかりません…………」
アイドスの壮絶な過去を聞き終えたリィンは申し訳なさそうな表情で謝罪した。
「フフ、気にしないで。貴方の反応は当然だし、それにキーアのお陰で、私はこうして蘇り……私のせいで運命が狂ったアストライアお姉様とセリカ(お姉様が愛する人)が”(エステル)”によって救われたんだから。かつて裏切られた”人”によって”神”が救われ、そしてエステル―――”人”が多くの異種族に加えて女神と共に生き、笑い合っているんだから。……それだけでも私にとっては心から嬉しい出来事だわ。私の目指した”道”は決して間違っていない事が証明されたのだから。」
一方謝罪されたアイドスは優し気な微笑みを浮かべて答えた。

「そうですか…………カシウス師兄のご息女であるエステルさん…………色々と話は伺っていますが、本当に凄い人物ですね…………それに比べて俺は…………」
「…………今度は私が貴方に聞く番ね。ねえ、リィン。どうして貴方は自らが結んだ”絆”を断とうとする事――――今回の戦争に貴方が結んだ”絆”と敵対する関係を選んだのかしら?」
辛そうな表情を浮かべたリィンに対してアイドスは静かな表情で問いかけた。
「…………それは――――」
そしてリィンはアイドスに戦争に参加した理由を説明した。

「…………そう。貴方は貴方自身が結んだ”絆”の為に今回の戦争は、その人達とは別の道を歩むことにしたのね…………―――でも、リィンはわかっているの?その道は辛く険しく、例え貴方の目的であるエレボニアの滅亡を防げたとしても、その人達と以前のような関係に戻れる可能性はほとんどない事に…………」
事情を聞き終えたアイドスは静かな表情で呟いた後リィンに問いかけた。
「―――はい。全て覚悟の上です。」
「………………………………うん、例え世界は違っても貴方は貴方であることがよくわかったわ。」
リィンの決意の表情を少しの間見つめたアイドスは納得した様子で頷き
「へ…………」
アイドスの答えを聞いたリィンは呆けた声を出した。

「………そう言えば私がここに来た理由をまだ言ってなかったわよね。―――私がここに来た理由は一つ―――”人”を良く知る為に貴方と共に”道”を歩む為に来たのよ。」
「お、俺と共に”道”を歩むって、ま、まさか……!」
アイドスの答えを聞いてアイドスが自分と”契約”しようとしている事に気付いたリィンは信じられない表情をしてアイドスを見つめたその時、アイドスは身に纏っている服のボタンを外してなんと下着もつけていない胸を顕わにした。
「あわわわわわわっ!?―――んんっ!?」
そしてアイドスは自分の扇情的な姿を見て混乱しているリィンの唇を口付けで封じ
「フフ、貴方がここに来た時に認識障害の結界を展開したから、私が結界を解くまでこの場には誰も来ないから、慌てなくていいわよ。それじゃあ始めるわね?”契約”の”儀式”を――――」
リィンに”性魔術”を施してリィンと契約し、リィンが装備していた太刀――――利剣『緋皇』に宿り、女神であるアイドスが宿った事によって太刀は形態を変えると共に”慈悲の大女神アイドス”の膨大な神力を纏わせた”神剣”―――『神剣アイドス』に生まれ変わり、更にアイドスとの性魔術によってリィンを長年苦しめていたリィンの心臓に秘められていた”鬼の力”は浄化され、その代わりに”慈悲の大女神”であるアイドスの神力による加護でリィンの”神気合一”が強化された!

「フフ、まさか復活した私が”処女”だったなんて、私自身も驚いたけど……よかった……私が選んだ人に”処女”を奉げる事が出来て……”処女”の身体を持つ私を復活させた”並行世界のキーア”に感謝しないとね……アストライアお姉様……ようやく私もお姉様のように心から信頼できる人を見つたわ…………これからよろしくね、リィン………ん……」
契約を終え、リィンが持っていた太刀に宿った後すぐにリィンの傍に現れたアイドスは優しげな微笑みを浮かべて迎撃戦の疲れに加えて自分との”性魔術”による疲労で眠っているリィンに膝枕をしてリィンの頭を優しく撫でながら見つめた後リィンの唇に口付けをした。
「あ…………!お兄様がいましたわ…………!」
「リィン様の他にも女性がいらっしゃるようですが、あの女性は一体…………」
するとその時リィンがパーティー会場からいなくなった事を心配してリィンを探していたエリゼ、エリス、セレーネ、メサイア、フォルデ、ステラがリィンとアイドスに近づいてきた。

「リィンの仲間の人達や恋人の人達かしら?」
「は、はい…………貴女は一体…………」
アイドスの問いかけにエリスは戸惑いながら答えた後アイドスの正体を訊ねた。
「―――私はアイドス。”慈悲の大女神アイドスよ”。リィンと”契約”を交わしてリィンの太刀として、貴女達のようにリィンと将来を共に歩むことに決めたからよろしくね。」
アイドスの答えを聞いたその場にいる全員は衝撃のあまり石化したかのように固まり
「…………あ~…………ちょいと酒を飲み過ぎたか?今、俺の耳に”女神”がリィンと”契約”を交わした上リィンの新たなハーレムの一員になったと聞こえたんだが…………」
「い、いえ…………フォルデ先輩の気のせいじゃないです。アルコールを飲んでいない私の耳にもハッキリとそう聞こえましたし…………その証拠にリィンさんの太刀から凄まじい聖なる魔力まで感じますし…………」
逸早く我に返ったフォルデは疲れた表情で呟き、ステラは冷や汗をかいて表情を引き攣らせながら『神剣アイドス』を見つめて答えた。

「ちょ、ちょっと待ってください!先ほど貴女は”慈悲の大女神”と名乗りましたわよね!?という事は貴女は私達の世界の神――――それも”古神(いにしえがみ)”なのですか!?」
「ええ、一応そうなるわね。―――あら?貴女達は確か”セレーネ”と”エリゼ”だったわよね?フフ、久しぶりね。特にセレーネは前に会った時と比べると随分と見違えたわね。」
「は、はい…………あの後、色々あって”成竜”と化した為、このような姿に成長したのですが…………」
「…………お久しぶりです、アイドス様。不躾な質問で申し訳ないのですが…………何故アイドス様が、兄様とそのような関係に?レグラムでの特別実習の際にローエングリン城で兄様たちと邂逅した話は伺っておりますが…………」
一方アイドスの正体に心当たりがあるメサイアは血相を変えてアイドスに確認し、メサイアの問いかけに頷いたアイドスはセレーネとエリゼに気づくとエリゼに微笑み、声をかけられたセレーネは戸惑いながら答え、エリゼは戸惑いの表情でアイドスに問いかけた。
「そうね…………一言で言い表すならば”押しかけ女房”と言うべきかしら?」
アイドスの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「フフ、そういう訳だからこれからよろしくね。それじゃあ私は一端太刀に戻るからリィンの事、お願いね。」
そしてアイドスはリィンの太刀に戻った。
「…………………え、えっと………とりあえずリィンさんはベルフェゴール様に続いて心強い仲間ができたと思うべきなのでしょうか?」
「”心強い”ってレベルじゃねぇだろ…………”魔神”を使い魔にしている時点ですでに”チート”と言ってもおかしくない戦力なのに、そこに”女神”まで加わるとか、こいつの女運は一体どうなっているんだと俺でも突っ込みたいくらいだぜ…………しかし、リィンが女神と”契約”を交わした話をゼルギウス将軍閣下達が知れば、間違いなく驚くだろうぜ。いや~、あの将軍閣下達が驚く顔が今から楽しみだぜ~。」
「そしてゼルギウス将軍閣下達からアイドス様の件がリフィア殿下やリウイ陛下達にも伝わって、メンフィル皇族の方々まで驚かせることになるのでしょうね…………」
我に返って苦笑しながら呟いたステラの言葉に疲れた表情で溜息を吐いて答えたフォルデは口元に笑みを浮かべ、セレーネは苦笑し
「ハア…………ちょっと目を離した隙に増やすなんて…………それもその相手が”古神”だなんて…………」
「ベルフェゴール様の件といい、メンフィル軍に所属してからの兄様の”悪い癖”が明らかに酷くなっていますよね…………」
エリゼとエリスはそれぞれ疲れた表情で頭を抱えて溜息を吐いた。

~帝都クロスベル・中央通り~

「速報です!今回の迎撃戦での活躍を評されて、メンフィル帝国軍の少佐に”昇進”し、ヴァイスハイト陛下から感謝状を授与されると共にメサイア皇女殿下との婚約が発表されたメンフィル帝国の新たなる英雄―――リィン・シュバルツァー少佐はエレボニアの内戦終結の鍵となったエレボニアの若き英雄”灰色の騎士”と同一人物との事です――――」
「え…………い…………ゆ…………う…………?」
中央通りに設置されている臨時の巨大モニターに市民達の一部が注目している中、天使の女性――――天使階級第七位”権天使(プリンシパティウス)”ユリーシャは虚ろな目でモニターに映るリィンの写真を見つめてグレイスの解説を聞いていた。
(けが)されなければ…………我が主がいる世界すらからも追放され…………我が主の為に…………この身を(けが)す事すらできなくなった…………壊れた天使である…………この身に唯一できる”英雄”への役割は…………”英雄”にこの身を(けが)されること…………」
そしてうわ言を呟きながらユリーシャはその場から去っていった――――
 
 

 
後書き
という訳でアイドスも予告通り早期に仲間になりました!!そして今回の話の最後でまさかのエウシュリー最新作――――”封緘のグラセスタ”の天使枠にしてポンコツ天使(コラッ!)ことユリーシャが初登場しました!なお、ユリーシャの発言から既にお察しと思いますが今回出てきたユリーシャは正史ルート(?)ではなく、もう一つのルートのユリーシャです(ぇ)なので別にリィンが原作主人公からユリーシャを寝取ろうとしている訳ではないと思ってもらえれば幸いかと(冷や汗)ちなみに最初からもしユリーシャを登場させるとしたら、アイドスが仲間になってからにするつもりでした。…………え?何でそのつもりだったかって?なんせ”古神”であるアイドスがいないと、ユリーシャの運命の分岐点となる”例のスキル”を消滅させる事ができませんのでwwまあ、それを考えるとセリカでもいいのですが、セリカには既に天使枠のメティサーナがいる上、セリカ陣営だとユリーシャと色々な意味での役割が被っているキャラが多数いる為、ユリーシャがあまりにも哀れなので(ぇ) 

 

第11話

1月14日、同日AM10:20――――――

翌日は休暇だった為、リィンは早速特務支援課のビルを訪れてヴァリマールの太刀の件も含めて様々な依頼をセティ達に出して太刀の改良の為のデータ収集の為の時間を使い…………更にその翌日、”少佐”に昇進した事で二十数名の部下を持つことになったリィンは部下達への挨拶回りをする為に、まず名目上は”部下”として自分の部隊に配属されることになった人物達――――エリス達への挨拶回りをする為に最初にフォルデが待機している部屋を訊ねた。

~メンフィル帝国軍・魔導戦艦ヴァリアント・フォルデ大尉の部屋~

「フォルデ先輩。」
「よっ、リィン隊長♪早速挨拶回りか?」
「ええ…………というかその”隊長”という呼び方は止めて欲しいのですが…………」
「クク、何を今更。お前は俺の上司なんだから、そう呼んで当然だぜ?」
呼び方に関して謙遜するリィンに対してフォルデは口元に笑みを浮かべて指摘した。

「ですが先輩は俺より年上ですし、何よりも訓練兵時代にお世話になった方ですし…………」
「そんな些細な事を気にしていたらキリがねぇぞ?第一今回の昇進の件で俺以外のお前にとっての年上の”先輩”達もお前の下に就く事になったんだから、下の連中に上司らしく指示を出す為にも”年上”とか”先輩”みたいな事は気にするな。――――実際エリゼちゃんはあの年齢で”皇族専属侍女長”を務めているから、自分よりも年上の城のメイド達に頭をペコペコ下げられたり、年上のメイド達に指示を出したりする所とかも見た事があるぜ?」
「い、言われてみればエリゼは既に侍女の中ではトップクラスの地位に就いていましたね…………」
フォルデの指摘を聞いたリィンは冷や汗をかいてエリゼの顔を思い浮かべながら呟いた。
「ま、メンフィルはお前も知っての通り”実力主義”なんだから年下が年上の連中をこき使うなんて割とよくある光景だからあんまり気にすんな。――――あ、でもお前は俺達の事をこき使う事はないと期待しているぜ?」
「…………先輩も迎撃戦での活躍でステラと共に”大尉”に昇進した上、俺達の部隊の”副官”を務める事になっているのですから、以前と違ってちゃんと働いてもらいますよ?」
フォルデの希望に冷や汗をかいて脱力したリィンは呆れた表情で溜息を吐いて答えた。

「ま、ほどほどにな。―――しかし、俺達の部隊のお前と俺以外のそこそこの軍位持ちはみんな女性だから、本来2人で使う軍位持ちのこの部屋を一人で使えるから気を遣わなくていいから助かるぜ♪特に相部屋の奴に気を遣わずに娼婦を部屋に呼べるのはいいよな~。」
「先輩の場合、例え相部屋の相手がいたとしても気を遣うような事はしないような気がするのですが…………というか、娼婦を部屋に呼ぶのはほどほどにしてくださいよ…………」
フォルデの話を聞いたリィンは疲れた表情で指摘したが
「クク、”隊長”だから一人部屋のお陰でエリゼちゃん達ともそうだが、お前の使い魔の連中――――メサイア皇女殿下達といつでも”ヤリ放題”のお前だけには言われる筋合いはないと思うぜ?」
「う”っ。」
(クスクス、あの騎士の言う通りね♪ご主人様は今後の戦いに備えて私達と頻繁に性魔術(セックス)をする必要があるのだから♪)
(フフ、まあ間違ってはいないわよね。)
(ええ…………それで実際リィン様達が強くなれますから、お父様あたりが知れば間違いなく本気で羨ましがるでしょうね…………)
からかいの表情を浮かべたフォルデに図星を刺されたリィンが唸り声を上げている中ベルフェゴールはからかいの表情で呟き、ベルフェゴールの念話を聞いたアイドスとメサイアはそれぞれ苦笑していた。

「女連中と言えば、その内ステラやあのチビッ娘――――アルティナだったか?二人もエリゼちゃん達みたいに部屋に呼んで”イイコト”をするのか♪」
「いやいやいや、エリゼ達と違って恋仲でもないステラやアルティナを呼んでそんな事をしたらどう考えてもセクハラで軍法会議ものじゃないですか!?先輩は俺を何だと思っているんですか!?」
「ん?草食動物の皮を被ったその実体は女を喰いまくっている肉食動物の兄貴族って所か?」
「ううっ、結果的にそうなっただけなのに…………」
フォルデの自分に対する印象を知ったリィンは疲れた表情で肩を落とした。その後フォルデの部屋を出たリィンはエリスとエリスと相部屋になっている人物――――アルティナの部屋を訊ねた。


~エリスとアルティナの部屋~

「…………よし、これで髪が整いましたよ。」
「…………どうも。」
「ハハ、早速仲良くなっているみたいだな?」
リィンが部屋を訊ねるとエリスがアルティナの髪を整え終えており、その様子をリィンは微笑ましそうに見守りながら二人に近づいた。
「兄様。」
「…………ユミルで拉致された件があったからアルティナと相部屋にする事は若干”賭け”だったが、どうやらその様子だと和解したようだな?」
「はい。姫様を攫った事はちょっと許せませんでしたけど…………それもカイエン公達に命じられてやっただけとの事ですし、アルティナさんが部屋に来た時にいきなり謝られましたからもう許しています。」
「そうか。ちゃんと謝る事ができて偉いぞ。」
過去の経緯で関係が心配されたエリスとアルティナが和解した事に安心したリィンはアルティナの頭を優しく撫でた。

「…………子供扱いしないでください。メンフィル帝国軍の捕虜であったわたしの身柄がリィン少佐を含めたシュバルツァー家に引き取られることになった以上、エリス様に過去に行った無礼を謝罪するのは当然の事ですので。」
「――――――」
リィンの行動に静かな表情で指摘したアルティナは淡々と答え、アルティナに続くようにアルティナの傍に現れたクラウ=ソラスが機械音を出し、それを見たリィンとエリスは冷や汗をかいた。
「フフ…………リフィア殿下からアルティナさんの処遇を兄様に委ねられた時に、兄様がアルティナさんをシュバルツァー家の使用人として引き取った話を聞いた時は驚きましたけど…………父様達の事ですから、きっとアルティナさんの事を可愛がられるでしょうね。」
「ああ、ひょっとしたら俺達以上に可愛がるかもな。」
「……………………あの、リィン少佐。メンフィル軍から捕虜であったわたしの今後の処遇について聞かされた時からずっと聞きたかったのですが…………どうして、エリス様達の件や貴族連合軍の”裏の協力者”として協力していた上、二日前のパンダグリュエルでも敵対したわたしを引き取る事を申し出たのですか…………?」
リィンとエリスがアルティナの事について話し合っていると、アルティナは複雑そうな表情を浮かべてリィンに訊ねた。


「俺がカイエン公の”招待”を受けてパンダグリュエルに滞在する時にも言ったように、エリス達の件はアルティナ自身の意志によるものではないとわかっているからもうその件に関しては許しているし、他の件にしても全て誰かに命じられて行った事だから俺はアルティナが俺達と敵対していた件について気にしていないさ。エリスもそうだが、エリゼもエリスの件で最初は君に関して怒っていたが、今ではただ命じられてやっただけの子供相手に怒り過ぎて大人げない事をしたと逆にアルティナに対して申し訳ないと思っているくらいだ。」
「……………………それでも理解できません。敵対関係を抜きにしても、赤の他人であるわたしをどうして…………」
リィンの答えを聞いたアルティナは戸惑いの表情を浮かべながら指摘し
「俺にとっては赤の他人じゃないさ、アルティナは。何せアルティナはかつての俺の仲間達――――”Ⅶ組”の一人とも関係があるんだから、そんな人物が天涯孤独なんだからほおっておけないよ。」
「兄様…………」
「…………ミリアムさんですか。ですがリィン少佐は今回ミリアムさんを含めた”Ⅶ組”と敵対関係になる事を選んだようですが…………」
リィンの話を聞いたエリスが静かな表情でリィンを見つめている中リィンが言っている人物がミリアムである事にすぐに察したアルティナは複雑そうな表情をした後リィンにある事を指摘した。


「…………ああ。二日前の迎撃戦でも言ったように、エレボニアを滅亡を防ぐ為に俺はあえてその道を進むことにした。本当ならアルティナだけでもユミルで全て終わるまで待っていて欲しかったんだが…………」
「―――必要ありません。わたしはリィン少佐達――――シュバルツァー家をサポートする為に引き取られたのですから、当然今そのサポートを最も必要とする上戦力も必要とするリィン少佐達の元で戦うのがわたしとクラウ=ソラスの役割です。」
「――――――」
リィンの言葉を途中で遮ったアルティナは静かな表情で答え、アルティナに続くようにクラウ=ソラスも機械音を出した。
「…………そうか。これから人の命を奪い合う実戦続きになるだろうが…………改めてよろしく頼む。」
「――――はい。」
アルティナの決意が固い事を悟ったリィンの言葉にアルティナは静かな表情で頷いた。その後二人の部屋を出たリィンはステラとセレーネがいる部屋を訊ねた。


~ステラ大尉とセレーネの部屋~

「まあ…………そのような事が。訓練兵であった頃からお兄様のそういう所も変わりないのですね。」
「はい。というかむしろトールズ士官学院に留学してからの方が無茶をするようになっていると思いますよ?」
「俺の話をしていたようだが…………一体どんな話をしているんだ?セレーネ、ステラ。」
談笑していたセレーネとステラに話しかけたリィンは表情を引きつらせながら訊ねた。

「ふふっ、ステラさんはエリスお姉様も知らないお兄様の昔――――訓練兵時代のお兄様を知る方ですからせっかくの機会ですから、どのような事があったのか教えてもらっていたのですわ。」
「逆に私はトールズ士官学院に留学してからのリィンさんの事についてセレーネさんに教えてもらっていましたが…………セレーネさんの話を聞いて思いましたけど、リィンさん、トールズ士官学院時代もそうですが内戦時も相当無茶をされたようですね?正直、よく五体満足で全て乗り越えられましたよね…………もし、セシリア教官が知れば呆れた後説教をすると思いますよ?」
「うっ…………今思い返してみると自分でも相当無茶をしたと思っているよ。」
セレーネの後に答えたステラに呆れた表情で指摘されたリィンは唸り声を上げた後苦笑しながら答えた。

「二十数名とはいえ、リィンさんも”部下”を持つ立場になったのですから、今後は無茶な行動は控えてくださいね?”副官”である私とフォルデ先輩もフォローはしますがリィンさんが無茶をすれば私達はともかく、リィンさんの部隊に配属された部下の方々にまで大きな負担をかけたり不要な危険にさらされる事になるのですから。」
「ああ、肝に銘じている。」
「…………今までのお兄様の行動を考えるとその発言もちょっと怪しいですわ…………」
「……………………」
ステラの指摘にリィンが真剣な表情で答えている中セレーネはジト目でリィンを見つめて呟き、セレーネの指摘を聞いたリィンは反論することなく冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ふふっ、大丈夫ですよ。この戦争ではリィンさんにとって目に入れても痛くない大切な妹であるエリゼさんとエリスさんもリィンさんの部隊に配属されているのですから、さすがのリィンさんも無茶はできませんよ。」
「言われてみればそうですわね…………もしかしたら、ゼルギウス将軍閣下達がわたくし達をお兄様と同じ部隊にする事に決めた理由はエリゼお姉様の頼みだけでなく、お兄様に無茶をさせない意味も含まれているかもしれませんわね。」
「…………え、えっと…………二人とも短い間に随分と仲良くなったんだな…………?」
ステラの推測を聞いて納得している様子のセレーネを見たリィンは再び冷や汗をかいた後話を逸らす為に二人の仲の良さについて指摘した。

「フフ、お互いお兄様の”相棒(パートナー)”の身ですから、色々と共通する話題があって自然と話が弾むんです。」
「とはいっても私は訓練兵を卒業した際にそれぞれ異なる道を進むことになった為セレーネさんと違って過去の身ですが…………」
リィンの指摘にセレーネは微笑みながら答え、ステラは苦笑しながら答えたが
「――――――そんな事はないさ。現にステラはこうしてまた俺の”パートナー”として、この戦争は共に戦う事になったのだし、例え今回の戦争の件がなくても俺はステラの事を信頼できる”相棒”だと思っている。」
「……………………フウ…………そういえば、肝心な事を聞きそびれていましたが…………リィンさんのこの様子ですと、トールズ士官学院に留学してから知り合った女性達の一部も”被害”を受けた方々もいらっしゃっているのでしょう?」
静かな笑みを浮かべたリィンの答えに目を丸くして黙り込んだステラは溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべてセレーネに訊ね
「はい、お察しの通りですわ…………特にアリサさんはわかりやすい反応をされていますし、エマさんやアルフィン殿下も恐らくそうでしょうし、ひょっとしたらトワ会長やクレア大尉も怪しいと思っていますわ…………」
「まあ、そんなにも…………そこの所、もっと詳しく伺っても構いませんか?」
「ええ、構いませんわ。まずアリサさんですが――――」
(な、何でそこでアリサ達の名前が挙がって、俺がアリサ達に何の”被害”を与えたのかわからないが…………これ以上ここにいたら、ステラの説教があるかもしれないからここは失礼させてもらうか…………)
ステラの質問にセレーネが答えている中、リィンは冷や汗をかいて表情を引きつらせた後これ以上この場にいるのは不味いと思い、二人が会話している隙に部屋を出た。部屋を出たリィンは次に自分にとって直接的な上司となるゼルギウスとシグルーンの元を訪れた。


~リフィア皇女親衛隊隊長・副長の執務室~

「―――リィン・シュバルツァー少佐です。入室してもよろしいでしょうか?」
「ああ、入って構わない。」
「…………失礼します。」
入室の許可を聞いたリィンは二人がいる執務室に入った。
「それで要件は?」
「要件…………というか単なる挨拶回りです。これから自分は自分に配属された部下達もそうですがリフィア殿下やゼルギウス将軍閣下達にお世話になる身ですので、戦争が本格的になる前に挨拶回りを済ませておこうかと。」
「フフ、挨拶は仲間同士の関係や上下関係を円滑に築く上での基礎にして必須な事ですから、良い判断ですわ。」
「そうだな…………――――一昨日の迎撃戦の活躍は見事だった。リフィア殿下もお前の活躍――――特に”騎神”を駆って次々と敵の空挺部隊を撃破している様子を見てお喜びのご様子だったぞ。」
リィンが自分達を訊ねた理由を知って感心している様子のシグルーンの言葉に頷いたゼルギウスはリィンを称賛した。

「…………恐縮です。あの…………自分と同じ所属になった者達の件で将軍閣下達には伺いたい事があるのですが。」
「ん?エリス嬢達なら、エリゼの頼みがあった為お前と同じ配属にしたことをエリゼから聞いていないのか?」
「いえ、そちらの件ではありません。―――ステラとフォルデ先輩の件です。二人とも自分にとって馴染みの軍人の為、ひょっとしたら二人の件もエリゼが気を遣ってゼルギウス将軍閣下達に進言したと思っていたのですが、エリゼは違うと言っていたので…………」
「ああ、その件か。二人に関してはシグルーンと話し合った上で決めたが…………何か問題があるのか?」
リィンの問いかけに答えたゼルギウスは不思議そうな表情でリィンを見つめて訊ねた。

「い、いえ。問題どころかむしろありがたかったです。二人とも気さくな態度でエリス達に接してくれるお陰で、エリス達もすぐに軍に馴染めるようになった様子ですし、パンダグリュエルでの戦いもすぐに連携が取れました。えっと………さすがにこれは自分の勘違いだと思うのですが、ゼルギウス将軍閣下達が二人の配属を決めた理由は自分達を気遣ってですか?」
「まあ、私達の新しい部下として配属されることになったリィンさんの事情は私達も知っていますから、その理由もないとは言いませんが、一番の理由はリィンさん自身も言ったように配属される者達が顔馴染みである事で、すぐに連携を取りやすくして味方の生存率を上げると共に戦力を向上させる為でもあります。」
「後はそれぞれの武装や戦闘方法も考えた上だ。お前達は一応前衛、後衛は揃っているが中距離――――槍のような長物を武装とする仲間や弓や銃のような遠距離武装による援護ができる仲間はいなかった為、戦力的にバランスの取れた小部隊にする意味でもその二人がすぐに挙がったのだ。」
「なるほど…………(もしかしたら、”特別実習”のメンバーを考える時サラ教官もゼルギウス将軍閣下達が言ったような理由も踏まえてあのメンバーにしたのか…………?)」
顔馴染みであるステラとフォルデが自分達と同じ配属にした理由を語ったシグルーンとゼルギウスの説明を聞いて納得したリィンはサラの事について考えていた。

「…………お前も理解していると思うが、戦争は軍と軍が真正面にぶつかり合う戦いだ。トールズ士官学院時代や内戦時で経験したお前の戦いとは異なっている事は理解しているな?」
「はい。トールズや内戦時に経験した自分の戦いはエレボニアの”裏の戦い”――――”真実”を探る為の戦いであった為、軍と真正面からぶつかって自分達の力だけで撤退させるような事は行っていません。ですから今回の戦争は心機一転の心構えで挑む所存です。」
ゼルギウスの指摘に対してリィンは静かな表情で頷いた後決意の表情を浮かべた。
「――――――理解しているならばいい。お前達の今後の活躍、期待している。」
「そしてリィンさん達が今回の戦争で目的を果たす事ができる事、リィンさん達の上司として応援していますわ。」
「はい…………!」
ゼルギウスとシグルーンの応援の言葉に対してリィンは力強く答えて敬礼をした。その後部屋を退出したリィンはリフィアに挨拶する為にリフィアの執務室を訊ねた。


~リフィア皇女の執務室~

「――――――リィン・シュバルツァーです。リフィア殿下、御前失礼してもよろしいでしょうか?」
「む?よいぞ。」
「――――――御前失礼します。」
リィンが執務室に入ると書類の整理を行っているエリゼとリフィアがいた。
「兄様、リフィアに何か用が?」
「いや、ただの挨拶回りだよ。親衛隊に配属されてからすぐに迎撃戦だったから、俺の部隊に配属される部下達への挨拶回りも兼ねてこれからお世話になる人達に挨拶回りをしていたんだ。」
「うむ、よい心構えだ。全く…………エリゼも余の専属侍女として配属された当初はリィンのような慎み深さがあったというのに、気づけばどうして”こんなの”になったのじゃ?」
エリゼの質問に答えたリィンの答えを聞いて満足げな様子で頷いたリフィアはエリゼに視線を向けた後疲れた表情で溜息を吐いたが
「私が”こんなの”になった理由は、だ・れ・の・せ・い・か・し・ら?」
「ぬおっ!?余が悪かったことを認めるから、落ち着くのだ!」
膨大な威圧を纏ったエリゼに微笑まれると驚きの声を上げて冷や汗をかきながらエリゼを諫め、その様子を見たリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「そ、それよりも先日の迎撃戦での活躍もそうだが、”魔神”に加えて”女神”と”契約”を交わすとは見事じゃぞ!」
「恐縮です。ただアイドスは”古神”の為、ディル=リフィーナでは”古神”を”邪神”として扱っている事で自分がアイドスと契約した事に殿下を含めたメンフィル帝国の皇族の方々の頭を悩ましていないとよいのですが…………」
「リウイや父はその件を知った当初は頭を抱えたそうじゃが、余はそんな些細な事は全く気にしておらんぞ。メンフィルは”全ての種族との共存”を謳っているのだから、当然その中には”古神”も含まれるのだから、何故悩む必要があるのか逆に問いたいくらいじゃ。」
「普通に考えて問題大ありじゃない…………もし、メンフィルが”古神”と協力関係を結んでいる事がディル=リフィーナの他国や教会に知られたら、その件を口実にメンフィルが”世界の敵”にされて世界中の国家や教会を敵に回す可能性も考えられるのよ?」
リィンの推測に対して答えたリフィアの答えに呆れたエリゼはリフィアに指摘した。

「そんなのメンフィルにとっては”今更”な話だ。元々メンフィルは光と闇、どちらの勢力も受け入れているのだからその件でメンフィルを敵視したり危険視する勢力は幾らでもおる。それにもし、世界中を敵に回したとしても勝てばいいだけじゃろ。―――かつてレスペレント地方全土の国家を敵にした”幻燐戦争”のようにな!」
堂々と言い切ったリフィアの発言を聞いた二人はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。
「―――そんな事よりもリィンよ。今回のお主の迎撃戦での活躍の件で、アルフィン皇女の処罰に関する事で朗報があるぞ。」
「え…………もしかして、アルフィン殿下の処罰内容が穏便な内容に変更するように見直されることになったのですか!?」
リフィアの話を聞いたリィンは一瞬呆けた後すぐに血相を変えて訊ねた。

「いや、処罰内容は変わっておらん。―――決まっていなかったアルフィン皇女の仕え先がお主に決定したのじゃ。」
「…………へ。」
リフィアの答えを聞いたリィンは一瞬固まった後呆けた声を出し
「ええええええええええええええええええええええええっ!?な、何故アルフィン殿下の仕え先が自分に…………!?」
(あはははははっ!本物のお姫様までハーレムにするとかさすがご主人様ね♪)
(あ、あの…………一応ですが私も”本物のお姫様”なのですが…………)
(――――なるほど。そのアルフィン皇女がリィンに仕える事になれば、リィンがアルフィン皇女に手出ししなければ、本来なら”娼婦”として仕える主に犯され続けるはずだったアルフィン皇女の貞操は守られることになるわね。)
我に返ると驚きの声を上げてアルフィン皇女が自分の使用人兼娼婦に決定した理由をリフィアに訊ね、その様子を見守っていたベルフェゴールは腹を抱えて大声で笑い、メサイアは冷や汗をかいてベルフェゴールに指摘し、リフィアの”朗報”という言葉を理解していたアイドスは納得した表情を浮かべていた。

「エレボニアの内戦勃発後、メンフィルはエレボニアの領土と隣接しているユミルにエレボニアの内戦に巻き込まれた際に対処する軍を派遣しなかったから、元々その件でシュバルツァー家に対する”詫び”としてアルフィン皇女の仕え先の候補としてシュバルツァー家が挙がっておったのじゃ。」
「そして先日の迎撃戦での兄様の活躍によって、アルフィン殿下の仕え先は将来のシュバルツァー家の当主である兄様に決定したとの事です。」
「な、なるほど…………というか、それのどこが”朗報”なのでしょうか…………?」
リフィアとエリゼの説明を聞いたリィンは冷や汗をかきながら聞いた後疑問に思っている事を訊ねた。

「―――兄様が使用人兼娼婦として仕える事になるアルフィン殿下の”主”になれば、兄様がアルフィン殿下に手出ししなければアルフィン殿下の貞操は守られることになりますし、それと同時にアルフィン殿下はメンフィルの民――――つまり、メンフィル帝国による庇護を受けられる事になります。アルフィン殿下は使用人兼娼婦とはいえ、メンフィル帝国貴族である兄様に仕える事で”メンフィルの民”になれるのですから。」
「あ……………………その、リフィア殿下。エリゼが言ったように、メンフィル帝国から処罰が求められているアルフィン殿下が俺の元にくればアルフィン殿下も本当にメンフィル帝国の庇護を受けられるのでしょうか…………?」
エリゼの指摘を聞いたリィンは呆けた後リフィアに確認した。
「お主に限らず、アルフィン皇女が使用人兼娼婦としてメンフィル帝国の誰かに仕えている時点でアルフィン皇女も”メンフィル帝国人扱い”だから、アルフィン皇女の”主”以外はアルフィン皇女を犯したり危害を加える事は許されず、もし”主”以外の者がアルフィン皇女に危害を加える等をすれば罪に問われることはは事実だ。―――例えその者がメンフィル帝国の皇族や貴族であろうとな。」
「そうですか…………最悪エレボニアの滅亡を防ぐ事ができなくなっても、アルフィン殿下の貞操や身は大丈夫になった事を知れば、エリスも一先ず安心するだろうな…………」
「…………そうですね。最も使用人兼娼婦の処罰が求められているアルフィン殿下の仕え先が兄様である事を知ったエリスにとっては別の意味の心配が出てくるでしょうが。」
リフィアの答えを聞いたリィンは安堵の表情で呟き、リィンの意見に頷いたエリゼはジト目でリィンを見つめた。

「へ…………別の意味の心配ってどういう事だ?まさか、俺がアルフィン殿下に手出しするかもしれない心配か?」
「違います。――――アルフィン殿下が私やエリス達のように兄様と”将来を見据えた関係を持つ事”です。」
リィンの推測をエリゼは呆れた表情で否定した後ジト目でリィンを見つめながら指摘し
「”将来を見据えた関係を持つ事”って………い、いやいやいや!?さすがにそれはありえないだろう!?」
「…………どうでしょうね。アルフィン殿下は夏至祭のパーティーで兄様を自分にとっての初めてのダンスパートナーに指名してダンスをしましたし、その件以降もアルフィン殿下の兄様に対する接し方は普通の男性と比べると近しい事はエリスやセレーネから聞いているのですが?」
「ダンスの件はリウイ陛下の指示によるものだったし、親しい件についても俺が親友(エリス)の兄だから、普通の男性よりは親しみを感じて接しているだけなんじゃないのか?現にエリスのように俺も殿下にからかわれる事はよくあったし。」
ジト目のエリゼの指摘に対してリィンは疲れた表情で答えたが
「………エリス達に聞きましたよ。1度目のユミル襲撃が起こる直前にエリスとセレーネどころか、湯着を着ているとはいえアルフィン殿下とまで露天風呂を共にしたそうですね?」
「うっ。そ、それがさっきのエリゼの推測とどう関係してくるんだ…………?」
(あはははははっ!普通に考えて、湯着を着ていても年頃の女の子が異性とお風呂を一緒にするなんて、その異性に少なからず気がある証拠じゃない♪)
(それで実際の所はどうなのかしら?)
(そ、そうですわね…………私見ではありますが、アルフィン殿下はエリゼ様の推測通り恐らくリィン様に心を寄せているかと…………)
エリゼにある事を持ち出されると唸り声を上げ、その様子を見守っていたベルフェゴールは腹を抱えて笑い、興味ありげな様子のアイドスに訊ねられたメサイアは苦笑しながら答えた。

「エ、エリゼよ、ここはお主達に充てられた部屋ではないのじゃから、そういう事は後で自分達が休む部屋でエリス達と共に追及してはどうじゃ?」
一方二人の会話を聞いて嫌な予感がしたリフィアは冷や汗をかきながらエリゼに指摘し
「…………それもそうね。そういう訳ですから、アルフィン殿下の件についてはエリス達と共に後でじっくりと追及させてもらいますね?」
「はい…………」
指摘されたエリゼは頷いた後膨大な威圧を纏ってリィンに微笑み、微笑まれたリィンは反論することなく疲れた表情で頷いた。その後リフィアの執務室を退室したリィンは自分の部隊に配属されたメンフィル兵や義勇兵に挨拶をした後遅めの昼食をとって一端自室に戻った。


同日、PM2:15―――

~リィン少佐の部屋~

「さてと…………(挨拶回りも一通り終わった…………ブリーフィングは明日の朝だから、今日は約半日空いている事になるな…………学生時代は”自由行動日”はトワ会長が集めた依頼の消化や旧校舎の探索で時間を費やしていたから、純粋に何もする必要がない時間ができるのは久しぶりで何をすべきか考えてしまうな…………)」
リィンが午後の行動について考えていると部屋に備え付けている内線が鳴り始めた。
「はい、シュバルツァーです。」
「こちらエントランス。お疲れ様です、シュバルツァー少佐。天使族の女性がシュバルツァー少佐に御用があり、この艦を訊ねたとの事ですがいかがなさいますか?」
「へ…………天使族の女性が…………?…………わかりました。その方から自分を訊ねた要件を聞きますので自分の部屋に案内してください。」
「了解しました。」
「天使族という事はその人はディル=リフィーナの出身なんだろうけど、天使族なんて今まで会った事がないぞ…………?」
内線との通信を終えたリィンは自分を訊ねた天使族の女性について考え込んでいた。そして10分後リィンの部屋がノックされた。

「シュバルツァー少佐、先程お伝えした天使族の女性をお連れしました。」
「お疲れ様です。後は自分が対応しますので貴方は軍務に戻ってください。自分に用がある天使族の方はそのまま部屋に入ってきてください。」
「ハッ!失礼します。」
「…………失礼します。」
そして扉が開くとユリーシャが部屋に入ってきた――――

 
 

 
後書き
というわけでアルティナもリィン達側のメンバーとしてパーティインしました!リィン達側の拠点のBGMはVERITAの”英雄集結”、FF5の”暁の戦士”、FF2の”反乱軍のテーマ”、ティアーズ・トゥ・ティアラ2の”征伐”のどれかで通常戦闘BGMはVERITAの幻燐側の戦闘BGMである”我が旗の元に”、ロイド達やエステル達、Ⅶ組側の通常戦闘BGMは閃Ⅳの通常戦闘BGMである”Burning Throb”だと思ってください♪なお、ユリーシャの話が終わったらアルフィンがリィン達側のメンバーになる話、Ⅶ組側の話、エステル達側の話へと次々と話の内容の勢力が切り替わる予定です。なお、クルトとミュゼのパーティーインはそれらの話の後になるので二人のフライング登場&パーティーインはまだまだになりそうです。ちなみにクルトとミュゼは同時にリィン達側のメンバーになる予定です。 

 

第12話

~リィン少佐の部屋~


「貴方が…………」
「…………お初にお目にかかります。この身の名前はユリーシャと申します。天使階級は第七位――――”権天使(プリンシパティウス)”になります。」
「メンフィル帝国軍リフィア皇女親衛隊所属、リィン・シュバルツァー少佐です。初めまして、ユリーシャさん。自分に用があるとの事ですが、一体どのような要件で自分を訊ねたのでしょうか?」
ユリーシャが自己紹介をした後リィンも自己紹介をして要件を訊ねた。

「それを答える前にもう一度確認しておきたいのですが…………リィン様は二日前の戦い――――他国より侵略してきた”エレボニア帝国”という国の空の部隊を相手に獅子奮迅の活躍で撃破し、更には艦内での戦闘では敵軍の”総大将”を討ち取った事に加えてその侵攻してきたエレボニア帝国という国の内戦の終結の鍵となった事で”英雄”と称されるようになった方ですね?」
「え、ええ。自分には過ぎた称号だと思っていますが…………それが何か?」
ユリーシャの質問にリィンは戸惑いの表情で答えた。
「本日この身はこの身が唯一行う事ができる”英雄”に対する”天使としての役目”を果たす為にリィン様を訊ねました。」
「へ…………”英雄に対する天使としての役目”…………?」
そしてユリーシャの答えにリィンが呆けたその時、何とユリーシャは甲冑や服を脱いで生まれたままの姿になった!

「ちょっ、ユリーシャさん!?突然何を!?」
「壊れた天使であるこの身が唯一行う事ができる”英雄に対する天使としての役目”――――この身を”英雄”である貴方に抱かれる事で、”英雄”である貴方に一時の癒しを感じてもらう為です。――――どうか遠慮なく、私を犯してください。」
「い、いやいやいや!?もっと自分の身を大切にしてください…………!(メサイア、ベルフェゴール、アイドス!一応聞いておくが天使族の女性はみんな、さっきユリーシャさんが言った”役目”があるのか!?)」
(私も天使族の女性は一人しか存じていませんが…………その方はかなり特殊な方で一般的な天使族の方ではありませんから、ユリーシャさんが仰った事は世間一般で言う天使族の役目ではないと私は思うのですが…………)
(うふふ、私は天使族の女性は自分にとっての”主”となる人物や”英雄”にその身を捧げるって話は聞いた事があるから、ユリーシャの言っている事は間違ってはいないわよ?―――そうよね、アイドス♪)
(そこでどうして私に話を振るのかわからないけど…………今、彼女は自分の事を”壊れた天使”と言った事が気になるから、まずはそれを聞いてみてはどうかしら?)
自分に抱かれようとするユリーシャにリィンは必死にユリーシャに思いとどまるように答えながらメサイア達に念話で訊ね、訊ねられたメサイアは困惑の表情で答え、からかいの表情を浮かべたベルフェゴールに話を振られたアイドスは困った表情を浮かべてリィンに提案した。

「(そ、そうだな。)えっと………ユリーシャさん、先程ご自分の事を”壊れた天使”と仰いましたよね?会った事もない男である自分に気高き天使族である貴女が”娼婦”のような事をする事を申し出た理由はその件が関係していると思っているのですが…………まずは一端服を着て、その件について教えてくれませんか?何か御力になれるかもしれません。」
「…………わかりました。」
リィンの提案を聞いたユリーシャは脱いだ服や甲冑を着て自分の事情を説明した。

――――かつて遺跡に封印されていた自分が封印から目覚め、封印から目覚めたユリーシャは遺跡発掘の商人達に連れられて”グラセスタ”という国の王に献上されたが、王はユリーシャを年に一度闘技場で行われるその国にとっての最大の武闘会の優勝者に与えられる”副賞”にされ、その優勝者にしてその大会の優勝賞金によってその国の奴隷身分を表す”隷士”から自由民を表す”抜闘士”に成り上がったジェダル・シュヴァルカに優勝の”副賞”として引き渡された。

ジェダルに引き渡されたユリーシャは自分を”副賞”扱いした王の行動に不満を抱えながらも、主となったジェダルに仕える事を決めて、ジェダルがジェダルにとっての雇い主である”グラセスタ”の有力貴族の一人――――リリカ・ルシティーネと共に”グラセスタ”の地下深くへと広がる大迷宮――――黒の(こう)の最奥を目指すという目的の為にジェダル達と共に黒の(こう)に潜む魔物達を撃退しながら探索する事になった。

引き渡された当初から自分にとっての”主”であるジェダルから厄介者扱いされていたユリーシャだったが、戦闘による活躍でジェダルの役に立つ事で天使としての役目を果たそうとしていたが、何とユリーシャは魔法を頻繁に失敗させてしまい、ジェダル達の足を引っ張り続けた。

何故自分が魔法を失敗するようになったのかわからず、苦悩していたユリーシャはついにジェダルから見限られて”娼婦”として”娼館”に売られた。”娼館”に売られたユリーシャは全てを諦めて毎日男に抱かれていたが、ある日突如謎の空間震が起こり、空間震に巻き込まれたユリーシャが気づくとクロスベルの郊外に倒れており、これから自分はどうすればいいのかわからなかったユリーシャがクロスベルを彷徨っていると、臨時に設置されたモニターで”英雄”であるリィンの事について解説されていた為、その解説を聞いたユリーシャは主からも捨てられ、世界からも追放された自分ができる唯一の天使の役目を果たす為にリィンを訊ねた事を説明した。


「…………そんな事が…………」
(ユリーシャがゼムリア大陸に転移させられた理由は恐らく私の件同様因果を操る事ができる”並行世界のキーア”によるもの…………そして”並行世界のキーア”がユリーシャをこの世界に転移させたのは恐らく私のようにユリーシャを救う為でしょうね…………)
ユリーシャの事情を聞き終えたリィンは辛そうな表情でユリーシャを見つめ、アイドスは静かな表情で考え込んでいた。
「ですから、どうかこの身を遠慮なく犯してください…………!それだけが”壊れた天使”であるこの身ができる”天使の役目”なのです…………!」
「ユリーシャさん…………(アイドス、何とかユリーシャさんが”娼婦”になってしまった原因――――再び魔法が使えるようにする方法を知らないか?御伽話等で天使は”神”と主従関係である事はよくある話だから、”女神”であるアイドスなら何か知っていると思うんだが…………)
自分を犯すように嘆願するユリーシャを辛そうな表情で見つめていたリィンはアイドスにある事を訊ねた。

(そうね…………結論から言えば、ユリーシャが再び魔法が使えるようになる手段を私は知っているわ。)
(ほ、本当か!?一体どんな方法だ!?)
(ここではその手段を取るのは難しいから、そうね…………このクロスベルに”星見の塔”という遺跡があるから、まずはその遺跡の屋上に行ってくれないかしら?そこでならユリーシャが魔法を使えるようになる手段が使えると思うわ。”星見の塔”への行き方は私が指示するわ。)
「(”星見の塔”だな?わかった。)―――ユリーシャさん、魔法の件ですが…………自分の知り合いから聞いた話になるのですがユリーシャさんのように魔法が失敗する天使族の方が再び魔法を使えるようになる手段を知っていて、その手段を自分も聞いた事があるのですが、まずはそれを試してみませんか?」
「え………人間族であるリィン様が天使族であるこの身が再び魔法を使える手段を…………?失礼を承知で申し上げますが、正直な所信じられないのですが…………」
アイドスの助言を聞いてそれを実行する為に申し出たリィンの申し出に一瞬呆けたユリーシャは戸惑いの表情で指摘した。

「ハハ、とりあえず騙されたと思って、これから自分と一緒にある場所に同行してくれませんか?もし失敗すれば、ユリーシャさんの希望通り、ユリーシャさんを抱きます。」
「…………わかりました。無駄とは思いますが、リィン様がそこまで言うのでしたら同行致しましょう。」
その後ユリーシャと共に自分の拠点である戦艦を出たリィンはアイドスの言う通りにまずはクロスベルに向かい、その後バスでウルスラ間道にあるバス停まで行き、そこからは徒歩で”星見の塔”へ向かって”星見の塔”に到着してからはユリーシャと共に時折襲い掛かる魔物やゴーレムを撃退しながら屋上に到着し、屋上に到着する頃には夜になって夜空に星々が輝いていた。


同日、PM6:45―――

~星見の塔・屋上~

「……………うん、ちょうど星々が輝く夜になっていて何よりね。」
「あ、あの…………貴女様は一体…………貴女様から感じるこの懐かしい”神気”…………まさか貴女様はこの身の世界の…………!」
屋上に到着すると太刀から現れたアイドスは周囲を見回し、アイドスの登場に驚くと同時にアイドスから感じる”神気”でアイドスの正体を察したユリーシャは信じられない表情でアイドスを見つめ
「ええ、私の名はアイドス。かつての天使達の主であった”古神”の一柱――――”慈悲の大女神”よ。そして今はリィンと共に生き続ける事を決めた女の一人よ。」
「!!」
アイドスの正体を知ると目を見開いた。

「それでアイドス。ここでどうやってユリーシャさんが再び魔法を使えるようになるんだ?」
「簡単な話よ。ユリーシャが私に強く祈る事でユリーシャを”慈悲の大女神”である私――――つまり、改めて”古神”に仕える天使として認められることでユリーシャが再び魔法を使えるようになるわ。」
「へ…………だったら、何でその場ですぐにそうせず、わざわざこんな所まで来たんだ?」
ユリーシャの悩みを解決する方法を知ったリィンは戸惑いの表情で訊ねた。
「リィンにも話した通り私は”オリンポスの星女神”の一柱―――つまり、星々の力を行使する女神だから、何らかの儀式をするには星々が輝く夜空の下で、それもできれば星々に近い場所―――高所の方が都合がいいのよ。」
「ああ…………だから契約の時も夜のオルキスタワーの屋上で待っていたのか…………」
「ア、アイドス様…………!本当にこの身がアイドス様に祈りを捧げればこの身は再び、”天使の誇り”を取り戻せるのですか…………!?」
アイドスの答えを聞いたリィンが納得している中ユリーシャは懇願するような表情を浮かべてアイドスを見つめて問いかけた。

「ええ、貴女の想いが本物なら星々は応えてくれるわ。やり方はわかるかしら?」
「はい…………!」
アイドスの言葉に力強く頷いたユリーシャはアイドスの正面で両手と共に翼を広げて星々が輝く夜空に向かって祈りを捧げた。
「慈悲の大女神アイドスよ!声に応えたまえ!この身に力を!我が主を守り、魔に打ち勝つための力を!」
ユリーシャが祈りを強めるとユリーシャの上空から神秘的な光が降り注ぎ、ユリーシャを包み込んだ。

「慈悲神アイドスよ…………!この身の声に応えよ!!」
「…………ええ、貴女に星々の加護を与えましょう。」
そしてユリーシャの身体を一瞬まばゆい光が包んだ。その光が弾けるとユリーシャは目を見開いた。
「…………成功したのか?」
「ええ、ユリーシャは”慈悲の大女神”である私と”契約”したわ。その証拠を今見せるわ。」
リィンの問いかけに頷いたアイドスは自身の神剣を異空間から取り出した後、指に剣の切っ先を当てて軽く切った。するとアイドスの指から血が出始めた。

「ユリーシャ、治癒魔術を私に。」
「…………失礼します。神よ――――慈愛の光。」
アイドスに命じられたユリーシャは身体を震わせながら治癒魔術を発動した。するとユリーシャの治癒魔術によってアイドスの小さな傷はすぐに収まった。
「魔法が…………成功…………した…………?」
「ええ、まだ疑うのだったら今度は適当な場所に攻撃魔法を撃ってみて。」
「わかりました…………!裁きを―――光焔!!」
更にユリーシャが誰もいない場所に向かって魔術を放つと、ユリーシャが放った攻撃魔術は誰もいない場所で問題なく発動した。

「ハハ、治癒魔術も攻撃魔術も問題なく成功したじゃないか。」
「フフ、それだけじゃないわ。”星女神”である私と契約した事で星々の力を借りた魔術も使えるようになっているわ。」
そしてリィンとアイドスが微笑ましそうに呆然としているユリーシャを見つめて会話をしていたその時
「う…………ぁぁ…………あああああぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!」
「ユ、ユリーシャさん!?どうしたんですか!?」
虚ろだった目に力強き意志を示す光を取り戻したユリーシャは突如大声で泣き始め、それを見たリィンは慌てたが
「きっと諦めていながらも心の中では望んでいた事である再び魔法が使える事――――”天使の誇り”を取り戻せた事がよっぽど嬉しかったのでしょうね…………」
「あ…………本当に…………よかったですね…………」
「うああああああああぁぁぁぁぁ…………ッ!」
アイドスの推測を聞くとすぐに納得し、ユリーシャに近づいてユリーシャを優しく抱き締め、抱き締められたユリーシャはリィンの胸の中で泣き続けた。

「…………落ち着きましたか?」
「はい…………」
そして少しの間泣き続けたユリーシャはリィンの言葉に頷いた後リィンから離れた。
「アイドス様…………それにリィン様…………此の度はこの身に”天使の誇り”を取り戻させていただき、本当にありがとうございます…………!貴方方の”慈悲”に心からの感謝を。」
「気にしないでください。俺はたまたまユリーシャさんの悩みを解決できる方法を知っているアイドスが仲間にいたお陰で、ユリーシャさんの悩みを解決できただけですから、感謝をするのだったらアイドスだけに感謝してください。」
「いいえ、リィン様がこの身の為に動くと決心してくだされなければ、この身はずっと”娼婦”として、様々な男達に汚され続ける毎日を送るしかありませんでした。ですから貴方様もこの身にとっての恩人です…………!あの…………アイドス様…………」
謙遜するリィンに対して静かに首を横に振って答えたユリーシャは一瞬リィンに視線を向けた後アイドスを懇願するような表情で見つめ
「フフ、それ以上は言わなくてもわかっているわ。―――今、結界を展開したから頑張ってね、ユリーシャ。」
「!ありがとうございます…………!」
微笑みながら答えた後結界を展開してリィンの太刀に戻ったアイドスに感謝の言葉を述べた。

「え、えっとアイドス?何でここで結界を…………って、まさかとは思うが…………」
(うふふ、さすがに2度も経験すればご主人様も”察する”事ができるみたいね♪)
既に2度も似たような展開を経験したリィンは次に何が起こるかを察して表情を引きつらせ、その様子をベルフェゴールは面白そうに見ていた。
「アイドス様のお陰でこの身は”天使の誇り”を取り戻し、新たな力を得ました。アイドス様を信仰する天使の責務を果たすに当たってどうかリィン様をこの身の新たなる我が主になって頂く―――”守護天使”の契約を結び、この身をリィン様のお側にお置き頂きたいのです…………!」
「”守護天使”…………?」
(”守護天使”とは仕える主を守り、間違った道を進もうとした時に正そうとするから、まあ使い魔の天使版のようなものよ。まあ、天使からしたら一生を添い遂げる相手でもあるわ。)
「ええっ!?ちょ、ちょっと待ってください!ユリーシャさんには元々”主”がいるんじゃ…………!?」
ユリーシャが希望した存在の意味がわからなかったリィンはアイドスの説明を聞くと驚きの表情でユリーシャに問いかけた。

「先程も説明しましたように、気がつけばこの身は何らかの原因によって主がいた世界から追放され、この世界にいました。それに主―――ジェダル様に娼館に娼婦として売られた時点で、この身はジェダル様に仕える身として至らない身である証拠ですから、今のこの身に主は存在しません。」
「あ…………本当に俺でいいんですか?」
ユリーシャの説明を聞いてユリーシャの事情を思い出したリィンは気まずそうな表情をした後、主を失って行く当てのないユリーシャと契約する事を決めてユリーシャに確認した。
「はい…………!貴方は、我が新たなる主として相応しい資質を持っています。貴方の行く末を見守り、導いていくのがこの身の幸せとなりましょう。了承していただけますか?」
「…………ああ、俺でよければ喜んで。」
「ありがとうございます…………!それでは早速始めさせて頂きます。ん…………」
リィンの了承を知ったユリーシャは嬉しそうに微笑んだ後、リィンの唇に口づけをして甲冑や服を脱いで生まれたままの姿になった後リィンと”守護天使”の契約を交わし、リィンの”守護天使”となり、また”守護天使”となった事でユリーシャは天使階級第六位――――能天使(パワーズ)に昇格した!


PM7:50――――


「…………不思議です。今まで数多くの男達に犯された事で男に抱かれる事は内心嫌悪を感じていましたが、我が主でしたらいつでも、いくらでも犯されてあわよくば主の子を孕みたいという感情が芽生えています。これも”守護天使”の契約を結んだ影響でしょうか…………?」
契約を終えて互いに脱いだ服等を着終えたユリーシャは幸せそうな表情を浮かべてリィンにもたれかかって呟き
「い、いや…………さすがにそれは違うんじゃあ…………えっと………今更だけど、本当に俺でよかったのか?」
ユリーシャの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかいた後苦笑しながら指摘した後ユリーシャにある事を訊ねた。

「?どういう意味でしょうか?」
「俺にはアイドスの他にも5人もの女性達と将来を共にする事を決めている。普通に考えれば女性が複数の女性を侍らせている男である俺の新たな伴侶になる事は嫌がると思うんだが…………」
「フフ、”英雄色を好む”という諺がありますよ?現に今までの歴史では”英雄”や”王”達が多くの女性達を侍らせて多くの子孫を残しています。そして我が主は既に”英雄”と呼ばれ、今後の戦いでも更に飛躍するおつもりで、更にはこの身がお仕えし女神たるアイドス様に寵愛を受ける事が許されている特別な人物。そんな主とアイドス様共々一生を添い遂げ、いつか主の子を孕ませてもらえるなんて、天使であるこの身にとってはこの上なく幸福でありますよ。」
「え、え~と…………一応光栄と思うべきなのか…………?」
幸せそうな表情で微笑んだユリーシャの言葉に冷や汗をかいたリィンが苦笑しながら答えたその時
「―――そうですね。天使族の方にそこまで想いを寄せてもらえるなんてある意味光栄と思うべきでしょうね。―――最も”女神”であるアイドス様や”魔神”であるベルフェゴール様に想いを寄せられている兄様にとっては”今更”かもしれませんが。」
「え”。」
エリゼの声が聞こえ、その声を聞いたリィンが表情を引きつらせるとエリゼ、エリス、セレーネ、ステラ、フォルデ、アルティナ、更にロイド、エリィ、ティオ、ランディ、ノエル、ユウナがリィンに近づいてきた。

「エ、エリゼ!?それにエリス達やロイド達まで何でここに…………!?」
「…………兄様が兄様を訊ねたという天使の方と共に艦を出て夕方になっても帰ってきませんでしたから、気になって兄様たちを探していたんです。」
自分達の登場に驚いているリィンにエリスがジト目でリィンとユリーシャを見つめながら答え
「え、えっと………俺達はリィンを探して欲しいというエリゼさん達からの緊急支援要請を受けてエリゼさん達と共に君達の行方を探ってここに来たんだが…………」
「…………どうやらリィンさんもロイドのように女性の天使の方と”そういう関係”を結んだみたいね。」
「しかも幾ら滅多に人がこない場所とはいえ、外で”する”なんて何を考えているんですか…………」
「…………やはりリィン少佐は不埒ですね。」
「ええっ!?ロイド先輩が女性の天使とそういう関係を結んだって………!まさか相手はルファディエル警視ですか!?」
「エ、エリィさん…………何気にロイドさんにまで誘爆していますよ、その発言…………」
ロイドは気まずそうな表情で答え、エリィとティオ、アルティナはジト目でリィンを見つめながら呟き、エリィの話を聞いてある事実に気づいて顔を真っ赤にし始めたユウナを見たノエルは苦笑した。

「こっの兄貴族が…………っ!あんだけ色々なジャンルの綺麗所を侍らせておいて天使――――それも巨乳天使なんていうレア過ぎるジャンルの女の子まで侍らせるとか、マジでロイドクラスのリア充野郎じゃねぇか!?いや、その調子だと下手すればリア充皇帝やセリカの野郎クラスの超リア充野郎になるんじゃねぇのか!?」
「ハハハハハハハッ!いや~、さすが魔神や女神を侍らすリィンだけあって、お堅いイメージがある天使もハーレム要員にするのも楽勝ってか♪」
「お兄様の事ですから、恐らくその天使の方関連でここに来たのでしょうけど…………それならば、どうして私達にも声をかけてくれないのですか…………?」
「フウ………事情はまだ把握していませんが、リィンさん。もし”Ⅶ組”の方達と会う事があっても、ベルフェゴール様達とリィンさんの関係やそうなった経緯は教えない方がいいと思いますよ?」
ランディは悔しそうな表情でリィンを睨み、フォルデは腹を抱えて笑った後からかいの表情を浮かべ、セレーネとステラは疲れた表情で指摘した。
「…………とりあえず。まずはそちらの天使族の方の紹介をして頂きましょうか~?」
「それと、そちらの天使族の方とまで”私達と同じ関係”になった詳細な説明もして頂きますからね~?」
「はい…………」
そしてそれぞれ膨大な威圧を纏って微笑むエリスとエリゼに微笑まれたリィンは疲れた表情で肩を落として答えた。

こうして…………”天使の誇り”を取り戻して天使として復活したユリーシャは新たなる主であるリィンに仕える事になり…………リィンもまた、ベルフェゴール、アイドスに続く心強き仲間を手に入れた―――!
 
 

 
後書き
という訳でリィン側の初めての天使枠であるユリーシャがリィンの使い魔(?)キャラの一人&昇格しました!勿論原作にあったマイナススキルは消滅した上、この物語のオリジナル設定としてサティアやアイドスのように星の力を借りた魔術も扱えるようになった上エニグマまで使えますので原作よりも強さが明らかにブースト化されています♪なお、ユリーシャが過去を話すときのBGMはグラセスタの”知られざる過去の記憶”、ユリーシャが”守護天使”になってからのBGMはグラセスタのOPの歌がないVERだと思ってください♪なお、シルフェニアの18禁版にアイドス、ユリーシャの話を更新しておきましたので、興味がある方はそちらもどうぞ。

 

 

第13話

1月14日、同日PM3:30――――


一方その頃、リィン達がクロスベルに侵攻したルーファス達エレボニア帝国軍をメンフィル・クロスベル連合軍の一員として殲滅し、活躍した事を新聞で知り、更にその後に来たエリスから来た手紙を読み終えたアルフィン皇女はある決意をしてバッグに最小限の荷物を入れて自分やエリスが通っていた女学院を見つめていた。

~聖アストライア女学院・校門~

(………短い間でしたがお世話になりました。中等部も卒業せずに学院から去ってしまう不出来な生徒をお許しください、先生方…………)
女学院を見上げたアルフィン皇女は悲しそうな表情を浮かべた後バルヘイム宮が建っている方向へと視線を向けた。
(お父様…………お母様…………別れの挨拶もせずに去ってしまう親不孝な娘の事はどうか一日でも速くお忘れください…………オリヴァルトお兄様…………お兄様にも相談もせずに去ってしまう事…………どうかお許しください。そしてもし”Ⅶ組”のみなさんが再び立ち上がる時がくれば、わたくしの代わりに彼らの後ろ盾になってあげてください…………セドリック…………メンフィル帝国との件がどんな形で終わってもエレボニアはメンフィル帝国に対する贖罪を終えるまで苦境に立たされ続ける事になるでしょう。エレボニアをそんな状況においやった愚かな姉であるわたくしの事は幾らでも恨んでもいいから、エレボニアとお父様達の事をお願いね…………)
バルヘイム宮にいる家族に心の中で別れを告げたアルフィン皇女がその場から離れようとしたその時
「――――やはり行かれるのですね?」
ミント髪の女学生が女学院から現れてアルフィン皇女に近づいた。

「ミルディーヌ…………えっと、何の事かしら?」
自分にとって親しい後輩である女学生にして貴族連合軍の”主宰”であったカイエン公爵の姪――――公女ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエンの登場に驚いたアルフィン皇女は気まずそうな表情を浮かべてごまかそうとしたが
「ふふっ、リベールのロレント地方にあるメンフィル帝国の大使館に行かれるのでしたら、空港での乗船手続きの際は偽名を使われた方が姫様の捜索に遅れが生じて連れ戻される可能性を低くできますから、偽名を使う事をお勧めしますわ。」
「フウ………助言ありがとう。それよりも一体いつから、気づいていたのかしら?」
”自分がこれからどこに行くのか全てわかった上”の公女ミルディーヌが助言を口にすると疲れた表情で溜息を吐いた後公女ミルディーヌに訊ねた。

「―――今朝から帝都を含めたエレボニア中を騒がせている内容――――クロスベルを侵攻したエレボニア帝国軍がメンフィル帝国と連合を組んだ”クロスベル帝国”によって迎撃・殲滅され…………その迎撃戦にはエリス先輩のお兄様――――”灰色の騎士”がメンフィル・クロスベル連合軍の一員として参加されていて、お一人でエレボニアの空挺部隊の多くを撃破した所か侵攻軍の”総大将”にして貴族連合軍の”総参謀”であったルーファス卿を討伐した内容が書かれている新聞である”クロスベルタイムズ”を姫様が顔色を悪くして読んでいるご様子を偶然目にした時から、メンフィル・クロスベル連合軍との戦争が本格的になる前に姫様は動かれると想定しておりました。―――最も、新聞を読んだ当日に行動なさる事は”少々”想定外でしたが。」
「そう…………貴女は止めないのね?」
「…………帝国貴族として、そして姫様の後輩としてお止めしたいですが、私には姫様をお止めする資格はございませんわ。――――姫様にそのような決断をさせる原因となった元凶の一人である貴族連合軍の”主宰”であったクロワール叔父様を親類に持つ私には。」
静かな表情で問いかけたアルフィン皇女に対して公女ミルディーヌは複雑そうな表情で答えた後静かな表情を浮かべてアルフィン皇女を見つめた。
「確かにユミルの件にはカイエン公も関わっていたけど、ユーシスさんのように貴族連合軍に関わっていない貴女まで責任を感じる事はないわ。―――でも、”最後”に貴女に会えてよかったわ。」
「…………姫様…………――――どうかご無事で。再びエリス先輩と共にお会いし、以前のように”乙女の嗜み”やエリス先輩ご自慢の”リィン兄様”についての談議ができる事を心からお祈り申し上げますわ。」
寂しげな笑みを浮かべたアルフィン皇女を辛そうな表情で見つめた公女ミルディーヌは静かな表情で会釈をして微笑み
「フフ、そうね。―――それじゃあ、”またね。”」
公女ミルディーヌの言葉に苦笑したアルフィン皇女はミルディーヌに微笑んだ後帝都にある国際空港へと向かい始めた。

(やはり”想定通り姫様はメンフィル帝国へと向かわれましたか。”将軍からの連絡によれば”黄金の戦王”との婚姻の話が纏まったユーディお姉様もキュアさんと共に近々クロスベルに亡命するご様子。ならば私も”指し手”として動く時が来るのも後少しですね。―――”メンフィル・クロスベル連合を含めた西ゼムリア大陸の全国家・組織との戦争に敗戦した後のエレボニアの未来の為”に…………そして”本来の盤面よりも2年も早まった想定外の盤面”をどのような結末へと導くのかをお傍で見せて頂くためにも、私も近々貴方の元に参りますわね?―――”灰色の騎士”様――――いえ、”私の未来の旦那様”♪)
アルフィン皇女を見送った公女ミルディーヌは真剣な表情を浮かべた後意味ありげな笑みを浮かべてまだ見ぬリィンの顔を思い浮かべた。

その後空港に到着したアルフィン皇女は偽名で乗艦手続きをして、まずリベール王国の王都―――グランセルへと向かい、グランセルに到着後は定期船でロレント市へと向かい、そしてロレント市に到着後は徒歩でロレント市の郊外にあるメンフィル帝国の大使館へと向かった。


同日、PM8:30―――

アルフィン皇女が大使館に到着する前リウイはしばらくの間”メンフィル帝国大使”としての代理を務める自分と同じ隠居した立場にして、かつては”宰相”として自分とシルヴァンの二代のメンフィル皇帝を支えた大貴族――――パント・リグレへの引継ぎを終えていた。

~リベール王国・ロレント市郊外・メンフィル帝国大使館・執務室~

「夫婦揃って隠居生活を楽しんでいた所をわざわざ異世界にまで呼び出し、面倒な仕事を押し付ける羽目になってしまってすまないな、パント。」
「いえ、異世界――――ゼムリア大陸には前から興味がありましたから、私にとっては渡りに船ですから、どうかお気になさらないでください。―――それよりも、今回の戦争、本当に私は陛下達の御力にならなくてよろしいのでしょうか?」
リウイの言葉に対して謙遜した様子で答えたパントはリウイにある事を訊ねた。
「今回の戦争相手――――エレボニア帝国はお前の知恵が必要な程手強い相手ではないし、メンフィル側の軍師はシルヴァンの名代も兼ねたセシリアが纏める事になっているから、心配無用だ。」
「まあ…………セシリアさんが。それでしたら何の心配もございませんわね。」
リウイの答えを聞いた金髪の婦人――――パントの妻であるルイーズ・リグレは目を丸くした後微笑んだ。

「そのようだね。だったら私達はお役御免になった後の事――――動乱の時代が終わって平和になったゼムリア大陸での旅行の計画でも立てておこうか。」
「ふふっ、それはいい考えですわね。」
「クスクス、そういえば私達も”新婚旅行”はまだですから、戦争が終わったら私達もゼムリア大陸で旅行をしませんか、あなた?」
「…………そうだな。全て終えて落ち着いた後でならいいかもしれんな。」
パントの提案にルイーズが頷いている様子を微笑ましく見守っていたイリーナの希望を聞いたリウイは静かな笑みを浮かべて頷いた。するとその時部屋に備え付けている内線が鳴った。

「―――こちら執務室。何があった?」
「こちらエントランス。夜分遅くに申し訳ございません、陛下。どうしても陛下にお会いしたいという人物がこの大使館に飛び込みで訊ねてきたのですが…………」
「何?こんな夜遅くにか?―――一体誰だ?」
「それが…………エレボニア帝国皇女アルフィン・ライゼ・アルノールと名乗っています。本来でしたら追い返すべきだと思われるのですが、証拠としてエレボニア皇家の一員であることを示す皇印も見せられた以上陛下に判断を委ねる必要があり、ご連絡致しました。」
「…………何?少し待て。その者が本人かどうかを確認する。」
予想外の人物が自分を訊ねてきた事に驚いたリウイは端末を操作してエントランスにある監視カメラの映像を見ると、そこには学生服姿のアルフィン皇女がいた。
「…………確かに本人のようだな。―――いいだろう。今から会うから執務室まで案内してやれ。」
「御意。」
「あなた、何があったのですか?」
リウイが内線を終えるとイリーナが不思議そうな表情を浮かべて訊ねた。

「…………今エレボニア帝国のアルフィン皇女がこの大使館に訊ねてきて、俺との面会を望んでいるとの事だ。」
「ええっ!?アルフィン皇女が!?一体何の為に…………メンフィル帝国とエレボニア帝国はもはや戦争状態に突入しているというのに…………」
「まさかご自身がメンフィル帝国に対する人身御供となる事で戦争を止める為でしょうか?」
リウイの説明を聞いたイリーナは驚いた後困惑し、エクリアは複雑そうな表情で自身の推測を口にした。
「さてな…………エレボニアへの侵略を中止する要求内容はアルフィン皇女も知っているだろうから、自分の身一つを差し出した所で何の意味もない事は承知しているとは思うが…………」
「陛下、もしよろしければ私が対応致しましょうか?」
リウイが考え込んでいる中パントは自分がアルフィン皇女の対応する事を申し出た。
「いや、アルフィン皇女が護衛もなしに俺に会いに来たという事はアルフィン皇女自身の独断で”そこまでの覚悟”を持って来たという事だろうから、俺が対応する。あまり大人数で対応してアルフィン皇女を委縮させる訳にもいかないから、お前とルイーズは一端部屋に戻ってくれ。会談が終わり次第状況を説明する。」
「ハッ。それでは我々は一端失礼致します。」
「失礼します。」
そしてパントとルイーズが部屋を退出して少しすると、アルフィン皇女が執務室に通された。

「―――このような夜分遅くの突然の訪問に応えて頂き、誠にありがとうございます、リウイ陛下。」
執務室でリウイ達と対峙したアルフィン皇女は上品な仕草で会釈をし
「直接顔を合わせて話をするのは帝都(ヘイムダル)での夏至祭以来か……………………それで、メンフィルとエレボニアが戦争状態に陥っているこの状況で、今更何をしに来た、アルフィン皇女。」
「「……………………」」
会釈をされたリウイは静かな表情で答えた後目を細めてアルフィン皇女に問いかけ、その様子をイリーナは複雑そうな表情で、エクリアは静かな表情で黙って見守っていた。

「まずは内戦の件について謝罪させてください…………シュバルツァー男爵夫妻の好意に甘えて軽はずみにも貴国の領土であるユミルに潜伏し続けた結果、ユミルが猟兵達によって襲撃されてその襲撃でテオおじ様が重傷を負われ、貴国の令嬢であるエリスまで拉致されるという貴国としてはとても許されない所業を我が国が行ってしまい、誠に申し訳ございませんでした…………!」
リウイに問いかけられたアルフィン皇女はその場で深く頭を下げた。
「今更謝罪をした所で、我が国のエレボニアに対する”怒り”は全く収まらないがな。まさかとは思うが、ユミル襲撃の元凶の一人である自分の身をメンフィルに差し出せば、メンフィルは”怒り”を収めるような甘い事は考えていないだろうな?グランセルのエレボニアの大使館を通じてエレボニア帝国政府に送り付けた要求内容にも書いてある通り、今更”帝位継承権がある皇女一人の身如き”で我らメンフィルの”怒り”は収まらんぞ。」
「……………っ!」
「あなた…………何もそこまで言わなくても。」
しかしリウイは冷たい答えを口にし、その答えを聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情で息を呑み、イリーナはアルフィン皇女を気にしながらリウイに指摘した。

「いいえ…………リウイ陛下の仰る通りですし、わたくしもそのような甘い事は考えておりませんのでどうかわたくしの事はお気になさらないでください、イリーナ皇妃陛下。」
「……………………」
「―――それで?ここに来た本題は何だ?」
アルフィン皇女の答えを聞いたイリーナが複雑そうな表情で黙り込んでいる中リウイは静かな表情でアルフィン皇女に要件を訊ねた。
「…………リィンさん達の事です。二日前我が国がクロスベルに侵攻した際に、リィンさん達もメンフィル帝国軍の一員として戦い、多くのエレボニアの軍人達だけでなくルーファスさんも討ったとの事ですが…………実は今日エリスから手紙が届きまして。エリスの手紙によりますとメンフィル帝国軍にはリィンさんやセレーネさんだけでなく、エリスまで入隊しているとの事ですが…………もしかして、リィンさん達がそのような状況に陥った原因の一つはわたくしを含めたエレボニアの人々と親しくなり過ぎた事でしょうか?」
「…………まあ、理由はアルフィン皇女が考えているような内容ではないが、リィン達が今回の戦争に参加するためにメンフィル帝国軍に入隊を志望した理由はアルフィン皇女が関係している事は否定しない。」
辛そうな表情で訊ねたアルフィン皇女に対してリウイは静かな表情で答えた。

「っ…………!やはり…………!リウイ陛下、リィンさん達が貴国に忠誠を疑われる責任はリィンさん達の好意に甘え続けたわたくし達”アルノール家”に一番の責任があります!わたくしが”アルノール家”を代表してメンフィル帝国が望むわたくしへの裁きも受けますので、どうかようやく辛い戦いを終えたばかりのリィンさん達を再び戦いに駆りだすような事は止めてあげてください!お願いします…………!」
リウイの説明を聞いて辛そうな表情で唇を噛み締めたアルフィン皇女は頭を深く下げてリウイに嘆願したが
「どうやらアルフィン皇女は盛大な勘違いをしているようだな。」
「え………」
リウイの言葉を聞くと呆けた表情を浮かべた。

「―――リィン達が今回の戦争に参加する為にメンフィル帝国軍に入隊した理由は俺達を含めた誰の意志も介入していない―――つまり、自分達の意志で今回の戦争に参加する事を決めたリィン達自身によるものだ。」
「!!ど、どうしてリィンさん達が自らの意志でエレボニア帝国との戦争に…………もしかして、ユミルの件に対する”報復”でしょうか…………?」
リウイの答えを聞いて目を見開いて驚いたアルフィン皇女は悲しそうな表情を浮かべてリウイに訊ねた。
「…………あなた、アルフィン皇女がご自身の身も顧みずリィンさん達の為にお一人でここに訊ねてきたのですから、教えてあげたらどうですか?」
「僭越ながら私もイリーナ様の意見に賛成致します。エレボニアで結んだ親しい方々にも刃を向ける辛い決意をして早速”結果”を出したリィンさん達の為にも、その当事者の一人であるアルフィン殿下にもお教えるべきかと。」
「……………………―――いいだろう。リィン達が今回の戦争に参加した理由は――――」
イリーナとエクリアの意見を聞いて頷いたリウイはアルフィン皇女にメンフィルが求めるアルフィン皇女の処罰内容を含めてリィン達が戦争に参加した理由を説明した―――
 
 

 
後書き
という事で今回の話でミュゼがフライング登場しました♪なお、アルフィンが女学院を去るときのBGMは閃4の”それでも前へ”、リウイがアルフィンにリィン達の事について話し始めるときのBGNは碧の”想い、辿り着く場所”か、VERITAの”それでも生きる”のどちらかだと思ってください♪ 

 

第14話

~メンフィル帝国大使館・執務室~

「そ…………んな…………それではリィンさんやエリス達はわたくしやエレボニアの為に敢えてメンフィル帝国軍に…………っ!」
事情を聞き終えたアルフィン皇女は愕然とした後悲痛そうな表情を浮かべた。
「そしてその結果としてアルフィン皇女も知っての通りリィンはヴァリマールでクロスベル侵攻軍の空挺部隊の多くを撃破し、エリス達と共にルーファス・アルバレアを討ち取った活躍を評されて”少佐”に昇進した。リィンは戦後のエレボニアの処遇について口出しできる立場を目指しているとの事だから…………”少佐程度の地位で満足はすまい。”更に昇進をする為にもリィンはエリス達と共に今後の戦争で積極的に敵将クラスの撃破等の”戦場の手柄”をその手に掴み取る事を考えているだろうな。」
「……………………リィンさん……………………」
リウイの推測を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情を浮かべた。
「――――それとリィンはクロスベル防衛戦での”手柄”の件で既に目的の一つである”メンフィルが求めるアルフィン皇女の処罰を穏便な内容にする件”についても”半分は目的を達成する事ができた”から、今頃自分達がやろうとしている事は決して無謀でも無駄でもないことに実感しているだろう。」
「え………それはどういう事でしょうか……………?」
そしてリウイの口から自分の件についての話が出るとアルフィン皇女は不思議そうな表情で訊ねた。

「今回のクロスベル防衛戦での手柄の件でメンフィル帝国政府はまだ決まっていなかったアルフィン皇女の仕え先をリィンさんに決定したのです。」
「……………………え……………………わたくしがリィンさんに…………?あ、あの、幾ら手柄の件があるとはいえ、何故メンフィル帝国政府はわたくしの仕え先をリィンさんに決められたのでしょうか…………?”帝位継承権”を持つわたくしは敗戦後のエレボニアでも利用する事はできると思われるのですが…………」
イリーナの答えを聞いて呆けたアルフィン皇女は戸惑いの表情でリウイ達に訊ねた。
「メンフィル帝国はエレボニアの内戦勃発時万が一エレボニアの領土に隣接しているメンフィル帝国領であるユミルも内戦に巻き込まれた際に対処する臨時のメンフィル軍をユミルに派遣しなかった件で、ユミルの領主一家である”シュバルツァー家”に”負い目”があった為元々”シュバルツァー家”もアルフィン殿下の仕え先の有力な候補として挙がっていたのですが、今回のリィンさんの手柄の件でシュバルツァー家の跡継ぎであるリィンさんに決定したとの事です。」
「―――そういう訳で万が一今回の戦争でエレボニアが滅亡しても、アルフィン皇女は”リィンの使用人兼娼婦”という名目でシュバルツァー家に保護されることになるだろう。…………――――よかったな、アルフィン皇女。現時点でアルフィン皇女の処罰は穏便な内容になっているも同然の上、万が一リィンが心変わりをしてアルフィン皇女に関係を迫ってもアルフィン皇女としてもそれ程抵抗感はあるまい。何せアルフィン皇女にとってのリィンは親友であるエリスの兄であり、夏至祭、内戦ではリィン自身の活躍によって受けた恩がある上、エレボニアの滅亡を防ぐ為に今回の戦争に参加したのだからな。」
「………………………………」
「あなた、最後のその言い方は幾ら何でもアルフィン皇女に失礼ですよ。」
エクリアの説明の後に興味なさげな様子で指摘したリウイの指摘を聞いたアルフィン皇女が複雑そうな表情で黙り込んでいる中イリーナが呆れた表情でリウイに指摘した。

「いえ、リウイ陛下の仰っている事は何一つ間違っていませんわ。…………不謹慎ではありますが、わたくしが一生お仕えし、貞操も捧げる相手がリィンさんである事を知った時正直な所安心すると共に、”嬉しさ”も感じましたから…………」
「え………ではアルフィン皇女はリィンさんの事を…………」
困った表情を浮かべて語ったアルフィン皇女の答えを聞いたイリーナはアルフィン皇女がリィンに想いを寄せている事を察して目を丸くしてアルフィン皇女を見つめた。
「……………………――――話は以上だ。仮にも敵国の皇女が護衛もつけずに現れたのだから、本来ならば拘束すべきだろうが…………大使館設立時から世話になり続けているリベールとかつての戦友であり、恩もあるオリヴァルト皇子に免じてそのまま祖国に帰る事を許してやる。今日はもう遅いから大使館に泊まり、明日に祖国に帰国するといい。必要ならばアリシア女王やグランセルのエレボニア大使館に務めているダヴィル大使に連絡を取るがどうする?」
そして話を打ち切ったリウイはアルフィン皇女に今後の事について伝えた後アルフィン皇女に判断を訊ねた。
「………………………………いえ、わたくしはわたくしが犯した罪を償う為にも祖国には2度と戻らないつもりでここに来ましたから、どうかメンフィル帝国から処罰を受ける事になっているわたくしを”処罰”として、わたくしの御仕え先であるリィンさんにお仕えできるように手配をしてください。」
しかしアルフィン皇女はリウイ達も予想もしていなかった答えを口にした。

「何?―――自分の言っている事がどういう事なのか、理解しているのか?」
「はい。現時点を持ってわたくし――――アルフィン・ライゼ・アルノールはメンフィル帝国の要求通りエレボニア皇族の身分を捨て、処罰内容であるリィンさんの使用人兼娼婦として、今後も戦い続きになるリィンさんの御力になりますわ。勿論使用人兼娼婦としての役目を務めるだけでなく、”主”であるリィンさんの望みを叶える為にも此度の戦争、リィンさん達と共に”エレボニア帝国”と戦う所存です。必要であるならば、誓約書も書きます。」
「な……………………メンフィル・クロスベル連合とエレボニアとの戦争にメンフィル・クロスベル連合の戦争相手である皇族のアルフィン皇女、貴女が”メンフィル・クロスベル連合側”として戦争に参加するなんて一体何を考えておられるのですか!?」
リウイの問いかけに対して決意の表情で宣言したアルフィン皇女の宣言にリウイとエクリアと共に血相を変えたイリーナは一瞬絶句した後信じられない表情でアルフィン皇女に訊ねた。
「リィンさん達――――シュバルツァー家から受けた恩を返す為…………そして今回の戦争の勃発の元凶の一人としての責任を果たす為に、”かつてのエレボニア皇女として”滅亡の危機に陥っている祖国の滅亡を防ぐ為に、そして…………エレボニアの為に自ら”エレボニアの裏切り者”という”咎”を背負ったリィンさん達と共に”咎”を背負う為にも、わたくしはリィンさん達と共にエレボニア帝国と戦います…………!」
「アルフィン皇女…………」
「………………………………」
アルフィン皇女の決意を知ったイリーナは驚き、エクリアは驚きのあまり目を見開いてアルフィン皇女を黙って見つめ
「……………………決意は固いようだな。――――――いいだろう。アルフィン皇女――――いや、”我らメンフィルの新たなる戦友になることを決めたアルフィン”の申し出、”メンフィル帝国軍エレボニア帝国征伐総大将”リウイ・マーシルンの名において受理する。」
アルフィン皇女――――皇族の身分を捨ててただの”アルフィン”としてリィン達の仲間になる事を決めたアルフィンの目を少しの間見つめてアルフィンが”本気”であることを悟ったリウイはアルフィンの申し出を受ける事にした。

「本当にアルフィン皇女の申し出を受理するのですか、あなた!?」
「……………………エレボニアはともかく、リベールにも話を通さず勝手に決められてよかったのですか?この件をリベールが知れば、間違いなくその件について何か言ってくると思われますが…………」
リウイの判断にイリーナが驚いている中エクリアは真剣な表情を浮かべてリウイに確認した。
「万が一その件でリベールが何か言ってきた時はパント達にアルフィン皇女はメンフィルの処罰の件で今後の先行きが不安だったが、クロスベルの迎撃戦での”手柄”として戦後に実行されるはずだったアルフィン皇女の処罰内容である”リィンの使用人兼娼婦”という名目でリィンに保護される事になったと言うように伝えておく。それに例えエレボニアが和解を望もうがアルフィン皇女がリィンに仕える事は”決定事項”だ。内戦の件で2度もリベールに免じて開戦を待ってやったのだから、今更文句は言わせん。」
「それは…………」
「…………確かに陛下の仰る通り、今回の戦争の件にリベールは”中立の立場として”エレボニアに対するメンフィルの要求内容について意見し辛い立場ですから、アルフィン皇女の件を知ってもその結末に納得せざるを得ないでしょうね。」
リウイの答えにイリーナが複雑そうな表情をしている中、エクリアは静かな表情で頷いた。

「あの…………内戦の件でリベール王国に免じて開戦を待って頂いたと仰いましたが…………」
リウイ達の会話内容が気になったアルフィンはリウイ達に訊ね
「……………実はアルフィン皇女もご存知のように内戦の最中に起こった出来事――――アルバレア公爵に雇われた北の猟兵達による”1度目のユミル襲撃”、カイエン公爵達貴族連合軍による”2度目のユミル襲撃”の件でそれぞれメンフィル帝国は王都(グランセル)にあるエレボニア帝国の大使館にそれぞれの襲撃に対する謝罪や賠償としてメンフィルが求める要求をメンフィルが決めた期日以内に実行しなければ、開戦する事を警告したのですが…………その時にそれぞれアリシア女王とクローディア王太女が仲介に入って、メンフィル(私達)に開戦を考え直すように説得し、リベールと盟を結んでいるメンフィル(私達)は盟友であるリベールに免じて内戦が終結するか”ユミル襲撃”のようなメンフィルとエレボニアの間で何らかの国際問題が発生するまで”開戦を止めるための3度目の要求”をする事を待つ事にしたのです。」
「最も2度目の説得の際は幾ら盟友のリベールの頼みであろうと『3度目はない』事やこれ以上エレボニアを擁護する事を行えば、メンフィルはメンフィルとエレボニアの戦争の際リベールを第三者――――つまり、”中立の立場として認めない為リベールの仲介には応じない”事を言い含めたがな。」
「そうだったのですか…………リウイ陛下、もし戦争が終結した際は、アリシア女王陛下達に感謝の言葉を述べる機会を設けてはいただけないでしょうか?」
イリーナとリウイの説明を聞くと目を丸くした後リウイにある事を頼んだ。
「そのくらいならいいだろう。――――明日にはリィン達の元に到着する手筈を整えるから、今夜は大使館で休むといい。」
「はい…………!」
翌日――――アルフィンはリウイの手配によってリィンの使用人兼娼婦、そしてメンフィル帝国の”義勇兵”としてリィンの元に送られる事になった。


1月15日、AM11:20―――

~メンフィル帝国軍・魔導戦艦ヴァリアント・ブリーフィングルーム~

「それでリィンさん、先程ブリーフィングが終わったばかりなのにわざわざ私やフォルデ先輩どころかエリスさん達まで集めた理由を教えて頂きたいのですが…………」
「ああ、さっき内線でゼルギウス将軍閣下から入った連絡なんだが…………俺達の部隊に義勇兵が新たに一人追加される事になったから、その顔合わせの為に集めたんだ。将軍閣下の話によると何でもその義勇兵は俺やエリス達と知り合いだそうだが…………」
「え………私達とですか?」
「一体どなたが…………お兄様、その方はいつこちらに?」
ステラの質問に答えたリィンの答えを聞いたエリスは目を丸くし、セレーネは不思議そうな表情でリィンに訊ねた。
「今エリゼが迎えに行っているからもうそろそろ来るは『兄様、私達の部隊に配属された新たな義勇兵の方をお連れしました。』…………どうやら来たみたいだな。―――ああ、入ってくれ。」
セレーネの疑問にリィンが答えかけたその時扉がノックされてエリゼの声が聞こえ、リィンは入室の許可を部屋の外にいるエリゼに伝えた。

「…………失礼します。」
そしてエリゼが部屋に入ると、エリゼの後に”メンフィル帝国の紋章が刻み込まれたメイド服を身にまとったアルフィン”が部屋に入ってきた!
「な――――――」
「ええっ!?」
「まさか貴女は…………」
「おいおい…………どうなってんだ?」
「……………………」
自分達にとってあまりにも予想外過ぎる人物―――アルフィンの登場にリィンは絶句し、セレーネは驚きの声を上げ、アルフィンに見覚えがあるステラは信じられない表情をし、フォルデは困惑し、アルティナは呆けた表情でアルフィンを見つめ
「―――姫様!?」
エリスは信じられない表情で声を上げた。

「エリス…………っ!」
アルフィンはエリスに駆け寄るとエリスを抱き締め
「やっとまた会えたわね…………!クロスベル侵攻軍と戦った事は手紙で知らされていたけど、無事で本当によかった…………!」
「姫様…………あの、何故姫様がこちらに…………?というかその服装は一体…………」
抱き締められたエリスは抱き締め返しながらアルフィンの自分への気遣いに感謝した後、アルフィンと離れて戸惑いの表情でアルフィンを見つめた。
「―――”アルフィンさん”、積もる話はあるでしょうがまずは兄様達に自己紹介をお願いします。」
「はい。―――改めまして、此度エレボニア帝国征伐を行うメンフィル帝国の”義勇兵”の一人兼リィン少佐にお仕えする使用人兼娼婦としてリィン少佐の部隊に配属されることになった”アルフィン・レンハイム”と申します。どうかお見知り置きを。」
エリゼに促されたアルフィンはリィン達に上品な仕草で会釈をして自己紹介をした。

「……………………」
「リィンの使用人兼娼婦は例の要求内容だが、それを抜きにしても戦争相手の国の皇女がメンフィルの義勇兵としてここに配属って色々な意味で無茶苦茶だな、オイ…………」
「メンフィルが求めるアルフィン殿下の処罰の件については先日私もリィンさん達から教えてもらいましたが…………何故、エレボニアにいるはずのアルフィン殿下が我が軍に…………」
「それにアルフィン殿下はご自身の事を”アルフィン・レンハイム”と仰っていましたが…………」
「…………理解不能です。」
アルフィンの自己紹介を聞いたエリスは驚きのあまり口をパクパクさせ、フォルデは疲れた表情で溜息を吐き、ステラとセレーネは戸惑いの表情でアルフィンを見つめ、アルティナはジト目でアルフィンを見つめた。
「―――エリゼ!?一体どういう事なんだ!?」
そして石化したかのように固まっていたリィンは我に返ると事情を知っていそうなエリゼに血相を変えて訊ねた。

「リフィアからの話によりますと昨日の夜にアルフィンさんがロレントのメンフィル帝国の大使館にいるリウイ陛下達を訊ねて、兄様達が戦争に参加した理由を陛下達から聞かされた後にメンフィルがエレボニアに求める要求内容の一部であるご自身の身分を捨てて”リィン・シュバルツァーの使用人兼娼婦”という立場として兄様を支えるために…………そして、戦でも兄様達に協力するためにエリス達のように自らメンフィルの”義勇兵”になる事を陛下に申し出て、陛下はその申し出を受理して今に至ります。」
「ちなみに”レンハイム”はオリヴァルトお兄様がリベールの旅行時代に名乗っていたファミリーネームであり、オリヴァルトお兄様の産みの母親であられるアリエル様のファミリーネームでもありますわ。」
「そ、そうなんですか…………―――じゃなくて!?ご自身の身を顧みずにリウイ陛下達を訊ねた件に関しては百歩譲ったとしても、何故ご自身の処罰内容も陛下達から知らされた上でその内容を承諾し、更にはメンフィル軍の一員として殿下にとっての”祖国”であるエレボニア帝国軍と戦う事を決められたのですか!?」
エリゼの後に説明したアルフィンの説明に頷きかけたリィンだったがすぐに我に返ると疲れた表情でアルフィンに問いかけた。
「ふふっ、リィンさん達もエレボニア帝国との戦争による手柄で昇進して、”敗戦後のエレボニアの処遇について口出しできる立場”を目指す為に今回の戦争に参加なされたとの事ですから、わたくしも”元エレボニア皇家であるアルノール家の一員として”、祖国であるエレボニアの滅亡を防ぐ為にリィンさん達に協力する事にしたのですわ。」
「…………例え祖国の滅亡を防ぐ為とはいえ、アルフィン殿下はエレボニアに侵略するメンフィル(わたしたち)の一員としてエレボニア帝国軍と戦うという事は、エレボニアの民や貴族、それにご家族であるユーゲント皇帝陛下達からも”裏切り者”呼ばわりされる事も承知されているのですか?」
アルフィンの答えを聞いたステラは真剣な表情でアルフィンを見つめながら訊ねた。

「はい。リィンさん達――――シュバルツァー家から今まで受けた恩を返す為…………今回の戦争の勃発の元凶の一人としての責任を果たす為に…………そして…………エレボニアの為に自ら”エレボニアの裏切り者”という”咎”を背負う事を決めたィンさん達と共に”咎”を背負う為にも、わたくしは祖国を捨ててリィンさん達と共にエレボニア帝国と戦う事にしたのですわ。」
「アルフィン殿下…………」
「姫様…………」
「……………………」
アルフィンの答えを聞いたセレーネとエリスが辛そうな表情でアルフィンを見つめている中アルティナは静かな表情で黙ってアルフィンを見つめた。
「決意は固いようだし、もうここまで来ちまった以上姫さんもお前達のように後戻りはできねぇんだから、受け入れて姫さんをお前達で守ってやるしかないんじゃねぇのか?」
「………………………………はい……………………って、”姫さん”だなんてさすがにその呼び方は幾ら何でもアルフィン殿下に対して不敬だと思うのですが…………」
肩を軽く叩いたフォルデの意見に少しの間考え込んだリィンは複雑そうな表情で頷いた後ある事に気づいて呆れた表情でフォルデに指摘した。

「ふふっ、リィンさ―――いえ、”ご主人様”。先ほども自己紹介をしたようにわたくしはメンフィル帝国がわたくしに求める処罰内容である”エレボニア帝国皇女という身分を捨てて、リィン・シュバルツァーの使用人兼娼婦として一生仕える”事も承諾したのですから、今のわたくしはご主人様専用の使用人兼娼婦―――すなわち”メンフィル帝国の平民”ですから、わたくしへの呼び方はどのような呼び方で呼んで頂いても問題ありませんわよ♪」
「ブッ!?」
「姫様!?」
「……………………」
「え、え~っと…………アルフィン殿下…………―――ではなくてアルフィンさん、使用人はともかく”娼婦”とはどういう存在なのかもご存知で現時点でのメンフィル帝国が求めていたアルフィンさんへの処罰内容を本当に受け入れたのですか?」
アルフィンはリィンにウインクをして答え、アルフィンが自分を『ご主人様』呼ばわりした事にリィンは思わず吹き出し、エリスは驚きの声を上げ、エリゼはジト目でアルフィンを見つめ、セレーネは冷や汗をかいて苦笑しながらアルフィンに訊ねた。
「勿論リウイ陛下達から伺っていますわ。―――そういう訳ですので、わたくしの身体はご主人様だけのものなのですから、もしわたくしを抱きたければ、いつでも仰ってください、”ご主人様”♪」
(アハハハハハッ!これでまたご主人様のハーレムメンバーが増えたわね♪)
(ほ、本当にいいんでしょうか…………?)
(皇族を従者として侍らせるなんて…………!あぁ、これで我が主の”英雄”としての”格”がまた上がりましたね…………!)
(ふふっ、”女神”である私や”魔神”であるベルフェゴールを侍らせているから、”今更”だとは思うけどね…………)
アルフィンの宣言にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ベルフェゴールは腹を抱えて笑い、メサイアはリィン達同様冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ふにゃりと顔を崩して嬉しそうにしているユリーシャの様子にアイドスは苦笑していた。

「「に・い・さ・ま~~~~~!?」」
「お、俺は無実だ――――――ッ!」
そして我に返ったエリゼとエリスは膨大な威圧を纏ってリィンに微笑み、微笑まれたリィンは思わず疲れた表情で叫んだ。


PM10:10―――

アルフィンが仲間になったその日の夜、自室に備え付けているシャワーを浴びたリィンはベッドに倒れこんだ。

~リィン少佐の部屋~

「きょ、今日は精神的な意味で疲れた…………まさか殿下が俺の部隊に配属されるどころか、現時点での処罰内容を受け入れて俺の使用人兼娼婦になるなんて…………」
ベッドに倒れこんだリィンは今日起こったとんでもない出来事であるアルフィンの件について思い返した。

わたくしの身体はご主人様だけのものなのですからもしわたくしを抱きたければ、いつでも仰ってください、”ご主人様”♪

「俺が望めば”帝国の至宝”と呼ばれたアルフィン殿下を…………って、何を考えているんだ、俺は!?ベルフェゴール達の件で最近淫行続きだったから、頭がおかしくなったのかもしれない…………心を落ち着かせるために寝る前に精神統一をしておくか…………」
アルフィンの自分に向けた発言を思い返してふと自分がアルフィンを抱いている様子を思い浮かべたリィンはすぐに我に返って精神統一を行おうとしたが、扉がノックされた。
「(こんな夜遅くに誰だ?)…………誰ですか?」
「―――アルフィンです。夜分遅くに申し訳ありませんが、入ってもよろしいでしょうか、リィンさん。」
「へ…………!?え、ええ、どうぞ。」
アルフィンが自分を訊ねた事に驚いたリィンだったがすぐに気を取り直して入室するように促した。

「…………失礼します。」
「アルフィン殿下、こんな夜遅くに自分に何の御用でしょうか?」
「ふふっ、何度も言っているようにわたくしは”エレボニア皇女”の身分を捨ててこの場にいますし、リィンさんはわたくしの”主”であり、メンフィル軍の”上司”でもあるのですからもっと気安い呼び方をして頂けないと、他の部下の方達に示しがつきませんわよ?」
「うっ。まあ、それについては可能な限り早く慣れるように努力します…………ハハ…………」
アルフィンの指摘に唸り声を上げたリィンは苦笑した。
「―――でしたら、すぐにでもわたくしの事をもっと気安い呼び方で呼べるようにわたくしも協力致しますわ。」
「へ。」
そしてアルフィンの言葉にリィンが呆けた声を出したその時、何とアルフィンは服を脱いで下着姿になった!

「ちょっ、殿下!?突然何を!?」
(うふふ、女がこんな夜遅くに男の部屋を訊ねた時点で何が起こるか普通なら”察する事ができるわよ”、ご主人様♪)
下着姿になったアルフィンを見た後すぐに慌てて視線をそらしたリィンを面白そうに見ていたベルフェゴールは結界を展開した。
「わたくしは”ご主人様”にお仕えする使用人であり、”ご主人様”の”性欲”を発散させる為の存在であるご主人様専用の”娼婦”。わたくしが本当の意味でご主人様専用の”娼婦”である”証”を作る為に、ご主人様の欲望のままにどうか存分にわたくしを犯してください。」
「い、いやいやいやいや!?た、確かに自分にとっては突然の出来事でそのような形で殿下を自分の元で保護する形になりましたが、自分はアルフィン殿下には幸せになってもらいたいと思っていますので、もっとご自分の身を大切にしてください!(ユリーシャの件といい、何で”こういう展開”が連続で続くんだ…………?)」
下着姿で迫ってきたアルフィンに対してリィンは必死な様子でアルフィンに考え直すように説得しようとしたが
「もう…………わたくしの知らない間に3人もの女性を増やしたにも関わらず、ここまで言ったわたくしの気持ちに気づかないなんてさすがにどうかと思いますわよ?」
「え……………………」
苦笑しながら答えたアルフィンの言葉を聞くと呆けた表情を浮かべた。

「――――好きです、リィンさん。あの1(ひとつき)前のパンダグリュエル……わたくしを解放してくださったあの日から。親友の兄君に対してではなく、エレボニアの皇女としてでもなく……一人の娘として、貴方という男性(ひと)を。叶う事ならばエリス達のようにわたくしも貴方の伴侶の一人に加えて欲しかったのですわ。」
「アルフィン殿下…………」
「リウイ陛下達からわたくしの処罰内容を聞いた時、不謹慎だと理解はしていましたが、それでも嬉しかったですわ…………わたくしにとって初恋の殿方に貞操を捧げる事が許され…………例えどんな形であろうと、好きな殿方が侍らす女の一人になれるのですから…………」
「……………………その、殿下は自分で本当にいいんですか?多くの女性達を侍らせている男である自分で…………」
アルフィンが自分に想いを寄せている事をようやく知ったリィンは複雑そうな表情でアルフィンに訊ねた。
「ふふっ、”元”とはいえわたくしも皇族なのですから、皇族や貴族に限らず富や権力を持つ者が多くの女性を囲っている事は珍しい話でない事は知っていますから、わたくしにとっては既に多くの女性を囲っているリィンさんが、わたくしをリィンさんの愛人の一人にする事について別におかしなこととは思いませんわよ。」
「いやいやいやいやっ!?例え皇族の身分を捨てられたとはいえ、アルフィン殿下を”愛人”にするなんてオリヴァルト殿下達にも顔向けできないようなそんな失礼な事はできませんよ!?」
「ではエリス達のように”妻”の一人にして頂けるのでしょうか?」
「そ、それは…………その…………殿下のお気持ちはとても嬉しいのですが、まずはエリス達に相談したいので、できれば保留にして頂きたいのですが…………」
期待を込めた表情のアルフィンに見つめられたリィンは何とか時間を稼ごうとしたが
「あ、ちなみにここに来る前にエリスもそうですがエリゼさんやセレーネさんにもわたくしのリィンさんへの想いを伝えて、わたくしもリィンさんに抱かれてエリス達と”同じ関係”になる許可もいただいていますから、エリス達に相談する必要はありませんわよ♪」
「………………………………」
アルフィンの答えを聞いて逃げ道が防がれた事を知ると表情を引き攣らせた。

「もしリィンさんがわたくしの幸せを願ってくれているのでしたら、どうかわたくしをエリス達のように抱いてリィンさんの愛人にしていただけませんか…………?」
「…………フウ。先ほども言ったように、殿下に限らずここまでしてくれる女性に対して愛人にするような失礼な事はしませんよ。女性の操を奪う以上、その責任は当然取らせて頂きます。」
「リィンさん…………!嬉しい…………!どうか、わたくしの事はこれから敬称なしで名前を呼んでくれませんか…………?」
リィンの答えを聞いたアルフィンは微笑んだ後リィンの胸に寄り添ってある事を要求し
「ぁ…………わかった―――”アルフィン”。アルフィンの事も必ず幸せにするから、改めてよろしくな……………………」
アルフィンの要求に一瞬呆けたリィンはアルフィンを呼び捨てにした後アルフィンを抱き締めてアルフィンに口づけをし
「…………あ…………(リィンさん…………)」
リィンに口づけをされたアルフィンは幸せそうな表情を浮かべて自分を抱き締めているリィンを抱き締め返してリィンの口づけを受け入れ、その後リィンに抱かれた。

こうして…………悲壮な決意でメンフィル帝国に向かったアルフィンは数奇な運命によって叶うはずがない恋を叶える事ができ、リィンの仲間として…………そして将来を共に生きることを前提とした恋人としてエリゼ達と共にリィンを支える事となった――――
 
 

 
後書き
というわけで予告していたのようにリィン側にアルフィン加入、そしてリィンハーレム入りですw 

 

第15話

1月14日、同日PM9:30――――

アルフィンがメンフィル帝国の大使館に向かったその日の夜、リィン達がメンフィル帝国軍の一員としてクロスベルに侵攻したエレボニア帝国軍を殲滅した事を新聞で知ったアリサ達はサラが自分の伝手を使っての事実確認や情報局に呼ばれたミリアムによる情報収集、そしてメンフィル帝国政府からルーファスの遺体がエレボニア帝国政府に届けられた為、それの確認の為に帝都(ヘイムダル)に呼ばれたユーシスを待っているとまずユーシスが戻ってきた。

~第三学生寮~

「……………………」
「あ、ユーシス…………!」
「それで…………どうだったんだ?」
暗い表情を浮かべて寮に戻ってきたユーシスに気づいたエリオットは声を上げ、マキアスは心配そうな表情で訊ねた。
「………………間違いなく兄上の遺体だった。―――それも首と身体が別れた状態のな。」
「く、首と身体が別れた状態って………!」
「まさか本当にあのルーファスさんが死ぬなんて…………」
ユーシスの答えを聞いたアリサは表情を青ざめさせ、エマは信じられない表情をし
「…………ちなみに”クロスベルタイムズ”にも書いてあるように、ユーシスのお兄さんを殺したのは本当にリィンだったの?」
「……………………それについてはメンフィル帝国政府側からの説明の為、真偽は不明だが…………兄上の遺体の状態を解析した結果判明したのは、兄上の首を切断した武装は斬撃に特化した武装――――東方独特の剣である”太刀”の可能性が極めて高いとの事だ…………」
「”太刀”という事はやはりルーファスさんを討ったのは…………」
「確かリィンの話だとメンフィル軍の武装はこっちとそれ程変わらないという話だから、ほぼ間違いなくリィン(あの子)である証拠ね…………」
「一応我々が知っているメンフィルの”太刀”の使い手はリィン以外にもいるが…………」
「その人物―――エリゼ君だったとしても、どの道ルーファスさんを討った人物は僕達と関りのある人物という事になるよな…………」
フィーの疑問に答えたユーシスの答えを聞いたガイウスは辛そうな表情をし、セリーヌとラウラは重々しい様子を纏って呟き、マキアスは複雑そうな表情で呟いた。

「その…………ルーファスさんの遺体はどうしたんだ…………?」
「兄上の遺体はバリアハートに送ってバリアハートで略式の葬式をすませて、兄上の遺体をアルバレア家の墓に埋めるのを見守って帰ってきたところだ。」
気まずそうな表情で訊ねたマキアスの質問にユーシスは静かな表情で答え
「りゃ、略式の葬式って………言ってくれたら、僕達も参加したし、何か手伝えることがあったら手伝えたのに…………」
「―――今はお前達にそのような”些事”に時間を取らせるような暇はない。…………ましてや、幾ら”鉄血宰相”の指示とはいえ、本来ならばカイエン公同様”逆賊”の立場の上内戦でも俺達を苦しめ、内戦後は”鉄血宰相”と共にリィンを利用とした挙句クロスベルに侵攻してそのリィンにあっけなく討ち取られた兄上の葬式を華美にする必要はない。」
「ユーシス…………」
複雑そうな表情で指摘したエリオットの言葉に対して静かな表情で語ったユーシスの様子をガイウスは心配そうな表情で見つめた。

「…………ヴァリマールを回収に来たメンフィル軍と共に現れたエリゼさんの話からして、エレボニア帝国とメンフィル帝国が戦争状態に陥る可能性は考えていましたが、まさかクロスベルと連合を組んでこのような事になってしまうなんて、一体メンフィルとクロスベルの間で何があったのでしょうね…………?」
「それも”自治州”だったクロスベルは”帝国”を名乗っているものね。」
「しかもメサイアに関しては”クロスベル皇女”扱いされていて、リィンと婚約した事が堂々と新聞にも載っているよね。」
「ああ…………それに結社の”神速”を含めた”鉄機隊”の者達もメンフィル軍に所属しているとの事だが…………まさか結社もメンフィルとクロスベルと協力関係を結んだのか…………?」
「―――いえ、少なくともメンフィル・クロスベル連合は”結社と手を組んではいないわ。”」
エマとアリサは不安そうな表情で呟き、フィーは静かな表情で呟き、ラウラが真剣な表情を浮かべて推測を口にした時寮に戻ってきたサラがラウラの疑問について答えた。

「サラ教官…………!」
「”クロスベルタイムズ”に書かれている内容――――リィンがメンフィル軍に所属してクロスベルに侵攻したエレボニア帝国軍を迎撃した上ルーファスさんを討った事や、メサイアがクロスベルの皇女になった事、それに鉄機隊はメンフィル軍に所属しているかどうかについて何かわかったんですか…………!?」
サラの登場にエリオットは声を上げ、アリサは血相を変えてサラに訊ねた。
「順番に答えるから落ち着きなさい。――――――それよりもミリアムは”情報局”関連だからまだ戻ってこない事は仕方ないにしても、あのメイドも見かけないけど何かあったのかしら?」
「それが…………母様からRF(ラインフォルトグループ)本社に至急戻るようにとの連絡を受けた為、急遽ルーレに向かったんです…………シャロンの話によると、エレボニア帝国とメンフィル帝国との戦争に関連するRF(ラインフォルトグループ)の対応についての会議に関連しているらしいですけど…………」
サラの疑問にアリサは不安そうな表情で答えた。

「そう…………で、まず”結社”の件についてだけど…………信じられない事に”結社は既に崩壊しているわ。”」
「へ…………」
「一体どういう事なのだろうか?」
サラの説明を聞いたエリオットは呆けた声を出し、ガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。
「遊撃士協会の情報によるとどうやらメンフィル・クロスベル連合は内戦の間に結社のトップの”盟主”を含めた最高幹部クラス――――”盟主”や”蛇の使徒”の大半を抹殺していたらしいのよ。」
「なっ!?結社のトップや”蛇の使徒”が!?」
「一体何があって、そんな超展開になっているのよ…………あら?という事はヴィータは今どうなっているのかしら?」
「あ…………サラ教官、ヴィータ姉さん――――”蒼の深淵”はどうなったんですか!?」
サラの説明を聞いて仲間達と共に血相を変えたマキアスは驚きの声を上げ、溜息を吐いた後呟いたセリーヌの疑問を聞いたエマは呆けた後血相を変えてサラに訊ねた。

「”蒼の深淵”については現在消息不明よ。現在唯一生存が確認されている”蛇の使徒”は第七柱――――”鋼の聖女”という二つ名の”蛇の使徒”なんだけど、その”鋼の聖女”は自分直属の部隊である”鉄機隊”と共にメンフィルに寝返ったらしいのよね…………」
「ハアッ!?」
「け、結社の”蛇の使徒”がメンフィルに!?」
「その話も気になるが”鋼の聖女”とやらは”槍の聖女”と何か関係があるのだろうか…………?どうやらその”鋼の聖女”とやらが”神速”――――”鉄機隊”の主のようだが…………」
疲れた表情で溜息を吐いて答えたサラの話にセリーヌとエリオットは驚きの声を上げ、ラウラは真剣な表情で考え込んでいた。
「………サラ教官、その”鋼の聖女”とかいう蛇の使徒がメンフィルに寝返ったという事はまさか結社の”盟主”や”蛇の使徒”が抹殺されたのはその”鋼の聖女”とやらの裏切りによるものなのか?」
「ええ、状況からして恐らくその可能性が高いと遊撃士協会は判断しているみたいよ。で、肝心のリィン達の件についてだけど…………どうやらあの子達がメンフィル軍に所属してクロスベルに侵攻したエレボニア帝国軍をメンフィル軍の一員として殲滅したという話は本当らしいわ。―――それもリィンやセレーネだけでなく、エリスも。」
ユーシスの質問に答えたサラは気まずそうな表情でアリサ達にとっての凶報を伝えた。

「そ、そんな…………っ!?」
「しかもリィンやセレーネだけでなく、エリスもメンフィル軍に所属か。メンフィルにはメンフィル皇族に重用されているエリゼがいるから、リィン達が無理矢理メンフィル軍に所属させられた可能性は低いだろうね…………ちなみに、リィン達の件についての情報を遊撃士協会はどうやって掴んだの?」
サラの説明を聞いたアリサは悲痛そうな表情で声を上げ、フィーは複雑そうな表情で呟いた後サラに訊ねた。
「リィン達の情報を掴んだのはクロスベルにある遊撃士協会の支部よ。クロスベル支部の話によると迎撃戦が始まるとヴァリマールが”戦場”に現れて次々とエレボニア帝国軍の空挺部隊を撃破したらしいわ。――――――それと迎撃戦後メンフィル軍もクロスベルに駐屯していて、メンフィル軍の軍服を纏ったリィン達が普通にクロスベル市に歩いている様子もクロスベルの遊撃士達が目撃しているとの事よ。」
「という事はリィン達は今クロスベルにいるのか…………ちなみにメサイアは何故突然クロスベルの”皇女”になったのだろうか?」
「それなんだけどね…………クロスベル支部もまだ詳しい経緯は掴んでいないそうだけど、何でもメサイアはクロスベルの皇帝の一人にして”六銃士”の一人――――”黄金の戦王”ヴァイスハイト・ツェリンダー皇帝とその側妃の一人の”養女”としてクロスベルの皇女扱いされているとの事よ。」
「ろ、”六銃士”って確か父さん達――――”第四機甲師団”がクロスベルとの合同演習の際に完敗させられた相手であるクロスベル警備隊を鍛え上げたっていう…………」
「クロスベル警備隊、警察の上層部に就いた義賊気取りの凄腕の使い手達か。という事は今のクロスベルのトップはIBCのディーター・クロイスではないのか?」
ラウラの疑問に答えたサラの答えを聞いたエリオットは不安そうな表情をし、静かな表情で呟いたユーシスはサラに確認した。

「ええ、どうやら内戦の間に”六銃士”達は自分達を慕う部下達――――”六銃士派”と共にディーター・クロイス政権に対してクーデターを起こして、そのクーデターを成功させてディーター・クロイスを処刑して”クロスベル帝国”を名乗り上げたそうよ。」
「しょ、”処刑”…………」
「フン、”独立国”の次は”帝国”か。自治州が”帝国”を名乗るとは、その”六銃士”とやらは呆れを通り越してもはや感心に値するな。」
サラの説明を聞いたエリオットは信じられない表情をし、ユーシスは呆れた表情で呟いたが
「…………それなんだけどね。クロスベル支部や遊撃士協会の情報によるとメンフィルと連合を組んだクロスベルは共和国に侵攻して、僅かな期間で共和国を占領してその占領した領土をメンフィルと山分けしたとの事だから、今のクロスベルは冗談抜きで”帝国”を名乗るに相応しい広大な領土を保有しているらしいのよ。」
「何だとっ!?」
「共和国がメンフィル・クロスベル連合に…………という事はカルバード共和国は既に滅亡しているのですか………?」
サラが驚愕の事実を口にすると血相を変えて声を上げ、ユーシス同様仲間達と共に血相を変えたラウラは信じられない表情で訊ねた。

「ええ。ちなみにロックスミス大統領は首都が侵攻された際に責任を取って”自決”したとの事よ。」
「じ、”自決”って…………!」
「…………どうやらあたし達の知らないところで、随分とエレボニア以外の世間の状況が大きく変わっていたみたいね。」
「ええ…………そもそもメンフィル帝国は何故”自治州”であったクロスベルと連合を組んだのでしょう…………?」
サラの説明を聞いたアリサは信じられない表情で声を上げ、目を細めて呟いたセリーヌの言葉に頷いたエマは不安そうな表情で考え込んでいた。

「クロスベルと連合を組んだメンフィル帝国の意図は不明だけど、あくまで遊撃士協会の推測になるけど”聖皇妃”がクロスベルの出身――――それもクロスベルの市長、議長と長年クロスベルの政治家のトップだったマクダエル議長の孫娘だから、その関係で連合を組んだのではないかと推測しているわ。」
「そ、その人って確か帝都(ヘイムダル)で”帝国解放戦線”に拉致されたアルフィン殿下とエリスちゃんを助けに行って、後から来たリウイ陛下達がクロウ達を撃退した後に現れた…………」
「うむ…………”聖皇妃”――――リウイ陛下の正妃として嫁がれたイリーナ皇妃陛下だな。だが、例えそれが理由でもまだ疑問は残るな。もしイリーナ皇妃陛下の関係でメンフィルがクロスベルと連合を組んだ際にマクダエル議長がクロスベルの”皇”になるならまだ納得がいくが、マクダエル議長とは何の関係もない”六銃士”とやらがクロスベルの”皇”に名乗り上げたとの事だからな…………」
「…………ねえ、サラ。何でそんなとんでもない情報を”情報局”は掴んでいなかったの?エレボニアの長年の宿敵だった共和国が滅んだなんてとんでもないニュース、普通に考えれば内戦の間に共和国に潜入している”情報局”とかが掴んでいそうだけど。」
サラが口にした推測を聞いて不安そうな表情で呟いたエリオットの言葉に頷いたラウラは考え込み、フィーは真剣な表情でサラに訊ねた。

「さすがにそれに関しては遊撃士協会もわからないわよ。それよりも、問題はトヴァルと連絡が取れなくなった事なのよね…………ったく、こんな肝心な時に何をしているのよ、アイツは。」
「え………トヴァルさんと連絡が取れないんですか!?」
悪態をついてこの場にはいないトヴァルについ文句を口にしているサラの言葉が気になったマキアスはサラに確認した。
「ええ、今朝の新聞の件でトヴァルにも調べてもらおうと思って連絡したのに、全然連絡が取れないのよ。」
「その件も気になりますね…………」
「うむ…………トヴァル殿の身に”何か”が起こっていないとよいのだが…………」
サラの答えを聞いたエマの言葉に頷いたラウラは重々しい様子を纏って考え込んでいた。

「―――みんな、いる!?」
するとその時トワが学生寮に現れた。
「トワ会長、こんな夜遅くにわざわざ第三学生寮に訊ねるなんて何かあったんですか?」
「うん、さっきヴァンダイク学院長に連絡があったの――――オリヴァルト殿下から。」
「オリヴァルト殿下から…………!?」
「それで殿下はなんと…………?」
マキアスの質問に答えたトワの答えを聞いて仲間達と共に血相を変えたラウラは声を上げ、ユーシスは真剣な表情で訊ねた。
「『”紅き翼”の再始動をトールズ士官学院に要請する。もし、要請に応えてくれるのならば、明日の朝8:00に帝都(ヘイムダル)の国際空港に停泊させている”カレイジャス”に集合してくれ』だって…………!」
こうして…………オリヴァルト皇子の要請を受ける事にしたアリサ達Ⅶ組は翌朝、トールズ士官学院の生徒全員と共にヘイムダルの空港に停泊している”カレイジャス”に集まり、アリサ達を乗せたカレイジャスは離陸してどこかへと向かい始めた。


1月15日、同日AM8:30―――

~カレイジャス・ブリーフィングルーム~

「…………話を始める前にまずは謝らせてくれ。私達エレボニア皇家の愚かさと怠慢によって、内戦の裏で燻っていた”真の意味でエレボニアを滅ぼす火種”を今まで放置していた事によってこのような結果――――君達の協力によって終結したばかりのエレボニア帝国が異世界の大国にしてかつての”百日戦役”でも大敗させられたゼムリア史上最強の国家であるメンフィル帝国とメンフィル帝国と共に共和国を飲み込んで大国となったクロスベル帝国との戦争を勃発させてしまった事に…………!」
「殿下…………」
オリヴァルト皇子はアリサ達を見回した後その場で頭を深く下げて謝罪し、オリヴァルト皇子の様子をアルゼイド子爵は辛そうな表情で見守り
「殿下達の責任ではございません!全てはアルバレア公爵家を含めた貴族連合軍の責任です!」
「そうだね…………そういう意味では例えユミルの件に関わっていなくても貴族連合軍によるユミルへの襲撃やエリス君の拉致監禁を黙認してカイエン公や陛下達の代わりにメンフィル帝国に対して何の謝罪もしなかった父上―――ログナー侯爵家もその責任の一端を担っている。ですからどうか頭をお上げください、殿下。」
「ユーシス…………」
「アンちゃん…………」
辛そうな表情で声を上げたユーシスと重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカのオリヴァルト皇子への指摘を聞いたガイウスとトワはそれぞれ心配そうな表情で二人を見つめた。

「―――今は互いの非を謝罪しあっている場合じゃないわ。殿下、あたし達に再び”紅き翼”の再始動を要請した理由はリィン達の件を含めたメンフィル・クロスベル連合との戦争に関する件ですか?」
「…………ああ。そしてそれにはアルフィンの事も含まれている。」
「へ…………アルフィン殿下が?」
「どうしてそこにアルフィン殿下まで出てくるんでしょうか…………?」
「!まさか…………アルフィン殿下の身に何かあったんですか!?」
サラに説明を促されて答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたマキアスとエリオットが戸惑っている中、ある事に気づいたラウラは血相を変えて訊ねた。

「…………ああ。昨日の夕方アルフィン殿下は女学院を去って、リベールにあるメンフィル帝国の大使館にお一人で向かわれたとの事だ。」
「ええっ!?アルフィン殿下がお一人でメンフィル帝国の大使館に!?」
「…………まさかとは思うけど、自分がメンフィルの”人身御供”になる事で戦争を止める為にメンフィル帝国の大使館に自分から捕まりにいったのかしら?」
「セリーヌ!」
重々しい様子を纏って答えたアルゼイド子爵の答えを聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中アリサは驚きの声を上げ、推測を口にしたセリーヌをエマは声を上げて睨んだが
「いや…………セリーヌ君の推測は恐らく当たっているだろう。」
「え………それは一体どういう事なんですか…………?」
オリヴァルト皇子の答えを聞くと戸惑いの表情で訊ねた。

「実は昨日にエリス君からアルフィン充てに手紙が届いていたようでね…………手紙の内容を要約するとエリス君にリィン君、そしてセレーネ君はメンフィル帝国貴族の義務を果たす為にメンフィル帝国軍に所属してメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に参加する事になった事や早速メンフィル軍の一員としてクロスベル侵攻軍を殲滅した事とリィン君達と共にルーファス君を討ち取った事、そしてアルフィンに対する別れの言葉が書かれていたんだ。…………恐らくその手紙がユミルの件でメンフィル帝国との戦争が勃発してしまった事に責任を感じていたアルフィンに”止め”を刺したんだろうね…………自分の身を犠牲にしてでも、メンフィル帝国にエレボニア帝国の侵略を中止してもらうか、それが叶わなければせめて敗戦後のエレボニアの処遇を少しでも穏便な処遇にしてもらえるようメンフィル帝国の”大使”であるリウイ陛下と直接交渉する為にリベールにあるメンフィル帝国の大使館に向かう事や、私達―――”アルノール皇家”の人物達それぞれへの別れの挨拶が書かれた手紙がアストライアの学生寮のアルフィンの部屋から発見されたんだ…………」
「そんな…………」
「それにやっぱり、リィン達がルーファスさんを…………」
「申し訳ございません、殿下…………ッ!」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたエマは悲痛そうな表情をし、エリオットは不安そうな表情で呟き、ユーシスはオリヴァルト皇子に謝罪した。
「…………殿下。エレボニア帝国政府はアルフィン殿下がいなくなった事にいつ、気づいたんですか?」
「昨日の夕食の時間になっても食堂に現れないアルフィンを心配した女学院の教師達がアルフィンの部屋を訊ねて、その時にようやくアルフィンが女学院―――いや、エレボニア帝国からいなくなった事を把握して政府に通報して、当然政府の指示によって軍もアルフィンの捜査をしたんだが…………どうやら自分が連れ戻される可能性を低くする為にアルフィンは乗船手続きの時に偽名で手続きをしたみたいでね。それによってアルフィンがどの飛行船に乗ったのかを把握する事に時間がかかってしまい…………ようやくアルフィンが乗った飛行船を把握した頃にはアルフィンは既にリベールに到着していたようなんだ。」
「リベール王国政府にアルフィン殿下の件を連絡して、殿下がメンフィル帝国の大使館に到着する前に保護するような要請はエレボニア帝国政府は行わなかったのですか?」
アンゼリカの質問に答えたオリヴァルト皇子の話を聞いて新たな疑問が出てきたラウラは質問をした。

「…………それなんだが…………事の経緯を知った宰相殿がアルフィンの捜索の打ち切りを命じたどころか、内戦が終結したばかりのエレボニア帝国がメンフィル・クロスベル連合と緊張状態に陥ってしまった今の状況でアルフィンの我儘に付き合って他国であるリベールに弱みを握られる事や”借り”を作る訳にはいかないという理由でアルフィンの件でリベール王国政府への連絡すら許可しなかったんだ…………」
「ええっ!?オズボーン宰相が!?」
「あの男…………!ついに、帝位継承者の一人でもあられるアルフィン殿下まで蔑ろにしたのか…………!」
「…………ちなみにオズボーン宰相のその判断に皇帝陛下達は何と?」
オリヴァルト皇子の話を聞いたアリサは驚き、ユーシスは怒りの表情で声を上げ、アンゼリカは真剣な表情で訊ねた。

「当然プリシラ継母上(ははうえ)は宰相殿に対して反論したんだが、何故か父上―――ユーゲント皇帝陛下は宰相殿の判断に対して何も反論せず逆に宰相殿に反論を続けようとしたプリシラ継母上(ははうえ)を宥めたんだ。」
「こ、皇帝陛下が…………!?」
「…………ユーゲント皇帝が”鉄血宰相”を信用している話は有名だけど、幾ら何でも”異常”じゃない?下手したら自分の娘がメンフィルに命を奪われるかもしれないのに、それすらも黙認しているんだから。」
オリヴァルト皇子が語った驚愕の事実に仲間達と共に驚いたエリオットは信じられない表情で声を上げ、セリーヌは困惑の表情で呟き
「ああ…………私も今回の件に対する父上の反応は”異常”だとは思っているが…………それでも今はアルフィンの件を優先すべきだと思って、私は父上と宰相殿にアルフィンの件を含めたメンフィル・クロスベル連合との外交問題に対して”紅き翼”を再始動させる事を要請したんだ。」
「―――そして恐らくアルフィン殿下の件でオリヴァルト殿下に対しても”負い目”があると思われるお二人はオリヴァルト殿下の要請を受け入れて、其方達―――”トールズ士官学院”が”紅き翼”として活動する事も承諾されたのだ。」
「そのような経緯が…………」
「そういえば…………先程から気になっていたが、”Ⅶ組”もそうだがトワ君達の中にも姿が見えない者達がいるが…………彼らは何故、この場にいないんだい?」
セリーヌの意見に頷いたオリヴァルト皇子とオリヴァルト皇子に続くように答えたアルゼイド子爵の話を聞いたラウラが驚いている中、ある事が気になったオリヴァルト皇子はアリサ達を見回して訊ねた。

「ミリアムちゃんは昨日”情報局”に呼ばれてから、まだ戻っていないんです…………」
「シャロンは…………メンフィル・クロスベル連合との戦争の件でルーレのRF(ラインフォルトグループ)の本社に戻ることになってしまって…………」
「ジョルジュ君も、シュミット博士に急遽呼ばれたとかで、一昨日から留守にしていて、まだ帰ってきていないんです…………」
「そうだったのか…………」
エマとアリサ、トワの説明を聞いたオリヴァルト皇子は静かな表情で呟き
「殿下、実はトヴァルとも連絡がつかないのですが、何かご存知ないでしょうか?」
ある事が気になったサラはオリヴァルト皇子にトヴァルの事について訊ねた。

「…………トヴァル殿なら、今は”オレド自治州”にいるだろう。」
「ハア?何でアイツがエレボニアどころか、そんな辺境に…………」
「…………トヴァル君は1度目のユミル襲撃の件で遊撃士協会本部から降格と左遷処分を受けて”オレド自治州”の遊撃士協会の支部に異動させらてしまったんだ…………」
アルゼイド子爵の答えを聞いたサラが困惑しているとオリヴァルト皇子が重々しい様子を纏って答え、オリヴァルト皇子の答えを聞いたアリサ達はそれぞれ血相を変えた―――― 
 

 
後書き
という事でいよいよお待ちかね(?)のⅦ組側の話です。今回の話でお気づきと思いますが、Ⅶ組やその関係者達が一部いなくなっていますが…………その理由については閃3や4をやっていたらわかるかと(ガクガクブルブル)なお、Ⅶ組側はトワとアンゼリカに加えてオリビエやアルゼイド子爵、後に合流する予定となっているミュラーを頻繁にパーティーインさせてアリサ達と共に戦ってもらう予定です。…………まあ、正直な所オリビエとアルゼイド子爵、ミュラーが加わった所で、リィン達を含めたメンフィル・クロスベル連合やオズボーン宰相達に対抗できるかと言われたら正直、”無理”としか思えない程の絶望的な戦力差なんですけどね(ぇ)ちなみに第三学生寮の時のBGMは閃1の”Seriousness”、カレイジャスにいる時のBGMは閃2の”目覚める意志”だと思ってください♪ 

 

第16話

~カレイジャス・ブリーフィングルーム~


「ええっ!?トヴァルさんが!?」
「1度目のユミル襲撃の件と言っていましたが…………何故彼まで責任を取る事になったのでしょうか?」
エリオットが驚きの声を上げている中、ユーシスは複雑そうな表情で訊ねた。
「…………実はヴァリマールがメンフィル帝国軍に回収された件を知った私はトヴァル君に依頼をしてユミルに向かってシュバルツァー男爵閣下にリィン君達の件も含めて何か知っているかどうかを聞いてもらう為にユミルに行ってきてもらったのだが…………トヴァル君の話では既にユミルは郷どころか、麓までメンフィル帝国軍による厳戒な警備体制が敷かれていたらしいんだ。」
「ええっ!?ユミルが…………!?」
「という事はエリゼの言っていた通り、メンフィルは最初からエレボニアは戦争を回避する為のメンフィルによる要求内容を呑まないと踏んでエレボニアと戦争をするつもりだったんだ。」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたアリサは驚きの声を上げ、フィーは真剣な表情で呟いた。

「そしてトヴァル君はメンフィル帝国軍に交渉して何とかユミルに行こうとしたんだが…………メンフィル帝国軍はユミルに入国しようとした人物がトヴァル君だとわかるとすぐに入国の不許可を出してしまった為、結局トヴァル君はユミルに行けなかったとの事だ。」
「ど、どうしてメンフィル帝国軍はユミルに向かおうとした人物がトヴァルさんだとわかるとすぐに入国の不許可を出したんでしょうか…………?」
トヴァルがメンフィル帝国領であるユミルに入る事が許されなかった事が気になったエマは不安そうな表情で訊ねた。

「…………どうやらメンフィル帝国政府の関係者がレマン自治州にある遊撃士協会本部を訊ねて、1度目のユミル襲撃の件で何故遊撃士―――”中立の立場”であるトヴァル君が貴族連合軍に狙われていたアルフィンがメンフィル帝国の領土であるユミルに潜伏していたことをメンフィル帝国政府に報告しなかった事について責めたらしくてね…………その件を重く受け止めた遊撃士協会本部はトヴァル君の降格・左遷処分を決めたんだそうだ。恐らくメンフィル帝国軍がトヴァル君の入国を不許可にした理由は貴族連合軍の関係者に襲撃される原因であるアルフィンをユミルに潜伏させて、その件をメンフィル帝国政府にも報告しなかった事が関係しているだろうね…………」
「……………………」
「そ、そんな…………幾ら何でもそれは理不尽ですよ…………」
「―――いえ、本部に責任を追及したそのメンフィル帝国政府の関係者の言っている事は正論よ。―――例えどのような理由があろうとも、”中立の立場”である遊撃士のトヴァルが貴族連合軍にその身柄を狙われていたアルフィン殿下を他国の領土であるユミルに潜伏させて、その件をメンフィル帝国政府に報告しなかった事は大問題よ。もし予めメンフィル帝国政府がアルフィン殿下が内戦の最中にユミルに潜伏していた事を掴んでいたら、アルフィン殿下の身柄を狙う貴族連合軍による襲撃に備えてメンフィル帝国軍をユミルに派遣して襲撃を未然に防ぐ事もできたでしょうし。」
「サラ教官…………」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたユーシスが複雑そうな表情で黙り込んでいる中、不安そうな表情で呟いたアリサに静かな表情で指摘したサラの話を聞いたトワは辛そうな表情を浮かべた。

「『俺のせいでお前達の努力を全て無駄にしてしまって、本当に申し訳ない』―――それが、通信で殿下に伝えたエレボニアから去る前のトヴァル殿の伝言だとの事だ。」
「トヴァル殿…………」
「……………………」
「あの…………ちなみに父さんはアルフィン殿下の件やメンフィル・クロスベル連合との戦争についてどのような反応をしたんですか?」
アルゼイド子爵の話を聞いたラウラとサラがそれぞれ重々しい様子を纏っている中、ある事が気になっていたマキアスは複雑そうな表情で訊ねた。

「レーグニッツ知事閣下はリベールに連絡してアルフィンを保護してもらうべきと宰相殿に反対していたし、メンフィル・クロスベル連合との戦争もメンフィル帝国と貴族連合軍による2度に渡った”ユミル襲撃”の件でメンフィル帝国が求める要求の一部受け入れを交渉材料としてメンフィル・クロスベル連合との戦争を避ける事やメンフィル帝国の残りの要求内容を何か他の内容を対価とする事で変更する事も宰相殿や父上に進言していたが…………どれも、却下されたんだ。」
「そうだったんですか…………」
「”メンフィル帝国の要求”…………――――そういえば”破壊の女神”達と共にヴァリマールを回収しに来たエリゼが言っていた件だね。」
「エレボニア帝国がメンフィル帝国――――いや、メンフィル・クロスベル連合との戦争を避けるために承諾する必要がある要求か…………」
「…………殿下、ちなみにその要求内容を我々にも開示して頂く事は不可能でしょうか?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたマキアスは疲れた表情で溜息を吐き、真剣な表情で呟いたフィーの言葉を聞いたガイウスは静かな表情で呟き、アンゼリカはオリヴァルト皇子に訊ねた。

「それについては既に要求内容が書かれている写しがあるから大丈夫だ。――――――ちなみにこれがその写しだ。」
そしてオリヴァルト皇子はアリサ達にメンフィル帝国の要求内容が書かれている写しを配った。

「な――――――」
「そ、そんな…………!?」
「何だ、この滅茶苦茶な内容の要求は!?確かに全面的にエレボニア帝国に非があるとはいえ、幾ら何でも理不尽すぎるぞ!?」
「―――確かにエリゼの言っていた通り、”鉄血宰相”ならこんな要求、絶対受け入れないだろうね。」
「というか例えエレボニア帝国政府の代表者が”鉄血宰相”じゃなくても、誰も受けれないわよ、こんなとんでもない要求は…………」
「この要求内容を全て実行したらエレボニア帝国にまた混乱が起きるだろうね……」
「うん………それに”四大名門”の当主達全員に加えてアルフィン殿下とオズボーン宰相まで身分を剥奪されてメンフィル帝国による処罰を受けさせられる件もそうだけど、入国料とかあったら旅行や商売でエレボニアの人達がメンフィル領に行きにくくなるよ……」
メンフィルの要求内容を知る事ができたユーシスは驚きのあまり絶句し、アリサは悲痛そうな表情で声を上げ、マキアスは真剣な表情で声を上げ、静かな表情で呟いたフィーにセリーヌは呆れた表情で溜息を吐いて指摘し、重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの意見にトワは悲しそうな表情で頷いた。

「殿下、それでオズボーン宰相達――――帝国政府はこの要求内容に対してどういう反応をされたんですか?」
「『ユミルが襲撃されたのは隣国で内戦が勃発したにも関わらず、自分達は関係ないと高をくくってユミルに軍を派遣しなかったメンフィル帝国の責任であるにも関わらず、その責任をエレボニア帝国に押し付けた挙句このような理不尽な要求を呑む等言語道断』と宰相殿は言って、要求内容を拒否した挙句、クロスベルと連合を組んだメンフィル帝国に対してIBCによる”資産凍結”の件で受けたエレボニアの被害をメンフィルにも賠償するようにと、グランセルのエレボニア帝国の大使館に伝えたそうだ…………」
「む、無茶苦茶だ…………!」
「どう考えても”鉄血宰相”はメンフィル・クロスベル連合とも戦争するつもりのようね。」
「愚か者が…………!内戦を終結したばかりのエレボニアが他国と戦争をしているような余裕――――ましてや”百日戦役”で大敗させられてユミルを初めとしたエレボニアの領土を占領したメンフィル帝国相手に勝てると思っているのか、あの男は!?」
アンゼリカの質問に重々しい様子を纏って答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたマキアスは信じられない表情で声をあげ、セリーヌは呆れた表情で呟き、ユーシスは怒りの表情で声を上げた。

「で、まずはメンフィルと連合を組んでいるクロスベルを占領する為に侵攻させたエレボニア帝国軍があっけなく殲滅された挙句、自分が信頼する部下――――それも”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”まで殺されるというあまりにも手痛いしっぺ返しを受けていながら、本気でメンフィル・クロスベル連合と戦争をするつもりなのですか、オズボーン宰相は?」
「ああ…………宰相殿といい、宰相殿の無謀な判断に対して何の反論もしない父上は一体何を考えているんだと、私も言いたいくらいだよ…………」
呆れた表情で溜息を吐いたサラは真剣な表情でオリヴァルト皇子に確認し、オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って頷いた後疲れた表情で溜息を吐いた。

「…………ねえ、どうして”情報局”はカルバード共和国がメンフィル・クロスベル連合との戦争によって既に滅亡していたことをクロスベルに侵攻する前に把握していなかったの?少なくとも、メンフィル・クロスベル連合が共和国を滅ぼしたことを知っていたら、クロスベルへの侵攻はもう少し慎重になっていたんだと思うんだけど。」
「言われてみればそうだよな…………?」
フィーの疑問を聞いたマキアスは考え込んだ。

「どうやらメンフィル・クロスベル連合―――いや、恐らくメンフィル帝国軍の諜報組織に所属している者達が共和国に潜伏していた”情報局”の者達を全員暴いた上で”暗殺”してエレボニアに共和国の件の情報が伝わらないように情報操作をしたらしくてな…………これもメンフィル帝国軍の諜報組織による仕業だと思われるのだが昨日、帝都近辺で共和国に潜伏していた”情報局”の者達全員の遺体が発見されたとの事だ。」
「ええっ!?共和国に潜伏していた”情報局”の人達が!?」
「もしかしてミリアムちゃんが”情報局”に呼ばれた理由は、その暗殺された”情報局”の人達の”穴埋め”としてかもしれませんね…………」
「ええ…………そうなると、下手したらミリアムとの合流は厳しいかもしれないわね…………」
アルゼイド子爵の答えを聞いて仲間達と共に血相を変えたエリオットは驚きの声を上げ、不安そうな表情で呟いたエマの推測に頷いたサラは真剣な表情で考え込んでいた。

「前々から疑問に感じていたけど、何で”メンフィル帝国”とやらをそこまで恐れているのかしら?そりゃ、”百日戦役”での大敗があるから恐れるのも無理はないかもしれないけど、皇子のその口ぶりだと今回の戦争、”最初からエレボニアは敗戦する事を前提”に話しているように聞こえるわよ。仮にもメンフィルが現れるまではエレボニアは”大陸最強”を誇っていたのに、何でメンフィル相手だとそこまで弱気になるのかがわからないわ。」
「セ、セリーヌ。」
「………それに関してはオレも気になっていた。異世界の大国である”メンフィル帝国”。わかっているのはオレ達人間とは違う種族――――”闇夜の眷属”を始めとした異種族が人間と共存して暮らしている国家で、国家、軍の規模は少なくともエレボニア以上。そしてリィンから聞いた話のみになるが、メンフィル帝国は今まで戦争に負けたことがない相当な強国ではあるようだが…………」
セリーヌの疑問を聞いたエマが気まずそうな表情をしている中ガイウスは静かな表情で呟いて自身の疑問を口にした。
「……………そうだね。ちょうどいい機会だからリベールの旅行をきっかけに知り合う事ができたメンフィル帝国の上層部――――リウイ陛下を始めとしたメンフィル帝国の上層部の方達から教えてもらえたメンフィル帝国の歴史も含めたメンフィル帝国についての事を説明するよ。」
そしてオリヴァルト皇子は自分が知るメンフィル帝国の事についてをアリサ達に説明した。

「なっ!?という事はメンフィル帝国の建国者であれるリウイ陛下はメンフィルの初代の皇で、それも元々は”平民”だったんですか!?」
「まさかメンフィルがリウイ陛下が起こした反乱によって建国された国家だったとは…………」
「しかもその後に当時の大国だった”カルッシャ”という国の謀によって起こされた大陸全土の国家を巻き込んだ戦争に勝利して”帝国”へと成り上がった国とはね…………それを考えると間違いなくメンフィル帝国軍は”エレボニア帝国軍すらも”比較にならない程の精鋭揃いなんだろうね。」
「軍による強さだけじゃなく、外交面でも強すぎだよ…………周辺国家による”大封鎖”をされて文字通り孤立したにも関わらず、その”大封鎖”を利用して国内の安定に集中させつつ、裏ではその”大封鎖”を破る外交を行っていたとの事だし…………」
「そして極めつけに”闇夜の眷属”の中でも”最強”を誇る種族である”魔神”と、異世界の神々によって選ばれて不老不死になる存在―――”神格者”という存在も保有している、か。」
「ん。その内の”魔神”とやらはわたし達がヘイムダルで出会った”魔弓将”だったとはね。」
「更にその”神格者”の一人が異世界の宗教を取りまとめていて”闇の聖女”と呼ばれているペテレーネ・セラ神官長だったなんて…………」
「…………話からして間違いなくその”闇の聖女”は、最低でも魔女の眷属(アタシ達)の”長”と”同格”…………下手をすればそれ以上の術者なんでしょうね。―――少なくてもヴィータじゃ遠く及ばない術者よ。」
「あ、あのクロチルダさんすらも遠く及ばない術者って一体…………」
説明を聞き終えたマキアスは驚き、ラウラやアンゼリカは真剣な表情を浮かべ、トワは不安そうな表情で呟き、静かな表情で呟いたガイウスの言葉に続くようにフィーとエマはそれぞれ考え込み、目を細めて呟いたセリーヌの推測を聞いたエリオットは信じられない表情をした。

「…………殿下。殿下の話によると父君が”魔神”という種族の為”半魔神”であられるリウイ陛下はもしかして”魔神”のように寿命や老化は…………」
「ああ。―――リウイ陛下もペテレーネさんやエヴリーヌ君達のように”寿命や老化は存在していないんだ。”だから、リウイ陛下は100年以上生きていても若々しい姿だし、武術の腕前も全く劣らないどころか、増々強くなっているだろうね。」
「”寿命や老化が存在していない”なんて女としては羨ましすぎるけど、”英雄王”を恐れている他国からしたら最悪な事実でしょうね…………」
「ええ…………”英雄王”としての武勇をゼムリア大陸中にその名を轟かせ、恐れられているリウイ陛下が少なくても寿命や老化で死なないなんて事実をオズボーン宰相あたりが知ればさすがに頭を抱えるんじゃないんですか?」
「ア、アンちゃん…………」
アルゼイド子爵の推測に頷いたオリヴァルト皇子の説明を聞いたサラの推測に頷いた後に答えたアンゼリカの冗談じみた言葉にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワは疲れた表情で溜息を吐いた。

「えっと………ちなみにリウイ陛下の実力って、比較すればどのくらいの強さなんですか?ヘイムダルの時にクロウ相手に圧勝した話は聞いてはいますけど…………」
「―――少なくても、エレボニアでその名を轟かせている武将達が全員で挑んでもリウイ陛下の勝率は圧倒的だと思う。―――それこそ”ヴァンダール”、”アルゼイド”の両子爵閣下にゼクス先生、オーレリア将軍とウォレス准将、そしてクレイグ将軍が協力して挑んでもリウイ陛下に”本気”を出させる事すら怪しいくらいだ。」
「な――――――」
「ええっ!?リウイ陛下って、そんなに滅茶苦茶強いんですか!?」
「正真正銘の”化物”じゃないですか!?」
アリサの質問に答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いて仲間達と共に血相を変えたラウラは絶句し、エリオットとマキアスは驚きの声を上げた。

「ハハ…………リウイ陛下の場合凄いのは剣術だけじゃなく、”魔神”としての力もあるから、リウイ陛下がその気になってその身に秘める”力”を解放すれば戦車や機甲兵も一瞬で塵と化する事も可能だと思うよ。」
オリヴァルト皇子の推測を聞いたアリサ達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「それにリウイ陛下だけが凄い訳じゃない。カーリアンさん、ファーミシルス大将軍閣下、サフィナ元帥閣下、シェラ元帥閣下、そしてリフィア殿下を始めとした私がリベールの旅行時代で出会ったメンフィル帝国の皇族、武将と私が知っているだけでもリウイ陛下には届かなくても、たった一人で機甲師団一つを易々と壊滅に追いやれる手段を持つ人達がいる事に加えて私も知らない多くのメンフィル皇族、武将、そしてメンフィル帝国軍と推測するだけでもメンフィル帝国の強さはまさに言葉通り強い意味での”解析不明(アンノウン)”なのさ。―――私がメンフィル帝国を恐れる理由がこれでわかっただろう?」
「………………………………」
疲れた表情で答えたオリヴァルト皇子の指摘にアリサ達は何も返せず重々しい様子を纏って黙り込んだ。

「今の話を聞けばあの”結社”が潰された事にも納得ね…………」
「ん…………しかも今回はメンフィルだけじゃなく、クロスベル―――”六銃士”までエレボニアにとっての”敵”になるから、どう考えても内戦とは比べ物にならないくらい”最悪な状況”。」
重々しい様子を纏って呟いたサラの言葉に頷いたフィーは静かな表情で答えた。
「ちなみにその”六銃士”の一人にしてクロスベル皇帝の一人でもあるヴァイスハイト・ツェリンダーは以前にも話したことがある私やミュラーも巻き込まれた”影の国”が持つ特殊性で転生前の彼も巻き込まれたんだが…………その彼も”影の国”に帰還してからの経歴も凄まじいのさ。―――それこそ彼が成し遂げた偉業はドライケルス大帝以上と言っても過言ではないだろう。」
「ええっ!?”獅子心帝”以上の偉業をクロスベルの皇帝の一人が…………!?」
「それにオリヴァルト殿下はその方の事を”転生前”と仰っていましたが、一体それはどういう事なのでしょうか?」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたトワは驚きの声を上げ、エマは真剣な表情で訊ねた。そしてオリヴァルト皇子はヴァイスの事について説明をした。

「異世界の昔の皇帝が今の時代に生きる時代の人物そのままそっくりに生まれ変わるとか非常識な…………」
「しかも、そのヴァイスハイト皇帝がかつて成し遂げたという偉業もオリヴァルト殿下の仰る通り、認めたくはないがドライケルス大帝以上だな…………」
「ん。国内で起こった内戦を終結させたどころか、その内戦の隙を狙って侵略してきた国家全てを飲み込んでその”メルキア”っていう国を豊かにして皇帝に即位したって話だもんね。」
「メンフィルの”英雄王”といい、そのヴァイスハイトって皇帝といい、まさに”血統主義”であるエレボニアにとっては”天敵”みたいな存在ね。―――二人とも本来”皇”とは縁のない地位だったにも関わらず、”成り上がり”で当時の”皇”を玉座から排除して自分が玉座についたのだから。」
「セ、セリーヌ…………」
ヴァイスの事を知ったマキアスは疲れた表情で溜息を吐き、複雑そうな表情で呟いたユーシスの意見にフィーは同意し、静かな表情で呟いたセリーヌの意見を聞いたエマは冷や汗をかいた。

「殿下、ヴァイスハイト皇帝の件を考えるともしかして、他の”六銃士”もヴァイスハイト皇帝同様過去のヴァイスハイト皇帝と縁がある方々が転生した方々なのでしょうか?」
「それについては私も詳しい事はわからない。ただ、”蒼銀の魔剣士”の異名で呼ばれている”アル”というエルフ族の女性はヴァイスにとってかつての彼が最も信頼する副官にして後に彼の正妃となったリセル君の次に信頼し、大切にしている人物である事は以前の”西ゼムリア通商会議”の際に教えてもらえたが…………」
「…………………もしかしたら、ギュランドロスさんが言っていた”最高にして最強のライバル”と言っていた人物はそのヴァイスハイト皇帝の事かもしれないな…………」
「へ…………ガイウス、”六銃士”の事について何か知っているの!?」
「確か”ギュランドロス”という名前の人物は”六銃士”の中にもいて、その人物はもう一人のクロスベル皇帝らしいけど…………」
アルゼイド子爵の問いかけに答えたオリヴァルト皇子の後に答えたガイウスの推測を聞いたエリオットは驚き、サラは信じられない表情でガイウスにギュランドロスの事について軽く説明した。

「ああ…………以前ノルドで魔獣に包囲された父さん達を助けてくれた恩人――――ギュランドロスさんとその仲間の人達からそのヴァイスハイトという名前が出た事があるんだ。ギュランドロスさんの話では自身が認める”最高にして最強のライバル”だと言ってたが……」
「そのような出会いがあったのですか…………」
「フム…………ちなみにその仲間の人達の名前は何という名前なんだい?」
ガイウスの話を聞いたエマが驚いている中、オリヴァルト皇子は考え込んだ後ガイウスに訊ねた。

「ギュランドロスさんの仲間の人達は3人の女性で…………ラウラや子爵閣下よりも深い蒼色の髪の女性の名前はギュランドロスさんの奥方のルイーネ・サーキュリーさん、アリサのような金髪の女性の名前はエルミナ・エクスさん、そして紫髪の女性の名前はパティルナ・シンクさんだ。」
「―――決まりね。どの人物の名前や特徴も残りの”六銃士”と一致するわ。」
「彼らはどのような経歴かはわからないが…………ギュランドロス皇帝がヴァイスハイト皇帝と共にクロスベル皇帝として即位しているという事は、ガイウス君の話通りそのギュランドロス皇帝にとってヴァイスハイト皇帝が”最高にして最強のライバル”であるように、ヴァイスハイト皇帝にとってもギュランドロス皇帝は自分にとっての”最高にして最強のライバル”だからこそ、同じ立場になる事を受け入れたのかもしれないね。」
「それを考えるとギュランドロス皇帝もヴァイスハイト皇帝のようにかつては異世界の国の”皇”であった可能性が考えられますね…………」
ガイウスの説明を聞いたサラは静かな表情で呟き、アンゼリカとラウラはそれぞれ考え込んでいた。

「その…………話を変えますが、今までの話からしてわたし達が向かっている場所はメンフィル帝国の大使館があるリベール王国のロレント市ですか?」
「いや、ロレント市はリベール王国の領土の為当然リベール王国政府から入国許可を取る必要がある為、国境である”ハーケン門”に向かっている。」
「そして入国許可が下りたらロレントに向かう前にリベールの王都である”グランセル”に向かう予定となっている。」
トワの質問にアルゼイド子爵とオリヴァルト皇子はそれぞれ答えた。

「へ…………メンフィル帝国の大使館があるロレント市じゃなくてリベールの王都であるグランセルに?一体何故…………」
「まさか王国政府―――いえ、アリシア女王陛下達にメンフィル帝国との交渉の際の仲介に入ってもらう為にグランセルに向かっているのでしょうか?」
「あ…………」
マキアスが疑問を口にするとユーシスがその疑問に対する答えの推測を口にし、それを聞いたアリサは呆けた声を出した。
「ああ。君達も知っての通りリベールはメンフィルと同盟を結んでいる国家であり、2年前の”リベールの異変”の件でアリシア女王陛下の跡継ぎであるクローディア王太女殿下はリウイ陛下達とも親しい関係を築いている。…………正直な所私はアリシア女王陛下達からは”恩”を受けてばかりでその”恩”に対して何も返せていないにも関わらずアリシア女王陛下達に再び頼る事は心苦しいが、恥を忍んでアリシア女王陛下達の慈悲深さに頼るつもりだ。」
そしてユーシスの質問に対してオリヴァルト皇子は決意の表情で答えた。

その後ハーケン門に到着した”カレイジャス”はハーケン門にリベールへの入国許可やアリシア女王達との面会の許可を取った後、グランセルの国際空港に離陸し、アリシア女王達が出した送迎の車に乗ってリベールの王城―――”グランセル城”に向かい、城に到着して謁見の間に向かったアリサ達は壁際で謁見の様子を見守る事になり、オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵はアリシア女王達との謁見を開始した――――









 
 

 
後書き
というわけでトヴァルは登場することなく、メンフィルによる政治攻撃によってエレボニアから退場させられちゃいましたwトヴァルをエレボニアから退場させる為に遊撃士協会本部に政治攻撃を仕掛けたメンフィル帝国政府の人物は一体誰なのかは後に判明しますが…………まあ、他の光と闇の軌跡シリーズの話を読んでいる人達ならそれが誰なのかはすぐにわかるでしょうね~ww 

 

第17話

同日、PM1:30―――

~リベール王国・王都グランセル・グランセル城・謁見の間~

「―――女王陛下、王太女殿下。此度(このたび)は突然の訪問に応えて頂き、心より感謝致します。」
「いえ……貴国の事情はある程度把握しておりますので、どうかお気になさらないでください。」
「その…………殿下達が私達を訊ねた理由はやはり、エレボニア帝国とメンフィル・クロスベル両帝国との戦争の件でしょうか?」
オリヴァルト皇子の挨拶に対してアリシア女王は静かな表情で答え、クローディア王太女は複雑そうな表情でオリヴァルト皇子に確認した。
「はい。実は――――――」
そしてオリヴァルト皇子はアリシア女王達に自分達がリベールに来た理由を説明した。

「ええっ!?アルフィン殿下がお一人でメンフィル帝国の大使館に…………!?」
「まさかアルフィン殿下が昨日にリベールに来訪された上お一人でロレントのメンフィル帝国の大使館に向かわれていたとは…………誠に申し訳ございません。もしこちらで把握していれば、アルフィン殿下がメンフィル帝国の大使館に向かう前に保護をしてメンフィル帝国の大使館に向かう事をお止めしましたのに…………」
事情を聴き終えてクローディア王太女と共に驚いたアリシア女王は申し訳なさそうな表情でオリヴァルト皇子に謝罪し
「いえ、その件に関しては帝国政府としての下らないプライドに拘って女王陛下達にアルフィンの件を連絡しなかった宰相殿を含めた帝国政府やそれを承諾した父上―――ユーゲント皇帝陛下に非がありますので、どうかお気になさらないでください。それよりも、誠に勝手なお願いで大変申し訳ないのですが、恐らくメンフィル帝国によって拘束されていると思われるアルフィンの身柄をメンフィル帝国から返還して頂く事も含めたエレボニアとメンフィル・クロスベル連合との戦争を阻止する為に、御力を貸して頂けないでしょうか?―――どうか、お願いします。」
「お願いします!!」
オリヴァルト皇子は謙遜した様子で答えた後頭を深く下げてアリシア女王達に嘆願し、壁際で状況を見守っていたアリサ達も全員頭を深く下げて嘆願した。

「「………………………………」」
「陛下…………殿下…………」
一方嘆願された二人はそれぞれ複雑そうな表情で黙り込み、事情を知っているユリア准佐は辛そうな表情で二人の様子を見守っていた。
「…………みなさん、どうか頭を上げてください。メンフィル帝国の大使館に連絡を取り、オリヴァルト殿下がメンフィル帝国の大使であるリウイ陛下と交渉する場を用意する事は可能です。―――ただ、申し訳ないのですが”それ以上の協力”は私達にはできません。それでもよろしければ、メンフィル帝国の大使であられるリウイ陛下との交渉の場を設けますが…………」
「交渉の場を設ける以上の協力―――”それ以上の協力”と言いますと、例えばメンフィル帝国が我が国に要求している”ユミル襲撃”に関する賠償や謝罪内容を変更して頂く為の協力等と言った事でしょうか?」
黙り込んだ後重々しい口調で答えたアリシア女王の説明が気になったオリヴァルト皇子の隣にいたアルゼイド子爵は頭を上げた後アリシア女王達に訊ねた。

「はい…………正確に言えば、今回の件に関して私達リベールはこれ以上エレボニアを擁護するような意見をすれば、メンフィル帝国から今回の件であるエレボニア帝国とメンフィル帝国―――いえ、メンフィル・クロスベル連合との戦争に関してリベールを”中立の立場として認めない”と警告されている為、貴国がメンフィル帝国より受け取った”3度目の要求内容”についてリベール(私達)はメンフィル帝国に意見する事は厳しい立場なのです。」
「な……………………」
「さ、”3度目の要求内容”って………」
「まさか…………内戦の間にメンフィル帝国は貴族連合軍による”ユミル襲撃”に対する賠償を要求する書面を”既に2度もエレボニア帝国の大使館に送ったのですか?”」
辛そうな表情で語ったクローディア王太女の話にアリサ達と共に血相を変えたオリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、トワは不安そうな表情で呟き、ある事に気づいたアンゼリカは真剣な表情で訊ねた。

「……………ユリアさん。オリヴァルト殿下達にメンフィル帝国が用意したエレボニア帝国に対する1度目と2度目の賠償内容が書かれた書面を配ってあげてください。」
「御意。」
アリシア女王に指示されたユリア准佐は予め用意してあった鞄から書類を出して謁見の間に控えている王室親衛隊員達と共にオリヴァルト皇子達にその書類を配った。そしてその書類にはそれぞれメンフィル帝国の要求内容が書かれていた。



1度目の要求内容


メンフィル帝国によるエレボニア帝国に対する戦争勃発を中止する為の賠償内容は以下の通り。


1、貴族連合軍が拉致監禁したユミル領主の娘、エリス・シュバルツァー嬢の即刻解放

2、ユミル襲撃の主犯である”北の猟兵”並びにアルバレア公爵家当主ヘルムート・アルバレア、エリス・シュバルツァー嬢の拉致監禁の指示と実行を行った貴族連合軍の”裏の協力者”であるヴィータ・クロチルダ並びにアルティナ・オライオンの身柄引き渡し

3、貴族連合軍による”ユミル襲撃”に対する謝罪金並びに賠償金として5000億ミラの支払い

4、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女は女学院卒業又は退学後メンフィル帝国領内で一生を過ごす事。メンフィル帝国で行う社交界への参加は許可するが、エレボニア帝国で行う社交界は夏至祭、皇族の誕生日、年末年始の際に行う社交界以外の参加を禁じ、帰省は1年につき30日間のみ認める。また、アルフィン皇女とエレボニア帝国人(貴族も含める)との結婚も禁ずる。(愛人として迎える事も禁ずる)


以上の内第1項を即実行後、メンフィル帝国が定めた期間以内に内戦を終結させて残りの全てを実行するのならば、メンフィル帝国はエレボニア帝国に対する侵略行為を中止し、和解にも応じる。



2度目の要求内容


メンフィル帝国によるエレボニア帝国に対する戦争勃発を中止する為の賠償内容は以下の通り。


1、貴族連合軍が拉致監禁したユミル領主の娘並びに息子であるエリス・シュバルツァー嬢とリィン・シュバルツァーの即刻解放

2、ユミル襲撃の主犯である”北の猟兵”並びにアルバレア公爵家当主ヘルムート・アルバレア、カイエン公爵家当主クロワール・ド・カイエン、アルバレア公爵家長男ルーファス・アルバレア、エリス・シュバルツァー嬢の拉致監禁の指示と実行を行った貴族連合軍の”裏の協力者”であるヴィータ・クロチルダ並びにアルティナ・オライオンの身柄引き渡し

3、クロイツェン州全土とラマール州全土の内それぞれ首都である”バリアハート”と”オルディス”を含めた半分の領土の統治権をメンフィル帝国に贈与する事

4、内戦によってメンフィル帝国領に避難してきた難民達の生活費等の支払い(なお、内戦が始まってから現在に到るまでの金額は利子込みで500億ミラで、内戦終結まで1日経つ度に難民達の一日の生活費を利子込みで20億ミラが増加し続ける)

5、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女は女学院卒業又は退学後メンフィル帝国領内で一生を過ごす事。メンフィル帝国で行う社交界への参加は許可するが、エレボニア帝国で行う社交界は夏至祭、皇族の誕生日、年末年始の際に行う社交界以外の参加を禁じ、帰省は1年につき30日間のみ認める。また、アルフィン皇女とエレボニア帝国人(貴族も含める)との結婚も禁ずる。(愛人として迎える事も禁ずる)

6、2度に渡る貴族連合軍による”ユミル襲撃”に対する謝罪金並びに賠償金として1兆ミラ並びにカイエン公爵家、アルバレア公爵家の全財産の内の半分に相当するミラの支払い


以上の内第1項を即実行後、メンフィル帝国が定めた期間以内に内戦を終結させて残りの全てを実行するのならば、メンフィル帝国はエレボニア帝国に対する侵略行為を中止し、和解にも応じる。




「1度目の要求内容もそうだが、2度目の要求内容も”3度目の要求内容”と比べるとそれ程理不尽ではない…………いや、特に1度目の要求内容に関しては”当然”と言ってもいい要求ばかりだな…………まあ、最初からアルフィン殿下まで”ユミル襲撃”に対する処罰としてメンフィルによってエレボニアからの追放処分を受ける事は納得し難いが…………」
「でも、”3度目の要求内容”と比べるとどっちも”相当マシな要求内容”だね。」
「そうね…………まあ、例え貴族連合軍がこの要求内容を知っても実行は全くしなかったでしょうけど。」
「まさか最初と2度目の要求内容で姉さんの身柄をメンフィル帝国に引き渡す事まで要求されていたなんて…………」
「ま、メンフィルの要求通り、1度目のユミル襲撃の際に”黒兎(ブラックラビット)”にエリスを誘拐させたのはあの女の指示によるものなのだから、メンフィルがエリスの”誘拐犯”であるあの女の身柄を要求するのも当然よ。」
「…………予想はしていたが、やはり最初の要求内容の時点で父上はメンフィル帝国によって裁かれる身であったのか…………」
「ユーシス…………」
それぞれの要求内容を読み終えたラウラは複雑そうな表情で呟き、フィーの意見に頷いたアリサは複雑そうな表情を浮かべ、不安そうな表情で呟いたエマにセリーヌは静かな表情で指摘し、疲れた表情で肩を落としたユーシスの様子をガイウスは心配そうな表情で見守っていた。

「ちなみにこの要求内容はそれぞれいつ、グランセルのエレボニア帝国の大使館に届けられたのでしょうか?」
「1度目の要求内容は”1度目のユミル襲撃”が起こった二日後に…………2度目の要求内容は”2度目のユミル襲撃”が起こった翌日にそれぞれエレボニア帝国の大使館にメンフィル帝国の大使であるリウイ陛下直々が訪問して、その要求内容をダヴィル大使に渡してその要求内容にも書かれている通り、メンフィル帝国が定めた期間以内に実行しなければ開戦する警告を行ったそうです。」
「そしてその件をダヴィル大使から相談されて”中立の立場”としてメンフィル帝国との仲介を頼まれた私達はダヴィル大使と共にリウイ陛下と交渉して、何とか”期限切れ”で開戦する事は思いとどまって頂けたのですが…………2度目の要求内容に対する交渉の際、リウイ陛下から『幾ら盟友のリベールの頼みであろうと”3度目はない”事やこれ以上エレボニアを擁護する事を行えば、メンフィルはメンフィルとエレボニアの戦争の際リベールを第三者――――つまり、”中立の立場として認めない為リベールの仲介には応じない』と言われ、私達リベールは”中立の立場”としてリウイ陛下のそのお言葉に承諾せざるを得なかったのです…………」
「そ、そんな…………それじゃあ、リベール王国は”3度目の要求内容”の件については…………」
「”エレボニアとメンフィル・クロスベル連合との戦争に関してリベールが中立の立場を保つため”に女王陛下達は貴族連合軍の2度に渡る”ユミル襲撃”の賠償として求めてきたメンフィル帝国の要求に対して意見しづらい――――いえ、”意見ができない立場”なのですね…………」
オリヴァルト皇子の質問に答えたアリシア女王とクローディア王太女の答えを聞いたエリオットは悲痛そうな表情をし、サラは複雑そうな表情で呟いた。

「つまり、”3度目の要求内容”は”1度目の要求内容”から内戦の間に積もり積もったメンフィル帝国のエレボニア帝国に対する”怒り”という名の”利息”の結果、あのような要求内容になったという訳か。」
「で、でも…………1度目もそうだけど、2度目の時も内戦の最中でユーゲント陛下達は”カレル離宮”に監禁されたままで、オズボーン宰相は行方不明だったから、どの道エレボニアは他国と交渉するような余裕はなかったのに、それを理解していながら要求するのは幾ら何でも理不尽だよ…………」
重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカに続くようにトワは辛そうな表情で自身の意見を口にしたが
「ダヴィル大使も内戦の件を理由にそちらの方と似たような意見を仰って、期限について交渉を行おうとしましたがリウイ陛下は『戦争を仕掛けるかもしれないエレボニアの事情にメンフィルが考慮する義理はない』という答えで断ったとの事です。」
「そ、それは…………」
「…………確かに内戦の件はリウイ陛下の仰る通り、”あくまでエレボニア帝国内の事情であって、エレボニア帝国に戦争を仕掛けるかもしれないメンフィル帝国が戦争相手であるエレボニア帝国の事情に付き合う義理はありませんね”…………」
アリシア女王の話を聞くと言葉をなくし、ラウラは複雑そうな表情で呟いた。

「―――女王陛下、王太女殿下。内戦の最中、我が国が犯した愚行に対して怒りの炎を燃やすメンフィル帝国の”炎”を私達アルノール皇家やエレボニア帝国政府に代わり、2度も鎮めてくださった事、心より感謝致します。メンフィル・クロスベル連合との件が”どのような結果になろうとも”、エレボニアは何らかの形でリベールから受けた恩を返せるように手配を致します。――――例え、メンフィル・クロスベル連合に敗戦して”アルノール皇家”が責任を取って皇族の身分が剥奪されようとも我が命に代えてでも、このご恩、いつか必ずや何倍にしてお返しいたします。」
「僭越ながら、我が”アルゼイド子爵家”もオリヴァルト殿下と共に我が祖国であるエレボニア帝国がリベール王国より受けた恩を返す為に、私を含めた”アルゼイド子爵家”も何らかの形でリベール王国に恩返しする事をお約束致します。感謝の言葉を遅くなりましたが、2度もメンフィル帝国の怒りを鎮めてくださったこと、本当にありがとうございました…………」
「父上…………」
オリヴァルト皇子はその場で頭を深く下げてアリシア女王達に感謝の言葉を述べ、アルゼイド子爵もオリヴァルト皇子に続くように頭を深く下げ、その様子をラウラは静かな表情で見守り
「お二方とも、頭をあげてください。私達はエレボニア、メンフィル両帝国と友好を結んでいる国として…………”不戦条約”を提唱した国として当然の事を行っただけです。それよりも、先程も申しました通り、メンフィル帝国との交渉の際私達リベールはあくまで”中立の立場として”交渉の場を設ける事と交渉の場でのオリヴァルト殿下達の身の安全を保障できるだけで、メンフィル帝国の”3度目の要求内容”に対して意見をする事はほぼ不可能である立場の為、交渉は相当厳しいものになると思われます。それでも、リウイ陛下との交渉を望みますか?」
アリシア女王は謙遜した様子で答えた後オリヴァルト皇子に訊ねた。

「―――はい。どうか、リウイ陛下に私――――エレボニア帝国皇子オリヴァルト・ライゼ・アルノールがエレボニア帝国を代表して、内戦の最中メンフィル帝国に対して我が国が行った数々の愚行について謝罪したい事と、その賠償、メンフィル帝国にいるリィン君達やアルフィンの状況、そしてメンフィル・クロスベル連合との戦争の和解の為の話し合いがしたいとお伝えください。」
「…………わかりました。今から手配をするので少しだけお待ちください。クローディアは手配を終えるまで、殿下達の話し相手を務めてください。」
「わかりました、お祖母様。」
オリヴァルト皇子の頼みを承諾したアリシア女王はクローディア王太女に指示をした後謁見の間に控えている王室親衛隊員達の一部と共に謁見の間を出た。

「改めてになりますが――――お久しぶりですね、”オリビエさん”。内戦が勃発した時は本当に心配しましたが、ご無事で何よりです。」
「ハハ、子爵閣下やⅦ組の彼らも含めて多くの人々の力を借りて何とか内戦を乗り越える事ができたよ。エステル君達は今、どうしているんだい?」
アリシア女王達が謁見の間から去るとクローディア王太女は親し気な様子でオリヴァルト皇子に話しかけ、話しかけられたオリヴァルト皇子も親し気な様子で答えた後エステル達の事について訊ねた。
「エステルさん達はエレボニアの内戦が勃発した後はリベールに帰国してしばらくはリベールで活動していましたが…………クロスベルで起こった”異変”の解決の為にクロスベルに向かって、ヴァイスさん達やロイドさん達と共にクロスベルでの”異変”を解決したとの事です。ちなみに遊撃士協会はその功績を評してミントちゃんを”S級正遊撃士”に、エステルさんに関しては遊撃士協会史上初の”SS級正遊撃士”に昇格させたとの事です。」
「ハアッ!?”SS級”ですって!?しかもミントまで”S級”に昇格だなんて…………」
「確か”S級正遊撃士”はゼムリア大陸でたった4人しかいない特別な遊撃士なのに、まさか更にその上のランクが存在するなんて…………」
「サラ教官よりも上のランクの遊撃士って、一体どんな人達なんだろう…………?」
クローディア王太女の答えを聞いたサラとトワは驚き、エリオットはまだ見ぬエステル達の事について考え込んでいた。

「ハハ、さすがエステル君達だね。ちなみにヨシュア君は”S級”には昇格していないのかい?」
「ええ。ですが、既に遊撃士協会本部からは次の”S級昇格候補”として挙げられているとの事です。」
「あの…………王太女殿下。横から口をはさむようで大変申し訳ないのですが、何故遊撃士協会本部はエステルの昇格は”S級”を飛ばして”SS級”なんていう今まで存在しなかったランクに昇格させたのでしょうか?2年前に貴国で起こった”リベールの異変”に加えてクロスベルでの”異変”も解決した功績を考えると”S級”に昇格させる事に関しては納得できるのですが…………」
オリヴァルト皇子の質問にクローディア王太女が答えると、サラが遠慮気味に訊ねた。
「ふふっ、それに関しては恐らくエステルさんが異世界の大国であるメンフィル帝国から爵位をいただいている事もそうですが、エステルさん自身の出自も関係していると思います。」
「ハ…………?あの娘がメンフィル帝国から”侯爵”の爵位を賜っている事は聞いたことがありますが、”出自”、ですか?まさかカシウスさんの娘だからという理由ではありませんよね?そもそもカシウスさんの最終ランクも”S級”だったのですから。」
クローディア王太女の答えを聞いたサラは困惑の表情で訊ねた。

「それを答える前に皆さんに”ゼムリア大陸にとってとても重大な事実”をお知らせしておきます。」
「”ゼムリア大陸にとってとても重大な事実”…………?」
「何それ。意味不明なんだけど。」
「フィ、フィーちゃん、王太女殿下に失礼ですよ。」
クローディア王太女の答えが気になった仲間達がそれぞれ不思議そうな表情を浮かべている中アリサは首を傾げ、ジト目で呟いたフィーにエマは冷や汗をかいて指摘し
「殿下。あの方々の事までオリヴァルト殿下達にも教えてよろしいのですか?」
「ええ。―――というか、既に”リベール通信”を始めとしたリベールの通信社もそうですが、クロスベルの通信社も”あの方々”の存在やエステルさん達との関係を公表しているのですから、逆に隠す理由がありませんよ。」
「?”あの方々”とは一体何者なんだい?しかもエステル君まで関係しているようだが…………」
ユリア准佐の確認にクローディア王太女が苦笑しながら答えると、オリヴァルト皇子が不思議そうな表情で訊ねた。

「フフ…………―――単刀直入に申し上げます。ゼムリア大陸の多くの人々の信仰の対象にして七耀教会が崇める存在――――”空の女神”エイドス様がご両親や先祖の方々と共に現代のゼムリア大陸に降臨し、今も現代のゼムリア大陸に滞在しておられるのです。」
「………………………………」
クローディア王太女の答えにアリサ達はそれぞれ石化したかのように固まり
「ええええええええええええええええええええ~~~~~~~~~~~~っ!?」
やがて我に返ると驚きの声を上げた―――!

 

 

第18話

~グランセル城・謁見の間~

「め、めめめめ、女神様が現代のゼムリア大陸に降臨して滞在しているって…………!」
「”空の女神”がこのゼムリア大陸に…………」
「しかも”空の女神”どころか、その”両親”や”先祖”までいるって一体どうなっているのよ!?」
「あの…………王太女殿下の話から察すると”空の女神”は私達”人”のように”親”や”先祖”が存在するような口ぶりでしたが…………」
マキアスは混乱した様子で声を上げ、ガイウスは呆けた表情で呟き、セリーヌは疲れた表情で声を上げ、エマは困惑の表情でクローディア王太女に訊ねた。
「フフ、実は私とユリアさんもオリビエさん――――オリヴァルト殿下やミュラーさんと共に”影の国事件”に巻き込まれたのですが…………その”影の国”で後のエイドス様のご両親や、そのご両親の内の母君にとって先祖にあたる人物も巻き込まれて、その方々が自分達の時代に帰還した際にその方々が”空の女神”のご両親と先祖であることが”影の国”を管理している方の情報によって判明したのです。」
「今の話は誠なのですか、殿下?」
「ああ。ハハ…………まさかヴァイスに続いて”彼ら”まで”空の女神”と共に現代のゼムリア大陸に現れたとはね…………この調子だと、その内シルフィアさん達の生まれ変わりやリセル君もゼムリア大陸に現れるかもしれないね。」
クローディア王太女の話を聞いて驚きの表情を浮かべたアルゼイド子爵に訊ねられたオリヴァルト皇子は頷いた後懐かしそうな表情を浮かべた。

「あ…………え、えっと………その、実はリセルさんも既にヴァイスさんのように転生前の記憶もそのままで生まれ変わって現代のゼムリア大陸に現れて、ヴァイスさんの元にいます。」
「そうか…………既にリセル君も生まれ変わって現代のゼムリア大陸にいるのか…………ハハ、メンフィル・クロスベル連合との件が終われば、できればエステル君達と共に”影の国”を共に乗り越えたメンバー同士による同窓会を開きたいものだね。」
「フフ、そうですね。それとエステルさん達の話によりますとティナさんとシルフィアさんはヴァイスさん達と違って別の人物として生まれ変わってはいますが、お二人とも転生前の記憶を取り戻してかつてのように再びリウイ陛下と結ばれたそうなのですが…………その、シルフィアさんが生まれ変わった人物がオリヴァルト殿下も驚愕する人物との事なのです。」
「私が?シルフィアさんは一体どのような人物に生まれ変わったのだい?」
「それが…………結社の”蛇の使徒”の第七柱――――”鋼の聖女”アリアンロードという人物との事です。」
オリヴァルト皇子の質問にクローディア王太女は気まずそうな表情を浮かべて驚愕の事実を答えた。

「な――――――――」
「何ですって!?」
「ハアッ!?あの”鋼の聖女”がメンフィルの関係者の転生者ですって!?」
「ほとんどが殺されたか生存がわからない結社の”蛇の使徒”の中で唯一生存が判明しているその”鋼の聖女”とやらが、まさかメンフィル帝国の関係者が生まれ変わった人物だったとは…………」
「なるほど。その”鋼の聖女”の裏切りは間違いなくその件が関係しているだろうね。」
「う、うん…………あの、王太女殿下。ちなみにその”シルフィア”という方はメンフィル帝国ではどのような立場だった方なのでしょうか?」
クローディア王太女の説明を聞いたオリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、サラとセリーヌは信じられない表情で声を上げ、ラウラは真剣な表情で呟き、静かな表情で呟いたフィーの推測に頷いたトワはクローディア王太女にある事を訊ねた。

「シルフィアさんはリウイ陛下による”メンフィル王国”建国時より、近衛騎士団長としてリウイ陛下に仕え、ファーミシルス大将軍閣下やペテレーネさんのようにリウイ陛下からも絶大な信頼が寄せられている重臣の一人であり、”メンフィルの守護神”とも呼ばれたメンフィル帝国の多くの人々に慕われ、尊敬された偉大なる聖騎士との事です。」
「更にシルフィア殿はリウイ陛下の側室の一人でもあり…………後にリウイ陛下の後を継がれたシルヴァン皇帝陛下の母君でもある御方だ。」
「な――――現メンフィル皇帝であられるシルヴァン皇帝陛下の!?」
「ハハ…………とんでもない事実の連続でさすがの私も頭がパンクしそうだよ。話が色々と逸れている為”エステル”という人物の話に戻しますが、何故エステルという人物の”SS級正遊撃士”への昇格がその”空の女神”の話とどうつながるのでしょうか?」
クローディア王太女とユリア准佐の話に仲間達が再び驚いている中ユーシスは驚きの声を上げ、疲れた表情で呟いたアンゼリカは気を取り直してクローディア王太女達に訊ねた。

「フフ…………実はエイドス様にも私達”人”のようにファミリーネームがあるのですが…………エイドス様のフルネームは”エイドス・クリスティン・ブライト”で、エステルさんの”貴族としての名前”を除いたフルネームは”エステル・ブライト”と言えば、皆さんも理解できるかと。」
「女神様と同じファミリーネームの”ブライト”って事は…………!」
「ええっ!?も、もしかしてそのエステルさんって人は”空の女神”の血縁者なのですか!?」
クローディア王太女の話を聞いてすぐにある事実に気づいてエリオットと共に信じられない表情をしたアリサはクローディア王太女に訊ねた。
「はい。――――――先祖代々”ブライト”の名を継ぎ続けたカシウスさんやエステルさんが”空の女神”であられるエイドス様の子孫である事も”影の国”で判明した事実です。」
「あのカシウス卿が”空の女神”の…………」
「まさか”空の女神”に”子孫”が存在していた上、その系譜が今も続いていたなんてね…………なるほどね、だから遊撃士協会はその”エステル”って娘を”SS級”なんていう史上初のランクにしたのね。――――それにしても七耀教会にとってはとんでもないスクープじゃない。もし、教会が知れば”ブライト”の血族達を教会の神輿として利用する為に何らかの画策をするんじゃないかしら?」
「セ、セリーヌ。」
クローディア王太女の話を聞いたアルゼイド子爵が驚いている中溜息を吐いた後呟いたセリーヌの推測にアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エマは気まずそうな表情をした。

「ふふっ、それに関してはエイドス様も予め想定していたのか、既に七耀教会の”教皇”を含めた上層部クラスにはカシウスさん達――――”ブライト家”を特別扱い―――――――例えば”ブライト家”の人々を七耀教会の神輿として利用したり、七耀教会の要職に就いてもらう要請等する事は”空の女神”であるエイドス様自身が許さないと念押し――――いえ、私達の知人である七耀教会の関係者達曰く”笑顔で脅迫した”との事ですから、そのような事は起こりませんよ。」
「め、女神様が七耀教会の偉い人達を”笑顔で脅迫した”って………」
「とても女神のやる事とは思えないね。」
「ふっ、どうやら”空の女神”は中々ユニークな性格のようだね。」
「ハハ、さすがはあのエステル君の先祖だけはあるね…………」
苦笑しながら答えたクローディア王太女の話にアリサ達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワは信じられない表情で呟き、フィーはジト目で呟き、アンゼリカは静かな笑みを浮かべ、オリヴァルト皇子は苦笑していた。

「あの…………そもそも女神様達は何の為に今のゼムリア大陸に現れたんでしょうか?」
「もしかして、混迷に満ちた今のゼムリア大陸を何とかする為だろうか?」
「いえ…………エイドス様達が現代のゼムリア大陸に降臨した理由はクロスベルでの”異変”が関係しているんです。」
エリオットとガイウスの疑問に答えたクローディア王太女の話を聞いたアリサ達は血相を変えた。

「ここでもクロスベルでの”異変”の話が出てくるなんて…………」
「女神まで直々に関わるとは、一体クロスベルでどのような”異変”が起こったのでしょうか?」
アリサは不安そうな表情で呟き、ユーシスは真剣な表情でクローディア王太女達に訊ねた。そしてクローディア王太女達はクロスベルでの”異変”の真実を説明した。

「まさかあの”碧の大樹”にそのような”力”があったなんて…………」
「”因果律を操作する事でゼムリア大陸の歴史自体を改変する”…………なるほどね。確かに幾ら自身の”至宝”の仕業ではないとはいえ、それ程の大事(おおごと)になるとさすがの”空の女神”も介入せざるを得なかったのね…………」
「しかもその件にあの”D∴G教団”まで関係していた上、その黒幕(スポンサー)がIBCのトップである”クロイス家”だったとはね…………」
事情を聞き終えたエマは真剣な表情で考え込み、セリーヌとサラはそれぞれ厳しい表情を浮かべた。

「…………あの、王太女殿下。女神様は今どこにいるか、わかりませんか?」
「トワ?どうして”空の女神”の居場所を聞きたいんだい?」
トワのクローディア王太女への質問内容が気になったアンゼリカはトワに訊ね
「うん。もし、これからオリヴァルト殿下達が臨むメンフィル帝国の大使館での交渉の際に女神様が第三者―――”中立の立場”として参加してくれれば、メンフィル帝国の要求内容についても口出しできるんじゃないかなって。」
「あ…………っ!」
「”空の女神”はゼムリアの多くの人々が崇める”女神”。七耀教会―――いや、ゼムリア大陸全土に対して絶大な発言権を持っているから、幾らメンフィル帝国が異世界の国であろうとも、”空の女神”の口出しまでは無視できないでしょうね…………!」
トワの推測を聞いたエリオットとマキアスはそれぞれ明るい表情を浮かべた。

「「………………………………」」
一方クローディア王太女とユリア准佐はそれぞれ複雑そうな表情で黙り込み
「?二人とも今の話に何か気になる事でもあるのかい?」
二人の様子が気になったオリヴァルト皇子は不思議そうな表情で訊ねた。

「………………実はエイドス様達は今、リベールの国内に滞在しておられるのですが…………メンフィル帝国よりグランセルのエレボニア帝国の大使館に貴族連合軍による2度に渡る”ユミル襲撃”に対してメンフィル帝国が要求した謝罪や賠償内容である”3度目の要求内容”が届いた翌日にダヴィル大使から相談や協力の嘆願をされた際に、私とお祖母様も皆さんのようにエイドス様達に御力なってもらおうと思い、エイドス様達の元を訪れて戦争勃発寸前のエレボニア帝国とメンフィル帝国の関係を和解に導く協力をして頂けるように嘆願したのですが…………」
「エイドス様は『私は現代のゼムリア大陸の(まつりごと)に介入する意思は全くなく、またその権限もありません』という理由で陛下と殿下の嘆願を断ったのです。」
「そ、そんな!?女神様が本当にそんな事を言ったんですか!?」
「何故”空の女神”は戦争を止める協力をする意思がないのだろうか?」
「それに”現代のゼムリア大陸の(まつりごと)に介入する権限もない”という言葉も気になるわね…………意思の件も併せて、何故”空の女神”は殿下達の嘆願を断られたのでしょうか?」
クローディア王太女とユリア准佐の答えを聞いて仲間達と共に血相を変えたアリサは表情を青ざめさせて声を上げ、ガイウスとサラはそれぞれ質問をした。

「いくつか理由はありますが…………一番の理由はエイドス様達はクロスベルの”異変”を解決する為に現代のゼムリア大陸に降臨しましたが、その理由はあくまで”ゼムリア大陸自身を護る為”であって、『女神である私は至宝も関わっていない現代のゼムリア大陸の人々の争いに介入するつもりは一切ありません』との事です。」
「それは……………………」
「要するに”空の女神”にとって”今のゼムリア大陸に生きるわたし達”―――ましてや自分の子孫の故郷であるリベールに戦争を仕掛けたエレボニアの人達の事はどうでもいいんだ。」
「フィー、さすがにそれは考え過ぎだと思うぞ。」
辛そうな表情を浮かべて答えたクローディア王太女の説明を聞いたオリヴァルト皇子が複雑そうな表情をしている中、厳しい表情で呟いたフィーにラウラは指摘した。

「殿下、例え”空の女神”にそのつもりがなくても、まだ殿下自身が”空の女神”にお会いして嘆願もせず、”空の女神”の協力を諦めるべきではないかと。」
「そうだね…………クローディア姫、どうか私達に今”空の女神”達が滞在している場所を教えてもらう事と、そこに行く許可を貰えないだろうか?」
アルゼイド子爵の提案に頷いたオリヴァルト皇子はクローディア王太女にある事を頼み
「……………わかりました。現在エイドス様達が滞在していらっしゃっている場所は―――」
そしてクローディア王太女はオリヴァルト皇子にエイドス達の居場所を伝えた。

「…………了解した。ちなみに話は変わるのだが、リベールは新興の国である”クロスベル帝国”を既に”国”として認めて、国交も行っているのだろうか?」
クローディア王太女に感謝の言葉を述べたオリヴァルト皇子はクローディア王太女にある事を訊ねた。
「…………はい。オリヴァルト殿下達にとっては複雑かもしれませんが、リベールは既にクロスベル帝国を”国”として認め、国交も開始しています。また、レミフェリアも”クロスベル帝国”を国として認め、リベールのようにクロスベル帝国から来た国交を開く為の使者と今後のクロスベルとの交流についての話し合いも既に始めていると聞いています。」
「メンフィルだけじゃなく、リベールやレミフェリアも既に”クロスベル帝国”を”国”として認めて国交も行っているなんて…………」
「まあ、メンフィルというエレボニアやカルバードを遥かに超えるとんでもない大国が”クロスベル帝国”の存在を認めている上連合まで組んでいるのだから、メンフィルと同盟関係であるリベールは当然として、メンフィルと何の縁もないレミフェリアもエレボニアのようにメンフィルに喧嘩を売ってメンフィルとの緊張状態に陥る理由を作らない為にも認めざるを得なかったかもしれないね。」
オリヴァルト皇子の質問にクローディア王太女は静かな表情で答え、クローディア王太女の話を聞いたトワとアンゼリカはそれぞれ複雑そうな表情を浮かべた。

「勿論、リベールやレミフェリアが”クロスベル帝国”を国として認めた事はメンフィル帝国の存在も関係はしていますが、クロスベル帝国の皇帝の一人であるヴァイスさんが国としての正当性を主張できる”尊き血”の女性を自身の第一側妃として婚約した事も関係しています。」
「ヴァイスが?一体どんな女性を彼は側妃に婚約したんだい?」
「それが…………ヴァイスさんが第一側妃として婚約した”尊き血”であるその女性はエレボニア帝国の大貴族である”四大名門”の一角にして貴族連合軍の”主宰”であったカイエン公爵のご息女の一人―――ユーディット・ド・カイエン公爵令嬢なんです。」
「な――――――――」
「カイエン公爵の娘がクロスベル皇帝の側妃になっただって!?」
「あのユーディット嬢が…………」
クローディア王太女の話を聞いたオリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、マキアスは信じられない表情で声を上げ、アルゼイド子爵は驚きの表情を浮かべた。

「…………確かに”四大名門”―――それもオルトロス帝の末裔である”カイエン公爵家”の”尊き血”も状況によっては、皇族としての正当性を主張する事が可能ではあるが…………」
「く…………っ…………社交界では兄上と並ぶ才能を持っている事から”才媛”と評された程のあのユーディット嬢が他国―――それも新興したばかりの国で、自身にとっての祖国であるエレボニアと戦争状態に陥っている国の皇の側妃として嫁ぐという事は、”四大名門”の貴族でありながら祖国であるエレボニアを裏切る事になると理解していて、何故クロスベルの皇帝と婚約を結んだのだ…………!?」
「ハアッ!?そのユーディットってカイエン公の娘はそんなに有能なの!?」
「まさかあのカイエン公の娘がルーファスさんと同じくらい凄いなんて…………」
「というかカイエン公って娘がいたんだ。」
ラウラは複雑そうな表情で呟き、唇を噛み締めて呟いたユーシスの言葉を聞いてアリサ達と共に驚いたサラは声を上げ、ガイウスは驚きの表情で呟き、初めて知った事実にフィーは目を丸くして呟いた。

「ユーディット嬢は才能ばかりでなく、性格もとても理知的な淑女で、父親であるカイエン公やその息子のナーシェン卿と違い、ユーディット嬢とその妹であるキュア嬢は決して権力を笠に着るような人物ではなく、平民達を想う心もあり、内戦中は自らの私財をなげうってまで民達に支援物資を送っていた話も西部での活動の際に耳にしたことがある。」
「そんな方があのカイエン公のご息女なのですか……」
「とてもあのカイエン公の娘とは思えないわね。」
アルゼイド子爵の説明を聞いたエマは驚き、セリーヌは戸惑いの表情で呟いた。

「で、でもどうしてそんなに凄くてオリヴァルト殿下にも協力してくれそうな大貴族の女性がクロスベルの皇帝に…………」
「…………多分だけど、彼女は”カイエン公爵家を護る為に”ヴァイスハイト皇帝と婚約を結んだのかもしれないね。」
「へ…………それってどういう事なんですか?」
エリオットの疑問に対して静かな表情で答えたアンゼリカの推測を聞いたアリサは戸惑いの表情で訊ねた。

「君達も知っての通り、貴族連合軍の”主宰”であったカイエン公は拘束された。そして当然内戦を引き起こした責任はカイエン公個人だけでなく、その実家である”カイエン公爵家”にも追及される事になるだろう。内戦を勃発させた主犯の実家なのだから、よくて”四大名門”からただの貴族への降格…………最悪は御家断絶――――つまり、”爵位剥奪”やエレボニア帝国からの永久追放処分をエレボニア帝国政府から命じられる可能性は非常に高いだろうね。だが、他国――――それもエレボニアと戦争している国であるクロスベルの皇帝に側妃として嫁ぐ事で”カイエン公爵家がエレボニア帝国の貴族からクロスベル帝国の貴族として鞍替えすれば”話は変わってくるだろう。」
「メンフィル・クロスベル連合がエレボニア帝国との戦争に勝利すれば、恐らくカイエン公爵家は大貴族としての地位を保ち続ける事ができるどころか、側妃であるユーディット嬢が産むご子息かご息女が次代のクロスベル皇帝に即位する事でカイエン公爵家が”クロスベル皇家”になる可能性は十分に考えられるな…………」
「あ…………っ!」
「つまり、そのユーディットって人はエレボニアの貴族でい続けたら父親のせいで御先が真っ暗になった実家の未来が危ういから、あっさりエレボニアを捨ててクロスベルに寝返ったんだ。」
「その狡猾さはある意味あのカイエン公とそっくりね…………まあ、父親と違って娘の方は”勝ち組”になったようだけど。」
「彼女がカイエン公の後を継いでくれれば、エレボニアの貴族達を抑えていずれは”革新派”と協力してくれる事も期待していたんだが、まさかヴァイス達側になるとはね…………ルーファス君達に続いて、エレボニアは失うにはあまりにも惜しい人物を更に失ったようだね…………」
「殿下…………」
アンゼリカとラウラの推測を聞いたエリオットは声を上げ、フィーはジト目で呟き、セリーヌは呆れた表情で呟き、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の様子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見つめた。

「ユーディット嬢の件を考えると、メンフィル・クロスベル連合はひょっとしたらエレボニアの貴族達――――特に貴族連合軍に所属していた貴族達の調略をしているかもしれんな。」
「ちょ、”調略”って事はまさか、エレボニアの貴族達までメンフィル・クロスベル連合に寝返るって事か!?」
「カイエン公爵家程じゃないけど、貴族連合軍に所属していた貴族達はエレボニアに所属し続けていたら間違いなく処罰を受ける事は目に見えているのだから、その処罰から逃れる為にメンフィル・クロスベル連合に寝返る可能性は十分に考えられるわね…………」
重々しい様子を纏って呟いたユーシスの推測を聞いたマキアスは信じられない表情で訊ね、サラは厳しい表情で考え込み
「ハハ…………私達と違って、数多の戦争を経験したリウイ陛下やヴァイス達なら敵国を内部から崩す為のそういった謀略も当然行っているだろうね…………改めて、メンフィル・クロスベル連合を敵に回した恐ろしさを思い知ったよ。例えエレボニアの滅亡を防げても、エレボニアはあらゆる意味でボロボロになって、完全に復興するには膨大な年数を要する事になるだろうね…………」
オリヴァルト皇子はエレボニアの未来を考えて疲れた表情で肩を落とした。
「―――その時が来れば、リベールを頼ってください。私やお祖母様を含めたリベールはエレボニアの友好国として、可能な限り御力になる所存です。」
「殿下…………」」
「―――ありがとう。今回の件が終われば、間違いなくリベールにも頼る事になるだろうが…………どれだけの年数がかかっても、受けた恩を必ず倍にして返すよ。」
クローディア王太女の申し出を聞いたユリア准佐は明るい表情でクローディア王太女を見つめ、オリヴァルト皇子は感謝の言葉を述べた。その後アリシア女王が謁見の間に戻ってきて結果を知らせた。


「―――お待たせしました。先ほどメンフィル帝国の大使館に連絡を取った所、明日の朝9時からなら面会可能との事でしたので、その時間にオリヴァルト殿下達が面会する事とその場に”中立の立場”としてクローディアが立ち会う事を承諾して頂きました。そういう訳ですから、クローディア。明日貴女は私の名代としてオリヴァルト殿下達に同行してください。」
「わかりました、お祖母様。」
「重ね重ねありがとうございます。」
アリシア女王は説明をした後クローディア王太女に指示をし、指示をされたクローディア王太女は頷き、オリヴァルト皇子はアリシア女王に会釈をした。
「ただ、リウイ陛下はクロスベル帝国と共に”エレボニア帝国征伐”を行うメンフィル帝国軍側の”総大将”として既にロレントから起っているらしく、殿下達が面会する相手は”メンフィル帝国大使の代理”―――つまり、リウイ陛下ではない為、その事は予め念頭に置いてください。」
「わかりました。ちなみにそのリウイ陛下の代理を務める人物はどのような人物なのでしょうか?」
アリシア女王の話に頷いたオリヴァルト皇子はある事を訊ねた。

「”パント・リグレ”という名前の男性で、その方はメンフィル帝国の貴族の一人で、リウイ陛下同様今は当主の座をご子息に譲って隠居の身であるとの事ですが、かつてはメンフィル帝国の”宰相”としてリウイ陛下とシルヴァン陛下、二代のメンフィル皇帝を支えた”リグレ侯爵家”の前当主との事です。」
「メンフィル帝国の前宰相ですか………」
「しかも二代のメンフィル皇帝を支えたのだから、外交方面は間違いなくオズボーン宰相以上の相当なやり手なのだろうな。」
「フム…………となると、2年前のリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下の結婚式の披露宴の際に挨拶をしたクレイン・リグレ宰相閣下の父君に当たる方か。やれやれ…………軍事面で例えるならファーミシルス大将軍閣下クラスの外交官だろうから、そんな宰相殿すらも”格下”に思えるような人物と交渉するなんて考えただけでも今から気が滅入ってきたよ…………」
「オリヴァルト殿下…………」
アリシア女王の説明を聞いたエマは不安そうな表情をし、ラウラは真剣な表情で呟き、考え込んだ後疲れた表情で溜息を吐いたオリヴァルト皇子の様子をクローディア王太女は心配そうな表情で見つめた。

「それと面会の際、パント大使の希望でそちらにいる皆さん―――”Ⅶ組”の方々も同席する事になりました。」
「へ…………ぼ、僕達”Ⅶ組”が?」
「何故そのパント大使という人物はこの子達の同席を希望したのでしょうか?」
自分達まで交渉の場に同席する事をまだ見ぬパントに希望された事を知ったマキアスは戸惑い、サラは困惑の表情で訊ねた。
「パント大使の話によると、パント大使のお知り合いの方が現在大使館に滞在していて、その方が一度”Ⅶ組”の方達がどのような方達か興味があった為、その方の頼みに応じたパント大使が”Ⅶ組”の皆さんの同席を希望したとの事です。」
「メンフィル帝国の大使の代理の知り合いがオレ達に…………」
「一体どんな人なんだろう…………?」
アリシア女王の話を聞いたガイウスとエリオットはそれぞれ考え込んだ。

「なお、Ⅶ組の皆さんの同席を希望した”対価”としてリウイ陛下の”帰還指示”によってメンフィル帝国に帰国した後メンフィル帝国軍に入隊したリィン・シュバルツァーさん達の事情については無条件で教えてくれるとの事です。」
「ほ、本当ですか!?」
「事情はよくわかんないけど、リィン達の事情を無条件で教えてくれるのはラッキーだね。」
リィン達の事情を無条件で知る事ができる事に仲間達と共に血相を変えたアリサは明るい表情を浮かべ、フィーは静かな笑みを浮かべた。
「わかりました。明日のパント大使との会談に向けて、現在リベール王国に滞在していらっしゃっている”空の女神”の一族の方々とも先に会って、可能ならば協力を取り付けたいと思っておりますので、私達はこれで失礼致します。」
「何故殿下が”あの方々”の事を…………もしかしてクローディア、貴女が教えたのですか?」
オリヴァルト皇子の話を聞いてオリヴァルト皇子達がエイドス達の存在を知っている事に驚いたアリシア女王だったが、すぐに心当たりに気づいてクローディア王太女に訊ねた。

「はい。エイドス様の頑ななご様子からして、正直協力を取り付ける事は恐らく不可能とは思いますが、それでもオリヴァルト殿下達は私達と違い、まだエイドス様達とお会いして話もしていないのですから、せめて当事者であるオリヴァルト殿下達もエイドス様と実際にお会いするべきかと思いまして。」
「確かにそうですね…………――――エイドス様達との会談はオリヴァルト殿下達にとっても貴重な経験になると思います。ですが、殿下達の考え方とエイドス様達の考え方は全く異なりますので、どうかそれだけは念頭に置いてください。」
「…………わかりました。ゼムリア大陸の為に自ら現代のゼムリア大陸に降臨なされたエイドス様達のご気分を害さない為にも今のお言葉、肝に銘じておきます。」
こうして…………グランセル城を後にしたアリサ達はリベール王国のボース地方のヴァレリア湖にある宿――――”川蝉亭”に滞在している”空の女神”――――エイドスとその両親や先祖と会う為に、”カレイジャス”に乗り込んだ後”カレイジャス”でボース市の空港へと向かい始めた――――

 
 

 
後書き
今回のBGMはクローゼ達がエイドス達のことについて話している間はイースオリジンの”Genesis Beyond The Biginning”、クロスベルの話の時は魔導攻殻の”動乱 ~旗国を大空に翳して~”、アリシア女王が戻ってきて今後のことについて話すときのBGMは空シリーズの”虚ろなる光の封土”だと思ってください♪そして次回の話はすでに察していると思いますが、ご存じ自称”ただの新妻”とその一族、後そのオマケ二名()が登場しますww 

 

第19話

ボース市の空港に離陸後、川蝉亭に向かって到着したアリサ達は宿の関係者達にエイドス達の事について訊ねると、エイドス達は湖の岸で釣りをしている事を聞き、岸側を探しているとセルリアンブルーの髪を持つ女性と赤毛の青年が釣りをしていた。


同日、PM4:15―――


~ボース地方・ヴァレリア湖~

(腰まで覆いつくすセルリアンブルーの髪の女性…………アリシア女王陛下達から聞いていた通りの特徴だね。)
(う、うん。隣の赤毛の男性は多分女神様の関係者だと思うんだけど…………)
(あの女性が”空の女神”…………)
(ハハ、まさかこんな形で再会する事になるとはね…………)
自分達に背を向けて釣りをしているセルリアンブルーの髪の女性を見つけたアンゼリカの小声に頷いたトワは隣にいる赤毛の青年に視線を向け、ガイウスは呆けた表情で女性を見つめ、オリヴァルト皇子は懐かしそうな表情を浮かべて赤毛の青年を見つめた。すると釣りをしていた二人の釣り竿がそれぞれ動き始めた。
「お………それっ!」
「あら…………えいっ!」
それぞれ獲物がかかった事に気づいた二人は揺れ続ける釣り竿と格闘しつつ、それぞれの獲物を釣り上げた。

「僕は”スネークヘッド”が釣れた。エイドスは?」
「私はまた”ガーウェルズ”です。全く…………この”レイクロード二世・改”とかいう釣り竿は嘘つきな釣り竿ですね!この釣り竿の説明の中にあった謳い文句である”どんな人でも釣りたい魚を釣れる最高の釣り竿”とか書いてありましたけど、さっきから釣れるのは可愛くもなく、食べる事すらできない”ガーウェルズ”ばかり!この釣り竿を作ってそんな嘘をついた会社に後で”天罰”として”アイシクル・メテオ”を落としてあげたくなってきましたよ!」
「いや、君が言うと冗談になっていないから。というかそのアーツって確か君が撃てるアーツの中でもトップクラスの威力があるアーツじゃないか…………」
青年の問いかけに答えた女性はジト目で自分が釣った魚を見つめてリリースをした後自分が持っている釣り竿を睨んで文句を口にし、二人の会話を聞いていたアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、青年は呆れた表情で女性に指摘し
(”レイクロード”って事はもしかして、女神様が使っているあの釣り竿って………)
(ん、間違いなくケネスの実家が売っている釣り竿だろうね。)
(この場にケネスがいなくて本当によかったよな…………)
(いや、マイペースなあの男の事だから、案外笑って聞き流すかもしれん。)
(というかあの女神らしき女が何気に呟いた”アイシクル・メテオ”って確か”ロストアーツ”の一つだったはずよ。)
(ええっ!?)
我に返ったエリオットはある事に気づくと困った表情をして女性が持つ釣り竿を見つめ、フィーは静かな表情で呟き、疲れた表情で呟いたマキアスの推測にユーシスはある人物を思い浮かべながら呆れた表情で答え、ジト目で呟いたセリーヌの言葉を聞いたエマは驚いた。

「―――それで?エレボニアの放蕩皇子が祖国が相当ヤバイ状況だっていうのに、団体さんを引き攣れてわざわざ外国であるここを訊ねたって事は僕達――――いや、”空の女神”に祖国の状況を何とかしてもらう為に来たってワケかい?」
「へ…………」
するとその時別方向から声が聞こえ、声を聞いたアリサは呆けた声を出した後仲間達と共に声が聞こえた方向に視線を向けるとそこには木陰で休んでいた法衣姿のワジが立ち上がってアリサ達に近づき
「君は確か”特務支援課”の…………」
「七耀教会の法衣…………それもアンタから感じるそこらの神父やシスターが持たない莫大な霊力(マナ)……………………アンタ、”星杯騎士”――――それも”守護騎士(ドミニオン)”の一人ね?」
「”守護騎士(ドミニオン)”ですって!?」
「!!」
「せ、”星杯騎士”に”守護騎士(ドミニオン)”…………?」
「フム…………エマ君達やサラ教官はその存在を知っているようだが…………」
ワジの登場にオリヴァルト皇子が目を丸くしている中、目を細めてワジを見つめて呟いたセリーヌの推測を聞いたサラは血相を変えて声を上げ、エマは目を見開き、トワは困惑し、アンゼリカは真剣な表情を浮かべた。

「へえ。ツァイトのように喋る動物って事はもしかして、あの猫も貴女の”眷属”なのかい?」
猫であるセリーヌが人の言葉を解した事に目を丸くしたワジは女性に問いかけ
「いえ、私の”眷属”の中に猫はいませ――――あ。そういえば猫じゃありませんけど、猫の特徴もある”眷属”はいますね。ひょっとしたらその子が配下や使い魔を作っているかもしれませんね。」
「な、なんかさり気なくとんでもない事実を聞いたような気がするんだが…………」
「え、えっと………もしかしてエマ達って、”空の女神”とも何か関係がある一族なの?」
「そ、それは……………………」
「………………………………」
ワジに訊ねられた女性の答えに仲間達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたマキアスは表情を引き攣らせながら呟き、アリサに訊ねられたエマは答えを濁し、セリーヌは目を伏せて黙り込んでいた。

「あれ?貴方は確か…………オリビエさん!どうしてエレボニア帝国の皇子の貴方がリベールに…………」
「ハハ、”影の国”以来だね、アドル君。」
「殿下はあちらの男性とお知り合いなのですか?」
驚いた様子で自分に話しかけた青年――――”空の女神”の父親であるアドル・クリスティンに対して親し気な様子で答えたオリヴァルト皇子にアルゼイド子爵が訊ね
「ああ。―――彼の名はアドル・クリスティン。”空の女神”の父親であり、世間でも有名な娯楽小説である”赤毛の冒険家の冒険日誌”の著者にして主人公さ。」
「”空の女神”の…………!?」
「し、しかもあの”赤毛の冒険家の冒険日誌”の著者にして主人公って事は…………!」
「ふえええっ!?あの小説って、実際にあった話だったんですか!?」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたラウラは驚き、ある事に気づいたエリオットとトワは信じられない表情で声を上げた。

「そして私がお父様とお父様にとって最初の”現地妻”であるフィーナお母様の娘にして、”ただの新妻”であるエイドス・クリスティン・ブライトです♪」
「ちょっ、エイドス!?”現地妻”だなんて人聞きの悪い事を言わないでくれ!?」
そして笑顔で自己紹介をした女性――――”空の女神”本人であるエイドス・クリスティン・ブライトの自己紹介にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アドルは焦った様子で指摘した。
「女神が”ただの新妻”とか意味不明よ…………」
「というか私達が今まで抱いていた”空の女神”のイメージがどんどん崩れていくわ…………」
我に返ったセリーヌとアリサはそれぞれ疲れた表情で呟いた。

その後、エイドス達はアリサ達が自分達を訊ねた事情を知る為に他の場所でそれぞれ休暇を過ごしていた仲間達を呼び寄せて自分達が宿泊している部屋で改めてアリサ達と対面し、まずアリサ達がそれぞれ自己紹介をした。


~川蝉亭~

「改めてになるが…………久しぶりだね、アドル君、フィーナさん、エレナさん、ナユタ君、それにノイ君も。まさか再び君達と会えるとは思わなかったよ。」
「アハハ、それは僕達もです。」
「これもどっかの誰かさんの”導き”とやらかもしれないの。」
「フフ、私やエイドスが”女神”である事を考えると冗談になっていませんね、ノイさんのその言葉は。」
「まあ、ここには”女神”が二柱もいますから、冗談抜きでどちらかは関係していそうですよね…………」
オリヴァルト皇子の挨拶に対して空色の髪の少年――――ナユタ・ハーシェルは苦笑し、ナユタの傍にいる妖精―――ノイ・ステラディアはジト目でエイドスを見つめ、ノイの意見に同意したエイドスによく似た容姿で背中に一対の白き翼を生やしたセルリアンブルーの髪の女性―――エイドスの母親であるフィーナ・クリスティンの推測に金髪の女性―――アドルの妻の一人であるエレナ・ストダート・クリスティンは苦笑しながら同意した。
「だから何度も言っているように、何でもかんでも私のせいにしないでください!全く…………事あるごとに空の女神(エイドス)の導きとかいう言葉を聞いて、正直辟易しているんですよね。ただでさえ”空の女神”なんていう痛い呼び名で呼ばれる事も”非常に不本意でありながらも仕方なく受け入れていますのに”…………」
「お願いしますから、そういったエイドス様ご自身の私事(プライベート)な意見を私達以外の他者の前で堂々と言わないでください…………」
ノイ達の意見に対して文句を口にした後更に文句を口にしたエイドスの意見にアリサ達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中、ルフィナは疲れた表情でエイドスに指摘した。

(ハッハッハッ。話に聞いていた以上のユニークな女神のようだね、”空の女神”は。)
(そ、”空の女神”が痛い呼び名で”非常に不本意でありながらも仕方なく受け入れているって”………)
(本当にあの女が”空の女神”なのかどうか、逆に怪しくなってきたな。)
我に返ったアンゼリカは暢気な様子で自身がエイドスに対して感じた感想を口にし、マキアスは疲れた表情で小声で呟き、ユーシスはジト目でエイドスを見つめた。

「それにしても、今更だがその姿でアドル君達と共にいるという事はワジ君も”ケビン神父達と同じなのかい”?」
「正解。改めて名乗らせてもらうよ。―――七耀教会”星杯騎士団”所属”守護騎士(ドミニオン)”第九位”蒼の聖典”ワジ・ヘミスフィア。君達”Ⅶ組”の事はウチの副長や”第八位”からある程度聞いているよ。」
「ハア?”星杯騎士団”の副長や”第八位”が?何でその二人はあたし達の事を知っているのよ?」
「それ以前にそもそも”星杯騎士団”とはどういった存在なのだろうか?」
オリヴァルト皇子の問いかけに対して答えた後改めて自己紹介をしたワジの言葉にサラは困惑し、ガイウスは自身の疑問を訊ねた。そしてワジ達は”星杯騎士団”の事について説明した。

「し、七耀教会にそんな組織があったなんて……」
「七耀教会に古代遺物(アーティファクト)を回収する”裏”の武装集団がある事は、”長”から少しだけ聞いていましたが…………」
「星杯騎士団の連中―――特に守護騎士(ドミニオン)なら結社の”執行者”ともまともに渡り合えるだろうし、中には”蛇の使徒”とも渡り合える奴もいるはずよ。―――特に星杯騎士団総長にして第一位――――”紅耀石(カーネリア)”だったら、”鋼の聖女”もそうだけど”劫焔”ともまともに渡り合えると思うわよ。」
「なっ!?執行者どころかあんな化物と互角って………!」
「星杯騎士団…………話に聞いた以上に得体の知れない組織のようだな。」
星杯騎士団の事を知ったトワは驚き、エマは真剣な表情でワジやルフィナを見つめ、セリーヌの推測を聞いたマキアスは驚き、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って呟いた。

「え、えっと………もしかしてそちらのシスターの方も守護騎士(ドミニオン)の方なのですか?」
「ふふ、私は守護騎士(ドミニオン)じゃなく、ただの”正騎士”よ。」
「ハハ、”剣帝”とも互角にやり合った事がある君の場合、ただの”正騎士”の範囲に含まれないと思うんだけどねぇ?」
「な――――――――あの”剣帝”とも互角にやり合った事があるですって!?」
「”剣帝”…………”劫焔”や”神速”が何度か口にしていた元結社の執行者No.Ⅱにしてメンフィル帝国のプリネ皇女殿下にお仕えしているという凄腕の剣士か…………」
「シャロンの話によると、その”剣帝”って人相手だとあの”劫焔”みたいにシャロンでも”絶対に勝てない”って言っていたけど…………」
エリオットの質問に苦笑しながら答えたルフィナの答えにワジは口元に笑みを浮かべて指摘し、ワジの指摘を聞いたサラは驚きの声を上げ、ラウラは真剣な表情でルフィナを見つめ、アリサは不安そうな表情で呟いた。

「あれは何度も言っているように上手く互いの”落としどころ”に持って行けただけの話だから、まともにやり合ったら私だと彼には絶対に勝てないわよ。」
「フム…………先程から気になっていたんだ…………”彼女”の容姿と似ているその容姿でレーヴェ君ともやり合った話…………まさか、貴女はリース君の?」
苦笑しながら答えたルフィナの答えにアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ルフィナの正体を察したオリヴァルト皇子は考え込みながらルフィナに訊ねた。
「はい。―――自己紹介が遅れて失礼しました。私の名はルフィナ。七耀教会”星杯騎士団”所属”正騎士”のルフィナ・アルジェントです。”影の国”ではリースとケビンがお世話になりました。」
訊ねられたルフィナは静かな表情で頷いて自己紹介をした。

「やはり…………という事はアドル君達もそうだが貴女も、”彼女”の能力で現代のゼムリア大陸に?」
「ええ、そうなりますね。」
「そうか…………クローディア姫達からアドル君達の話を聞いてから何となく察してはいたが、やはり”彼女”も関わっていたのか。」
「え、えっと………殿下達は何の話をしているのでしょうか?」
オリヴァルト皇子とルフィナの意味深な会話内容に仲間達と共に不思議そうな表情を浮かべたトワはオリヴァルト皇子に訊ねたが
「―――すまないが、その件については事情も知らない人達にみだりに教える事はできないから、幾ら君達でも教える事はできないんだ。」
「ま、守護騎士(僕達)は成り行きで事情を知ってしまったけど、ゼムリア大陸の平和の為にその事情についてはおいそれと話す事はできないから、その件に関してはこれ以上気にしないでくれるとありがたいね。」
「き、”気にしないでくれ”って言われても…………」
「そんな言われ方をしたら逆に滅茶苦茶気になる。」
オリヴァルト皇子とオリヴァルト皇子の後に答えたワジの答えにエリオットは気まずそうな表情をし、フィーはジト目で指摘した。

「フム…………気になるといえば、そちらの翼を生やした女性や他の人達も王太女殿下達の話にあった”空の女神”のご両親や先祖なのかい?」
「ええ。―――初めまして。私の名はフィーナ・クリスティン。女神の一柱にしてアドルさんの妻の一人でエイドスの産みの母親――――――”母神”になります。」
「同じくアドルさんの妻の一人のエレナ・ストダート・クリスティンです。よろしくお願いしますね。」
アンゼリカに視線を向けられたフィーナとエレナはそれぞれ自己紹介をし
「貴女が”空の女神”の”母神”…………」
(というかその”空の女神”の父親だっけ?何気に妻が二人もいる事やさっきの”空の女神”の”現地妻”発言からして”タラシ”な男みたいだね。)
(そうね。それもリィンみたいな一番性質が悪い”無自覚”なタイプなんでしょうね。)
(お二人とも、そんなあからさまにアドルさんを見て会話しない方がいいですよ…………?)
(あの娘達の僕を見る目が蔑みの視線になっているのは、僕の気のせいか…………?)
ガイウスは呆けた表情でフィーナを見つめ、それぞれジト目になってアドルを見つめて小声で会話しているフィーとアリサにエマは冷や汗をかいて指摘し、二人の視線に気づいたアドルは冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。

「ちなみにナユタ君。先程から気になっていたんだが、そちらの白髪(はくはつ)のレディーは”影の国”の”裏の試練”を終えてから頭を悩ませて、ようやく決めた君の恋人なのかい♪」
「うっ。え、ええ、そうです。」
「フフ……―――私の名はクレハ・レム・オルディーン。”影の国”の情報によると…………正直自分ではあんまり言いたくないのだけど、私とナユタはフィーナの”先祖”だとの事よ。よろしくね。」
「私はクレハ様にお仕えしていてナユタの”相棒”のノイ・ステラディアなの!よろしくなの!」
からかいの表情のオリヴァルト皇子の問いかけに唸り声を上げたナユタの様子を面白そうに見ていたクレハは名乗り、クレハに続くようにノイが名乗るとアリサ達はクレハがフィーナの先祖である事を知るとそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「そしてノイの”相棒”である僕の名前はナユタ。ナユタ・ハーシェルです。よろしくお願いします。」
「ふえ…………?」
「へっ……”ハーシェル”だって!?」
「まさかとは思うが生徒会長までもが女神の一族なのか?」
「驚愕の事実だね。」
ナユタの自己紹介を聞いたトワが呆けている中、何かに気付いたマキアスは驚き、ユーシスは信じられない表情で、フィーは興味ありげな表情でトワを見つめ
「ふええええええええっ!?ち、違うよ~!?」
「フフ、なるほどね。トワの愛らしさは女神の血を引いている事も関係していたんだね♪」
すぐに我に返って慌てているトワをアンゼリカは口元に笑みを浮かべて見つめていた。
「アンちゃん!こんな時に変な事を言わないでよ~!?」
「えっと……僕の名前に何かあるんですか?」
慌てた様子でアンゼリカに指摘しているトワの様子を見て冷や汗をかいたナユタはアリサ達に尋ねた。

「フフ、そちらのトワ会長の本名は”トワ・ハーシェル”。会長のファミリーネームがそなたのファミリーネームと同じである事に我らは驚いているのだ。」
「ええっ!?」
「フフ、不思議な偶然ね。もしかしたら彼女も私達の遠い親戚かしら?」
「さすがにそれはないと思うの……」
ラウラの説明にナユタは驚き、微笑んでいるクレハにノイは疲れた表情で指摘し
「いやいや、”ブライト家”が遥か昔から今の時代まで存在し続けているのだから、もしかしたらそうかもしれないよ♪」
「ええ。その証拠にドライケルス大帝やその親友であるロラン、そして我が先祖にして”鉄騎隊”の副長を務めていたシオン・アルゼイドの系譜も250年前から今まで続いてきましたからね。」
オリヴァルト皇子の意見にアルゼイド子爵は苦笑しながら同意した。

「フフ……―――それで私に何かご用のようでしたが、一体何の為に皆さんが揃って、ここに訪れたのですか?」
微笑ましそうに見守っていたエイドスだったがある事を思い出すと不思議そうな表情でアリサ達に訊ね
「実はエイドス様にどうしてもお願いしたいことがありまして―――」
エイドスの疑問を聞くとオリヴァルト皇子が一歩前に出てエイドス達を訊ねた経緯を説明した。


「……メンフィルとクロスベルもさすがに”空の女神”の意見は無視できないと判断しての事、か。」
「確かにその判断は間違ってはいないけど……」
理由を聞き終えたワジとルフィナは重々しい様子を纏って呟き
「女神様、どうか私達――――エレボニア帝国に御慈悲をお願いします……!」
「お願いします!」
オリヴァルト皇子が頭を深く下げてエイドスに対して嘆願すると、アリサ達も続くように頭を深く下げてエイドスに嘆願した。

「…………………………」
「エイドス…………」
「”神”にすがりたい君達の気持ちはわからなくはないけど……」
「……難しい問題ですね。」
目を伏せて黙り込んでいるエイドスをフィーナは静かな表情で見つめ、アドルとエレナは複雑そうな表情をし
「それで?貴女はどうするんだい?」
ワジは真剣な表情でエイドスを見つめて問いかけた――― 
 

 
後書き
ということで自称”ただの新妻”エイドスとその一族、そしてオマケとしてワジとルフィナが登場しましたwなお、エイドス達の話は次回の話で終わる予定で次のエイドス達の登場は終盤になる予定です。 

 

第20話

~川蝉亭~

「―――アリシア女王達にもお伝えしましたように、私は異世界の大国との外交問題等の現代のゼムリア大陸の(まつわりごと)に介入する”権限”はありませんし、そのつもりもありません。――――そしてその気持ちは今も変わりません。」
「そ、そんな……女神様はエレボニアの人々を見捨てるのですか……?」
「……エレボニアの人々は平和を願って、貴女に祈り続けているのに何故エレボニアを見捨てるのでしょうか?」
目を見開いて静かな表情で答えたエイドスの非情な答えに表情を青褪めさせたトワは身体を震わせながら尋ね、ガイウスは複雑そうな表情で尋ねた。
「見捨てるとは人聞きが悪いですね。単に”国が滅ぶだけ”で多くの戦う力を持たない人々―――民間人はせいぜい、戦争に巻き込まれるだけでエレボニア帝国の軍人達のようにメンフィル・クロスベル連合に意図的に傷つけられたりはしないのでしょう?”戦争で国が滅ぶような些細な事”は今までの歴史で繰り返され続けています。」
「……そうね。そして人々は争いをいずれ忘れて生きて行き、いつかまた争いを始め、争いが終わればまた忘れて生きて行く……という繰り返しをし続けて行くのでしょうね……」
「クレハ様……」
「………………」
エイドスの答えに悲しそうな表情で同意したクレハをノイは辛そうな表情で見つめ、ナユタは複雑そうな表情で黙り込んだ。

「く、”国が滅ぶ事が些細な事”って……!」
「確かに直接傷つけられる事はないと思いますけど……心に傷は負うと思いますよ?」
エイドスの非情な答えにアリサは信じられない表情をし、アンゼリカは真剣な表情で問いかけた。
「そうですね。ですがそれも一時的な傷。10年、20年と長い年月と共に人々はやがて祖国が滅んだという記憶を忘れ、平和な暮らしに満足するでしょうね。一応私も現在の世界情勢をある程度ワジさん達から聞いています。確かエレボニア帝国の内戦勃発の原因となった今のエレボニア帝国の宰相も実際にそれを行った結果、エレボニア帝国に呑み込まれた小国や自治州は”過去”を忘れて平和に過ごしているのでしょう?」
「そ、それは…………」
「例え両帝国が戦争を仕掛ける相手であるエレボニアの民達を傷つけるつもりはなく、平等に扱うつもりでも、それがエレボニア帝国が滅びていい理由にはならないと思われるのだが!?」
エイドスの指摘に反論できないマキアスは言葉を無くしている中ユーシスは厳しい表情エイドスに意見した。

「というかアンタの話を聞いてからずっと気になっていたんだけど、そもそも”権限”がないってアンタは言ってるけど、その”権限”ってどういう意味なのよ。」
「セ、セリーヌ。お願いだからもっと、丁寧な言い方で尋ねて……」
目を細めてエイドスを睨むセリーヌにエマは冷や汗をかいて指摘し
「口調の事で私は気にしていないので心配無用です。―――セリーヌさんの疑問についてですが………私もそうですが、お父様達やナユタさん達の存在について皆さん、色々と気になっていると思いますが…………私達は”この時代に生きる者達ではありません。”そのため、”この時代の存在ではない私にこの時代の事を決める権限はありません。”」
「め、女神様達が”この時代に生きる者達ではないって”…………」
「まさか…………アンタ達は”時を超えてこの時代にやってきた”っていうの!?」
エイドスの答えを聞いたエリオットが戸惑っている中、事情を察したセリーヌは信じられない表情でエイドス達に訊ねた。

「―――はい。私達が私達にとっての”未来”であるこの時代の出来事をどうやって知った事や”時を超えた方法”については先程ワジさんも仰ったように、おいそれと教える事はできませんので、それらについての質問は受け付けませんが…………―――そもそも今回のエレボニア帝国とメンフィル帝国との戦争勃発の原因はどう考えてもエレボニア帝国にあって、メンフィル帝国は戦争を回避する機会を”3度も”与えたとの事ですのに、エレボニア帝国はその機会を全て無視したのでしょう?にも関わらず、今更その戦争を回避しようだなんて、あまりにも虫が良すぎる話ではありませんか?」
「それは……………………」
「1度目と2度目に関しては私達も知らなかったですし、そもそも内戦の最中であったエレボニアが他国との交渉をするような余裕はなかったんです!それに”3度目の要求内容”は最初と2度目の要求と比べるとあまりにも理不尽な内容だった為、オズボーン宰相を含めた帝国政府の人達はその要求を受ける訳にはいかなかったんです!」
エイドスの正論に対して反論できないオリヴァルト皇子が複雑そうな表情で答えを濁している中アリサが悲痛そうな表情を浮かべて反論した。
「―――そういう事は明日交渉するメンフィル帝国の大使に言ってください。そもそもこのゼムリア大陸は私が没した後は女神である私に縋ることなく、滅びの道を歩まず今もなお発展し続けている世界に至っているのですから、幾ら偶然現代のゼムリア大陸に私達がいるとはいえ、”女神を利用して自分達の希望通りの内容に変更する事を戦争相手の国に承諾してもらって戦争を回避するという例外”をエレボニアだけが作るなんて、エレボニア(あなたたち)は一体何様のつもりですか?」
「め、女神様を僕たちが利用しようとしているって…………」
「お待ちください!我々はゼムリア大陸の多くの人々が崇める御身を利用するといった恐れ多い事は毛頭考えておりませんし、今回の戦争は我が国に全面的な非がある事は承知していますから、本来でしたらメンフィル帝国側の要求を全て承諾する事が”筋”である事は理解しています!ですが、エイドス様はご存知かどうかわかりませんが、メンフィル帝国が我が国に貴族連合軍による2度に渡る”ユミル襲撃”に対する賠償として求めてきた”3度目の要求内容”は内戦を終結したばかりのエレボニアにとっては、国の存続すらも危ぶまれる内容なのです…………!」
目を細めて指摘したエイドスの指摘に対してエリオットが不安そうな表情をしている中、ラウラは必死の様子で反論した。

「メンフィル帝国による”3度目の要求内容”の件でしたらアリシア女王達が嘆願しに来た時に教えてもらっていますが…………今より遥か昔に起こった混迷と戦乱に満ちたゼムリア大陸も知る私からすれば、”相当穏便な要求内容”だと思ったくらいですよ?」
「あ、あんな理不尽な要求内容が女神様にとって”相当穏便な要求内容”って………!」
「”空の女神”が知る混迷と戦乱に満ちた古のゼムリア大陸…………か。一体どんな世界だったんだ、その頃のゼムリア大陸は…………?」
「ま、”空の女神”が生きている時代は戦乱と混迷に満ちた”暗黒時代”よりも遥かに昔のゼムリア大陸なんだから、それこそ現代のゼムリア大陸にとっては”理不尽で不幸に満ちた世界”だったんでしょうから、そんな時代を生きてきたアンタからすれば、確かにあの要求内容も”穏便”と思えるような内容かもしれないわね。」
エイドスの答えに仲間達と共に血相を変えたマキアスは信じられない表情をし、考え込みながら呟いたガイウスの疑問に静かな表情で答えたセリーヌは複雑そうな表情でエイドスを見つめた。

「ちなみに”空の女神”はあの要求内容が”穏便”って言っているけど、もし”空の女神”の時代で同じことが起こったらどんな内容になるの?」
「そうですね…………―――例えばユミル襲撃に関わっていた”戦犯”やその関係者、その襲撃が起こった原因である皇女の件についての第一項に関してでしたら、犯罪者に関しては本人だけでなく三親等―――その者の親、伴侶、そして子供も全員”処刑”されるでしょうし、皇女に関しては”奴隷落ち”した後その奴隷落ちした皇女を引き取った主人にもよりますが、最悪の場合一生過酷な労働を強いられるか、その皇女自身の身体を犯され続ける事になるでしょうね。」
「ど、”奴隷”って…………!」
「し、しかも”戦犯”は本人だけでなく親や伴侶、それに子供まで処刑されるなんて…………!」
「…………今の時代でそんな人権を完全に無視した事を行えば大問題でしょうけど、遊撃士協会も国際法も存在していない大昔のゼムリア大陸だったら、まさにそんな理不尽な事すらも”常識”なのかもしれないわね…………」
「ハハ…………という事は、もし私達が生まれた時代が違って同じことが起これば、私やユーシス君もメンフィル帝国の処罰対象になっていたのか…………」
「……………………」
フィーの質問に答えたエイドスの答えに仲間達と共に驚いたアリサとエリオットは表情を青ざめさせ、サラは複雑そうな表情で呟き、アンゼリカは疲れた表情で呟き、ユーシスは辛そうな表情で黙り込んでいた。

「エイドス様の仰っている通り、我々のエイドス様への嘆願は道理の通らないことである事は理解しています。ですが、今回の件とは無関係のエレボニアの平民達までその煽りを受けて苦しみ、傷つくことになるでしょう。どうか我々の為ではなく、民達の為にお力をお貸し願えないでしょうか?」
「―――そう、”それ”についても私はもう懲り懲りしていて、私の時代で起こったゼムリア大陸の危機を救った後夫と共に”普通の人として”生きる事を決めた時から、人同士の争いによって起こった戦争には2度と関わらないと決めたのです。」
アルゼイド子爵の嘆願に対してエイドスはジト目で答えた後呆れた表情で溜息を吐き
「”それについても懲り懲りしている”の”それ”って、もしかして人々を救う為に女神様に頼る事ですか…………?」
エイドスの答えを聞いたトワは不安そうな表情で訊ねた。

「はい。―――皆さんもご存知のように私は”女神”ですから、こう見えても私は”見た目通りの年齢ではありません。”」
「エイドス様の若々しいそのお姿通りの年齢ではないという事は、エイドス様もリウイ陛下達のように数十年…………いえ、数百年以上生きておられるのでしょうか…………?」
エイドスの答えを聞いてある事を察したエマはエイドスに確認した。
「―――”4024歳”。それが今の私の年齢と言えば、私が途方もない年月を過ごしてきた事がわかるでしょう?」
「よ、”4024歳”って事は女神様は4000年以上も………!」
エイドスの年齢を知ったアリサは仲間達と共に驚いた後信じられない表情でエイドスを見つめた。
(ようやく実年齢を言ったわね…………私達の事を”年寄り”呼ばわりするくせに、私が睨んでいた通りやっぱり私やシグナよりも遥かに年を取っているじゃない…………!)
(ク、クレハ。僕達が”先祖”だからエイドスさんにからかいの意味も込めて”年寄り”呼ばわりされている事を気にしていた君の気持ちはわかるけど、今気にするべきところはそこじゃないと思うんだけど…………)
(やっぱりクレハ様が段々エイドスやエステルの悪影響を受けているの…………)
一方ジト目でエイドスを見つめて小声で呟いたクレハにナユタは冷や汗をかいて指摘し、ノイは疲れた表情で頭を抱えた。

「4000年以上”女神”として生きてきたのですから、当然途方もない年月の間に皆さんのような状況に陥り自分達の過ちを後悔した国や組織が私に”救い”を求め、その”救い”に応じる事にした私は幾度も”救って”きましたが…………時が経ち、世代が変われば過去の過ちを忘れて同じ事を繰り返すという私や当時の人々がやった事を全て無駄にするという虚しい結果ばかりでした。その事に虚しさや”神である私自身の存在の恐ろしさ”を思い知った私は夫や仲間達と共に当時のゼムリア大陸を救った後、”女神としての最後の務め”として『”神”の判断にゼムリア大陸の人々が左右される事や”神”や”奇蹟”に縋る事で人々が堕落する事を恐れ、”神”や不確かな”奇蹟”に頼らずに自分自身で”選択”して”本当の幸せ”を掴みとって欲しいと願い』も込めて、当時の人々に”七の至宝(セプト=テリオン)”を授けたのです。」
「……………………」
「ハハ…………まさかこのような形で、空の女神”が人々に”七の至宝(セプトテリオン)”を授けた”真実”を知ってしまうとはね…………七耀教会も今の事実を知った時、さぞ驚いたんじゃないのかい?」
エイドスの話を聞いたアリサ達がそれぞれ言葉をなくして絶句している中、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子はワジとルフィナに訊ねた。
「当然教皇猊下も含めて教会(ウチ)の上層部はみんな驚いていたよ?何せ滅多な事で動じないあの”総長”ですら心底驚いていたくらいだからね♪」
「へミスフィア卿、今はこの場を茶化すような発言をするべきではないかと。」
口元に笑みを浮かべて答えたワジにルフィナは静かな表情で指摘した。

「―――ま、そういう訳だから教会としては、過去の偉業を果たしてそれぞれ平穏な生活を過ごしていたにも関わらずクロスベルの”異変”の解決の為に時を超えて”異変”の解決に協力してくれた”空の女神”とその一族には『一度も揃った事がない家族全員で自分達にとっての未来であるゼムリア大陸がどのように発展し、変わったのかを自分達の目で確認し、体験したい』―――ま、要するに”家族旅行”だね。僕達七耀教会は”空の女神”の希望通り、”空の女神”達がそれぞれ元の時代に帰還するまで全力で”空の女神”達の”家族旅行”をサポートする事にしたのさ。」
「そしてそのサポートの中には遥か昔からゼムリア大陸の多くの人々が崇め続けてきた”空の女神”であるエイドス様とその一族の方々の威光を政治利用しようとする輩から守る事も含まれています。ですから、エイドス様達がエレボニア帝国とメンフィル・クロスベル両帝国との戦争に関わる事に対して拒否の意志を示した以上、お引き取り願います。」
(フフ、私達の場合は平穏な生活を過ごしているとは言えませんけどね。)
(アハハ…………それについては反論できないな。)
(フフ、”冒険”が大好きなアドルさんには”平穏”という言葉とは無縁ですものね。)
そして真面目な顔に戻ったワジはルフィナと共にオリヴァルト皇子達からエイドスを庇うようにエイドスの前に出てオリヴァルト皇子達に宣言し、エレナの小声に対してアドルとフィーナはそれぞれ苦笑していた。

「ま、待ってください…………!わたし達は女神様達を政治利用する等と言ったそんな恐れ多い事は考えていません!メンフィル帝国との交渉の際に”第三者”として意見してくださるだけでいいんです…………!」
「いや、”第三者として意見する”だけでも、今回のエレボニアとメンフィル・クロスベル連合との戦争に政治介入している事になるから、君達のその嘆願はどう考えても教会やエイドス達からすればアウトの類の嘆願だよ。」
トワが必死の様子で意見をしたがワジが呆れた表情で指摘し
「あの…………!女神様自身が無理でしたら、女神様のご両親や先祖の方々―――フィーナ様かクレハ様のどちらかが私達にご協力していただけないでしょうか…………!?」
「―――申し訳ございませんがその件に関しては私達もエイドスの意見と同じですので、エイドス同様今回の戦争に限らず、現代のゼムリア大陸の(まつわりごと)に介入するつもりは一切ありません。」
「遥か昔からゼムリア大陸の人々が崇め続けてきた”空の女神”の一族が持つ権力はエイドスに頼もうとしている貴方達も気づいているようにこの世界にとっては絶大な権力よ。そんな権力をたった一国―――それも自分達の過去の所業で自業自得の状況に陥った国の為だけに振るう訳にはいかないわ。」
「そ、そんな…………」
エマの嘆願に対してフィーナとクレハは冷酷な答えを口にし、それを聞いたエリオットは悲痛そうな表情をした。

「というか、さっきそこの守護騎士(ドミニオン)が言ったようにエイドス達はわたし達の国が滅茶苦茶困っているにも関わらず”家族旅行”なんていつでもできる暢気な事をよく平気でしていられるよね。」
「言い過ぎだ、フィー!すぐにエイドス様達に謝罪するべきだ!」
厳しい表情でエイドス達を睨んで文句を言うフィーにラウラが注意をしたその時フィーの足元から真紅の魔法陣が突如現れた!
「!?…………っ!」
突如現れた魔法陣に気づいたフィーは間一髪のタイミングでその場から飛びのくと炎の柱が発生した後大爆発を起こした!

「あら、今のを避けるなんて中々すばしっこいですね。」
「エ、エイドス…………」
「幾らあちらの女の子の言葉に怒ったからと言っていきなり予備動作すらもなく無詠唱でアーツを撃つのはさすがにどうかと思いますよ?」
「というか屋内で炎のアーツを使うなんて危険過ぎですよ…………火事になったらどうするんですか…………」
「まあ、エイドスの事だから火事になっても一瞬で消火できると思うの。」
フィーの回避能力にフィーにアーツ―――サウザンドノヴァを放った人物であるエイドスが感心している中、アドルは冷や汗をかき、エレナは疲れた表情で指摘し、呆れた表情で指摘したナユタの推測にノイが疲れた表情で答えた。

「フィーちゃん、大丈夫ですか!?」
「ん…………ギリギリ回避できたから、特にダメージは受けていない。」
「今のアーツは確か”サウザンドノヴァ”だったわね。最高位アーツをオーブメントも使わないどころか、無詠唱かつ予備動作すらもなく放つなんてさすがは”空の女神”と言った所かしら。」
「という事は先程のアーツは”空の女神”がオーブメントも使わずに放ったのか…………」
「アーツを戦術オーブメントも使わずに放つとか非常識な…………」
「フン、そもそもあの女神自身が”非常識な存在”だろうが。」
「やれやれ…………まさかこんな形で”空の女神”の力の一端を見せられる事になるとはね…………」
エマに駆け寄られたフィーは平気な様子で答え、目を細めてエイドスを見つめて呟いたセリーヌの分析を聞いたガイウスは呆け、疲れた表情で呟いたマキアスにユーシスは呆れた表情で指摘し、アンゼリカは疲れた表情で呟いた。

「も、申し訳ございません、女神様…………!私達の仲間が女神様に失礼な事を…………!」
「別に私はそれ程怒っていない為、先程の”お仕置”で勘弁してあげていますから、そんなに気にする必要はありませんよ。」
「”お仕置き”で予備動作すらもない最高位アーツを撃つとか、十分怒っている証拠じゃない…………」
アリサの謝罪に対して静かな表情で答えたエイドスの発言に仲間達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたサラは疲れた表情で指摘したが
「コホン。私達の件はともかく、そもそも”ハーメル”の”償い”すらも行っていないエレボニアに最初から協力するつもりはありませんから、お引き取りください。」
「な――――――――」
「!!」
「それは……………………」
エイドスが呟いたある言葉を聞くと絶句し、オリヴァルト皇子は目を見開き、アルゼイド子爵は複雑そうな表情を浮かべた。

「ハ、”ハーメル”…………?」
「一体何の事なんだ…………?女神様は”償い”って言っていたけど…………」
「そういえば”煌魔城”でも教官は”ハーメル”の言葉を口にしていたが…………」
「事情を知っていそうなサラ教官達の反応からすると、少なくてもエレボニアにとってはとんでもないスキャンダルである事は間違いなさそうだね…………」
初めて聞く言葉にトワとマキアスが困惑している中、ガイウスは考え込み、重々しい口調で呟いたアンゼリカはサラ達に視線を向けた。
「ハハ…………ここでまさか”ハーメル”の話が出てくるとはね…………フィーナさん、もしかして貴女が”ハーメル”の件を?」
「ええ…………教育の一環として”影の国”で知る事ができた”ハーメル”についても教えました。レーヴェさんではありませんが私の時代のエイドスが将来成長して第二、第三の”ハーメル”を生み出す事は女神として阻止して欲しいと思いましたので。」
疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の問いかけにフィーナは静かな表情で答えた。

「そうか…………―――エイドス様達が家族揃って現代のゼムリア大陸に滞在していられる貴重な時間を長らく取ってしまい、申し訳ございませんでした。私達はこれで失礼しますので、エイドス様達はエイドス様達にとっては貴重な”家族旅行”をエイドス様達が帰還する時が来るまで堪能する事を心より願っております。」
そしてオリヴァルト皇子は頭を下げて退室の言葉を口にし
「そちらこそ、わざわざ無駄足を踏ませてしまい、申し訳ございませんでした。月並みな言葉になって申し訳ございませんが、異世界の大国との交渉、頑張ってください。」
オリヴァルト皇子の言葉に対してエイドスは静かな表情で答えた。

こうして…………エイドス達との交渉に失敗したアリサ達は翌日のパントとの交渉に向けた話し合いを行った後アリサ達を含めたトールズ士官学院の関係者達はアリシア女王達の好意によってグランセル城で一晩泊まる事になり…………翌日、アリサ達を乗せた”カレイジャス”とクローディア王太女を乗せた”アルセイユ”は王都からロレント市へと向かい、ロレント市に到着してからは徒歩でメンフィル帝国の大使館に向かった―――
 
 

 
後書き
今回の話でようやく判明したこの物語のエイドスの実年齢はお気づきの方達もいるかと思いますが、運命が改変された~の閃2篇の幕間2でエイドスの話に出てきた仲間達の原作を参考にしていますww 

 

第21話

1月16日、同日AM9:00―――

メンフィル帝国の大使館に到着したアリサ達は応接室に案内され、アリサ達が壁際に用意されていた椅子に座り、オリヴァルト皇子とクローディア王太女は背後にアルゼイド子爵とユリア准佐を控えさせた状態でソファーに座って待機して数分待っていると、部屋の扉が開かれてパントとルイーズ、瞳の色と同じ緑の髪を腰まで届く長髪と落ち着いた美貌を持つ女性が応接室に姿を現した。

~ロレント郊外・メンフィル帝国大使館・応接室~


(あの人がメンフィル帝国の大使の代理を務めるパント大使か……何となくだが雰囲気がルーファスさんに似ていないか?)
(言われてみれば……)
(兄上…………)
(というかどう考えても二代の皇帝を支えた宰相とは思えない程見た目が若すぎるんだけど。)
パントを見たガイウスの感想を聞いたラウラは頷き、ユーシスは辛そうな表情をし、フィーはジト目でパントとルイーズを見つめ
(……ッ!何て霊力(マナ)……!あの大使代理もそうだけど、その後ろにいる女も少なくてもヴィータよりも確実に上ね。)
(ええ……メンフィルには凄まじい術者が一体どれほどいるのかしら……?)
パントとパントの背後にいる女性からさらけ出されている凄まじい魔力を感じ取っていたセリーヌは目を細め、エマは不安そうな表情をしていた。

(綺麗な人……もしかして奥方かしら?)
(確かに美人だけど……彼女も相当な使い手よ。)
パントの傍にいるルイーズの美しさにアリサは見惚れ、ルイーズの強さを感じ取っていたサラは真剣な表情をしていた。
(隣にいる女性がパント大使の奥さんだとして、背後にいる女性は一体どんな立場の人なんだ…………?)
(軍服を着ている事からして、少なくてもメンフィル帝国軍の関係者だろうね。―――それも代理とは言え、一国の大使と共にいるのだから恐らくは上層部クラスだ。)
(多分、あの女性が女王陛下の話にあった”Ⅶ組”のみんなに興味がある”パント大使の知り合い”だとは思うのだけど…………)
パントとルイーズの背後にいる女性が気になったマキアス、アンゼリカ、トワはそれぞれ考え込んでいた。そしてパント達が近づくとその場にいる全員は立ち上がった。

「―――お待たせしました。私の名はパント・リグレ。メンフィル帝国の大使を務めているリウイ陛下の代理を任されている者です。―――お初にお目にかかります、クローディア王太女殿下、オリヴァルト皇子殿下。」
「パント様の妻のルイーズと申します。パント様共々以後お見知りおきをお願いします。」
「―――お初にお目にかかります。私はエレボニア皇帝ユーゲントが一子、オリヴァルト・ライゼ・アルノールと申します。」
「お初にお目にかかります。わたくしの名は、クローディア・フォン・アウスレーゼ。リベール女王アリシアの孫女にして、次期女王に指名された者です。本日は”中立の立場として”オリヴァルト殿下とパント大使閣下達との交渉に立ち会う為に殿下達と共にこちらを訊ねました。ちなみにお二方の後ろにいる方は確かセシリア将軍閣下…………でしたよね?もしかして、Ⅶ組の皆さんに興味があるパント大使閣下のお知り合いというのは…………」
オリヴァルト皇子とクローディア王太女に近づいたパントとルイーズが自己紹介をするとオリヴァルト皇子と共にクローディア王太女はそれぞれ自己紹介をした後パント達の背後にいる女性に訊ね
「ええ、私の事です。―――初めてお会いする方達もこの場にいらっしゃっているようなので自己紹介を致します。私の名はセシリア・シルン。シルヴァン皇帝陛下の側妃の一人にしてシルヴァン皇帝陛下の親衛隊を率いる”皇帝三軍将”が一人―――”魔道軍将”です。以後、お見知り置きを。」
クローディア王太女の質問に答えた女性―――シルヴァンの側室の一人にしてシルヴァンを守護する親衛隊を率いている3人の将軍―――”皇帝三軍将”の一人―――”魔道軍将”セシリア・シルンはアリサ達を見回して自己紹介をした。

(ええっ!?しょ、”将軍”!?)
(それもシルヴァン皇帝陛下の親衛隊を率いる将軍とは…………)
(更にはシルヴァン皇帝陛下の側妃の一人でもあられるという事は、シルヴァン皇帝陛下の名代としてこの場に参加したのか…………?)
(”皇帝三軍将”という呼び名からして、恐らくシルヴァン皇帝の親衛隊にはセシリア将軍も含めて三人の将軍が存在しているとは思うのだけど…………)
(”魔道軍将”…………なるほどね。まさにその呼び名通り、あの女将軍は魔術師としても相当な使い手なんでしょうね。)
(ええ…………でも、どうしてそんな人が私達に興味を持ったのかしら…………?)
セシリアの身分を知ったエリオットは驚き、ラウラとユーシス、サラは真剣な表情でセシリアを見つめ、セリーヌの言葉に頷いたエマは不安そうな表情でセシリアを見つめた。

「2年前のリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下の結婚式以来になりますね、セシリア将軍閣下。お元気そうで何よりです。」
「ふふ、王太女殿下こそ女王陛下共々ご壮健そうな様子で何よりです。ユリア准佐も、あれから更に腕を磨かれたようですね。」
「…………恐縮です。」
クローディア王太女と軽く挨拶を交わしたセシリアに話しかけられたユリア准佐は目礼をして答え
「オリヴァルト殿下もご壮健そうで何よりですが…………我が国と貴国の関係がここまでこじれてしまっての再会は個人的には非常に残念に思っていますわ。」
「いえ……これも全て私達の不手際ですので、将軍閣下がお気になさる必要はありません。ところで、将軍閣下はパント大使閣下とお知り合いのご様子ですが、一体どのような関係なのでしょうか?」
セシリアの指摘に対して静かな表情で答えたオリヴァルト皇子はセシリアとパント達の関係を訊ねた。

「セシリアと私の関係は”師弟”の関係で、セシリアは私にとっては”最初の弟子”にもなります。」
「宰相だけでなく、”総参謀”も兼ねているパント様からは魔術の師として…………メンフィル帝国軍人の師として…………そして敬愛すべき御方にして私が心から愛している御方であられるシルヴァン陛下を政治方面でも支えたい事を願う女の師として、あらゆる方面でお世話になりましたわ。」
「そうだったのですか…………」
(…………どうやらあのパント大使という人物は私達が想定していた以上の”大物”のようだね。)
(うん…………それに今の話が本当ならセシリア将軍も軍事面だけでなく、政治面でも相当強力な相手って事にもなるよね…………)
パントとセシリアの説明にクローディア王太女が驚いている中、真剣な表情でパントを見つめて小声で呟いたアンゼリカの推測に頷いたトワは不安そうな表情でセシリアを見つめた。

その後その場にいる全員が着席した後オリヴァルト皇子達と対面した状態でルイーズとセシリアと共に着席したパントは早速話を始めた。


「―――さてと。本日オリヴァルト殿下達が私達を訊ねてきた理由は昨日(さくじつ)アリシア女王陛下より粗方伺っておりますが…………まずは、やはり妹君の行方についてお知りになられたいのですか?」
「はい…………やはり、二日前にアルフィンは単身でこちらを訪問されたのでしょうか?」
パントの問いかけに頷いたオリヴァルト皇子はパントに訊ねた。
「ええ。二日前の夜に飛び込みで我が国の大使館であるこちらを訊ね、その際にリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下、エクリア殿が対応しました。」
「え…………という事は二日前の時点ではリウイ陛下達はこちらにいらっしゃったのですか?」
パントの答えを聞いて驚いたクローディア王太女はパントに訊ねた。

「はい。元々”大使代理”を務める私に業務の引継ぎを終えた陛下は翌日にはイリーナ皇妃陛下達と共に大使館(こちら)を起つ予定でしたので。」
「……………………単刀直入に伺います。アルフィンは今、どのような状況に陥っているのでしょうか?」
パントがクローディア王太女の疑問に答えるとオリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って問いかけた。
「”アルフィン殿”でしたら、”3度目の要求内容”にも記していた通り―――”エレボニア帝国皇女という身分を捨てさせて、メンフィル帝国が定めたアルフィン殿に対する処罰内容を受けています。”」
「!!」
「………………っ!」
「お、お待ちください…………!まさかリウイ陛下達はエレボニアからはるばるメンフィル帝国の大使館に交渉に来たアルフィン殿下を問答無用で拘束したのですか!?」
パントの答えにアリサ達がそれぞれ血相を変えている中、オリヴァルト皇子は目を見開き、アルゼイド子爵は拳を握りながらも表情を変えず目を伏せた後すぐに目を見開いてパント達を見つめ、クローディア王太女は驚きの表情で声を上げて訊ねた。

「いいえ、陛下達の話によりますと元々陛下達は我が国の盟友であられる貴国とかつての戦友であったオリヴァルト殿下に免じて、アルフィン殿には一晩大使館に泊まってもらって翌日には祖国であるエレボニア帝国に帰国するようにとアルフィン殿に帰国を促したとの事ですが…………そのアルフィン殿が自ら、メンフィル帝国が定めた処罰内容を受ける事を申し出たのです。」
「な――――――――」
(ア、アルフィン殿下自らが…………!?)
(それ程までにユミルの件に責任を感じていたというのか、アルフィン殿下は…………)
(…………っ!)
ルイーズの話を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中オリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、アリサは信じられない表情をし、ラウラは重々しい様子を纏い、ユーシスは辛そうな表情で唇を噛み締めて身体を震わせていた。

「エレボニア帝国が戦争回避の為に我が国の要求を呑もうが、今回の戦争で滅びようがアルフィン殿がメンフィル帝国が定めたアルフィン殿に対する処罰を受ける事は”決定事項”です。実行は少々早いかもしれませんが、アルフィン殿ご自身がユミル襲撃に対するご自身の償いをする為に申し出たのですから、”中立の立場”である貴国もその件について特に意見はないかと思われるのですが?」
「…………っ。確かに大使閣下の仰る通り、アルフィン殿下自らが本当にそのような事を申し出たのでしたら、リベールとしてはその件について何もいう事はありませんが…………失礼を承知で申し上げますがそれは貴国の主張であって、アルフィン殿下自らが貴国が定めたアルフィン殿下自身に対する処罰を受けたという明確な証拠を示されていないのですが?」
パントに試すような視線を向けられて問いかけられたクローディア王太女は唇を噛み締めた後すぐに気を取り直して厳しい表情を浮かべてパントに指摘した。
「勿論、証拠はありますのでご確認ください。」
クローディア王太女の指摘に対してパントは全く動じない様子で懐から一枚の書状を取り出して目の前のデスクに置いた。

「…………失礼します。―――!これは…………オリヴァルト殿下もご確認ください。」
「失礼する。―――!!アルフィン自身がエレボニア帝国皇族の身分を捨て、1度目のユミル襲撃の件でメンフィル帝国が定めたアルフィンに対する処罰内容を受ける事をアルフィン自身が承諾したという誓約書か…………確かにこのサインはアルフィンのものだし、その隣の皇印もアルフィンが持っている皇印だな…………」
(不味いわね…………本人のサインと印鑑付きの”誓約書”まで用意されている以上、アルフィン殿下を返還してもらう事はほぼ”不可能”な状況よ…………)
(そ、そんな…………)
(アルフィン殿下は一体どんな処罰を受けているんでしょうね…………?)
書状を手に取って確認したクローディア王太女は複雑そうな表情を浮かべた後オリヴァルト皇子に手渡し、手渡されたオリヴァルト皇子は書状の内容を確認した後重々しい様子を纏って呟き、オリヴァルト皇子の話を聞いたサラは厳しい表情を浮かべ、サラの推測を聞いたエリオットは悲痛そうな表情をし、エマは不安そうな表情を浮かべた。

「…………アルフィン自身が1度目の”ユミル襲撃”の件に対するメンフィル帝国が求めるアルフィンへの処罰を受ける事を申し出たと仰っていますが…………アルフィンはその処罰内容も把握した上で、申し出たのでしょうか?」
「はい。」
「ちなみにアルフィンさんの処罰内容はメンフィル帝国に所属する貴族の使用人兼娼婦として、一生その貴族に仕える事ですわ。」
「しょ、”娼婦”ですか…………?一体それはどういった意味を示しているのでしょうか…………?」
オリヴァルト皇子の問いかけにパントが頷いた後に説明をしたルイーズの話を聞き、”娼婦”の言葉を初めて聞くオリヴァルト皇子達がそれぞれ困惑している中クローディア王太女が不思議そうな表情で訊ねたその時
「アンタ()…………幾ら自国の領土が襲撃される原因の一端を担っているとはいえ、まだ10代の少女のアルフィン皇女に”女として”あまりにも酷な処罰を受けさせる事に何も思わなかったのかしら?」
「セ、セリーヌ…………?それは一体どういう事なの…………?
厳しい表情を浮かべたセリーヌがパント達を睨んで指摘し、セリーヌの言葉を聞いたエマは困惑の表情でセリーヌに訊ねた。

「…………”娼婦”って言ったら、今よりも遥か昔に存在していた”身体を売る事を生業としている女性”―――今の時代で言うと売春行為をする女性の事よ。」
「「な――――――――」」
「何ですって!?」
「ば、”売春行為をする女性”って、ま、ままままままま、まさか……!?」
「え、えっと……それって、もしかして…………」
「男が女を抱きたくなった時にお金と引き換えに男に抱かせる女の事でしょ?わたしがいた団の男連中も法をかいくぐって裏でコッソリやっているそういう施設に行ったみたいな話をしているのを聞いた事があるし。」
セリーヌの説明を聞いたオリヴァルト皇子とクローディア王太女はそれぞれ絶句し、サラは厳しい表情で声を上げ、アリサは顔を真っ赤にして混乱し、トワは表情を引き攣らせ、フィーはジト目で呟いた。

「我々の世界ではそういう施設を”娼館”と言う名前で呼んでいてね。ゼムリア大陸の国家は売春行為による商売を違法行為扱いしているようだが…………我々の世界では”娼館”も立派な”公共施設扱い”されているんだ。だから、ゼムリア大陸の我が国の領土の栄えた都市―――例えばセントアークにも”娼館”は存在するよ。」
「ば、売春行為の商売をする施設が”公共施設”って……!」
「しかもかつてはハイアームズ侯爵家の本拠地であったセントアークにそのような施設が存在しているとは…………ハイアームズ侯爵閣下がその事実を知れば、どう思われるだろうな…………」
「それよりもアルフィン殿下だよ。今の話通りなら、既にアルフィン殿下は操を…………」
「…………っ!何故ですか!?例え貴国の領土であるユミルが襲撃される原因になってしまったとはいえ、何故ユミルが襲撃されるように意図的に行動された訳でもないアルフィン殿下にそのようなあまりにも酷な処罰をメンフィル帝国は求められたのですか!?」
「リベールも”中立の立場”として問わせて頂きます!ユミル襲撃の超本人であるカイエン公やアルバレア公ならまだ理解できますが、ユミル襲撃の”被害者”でもあられるアルフィン殿下に対して何故そのような人道から外れたあまりにも惨い処罰をアルフィン殿下に受けさせる事にされたのですか!?この事がゼムリア大陸の国家にも知れ渡れば、間違いなく貴国はアルフィン殿下に対する人道から外れた処罰内容の件で各国から非難を受ける可能性も考えらえるのですよ!?」
パントの説明を聞いたマキアスが信じられない表情をし、ラウラとアンゼリカはそれぞれ重々しい様子を纏って呟き、ユーシスは悲痛そうな表情で、クローディア王太女は怒りの表情でパントに問いかけた。

「フフ、王太女殿下もそうですが皆さんも”娼婦”という存在に気がとられがちなご様子ですが、アルフィン殿の件は言い換えれば一種の”政略結婚”にもなるのですから、アルフィン殿は皆さんが推測されているような状況には陥っていませんよ?」
「…………それは一体どういう意味なのでしょうか?」
苦笑しながら指摘したセシリアの指摘が気になったオリヴァルト皇子は真剣な表情でパント達に訊ねた。
「先程も説明しましたように、アルフィン殿の処罰内容は『メンフィル帝国に所属する貴族の使用人兼娼婦として、一生その貴族に仕える事』―――すなわち、”メンフィル帝国が指定する人物専用の娼婦”という事になるのですから、当然アルフィン殿に肉体関係を強要する事が許されるのは”メンフィル帝国が指定した人物のみ”になります。その為、その人物以外がアルフィン殿に肉体関係を強要すれば”犯罪者扱い”されて、メンフィル帝国の法によって裁かれます。勿論例外はありませんので、例えアルフィン殿に肉体関係を強要した人物がメンフィル帝国の貴族や皇族であろうと、その人物は間違いなく裁かれる事になります。」
「つまり、アルフィン殿は言い換えれば”メンフィル帝国が指定する人物の使用人兼愛人”という立場でメンフィル帝国の”民扱い”される事になりますから、勿論メンフィル帝国人としての人権も存在しますし、アルフィン殿が仕える人物にもよりますが、運が良ければアルフィン殿は”愛人”ではなく”妻”としての立場にしてもらえる事も十分に考えられます。」
「上流階級の女性が自身の操を捧げるのは一生を共にすると決めた伴侶である事は私達の世界でも”常識”です。それについてはゼムリア大陸でも変わらないと思われるのですが?」
「それは……………………」
パント達の説明に反論が見当たらないクローディア王太女は複雑そうな表情で答えを濁した。

「…………オリヴァルト殿下、パント大使閣下達への質問をしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。」
「ありがとうございます。…………パント大使閣下達の話によればアルフィン殿下は我々が邪推しているような状況には陥っていない事は理解できました。ですがオリヴァルト殿下もそうですがアルフィン殿下にとってのご両親であられるユーゲント皇帝陛下とプリシラ皇妃陛下、そして弟君であられるセドリック皇太子殿下はアルフィン殿下はどのような人物に一生お仕えする事になった事についても心配されています。せめて、その人物の性格等について教えて頂く事はできないでしょうか?」
オリヴァルト皇子に許可を取ったアルゼイド子爵はパント達に訊ねた。
「それでしたら、問題はないでしょう。―――何せアルフィン殿が”使用人兼娼婦として一生仕える事になるメンフィル帝国が指定する人物”は子爵閣下やオリヴァルト殿下達もよくご存知のメンフィル帝国の貴族―――”シュバルツァー男爵家の跡継ぎなのですから。”」
「へ。」
「ア、アルフィン殿下がお仕えする”主”が”シュバルツァー男爵家の跡継ぎ”って事は…………」
「リィンがアルフィン殿下の”主”という事になるな…………」
パントの答えを聞いたアリサは呆けた声を出し、マキアスは信じられない表情で呟き、ガイウスが呆けた表情で呟いた後その場にいる者達は石化したかのように固まり
「ええええええええええええええっ!?」
やがて我に返ると驚きの声を上げた!

「何でリィンがそんな超展開になっているとか、訳がわからないわ…………」
「道理でアルフィン皇女は自分の処罰内容をあっさり受け入れた訳だね。リィンもそうだけど、アルフィン皇女も心配して損した。」
「フィ、フィーちゃん。」
サラは疲れた表情で呟き、ジト目で呟いたフィーの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいた。

「確か”シュバルツァー男爵家”は今回の戦争の発端となった”温泉郷ユミル”の領主であり、その跡継ぎであられるリィン・シュバルツァーさんはⅦ組の皆さんのクラスメイトだと伺っておりますが…………何故アルフィン殿下の件で彼に白羽の矢が立ったのでしょうか?」
「メンフィル帝国政府もそうですがメンフィル皇家である”マーシルン皇家”もエレボニアの内戦勃発後、エレボニアの領土と隣接しているユミルにエレボニアの内戦に巻き込まれた際に対処する軍を派遣しなかった件でシュバルツァー家に対する”負い目”があった為、その”負い目”に対する”詫び”として元々アルフィン度の仕え先の有力な候補としてシュバルツァー家が挙がっていたのですが…………」
「殿下達もご存知のようにリィンは先日のクロスベルでの迎撃戦の活躍の件があった為、それが後押しとなり、メンフィル帝国政府並びにマーシルン皇家はアルフィン殿の仕え先をリィンに決定したのです。」
「そうだったのですか…………クロスベル侵攻軍の空挺部隊のおよそ過半数がヴァリマールに撃墜された事やルーファス君がリィン君に討伐された事はある意味不幸中の幸いでもあったのか…………という事はアルフィンは今、リィン君の元に?」
戸惑いの表情を浮かべているクローディア王太女の質問に答えたルイーズとセシリアの説明を聞いたオリヴァルト皇子は安堵の表情で溜息を吐いた後パント達に訊ねた。

「ええ、そうなりますね。実際にアルフィン殿の対応したリウイ陛下達からの話による推測になりますが、今頃アルフィン殿は彼自身が遠慮していても自らの意志で彼の”使用人兼娼婦”を務めていると思いますよ?」
「え、えっと………何故そのような推測を?」
苦笑しながら答えたパントの答えにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クローディア王太女は苦笑しながら訊ねた。
「フフ…………リウイ陛下達の話によりますと、アルフィンさんはご自身が使用人兼娼婦として仕える相手がリィンさんだと知った時にこう仰ったそうですわよ―――『不謹慎ではありますが、わたくしが一生お仕えし、貞操も捧げる相手がリィンさんである事を知った時正直な所安心すると共に、”嬉しさ”も感じましたから』、と。」
「ええっ!?」
「なっ!?という事はまさかアルフィン殿下はリィン少佐の事を…………!?」
微笑みながら答えたルイーズの話を聞いたクローディア王太女とユリア准佐はそれぞれ驚きの声を上げ、アリサ達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。

(ハッハッハッ、アルフィン殿下がリィン君に想いを寄せている事は私達も感づいていたが、まさかこんな形で叶う事が厳しいご自身の恋を叶えるとはさすがはアルフィン殿下。追い詰められながらもまさかの大逆転をするなんて、転んでもただでは起きなかったようだね♪)
(か、感心している場合じゃないよ、アンちゃん。とりあえずアルフィン殿下は大丈夫な状況である事がわかったのは幸いだけど、幾らアルフィン殿下自身の意志とはいえ、ユーゲント皇帝陛下達に何も話を通さずにそんな状況になるなんて、大問題だと思うし…………)
(ううっ、まさかアルフィン殿下にまで先を越されるなんて…………)
暢気に笑っているアンゼリカにトワは困った表情で指摘し、アリサは疲れた表情で呟いた。

「そういう訳でアルフィン殿の件に関しましては納得できましたか?」
「…………正直な話、父上達の承認もなしにエレボニア皇家の一員のアルフィンがそのような状況になる事には問題があると思いますが…………私個人としてはアルフィンの今の状況には安心しました。」
「……………………」
パントの問いかけに対してオリヴァルト皇子は静かな表情で答え、アルゼイド子爵は目を伏せて黙り込んでいた。

「―――さてと。次はアルフィン殿の件で話に出たリィン少佐や彼の婚約者であるエリス嬢とセレーネ嬢がリウイ陛下の”帰還指示”によって我が国の帝都である”ミルス”にリィン少佐と共に帰還し、帝城の客室での”待機指示”が出されていた彼らが何故、メンフィル軍に入隊し、クロスベルでの迎撃戦にも参加した経緯についての説明を先にした方がよろしいでしょうか?」
「はい、是非お願いします。」
パントが次に話にする内容を口にするとアリサ達はそれぞれ血相を変え、オリヴァルト皇子は静かな表情で頷いて話の続きを促した。そしてパント達はリィン達がメンフィル帝国軍に入隊し、戦争に参加した経緯や理由を説明した―――
 
 

 
後書き
今回のBGMは空シリーズの”荒野に潜む影”か閃4の”それぞれの覚悟”のどちらかだと思ってください♪ 

 

第22話

~メンフィル帝国大使館・応接室~


「そんな…………それではリィンさん達はアルフィン殿下やⅦ組の皆さんを含めたエレボニア帝国で知り合った方々の為に敢えてメンフィル帝国軍に…………」
「……………………」
「ハハ…………リィン君達の件は相当込み入った事情がある事は予想していたが、まさか私達の為に戦争に参加していたとはね…………私達は内戦に続いて本来ならばメンフィル帝国に所属している彼らがエレボニアの為にそこまで動く義理がないにも関わらず、そのような厳しい道を歩ませてしまったのか…………」
「殿下…………」
事情を聞き終えたクローディア王太女は辛そうな表情を浮かべ、ユリア准佐は複雑そうな表情を浮かべ、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の様子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見つめていた。

(あの子は…………!また、勝手に一人で突っ走って今度はセレーネやエリスまで巻き込んであたし達にも相談することなくそんな厳しく辛い道を選ぶなんて…………!)
(リィン…………)
(…………っ!)
サラは唇を噛み締めて身体を震わせ、アリサは悲痛そうな表情でリィンを思い浮かべ、リィン達をそのような状況に追い込んでしまった原因の人物は間違いなく自分の父と兄も関係している事を悟っていたユーシスは辛そうな表情で唇を噛み締めて身体を震わせていた。
(…………まさか、エレボニア帝国の滅亡を防ぐ為にメンフィル帝国軍に入隊していたなんて、完全に想定外よ…………それを考えるとアイツの頑固な性格を考えると、今回の件、内戦の時とは比較にならないくらいの厳しい状況になりそうね…………)
(最悪の場合、今後の活動でリィンさん達と私達が敵対するような出来事が起こるかもしれないわね…………)
(一度決めた事は決して曲げないリィンの誠実さでもあり、頑固でもある性格を考えると、委員長の言う通り本当にオレ達がリィン達と戦わざるを得ない状況が起こるかもしれないな…………)
(そ、そんな…………リィン達が”敵”になるって…………)
(くっ…………手紙でもいいから、どうして僕達に相談してくれなかったんだ、リィン…………!)
それぞれ複雑そうな表情で呟いたセリーヌとエマ、ガイウスの話を聞いたエリオットは不安そうな表情を浮かべ、マキアスは悔しそうな様子で唇を噛み締めていた。

(そ、そんな…………これじゃあクロウ君の二の舞だよ…………っ!)
(そうだね…………だけども彼らの場合はクロウの時と違い、”祖国であるメンフィル帝国の為にエレボニア帝国と戦う事”でもあるのだから、メンフィル軍に入隊した彼らの行動は決して間違ってはいないし、今回の件は完全にエレボニアに全面的な非があって”大義”は完全にメンフィルだから、クロウの時以上にリィン君達を連れ戻す事は難しいだろうね…………)
悲痛そうな表情を浮かべたトワの言葉に頷いたアンゼリカは重々しい様子を纏って呟いた。

「そういう訳でメンフィル軍に入隊した彼は殿下達もご存知のように”灰の騎神”を駆って多くのクロスベル侵攻軍の空挺部隊を撃墜し、パンダグリュエル内での戦闘ではエリス嬢やセレーネ嬢、そしてエリゼ嬢や彼らと同じ小部隊に配属されたメンフィル軍の者達と協力して貴族連合軍の”総参謀”にして”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の”筆頭”でもあったルーファス・アルバレアを討伐するという大金星を挙げて”少佐”に昇進し、更にはアルフィン殿の”主”になったのです。」
「……………………もしかして、リウイ陛下はアルフィンにその事も?」
パントが説明を終えると重々しい様子を纏って黙り込んでいたオリヴァルト皇子はパント達に訊ねた。
「はい、アルフィンさんが陛下達を訊ねた理由はリィンさん達の件についても含まれていた為、陛下達はリィンさん達の件についても説明したとの事ですわ。そしてその件を知ったアルフィンさんはご自身の処罰として使用人兼娼婦としてリィンさんを支える事だけでなく、エリスさん達のように戦闘面でもリィンさんを支えるためにエリスさん達同様メンフィル軍の”義勇兵”になる事をリウイ陛下に申し出たとの事ですわ。」
「な――――――――」
「!!」
「なあっ!?」
「ア、アルフィン殿下がメンフィル軍の!?何故、アルフィン殿下はご自身がエレボニア帝国の皇女でありながら、祖国であるエレボニア帝国と戦う事を決められたのですか…………!?幾らリィンさんを支える為とはいえ、戦争にまで参加して祖国と戦う理由はリィンさんの件以外にもあると思われるのですが…………」
ルイーズの説明によって更なる驚愕の事実を知ったアリサ達がそれぞれ血相を変えている中オリヴァルト皇子は絶句し、アルゼイド子爵は信じられない表情を浮かべ、ユリア准佐は思わず驚きの声を上げ、信じられない表情で声を上げたクローディア王太女はパント達に訊ねた。

「勿論王太女殿下のように、アルフィン殿のその決断に驚かれたイリーナ皇妃陛下がアルフィン殿に理由を訊ねた際にアルフィン殿はこのような答えを返したとの事です。―――『リィンさん達――――シュバルツァー家から受けた恩を返す為…………そして今回の戦争の勃発の元凶の一人としての責任を果たす為に、”かつてのエレボニア皇女として”滅亡の危機に陥っている祖国の滅亡を防ぐ為に、そして…………エレボニアの為に自ら”エレボニアの裏切り者”という”咎”を背負ったリィンさん達と共に”咎”を背負う為にも、わたくしはリィンさん達と共にエレボニア帝国と戦います…………!』、と。」
「アルフィン…………」
「殿下…………」
「そんな…………どうして陛下達はアルフィン殿下のそのようなあまりにも酷な決意を止めることなく、承諾されたのですか…………!?」
パントの答えを聞いたアリサ達が驚きのあまりそれぞれ絶句している中オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵はそれぞれ辛そうな表情を浮かべ、クローディア王太女は悲痛そうな表情を浮かべてパント達に問いかけた。

「ふっ、王太女殿下はおかしなことを仰る。我々メンフィル帝国とエレボニア帝国は既に戦争状態に突入しているのですから、わざわざ”敵国”の皇女が自らメンフィル帝国への寝返りを申し出たのですから、何故それを止めなければならないのですか?―――むしろリウイ陛下はアルフィン殿のその決断に感心されて、アルフィン殿の事を”我らメンフィルの新たなる戦友”とも仰っていましたよ?」
「……………………っ!」
(殿下…………)
「ハハ…………アルフィンがあのリウイ陛下に感心される上”戦友”扱いされるなんて、本来なら誇るべき事だが、理由が理由だから私個人としては喜べても、”エレボニア皇子”としては喜べないね…………」
静かな笑みを浮かべたパントの指摘に反論できず辛そうな表情で唇を噛み締めているクローディア王太女の様子をユリア准佐は心配そうな表情で見つめ、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた。

「そういう訳でアルフィン殿は”アルノール”の名前を捨てられ、かつてオリヴァルト殿下がリベールの旅行時代で名乗っていたように”アルフィン・レンハイム”という新たな名前で既にメンフィル軍に入隊済みです。なお、彼女が所属する部隊は処罰の件も関係していて、リィン少佐の部隊です。」
(ア、アルフィン殿下がリィンの部隊に所属したって事は…………)
(最悪の場合、我らはリィン達どころか、アルフィン殿下とまで戦わなければならない事が起こるかもじれないな…………)
(殿下にそのような決意をさせてしまったのは間違いなくアルバレア公爵家…………!誠に申し訳ございません、殿下…………っ!)
パントの説明を聞いたある事に気づいたエリオットは不安そうな表情を浮かべ、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、ユーシスはアルフィンを思い浮かべて辛そうな表情で身体を震わせていた。

「今までの話から察するに、リィン達は今後の戦いでも手柄を挙げる為に積極的に双方死者が多くなる最前線に配置される事を希望すると思われますが、貴国はその件についてどうお考えなのでしょうか?」
「まあ、それに関しては兵達の配置を決める我が軍の参謀達や”将軍”クラスの上層部、そして陛下達皇族の役目ですから、”大使代理”である私としては何とも言えませんが…………私個人としては、例え彼らが最前線に配置され続けようと”一人も欠けることなく必ず生き残る”でしょうから、彼らの事をそんなに心配する必要はないと思いますよ。」
「何故パント大使閣下達はリィン君達は例え最前線に配置されようと”一人も欠けることなく必ず生き残る”と確信されているのでしょうか?」
アルゼイド子爵の質問に答えたパントの答えが気になったオリヴァルト皇子はパントに訊ねた。

「他国に我が軍の戦力を教える事はあまり好ましくない為、詳細は省かせて頂きますが…………リィン少佐が契約している”使い魔”の中に”魔神”が存在しているのです。―――それも、エヴリーヌ殿どころかかの”匠王”―――ウィルフレド卿に協力している”魔神アスモデウス”殿クラスの魔神と。」
「な――――――――」
「ええっ!?リ、リィンさんにもエステルさんのように使い魔がいる事には驚きましたが、まさかその使い魔の中に”魔神”がいるなんて…………!?」
「それもエヴリーヌ君どころか、あのアスモデウス殿クラスの”魔神”とは…………」
パントの説明を聞いたオリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、クローディア王太女とユリア准佐はそれぞれ信じられない表情を浮かべた。

(ま、”魔神”って確かオリヴァルト殿下の説明にあった…………)
(”闇夜の眷属”の中でも”最強”を誇る種族か…………)
(しかも話の感じからしてあの”魔弓将”よりも上のランクの”魔神”みたいだけど…………一体どういう事なのかな?リィンの使い魔ってメサイアしかいなかったのに。)
(状況を考えれば恐らくメンフィル帝国の本国に帰還してからメサイアのようにその”魔神”とやらと出会って契約するような出来事があったんだと思うんだけど…………)
マキアスは不安そうな表情を浮かべ、ガイウスは重々しい様子を纏って呟き、フィーの疑問にサラは真剣な表情で考え込みながら答えた。
(というか”アスモデウス”ってまさかとは思うけどソロモン72柱の一柱にして”七大罪”の一柱の”色欲のアスモデウス”の事かしら?だとしたら、リィンはとんでもない存在を使い魔にしている事になるわよ…………多分、あの”エンド・オブ・ヴァーミリオン”すらも”格下”扱いできるような”魔王”なんじゃないかしら?)
(それにパント大使閣下の口ぶりだと、その”魔王”以外にもリィンさんが新たに使い魔にした人達もいるような口ぶりだったわよね…………?)
セリーヌはリィンの状況を推測して目を細め、エマは不安そうな表情を浮かべた。

「”魔神”が持つ絶大な”力”については実際にその”力”を目にした事がある両殿下でしたらよくおわかりでしょうから、”魔神”を使い魔にしているリィン少佐の部隊の生存率は極めて高くなっている事にお気づきかと思われるのですが?」
「……………………」
「まさかリィン君が私達の知らない内に”魔神”を使い魔にしていたなんてね…………ハハ、”魔神”が味方にいれば例え相手が戦車(アハツェン)の軍団や機甲兵の軍団だろうと一瞬で灰塵にする事もできるだろうから、魔神もそうだが異世界の”戦略級”の魔術に対して何の対策も持たないエレボニア帝国軍にとってはまさに”あまりにも非常識かつ理不尽過ぎる強さを持つ存在”にして”絶対に勝てない存在”で、そんな存在が味方にいるリィン君達は”圧倒的な勝利”ができる事間違いなしじゃないか…………」
「それ程までに強力な存在なのですか、”魔神”とやらは…………」
パントの指摘に反論できないクローディア王太女は複雑そうな表情で黙り込み、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の話を聞いたアルゼイド子爵は驚いていた。

「それとリフィア殿下の親衛隊として所属しているリィン達は”上司”達にも恵まれていますから、リィン達は常に万全の態勢かつ心強き戦友達と共に今後の戦いに挑めるのですから、”上”の嫉妬心や無能さで危険に陥るような事は絶対にありえませんから、その点でもリィン達は相当運がいいと思いますわ。」
「リフィア殿下の親衛隊に所属しているリィンさん達にとっての”上司”という事は私やオリヴァルト殿下が二年前のリウイ陛下達の結婚式の披露宴で挨拶をした…………」
「夫婦でリフィア殿下の親衛隊長と副長を務めるゼルギウス将軍閣下とシグルーン中将閣下か…………リフィア殿下達の話によるとお二人とも精鋭揃いのメンフィル軍の中でも相当な腕前の勇将との話の上、部下達にとってはまさに”心から尊敬できる理想の上司”との話だから、リィン君達は内戦の時とは比べ物にならないくらい相当恵まれた環境にいるようだね…………」
セシリアの説明を聞いたクローディア王太女はかつて出会った事があるゼルギウスとシグルーンを思い出し、オリヴァルト皇子は静かな表情で推測を口にした。
(戦力やバックアップもそうだが、クロウと違って”上”にも恵まれているとの事だから、オリヴァルト殿下も推測されているようにリィン君達は間違いなく貴族連合軍の”裏の協力者”だったクロウよりも恵まれた環境なんだろうね。)
(うん…………そういった方面ではリィン君達やアルフィン殿下が危険に陥る事はないと思うから、安心はできるんだけど…………)
静かな表情で呟いたアンゼリカの推測にトワは複雑そうな表情を浮かべて同意した。

「さてと…………リィン少佐達の事については粗方説明しましたから、最後は肝心の今回の戦争を和解に導く為の交渉に入るべきなのですが…………誠に申し訳ございませんが”オリヴァルト殿下はエレボニア帝国を代表する交渉相手としての資格がない為、私達は最初から交渉に応じるつもりはありません。”なので、恐らくそちらが用意しているであろうユミルの件に対する賠償としての”メンフィル帝国の3度目の要求を変更させる為の代案”等は提示されなくて結構です。」
「な――――――――」
「ど、どういう事ですか、それは!?大使閣下達も今回の訪問がエレボニアとメンフィル・クロスベル連合の戦争を和解に導く為の交渉も含まれている事を承知の上で、お祖母様―――アリシア女王陛下による要請に応えたのではないのですか!?」
パントの口から出た驚愕の答えにアリサ達がそれぞれ血相を変えている中オリヴァルト皇子は絶句し、驚きの声を上げたクローディア王太女は真剣な表情でパント達に問いかけた。
「ええ、王太女殿下の仰る通り確かに女王陛下の要請には応じましたが…………先程も申しましたように、”オリヴァルト殿下にはエレボニア帝国を代表する交渉相手としての資格が存在しない為”、今回の戦争の件に関する和解交渉をこの場でしても”無意味”だと判断したからです。」
「……………………”オリヴァルト殿下にはエレボニア帝国を代表する交渉相手としての資格が存在しない”とは一体どういう意味でしょうか?大使閣下もご存知のようにオリヴァルト殿下はエレボニア帝国の皇家である”アルノール家”の一員としてエレボニアだけでなく、世界中に広く知れ渡っています。なのに何故オリヴァルト殿下を”エレボニア帝国を代表する交渉相手としての資格が存在しない”と仰ったのでしょうか?」
パントの答えを聞いたアルゼイド子爵は真剣な表情でパントに問いかけた。

「国を代表する交渉相手―――ましてや”戦争”等と言った国の運命を左右する交渉人には当然相応の”立場”が要求されます。既に滅亡した共和国ならばロックスミス大統領、リベールならばアリシア女王陛下かアリシア女王陛下の”後継者”として既に認定されているクローディア王太女殿下。そしてエレボニア帝国の運命を決めても各方面が納得する人物はエレボニア帝国の”皇帝”と”皇帝の跡継ぎの資格がある人物”、そして帝国政府の代表者である”宰相”です。今挙げた”エレボニア帝国を代表する交渉相手としての資格を有する立場”にオリヴァルト殿下は含まれていますか?」
「……………………それは……………………」
「あ…………」
パントの正論に反論できないオリヴァルト皇子は複雑そうな表情をし、クローディア王太女は呆けた声を出した後辛そうな表情で黙り込み
「交渉する時期がまだ去年末まで続いていた内戦の時期でしたら、リベールや七耀教会と言った他国や国際的な立場を持つ他勢力が超法規的措置として”オリヴァルト皇子を非常時によるエレボニア帝国の代表”として認めた際には交渉には応じたでしょう。ですが内戦が終結し、ユーゲント皇帝、オズボーン宰相共に正常に戻ったエレボニア帝国政府に復帰している以上、”政府内の立場はオズボーン宰相よりも上でもなく帝位継承権も存在しないオリヴァルト皇子”が我々と交渉した所で、万が一我が国が交渉の際に決まった要求内容を変更し、その実行をエレボニア帝国に要求した所で、我が国にエレボニア帝国にその要求内容を実行させる”正当性”やエレボニア帝国がそれを実行するという”保証”はありますか?」
「………………………………」
(殿下…………)
「……………………では何故、アリシア女王陛下の要請に応じて我々がこの場に来ることを承諾されたのでしょうか?」
パントの指摘に何も反論できず辛そうな表情で黙り込んでいるクローディア王太女をユリア准佐が心配そうな表情で見つめている中、オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏ってパント達に問いかけた。

「理由は二つあります。一つは我が国の盟友たるリベール王国の要請だった為、盟友たるリベールの顔を潰さない為にも”会談を行ったという事実”が必要であった為、応じたのです。そしてもう一つの理由は…………」
「―――私がパント様に頼んだのですわ。―――”かつての教え子がエレボニアのトールズ士官学院に留学した時にできたエレボニアの仲間達”がどのような方達なのか興味がありましたので。」
「な――――――――」
「か、”かつての教え子がエレボニアのトールズ士官学院に留学した時にできたエレボニアの仲間達”って事は、もしかしてセシリア将軍は…………!」
パントの後に理由を説明したセシリアの答えにアリサ達がそれぞれ血相を変えている中ある事に気づいたサラは絶句し、トワは信じられない表情でセシリアを見つめた。

「フフ…………―――改めて名乗らせて頂きます。私の名はセシリア・シルン。”訓練兵時代のリィン・シュバルツァーの担当教官”にしてメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”のシルヴァン陛下の名代兼メンフィル帝国軍側の”総参謀”としてメンフィル帝国軍に派遣される者ですわ。」
そしてセシリアはアリサ達にとって驚愕の事実となる自己紹介をした―――
 

 

第23話

~メンフィル帝国大使館・応接室~


「リィンがトールズに来る前はメンフィル帝国軍の”訓練兵”としてリィンと同じ訓練兵達と共にメンフィル軍の関係者から教えを受けていた話は聞いてはいたが…………」
「それがまさかセシリア将軍閣下がその一人で、しかもリィンの”担当教官”だったなんて…………!?」
「やれやれ…………まさかトールズに来る前のリィン君はそんなとんでもない大物から教えを受けていたとはね…………」
「しかも、メンフィル側の”総参謀”として今回の戦争に参加するって事は今後のメンフィル・クロスベル連合の動きや配置を決める人物でもあるんだ。」
セシリアが改めて自己紹介をするとガイウスは複雑そうな表情で、アリサは信じられない表情でそれぞれセシリアを見つめ、アンゼリカは疲れた表情で溜息を吐き、フィーは真剣な表情でセシリアを見つめた。

「…………何故、セシリア将軍閣下は”かつての教え子であるリィンの友”だからという理由の為だけに今回の会談が行えるように取り計らったのでしょうか?」
「―――内戦時の貴方達”Ⅶ組”を含めた”紅き翼”が取った行動等は我が軍の諜報部隊が集めた情報から貴方達の性格や行動原理等を分析した結果、今回の戦争に”メンフィル側として参戦したリィン達を取り戻す”という”無謀かつ無意味”な事をする事は簡単に想像できましたからね。そんな貴方達を自分の目で見て、実際どのような人物達であるかを確かめたかったのですよ。報告だけではわからない事もありますもの。」
「リ、”リィン達を取り戻す事が無謀かつ無意味な行動”ってどういう事ですか!?」
ラウラの質問に答えたセシリアの答えを聞いて仲間達と共に血相を変えたマキアスは真剣な表情で訊ねた。
「今回の戦争は内戦の時と違い、戦争の裏に隠された『真実』とやらは『貴族連合軍―――即ちエレボニア帝国による2度に渡るユミル襲撃』ですし、戦争を終わらせる方法は『エレボニアかメンフィル・クロスベル連合のどちらかが敗北する』か、『エレボニアがメンフィルの要求を受け入れる』の二つの内のどちらかなのですから、貴族派と革新派に分かれていたエレボニアに巻き起こす為に結成された”新たな風”である貴方達が今回の戦争を双方納得できる”結果”にする事等普通に考えてありえませんし、リィン達は『メンフィル側と戦争に参加して手柄を挙げて”上”を目指す事でエレボニアの滅亡を防ぐという目的』の為に今回の戦争に参加しているのですから、ただの士官学生である貴方達にリィン達のその考えを変える事ができる”代案”を思いつき、リィン達を説得する等普通に考えて”無謀かつ無意味な理想”ですわ。リィン達の方がよほど”現実”を見ています。―――その証拠にリィン達はクロスベルでの迎撃戦の戦功を評価されてエリス嬢とセレーネ嬢は”少尉”に、リィンは”少佐”にそれぞれ昇進した上今回の戦争に参加したもう一つの目的である『アルフィン殿の処罰内容を軽くする事』もできたのですから。」
「それは……………………」
セシリアの指摘に反論できないユーシスは複雑そうな表情を浮かべた。

「そしてリィン達は元々メンフィル帝国に所属―――それも”貴族”なのですから、”本来の立ち位置に戻っただけ”の話です。まさかとは思いますが貴方達はトールズ士官学院卒業後、”メンフィル帝国人のリィン達”がエレボニアで何らかの職に就いて貴方達と共にエレボニアを支えるといった夢まで見ていたのですか?」
「そ、そんな先の事まで考えていません。でも…………」
「…………心のどこかではリィンさん達は私達の”仲間”として、エレボニアにもし”何か”あればそれらを協力して解決するような事は考えていたかもしれません…………」
「……………………」
セシリアが口にした未来を言い当てられたエリオットは不安そうな表情で、エマは複雑そうな表情でそれぞれ答え、セリーヌは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「まあ、エレボニアとメンフィルの間で”戦争”が起こらなければそのような事もありえたかもしれませんね。―――ですが戦争は始まり、メンフィルはエレボニアを”明確な敵”として認めました。一応聞いておきますが、リィン達がメンフィルにとっての”敵国であるエレボニアの為にエレボニア側として行動すればメンフィルにとっては祖国を裏切った裏切り者”として扱われる事も考えた上で、リィン達を取り戻す―――エレボニア側である自分達の仲間に戻ってもらう事を考えたのですか?戦後のリィン達のメンフィル帝国内での扱いも考えた上で。」
「そ、それは……………………」
「……………………」
セシリアの痛烈な指摘に何も反論できないトワは辛そうな表情で答えを濁し、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「そのご様子ですと”何も考えてなく、リィン達を取り戻してから一緒に考える”といった所ですか。―――大方私が予想した通りだったようですね。―――まあ、恥じる必要はありません。貴女達はまだ”学生”なのですから。それよりも”教官”であるサラ・バレスタインさんに問わせて頂きたいのですが…………貴女、”士官学院の教官”―――それも国家間交渉の仲介役を担う役割も有する遊撃士の中でも真っ先にその役割が求められる”A級遊撃士”の資格がありながら今回の戦争での”リィン達の立ち位置がエレボニア側だった場合でのリィン達にとっての祖国であるメンフィル帝国でのリィン達の扱い”について何も考えず、内戦の時のように教え子達の方針に委ねて自分はただ教え子達を支えるつもりだったのですか?」
「…………っ!」
セシリアの正論かつ痛烈な指摘に対して反論する事ができないサラは悔しそうな表情で唇を噛み締めて身体を震わせていた。
「どうやら図星のご様子ですわね…………―――遊撃士稼業を休職しているとはいえ、正直”期待外れ”でしたわ。2年前に起こった”リベールの異変”でのリウイ陛下達による詳細な経緯が書かれた報告書で私が知る事ができたメンフィルと縁があるA級やS級遊撃士達―――ファラ・サウリン卿にルーハンス卿、”剣聖”カシウス・ブライト中将に”漆黒の牙”、そして”不動”と”重剣”。更にA級ではありませんがペテレーネ神官長唯一の弟子である”嵐の銀閃”とリィンが修めている剣術―――”八葉一刀流”の”開祖”である”剣仙”の孫娘と、正遊撃士は世界規模で考えれば数は少ないにも関わらず一人一人が無視できない存在である事からまさに”少数精鋭”であることを思わせるような方々でしたが…………貴女といい、”零駆動”のトヴァル・ランドナーといい、ファラ・サウリン卿達と同じ”正遊撃士”とは思えない浅はかな方々ですわね。」
「「「………………………………」」」
セシリアが挙げた人物達をそれぞれ思い浮かべたクローディア王太女とオリヴァルト皇子、ユリア准佐はそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「リィン達の件はメンフィル帝国軍の関係者としてだけでなく、リィンの担当教官として…………そして私個人としても『正しい選択をした事』に安心しましたわ。」
「ふざけんじゃないわよっ!?あたしやトヴァルに関してはアンタの言う通り、あたし達にも”落ち度”があった事は認めざるを得ないから、それについては反論はないわよ!だけどリィン達の今の状況になると話は変わるわ!アンタはリィン達がメンフィル側として今回の戦争に参加した事を安心したって言っているけど、アンタ、それでもリィンの担当教官!?自分の教え子が戦争で留学先で作った仲間達と戦うどころか、その関係者や軍人達と戦って自分の手で命を奪うかもしれない事に何も思わないの!?」
セシリアが自身の感想を口にするとサラが立ち上がって怒りの表情でセシリアに問いかけた。
「まあ、あの子のお人好しな性格を考えれば、外面は平然を保つ事はできても、内心は傷ついてはいるかもしれませんが…………―――彼は将来はメンフィル帝国軍のいずれかの部署に配属される事が決まっている”メンフィル帝国軍の訓練兵”として私達から教えを受け、同期達と共に切磋琢磨をし、訓練兵を卒業している時点で彼も新人とはいえ”メンフィル帝国の軍人”。メンフィルの為にその身を持ってメンフィルに仇名す者達と戦い、祖国であるメンフィルと皇族であるシルヴァン皇帝陛下達を護る重要な役割を果たす事が求められているのですから、幾ら親しくなろうとも祖国と陛下達の為には親しくなった者達が”メンフィルの敵”になるのであれば、己の心を殺して躊躇うことなくその刃を振るうのが彼に求められている”義務”。また、リィンもそうですがセレーネ嬢やエリス嬢もメンフィル帝国貴族の一員なのですから、祖国であるメンフィル帝国の為に例え”敵が親しくなった相手であろうとその相手に刃を振るう事”も”メンフィル帝国貴族としての義務”です。」
「っ!!」
「”メンフィル帝国軍人としての義務”と”メンフィル帝国貴族としての義務”か…………」
「…………確かにセシリア将軍閣下の仰る通り、国に限らず”軍人”や”貴族”には相応の”義務”が求められるね…………」
「はい…………」
「……………………」
セシリアの指摘を聞いたサラは悔しそうな表情で唇を噛み締め、ガイウスは複雑そうな表情で呟き、重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの言葉にラウラは複雑そうな表情で頷き、ユーシスは辛そうな表情で黙り込んでいた。

「とはいっても、私とてかつてのリィンの”担当教官”として今回の戦争の件で傷ついているであろうリィンの精神面について何も考えていない訳ではありません。―――その証拠にリィンの部隊には訓練兵時代のリィンと一番親しい関係であった”先輩”と”同期”が配属されるように、彼の上官であるゼルギウス将軍達にその二人の事を教え、その二人をリィン達と同じ部隊に配属させた方が”昔から親しい関係である仲間がいる事”でリィン達の生存率が格段に上げる事ができる為、その二人もリィン達と同じ部隊に配属させるように進言しておきましたわ。」
「く、”訓練兵時代のリィンと一番親しい関係であった先輩と同期”の人達がリィン達と同じ部隊って………」
「……………なるほどね。その二人がいれば、今回の戦争で内心傷ついているであろうリィン達の精神面もある程度緩和されると考えたのね。―――要するにその二人はエマ達”Ⅶ組”の”代役”ね?」
セシリアの説明を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、ある事に気づいたセリーヌは目を細めてセシリアに問いかけた。
「あの二人を誰かの”代役”としての役割も兼ねさせるようなあの二人にとって、そしてリィン達にとっても失礼になる事までは一切考えておりません。―――が、その内の”先輩”に関しては、偶然にも貴方達”Ⅶ組のある人物”と性格がある程度一致している事は否めませんわ。」
「訓練兵時代のリィンさんの”先輩”の方が私達の中で性格がある程度一致している人、ですか………?」
「一体誰なの、そのある程度性格が似ているっていうⅦ(わたしたち)の代わりの”先輩”とやらは。」
セシリアの話が気になったエマは不安そうな表情を浮かべ、フィーは真剣な表情で訊ねた。

「―――フォルデ・ヴィント。怠け癖があり、周囲の者達を明るくさせるお調子者で、”娼館”に通う頻度は他の軍人達よりもやや多い女好きで、同僚や後輩達にも”娼館”に誘う事もする”先輩”というよりもいわゆる”悪友”タイプの自由奔放な人物ですが、後輩や仲間達を大切にする心は人一倍です。」
「ちょ、ちょっと!?その性格と一致するⅦ(わたしたち)の中にいる人物って………!」
「……………………クロウ君……………………」
「しかもリィン君にとっての”先輩”でもあるとはね。やれやれ…………そんな人物をリィン君達と同じ部隊にするように働きかけるなんて、随分と”いい性格”をしていますね、セシリア将軍閣下は。」
セシリアが口にしたフォルデの性格を知ってすぐにクロウとフォルデが似ている事に気づいた仲間達がそれぞれ血相を変えている中アリサは信じられない表情で声を上げ、トワは辛そうな表情を浮かべ、アンゼリカは溜息を吐いた後真剣な表情でセシリアを見つめ
「フフ、勘違いしないでください。”リィンが先に出会っているのはクロウ・アームブラストではなく、フォルデ・ヴィント”なのですから、別に私はフォルデを”クロウ・アームブラストの代役”としてリィン達の部隊に配属させるように働きかけた訳ではありませんわよ?」
セシリアは苦笑しながら答えた。

(あの…………Ⅶ組の皆さんの様子からしてそのクロウさんという人物の話が出た途端雰囲気が変わったように見えたのですが…………そのクロウさんという人物とⅦ組の皆さんと一体何があったのですか?少なくてもⅦ組の皆さんの中にそのクロウさんという人物はいないようですが…………)
(…………クロウ君もかつてはⅦ組の一員だったんだが…………その正体は”帝国解放戦線”のリーダーで、内戦時は貴族連合軍側について、リィン君達と何度も戦ったのだが…………最後の戦いで和解はできたのだが、カイエン公の悪あがきによってカイエン公に拉致されたセドリックが窮地に陥って、クロウ君は窮地に陥ったセドリックをリィン君達と共に助ける最中に心臓が貫かれてセドリックを助けた後はリィン君達に見守られながら逝ったとの事なんだ…………)
(そ、そのような事が…………)
(だから、彼らはクロウという人物の話が出た途端あのように雰囲気が変わったのですか………)
「……………………」
小声でクロウの事について訊ねたクローディア王太女はオリヴァルト皇子の説明を聞くと悲しそうな表情を浮かべ、ユリア准佐は複雑そうな表情をし、アルゼイド子爵は目を伏せて黙り込んでいた。

「それとフォルデは先祖に”ロラン・ヴァンダールの妹”がいますから、オリヴァルト殿下を含めたエレボニアの皆さんにとっても僅かながら関係がある人物です。」
「な――――――――」
「ええっ!?ヴァ、”ヴァンダール”という事はその方はミュラーさんにとっては…………!」
「相当な遠縁とはいえ、親類にあたる人物という事になりますね…………」
「ドライケルス大帝の友にして家臣だったあの”ロラン”の妹が先祖だって!?」
「ロラン様が”ヴァンダール”の先祖である事は知っていたが、まさかその妹君を先祖に持つとは…………という事はそのフォルデという人物は”ヴァンダール流”の使い手なのですか?」
セシリアが口にした新たな驚愕の事実にオリヴァルト皇子は絶句し、クローディア王太女とユリア准佐、マキアスはそれぞれ驚き、信じられない表情で呟いたラウラはセシリアに訊ねた。

「ええ、フォルデは普段はいい加減な様子を見せていますが、亡くなった父から教わった”ヴァンダール流槍術”の”皆伝者”でもありますから、戦闘になれば中々の戦力になります。」
「”ヴァンダール流槍術”だと…………?」
「確か”ヴァンダール流”は”剛剣術”と”双剣術”の二つがあって、槍を使った武術は存在しないはずだが…………」
セシリアの説明を聞いて気になる事があったユーシスは眉を顰め、アンゼリカは真剣な表情で考え込んでいた。
「いや…………マテウス殿やゼクス殿から聞いた話によると、”ヴァンダール流”にはかつて”槍術”が存在していたらしいが、元々伝承できる程の使い手の数が少なかったのかロラン卿の戦死を境に”ヴァンダール流槍術”は廃れたとの事だ。」
「なっ!?という事はそのフォルデという人物は、廃れたはずの”ヴァンダール流”の槍術の唯一の伝承者でもあるのですか…………!?」
「まさか”ヴァンダール”の系譜の者まで、メンフィル側にいるとはね。」
アルゼイド子爵の説明を聞いたラウラは驚き、セリーヌは複雑そうな表情で呟いた。

「話を続けますが…………フォルデに加えて皆さんもご存知のようにリィンの部隊にはリィンにとって大切な”身内”であり将来を共にする事を約束しているセレーネ嬢、エリス嬢、メサイア皇女殿下、そしてエリゼも配属され、更にはアルフィン殿も配属されました。正直な話、アルフィン殿の件はこちらにとっても完全に想定外の出来事ではありましたが、リィンもそうですがセレーネ嬢やエリス嬢の精神面を支える意味でもアルフィン殿の申し出は非常にありがたかったですわ。」
「……………………」
セシリアの説明を聞いたオリヴァルト皇子やアリサ達はそれぞれ複雑そうな表情で黙り込み
「リィンのトールズ士官学院への留学は正直どうなるか心配していましたが…………セレーネ嬢との出会い、”灰の騎神”の入手、そしてリィン自身が長年悩んでいた自身に秘められる”力”を最大限に生かす事―――”鬼の力”を制御できるようになったのですから、そういう意味では貴方達”Ⅶ組”に感謝していますわよ。―――貴方達との出会いが切っ掛けとしてそれらを手に入れたお陰でリィンは”戦争”になれば、間違いなく有効活用できる”力”をエレボニアの留学で手に入れる事ができたのですから。」
「っ…………!」
「エマ…………」
セシリアの指摘の中に”騎神”がある事を聞いて辛そうな表情で唇を噛み締めているエマをセリーヌは心配そうな表情で見つめ
「―――セシリア、なぶるのはそのくらいにしておけ。この場にはクローディア王太女殿下もいらっしゃるのだぞ?」
パントは苦笑しながらセシリアに指摘した。

「申し訳ございません、パント様。王太女殿下もみっともない姿をお見せしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」
「いえ…………セシリア将軍閣下も”担当教官”としてリィンさんを大切に想っていたからこそ、先程のような言葉が出てしまったのだと思っていますから、気にしないでください。」
パントに指摘されたセシリアはパントとクローディア王太女にそれぞれ謝罪し、謝罪されたクローディア王太女は静かな表情で答え
「ふふ、リィンさんを含めた当時のセシリアさんの教え子である訓練兵の方々は皆さん、”佐官”クラスに昇進しているか、親衛隊に配属されているかのどちらかで、リィンさんもトールズ士官学院への留学の件がなければ、リフィア殿下かシルヴァン陛下の親衛隊員になる事が内定していたとの事ですから、セシリアさんが滅多に見せない”怒り”を見せるのも仕方ないかもしれませんね。」
「ハハ…………つまり、私がⅦ組メンバーにリィン君を希望しなければ、リィン君は今頃メンフィル帝国軍で頭角を現して、エリゼ君のように10代とは思えないくらい出世して、リウイ陛下達からも信頼を寄せられていた可能性もありえたのか…………」
「殿下…………」
(リィンがトールズに来なかったらリフィア殿下かシルヴァン陛下の親衛隊員になる事が内定していたなんて…………)
(もし、リィンがトールズの件がなかったら出世街道まっしぐらだったのか…………)
(みんな…………)
ルイーズの話を聞いたオリヴァルト皇子が疲れた表情で呟いている様子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見つめ、複雑そうな表情を浮かべているエリオットやマキアスを始めとしたⅦ組の面々の様子をトワは辛そうな表情で見つめた。するとその時内線が鳴った。

「―――失礼。よほどのことがない限り、会談中はこちらにかけてくるなと伝えておいたのですが…………―――こちら、応接室。何があった?」
オリヴァルト皇子達に一言断ったパントは内線を取って通信を始めた。
「…………わかった。繋げてくれ。―――リウイ陛下、どうなされたのでしょうか?…………ええ、ええ…………そうですか…………”彼女達”の活躍があったとはいえやはり、”襲撃がされた時点”でエレボニアはその件を”大義名分”にするつもりだったようですね。それで?エレボニアが冤罪を押し付ける相手はやはりメンフィル(われわれ)ですか?それともクロスベルですか?…………え?…………わかりました。ちょうど王太女殿下が目の前にいらっしゃるので、その件について説明しておきます。―――失礼します。」
「あの…………リウイ陛下との通信で、私が話の中に出てきたようですが…………一体どのような通信だったのでしょうか?」
パントが通信を終えるとクローディア王太女が困惑の表情でパントに訊ねた。

「―――単刀直入に言いましょう。昨夜に起こった所属不明の武装集団によるエレボニア帝国の辺境が襲撃された事件―――”アルスター襲撃”の”主犯である所属不明の武装集団はリベール王国軍である事”がエレボニア帝国政府の代表者であるオズボーン宰相によって公表されたとの事です。」
「…………え…………」
「「な――――――――」」
「エ、エレボニア帝国の領土をリベール王国軍が襲撃!?ありえません…………!何故、オズボーン宰相は何の証拠もないのに、襲撃が起こった翌日という早さで”アルスター”という領土を襲撃した所属不明の武装集団がリベール王国軍であると断定し、公表したのですか!?」
パントが口にした驚愕の事実にアリサ達がそれぞれ驚いている中クローディア王太女は呆けた声を出し、オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵はそれぞれ絶句し、信じられない表情で声を上げたユリア准佐は真剣な表情でパントに訊ねた。

「オズボーン宰相の発表によると、”襲撃者達は王国製の導力銃を携えていた”事が判明したとの事です。」
「ただ、襲撃者が王国製の導力銃を携えていたという理由だけで帝国政府は我が国による仕業だと断定されたのですか!?王国製の導力銃を含めた王国製の武装も他国にも輸出されているのですから、我が国でなくても王国製の武装の購入は容易だというのに!?」
「そ、それよりもその口上はまるで12年前の…………!」
「…………ハハ…………まさか、このタイミングで”第二のハーメルの悲劇”が起こり、しかもそれが”アルスター”で起こったとはね…………状況を考えると、今回の件は間違いなく宰相殿も関わっているだろうね…………」
パントの説明を聞いたユリア准佐は厳しい表情で反論し、ある事に気づいたクローディア王太女は不安そうな表情を浮かべ、疲れた表情で肩を落としたオリヴァルト皇子は気を取り直すと厳しい表情を浮かべた。

「12年前の件を考えると恐らく既にグランセルにあるエレボニアの大使館からアリシア女王陛下に”アルスター襲撃”の件が伝えられ、それに対する賠償、最悪の場合は12年前のように”問答無用の宣戦布告”が伝えられているでしょう。我々との会談はこれ以上の進展は望めませんので、すぐにグランセルに戻られる事をお勧めします。」
「っ…………!わかりました…………大使閣下のお言葉に甘えて、この場は失礼させて頂きます。オリヴァルト殿下達はどうされますか?」
パントの指摘に辛そうな表情で息を呑んだクローディア王太女はすぐに気を取り直した後オリヴァルト皇子に訊ねた。
「…………大使閣下の仰った通り、私では”役者不足”のようだから私達も失礼させてもらうよ。それよりも、私達もアリシア女王陛下から大使館から伝えられているであろう”アルスター襲撃”の件についての説明を受けてもいいだろうか?」
「ええ、構いません。―――ユリアさん、私達が空港に到着次第アルセイユがすぐにロレントから起つ準備を進めておくように伝えておいてください!」
「子爵閣下、トワ君。カレイジャスにもいつでもロレントから起つ準備を進めておく事を伝えておいてくれ。」
クローディア王太女とオリヴァルト皇子は立ち上がってそれぞれユリア准佐とアルゼイド子爵、トワに指示をし
「ハッ!」
「御意…………!」
「はい…………!」
指示をされた3人はそれぞれ敬礼で答えた。

こうして…………会談を切り上げたアリサ達は”アルスター襲撃”の詳細について知る為に、カレイジャスに乗り込み、アルセイユと共にグランセルへと急行した―――――― 
 

 
後書き
今回の話で大使館の話は終わりで、次回はようやく真打ち登場こと、エステル達の活躍の話です!なお、パントが”アルスター襲撃”のことをクローゼ達に教えるあたりからのBGMは空シリーズの”虚ろなる光の封土”だと思ってください♪
 

 

外伝~アルスター襲撃~ 前篇

1月15日、同日PM10:20―――


アリサ達がグランセル城に宿泊する事になったその日の夜、エレボニア帝国の辺境にある町―――”アルスター”の裏手にある盆地―――”オスギリアス盆地”に潜んでいた全体的に黒い甲冑やヘルメットを纏った謎の武装集団が動きだし、武装集団は次々と町に火を放ち、それらによってアルスターは炎に包まれた!


~エレボニア帝国領・ラマール州・”辺境の町”アルスター~

「ティーリア、早く!」
「う、うん…………!」
町中が炎に包まれた事で住民たちが逃げ回っている中、内戦中の”とある出来事”でリィン達に加えてアルティナとも知り合い、また1年半前にエステル達と”とある事件”で知り合って助けられた事もある兄妹―――カイとティーリアも慌てた様子で屋根の部分についた火によって炎に包まれ始めた自分達の借家から出てきた。
「そんな…………私達の借家だけじゃなく、町全体が…………一体何が起こっているの…………?」
「わからないけど、とにかく今は非難して町のみんなと合流する事が最優先だ…………!町長達から教えてもらった”何か”あった時の避難場所に急ぐよ!」
信じられない表情で炎に包まれている町を見回しているティーリアの言葉に答えたカイはティーリアの手を引いてその場から避難しようとしたその時

「2名発見、これより殲滅を開始する。」
「グルルル…………」
謎の武装集団の一員である武装した男が二人と軍用犬が二人の前に立ちふさがった!
「…………ッ!?」
「その姿…………まさか”猟兵”!?という事はこの火事は貴方達によるものですか…………!どうして、”猟兵”が2度も辺境であるこの町を襲うんですか…………!?」
男達の登場にティーリアは息を呑み、男達の格好を見て男達が猟兵である事に気づいたカイは真剣な表情で男達に問いかけた。
「貴様らのようなガキ共相手に語る必要はない。」
「”今夜をもってアルスターは滅びなければならない。”自分達の不運さを女神に呪いながら、あの世に行くといい、アルスターの民達よ。」
カイの問いかけに答えた男達がカイ達に銃口を向けたその時!

「エイドスが今の言葉を聞けば、間違いなく怒ってアンタ達に”天罰”を降すでしょうね。ま、結果的とはいえ、あたし達がエイドスに代わってアンタ達に”天罰”を降す事になりそうだけど。」
「何…………っ!?」
「え…………」
「まずは連中を牽制して、テトリ!」
「はい!森よ、我が矢に邪を退ける力を―――大地の制圧射撃!!」
突如娘の声が聞こえ、声を聞いた男達が驚いて周囲を見回し、声に聞き覚えがあるティーリアが呆けた声を出すと、娘の声が再び聞こえた後カイ達の背後から飛んできた無数の矢が男達に襲い掛かった!
「うお…………っ!?」
「く…………っ!?」
「グル…………っ!?」
突然の奇襲に男達は怯んだ。そしてそこに栗色の髪の娘、漆黒の髪の青年、蜂蜜色のような金髪の娘がカイ達の背後から現れ―――
「ヨシュア!ミント!一気に決めるわよ!」
栗色の髪の娘―――”百日戦役”で活躍したリベール王国の英雄―――”剣聖”カシウス・ブライトの娘にして”空の女神”エイドスの子孫でもあるメンフィル帝国から”侯爵”と”ロード”の爵位と称号を授けられたゼムリア大陸史上初のSSランク正遊撃士――――”ブレイサーオブブレイサー”エステル・ファラ・サウリン・ブライトは漆黒の髪の青年――――かつて結社”身喰らう蛇”の執行者の一人であったA級正遊撃士”漆黒の牙”ヨシュア・ブライトと金髪の娘――――セレーネと同じ”パートナードラゴン”という竜族の娘にしてエステルと同じくメンフィル帝国から”伯爵”の爵位を授けられたゼムリア大陸全土で数名しか存在しないS級正遊撃士”黄金の百合”ミント・ルーハンス・ブライトに号令をかけた!

「―――ああ!」
「―――うん!」
エステルの号令にそれぞれ力強く頷いた二人はエステルと共に攻撃を開始した!
「そこだっ!!」
一番最初に攻撃を開始したヨシュアは一瞬で男達を攻撃した後下がり
「はぁぁぁぁぁ………!!」
ヨシュアが下がると次にエステルが棒で凄まじい連打を浴びせた後下がり
「えーいっ!!」
ミントは男達の目の前で長剣を地面に叩きつけ、凄まじい衝撃波を発生させて、男達を舞い上がらせた後エステルと共に跳躍し、エステルは鳳凰の姿に、ミントは竜の姿になり、そしてヨシュアは写し身を数体作った後、3人はそれぞれ同時に突撃した!

「「「究極奥義!太極烈波――――ッ!!」」」

「ぐああああ…………っ!?」
「があっ!?」
「ガ…………っ!?」
3人の協力攻撃によって一瞬で無力化された男達は壁に叩きつけられ、軍用犬はセピスを落として消滅した!
「バ、バカな…………このタイミングで遊撃士…………だと…………」
「一体どこから、襲撃の情報が…………もれた…………のだ…………」
壁に叩きつけられた男達はエステル達の服にそれぞれ付いている”支える籠手”の紋章を見て信じられない表情をした後気絶した。


「ふう………何とか間に合ったみたいね。さっきの牽制射撃は助かったわ、テトリ。」
「いえ、私はそれほど大した事はしていませんよ。」
男達を無力化したエステルは一息ついた後、自分達を追ってカイ達の背後から現れた木の妖精(ユイチリ)族の最上位妖精―――”ニルユイチリ”族のテトリにお礼を言い、お礼を言われたテトリは謙遜した様子で答えた。
「あ、貴方達は…………!」
「エステルさん…………!それにヨシュアさんとミントさんも…………!」
エステル達の登場にカイは驚き、ティーリアは明るい表情でエステル達を見つめて声を上げた。

「久しぶり、ティーリアちゃん!1年半ぶりくらいになるかしら?」
「カイ君も久しぶり!二人とも無事で何よりだよ。」
エステルとミントはそれぞれ懐かしそうな様子でカイとティーリアに声をかけ
「1年半前に続いてまた助けて頂き、本当にありがとうございます…………!」
「えっと………どうしてエステルさん達が再びアルスターに来てくれたんですか?」
声をかけられたカイは感謝の言葉を述べ、ティーリアはエステル達にある事を訊ねた。

「えっと………あたし達にとっての一応”知り合い?”から、”ニーズヘッグ”って名前の猟兵団―――要するにそこにのびている連中がアルスターを襲撃するって情報を聞いてあたし達は襲撃からアルスターの人達を護る為にここに来たのよ。」
ティーリアの質問にエステルは自分達に”アルスター襲撃”の情報を教えた”とある人物”を思い浮かべて疲れた表情を浮かべたがすぐに気を取り直して説明を続けた。
「そうだったんですか…………でも、どうして内戦も終結したばかりなのに辺境のアルスターがまた襲撃されたんでしょうか…………?」
「え、えっと………」
「……………………」
「ミントさん…………?エステルさん…………?」
カイの質問に対して、事情を知っているミントは気まずそうな表情で答えを濁し、エステルは複雑そうな表情で黙り込み、二人の様子が気になったティーリアは不思議そうな表情で首を傾げた。

「…………エステル、ミント。どうやら彼らは本当の意味で”ハーメルの悲劇をそっくりそのまま繰り返すつもりのようだよ。”」
するとその時男達―――猟兵達を調べていたヨシュアが猟兵達が持っていた銃を手に持ってエステル達に近づいて声をかけた。
「?それってどういう事、ヨシュア。」
(…………彼らが使っていた銃は”王国製の導力銃だ。”)
(あ、あんですってー!?)
(”王国製の導力銃”って事は、今回の襲撃はメンフィルやクロスベルのせいじゃなく、”ハーメル”の時のようにリベールのせいにされるって事だよね…………!?)
ヨシュアに小声で囁かれたエステルは厳しい表情を浮かべ、ミントは不安そうな表情で推測した。

(ああ………それを考えると、恐らくエレボニア帝国政府はメンフィル・クロスベル連合との戦争にリベールも巻き込むつもりなんだろうね。)
(何でエレボニアはリベールまで今回の戦争に巻き込もうとしているのよ!?女王様やクローゼ達がエレボニアの代わりに内戦の間にエレボニアに戦争を仕掛けようとしたメンフィルを2度も説得したのに!?)
(理由は色々と考えられるけど…………恐らく一番の理由はメンフィル・クロスベル連合との戦争に勝利する為に、異世界にあるメンフィル帝国の”本国”と繋がっている大使館を抑えるためにロレント―――リベールに攻め入る”大義名分”を作る為なんだと思う。メンフィル帝国の本国からの支援や援軍を抑える事ができれば、エレボニアにとって勝ち目のない今回の戦争に勝機が出てくる可能性も十分に考えられるし。)
(!!)
(今の所、異世界(ディル=リフィーナ)と行き来できるのはロレントの郊外にあるメンフィル帝国の大使館だけだものね…………)
ヨシュアの推測を聞いたエステルは目を見開き、ミントは複雑そうな表情で呟いた。
(リウイ達の事だから、もしエレボニアがリベールに宣戦布告をしたらすぐにエレボニアの狙いに気づいてロレントや大使館の守りを固めるわよ。――――それよりも、今はアルスターの人達を襲撃から護るわよ!難しい事を考えるのは後よ!)
(えへへ、それでこそママだよ!)
(いや、君達は”SS級”と”S級”なんだからもう少し色々と考えるべきなんじゃないかな?…………だけど遊撃士として…………そして人として、彼らを”第二のハーメル”の犠牲者にする事を絶対に食い止めるその意見には同意するよ。)
エステルの即決即断にミントは微笑み、ヨシュアは呆れた表情で指摘した後すぐに気を取り直した。

「えっと………?」
「っと、二人をほうってあたし達だけで話し込んじゃってごめんね。」
話し込んでいる自分達の様子を不思議そうな表情で見つめているティーリアにエステルは苦笑しながら答え
「僕達の仲間達がアルスターの人達を護る為の安全な避難場所を作ってそこを護っているから、君達をそこまで誘導させてもらうね。」
「移動している最中に猟兵の人達から襲撃を受けるかもしれないけど、絶対にミント達が二人を護るから安心してね!」
「は、はい…………!」
「お願いします…………!」
そしてヨシュアとミントの言葉に頷いたティーリアとカイはエステル達と共に避難場所へと向かい始めた。エステル達がティーリアとカイを護りながら避難場所へと向かっている中、エステル達の頼みに応じたセリカによってエステル達に加勢したセリカの仲間達もアルスターの様々な場所で活躍していた。

「く…………っ!ちょこまかと鬱陶しい…………!」
「何なんだあのメイドは…………!?」
「ふふ~ん、そんな遅い弾、あたしに当たる訳ないでしょう?―――それぇっ!!」
猟兵達は縦横無尽に動き回るマリーニャ目掛けて銃撃したが、マリーニャには一切命中せず、反撃に投擲用の短剣を猟兵達目掛けて放った!
「ガハッ!?……バ、バカな……」
「グフッ!?……メイド如きに”ニーズヘッグ”の俺達が……」
投擲された短剣が喉元に命中した猟兵達は絶命して地面に倒れた。

「グルルル…………ッ!」
「ひぃぃぃぃ…………っ!誰かあの犬を何とかしてくれ―――ッ!」
(燃えよっ!)
「「グルッ!?」」
町人の一人が軍用犬達に追い回されていると俊敏な動きでどこからともなく現れたサエラブが町人の背後に降り立つと口から火炎球を連続で放ち、襲い掛かる火炎球に気づいた軍用犬達は回避行動をとった。
「オオオオオォォォォォ―――ッ!!」
そしてサエラブが咆哮をするとサエラブの咆哮で恐怖を感じた軍用犬達は地面に伏せて震え
「止めよ!!」
「「ガアッ!?」」
そこにニルが空から奇襲して連接剣を振るって軍用犬達を滅した!
「き、狐に天使…………?一体どうなっているんだ…………?」
「フフ、とりあえずニル達はあなた達を助ける為にここにいるから、安心していいわよ。」
(避難場所まで守ってやるから、さっさと我らについてくるがいい。)
自分達の登場に困惑している町人にニルは微笑み、サエラブは先を急ぐように促した。

「セリカ様、御力を―――蘇生の息吹。」
「う、うう~ん…………?あ、あれ…………?俺、さっき撃たれたんじゃ…………?」
結界の中にいるシュリが重傷を負っている男性に蘇生魔術をかけると瀕死の状態であった男性の傷が完全に回復するとともに男性は目覚め
「!あ、あなた…………!」
「よかった…………目を覚ましてくれて…………!本当にありがとうございます…………!」
それを見て先程まで祈っていた男性の家族である男性の妻は明るい表情を浮かべ、その娘―――サンディはシュリに感謝の言葉を述べた。
「セリカ様、お願いします~―――癒しの息吹~!!」
「あ…………私の火傷が…………!」
「き、奇跡だ…………!」
一方シュリ同様結界の中にいたサリアは火傷を負った女性の傷を回復し、それを見た周囲の町人達は驚いていた。
「―――重傷を負っている方々はすぐに私に申し出てください!」
「火傷のような軽い傷はシュリ姉様の代わりにサリアが治しますので、大丈夫ですよ~!」
それぞれ治療を終えたシュリとサリアは町人達に指示を出していた。

「グルルル…………!」
「く…………っ!なんなんだ、あのメイド共は!?」
「あのメイド共もそうだが、あんな強力な障壁を展開している女は一体何者なんだ!?」
「クソッ!こんな事なら、対戦車砲(パンツァーミサイル)も持ってくればよかった…………!」
「ふふふ、例え”兵器”を持ち出した所で、私の結界はそう簡単に破る事はできないと知った時の彼らの絶望した表情を見てみたいですね。」
一方結界の外から軍用犬達は何度も結界を攻撃し、猟兵達は銃を連射し続けていたが、結界はビクともせず、その事実に猟兵達は苛立ち、猟兵達の会話が聞こえていた結界を展開している張本人―――セリカの使い魔の一人である”精霊王女”リザイラは静かな笑みを浮かべていた。

「唸れ、猛りの風よ―――双竜の大竜巻!!」
「飛んでけ―――!大竜巻―――ッ!!」
「な――――――――」
「た、竜巻だと…………っ!?」
「うあああああああ…………っ!?」
するとそこに夜闇の空に隠れて魔術の詠唱をしていたパズモとセリカの使い魔の一人である風の中位精霊――――”ジルニー種”であるミルモが発動した魔術によって発生した竜巻が猟兵達に襲い掛かって猟兵達を空へと舞い上げ
「これで終わりだ―――ッ!メティの裁きを受けるがいい―――ッ!」
「ガフッ!?」
「ギャアアアアアアッ!?」
「ガアッ!?」
猟兵達が空へと舞い上がるとパズモ達の傍に待機していたメティサーナが猟兵達目掛けて飛行による突撃で自身の得物である大鎌を振るって猟兵達を切り裂いて止めを刺した!

「フフ、上手くいったわね。この調子で次も頼むわよ、二人とも。」
「はーい!」
「メティに任せるがいい!」
猟兵達の絶命を確認した後パズモは自分と共にシュリ達を護る役目についている二人に声をかけ、声をかけられた二人はそれぞれ力強い答えを返した。

「おい、教会にはまだ火がついていないぞ。」
「ったく、手筈通りだとこの辺りに火をつけるのはあいつらなのに、何やってんだ?」
多くの建物が燃えている中アルスターの七耀教会の聖堂が燃えていない事に気づいた猟兵達は聖堂を燃やす為に聖堂の裏手に近づくと、猟兵達は信じられないものを見つけた。
「なっ!?こいつらは聖堂を含めたこの周辺を担当している…………!」
「全員死んでいる…………一体誰の仕業だ!?」
聖堂の裏手近辺に倒れている自分達の仲間達の遺体を見つけると驚いた。
「ふふ…………それは私達ですよ。」
するとその時突如猟兵達の背後にリタが現れた!

「なっ!?い、いつの間に背後に…………!?」
「と、とにかく撃『メルカーナの轟炎』ぐぎゃあああああああっ!?」
仲間と共にリタの登場に驚いて振り向いた猟兵の一人はリタに銃口を向けたが、突如上位魔術による超高熱の炎に包まれて断末魔を上げ、焼死体となった猟兵の死体は地面に倒れた!
「なあっ!?お、おのれ…………!このクソガキ、今のは貴様の仕業か―――ッ!」
仲間の惨状に驚いた猟兵はリタに憎悪を向けて銃を連射したが、霊体であるリタには銃弾は一切通らなかった。
「じゅ、銃が効かない…………!?何なんだよ、貴様は!?」
幾ら撃っても全く傷つかないリタに不気味さを感じた猟兵は銃を撃ちながらリタに問いかけ
「クスクス、私は”幽霊”ですから、そんなものは効きませんよ?」
「ゆ、幽霊だとぉっ!?まさか他の連中が既に殺したガキが化けて出たってのか…………!?」
リタの答えを聞くと恐怖の表情を浮かべた。

「不正解です。そもそも”私はこの世界で死んでいませんよ?”」
「ぁ―――ガフッ!?ち、畜生…………何でこんな事に…………」
そしてリタはその場から完全に姿を消した後猟兵の背後に現れて自身の得物である聖槍で背後から猟兵の心臓を貫き、心臓を貫かれた猟兵は口から大量の血を吐いた後信じられない表情で呟いた後絶命して地面に倒れた。
「あ、後貴方達は私の事を”子供扱い”しましたけど、私はこう見えても貴方達よりもよっぽど長生きですから、私からすれば貴方達の方が”子供”ですよ?…………と言っても、もう聞こえていないでしょうけど。」
ある事を思い出したリタは猟兵達の遺体にある事を伝えたが、すぐに伝えても無意味である事に気づくと苦笑したその時
「”幽霊”のリタが…………”長生き”…………違う気が…………する…………?」
物陰に隠れて魔術を放った術者であるナベリウスが姿を現してリタに指摘した。

「確かに”幽霊”の私が”長生き”なんて言葉を使うのは、ちょっとおかしいよね。”長生き”じゃなかったら”長死に”なのかな?ま、そんな事を気にするよりも今はここをちゃんと守らないとね。」
「ん…………教会の中にいる人達…………護る…………」
ナベリウスの指摘に苦笑しながら同意した後首を傾げたリタだったがすぐに気を取り直し、リタの言葉にナベリウスは頷いた。

「行けっ!」
「左右から襲い掛かってあの女を殺せ!!」
「「グルルル…………ッ!」」
リタ達が聖堂の裏手を守っている一方、聖堂の正面を攻めている猟兵達は軍用犬達に聖堂を護るある人物へ襲い掛かるように指示をし、軍用犬達は左右に分かれて同時にある人物へと襲い掛かったが
「甘い!!」
「「ギャンッ!?」」
聖堂の正面出入口をたった一人で護る人物―――フェミリンスは神聖魔力を纏わせた神槍による薙ぎ払いで同時に襲い掛かって来た軍用犬達を一撃で一掃し
「く…………っ!」
「敵の武装は槍だ!近づかせるな!」
「無駄ですわ。―――裁きの炎よ、卑しき魂達に裁きを―――贖罪の聖炎!!」
それを見た猟兵達はフェミリンス目掛けて銃撃をしたがフェミリンスは片手で展開した結界で銃撃を防ぎながら、魔術を発動した!
「「ギャアアアアアアアア…………ッ!?」」
フェミリンスが発動した魔術での聖なる炎にその身を焼き尽くされた猟兵達は断末魔を上げた後、焼死体となって地面に倒れた!

「やれやれ…………こっちはフェミリンス達が護っているのじゃから、わざわざ妾が聖堂を結界で護る必要はないと思うんじゃがの。」
聖堂の中からもう一つの避難場所である七耀教会の聖堂を包み込むようにドーム型の結界を展開して聖堂自体を護っているレシェンテはフェミリンスの活躍を見て自分は暴れる事ができない事に不満げな表情を浮かべた。
「あの…………貴女達は一体…………?」
そこにアルスターの聖堂を任されている神父が避難してきたアルスターの人達の誰もが気になっている事をレシェンテに訊ねたが
「ふふん、妾達の正体は知らぬ方がお主達の為じゃぞ?」
レジェンドは自慢げに胸を張って答えを誤魔化し、その答えにその場にいる全員は冷や汗をかいた。
「全く…………異世界の神々である私とレシェンテ、更には”冥き途”の門番も兼ねている”聖霊”とはいえ”亡霊”のリタと”ソロモン72柱”の一柱の”魔神”が異世界の神を信仰している教会の聖堂を護るとか、どんな皮肉ですか…………まあ、少なくてもエイドスはその事について全く何も気にしないでしょうね…………」
フェミリンスは聖堂を護る面子や自分達が護る七耀教会が信仰しているエイドスを思い浮かべて苦笑したが、新手に気づくと表情を引き締めて神槍を構えなおした。

アルスターの様々な場所で戦いが起こっている中、オリヴァルト皇子の亡き母―――アリエル・レンハイムの慰霊碑がある場所の空間が突如歪み、空間からは鋭い目つきをして身体に独特の紋様がある青年、ノイのような妖精のような姿をした女性型の人形、”顔、姿共にユリーシャと瓜二つ”をした天使族の女性、圧倒的な気配を纏う髪、肌共に真っ白で大胆に肌のほとんどを晒して腰のあたりに漆黒の外套を纏った女性、天使とは異なる翼を背に生やした明るい雰囲気を纏った娘が現れた!


「あれれ?ここ、どこ?」
「…………それは俺達のセリフだ。状況を考えればここが俺達が飛び込んだあの白い”災怨”の中じゃないのか?」
「そもそも、”災怨”以前に”人”が暮らしている町にしか見えないのですが…………」
周囲を見回した娘の言葉に青年が指摘し、天使族の女性は困惑の表情で周囲を見回し
「え、えっと…………フルーレティさん、”災怨”の中にはこういった場所があるんですか?」
「さあ?そもそも私は自分以外の”災怨”なんて知らないもの。―――それよりも、”来るよ。”」
人形に問いかけられた圧倒的な気配を纏う女性は興味なさげな様子で答えた後青年達に忠告した。

「な、何だ貴様らは…………!?」
「状況から考えて、新手の遊撃士か…………!?」
「クソッ、今この町に一体どれだけ遊撃士がいるんだ…………!?」
すると猟兵達が青年たちに近づき、それぞれ武装を構えた。
「”遊撃士”?何それ??もしかして”抜闘士”みたいにグラセスタ特有の何かの存在なの?」
「い、いえ…………私も初めて聞く言葉です…………」
「…………とりあえず、俺と同じ”抜闘士”の類やグラセスタの関係者ではなさそうだな。―――おい、誰と勘違いしているか知らないが俺達は”遊撃士”とやらではない。用がすんだのなら、とっとと去れ。」
娘の疑問に人形が困惑の表情で答えると青年は静かな表情で呟いた後猟兵達にその場から去るように促した。

「な、舐めた口を…………!」
「例え遊撃士でなくても、この町にいる者達は”殲滅”する事が依頼内容だ。」
「何者かは知らないが、ここで死んでもらう…………!」
「え、えっと…………何やら物騒な言葉が聞こえてきたんですけど…………」
「―――少なくても、彼らは悪行を行っている事だけはわかりましたね。」
青年の指示に従わずそれぞれ殺気や怒気を纏った猟兵達の様子を見た娘は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、天使族の女性は真剣な表情を浮かべた。

「―――状況はよくわからないが、まずは俺達の”敵”を殲滅してからだ。行くぞ、リリカ、ユリーシャ、フルーレティ、フィア!」
青年―――とある国に設けられている身分制度によって”自由民”と同等の身分である”抜闘士”の一人―――ジェダル・シュヴァルカは得物である身の丈程ある大剣を構えて自身の仲間達に号令をかけ
「はい…………!」
「能天使ユリーシャ、これより正義を執行致します!」
「ふふっ、何だか面白い事になりそうな予感…………まあ、まずは邪魔者を殺さないとね。」
「ううっ、私は逆に嫌な予感しかしないよ~…………」
ジェダルの号令に人形――――――とある国の貴族の当主であり、ある事情によって”魔導操殻”という人形に魂を宿しているリリカ・ルシティーネは力強く頷き、天使族の女性――――――ジェダルの”守護天使”である天使ユリーシャは真剣な表情で宣言した後自身の得物である杖を構え、圧倒的な気配を纏う女性――――――ジェダル達と出会った当初は敵対していたが、”とある出来事”を切っ掛けにジェダル達の”盟友”になった魔神フルーレティは凶悪な笑みを浮かべて得物である鞭を構え、娘―――”とある事情”でジェダル達と行動を共にする事になった”縁結びの女神”フィアは疲れた表情で呟いた後自身の得物である弓矢を構え、ジェダル達は猟兵達との戦闘を開始した―――!


 
 

 
後書き
という訳でついにエステル達登場で、初っ端から大暴れしていますwそして!魔導攻殻のヴァイス達以来になる新たなエウシュリー陣営であるグラセスタ陣営としてジェダル、リリカ、ユリーシャ(正史ルート+原作と違い、創刻のメヒーシャのように守護天使契約による昇格)、フルーレティが参戦、更に天結いキャッスルマイスターからフィアが特別参戦です!なお、今回のBGMは碧の”To be continued!”か空シリーズの”奪還”、ジェダル達登場からのBGMはグラセスタのOPである”Ancient Guardian”で戦闘BGMはグラセスタの”力こそが正義”だと思ってください♪ 

 

外伝~アルスター襲撃~ 中篇

~アルスター~

「撃て―――ッ!」
「散開しろ!」
猟兵達がジェダル達目掛けて銃撃するとジェダル達はそれぞれ散開して回避し
「行けっ!」
「「グルルル…………ッ!」」
ジェダル達が散開すると猟兵の一人が犬笛を吹いて軍用犬達に指示をし、指示をされた軍用犬達はジェダル達に向かった。

「リリカ、ユリーシャ!詠唱の短い魔術で犬の足を止めろ!フィアは矢で犬に指示を出した男達を牽制しろ!」
「はい!大地の槍よ―――岩槍撃!!」
「了解しました!光よ―――連続光弾!!」
「まっかせて~!いっくよ~―――二連制圧射撃!!」
「「グルッ!?」」
「なっ!?チィ…………ッ!?」
「く…………っ!?」
ジェダルは襲い掛かる軍用犬達に対してリリカとユリーシャに指示をし、指示をされたリリカは足元から岩の槍を発生させる魔術で、ユリーシャは片手から連続で光の魔力弾を放つ魔術で軍用犬達を攻撃して軍用犬達の足を止め、フィアは猟兵達目掛けて矢の雨を降り注がせて猟兵達にダメージを与えると共に牽制した。

「フルーレティ!」
そしてジェダルは足が止まった軍用犬目掛けて突撃しながらフルーレティに視線を向けないまま声をかけ
「ふふ、言われなくてもちゃんとこっちの犬に止めは刺して…………あげるよっ!!」
「ギャンッ!?」
声をかけられたフルーレティはジェダルの指示を聞くことなく、足が止まっているもう片方の軍用犬に詰め寄って鞭を軽く振るった。”闇夜の眷属”の中でも”最強”を誇る種族―――”魔神”であるフルーレティが振るう鞭は例え軽く振るってもその威力は岩をも易々と砕く威力である為、フルーレティが振るった鞭を受けた軍用犬は斜めに真っ二つに割られて消滅し
「邪魔だっ!」
「ガッ!?」
ジェダルは自身の紋様の戦意を高める事で通常の薙ぎ払いよりも威力がある薙ぎ払いを放つクラフト―――禍汲斬(ガルベリオ)で一閃してフルーレティ同様軍用犬を一撃で倒した!

「つ、強い…………っ!」
「く…………っ!なら、これはどうだ!?」
ジェダル達の強さに猟兵が驚いている中、もう片方の猟兵はジェダルとフルーレティの足元にそれぞれ閃光炸裂弾(スタングレネード)を投擲し
「!」
ジェダルは足元に投擲された閃光炸裂弾(スタングレネード)の正体はわからなったが、幼い時より”戦場”で剣を振るい続けた戦いによる経験と直感で足元に投擲された謎の物体は受ければ不味いものと判断した為その場で閃光炸裂弾(スタングレネード)を投擲した猟兵目掛けて高く跳躍して閃光炸裂弾(スタングレネード)による閃光を回避し
「なっ!?い、いない…………っ!?どこにいった…………っ!?」
ジェダルに投擲された閃光炸裂弾(スタングレネード)が炸裂した後その場にジェダルがいない事に気づいた猟兵は戸惑っていた。

「―――なるほど。今のは爆発と共に閃光によって敵の目を眩ませる爆弾の類か。俺も知らなかった未知の爆弾を見せてくれたことには感謝している。ハアッ!!」
「しまっ――――――」
猟兵の正面に着地したジェダルが大剣そ振り下ろして猟兵を縦一文字に真っ二つに斬って殺害し
「何、今の見せかけだけの爆発は。爆発ってのはこういうものだよ――――――タキオンの爆発。」
「え――――――グ…………ギャアアアアアアアアッ――――――!?」
一方ジェダルと違って回避行動を一切取らず閃光炸裂弾(スタングレネード)による爆発と閃光を受けたフルーレティだったが、”魔神”であるフルーレティの強靭な肉体には相手を怯ませる事が目的で威力は普通の爆弾と比べると低い閃光炸裂弾(スタングレネード)による爆発では傷つかず、また閃光による目くらましも無意味だった為、フルーレティはつまらなさそうな表情をした後もう一人の猟兵を中心に魔力を凝縮させて大爆発を起こし、大爆発をその身に受けた猟兵は断末魔が大爆発による轟音に呑み込まれながら跡形もなく木端微塵になって絶命した!

「な、何だったんでしょう、この人達は…………グラセスタでは見かけない格好の上、武器も随分と珍しいものを使っていましたし…………」
「確か”銃”だっけ?グアラクーナ城砦の防衛用にアヴァロも作って試し撃ちしている所を見たこともあるけど…………さっきみたいに弾を連射するような銃なんて私も初めて見たよ…………」
「――――――少なくても”外道”の類である事は確実でしょう。周囲の状況も恐らくこの者達の仲間達による仕業でしょうね。」
戦闘が終了するとリリカとフィアは困惑の表情でジェダルが殺害した猟兵の死体を見つめ、ユリーシャは周囲を見回して町全体が火事になっている事に気づくと厳しい表情を浮かべた。
「それで?これからどうするの、ジェダル?多分…………というかここは絶対、”災怨”の類じゃないと私も思うけど?――――――それどころか、ここは”グラセスタですらない場所かもね。”」
「……………………可能ならば、まともに話ができる奴と接触して、ここはどこかを聞きたいところだが…………―――構えろ。また、来るぞ。」
興味ありげな表情を浮かべるフルーレティに訊ねられたジェダルはその場で少しの間考え込んだが新たな気配が自分達に近づいている事に気づくと警戒の表情を浮かべて大剣を再び構えてリリカ達に警告した。

「確か爆発はこっちの方だったわよね!?―――へ。」
するとそこにカイ達を安全な場所に送り届けた後フルーレティの魔術による爆発に気づいて状況を確かめる為にやってきたエステルはジェダル達を見つけると呆けた声を出し
「えっと…………武装している所を見ると、少なくてもアルスターの人達でもないし、ニーズヘッグの猟兵さん達でもない…………よね?天使さんまでいるし。」
「ああ…………恐らくそこにある猟兵の死体は彼らによるものだろう。」
「へ…………―――なっ!?貴方達って一体何者なの?天使族の人がいるから、多分あたし達の世界にとっての異世界―――”ディル=リフィーナ”と関係がある人達だとは思うんだけど…………」
ミントは困惑の表情でジェダル達を見回し、ミントの言葉に頷いたヨシュアは猟兵の死体に気づいた後真剣な表情でジェダル達を見つめ、ヨシュアの話を聞いて猟兵の死体に気づいて驚いたエステルは真剣な表情でジェダル達に問いかけ
「…………それはこちらのセリフだ。お前達こそ、一体何者だ。さっき殺した連中の仲間ではないようだが…………」
「あの…………そちらの栗色の髪の貴女、私達の事を”あたし達の世界にとっての異世界―――ディル=リフィーナ”と関係がある人達”って言いましたよね?もしかしてここって、グラセスタどころか”ディル=リフィーナ”でもない”異世界”なんですか…………!?」
エステルの問いかけに対してジェダルは静かな表情で問い返し、ある事に気づいたリリカはジェダルの傍に移動してエステル達に問いかけた。

「ふえ?パズモさんやミルモさんみたいな妖精さん…………?」
「いや…………所々人形のような関節が見える所からして、どちらかというとリューンさん達―――”魔導攻殻”に近い感じに見えるけど…………」
「うーん…………そこの妖精か人形?の人の言った事から察すると貴方達は多分、”ディル=リフィーナ”から貴方達にとっての”異世界”―――ゼムリア大陸に何らかの方法で異世界移動したんだけど思うんだけど…………悪いけど、今は町の人達を護る為に忙しいからここでのんびりと色々と話しているような余裕はないのよね…………」
リリカに気づいたミントは首を傾げ、ミントの推測を否定したヨシュアは考え込み、エステルは疲れた表情で答えかけたその時
「―――ここにいたのね、エステル!」
「パズモ?どうしたの?」
パズモが空から降りてきてエステル達に声をかけ、声をかけられたエステルは不思議そうな表情で訊ねた。
「あの”ニーズヘッグ”って猟兵達、どこに隠していたかは知らないけど、”機甲兵”まで投入して避難場所の結界を破壊しようとしているのよ!」
「あ、あんですって~~~~っ!?」
「ど、どうして猟兵の人達が貴族連合軍にとって”切り札”だった”機甲兵”まで持っているの…………!?」
「内戦での戦いに敗れて放置された機体を回収して修理したか、内戦による混乱に生じて貴族連合軍から盗んだか、最悪の場合はエレボニア帝国政府から融通されたかと色々と可能性は考えられるけど…………どっちの避難場所が攻撃されているんだい?」
パズモの報告を聞いたエステルは厳しい表情で声を上げ、不安そうな表情で声を上げたミントの推測に真剣な表情で答えたヨシュアはパズモに状況を訊ね
「どちらも攻められているわ!教会の方はフェミリンス達がいるから、直に制圧されるでしょうけど、リザイラが展開している結界の方はシュリとサリアが避難してきた民間人の救護に回っている影響で、サリアが呼んだシュヴェルトライテと合流したマリーニャ達が加勢しているとはいえ、機甲兵は一体どころか七体で攻めてきている上、場所が町中だからシュヴェルトライテも”本気”を出せないからこっちの攻撃力が足りないのよ…………!」
訊ねられたパズモは真剣な表情で答えた。

「あの甲冑を纏った天使に攻撃させないように集中攻撃しろっ!!」
「この化物が…………っ!これ以上、仲間は殺させないぞ!!」
「他の天使共も地上の異種族共の援護をさせないようにしろ!」
「チッ…………場所が町中でなければ、あんな鉄屑如き纏めて一瞬で滅せられるものを…………」
「ええい、鬱陶しい!鎌を思いっきり振る隙があれば、あんな鉄屑なんて、メティの鎌で一刀両断してやれるのに…………!」
「むー…………!私も詠唱する時間があれば、もっと凄い風の魔術で吹き飛ばせるのに…………!」
「最初にシュヴェルトライテが一瞬で機甲兵を1体破壊した事で私達の力を相当警戒したようね…………!」
それぞれ大型の銃を持つ機甲兵―――”シュピーゲル”と”ドラッケン”はサリアによって召喚されたシュヴェルトライテによって既に自分達の仲間が操縦する”ドラッケン”が破壊された事でシュヴェルトライテの戦闘能力を警戒している為、シュヴェルトライテに近づかせないように絶え間ない弾丸の嵐で牽制し、シュヴェルトライテは場所が町中である為自身が”本気”を出せばアルスターに大きな被害をもたらせる事を理解していた為”本気”が出せず決め手がない事に舌打ちをしながら防御や回避に集中し、同じく銃を持つドラッケン2体に怒涛の銃撃を放たれたメティサーナとミルモ、ニルも防御や回避行動に集中していた。

「幾ら多少材質のいい武器を使っていようと、生身では機甲兵には敵わないんだからさっさと諦めて死ねっ!」
「ハハハハハッ、纏めてミンチにしてやるっ!」
「あーもう…………!攻撃は一応通るから、倒せないって訳じゃないんだけど…………!」
(装甲に覆われている事もそうだが魔法攻撃にも耐性がある上、あの図体だから相当しぶといな…………!)
「ぴえええ…………っ!?早く来てください、エステルさん…………っ!」
両腕に棍棒を装備した”ドラッケン”と斧槍を装備した”ヘクトル”による攻撃を地上で戦っているマリーニャとサエラブ、テトリは回避しながら反撃の隙を狙っていた。


「死ねっ!」
「遅い―――ハイロウスピン!!」
「うおっ!?」
一方教会を攻めてきたヘクトルの重い一撃を回避したフェミリンスは神槍から放った回転する衝撃波でヘクトルを怯ませ
「ぽーん…………ぽーん…………二つ回廊の轟雷…………」
「ぐぎゃあああああああっ!?」
「うあああああああっ!?」
教会の屋根で魔術の詠唱を終えたナベリウスが凄まじい電撃の爆発を起こす最上位魔術を発動させて周りにいるドラッケンも巻き込んで滅した。
「ありえねえ…………!”機甲兵”の中で”ゴライアス”を除けば防御力も最も高い”ヘクトル”相手に生身で渡り合うとか何なんだよ、あの女は!?」
「ふふっ、そもそもフェミリンスさんはただの人じゃありませんけどね。」
シュピーゲルを操縦している猟兵が仲間の惨状に信じられない表情で声を上げたその時、壁抜け等ができる”霊体”の特性を生かして機甲兵の装甲をすり抜けたリタが猟兵の正面に現れ
「な――――――」
「えいっ!」
「ガフッ!?化物………共…………め…………」
猟兵の正面に現れたリタは聖槍で猟兵の喉元を貫き、喉元を貫かれた猟兵は忌々しげな表情を浮かべて操縦席に上半身を倒して絶命した。
「さてと………マリーニャちゃん達の方も手伝う為に、こっちは手早く済ませないと…………!」
そしてリタは教会を攻めている他の機甲兵を無効化するためにその場からすり抜けていった。

「エステル、ミント!」
「わかっている!今からシュリさん達の方に行ってカファルーとクーちゃんを呼んで対抗させるわ!」
「ミントも竜になって、機甲兵と戦うよ…………!」
パズモの報告を聞いたヨシュアに呼びかけられたエステルは頷き、ミントは真剣な表情で答え
「そういう訳だから、貴方達は今は自分達の身を護る事を最優先にして!猟兵を殺せる実力はあるんだから、少なくても機甲兵が現れなければ、猟兵達に対しては貴方達だけで十分対処できるわ!」
「ただし機甲兵―――一軒家のような大きさの人形型の甲冑と遭遇した場合は逃げる事に徹してください!」
「この町での戦いが終わったら、貴方達が知りたい詳しい事情とかも説明するから、今はどこかに隠れて自分達の身を護る事に専念してね!」
ジェダル達に助言と忠告をした後その場からパズモと共に去っていった。

「い、言うだけ言って行っちゃいましたね…………」
「彼女達の様子からして、恐らく彼女達は先程この身達が滅した外道共からこの町を護る為に戦っているようですが…………」
エステル達が去るとリリカは呆けた表情で呟き、ユリーシャは真剣な表情で考え込み
「えっと…………それでさっきの人達の忠告通り、どこかに隠れるの?」
フィアはジェダルに判断を委ねた。

「いや―――奴等に加勢する。」
「え…………意外ですね。ジェダルが”人助け”をするなんて…………」
「あぁ…………ようやく主も正義の心に目覚めたのですね…………!」
ジェダルが答えた意外な答えにジェダルの性格を最も把握しているリリカは目を丸くし、ユリーシャは感動していた。
「理由はわからないが、奴等は今の俺達の状況について知っていそうな口ぶりだったからな。加勢の”対価”として、俺達の今の状況を答えてもらう。」
「ア、アハハ……………………まあ、事情はよくわかんないけど、結果的にはこの町の人達を助ける事になるんだから、私は賛成だよ!」
「ふふ、まあ私が見た感じ、さっきの連中は相当なお人好しっぽいから、わざわざ”対価”を求めなくても教えてくれそうだけど…………ま、あんな雑魚相手に逃げ回るのも癪だし、その提案、いいと思うよ?」
ジェダルの答えに冷や汗をかいて苦笑していたフィアだったが気を取り直して答え、フルーレティは静かな笑みを浮かべていた。
「そうと決まれば、すぐに奴らを追うぞ!全員、遅れるな!」
そしてジェダルの号令を合図にジェダル達はエステル達の後を追い始めた――――――

 
 

 
後書き
今回の話でアルスターの話は終わるつもりだったのですが予想以上に長くなりそうだったので、ここでいったん切りました。次回でアルスターの話は終わり、エステル達がジェダル達に事情とかを説明する話になると思います 

 

外伝~アルスター襲撃~ 後篇

~アルスター~

「お待たせ、みんな!」
「エステルさん…………!」
(フッ、”真打ち登場”か。)
マリーニャ達が機甲兵達と戦闘を繰り広げている所に駆けつけたエステル達に気づいたテトリは明るい表情を浮かべ、サエラブは静かな笑みを浮かべた。
「貴様は…………!」
「遊撃士協会史上初ランクSSにして”剣聖”の娘、”ブレイサーオブブレイサー”…………!」
「そらに”黄金の百合”に漆黒の牙まで…………!」
「恐れるな!例えランクA以上の遊撃士が集まろうと、幾ら何でも機甲兵相手に生身では敵うまい…………!」
一方エステル達の登場に機甲兵の中にいる猟兵達が警戒している中、猟兵の一人が仲間達に鼓舞をした。

「”リベールの異変”や”クロスベル動乱”を経験したあたし達からしたら、”輝く(オーリオール)”と一体化した教授や”碧のデミウルゴス”と比べたらよほど楽勝な相手だけどね。」
「いや、比較対象が色々とおかしいから。」
「アハハ、比べるんだったらせめて、”パテル=マテル”や”トロイメライ”にしてあげた方がいいんじゃないかな?」
ジト目で答えたエステルの言葉にヨシュアは呆れた表情で、ミントは苦笑しながらそれぞれ指摘し
「舐めやがって…………!」
「我らニーズヘッグの依頼を邪魔するに飽き足らず、多くの仲間達を殺してニーズヘッグに甚大な被害をもたらせた貴様らだけは絶対に許さん…………!」
「この町を貴様らの墓標にしてやる…………!」
「あんた達がそんな事になったのは、全部自業自得でしょうが!――――――出番よ、クーちゃん、カファルー!!」
機甲兵の操縦席にいる猟兵達の自分達に対する憎悪の言葉を聞いたエステルは怒りの表情で声を上げた後心強き仲間達を召喚し
「ク――――――ッ!!」
「グオオオオオオオオ――――――ッ!!」
「ハァァァァァァ…………グオオオオオオオオ――――――ッ!!」
「なあっ!?」
「りゅ、竜に幻獣らしき大型の魔獣だとぉっ!?」
召喚されたクーとカファルーは咆哮を上げ、ミントは竜化し、それを見た操縦席にいる猟兵達は驚いていた。

「カファルー、シュヴェルトライテ、クーちゃんとミントはそれぞれ一人で銃を持った機甲兵の相手をして!あたしとヨシュア、パズモとテトリの4人で”ヘクトル”の相手をするわ!マリーニャさんとメティサーナ、ミルモは近接戦闘用の”ドラッケン”の相手を――――――」
「――――――いや、お前達が相手をするあの一番図体の大きい奴は俺達がもらう。」
エステルが仲間達に指示をしていた時、その場に仲間達と共に駆け付けたジェダルがエステルにある事を申し出た。
「へ…………っ!?」
「貴方達はさっきの…………」
ジェダル達の登場と加勢の申し出にエステルは呆け、ヨシュアは呆けた表情でジェダル達を見つめた。

「うわあ…………何なの、あの大きい人形の軍団は…………もしかしてリリカの親戚とかじゃない…………よね?」
「あ、当たり前ですよ!あんな可愛さが全くないものと私を一緒にしないでください!――――――というか私は今はこんな姿ですけど、元々人間なんですからあんな存在と親戚である訳がないでしょう!?」
「遺跡等を守護するゴーレムの類でしょうか…………?」
「んー…………どっちかというと”先代史文明”の戦闘兵の方に似ているかもしれないけど…………ま、どうせ壊しちゃうんだから、どうでもいいよ。」
呆けた表情で機甲兵の軍団を見つめて呟いたフィアに訊ねられたリリカは疲れた表情で反論し、ユリーシャの疑問に考え込みながら答えたフルーレティだったが、すぐに考える事を止めて凶悪な笑みを浮かべ
「お前達に加勢する”対価”は”情報”だ。――――――行くぞ!」
エステル達にある事を伝えたジェダルはリリカ達と共にヘクトルへと向かっていった。
「ちょ、ちょっと!?あーもう…………!悪いけどマリーニャさん達はあたし達と一緒にドラッケンの相手をして!さっさと倒していきなり乱入してきたあの人達の加勢をするわよ!」
「了解!」
「みんな、行くわよっ!!」
「おおっ!!」
ジェダル達を制止しようとしたエステルだったが、ジェダル達は既に戦闘を始めていた為止める事を諦めてマリーニャ達と共にドラッケンの相手をする事を決めた後号令をかけて仲間達と共に機甲兵の軍団との戦闘を開始した。

「纏めて潰れるがいい!」
「散開しろ!」
ヘクトルの重い一撃に対して仲間達に指示をしたジェダルは仲間達と共に散開して回避した。
「滅します――――――光焔!!」
「行きますよ…………!―――青月光!!」
敵の攻撃を回避したユリーシャとリリカはそれぞれ詠唱時間の短い神聖魔術で反撃したが、魔法攻撃にも耐性がある装甲でできている機甲兵にはあまり効果がなかった。

「魔法攻撃に対しては耐性があるようだが…………物理攻撃の方はどう…………だっ!!」
「うおっ!?クソッ!」
「!」
ヘクトルに一気に詰め寄ったジェダルはクラフト―――禍汲斬(ガルベリオ)で両足の関節部分を攻撃し、関節部分が攻撃された事で一瞬怯んだヘクトルはジェダルに反撃をし、ジェダルは後ろに跳躍して回避した。
「…………やはり見た目通り、物理攻撃に対しての防御力も中々のものか。だが、どうやらあの人形は”人”の姿を形どっているだけあって、関節部分は他の装甲比べると防御が薄いようだな。」
「”人”みたいに関節部分が弱いんだったら、頭の方はどう…………かなっ!」
「グアッ!?しまった、センサーが…………っ!」
ジェダルの解析を聞いたフィアはクラフト―――精密射撃でヘクトルの頭目掛けて正確無比な狙撃をし、フィアの狙撃によってセンサー部分が破壊された事でヘクトルの操縦席にいる猟兵は驚いた。
「フフッ、それだけ図体があるんだからこのくらいは耐えられるよね?――――――イルレスの氷柱!!」
「ガアッ!?なあああああああっ!?」
そこにフルーレティが発動した魔術によってヘクトルを中心に地面から現れた巨大な氷柱がヘクトルを貫き、他の機甲兵よりも厚い装甲に覆われているヘクトルが氷柱に貫かれている事を見た猟兵は信じられない表情で声を上げた。

「大地の力よ、今ここに集え――――――メテオグレイブ!!
「月女神リューシオンよ、裁きの鉄槌を今ここに――――――神槍の流星!!」
「天の光よ、あらゆる穢れを浄化して――――――天界光!!」
「グウッ!?」
リリカ、ユリーシャ、フィアが放った最上位クラスの魔術によるダメージはさすがのヘクトルも防ぐ事ができず、ダメージを受けると共に怯んだ。
「セイッ!!」
「邪魔ッ!!」
「グアッ!?しまった―――ガッ!?」
そこにジェダルが人間離れした跳躍力で、フルーレティが転移魔術でそれぞれ操縦席があるヘクトルのヘッド部分へと襲い掛かって同時に強烈な攻撃を叩き込んだ。するとヘクトルはヘッドに強烈な衝撃が与えられた事でバランスが崩れて地面に仰向けに倒れた!

「一気に決めるぞ、フルーレティ!」
「フフ、”アレ”をやるんだよね?いいよ、ジェダル…………!」
仰向けに倒れたヘクトルの様子を見て好機と判断したジェダルに呼びかけられたフルーレティは頷いた後その場でジェダルと共に集中した。するとヘクトルを中心に広範囲に広がる漆黒の波動が現れた!

「「共鳴紋瘴!!」」

「ぐぎゃあああああああっ!?……………………」
極限まで同調させた漆黒の波動で周囲を押しつぶすジェダル・フルーレティの協力技(コンビクラフト)――――――共鳴紋瘴はヘクトルを原型すら残していない姿へと押しつぶし、二人の合体技によって操縦席ごと押しつぶされた猟兵は絶命した!

また、ジェダル達がヘクトルとの戦闘を終える頃にはエステル達もそれぞれが相手をする機甲兵を撃破していた。

「終わりだ――――――神極突聖槍!!」
「ガフッ!?ク、クソッ…………何故貴様らのような化物が揃いも揃って遊撃士共に…………っ!」
シュヴェルトライテは凄まじい聖なる魔力を纏わせた神槍で常人には見えない凄まじいスピードで銃を持つシュピーゲルの操縦席があるヘッドの部分目掛けて突撃してヘッドの装甲を破壊しながら操縦席に座る猟兵の身体に大きな穴を開けて猟兵を絶命させ
「グオオオオオオオオ――――――ッ!!」
「ク――――――ッ!!」
隕石石化大地震撃(メテオペトロアースクエイク)――――――ッ!!」
「「「うあああああああああ――――――ッ!?」」」
カファルー、クー、ミントはそれぞれ全てを焼き尽くす灼熱の炎のブレス、どんな存在をも完全に凍り付かせる絶対零度のブレス、どんな強固な装甲であろうと破壊する大地のブレスでそれぞれが相手をしていたドラッケン達を滅すると共に操縦していた猟兵達を絶命させ
「これで終わりだ――――――ッ!」
「ぁ――――――」
メティサーナは全てを滅する大鎌の一撃を放つSクラフト――――――魂ヲ切リ離ス鎌斬で操縦席にいる猟兵ごとドラッケンを一刀両断して滅した!

「皆さん…………!」
「わーい、みんな、勝ったです~!」
エステル達の勝利に結界の中から見守っていたシュリとサリアは明るい表情を浮かべ
「あら?ふふっ、どうやら私達の加勢は必要なかったみたいだね。」
「ん…………教会守っているフェミリンス…………知らせる…………」
更に教会での戦いを終わらせてエステル達の加勢にやってきたリタとナベリウスもエステル達の勝利を確認した。

「よし、こっちは片付いたから後はいきなり乱入してきたあの人達が相手をしているヘクトルを―――って、へっ!?」
「どうやら彼らには加勢の必要はなかったみたいだね。」
一方自分達が相手をしていたドラッケンの撃破を確認したエステルはジェダル達の加勢をしようとしたが、ジェダル達がヘクトルを破壊する様子を見ると驚きの声を上げ、ヨシュアは苦笑した。
「あら?フウ………来るんだったら、もう少し早く来て欲しかったわ。」
その時何かに気づいたマリーニャは疲れた表情で溜息を吐き
「それってどういう意味、マリーニャさん?」
「ママ、領邦軍の人達もこっちに到着したみたいだよ!」
「あ…………」
マリーニャの言葉の意味がわからなかったエステルだったがマリーニャ同様機甲兵の軍団―――”黄金のシュピーゲル”を先頭にした領邦軍がアルスターに近づいている事に気づいたミントが声を上げ、ミントやマリーニャが見つめている方向を見つめて領邦軍を確認したエステルは呆けた声を出し
「”黄金のシュピーゲル”という事は操縦しているのは”黄金の羅刹”オーレリア将軍だから、ようやく領邦軍が到着したみたいだね。」
ヨシュアは安堵の表情で呟いた。その後アルスターに到着したオーレリア将軍率いる領邦軍は戦後処理をしていた。

「―――お初にお目にかかる。ラマール領邦軍―――いや、”貴族連合軍の残党”を率いる”将”たるオーレリア・ルグィンだ。このような形で其方達と邂逅する事になるとはこれも”空の女神”による導きかもしれぬな、かの”剣聖”の子供達よ。」
部下達が戦後処理をしている中エステル達に近づいてエステル達と対峙したオーレリア将軍は自己紹介をし
「アハハ、エイドス本人はその言葉、滅茶苦茶嫌がっているから、あんまり言わない方がいいと思うわよ?―――初めまして、遊撃士協会所属SS級正遊撃士のエステル・ファラ・サウリン・ブライトです!」
「同じくA級正遊撃士ヨシュア・ブライトです。」
「ミントはママ達の娘で、S級正遊撃士のミント・ルーハンス・ブライトです!」
オーレリア将軍が名乗るとエステル達もそれぞれ名乗った。

「フフ、アルスター襲撃の報を受けて急いで軍を編成して向かってみれば、まさか既に襲撃した猟兵達を殲滅した上、アルスターの民達を守り切るとは正直驚いたぞ。」
「アハハ、あたし達だけじゃ多分アルスターの人達は守れなかったわよ。今回は多くの協力者の人達の手を借りて守れたようなものだし。」
オーレリア将軍の称賛に対してエステルは苦笑しながら答え
「フッ、その多くの者達の協力を取り付ける事ができる其方の”器”である証拠なのだから、謙遜する必要はあるまい。」
エステルの答えを聞いたオーレリア将軍は静かな笑みを浮かべたがすぐに表情を戻して話を続けた。

「さてと。一応確認しておくが”手筈通り我らは保護をしたアルスターの民達をクロスベルに送り届け、その後はクロスベルが用意した護衛と其方達が引き続き護衛する形でアルスターの民達を匿う場所へと護送する事でよいのだな?”」
「あ、はい。えっと、一応あたし達も自分達だけでクロスベルに戻る手段はあるけど、できればあたし達もそっちの飛行艇に乗せてもらえるとわざわざ合流する手間が省けるから助かるんだけど…………」
「フフ、別にその程度の些事等お安い御用だ。其方達は私の専用艇でクロスベルまで送って行こう。」
「ありがとうございます。」
「う、う~ん………今更だけど、将軍さんは他の領邦軍の人達とは色々違うよね?ミント達がエレボニアで活動していた頃の領邦軍の人達はミント達を凄く邪魔な存在扱いしていたし、内戦でも民間人の人達を凄く苦しめていたのに…………」
「ちょ、ちょっと、ミント。」
エステルの頼みに応じたオーレリア将軍の答えにヨシュアが感謝の言葉を述べた後ミントは首を傾げて疑問を口にし、ミントの疑問を聞いたエステルは冷や汗をかいた。

「ふふっ、内戦の件に関しては耳の痛い話ではあるが、少なくても私の部下達にはそのような愚かな事をする事は断じてさせていなかった事は女神達にも誓って断言できる。そして私自身は遊撃士協会はエレボニアの民達―――いや、エレボニアにとっても必要な存在である事は理解しているし、少なくても私の考えが浸透している部下達は其方達に対して邪険な態度は取らないから、安心するといい。」
ミントの疑問に対してオーレリア将軍は苦笑しながら答えた。
「ああ、それと…………―――我らに代わり、アルスターの民達を”第二のハーメル”の犠牲者にしないように守ってくれたこと…………心より感謝する。」
そしてすぐに表情を戻したオーレリア将軍はエステル達に頭を下げて感謝の言葉を述べた。

その後エステル達はオーレリア将軍の実家である”ルグィン伯爵家”が所有しているオーレリア将軍専用飛行艇―――”バルクルーサ号”でクロスベルへと護送するラマール領邦軍と共にクロスベルに向かう事となり、”バルクルーサ号”がクロスベルへと向かい始めるとエステル達はジェダル達と対面して互いに自己紹介をした後ゼムリア大陸と”ディル=リフィーナ”の関係について説明した。


~バルクルーサ号・ブリーフィングルーム~

「い、異世界と私達の世界―――”ディル=リフィーナ”が繋がっていたって………ううっ、案の定私の嫌な予感が的中しちゃったよ~…………これじゃあ、”英傑人形”探しどころじゃないよ~…………」
「ふふっ、しかもその世界を繋ぐ”門”を管理しているのはよりにもよって”メンフィル”とはね。光陣営のリリカからしたら、グラセスタに帰るためにメンフィルに頼らなければならない事に”色々”と思う所はあるんじゃないの?」
「別に私は”メンフィル”については知識として知っている程度で、思う所等はないのですが…………」
「二人はその”メンフィル”とやらを知っているのか?」
エステル達から事情を聞き終えたフィアは疲れた表情で溜息を吐き、興味ありげな表情を浮かべたフルーレティに話を振られたリリカは困った表情で答え、二人の会話内容が気になったジェダルは二人に”メンフィル”の事について訊ねた。

「知っているも何も”メンフィル”はサマラとも親交があった国だから、リクシュマ様に仕えていた私も”メンフィル”の存在くらいは知っているよ。」
「サマラと親交があった国という事は”闇陣営”の国か?」
「いえ、メンフィル帝国は少々特殊な国でして…………先程フルーレティさんも言ったようにサマラ魔族国に加えて”闇陣営”の国家であるベルガラード王国とも親交がある事から”闇陣営”の国家と見られがちですが…………メンフィル帝国は”光と闇の共存”を掲げていて、遥か昔から”光”と”闇”に分かれて争っている世界である”ディル=リフィーナ”にとってはとても珍しい大国なんです。」
「”光と闇の共存”という事は例えば、この身のような天使が魔族と共存しているのでしょうか?」
フルーレティの話を聞いてある事を推測したジェダルの推測を否定したリリカの説明を聞いたユリーシャは疑問を口にした。

「うん、天使族の人達は数は少ないらしいけどメンフィルに所属している人達はいるらしいし、”光陣営”の宗教―――例えば”癒しの女神(イーリュン)”や”交易の(セーナル)”の聖堂もメンフィルにあるわよ。」
「ちなみにメンフィル帝国の皇族の一人―――ティア皇女殿下は母親が”癒しの女神(イーリュン)”教の司祭だった方でご自身も”癒しの女神(イーリュン)”の司祭を務めていますし、現メンフィル皇帝であるシルヴァン皇帝陛下の母君は”軍神(マーズテリア)”教の”神格者”です。」
「それにメンフィル帝国には”闇夜の眷属”の人達と人間の人達だけじゃなく、色んな種族の人達も一緒に住んでいるよ!」
「な―――光陣営の神に”神核”を与える者として選ばれた者がその光と闇の陣営が共存するメンフィル帝国とやらの皇帝の母君なのですか!?」
「”軍神(マーズテリア)”…………光陣営の中でも強大な軍事力を持つ教会か。しかも、そのメンフィルとやらの皇帝の母が”軍神(マーズテリア)”の”神格者”とはな…………」
「へ~…………何だかグアラクーナみたいだね!私の住んでいる所―――グアラクーナ城砦にも種族関係なくたくさんの人達が住んでいるもの!」
エステルとヨシュア、ミントの話を聞いたユリーシャは驚き、ジェダルは考え込み、フィアは興味ありげな表情を浮かべた。

「あれ…………?あの~…………私が知っているメンフィル帝国についての知識ですと、確かに”シルヴァン・マーシルン皇帝はメンフィル帝国の皇帝だった方”ですけど、”今のメンフィル帝国の皇帝はリフィア・イリーナ・マーシルンという名前の女性の皇帝―――女帝”のはずですが…………」
「へっ!?リ、リフィアがメンフィル帝国の皇帝って………!」
「…………どうやら、彼らはゼムリア大陸どころかこの時代の人達ですらないみたいだね。」
(ハア…………並行世界のキーアは何を考えて西ゼムリア大陸全土が動乱の時代になりつつあるこの時期に―――いえ、”この時期だからこそ”何らかの意図があって彼らをこの時代に呼び寄せたかもしれませんわね…………)
「ううっ、ただでさえ本来だったらこの時代に留まっているべきじゃないエイドスさん達までいるのに、更に増えるなんて………しかも、サティアさんやエイドスさん達と違って、ジェダルさん達は何年後の未来の人達かの手がかりとかもないから、ジェダルさん達を元の時代に送り届けるのも相当苦労する事になるよ~…………」
リリカの指摘を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは表情を引き攣らせ、フェミリンスは呆れた表情で溜息を吐いてある人物を思い浮かべ、ミントは疲れた表情で頭を抱えた。

「”この身や我が主達が貴方達の時代の者達ではないという事”は…………」
「嘘でしょう~!?異世界移動に加えて、時間移動とか、本当にどうなっているの~!?」
「だから、それは俺達のセリフだ。―――それよりも、ミントだったか。ミントの口ぶりだと、俺達を元の時代と場所―――”迎撃都市グラセスタ”に送れるような口ぶりだったが、本当にそんな事ができるのか?」
エステル達の話を聞いてある事に気づいたユリーシャは目を丸くし、フィアは信じられない表情で声を上げ、フィアに呆れた表情で指摘したジェダルはエステル達に問いかけた。
「う、う~ん…………本当だったら、ミントの正体については身内以外の人達にあんまり話したくはないけど、状況が状況だから仕方ないわよね?」
「うん…………えっとね、ミントは―――」
ジェダルの問いかけを聞いて疲れた表情を浮かべたエステルに判断を委ねられたミントも疲れた表情で頷いた後自身の正体について説明した。

「じ、”時間を自由自在に移動できる竜”って、まさか本物の”女神”のフェミリンス様以上に驚く存在がいるとは思いませんでしたよ…………」
「何はともあれ、ミントちゃん―――”真竜”の役目は私達みたいに何らかの事故で別の時間軸に飛ばされた人達を元の時代に戻す事もその役目の一つだそうだから、私達が”白い災怨”に突入する前のグラセスタまで送ってもらえる目途がついたのは何よりだね~♪」
ミントの正体について知ったリリカは表情を引き攣らせ、フィアは安堵の表情を浮かべた。
「えっと…………その事なんだけど、ジェダルさん達を元の時代のその”グラセスタ”って所に送り届けるのは今すぐは無理で、早くても半年後になるんだけど…………」
「何?一体どういう事だ?」
気まずそうな表情を浮かべたミントの答えにジェダルは眉を顰めて訊ねた。

「えっとね?話し出すと長くなるから凄く簡単に説明するけど、以前ミント達が戦った”敵”の人達が死に際に時空間を滅茶苦茶にしちゃった事で時空間移動が凄く危険になっている状況だから、その滅茶苦茶になった時空間が落ち着く半年後までは時空間移動ができないんだ…………」
「つまりこの身達は少なくても半年はこの時代に留まらなければならないのですか…………」
「ううっ、私達が突然いなくなった事でグラセスタの人達が私達が”黒の杭”で死亡したか、”不明体”になってしまったと勘違いしていないとよいのですが…………」
ミントの答えを聞いたユリーシャは表情を引き攣らせ、リリカは疲れた表情で呟き
「ま、元の時代―――要するに私達が”白い災怨”に入る前の時間軸に送ってもらえば、問題ないんだから、そんなに気にする必要はないんじゃない?」
「それもそうだな…………―――それよりも、元の時代に戻るまでの半年をどう行動するかだな…………―――まず最優先に確保すべきは拠点と金だな。」
「あ”。そ、そういえば私達って世界も時間も違うここだと泊まる所は当然として、この世界で使えるお金も持っていないよね…………?」
フルーレティの意見に同意して考え込み始めたジェダルの言葉を聞いたフィアは表情を引き攣らせた。

「あ、それだったら遊撃士(あたし達)の手伝いとかしない?ジェダル達の実力だったら、ミシェルさん達も歓迎すると思うし。」
「エステルさん達の手伝いというと…………」
「遊撃士―――力無き民達を護る為に存在する正義の傭兵ですか。確かに我が主は元々傭兵であるのですから、ちょうどいいかもしれませんね。それに我が主が善行を重ねる機会でもありますね…………!」
「それ以前に”正義の傭兵”って何か、色々とおかしい気がするんだけど…………」
エステルの提案を聞いたリリカは目を丸くし、ユリーシャは目を輝かせ、フィアは冷や汗をかいて指摘した。

「―――必要ない。先程も説明したように俺は今、リリカを”黒の抗”の最奥まで護衛するという契約―――”約束”を結んでいる。俺は既に一人の人物と”約束”している間は、他の人物達との”約束”は引き受けない事にしている。」
「ジェ、ジェダル…………」
「うーん、セリカ達の時みたいにいい提案だと思ったんだけどな~。」
「エステル、ジェダルさん達の場合はセリカさん達と違って、既に傭兵としての仕事を請けている状況なんだから、さすがに遊撃士としての仕事を手伝ってもらう事は無理だと思うよ?」
ジェダルの答えを聞いたリリカが頬を赤らめている中、考え込んでいるエステルにヨシュアは静かな表情で指摘した。
「それ以前に”遊撃士”とやらは”対価”も無しに、民間人を護る事が義務付けられているとの事だから、俺はそんなお人好しな真似をするつもりは毛頭ない。」
「というか私からすれば、何で女神がたった一人の人間と契約している上、そのお人好しな集団に所属しているとか、意味不明なんだけど?」
「…………その言葉そっくりそのまま、お返ししますわ。―――貴女こそ”魔神”―――それも”契約”している訳でもないにも関わらず、その者達の仲間である事が不思議なくらいですわ。―――って、そこの”縁結びの女神”とやらのフィアでしたか?先程から何度も私に視線を向けていたようでしたが、そちらの魔神のように私に何か言いたい事があるのですか?」
ジェダルがエステルの誘いを断った理由を更に口にした後、フルーレティはフェミリンスに視線を向けて嘲笑し、フルーレティの嘲笑に対して静かな表情で答えたフェミリンスだったが、すぐにフィアが何度も自分に視線を向けている事に気づいていた為フィアに問いかけた。

「ああ、いや、えっと…………私以外の女神に会うなんて初めてだから、色々と興味があるだけなんです、えへへ………(おっかしいな~…………?”英傑人形”の中に”幻燐の姫将軍”のラスボスの”姫神フェミリンス”もあるけど、全然姿が違うし…………)」
フェミリンスに問いかけられたフィアは内心を隠しながら苦笑しながら答え
「ジェダル、その”遊撃士協会”という組織が出している”依頼”は聞いた限りですと、”迎撃匠合”が出している”依頼”とも似たような内容もあるようですから、エステルさん達を手伝う事についても私の護衛にそれ程支障はないと思いますけど…………実際、ジェダルとの”約束”の中にはジェダルは”黒の抗”を探索する私と共に”迎撃匠合”が出している依頼を引き受けて実行していい事も”約束”の中に入っていますし。」
「……………………確かに言われてみればそうだな。」
「それじゃあ…………!」
リリカに指摘されて少しの間考え込んだジェダルがリリカの意見に同意する様子を見せるとエステルは明るい表情を浮かべたが
「―――勘違いするな。俺達はその”遊撃士”とやらになるつもりはない。あくまで”傭兵”としてその遊撃士協会とやらが用意する”依頼”を引き受けるだけだ。遊撃士(お前達)のように無条件で民間人を護るような事をするつもりはない。」
「ちょっ、それってどっちかというと”猟兵”に近いじゃない…………!?」
「待って、エステル。…………逆に言えば”対価”―――具体的に言うとこの世界の通貨である”ミラ”、もしくは”ミラ”に換金できる”セピス”さえ用意すれば、民間人を護る事も考慮して頂けるのでしょうか?」
ジェダルが答えたジェダル達の意志を知ると信じられない表情をして反論しようとしたが、ヨシュアが制止してジェダルに問いかけた。

「ああ。それと当然だが、半年経って時間移動ができるようになればそこのミントとやらに俺達を元の時代のグラセスタに送ってもらう。」
「別にミントはわざわざ約束しなくても、元々そのつもりだけど…………」
「誠に申し訳ございません…………我が主は人の好意を素直に受け止める事が中々できない方でして。」
ジェダルの要求に対してミントが困った表情を浮かべている中、ユリーシャは申し訳なさそうな表情で謝罪し
「ああ、ユリーシャさんがわざわざ謝らなくてもいいわよ。ジェダルみたいに口や態度が悪い人はあたし達の知り合いの中にもいるから慣れているし。―――そういう事なら早速ジェダル達に”依頼”したい事があるんだけど―――」
ユリーシャの謝罪に対してエステルは出会った当初のアガットの事を思い浮かべながら疲れた表情で答えた後気を取り直してジェダル達にジェダル達の拠点の確保と1週間分の生活費を”対価”に自分達と共にアルスターの民達をクロスベルが用意したアルスターの民達を匿う場所へと護送する”依頼”をし、その依頼を引き受ける事にしたジェダル達はエステル達と共に”バルクルーサ号”でクロスベルに向かう事となった――――――
 
 

 
後書き
次回は予告通りエステル達に加えてロイド達、リィン達、そして様々なエウシュリー陣営のキャラ達が共闘する戦いになる予定です。なおジェダル達は今後、エステル達に限らず、様々な陣営の協力者として活躍させる予定です。まあ、様々な陣営とはいっても幾ら何でも敵側であるエレボニア陣営(Ⅶ組含む)には協力しませんが(苦笑)そしてジェダル達の登場によって、碧編の”戦鬼”対決のようにある呼び名同士の対決としてジェダルと軌跡シリーズのあるキャラとの夢の対決が実現可能な事に…………!なお、今回のヘクトル戦のBGMはグラセスタの”閃光交わり轟く戦場”、オーレリア達登場のBGMは零の”揺るぎない強さ”、エステル達とジェダル達の会話のBGMはグラセスタの”迎撃都市グラセスタ”、グラセスタ陣営のフィールド移動の際のBGMはグラセスタの”自由を掴むその日まで”で通常戦闘はグラセスタの”生死の狭間を生きる者たち”だと思ってください♪ 

 

第24話

1月15日、同日PM10:30―――



何者かの依頼によって”ニーズヘッグ”の猟兵達がアルスターを襲撃し、その襲撃にエステル達が対抗している中、既に仕事を終えて明日に備えて休むつもりだったロイド達だったがセルゲイの通信による連絡で急遽召集をかけられ、ブリーフィングを開始した。

~特務支援課~

「さてと、これで全員揃ったわね…………念の為にもう一度聞いておくけど二人のキーアはちゃんと寝ているのかしら?」
「はい、さっきわたしとエリィさんが降りて来る前に二人のキーアがちゃんとベッドに入って眠っているのを確認しました。」
「それで課長、ルファディエル姐さん。こんな夜中に召集をかけるなんて、何かクロスベルで相当ヤバイ事でもあったんッスか?」
ルファディエルの確認にティオが答えたランディが真剣な表情でセルゲイ達に訊ねた。
「いや、クロスベルではそのような事を起こっていない…………まあ、後で起こるかもしれんが。」
「へ…………それってどういう事なんですか?」
セルゲイの答えの意味がわからなかったユウナは不思議そうな表情で質問を続けた。

「先程ヴァイスハイト皇帝からの直通の連絡で判明した事なんだけど…………現在、エレボニア帝国の辺境の町の一つ―――”アルスター”という町が何者かに雇われた猟兵団によって襲撃を受けているとの事よ。」
「なっ!?」
「ど、どうして猟兵団がエレボニア帝国の町を…………」
「それにその猟兵団を雇った”依頼人”は何の為にその”アルスター”という町を襲撃させるように依頼したのでしょうか?」
ルファディエルの説明を聞いたロイドは厳しい表情で声を上げ、ノエルは不安そうな表情を浮かべ、エリィは真剣な表情で訊ねた。
「ま、簡単に言えばその猟兵団を雇った依頼人とやらは”第二のハーメルの惨劇”を発生させる事で”百日戦役”を再現するつもりであるとヴァイスハイト皇帝達は睨んでいるとの事だ。」
「え…………」
「”百日戦役”って………」
「12年前に起こったリベールとエレボニアの戦争の事ですね。」
「ええ、そしてその戦争の最中にゼムリア大陸と繋がる転移門を見つけたメンフィル帝国が乱入して、リィンさん達の故郷である”ユミル”を含めたエレボニア帝国の領土を奪い取った戦争でもありましたね。」
セルゲイの答えを聞いたティオは呆けた声を出し、シャマーラは目を丸くし、エリナとセティは真剣な表情で答えた。

「課長、先程”第二のハーメルの惨劇を発生させる事で百日戦役を再現するつもりである”と、ヴァイスハイト陛下は睨んでいると仰っていましたが…………そもそもその”百日戦役”勃発の原因と思われる”ハーメルの惨劇”とは一体どういった内容なのでしょうか?」
「………………………………俺もヴァイスハイト皇帝からの連絡で先程知ったばかりだが…………”ハーメルの惨劇”はエレボニアの機密情報の中でもトップクラスのもので、もしその内容を流布すれば、恐らく帝国機密法に接触し、国家反逆罪に問われる可能性が非常に高いものだ。」
「こ、国家反逆罪に問われるって…………」
「”百日戦役”―――”戦争”にも関係している出来事なのだから、恐らくはエレボニアにとっては外部―――他国もそうだけど、自国の民達にも知られれば相当不味い内容なのでしょうね…………」
「つーか、あのリア充皇帝はそんな情報をどっから仕入れてきたんだよ…………」
ロイドの質問に対して少しの間重々しい様子を纏って黙り込んだ後答えたセルゲイの答えにノエルは信じられない表情をし、エリィは複雑そうな表情で呟き、ランディは疲れた表情で溜息を吐いた。
「………………………………」
「ティオ?もしかして今の話について何か知っているのか?」
一方複雑そうな表情で黙り込んでいるティオの様子に気づいたロイドはティオに訊ね
「はい…………わたしが”影の国”事件で巻き込まれた際にエステルさん達を始めとした様々な”立場”の人達とも出会い、その人達の中にはエレボニア帝国の皇族のオリヴァルト殿下も含まれている事は皆さんもご存知でしょうが…………その時にわたしはエステルさん達からも”百日戦役”の裏に隠されていた”真実”である”ハーメルの惨劇”についても教えてもらっているんです。」
「へ…………その”ハーメルの惨劇”が”百日戦役の裏に隠された真実”、ですか?」
「…………課長、ルファ姉。その”ハーメルの惨劇”とは一体どういう内容なのか詳しく教えて頂けないでしょうか?」
「ええ、構わないわ。”ハーメルの惨劇”とは―――」
ティオの答えを聞いたユウナは首を傾げ、真剣な表情で訊ねたロイドの質問に頷いたルファディエルはセルゲイと共に”ハーメルの惨劇”について説明した。

「それじゃあエレボニア帝国政府の人達はリベールの領土欲しさに猟兵達に同じ祖国の人達を虐殺させたんですか!?」
「いえ、さっきも言ったように”ハーメルの惨劇”を企てたのは一部の過激派の”独断”と”リベールの異変”にてケビン神父に殺害された結社の”蛇の使徒”によるものよ。皇帝を含めたエレボニア帝国政府の上層部はその件を把握したのは終戦間際との事よ。実際”ハーメルの惨劇”の真実をようやく把握したエレボニア帝国政府は”ハーメルの惨劇”がリベール王国によるものであるという指摘を撤回して、即時に停戦と講和を申し出たとの事よ。」
「だ、だからと言って、それで”ハーメル”の人達が生き返る訳でもありませんし、多くの犠牲者を出したリベール王国にも謝罪や賠償とかもしなかったそうですし、その事件を公表せず、それ所か今も隠し続けているなんて…………」
「公表すれば間違いなくエレボニア帝国の国際的地位は地の底に落ちる事や自国の民達からの信頼も地に落ちて、エレボニア帝国は内部、外部共に大混乱が起こる事が予想されたから、帝国政府による”政治的判断”によって”ハーメルの惨劇”は闇に葬ったのでしょうね…………」
”ハーメルの惨劇”の事を知って怒り心頭の様子のユウナにルファディエルは静かな表情で指摘し、ユウナ同様エレボニアに対して思う所があるノエルは複雑そうな表情で呟き、エリィは複雑そうな表情で推測を口にした。

「つーか、まさかその”ハーメルの惨劇”とやらに巻き込まれて運良く生き残っていたのがヨシュアと”剣帝”だったとはマジで驚いたぜ…………」
「ああ…………」
疲れた表情で呟いたランディの意見にロイドも頷いた。
「えっと………でも、課長たちはその”アルスター”っていう町が”第二のハーメルの惨劇”になる事で”百日戦役”を再現するって言っているけど、それがクロスベルとどう関係してくるの~?」
「…………恐らくエレボニア帝国政府は”百日戦役”のように”アルスターを襲撃したのはメンフィル・クロスベル連合であるという言いがかり”を公表する事でエレボニアの民達のメンフィル・クロスベル連合に対する憎悪や復讐心を煽る事で、エレボニア帝国全体の士気を高める為でしょうね…………」
「そうですね…………ただでさえエレボニアは内戦が終結した直後で戦争が起こった事で民達が今後のエレボニアの先行きについて不安や不満を抱えていると思われますから、その不安や不満を”メンフィル・クロスベル連合に対する怒り”に変える為でもあるでしょうね。」
シャマーラの疑問にセティとエリナはそれぞれ推測を答え
「な、なんですか、それ!?要するにエレボニアは自分達の国を一致団結させる為だけに”ハーメルの惨劇”のようにその”アルスター”って町の人達を虐殺してその罪をクロスベルやメンフィルに押し付けてメンフィル・クロスベル連合を悪者にするって事じゃないですか!」
「まあ、この間の迎撃戦でクロスベルを侵略する為に侵攻してきたエレボニアの侵攻軍に所属する多くのエレボニアの軍人たちを殺害した時点で、既にメンフィル・クロスベル連合はエレボニアにとっては”悪者”ではありますが…………」
「幾らクロスベルにとっては”敵国”の話とは言え、エレボニアが戦争で勝つ為だけに猟兵達に自国の民間人を虐殺させるなんて、色々と複雑ね…………」
二人の推測を聞いたユウナは怒りの表情で声を上げ、ティオは静かな表情で呟き、エリィは複雑そうな表情で呟いた。

「…………課長、ルファ姉。その”アルスター”の件ですが…………本来でしたら事件が起こった翌日に説明してもいいその情報を事件が起こっている最中に説明する為にわざわざ俺達を召集させたのは…………その”アルスター”の件に関係する”緊急支援要請”でしょうか?」
「ほう…………」
「フフ、今までの話だけでそこまで推理できるなんてね。」
ロイドの推理にセルゲイは思わず感心した様子で声を上げ、ルファディエルは微笑み
「ええっ!?それじゃあ、ロイドさんの言ったようにまさか本当にあたし達をその”アルスター”の件に介入させるつもりなのですか!?」
「その”アルスター”って所がエレボニアのどこにあるか知らねぇが、今から行っても間に合わないんじゃないッスか?」
「それ以前にどう考えても”特務支援課”の業務ではありませんし、そもそも他国―――それも戦争状態に陥っている国で起こっている事件にわたし達をどのような名目で介入させるのでしょうか?」
二人の様子を見たノエルは驚き、ランディとティオは困惑した様子で訊ねた。

「いや、別にお前達に”アルスター”に行ってもらう訳じゃない…………―――ヴァイスハイト皇帝が出した”特務支援課に対する緊急支援要請”の内容はエステル・ブライトを始めとした”ブライト家”の遊撃士達が”アルスター襲撃”から護ったアルスターの民間人の”護送”だ。」
「エステルさん達が…………!?という事はまさか、エステルさん達は今アルスターに?」
セルゲイの説明を聞いて驚いたエリィは信じられない表情で訊ね
「ええ。一体どこで入手したのは不明だけど、彼女達はこの前の迎撃戦が起こる前日くらいから”第二のハーメルの惨劇”が起こる情報を手に入れたそうでね。彼女達は”第二のハーメルの惨劇”を防ぐ為にセリカ・シルフィルから彼の使徒や一部の使い魔達も借りて”アルスター”に向かったのよ。」
「そういえば迎撃戦が起こったあたりから、マリーニャさん達の姿を見かけませんでしたが…………まさかそんな事になっていたとは。という事はまさか今からわたし達もその”アルスター”という所に行ってエステルさん達が護り切るであろうアルスターの民間人をどこかに”護送”するのでしょうか?」
ルファディエルの答えを聞いて驚きの表情を浮かべたティオは自分達の今後の行動を訊ねた。

「いや―――アルスターの民達は貴族連合軍の残党がエレボニアとクロスベルの国境である”ベルガード門”に護送する手筈になっているから、お前達の役割はそこからクロスベルが用意するアルスターの民達を匿う場所へ護送する事だ。」
「き、”貴族連合軍”って確かエレボニアの内戦を勃発させた…………」
「”主宰”であるカイエン公が捕えられても、貴族連合軍の一部はまだ抵抗を続けている事は伺っていますが…………何故、その貴族連合軍がアルスターの民達をクロスベルまで護送―――いえ、それ以前に何故ヴァイスハイト陛下は”クロスベルにとっての敵国”の民達であるアルスターの民達をクロスベルで匿う事を決められたのでしょうか?」
セルゲイの説明を聞いたノエルは驚き、エリィは困惑の表情で訊ねた。
「まあ、普通に考えたら真っ先にその疑問を抱くわよね。―――ヴァイスハイト皇帝によるとメンフィル・クロスベル連合がエレボニア帝国との戦争に勝利、もしくはエレボニア帝国が戦争を回避する為にメンフィルの例の要求を呑んだ際の領土の”分け前”の中に”アルスターを含めたラマール州”が含まれているとの事よ。」
「”ラマール州”と言えば、帝国貴族最大の貴族であり、四大名門の一角でもある”カイエン公爵家”が統括領主を務めている領土ですが、まさかその”ラマール州”がクロスベルの領土になる予定だなんて…………」
「もしかしてヴァイスハイト皇帝がそのアルスターって人達を匿う事にした理由はそのアルスターって人達が将来のクロスベルの民達になるからかな?」
「確かにそれなら、納得できますね。」
「ええ、何だかんだ言ってもヴァイスハイト皇帝もそうですが、ギュランドロス皇帝も民達をとても大切にしていらっしゃる”名君”ですものね。」
ルファディエルの答えを聞いたエリィは驚きの表情を浮かべ、ある事に気づいたシャマーラの推測にエリナとセティはそれぞれ納得した様子で頷いた。

「無論その理由も含まれているが…………この情報もさっきヴァイスハイト皇帝から教えてもらった秘匿情報だが、どうやらヴァイスハイト皇帝達―――メンフィル・クロスベル連合は何らかの方法で”カイエン公爵家”に接触してカイエン公が逮捕されて以降”カイエン公爵家”を取り仕切っているカイエン公の娘の一人―――ユーディット・ド・カイエン公女をヴァイスハイト皇帝の”第一側妃”として迎える縁談を交渉して、その縁談が纏まったとの事だから、ヴァイスハイト皇帝を含めたクロスベルがアルスターの民達を護る事でその公女に対する”恩”を作る事でカイエン公爵家のクロスベルに対する忠誠心を高める為の”点数稼ぎ”でもあるとの事だ。」
「きょ、局長…………」
「何ィッ!?あのリア充皇帝、戦争のどさくさに紛れてただでさえ多いハーレムメンバーを更に増やしたのかよ!?」
「しかもその相手がよりにもよってエレボニアの内戦の主犯であるカイエン公のご息女だなんて…………」
「という事はわたし達はヴァイスさんの”点数稼ぎ”の為にもこんな夜中にわざわざ召集をかけられてそのアルスターの人達を護送しなければならないのですか…………」
セルゲイが口にした驚愕の情報に仲間達と共に冷や汗をかいて脱力した後ロイドは疲れた表情で肩を落とし、ランディは悔しそうな表情で声を上げ、エリィは表情を引き攣らせ、ティオはジト目で呟いた。

「まあ、今の話を聞けば、貴方達も色々と思う所はあるかもしれないけど、アルスターの民達は将来はクロスベルの民達にもなるのだから、それを考えれば彼らの護送は特務支援課(あなた達)の業務の一つでもあるでしょう?」
「確かにヴァイスハイト皇帝の”私情”が含まれているとはいえ、そのアルスターの人達を護送する事もまた特務支援課の業務の一つではありますね…………」
「それにエレボニアやクロスベルとか関係なく、そんなエレボニアの悪巧みに巻き込まれた民間人を護る事は特務支援課―――いえ、クロスベル警察の一員として当たり前の事ですよ!」
「ハハ、それもそうだな…………―――話はわかりました。そういう事であればアルスターの民達の護送に関する”緊急支援要請”を謹んで受けさせて頂きますが…………その件で一つ気になる事があるのですが。」
苦笑しながら答えたルファディエルの指摘にノエルは疲れた表情で溜息を吐いて答え、真剣な表情で答えたユウナの意見に同意したロイドはセルゲイとルファディエルにある質問をしようとした。

「ん?何が気になっているんだ?」
「町一つの民間人を護送する事になると護送する人数も相当なものになると考えられますが…………何故、その護送任務に一課を含めたクロスベル警察の他の部署やクロスベル帝国軍、警備隊がつかないのでしょうか?」
「言われてみればそうですね…………」
「辺境の町だから、普通の町よりは少ないとは思うけど、それでも数十人くらいはいると思うから、あたし達だけじゃ手が足りないかもしれないよね~?」
ロイドの疑問を聞いたエリナは頷き、シャマーラは考え込んでいた。
「その件についてだけど…………ヴァイスハイト皇帝達は”アルスターの民達への襲撃はもう一度起こる―――それも護送の最中にあると想定しているわ。”」
「しゅ、”襲撃がもう一度起こる事を想定している”って…………一体どういう事なんですか?」
ルファディエルの答えを聞いたユウナは不安そうな表情で訊ねた。

「”ハーメルの惨劇”の件を考えると、アルスターを襲撃するように猟兵達に依頼した”依頼人”にとってはアルスターの民達が生き残っている事はその”依頼人”も関わっていると思われるエレボニア帝国政府にとっても都合が悪い事実だろうから、連中にとってはアルスターの民達は必ず全員死んでもらわなければ、アルスターの民達の生存は後々のエレボニア帝国政府にとって都合が悪い存在だと、ヴァイスハイト皇帝達は想定しているとの事だ。」
「実際に襲撃を行った”犯人”である猟兵団を目撃している”証人”であるアルスターの民達を全員殺害する事で、”ハーメルの惨劇”のように”アルスター襲撃”の”真実”を闇に葬る…………そういう事ですか…………!」
「例え”アルスター襲撃”の理由がメンフィル・クロスベル連合との戦争に勝つ為という理由とはいえ、もしその事が世間に知れ渡ればエレボニア帝国は各国から非難される上信頼も地の底に落ちるでしょうし、何よりも帝国政府に騙されたエレボニアの民達が暴動を起こす可能性は非常に高い事はわかりきっていますから、エレボニア帝国政府の関係者と思われる”依頼人”にとってはアルスターの民達に生きてもらう事は非常に都合が悪い状況でしょうね…………」
セルゲイの話を聞いたロイドとエリィはそれぞれ厳しい表情を浮かべて推理をし
「ですが何故ヴァイスさん達は護送の途中に必ずもう一度襲撃があると睨んでいるんでしょう?」
「恐らくエステルちゃん達が一度襲撃を防ぐ事で、アルスターの連中も自分達が助かった事に安心して気が抜けている所を狙うつもりなんだろうな、その”依頼人”とやらは。アルスターの連中を匿う場所はどんな所かわからねぇが、襲撃の件を考えればクロスベルが遊撃士協会(ギルド)と協力して”匿っている間の襲撃”に対して最大限に警戒するだろうから、さすがにそこを襲撃する事は厳しいだろうから、アルスターの連中が本格的に匿われる前に消す算段なんだろうな。」
「そ、それなら尚更護送は万全の態勢でするべきじゃないですか!なのにどうしてヴァイスハイト皇帝達は護送に一課の人達や警備隊、それに軍を使わないんですか!?」
ティオの疑問に答えたランディの推測を聞いたノエルは真剣な表情で声を上げた。

「―――”敢えてアルスターの民達の守りを薄くする事で襲撃者達を確実に釣りだす為よ。”」
「”守りを薄くする事で、襲撃者達を確実に釣りだす為”、ですか?」
「一体どういう事なのか訳がわからないよ~。」
ルファディエルの答えを聞いたエリナは目を丸くし、シャマーラは疲れた表情で呟き
「…………恐らくですけど護送の状況が鉄壁の場合だと、”襲撃者達”は襲撃を一端諦めて再び襲撃する機会を狙うでしょうから、”アルスター襲撃”の”依頼人”もそうだけどその”襲撃者達”に”アルスターの民達を襲撃する事はあまりにもリスクがある事を思い知らせる事でアルスターの民達への襲撃を諦めさせる為”に守りを薄くして襲撃者達を釣りだしてそこを徹底的に叩く作戦なのだと思います。」
「ええ、まさにその通りよ。」
「ちなみにだが…………どうやらこの間の迎撃戦のどさくさに紛れて猟兵団がクロスベルに”密入国”して、”ジオフロント”やクロスベル郊外に潜伏している事が一課やメンフィル帝国軍の諜報部隊の調べで判明している。…………それを考えると”次の襲撃”の際は、クロスベルにアルスターの民達への2度目の襲撃を介入させない為にクロスベルでも何らかの騒動を起こすと想定している。」
「ええっ!?猟兵団がジオフロントやクロスベルの郊外に!?」
セティの推測にルファディエルは頷き、セルゲイが口にした驚愕の情報にロイド達がそれぞれ血相を変えている中ユウナは信じられない表情で声を上げた。

「よりにもよって迎撃戦の時に”密入国”していたなんて…………まさかその依頼人は”アルスター襲撃”が未然に防がれた時の”備え”としてその猟兵団をクロスベルに潜伏させたのでしょうか…………?」
「いや…………さすがにその時点でクロスベルがエレボニアの貴族連合軍の上層部クラスと繋がっている上”アルスター襲撃”に対する対策までしている事を想定してはいないと思う。恐らくその猟兵団は”別の目的”―――メンフィル・クロスベル連合とエレボニアの戦争の最中に何らかのタイミングでその猟兵団にクロスベルを襲撃させてメンフィル・クロスベル連合を混乱させる目的だったんだろう。」
「そして”アルスター襲撃”が失敗すれば、急遽その猟兵団を動かす羽目になる…………という所でしょうね。」
不安そうな表情で呟いたノエルの推測に対して答えたロイドは真剣な表情を浮かべ、ロイドに続くように推測を口にしたエリィは複雑そうな表情を浮かべた。
「要するにわたし達やわたし達に護送されるアルスターの人達はその猟兵団を釣る為の”餌”ですか………」
「味方どころか護送対象者まで敵を釣る為の”餌”にするなんてえげつない作戦、恐らくだがエルミナ皇妃が考えたんだろうな…………まあ、ルファディエル姐さんも考えそうッスけど。」
「フフ、それについては否定できないわね。」
ティオはジト目になり、疲れた表情で呟いたランディの推測に苦笑しながら同意したルファディエルの答えにロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「頼むから、せめて否定くらいはしてくれよ…………話を戻しますけど、今までの話から察するに一課を含めたクロスベル警察や警備隊、それにエステル達以外のクロスベルの遊撃士達はクロスベルで騒動を起こすと想定されている猟兵達の対処で、クロスベル帝国軍はその護送の最中に釣りだされた猟兵達の制圧でしょうか?」
我に返ったロイドは疲れた表情で指摘した後気を取り直してセルゲイ達に確認した。
「ああ。ちなみにその釣りだされた猟兵達の制圧にはクロスベル帝国軍だけじゃなく、メンフィル帝国軍も参加するとの事だ。」
「メ、メンフィル帝国軍までその猟兵達の制圧に協力してくれるんですか!?」
「幾ら連合を組んでいるとはいえ、クロスベルの都合の為だけに何故協力してくれるのでしょうか?」
セルゲイの説明にノエルは驚き、エリィは目を丸くして訊ねた。

「そのあたりの事情についてはヴァイスハイト皇帝ははぐらかしていたが…………ヴァイスハイト皇帝の話にあったダドリー達”一課”の連中やメンフィル帝国軍の諜報部隊が確認したというその猟兵団を考えれば、もしかしたらその猟兵団に対する”報復”かもしれん。」
「あのメンフィルが”報復”する事まで考える程の猟兵団ですか………ちなみにその猟兵団の名前は何という名前なんでしょうか?」
セルゲイの説明を聞いて目を丸くしたティオはセルゲイ達に訊ねた。
「―――”北の猟兵”よ。」
「”北の猟兵”…………ノーザンブリアを拠点にしていて、その稼ぎを祖国のノーザンブリアに送っている元ノーザンブリア公国軍の連中か。」
「それに確か”北の猟兵”はメンフィル帝国が”本気でエレボニア帝国に戦争を仕掛ける理由”の一つとなった”ユミル襲撃”を実行した猟兵達でもあったそうだから…………メンフィル帝国軍まで協力する理由は恐らくその”ユミル襲撃”に対する”報復”かもしれないわね…………」
ルファディエルの答えを聞いたランディは目を細め、静かな表情で推測を口にしたエリィは複雑そうな表情をした。

「恐らくはそうでしょうね。ヴァイスハイト皇帝の話によると猟兵達の制圧に協力するメンフィル帝国軍は”英雄王”と”聖魔皇女”、それにプリネ皇女が直々に率いる事になっているとの事だもの。」
「おいおいおい…………!たかが猟兵を殲滅する為だけに皇族どころか、”総大将”まで出て来るとか、どんだけその”北の猟兵”の連中に対してマジになってんだよ、メンフィルの連中は!?」
「エレボニア帝国同様リウイ陛下を含めたメンフィル帝国を本気で怒らせた”北の猟兵”達はご愁傷様としかいいようがないですね…………リウイ陛下達の事ですから、恐らくその”北の猟兵”達を慈悲もなく殲滅するでしょうし。」
ルファディエルの説明を聞いて驚きの声を上げたランディは呆れた表情で溜息を吐き、ティオは静かな表情で呟いた。
「リフィア殿下まで”北の猟兵”達の制圧に協力するって事はリィンさん達も来るんじゃないかな~?」
「リィンさん達はリフィア殿下の親衛隊に所属していますものね…………」
「それに”北の猟兵”達はリィンさん達にとっては故郷を襲撃した猟兵達の仲間でもありますから、リィンさん達自身にとっても”北の猟兵”に対する”復讐”になるのでしょうね…………」
「それは…………」
シャマーラの推測にエリナは頷き、セティの推測を聞いたエリィは複雑そうな表情をした。

「…………課長、ルファ姉。俺達はアルスターの民達をどこまで護送する事になり、ヴァイスハイト皇帝達が想定している襲撃地点はどこになるのですか?」
「アルスターの民達を護送するお前達の目的地は”太陽の砦”だ。ヴァイスハイト皇帝達によるとあそこはヴァイスハイト皇帝達がディーター元大統領政権に抵抗していた頃に”拠点”として利用していたことから、ライフラインも一通り揃っている上非常時に利用できるように今も稼働しているとの事だ。」
「そして予想される襲撃地点は太陽の砦の手前―――”古戦場”よ。」
ロイドの質問にセルゲイとルファディエルはそれぞれ答え
「”古戦場”か…………あそこなら護送する俺達を包囲しやすい上、クロスベルやタングラム門からも距離がある事で普通に考えれば応援が到着するのも時間がかかるだろうから、襲撃する場所として絶好の場所だな…………」
「クロスベル帝国軍やメンフィル帝国軍はどうやって、”古戦場”に潜んでいると思われる猟兵達から見つからず”古戦場”に待機しているのですか?」
ルファディエルの話を聞いたランディは真剣な表情で考え込み、ティオはある事を訊ねた。

「クロスベル帝国軍もそうだけどメンフィル帝国軍も襲撃が起こる直前まで”古戦場”の上空でステルス機能を発動させた戦艦を滞空させて、その戦艦に兵達を待機させて、襲撃が起こればその兵達を転移魔術で”古戦場”に転移させる事になっているわ。そして貴方達は襲撃が起こった際には信号弾を空に打ち上げればいいわ。―――で、ユウナに聞きたいことがあるのだけど…………」
「へ…………あたしにですか?一体何を聞きたいのでしょうか?」
「今までの話からも既に察していると思うが、襲撃が起こればその場は”本物の戦場”―――”互いの命を奪い合う現場”になるだろう。」
「貴方達の目的はあくまで護送するアルスターの民達の護衛に徹する事で、メンフィル・クロスベル連合軍と共に猟兵達の制圧をする必要はないのだけど…………それでも、まだ新人どころか警察学校も卒業していない”学生”のユウナにはあまりにも”早すぎる現場”よ。」
「ルファディエルと相談した結果、今回の緊急支援要請のお前の参加はお前自身の自由意志にする事に決めて、ヴァイスハイト皇帝にもその件を説明して既に承諾してもらっている。」
「確かに幾ら補充要員とはいえ、本来だったらまだ警察学校の生徒であるユウナちゃんが経験するには”あまりにも酷な現場”になるでしょうね…………」
「ええ…………状況を考えれば間違いなく多くの死者が出る凄惨な現場になるだろうし…………あ…………もしかして、キーアちゃん達がちゃんと寝ているかどうかの確認はそれが関係しているんですか?」
セルゲイとルファディエルの話を聞いたノエルは複雑そうな表情を浮かべ、疲れた表情で呟いたエリィはある事に気づいてセルゲイ達に訊ねた。

「そうよ。子供の方のキーアにはとても聞かせられない話だし、大人の方のキーアだったらあの娘の事だから貴方達に協力する申し出をする事は目に見えているでしょう?」
「そうッスね…………」
「まあ、10年後の方のキーアは今よりも”未来”の出来事を知っていますから、ひょっとしたら知っていてわたし達を困らせない為に敢えて過去の自分と共に眠る事にしたかもしれませんが…………」
ルファディエルの意見に同意したランディとティオはそれぞれ複雑そうな表情を浮かべた。
「…………ユウナ、俺は”特務支援課”のリーダーとして正直今回の緊急支援要請からは外れて欲しいと思っている。ルファ姉の言う通り、今回の”緊急支援要請”は今まで受けた支援要請や経験した”現場”の中でも間違いなくトップクラスの修羅場になるだろうから、まだ新人どころか警察学校も卒業していないユウナには”あまりにも早すぎる現場”だ。」
「そうね…………それこそかつてクロスベルが”赤い星座”、”黒月”、そして結社の猟兵達に襲撃されたあの時よりも凄惨な現場になると思われるもの。」
「ロイド先輩…………エリィ先輩…………―――お二人やセルゲイ課長、ルファディエル警視の心遣いはとても嬉しいですけど、その頼みだけは聞けません。あたしは特務支援課に来た時から―――いえ、警察学校に入学した時からクロスベル警察の一員としてクロスベルを護りたいと気持ちで精進し、そしてクロスベルを護る為にも人手不足な”特務支援課”に派遣されたのですから、あたしも支援課の一員として…………クロスベル警察の一員として今回の緊急支援要請にも是非協力させてください!」
ロイドとエリィの気遣いを知って呆けたユウナだったがすぐに決意の表情を浮かべて答えた。

「ユウナさん…………」
「ったく、雛鳥なのにいっちょ前な発言をしやがって…………」
ユウナの決意にティオは目を丸くし、ランディは苦笑し
「……………………わかった。だけど最優先に自分の身を護る事と俺達の指示に必ず従う事…………この二つを守る事を約束してくれ。」
「はい…………!」
ユウナの決意の表情を少しの間見続けたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた後気を取り直してユウナに指示をし、ロイドの指示にユウナは力強く頷いた。
「フフ、話は纏まったみたいね。それじゃあ早速だけど、護送の手筈について説明をするわ―――」
そしてロイド達の様子を微笑ましく見守っていたルファディエルはセルゲイと共に護送についての手筈について説明を始めた――――――
 
 

 
後書き
またもや予告詐欺となる話にしてしまい申し訳ありません…………次回こそは敵、味方共に豪華な面子が登場する話になります。 

 

第25話

1月16日、同日AM3;45―――

数時間後、オーレリア将軍率いる貴族連合軍の残党によるアルスターの民達の護送を引き継ぎ、エステル達とも合流したロイド達は作戦内容の手筈通り、予め先頭に導力地雷(オーバルマイン)対策用に人を乗せていない自動運転で走らせるクロスベル警備隊の旧型の装甲車を3台走らせ、エステル達とジェダル達は囮の装甲車の後ろを走るアルスターの民達を乗せたクロスベル警察の護送バスにそれぞれ乗り込んでおり、ロイド達はそれぞれ運転にノエルとユウナを任せた支援課専用の車で護送バスの後ろに車を走らせていた。

護送は特に襲撃もなく順調に進み、襲撃地点と想定されている”古戦場”に入ったあたりでは何も起こらなかった。しかし、装甲車が太陽の砦の目の前の敷地に入った瞬間、予め仕掛けられていたと思われる導力地雷(オーバルマイン)による足元からの爆発が起こり、装甲車は炎上し始めた!


~古戦場~

「うわあっ!?」
「そ、装甲車がいきなり爆発を…………」
「一体何が起こったの…………!?」
「皆さん、落ち着いてください!」
「あたし達が外に出て状況を確かめてくるから、みんなは絶対バスから出ないで!――――――リザイラ、後ろのバスも含めて結界は頼むわよ!」
「ふふふ、そのくらいお安い御用です。――――――ご武運を。」
突然の出来事に混乱しているアルスターの民達を落ち着かせる為にミントと共に声を上げたエステルはアルスターの民達とリザイラに指示をし、指示をされたリザイラはその場で魔力を練り始め
「僕達が外に出たらすぐにドアを施錠して、僕達が戻ってくるまで決してドアを開けないでください!」
「りょ、了解しました…………!」
「すぐに外に出て周囲の警戒、そしてバスの護衛をしますわよ…………!」
ヨシュアはバスの運転を務めているクロスベル警察に所属している運転手に指示をし、フェミリンスはエステル達に指示をした後エステル達と共にバスから出ると、もう一台のバスからマリーニャ達とジェダル達がバスから現れ、そして全員が降りるとリザイラが展開した結界によって二台のバスはドーム型の結界に覆われた。
導力地雷(オーバルマイン)…………!ったく、やっぱり仕掛けてくんのかよ…………!」
「ロイドさん…………!」
「ああ…………!全員すぐに車を降りてバスの護衛に!エリィは車から降りたらすぐに信号弾を打ち上げてくれ!」
「ええ…………!」
「おおっ!」
同じ頃爆発が起きた様子を見たランディは厳しい表情で声を上げ、バスと共にブレーキをかけて車を止めたノエルは真剣な表情でロイドの名を呼び、呼ばれたロイドは頷いた後仲間達に指示をして急いで車から降りてエリィが信号弾を打ち上げるともう一台の車に乗っていたユウナ達も車から降り、車から降りたロイド達はすぐにバスに向かい、エステル達と共にバスを囲むような位置でそれぞれの武装を構えた。

「へ~、どうやらその装甲車には誰も乗っていなかったようやな?」
導力地雷(オーバルマイン)対策用に人を乗せていない装甲車に自動運転をさせて”囮”として使うとは…………俺達の知らない間にクロスベルは随分と”変わった”ようだな。」
するとその時男達の声が聞こえると遺跡の壁にいたゼノとレオニダスが跳躍して炎上する装甲車を飛び越えて装甲車の前に着地した。
「!テメェらは…………!まさか、テメェらまでアルスターの連中の虐殺に手を貸しているのか…………!?」
「あの二人を知っているんですか、ランディさん。」
ゼノとレオニダスの姿を見て二人が何者かにすぐに気づいたランディは厳しい表情で声を上げ、ランディの様子が気になったティオはランディに訊ねた。

「ドレッドヘアの野郎は破壊獣(ベヒモス)レオニダス。もう一人のサングラス野郎は”罠使い(トラップマスター)”ゼノ。どちらも”西風の旅団”の連隊長だ。」
「あ、あんですって~!?」
「”西風の旅団”…………”赤い星座”と並ぶゼムリア大陸最強の猟兵団ね…………」
「ああ…………そしてあのガルシアがルバーチェに引き抜かれる前に所属していた猟兵団でもあるな…………」
「どうやら”依頼人”は”一度目の襲撃”が失敗したから、”二度目の襲撃”には念を入れたようだね…………」
ランディの説明を聞いたエステルは厳しい表情で声を上げ、エリィは不安そうな表情で呟き、ロイドは真剣な表情でゼノとレオニダスを睨み、ヨシュアは警戒の表情でゼノとレオニダスを睨んだ。
「久しぶりやな、”闘神の息子”。”星座”を抜けた話は聞いていたけど、まさかお前が警察に就職するなんて、人生何があるかわからんもんやな~。」
「”表の世界”に逃げた事で腕は鈍ったと思っていたが…………”碧の大樹”ではあの”赤の戦鬼(オーガロッソ)”を退けた上討ち取ったと聞いている。その話が本当ならば、少しは楽しませてもらえそうだな。」
「うるせえ!その呼び名はヘドが出るほど気に喰わねぇんだよ!それと叔父貴とは戦って勝ったが、別に”止め”までは刺していねぇよ!叔父貴は俺達に無力化された後別の人物に”止め”を刺されてあっさり逝っただけだから勘違いするんじゃねぇ!」
ゼノとレオニダスに声をかけられたランディが厳しい表情で声を上げて反論したその時
「ハハ、だが”止め”までは刺していないとはいえ、あのシグムントを超えるとはどうやら”俺”やバルデルの領域に近づいているようだな、ランドルフ。」
突如他の男の声が聞こえた後、いつの間にか遺跡の壁の上にいたゼノやレオニダスと同じジャケットを身に纏った中年の男が跳躍してゼノとレオニダスの前に着地した!

「な…………アンタは…………!?何でアンタが生きているんだ…………!?確かアンタは2年前の”リベールの異変”で親父と共に戦死したんじゃなかったのかよ!?」
「ランディ…………?あの人物は一体何者なんだ…………?」
「2年前の”リベールの異変”で戦死したと言っていましたが…………」
中年の男を見て困惑している様子のランディにロイドは不思議そうな表情で訊ね、ティオは真剣な表情で中年の男を見つめた。
「フフ………西風の旅団長、ルトガー・クラウゼルだ。見知りおき願おうか――――――”特務支援課”に”剣聖カシウス・ブライト”の子供達。」
「に、”西風の旅団”の団長さん…………!?」
「な、何かその様子だと、あの人はこの世界にとってとんでもない人物みたいだね~。」
「”猟兵王”ルトガー・クラウゼル…………!だけど彼はランディさんの言っていたように、確かに2年前の”リベールの異変”でロレントを襲撃した際、メンフィル帝国軍の迎撃によって戦死したはず…………」
中年の男――――フィーの育ての親にして”西風の旅団”の団長である”猟兵王”ルトガー・クラウゼルが自己紹介をするとエステル達と共に血相を変えたミントは信じられない表情で声を上げ、エステル達の様子を見たフィアは冷や汗をかき、真剣な表情で声を上げたヨシュアは困惑の表情でルトガーを見つめた。

「いえ、確かに二人の言っているように”その男が一度死んだ事は本当なのでしょう。”」
「ええ…………その男性は他の二人と違って”生者”ではありません。」
「そちらの男性は幽霊の私とは異なる”意志を持って動く死者”――――――”不死者”です。ですが…………」
「不死者なのに………ハッキリ意志持っている事…………不思議…………」
「えっと………”不死者”って何なんですか?」
「”不死者”とは”意志がある屍”――――――要するに”ゾンビ”です。」
「ゾ、”ゾンビ”!?あの人が…………!?」
フェミリンス、エリナ、リタはルトガーの正体を言い当て、ナベリウスは不思議そうな表情で首を傾げ、”不死者”が何なのかわからなかったユウナはセティの説明を聞くと信じられない表情で声を上げてルトガーを見つめ
「ええっ!?あんなにハッキリ意志を持っているのに”不死者”なんですか!?」
「まさかとは思うが”不明体”の同類か?」
「フフ、さすがにそれは考え過ぎだよ。」
「ええ…………天使であるこの身にはあの男は以前戦った”不明体”と違い、”不死者”である事はハッキリわかります。」
ユウナのようにルトガーが”不死者”である事を知ったリリカは驚き、ジェダルの推測にフルーレティは苦笑しながら否定し、ユリーシャは静かな表情で答えた。

「ハハ、再会して早々俺の正体がバレるなんて、”星座”を抜けてから中々面白い連中と知り合ったようだな、ランドルフ。」
「いや、一部は俺も今日会ったばかりの連中なんだが…………――――――そんな事よりも、本当にアンタ達は俺達が護送している連中が”狙い”でここに現れたのか!?」
懐かし気な様子で話しかけたルトガーに対して疲れた表情で答えたランディだったがすぐに気を取り直して厳しい表情で問いかけた。
「我らがこの場にいる…………それが答えだ。」
「ま、俺達としたら”虐殺”みたいな趣味の悪い事はあんまり好まへんねんけど、”依頼人”の”要請(オーダー)”やからな。」
「!やはりあんた達は”アルスター襲撃”を指示したエレボニア帝国政府と何らかの形で繋がっていると思われる”依頼人”に雇われているのか…………!」
レオニダスとゼノの答えを聞いたロイドが厳しい表情で推測を口にしたその時
「アハハ、要請(オーダー)を受けたのは”西風の旅団”だけじゃないよ!」
ルトガーとは逆の位置の遺跡の壁に現れたシャーリィとガレスが跳躍してルトガー達の傍に着地した。

「”赤い星座”まで…………」
「なっ!?”赤い星座”って事はあの二人がクロスベルを襲撃した猟兵達の…………!」
「シャーリィ、ガレス!てめぇら叔父貴やザックスが殺された上”赤い星座”自体が衰退しながらも性懲りもなくまた、クロスベルに喧嘩を売りに来たのか!?」
シャーリィとガレス――――――”赤い星座”の登場にエリィは不安そうな表情を浮かべて呟き、エリィが呟いた言葉を聞いて驚いたユウナは怒りの表情でシャーリィとガレスを睨み、ランディは厳しい表情で二人に問いかけた。
「若に逆に聞きますが、我々”赤い星座”がシグムント様を含めた多くの団員達を殺害した挙句”赤い星座”を”西ゼムリア通商会議”で”国際犯罪者”扱いして我々を徹底的に嵌めたクロスベルに対して”報復”も考えないような”負け犬”にまで落ちぶれると思っていたのですか?」
「どう考えても八つ当たりじゃないですか…………」
「貴方達がそんな事になったのも、全部貴方達自身の悪行による自業自得じゃないですか!」
ランディの言葉に対して厳しい表情で反論したガレスの説明を聞いたティオは呆れ、ノエルは怒りの表情で指摘した。

「ま、シャーリィはそこの所は興味ないんだけどね~。シャーリィが新しくお世話になる事になった”結社”も今回の件に関わっているから、”赤い星座”の猟兵兼”執行者”としてもランディ兄が護ろうとしている人達の殲滅をしなければならないんだ~。」
「あ、あんですって~!?って事は貴女も結社の”執行者”の一人なの!?」
シャーリィの答えを聞いてロイド達やヨシュア達と共に血相を変えたエステルは厳しい表情でシャーリィに問いかけたその時
「フフ、執行者No.ⅩⅦ――――”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランド。それが結社の新メンバーとなった彼女のナンバーと二つ名さ。」
カンパネルラがマクバーンと共に転移でシャーリィの傍に現れた!
「結社の執行者No.0―――――”道化師”カンパネルラ…………!」
「ゼムリア二大猟兵団に結社まで協力するとか、何気に”クロスベル動乱”の時よりもとんでもない面子過ぎでしょう…………」
「隣にいる男は初めて見ますけど、やはり結社の”執行者”なのでしょうか…………?」
カンパネルラの登場にロイドは厳しい表情で声を上げ、ティオは疲れた表情で呟き、セティは真剣な表情でマクバーンを見つめて呟いた。

「不味い……よりにもよって”彼”がいるなんて……!」
「パパ…………?やっぱりあの人も”執行者”か”蛇の使徒”なの…………?」
「それにその様子ですとあの男は結社の中でも相当な危険人物のようですわね。」
マクバーンを見て厳しい表情を浮かべて呟いたヨシュアの言葉が気になったミントは首を傾げ、フェミリンスは真剣な表情で推測し
「ああ…………彼は執行者No.Ⅰにして”鋼の聖女”と並ぶ結社最強の使い手――――――”劫炎のマクバーン”だ。」
「あ、あんですって~!?しかもNo.Ⅰって事は、あのレーヴェより上じゃない!」
「それもあの”鋼の聖女”と並ぶ程の強さだなんて…………」
「な、何か状況はよくわかんないけど、エステル達にとっての強敵のオールスター状態のようだね~………」
「…………確かにあのルトガーという男とマクバーンという男は他の連中とは”格”が違うようだな。」
「フフ、あのアルスターって町の戦いの時よりは楽しめそうかな?」
「そんな暢気な事を言えるのは”魔神”であるフルーレティさんくらいですよ…………」
「ハハ、雑魚共を燃やすだけの気が乗らない話だったが、”漆黒の牙”に加えて”剣聖”の娘達に”特務支援課”までいるとは、”光の剣匠”とやりあった時の次くらいには楽しめそうじゃねぇか。」
ヨシュアの情報を聞いてロイド達と共に驚いたエステルは驚きの声を上げ、エリィは不安そうな表情を浮かべ、エステル達の話を聞いていたフィアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ジェダルはルトガーとマクバーンを警戒し、静かな笑みを浮かべて呟いたフルーレティにリリカは疲れた表情で指摘し、マクバーンはエステル達を見回して不敵な笑みを浮かべた。

「クク、幾らリベールとクロスベルの”英雄”が揃っていようとこれ程の使い手が相手だとどうしようもあるまい。」
するとその時エステル達やロイド達にとって初めて聞く男の声が聞こえた後黒衣の男が転移術によって仮面を被ったコートの青年とジョルジュと共に現れた!
「だ、誰…………!?」
「俺達も初めて会う相手だが…………」
「状況を考えれば、連中は少なくても俺達の”敵”である事は確かだろうぜ。」
「ヨシュア、あの3人に見覚えは?」
「いや…………少なくても僕が知る限りの”執行者”や”蛇の使徒”の中に彼らはいない。だけど”転移”を使ったという事は恐らく結社と何らかの繋がりがある組織の可能性は高いと思うよ。」
黒衣の男達の登場にミントは困惑の表情で声を上げ、ロイドとランディは警戒の表情で男達を睨み、エステルに訊ねられたヨシュアは男達を警戒しながら答えた。

「フフ、初対面でそこまで見抜くとはさすがはかの”白面”殿に仕込まれただけはあるようだね?」
「あ、あんですってぇ…………!」
「ど、どうしてパパの事を…………」
「…………まさか貴方は…………」
「アルスター襲撃の件から今の状況、そして”白面”が知人であるという発言から考えて…………結社の十三工房に参画していた集団にして結社を裏切り、鉄血宰相と手を組んだ”黒の工房”の関係者――――――特に黒衣の”不死者”である貴方はその責任者ではなくて?」
男がヨシュアの過去を知っている事にエステル達が血相を変えている中フェミリンスは自身の推測を口にした。
「ええっ!?それじゃああの黒衣の男も不死者なんですか!?」
「ええ…………それとそちらの仮面の男も”不死者”ですね。」
フェミリンスの推測を聞いたリリカは驚いて黒衣の男を見つめ、リリカの言葉に頷いたユリーシャは真剣な表情で仮面の青年に視線を向けた。

「ハハ、ご明察だ。黒の工房長にして”地精”の長である”黒のアルベリヒ”だ。」
「”蒼のジークフリード”。”地精”に所属している。」
「…………ジョル――――――いや、”銅のゲオルグ”。同じく”地精”に所属している。」
「”地精”…………初めて聞く組織ですね。」
「あのアルベリヒという男の発言からして、恐らく”地精”とは”黒の工房”の別の呼び方――――――いや、”地精が組織としての真の名”なのだろう。」
黒衣の男――――――黒のアルベリヒ、仮面の青年――――――蒼のジークフリード、そしてジョルジュ――――――銅のゲオルグがそれぞれ名乗った後に呟いたセティの疑問にロイドがアルベリヒ達を睨みながら自身の推理を答えた。

「ハハ、またもやご明察だ。さすがは誰よりも早くクロイス家の”真実”に辿り着いたガイ・バニングスの弟と言った所かな?」
「ガイさんの事まで知っているなんて…………」
「…………どうやらその口ぶりだとディーターさん達とも――――――いや、それどころかヨアヒムを含めた”D∴G教団”とも何らかの繋がりはあったようだな?」
アルベリヒのロイドに対する評価を聞いたティオは不安そうな表情を浮かべ、ロイドは厳しい表情を浮かべてアルベリヒを睨んで指摘した。
「フフ、”そちら”に関しては私はそれ程関わっていない。――――――かつて結社の前三柱の”白面”殿とはそれなりに懇意にさせてもらっていた。自律稼働型の小型戦術殻のテスターになってもらう形でね。フフ、12年前のハーメル事件でも多少は役に立ってもらったものだ。」
「ッ…………どういう事だ?」
「それって教授がエレボニアの主戦派を曝して起こしたっていう…………!?」
「…………どうやら”ハーメル”の件には隠された事情がまだ残っていたみたいだな。そして今夜――――――いや昨夜起こった”アルスター襲撃”、アルスターの人達を護送している俺達の前に現れた事、更にあんたがオズボーン宰相と手を組んだ事を考えると…………――――――あんたが猟兵達に”アルスター襲撃”を依頼した”依頼人”なのか!?」
アルベリヒが口にしたある言葉を聞いたヨシュアとエステルは血相を変え、ロイドは真剣な表情でアルベリヒを睨んで問いかけた。

「クク…………ハハ…………ハハハハハッ!見事だ!まさにその通りだよ!まさかたったそれだけの情報で、それも僅かな時間で私に辿り着くとは正直驚いたぞ!」
「あ、あんですってぇ…………っ!」
「つまりアルスターの件の”黒幕”はその男という事か。」
「ッ…………何故、”第二のハーメル”を生まれさせようとした!?それも”ハーメル”の時のようにリベールに冤罪を押し付けて、エレボニアとメンフィル・クロスベル連合との戦争にリベールを巻き込もうとしている!?」
声を上げて笑った後に答えたアルベリヒの答えにエステルは怒りの表情を浮かべ、ジェダルは静かな表情でアルベリヒを見つめ、ヨシュアは怒りの表情でアルベリヒに問いかけた。
「フフ、全ては”地精”の悲願である”巨イナル黄昏”を成就させる為とだけ言っておくよ。」
「”巨イナル黄昏”…………?」
「意味は全くわかんねぇが、シャーリィ達どころか結社まで関わっているとなると”碧き零計画”と同等か、それ以上のロクでもない計画なのは間違いねぇだろうな…………」
アルベリヒの答えの意味がわからないエリナは眉を顰め、ランディは厳しい表情を浮かべた。そしてアルベリヒが指を鳴らすと数百人の北の猟兵達や軍用犬達が一斉に現れてバスを守っているエステル達やロイド達を包囲した!

「”赤い星座”や”西風の旅団”とも恰好が異なる猟兵という事は彼らが課長達の話にあったクロスベルに潜伏していた…………!」
「”北の猟兵”なんだろうね~。」
「これ程の数の猟兵がクロスベルに潜伏していたなんて…………」
北の猟兵達の登場にノエルとシャマーラは真剣な表情で呟き、エリィは不安そうな表情を浮かべた。
「ほう?まさか彼らの存在を把握していたとは。ちなみにだが”北の猟兵”はここにいる者達だけでなく、他にもいるが…………その者達は今頃クロスベルを襲撃している――――――かつてクロスベルを独立させる為にディーター・クロイスが雇った猟兵達がクロスベルを襲撃した時のようにね。」
「なっ!?それじゃあロスベルからの応援が着くのが遅れるように猟兵達にクロスベルを…………!」
アルベリヒの話を聞いたユウナは驚いた後アルベリヒを睨んだ。
「――――――そういう事だ。”北の猟兵”達にはアルスターの民達の殲滅が終わればクロスベルから撤収するように指示する予定になっている。」
「僕達の目的はあくまで”アルスターの民達の殲滅”だ。クロスベルが大切ならば、アルスターの民達を僕達に引き渡してくれ。」
「どこで襲撃の情報を知ったかは知らないが…………どれだけ抗おうと、お前達如きでは我らの計画の障害にはならない。理解したならば諦めてアルスターの民達を――――――」
ジークフリードとゲオルグが答えた後にアルベリヒがエステル達を見つめて嘲笑して答えかけたその時
「―――ならば俺達からも言わせてもらおう。”お前達如き”で俺達の”覇道”を止められると思っている事自体が大間違いだ。」
突如ヴァイスの声が辺りに響いた!

「何…………ッ!?」
「この声は…………」
「ったく、まさにタイミングを見計らっていたとかし思えねぇぞ。」
ヴァイスの声を聞いたアルベリヒが驚いて周囲を見回している中ティオは明るい表情を浮かべ、ランディは苦笑した。するとエステル達の上空にステルス機能を解除した”ヴァリアント”が二隻現れると共に、北の猟兵達を包囲するようにプリネ、ツーヤ、レーヴェ率いるメンフィル帝国軍とエヴリーヌ、アル、パティルナ、エイフェリア、リューン率いるクロスベル帝国軍がそれぞれ転移魔術によって次々と現れた!

「メンフィル・クロスベル連合軍やと…………!?」
「ステルス機能を搭載した戦艦に兵達を待機させて、”転移”による包囲網…………!」
「バカな…………最初から襲撃が読まれていたというのか!?」
「アハハ、こんな事、”西ゼムリア通商会議”の時以来だね~。」
メンフィル・クロスベル連合軍の登場にゼノは驚き、レオニダスはすぐにメンフィル・クロスベル連合軍の行動を悟って声を上げ、ガレスは信じられない表情で声を上げ、シャーリィは暢気に笑っていた。そしてエステル達の前にヴァイス、リセル、リウイ、イリーナ、ペテレーネ、エクリア、リフィア、ゼルギウス、シグルーン、リアンヌ率いる鉄機隊、リィン率いるリィン隊に加えてセリカ、サティア、ロカが転移魔術で次々と現れた――――――!
 
 

 
後書き
敵のメンツは閃4のリィン復帰時のような豪華メンツを思わせるような顔ぶれでしたが、味方のメンツはそれを軽く超えちゃいましたwなお、メンフィル・クロスベル連合軍の登場あたりからのBGMはVERITAの”覇道”だと思ってください♪ 

 

外伝~三人の英雄、三人の王~

~古戦場~

「ヴァイスさん!それにリセルさんにリウイ達も…………!」
「しかもシルフィアさん――――――じゃなくてリアンヌさんに加えて鉄機隊まで…………」
「セリカ様…………!それにエクリア様も…………!」
「えへへ、ご主人様達が来てくれましたから、もう安心ですね~♪」
「フフン、まさに形勢逆転じゃな!」
「いや、あんただけはその言葉に説得力が欠けると思うんだけど…………」
心強き味方の登場にエステルとティオは明るい表情を浮かべ、ヴァイス達と共に現れたセリカ達の登場にシュリとサリアが明るい表情を浮かべている中、自慢げに胸を張って答えたレシェンテにマリーニャは苦笑しながら指摘し
「リィン達も今回の制圧――――――いや、殲滅戦にやっぱり参加していたのか…………」
「ああ…………状況はモニターで見ていたけど、まさかこんな形で”彼”とも会う事になるとは思わなかったよ…………」
「まさかジョルジュ先輩が”黒の工房”の関係者だったなんて…………」
「リィンさん…………セレーネさん…………」
ロイドの問いかけに頷いたリィンは重々しい様子を纏って複雑そうな表情を浮かべたセレーネと共にゲオルグを見つめ、二人の様子をアルフィンは心配そうな表情で見つめた。

「…………”ユリーシャさん”。先程貴女はあの仮面の男も”不死者”だと言っていましたが、間違いないんですか?」
「え、ええ。それよりも何故この身の名前を…………」
ユリーシャに背を向けたまま問いかけたリィンの問いかけにユリーシャは戸惑いの表情で肯定した。
「…………久しぶりだね、リィン君、セレーネ君。まさか君達がエレボニア――――――いや、”Ⅶ組”の”敵”になるなんて、思いもしなかったよ。」
「それに関してはお互い様なのでは?――――――単刀直入に聞きます。貴方は一体いつから”黒の工房”と繋がっていたんですか?そして――――――その仮面の男は何者なんですか!?その仮面の男が”不死者”である事からして、まさか本当にその仮面の男の肉体はアイツの―――”クロウ”の遺体を利用しているんですか!?」
「「兄様…………」」
「シュバルツァー…………」
ジョルジュの問いかけに対して静かな表情で答えたリィンはジークフリードに視線を向けた後厳しい表情でジョルジュに問いかけ、リィンの様子をエリゼとエリスは辛そうな表情で、デュバリィは複雑そうな表情で見守っていた。
「……………………」
「既にジークフリードが”不死者”である事まで判明している以上、隠す意味もないね…………その問いかけに関しては否定しないとだけ言っておこう。」
「!!」
「その口ぶりですと、貴方もそちらの仮面の男の”不死者化”に関わっているようですね…………」
「外道が…………」
ジークフリードが何も語らず黙り込んでいる中静かな表情で答えたゲオルグの答えにリィンは目を見開き、シグルーンとゼルギウスは厳しい表情でゲオルグを睨んだ。

「それにしてもいずれ古巣とやり合う事になる事は想定していたけど、まさかこんな形で早速古巣とやり合う事になるなんてね。」
「それも”執行者”程の使い手が戦闘能力もない民間人の虐殺に手を貸すとは、”盟主”がいなくなった途端ただの外道の集団に堕ちたようだな。」
「おまけに”結社”を裏切った”黒の工房”やその”黒の工房”と協力関係である”鉄血宰相”とも組むとは。その様子ですと結社は随分追い詰められている状況のようですわね?」
エンネアとアイネスは厳しい表情でカンパネルラやマクバーンを睨み、デュバリィは真剣な表情でカンパネルラ達に問いかけた。

「いや、結社(僕達)の状況がそんな事になった原因の一つである君達にだけはそれを言われたくないんだけどねぇ。」
「クハハハッ!テメェが結社を抜けた上”英雄王”達と”盟主”を討った話は聞いていたが、まさかこんな所でやり合う事になるとは思わなかったぜ――――アリアンロード!」
デュバリィの指摘に対してカンパネルラは疲れた表情で答え、マクバーンは好戦的な笑みを浮かべてリアンヌを見つめた。
「その言葉そっくりそのまま、お返し致します。――――――とはいっても、貴方の相手は私ではありませんが。」
「あん…………!?それは一体どういう意味だ…………!?」
そしてリアンヌの言葉を聞いたマクバーンが不満げな表情を浮かべたその時
「―――お前の相手は俺達がする事になっている。」
「リアンヌと戦いたければ、まずは私達を倒す事ね。――――――とはいっても”神”でもない貴方では私達はともかく、セリカには絶対勝てないでしょうけど。」
「愚かな野望に手を貸し、民達の虐殺に手を貸す”罪人”よ、貴方の罪は軍神(マーズテリア)の神官騎士が私が裁きます。」
セリカ、サティア、ロカがそれぞれ前に出てマクバーンの相手をする事を宣言し
「セリカ様、私達も!」
「主の敵は私達の敵。どうかお覚悟を。」
「セリカ…………敵…………わたしたち…………敵…………覚悟する…………」
それを見たシュリも他の使徒達と共にセリカ達の元にかけつけ、シュリ達に続くようにリタとナベリウスもセリカ達の元にかけつけた。
「幾ら相手が執行者のNo.Ⅰでリアンヌさんと並ぶ使い手だろうと、相手が悪すぎましたね。」
「ハハッ、最強には最強をぶつけるってか?」
その様子を見たティオは静かな笑みを浮かべ、ランディは口元に笑みを浮かべた。

「ちょっ、勘弁してよ…………!ただでさえ、不味すぎる面子が揃っているのに、”鋼の聖女”すらも歯牙にもかけない”嵐の剣神”が相手とか、幾らマクバーンでも相手が悪すぎるよ…………!」
「こら、No.0!マスターへの侮辱は許しませんわよ!」
セリカ達がマクバーンの相手をする事を知ったカンパネルラは表情を青ざめさせ、デュバリィは厳しい表情でカンパネルラに指摘し、それを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力した。
「ほう?って事はテメェがクロスベルでアリアンロードに圧勝したとかいう”嵐の剣神”とやらか。クハハハッ!もしその話が本当なら”光の剣匠”以上に楽しめそうだなあ!」
一方マクバーンは興味ありげな表情を浮かべた後”火焔魔人”となり、更に異空間から魔剣アングバールを取り出した!
「ちょっ、何なのあの姿と剣は!?」
「”火焔魔人”は彼自身の”異能”によるもので、彼が持つ剣――――――”魔剣アングバール”は”ケルンバイター”と同じ”盟主”が彼に授けた”外の理”で作られた魔剣だ。」
「ええっ!?それじゃああの人が持っている魔剣は以前レーヴェさんが持っていた魔剣と同じものなの!?」
マクバーンの変わりように驚いているエステルの疑問に答えたヨシュアの説明を聞いたミントは驚き
(フン、なんじゃもう一人の”結社最強”とはいっても、リアンヌ程ではないだの。その程度の”力”等、よくて”下級魔神”クラスだの。)
ハイシェラはつまらなさそうな表情でマクバーンを見つめていた。

「おのれ…………っ!今頃北の猟兵達に襲撃されているクロスベルを無視してまで、何故このような過剰戦力でアルスターの民達を護る!?」
「フッ、別にクロスベルを無視している訳ではないのだが?」
「迎撃戦の際にクロスベルに密入国をしてクロスベルの郊外やジオフロントに潜伏した猟兵達の居場所は全てこちらで把握しています。そしてアルスターの民達を護送する”特務支援課”が”古戦場”に入ったあたりで既にギュランドロス皇帝陛下率いるクロスベル帝国軍がクロスベル警備隊やクロスベル警察の一課、そして遊撃士協会と共に猟兵達の”制圧戦”を開始しました。」
「ちなみに、その制圧戦には我らメンフィルも協力している。――――――ファーミシルス率いるメンフィル軍がな。」
「そ、そんな…………!?それでは今頃仲間達が…………!」
「くっ…………それもよりにもよって”空の覇者”まで投入するとは、何故ただの猟兵である我らの制圧の為だけにそこまで”本気”になる…………!?」
怒りの表情で声を上げたアルベリヒの問いかけにヴァイスは嘲笑し、リセルとリウイの話を聞いた北の猟兵達は仲間が窮地の状態に陥っている事に表情を青ざめさせたり、唇を噛み締め
「内戦の際にメンフィル帝国領であるユミルを襲撃しておきながら、ぬけぬけとよくもそのような戯言が言えるものじゃな!メンフィル帝国領であるユミルを襲撃した時点でお前達”北の猟兵”はメンフィルの報復対象じゃ!北の猟兵共はいずれ根絶やしにしてくれる!覚悟するがいい!」
北の猟兵達の言葉に対してリフィアが怒りの表情で指摘した。

「―――さてと、予想以上の”獲物”も釣れた事は僥倖だ。これを機会にエレボニアとの戦争が本格化する前にエレボニアの内戦でのように裏で暗躍する予定の協力者共は根こそぎ刈り取ってやろう。――――――アル、パティルナ、エイダ、リューン!」
大剣を鞘から抜いたヴァイスは大剣を掲げて声を上げてアル達の名を呼び
「了解しました。――――――これより猟兵団”北の猟兵”並びにその協力者、関係者達の”殲滅”を開始します。クロスベル帝国軍、戦闘開始(オープンコンバット)!」
「さあ、今度は自分達が生き残る為なら”何をしても許されると”勘違いしているノーザンブリアのバカ共にクロスベル(あたし)達に手を出せばどうなるかたっぷり思い知らせてやるよ、野郎共――――――ッ!」
「全く何故妾までこんな事を…………――――――クロスベル帝国軍、とっとと殲滅して、クロスベルに帰還するぞ!」
「ケガをしたらわたくしが回復してさしあげますから、遠慮せず突撃しろですのっ!!」
「オオオオオォォォォォ――――――ッ!!」
ヴァイスに名を呼ばれたアル、パティルナ、エイフェリア、リューンはクロスベル帝国軍に号令をかけて北の猟兵達に襲い掛かり
「こちらもだ、プリネ!」
「はい、お父様!――――――メンフィル帝国軍、戦闘開始!クロスベル帝国軍と協力して北の猟兵達を殲滅しなさい!」
「今こそ、メンフィルの”怒り”、”北の猟兵”達に思い知らせなさい!」
「メンフィルの同胞であるユミルを襲った挙句”第二のハーメル”を生まれさせる事に加担した奴らに慈悲は必要ない。決して一人も生かすな!」
「オオオオオォォォォォ――――――ッ!」
「キャハッ♪エヴリーヌもたっぷりと遊ぼうっと!」
「ハハハハハッ!久方ぶりの殲滅戦、大いに楽しませてもらうぞ!」
「う、うわあああああああ――――――ッ!?」
更にリウイに名を呼ばれたプリネはツーヤとレーヴェと共にメンフィル帝国軍に号令をかけて北の猟兵達に襲い掛かり、プリネ達の傍にいたエヴリーヌとリフィアの傍に自分から現れたディアーネはそれぞれ凶悪な笑みを浮かべて北の猟兵達に襲い掛かるメンフィル・クロスベル連合軍と共に北の猟兵達に襲い掛かり始め、それを見た北の猟兵達は悲鳴を上げた!

「さて…………俺達も行くぞ、リセル!」
「はい、ヴァイス様!」
「俺達もヴァイス達に続くぞ、イリーナ、ペテレーネ、エクリア!」
「「「はいっ!」」」
そしてヴァイス達とリウイ達もそれぞれ戦場に向かい、メンフィル・クロスベル連合軍と共に猟兵達との戦いを繰り広げ始めた。

「リィン、俺達はどうする!?その様子だとあのジークフリードとかいう仮面野郎やゲオルグとかいう奴に用があるんだろう!?」
「ええ!まずは無力化して捕縛し、戦闘後に尋問します!ステラ!君は兵達と共にバスを護衛するロイド達の加勢をしてくれ!エリス、アルフィン、アルティナはステラ達と共にロイド達の加勢を頼む!」
戦いが繰り広げ始められている中フォルデに判断を訊ねられたリィンはステラ達に指示をし
「「はいっ!」」
「了解しました…………!」
「――――――」
「わかりました!――――――リィン隊はこれよりバスの護衛に回ります!状況開始!」
「イエス・マム!!」
リィンの指示に頷いたステラ、エリス、アルフィン、アルティナは兵達と共にバスを護衛する為にバスへと向かった。
「エリゼ、セレーネ、フォルデ先輩は俺と共に黒の工房の関係者――――――”黒のアルベリヒ”達の制圧をするぞ!」
「「はいっ!」」
「おう!」
そしてリィンはエリゼ、セレーネ、フォルデと共にアルベリヒ達の元へと向かってアルベリヒ達と対峙した。

「貴様は宰相閣下の息子でありながら宰相閣下にとって想定外(イレギュラー)の行動ばかりをし続ける忌々しき灰の起動者(ライザー)…………!」
アルベリヒは自分達と対峙したリィン達を見ると怒りの表情でリィンを睨み
「その口ぶりだとあんたはオズボーン宰相の考えている計画についても詳しく知っていそうだな…………そちらの”蒼のジークフリード”、そしてジョルジュ先輩共々制圧して、後で色々と詳しい話を聞かせてもらう!」
「宰相閣下の駒に過ぎない愚者が生意気な…………!」
「たったそれだけの戦力で、僕達を抑えられると思うなんて、随分と甘く見られたものだね。」
リィンの宣言に表情を歪めたアルベリヒと淡々とした表情で呟いたゲオルグはそれぞれ自身の背後にミリアムやアルティナのような戦術殻を出現させた!
「「――――――」」
「ミリアムさんやアルティナさんのような戦術殻…………!」
「しかも”黒のアルベリヒ”の戦術殻は今までの戦術殻と比べると”格”が違うようね…………」
二人が出現させた戦術殻を見たセレーネは驚き、エリゼは警戒の表情でアルベリヒの背後にいる一際大きい戦術殻を見つめた。

「”ナグルファル”―――それが僕の戦術殻の名前さ。性能も二人のと比べると若干上さ。―――最も、”彼”が扱う戦術殻と比べれば、どれも比較対象にならないだろうけどね。」
「”ゾア=バロール”―――久々の稼働テストに付き合ってもらおう。」
「――――――生憎ながら貴様の相手は余達だ、黒のアルベリヒ!」
アルベリヒがゲオルグの後に戦術殻についての説明をするとゼルギウス、シグルーン、リフィアがその場にかけつけた!
「ゼルギウス将軍閣下!シグルーン副長!」
「それにリフィアまで…………お二人とも、敵将の前にリフィアを連れてくるのは止めて欲しいのですが…………」
リフィア達の登場にリィンは驚き、目を丸くしたエリゼは疲れた表情でゼルギウス達に指摘した。

「フハハハハッ!下僕共ばかりに活躍はさせんぞ!メンフィルの次代の女帝として、今回の戦の”総大将”である貴様は余が直々に相手をしてやろう!」
想定外(イレギュラー)如きが生意気な事を…………!」
「ふふっ、殿下の性格をよくわかっている貴女もそれは無理な事である事はわかっているでしょう?」
「それにこちらの制止を振り切って独断で行動されるよりはよほどマシだ。それと我々以外にもお前達に加勢する者がいるようだぞ?」
「え…………それは一体…………」
リフィアが高笑いしながら答え、リフィアの言葉を聞いたアルベリヒは怒りの表情を浮かべ、エリゼの指摘にシグルーンと共に苦笑しながら答えたゼルギウスの指摘にセレーネが呆けたその時
「――――――シュバルツァー、アルフヘイム!」
「デュ、デュバリィさん!?どうして俺達の加勢に…………というかサンドロット卿達とは行動を別にして大丈夫なんですか?」
デュバリィがかけつけてリィン達と共にジークフリードとゲオルグと対峙し、デュバリィの登場に驚いたリィンはデュバリィに訊ねた。

「マスターからは既に許可は取っていますから心配無用です。――――――”黒の工房”には内戦の件で一杯食わされてしまいましたから、その”借り”を返す為に仕方なく加勢してあげますわ!ありがたく思いやがりなさい!」
「ハハ…………何はともあれ、加勢、ありがとうございます。」
デュバリィの答えに仲間達が冷や汗をかいている中リィンは苦笑しながら答えた。
「クク…………灰の起動者(ライザー)に”守護の剣聖”、”現代の鉄騎隊”の”筆頭”ならば、少しは楽しめそうだな。」
一方ジークフリードは口元に笑みを浮かべた後自身の得物である二丁拳銃を構えた。
「その武装は確か”蒼の騎士”のもう一つの得物である…………」
「二丁拳銃…………そんな所までクロウさんと一緒だなんて…………」
ジークフリードの得物を見たデュバリィは真剣な表情を浮かべ、セレーネは複雑そうな表情をし
「…………っ!来い、メサイア!――――――戦術リンク・オン!メンフィル帝国軍所属リィン・シュバルツァー以下6名、これより”蒼のジークフリード”並びに”銅のゲオルグ”の制圧を開始する!みんな、行くぞっ!」
「おおっ!」
辛そうな表情で唇を噛み締めたリィンはすぐに気を取り直してメサイアを召喚し、そして仲間達に号令をかけてリィンはデュバリィ、セレーネはメサイア、エリゼはフォルデとそれぞれ戦術リンクを組んでジークフリードとナグルファルを操るゲオルグとの戦闘を開始し
「さあ、”第二のハーメル”を作ろうとした愚か者に”裁き”を与えてやるぞ、余の”守護神”と”守護騎士”よ!次代の女帝たる余が最も信頼する余の騎士たる力、存分に振るうのじゃ!」
「「仰せのままに(イエス)、我が(マイロード)!!」」
リフィアはゼルギウスとシグルーンに号令をかけてゾア=バロール操るアルベリヒとの戦闘を開始した!

「こ、これが”本物の戦場”…………ロ、ロイド先輩、あたし達はどうすればいいんですか!?」
一方初めて体感する”本物の戦場”に呆然としたユウナは混乱した様子でロイドに訊ね
「俺達の目的はあくまでバスの護衛だ!猟兵達の制圧は局長――――――ヴァイスハイト皇帝達に任せれて俺達はバスの護衛に専念するんだ!」
「は、はい…………!」
ロイドの指示を聞くと我に返って武装を構えて周囲を警戒した。
「ハハ、こんな状況になっても”戦場の空気”に流されずにアルスターの連中の護衛に徹するとはいい判断だ。さすがはランドルフがリーダーを任せた男といった所か?」
「アハハ、実際その人、警察なのに以前シャーリィみたいな小娘相手に容赦のない連携攻撃を仕掛けるくらい判断力はいいよ!」
するとその時ルトガー達”西風の旅団”とシャーリィとガレス、そして二人に率いられた”赤い星座”専用の軍用犬であるクーガー達”赤い星座”がバスを護衛するロイド達やエステル達と対峙した。

「”西風の旅団”と”赤い星座”…………!」
「二大猟兵団の団長、隊長クラスが揃いぶみですか…………」
「シャーリィ、オッサン!テメェら、自分達の状況がわかっていて、こっちに仕掛けるとか何考えてやがるんだ!?どう考えても今回の戦い、テメェらの”負け”だろうが!?」
ルトガー達と対峙したヨシュアは真剣な表情で声を上げ、ティオは警戒の表情でルトガー達を見つめ、ランディは厳しい表情でルトガー達に問いかけた。
「俺達の目的はあくまで”アルスターの民達の殲滅”。北の猟兵達がどうなろうとこちらにとっては関係ない。」
「ま、大佐に世話になっておきながらノーザンブリアの連中を見殺しにするのは悪いとは思っているけど、これも”依頼”やからな。依頼主やその関係者は自分達がヤバくなったら自分達だけで撤退するくらいはできるやろ。それにアルスターの連中を殲滅できれば、結果的にはノーザンブリアの連中も依頼を達成した事になるしな。」
「”赤い星座”がクロスベルで受けた屈辱、ここで返させてもらう…………!」
「上等じゃない!全員纏めてぶっ飛ばしてあげるわ!」
レオニダスとゼノの後に答えた憎悪が込められたガレスの宣言に対してエステルは真剣な表情で声を上げて答えた。

「――――――私達も加勢致します!」
「ステラさん…………!それにアルティナちゃんやエリスさん、アルフィン殿下達まで…………!」
そこにステラ達リィン隊が駆け付け、それを見たエリィは明るい表情を浮かべ
「――――――”戦場”とはいえ、戦う手段も持たない民達を狙う非道な事は私達も許せません。私達も加勢させて頂きます。」
「あ、シルフィアさ――――――じゃなくてリアンヌさん!」
「それに”鉄機隊”の方々まで…………」
「サンドロット卿達まで加勢してくださるなんて、心強いです。」
「あれ?よく見たら”神速”だっけ?その人だけ、いないけどどこに行ったの~?」
更にリアンヌ達鉄機隊もその場に駆け付け、リアンヌ達の登場にミントは嬉しそうな表情を浮かべ、セティとエリナは明るい表情を浮かべ、デュバリィがいない事に気づいたシャマーラは不思議そうな表情で訊ねた。

「フフ、デュバリィは”灰色の騎士”達に加勢しているわ。」
「かつて我らは刃を交えたが今は共に戦う”戦友”。そして力無き民達を虐殺しようとする非道はマスターから薫陶を受けた我ら”鉄機隊”も許せない所業だ。マスター共々我らも其方達と共に二大猟兵団と刃を交えさせてもらおう、”特務支援課”、遊撃士協会!」
「助かります…………!」
シャマーラの疑問に答えたエンネアの後に答えたアイネスの言葉にロイドは明るい表情を浮かべ
「――――――そちらの魔神殿と黒衣の剣士殿、そしてフェミリンス殿。お三方は私と共に”猟兵王”の相手をして頂いても構いませんか?」
「構いませんわ。」
「フフ、あんな男、私とジェダルだけでも十分だけど、ま、別にいいよ。」
「あの中で唯一”格”が違う敵を相手にするには妥当な面子だな。…………リリカ達はエステル達に加勢しろ。それとユリーシャは俺の代わりにリリカを守れ。」
リアンヌに名指しされたフェミリンス、フルーレティと共に同意したジェダルはリリカ達に指示をし
「はいっ!ジェダルも気を付けてください…………!」
「アハハ…………魔神と女神がいるんだから、むしろ敵の方を心配するべきなんじゃないかな~…………」
「了解しました!リリカはこの身が必ず守りますので、どうか異世界であるこの世界にて存分に武勇を振るってください、我が主!」
指示をされて頷いた後に声をかけたリリカの言葉にフィアは冷や汗をかいて苦笑し、ユリーシャはジェダルの指示に力強く頷いた後ジェダルに激励の言葉を送り、リアンヌ達はルトガーと対峙した。

「リィン隊は赤い星座の軍用犬の排除を!エリスさん、アルフィンさん、アルティナさんは私と共にロイドさん達の加勢を!」
「イエス・マム!!」
「わかりましたわ!」
「はいっ!」
「了解しました。」
「フム、ならば我らは”ブレイサーオブブレイサー”達を加勢するか、エンネア。」
「ええ!」
それぞれに指示を出したステラはエリス、アルフィン、アルティナと共にロイド達と共にシャーリィとガレスと対峙し、それを見たアイネスとエンネアはエステル達と共にゼノとレオニダスと対峙した。

「特務支援課並びにその協力者一同…………」
「同じく遊撃士協会並びにその協力者一同…………」
「「これより敵勢力の制圧を開始する!みんな、行くぞ(わよ)っ!!」」
そしてロイドとエステルはそれぞれ力強い号令をかけ
「おおっ!!」
仲間達は二人の号令に力強く答えた後戦闘を開始した!


今ここに!どんな暗闇をも照らす太陽のような明るさを持ってさまざまな”絆”を結ぶリベールの英雄カシウス・ブライトの娘にして空の女神エイドスの子孫である”ブレイサーオブブレイサー”――――――エステル・ファラ・サウリン・ブライト!

亡き兄の正義の意志と不屈の闘志を受け継ぎし”正義の継承者”――――――ロイド・バニングス!

本来の運命とは全く異なる運命を歩み、自らの剣と新たなる絆を持って”上”を目指すエレボニアの英雄”灰色の騎士”――――――リィン・シュバルツァー!

改変されし運命によって生まれ変わった愛妻イリーナと心から信頼する家臣、家族と共に”光と闇の共存”を目指す半魔神の英雄王たる”闇王”――――――リウイ・マーシルン!

かつてメルキア中興の祖となり、生まれ変わった後もかつて結んだ”絆”と共に再び”覇道”を歩むことを決意した”簒奪王”――――――ヴァイスハイト・ツェリンダー!

未だ誰も足を踏み入れる事ができていない”黒の抗”の最奥をリリカと共に目指す古今無双の戦人にして後にグラセスタの”王”に成り上がる”迎撃王”――――――ジェダル・シュヴァルカ!

数奇な運命によってゼムリア大陸の三人の”英雄”達とディル=リフィーナの”成り上がり”で”王”となる三人の”王”達が共闘する史上初の戦いが始まった――――――!
 
 

 
後書き
というわけで様々な場所で戦いが始まりましたが実際に書く戦いはリィン達とジェダル達だけです。他のメンツは人数多いし、後めんどくさいので(オイッ!)というかルトガーはマジでご愁傷様としかいいようがない(笑)なんせ戦うメンツが揃いも揃ってエウシュリーキャラの中でも実力がトップレベルのキャラ達ばかりですからwwなお、次回の戦闘BGMもVERITAの”覇道”だと思ってください♪ 

 

外伝~英雄無双~

~古戦場~

「喰らえっ!!」
ジークフリードは先制攻撃に二丁拳銃の掃射によって広範囲を攻撃するクラフト――――――クイックバーストで先制攻撃を仕掛け
「散開して回避!」
ジークフリードの攻撃を見たリィンは仲間達に指示をし、リィン達はそれぞれ散開して襲い掛かる銃弾を回避した。
「グラムキャノン照射!」
「――――――!!」
そこにゲオルグの指示によってナグルファルがセレーネとメサイアにレーザーを放った。

「吹雪よ、吹き荒れなさい――――ハリケーンブリザード!!」
自分達に襲い掛かるレーザーに対してセレーネは前に出て自分の周囲に猛吹雪の結界を展開して襲い掛かるレーザーを防ぎ
「刃よ、走れ――――――虎口一閃!!」
「ぐっ!?」
「!?」
「落ちよ、裁きの雷――――――救世の聖雷!!」
「ぐあっ!?」
メサイアは反撃に剣の一閃によって一瞬で複数の斬撃を放つ剣技でゲオルグとナグルファルをそれぞれ攻撃して怯ませ、エリゼは浄化の光による雷を落とす神聖魔術をジークフリードに放ち、”不死者”の為神聖属性が弱点であるジークフリードはエリゼの魔術を受けると怯んだ。
「崩しましたわ!」
「私も続きますわ――――――そこっ!!」
「巻き起これ、風の刃!!」
ゲオルグが怯むとメサイアと戦術リンクを結んでいるセレーネがゲオルグに詰め寄って追撃し、フォルデは槍の突きによる烈風を巻き起こし、風の刃で切り刻むクラフト――――――シルフィードキスでジークフリードにダメージを与えた。

「二の型――――――疾風!!」
「行きますわよ――――――ハアッ!!」
「ガッ!?」
セレーネ達の反撃が終わるとリィンは電光石火の速さで広範囲を攻撃するクラフトで二人に攻撃を叩き込み、デュバリィは神速の速さで襲い掛かるクラフト――――――神速ノ太刀をジークフリードに叩き続けてジークフリードを怯ませ
「今ですわ!」
「もらった!」
ジークフリードが怯むとデュバリィとリンクを結んでいるリィンがジークフリードに追撃を叩き込んだ。

「裁きを受けろ!!」
ジークフリードは反撃に悪夢と混乱の効果が込められた特殊な弾丸を放つクラフト――――――ネメシスバレットをリィンとデュバリィ目掛けて放ち
「カラドボルグ発動――――――これで終わりだよ!」
ゲオルグはドリルハンマーに変形させたナグルファルを持ってエリゼとフォルデに襲い掛かった。
「「!!」」
「ハッ!」
「おっと!」
リィン達はそれぞれに放たれた攻撃を左右に散開して回避し
「聖なる雷よ、我が右腕に宿れ――――――サンダーストライク!!」
「エニグマ駆動――――――ラストディザスター!!」
「”エニグマ”だって…………?――――――まあいい。ナグルファル、前に出て障壁展開。」
「――――――」
セレーネとメサイアはそれぞれ”不死者”にとって弱点である光の魔法で一か所に集まっているゲオルグとジークフリード目掛けて放ち、放たれた魔法に対してゲオルグは一瞬眉を顰めた後すぐに気を取り直して自分達の前にナグルファルを前に出させて障壁を展開し、二人が放った魔法を防いだ。

「後ろががら空きだぜ――――――そらああああっ!!」
「秘技――――――裏疾風!斬!!」
「ぐうっ!?」
「ガッ!?」
しかしそこにフォルデが背後からクラフト――――――スラストレインで襲い掛かり、エリゼも続くように電光石火の二連続攻撃をゲオルグの側面から仕掛け、二人の奇襲攻撃を受けたゲオルグとジークフリードは怯んだ。
「さあ、行きますわよ! おおおおおっ!」
「無明を切り裂く閃火の一刀――――――はあああ…………はっ!せい!たあ!おおおお……………っ!」
二人の様子を見て好機と判断したデュバリィは分け身と共に二人の周囲を縦横無尽に駆けながら無数の斬撃を叩き込み、リィンは太刀に闘気による炎を宿らせて二人に何度も斬撃を叩き込んだ。
「プリズム――――――キャリバー!!」
「終ノ太刀・暁!!」
そしてデュバリィは止めに光の剣と化した剣による薙ぎ払い攻撃で、リィンは戦場を暁に染める程の爆発を起こす斬撃を叩き込み
「ぐあああああっ!?やるな…………」
「があああああっ!?まさか僕達が負けるなんて…………」
二人のSクラフトによって戦闘不能になったジークフリードとゲオルグはそれぞれ地面に膝をついた!

「ハアッ!喰らいやがれっ!!」
リィン達とジークフリード達が戦っている一方、ジェダル達との戦闘を開始したルトガーは先制攻撃に跳躍して雷を宿したバスターグレイブで雷と共に強烈な一撃を叩き込むクラフト――――――ラグナドライバーで襲い掛かったが
「させません!」
「ハッ、これを真正面から受け止めるなんて、さすがは”聖女”だなぁ!?」
リアンヌが真正面からルトガーのクラフトを槍で受け止め、クラフトを受け止められたルトガーは不敵な笑みを浮かべて武器を退いてリアンヌから距離を取った。

「天の光よ、あらゆる穢れを浄化せよ――――――天界光!!」
「おっと!ハハッ、掠っただけでこの威力とは、恐れ入ったねぇ。」
そこにフェミリンスが最高位の神聖魔術でルトガーに攻撃したが、頭上から襲い掛かる浄化の光に気づいたルトガーは側面に跳躍して回避したが、回避する際に浄化の光が左腕の一部を掠り、掠った部分から煙を上げている所を見たルトガーは暢気に笑っていた。
「――――――ユリーシャ達の言っていたように、お前は正真正銘”不死者”のようだから、やはり光の魔法が弱点のよう…………だなっ!」
「っと!若ぇのに、俺に挑むとは随分と命知らずだねぇ!そらそらぁっ!」
「……………………」
後ろからの跳躍によるジェダルの奇襲攻撃にすぐに気づいたルトガーはジェダルの攻撃を受け止めて不敵に笑った後ジェダル目掛けて反撃を繰り出す為に身の丈程あるバスターグレイブを軽々と振るってジェダルに反撃をし、対するジェダルは冷静にルトガーが繰り出す剣撃を見極めて大剣を振るってルトガーの攻撃を受け流していた。

「ハハッ、若ぇのにやるじゃないか!だったらこいつはどうだい?よっこいしょっと…………!」
「!!」
次々と繰り出す剣撃を防ぐジェダルの力量に感心したルトガーはバスターグレイブを銃を撃つような構えをし、それを見たジェダルはすぐに大きく側面に跳躍し
「そらああああっ!!」
ジェダルが跳躍した瞬間ルトガーはバスターグレイブの銃口から怒涛の銃弾を放つクラフト――――――ブラストストームを放ち、ジェダルに攻撃を回避されたルトガーはそれぞれ魔術の詠唱をしていたフェミリンスとリアンヌに銃口を傾けて詠唱を妨害しようとし、襲い掛かる銃弾に気づいた二人は詠唱を中断して回避に専念した。
「ふふっ、不死者の癖にやるじゃない。」
そこにフルーレティが凶悪な笑みを浮かべてルトガーの背後に転移魔術に現れ
「!?」
フルーレティの奇襲に驚いたルトガーはすぐに銃撃を中断してフルーレティの奇襲攻撃を回避する為に側面に跳躍したが
「ハッ!それっ!!」
「グッ…………!?ったく、毎回思うが”転移”は反則過ぎじゃねぇか…………!?」
フルーレティが放った攻撃範囲内の敵達を二連続で攻撃するクラフト――――――ダブルウィップの一撃目が命中してしまった為ダメージを受けた。

「ふふっ、これはどう?――――――空間歪曲!!」
「ガハッ!?ハハッ…………一瞬で空間まで歪ませるとか、とんでもない嬢ちゃんだな…………」
更にフルーレティは瘴気を操って空間を歪ませて対象を断裂させる魔術――――――空間歪曲を発動させ、フルーレティの魔術によって腹の部分が切り裂かれたルトガーは切り裂かれた場所から血を流しながらも不敵に笑っていた。
「光よ!!」
「!!――――――返すぜぇっ!」
そこにフェミリンスが片手から無数の光弾を放つ魔術でルトガーに追撃し、襲い掛かる無数の光弾に気づいたルトガーは後ろに跳躍して回避した後反撃にクラフト――――――ラグナドライバーでフェミリンスに襲い掛かろうとしたが
「裁きの雷よ――――――今、戦場に来たれっ!!」
「しまっ――――――があああああっ!?」
リアンヌが放ったクラフト――――――アングリアハンマーによる雷をまともに受けてしまった。
「止めだ――――――天破虎爪烈斬!!」
そして反撃が中断されて落下してくるルトガーにジェダルがどんな防御も崩す超威力の斬撃で追撃し
「…………!」
ジェダルが放ったクラフトに対してルトガーは落下しながらも体制を整えて自身の得物であるバスターグレイブで防御態勢に入った。しかし――――――
「な――――――ぐあッ!?ハハッ…………読み違えちまったな…………こんな事になるなら最初から本気を出しとくべきだったぜ…………」
ジェダルが放った超威力の斬撃の前には防御も意味を為さず、ルトガーのバスターグレイブは真っ二つに割られ、更にルトガー自身もジェダルの斬撃を受けてしまい、ジェダルの斬撃を受けた部分から大量の出血をしてしまい、その出来事と今までの戦闘のダメージによって戦闘不能になったルトガーは地面に跪いた!

「団長!?まさか団長が敗北するとは…………!」
「クソッタレ…………!幾ら俺達が相当な使い手とは言え、こんな少人数にそんな大人数でタコ殴りにするとか、いくら何でも卑怯やないか!?」
「アルスターの人達を虐殺しようとするアンタ達にだけは”卑怯”呼ばわりされる筋合いはないわよ!」
ルトガーの敗北に気づいたレオニダスは驚き、ゼノは劣勢になっている自分達の状況で悪態をついた後思わずエステル達に文句を口にし、ゼノの文句に対してエステルが怒りの表情で反論した。
「アハハ…………さすがに不味くなってきたね…………!」
「くっ…………特務支援課が手強い事はわかっていたが、まさか女ばかりで編成されているメンフィルの連中にもこれ程手強いとは…………!」
「ふふっ、わたくしやエリスが”執行者”ともまともにやり合えたのも”ご主人様”のお陰ですわね♪」
「姫様…………時と場所を考えて発言してください…………」
「…………意味はよくわかりませんが、リィン少佐の不埒が関係していると想定しました。」
「――――――」
ルトガー達同様ロイド達との戦いによって劣勢に陥っているシャーリィは傷つき、疲弊した様子を見せながらも好戦的な笑みを浮かべ、ガレスは唇を噛み締め、ガレスの言葉を聞いて思わず呟いたアルフィンの発言にエリスは脱力し、アルティナはジト目になり、アルティナに続くようにクラウ=ソラスも機械音を出してロイド達に冷や汗をかいて脱力させた。

「ハア、ハア…………でもこんな大人数を相手にして、まだ立っていられるなんて…………」
「そいつらは腐っても二大猟兵団の隊長クラスだからな…………ユウ坊にはいい経験になっただろう?」
一方シャーリィ達との戦いで疲弊していた様子を見せているユウナに答えたランディは苦笑しながら指摘し
「というか普通に考えたら警察学校も卒業していないユウナちゃんが経験するにはあまりにも早すぎる相手だったんですけどね…………」
「ユウナが彼ら相手に渡り合えたのは、赤い星座の隊長クラス二人相手に互角にやり合える私達味方の人数が多かった事もそうですけど、この戦いの前に武器や防具を新調した事も影響しているでしょうね。」
「…………そうですね。ある意味ユウナさんは”影の国”に巻き込まれた当時のわたしと同じ状況でしたよ、今の相手は。」
それぞれ苦笑しながら答えたノエルとセティの指摘にティオは静かな表情で同意した。

「…………”北の猟兵”達や結社、それに黒の工房の関係者がメンフィル・クロスベル連合軍に制圧されるのも時間の問題だ。そしてあんた達が満身創痍の状況に対して俺達はまだルファ姉達――――――”予備戦力”を残している。諦めて投降するのがあんた達の身の為なんじゃないのか!?」
「ハハッ…………確かにそっちの若いのの言う通り、今の俺達には”依頼”を達成するどころか、自分達の身を護る事すらも危うい状況だが…………”予備戦力”なら俺にもいるぜ!――――――ゼクトール!!」
ロイドに投降を促されたルトガーは苦笑しながら答えた後立ち上がって声を上げた。
「応!!」
するとどこからともなく声が聞こえた後ルトガーの背後に紫の機体が突如現れた!

「えええええええっ!?な、何なのあれ~~~~!?」
「アルスターで戦った”機甲兵”とやらでしょうか…………?」
「まさかその機体はリィンさんのヴァリマールと同じ…………」
「”騎神”…………」
突如現れた機体――――――”紫の騎神”ゼクトールにフィアは思わず驚きの声を上げ、ユリーシャは真剣な表情で機体を睨み、ある事に気づいたステラは驚きの表情を浮かべ、アルティナは呆けた表情で呟いた。そしてルトガーはリィンのように光に包まれてゼクトールの中に入った。
「ゼクトール、”精霊の道”をすぐに起動だ!”星座”の二人も、今回の依頼は諦めろ!その代わりお前達もついでにここから逃がしてやるよ!」
「了解した。」
「ま、しょうがないか~。」
「くっ…………シグムント様達の無念を晴らせないどころかまたしても、クロスベルに依頼を失敗させられるとは…………!」
ゼクトールの中に入ったルトガーの指示に同意したシャーリィとガレスはゼノやレオニダスのように”精霊の道”を起動したゼクトールの傍に跳躍した。

「せ、”精霊の道”…………?一体何なの…………?」
「霊力が彼らの周りに…………それに”逃がしてやる”という事はまさか…………”転移”!?」
「て、”転移”って事はあの機体は”転移魔術”までできるんですか!?」
一方”精霊の道”の意味がわからなかったエリィは戸惑い、周囲の状況やルトガーの発言からある事に気づいたティオは真剣な表情で声を上げ、ティオの言葉を聞いたリリカは驚きの声を上げた。
「”西風”と”星座”は今後アルスターの連中に手出ししない事を約束するから、今回の戦いはこれで”手打ち”にしといてくれ。」
「団長…………ま、そういう訳やから俺達は今後アルスターの連中を襲撃するような事はせえへんから安心してええで。」
「次に相対する時は今回の依頼の失敗による”借り”も返させてもらう。――――――それまでに俺達以外の何物かに屈するような事はしてくれるなよ、特務支援課に遊撃士協会。」
そして西風の旅団と赤い星座はゼクトールの”精霊の道”によってその場から転移した。

「逃がしてよかったの、ジェダル?」
「今回の目的はアルスターの民達を乗せたバスの護衛だ。護衛しているにも関わらず手負いの獣相手に深追いは禁物だ。」
ゼクトール達が消えた後訊ねたフルーレティの疑問にジェダルは静かな表情で答え
「!…………どうやらデュバリィ達の方も終えたようですね。」
「あ……………………」
周囲の状況を見回してそれぞれが相手をしていた敵達を制圧した様子のセリカ達やリィン達、リフィア達に気づいたリアンヌは静かな表情で呟き、リアンヌの言葉を聞いて周囲の状況を見たエリィは呆けた声を出した。

「「飛燕無双演舞剣!!」」
「ガフッ!?ハハッ!いいねぇ!もっとだ…………もっとアツくさせろや、”嵐の剣神”!!」
セリカとサティアの協力技(コンビクラフト)を受けて全身から大量の血を出血させ、更に口からも血を吐いたマクバーンは満身創痍の状態でありながらもなお闘志を燃やし続けていた。
「いや、そんな事を言っているけど、実際はボロボロじゃない『マーズテリアよ、悪しき者を貫く槍を――――――神槍の流星!!』っと!ハア…………クロスベルで仕掛けると聞いた時から嫌な予感はしていたけどこんなことになるなんて、想定外だよ…………」
一方マクバーンの様子に気づいて呆れた表情で指摘しかけたカンパネルラだったがロカが放った魔術を慌てて”転移”で回避して疲れた表情で溜息を吐いた後指を鳴らした。するとカンパネルラとマクバーンは幻の炎に包まれ始めた。
「あの炎はもしかして…………」
「”転移”の類の炎か!?」
二人に纏っている炎を見てある事を悟ったシュリは静かな表情で呟き、レシェンテは真剣な表情で声を上げた。
「カンパネルラ!?何勝手な事をしていやがる!?」
「悪いけどこんな所で君を失う訳にはいかなくてね。――――――そういう訳だから僕達はこれで失礼するよ。」
マクバーンの文句を軽く流して答えたカンパネルラはマクバーンと共に転移によってその場から消えようとしたが
「逃がすか!雷光――――――紅燐剣!!」
「ちょっ、また…………!?うわあっ!?」
「ガアッ!?」
転移によって消える直前に放たれたセリカの雷が宿った高速剣の斬撃波によってマクバーンと共に全身を切り裂かれ、体の様々な場所から出血させた状態で消えた。

「月閃光!――――――今ですわ!」
「ああっ!我が剣は我が皇の刃!闢――――魔神王剣!!成敗!!」
「――――――!!??」
同じ頃シグルーンのクラフトによって態勢が崩れたゾア=バロールをゼルギウスが自身の奥義(Sクラフト)で一刀両断して無力化し
「なあ………!?人如きにゾア=バロールが敗れるだと…………っ!?」
その様子を見たアルベリヒは信じられない表情で声を上げた。
「余が最も信頼する騎士達にとってそのような鉄屑等容易い相手じゃ、愚か者め!――――――贖罪の聖炎!!」
「グギャアアアアアアアアア…………ッ!?お、おのれ…………想定外(イレギュラー)共が…………っ!」
そこにリフィアが最高位神聖魔術の内の一つを発動し、”不死者”である為神聖魔術が弱点であるアルベリヒは大ダメージを受けると共に悲鳴を上げ、リフィアの魔術が終わるとアルベリヒは全身から煙を上げた状態で地面に膝をついた。

「…………まさかアルベリヒまで敗れるなんて…………どうやら僕達は君達メンフィルの事を過少評価をしていたようだね…………」
それぞれの戦闘が終わり、アルベリヒの敗北を見たゲオルグは信じられない表情をした後表情を歪めてリィン達を見つめ
「メンフィル・クロスベル連合軍を敵に回したエレボニアのように”相手が悪すぎた”―――それだけの話です。さあ、洗いざらい話してもらいますよ――――――貴方達”黒の工房”について!」
「兄様…………」
「シュバルツァー…………」
ゲオルグの言葉に対して静かな表情で答えた後ゲオルグを睨むリィンの様子をエリゼは心配そうな表情で、デュバリィは複雑そうな表情で見守っていた。

「…………まさか僕達が絶体絶命の状況に陥るなんてね…………どうする、アルベリヒ?」
「…………忌々しい話だが、”アルスター”は諦める。――――――ジークフリード、撤退の時間を稼げ!”蒼”の使用も許可する!」
「了解した。――――――来い、”蒼の騎神(オルディーネ)”!!」
「な――――――」
ゲオルグに判断を委ねられたアルベリヒは憎悪の表情でリィン達を睨んだ後ジークフリードに指示をし、指示をされたジークフリードはリィン達にとって驚愕の名前を口にし、それを聞いたリィンは絶句した。すると亡きクロウが操っていたはずの”蒼の騎神”――――――オルディーネがジークフリードの背後に現れた!
「あの蒼の機体は…………!」
「あ、蒼の騎神――――――オルディーネ…………」
オルディーネの登場に仲間達と共に血相を変えたデュバリィは驚きの表情を浮かべ、セレーネは信じられない表情で呟いた。そしてジークフリードがオルディーネの操縦席へと入ると、オルディーネは双刃剣(ダブルセイバー)を構えた!

「くっ…………――――――来い、”灰の騎神”ヴァリマール!!」
一方唇を噛み締めてオルディーネを見つめたリィンだったがすぐにヴァリマールの名を呼んで、ヴァリマールを戦場に呼び寄せようとしたが
「フッ、”時間切れだ”。」
既にアルベリヒが転移魔術を発動していた事によってアルベリヒ達は転移しようとしていた為オルディーネからジークフリードの嘲笑する声が聞こえた。
「転移魔術を発動したからと言って簡単に逃げられると思ったら大間違いじゃ!――――――レイ=ルーン!!」
「な――――――ぐあああああっ!?」
「アルベリヒ!?」
そしてアルベリヒ達が消える直前に放ったリフィアの純粋魔力による集束エネルギーがアルベリヒの右腕を一瞬で焼き尽くして消失させ、それを見たゲオルグが驚きの声を上げた瞬間アルベリヒ達は転移魔術によってその場から消え、同時にヴァリマールがリィンの背後に現れた!

「逃がしてしまった…………くっ、さっきの戦いでジークフリードを気絶まで追い込んでおけば転移魔術を発動させる隙も与えなかったのに…………っ!」
「お兄様…………」
アルベリヒ達が撤退した後、悔しがっているリィンをセレーネは辛そうな表情で見つめた。
「ま、俺達の目的は果たしている上あの様子だとエレボニアと戦っていたらその内自分達からまた姿を現すだろうから、その時にリベンジすればいいじゃねぇか。だからそんなに気にすんな。そもそも俺達の今回の目的はアルスターの民達の護衛と北の猟兵達の殲滅だぜ?」
「フォルデ先輩…………そうですね。――――――お蔭様で頭が冷えました。ありがとうございます。」
フォルデに慰められたリィンは少しの間黙り込んだ後冷静になってフォルデに感謝の言葉を送り
「クク、熱くなりがちな後輩を諫めるのも先輩の仕事なんだから、気にすんなって。」
(…………セシリアの助言を聞いてフォルデ達をリィンにつけた事はやはりあらゆる意味で正解だったようだな。)
(ええ…………さすがリィンの”担当教官”だった方ですわね。)
リィンに感謝されたフォルデは親し気な笑みを浮かべて答え、その様子をゼルギウスとシグルーンは微笑ましそうに見守っていた。

(兄様…………私にも姉様やセレーネのような”力”があれば…………)
一方リィン達の様子を遠目で見守っていたエリスが辛そうな表情を浮かべたその時

新”起動者”候補ノ波形ヲ100アージュ以内ニ確認。コレヨリ”試シノ場”ヲ展開スル――――――

「え…………」
突如頭の中に謎の声が響き渡り、それを聞いたエリスは困惑の表情で周囲を見回し
「?どうしたのエリス?」
「いえ…………今声が聞こえた気がしたのですが…………多分気のせいだと思います。」
自分の様子を不思議に思ったアルフィンに声をかけられると答えを誤魔化した。

その後――――――北の猟兵達はメンフィル・クロスベル連合軍によって”殲滅”され、メンフィル・クロスベル連合軍が戦後処理をしている中その様子をバスの傍でジェダル達が見守っているとリセル達と共にジェダル達に近づいたヴァイスがジェダル達に声をかけた――――――
 
 

 
後書き
次回は原作でも実現して欲しかったと思われる魔導巧殻陣営であるヴァイス達とグラセスタ陣営であるジェダル達の邂逅、更にリィン達とエステル達、ジェダル達の邂逅に加えて、アルベリヒ達にとっては”泣きっ面に蜂”と言ってもおかしくないまさかの展開の話の予定です(大爆笑)まあ、その展開については今回の話の最後で大体”察する”事ができたと思いますがww 

 

外伝~想定外の起動者~ 前篇

~古戦場~

「――――――少しいいか?」
「お前は…………確かこの国の皇帝――――――ヴァイスハイト皇帝か。」
「ジェ、ジェダル、ヴァイスハイト皇帝陛下はサロ王陛下と同じ”王”なのですから、もう少し言葉遣いを…………」
ヴァイスに声をかけられて返事をしたジェダルにリリカが冷や汗をかいて指摘したが
「ああ、他の皇はどうか知らんが別に俺は態度や口調等は一切気にしないから、いつも通りの感じで接してくれて大丈夫だ。」
ヴァイスがリリカの心配が無用であることを答えた。
「…………それで俺達に何の用なんだ?」
「あー…………俺もそうだが、俺の仲間達がお前達――――――特にそちらの”魔導巧殻”と非常に似たお嬢さんに興味があって声をかけたんだ。」
「ふえ?私ですか?というか確か”魔導巧殻”って――――――」
ヴァイスの答えに首を傾げた後にリリカが答えかけたその時
「あぁ…………!まさか生まれ変わってから、新型の”魔導巧殻”をこの目にする日が来るなんて…………!」
「いや、それにしては細部がいくつか違っているぞ…………っ!」
「貴女は一体いつ作られたのでしょうか?」
「そんなことを気にするよりも、貴女は私達の後に作られたのは確実なのですから、当然新型の貴女にとって貴女が作られる前から存在していた私達は”姉”!今日から私の事は”リューンお姉様”と呼びなさい!」
「な、な、ななっ!?」
ヴァイスの傍にいたリセル、エイフェリア、アル、リューンが興味津々な様子で次々とリリカに話しかけ、突然の出来事にリリカは混乱した。

「それにしても彼女の導力源は一体何なのでしょうね?幾ら何でもリューン達や当時の私と同じな訳ではないでしょうし…………」
「フム…………恐らくだが、魔制球で稼働しているのではないのか!?」
「魔制球…………そうか、ゴーレムと同じ技術なのですね。ですが、メルキア帝国でもここまでの小型化に成功したという事例は聞いたことがありません…………!」
「それよりも今の話が本当でしたらひょっとして貴女以外にも、私達の”妹”達がいるのですの!?」
「あの4人は何故リリカに興味津々なのでしょう?」
「さあ?ま、向こうにもリリカみたいな人形がいる事からして、多分その関係なんじゃない?」
「ア、アハハ…………(というかリセルもそうだけど、セリカの”実物”と会う事になるなんてね~。)
興味津々な様子でリリカに次々と問いかけるアル達の様子を見て困惑しているユリーシャの疑問にフルーレティは興味なさげな様子で答え、フィアは苦笑しながら見守っていた。

「あ、いえ、あのー…………私の身体は『魔導操殻』っていうんですよ。おそらくメルキア帝国から伝え聞いた技術を応用しているのかと。」
「なんと!それは興味深い話だ!」
「はい!従来の機械人形より汎用性を重視している性能なのでしょうか、兵器を装備されていない所を見るに、戦闘に特化している訳ではないというのが肝なのかもしれません!」
「ああ、まさか妾ですら実現できなかった量産型の生産が叶っていたとは!これは、心躍る話だ!」
リリカの答えを聞いたエイフェリアとリセルはそれぞれ目を輝かせて語り終えた後リリカにある事を頼んだ。
「ちょっとだけ、ちょっとだけでもいいから触らせてくれ!何もせぬから!」
「安心してください。敬意をもって触れることを約束します!」
「この場面でそう言う人に、何もしない人はいませんよ!?」
「その言葉には同意致しますわ。」
「二人の事ですから、間違いなく解体して、構造を調べようとするでしょうね。」
二人の頼みにリリカは近づいて来る二人から距離を取りながら表情を引き攣らせて反論し、リューンはリリカの意見に呆れた表情で同意し、アルは静かな表情で淡々と呟いた。

「それ壊されてるじゃないですか!!絶対いやです!」
「あ、いえ、当然ちゃんと元に戻しますよ。改良したいというのならば協力しますし、むしろ積極的に手を加えていく所存です!」
「うむ!そういう内容で妥協するから、是非調べさせてくれ!」
「どう考えても妥協してないんですがー!」
リセルとエイフェリアの言葉に対してリリカは疲れた表情で声を上げて反論した。
「…………おい、そいつらを何とかしろ。リリカが嫌がっている以上、そいつらの行動を見過ごす訳にはいかない。」
「ふふ、愛だね。」
するとその時ジェダルが二人から庇うようにリリカの前に出てヴァイスを睨んで要求し、その様子を見たフィアは意味ありげな笑みを浮かべた。

「…………俺はリリカに雇われている護衛で、契約を護る傭兵だからだ。」
「そこは愛だって言い切ってくれてもよかったんですよ!?」
フィアの言葉に呆れた表情で指摘したジェダルにリリカが声を上げて文句を口にし
「ハッハッハッハッ!エステル達からある程度事情を聞いていたが、中々面白い連中がゼムリア大陸に迷い込んできたものだ。――――――リセル、エイダ、お前達の気持ちも理解しているがそこまでにしておけ。あんまりしつこいと、完全に嫌われて『魔導操殻』とやらについて何も知る事ができなくなるぞ?」
「ぐっ…………」
「ううっ…………」
ヴァイスは声を上げて笑った後リセルとエイフェリアに注意し、ヴァイスの注意にエイフェリアとリセルはそれぞれ唸り声を上げて黙り込んだ。

「――――――仲間達が失礼をした。改めて――――――今回の”アルスター”の件に加勢してくれたこと、心より感謝する。」
「…………俺達はエステル達との”契約”通りに動いただけだ。それよりもエステル達がお前達に俺達の事を話したという事は、お前達がこの国――――――いや、この世界での俺達の”拠点”を用意するのか?エステル達からクロスベルの皇族にも知り合いがいるから、そいつらに俺達の”拠点”についての手配ができるように頼むつもりだと言っていたが。」
「ああ。それでお前達に声をかけた理由だが…………お前達はミントによって元の時代に戻るまで遊撃士協会の協力者として活動するとの事だが、もしよければ俺達――――――”クロスベル帝国”が出す依頼も個別で受けてもらう事はできないだろうか?」
「――――――内容と報酬による。エステル達からこの世界の現状を聞いたがお前達――――――メンフィル・クロスベル連合とやらは確か”エレボニア帝国”という国と戦争しているそうだな。それを考えるとお前達が俺達に出す”依頼”はその戦争関連だろうが…………軍と軍がぶつかり合う戦いに加勢する依頼なら断る。幾ら何でも”戦場”にリリカを出す事はリリカの護衛として認められない。」
「ジェ、ジェダル…………」
自分の身の安全を第一に考えているジェダルの言葉を聞いたリリカは頬を赤らめ
「ああ、別にそういった類の依頼を出すつもりは一切ない。幸いにも今回の戦争、軍と軍がぶつかり合った所でメンフィル・クロスベル連合側の方が圧倒的に優勢だからな。――――――お前達にして欲しいと思う依頼は敗残兵となったエレボニアやエレボニアに雇われた猟兵達の”殲滅”、今後クロスベルやメンフィル領内に潜入すると思われるエレボニアの諜報関係者の”殲滅”に”黒の工房”のように戦争を”裏”から支える協力者達の始末に後は敵拠点の攪乱、破壊工作といった所だ。」
「要するに裏工作の類か…………――――――一つ聞く。何故そういった類の依頼を遊撃士協会もそうだが、猟兵団を使わない?その二つの組織は互いに天敵同士の関係とはいえ、結局は”傭兵”の組織なんだろう?」
ヴァイスの話を聞いて静かな表情で呟いたジェダルはヴァイスに問いかけた。

「遊撃士協会の場合は”国家権力の不干渉”を掲げている為、基本”戦争”でどちらかの国に協力するような事はない。連中が戦争に協力、もしくは介入する唯一の例外は”民間人の保護”の為だ。で、猟兵団だが…………かつてクロスベルは猟兵団によって襲撃された経緯から、”猟兵”という存在自体に対する忌避が更に強まった為、幾ら戦争に勝つ為とはいえ、クロスベルが”猟兵”を雇う事は市民達もそうだが兵達の士気にも関わってくる上メンフィルも、今回の戦争勃発の原因の一つでもある”ユミル襲撃”の件で”猟兵という存在自体”を嫌うようになったから猟兵を雇うような事はないだろう――――――というか、そもそもメンフィルの場合”猟兵”を雇う程人手が足らないという事はないのだがな。」
「俺達――――――いや、俺も勝つ為なら手段を選ばない”猟兵”とそれ程変わらない。なのに何故その俺を雇おうとする?」
「理由は二つある。一つはお前達――――――特にルシティーネ卿を味方にする事で知る事ができる”魔導操殻”とやらの技術を知る為だ。」
「あのー…………先に言っておきますけど、私は専門的な技術についてはわからないですよ?あ、勿論私の身体を解体するのは絶対にダメですからね!それと触る事も!」
「あぁ、そんなご無体な…………!」
「せめて触るくらいはいいのではないか…………!?」
「二人の場合、その”触るくらい”という言葉すらも怪しいからなのでは?」
「あの様子ですと、隙あらばリリカを触ったり解体するつもりでしょうね…………どうやらリリカの”姉”である私がしっかりと見張る必要がありそうですわね!」
ヴァイスの話を聞いた後答えたリリカの答えにショックを受けている様子のリセルとエイフェリアにアルは静かな表情で指摘し、リューンはジト目で二人を見つめた後胸を張って答え
「いや、それ以前に私は貴女と”姉妹”の関係になる事を承諾した覚えがないのですが!?」
リューンに対してリリカは疲れた表情で指摘した。

「まあ、その件については落ち着いた時に後で話し合うとして…………もう一つの理由は”敵”にお前達という戦力を取られない為の措置でもあるな。」
「”敵”…………先程現れた”黒の工房”やお前達の戦争相手であるエレボニア帝国とやらか。雇われている訳でもなく、”貸し”がある訳でもない連中につくつもり等毛頭ないが…………そこまでして俺達が敵につかないようにするとは、初めて会ったばかりだというのに随分と俺達の事を高く評価しているのだな?」
「フッ、エステル達の話によると確かそちらの二人は”魔神”と”女神”なんだろう?その上ジェダルは先程”猟兵王”と互角の斬り合いをしたと聞いている。そんなお前達は俺達にとっては正直、二大猟兵団もそうだが結社や黒の工房よりも強力な戦力だ。――――――ならば敵に取り込まれる前にこちら側に取り込めようと思ったまでだ。」
「…………依頼内容に相応した”報酬”と俺達に依頼を受けるかどうかの選択権があるならば、内容次第で引き受けてやる。」
ヴァイスの説明を聞いたジェダルは静かな表情で答え
「フッ、決まりだな。改めてこれからよろしく頼む。」
ジェダルの答えを聞いたヴァイスは静かな笑みを浮かべた。

「フフ、中々面白い戦いが見れたな、ウォレス?」
「ハハ、正直相手が哀れに思えるような”蹂躙戦”でしたけどね。将軍が言っている戦いは”灰色の騎士”達もそうですて、”剣聖”の子供達の事でしょう?」
一方古戦場にある遺跡の一部から双眼鏡で戦いを見守っていたオーレリア将軍の問いかけにウォレス准将は苦笑しながら答えた。
「ああ。…………この戦いも”あの方の仰る通り”だったが、まさかアルフィン殿下まであの場で戦っておられた事まであの方は”見通していた”と思うか?」
「さて…………本当に底知れない方ですからね。ですが、アルフィン殿下が”灰色の騎士達の仲間になっているという事実”は”あの方”もそうですが我々にとっては”好都合”なのでは?」
「そうだな…………殿下の件も合わせて、あの方に朗報を伝えられるようで何よりだ。――――――行くぞ、ウォレス。長居は無用だ。」
「了解。」
そしてオーレリア将軍とウォレス准将はその場から去っていった。

「そうか…………”猟兵王”まで”騎神”を…………」
「”蒼の騎神”や”ジークフリード”という人物の事といい、内戦のように今回の戦争の裏にも何らかの事情が隠されていそうですわね…………」
「はい…………オズボーン宰相もそうですが、お父様も”アルスター”の件についてご存知の上あの”アルベリヒ”という人物のする事を本当に受け入れたのでしょうか…………?”アルスター”はオリヴァルトお兄様と亡きオリヴァルトお兄様の母君であるアリエル様の故郷でもあるというのに…………」
「姫様…………」
同じ頃部下達に戦後処理を任せた後集まってそれぞれが戦った相手について話し合っている時にステラ達から事情を聞いたリィンとセレーネは考え込み、辛そうな表情を浮かべているアルフィンをエリスは心配そうな表情で見つめた。
「…………アルティナ、念の為に聞くがアルベリヒもそうだが、ジョルジュ先輩やジークフリードに見覚えは?」
「ありません。…………というかわたしはルーファス・アルバレアの元に”出荷”された時点で”黒の工房”にいた頃の記憶は抹消されている為、”何も覚えていないのです。”」
「…………やはりミリアムと同じか。」
「”出荷”とは穏やかな言葉ではありませんね…………」
「ま、猟兵達に民間人を虐殺するように依頼する連中なんだから、碌な連中でない事は最初からわかっていた事じゃねぇか。」
アルティナの答えを聞いたリィンが複雑そうな表情で考え込んでいる中、真剣な表情で呟いたステラにフォルデは呆れた表情で指摘した。
「何はともあれ、今回の戦いの相手はエレボニアだけでない事が判明しましたね。」
「ああ…………二大猟兵団に結社の残党、そして”黒の工房”…………内戦の時とは比べ物にならないくらいの強敵揃いになりそうだな。」
エリゼの指摘に頷いたリィンは表情を引き締めた。

「ま、それでもメンフィル・クロスベル連合軍(俺達)の方もそんなとんでもない連中も圧倒できる面子が揃っているんだから、むしろ手柄を狙っているお前からしたら”手柄首”が増えた事に喜ぶべきじゃねぇのか?」
「ましてや今のリィンさんにはメサイア皇女殿下を始めとした心強い異種族の方々と”契約”を結んでいるのですから、例え結社最強の”執行者”や”猟兵王”が相手だろうと、内戦の時と比べると明らかに戦いが有利になると思いますよ?」
「ハハ、確かに言われてみればそうだな…………」
そしてフォルデとステラの指摘にリィンが苦笑したその時
「――――――リィンさん!」
バスから降りてティーリアと共に走ってきたカイがリィン達に声をかけた。

「カイさん…………!」
「それにティーリアさんも…………」
「そういえば君達もアルスターに住んでいたな…………アルスターの民達が昨夜の襲撃の際に遊撃士達に猟兵達から護ってもらった話は聞いたけど、こうして無事な姿を見る事ができて安心したよ。」
二人の登場にセレーネは驚き、アルティナは目を丸くし、リィンは優し気な笑みを浮かべてカイ達に声をかけた。
「はい…………突然の事が続いて今も色々と混乱していますけど、リィンさん達とまた会えてよかったです…………!」
「うん!それにアルティナさんも…………!まさかこんな所で再会できるなんて、思いもしませんでしたけど、また会えて嬉しいです…………!」
「…………どうも。」
リィンの言葉にカイが答えた後嬉しそうな表情で声をかけたティーリアにアルティナは静かな表情で答えた。

「あら?アルティナさんとティーリアさんはお知り合いなのですか?」
「そういえば”紅き翼”がアルスターに支援物資を届けに行った時もアルスターにいたようだが…………もしかして、その時にか?」
「ええ、お二人も知っているように機甲兵を盗んだ脱走兵の捕縛任務でアルスターを訪れた際に。」
ティーリアと知り合いの様子のアルティナをセレーネは不思議そうな表情で見つめ、ある事を思い出したリィンの問いかけにアルティナは静かな表情で頷いて答えた。
「あれ…………?リィンさん達もアルティナさんとお知り合いだったんですか…………?以前支援物資を届けに来てくれた時はご一緒ではなかったですけど…………」
「え、えっと………まあ、知り合いではあったけど、当時は一緒に行動していなかったんだ。」
ティーリアの問いかけにセレーネと共に冷や汗をかいたリィンは苦笑しながら答えた。

「あれ?貴方達も二人と知り合いなの?」
するとその時エステル、ヨシュア、ミントがリィン達に近づいてきた。
「貴方達は確か遊撃士協会の…………」
エステル達の登場にステラは目を丸くし
「うん、あたしはエステル。エステル・ファラ・サウリン・ブライト!よろしくね!」
「僕はヨシュア・ブライトです。以後お見知りおきを。」
「ミントはママ達の養女のミント・ルーハンス・ブライトだよ!えっと………そっちの蒼銀の髪の貴女がツーヤちゃんの妹のセレーネちゃんだよね?」
エステル達と共に自己紹介をしたミントは興味ありげな表情でセレーネに声をかけた。

「は、はい…………という事は貴女がツーヤお姉様が異世界であるこちらに迷い込んだ時にツーヤお姉様にとっての大親友になったミントさんですか?」
「うん!ツーヤちゃんの手紙でもセレーネちゃんの事が書いてあったけど、実際にこうしてセレーネちゃんと会えてとっても嬉しいよ!よかったら、セレーネちゃんもミントの友達になってくれるかな?」
「ミントさん…………ふふっ、わたくしでよければ喜んで。」
「アハハ、よかったわね、ミント。――――――初めまして、リィン君。君の事は”色々”と聞いているけど、こうして会える事ができて嬉しいわ。」
新たな友人関係を築き始めているミントとセレーネの様子を微笑ましそうに見守っていたエステルはリィンに声をかけた。
「ハハ、それについてはお互い様ですよ。――――――クロスベルではエリゼがお世話になりました。」
「う~ん…………どっちかというと活躍していたのはエリゼちゃんだったような気がするから、お世話になったのはあたしたちの方よ。」
「ああ、彼女は僕達よりも早くロイド達に加勢していたし、”碧の大樹”でもアリオスさんとの激闘でもアリオスさんと同じ”剣聖”である彼女には世話になったよね。」
「…………恐縮です。」
「エ、エリゼ…………ロイド達と共に”碧の大樹”に突入して攻略した話は聞いてはいたけど、”風の剣聖”とまで戦った事があるのか…………」
「姉様は私達の知らない所で一体どれほどの戦いを潜り抜けたのでしょうか…………?」
エステルとヨシュアの話を聞いたエリゼは静かな表情で会釈し、その様子を見守っていたリィンとエリスは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「あ、それとあたし達は呼び捨てにしてよ?歳だって一つしか違わないんだし。」
「君達のように僕達もロイド達とはお互い呼び捨てだから、僕達ともロイド達に接するような態度でお願いするよ。」
「はは…………それじゃあお言葉に甘えて。よろしく、エステルにヨシュア。」
エステルとヨシュアの申し出を聞いたリィンは苦笑しながら答え
「うん、こちらこそ!」
「会えて嬉しいよ。」
エステルとヨシュア、それぞれと順番に握手をした。

「ふふっ、それにしてもオリヴァルトお兄様がリベールの旅行時代にお世話になった方々とこんな所で会えるなんて、これも空の女神の導きかもしれませんわね。」
「いや、だからその言葉はエイドスは滅茶苦茶嫌がるからあんまり言わない方がいいって…………オリビエが”お兄様”?」
「まさか貴女はエレボニア帝国皇女の…………」
アルフィンに声をかけられたエステルは苦笑しながら答えかけたがある事に気づくと目を丸くし、ヨシュアは驚きの表情でアルフィンを見つめた。
「名乗るのが遅れて申し訳ありませんでした。わたくしの名はアルフィン・レンハイム。”元エレボニア帝国皇女”であり、オリヴァルトお兄様の妹でもあり、今はリィンさん――――――”ご主人様”専用の使用人兼娼婦ですわ♪」
「姫様…………せめて、”娼婦”を名乗る事は控えてください…………」
「えええええええっ!?という事は貴女が”帝国の至宝”の一人であるあの…………!」
「わあ…………!まさかエレボニアのお姫様にまで会えるなんて…………!あれ…………?でも、どうしてエレボニアのお姫様がクロスベルに…………」
アルフィンの自己紹介の仕方にリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エリスは呆れた表情で指摘し、我に返ったカイは驚き、目を輝かせたティーリアはある事に気づくと首を傾げた。

「オ、オリビエさんの妹さん!?」
「ちょ、ちょっと待って!何でオリビエの妹――――――エレボニアのお姫様がリィン君達――――――メンフィル軍と一緒にいるの!?しかもリィン君専用の”使用人兼娼婦”ってどういう事!?」
「まさか貴女はメンフィル帝国の要求に従って――――――」
一方ミントと共に驚いたエステルは困惑の表情で訊ね、ある事に気づいたヨシュアが複雑そうな表情を浮かべて推測を口にしかけたその時
「――――――少しいいか。」
ジェダルが仲間達と共にリィン達に近づいて声をかけた。

「ジェダル?どうしたの?」
「…………ユリーシャがそこの黒髪の剣士に聞きたい事があるとの事だ。――――――ユリーシャ。」
「はい。…………確かリィン殿と仰いましたよね?何故リィン殿はこの身の事を存じていらっしゃるのでしょうか?」
エステルの疑問に答えたジェダルに促されたユリーシャは頷いた後前に出てリィンに訊ねた。
「ハハ…………その件についてはこれから起こる事を見てもらえれば、わかるかと。――――――来い、”ユリーシャ”!」
ユリーシャの疑問に苦笑しながら答えたリィンは自身が契約しているユリーシャを自身の傍に召喚した!

「な――――――」
「えええええええっ!?」
「ユリーシャが二人…………だと?」
「ど、どどどど、どうなっているの~!?」
「へえ?…………なるほどね。私には何とくなく事情が読めてきたよ。」
リィンが契約しているユリーシャの登場にジェダルの”守護天使”である守護天使ユリーシャは絶句し、リリカとジェダルは驚き、フィアは混乱し、フルーレティは興味ありげな表情をしていた。
「…………お初にお目にかかります、”並行世界のこの身達”。この身はかつての主であったジェダル様に娼婦として売られ、後に今の主であるリィン様達との出会いによってリィン様の守護天使となった能天使ユリーシャです。」
「へ、並行世界の!?し、しかもこの身が”娼婦”として売られた…………!?」
「”並行世界”とは一体何なんだ?」
「えっと、”並行世界”というのは――――――」
複雑そうな表情で自分を見つめるユリーシャの自己紹介に対して守護天使ユリーシャは驚き、ジェダルの質問にリリカが説明をし、ユリーシャはゼムリア大陸に来た経緯を軽く説明した。
 
 

 
後書き
前回予告した内容は長くなってきたので、前篇、後篇にわけました。そして今回の話で予想通りリセルとエイフェリアが暴走しましたww 

 

外伝~想定外の起動者~ 後篇

~古戦場~

「…………なるほどな。つまりお前は魔法が失敗ばかりしていた当時、”そちらの俺”が”娼館”に売って切り捨てる事を決めたユリーシャか。」
「ジェダル、何もそんな言い方をしなくても…………というか、”娼館”に売るなんて幾ら何でも酷いじゃないですか、ジェダル!」
説明を聞き終えた後に答えたジェダルの答えに気まずそうな表情で指摘したリリカはすぐに真剣な表情を浮かべてジェダルを睨み
「それは”そちらの俺”の話だから俺自身とは関係のない話だろうが。」
「……………………その、貴女は今も以前のこの身のように魔法が失敗するのでしょうか?」
リリカの言葉に対してジェダルは軽く流し、守護天使ユリーシャは辛そうな表情でユリーシャに訊ねた。

「いえ、新たなる主であるリィン様がこの身の為にリィン様と”契約”しているアイドス様自らがこの身に魔法が再び使えるようにしてくださったお陰で、もう魔法が失敗するような事はありません。」
「へ…………ア、”アイドス”って………まさかリィン君、アイドスさん――――――”慈悲の大女神アイドス”と契約しているの!?」
ユリーシャの説明を聞いたある事が気になったエステルは信じられない表情でリィンに訊ね
「ええ。――――――アイドス。」
「フフ、久しぶりね、エステル、ヨシュア、ミント。」
訊ねられたリィンはアイドスを召喚し、召喚されたアイドスはエステル達に微笑んだ。
「……………………」
「アイドスさんがフェミリンスさんみたいに、リィンさんの武器から…………!」
「まさか”碧の大樹”の件が終わった後、エステルのようにアイドスさんがリィンと”契約”していたなんて…………」
アイドスの登場にエステルは口をパクパクさせ、ミントとヨシュアは驚きの表情でアイドスを見つめた。

「え、えっと………そっちのアイドスだっけ?さっきエステルが”慈悲の大女神”って言っていたけど、もしかして貴女もフェミリンスや私と同じディル=リフィーナの”女神”なの…………?」
「ええ。――――――とはいっても私は現神(うつつかみ)の貴女やフェミリンスと違って、”古神(いにしえがみ)”だけどね。」
「ア、アハハ…………こうも次々と、”神”と出会えるなんて”神”の価値観がおかしくなりそうですね…………」
「そう?フィアがジェダル達の仲間になっている時点で”今更”だと思うけどね。」
フィアの質問に答えたアイドスの答えにリリカは苦笑し、フルーレティは静かな笑みを浮かべてリリカに指摘した。

「アイドス様のお陰でそちらのこの身も魔法が失敗しなくなったという事は…………まさかそちらのこの身はアイドス様に直接仕える天使に!?」
「ええ、改めてアイドス様に仕える天使として認めて頂いたお陰で、魔法が失敗しなくなる事に加えて、リィン様という新たなる主に仕える事になりました。フフッ、ちなみに”我が主”は既にこちらの世界で”英雄”として有名で、更に今回の戦争で活躍する事で”英雄”としての”箔”をつけて更なる飛躍を目指し、この身はそんな”我が主”を支える守護天使にして”英雄”たる我が主と一生を共にする女の一人としても認められていますし、更に”女神”であられるアイドス様にも直接仕えています。羨ましいでしょう?」
驚いている様子の守護天使ユリーシャの問いかけに答えたユリーシャは自慢げに胸を張って守護天使ユリーシャを挑発し
「うぐっ…………フッ、フフッ…………!それはこちらのセリフです。こちらの方のこの身は”我が主”に切り捨てられることなく、この身が再び魔法が使えるようになるまで待って頂いた上その為の協力までして頂きました。そして正式に生涯を共にする”守護天使”としての”契約”も結んでいる上、我が主が侍らせる女の一人として時折寵愛を頂いております。――――――”我が主”の慈悲深さを受ける事ができた上”娼婦”に落ちる事もなかったこの身の方がそちらにとって羨ましいのでは?」
対する守護天使ユリーシャは一瞬唸り声を上げた後すぐに気を取り直してユリーシャのように自慢げに胸を張ってユリーシャを挑発した。
「つまりそれは”今の我が主”を遠回しに侮辱している事になっていますよね…………!?」
「その言葉そっくりそのまま、お返し致します…………!」
二人のユリーシャは互いに睨み合い、その様子を見ていたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ユ、ユリーシャ、そこまでにしておいてくれ。」
「お前もだ、ユリーシャ。」
そしてそれぞれの主であるリィンとジェダルは二人のユリーシャを宥め
「その…………何か色々とすみません。」
リィンはジェダルに謝罪した。
「それについてはお互い様だから謝罪する必要はない。――――――それよりも魔法の件を除いても色々と手間がかかる”ユリーシャ”をよく引き取る事にしたものだな?」
「わ、我が主!?それはそちらのこの身の話であって、この身自身の事ではありませんよね!?」
リィンに対して静かな表情で答えたジェダルの言葉を聞いた守護天使ユリーシャは焦った様子でジェダルに訊ねたが、ジェダルは無視していた。

「ハハ、俺からしたら天使のユリーシャと”契約”できるなんて光栄だと今でも思っていますよ?」
「我が主…………!フフッ、これが”前の我が主”にはなかった”今の我が主”の魅力の一つである謙虚な所です。羨ましいですか?」
「うぐぐぐ…………っ!」
ジェダルの指摘に苦笑しながら答えたリィンの答えに目を輝かせた後ユリーシャは再び守護天使ユリーシャを挑発し、挑発された守護天使ユリーシャは唸り声をあげながらユリーシャを睨み、その様子にその場にいる全員は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
(何で同じ存在なのに、あんなに仲悪そうな感じに見えるのかしら?もしかしてあれが”同族嫌悪”ってやつなのかしら?)
(彼女達の場合はそれはちょっと違うような気がするんだけど…………)
エステルの推測にヨシュアは冷や汗をかきながら指摘した。
「――――――エステル、リィン、少しいいか!?」
するとその時ロイドが仲間達と共に駆け寄ってエステルとリィンに声をかけた。

「そんなに慌てた様子でどうしたんだ、ロイド?」
「確かロイド君達はフェミリンスと一緒に念の為に”太陽の砦”に猟兵達が残っていないか、調べていたんじゃ…………」
「…………その”太陽の砦”自体に問題が発生したのよ…………」
「――――――現在”太陽の砦”が何らかの異空間と繋がった為、”太陽の砦”の中は”異界”と化しているのです。」
「な――――――」
「あ、あんですって~!?」
そしてエリィとティオの説明を聞いて仲間達と共に血相を変えたリィンは絶句し、エステルは驚きの声を上げた。その後リィン達が急いで”太陽の砦”の中に入るとそこは完全に”異界”と化していた!

~太陽の砦・異空間~

「な、なんなの、これ!?」
「ミント達が以前”太陽の砦”に来た時と景色が全然違うよね!?」
「ああ…………どちらかというと”四輪の塔”の異空間や”影の国”に近いように見えるけど…………」
異界と化している太陽の砦の中を見回したエステルとミントは困惑し、ヨシュアは真剣な表情で考え込み
「お、お兄様、この景色ってなんだか”旧校舎”の最下層の時と似ていませんか…………?」
「それは俺も思った。まさかとは思うが――――――」
一方心当たりがあるセレーネの言葉に頷いたリィンが真剣な表情を浮かべたその時

―――『起動者』候補ノ来訪ヲ感知―――

「この声は…………」
「な、何なの今の声!?」
「恐らくはこの異空間を維持している”主”の声だと思うのですが…………」
謎の声が聞こえ、声を聞いたリィン達がそれぞれ驚いている中エリスは呆け、ユウナは驚きの声を上げ、セティは考え込んでいた。

――刻ハ至レリ―――コレヨリ『第二ノ試シ』ヲ執行スル―――

そして何もなかった場所に光の橋が現れて異空間に浮く足場へと渡れるようになった。
「さっきまで何もなかったのに、橋が…………!」
「ったく、さっきの声といい、この空間といい、マジでどうなってんだよ…………」
それを見たノエルは驚き、ランディは疲れた表情で溜息を吐き
「それよりもさっきの声は『起動者』と言っていたけど、まさかその『起動者』とは――――――」
ある推測をしたロイドはリィンに視線を向けた。
「ああ…………間違いなく『騎神』の『起動者』の事だと思う。」
「ヴァリマールさんを手に入れた時もこの空間のような異空間を攻略して、奥に待ち受けているこの空間の”主”を倒したのですわ。」
「つまりはこの異空間の奥に”主”と”騎神”が待っているという事ですか…………」
「でも、どうしてエレボニアの伝承の存在であった”騎神”がクロスベルに…………」
リィンとセレーネの説明を聞いたティオは真剣な表情で呟き、エリィは不安そうな表情で呟いた。

「…………そんな…………でも、どうして私なんかが…………」
「エリス?どうしたの?」
一方リィン達の話を聞いて信じられない表情で呟いたエリスの様子が気になったアルフィンはエリスに訊ね
「その…………実は兄様達が”黒の工房”の使い手達が撤退する様子を見て無念を感じている所を遠目で見えた時にも先程と同じ声が聞こえてきたんです…………」
「え…………」
「何だって!?それは本当なのか、エリス!?」
エリスの答えにエリゼは呆けた声を出し、リィンは血相を変えてエリスに訊ねた。
「は、はい…………『新”起動者”候補の波形を100アージュ以内に確認。これより”試しの場”を展開する』という内容の声が私の頭の中に響いたんです。」
「「な――――――」」
「おいおい、どう考えても”ただの偶然”とはとても思えないぜ?」
「ええ…………恐らくですがエリスさんがこの異空間の奥に待ち受けている”騎神”の…………」
「”起動者”の可能性が非常に高いかと。」
エリスの説明を聞いたリィンとエリゼはそれぞれ絶句し、疲れた表情で呟いたフォルデの言葉に頷いたステラは真剣な表情でエリスを見つめ、アルティナは静かな表情で呟いた。

「――――――ま、何はともあれ、早急にこの異空間を何とかする必要があるのだから、アルスターの民達の為にもさっさと攻略した方がいいんじゃないのか?」
「ヴァイスさん!それにリウイ達やセリカ達も…………!」
「どうして陛下達までこちらに…………」
するとその時リィン達の背後からヴァイス達が現れ、ヴァイス達に続くようにリウイ達とセリカ達も現れ、それを見たエステルは声を上げ、リィンは驚きの表情で呟いた。
「リアンヌが”太陽の砦”から”気になる気配”が感じると聞き、先程報告にあった”太陽の砦”に起こった”異変”を確認する意味でも来てみたのだが…………」
「この異空間は一体…………何となくですが”影の国”を思い返すような空間に見えますが…………」
「理由はわかりませんが、何らかの要因によって”太陽の砦”が”異界”と化したかと思われるのですが、一体何が要因で…………」
リウイの説明に続くように呟いたイリーナは困惑の表情で周囲を見回し、ペテレーネは考え込んでいた。

「――――――恐らくですが、”碧の大樹”――――――いえ、クロスベルが”零の至宝”による加護を受けられるようになった事でクロスベル一帯が霊力の高い一帯と化した事に加えて”起動者”現れた事で、”試練の場”をクロスベルに呼び寄せてしまったのでしょう。」
「しかも”太陽の砦”はクロスベルの霊力が高い場所の一つでもあるから、それもこの”異界化”の要因の一つかもしれないわね。」
「それは…………」
リアンヌとサティアの推測を聞いたロイドは複雑そうな表情をし
「それで肝心の”起動者”が誰なのか心当たりはあるのか?」
「…………それなのですが…………」
リウイの問いかけにリィンが複雑そうな表情を浮かべてエリスから聞いた話を説明した。

「まさかエリスさんが”起動者”に選ばれるなんて…………正直、信じられませんが…………」
「――――――だが状況から考えて、間違いなくこの異界の奥に眠る”騎神”の”起動者”はエリスなのだろう。その”声”とやらを最初に聞いたのはエリスとの事だしな。」
リィンの話を聞き終えたシグルーンは信じられない表情でエリスを見つめ、ゼルギウスは静かな表情で呟き
「それでこれからどうするつもりだ?」
「どうするも何も、この異界を攻略して新たなる”騎神”を手に入れればいいだけではないか!幸いにもこの場にはかつて”影の国”を攻略したメンフィル、クロスベルメンバーの一部やセリカ達が揃っている事に加えて、”影の国”の時と違ってゼルギウス達やロイド達、そしてリィン達もいる!なので、全員で協力してさっさと攻略すればいいだけじゃろ!」
「ま、リフィアならそう言うとだろうと思ったよ、キャハッ♪」
「予想はしていたがやはり、俺達も巻き込むつもりか…………」
「お姉様…………そんな簡単に言いますけど、”異界”の攻略をそんな手軽に攻略できるとは思えないのですが…………」
ジェダルの質問に答えたリフィアの答えにエヴリーヌが暢気に笑っている中セリカとプリネは呆れた表情で溜息を吐いた。
「そ、そうでしょうか?何気にこの場にはとんでもないメンバーが揃っていますから、案外あっさり攻略できるような気がしなくもないのですが…………」
「フッ、しかも結社最強の一人である”鋼の聖女”に加えて”鉄機隊”まで加勢すれば、正直この異界の”主”が”哀れ”に思えてくる気がするぞ。」
「フフン、珍しく意見が合いましたわね、No.Ⅱ。私達に加えてマスターがいれば、”たかが異界如き”の攻略等朝飯前ですわ!」
一方冷や汗をかいて苦笑しながら答えたツーヤの推測に静かな笑みを浮かべて同意したレーヴェの言葉を聞いて自慢げに胸を張ったデュバリィの発言にその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。

「…………まあ、早急にこの異界を攻略せねばならない事については同意しますわ。」
「そうですね…………アルスターの民達の件がなくても、この異界化による影響がクロスベルの領土に何らかの影響を及ぼす可能性も十分に考えられるのですから、それが起こる前にこの”異界”を何とかしなければなりませんね。」
「そういう事だ。という訳でリウイ、悪いがこの異界の攻略にお前達の力も貸してもらってもいいか?」
気を取り直して答えたフェミリンスの意見にリセルは頷いて考え込み、ヴァイスはリウイに協力を頼み
「別に頼まれなくても元々そのつもりだ。この状況の打破の為には我が国の民であるエリスが必要不可欠の上、新たなる騎神を手に入れる事で我らメンフィルの戦力を増強する機会でもあるのだからな。」
「陛下…………」
「私のような者の為だけに、陛下達まで加勢してくださる事、心より感謝致します。」
ヴァイスの頼みに頷いて答えたリウイの説明にリィンは驚き、エリスはリウイに会釈をした。

「――――――ジェダル、早速で悪いがこの異空間の攻略に手を貸してもらうという内容の”依頼”を請けてもらえないか?戦力は多いに限るしな。”報酬”はそうだな…………一人10万ミラとして、お前達は5人いるから50万ミラでどうだ?」
「…………いいだろう。」
ヴァイスの依頼にジェダルは頷き
「ロイド、エステル。今この場でアルスターの民達の護送に続いて”緊急支援要請”並びに遊撃士協会に対する”依頼”を出そうと思うのだが、構わないか?」
「ええ、勿論構いません。」
「内容はアルスターの人達を匿う場所である”太陽の砦”に起こった”異変”の解決よね?そんなの依頼を出されなくても最初からそのつもりよ!」
ヴァイスに確認されたロイドは頷き、エステルは胸を張って答えた。
「よし…………――――――これより”太陽の砦”の異空間攻略を開始する!」
「ここにいる者達はいずれも精鋭揃い…………互いに協力し、早急の解決を目指すぞ!」
「おおっ!!」
そしてヴァイスとリウイはその場にいる全員に号令をかけ、二人の号令に力強く頷いた仲間達は異空間の攻略を開始した。

異界と化した太陽の砦内を徘徊する魔物や魔獣達はかつてリィン達が攻略した”煌魔城”を徘徊していた魔物達に匹敵、もしくはそれ以上の強さだったが、”煌魔城”の時とは比べ物にならないくらいの精鋭が揃っていた事に加えてメンフィル・クロスベル連合軍による支援もあった為、リィン達は凄まじい早さで攻略を進め、最奥に待ち構えていた”起動者”にとって”最後の試し”にして異空間の”主”である巨大な”影”も余裕をもって対処する事ができ、”止め”はエリスが刺した。

~最奥~

「今だ、エリス!」
「はい!氷の魔剣よ、私に力を!ハッ!ヤッ!ハァァァァァァ…………ッ!咲き誇れ――――――クリミナルブランド!!」
巨大な”影”にSクラフトを放って怯ませたリィンに呼びかけられたエリスは頷いた後レイピアに氷の魔力を纏わせた後一気に”影”に詰め寄って乱舞攻撃を叩き込み、止めに跳躍して氷の魔剣を解き放ち氷の華を”影”を中心に咲かせた。
「――――――!?」
エリスのSクラフトが”止め”となった事で”影”は咆哮を上げた!

コレニテ『最後ノ試シ』ヲ終了スル――――――”起動者”ヨ、心セヨ――――――コレナルハ”巨イナルチカラ”ノ欠片―――世界ヲ呑ミ込ム”(ホノオ)”ニシテ”(アギト)”ナリ――――――

そして咆哮を上げ終えた”影”が消滅すると、異空間も消え始め、異空間が消える最中にエリスの目の前に一瞬何かの文字が現れた後文字がエリスの身体へと入っていくと異空間は完全に消滅し、周囲の景色は最奥の元の場所である祭壇に戻った!


「ここは…………太陽の砦の最下層の最奥の”祭壇”か…………」
「え…………という事はここがロイド先輩達とヨアヒム・ギュンターとの決戦の地となった場所ですか………――――――え。」
「どうやら戻ってこれたようだな…………」
「ええ…………それに想定通りの存在もいるみたいね。」
ロイドが呟いた言葉を聞いたユウナは興味ありげな表情で周囲を見回した後ある物を見つけると呆けた声を出し、静かな表情で呟いたアイネスの言葉に頷いたエンネアがある方向に視線を向けると、そこにはユウナが思わず呆けた声を出す原因となった物――――――金色の機体が地面に膝をついていた!
「金色の…………騎神…………」
「…………エリス、”彼”の名前は知っているはずだよな?」
金色の機体を見つめたセレーネは呆けた表情で呟き、リィンはエリスに確認し
「…………はい。応えて――――――”金の騎神”エル・プラドー!!」
「応!!」
リィンの確認に頷いたエリスが金色の機体――――――”金の騎神”エル・プラドーの名を呼ぶと、エル・プラドーはエリスを自身の操縦席へと入れ、操縦席に入ったエリスがエル・プラドーを操作するとエル・プラドーは立ち上がった!

「エ、エリス!?もう、操縦ができるようになったの!?」
「は、はい。まるで身体が覚えてるみたいに動かせるのです…………」
その様子を見て驚いたアルフィンの問いかけにエリスは戸惑いの表情で答え
「俺の時と一緒だな…………ちなみにエリゼはどうだったんだ?」
「私もエリスの時のように、ヴァイスリッターの中に入った瞬間まるで自分の身体のように動かせるようになったのです。」
静かな表情で呟いたリィンに訊ねられたエリゼは頷いて答えた。

「ま、何はともあれメンフィルにとっては更なる戦力増強ができたようだな?」
「ああ。…………本格的に戦力とする為にはヴァリマールのように、エル・プラドー専用の武装も早急に用意する必要があるが…………――――――エリス、エル・プラドーに武装は搭載されているか?」
ヴァイスの言葉に頷いたリウイは考え込んだ後エリスに訊ね
「はい、どうやら最初から搭載されているみたいです。今お見せしますので少々お待ちください。」
訊ねられたエリスはエル・プラドーを操縦してエル・プラドーに最初から搭載されている騎士剣を構えた。

「あの形態は…………”騎士剣”か。」
「私やお父様と同じ細剣(レイピア)を得物としているエリスさんには少し合わない武装ね。」
「…………やはり、ヴァリマールのように武装の強化、改造が必要のようだな。――――――頼めるか、ディオン三姉妹。勿論報酬はヴァリマールの時のように相応の額を用意するつもりだ。」
レーヴェとプリネはエル・プラドーの武装を確認すると静かな表情で呟き、リウイは考え込んだ後セティ達に視線を向け、視線を向けられた三人は互いの視線を交わして頷いた後答えた。
「”工匠”としてその依頼、謹んで受けさせて頂きます。」
「ま、ヴァリマールの”太刀”を強化しておいて、エル・プラドーの武装を断る訳にはいかないもんね~。」
「…………口を謹んでください、シャマーラ。…………支援課に帰ったらゼムリアストーンもそうですけど、改造の際に必要な他の鉱石の合成も早急にする必要がありそうですね…………」
「へ…………ちょ、ちょっと待ってくれ。エリナの口ぶりだと、まるでゼムリアストーンも人為的に作れるように聞こえたんだが…………もしかして、”工匠”って”ゼムリアストーンも作れるのか?”」
シャマーラに注意した後疲れた表情で溜息を吐いたエリナの言葉が気になったリィンはエリナに訊ねた。

「ええ、”ゼムリアストーンのレシピ”はお父様が”影の国”に巻き込まれた際に思いついてくれましたから、”匠貴”である私達でしたらお父様が思いついた合成技術で”ゼムリアストーンを人為的に作る事は可能です。”」
「ま、最低でも”匠範”クラスの”工匠”でないと作る事が許可されない難しい技術だから、それを簡単にする為の課題は残っているけどね~。」
「”現在のゼムリア大陸の技術ではゼムリアストーンを人為的に作り出す事は不可能なはずのゼムリアストーンを人為的に作っている時点”で十分非常識だと思われるのですが。」
「ううっ、”精霊窟”でゼムリアストーンを集めていたわたくし達の苦労は何だったのでしょうね…………?」
「頼むから、それだけは言わないでくれ、セレーネ…………考えるだけでも虚しくなってくるから…………」
エリナとシャマーラの答えを聞いたアルティナはジト目で指摘し、セレーネとリィンは冷や汗をかいた後疲れた表情で肩を落とした。

「ア、アハハ…………それよりも”起動者”でしたか?それの基準は一体どういうものを基準にしているのでしょうね?」
リィン達の様子を見て冷や汗をかいて苦笑していたノエルはある疑問を口にし
「”神機”の”起動者”であるエリゼさんを除くとして、現在判明している”騎神”の”起動者”はリィンさん、エリスさん、黒の工房の”蒼のジークフリード”、西風の旅団の”猟兵王”…………確かにノエルさんの言う通り、一体何を基準にしているのかわかりませんね。」
「ああ…………4人には何の共通点も見当たらないしな…………」
ノエルの疑問を聞いたティオとロイドはそれぞれ考え込んだ。

「あの…………そこに付け加えさせて頂きますが実は内戦でその4体以外の”騎神”が存在している事が判明していますわ。ちなみにその騎神は”紅の騎神テスタロッサ”という名前で、”起動者”はわたくしの弟との事です。最も”紅の騎神”は他の”騎神”と違い、アルノール家の血を引く者が”起動者”の為、わたくしやお兄様も”紅の騎神”の”起動者”の可能性もあると思われますが…………」
「アルフィン殿下の弟君という事はセドリック皇太子殿下ですか………」
「しかもシャーリィの得物の名前と一緒とか、一体どうなってんだ?」
「単なる偶然とは思えませんよね…………?」
アルフィンの申し出を聞いたエリィは驚き、ランディは疲れた表情で呟き、ユウナは不安そうな表情で呟いた。

「…………――――――”騎神”は”紅”、”蒼”、”紫”、”灰”、”銀”、”金”、そして”黒”と全て合わせて7体存在しています。」
「”騎神”は7体…………”七の至宝(セプト=テリオン)”と同じ数であることを考えると、ひょっとしたら”至宝”と何か関係があるかもしれないね…………」
「そうですわね。特にエイドスあたりだったら、何か知っている可能性はありそうですわ。」
「ハア…………こりゃ一端リベールに戻ってエイドスを問い質す必要があるみたいね。――――――って、そういえば何でリアンヌさんが”騎神”が7体ある事を知っているの?」
リアンヌの答えを聞いたヨシュアとフェミリンスは考え込み、溜息を吐いたエステルはある事が気になり、リアンヌに訊ねた。
「――――――”シルフィアとしての意思が目覚める前の私”――――――つまり、”リアンヌ・サンドロッド”も”起動者”の一人だからです。顕現せよ――――――”銀の騎神”アルグレオン。」
「応!!」
エステルの問いかけに答えたリアンヌは自身の背後に銀色の機体――――――”銀の騎神”アルグレオンを現わさせた!

「な――――――」
「サ、サンドロッド卿も”起動者”の一人だなんて…………!」
「あれがマスターの”騎神”…………」
「話には聞いていたけど、こうして実際に見るのは初めてね…………」
「ああ…………まさにマスターに相応しい機体だな。」
アルグレオンの登場にリィンは絶句し、セレーネは信じられない表情で呟き、デュバリィは呆け、エンネアとアイネスは興味ありげな表情でアルグレオンを見つめた。

「そしてエリス嬢が”起動者”に選ばれた理由にも心当たりはあります。」
「え…………」
「…………サンドロッド卿、何故エリスは”起動者”に選ばれたのでしょうか?」
静かな表情で呟いたリアンヌの答えにその場にいる多くの者達が驚いている中エリスは呆け、エリゼは真剣な表情で訊ねた。
「恐らくですが彼女はあの”戦場”にいた人物の中で、誰よりも”力”を欲していたからかと。――――――実際にリアンヌ・サンドロッドやドライケルス皇帝が”騎神”の”起動者”として選ばれた理由は”獅子戦役”――――――いえ、エンド・オブ・ヴァーミリオンに勝てる”力”を心から願ったからでもあります。」
「”力”を…………」
「エ、エリスが”力”を…………!?その…………何かの間違いなのでは…………?」
「……………………いえ、姫様…………恐らくサンドロッド卿の仰る通りだと思います…………」
リアンヌの推測を聞いたリィンが考え込んでいる中アルフィンが戸惑いの表情で指摘したその時、光に包まれてエル・プラドーから降りたエリスが複雑そうな表情で答え
「え…………」
「…………今の話を聞いてどうしてそう思ったのかしら?」
エリスの答えを聞いたアルフィンは呆け、エリゼは真剣な表情で訊ねた。

「…………兄様が道を定めた時から、妹として兄様の背中を護る事が私の務めだと覚悟を決めたのですが…………私は”無力”でした。ユミルが襲撃された時は”蒼の深淵”の謀に気づかず姫様と共に拉致され、兄様達に助けられるまではずっとカレル離宮にユーゲント陛下達と共に幽閉され、内戦で辛い目に遭い続けながらも私の心配もして頂いた兄様に負担をかけてばかりでした。そんな無力な私に対して姉様は若輩でありながらもメンフィル帝国の時代の女帝であられるリフィア皇女殿下の専属侍女長として…………”剣聖”の一人として、クロスベルで起こった”異変”の解決に貢献し、そして私と兄様達がメンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国との戦争勃発前にメンフィル帝国政府の判断でマルーダ城に待機させられた時も…………メンフィル皇家の方々の覚えめでたい姉様はご自身の人脈で、私達に色々と便宜を図る事ができる程の”力”がありますし…………セレーネは伝説上の存在――――――”竜”に秘められる”力”で内戦時は兄様を私と姉様の代わりに支え続けてくれました…………同じ”兄様の妹”として、私だけが無力だったのです…………」
「「エリス…………」」
「エリスお姉様…………」
「「………………………………」」
辛そうな表情で自身に秘めた心を口にしたエリスの話を聞いたリィンとエリゼ、セレーネはそれぞれ辛そうな表情でエリスを見つめ、エリスを誘拐した超本人であるアルティナやエリスとかつての自分が同じである事に気づいたデュバリィはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「そしてアルスターの民達を護る為に、兄様達は”黒の工房”の使い手達と戦いましたが、逃がしてしまい…………その事に兄様が悔しがっているご様子を見て、私は改めて思ったんです…………私にも、姉様やセレーネのような険しい道を歩む兄様を支える事ができる”力”があれば…………と。そう思った時に、エル・プラドーの声が聞こえたんです…………」
「そうだったのか…………」
エリスの説明を聞いたリィンは静かな表情で呟き
「……………………エル・プラドー、こんな自分勝手で卑屈な私が貴方の”起動者”になって本当によかったのでしょうか…………?」
エリスは振り向いて辛そうな表情でエル・プラドーに問いかけた。

「我はエリスに”起動者”の”資格”があると判断し、”試練”を与え、エリスは”試練”を超えた為、エリスを我の”起動者”として認めた。そして”我自身”は例えどんな理由があろうとも、誰かを守りたいというエリスの気持ちは決して間違っているものではないと判断する。」
「エル・プラドー…………」
エル・プラドーの答えにエリスは目を丸くし
「――――――エリス。これは”鬼の力”に迷っていた俺に子爵閣下が向けた言葉なんだが…………――――――『力は所詮、力。使いこなせなければ意味はなく、ただ空しいだけのもの。だが――――在るものを否定するのもまた”欺瞞”でしかない。畏れと共に足を踏み出すがよい。迷ってこそ”人”――――立ち止まるより遥かにいいだろう。』…………それはエリスも同じなんだと思う。」
「ぁ…………」
リィンの言葉を聞くと呆けた表情を浮かべた。

「俺だって未だヴァリマールの”起動者”として相応しい事に自信が持てない。だから、これからはお互いの騎神にとって相応しい”起動者”になれるように、支え合い、時には迷ってくれないか?」
「兄様…………はい…………!」
リィンの言葉にエリスは呆けた後嬉しそうな表情で頷き
「貴女が抱えていた悩みに気づかなくて、ごめんね、エリス…………」
「わたくしもエリスお姉様と同じお兄様の妹として、エリスお姉様の悩みに気づけなくて、申し訳ございません…………」
「姉様…………セレーネ…………どうか、謝らないでください。お二人に相談しなかった私にも否があるのですから…………」
エリゼとセレーネにそれぞれ謝罪され、抱き締められたエリスは呆けた後二人の気遣いに感謝しつつ二人を抱き締め返した。

「やれやれ…………フム…………それにしても、”騎神”か。機会があれば――――――いや、今の内にせめてデータだけでも取っておくべきか?」
「エイダ様…………今の言葉で雰囲気がぶち壊しですの。」
「まあ、エイフェリアが壊さなくてもリセルが壊す可能性も十分考えられましたが。」
「アルちゃん!?私は”魔導巧殻”や”魔導操殻”の技術に興味があるのであって、エイフェリア元帥閣下と違って”騎神”の技術にはそれほど興味はありませんよ!?」
リィン達の様子を苦笑しながら見守った後興味ありげな表情でアルグレオンやエル・プラドーに視線を向けて呟いたエイフェリアの言葉にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて脱力している中リューンはジト目で指摘し、静かな表情で呟いたアルの推測に驚いたリセルは反論し、その様子にその場にいる多くの者達が再び冷や汗をかいて脱力した。

「クク…………それにしても、これで7体中6体の”騎神”と”起動者”が判明した事になるが、残り一体はどういう状況なんだろうな?」
「残りの騎神…………”黒の騎神”ですか。既に6体の”騎神”が目覚めている以上、残り一体の騎神も目覚めて”起動者”がいる可能性は十分に考えられますよね。」
「フフ、鋭いですね。そちらの二人の仰る通り”黒の騎神”も既に目覚めていて、”起動者”も存在しています。」
エイフェリア達の様子を面白そうに見つめた後気を取り直してある疑問を口にしたフォルデの言葉を聞いたステラが考え込んでいるとリアンヌが答えを口にし、その答えを聞いたその場にいる多くの者達は驚いた。
「その口ぶりだと、”黒の騎神”の”起動者”も知っているのか?」
「はい。”黒の騎神”の名は”イシュメルガ”。”獅子戦役”、”ハーメルの惨劇”を始めとしたエレボニアの多くの人々の運命を狂わせた全ての”元凶”にして他の6騎とは別格の力を誇る”最強の騎神”。そして”起動者”はエレボニア稀代の宰相――――――”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンです。」
「!!」
そしてリウイに訊ねられたリアンヌは重々しい口調で驚愕の事実を口にし、その事実を知ったその場にいる多くの者達は驚愕の表情を浮かべた。その後リアンヌは”黒の騎神”について自身が知る限りの情報をその場にいる全員に伝えた。

こうして…………アルスターの民達は多くの英雄達の活躍によって、”第二のハーメル”の犠牲者になる運命から逃れる事ができ…………エリスは”黒の工房”や”結社”どころか、オズボーン宰相すらも予想できず、未だ把握していない”想定外の起動者”となった―――――― 
 

 
後書き
という訳で予想通り?エリスがエル・プラドーの起動者になり、リィンパーティーが更に強化されちゃいましたwしかも、エル・プラドーの試練は哀れ、リィン達に加えて空、零・碧の主人公勢、幻燐陣営、魔導巧殻陣営、戦女神陣営、グラセスタ陣営という超過剰戦力によってさっさとクリアされ、ボスも3rd篇のフェミリンスの時も超える超過剰戦力によるタコ殴りの後にエリスに止めを刺されました(笑)それとお察しの通り端折ってはいますが、今回の話の最後でリィン達は本来なら閃4の終盤で知る事実を全て知る事になった為、リィン達はⅦ組と違って”全て知っている事になっています”。なお、エル・プラドーの試練の場のBGMは東亰ザナドゥのラストダンジョンのBGMである”Liberation Drive”だと思ってください♪次回からはⅦ組視点になり、しばらくⅦ組の話になる予定で、リィン達の視点になるのはメンフィル・クロスベル連合によるエレボニア征伐が本格的になる頃からです。リィンが主人公の話のはずなのに、Ⅶ組視点が多くなっている現状ですが、エレボニア征伐が始まれば逆にⅦ組視点の話は少なくなりますので、Ⅶ組視点の話が多いのは序盤である今の間だけの予定です。 

 

第26話

1月16日、同日PM12:20――

グランセルに到着後、グランセル城にクローディア王太女と共に入城したアリサ達がアリシア女王がいる謁見の間に向かうと、謁見の間にはアリシア女王だけでなく、カシウスもアリシア女王の傍に控えていた。

~グランセル城・謁見の間~

「お祖母様…………!」
「クローディア…………それにオリヴァルト殿下達も。その様子ですと、貴女達も既に”アルスター”の件について聞き及んでいる様子ですね…………」
慌てた様子で謁見の間に入ってきたクローディア王太女達を見たアリシア女王は重々しい様子を纏って答え
「はい…………会談の最中にリウイ陛下からパント大使閣下に急遽連絡があり、その場で”アルスター襲撃”について軽く説明を受け、会談を切り上げてグランセルに帰還すべきだというパント大使閣下達のお心遣いに甘えて、こちらに急行したのですが…………」
「……………………やはり、パント大使閣下達が仰ったように、”アルスター襲撃”が実際に起こり、帝国政府はその犯人をリベール王国であると断定しているのでしょうか…………?」
アリシア女王の問いかけにクローディア王太女が答えた後オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏ってアリシア女王に問いかけた。

「誠に残念ながら、殿下達の仰る通りです。先程ダヴィル大使閣下がこちらに訪れ、”アルスター襲撃”の件についての説明を行い、帝国政府の決定に対して大変不服な様子を見せながらも帝国政府の要求をリベール王国に伝えました。」
「貴方は一体…………?」
アリシア女王の代わりに答えたカシウスの話を聞いたガイウスは不思議そうな表情でカシウスを見つめ
「フフッ、まさかこんな形で再会する事になるとはな。これも”空の女神”の悪戯かもしれませんな――――――オリヴァルト殿下、サラ。」
「ハハ、エイドス様はご自身が関係する言葉に関して随分と嫌がっているご様子でしたから、その言葉はご本人の前では口にしないほうがいいと思いますよ。」
「……………………お久しぶりです、カシウスさん。」
苦笑しながら話しかけたカシウスに対してオリヴァルト皇子も苦笑しながら答え、会釈をしたサラの言葉にアリサ達はそれぞれ驚いた。

「カ、”カシウス”ってまさか…………!」
「貴方が”百日戦役”で活躍したあのリベールの英雄――――――カシウス・ブライトなんですか………!?」
「ん。しかも”空の女神”の子孫でもあるね。」
「貴方があの”剣聖”――――――カシウス・ブライト卿…………」
エリオットとマキアスは信じられない表情でカシウスを見つめ、フィーは静かな表情で呟き、ラウラは呆けた表情でカシウスを見つめた。
「ハハ、”空の女神”関連に関しては俺も最近知った青天の霹靂の事実だから、正直今でも実感はないんだがな。――――――改めて名乗ろう。リベール王国軍総司令、カシウス・ブライト中将だ。時間が惜しい――――――早速になりますが、彼らにも”アルスター襲撃”の件でのリベール王国に要求したエレボニア帝国政府の要求について説明させていただいても構いませんか、陛下?」
「ええ、お願いします。」
軽く自己紹介をしたカシウスはアリシア女王に確認を取った後、アリサ達にリベール王国がエレボニア帝国政府に要求された内容を説明した。


エレボニア帝国による”アルスター襲撃”に対するリベール王国に要求する内容は以下の通り


1、メンフィル帝国との同盟を破棄

2、エレボニア帝国軍によるリベール・エレボニアの国境――――――ハーケン門の通過を無条件許可

3、エレボニア帝国軍がロレント市を前線基地として利用する無条件許可

4、エレボニア帝国軍が要求する支援物資の無償提供


以上の条件をエレボニア帝国軍によるリベール王国征伐が開始されるまでに全て実行するのであれば、エレボニア帝国は”アルスター襲撃”に対する報復内容であるエレボニア帝国軍によるリベール王国征伐を中止する。


「――――――以上の内容がエレボニア帝国政府がダヴィル大使を通じて伝えたリベール王国に対する要求内容だ。」
「そ、そんな…………エレボニア帝国政府がリベール王国にそんな要求を…………」
「内戦の間に、エレボニア帝国はリベール王国のお陰で、2度もメンフィル帝国との戦争勃発を避ける事ができたにも関わらず、どうしてそのような恩を仇で返すことを…………」
カシウスが説明を終えるとアリサとエマはそれぞれ悲痛そうな表情を浮かべ
「…………恐らくは――――――いや、要求内容からして間違いなくメンフィル・クロスベル連合との戦争に勝利する為だと思うよ。」
「うん…………メンフィル帝国との同盟を破棄させる事もそうだけど、何よりもゼムリア大陸に唯一存在しているメンフィル帝国の大使館にして、異世界と繋がっている場所でもあるロレント市郊外にあるメンフィル帝国の大使館を占領する為にロレント市を前線基地として使うことを要求しているもの…………」
「あ…………っ!」
「――――――なるほどね。異世界にあるメンフィル帝国の”本国”からの支援さえ封じる事ができれば、普通に考えて敗戦する可能性が高いメンフィル・クロスベル連合との戦争を逆転させる事ができると判断した訳ね。」
「ああ…………間違いなくそれが狙いなのだろう。」
「だからと言って、かつての”ハーメル”のようにリベールに冤罪を押し付けた挙句そのような理不尽な要求をするとは…………っ!」
「………………………………」
重々しい様子を纏ったアンゼリカと辛そうな表情を浮かべたトワの推測を聞いて仲間達と共に血相を変えたエリオットは声を上げ、静かな表情で呟いたセリーヌの言葉にアルゼイド子爵が頷き、ユリア准佐は怒りを抑えるかのように唇を噛み締め、拳を握りしめて呟き、クローディア王太女は辛そうな表情で黙り込んでいた。

「……………………――――――アリシア女王陛下、クローディア王太女殿下、そしてカシウスさん。我々の代わりに2度もメンフィル帝国の怒りを鎮めて頂いたにも関わらず、受けた恩を仇で返すというあまりにも卑劣な行いをした愚かなオズボーン宰相――――――いえ、エレボニア帝国政府の所業…………エレボニア帝国皇家を代表して、心からのお詫びを申し上げます…………誠に申し訳ございません…………っ!」
「殿下…………」
オリヴァルト皇子はその場で頭を深く下げて謝罪し、その様子をアルゼイド子爵は辛そうな表情で見つめた。
「…………どうか頭をお上げください、殿下。殿下と同じように謝罪をされたダヴィル大使にもお伝えしたように、今回の件も”百日戦役”の時のようにエレボニア帝国政府――――――いえ、オズボーン宰相を含めた一部の暴走であり、殿下達アルノール皇家の方々を含めたエレボニア帝国自身の意志ではないと信じております。」
「え…………ダヴィル大使も謝罪をされたのですか………?」
「そういえば帝国政府の決定に対して大変不服な様子を見せながら先程の要求内容をお伝えしたと仰っていましたが、ダヴィル大使閣下も帝国政府の決定に対して不信感等を持っておられるのでしょうか?」
アリシア女王はオリヴァルト皇子に頭を上げるように伝え、アリシア女王の話を聞いたクローディア王太女は戸惑いの表情を浮かべ、サラは真剣な表情で訊ねた。

「ええ…………要求内容を伝える際、ダヴィル大使閣下は辛そうなご様子で涙を流しながら帝国政府の要求を私達に伝え…………要求内容を伝え終えた後、額を地面に擦りつける程の深い謝罪をされました…………」
「涙を流しながら帝国政府の要求内容をアリシア女王陛下達に…………」
「し、しかも額を地面に擦りつける程の謝罪をしたって事は…………」
「”土下座”、か…………」
「ハハ…………私だって正直な所、泣きたいくらいだし、父上と共にアリシア女王陛下に土下座をしてでも謝罪したいくらいだからダヴィル大使の気持ちはよくわかるよ…………」
「殿下…………」
重々しい様子を纏って答えたアリシア女王の話を聞いたガイウス、マキアス、ユーシスはそれぞれ辛そうな表情を浮かべ、疲れた表情を浮かべて呟いたオリヴァルト皇子の様子をラウラは心配そうな表情で見つめた。

「…………それで、リベール王国はエレボニア帝国政府の要求に対して、どういう対応をされるおつもりなのでしょうか?」
「それについてはクローディアやデュナン、それに王国政府、軍部の上層部を交えて話し合うつもりですが…………間違いなくエレボニア帝国政府の要求を呑むような結論には至らないでしょう。私自身、リベール国王としてエレボニア帝国政府の要求を呑む訳にはいかないと思っております。」
「はい…………”百日戦役”の件も含めて様々な面でお世話になり、またリベールとは比べ物にならない大国でありながら対等の関係として友好を結び続けてくれているメンフィル帝国との関係を自ら破棄するような道理に反する事をする訳にはいきませんし、何よりもロレントの市民達――――――国民達に他国の軍が駐留し、リベールの友好国であるメンフィル帝国との戦争の前線基地にされる事によって発生する大きな負担をかける訳にはいきませんし…………」
「――――――加えて、”百日戦役”の時と唯一違う点がある。その点を考えると多くの者達は誤解を解くための話し合いによる解決に賛同しない可能性が十分に考えられますな。」
アルゼイド子爵の質問にアリシア女王、クローディア王太女、カシウスはそれぞれ重々しい様子を纏って答え
「”百日戦役”の時と唯一違う点――――――”メンフィル帝国との同盟関係”ですね…………それも、”話し合いによる解決に賛同しない”という事はリベール王国もメンフィル・クロスベル連合と同盟を組んで、エレボニア帝国との戦争に勝利する事による解決の可能性も考えられるという事ですよね…………」
「…………”百日戦役”の時点でメンフィル帝国のみで、エレボニア帝国軍を圧倒したという実績がありますからね…………そこに加えてメンフィル帝国と共にカルバード共和国を吞み込み、大国となったクロスベル帝国まで連合を組んでいる状況ですからね。メンフィル帝国と同盟を組んでいる以上、その関係を利用してメンフィル・クロスベル連合にリベールまで加わって”百日戦役”の復讐をするような意見が出るかもしれませんね…………」
「そ、それは…………」
「「……………………」」
複雑そうな表情で推測したサラとユリア准佐の推測を聞いたクローディア王太女が不安そうな表情を浮かべている中、アリシア女王とカシウスはそれぞれ重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「あの…………”アルスター襲撃”の件で何度か出てきた上、エイドス様との会談の際にも出てきた”ハーメルの惨劇”とは一体どういった内容なのでしょうか…………?オリヴァルト殿下は”アルスター襲撃”の件を”第二のハーメル”と仰っていましたが…………」
「エマ、それは…………!」
その時エマが質問し、エマの質問内容に血相を変えたセリーヌが声を上げかけたその時
「そうだね…………ちょうどいい機会だから、君達にも教えるよ。”百日戦役”に隠されていた”真実”にしてエレボニアが犯した”空の女神”であられるエイドス様自身も許さない”大罪”――――――”ハーメルの惨劇”について。」
オリヴァルト皇子がアリサ達に振り向いて静かな表情で答えた後、”ハーメルの惨劇”についての説明をした。

「そ、そんな……!”百日戦役”が勃発した理由がエレボニア帝国の自作自演だったなんて……!」
「しかも戦争を起こす為に内密に雇った猟兵達に自国の村を滅ぼさせるなんて……!」
「ひ、酷すぎるよ……!」
「リベールは完全に被害者だね……」
「余りにも卑劣で愚かすぎる話です……!」
「……そうね。人間はたまに信じられない程愚かな事をするのは確かね。」
事情を聞き終えたエリオットとマキアスは信じられない表情をし、トワは悲痛そうな表情を、アンゼリカは辛そうな表情を浮かべ、怒りの表情で声を上げたエマの意見にセリーヌは静かな表情で頷き
「父上、今の話は本当なのですか!?」
「ああ……残念ながらな。」
血相を変えたラウラに尋ねられたアルゼイド子爵は重々しい様子を纏って頷き
「多分、シャロンも知っているのでしょうね…………」
「間違いなく知っているでしょうね。何せ自身が所属している組織の幹部――――――”蛇の使徒”が関わっていたのだからね。それと多分だけど”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の連中も知っていると思うわ。」
「確かにミリアム達も知っていてもおかしくありませんね…………」
複雑そうな表情で呟いたアリサの推測に頷いた後答えたサラの推測を聞いたマキアスは複雑そうな表情で同意し
「……”百日戦役”にまさかそのような”真実”が隠されていたとは……」
「……猟兵達に虐殺されたハーメルの人達はどんな気持ちだったんだろう……」
ガイウスは真剣な表情で呟き、元”猟兵”であったフィーは複雑そうな表情をした。

「エイドス様が”ハーメルの惨劇”の”償い”もしていないエレボニア帝国には最初から協力するつもりはないというお言葉も、今の話を聞けば納得だな…………」
「そうだね…………――――――待てよ?そういえばオリヴァルト殿下は”アルスター襲撃”の件を”第二のハーメル”と仰っていましたが、まさか”アルスター襲撃”の”真犯人”は…………!」
重々しい様子を纏って呟いたラウラの言葉に頷いた後ある事に気づいたアンゼリカは厳しい表情を浮かべ
「ああ…………間違いなくエレボニア帝国政府の関係者――――――オズボーン宰相も何らかの形で関係している可能性は非常に高いだろう。――――――いや、それどころか最悪の場合メンフィル・クロスベル連合との戦争を望み、アルフィンを見捨てることを決めた宰相殿の考えに反対しない父上も関わっているかもしれないね。」
「ユ、ユーゲント皇帝陛下が…………っ!?」
「さすがにそれは考え過ぎかと思われるのですが…………」
(まさかとは思うけど、父さんまで関わっていないよな…………?)
アンゼリカの推測に頷いた後厳しい表情を浮かべたオリヴァルト皇子の推測に仲間達と共に驚いたエリオットは思わず声を上げ、ユーシスは信じられない表情で指摘し、マキアスは不安そうな表情で考え込んでいた。

「し、失礼します………!」
するとその時女官長のヒルダが慌てた様子で謁見の間に入って来た。
「ヒルダさん……?」
「女官長、いかがしました?貴女がそのように取り乱すのは珍しいですね。」
ヒルダの様子にクローディア王太女は不思議そうな表情をし、アリシア女王は戸惑いの表情で尋ねた。
「……失礼しました。今しがた、グランセル城に突然のご来客がございまして。それが、陛下達だけでなくかつてのオズボーン宰相閣下の時のようにオリヴァルト殿下達にもご挨拶をしたいと仰っているメンフィル・クロスベル連合の使者の方々とエレボニア帝国の貴族連合軍の”総主宰”と名乗る人物である為、お話中、失礼かと思ったのですが陛下たちのお耳に入れようかと……」
「な――――――」
「ええっ!?」
「”アルスター襲撃”の件を知ったメンフィル・クロスベル連合が接触してくることまでは想定していたが、まさかエレボニア帝国の貴族連合軍の残党の関係者まで、メンフィル・クロスベル連合と共に接触してくるとは…………」
「…………女官長、メンフィル・クロスベル連合、そして貴族連合軍の”総主宰”と名乗っている人物の名前は何という名前なのでしょうか?」
ヒルダの話を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えて驚いている中オリヴァルト皇子は絶句し、クローディア王太女は驚きの声を上げ、カシウスは真剣な表情で呟き、アリシア女王は表情を引き締めてヒルダに訊ねた。

「…………はい。メンフィル・クロスベル連合の使者の方々はクロスベル帝国第一側妃ユーディット・ド・カイエン、メンフィル帝国大使リウイ・マーシルンの側妃の一人、シルフィエッタ・ルアシア、貴族連合軍の”総主宰”はカイエン公爵令嬢ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエンと名乗っております。」
そして謁見の間に新たな客―――ユーディット、シルフィエッタ、ミルディーヌ公女に加えてそれぞれ護衛としてユーディットはミレイユ、シルフィエッタはセオビット、そしてミルディーヌ公女は姉弟に見える蒼灰色の髪の女性と男子を連れて謁見の間に現れた――――――

 
 

 
後書き
次回のBGMは閃4の”それぞれの覚悟”だと思ってください♪
 

 

第27話


~グランセル城・謁見の間~


「――お初にお目にかかります。クロスベル帝国ヴァイスハイト皇帝が第一側妃、ユーディット・ド・カイエンと申します。このような形での突然の訪問、どうかお許しください。」
「――エレボニア帝国貴族連合軍の”総主宰”並びに”エレボニア側のカイエン公爵家暫定当主”のミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエンと申します。エレボニア帝国で内乱を引き起こした愚かな反逆者の集団の”主”の座を叔父クロワールより引き継いだ身であるこの私がこの場に同席する事、どうかお許しください。」
「――メンフィル帝国大使リウイ・マーシルンの側妃の一人、シルフィエッタ・ルアシアと申します。――――お久しぶりですね、クローディア王太女殿下、ユリア准佐、それにオリヴァルト殿下も。」
ユーディット達はそれぞれ一歩前に出てアリシア女王達に自己紹介をし
「クローディアとユリアさんはシルフィエッタ殿の事をご存知なのですか?」
「オリヴァルト殿下ともお知り合いのようですが…………一体どのような経緯でシルフィエッタ殿とお知り合いになられたのでしょうか?」
シルフィエッタの自己紹介を聞いたアリシア女王は目を丸くし、カシウスは戸惑いの表情で訊ねた。

「シルフィエッタさんとは”影の国”事件で出会ったのです。”影の国”から帰還後、リウイ陛下の側妃として迎えられた事は話には聞いていましたが…………」
「ちなみにシルフィエッタ殿はセオビット殿にとって母君にあたる御方です。」
「セオビット殿の…………確かにお二人はまるで姉妹のように、顔立ちが似ていますな。」
クローディア王太女とユリア准佐の話を聞いたカシウスはシルフィエッタとセオビットを見比べて感想を口にし
「フフ、母は生粋のエルフで私自身は闇夜の眷属とエルフのハーフの為、普通に考えれば血縁関係に見えない私と母が親子や姉妹のように見られる事は光栄ですわ。」
(自然と精霊と共に生きる”森人”とも呼ばれる”エルフ”…………まさに伝承通りの姿ね。)
(そうね…………ラウラさん?どうかされたのですか?)
セオビットの答えを聞いてシルフィエッタの種族を知って呟いたセリーヌの小声に頷いたエマだったが、信じられない表情を浮かべているラウラが気になり、訊ねた。

(ありえないのだ………貴族連合軍の”総主宰”と名乗る人物の護衛にあの方がついている事に…………!)
(ラウラがそこまで驚くなんて一体何者なの?)
信じられない表情で呟いたラウラの答えが気になったフィーはラウラに訊ね
(………ミルディーヌ公女の護衛と思われる蒼灰色の髪の女性の名前はオリエ・ヴァンダール。”風御前”とも呼ばれているヴァンダール子爵家”の当主であられるマテウス・ヴァンダール卿の伴侶にして、ヴァンダール流の師範代も務める人物だ…………!)
(な――――――)
「”ヴァンダール”だって!?何で”ヴァンダール”の関係者が貴族連合軍についているんだ!?」
ラウラの答えを聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中サラは思わず絶句し、マキアスは信じられない表情で声を上げた。

「え…………」
(おい…………っ!貴様の気持ちもわからなくはないが、今がどういう状況なのかを考えろ…………!)
「ハッ!?す、すみません!すみません!」
マキアスの言葉を聞いたクローディア王太女が呆けている中ユーシスに睨まれて注意されたマキアスは我に返った後何度も頭を下げて謝罪し
「いや、正直な所私達もマキアス君のように声を上げたり、”彼女達”から事情を色々と聞きたいくらいだから、気にしないでくれ。」
「…………久方ぶりです、オリエ夫人。それにクルトも。お二人とも無事で何よりです。」
「ええ…………子爵閣下もご壮健そうで何よりです。」
「…………お久しぶりです、子爵閣下。それにオリヴァルト殿下も。」
マキアスの謝罪に対してオリヴァルト皇子が静かな表情で答え、アルゼイド子爵に話しかけられた女性と少年はそれぞれ会釈をした。

「あの…………ミルディーヌ公女殿の護衛のお二人はミュラーさんとどのような関係なのでしょうか…………?」
「先程そちらの方が貴方方の事を”ヴァンダールの関係者”と仰っていましたが…………」
クローディア王太女は戸惑いの表情で、アリシア女王は真剣な表情で女性と少年に問いかけ
「フフ…………私達の事は気にせず、アリシア女王陛下達にご挨拶をして頂いて構いませんわよ。」
ミルディーヌ公女は驚愕の表情で女性と少年に視線を向ける周囲の様子に苦笑した後女性と少年に自己紹介を促し
「そうですか…………でしたらお言葉に甘えさせて頂きます。――――――”ヴァンダール子爵家”当主マテウス・ヴァンダールが後添い、オリエ・ヴァンダールと申します。どうぞ、お見知りおきを。」
「マテウスとオリエの息子のクルト・ヴァンダールと申します。兄ミュラーとは腹違いの兄弟の関係になります。以後お見知りおき願います。」
自己紹介を促された女性と少年――――――オリエ・ヴァンダールとクルト・ヴァンダールはそれぞれ自己紹介をした。

「な――――――」
「ええっ!?”ヴァンダール”――――――それもミュラーさんの…………!?」
「まさかこのような形でかの”風御前”とお会いする事になるとは…………”アルノール家の懐刀”とも呼ばれている”ヴァンダール”のご夫人とご子息の一人が貴族連合軍側についている事には何やら深い事情がおありと思われますが…………」
オリエとクルトの事を知ったユリア准佐は絶句し、クローディア王太女は驚きの声を上げ、カシウスは真剣な表情でオリエとクルトを見つめた。
「フフ、お二人の事情については後に説明させて頂きますので、まずは我々が本日こちらにご挨拶に参った要件を済まさせていただいても構わないでしょうか?」
「…………わかりました。それで本日はお三方が揃って私達に何の御用でしょうか?」
ミルディーヌ公女の話を聞いて頷いたアリシア女王はユーディット達に要件を訊ねた。


「既に女王陛下達も予想はされていると思いますが、メンフィル・クロスベル連合にリベール王国にも加わって頂くご提案をする為に本日ご訪問をさせて頂きました。」
「昨夜に起こった”アルスター襲撃”や、エレボニア帝国がかつての”ハーメルの惨劇”のように碌な調査もせずに”アルスター襲撃”の犯人を貴国であると断定した情報を掴んでおります。そして近日中にエレボニア帝国が12年前の”百日戦役”のように”アルスター襲撃”の報復並びに賠償として、貴国に理不尽な要求又は宣戦布告を行うと思われ――――――いえ、既に行った可能性も考え、メンフィル帝国は貴国と同盟を結んでいる国として、何か御力になれないかと思い、こちらに参った所存です。」
「クロスベル帝国としても、クロスベルがまだ自治州だった頃にリベール王国には”不戦条約”の件でお世話になったご恩もありますので、メンフィル帝国共々かつての”百日戦役”のように再びエレボニア帝国によって国家存亡の危機に陥っている貴国の御力になりたいと思い、メンフィル帝国と相談した結果、貴国にもメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”にも協力して頂くことを提案すべきだという結論に至りました。」
「………………………………」
「二国のお心遣いはとても心強く、ありがたい話だとは思っております。――――――ですが、それは”不戦条約”を掲げた我が国が”戦争”に加担すると思っての行動なのでしょうか?」
ユーディットとシルフィエッタの話を聞いたクローディア王太女が辛そうな表情で黙り込んでいる中、アリシア女王は静かな表情で答えた後目を細めて二人に問いかけた。
「勿論、ゼムリア大陸から”戦争”を無くす為の一手として貴国が”不戦条約”を掲げた事は存じています。――――――ですがリベール王国が”戦争”の”当事者”になってしまった今の状況では、”話し合いで戦争を回避する事は不可能”だとメンフィル・クロスベル連合は判断したのです。」
「ましてやリベール王国と戦争勃発寸前に陥っている国はかつての”百日戦役”のように”第二のハーメル”といっても過言ではない”アルスター襲撃”という冤罪を貴国に押し付けたエレボニア帝国。”百日戦役”の件を考えると、エレボニア帝国が貴国の主張に耳を貸すとはとても思えません。」
「そ、それは…………いえ、”百日戦役”の時と違い、エレボニア帝国の皇家の一員であられるオリヴァルト殿下も”アルスター襲撃”はリベール王国によるものではなく、リベール以外の何者かによる謀であると信じて頂いています!ですから、、”話し合いで戦争を回避する事は不可能”だと判断しているメンフィル・クロスベル連合の判断は早計かと思われます…………!」
「王太女殿下も仰ったように、”アルスター襲撃”による今回のエレボニア帝国の行動…………かつての”百日戦役”のように一部の過激派による暴走だと私は判断している。リベールとエレボニアの戦争が勃発する前に”アルスター襲撃”に関する真実や証拠を直ちに集め、それらを帝国政府に提示して戦争を中止、そしてリベール王国に謝罪してもらうつもりだ。」
ユーディットとシルフィエッタの指摘に辛そうな表情で答えを濁した後すぐに反論したクローディア王太女に続くようにオリヴァルト皇子は決意の表情で答えた。

「――――――失礼を承知で申し上げますが、例え”アルスター襲撃”の”真実”や”証拠”を殿下達が集める事ができたとしても、リベール王国との戦争を中止すると本当にお思いなのでしょうか?――――――メンフィル・クロスベル連合との戦争という無謀な”賭け”に出た挙句、”帝国の至宝”の片翼にして帝位継承権もあり、”紅き翼”の旗印として内戦終結にも大きく貢献した姫様すらも見捨てたオズボーン宰相や宰相の判断を受け入れたユーゲント皇帝陛下が。」
「…………っ!ハハ…………中々痛いところを突いてくるね、ミルディーヌ君。その様子だと貴族連合軍はメンフィル・クロスベル連合に加わっていると思われるけど…………その理由はやはり、内戦の責任から逃れる為かい?」
意味ありげな笑みを浮かべたミルディーヌ公女の指摘に辛そうな表情で唇を噛み締めたオリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた後表情を引き締めてミルディーヌ公女に問いかけた。
「まあ、その理由がある事も否定はしませんが、それはあくまで”副産物”のようなものであり、本当の理由はメンフィル・クロスベル連合に敗戦したエレボニアの政治に貴族連合軍(私達)が介入できるようになる事でメンフィル・クロスベル連合との戦争で滅亡したエレボニアの多くの民達を苦しむ事になる事を防ぐ為――――――つまりは”貴族の義務(ノブレスオブリージュ)”ですわ。」
(ノ、”貴族の義務(ノブレスオブリージュ)”ってユーシスがいつも心掛けている………)
(貴族が弱き者――――――”民達を守る事”か…………)
「…………っ!オリヴァルト殿下、会談中の所横から口を挟んで申し訳ございませんが、ミルディーヌ殿やユーディット殿に対して発言をさせて頂いても構わないでしょうか…………?」
ミルディーヌ公女の答えにエリオットとガイウスが複雑そうな表情をしている中、怒りの表情で唇を噛み締めながら身体を震わせていたユーシスはオリヴァルト皇子に発言の許可を確認した。

「ああ、構わないよ。」
「ありがとうございます。――――――ふざけるのも大概にして頂きたい、ミルディーヌ殿!真に帝国を想う帝国貴族ならば、貴女達貴族連合軍もエレボニア帝国政府の暴走を止めようとするオリヴァルト殿下に協力するのがアルノール皇家に忠誠を捧げる帝国貴族の義務なのではないか!?それにユーディット殿も何故、帝国貴族の一員――――――それも”四大名門”のカイエン公爵家の一員でありながら、父であられるカイエン公のようにエレボニア皇家を裏切り、敵国となったクロスベルの皇帝に嫁いだのですか!?」
「ユーシス君…………」
オリヴァルト皇子の許可を取った後ユーディットとミルディーヌ公女を睨んで指摘したユーシスの主張にアンゼリカは辛そうな表情を浮かべた。
「――――――ラマールを含めたエレボニアの民の生活が平穏である事を保ち、民を守り続ける事……―――それが私と私の考えに賛同したキュアの”貴族”が果たすべき”義務”――――”貴族の義務(ノブレスオブリージュ)”です。その為ならば、”売国奴”と罵られる覚悟もクロスベル帝国からヴァイスハイト陛下との縁談を提案され、その縁談に承諾した時からできています。」
「ユーディット嬢…………」
静かな表情で答えたユーディットの答えにアルゼイド子爵は複雑そうな表情を浮かべた。
「クスクス、それとまさかメンフィル帝国との戦争を回避する為に1度目の”ユミル襲撃”の超本人であられる父君を”ユミル襲撃”の件を知ってすぐにアルバレア公をメンフィル帝国政府に突き出すか、もしくは処刑してアルバレア公の遺体をメンフィル帝国政府に渡さなかったユーシスさんにそれを言われるとは思いませんでしたわ。」
「…………っ!」
「ミュゼ君…………幾ら何でもそれは言葉に過ぎるんじゃないのかい?」
意味ありげな笑みを浮かべたミルディーヌ公女の指摘に反論できないユーシスが辛そうな表情で唇を噛み締めている中、アンゼリカは厳しい表情でミルディーヌ公女に指摘した。

「フフ、申し訳ございません、アンゼリカお姉様。」
(………何となく予想はしていたけど、もしかしてアンちゃんはミルディーヌ公女殿下と知り合いなの…………?ミルディーヌ公女殿下に対して愛称のような名前で呼んでいるし…………)
ミルディーヌ公女が謝罪するとミルディーヌ公女のアンゼリカへの呼び方が気になったトワがアンゼリカに訊ね
(ああ…………パーティーなどで知り合う機会があって数少ない四大名門の年が近い女子同士として個人的に親しくしていたんだ…………それと確か彼女は”アストライア女学院”に通っていて、エリス君やアルフィン殿下とも仲がよかったはずだ。)
「ええっ!?エリスさんやアルフィン殿下とっ!?って、ご、ごめんなさい、思わず声を上げてしまって…………!」
アンゼリカの答えを聞いて思わず驚きの声を上げたアリサはすぐに我に返って謝罪をした。

「フフ、エリス先輩や姫様にはお二人の後輩としてとても親しくして頂いておりますわ。――――――ですから当然貴方方”Ⅶ組”やエリス先輩ご自慢の”リィンお兄様”についてもよく存じておりますわ。このような形になりますが、噂の”Ⅶ組”の皆さんとお会いできて光栄です。――――――最も肝心の”リィンお兄様”が同席していない事は少々残念ですが。」
「そっちはメンフィル・クロスベル連合側なんだからリィンの事についてもある程度知っているだろうに、わたし達に対