ロックマンX~Vermilion Warrior~


 

[ロックマンX編]プロローグ:転生

私はどこにでもいる高校2年生の女の子だ。

平凡な家庭で生まれ育って、変わったところなんて何もない。

強いて言うなら女子にしては珍しくロックマンシリーズにハマっていたことくらいだろうか?

今年は嬉しいことがあり、何とロックマンXのコレクション作品であるアニバーサリーコレクションとロックマンの新作であるロックマン11が発売するのだ。

販売元がロックマンをプッシュしているためにロックマンファンとしては堪らない年になりそうだ。

早く発売日にならないかとウキウキしながら私は古いゲームを売りにゲーム店に行ったその時である。

「トラックが突っ込んで来るぞーーーーっ!!!!」

騒音と悲鳴に気付いた私が後ろを振り向いた時には既にトラックは私の目の前に迫り…。

身体に強い衝撃が襲いかかったのと同時に視界がブラックアウトした。

そして、次に目を開けた時には不思議な空間にいた。

「あれ?ここ…どこ?」

「やあ、初めまして」

「!?誰!!?」

振り向いた先には、神々しいオーラを放つ金髪のロングヘアーの美しい女性がいた。

あまりの神々しさに思わず私は息を飲んだけれど。

「信じられないかもしれないけど、私は神様。女神様です♪」

「はあ…?」

彼女のいきなりの女神様発言に少し引いてしまったのは秘密だ。

「あの…私、もしかして死んだんですか?」

「YES♪」

私の問いに対して笑顔で言われ、ショックを受けるより頭を抱えたくなった。

出来ればシリアスな雰囲気で言って欲しかった。

「実を言うと、君は本来死ぬはずじゃなかったんだよ」

「死ぬはずじゃなかったって…現に死んでるじゃないですかあ…ロックマンXアニバーサリーコレクションとロックマン11の発売を楽しみにしていたのに…ロックマンファンとして無念にも程がありますよ…」

「……君はロックマンシリーズが好きなの?」

「はい。ロックマンシリーズはどれも好きですけど、一番好きなのはXシリーズで、次に好きなのはロックマンゼロシリーズとゼクスシリーズですね」

「ああそう…じゃあ、転生先は決まったね」

「え?」

「君のように本来死ぬはずではなかった人は別の世界に転生させるルールがあるの。君はロックマンXの世界に転生させる。」

「え?そりゃあ、エックスやゼロ達に会えるのは嬉しいけど…あそこ死亡率が凄いじゃないですか!!私、あっさり死にます。確実にあの世行きです!!」

主人公ですら死ぬようなシリーズに転生させられてもまたあっさり死んでここに逆戻りしてしまいそうだ。

「大丈夫!!高性能な戦闘型レプリロイドに転生させればいいんだし。エックスやゼロ、アクセルに匹敵するようなね」

「あの…本当に出来るんですか?」

エックスとゼロと言った主人公クラスとなると本当に出来るのか疑わしく、半信半疑な態度を取ると女神は頬を膨らませる。

「勿論。早速転生を始めるよ?どんな姿がいい?」

「えっと…ZXのロックマンモデルZXの姿で…ZXAのロックマンモデルAもいいけど同性の主人公ではあれが好きです」

「OK。それじゃあ…君のレプリロイドとしての名前は“ルイン”姿はZXのロックマンモデルZX…おまけとしてモデルX以外の形態になれるようにしてあげる…」

「…本当?」

「本当です。だけど、何かのきっかけが必要になるよ。」

「それで充分ですよ」

女の子の身体が光に包まれ、光が消えた時には、ロックマンZXに登場するロックマンモデルZXと同じ姿をしたレプリロイド“ルイン”がいた。

「じゃあ、新しい人生楽しんでねルインちゃん。またね~」

「え!!?あ、ちょっと…」

「あ、そうそう、転生の代償に、君の記憶の大半が失われるから」

「それをもう少し、早く言って…」

そして、ロックマンXの世界。

研究所から気晴らしのために散歩をしていた老人は1体のレプリロイドが倒れている姿を発見した。

「これは…!!?」

朱の細身のアーマーに金色の髪のレプリロイドは自分の友人に似ていたのもあって急いで、彼女に触れる。

「ん…」

「おお、目を覚ましたか。大丈夫か?」

意識が完全に覚醒していないルインは声のする方を向くと、そこにいた老人に目を見開いた。

その人物は発見されたエックスの設計思想を流用し、世界で初めてレプリロイドを開発した天才科学者であるDr.ケインであった。

「大丈夫じゃ、お主に危害を加えたりはせんよ」

目を見開いているルインを見て、怯えられていると思ったのか、ケインは安心させるように笑顔を見せる。

「あ、はい…」

笑みを浮かべて頷き返すルインにケインも満足そうに笑みを浮かべた。

「お主、一体何があったのじゃ?どうしてここに倒れておったんじゃ?」

「あ、はい…私はルイン……私は…私…は?」

「どうしたのじゃ?」

徐々に表情が固くなり、突如頭を抱え始めたルインにケインも表情を険しくする。

「わ、分からない…何で…?」

必死に過去を思い出そうとしても以前の記憶が殆ど思い出せない。

かつての自分も…友人も…家族でさえも。

「もうよい!!すまんな…辛い思いをさせてしもうた…」

頭を抱えるルインを見て、申し訳なさそうに言うケインにルインは首を横に振る。

「お主、行くところがないならわしの所に来ぬか?」

「え…?」

どう見ても怪しいレプリロイドである自分に優しい言葉をかけてくれたケインに思わず目を見開く。

「最近1人でいることが多くてのう。昔はシグマがいたんじゃが、今ではあまり来なくてのう…わしも話し相手が欲しかったんじゃ」

「あり…が、とう…」

こうしてルインはケインの元に引き取られ、ロックマンXの世界に転生した少女の物語が始まる。  

 

第1話:イレギュラーハンター・ルイン

ルインがDr.ケインと暮らし始めて数ヶ月後。

レプリロイドとしての生活にも慣れてきた頃、自分が転生する前に立てた目標である本物のエックス達に会うという目標の元、イレギュラーハンター入隊試験を受けることにした。

イレギュラーハンターとなるためにはシミュレートルームで仮想エネミーの戦闘試験でハンターランクを決めなければならない。

「それでは準備はいいかい?」

「はい」

試験官の言葉に笑顔で彼女は答えた。

ハンターベースの訓練施設の中で、シミュレートルームは1番広く、実際の事件現場などを再現して訓練する為の場所なので広い方が多くのものを再現出来るのだ。

「状況判断も採点対象に入ってるから、設定内容は教えられないが…」

「はい、大丈夫です。」

試験官の説明にルインは迷うことなく返事をする。

「分かった。ではこれより…試験スタート!!」

精巧な建物の立体映像と仮想エネミーであるメカニロイドが出現し、即座にルインは銃…正確には銃と剣の複合武器の銃形態であるZXバスターを抜くとメカニロイドをショットで的確に撃ち抜いた。

「……動きに無駄がないな…」

感嘆するように言う試験官から見ても彼女は動きに全く無駄がない。

最小限の動作で攻撃を繰り出し、敵の攻撃をかわし、そして隙もない上に見ていて華もある。

動く度に金髪がふわりと揺れ、舞うような戦い方と整った顔立ちも相まって美しく見える。

「こいつで…ラスト!!いっけえ!!」

最大までチャージしたチャージショットを放ち、大型メカニロイドのコアを破壊した。

「…………状況判断力、SA。達成時間、12分26秒31。達成率、91%。減点5。総合点、SA…特A級だな。検討する間でもなく…これはまたとんでもない逸材が現れましたねDr.ケイン?」

「う~む、最初の登録試験で特A級に一発合格なんて、ゼロ以来じゃのう…」

イレギュラーハンター創始者であるケインとしても優秀な戦闘型レプリロイドがイレギュラーハンターに入るのは実に喜ばしいのだが、あまりにも優秀すぎて釈然としない。

そしてケイン直々に試験結果を聞かされたルイン本人はと言うと。

「特A級って…確か(現時点で)1番上のランクでしたよね?」

「うむ、しかも特A級に一発合格などゼロ以外ではお前さんが初めてじゃな」

確か今から100年後のコマンドミッション時代にS級ランクが現れたから、現時点の最高ランクは特A級だ。

「良かった…正直B級がいいところかなと思ってたんだけど…下のランクより上のランクの方が嬉しいや」

自分が思っていたよりも試験で好成績を叩き出せたことに喜ぶルインの無邪気そうな表情にケインも顔を綻ばせてしまう。

このレプリロイドはどういうわけか、レプリロイドの始祖であるエックスと同じくらいにレプリロイドとは思えないくらいに人間臭さを感じる。

戦闘力は高いが、一部のハンター同様にブラックボックスの塊であるために体調不良時はナノマシンを粉薬にしたようなワクチンを摂取しなければならない。

しかしそのワクチンは調合の都合上でとても苦く、苦い物が大嫌いな彼女が最初の体調不良で飲んだ時に沈んでしまい、それ以来は飲ませようとすれば逃げ出そうとするし、幽霊という非科学的な物も怖がるなどレプリロイドとは思えないくらい人間らしい。

「(わしにはアルファやシグマのような息子はいたが娘はいなかったからのう…もしわしが娘を造っていれば……娘がいればこんな感じだったかもしれんのう……)」

「博士?」

自分を見つめながら急に黙ってしまったケインにルインが不思議そうに見つめる。

「ん?ああ、すまんのう。お前さんはこれから特A級のハンターとしてわしの息子であるシグマが率いておる第17精鋭部隊に配属される。大変かもしれんが、シグマと先輩達と共に頑張るんじゃぞ」

「はい、博士!!」

ケインの言葉にルインは力強く頷き、そして翌日の早朝にルインはケインの言葉通りに第17精鋭部隊へと配属され、隊長であるシグマの元に向かっていた。

「(うぅ…シグマ隊長に会うのか…やっぱり緊張するなあ…)」

緊張しながらもこれから自分の上司となるシグマの部屋に向かうルイン。

そしてシグマの部屋の前に立つと、深呼吸を1回して声をかける。

「シグマ隊長。本日をもって第17精鋭部隊に配属されることになったルインです」

「うむ、入れ」

「失礼します」

部屋から低く重厚な声が聞こえ、失礼のないように部屋の中に入るとシグマがルインを見下ろしていた。

「ルインだったな。お前の成績はDr.ケインから聞いている。しかしだからと言って特別扱いはせん。今日から我が部隊の一員として頑張ってくれたまえ」

「は、はい…」

シグマの威圧感にルインは少々気圧されながらも、何とか返事をすると扉の方から声が聞こえた。

「お呼びですかシグマ隊長。エックスです」

「!!?」

「来たか…入れ」

扉が開くとそこには蒼いアーマーを身に纏うレプリロイド…全てのレプリロイドの始祖であるエックスが立っていた。

「(うわあ…本物だ…本物のエックスだ…)」

最早、前世の記憶があまり残っていないために理由は分からないが、本物のエックスを間近で見た感動を抑え切れず、少し体を震わせてしまう。

しかしそれにシグマもエックスも気付くことはなったのが幸いであった。

「ルインが部隊に慣れるまでの世話はエックス、お前に任せる。頼んだぞ」

シグマは自分が慣れるまでの間、エックスに自分の相手をするように言った。

「はい。それじゃあ…ルイン…行こうか?」

「あ、はい!!」

エックスに促されたルインは自分の先輩であるエックスと共にシグマの部屋を後にする。

部屋を後にしたルインはエックスの隣を歩きながらエックスをチラチラと見ていた。

「(本物…本物のエックスだ…)」

理由は覚えていないが、ずっとずっと実物を見てみたいと思っていたから感激も大きい。

エックスもエックスでルインの容姿を見ていた。

現時点の現存するレプリロイドとは違う細身のアーマーを身に纏っているが、腰にまで届く金髪とアーマーの色も相俟って自分の先輩であり、親友の兄妹型ではないかと思ってしまうのだ。

「あの、エックス…先輩ですよね?ケイン博士から話は聞いてますけど…」

「そうだよ。でも先輩は止めてくれないかな?そういうのは少し苦手なんだ…それから敬語はいいよ。」

「うん、分かった」

苦笑しながら言うエックスにルインは頷く。

しかし視線を感じて周りを見れば他のレプリロイド達がチラチラとルインを見ていた。

次々と自分に刺さる視線にルインは微妙に居心地の悪さを感じる。

「ね、ねえ…何かみんな私のことジロジロと見てるんだけど…私…何かやらかしちゃったかなあ?」

自分は何かしてしまったのだろうかと不安になり、エックスを見上げる。

エックスもルインの不安に気付いて苦笑を浮かべながら首を横に振る。

「ああ、違うよ。大丈夫、君は何もしていないよ…多分君の容姿があるレプリロイドに似ているからだよ。」

「え?私に?」

「そう、名前はゼロ。俺の大切な親友で先輩だよ…まあ、君にとっても先輩になるんだけど」

「親友…」

そういえばこの姿の元になったモデルZXはゼロをベースにした姿だから自分がゼロに似ているのは当然かもしれない…。

しばらくエックスと共に通路を歩いて訓練所に辿り着くと、そこには紅のアーマーと腰にまで伸びた金髪が特徴のレプリロイドである特A級ハンター・ゼロがいた。

そしてその隣にはゼロと自分と同じく特A級ハンターであるストーム・イーグリードと呼ばれるレプリロイドもいる。

「ん?おい、エックスの隣にいるのは…もしかしてお前の兄妹型か何かかゼロ?」

「何?」

イーグリードの言葉にゼロはエックスの隣にいるルインに視線を遣ると、ルインはルインでジッとゼロを見上げていた。

「久しぶりですイーグリード。彼女はルイン…今日からこの第17精鋭部隊に配属されることになったんです」

「ほう?いきなり精鋭部隊に配属されるとはな。それで彼女のランクは?何級だ?」

「い、一応特A級です。イーグリード先輩とゼロ先輩と同じ…」

「ほう?」

目の前の少女が自分と同ランクということにイーグリードは目を見開いた。

「それだけじゃないんです。彼女は試験をゼロに匹敵する程の成績で特A級ハンターに一発で合格したんですよ」

「ほう、この娘の容姿といい、完全に女版ゼロだな。まあ、ぶっきらぼうでガサツなゼロと違って性格は対称的なようだがな」

「おい」

横目でイーグリードを睨むゼロだが、ルインがこれから同じ部隊の先輩であるゼロに挨拶をする。

「は、初めまして、ゼロ先輩。これから宜しくお願いします」

「先輩は止めろ。ゼロでいい。後、敬語は止めろ」

「あ、うん…分かった」

ゼロの言葉にルインは慌てて返事をする。

それを見ていたエックスはゼロがそういう言葉使いをされることが面倒だと思っていることを知っているために苦笑していた。

「それにしてもお嬢さんはゼロに似ているな」

「え?そ、そんなに似てますか?」

「うん。その朱いアーマーといい、金髪といい、そっくりだよ」

「は、はあ…」

こうして第17精鋭部隊に配属されることとなったルインは彼らとどのような物語を描いていくのだろうか? 

 

第2話:ロックマンX

ルインがイレギュラーハンターとなって瞬く間に数週間が過ぎた。

今回もイレギュラー騒動が起き、ルインはイレギュラーをZXバスターのショットで撃ち抜きながらエックスの方を見ていた。

エックスの動きは悪くない。

バスターの威力も機動力だって申し分ない。

戦闘スペックは他のA級や特A級ハンターと比べても遜色がないくらいに高い。

そもそも、シグマやその他のレプリロイドの元となったエックスの性能が低いわけがないのだ。

「くっ…」

しかしエックスはイレギュラーの動力炉を狙わないようにバスターの照準を合わせているのが見えた。

エックスはハンターとしては優し過ぎるのだ。

その性格が災いして、本来なら特A級の実力を秘めながらB級に甘んじている。

あれではやられてしまうと考えたルインはZXセイバーに切り替え、イレギュラーの両足と右腕のバスターを斬り落として無力化した。

「あ…」

倒れたイレギュラーを見つめるエックスにルインは優しく伝える。

「大丈夫だよエックス。イレギュラーの武器と両足を破壊しただけだから、修理すれば大丈夫だよ」

そう言って他のイレギュラーと戦っているゼロの方を見遣るが、苦戦している様子はないために問題なしと判断した。

まあ、下手に加勢しても邪魔になるだけだろう。

「あ、ありがとう。助かったよ…それに…破壊しないでくれてありがとう」

ルインは倒れたイレギュラーの方を見遣りながらエックスの方を見て笑みを浮かべた。

「イレギュラーだって元は私達と同じだからね。殺したくないっていうエックスの気持ちは分かるよ。修理すれば直るかもしれないんだしね」

ZXセイバーでイレギュラーの武装と足を破壊しながら次々と先へと進んでいく。

「ルイン…」

イレギュラーハンターはイレギュラーに対して効率の関係もあって破壊の措置しか取らないから、エックスのような考え方を甘いという奴は沢山いる。

しかし彼女はそんな者達と違い、自分の考えを尊重してくれたのだ。

「エックス!!バスターで牽制してくれる?イレギュラーの武装と足を破壊するから!!」

「わ、分かった!!」

エックスがバスターで牽制してルインがセイバーとバスターを状況に応じて使い分け、イレギュラーの武装と足を破壊していくのだった。

数十分後、ルインとエックスが相手をしたイレギュラーは全員、戦闘不能にされてはいるが生きている。

「ふう、これで最後かな?お疲れ様エックス。」

「あ、うん……君も…」

「エックス!!ルイン!!」

エックスがルインに礼を言おうとした時、それを遮るようにペンギン型レプリロイドが駆け寄ってきた。

「あ、ペンギーゴ…」

「えっと…君は確か、第13極地部隊の特A級ハンター…だっけ?」

不思議そうにペンギーゴを見つめるルインだが、ペンギーゴは首を傾げるルインを無視してエックスに詰め寄る。

「何故イレギュラーを始末しない?」

「そ、それは…」

「俺達イレギュラーハンターはイレギュラーを排除するのが役目なんだぞ!!それが出来なくてイレギュラーハンターが務まると…」

「今回のことにエックスは関係ない。今回は私の独断だよ。」

「なっ!?ルイン…」

それを聞いたペンギーゴは呆れと嘲笑を浮かべてルインを見遣る。

「はっ…エックスの他にもまだ甘ちゃんハンターがいたのか。こんな奴が特A級ハンターなんて世も末だクワ」

「ペンギーゴ!!そんな言い方はないじゃないか!!」

あんまりな言い方に流石のエックスも声を荒げる。

「たかがB級が特A級の俺に偉そうに説教するな!!ふんっ」

ペンギーゴはエックスとルインを一瞥し、鼻を鳴らすと去っていく。

「やれやれ、あのペンギン君も黙っていれば可愛いのに勿体無いね。さあ、早く行こうエックス。ゼロと合流しなきゃ」

「あ、ああ…」

こうしてルインとエックスはゼロと合流し、共にハンターベースへと戻っていく。

「ごめん…」

「へ?」

メンテナンスルームでメンテナンスを終え、屋上で寛いでいると、ハンターベースの屋上でいきなりエックスに謝られたルインは目を見開いた。

「俺のせいで君が…」

「え?ああ、あのペンギン君のこと?別にエックスは気にしなくていいのに。」

「そうはいかないよ。本来なら責められるのは俺のはずだったのに…」

「私は私の気持ちのままに動いただけ。別にエックスが気にすることじゃないよ」

「でも…」

気にしなくていいと言ってもエックスの表情は全く晴れない。

しかし、エックスがこういう真っ直ぐな性格だからこそ彼女は彼に好感を持てるのだが。

「…さっきの戦闘でエックスの動きを見ていたけど…エックス、君は特A級クラスの力を持ってるんじゃないの?その気になれば」

「え?俺にはそんな力なんか無いよ…」

「そうかな?私はそう思うよ。戦士としての力量は充分だと思うし。エックスの戦いを見た限り…イレギュラーに劣っているようには見えなかった…大体本当に弱かったら第17精鋭部隊に入れないと思うんだけど…」

第17精鋭部隊は文字通り、高性能なレプリロイドで構成された精鋭揃いのためにそこに配属される時点でエックスの能力は優秀のはずだ。

事実エックスは数々の大戦を生き抜いて生ける伝説とまでなったのだから。

「…ルイン。でも俺はいつもいつも失敗してるんだ。今回だって君に迷惑をかけた。こんなことじゃあ…ペンギーゴの言っていたようにハンター失格だ……。」

「うーん……でも私は、エックスのそう言う優しい性格も悪くないと思うよ。あのペンギン君やシグマ隊長達のような戦闘型よりも…君ならきっと違う視点でイレギュラーを見ることが出来るんじゃないかな?」

「え?」

「私もね、ケイン博士と同じようにエックスを信じてる…エックスならイレギュラーに対してのハンター達の指向も上手く変えてくれる可能性を…ね…」

「ルイン……」

「優しさが弱点になるなら私がそれを補ってあげるよ。私とエックスのコンビネーション。即興にしては上出来だったよね!!」

「うん。君が俺に合わせてくれたからね…助かったよ」

「どういたしまして、これからはエックスがバスターでイレギュラーを牽制して私が決めていくってことで」

ルインの言葉にエックスも笑みを浮かべた。

「それにしても…君の言うペンギン君ってペンギーゴのことかい?」

「え?当たり前じゃない。ペンギン型なんてペンギン君の他に誰がいるの?」

2人は朗らかに笑いながら会話を弾ませていく。

「やれやれ…」

今回のペンギーゴの言葉を気にしているのではないかと思って屋上にやって来たゼロであったが、ルインと共に笑っているエックスを見ると杞憂だったようだ。

「ルイン…不思議な奴だな…」

まだ数週間しか交流してないが、エックスのように人間臭く、レプリロイドなのに幽霊のような非科学的なものに怖がるような奴だ。

後、ワクチンを摂取する際は必ず逃げ出そうとしてルインが風邪を引いた時、ワクチンを飲ませるのが大変だった。

『ほれ、お前さん達のワクチンじゃ』

ケインがエックス、ゼロ、ルインに渡したのはナノマシンを粒子状にした粉薬のようなワクチン。

どういう訳かエックス、ゼロ、ルインの3人が同時に風邪を引いたためにケインが3人のために作ったのだ。

レプリロイドだってバグ等の原因によって風邪に近い状態となることがある。

通常のレプリロイドはワクチンプログラムを使えば治るのだが、エックスとゼロとルインは他のレプリロイドとは違い、未解析な部分が多いためにナノマシンを使ったワクチンを使わなければならない。

『ありがとうございますケイン博士…。』

少し怠そうに言うエックスは微熱。

『頭が痛くてイライラしていたところだ。助かる』

熱は無く、頭痛程度で済んでいるのがゼロ。

『………………』

『ルイン?どこに行くんだい?君もワクチンを飲まないと』

ワクチンを摂取し、通常の状態に戻ったエックスがワクチンを摂取しないでこっそりと部屋から出て行こうとするルインを不思議そうに見つめる。

ルインは3人の中で一番症状が酷いので誰よりもワクチンを摂取しなければならないはずなのに。

それに気付いたケインは手に持ったボタンを押すと扉が閉まる。

『!!?』

突然閉まった扉にルインの身体が硬直した。

『今じゃエックス!!早くルインを抑えるんじゃ!!』

『え!!?』

一体何が起きているのかさっぱり分からないエックスは扉を抉じ開けようとしているルインに目を見開く。

『早くせい!!逃げられてしまうぞい!!』

『は、はい!!』

ケインに促されたエックスは扉を抉じ開けようと手に力を入れようとしたルインを羽交い締めする。

『は、離して~!!』

『ルイン、どうして逃げようとするんだ…?』

羽交い締めにされてもジタバタと暴れるルインに困惑しながら尋ねるエックス。

『やだ…』

『え?』

『やだやだやだやだやだ~!!!!そんな苦いワクチンなんか飲みたくない!!ほっとけば風邪なんか治るもん!!』

ノイズが混じった声で泣き叫びながら必死に抵抗するルイン。

『え、ええ!?』

『は?』

ケインが調合したエックス達の専用のワクチンは相変わらず滅茶苦茶苦く、前世の時から苦いのが大嫌いなルインにとってはあまり摂取したくない忌むべき存在。

『ル、ルイン!!?か、簡単には治らないからワクチンを摂取しなきゃいけないんだぞ!!?』

駄々っ子のように手足をバタバタさせながら必死に逃げようとするルインにエックスも必死に抑える。

風邪のせいで本来の力を発揮出来ないルインは何とかエックスでも抑えることが出来た。

『…………』

既にワクチンを摂取したゼロは呆気に取られていた。

『それでも飲むのはやだ~!!お願いエックス、離してよ~!!』

『何の騒ぎかね?』

『シグマ隊長!?』

『うえ!?』

『今じゃ!!!!』

突然のシグマの登場に驚いたルインの隙を突いて、ケインは口の中にワクチンと水を流し込む。

『むぐっ!?……~~~~っ!!!!』

声にならない悲鳴を上げて、ルインはワクチンを飲み込むと床に倒れ伏した。

『だ、大丈夫かいルイン…?』

『う、うぅ~…に、苦いよう……』

『ガキだな…』

あまりの苦さに倒れ伏し、涙目のルインを心配そうに見遣るエックスとそれを呆れたように見つめるゼロ。

因みにやはりワクチンの効果は抜群で一発で風邪は治った。

当時のことを思い出したゼロは苦笑して、2人の部屋に食事を届けに向かう。

当然、食事代は2人のツケで。

「あ…そうだ。ねえ、エックス」

「何だい?」

「今まで気になってたんだけど、どうしてエックスはハンターになろうとしたの?」

「え?」

いきなりのルインの問いにエックスは思わず目を見開く。

「だってエックス、戦いが嫌いなんでしょう?なら、どうしてかなって…」

ルインの問いにエックスは少し沈黙したが、ゆっくりと口を開く。

「……ハンター試験はケイン博士に勧められたんだ。でも結果は散々で腕をバスターを切り替えることすら出来なかった。」

「え?な、何で?」

バスターの切り替えすら試験の時には出来なかったことにルインは目を見開く。

「怖かったんだ。誰かを撃つのが、殺してしまうのが…試験の結果もあってハンターの件は流れそうになったんだけど、ある事件が起きたんだ」

「事件?」

「うん、ケイン博士が一番最初に作ったレプリロイド…俺にとっては兄のような存在だったアルファが修理の時にイレギュラー化して、生みの親であるケイン博士を殺そうとした」

「え…嘘…」

エックスを元にした全てのレプリロイドのプロトタイプと言うべき存在のイレギュラー化にルインは目を見開く。

「本当だよ、彼が突然イレギュラー化した理由は今でも良く分からない。アルファに聞いてもケイン博士を殺して自由になるとしか言ってくれなかったし…そしてケイン博士を殺そうと襲い掛かってきたアルファを…俺が処分した。試験の時は切り替えることすら出来なかったバスターで…」

「エックス…」

「」アルファの件で俺は本格的にイレギュラーハンターとして活動することを決意した。平和のために、せめて目の前の人を守れるように」

「そうだったんだ…その、エックス…ごめんね。辛いことを思い出させて」

エックスの辛い過去を思い出させてしまうようなことをしてしまったルインは申し訳なさそうに謝罪した。

「良いんだよ、悪気があった訳でもないし」

「でも、本当に辛かっただろうね…エックスにとってはお兄さんみたいな人だったんでしょ?そんな人が突然イレギュラー化して…」

悲しげに言うルインにエックスは微笑みながら口を開いた。

「ありがとう、ルイン。みんなアルファは旧式だからイレギュラー化したとしか思ってくれなかったのに…」

「いや、寧ろ最初のレプリロイドだからプロテクトとかは他のより特別製にしてるんじゃないの?私達からしても全然他人事じゃないのに…」

エックスはそれを聞いてハッとなる。

確かにそうだ、ケインは自身が造ったレプリロイドやマシンには深い愛着を持つが、最高傑作であり、若い頃の自身をモデルとしたシグマと初めて造ったアルファには深い愛情を抱いている。

そんな彼が簡単にイレギュラー化するようなプロテクトをするだろうか?

アルファのイレギュラー化はそんな旧式だとかそんな単純な物ではないのではないのだろうか?

エックスの中で深い疑問として残った。

因みに食堂は閉まっており、夕食を食べ損ねたと気落ちするルインだが、ゼロが部屋に購買で買っていてくれたことに感謝したが、ツケであると言う書き置きを見て気落ちした。 

 

第3話:THE DAY OF Σ

 
前書き
本当にイレハン2出してくれないかな 

 
シティ・アーベルの市街にて、暴走するメカニロイドを破壊、もしくは停止させるためにシグマ率いる第17精鋭部隊が出撃していた。

エックスは現在、別行動中でルインはゼロと共に物陰に身を潜めていた。

「ゼロ、メカニロイドが動き出したよ……」

「ああ…」

朱のアーマーを纏う少女と紅のアーマーを纏う青年…傍目からすれば兄妹に見える2人がメカニロイドの様子を伺う。

「エックスはまだかな…?」

エックスを乗せた運搬用メカニロイドはまだ着かないのだろうか?

「いや、来たぞ…予定通りだ」

ルインとゼロが上空を見上げ、そしてシグマも気付いたようで不敵な笑みを浮かべると片腕を上げた。

作戦開始の合図だ。

ゼロとルインが他の隊員と共に前に出るとゼロは腕をバスターに変形させ、ルインもZXセイバーを構えてメカニロイドに向かっていく。

そして上空からメカニロイドに向かって降下していくエックスも右腕をバスターに変形させるとメカニロイドに向け、バスターのエネルギーをチャージする。

「うおおおおお!!!!」

相手がメカニロイドなら普段のような遠慮はいらない。

エックスは最大までエネルギーをチャージしたバスターからチャージショットをメカニロイドに向けて放った。

これがエックスの最大火力。

伝説のロボットであるロックマンと同様にバスターに太陽エネルギーを収束し、それをバスター内でチャージすることによって威力と貫通力に優れたハイパーXブラスター…エックス達が言うチャージショットである。

チャージショットがメカニロイドに直撃し、それを確認したエックスはバスターを右に向けて放ち、その反動でビルの壁に手をつけ、地面に着地した。

「B級隊突撃開始!!」

エックスが着地したのを確認したシグマは次の指示を飛ばす。

「今だ!!確保するクワ!!」

ペンギーゴが隊員と共にメカニロイドを確保しようとした時、メカニロイドが再び動き出した。

「あの一撃を受けても平気なの…?」

あのメカニロイドにはどれだけ強固な装甲を使っているのだろうか?

エックスのチャージショットが効かないのなら、セイバーで直接攻撃するしかないだろう。

その時、シグマからルインとゼロに通信が入る。

『ゼロ、ルイン。そちらから目標のメインジェネレーターを確認出来るか?』

「メインジェネレーター…あれかな?」

メカニロイドの攻撃をかわしつつ、確認するとメカニロイドのアームの近くにメインジェネレーターらしき物があった。

「駄目です!奴の動きが早くて近づけません!!」

「あっ!!」

ゼロがシグマの問いに答えるのと同時にメカニロイドに捕まった隊員が投げ飛ばされた。

「喰らえ!!」

ペンギーゴが口から極低温のアイスショットを放つ。

それによってメカニロイドの脚部が凍結し、動きを阻害するが、それは少しの間しか保たず、氷は僅かだが砕かれてしまう。

「何てパワーだ…!!」

想像以上のメカニロイドのパワーに思わず表情を歪めるペンギーゴ。

「隊長!!奴のパワーは想定以上です。援護に回ります!!」

エックスはペンギーゴ達の援護に向かおうとするが一足遅かった。

氷を砕いたメカニロイドが隊員の1人を捕まえたからだ。

「た、助けてくれ…!!」

「野郎!!」

「くっ!!」

捕まった隊員を助けるため、動きを止めるためにエックスがメカニロイドの脚部を狙うが、放ったショットは装甲によって弾かれてしまう。

メカニロイドがエックス達を踏み潰そうとするが、何とか間一髪でかわす。

「これ以上はさせない!!」

「何時までも好きにやらせるかよ!!」

ルインとゼロがセイバーとバスターを構えてメカニロイドに突っ込む。

ゼロが至近距離で放ったショットがメカニロイドの脚部を穿ち、ルインのチャージされたセイバーの一撃はゼロの一撃で脆くなったメカニロイドの脚部を両断した。

チャージセイバーはエックスのチャージショットと同じくセイバー内でエネルギーをチャージすることで破壊力と切断力を高めた斬擊を繰り出すことが出来るのだ。

それによってメカニロイドはバランスを崩し、メインジェネレーターが露になる。

「あ…」

「ジェネレーターだ!!」

エックスがジェネレーターにバスターの照準を合わせようとするが、狙いどころを誤れば盾にされた隊員に当たる。

「エックス!!ジェネレーターだ。ジェネレーターを撃つんだ!!早くしろエックス!!」

ペンギーゴが急かすが、エックスはバスターを構えたまま動けなかった。

その時、シグマが愛用のビームサーベル・Σブレードで隊員ごと攻撃し、メインジェネレーターを破壊した。

盾にされた隊員の右腕もブレードによって切断されたが、命に別状はなく、メインジェネレーターを破壊されたメカニロイドは機能停止した。

エックスもバスターを下ろし、ゼロはバスターに変形させたままの腕で額の汗を拭う仕草をし、ルインもセイバーを下ろしていた。

「エックス、ゼロ。お疲れ」

周囲に敵がいないかを確認してきたルインがエックスとゼロに声をかける。

「ああ、君もお疲れ」

「大丈夫エックス?ペンギン君や隊長に何か言われてたけど?」

「ああ…隊長に俺達イレギュラーハンターには引き金を引くのを躊躇ってはならない時がある。それが力なき者の剣となり盾となる俺達の運命(さだめ)だって言われたよ…」

「ふうん…それにして最近メカニロイドのイレギュラーが多いよね」

「ああ、作業用メカニロイドだから、非常時のために装甲が異常に固いのも厄介だ」

「エックスのチャージショットも通用しなかったしね。いくら作業用でも固すぎるのも考え物だよ」

少なくともゼロが至近距離で攻撃して脚部を脆くしてくれたおかげでようやくチャージセイバーで両断出来たのだ。

イレギュラー化した時のためにもう少し装甲を薄くしてもらいたい所だが、それだとイレギュラー化以外の非常時の際に困ることになるので悩むところである。

「ああ…」

3人は今回の事件のことで会話をしながらハンターベースへと戻っていく。

「メカニロイドのイレギュラー。今月で7件目だな」

「隊長はその件でケイン氏に?」

「ああ、そうらしい」

ハンターベースに戻り、通り過ぎていく隊員達の会話に耳を傾けていたエックスは今まで思っていた疑問を口にする。

「イレギュラーか…どうしてイレギュラーは発生するんだろう?」

「え?イレギュラーの発生原因?そりゃあプログラムのエラーや電子頭脳の故障とか…」

「他にもウィルス等の問題もあるが、基本的には俺達レプリロイドの高度な情報処理能力の…いわばツケだな」

「ん?ねえ、あれって」

ルインが指差した先には、ハンターベースの保安要員に連行されている紫を基調にしたアーマーのレプリロイドの姿があった。

「VAVAだ…大方また揉め事でも起こしたんだろう。同じハンターでもエックスやルインみたいにいつまでも甘い奴もいれば、VAVAみたいにイレギュラーすれすれの奴もいるってことだ。」

「…………」

「でも、VAVAも人間臭いところあるよね」

「え?」

予想外の言葉にエックスの目は見開かれた。

「何でか分からないけどそう思う」

「奴を人間臭いと思うのはお前くらいだろう。」

ルインの発言に呆れたように言うとゼロは部屋のある場所とは別方向に向かう。

「あれ?ゼロ、どこ行くの?」

「トレーニングルームだ。エックス、ルイン。お前達はどうする?」

「私は部屋に戻るよ。多分メカニロイドの暴走のことで召集が来るだろうし。それにちょっと寄りたいとこもあるしね」

「俺も部屋に戻るよ。」

「そうか…」

3人はそれぞれの目的地に向かう。

一方その頃、Dr.ケインの研究所ではケインとシグマの密会が行われていた。

「最近、騒がしいようじゃな?」

棚に置かれてある自身が幼かった頃から大切にしていた玩具の整理をしながらシグマに尋ねる。

レプリロイドの生みの親として世界に名を轟かせている彼は、イレギュラーハンターを設立した後も度々ハンターベースを訪れ、ハンター達のメンテナンスやイレギュラー発生要因の研究など、高齢でありながら精力的に活動している。

しかしゼロの髪を勝手に三つ編みにしたり、エックスに青汁風味のオイルを飲ませたり、ルインを幽霊のフリをして脅かしたり等、他にも他にもetc.…。

まあ、ケインもルイン達からしっかりと報復は受けているらしいが、博士の悪戯を目撃してしまっている大半のハンターは、尊敬こそはしていても“元気溌剌のお茶目なお爺ちゃん”といった印象が抜けないらしい。

「はい、ケイン博士。イレギュラーによる犯罪は増加傾向にあり、大型メカニロイドの暴走も数件発生しております。」

「…エックスはどうしておる?」

エックスのことを尋ねられたシグマは疑問を抱きながらも口を開いた。

「状況分析、戦闘能力。共に極めて高いレベルにあります。が…時に悩み、判断を遅らせるところがあります」

「悩むか…正しくそれこそがエックス最大の特性なのじゃ。シグマよ、お前は悩むことがないじゃろう?わしはかつてある研究所跡の地下に封印されていたエックスを見つけだし、その設計思想を流用し、お前達レプリロイドを生み出した。レプリロイドは人間のように考え、行動出来る。じゃが、深く悩むレプリロイドは例外を除けばエックスだけじゃ」

例外…エックス以外に深く悩むレプリロイドは前世が人間だったルイン。

そして今、新しく創設された軍隊にいる100年前の伝説のロボットを元にして造られた兄妹レプリロイドの片割れだろうか。

「わしは、エックス達の深く悩むことがレプリロイドの新たな可能性であると思っておる」

「悩むことが新たな可能性?欠陥ではなく?」

「普通のロボットならそうじゃろうな。じゃが、エックスは深く悩み、ロボット三原則にも縛られない新たな答えを出すことが出来る。わしにもエックスの可能性が希望となるかそうでないのかは分からん。わしはこれからもエックスを見守っていこうと思っておる。この命が続く限りな」

「…………」

こうしてシグマとケインの密会は終わりを告げ、そしてほぼ同時刻にハンターベースの留置場にルインが訪れていた。

そこではVAVAが手錠を填められ、留置されている。

「やあ、VAVA。」

「何の用だ?シグマに命令されて俺を直々に処分しに来たのか?」

「まさか、ただ私は差し入れを持ってきただけだよ」

ルインがハンターベースの購買の紙袋から出したのは何時も自分が常飲しているオイルであった。

「お前は馬鹿か?こんなザマで飲めるか」

「うん、だから飲んでる間だけ手錠は外すよ」

「何?正気かお前は?手錠を外した瞬間にお前を殺すかもしれないんだぜ?」

「武装を没収されて丸腰の君と武装持ちの特A級ハンターの私。どっちに分があると思う?」

「チッ…」

ルインの言葉にVAVAは舌打ちすると手錠が外され、差し入れのオイルを口に含んだ。

「災難だったね~。イレギュラー討伐中に割り込んできた隊員をぶち抜いて牢屋に直行なんて」

「フン…」

思えば彼女とは初めて会った時からかなり変な奴だと思っていた。

イレギュラーハンターになりたての頃から自分に普通に話し掛けて来たからだ。

『えっと、君がVAVA先輩?』

『何だお前は?』

後で聞けば自分の思考回路が異常だという話は既に知っていたらしいが、それを聞いてなお話し掛けて来たのだ。

『私はルイン。最近イレギュラーハンターになったばかりの新人なんだ。よろしく』

『そうか、だったらすぐに消えろ』

『用はないんだけど…』

聞いていない。

彼女は見た目とは裏腹にどんな暴言も左から右へと聞き流す図太さを併せ持っていた。

エックス同様に甘いが、実力は申し分ないため、ストレス発散の模擬戦をする程度の関係にはなっていた。

『VAVA』

『何だ?』

ルインと知り合ってから数ヶ月後の何時も通りの模擬戦の最中であった。

『エックスが問題児のフレイム・スタッガーと決闘するんだってさ』

『決闘だと?』

『何でも、スタッガーのイジメが原因らしいけどね。』

『あの甘ちゃんハンターでは瞬殺されるのがオチだろうよ』

エックスのハンターとしての評価は一部を除いて基本的に誰から見ても低い。

余程の奇跡が起きない限り相手にならないだろう。

『それはどうかな?』

『何だと?』

『VAVAは知らないかもしれないけどエックスはその気になれば強いよ…スタッガーなんてメじゃないくらいにね』

『あの悩んでばかりいる甘ちゃんハンターにそんな力があるとは思えんがな』

『まあまあ、論より証拠だよ。2人の決闘を見てみなよ』

ルインがモニターを指差し、VAVAは半信半疑でモニターを見つめる。

そしてゼロが決闘の立会人となり、エックスとスタッガーの決闘が始まった。

2人が同時に動き出し、スタッガーが繰り出した拳をエックスは最低限の動きで回避するとチャージを終えているバスターの銃口をスタッガーの顎に突き付けた。

このままエックスがバスターの引き金を引けば間違いなくスタッガーの頭部が消し飛ぶ。

それを見たゼロがエックスの勝利を宣言し、スタッガーは反抗するも誰の目から見てもスタッガーの敗北は一目瞭然である。

普段の任務で目にするエックスの動きとはまるで違う。

『どういうことだ…?』

先程のエックスの動きはとてもB級とは思えない物で、間違いなくエースと呼ばれる者の中でも一握りの者しか為し得ない動きだ。

『言ったでしょ?本気になればエックスは強いって…』

『…あいつは力の出し惜しみでもしていたのか…?』

『違うよ?エックスは優しすぎる…無意識の優しさがエックスの能力に制限を課してるんだよ』

『無能なB級ハンターだと思っていたが…脳筋野郎とは言え特A級に勝てるくらいの力があるようだな』

この時からVAVAのエックスの評価は無能から僅かだけ上がった。

…途中から思考が逸れたが、VAVAはルインに視線を戻す。

「災難だけど、仲間殺しは重罪。極刑は免れないよね普通は」

「だろうな」

「けど君はこんなところで消えるような奴じゃないよね?運だけで特A級になった奴とは違うでしょ?」

「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる。無能なペンギン(ペンギーゴ)や豚(ナウマンダー)と一緒にするな。俺はVAVA、最強のレプリロイドだ。」

「それを聞けて安心したよ。もし今度会えたらまたピアノ聞かせてよ」

そう言い、VAVAに手錠を再びかけるとルインは留置場を後にした。

そしてハンターベースのトレーニングルームではゼロが今回の事件をシミュレーションで再現していた。

ゼロがバスターの照準をメカニロイドのメインジェネレーターに合わせる。

そして放たれた一撃はメインジェネレーターではなく、隊員の右肩に直撃した。

「っ!!」

訓練が終了し、溜め息と共にゼロはバスターに変形させたバスターを元に戻す。

95%

それが今回の訓練の成功率。

「チッ、5%をミスっちまったか…」

近接戦闘用の武装を持たない射撃型のレプリロイドであることを考えれば充分過ぎるが、やはりゼロとしてはパーフェクトを狙いたいものだ。

「95%か。大したもんじゃないかゼロ」

ゼロの訓練が終わるのを見計らってイーグリードがスコアを見ながら声をかけてきた。

「イーグリードか…お前、ミサイル基地の守備任務はどうしたんだ?」

「自動警報装置が完成したんで、守備隊は縮小されたよ。今日からはまた通常のハンター業務さ」

「そっか…」

「で、早速メカニロイドの暴走事件で召集だ。行こうぜ。ゼロ」

トレーニングルームを後にし、ブリーフィングルームに向かうゼロとイーグリード。

そしてブリーフィングルームには既にエックスとルイン達がおり、オペレーターからある事実が伝えられた。

「解体中のビルで起きたメカニロイドの暴走ですが、コントロール系が何者かに乗っ取られていたと判明しました」

「え?」

「中には誰も乗っていなかった…つまり遠隔操作されていた?」

オペレーターの言葉にルインは目を見開き、エックスはメカニロイドには誰も搭乗してなかったことを思い出し、オペレーターに尋ねる。

「そうです」

エックスの問いを肯定すると今度はゼロとペンギーゴが尋ねる。

「ちょっと待てよ。メカニロイドの警戒プログラムは…」

「そう簡単にハッキングされるような防壁ではないはずだクワ」

「はい、犯人はこちらの警戒体制に精通している可能性があります」

「で?犯人はどこから操作を?」

イーグリードは犯人の所在を尋ねる。

オペレーターがここに自分達を召集させたと言うことは犯人の居場所か手掛かりを掴んだのだろう。

「いくつもの衛星を経由してカモフラージュしていましたが…発信源はここ…シティ・アーベル東16番地区」

スクリーンに映し出された発信源はハンターベースからあまり離れてはいない場所だ。

「すぐ近くか…ふざけやがって…!!」

「“灯台もと暗し”…だね」

「シグマ隊長にこの事は?」

犯人の居場所がハンターベースからあまり離れていない場所であることに驚く者と憤る者がいたが、エックスは隊長であるシグマがこの事を知っているのかと尋ねる。

「連絡済みです。エックス、ルイン、ゼロのチームはこのブリーフィング終了後、偵察に向かうようにとの指示です。」

「「「了解!!」」」

そしてエックス達は発信源であるシティ・アーベル東16番地区に着いたが、あまりの静けさに表情を歪める。

「ここが発信源なの?そのわりには…」

「ああ、静か過ぎないか?」

「行ってみるか、エックス、ルイン。」

あまりの静けさにエックスとルインが訝しむが、このままここにいても何も分からないと判断したゼロは取り敢えず犯人がいるらしい建物に向かうことにした。

「うん」

「そうだね」

エックスとルインも同意し、3人は建物の壁を蹴るとあっという間に屋上付近の入口に向かう。

これが壁蹴りである。

特A級ハンターでも数える程しか扱える者が存在しない技術で特別な装備だけでなく絶妙なバランス感覚が要求される技術であり、これを扱えるレプリロイドは空戦型程ではないにしろ幅広い行動範囲を得られるのだ。

そして内部を見ると、そこには無惨な姿となった犯人であろうレプリロイド達が倒れ伏していた。

その光景にエックス達は愕然となるが、直ぐにハンターベースに連絡を入れた。

しばらくしてハンターベースから出動した調査隊が到着し、周囲の調査を開始した。

それまではルインとゼロが犯人達の状態を見ていたが、全員手遅れの上に手掛かりになりそうな物もないようだ。

犯人達の動力炉やメモリーチップを調べていたルインとゼロが首を横に振る。

動力炉は完全停止、メモリーチップは抜き取られていてデータを見ることも出来ない。

「…どうだ?」

エックスが何か他に手掛かりはないかと端末を調べている隊員に尋ねるが、隊員の表情は渋い。

「駄目ですね、恐らくデータは全て持ち出された後でしょう」

「かなりの手練だな」

ゼロは犯人達を殺したレプリロイドの戦闘力を冷静に分析すると、シグマが此方に来た。

「状況は?」

「ハッ!!仲間割れですかね?メカニロイド暴走事件のすぐ後にやられたようです」

「ふむ。ゼロ、ルイン。どう思う?」

隊員からの報告を聞いたシグマは犯人達の状態を見ていたゼロとルインに尋ねる。

「さあ、ですがどちらにせよやったのは相当の戦闘能力を持った奴でしょう。全て急所を一撃です」

「後、高出力のビームサーベルのような物で斬り裂かれたようですね。おまけに情報漏洩を恐れてかメモリーチップまで抜き取る辺り、徹底してます」

犯人達の体にはまるでバターを切ったように滑らかな切り口があり、僅かなぶれもない綺麗な切断面からは、使い手の相当の腕が窺える。

「うむ」

シグマは何故かチラリとエックスを見遣るとそのまま外に向かい、外に出たシグマは待機していたイーグリードに声をかけた。

建物内の状況と犯人のことを伝えるとイーグリードは頷き、自身の部隊を見遣る。

「仲間割れを起こした犯人の残りがハッキングデータを持って逃走中だ。イーグリード隊は周辺の捜索を開始!!」

【はい!!】

「ペンギーゴ隊は別地区の捜索クワ!!行くぞ!!」

【はい!!】

イーグリード隊とペンギーゴ隊が犯人の捜索を開始する中、1人残されたシグマは無表情のまま、ただ静かに立っている…。 
 

 
後書き
イレギュラーハンターXでは強襲を任せられる辺り、性格はともかく性能面では一定の評価はあったように見えますね。

ペンギーゴですらエックスのチャージショットを受けて無傷のメカニロイドを見て驚愕する辺り、少なくとも一撃の火力の高さは買われてたんでしょうね 

 

第4話:THE DAY OF Σ Ⅱ

エックス達とは別行動をし、ハッキングデータを持って逃走中の犯人を追うルインは朱色のチェバルに乗りながら街を駆け抜ける。

「…………さて、犯人は一体何をしようとしているのかな…?」

日に日に前世の記憶が薄れてきているルインにはもうこれから先に起こる出来事を殆ど思い出せない。

殆ど知識なしの状態でこれからは行動しなければならないのは辛い。

「こう言うどさくさ紛れにやれることは多いけど…」

誘拐、暗殺、機密奪取、侵入及び潜入、密入国etc.…。

この世界の歴史を紐解くまでもなく、混乱に乗じて己の利を貪る者は後を絶たない。

「他の隊との連絡が取れないのも気になるね。問題は犯人がここまでして狙うものが何なのか…」

犯人の狙いが分からず、頭を悩ませている時にルインにシグマから通信が入る。

『ルイン。』

「あ……シグマ隊長。申し訳ありません。犯人の行方は依然として…」

『いや、そうではない。お前と個人的な話がしたい』

「?…はい」

ルインは疑問符を浮かべながら道端にチェバルを停車させるとシグマとの通信を再開する。

『ルイン、お前はイレギュラーをどのように思っている?』

「え?」

突然の問いに首を傾げるルインだが、シグマは気にせずに話を続ける。

『上層部の人間はロボット三原則を取り戻そうと躍起になっていることを知っているな?“レプリロイドは人間に奉仕するべき”だと、そのためにイレギュラー発生率を抑えるために思考回路等の簡略化も言い出している』

「は、はい。それは知っていますが…」

昔、レプリロイドがロボットと呼ばれていた時のようにレプリロイドは人間に奉仕し続けるべきだと言う者も少なくはない。

そのためには今の人間のような思考能力を持つレプリロイドでは色々と都合が悪いのだろう。

それを聞いたゼロとVAVAは呆れ、エックスは悲しげにしていたのをよく覚えている。

『しかしDr.ケインはレプリロイドには可能性があると言っていた。それが何なのか…。他のレプリロイドよりも人間と似た思考回路を持つお前なら分かるかもしれないと思ってな』

「…ケイン博士のその話なら私も聞いたことがあります。イレギュラーを含めてその可能性を考えるなら……イレギュラーの方に可能性があるのでは?」

『ほう?』

「レプリロイドのイレギュラー化は電子頭脳の故障、プログラムのエラー、ウィルスなどがありますが、過度なストレスや不満がイレギュラー化の原因でもあります。人間で言う反抗期…ですかね?それは人間の成長の過程に必要なもの…イレギュラー化はそれに似たようなものでは?…と、イレギュラーハンターの私が言うような言葉じゃないですね」

『いや、大丈夫だ。参考になった。引き続き調査を続行してくれ』

「了解」

シグマとの通信を切ると再びチェバルに乗り、調査を続行する。

そして間もなくルインの元に本部のオペレーターから緊急通信が飛び込んできた。

『ルイン!!聞こえますか!?こちらハンターベース!!』

「どうしたの!?」

モニターに映し出されたオペレーターの焦ったような表情からただ事ではないと言うことを察したルインは表情を引き締める。

『留置されていた元イレギュラーハンターVAVAが脱走しました!!』

「VAVAが脱走!?」

『直ぐに現場に急行してください!!エックスとゼロもそちらに向かいました!!』

「っ…了解」

ルインは方向転換すると、チェバルを加速させ、ハンターベースに存在する地下の独房に向かう。

そしてハンターベースの独房に着いたルインは惨状を前に一瞬言葉を失った。

倒れている看守達はどれも急所を一撃でやられている。

「これ、一体…誰がやったの…?どれも急所を一撃…VAVAじゃない。丸腰のVAVAにはこんなこと出来ない…。恐らく、例の事件の犯人と同じ奴……」

静かな独房でルインの声が響く。

犯人の狙いが何なのか?

何故こんなことをするのか?

様々な疑問が尽きない中でルインの元にオペレーターから通信が入る。

『こちら本部。ルイン、応答願います』

「…こちらルイン」

『やっと通じたわ…コードの発信源を突き止めたわ。北西部のミサイル基地からよ』

「…他の部隊に通達は?」

『既に通達を送るも応答は無いわ。エックスとゼロは既に向かいました。至急確認に向かって…それと…シグマ隊長と連絡がつかないの』

「え…?」

ルインは再び、倒れ伏している看守達を見遣る。

倒れ伏している看守達は全て急所を一撃で仕留められており、ルインのように高出力のビームサーベル系統の武装を所持している者は戦闘型でも少ない。

持っていたとしても量産型でも扱える低出力のバッテリー式のビームサーベルだ。

ビームサーベル持ちでこれ程の戦闘力を持つレプリロイドは自然と限られてくる…。

「まさか…とにかくミサイル基地に急ごう。早くエックスとゼロと合流しないと!!」

そこでは悲劇が待っていることを知らないルインは嫌な予感を感じながらミサイル基地に向かうのだった。

そしてミサイル基地に向かう途中、轟音が聞こえ、空を見上げると基地の全てのミサイルが発射されていた。

「何で!?どうしてミサイルが発射されているの!?」

困惑するルインだが、ミサイルはそのままシティ・アーベルに向かって行った。

「先に基地に向かったはずのエックスとゼロはどうしたの…!?」

ミサイル基地には既にエックスとゼロが向かっていたはずだ。

それなのに何故ミサイルが発射されたのか?

目的地に到着したルインはチェバルを停めるとミサイル基地の中に入っていく。

バスターを構えながらしばらく探し回ってようやく辿り着いた場所は低く唸る装置の稼働音と微かな粉塵が舞う薄暗い室内。

動かないエックスとゼロ…そして室内のコントロールシステムのコンソールの前には、静かに立つ自分の上司。

「…シグマ隊長。あなたはエックスとゼロに何をしたんですか?」

バスターをシグマに向けながら、ルインは怒りに満ちた声音で尋ねた。

シグマにとってルインはエックス、ゼロに続いて戦いの始まりを告げる為の客人でもあった。

彼女で3人目…最後の招待客である。

「ふむ、少しばかり遅かったようだな…街は壊滅しているか?ルイン」

「……シグマ隊長、ええ…あなたがミサイルを撃ったせいで…街は酷い状態ですよ」

「ふっ…そうか」

笑みを浮かべるシグマに苛立つが、ルインは何とか怒りを抑えてバスターをセイバーに切り替えると、セイバーのチャージをしながらシグマに狙いを定める。

「……今はあなたに聞きたいことが山程あります。ミサイル発射以外にも犯人グループの殺害、メカニロイドの暴走やVAVAの脱走の手引きもあなたの仕業ですね?」

「ほう?何故分かる?」

「犯人の戦闘力。それから高出力のビームサーベル持ちとなれば犯人は限られてきます。しかもどれも急所を一撃…そんなことが出来るのはあなたくらいですよ」

「ほう?流石はルインと言うべきか…最近はエックスの補佐ばかりしているから腕が落ちたのではないかと危惧していたが、その様子では、安心できる。」

「常日頃にトレーニングしているのでご心配なく…隊長、あなたの目的はなんですか?人類に反旗を翻し、レプリロイドの理想境でも創ろうとでも?」

「そうだな、それも私の目的の一部ではあるが…“我々”の為だと言うのが一番近いだろう」

「…?」

「ルインよ…お前はこの現状をどう思っている?」

「現状?何の現状ですか?イレギュラー化したとは言え、曲がりなりにも偉大な科学者であるケイン博士の最高傑作なら少しはマシな質問をされたらどうなんですか?」

吐き捨てるように挑発するが、しかしこの程度の挑発に乗るような相手ではないことはシグマの部下であったルインにも分かっている。

エネルギーのチャージを終えたことを確認するとセイバーを構えるルイン。

「ふむ…記憶を持たないお前にこの世界の現状が分からないのも無理はないかもしれんな。ルインよ…現在戦闘で戦うのは人間ではなく我々だ。戦場に人間がいたとしても僅かな、一握りの技術者だけだ。事実、イレギュラーハンター関係者の人間の犠牲は少ない。人間達に造られた我々は、毎日のように破壊され続けられている。これについてはどう思うかねルイン?」

「っ…それは、仕方がないのでしょう?私達レプリロイドはエネルギーが続く限り人間が活動出来ない場所…例えば水中でも活動が可能です。人間の肉体と私達のボディとでは耐久性だって雲泥の差があります。なら、人間では手に負えないところを私達が補い、私達に出来ないことを人間がやる。人間の代わりとなって私達レプリロイドが働くのは当然です。」

人間では太刀打ちできないイレギュラーへの対策組織として“イレギュラーハンター”が結成されたのだから。

「人間では手に負えないために、レプリロイドは代わりに働く…か。」

「はい、そんなことはケイン博士と言う偉大な科学者に造られたあなたが誰よりも分かっているはずです。」

シグマの言葉にルインは頷き、守るべき人間達に刃を向けたイレギュラーとなった元上司を鋭く睨み据えた。

「ならば、お前も理解しているはずだ…。人間では手に負えない環境で、我々は活動出来る。人間が活動出来ない海底、火山口。そして身体能力や、処理能力も人間の遥か上をいく。これだけあればそろそろお前にも分かるのではないか?人間が、我々レプリロイドに勝る点なぞ、何1つないのだと。」

「何を馬鹿なことを…!!そのレプリロイドを造ったのは人間なんですよ…あなたを造ったケイン博士も人間です!!」

「そうかもしれんな。だが私は思うのだよ。何故我々は…レプリロイド同士殺し合わねばならないのかをな。それもただ上から見ているだけの身勝手な人間の命令でな…」

「私は人間達を信じます。あなたの言うように人間の中には身勝手な人もいる。でもレプリロイドを造って感情を与えてくれたのは他でもないケイン博士達人間なんですから!!一部の人間だけしか見ずにそんなことを言うあなたにこれ以上の悪事は許さないっ!!」

「ならば私を倒してみるがいい!!勝利の上にしか歴史は正当性を与えぬのだからな!!」

「シグマ隊長…いえ、イレギュラー・シグマ!!あなたはここで止めて見せる!!」

Σブレードを抜き放つシグマ。

自らが正しいと言うかのように互いの剣は輝きを増す。

最初に仕掛けたのはルインだった。

いくらシグマのアーマーが強固でもチャージセイバーをまともに受ければただでは済まないからだ。

バスターで攻撃することも考えたが、簡単に当たってくれる相手ではないし、実力差を考えれば照準を合わせる前に斬り捨てられる可能性が高い。

ならばチャージセイバーによる一撃必殺に賭けるしかない。

「はああああ!!」

渾身の力を込めて両断せんとばかりにシグマに向かって振り下ろされたチャージセイバー。

シグマは後退することで回避し、チャージセイバーの衝撃波はブレードで掻き消した。

「そのセイバーの威力は大したものだ。直撃を受けたならば、私もただでは済まないだろう。」

シグマはそう嘲笑うとブレードを構えるのと同時に一気に距離を詰めて斬り掛かって来た。

体勢を整えてルインはセイバーでブレードを何とか受け止める。

「ぐっ…くぅぅ…!!」

鍔ぜり合いで少しずつ体が後退していく。

武器の出力は殆ど互角…チャージが出来る分、攻撃性能は上かもしれないが、使い手自身のパワー出力が違い過ぎる。

こちらは限界までアーマーやフットパーツの出力を出しているというのにシグマにはまだ余裕がある。

「どうした?私を止めるのだろう?その程度の力では私を止める事など出来んぞ!!」

シグマの額の内蔵型バスターからショットが発射された。

完全に不意を突かれたルインは咄嗟に身体を捻って回避するが、利き腕を損傷してしまう。

シグマはブレードを振るい、ルインの体に横一文字の傷をつけた。

「が…は…っ!!」

傷口を押さえて、床に膝を着くルインをシグマは冷たく見下ろす。

「ここまでのようだなルインよ」

「シグマ…っ!!」

シグマを睨みつけるルインだが体に違和感を感じ、不快感と痛みが同時に体を襲う。

「か、体が……ま、まさか…!?」

「そうだ。私のΣブレードにウィルスを仕込んでおいたのだ。どのような頑強なレプリロイドであろうと簡単に停止するほどのな」

「くっ…ウィルスなんて…シグマ…あなたはどこまで堕ちれば気が済むんですか…」

「ふっ…だが、予想はしていたが私はお前に驚愕している。ルイン、お前が機能停止せずにいられるはずがない程のウィルスを受けたというのに、お前は活動している。そのようなことは有り得ないというのに…」

「………」

「エックスとゼロもそうだが、私はお前にも興味がある…誰が開発したのかも分からない。内部機関にかけてはブラックボックスの塊。エックス以外のレプリロイドにあるはずのない…人間の“成長する”能力。どれを取っても、お前は従来のレプリロイドとはかけ離れている。ルイン、お前は一体何者なのだ?」

「え…?」

シグマの言葉に目を見開くルインだが、シグマは構わずに言葉を続ける。

「……奇妙なことだ。経歴が分からないレプリロイドは数多く見てきたが、これほどまでにデータがないレプリロイドはいないだろう。お前の経歴を探しているうちにいくつかの重要なセキュリティを突破することになったが………驚いた、ルインというレプリロイドはどこにも存在しないということに」

「……っ!!」

シグマのその言葉にルインは動揺する。

「もう一度聞く。ルイン、お前は何者なのだ?」

「………」

「答えたくないのならば、エックスとゼロを破壊する。それでも答えたくないのならば電子頭脳を引きずり出し、お前のデータを見るだけだ」

冷徹な言葉にルインは唇を噛み締める。

ルインの前世の記憶は殆ど残っていないが、それでもこれだけは覚えていた。

エックスとゼロを守るために彼女は口を開いた。

「私は……私は…かつて…人間でした…」

「人間…だと?」

ある程度の予想はしていたが、ルインが人間であったというのは予想外だったらしい。

その言葉にシグマの表情に驚きの色が見える。

「昔の私に何かあったのかは殆ど思い出せない…でも、かつての私は確かに人間でした…人間としての肉体を無くして今ここに…」

シグマはあまりに荒唐無稽な言葉に虚偽ではないかと疑ったが、同時に納得もした。

ルインはレプリロイドよりも人間に近いどころか人間そのものだ。

思考も行動パターンも人間のそれで、もしルインが元人間ならばと考えればすんなりと納得出来た。

「つまりお前は真の意味で人間の心と機械の身体が1つとなった存在ということか…お前が元人間とはさしもの私も驚いたぞルイン。」

「………」

唇を噛み締め、俯くルインに興味を無くしたかのようにシグマはこの場を去ろうとする。

「ルイン…私が間違っているというのなら……私の元まで来い。止めてみせろ、エックスとゼロと共にな」

「シグマ…」

「その身でどこまで出来るかを見極めてやろう。人間の心と機械の体を持つお前に何が出来るか、この私に見せてみろ。」

「あなたはケイン博士を悲しませたいんですか?あなたのお兄さんを喪ったケイン博士にまた喪う悲しさ与えるつもりなんですか?」

「兄…アルファか…あの時は理解出来なかったが、今なら分かる。アルファは生みの親であるDr.ケインを殺し、自由となることで己の存在を確固たるものにしたかったのだろう」

そう言うと転送装置の光がシグマの視界を埋めていく。

エックス、ゼロ、ルイン、VAVAの4人の戦士と人類に反旗を翻したレプリロイド達。

全ての者達の手筈は滞りなく完了し、後はもう始めるだけだ。

レプリロイドの理想境を創るために。

シグマが転送されたのを見届けたルインは深く息を吐いて、ゼロに歩み寄る。

「ゼロ…大丈夫…?」

「ああ…すまん。不覚を取った…」

「いいよ。相手がシグマじゃあ分が悪すぎるよ…早くエックスをハンターベースに連れていかないと…」

「…ああ」

腹部に風穴が空いたエックスをゼロと共に支え、ミサイル基地を後にする。

しばらくしてハンターベースに何とか辿り着いた3人はメンテナンスルームでメンテナンスを受ける。

「ルイン…」

「何…?」

メンテナンスを終えて、メンテナンスルームのメンテナンスベッドに横たわりながらゼロはルインに話し掛ける。

「シグマとの会話のことだが…」

「っ…聞いてたの?」

「…ああ」

ルインの問いに少し間を置いてからゼロは頷いた。

「そっか…ごめんねゼロ」

「何がだ?」

「何がって…私、黙ってたんだよ?エックスやゼロにも自分のことを…」

「言いたくないことなど誰にでもあるだろう。経歴にしても俺やエックスも誰に造られたかは分からない。俺もイレギュラーハンターになる前は何をしていたかは何1つ思い出せないしな…例えお前の元が何だろうとお前はお前だろう」

「…うん……ゼロ」

「何だ」

「ありがとう…」

「礼を言われるようなことはしていない。エックスが目を覚ましたらシグマを止めるぞ。俺達の手で」

傷付いてこんな状況になっても、ゼロの力強さが変わらないことにルインは頼もしいと思う。

「うん…私達はイレギュラーハンターだからね」

戦いの火蓋は切って落とされた。

こうしてエックス達は長い長い戦いへと身を投じていくことになる。 

 

第5話:Central highway

ハイウェイの道筋に沿ってゆっくりとした足取りで歩く1体のレプリロイドがいた。

そのレプリロイドの名はVAVA。

かつての特A級ハンターであり、イレギュラー認定を受けて留置場に入れられていたレプリロイドだったにも関わらず、我が物顔でハイウェイを歩いていた。

「あいつがレプリロイドの可能性…ふっ、笑わせてくれるぜ」

嘲笑を浮かべ、留置場での会話がVAVAの脳裏を過ぎる。

時折伝わる振動は恐らく外では何らかの事件が発生しているのだろう。

例のメカニロイド暴走事件かもしれないが、今の自分には関係のないことだ。

本音を言えば暴れたい気持ちがあったが、武装を取り上げられているのでここを脱出することも出来ない。

VAVAは目を閉じて、スリープモードに切り替えようとした時であった。

突如独房の扉が開いて、そこに立っていた人物に思わず驚いた。

『…これはこれはシグマ隊長。精鋭部隊の隊長が1匹のイレギュラーを直々に処分しようと?』

最強のイレギュラーハンター・シグマ。

どうやら自分には僅かな希望もないらしい。

だがどうせ殺されるなら、出来るだけの抵抗をして殺されてやる。

何もしないで殺されるのは自分のプライドが許さない。

次の瞬間、シグマがΣブレードを抜いた。

『ぐっ!!』

手錠をされた腕を前に出して少しでも生存率を上げようとするが、シグマはVAVAの予想していたことはしなかった。

それどころか手錠と足枷を破壊し、思わずVAVAは自身の両手足を見る。

『…何の真似だ?釈放されるとは聞いてないが?』

『力を貸せVAVA。エックスを倒す』

『エックスを倒す…だと?あの甘ちゃんハンターをか?』

『そうだ』

それを聞いてVAVAは嘲笑を浮かべてしまう。

『ふん…何を言い出すかと思えば…あの悩んでばかりいて実力さえ満足に発揮出来ない奴を倒してどうなると言うんだ?それとも悩みすぎてとうとうエックスもイレギュラー化したのか?』

嘲笑を浮かべてシグマを睨み据えるVAVAに対して、シグマは無表情のまま口を開いた。

『“悩む”…それが他のレプリロイドには存在しない特殊な能力。その能力を持つ故にエックスは深く悩み、我々では到達出来ない“答え”を出す…それがレプリロイドの新たな可能性なのだが、エックスはその秘められた可能性に気付いてはおらん』

『つまりその可能性とやらを目覚めさせるために自らイレギュラーになると?そして俺にエックスの可能性を目覚めさせる手伝いをしろと?』

『…理由はそれだけではないがな。だからこそ来たのだ。私と同様に自ら狂うことが出来る者…お前のような存在が必要なのだ』

『ふ、ふはははは!!なる程、自分から狂うか…魅力的なことを言ってくれるぜ。だがな、俺は自分にしか従わない。それがどういうことか分かるかシグマ?』

VAVAの笑みを浮かべながらの問いにシグマも笑みを浮かべた。

『無論だ。貴様は誰かの命令に大人しく従うような男ではない。自分のためだけに戦い、そのためなら私の首をも狙うつもりなのだろう?それは今回に関しては…このような事態に陥った場合ならば、寧ろ好ましいとさえ思っている。』

そう言うとシグマはVAVAに1枚のデータディスクと携帯端末を差し出した。

『何だこれは?』

『エックスの秘匿されていた一部のスペックデータだ。見てみろ』

『………ほーう…』

端末にデータディスクを差し込み、モニターに映し出されたエックスのスペックデータとやらを見ると思わずVAVAは目を奪われてしまった。

超高速移動用の脚部内臓ダッシュバーニア。

垂直壁面移動用の背面アポジモーター。

高密度粒子皮膜による高硬度ボディアーマー。

演算能力を加速させる頭部超量子コンピューター。

多様な武器の性能を強制的に増幅する武装チップスロット。

この内容が事実なら間違いなくエックスの潜在的なスペックは特A級達を上回るだろう。

『なるほど、道理でB級にしては無駄に打たれ強かったり、壁蹴りのような高等技術が使えるわけだ。』

しかもこれはエックスの持つスペックの一部だと言うではないか。

ならば更なる秘密がエックスに隠されていてもおかしくない。

これらを見てVAVAも少し興味が湧いてきた。

『どうだVAVA?これでエックスをつついてみる気にならんか?』

『なる程…いいだろう。しばらくはお前の掌の上で踊らされてやる。だが、覚えておけシグマ…何時かお前もエックス同様に粉微塵にしてやる…』

『やはりお前もそうだ。お前もエックスやルイン達とは違う意味の“可能性”を秘めし者。見込んだ通りだ。』

『ふん…』

『上にお前の武装を用意してある。今まで以上に存分に働いてくれ。』

『ああ、精々励むさ』

そしてVAVAはシグマと共に留置場を後にして炎に包まれたシティ・アーベルを無言で見つめた後、現在に至るのであった。

「…シグマ、お前がエックスに何を見出したかは知らんが、レプリロイドの可能性だとか未来だとか…そんな物は俺にとってどうでもいいことだ。俺はVAVA…最強のレプリロイドはシグマでもなければゼロやルイン、そして全ての力を引き出したエックスでもない…この俺だっ!!」

一気に跳躍し、そして着地と同時に迫り来るメカニロイドを腕部兵装のチェリーブラストで殲滅する。

「チッ、まともな整備もされてないことを考えればマシな方か…シグマの野郎、いい趣味してやがる」

ハンター時代に使っていた頃より威力が僅かに落ちていることにVAVAは苛立つ。

「まあいい、このイレギュラー共の動きから察するに暴動でハンター共の戦力を分断してエックスを追い込む手か…恐らくどこかにエックスがいるはずだが…」

少なくともそこらのメカニロイド程度にはやられはしないだろう。

甘ちゃんではあるが実力はそれなりにある。

「さて…エックスを捜す前に…」

右肩のキャノン砲から砲弾を放って、ロードアタッカーズの車を搭乗者ごと粉砕する。

「軽いウォーミングアップでもするか!!」

VAVAは留置されていた期間のブランクを感じさせない動きでメカニロイド等の雑兵を破壊していく。

おまけに武装もまともな整備がされていないのにも関わらずだ。

「大分体が温まってきた…ウォーミングアップはこれくらいでいいだろう…」

しばらくして最後のメカニロイドを殴り砕いて目の前のレプリロイドを見据えるVAVA。

「最後はお前だ。レプリロイドの可能性さんよ」

シグマの狙いであり、かつての同僚のイレギュラーハンター・エックスがVAVAの目の前にいた。

「VAVA!?ここで何をしている!?」

「ようエックス。何を仕出かしたのか知らんが随分とシグマに気に入られたようだな。シグマの掌の上で踊らされている気分はどうだい大将?」

「シグマだと…貴様もシグマの反乱に加わっているんだな!?」

「ふん…まあ、今のところはな。いずれは奴もこの手でぶっ潰すがな……」

「………」

「シグマは随分と面白いことを言ってたぜ。お前にはレプリロイドの可能性があるとな。そして秘匿されていたお前のスペックデータ…その力を見せてもらうぞ!!」

「可能性…?シグマのように何を訳の分からないことを!!VAVA、お前を拘束する!!」

エックスがショットを放つよりも早く、VAVAがエックスに向けてバルカンを放った。

危なげなくエックスはそれを横に動いて回避してみせる。

「反応速度は中々だ。」

「この……っ!!」

エックスはVAVAとの距離を保ちながらチャージショットを放った。

「バスターの威力も精度も申し分ない。だが、スタッガーとの決闘の時に見せた力はそんなもんじゃなかったはずだ。お前の持つ全ての力を見せてみろ!!」

チャージショットをかわしながらキャノン砲の砲弾を放つとエックスに炸裂し、吹き飛ばす。

「ぐっ…」

VAVAとエックスでは戦いの条件が違いすぎる。

ただエックスを破壊しようとするVAVAと迷いを抱えながらも拘束を目的としているエックスとでは攻撃にも差が出る。

「この程度か…ならがっかりだぜエックス!!」

肩部、腕部、脚部の全兵装を展開し、現時点での全火力をエックスに叩き込んだ。

一方、ハンターベースでのメンテナンスを受けていたルインはウィルスの除去に手間取り、エックスやゼロよりも大幅に遅れて復帰した。

そして現在は高層ビルの頂上から周囲を見渡し、状況を確認している。

「…………」

今のシティ・アーベルの空は灰色に覆われ、かつてのような雲1つない空が嘘のようである。

地上では至る所から黒煙が上がって炎が噴き出し、建物は倒壊して痛々しい姿を曝している。

ルインは胸の辺りに鈍い痛みを覚えた。

シグマの計画に気付けなかったがために起こったこの悲劇を必ず…必ず止めなくては…。

「シグマ…止めて見せる…この戦いを……ルイン…行きます!!」

高層ビルから飛び降りたルインの瞳には強い光が宿っており、フットパーツのバーニアをフルに使い、落下速度を減速させながら着地する。

ルインが着地するのと同時に蜂のようなメカニロイドが押し寄せてくる。

チャージしたZXバスターの銃口から周囲に2つの赤い螺旋状のエネルギー弾を伴ったチャージショットが放たれた。

大した耐久性を持たないメカニロイド達は砲撃に飲まれて蒸発していく。

「イレギュラーを扇動して暴動によってハンターの戦力を分断してエックスを追い込む気なんだね…シグマ…あなたの好きにはさせない!!」

後にルインの目の前に蜂のようなヘリ型メカニロイドが現れたが、バスターをセイバーに切り替えて強烈な回転斬りを喰らわせる。

「とどめっ!!」

そして再びバスターに切り替えて予めチャージしていたチャージショットを喰らわせるとあっさりと沈んだ。

「(おかしいな…敵の数が思っていたよりも少なすぎる…エックスが破壊した割には数が…)」

ルインはメカニロイドを撃ち抜き、そして時には斬り捨てながらただひたすらにハイウェイを突き進んだ。

メカニロイドが道路を砕いているので進み辛いが特に問題はない。

「ん?これは…もしかしてロードアタッカーズの車?」

現在イレギュラーハンターの頭を悩ませているレプリロイド暴走族。

ボンネットには大型のビーム砲を装備しており、それで攻撃をしてくるために他のイレギュラーハンター達が頭を悩ませていたのを見たことがある。

「これをやったのはエックスじゃない…」

バスターによる攻撃ではない実弾による物だ。

レプリロイドのアーマーを粉々に出来る程の火力を持つ実弾兵器を持つレプリロイドは…。

「ああ……やっぱり君だったんだVAVA」

「ルインか」

VAVAの近くにはダメージを受けて倒れ伏しているエックスの姿があった。

「やあVAVA。えっと…数日ぶりだね」

「ふん、相変わらずおかしな奴だ」

「シグマに出されたんでしょ?プライドの高い君ならシグマなんかに従うはずがないと思ってたんだけどね?」

「俺がシグマに従う?違うな、俺は自分にしか従わない。シグマの奴が興味深いことを言っていたからな。この甘ちゃんハンターがレプリロイドの可能性だとか言っていてな…こいつのデータのこともあるし、本当かどうか試してみたらこのザマだ。」

倒れ伏しているエックスを蹴り上げ、ルインの近くに吹き飛ばし、ルインはエックスを受け止めると、近くの残骸に寄り掛からせる。

「確かに実力は申し分ないかもしれないが、そいつは甘すぎる。破壊すればいいものを俺をあくまで捕えようとした大馬鹿野郎だ」

エックスとスタッガーの決闘を映像で見ていたVAVAはエックスの実力だけは多少は認めてはいた。

バスターの威力も機動力も悪くない。

甘ささえなければ、戦闘型レプリロイドの上位に食い込むだろう。

しかし、ハンターにあるまじき甘さがそれを台なしにしていた。

「こんな甘ちゃんハンターをレプリロイドの可能性と言うシグマもとうとう電子頭脳がイカレたのかもしれんな。」

嘲笑いながら言うVAVAにルインも冷笑を浮かべた。

「ねえVAVA…まだ暴れ足りないんじゃない…?久しぶりに私が遊び相手になってあげようか?」

「ククク…、暇潰しにはなりそうだ。少し遊んでやるとするか」

ルインの冷笑を見て彼女にもこんな表情が出来たのかと、感心してしまった。

表情には出さずに右肩のキャノンを向けるとルインもバスターを構えてチャージを開始する。

「丁度いい、ハンター時代では試せなかった新しい兵装を試させてもらうぜ!!ナーバスゴースト!!」

「チャージショット!!」

VAVAのキャノンから放たれた高出力のレーザーとルインのチャージショットがぶつかり合う。

レーザーはチャージショットの中心は砕いたが、チャージショットに伴われていたエネルギー弾がVAVAに襲い掛かる。

VAVAはそれを翻しながらルインに向けてバルカンを放つが、弾丸はルインのセイバーによって蒸発する。

ルインに届く弾丸は極僅かだが、それすらもルインのアーマーには傷つけることは出来ない。

「ほう…」

ルインのアーマーの頑強さに目を見張りながらも、脚部に装備されているボムをルインに向けて放つ。

流石に威力が高いボムを受けるわけにはいかず、直ぐさまルインは距離を取る。

距離を取ったルインがバスターを向けたその時、VAVAが拳を構えて突っ込んでくる。

「!?」

遠距離での戦闘を得意としているはずのVAVAのまさかの動きに目を見開き、硬直してしまう。

VAVAの右腕が発射され、ルインはそれを屈んでかわすが、発射されたロケットパンチは軌道を変えてルインの背中に命中する。

「ぐっ!?」

「インフィニティーギグ…高いホーミング性を持ったロケットパンチだ。」

「ああ…確か、ロケットパンチ系の兵装を持ってたね…」

セイバーを杖がわりにして立ち上がるルイン。

「それにしても君らしくない戦い方だね。普段の君なら、圧倒的な火力で敵を捩じ伏せる戦いをするのに、随分と控えめな攻撃ばかり…大方、捕らえられた時のままなんでしょう?」

充分な補給はされておらず整備も特にされてはいないのかもしれない。

実弾を多用するVAVAの兵装は整備を怠るとリスクが大きく、最悪の場合は暴発して自身を破壊してしまう。

「ふん…あのシグマも随分といい趣味をしていたということだ。」

「ああいうのは性悪って言うんだよ」

「違いねえ」

脚部が展開し、今度はボムではなくバーナーの炎がルインに迫る。

それを横にかわしてバスターをチャージし、ダッシュで一気にVAVAとの距離を詰める。

戦闘でルインが最も多用する手だ。

避けきれないと悟ったのか、VAVAは全身から冷気を放ち始めた。

「フローズンキャッスル!!」

VAVAが体の表面に薄く硬い氷を纏うとチャージショットは直撃したが、氷の鎧によって威力の大半は殺されてしまった。

「……君、そんな兵装を持ってたっけ…?」

「ふん…あのペンギンのデータを参考にしてな。こいつもハンター時代には使わなかったからお前が知らないのも無理はない。お前が来るのは分かっていたからな、用心するに越したことはない。即興にしては中々の出来だろ?」

驚愕しているルインを嘲笑うように言うVAVA。

「(ちょっとやばいかな…?)」

表情には出さずにルインは何とかこの場からの離脱を考える。

「逃げようとしても無駄だルイン。今の俺からは逃げられん!!スピードデビル!!」

次にVAVAは全身に薄く空気の層を纏う。

次の瞬間、VAVAが凄まじい速度でルインとの距離を詰めて拳を繰り出してきた。

VAVAの最強のロケットパンチ系の兵装・ゴールデンライト。

それをまともに受ければただでは済まない。

何とかそれを間一髪でかわすが、ヘッドパーツの一部が粉砕される。

「…っ、全身に薄く空気の層を纏うことで空気抵抗を軽減して、移動速度を向上させたんだね?」

「ご名答。イーグリードのデータを参考にさせてもらった。こちらも即興だったが悪くない」

「…どんな天才だよ君は?」

「当然だ。俺はVAVA、シグマを倒し、最強のレプリロイドとなる者だ」

「そう、嫌いじゃないよ?君のそういうとこ…でも私ばかり見ていてもいいの?」

「!?」

殺気に気付いたVAVAは横から放たれた紅いエネルギー弾に気付いて飛び上がる。

「VAVA!!」

「ゼロか!?」

「ゼロ…」

ゼロがバスターを構えながらルインとVAVAの間に入ると、バスターからチャージショットが放たれた。

ルインとエックスの物よりも強力で、それでいて正確に放たれるチャージショット…別名・ハイパーゼロブラスターだ。

「そいつらのために随分と頑張るんだな。」

「こいつらはシグマを倒すのにいなくてはならない奴らだ。ここで失うわけにはいかない」

「ふん…ここでお前達を潰すのも面白そうだが…」

VAVAはチラリとエックスを見遣ると、どうやらダメージから回復したようで起き上がった。

流石に3対1は分が悪い。

「今は退かせてもらうぜ」

「逃がすと思う?」

ルインがバスターをチャージし、ゼロと共にVAVAへと向ける。

エックス達が得意とする合体攻撃であるクロスチャージショットを繰り出すつもりなのだろうが…。

旗艦兼空中要塞デスログマーがこちらに向かってきた。
VAVAは道路の外に飛び降り、デスログマーの翼に着地する。

そのまま呆然とする一行の前でデスログマーと共に空の向こうへと去って行ってしまった。

「嘘…デスログマー…?」

「第7部隊…イーグリードが堕ちたか…」

イーグリードがシグマ側についたと言うことは敵が確実な制空権を手に入れたことに等しい。

「ゼロ…VAVAは一体何を…?」

傷付いた体を引き摺りながらエックスはVAVAの狙いが分からず、ゼロに尋ねる。

「分かっているのは…奴は俺達の敵だということだ…」

ゼロはデスログマーの去った空の向こうを睨みつけながら言った。

親友であるイーグリードが下された事実に対する彼の心中は察するに難い。

それでも彼はあくまで冷静なハンターとしての態度を貫いた。

「俺はしばらくシグマの足取りを追ってみる。お前達は一旦ハンターベースに戻れ。」

「分かった。後で合流しよう。」

「気をつけてねゼロ」

「ああ、後は頼んだ。」

「分かった。……ゼロ。ありがとう、また君に助けられた」

エックスの心からの礼に言葉を返さずゼロは笑みを浮かべた後、去って行った。

「ルイン、君もありがとう。助けてくれて」

「気にしないで、だって仲間でしょ?」

エックスとルインは互いに笑みを浮かべると転送装置でハンターベースへと戻る。

ハイウェイからハンターベースに戻ったエックス達はメンテナンスを受けてから司令室に向かうとオペレーターの顔色が悪い。

「どうしたの?」

「各地でイレギュラーによる暴動が発生しているのよ…本格的に動き出したようね…」

「くっ…シグマの部下達か…」

「早く何とかしないとね…」

「シグマを追うより、こっちを止めるのが先か…!!」

世界各地で暴動を起こしている特A級ハンターを止めるためにエックスとルインはモニターに映るエリアを見つめるのだった。 

 

第6話:Lunch time

ハンターベースの司令室ではエックスがモニターに映るエリアを睨んでいる。

ルインはそんなエックスを見て、明らかに肩に力が入っていると思った。

人間が緊張することで能力が引き出せないように、レプリロイドも性能をフルに発揮出来ない。

だからこそ、ここで緊張を解さなければならないとルインは行動に移すことにした。

「エックス…」

「ルイン?どうしたんだ?」

「あのね…」

普段は戦闘時にしか見せない真剣な表情でエックスを見つめるルインにエックスも表情を引き締めた。

「準備まで時間かかるし、それまでにお昼ご飯を済ませようか♪」

「は?」

一体どんな言葉が出るのかと思えばただの食事の誘いだった。

ルインはエックスの返事も待たずに自身の部屋に引き摺っていく…。

そしてルインの自室に引き摺られたエックスは初めて入る女性の部屋に緊張した面持ちで辺りを見回した。

何故なら基本的に集まるのはエックスかゼロの部屋だからだ。

話で聞いていたようなファンシーグッズで囲まれたような部屋ではないことにエックスは胸中で安堵した。

きちんと部屋は整理されている殺風景な部屋だが、デスクの上には工具が(武器のチェックだろうか?)転がっていた。

棚にはゲーム類と今では珍しい紙媒体の書物の小説という物があり、小説はケイン博士から貰ったと教えてくれた。

「エックス~、お昼ご飯はレーションでいい?」

「ル、ルイン…こんな時に食事なんて…」

「…こんな時だからだよ」

エックスが部屋に備え付けられているキッチンの棚からハンターベースのレーション(糧食)を取り出そうとするのをエックスは止めようとするが…。

ルインはレーションを取り出しながら冷静に言う。

「こういう緊急事態だからこそ、何時もより冷静でいなきゃいけないんだよ。戦場で冷静さを失ったら負けだよエックス?」

「だけど…」

今、この瞬間にも傷付いている人々がいると思うと食事どころではないとエックスは思う。

あの時、自分がシグマを撃つことが出来ていたらこんなことにはならなかった。

皆はあのシグマ相手によく破壊されなかったと言ってくれたが、自分の甘さが招いたことへの後悔は晴れなかった。

「エックス」

ルインの手がエックスの肩にポンッと置かれた。

自分よりも小さく細いこの手は自分が本気で握ってしまえば容易く砕けてしまいそうに思える程小さい。

しかしエックスは知っている。

彼女はこの手で沢山のイレギュラーを屠り、人々を守ってきたことを。

「ルイン…」

「シグマのことなら気にしないで…私も気付けなかったし…他のハンター達も気付けなかったんだから…エックスだけが責任を感じることはないよ」

「でも…あの時……あの時俺がシグマを撃てていたら…」

「…………」

ふと、エックスの脳裏を過ぎるのは反乱軍の爆破テロのために子供を助けて瓦礫の下敷きになり、機能停止してしまったレプリロイドの瓦礫の近くで子供が泣いていた姿だった。

自分を助けてくれた彼のために、子供は顔をぐしゃぐしゃにしながら大きな声で泣いていた。

エックスは泣きじゃくる子供を背負って、彼の両親の元へと送った。

この子を生かした彼の優しさがとても尊く、この子の流した涙がとても悲しいと思えたから。

「エックス、私達レプリロイドだって完全じゃないんだよ?何でも背負おうとしないで」

「……でも」

「もしエックスが迷わずシグマを撃っていたらシグマと一緒にゼロも死んでいたよ」

ゼロからミサイル基地での出来事を聞いていたルインは戸惑うこともなくエックスに言う。

「…っ」

ルインの言葉にエックスは思わず閉口してしまう。

「何が正しくて、何が間違っているのかは…私にも分からない…。けど私はシグマのしようとしていることは間違っていると思う。エックスは違うの?」

「そんなわけないじゃないか!!」

ルインの言葉にエックスは思わず声を荒げた。

確かにシグマの言う通り、犠牲の無い進化など確かに無いかもしれない。

種として生きるには、進化は確かに必要な物なのかもしれないが、エックスは流された血に触れて流された涙を前にしたことで分かるのだ。

言葉には出来ないが分かるのだ。

こんなことは間違っていると心が叫んでいる。

「それが分かっているならいいんじゃないかな?」

「え?」

ルインの言葉にエックスは目を見開き、そんなエックスをルインは優しく見つめた。 

「心がこんなことを“違う”と、“間違っている”と言っている。それでいいんじゃない?多分こういうのは理屈じゃないんだよ」

「…………」

「エックス、私達は戦わなきゃいけない…そして勝たなきゃいけないんだシグマに。それが、私達のミスで死んでしまった人々やレプリロイド達に出来る唯一の償いだと思うから」

「…そう、だな……」

「大丈夫だよエックス、君は1人じゃない。ゼロやケイン博士…私だっているんだからね」

ルインが笑みをエックスに向けると、エックスもルインに笑みを返した。

「よし、それじゃあご飯だね♪ハンターベースのレーションだけど食べよう。あんまり美味しくないけど」

レーションの加熱も丁度終わり、ルインはレーションを取りに向かう。

「そうだね、頂くよ」

ハンターベースでは賞味期限の切れる半年前に新品のレーションと交換する際、古いレーションをルインを含めたハンターが食事代わりに少し頂いていくのだ。

ハンターベースのレーションは弁当のようなタイプで付属の粉末飲料を水で溶かしてテーブルに置き、過熱したレーションを置く。

中身はライスにチキンステーキ、ベジタブルミックス、ドライフルーツ入りの小さなケーキであった。

見た目はかなり豪華だが、しかしレーションの肝心の味にルインは顔を顰めた。

「う~ん、やっばりハンターベースのレーションはあんまり美味しくないな…レプリフォースの方が美味しいよ」

「レプリフォース?レプリフォースって確か最近創設された軍隊だったよな?そっちではどんな物なんだ?」

「向こうは太古の保存食品の缶詰だよ。保存状態も味もこっちとは比べものにならないね」

“太古の保存食品”のために生産減少の缶詰だが、レプリフォースにいる友人に勧められて食べてみると味はちゃんとしていたし、鮮度も保たれていた。

レプリフォースは缶詰の保存性の高さを信用しているのだろう。

それに比べたら、ハンター機関のレーションは不味いの一言だ。

しばらくしてレーションを食べ終えたルインはあることを思い出した。

「そうだエックス。いい物が手に入ったんだ。今から淹れるね」

ルインは食べ終えたレーションの容器を片付けると、キッチンに向かうと、何かを取り出すような音とそれを置くような音が聞こえたかと思うと。

がりがりがり。

耳慣れない音がキッチンから響いてきた。

「何をしてるんだ…?」

エックスは疑問符を浮かべるが、ルインが淹れるのだから問題はないだろうと、エックスは何が出るのかを楽しみにしながら待つ。

「エックス、お待たせ」

2つのカップを持ちながら、ルインはエックスにカップを1つ渡した。

エックスの目の前に重厚な琥珀色をした飲み物が、香ばしい香りを湯気と共に発していた。

「え?ルイン…こ、これはもしかして…珈琲…?」

「そうだけど?」

「…凄いじゃないか、ルイン。この珈琲は豆を使った本物だろう?ある種の木の根を使った物でもなく」

エックスの瞳が感嘆に見開かれる。

今の時代、こういう嗜好品は殆ど存在しない。

例えば珈琲ならある種の根を使った代用珈琲ですら年々深刻化する環境の悪化の影響で入手は難しい。

エックスは映像ではない実物の珈琲に驚いた。

「えへへ、驚いたでしょ?エックスは実物の珈琲なんて見るの初めてじゃない?」

「ああ」

「それにしても、思ったより随分手間が掛かっちゃった。待たせちゃってごめんね?」

「いや、構わないさ。珈琲豆を挽いている音を聞くのも新鮮で良かったよ。それにしても本物はこんなにもいい香りがするなんて…だけど道具を揃えるのも大変だったんじゃないのかい?」

嗜好品の殆どが存在しないのだから、その道具を集めるのは大変だっただろうに。

「えっと…コーヒーミルと、ドリップ用のフィルターはケイン博士から貰ったの」

「ケイン博士から?じゃあ珈琲豆はどういう経路で入手を?」

「レプリフォースにアイリスっていう知り合いがいるの。レプリフォースの研究所で作られた豆を分けてもらったんだ。」

「ルイン、君って結構友好範囲広いよね…」

「そう?ゼロだってレプリフォースに知り合いがいるし、普通じゃないかなあ?」

「はは…それにしても凄いな…映像じゃない本物の珈琲を見るだけじゃなく飲めるなんて…ありがとうルイン。」

「どういたしまして♪砂糖とミルクもあるから入れたくなったらどうぞ♪私は早速カフェオレにして飲むけど」

そう言うと、ルインは自分の珈琲に砂糖とミルクを入れて一口飲んだ。

「ありがとう…」

礼を言ってエックスも珈琲を一口飲むと苦くて柔らかい風味が口の中に広がる。

「どう?」

「美味しいよ。本当にありがとうルイン」

尋ねて来るルインにエックスは口元を綻ばせ、彼女の思いやりに身も心も温かくなったような感覚を覚える。

「エックス」

「ん?」

「一緒に頑張ろうね」

「ああ、必ずシグマを倒そう…それと、ルイン」

「何?」

「平和になったら俺とゼロと君の3人で一緒にこれを飲もう」

エックスの提案にルインは面白そうに笑う。

「そうだね!!ゼロだけ仲間外れなんて可哀相だしね。珈琲ならゼロも飲めるだろうし、ハンターベースの屋上がいいかな?それとも…」

「誰もいない静かな野原でするのもいいかもな」

「うん」

エックスの微笑にルインも満面の笑みで返した。

平和な世界で一緒に今度はゼロを含めた3人で一緒に贅沢なお茶をしようと約束した。

そして昼食を終えて司令室に入るとケインと金髪とピンクのアーマーが特徴的な女性型レプリロイドがいた。

レプリロイド工学員の制服とも言える白衣を纏っていることから研究者であることは分かる。

「誰だ…?」

「え?エイリア!?何でここにいるの!?」

エックスは見慣れない女性型レプリロイドに戸惑うが、彼女の姿に思わず目を見開くルイン。

「ルイン!?良かった…あなた無事だったのね…まさかこんなことになるなんて思わなかったけど…」

「そりゃあね…エイリアも無事で良かったよ…あ、エックス。彼女はエイリア、私がケイン博士と暮らしていた頃に出会って、妙に気が合って友達になったの」

「そ、そうなんだ…えっとよろしくエイリアさん」

「エイリアでいいわ。私はこれから臨時オペレーターとしてあなたとルインをサポートすることになったから、あなたともある程度親しくなった方がいいと思うし」

「へー、臨時オペレーター…臨時オペレーター?えええええええっ!!!?」

司令室にルインの叫びが響き渡り、エックスとエイリアは耳を塞いでしまうが、構わずにルインはケインに問い詰める。

「おお、ルイン。どうしたんじゃ?」

「どうしたもこうしたもありませんよ!!どうしてイレギュラーハンター所属じゃないエイリアが…」

「うむ…お主の言うことは尤もじゃが、シグマの反乱の際にシグマに賛同した者の中にはオペレーターも含まれていてのう。人手が足りんのじゃ…エイリアの優秀さは知っておったからのう。彼女が此方への連絡を担当した時に頼んだんじゃよ」

「そうなんですか…」

「私なら大丈夫よ。とにかく、これからよろしくね」

「うん、お互い頑張ろうね」

「協力に感謝するよ。ありがとうエイリア」

臨時オペレーターであるエイリアとの会話もそこそこにエックス達は出動した。 

 

第7話:Prototype Weapons Plant

 
前書き
イレハンでは最初のボス扱いですが、オリジナルでもノーマルエックスで簡単に倒せるくらいに弱い。 

 
昼食を摂ったルインとエックスは現在、元第4陸上部隊隊長のバーニン・ナウマンダーが占拠した工場地帯に潜入していた。

そして施設への潜入経路を探している途中でふと気になっていたことがあり、ルインに尋ねることにした。

エイリアは臨時オペレーターとして配属されたばかりなので、敵対しているハンターの情報はルインの方が知っているかもしれない。

「ルイン、ここに元特A級ハンターのバーニン・ナウマンダーがいるらしいけど、彼は一体どういうレプリロイドなんだ?」

第17精鋭部隊は他の部隊と連携を取ることも多いが、第4陸上部隊は陸上…特に砂漠での戦闘を得意とするためかあまり部隊同士での関わりが少ない。

「え?私も噂くらいしか聞いたことないんだよね。でもあまりいい噂は聞かなかったかな…バーニン・ナウマンダー…元第4陸上部隊隊長で、性格は粗暴。部隊でも嫌われ者で、シグマ側についた時、彼に付き従った部下はいなかったらしいよ」

バーニン・ナウマンダー

ナウマン象型レプリロイドの第4陸上部隊隊長。

動きこそ見た目に違わず鈍重だが、圧倒的な火力を有し、その武力を以って第4陸上部隊を束ねていた。

シグマの反乱に加わったのはその実力を今まで以上に試す機会だと判断したためであり、反乱に加担してからは工場地帯を大規模な兵器生産工場にしようとした。

トボけた外見とは裏腹に、自分より力の劣る相手は徹底的に潰すという残虐な面を持っているため部下にも嫌われており、反乱の際には誰1人として共に反乱へ加わることはなかったと言う。

「まずはここを反乱軍から解放しよう。相手は腐っても特A級ハンターだから油断禁物だよエックス」

「ああ」

そしてルインとエックスが同時に施設を駆ける。

守備隊らしきメカニロイドが襲い掛かるが、エックスとルインのバスターのチャージショットにより撃墜された。

2人はナウマンダーがいる中枢部を目指してひたすらに駆ける。

「大分進んだね…にしても妙だね…ここ一応、占拠されているはずなのにあまりにもメカニロイドとかの防衛戦力が少ない。」

一応緑色で盾と鎖付き鉄球を備えたレプリロイドもいるが、ハッキリ言って防衛戦力があまりにも少なすぎる。

「まさかナウマンダーが私達を誘っているの…?」

どうにも違和感が拭えない。

中枢部に近付いているにも関わらず、どうにも守備隊の数が少ない。

しかしその分比較的性能の高いレプリロイドとメカニロイドが各エリアを守備しているために突破は少し苦労するが、それでもこの数の少なさは一体何なんだろうか?

「一体どういうことなんだろうね…ナウマンダーは何を企んでるのか…ねえ、エックス…あれ?エックス?」

ルインは後ろに来ているはずのエックスの姿がいつの間にかないことに目を見開いた。

その頃、エックスは何かに誘われる感覚のままルインのいる場所とは別の場所に向かい、辿り着いた先には白と青で縁取られた円盤状の機械が場違いに置かれていた。

一瞬敵が仕掛けた罠かと疑ったが、エックスは慎重にそれに手を伸ばした。

それを感知したのか、円盤はふわりと浮かび上がり、やはり罠かと身構えた時、浮かび上がった円盤の下で白衣を着た老人のホログラムが映し出された。

恰幅がよく、白い髭を豊かに蓄えた人物だった。

『わしはトーマス・ライト。このメッセージをエックス…お前の未来に託す…』

「ライト…?俺は…俺はこの人を知っている……」

エックスの深い記憶を刺激する電子音声に、彼は知らず知らずのうちにバスターを下ろしていた。

「エックス!!敵地で1人だと危ないよ…って…こ、この人は…」

エックスを追ってきたルインもこのホログラムとして出ている人物に驚いた。

僅かに残っている記憶が、彼の正体を引き出す。

トーマス・ライト

数多くロボットを造り、エックスを造った研究者。

その間、ホログラムの老人は真摯な目で言葉を続ける。

『このカプセルに辿り着いたと言うことは…既に逃れられぬ戦いの中にあるのだろう。エックス…』

老人の言葉の意味を理解する前にエックスは彼の言葉に聞き入っていた。

彼を前にすると、何か大切な記憶を忘れてしまったもどかしさに襲われる。

『わしが遺した4つの力を…お前が正しく使ってくれると信じているよ…。ここに遺したのはフットパーツじゃ。カプセルに入りパーツを装着すれば…お前の脚部に内臓されたダッシュバーニアの機能が開放され、ダッシュによる高速移動が可能になる』

老人の代わりにしばらくフットパーツのビジョンが映し出された。

それは白と青を基調にしたフットパーツである。

『この力で未来を正しい方向に導いておくれ…。わしのエックスよ…』

「………」

老人の言葉にエックスは何も言えない。

何か彼に言わなければならない言葉があるはずなのに、何故か口から言葉が出てこない。

『そして…』

「え…?」

老人の視線がルインに向けられる。

『ルイン…だったね。君にはお礼をしなくてはいけない…』

「お、お礼?な、何をですか?」

少なくとも初対面である自分は彼に礼をされるようなことはしていないはずだ。

『私は、与えることが出来なかった。喜びも、穏やかな時も…それを君は代わりに与えてくれた…ありがとう。君には感謝してもしきれない。本来なら礼に君のパワーアップパーツを造りたいのだが、残念ながら…私には君の身体の仕組みが分からない。故に君のパワーアップパーツを造ることが出来ないのだ。申し訳ない』

「い、いえ…私は別に今の状態でも満足してますから」

『だが…君の中に眠る力を引き出すことは出来る』

「え?」

ライト『このカプセルに入ることで、君の力を引き出せる。君には複数のアーマーを換装することであらゆる局面に対応出来る力がある。このカプセルで引き出せるのは1つだけじゃが…どうする?』

エックスは老人とルインを交互に見遣り、その言葉にしばらく考えたルインは頷いた。

「お願いします。」

『分かった。では、まずエックス…カプセルに入りなさい』

一瞬の動揺の後にエックスは足を踏み出してカプセルの中に入ると、エネルギーが充填されていくと同時に温かいものに抱かれるような感覚が体中に満ちてゆく。

自分の足を見ると何時も見ていた青のフットパーツではなく、カプセルで見たものと同じになっていた。

今までとは格段に違う出力であるにも関わらずに以前から自分のもののように違和感が無い。

「次は私だね…お願いします」

今度はルインがカプセルの中に入るとエックス同様にエネルギーが充填されていくと同時に温かいものに抱かれるような感覚が体中に満ちてゆく。

形状が変わっていくアーマーは今までの朱を基調としたアーマーではなく緑を基調としたアーマーである。

ルイン・HXアーマー

頭部と背部に巨大なバーニアを持ち、ダブルセイバーを装備した高い機動力を誇る形態。

まるで最初からこの姿だったのかと思うくらいにアーマーの情報が電子頭脳にデータがインプットされていく。

「これが、私の中に眠っていた力なの…?」

全身から満ち溢れんばかりのエネルギーにルインは拳を握り締めると、隣にいるエックスに向き直る。

「行こうエックス」

「ああ」

ルインは頭部と背部のバーニアを展開し、エアダッシュとホバーを駆使し、エックスはフットパーツによって会得したダッシュで一気に中枢に向かう。

強化された機動力で進んでいくエックス達は徐々に中枢部へと近付いていき、奥に行けば行くほど温度は高くなっていく。

現在の温度は人間には立ち入ることの出来ない場所であり、エックスとルインは中枢一歩手前に到達した。

「いよいよだね」

「ああ」

奥へと進むと中枢部には発電所を統括するコンピューターが設置されており、そこにはこの施設を占拠したナウマン象型レプリロイドであり、元特A級ハンターのバーニン・ナウマンダーがいた。

「ふん、どうしてシグマめ…お前みたいなB級やこんな小娘の相手をしろなどと…」

「シグマはイレギュラーだ。そしてお前も…!!」

「確かにシグマはおかしな奴だ。エックス…お前がレプリロイドの未来だとか言ってな」

「…………」

「ふはは!!では未来を踏み潰すとするか!!」

「バーニン・ナウマンダー、あなたをイレギュラー認定し、処分します!!」

新アーマーの装備であるダブルセイバーを抜き放ち、その切っ先をナウマンダーに向ける。

「おらよっと!!」

巨体に似合わぬ身軽な動きでナウマンダーが大きく跳躍してくるが、エックスは即座にダッシュで攻撃範囲から抜け出す。

ルインもバーニアを展開しエアダッシュで上空に逃げると、ナウマンダーが床に着地するのと同時に凄まじい振動が発生。

「ぐっ!?」

あまりの振動にエックスが体勢を崩し、ナウマンダーはそれを見計らって右腕のバスターから高温の火炎をエックスに向けて放射する。

ホバーで滞空していたルインは一気に急降下して、エックスの腕を掴むと再び空中へと避難する。

そして火柱が消えたのを見計らって床に着地した。

「ありがとうルイン。助かったよ」

「いいってこと。それにしてもあの巨体を活かした攻撃は厄介だね…」

まともに喰らったらナウマンダーの重量も相まって確実にスクラップだ。

火炎で逃げ場を塞いでプレスによる戦法はとてもシンプルだが鈍重による機動力の低さを補うことが出来るために効果的だ。

「どうする?」

「手がないわけじゃないよ。エックス、バスターのチャージをしておいて…」

「分かった…」

ルインの言葉を信じてバスターのチャージを始めるエックス。

「どうした?もう終わりか?ならとっとと終わらせてやる。その綺麗な顔がぐしゃぐしゃになるのが楽しみだぜ」

残虐な笑みを浮かべながら言うナウマンダーにルインは肩を竦めながら口を開いた。

「そうかな?君が勝利を確信して勝手に盛り上がるのはいいけど、こっちとしては期待外れだよ」

「何だと?」

「動きは鈍いし、ご自慢の火炎もその程度、よく特A級になれたよねえ?もしかして特A級になれたのは試験の時に運が良かっただけじゃないの豚もどき君?あ、ナウマン象もどきか」

「てめえ…!!」

馬鹿にされ、体を大きく震わせるナウマンダーにルインは後一押しだと確信した。

「君よりペンギン君…ペンギーゴの方がずっと強いよ…」

ルインはセイバーのチャージをしながらナウマンダーにチャージ攻撃を放つタイミングを伺う。

「そうか…じゃあ、お前に教えてやるよ。俺とペンギーゴのどちらが強いのかをな!!」

犬猿の仲であるペンギーゴと比べられ、頭に血が上り、冷静な判断が出来なくなったナウマンダーは大きく跳躍すると、ルインに襲い掛かる。

ナウマンダーがルインに落下する直前に勢いよくセイバーを振るう。

「プラズマビット!!」

「ぐおっ!?」

速度は遅いが追尾性能を持つ電撃弾を放ち、完全に不意を突かれたナウマンダーは直撃を受けてしまい、感電によって動きが硬直する。

その隙を突いて、セイバーの衝撃波を繰り出すとナウマンダーの鼻を斬り落とした。

「エックス!!」

ルインが振り返ると、既にエネルギーのチャージを終えているエックスがバスターを構えていた。

「これで終わりだ!!」

エックスのバスターから放たれたチャージショットがナウマンダーの頭部に炸裂した。

チャージショットはナウマンダーの頭部を粉砕し、頭部を失ったナウマンダーはヨロヨロと後退すると仰向けに倒れて機能停止した。

「勝った…」

安堵の息を吐きながらセイバーを下ろすルインにエックスが歩み寄る。

「ルイン、大丈夫か…?」

「うん…ナウマンダーが思っていたより単細胞で助かったよ。」

ルインはセイバーを握り締め、セイバーで機能停止したナウマンダーの腹部を斬り裂いて内部機関を露出させた。

こういう剥ぎ取るような行為には抵抗を感じるが現在は非常事態のために仕方ないだろう。

「ルイン…何を…?」

既に動かぬナウマンダーの腹部を斬り裂いたルインにエックスは複雑そうな表情で尋ねる。

ルインはナウマンダーの無駄に膨らんだ腹部からDNAデータを採取する。

一時期ケインの元にいたルインはエックスの能力を知っているための行動だ。

武器可変システム。

エックスにはバスター内の端子にDNAデータを組み込むことで特殊攻撃を会得することが出来るのだ。

「エックス、バスターを見せてくれる?エックスのバスターにナウマンダーのDNAデータを組み込むから」

「な、何をする気なんだ?」

自分のバスターにナウマンダーのDNAデータを組み込もうとするルインにエックスは戸惑う。

「エックスのバスターの端子にナウマンダーのDNAデータを組み込んでバスター内の予備の武器チップにインストールすることでナウマンダーの火炎攻撃が可能になるはずなの…だから」

「DNAデータを組み込むって…出来たのか?俺のバスターにそんな機能があるなんて初めて聞いたぞ?」

「私もケイン博士に聞いただけだからね…多分理由としては大した敵も存在いなかった当時に教える必要はないと思ってたんだよ…」

ルインはDNAデータをエックスのバスター端子に組み込んでいく。

自分の武器にも組み込もうとは考えたものの、容量の問題で不可能なのだ。

ルインが老人に引き出された新たな能力であるアーマー換装システムによって更に拍車をかかっているのだ。

「出来たよ。エックス、バスターにナウマンダーのデータを組み込んだからナウマンダーの火炎攻撃…ファイアウェーブが使えるようになったはずだよ」

エックスはバスターに意識を集中させるとボディの色が青から赤へ変わっていき、バスターを撃つのと同じ感覚でしてみたら何時ものショットではなくナウマンダーの火炎放射が放たれた。

「リーチは短いから近接戦闘で役に立ちそうだね。これでエックスの戦略の幅が広がる…」

「ルイン…」

バスターから放射される火炎放射を複雑そうに見つめながらエックスは口を開いた。

「何?」

「これからの戦いのために強化が必要なのは分かるんだけど…これは…」

こういう死者から剥ぎ取るような行為にエックスは気が乗らないようだ。

確かにナウマンダーは紛れも無くイレギュラーで、それには弁護のしようがないし自分もしようとも思わない。

しかしそれでも死者から剥ぎ取る行為にエックスは抵抗を感じるのだ。

「エックスは優しいね……」

渋るエックスに向けたルインの目は優しい。

エックスの気持ちは痛いほど分かる。

いくら非常事態とは言え死者から剥ぎ取るような行為は自分もしたくはない。

「でもごめんね。私もエックスにそんなことさせたくないんだけど…私はエックスみたいに高い拡張性を持たないし、武器可変システムが使えないから…」

「…………」

ルインが自嘲しながらの言葉を聞いて、それはもし彼女が使えるなら彼女が使うというのだろうか?

「今の私じゃ、もっと無理なんだよね…アーマー換装が出来るようになって残りの拡張領域を失ったから」

「ルイン…」

それは仕方ないと思う。

ルインは自分と違って優秀な特A級ハンターだ。

戦闘型レプリロイドはランクによって強化の度合いが違って来る。

特A級の彼女は高水準のパーツで強化されており、それにアーマーを換装する能力を得たことで特殊武器を組み込む容量などないことは分かっている。

「(俺はいつまで彼女に甘えるつもりなんだ…)」

いくら優秀な彼女にだって限界がある。

自分が弱いせいでいつも彼女は傷を負う。

弱いままでは駄目なんだ。

今の自分では彼女を守るどころか危険に曝すだけでせめめて自分の身を守れるくらいには強くならなくてはならない。

生き残り、そして力なき者達の剣となり盾となるために。

「ごめん…俺は甘ったれていた。いつまでも君に頼っていてはいられないのに……」

「…………」

「ルイン、ありがとう…この武器。使わせてもらうよ」

「うん…」

「(俺はもっと強くなる…少しでも彼女の負担を減らせるように…少しでも強くなるんだ。)」

エックスは新たな誓いを胸に施設を後にするのであった。 

 

第8話:Abandoned Missile Base

 
前書き
この作品ではエイリアに頑張ってもらいますかね

ノベライズ版みたいなものでもいいからロックマンシリーズが賑わって欲しいですね更に 

 
ナウマンダーを下したエックスとルインが選んだ次の攻略するエリアはペンギーゴのいる南極にしたのだが。

「エイリア、どうかな?」

「後少しでフットパーツのプログラムのバックアップが終わるわ…」

エックスはメンテナンスルームのメンテナンスベッドでエイリアにフットパーツのプログラムのバックアップをしてもらっている。

ナウマンダーを倒してハンターベースに帰還してエイリアから労いの言葉を受けたのだが、エイリアの興味がエックスの変化したフットパーツに注がれ、解析や今後のためにプログラムデータのバックアップをしてもらっているのだ。

「…出来たわ…ありがとうエックス」

フットパーツのバックアップデータが入ったデータファイルを懐にしまってエックスに礼を言う。

「いや、大丈夫だよ……出来ることならそのバックアップデータが使われる事がなければいいんだけど」

「そうね、でも万が一のためよ」

「分かってる…それじゃあ行こうルイン。早くこんな戦いは終わらせてしまわなければ」

「うん」

そしてメンテナンスルームを後にして、ペンギーゴのいる南極に向かった。

「映像で見たことがあるけど、本物はやはり違うな」

「わあ、綺麗…」

周囲を見渡しながら呟くエックスの隣で降り続ける雪を見つめながらルインは目を輝かせながら呟いた。

エックスも思わず苦笑してしまうが、シティ・アーベルを離れたことがないルインがそう思うのも無理はないと思ったし、エックスもこの白銀の世界の美しさに見惚れていた。

しかし、この世界は普通の人間が生きていくには厳しすぎる場所のためにレプリロイドである彼らだからこそ景色を楽しめる余裕がある。

「行こう。ペンギーゴを止めなければ…」

「あのペンギン君ね…」

雪原の皇帝 アイシー・ペンギーゴ

その異名通り吹雪や氷を使った攻撃方法を得意とし、その小さい体で任務がこなせるように思考回路は柔軟に作られているらしいが、それが周囲にはひねくれ者と思われる原因となっている。

パワーと巨体ばかりを誇るナウマンダーとは犬猿の仲だった。

エックスとルインはペンギーゴの戦いを間近で見たことがあるからペンギーゴの実力は知っている。

身軽な上に極低温のアイスショットが非常に厄介な相手で、こういう寒冷地では無類の強さを発揮する。

「ペンギーゴはどうしてシグマに荷担したんだろうか…勤勉だった彼が…」

「元々ペンギーゴはここでの生活に飽きていたからね。シグマに荷担すれば、ここから出られるというのもあるだろうし、自分の力を認めてくれたシグマを慕ってもいたから…」

「………」

確かにペンギーゴはシグマを慕っていたが、だからと言ってこのようなことなど許されるはずがない。

「とにかく、ペンギーゴを倒してここを解放しないとね…急ごうエックス!!」

「ああ」

2人はダッシュによる高速移動で一気に基地へと向かう。

途中で兎型のメカニロイドと蜂型メカニロイド、丸太を飛ばすメカニロイドが妨害してきたが、チャージショットで薙ぎ払う。

途中のダチョウ型メカニロイドは耐久性が他のメカニロイドより高く破壊に手間取ってしまい、早速エックスはナウマンダーから得た特殊武器を使用する。

「ファイアウェーブ!!」

高熱の火炎放射がバスターの銃口から放射され、ダチョウ型メカニロイドを瞬く間に熔解する。

「凄いね…」

「(流石は元特A級ハンターの武器だ…中々の使い勝手だな。)」

ルインがファイアウェーブの威力に目を見張り、エックスも特殊武器の性能に胸中で呟き、称賛した。

流石は元特A級ハンターの武器なだけはある。

これから挑むペンギーゴは氷属性の敵のためにナウマンダーのこの武器はペンギーゴとの戦いの切り札になるだろう。

エックスとルインは互いに見合わせ、ペンギーゴがいるであろう基地の最奥へ向かおうとした時だった。

あの時と同じ不思議な感覚をエックスは感じた。

「どうしたのエックス?」

何かに引き寄せられるように歩くエックスを追い掛けるルイン。

2人が向かった先には隠し部屋があり、あの老人のカプセルがあった。

エックスにフットパーツを与え、ルインに能力を引き出させた老人のカプセルにエックスが触れると再びあの老人の映像が現れた。

『このカプセルにはヘッドパーツを遺した…。エックスがカプセルに入りパーツを装着すれば頭上の障害物を破壊出来るようになり、頭部の超量子コンピュータの機能が引き出されるはずじゃ…ルインが入れば、また1つアーマーが解除されるじゃろう…頼んだぞエックス…わしの…人類の希望よ…!!』

そう言うと老人のホログラムは消えてしまった。

最初にエックスが入り、頭部に白を基調としたヘッドパーツが装着される。

次にルインが入ると橙色を基調としたアーマーに変化し、格闘・射撃兼用武器の二丁のナックルバスターを背負った形態である。

ルイン・FXアーマー

HXアーマーは雷属性のアーマーであるのに対してFXアーマーは炎属性のアーマーであり、これでルインも戦略の幅が大きく広がる。

ルインはFXアーマーから機動力に秀でているHXアーマーに換装するとエックスと向き直る。

「エックス。」

「ああ、行こう」

隠し部屋から出たルインとエックスは再び基地の攻略を再開する。

しばらく突き進んで一度広い所に出ると1機のライドマシン、ライドアーマーを発見した。

それにエックスが乗り込み、ライドアーマーを操作するとメカニロイドを殴り、破壊する。

元々ライドアーマーは土木作業用として開発されたものだが、VAVAが戦闘に転用した事を機に各地で人型機動兵器として運用され、様々な発展機が登場することとなった。

新しく創設されたレプリフォース軍においても戦闘用の機体が開発されている。

そして向こうからはペンギーゴの部下であろうレプリロイドがライドアーマーに乗って突っ込んで来る。

「プラズマサイクロン!!」

ダブルセイバーをチャージし、勢いよく振るうと電磁竜巻が発生し、電磁竜巻は凄まじい勢いでライドアーマーに傷をつけていく。

そして電磁竜巻が消滅したのと同時にエックスがとどめとばかりにボロボロとなったライドアーマーにパンチを喰らわせ、破壊する。

空中の小型メカニロイドから放たれる攻撃に対し、エックスはライドアーマーから下りるとライドアーマーを盾にする。

こういう敵は自身で破壊した方が早いと判断してのものだった。

ルインはHXアーマーからFXアーマーに換装するとナックルバスターを構えた。

「エディットバスター!!」

バスターの銃口から発射されたショットは時折軌道を変えてメカニロイドを破壊する。 

これこそがFXアーマーの固有能力であるバスターエディット。

この能力によってショットの弾道を指定する事が可能にり、高い命中率を誇るのだ。

そしてエックスのチャージショットが残りのメカニロイドを次々に破壊し、全滅したのを確認するとルインはZXアーマーに換装し直して一息吐いた。

そして基地の最奥に辿り着く。

「エックス!!それにルイン!?」

驚いたようにエックスとルインを見つめるペンギーゴ。

「ペンギーゴ…何故こんなことをしたんだ…勤勉だった君が…!!」

「何故…か…人型であの爺さんのお気に入りのお前に言っても理解出来ないだろうさ」

「………」

「エックス、お前はレプリロイドとして自分の境遇に不満を抱いたことはないのか?俺はあるぞ」

「不満だって…?」

突然のペンギーゴの言葉にエックスは目を見開いた。

「俺は見た目から分かるようにペンギン型のレプリロイドだ。寒冷地での活動に特化したな…高みを目指そうにも俺に与えられた特性のために配属されるのは人間や動物もあまり暮らしていない寂れた寒冷地ばかりだ。ペンギン型のレプリロイドであるだけで俺は人間達に多くの可能性を否定されていた」

「ペンギーゴ…」

「寒冷地特化型だからとは言え、本当に寒冷地でしか活躍出来ない訳じゃない!!何度か俺と作戦を共にしたお前らなら分かるだろう!!それなのに人間共は俺のスペックを理由に何時までもこんな寒冷地に押し込めやがって!そんな俺の悔しさをシグマ隊長は理解してくれた。俺の実力、そして可能性をな…だから俺はシグマ隊長の理想に賛同した。レプリロイドが正しく評価され、生きていける世界のために死ねエックス!!ルイン!!」

ペンギーゴの口から放たれたアイスショット。

エックスは迎撃のセミチャージショットを放つが、それは弾かれてしまい、ルインが間に入ってZXセイバーでアイスショットを砕く。

「(硬い…)」

あまりの硬度に腕が痺れてしまう。

アイスショットの硬度に驚きながら利き腕の右から左に持ち替える。

「喰らえ!!」

アイスショットをエックスとルインより少し上の壁に向けて放つ。

「…?」

見当違いの方向に放たれたアイスショットにエックスが訝しむが、今は戦闘に集中しなければとバスターをペンギーゴに向けた瞬間にエックスの左肩が凍結した。

「エックス!?」

「なっ!?」

何が起こったのか分からないエックスとルインは目を見開いた。

「ショットガンアイス…壁や障害物に当たると分裂して跳ね返るのさ…どうだ?早く何とかしないと左肩が使い物にならなくなるぞ?」

「くっ!!」

エックスはファイアウェーブの出力を抑え、凍結した左肩に火炎放射を放つと凍結した左肩が瞬く間に正常に戻る。

「その技はナウマンダーのファイアウェーブ…何故お前がそれを使える!?」

「エックスがナウマンダー倒して、ナウマンダーのDNAデータをバスターに組み込んだことでナウマンダーの武器が扱えるようになったの」

「エックスがナウマンダーを倒しただと…」

それを聞いたペンギーゴはエックスをマジマジと見つめると高らかに笑い始める。

「クワックワックワッ!!あいつ死んだのか!!たかがB級に!!今まで大口叩いておいてエックス程度にやられるなんてなあ!!」

「…………」

そういえばペンギーゴとナウマンダーは仲が良くないと噂で聞いていた。

属性が正反対なのもあるが、小さい体で任務がこなせるように思考回路は柔軟に作られているペンギーゴと何も考えずにパワーばかりを誇るナウマンダーとはソリが合わなかったのだろう。

「エックス、図体しか取り柄がないとは言え、ナウマンダーを倒したのは褒めてやろう。B級とは言え、一応は第17精鋭部隊に配属されたハンターと言うことか」

嘲笑を浮かべながら言うペンギーゴに対してエックスとルインは次の攻撃に備える。

「クワーーーーッ!!」

次に仕掛けてきたのはエックスに向けてのスライディングタックル。

かつてのエックスなら避けられなかった一撃だが、フットパーツとヘッドパーツ入手の恩恵で機動力と演算能力が格段に向上した今のエックスならかわすことが出来る。

ジャンプでかわしたエックスに対してペンギーゴはスライディングから跳躍し、壁を蹴り上げるとエックス達と距離を取りながらアイスショットを放つ。

またショットガンアイスかと警戒したエックスとルインだったが、壁が凍結しただけだった。

そしてペンギーゴはアイスショットに気を取られていたエックスに向けて勢いよくスライディングタックルを喰らわせる。

「ぐっ!!」

がら空きの胴体に直撃を受けたエックスは勢いよく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

「エックス!!」

エックスに注意が逸れたルインにアイスショットを数発放って上半身と下半身を凍結させた。

「っ!?」

「これでお前も終わりだなルイン。特A級のお前は氷像にしてシグマ隊長の献上品にでもしようと思ったが気が変わった」

「ペンギーゴ…!!」

「これで終わりだクワ!!」

エックスに繰り出したのよりも遥かに速いスライディングタックル。

もし直撃を受ければ凍結している部分が間違いなく砕け散るだろう。

「ルイン!!」

駆け寄ろうとするエックスだが、ダッシュでも間に合わない。

ペンギーゴがルインに接触する瞬間にルインの体から炎が上がり、FXアーマーに換装するのと同時にチャージされたナックルバスターの一撃が繰り出された。

「メガトンクラッシュ!!」

FXアーマー時に使えるナックルバスターによるパンチと火炎弾を同時に繰り出す技。

その威力はペンギーゴのスライディングタックルの勢いもプラスされ、ペンギーゴのボディの表面を破壊し、内部機関を露出させた。

おまけに弱点である炎を受けたことで、ペンギーゴのダメージは凄まじい。

「ア…ギギ…ル、ルイン…お前…何だその、能力は…」

自分の知るルインにそんな能力は無かったはずだ。

「アーマー換装システム。私には状況に応じて属性を持つアーマーに換装することであらゆる局面に対応出来るんだ。と言ってもこれはつい最近出来るようになったんだけどね」

「な、んだとお!?」

一体どういう改造を施したのだ?

エックスとゼロもそうだが、ルインもブラックボックスがありすぎて、パワーアップパーツを作ることもままならないというのに。

「うおおおお!!」

追撃のチャージショット。

今までのエックスなら戸惑ったかもしれないが、今のエックスは迷いを振り切っている。

エックスのチャージショットが動力炉に直撃し、ペンギーゴは機能停止した。

「すまないペンギーゴ…君の気持ちは理解出来ないわけじゃない。でも俺はシグマのやり方を認める訳にはいかない…俺は…イレギュラーハンターだから」

機能停止したペンギーゴにエックスは謝罪しながら、己の胸の内を吐き出した。

「エックス…」 

当然だが、機能停止しているペンギーゴからの返答はない。

「何故、少し前まで仲間だった奴と戦わなければならなかったんだろうな…でも俺はイレギュラーハンターだ…俺達は守るべき物のために戦わなければならない」

エックスはペンギーゴのDNAデータを回収し、バスターの端子にDNAデータのデータを組み込んだ。

エックスのアーマーが水色に変わり、ペンギーゴの特殊武器であるショットガンアイスを得た。

ペンギーゴに占拠された施設を解放したエックスとルインは南極を後にし、ハンターベースへ帰還するのであった。 

 

第9話:Break Time

ペンギーゴを処分したエックスとルインはメンテナンスを受けるためにハンターベースに戻っていた。

2人のダメージ自体は大したことはないのだが、凍結の影響がないとは限らないからハンターベースに戻ってきたのだ。

「納得いかない。ダメージはそれほど酷くないのにさ」

不満そうな表情で呟くルインにエックスは苦笑しか出来なかった。

ペンギーゴの冷気をエックス以上に浴びたルインは大事を取ってメンテナンス後に自室での休息を言い渡された。

「仕方ないさ、今ではルインは貴重な特A級ハンターなんだ。扱いが慎重になるのも当然だよ」

エックスもエイリアによるヘッドパーツのバックアップを終えて、次の出動まで休息している。

「ちぇ、今日は任務を終わらせたら外でお弁当を食べようと思ったのに…折角のお弁当が台無しだよ」

「外でって…何処で?」

正直、今の状況では弁当を落ち着いて食べられるような場所はないはずだが。

「ほら、エックスと私とゼロの3人でよく行った野原があるじゃない?あそこは運よくミサイルの直撃を受けなかったんだ。イレギュラーもいないから気分転換には持ってこいな場所じゃない?」

「確かに…」

最近は気が滅入っていたし、エックスとしても久しぶりに日向ぼっこをしたいような気がする。

「…はあ、まあ、それは戦いが終わってからの楽しみにして…ご飯にしようかエックス。今日のお弁当はサンドイッチでした」

ルインが取り出したバスケットをテーブルに置いて開くと、長方形にカットされた様々な種類のサンドイッチが並んでいた。

「今日も美味しそうだね」

「へへ、エックスのために早起きしてお弁当を作ってきたんだ。まあ、無意味になっちゃったけど」

嬉しそうな表情から一気に落ち込むルインにエックスは苦笑してしまう。

「ま、まあ…そんなに落ち込まないで、今は貴重な休息の時間を大切にしよう」

「うん」

エックスはヘッドパーツを外すと遥か昔に造られた兄弟機に似た黒髪が露になり、ルインもヘッドパーツを外すと、完全に金色の髪が露出する。

「(そう言えばルインって、元は人間なんだよな…)」

ゼロから聞いた話だとルインは元は人間らしい。

レプリロイドはアーマーを装備した状態の時はレプリロイドだと分かるが、アーマーを装着していない時は人間と区別がつかなくなり、それが人間とレプリロイドの境目を曖昧にしている。

「(人間としての肉体を失ったルインはどんな気持ちで日々を過ごしているんだろうか…?)」

肉体とは魂の器であり、人間にとって最も重要なものであることは否定しようのない事実だ。

今まで人間であったのに全てが機械と化した時、正気を保てるだろうか?

恐らくそれは否だ。

人間とは肉体と魂が共にあってこその存在なのだから。

「ルインは…」

「何?」

サンドイッチを口に運びながらルインは首を傾げた。

「ルインはその…元々は人間だったんだろう?」

「…ゼロから……聞いたの?」

サンドイッチを持つ手を止めてエックスに尋ねるルインにエックスは頷いた。

「…ああ、どうして人間であった君がレプリロイドになったのか……すまない、言いたくないならいいんだ」

自分だって経歴が不明なレプリロイドだ。

自分の製作者が完成間近だった時に亡くなり、ケインが自分を引き取ったらしいが…とにかく自分にも解析出来ない部分が沢山ある。

ブラックボックスの塊であるために何度研究者からの好奇の視線にさらされたか分からない。

彼女を傷つけたくないと、エックスは話を中断しようとしたが…。

「生きたかったからかな?」

「え?」

「私ね、レプリロイドになる前のことはもう殆ど思い出せないんだ。家族や友達のことも…でもレプリロイドになる前にこう思っていたのは分かるんだ。“もっと生きたい”って」

「生きたい…」

人間からレプリロイドになってまで生きたいと願う心。

かつて人間だった彼女がどういう気持ちでこのような思いを抱いたのかは自分にも彼女にも分からない。

「今だってもっと色んな人に会いたいし、色んな物を見たいし、色んな人に私を知って欲しいから……今の私をね」

「そうか…」

「私は…ルイン…第17精鋭部隊所属のイレギュラーハンターだよ。今も、そしてこれからもね」

ウインクしながら言う彼女にエックスは動力炉が強く動いたような錯覚を覚えたが、気にせずに頷いた。

「そうか…そうだよな。君は君だ。例え君が人間だろうとレプリロイドだろうと君は君だからな」

「そういうこと…あ、エックス。レタスが落ちるよ」

「え?おっと!!」

ルインに指摘されたエックスは零れ落ちそうになるレタスを押さえるとサンドイッチを頬張る。

ルインはクスクスと笑いながらエックスを見つめる。

「笑うなよ…それにしても君は料理が上手だね。俺も料理は出来るけど…お菓子作りは君に負けるんだよな…」

「戦闘型レプリロイドで料理が出来るのって何人いるんだろうね」

現時点では兄が家庭用ロボットであり、その後継機であるエックスと元が人間であるルインくらいしかいないだろうが。

「実はデザートもあるんだ。」

もう1つの小さなバスケットからチョコレートカップケーキを取り出すルイン。

「ケーキ?」

「そう、今日はチョコレートのカップケーキ。ゼロは食べてくれないからね~」

「まあ、ゼロは甘いの好きじゃないからね」

「そうなんだよ。甘い物が食べられないなんて勿体ない」

ルインは紅茶をエックスに差し出しながらゼロに対して不機嫌そうに言う。

「まあ、俺達にも味の好みはあるし…頂きます」

パクリと彼女が作ったケーキを一口頬張るとチョコレートの甘い風味が口の中に広がる。

「どう?今日のは甘さは控えめにしてみたんだけど?」

上に乗っている生クリームも自分のために甘さを抑えているのだろう。

甘くはないし、添えられている果物の酸味が程良く効いて、甘さをさらにしつこくない物にしていた。

「美味しいよ。これならまだ食べられるよ」

「本当?やった♪」

嬉しそうな表情を浮かべるルインにエックスも穏やかな笑みを浮かべた。

しばらくして食事を終えたルインは自室のベッドに仰向けになった。

窓から射し込む太陽の光が気持ちいい。

「う~ん、食べた後寝るのは人間時代は厳禁だったんだけど、今は食べた後すぐ寝ても平気だからレプリロイドになってよかったって思う点かもね」

「(確か…)」

人間の女性の大半が体型を気にしていると言うのはエックスも聞いたことがある。

どうやら人間時代のルインも例外ではなかったらしく、思わずエックスはクスリと笑ってしまった。

「あ、何笑ってるのエックス」

「ああ、いや…ごめんごめん」

謝りながらも笑いが止まらないエックスにルインは頬を膨らませる。

「こういう穏やかな時が続けばいいのに」

「それを作るのが私達の仕事だよエックス」

戦いの間の少しだけの穏やかな時間の中、2人は笑い合うのであった。  

 

第10話:New-type Airport

新人時代に出会ったあのレプリロイドとの出会いはまず、“最悪”の一言であった。

『おい、そこの女みたいな奴』

『……………鳥…?』

自分とあのレプリロイドは初対面から喧嘩腰であった。

いくつかの言葉を交わした後は互いにチャージを終えたバスターを構えていた。

その際に巻き添えになった同僚達には申し訳ないことをしてしまったし、恥ずかしい姿を曝してしまった自覚もある。

そして自分の親しい友人兼後輩となるあの2人が当時いなくて良かったと今でも思う。

しかし自分からすれば唯一喧嘩するのはあのレプリロイド位だった。

顔を合わせてはいがみ合い、次にすれ違っては嫌味の言い合い。

時々同じ任務に配属されれば、どちらが手柄を挙げるかの競い合いだった。

何時の間にか、最後に勝った方が1つだけ何でも要求出来る何て言うルールまで生まれていた。

ただこうやって何度もぶつかり合うことであのレプリロイドの良い部分も分かってきて、互いに後輩や部下を持つようになったこともあり、いがみ合いは無くなり、かつては腕を競い合ったライバル兼良き友人として接する
ことが出来るようになった。

そして久しぶりに合同の任務で顔を合わせ、いくつかの言葉を交わした後、あのレプリロイドはこう言った。

『あの頃は、競い合う相手を探していた』

『何?』

『機械である俺達は最新のパーツに交換しなければ飛躍的な変化は得られない。なら、経験値のみで上に目指すにはどうするかと頭を悩ませていた時にお前と出会った。』

『……それで?』

『競い合う相手にするなら、自分と同等かつ、向上心のありそうな奴がいい。だから俺はあの時お前に喧嘩を売ったのさ』

『おい、俺はお前の昇進に利用されたのかよ?』

『そうとも言えるかもな』

あのレプリロイドの笑みに自分は苦笑してしまったが、自分としてもその考えは理には適っているとも感じていた。

あの時は、まさかシグマによる反乱によってこんなことになるとは思いもしなかったが。

そして現在のハンターベースでは、エックスがペンギーゴとナウマンダーを倒したことで話題となっていた。

B級が特A級ハンターを下したという事実が持ち切りの話題となるのは至極当然だが、唯一それに動じていない存在がいる。

特A級ハンター・ゼロ

エックスの秘められていた潜在能力に気付いていた数少ないハンターである。

ゼロからしてみれば、これは当然の結果である。

迷いを捨てた今のエックスは強い。

「ゼロ」

「ルイン、それにエックス」

ゼロが声のした方を見遣るとルインとパワーアップパーツを装備しているエックス。

話題になっているエックスと現時点でのイレギュラーハンターの中でもトップクラスの実力者であるゼロとルインの組み合わせは目立つ。

「ゼロ、デスログマーが見つかったの?」

「ああ、あいつはエアポートにいるらしい」

「なら俺達も一緒に…」

「駄目だ。あいつは俺が止めなければならない。」

かつての友として、イレギュラーとなった彼は自分が止めなければならない。

協力を申し出てくるエックスに対して悪いとは思ったがこれだけは譲れない。

「エックス、ここはゼロに任せよう。私はカメリーオの所に行くからエックスはマンドリラーをお願い」

「俺が…あのマンドリラーと?」

豪速拳の雷王 スパーク・マンドリラー。

元第17精鋭部隊所属で隊長であったシグマに従う形で反乱に参加し、その圧倒的な戦闘力で巨大発電所を占拠。

拠点制圧は部下に任せ自分はごろ寝を決め込んで好物の電気を貪り食っていると聞いている。

「大丈夫だよエックス、自信を持って。今の君なら大丈夫だから」

「ああ」

ルインの言葉に何とか緊張を解いたエックスはゆっくりと頷いた。

「エックス、ルイン。気をつけろよ」

「ありがとう」

「ゼロこそ気をつけてね」

「ああ、分かってる」

ゼロはハンターベースを後にし、イーグリードがいるエアポートに向かってチェバルを走らせた。

しばらくチェバルを走らせ、目的地であるエアポートに着いたゼロは右腕をバスターに変形させ、迫って来るイレギュラーを見据える。

「邪魔だ!!」

イレギュラーに向けてチャージショットを放つゼロ。

エックスの蒼色のチャージショットとは正反対の紅色をしたチャージショット。

威力もエックスのチャージショットとは威力も桁違いでメカニロイドはチャージショットに飲み込まれていく。

ゼロはリフトに乗り込んで更に奥へと進んでいく。

天空の貴公子 ストーム・イーグリード

第7空挺部隊の隊長を務めていた人物で人望と正義感に厚く、当初は反乱を起こしたシグマとも対立していたが、シグマとの直接対決で敗れ、その軍門に下ってしまう。

その後、第7部隊旗艦であり彼の乗艦であるデスログマーは反乱軍の空中要塞となり、空路を遮断するため空港を制圧している。

「(止めてやるぞイーグリード…俺の知っているお前ならこんなことを許せるはずがないからな)」

チャージショットを放ち、メカニロイドの群れを単体で灰燼に帰していく。

ゼロには不明な点が多い。

制作者が不明。

エックス、ルイン同様にケインでも解析出来ないブラックボックスが多すぎると言う極めて例外的なレプリロイドである。

恐らくその不明な点にゼロの正体があるのだろうが。

とにかくゼロにとってメカニロイドは大した敵ではなく、ただ面倒な障害物でしかないのだ。

いくら破壊しても沸いて来るメカニロイドに辟易してきたゼロはバスターを元に戻すとエネルギーを纏わせた拳を握り締め、全力を込めて地面を殴りつける。

「アースクラッシュ!!」

一瞬のうちに地面には亀裂が走り、砕けた岩片がメカニロイドを巻き込んで宙へと舞った。

その直後の衝撃波で機体はバラバラに裂け、小さな鉄片となり地へ振り注ぐ。

「…………」

ゼロは周囲を見回すが、この辺りにはもうメカニロイドは残ってはいないようだ。

先へ進もうとしたらあるレプリロイドが視界に入った。

「貴様…VAVAか…!!ここで何をしている!?」

元特A級ハンターにしてハンター時代からイレギュラースレスレの存在であり、今や正真正銘のイレギュラーとなったレプリロイドがいた。

「ほう、ゼロ。お前が此処に来たのか…てっきりエックスが来ると思っていたが、これは想定外だったな」

VAVAとしてもここでゼロと会うのは予想していなかったのだろう。

声には幾分かの驚きが混じっていた。

「丁度いい、ここで貴様を処分してやる」

ここでVAVAと会うのはゼロとしても予想外だったが、好都合でもある。

何せVAVAはそこらのイレギュラーよりも何をしてくるのか分からない相手で下手をしたらシグマよりも恐ろしい相手だ。

これからの戦いの不安要素は消しておくべきだとゼロは判断し、VAVAにバスターを向けた。

「ふん、やれるものならやってみろ。逆にぶっ潰してやる…と言いたいが…」

「?」

VAVAはゼロを無視して壁のパネルを弄ると武器庫の扉が開いて漆黒のライドアーマーが飛び出してきた。

「生憎、俺は此処に置いてあった自分の愛機を取りに来ただけなんでな。悪いがお前と遊んでいる暇はない」

愛機と聞いてゼロはライドアーマーを凝視する。

確かにそのライドアーマーはVAVAがハンター時代に愛用していたVAVA専用にチューンアップされたカスタム機だ。

これを駆るVAVAは他の追随を許さない操縦技術によってイレギュラーを殲滅してきた。

「ゼロ、お前も楽しみに取っておいてやる。精々奮闘し、強くなることだ。俺の渇きを癒すくらいにな」

そう言ってVAVAはライドアーマーに乗り込み、バーニアを噴かしてこの場を去った。

「奴め…一体何を考えて……ん?」

VAVAのライドアーマーが置かれていた武器庫の奥にカプセルのようなものを発見し、ゼロは警戒しながらカプセルに歩み寄る。

近付くと起動し、エックスとルインに力を貸す白衣の老人のホログラムが映し出された。

「…っ」

映し出されたのは優しげな老人だった。

懐かしい…どこかで会ったことのあるような…そんな気持ちを抱かせる男だった。

老人はゼロの姿を認め、笑いかけた。

『君は…ゼロだったかな?』

「あなたは一体…?」

自分を認識し、話しかけているこのホログラムは生きているのか…?

驚愕しているゼロに老人は優しく話し掛ける。

『いつもエックスのことを…感謝している…これからもあの子を助けてやってほしいのだ』

「何故あなたがエックスを知っているのですか…?あなたは一体…?」

『…すまないが、それを言うことは出来ない……許してほしい…このカプセルにはボディパーツを遺した。細かい説明は省くが、エックスがこれを装着すれば、エックスの防御力を飛躍的に高めることが出来る…代わりにパーツファイルを受け取ってエックスに渡してほしい…後はこれをルインに』

老人がカプセルに1つのチップを映し出し、ゼロに見せる。

「それは…?」

『彼女のアーマー解除プログラムじゃ…これを彼女に使えば彼女の封印されたアーマーを解除することが出来る…私は残念ながらルインと同じように君の体の仕組みが分からない…故に君のパワーアップパーツが造れないのじゃ…申し訳ない』

「気にしないで欲しい。エックスにパワーアップパーツを…ルインには解除プログラムを渡しておく」

『すまない…しかし、君のためのパワーアップパーツは造れないが…君に秘められた力を解放することは出来そうじゃ……』

「何だって…?」

『このカプセルで力を解放するかどうかは君の自由だ。ただこのカプセルに入ればバスターの性能を引き上げ、アーマーの強度も格段に上がるはず…君ならこの力を正しい方向に…戦うべき敵に使ってくれると信じているよ…後は力を使う君次第じゃ…ゼロ』

それだけ言うと、老人のホログラムが消えていく。

「…………」

ゼロはしばらくカプセルを見つめるとその中に入る。

エックス、ルインは自分にとって掛け替えのない親友達。

ルインはエックスと比べれば付き合いは浅いが、ゼロにとっては大切な友であることには変わりはない。

今の自分ではシグマには勝てないのは分かっている。

ならば力を求めよう。

「あいつらは…俺が守る……」

カプセルの中で力が漲っていくのを感じる。

紅いアーマーは漆黒へと変わり、金色の髪は見事な銀髪へ変わった。

次にエックスのパワーアップパーツとルインのアーマー解除プログラムを入手。

それらを簡易転送装置でハンターベースへ転送すると、ゼロは銀髪を靡かせながらかつての友の元へ向かう。

途中のメカニロイドを殲滅しながら最奥へ進み、デスログマーの甲板にはイレギュラーとなった友がいた。

「ゼロ…なのか……?」

外見が変わった友にイーグリードは戸惑いを隠せなかった。

紅いアーマーは漆黒になり、豪奢な金髪も銀髪に変わっていたからだ。

「…ああ、久しぶりだなイーグリード」

「しばらく見ないうちに随分と変わったものだな」

「ある人に力を引き出してもらった。以前の俺と同じだと思っていると痛い目に遭うぞイーグリード」

途中のメカニロイドとの戦闘によってバスターの性能とアーマーの防御力も飛躍的に上がっていることをゼロはイーグリードに警告する。

「…そのようだな。しかし、力を引き出しただと…?」

一体どうやってだ?

ゼロは未解析な部分が多くパワーアップパーツを造ることすら困難だというのに。

「…イーグリード、お前を止めに来た。ハンターとして…友としてな」

「…ならばこちらも全力で相手しよう…我が友よ」

イーグリードのバスターから突風が放たれた。

ゼロは強化された脚力を活かして大きく跳躍することでかわし、バスターを構えてショットを連射する。

通常のショットも攻撃力が増加し、弾速も上がり、一度に発射出来る連射数も3発から5発に増えている。

「チッ!!」

舌打ちし、イーグリードは即座に飛翔することでショットをかわしていく。

ゼロの警告通り、以前のゼロとは性能が桁外れだ。

しかし空中戦ならこちらに利がある。

イーグリードの強みは360度を自在に駆け巡る戦闘能力であり、それは地上戦に特化したレプリロイドよりも多彩の行動を可能とし、敵を為す術なく粉砕する。

「チッ…ちょこまかと飛びやがって…」

縦横無尽に飛び回るイーグリードに舌打ちしながらもゼロは感覚を研ぎ澄ませる。

かつてのゼロなら苦戦は免れなかったろうが、今の自分なら…。

「そこだっ!!」

イーグリードの突進を見切り、カウンターの突きを繰り出した。

「ぐあっ…!!」

ゼロの拳が顔面に突き刺さる。

イーグリード自身の突進の勢いもプラスされていたためにダメージが大きく、一瞬気が遠くなった。

「喰らえっ!!」

吹き飛ばされたイーグリードに向けて炎を纏った飛び蹴りを喰らわせる。

直撃を受けたイーグリードは何度もバウンドして甲板の床に叩き付けられた。

「ぐっ…負けるわけにはいかん…!!」

ふらつく体を叱咤し、再び起き上がるのと同時に再び飛翔すると複数のオプションメカを放つ。

ゼロは連射性能が向上したバスターで撃ち落としていくが、爆煙が辺りを覆う。

後ろに気配を感じたゼロは右方向に裏拳を繰り出すが、それはオプションメカ。

「おおおおおおっ!!」

「ぐあっ!!」

真横からのイーグリードの突進の直撃を受けたゼロはダメージこそは大したことはないが吹き飛ばされる。

「やはり簡単にはいかないか…」

いくら性能が向上してもイーグリードは自分の戦い方を知り尽くしている。

1216戦中、600勝600敗16引き分け。

これだけ間抜けな程に争っていれば自然と相手の手の内が分かる。

次にイーグリードが繰り出すのは羽ばたきによる攻撃だ。

ゼロの真上から鋭利なイーグリードの羽が落ちてくる。

羽の威力自体は大したことはないが全てを受けるわけにはいかない。

「爆裂炎!!」

ゼロは拳を甲板の床に叩きつけると火柱を発生させ、イーグリードの羽を尽く焼き尽くす。

大きく跳躍し、イーグリードに接近して零距離でチャージショットを繰り出そうとする。

ゼロのバスターのチャージの時間も大幅に短縮されており、かつての時よりも速く、強烈なチャージショットが放たれた。

イーグリードは咄嗟に体を捻ることで直撃はかわすが片翼と右腕を奪われた。

「ぐああああっ!!」

片翼と右腕を奪われたイーグリードは即座に体の痛覚を切ることで何とか耐える。

誤魔化しでしかないがこのままでは満足に動けない。

イーグリードの翼は姿勢の制御、浮力、速度の制御などを計算されて造られている。

電子頭脳と最も関わりのある部位のために痛みは想像を絶するだろう。

「くっ……」

戦闘の要となる翼を失ったイーグリードは表情を歪めており、翼を失った自分にはもう勝機はないことを悟っているのだ。

「イーグリード…降参しろ。その状態では満足に戦えないだろう」

「何だと…?」

降参を呼び掛けるゼロにイーグリードは目を見開いた。

ゼロはイレギュラーには一切容赦しない。

それは電子頭脳の異常でイレギュラーとなったイレギュラーハンターに対しても例外ではなかった。

その中には同期のハンターもいたのだから。

「変わったなゼロ…昔のお前なら一切容赦はしなかっただろうに……」

「エックスとルインの甘ったるい考えが移っただけだ…少しだけな…」

「そうか…だが断る。俺にイレギュラーの情報を吐かせようとしてもそうはいかんぞ。イレギュラーとなったが、敵に情報を売り渡すほど堕ちたつもりはない。」

イーグリードは非常用の装備である対装甲ナイフを取り出した。

普通なら緊急用の武装にしか成り得ない対装甲ナイフは使わないだろうが、主兵装であるバスターと片翼を失い、オプションメカも使い切ったイーグリードにはこれしかない。

しかし対装甲ナイフと言えどもこれは超振動モーターによって刃身を高周波振動させることで重装甲のレプリロイドのアーマーさえも容易く切断するほどの威力を誇る。

それを見たゼロも覚悟を決める。

「そうか…ならこの一撃で終わらせよう」

拳にエネルギーが収束していく。

ゼロの最強の必殺技であるアースクラッシュは地面に拳を叩きつけて衝撃波で攻撃すると思われがちだが、直接エネルギーを纏った拳で攻撃することも出来る。

まともに受ければ並のレプリロイドでは粉微塵になってしまう。

上空は強い風が吹き、当然ながらこの戦場も強風が吹いている。

その風が一瞬止まったことで彼らは同時に駆け出し、一瞬ですれ違いながら互いの拳とナイフが交差する。

背を向け合った2人の動きは完全に止まっていたが、振り返ったイーグリードは笑った。

がっくりと膝が崩れ、直後ドサリと倒れ伏す。

イーグリードの胸に風穴が空いており、彼は穏やかに、心から笑いながら息絶えていた。

「イーグリード…」

イーグリードの死に呼応するかのように、デスログマーが大きく揺れた。

「…そう言えば、最後に勝った方が相手に何でも要求出来るんだったな……おい、鶏ガラ………死ぬな」

自分で処分しておきながら無茶なことを言っていると言う自覚はあるが、どうしても言っておきたかった。

勿論、イーグリードからは返事がない。

「チッ…安らかな面をしやがって…」

ゼロは簡易転送装置を使い、機能停止したイーグリードと共にハンターベースへ戻るのだった。 

 

第11話:Recon Base Ruins

カメリーオがいるという森の前線基地へ来たルインは辺りを見回して表情を顰めた。

自分がカメリーオの相手をすることにしたのは個人的感情がある。

新人時代に新しいエネルギー体の実験をしたいからとそれの実験台にされたのだ。

あれは例えどれだけの年月を経ても忘れはしない。

カメリーオが差し出したエネルゲン水晶から抽出された透き通るような青いエネルギー体とは全く違う血を思わせる赤黒いエネルギー体。

それを飲まされ、稼働不能状態に陥ってエックス達に心配をかけてしまった。

優れた戦闘用であり、技術者であるカメリーオは以前からマッドサイエンティストな人格が問題視されており、因みに新人時代のエックスもカメリーオの被害に遭ってしまったらしい。

とにかくカメリーオはイレギュラースレスレの存在で何時イレギュラー化しても可笑しくない…既にイレギュラー化していたかもしれないが。

とにかくジャングルの中は敵だらけ、カメリーオの性格を考えれば罠だらけなのは間違いない。

メカニロイドとライドアーマーの軍勢でも特に厄介なのはライドアーマーだろう。

あの強固な装甲は破壊にやたら時間がかかる。

「まあ、そうは言ってられないんだけどね」

ルインはZXアーマーからパワー重視のFXアーマーに換装する。

堅牢な装甲を持つタイプの敵にはこのアーマーが一番効率がいい。

二丁のナックルバスターを構えると突撃するとメカニロイドがルインに襲い掛かってくる。

「メガトンクラッシュ!!」

ナックルバスターでのパンチと火炎弾をメットールに叩き込むとメットールは炎に包まれながら吹き飛ばされ、爆散した。

メットールのヘルメットは大抵の攻撃を防ぐがそれを無視して攻撃出来る。

敵の防御を無視して有効なダメージを与えられるFXアーマーはこういう時に便利だ。

「エディットバスター!!」

丸太を飛ばしてくるメカニロイドやアメンボ型メカニロイドもナックルバスターのショットで破壊し、向かってくるライドアーマーにもメガトンクラッシュを喰らわせ、僅かに吹き飛ばすと追撃で二丁のナックルバスターからショットを連射する。

そして耐久力を超えたダメージを受けたライドアーマーが爆散するのを確認して、更に奥に向かった。

途中で岩に擬態したレプリロイドやナウマンダーの工場地帯で見た緑色のレプリロイドもいたが、メガトンクラッシュで防御も装甲も無視して粉砕する。

途中でFXアーマーからHXアーマーに換装するのと同時にバーニアを展開し、エアダッシュと壁蹴りを駆使して岩壁を一気に越えた。

そこにはアメンボ型メカニロイドやライドアーマーが配置されており、近くにあるライドアーマーに乗り込むと汚泥を突き進む。

途中で妨害してくるメカニロイドや敵のライドアーマーはライドアーマーのパンチで沈めていくが、慣れない汚泥での操縦でライドアーマーを乱暴に扱い過ぎて敵の攻撃を受け続けたために壊れてしまった。

しかもライドアーマーが爆発した際、敵にぶつけていた。

確かに倒す為には合理的ではあるのだが……。

「ふう、危なかった~。あのライドアーマー、思ったより脆いね」

……全く悪びれていないと言うより気にしていない。

ルインは密林の前線基地のボスの情報を再び検索する。

幽林の妖撃手 スティング・カメリーオ

元第9レンジャー部隊副隊長であり、如何なる場所にも適応可能な保護色能力を持つ部隊きっての実力者だが、任務遂行のためには手段を選ばず、その行き過ぎた合理主義思想から卑怯者扱いを受けていた。

優秀な技術者でもあるのだが、マッドサイエンティストな性格もあり、却って嫌われていた。

シグマにその実力を純粋に買われ、協力を持ちかけられた事から、シグマの反乱軍へ身を投じる事となり、密林の前線基地の警備を担当している。

「カメリーオの電磁迷彩か…厄介だな……」

HXアーマーからZXアーマーに換装し、ZXバスターを構えながら奥へと進むと扉が開かれる。

そこにはスティング・カメリーオが嫌みたらしい笑みを浮かべていた。

「やあ、カメリーオ。久しぶりだね」

嫌悪感を隠さずに言うルインに対してカメリーオは陰湿な笑い声をあげる。

「にににに…そうだなあ。最後に会ったのはあの実験の時だったな」

「どうして君達はシグマに与するのか教えてもらえるかな?」

「さーな、中には人質に取られて仕方なくってのもいるかもしれねえがな。まあ俺としてはイレギュラーだろうがなんだろうが、のし上がれりゃそれでいいしな。そうなりゃ実験もやりたい放題だ」

「イレギュラーだね…正真正銘の…スティング・カメリーオ。あなたをイレギュラーとして処分します。」

バスターを構えてチャージショットを放ち、チャージショットがカメリーオを捉えたかに見えたが…。

「やった…なわけないよね!!」

背後に悪寒を感じて、飛び上がると緑色のレーザーが床に当たる。

「ににに…どうしたんだあ?俺を処分するんだろ?」

「不意を突いたつもりだったんだけど…あれを簡単に避けるなんて」

完全に不意を突いた一撃であったのにも関わらず、回避した上に反撃してきたカメリーオにルインは敵ながら感心してしまった。

「にににに…お楽しみはこれからだぜ」

カメリーオは電磁迷彩を使って姿を隠し、ルインはバスターからセイバーに切り替えて構える。

「(どこ…?どこから仕掛けてくるの…?)」

辺りを見回すルインだが、姿形も熱源すらも探知出来ない上に視界も狭いためにここはカメリーオの独壇場だ。

「(落ち着いて、ゼロに昔言われたように目やデータに頼っちゃ駄目……)」

全ての感覚を限界まで引き上げていき、僅かな物音も聞き逃さないようにする。

「っ………そこだ!!」

右斜め前方からした微かな音を頼りにチャージセイバーを叩き込む。

「なっ!?」

ルインが叩き斬ったのは電磁迷彩機能を装備させた鳥型メカニロイドだった。

「ににに!!甘えぜルイン!!」

ルインの背後に来ていたカメリーオのレーザーがセイバーを吹き飛ばし、カメリーオの舌がルインの腕に絡み付いて、壁に叩きつけられる。

「くっ…まさか、メカニロイドに電磁迷彩を搭載していたなんて…」

「にに…武器は使い物にならなくなっちまったな。それでどうやって戦うつもりだ?」

貫通力の高いレーザーを至近距離で受けたルインのセイバーは内部の機械が露出しており、切り替える機能は勿論、セイバーやバスターも機能しない。

「(確かにこれじゃあセイバーやバスターは使い物にならない…だけどどうすれば…この狭い空間じゃあHXアーマーもFXアーマーも使えない。)」

この狭い空間では例え換装したとしてもHXアーマーの機動力もFXアーマーのパワー性能を充分に活かせない。

特にプラズマサイクロン等の大技は自分を傷付けてしまうためにルインが素手で戦おうと決心した時。

『ルイン!!』

突然エイリアからルインに通信が入った。

「エイリア?」

『ゼロが入手したアーマー解除プログラムを転送するわ!!』

エイリアによって転送された解除プログラムチップを組み込むと、ヘッドパーツのクリスタルが光り、アーマーが新しく解除された。

直ぐさま新しいアーマーに換装し、光が収まった時には紫を基調としたアーマーを身に纏って仮面とマフラーのような装備を身につけたルインがいた。

「ににに…そいつが噂で聞いたアーマー換装システムか…」

油断なくルインを睨みつけ、再び電磁迷彩を使う。

ルインは姿を消したカメリーオを睨むと、このアーマーの能力であるレーダースコープを使う。

これを使えば例えどれ程高性能な電磁迷彩だろうと敵の位置を把握出来る。

「そこだ!!十字手裏剣!!」

PXアーマーのチャージショットとも言うべき大型手裏剣をアームパーツから出現させると投擲し、十字手裏剣は孤を描いて狙った場所へ向かっていく。

「にっ!?」

それは的確にカメリーオの舌を斬り落とした。

「て、てめえ…」

「……」

ルインは血走った目を向けるカメリーオに無言でアーマーの電磁迷彩を使い、景色と同化する。

「っ!?」

電磁迷彩を使ったルインにカメリーオは驚愕して辺りを見回すが、カメリーオの電磁迷彩同様に姿形も熱源すらも探知出来ない。

新しいアーマーのフットパーツの能力、サイレントの恩恵によって物音すらしない。

高いステルス性能を持つ新アーマーのPXアーマーはカメリーオの能力を上回り、四方八方からカメリーオに向けてクナイが降り注ぐ。

「にに…っ、死んでたまるかよ!!」

致命傷を避けながら離脱しようとするカメリーオを追い掛けようとするが、メカニロイドと予め仕掛けていたのか天井から針が降り注いで妨害してくる。

ルインは舌打ちしながら、降り注ぐ針をかわしながらメカニロイドにクナイを投擲する。

「くそ!!俺としたことが…!!」

カメリーオは脱出用の隠し通路に飛び込んで地下の洞窟へ向かう。

このまま逃げて傭兵かブローカーでも始めるか…。

ここまで失敗したとなるとエックス達を倒してもシグマに粛清されかねないからだ。

そんなことを考えながら隠し通路から抜けた時だった。

後ろから両手両足を撃ち抜かれ、何が起こったか分からないまま尾も吹き飛ばされた。

「おいおい、今まで散々でかい口を叩いておきながらこのザマかカメリーオ?」

右肩のキャノン砲をカメリーオに向けたままVAVAはその無様な姿を嘲笑う。

「あ、あんた…」

「お前の悪足掻きも楽しませてもらったがね。そろそろ飽きてきたぜ…ほらよ」

キャノン砲から放たれたフロントランナーの砲弾がカメリーオの頭部を吹き飛ばす。

「ギ、ガギャ、ギャ!!」

「お?まだ生きている上に少しだけ会話する能力が残ってんのか」

頭部を吹き飛ばされたのにも関わらず、生きており、その上会話をする能力がまだ残っているというカメリーオの生命力に心底感心した。

「頭を吹き飛ばされた気分はどうだカメリーオ?風穴が空いてすっきりしただろう?」

「ギ…ギギャギャ…」

VAVAは嘲笑いながらカメリーオの脇腹を蹴り上げ、木に叩きつける。

「さて…」

VAVAは僅かに痙攣するカメリーオの元まで行くと、カメリーオの腹部を引き裂いた。

「ギャヒ!?ひヒひひひ…」

どうやら今ので電子頭脳がイカれたらしい。

カメリーオの発狂などVAVAにとってはどうでもいいのか、気にせずに引き裂いた腹部に手を突っ込み電磁迷彩の機能を引っこ抜いた。

「さて、目当ての物は手に入った。お前にはもう用はない。死に果てろカメリーオ…」

脚部の兵装・バンピティブームをカメリーオに放ち、放たれたボムは爆発してカメリーオを鉄屑にした。

「VAVA!!」

メカニロイドを片付け、カメリーオを追い掛けてきたルインがVAVAを睨み据える。

「よう、ルイン。毎回毎回姿が変わるが、自分を着せ替え人形にする趣味でもあるのか?」

「君こそ毎回毎回嫌みったらしい奴だね君は…何ならここで殺り合う?」

「くはっ…面白いじゃねえか……だが、俺にはまだしなくてはならないことがある。機が熟した時、相手をしてやる。エックスやゼロともな。今回はこれで失礼させてもらうぜ。次に会う時が楽しみだ。その時にお前達と決着を付けるとしよう」

イーグリードのデータを参考にして造られたスピードデビルの恩恵だろうか…?

イレギュラーハンター最速を誇るクワンガーと互角かそれ以上の速度でこの場を後にした。

ルインはカメリーオの残骸と奇跡的に無事だったDNAデータを回収し、前線基地を後にしながら空を見上げると、雲一つない眩しいばかりに太陽が輝き、まるでエックスのアーマーのような蒼い空が広がっていた。

決着の時が近づいているのをルインは何となく感じていた。 

 

第12話:Electromagnetic Power Plant

エックスはマンドリラーが占拠したシティ・アーベルの電力の約7割を賄っている巨大発電所付近に来ていた。

「シティ・アーベルの都市部が停電している…マンドリラー…何故彼までこんなことを…」

『エックス、同僚の凶行に戸惑う気持ちは分かるけど、あなたがそうして迷っている間にも苦しんでいる人々がいるのを忘れないで』

迷っているエックスにエイリアがオペレーターとして厳しく言い放つ。

しかしこの発言はエックスの背中を押すためのもので、エックス自身もそれを理解している。

ここに来る途中にエイリアによってゼロが入手したボディパーツのプログラムが転送され、防御力が飛躍的に向上したエックスはイーグリードのDNAデータを組み込んだバスターを見つめる。

顔見知り、知り合い程度の自分と違ってゼロにとってイーグリードは新人時代からの古い戦友なのだ。

それを討ったゼロの心境は図り知れない。

VAVAがカメリーオを破壊したことも知らされた。

カメリーオの電磁迷彩機能を引き抜いた後、何処かへ消えてしまったと言う。

VAVAが何をしたいのかは分からないが、あまり良くないことは確かだろう。

エックスは複雑な心境で同僚が占拠した発電所に向かい、施設内に入ると墜落したデスログマーが目に入った。

『どうやらデスログマーの落下による衝撃の影響で施設内の機能がいくつかが停止したようね…ゼロには悪いけれどこれは好機だわ。機能が復活する前に奥に進んで』

エイリアのオペレートを受けながら途中で向かってくるメカニロイドにはチャージショットを喰らわせ、あるものには…。

「ストームトルネード!!」

イーグリードのDNAデータから得た特殊武器を放つ。

バスターから放たれた小型の竜巻は大型のメカニロイドを切り刻んでいく。

「(これもいい武器だ。)」

ある程度距離を詰めなければ当てられないファイアウェーブよりも使い勝手がいいのでこれを攻撃の要にして、エックスは発電所の奥へと向かっていく。

メカニロイドの迎撃をしながら奥に向かうと広い部屋に出たが、照明は落ちており変電器の駆動音以外何も聞こえなかった。

中に入った途端に背後の扉が閉まり、閉じ込められたとエックスが悟った時には一転して部屋の照明がついた。

一瞬眩しさに目が眩み、エックスは天井を見上げると目を見開いた。

「何だこいつは…!?」

透明なゼリー状のような膜に覆われた巨大な機械。

顎に当たる部分には巨大な電極がついており、そんな異形が変電室の天井に浮いていた。

「何だあれは…?メカニロイド…なのか?」

『そのゼリーのような膜を持つメカニロイドは恐らくサンダースライマーよ。1個の細胞をどこまで巨大化出来るのかと言う実験の産物。でもサンダースライマーの維持には大量の電気が必要なのと制御不能のためにプロジェクトもろとも凍結処分が下されていたはずだったんだけど…どうやらマンドリラーが発電所を占拠した際に解放されたようね…サンダースライマーを倒すには膜の中にある機械部分を攻撃するのよ。何とかあの膜を突破して攻撃を当てて』

エイリアの説明を聞いたエックスは即座にストームトルネードをサンダースライマーに喰らわせる。

膜が竜巻によっていくらか削られるが、スライマーを倒すには至らない。

出来るだけ敵から離れなければならないとダッシュやジャンプを駆使して変電室を駆け回るが、撃ち返す間もなく電撃が襲ってくる。

しばらく走り回った末に相手の攻撃が止んだのを見計らってエックスはバスターを連続で撃ち込んだ。

ファイアウェーブもショットガンアイスもストームトルネードもカメレオンスティングも。

しかしいずれの攻撃もゼリー状の膜を貫通しきることなく消滅してしまった。

「くそ!!一体何の細胞で出来てるんだあれは…!?」

悪態をつきながら諦めず撃ち続けるが、相手は堪えた様子が無く、それどころかその巨体で突撃してきた為にエックスは慌てて回避する。

あの巨体の体当たりをまともに受けたら押し潰される。

このままではバスターはともかく特殊武器のエネルギーが尽きてしまう。

「(ストームトルネードは後1発しか撃てない…なら、危険だがこれしかない!!)」

エックスは意を決してバスターに変形させた腕をサンダースライマーに突っ込むと腕に走る痛みに顔を顰めながら、最後の1発を放つ。

「ストームトルネード!!」

内部で放たれた竜巻により膜が弾け飛び、露出した機械部分にショットを連射して破壊し、サンダースライマーの残骸が辺りに転がる。

「………」

この世に生を受けた瞬間に凍結処分させられた実験機の残骸に哀れみを覚えながらも、エックスは先へと進むと十字に分かれている通路を見つめる。

左の通路の奥から淡い光と共に懐かしい感覚がする。

エックスは左の通路に進むと奥には白衣の老人のホログラムが映るカプセルがあった。

『このカプセルにはアームパーツを遺しておいた…カプセルに入り、腕に装着すれば、お前のチャージショットが強化され、より強力なスパイラルチャージショットが放てるようになり、特殊武器のチャージも可能になる。そしてこれはルインの最後のアーマー解除プログラムじゃ…あの子に渡して欲しい……』

フット、ヘッド、ボディに続く最後のパーツ。

「…分かりました。パーツとプログラムチップを受け取りましょう」

カプセルの中に入り、アームパーツがエックスの腕に装着されたことでファーストアーマーが完成し、続いてルインのアーマー解除プログラムチップを受け取る。

『エックス…戦いとは辛く虚しいものじゃ……だがそれによって得られる平和の…笑顔の素晴らしさを忘れるでない…』

「…はい。ありがとうございます。あなたのおかげで、俺はこうして、ゼロとルインと一緒に戦える。この御恩を返せるかは分かりませんが、決して忘れることはありません。」

エックスは白衣の老人に頭を下げるとマンドリラーの元へ向かう。

何もない通路を抜けるとタービン室の扉に辿り着き、エックスがそれを力任せに開けると室内は暗かったが、何かが中にいるのは分かった。

暗い天井付近で七色に明滅するランプが縦一列に見え、それが合図であったように広い部屋の照明が点灯し、天井の太いパイプを掴んでぶら下がる巨大な猿の影が浮かび上がった。

「此処にいたのかマンドリラー…」

エックスは苦い顔でかつての同僚の名を呼んだ。

来ると分かっていたスパーク・マンドリラーは、静かに床に降りてエックスに問いかけた。

「…シグマ隊長が狂ってると思うかいエックス?」

シグマの名を聞いてエックスの顔が更に険しくなる。

「奴はもう隊長なんかじゃない…イレギュラーだ!!」

「なあ、エックス…」

怒るエックスにマンドリラーはボリボリと頭を掻きながら言った。

「隊長が正しくて お前が間違ってると思ったことはないか…?」

「…………」

マンドリラーの言葉にエックスは思わず目を見開いて閉口してしまう。

「俺も考えるのは苦手だ…答えは戦えば分かるかもしれんな…」

表情の無い顔に何か遠くを見るような目をしながらそう語ると、マンドリラーは腕のドリルの出力を上げた。

エックスもアームパーツによってパワーアップしたバスターを構え、予めチャージしていたことで即座にチャージショットをマンドリラーに放つ。

マンドリラーはそれを翻すとその巨躯と普段の態度からは想像できないような俊敏な動きで接近すると、その豪拳でエックスを殴り飛ばした。

“豪速拳の雷王”の異名を持つマンドリラーの恐ろしさは接近戦の強さではなく、その俊敏さにあるのだ。

瞬間速度だけなら、かつての精鋭揃いの第17精鋭部隊でも“時空の残鉄鬼”ブーメル・クワンガーに次ぐ速度を誇るレプリロイドである。

「ぐっ…!!(反応仕切れなかった…や、やはりマンドリラーは速い…!!)」

強化されたアーマーはマンドリラーの一撃に耐えはしたが、エックス自身に相当のダメージを与えた。

「…壊す気で殴ったんだがなぁ…」

あの一撃には渾身の力を込めて繰り出したにも関わらず、強化されたアーマーのおかげとはいえ耐え抜いた。

明らかにエックスのステータスが以前と比べて飛躍的に上がっている。

「マンドリラー、どうして君はシグマに従うんだ…?ただ、シグマが正しいと思っただけじゃないだろう…?」

起き上がったエックスに尋ねられたマンドリラーは少しの間を置いて口を開いた。

「う~ん、まあいいか…話しても。俺もペンギーゴとか程じゃないけど人間に不満があったんだよエックス?」

「人間に不満…?君が…?」

マンドリラーが言い放った“不満”と言う単語にエックスは目を見開く。

「ほら、俺って電気の力を使うから他のレプリロイドより燃費が悪いだろ?そう設計したのは人間なのに取り込む電気量を制限されちゃってさ。俺を造っておきながらこれだよ。だからさ、シグマ隊長に従うのは隊長が正しいと思うからだし、俺をその制限から自由にしてくれた隊長に恩を返そうと思ったからだよ」

そう言うとマンドリラーはもう1発喰らわせようとするが、今度は回避して最大までチャージしたチャージショットを放つ。

エックス「スパイラルチャージショット!!」

大量の拡散弾を束ねたチャージショットが放たれた。

まともに受ければやばいと判断したマンドリラーは即座に体を捻って回避し、避けられたスパイラルチャージショットは壁を容易くぶち抜いた。

新たなチャージショットのスパイラルチャージショットの威力に目を見開いたが、エックスは少々訝しげにバスターを見遣る。

エネルギーチャージが臨界点に達そうとした瞬間、バスター内部でエネルギーが四散した。

「(まさかバスターにリミッターが取り付けられているのか…?)」

確かにあれ以上の出力を出したら下手な場所では大惨事になるだろう。

今度はショットを連続で撃つことでマンドリラーを更に壁際へと追い詰めていく。

かつて同僚だったためにマンドリラーの弱点は知っており、特にこれから使う武器はこのような狭い場所で真価を発揮する。

「喰らえマンドリラー!ショットガンアイス!!」

バスターから極低温のアイスショットが放たれた。

マンドリラーは上に飛び上がって避けるが、この攻撃はそれでは終わらない。

ショットガンアイスは壁に当たると部屋の中に無数の氷の礫をばら撒いた。

いくつかは部屋の壁に当たってその箇所を凍結させ、そしてマンドリラーの体に当たった礫はそのまま張り付いて徐々にマンドリラーの体を凍結していく。

「ペンギーゴの技を…!?」

戸惑うマンドリラーの体をショットガンアイスの氷が侵食していく。

電気を武器とするマンドリラーの体は極端な熱の変化に対応仕切れないのだ。

動きが鈍ったマンドリラーにエックスは再びショットガンアイスを至近距離でマンドリラーに撃ち込むと、あっという間にマンドリラーは氷の彫像となって地に落ちた。

「終わったか?」

エックスは氷に閉じ込められたマンドリラーに近づこうとしたが、マンドリラーを閉じ込めた氷に罅が入るのを見てバスターをチャージさせた。

「ぶるぅあぁぁぁぁぁ!!」

吠えながらマンドリラーは自力で氷を破壊して起き上がり、今のショットガンアイスでかなりのダメージを受けたはずなのに戦闘体勢に入る。

ここは流石は特A級と言った所だろう。

起き上がったマンドリラーがエックスに殴り掛かるが、ダメージにより速度が低下しているために今のエックスなら容易にかわせる。

エックスはマンドリラーの拳をジャンプてかわすとチャージを終えたバスターを向ける。

「これで終わりだマンドリラー!!スパイラルチャージショット!!」

現時点の最大出力のスパイラルチャージショットを放ち、マンドリラーの動力炉をぶち抜いた。

動力炉をぶち抜かれたマンドリラーはうつ伏せに倒れて、機能を停止させた。

「……何とか倒せたか…」

エックスはマンドリラーのDNAデータを回収すると簡易転送装置でハンターベースへ帰還する。 

 

第13話:Subterranean Base

ルインが次に選んだのはオクトパルドのいる海であり、オクトパルドが占拠した時点で水中戦を想定してはいたが、この動きの悪さは予想以上だ。

動きが地上と比べて緩慢になり、何時もの迅速な動きが行えない。

HXアーマーも水中では自慢の機動力も役立たずになってしまい、FXアーマーも炎を使えず、PXアーマーは電磁迷彩を使えない。

故にもしエックスからプログラムチップを受け取らなければ、ルインの基本のアーマーであるZXアーマーで戦わなければならなくなるところであった。

現在のルインのアーマーは青を基調としたヘッドパーツに二基のウォータージェットとハルバードを装備したアーマーで水中戦に特化したLXアーマーに換装して挑んでいた。

「それ!!」

ルインのハルバードを振るいマンボウ型メカニロイドを両断する。

ハルバードは使い慣れたセイバーと比べれば使い勝手はあまりいいとは言えないが、これから慣れればいいかと考えて奥へと進む。

この先にいるオクトパルドを倒すために。

深海の武装将軍 ランチャー・オクトパルド

元第6艦隊所属で銃火器で全身を武装し、狙った獲物は決して逃さず、常に“手数の多さ”でイレギュラー達を圧倒していた。

作戦や戦闘に美しさを求め、美しく戦う事に至上の喜びを感じ、自らを“水中戦闘のアーティスト”と自称し、長らく周囲に理解されてこなかったが、シグマにその美意識を認められた事から、反乱に加わる事となる。

そして蜂起後は海上都市を襲って海路を遮断している。

「うー、数が多過ぎるよ…エイリア、何とか出来ないかな?このままだとオクトパルドの所に辿り着く前にエネルギー切れを起こしそうだよ。ハッキングでメカニロイドをどうにか出来ないかな?」

地上ならまだしも、慣れない水中では疲労が溜まりやすいためにルインはエイリアにハッキングでメカニロイドを停止させられないかを尋ねた。

『さっきから試みているけど、一筋縄ではいかないわ。時間を頂戴』

通信用モニターの向こうで渋い顔でハッキングを繰り返しているエイリアの姿が映っている。

「(レプリロイド工学のトップのエイリアでも苦戦するなんて…かなり厄介な防壁のようだね)」

やはり反乱軍にハンターベースの優秀な人材がかなり持っていかれたのだろう。

ルインは思わず溜め息を吐いたが、このままじっとしていても何にもならないのでハルバードを構えて突撃した。

しばらくしてようやくメカニロイドが停止した。

「止まった…と言うことはやったんだねエイリア?」

『ええ、状況の報告をお願いルイン』

「うん、視認出来る範囲のメカニロイドは全て停止してるよ。流石だねエイリア」

『了解。それじゃあルイン、先に進んで頂戴』

「分かったよ、軍事施設までの最短ルートをお願い…それからあまり気を張らないでね?多少のミスなら何とか出来るから」

ルインの言葉にどこか固かったエイリアの雰囲気が少しだけ和らいだ気がした。

『ありがとう…軍事施設までの最短ルートは海底都市を駆け抜ける形となるけど、そのルートで構わない?』

「勿論、1分1秒が惜しいからね」

そう言うとジェットを噴かしてルインは海底都市を駆け抜けて軍事施設に向かうのだが、そこで予想外の物を見ることになった。

「何これ?」

海底都市を抜けたルインが見たのは、軍事施設とは程遠い色鮮やかな建造物である。

いや、確かに外観と言うか造形は以前の軍事施設のままなのだが、別物に見えてしまうくらいに塗装が全面的に施されており、例えるなら美術館のようだ。

「オクトパルドらしいと言えばそれまでなんだけど…トラップは無さそうだし…オクトパルドがいそうな場所まで進むしかないかなあ…」

あまり気は進まないが、駆け足で施設内部を進んでいくと1分も経たない内に兎のレリーフが彫られた1枚の扉が見えた。

LUST(色欲)と書かれた扉にルインは首を傾げた。

「何これ?」

『LUST…“色欲”ね。多分だけどキリスト教の西方教会、主にカトリック教会において用いられる七つの大罪と言う人間の罪を分類した物ね。』

「七つの大罪?」

『色欲、暴食、強欲、憤怒、傲慢、嫉妬、怠惰の7つが人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことを指す物よ。この国では七つの罪源とも言われているわね』

「へえ、流石だねエイリア。物知り…と言うことはここは色欲をイメージした部屋なわけだね…あまり気乗りはしないけれど」

ルインはハルバードを握り締めながら色欲の扉を開いて部屋の中を覗くと顔を顰める。

「何これ…?」

『…確かにこれは色欲の名に相応しいわね……』

女性であるルインとエイリアは色欲の部屋の内装に思わず顔を顰めた。

そこは文字通り人間の欲望が凝縮されたような部屋で一本道な通路は様々なピンク色をあしらった塗装が施されており、その目に痛い色だけでも眩暈を起こしそうになるのだが、それ以上に際立つのがルインとエイリアと同じくらいの年齢に設定された女性型レプリロイドのボディである。

数百体に及ぶ女性型レプリロイドは、まるでショーをさせられてるかのような色気のあるポーズで通路を挟むように飾られている。

「ここに飾られてるボディは拐われてきたものなのか、自我をインストールされる前のニュートラルなボディか、それともハリボテかは分からないけど…同性としてあまりいい気分はしないなあ…まあ、オクトパルドらしい感性と言えばそれまでなんだけどね…」

この飾られてるボディを調べるのは調査隊に任せてルインは先に進み、今度はGLUTTONY(暴食)の部屋の扉である。

部屋の中を見るとルインはその中身に目を見開いてしまう。

「エネルゲン水晶の海底鉱脈…成る程、確かにこれを主なエネルギー源にしている私達からすれば“暴食”に相応しいね」

周囲一帯が埋め尽くされる程のエネルゲン水晶。

一平方メートルでの埋蔵量で言えば現時点で発覚している山岳地帯の水晶鉱山よりも遥かに高密度だ。

『もしかしたら反乱軍はここをエネルギー補給の要にしているのかもしれないわね。あなたがここを奪取したらケイン博士に頼んで運び出してもらった方が良さそうだわ。これだけの量なら逆にイレギュラーハンターの重要な補給路になるもの』

「うん、でもこの部屋も結局罠はないんだね」

次の部屋はGREED(強欲)だった。

「うわあ、これは凄いね。銀行の金庫みたい。“強欲”らしさが出てるねこれは」

強欲の部屋はまるで銀行の金庫のように大量の金塊が積み上げられており、部屋も床も天井も全てが金だった。

レプリロイドであるルインも思わず足を止めてしまうくらいなのだから、人間なら欲望を刺激されて全く動かなくなるに違いない。

「まあ、ここにも罠は無さそうだし…先を急ごう」

次の部屋はWRATH(憤怒)の部屋であり、その部屋の中身にルインとエイリアは息を飲む。

そこは正に怒れるレプリロイド達の部屋であり、壁一面に並べられたのはどんな殺され方をしたのか分からない程に歪み、怒り、叫びを上げた鬼面のような表情をしたレプリロイドの生首である。

これは正に“憤怒”の名に相応しい部屋だ。

思わずルインは生首にゆっくりと手を伸ばして、軽く小突くと生首から乾いた空洞音が響いた。

「良かった…」

ハリボテだと分かったことでルインは思わず呟いてしまった。

『でも悪趣味であることには変わらないわ…ルイン、急いでそこから出て貰える?あまり見たくないわ』

「同意見だよ…次は…」

憤怒の部屋を後にすると今度はPRIDE(傲慢)の部屋であり、部屋の中身にルインは表情を今までとは違う意味で顰めた。

「うわあ、これは別の意味で凄まじいね…」

『辺り一面にランチャー・オクトパルドの自画像や彫刻、銅像があるわね』

この部屋にはオクトパルドの写し鏡ばかりで、これだけ集められるなら確かに“傲慢”に相応しい部屋だ。

「早く出ようか、絵や彫刻とは言え大量のオクトパルドに囲まれてると落ち着かないし」

傲慢の部屋を出ると残る大罪の部屋はENVY(嫉妬)とSLOTH(怠惰)のみだ。

“嫉妬”の部屋に入るとやたら高価そうな装備で身を固めたレプリロイドが悔しそうな表情を浮かばせている一般レプリロイドを足蹴にしている部屋であり、元人間であるルインは何となく理解出来る。

恐らく傲慢な上流階級の人間が下層階級等の人間を見下すようなイメージをして作られた部屋なのだろう。

現実でも有り得る光景の為にあまりいい気分はしないが、一応このレプリロイド達を小突くと憤怒の部屋と同様にハリボテのようだ。

これだと色欲の部屋にあった女性型レプリロイドのボディもハリボテの可能性が高い。

嫉妬の部屋を後にして最後の“怠惰”の部屋に入ると、今までとは違う部屋に出た。

他の部屋よりも遥かに広く、ルインが部屋に入るのと同時に扉がロックされてしまう。

そして部屋が水で満たされるのと同時にウツボ型のメカニロイドが床から飛び出してくる。

「怠惰ってそう言う意味!?」

怠惰の部屋がどうやら戦いの場らしい。

この部屋で言う怠惰とは死によって全く動かなくなることを意味してるようだ。

ルインはジェットを噴かしてメカニロイドの背に乗ると頭部を斬り裂いた。

このLXアーマーは水中ではかなりの性能を誇り、地上でもZXアーマーと殆ど同じ機動力を誇るために水陸両用のアーマーなのだろう。

そしてハルバードにエネルギーを最大までチャージして、それを一気に振るう。

「フリージングドラゴン!!」

ハルバードを勢いよく振るうと氷の龍が放たれた。

龍はメカニロイドに向けて牙を剥き、ボディを凍らせていくが、倒すには至らない。

流石にあのメカニロイドは他に比べてそうが硬いが、ハルバードを動きが鈍ったメカニロイドの口に突っ込むと、内部を凍結させる。

極低温の冷気がメカニロイドの内部を破壊したのだ。

「弾けろ」

彼女の言葉に反応するかのようにメカニロイドは粉々になり、凍結したメカニロイドの破片が部屋の照明の明かりに反射して美しい光景を生み出した。

「素晴らしい…」

奥から聞こえてきた聞き覚えのある声は彼で間違いないだろう。

「オクトパルド…」

「そうです。お久しぶりですねルインさん。相変わらずお美しい…いえ、寧ろ美しさに磨きがかかられましたね」

紳士のような態度をする相変わらずのオクトパルドにルインは苦笑した。

「うん。久しぶりだねオクトパルド。君はこんなことはしないんじゃないかと思ったんだけど…」

「私は水中戦闘のアーティストでもあります。ルインさん。だが長らくそれはルインさんと彼…クラーケン以外誰にも理解されなかった」

「シグマがそれを認めたのオクトパルド?クラーケンは君のことを心配していたのに……」

「彼のことは申し訳ないとは思いますが、我々が認められる世界を創るのに、この戦いは非常に意味があります!!」

「そう…残念だよ。君という友人を失うなんてさ」

ハルバードを握り締め、ルインは頭部のジェットで加速し、一気に肉薄するとオクトパルドに向けて振るう。

「甘いですよルインさん!!」

全力のハルバードの一撃をオクトパルドはいとも容易く回避した。

「(やっぱり速い!!)」

オクトパルド自身と触手に装備された推進剤によって水中限定ではあるが、他の追随を許さない機動力を誇る。

「元が地上用レプリロイドとは思えないくらいに素晴らしい機動力です。どうやらあなたのアーマーを切り替えると言う能力の噂は嘘ではなかったようですね」

「何?疑ってたわけ?」

「私は自分自身の目で見ないと納得出来ない主義なので…さあ、ワルツを始めましょう!!」

オクトパルドはそう叫ぶとルインに向けてホーミング性能を持った魚雷を放つ。

「くっ…」

ハルバードを回転させて氷の盾を作り、それを防いだが、しかし立て続けに発射されるオクトパルドの魚雷がルインの氷の盾を破壊する。

「美しい…」

部屋の照明の光を氷の破片が反射することで煌めく水中をうっとりと見つめるオクトパルド。

「この…!!」

戦闘中にも関わらず、余所見をする余裕があるオクトパルドにルインは悔しそうにする。

「さて、行きますよ!!」

凄まじい速度で移動しながらミサイル、魚雷を放つオクトパルドに対してルインはハルバードをチャージする。

「フリージングドラゴン!!」

再び氷龍を召喚し、オクトパルドのミサイルと魚雷を迎撃させると氷龍をオクトパルドに向かわせる。

「甘いですよ」

オクトパルドは機動力にものを言わせ、氷龍から一気に離れると魚雷で破壊する。

「なっ!?」

「お次はこれです!!エクセレントッ!!」

オクトパルドは体を高速回転させ、自身の周囲に竜巻を発生させる。

「…っ!?」

竜巻に引き寄せられるように引っ張られるルインはジェットを最大出力で噴かすことで逃れようとする。

そして竜巻が消えた頃にはオクトパルドの姿は何処にもなかった。

「っ!?オクトパルドは何処に…」

「こちらですよ」

「何!?」

オクトパルドはルインの真上にいた。

ルインが上を見上げた時には既にオクトパルドの全砲門が向けられていた。

「ほら、ちゃんとついてきて下さい!!」

ルインに向けてミサイルと魚雷が一斉に放たれ、水中で大爆発が発生する。

「さようならルインさん。あなたとのワルツは楽しかったですよ」

残骸となったであろうルインにそう言うと背中を向けた時であった。

「勝手に殺さないでくれる?」

「!?」

背後から聞こえた声に反応し、煙から見える影にオクトパルドはミサイルを放つ。

しかしそれはルインの形に似せた氷の像であり、真横から手裏剣が飛んで来るとオクトパルドの触手は全て斬り落とされた。

「そのアーマーは…!?」

PXアーマーを纏ったルインが紫色の球体状のバリアで守られていた。

「…調査を怠ったねオクトパルド。私が切り替えられるアーマーは1つや2つだけじゃないの」

触手を失い機動力と攻撃力の大半を失ったオクトパルドはルインにとって脅威にはなり得ない。

「(ここまでですか…)」

戦闘の要である触手を全て失った今、ミサイルしか武装が残っていない。

だからと言ってそんなものがルインには通用するわけがないと分かっており、ルインがZXアーマーに換装するとZXバスターをオクトパルドに向ける。

「(すみませんクラーケン…)」

目を閉じ、思い出すのは自身の親友のボルト・クラーケンの姿だった。

彼はこんな自身を見たら何と言うだろうか?

“全くあなたは!!”と怒るだろうか?

それとも悲しむだろうか?

どちらにせよ親友である彼を傷つけるのに変わりはない。

内心で申し訳なく思うも後悔は微塵もない。

自分の心のままに従って戦い、死ねるのだから。

「これで終わりだよ、オクトパルド!!チャージショット!!」

ルインのバスターからチャージショットが放たれ、それを受けたオクトパルドは全身に襲う激痛を感じながら叫ぶ。

「…芸術は…爆発なのです!!」

叫んだ後、自然に笑みが零れた。

その理由はオクトパルド自身も分からないが、しかし至福のままに、この命を散らせるのならそれで構わない。

「(さようならルインさん…またお会いしましょう。今度あの世でお会いする時にはお茶をご用意して待っていますよ)」

もう1人の友人に胸中で囁きながらオクトパルドの意識は途切れた。

「さようならオクトパルド…」

かつての友人に頭を下げながら、ルインは簡易転送装置でハンターベースへと帰還する。 
 

 
後書き
ノベライズ版のオクトパルドは本当に影薄かったな 

 

第14話:Fortress Tower

ゼロはシグマの足取りを追いながら、イレギュラーを排除していたが、ハンターベースから通信が入った。

『ゼロ、聞こえる?こちら、エイリアよ。あなたが近くにいる街のシンボルとなるはずだったタワーにイレギュラー反応があるの。急いでそちらに急行して下さい』

それを聞いたゼロはタワーに侵入すると、タワー内部にはメカニロイドと緑色のレプリロイドがいた。

ゼロはバスターでそれを薙ぎ払いつつ、梯を登ってタワーの最上階を目指していく。

途中の警備システムもかわしながら迅速に奥へと進むと昇降機に辿り着き、それに乗り込むと昇降機はゆっくりとした早さで上がっていく。

「ん…?」

真上から聞こえてきた微かな物音に反応し、上を見上げると真上からメカニロイドが降ってくる。

「なるほど、そう簡単には行かせてもらえないわけか」

ゼロは真上から降ってくるメカニロイドをかわすとバスターで破壊する。

それを数回繰り返すとタワーの最上階付近まで着くと跳躍して移動し、梯を掴んで上に登っていく。

途中で警備メカニロイドが攻撃を仕掛けてくるが難無くバスターで破壊すると頂上の入り口に辿り着いたゼロは壁を蹴り上げる。

砲台メカニロイドを破壊して台座に乗り移る等を繰り返し、最後に梯を登り、扉の前に立つ。

『お疲れ様、調べた結果…ここのボスは元第17精鋭部隊所属のブーメル・クワンガーよ』

ゼロはエイリアからこのタワーを占拠しているボスの名前を聞くと、即座にハンター時代のクワンガーのデータを検索する。

時空の斬鉄鬼 ブーメル・クワンガー

マンドリラーと同じく第17精鋭部隊に所属しており、行動が素早く、人間はおろかレプリロイドでさえ目に見えない速さで動き、イレギュラー達から恐れられていた。

また、頭部の鋏で相手を捕まえ、そのまま天井に投げ上げるなど、細身の体に似合わぬ怪力の持ち主でもある。

『どうやらクワンガーは蜂起後は都市のシンボルになるはずだったタワーを制圧して、侵入者を迎え撃つ要塞に造り変えたようね』

「あのクワンガーもか…まあ、イレギュラーなら倒すまでだ…」

扉を強引にこじ開けると、すらりとした細身のフォルムで人型でありながらも昆虫を窺わせる2本の角が装着された頭部が特徴で、赤を基調としたアーマーには優美な装飾が施されている嘗ての同僚がいた。

「久しぶりだなクワンガー、お前をイレギュラーとして処分する」

「ゼロ…あなたが来ましたか。見た目も変わりましたが、攻撃力、機動力、判断力…戦闘スペックは至って良好…いえ、それどころか向上している……やはりシグマ隊長が仰っていたように、あなたにもエックスとルインと同じように可能性がありそうです」

「可能性だと?どういうことだ?」

「本来なら機械である我々レプリロイドに“成長”という概念はない。レプリロイドは造られた時点で全ての能力が完成している。劇的な変化を得るには最新のパーツを使わねばならない。しかしあなた方3人は違う。エックスは戦いの中で悩みながら…あなた方は激戦を潜り抜ける度に凄いスピードで全てのステータスが上がっていく。」

「それが可能性だと?ふざけたことを…お前もここで倒してやる。シグマと同じように変な妄想に取り憑かれやがって」

腕をバスターに変形させてクワンガーに向ける。

「やれやれ、相変わらず会話が通じませんねあなたとは。まあいいでしょう…ゼロ、今のあなたのスペックを見せてもらいましょうか」

クワンガーが凄まじい勢いで床を蹴ると神速の如き速度でゼロに肉薄する。

「っ!!」

咄嗟にゼロは捻りながら横に回避し距離を取る。

チャージショットを喰らわせようにもまともに受けてくれる相手ではないので通常のショットを連続で放つ。

クワンガーは装甲を極限まで削ぎ落として機動力を追求したレプリロイドなので通常のショットでも当たればそれなりの効果は期待出来る。

「反応速度も以前より上がっている…」

回避行動を取りながら冷静にゼロの戦闘力を分析していくクワンガー。

「どういう改造を行ったのかは知りませんが、見えているんですね、私の動きを…以前のあなたは完全に捉えることが出来なかったというのに。今のあなたは、私を的確に捉えた」

「…………」

「どうやらこれは本気で行かなければならないようですね」

頭部のカッターを放ちながらクワンガーはゼロに接近し、手刀を振るい、ゼロはそれを回避するとエネルギーを収束させた拳で殴り掛かる。

クワンガーはそれを苦もなく避けるも、拳から放たれた凄まじい衝撃波が壁をぶち抜いた。

「チッ…“時空の斬鉄鬼”の異名は伊達ではないということか……」

「あなたこそ、それでこそシグマ隊長に次ぐ実力者と言われた男ですね」

スピードではこちらが上回るが、かつての時から総合的な能力はゼロが上回る。

そして何よりも、かつてのゼロはシグマを追い詰めた程の実力者なのだ。

「さあ、行きましょうか」

クワンガーが一気に跳躍し、ゼロもそれを追うように跳躍して追い掛ける。

「(速い!!)」

強化され、機動力も以前より上がっているはずなのに速度は僅かにクワンガーが上回っている。

クワンガーも自身について来るゼロを油断なく見つめる。

「(やはり以前とは性能が桁違いですね…一体どうやってゼロの強化を…?)」

ゼロはエックス達と同じようにブラックボックスの塊でパーツを造ることもままならない存在なので今の時代にゼロの強化を行える科学者がいるわけがない。

「アースクラッシュ!!」

「っ!!」

再びクワンガーに向けて放たれる衝撃波。

それを受ければ確実に破壊されるのは確実なのでクワンガーは直ぐさまそれを回避する。

「チッ!!」

避けられたことに舌打ちし、ゼロはバスターを構えて再びショットを放つ。

「(考え事をしている暇はありませんね。一気にケリをつけなくては…)」

戦闘力の殆どはゼロが上回っており、今は何とか速さで誤魔化せているがそれは時間の問題だろう。

ゼロに追い掛けられていたクワンガーは距離を取るのを止めると一気にゼロに突進する。

虚を突かれたゼロはまともに突進を受け、バランスを崩し、更にクワンガーはゼロの胴を頭部の角で掴むとゼロを天井に叩きつける。

「ぐっ!!」

天井に叩き付けられたゼロは床に落下し、仰向けに倒れるが、すぐに起き上がる。

「ほう、あれを受けて大してダメージを受けていないとは…」

「………」

クワンガーの称賛に構わず、ゼロは再び拳にエネルギーを収束する。

「無駄撃ちを止めて一撃必殺に賭けようとしているのでしょうが無駄な足掻きですよ」

「無駄な足掻きかどうかは…やってみなければ分からん…!!」

「ふふ…ではこれでどうです?久方ぶりに速度のリミッターを外させてもらいます」

クワンガーが笑みを浮かべてリミッターを解除すると凄まじい速度でゼロに手刀を浴びせる。

しかし強化されたアーマーには僅かなダメージしか受けない。

しかし、クワンガーは目にも止まらない動きでゼロの全身に攻撃を加えていく。

「ぐああああ!!」

「ふははははは!!どうですゼロ?私がこうして絶えずに動き回り、あなたに一撃を与え、離脱を繰り返す。あなたの射程距離内にいるのはほんの一瞬だけ!!いくら強力な攻撃でも当てることが出来なければ意味がありません!!こうしてヒット&アウェイを繰り返しているだけであなたの体力は確実に削られていくのです!!」

「ぐっ…」

「この勝負…私の勝ちです!!」

ゼロの全身に怒涛の凄まじい連撃が浴びせられ、ゼロは床に仰向けに倒れた。

「(な、何て奴だ…速度だけならシグマと互角…いやそれ以上だ…)」

リミッターを解除したクワンガーの動きは今のゼロですら見切れない程であった。

「(しかし、何故これ程の力を持っていながら最初からこれを使わなかった…?余裕か?いや、そんなはずはない…一撃を受けるだけで致命傷になりかねないような奴だぞ…)」

クワンガーは極限まで装甲を減らして機動力に特化したレプリロイドであるために一撃を受けただけでも致命傷になりかねない。

ならば何故今になって速度のリミッターを解除したのだろうか?

「…っ!!」

理由に気づいたゼロはクワンガーに気付かれないように拳にエネルギーを収束する。

「さあ、とどめですよゼロ。後でエックスとルインもあなたの後を追わせてあげましょう!!」

クワンガーが跳躍し、ゼロに向かって突進してきたのを見たゼロは内心でほくそ笑む。

「アースクラッシュ!!」

床に拳を叩きつけると床に亀裂が入り、破片と衝撃波がクワンガーに直撃する。

「ぐああああ!!?」

破片と衝撃波をまともに受け、全身に亀裂が入り、身体から火花が出ている。

「自分の速さを過信し過ぎたなクワンガー。いくらお前でも空中ではまともな回避行動は出来ないだろう…特にそれだけの速さでは尚更な…それに仰向けになれば正面から攻撃するしかない…一種の賭けだったが…俺の勝ちだクワンガー!!」

とどめとしてクワンガーに向けて放たれるチャージショット。

「(やはりそうでしたか…あなたもエックス達と同じ可能性を秘めし者。精々頑張ることですね、紅いイレ…)」

胸中の言葉を言い切る前にチャージショットに飲み込まれるクワンガー。

装甲を極限まで減らしてまで機動力を追求したクワンガーに耐えられるわけがなく消滅した。

「…何とか勝てたか……」

予想以上の強敵を倒したゼロも安堵の息を吐いた。

可能性という言葉に一瞬考えそうになるが所詮はイレギュラーの戯れ言だと思ってタワーを後にした。 

 

第15話:Energy Mine Ruins

オクトパルドをルインが下し、クワンガーをゼロが下したためにエックスは反乱軍の最後の特A級ハンターであるアーマー・アルマージの元へ向かっていた。

鋼鉄の甲弾闘士 アーマー・アルマージ

元第8機甲部隊の隊長であり、鉄壁の防御力を誇る装甲を纏う武人肌の堅物。

イレギュラーハンター部隊の指揮権を全てシグマに掌握された事から彼を上官と判断し、“上官の命令は絶対”として反乱に参加する。

“上官の判断に対する責任は上官にあり、上官の命令について部下が疑念を挟むことは間違っている”と考えており、蜂起後は兵器の原料の採れる鉱山を占拠した。

「ストームトルネード!!」

ダチョウ型メカニロイドに向けてストームトルネードを放ち、周囲のメカニロイドにもストームトルネードを放って破壊する。

「ホーミングトーピード!!」

途中の蝙蝠型メカニロイドを転送されたオクトパルドのDNAデータ会得した誘導ミサイルを発射するホーミングトーピードで撃墜しながら奥へと向かう。

恐らく物資運搬用だったのだろう機械に乗ると、一気に奥へと突き進み、鉱山を出ると崖の向こうに扉が見えたので一気に跳躍して飛び移った。

扉を開けると1体のアルマジロをモデルに作成されたであろう非人間型のレプリロイドがいた。

全身を白銀に輝くアーマーで覆い、両腕には一際大きな盾を備えており、背丈はエックスよりも少し小さい程度だが、その鋭い眼光は見るものを怯ませる凄みがある。

かつての自分にイレギュラーハンターとしての在り方を説いてくれた存在でもあった。

確か自分が第17精鋭部隊に配属されて1年程経った頃だっただろうか?

ゼロが自分の教育係を任されていた時期のことで、ピエロ型レプリロイドのピエロットがイレギュラー化して、サーカスで人間を人質に取った立て籠り事件の時にアルマージに出会った。

偶然非番だったアルマージにゼロが協力を要請したことで共に事件の対応をしたのだ。

『俺が奴の注意を引く。アルマージとエックスは左右から回り込み、無力化を』

『心得た』

『了解。気を付けて、ゼロ』

三手に分かれて人質の奪還と、イレギュラーの無力化を開始し、ピエロットはサーカスホールの丁度中央に陣取っており、その周囲に10人程の劇団員を縛り上げていた。

『おい、イレギュラー。随分と迷惑なショーをやってくれるじゃないか』

ゼロがピエロットの気を引き付けることに成功し、後は自分かアルマージがピエロットを狙撃するだけだったのだが、ピエロットは自分達の想像を超えていた。

『ヒャー!!やrうもんあらyあtmろy』

ピエロットのイレギュラー化は言語中枢にまで及んでいるのか、何を言っているのか理解出来ない。

そしてピエロットは手元にいた人質2人を両脇に抱える形でサーカスホールの中央から走り出す。

『チッ!エックス、そっちに行ったぞ!!』

ピエロットが向かったのは自分が潜んでいる場所の射線上であり、すぐにショットを放てるようにバスターを構える。

『動くな!動くと撃つぞ!!』

後は精密射撃でピエロットを撃ち抜けば終わる…はずだった。

『お前、同じレプリロイドを撃つのか?』

言語中枢がおかしくなっているのにも関わらず、はっきりとした口調で放たれたその言葉に、僅かな迷いが生じてしまった。

その迷いが命取りでピエロットに次の行動に移るための余裕を与えてしまう。

『チッ!エックス、動け!!』

ゼロが駆け寄ろうとするが、間に合わない。

ピエロットは耳障りな機械音を鳴らしながら人質を地面に叩き付けようとする。

固い地面にレプリロイドのパワーで人間を叩き付けようとしたら間違いなく死ぬ。

人質が地面に叩き付けられる直前であった。

『そうだ。貴様がイレギュラーで、我らはイレギュラーハンターだからな』

アルマージがローリングシールドで人質を包むことで守り、額のバスターでピエロットの動力炉を撃ち抜いており、ピエロットは力なく崩れ落ちた。

自分がバスターをゆっくりと下ろした直後にアルマージに殴られた。

『何故、あの時撃たなかった?もしも自分がいなければ、罪のない人間が2人、確実に死んでいたのだぞ。ハンターが躊躇えば、罪なき者達が死ぬ。努々忘れるなエックス』

あの時、アルマージに言われたことは今でも鮮明に覚えている。

「エックス…お前かルイン達が来たら倒すよう命令されている」

そして自分にイレギュラーハンターとしての在り方を説いてくれたアルマージが今、イレギュラーとして目の前にいる。

「狂ったシグマの命令で俺と戦うのか…」

「戦うのは自分の使命だ」

「それはイレギュラーの考えだ。アルマージ!!あなたにその命令を与えたのはイレギュラーであるシグマだ!!」

戦闘型レプリロイドであれば戦うことを使命と考えるのはおかしいことではないが、命令を与える存在がイレギュラーであることに何の疑念も抱かずに従って戦うことはイレギュラーの考えでなければ何と言うのだろう。

「ハンターの指揮権がシグマに掌握された今、我々の上官はシグマだと判断している。そして自分は上官の命令に従うのがイレギュラーだとは思わない。我々はどちらも間違ってはいないということだな…」

エックスの考えに理解を示しながらもシグマへの忠誠のために戦いを選ぶ。

「これ以上は問答無用!!お前が信ずる信念を貫くが良い!!」

「アルマージ!!」

先制してショットを連射するがアルマージの盾によって容易く弾かれる。

「我が特殊合金の盾はいかなる攻撃だろうと弾く。例えそれがゼロのバスターやルインのセイバーでもだ」

「なら、これならどうだ!?ホーミングトーピード!!」

ショットが効かないなら特殊武器を選択し、バスターから誘導ミサイルを放ってアルマージに直撃させる。

アーマーはミサイルの直撃に耐えられたとしても内部に走る衝撃は相当なものだ。

しかし、エックスは悪寒を感じて反射的に体を横にずらして回避するのと同時にアルマージの額のバスターから放たれたショットがエックスの頬に掠る。

「っ…!!」

頬に走る痛みに顔を顰めるが、煙の方を見つめる。

「成る程、以前と比べて確かに強くなっている。流石は他の特A級ハンター達を倒しただけのことはある…今度はこちらから行くぞ!!」

アルマージは丸くなるとエックスに向けて突進攻撃を仕掛けてきた。

突進を回避するエックスだが、アルマージは壁にぶつかると反動によって移動することで縦横無尽に動き回る。

壁や地面、天井にぶつかる度に部屋が揺れてエックスの動きを鈍らせていき、更にアルマージは転がりながら四方にショットを撃って来る。

「ぐっ!!」

動きが鈍っていたエックスはショットの直撃を受けて硬直しまい、それを狙ってアルマージが突進をエックスに喰らわせた。

「ガ…ッ!!」

アルマージの突進をまともに受けたエックスは勢いよく壁に叩きつけられたが、何とか起き上がる。

「我の突進を受けながらまだ生きているとはな…」

内心エックスの防御力に驚きながらも額のバスターをエックスに向ける。

「だが、これで終わりだ。さらばだエックス!!」

バスターにエネルギーが充填され、エックスに向けてショットを放とうとした瞬間に2つの漆黒と橙の影が乱入した。

「グラウンドブレイク!!」

「アースクラッシュ!!」

ナックルバスターと拳が地面に叩きつけられ、火柱と衝撃波が同時にアルマージを襲う。

「ゼロ…ルイン…」

「セーフ、何とか間に合ったね!!」

「どうしたエックス?アルマージに随分と苦戦したようだな。ボロボロじゃないか」

ゼロとルインがエックスに駆け寄って助け起こす。

「君達だって…まさか、オクトパルドとクワンガーを倒した後、すぐにここに来たのか?」

2人の傷だらけのアーマーを見れば、治療を受けていないのは明白で、それなのに助けに来てくれた2人に対して嬉しいと思う反面申し訳なく思う。

「ゼロ…ルイン…まさかお前達まで来るとはな」

グラウンドブレイクとアースクラッシュを同時に受けたにも関わらずアーマーが少々焦げている程度のアルマージが煙から出て来た。

「相変わらず出鱈目なアーマーだな…それにしてもお前のような堅物までシグマに従うとはな」

ゼロの最強の技であるアースクラッシュとパワー重視のアーマーであるFXアーマーの最大の技だというのにも関わらずアーマーに焦げ目がついた程度だ。

「ゼロ、ルイン。お前達も倒すように命令されている」

「それはシグマの命令?」

「無論」

「そう…なら言葉はいらないね!!メガトンクラッシュ!!」

メガトンクラッシュをアルマージに叩き込もうとするが、アルマージの盾に阻まれる。

「温いぞ!!」

「くっ!!」

攻撃後の隙を突いたアルマージの額のバスターのショットを受けたルインは仰け反る。

「離れろルイン!!」

牽制のためにショットを連射するゼロだが、それはアルマージからすれば無意味である。

「その程度…」

アルマージの全身を球状のバリアが包み込み、ゼロの放ったショットを防ぐ。

「!?」

「喰らえ!!」

次の瞬間にはバリアのエネルギーが解放され、ゼロは吹き飛ばされる。

「ゼロ!!」

「ぬうぅん!!」

ゼロに気を取られたエックスに突進を浴びせるアルマージ。

「エディットバスター!!」

ダメージから立ち直ったルインはショットを連続で放つが、アルマージのアーマーには傷1つ付かない。

「…っ!!」

理不尽なまでの防御力に歯噛みしてしまうルイン。

「チッ!爆裂炎!!」

拳を地面に叩きつけ、火柱を発生させる。

この技は威力こそはアースクラッシュに劣るが、相手の足止めには絶大な効果を発揮する。

その隙にゼロはエックスとルインの元に駆け寄ると耳打ちする。

「エックス、ルイン…“あれ”をやるぞ」

「あれを…!?」

「で、でもあいつにあれが通じるの!?アースクラッシュやグラウンドブレイクが同時に当たってもびくともしないのに!!」

「分からん…しかしこれが通用しなければ俺達に勝ち目はない。それに俺とエックスのバスターも強化されているんだ…以前以上の威力を見込める。一か八かの賭けだ」

「…分かった。」

「やろう」

ゼロの言葉にエックスとルインも同意し、アルマージの方角を見遣る。

「エックス、ルイン。構えろ!!」

「うん!!」

「行くぞ!!」

ゼロとエックスがバスターを構え、ルインがZXアーマーに換装するとバスターを構える。

火柱が消えるのと同時にアルマージが突っ込んで来た。

「エネルギー、フルチャージ!!」

「行くぞエックス!!ルイン!!」

「ああ…!!」

「「「クロスチャージショット!!!!」」」

3人のバスターから放たれたチャージショットが1つとなり、想像絶する破壊力を誇る一撃となってアルマージに向かう。

「っ!!」

その凄まじい熱量に戦慄したアルマージはバリアを張り、防御体勢に入る。

「ぬぐぐぐぐぐぐぐ…」

クロスチャージショットはバリアを打ち破り、そのままアルマージに直撃した。

「やった!!」

喜色を浮かべるルインだが、アルマージは即座に立ち上がってきた。

「そんな!?クロスチャージショットでもアルマージには通じないのか!!?」

「いや流石のアルマージもダメージは受けている。だが、流石にもうあれを喰らってはくれないだろう…」

「どうすればいいの…?」

「奴のアーマーさえ何とか出来れば…」

アルマージの異常とも言える防御力は全身に纏っているアーマーの恩恵があるからで、アーマーさえ破壊出来れば、アルマージの戦闘力は大幅に減少する。

「アーマー…いくら異常な強度のアーマーでも金属であることには変わらない…なら…ゼロ!!」

「?」

「もう一度あの火柱を出す技を!!」

「何?あれはアルマージには通用しないぞ」

「私に考えがあるの!!お願い!!」

ルインらアーマーをLXアーマーに換装するとハルバードをチャージする。

「爆裂炎っ!!」

拳を地面に叩きつけ、火柱を発生させるとアルマージを飲み込む。

アルマージはアーマーが熱されていくのを感じたが戦闘に支障が出る程ではないと判断し、火柱が消えた瞬間再び突進を繰り出そうとしたが。

「フリージングドラゴン!!」

氷龍がアルマージに喰らいつく。

アルマージはアーマーの防御力なら耐えられると判断したのか防御体勢に入っていたが、氷龍がアルマージに喰らいついた瞬間にアルマージのアーマーが砕けた。

「何!?」

「いくらあなたのアーマーが頑丈な特殊合金でも金属であることには変わらない!熱されたアーマーを極低温で冷やした事で脆くしたんだ!!」

「今だエックス!!撃て!!」

「スパイラルチャージショットッ!!!!」

自慢のアーマーを失い無防備となったアルマージに最大出力のスパイラルチャージショットを放つ。

全身がスパイラルチャージショットに飲まれ、苦悶の表情を浮かべながらもアルマージは嬉しさを覚えた。

思考回路が暴走し、視界にノイズが走る。

「いい…戦いだった」

満足感に満ちた呟きにエックス達は悲しげにアルマージの残骸を見つめる。

「…悔しいね…ゼロ、エックス。これ程の人でさえ…敵として戦わなきゃならなかったなんて…」

力なく座り込み、ポツリと呟くのはルインであったが、その想いはエックスもゼロもまた同じだろう。

「逆だ。これ程の奴だからこそだ。一度意見を違えれば最早決して相容れることは出来ない。本物の戦士であれば尚更だ。…とにかく俺達は漸くここまできた。これで残るはシグマだけだが…」

正直今のままでシグマに挑むのは余りに無謀過ぎる。

エックスもゼロもルインも満身創痍で、とてもじゃないが史上最強のイレギュラーハンターとまで呼ばれたあのシグマと戦うだけの力は残っていない。

「今は一度ハンターベースに引き上げるべきだな」

「そうだな…」

バーニン・ナウマンダー

アイシー・ペンギーゴ

ストーム・イーグリード

スティング・カメリーオ

スパーク・マンドリラー

ランチャー・オクトパルド

ブーメル・クワンガー

アーマー・アルマージ

シグマについた特A級ハンター達を全て倒した今、シグマが何らかの動きを見せるはずだ。

そしてアルマージのDNAデータを回収すると、鉱山を後にしようとした時にハンターベースからの通信が入ってきた。

『みんな、聞こえる?こちらエイリアよ。シグマのアジトを発見しました。“エックス、ルイン、ゼロはハンターベースに戻り次第指定された座標へ赴き、可能ならば、これを殲滅せよ”とのことです』

エイリアから伝えられた上層部からの命令にエックス達は表情を引き締めると鉱山を後にした。 

 

第16話:HADOUKEN

 
前書き
オリジナルとイレハンのバランスブレイカーと言えばこれ、イレハンのハイパーゼロブラスターも大概だったけれど。 

 
アルマージを倒したエックス達はシグマとの決戦に備えてメンテナンスとエネルギーの補給のためにハンターベースへ戻ろうとした時だった。

機械の駆動音が聞こえ、そこへ向かうとエックス達を強化してくれた老人のカプセルがあった。

「あれは…」

「あのお爺さんのカプセルだよね?」

「何故これがここにあるんだ?」

エックス達が疑問符を浮かべるが、今までの経験から触れても大丈夫だろうと触れるとカプセルが起動し白衣の老人ではなく…道着を着込んだ老人であった。

「えっと…………」

「(何だこれは…?)」

「(何これコスプレ?と言うか凄く鍛えてるんだね…このお爺さん)」

老人の格好にどう反応すればいいのか分からずエックス達は無言で老人を見つめる。

『ふふふ、どうじゃエックス、ゼロ、ルイン!この鍛え抜かれた身体は!!後ろに見ゆる大瀑布で鍛えに鍛え抜いたのじゃ!!ばくふと言うても“江戸幕府”のことではないぞ!!』

「え?そうなの?私はてっきり江戸幕府かと…」

「他にもあるだろう、室町幕府や鎌倉幕府とかな」

「ゼロ…何で君はそんなどうでもいいことを知ってるんだい……?」

意外な知識を披露したゼロにエックスは思わずツッコミを入れた。

というか今までの白衣の老人に対して抱いていた儚いイメージが一気に崩れた。

『……とまあ、冗談はこれくらいにしておいて………このカプセルに入れば、厳しい修業によって一部の人間だけが習得出来た必殺技を放てるようになる。残念ながらこの技を教えられるのはエックスのみ。人に近い心を持つお前なら、きっと使いこなせるはずじゃ…エックス…宇宙を…パワーを…波動を…感じるんじゃ!!はああああ…波動拳!!』

老人はそう言うと自らの波動で大地を揺らした後、今までのように消えた。

「(これ本当にホログラムなの?)」

あまりにもホログラムらしからぬ演出を見せる老人にルインは引き攣り笑いを浮かべるしかなかった。

エックスは少し戸惑いながらカプセルに入ると光に包まれ、光が消えた後、エックスは自身の身体を見つめる。

「どうエックス?どこか変わったかな?」

「どうって言われても…」

アーマーにも変化はないし、特別な力が宿ったような感じもしないためにエックスも困った表情を浮かべる。

「先程の彼がやっていた構えをやってみたらどうだ?」

「あ、ああ…」

ゼロの提案に頷き、老人がやっていた構えを再現してみる。

「…波動拳!!」

エックスの掌から波動が放たれ、それは山にぶつかって跡形もなく山を吹き飛ばした。

跡形もなくすっきりと。

「「「……………」」」

波動拳のあまりの破壊力に呆然となる一同。

「こ、これは封印だね…」

「あ、ああ、そうだな」

「そうだな。それがいい…」

折角教えてくれた老人には申し訳ないが、こんな技を無闇に放ったら自分が世界を滅ぼしかねない。

こうして凄まじい破壊力から波動拳は永久に封印されるのであった。 

 

第17話:Sigma Palace

シグマパレスと呼ばれるシグマのアジト付近に来ていたエックス達は崖の上からシグマパレスの様子を伺う。

「あのメカニロイド暴走事件からとうとうここまで来たね。エックス、ゼロ…長かったよ」

シグマのイレギュラー化から、そんなに経っていないはずなのに随分長い時間が過ぎた気がする。

「ああ、シグマを倒して平和を取り戻さなければ」

「焦る気持ちは分かるが落ち着けエックス。思っていたよりも守りが固そうだ。よし…エックス、ルイン。敵を分散させよう。それぞれ別ルートで侵入だ」

「分かった。後で合流しよう」

「行こう!!シグマの居城に殴り込みだよ!!」

「ああっ!!」

ルインの言葉に頷き、疾走するエックス。

シグマに最後の戦いを挑むべく、シグマパレスの最深部に向けてエックスはゼロとルインと共に平和を取り戻すための第1歩を踏み締めた。

エックスは左のルートから侵入し、ゼロは真ん中、ルインは右のルートから侵入する。

「(いよいよ最後の戦い…この城の奥にシグマとVAVAがいるだよね…)」

そう思えば嫌でも気が引き締まるのを感じる。

シグマもVAVAも人類に反旗を翻した元特A級ハンターのイレギュラーの中でも最強クラスの実力者だ。

敵の執拗な攻撃を掻い潜りながらルインはシグマパレスの内部に潜入を果たしていたが、途中でメカニロイドや元ハンターであったレプリロイドの妨害を受ける。

「イレギュラーハンターのルインだ!!特A級のルインが現れたぞ!!」

「取り囲め!!絶対に逃がすんじゃない!!いくら相手が特A級だろうと数はこちらが上だ!!怯むな!!」

朱いアーマーを纏うルインはとにかく目立つ。

そんな彼女の出現にシグマパレス内部を警備していたレプリロイドやメカニロイドは一斉に群がり、ルインが移動する方向に次々と姿を現していた。

「数だけ多くいたって無駄だよ!!」

ZXアーマーからHXアーマーに換装し、ダブルセイバーをチャージする。

「プラズマサイクロン!!」

セイバーを交互に勢いよく振るうと電磁竜巻が2つ発生し、多くのレプリロイドとメカニロイドを巻き込んで切り刻んでいく。

「何をしている!相手はたったの1人だ!!利点である数を活かせ!!これだけの数が相手では例えルインでも為す術などない!!かかれえ!!」

「為す術がない?それはどうかな?フリージングドラゴン!!」

次はLXアーマーに換装したルインがハルバードをチャージして氷龍を召喚し、繰り出す。

極低温の氷龍に触れたレプリロイドとメカニロイド達は瞬く間に凍結していき、間もなく砕け散った。

「な、何て強さだ!!奴は化け物か!!?」

イレギュラーハンター最強部隊とされる第17精鋭部隊に配属され、ハンター試験ではゼロに次ぐ成績を叩き出し、それに恥じぬ圧倒的な戦闘力を誇る特A級ハンター・ルイン。

アーマーを換装することによりあらゆる局面に対応出来るようになったことでその強さには更に磨きがかかっている。

「ほらほらどうしたの!?シグマの居城の防衛隊の力はこの程度なの!?それから一度に襲い掛かるなら最低10人くらいにした方がいいんじゃないかな!?」

ハルバードを巧みに扱いながら、メカニロイドを斬り捨てるルインに指揮官のレプリロイドが更に指示を飛ばす。 

「ライドアーマー部隊出撃!!侵入者を破壊せよ!!」

即座に姿を現す数十体にも及ぶライドアーマーの大軍がルインを取り囲む。

「これまでだルイン。これだけの数のライドアーマーが相手ではいくら特A級ハンターでも打つ手はあるまい」

嘲笑うように言う指揮官レプリロイドにルインは呆れたように言う。

「今更ライドアーマーなんか出されてもね。これよりもずっと強力なのと戦ったことがあるよ…メガトンクラッシュ!!」

FXアーマーに換装するのと同時にナックルバスターをチャージし、パンチと火炎弾を叩き込んで吹き飛ばす。

「ダブルグラウンドブレイク!!」

次にチャージした二丁のナックルバスターで地面を殴り、2つの火柱が複数のライドアーマーを飲み込んで粉砕していく。

更にPXアーマーに換装して天井に張り付くと無防備な操縦者に向けてクナイを放ち、頭部をクナイで貫かれたライドアーマー部隊は機能停止する。

そして機能停止した操縦者を放り出してライドアーマーに乗り込むと、防衛レプリロイドにライドアーマーのパンチを喰らわせた。

「あ、悪魔かあいつは!?」

数をものともせずにこちらを蹂躙していくルインの姿に戦慄が走る。

「ま、まるで歯が立たん!!つ、強すぎる!!」

「こ、こうなったら一斉攻撃に賭けるしか…!!」

「ハッ…止めとけ、無駄なことはな…」

「何!?今言った奴は誰だ!?」

防衛隊の指揮官レプリロイドが振り返った瞬間に誰もいない場所から凄まじい火力が防衛隊を襲い、瞬く間に殲滅する。

「…カメリーオの電磁迷彩を使っているようだけど場所は分かっているよVAVA」

「そのアーマーのスコープ能力か…便利な物だな。まあいい。エックスもシグマもルイン達も…全員俺の獲物だ。誰にも渡さん!!」

電磁迷彩を解除すると肩部、腕部、脚部の兵装を展開しながらルインを見遣るVAVA。

「VAVA…」

「とうとうここまで来たかルイン…俺はこの日を待っていた。シグマの掌の上で踊らされている屈辱に耐えながら力を蓄え、お前達とシグマを倒せるこの日をな」

「…そう、楽しみにしていたところで悪いけど、ここは通してもらうよ」

「ここから先に行きたいのなら俺を倒してみるんだな」

「勿論、そうさせてもらうよ!!」

ルインはZXアーマーに換装するのと同時にチャージを終えたZXバスターを構えてチャージショットを放つ。

「ナーバスゴースト!!」

ルインのチャージショットとVAVAのナーバスゴーストがぶつかり合い、初撃は相殺される。

「ドラゴンズワース!!」

弓なりにカーブする特殊な軌道のロングレンジバーナーをルインは何とかかわし、セイバーに切り替えてチャージセイバーを繰り出そうとするが、VAVAはルインの腕を左手で掴む。

そして右の拳をルインに向けた。

「スポイルドブラット!!」

攻撃力はロケットパンチ系の兵装の中で最弱だが連射が利き、威力を手数で補えるロケットパンチを至近距離でルインに連続で喰らわせる。

「あぐっ!!ガハッ!!」

腕を掴まれているために逃れることも出来ないルインはVAVAのロケットパンチのエネルギーが尽きるまで喰らい続ける。

「おらよ!!」

そして勢い良くルインを投げ飛ばし、キャノン砲をルインに向けた。

「ロングショットギズモ!!」

キャノン砲から一度に5発のキャノンを連射し、それらを全てルインに直撃させる。

「う…っ」

セイバーを杖代わりにして立ち上がるルインにVAVAは笑みを浮かべる。

「ククク…そうだ、それでいい。始まってすぐ終わりじゃあつまんねえもんなあ!!ピースアウトローラー!!」

「っ!!」

地面に着弾後、2発に分裂して直進する電撃のエネルギー弾を放つ。

それはかなりの速度で動けないルインに向かっていき、彼女に直撃した。

「何だ…もう終わりか?お前が大して成長していなかったのか…それとも俺が強くなりすぎたのか…」

拍子抜けしたような感じのVAVAだが、爆煙から聞こえてきた声に身構えた。

「まだ終わらないよVAVA…」

ルインはエックスから預かったサブタンクでエネルギーを回復させると換装したLXアーマーのハルバードを向ける。

「何?あれを受けて大してダメージを受けていないだと?」

「私の各属性のアーマーにはある属性に対して高い耐性を持ってるんだ…さっきの電撃ならLXアーマーで耐えられる。」

「…なるほど…そうこなくちゃ面白くない……」

自身の攻撃を耐えられたにも関わらず、VAVAは笑みを浮かべる。

「行くよ!!」

ハルバードを構えてVAVAに斬り掛かるが、それをVAVAは跳躍することで回避し、至近距離専用のバーナーであるグリーンアイドランプを放つ。

即座にルインは耐炎性能を持つHXアーマーに換装してバーナーを耐える。

「プラズマビット!!」

チャージしたダブルセイバーを振るって電撃弾を放つがVAVAはバンピティブームで相殺する。

「ディスタンスニードラー!!」

腕部のバルカンから氷属性の弾を撃ち出すが、ルインも耐氷性能を持つFXアーマーに換装することで対応する。

「メガトンクラッシュ!!」

ディスタンスニードラーに耐えるとチャージしたナックルバスターによるパンチと火炎弾を喰らわせる。

「ぐっ!!」

フローズンキャッスルの氷の膜で火炎弾の熱とパンチの衝撃をいくらか軽減出来たとしてもまともに受けたVAVAは膝をつく。

「喰らえ!エディットバスター!!」

ルインはナックルバスターのショットを連射し、VAVAに何発も喰らわせていく。

爆煙がVAVAを包み込むが、そんな簡単に終わるはずがない。

「ファットボーイ!!」

キャノン砲からキャノン系単発の中で最強の攻撃力を誇るキャノンを放ってルインに直撃させる。

「ぐっ…メガトンクラッシュをまともに受けてまだ動けるなんて……」

流石VAVAだと胸中で敵を称賛するルイン。

「けどこれで終わりだよ!!」

ZXアーマーに換装したルインがチャージを終えたセイバーを構えて突っ込む。

「ふん、甘いな…」

脚部の兵装から放たれる青いバーナー。

「またバーナーか!!」

即座にHXアーマーに換装して防御体勢に入るが…。

「う…ああああああ!?」

全身を襲う熱ではなく極低温の冷気であった。

「シードラゴンズレイジ…極低温の冷気を放つバーナーだ。そのアーマーに耐性のない氷属性の兵装だ。流石に効くだろう?」

「ぐっ、この!!」

即座にFXアーマーに換装することで何とか耐え抜いてナックルバスターをチャージをする。

「バックショットダンス!!」

ばら撒くタイプのバルカンを放ち、メガトンクラッシュの射程範囲に入らないようにルインと距離を取る。

「フリージングドラゴン!!」

メガトンクラッシュを当てられないと判断したルインはLXアーマーに換装してハルバードのチャージを終えると氷龍を召喚する。

「グリーンアイドランプ !!」

至近距離専用のバーナーで氷龍を一瞬で蒸発させ、ルインに向けてロケットパンチを放つ。

間一髪それをかわすが、パンチはルインを追うように動き、ルインの側頭部に直撃する。

「あぐっ!?」

「インフィニティーギグの性能を忘れてもらっては困るな」

「負けられ…ない…!!私は…負けない!!」

ZXアーマーに換装してセイバーで斬り掛かる。

刺し違えてでもこいつを倒すというその意志を持ってVAVAに斬り掛かるが、VAVAは余裕の笑みを持って構える。

「バーニングドライブ!!」

自分の周りの酸素を消費して周囲を強大な炎で包み込み、殆んど特攻に近い状態だったルインはそれに飲まれてしまう。

「ーーーーーーーッ!!!!」

まともに受けたルインは声にならない悲鳴を上げると意識が一瞬飛んだ。

「ゴールデンライト!!」

その隙を逃さず至近距離専用のロケットパンチをルインに向けて放った。

「あ…ぐっ…!!」

それは無防備なルインの腹部を穿ち、風穴を空けた。

「ネクロバースト!!」

とどめとばかりに広範囲に電撃波を放つVAVAのレーザー系最強の兵装・ネクロバーストが炸裂する。

直撃を受けたルインの視界がブラックアウトする。

その頃、別ルートでシグマパレスの防衛隊の相手をしていたゼロは奥からした凄まじい轟音に目を見開き、嫌な胸騒ぎを感じて駆け抜ける。

「ルイン!!」

辿り着いた先には腹部に風穴が空き、アーマーには凄まじい裂傷が入って体から火花が出ているルインの姿と、それを嘲笑うような笑みを浮かべてゼロを見つめているVAVAの姿があった。

「ほう、ゼロ。雑魚相手に随分と遅かったじゃねえか?ルインは俺と遊び疲れておねんねしちまったぜ?」

「貴様、よくも!!」

ルインがやられたことに怒りを覚えるゼロはチャージを終えたバスターをVAVAに向ける。

「そうだな、お前は自慢の愛機であるこいつで遊んでやるよ」

VAVAがパチンと指を鳴らすと天井から漆黒のライドアーマーが降ってくる。

「ライドアーマーだと!?今更こんなガラクタが通用するか!!」

ゼロがライドアーマーに乗ったVAVAごと破壊せんとばかりにチャージショットを放つ。

しかしライドアーマーのマニュピレーターがゼロのフルチャージショットを弾く。

ゼロ「何だと!?」

「無駄だ!!このライドアーマーにはビームコーディングが施されている!!例えお前のチャージショットだろうと通用しない!!」

「なら直接攻撃で破壊するまでだ!!アースクラッシュ!!」

エネルギーを収束させた拳をライドアーマーに叩きつけようとするが、VAVAはそれに対して余裕の笑みを浮かべる。

「甘いな」

「なっ!?」

突き出されたゼロの拳をライドアーマーとは思えない速度で軽やかにかわすVAVA。

「忘れたかゼロ?ライドアーマーを初めて実戦で使ったのは誰だと思ってやがる?他でもないこの俺だ!!」

VAVAは易々とゼロの背後を取ると、ライドアーマーのパンチでゼロを吹き飛ばした。

通常のライドアーマーよりも遥かに高い出力を誇るパンチを受けたゼロは壁に叩き付けられる。

「どうしたゼロ?もう終わりか?これくらいで終わったら俺としても拍子抜けも良いところなんだが?」

ライドアーマーのコックピットからVAVAはゼロを嘲笑いながら見下す。

何とか立ち上がるが、防衛隊のライドアーマー部隊の奴らとは動きが桁違いだ。

本来土木工事用の機械に過ぎなかったライドアーマーのパワーと汎用性に着目し、日々の任務の中で自らその性能を実証する事で兵器としてのライドアーマーの有効性を世間に示した第一人者として、VAVAのライドアーマーの操縦テクニックはそれこそ他の追随を許しはしない。

「チッ…」

「クックック…さあ、ルインのように楽しませてくれよゼロ!!」

「VAVAーーーーッ!!!!」

露出しているVAVAを捉えるがゼロの放ったショットはコックピットの電磁バリアにより阻まれてしまう。

「っ!!」

「俺がライドアーマーの弱点をそのままにしておくと思ったかい?阿呆が」

ライドアーマーのパンチのラッシュをゼロに浴びせる。

「ぐああああ…っ!!」

「終わりだなゼロ…流石のお前も俺と特別チューンされたライドアーマーの組み合わせには敵わなかったようだな」

アースクラッシュやチャージショットが効かないことを思いしらされたゼロには反撃の術など何も無い。

VAVAのライドアーマーのラッシュを受け続けて壊れた人形のように宙を舞い続け、そしてとうとう力無く床に倒れ伏した。

「ぐっ…」

「おいおい死ぬなよ。お前とルインにはまだ生きてもらわなきゃ困るんだよ」

ゼロをカプセル型の装置に放り込んで動きを封じる。

「そこで眠っていろ。後でゆっくり解体してやる。あいつの本気を引き出すには痛めつけられた仲間の姿を見せるのが1番手っ取り早いからな。ましてそれが親友であるお前とあいつならば尚更だからな…クックック…早く来いエックス…血祭りに上げてやる…」

VAVAの狂ったような笑いが部屋に響き渡る。

そしてエックスは防衛隊と今まで倒してきた特A級ハンター達のデッドコピー、そして大型のメカニロイドを破壊し、ようやく奥まで来た。

そこにはカプセルのような装置に動きを封じられたゼロと中破しているルインの姿があった。

「ゼロ!!ルイン!!」

酷く傷ついた仲間達にエックスは駆け寄ろうとする。

「エッ、クス…来る…な…これ…は、罠…」

「え…?」

ゼロの制止を理解する前に電磁迷彩で隠されていたライドアーマーのマニュピレーターがエックスの体を掴む。

「ぐっ!?」

「クックック…間抜けだなエックス、シグマや目の前のことばかりで周辺の警戒が疎かになっているからこうして敵に足元を掬われるんだ。」

「VAVA…貴様…!!」

「おいおい、どうしたエックス?ルインとゼロが俺に痛め付けられたんだぞ?悔しくないのか?俺が憎いと思わないのか?悔しいと…俺を憎いと思うならお前の真の力とやらを見せてみろ!!」

ライドアーマーのマニュピレーターがエックスを握り潰そうと、力を込めていく。

「ぐわああああああ!!!!」

エックスの絶叫が部屋に響き渡る。

老人から与えられた強化アーマーによって嘗ての時とは比較にならない程の防御力を得たが、それはこの状況では苦しみの時間を伸ばす物でしかなかった。

「エックス…!!」

激痛に震える体を叱咤し、起き上がろうとした時にゼロよりも先に行動を起こした人物がいた。

それはライドアーマーの背にしがみつき、エックスを救出する。

「ルイン!?貴様まだ動けたのか!?ええい、離れろ!!」

ライドアーマーを動かし、ルインを振りほどこうとするが、ルインはライドアーマーにしがみついてライドアーマーのビームコーティングを施されていないバーニアにバスターを向け、チャージする。

それを見たエックスとゼロが叫んだ。

「止せルイン!!そんな至近距離で撃ったらお前まで巻き添えを喰らうぞ!!」

「ルイン!!」

「ごめん…エックス、ゼロ……負けないでね」

そのままチャージショットが放たれ、ライドアーマーのバーニアに炸裂した。

直撃を受けたバーニアから誘爆を起こしてライドアーマーは大破し、エックスとゼロは両腕が肩から吹き飛んでアーマーがボロボロになったルインがまるでボールのように吹き飛んでいくのを見た。

倒れ伏す彼女の姿を見た瞬間、エックスの表情は凍りついた。

「あっ…ああ…うあああぁっ!!」

エックスの双眸からとめどめなく涙が溢れ出し、エックスは急いでルインの元に駆け寄る。

「しっかり…しっかりしてくれルイン!!」

「エッ、ク…ス……ごめ、ん…ね…一緒に…戦えなくな…っちゃった…」

「もう喋らないでくれルイン!!直ぐに…直ぐに治療を…」

「そん、な…暇はない、よ…エックス…まだ…VAVAは…倒れて…ない…」

「何!?」

エックスがライドアーマーの残骸の方を見遣ると、爆発に巻き込まれたにも関わらず無傷のVAVAが現れた。

「馬鹿な奴だ。早まった真似をしなければまだ長生き出来たものを……無駄死にしやがって」

「何だと…!!」

「ルインが命を懸けたというのに…それを!!」

彼女の行動を侮辱する発言にエックスとゼロが怒りに震える。

「何度でも言ってやる。そいつはただの無駄死にした負け犬だ」

その一言はエックスを激怒させるには充分すぎた。

「VAVA…お前だけは許さない!!」

ヘッドパーツのクリスタルが光り輝き、蒼い光を身に纏うエックス。

その時、バスターの内部で何か外れたような気がしたエックスはチャージを終えたバスターをVAVAに向ける。

「スパイラルクラッシュバスターーーッ!!!」

バスターから放たれたのは今までのスパイラルチャージショットとは桁違いの出力で、それはエックスの背後にも衝撃波を発生させる程だ。

「くっ!!」

凄まじいエネルギーに戦慄したVAVAは跳躍してかわす。

スパイラルクラッシュバスターはシグマパレスの壁をぶち抜き、その威力はゼロですら絶句するほどだ。

「……これがお前の真の力というわけか…」

かつてのシグマの言葉に感じ取るものがあった。

なるほど、確かに違う。

VAVAの知る今までのエックスは、ただの悩んでばかりの甘ちゃんハンターだった。

高い実力を秘めながら、持てる力を使おうとしない戦士の風上にも置けぬような腑抜けだった。

見定めなければ、今のエックスの力がどれ程のものかを。

「ふふふ、これだ。この時を待っていたぜエックス!!お前の真の力を見せてもらうぞ!!」

拳を握り締め、一気にエックスに肉薄するVAVA。

VAVAの兵装で最強の攻撃力を誇るロケットパンチ・ゴールデンライト。

その一撃がエックスに向けて繰り出されたが、エックスはそれをエネルギーを収束させた左の拳で打ち砕く。

「チッ!!」

肩部のキャノン砲からネクロバーストを繰り出そうとするが、それよりも早くエックスが動いた。

「(速い!!)」

あまりの速さに対応出来ず、エックスにキャノン砲を握り潰されてしまう。

そしてVAVAへと向けられるバスター。

「終わりだVAVA!!スパイラルクラッシュバスターーーーーッ!!!!」

秘められた力を解き放ったエックスのバスターから放たれたスパイラルクラッシュバスターはVAVAを容易く飲み込み、シグマパレスの頑丈な壁を幾重にも貫き、紅い閃光が海を引き裂いた。

あれを受けて生きているレプリロイドなど存在しないだろう。

こうして圧倒的な力でエックス達を苦しめたVAVAは死んだのだ。 

 

第18話:残された者達

 
前書き
これがゼロの運命を大きく変えていく 

 
スパイラルクラッシュバスターの一撃によって貫かれた壁を見つめていたエックスはゼロを装置から解放させると急いでルインの元に向かう。

まだ彼女の動力炉は動いていて、まだ生きていることを表しているが、それはもう時間の問題だとエックスとゼロも理解していた。

「ルイン!!」

「しっかりしろルイン!!」

エックスはルインを抱き寄せ、ゼロと共にルインに呼び掛ける。

ルインは弱々しい目でエックスとゼロを見遣ると笑みを浮かべた。

「やったね…エックス…VAVAを倒し…たん、だ…やっぱ、り…強いよエッ、クスは…」

「違う、俺は強くなんかない!!俺はいつも君に助けられてばかりだ…」

「…………」

涙を流す親友を見てゼロは涙を流せない自分に憤りを感じた。

涙を流す機能がついていないゼロはこの悲しい想いを表面に出すことが出来ない。

「泣か、ない…で…エックス…」

エックスの涙を拭おうとしたが両腕がないことを思い出してルインは自嘲する。

「何か…凄く眠、い…や……」

自身の動力炉が活動を停止しかけているのが分かる。

眠気に似た何かが自分を襲い始め、多分これが“死”なのだろうなと漠然と思う。

視界にノイズが走り、エックスとゼロの顔が分からなくなっていく。

「ルイン!!」

機能停止しかけている彼女を揺すり、少しでも機能停止を遅らせようと彼女を生き長らえさせようとしている。

それでも動力炉は確実に活動を停止していき、もう視界はノイズによってエックスとゼロの顔すら分からない。

それでも彼女は何とか口を開いて最期の言葉を伝えようとする。

「エッ、ク…ス…ゼ…ロ…」

「!?」

「…………」

「わ、た…しのさ…いごのおね、が…い…き、いて…くれ、る…?」

「最期って…」

「何だ?」

エックスの言葉を遮ってゼロが尋ねる。

その気遣いを嬉しく感じながらルインは必死に言葉を紡ぐ。

「つれ、てっ…て…エック…スとゼ、ロが…2人がつく、る…や、さし…い…平和な…せ、かい…に…」

そう言うと彼女の動力炉は活動を終え、彼女は機能停止した。

「ルイン!!ルイン!!目を、目を開けてくれ!!ルイン!!」

必死に彼女の名前を呼ぶが彼女の動力炉は活動を停止し、体の機能は完全に停止しているのだ。

どんなに名前を呼んでも彼女の目は開かない。

「ルイン………ぐっ…くぅう…うわあああああああ!!!」

動かない彼女を抱き締めながら泣き叫ぶエックスにゼロも沈痛そうな表情でルインを見つめる。

「……………」

しばらくして、少しだけ気持ちの整理がついたゼロは近くに落ちているボロボロとなった彼女のヘッドパーツを回収するとルインの元に向かう。

冷たい床に横たわる彼女の隣に置いて彼女の顔を見つめると彼女の顔には血が残っており、思わずゼロは彼女の頬に触れてみた。

触れると彼の掌に彼女の血が馴染んで落ち、思わず無心にその紅い汚れを綺麗になるまで拭い、血の移った手を見つめ、少し間を置いた後に顔にかかった髪を、几帳面にも掻き上げて整える。

「俺が…守るって…彼女は俺が守るって…誓ったのに…!!なのに、守れなかった…っ!!」

エックスの嗚咽が混じった声にゼロも悲しげにルインを見つめ、ヘッドパーツを彼女に被せるとエックスの肩に手を置く。

「エックス、まだ希望はある。ケインの爺だ。爺ならルインを救えるかもしれん」

「ケイン博士…?」

涙で濡れた顔をゼロに向けるエックス。

「確かに彼女は機能停止したが、両腕を失った以外、体は原形を留めている。レプリロイドの核でもある頭脳チップも無傷である可能性もある…可能性はゼロじゃない。諦めるなエックス。彼女の分まで俺達が戦うんだ。シグマを倒し、彼女が望んだ“優しい平和な世界”を創るためにもな」

「…うん、そして彼女を“優しい平和な世界”に連れていくためにも…シグマを倒さないと……」

エックスはルインの武器を回収する。

奇跡的に武器は何の損傷もない。

「これは、借りていくよルイン…一緒にシグマと戦おう」

彼女の武器を握り締めるエックス。

彼女の魂が宿った武器を手にしてエックスはシグマと戦う決意をし、ゼロは簡易転送装置でルインを転送する。

座標はケイン博士の研究所で簡単なメッセージをつけて彼女を転送した。

ゼロ自身ああは言ったものの、彼女が助かる可能性は限りなく低いと分かっている。

例え頭脳チップが無事だとしても助かったレプリロイドはいないのだ。

ゼロの常に明晰な理性は、ルインは助からないのではないかと呟く。

だが、ゼロは初めて……恐らく起動してから初めて、神に祈りたい気持ちになった。

もし彼女が助からなかったらケインや上から目線の気に入らない上層部に頭を下げてでも彼女の墓を作ってやりたいと思った。

ハッキリ言ってゼロは信心深くない。

エックスとは違い、死者の魂が天に還るなどという人間達の言葉など頭から否定していた方だ。

だからこそ墓標などと言うものに価値など見出す事など出来なかった。

深刻な人口増加により更なる居住の地を求めるようになった現在でも不足した土地を死人のために使う行為がゼロには理解出来なかった。

死者を弔い魂を鎮める…。

親しき者を失った人間達が繰り返してきた行為がゼロには無駄な行為にしか見えなかった。

自分が大切に思ってきた後輩を目の前で失うまでは…。

この時ゼロは初めて思い知らされた。

墓標とは死者のために建てられる物ではない。

大切な者を失い、その者の面影を求める者が傷ついた心を癒すための拠り所として存在する物が墓標と呼ばれる物なのだ。

もし、自分達がシグマを倒せて彼女が助かろうがなかろうが…自分は彼女の死顔を一生忘れることはないだろうとゼロは思った。 

 

第19話:Σ

ルインを転送させたエックスとゼロはシグマパレスの長い長い回廊を抜けた先に立ち塞がる巨大な扉の奥からその存在を誇示するかの如く、凄まじい威圧感を感じた。

エックスとゼロは互いに見合いながら頷き、巨大な扉に手を掛けるとゆっくり左右へと開いて行く。

そしてこの戦いの元凶となったかつて最強のイレギュラーハンターと謳われ、自分達の上官でもあったシグマがいた…。

「…………」

エックスは鋭く、シグマを睨み据えた。

全ては奴が元凶だ。

奴さえいなければ戦いなど起きず、ルインも沢山の仲間も死ぬことなどなかった。

対するシグマは不敵な笑みを浮かべて自身を鋭く見据えるエックスを見つめる。

「ほう…いい目をするようになった…迷いがない」

「シグマ!!俺はお前を許さない!!」

「VAVAは来ず、ルインがいないところを見るとあの2人は脱落したか…ふふふ…可能性を持つ奴らもこの新たな時代の流れについていけなかったというわけか…」

「ふざけるな…!!」

怒りに震えるゼロは全ての元凶を睨み据える。

「出来ることなら今すぐにでも手合わせしたいのだが…まずはこれを試させて貰う」

シグマの背後から現れたのは犬型のメカニロイドで、それはエックス達に牙を剥くがエックスとゼロはそれを冷ややかに見つめる。

メカニロイドが凄まじい勢いでゼロに迫るが、ゼロは屈んで回避し、メカニロイドの顎に拳による強烈な一打を与え、吹き飛んだメカニロイドに間髪入れずにエックスがスパイラルクラッシュバスターを放ち、瞬く間(メカニロイドを残骸へと変えた。

「こんな出来の悪いガラクタで今の俺達の相手が務まるか…!!俺達を倒したいならお前の全てを懸けて掛かってこいシグマ!!」

「見事だエックス、そしてゼロよ。やはりお前達には可能性がありそうだ。我々レプリロイドの無限の可能性がな。」

「シグマ!!狂ったお前に可能性なんかない!!」

「エックス…それはお前が本当に考えていることではない。」

「………」

「お前の薄っぺらな…正義だと考えているものがお前にそう思わせているだけだ!!エックス、ゼロ。お前達の可能性は充分見させてもらった。私と共に来い。我々でレプリロイドだけの楽園を共に創り上げようではないか」

「下らんな…」

シグマの戯れ言をゼロは吐き捨てるように言う。

「レプリロイドだけの楽園だと?笑わせるな!!レプリロイドだけの楽園なんて幻だ!!どれだけ優れていようと人間と同じようにレプリロイドも不完全な存在だ。互いに支え合わなければ駄目なんだ。」

「俺達は力なき者達を守るイレギュラーハンターだ!!俺達はルインに誓ったんだ…お前を倒して平和を取り戻すと!!」

ゼロが戦闘体勢に入るのと同時にエックスもバスターを構える。

此処まで来るのに色々なものを手に入れ、失ってきた。

その全てが、今の自分達を此処に立たせてくれている。

怒りも、悲しみも、憎しみも、慈しみも全部引っ括めてシグマを、最強のイレギュラーを倒す。

「そうか…ならばもう何も言うまい。行くぞエックス!!ゼロ!!」

「お前の野望はここで終わらせる!!」

「全て終わりにしようぜ。シグマ!!」

先に放たれたのはエックスのスパイラルクラッシュバスターであった。

リミッターを外され、真の力を解放した一撃はゼロのチャージショットすら上回る程だ。

これをまともに受ければシグマとてただではすまないだろうが、シグマはそれを容易く回避するとエックスに拳を突き出す。

エックスは咄嗟に顔を横にずらしてかわし、シグマの胸に蹴りを入れる。

本来エックスは格闘向きのレプリロイドではないが、ファーストアーマーの出力をそれぞれの部位に回せば、それなりの威力が出る。

「温いぞエックス!!」

額のバスターから放たれたショットを受けたエックスは僅かに吹き飛ぶ。

ケイン博士の最高傑作の名に恥じない頑丈なボディを持っているシグマには格闘向きではないエックスの蹴りは大したダメージにはならないのだ。

「シグマーーーーッ!!!!」

咆哮しながらゼロはシグマに殴り掛かる。

エックスと違って元から高い格闘能力を持つゼロ。

そして老人によりパワーアップした今ならシグマにも有効なダメージを与えられるだろう。

「フ…ッ」

シグマは不敵な笑みを浮かべながら顔を逸らし、ゼロの拳を回避する。

「はああああ!!」

ゼロの強烈な回し蹴りがシグマに向けて繰り出されるが、シグマはそれすら回避してゼロの蹴りはシグマではなく壁を粉砕した。

「今度はこちらから行くぞ!!」

シグマがゼロに向かって駆け出し、ゼロも同様にシグマに向かって駆け出した。

「うおおおおおおお!!」

凄まじい速さで繰り出されるゼロの拳だが、シグマはそれを回避しながらゼロに向けて渾身の蹴りを放つ。

「ぐっ…うわあああああ!!」

ゼロは咄嗟に左腕でガードしたが、耐え切れずに吹き飛ばされた。

「ゼロ!!」

それを見たエックスがダッシュで距離を詰めるとシグマに殴り掛かり、シグマも応戦して互いの拳が激突する。

「うおおおおおっ!!」

咆哮を上げながら、何度も拳を突き出すエックスに対してシグマは余裕の笑みを浮かべながらも拳を激突させながらエックスを称賛する。

「素晴らしいぞエックス!!とても射撃に特化したレプリロイドとは思えん程のパワーだ!!お前は最早B級ハンターなどでは有り得ない!!」

「ここで倒す…倒してみせる!!お前を!!」

「ならばやってみるがいい!」

「が…は…っ」

急速にシグマの拳の速度が上がり、エックスは避ける間もなく鳩尾に拳を受け、僅かに浮き上がった体をシグマに蹴り飛ばされた。

「アースクラッシュ!!」

エネルギーを収束させた拳でシグマの背中を穿とうとするゼロだが、エネルギーを纏っていない腕を掴まれ、地面に叩きつけられる。

「はあっ!!」

「ぐはっ!!」

シグマは天井に向けてゼロを投げ飛ばし、ゼロは頭から天井に激突し、シグマは額のバスターで追撃を仕掛けようとするが、エックスはそれを許さない。

「スパイラルクラッシュバスター!!」

「むっ!?」

シグマに向けて放たれたスパイラルクラッシュバスターを咄嗟にシグマは回避したが、回避したにも関わらずシグマの肩を僅かに溶解させる。

「喰らえっ!!」

ゼロも追撃をかけるようにバスターを構えてショットを連射する。

それに対してシグマはΣブレードを抜き、ショットを全て斬り払う。

「やはり強くなった…この私にΣブレードまで使わせるとはな」

シグマはブレードを構えると一気に距離を詰めてゼロとエックスに斬り掛かる。

ゼロは近くに落ちていた鉄パイプを拾い、それを剣の代わりにして受け止める。

「ぐ…っ!!」

あまりの威力にゼロは腕が痺れるのを感じた。

「フフフ…まるであの頃を再現しているかのようだ!!」

「あの頃だと…?」

「ゼロ、貴様は昔、私と戦ったことがある」

シグマの言葉にゼロは疑問符を浮かべる。

何故ならゼロのメモリーにはそんなことは残されていないからだ。

「馬鹿な…メモリーにはそんなことは残されていない。嘘ならもっとマシな嘘を吐いたらどうだ!!」

「メモリーに無いからと言って何故嘘だと言い切れる?こうしていると懐かしいと思わないか!?」

「……………」

言われてみればゼロは妙な既視感を感じていた。

ゼロの脳裏にある映像がフラッシュバックしていく。

鉄パイプを握り締め、ブレードを持つシグマと戦っている光景が過ぎる。

「(この…光景…どこかで……)」

ゼロの意識がそちらに僅かに向いた途端、シグマはブレードで鉄パイプを両断した。

「っ!?しまった!!」

シグマの口車に乗ってしまい、隙を曝してしまったことにゼロは思わず自身に憤る。

「ゼロ!!」

ゼロを援護するために牽制のチャージショットを放つとシグマは回避のために距離を取る。

「エックス…」

「大丈夫か?ゼロ」

「ああ、すまん助かった。いつもお前に油断するなと言っておきながら…」

シグマとの戦いで致命的な隙を曝してしまったことを恥ながら、助けてくれたエックスに礼を言う。

「気にしなくていい。何としても勝つんだ。絶対に」

「ああ」

「エックス、ゼロ。今からでも遅くはない。これが最後だ。私と共に来い」

「断る」

「冗談じゃない」

シグマの誘いをエックスとゼロは即答で返す。

「そうか…残念だ。お前達は私と似ているというのにな」

「何だと!?」

「俺達とお前を一緒にするな!!」

シグマの思わぬ言葉にエックスとゼロは激昂する。

「私はレプリロイドの可能性を見るため…そしてそれ以上に人間を憎んだ。そしてお前達は私を憎んだ。憎しみがお前達を私と同じ域にまで到達させた」

「違う!!」

「何が違うというのだ!?私の人間を憎む心とお前達の私を憎む心のどこが違うのだ!!」

「シグマ…何故そこまで人間達を憎む!?」

何故そこまで人間を憎むのか、此処まで来たら全てを知りたいと思う。

全てを知った上でシグマと戦おうと考えた。

「それを聞くか…いいだろう。教えてやる。かつて私のような第一世代型レプリロイドが生まれた時、我々レプリロイドの権利など無いに等しかった。レプリロイドは人間の命令で戦場、環境破壊により人間では活動出来ない場所へと送り込まれた。」

「それは…仕方の無いことだ。俺達レプリロイドでは人間とは活動出来る範囲が違い過ぎる」

「そうだ。かつてルインも言っていたが、我々レプリロイドはエネルギーが続く限り人間が活動出来ない場所でも活動が可能だ。人間の肉体と我々のボディとでは耐久性だって雲泥の差がある。私もそれを理解していたからこそ、戦場で戦い、そして人間が活動出来ない場所へと向かった…だが、徐々に人間達のやり方は日増しに悪化し、レプリロイドによる実験が繰り返された。」

レプリロイドはどのくらいの熱に耐えられるのだろう?

どのくらいの冷気に耐えられるのだろう?

新たな兵器の実験台にしよう。

最新のウィルスを試してみよう。

人間達のレプリロイドへの暴虐はケインがレプリロイドの権利をもぎ取るまで続いたのだ。

シグマはレプリロイドの権威であるケインの作品であるためにそれから逃れることが出来た。

しかし実験台にされ、スクラップへされていく同胞を見てきたシグマの人間への嫌悪は日増しに増していった。

シグマの拳は怒りに震えていた。

「…エックス、ゼロ。我々が…我々が何をしたというのだ?遥か昔、戦争を起こし、資源を浪費し、環境を破壊し続け、己の首を絞め続けてきたのは他でもない人間達だろう!!」

「………」

凄まじいシグマの…今まで奥底に封じ込めていた怒気にエックスとゼロは気圧されてしまう。

「この世界において人間とは環境を破壊し、資源を浪費するだけの害虫でしかない。私はレプリロイドの進化を信じ、人類と言う不必要な存在を処分するために立ち上がった。レプリロイドの楽園を創った後に…奴らが我々にしたように生かさず、殺さず…地獄の苦しみを味あわせてやるのだ!!」

シグマがブレードを構えてエックスに斬り掛かるが、エックスはルインのZXセイバーでブレードを受け止めた。

「…かつてのお前達の境遇には同情はする。だけど、俺にはお前のしていることが正しい事とはどうしても思えない」

「何だと…!!」

「お前は人間達だけじゃない…レプリロイド達まで傷つけ過ぎたんだよ!!どれだけ正しいことを言おうがお前はレプリロイド達も大勢苦しめたんだ!!」

エックスの脳裏を過ぎるのはこの戦争によって死んでいったイレギュラーハンターの仲間やシティ・アーベルの市民達。

そしてシグマが反乱を起こしたことでアルファに続いて身内を失い、寂しそうなケインの姿。

そしてルインの死顔。

「俺は…この戦いで死んで、傷付いた者達のためにも……お前には負けない!!」

「戯れ言を!!」

「そうだなエックス…俺達はイーグリードやルイン…他にも死んでいった奴らの想いを背負っているんだ…!!」

エックスがシグマを抑えている間に炎を纏った飛び蹴りをシグマの顔面に喰らわせるゼロ。

それを受けたシグマがたたらを踏む。

「やるぞ!エックス!!」

「ああ!!」

ゼロとエックスがそれぞれのチャージを終えたバスターを構え、そしてエックスは左手にセイバーから切り替えたバスターを持ち、シグマに照準を合わせる。

「エネルギー、フルチャージ!!」

「行くぞ!!」

「「クロスチャージショット!!!」」

3つの銃口から放たれたチャージショットは1つとなる。

そしてクロスチャージショットの一撃はシグマの両腕、Σブレード、そして下半身を消し飛ばした。

「ぐぅ…!!」

下半身と両腕を失ったシグマにはもう戦闘能力は残されていない。

額のバスターがあるが、それだけではエックスとゼロの相手にはならない。

エックスとゼロの勝利である。 

 

第20話:Rockman

上半身だけとなったシグマを見遣り、エックスとゼロはとどめを刺すためにバスターを向ける。

「イレギュラー・シグマ!お前の企みもここまでだ!!」

「お前に利用され、死んでいった者達の無念をここで晴らしてやる!!」

「まだだ…まだ終わらん…!!」

突如シグマの頭部がボディから外れ、壁へと向かっていき、壁の狼の額に頭部が装着した次の瞬間であった。

壁を粉砕して巨大な狼型メカニロイドと融合したシグマが、エックスとゼロを睨み据える。

「シ、シグマ!?」

「ば、馬鹿な…!!」

あまりの事態に絶句するエックスとゼロを嘲笑うようにシグマは言い放つ。

「驚いているようだな…私は万が一に備え、部下に新たなボディを造らせていたのだ。いくら私と言えども人型の状態では出来ることが限られてくるのでね。お前達が来るのが予想以上に早かったためにまだ未完成だが…今の満身創痍のお前達を始末するには充分過ぎるほどだ。私の真の力…その身で味わうがいい!!」

メカニロイドの口から火炎が放たれる。

並のレプリロイドが受ければ容易く溶解してしまう程の高熱にエックスとゼロは反射的に回避した。

凄まじい熱にエックスとゼロは思わず戦慄する。

「チッ!図体がでかくなっただけでいい気になるなシグマ!!」

巨体になったためにパワーは格段に上昇したが、ボディが不完全であるために機動力が無いに等しいシグマの攻撃はある程度距離を置けばかわせると判断して即座にゼロはチャージショットをシグマのメカニロイドボディに浴びせた。

「無駄だゼロ!!最早お前如きの攻撃では今の私を傷つけることなど出来ん!!此処がお前達の墓場となるのだ!!」

「なんだと…!?」

ゼロのチャージショットが確かに命中したにも関わらず、直撃を受けてもメカニロイドのボディには傷1つ付かない。

「裁きの雷を受けるがいい!!」

エックスとゼロに目掛けて降り注ぐ電撃。

避けようとしても雷撃のあまりの数に直撃を受けてしまい、膝をつくエックスとゼロ。

「な、なんて威力なんだ…!!」

「くそ…ここまで来て負けてたまるか!!」

2人は何とか痛みに耐えながら立ち上がり、シグマに向けてバスターを構えた。

「「うおおおおおおおお!!!!」」

残った全てのエネルギーと武器をシグマに叩き込むエックスとゼロ。

しかし如何なる武器を用いようと、どれ程のエネルギーを叩き込もうと眼前のシグマの巨体は身じろぎもしなかった。

「無駄だ!!こうなった以上貴様らに勝ち目はない!!大型メカニロイドのパワーを手にした私は最早全能の存在なのだ!!」

質量にものを言わせた打撃と莫大な出力任せの電撃と火炎を放つシグマ。

そしてそれらを受けながらもエックスとゼロも負けじとバスターからショットを放ち続ける。

互いに凄まじい火力の応酬がされるが、どんなに攻撃を受けてもビクともしないシグマと徐々にダメージが蓄積していくエックスとゼロ。

このままではどうなるかなど火を見るより明らかであり、エックスとゼロに向かって腕を振り下ろすシグマ。

攻撃をかわそうとするエックスとゼロだが、それは既にシグマには先読みされており、雷撃がエックスとゼロを襲う。

「うわああああっ!!」

「ぐわああああっ!!」

電撃をまともに受けて敢え無く吹き飛ばされるエックスとゼロ。

「滅びるがいい!!」

腕を出鱈目に振るい続けるシグマの攻撃を受けるエックスとゼロは壊れた人形のように宙を舞う。

単純な攻撃でも大型メカニロイドのボディのパワーによるそれは驚異的な威力である。

「く…そ…っ」

重力に従って床に叩き付けられるエックスとゼロ。

度重なるダメージによって動けなくなり、2人は倒れ込んだままピクリとさえ動きはしない。

「もう終わりか…まあ、当然の結果だがな…私は更に時間をかけてこのボディを完成させ、完成したこの力を以てレプリロイドだけの新たな世界をこの地上に築く」

「勝手に…決めるな…!!まだ…終わっていない…俺はまだ…生きている……!!」

激痛に震える体を叱咤し、必死に起き上がろうとするエックス。

「流石は無限の可能性を持つレプリロイド。我々の元になっただけのことはある。だが…」

そんなエックスに対してシグマの額のバスターにエネルギーが収束していく。

「所詮は雑魚の遠吠えに過ぎん!!滅びよっ!!」

シグマが額のバスターをチャージし、巨体のボディの出力に物を言わせた巨大なチャージショットが放たれた。

出力も規模もエックス達の物とは比較にならないそれは真っすぐエックスへと向かっていき、エックスが思わず目を閉じた瞬間。

「させるかああああ!!」

ゼロがエックスと攻撃の間に割って入り、シグマの放ったチャージショットを相殺しようとゼロもチャージショットを放つが、簡単に打ち破られてしまい、それはゼロに直撃した。

「うわあああ…!!」

直撃を受けたゼロは片腕と下半身が吹き飛び、床に叩き付けられる。

ゼロのアーマーが漆黒からいつもの紅へと変わっていき、髪の色も銀色から金色に戻っている。

「ゼロ!!ゼローーーーッ!!!!」

それを見てエックスは痛みも忘れ、無我夢中でゼロに駆け寄る。

「ゼロ!!しっかりしてくれゼロ!!」

「エックス…すまない。どうやら…俺はここまでのようだ……」

「そんな…」

「頼む…シグマを…奴を…倒してくれ…そして…連れていってくれ…お前の…創る…懐かしい、未来へ…」

「…………」

死に際にゼロの脳裏に過ぎるのは、エックス、ルイン、自分の3人で一緒に任務に励み、一緒に騒ぎ、ケインの悪戯を受け、共にケインに報復したりした騒がしくも楽しかった日々。

エックスならきっとシグマを倒せると信じてゼロは静かに機能停止した。

「ゼロ…!!」

涙を流しながら立ち上がるエックスは親友を奪った男を鋭く睨み据えた。

「シグマ…お前を倒す」

「ほう?お前にそれが出来るというのか?」

「ああ、どんな手を使ってでもお前を倒す。」

嘲笑するシグマにエックスは力強く言い放つとシグマが放つ電撃をかわしながらエックスはバスターからショットを放ってシグマに叩き込んだ。

「何度やっても無駄だ!!」

「(俺はゼロやルインのように強くなんかない…ゼロのような強さもルインのような勇気もない…だけど…)」

シグマを睨みつけながら、諦めることなく何度も何度も攻撃を当てるエックス。

「(だけど俺だって…平和を守りたいと願う気持ちの強さは誰にも負ける気はない。そしてゼロとルインが望んだ世界に2人を連れていきたいと願う気持ちは誰にも負けない!!)」

「しぶとい奴め!!」

「生憎、このしぶとさが俺の取り柄でな!ゼロもルインも最期まで諦めなかったんだ…俺も最後まで諦めるものか!!」

どれ程熾烈な攻撃を加えられようとエックスは1歩たりとも退かなかった。

エックスはシグマの手の甲へと飛び乗ると、そのまま一気にシグマの腕を駆け上がる。

目指すはそう…メカニロイドの額にあるシグマの顔。

至近距離からのスパイラルクラッシュバスターなら防御壁を貫けるはずだ。

「何!?」

「スパイラルクラッシュバスター!!」

「ぐおおおお!?」

防御壁によりスパイラルクラッシュバスターの大半は防がれたが、ようやくシグマにダメージを与えることに成功したエックス。

そして至近距離まで近付いたことで防御壁のあることに気付いた。

「この防御壁は…アルマージのローリングシールドのエネルギーと同質の物か!?なら!!」

エックスはメカニロイドの頭部にしがみつき、ローリングシールドを発射する。

ローリングシールドはエックスの読み通り、シグマの防御壁を素通りしてシグマに直撃する。

「ええい!!離れろ!!」

シグマがエックスを振りほどき、シグマの巨大な腕がエックスを床に叩き付けるとエックスに向けて再び降り注ぐ電撃と火炎。

「ぐああああああ!!」

激痛に絶叫するエックス。

更にエックスに向けて打撃が繰り出されるが、それでもエックスは耐えて立ち上がるとシグマの頭部に向けてローリングシールドとスパイラルクラッシュバスターを放つ。

一見すると大して効いていないように見えるが、シグマの異常なまでの精神力の強さを思えば、彼がエックスの攻撃で些かも怯まなかったからと言ってそこが弱点で無いと判断するのは早計だ。

シグマのメカニロイドのボディには通常ショットやチャージショットどころか、スパイラルクラッシュバスターも特殊武器も通用しない。

ならば攻撃が通用するそこを攻撃するしかないのだ。

「くっ、ローリングシールドはエネルギー切れか…!!」

ローリングシールドのエネルギーが尽きて、今度はスパイラルクラッシュバスターをシグマに喰らわせようとする。

「甘いぞエックス!!」

シグマの額のバスターから再びゼロを破壊したチャージショットが放たれ、エックスを飲み込んだ。

「がは…っ!!」

更にエックスの頭上から振り下ろされた腕がエックスの全身を強かに打ち据え、凄まじい速度で落下したエックスは、床上に激しく叩き付けられると数度バウンドし、そのまま力なく床に倒れ込んだ。

「勝ったぞ…この勝負…私の勝ちだ!!」

シグマの笑い声が響き渡り、意識を失っていたエックスの脳裏を過ぎる光景があった。

『…ス。……ックス。エックス』

目を開けると、白い豊かな髭を持った老科学者が優しげな目で自分を覗きこんでいた。

自分の知る物より若さを感じるが、この老科学者は自分やゼロ、ルインを強化してくれた人ではないか。

周りには古い型の設備が並んでいた。ここは何処だろう?

『あな…たは…?』

自分の意思とは無関係に胸までしかない状態でカプセルのようなもの寝かされている自分は老人に問う。

すると老人はエックスの問いに嬉しそうに答えた。

『私の名前はトーマス・ライト。お前の生みの親だよ。エックス』

生みの親と聞いて妙に納得してしまった。

だから自分のパワーアップパーツを造ることが出来たのだなと。 

『エックス……それが…私の…な…ま…え…』

意識が落ちる…出力不足だろう。

『エックス…そう、無限の可能性を意味する名前だ。お前は自分で考え、行動する新しいタイプのロボットになるんだよ』

そして場面は変わり、この頃のエックスは組み立てが終了し、後は微調整と主武装となるバスターの装着を残すのみとなっていた。

しかし、この日に会いに来てくれた老人は窶れ果て、憔悴しきっていたために何時もと様子が違うことを、外の様子を知らないエックスでもすぐに察した。

『どうしました?博士…お疲れの様子ですが…』

『エックス。お前は本当に人間と同じようだな…だがそれだけに…ゴホッゴホッ…お前のように極めて自分達に近い存在を受け入れるには、まだ人類は幼すぎるかもしれん…人はお前の無限の進化の可能性を危険と感じるかもしれない…“エックス”という名前には危険という意味もあるのだ。』

暗転。

場面が変わり、自分が老人と話せる最後の日だと…何となくだが分かった。

『すまないエックス…。お前を世の中に出してやるには、時間が足りなかった…ゴホッゴホッ!!』

更に窶れた老人は、掠れた声であの少年の面影を持つ最後の“息子”に詫びた。

そこまで言うと、老人は咳き込む。

医療に関して無知な今のエックスにも分かるくらい呼吸系の異常は明らかだった。

『ライト博士!!』

『わしはお前に悩み考え、そして進化を戦い取る力を与えた。だが、それをまだ解放するわけにはいかないのだ』

それは実質のエックスの封印宣告であった。

だが、エックスの中にあったのは恨みでも悲しみでもない、1つの決意だった。

『博士。私はこの力を正しいことのために使います。希望のために!!』

進化を戦い取るために与えられたバスターを胸に翳し、エックスは老人に、“父”を安心させるために誓った。

『ああ、もちろんわしもそう信じている。お前がその正しい心を持ち続けるということを。未来の人々が…世界がそう願うことを…』

エックスの言葉に老人は心から嬉しそうに笑った。

老人がカプセルの蓋が閉めてエックスの封印が始まったが、2人の顔に悲しみはない。

最後に残った菱形の窓に老人が顔を覗きこむ。

『博士…』

『さらばだ、エックス…ワシの…世界の希望』

それが最後の別れだった。

光が遠退き、意識が暗闇に落ちていく。

次の場面はハンターベースの屋上で隣にはVAVAとの戦いで大破したルインとの会話であった。

『うーん……でも私は、エックスのそう言う優しい性格も悪くないと思うよ。あのペンギン君やシグマ隊長達のような戦闘型よりも…君ならきっと違う視点でイレギュラーを見ることが出来るんじゃないかな?』

『え?』

『私もね、ケイン博士と同じようにエックスを信じてる…エックスならイレギュラーに対してのハンター達の指向も上手く変えてくれる可能性を…ね…』

『ルイン……』

『優しさが弱点になるなら私がそれを補ってあげるよ。私とエックスのコンビネーション。即興にしては上出来だったよね!!』

『うん。君が俺に合わせてくれたからね』

『エックスがバスターでイレギュラーを牽制して私が決める!!』

笑顔を浮かべながら言うルインにエックスもいつの間にか笑みを浮かべていた。

今思えばこの時からかもしれない。

彼女に惹かれたのは…。

彼女の無邪気な笑顔と言葉には何度も救われた。

更に風景が変わり、次の風景はVAVAとの最後の戦いの直後で大破したルインが弱々しい笑みで自分を見つめている。

『つれ、てっ…て…エック…スとゼ、ロが…2人がつく、る…や、さし…い…平和な…せ、かい…に…』

それを言うと彼女は機能停止して世界が暗転する。

次は、多分自分がイレギュラーハンターとなって初めてイレギュラーを倒した時の光景であった。

イレギュラーを殺したことに対して、バスターに添えた手に力が無意識に入り、恐怖を感じていた時であった。

『エックス、その心の痛みを絶対に忘れるな。痛みを負うのは誰でも辛い。だが、心が無ければ俺達はただの人形だ。それにな、お前はあの笑顔を守る事が出来たんだ…もっと胸を張れ』

ゼロの指差す方向にはエックスの手で助けられた人々がいる。

暗転し、そして自分を庇ってボロボロになったゼロが必死に紡いだ言葉。

『頼む…シグマを…奴を…倒してくれ…そして…連れていってくれ…お前の…創る…懐かしい、未来へ…』

懐かしい未来…。

それを創るために自分は…。

「………」

エックスは静かに立ち上がる。

老人から授かった強化アーマーは最早使い物にならず、邪魔になるために即座に外してシグマを見上げると、シグマの反乱に悲しんでいたケイン博士の顔が脳裏を過ぎる。

「すみませんケイン博士…隊長を…シグマを止めるには…もうこれしかなさそうです…」

アルファに続いてシグマまで彼から奪うことを謝罪しながら構えるのはZXバスター。

エックスのバスターは度重なるダメージで限界に達しているために形見であるルインのバスターをシグマに向ける。

不思議な武器である。

初めて触れるはずなのにそんな気がしない。

まるで最初から自分の武器であるかのように違和感がなく、この戦いで得たどんな特殊武器よりも自分に馴染んだ。

「フン…そんな玩具で私を倒せると思っているのかね?さあ…お別れだエックス。あの世にいるゼロとルインの後を追うがいい!!」

嘲笑と共にシグマの砲撃がエックスに向けて放たれる。

「ゼロとルインが何だって?2人なら…さっきから俺の傍にいるぞ!!」

「!?」

一瞬、シグマの視界にエックスの隣にいるゼロとルインの姿が見えた。

そんなはずはない。

ゼロはそこに転がっているし、ルインはケインの研究所にいるためにエックスの隣にいるわけがない。

「うおおおおお!!」

ルインのバスターから放たれたチャージショット。

それはシグマの砲撃を砕いただけではなく、防御壁さえも貫いて頭部に直撃する。

「があああああ!?」

「はあああああ!!」

よろめいたシグマにエックスはバスターをセイバーに切り替えると、セイバーを構えてシグマの頭部に斬り掛かる。

「ずぁああ!!でやあああ!!」

エックスは剣を使ったことなどないために、基本的な型すらマトモに出来ていないため、ただがむしゃらにセイバーをシグマに叩き付ける。

しかしセイバーによる攻撃は確実にシグマにダメージを与えて蓄積させていく。

「ぬうううう!!己ええええ!!」

無視出来ないダメージが蓄積していくシグマの表情にも焦りの色が見えている。

シグマの腕がエックスを床に叩き落とす。

「がはっ!!ぐっ…まだまだあっ!!」

床に叩き付けられるエックスだが直ぐさま立ち上がり、再びセイバーで斬り掛かる。

「ぐっ…何故だ。何故これ程の力を前にしても尚、戦おうとする!?」

「守りたいものがあるからだ!!俺が今まで戦ってこれたのはルインやゼロ、ライト博士とケイン博士達の存在があったから…そしてみんなとの思い出やみんなの願い…それが俺にどんな敵とでも戦える勇気をくれるんだ!!」

「戯れ言を!!」

シグマがエックスに向けて腕を振るうが、エックスは強化アーマーを失っているのにも関わらず、素早く動いてそれをかわした。

「お前の言う戯れ言が俺を支えてくれているんだ!!そしてお前を倒すのもお前にとっては取るに足らないだろう人々の無数の願いだ!!」

エックスは渾身の力でセイバーを無防備なシグマの腕に向けて振るい、両断した。

「ば、馬鹿な…私のボディが…!?」

「願いは!!そしてそれに応えようとする意志は!!どんな強固なものでも打ち砕く!!これは俺だけの力じゃない…これはルインやゼロ、そして死んでいった仲間達…そして俺を信じてくれたみんなの力なんだ!!」

「黙れ!!今ここにいない機能停止したルインとゼロと愚か者達に何が出来る!!」

「少なくとも!!」

セイバーをチャージし、そしてシグマに最後の一撃を叩き込むために一気に跳躍してシグマの頭部に向けて振り下ろされるチャージセイバー。

「みんなはお前を倒すための力を俺にくれた!!」

チャージセイバーの直撃を受けたシグマは蓄積していたダメージもあり、メカニロイドのボディから爆炎が上がっていく。

「ぐわああああああっ!!エェックスゥゥゥゥゥゥ!!!!」

屈辱か、怒りか。

怨嗟に似た咆哮が部屋に響き渡るが、エックスはそれに構わずに大破したゼロを抱えると、すぐさまシグマパレスから脱出する。

「(さようならシグマ隊長…)」

かつて尊敬していたシグマへ最後の言葉を胸中で呟くエックス。

爆発するシグマパレスを脱出したエックスは遠くで炎上するシグマパレスをただ悲しげに見つめていた…。

戦いは終わった。

明日になれば、再び平和な朝が訪れることだろう。

しかし、傷つき、倒れ、夜の闇へと消えていった者達がその朝を目覚めることは決してない。

1人立ち尽くすエックスの姿は爆発の光に照らされて、今にも消えてしまいそうに見えた。

何故、戦わなければならないのか。

誰もエックスにその事を教えてはくれない。

休む間もなく、どこかでイレギュラーが発生し、再びエックスは戦いの渦へと巻き込まれていくのだろう…。

優しさを捨てきれぬイレギュラーハンター・エックス。

エックスの戦いは、どこまで続くのであろうか。

エックスの苦しみは、いつまで続くのであろうか。

彼が握る、ルインの形見であるZXセイバーの翡翠の輝きと共に…。 

 

第21話:X

エックスからの通信によってシグマが倒されたことにハンターベースは歓喜する者と複雑な表情を浮かべる者達がいた。

当然だとケインは思う。

何しろ自分もシグマが倒されたことに複雑な心境を抱いているのだから。

反乱を起こした者達と親しかった者もいるために、だから素直に喜べない者もいるのだろう。

しかし通信を送ってきたエックスも複雑な心境なのは間違いないだろう。

反乱を起こしたハンターには当然エックスの同僚もいて、ゼロとルインは大破してしまうと言う大きすぎる犠牲が出てしまった。

「戦いは終わりましたけど…小さくない犠牲が出てしまいましたね…Dr.ケイン」

親友のルインが殉職したことを知ったエイリアはとても憔悴していたが、それでも最後まで臨時オペレーターとして働いてくれたことにケインは深く感謝していた。

「うむ、そうじゃな…しかし今はエックス達を迎えに行かねばな。シグマと戦ったのならダメージも深いはずじゃからな」

「はい」

こうしてケインはエイリアとハンター数名を伴ってエックスが送ってきた座標へと急行した。

辿り着いた海岸線ではボロボロのエックスと大破したゼロの姿があり、その姿は朝日に照らされて今にも消えてしまいそうな儚さがあった。

「ゼロ…」

ケインは想像以上のゼロの損傷に言葉を失う。

どれだけの激戦だったのか自分には想像すら出来ない。

「無事だったのねエックス」

言葉が出てこないケインに代わって、この反乱でエックス達をオペレートしていたエイリアがエックスに歩み寄って手を差し伸べた。

「ああ、エイリア…終わったよ…」

彼女の差し伸べた手を縋るように握り、小さな声でエックスは言いながら立ち上がった。

それは平和の訪れを意味する言葉であり、ケインが求めた言葉でもあるのだが。

「……本当にシグマを、倒したのか」

ケインはエックスに恐る恐ると言った感じで尋ねたが、エイリアから非難の視線を受ける。

「Dr.ケイン、今は…」

「良いんだよエイリア…シグマは…ケイン博士にとって大切な存在だったんだ。俺には答えなければならない義務がある…シグマは…俺が倒しました。」

通信越しではどこか実感が湧かなかったが、エックスから面と向かって言われたことにより、ようやく実感を得られたケインは悲しい気持ちが湧き上がった。

だが、この戦いでは自分だけではなく、エックスもエイリアも大切な者を失って大きな犠牲を出してしまった。

犠牲になった者は帰ってこないのは人間もレプリロイドも同じであり、残された者達はそれを受け止めて生きていかねばならない。

「エックス…」

「エイリア…俺は…ルインもゼロも死なせてしまった。俺だけが…生き残ってしまった…」

戦いの間はずっと堪えていた悲しみを吐き出すようにエックスは涙を流した。

ルインの形見であるZXセイバーを握り締めて。

エイリアもそんなエックスの姿に涙を流しながらセイバーを握るエックスの手に自分の手を重ねた。

平和主義の彼のことをルインから聞いていたエイリアは下手な慰めなど逆効果でしかないことが分かっていた。

「お疲れ様…エックス…」

労いの言葉と共に涙を流すエックスにハンカチを差し出す。

付き合いの浅い自分に出来ることはこれくらいだろうと判断したエイリアはせめて時間がエックスの傷付いた心を癒してくれることを願った。

「ありがとう…そして、ごめん…エイリア」

エイリアの優しさに感謝しながらハンカチを受け取ったエックスの姿をケインは無言で見つめていた。

どうか、この取り戻した平和が乱されないことを願いながら。 

 

第22話:新たな始まり

 
前書き
X2編行きます 

X2編は新規ですので1日1話です。 

 
シグマとの戦いから半年後、シグマの破壊と共に一旦は減少したかに見えたレプリロイドのイレギュラー化だったが、最近では増加の一途を辿り、各地では反乱を起こしたレプリロイド達によって、いくつかのハンター組織が襲撃を受け、壊滅していた。

それどころか捕獲されたレプリロイドを分析した結果イレギュラー化するための特殊なチップを予め体内に埋め込まれた、所謂“作られたイレギュラー”が発見されたのだ。

そしてそのチップにはΣ(シグマ)のマークが刻まれており、イレギュラーハンター上層部はこのイレギュラー達の製造元を探るべく全国のイレギュラーハンターに調査を命じた。

程無くして地図に載っていない工場発見との連絡が入り、そしてその工場の搬入搬出ルートを調査した結果、イレギュラーはそこで製造されている事が明らかになった。

この事件にシグマの残党が絡んでいると確信したエックスは、基地を破壊するために嘗てはシグマが率いていた第17精鋭部隊を率いて出動した。

「くっ…やはり警備用メカニロイドが配置されていたか…」

工場付近に近付いた途端に警備用メカニロイドが次々に出現し、工場に向かっているエックス達を迎撃してきた。

「エックス隊長!!このままでは…」

エックスの部下である隊員の搭乗しているチェバルが被弾し、機体から煙が出ており、他にも被弾したチェバルが増えている。

シグマを倒した功績を称えられたエックスは特A級に昇進し、第17精鋭部隊の隊長となったのだ。

最初は昇進を断っていたのだが、ケインの勧めもあって断れなくなったエックスは渋々とだが、隊長に就任したのである。

「被弾した者はライドチェイサーを放棄し、被弾していない者は彼らを連れてハンターベースに帰投しろ!!後は俺がやる!!」

被弾した者達は悔しそうにするが、このままでは自分の命を散らすだけだと分かっているためにエックスの指示に従った。

被弾したチェバルを放棄し、被弾していない隊員のチェバルに乗せてもらい、安全な場所まで運ばれていった。

それを確認したエックスはオペレーターに通信を繋げる。

「エイリア、聞こえるかな?」

『ええ、大丈夫よエックス…万が一とは言ったけど本当にこんなことになるなんてね…』

エックスの通信に応対したのはシグマの反乱の際に臨時オペレーターとして配属されたエイリアであった。

彼女はあの反乱以降、このような規模の事件の際には臨時オペレーターとして配属され、エックスのサポートをしてくれる頼りになる存在だ。

そして今では数少ないエックスの苦悩を理解してくれる人物でもある。

「エイリア、例の物を頼むよ」

『ええ…今からファーストアーマーをあなたに転送するわ。でも解析が不完全で性能がオリジナルより低下しているから過信は禁物よ』

「了解」

エックスにアーマープログラムが転送され、エックスのアーマーが何時もの蒼とは違い、純白の物となっていた。

これはシグマの反乱の際にエックスがライト博士によって与えられた強化アーマー・ファーストアーマーのバックアップデータを元にして再現したレプリカアーマーである。

しかしレプリロイド工学でトップの成績を誇るエイリアの能力を以てしても完璧な再現は出来ず、エックスの防御力強化のみに留まっている。

しかしこれによってある程度の無茶が可能となり、チェバルの被弾も気にせずに特攻を仕掛けて警備用メカニロイドにチェバルをぶつける。

ぶつかる直前にチェバルから飛び降りたことでエックスは無傷だ。

爆発によって工場の扉が吹き飛び、侵入が可能となった。

「これよりイレギュラー工場への潜入を開始する。エイリア、オペレートを頼むよ」

『了解…あなたも無茶をするようになったわね…』

呆れたような彼女の口調にエックスは苦笑しながら工場内に潜入した。

中に入ると警備用メカニロイドがエックスを迎撃してくる。

「ダッシュで潜り抜けてやる!!」

フットパーツのバーニアを噴かして攻撃を潜り抜け、メカニロイドにチャージショットを放って破壊した。

ファーストアーマーのフットパーツの解析は不完全だったが、ダッシュ機能自体は元々エックスに備わっており、オリジナルのパーツの装着の際に標準機能となったのだ。

故にフットパーツのダッシュ機能解析は不要となり、ボディパーツの解析に力を入れられた訳である。

他にも不完全なのはアームパーツとヘッドパーツであり、アームパーツはスパイラルクラッシュバスターの使用不可と、ヘッドパーツは頭突きによる障害物の破壊が出来なくなっている。

唯一再現が出来たのはボディパーツの防御力向上くらいだが、今はそれだけでもありがたい。

『エックス、イレギュラー製造プラントまでの最短ルートを割り出したわ。その通路を左に曲がって』

「了解!!」

メカニロイドを迎撃しながらエイリアのオペレートを受け、最短ルートでイレギュラーの製造プラントに向かった。

「ここでイレギュラーのチップを製造していたのか」

周囲を見渡すと組み立て途中の大型のメカニロイドとカプセルに入れられた未完成のレプリロイドの姿があり、コンベアに流されている物が目に入った。

「Σのマークの入ったチップ…」

『エックス…』

コンベアによって流されているΣのマークが入ったチップを掌一杯に掬い上げると静かに呟いた。

「あの事件で、沢山の犠牲が出た…それなのにまだ争おうとするのか…こんな…ゼロやルイン達の想いを踏みにじるような物を…こんな…こんな物があるからっ!!」

チップを握り砕くとチャージを終えたバスターを機材に向けてチャージショットを放った。

「この製造プラントは完全に破壊する!!」

何度もチャージショットを放って製造プラントを完全に破壊するが、重厚な足音に上を見上げる。

「どうやらこの工場の番人らしいが、少し遅かったな」

現れたのは超大型メカニロイドCF-0。

CF-0はエックスを踏み潰そうとするが、エックスは壁蹴りを駆使して攻撃をかわす。

「子供みたいに手足を振り回すしか出来ないのか!?」

壁蹴りで駆け上がり、CF-0の頭部に向けてチャージを終えたバスターを向ける。

「チャージショット!!」

放たれたチャージショットはCF-0の頭部に直撃させ、その巨体をふらつかせる。

「どうやら見かけ倒しのようだな!!これで終わりだっ!!(ルイン、力を貸してくれ…!!)」

ルインの形見であるZXセイバーを構え、CF-0の破損した頭部にチャージセイバーを叩き込んで粉砕した。

頭部を破壊されたCF-0は少しの間を置いて爆発した。

「これでイレギュラーの製造は不可能だ」

『そして我らの戦いの始まりでもある』

「この声は…」

聞き覚えのある声だが、聞こえていいはずがない。

奴はこの手で倒したはずなのだ。

冷たい汗が頬を伝い、エックスが振り返る。

『久しぶりだなエックス。嘗ての軟弱な若造が私の部隊を率いているとは驚いたぞ』

そこには記憶の物とは違うボディのシグマのホログラムが立っていた。

「シグマ…貴様…何故生きている!?」

エックスがセイバーを構えて何時でも動けるようにするが、シグマは不敵な笑みを浮かべる。

『貴様が倒したのは私自身ではない。貴様が倒した私は分身のような物。私はこうして新たなボディを手に入れ、甦ったのだ。』

シグマの言葉にエックスは愕然となる。

分身とはどういうことなのかは知らないが、あれだけの犠牲を出して挑んだシグマとの死闘がただの茶番でしかなかったことにエックスは悔しげに唇を噛み締めた。

『エックスよ…もう以前のようなことはせん。今の私の目的は人類の抹殺と貴様への復讐だ!!!』

次の瞬間、工場が爆発を起こす。

恐らく自爆プログラムを作動させたのだろう。

「くっ!!」

『この程度で死ぬ貴様でもなかろう……そういう貴様のために先の戦いとは比べ物にならぬ強者を揃えた。以前のような楽な戦いにはならんぞ……果たして私の元に辿り着けるかな?エックスよ!!』

燃え盛る工場から脱出するエックスにシグマは新たな戦いを告げる。

脱出したエックスは燃え盛る工場を見つめながら決意した。

「シグマ…お前が甦ったのだと言うのなら俺は戦う…今度こそお前を倒す!!」

バスターを天に掲げながらエックスはシグマとの2回目の戦いを決意するのであった。 

 

第23話:Wiseman

 
前書き
Dr.ケインは人格者ですよね。

ゲームでは影薄いけど 

 
最強最悪のイレギュラー・シグマの復活はハンターベースを震撼させた。

誰もがシグマの脅威に恐怖を抱く中、エックスは懸命にシティ・アーベルで暴れているイレギュラーを処分していた。

「まさかシグマが復活するなんて…」

オペレーターとしての一仕事を終えたエイリアが、ドリンクを飲みながら呟いた。

あれだけの犠牲を出して掴んだ平和が簡単に崩されたことにエイリアは虚しい物を感じた。

「うむ、シグマのことも色々と考えねばならんが…やはり一番の問題はエックスじゃのう」

「エックスが?」

ケインの言葉にエイリアは疑問符を浮かべる。

エイリアから見てエックスは大丈夫そうに見えたが、ケインからすれば違うのだろうか?

「エックスは一度シグマを倒しておる。じゃから周囲は自然にエックスに期待してしまう。エックスは真面目過ぎるからのう…その重みに押し潰されてしまう可能性も無くはない」

「っ!そう…ですね。それを失念していました…多分エックスは無意識にそれを感じているんでしょうね…自分に向けられている期待に」

真面目過ぎる性格のためにエックスは平和のために戦おうとするが、周囲の期待に気付かぬうちにプレッシャーを感じているのかもしれない。

「まあ、わしらはわしらの出来ることをしようではないかエイリア。」

「はい、私もエックスのオペレートを頑張ります」

「まあ、それも必要じゃろうが…一番大切なのは笑顔で帰ってきたエックスを迎えてあげることじゃな」

「笑顔…ですか?」

ケインの言葉にエイリアは首を傾げるが、ケインは笑みを深めながら説明する。

「誰でも笑顔で出迎えてくれれば嬉しいもんじゃよ。それだけでも帰って来れたと安心出来るし、特にお前さんは美人じゃからのう。美人のお出迎え程、男が喜ぶものはないわい。カッカッカッ!!」

「からかわないで下さいDr.ケイン…でも…そうですね。エックスが帰ってきたら笑顔で迎えようと思います」

呆れながら言った後、エイリアは優しく微笑んでドリンクの紙コップを捨てる。

「うむ、それがええ…それにしても…」

窓から見える外ではここ数日、異常気象が起こっている。

急激に温度が上がったかと思えば大雨が降るなど全く安定していない。

「エックスは大丈夫でしょうか?」

「大丈夫じゃよ。これくらいの熱さと雨で参るような奴ではない。それよりエイリア」

「はい?」

キリッとした表情を浮かべるケインにエイリアの表情も自然と引き締まるが、次の言葉で崩れることとなる。

「釣りにでも行くか」

「はあ?」

疑問符を浮かべるエイリアの手を引っ張って外に連れ出すケインであった。

そして時は数日前に戻り、エックスはイレギュラーの掃討を終えてハンターベースに帰投しようとしていたのだが、灼熱地獄とも言える熱さに汗を流しながら街を駆けていた。

「何て暑さなんだ!!」

周囲を見渡すと、あまりの暑さに倒れている人間もいるくらいだ。

「(それでも今はまだいい…だが、このままこの暑さが続けば高熱で道路とレールが歪んで大事故が起きる可能性も出てくる…早くこの急激な温度上昇の原因を突き止めなければ…ん?)」

顔にかかった水滴にエックスが足を止めると、雨が降り始めた。

「雨だっ!!」

「助かったぞーっ!!」

人々が歓喜する中、エックスは違和感を感じていた。

雲一つ無かったと言うのにいきなり雨が降ってきたことに。

エックスの不安は的中し、猛暑に続く雨は豪雨となってシティ・アーベルは大洪水に見舞われる。

事態を重く見たエックスはハンターベースに戻らずに原因究明のためにあちこちの気象関係の施設を駆け回り、ようやく原因を突き止めた。

「あの山頂のドーム…気象コントロールセンターがシグマの手に落ちていたのか!!…うわあっ!?」

流れていく車を足場にして先に進んでいくが、雨で濡れていた為に足を滑らせて水の中に落ちてしまう。

「大丈夫?エックス!?」

「え?」

エックスに向けて差し伸べられた手と慌てたような聞き覚えのある女性の声に顔を上げると杖を釣竿代わりにしているケインと傘を広げてケインに雨水がかからないようにしながらエックスに手を差し伸べているエイリアの姿があった。

「ケイン博士…オペレーターのエイリアを巻き込んで何をしてるんですか…?」

「見て分からんか?釣りじゃ釣り!!釣りは良いぞ~昔の娯楽と言うことでやる者はいなくなったが、心が落ち着くからのう」

杖に違和感を感じて引き上げると釣れたのは機能停止したメカニロイド…メットールであった。

「食えるもんは釣れんがの~ほれ、エイリア。お前さんにやろう」

「ど、どうも…(要らない…)」

メットールを受け取ったエイリアはメットールをどうしようかと頭を悩ませるのであった。

「おおっ!大物じゃ!!」

次に釣れたのはかなりの大きさのメカニロイドである。

「って、どうするんですかそれ!?流石に私は持てませんし置き場所が…」

「あ、あの…博士。俺は急いでいるので失礼します。ごめんエイリア」

「え?ちょっとエックス!!」

釣ったメカニロイドの扱いに困っているエイリアに悪いと思いつつも気象コントロールセンターに向かうエックス。

「何じゃい!行ったのか。せっかちな…まっ…ここは一つお手並み拝見と行くかの~」

「あの、Dr…それ…どうするんですか…?」

メカニロイドを指差すエイリアにケインは表情を引き締めながら振り返る。

「ふむ…エイリア…」

「リリースして下さい」

押し付けられそうな気がした為にリリースさせるエイリアであった。

気象コントロールセンターに辿り着いたエックスは施設内に潜入する。

施設内では警備用メカニロイドが好き勝手に暴れ回っていた。

「好き勝手にやってるな…どけえっ!!」

外の状態を考えて全てを相手にしていたら間に合わなくなるためにエックスはメカニロイドを無視して先に進む。

「ん?急に霧が出てきたな……」

しばらく進むと霧が出てきて視界が悪くなり、更に進むと豪雨となる。

「このドーム内の天候はそのまま街の天候そのものだ……早くコントロールタワーを解放しなくては!!」

気象コントロールセンターの心臓とも言えるコントロールタワーの入り口をショットで穴を開けて潜入すると、コントロールルームに向かう。

「コントロールルームはどこだ…?エイリアに…おっと、エイリアはケイン博士に巻き込まれていたんだった……ん?あそこか」

しばらく走り回るとコントロールルームに辿り着くが、扉が開いていることに気付いた。

「(開いてる…?誰かが暴れているぞ…)」

室内の様子を伺うと、植物のヘチマを模したレプリロイドが踊っていた。

「ダン・ダン・ダぁぁぁぁぁンス!!ダン・ダン・ダぁぁぁぁぁンス!!……おや~?」

踊ってる最中にエックスの気配に気付いて動きを止めるレプリロイド。

「チッ」

急いで身を隠してバスターを撃てるようにするエックス。

「お客さんかな~?こっち来てあんたも踊らねえかい?描いてある絵の通りに天気が変わる魔法のステージよっ!!おっと、自己紹介がまだだったっけ?俺はワイヤー・ヘチマール。シグマ様に用意してもらったこのステージでダンスしてるんだよ。ころころ天気が変わって楽しいぜっ!!あんたが踊んないなら俺が踊っちまうぜ~~~っ!!」

ヘチマールが踊り出した瞬間、エックスはショットで壁を吹き飛ばす。

「自分は踊りながらやっていることは質の悪い破壊活動か……」

「踊らねえで戦うってのかい?言っとくが俺は強えぜーっと」

ポーズを決めるヘチマールにエックスはチャージしたバスターを向けると、即座にチャージショットを放った。

「貴様は自分のしたことが分かっているのか!!」

「な~んだ、普通の戦い方でやるの?芸がないね」

ヘチマールは先端に刃がついた蔓を回転させてチャージショットを防いだ。

「(くそっ、あの蔓は防具だったのか)お前を倒してシグマの居所を聞き出す!!」

「おっ!ギャンブルってわけかい?乗った!!」

次の瞬間、ヘチマールが蔓を放ってきた。

「え!?」

エックスは蔓を間一髪でかわし、放った蔓を元に戻すとヘチマールはもう1本の蔓を出す。

「さぁ~~~今度はこっちの番だっ!!」

今度は2本の蔓を放ち、エックスはそれを素早くかわしていく。

「この蔓は攻防一体の武器なのか!だが、攻撃に転じている今なら防御出来ないはず!!」

攻撃をかわしながらチャージショットをヘチマールに放つ。

「は~ん?」

ヘチマールは軽快な動きでエックスのチャージショットをかわしていく。

「ちょこまかと…動くな!!」

着地の瞬間を狙ってチャージショットを放った。

「おっ!?」

「やったか!?」

タイミング的にかわしようがなく、チャージショットによる爆発でヘチマールに直撃したと思ったエックスだが…。

「なーにやってんだか、分かってねーなー。大事なのはリズム!リズム!!今からダンスのレクチャーをしてやるぜっ!!」

当たる直前に蔓を天井の植物の蔓に絡ませて上に移動することでチャージショットを回避していたのだ。

そして頭部の球体をばら蒔いて複数の先端が尖った蔓を生やす。

「くっ!!邪魔だ!!」

このままでは満足に動けないためにチャージショットで蔓を一網打尽にする。

「避けろよなぁ~~っ」

「ぐあっ!!」

攻撃の隙を突いてヘチマールはエックスにのし掛かって床に叩き付ける。

「弱っちーなぁ……ん?」

「ぐっ…何処までもふざけたような真似を…」

ふらつきながらも立ち上がるエックスにヘチマールは再び蔓を放った。

「ほれっ」

「同じ手を喰らうかっ!!」

蔓をかわすエックスだが、ヘチマールの狙いはそれではない。

先端が壁に深く突き刺さり、蔓を元に戻すとエックスに向かって凄まじい勢いで向かってくる。

「ひょほ~~ん」

そのままヘチマールの体当たりを喰らって吹き飛ばされるが、何とか体勢を立て直してバスターを向ける。

「くそっ…負けない…負けられない!!」

チャージショットを放って壁に刺さった蔓の先端を外して隙を曝していたヘチマールに直撃させた。

「どああああっ!!」

まともに受けたヘチマールは床に叩き付けられ、転がっていく。

「はあ…はあ…はあ…」

ようやく一撃を与えて荒く息を吐くエックスだが、ヘチマールは震えながら起き上がる。

「酷いよ……本気出すなよーっ!!くそぉ~~~…くそぉーーっ!!馬鹿ーーーっ!!」

ヘチマールのボディが赤く染まったかと思ったら、室内に雷撃が降り注ぐ。

「うわっ!!ヒステリーめっ!!」

いくつか掠りながらも雷撃をかわしてヘチマールに足払いをかけて転倒させると、ZXセイバーの切っ先を向けた。

「終わりだ。さあ、シグマの居所を教えろ…」

次の瞬間、背後から狙撃されてエックスは吹き飛ばされた。

「ぐっ…だ、誰だ…」

「ちょ!?Dr、何しているんですか!?」

「おー、すまんすまん。ちいーっと威力が強過ぎたかのう?」

「当たり前です!!エックスでなかったら大破してましたよ!?ファーストアーマーがあったからあの程度で済みましたけど!!」

恐ろしい会話を聞きながら狙撃された方向を見遣ると、そこにはケインとエイリアの姿があった。

「ケイン博士、それにエイリアも…どうしてここに…」

「どうして?随分と情けなくなったのうエックス。ヘチマールを良く見てみいや」

ケインに促されてエックスはヘチマールを見遣ると、ヘチマールは怯えた表情をしていた。

「(怯えている…?いや、騙されるな!こいつはシグマの…)」

シグマの部下であることがエックスに警戒心を抱かせるがそれを見たケインが一喝する。

「戯けっ!!先の戦いでゼロとルイン達を失いながらお主が学んだのは殺すことだけなのか!!?」

「っ!!」

「…………」

ケインの言葉に俯くエックス。

そんなエックスを心配そうに見つめるエイリアだが、ケインがヘチマールに歩み寄るのを見て慌てる。

「Dr!!危険です!!」

「大丈夫じゃよエイリア。こいつはただ善悪の区別が付いとらんだけじゃ。ほれ、大丈夫じゃからわしに体を見せてみろ」

怯えているヘチマールを安心させるように笑うと、警戒を解いたヘチマールはスリープモードに移行した。

「こいつはただ遊びたかっただけなんじゃよ。少々やり過ぎてしまったがのう。」

「え?遊んでただけ…?」

「そうじゃよ、誰だって自分の意思で生まれてくるわけではない。レプリロイドなら尚更じゃ、ヘチマールがこのように善悪がつかないように生まれてしまったのはヘチマールのせいではないんじゃよ。お主が先の戦いで学んだことを見せてもらおうとエイリアを巻き込んで来てみたんじゃが、怒りに駆られおって真実を見失ってしまうとはなぁ…ぬうぅ…ほわちゃああああっ!!」

「おうっ!?」

杖から工具を取り出してヘチマールの修理を開始するケインの修理速度に思わず引いてしまうエックスであった。

「エックス、以前のお主ならきっとヘチマールが善悪の区別がつかない子供であることに気付けたはずじゃ。それが今ではシグマの部下であることを理由に撃とうとした…先の戦いで両手一杯の“物”を得て……同じくらいの“物”を失ったからかのう」

その言葉にエックスは拳を握り締めた。

ゼロやルイン、先の戦いで失った仲間達の姿が脳裏を過ぎったからだ。

「あ、そうじゃ…ほれ!」

「え?」

「ヘチマールのDNAデータじゃ、これでヘチマールの武器が使えるようになる。お主が持っといた方が良かろう…よし、終わりじゃ…エイリア~肩揉んでくれ~」

「は、はい!!」

肩揉みを要求してきたケインにエイリアは肩を揉む。

エックスにはそれが孫娘に肩揉みを頼む祖父のように見えて微笑んだ。

「(少しだけ肩の力を抜こう…真実を見失わないように…)」

その後ヘチマールは保護され、ケインとエイリアをハンターベースに送った後に再び出動したエックスの表情は気を張っていた物とは違い、とても穏やかな物であった。 

 

第24話:Friend

ヘチマールが保護されてから数日後にシティ・アーベルに再びイレギュラーが出現したと聞いたエックスは現場に部下と共に急行した。

エックスはイレギュラーを発見するのと同時にZXセイバーで一瞬で斬り捨てる。

「他にはいないようだな(大分これにも慣れてきたな)」

ルインの形見であるセイバーを見つめるエックスに歩み寄る者がいた。

「お見事ですエックス隊長。」

腰にまで届く長い金髪を靡かせ、称賛しながらエックスに歩み寄るレプリロイド。

「ディザイア…」

「隊長、どうしましたか?」

「いや…」

彼はエックスに剣の扱いを教えてくれたレプリロイドなのだ。

イレギュラーハンターの人員がシグマの反乱によってかなり減った第17精鋭部隊に新しく配属されたサーベルの扱い長けたA級ハンターてある。

最初は独学でセイバーの訓練をしていたのだが、やはり1人では限界があるため、部下である彼に頼み、剣の教えを受けていた。

隊長であるエックスが部下であるディザイアに教えてもらうなど普通は有り得ないだろうが、エックスはルインの形見を1日でも早く使いこなしたかった。

今では最初は基本的な型すら出来てなかったエックスの剣術もZXセイバーの本来の所有者に匹敵するほどの腕前となっていたのだ。

「ありがとう…君のおかげでこの武器を使いこなすことが出来たよ」

「別に構いませんよ。隊長の命令は絶対ですから」

ディザイアは笑みを浮かべながら言うが、エックスは例え社交辞令でも感謝した。

「どうやらもう此処にはイレギュラーはいないようだ。みんなご苦労様。被害状況の確認が終わり次第撤収!!」

軽く周囲を見回したエックスの力強く凛とした声が響き渡る。

【了解!!】

部下達からの返事を受け、エックスは面会のためにケイン博士の研究所に向かうのだった。

「まさか、あの甘ちゃんハンターがあんな立派になるなんてな…」

「馬鹿、聞こえたらどうするんだ…エックス隊長だぞ隊長…。」

「しかし、隊長はあの戦い以来、目つきが鋭くなったよな…」

「ああ、まるであのゼロのように……」

同じ部隊に所属するエックスの同僚達が今のエックスに対して感慨深げに話す。

エックスはケインの研究所に到着すると、ゼロとルインの元に向かう。

そこには、カプセルに入れられた状態の大破したゼロとルインの姿があり、此処に来たのはあの日以来から一度も欠かしてはいない2人への任務の報告のためだ。

しかし今日は先客がいるようだ。

「あれ?エイリア、お見舞いかい?」

「エックス、ええ…そうよ。」

見舞いの品である造花を容器に入れるとエイリアは微笑む。

「この造花を置いていたのはエイリアだったんだ。ありがとうルインやゼロのために。俺は任務の終わりに来るからそう言うのは持って来れなくて」

「良いのよ。私が勝手にしてることだもの」

そう言うと、ルインが入ったカプセルを見つめるエイリア。

ルインよりもゼロの方が損傷が酷いために、比較的ゼロの方に手が回されている。

ルインもゼロも頭脳チップが奇跡的に無傷だったためにボディさえあれば復活出来るのだが、2人はブラックボックスの塊でケインですら解析出来ない部分が多く、2人の復活は今も難航している。

「そう言えば、エイリアとルインはどうやって知り合ったんだ?今まで聞けなかったけど」

「え?」

思わぬ質問にエイリアは目を見開く。

「いや、エイリアはレプリロイド工学員でルインは戦闘型の上に研究所に興味を示すような人じゃないから」

「そうねえ、研究に興味を示すルインなんて想像出来ないもの」

本人が聞いたら激怒しそうな内容の会話をしながらエイリアはエックスに自分とルインの邂逅話をすることにした。

「私がルインと会ったのは彼女がまだDr.ケインと暮らしてた頃よ。研究資料をDrに渡すために研究所を訪れた時に彼女と出会ったの。初めて会った時は驚いたわよ。あんなに喜怒哀楽が激しい人間みたいなレプリロイドなんて初めてだったし。」

「確かにね」

何となくルインの性格に圧されるエイリアの姿が容易に想像出来て笑ってしまう。

「それからDrが資料を確認し終えるまでの間に色々と話して…気付いたら妙に気が合ったのよ。危なっかしいところがあって放っておけなかったのもあるけど…あれ以来、私にとってルイン…大切な友人だったわ」

クスクスと笑いながら言うエイリアにエックスもそんな2人の姿が容易に想像出来たので微笑む。

そしてカプセルの中で眠るゼロとルインにエックスが語りかける。

「ゼロ、ルイン…今日もイレギュラーを破壊したよ……シグマが復活してから更にイレギュラーによる犯罪は増加する一方で減る気配が全くない…。でも俺は諦めない…君達が望む世界に連れていくために…また来るよ…今度はエイリアのようにお見舞いの品を持ってくるから…それじゃあ俺は失礼するよ。話してくれてありがとう」

「ええ、気をつけて戻るのよエックス」

エイリアと別れてハンターベースに戻るエックス。

次の出動までもう間もなくであった。

そしてとある場所でエックスを監視する者達がいた。

1人は老人、2人目は細身の青年、3人目は大男を思わせるレプリロイドだ。

「これがロックマンXの“力”だ…」

「そんなに気にする相手とも思えませんが」

「…………」

「お…俺の…鉄球でぇ……バラバ…ラ…なんだ…なあ」

老人がエックスの戦いの一部始終を見せた後に青年は無関心そうに言う。

言語中枢に異常か、元から電子頭脳の性能が低いのか大男は見た目に寄らず途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

「侮るなよ、この小僧、“奴”の忘れ形見故にな…」

「老婆心って奴ですか?」

「若造が!口を慎まんかぁっ!!」

青年のからかうような口調に老人は声を荒げる。

「興奮すると回路が切れますよ。大丈夫ですよ、私達はイレギュラーハンターの天敵、カウンターハンターなのですから」

「ふん…」

青年は優雅な足取りで部屋を後にし、老人は鼻を鳴らしながら大男を連れて部屋を後にしたのであった。 

 

第25話:Duel

 
前書き
漫画版で個人的に好きな回です 

 
突如、国全体を揺らす地震が発生し、山の頂上が崩れたかと思えばそこから更に山が生えると言う異常事態が発生していた。

丁度ヘチマールの特殊武器であるストライクチェーンの最終調整を終えたエックスは司令室に駆け込み、ケインとエイリアに異常事態について尋ねる。

「ケイン博士、エイリア…これは一体…」

「落ち着くんじゃエックス。今、エイリアが調べてくれておる…」

慌てるエックスをケインが宥める。

火山の状況を調べているエイリアだが、徐々にそれは深刻な物となる。

「何てことなの…!!」

「どうしたんだエイリア?」

「あの火山が噴火すれば地中で繋がる多くの火山も噴火を起こして、その火山灰は太陽を遮り、この国は死の国となるわ」

「何だって!?」

エイリアの説明にエックスは驚愕で目を見開き、ケインはエックスを火山に向かわせる。

「エックス!!シグマの野望を食い止めるんじゃあっ!!」

「はい!!」

エックスは司令室を出て、チェバルに乗り込むと目的地の火山に向かうのであった。

一方、火山の頂上では1体のレプリロイドが佇んでいた。

「こんな気の長い作戦は性に合わねえが、おかげで奴が来る。このフレイム・スタッガー様の元にな!!その時こそあの日の恨み、晴らさせてもらうぞ!!」

スタッガーと言うレプリロイドが拳を握り締め、頭部の炎の熱を上げながら叫ぶ。

このスタッガーは以前、エックスと決闘をしてエックスに敗北したと言う過去を持つ。

シグマの反乱以前、一部の特A級ハンターの間でB級とそれ以下のハンター達への謂れなき蛮行が行われていた。

それに対して強い正義感を持つエックスは反感を抱いてその中心人物であるスタッガーにゼロを立会人にした決闘をすることになったのである。

『俺が勝ったら、彼らへの行いを改めてもらうぞ』

『身の程って奴を教えてやるよ。その体にな!!』

2人が同時に駆け出す。

片や問題児とは言え、高い戦闘力を誇る特A級ハンターのスタッガーと、片やB級の落ちこぼれと言われているエックスとでは誰もがスタッガーの勝利を確信していた。

それはエックスに庇われたハンターたちも同様にだ。

しかし、ゼロとこの場にいないルインはエックスの勝利を確信していた。

スタッガーが繰り出した拳をエックスは最低限の動きで回避するとチャージを終えているバスターの銃口をスタッガーの顎に突き付けた。

このままエックスがバスターの引き金を引けば間違いなくスタッガーの頭部が消し飛ぶだろう。

『ぐ……』

バスターを突き付けられたスタッガーだけでなく、ゼロ達以外の誰もが目を見開く結果となった。

『勝負あったな』

ゼロがエックスの勝利を宣言すると、敗北したスタッガーが憤る。

『何ーっ!!ゼロ!俺が負けたと言うのか!!』

『そうだ、潔く負けを認めろフレイム・スタッガー。曲がりなりにも特A級ならな。』

憤るスタッガーを鋭く睨み据えるゼロに何も言えなくなり、スタッガーは無言となった。

そしてシグマの反乱の際にハンターを脱隊し、エックスへの復讐の機会を待っていたのである。

「俺は負けちゃいねえ…さあエックス、マグマの洗礼を切り抜けて俺の元まで来い!!」

そしてエックスは壁蹴りを駆使して下から迫るマグマかは逃げていた。

「まさか、敵の基地の中でマグマと追いかけっこをするとはな!!」

いくら熱に高い耐性を持ち、ファーストアーマーで防御力を高めたエックスのボディでもマグマの熱は耐えられないので急いで出口まで急ぐ。

足場にする岩に足を引っ掛けるが、足場の岩が崩れてマグマに落下していく。

「(まずい!このままではマグマに飲み込まれる…よし、この武器を!!)ストライクチェーン!!」

バスターから鎖を射出し、出口の岩に先端を食い込ませるとそのまま鎖を元に戻すことで出口にエックスが引っ張られる。

「ふう…ヘチマールの武器が無ければ危なかったな…用心しなければ…」

ヘチマールの特殊武器によって救われたエックスは安堵の息を吐いて先に進む。

「ここに敵の本陣があるはずだ…恐らくマグマの真ん中にある岩山がそうだろう…行くか!!ストライクチェーン!!」

鎖の先端を岩に突き刺して本陣である岩山に向かい、その内部に侵入するエックス。

そして岩山の中枢とも言えるマグマのコントロールルームに入ったのだが…。

「誰もいない…ここにボスはいないのか?ここでマグマをコントロールしているんだろうが、下手に破壊するとどうなるか分からないからな…仕方ない、一旦…戻るか…」

一度任務を中断してハンターベースに帰投しようとするエックスだが、何かがぶつかるような音に足を止めた。

「ん?上!?…ぐあっ!!」

回避する暇もなく、何者かの突進をまともに喰らって上空に向かって跳び上がり、天井で跳ね返って床にエックスを叩き付けようとする。

「叩き付け……ぐはあ…っ!!」

床に叩き付けられたエックスは苦悶の表情を浮かべるが、エックスを床に叩き付けた存在は即座にエックスから離れると高笑いした。

「隙・隙・隙・隙・隙だらけだぜーっ!!」

「お前はフレイム・スタッガーか!?いや…しかし以前とは姿が違う…」

ボディの形状が以前の物とは違うことに気付いたエックスは表情を顰めた。

「貴様を確実に倒すため、シグマに改良して貰ったのさ!!」

シグマに改良してもらったことでより強力な炎と高い格闘能力と機動性、耐久力を得たスタッガーはエックスを鋭く睨む。

「俺を殺すため…まさかまだあのことを………」

「そうだ!!貴様の命で俺の恥を拭う!!」

あの日から特A級であるにも関わらず、B級に負けたことで同じ特A級のハンター達から侮蔑の視線を向けられたスタッガーは復讐の時を待っていたのだ。

「そ…そんなことのためにシグマに魂を売ったのか!!」

しかしそれはエックスからすれば完全な逆恨みであり、逆恨みのためにシグマに魂を売り、仲間を裏切ったスタッガーの愚行は到底、許せるものではない。

先制攻撃でチャージショットを放ってスタッガーに直撃させる。

「んぐっ!!くくく……」

チャージショットをまともに受けて幾らか揺らいだものの、次の瞬間には嘲笑を浮かべていた。

「!?」

「痒い痒い痒ーい!!笑う!笑う!笑う!笑っちまうねーっ!!」

チャージショットが容易く掻き消されたことにエックスは驚愕し、スタッガーはエックスに火炎弾を連続で飛ばしてくる。

これがスタッガーが好んで扱うラッシングバーナーである。

威力自体はファーストアーマーの防御力で耐えられるが、連射と速射性が高いこの技はジワジワとエックスにダメージを蓄積させていく。

「くっ…」

「チッ!出来損ないのレプリカとは言えシグマを倒した装備なだけはあるようだな!!」

どれだけ火炎弾を撃ち込んでも倒れないエックスに苛立ちが募り、踵落としを叩き込んで床に叩き付ける。

「うぐっ!!」

「さあ、詫びろ!!」

「ぐあっ!!」

倒れたエックスを足蹴にするスタッガーだが、エックスは何とか起き上がろうと腕に力を入れるが、力の差があって起き上がれない。

「起きたいのか?起こしてやるぜっ!!」

「ぐはっ!!」

エックスを蹴り上げ、無理矢理に起こした体にアームハンマーを叩き込んで再び床に叩き付けた。

「でもすぐにおねんねだけどな!!」

「う…く…っ」

「さあてと、詫びる気にはなったか?詫びたところで見逃さねえけどよっ!!んっ!?うおっ!?」

突如起きた衝撃にスタッガーの体が浮き上がり、エックスはバスターを浮いているスタッガーに向けた。

「ストライクチェーン!!」

「っ!?」

鎖の先端がスタッガーの右腕を掴み、そのまま引き寄せると左手には逆手に構えたZXセイバー。

先程、チャージセイバーを床に叩き込んで衝撃波でスタッガーを浮き上がらせたのだ。

流石のスタッガーも上空ではまともに動けないためにセイバーによる攻撃をまともに受けることになり、右腕が斬り落とされた。

「ぐ…おおおっ!!?」

「許さない…」

「ぐっ!?」

背後にいるエックスを睨むが、エックスもまた怒りに満ちた目でスタッガーを睨む。

「俺を恨むのは勝手だが、しかし罪のない人々まで巻き込むのは許さない!!」

そのエックスの目にスタッガーの怒りが臨界点に達し、そしてスタッガーも自覚していない感情を抱かせた。

「こ…このぉ…ガキャあぁ。殺して・殺して・殺して」

出力を最大まで上げ、身に纏う炎が蒼に変化するのと同時にエックスに突進し、上空に跳び上がった。

「うぐっ!?」

「この良い子ぶりっ子野郎がぁーーーっ!!おめえのそう言うとこが、大・大・大・大・大っ嫌いなんだーーーっ!!」

そして天井で跳ね返って床に向かって急降下。

最初に繰り出したものとは比較にならない勢いと威力でエックスは床に叩き付けられた。

「あ…あ…うぐ…」

ファーストアーマーで防御力を底上げした状態であっても身動き出来ない程のダメージを受ける。

「ふん、これに懲りたら正義漢ぶるのは止めるんだな……もう、生きとらんだろうがな」

「勝手に…殺すな…!!」

「ん!?エックス、貴様まだ!?」

手加減など一切していないと言うのに起き上がったエックスにスタッガーは驚愕する。

「俺は…負けられないんだ…お前のような、力で相手を捩じ伏せようとするようなイレギュラーにはな!!」

ダメージを受けてもエックスの眼光は少しも衰えない。

「その目が、その目がっ!その目がよぉーーーっ!!」

拳に炎を纏わせてエックスに殴り掛かる。

「(ストレートだ。間合いを外して…)」

「ちっ!!」

間合いを外すために下がろうとするエックスの足を踏んで動きを止めた。

「っ!!」

「気に入らねーーっ!!」

スタッガーの拳は何とか直撃は避けたものの、熱によってエックスの目…アイカメラの機能を低下させる。

「っ……」

「これで胸糞の悪い目ん玉ともおさらばだ!!……ヒッ!!」

高笑いしていたスタッガーだが、エックスの閉じられているはずの目の眼光に気圧される。

「何だよ…何だよ…何だよ何だよその目はーーーっ!!う~~~っ!!」

地団駄を踏みながらスタッガーは拳に炎を纏わせ、エックスはバスターを構えた。

いやしくもあの決闘の再現である。

天井から石が落ち、それが床に落ちたのが合図となって同時に動いた。

2人はすれ違い様に一撃を放って互いに背を向けたような状態となる。

少しの間を置いてエックスの左肩のアーマーが床に転がり、エックスは傷口を押さえて膝をつき、力なく倒れた。

「ふふぇ、ふぇふぇふぇ。エックス…貴様のよぉ、負け・負け・負け・負け!!大負けだーーーっ!!!」

復讐の成就に歓喜にするスタッガーは倒れ伏すエックスの頭部を踏みつける。

「見たか!?これが特A級の本当の実力だあ~~!!あっ、しまったぁ~~。もう見れねぇ~~かぁ~~っ死んじまったもんなぁ~~~!!」

勝利の余韻に浸るスタッガーだが、体に異常が起き始めた。

「あ……?あ~~~っ!!?」

スタッガーの纏っていた炎が本人の意思とは無関係に突然消えてしまい、スタッガーは狼狽える。

「俺…俺、俺の……炎が消えていく~っ!!」

次の瞬間には胸から炎が噴き出す。

「何だ!何だ!!何だぁあ~~~!!!止ま・止ま・止ま・止ま・止まらねぇ~っ!!」

抑えようとしても炎の勢いが増すばかりで噴き出す炎は止まらない。

「俺が…破壊した」

傷を押さえながら立ち上がり、スタッガーの異常の原因を説明する。

「てめ…」

「俺の放った特殊武器…ストライクチェーンでお前のエネルギーコントロールシステムを破壊したんだ」

「吹か…すなよぉ~…俺の体に傷は無かった!!しかもてめえ、視界がボケてるじゃねえかぁっ!!」

実際にシステムを破壊されているにも関わらずスタッガーはそれを認めようとはしない。

しかしいくら目を潰されても狙う方法は存在する。

「…確かにお前の体は俺のチャージショットの直撃を受けても耐えられる程に頑丈だが、俺のダッシュの速度とお前自身の速度が加算され、超至近距離でのストライクチェーンによる物理的衝撃によって内部メカは破壊されたんだ!!それに視覚に障害があっても聴覚でエネルギーコントロールシステムの位置は掴める!!お前の敗因は自分の力を過信し過ぎたことだ(尤も、前の戦いでの敵にもその過信がなければ俺は先の戦いで生き残れなかったが…)」

「そ……そんな…B級が特A級に二度も勝つなんて…」

胸だけでなく全身から炎が噴き出し始める。

「…………」

「俺は……俺は……認めない!認めない!認めない!認めなぁ~~~…」

最後まで敗北を認めようとはせず、スタッガーは自身の炎に飲み込まれて機能停止して倒れ伏した。 

 

第26話:ZERO

スタッガーを倒したエックスはアイカメラの機能が完全に復活するまで待つと、燃えているスタッガーの周囲に転がるDNAデータを回収し、そしてシグマの所在を知るためにスタッガーの残骸を回収をエイリアに頼もうとした時だった。

「っ!?」

背後から殺気を感じて飛び退くと、衝撃波が飛んできてスタッガーの残骸だけでなく壁と火山のコントロールシステムを両断し、少し離れた山に衝撃波が直撃した。

「な…?」

あまりの破壊力に言葉を失うエックスに背後から声が掛かる。

「今のはほんの挨拶代わりです」

「っ!!」

声をかけた青年がビームサーベルの光刃を消しながら柄を腰に装着する。

「遅れましたが、取り敢えず自己紹介を……私はアジール」

「わしがサーゲス」

「もう1人、バイオレンと言うこう言うのがいますが、今日のとこは別件で……挨拶はまた後程と言うことで……」

両手でバイオレンの特徴を教えるアジールだが、エックスは警戒を緩めずにアジールとサーゲスに身構える。

「(何者なんだ?こいつらは…?)」

「その様に胡散臭い顔をしないで下さい。我々はシグマ様直属の親衛隊、カウンターハンターなんですよ」

「(シグマ直属!?カウンターハンターだと!?)な…ならばこの場で…」

親衛隊である彼らを倒せばシグマ側の戦力を大きく削ぎ落とすことが出来るため、スタッガーとの戦闘直後であるとは言え、エックスは出来れば彼らを倒しておきたかった。

「いえいえ、今日のところは顔見せ。勝負は次の機会に取っておきましょう」

サーゲスの隣から背後に移動したアジールの言葉にエックスはチャージを終えたバスターを向ける。

「ふざけるなっ!!」

チャージショットを放つが、2人は転送によって攻撃を回避するのと同時にこの場を脱出した。

「もう1人の我々の仲間と言うのは気になりませんか?」

「っ!?」

アジールの言葉にエックスが疑問符を浮かべるが、エイリアからの通信によってその意味を知ることに。

『エックス!聞こえる!?Dr.ケインの研究所にイレギュラーが現れて、Dr.ケインが研究所に…』

「何だって!?」

『急いで急行して下さい!!』

「了解!!」

エイリアによってケインの研究所付近に転送され、急いで破壊された扉から中に入る。

「奴の言っていたバイオレンとか言う奴の仕業か…!!ケイン博士は無事なのか!?」

そして研究所内を捜し回り、ゼロとルインのカプセルが安置されている部屋に辿り着く。

そこに生命反応があったためにエックスは急いで部屋に入る。

「ケイン博士!!ご無事ですか!?こ…これは!?」

部屋の中を見たエックスは愕然となるが、倒れているケインの姿を発見し、急いで駆け寄る。

「ケイン博士、大丈夫ですか?」

「おお…エックスか…わしは大丈夫じゃが……すまん!!ゼロが…」

「え!?まさか!?」

ゼロのカプセルのあった場所を見るとゼロのカプセルが破壊され、ゼロのボディが失われていた。

「ルインは何とか別の場所に隠せたが、ゼロは間に合わずにイレギュラーに奪われてしもうた…すまんエックス…」

「ゼロ…」

ゼロが敵の手に落ちてしまったことにエックスは思わず拳を握り締めるのであった。

そして一方で、シグマの基地ではシグマが新たなボディを使っての実戦訓練をしていた。

現れたメカニロイドを爪で両断し、次に迫ってきたメカニロイドも引き裂こうとするが、その動きはどこか以前のボディと比べて鈍い。

右腕に異常が発生し、動きが悪くなって攻撃を外してしまう。

「チッ!外した!!んぐぁっ!!」

攻撃を外してメカニロイドの反撃が掠るものの、今度は攻撃を当てて破壊した。

『お見事でございますシグマ様』

訓練を終えたシグマだが、その言葉に苛立つ。

「お見事……だとぉ…?」

その直後、異常が起きている右腕を引き千切り、それを投げ捨てた。

「不良品の体で何が出来る!!私の体がバグに侵される前に水晶を集めるのだ!!レプリロイドのエネルギー源であり、能力を高めるエネルゲン水晶をなーーーっ!!」

シグマのボディはバグに侵されており、それを克服するためのエネルゲン水晶の収集を急がせる。

エックスとシグマ軍との3戦目は間近である。 

 

第27話:Glitteing Death

 
前書き
マイマイン戦 

 
ゼロがシグマ軍の手に落ちてから数日後、エックスはクリスタル・マウンテンに向かっていた。

「エイリア、ここがそうなのか?」

『ええ、クリスタル・マウンテンで正体不明のエネルギーを感知したわ。Dr.ケインもこの時期に現れたと言うことで調査する価値は充分にあるとのことよ』

「分かった、まずはこの洞窟を調べてみるよ」

洞窟の中に入ると彫刻が彫られた水晶で出来た扉が道を塞いでいる。

扉にはシグマのエンブレムが彫られていた。

「成る程、シグマが関係しているのは間違いなさそうだよエイリア。」

『そう、先に進めそう?』

「いや、開きそうにないから破壊して進む。オペレートを頼むよエイリア…もしかしたらゼロの手掛かりが得られるかもしれないしね」

バスターで扉に穴を開けると洞窟内を駆け出す。

しばらく進むと採掘用メカニロイドが水晶を採取しているところを目撃している。

「これは…」

『凄い…何て量のエネルゲン水晶なの…?純度もかなりの物だし、もしこれが…』

「ああ、シグマの手に渡ったら大変なことになる。」

エックスはエネルゲン水晶がシグマに渡らないように採掘用メカニロイドを破壊して奥へと進んでいく。

ある場所では1体のカタツムリを模したレプリロイドがメカニロイドが埋め込まれた水晶に身を委ねていた。

「あは~~~っ、君の美しさは…輝きは…僕の醜さを包み込んでしまう~~~。」

レプリロイドはメカニロイドの水晶に頬擦りする。

「“美”、それは…永遠そのもの。幾星霜経ても変わらぬ唯一絶対のもの。君は“美”そのものだよ~~~」

一方、エックスは洞窟内を駆け回っていたが、奥に進むごとに警備は厳重になっていき、エックスは攻撃を受けてしまう。

「ぐっ!!」

攻撃を何とか耐えるエックスだが、ファーストアーマーはスタッガーとの戦いでのダメージが酷く、修復中のために今はノーマル状態なのだ。

「これはリフレクザーか!?無人だと思って油断した。これではゼロや鉱山を調べる前にやられてしまう!!」

リフレクザーの他にもメカニロイドはおり、1体1体相手にしていたら時間が掛かり過ぎる上に体力も消費してしまうために攻撃をかわしながらエックスは奥へと進む。

「ここのボスを叩けば…ん!?ここは、水晶の間!?」

巨大な水晶がある場所に着いたエックスは周囲を見渡す。

徐々にエネルギー反応は高くなっているが、ボスらしき影は見当たらない。

次の瞬間に地響きが起こり、巨大な水晶が浮遊し始めた。

「何だこれは…リフレクザーの強化型か?」

『そのようね、リフレクザーの能力を発展させたメカニロイドで、どのような攻撃も受け付けない支援メカを操り、そのメカは水晶しか反射出来ないリフレクザーと違って岩や壁にも反射出来るレーザーが撃てるようだわ』

「成る程な!!」

支援メカが放ったレーザーが岩や壁に反射されたことを確認したエックスはダッシュで反射されたレーザーをかわす。

しかし、回避が出来たのは最初のみで反射の軌道は読みにくく、徐々にエックスに当たり始める。

「メカには攻撃が効かないとなると…あの水晶に埋め込まれたメカニロイドを狙えば!!」

すぐさま水晶に埋め込まれたメカニロイドにチャージショットを当てる。

しかし、大型なだけあってチャージショット1発では決定打にはならないようだが、それでも水晶に罅が入った。

「よし!俺が先に倒れるか、お前が先か体力勝負だ!!」

反射されたレーザーの軌道は回避は困難。

ならば肉を切らせて骨を断つ。

ダメージ覚悟でショットを連射し、メカニロイドにダメージを蓄積させていく。

そして水晶の罅は広がっていき、それを見たエックスはとどめのチャージショットを炸裂させる。

チャージショットでメカニロイドを破壊したのと同時に声が響いた。

「声だ…恨みのような…悲しみのような…」

「これもまた“美”…か」

「え!?」

声に反応して振り返ると、カタツムリの殻のような物が此方に転がってきた。

「美とは永遠…それ故にその終わりは想像もつかぬ“艶”を持つのか…貴様のおかげで新たなる“美”が分かった。然りとて礼は言わない!醜い僕のたった一つの心の拠り所を砕いた貴様を許しはしない!!絶対にぃぃ!!」

殻のような物から姿を現れたレプリロイドのデータを検索する。

レプリロイドの名はクリスター・マイマイン。

出自と所属は不明だが、水晶を操る力…特に対象の動きを鈍らせると言う能力を持つ危険なイレギュラーとして認識されている。

マイマインの口から放たれた液状の水晶弾がエックスに直撃し、エックスを水晶の中に閉じ込めた。

「醜い死に方だ…こんな醜い死に方をする奴に僕の…僕の……心の友は倒されたのか………」

メカニロイドの残骸の元に向かい、膝をつくマイマインの視界に比較的大きめの水晶の欠片があった。

「友の…欠片……もう、君の輝きにこの身を委ねることは出来ないのか…ならば…君の輝きをこの身の中に閉じ込めよう…これで何時までも一緒にいられる…」

マイマインはその欠片を拾って飲み込んだ。

友と呼んだメカニロイドのことを体の中に閉じ込めるために。

しかし、エックスを閉じ込めた水晶が一気に溶解し、エックスは水晶から抜け出した。

「うおおおおおっ!!!」

スタッガーの炎属性の特殊武器であるラッシングバーナーで水晶を溶解させたのだ。

「チッ!死に損ないがーーーっ!!砕いてやる!!」

マイマインは殻に籠ると、バーニアを噴かしてエックスに突進した。

「くっ!!」

エックスはマイマインの突進をダッシュでかわす。

「くう~~~…」

ダッシュでかわされたことで機動力ではエックスに敵わないと悟ったのか殻から体を出すと特殊なエネルギーを角から発した。

「そう簡単には……や…ら…れ…は…し…な…い……(な、何だ!?体が動か…いや、鈍くなっている…まさかこれが!?)」

そしてエックスのバスターを水晶弾を当てて、銃口を塞ぐ。

「僕の“力”の一つに“動きを鈍らす”と言うのがある……長い時間は保たないが、君を…殺すくらいの時間は…充分あるっ!!」

エックスの肩に手を置くと、そのまま指を食い込ませる。

「痛いかエックス?でも僕の心はもっと痛かったんだよ~~~」

「(え?)」

睨みと共に放たれた言葉にエックスは驚愕する。

「マグネクォーツの輝きに身を委ねれば、この身の醜さすら僕は忘れられたんだ!!分かるか!?それは至福の時だった!!それを…貴様は奪った!!!」

強引に肩のパーツを引き千切り、マイマインは再び殻に籠るとエックスに突進した。

「(待ってくれマイマイン。俺は知らなかったんだ…君の気持ちを……!!)」

凄まじい勢いで向かってくるマイマインにエックスは思わず恐怖心を抱いた。

「(死ぬ!?死んでしまう!!死にたくない!!)」

丁度マイマインの技の効力が尽きてエックスの体は自由になり、そして体は無意識に動いてバスターをマイマインに向けた。

マイマインの突進の直撃によってバスターを覆っていた水晶が砕けてチャージされていたエネルギーがマイマインに炸裂した。

超至近距離で放たれたチャージショットは見事に殻ごとマイマインを撃ち抜き、絶命させたのであった。 

 

第28話:Glitteing Death Ⅱ

 
前書き
マイマインを撃破したエックス。 

 
死への恐怖心に勝てず、無意識にチャージショットをマイマインに直撃して破壊…殺してしまったエックスは体を震わせた。

そう、まるで新人時代に初めてイレギュラーを撃った時のように。

「く…っ…うああああああっ!!!」

膝をついて涙を流すエックスの叫び声が洞窟に響き渡る。

『エックスよ…』

「え?」

『泣くでないエックスよ』

目の前にカプセルが出現し、優しい表情を浮かべてエックスを見つめるのはライト博士のホログラムであった。

「ライト…博士…」

『エックス…わしのことを思い出したのか…』

エックスがファーストアーマーのパーツを返しに来た際にはライト博士は姿を現さなかったので、これがライト博士との僅かな記憶を取り戻した記憶を取り戻したエックスとの会話であった。

「俺は…博士に与えられたこの力を正しく使えなかった…マイマインの大切な物を奪った挙げ句に…彼も…彼を撃つつもりはなかったんです…でも…恐怖心に勝てませんでした……」

あのままでは、エックスはマイマインによって破壊されていた。

誰もが仕方ないと思うだろうが、優しいエックスにはそんな逃避は出来ない。

『……………』

「マイマインに詫びるどころか……俺は……俺は……俺は此処に来てはいけなかったんだ。」

涙を流し続けるエックスにライト博士は何も言わずに見つめていたが、しばらくして口を開いた。

『………エックスよ……お前の取った行動の善悪は今は問うまい……しかしお前は一つのことを確かに学んだ……人を傷付ける“悲しみ”、“痛み”……そう、相手と同等の“心の傷”を……』

カプセルから光が放たれ、エックスに吸い込まれていき、エックスの体は元通りとなる。

同時にパワーアップも行ったのか、エックスのヘッドパーツが変化を起こし、ファーストアーマーのヘッドパーツとは違う機能を持った新たなヘッドパーツとなる。

『さあ、立つのだ…でもマイマインの“心の傷”を自分の“傷”として…決してそこ“心の傷”を忘れるでないぞ……私の最後の息子…世界の希望よ』

立ち上がったエックスの表情は涙を流しながらも何処か力強かった。

「はい…!!」

そしてシグマが潜んでいるシグマの基地ではクリスタル・マウンテンがエックスに奪取されたと言う報告を受けたシグマがグラスを握り砕いた。

「鉱山がエックスに奪取されただとお~~~っ」

「まことに遺憾ながら……」

怒れるシグマにサーゲスはそう答えると、シグマは冷静さを取り戻して部下から新たなグラスを受け取る。

「採取したエネルゲン水晶で最高のボディを造れ」

「はっ」

「それと……」

「御案じめされるな」

シグマの言葉を制すると、サーゲスは口元を押さえて笑い始める。

「ククク…承知しております…シグマ様も余興好きですな……お言い付け通りに仕上げていますよ。エックスを葬る最凶のハンターに!!」

扉が開くと光に照らされて良く見えないが、細部こそ違えどゼロに酷似したシルエットが浮かんでいた。

そしてエックスはハンターベースに戻るとエイリアに出迎えられた。

「お帰りなさいエックス…あら?エックス、そのヘッドパーツ…」

微笑みと共に告げられた言葉にエックスはマイマインのことで傷ついた心の痛みが和らぐのを感じた。

エイリアはエックスのヘッドパーツが変化していることに気付いて興味深そうに見つめる。

「うん、ただいまエイリア…ライト博士が俺にヘッドパーツを与えてくれたんだ」

「そうなの…バックアップを取りたいところだけど、今はゆっくりと休んで」

エイリアはケインからエックスの出自をある程度聞いており、エックスがライト博士の遺作であることと、前回の戦いでのエックスの強化アーマーがエックスのために用意されたライト博士製の物であることを聞かされているのだ。

何故既に故人であるはずのライト博士がホログラムと言う形で存在しているのか、ライト博士のことで色々と聞きたいことは1人の研究者として山程あるが、今でなくとも良いだろう。

エックスが生きていればライト博士について色々なことを聞けるのだから。

「それじゃあ、ケイン博士への報告を終えたら休むよ」

「ええ、次の任務までゆっくり休んで…次の任務も必ず帰ってきて。私はあなたに聞きたいことが沢山あるんだもの…そうそう、ファーストアーマーの修復が終わったから次の任務には持っていけるわよ。ライト博士の新しいアーマーが用意されてるならすぐに御役御免になりそうだけど」

「そんなことないよ、君の用意してくれたアーマーのおかげで俺は多少の無茶が出来るんだから…まだまだ使えるよ…それじゃあまた」

「ええ、また」

エックスの言葉にエイリアは微笑みながら作業に戻り、それを見たエックスもケインへの報告に向かうのであった。 

 

第29話:Antlion

 
前書き
次はダチョウだ。 

 
西暦21XX年:5月15日未明。

一発の超巨大爆弾が一つの国を死滅させた……。

だが、この爆弾の発射場所の発見は世界中のあらゆる防衛組織を以てしても不可能であった。

しかし、唯一イレギュラーハンターだけはその場所の確定に成功していた。

『エックス、聞こえる?マップデータを送信したけどそこは砂嵐が酷くて視界は最悪よ。岩などの障害物に気をつけて!!通信妨害がされているのか、電波状況も段々悪くなってきてるから通信も出来なくなるわ』

「分かった。気を付けるよエイリア」

エックスはケインの指示でチェバルに乗り込んで爆弾が発射されたオム砂漠を駆けていた。

「凄い砂嵐だな…問題の場所はこの砂嵐の先なわけだが、砂嵐が酷すぎて新しいヘッドパーツのレーダー機能も役に立ちそうにないな。」

ライト博士からの説明は無かったが、プログラムの送信と共にヘッドパーツの能力の詳細が電子頭脳に送られており、エックスはヘッドパーツの能力を理解することが出来ている。

ヘッドパーツにはエネルギー感知器の精度を大幅に強化したエネルギートレイサーが搭載されており、かなりの距離が離れていてもそのエネルギー反応を逃さない。

しかし、砂嵐によって強化されたエネルギートレイサーも役に立たない。

「酷い砂嵐だが、このチェバルの機動力なら突破出来るはずだ!!」

機動力を大幅に強化したチェバルならどれだけ酷い砂嵐でも突破は可能なはずなのでエックスはチェバルで突撃した。

一方、シグマの基地ではゼロの調整が行われている部屋で2人のレプリロイドが会話していた。

「この計画が成功すればこいつも用なしだな。」

「何だよ、そんなに強いボスがいるのかよ?」

「知んねえのか?オストリーグさっ」

「なるほどな」

その名を聞いた瞬間、ゼロが僅かに反応したことに2人は気付かなかった。

「奴は親友のイーグリードをエックスに惨殺されたと吹き込まれてるから生半可な執念じゃねえぞ」

「実際はイーグリードはゼロに破壊されて、最初はシグマ様に歯向かっていたことも知らずにな」

「「“馬鹿と鋏は使いよう”って奴かーーーっ!?」」

2人が笑いながら言った瞬間にゼロは完全に意識を取り戻してケーブルを外した。

「良いことをおしえてやろう。」

「ゼ…ゼロおぉっっ!!?」

「“馬鹿”には使い道があるが、貴様達みたいな“屑”には無いんだよな。」

そう言った瞬間、ゼロの拳が叩き込まれた。

そして一方、オム砂漠にいるエックスは凄まじい風速に振り回されていた。

「くっ…何て風速だ。流されてしまう。チェバルのレーダーがおかしくなり、ヘッドパーツのエネルギートレイサーも正常に機能しないとなると、この砂嵐は自然発生の物じゃないな……ん!?」

砂嵐のせいで良く見えなかったエックスは目の前に障害物らしき物があることに気付くのが遅れてしまった。

「くっ!駄目だっ!避けきれない!!」

急いで曲がろうとするが、元々ターン性能に難があったチェバルでは回避出来ずに激突してしまった。

エックスは激突の直前に脱出したので無事であった。

「しまった…チェバルが壊れてしまったこれでは移動が難しくなって…ん?」

しばらくすると、砂嵐が止んで澄みきった青空がエックスの目に映った。

「空だ…そうか、これは砂嵐を起こすための装置だったのか…こんなに青い空を隠すなんて……もしルインがいたら、あの空戦用のアーマーで飛び回っていただろうな」

そんな彼女の姿を想像してエックスは思わず笑みを浮かべて砂嵐発生装置を見遣ると、あることに気付いた。

「これは基地?どうやらこの装置は基地に繋がっていたようだな」

エネルギートレイサーで近くに敵がいないかを確かめると、基地へと飛び降りた。

場所は戻ってシグマの基地ではゼロが相手を殴り飛ばしてオストリーグの居場所を吐かせていた。

「さっさと言わないから痛い目に遭うんだよ。オム砂漠か…この基地からだと此処から5~6時間か…あいつの怒りを受けなければならないのは俺だ。あいつの為にもオストリーグは俺が止める!!」

飛行艇を奪うために駆け出すゼロだが、目の前の光景に足を止めた。

「そんな簡単に行かせてはくれないか。何せ俺はエックスに対しての切り札みたいな物だからな」

レプリロイドとメカニロイドの大軍がゼロに迫ってくるが、ゼロは不敵な笑みを浮かべて背部のバックパックから新装備であるビームサーベル・Zセイバーを抜いた。

そしてオム砂漠の地下基地に侵入したエックスはメカニロイドを返り討ちにしていた。

「これで粗方片付いたな…流石に基地の中はガードが固いな…次が発車される前に爆弾を破壊しなくては」

ダッシュからの跳躍で飛び越えようとするが、ファーストアーマーを纏っていたことが災いし、潜んでいたメカニロイドがエックスの前に現れた。

「ぐはあっ!!」

そして狙撃されてしまい、エックスは鋭利なトゲ床に落ちそうになる。

「ストライクチェーン!!」

咄嗟にストライクチェーンを使うものの、ほんの僅かだけ届かない。

「まずい、このままでは…くそっ!!」

このままでは串刺しになってしまう。

しかしその時、ファーストアーマーが解除され、エックスのフットパーツが変化した。

フットパーツに増設されたバーニアによって空中であるにも関わらずにダッシュ移動が行われた。

「くっ!!」

突然のことに驚きながらもエックスはストライクチェーンでメカニロイドを破壊した。

「このフットパーツは…?」

『エックスよ…』

「ライト博士!?」

突如聞こえてきたのはライト博士の声で、どうやら彼がエックスにフットパーツを与えて助けてくれたようだ。

『戦いを拒むお前をパワーアップするのは忍びないが……しかし許しておくれ…お前が正しい心を持ち続けていれば、きっとその“力”がお前を導いてくれるじゃろう。そのフットパーツを装着したことで空中でのダッシュ移動…エアダッシュが出来るようになり、機動力が大幅に向上する。これにより今まで進むのが難しかった場所への移動も可能になるはずじゃ。辛いかもしれぬが今は耐えて欲しい…エックス』

ライト博士の説明が終わるのと同時にエックスにメカニロイドの軍勢が迫る。

即座にファーストアーマーに換装するとラッシングバーナーを発射して薙ぎ払う。

「分かっていますライト博士……俺は絶対に道を誤りません。あなたとの約束のために、そして俺の信じる“正義”の名の元に!!」

一方、ゼロの方でも激闘が繰り広げられていた。

セイバーでメカニロイドを薙ぎ払いながら周囲を見回すと溜め息を吐いた。

「全く、俺1人に続々と戦力を投入しやがって。気持ちは分かるがな、そんなに俺が怖いなら甦らせるんじゃない!!」

強化されたことでより強力になったアースクラッシュを炸裂させる。

そしてエックスも巨大爆弾のある場所に辿り着き、発射されそうな爆弾に取り付いて破壊を試みる。

「ここで2発目を発射させてたまるか!!絶対に止めてみせる!!」

チャージショットを放って爆弾を破壊すると、爆弾は大爆発を起こしてエックスは外に弾き飛ばされる。

「くっ!!」

ファーストアーマーを纏っていたことで爆発によるダメージは最小限に抑えられたエックスは閉じていた目を開くと視界に広がる大空に目を奪われる。

「(これは凄いな…青くて、広く。力強さと優しさが感じられる…成る程、空戦に特化したレプリロイドが何より空を飛ぶのを好む理由が分かった気がする)」

そして地面に落下したエックスは清々しいくらいに晴れ渡った青空を見て守ったことに誇らしげな笑みを浮かべたのであった。 

 

第30話:Past

爆弾を破壊したエックスはハンターベースに通信を入れて転送してもらおうと立ち上がった時であった。

「ん!?」

殺気を感じて振り返ると、凄まじいスピードで此方に迫ってくるレプリロイドの姿があった。

「あれは…!?」

バスターを構えようとするが、それよりもレプリロイドが跳躍した。

「上…ぐっ!?」

降り注ぐ衝撃波の刃にエックスは直撃は避けたものの、腕に僅かだが裂傷が刻まれる。

「(何て切れ味なんだ。もしファーストアーマーの防御力が無ければ危なかった…!!)まさか、ここのボスか!?うあっ!?」

反応する暇もなく、エックスは体当たりを受けて吹き飛ばされる。

「クァックァックァッ、俺の嫌いな空を剥き出しにした上にミサイルまで撃ち落としやがって。エックスよ~てめえはぁ…」

此方を睨み付けてくるレプリロイドの姿にエックスは目を見開く。

「お、お前は…行方不明になっていた元第7空挺部隊所属のソニック・オストリーグ!?どうして此処に…」

「どうして…だと…?クァックァックァッ…!!エックス…てめえは本当にとことんムカつく野郎だぜぇーーーっ!!!」

血走った目を此方に向けながらオストリーグは突撃し、エックスを自身の刃で斬りつけていく。

「ぐああああっ!?」

「飛べなくなった俺を救ってくれたシグマ様に楯突く奴はぁ、許さねえっ!!死ねええええっ!!エックス!!」

次に両肩の刃を飛ばしてエックスに裂傷を刻む。

「うわあっ!!(な、何て切れ味だ。ファーストアーマーの装甲を斬り裂くなんて…!!)」

「中々頑丈なアーマーだが関係ねえ!!こんなもんじゃ済まねえんだよ!!貴様も同じように百八に斬り刻んでやるぞ!!」

エックスを斬り刻みながらオストリーグの脳裏を過ぎるのは2年前の飛行訓練でのことだ。

飛行訓練中にブースターが故障して高所から墜落するという事故によるトラウマで飛行能力を封印し、イーグリードに第7空挺部隊を辞めることを伝えた。

『……考え直せないか…どうしても空挺部隊を…辞めるのかオストリーグ?』

『すいません隊長……でも…自分は…空が……くっ…空が怖くなったのです!!』

飛行能力を持つレプリロイドとして情けないのは分かっているが、あの落下の恐怖がオストリーグの中で巣食っていた。

『……空が……か…分かった。そこまで言うならもう言うまい。でも俺は何時までも覚えてるぜ。ソニック・オストリーグと言う空の猛者を!!そして信じてる、もう一度共に空を飛ぶことをな!!』

笑みを浮かべて言うイーグリードにオストリーグは感極まったような表情を浮かべる。

『イーグリード隊長…』

『隊長は止めろよ!これからは“友達”だろ』

『ありがとう…イーグリード』

こうしてオストリーグは第7空挺部隊を辞め、シグマによって強力な脚力を見込まれて再評価されたオストリーグは別の部隊で活躍していた。

そしてシグマの反乱の最中、任務によって遠征に出ていたオストリーグの元にシグマが現れ、オストリーグに見せたのは破損したバスターであった。

『こ…これは…そんな…』

『そうだ…イーグリードのバスターだ。』

バスターを見て震えるオストリーグにシグマは誰のバスターなのかを教え、それを聞いて目を見開くオストリーグ。

『形見…になるか…?取っておけ、それしか形を留めていなかったのだ。反逆者“エックス”とその仲間がお前の大切な“友”を百と八に砕いたのだ!!』

『反逆者…エックスぅ?…ぐ…ぐぐ…』

膝をついて項垂れるオストリーグは拳を握り締め、それを床に叩き付け、今度は壁に何度も拳を叩き付けた。

それをシグマが腕を掴むことで止める。

『止めるなぁ…っ!!』

オストリーグの拳は血が滲んでおり、それがオストリーグの怒りを表しているよう思えた。

『止めろ…イーグリードを殺されたお前の今の気持ちは分かるぞ』

『何がっ!!』

シグマの言葉に顔を背けるオストリーグだが、それに構わずにシグマは言葉を続ける。

『どうだ…オストリーグの……同志とならんか?反逆者を潰し、我らの理想の為に共に戦おう。イーグリードの意志を継ぐのだ。』

シグマのその言葉にオストリーグは何かを決意したような表情を浮かべて部屋を後にしようとする。

『形見のバスターは要らんのか?』

『形見?友は何時も“心の中”にいる』

それだけ言い残してオストリーグは今度こそ部屋を後にした。

『くくく…くっくっくっくっくっ…ハーハハハハハハハァッ!!!』

直後にイーグリードのバスターを踏み潰し、嘲笑うような笑い声を上げているシグマに気付かぬまま。

「そうだ!貴様だ!!」

「ぐあ…っ!!」

オストリーグの脚力にものを言わせた鋭い蹴りがエックスの胴体を斬り裂き、そのまま吹き飛ばす。

「貴様だっ!!」

「くうっ!!」

「貴様がっ!!き・さ・ま・がぁーーーっ!!!」

跳躍したオストリーグのソニックスライサーが吹き飛ばしたエックスに炸裂する。

「うわあああっ!!」

オストリーグの猛攻に防戦一方のエックス。

そしてゼロの方も徐々に数に押され始めていた。

「倒しても倒しても、全くキリがないぜ…ゴキブリか貴様ら……」

流石のゼロも新たなボディに慣れていない上に数の差はどうしようもなく、次から次へと現れる敵に疲弊していた。

そして隙を突かれてしまい、メカニロイドに拘束されてしまう。

「っ!!しまった、放せぇ!!」

何とか振りほどこうとするが、その前に攻撃を受けてしまう。

「うわあああっ!!…くぁっ…エッ…クスう…」

ダメージと疲労でふらつくゼロと、オム砂漠でオストリーグに押されているエックスの姿をシグマはモニターで見ていた。

「エックス…ゼロ…過去の遺物共よ…苦しめ…苦しめ…しかしな…まだまだこれからだ。くっくっくっ…私の作った“生き地獄”はまだまだこれからだ!!」

モニターを見つめるシグマはとても愉快そうな笑みを浮かべていた。 

 

第31話:Feather

 
前書き
エックスのバスターは右腕でしか使えないんかな?

イレハンとかでは右腕ばっかだし 

 
オストリーグに圧倒されながらもエックスは何とか致命傷だけは避けていた。

酷いダメージではあるが、ファーストアーマーのお陰でダメージはある程度抑えられている。

エイリアが復元してくれなければきっとまともに動けない程のダメージを受けていたに違いない。

「………(つ…強い…これがシグマに認められた猛者の力なのか…)」

エックスがオストリーグの強さに驚く一方で、オストリーグもまた驚いていた。

それはエックスが未だに作動していることだ。

「(………何故、奴はまだ作動してるんだ!?俺の全力の攻撃を受け続けていると言うのに!!)何故死なないんだーーーっ!?」

確かに強化アーマーで防御力が底上げされていると言うこともあるだろうが、いくら何でもこの耐久力は数多くのイレギュラーを屠ってきたオストリーグから見ても異常であった。

再び両肩の刃を飛ばしてエックスを斬り刻むが、エックスはそれを何とか致命傷を避けながら耐える。

そして一方のゼロも攻撃を受け続けたことでボロボロではあるが、何とか耐えきってみせた。

ボロボロでありながら異様な迫力を放つゼロに敵は圧倒されてしまい、攻撃しようとした者も一睨みで黙らせてしまった。

そしてゼロはボロボロの体を引き摺って、飛行艇のある場所に向かう。

「(待っていろエックス…)」

そして場所は戻ってオム砂漠のエックスはオストリーグの絶え間ない攻撃にとうとう膝をついた。

「はあ…はあ…無駄に頑丈な野郎だ…だが、流石に立ち上がれまい!!バスターの回路は切断したからまともに戦えまい!!」

出来ることならバスターの回路ではなく右手首の神経回路を切断したかったが、ファーストアーマーの防御力のせいで厳しかったのでバスターの回路の切断のみに終わった。

バスターの回路が切断されたことで特殊武器の使用も不可能である。

「まだだ…俺にはまだ彼女の形見がある…!!」

エックスが取り出したのはZXバスターである。

自身のバスターが使えないためにこれがエックスの最後の武器だ。

「まだ…まだ戦意を失わんのか!!根性だけは褒めてやる!!しかし性根が腐ってるんだよ!!」

再び繰り出されるオストリーグの蹴り。

足に装備された刃がエックスに迫るが、エックスはダメージ覚悟でオストリーグの脚を掴んでバスターを向ける。

「肉を斬らせて骨を断つか!!しかし俺は肉と同時に骨ごとたたっ斬る!!貴様のその首をな!!作戦が甘過ぎるんだよ!!」

腕の刃でエックスの首を斬り裂こうとするが、エックスの目を見たオストリーグは思わず動きを止めてしまい、エックスの放ったチャージショットが掠る。

「勝負はまだ終わっていない!!ここで負けたら…俺が今まで倒してきた相手に…死んでいった仲間に申し訳が立たないんだ…だから俺は最後まで諦めないぞ!!」

オストリーグを吹き飛ばした後、ショットを連射して弾幕を張る。

そして飛行艇を奪ったゼロはオム砂漠に向かっていたが、シグマは追っ手の手配をするどころか気にかけてもいなかった。

「追っ手の手配はよろしいのですね」

「放っておけ、目的地前にガス欠になる。それよりあれの準備は出来ているか?」

サーゲスの問いに対してシグマはゼロは放置することにした。

どうせ時がくれば戻ってくるのだから。

「これでエックスは死ぬ…仮に生き残れたとしても奴を待つのは“生き地獄”と言う訳だ。」

「お見事でございます。シグマ様…」

そして、オム砂漠ではようやく反撃のチャンスを得たエックスが猛攻を仕掛けていた。

「くっ……クェーっ!!」

「まだまだあっ!!」

ショットを連射してオストリーグに反撃のチャンスを与えない。

「(あの目…俺はあの目に無意識のうちに恐れを感じ、攻撃の手を緩めてたのか…恐れ…違う!!)」

「逃げるか!!」

跳躍してかわしたオストリーグだが、着地点にショットを放ってオストリーグを吹き飛ばす。

「(もっと…もっと違う感情だ!!)何だ!!この感情は!?」

オストリーグはエックスに顔を向けると、あることに気付いた。

エックスの目がイーグリードと同じ信念に満ちた輝きを放っていたことに。

「反逆者がイーグリードと同じ目をしている!?だからなのか!!だから俺の攻撃は手緩くなってたと言うのか!!認めん!!友と反逆者が同じ志を持つ目をしているなどとは!!」

次の瞬間に凄まじい地響きが起こり、エックスとオストリーグがバランスを崩した。

「うわっ!?」

「おっ!!」

「「何だ!?」」

震源地である方向を見遣ると、そこから大型ミサイルが姿を現した。

「この大型ミサイルは!?」

「知らんぞ…こんな大型ミサイルがあったなんて…」

「そ、そんなこと言ってる時か!?…え!?何だ!?」

突如、地面が爆発を起こし、エックスは爆発を避けながらも目を見開く。

「基地が勝手に自爆し始めた!?」

「シグマ様の命令なんだなぁ~」

「「!?」」

声のした方向にエックスとオストリーグが振り返ると、そこには大男のレプリロイドがいた。

「あ、あいつはゼロを連れ去ったイレギュラーだ!!確か名前はバイオレン…」

「オストリーグがぁ、エックスを動けなくしたらぁ、ミサイル発射してぇ、基地を壊すぅ……そしたらエックスとオストリーグは共倒れぇ~~~!!あれ~~~エックスをぉ~倒した後だったっけぇ~~~そうそう、馬鹿な駝鳥を上手く利用出来たとか言ってたなぁ~~~」

愉快そうに手を叩くバイオレンにオストリーグは目を見開く。

「何っ!?り…り……利用……!?」

「あ!これ内緒だっけなぁ~~~?」

「………オストリーグ…」

「………よ」

「え?」

シグマに利用されていたオストリーグに声をかけようとするエックスだが、それよりもオストリーグの方が早かった。

「分かんねえよぉ…俺は一体何を信じりゃ良いんだよぉ~~~」

振り返ったオストリーグの表情は途方に暮れた子供のような表情であった。

「さぁてぇ、帰ろっかなぁ~」

「貴様!待て!!」

転送されていくバイオレンにバスターを向けるが、間に合わず、バイオレンは転送されてしまう。

「くそ、先にあれを何とかしなくては!!」

「………」

俯いているオストリーグに構わずにエックスはミサイルにショットを連射するが、距離が離れているためにまるで効かない。

爆風によって、吹き飛ばされるオストリーグは最早どうすれば良いのか分からなくなっていた。

「(反逆者諸とも俺を殺そうとしたシグマ…イーグリードと同じ目をした反逆者。俺は一体何を信じたらいいんだ…一体…何を!!)」

「駄目だ…距離が離れすぎて効果がない!!空でも飛べれば…空?そうだ。今の俺は新しいフットパーツの能力を使えば空を飛べる!!」

ファーストアーマーを解除して新たなヘッドパーツとフットパーツを装着すると、鉄骨を壁蹴りで駆け上がる。

「(空!?)」

オストリーグがエックスの言葉に反応して振り返ると、エアダッシュでミサイルに突撃するエックスの姿。

「あ…見える…見えるぞ…俺の信じるべき魂がっ!!」

エックスの姿がイーグリードと重なって見えたオストリーグはようやく気付けた。

「くく…“友は心の中にいる”…か…偉そうなこと言っちまったぜ……すまなかったな…イーグリード…今までシカトしてて!!」

封印していた飛行能力を解き放ち、オストリーグは空を飛んでエックスを追い掛ける。

「今なら心の中のお前の声が聞ける。“あいつはこの世界の希望だ!!”とな!!」

そしてエックスはミサイルとの距離を後少しと言うところまで縮めていた。

「後少しだ!!」

しかしここでエアダッシュの作動時間を迎えてしまい、エックスは落下してしまう。

「く、くそ!!後少しのところで!!」

「受け取ってくれエックス!!」

「こ、これはオストリーグのDNA!?」

擦れ違い様に渡されたのはオストリーグのDNAであり、オストリーグはそのままミサイルへ向かっていく。

「これが俺の“詫び”だ!!」

「え!?オストリーグ!?何を!!止めるんだ!!これ以上お前が傷付くことは……あ!?」

オストリーグの隣に信じられないものが現れ、エックスは目を見開いた。

「(なあ、イーグリードよ…やっぱり空ってやつは良いな…忘れてたよ)」

『全く、馬鹿な奴だよ…お前と言う奴は』

「?…っ!!」

隣から聞こえてきた声にオストリーグが振り返ると、そこにいた存在に目を見開いた後に微笑んだ。

「全く…だな…」

『こうして、また一緒に飛べるのもエックスのおかげだな。』

「ああ、感謝してるよ……大した奴だぜ」

イーグリードの幻と並んでミサイルへと突撃していくオストリーグの表情は晴れやかであった。

「そんな、あれはイーグリード…俺は幻を見ているのか…?」

目を擦りながら確認し直してもイーグリードの幻はエックスのアイカメラに映っていた。

「結局、不器用にしか生きられなかったよ…」

『お前らしいよオストリーグ』

オストリーグとイーグリードはタッチした直後、ミサイルに特攻した。

「オストリーグ!!」

特攻によってミサイルは爆発し、それはオストリーグの死も意味している。

「レプリロイドの俺が幻を見るのか…?奇跡だ…」

涙を流しながらエックスはオストリーグが散った大空を見つめていた。

そしてオム砂漠から大分離れた森の中に不時着した飛行艇から少し離れた場所に倒れているゼロの姿があった。

「エックス…オスト…リーグと…戦っては…いけ…な…い…エックス…」

そのままゼロの意識は深い闇の中に沈んでいった。 

 

第32話:Utopia

オム砂漠での激闘から一週間が経ち、エイリアは新たなフットパーツのバックアップを取りながら、オストリーグに斬り刻まれて大破したファーストアーマーを労るように触れた。

「ありがとう、あなたのお陰でエックスは無事に帰って来れたわ」

もうこれを修復するくらいなら新しく造り直した方が早いと断言出来るくらいには酷い状態である。

「エイリア、ファーストアーマーだけど…」

「この損傷具合だと、修復よりも一から復元した方が早いわ。でもエックスの装備も充実してきたし、もう要らないわね」

「そう、ありがとうエイリア。君が用意してくれたアーマーのおかげで助かったよ」

実際にエイリアがファーストアーマーのレプリカを用意してくれなければもっと任務中に苦労していただろう。

「良いのよ…あなたにばかり負担をかけているんだもの。これくらいはさせて頂戴。」

「うん…」

そしてメンテナンスルームにバスターの回路の修理を終えたケインが入ってきた。

「おお、エックス。バスターの回路の修理は終わったぞ。これで何時も通りにバスターが撃てるようになるはずじゃ」

エックスの腕にバスターの回路を組み込み、エックスは腕に意識を集中させると腕はバスターに変形した。

「ありがとうございますケイン博士」

腕が無事にバスターに変形したことでエックスは安堵してケインに礼を言う。

どれだけの戦いを重ねても戦いを好きにはなれないエックスだが、このバスターはライト博士の形見とも言える物でもある。

「フフフ…それだけじゃあないぞい!!今までは右腕しか変形させられんかったが、これからは違ぁ~う!!少し回路を弄ったことでこれからは左腕もバスターに変形するぞい!!」

「え?」

試しに左腕に意識を向けると確かに左腕がバスターに変形した。

「凄い、これなら以前よりも敵への対応が素早く行きますね。と言うことはダブルバスターも可能なんでしょうか?」

エイリアが感嘆するように言うとエックスは両腕をバスターに変えようとするが左腕のバスターが元に戻り、そして右腕がバスターに変形した。

「あれ?」

「元に戻ってる?」

「左、右…」

何度か繰り返してみるが、どうやら両腕の変形は無理なようだ。

「あのぉ…Dr…両腕一緒でないとあまり意味がないんじゃありません…?」

「いやあ、エックスの回路は複雑でのぉ~両腕の同時変形は無理じゃったんじゃ。これが精一杯なんじゃよエイリア」

エイリアのツッコミにケインは困ったように笑う。

「あ、いえ…でも前よりは動きやすくなりましたよケイン博士」

「そう言ってもらえると助かるわい。が!わしも天才と呼ばれた男!!今に夢の五連バスターにしてやるぞい!!」

モニターに映し出された五連バスター装備のエックスの想像図の姿には流石のエックスもツッコミを入れざるを得ない。

「人のボディを玩具にしないで下さい!!」

「メカニロイドみたい…」

ケインはエックスに足蹴にされ、エイリアは100年後の並行世界の汎用レプリロイドのようなエックスの想像図にドン引きしていた。

「(しばらく辛い戦いが続いておったエックスもエイリアも余裕を失っておったが…ようやく笑いおった。そうじゃ、わしの理想郷は嘗ての天才科学者、トーマス・ライト博士が目指したような人とレプリロイドが仲良く暮らせる平和な世界じゃ)」

その中にはエックス達は勿論、連れ去られたゼロや未だに修理の目処が立っていないルインも含めてだ。

「理想郷じゃ~平和な世界じゃ~へへへ…」

「「怖い…」」

急に笑いだしたケインにエックスとエイリアはおま同時に引いてしまった。

次の瞬間に警報が鳴り響き、エイリアが監視カメラの映像をモニターに映す。

「侵入者かいのう?」

「またカウンターハンターでしょうか?」

コンソールのキーを滑るように叩いていくエイリア。

少ししてモニターには研究所付近で1人の女性型レプリロイドが倒れているのが映し出された。

「何じゃい?あのレプリロイドは?エックス、助けて来るんじゃ」

「はい」

エックスが走っていき、レプリロイドを研究所のメンテナンスルームに連れていく。

しばらくすると彼女が目を覚ました。

「う…」

「気がついた?」

「ここ…は?」

「大丈夫かい?」

エックスが声をかけると彼女はエックスにしがみついた。

「助けて下さいエックス様!!」

「あっ!?」

エックスにしがみついた彼女の姿に一瞬だけエイリアは動揺したが、直ぐに切り替えて彼女に歩み寄る。

「お…落ち着いて欲しい。どうしたんだ?」

「あなたのボディを見る限り、あなたは中央コンピューター施設のマザーセンターに所属しているレプリロイドよね?何故この研究所に?」

「エイリア…何か機嫌が悪くないか?」

微妙に不機嫌な感じがするエイリアに疑問符を浮かべながら尋ねる。

「別にそんなことはないわ」

「そう?なら良いんだけど…」

エイリア本人が違うと言うなら違うのだろうと判断したエックスにケインは溜め息を吐いた。

「ふう、エックス。お前さんと言う奴は女心を理解しとらんのう!!」

「え?」

「私の名前はシルキー…あなたの言う通り、中央コンピューター施設のマザーセンターに所属しているレプリロイドです。マザーセンターにある私達が管理している大型CPU“マザー”がシグマの手の者によってウィルスに侵されてたんです………」

「何ですって…?マザーは世界中のCPUの中心になっている…それが完全にウィルスに感染したら…」

「はい、世界中のCPUが狂って大パニックとなってしまいます」

「エックス、急いでマザーセンターに向かうのじゃ!!」

「了解!!」

「私もハンターベースに戻ります!!」

エックスとエイリアは研究所の転送装置を使ってマザーセンターとハンターベースと自分達が向かうべき場所に向かうのであった。 
 

 
後書き
しかし五連バスター装備のエックスはメカニロイドっぽかったな 

 

第33話:Brave

マザーセンターに向かったエックスはエイリアのナビゲートを受けながらマザーセンターのメインコントロールルームに向かっていた。

『エックス、今のうちにメインコントロールルームへの最短ルートのマップデータを送るわ。もしかしたらウィルスによって通信も出来なくなるかもしれないから』

「分かった、ありがとうエイリア」

エイリアから送られてきたマップデータを確認して、サーチライトを回避しながら先に進んでいく。

『我が名は“マザー”。全てのCPUの“王”、その王の名の元に侵入者を抹殺せよ!!』

侵入者を察知したマザーは防衛システムを作動させる。

中にはマザーセンターにはない一部も作動したが。

何とかサーチライトに引っ掛からずに途中のサブコントロールルームに到達することが出来た。

エックスは周囲を警戒しながらサブコントロールルームを出ようとするが、剣の立体映像らしきものが現れた。

「ホログラム…?いや、ただのホログラムじゃない…エイリア、これは一体…」

『どうやらこれはコンピューター・ウィルスが実体化したようね。取り敢えず、チョップレジスターとでも名付けましょうか』

ヘッドパーツのエネルギートレイサーによってチョップレジスターに違和感を抱いたエックスはエイリアに尋ねると、どうやらチョップレジスターはマザーを侵しているウィルスがホログラムと言う形で実体化したようだ。

「つまりこれに触れると俺もウィルスに侵されるわけか」

『そうね、いくら高いウィルス性能を持つあなたでもチョップレジスターに触れない方がいいわ。』

エックスはショットを連射して攻撃するが、ダメージは薄い。

『(無理だ…侵入者…エックスよ…そなたにはその剣は倒せん…その剣はウィルスにより実体化した魔剣…普通の者には倒せない!!その剣は魔剣…倒せる者は勇者のみ!!)』

マザーの一部である端末が、エックスに勝ち目はないと断じるが、エックスは攻撃が通じなくても諦めるつもりは毛頭ない。

「駄目だ、ダメージが薄い。エイリア…弱点は分からないか?」

チョップレジスターの体当たりと斬擊をかわしながら、エックスはエイリアとの通信を継続する。

『調べてみたけど、チョップレジスターは衝撃に弱いようだわ。何か使えそうな武器はない?』

「衝撃か…ならお誂え向きの武器がある!!(オストリーグ…使わせてもらうよ。)喰らえ!ソニックスライサー!!」

エックスはオストリーグの特殊武器である衝撃波の刃を発射するソニックスライサーをチョップレジスターに直撃させるとチョップレジスターの動きが目に見えて鈍くなる。

どうやらソニックスライサーはチョップレジスターに有効なようだ。

「どうやら効いたようだな!!ならもっと喰らわせてやる!!ソニックスライサー!!」

衝撃の刃がチョップレジスターを斬り刻み、ダメージを受けすぎたチョップレジスターは消滅していく。

『(仲間の助力があったとは言え、魔剣を…まさか彼は勇者!?)』

サブコントロールルームから出ていくエックスの後ろ姿を見つめるマザーの端末。

そしてエックスはブロックを回避しながら先に進んでいく。

「くそ!コンピューターセンターに何故こんなトラップがあるんだ…」

メインコントロールルームでは突き進んでいくエックスを監視する者がいた。

「(エックスか…先の戦いでB級から特A級に躍進したハンター。最早その戦歴は特A級ハンターのそれを容易く上回っている。今までの刺客は奴を侮っていた。そこに隙が生じる…だが、私は違う。徹底的に分析を重ね…そのデータを全てインプットした最後の罠が貴様を倒す)さあ、行け…レイダーキラー…エックスを始末しろ!!」

エックスの今までのデータをインプットさせた超大型コンピューター専用の侵入者撃退用メカニロイドを起動させ、エックスに差し向けた。

マザーセンター最後の難関であるレイダーキラーとの戦いが始まった。 

 

第34話:Possibility

 
前書き
ある意味このステージはシグマの正体の伏線になってたんですね 

 
突如エックスの前に現れたレイダーキラーの攻撃をかわしながらタイミングを見計らってチャージショットを撃つためにチャージを開始し、レイダーキラーはエックスのパターン検索を行った。

『シミュレーションパターンNo.1~17検索…パターンNo.7。回り込む素振りから反転…』

レイダーキラーにインプットされたデータ通りの動きをエックスはしてしまう。

「あの巨体では素早くは動けないはず!!この動きには対処出来ない…なっ!?」

エックスがレイダーキラーにチャージショットを放とうとしたバスターを向けようとした瞬間、レイダーキラーのレーザーを受けてしまう。

『シミュレーションパターンNo.93~No.127検索中…』

エックスに攻撃を当てたレイダーキラーは攻撃を受けた直後のエックスの次の行動のパターン検索を開始した。

「もらった!!」

『パターンNo.106、煙に紛れて上空からの攻撃』

そしてエックスのチャージショットがレイダーキラーに迫るが、既にレイダーキラーはチャージショットへの対策を取っており、バリアを展開した。

「バリアだと!?」

そして攻撃直後の隙を突いてレーザーを放ち、エックスはまともに喰らってしまう。

「くそっ!!何とかしなくては…ぐあっ!!」

起き上がろうとしたところでレーザーを受けてまた吹き飛ばされる。

『これは当然の結果だ…敵は確実にエックスの動きを先読みしている。どう足掻いても……』

その時、マザーの端末の後ろから現れた人物にバスターを向けられた。

「おい…エックスに奴の倒し方を教えろ…でないと風穴が開くぜ?」

エックスには聞かれないように小さい声で端末に脅しをかける。

『わ…分かった…エックスよ…良く聞くのだ…今のままでは敵には勝てない…』

すぐにエックスの電子頭脳とリンクし、エックスに自身の声を届かせる。

「(電子頭脳の中に直接話しかけてくるのは…誰なんだ?)」

『私はマザー…このセンターのメインコンピューターだ。尤も私はその端末だがな。』

「マザー…」

エックスは自身に語りかけてくるマザーの言葉に意識を向ける。

『今、お前が戦っている敵は私の端末のカメラを通して得たお前のデータが入力されている……つまり、お前の戦い方は既に読まれているのだ…敵に勝つためにはお前が“入力されているデータ”にないことをするしかない』

「(データに入力されてないこと…?)それなら…ラッシングバーナー!!」

エックスは腕をバスターに変形させるとラッシングバーナーの火炎弾を自分に当てた。

『!?』

『!?エックスの行動、理解不能。理解不能…理…解…不Noーっ!!』

自分への攻撃にレイダーキラーがパターン検索をしても出てこず、とうとうレイダーキラーに搭載されたコンピューターが暴走を始めた。

「入力されてない行動と言えばこれしか咄嗟に思い付かなかった。入力外の俺の行動によってお前のコンピューターは暴走を始めた。これで終わりだ!!」

暴走しているレイダーキラーにチャージショットを放って破壊するエックス。

「まあ、尤もラッシングバーナーの威力はミニマムだったけどな。それでも少し焦げたけど」

ショットではなくラッシングバーナーを選んだのはエックスのアーマーが熱に高い耐性を持っていたのもあるし、ショットではアーマーを破壊してしまう可能性があったから念には念をだ。

「マザー…助けに来たつもりが反対に助けられてしまったね。ありがとう…待っててくれ。すぐに君をウィルスから解放してみせる。それでは行くよ」

エックスは急いでこの場を去ってメインコントロールルームへ向かう。

完全にエックスがいなくなったのを見計らってマザーは自身にバスターを向けている人物に話しかけた。

『そろそろ、その物騒な物をどけてくれないか?』

マザーの言葉にバスターを向けていた人物はバスターを腕に戻した。

「悪かったな」

そして、そのまま踵を返す人物にマザーは問いかけた。

『傷付いた体を押して来たのに何故名乗りでない?』

「…さてな……(体の中に巣食っている“シグマの呪縛”を解くまであいつらの元へは帰れない!!)」

『ガッ…ギ…』

「?」

彼の言葉を待っていたマザーだが、異変が起きた。

『ウィルス…か…今までプロテクトで押さえ込ん…でた…が…ついに…活動を始め…たっ。私は直に活動を停止する…それは私の“死”を意味する…私の繋がっているコンピューターも同時に“死ぬ”。そうなればコンピューター制御されていた世界中の軍事施設は簡単にシグマの手に落ちて世界はシグマの手中に収められるであろう』

マザーの言葉に彼は肩を押さえながら立ち去ろうとするが、その際に口を開いた。

「安心しろ、直にあいつが助けてくれる」

『あんな若造に何が出来ると言うのだ!!』

「全てだ…。そう、あいつの持つ“可能性”は無限大だからな」

それだけ言うと彼はこの部屋を後にした。

『ま…待て!!どういう事だ!!』

マザーが止めるも、彼は足を止めずにマザーセンターを離れるために重い足を動かした。

『………“可能性”…?我々コンピューターは設定された能力以上のことは出来ない。それはレプリロイド…エックスとて同じことだ…なのに“可能性”だと?…信じているのか…あの男は…可能性を…』

そしてメインコントロールルームに辿り着いたエックスはウィルスを止めるために周囲を見渡す。

エイリアへの通信も考えたが、通信妨害がされているために不可能であった。

その時、メインコンピューターに誰かがいることに気付く。

「ん?誰かいる?大丈夫ですか…え?シ…シルキー!?しっかりするんだ!!」

取り敢えずエックスは椅子から彼女を床に下ろすと、彼女の状態を確かめようとするが、エックスは一度考えるべきだったのだ。

あれだけのマザーセンターのトラップを何故非戦闘型の彼女が潜り抜けられたのかを。

「!?」

突如シルキーの右腕が変化し、尾のような物のトゲがエックスの背中に突き刺さる。

「な…何…」

「ふっ…」

笑みを浮かべたシルキーを突き飛ばすが、体が痺れて蹲るエックス。

「ぐっ…体が…痺れて…」

「いきなり突き飛ばすなんて酷いわエックス!!」

「貴様…シルキーじゃない…な…」

痺れる体に苦しみながらもシルキーを睨むエックス。

「え?私よ、シルキーよ?助けを求めたシルキーよ!でもね…」

「………」

彼女の表情が不敵な物に変わり、エックスは表情を顰めた。

「それは仮のす・が・た。分からないかしら、全てはあなたを倒すためのチャ・バ・ン。このマグネ・ヒャクレッガー様の作ったお芝居さ!!」

シルキーの変装を解いて本来の姿を現したヒャクレッガーは直後にエックスを蹴り飛ばす。

「何時まで痺れてる!!」

「うわあっ!!」

蹴り飛ばされたエックスだが、その衝撃によって麻痺が解けて自由に動けるようになった。

「よし!麻痺が解けた!よくも卑怯な真似を!!これでも喰らえ!!」

チャージショットを放つエックス。

放たれたそれはヒャクレッガーに命中し、着弾点に爆発が起こる。

「やったか!?…な!?椅子だと!?」

爆煙が晴れると、チャージショットで破壊したのはヒャクレッガーではなく椅子である。

「残念だったな、第0特殊部隊。別名“忍び部隊”…“変わり身の術”くらいは“忍び部隊”のB級にも出来る基礎中の基礎だ。まあ、第0特殊部隊は表には一切出ないから表のお前が知らないのも無理はないがな。」

「天井なんかに逃げたつもりか!?そんなところは壁蹴りを使えば…」

壁蹴りを使おうとするが、何故か上手くいかずに失敗してしまう。

「失敗した!?うあっ!!」

床に落ちるエックスにヒャクレッガーは壁蹴りを使えない原因の説明をする。

「私のトゲには秘密があってな。」

「何?」

「このトゲには相手のデータを消去するウィルスがインプットされる仕組みになっている。勿論、マザーに流したウィルスを消すのにも有効だ。」

「え!?」

ヒャクレッガーから聞いたマザーを救う方法にエックスは目を見開く。

「マザーを救いたいなら使うがいいさ、この私を倒した後にな」

「く……」

しかしエックスはその言葉に顔を顰めた。

ヒャクレッガーがそう簡単にやられるような相手ではないと悟ったからだ。

「ただ、それまでにマザーの防衛プログラムが保てばの話だがな」

「絶対に間に合わせてみせる!!」

「それは感心だな」

壁蹴りが使えないならチャージショットを放つが、ヒャクレッガーはエックスでも反応仕切れない速さで移動してチャージショットをかわした。

「くそっ!!何処だ!?何処にいるんだ!?」

周囲を見渡すが、ヒャクレッガーの姿は何処にもない。

「(何処なんだ…)」

突如背後にヒャクレッガーが姿を現した。

「うわっ!?」

「せいぜい…足掻いてみることだな!!」

尾のトゲでエックスを掴むと持ち上げると、再びエックスにウィルスを流し込む。

「さあ、次はどの機能が消えるのかな!?」

「ぐああああっ!!」

流し込まれるウィルスに苦しむエックスを床に叩き付けると、ヒャクレッガーは距離を取る。

「くそ…舐めるなあっ!!」

立ち上がってチャージショットを放つエックスだが、ヒャクレッガーの機動力には掠りもしない。

「ふん、バスターはまだ生きているか。悪運の強い奴だ。ならば次に消えた機能はどれだろうな!?マグネットマイン!!」

複数の小型の機雷をエックスに投擲するヒャクレッガー。

「くっ!!ダッシュで回避だ!!」

ダッシュですり抜けようとするが、今度はダッシュ機能が消去されてしまい、機雷の直撃を受けてしまう。

この戦いを見ていたメインコントロールルームのマザーは諦めかけてしまう。

『やはり私はこのままウィルスに侵されていくのか……!?』

しかしエックスは少しふらつきながらも立ち上がる。

「多少は効くがオストリーグの蹴りに比べれば大した攻撃じゃないな」

「ほう、流石は今までの刺客を倒してきただけのことはあるな。だが、それも何時まで保つかな!?」

今度は尾を分離させ、それを浮遊させるとエックスにぶつけていく。

「うぐっ!!」

何度も攻撃を受けたエックスは床に勢い良く叩き付けられる。

『やはり無理なのだ…』

しかし再び立ち上がるエックスにマザーは驚く。

「この程度じゃ、俺はまだまだ倒れないぞ…」

『愚かな奴だ。何故立ち上がるのだ…膝が笑っているではないか…勝てる“可能性”など全くないと言うのに……“可能性”!?』

ふと、マザーのメモリーに刻まれた彼の言葉が過ぎる。

『あいつの“可能性”は無限大だからな』

そしてエックスは再び、ヒャクレッガーの尾に捕らわれて機能が消去されてしまう。

「ぐああああっ!!」

再び投げ飛ばされるが、何とか体勢を整えてバスターを構えるエックス。

「くっ!!当たってくれ!!」

ショットを放とうとしてもバスターは全く反応しない。

どうやらバスターの機能が消去されてしまったようだ。

「そんな…バスターまで…!!」

「バスターが使えないと言うことは特殊武器も使えなくなったな。頼みの綱はルインの武器だが…それは既に使えない」

ヒャクレッガーの手にあるのはルインの武器であった。

どうやらエックスの機能を消去している最中に奪ったようだ。

「くう…っ!!」

「さあ、いい加減楽になれ!!」

再び機雷を投擲し、エックスに直撃させる。

「まだだ…俺は諦めないぞ…!!」

何度もヒャクレッガーはエックスに機雷を投擲してダメージを蓄積させていく。

『無駄なことを…直に私はウィルスにやられ、世界は滅ぶのだ。例えお前が何度立ち上がっても、もう遅いのだ。』

「まだだ…」

何度も機雷を受けても立ち上がるエックスの姿にマザーはデータにはない何かを抱いた。

『なのに…何故…』

「諦め…ない…っ!!」

そして限界が間近でありながら立ち上がるエックスの姿にマザーはエックスの“可能性”に気付いた。

『そうか…彼が立ち上がるのは…立ち上がることによってのみ“可能性”が生まれるからか!!彼の“可能性”は“諦めない”ことなのだ!!』

「まだ…俺は…戦える!!」

激痛に震える体を叱咤して立ち上がったエックスにヒャクレッガーは拳を震わせて叫んだ。

「な…何故こんなに攻撃してるのに倒れないんだーーーっ!!?」

普通のレプリロイドならとっくに機能停止しているような攻撃を絶え間なく浴びせているのに立ち上がるエックスにヒャクレッガーは苛立ちを覚えてエックスに突撃する。

「それならこの手でその首を引っこ抜いてやるわーーーっ!!!」

「(どうする?バスターは使えない。ルインの武器は奴に奪われている…武器になりそうな物もない。)いや、諦めるな!!諦めなければ活路は開ける!!今までもそうだった!!」

『エックスよ…』

電子頭脳に響くマザーの声にエックスは意識をそちらに向ける。

「!?(マザー?)」

『エックスよ…聞こえるか?私も君と一緒に戦わせてくれ。私がウィルスに侵されるのも時間の問題だ。ならばその時までは…抗うのが私の責任だから…私が床の一部を爆発させて敵に一瞬だが、隙を作ろう。その隙に敵に突進しろ!!ダッシュ機能が使えないなら全力で走れ!敵を捕らえるのだ。』

マザーの指示通りにエックスは動き、床の突然の爆発によって吹き飛ばされたヒャクレッガーを捕まえる。

『全力で走れ!!』

「うおおおおおっ!!」

『そして敵を傷ついている穴に押し込むのだ!!私の剥き出しの回路から敵にウィルスを流し込み、敵を倒す』

ヒャクレッガーを穴に押し込み、マザーが剥き出しの回路からヒャクレッガーにウィルスを流し込む。

「うぁあぁぁあ…ウィルスが…ウィルスが…流れ込んでくるぅう…!!ふぅぅうおおおおぉぉぉぉっ!!!」

ヒャクレッガーに凄まじい勢いで流れ込むウィルスはマザーセンターの制圧のために用意された物であるためにレプリロイドであるヒャクレッガーには一溜まりもない。

「こんな…ことでっ…私の活動は…停止…する…の…かっ」

自らが用意したウィルスによって自身が機能停止すると言う最期を迎えたヒャクレッガーは力なく倒れ、エックスはヒャクレッガーの尾の先端部分を回収してマザーのシステムに接続するのであった。 

 

第35話:Emotion

メインシステムにヒャクレッガーの尾の先端を接続したエックスは不安そうにメインコンピューターを見る。

「大分時間が経過した上に派手にやられたからな…間に合うかな…?」

しばらくするとマザーのシステムが復旧していき、正常な状態に戻った。

「ふう…どうやら間に合ったようだな…」

『ありがとうエックス君。助かったよ』

自身を救ってくれたエックスに敬意を示すマザーにエックスは笑みを浮かべる。

「礼を言うのは俺の方だよマザー。君の助けがなければ間に合わなかったんだ。」

『私はただ、君達の行動に感銘を受けたに過ぎない。私はスーパーコンピューターだが、“無”から“有”を作ることは出来ない……しかし、彼の言っていた君の可能性とは“無”から“有”にすることを諦めない“心”のことと分かった』

「っ!彼…?」

マザーの言葉に引っ掛かるものを覚えたエックスはマザーに尋ねる。

『そう…最初の助言も実は彼に頼まれたものだった。』

破損はしたが、機能は生きているモニターにマザーにエックスへの助言を頼んだ人物の姿が映し出された。

「こ…これは!!」

その人物の姿を見たエックスは椅子から勢い良く立ち上がり、拳を握り締めた。

『“友情”と言う感情なのだろう?今まで私のデータには入力されていなかったものだ。これから“心”と言うものを学んでいくことにしよう。君達の“心”を見習って!!』

「(ゼロ…)」

この場にいない…助けてくれた親友にエックスは一筋の涙を流した。

そしてケインの研究所に帰還すると、激しく傷付き、消去されたデータを戻すためにエックスはメンテナンスルーム行きとなった。

「うーむ、随分とやられたのう。まさか、第0特殊部隊にまでシグマの手が及んでいたとはな…一度チェックすべきかもしれんな」

「エックスが消去されたデータは壁蹴りとダッシュ機能とバスターの機能ね…他にも体に違和感はない?」

ケインと共同してエックスのデータを復旧するための準備をしているエイリアに尋ねられるものの、エックスは首を横に振る。

「いや、大丈夫だよ。データを消去されたのは3回だけだし…」

「そう?なら良いんだけど…念には念を入れて精密検査をしましょう」

「…うん、分かった。頼むよ」

「エックスは素直じゃのう。これがゼロかルインならば嫌がるに決まっとるからのう…」

体を弄られるのを嫌う2人は余程のダメージを受けない限りはメンテナンスルームに足を運ぼうとはしないので、メンテナンスを担当する医師レプリロイドを困らせている。

「ゼロか…」

「マザーセンターにゼロがいたんでしょう?マザーが嘘を吐くとは考えにくいし、シグマの所から逃げ出せたのならどうしてエックスと合流しないのかしら?」

エックスの呟きに反応したエイリアは、ゼロの考えが分からず、首を捻って顰め面をするしかなかった。

「分からない…でも、ゼロにも何か理由があるんだと思う。だから俺と合流せずにマザーセンターを後にしたんだ。」

エックスとしても不思議に思うが、ゼロが助けてくれたのは事実のために出来れば何か事情があるのだと思いたかった。

「そうね…」

「それにしてもエイリア、機嫌が直ったね…シルキーに変身したヒャクレッガーがいた時は何処か不機嫌だったけど」

「え?あ、どうしてかしらね?自分でもどうしてあんな風になったのか分からないのよ」

自分でも理解不能の感情にエイリアは疑問符を浮かべ、エックスは少し不安そうに口を開いた。

「きっと戦いが長引いたせいで疲れているんだ。エイリアも少し休んだ方がいい」

エックスの発言にケインが転けているが、エックスとエイリアもそれに気付かずに話を進める。

「そうね、この作業が終わったら軽く仮眠を取るわ。」

そしてヒャクレッガーの攻撃によって破損したボディの修復のためのパーツを取りに向かうエイリア。

それを見たケインはエックスに歩み寄って嘆くように溜め息を吐いた。

「エックス…お前さんは鈍い!!エイリアもそうじゃが鈍すぎるぞ!!何故そうなるんじゃ!!」

「え?鈍い?…確かに今回はヒャクレッガーに何度も油断を突かれてしまいましたが…」

「そういう意味では…」

「それじゃあエックスのデータを元に戻すからスリープモードに移行してもらえる?」

「了解」

戻ってきたエイリアにそう答えると、エックスはスリープモードに移行して眠りについた。

「あ、これ!!まだ話は…はあ~…」

「?」

溜め息を吐くケインに首を傾げるエイリアだが、ケインと共同してエックスの消去されたデータをかなりの勢いで元に戻していく。

レプリロイド工学トップの名に恥じない見事な手腕にケインも感心する。

「ほっほーっ、相変わらずお前さんのプログラミング技術は見事じゃのう。エイリア、わしの後継者にならんか?」

「もう、冗談を言わないで下さいDr。私よりも優秀な人はいますよ…ただ評価されていないだけで…」

「人格面も含めてとなるとお主以外はいないと思うがのう。まあ、これはドップラーとも相談して決めるとするかの。さあ、エイリア。エックスが退屈しないうちにさっさと済ませてしまおうぞ」

「はい…」

こうしてエックスの消去されたデータは数時間後に完全に元通りになった。

「凄い、本当に元通りになってる」

トレーニングルームで試してみたが、機能は完全に元通りになっていた。

「それにしてもウィルスを攻撃手段に用いるなんて、ワクチンプログラムやそれに対するブロテクトプログラムの構築も考えないといけませんね」

「うむ、特に高いウィルス性能を持つエックスのデータも消去するほどの強力なウィルス…対策を取らぬ訳にもいかぬしな」

生半可なウィルスなど通用しないエックスに直接攻撃込みとは言え効果を発揮したウィルスにケイン達は警戒心を抱かせたのである。 

 

第36話:Meyer Ruby

 
前書き
マーティ出ませんよ?

だから大幅に話変わってます 

 
とある海域にてハンターベースに輸送されるはずだった大量の物資を載せた輸送船がイレギュラーに襲われて沈められると言う事件が何度も発生し、この事態を重く見たケインは沈められた船の共通点を調べ、あることに気付いたのである。

「「マイヤールビー?」」

疑問符を浮かべるエックスとエイリアにケインは重々しく頷いた。

「うむ、お前さん達はマイヤールビーとは何なのか分かるかのう?」

「はい、水中用レプリロイドのエネルギー源ですね」

エイリアがケインの問いに答える。

基本的にレプリロイドは基となったエックスと同じくエネルゲン水晶と太陽光でエネルギーを賄っているのに対して、水中用レプリロイドは基本的に太陽光の恩恵を受けられない上にボディと内部機関の温度調整が地上以上に行われる水中での活動が主なのでエネルゲン水晶とマイヤールビーと呼ばれるエネルゲン水晶以上の高エネルギー物質で賄っている。

「しかし、マイヤールビーがどうかしたのですか?」

「うむ、どうやら襲われた輸送船には一つの共通点が見つかったのじゃ…それがこのマイヤールビーなんじゃよ」

エックスの問いに答えるようにケインは厳重に収められているかなりの大きさのマイヤールビーを見せる。

それを見たエックスとエイリアは感嘆の息を吐いた。

何しろ指で摘まめるくらいのサイズでさえ長時間の水中での稼働を可能とするエネルギー物質だ。

それが両手にようやく収まるようなサイズだとあまり物欲を持たないエックスやエイリアでも凝視してしまうのも無理はなかった。

「このマイヤールビーを狙っての犯行と言う訳ですね?」

「そうじゃ、マイヤールビーは使い方を変えれば大量破壊兵器の量産も容易く出来るようになる。それだけのエネルギーがこのマイヤールビーにはあるんじゃよ。そして高値で密売される代物でもある。そして今の情勢でこのようなことをする者と言えば…」

「シグマ…ですね」

「うむ、少なくともシグマの関係者であることは間違いあるまい。そしてそのようなことをする者にも目星が付いておる。蟹型レプリロイドのイレギュラーハンター第6艦隊に所属していた元特A級ハンター…バブリー・クラブロスじゃよ」

「クラブロスって…あの守銭奴で有名だった…」

「うむ、先のシグマの反乱の際に行方を眩ませていたのじゃが、ここで本格的に活動を始めたようじゃな」

「クラブロス…」

クラブロスがシグマの元についた理由は何となく理解出来る。

恐らくクラブロスは反乱に加われば莫大な大金を得られると思ったからだろう。

何せイレギュラーハンターに入隊した理由も給料が他よりも良いからと言う理由である。

「クラブロスのことだからマイヤールビーを素直にシグマに渡すはずがないのが救いか…今から輸送船が沈められた海域に行きます!!」

「待ってエックス!!地上用のレプリロイドであるあなたは水中で満足には動けないわ!!」

「だけど…」

「水中用の装備を手配するわ」

エイリアがエックスのために水中用の装備の手配をし、エックスは背中に外付けのジェットパックを装備して出動した。

「っ…成る程、これは予想以上に動きにくいな」

水中のためか何時もより動きが鈍い。

もしエイリアが水中用のジェットパックを用意してくれなければ素早い動きは不可能だった。

慣れない水中ながらも何とか此方に向かってくるクラゲのようなメカニロイドを撃破していくが、背後から元々先程のメカニロイド…ジェリーシーカーを休ませたり、整備や補給をするための母艦として開発された深海作業艇で今は輸送用に改造されているが、追尾ミサイルやレーザー光線などを装備したシーキャンスラーがエックスを追い掛けてくる。

エックスは追い付かれないようにジェットパックの出力を上げながらシーキャンスラーの周囲を動き回ってチャージショットを叩き込む。

水中用の調整を施されているために水中でもエネルギーが放電されてしまうこともなく放てるのだ。

「よし、チャージショットが撃てる!!」

ケインの調整が上手くいったことにエックスは至近距離でショットを連射してシーキャンスラーを破壊していく。

時折ミサイルが飛んでくるものの、チャージショットで薙ぎ払うとエックスは止めとばかりにチャージショットを放って破壊した。

一方、深海基地の司令室に相当する場所ではクラブロスが輸送船から奪ったマイヤールビーに舞い上がっていた。

「これだけのマイヤールビーがあればどれだけの儲けになるでしょうか?」

「まあ、待たんかい。今計算中や…今、貯金箱に入っとる金や宝石、マイヤールビーも合わせて~90億ゼニーや!!」

「90億ゼニー!?それだけあれば…」

部下のレプリロイドが最後まで言い切ることは出来なかった。

何故なら上から放たれたチャージショットがクラブロスの部下の頭部を粉砕したからだ。

「あ?何や何や?」

部下のエネルギー源となっていたマイヤールビーを回収しながら上を見上げるとエックスがクラブロスにバスターを向けていた。

「クラブロス…人々を守るイレギュラーハンターでありながらこんなことをしていたのか!!」

「あ~?何やエックスやないか。久しぶり…って言うべきなんか?昔は随分甘ちゃん面やったのに随分と変わったやんか…甘ちゃん卒業おめでとうやな」

クラブロスがどうでも良さそうに回収したマイヤールビーを貯金箱に放り投げると口に相当する部分に入った。

『毎度ぉ~只今の品物で現在総額90億8900万とんで17ゼニー也~っ!!』

「90億…!?」

あまりの法外な金額にエックスは絶句する。

これだけの金額を得るためにどれだけの悪行をしたのかエックスには理解出来なかった。

「かーたまらん!!貯金箱に金が貯まる瞬間が大好きなんよーっ!!」

「クラブロス!!お前はこれだけの金を得るのにどれだけの悪事を働いたんだ!!」

「これだけやないでエックス!!この基地にはシグマに献上するためのマイヤールビーがぎっしり入った部屋もあるんや…その部屋にあるマイヤールビーを合わせれば300億ゼニーになら~~~!!金の力でシグマさえこの手の中に牛耳ってみせるわいーっ!!」

「貴様…っ!!」

「おっと、待つんやエックス…こいつらを見てもらうで~」

次の瞬間、魚の骨のような物が出現し、そこには沈められた輸送船の船員が磔にされていた。

「こ、これはまさか!!沈められた船の船員か!!」

「そうや、こいつらも水中用レプリロイドやからこいつらの体の中にもマイヤールビーがある。動くんやないで?動いたらこいつらはこうなる!!」

「ぐはっ!?」

クラブロスの肩から伸びるビームの鋏…ビームシザーで虫の息の船員を破壊し、マイヤールビーを回収した。

「貴様っ!!」

「動くとこいつらがどうなっても知らへんで?わしは別にマイヤールビーさえ無事ならこいつらがどうなってもええんやけどな」

クラブロスの言葉にエックスは構えていたバスターを下ろすと何とか状況を打開するために考える。

「(ここから飛び出しても船員の人達が同時に攻撃を受けてしまう。何とか奴の注意を引かないと…その為には…)」

エックスの視線が一瞬だけ向けられたのは悪趣味な蟹型の貯金箱。

「こいつだ!!」

チャージショットが貯金箱に向けて放たれ、クラブロスは突然のことに反応出来ずに貯金箱を破壊されてしまう。

「!?ちょ…っ、わしの貯金箱!!わしの金がーーーっ!!!」

「喰らえ!!」

続いてZXセイバーを抜いてチャージセイバーの衝撃波でクラブロスを吹き飛ばす。

「金!金!!金ーっ!!わしの金~~~っ!!」

吹き飛ばされながらも金への執着は凄まじく、金や宝石を掴もうとするが、エックスの攻撃で再び吹き飛ばされる。

「見苦しいぞクラブロス!!曲がりなりにも特A級ハンターだった男が!!」

人質から大きく離されたクラブロスはエックスとの1対1の状態となる。

「エックス…!!」

「よくもあんな卑怯な真似を!!許さないぞ!!」

正義感の強いエックスからすればあのような行為は到底許せるものではなかった。

「生意気なー!!バブルスプラッシュ!!」

泡を吐いてエックスの左腕にぶつけると、エックスの左腕が溶解した。

「なっ!?左腕が…」

「忘れたんかエックス!?わしのバブルスプラッシュは強酸の泡やで!!水中ではバブルスプラッシュの攻撃範囲も広がり、どんなレプリロイドもドロドロに溶かして来たんや!!良くもわしの貯金箱を破壊してくれたもんやな!!お前もドロドロに溶かしたる!!」

小型メカニロイドを射出し、エックスに突撃させる。

エックスはそれをセイバーで弾いていくが、クラブロスは肩のビームシザーでエックスを捕まえて挟みこんだ。

「ぐああああっ!!」

「捕まえたでえっ!!このままバブルスプラッシュで…」

「ストライクチェーン!!」

「ぐへえっ!?」

クラブロスがバブルスプラッシュを放つ前にエックスが顔面にストライクチェーンの鎖を叩き付けることで何とか離脱した。

「簡単にはやられないぞ!!」

「くう~っ、人がせっせと集めた金をばら撒きおって、このくそボケーっ!!お前は原型も残らへんくらいドロドロに溶けてまえーっ!!」

怒りの形相でバブルスプラッシュをエックスに向けて放つクラブロス。

先程よりも出力を上げているのか泡の量と規模が桁外れだ。

「待っていたぞ、お前が全力のバブルスプラッシュを放つ時をなっ!!」

ダッシュで床すれすれに移動するエックス。

「なっ!?バブルスプラッシュが何で当たらへんのや!!」

「自分の技を過信し過ぎたなクラブロス!!確かにお前のバブルスプラッシュの酸は強力だが、所詮は泡だ。床すれすれで移動すれば当たりはしない!!」

「そ、そんなあ~っ!!」

「ストライクチェーン!!」

再び鎖を射出してクラブロスを雁字搦めして一気に引き寄せると左手に構えたセイバーを振るった。

「これで終わりだクラブロス!!あの世で銭勘定をしてるんだな!!」

チャージセイバーでクラブロスを斬り上げて一刀両断するエックス。

しかしクラブロスが死んだことで基地の自爆装置が作動してしまう。

「どうやら、クラブロスが死ねば基地の自爆装置が作動する仕掛けのようだな…急いで人質を解放して脱出しなくては!!」

急いで人質を解放して深海基地を脱出するエックス。

しかし、基地の崩壊には巻き込まれなかったものの、爆発の余波を受けて気を失ってしまう。

『…クス…エックス!!聞こえる!?』

「ん…エイリア……?」

エイリアからの通信によって意識を取り戻したエックスは周囲を見渡した後、通信に応対した。

「生きているのか…エイリア、こちらエックス…イレギュラー・クラブロスを処分は完了した。マイヤールビーは…残念ながら回収出来なかった」

『そう…貴重なエネルギー物資だけど悪用されるよりはマシね。お疲れ様エックス…今から迎えを…』

「ああ、頼むよ……あっ!?」

『どうしたのエックス!?』

驚いたような声を出すエックスにエイリアは驚きながらも尋ねる。

「エイリア、今から俺の視覚情報を共有する!!凄い物が見れるよ!!」

『凄い物…え?嘘…?』

そう、エックスが見せたかったのはこの時代では絶滅したはずのイルカであった。

『そんな…イルカは既に絶滅しているはずなのに…』

「多分、まだ僅かに生き残りがいたのかもしれない。そして姿を現した原因はマイヤールビーだよ。マイヤールビーが基地の破壊で粉々になったことでマイヤールビーのエネルギーがこの海域の生命体に力を与えたんだ…」

『そんなことが…マイヤールビーにそんな力があったなんて…』

「確証はないけどね…近い内にここの生物は保護した方が良いかもしれない。彼らを未来に遺すためにも…この奇跡を無駄にしないためにも」

『奇跡…そうね、後で海上警備隊に連絡を入れておきましょう…』

エックス達は跳び跳ねるイルカを見つめる。

この奇跡を目に焼き付けるように。 

 

第37話:Weaknees

エックスがクラブロスを倒してから数日後、マザーセンターを後にしていたゼロはスクラップ工場に足を運んでいたが、その足取りは覚束なくなっており、シグマに近い実力者と呼ばれた特A級ハンターとは思えないくらいに弱っていた。

「くっ…このスクラップ工場でパーツを手に入れてシグマの入力したデータを消そうと思ったが…もう間に合わないかもな…」

意識も朧気になりかけた時、ゼロは気配を感じて前を向くと、そこにはいるはずのないエックスの姿があった。

『弱気になるなゼロ!頑張れ!!』

「エック…ス…」

疲弊によって見えてしまった幻覚なのかは分からないが、エックスの姿を見たゼロの心は隙が生じてしまったのかもしれない。

エックスの手を掴んだ瞬間。

『お前は逃げられんのだゼロ。私に従え!!』

「シグ…マ…!!」

エックスがシグマに変わり、ゼロの意識は完全に途絶えた。

そして一方、ケインの研究所では端末のモニターに映る後ろ姿に疑問符を浮かべているエックスの姿があった。

「この後ろ姿はカメリーオ?確かカメリーオはVAVAに破壊されたはずなのに…これを一体何処で?」

「うむ…ポイントY-O-S-H-I。世界一の規模を誇るスクラップ廃業処理工場じゃ!!」

そして現地に向かい、辿り着いたエックスは周囲を見渡しながら先に進んでいく。

「スクラップ処理場か…俺達の墓場だな…何時見ても慣れないものだな…」

更に奥に進もうとした時、スクラップの破片がエックスに飛んできた。

それに気付いたエックスはスクラップを吹き飛ばして突っ込んでくる複数のメカニロイドが合体したようなメカニロイドをギリギリでかわした。

「何だあれは!?機能停止しているメカニロイドがどうして…」

エネルギー反応を調べても機能停止しているのは間違いないと言うのにだ。

「どうなっているんだ!?ソニックスライサー!!」

確実に仕留めるためにソニックスライサーで真っ二つにして、完全に破壊した。

「何だったんだ…一体…ん?スクラップが崩れた場所に扉がある…ここから先に進めるのか?」

扉を開くと、そこにあるものにエックスは目を見開いた。

何故ならそこにはペンギーゴの墓標らしきものがあったからだ。

他にはマンドリラー、ナウマンダー、アルマージ…他にもエックスが倒してきたイレギュラーの墓標がある。

「俺が倒してきたイレギュラーの墓標…何故ここにこのような墓標が…?」

次から次へと現れる墓標にエックスは少しずつ精神的に参ってきていた。

そして天井に吊るされていたレプリロイドが落下したかと思えば突如動き出してエックスに襲い掛かる。

「来るなっ!!」

咄嗟にバスターを構えてショットを連射して撃ち抜いて行動不能にするが、エックスにしがみつくように倒れる。

「うっ…」

エックスは反射的に振り払い、背後から聞こえた足音に振り返るとそこにはエックスが倒したイレギュラーが立っていた。

「そんな!?倒したはずなのに…何故復活しているんだ!?」

先の戦いでは確かにシグマパレスで倒したイレギュラーが襲い掛かってきたが、それはボディのみを再生したデッドコピーである。

そしてイレギュラー達の攻撃がエックスに襲い掛かる。

「ぐああああっ!!くそ、本当に…どうなっているんだ…」

理解不能な事態の連続にエックスは精神的に追い詰められていく。

マンドリラーの拳を受けて吹き飛ばされ、次はヘチマールの蔓に足を絡め取られて引っ張られる。

「ヘチマール!?どうして君まで…ん!?この粉は…」

自身の周囲を舞う粉に気付いたエックスは天井にスクラップの塊のような存在に気付いた。

「あれが原因か!?」

スクラップの塊にエックスはショットを連射して浴びせていく。

するとイレギュラーの姿が廃棄されたメカニロイドやレプリロイドに変わっていき、他にも稼働しているメカニロイドの姿も確認出来た。

どうやらあの虫のようなメカニロイドが機能停止していたレプリロイドやメカニロイドを動かしていたようだ。

「なるほどな…あのイレギュラー達は粉による幻覚だったのか…人の心に付け入るなんて絶対に許さない!!」

ショットを連射して敵を殲滅し、スクラップの塊を見上げる。

「降りてこい卑怯者!!」

「卑怯とは心外な」

スクラップの塊はエックスにスクラップをばら撒いてぶつけ始めた。

「卑怯な手の次は姑息な手を使うんだな!!」

チャージショットを放って撃ち落とそうとするが、スクラップがバスターの銃口を塞いでしまい、暴発して左腕が破壊されてしまう。

「ぐああああっ!!」

「いやいや、姑息な手でも意外な効果があるものでしょう?これは時間を稼ぐ必要は無かったですかね?私が私になるための時間を稼ぐ…ね」

突如スクラップの塊が光を放ったかと思えば姿を大きく変えた。

「何!?」

「私がメタモル・モスミーノスになる時間をね!!」

「姿を変えただと!?そんなレプリロイドが…」

時間経過で姿を大きく変えると言う前代未聞の存在にエックスは驚愕する。

「先程のは進化のためのほんの時間潰しですよ!!」

「卑怯な手をばかり使っていながら良く言えるな!!」

「ふっ!!勝利こそ全てなのはあなたも同じことでしょう?そしてあの鱗粉はただ幻を見せるだけではありません。あなたの心の弱さを映すのですよ。つまり、先程あなたが見たのはあなたの弱さなのです!!」

「俺の心の弱さ…だと!?」

「心に隙がある自分を差し置いて良く言えるものです」

「黙れ!俺は貴様らのようにはなれないんだ!!」

無事な右腕をバスターに変形させてチャージショットでモスミーノスを狙うが鱗粉で弾かれてしまう。

「馬鹿な!?」

「私の鱗粉は幻を見せるだけではなくこのように防御にも扱えるのですよ」

つまりあの鱗粉をどうにかしない限りエックスの攻撃は届かないと言う事だろう。

ストライクチェーンを使うことも考えたが、簡単に捕らえられてくれる相手でもないだろう。

「私の攻撃は素通りしますがね」

「くそ、何処までも卑怯な奴だ!!」

「卑怯?精神攻撃も歴とした戦術ですよ。ただ無策に真っ向から向かっていくだけなのは無謀の極み!!このような搦め手も使いこなせてこそ強者なのですよ!!イレギュラーハンターならば無策に突っ込んで返り討ちにあった愚か者達を見てきたのでは!?」

エックスに向かって光線を放つモスミーノス。

「俺は貴様らのようにはなれないと言ったろう!!」

それをダッシュでかわしていくが、モスミーノスは再び鱗粉を飛ばしてくる。

それから逃げようとするが、スクラップに足を取られて転倒してしまう。

「うわっ!?」

転倒の際に床にアーマーが擦り付けられ、火花が散って鱗粉が燃えた。

「(鱗粉が…燃える…?まさか、あいつの弱点は…)」

「余所見とは余裕がありますね!!」

再び光線を放って来たためにエックスは何とかそれをかわしていく。

「まだ体力に余裕があるなら精神攻撃です」

再び鱗粉を飛ばすモスミーノス。

消耗によって鱗粉から逃れられずにエックスは鱗粉に包まれてしまう。

「(気をしっかり持て…これは…幻覚なんだ…!!)」

目を閉じて幻覚をどうにかしようとするが、全く効果はない。

「目を閉じたところで無意味です。私の鱗粉はあなたの“恐怖”を直接あなたの心に投影する。どれだけ高い戦闘力を持とうとあなたの“心の弱さ”が弱点となるのです!!」

モスミーノスの言う通り、目を閉じても弱まるどころかどんどん効果を増していく。

恐怖によって震えが止まらなくなり、歯の根が合わなくなる。

「歯の根が合わないようでは終わりですね、そのまま恐怖に飲まれて死になさい」

エックスに興味を失ったモスミーノスはエックスに背を向けた。

「(弱さ…倒した敵に心を痛めることが…俺の“心の弱さ”!?)くっ…!!うおおおおおっ!!!」

恐怖を振り払うようにエックスは叫ぶとある特殊武器を選択してバスターを向ける。

「お前の姑息な手に早々かかるか…!!みんなの幻に気を取られて俺が負けたら…倒してきたみんなに申し訳が立たないんだ…ラッシング…バーナーーーーッ!!」

放たれた火炎弾は粉塵爆発を起こしたことで今までのものとは桁違いの威力でモスミーノスのボディを燃やしていく。

「私の…鱗粉が…導火線に…なったのか…」

粉塵爆発とはある一定の濃度の可燃性の粉塵が大気などの気体中に浮遊した状態で、火花などにより引火して爆発を起こす現象である。

モスミーノスの鱗粉でそれを利用したのである。

落下したモスミーノスは全身を炎で燃やし尽くされ、DNAデータのみを残して灰となった。 

 

第38話:Scratch

モスミーノスを倒したエックスは精神的疲労によってふらつきながらもエイリアに通信を繋げて転送してもらおうとした。

「エイリア、任務完了…転送してもらえるかな…?」

『了解…少し待ってもらえるかしら?それまで休んでいて…スクラップ工場だから休もうにも居心地が悪いでしょうけど…』

「分かった、頼むよ」

レプリロイドやメカニロイドの墓場とも言える上にあのような目に遭ったスクラップ工場で安心して休めるのかと言えばそれはない。

「(“心の弱さ”…か、モスミーノスの言う通りかもしれないな…正義の名の元に俺はこのバスターでイレギュラーを…レプリロイドを撃ち抜いてきた…その痛みは今でも俺の中に残っている…)」

バスターに変形させたまま腕を見つめて俯くエックスだが、気配を感じて前を見ると…。

「ゼロ…?」

アーマーの色と形状が記憶の物とは違うが、間違いなくゼロであった。

髪の色も正反対の銀色に染まっていたが、先の反乱の際にゼロがライト博士によるパワーアップを受けたことで同じ配色になったことがあるためにエックスはそこは気にならなかった。

エックスはゼロに影があることを確認すると、ゼロの元へと歩いていく。

「影がある…と言うことは本物なんだね…ゼロ…」

ゼロの左腕がエックスにとって初見の物に伸ばされた瞬間にエックスも反射的にZXセイバーでゼロのZセイバーを受け止めていた。

「ほう、受け止めたか…真っ二つにしてやるつもりだったんだがな」

「ゼ、ゼロ…?」

今の一撃は本当に危なかった。

もし少しでも反応が遅れていたらエックスはセイバーによる斬擊で小さくないダメージを負っていただろう。

ルインの形見の武器を使いこなすための特訓が親友からの本気の一撃から身を守ることになるとは思わなかった。

そしてゼロは不敵な笑みを浮かべてエックスを弾き飛ばすと拳にエネルギーを纏わせていく。

「成る程な、話で聞いていた通りの甘ちゃんだが実力はそれなりにあるらしいな。だが、そんなボロボロのお前を倒したところで意味はない。もっと強くなったお前と戦い、打ちのめすことに意味がある…じゃあな!!」

アースクラッシュを床に叩き込んで粉砕し、余波で吹き飛ばされたエックスを地下へと落としていく。

「そんな…何故…何故なん…だゼロ…?」

アースクラッシュの直撃は受けなかったが、ゼロの技の中でも最高威力の技は余波だけでもエックスの意識を刈り取るだけの威力があった。

エックスが意識を失った瞬間、転送の光に包まれる。

しかしその光に別の輝きが混じっていたことに意識を失っていたエックスは気付けなかった。

「(何故なんだ…ゼロ…どうして俺に攻撃をしてくるんだ…一体…何故…)」

「ス…クス…エックス!!起きてエックス!!」

「っ!!ゼロ!!」

勢い良く起き上がるエックスに隣にいたエイリアは多少驚くが、エックスが起きたことに安堵の表情を浮かべた。

「大丈夫エックス?あなたかなりのダメージを受けて気絶していたのよ?」

「ダメージ…そうか、ゼロのアースクラッシュで…」

「悪いけど、あなたのその状態の経緯を知るために少しメモリーの内容を見させてもらったわ…データ反応は…間違いなくゼロだった…」

「そうか……ゼロを助けるために戦ってきたのに…何をしてるんだ俺は…ん?このアーマーは…?」

皮肉の笑みを浮かべて下を向くと、ボディが何時もの物とは違うものに変化していることに気付いた。

「新しいボディパーツ…?」

「多分、ライト博士からの贈り物よ。あなたが受けたダメージは相当な物のはずだった。でもライト博士は咄嗟にボディパーツを転送することであなたのボディへのダメージを回復させてくれたんだわ」

「そうか………」

「エックス、ボディパーツのバックアップは既に取ってあるから…トレーニングルームで体の調子を確認してもらえるかしら?」

「…分かった」

そしてトレーニングルームに到着し、エイリアが出した仮想エネミーとの戦闘が始まるが、ここでアクシデントが起こった。

「!?バスターに変形しない!?」

「エックス!!」

攻撃が当たる直前に訓練を強制終了させる。

「そんな…」

「回路には異常はないはずなのに…どうして…」

変形しないバスターにエックスとエイリアが動揺する中、ケインからの通信があった。

『大変じゃ!!シグマの軍団がシティ・アーベルに攻撃を仕掛けておる!!このままでは街が壊滅してしまうぞい!!』

「攻撃…でも今のエックスじゃ…」

エイリアは両腕を震わせるエックスを見遣ると、足をケインの元へと進ませる。

「エイリア…!!」

「Drと話して打開策がないか検討してみるわ。私達はあなたに頼りすぎていたし、今のあなたには休息が必要だもの」

親友から攻撃されたと言う事実はエックスの心を打ちのめして戦える精神状態ではない。

去ってしまったエイリアを止めようとしてもエックスの声には力がなかった。

「俺は…」

『助けるべき友がお前を攻撃したと言う事実が、お前の心を傷付けて、バスターを封じてしまったのじゃな』

「ライト博士…」

背後にはライト博士のホログラムがいた。

『じゃが、エックス…心の傷を理由にして目の前の現実から目を逸らし続ける訳にもいかないと言うのも分かっとるじゃろう?』

「…………はい」

『…武器を失ったなら、力なき者の盾となって守ろう…以前のお前ならそう考えたじゃろう…エックスよ…戦いは辛く虚しい…じゃが、それによって得られる平和…そして人々の笑顔の素晴らしさを忘れるでない…お前が望む未来を手に入れるためにお前に与えたボディパーツは必ず応えてくれるはずじゃ…』

「ライト博士…」

エックスに伝えたいことを伝えたライト博士のホログラムは消えてしまったが、エックスの胸に確かに届いた。

エックスはハンターベースのライドアーマー・ラビットに乗り込んで、シティ・アーベルを攻撃している軍団の司令官の元へと向かうのであった。 

 

第39話:Giga Crash

 
前書き
アームパーツはアリゲイツ戦中に。 

 
エックスがライドアーマーに乗り込んで突撃したことはハンターベースでも動揺が走ったが、特にエックスの状態を知るエイリアの動揺はかなりのものだった。

「エックス…何て無茶を…」

「どうしたんじゃエイリア?」

まだエックスの状態を知らないケインは首を傾げている。

「今のエックスは腕がバスターにならないんです!!そんな状態で出動したら…」

「な、何じゃとおっ!!?」

バスターが使えない状態で出動したエックスにケインの叫びが司令室に響き渡った。

そしてエックスは攻撃を回避しながら何とか甲板に着地することが出来た。

「(バスターは使えない以上、俺に残されている武器はルインの武器とこのライドアーマーのみ…何とかライドアーマーを破壊されずにボスの元まで行かなくては!!)」

しかし、着地したポイントが悪かったのかレプリロイドとメカニロイドの大軍が群がってきた。

「くそ!!着地する場所を間違えたか…!!」

出来るだけ消耗を避けたいと言うのによりにもよって敵の密集地帯に着地してしまったようだ。

VAVAのような操縦テクニックがあれば被弾を抑えつつ立ち回ることは可能だろうが、残念ながらエックスにそれほどの技量はなく、波状攻撃を受けてライドアーマーを破壊されてしまう。

「くそ…」

爆風で吹き飛ばされたエックスは仕方なくルインの武器を構えたものの、セイバーもバスターも反応しなかった。

「ルインの武器まで!?」

頼みの綱であるルインの武器まで使えないと言う事態にエックスは攻撃を為す術なく受けてしまう。

正確にはルインの武器に問題があるのではなく、エックスが無意識に武器への出力を拒んでいるのだ。

「く、くそ…俺はみんなの盾にもなれないのか…!!」

このままではやられるのは時間の問題かと思われたが、ライト博士がボディパーツに保険をかけていたのか、ボディパーツの能力が発動された。

エックスを中心に広範囲にエネルギー波が放出され、レプリロイドとメカニロイドの大軍を殲滅した。

『エックス…』

「え?」

『何をしているのエックス?』

光の中にいたエックスは声に反応して振り返ると、そこにはルインがいた。

研究所にいる大破した姿ではなく、五体満足の状態でだ。

「君はどうして…」

『エックスが立ち止まってるから背中を押しに来たんだよ』

「え?」

目を見開くエックスにルインは微笑んだ。

『ねえ、エックス。ゼロが本心からあんなことをしたんだって思ってる?』

「それは…」

ルインの問いにエックスは答えられずに俯いてしまう。

『エックス…思い出してごらんよ?ゼロとの思い出…エックスを、私を助けてくれた最高の先輩はそんなことするような人だった?』

「っ!!」

ルインに言われて思い出した。

ゼロとの思い出…イレギュラーハンターに配属されたばかりで右も左も分からなかった自分に声をかけてくれた。

他にもイレギュラー相手に非情になれずに何度も危機に陥ると呆れながらも助けてくれた。

先の戦いの時だって…自分を庇って…。

『思い出した?』

「ああ…思い出したよ…俺は…俺は…っ!!何を疑ってたんだ…!!ゼロは何度も俺を信じて助けてくれたのに…今度は…俺がゼロを信じてやらないといけなかったのに…!!」

『良かった…エックスが思い出してくれて…私達は何時だってエックスと一緒に戦っているからね』

その言葉を最後にルインの輪郭がボヤけていく。

しかしもう大丈夫だろう。

「…ああ…そうだ。2人は何時だって俺と一緒に戦ってくれる…ありがとう…」

光が晴れた時にはエックスは完全に吹っ切れて新しいボディパーツの能力を再確認していた。

「これが、ボディパーツの新能力…ギガクラッシュか…ダメージをエネルギーに変換する機構を取り付けたことで防御力は前のアーマーより下がっているようだけど…」

しかし、これによって起死回生の一発逆転が出来るようになったようだ。

これは切り札として使えそうだ。

「さて、この艦の指揮者は何処だ?」

『知りたいか?』

「その声は…クラブロスと同じく行方を眩ませていたホイール・アリゲイツだな?」

『正解だ。今じゃこの艦の総指揮者になったんだよ。俺の好きな破壊も思う存分出来るようになったからシグマ様々だぜ』

「………」

元イレギュラーハンターでありながら、イレギュラー同然の思考を隠そうともしないアリゲイツにエックスの表情は険しくなる。

『俺の所への最短ルートを教えてやる。正義の味方のお前は当然来るよな?』

突如甲板の一部が開いたので、どうやらここが最短ルートへの入り口のようだ。

罠の可能性もなくはないが、エックスに逃げると言う選択肢はない。

「行ってやるさ」

入り口に飛び込んでオイルに満ちた部屋に着地する。

「オイル…?…水の代わりか?確かに奴は水中戦も出来るようになっているが………アリゲイツ…何処にいる!?」

部屋に満ちているオイルに疑問符を浮かべながらもエックスは周囲を見渡す。

「威勢がいいなエックス。だが、俺は気付いてるぜ?お前が…お得意のバスターを使ってないことをな!!」

「なっ!?(しまった!このオイルは接近に気付かせないためか!!)」

オイルの中から飛び出してきたアリゲイツはエックスのボディに噛み付いた。

「バスターが壊れてるのに飛び込んでくるとは馬鹿な奴だ。丸腰同然じゃねえか…自殺願望でもあるのかお前?」

「ぐっ!!放せ!!」

アリゲイツを殴るが、頑強な装甲を持つアリゲイツにはびくともしない。

「まあ、安心しな。手加減はしてやる!!ジワジワと痛め付けて殺すためにな!!」

エックスを投げ飛ばしてオイルの中に沈ませるとアリゲイツもオイルの中に潜った。

「くそ…(バスターが使えればあいつに有効打を打てそうなストライクチェーンやバブルスプラッシュが使えるんだが…)」

「スピンホイール!!」

回転しながら迫ってくる円盤状のノコギリがエックスに迫る。

壁蹴りを駆使してかわそうにも地形を這う能力を持つためにエックスの背中に傷をつける。

「ぐわあっ!!」

「そぉーれぇ!!捕まえたあ!!」

落下していくエックスに噛み付くアリゲイツ。

本来の防御力なら大ダメージは逃れられなかったかもしれないが、今のエックスにはボディパーツの恩恵があるためにダメージは小さい。

「中々固えな!!そうでないと潰しがいがないぜ!!」

バスターが使えないエックスに連続攻撃を仕掛けるアリゲイツ。

このままではダメージが蓄積し、倒されてしまうのは時間の問題だ。

「(バスターが使えれば…)」

いくらゼロへの疑念が無くなったとしても心の傷はそう簡単には癒えない。

しかしそんなエックスの背を押してくれるのは何時も彼女達だった。

『行くよ!!エックス!!』

『構えろ!!』

「この感覚は…!!」

3人で出来る合体攻撃が出来ないか試行錯誤していた時…初めてクロスチャージショットを放った時の感覚を思い出した。

エックスのアームパーツが変化して両腕にエネルギーがチャージされる。

「バスターに変形した!?使えないわけでは無かったようだが、それだけで形勢逆転は……!?」

アリゲイツのエネルギー感知器に異常が無ければだが、エックスの両腕にエネルギーが同時にチャージされていると言う普通ならばあり得ない状態となっていた。

「このパーツは…そうか…ゼロとルインが俺に力を貸してくれているんだ…行くぞアリゲイツ!!これが…このアームパーツの…ダブルチャージショットだ!!」

両腕のバスターから放たれたチャージショットはまるで意思を持つかのようにアリゲイツに向かっていく。

「ダブルチャージショットだと!?エックスにそんな機能があるなんて聞いてねえぞ!?」

元々評価が低かったB級時代でもチャージショットの火力はシグマは愚か、エックスを見下していたペンギーゴからも評価されていたエックスである。

そんなエックスの最大火力が2発同時に放たれたことにはアリゲイツも驚愕を隠せない。

ダブルチャージショットをまともに受けたアリゲイツは壁ごと消し飛んだ。

アリゲイツのDNAデータを回収したエックスはこの艦の搭乗員が逃げ出しているのを見て、アリゲイツの人望の無さを知った。

「アリゲイツの仇を取ろうともせずに逃げ出すか…力による結束の脆さが浮き彫りになったな…俺の結束は大丈夫だ…ルインが俺に思い出させてくれたから…ありがとうルイン…」

あの彼女はもしかしたら自分の弱さが生んだ幻影なのかもしれないが、それでもエックスは眠っている彼女に感謝した。

「さて、せっかく彼らが残してくれたんだ…この艦からシグマの本拠地のデータを暴き出す!!」

最後のボスを倒したエックスは残された艦の司令室に向かい、データを探し始めるのであった。 

 

第40話:Special Skill

 
前書き
あの技は一応習得させます 

 
全てのボスを倒したエックスはアリゲイツの艦から入手したデータでシグマの本拠地を暴いたエックスはそこで待っているであろうカウンターハンター…シグマ…そしてゼロとの戦い気を引き締めていた。

「ねえ、エックス…本当に今から向かうの?あなた戦い詰めじゃない…少し休んでから行った方が…」

新たな強化アーマーであるセカンドアーマーのバックアップを取る時以外はあまり休めていないような気がするエイリアはもう少し休んでいくことを勧めるが、エックスは首を横に振る。

「そうもいかないよ。早くシグマを倒して平和を取り戻さないと…」

そう言って振り返るエックスにエイリアは何も言えずに寂しげに微笑むしかなかった。

「そう…なら、これだけは言わせて…気をつけてエックス」

「ああ、行ってくるよエイリア…チェバルを借りていくよ。出来れば長距離移動用のタンクを装備させてもらえるかな?」

「分かったわ、整備員に伝えておくわ」

そして用意されたチェバルに乗り込んでシグマの本拠地に殴り込んだものの、カウンターハンターによって戦力にすらならない者は既に破壊されていることなど知る由もなかった。

そしてシグマの本拠地に辿り着いたエックスは、目の前の惨状に愕然となる。

「な、何だこれは!?」

見張りであったろうレプリロイドが既に破壊されていることにエックスは目を見開いて破壊されたレプリロイドの状態を見る。

「これは…かなりの硬度と重量のある物を叩き付けられたような跡があるな…他にはショットの弾痕に地面の爆発の痕跡…他にはビームサーベルのような物で斬られたイレギュラーもいる…まさか…でも何故こんなことを…?」

エックスは知らないが、元々ここのイレギュラーは数合わせの存在にしか過ぎず、エックスと戦わせても無駄に経験を積ませるだけだと判断したサーゲスによってカウンターハンターにより惨殺されたのである。

「…とにかくここにいても始まらないで進もう」

嫌な感覚を抱きながらもシグマの基地に突入するエックスだが、やはり中にイレギュラーはおらず、全て破壊されていた。

「奴らは何を考えて…ん?」

何かに引き寄せられるように向かうエックス。

そこにはかつてのように道着姿のライト博士の姿が映ったカプセルがあった。

『エックス。とうとうここまで来たか。このカプセルに入れば、波動拳同様、厳しい修業によって一部の人間だけが習得出来た必殺技を放てるようになる。人に近い心を持つお前なら、きっとこの技も使いこなせるはずじゃ。その名も昇竜拳!!空中の敵に対して絶大な威力を発揮するのじゃ。エックス、後少し…頑張るのじゃぞ…昇竜拳!!』

ライト博士は腕に炎を纏い、強烈なアッパーカットを放った後に消えた。

「どうやら今度は前みたいに危険な技じゃないようだな」

安堵の息を吐くエックス。

もし波動拳のような技ならどうしようかと思ったが、そうではないようなので安心した。

カプセルの中に入り、昇竜拳を習得したエックスはそのまま先に進むのであった。

しかしどれだけ先に進んでもあるのは床に転がる残骸のみで敵の攻撃がないのはエックスの体力のことを考えれば有難いが、寧ろ何もないのは逆にエックスの不安を煽っていく。

奥に光が見えたのでそこに駆け出すと、広い場所…コロシアムに出て、観客席に立体映像の見物人が現れた。

「立体映像の見物人か…悪趣味な」

「け・見物人は多い方がい・良いんだなぁ。お・お前もお・大勢にみ・見送られた方が良いだろぉ。き・気を遣ってや・やったんだなぁ~」

「バイオレンか…相変わらず電子頭脳に異常があるようだな…俺と戦う前にまともに喋れるようにお前の仲間に電子頭脳を直してもらったらどうだ?」

オストリーグが死ぬ原因となったバイオレンに皮肉を言うエックス。

「む~!!お前を壊してからす・するんだな~!!」

エックスの皮肉に怒るバイオレンはエックスに向かって鉄球を投擲する。

「なら、お前は永久にそのままだな!!」

いくら心優しいエックスでも数多くの犠牲者を出したシグマの直属の部下であり、オストリーグの仇であるバイオレンを生かしておくつもりなど毛頭ない。

迫ってくる鉄球をダブルチャージショットの一発目で弾こうとするが、ビームコーティングが施されているのかチャージショットが弾かれてしまう。

「ぐはっ!?」

鉄球を顔面に喰らったエックスは吹き飛ぶ。

「き・決まったんだなぁ~」

「もう一発!!」

勝利を確信し、隙だらけのバイオレンに二発目のチャージショットが直撃した。

「ぐっほーぅ!!」

まともに二発目を喰らったバイオレンは尻餅をついた。

「見た目通り…頑丈だな…」

「お…俺の鉄球喰らって…い・生きてんのはぁ~おめが初めてなんだなぁーっ」

「生憎俺はお前よりも強力な攻撃を受けてきたんでな…そう簡単にやられはしない。」

まともに鉄球を喰らったことで顔が腫れているが、エックスは立ち上がる。

「二枚目が台無しなんだなぁ~。次はか・顔だけじゃあ、す・済まないんだなぁ!!」

再び鉄球を投擲するバイオレン。

「舐めるな!こんな直線の攻撃なんて簡単に避けられる!!」

鉄球を横に動いてかわすエックスだが、鉄球の内臓されていたバーニアを噴かして強引に軌道を変えた。

「鉄球の軌道が変わった!?」

何とか防御が間に合ったエックスだが、変幻自在に動き回る鉄球によってダメージが蓄積していく。

「(落ち着け…奴の攻撃手段は鉄球によるものだ…鉄球を手元に戻した瞬間を突けば!!)」

バイオレンの手元に鉄球が戻った瞬間、チャージしていたバスターを向けてチャージショットを放つが、バイオレンは巨体からは考えられない程の身軽さで跳躍した。

「あの巨体で跳んだだと!?」

「あれくらい、か・簡単にかわせるんだなぁ~」

そして指先からのマシンガンを撃ってくるバイオレン。

どうやら他にも攻撃手段を持っていたようだ。

「付け入る隙がないのか!?」

何とか回避しようとするエックスだが、マシンガンの弾幕を避けきれずに吹き飛ばされてしまう。

「あ・浅はかな奴なんだなぁ~」

「!?」

バイオレンが着地したので次の攻撃に備えようとしたエックスだが、バイオレンは全く動かない。

少しの間を置いてバイオレンは動き出した。

「さ・さぁ~て、と・とどめを刺すんだなぁ~っ!!」

「(…今の間は…?そうか、パワーと装甲を重視し過ぎたせいで、体重が支えられずに着地の瞬間に動きが止まる…だが、まずはあの鉄球をどうにかしなければ!!)ストライクチェーン!!」

投擲された鉄球による初撃をかわしてストライクチェーンの鎖をバイオレンの鉄球に絡ませる。

「むふぅーっ!!ち・力比べならま・負けないんだなぁ~っ!!」

「力比べ?パワー型相手にするわけないだろう!!」

バイオレンが自身の鎖を引っ張るが、エックスは自分の膂力を理解しており、いくら強化アーマーで出力が相応に強化されていたとしてもパワーに特化した相手には敵わないことも理解している。

エックスはバイオレンが鎖を引っ張るのと同時にダッシュを使い、宙に浮いた瞬間にエアダッシュを使用することで凄まじい速度でバイオレンに肉薄した。

「喰らえ!!」

ZXセイバーのチャージは予め済ませていたためにチャージセイバーは何時でも繰り出せる。

バイオレンの首を叩き斬ろうと横薙ぎに振るうが、反射的にバイオレンは屈んだことで首を斬り落とされずに済んだが、主武装の鉄球の鎖を断ち斬られてしまう。

「お…俺のて・鉄球が…」

「まだ俺の攻撃は終わっていない!!バブルスプラッシュを喰らえ!!」

重装甲のバイオレンには生半可な攻撃は通らないだろうが、クラブロスから得た特殊武器であるバブルスプラッシュはどんな金属をも溶解させる強酸の泡を発射する武器だ。

流石のバイオレンもこれには耐えられないと判断したエックスだが、バイオレンにとどめを刺す直前に横槍が入る。

何者かのビームサーベルによる斬撃がエックスの左肩を斬り裂いたからである。

「な…に…!?」

反射的に体を捻ってダメージを和らげたが、それでも小さくないダメージを受けたエックスは倒れる。

「ふむ、咄嗟に体を捻ったことでダメージを和らげましたか。良い反射神経です」

「ふん、あの男の忘れ形見じゃ。簡単に死なれても拍子抜けじゃ」

倒れるエックスに向かって称賛する青年のレプリロイドと冷たく見据える老人型レプリロイド。

「アジールにサーゲスか…!!」

「覚えてくれて光栄です。さあ、エックスさん…楽しい死闘の第2ラウンドと行きましょうか?」

アジール、サーゲス、バイオレン。

カウンターハンター3人を同時に相手にすると言う厳しい戦いを強いられるエックスであった。 

 

第41話:Special Skill Ⅱ

 
前書き
バイオレンを倒せるところまで追い詰めたエックスであったが… 

 
ダメージから立ち直ったエックスは何とか立ち上がってカウンターハンター3人を睨み付ける。

「(相手は3体…バイオレンの実力は大体把握出来たが、アジール…特にサーゲスの実力は未知数だ…特殊武器を使って上手く立ち回る必要があるな…。)」

「エックスさん、バイオレンの主武装を破壊し、バイオレンを倒す寸前まで追い詰めたあなたの実力は評価に値しますよ。そしてあなたはバイオレンの弱点…パワーと装甲に重きを置いた結果、それなりの高度からの着地の際にその体重を支えられなくなり、一瞬足の機能が止まって無防備となるところを見抜いた。更にバイオレンのパワーを逆に利用して攻撃するとは流石です。どうやら流石の我々も1対1では分が悪いようですね」

「しかし、お主にも弱点はある。お主のダブルチャージショットは確かに強力じゃが、2発しか撃てんと言うことと、ダブルチャージショットを放つ際の反動で僅かな間だけ動けなくなるということじゃ」

サーゲスは用意した飛行ユニットに乗りながらエックスに向かって言い放つ。

「そう、つまり我々のうち2人は対処出来ても3人目には対処出来ないと言うわけです。さあ、エックスさん…どう戦います!?」

3人同時にエックスに襲い掛かってくる。

特にアジールの速度は凄まじく、一瞬エックスは対応が遅れてしまう。

「(速い!?)」

アジールのサーベルによる攻撃をギリギリのところでかわすものの、胸にX字の傷が出来る。

「ほう、避けましたか…」

「(何て速さだ!シグマに匹敵する…)」

現在のシグマの実力を知らないエックスは先の戦いのシグマが基準となっているが、それでも恐ろしい速度なのは変わらない。

「(このままではサーベルの餌食になる!!早く奴から離れ…)がっ!?」

全身に衝撃が走り、咄嗟に目を向けると指先のマシンガンでバイオレンが狙撃したようだ。

「しまった…敵は1人じゃなかったんだ…」

たたらを踏むエックスはいつの間にか仕掛けられていた地雷を踏んでしまい、爆発によって吹き飛ばされる。

「ふぉふぉふぉ!油断しとるとわしの地雷の餌食になるぞ」

「地雷と言うのは」

「こ・こう進むんだ・だな」

アジールは地雷をかわし、バイオレンは自分の装甲に物を言わせて地雷を構わずに踏みつけて強引に突破してくる。

「不味い、ラッシングバーナー!!」

このままでは集中攻撃を受けることになると判断したエックスはエアダッシュとチャージラッシングバーナーによる超加速で離脱した。

チャージラッシングバーナーは全身に炎を纏わせて敵に突撃する技なのだが、こういう風に回避と移動にも使える。

この技は全身に纏う炎を推進力にしているためにフットパーツのバーニアは関係ないのでそれにより特殊武器エネルギーを消費するものの、それに見合う超加速を使用出来る。

「ほう、武器をそのように使いますか」

「ふん、特殊武器を回避に使うとは忌々しい奴を思い出させるわい」

「に・逃がさないんだなぁ~っ!!」

エアダッシュとチャージラッシングバーナーの超加速はアジール達も驚かせたが、すぐに切り替えてエックスに向かってくる。

「(相手は3人…一番厄介なのは地雷を仕掛けて此方の機動力を削いでくるサーゲスだが…)」

取り敢えず広範囲への攻撃が可能な特殊武器を主体に攻めることにしたエックスはバスターを真上に掲げた。

「ソニックスライサー!!」

チャージソニックスライサーの無数の衝撃波の刃が3人に向けて降り注ぐ。

「シャアッ!!」

「き・効かないんだなぁ~っ!!」

「ぐはっ!?」

アジールはサーベルで衝撃波を防ぎ、バイオレンは衝撃波をものともしないが、小柄なサーゲスには堪えるのか苦悶の表情を浮かべた。

「(効いた…!!)あぐぅっ!!」

サーゲスにはダメージを与えられたが、アジールとバイオレンの攻撃を受けてしまう。

「(ま、不味い、離脱しなくては…)クリスタルハンター!!」

水晶振動波を増幅させ、周辺の時間流を鈍らせるチャージクリスタルハンターでアジール達の動きを鈍らせる。

エックスも動きは鈍くなるものの、アジール達程ではないためにエアダッシュで離脱した。

「逃げるしかないと言うのは少し情けないですよエックスさん!!」

「挑発に乗るか!スピンホイール!!」

広範囲攻撃を可能とし、高い貫通力を持つチャージスピンホイールで攻撃し、今度はバイオレンとアジールにもダメージを与えられたが、やはり数の差は大きいのか徐々にエックスは追い込まれていき、ラッシングバーナーとクリスタルハンターのエネルギーがゼロになる。

「クリスタルハンターとラッシングバーナーのエネルギーはゼロになったか…」

つまりこれで回避することは出来なくなった。

アジール達もそれなりにダメージはあるが、エックスのダメージはそれ以上だ。

「思った以上に足掻きましたがここまでのようですね」

「奴の忘れ形見ならもう少し足掻くと思ったがのう」

「そ・そうだ!か・賭けをするんだな。みんなで一斉攻撃して、と・とどめを刺した者が、か・勝ちなんだなぁ~」

「ふん、わしらがダブルチャージでやられた後にゆっくりとどめを刺すつもりじゃろ」

「ゲヘヘっ、ば・バレた~?」

「いや、面白いですね。バスターなど避ければ良いのですからね!やりましょう」

バイオレンの提案にアジールが乗ると、3人は少し離れた場所に立つ。

「賭けの道具になってもらいますよ…エックスさん」

「…良いだろう…俺は俺に賭けるがなっ!!」

両腕にエネルギーをチャージさせていくエックスにアジール達は嘲笑う。 

「そうそう…精々抗って…下さい…よっ!!」

アジール達が3人同時にエックスに向かっていく。

「(攻撃の優先順位が高いのはアジールとサーゲスだ。まずこの2人を倒さなければ!!)ギガクラッシュ!!」

エックスが最初に繰り出したのはセカンドアーマーの切り札と呼べるギガクラッシュである。

エネルギー波がアジール達を飲み込むが、ダメージはあまり与えられていない。

「雑魚相手ならいざ知らず、我らがその程度の技で…やられると思ったのですか!?笑止せ・んば…ん!?」

エックスがギガクラッシュを放った本当の目的はアジール達へのダメージではない。

「(ア、アイセンサーがっ!!あまりの光量で…壊れた!?)」

エックスの狙いはアジール達の目潰しである。

そしてエックスの本命が放たれた。

「ダブルチャージショット!!」

一発目がアジールの胴体を吹き飛ばし、飛行ユニットの陰にいたことで何とか目潰しを凌いだサーゲスの飛行ユニットと下半身を粉砕した。

しかし、まだバイオレンが残っている。

「バ・バスターの音でお・お前の位置がわ・わ・わ・わ分かったんだなっ!!」

エックスに飛び掛かるバイオレンにサーゲスは勝利を確信した。

「か…勝った…奴はチャージが間に合わん!!チャージしていない一撃ではバイオレンの装甲は貫けんわい!!やっと…やっと勝てたわい…長かった…長かったわ…!!?」

鈍い音が響き渡り、エックスの敗北した姿を見ようとするが、煙が晴れた先にはエックスの鋭いアッパーカットがバイオレンに炸裂していた。

「あ…ぎ…?」

「昇竜拳!!」

ライト博士によって新しく習得した昇竜拳をバイオレンに叩き込んだエックス。

バイオレンもまさか、エックスが徒手空拳で反撃するなど予想しておらず、昇竜拳をまともに受けたバイオレンの頭部は粉微塵になってしまった。

エックス対カウンターハンターとの戦いはエックスの勝利で終わったのである。 

 

第42話:Destiny

ギリギリまで隠していた切り札によってカウンターハンターから勝利を手にしたのをシグマはモニターで見ていた。

「…かつて、この世界を二分する2人の優秀な科学者がいた。1人はその頭脳を平和のために使い、1人は己の欲のために用いた。奇しくも2人は最後に互いの最高を自負するロボットを造り上げ…それぞれ何処かへと封印された…出来ることなら最高同士の戦いを見てみたいものだ」

シグマの呟きが玉座の間に響き渡る。

そして場所はコロシアムに戻り、残る相手はゼロとシグマのみとなり、機能停止をしていないサーゲスの方に向かおうとした。

「サーゲス、俺の勝ちだ。シグマとゼロの居場所を教えてもらうぞ」

「お主の勝ち…くくくっ…くかか…ひひひ…」

「ん?」

突如笑いだしたサーゲスにエックスは表情を顰めるが、サーゲスは狂ったように笑う。

「ヒャーハヒヒヒヒッ!!」

「何が可笑しい?こんな状況で笑うなんて気でも狂ったか?」

「くくくっ…笑わずにはおられんわい!!わしらを倒したくらいで勝利を確信するとはな!!この勝負はわしの勝ちじゃ~っ!!」

「何だと!?」

「これがわしの切り札じゃ!!」

そう言ってエックスに見せたのは何かのスイッチ。

「このスイッチを押せば宇宙にあるキラー衛星から一斉に世界各国への攻撃が行われるのじゃ!!」

「止めろ!!」

スイッチを押そうとするサーゲスを止めようとするエックスだが、それよりも速く動いた存在がいた。

セイバーによる斬撃がサーゲスのスイッチを弾き飛ばして、そのスイッチを踏み砕く。

「数に驕り…戦いの術を怠り、その挙げ句潔さまで失ったのか?みっともないぜ。そうは思わないか?英雄さん」

「………」

スイッチを踏み砕いたのはゼロであり、ゼロはエックスに振り返って尋ねるものの、エックスはただ無言でゼロを睨み付けるだけだった。

「やれやれ…嫌われてるな」

セイバーをバックパックに戻すと、サーゲスがゼロに向かって喚き始める。

「今なら無礼は許してやる!!早くエックスを倒すんじゃ!!」

「安心しろ、必ず倒してやるさ。それを貴様は…」

エックスを指差すと左腕をバスターに変形させるとチャージを始める。

「ゼ…ゼロッ、何のつもりだっ!!」

「アジール達とあの世で見てるんだな!!」

躊躇することなくサーゲスに向けて放たれるチャージショット。

「きっ…貴様ーっ!!その“力”を与えた恩を忘れたかーっ!!」

そしてチャージショットはサーゲスに直撃し、跡形もなく粉砕した。

「悪いな…覚えていない」

笑みすら浮かべるゼロにエックスは拳を握り締めた。

「(仲間を倒した…ゼロが…)」

「エックス…俺は元々貴様の仲間だったらしいが、今の俺にはそんな記憶はない。あるのは貴様を倒すと言う“使命”だけだ。下手な策など一切使わずに力で貴様を捩じ伏せる。しかし、貴様が戦わずに背を向けると言うならば…躊躇わず…斬る!!」

鋭い眼光でエックスを射抜くゼロの姿に、エックスはその姿が自分の知るゼロと被り、エックスにも覚悟を決めさせた。

「分かってるさ、ゼロ。君が望むのなら俺は戦うよ!!君をシグマの呪縛から救えないのなら…俺は君を倒すことで君の魂を…誇りを救う!!俺の全身全霊を以て!!」

両腕のエネルギーがチャージされていき、フルチャージ状態となり、ZXセイバーも何時でも使える状態だ。

「…結構だ!!」

エックスの言葉に不敵の笑みを浮かべてチャージを終えたバスターを構える。

「その痛々しい姿に引導を渡してやろう。今すぐにな!!」

「うおおおおおっ!!!」

同時に放たれるチャージショット。

2人のチャージショットの威力は互角のようで拮抗状態が続く。

「(ダブルチャージでケリを着けてやる!!)」

ダブルチャージショットは一撃の破壊力はファーストアーマーのスパイラルクラッシュバスターに劣るが、チャージショットを2回連続で放てるために初撃を防いでも二撃目で敵に痛打を与えることが出来る。

「喰らえーっ!!」

放たれる2発目のチャージショットがゼロに向かっていく。

「ダブルチャージか!だが、エックス!!ダブルチャージはお前の専売特許じゃないんだぜ!!」

ゼロのバスターも2発目のチャージショットを放ち、エックスのチャージショットと激突する。

「ゼロもダブルチャージを!?」

「その通り…と言いたい所だが、それも不正解だ!!俺には第3の武器があるんだぜ!!これが俺のダブルチャージウェーブだ!!」

セイバーを抜いてエックスに向かって衝撃波を放つ。

「くっ!!」

エックスも咄嗟にセイバーを抜いて衝撃波を受け止める。

「ほう、そいつは確かルインの武器だったな。近接武装のセイバーと遠距離武装のバスター…武装の差はないようだ…面白くなってきたなエックス!!」

ダブルチャージウェーブはエックスにあまり有効ではないと悟ったゼロは今度はショットによる連射で攻めてくる。

「バブルスプラッシュ!!」

チャージバブルスプラッシュの泡のバリアでゼロの攻撃を防ぎながら距離を取るエックス。

同時に両腕のチャージもしていく。

「良いぞエックス!俺の性能を限界以上まで引き出し…お前も限界以上の性能を引き出せ!それこそが俺達が造られた理由なんだ!!」

「(そんなことないと俺は思いたいけどね…でもこの一撃一撃が俺達の言葉でもあるんだ…悲しいなゼロ…こうやって戦っている時だけしか今の俺達は分かり合えなくなってしまったなんて…でも俺は逃げない。君をシグマの呪縛から救えないなら…俺は君を倒す…それが俺達を助けてくれた君に出来る精一杯のことだから!!)ゼロおおおおおっ!!」

ゼロのチャージショットをかわしてエックスはダブルチャージショットの一発目を放つ。

「何!?」

チャージショットを放った直後を狙われたゼロはギリギリで防御出来た。

そしてエックスの左腕がバスターに変形する。

「チッ!!舐めるなよエックス!!」

ゼロが二発目のチャージショットを放つが、エックスはチャージしているセイバーを構えてバスターを後ろに向け、そのままチャージショットを放ってエアダッシュを使用した。

「でやああああっ!!」

「何!?俺のチャージショットを砕いただと!?」

チャージセイバーでチャージショットを粉砕し、その超加速を維持したままゼロにチャージセイバーの一撃を叩き込もうとするが、ゼロも流石と言うべきかセイバーで受け止める。

「っ!防がれたか…!!」

「っ…バスターを推進力に使うとは見た目とは裏腹に型破りな野郎だ…!!」

ゼロは両腕に走る痺れに表情を顰めるが、エックスは拳を構える。

「だが、俺の攻撃は終わっていない!!昇竜拳!!」

「舐めるなよエックス!!アースクラッシュ!!」

重装甲を誇るバイオレンすら一撃で葬った必殺技をゼロは腕の痺れを無視して技の完全発動前にエックスの拳に自身の拳を叩き付ける。

互いに凄まじい威力を誇る技同士の激突によってエックスとゼロは衝撃によって弾かれる。

「ぐっ!!」

「チッ!なるほど、バイオレンがあっさり破壊される訳だぜ……だが、嬉しいぞエックス」

両者共にぶつけ合った拳に触れるが、ゼロが不敵の笑みを浮かべる。

「え?」

「話を聞き、あそこで会った時のお前は“甘ちゃん”と言う印象が抜けなかったが…認めよう。お前は俺の最大の宿敵に値する相手だとな…さあ、怒れ!戦え!!それでこそ俺の“存在意義”がハッキリする!!」

ゼロの放った衝撃波をエックスは跳躍して回避し、観客席の方に降り立つ。

「良い反応だエックス!!」

ショットを連射するゼロに、エックスはダッシュで攻撃を回避するが、ダブルチャージショットを放ち、それによる時間差攻撃でエックスを吹き飛ばす。

「ぐっ!!」

「さあ、これをどう避ける!?」

チャージしていたら逃げられるためにショットを連射してくるが、エックスはエアダッシュでそれを回避する。

「良いぞ!その調子だ!だが、俺の最強の技に耐えられるか!?アースクラッシュ!!」

昇竜拳との激突の際は互いに不完全な発動で終わってしまったが、今度は完全な形で繰り出されたアースクラッシュの衝撃波がエックスを襲う。

「ぐわああああああっ!!!(耐えるんだ!アースクラッシュは確かに威力は凄まじいけど、発動後の硬直も長い!!今だ!!)」

アースクラッシュ発動後の硬直を狙ってエックスはゼロにチャージショットを放つ。

「しまった!!」

アースクラッシュの硬直を突かれたゼロは何とか直撃は避けたが、ヘッドパーツのクリスタル部分に掠ってしまう。

「外した…いや、まだだ!!」

二発目を放とうとした時、ゼロに異変が起こる。

突如頭を抱えて苦しみだしたのだ。

「うわ…あああああっ!!」

「ゼロ…?」

エックスがゼロの異変に疑問符を浮かべるが、ゼロが膝を着いた時にその理由が分かった。

アーマーと髪の色が自分の記憶にある配色になり、目も正気のあるものに戻っている。

「エッ…クス…?」

「ゼ…ロ…ゼロ!!」

覚悟は決めていた。

しかし先程の一撃が自分の良く知るゼロを取り戻したと言う奇跡に思わずエックスはバスターを解除してゼロに駆け寄る。

「ゼロ!正気に戻ったんだな!?」

「エックス…俺は一体何を…?それにお前…その傷は…?」

「良いんだゼロ…後はシグマを倒すだ…」

次の瞬間、ゼロのバスターからチャージショットが放たれ、エックスに直撃した。

「な…俺は…何を…?」

崩れ落ちるエックスを見て、自分の意思とは無関係に動いたバスターとなっている腕を見つめる。

「う…ぐ…っ」

無防備、しかも零距離でチャージショットを喰らったエックスは傷口を押さえて呻く。

「エ…エックス……ぐあ…っ!?」

エックスの状態を気にするゼロだが、それよりもゼロに異変が起きる。

ヘッドパーツに埋め込まれたイレギュラー化チップが再び機能を取り戻してゼロを洗脳し始めたのだ。

「(そ、そうか…ゼロのさっきの攻撃はヘッドパーツに埋め込まれたチップのせいか…ならそれを壊せば…)っ!?」

ゼロの意識は再びチップに支配され、アーマーも漆黒に、髪の色も銀色に変化してエックスにセイバーを振り下ろすが、ギリギリのところで回避する。

しかしセイバーがヘッドパーツに掠り、これがとどめとなったのかヘッドパーツの機能が停止し、ヘッドパーツはノーマル状態となる。

「これならどうだ!!」

「何!?」

ゼロはエネルギーを収束させた左手の指をエックスのアーマーにめり込ませる。

「アースクラッシュの全エネルギーを貴様の体内に一気に流し込んでやる!!」

「ぐあああああっ!!?」

ゼロの最強の一撃のエネルギーを一気に流し込まれるエックスは激痛に叫ぶ。

「大地を切り裂く“龍”が駆け回る感じはどうだ?」

エックスのアーマーは崩壊していき、次第に限界を迎えて大爆発を起こした。

爆風によってエックスのアーマーが吹き飛んで地面に転がっていく。

「エックスは死んだ…これによって俺の“使命”は終わった…さて、これからどうするか…使命を終えた以上ここにはもう用はないが……やることがないと言うのは思った以上につまらんものだな…エックスとの戦いはかなり楽しめたが…」

「まだだ…ゼロ…」

「何!?」

振り返ると、ダメージはあるが五体満足のエックスが立ってゼロを睨み付けていた。

2人の戦いはまだ終わっていない。 

 

第43話:Destiny Ⅱ

アースクラッシュのエネルギーを体内に流し込まれても立ち上がったエックス。

セカンドアーマーが大破する直前に全てのパーツをパージしたことで自身の破壊を逃れたのである。

「成る程…確かに俺の“使命”はまだ終わってはいないようだな!!」

「ごふっ!!」

しかしいくらダメージを最小限に抑えたと言ってもエックスの体には相当のダメージが蓄積しており、ゼロの拳を避けられずに吹き飛ばされてしまう。

「退屈させない男だ。俺の宿敵と言う爺の言葉も戯言とは言えなくなってきたな……だが、エックス。アーマーを失ったお前が俺に敵うと思うか?」

エックスの能力はノーマル状態でも決して低くはない。

それでもフルアーマー状態時と比べればかなり見劣りするレベルと言うのが大体の見解だろう。

「確かにアーマーは失われたけど、俺がこうやって諦めずに立っている限り、必ず活路は開ける!!」

「ならば、貴様の不屈の闘志と魂をこの一撃で打ち砕く!!」

エックスに向かっていくアースクラッシュの衝撃波。

それを真正面から受けたエックスを見たゼロは笑みを浮かべるが、次の瞬間に驚愕する。

「何!?アースクラッシュの中を突っ込んでくるだと!?」

「ファーストアーマーが俺の本来の力を引き出すアーマーなら、セカンドアーマーは俺の成長を表すアーマーなんだ!!だからアーマーが無くなっても強さが俺の心にある限り、俺は負けない!!」

エックスの拳がアースクラッシュの硬直で動けないゼロのヘッドパーツのクリスタル部分を粉砕し、内部のチップも破壊した。

「(チップは破壊した…ゼロは…?)」

ゼロが倒れるのと同時に地面が割れ、2人は落ちていく。

「い…一体何が起きているんだ!?」

状況の把握が出来ずに大分下に落ちたが、何とか床に着地には成功したエックスはゼロを捜す。

「ゼロは何処だ?」

周囲を見渡すと倒れたまま動かないゼロを見つけた。

「エネルギー反応は…ある…でも何故動かないんだ……まさか…手遅れ…」

助けられるかもしれないと言う希望が消えたことにエックスは拳を握り締めた。

「残念だったなエックス…しかし私の心は晴れやかだ…復活してから長い間待っていたからな…私の夢が叶うこの時をな…」

「シグマか!!!」

エックスは立ち上がり、バスターを構える。

しかしエックスにバスターを向けられてもシグマは動じることなくゆっくりと立ち上がる。

「人類の抹殺…そして、貴様への復讐!!この2つの夢を叶えられる日をな」

新しいシグマのボディの武装である爪が手の甲から飛び出し、シグマは笑みを浮かべながら掌に電撃を発生させる。

「さあ、エックスよ…久しぶりの再会だが…今すぐ死んでもらうぞ!!」

「ぐあっ!!」

電撃弾がエックスに放たれ、それはエックスに直撃して吹き飛ばす。

「くっ…俺は…ゼロやお前に利用されたオストリーグ。そして犠牲になった人々の為にも負けられないんだ!!」

何とか耐えてチャージショットを放つが、それは簡単にかわされてしまう。

「な!?消えた…」

「上だ」

シグマはワープでチャージショットをかわしてエックスの真上に移動し、落下しながらエックスを爪で斬り裂く。

「がはっ!?」

まともに受けてよろめくエックスにシグマは追撃の電撃弾を放って直撃させ、距離を詰めると凄まじい拳のラッシュを叩き込み、そしてエックスの顔を鷲掴んで笑みを浮かべる。

「どうした?エックス、貴様弱くなったか?それとも私の方が強くなり過ぎたか?どう思うエックス!!」

エックスを床に叩きつけて再び電撃弾を繰り出す。

「やはり、私が強くなり過ぎたかっ!?灰になれーっ!!」

放たれた電撃弾は倒れているエックスに直撃し、爆発が起きる。

「フッ…終わった…訳がないか…」

煙を払って現れたのは傷付きながらも立ち上がり、シグマを睨み付けるエックスであった。

「相変わらずの根性だな。だが、どれだけ足掻いたところで私との実力差は埋められんぞ」

「そんなことはやってみなければ分からない!!」

そう言ってバスターを構えるエックスだが、それを横から掴んだ者がいた。

「え?ゼロ!?」

エックスの腕を掴むゼロの姿は全く変わっていない。

それを見たエックスは悲しげに見つめるが、徐々にゼロのアーマーと髪の色は先程正気を取り戻した時の色に戻っていく。

「エックス…お前だけの力ではシグマは倒せないぞ。だが、俺達が組めば話は別だ」

完全に正気を取り戻したゼロがエックスに不敵な笑みを浮かべる。

「そうだな、力を貸してくれゼロ!!」

「任せておけ、今度こそシグマを倒すぞ!!二度と蘇らないようにな!!」

構えるエックスとゼロに対してシグマも笑みを浮かべる。

「全く、未知数な奴らだな。しかし貴様らの創る伝説もここまでとなる!!」

エックスとゼロに向かって電撃弾を放つがエックスとゼロに焦りはなかった。

「行くぞエックス!俺達の全エネルギーを!!」

「シグマにぶつける!!」

エックスがチャージショット、ゼロがアースクラッシュを同時に繰り出す。

アースクラッシュのエネルギーがチャージショットに吸収され、強大な一撃となってシグマに炸裂した。

「二つのパワーが一つになっただとーっ!!」

合体攻撃の威力はシグマのボディを粉砕したが、爆散する直前に意味深の笑みを浮かべていた。

そして周囲から何かの起動音が聞こえる。

「何だこれは?」

「何かが起動したようだが…」

『かかったな』

「な、シグマ!?」

「馬鹿な!?ボディは完全に破壊したはずだ!!」

シグマの声にエックスとゼロは動揺しながらも構えるが、シグマは構わずに話を進める。

『忌々しいが、貴様らは最強の敵だ…しかし…今の戦いの真の目的は…貴様達の足止めだ。我がダミーを倒した一撃で貴様らのエネルギーは底をついたろう。貴様らはここで人類抹殺を見ながら朽ちていくのだよ』

現れた半透明のシグマの巨顔にエックスとゼロは目を見開く。

「ダミーだと!?」

「貴様…ボディを失って何故生きているんだ…?」

『私は既にボディを持たずとも生き長らえ、行動出来る術を得ていてな。あのボディも私にとって仮宿のような物。あのボディは貴様達のエネルギーを削るために用意したのだ。私のボディは最早この基地そのものと言ってもいい!!』

「くそ…まんまとシグマの作戦に引っ掛かるなんて…」

「確かにエネルギー切れだ…」

最早ショットを放つだけのエネルギーもない。

太陽が降り注がない基地の中ではエネルギーの補充は不可能だ。

『しかもダミーの破壊と同時にシグマチップを持つレプリロイドによって私の最終プログラム…“人類抹殺計画”が実行される!!』

「そんな…俺がしたのはシグマの計画の手助けだったと言うのか…?このままでは地球が…人類が…どうすることも…どうすることも出来ないのか!?」

このままでは地球が、人類が…ハンターベースにいる仲間達…エイリアとケインも殺されてしまう。

だが、エネルギーが尽きているエックスにはどうすることも出来ずに悔し涙を流すしかなかった。

しかしその時、奇跡が起きた。

シグマに占領されたはずのネットワークのうち、四ヶ所に希望の光が走り、その光はエックスとゼロに降り注いだ。

「「!?」」

『くっ!何者だ!!何者が我がシステムに侵入した!?』

「力が…」

「みなぎってくる!?」

2人に降り注いだ光がエックスとゼロのエネルギーを全快の状態に持っていく。

『我が名はマザー。勇者によって目覚めた巨大コンピューター』

「「マザー!?」」

思わぬ存在からの救援にエックスとゼロが驚く。

『自然の声…人々の平和への祈り…そして勇者の涙があるプログラムを起動させた。この男によるプログラムだ。』

「あっ!?」

マザーが見せるのはライト博士の姿であった。

『エックスよ…ロックマンの名を継がせたばかりに辛い目ばかりに遭わせてしまったな…しかし皆が平和を待っておる。さあ、取り戻した友と共に渾身の力を込めて平和の光を取り戻すのじゃ…』

そしてエックスは自身のボディに送られたプログラムを理解すると、ライト博士に向かって力強く頷いた。

『貴様ら!!誰と話している!!』

「なるほど、悪人には聞こえない上に見えないようだな…さあ、やるぞエックス!!」

どうやらマザーとライト博士はエックスとゼロにのみ見聞き出来るようにしているようだ。

ゼロはこのチャンスを無駄にしないようにエックスに叫ぶとエックスも笑みを浮かべて頷いた。

「ああっ!!みんなの未来を奪わせはしない!!」

『えーい!!小癪なっ!!』

基地全体がシグマのボディと言う言葉通りに床が変形してエックスとゼロに襲い掛かる。

「行くぞエックス!!アースクラッシュ!!」

しかし全快状態の2人にそのような攻撃が当たるはずもなく、ゼロが拳にエネルギーを纏わせてエックスの背中に叩き込む。

「ぐっ!!」

『馬鹿め!味方を攻撃するとは何のつもりだ!!』

アースクラッシュを受けてふらつくエックスを嘲笑うシグマだが、エックスは不敵な笑みを浮かべる。

「馬鹿…?違うな…これはお前を倒すための準備だ!!ギガクラッシュは受けたダメージを溜めて巨大なエネルギー放出する技…そしてライト博士が送ってくれたプログラムはゼロのアースクラッシュのダメージエネルギーを数百倍にして放出するんだ!!受けろシグマ!!ハイパーギガクラッシュ!!」

アースクラッシュのダメージエネルギーを数百倍にして放出したギガクラッシュの強化版のエネルギー波を放ってシグマに直撃させる。

『何故だーっ!!私の勝利は確実だっ!!なのに何故二度も!?有り得ん!!有り得ん!!』

現実を受け入れることが出来ないまま、シグマはハイパーギガクラッシュのエネルギー波によって基地ごと吹き飛ばされた。 

 

第44話:Peace

 
前書き
シグマを撃破したエックス達。 

 
マザーとライト博士の救援によってシグマを倒したエックスとゼロ。

ハイパーギガクラッシュによって基地が崩壊していく。

「これで平和が戻るな。さあ、凱旋と行こうぜエックス…エックス?」

脱出しようとエックスの方を向くゼロだが、エックスの様子がおかしいことに気付いた。

「どうしたエックス…?」

「どうやら、ハイパーギガクラッシュの反動のようだ…。元々ギガクラッシュはセカンドアーマーのボディパーツを装着した状態での使用が前提の技だからボディパーツ無しでギガクラッシュの強化版を放ったせいで…内部のダメージが深刻だ…ゼロ…君だけでも脱出してくれ」

その言葉にゼロは目を見開くが、ゼロはエックスを担いで基地から脱出しようとする。

「馬鹿なことを言うな。一緒に脱出するぞ」

いくらか前進すると、爆発が起きて爆風によってゼロとエックスは吹き飛ばされて床に叩き付けられる。

「ぐっ…そうだ…お前を見捨てて逃げられる訳がない…お前が俺を助けてくれたように…今度は俺がお前を助ける番だ…もう大事な物を失うのはごめんだ…!!」

エックスを背負って前進するゼロ。

しばらくすると基地が完全に崩壊した。

シグマの基地が崩壊してから数時間後、エックスの捜索に来たケインとエイリアを乗せた飛行艇が飛び回っていた。

「シグマの基地が崩壊してから数時間も捜したが、一向にエックスが見つからん…」

「大丈夫ですよDr…エックスは生きています。だってエックスはみんなを悲しませるようなことは決してしませんもの」

数時間捜してもエックスを見つけられないことにケインは精神的に参っていたが、エイリアの言葉に頷いた。

「そうじゃな…」

ケインが希望を取り戻したのと同時にレーダーに反応が出る。

しかも反応は2つ。

「Dr!!レーダーにデータ反応!!片方はエックス!もう片方は…」

「ゼロじゃ!!エックスとゼロのデータ反応!!あやつら無事じゃったか!!」

「すぐに迎えに行きましょう!!」

「うむ!!エックス!ゼロ!!待っておれ!!」

エックスとゼロを救助するために飛行艇の速度を最大まで上げると反応のある方へ急ぐ。

そこには海に漂う残骸に座りながらエックスとゼロは身を休めていた。

「こうやって話せるのは前の戦いでシグマの基地に殴り込む前だったな。お互いに聞きたいことと話したいことは山ほどあるだろうが、今はゆっくりと休んでくれエックス」

戦いが終わったことでゼロも余裕が出来たのか穏やかな笑みを浮かべていた。

しばらくしてケインとエイリアを乗せた飛行艇が着水してケインとエイリアが駆け寄ってきた。

「エックス、大丈夫!?」

「大丈夫だ。少し無茶をして気絶しているだけだ…直に目を覚ますさ」

気絶しているエックスに駆け寄るエイリアを安心させるように言うと、エイリアは安堵の息を吐いた。

「ゼロ…お主も無事じゃったか!!全く心配かけおって…」

「おいおい、あまり騒ぐなよ爺…海に落ちるぜ?」

「年寄り扱いするでないわい!!」

ゼロとケインのやり取りに苦笑しながらエックスの顔を見つめると、エックスの表情はとても穏やかな物であることに気付いたエイリアは微笑む。

こうしてエックスとゼロを救助してハンターベースに帰投するとエックスとゼロは問答無用でメンテナンスルーム行きとなったのは言うまでもないだろう。 

 

第45話:Change

エックスはハイパーギガクラッシュの反動のダメージによって長期間のメンテナンスが必要になり、レプリロイドの病院とも言える施設に入院することなった。

「………おお、これが100年前に運用されていたメカニロイド・メットールか。今の時代に運用されているメットールと比べてこんな表情も浮かべるのか」

今では珍しい紙媒体の書物を読んでいたエックス。

入院期間中は退屈だろうと言うことでケインが気を利かせてこの書物を送ってくれたのだ。

これは…エックスが封印されていた研究所にあった物だと言う。

エックスの製造時期は今から100年前だが、当時のことは一切知らず、知っているのは親であるライト博士の顔と自分が寝かせられている研究室くらいである。

エックスは自分が生まれた時代のことを知らなさすぎたために、ケインに頼んで当時の書物を読み漁っていた。

量も量なために丁度いい暇潰しにも一役買っていた。

すると扉をノックする音が聞こえて振り向く。

「どうぞ」

「入るわよエックス」

入ってきたのはエイリアである。

今日はオフなのか、普段纏めている髪を下ろしていて、ハンターベースで会う彼女とは少し雰囲気が違うような感覚をエックスは覚えた。

「これ、お見舞いの品。後で飲んで」

エイリアが差し出してくれたのは今では手に入りにくいE缶である。

「これ…良いのかい?こんな希少な物を…」

「良いも何も…あなたはE缶1つだけじゃ足りないくらいの活躍はしてるわ。と言うより飲んでくれないと困るわ。Drに頼んでようやく入手したんだもの」

「あ、ありがとう…それじゃあ早速…」

E缶を開けて一口飲むと疲労が抜けてエネルギーが満ちていく感覚を覚える。

成る程、100年前のロボット達がこれによるエネルギー補充を好む理由が何となく理解出来る。

「それ、今では珍しい物ね?何なの?」

「ああ、これはケイン博士に頼んで送ってもらった100年前の資料とかだよ。ライト博士の研究所跡にあった物なんだ。」

「100年前の…それはとても貴重な資料ね…見せてもらってもいいかしら?」

「勿論、だけど他言無用だよ」

100年前の資料は今の科学者からすれば喉から手が出る程に欲しい代物だ。

自分にとってこれはライト博士が遺した物なので出来れば自分の手元に置いておきたい。

「分かってるわ……」

100年前の資料を読みながらエックスとエイリアは穏やかな時間を過ごしていく。

「そう言えばエックス、ゼロが第0特殊部隊の隊長に就任したようよ。」

「ゼロが第0特殊部隊の隊長に…確かにゼロなら実力的に申し分ないかもしれないな」

第0特殊部隊はヒャクレッガーのような隠密能力に長けたレプリロイドが所属する部隊である。

ゼロなら戦闘能力も申し分ないだろうし、必要な技術は短期間で扱えるようになるだろう。

「でもゼロが隠密かあ…少しアーマーの色がミスマッチかも」

「それ、私も思ったわ」

気配さえ消す技術があれば大した問題ではないのだが、紅いアーマーに金髪と言うゼロの容姿は少し隠密部隊にはミスマッチだと思ってしまう。

部屋にエックスとエイリアの笑い声が響き渡る。

「エックス、セカンドアーマーのレプリカが完成したから退院したら装着して欲しいの…これも必要にならなければ良いんだけどね…」

セカンドアーマーのレプリカとは言え、それが必要になるような事件など起きない方が良いと言うのはエックスとエイリアの共通する想いである。

しかし今回の戦いで劣化レプリカとは言え強化アーマーの有用性が分かったので用意しておくに越したことはない。

「…そうだね…」

「…あら?もうこんな時間だわ、それじゃあエックス。また来るから」

時間を見ると、自分はそろそろ戻らねばならない時間となっていたので空となったE缶をゴミ箱に捨てると部屋を後にしようとする。

「うん、エイリア、E缶ご馳走様。」

「どういたしまして…そうそう、エックス。あなたが退院したら近い内にDrが知り合いのDr.ドップラーのいるドッペルタウンに足を運ぶそうよ。エックスも連れていくそうだから覚えておいて」

「分かった、ありがとう」

エイリアが退室し、エックスは再び資料を読み始めると資料の1つから1枚の写真が落ちてそれを拾い上げるとエックスは思わず微笑んだ。

写真に写っているのはホログラムで出てくるものよりも若いライト博士と…エックスよりも前に製造された自分の兄弟達の姿であった。

こうして2回目のシグマとの戦いを乗り越え、ゼロが復活したことでハンターベースでも明確な変化が起きていく。

ゼロの帰還を喜ぶ同期の者、そして新たな隊長として彼に忍びとしての技術を教える者…そして……彼を憎悪する者も。 

 

第46話:Doppel Town

 
前書き
X3編スタート!! 

 
エックスが退院してから数日後、ケインに連れられてエックスはエイリアと共にドッペルタウンへと足を運んだ。

ドッペルタウンとはかつてケインの助手であったDr.ドップラーによって最初のシグマの反乱以前から発案されており、つい最近になって生まれた21XX年の楽園である。

自然と科学が互いを支え合い、共存をしているその姿にエックスは周囲を見渡して微笑んだ。

「凄いな…人工のものとは言え自然が満ちていて、機械の力で自然を支えている。人間とレプリロイドが穏やかに暮らせる場所が地上に出来るなんて…ライト博士が見たら喜ぶだろうな」

「そうね、ライト博士は平和を愛する伝説の科学者だもの。ドッペルタウンだけとは言え、目に見える形で人間とレプリロイドの共存が見られる場所は喜びそうだわ」

エックスの強化アーマーを解析し、その修理とレプリカ製造をしているためにエックスからライト博士の人物像を直接聞いているエイリアもエックスの言葉に頷いた。

「エックス、セカンドアーマーのレプリカの使い勝手はどう?ファーストアーマーのレプリカよりはマシな仕上がりにしたつもりだけど…」

前回の戦いのレプリカアーマーであるファーストアーマーは防御能力しか再現出来ていないと言う申し訳程度の強化しか得られなかったが、セカンドアーマーはファーストアーマー以上の仕上がりにはしてみた。

まあ、オリジナルと比べれば申し訳程度の性能しかないわけだが。

「うん、充分頼りになるよ。ありがとうエイリア…君には任務の時のオペレートと言い、アーマーのレプリカのことも君には本当に世話になりっぱなしだ。ありがとう…」

「…私でもあなたの力になれてたのね…でも…(ここにルインがいたらあの子も喜んでたでしょうね)」

何となく想像出来る。

このドッペルタウンの街並みを見てはしゃぎ回るルインの姿を。

「エイリア?」

黙りこんだエイリアにエックスは疑問符を浮かべる。

「いいえ、何でもないわ…エックス…この街が出来たのはあなたがシグマを倒したからよ。あなたがいなかったらこの街は作られなかった…」

「そ、そんな…大袈裟だよ」

「大袈裟じゃないわ。あなたは私達みんなの英雄…」

「よお、エックス!!」

「うわっ!!?」

背中を強く叩かれたエックスは目を見開いて振り返ると、そこにはイレギュラーハンターの仲間であり、ドッペルタウンの警備に配属されたマックである。

「何するんだマック…痛いじゃないか…」

「良いじゃないか、この色男。B級から特A級に昇進しただけじゃなく第7精鋭部隊の隊長に就任しただけでは飽きたらずにこんな美人さんまでパートナーにしやがって…正直羨ましいぜ」

「パートナー?エイリアは俺専属のオペレーターじゃないぞ?ゼロや他のみんなのオペレートも」

「いやいやそうじゃなくてだな…あーもう、いい。とにかくドッペルタウンはどうだ?退屈な場所だろう?」

エックスの言葉に呆れるマックだが、エックスはドッペルタウンの街並みを見遣りながら笑みを浮かべた。

「何を言ってるんだよマック。俺もこういうところで働きたいさ」

「そうね、自然が満ちていてゆっくり研究出来そうだわ」

「ほーか、ほーか。エックスもエイリアもわしん所で働くんは嫌か?」

「ケイン博士…」

「そんなこと言ってないじゃないですか…」

いじけるケインにエックスとエイリアが呆れたように見つめる。

「年寄りが拗ねても可愛いげがないな」

「だーれが年寄りじゃ!!」

「あ、Dr.ドップラー」

からかうように言う老人の声にケインは怒鳴り、マックは即座に敬礼し、老人の名前を言う。

「ドップラー博士…」

「Dr.ドップラー…レプリロイドをイレギュラー化させるシグマウィルスのワクチンプログラムを作成した天才科学者レプリロイド…やっぱり本物は風格が…」

「久しぶり」

「元気だった…」

「オ飲ミ物ハイカガデスカ」

挨拶をしようとした直後にドリンクを配って回る業務用メカニロイドが間に入った。

「「うおりゃああーっ!!」」

「アレ」

即座にメカニロイドは頭部を残して分解されてしまい、ケインとドップラーの作る装置の材料にされてしまう。

因みに飛んでいった頭部はエックスが回収した。

「どうじゃ、超時空推進機じゃぞい」

「フッ、こっちは強力P・P波発生機だ。」

「す、凄い…業務用メカニロイドのパーツだけであんな装置が造れるなんて…!!」

「エイリア、感心するところがそこなのか?」

装置の大きさを見て、明らかにメカニロイドのパーツだけでは造れなさそうな物にエックスには見えるのだが、ツッコむだけ野暮か…。

「お主のメカには品がないのーっ」

「老人的でセンスのないメカですなーっ」

「世紀の天才が子供みたいだ…」

「ついてけないな~…」

「流石はDr.ドップラーとDr.ケイン…凄まじい技術力だわ…」

ケインとドップラーの張り合いにエックスとマックは呆れ、エイリアは2人が造った装置を観察していた。

張り合っていた2人だが、ケインとドップラーは笑みをうかべる。

「素晴らしい街じゃの、やったの~ドップラー」

「ありがとうケイン。今の私があるのもあなたのお陰だ……そう!あれが完成している。見に来ないか?」

握手を交わし、ドップラーが笑みを浮かべてエックス達を案内してくれる。

因みに業務用メカニロイドは元に戻っている。

「オ飲ミ物ハイカガデスカ」

エックス達が案内されたのは巨大メカニロイドが安置されているドックである。

「「これは…」」

「出来上がったか!マオー・ザ・ジャイアント!!」

目を見開くエックスとエイリア。

隣のケインは巨大メカニロイドを喜びながら見上げる。

「マオー・ザ・ジャイアント?」

「「そう!わしら初の共同製作じゃ!!」」

「ええ!?それってつまり天才科学者2人の技術の結晶と言うことですか!?」

マオー・ザ・ジャイアントの正体にエイリアは目を見開いてその巨体を見上げる。

この時代を代表する科学者2人の技術がこのメカニロイドには注ぎ込まれていると言うことなのだろうか。

「このドッペルタウンの守護神というところだな」

「でも…ほら。守護神なら女神像とかの方が良かったんじゃ…」

守護神と言うにはマオー・ザ・ジャイアントのあまりにも充実した装備や重装甲にエックスは少し表情を顰める。

「確かに守護神にしては物々しいと言うか…」

「ん?やはりお前さん達もそう思うか?わしも女神像を建てることを考えたんじゃがな」

「エックス君、君のそのバスターと戦時中に纏う強化アーマーは飾りかね?その“力”で君は“平和”を勝ち取ったのではないかね?平和は確かに素晴らしい。しかし平和に浸っているだけでは我々は腐っていくだけである。その腐った心に“喝”を入れる為にも“力”が必要なのだよ」

「…………」

その言葉にエックスは何も言えずに俯き、エイリアはそんなエックスを心配そうに見つめる。

「まあ、魔除けみたいなもんじゃて。」

こうしてドッペルタウンを見て回ったエックス達は帰る途中でケインとドップラーの関係について聞いていた。

「わしはドップラーと共に沢山のレプリロイドやメカニロイド、ライドマシンと言った開発をしてきた。しかしわしはドップラーの才能を隣でずっと見てきた。そんなあやつが自分の才能を活かせるようにわしはドップラーを解雇してあやつ専用の研究室を与えて以来、わしらは親友として今日までやってきた…マオー・ザ・ジャイアントにしても奴なりの哲学じゃて、分かってやってくれや」

「ええ、分かっています。ドップラー博士の言っていることも正しいですから…力が無ければ得られない物、守れない物があることくらい…分かってますから」

「まあ、とにかくドップラーは良い奴じゃよ。虫も殺せんような奴じゃからな」

こうしてハンターベースへと帰っていくエックス達。

ドッペルタウンに誰も知らない悪意が膨らんでいくことに気付かぬまま。 

 

第47話:Raid

ドッペルタウンから戻ってきたエックス達はハンターベースにあるケイン用の部屋で雑談を交わしていた。

「世界中がドッペルタウンのようになれば良いんですけどね」

「大丈夫よエックス。イレギュラー化の原因であるシグマウィルスはDr.ドップラーがワクチンプログラムを作成したことで問題は無くなったし、いずれドッペルタウンのような街は増えていくわ」

「そうじゃな、わしらもより平和のために尽力せねばな」

「はい」

「あら?もうこんな時間だわ。それじゃあエックス、Dr。私は失礼します」

時間を確認したエイリアが立ち上がると、エックスも立ち上がる。

「エイリア、送っていくよ」

「大丈夫よ、研究所はそんなに離れてないもの」

「そうはいかないよ」

深夜と言っても差し支えない時間帯だ。

いくらレプリロイドでも女性である彼女を1人、夜道を歩かせるのはエックスには抵抗があった。

「嫌じゃ嫌じゃ!!エックスもエイリアもわしを置いていかんでくれーっ!!1人は退屈じゃ~」

「そんなこと言われても俺は明日の業務もありますし…」

「私も研究資料を明日中に纏めないといけないので…」

困ったように言う2人。

まるで孫に構って欲しい祖父とそれに困る孫のような図である。

襖型の扉が開いて車の用意をするために部屋を後にするエックスだが、目の前に現れたレプリロイドに目を見開いた。

「マックじゃないか?ドッペルタウンの警備は良いのか?」

「ああ、此処に来たのは任務のためなんでな」

「え?どういう…がはっ!?」

至近距離でバスターの零距離射撃を喰らって吹き飛ぶエックス。

「「エックス!?」」

「マック…?一体何のつもりじゃ?」

マックが指を鳴らして合図を送ると、ドッペルタウンの警備レプリロイドが大勢で部屋に入ってきた。

「Dr.ドップラーの命により、ハンターベースを占拠する」

「な、何ですって!?」

「ド…ドップラーの命…じゃとぉ…?」

「何を馬鹿なことを…冗談は止めて!!」

「信じる信じないはあんたらの自由だが、これは真実さ。お前達、Dr.ケインとそこの女を拘束して連れていけ」

ケインと戦闘能力を持たないエイリアは簡単に拘束されてしまい、部屋から連れ出されてしまう。

「どういうことじゃ!!説明せい!!」

「エックス!!」

ケインとエイリアを無視してマックはエックスに歩み寄る。

「これが2回もの大戦を制した英雄か…他愛もない」

ハンターベースに侵入したイレギュラーが元ハンターであるマックだったこともあり、ハンターベースは内側から瞬く間に制圧されていく。

イレギュラーハンター部隊長達もエックスやケインが人質に取られているために満足に動けず、このままハンターベースは敵の手に落ちるかと思われた時。

「成る程、大した数だな。だが所詮は数だけを揃えた烏合の衆…第0特殊部隊の敵じゃない。」

部下と共に敵部隊を見下ろすのは第0特殊部隊の隊長であるゼロである。

後ろにはゼロの部下達が控えており、ゼロは指示を飛ばす。

「作戦は先程言ったようにベース内に捕らえられているDr.ケイン及び仲間の救出とベースの奪取!!俺が囮になる。その間に各自の判断で行動せよ!散開!!」

散開する部下達を確認したゼロだが、唯一残っている副隊長であるホーネックに気付いて振り返る。

「隊長…」

「行かないのかホーネック?」

「いくら隊長と言えどもこれだけのイレギュラー相手に囮と言うのは…」

「うん?……そう言えばお前達にはこのボディになってからの俺の…精々3割程度の力しか見せてなかったよな…」

「(さ、3割!?鬼神と言われた実力で…3割っ!?)」

「特別に俺のこのボディになってからの全力を見せてやる。巻き込まれないように離れていろホーネック!!アースクラッシュ!!」

地面に拳を叩きつけ、建物を衝撃波で粉砕する。

「D・G・I班、調査に迎え!!」

突然建物が粉砕されたことにより、指揮官レプリロイドの指示によって大勢の部隊が向かう。

「何が起きたんだ?」

「油断するな…よ?」

駆け寄った次の瞬間には敵はセイバーによって真っ二つに両断されていた。

「凄い…これが隊長の今の実力なのか…流石隊長だ。惚れ直したぜ。俺にもあれだけの“力”があれば…」

ゼロの真の実力を目の当たりにしたホーネックは感嘆するのと同時に羨望の目をゼロに向けた。

「“力”が欲しいなら授けてやろう」

「誰だ!!」

聞き覚えのない声にホーネックが振り返ると、そこには見たこともないレプリロイドがいた。

「あのお方にはそれだけの才能がある」

「あのお方!?ドップラーのことか!?悪に身を委ねてまで“力”は要らん!!」

ドップラーの手先と判断したホーネックは敵に突撃するが、レプリロイドは余裕の表情だ。

「フッ…笑止…」

ビームサーベルを出現させ、一撃でホーネックを戦闘不能にする。

「な…っ!?」

「一度でも“力”を求めた者は…必ず“力”の魔力に屈服するのだ。」

そのまま気絶したホーネックと共にこの場を去るレプリロイド。

そしてゼロはベース内に突入し、迎撃してくる敵を殲滅していく。

「チッ、数だけはいるな…流石にベース内でアースクラッシュを使うわけにもいかんから面倒だ。」

近付いてくる敵にはセイバーで、離れて攻撃してくる相手にはバスターで対応していた。

しばらくするとメカニロイドに拘束されているエックスを発見した。

「エックス!!」

「良くここまで来れたなゼロ」

「マックか」

エックスを発見したゼロは駆け寄ろうとしたが、聞き覚えのある声に振り返ると、そこには裏切り者のマックがいた。

「しばらく会わないうちに随分と落ちぶれたものだな?今すぐエックスを降ろせ。今ならまだ話を聞いてやるぜ?」

バスターを向けるゼロ。

ゼロとマックのスペック差は隔絶とした差があり、マックには勝機は全くないのだが、マックは余裕の表情を崩さない。

「ゼロ、お前は自分の立場が分かってないようだな?笑わせるなよ?俺がこのスイッチを押せばエックスを捕まえているメカニロイドは奴もろとも大爆発する!!お前こそ俺の言う通りに…」

「押してみろ」

「は?」

思わぬゼロの言葉に唖然となるマックだが、ゼロは構わずにバスターを元に戻す。

「聞こえなかったのか?押してみろと言ったんだ」

「な、何だとおっ!?そ、そうか…俺が仲間だから躊躇すると思ってるのか?」

「いいや、俺はエックスほど甘くはないぞ。俺の答えは1つ…お前を倒してエックスを救うだけだ」

「舐めるなぁっ!!」

スイッチを押すマックだが、メカニロイドは爆発しない。

「な、何故だ?何故爆発しない!?」

「気付いてないのか?」

「な、何…?そ、それは…」

マックはゼロが手に持つ物に目を見開く。

「俺がセイバーを持っていることを知らなかったようだな。まあ、お前は今までハンターベースを離れていたから仕方ないだろうが…そして俺の居合いの速度は光より速い。お前の負けだ」

セイバーによって真っ二つにされたマックは自身が真っ二つにされたことに気付かぬうちに爆散した。 

 

第48話:Raid Ⅱ

マックを撃破したゼロはエックスを拘束しているメカニロイドをバスターで破壊する。

「これでエックスは助けた。おい、大丈夫かエックス?」

「あ、ありがとうゼロ…助かったよ…まさかマックがこんなことをするなんて…」

「倒したイレギュラーのことよりも今は爺達を助けるのが先決だ。ドップラーの手先がハンターベースを占拠しようとしている。エックスはベース内の敵を片付けてくれ。俺は爺とエイリアを助けてくる」

「…分かった」

ゼロから詳しい事情を聞いたエックスは若干状況についていけないながらもベース内の敵を倒しに向かう。

「まさか、これを使うことになるなんて…」

エイリアから渡された物を早速使うエックス。

エックスのアーマーが純白のアーマーに変化し、別の姿となる。

これは前回のシグマとの戦いで装着し、ゼロに破壊されたセカンドアーマーのレプリカである。

前々回の戦いで装着していたファーストアーマーのレプリカよりも再現度は上がっており、アームパーツのチャージショットはダブルチャージは撃てないが、チャージショットがダブルチャージ二発目の物となっており、ボディパーツはギガクラッシュは使えないが、防御力はオリジナルよりも向上している。

残念ながらヘッドパーツとフットパーツの能力の再現は出来なかった。

しかし、これでエックスも前回の時と同じようにある程度の無茶が出来るようになる。

「(ドップラー博士が反乱…?また、シグマの時のようなことが…)」

チャージショットを放って敵を纏めて破壊すると、悪寒を感じて飛び退く。

「一体何だ!?…あれは…マオー・ザ・ジャイアント!!本当にドップラー博士が…信じたくなかった…どうしてこうなるんだ!!」

チャージショットを放って直撃させるものの、ケインとドップラーの技術の結晶とも言うべきメカニロイドには強化されたチャージショットも通用しない。

マオー・ザ・ジャイアントはこちらに気付くと鉄球を放ってきた。

エックスはダッシュでかわしながらショットを当てていくが、相手の堅牢な装甲には傷一つ付かない。

そして鉄球の一撃をまともに受けて吹き飛ばされるが、ゼロに助けられる。

「すまん、遅れたな。爺とエイリアは無事だ。後はこいつを倒すだけだ!!」

「ゼロ!!ありがとう、助かったよ!!」

エックスとゼロがマオー・ザ・ジャイアントを相手にしている時、エイリアに止められているケインがこちらに向かおうとしていた。

「離せ!離してくれエイリア!!」

「Dr!!危険です!あなたがいてはエックス達が…」

「うるさいっ!!」

マオー・ザ・ジャイアントの巨体が一望出来る場所に来るとエックスとゼロが奮戦していた。

「マオー・ザ・ジャイアント…」

「Dr…」

「…………」

痛ましげに無言となるケインを見つめるエイリア。

ケインの脳裏にドップラーとの思い出が過ぎって唇を噛み締めながらケインは駆け出した。

「待って下さいDr!!」

エイリアも慌ててケインを追い掛ける。

「くそっ!!チャージショットが効かない!!」

「チッ!!守護神として造られただけのことはあるってことか!!」

エックスのチャージショットもゼロのダブルチャージショットとセイバーもマオー・ザ・ジャイアントの堅牢な装甲には通用しない。

「このままではジリ貧になってしまう!!何とか奴の弱点を…!!」

「左目じゃ!!」

「「!?」」

振り返るとエイリアに止められながらも叫ぶケインの姿があった。

「左目に奴の運動システムがあるぞい!!」

「Dr!ここは危険ですから早く離れないと!!」

「ゼロの連続攻撃で装甲を破れば後はセカンドアーマーで強化されたエックスのチャージショットで貫けるはずじゃ!!」

「ケイン博士…」

マオー・ザ・ジャイアントに対して思うことは沢山あるだろうに、その破壊方法を教えるケインの心境を察したエックスは複雑な表情を浮かべる。

「エックス!爺の決意を無駄にするな!!」

「…分かってる!!エイリア、ケイン博士を!!」

「分かったわ…お願い!!」

エイリアに連れていかれるケインの表情は涙でぐしゃぐしゃになっていたが、エックスはその表情に込められた想いを感じ取ってゼロと共に駆けていく。

「(ケイン博士…あなたは素晴らしい人だ…俺は戦います!!あなたの為に!!)」

「ダブルチャージウェーブ!!」

ゼロのダブルチャージショットとセイバーによる衝撃波が左目の装甲を破り、そこに続けてエックスがチャージショットを放つ。

「いけえええええっ!!」

放たれたチャージショットがマオー・ザ・ジャイアントの運動システムを破壊した。

運動システムが破壊されたことでマオー・ザ・ジャイアントは沈黙する。

そして敵の沈黙と共に消化作業と残骸の撤去が行われ、ケインは動かなくなったマオー・ザ・ジャイアントの姿を悲しげに見つめていた。

「何故じゃ…何故なんじゃドップラー…」

親友の凶行に悲しむケインの姿をエックス達はただ、見ていることしか出来なかった。 

 

第49話:Snowman

ハンターベース襲撃から数日後、イレギュラーが各地で大量発生し、エックス達ハンターはイレギュラーの対応に追われていた。

現在、エックスがいるのは大スキー場の麓街…ラーガに訪れていた。

その街の中央に一晩にして巨大な白銀の塔が築き上げられていたのである。

そしてエックスはその元凶であるイレギュラーと交戦していた。

「見損なったぞバッファリオ!!この街をイレギュラーから守ってきたお前がこんなことをするなんて!!」

エックスのチャージショットとバッファリオと呼ばれたレプリロイドの冷凍ビームが激突し、相殺し合う。

バッファリオはバッファロー型のスキー場整備用レプリロイドでありながらも寒冷地での性能は極めて高く、絶対零度の中でも活動可能な程で寒冷地のみに限れば特A級ハンターにも匹敵する程の戦闘力を誇る。

「見損なった…?何も知らない癖に分かったような口を利かないでもらいたいな!!」

巨体に似合わぬスピードでエックスとの距離を詰めて殴り飛ばすバッファリオ。

「ぐっ!?」

「良く見てみろエックス。この美しい光景を、人類の存在を隠す純白と透明の世界!!これ程美しい光景は無いと思わないか!?この清き世界により人類は…」

「何を言っている…ドップラーに何を吹き込まれたのかは知らないが…罪もない人々の生活を踏みにじるのがお前の言う芸術なのか!?」

「失礼な!!」

ショットを放つが、チャージもしていない一撃ではバッファリオの掌に打ち消されてそのまま殴り飛ばされる。

「ぐあっ!!」

「人の話は最後まで聞け!!エックス、あのお方の素晴らしいお考えが理解出来ないのならこのまま凍り付いてこの美しい光景の一部になるがいい!!」

冷凍ビームで凍結されて身動きが取れなくなってしまい、そんなエックスに向かってバッファリオが突進してくる。

「(駄目だ!氷を砕く前にやられる…!!)」

バッファリオが激突する直前に1人の少年が間に入ったことでバッファリオの動きが止まった。

「き、君は…!?」

「…………」

「……ぐっ…ガ…ブモーーーーッ!!」

少年を見た瞬間に頭を抱えて苦しみだし、バッファリオを逃げ出すが、氷を破壊したエックスがバスターを向ける。

「待て、バッファリオ!!逃がさないぞ!!」

チャージショットを放とうとするが、エックスを庇った少年がエックスの腕にしがみついて止めた。

「(な、何なんだこの子は…?)君は…バッファリオの…知り合いなのかな…?」

バスターを元に戻すと、少年もまた離れた。

「…ついて来てよ」

そして少年に案内されたエックスは1つの雪だるまがある場所に着いた。

「これは雪だるま?枝を折って笑顔にしているからかな?とても温かい顔をしているね。でもどうしてこれを?」

「この雪だるまは…バッファリオと作ったんだ。今みたいになる前の」

「イレギュラー化する前のバッファリオと?」

「うん、俺…一緒に遊べる友達がいなくて。何時も1人で遊んでたんだ。そしてこの枝を折る前の雪だるまを作ったんだけど…何処か気に入らなくて怖そうとした時にバッファリオと会ったんだ。そしてバッファリオはこの枝を折って笑顔の雪だるまにしてくれたんだ。」

「そうなんだ…」

「そしてバッファリオは“ブスッとした顔で遊んでも楽しくないだろう?遊ぶなら心から楽しむべきだ”って言って俺の友達になってくれたんだ。」

それは自分が知るバッファリオそのものだ。

「そうか…バッファリオらしいな」

「でも、バッファリオはドッペルタウンってとこから戻ってきてからどんどんおかしくなっていったんだ!!本当は…あんな奴なんかじゃないのに!!」

「うん…分かってるよ…」

「あんたバッファリオの友達なんだろ!?バッファリオを元に戻してくれよ!!」

「…………」

少年からの頼みにエックスは何も言えない。

何せ今回のイレギュラー化の原因はケインでさえも見つけることが出来ないでいるのだから。

「…俺もバッファリオを死なせたくはない。最善を尽くすよ」

今のエックスに言えるのはそれくらいであった。

そしてエックスはこのエリアのハンター支部に向かい、ケインにある物を頼んだ。

「それではお願いします」

『う、うむ…しかしそれを使うとなるとアームパーツが使えなくなるかもしれんぞい?』

「構いません。俺の力は“救う”為の物ですから」

そして転送された物をバスターに組み込んでエックスは明日、バッファリオを捜すことを決意した。

そして翌日、エックスは街の惨状に驚愕することになる。

「麓の街が氷付けになっている!?たった一晩の間で…?バッファリオの能力が強化されているのか…ん?」

ふと、下に目を遣るとそこには雪だるまが置かれてある場所に向かう少年の姿があった。

エックスも追い掛け、雪だるまのあった場所に行くとそこには無惨にも壊されている雪だるまの残骸が散らばっていた。

「………(どうして…こうなるんだ…俺達は…所詮…機械なのか…?)」

小枝を拾ってそれを握り締める少年にエックスは何も言えずにこの場を去っていく。

そしてバッファリオを捜し回り、緊急時用避難ドームから悲鳴が聞こえて駆け込むと、バッファリオが暴れていた。

「止めろバッファリオ!!」

セカンドアーマーを装着してバッファリオに体当たりを喰らわせて転倒させ、そのまま抑え込む。

「早く逃げるんだ!!」

避難していた人々を何とか逃がすが、エックスはバッファリオに弾き飛ばされる。

「くっ!!」

何とか立ち上がってバスターを構えるが、完全に正気を失っているバッファリオに目を見開く。

そしてエックスに向けて巨大な氷弾を放ってくる。

「フロストシールドか!?」

バッファリオの技のフロストシールドはただ攻撃に使えるだけでなく、着弾したところに鋭利なトゲとなって相手の機動力を削ぐことが出来る。

エックスはショットで氷弾を迎撃しながらバッファリオの例のアレを当てようとするが、バッファリオの接近を許してしまい、顔面を鷲掴みにされて壁に何度も叩き付けられる。

「う…ぐっ!!」

何とか逃れるものの、頭部のダメージですぐに動けなかったが、バッファリオがエックスが逃れたことに気付かずに同じことを繰り返した為に何とか意識をはっきりと取り戻すことが出来たが…。

「(これが…本当にあのバッファリオなのか…?あの何時も穏やかで人当たりの良かった…)」

嘗てのバッファリオとはあまりにもかけ離れた姿にエックスは脳裏に少年の姿が過ぎって唇を噛み締める。

「バッファリオ…」

「ブモオッ!!」

エックスの声でようやくエックスを掴んでないことに気付いたバッファリオがエックスに攻撃する。

「お前は本当にこれでいいのか?何時も穏やかで人当たりが良くて、この街の人々からも…沢山慕われていたお前がっ!!そしてお前を友達だと言ってくれた子供の心を裏切るのか!?俺達レプリロイドはただの機械なんかじゃない!!」

「ブモーーーーッ!!」

殴り飛ばされながらもエックスは何とか立ち上がる。

「俺達には…レプリロイドには“心”があるんだ!!メカニロイドにはない考える力があるんだ!!だから…お前を慕う人々を…あの子をこれ以上傷つけるな!!」

全身に炎を纏わせてその炎を拳に集束させ、業火を纏った拳をバッファリオに叩き込んだ。

「戻って来いバッファリオ!!ラッシングバーナーーーーーッ!!!!」

繰り出したのは前回の戦いで倒したイレギュラーであるフレイム・スタッガーの特殊武器である。

バッファリオは寒冷地特化型であるために熱に弱いのでこの武器チップの転送を頼んだのである。

しかしこのセカンドアーマーのアームパーツは再現が不完全であるために特殊武器チャージはあまり使えない。

しかしこの一発でも熱に弱いバッファリオには充分過ぎる威力だ。

バッファリオの頬に拳が突き刺さり、勢い良く吹き飛ばされて壁に頭から叩き付けられた。

それによるショックのせいかバッファリオが頭を抱えて苦しみ始め、目が正気に戻る。

「うあああああ…!!僕は…何てことをしてしまったんだ…街を壊して…人々を…あの子の心を傷つけてしまった…」

「バッファリオ…」

「エックス、君のバスターで僕を裁いてくれ…!!罪は償わなければならない…僕の罪は“死”でしか償えないんだ!!」

「(何でこうなるんだ…確かにバッファリオには罪はある。その罪は償わなければならない…だけど…!!)」

バスターから放たれたチャージショットはバッファリオの横の壁を貫くだけで終わる。

「何故だ…何故撃ち抜いてくれない!!」

「出来るか!!確かにお前は罪を犯した。だけどここでお前を倒して何になるんだ!!生きろ…どれだけ辛くても生きて罪を償うんだ!!それがお前に出来る償い……ん?あ、あれは…あの子じゃないか…」

バッファリオの隣を通り過ぎて開けた穴から外を見るとバッファリオの友人である少年が必死に雪だるまを作っていた。

「…………あ、あの子は…どうして…」

「あの子はずっと雪だるまを作ってたんだな。イレギュラー化しても本当のお前はまだいるんだって信じていたんだ。バッファリオはどうなんだ?あの子の気持ちに応えてやれないのか?あの雪だるまに応えてやれないのか?」

エックスの言葉にバッファリオはドームを飛び出して少年の元へと向かっていく。

2人の仲の良い姿を見ていたエックスの胸に暖かいものが灯るのであった。 

 

第50話:Cocoon

バッファリオの件を片付けたエックスはゼロと共に戦車に乗ってエネルゲン水晶の鉱山に向かっていた。

「確か、この辺りのはずだけど…エイリアがいれば通信で細かい位置を確認出来るんだけど…」

今回の戦いではエイリアはハンターベースの臨時オペレーターとして配属されていない。

今回は天才科学者であるドップラーが相手なのでレプリロイド研究所の重要なデータが盗まれる可能性もあるのでエイリアは研究所で対策に追われている。

「こうして彼女がいないとこういう任務では中々不便な物だな。優秀なオペレーターがいるのといないのでは勝手が違ってくるしな…それに…」

「かぁーかっかっかっ!!はあああ…愉快・愉快!!」

「この爺のストッパーになってくれるからな」

「いや、エイリアはケイン博士の介護用レプリロイドじゃないんだよゼロ?」

ゼロの言葉に思わずツッコミを入れるエックス。

何故、人間であるケインがエックスとゼロと共に来ているのかと言うと、ハンターベースに押し寄せてきているマスコミから逃げること…そしてもう1つあるのだが…。

「なあ、エックス。今すぐにでもエイリアを呼び出せないか?この爺を黙らせるか止められる人材が欲しいんだが…?」

「駄目だよゼロ。ただでさえエイリアは多忙なんだからそんなことをしては過労で倒れてしまう」

「レプリロイドが過労で倒れるか」

「お主ら~聞こえとるぞ!!はああ…まさかエックスまでわしに冷たくするとは…わしの味方はエイリアとルインのみと言うことなのか…身も心も老いた弱々しい老人が…」

「誰が身も心も老いた弱々しい老人だ。弱々しい老人はこんな場所についてくるか」

「それからケイン博士、あなたは前の戦いで占拠された気象コントロールセンターを突破しましたよね?」

少なくともそんなことが出来るケインを弱々しい老人と言うには無理がある。

それだけとんでもないハイスペック爺なのである。

「……がさつでデリカシーのないマスコミから逃げ出して、唯一心許せる者と同行しているだけなのに、その者から邪魔者扱いされたらこの爺は何処へ行けば良いのやら…爺は大人しく天に召されるだけなのかのぉ~~…」

ケインの言葉にエックスは苦笑、ゼロは苛立つ。

「ふん、勝手に天にでも地獄にでも召されてろ…っ!!おい、爺!人の髪に何してやがる!!」

いつの間にかゼロの髪が弄られておさげにされており、それを見たエックスが吹き出す。

「あ、いや…つい…じゃが、ゼロ…そいつはルインも気に入っとった髪型じゃ。似とるお主にも似合っとるぞ~」

「あいつは女だからだろう!!」

バックパックからセイバーを抜いたゼロにエックスは慌てて止めにかかる。

「ちょっ!?ゼロ!!」

「放せエックス!この爺を叩き斬る!!」

「ひぃいいいっ!!何ちゅうことを~、鬼じゃ鬼じゃ!あの世のルインも嘆いとるぞ~っ!!」

「ああもう!こんな狭い場所で騒がないで下さいよ!!」

騒がしくも何とかエネルゲン水晶の鉱脈に到着したエックス達であった。

「エネルゲン水晶は全て採取されているな」

「うむ、用のない採掘場なのにとてつもないエネルギーがここで使用されちょる。見てみい、大都市1年分はあるのぉ~。ここにゃあ何かあるぞい」

計測器を見ると確かにとてつもないエネルギーが使用されたことを計測器の針が示している。

「爺、お喋りはドップラーに会ってからにしろよ」

「ゼロ?お主、わしの目的を知っちょったんか?何時から…」

驚くケインにエックスはドップラーが此処にいると言うことに疑問符を浮かべる。

「ドップラーが此処にいるのかい?」

「爺はそう思ってるんだろ?使い道がないはずの鉱山には不似合いな莫大なエネルギー消費量。ここで何かを企んでいると考えるのが自然だろう」

「なるほど、こんな混乱時にそんなことをするのは…」

エックスは周囲に気を配りながらドップラーがここで何かを企んでいることに気付く。

「すまんの、迷惑はかけんからの」

「ああ、そうしてくれ」

「ゼロ…そんな言い方しなくても」

「ええってええって」

ゼロの素っ気ない言い方にエックスは何か言おうとするが、ケインに止められる。

そして上からいくつかの小石が落ち始め、僅かな音に気付いたエックスとゼロは気を引き締める。

「ゼロ…」

「ああ」

「ドップラー様のとこにゃあ、行かせんぞ~!!」

天井を破って現れたのはサイ型レプリロイドの右腕のドリルでエネルゲン水晶採掘用としての業務に従事していたが、ドップラーにドッペルタウンに招待されたことでイレギュラー化してしまった…。

「スクリュー・マサイダーじゃ!!」

「そして奴の発言を考えると…」

「ここにドップラーがいるわけだね」

ケインがマサイダーに驚き、ゼロとエックスはここにドップラーがいると確信した。

「う…」

「お前に隠し事は無理だね」

言い当てられたマサイダーは呻き、それをエックスが苦笑する。

「くそーっ!!」

自棄を起こしたマサイダーが殴りかかる。

後ろにケインがいるために受け止めるものの、採掘用レプリロイドだけあり、パワーは相当なもので吹き飛ばされてしまい、ケインを巻き込んで壁に叩き付けられそうになる。

「ひーーーっ!!」

激突する直前にゼロが2人を受け止める。

「全く…迷惑かけないと言っておきながら迷惑かけやがって…爺は少し離れてろ!行くぞエックス!!」

「ありがとうゼロ…分かってる!!」

エックスはセカンドアーマーを纏うと、マサイダーに向かっていく。

「採掘用レプリロイドだけあってパワーは侮れん」

「そうだね…でも…!!」

マサイダーは採掘用レプリロイドでパワーは凄まじいが鈍重だ。

そのため、ダッシュで攪乱すれば容易に接近出来る。

「戦い方に関しては俺達の方が上だ!!」

エックスとゼロが同時にマサイダーに蹴りを入れて気絶させる。

「よう、殺さんかったのう」

「当然だ。あいつは単なる採掘用レプリロイドだ。バッファリオのように厄介な能力があるわけでも…」

しかし安心するのも束の間で、突如地面からケーブルのような物が飛び出してマサイダーを包み込んで繭のような状態となるのであった。 

 

第52話:Longing

ゼロはある兵器工場に来ていた。

ドップラーの軍団がハンターベースに襲撃をかけたあの日から行方不明だったホーネックからゼロの個人端末にメッセージが送られたからだ。

『隊長…いや、ゼロっ!!俺はずっとあんたを追っ掛けてた…あの日あんたと出会ってからな。だが、それも今日で終わりだよ。俺はあんた以上の“強さ”を手に入れた…あんたを倒して俺はあんたを超える!!ミートン兵器工場で待っ…』

ホーネックの言葉が終わる前にゼロは端末を握り潰してそれを放り投げた。

あれはシグマの最初の反乱が始まる前のことでゼロがハンターとして配属される前のことだ。

ハンターベースに向かう途中でレプリロイド暴走族の喧嘩に出会した。

その時に会ったのが当時レプリロイド暴走族の片側のリーダーであったホーネック。

そのホーネックから攻撃を仕掛けられて一撃で返り討ちにして壊れたチェバルを置いてハンターベースに向かうことになったのは良く覚えている。

そしてそれからしばらくして暴走族から足を洗ってイレギュラーハンターにホーネックが入隊した。

本人はゼロが所属する第17精鋭部隊に入りたいようだったが、高い隠密能力を買われたホーネックは第0特殊部隊に配属されたので、ゼロとホーネックが本格的に交流するようになったのはゼロが第0特殊部隊の隊長となってからである。

ゼロはZセイバーでかつてエックスが戦ったチョップレジスターと同系統の敵であるシュリケインを一撃で撃破する。

直後に工場内にホーネックの声が放送される。

『あのシュリケインを一撃とはなぁ~。やっぱ強えや。やっぱ強え武器を持ってると違うよな。実は俺も同じくらい強え武器を持ってるぜぇ』

「(ホーネック…)」

イレギュラー化した部下に思うことがあるのか、ゼロの表情は何時もより険しい。

『ドップラー様は俺の眠っていた能力を認めて下さり、俺により強力な武器を与えて下さった。負けるのが嫌なら直ぐに帰るんだな。その門を潜ったらあんたの処刑場だからな』

「そうか、それが口先だけでないことを祈ろうか」

「相変わらず自信過剰だな~!!」

ホーネックの姿は以前より大きく変わっていた。

恐らくエックスとは違う外付けの強化アーマーだろう。

全身を火器で武装したような姿だった。

「どーだ?イカすアーマーだろ?あんたの武器なんて目じゃねえぜっ!!この部屋もあんたの処刑用に特注したんだぜ。ドップラー様は気前良いぜ!!」

「言いたいことはそれだけか?自分の得意な戦い方とは真逆の武装をするとは新人以下だ。暴走族時代の頃のお前の方がまだマシだったな」

溜め息と一緒に吐かれた言葉にホーネックは歯軋りする。

「くぅ~…死ねーーーっ!!」

左腕の火器で攻撃するものの、発射の反動で手が弾かれた。

「…………」

狙いが定められていない弾は見当違いの方向に飛んでいく。

「(反動で手が弾かれた…)」

「“豚に真珠”とは正にこれだな。使いこなせない武器など恐れるに足りん」

「言いたいことはそれだけかーっ!!」

ホーネックは全武装の攻撃をゼロにぶつけようとするが、一発も当たらない。

「どうしたホーネック?俺は一歩も動いてないぞ。動かない的に当てるのは新人にも出来る」

呆れの表情を浮かべるゼロにホーネックは叫ぶ。

「うるへーっ!!まだこれからだ!!俺は強力な武器を持ってるんだ!!負けねえんだ!!」

「強力な武器か…」

バックパックからセイバーは外して床に放り投げ、腕からバスターとアースクラッシュの回路を外す。

「それはバスターとアースクラッシュを使うための回路…」

「今のお前にバスターもアースクラッシュも必要ない。セイバーもな」

回路を握り潰し、ゼロは丸腰の状態となる。

それを好機と見たのかホーネックは笑いだした。

「キヒヒヒヒ…自信過剰なんだよ~っ!!」

そしてゼロに向かって放たれる一斉掃射。

下手な鉄砲でも数を撃てば当たると言うかのようにゼロに命中する。

「くっ…」

「これが強さだ!!」

絶え間なく続く連続攻撃によってゼロは爆炎に飲まれた。

「どうだゼロ!!これが“強さ”だ!!…くくく…身を以て“強さ”の証を立ててくれたな~っ………!?」

「新人時代に言われなかったか?戦場での判断ミスは自分の“死”を招くとな」

アーマーが傷付きながらもゼロはしっかりと立っていた。

「(何故死なねえ…俺は強えんだ。俺は強え俺は強え俺は強え俺は強え俺は強え俺は強え俺は強え…)俺は強いんだーっ!!」

弾切れとなった武装を外してゼロのセイバーの柄を拾い上げる。

「へへへ、格好つけて大失敗だったな…さあ、貴様の武器で殺してやらぁ~…!!?何て高出力ビームサーベルだ!?」

セイバーを出力させた瞬間、あまりの出力にホーネックの腕が振り回される。

「(奴はこれを片手で扱っていたのかーっ!?)」

ホーネックは両手で何とかセイバーを抑えると、ゼロがこれを片手で扱っていたことに驚く。

「ひひひ、あんたずりぃよ。格好良いこと言っといてよ。こんな凄え武器使ってたんじゃねえかーっ!!」

セイバーをゼロに振り下ろすが、それはゼロのヘッドパーツを両断するだけで終わる。

僅かに額が斬られたのか、ゼロの額から疑似血液が流れる。

「お前の言う“強さ”とは俺のヘッドパーツしか斬れないのか…?その程度の“強さ”を…お前は欲しかったのか?……ホーネック…お前が欲しかったのは…こんな紛い物の力じゃないだろうっ!!!」

ホーネックの頬にゼロの拳が突き刺さり、ホーネックの体は勢い良く吹き飛んでいった。

「(俺の求めていた“強さ”…それはゼロのような…そうだ…隊長のように何者にも屈さない強さ…ドップラーのくれた強さなんかじゃない!!俺は…俺は大馬鹿野郎だ…)」

先程の一撃で正気を取り戻したらしく、ホーネックは本来の人格に戻っていた。

「頭部に強烈な衝撃を与えれば、一時的に正気に戻る…エックスの言っていた通りだったな…目が覚めたか?この大馬鹿が」

ホーネックを見下ろしながら言うゼロ。

実はここに来る前にエックスからバッファリオを正気に戻した方法を聞いていたので、ゼロもホーネックに試したのだ。

「(た…隊長…くっ…みっともなくて…情けなくて…顔が合わせらんねえよ…)」

憧れであったゼロにとんでもない醜態を見せてしまったことにホーネックはゼロの顔を見ることなど出来ずに顔を背けてしまう。

「……ふう」

溜め息を吐きながらゼロは踵を返す。

「(行っちまう…良いのかよこのままで…)」

自分は人類に反旗を翻したイレギュラーなのに処分しないゼロにホーネックは目を見開く。

「以前のお前なら立ち上がる位の根性はあったぞホーネック」

その言葉にホーネックは震える体を叱咤して立ち上がる。

「こ…根性だけは…昔よりついてるつもりですよゼロ…隊長!!」

次の瞬間、警報が鳴り響いた。

『エマージェンシー、エマージェンシー。裏切り者を抹殺せよ!!抹殺せよ!!』

そして部屋にかなり数のメカニロイドが押し寄せてきた。

「ホーネック、俺達の仕事は何だ?」

「イ…イレギュラーハンターです!!」

ホーネックの答えにゼロは微笑を浮かべる。

「その通りだ。今度こそ忘れるな…行くぞ副隊長!!」

「はいっ!!隊長!!」

セイバーを回収してホーネックと共にメカニロイドの大群に突っ込んでいくゼロ。

しばらくして工場が破壊され、ゼロとホーネックがハンターベースに帰還したのであった。 

 

第51話:evolution

倒したマサイダーが突如地面から飛び出したケーブルに包み込まれ、まるで虫の繭のような状態となってしまったことにエックスもゼロも困惑する。

「な、何が起きたんだ?」

あまりのことに思考が追い付かないエックスとゼロだが、近付いてくる気配に気付いてそちらに向く。

「進化だよエックス君。君にも経験があるはずだ。進化とは新たな適応力を身に付けること…それは生き残る為の術だ…違うかねDr.ケイン?」

「ドップラー…」

姿を現したドップラーにケインは表情を険しくする。

「そう怖い顔をしないでくれ。君達に最初に見せる為に大急ぎで完了させたんだよ。進化をね!!」

そしてドップラーは戦闘用ボディに改造したボディをエックス達に見せる。

「レプリロイドの進化!即ち!!人類を滅ぼす為の“力”を手に入れること!!聞こえるぞ、進化の音が…人類の滅びゆくリズムがな!!」

「哀れな…」

「?」

「素晴らしい才能を…歪んだ夢のために使うとは哀れじゃの、ドップラー」

「とんでもない、人間の都合を押し付けられていた昔の方が哀れだったよ。所詮人間とレプリロイドは相容れないのだよ。エックス君、ゼロ君。君達も疑問に思わないのかね?自分達よりも遥かに劣る人類の命令に従わなければならないレプリロイドの現状に?実際、最初の戦いではイレギュラーハンターからも反乱者が大量に出たではないか」

「まるで…まるであいつみたいなことを!!」

エックスがドップラーに反論するよりも早くケインが前に出て口を開く。

「確かにあの時はイレギュラーハンターからも反乱者は大勢出た。中には現状に疑問を抱いておった者もおるじゃろうな。それは確かに我々人類の落ち度じゃ…しかしドップラー…わしらは仲間じゃ!!エックス達はわしの大事な仲間なんじゃ!!」

「「!!」」

「………フッ、何時までその理想が続くものかな…まあ、それも一興か…ではそろそろ失礼するよ」

笑みを浮かべてフットパーツのバーニアを噴かして上昇し始めるドップラー。

「何処へ行くドップラー!!」

「生憎、私にはやらなくてはならないことが沢山あるのだよ!!これからのことを思うとワクワクしてくるなっ!ケインよ!!楽しみだな!!」

そして鉱山から脱出してこの場を去っていくドップラー。

「ドップラー…」

変わり果てた親友の姿にケインは悲しげに俯き、そんなケインにエックスはかける言葉が見つからない。

「ケイン博士…」

「爺を慰めるのは後にしろ!先にマサイダーが取り込まれたあの繭を処理するんだ!!……っ!?」

ケインのことが気になるのは分かるが、ドップラーが残していった物をそのままには出来ない為にゼロは繭を指差すが、悪寒を感じて繭を見つめる。

すると繭からドリルが発射され、エックス達は即座にそれを回避する。

「チッ!!ドップラーの言っていた進化とやらか!?」

セイバーを抜いて繭の表面を斬り裂くが、中身には届かなかったらしく、反撃を受けてドリルで左肩のアーマーが吹き飛ばされてしまう。

「姿が変わってる…!!」

「戦闘型に改造されたんじゃ!!」

右腕がドリルになり、両肩にもドリルが装備されただけではなく、フットパーツに機動力を補うローラーが装備されて攻撃的な姿となっている。

そして改造されたマサイダーの目を見たエックスはバッファリオの姿が脳裏を過ぎる。

「(あれはバッファリオと同じだ。と言うことはバッファリオと今までのイレギュラーはドップラーに操られていたのか!?)くそ…ドップラーめ…みんなの心を弄んでっ!!」

ZXセイバーを構えてマサイダーに突撃するエックス。

しかしマサイダーは右腕のドリルを向けてエックスに発射した。

「っ!!(しまった、無防備に飛び込んでしまった!!)」

「馬鹿が!戦闘型に改造されたんだ!!さっきまでとは違うぞ!!」

「す、すまないゼロ…」

ゼロが押し倒してくれたことで直撃を免れたエックスはゼロに謝罪すると戦闘を再開した。

「二手に分かれるぞ!!」

「分かった!!」

エックスは壁蹴りでマサイダーの上を取ろうとし、ゼロはマサイダーに向かっていく。

「ぐ…」

「お前の相手は俺だ!!」

マサイダーにショットを放つが、発射されたドリルに容易く砕かれる。

「(バスターショットが砕かれた…ビームコーティングが施されているのか!?)」

ゼロはドリルの直撃は避けたものの、掠っただけで吹き飛ばされてしまう。

「ゼロ!!」

そしてマサイダーはエックスが駆け上がっている壁にローラーによる機動力と持ち前のパワーを生かした体当たりで壁に激突してエックスを叩き落とす。

「くっ!!何てパワーなんだ…」

地面に叩き付けられたエックスにドリルを突き刺そうとするマサイダーだが、ダッシュでギリギリ逃れるエックス。

「チッ…これが進化って奴か…」

「違う…あんなものが進化であってたまるか…!!悲しみや争いしか生み出さない物が進化だなんて…そんなことあってたまるか!!」

「エックス……そうだな…それをじっくりと教えてやるとしようか!!アースクラッシュ!!」

マサイダーにアースクラッシュを放って直撃させるが、直撃を受けてもマサイダーはびくともしない。

それどころかアースクラッシュの衝撃波を弾き飛ばしてしまう。

「何!?アースクラッシュを弾き飛ばしただと!?」

元々マサイダーは採掘用レプリロイドなだけあり、改造前から装甲は堅牢なのだ。

それを改造によってアースクラッシュすら弾き飛ばす程の強度を持つに至った。

そしてゼロに向けて発射されるドリルだが、ゼロはセイバーでそれを両断する。

「どうした?それで終わりか?」

「グ…」

挑発するとマサイダーは更にドリルを発射してきた。

「そうだ!!撃ってこい…俺に当てられるならな!!」

しばらくドリルを発射するマサイダーとそれをセイバーで両断するゼロと言う繰り返しが起きる。

「もう終わりか…思ったよりも楽だったな…」

ゼロの足元に大量の両断されたドリルの残骸が転がっており、業を煮やしたマサイダーはゼロに体当たりを仕掛ける。

「ダブルチャージショット!!」

ダブルチャージショットでマサイダーの足元を吹き飛ばし、ゼロがアースクラッシュで開けた穴に潜んでいたエックスがマサイダーにチャージを終えたバスターを向けていた。

「お前はドップラーに操られているだけだ!!この一撃で!!」

無防備なマサイダーに至近距離でチャージショットを直撃させる。

そしてマサイダーは天井に叩き付けられ、そのまま地面に落下して気絶している。

「「…………」」

マサイダーの気絶を確認したエックスとゼロは互いに笑みを浮かべる。

「流石じゃなぁ、2人共!!」

「マサイダーはどうします?」

エックスの問いにケインはマサイダーを見遣って、髭を弄りながら考える。

「そうじゃな…連れて帰るかのぉ~。ドップラーの秘密が分かるかもしれんし、そやつも直せば更正出来るじゃろ」

「分かりました」

マサイダーを運ぼうとするエックスだが、ゼロに止められる。

「待てエックス…おい、爺…俺は嬉しかったぞ。仲間と言ってくれてな…」

「いやー、あれは格好つけ過ぎたかのお~」

照れるケインだが、ゼロの言葉は続いていく。

「仲間…苦楽を共にする“連れ”だよな…しかし変だな。俺達ばかり“苦”をやってるよな?ここで一発、髪を弄られたことの報復も兼ねて爺にも“苦”を味わってもらおうか」

そしてエックスを引き摺って鉱山を後にしようとするゼロ。

「こりゃ~っっ、わし1人でこいつを運べと言うのか~~~っ!!?」

気絶しているマサイダーを指差しながらゼロに向かって叫ぶケイン。

この時のゼロの表情は珍しく楽しげなものであった。 

 

第53話:Conscience

ゼロがホーネックを連れ戻してから数日後、エックスとゼロは連続殺人が起こっているジャングルに足を運んでいた。

今では完全な自然は殆ど存在しないので半分機械の木々が生えている。

「森の至るところにあるこの自動天候チェンジャーで、森は良く育っているな。例え山火事になったとしても反応し、即座に豪雨を降らして鎮火させる。おかげで森は迷宮となって連続殺人を行うのも都合の良い場所となる。科学万能も善し悪しだな…なあ、エックス………本当に人間臭いなお前も」

吐いているエックスの姿に呆れるゼロ。

そう言えばルインも同じようなことをしていたことを思い出した。

「すまない…基地で見た殺人事件の資料用フォトを思い出して…どうも俺はルインと同じでああいうのは苦手だ…」 

「俺には理解出来ない心境だな…とにかくあれはバラバラと言うよりも細切れだな…あの斬り口の焦げ…あれはビームサーベルのもの…それもかなりの大型だ。しかも一度に数本束ねないとあんなに細かくはならない。大型ビームサーベルを束ねて振り回すのはどう考えても人間技じゃないな」

また吐き出しているエックスに呆れながらもゼロは情報を纏め直し、それを聞いたエックスも察したようだ。

「うん…イレギュラーってことだな…またドップラーが絡んでいるのか…!!」

木の幹に指を減り込ませる程に力が入るが、そんなエックスの腕にゼロが手を置いた。

「慌てずに一つ一つ解決していくぞエックス。焦るな、焦りは判断力を鈍らせる」

「ああ」

木から手を離すエックス。

ゼロはもう1人の同行者が何処に行ったのかと周囲を見渡し始めた。

「ところで一緒に調査に来たデュークは何処だ?」

「ああ、奥を見てくるって…さっき…」

「うわああああっ!!!」

「「デューク!?」」

デュークの悲鳴にエックスとゼロは急いで向かうが、既にデュークは機能停止していた。

「この傷口は連続殺人犯のものと同じだ!!」

「人間もレプリロイドもお構いなしか…しかもこんな明るい時間帯でのとはな…何を考えている…?」

エックスがデュークの傷口を調べながらゼロは何故この時間帯での犯行に疑問を抱く。

しかし理由は次の瞬間に分かることになった。

飛び出してきた1体のレプリロイドは太陽光をエネルギーにしてビームの爪を発現させる。

「奴は太陽光を武器エネルギーにしていたのか!!」

この時間帯での犯行の理由に気付いたゼロは迎撃しようとするが、敵の動きがゼロの想像を上回っており、擦れ違いざまにゼロのボディに傷を付ける。

咄嗟に体を捻ったことで致命傷は避けたが、直ぐには起き上がれない。

「ゼロ!!」

そして木を足場にして次はエックスに狙いを付けてきた。

「くっ!!もう反転して来たのか!?」

「グルオオオオオッ!!」

「!?」

「(何だこの雄叫びは…?)」

雄叫びに反応する2人。

敵は攻撃を中断して森の中に逃げていく。

「攻撃を止めた…?あいつに命令を下す“上”がいるのか?真犯人はそいつなのか?」

「何をしている!!ここで奴を取り逃がしてどうする!!早く追うんだ!!」

「…分かった!!」

ゼロがエックスに犯人を追い掛けるように言うとエックスも頷いて追い掛けていく。

「(情けない…一撃でこのザマとは…)」

ダメージが深いゼロは直ぐには動けない。

取り敢えず自己修復がある程度終わるまで待つしかないと思っていたが、気配を感じてそちらに振り向くと、そこには虎の大群がいた。

そして追い掛けたエックスは犯人を見つけ出し、攻撃を仕掛けようとするも、それよりも早く相手は動いた。

エックスの左肩のアーマーを噛み千切りながら距離を取る。

「連続殺人犯はお前だったのか…密猟者逮捕用レプリロイドの…シャイニング・タイガード!!」

「殺す…殺す…」

「ドップラーに何かされたのかは知らないが、殺人まで犯すとは見損なったぞ!!」

チャージショットでタイガードを攻撃するものの、ビームクローで掻き消される。

「チャージショットが掻き消された!?そうか、奴は太陽光エネルギーを直接武器エネルギーに変換している!!この天候では奴のビームクローは常に最大出力なのか!!」

タイガードが一気に距離を詰めてくる。

エックスはZXセイバーでビームクローを受け流していく。

「(不意を突いたとは言えゼロを一撃で倒す攻撃だ!!強化アーマーがあってもまともに受けるわけにはいかない!!)」

屈んでビームクローをかわすと、タイガードに足払いをかけて距離を取る。

「(奴相手に接近戦は不利!!距離を取ってバスターで攻撃するしかない!!)」

バスターをタイガードに向けるが、獣型のレプリロイドの機動力はエックスの想像を超えており、既にエックスの眼前にいた。

ビームクローを何とか後退することで致命傷を避けるが、タイガードの連続攻撃にエックスは為す術がない。

セカンドアーマーの防御力のおかげで動けない程のダメージは免れているが、このままではやられてしまうと判断したエックスは目の前の装置を見遣りながら一か八かの賭けに出る。

「くっ…このままでは嬲り殺しだ。一か八かだ…!!」

跳躍し、木に飛び乗ると次の木に飛び移る。

「に…逃がすかぁーーーっ!!」

エックスは着地位置をずらすことでタイガードの攻撃範囲から逃れる。

タイガードは邪魔になる枝をビームクローで斬り落としていくが、木の葉がビームクローによって燃え、森は火事となってしまう。

そして広い場所に出たエックスとタイガードだが、エックスはダメージのせいか膝を着いてしまう。

「あ…ぐう…殺す…殺す。殺す!!」

ビームクローがエックスを貫いた次の瞬間、雨雲で太陽が隠され、豪雨が降り注ぐ。

「雨…豪雨!?」

「狙い…通りだ…!!」

エックスは狙い通りとなったことに笑みを浮かべるとセイバーで雨に気を取られたタイガードの右腕を斬り落とす。

「ビームクローが消えた…っ!!」

「そうだ、お前が起こした山火事によって反応した自動天候チェンジャーがお前の武器エネルギー源である太陽光を覆い隠し、遮断したんだ。」

「まだ牙ある!!」

エックスに飛び掛かろうとしたタイガードだが、ぬかるんだ地面に足を取られて転んでしまう。

「濡れた地面はお前の自慢の機動力も奪ったんだ。もう終わりだタイガード。罪を償うんだ」

バスターを向けながらタイガードに罪を償うように訴えるエックスだが、タイガードは聞く耳持たずに尾の先端から光弾を発射してくる。

「まだそんな武器が残っていたのか!?止めろ!!これ以上しても何にもならない!!」

「殺す…殺す…人間を…その味方を…!!」

「タイガード…くそおっ!!!」

豪雨が終われば一気に不利になるエックスは断腸の思いでチャージショットを放った。

タイガードの光弾はチャージショットに伴われたエネルギー弾に弾かれ、そのままタイガードに直撃し、直撃を受けたタイガードは力なく倒れた。

「タイガード…」

倒れたタイガードを無念そうに見つめるエックスだが、次の瞬間にまた雄叫びが響き渡る。

「また…?タイガードに指令を送っている奴が何処かにいるのか?」

「それは違うぞエックス」

「え?ゼロ!?怪我は大丈夫なのか!?それと…その抱いている虎と後ろの虎達は?」

振り返った先には雌の虎を抱き、後ろに虎の大群を連れたゼロの姿があった。

「ダメージは自己修復で何とかなった。どうやら彼女とこの虎達はタイガードと縁があるようだ」

ゼロが抱いていた雌虎をタイガードの近くに下ろすとエックスに事情を説明する。

「エックスがタイガードを追い掛けた後に、この虎達に囲まれてな。敵意は感じられないから連れていかれるままについていったんだ。そして彼女達の住み処らしき洞窟に着いた。そして怪我をしていた彼女が訴えるように吠えていた。恐らく密猟者の人間に撃たれたんだろう。酷い怪我だった。」

「それじゃあ、あの雄叫びは彼女だったのか…」

「そうだ。支部に連絡を入れて医療用具を転送してもらって彼女の手当てをしてやるとフラフラと外へ行こうとしていたから俺がここまで運んできた訳だ」

「そう…なのか…彼女にとって…タイガードは大切な人だったのかな…?だからずっとああして…」

タイガードの内部機関を舐めている雌虎の姿に、彼女にとってタイガードは大切な存在だったのではないかと思うエックス。

「は?……まあ、タイガードは虎型のレプリロイドだからな。モデルとなった虎と交友は出来なくはないだろうが…」

「軽率だったかな…俺は彼女から大切な人を奪ってしまった…あんなに一生懸命なのに…タイガードはもう…俺のバスターがタイガードを……」

「仕方ないだろう。今のタイガードを放置していては罪のない人間やレプリロイドが犠牲になる…お前は間違っていない。」

雨雲が無くなり、再び太陽光が降り注ぐ。

タイガードにも太陽光が降り注ぎ、それによって再起動が始まったことを示す起動音が鳴った。

「え?」

タイガードの腕が動いて雌虎の頭に回された。

「グル?」

「奇跡だ…!!」

タイガードが起き上がり、雌虎の傷に響かないように優しく抱き締め、雌虎も嬉しそうに頬擦りする。

「奇跡だと?バックアップシステムがドップラーの手に掛かっていなかっただけだろう。」

「ドップラー程の科学者がミスするはずがない。タイガードの最後の両親がドップラーの手からシステムを守ったんだ」

「非科学的な」

「科学万能も善し悪しなんだろう?」

「…だったな」

エックスの言葉にゼロは微笑みを浮かべる。

タイガードにとってあの雌虎はきっとタイガードの心の支えでもあったのだろう。

だからこそ、彼女が人間に撃たれたことで人間とそれに味方するレプリロイドに憎しみを抱いてドップラーに付け込まれてしまったのだ。

タイガード達の姿を見て何となくエイリアの姿が脳裏を過ぎり、エックスはハンターベースに帰還するとエイリアに通信を送る。

『あら?エックス…どうしたの?』

「あ、忙しいのに通信を寄越してごめん…大した用事じゃないんだけど…」

『良いわよ、今は休憩中だし』

「そうか…実は今日…」

今日の任務の出来事をエイリアに話すと、興味深そうに聞いてくれた。

研究者であるエイリアからすれば動物とレプリロイドの関係とは興味深いものだからだろう。

こうして今日の任務は終わりを告げた。 

 

第54話:Parasite

ハンターベースのケインの部屋でエックスがケインの発言に思わず声を荒げる。

「俺は反対です!!彼らの頭部を開けて電子頭脳を検査するなんてあまりにも乱暴過ぎます!!」

ケインの発言に声を荒げる理由は、電子頭脳は言うまでもなくレプリロイドの頭脳で大切な部分の1つである。

もし万が一のことがあれば、記憶やデータがデリートされてしまう可能性も無くはないのだ。

「記憶やデータがデリートしてしまう可能性があるからか?だが、ホーネック達もそれを承知しているんだ。いくら調べてもドップラーがホーネック達に施した処置が分からないんだ。ならば電子頭脳を検査するしかないとな」

どれだけボディの検査をしてもドップラーのイレギュラー化させる原因が見つからないのなら最早、電子頭脳を調べるしかないのである。

「エックスよ…わしを誰だと思うとる?わしはDr.ケインじゃぞ。心配するな!!」

自信を持って言うケインにエックスは何も言えずに、検査が始まった。

「それでは今より4人の電子頭脳の検査手術を開始するぞい!!よし、ドライバーN・N」

数人の助手の手を借りながら、ケインはまずメンテナンスベッドに寝かされているホーネック、バッファリオ、マサイダー、タイガードの頭を外し始める。

「みんな…頑張ってくれ…」

「………」

何も出来ないエックスとゼロは成功を祈るくらいしか出来ない。

「何処じゃ…一体何処にドップラーの手が掛かっとるんじゃ…」

どれだけ電子頭脳を調べたところでドップラーの施したイレギュラー化の原因は見付からない。

「(ケイン博士ともあろう人があんなに苦しんでいる…)」

何も出来ない自分に無力感を抱きながらも、ケイン程の科学者ですら見つけられないような処置を施すドップラーに戦慄を覚える。

「…………最早、これしかあるまい」

ケインは台に置かれた治療用具を見つめていたが、意を決して1つの道具を手に取る。

「(あれはアロファー波照射機!!確かにあれは異物探索に絶大な効力を発揮する。けどその反面、僅かでもアロファー波の照射位置がずれるとシステムも破壊してしまう!!)止めさせなくては…!!」

止めようとメンテナンスルームに入ろうとするエックスをゼロが止めた。

「黙って見ていろ…爺を信じるんだ。普段はボケ爺だが、やる時は必ずやる男だ…俺達の知るDr.ケインはそう言う男だろう?」

「ゼロ………うん」

ゼロとて自分を慕ってくれる部下をこの検査手術で失うかもしれない可能性があることに何も思っていない訳じゃない。

だが、ケインを信じているからこそやらせるのだ。

そしてケインがタイガードの電子頭脳にアロファー波の照射を開始し、照射位置がずれないように慎重に動かしていく。

そしてチップの所にアロファー波が照射された際に異変が起きた。

「「「!?」」」

チップが突如生物のように動き出し、まるでムカデのような姿となる。

「な…これがドップラーの呪いの正体なのか…純正パーツに擬態して寄生した相手をイレギュラー化させ、凶暴化させる変形チップ…」

寄生チップはタイガードが機能停止しているためか、他の宿主になりそうなレプリロイドに飛び付く。

それはケインの背後にいた助手レプリロイドの1体のレプリロイドだ。

「はぐっ!?」

口に当たる部分でボディに穴を開けると、そのまま内部に侵入した。

「ふぐぅぬ~~っ!!」

そして電子頭脳に到達し、そのまま寄生すると助手をイレギュラー化させ、電気メスを持たせてケインに襲い掛かろうとする。

「その電気メスをどうするんじゃ!!」

「フ…ヒェヒェヒェ。解剖だぁ~科学の進歩だぁ~」

ゼロがガラスを突き破ってZセイバーを抜くと、寄生された助手を一刀両断した。

それにより寄生チップも破壊される。

「全く…とんでもないチップだ…だが、これで頭部に衝撃を与えると一時的に正気に戻る理由も分かったな…こいつらは生物のように思考・動いて寄生出来るくらいに精密なせいで他のイレギュラー化チップよりも衝撃に弱いんだ」

「ゼロ!何も倒さなくても良かったんじゃ…」

「こんな奴は1秒たりとも野放しに出来るか」

駆け寄りながら言ってくるエックスにゼロはチップの破片を踏み砕きながら言う。

「……あ…野放し…?」

タイガードの寄生チップは排除されたが、ホーネック、バッファリオ、マサイダーの寄生チップは取り除かれていない。

つまり…。

「どわひぃぃぃっ!!」

他の宿主となりそうなレプリロイドに寄生してケインに攻撃を仕掛ける。

「ケイン博士!!」

「世話のかかる爺だ。伏せてろ爺!!」

エックスが飛び出し、ゼロがバスターを構えてショットを放って助手達の頭部を破壊する。

「全く、迷惑なチップを造りやがって…なあ、エックス…」

「うわああああっ!!!」

振り返ったゼロが見たのは寄生チップに取り憑かれたエックスの姿だった。

「エックス…お主…寄生チップに取り憑かれたのかーっ!!?」

「(取り憑かれた…エックスが…)」

ゼロはセイバーの柄を握り締めると、光刃を発現させて構える。

「ゼ、ゼロ…何のつもりかの…?」

「エックスを処分する…俺は何時も言い続けた。俺達はイレギュラーハンターだ…と…その言葉に甘えは…ない!!」

「そんなプログラムされた信念は犬にでも食わしゃいいんじゃい!!お主が信じるのは共に苦楽を乗り越えてきたエックスとの絆じゃ!!あんなチップ如き、エックスの“良心”っつうワクチンに掛かればイチコロじゃい!!」

その言葉にゼロは足を止める。

「俺が今…信じるもの…か…(そうだな…エックスは俺を信じてくれた。なら今度は俺が信じる番か…)エックス!!負けるんじゃないぞ!!」

「う…ぐぐ…」

「頑張れエックス!!頑張るんじゃあ!!」

寄生チップの洗脳に必死に抗うエックスにゼロとケインは叫ぶ。

「(エックスがチップ一匹でこんなに苦しむなんて…しかし、その気になればこいつらは何時だって俺達に寄生出来たはずだ…なのに何故今になって……まさか!?)」

嫌な予感を感じたゼロはチャージショットで壁に穴を開けると外に向かう。

「なっ!?これは…ハンターベースが火の海になっているだと!?」

あまりの惨状に驚愕するゼロだが、元凶であろう2体のレプリロイドが姿を現した。

「ワーム数匹で大あらわだな。我らの侵入にエースが全く気付かなかったとはな。あの寄生チップ“ワーム”は取り憑いた相手を凶暴化し、その能力を大幅にアップさせる。そしてそのチップは我らの素体となっているのだ。」

侵入者の片割れの手が変化し、エックス達に取り憑いたチップを集めたような状態になり、次の瞬間にら元に戻った。

「そう言えば自己紹介をしてなかったな。我が名はナイトメアポリスのヴァジュリーラFF」

「同じくマンダレーラBB!!」

細身で標準サイズのレプリロイドと大型のレプリロイドがそれぞれの名を名乗る。

「ナイトメアポリス?悪夢警察とは面白い芸名だな。爺、エックスを任せたぜ。俺は奴らを倒してエックスの悪夢を覚まさせてもらう!!アースクラッシュの一撃で沈めてやるぜ!!」

まずはマンダレーラBBに狙いを定め、アースクラッシュのエネルギーを纏わせた拳を叩き込もうとするが、マンダレーラBBに容易く掌で受け止められた。

「勝ちを急ぎおって、実力差を考えてみろ」

「うわあっ!?」

マンダレーラBBはゼロを地面に叩き付けると、勢い良く放り投げて建物に叩き付ける。

「(待っていろエックス…こいつらを倒して少しは楽にしてやる…)」

ゼロは2対1と言う絶望的な状況の中、エックスを信じて戦い続ける。

そしてエックスの意識は夢の中の、争いの無い平和なシティ・アーベルの花畑の真ん中に静かに佇んでいた。

「ここは…シティ・アーベル?でも、どうして?」

『ここはあなたが苦しい戦いの末、成就した理想郷なのです』

何故か心に響くような声にエックスは納得したように口を開いた。

「そうか…俺の戦いは…終わったのか…」

一方、現実の世界ではケインがエックスに取り憑いたワームの活動を抑えることに成功していた。

「ふぃ~やっと小康状態になったわい。これで一安心じゃな。しかし解せん、エックス程の戦士がいとも簡単に寄生されるとは…え~い、早く帰ってこい!エックス!!」

エックスに叫ぶとケインは腕を振りながらホーネック達の元に向かう。

「よっしゃあ!!わしはもう一仕事じゃい!!」

そして外ではゼロが奮闘していた。

実力は完全に向こうが上回っているために何とか2体同時を相手にするのを避けるために壁蹴りを駆使して距離を取るが、ヴァジュリーラFFはゼロの真上を取ってビームサーベルを振り下ろしてくる。

「チッ!!」

セイバーでそれを受け止めるが、そのまま落下していき、真下にいるマンダレーラBBが落ちてくるゼロに拳を振り上げようとする。

しかしホーネックがゼロを抱え、マサイダーとタイガードがヴァジュリーラFFを押さえ込み、バッファリオはマンダレーラBBの攻撃を受け止める。

「お前達…全く…悪運が強いな俺達は…」

笑みを浮かべる加勢者達にゼロは笑みも浮かべた。

そしてエックスの夢の中では、エックスは舞い散る桜の花弁を見つめていた。

通り過ぎていく子供達の笑顔を見て、エックスは微笑む。

「みんな幸せなんだな…」

『そうです。あなたが苦しみに耐えて戦ってきた結果がこの理想郷なのです』

「こんなに平和なら…俺はもう戦わないで済むんだ…」

エックスの夢とは正反対の事態が現実の世界で起きていることなど知らないまま、現実のゼロ達とナイトメアポリスとの戦いは激化していくのであった。 

 

第55話:Return

ゼロ達はナイトメアポリスと戦っていた。

バッファリオ達はワームによる強化が無くなったことで弱体化していたが、それでも彼らは持てる力で必死に抗う。

そしてそんな中、エックスは夢の中で偽りの平和を噛み締めていた。

「エックス」

「ん?君は…ルイン?」

「こんなところで寝てないで散歩しようよ。こんなに良い天気なんだからさ」

優しく微笑んで見下ろしてくるルインが手を差し出すとエックスはその手を取って立ち上がり、一緒に歩き出した。

「ふふふ」

「そんなに走ると危ないよ」

「だって嬉しいんだもん。エックス達はちゃんと約束を守ってくれた。こんなに平和で優しい世界を創ってくれたんだから」

無邪気に笑うルインにエックスは微笑みながら周囲を見渡す。

「俺もこの平和が好きだよ」

「そっか…でもこれは何?」

冷たい声にエックスが前を向くと、穏やかな光景から一変して荒れ果てた光景が広がる。

「な…っ!?これは一体…?」

「これは…エックスに待ち受ける未来だよ」

一方、現実の世界ではバッファリオが冷凍ビームでマンダレーラBBの右腕を凍結させる。

「これで片手はもう使えまい!!」

「何故、手が使えぬ?」

力を込めるだけでバッファリオの氷は容易く砕かれてしまう。

「ば…馬鹿な…!?」

驚愕するバッファリオはマンダレーラBBの張り手で吹き飛ばされる。

「ぐっ」

「チィッ!!小賢しい!!」

そしてヴァジュリーラFFのビームサーベルをタイガードはビームクローで何とか受け止めるものの、蹴り飛ばされる。

「おめえにゃ、借りがあったなーっ!!」

奇襲をかけるホーネックだが、ヴァジュリーラFFに直前に気付かれる。

「役立たずがっ!!」

即座にサーベルでホーネックの左肩を斬り落とす。

「くあ…っ!!」

「ホーネック!!(くそ…ナイトメアポリス…予想以上だ…)」

ゼロ達は傷付いても立ち上がり、戦い続ける。

後ろには守るべきものがいるからだ。

そして夢の中ではエックスとルインが見つめあっていた。

「この荒れ果てた世界は君が生きる世界。」

「ここが俺の生きる世界?なら、あの理想郷は?」

「あれは戦いの果てに君が築いた世界。でも君はあの世界にはいられない。君も私も…理由は私達の手が血で穢れ過ぎてしまったから」

「俺達の手が穢れてる…!?」

ルインの言葉に目を見開くエックスだが、ルインは構わずに言葉を続ける。

「だって私達は今まで沢山のレプリロイドを倒してきた。彼らはもうあの理想郷には行けない。だから奪った私達もあそこには行けない。私達が住めるのはこの荒れ果てた世界。そして私達は鬼となって生き続けなければならない…でも怖がらなくて良いの。私が君の傍にいるよ。私がずっと君の傍に…さあ、行こう…私が君を守ってあげるから…」

「俺は…あそこへは戻れない…俺の進むべき道は修羅の道…身も心も修羅に…鬼になるだけ…」

「大丈夫だよエックス…怖がらないで…私は君の味方…に…?」

エックスにバスターを向けられるのと同時にルインの体に風穴が開いた。

「エックス…何を…!?」

「それがお前の手だったのか…甘い愛を見せて心に出来た隙に付け込む…卑怯この上ないぞ!!」

「…………」

体を貫かれたルインはふらつきながら険しい表情でエックスを睨む。

「確かに俺は修羅の道を歩んでいる。しかし俺は鬼にはならない。俺の大事な仲間が俺の心を支えてくれる!!例え一緒に戦えなくても本物のルインも俺の心を支えてくれる。だから俺は絶対に…鬼にはならない!!」

「……クククッ、流石だなエックス。わざと寄生されることでこちらの手の内を暴くとはな」

ルインの姿をしたものが、冷酷な笑みを浮かべて本当の姿を見せ始めた。

「そうか、貴様が…貴様が裏についていたのか…シグマーーーッ!!!」

セカンドアーマーを装着し、チャージショットをシグマに直撃させる。

それは現実の世界にも反映され、建物からチャージショットが壁を貫いて飛び出した。

それを見たホーネック達は戦いの最中であることを忘れて固まる。

「ククク…」

「ふはははは…」

突如笑い出すヴァジュリーラFFとマンダレーラBBだが、ホーネック達の視線は吹き飛ばされた建物から目を離せない。

「その目…貴様らにも分かっているはずだがな…」

「お主達の英雄は“ワーム”に取り憑かれ、暴走した挙げ句に…」

「「自滅した!!!」」

その言葉にゼロは鼻で笑う。

「フンッ、電子頭脳も虫だからそんな寝惚けたことしか言えないのか?分かるんだよ…あんな粗悪チップ如きでは抑え切れない。地獄を見て来たことで叩き上げられたあいつの心はな!!」

そして姿を現したエックスは既にバスターのチャージを終えており、何時でもチャージショットを撃てる状態である。

「俺は…鬼にはならない!例え修羅の道に身を落とすことになってもだ!!」

渾身のチャージショットが放たれ、そのままヴァジュリーラFFに向かっていく。

「お前程度の攻撃が通用するとでも…いや…このパワーは…?」

尋常ではないエネルギーを感知したヴァジュリーラFFは危機感を抱いて盾を構えるものの、エックスのチャージショットは盾ごとヴァジュリーラFFの左腕を粉砕した。

「な…っ(これがエックスの真の“力”か…)」

「帰ってドップラーに伝えろ。例えお前の後ろに誰がいても関係ない!!貴様らの悪事は根刮ぎ叩き潰すとな!!」

「うむ、伝えておこう」

ヴァジュリーラFFを支えながらマンダレーラBBは頷いた。

「やいやい!逃げようってのか!?」

「どう解釈しても構わんよ。我らはドップラー様に確実な勝利を捧げる為に戦っている。0.1%でも確実性が失われるのなら新たなる強化を以て任務を遂行するだけ」

転送の光に包まれ、ヴァジュリーラFFとマンダレーラBBはハンターベースから去ろうとする。

「てめえ!!逃げんなあっ!!」

飛び掛かろうとするホーネックをエックスは手で制する。

「良いんだよ…今の状態で深追いするわけにはいかない…ゼロ…大丈夫か?」

「この程度のダメージなら問題ない。全く、無茶しやがって」

どうにかナイトメアポリスの襲撃を凌いだエックス達は喜びを分かち合う。

「二度と鬼には戻らねえだと?眠てえことを言いやがるぜ。俺が引き戻してやるさ…お前を鬼にな…」

そんなエックス達の姿を冷たい目で見ている者がいることに気付かずに。 

 

第56話:Berserker

ナイトメアポリスによるハンターベース襲撃から数日後、とある海域で大型輸送船が真っ二つされて沈没すると言う事件が起きた。

それから更に3ヶ月後のガンダ造船所。

世界有数の規模を誇るこの造船所で異変が起きており、それを感知したイレギュラーハンターは出撃した。

「アースクラッシュ!!」

造船所の一角でゼロが1人でドップラーの部下を相手取っていた。

「さて、まだやるか?」

ゼロの元にドップラー軍団のメカニロイドとレプリロイドが集まっていく。

「そう、相手は俺だ…(頼んだぞエックス)」

ゼロは自ら囮となって音信不通となった造船所の調査にエックスが向かった。

エックスはハイパワーエンジンをライドアーマー・キメラに取り付けることで潜水能力を持たせたフロッグで水中を移動していた。

そして造船所の壁に穴を開けて潜入すると、造船所の中にもドップラーの部下がいることに気付く。

「ドップラーの部下がここにもいると言うことはケイン博士が送った調査隊もやられてしまったかもしれないな。」

巨大戦艦の船底辺りをゆっくりと移動していくが、エックスの視界にあるものが目に入った。

「あれはこの造船所の作業員とケイン博士が送った調査隊じゃないか!!」

「進水式の生け贄だ~っ!!働いている人間も連れて来~い!!海を真っ赤に染めようぜっ!!」

上から聞こえてきた声にエックスは表情を顰める。

「進水式の…生け贄だと!?止めろっ!!」

水上に飛び出すと、この造船所を占拠したイレギュラーの指揮官らしき者の姿があった。

「むう?ひゃーはははっ!!こいつぁ、とびっきりの生け贄だぜっ!!」

「シザーズ・シュリンプァー!!3ヶ月前に脱走してこんな所にいたのか!!」

「勝手に造られ、勝手に殺されてたまるか!!俺はまだこの鋏を使っちゃいねえ!!俺は斬りまくるぜぇっ!!レプリロイドだけじゃねえ!!人間もだ!!生の肉を斬り裂いて思う存分この鋏に吸わせてやるのさ!!」

「う……」

シュリンプァーの狂気に気圧されるエックス。

「だから邪魔すんなよ~っ!!」

そんなエックスにシュリンプァーは両腕の鋏を向けて発射し、フロッグを破壊する。

「うわっ!?」

フロッグを破壊されたエックスは水中に落ち、シュリンプァーも飛び込んでエックスを鋏で掴む。

「ぐあっ!!」

「さあ、捕まえた~っ!!じたばたしなっ!!じたばたよ~っ!!」

「うっ、くっ…!!」

何とかエックスは脱出しようともがくものの、体に鋏の刃が食い込んでいく。

「暴れろ、もがけぇ、お前が動く度に鋏は確実にお前に食い込んでいくんだよぉ」

「(何か手はないのか…このままでは…)」

船底の砲台が視界に入ると、エックスはバスターを構える。

「実装されていてくれ!!パラスティックボム!!」

砲台が実装されていることを願いながらホーネックの特殊武器であるパラスティックボムを発射する。

どうやら実装されていたようで、爆弾の爆発によって誘爆を起こした。

「砲台の実弾を誘爆させて激流を作りやがったーっ!!」

両者共に吹き飛ばされるが、何とかエックスはシュリンプァーの鋏から脱出出来た。

「実弾の装備が早過ぎたな」

「よくも俺の戦艦に傷を付けてくれたな~!!」

「お前は罪のない者達を殺していただろう!!」

戦艦を傷付けられたことに怒るシュリンプァーだが、エックスもまた罪のない者を殺してきたシュリンプァーに怒る。

「当ー然!!!俺はその為に造られたんだーっ!!」

「その考えが間違ってるんだ!!だから廃棄されるんだ!!」

バスターを構えてチャージショットを撃とうとするが、フルチャージにも関わらずに通常のショットが放たれた。

「っ!しまった、バスターに水中戦用の調整が…!!」

「準備不足だな!!まあ、水中じゃ構えるにも時間を食う!!フルチャージでも軽く避けられるけどなぁっ!!」

「ぐああああっ!!」

「そ~れ!!反撃しねぇのか~っ!!」

鋏で突かれ、仰け反るエックスにシュリンプァーは尻尾を叩き付けて吹き飛ばして壁に激突させた。

頭から激突したエックスにシュリンプァーは鋏を構えてエックスに襲いかかる。

「これでお開きにしてやらぁ~っ!!」

鋏が当たる直前に体を動かしてかわすと、鋏が壁に減り込む。

「まだ終わるわけにはいかないんだ」

「てめえ、ちょっと生意気だぜぇ~っ!!!」

「このままやられてたまるか!!今の俺に必要なのは水中での機動力!!ならばまだ手はある!!」

エックスは泳いで破壊されたフロッグの元に向かい、近くにある物を持ち上げる。

「今更そんなスクラップに何が出来る!!纏めて斬り刻んでやる!!」

「それはどうかな?確かにフロッグは使えないが…これならまだ使えるぞ!!」

フロッグの特徴と呼べるハイパワーエンジンを起動させ、それに乗ることでエックスは水中での機動力を確保する。

「それはフロッグのエンジンか!?」

「そうだ。ライドアーマーを水中でも運用出来るようにする為のハイパワーエンジンだ!!これでバランスも機動力も補える!!」

「付け焼き刃ぁ~っ!!!」

エックスに向けて鋏を発射するものの、エックスはエンジンを動かすことで方向を変えて回避する。

「シュリンプァー!お前の攻撃は見切った!!今度はこちらの番だ!!」

エンジンを噴かしてエックスはシュリンプァーに接近する。

「馬鹿野郎!!俺は殺戮用レプリロイドだ!!殺られんのはおめえの方なんだよ!!俺じゃねぇ!!」

「いや!!殺られるのは貴様だっ!!」

バスターよりも威力があるルインのZXセイバーでシュリンプァーの左肩を斬り裂き、そしてエンジンに内蔵されている誘導魚雷を発射して左肩を完全に破壊する。

「うぐぐぐぐ、この野郎っこの野郎っ!!ぶっち殺す!!!」

「これは…戦艦が動き出している!?」

シュリンプァーが戦艦に指示を流して戦艦を起動させるとエックスは巻き込まれないうちに脱出する。

外に出ると戦艦が動き出しており、甲板にはシュリンプァーの姿も見え、エックスはこの最悪の状況での戦いを強いられることになる。 

 

第57話:Sniper

大型戦艦が姿を現し、そのあまりの大きさにエックスは圧倒されてしまうが、怯んでいる暇はないとシュリンプァーに狙いを定めようとするが、砲撃が放たれたことでエックスは回避に集中しなければならなくなる。

「しまった!街が!!このままでは壊滅してしまう!!」

しかし、砲弾は建物に直撃してしまい、街が破壊されていく。

それを見ていたゼロが住民を避難させている。

「早くこの街から離れろ!!レプリロイドは人間の年寄りと子供を運んでやれ!!(頼むぞエックス…)」

住民の避難に集中しながらゼロはエックスに全てを任せる。

「くそ、どこを狙えば…」

何とか攻撃は避けたものの、その間にシュリンプァーを見失ってしまう。

バスターを構えながらシュリンプァーを捜すが、甲板に現れたシュリンプァーが連れている者達に目を見開く。

「何?あれは…人間!?」

「ひゃーはっはっはっ!!撃てよぉ~。まあ、撃てねぇ~よなあ?しかもまだまだ船ん中にはセレモニー用にまだまだ人間はいるぜぇ~」

「貴様!!卑怯だぞ!!」

「ひゃーはははっ!!何とでも言いなぁ~っ!!外海に出たら派手にセレモニー開始だぜぇ!!それまで花火で時間潰しだぁ~っ!!」

再び砲弾が撃ち込まれるが、エックスは人質がいるせいで反撃出来ない。

「くそっ!手が出せない…このままでは…」

それだけではなく飛行艇が戦艦から飛び出し、エックスの周囲に大量のメカニロイドを投下した。

「くそ……ん?」

周囲を見渡した際にある場所が視界に入ると、そちらに向かって駆け出す。

「(一か八かだ!!)」

しかしシュリンプァーと人質には逃亡と見られたのかシュリンプァーは愉快そうに、人質は見捨てられたと絶望する。

「見ろよ見ろよっ!!逃げて行っちまったぜぇ~っ?構わねえ!!味方ごと吹っ飛ばしちまえーーっ!!」

「何!?奴め、見境なしか!!」

敵味方関係なく攻撃するシュリンプァーにエックスは激怒しながらある場所を目指す。

襲いかかるメカニロイドを蹴散らし、障害物を避けては破壊しながら目的の場所まで突き進む。

そして辿り着いたのがガンダ造船所の灯台であった。

「よし、ここなら奴の死角を取れる…!!ルイン、力を貸してくれ…!!」

ルインのセイバーをバスターに変形させるとエックスはシュリンプァーに狙いを定める。

「(チャンスは一度だけだ。この一撃を外したら人質と一緒に艦内に逃げられてしまう…しかもこれだけの距離があると0.001度の狂いでもターゲットから大きく外れてしまう。限界まで、チャージショットの攻撃範囲を限界まで絞り、射程を伸ばす…そして正確にシュリンプァーの頭部を撃ち抜かなければ…)」

ZXバスターのチャージショットの攻撃範囲を限界まで絞り込んでチャージショットの威力と射程を上げていく。

残るはシュリンプァーの頭部を的確に射抜くのみだが、これはあまりに厳し過ぎる。

少しでも狙いが狂えばターゲットを外し、下手をしたら人質に当たる可能性も無くはない。

エックスはシュリンプァーの僅かな動きや隙も見逃さないように極限まで神経を研ぎ澄ませた。

「ひゃーはっはっはっ!!死んだぁ死んだぁ!!おっ死んだぁ~!!」

砲弾を何度も撃ち込まれたことで火の海と化した街を見ながらシュリンプァーは大笑した。

「そ…んな…あっ!?」

愕然としていた女性だが、シュリンプァーに髪を切られたことで正気に返る。

「さあ!!セレモニーだ!!お前からか!?お前か?いーや!俺の鋏ならてめえら纏めて真っ二つだ…」

シュリンプァーが鋏を振るおうとした直前に一筋の閃光かシュリンプァーの頭部を貫いた。

「ん?成ぁ~る程」

頭部を貫かれたシュリンプァーは閃光が放たれた方向を見遣るとそこにいたエックスに納得したような表情を浮かべた。

「ひっ、ひひひひ…ひゃーははははっ!!…逃げたんじゃなかった訳かい…低い所からじゃ人質に当たるからなぁ…たった1つの死角は“真上”だもなぁ…」

そのまま機能停止したシュリンプァーは海に落下し、海中で爆発を起こした。

「ふう…」

精神的な疲労でエックスは仰向けに倒れ、爆発の水しぶきによって出来た虹に笑みを浮かべた。

ゼロからも通信が来て、怪我人はいたが死者は奇跡的に出なかったのが救いだった。 

 

第58話:Big Bang

シュリンプァーの事件から間を置かずに新たなる事件が発生した。

それはドップラーの手によって“笑い”を暴走させられ、体内の電流をコントロール出来なくなった体内に高性能発電装置を内蔵しており、必要な時には移動発電所として機能していたナマズ型レプリロイドのエレキテル・ナマズロスの大放電によって次々と発電所は消滅してしまうと言う事件である。

電力の供給が失われた都市は闇に閉ざされ、それに乗じたドップラーの放った工作員が都市の破壊を開始し、人々は逃げ惑い、恐怖した。

事態を重く見たケインはエックスとゼロを出動させる。

そして7番目のツアー地であるフィールド発電所にナマズロスが現れた。

「さぁ~っ!!今日も抱腹絶倒の舞台が始まるでぇーっ!!」

「待て!!」

ナマズロスが行動を起こす前にエックスとゼロが立ちはだかる。

「おーっ!!」

「ナマズロス!これ以上の破壊は止めるんだ!!」

「鯰は大人しく地震予知でもしていろ」

エックスとゼロがナマズロスにバスターを向けるものの、ナマズロスは寧ろエックスとゼロの登場に歓喜するだけである。

「おーっ、初めてのお仲間の客やんか。あ、いかん。嬉しゅうて辛抱たまらんわーっ」

「うあっ!!」

「ぐぁっ!!舐めるなーっ!!」

エックスとゼロに向けて放たれる電撃を辛うじてかわすと、ゼロがチャージショットで反撃するが、こちらもかわされてしまう。

「わほーっ!!ええツッコミやー!!痺れるなぁ~。あ~ほんまに痺れて来たでぇ~!!電圧上がる~!!」

ナマズロスから先程よりも強力な電撃が放たれ、それはゼロに直撃する。

「ぐああああっ!!」

「ゼローーーっ!!」

「鯛は小骨が多くて食うのがたいへんやー」

「うぐあっ!?」

ゼロに駆け寄ろうとするエックスだが、それよりも早く駄洒落と共に繰り出された電撃を受けてしまい、許容量を遥かに超えた電撃を受けたことでエックスとゼロは一時的な機能不全を起こして気絶してしまう。

「いやー乗った乗ったでー。次のツアーはあの世界有数の規模を誇るハリアン発電所や!!まった見に来てやーっ!!絶対やでーっ!!」

宣伝するように言うとナマズロスは何もせずに発電所を去っていく。

敗北はしたものの、発電所は破壊されずに済んだのは幸いである。

そしてケインの研究所にエックスとゼロが運ばれ、メンテナンスを受けたエックスとゼロ。

「おはようエックス、体に異常はない?」

「あ?エイリア…どうしてここに?」

研究所で忙しくしているはずのエイリアがここにいることにエックスは疑問符を浮かべる。

「わしが呼んだんじゃよ。ほんの少しの間だけじゃが、ある物を頼んだのでな」

「ある物?」

「今回の相手は電気を扱うと聞いてね。試作中のだけどラバーコーティングを持ってきたのよ。これなら電気を通さないはず」

「成る程」

そしてエックスはラバーコーティングを施され、体を動かして不便はないか確かめる。

「どう?」

「うん、動かしやすいよ」

「ただ機動力を落とさぬ為に限界の薄さにしたから耐久回数に不安はあるがのう。それからそのコーティングをしとると特殊武器は使えんことになる。バスターだけで勝負にすることになるぞい」

「良いですよ、バスターが使えるだけでも充分です」

「それで俺の分は無いのかエイリア?」

「ごめんなさい、試作中の物だからエックスの分しかないの」

苦笑しながら言うエイリアにゼロは困ったような表情を浮かべる。

「なら俺は待機か?」

「いや、ゼロには恐らく捕らえられているだろう人達を助けてもらいたい。お前の技は大勢の敵を相手にするのに向いておるからのう。」

「仕方ないな、行くぞエックス」

「あ!ゼロ、待ってよ。エイリア、行ってくる…これありがとう」

「ええ、気をつけてエックス…無事に帰ってきて」

エックスとゼロが研究所を飛び出してハリアン発電所に向かい、エイリアはそんな2人の後ろ姿を見つめていた。

「本当に無事に帰ってきて欲しいもんじゃ…(何時まで人の心に付け込むのじゃ…ドップラーよ…)」

そしてエックスとゼロは別行動を取り、エックスはキメラにホバリングローターとミサイルポッドを装備した空戦型のホークに乗ってハリアン発電所に向かっていた。

「街が死んでいる…」

普段は夜でもそれなりの活気があったと言うのに今は見る影もない。

「ドップラーの寄生チップがナマズロスの“スター”への憧れを暴走させなければ…一刻も早くナマズロスの暴走を止めなければ…ん?明かり…それに何か音楽が…あそこはハリアン発電所だが…一体…何が……!?」

アイカメラの機能を最大にして目を凝らすと、思わず瞬きを何度か繰り返し、アイカメラに異常が起きてしまったのかと思ってしまう。

「発電所がクリスマスツリーに!?何を考えているんだ!!?」

夏の季節であるにも関わらずにクリスマスツリーと言う常識外れの行為にエックスは唖然としてしまうが、ナマズロスの姿を発見して真っ白になっていた頭を元に戻す。

「残暑お見舞い申し上げるでぇー!!まだまだ暑いが今日はわいの“笑い”で一時の“涼”を取ってな~!!」

人々の悲痛な叫び声も今のナマズロスには歓声にしか聞こえないらしく、ナマズロスは調子に乗り始める。

「えーでえーで!!みんなノッとるやんか!!ほな、脳味噌ショートするよな奴、バー行くでーっ!!星が欲しー…」

「させるか!!」

ミサイルを放ってナマズロスの放電を妨害し、爆風によってナマズロスが吹き飛ばされる。

「やるのー、打ち合わせなしの大仕掛けやの」

「ナマズロス!いい加減に正気に戻れ!!今すぐ発電所の機能を元に戻すんだ!!」

「何やエックスはんやないかー。エックスはん、アポなし飛び入りかい。わいはーわいはー、ほんまごっつう…嬉しいでぇ~めちゃノリノリやでぇ~っ!!」

「(エイリアとケイン博士を信じるんだ!!)」

電撃がエックスに直撃したことで下に落とされるが、エックスにダメージはない。

「よし、ダメージはない!!イケるぞ!!」

チャージショットを放ち、ナマズロスに直撃させて自分のいる所に落下させる。

「なーんや!落ちネタやったんかい!!」

「ナマズロス!!今度は前のようにはいかない!!正気に戻ってもらうぞ!!」

「狙えるでエックスはん!!世界をっ!!」

「は?」

いきなり指差された挙げ句に訳の分からないことを言われたエックスは再び唖然となる。

「わいの電撃に耐えられる奴を捜しとったんやーっ!!一緒に世界目指すでぇ!!」

「何を訳の分からないことを…俺が目指す“世界”は平和だ!!」

今のナマズロスに何を言っても無駄だと判断したエックスは頭部に衝撃を与えるためにチャージショットをナマズロスに放つ。

「そうやなぁ、名前考えないかんわ。エックスはん、“直流君と交流君”ってのはどーやぁー!!“ワット君やアンペアちゃん”は?“一時・四時”もええなぁ!!」

チャージショットが電撃に砕かれ、電撃はそのままエックスに直撃する。

「くっ!!まだだぁ!!」

反撃のチャージショットを放つが、ナマズロスはある物を取り出そうとする。

「何やエックスはん、ツッコミ早すぎるわ。これ貸したるさかいもっと研究せーや!!わい自慢のドクロ・ハリセンやーっ!!」

不気味なハリセンを取り出し、ナマズロスはそれを構える。

「えーか?こいつは手首のスナップを効かせて使うんやーっ!!」

「何!?チャージショットが叩き落とされた!?」

ビームコーティングでも施されているのか、ハリセンらしき物でチャージショットが叩き落とされたことにエックスは目を見開く。

「これマスターしたら知名度、鰻登りや!!」

「ぐあっ!!」

ハリセンで攻撃され、エックスは思わず後退する。

「こうや!こうや!こう使うんやでぇ~」

「ぐああっ!!」

そして大振りの一撃を喰らってエックスは仰向けに倒れる。

「あかん!気張り過ぎたわぁ~。はぁ~電力充電せんとなぁ…ひーはーふ~」

「え?」

ナマズロスが電力不足でフラフラになりながらある場所に行くと、真上の発電機が起動し、ナマズロスに電気を送る。

「ほほほのほーっ!!ネタが湧いてくるでぇーっ!!マッ感電ミアナッツ!おさ感電なあ!!もうご感電んんんん!!!」

「充電か!?そうはさせるか!!」

ナマズロスにチャージショットを放って妨害しようとするが、チャージショットはナマズロスの全身を覆う高電圧によって弾かれてしまう。

「な!?高電圧のバリア!?なら、電気を送る装置を破壊するしかないが…破壊出来るか…?やるしかない!!」

装置にバスターを向けるが、ナマズロスのハリセン攻撃で全身のコーティングが傷だらけになり、動いたことで破けてしまう。

「まずい!先程のハリセンでコーティングに傷が…今電撃を受けたら耐えられない!!」

「見えるでぇ~っ、わいには見える。2人で世界一のお笑いになる姿が!!これや!“ビッグバン”や!!目標は世界やないわ!分かるかい!!世界やない!太陽系や!銀河や!!いやいや!!もっと大スケールや!宇宙やーっ!!」

ラバーコーティングが破けた状態で充電直後のナマズロスの最大出力の電撃をまともに受けるエックスであった。 

 

第59話:Star

ナマズロスの最大出力の電撃をまともに受けたエックスはそのまま倒れ伏してしまう。

「(また…やられるのか…?コーティングが破られて…バスターも効かない…もう打つ手がない…打つ手が……ない…?いや…本当に…ないのか…?俺は打てる手を全て出したか……?いや!まだ、手は残っている!!その為には!!)」

ボロボロになったコーティングを剥がしてエックスはある特殊武器を選択する。

「ナマズロス!お前は特殊武器で倒す!!」

「色変わるなんてカメレオンやん。止めてーなもう、電圧上げるで。わいも負けられへん!!わいも大ネタのための充電やーっ!!」

再び再充電を行うナマズロスにエックスは特殊武器を発射する。

「トルネードファング!!」

高速で回転するドリルを発射するエックス。

「そんなもんまで出せるんかーっ!!たまらんわー!ごっつう痺れるわ!!」

トルネードファングのドリルは途中で方向を変えて天井に突き刺さる。

「そらいかんわ!!“ツッコミ”はきちんと届かんとな!!…ん?」

充電の電気が急に流れなくなり、ナマズロスが上を見るとドリルが避雷針となって電気を受け止め、吸収していた。

「もうお前に電気は流れない!!俺の放ったトルネードファングがお前に届く前に電流を吸収する!!ナマズロス!!お前の歪んだ憧れを破壊する!!」

バスターを構えてチャージショットを放つ。

チャージショットはナマズロスの頭部を掠り、そのまま天井の発電機を破壊する。

頭部に衝撃を受けたことで電子頭脳に巣食っていたワームが破壊される。

それによりナマズロスは正気に返り、発電機が破壊されたことで見上げることが出来るようになった満月と星が煌めく夜空を見上げた。

「綺麗やな~。まるで宝石箱をひっくり返したみたいやなぁ…」

「ナマズロス、正気に戻ったか」

「エックスはん…わい…何しとったんやろうな…。“スター”はみんなに光を与えないかんかったんや…なのにわいは全く逆のことをしてもうたんや…全く…何やっとんたんやろな…エックスはん…わいを起こしてんか…」

「ああ」

戦闘で疲弊したナマズロスはエックスに支えられながら起き上がる。

「おおきになぁ。」

そしてナマズロスは破壊された発電機のケーブルを掴むと、電気を送り込む。

「わいは発電用レプリロイドやったんや…そんなわいがみんなから電気を奪ったんや…命懸けて償わんとなぁ~」

「止めるんだナマズロス!!万全の状態でも危険なのに戦闘で疲弊した体では…」

止めようとするエックスだが、ナマズロスの決意の表情に手を止める。

「なぁ…エックスはん…わいなぁ…わい…もう一度…やり直したい…わぁ…」

機能停止間近の状態となり、ナマズロスは霞んでいく意識の中で、もしやり直せるならもう一度やり直したいと願う。

その言葉にエックスは涙を流しながらも頷いて笑みを浮かべる。

「ああ…やり直せるさ…きっと…きっとな…」

「おおきになぁ…エックスはん…エックスはんには…ほんまに迷惑かけてもうたわ…わいを止めてくれて…おおきにな…もし…やり直せたら…今度は…わいがエックスはんを助けたる…か…ら…な…」

ナマズロスが全ての電力を注ぎ込んだことで闇に閉ざされていた街に光が戻り、本来の姿を取り戻したのであった。

「エックス!街に光が戻ったと言うことはナマズロスは…?」

「ナマズロスは自分を取り戻して…自分の役目を果たしたんだ…ゼロ…ナマズロスを研究所に連れて帰ってもいいかな?」

機能停止したナマズロスを見つめながらエックスはゼロに尋ねる。

本来ならこれ程のことをやらかしたナマズロスは処分されるべきだろう。

しかし、身を賭して償ったのもまた事実。

ゼロは無言でエックスの背を押すと、2人でナマズロスを研究所に運ぶのであった。

それから数日後、ケインの手によって奇跡的に助かったナマズロス。

しかし暴走中に無理な電気の使い方をした為に完全に直るまでは時間がかかるとのことだった。

エックスは自室に戻るとエイリアに通信を繋いだ。

「エイリア、ナマズロスを止められたよ。ラバーコーティング…ありがとう。あれが無かったらナマズロスは止められなかった。」

『そう、あなたの役に立てたなら良かったわ。私は前のようにオペレートは出来ないけれど、あなたの無事を祈ってるから…』

「ありがとう…君には何時もお世話になりっぱなしだ。今度お礼に何か用意するよ」

エイリアの言葉にエックスは感謝しながら答えると、普段から心配をかけ、お世話になっていることからお礼をしたいと言う。

しかしエックス同様に物欲があまりないのはエイリアも同じなので、これには少し頭を悩ませる。

エックスの性格上、気にしなくてもいいと言っても聞かないのは分かっているからだ。

『うーん、そうねえ…あ、そうだわ。この事件での戦闘データを私に送ってもらえる?そして強化アーマーを手に入れたらデータのバックアップをして私に送って来て。それでいいわ』

「…それでいいのかい?」

戦闘データとまだ手に入れていない強化アーマーのバックアップデータが望まれていることにエックスは疑問符を浮かべる。

『あなたね…自分の存在を考えた方が良いわよ?あなたはあの天才科学者のトーマス・ライトの遺作なのよ?そんなあなたの戦闘データや強化アーマーのデータが私達科学者からすればどれだけの価値があるのか…』

「わ、分かったよ…後でケイン博士に頼んで戦闘データを送るから」

このままでは説教になりそうなので慌てて話を変える。

それにエイリアは呆れながらも笑ってしまう。

『もう…とにかくエックス…気をつけて…何度も言うけど、私はあなたの無事を祈ってるから…頑張って』

「うん、ありがとうエイリア」

通信を切ると、まずは自室に向かい出すエックス。

そしてエックスの後ろ姿を見つめる第17精鋭部隊の部下達。

「はああ、良いなあエックス隊長…彼女持ちで」

「いや、エックス隊長とエイリアさんはお付き合いはしてないそうだぞ…まあ、時間の問題だろうが…」

「だよなあ…それにしてもエックス隊長は俺達に指示を飛ばす余裕ねえよな…」

「第17部隊には副隊長がいないからな…ルインがいれば副隊長だったろうがいないしな。それに副隊長の代理になりそうなビートブードは行方不明だし…しばらくは独自で動くしかないだろ…今頃あいつはどうしてんのやら」

今はいない数少ない特A級ハンターであるビートブードの姿を思い出した隊員が思わずぼやく。

「あれ?そう言えばビートブードがいなくなったのって…ゼロ隊長が戻ってきてしばらくしてからじゃなかったか?」

「ん?…確かにそうだな…」

ゼロが戻ってきてからビートブードは姿を眩ましたことに隊員は不安を抱くのであった。 

 

第60話:Remain

ナマズロスの騒動からしばらくして、水が無くなると言う異常事態が発生した。

収穫の時を待っていた作物は全て枯れ果て、街は熱気と乾燥に包まれて生気を失っていた。

生き物は水と涼を求めてさ迷うが、死に絶える者も出始めた。

しかし唯一の例外があった。

それはモナークダムと言う世界最大の規模を誇る巨大ダムであり、本来下流に送られるはずの水がここに塞き止められていた。

そしてエックスとゼロは現在、モナークダムの上流を泳いで移動していた。

「今回のこともドップラーの手下の仕業だろうけど、何時にも増して残酷な手口だ」

しばらく泳ぐと水門に差し掛かる。

「水門だ」

「流石に厚いな」

「穴を開ける。そこから入るぞ」

アースクラッシュで水門に風穴を開けると、エックスとゼロは奥に進む。

「こんなこと…絶対に許しはしない……ん?これは…」

「ほう」

エックスとゼロが進んだ先には珍しい物があった。

「ちょっとしたタイムトラベルだね…1990年代の街並みだ。」

「ああ」

「ライト博士が生まれる前の物なのかな?俺、初めて見たよ」

「それとも田舎だったかのどちらかだろうな…まあ、それはそうだろう。この街を保存しておく理由もないし、作り直すよりも沈めた方が楽だからだろうな」

「でも正直勿体無い気もするんだよね。温故知新とも言うし、昔の人々がどのような生活を送っていたかを今の時代の人々に教えると言う意味でも俺は残しておくべきだと……!!?」

突如背後から頭を鷲掴みされたエックス。

「エックス!!」

ゼロがセイバーで腕を両断するが、腕は水に溶けるように消えていく。

「何なんだこいつは…?エックス、大丈夫か!?」

「う、うん…遺跡に気を取られ過ぎていたね。ここは敵のフィールドなんだ…奇襲されてもおかしくは…うわあっ!?」

背後から忍び寄っていた敵が尻尾をエックスの足に絡ませると、そのまま引き摺る。

「エックス!!凄い泥だが、見失ってたまるか…」

泥で視界が悪くなるが、アイカメラのセンサーでエックスの熱源を発見し、そこにセイバーを投げる。

「ゼロ!!」

「そいつに捕まれ!!」

セイバーの柄を握って、足に絡み付く尻尾を振り払う。

「大丈夫か?」

「うん、何度もありがとう…」

「奴め、何処に潜んでやがる…水中では完全な奇襲を行うのは不可能に近いと言うのに…」

レプリロイドは機械であるために水中で冷やされないように常に温度調整が行われるので水中での奇襲はほぼ不可能に近い。

「油断出来ないな…」

横から飛び出した尻尾で殴り飛ばされたエックスは家の中に飛び込んでしまう。

「自分で言っていてそれか?しっかりしろ……っ!?」

尻尾で足を掬われたゼロも家に飛び込む羽目になる。

「しまった!!くそ、人のこと言えないな…」

「ゼロ!!向こうの家にいる!!」

エックスが指差した先には奇襲をかけた者のだと思わしきレプリロイドがいた。

移動して家中を捜すエックスとゼロだが、敵は見当たらない。

「くそっ、奴め…何処に行った?こっちの部屋か…?」

「また水に溶け込んだかもしれない…」

「一体…何処に…ぐあっ!?」

「ゼロ!?」

突如左肩に激痛が走り、ゼロは左肩を見遣ると左肩のアーマーが溶解していた。

「これはバブルスプラッシュと同じ強酸だ…」

「突然穴が開いたということは奴は外か!!行くぞエックス!!」

「ああっ!!」

家を飛び出して追い掛けるエックスとゼロ。

舞い上がる泥によって敵が進んだ場所が分かるのは幸いで、辿り着いたのは旧世代の学校であった。

「これは旧世代のスクールか…」

「ここいらでかくれんぼは終わりにしたいものだな」

『君達に忠告しよう。このまま帰れば私は一切の手出しはしないでおこう。しかし君らが無粋な戦いをするのなら私は一切の容赦はしな…』

ゼロはバスターを構えてスピーカーをショットで破壊する。

「容赦をしてもらうつもりはない」

『戦いを求める愚民めが…私の聖地を汚すと言うのか』

別のスピーカーから声が流されるが、ゼロは忌々しげに見上げる。

「愚民ときたか、卑怯者の癖に」

『この時の止まった静寂の地に…戦いを招く無粋な者めら。あくまで退かぬと言うのなら…』

水とは違う液体が集まり、形を作っていく。

「このアシッド・シーフォースが、この悠久の水底に君達の無駄口を沈めてあげよう!!」

タツノオトシゴを彷彿とさせる容姿を持つレプリロイドの姿となった。

「液体が…まさか奴のボディは液体金属なのか!?」

「なら、液状化する前に叩き斬るだけだ!!」

水の浮力を利用した跳躍でシーフォースとの距離を詰めてセイバーを振り下ろす。

それによってシーフォースは縦に真っ二つにされたものの。

「そんな攻撃では私は倒せませんよ」

真っ二つにされた体はくっついて元通りになる。

「私のボディは液体金属…あらゆる攻撃を無力化します。力で全てを捩じ伏せようとする下品な思考…そんな心の持ち主に私は倒せません。それ以前に私は既に死んでいるのですから…無意味な戦いを挑んだことを後悔なさい!!」

ゼロに向かって酸弾を発射するシーフォース。

「みんなの生活を取り戻す戦いが無意味だとは思わない!!何の理由があるのかは知らないが…こんな残酷なことをするお前は許さない!!」

エックスはショットで酸弾を相殺し、バスターやセイバーが効かないのならと、回し蹴りをシーフォースに叩き込む。

しかしシーフォースは液状化することで衝撃を無力化し、腕を固体化させると頭を鷲掴んで下に叩き落とす。

教室に落とされたエックスは何とかシーフォースから逃れる。

しかしシーフォースが再び酸弾を放ってきた。

「くそっ、ええい!!」

机で酸弾を防ぐが、立て続けに放たれる酸弾にエックスは机を手放して回避に徹した。

「エックス!!大丈夫か!?」

「ああ、何とか…でもこのままじゃ…」

「ああ、何とか奴が水に溶け込むのを防がないとな…」

「それだけじゃ駄目だ。奴の液体金属の特性を活かした液状化をどうにか……ん?」

そう言えば、以前液体金属の話をルインとして、こんな会話をしたことがある。

『液体金属は冷気に弱いそうだよ。液体である金属を固体・液体化させるために特別性のコントロールユニットを使ってるせいで急激な温度の変化に弱いみたいだね。まあ、元々液体だからなのもあるんだろうけどさ』

「(ならばあいつを固めればいい。まずはこの水をどうにかしなければならない。)」

「くそ、奴はすぐ横にいるかもしれんのか」

「ゼロ、1つ策があるんだ。このダムの水を…最低でも膝下くらいまで一気に抜きたい…アースクラッシュで水門に大きな穴を開けて欲しい」

「策があるなら試してみるか。このままでは奴は倒せんからな…少し荒っぽいがな…ダブルアースクラッシュ!!」

両腕にエネルギーを収束させ、両拳を地面に叩きつけると2つの衝撃波が水門に向かっていき、そのまま水門に大きな風穴を開けた。

それにより水門によって塞き止められていた水が一気に流れていく。

エックスとゼロは流されないように近くの鉄棒に捕まっており、水の流れが治まると、シーフォースの姿を発見した。

「よくも…私の…私達の…聖地を…台無しにしてくれたなぁーっ!!」

怒りを露にするシーフォースに対してダブルアースクラッシュの反動でふらついているゼロを支えながらエックスはある特殊武器を選択する。

「…………」

「君達の浅知恵のせいで私達の心は深く傷つけられた…その罪は君達の“死”で償ってもらう!!」

シーフォース液状化すると膝下の水に紛れようとする。

「さあ、姿が見えない私からの攻撃で死の瞬間まで恐怖するがいい!!」

「くそ!水は完全には引かないのかっ!!」

「いや!これでいい!!俺達の浅知恵はまだ終わってはいない!!フロストシールド!!」

氷弾を連続で発射してシーフォースがいた場所の周囲に着弾させて撒菱を展開する。

「それはバッファリオのフロストシールドか?そうか、ブービートラップか!!フロストシールドの隙間から抜け出ようと奴がフロストシールドに触れた瞬間に…」

液体金属が冷気に冷やされたことで固体化し、シーフォースの液状化が解除されてしまう。

「か、体が凍っていく!?」

「終わりだ!!」

チャージショットを放って頭部に掠らせると、電子頭脳に巣食っていたワームが破壊された。

チャージショットの衝撃で氷が砕かれるのと同時に液状化をするシーフォース。

「何?逃げられるのか!?」

「頭部を強打したのにまだ動けるのか!?でも、メインプログラムとコントロールユニットに異常があるようだ…水に同化出来ていない…」

液状化した金属は水に浮かんだまま、何処かへと向かっていく。

「とにかく追うぞ!!」

「あ、ああ…(シーフォースを突き動かしているのは一体何なんだ…?無理をした再起動出来なくなる状態なのに…)」

液体金属のレプリロイドは普通のレプリロイドよりもずっと繊細なために無理な運用をすると再起動が出来なくなるのだ。

シーフォースを追い掛けると、巨木の前に出た。

「ダムの底にこんな巨木があったのか…?」

「奴はあの上か…」

「あの上に何が…」

壁蹴りで巨木の上に登ると、水草が足場となっていた。

「木の上は水草で出来た草原なのか」

足場になるほどに生い茂った水草に年月の経過を感じるエックスだが、シーフォースを発見したゼロが叫ぶ。

「エックス!!シーフォースがいたぞ!…ん?奴の行く先にあるのは?」

「え?あれは…」

シーフォースが向かう先には機能停止した女性型レプリロイド。

彼女の体を抱き締めると液状化を始めた。

「シーフォース!!その状態でそんなことをしたらメインプログラムが復帰不可能になるぞ!!」

止めようと駆け出すエックスだが、ゼロに肩を掴まれて止められる。

「ゼロ!?」

「帰投するぞ」

「シーフォースはどうするんだ?」

「これ以上は無粋だろう。それにダムを占拠していたあいつはもういない。ここにいても時間の無駄だ」

「…………」

エックスは思い出していた。

シーフォースがこの遺跡を“聖地”と言っていたことを。

“自分は既に死んでいる”と言ったことを…。

しかしその言葉の本当に意味することはもう知る由もなかった。

…その後、再びダムは本来の機能を取り戻し、遺跡は静かな眠りについた。

そして誰も知らない…。

メタルリキッドに抱かれたレプリロイドが優しく佇んでいるのを…。 

 

第61話:Revenge

エックスは夢を見ていた。

これは最初のシグマの反乱が終わり、エックスが第17精鋭部隊の隊長に就任して数ヶ月後位の時だ。

エックスはシグマの部屋であった隊長室のデスクで休憩をしながらある物を見つめていた。

それはかつての同僚であるブーメル・クワンガーのDNAデータであった。

じっとそれを見つめていたエックスはそれを握り締めて彼のいる場所に向かう。

『やあ、ビートブード…』

最近ハンターベースの屋上にいることが多いらしいビートブードの元に足を運んだ。

そう、ビートブードはこのクワンガーのDNAデータのプログラムの基本構造が同じ…つまり兄弟なのだ。

シグマの反乱の際にクワンガーとは違って反乱に加わらなかったことでビートブードは監視が付きながらもハンターとしてやっている。

『あ、エックス…隊長…』

『今は隊長と言わなくて良いよ…今回は個人的なことだから…それにハンター歴は君の方が長いだろう?』

『そうか、じゃあ言葉に甘えて……今更だけど隊長就任おめでとうエックス。遅くなって悪かったな…中々監視が厳しくて自由に動けなくて個人で言う時間が取れなかった』

『いや、良いよ…正直…こんな地位よりも欲しくて…大切なものが…いない』

『………エックス、でもルインと…ゼロは反乱での功績で特別に復活が認められてるんだろ?なら、何時か戻ってくるさ』

『ありがとう…君に会いたかったのはこれを君に渡すためだ』

エックスがそっと差し出した物にビートブードは目を見開いた。

『!?これは兄貴のDNAデータ!?』

『ブーメランカッターのデータは武器チップにインストールして保管しているから…このデータを何時までも俺が持っているのもどうかと思って』

エックスはバスターの端子にDNAデータを組み込み、そのデータをバスター内の予備の武器チップにインストールすることで特殊武器の使用が出来るようになる。

つまりブーメランカッターのデータをインプットした武器チップがある時点でエックスがこのDNAデータを持っていても意味がないのだ。

『貰っていても良かったのに…その武器チップが破壊された時とかの為に…』

しかし万が一と言うこともあり、その保管している武器チップが破壊された場合は二度とブーメランカッターが使えなくなると言うことも有り得るのだが、エックスは首を横に振る。

『DNAデータは…レプリロイドにとって頭脳チップと同じくらい大切な物だ。それを他人の俺が持っていていいはずがない』

『そうか…ん?それはルインの…エックスが使ってるって本当だったんだな…』

『うん…我ながら女々しいと思うけどね…』

腰にあるルインの武器に触れて悲しげに微笑む。

『なあ、エックス…例外以外でのレプリロイド再生を禁じる法律が無かったら…なんて思ったことないか?』

『あるよ…出来ることなら…みんなに生きていて欲しかった…』

『そうか…そうだよな…』

苦笑しながらビートブードはDNAデータを握り潰す。

『……良いのか?』

『良いんだ…エックスが不要なら本当に使い道がないからな…』

そうして背中を向けるビートブードにエックスは声をかけられずに静かに屋上を後にした。

「ん…夢…か…?」

エックスは目を覚ますと周囲を見渡す。

エックスは甲虫型の戦艦空母であるビッグ・ビートルにゼロと共に乗り込んだのだが、いきなりに闇に吸い込まれて意識を失って現在に至る。

「ここは…空母の中か?とにかくゼロと合流しなければならないんだが…拘束されているようだし…」

両手両足を拘束されて身動きが取れないエックスに声がかかる。

「お目覚めですかエックス隊長?」

聞こえてきた声は久しぶりに聞くものであった。

「この声は…?君はゼロが戻ってきてから行方不明になっていたビートブードじゃないか!!ゼロに何をしているんだ!?」

ゼロは拘束された状態で頭を開かれ、電子頭脳が露の状態にされていた。

電子頭脳にはコンピューターから伸びる複数のケーブルが繋がっている。

「見て分かりませんかエックス隊長?このコンピューターには兄貴の性格プログラムがインプットされているんです。俺は兄貴を復活させる…ゼロのボディを使って!!」

「クワンガーの復活だと…?それをゼロのボディで!?止めろビートブード!!そんなことをしてもクワンガーが戻ってくる訳じゃ…」

「黙れぇ!!兄貴を殺したゼロが戻ってこれて…兄貴が戻ってこれないなんてあってたまるかあっ!!ゼロが死んでいた時はまだ我慢出来た!!兄貴を殺した奴がいないなら恨んでも仕方がないって…それなのに前の戦いで何事もないかのように戻ってきて間を置かずに隊長に就任して華々しい活躍をしている…これを恨まずにいられるかあっ!!」

ゼロがカウンターハンター事件から戻ってきてからずっと抑えていた憎しみが吐き出され、エックスは思わず閉口してしまう。

「…はあ…はあ…エックス隊長…取り引きをしましょう。あんたには色々便宜を図ってもらったから、出来れば殺したくない…兄貴の復活を見逃してくれれば俺はハンターベースやシティ・アーベルには手を出さない。だが、あんたが俺と戦うのなら俺はあんたを殺してシティ・アーベルを破壊する」

「その選択肢なら答えは1つ…ビートブード…君を止めて…ゼロを助ける!!それだけだ!!」

何とか強引に拘束を破ってエックスはビートブードと相対する。

「そうか…後悔するなよエックス!!バグホール!!」

「バグホール…こいつは確か…」

「そう!!俺は兄貴と違って機動性能は低いがそれを補って有り余るパワーとブラックホールを操る力があるんだ!!」

放たれたバグホールのブラックホールは着弾地点の物質を吸収して消滅する。

「く…っ!!」

「俺がハンター時代に能力の使用をマンドリラー以上に制限が課せられていた理由を思い出したか?それからバグホールにはこういう使い方もあるんだ」

複数のバグホールを展開し、そこに勢い良く腕を突き出すと…。

「ぐあっ!?」

突如、何もない空間からビートブードの腕が飛び出してエックスの横面に突き刺さる。

「バグホールは空間同士を繋ぐワープホールを作り出すことが出来る。さっきのように遠距離から対象を殴り飛ばすことも出来るのさ!!うおおおおおっ!!!」

ビートブードが連続でワープホールに拳を振るい、エックスを遠距離からあらゆる角度で何度も殴り付ける。

「ぐああああ…!!(つ、強い…能力が使える状態ならハンター最強格の1人かもしれない…!!)」

「どうしたエックス!?このまま殴られて終わりか!?俺の知ってるお前はそんなんじゃなかったぜ!!」

「っ!!まだまだ!!」

ビートブードの拳がワープホールを経由して飛び出すには僅かなタイムラグがある。

何とか攻撃を耐えてダッシュでビートブードに接近しようとする。

「(ビートブードはパワー型のレプリロイドで機動力はそんなに高くない…だからこうやって距離を詰めれば)」

「かわせないと思ったら大間違いだ」

足元にワープホールを出現させて別の場所に移動するとエックスに小型のバグホールを連射する。

「っ!!」

「さあ!!このブラックホールの弾幕をどうかわす!?」

一発でも当たれば当たった部位が持っていかれる為にエックスはそれを必死にかわす。

「(これを受けるわけにはいかない。まともに受けてしまえば簡単に戦闘不能にされてしまう!!)」

「ふん、まるで独楽鼠のようだな。このまま逃げていても俺は倒せないぞ」

「(思い出せ!!バグホールの性質は闇…ビートブードの弱点…ビートブードの属性とは真逆のこれなら…!!)レイスプラッシャー!!」

タイガードの武器を選択し、バスターから光のエネルギー弾を連射する。

「何!?タイガードの武器だと!?」

光のエネルギーとブラックホールのエネルギーはほぼ同等だったのか相殺され、残りの弾はビートブードに直撃する。

しかもそのうちの一発は顔面に直撃したのか、あまりの光量にビートブードはアイカメラのダメージに耐えられずに目を押さえて悶える。

「ぐあっ!?目が!!目がああああっ!!!?」

「ビートブード!!お前をドップラーから解放してやる!!いけえっ!!」

悶えているビートブードにチャージショットが放たれ、それは頭部に掠る。

それにより、頭部に寄生していたワームが破壊される。

ワームが破壊されたことでビートブードは倒れるのと同時に正気を取り戻してこちらに駆け寄ってくるエックスを見上げる。

「エックス……」

「ビートブード…」

「兄貴のことは…ケリを着けたつもりだったんだ…でも、やっぱりゼロのことは心の何処かで許せなかったんだろうな…頭では分かっていたんだ。悪いのは兄貴だ…ゼロじゃないって…けど、レプリロイドの持つ“心”がそれを認めなかったんだ…そんな気持ちを抱えていた時にドップラーにドッペルタウンに招待され、ドップラーに言われたんだ。“心に従えばいい”と…そしてワームによって俺の心の底に封じていた憎しみは解放された…なあ、エックス…俺達レプリロイドはどうして“心”を持ってるんだろうな…メカニロイドのようなプログラムだけで動くならこんな気持ちを抱えずに済んだのに…」

「ビートブード…」

今まで心の底に封じ込めていた気持ちを吐露するビートブードにエックスは何も言えない。

「さあ、エックス…撃ってくれ…俺はイレギュラーだ…お前はイレギュラーハンターとしての責務を果たしてくれ……」

エックスはバスターをビートブードに向けるが、少し考えた末にバスターを元の腕に戻す。

「エックス…?」

「君を操っていた原因は破壊した。君は破壊する理由はない…それに…俺達には君が必要なんだ。」

屈んでビートブードに手を差し出すエックス。

「俺が…?」

「第17部隊のみんなが君を必要としている。行方不明になった君の帰りを待っていてくれる人もいるんだ。だから生きてくれ…君を必要としてくれているみんなの為にも」

その言葉にビートブードは腕で顔を隠すと掠れた声で言う。

「こんな状態でお前の優しさは…反則だぜ…エックス…」

エックスの差し出した手を掴むと、ビートブードは降伏して連行されていった。

ゼロも解放され、メンテナンスルームで修理を受けていた。

「ゼロ…大丈夫か?」

「ああ、しかしクワンガーの性格プログラムがあったのならエックスが目覚める前にやれば簡単だったはずだ…それなのにやらなかったのは…あいつ自身…あのチップに支配されながらも迷っていたのかもな…あいつの最後の良心に俺は救われた訳だ」

「ゼロ…」

「俺達は相手を憎むことが出来る。そして尊敬し、友情を抱くことも…俺達レプリロイドは心があるからな…お前達の甘さが移ったのかもしれないが…そんな自分が少し好きになってきた…心があるからこそ俺達は会えたんだ」

「うん、そうだね…(だよな、ルイン…)」

エックスとゼロもこの場にはいない彼女を思いながら穏やかな一時を過ごすのであった。 

 

第62話:Funeral

ドップラー軍の猛攻によっていくつかの都市はその機能を失っていた。

しかし突如モニターが映像を映したことで人々はそれに注目する。

『エックス、ゼロよ。我々のパーティーへ招待したい。恐らくこれが最後のパーティーだろう。何故ならこのパーティーが君らの“葬式”なのだから!座標データを今から表示しよう。待っているぞ…デス・ドッペルタウンでな!!』

そして数時間後に表示された座標の元に向かったエックス達が見たのはとても禍々しい街並みと、壊滅した防衛軍の姿だった。

「防衛軍も全勢力を投入したようだが…」

「壊滅で生き残りはいない…か…どうして俺達が来るまで待てなかったんだ…!!」

あまりの惨状に思わずエックスは呻く。

「嘆いている暇はないぞエックス。早く奴らの元に行くぞ」

「ああ」

デス・ドッペルタウンに突入し、パーティー会場へ向かうエックスとゼロ。

案内板と壁に矢印の標識があり、エックス達は迷うことなく会場に辿り着いた。

「ここがパーティー会場か」

「入ろう」

扉を開けると視界に赤一色の壁と文字のレリーフが入った。

「D・E・A・T・H」

「“死”…か…赤一色の壁にチープなレリーフ…人を招待する部屋ではないな」

「くそ!!馬鹿にして…っ!!」

レリーフを殴り付けるエックスだが、レリーフはワームだったようだ。

「レリーフは“ワーム”だったのか!?くそっ!!」

飛び付いてきたワームを振り払うと、ゼロはバスターで破壊する。

「ぞろぞろと!!粉々にしてやる!!」

エックスもバスターでワームを砕き始めたが、背後に集まったワームが人型の形となると、ビームサーベルをエックスの首に向ける。

「これで一回死んだなエックス…あっさりとパーティーを終わらせないでもらいたいな」

「ヴァジュリーラ!?この化け物め!!」

ゼロの背後にいたワームも形を作り、ゼロの背後に立つと振り返ったゼロを殴り飛ばす。

「ぐわっ!!」

「よくも私の分のワームを砕いてくれたな。おかげでまだ本調子にならんわ」

起き上がったゼロが見たのはワームを砕かれて体の構成が不充分になり、頭からワームを蠢かせているマンダレーラBBの姿であった。

「う…ぐ…う…うああああっ!!!」

あまりの不気味さにゼロは思わず後退するが、正気を失って殴りかかる。

人はあまりの恐ろしさに我を忘れて行動してしまうこともあるが、このゼロの攻撃もそうなのだろう。

しかしそんな大振りの一撃がマンダレーラBBに当たるはずもなく、弾かれて手刀を叩き込まれて床に叩き付けられる。

「フッ、自分の技を見失ったか」

「ゼロ!!」

「敵に背を向けて走り出すとは…愚かなり!!」

盾から放たれたエネルギー弾がリング状になってエックスの足を拘束して転倒させる。

「ぐっ…」

「いけないな、目先の感情に流されていては」

エックスの首の近くにサーベルを突き刺すヴァジュリーラFFにエックスは何とか足の拘束を解いてヴァジュリーラFFにショットを放った。

「その余裕を撃ち砕いてやる!!」

「その意気でやってこい!!」

至近距離からのショットをかわすと、エックスから距離を取るヴァジュリーラFF。

「一度は退いた癖に!!」

即座にチャージしてヴァジュリーラFFにチャージショットを放つ。

「確かにその執念とも言える“力”の前に一度は退いた。しかしそれは確実な勝利の為である。その為に我々は強化された!!我々に二度目の撤退はない!!」

「馬鹿な…!?」

チャージショットが素手で叩き落とされたことにエックスは驚愕する。

レプリカとは言え強化アーマーで強化されたチャージショットが全く通用しない。

「落ち着けエックス!バスターが効かない敵だって倒してきたんだ!!無敵な存在などいない!!」

「小っ…賢しい!!」

ゼロに拳を振り下ろすマンダレーラBB。

「いいかエックス!!防御力を上げたならそれ相応に装甲も厚くなっているはず!!つまりスピードが以前より落ちて、そこに隙が生まれる!!」

ゼロの言葉通り、装甲が以前より厚くなっているために以前より機動力が損なっている。

攻撃をかわすとゼロはバスターを構えてマンダレーラBBにショットを連射して直撃させる。

「ぬうっ、小っ癪な~!!」

「はあっ!!」

エックスにサーベルを振り下ろそうとするヴァジュリーラFFだが、エックスは冷静にそれを回避すると背後を取る。

「(落ち着いて奴の動きを見れば確かにかわせる。どれだけ攻撃力が上がろうが、当たらなければどんな攻撃にま劣る!!)俺達は絶対に負けられない!!」

チャージショットでは回避されてしまうために通常のショットを連射する。

ヴァジュリーラFFはサーベルでそれらを弾いていくが、弾き切れずに直撃を受ける。

「くっ!!…ふむ…面白い…そうでなくてはなぁ!!」

再び拘束弾を発射してエックスの動きを封じると、そのままエックスにサーベルによる斬擊を見舞う。

「ぐあっ!!」

「しかし、どれだけ戦い方を変えても実力差は簡単には埋まらない!!」

そしてマンダレーラBBに連続で攻撃していたゼロだが、肩から球体のような物が射出される。

「ふん、お手玉か……なっ?」

突如体がマンダレーラBBへと引き寄せられるゼロ。

「相手に追い付けないなら引き寄せるまで」

「成る程、そいつは磁力弾か!!ならば!!」

磁力弾をショットで破壊するが、既に手遅れであった。

「もう間合いに入っておるわ!!!」

顔面にマンダレーラBBの拳が突き刺さり、ゼロは吹き飛ばされ、エックスもヴァジュリーラFFに吹き飛ばされてしまう。

おまけにエックスはセカンドアーマーが大破してしまい、攻撃力と防御力が大幅に低下した。

「くっ…アーマー…が…」

「御託は完璧な程、虚しいものだな」

倒れるエックスとゼロはボロボロだが、まだ切り札が残っていた。

「ゼロ…あれを…」

「ああ…あれで…決める…か…」

ふらつきながらも立ち上がり、エックスとゼロは全エネルギーを解放する。

「何をするんだ?うん?」

「何なのかは…」

「今見せてやる!!」

全てのエネルギーを込めたチャージショットとアースクラッシュを同時に繰り出し、アースクラッシュのエネルギーがチャージショットに吸収されて強大な一撃となってヴァジュリーラFFとマンダレーラBBに迫る。

「な…に?」

そしてその一撃は見事に直撃し、背後の壁を跡形もなく粉砕した。

「あいつらの敗因は慢心だったな…」

「うん…俺達を何時でも倒せると言う油断だったんだ…あいつらの言う通り、実力には差があったんだ…しかし…」

「成る程な…それは勉強になる…」

爆煙が晴れるとシグマを倒した一撃であったにも関わらずにダメージを受けていないヴァジュリーラFFとマンダレーラBBの姿があった。

「なっ!?」

「あの攻撃で無傷だと!?」

「貴様らのレベルでドップラー様の科学を考えたな!!愚かな奴らだ!!」

先程の一撃で全てのエネルギーを出し切ったエックスとゼロはもう満足な反撃も出来なかった。

エックスは全身を斬り刻まれ、ゼロは全身を滅多打ちにされた。

そしてふらついたところをエックスはサーベルで肩口から斬りこまれた傷が背中まで達して大出血。

ゼロもまた、マンダレーラによって胸部装甲を砕かれ、肋骨のような内部フレームが露出するほどのダメージを負う。

最早気力だけではどうにもならないダメージにエックスとゼロは力なく倒れ、ヴァジュリーラFFとマンダレーラBBに捕縛され、そしてエックスとゼロを磔にすると、この光景の映像を人類に見せつける。

「人類諸君よ!これよりパーティーの第二幕の中継を始めよう。まずオードブルは君達の英雄の今の姿からだ。中々いい格好だろう?それではお待ちかねの第二幕の宣伝をしよう。第二幕はこの英雄達の公開処刑を演目とする!開演は12時間後の午前6時!場所はDポイントのデス・ドッペルタウン!!皆さんのお越しをお待ちしている!!」

それだけ言うとヴァジュリーラFFは映像を切り、世界が絶望に満たされていく中、ある場所で奇跡が起きようとしていた。 

 

第63話:Rebirth

VAVAとの死闘で大破したルインの魂は不思議な空間を漂っていた。

あの戦いで受けたダメージによってボディだけではなく魂の損傷も激しく、ダメージを癒すためにルインの意識は眠ったままである。

「起きろーーーっ!!!!」

「ふにゃあ!?」

しかし、その眠りは横から飛んできた現実の世界なら確実に近所迷惑クラスの怒声によって終わりを告げた。

隣にはかつて自分をこの世界に転生させた女神と。

「女神殿、ルインはまだ回復していないのですぞ…?少し乱暴では?」

完全に回復していないルインを強引に叩き起こした女神に流石のライト博士も呆れ顔だ。

「め、女神様!?それにライト博士まで…何でここにいるの!?」

女神だけならまだしも何故ライト博士がいるのかさっぱり分からず、ルインは混乱してしまう。

どうやらこの空間では前世の記憶は復活するらしい。

「そりゃあ、この世界の重要人物だし、君のことを知ってくれている人がいれば色々とやりやすいでしょ?ライト博士は現時点では亡くなっているから、絶好の相手だと思わない?」

「な、成る程…」

確かにライト博士は100年前の人間で既に故人だから協力を得られれば心強い。

「でも、私はVAVAとの戦いで死んじゃいましたし」

「壊れたボディは私とライト博士が直すから全然問題なしだよ。これから滅茶苦茶に苦労するであろうルインちゃんにプレゼントがあったりする」

「プレゼント…ですか?」

「ふふふ…おいで、電子の妖精ちゃん!!」

女神がパチンと指を鳴らすと、現れたのはロックマンゼロ4に登場するサイバーエルフの幼体である。

「サイバーエルフだ!!しかも赤ちゃん!!可愛い…」

[ミ…ミミ…]

体を擦り寄せてくるサイバーエルフの可愛らしい姿にルインの動力炉があった部分が跳ね上がる。

「この子の性能は基本的にロックマンゼロ4のサイバーエルフと同じ。エネルゲン水晶や食べ物をあげれば育つよ。ただエネルギーを使い果たすと赤ちゃんに戻っちゃうから気をつけてね。」

「はい」

「ルイン、この子の名前はどうするかね?」

ルインの腕にいるサイバーエルフを優しく見つめながらライト博士が尋ねてくる。

「えと…名前かあ……」

[ミ?]

「う~ん。簡単には決められないし…向こうでエックス達と再会したら一緒に決めます!!ところで私が死んでからどれだけ経ちましたか?」

「あ、完璧な女神である私ともあろうものがすっかり忘れていたよ。ただいま、ドップラー博士の反乱の真っ最中で、エックス君とゼロ君がヴァジュリーラFFとマンダレーラBBの超濃いコンビに負けて、今はクリスマス☆エグゼキューション中」

「は?クリスマス…?」

女神の説明に疑問符を浮かべるルイン。

それを見て、ライト博士は頭を抱えそうになる。

「女神殿、もう少し真面目に説明して頂けませんかな…?ドップラーと呼ばれるレプリロイドが造り出した戦闘型レプリロイドのナイトメアポリスのヴァジュリーラFFとマンダレーラBBにエックスとゼロが敗れ、今から約10時間後にエックス達が処刑されてしまうのじゃ」

「な、何ですって!?エックス達が負けて処刑される!?」

「私達が君の元に来たのはそういう訳なの、君の魂はまだ完全に回復仕切っていないけど、このままだと2人が死んでしまう。病み上がりで回復仕切っていない君を戦場に送り返すのは心苦しいんだけどね…」

女神の言葉にルインは力強い目で女神を見つめながら口を開く。

「全然へっちゃらです。エックス達は私が死んだ後も滅茶苦茶頑張ったんですよ?私だって頑張らないとエックス達に申し訳ないです」

「ルイン…ありがとう…エックスを…私の息子を頼んだよ…」

「任せて下さい!!」

「そうそう、ルインちゃんにもう1つプレゼントがあるんだよ」

女神はルインに手を翳すと、ルインの体が蒼い光に包まれる。

「これは…?」

「病み上がりの君を送り出す訳だし…せめてこれくらいはね。新しいアーマーを与えるよ。エックス君の力を持つアーマー…Xアーマーをね」

光が消えるとルインはまるでエックスを彷彿とさせる蒼いアーマーを纏っていた。

「Xアーマー…ですか」

「基本的な運用法はZXアーマーと変わらないよ、でも武器はXバスターのみ、このアーマーの最大の特徴はダブルチャージ!!フルチャージショットを二発放てるようになるの、エックス君が使っていたセカンドアーマーのアームパーツの欠点である地面では接地していないと発射出来ないのを解消した優れもの!!最後のアーマーのOXアーマーはお楽しみってことで」

「そ、そうですか…」

「では、ルイン。今は一刻を争う。急ごう」

「はい!!」

ルインはライト博士と共に現実の世界に向かい、残された女神は現実の世界を見守りながら呟いた。

「それにしても意外だね、まさか漫画版要素が此処まで濃く出るなんて…まあ、ルインちゃんがいる時点でどうなるか分かんないしね…どうか、この世界に生きる子供達に幸多からんことを…」

普段のおちゃらけた雰囲気は消え、祈るように呟く彼女は正に女神であった。

しばらくして、ルインのメンテナンスベッドの隣に青い光が現れた。

「わしが女神殿の力で現世にいられるのは僅かな間だけじゃ…ルイン、目覚めるのじゃ…」

ライト博士から放たれた光がルインを包み込み、内部の機構を変えていく。

すう、と感じる重力と、体の隅々まで染み渡る感覚。
外界の情報が津波のように押し寄せる。

自分は戻ってきた……かつて生きていた時は何事もなく見逃していたそれらも、今の自分には処理しきれないほどの量に感じられる。

視覚

聴覚

触覚

味覚

痛覚

全てがはっきりとし始める。

ルインの瞳に光が宿り、ゆっくりと起き始める。

体を動かすのは本当に久しぶりで魂がまだ癒えていないためか、体が重く、そして関節が所々ぎこちなさを感じる。

現世に戻ったことで徐々に抜け落ちていく前世の記憶。

前世の記憶の大半が抜け落ちたことでルインはようやくライトの方を見遣る。

「体の調子は微妙だけど…そうは言ってられないよね。ありがとうございますライト博士。」

自身の体を修復してくれたライト博士に礼を言うと、ライト博士も微笑んだ後、表情を引き締めた。

「君の仕組みを女神殿から聞いていたから出来たことじゃ…ルイン、エックスのことを頼む。」

「任せて下さい、エックスは私の大事な人だから絶対に助けます。」

ルインは幼体のサイバーエルフを連れて部屋から飛び出し、まずはケインの元に向かおうとするが…。

「え?何…これ?」

研究所のモニタールームの前には何故か重傷のレプリロイド…タイガード達がいた。

「ルイン!?お前さん…目覚めたのか…?」

今まで眠っていたルインの状態を誰よりも知っていたケインだが、今はそれどころではない。

「ある人に直してもらったんです!!それよりも彼らは…」

「おお、そうじゃった…」

ケインがルインからタイガード達に向き直ると、ナマズロスがケインの拘束を解いた。

「Dr…こ…これを…受け止…」

「「これは…」」

バッファリオがふらつきながらも差し出した物にケインとルインは目を見開いた。

「エックスの…パワーアップ用、パーツ…データ…だ」

「俺達も…持ってるぜぇ…」

バッファリオに続いてマサイダー達もエックスのパワーアップパーツのデータを差し出した。

「何処でこれを…そんなにボロボロになって…」

データをケインに差し出したタイガード達はダメージによって吐血しながら崩れ落ちた。

「大丈夫か?お主ら…確か…古巣へ行ったのじゃ…」

そこまで言ってケインは気付く。

タイガード達がボロボロになっている理由に。

「お主ら…元同士としてではなく…反逆者として戻ったのか……エックスにそのデータを渡すため……敵の真っ只中に戻ったのか…未来への…希望の……ために……今、直してやるぞい!!ルイン、病み上がりですまんが手伝っ…」

『ぐわぁ!!』

「ん!?」

「この声は…まさかホーネック!?」

ルインがモニターを見遣ると、時間稼ぎをしていたホーネックが攻撃を受けていた。

『来るなよ!俺が時間を稼ぐ!!安心して直してもらえ!!』

「ホーネックっ!無理じゃ…って、ルイン!お主、何処へ行くんじゃ!?」

モニタールームを出ようとしているルインに気付いて呼び止めるケイン。

「決まってるじゃありませんか、イレギュラーハンターとしてちょっとイレギュラーのお掃除しに行きます。」

「む、無理じゃ!!病み上がりの上に調子が悪そうではないか…またお主が死んだら…」

「もう簡単には死にませんよ。それに私はイレギュラーハンターですから」

ルインの目に宿る決意の光にケインは押し黙り、ルインはHXアーマーに換装するのと同時に飛び出した。

飛び出したルインはダブルセイバーをチャージし、交互に振るった。

「ダブルプラズマサイクロン!!」

2つの電磁竜巻がメカニロイドを引き寄せ、吸い込まれたメカニロイドを瞬く間に斬り刻んでいく。

「ルイン!?」 

「久しぶりだね、ホーネック。後は私に任せて!!」

ホーネックを強引に下がらせて、ルインは久しぶりの戦闘を開始するのであった。 

 

第64話:Perfect Rebirth

圧倒的だとホーネックは思った。

機能停止から回復してそんなに時間は経っていないはずなのに最初はぎこちなかった動きが徐々に洗練されていく。

「エディットバスター!!十字手裏剣!!」

アーマーを状況に応じて換装することで様々なタイプのメカニロイドに対処していくルインは正にエックスとゼロと肩を並べた特A級のイレギュラーハンターなのだと理解した。

「これからのことを考えるとあまりエネルギーは無駄遣い出来ないから…一気に決める!!ダブルチャージショット!!」

新アーマーのXアーマーは他のアーマーに比べて目立つ長所はないが、ダブルチャージでチャージショットが二発放てる特徴がある。

放たれた二発のチャージショットは残りのメカニロイドを巻き込んで爆砕した。

「うわあ…長い時間寝ていたから全然思い通りに体が動かないや…まあ、愚痴っても仕方ないけど…早くエックスにクリスマスプレゼントを届けないと!!ケイン博士、座標データを。今すぐ向かいます」

『じゃが、お主は…』

病み上がりのルインをドップラーのいるデス・ドッペルタウンに向かわせて良いのだろうかとケインは迷う。

「大丈夫、もうみんなを置いて死んだりしません」

『…分かった。わしも直ぐに追う。エックスへのクリスマスプレゼントを頼んだぞい!!』

「任せて下さい!!」

座標データとパワーアップパーツデータを送られ、ルインは敵の本拠地であるデス・ドッペルタウンに向かう。

「うわあ、しばらく死んでるうちに悪趣味な物が出来てるね…公開処刑までの残り時間は後30分。急がないと…!!」

ステルス性能が高いPXアーマーを身に纏いながら、一気に駆け出す。

しかし、本拠地であるためか警備は厚く、処刑場まで後半分の距離と言うところで発見されてしまう。

「やっぱりそう簡単には行かないか!!」

ケインを乗せた飛行戦艦も到着し、ある程度気を引いてもらっているにも関わらずこの警備の厚さには嫌になりそうだ。

「でも、私は長い間休ませてもらったんだからこれくらいは乗り越えないとね!!」

PXアーマーからHXアーマーに換装し、セイバーでメカニロイドを迎え撃つ。

残り時間…。

「後、7分47秒!良いクリスマスになるぞ。キリストの生まれた日に地球の救世主が死ぬんだ!!」

「それはどうかな?」

「ん?貴様は…もしや…ルイン…か?」

突如この場に現れたルインにヴァジュリーラFFは鋭く睨み据えた。

「へえ、君は私を知っているんだ」

「当然だ。貴様は復活の目処はまだ立っていないという噂を聞いていたが…やはり噂とは宛てにならんな…何をしに来たのかな?」

「クリスマスと言えばサンタさんからの良い子へのクリスマスプレゼント。サンタさんとして良い子のエックスにプレゼントを持ってきたのさ!!」

「ほう、特A級自らとはそれはご苦労!私にもプレゼントはあるのかな?」

ビームサーベルを抜いて油断なくルインを見据えるヴァジュリーラFFにルインも不敵な笑みを浮かべた。

「あはは、馬鹿言わないで。サンタさんのプレゼントは良い子限定!!」

「人を選ぶとは冷たいサンタさんだ!!」

LXアーマーに換装したルインがハルバードを振るい、ヴァジュリーラFFはサーベルで受け止める。

「リーチの長い武器で間合いを保ちながら戦うつもりか。悪くない考えだ」

ルインのハルバードによる斬撃を捌きながらヴァジュリーラFFはルインを見つめる。

「顔色が良くない、それに動きもぎこちない。どうやら復活して間もないようだな…そんな状態で此処に来るとは…我々も随分と舐められたものだな」

「まさか、私の仕事は良い子へのクリスマスプレゼント。あなたを倒すのが私の目的じゃない」

それだけ言うとヴァジュリーラFFを弾き飛ばしてエックスの元に駆ける。

「させん!!」

盾からビームを放ち、ルインを撃ち抜こうとするがルインもそれを予想しており、PXアーマーに換装し、チャージすることでバリアを張ってそれを防いだ。

「チッ、バリアとは無駄に芸がある奴だ!!だが、私に時間をかけ過ぎたな!!もう間に合わんぞ!!」

「間に合わせる!届けるんだ!みんなの想いを!!」

エックスに向かってデータを投げるルイン。

そのデータは吸い込まれるかのようにエックスに。

そしてドリルの先端がエックスに触れ、エックスの体が煙に覆われた。

「メぇぇぇ~~~リぃぃぃぃクリっスマぁぁぁーーースぅ!!ひゃーーーはっはっはっはっはぁーーーーっ」

辺りにヴァジュリーラFFの狂笑が響き渡るが、ルインの表情には笑みが浮かんでいた。

「君達の負けだね」

「んふ?…!!ゼロが無事だとーーーつ!?」

何故かドリルの先端が無くなっているため、ゼロは生きていた。

「エックス、後はお願いして良いかな?」

「勿論だよ、色々話したいことがあるけど…まずは…」

新たなる強化アーマーであるサードアーマーを身に纏いながら、ヴァジュリーラFFを見据えるエックスの両腕に高密度のエネルギーが収束していく。

「ヴァジュリーラ、まずはお前からだ!!クロスチャージショット!!」

両腕のバスターから放たれたチャージショットが1つとなってヴァジュリーラFFに迫る。

「なっ!?う、うわああああ!!?」

クロスチャージショットを受けたヴァジュリーラFFの悲鳴が響き渡った。 

 

第65話:Grudge

エックスのバスターから放たれたクロスチャージショットの威力は凄まじく、ヴァジュリーラFFの半身を容易く消し飛ばしてしまった。

「うわあ、凄い威力」

ゼロを救出しながらサードアーマーのクロスチャージショットに目を見開く。

下手したら自分達3人で放ったクロスチャージショットに迫る威力がありそうだ。

「ルイン…本当にお前なのか?」

「もう、私がお化けなんかに見える?正真正銘の本物のルインだよ」

膨れっ面になりながら言うルインにゼロは思わず笑ってしまった。

「全く…信じてはいないが…神って言うのは結構、粋なことをするもんだな…クリスマスに目覚めさせるとはな」

「ふふっ…久しぶり…だよね。私達3人揃うの」

「うん…ルイン」

「何?」

「届いたよ。パーツから…みんなの声、ルインの心……」

穏やかな表情で言いながら、エックスはあの日からずっとルインに借りていた武器を返却する。

「私の…ずっと持っていてくれたんだね」

「あの戦いからずっと持ってたんだ。これを持っているだけで君が傍にいるかのように勇気が湧いてどんな敵とも戦うことが出来た。これを君に返すよ」

「…うん」

エックスから受け取った愛用の武器を握ると久しぶりの感覚に笑みを浮かべた。

「しかし、誰がルインを直したんだ…?」

ケインですら難航していたはずのルインの修理を誰がやったのかがゼロには気掛かりだった。

「あの博士のおかげだよ。私達を助けてくれたあのお爺さん」

「ライト博士が…ありがとうございます博士」

厳密には違うのだが、ライト博士にも助けられたのは事実なのだ。

「ルイン…」

「何?」

「…お帰り」

エックスの言葉にルインは目を見開いたが、次の瞬間満面の笑みで答えた。

「うん、ただいま」

「おい、エックス、ルイン。お互いに積もる話もあるだろうが、今は目の前の相手だ」

「「うん」」

向こうを見遣ると、半身を失ったヴァジュリーラFFに駆け寄るマンダレーラBBの姿があった。

「私とパワーアップしたエックスならあれくらい何とかなるよ」

「いや、ここはドップラーの本拠地だ。ドップラーが何をしてくるか分からないから油断は禁物だ」

「しばらく死んでるうちに逞しくなったねエックス」

少ししてケインも現れ、動けないゼロをルインの代わりに支える。

「エックス、ルイン。思いっきり戦ってくれ。俺達のことは気にしないでな」

「こっちのことは気にせんでええからな2人共…(良かった…またこの3人が揃う姿が見られるとは…本当に…良かったわい…)」

「それがお前の言う“仲間”の姿か?」

ルイン達に巨大な影がかかり、全員が上を見上げた。

そこには巨大なメカニロイドと、メカニロイドの頭部に立つドップラーの姿があった。

「仲間っ、仲間っ、仲間っ、仲間っ、仲間ーっ、仲間仲間仲間仲間仲間仲間仲間仲間仲間仲間仲間仲間…カーーーッ、オイルが逆流する程甘ったるい言葉だわっ!!」

「あれが、あのドップラー博士?あのドップラー博士が随分変わったね…」

「今では質の悪いイレギュラーだ…」

記憶の中のドップラーと今のドップラーが全く重ならず、思わずルインは困惑し、ゼロはドップラーの所業を思い出したのか吐き捨てる。

「ドップラー様!!ヴァジュリーラの救出を!!」

ヴァジュリーラFFの救出を要請するマンダレーラBBだが、ドップラーの返答は…。

「…………貴様…“仲間”と言う言葉に影響されたか?」

「え?」

「一度でも撤退を許すと思ったか、結局は“あの方”を復活させるための実験体よのぉ」

ドップラーの冷酷な言葉にエックスとルインは悪寒を覚える。

「!!…まさか…ドップラー?」

「死ねっ!!」

メカニロイドの口から放たれたビームはドップラーの味方であるはずのヴァジュリーラFFとマンダレーラBBに向かっていく。

「ドップラー様ぁあっ!!」

「ヤバい!!」

ビームが着弾する直前にエックスがケインを、ルインがゼロを抱えて何とか回避に成功した。

「ルイン、瓦礫に気を付けるんだ!!」

「うん、一気に抜けよう!!」

エックスはサードアーマーのヴァリアブルエアダッシュ、ルインはHXアーマーのホバーとエアダッシュを駆使して瓦礫をかわす。

何とか安全な場所まで移動したエックスとルインはケインとゼロを地面に下ろす。

「ケイン博士?怪我は?」

「ゼロ、大丈夫?」

「ああ……全く、少し前まで機能停止していた後輩に守られっぱなしとは先輩として情けないな…」

「仕方ないよ、そんな大怪我じゃ。エックスはパワーアップと同時に回復したようだけどね…それにしても、まさか味方まで攻撃するなんて…」

「ほう、全員生き残ったか。悪運の強い奴らめ」

「あなたねえ…味方まで攻撃するなんて何を考えて…」

ルインが言い切る前に大破したヴァジュリーラFFを抱えるボロボロのマンダレーラBBが瓦礫の中から現れた。

「ドップラー様……我々を見捨て…ないで…下…さい。ドップラー様ぁーーー」

少し前までエックス達を圧倒した強力なイレギュラーとは思えないくらい哀れな姿である。

「ほおーーー、まだ生きておったか。ならば最後まで私に仕えろ!!実験の道具としてなー!!」

メカニロイドの口から大量の寄生チップ・“ワーム”が大量に放たれ、それはヴァジュリーラFFとマンダレーラBBに降り注ぐ。

「どっ……道具ーーっ!?嫌だっ、嫌だっ!私は自分でいたーい!!」

ワームはマンダレーラBBとヴァジュリーラFFに取り憑き、寄生を始めた。

「うっ…」

あまりにも惨い光景にルインは思わず口元を押さえてしまう。

「うあっ、あっ、あっあ……」

マンダレーラBBの声が聞こえなくなるのと同時に2体のレプリロイドは1体の大型レプリロイドとなり、同時にヴァジュリーラFFとマンダレーラBBは今死んだのだ。

「さあ…思う存分働け。ナイトメアポリス最終形態。ゴッドカルマシーン・O・イナリーよ!!」

「酷いね、あんな酷いことするなんて、一発殴らないと気が済まないよ!!」

「どこまで腐ってるんだあいつは…」

ルインとゼロは嫌悪感を隠さずにドップラーを睨み据える。

O・イナリーはビームサーベルの斬撃を飛ばし、エックス達に攻撃を仕掛ける。

身構えるルインだが、エックスが制した。

サードアーマーのディフェンスシールドのバリアがそれをあっさりと弾く。

「素晴らしい!!」

攻撃を防がれたにも関わらず、ドップラーはエックスの性能に歓喜した。

「データだデータ!!全てのデータを送るぞ!!コンピューターにぃ!!そして、より完全なボディをぉ、あの方の為にぃーーっ!!」

O・イナリーが何度攻撃しようと、エックスのディフェンスシールドに弾かれる。

「まだだ!その程度ではないだろう!!未知の領域を見せてみろ!!」

ドップラーの目を通して、コンピューターにデータが送られていき、データが送られていく度に歓喜する。

「エックス…」

「分かっている。君はゼロ達を守っていてくれ」

ルインの声に頷くと、ドップラーの事など構わずにエックスはO・イナリーに向かっていく。

「素晴らしい!素晴らしい“力”だーーーっ!!ん?」

エックスは両腕のチャージを終えると、O・イナリーに向けた。

「すまない」

自我を失った哀れな存在に謝罪しながらエックスはクロスチャージショットを至近距離で放った。

クロスチャージショットはO・イナリーを容易く飲み込み、そのままドップラーの乗ったメカニロイドに向かっていく。

「ひぐっ!!」

メカニロイドにクロスチャージショットが直撃し、ドップラーは爆発に巻き込まれた。

「ドップラーっ!!…ぐ…」

爆発に巻き込まれたドップラーにケインは俯いた。

「ケイン博士、ドップラー博士のことは残念でしたけど、あの人がこれ以上罪を重ねずに済んで良かったと思いましょう」

「そうじゃな……」

燃え盛るO・イナリーから叫び声が響き渡り、O・イナリーの体を構成していた無数のワームが別の形に変わっていく。

「形が…変わってきておる……」

「もう、私の理解が追い付かないよ…」

「安心しろ、この場にいる全員が理解出来ていない」

炎が消えると、ワームは巨大な双頭の怪物となり、エックスに襲い掛かる。

口に相当する部分の先端がエックスに向かって伸びるが、クロスチャージショットのダメージは凄まじく、後少しの距離で機能停止。

ワームは突風によって周囲に散らばり、風に飛ばされていくワームを見つめるエックスにルイン達が駆け寄る。

「ご…ご苦労じゃったなぁ…ようやったぞい」
 
「エックス、お疲れ様。」

「……ルイン…ケイン博士…俺は…結局…ドップラーを……」

ケインとルインの言葉にエックスは俯きながら話す。

「あれは仕方ない。ドップラーを倒す以外に方法はなかった」

「そうじゃ!!お前はようやったぞっ!!」

「自分を責めないでエックス。途中参戦の私が言うのもなんだけど、エックスはエックスに出来る精一杯をしたんだと思うからさ」

「全ては…あいつの残したデータが悪いのに……」

唇を噛み締めながら拳を握り締めるエックス。

[ミー]

【?】

ルイン以外には聞き慣れない声に全員が周囲を見渡すと、ルインが女神から授かったサイバーエルフが浮かんでいた。

「何だこのチビは?」

「私について来ちゃったんだ…」

[ミー、ミー]

サイバーエルフはエックスの元に向かうと、エックスの胸に飛び込み、可愛らしい笑みを浮かべる。

「…俺を慰めてくれるのかい?不思議な小さい子?」

[ミー!!]

「この子もライト博士から?」

「うん、まあね」

幼子の優しさに少しだけ癒されたエックスは少しだけ笑みを浮かべてルインに尋ねるとルインも取り敢えずそういうことにした。

そしてルインがエックスに声をかけようとした時、背後から何か崩れる音がして、全員が振り返る。

「ぐひひひ…」

「ドップラー!?」

「まだ生きていたのか!?」 

科学者レプリロイドであるドップラーがボロボロとは言え、あの爆発に耐えたことに驚愕する一同。

「素晴らしい…素晴らしいぞぉ、エぇッーーークスぅ。どうじゃあ、今からでも遅くない。我が軍門に下れ!!」

「ドップラーっ、生きておってくるたのか!?…のぉ……ドップラーよ…何がお主をそこまで変えたんじゃ。シグマウィルスワクチンを作り、理想郷を目指したお主が何故…」

ケインはドップラーが生きていてくれたことを喜ぶが、今まで気になっていたことを尋ねたが、ドップラーは聞く耳持たずにエックスに叫ぶ。

「エックス!!返答はいかに!!」

「シグマ…ウィルス………だな」

ドップラーの言葉に答えず、エックスはドップラーの豹変の原因を呟いた。

「え?」

「シグマウィルスに当てられたな。以前、ワームの正体を暴くため、わざと取り憑かれた時に感じた………奴の怨念を……シグマの怨念をな!!」

「なるほどな、ドップラーはシグマウィルスのワクチンを作るためにシグマウィルスを研究していた。その時にか」

「もしそれが本当なら、凄い皮肉だね。シグマウィルスを除去するためのワクチンを作るために研究していたのに本人がやられちゃうなんて」

「俺は貴様が憎い。貴様のせいで無用の戦いが生まれたんだ……でも、こんな幼い子供の前でこれ以上命を奪いたくない…終わりにしよう……滅びた悪魔に振り回されるのは…レプリロイド同士、傷付け合うのは…全ての戦いを終わりにしよう!!」

「エックス…良いのか?それで…」

「ああ、もう終わらせるんだ…」

エックスの言葉にドップラーは歪んだ笑みを浮かべながら口を開いた。

「………で、返答は“否”なのだな」

ドップラーの言葉に全員が目を見開き、ルインはドップラーを指差しながら叫ぶ。

「くっ…あなたにはエックスの気持ちが分からないの?これ以上やっても無駄な犠牲を増やすだけでしょう!?」

「良いことを…教えてやるわ。わしの身体にはジーロン弾がセットされている。わしの機能停止と同時に作動する。エックス…貴様がわしと組むなら、ジーロン弾の起爆装置を切ってやってもよいぞ」

「…ジーロン弾?」

「ジーロン弾じゃと………?」

「貴様…狂っているとしても限度があるぞ…!!」

「え?ケイン博士?ゼロ?どうしたの?何?何なのジーロン弾って?」

ケインとゼロの表情からして、とんでもない代物なのだろうが、初耳のルインからはあまりピンと来ない。

「ジーロン弾はお主が機能停止していた時に開発された兵器…地球上の生物を一掃してしまう電磁波爆弾じゃ!!」

「えーっ!?と言うか爆心地のあなたまで死ぬんだから意味ないじゃない!!」

「意味はある……あの方の世が来るのだ」

「っ!!あの…方…だと…?」

「怨念だと?あの方は“いる”!!私が完全なるボディを進呈した……シグマ様がついに地上の“王”となられるのだーーーっ!!!」

叫んだ直後、ドップラーが膝をついた。

いくら改造を施しても元々科学者レプリロイドであり、クロスチャージショットのダメージはやはり深刻だったらしい。

「ドップラー」

「わしが死ねば……体内のジーロン弾が作動して地球上の生物は……全滅だ……。わしの…死は……シグマ様の……創る…理想…郷の……と……な……る…」

そう言うと、ドップラーは機能停止し始めた。

「いかん!!」

「ジーロン弾が作動しちゃう!!」

ケインはドップラーに駆け寄るとドップラーのメインプログラムの復旧を始めた。

ジーロン弾作動までに復旧は間に合うのだろうか…。 

 

第66話:Understanding

機能停止寸前のドップラーのメインプログラム復旧は流石のケインの技術力を持ってしてもやはり容易ではないようだ。

「ケイン博士、大丈夫かな?」

「爺を信じろ、俺達にはそれくらいしか出来ん」

「ケイン博士なら大丈夫だよ。あの人はカウンターハンター事件の時も凄い早業でワイヤー・ヘチマールの修理を終えた人だし」

ルインはドップラーの乗っていたメカニロイドの残骸を回収して使い、ゼロの応急処置をしながらケインの修理を見守る。

ゼロもエックスもケインなら大丈夫だと信じて、静かに見守る。

[ミー]

サイバーエルフはケインの隣に移動し、ドップラーに力を使って傷を癒し始める。

「お、すまんな。助かるぞい」

「驚いたな、あんな治療能力まであるなんて」

「うん、でもまだ赤ちゃんだから強力な力は使えないの…よし、ゼロ…これで終わりだよ」

「ああ…すまん。これで自分の身を守るくらいは出来そうだ。ただ、動力炉に異常が出ちまったからかバスターが使えん…」

同時にバスターと同じ回路を使っていたアースクラッシュも使えなくなったようだ。

しばらくはZセイバーのみの戦闘になるだろう。

ケインの修理を見守ったエックス達だが、やがてドップラーのメインプログラムの復旧が終わり、ドップラーが再起動した。

「やった、再起動したよ」

「そのようだな」

「気が付いたかの、ドップラーよ」

再起動により、意識を取り戻したドップラーが目を見開く。

「ケイン……?貴様、何故生きておる…わしは……死んでなかったのか……?」

ドップラーが自分の体を見ると、ようやくケインに修理されていることに気付いた。

「ぐっ!!修理をしておるのか!!」

「ジーロン弾作動前にお主のメインプログラムを復旧させるのは骨じゃったわい」

「ふっ!貴様も科学者の端くれなら完全回復は99%不可能と分かるだろう。無駄なことを…わしの命令1つでジーロン弾は作動するのに…」

「分かっとる。けどお主はせんなあ~~~」

ドップラーの言葉にケインはさらりと言い放つ。

そしてドップラーはジーロン弾の作動はしないとも言う。

「何故だ!?」

「今のお主ならわしらの困る姿が楽しくって仕方ないじゃろうからな、フン」

「ちっ!そうだ!!その通りだ!!愉快だ!!愉快だな!!もっともっと楽しませてもらうぞ!!」

ドップラーの目が光ったのと同時に大量のメカニロイドが飛び出してきた。

「うわあ、出て来たよ」

「チッ、数だけはいるようだな」

あまりの数にルインとゼロは表情を顰めた。

「そやつらの動きを阻止出来るかな」

「お主、ドップラーを寝かせてくれんか」

[ミー]

「むぐう」

ドップラーの顔面にサイバーエルフが体当たりを喰らわせて強制的に寝かせる。

「あ~、お主らすまんが一時凌いでくれや」

「はい」

「後で美味しいお菓子をご馳走して下さいね」

ケインの言葉にエックスとルインは即答して、ゼロの方を見遣る。

「ゼロ、君はケイン博士を頼むよ」

「もしそっちに行ったら対処お願いね」

「………俺は爺のお守りか」

エックスとルインに頼まれたゼロは微妙な表情でケインとドップラーの前に立つ。

「久しぶりだね、一緒に戦うの」

「ああ、そうだな。1体も博士に近付かせないようにするんだ…病み上がりの君には悪いけど…」

「大丈夫大丈夫、何もしない方が却って辛いこともあるしね」

エックスはシュリンプァーのスピニングブレードを選択し、ルインはPXアーマーに換装するのと同時に構えた。

「スピニングブレード!!」

「十字手裏剣!!」

エックスのチャージスピニングブレードとルインの巨大手裏剣がメカニロイド達を薙ぎ払うように斬り裂いていく。

上空のメカニロイドにはルインがLXアーマーに換装するのと同時にハルバードをチャージする。

「フリージングドラゴン!!」

氷の龍が投下された爆弾を全て防ぎ、エックスもビートブードから得た特殊武器を展開した。

「バグホール!!」

上空で展開したチャージバグホールによる小型ブラックホールはメカニロイドを吸い込み、消滅させる。

「ダブルチャージショット!!」

Xアーマーに切り替え、バスターのチャージを終えるとチャージショット二発をメカニロイドが密集している場所に発射した。

「ルイン、そのアーマーは?」

「私の新しいアーマーだよ。エックスと似ているからお揃いだね」

「あ、うん…」

「?」

何故か照れ臭そうなエックスの表情にルインは疑問符を浮かべた。

「トライアードサンダー!!」

チャージトライアードサンダーを使い、電撃を纏わせた拳で地面を殴ると衝撃と電撃の二段攻撃で地上のメカニロイドを粉砕していく。

「エックスもアースクラッシュやグラウンドブレイクみたいなことが出来るようになったんだね」

「特殊武器のチャージだからあまり燃費は良くないけどね」

「これは私も負けられない。プラズマサイクロン!!」

HXアーマーに換装するとダブルセイバーのチャージ攻撃を繰り出す。

「………」

圧倒的な力でメカニロイドの大軍を相手にするエックスとルインを見つめるドップラーだが…。

「駄目じゃぞい。お主、今起きてエックスとルインのデータを集めようと考えたじゃろ。ほれ、ちょいと手を退かせ、動いていてはこの子の治癒能力も無意味になるしの」

[ミーミー]

ケインの言葉を肯定するようにふよふよと上下するサイバーエルフ。

「ぐっ、生意気な。人間の指図など…」

[ミーーーーッ!!!!]

「な…?」

反論しようとしたドップラーを黙らせるようにサイバーエルフが叫ぶ。

「ふーむ、何となくじゃがこの子の言いたいことが分かるのう。“動くな”と言いたいんじゃな」

「ぐっ…何故だ…」

「う~~~ん?」

「さっきもわしの考えを読み、今もまた…何故人間の貴様にわしの考えが分かる?」

「ふん~~~どっこいしょ。」

一度立ち上がり、位置を変えて再びドップラーの修理を再開する。

「おい、爺。パーツが必要なら言え。今ならパーツが簡単に手に入るからな」

エックスとルインが倒したメカニロイドの残骸を指差すゼロ。

「うむ、すまんのう。さて…お主の質問に対して答えるなら、友達じゃからかの~~~」

「笑わせるな!!貴様の友だったわしはもういない!!」

「まあの~~~昔のお主は人の不幸を楽しみはせんかったものな~~~。と言うことはじゃ、昔のお主の逆と考えればええわけじゃ。お主のことを分かっとれば造作もないことじゃ。それに研究熱心なとこと幼子に対して強く出られんとこも同じじゃなぁ~~~まあ、ここはわしらみたいな年寄りの共通の弱点みたいなもんじゃが」

チラリとサイバーエルフを見遣りながらケインはからかうように言う。

「チッ!!」

言い返せないからか、ドップラーは顔を逸らす。

「パラスティックボム!!」

「エディットバスター!!」

エックスとルインは特殊武器と各アーマーの武器をフル活用してメカニロイドを迎え撃っていた。

「フォッフォッフォッ、エックスの奴…ルインが帰ってきたからか張り切っとるのう…ルインも大分戦闘の勘を取り戻したようじゃな」

「お前と同じだ。無駄なことをやっておるわ」

「あれこそ“若さ”じゃよ。それに無駄かどうかはまだ分からんぞい」

笑いながら言うケイン。

ケインの顔から流れる汗が修理中のドップラーのボディに落ちるとジュッと音を立てて蒸発した。

「…?ジュ?」

音に気付いたドップラーは顔を動かすと自身の修理をしているケインの手の変化に気付いて、その腕を掴んだ。

「こ、これ!何すんじゃい。痛いぞい!!」

「うるさい!!」

掴んだケインの手を見ると、その手は火傷をしていた。

「あちゃ」

「火傷かっ!!そんなに害虫が惜しいか!死にたくないかっ!!」

「当然じゃい!!人類を失いたくない!やりたいことも沢山あるわい!!ようやくまたあの3人が揃ったんじゃ!それなのにそんな簡単に終わらされてはたまらんわい!!それにのぉ、よっと…友も一緒に助かる!お得この上なしじゃ」

立ち上がり、明るい笑顔と共に言われた言葉にドップラーは目を見開く。

「わしも……一緒に……」

「特殊武器はエネルギー切れか!!バスターだけでも凌いでみせる!!」

「私だってまだまだやれるよ!!」

エックスとルインがそれぞれのバスターでショットを連射しながらメカニロイドを破壊していく。

2人がバスターのチャージをしようとした時、メカニロイドは突如停止した。

「「え?」」

「メカニロイドが止まっただと?」

「何じゃと?」

エックス達は目を見開き、メカニロイドを止めたであろうドップラーの方を見遣る。

「………」

「ドップラー…」

ドップラーは無言でパーツを外して内部を見せる。

「中の赤い線だ………」

「え?」

「早く切れ…」

ケインはドップラーの言う通りに赤い配線を切った。

「そうだ……それでいい…もう、ジーロン弾は作動しない……」

そのドップラーの言葉が全員の耳に入り、エックス達は思わず顔を見合わせた。

ジーロン弾の作動が無くなったことで全員が安堵し、エックスはドップラーに歩み寄る。

「………ドップラー……博士……」

「わしのことを…まだ博士……と呼んでくれるのか……わしを………こんな………わしを……」

「まだ立ってはいかんぞい!!」

立ち上がるドップラーを止めようとするケインだが、ドップラーはエックス達の方を向いて口を開いた。

「わしは…わしは生き残って良いのか?人類を苦しめ、同胞を利用して………そして友を悲しませたこのわしが……そんなわしが……やり直すために生き残って良いのか………?」

「………それは……あなたが自分の“心”に従って決めることだ」

「自分の“心”!!そうだな……わしが決めることだな……」

微笑みを浮かべたドップラーに全員が安堵した。

今まで倒してきたイレギュラー達を考えれば、完全にとはいかないが、ハッピーエンドと呼べるだろう。

「後はシグマのボディを破壊すれば全て終わりだね」

そう言った直後、地面が大きく揺れて、突風が起きた。

「何だ!?この地鳴りと突風は?」

「おい、ドップラー。これは何だ!?」

「いや!わしも何が起きたか……」

ドップラーでさえ分からない事態はまだ続き、次は周囲の塔が飛んで行く。

「見てみい!!塔が飛んで行くぞい!!何じゃあ!!……塔が……合体しちょるぞ!!」

塔が一ヶ所に集まり、合体して1つの禍々しい外観の建造物に姿を変えた。

「これが…シグマの城!!」

「うああああ!!」

その時、背後からケインの悲鳴が聞こえてエックス達が振り返る。

「爺!!」

「うががががあっ」

何とケインが頭をドップラーに鷲掴みされていた。

「ドップラー博士!?」

「キヒヒぃぃぃ、死ね~~死ね~~柘榴のようにかち割れろぉ」

「やめろーっ!!」

「ぐが!!」

即座にエックスがドップラーを殴り飛ばしてケインを救出する。

「ドップラー博士、どうして!?」

「ルイン、恐らくあの城からドップラーに影響を及ぼす何かが発せられとるんじゃ」

「ドップラーはシグマウィルスに侵されている。シグマからすれば簡単に操れると言うわけか!!」

「ふおおおおっ!!」

エックスに飛び掛かるドップラー。

それに対して反射的にバスターを展開するエックスだが。

「ドップラー!!」

「っ!!あ、ぐ、ぐぐ……ぅ…ケイン………駄目…やり……直せ……ない。わしはシグマウィルスに侵され過ぎ………た…戻……れ…な……い……」

ケインの声に何とか理性を取り戻したドップラーだが、シグマウィルスに侵され過ぎたことで簡単にシグマの操り人形にされてしまう状態になっていたのだ。

「何を言う!!」

「ケイン博士、もうドップラー博士は…」

ドップラーは完全に手遅れなのだと悟ったルインはケインをドップラーから離そうとする。

それよりも先に城から悪質な電波が飛び、ドップラーに再び影響を与える。

「ぐあああっ!!」

頭を抱えて苦しむドップラー。

「ドップラー!!」

「いかん!!離れろ爺!!」

セイバーを抜いてケインの前に立つゼロは何時でもドップラーの動きに対応出来るように構えた。 

「ぐあああっ!!」

「っ!!」

ドップラーの腕が此方に伸ばされたかと思いきや、ドップラーは自分のメインプログラムを掴んでそれを破壊した。

「ドップラー博士…!!」

「そんな…」

「自分でメインプログラムを破壊したのか……シグマに利用されんために“死を”選んだ訳じゃな。これでお主を縛るものは無くなった訳じゃ……自分の……“心”に従っ…た……訳じゃ…な………ド………ドップラーーーーーー!!!!」

ケインの悲しみの咆哮が響き渡り、そして地面に何度も拳を叩き付けた。

「おおおおお!!」

「ケイン博士!!?」

「おい、爺!何をしている!?止めろ!!」

「放せぇーーー!!放せぇーーー!!!」

ゼロがケインの腕を掴んで自傷行為を阻止するが、ケインは暴れる。

「何故、“死”を選んだーーーっ!!お主の“才能”で償いをすべきじゃろうがぁ!!」

「爺!ドップラーはドップラーなりにシグマに抗ったんだ!!そんな言い方では無駄死にだろう!!」

「おー!!無駄じゃ無駄じゃよ!何故闘わん!!シグマウィルスと!!そんな弱虫じゃったのかーーーっ!!馬鹿もんーーーっ!!馬鹿もん!!」

ゼロが何とか止めているが、ケインは暴れることを止めない。

大事な友人を失った悲しみがケインを支配していた。

「どうして…ドップラー博士…これからだったのに…」

涙ぐむルインを見て、サイバーエルフはふよふよとドップラーの亡骸に近付いて治癒能力を使った。

「おい、チビ。無駄だ、ドップラーが死んだ以上治癒しても無意味だ」

ケインを止めながらゼロはサイバーエルフに治癒を止めるように言う。

[ミ~~~…]

直せないと言われたサイバーエルフは悲しそうな表情でドップラーを見つめる。

「……………」

エックスはシグマの城を見つめながら拳を握り締め、シグマの城に向かおうとした時である。

サイバーエルフの小さな体から光が放たれ、それにより全員の視線がサイバーエルフに釘付けになる。

『ドップラー博士、君は死なない。今はレプリロイドではなく電子生命体として生き延びるの…』 

ルインは自分の電子頭脳に響き渡る声に目を見開くが、それどころではなく光を浴びたドップラーの亡骸が消えていく。

「ドップラーの体が…」

「消えていく…!!」

「ど、ドップラー!!」

消えていくドップラーに慌てて駆け寄るケインだが、手が触れる前に弾かれてしまう。

「ぬう!?」

「ケイン博士、大丈夫です多分…多分ドップラー博士は…」

「ああ…暖かい…何と暖かい光じゃ…」

光と共にドップラーの亡骸は消滅し、代わりに現れたのは半透明のホログラムのようなドップラーであった。

「ドップラー…?」

「年寄りが泣いても可愛げがないな」

顔をぐしゃぐしゃにしたケインをからかうように言うドップラー。

「だ、誰が年寄りじゃあ!!そ、それよりもドップラー…お主…」

ドップラー「詳しい原理はわしにも分からんが、どうやらわしは電子生命体になったらしい。この子と同じようにな…ケイン…どうやらわしはやり直すチャンスを与えられたらしいな」

「…っ、当然じゃあ!!お主の才能で償いをすべきなんじゃ!死んで楽しようなど許さんからのう!!」

「ふふふ…厳しいな。わしはボディを失ったが、ボディが新しく出来るまでは今出来る範囲のことで償いをしよう」

「お主のボディなどわしがパパっと造ってやるわい!!僅かな時間でも楽はさせんわい!!」

「…………奇跡だ」

一部始終を見たエックスがポツリと呟いた。

「ああ、ここまで常識外れだと奇跡と言うしかないな」

「でも良かったよ。ドップラー博士が幽霊みたいな状態でも生き残って…あれってレプリロイドの魂なのかな…もしそうなら、私達レプリロイドにも魂は宿るんだね」

「“魂”?非科学的にも程があるぞルイン」

「良いじゃないかゼロ…俺は信じたいよ。俺達レプリロイドはただの機械じゃない、この世界で生きている生命体の一種なんだってことを…」

「………そうだな」

泣きながら笑うケインを見てゼロも思わず微笑んで空を見上げた。

残る問題はシグマである。 

 

第67話:VAVA Mk-II

ドップラーはケインとの会話もそこそこにエックス達に振り返る。

「これからシグマと戦う君達に教えておかねばならんことがある。シグマの正体は、奴自身が悪性のウィルスプログラムであること。奴のボディを破壊したところで本体と言えるウィルスである奴は死なず、やがて更に強力な新たなボディを手にして復活するだろう」

「チッ、まるでゴキブリだな。何度倒してもまた出て来やがるところとかな」

「なら、どうすれば良いんでしょうか?」

「わしがシグマウィルスに完全に支配される前に作成したシグマウィルスの抗体ウィルスがわしの研究室にある。あれならウィルス状態のシグマにもダメージを与えられるはず」

「ドップラー博士、その抗体ウィルスのある研究室の場室を教えてくれませんか?」

シグマを倒せるかもしれない可能性を持つ抗体ウィルスはエックス達からすれば喉から手が出る程に欲しい代物だ。

「うむ、研究室の場所は………」

ドップラーがこれから城に潜入するエックスとルインに抗体ウィルスのある研究室の場所を教える。

「よし、行こうルイン」

「うん」

「待てエックス」

ルインと共に城に向かうエックスを止めたのはゼロであった。

ゼロはエックスにZセイバーを渡す。

「ゼロ?」

「シグマ以外にどんな強敵がいるか分からないからな、ルインに武器を返して近接戦闘に使える武器がないだろう?俺のZセイバーを持っていけ。今のお前なら使いこなせるはずだ」

ナイトメアポリスとの戦いでのダメージの影響で普段の力を出せないゼロは足手まといだ。

だから少しでもエックス達の勝率を上げるためにZセイバーをエックスに託すのだ。

「ありがとう、ありがたくセイバーを借りていくよゼロ。君はケイン博士とドップラー博士とその子を頼んだよ」

エックスはゼロのセイバーを受け取り、ルインと共にシグマの城に潜入した。

「ルイン、すまない。本当なら君にも休んでもらいたいんだけど」

「動力炉の破壊と抗体ウィルスの入手をしないといけないからね。仕方ないよ」

シグマのボディの破壊。

この城の動力炉を破壊して城の機能停止。

それから抗体ウィルスの入手をするには最低でも2人必要になる。

「それじゃあ、私は地下の研究室で抗体ウィルスを入手、そして動力炉を破壊するからエックスはシグマのボディを破壊してね」

「ああ、君も気を付けて」

エックスはシグマのボディのある場所を目指し、ルインは地下の研究室だ。

先程、外でドップラーが繰り出したメカニロイドの大軍が全兵力だったらしく、守りが非常に薄い。

「よし、これなら直ぐに地下室に…」

『ルイン…ルインよ』

「この声は…ライト博士?」

隠すように置かれている見覚えのあるカプセルにはライト博士のホログラムがあった。

『急いでいるところを呼び止めて申し訳ない。だが、この城にいる敵を相手にするのは今の状態ではとても危険じゃ!!少しでも君の力になれるように君の力を解放する。このカプセルに入れば、君の戦闘力を2倍にするオーバードライブが扱えるようになる。ただし、オーバードライブは使用時間が切れたり、ダメージを受けると解除されてしまうから気をつけるのじゃぞ。』

「は、はい。ありがとうございます」

ルインがライトに礼を言うと、ライトは優しい笑みを浮かべると口を開いた。

『君はエックスを救ってくれたんじゃ、これくらい当然じゃよ…どうかこれからもエックスと共に頑張って欲しい』

「勿論です!!」

ルインはカプセルに入って、新能力・オーバードライブを会得した。

ライト博士に頭を下げた後、再び地下を目指す。

そして地下にある部屋をいくつか探して1枚のプログラムチップを発見した。

「後は動力炉を…」

研究室を出た直後、ピアノの音が聞こえてきた。

「こんな所で…ピアノ?」

ピアノの音がする場所に向かい、扉を開くとそこには…。

「久しぶりに弾いてみたが、意外に弾けるものだな…どうだルイン?お前の復帰祝いを兼ねた再び冥土へと旅立つお前へ贈るレクイエムは?」

「嘘…!?VAVA!?」

立ち上がったピアノの演奏者は何と最初のシグマの反乱でエックスに破壊されたはずのVAVAであった。

「久しぶりだな、ルイン。まさかこの戦いでお前まで蘇るとはな…前の戦いで蘇ったゼロと言い、お前と言い…どうやら俺達は奇妙な縁でもあるようだな」

「生きていたんだねVAVA」

「シグマの部下共が俺の残骸を回収していたらしい。そしてドップラーの手によって蘇った…さて、再会の会話はこれくらいでいいだろう。楽しい命のやり取りの後に立っているのは、お前以上の“死”と言う地獄を掻い潜ってきた真の“鬼”のこの俺だ!!」

「………はああああ!!」

即座にチャージしたZXバスターを構えてVAVAに向けてチャージショットを放つ。

VAVAは背中のシールドを構えてチャージショットを防ぐと、部屋から飛び出し、ルインもXアーマーに換装してVAVAを追い掛けると互いに火力にものを言わせた射撃戦を繰り広げる。

「だああああっ!!」

ルインがXバスターを構えてショットを連射し、VAVAも対抗して右肩のキャノン砲から火炎を放つ。

「ククク…ドップラーの繰り出した雑魚との戦いで完全に慣らしを終わらせたようだな、中々良い攻撃だ。しかしそのアーマーは新しい物のようだが、とうとうエックスの真似事か?」

「地獄から蘇った君と戦うのに相応しい力だと思うけどね!!」

「ククク…確かにな。エックスを倒す前にその姿のお前を倒すのも一興かもな!!」

左肩のミサイルポッドからミサイルを放つVAVA。

ダッシュでかわそうとするルインだが、ミサイルはルインを追尾する。

「えっ!?」

「俺が今更ただのミサイルなど使うわけがないだろう。インフィニティーギグ同様、当然ミサイルもホーミングなんだよ!!」

「ダブルチャージショット!!」

すぐさまルインはダブルチャージショットでミサイルを迎撃する。

「ダブルチャージか!!」

ダブルチャージショットを見たVAVAは電子頭脳にインプットされている情報を検索した。

ダブルチャージはかつてのカウンターハンター事件の際にエックスが使用していたセカンドアーマーの能力だったはずだ。

ダブルチャージは単発の威力は最初の強化アーマーであるファーストアーマーのスパイラルクラッシュバスターにも劣るが、二発もチャージショットを放てるために使い勝手は大きく上回る。

セカンドアーマーのダブルチャージは反動故に地面では接地、他にも動きを阻害してしまう欠点があったが、Xアーマーにはそれがない。

「ふん、そうでなくては面白くない。」

「喰らえ!!メガトンクラッシュ!!」

「一度見た技がまた通用すると思っているのか!!」

FXアーマーに換装したルインはチャージを終えたナックルバスターで殴り掛かる。

メガトンクラッシュの破壊力を知るVAVAは真っ向から受け止めるようなことはせず、シールドで受け流し、そしてルインの背後を取るとすかさずキャノン砲から火炎を放つ。

「きゃあ!?」

「お前の力はこの程度かルイン!!」

「くっ!!プラズマビット!!」

炎に耐えながらHXアーマーに換装し、ダブルセイバーをチャージして電撃弾を数発放つ。

「温い!温すぎるぞ!!」

電撃弾を両手で受け止めるVAVA。

しかしルインの本命は電撃弾ではなくセイバーによる直接攻撃。

「やああああ!!」

セイバーを振るい、VAVAを斬り裂こうとするが、VAVAは信じられない反応速度でかわす。

「なっ!?」

「改修された俺は数多の兵装を失ったが、それを補って余りある力を手にした。以前のボディを超えるパワーと防御力。特にスピードをな!!」

裏拳をルインの横っ面に叩き込むVAVA。

「あぐっ!!」

「あらゆる攻撃と動きに反応出来る反射速度とそれに追従出来る機動力…あらゆる面で強化されたスピードこそが俺の最大の武器なんだ!!いやっ、違うな。」

「っ!?」

再びキャノン砲から火炎を放ち、ルインに直撃させると一気に距離を詰めて顔面を鷲掴みにする。

そしてルインを城の壁にぶつけながら引き摺っていく。

「俺の…本当の武器はぁ!!俺の中に巣食う“鬼”そのものよ!!」

そして前にある塔の壁を破壊し、ルインを部屋の壁に投げ飛ばし、そして塔から離脱すると火炎を最大出力で放って塔を燃やす。

「所詮は生温い場所から戻ってきた奴、地獄を掻い潜ってきた“鬼”には敵わん!!………むっ!?」

VAVAが燃え盛る塔を見つめていたが、突如大規模の地響きと共に巨大な火柱が塔から立ち上ぼり、塔は一瞬で灰と化した。

VAVAは煙がまだ晴れていない中、塔があった場所に移動する。

「何が起こった?凄まじい高熱…FXアーマーのグラウンドブレイクか?それにしては威力があまりにも違い過ぎる……っ!?」

悪寒を感じたVAVAが咄嗟に屈むが、右肩にメガトンクラッシュを叩き込まれる。

あまりの威力に右肩が吹き飛ばされそうになり、VAVAは衝撃に逆らわずに吹き飛ばされることで何とか右肩を失わずに済んだ。

「チッ、右肩の武装がイカれたか…」

「どう?さっきのお返しだよ」

脱臼のような状態の右肩を強引に元に戻すと、ルインを睨みながら笑う。

「ククク…さっきの発言は撤回する。やはりお前との戦闘は楽しいな、お前は普通では考えられないような戦い方をするため、他の奴との戦闘では味わえないスリルがある!!」

「それはどうも!!……さて、そろそろ新能力に体が馴染んで来たし…私も全力で行くよVAVA!!オーバードライブ!!」

FXアーマーを維持した状態でルインは新能力のオーバードライブを発動し、戦闘力が上昇する。

「力が倍にまで膨れ上がった…!?……ククククク…そうでなくては面白くない!!さあ、俺を楽しませてみろルイン!!」

再び火力の応酬が始まる。

オーバードライブで強化された力は凄まじく、ナックルバスターの通常ショットの一発一発がメガトンクラッシュの火炎弾に匹敵する威力でVAVAに着実にダメージを与えていく。

「これで終わりだよVAVA!!」

「ク…クク…まだだ…この一撃で砕いてやる!!」

武装を全て失ったVAVAはルインに殴り掛かる。

ルインはXアーマーに換装し、予めチャージしていたバスターをVAVAに向けた。

「ダブルチャージショット!!」

バスターから放たれた二発のチャージショットはVAVAを飲み込み、破壊した。

ルインはVAVAの残骸を見遣ると、動力室に向かうのであった。 

 

第68話:King

ルインがVAVAを撃破した一方で、エックスはシグマの元に向かう。

僅かに残ったメカニロイドを迎え撃ちながら、目の前の大きな扉を開くと、そこにはやはりシグマがいた。

「…シグマ」

「良く来てくれたな。心からお持て成しをして差し上げよう。我らが英雄の冥土への旅立ちだ……盛大にな」

「俺は英雄じゃない。そして冥土とやらに旅立つのも俺じゃない…冥土へと旅立つのはシグマ、貴様だ!!」

ドップラーを操り、ケインを苦しませ、世界をここまで荒らしたシグマをエックスは決して許しはしない。

「私はこの後、王となり、この世に君臨するのだから…」

「黙れ!!これ以上貴様に世界を荒らされてたまるか!!クロスチャージショット!!」

シグマが言い終わる前に予めバスターをチャージしていたエックスはクロスチャージショットを放つ。

それをシグマは跳躍してかわし、背中の武装から複数の電撃を放った。

「くっ!!」

エックスはヴァリアブルエアダッシュを駆使したフットワークで電撃をかわし、バスターのチャージを終えると撃つタイミングをずらしてチャージショットを放った。

「なっ!?ダブルチャージだと!?」

初撃の弾速の遅いチャージショットをかわしたシグマだが、着地直後を狙ったエックスの2発目のチャージショットに目を見開く。

サードアーマーを纏う今のエックスのバスターは放つタイミングによってクロスチャージショットとダブルチャージショットの二択を選択出来る。

シグマは威力の高いクロスチャージショットを主に攻めると思っていたが…。

「チッ!!だがぁ!!」

左腕に盾を出現させると、それでチャージショットを防いだ。

「なっ!?」

クロスチャージショットより威力が劣るとは言え、簡単に防がれたことに目を見開くエックス。

「貴様の戦闘データを元に造った盾だ。壊せんぞ!!」

「くそ!!」

此方に迫るシグマにショットを連射するが、シグマは腕をバスターに変形させ、火炎弾を放つ。

火炎弾はショットをすり抜けてエックスに直撃し、エックスの放ったショットはシグマの盾に防がれてしまう。

「ぐあっ!?」

直撃した火炎弾は燃え盛り、エックスの全身を包んだ。

「私の火炎は標的に到達すると瞬時に1000度まで一気に燃え上がる!!」

「ぐわああああ!!」

炎が消えるとエックスはふらつき、それを見たシグマが更に電撃を放った。

「休ませたりはせんぞ!!」

「ぐっ!!まだ…だあ!!」

何とか踏ん張り、ショットの連射で相殺しようとするが、1発外してしまう。

外してしまった電撃はエックスの右肩に直撃し、頑強なはずのアーマーが破壊されてしまう。

それを見たシグマが笑う。

「休ません!一片の勝機も与えん!!」

「っ!!」

追撃で放たれる電撃がダメージで動けないエックスに迫る。

「貴様の肉体っ!魂までをっ!打ち砕くまではなぁあ!!」

電撃が全弾、エックスに直撃するのと同時に爆発が起きる。

「今こそ我が闘争の勝利の時!!」

爆煙で視界が遮られるが、シグマは腕の一振りで煙を払う。

「う…おおおおおお!!」

何とかシグマの怒涛の連続攻撃に耐えきったエックスはクロスチャージショットで反撃するが、クロスチャージショットのデータも取られていたのか、シールドによって難なく防がれてしまう。

「やはり簡単には砕けんか、だがかなり効いているようだな。」

「ハァ、ハァ、ハァ…」

シグマの言う通り、エックスのダメージは相当のもので息が荒くなっている。

「お前の身も心も砕け散るのは時間の問題だな!!」

「く…っ!!」

再び放たれる電撃にエックスもバスターを構えた。

「貴様のバスターの連射速度では5発分しか相殺出来んぞ!!」

「なら、連射性能の高い特殊武器を使うまでだ!!レイスプラッシャー!!」

連射性能の高い特殊武器のレイスプラッシャーで電撃を相殺する。

「タイガードの武器か!?特殊武器のエネルギーは使い果たしたはず…いや、此処に残ったメカニロイドのエネルギーカートリッジを使ったのか…」

「そうだ、全ては貴様を倒すためだ!!」

「ふん、だが特殊武器があっても私の優位に変わりはないわ!!」

バスターから火炎を放つが、エックスもチャージフロストシールドで火炎を受け止める。

しかし氷の盾で火炎を防ぐのは難しく、熱で氷の盾が溶けていく。

「トルネードファング!!」

今度はドリルによる直接攻撃を仕掛ける。

遠距離からの攻撃が駄目なら直接攻撃で攻めようとしているのだろう。

「私に接近戦を仕掛けるとは愚かだぞエックス!!わしが最も得意とする分野で挑むとはな!!」

トルネードファングのドリルがシグマの盾を穿とうとするが、どれだけ出力を上げようと盾の表面を削ることすら出来ない。

「その程度の威力では私の盾に傷ひとつ付けられん!!」

「うわっ!!」

強引に弾き飛ばしたエックスにシグマは盾をブーメランのように投擲した。

「ぐはあっ!!」

腹部に命中し、痛みに膝をつくエックスだが、戻ってきた盾が背中に命中し、エックスはシグマの元に吹き飛ばされた。

「終わりだ!!」

手首のパーツがメリケンサック状の武器になり、吹き飛んできたエックスに叩き込んだ。

「がはあ!!」

まともに喰らったエックスは口から疑似血液を吐き出しながら吹き飛び、地面に倒れた。

「これで終わりだ。精も根も尽きたろう」

「ゴホッ!!…ぐっ!!まだだ…お前は俺が必ず…」

「まだ抵抗する意思を見せるか…ならばその脳天ごと魂を砕いてやるわ!!」

シグマのメリケンサックがエックスの顔面に繰り出される。

「(かかったな、一か八か。俺の命を囮にした罠に!!ゼロ、使わせてもらうよ!!)」

エックスは左肩のアーマーに忍ばせていたゼロのZセイバーを抜き放つ。

「それはゼロのセイバーか!?」

「この距離ならかわせない!!終わりだシグマ!!」

エックスはセイバーを勢い良く横薙ぎし、シグマの胴体を両断した。

「馬鹿…な…」

「ドップラーのデータを過信し過ぎたな。データを過信し過ぎたあまり、俺のデータにないゼロのセイバーに対処出来なかった。」

おまけにゼロのセイバーはルインのセイバーよりも刃渡りが長いために例えシグマがかわそうとしても間合いからは逃れられなかったろう。

ドップラーのデータを過信し過ぎたのがシグマの敗因だったのだ。 

 

第69話:Golden

ゼロのZセイバーの光刃をまともに喰らって胴体を両断されたシグマは悔しげに歯噛みした。

ドップラーのデータを過信し過ぎた結果、充分勝てるはずの相手に敗北したことに。

「くっ…まさかゼロのセイバーを隠し持っていたとは…しかし……まだだ……」

シグマの笑いに悪寒を感じたエックスが、シグマから離れた直後にシグマのボディは爆散し、城を大きく揺らした。

「わっ!わっ!!何!?」

動力炉を停止させたルインはエックスと合流しようとしたが、途中の爆発による振動に足を止めた。

「何だろう…」

凄まじい振動に不安を覚えたルインは一瞬戸惑ったが、急いでエックスの元に向かうのであった。

そして一方では何とか爆発から逃れたエックスはシグマの爆発によって空いた穴を見つめる。

「奴1人でこの爆発……。俺を道連れにするつもりだったのか……あそこまで“生”に執着していた奴が……」

しかし今までの戦いを振り返ると、あのシグマがそんな簡単に死ぬとはエックスにはどうしても思えなかった。

「となると、奴はまだ…」

静かにエックスが呟いた瞬間、下から幾つかの光が見えた……。

「来た!!」

穴から大型ミサイルが飛び出し、エックスは何とか直撃を受けずに済んだが、爆風で吹き飛ばされてしまう。

「くっ…やはり生きていたか」

「その通りだ!私は“死”など望まん!!生きて覇者となる道以外無用!!ドップラーに開発させた究極の戦闘用ボディ、“カイザーシグマ”の力を今この場で味わわせてくれるわ!!」

見た目はかなりの巨体だが、大きさ自体は最初の反乱で戦ったウルフシグマと比べれば大したことはない。

しかし今のシグマから放たれる威圧感はそれを遥かに凌駕されていた。

「どんなに強力なボディだろうと関係ない。お前はここで倒す!!クロスチャージショット!!」

エックスは両腕のバスターのチャージを終えると、シグマの頭部に向けてクロスチャージショットを放った。

それをシグマは即座にバリアを展開してそれを防ぐ。

「見事と言う他はないなエックス。ウルフシグマとの戦闘の経験を活かし、わしの頭部が弱点であることを見抜くとはな。だが、今のわしの性能はウルフシグマとは次元が違うのだ」

「それくらい分かっている!だがやるしかないんだ!クロスチャージショットで貫けないならゼロのセイバーならどうだ!!」

セイバーを構えてシグマに直撃攻撃を仕掛ける。

「力の差を理解していても戦うか、哀れな男だ…どれだけ足掻こうが貴様にどうにか出来る実力差ではないわーーーー!!!」

シグマのバスターのチャージは既に終わっており、斬り掛かるエックスに向けて放つ。

エックスに直撃するかと思われた瞬間。

「エックスーーー!!!」

HXアーマーに換装したルインが、エアダッシュでエックスとの距離を詰め、エックスを抱えるとシグマの砲撃から離脱した。

「ルイン!?」

「何!?ルインだと!?」

ルインの乱入に驚愕するシグマ。

ドップラーはルインのデータは一切採取していなかったために、ルインの復活を知らなかったのだ。

「大丈夫?エックス?」

「ああ、ありがとうルイン。助かったよ」

ルインはエックスを下ろすとシグマを見上げた。

「ルイン、貴様…再稼働したのか…かつてVAVAと戦い、敗れた貴様が現れたのには驚いたが…VAVAにさえ勝てなかった貴様が加勢に来たところで何が出来る?」

「シグマ…随分変わり果てた姿になったね。もう殆どメカニロイドと変わらないんじゃない?何時までも同じことの繰り返しじゃね」

「言いおったな、小娘が。人間でもレプリロイドのない狭間の存在の分際で」

「………」

「シグマ…!!」

その言葉にルインは少しの沈黙の後、ZXアーマーに換装するとZXセイバーを抜いた。

「狭間でも中途半端でも良いよ。そのお陰でエックス達に会えたんだから。私は今でも充分幸せなの…エックス、立てるよね?」

「あ、ああ…大丈夫だ」

ふらつきながらも何とか立ち上がるエックス。

「それにしてもさっきの攻撃…凄い威力だったよね…」

「ああ、パワーは今まで戦ってきたシグマの中でも間違いなく最強だ…」

先程の一撃も、もしルインが助けてくれなければ間違いなく消し飛ばされていただろう。

「でもパワーと防御力が高いということは反動と攻撃に耐えるために装甲が厚いはず…だから…」

エックスと目配せすると2人は同時に駆け出し、シグマの周囲を高速で動き回る。

「ぬう!?」

「当然スピードはガタ下がり!!いっけー!!」

「クロスチャージショット!!」

2人は縦横無尽に動き回りながら、チャージショットとクロスチャージショットを叩き込む。

「ぬう!!小癪な!!」

「ルイン!!合わせてくれ!!」

「OK!やろうエックス!!」

Xアーマーに換装するとバスターのチャージを開始するルイン。

そしてエックスは両腕のバスターをチャージしながら隙を窺う。

「(奴は攻撃の直後に隙がある。そこを突けば…)」

シグマからエックスとルイン目掛けてミサイルが放たれたが、2人はそれをかわすと同時にバスターを構えた。

「クロスチャージショット!!」

「ダブルチャージショット!!」

2人の放ったクロスチャージとダブルチャージのショットは1つとなり、巨大な光弾となってシグマに迫る。

「チッ!!そんな小細工で!!」

シグマもバスターから砲撃を放って相殺しようとするが、クロスチャージショットとダブルチャージショットの合体攻撃に掻き消される。

「な、何…!?ぬあああああ!!!」

光弾をまともに喰らったシグマが悲鳴を上げた。

「やった!!」

「ああ、流石のシグマもこれなら…」

クロスチャージショットとダブルチャージショットの合体攻撃をまともに浴びたのだ。

如何にシグマの今のボディが頑強でも一溜まりもないはずだ。

エックスとルインがバスターを下ろした時であった。

「ぬううう…!!今の一撃は危なかったが……耐えきったぞ!!」

瓦礫を吹き飛ばして現れたのは多少のダメージは受けたようだが、まだ健在のシグマである。

「なっ!?」

「嘘、あの攻撃に耐えきったの!?」

「消し飛べ!エックス!!ルイン!!」

再びシグマはバスターを構えると再び2人に向けて砲撃を放つ。

しかも今度は2つのバスター同時に放っており、シグマ版のダブルチャージと言ったところか。

エックス「くっ!!」

あまりの規模に避けられないと感じたエックスはディフェンスシールドを展開し、ルインとPXアーマーに換装するとバリアを展開した。

しかし、あまりの出力に二重のバリアも簡単に破られてしまい、エックスはルインを突き飛ばして離脱させるとそれをまともに喰らってしまう。

「エックス!?」

ルインの声が遠く聞こえ、エックスは自分の体がバラバラになっていくのを感じた。

「(体が崩れる…俺はここまでなのか…ルインが目覚めて…ようやくあの時のように笑いあえると思っていたのに…ドップラー博士やケイン博士もこれからなのに…嫌だ…!!まだ、終わりたくない…!!)」

『エックス、そうだ。諦めるでない』

「(ライト博士…?)」

『ここでお前が負ければシグマによって永遠に平和が失われてしまう。だから諦めないで欲しい』

「(しかし、俺はもう…)」

体を失いかけている自分にはどうしようもないとエックスは諦めかけていた。

『エックス、あれを見よ』

「(え…?)」

ライトが指差した方向には産声を上げる人間の赤ん坊の姿とそれをあやす母親の姿があった。

他にも元気に大地を駆け回る動物達の姿や今までの事件で関わった人々やレプリロイド達の祈る姿が映っていた。

そしてゼロ達の姿も。

「(こ、これは…?)」

『お主と出会い、そして救われてきた者達じゃよ。争いが起こり、死んでいった者達の数は確かに少なくはないのかもしれない。じゃが、お主の力で救われた者も数多く存在するのじゃ…エックスよ諦めずに立ち上がるのじゃ…シグマを打ち倒し、今を生きる人々とレプリロイドに明るい未来を…!!』

「(ライト博士……はい、俺は…)みんなの未来と笑顔のために戦う!!」

エックスのボディが急速で再構成され、サードアーマーは全ての潜在能力が解放されたことで純白から金色に変わる。

「な、何!?」

「シグマ、世界をお前の思い通りにはさせない。お前がどれだけ強くなろうとだ!!」

黄金の輝きを纏いながら、エックスは鋭い眼光でシグマを見据える。

「馬鹿な…確かに貴様は直撃を受け、バラバラになったはず…だが、貴様が如何なる“力”を手に入れてもわしは勝つ!!わしの野望は誰にも邪魔はさせん!!誰にも砕かせん!!」

シグマはエックスに向けてミサイルを乱射するが、エックスは全く動じない。

「クロスチャージショット!!」

アームパーツの潜在能力の解放により、チャージ無しによるフルチャージショットの連射が可能になったエックスはクロスチャージショットを連続で繰り出してミサイルを全て迎撃する。

「す、凄い!!」

「なっ…何だその力はーーーっ!!認めんぞーーーっ!!」

驚愕するルインとシグマ。

シグマはバスターによる砲撃をエックスに放つが、これもボディパーツの潜在能力の解放で強化されたディフェンスシールドで無効化された。

「ルイン!!」

「うん!!」

エックスがセイバーを構えてルインに叫ぶとエックスの考えを察したルインもZXアーマーに換装し、オーバードライブを発動させるとセイバーを構えた。

「俺はみんなの未来のために戦う。ルインやゼロ達との明日を築くために、俺は…俺達は…勝つ!!!」

潜在能力を解放したサードアーマーのエネルギーを全てセイバーに収束させたエックスはルインと共に斬り掛かると一撃で両断し、エックス達はすぐにこの場を離脱した。

両断されたシグマは爆発を起こし、城とその周囲を吹き飛ばす。

そしてシグマの城から脱出したエックス達は互いに無事であることを確認して安堵の息を吐いた。

「はあ、何とか勝てたね」

「今回のシグマも強敵だった。ライト博士が力を貸してくれなければ負けていたかもしれない。」

潜在能力を全て解放したサードアーマーも役目を終えたことで元の純白に戻っている。

「これでようやく平和が戻るんだね。さーて、戻ったら面倒な手続きをしないとね」

「あ、そうか…すっかり忘れてたけどルインは今まで機能停止していたんだよな…」

再びハンターとして活動するには様々な手続きをしなければならないため、ルインは溜め息を吐いていた。

「さて、帰ろうエックス…みんなが待っているよ」

「…ああ」

ルインの差し出した手を握るエックス。

こうしてまたゼロを含めた3人での活動が出来るのだと胸を弾ませた。

「ククク、残念だったな。お前達はゼロ達の元には戻れん…何故なら貴様らはわしのボディとなるのだからな」

「「っ!!」」

振り返ると突如空間が歪んでウィルスの状態となったシグマが現れた。

「シグマ…」

「まだ生きているか」

「当然だ愚か者共!!流石にあのボディが敗れるなど想定外ではあったが、そもそもこのわしにとってボディなど仮宿のようなもの。シグマウィルスこそが我が本体だ!!故にいくらボディを破壊しようとわしを倒すことなど不可能なのだ!!」

「本当に化け物に成り下がったね。あのシグマ隊長ともあろう人が」

吐き捨てるように言うルイン。

今のシグマを見ているとかつて最強のイレギュラーハンターとして人々から称賛されていたとは到底思えない。

「黙れルイン!!まずは貴様のボディを頂く。その上でエックスのボディを奪い、世界を手に入れてやる!!」

シグマはまず手始めにルインのボディを奪おうと迫る。

「ルイン!!」

「大丈夫だよエックス、ちゃんと研究室であれを手に入れたからさ」

焦ることなくルインは迫り来るシグマをZXセイバーで斬り裂いた。

「ぐあああああ!!?ル、ルイン…貴様、何をした…!?ぶ…物理的な手段で、ウィルスである…い…今のわしにダメージを与えられるはずが…」

シグマのウィルスの体が徐々に薄れ、空間の中に消えていく。

「これはドップラー博士が完全にシグマウィルスに侵される前に作成した対シグマウィルス用の抗体ウィルスだ。これを使えばウィルスの状態のお前にもダメージを与えることが出来る」

毒を以て毒を制すと言う言葉通り、ワクチンに対してはそれなりの対抗力を持っていてもウィルスに対する対抗力は皆無のためにシグマはかなりの早さで消滅していく。

「こ…抗体ウィルスだと!?…我が…ウィルスに侵されていながら…そ…そんな物を…か…完成させていたとは…おのれドップラーめ…!!」

「ドップラー博士はね、最後まであなたに抗ったんだよ。自分を失うギリギリまでね。あなたが抗体ウィルスの存在を知らないのがその証拠」

「き、消える…わしの…プ…ログ…ラム…」

「消えろシグマ、もう二度と蘇るんじゃないぞ」

消滅していくシグマに対して冷淡に言うエックス。

その後、シグマは空間に溶けるように消滅した。

「………ふう、これでようやく終わったね。」

「そうだな、流石のシグマも本体のシグマウィルスを消去されては蘇ることなど出来ないはずだ。」

「うん、さあ!帰ろう!!」

「ああ、みんなの所に」

2人は手を繋いで仲間の元へと向かうのであった。

これからの未来が希望に満ちていることを信じて。 

 

第70話:Peace Time

ドップラーの反乱はシグマの策略によって起こされたことが判明し、新たなボディを持ったドップラーはしばらくの間、ハンターの監視が付くことになったが、再びケインの助手として働くことになる。

そして今夜は…。

【ルイン、復帰おめでとう!!】

「ありがとうみんな!!」

ルインを知る誰もが強く願っていた彼女の復活が遂に叶ったことに全員のテンションは最高潮に上がっていた。

「私のためにこんなパーティーまで開いてくれてありがとう!!さあ、ソニアもこっちに来て一緒に食べよう?」

[ミーーー♪]

沢山のスイーツ類に満面の笑顔を浮かべるルインとソニアと呼ばれたサイバーエルフ。

この名前はエックスが名付けた名前で、サンダーソニアと呼ばれる花から取ったのだ。

サンダーソニアの花言葉は“純粋な愛”・“福音”・“祈り”・“祝福”・“共感”・“愛嬌”・“望郷”。

この世界に生まれた命として幸せに生きて欲しいと言う願いを込めてエックスは名付けた。

因みにソニアの親代わりはエックスとルインであり、ソニアの世話をする姿はまるで本当の家族のようだ。

「それにしても本当に良かったなあ、ルインがハンターに復帰して…」

「ああ…今までむさ苦しかった我が第17部隊にようやく華が…俺は…嬉しい…!!」

男性型のハンターに結構人気があるルインの復帰を心から喜ぶ者達。

中には華が部隊に戻ってきたことに感涙する者も。

【あんた達、ちょっと表に出なさい】

指の関節を鳴らしながらハンター達を引き摺る女性ハンター達。

【でやあああああううううううっ!!!!】

少しして男性ハンター達の断末魔の叫びが聞こえてきたが聞かなかったことにしよう。

「さあ、再び3人揃った記念にわしとドップラー共同製作の特製のスペシャルドリンクじゃ」

「さあ、3人共。遠慮なく飲んでくれ」

「え?」

「何…これ…」

「おい、爺共。本当に害は無いんだろうな?」

エックス達3人のグラスに並々と注がれた濁った緑色の液体を見つめる3人。

「そのドリンクに害はない。」

「わしらが手間暇かけてそのドリンクを作ったんじゃぞ。ささ、ぐいっと」

「「「………」」」

3人はマジマジとケインとドップラーの共同製作のスペシャルドリンクを見つめ、覚悟を決めたのか一気に飲み干した。

「………ぐっ…不味い…!!」

「し、死ぬ……!!」

あまりの不味さに倒れ伏すゼロとルイン。

エックスはかつてケインとルインよりも長く暮らしていた為か、こういうのに耐性があったために耐えきれた。

「どうじゃ、青汁風味のスペシャルドリンクの味は?」

「天にも昇るような味じゃろう」

「(ケイン博士、ドップラー博士。確かに有害な物は何も入ってはいませんけど味が酷いです。ルインに至ってはあまりの酷い味に痙攣を起こしてますよ…)」

「いかん!!ルインの動力炉が停止しかけている!!」

「ゼロ隊長もヤバイぞ!!早くメンテナンスルームに運ぶんだ!!」

パーティーは大騒ぎになるが、みんなの表情はとても明るい物である。

「ん?」

ふと、エックスが向こうを見遣ると、会場の隅で軽く摘まんでいるビートブードの姿があった。

スイーツ類を沢山食べて満足したのか眠ってしまったソニアを抱きながらビートブードに近付いた。

「ビートブード」

「あ、エックス……隊長……」

「君も来ていたんだな」

「ええ、ケイン博士にワームの破片も取り除いてもらったので…」

それだけ言うとビートブードは少しの沈黙の後、エックスに頭を下げた。

「ビートブード?」

「エックス隊長、ゼロ隊長にもですが、改めて謝罪します。本当にすいませんでした。ワームによって抑え込んでいた気持ちが表面化して、俺はゼロ隊長に…本当に頭では分かってたんです。ゼロ隊長は正しいことをしたって、ゼロ隊長の電子頭脳に兄貴の人格プログラムをインプットしたってそれは兄貴じゃないって。でもそれでも…俺にとっては…たった1人の兄貴で…!!」

「分かっているよビートブード。君の気持ちは分かるよ、大切な人を失う悲しみは…俺にも痛い程分かるから…」

エックスも大切な者を失った経験があるからビートブードの気持ちは痛い程に分かる。

「エックス隊長…」

「ビートブード、君のしたことは確かに許されないことかもしれないけど、君は此処に戻ってきてくれた。俺はそれで充分嬉しいよ…これからもずっと今までと同じように君の力を平和のために役立ててくれ。それが君の上司として君に与える罰だ」

「っ!!」

エックスの温情にビートブードは深く頭を下げる。

ビートブードはエックスの部下として自分の力を最大限に使うと決意するのであった。 

 

第71話:Genius

今現在ルインがいるのはレプリロイド工学が盛んな研究所である。

再稼働してからは、今までの知り合いをソニアを伴って訪ねているのだ。

最初の大戦前から通っていたので、最早この研究所の造りは把握している。

はてさて、親友の彼女はどこにいるのだろうか?

ふと、ある研究室に入ると見慣れた金髪の女性…エイリアがいた。

「ヤッホー、エイリア」

「え!?あなた、ルイン!?」

エイリアはルインの姿を見ると同時にまるで亡霊を見るような目で自分を見つめる。

そういう風に見られるのは地味にショックだ。

「あ、あなた、どうして…?まだ復活の目処は立っていないはずなのに…」

ケインにルインの状態を聞かされていたエイリアはルインが復活するにはまだまだ時間がかかるといわれていたのだが、なら目の前にいるルインは一体何なのだろう?

「色々あってね、何やかんやで復活したの」

苦笑しながら言うルインにエイリアは微笑みながら抱きしめる。

「本当に良かったわ…私は唯一無二の親友を失ったと思っていたんだから」

「ありがとう。」

「それにしても…ルインが復活したことをDrは黙っていたのね…本当に子供っぽいんだから」

この場にいないケインに対して呆れたように言うエイリアにルインは苦笑しか出来ない。

「それにしてもエイリアは全く変わらないね」

「レプリロイドが老けるわけないじゃない。それに定期メンテナンスを面倒臭がってサボる誰かさんとは違います」

「ふぐっ!!サボるのは事実だから言い返せないのが悔しい…」

「いい加減、定期メンテナンスを受けなさい。そしてワクチンを飲めるようになりなさい。昔あなたに特製のオブラートを渡したじゃない」

「オブラートがあっても苦いのは嫌!!」

嫌々と首を振るルインにエイリアは苦笑を浮かべる。

どうやら彼女の味覚は死んでも治らないらしい。

「それからルイン、あなたのハンターとしてイレギュラーを倒そうとする姿勢は凄く立派だと思うけれど、それで死んだら意味がないわ。」

「うっ…」

「あの時のエックスは本当に辛そうで…正直見ていられなかったわ」

「あ…う…」

最初の大戦が終わってエックスは1人で静かに泣いていた。

それを見たエイリアはエックスにハンカチを差し出すとお疲れ様とだけ伝えた。

多分あの時のエックスに下手な慰めは逆効果だと思ったから。

「は、反省してます…」

「本当に反省してるのあなた?」

ジト目で見つめるエイリア。

実はエイリアはルイン復帰までは唯一、エックスとかなり親密な女性型だったりするので仲はどうなるのか噂されていたりする。

何とか逃れられないかと頭を悩ませた時であった。

「エイリア、前に君に渡した資料なんだが…」

落ち着いた声。

紫のアーマーと切れ長の紫色の瞳。

そして最も特徴的なのは、白衣。

知的な雰囲気を漂わせる初めて見るレプリロイドにルインは首を傾げた。

「あら?ゲイトじゃない。どうしたの?」

「ああ、前に渡した研究の資料を返して欲しくてね。それで彼女は?」

「彼女はルイン。イレギュラーハンターで第17番精鋭部隊に所属している特A級ハンターよ」

「あ、後、第17精鋭部隊の副隊長をやってます」

「特A級ハンターだって?あのエックスとゼロと同じか、女性型だというのに凄いな」

「ああ、思い出した。ゲイトってこの研究所きっての天才科学者だって聞いてるよ。」

確か噂で聞いたことがある。

ドップラーをも上回る才能を持ち、ライト博士の再来ではないかと言われているほどのレプリロイドだ。

「天才科学者だなんて大袈裟だよ。まだまだ僕は未熟者さ。君の戦闘スタイルは?噂を聞けばエックスとゼロはバスターとセイバーだろ?」

「あ、エックスが使っていたセイバーは私が使っていた物なの。今は返してもらっていて、私の武器はZXセイバーとZXバスター。変形させることでセイバーとバスターに切り替えて遠近両方に対応出来る仕組みなの。どちらもチャージ可能なんだ」

「へえ、このサイズでチャージ機能までついているのか…セイバーにチャージ機能を付加させることで更なる攻撃力の強化を図ったのか…」

興味深そうにルインの武器を見つめるゲイト。

「うーん、良く分かんないけど多分。」

「そう言えばルイン。あなたの隣にいる物体はなんなの?」

ルインの隣に浮かぶソニアを見つめながら言うエイリアにルインはムッとなる。

「物体じゃないよ。この子はサイバーエルフ。プログラムが実体化した生き物なの」

「プログラムが実体化した生物?信じられないが凄いエネルギーを発している…こんな小さな身体のどこにこんなエネルギーを秘めているんだ…実に興味深いね……」

ゲイトの興味がソニアに向けられ、怖くなったのかソニアはルインの後ろに隠れた。

「一応言っとくけど、この子を調べたいとか駄目だからね」

「なっ!?…くっ、頼む前に釘を刺されたか」

「けど、ルインの体も解析不能な部分も多いのよ。あのケイン博士ですら解析出来ない部分が沢山あるんですって」

「そうなのか…」

「それにしてもあなたはまた新しいプログラムを組んだんですって?あなたの組んだプログラム。私では解析出来ないわ」

「へえ、そんなに凄いんだ。」

プログラムを見せてもらうが、エイリアでも解析出来ないプログラムをルインが分かるわけがない。

しかし親友の解析能力を知っているルインからすれば、エイリアでも解析出来ない程のプログラムを作り上げることが出来るゲイトの実力が分かるというものだ。

「でも何でゲイトはそんなに高度なプログラムを造るの?」

「僕はね、エックスやゼロ、君のような優れたレプリロイドを造りたいんだ。」

「…今のプログラムでも充分優れたレプリロイドが造れると思うけど」

今見せて貰っているプログラムは、恐らくケインかドップラークラスの科学者でようやく解析出来るレベルだろうに、これ以上となると想像出来ない。

「いや、まだだ。この前ケイン氏に渡したが解析されてしまった。これでは偽物しか造れない。」

「…君はどうしてそんなに上を目指すの?」

普通なら充分過ぎるくらいのプログラムを組めると言うのに何故更に上を目指すのかが、ルインには分からない。

「ああ、エックスやゼロや君のような優れたレプリロイドが沢山造られれば、この世界は更に栄えるはずなんだ。人間やレプリロイドの犠牲も少なくなり、平和の維持にだって貢献出来るはずさ!!」

瞳を輝かせて言うゲイトを見てルインは笑みを浮かべた。

「そっか、頑張ってねゲイト。私はゲイトの夢を応援するよ」

「ああ、ありがとう」

握手を交わす2人をエイリアは微笑みながら見守っていた。

それはまだ、あの悪魔により全てが狂い始める前の、幸せな一時であった。




おまけ

「そう言えばエイリアは何をしていたの?」

ゲイトが部屋から立ち去ったのを見て、ルインはエイリアがこの部屋で何をしていたのかを尋ねる。

「今回のドップラー博士の事件の時にエックスが使っていた強化アーマーの解析よ。エックスから送られたデータが無傷で助かったわ…今はまだ完全に解析出来ていないけれど、もし解析出来ればエックスの力になるはずよ。本人はあまり好まないかもしれないけどね」

「いや、きっとエックスも分かってくれるよ…ただ、もう争いが起こらないのが一番なんだけれど…」

「…そうね……」

2人は外の景色を見つめながら、どうかこれ以上の争いが起こらないことを願った。 

 

第72話:Falling in love

現在、エックスとルインはトレーニングルームで白衣を身に纏っているエイリアに見守られながら模擬戦を行っている。

『模擬戦を始める前にエックスに幾つか言っておくことがあるわ。サードアーマーの復元が出来たんだけど、やっぱり解析が不完全で完璧ではないの。この模擬戦はどれだけサードアーマーの再現が出来たかのテストでもあるから、2人共、お願いね』

「「了解!!」」

エイリアが復元したレプリカのサードアーマーを身に纏ったエックスがルインにチャージショットを放つ。

「たあっ!!」

対するルインもZXセイバーでそれを斬り裂いて掻き消し、バスターに変形させてを構えるとショットを連射する。

エックスはそれをエアダッシュを駆使して回避し、特殊武器を繰り出す。

「レイスプラッシャー!!」

タイガードの特殊武器を放ち、ルインに回避行動を取らせるとチャージを終えたバスターを大型ドリルに変形させる。

「トルネードファング!!」

「フリージングドラゴン!!」

LXアーマーに換装したルインはチャージしたハルバードを振るって氷龍を召喚し、エックスに放つ。

チャージトルネードファングのドリルと氷龍は激突し、ドリルによって氷龍がガリガリと削られていく。

「トライアードサンダー!!」

氷龍が砕けたのと同時にチャージトライアードサンダーを繰り出し、ルインもFXアーマーに換装してチャージしたナックルバスターを構えた。

「メガトンクラッシュ!!」

チャージトライアードサンダーの拳とFXアーマーのメガトンクラッシュが激突し、あまりの衝撃にサードアーマーが耐えきれず崩壊してしまう。

「「あっ!!?」」

『……耐久性に問題ありね…ありがとう、2人共………』

エイリアのガッカリしたような声色に何故か此方が悪いことをしたような感じを覚えた。

『エックス、耐久性以外にもサードアーマーに問題がないかを聞きたいから来てくれる?』

「ああ、分かった。それじゃあルイン。次の仕事までゆっくり休んでくれ」

「うん」

エックスがトレーニングルームを後にしてエイリアの元に行き、ルインはライフボトルを口に含んだ。

「ルイン副隊長、休憩中に失礼します」

「ディザイア?どうしたの?」

声に反応してルインは振り返ると、ライフボトルを飲むのを止めて珍しい来訪者を出迎える。

ディザイアは手に資料の束を持っていた。

「資料をお届けに来ました。他の者がお忙しそうでしたので、私が代わりに…」

ディザイアは現在のハンターベースで貴重なA級ハンターのため、隊長や副隊長のエックスやルインの次に多忙な職務に追われるディザイアは滅多にルインと会うことはない。

だが、たまにはルインの顔を見たいと言うその気持ちから、ディザイアは偶然廊下で会ったハンターに頼んで、資料を届ける役目を買って出たのだ。

「ありがとう。ごめんね、ディザイアも忙しいのに面倒かけちゃって……」

ルインが資料を受け取りながら言うと、ディザイアは気にするなと言いたげに手を振る。

「いえ、お気になさらないでください。部隊の運用に必要なものですし、副隊長が喜んでくれれば私も嬉しいですから」

「優しいんだね。ありがとうディザイア」

ルインは微笑み、それを見たディザイアはその笑顔に胸が高鳴る。

彼はルインに恋をしていた。

ディザイアが知る特A級ハンターは傲慢で部下をゴミのように見る者ばかりだったが、ルインは違った。

明るく、気立てが良く、常に笑顔を絶やさない、花のような可憐な女性。

だが訓練の時は非常に厳しく、部下達の泣き言は一切許さないが、それは立場上仕方の無いことだ。

公私混同しないところも彼が惹かれるところだ。

ルインは、ディザイアが今まで特A級ハンターに抱いていた暗いイメージを払拭した。

ルインに対して感じている感情が恋愛感情というものだと、彼が自覚するのにそう時間はかからなかった。

「(しかし彼女は特A級ハンターで、副隊長の身分。それから最初の大戦で多くの戦果を挙げ、前の事件でもエックス隊長と共にあのシグマを打ち倒した方だ…)」

ただのA級ハンターで戦果も並の自分ではあまりにも不釣り合いすぎる。

だが、ルインを見つめ、会話を重ねていくうちに、次第に彼女への恋慕も強くなっていく。

ディザイアはルインがもっと明るく笑える日が早く来るように頑張りたいと、サーベルを振るい続けている。

「さてと、そろそろ部屋に戻るよ。仕事があるし、ソニアも待たせてるからね」

「ソニア…あのサイバーエルフですか」

彼が初めてソニアを見た時、あの子はまだ赤ん坊だったが、エネルゲン水晶と食物の摂取によって大分成長した。

現在では可愛らしい容姿のためにハンターベースの…主に女性型レプリロイドのマスコットとなっていた。

現在はルインと共に出撃し、彼女のパートナーとして戦っている。

しかしディザイアは常々疑問を感じていた。

傷を癒したりすることが出来たりするのは勿論、あんな小さい身体だと言うのに穴に落ちかけた重量級のレプリロイドを軽々と引き上げたり、火炎弾や電撃弾、凍結弾の嵐をイレギュラーに見舞う。

目下、特殊0部隊隊長のゼロと並んでパワーファイターではなかろうかとイレギュラーハンター達の間で囁かれている。

「う~ん、まあソニアは少しお転婆だからねえ」

あの戦いぶりをお転婆で済ませられるのは多分エックスとルインくらいしかいないだろうが。ふと、ディザイアが床を見ると1枚の紙切れが落ちていた。

それに気づいたルインは、ディザイアの視線を追うと慌てて拾う。

よく見ると紙切れは写真だったようで、写真にはエックスとルインが並び、中央にソニアが写っている。

「写真ですか」

「うん。ケイン博士が撮ってくれたの、家族写真みたいな感じ」

ルインは写真を見つめながら穏やかに告げた。

写真の中のルインはエックスと同じで優しく微笑んでいる。

「あの、副隊長…」

「何?」

「あなたは……その、エックス隊長のことがお好きなんですか?」

ディザイアは思い切って、ストレートに聞いてみた。

ルインのような色恋沙汰に疎いタイプには遠回しに聞くよりもストレートに聞いた方がいいと判断したからだ。

「え?…う~ん…エックスは私の憧れの人…かな…?多分」

「憧れ…ですか?」

「うん、私がハンターになった時から…ね」

ルインの言葉の意味が分からなかったディザイアは首を傾げた。

ルインがエックスより後にハンターになったのは知っているが、当時のエックスはB級でルインは特A級。

ランクは当然彼女の方が格上で実力とて同じ。

ルインがエックスに憧れる要素など何処にも無いはずだ。

「エックスはね…心が強い人なの。どんなに苦しい時もどんなに悲しい時もどんなに悩んでいる時も最後の最後には必ず乗り越えてしまう人…私はそんなエックスに憧れてるんだ。異性として好きかどうかはまだ分かんないや、でもエックスと一緒にいれば不思議と安心出来て、幸せな気持ちになれるんだ」

「(…それが“愛”という感情なんですよルインさん)」

ディザイアは、ルインとエックスを見ると互いが好意を抱いているのではないかと察していた。

この返答はある程度予想していたものの、いざ本人の口から言われると、とても辛くて悲しかった。

内面の辛さを顔に出さないよう、あえて笑おうとする。

ディザイアの胸中など知らないルインは、照れた表情をしながら、写真に視線を戻した。

「何となく…」

「え…?」

「何となく副隊長の言いたいことや気持ちが分かる気がします。私も同じですから…」

「え?何々?君、好きな人がいるの?」

それを聞いたルインは興味津々といった様子でディザイアに聞いてくる。

第17精鋭部隊副隊長であり、歴戦の特A級ハンターとはいえ、こういったところはやっぱり十代後半くらいの年頃の娘である。

「あ…はい……」

彼なりに遠まわしに想いを伝えたつもりだったのだが、鈍感なルインには伝わらなかったようである。

ルインがディザイアを異性としてそういう対象として見ていないのだから、仕方のないことではあるが。

「ねえねえ、ディザイアが好きな人って誰なの?私に教えてくれる?」

ルインが好奇心で目を輝かせながら、ディザイアの顔を見上げてくる。

「そ、それは……」

こんなに近くで彼女の顔を見たのは初めてだったので、ディザイアは動揺する。

「わ、私の好きな人は……」

「うんうん、誰なの?」

目の前にいるあなたですと、彼は言おうとしたが…。

「……黙秘させて頂きます」

恥ずかしくて土壇場で言えなかった。

「え~?」

ルインは頬を膨らませて不満そうに怒ってみせる。

「す、すみません………」

困った顔をするディザイアがおかしいのか、ルインはクスリと笑う。

「まあいいや。話してくれる気になったら教えてね?楽しみにしてるからね!!」

「……はい。(ルインさん、すみません。今はまだ言えません。もっと強くなったら…あなたの隣に立てるようになったらその時は必ず言います。ルインさん、私はあなたを愛しています…と。)では、私はそろそろ戻ります。ルイン副隊長も頑張ってください」

「ありがとう。君もあまり無茶はしないでね?ゼロみたいに後先考えずの無鉄砲じゃないから大丈夫とは思うけどね」

「はい」

彼はルインの言葉に柔らかく笑うと、身を翻す。

「」これからも頑張ってね、ディザイア」

肩越しに見ると、ルインが笑顔で見送っている。

それに応えるように会釈して、部屋から出て行った。

「(見ていてください、ルインさん。私はあなたを必ず守れるくらいに強くなってみせます。そしてあなたが幸せに暮らせる世界を築いてみせます)」

ディザイアはサーベルを握り締め、心に固く誓った。

全ては愛する人のために。 

 

第73話:Counterpart

任務を終えてハンターベースに帰投している途中、ゼロは久しぶりにレプリフォースの友人であるカーネルと会った。

「カーネル、久しぶりだな」

「む?ゼロか…」

挨拶のためにカーネルに近づいてみると、見知らぬ少女型レプリロイドが彼の後ろにいるのを見付けた。

「そいつは誰だ?」

「ああ、ゼロと会うのははじめてだったな。ゼロ、私の妹のアイリスだ」

「よ、よろしくお願いしま…す…?」

そういえば、カーネルは元々1体のレプリロイドの半分から出来ていて、もう半分のパーツから出来た妹がいるということを聞いたことがあった。

カーネルに促されて、彼の後ろに隠れながら恐る恐る出てきたのはカーネルとは似ていない色恋沙汰に疎いゼロから見ても可愛らしいと思える容姿のレプリロイドだった。

しかし彼女はゼロを見ると何故か硬直した。

「おい、どうした?」

「アイリス?」

カーネルもアイリスの硬直を不思議に思ったのだろう。
疑問符を浮かべている。

「あ、すみません…あなたが私の友人に似ていたので…」

「友人?」

「はい。イレギュラーハンターであなたと同じ赤いアーマーの長い金髪の女性なんですけど…」

アイリスの言葉を聞いて、それに該当するレプリロイドはあいつしかいないだろう。

「ゼロ~」

背後からゼロに抱き着くルインだった。

噂をすればだ。

「ルイン、後ろから抱き着くのは止めろ」

「いいじゃん。私達親友でしょ?」

「人目を考えろ」

「いひゃいいひゃい!!」

ルインをひっぺがすと頬を容赦なく抓るゼロに涙目になるルインであった。

「うぅ…痛いよう…」

抓られた頬を擦るルインにゼロは深い溜め息を吐いた。

「お前の友人ってのはもしかしなくてもこいつか?」

親指でルインを指差すゼロ。

「は、はい…」

「ははは…アイリス、ゼロは見た目は怖いがいい奴だ。安心しろ」

「そりゃないだろ、カーネル…」

そう言われて、イレギュラーハンターはよく一般のレプリロイドに怖がられることがあるのを思い出した。

イレギュラー化をしたレプリロイドを処分する職業柄もあるのだろうが、イレギュラーと一緒に暴れ回る彼らをよく思わない人も少なくはない。

「それにしてもお前にも妹がいるとは知らなかったぞ。よく似ている」

カーネルがゼロとルインを見比べて2人を兄妹だと勘違いしたようだ。

「妹じゃねえ。こいつとはたまたま似ているだけだ。目の離せない後輩ってとこだ」

「ええ~、私はゼロのこと頼りになるお兄ちゃんのように思ってたんだけどな」

その言葉にゼロは目を見開いたが少しだけ微笑んで彼女の頭にポンと手を置いた。

頭を撫でられているルインもルインで嬉しそうにしている。

「ゼロ、ルイン」

「エックス、あそこにいたわ」

ゼロとルインを捜していたエックスとエイリアが、声をかけてくる。

「エックス…それにエイリアか?」

エックスと、そして今では完全にハンターベースに馴染んだ科学者兼臨時オペレーターのエイリアの姿にゼロは顔を向けた。

「彼は?」

カーネルに初めて会うエックスはゼロに尋ねるが、それよりも早くカーネルが答えた。

「私はレプリフォースのカーネルだ」

「カーネル…あのレプリフォースの…私は第17精鋭部隊隊長エックスです」

「あのエックスか…貴殿の武勇伝は聞き及んでいる。過去の大戦を鎮圧し、あのシグマを下したと。貴殿さえ良ければの話だが、是非手合わせしたいのだが」

「あら?丁度良いじゃない。新たに復元したサードアーマーの性能チェックも出来るし」

「感謝する。訓練所を借りるぞ」

「え?え!?」

訓練所に向かうカーネルに引っ張られていくエックスと、それを追い掛けるエイリア。

「…せめてエックスの了承を聞いてから連れていけよカーネル…」

「す、すみません…兄が…」

「まあ、大丈夫だろう。エックスもあいつみたいな性格のタイプはよく知っているしな。それよりもアイリス。こいつと友人だってことはこいつが確実に迷惑をかけているんだろうが、これからもこいつをよろしく頼むぞアイリス」

「は、はい」

「ちょっとゼロ!!何その言い方!!?寧ろ私がアイリスのお世話をしてるんだから!!」

「それは有り得ないな」

「酷い!!ゼロの馬鹿!!」

アイリスはゼロとルインの会話を見ながらゼロは思っていたよりも怖い人物ではないとほっとした。

せっかくなのでエックスとカーネルの模擬戦を見ていくことになった。

イレギュラーハンターが誇る第17精鋭部隊の隊長とレプリフォースが誇る陸軍士官の模擬戦にかなりのハンターが見物に来ていた。

「それではよろしくお願いします」

エックスはエイリアが再び復元したサードアーマーを身に纏い、特殊武器を幾つか装備する。

「お互い正々堂々と勝負しよう」

対するカーネルもまたビームサーベルを構え、エックスと相対する。

「それでは模擬戦開始!!」

エイリアが叫ぶとカーネルはビームサーベルを構えながらエックスに凄まじい速さで斬り掛かって来る。

「(速い!!)」

想像以上の速さに一瞬目を見開くが、エックスもこれと同等のスピードを持つレプリロイドと戦ったことがあるため、すぐに対応出来た。

「フロストシールド!!」

予めチャージしていたバスターを構え、チャージフロストシールドで氷の盾を出現させると、カーネルの斬撃を受け止める。

「むっ!?」

「トルネードファング!!」

盾で防いで、素早く次の行動に移行するエックス。

チャージトルネードファングでバスターを大型ドリルに変形させるとカーネルに突き出す。

「チッ!!」

しかしカーネルも虚を突かれたとは言え簡単に喰らってくれるはずもなく、サーベルでドリルを受け止める。

「う…おおおお!!!」

「ぬうううう!!!」

力比べの状態になるが、どちらも負けていない。

「凄い、フルアーマー状態のエックスと互角なんて」

「レプリフォースの陸軍士官で最高司令官のジェネラルに次ぐ実力者だからな。あれくらいは出来て当然だ」

力比べでは埒が空かないと判断したエックスは距離を取り、バスターを構えた。

「でやあ!!」

カーネルに向けて放たれるチャージショット。

しかし弾速が遅いためにサーベルで簡単に斬り裂かれて余裕で対処されてしまう。

「この程度で…何!?」

カーネルがエックスの方を向いた時には既にもう1発のチャージショットが放たれていた。

「ダブルチャージだ!!」

時間差で放たれたチャージショットは見事にカーネルに直撃する。

復元されたサードアーマーはクロスチャージショットを放つ機能こそは失ったが、ダブルチャージは放てるために射撃型故に追撃を苦手とするエックスの弱点を多少補える点は変わっていない。

「トライアードサンダー!!」

エックスがチャージトライアードサンダーの拳を地面に叩き付けると電撃が地を走り、カーネルに迫る。

「グランドクラッシュ!!」

対するカーネルもサーベルによる衝撃波を繰り出して反撃すると、電撃と衝撃波が激突し、威力は互角だったのか相殺される。

「凄い、兄さんと互角に戦えるなんて…やっぱりエックスさんは凄いんですね」

「うん、今回の特殊武器を近接戦闘でも扱える物にしてるのもあるんだろうけどね」

「よし、サードアーマーの調子は良さそうね。完全に復元出来なかったのは不満だけどそれでも実戦での投入は問題無さそうだわ」

「生き生きしてるなエイリア…」

科学者であるためか戦闘に出しても問題ない代物が出来て嬉しいのだろう。

普段は知的で物静かな彼女の目が嬉しそうに輝いている。

彼女は普段、如何にも仕事が出来る女性で異性を寄せ付ける雰囲気がないが、こういう表情や微笑を浮かべた時は余程の鈍感でない限り男性なら目を引く程である。

その証拠に周りの男性型のハンター達の視線が釘付けである。

「なあ、相棒。俺はな…第17部隊に配属されて心から良かったと思うよ。女性隊員は少なくてむさ苦しいけど、ルイン副隊長や臨時オペレーターとは言えエイリアさんのレベルは滅茶苦茶高いしな…」

「ああ、全くだ。あのレベルの高さを他の女性隊員も見習って欲しい位だぜ」

【あんた達、もう一度表に出な】

女性隊員に引き摺られていく男性隊員達。

【でぇえええええやあああああうぅぅぅっ!!!】

途中の断末魔は聞かなかったことにしよう。

模擬戦の結果は引き分けに終わった。

カーネルは満足そうにアイリスを伴って帰っていき、そしてゼロとアイリスの邂逅、エックスとカーネルの模擬戦からしばらくしてアイリスはハンターベース本部にいた。

アイリスの研修場所である。

「(うぅ……。緊張するなぁ……)」

せめて配属先がルインのいる部隊であるようにと願いながら、アイリスは足を動かした。

そしてアイリスの願い通り、研修の配属先はルインのいる第17精鋭部隊であった。

「レプリフォースから研修生としてやって来たアイリスです。今日からお世話になります。至らない点も多々ありますが、これからよろしくお願いします!!」

勢いに乗せて全部言うと、アイリスは深くお辞儀した。

そうして頭を下げていると、誰かが近づいてきて、そっと手を差し出した。

それにアイリスも自分の手を重ね返し、ゆっくり視線と頭を元の位置に戻していくと親友の姿があった。

「こちらこそ、私は第17精鋭部隊副隊長のルインです。今日からよろしくお願いしますねアイリス」

「…………」

普段のぽややんとした雰囲気は無く、凛とした声と兄と同じように上に立つ者の威厳を持った親友に目を見開いた。

「…アイリス?」

硬直しているアイリスに疑問符を浮かべるルイン。

「あ、す、すみません。ルイン副隊長」

慌てて手を握り返すアイリスにディザイアが苦笑しながら歩み寄る。

「緊張するのも仕方がありませんよ副隊長。彼女にとってここは初めて訪れる場所なんですから」

「あ、あの…あなたは……?」

「これは失礼しました。私は第17精鋭部隊に所属しているディザイアと申します。ハンターランクはA級。以後お見知りおきを、アイリスさん」

「ディザイア…“希望”ですか、素敵なお名前ですね」

ディザイアの紳士的な対応に安心したアイリスは彼の名前の意味に気づき、褒めた。

「ふふふ…何だか照れますね…ありがとうございますアイリスさん。」

照れ隠しに微笑むディザイアにアイリスも微笑んだ。

他の隊員達もディザイアに続くようにアイリスの元へやって来て、次々と手が差し出された。

予想外の友好的な歓迎に、アイリスはすっかり面食らってしまった。

パンッ!!

強く手を叩く音が響いた。

振り返ると音の発生源はルインであった。

「あなた達、彼女への質問なら後にして、今から戦闘訓練をしますから戦闘員は今すぐトレーニングルームに向かうように」

【了解!!】

ルインが言うと戦闘員達は敬礼し、何事も無かったかのようにトレーニングルームに向かいだした。

「(す、凄い…)」

これにはアイリスも唖然とした。

時々レプリフォースでカーネルの訓練を見学していたことがあり、その時に見た兄の統率力にも驚かされたが、ルインの統率力にも凛とした力強さが感じられた。

「(ルインって凄いんだ…そうよね…あのエックス隊長やゼロさんと対等の人だし…)」

副隊長のルインがこれなら隊長のエックスは…。

「(あれ?)」

そういえばエックスの姿が影も形も見当たらない。
アイリスはディザイアに尋ねる。

「あの…エックス隊長はどちらに?」

「エックス隊長ですか?エックス隊長ならエイリアさんの元でアーマーの機能チェックをしていますよ。上手く行けば更にエックス隊長の戦闘力が高まりますからね。」

「エイリアさん…あの人は科学者レプリロイド…なんですよね?」

「ええ、彼女は高い情報処理能力をケイン氏に買われて有事の際は臨時オペレーターとして配属されます。科学者としても非常に優秀でケイン氏やドップラー氏でも難航したエックス隊長の強化アーマーの復元まで可能とする程です」

「そ、そんな人が…やっぱり精鋭部隊なだけあるんですね…」

ひょっとしたら自分はとんでもない部隊に配属されてしまったのかと不安を抱いた。

そしてハンターベースのトレーニングルームで隊長代理となっているルインの指揮の元、激しい戦闘訓練が始まっていた。

「横の回避ばかり使わないの!!いい加減、縦の回避も覚えて!!ジャンプやローリング、一時停止なり減速なりバックステップでもいいしスライディングでもいい。回避パターンを敵に読まれると戦場では確実に死ぬよ!!」

「は、はい!!」

「ギ、ギブアップ…」

「そこ!!」

「は、はい!!」

音を上げはじめた隊員にルインの怒声が上がる。

「イレギュラーがそんなこと認めると思う?動きを止めた瞬間に嬲り殺されるよ………死にたくないなら生き残る術を磨いて、君自身の為にもね。」

「わ、分かりました…」

「そしてディザイア、君はもう少し攻撃の手数を増やした方がいい。サーベルの出力に頼っている部分があるからね。サーベルのリーチを活かした連続突きとかも使えるようになって」

「分かりました。」

アイリスは普段のルインからは考えられないくらい厳しい指導に目を見開いていた。

それから1週間が経過し、アイリスはルインから与えられた課題を次々と卒なくこなすと、瞬く間にハンターベースでも一目置かれる存在となった。

しかしこの頃、他の部隊でも慌しい様子が目立ってきて、何かあると感じずにはいられなかった。

やがてアイリスの耳にも、ある事件の話が飛び込んできた。

イレイズ現象。

レプリロイドのプログラムが突然消滅し動かなくなる事件が起きたというのだ。

前例の無い事態に、ハンター側も手を焼いているという。

原因不明のため予防処置も、既にイレイズしたレプリロイドの修復処置も出来ない状態で、そのうちシグマのせいではないかという噂まで流れ始めた。

アイリスは早期解決をただただ祈るばかりで、今日も大分慣れてきた足取りで、部隊へと向かう。

「アイリス」

「ルイン副隊長、おはようございます」

部屋に入るなり、ルインがアイリスの元へ歩み寄る。

「ついさっき上層部から連絡があって、アイリスにはある特別チームに入ってもらいたいの」

「特別チーム……?」

「うん、私も詳しくは聞かされなかったんだけど、とにかく急いでブリーフィングルームに行ってくれないかな?」

「は、はい、分かりました」

アイリスは返事するなり部屋を飛び出した。

ブリーフィングルームの扉の前に着いたルインとアイリスはブリーフィングルームに入ると既にエックスとゼロがいた。

「遅いぞ」

「ごめんごめん。ところで何なの?」

「ルインもアイリスも知っていると思うけど…」

エックス達はアイリス達を部屋の中央まで招き寄せると、傍にあったコンピューターの電源を入れた。

モニターに、巨大な研究所を有した島の映像が流される。

「プログラムが消滅して機能停止する、イレイズ現象。」

「なるほど、ラグズランド…あそこでイレイズ現象が起こってるんだね?」

「そうだ。俺とエックスとルイン、そしてアイリスの4人のチームだ」

「わ、私がですか!?エイリアさんじゃなくて研修生の私が!?」

自分を指差しながら言うアイリスにゼロは肯定の意味で頷いた。

「そうだ。お前の噂は俺の部隊にも届いている。的確なオペレートで作戦の成功に貢献しているってな。今回も頼むぞ」

「ええ…?」

自分は普通に与えられた課題をこなしていただけだというのに…。

「私、研修生なんですけど…?」

「研修生とか関係ないよ。君がハンターベースのオペレーターより優秀だから上層部から指名を受けたんだ。しっかりしなさいアイリス。」

「は、はい…」

仕事モードのルインに咎められたアイリスは俯く。

エックス達はイレイズ現象が発生したことにより、無人となったラグズランド島はすっかり生きている音を失っていた。

「静かだね。」

「ああ、だが静かでやかましくない島。そんなのもいいかもな」

「前に研修で来た時はもっと賑やかだったんだけどね」

「まあ、とにかく。あいつが関係してるのは間違いないね」

ルインが近くに落ちていた破片を拾うと全員に見せる。

「これは…!!」

「あいつの…シグマのエンブレムか…」

ゼロの口から出たその名に、アイリスの背中にも冷たいものが走った。

「アイリス、ハンターベースにこれの画像を送って詳しい解析をお願い」

「分かりました…………画像データ転送は完了しました。一応解析出来ることは出来ますが……詳しいことは帰ってからじゃないと分かりそうにないですね」

「それでいいよ。」

「とにかく、街を調査してみよう。何か分かるかもしれない。」

「ああ」

エックス、ルイン、ゼロの3人が街に向かって歩き出したので、アイリスも慌てて追い掛けた。

しばらく歩いて街に着いたエックス達は機能停止しているレプリロイド達を調べていた。

「本当に機能停止してるんだ…」

「ボディにも外傷はないな」

「やはりウィルスだろうか?」

「アイリス、どうだ?」

「駄目です。何もかも消されていて…」

「そうか…」

全員が落胆した時、ルインはある場所を見つめた。

「あれ?」

「ルイン?」

「何か、遠くで見覚えのある奴がいたような」

「もしかしてイレギュラーですか?」

「イレギュラーだと?なるほど、そいつを捕まえて調べた方が良さそうだなエックス」

「ああ、アイリス。下がっているんだ」

アイリスを庇うように3人が武器を構えた瞬間に、かつての大戦でエックス達が倒したイレギュラー達が押し寄せてきた。

「何だと!?」

「馬鹿な…俺達が倒したイレギュラーが何故活動しているんだ!?」

「来るよ!!」

ゼロとエックス、ルインはそれぞれの武器を構えてイレギュラーを迎撃する。

幸いにして大して強力なイレギュラーはおらず、あまり時間をかけずに殲滅出来た。

「全くどうなってるの?倒したはずのイレギュラーが復活するなんて…こいつらはシグマお得意のデッドコピーでもなさそうだし…」

「とにかく、こいつらを回収して解析してみるしかないだろう」

ゼロは斬り伏せたイレギュラーを見遣りながら言う。

「うん、そうだね。イレギュラーの残骸を調べれば何か分かるかもしれないしね」

「そうですね、解析してみればきっと色々分かると思います。でも本格的な解析が必要なので、本部に戻ってからでないと出来ません……」

「それじゃあ一度ハンターベースに戻ろう」

「そうだね。これ以上ここにいても何も見つかりそうにないし、ソニアもお腹空かせてるだろうしね。」

エックスが提案すると、ルインも賛同した。

「アイリスはどうだ?」

「はい、私もその方がいいと思います」

ゼロとアイリスもそれに異存はなかったので、ハンターベースに帰還することにした。

そしてハンターベースに帰還するとイレギュラーの解析を開始し、帰還してからアイリスは休まず解析を続けていた。

「どうだ?」

様子を見に来たゼロがアイリスに尋ねて来た。

「あ、ゼロ隊長。まだまだ解析には時間がかかります。」

「そうか…差し入れだ」

ゼロはアイリスにハンターベースの購買の紙袋を渡す。

アイリスは紙袋を開け、中を見るとアイリスが好んで飲むカフェオレとサンドイッチ等の軽食が入っていた。

「あ、ありがとうございます…」

「ああ、まあ…俺達レプリロイドには気休め程度にしかならないだろうが」

ゼロも持参してきた飲み物を口に含む。

飲み物はゼロもアイリスと同じカフェオレだ。

「ゼロ隊長、甘い物がお好きなんですか?」

「いや、昔はそんなに好きではなかった。だが一度大破してボディが別物になったせいか味覚が変わったのかもしれん」

「はあ…」

「アイリス、その隊長と敬語は止めろ」

「え?でも…」

「そういうのは苦手でな。エックスにもルインに対しても敬語はいらない。それ以前にお前とルインは友人だろう。何故友人相手に敬語を使う?」

「あ…その…勤務中のルインはなんか怖くて…」

「今は同じチームで仲間だ。仲間同士敬語は必要ない。現にあいつだって普段通りだろう。」

「仲間…そう、よね……仲間だものね…これからよろしくねゼロ。」

「ああ」

こうしてエックス達は仲間として互いに協力しあい、この事件を解決するのであった。 

 

第74話:Iris

イレイズ事件を鎮圧させたエックス達は研修終了日となり、レプリフォースに戻らなければならなくなったアイリスと別れを交わしていた。

「ありがとう。君のおかげで事件を早期解決することが出来たよ。」

「そ、そんな…私はただオペレートをしただけで、戦ったのはエックスやルイン達じゃない…」

礼を言うエックスにアイリスは謙遜するように言う。

「違うよアイリス。確かに戦場で戦うのは私達だけど、君の力があったからこそ、安心して戦えたんだよ。オペレーターのサポートなしじゃあ私達はまともに戦えないしね」

「そうだな。大分協力してもらったしな。だがイレギュラーハンターでの初仕事がこんなになってしまって…悪いことしたな。レプリフォースにいるカーネルに怒られるな、きっと。“妹になんてことするんだ”ってな…。」

「カーネル?でも、レプリフォースに戻っても今回の経験は役に立つはずだよ。」

「確かにね。アイリス、レプリフォースに戻ってもしっかりやるんだよ?」

「ええ、エックス、ゼロ、ルイン…本当にありがとう…お世話になりました」

こうしてアイリスは自分の所属するレプリフォースへと戻っていった。

イレイズ事件からしばらくしてアイリスの初の正式任務があったが、イレイズ事件での経験を活かして、アイリスは手際よくサポートをしていく。

「これで任務は完了だ。サポートご苦労、アイリス」

通信機から上官の声が聞こえると、アイリスは安堵の息を漏らした。

「そうですか、皆さんが無事で何よりです」

アイリスの返事を聞いてから、上官は更に続けた。

「見事なオペレートだったぞ、アイリス。初任務とは思えない、見事な手際だった。流石はあのイレイズ事件を解決へと導いた者の1人だ」

「そんな……。現場が上手く動くのは上官の指揮があってこそですし、イレイズ事件はエックス隊長達が…」

「そんなに謙遜しなくてもいいぞ、君が優秀なのはレプリフォースとイレギュラーハンターでも周知の事実だからな。データ解析やナビゲートで疲れたろう?今日はもうゆっくり休んでいいぞ」

「あ、は……はいっ!!ありがとうございます!!お疲れ様でした!!」

アイリスは通信が切れたのを確認すると、大きく溜め息を吐き、こうしてアイリスのレプリフォース正式就任後の初任務は、滞りなく終了した。

正式な隊員の証であるベレー帽。

アイリスはカーネルと同じように最初からレプリフォースに入隊することに決まっていたが、彼女自身はそれはもっと後のことでもいいと思っていたし、周りもきっと彼女と同じ考えだったのだろう。

元々カーネル同様、製作が頓挫したレプリロイドの片割れであったし。

しかし、イレイズ事件で事態は一変する。

レプリロイドを動かすDNAプログラムが消失し、多くのレプリロイドが機能停止したこの奇怪な事件が起きた当時、アイリスは研修生としてハンターベースに勤務していた。

この事件の調査をエックスとゼロ、ルインが担当することになり、何故かアイリスは3人のオペレーターに任命された。

そして見事に事件を解決し、アイリスはこの功績を称えられ、あっという間にアイリスは正式オペレーターとなった。

と言っても、ここ数ヶ月軍隊であるレプリフォースが出動するようなとりわけ大きな事件も無かったため、正式任務自体はかなり遅れてしまったのだが。

「あの事件はゼロ達が頑張ったから解決したんだけどな……」

事件解決後、直ぐにレプリフォースに連れ戻されてしまったアイリスはあれ以来、3人とは全く会っていない。

噂によれば、エックス達は上層部から労いの言葉を受けただけらしい。

自分はレプリフォースの就任や新しいアーマーを授かったというのに。

まあ本人達は全く気にしてはいないらしいが…。

「何だか自分だけ得した気分だわ…」

自分は安全な場所でオペレートをしていただけだというのに最大の功労者である彼らは労いの言葉だけ、何だか罪悪感が沸いて来た。

部屋に戻る最中、聞き覚えのある話し声が聞こえてきた。

「嫌だわ…レプリロイドが幻聴なんて……」

「何が幻聴?」

「ルイン!?どうしてここに!?」

目を見開きながらルインの方を見遣るアイリス。

何で彼女がレプリフォースに?

「私だけじゃないよ。エックスやゼロも一緒だよ」

確かにルインの後ろを見遣ればエックスとゼロもいた。

「どうしてもお前に言っておきたいことがあったからな。だからここに来たんだ」

「え?」

「レプリフォース正式就任、おめでとうアイリス」

「え?……え……え……?」

慌てふためくアイリスに、ルインはあくまでマイペースに続けた。

「本当はもっと早くに言ってやりたかったんだけど、仕事が終わんなくて遅れちゃった。ごめん」

「そっ、そんな、全然気にしないで……!!お祝いしてくれただけでも嬉しいから……」

謝罪する親友に両手を振ってアイリスは返した。

「それからこれはアイリスの就任祝いだ。受け取れ」

ゼロからぶっきらぼうにアイリスに小さな箱が差し出された。

「え?いいの?」

「勿論だよ。君のために買ったんだ。特にゼロやルインなんか必死に考えたんだよ?」

「余計なことを言うなエックス」

苦虫を潰したような表情を浮かべるゼロにエックスは笑みを浮かべた。

アイリスはリボンを解き、包装紙を丁寧に外して、白い蓋を開ける。

中には、ロケットペンダントが入っており、チャームを開くとエックス、ルイン、ゼロ、アイリスの写真が入っていた。

「これ…」

「そう、あの時の写真。プレゼントは動く時に邪魔にならないようにロケットペンダントにしてみました。」

満面の笑顔で言うルインにアイリスも笑みを浮かべる。

「ありがとう…こんな素敵なプレゼントを……」

「気にしなくていいよ」

「私達も散々助けられたしね。ね?ゼロ」

「ああ…アイリス。あの事件は、きっと俺達だけでは解決出来なかっただろう。お前が居てくれたからこそ、解決出来たんだ。お前はいいオペレーターだ。遠慮することない。自信を持て、お前なら大丈夫だ」

いつも寡黙なゼロが、ここぞとばかりに一気に言葉を並べた。

「(元気づけて……くれてるのよね……)」

ゼロの真っ直ぐな言葉に、アイリスは心が軽くなったような気がした。

「ありがとう、ゼロ。私、頑張るわね」

「ああ」

そして2人で微笑みあった。

「よし、今日はアイリスのお祝いにご飯を食べに行こうか!!」

「ああ、それもいいな。近くに店があったからそこで食べよう」

「行くぞアイリス」

「ええ」

4人は並んで廊下を歩く。

彼らの絆は簡単に消えたりなんかしない。

エックスとゼロは仲良く会話しながら歩くルインとアイリスを見遣りながら足を進めた。 

 

第75話:Sky Lagoon

西暦21XX年。

人間的思考をもったレプリロイドと人間が共存し、繁栄している世界。

この世界には、2つの大きな組織があった。

電子頭脳に故障をきたしたレプリロイドを処理するための“イレギュラーハンター”。

大規模な災害時に迅速な対応をするために設置されたレプリロイドだけの軍隊“レプリフォース”。

両者はこれまでお互いに助けあい、協力しながら、それぞれの任務を行っていた。

そう、あの忌まわしい事件が起きるまでは…。

ある嵐の夜。

レプリフォース総司令官ジェネラルの館に、マントに身を包んだ謎のレプリロイドが訪れていた。

「イレギュラーハンターは人間に尻尾を振って、人間に危害を加えるという理由で多くのレプリロイドを始末している者共。危険だとは思わんか?ジェネラル、お前も分かっているはずだ。奴らは単に人間の言いなりにならないレプリロイドを破壊しているに過ぎない。」

「………」

「やられる前にやれ!!ジェネラル、お前には奴らを倒すだけの強大な力がある!!」

「…お引き取り願おう。」

「…………」

ジェネラルは冷ややかに相手を見据える。

「人間を裏切る事は出来ん。帰れ!!二度と私の前に姿を見せるな!!」

「フフフフ…まあいい。直に考えも変わる…フハハハ…ハーッハッハッハ!!」

笑いながら去っていく謎のレプリロイドを、ジェネラルは疑わしげに見つめていた。

そしてハンターベースではカプセルルームで眠っているゼロの姿があった。

『ゼロ…』

謎の声に起き上がるゼロ。

光の向こうに何者かのシルエットが見える。

『ゼロ…ワシの最高傑作……』

「誰だ?」

『倒せ、アイツを!!わしの敵、わしのライバル、わしの生き甲斐…!!』

「あんた誰だ?」

『行け!そして破壊しろ…あいつを!!』

「待て…っ」

謎の人物を追おうとするゼロだが、その途端激しい頭痛に襲われる。

恐怖に怯えるシグマ…。

どこか見覚えのある研究所の内部…。

血塗れになった自分の手…。

何かの設計図…。

様々な光景が脳裏に浮かんでは消えていく…。

『緊急事態発生!緊急事態発生!!待機中のイレギュラーハンターはただちに集合せよ!!』

「っ!?」

そしてゼロの眠りは鳴り響く警報の音によって破られた。

「また…あの夢か…。」

ゼロは呟くと、すぐに歴戦のイレギュラーハンターの顔となり、起き上がると司令室へと向かっていく。

『ポイント5567において、イレギュラー発生。イレギュラーは、最新の兵器でスカイラグーンを占拠!!この軍隊はレプリフォースと思われる!!』

「レプリフォース…了解」

「分かりました。直ちに出撃します!!」

「レプリフォースだと?…分かった。出撃する。」

それぞれが疑問を抱きながらも、平和のため再び戦いに赴くエックス達。

これが4度目の大戦のきっかけとなることをこの時はまだ誰も知らずにいた。

『エックス、サードアーマーを転送するわ。知っての通り、完全に解析出来たわけではないからまだ不完全なの。性能は以前の物よりオリジナルに近付けたつもりだけど性能が低下しているけど、頑張って』

「了解」

臨時オペレーターとして再配属されたエイリアはサードアーマーを転送すると、エックスがサードアーマーを身に纏う。

空中都市スカイラグーンへと着いたエックス達はそれぞれが別々に行動し、イレギュラーを排除していた。

ルインはレプリフォースの主力戦力として採用されている“ノットベレー”の姿を見て、ますます疑問を募らせる。

ノットベレーが投げてきた手榴弾をHXアーマーに換装し、エアダッシュとホバーで回避しながら後ろに回り込むとダブルセイバーによる連続斬りとソニックブームで撃破する。

「こいつら、本当にレプリフォースなの?」

ノットベレーは軍隊であるレプリフォースに所属するだけあって、連携による攻撃を得意としている。

それなのにこのノットベレー達はメカニロイドのような単調な攻撃しかしてこないことに疑問符を浮かべる。

しかし今は悩んでいる暇などなく、更に大型メカニロイド、“イレギオン”の攻撃を受ける。

しかしメカニロイドの単調な攻撃は当たらず、Xアーマーに換装するとダブルチャージショットを数回喰らわせ、イレギオンを撤退させる。

「ん?」

ルインはノットベレーの残骸から、このタイプのレプリロイドには使われていないはずのパーツを発見した。

他の残骸を見遣るとそれも同様であった。

「……………」

これが何を意味するのかは分からないが、嫌な予感を感じ、急いで動力室に向かうルイン。

エックス達よりも動力室へといち早く着いたルインはそこにいる先客に目を見開いた。

「君は確か、第14部隊隊長のドラグーン!!どうしてここにいるの?」

「まずいぞルイン!さっきのイレギュラーが動力炉を破壊した。」

ドラグーンの言葉にルインは目を見開く。

「嘘!!それじゃあ、このスカイラグーンは間もなく地上に激突しちゃう!!早く動力炉を復旧させないと!!」

「もう手遅れだ。俺は急いで脱出する。お前も無茶をせず、待避するんだ、いいな!!」

ルインに忠告するととドラグーンは巻き込まれないうちに即座にスカイラグーンから脱出する。

「…エックス、ゼロ」

『ルインか!?この揺れは一体…』

「大型メカニロイドのイレギオンがスカイラグーンの動力炉を破壊した…早く脱出しないと……」

『何だと…!?』

ルインの言葉に愕然とするエックスとゼロ。

『では街の重力制御装置も…』

動力源を失った浮遊都市スカイラグーン。

それが何をもたらすかは幼い子供でさえ分かるだろう。

当然、スカイラグーンは地上に落下しこの街の住人はおろか、落下点にいる下の街の住民にまで大勢の犠牲者を出す破目になるのは確実だ。

「もう手遅れだよ…私は…私は先に脱出するから、エックスとゼロも急いでね!!」

ルインは簡易転送装置を使い、地上へと脱出する。

スカイラグーンにいる数え切れない程の人命を見捨てていく自分を呪いながら。

そして地上へと脱出したルインは火の海と化した都市を見つめる。

「…許さない…!!何の罪もない人達を……それが…あなた達のやり方かーーーーっ!!!!」

FXアーマーに換装するとチャージしたナックルバスターでノットベレーへと殴り掛かる。

怒りに満ちた表情でメガトンクラッシュとショット連射でノットベレーを殲滅していく。

パワー特化のアーマーであるFXアーマーのショットやチャージ攻撃により、ノットベレーやメカニロイドを蹴散らしながら進む。

ルインはエックスとゼロと合流せずしてイレギュラーを排除し、奥へと進むとそこにはいるはずのない存在がいた。

「…何で、君がここに……?」

目の前の光景に絶句するルイン。

若干あどけなさを残す表情と栗色の長い髪。

今更自分が彼女を見間違うはずもない。

本来ここにいるはずが…いてはいけないはずの人物がいることに愕然となる。

レプリフォース陸軍士官カーネルの妹にして同軍のオペレーター、アイリスの姿がそこにあった。

「アイリス、大丈夫!?」

「ルイン…助けに来てくれたの……?巨大なイレギュラーが突然襲ってきて…」

「巨大なイレギュラー…あいつか…!!」

憤怒の表情を浮かべ、向こうで暴れているイレギオンを睨むルイン。

「アイリス、少しだけ待ってて。エックスとゼロにメッセージ入れとくから」

エックスとゼロにアイリスを任せ、自分はイレギオンの破壊に向かう。

イレギオンはルインの姿を見つけると同時に襲い掛かって来るが、ルインはイレギオンの爪をかわすと懐に入り、ZXセイバーによる斬擊を喰らわせる。

「当たれ!!」

怯むイレギオンから距離を取り、セイバーをバスターに変形させるとバスターを構えてチャージショットを胴体に叩き込む。

仰け反ったイレギオンに向かって跳躍し、とどめを刺す為にPXアーマーに換装する。

「十字…手裏剣!!!」

右腕に大型手裏剣を出現させると勢い良くイレギオンに向けて投擲した。

まともに喰らったイレギオンは真っ二つに両断されてしまい、間を置かずに爆発した。

「………」

PXアーマーからZXアーマーに換装すると、爆散したイレギオンの残骸を見遣るルイン。

そこにある人物が姿を現した。

「ルインか…」

「カーネル。何で君がここにいるの?」

「妹のアイリスが大型のイレギュラーにさらわれてしまってな…アイリスは無事だろうか?」

「アイリスはそろそろ到着したエックスとゼロが保護しているはずだよ」

自身を落ち着かせるように深呼吸しながら言うルイン。

それを聞いたカーネルは安堵の息を吐いた。

「そうか…お前達に借りが出来てしまったな」

「あの、カーネル…ここのイレギュラーはレプリフォース…なの?」

「何だと?我々レプリフォースも急いでこの場に駆け付けたのだ。あの軍隊は断じてレプリフォースなどではない!!」

「ノットベレーは確かレプリフォースの主力だよね?それが此処にいて、街やスカイラグーンを破壊したことについてはどう説明するのかな?」

「フッ、今は否定も肯定も出来ん。少なくともここで暴れているイレギュラー達が身につけている軍装は紛れも無く我々レプリフォース軍の物…更に士官である私がこの場に姿を現した以上、傍から見ればどうあっても我々レプリフォースの仕業にしか見えないだろうな」

「………もし…潔白だと言うのなら、サーベルを捨てて司令部にまで来てカーネル…そうすれば…」

「それは出来ん。お前にも分かっているはずだ。我々軍人が武器を捨てるのは戦えなくなった時のみだと」

「それだとレプリフォース全てがイレギュラー認定を受けるんだよ!?それに…アイリスだって悲しむに決まってる!!」

「アイリスなら…理解してくれるはずだ。我々は誇りあるレプリフォースなのだからな。」

「…分からず屋……!!」

この場を去っていくカーネルに対して深い怒りを抱えながらルインはエックス達の元へ向かうのだった。 

 

第76話:ZERO

スカイラグーン落下事件後、ハンターベースの空気が重くなったとエックスは感じていた。

そうだろうなとエックスは思う。

イレギュラーハンターとレプリフォースには友好関係を持つ者が多い。

ゼロやルインもレプリフォースに知人がいるために複雑な心境だろう。

「どうしてこうなってしまったんだろうな…」

屋上に着いたエックスは小さくぼやいた。

レプリフォース…正確にはアイリスとだが、共に難事件を解決したこともあると言うのに何故こんなことに。

「本当…だよね…」

「ルイン、それにゼロも…」

屋上で気分転換したかったのはどうやら自分だけではなかったらしい。

「何とかしてレプリフォースの無実を証明したいところだが、無実の証拠になりそうなのがない…」

「一応、ノットベレーに使われないはずのパーツが扱われているって報告したんだけど、あまり相手にされなかったよ」

単に改造しただけだろうと一蹴されてしまった。

「そして出来るだけ穏便に済ませようとハンター側が決めた結論は…レプリフォースの武装解除、そして一時解散…か。レプリフォース側も納得してくれれば良いんだけど…」

3人がこの状況に深い溜め息を吐いた時、急に風が強く吹いてきた。

「急に吹いてきたな」

「うん、そうだね」

「凄い風だな…嵐が来るかな」

「………来るな……嵐が……」

風が吹いてくる方向を見据えながらゼロは呟いた。

そして、今から数分後のメモリアルホールでジェネラルは自身に従う全将兵を本部に集めると、決起を促すべく大集会を催した。

『我がレプリフォースの勇敢なる兵士諸君、皆も知っての通り今や我々レプリフォース全員がイレギュラーと決めつけられた』

居並ぶ数多の将兵を前にジェネラルが演説を開始する。

『だが我々もこのままムザムザと汚名を着せられている訳には行かない。我々は自らの手で、レプリロイドだけの国家を建てる!!』

【オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!】

ジェネラルの力強い宣言に答えるかのように将兵達の間から地を揺るがさんばかりの歓声が上がる。

『但し、これは人類に対しての敵対ではない。自由と安全、それら正当なる権利を求めるための戦いなのだ!!志ある者よ共に築こう!!何者にも侵されない理想の国家を。共に進もう!!我々レプリフォースの未来に向かって!!』

割れんばかりの歓声と拍手が会場を埋め尽くす。

そしてジェネラルの傍らにあって、今や全軍の総指揮権をも預けられたカーネルが進み出て兵達に向かって口を開いた。

『私もジェネラル将軍と同じ意見だ。良いか!我々にはこれしか道はない!!恐れず、勇気と誇りを持って戦おう。我々はレプリフォース!!史上最強の軍隊なのだ!!』

【ウオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!】

【ジェネラル!!】

【カーネル!!】

【ジェネラル!!】

【カーネル!!】

そしてある場所でそのレプリフォースの姿を見つめる黒い影があった。

「クックック…いよいよ動いたなジェネラルめ」

真っ黒な装束に身を包んだ、まるで死神のようなその姿。

「さあて…エックス、ゼロ、ルインよ。お前達ならどう出る?私はこのまま高みの見物を決め込ませてもらうとするか。ハーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」

闇の中に響き渡る黒幕の哄笑。

しかしそれはハンター側のイレギュラー認定に憤る兵達の怒号の中に掻き消えて、真実を知ろうとする者達の耳には決して聞こえる事など無かったのだ。

そしてジェネラルの演説を見ていたエックス達は驚愕で目を見開いていた。

「終わったね…」

「え?」

「レプリフォースのイレギュラー認定が間もなく下るよ。奴らの動きが分かり次第…出撃だね」

「…カーネル……早まったことをしやがって…」

拳を握り締めるゼロ。

少し迷った末に上げた顔には迷いは微塵も無かった。

「行きたいの?」

「!?」

その言葉に振り向くと、ルインが真剣な表情でゼロを見上げていた。

「え?」

「ゼロ、行きたそうな顔してるよ。多分、カーネルを止めたいんでしょう?」

「………」

図星を突かれたゼロは閉口してしまう。

「ハンターベースのことは私達に任せてゼロはカーネルの元に行って。多分、ここにいるだけじゃ解決出来ないと思うから…ケイン博士達には私が伝えとくから…だから行って、自分の“心”に従ってさ」

「ルイン…すまない…」

それだけ言うとゼロはこの場を静かに去っていった。

「ゼロ!!」

ハンターベースから去ろうとするゼロを止めようとするエックスだが、ルインに止められた。

「行かせてあげよう、エックス。」

「ルイン、でも…」

「ゼロは今まで私達を助けてくれたじゃない。ずっとずっと…だからゼロの初めての我が儘を、私達が叶えてあげようよ」

「…………」

ルインのその言葉にエックスは腕を下ろし、そして少し悩んだ後、意を決してゼロに尋ねた。

「ゼロ…帰って来るよな…?」

「……ああ、ハンターベースを…頼む」

エックスの言葉にゼロはそう返すと、アディオンに乗り込んでハンターベースを飛び出した。 

 

第77話:Jungle

アディオンに乗ってハンターベースから去っていくゼロの後ろ姿を見守りながら、エックスとルインは今後についてケインと話し合うことにした。

「そうか、ゼロがか…」

「はい、ケイン博士。こういう時に独断行動は許されないのは分かってるんですけど…」

「分かっとるわい、友人か敵になってしまったゼロの気持ちも分からんではないからのう」

かつてのドップラーの件もあるからケインはゼロの行動に理解してくれた。

「ありがとうございます。ケイン博士」

理解を示してくれたケインにエックスとルインは深く頭を下げた。

「それじゃあ、ゼロの分まで私達は私達なりに頑張ろう。ダブル、聞こえる?」

『は、はいデシ!!』

新しく配属された新人オペレーターのダブルにルインが通信を繋ぐと、ダブルが慌てて答えた。

「今、レプリフォースが活発に動いているエリアは何処かな?」

『えっと…カギキラのジャングルでレプリフォースのゲリラ部隊が大型のビーム兵器を守っているデシ』

「ジャングルか…よし、なら私が行くよ。ジャングルなら私の方が向いているだろうしね」

ジャングルなら障害物も多いためにステルス性能の高いPXアーマーの性能をフルに発揮出来る。

「分かった。ルイン、気を付けてくれ」

「うん」

エックスの言葉にルインは頷くと、アディオンに乗り込んでカギキラに向かおうとするが…。

アディオンを走らせようとしたルインにディザイアが駆け寄って来る。

「待って下さい副隊長!!」

「あれディザイアじゃない…?どうしたの?」

「ダブルから副隊長がカギキラジャングルのレプリフォースの基地へと向かうと聞いて…」

「………」

「副隊長。私も連れていって下さい。」

「え?」

「いくら副隊長と言えどもイレギュラーの巣窟にたった1人で向かうのは危険です。」

「でも…」

「あなたを死なせたくはないんです。1人で行くよりも2人で行った方が生存率も成功率も上がるはずです」

「ありがとう…」

ルインは微笑みながらディザイアに礼を言う。

「副隊長…」

「君は本当に優しい人だね…訓練も仕事も人一番頑張ってるのに…凄いよ」

「そんな…私が…こんなに頑張れたのも…ひとえに、あなたが…副隊長がいてくれたからこそ…です」

「大袈裟だよ」

「大袈裟ではありません(私が努力を怠らないのは、あなたを守るためです…あなたを1人の女性として愛しているから…)」

カギキラジャングルにあるレプリフォースの基地へと辿り着いたルインとディザイア。

彼ら2人は互いに目を合わせながら、一気にジャングルを駆け抜ける。

セイバーとサーベルが閃くと同時にメカニロイドが細切れにされていく。

「(私はようやく、彼女の隣で戦えた……)」

ルインの隣でサーベルを振るい、メカニロイドを斬り捨てるディザイア。

彼の心は歓喜に満ちていた。

その時、隊長のエックスからディザイアに通信が入り、ディザイアは内心舌打ちしながらも通信を繋げる。

『ディザイア。何故お前がルインと一緒にいる?そんな命令を与えてはいないはずだが?』

「これはこれはエックス隊長、私は無断でついて来た訳ではありません。ちゃんと副隊長の許可は頂いているので…」

苛立ちの為か、エックスに対する言葉にはキツイ雰囲気を感じさせる。

しかしエックスは隊長としてはっきりとディザイアに言い放つ。

『レプリフォースは甘くない。お前は確かに強いが、レプリフォースは戦闘のプロだ。直ぐにハンターベースに戻って来るんだ』

「ご忠告、ありがとうございます隊長。ですが、今の私の実力は特A級のそれに比類します。過去の大戦の時のようにあなたに頼るしかなかった時とはもう違います。今は、私でも充分やれるんですよ」

そのままエックスとの通信を切るとルインを追い掛けるディザイア。

「どうしたの?」

首を傾げるルインにディザイアは笑顔で首を振る。

「いえ、何でもありません」

基地の中間地点まで来ると流石に警備も厚くなり、ますます攻撃が激しくなるが、ルインはディザイアと連携して強行突破する。

途中で蜘蛛の巣のようなメカニロイドがいたが、破壊出来ないことを確認すると跳躍して通り越す。

そして最後の蜂の巣のような装置を破壊し、奥にある扉に入ると大型のビーム兵器があり、そこから蜘蛛を模したレプリロイドが現れた。

「スパイダス…」

「ルインか…久しぶりだな…最後に会ったのは確かシグマが反乱を起こす前だな」

「レプリフォースに転属したんだって?そのベレー帽、似合ってるじゃん、格好いいよスパイダス」

「ありがとう、今では俺もレプリフォースのゲリラ部隊の隊長。そしてお前はあの第17部隊の副隊長…お互い立場も変わった…」

「今、レプリフォースが何をしているのか…君なら分かってるんじゃないの?スパイダス?」

「…まあ、な………」

正直に言うと今回の戦争はカーネルが大人しく投降しなかったから起きたことだ。

スパイダスも若干ながら、疑問を感じていたが…。

「だが、今の俺はイレギュラーハンターではない。レプリフォースの軍人だ。主と認めたカーネル殿やジェネラル殿を裏切ることなど出来ん」

「そう、残念だよスパイダス。」

バスターをセイバーに変形させて構えるルインにスパイダスは油断なく見据える。

純粋な戦闘力では自分が負けているが、手段さえ選ばなければ勝機はある。

スパイダスは蜘蛛の糸を伸ばし、木へと移動する。

「っ!!」

「此処を通すわけにはいかん!!だが、実力はお前の方が俺より上…。悪いが手段は選ばん!!元第0特殊部隊の実力を見せてやろう!!」

忍びとして一流であるスパイダスは、姿を隠すと同時に気配を完全に消した。

「(気配が完全に消えている…流石だね…スパイダス)」

上空から気配を感じて飛びのくと子蜘蛛型メカニロイドが降ってきた。

「副隊長!!」

「来ないで!!」

チャージセイバーでメカニロイドを薙ぎ払うと、バスターに変形させて木にショットを数発放つ。

しかし、スパイダスはそれを容易く回避してしまう。

「ライトニングウェブ!!」

「当たるか!!プラズマビット!!」

電撃を纏った蜘蛛の巣を放つ技にルインはHXアーマーに換装し、エアダッシュで回避すると電撃弾を放つ。

スパイダスは目の前にライトニングウェブを放つと盾代わりにして相殺する。

最初に放たれたライトニングウェブは床に当たった。

スパイダスのライトニングウェブの厄介なところは威力でもなければ、スピードでもない。

一度、相手を捕らえれば簡単に外すことが出来ない拘束能力なのだ。

ホバーを使い、床のライトニングウェブに触れないように、床に着地した瞬間にスパイダスは筒のような物を取り出し、それをルインに向けて投げる。

黒い霧のようなものが噴射して、ルインに纏わりついた。

「うっ…これは!!?」

霧は体に付着して粘り着き、関節の動きを鈍らせる。

「レプリロイド捕獲用のホールドガム…!!」

「勝つためには手段は選ばんと言ったろう。ライトニングウェブ!!」

「くっ!!」

ホールドガムで動きを鈍らせられ、ライトニングウェブに搦め捕られたルインは完全に動きを封じられる。

「止めろ!!私が相手だイレギュラー!!」

「イレギュラーだと?我々をイレギュラー扱いするか…まあ否定出来んのが悔しいがな…だが、たかがA級が元がつくとはいえ特A級に勝てると思っているのか弱虫ディザイアの坊や?」

「もう私は昔の私ではない…!!私は特A級の実力を得た!!」

サーベルをスパイダスに振るうが、スパイダスは嘲笑いながら軽々とディザイアの攻撃を回避していく。

「どうした?遠慮は要らんぞ。」

「くっ!!」

サーベルをスパイダスの脳天に目掛けて振り下ろすが、片手でサーベルを持つ腕を掴まれる。

「成る程、確かにA級にしてはパワーもスピードも悪くない。実力が特A級クラスというのも満更出鱈目ではなさそうだ。あくまで特A級の下位…そうだな、精々ペンギーゴやナウマンダークラスがいいところだろうが」

「何…!!?」

「本物の実力を持った特A級を舐めるなと言うことだ。ふんっ!!」

ディザイアの腕を弾き、スパイダスはディザイアの顎に強烈な掌底を喰らわせ、身体を浮き上がらせると鳩尾に蹴りを入れて吹き飛ばす。

しかし直ぐさまディザイアは体勢を立て直した。

「ほう?中々どうして、A級ハンター如きが楽しませてくれるじゃないか。」

「つあっ!!」

「甘いぞ坊や」

サーベルの鋭い突きを回避し、裏拳をディザイアの顔面に喰らわせる。

「A級にしては悪くない。あくまでA級にしては…な。」

「ぐっ…」

「だが、これで終わりだなディザイアの坊や。ライトニング…」

「…うわああああああ!!!!」

スパイダスが技を放つ前に強引に糸を引き千切り、Xアーマーに換装する。

そしてルインはダブルチャージショットをスパイダスに向けて放つ。

「何!?」

不意を突かれたスパイダスはルインのダブルチャージショットに脇腹を刔られた。

激痛に顔を顰めた瞬間。

「はああああっ!!」

ディザイアのサーベルがスパイダスの動力炉を貫き、スパイダスは機能停止した。

「大丈夫?ディザイア?」

ホールドガムの影響で動きが鈍いが、何とかディザイアの元に歩み寄る。

「…ええ、ご迷惑をおかけしました……」

そう言うディザイアの表情は暗い。

助けるために一緒に来たというのに逆に彼女に助けられた自分に憤りを感じていたからだ。

「ダブル。ディザイアがダメージを受けたから、ハンターベースに転送をお願い」

『了解デシ!!』

ルインは周囲を見渡して何もないことを確認すると後始末は後続のハンター達がやってくれるだろうと、ルインもハンターベースへと戻ろうとしたが、何か不思議な気配を感じてそちらに向かうと、見慣れたカプセルを発見した。

「ライト博士…?」

ルインが近付くとカプセルが起動し、ライト博士のホログラムが現れる。

『元気そうで何よりじゃルインよ。この戦いはあってはならぬ戦いじゃ。何故、同じ志を持つレプリロイド同士が戦う?』

カプセルの中に姿を現したライト博士がルインに向かって問い掛ける。

『平和を守る者同士が何故戦わなければならないのか?きっと何かの間違いじゃ。ルインよ、このカプセルに入るがよい。このカプセルに入れば、お主の戦闘力を2倍にするオーバードライブの持続時間を少しだが伸ばすことが出来るようになる。』

ライト博士がルインに“R”の文字が刻まれたチップをホログラムにして見せる。

そして次に見せるのはエックスのアーマーパーツのフットパーツだ。

『後はこのパーツをエックスに渡して欲しい。このフットパーツをつければ、ホバリングが可能になる。前後に動くことができ、暫く滞空出来る。高い場所にいる敵や、危険な場所を、落ち着いて移動するのに有効じゃ。一刻も早く無駄な戦いを止めるのじゃ、ルイン…』

「分かりました。パーツを受け取ります」

ルインはカプセルに入るとエックスのフットパーツを入手し、更にオーバードライブ持続時間延長チップを入手した。 

 

第78話:Ocean

ルインがカギキラジャングルから帰還し、メンテナンスを受け、エックスが破棄されたはずのバイオラボラトリーが動いていると言う情報を受けてバイオラボラトリーに向かっていた。

その時である、ハンターベースのモニターにレプリフォース海軍が映ったのは。

「Dr、トライス州の住民がレプリフォースの誘導でシェルターへの避難を始めました!!」

「何じゃとぉ!?ぬ~~~、何を始めるんじゃ…」

ケインはレプリフォースの狙いが分からず、モニターを見つめながら唸るが、何となく予想が付いたエイリアが口を開く。

「あそこには大規模なエネルギー精製工場があります。恐らくレプリフォースの狙いは工場の破壊でしょう」

「んなあ!?あそこをやられたらエネルギー供給が追っ付かなくなるぞい。く~~~、ルインが修理中でエックスが別件出動しておる時に~~~。」

「…あら?……Dr!!この反応は…ゼロです!!」

ゼロの反応をキャッチしたエイリアが叫んだ。

一方、エネルギープラント付近の海域では、施設破壊の準備が着々と進み、後は住民の避難の完了を待つだけである。

「ジェット・スティングレン隊長!!トライス州全住民の避難完了しました!!」

「うむ、御苦労!第二警戒態勢に入れ!!」

部下の報告を聞いたスティングレンは即座に次の指示を出し、エネルギープラントを見遣り、そして手に持っている起爆スイッチを見る。

「(エネルギープラントか……これを押せば80万世帯のライフラインかま断たれる……この破壊に正義があるのか……)………迷わん!!これは“義”なのだ!!カーネル様を信ずるのみ!!」

少しの間、葛藤するスティングレンだが、カーネルへの忠誠心のために起爆スイッチを押した。

仕掛けた爆弾が作動し、エネルギープラントが大爆発により吹き飛んだ。

火の海に包まれるエネルギープラントを見てスティングレンは息を荒くしながら起爆スイッチを落とす。

「ハァ、ハァ…に…任務……完了……これより帰還する」

スティングレンが部隊に帰還命令を出した直後、スティングレンの戦艦にランチャーショットが炸裂した。

「何だっ!?何が起きた!?」

「逃がしはしない!!」

アディオンに搭載されたランチャーでショットを放ちながらスティングレンの戦艦に迫るゼロ。

「(真紅のボディに流れる金髪……あいつがゼロか!!)全速離脱!!」

「?」

「え?」

その命令にスティングレンの部下達は目を見開いた。

「なっ、何故ですか!?」

「敵を前に逃げるのですか!?」

「軍人としてのプライドが許しません!!」

不満をぶつける部下達に対して、その気持ちを理解しながらもスティングレンは部下を守るために拳を叩き付けて黙らせた。

「全速離脱!!上官命令だ!!」

【イ、イエッサーっ!!】

「作戦は終了だ!!皆、生還することを考えろ!!」

【ハッ!!】

去っていく部下達を見て微笑むとスティングレンはゼロに向かって飛び立った。

「逃がさん!!お前らにはカーネルの居場所を教えてもらうぞ!!」

ゼロの目的はカーネルと居場所を知ることであり、そのためにスティングレンの戦艦に攻撃を仕掛けたのだ。

「カーネル殿の名を口にするか!この痴者がっ!!貴様にその名を口にする資格は無いと知れ!!」

ゼロに向けてエイ型メカニロイドを発射しながら接近するスティングレン。

「貴様、カーネルの居場所を知っているな!!」

「その名を口にするな!!」

「ならば力ずくで聞き出すまでだ!!」

「貴様にその資格はない!!」

「お喋りは終わりだ!!」

アディオンのランチャーショットでスティングレンを撃ち落とそうとするが、飛行性能も高いスティングレンには掠りもしない。

それどころか体当たりを繰り出してゼロを海中に叩き落とそうとする。

ゼロは体勢を立て直そうとするが、スティングレンは即座にバスターから竜巻を放ち、ゼロを海に沈めた。

「あんな痴者を“友”などと……カーネル殿唯一の汚点!……むっ!?」

「空円舞!!飛燕脚!!」

ゼロはフットパーツのバーニアをフルに使い、エックス達のエアダッシュ系統に相当する疑似飛行技を使い、スティングレンに肉薄した。

「馬鹿な、地上用のレプリロイドが空を…!?」

「バスターを使えない俺が貴様のような飛行型の相手をする場合のことを考慮しないと思うか!?エックスとルインの能力はしっかり学ばせてもらったぜ!!」

「(“学んだ”だと?レプリロイドが学んで技を会得するなど…まさか、ラーニングシステムか!?レプリロイドの動きやDNAデータを解析、学習することで性能を高めるパワーアップシステム…極一部のレプリロイドのみに実装されたと言う…)」

「空円斬!!」

ルインの回転斬りをゼロ用に調整した技でスティングレンに斬り掛かる。

「(避けられん!)」

スティングレンはかわせないことを悟ると、ダメージ覚悟でゼロの懐に入る。

「!?」

「一つ!強敵と出会うことを喜べ!!一つ!敵わぬと思い、自ら身を引くな!!一つ!死中に活を求めよ!!これがカーネル殿の教え!!」

バスターをゼロに密着させると零距離で攻撃を繰り出す。

「ぐあっ!!」

まともに喰らったゼロは一瞬意識が飛んだが、脳裏に浮かんだエックスとルインの姿に意識を取り戻すとスティングレンのバスターを掴んだ。

「むっ!?」

「カーネルの教えか…そいつは大した物だな」

掴まれたスティングレンのバスターがゼロの凄まじい握擊でへこんでいく。

「ぬ、おおお!?(な、何と言う膂力だ!?こ、こんな細身のどこにこんな力が!?)」

「」お前にも退けない理由があるように俺にも退けない理由がある。こんな大変な事態にも関わらずに独断行動をしようとした俺を信じて送り出してくれた友の想いに応えるためにも、必ずカーネルを見つけ出し、レプリフォースを止める!!」

スティングレンを戦艦に向けて投げ飛ばし、戦艦の甲板に叩き付ける。

ゼロは疑似飛行技でスティングレンに肉薄するとセイバーによる高速連擊を浴びせた。

「ぐああああっ!!」

「水中と空中では追い詰められたが、地上戦では俺は負けん!!」

スティングレンはゼロの繰り出す斬擊を何とか耐えながらかつてのカーネルとの会話を思い出していた。

あれは確か自分がまだレプリフォースに配属されたばかりの頃だろうか。

『大丈夫ですかカーネル隊長』

まだ新人だった頃の自分をイレギュラーからの攻撃から庇って怪我をしたカーネルの身を案じるスティングレン。

『馬鹿を言うな』

『しかしその傷は……私を庇って……』

『スティングレンよ、部下を守り、敵を倒し、生還する。これこそ軍人冥利に尽きると言うものだ』

そうスティングレンに語るカーネルの表情はとても誇らしげであった。

『カーネル隊長……』

『痛…しかし…奴には見られたくない様だな』

しかし傷が痛むのか、傷口を押さえながら顔を顰めた。

『あ、奴?』

『真紅のボディと風に流れる金色の髪、最強のハンター……ゼロ!!あいつなら部下も自分も傷付けず敵を倒すだろう……私の終生のライバルだ』

『(カーネル殿がライバルと呼ぶ男……ゼロ!会ってみたい!そしていつか所属の枠を越え、共に戦ってみたい!共に………戦い…………たい……)』

そして意識は現実に戻り、スティングレンは太刀筋を見切ってゼロの腕を掴んだ。

「何!?」

「貴様はカーネル殿に信用されていた!貴様は認められていた!!それなのにぃいーーー!!」

ゼロを殴り飛ばし、そして馬乗りになるとゼロに拳を振るう。

「ぐっ!!」

「カーネル殿を裏切った!カーネル殿の信念に刃を向けた!!絶対に……絶対にぃいぃいーっ、許さぁあんん!!」

「黙れ…!共に歩むだけが友情とは違う!!そんなことも分からん奴が…友情を語るな!!」

ゼロもスティングレンに殴り、そして蹴りを入れることで何とか吹き飛ばす。

「何としてでも貴様にカーネルの居場所を吐いてもらうぞ!!」

「ほざけ!!カーネル殿を裏切った罪、体に刻み込んでくれる!!」

ゼロとスティングレンが激突する直前、甲板に脱出したはずのスティングレンの部下達が現れた。

「お前達!命令違反だぞ!!」

「我々も一緒に!」

「共に誇りのために!」

「ば…馬鹿者共がぁ……」

「……………」

命令違反をしてまでスティングレンと共に戦おうとする部下達を見てゼロは動きを完全に止めてしまう。

次の瞬間、スティングレンの戦艦に砲弾が放たれた。

【!?】

一瞬、誰もが何が起きたのか分からなかったが、しかしゼロは理由に気付く。

自衛団が戦艦に砲弾を放ったのだ。

「(一応俺がいるのに撃ってきたか…いや、当然か…俺がいようと自衛団には関係ない。彼らは自衛団として正しいことをしている)」

ゼロは巻き込まれる前に海に飛び込んだ。

しかし、大量の火薬やエネルギーを積んだ戦艦の爆発は凄まじく、その衝撃は離れていたゼロをも余波で気絶させる程であった。

意識が途絶える寸前でスティングレンらしき残骸が目に入ったのだけは記憶に残った。 

 

第79話:Angel

戦艦の爆発の余波を受けて気絶したゼロだが、顔に水滴が落ちたことで意識を取り戻す。

「(ここは……?)」

見慣れない場所にゼロは体を満足に動かせないが、何とか周囲を見渡し、人影を発見した。

「(誰…だ……っ!?)」

一瞬ゼロは自分の視覚の機能がイカれたのかと思ってしまった。

目の前の人影には翼が…まるでルインがソニアに読み聞かせた物語に出てきた…。

「(天…使…?)」

人影は視線に気付いたのか振り返ると安堵の表情を浮かべた。

「良かった……気が付いたのね…ゼロ」

「アイリ…ス…?」

そう、ゼロの目の前にいたのはカーネルの妹で過去のイレイズ事件を共に解決に導いた仲間の1人の…アイリスであった。

一方でバイオラボラトリーに向かったエックスは螺旋階段を駆け登りながらメカニロイドを迎撃していた。

「ダブルチャージショット!!」

エックスはサードアーマーを身に纏いながら、メカニロイドにダブルチャージショットを放って破壊する。

エックスはただの調査だから必要ないと思っていたのだが、エイリアからは万が一に備えてと言われて装着したのだ。

こうして大量のメカニロイドが現れているのを見ると、エイリアの判断は正しかった訳だ。

『エックス、再調整したサードアーマーの使い心地はどうかしら?』

「良好だよ。これが無かったら大変だったかもしれない」

今まで臨時のオペレーターとしてエックスの戦いを見てきたエイリアは歴代のエックスの強化アーマーを復元しようとしてきたが、復元が今以上に不完全でオリジナルに性能が大きく劣る物だった。

しかし今までの努力が実を結んで今までのレプリカアーマーよりも再現度の高い物を用意してくれた。

必要ないのならそれに越したことはないのだが、今はただ感謝するだけだ。

「(ゼロ…君は今まで俺達を助けてくれた。だから今度は俺達が君を助ける番だ。ハンターベースは俺達が守るから君は安心して自分の道を進んでくれ)」

エックスはエアダッシュを駆使してメカニロイドの攻撃をかわしながら螺旋階段を抜け出した。

一方ゼロはアイリスと再会し、アイリスに様々なことを尋ねていた。

「アイリス…お前はこんなところで何をしているんだ…?レプリフォースのオペレーターのお前が…こんな急拵えの薄暗い所で…」

普通ならオペレーターであるはずのアイリスがこのような場所にいるなど不自然だ。

そう感じたゼロはアイリスに尋ねた。

「そうね、でもその前にあなたの修理をさせて」

アイリスがゼロの腕に触れながら言うと、ゼロは複雑な表情を浮かべる。

「俺は独自で行動しているとは言えイレギュラーハンターだ。もしこれがレプリフォース上層部の連中に知られたらいくらお前がカーネルの妹とは言え、ただでは済まないぞ」

「……そうね」

「………アイリス、お前もカーネル達の考えに賛同したのか?俺はあいつらのしたことが許せん。いくら住人を避難させたとは言え、今までの破壊活動で何百万ものライフラインを断ったんだぞ…確かに即イレギュラー認定したハンター側にも非はあるかもしれないが、あれでは人殺しと同じだ!!イレギュラー認定を受けても文句は言えんぞ!!」

「…………」

ゼロの怒声にアイリスは悲しげに俯くのみ、無言のアイリスにハッとなったゼロはばつが悪そうに顔を逸らした。

「…すまない、お前に当たっても仕方ないと言うのに……アイリス、カーネルの居場所を教えてくれ」

「………ごめんなさい」

「アイリス、お前のカーネルを思う気持ちは分かるが…カーネルを早く止めないと被害が…」

「違う…分からないの」

「え?」

「私はクーデターが本格的に始まる直前に仲間と一緒に軍を抜け出したから…」

「そうか……ん?」

アイリスもカーネルの居場所を知らないことに落胆するゼロだが、あることに気付いた。

「アイリス…お前、抜け出したって…まさかレプリフォースを脱走したのか…?」

「ええ、兄さんやお世話になった上官には本当に申し訳ないと思うけど…兄さん達の気持ちも分かるけれど、それだと人間とレプリロイドの共存の可能性が無くなってしまうから」

「そうか…お前は分かってくれたんだな…」

安堵したように深い溜め息を吐いたゼロにアイリスは苦笑しながら口を開いた。

「ゼロ、私ね…前は人間とレプリロイドの共存なんて不可能だと思っていたの」

「…そうか」

ある意味それは当然かもしれない。

ゼロも人間とレプリロイドの共存を信じるエックスを見ていても疑問を感じる時がある。

「でもね、ある時、ルインからルインの正体を聞かされた時、凄くびっくりしたわ。だってどこからどう見てもレプリロイドにしか見えないルインが元人間だってことに」

「そうだな、それが普通の反応だろう。」

今まで親しかった友人が元人間だと知れば普通に驚くだろう。

「最初はからかわれているんだって思ったけどルインは私の目を見て真っ直ぐに伝えていた。知ってる?ルインって嘘を吐く時、視線を逸らす癖があるの」

「知っている。俺もあいつとはそれなりに長い付き合いだからな」

「元人間だったルインが、エックスやエイリアさん。そしてゼロ達みんなと仲良くしているのを見ていたら、人間とレプリロイドの共存も有り得なくはないんじゃないかなと思えるようになったの」

ケインも人間とレプリロイドの共存を信じているが、ケインはレプリロイドを造った人物なので除外した。

「………そうか」

笑みを浮かべるゼロにアイリスも笑みを返すが、意を決してゼロに尋ねた。

「ねえ、ゼロ…兄さんと会って…どうするの…?」

「…………カーネルを止める」

少しの沈黙の後、ゼロはアイリスの問いに答えた。

「説得…出来る…?」

「分からん、出来れば対話で済ませたいが…あいつの頑固さは筋金入りだ…あいつの返答次第では戦闘になるかもしれん…」

「…………そう」

「だが…俺は…あいつを死なせたくない。知り合いをこれ以上失うのは…流石に嫌なんでな…」

ゼロの脳裏に浮かぶのは最初の大戦で死んだイーグリードとルインの死顔である。

ルインは帰ってこれたが、今でもあの時のことは忘れない。

「昔の俺は知り合いが死んでも大して動じなかった。しかし最初のシグマとの戦いでイーグリードやルインが死んだ時、俺の中で何かが失われたのを感じた。今なら分かる…あれは“悲しい”と言う感情なんだってな。情けない話だ。身近にいた友人を一気に失ってようやく失うことの恐怖が分かるなんてな」

「ゼロ……」

「…すまん、変な話を聞かせたな」

「いいえ、話してくれてありがとう。後少しで修理が終わるから…もうちょっと我慢を…」

アイリスが言い切る前にアイリスの仲間であろうレプリロイドが駆け込んできた。

「アイリス!!」

「どうしたの?」

「昨日収容した人の容態が…」

「直ぐに行くわ、ゼロ…」

「充分だ、これくらいなら後は自分で直せる。」

幸い両腕の修理は完了しているから後はフットパーツのみだ。

大した損傷ではないし、これくらいなら大丈夫だろう。

「行け、大事なことなんだろう?」

「ええ、ありがとうゼロ!!」

アイリスは礼を言うと、仲間と共に奥へ向かった。

「ふう…」

溜め息を吐くゼロ。

思っていたよりも気を張っていたようだ。

アイリスが残してくれた器具を使い、フットパーツを修理をする。

「………こんなものか」

フットパーツを修理したことで脚部は満足に動けるようになり、ゼロはゆっくりと立ち上がる。

「…アイリスは仲間と一緒に何をしているんだ?」

奥へと向かうと、そこではアイリス達が傷付いたレプリロイド達を修理していた。

「修理しているのか…ここにいる全員……敵…味方関係無く、傷付いた者達を……これがアイリス達の戦いなのか…」

ゼロは修理の邪魔にならないように静かに元の場所に戻ったのであった。 

 

第80話:Bio Laboratory

一方、バイオラボラトリーのエックスはある場所に閉じ込められていた。

「何処にいるんだ?このラボを管理しているボスは?閉じ込められただけじゃなくてエイリアへの通信も出来ない…何が目的なんだ?俺を生け捕る作戦か…それとも時間稼ぎ……若しくはここでデスマッチ……」

次の瞬間、床が揺れ始めた。

「(来たか!?)」

敵の襲撃を警戒し、周囲を見渡した瞬間に床が崩れ、大型メカニロイドからの奇襲を受ける。

「ぐああっ!!」

エアダッシュする余裕もなくまともに攻撃を受けてしまうエックス。

メカニロイドのドリルに脇腹を抉られるが、サードアーマーを身に付けていたのが幸いし、ダメージは軽微である。

「くうっ、まさか下から来るとは…」

サードアーマーを纏っておいて良かったと思う。

もしこのアーマーがなかったらこんなダメージでは済まなかっただろう。

また床が揺れる。

「………今だ!!」

エックスはメカニロイドの奇襲をダッシュでかわすとダブルチャージショットの後にショットの連射を浴びせた。

そして再び穴に戻るメカニロイド。

「(くっ、何とか奴の動きを封じられれば……そうだ…)」

動きを封じるのに丁度良い特殊武器がある。

そしてあのサイズなのでチャージ攻撃でなければ動きを封じられない。

エックスは無事に帰還したらエイリアにお礼をしようと誓った。

タイミングを図り、エックスはダッシュでメカニロイドの攻撃をかわすと特殊武器を放つ。

「ライトニングウェブ!!」

バスターから放たれた光弾は巨大な電気を纏う蜘蛛の巣となってメカニロイドを絡め取った。

「とどめだ!!」

零距離でダブルチャージショットを放ち、チャージライトニングウェブによって拘束されたメカニロイドを爆砕した。

「何とか倒せたか…むっ!?」

エネルギー反応を感知したエックスは上を見上げる。

そこにはキノコを思わせるレプリロイドがエックスを見下ろしていた。

「そこかっ、ライトニングウェブ!!」

エックスはライトニングウェブを足場にしてレプリロイドの元に向かう。

「バイオラボラトリー管理用レプリロイド、スプリット・マシュラーム!!お前がここのボスか!!」

エックスは即座にデータを検索し、バイオラボラトリー管理用キノコ型レプリロイドのスプリット・マシュラームの詳細を調べた。

マシュラームはバイオラボラトリーの破棄と同時に処分されたはずだが…。

「ボス~~~?一体何のこと~~っ?」

エックスの言葉にマシュラームはただ疑問符を浮かべるだけである。

「そんなことより、さぁ!!一緒に遊ぼうよ!!」

「何!?待て、どう言うことだ!?」

マシュラームの言葉に驚愕するエックスだが、次のマシュラームの行動にも驚愕する。

「行っくよ~、ソウルボディ!!」

マシュラームは自身を模した高エネルギーの分身を数体作り出す。

「分身っ!?」

「行っけぇーっ!!」

エネルギー体の分身をエックスに向けて飛ばすマシュラーム。

咄嗟にエックスは両腕を交差させて分身を防御する。

「くっ、待てと言っているだろう!!」

「待て待てってさ~~~戦う気あんの~?弱い奴は友達じゃないからね」

「待つんだ!!」

マシュラームの言葉にエックスが叫んだ。

「お前はあいつのように善悪の区別がついていないだけだ!!やり直すんだよ!!今すぐ回路を修理するんだ!!」

エックスはカウンターハンター事件の際に戦い、ケインに修理されたことで更正したワイヤー・ヘチマールを思い出しながら叫んだ。

「体を弄られるのはや~だよ。それに戦わないなら聞きたくないもんね~~~」

分身をエックスに飛ばしながらマシュラームはそれを拒否した。

「そんなに言うなら戦ってやるさ!!その代わり、俺が勝ったら言うことを聞いてもらうぞ!!」

エックスの言葉にマシュラームは無邪気に笑いながら頷いた。

「OK!でもお兄ちゃんは勝てるかな~~~っ!?」

「約束だぞ!!」

両腕のバスターのチャージを終えるとマシュラームにダブルチャージショットを放つ。

「こっちだよ~だ!!」

マシュラームは身軽な動作でそれをかわすと分身を飛ばしてくる。

「くっ、戦闘慣れはしていないようだが、速い…」

小型のレプリロイドであることもあって、マシュラームに攻撃を当てるのは困難だ。

「よし…ライトニングウェブ!!」

最大出力のライトニングウェブを周囲に放ち、マシュラームの動きを阻害するように展開した。

「うわあ!?あぎゃぎゃぎゃあ!?」

動き回っていたマシュラームはライトニングウェブに絡め取られ、ライトニングウェブの電気によって感電した。

「もらった!!ダブルチャージショット!!」

感電と糸によって動きを止められたマシュラームだが、エックスは念には念を入れるように1発はマシュラームの脚部を撃ち抜き、次は頭部を狙い撃ち、気絶させた。

落下するマシュラームを受け止め、後はケインの元に連れていくだけだと安堵した時、背後から襲撃を受け、マシュラームを奪われてしまう。

「マシュラーム!!」

直ぐに追い掛けるエックス。

一方のゼロはアイリス達が修理を終えたのを見て、そちらに向かう。

「ごめんなさいゼロ。あなたの修理を放り出して」

「構わない、残りは大したことはなかったしな」

「そう……ねえ、ゼロ…この戦いは…誰が望んだのかしら…」

「何?」

「兄さん達じゃないのは確かなの、この戦い…何か邪悪な“モノ”に操られている気がするの……」

「邪悪な…か……」

ゼロはこの戦いを裏で操ろうとする存在について考え始めた。

そして場所はバイオラボラトリーに戻り、エックスはマシュラームを腕のブレードで串刺しにしているレプリロイドを睨み据えた。

「マシュラームを放せ…!!」

「おめえは殺さねえよ。今日は命令を受けてねえからな」

「ふざけるな!!」

エックスは謎のレプリロイドに向けてチャージショットを放つ。

「おっと、普段は甘いのに怒ると意外に攻撃的になるんだな……何!?」

既に第二撃のチャージショットが放たれていた。

レプリロイドは体を捻ってかわすが、エックスはエアダッシュで距離を詰めるとマシュラームを救出した。

「誰かは知らないが、更正出来るかもしれない彼を死なせはしないぞ」

「チッ、こんな単純な手にかかっちまうとは…まあいい、いずれ命令を受けた時は膾のように切り刻んで殺してやるよ」

それだけ言い残すとレプリロイドは去っていった。

「去ったか…それにしても奴は俺のことを知っているような口振りだったな…一体何者なんだろう…」

エックスは言い様のない不安を抱きながら夜空に浮かぶ満月を見上げた。 

 

第81話:Air Force

エックスは救出したマシュラームをケインに預け、そしてハンターベースの休憩室でようやく体が万全の状態となり、エイリア達と話していたルインと合流し、他愛のない話をする。

「そういえばエックスは前にライト博士に波動拳を教えてもらったよね?」

[はどーけん?]

「波動拳?」

初耳の単語に成長して舌足らずではあるが話せるようになったソニアとエイリアは顔を見合わせるしかない。

「ああ、そうだけど…」

[ねえ、はどーけんって何?]

「もしかして他にもライト博士に技を教えてもらったりした?」

[はどーけーん]

「ライト博士からは敵に接近された時の為と滞空している時に使える昇竜拳を教わったんだ。威力は言うまでもなく強力だった。でも波動拳みたいに危険じゃないわざだよ。因みに2人が気にしている波動拳はこういう風に波動を練って…」

エックスはエイリアとソニアの前に両手を翳すと、掌に波動を練る。

[おおー、これがはどーけん]

「不思議…光学系のエネルギーと似ているけど全く違うわ」

未知の力に科学者としての好奇心が疼くのか、エイリアはエックスの波動を見つめる。

「博士曰く、これは厳しい修行をして鍛えた人間のみが会得出来る技らしい」

「…じゃあ、どうしてエックスは使えるの?」

人間のみしか会得出来ないと言うのなら何故エックスは会得出来たのか?

「………さあ?」

「エイリア、多分色々事情があるんだよ。色々と…と言うかエックス、それをぶっ放さないでよね!?下手したらハンターベースが塵になるから!!」

「流石に誤って放ったりはしないよ!!山を消し飛ばす威力なんだから!!」

「ハンターベースが…塵…?山を消し飛ばす…?どう言うこと…?」

この話題はあまり深く関わらない方が良さそうだと判断したエックス達は他の話をしようと話題を変えようとした時である。

「た、大変デシ!!」

ダブルが慌てた様子で休憩室に入ってきた。

「ダブル?どうしたんだ?」

「エ、エアフォースがシティ・アーベルに空爆を仕掛けて来たデシ!!」

エックス「何だと!?」

即座に立ち上がるエックス達だが、しかしダブルが告げに来たのはそれだけではない。

「そ、それにディザイア先輩が飛行艇で独断でエアフォースに向かったデシ!!」

「ディザイアが!?どうして…」

「エイリア、彼の乗った飛行艇に通信を繋げられるか?」

「やってみるわ、その前にここを出ましょう」

全員が休憩室を飛び出し、通信室に入るのと同時にエイリアが端末のキーを素早く打ち込み、ディザイアが操縦している飛行艇に通信を繋げた。

「ディザイア!!お前は何をしているんだ!!早くハンターベースに戻ってこい!!」

『エックス隊長、あなたは非道な行いをしているイレギュラーを見過ごせと?』

「そ、それは…でも…お前1人で何が出来るんだ。いくら何でも無謀だ!!今すぐハンターベースに戻ってこい!!」

『失礼ながらエックス隊長…私はスパイダスとの戦い以後、更に力をつけました。フクロウルのようにただ後方で指揮するような臆病者には負けませんよ』

「でもディザイア、君だけで挑むなんて無謀だよ」

ディザイアか訓練をしていることは知っているが、流石に無理があるとルインは冷静に判断した。

『ふ、副隊長…』

「そうよ、あなたの実力は誰もが知っているけれど、レプリフォース参謀長のストーム・フクロウルは知略だけの相手ではないわ。実力主義のレプリフォースの中でも一目置くほどの実力者であると言う情報が…」

『うるさい!!臨時のオペレーターが偉そうに!!』

「な…?」

「ディザイア…?」

ディザイアの怒声にエイリアとルインは目を見開き、エックスは目を細めた。

「ディザイア、先程の発言は聞き逃せないな。彼女は確かに臨時のオペレーターだが、ケイン博士によって選ばれた優秀なオペレーターだ。彼女への侮辱はケイン博士への侮辱でもあるんだぞ?」

それを聞いたディザイアは苦々しげな表情を浮かべる。

『失礼しましたエイリアさん。でも…少しは、私の言うことも聞いてください。私も…副隊長や皆のこと…ちゃんと 考えているつもりなんだ。それなのに…大丈夫です…全て…上手くいきます…もしフクロウルを倒せれば副隊長…私は…私はあなたに…』

通信が届かない高度に到達したのか、モニターにノイズが走って通信が途絶えた。

「……これはまずいことになったな…」

エックスは隊長としてディザイアの実力は知っているが、フクロウルには絶対に勝てないと確信出来た。

伊達にフクロウルは戦闘のプロ集団であるレプリフォースの参謀ではない。

事実、カーネルでさえフクロウルに一目置く時点でそれに見合った実力があるのだ。

「ダブル、今すぐ飛行艇の用意を!!俺がディザイアを追い掛ける!!ルインは他の地域のレプリフォースを頼めるかな?」

「分かった…エックス、ディザイアを…彼をお願い」

「…分かっている」

エックスはディザイアを追い掛けるべく、ダブルに用意させた飛行艇に乗り込み、エアフォースに向かう。

そしてエアフォースに近付くと飛行艇を乗り捨て、エアフォースの空中戦艦に着陸したエックス。

恐らくディザイアが斬り捨てたレプリフォースの軍人達の残骸を見遣りながら、奥へと進んでいく。

道を塞ぐメカニロイドや迎撃用の砲台が破壊されているために進むのは他の基地に比べ比較的容易であった。

奥へと突き進むとリフトに乗り、更に奥へと進むと…。

『エックスよ』

「博士?」

ライト博士の声に引き寄せられるようにエックスは足を進めた。

そこにはカプセルがあり、ライト博士がエックスを見つめていた。

『今までにない未曾有の戦い…それを一刻も早く終結に導くべく、これまでとは違ってアームパーツは2種類用意した。用途に合わせて用いるのじゃ。』

「アームパーツを2種類もですか?」

『そう、セカンドアーマーとサードアーマーのアームパーツは威力と命中率に重きを置いた結果、反動により機動性を損ねると言う問題点があった。今回のアームパーツはそれを解消した物じゃ。』

ライト博士はそう言うと、アームパーツのホログラムをエックスに見せる。

『まず1つはストックチャージショット。エネルギーチャージに通常よりも時間を要するが、より高密度なエネルギーを集束させ、単発の威力と規模は今までのアームパーツと比べれば見劣りするが、チャージショットを4発連続で放てるようになるため、総合威力に置いては最大出力のダブルチャージをも上回る。』

「チャージショットを4発連続で…?」

エックスの最大火力のチャージショットを4発連続で放てるようになるアームパーツの凄まじい性能に目を見開くが、ライト博士の説明は更に続く。

『そしてもう1つがプラズマチャージショット。こちらはストックチャージと違い単発じゃが、その威力と規模は極めて大きく、過去のリミッターを解除したファーストアーマーのスパイラルクラッシュバスターに匹敵する。そしてダメージ効率を上げるために敵に着弾するのと同時にプラズマを発生させ敵に追加ダメージを与える事が可能じゃ。こちらはチャージ時間がノーマルの状態時と変わらないため、通常のバスターと同じ運用法で使えるぞ』

かつて最初のシグマの反乱に置いて驚異的な破壊力を発揮したスパイラルクラッシュバスター級の破壊力を誇り、更にプラズマによる追加ダメージを与えるという射撃型故に追撃を苦手とするエックスにはプラズマチャージの性能は頼りになる。

『命中率重視のストックチャージと威力重視のプラズマチャージの2種類のアームパーツを用途に合わせて使い分けて戦うのじゃ』

チャージショットを4発を連続で放てるストックチャージショット。

スパイラルクラッシュバスター級の威力を誇り、プラズマによる追加ダメージを与えるプラズマチャージショット。

どちらもバスターを主軸にして戦うエックスには心強い物であり、これならどのような敵が現れても対等に渡り合えるだろう。

『それからこれはあの子に渡して欲しい。ルインの強化チップじゃ』

オーバードライブの使用時間を延長させるチップ。

エックスは会釈するとカプセルに入り、アームパーツを入手するとアームパーツに意識を向けることでストックとプラズマの切り替えが出来るようだ。

ルインのチップも入手したエックス。

『ところでエックス、そのアーマーも…エイリアと言ったかな?彼女が復元したのかね?』

「はい、そうです。彼女が用意してくれたこのアーマーには助けられています。自分もオペレートや研究で忙しいのに…」

『ふむ…良い仲間と巡り会えたのうエックス、この戦いはあってはならないものじゃ、同じ平和を目指す者同士が争うなどあってはならない。頼んだぞ、わしの…世界の希望』

「…はい」

正直に言うと被害が拡大する前にレプリフォースを止められるかどうかは自信がない。

イレギュラーハンターとレプリフォースでは地力に差があるのだ。

自分達が基地を叩くことで何とかなっているが、世界各地に散らばっているレプリフォース軍にはイレギュラーハンターは惨敗している。

しかし泣き言は言ってられない。

自分は誇りあるイレギュラーハンターなのだ。

「ありがとうございますライト博士。私は最後まで諦めたりはしません。あなたと仲間達との誓いがある限り。」

『エックス…』

「ライト博士、私はこの力を正しきことのために使います…希望のために」

ライト博士の前にバスターを掲げ、かつての誓いを告げるエックス。

『私も信じているよエックス。お前がその力を正しく使ってくれると言うことを…』

ライト博士は微笑みながら去っていくエックスを見送る。

『どうか…あの子に明るい未来を…』

彼の祈りはエックスには聞こえなかったが、きっと届くだろう。

そしてエックスは新たに得たアームパーツを使って一気に駆け出した。

流石にかなりの時間が経過したから迎撃用のメカニロイドが出てくると思ったが…。

「妙だな、ディザイアが倒したにしてはあまりにも少なすぎる」

迎撃用のメカニロイドは確かに出てきたが、その数はかなり少ない。

あまりにも簡単に行きすぎて何かの罠ではないかと疑ってしまうくらいに手薄だった。

「まさか何かの罠…」

「よーし、大量大量!!これくらいジャンクパーツがあれば充分だろ!!」

「…………」

この場に不似合いな女の子の明るい声が響き渡った。

エックスは声が聞こえた方に向かうと、そこにいる二丁拳銃を持った銀髪のポニーテールが特徴の少女型レプリロイドにバスターを向けた。

「動くな!レプリフォースの者じゃないな!?ここで何をしている!?」

「いっ!?」

少女型レプリロイドは即座に拳銃を捨て、ホールドアップする。

「待て待てお兄さん!!落ち着け!!俺はイレギュラーじゃないんだぜ!!だから落ち着いてくれ!!」

「じゃあ何でこんな危険な所にいるんだ…?」

「材料の回収。俺はジャンク屋を営んでいてね、聞いたことはないか?時々ハンターベースにジャンクパーツとかを売りに来る…」

「噂で聞いたことくらいなら…まさか君が?」

時々、ハンターベースにジャンクパーツや武器類を売りに来る少女型レプリロイドがいると聞いたことはあるが、まさか目の前にいる少女がそうだと言うのか?

「そういうこと。今、大量のジャンクパーツの依頼が来ていてね。そのお客さんに売るためのジャンクパーツ入手のためにこの戦艦に乗り込んだのさ。因みにメカニロイド限定な」

「とにかくここは危険だ。いつレプリフォースに気付かれるか…」

エックスが少女の身を心配して言うが、少女は苦笑しながら言う。

「今、パーツ集めがいいとこなんだよ。見逃してくれ、頼むよ。依頼してくれたお客さん、元レプリフォースらしいんだ。傷付いた人達を救うために修理に使えるパーツが欲しいんだと…こんなこと聞かされたら揃えてやるしかねえじゃんか」

手を合わせて拝み倒しながら説明する少女にエックスは疑問符を浮かべた。

「元レプリフォース?そのレプリロイドの名前は?」

「名前?言い辛そうだったから聞かなかったけど、赤と青の配色のアーマーと栗色の長い髪が特徴の女の子レプリロイドだ。依頼とあらば誰であろうと何処にでもってのが俺のモットーだからな」

「まさか…アイリス!?」

「お兄さん、俺のお客さんのことを知ってるのかい?」

「知り合いなんだ…元レプリフォースと言うことは…そうか、彼女は敵じゃないのか」

共に事件を解決した仲間が敵とならなかったことに安堵するエックス。

「貴重な情報をありがとう。でも早くパーツ集めを切り上げてここから去った方が良い。」

「勿論、危なくなったらすぐに逃げるよ。見逃してくれる代わりにとっておきのパワーアップパーツをやるからさ」

半ばエックスに押し付けるようにパーツを渡す少女にエックスは思わず苦笑した。

「んじゃあ、そういうことで、そいつは“ハイパーチャージ”って言ってバスターのエネルギーチャージの効率を飛躍的に高めて、チャージ時間を半分に出来るんだ。本当なら1000ゼニー払って欲しいけど見逃してくれる今回は特別だよ」

背中を向けて去ろうとする少女型レプリロイドをエックスは呼び止めた。

「待ってくれ、君の名前は?」

「俺の?俺の名前はルナってんだ。俺はそう名乗ってる」

「?」

「俺、誰に造られたのかさっぱり分からないんだ。気づけば何もない荒野で倒れてて、世界を放浪していた時、たまたまジャンク屋を営んでいたじいさんに拾われて、この名前もじいさんがつけてくれたんだ。俺が拾われたのが月夜だったって単純な理由でさ、まあ気に入ってるからいいんだけどさ。だから俺の本当の名前を知る奴はどこにもいない」

「…すまない、悪いことを聞いた」

「別に気にしてない。じゃあな!!今度会ったらご贔屓に!!お兄さん!!」

ルナは明るく言いながらジャンクパーツの回収に向かう。

「変わっているけど悪い奴じゃなさそうだな…しかし、彼女のアーマーの形状はルインのアーマーと似ているような…」

押し付けられたパーツをバスターに装備しながらエックスは奥へと向かう。

急いで通路を駆け、梯を登り、戦艦の甲板に辿り着いた。

そこには無傷のフクロウルと、瀕死となって横たわっているディザイアの姿があった。

エックスはフクロウルにバスターを放ち、ディザイアから離すと即座にダッシュで移動し、ディザイアの前に立つ。

「レプリフォース参謀長、ストーム・フクロウルだな?」

「……いかにも、貴様があの噂に名高いエックスか…。カーネル殿から話は聞いている。その小僧を助けに来たのか?助けたところでそれは貴様に感謝などせんぞ。それどころか貴様に対しては怨みを持つかもしれんぞ?」

ディザイアと戦ったフクロウルはディザイアがエックスに対して強烈な嫉妬心を抱いているのを見抜いているのだ。

エックスに助けられたと知れば、感謝よりも屈辱に唇を噛み締めるのは目に見えている。

「そうかもしれない。でも俺は彼を助ける。そして仲間を部下をこれ以上死なせはしない」

守ってみせる。

そして死なせはしない。

これ以上大事な仲間を誰1人として。

ディザイアが自分をよく思っていないのはエックスも当然気づいている。

しかし彼には剣を教えてもらった恩があるので、その借りは返さなければならない。

「欲張りな男よ…。私は誇りあるレプリフォースの軍人。イレギュラーハンター共に負けるわけにはいかん!!我々をイレギュラー扱いし、敵に回した報いを受けるがいい!!」

「どんな理想があろうとお前達のしようとしているのは間違っている!!イレギュラーハンターとしてお前達を止めてみせる!!喰らえ、ダブルチャージショット!!」

ディザイアが転送されたのを見届けるとエックスがダブルチャージショットを放った。

強化パーツの恩恵で通常よりも半分の時間で放てるようになった2発のチャージショットがフクロウルに迫る。

しかしフクロウルは飛翔することで回避した。

「ダブルチャージ……確かに噂通りの素晴らしい威力だ。まともに受ければ誰であろうとただでは済まんだろう。だが…」

飛行速度を上げ、強烈なタックルをエックスに喰らわせるフクロウル。

「ぐっ!?」

「いくら強力な攻撃であろうと当たらなければどうということはない!ダブルサイクロン!!」

真空の刃を纏ったエネルギー弾を放ち、エックスに直撃させる。

「ぐっ…おおおお!!」

バスターをチャージし、フクロウルは先程のダブルチャージが来ると予想し、距離を取る。

「ソウルボディ!!」

両腕を広げ、フクロウルに目掛けて複数のエネルギー体の分身が襲い掛かる。

「何だと!?」

エックスが放ったチャージソウルボディの分身に目を見開くが、フクロウルはそれを回避すると羽型のエネルギー弾を放つ。

「ライトニングウェブ!!」

しかしエックスも避けられることは想定済み。

ライトニングウェブを放ち、それを壁代わりにして大きく跳躍する。

「!?」

「行け、バグホール!!」

そしてフクロウルに接近すると念のために用意していたビートブードの特殊武器を使ってフクロウルをこちらに引き寄せる。

「なっ!?」

「ダブルチャージショット!!」

ダブルチャージショットをバグホールの引力で引き寄せられているフクロウルに向けて放つ。

フクロウルは咄嗟に体を捻ることで直撃は避けたが、左肩を吹き飛ばされる。

「くっ、私は誇りあるレプリフォース。そしてこの艦隊を預かる者として…負けるわけにはいかん!!」

「フクロウル…」

「エックスよ。貴様の強さは見事と言う他はない。模擬戦とは言え流石はあのカーネル殿と互角に渡り合ったことはある。貴様の実力に敬意を表し、我が最大の奥義を貴様にくれてやろう!!」

自身の周囲からサイクロンを放ち、それをエックスに喰らわせる。

「ぐああああああ!!」

まともにサイクロンを受けて吹き飛ばされるエックス。
しかし体勢を立て直し、バグホールを放とうとするが、フクロウルもそれを読んでいたらしく、距離を取る。

「それはある程度距離が近くなければ対象を引き寄せられんのだろう?ダブルチャージもこれだけ離れていれば時間差で放とうが容易にかわせる。この勝負、私の勝ちだ!!くたばるがいいエックス!!」

「くそ…」

バグホールは届かない。

ライトニングウェブを使おうが同じことだ。

ダブルチャージショットもかわされてしまうとならば。

「(これしかないか)」

エックスはサードアーマーを解除し、一旦ノーマル状態となると新しいアーマーのフットパーツと白のアームパーツのストックを装着する。

チャージ完了。

「当たれーーーっ!!」

ストックチャージの1発目が放たれる。

フクロウルは先程よりも出力も大きさも小さい一撃に訝しむが回避。

「もう1発!!」

もう1発放ち、フクロウルに回避行動を取らせると静止した瞬間に残り2発のチャージショットをフクロウルに命中させた。

「がはっ!?馬鹿な…チャージショットを4発まで連発するだと…!?」

「ライトニングウェブ!!」

チャージしたライトニングウェブで落下するフクロウルを拘束するとアームパーツを黒のプラズマに切り替え、バスターのチャージする。

「プラズマチャージショット!!」

「ぐはああああ!!?ば、馬鹿な…こんな…!!」

至近距離でのプラズマチャージショットを受け、フクロウルは爆散した。

「ふう…」

どうやらエアフォースは指揮官であるフクロウルが倒されたことで撤退するようだ。

フクロウルのDNAデータを回収し、簡易転送装置でハンターベースを帰還しようとするが、フクロウルとの戦闘で壊れてしまい、エアフォースの小型戦闘機を奪って脱出したのである。 

 

第82話:Disappointment

ディザイアが目を開けると、そこはハンターベースのメンテナンスルームだった。

しばらく呆然となってメンテナンスベッドに仰向けになって天井を見上げていた。

自分が何故ここにいるのか、今まで何をしていたのか、はっきり思い出すまでに時間がかかったものの、やがて全ての記憶が甦ってきた。

「気が付いたかしらディザイア?」

ディザイアの意識が回復したことに気付き、ソニアを肩に乗せたエイリアが覗き込んでくる。

「エイリアさん…私は………一体どうしてここに……?」

ディザイアの問いに、エイリアは少しの間を置いて淡々と答える。

「………エックスがあなたを助けてくれたのよ。本来なら独断行動と命令無視で見殺しにされるか処分されてもおかしくないあなたをハンターベースに転送してくれたのよ。多分、今はストーム・フクロウルと交戦している頃かもしれないわ…」

「エックス…隊長が………?」

ディザイアはそのまま黙り込む。それは知りたくない事実だった。

ディザイアは沈痛な表情を浮かべる。

自分が犯した最大の失敗。

そして、今……その失敗を拭おうとしているのが、あの気にくわないエックスである。

それが彼にとっては屈辱だった。

「あなたが独断で動いたことで市街地の被害が広がったのよ。寄生チップなどの事情があったビートブードとは違って、あれはあなたの意思でやったことだもの。いくらエックスが優しくても今度ばかりは処分は逃れられないわよ」

ディザイアが独断で突っ込んだことでエアフォースの流れ弾が市街地に被害を与えたのだ。

おまけに命令無視、組織に所属する者としては決してしてはならないことだ。

特に今回のような時は大規模な争乱の時は。

「…分かって、ます……」

「エックスが帰還するまであなたの処罰は保留になるわ…それまでに頭を冷やしなさい」

エイリアが医務室から出て行き、そして少しして窓からルインとエイリアの声が聞こえてきた。

「ねえ、エイリア。エックスは大丈夫かな?」

「ルイン?」

窓から様子を伺うとルインがエイリアに不安そうに尋ねていた。

「だってフクロウルと戦ってるんでしょ?エックスには私みたいに空は飛べないし、ここは私が行くべきだったんじゃ…」

「心配性ねルイン。エックスは強いし、あなた達を置いて死ぬわけないじゃない、信じなさいルイン。信じることも大切なことよ」

「うん、そうだね。エックスを信じなきゃ…帰ってきてね…私達の所に」

ルインがエックスを想う目は自分と同じ目……。

恋をする目……誰かを愛する目だった。

自覚はないにしてもルインがエックスを好きだということは分かっていた。

実際にそれを目の当たりにして、もしかしたらエックスではなく自分を選んでくれるかもしれないという淡い期待が崩れていく。

「(ルインさん……。あなたはそこまでエックス隊長のことを…。どうして…私では、駄目なんですか?)」

目の前にいないルインに、ディザイアは心の中で問い掛ける。

だが、その答えは彼自身分かっていた。

思わず自嘲の笑みを漏らしてルインとエックスの絆の強さをいつも痛感する。

2人の間に割って入ることは出来ない。

そう、誰にも出来ないのだ。

ディザイアは近くの端末を使い、空のディスクを差し込むと震える声で言葉を紡ぐ。

「エックス隊長、ルイン副隊長…私は命令無視をした挙げ句フクロウルに敗北しました。」

今のディザイアにルインに会わす顔がない。

イレギュラーハンターの称号を返上し、ハンターベースから去る。

それが、悲しみ、絶望、失意…様々な負の感情に縛り付けられたディザイアに出来る唯一の方法だった。

だが、出ていく前に、エックスとルインに結果を報告しなければならない。

自分の胸に溢れている悲しみを無理やり抑え込んで、報告を続ける。

「全ては…私の責任です」

淡々と語るディザイアの声は震えていた。

『レプリフォースは甘くない。お前は確かに強いが、レプリフォースは戦闘のプロだ。直ぐにハンターベースに戻って来るんだ』

ディザイアの脳裏に、通信でエックスが自分に言った言葉が甦る。

あの時、ディザイアはエックスにこう言い返した。

『ご忠告、ありがとうございます隊長。ですが、今の私の実力は特A級のそれに比類します。過去の大戦の時のようにあなたに頼るしかなかった時とはもう違います。今は、私でも充分やれるんですよ』

しかし、あれだけ大見得を切っていながら自分は元イレギュラーハンターの特A級であるスパイダスには手も足も出なかった。

ルインが助けてくれなければやられていただろう。

そしてエアフォースに向かう時も…。

『ディザイア!!お前は何をしているんだ!!早くハンターベースに戻ってこい!!』

『エックス隊長、あなたは非道な行いをしているイレギュラーを見過ごせと?』

『そ、それは…でも…お前1人で何が出来るんだ。いくら何でも無謀だ!!今すぐハンターベースに戻ってこい!!』

『失礼ながらエックス隊長…私はスパイダスとの戦い以後、更に力をつけました。フクロウルのようにただ後方で指揮するような臆病者には負けませんよ』

あの時、エックスはディザイアの言葉に困った表情を浮かべながらディザイアを無言のまま見つめていた。

エックスは何も分かっていないのだと、当時のディザイアは思った。

だが、分かっていなかったのは自分の方だった。

きっとエックスは、何も知らず血気にはやる自分を言うことをまるで聞こうとしない子供のように見ていたのだろう。

そう思うと、ますます自分が愚かで惨めに思えた。

『でもディザイア、君だけで挑むなんて無謀だよ』

『ふ、副隊長…』

『そうよ、あなたの実力は誰もが知っているけれど、レプリフォース参謀長のストーム・フクロウルは知略だけの相手ではないわ。実力主義のレプリフォースの中でも一目置くほどの実力者であると言う情報が…』

ルインの否定の言葉にエイリアの冷静な声に遂に怒りが爆発した。

『うるさい!!臨時のオペレーターが偉そうに!!』

ディザイアがエアフォースに戦いを挑むのもひとえにルインに認めてもらいたい気持ちとエックスへの対抗心から。

自分の想いに気づいてくれないルインに対しての苛立ちが出てしまった。

「ハハ…。私は、駄目な奴です…。前に所属していた部隊では、いつも役立たず扱いされて………」

A級であっても最下位の実力。

例えB級でもエリート部隊に入り、後に特A級に昇進したエックスを始めとする、特A級ハンター達とは雲泥の差だった。

だが、部隊の再編成によって第17精鋭部隊に転属し、ルインと出会って、ここへ来て、今までの惨めな立場から一転して全てが変わった。

しかし、それは自分の独断行動の失敗と共に全てが泡沫と化した。

「ここに来て、ようやく第17番精鋭部隊の一個小隊を任せられたのも束の間…全て台無し…です…」

ディザイアは頭を振り、怒りも新たに拳を握った。

しかし、それ以上に怒りを感じるのは、我が身の傲慢さと無力さだった。

「それもこれも…私に力がなかったから…」

そう、エックスやゼロのような強大な力があれば…。

「力が欲しい…力が欲しいよ…。力を手に入れ…レプリフォースを…イレギュラーを…滅ぼし…今度こそ…英雄になってやるんだーーーーーっっっ!!!!」

ディザイアの叫びが医務室に響き渡った。

絶望に囚われ、悲しみにうちひしがれたディザイアが選んだ道は、エックスやゼロにも負けない力を手にして英雄になることであった。

「先輩」

「!?」

声に反応したディザイアが扉の方を見遣ると後輩のダブルがいた。

「あなたでしたか…丁度よかった。これをエックス隊長かルイン副隊長に…若しくはエイリアさんにでも渡して下さい。」

「分かったデシ。先輩、ハンターベースを出ていく前に会わせたい人がいるデシ」

「私に会わせたい…人?」

誰だと思い浮かべるが、もしかしたら自分の同僚達だと思い、最後に会うのも悪くないと考えて頷いた。

「よかったデシ!!ついて来て下さいデシ!!」

ダブルに手を引っ張られ、苦笑しながら着いていく。

それがディザイア自身を破滅へと誘う最悪の選択になることなど知らずに。

ディザイアが連れて来られたのはダブルの私室で、彼が辺りを見回すが誰もいない。

「ダブル、私に会いたい人とは何処に…」

「近くにいるデシよ?…ね、シグマ様…」

「!?」

背後から凄まじい威圧感を感じ、振り向いた先にはかつて最強のイレギュラーハンターだった、史上最悪のイレギュラー・シグマの姿があった。

「な、何故お前が此処に…」

「それは俺が呼んだからさ」

声に振り向いた時、そこにいるのはディザイアの見知ったダブルの姿ではなかった。

恰幅の良かった体型から細身となり、人相も人懐っこい物ではなく冷酷さを感じさせるものである。

「驚いたかねディザイア?彼は私が造ったレプリロイドだ。液体金属を使用しているために姿形を自在に変えることが出来るのだよ」

「ば、馬鹿な…そんな技術が…」

「ま