神? ああ、こっちで倒しておいたぞ


 

暦(こよみ)はここから刻まれた

 
前書き
話が進められなくなったら消します。

まあ打ち切りになってしまった原作一巻分で話が終わりますし、一話に使う文字数も出来るだけ少なくするつもり。

私の文章は目が滑るかもしれませんが読み終わるのは結構早いと思いますよ。 

 
『過去は変えられない』っていう言葉はみんな知ってるよな? その誰かさんが吹いた格言が俺の世界じゃあ過去のものになったんだ。

人類が()る出来事を切っ掛けにして【時間】を操る(すべ)と力を手に入れたせいさ。

まあ限定的にだけどな……。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


1718年のある日、【時空の変異遷(アイオーン・バガリー)】という未曾有(みぞう)の大災害が起きて、俺たち人間の世界に『時空獣(バタフライ)』なんて招かれざる怪物がやって来た。

けど、それと同時に一部の人間だけだが【神血(イコル)】っていう力を得て、【神祝(ブレス)】の時間現象を起こせるようになったんだよ。


加速(アクセル)

減速(ストール)

過去(トレース)

未来(フェイト)

停止(フリーズ)


この五つに区分された神祝を(もっ)て初めての時空獣を見事に撃退したわけだ。

それ以降も時空獣ことバタフライは地球のあちこちに現れては人間を無に帰してきたけど神祝(ブレス)の使い手となった家系の人間は『血』を継ぎ繋ぎ、力を絶やさずに対抗している。

けどそれだけじゃないんだよ。

時空の変異遷(アイオーン・バガリー)】がもたらしたのは。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


時空の変異遷が発生してから数十年に一度のペースで起きるようになった【大磁界】って言うのが有るんだが、この時期には特にヤバい時空獣が出てくる危険が多い。

しかしそれは『過去を改変できる好機』でもあったからそりゃあ余計に大変だ。

どういう理屈なのかは知らないが、大磁界は現在の人間を一時的に過去へと送り込めることが証明されて以来、それぞれの思惑が有った各国は協力と敵対を繰り返しながら過去の悲劇を『無かったこと』にしてきたんだよ。

二度の世界大戦や数え切れない程の死者を出した疫病の世界的大流行なんかを始め、悉く修正された結果として今の現代史では存在しない、起こらなかった出来事として処理されてしまっているわけだ。

ただ、同じ過ちを犯さない為に改変された多くの出来事について、外史としてだけだが詳細な記録はきちんと残っている。

そして大磁界が起きる度に過去を改変する権利を得る国際大会【大神暦の福音祭(アイオーン・エヴァンジェル)】が開催されるようになった。

まあ今回は開けるかどうか判らないし、開けても最期の大会になってしまうんだろうけどな。


え? なになに何だよ? さっきから長々と喋ってるお前は一体どこの誰なのかって?

そういや名乗って無かったっけ。


来栖拓未(くるすたくみ)


一応この話の主人公だよ。

他にも主人公が居るはずだけどな。 
 

 
後書き
拓未は原作主人公です。

性格変わってますけど。 

 

時の守護者

 
前書き
_〆(。。)カキカキ 

 
約10年ほど前になるだろうか。

まだ幼い頃の《来栖拓未(くるすたくみ)》が見詰める先には炎を噴き出す体を持った[時空獣(バタフライ)]が軽やかに躍動していた。

その容貌は鷹をベースにしたような形状(フォルム)で危険度は『グレードスリー』と言われ、日本の都道府県を一つ単独で落とせるくらいの強さ。

そいつは轟々と身を包む炎で自分をも焼くようにして眼下の街を蹂躙していく。

悠々と飛翔する姿は燃え盛る火の鳥として伝説で有名なフェニックスそのもの。

家屋は倒壊し、道は寸断、山は数千の火柱を(そび)え立たせ丸ごと赤くなり、時空獣の炎が次から次へと燃え移ったことで街全体が炎の渦に巻かれて一面埋め尽くされている。

そんな最中(さなか)の街に幼い拓未は茫然(ぼうぜん)としながらまともに声を挙げることはおろか、逃げることも出来ずにただただ突っ立っているしか出来なかった。

拓未の前にフェニックスが降り立つ。

(くちばし)を開いて雄叫びを挙げる。

その翼が羽撃(はばた)けば灰と化すであろうことを解る拓未は(すく)んで動くことが出来ない。

フェニックスの獰猛(どうもう)な足が振り上げられ鋭い爪の狙いが付くと、拓未に向かって落下し幼い子供の薄い皮膚を切り裂き(やわ)い肉にめり込む。

来栖拓未は一度そこで死んだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


《フェニックス》の爪を喰らい吹き飛んだ拓未に向かって人影が飛び出し彼を抱え込む。

そして重症化とダメージを時間停止した。


「しっかりして、死んじゃ駄目よ」


幼い拓未を抱いたままの女性は己の指先を切って血を(こぼ)し、拓未の傷口に(したた)らせる。

するとたちまち拓未の体力が戻り、負っていた傷も跡形無く綺麗に塞がってしまった。

それに体の底から力が溢れてくる。

抑えるのが大変なほどだ。

それを見て微笑む女性の背後からフェニックスの爪が迫っていた。拓未が声を出そうとするが間に合わない。万事休すかと思われたその時フェニックスの脚がクルクルと宙を回転しながら明後日の方へ飛んでいく。

長身の男性が両刃の剣で切り上げていたのだが、目の前で起きた出来事にも係わらず、拓未には彼が何時現れたのか全く判らなかった。


「やれやれ。【アイオーン】を倒した直後だって言うのにこれか。堪ったもんじゃないな」


ついつい男性は溜息を()らしてしまう。


「まあこれで漸く全員を始末できたんだから別に良いと思うわよ。もう少し時間が掛かってたらこの子を救えなかったもの」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


《来栖拓未》が安堵したのも束の間。

《フェニックス》が切り飛ばされた足を炎の中から元通りに復活させて見せた。


「やはりあの程度では止められないか」


男性は両手で剣を構え向かい合う。


「普段なら楽勝なのだけどね。アイオーンに力を使い過ぎたせいか効きが悪い」


女性は拓未を抱えながらフェニックスから距離を取り、男性の背中を見詰めている。

そんな三者を前にしてフェニックスは両翼を広げた。膨大な熱量と強大な炎を纏っている。まとめて薙ぎ払おうと言うのだろう。

其処へ新たな乱入者が現れた。

途端にフェニックスが動きを止める。

いや、フェニックスだけではない。

拓未の視界に映る全ての炎が凍り付いたように僅かな揺らぎも起こさず静寂に伏す。


「い、一体何が……?」


そんな拓未の疑問に答えるかの如く乱入者が女性と男性へと気軽に呼び掛ける。


「父さん、母さん、大丈夫?」


乱入者は一人の少年だった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


少年は拓未と変わらずあまり離れていない、まだ10才にも満たない年頃のようだ。


「助かった。ありがとうルレシオ」


父親だった男性が礼を言う。


「その歳でもうこんな事が出来るなんて」


母親だった女性も拓未を抱えたままで周囲を気にせずルレシオという少年に話しかける。

フェニックスや街を燃やす炎は停止して沈黙しており気を払う必要すら無いのだろう。

色々なことを考えている拓未の元へとその華奢で美形な少年が近付いてきた。

街を焼く炎が鎮火していく。


「父さん。その鳥は任せたよ」


ルレシオの言葉に男性はフェニックスの体を斬り刻み、(ちり)も残さず消してしまう。


「相当疲れているはずなんだけどあっさりと倒しちゃったな。流石は父さん。まだまだ追い付けそうにない。もっと頑張らないと」


拓未の前でルレシオが嬉しそうに笑う。


「さて、後はこっちの方を終わらせよう。俺の名前は《ルレシオ・ジン・シェイリアス》。君の名前を教えてくれないか?」


思えばこの時からだ。

来栖拓未が[クルセイダー]と呼称される『時の守護者』へ興味を抱いたのは。

そして自分を助けてくれたシェイリアス家との長きに渡る交流が始まったのは。
 
 

 
後書き
今作はこの段階で黒幕全員死亡。

原作は黒幕の存在を匂わせて終わってます。

原作だとこの時に過去を変えたいと拓未は思うようになります。助けてくれた人も女性ということ以外は全く情報が不明のままですしね。

伏線は張っていたんでしょうけど1巻で打ち切りになったせいで全く先が予想できない。

お陰で改変し放題ですが。
(*`・ω・)ゞ 

 

登校中

 
前書き
この話を書き始めてから文章が短いと書くのが楽だということを改めて実感しています。

 

 
「いきなり遭遇か。幸先(さいさき)が良いか悪いか判らないが、この場合は一体どうしたものかな」


左手に学生鞄を()げ、右手をポケットに突っ込んだままの少年がこの状況にはてさて自分は一体どうするべきかと悩んでいた。

来栖拓未(くるすたくみ)》は中学の卒業が迫った学生であり、日本の平均的な中3男子と比べ平均身長は周りよりも有る方だとは思う。

しかし彼の前に佇むのは車2台が並んで通行可能な道を塞ぐ一匹の巨大な[(あり)]だ。

5mを優に越し、鋼鉄を思わせるように黒光りする如何にも頑丈そうな巨躯(きょく)

[正史]どころか[外史]にすらも存在していないそれは【磁界】という現象によってこの世界に現れるという【時空獣(バタフライ)】だ。

通常兵器では傷一つ付けること叶わぬ人類の敵であり、約300年も前から天災と同様に扱われる時空の外から来た異端の怪物達。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「そう言えば【繰刻環(クロック)】は預けたままなんだったっけな? 別にこれと言って要らないから忘れてたや。まあ()ろうと思えば幾らでも何とかなる程度の相手だしどうでも良いか」


のん気に構えている拓未に巨大蟻の時空獣が前脚を槍のように伸ばして風切り音を立てる。


「ほい」


しかし拓未は何の気なしに体を半身だけ逸らし、紙一重で前脚を通過させていく。その表情に焦りは見えず、心も揺るがない。

彼にはまるで、今からうたた寝でも出来そうなほどあからさまな余裕が有った。

拓未を外した巨蟻の前肢は車が浮き上がるような風圧を起こし、そこそこ太さの有る街路樹の幹を容易くへし折ってしまう。

そして勢いそのままに地面へ突き刺さると舗装されたアスファルトが無残に砕け散る。


(一般車のボディなら普通に穴が空いちまう位の威力が有るみたいだなこりゃあ)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


拓未は思う。

入学する為の手続きをしに来ただけで何でこんな目に遇わなきゃいけないのか。


「そう思ったら何かだんだんと腹が立ってきたぞ。普通に片付けてやろうかな」


出来るだけ力を隠しておきたいのだが、それを差し置いて(いら)つきが先に来る。思考を別のことに割きながらも拓未の体は最小限に抑えた動作で悉く蟻の攻撃を(かわ)し続けていた。

鍛え抜いた反射神経と反応速度に冴え渡る六感、そして大嫌いな父と拓未が憧れて止まないシェイリアス家の人達との研鑽を積み上げた武術の経験が加わり彼の血肉となっているが故に可能な挙動だろう。

蟻の前肢が振るわれる度、拓未の視界に映る光景は物言わぬ瓦礫の山と化していく。

これ以上街を壊されるのを黙って見ているのも問題なので()む無く攻撃に移ろうとポケットに入れていた右手を抜こうとした時だった。

まさにその瞬間である。

唐突に警報音(サイレン)(うな)り、けたたましい騒音を上げながら周囲へ鳴り響いていく。

どうやらやっとのことで近くに在る学園が時空獣(バタフライ)のことを感知したらしい。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「はぁ~……今になって漸く気付いたかよ。俺が時間稼いでなきゃ遅すぎるんだってーの」


拓未がそう言うのも無理は無い。

彼が来る少し前から居たということは、この巨蟻が現界して暴れ出してから最低でも数分は経過しているということなのだから。


(この警報音、俺が行く学園のやつで間違いないんだろうけど、期待はできないな。あの二人以外にまともな生徒か教師が居れば良いけど)


拓未は元々からして今向かっている学園に興味も行く気も無かったのだがシェイリアス家の子供である二人が通っていると聞いて行くことを決めたのだ。


(そうでなきゃあ誰があんな学校に行くものかよ。自分の姉妹や幼なじみが在籍しているとは言え話題に登るのは真っ平御免だからな)


人類の為というのは理解しているが、嫌悪の対象である父の目論見に乗って人生のレールを決められるつもりなど拓未には更々無かった。


「俺が学園でパートナーに選ぶ生徒が居るのならば、彼か彼女だけだ。もしそれ以外に居るとしたらあの救世主二人しか居ないだろう。他の人間と組むのは考えられないよ」


それ以外は彼の選択肢に存在していない。
 
 

 
後書き
この話だと拓未のパートナー選択基準がオリキャラなので他は眼中に入らないですね。

まあペアを組みたかったとしてもオリジナル設定の都合で選ぶことは出来ませんが。 

 

登校中2

 
前書き
どれくらいで終われるかな。 

 
「【時空獣(バタフライ)】だっ!」

「早く学園(こっち)へ!」

「落ち着いて下さい!」


来栖拓未(くるすたくみ)》の向かっていた学園ではまだ住民の避難が終わっていないようだ。

入学受付で人が集まっていたせいも有るだろうがそこに一般市民も駆け込んでてんやわんやのお祭り騒ぎ。まるで統制が取れていない。

わざわざ拓未が時間を稼ぎ、警報が鳴るまで一人で粘っていたと言うのに。


「むぅ……今俺が逃げたらちょっと危ないかな。主に向こうの方がなんだけどさ」


父親いわく『落ちこぼれ』であったせいも有って普通に入学するより3年ほど遅れはしたものの、[クルセイダー]を目指している身としては彼等を見捨てるわけにもいかないだろう。


「まあ春休みではあっても学園は全寮制。あしらっていれば誰か来る筈だ。……たぶん」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


黒光りする巨大な蟻の時空獣は前肢と中肢の合わせて四本を振る。突き、払い、踏み、かち上げをその大きさからは想像も出来ないほど速く連続して繰り出す。

拓未は兎に角この巨大な相手を引き付けて学園から離れようとしていた。その間に沢山の人が学園の敷地へと避難していく。


(避難訓練の成果が出ているのか? 思っていたよりもスムーズな行動だ。これならあまり頑張らなくとも良さそうだな)


そんなことを考えていると、拓未の前に居る巨蟻の様子がおかしくなっていく。

目は真紅に変わり、口から(よだれ)(こぼ)しながら明らかな興奮と苛立ちに身を包む。

その唾液が落ちてコンクリートの地面に触れると鼻を突く白煙を立ち(のぼ)らせる。


「この刺激臭……酸か。それも強性の」


拓未の見ている部分がドロリと溶けた。

逃走など最初(はな)から考えていない。

何せ今日訪れたばかりの街だ。

土地勘も無いし地の利も得られないだろう。


(なら時の運か人の和か)


それとも誰か来ない内に倒すかの選択だ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「伏せなさいッ!」


巨蟻の時空獣(バタフライ)を見据える《来栖拓未(くるすたくみ)》に何処かから凛とした声が掛かる。

彼は膝を曲げ気味に(かが)み込む。

風を切りながら圧と共に拓未の頭上を通り過ぎるものが有り、まるで硬質の金属が(ひしゃ)げてしまったような激しい衝突音が鳴った。

拓未は屈んだ状態から体を浮き上がらせるようにしながら後方へバックステップして跳ぶ。

頭を上げた視界の先に有ったのは拓未の背丈くらい長く大きな斧のハルバード。

その()には鋭い穂先が付いており、根方の口金には見事に赤く染め上げられた二本の紐が意匠のように(くく)り付けられている。

最も印象深く残る三日月のような刃先が備わっている斧頭(ふとう)には薄っすらと紋様が浮かぶ。


(機械式時計の歯車を模した紋章……。【時空神(アイオーン)】の加護を示すんだったな)


拓未は斧と巨蟻を見比べる。


「お見事」


鋼鉄を超える強度を持った時空獣の外皮を貫く程の力で投擲(とうてき)されたらしい。


(クルセイダーの養成学校に通う普通(・・)の『学生』が持つ力としては、だがな)


彼は《ルレシオ・ジン・シェイリアス》や彼の妹《ルミア・シャル・シェイリアス》のことを考えながら自分を助けに来た人物の方へ振り返る。


「大丈夫!? 動ける!?」


其処に居たのは学園の制服を着た、金髪を(なび)かせて、エメラルドのような翠眼で焦りを見せながら、心配そうに拓未を見詰める華奢ながらも力強い、安心させるような背中の気品立つ美少女だった。


「……」


拓未は判らないよう少女を観察して有している力を値踏みし学園のレベルを測ろうとする。


(この娘がこの学園のトップクラスかな? それとも中堅辺りだったりするのか。もし彼女の力で下位に甘んじていると言うのなら、俺が思うより学園の生徒も捨てたものじゃあないんだが)


自身の姉妹も通うクルセイダーの学校へ立ち寄ったことも無く、強さの基準が規格外しか居ないシェイリアスの拓未では少女のことをどう判断して良いものか解らない。

が、判ることも有る。


(3年前……いや、下手をすれば5年前の俺よりも弱いか。まあ当然かもな。あの四人とクソ親父を相手に10年は()り合ってきたわけなんだし、もし負けてたりしたら困る)
 
 

 
後書き
カットしようと思えば大量にシナリオを省けるんですが味気無くなってしまうので。 

 

登校中3

 
前書き
やはり文字数が無いと話が進まないな。

100話を超えるか。 

 
「クルセイダー・《天崎小夜(あまさきさや)》、行きます!」


来栖拓未(くるすたくみ)》と巨大な蟻の【時空獣(バタフライ)】の戦いに加わったのは細身でスレンダー且つ、しなやか、顔立ちも整い深窓の令嬢を連想してしまうか弱そうな少女。

規格外である拓未にすれば自分より頭一つ背が低い彼女は全然頼り甲斐が無い存在だ。

しかし日の光が照り返す金色(こんじき)の髪と揺るぎ無い意志を閉じ込め結晶にしたような翠緑の美しい瞳を携え威風堂々と立つその姿は儚さを感じさせない。


(【クルセイダー】──『時の守護者』とも言われ、時空獣がもたらす災厄から世界を300年近く守っている武人達。その最高峰が俺の目指しているあの四人だ。最もルレシオさんとルミアさんは資格を持っていないからカウントされていないみたいなんだが……)


シェイリアス家の四人は誰もが、特に他のクルセイダーが認めざるを得ない、そして二度と達成されることの無い奇跡の大偉業を成し遂げている。


(お陰で世界中の政府や俺の親父からは怨まれてはいるが、そのお陰で時空獣は激減したし、【時空の変異遷(アイオーン・バガリー)】から数が一定していた【神血(イコル)】の持ち主も減った)


クルセイダーが減ったのは仕方がない。

それはそうなるであろう。

現在シェイリアス家以外のクルセイダーが持つ神血の根源となる存在をシェイリアス家であらゆる時空から跡形も無く綺麗さっぱりと消滅させてしまったのだから。

時空獣が少なくなればクルセイダーが戦力として必要とされる需要も少なくなるのは当然。

まあ元からして時空獣が地球に現れたのもその存在が原因だったので仕方ない。


(やはり本来は人間が時間を(いじ)くろうなんて言うのが(ことわり)に反してるんだろうな)


ちなみにシェイリアス家の人々は[時空の変異遷]が起きるより千年以上も前から代々に渡って[神血(イコル)]の恩恵無しで何らかの時間能力を扱えていたので関係が無い。

そして現シェイリアス家の四人から血を受けた拓未も五人目の例外になっている。

例え他の人類が神血を喪失してしまおうと彼等だけは変わらず力を行使するだろう。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


話が逸れた。今はまだ目の前で起きている戦いに注意しなければならない。

天崎小夜が右腕を空に伸ばすと中指に()められた銀色に輝くリング、彼女の【繰刻環(クロック)】が共鳴を起こして時計のように複雑に、そして精密に内部へ組み込まれた小さな歯車の群れが連動し音を立て、時を刻み出す。

指輪のギアが稼働すると共に光を放ち、大きく膨張しながら変様して形状を整える。


神器投影(アドベント)・メテオハルバード」


彼女が名を呼び光が飛び散った後に現れたのは巨蟻に突き刺さっていた紋章付きの長大な斧。

拓未が時空獣をチラリと確認すると、今あそこに出てきた斧に連動して巨蟻に深々とめり込んでいたはずのハルバードが消え去っている。


(もしや彼女は五種有る時間の【神祝(ブレス)】であれ(・・)を使うのかな? それにしても体格や身体能力に釣り合って無さそうな武器だ)


しかし小夜は彼の考えなど知りもせず、その細い右手のみで楽々と(かつ)ぎながら膝を曲げる。


「行くわよっ!」


彼女は深く沈んだ体勢から反発する撥条(ばね)の如く跳躍し、巨蟻の背丈より高度を取りながら両腕でメテオハルバードを上段に構えた。

そして重力に押され、引力に引かれて落下する慣性と速度、自身の体重と力の乗せ方による衝撃の増大も利用して巨蟻のまるで黒い鋼鉄のような頭頂部を目掛けてハルバードをこれでもかと言うように勢い良く振り下ろす。

すると小夜の攻撃を避けることが出来なかった時空獣(バタフライ)は御自慢の巨躯(きょく)をまるで軽く(まき)でも割るかのように一刀両断となってしまった。
 
 

 
後書き
オリジナル設定の紹介する機会有るかな? 

 

登校中4

 
前書き
φ(゜゜)ノ゜ 

 
如何に【時空獣(バタフライ)】とは言っても体が真っ二つになってしまっては生きていくことが不可能である。

ましてやこの巨大な蟻は危険度の指標である[グレード]がかなり低い方の筈だ。

戦いを観察している《来栖拓未(くるすたくみ)》は時空獣の強さからそう判断していたのだがどうやらコイツは珍しいタイプだったらしい。

肉体が分割された巨蟻は切断された片割れ同士が求めるように動き、雑な形で接合されていく。再生しきれていないのか動きが遅くはなっているものの普通の人間を相手取るには十分。


「自己修復? 生意気にもこのレベルで結合因子を持つのかしらね、腹立たしい」


天崎小夜(あまさきさや)》は武器の[メテオハルバード]を振るい、今度は縦にでなく、横の水平方向へと撫で斬りにし、上下に割ってやったが巨蟻は先程と同じように修復していった。


「このっ……しつこいわよっ!」


彼女の斧による斬撃は次々と巨蟻を切り裂くものの結合による自己修復が留まることは無い。

動きを封じる為に肢を落とせばそれが繋がり数を増していく有り様になっていた。

元の形へ戻ることを考慮しない雑な肉体再生のせいで、もはや時空獣は蟻としての様相からはかけ離れたものになってしまっている。


(彼女の攻撃が苛烈で手加減していない分、それが顕著に現れてるな。さて、俺はどうするべきなのかな? 協力して時空獣を倒すか、彼女を置いて一人で逃げるか、それとも二人で学園に避難するか、はたまた気付かれないよう俺が一人でさっさと片付けちまうか……)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「まったくもう。学園(ウチ)の戦力が出払ってる時に限ってこんなのが来るなんて。個体としての危険度(グレード)は低いみたいだけど、結合修復の勢いが想像以上に厄介。正直こいつを倒すのは私一人の単独(ソロ)じゃあ辛いかも……!」


しつこく自身に向かって来る巨蟻の[時空獣(バタフライ)]を相手に嫌な予感が頭を(よぎ)った時、《天崎小夜》は自分達から距離を取って後方の物陰に隠れながら戦闘を覗いている《来栖拓未》へと、半分だけ顔を振り向かせた。


「行ける!?」


小夜の顔には甘さが無かった。


(実戦経験は積んでるみたいだな。顔の幼さと表情が行動に一致してない。年上なのかも。俺より弱いが一般(・・)の学生クルセイダーとしてはマシな部類なんだろ)

「再来月から入学する予定なんですよ」


拓未は正直に答えておいた。


「編入生か……。なら()れるわよね。今は人が足りてないの。気を逸らすだけでも良いから貴方の力を貸して!」


拓未から見て小夜は自分と時空獣との戦力差・戦闘状況を正確に判断できている。

彼女には自分のプライドを捨てて他人(ひと)を頼り、出来るだけ早く困難な事態を打開しようという合理性に加え、全く知らない誰かとでも力を合わせられる協調性が有った。

ただ強い奴は己の力を過信して油断したり(かたく)なに一人で戦うことに固執(こしつ)することも少なくないが、本当に強い奴は譲れない(こだわ)りや曲げられない信念と共に割り切りや柔軟性を持っている。

小夜のそういうところは拓未にとってクルセイダーを目指す者として好意的に取れる部分だ。


「すみません。実を言うと今日は学園の方に自分の【操刻環(クロック)】を預けていまして」

(普通の【時の守護者(クルセイダー)】には無理なんだが俺は無くても時空獣と戦えるんだよな)


その答えに彼女は顔をしかめた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「間が悪いわね……。実を言うと今は私以外のクルセイダーが学園に居ないの。こうなったら仕方ない。兎に角やってみるしかないわ」


小夜は迫り来る巨蟻の肢を容赦なく斬り飛ばしてから自分のポケットに手を入れると指輪を取り出して拓未の方へ向かって投げ寄越す。


「それを使って頂戴。私が常に用意している予備の【操刻環(クロック)】なの。大丈夫、誰でも使えるように調整されてるから心配は要らないわ!」

(準備良いなおい。まあ何の意味も無く俺の力がバレるよりはマシだからな。やるか)


拓未は困ったように苦笑いをしながら右手の中指を彼女から受け取った指輪に通す。

それを確認した小夜はまるで躊躇(ためら)うことも無く、ごく自然に手を差し出してきた。


(やっぱりこうなるのかぁ~。まあこれしか手は無いよなあ。彼女の実力だと)

「握って!」


拓未は仕方なく手を掴んだ。


「エンゲージメント!!」


小夜が叫ぶと二人の付けたリングが光った。

まるで車のギアが入れ替わり、走行する為の速度域が上がるように、操刻環に内蔵された歯車がカチリと鳴って勢い良く回り出す。

小夜が操刻環を起動してメテオハルバードを出した時よりも歯車が高速で回転し、同期した二つの指輪からは光が伸びていった。

光は二人の腕に渦を巻いて絡み付く。


(ああー……死なないと良いなあこの娘)


もしクルセイダーとしての鍛練を父の教育でしか学んでいなければ死にかけていたのは自分の方であることを拓未は理解できているのだ。

つまりこの後で小夜の身に何が起きるのか拓未には察しが付いていた。だが彼女があの巨蟻を倒すまでの時間は持ってくれるだろう。


「リング・ザ・エンゲージ!!」


指輪が光の放出を終えて小夜が唱えると両者の腕を覆った光が一際強く輝いた。

更に膨れ上がった光は二人の腕を包み込む。


「こ、これは一体……!? いえ、今はそんなことどうでも良いわね。それよりも貴方の【神血(イコル)】を使わせてもらったわよ!」
 
 

 
後書き
久し振りに一日で二話書きました。

一話が短いですけど。 

 

登校中5

 
前書き
φ(-ω- ) 

 
来栖拓未(くるすたくみ)》が《天崎小夜(あまさきさや)》に渡された指輪の【操刻環(クロック)】に力を流すと内蔵された歯車が回り出し光を放つ。


「そんじゃ加勢しますか、神器投影(アドベント)


光が膨張して罅割(ひびわ)れると刃渡りの短いナイフが拓未の手元に現れ握られていた。


「一本が限度か。仕方ないな」

(俺の持ってる相性はシェイリアスの人達以外とは悪いからなぁー……。その分のステータスは一人で戦う方に割り振られてるみたいだから問題ないんだけど)

「ふーん、初めて見たわ。ナイフを使う【クルセイダー】なんて珍しいわね。【時空獣(バタフライ)】だとあまり効きそうにないのに。まあ良いか。それじゃあ行くわよ!」


小夜は言うと同時、[メテオハルバード]で巨蟻の肢を割けるチーズのように切り裂いてしまう。

彼女に続いて拓未も躍りかかると頭の外皮を破り、再生の繰り返しで関節が増え、触手のようになってしまった肢をバラバラにする。


「良し、間が空いた。喰らえッ!」


小夜が力任せにハルバードを投げ付け巨蟻を斜めに寸断するが攻撃は終わらない。

修復を始める前に刺さった武器を抜いて再び投げつけるも今度は地面に突き刺さってしまう。

相変わらず巨蟻は修復を続け反撃を行おうと藻掻(もが)くが小夜は攻撃を避けては武器を拾い、狙いも付けずにひたすら投げるだけだった。

もちろん攻撃が当たることも有ったが全て命中しているわけではないので巨蟻の持つ自己修復の度合いに対して上回らないくらいの頻度(ひんど)に留まっていては足止めにしかならない。


(生命活動を奪う為ではないこの一見無駄とも取れる彼女の動き。やはりあの【神祝(ブレス)】を使って戦うと見た。ならばもう俺の出番が回って来ることは無いんだろうな)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


暫くして天崎小夜はハルバードを投げるのを止めると巨蟻の方を睨んでいた。

どうやら仕込みは終わったらしい。


(そりゃまあ、あれだけ念入りに準備すりゃあ躱すも修復も関係無いだろうよ。この時空獣(バタフライ)は恐らく一番弱い『グレードファイブ』に相当する。その割にはしつこい再生持ちだったが彼女が先刻(さっき)まで用意した攻撃ならば確実にあの蟻を殺し切れる規模になるだろう)


小夜が右手を上げると操刻環(クロック)の歯車が順次軋みを上げて回り出す。そして最後の歯車が音を立てると手に持つメテオハルバードが消失した。


「さあメテオハルバード。因果を超えて招来なさい。[ヴァイスセレナータ]!!」


叫ぶと巨蟻の背後から現れ両断する。

そして直ぐに姿を消す。

また別の場所から出て切り刻む。


(あのハルバードが出現する位置、飛ぶ角度や速さは決して不規則じゃない。先刻までの彼女が投げていたものとまるで同じものだ)


メテオハルバードは小夜の投げた軌道を再生して挙動を起こしているらしい。

彼女は『過去』から武器を持ってきた。

何度も武器を巨蟻に向け、狙いも付けずひたすら投げ続けていたのはこの為だ。

あの時外れても今当たれば問題無し。

これが小夜の必殺技[ヴァイスセレナータ]


「人類の一部が大災厄・【時空の変異遷(アイオーン・バガリー)】によって得ることになった【神血(イコル)】の力によって発現する五つに大別される【神祝(ブレス)】の一つ」


過去(トレース)


それが小夜の持つ神祝だ。
 
 

 
後書き
原作だとかなり特殊な存在以外はブレスを一種類しか使うことが出来ません。

二種類使えるキャラも原作の日本では確認できる限り主人公である拓未の妹たった一人。

だから今作の拓未とシェイリアスの人間が設定で異常になっているんですけども。