クロスウォーズアドベンチャー


 

プロローグ

 
前書き
クロスウォーズアドベンチャー…始まります 

 
デジモンカイザー・一乗寺賢のパートナーデジモンのワームモンと、キメラモンによる無差別攻撃による大きな被害と犠牲を払いながらも、マグナモンがキメラモンを撃破し、デジモンカイザーが一乗寺賢に戻ってからしばらく経って、大輔はパートナーのチビモンと共に自宅への帰路についていた。

「今日もお疲れ、チビモン。今日はハンバーグだぜ」

「やったー!!ハンバーグだ!!」

何度もフレイドラモンとライドラモンへの進化を繰り返してデジタルワールドの復旧作業を頑張ったチビモンを労いながらそう言った大輔の言葉にチビモンは大喜びした。

現実世界の食べ物はデジタルワールドの物よりも味も質も良い物が多い。

何せ大輔達からすればありふれたコンビニのおにぎりでさえ美味しいと感じるくらいに。

「それにしても、一乗寺の奴が無事に家に帰ったみたいで良かったぜ…。家の人も心配してたし………出来ればああなる前に止められれば良かったんだけどな…」

「だいしゅけ、賢とワームモンのことを気にしてるのか?」

「ああ、ワームモンが死んで…あいつはようやく止まった。でもあいつを止めるチャンスはいくらでもあったんじゃないかって思うんだ。あいつが俺達の前に現れた時、無茶してでもあいつを捕まえていれば…せめて今より強かったら…」

「だいしゅけ…」

「本当にワームモンが死ななきゃあいつを止められなかったのかな…?」

大輔が小さく呟いた直後に背後から声がかかる。

「止められなかったと思うわ大輔君」

「ヒカリちゃん」

声の主は同じ選ばれし子供の八神ヒカリであった。

「多分、彼は途中で捕まえることが出来ても私達の言葉を聞き入れなかったと思う。全てを打ち壊されてようやく私達の声が聞こえるようになったんだと思うの…」

「………」

ヒカリの言葉に大輔は沈黙した。

確かにあの時の賢は自分以外を認めようとはせずに例えどのような言葉でも自分達の言葉など聞き入れなかっただろう。

「それでも…何とかあいつを止められたんじゃないかなと思うと…」

「どうしてそこまで彼のことで悩むの?」

大輔が優しい性格なのは自分も知っているが、同時に曲がったことや悪事が大嫌いな正義感が強い性格でもあるのだ。

「ん~……信じてくれるか分からないけどさ。あの時、要塞の中で黄金のデジメンタルに触れた時、ほんの少しだけなんだけど一乗寺の記憶が流れてきたんだ。いつも一乗寺そっくりの奴に比べられて、家族の中でさえおまけみたいな扱いを受けて…俺もさ、何だかんだで色々そつなく家事以外はこなせる姉貴がいるから分かるんだよ。兄貴や姉貴の弟としてしか見られない気持ち…」

「…………」

ヒカリは大輔の言葉に沈黙するしかない。

大輔の姉のジュンは何だかんだで壊滅的な家事以外はそつなくこなす人物で、不器用なところがある大輔はジュンと比べられることがそれなりにあった。

ジュンを良く知る人物は殆ど卒業したので今はそうではないが。

「もし俺達が早く出会えていればもしかしたら何か変わったんじゃないかなって…あ、いや、でも、あいつが太一さんのアグモンを操ったりキメラモンを造ってあんなことをしたのは許せないぜ?」

慌てて言う大輔にヒカリは分かっていると言うように頷いた。

「うん、分かってる。大輔君は…優しいね。私はまだ一乗寺賢君を許そうと思ったことない。沢山のデジモンを、みんなを傷付けて、キメラモンのようなデジモンを造った…彼を」

キメラモン

デジモンカイザーが数々のデジモンのデータを組み上げて造り上げた完全体とは思えない程の脅威を振るった人造デジモン。

あの悪魔のようなデジモンは目の前の大輔とチビモンが倒してくれた。

デジモンカイザーとしての力とパートナーデジモンを失って、砂漠を去っていく賢の後ろ姿を見て、自分を含めた殆どの仲間が怒りにも似た感情を抑えられなかったと言うのに大輔は心配そうに賢の後ろ姿を見つめながら叫んでいた。

『………お前、家に帰れ…。お前のことを心配して、待ってる人がいるんだ!帰れよー!!』

大輔のこの言葉を聞いた時にヒカリは何となくだが悟った。

大輔は自分達や兄の太一達が倒すべき敵としてしか見ていなかったデジモンカイザーを同じ選ばれし子供として人間として見ていたことに。

賢が罪を償いたいと言ってきた時は恐らく、明るく笑いながら共に戦う仲間として暖かく受け入れるのだろう。

意識して優しくあろうとする自分とは違い、大輔はまるで呼吸するように人に優しく出来る。

人を受け入れて優しさを与えてばかりの大輔にはそれが当たり前で、それによってどんなに自分が不利な立場であろうと、そんな状況を覆す心の強さもちゃんと持っている。

タケルはその優しさを付け込まれたりして命取りになるんじゃないかと危惧していたが、その優しさや真っ直ぐさがあったからこそあのような奇跡を起こせたのだと思う。

マグナモン

ブイモンがあの黄金のデジメンタルでアーマー進化した聖騎士型のアーマー体デジモン。

その美しい黄金の輝きはキメラモンやデジモンカイザーの闇すら消し去ってしまった。

あれは大輔だからこそ起こせた奇跡なのだとヒカリは思う。

誰もが諦めかけた時、大輔だけは諦めなかった。

希望を見失わず、勇気と友情を力にして危険を省みずに突き進んだ。

そんな彼だからこそ、他人の紋章をまるで自分の紋章のように使うかのような奇跡を起こせた。

自分どころか兄の太一やヤマト、タケルにも起こせない奇跡を…。

ふとマグナモンのことを思い出したヒカリは大輔に尋ねた。

「ねえ大輔君。もうブイモンをマグナモンに進化させることは出来ないの?」

もしマグナモンへの進化があれ以降も使えるなら自分達の最大の戦力になるとヒカリは思ったのだが、大輔は首を横に振る。

「あのデジメンタルはキメラモンとの戦いで完全に消えちまったよ。あのデジメンタルの力は凄え強かったから少し残念だけどさ、でもあれは本当の一乗寺の優しさが俺に力を貸してくれたんだ。紋章は個性なんだろ?あの時感じた優しさが本当のあいつなんだって俺は信じる…そう信じたいよ」

「そっか…でも無理しないでね。大輔君、1人で背負い込んで誰にも言わないで解決しようとするから…」

「………あのさ、それはヒカリちゃんにだけは言われたくないなあ…ヒカリちゃんだって誰にも言わないで無理すんじゃん。それはヒカリちゃんにそっくりそのまま返すぜ」

「ううっ!?」

確かにと今まで黙って聞いていたテイルモンとチビモンは思った。

大輔とヒカリは1人で背負い込んで自分だけで解決しようとする傾向がある。

変なところが似ているなとテイルモンとチビモンは思った。

「お互いに苦労するわね…」

「そうだな…」

互いに顔を見合わせながら、大輔とヒカリに聞こえないように呟く。

「チビモン?」

「テイルモン、どうかした?」

「「いや別に、何でもない」」

チビモンとテイルモンが合わせて言うと大輔とヒカリは疑問符を浮かべながらも自宅へ向かおうとしたのだが。

「ん…?」

空間が捻れるような妙な違和感を感じて上を見上げるチビモン。

「だいしゅけ!ヒカリ!上だ!!」

「え?うわあっ!?」

チビモンが異変に気付いて叫ぶと上から落ちてきた巨大な岩に大輔はヒカリの手を掴んで咄嗟にかわした。

岩はズシンと重そうな音を立てて先程立っていた大輔とヒカリのいた場所に転がった。

後僅かでも遅かったら下敷きになって死んでいたかもしれない。

慌てて岩が落下した上を見上げると、大輔達は空間が捻れているのを見た。

「何だよあれは…?」

「空間が捻れてる…?」

「なあ、テイルモン。あれ、デジタルゲートに似てないか…?」

「ええ、でも…何処かが違うわ」

チビモンとテイルモンはあれはデジタルワールドに関係があるのかと考えた。

突如、空間の歪みから3つの光が降り注いだ。

3つのうち2つは大輔とヒカリのD-3に。

光を吸い込んだD-3は色が変化し、大輔とヒカリのD-3は白い部分が黒に変化した。

見た目の変化はそれだけなのだが、チビモンとテイルモンはD-3に吸い込まれてしまい、驚く間も抵抗する間もなく大輔達は猛烈な勢いで時空の歪みに吸い込まれてしまった。

「過去の平行世界の子供達の旅路に幸多からんことを…」

不思議な声が大輔とヒカリがいた場所に響く。

大輔とヒカリの本来なら交わらないはずの平行世界での戦いが始まる。 

 

第1話:知らない世界

時空の歪みに吸い込まれ、そして歪みから抜け出した大輔とヒカリは現在地面に向かって落下中であった。

「きゃあああああ!?」

「うわあああ…って、服が変わって…今はそれどころじゃねえ!!」

歪みから抜け出した瞬間、何時もデジタルワールドに入ると起こる服装の変化に気付き、大輔はデジタルワールドに来たのだと言うことに気付いたが、今はそれどころではない。

「大輔!!ど、どうすればここから出られるんだよ!?」
D-3の中で慌てるブイモンとテイルモン。

「リロードだ…」

「「え?」」

突如、頭の中に流れてきた声に大輔とヒカリは辺りを見遣るが、周りには宙に浮かぶ岩しかない。

「リロードと言い、デジモンの名を呼べ…そうすれば…」

「「リ、リロード!!」」

「ブイモン!!」

「テイルモン!!」

声に言われたように自身のパートナーデジモンの名を叫ぶと、ブイモンとテイルモンが飛び出した。

それを確認した大輔とヒカリは何時もの台詞を叫ぶ。

「「デジメンタルアップ!!」」

「ブイモンアーマー進化、燃え上がる勇気!フレイドラモン!!」

「テイルモンアーマー進化、微笑みの光!ネフェルティモン!!」

大輔は先に着地したフレイドラモンが受け止めて、ネフェルティモンは落下するヒカリを背中に乗せた。

「ふう…助かったぜ、フレイドラモン」

「ありがとうネフェルティモン」

「いや、それはいいんだけど…ここは…?」

フレイドラモンが大輔を地面に降ろすと周囲を見渡す。

「服が変わってるからデジタルワールドじゃないか?」

「あ、本当だわ」

ようやく落ち着いたヒカリは自分の服が変化していることに気付き、ここがデジタルワールドであることに気付く。

「確かにデジタルワールド…のような気はするけど、違うわ…」

「うーん、何か違和感を感じるよな」

デジモンである2体は微妙な表情で辺りを見回す。

「…良く分かんねえけど、とにかく村か何かを探さないか?無かったら、何とかしてテレビを…」

大輔が言い切る前に向こうで爆音が響いた。

「何だ!?」

向こうで何度も上がる爆炎。

それを見て大輔とヒカリは、またデジモンカイザーのような存在が現れたのかと急いで爆炎が上がっている場所に向かう。

因みに機動力の問題でフレイドラモンは即座にライドラモンにチェンジした。

「大輔君、もしかしてまたデジモンカイザーが現れたのかしら!?また、彼みたいな…」

「…それは分かんねえけど…でも、ようやく平和になったデジタルワールドを滅茶苦茶にするような奴は許さねえ!!」

目的地に向かう途中で巨大な象のようなデジモン達と出会す。

「こいつは!?」

「マンモンだわ!大輔君、あれは完全体よ!!」

マンモンがこちらに気付き、突進を仕掛けてきた。

「ライトニングブレード!!」

「カースオブクィーン!!」

完全体であるマンモンに対して真っ向からやり合っても勝てないと分かりつつも、大輔達を守るために必殺技を放つライドラモン達。

精々目眩まし程度にしかならないと思っていたのだが、意外すぎる展開が起きた。

2体の必殺技を受けたマンモンが悲鳴を上げ、消滅したのだ。

「「え?」」

目を見開く大輔とヒカリ。

今まで完全体を相手にしてきたが、一撃で倒せたことなど一度も無かったからだ。

「今ので完全体を倒したの…か…?」

「お、おかしいわ。マンモンは見た目通り、完全体の中でも相当タフなデジモンのはずよ…なのにどうして…?」

かつてヴァンデモンの手下として同じヴァンデモンの手下であったマンモンを見たことがあるネフェルティモンが困惑したように呟く。

「ニ、人間ノ子供ガ更ニ2人!?アッチニモ子供ガ3人イルシ、ドウスレバイインダ!?」

「お前らか!?ここで暴れてんのは!?折角平和になったデジタルワールドを荒らすってんなら俺は許さねえ!!」

大輔が怒りを露わにすると仮面を着けたようなデジモンが慌てて銃を構えた。

「ブルーサンダー!!」

「ロゼッタストーン!!」

即座にライドラモンとネフェルティモンが必殺技を放って一気に数体薙ぎ倒す。

「どうして完全体を倒せるのか分からないけど今は好都合だ!!」

「ええ、このまま一気に全滅させるわよ!!」

多少の疑問を抱きながらも、ライドラモンとネフェルティモンは圧倒的な強さで敵を倒していく。

「サンダーボルト!!」

特に、広範囲を攻撃出来る技を持つライドラモンはネフェルティモンより早いペースで撃破数を増やしていく。

「ライドラモン、後ろよ!!」

しかし、数が多過ぎるためか、ライドラモンは背後をタンクモンに取られてしまった。

ネフェルティモンが慌てて叫ぶが間に合わない。

「しま…っ」

「ラウディロッカー!!」

赤い蜥蜴のようなデジモンがスタンドマイクでタンクモンを殴り飛ばした。

「お前は…」

「よう、大丈夫か?お前らもバグラ軍と戦ってるデジモンか?」

マイクを構えながらデジモンが歩み寄って来る。

「バグラ軍?」

「それがこいつらの軍団名なの?」

疑問符を浮かべるライドラモンとネフェルティモンに赤いデジモンも疑問符を浮かべる。

「はあ?何だお前ら…もしかしてバグラ軍を知らねえのか!?お前ら一体何処のゾーンから…」

「人間の子供が暴れていると聞いて来てみれば…シャウトモン!貴様達だったか!!」

「な、何か偉そうな奴が出て来たぞ?」

シャウトモンの近くにいた大輔やヒカリよりも年上そうな少年が突如現れた獣人を思わせるデジモンを見遣りながら言う。

「チッ!ちょいと厄介な相手に出会しちまったぜ。気ぃつけな!こいつはついさっき、俺様の命を奪いかけた奴だぜ」

「ええ!?」

大輔とヒカリと同い年くらいの女の子が叫ぶ。

「つまりあいつがあいつらのリーダーなのか?」

「ソウダ」

ライドラモンがシャウトモンの近くにいるバリスタモンと言うデジモンに尋ねると肯定された。

「まあいい…払っても払っても沸いて出るのが蠅と言う物よ…このバグラ軍、グリンゾーン方面軍司令、マッハレオモン様が…何度でも引導を渡してやるわ!!」

「来るぞ!!」

マッハレオモンは両手の短剣を構えると凄まじい速さでライドラモンに迫る。

「速い!?」

「ソニック・スラスト!!」

高速で動き回り、両手の短剣でライドラモンを斬り刻む。

「ぐあああああ!?」

デジタルワールドの復興作業とこちらに来てからの連戦で疲れていたとは言え、一方的にやられるライドラモン。

それを見かねたバリスタモンが殴りかかるが、パワー型のバリスタモンの動きは鈍く、マッハレオモンはそれを容易くかわす。

「大丈夫カ?」

「あ、ああ…助かった」

「クカカ!1体は戦闘不能に追い込んだ!パワーと頑丈さだけが取り柄のお前にこの動きは捉えられまい!?さあ…我がバグラ軍に不吉を齎す人間の子供達よ…くたばれっ!!」

「私を忘れるんじゃないわよ!!ロゼッタストーン!!」

「むっ!?」

マッハレオモンに向けて発射された巨大な石像を発射するネフェルティモン。

それを跳躍してかわすマッハレオモンだが…。

「もらったあああああ!!」

攻撃の機会を窺っていたシャウトモンが拳に炎を纏わせてマッハレオモンに叩きつける。

「ふん…この程度で俺を倒せると思っているのか!!」

しかしマッハレオモンは直撃を受けても大してダメージを受けておらず、シャウトモンを蹴り飛ばす。

「あいつ…、大輔。今度はフレイドラモンで行く!!」

「分かった、デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、燃え上がる勇気!フレイドラモン!!」

「何だその変化は!!?」

突然の変化に目を見開くマッハレオモン。

構わず、フレイドラモンは拳に炎を纏わせるとマッハレオモンに殴りかかる。

「チッ!!ソニック・スラスト!!」

フレイドラモンの拳をかわすと短剣で斬りかかるが、今度は一切油断していなかったためにマッハレオモンは両腕を掴まれ、動きを封じられた。

「何っ!?」

「さっきは油断していたからやられたけどな」

「う…ぐぐ…!?」

マッハレオモンの腕を掴むフレイドラモンの手に力が入り、あまりの握力にマッハレオモンは短剣を落とす。

「今度はやられない。覚悟しろ!!」

フレイドラモンはマッハレオモンの腹部に強烈な膝蹴りを叩き込む。

「ぐはっ!?」

「ふんっ!!」

悶絶するマッハレオモンにフレイドラモンは続けて顔面に強烈な蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。

「つ、強い!頑張って!!」

「へ、へへ…誰だか知らねえけど…やるじゃねえか…俺にもあれくらいの力がありゃあ…」

「いや…(分かる…こいつらの力はまだまだこんなもんじゃない!!だって、だってこいつらは…そうだ!!あの夢の中で…俺、何をした…?)」

夢の内容を思い出した少年が叫ぶ。

「シャウトモン!!バリスタモン!!何も言わずに俺の指示に従ってくれるか…!!?」

「…!」

「へっ!言ったはずだぜ!!俺達ゃ、ソウル・ブラザーだってな!!」

シャウトモンが笑みを浮かべながら言うと、少年はデジヴァイスらしき物を掲げた。

「シャウトモン!!バリスタモン!!デジクロス!!!」

「ウオッ!?」

「なっ…何だぁ!?体が!?」

「デジ…クロス…!?」

「2体のデジモンが1つに…!?」

「ばっ…馬鹿な!?デジクロスだとっ!?バグラモン皇帝陛下が唯一恐れると言われる合体進化の力…!!!」

誰もがシャウトモンとバリスタモンに起きた変化に驚愕し、そして光が収まった所には…。

「シャウトモンX2!!」

ポーズを取りながら叫ぶ、変化したシャウトモンの姿があった。

「え?あれってシャウトモンをバリスタモンの中に入れた…だけじゃないか?」

「進化…じゃないの?」

大輔とヒカリが進化と言うにはあまりにも簡単な変化に呆然となる。

「いえ…確かに簡単そうな変化だけど…!!」

ネフェルティモンは気付く、シャウトモンが合体前よりも凄まじいパワーを宿していることに。

「わっ…ワハハハハハ!!デカブツにシャウトモンを収納しただけではないか!!噂に尾鰭は付き物とは言え…伝説のデジクロスがそんなお粗末な物だったとは…チッ…一瞬でもビビらせおって!!」

シャウトモンX2に殴りかかるが、シャウトモンX2はマッハレオモンの動きを見切って尻尾を掴む。

「なっ…!?」

「良おおおっく…見えてるぜえっ!!」

そのままシャウトモンX2は勢い良くマッハレオモンを地面に叩きつけた。

「俺達も続くぞ!!喰らえ、ナックルファイア!!」

「ロゼッタストーン!!」

好機と見たフレイドラモンとネフェルティモンも同時に必殺技を放って直撃させる。

「つ…強!!!見た目ちょっと微妙だけど強っ!!」

「微妙微妙うるせー!!」

少女の言葉に怒鳴るシャウトモンX2。

「いや、そんなことよりもフレイドラモン。早くあいつを!!」

大輔が攻撃の指示を出そうとするが、既にマッハレオモンは立ち上がるのと同時に退避行動を取る。

フレイドラモンとネフェルティモンの必殺技で吹き飛ばされたために逃げるには充分過ぎる距離が開いていた。

「いかん!ここは一旦退き、上層部に報告を…」

「待ちなさい!!」

ヒカリが叫ぶが、このままではマッハレオモンに逃げられると誰もが思った時である。

「ムーンシューター!!」

真横から飛んできたエネルギー弾がマッハレオモンの足場を吹き飛ばし、バランスを崩したのだ。

「なっ!?」

「今だ!!」

突如現れた昆虫型デジモンがこちらに向かって叫ぶ。

「おう!!誰だか知らねえがありがとよ!!さあ、オーディエンス!!魂に刻んで帰りな!!俺のシャウトをなあっ!!!バディブラスター!!」

そしてシャウトモンX2の必殺技はマッハレオモンに炸裂し、マッハレオモンは吹き飛ぶ。

「あの…デジモン…あれは!!」

「一乗寺賢君!?」

大輔とヒカリは昆虫型デジモンの隣にいる賢に気づいて目を見開く。

賢は大輔達を見遣った後、この場を後にしようとするが。

「待てよ!!」

フレイドラモンに抱えられた大輔が賢の前に立つ。

向こうでは少女の叫びが響き渡るが、今の大輔達はそれどころではなかった。 

 

第2話:一応の和解

マッハレオモンを退け、デジタルワールドのグリンゾーンの微笑みの里の長老であるジジモンの厚意で長老の家に泊まることになった大輔達。

因みにマッハレオモンとの戦闘のゴタゴタで自己紹介が出来なかった為に改めて自己紹介をした。

ゴーグルを着けた少年が工藤タイキ。

赤い髪の女の子が陽ノ本アカリ。

そして緑色の服を着たのが…えっと…ツムリ…デン次郎(ゼンジロウだ!!)ということが分かった。

ジジモン長老の話を聞いた後、大輔達は自分達に宛てがわれた部屋で無言で向き合っていた。

「…えっと…助けてくれてありがとうな一乗寺」

「いや…」

「………」

「「「(気まずい…)」」」

部屋の隅っこでデジノワを食べているブイモン、テイルモン、ワームモンの3体。

「ところで、一乗寺はどうしてここに?」

「僕にも分からないんだ。いきなり空から降ってきた光がデジヴァイスに吸い込まれたかと思えば…」

「私達と同じなのね…」

重苦しい空気に、流石の微笑みの里のデジモン達も入る勇気はないみたいで、タイキ達がいる所のみが騒がしい。

そして少しして、賢は頭を下げた。

「今更謝ったところで意味がないというのは分かっています。それでも、すみませんでした…」

「いいって別に、俺は謝ってくれただけで充分だし。それよりも、どうしてワームモンが進化出来たんだ?今まで出来なかったんだろ?」

デジモンカイザー時代の賢はワームモンを進化させていなかったのに今になって進化出来たのは何故なのだろうと思ったのだ。

「実は……」

賢は大輔とヒカリに全てをうち明けた。

始まりの町へ行き、生まれ変わったワームモンと再会してしばらくは現実世界で平穏に過ごしていたが、突如姿を見せた謎の女。

その女を追い掛け、デジタルワールドに行くと…女はダークタワーをデジモンに変化させたかと思えば自分達に襲わせた。

「ダークタワーを…デジモンに変えただって…?マジかよ…」

「それだけじゃない…あの女が近付くとダークタワーは以前の機能を取り戻してしまう…それでダークタワーデジモンと戦って、ワームモンはスティングモンに進化出来たんだ」

「ダークタワーをデジモンに変えるだけじゃなくてダークタワーの機能を復活させることも出来る女か…」

「なら、私達の戦いはまだまだ終わらないのね」

「君達が気にすることじゃない。ダークタワーを建てたのも…寂しかったのも……それに目を背けたのも……全部僕……僕の責任なんだ…だから……僕が…僕がカタをつけなきゃいけないんだ…」

「いや、俺はお前1人に全てさせるつもりはないぜ。必死に罪を償おうとしているお前に全て押し付けるようなことはしたくないしさ…俺も手伝うよ。ダークタワーをぶっ壊すのもその女を倒すのも。一応選ばれし子供だしな」

「どうして…」

「ん?」

賢の小さな呟きが大輔には良く聞こえなかったので聞き返す。

「どうして……君は……僕を信じてくれるんだ……僕は……君にもあんなに酷い事をしてしまったのに……」

どのような罵倒を言われようと言い返す資格すらない自分に何故優しく出来るのだろうか?

「それはな、俺には聞こえたんだよ。」

「聞こえた?」

「ああ、変な奴と思うかもしれないけど、俺…お前の優しさの紋章から声が聞こえたんだ。上手く説明は出来ないんだけどな。その声を聞いたら、胸が暖かくなってさ。本当のお前が悪い奴じゃないって気付けたんだよ…。だからさ、お前が気にする必要なんかねえぞ。お前に力を貸したいと思うのは、俺がお前に力を貸したいからだ。こうしたい。だからそれをする。そんだけだよ…」

それを聞いたヒカリは思った通りだと思った。

大輔ならきっと、賢を仲間として受け入れると思っていた。

「まずはいきなり仲間は無理だろうから友達から始めようぜ一乗寺…でも機会があったらみんなに謝って欲しいんだ…みんな頭が固いからいきなり和解は無理だろうけど」

「分かった…元の世界に戻れたら必ず…」

「一乗寺君…」

ヒカリが少し前に出て、賢の目を見る。

デジモンカイザーの時のような濁った物とは違う澄んだ色をした瞳。

「私はまだあなたがしたことは許せない。沢山のデジモンを操ったじゃなく、傷つけて、キメラモンを造ったあなたを」

「…はい」

「でも…私達を助けてくれてありがとう。あなたの話…私も大輔君と同じように信じる」

「八神…さん…」

それだけ言うと、ヒカリは口を閉ざした。

「それにしても…不思議だよな、ここのデジモン達…進化のこと全然知らないなんて」

「そうね、デジモンなら当たり前のことだと思っていたのに…」

ジジモンと話した際にアーマー進化を不思議な変化と言われた大輔達。

確かにアーマー進化は普通の進化と違ってアイテムとデジモンを融合させる進化だから珍しいと思っていたのだが、普通の進化や退化のことまで知らないと言われたのは驚きであった。

「不思議と言えば、ライドラモンやネフェルティモンがマンモンを一撃で倒せたことにも吃驚したな。正直目眩ましが精一杯だと思ったのに」

「おい、大輔。俺も不思議に思ったけどさ…その言い方は傷つくぞ」

「悪い悪い」

不機嫌そうな表情で見つめながら言うブイモンに大輔は苦笑した。

「どうやらここには進化や退化の概念はないみたいだ。成熟期や完全体のことも知らないみたいだから、ある姿で生まれたデジモンはそのままなんだと思う。例えば本宮君達が倒したマンモンも生まれた時からマンモンだったんじゃないかな?世代がないからライドラモンやネフェルティモンでも本来なら完全体であるマンモンを倒せたんだと思う。」

「えっと…つまり?」

疑問符を浮かべる大輔にも分かるように説明する賢。

「多分だけど、ここにはデジモンの世代がないから成熟期や完全体の力の差が無くなってるんだと思う。」

「あ、そっか…世代がなくて力の差が無くなったからライドラモン達でも簡単に倒せたのか…」

「じゃあさ、俺達ってここじゃ結構強いのか?」

「さあ、どうだろう…?世代がないからって弱い敵ばかりではないと思う。少なくても極限まで鍛えて完全体と同等かそれ以上のデジモンもいるはず」

「せめて私が完全体に進化出来ればそういう相手にも対処出来るんだけど…」

テイルモンが深い溜め息を吐きながら呟く。

大輔達は知らないが、かつてデジタルワールドの安定のために紋章の力を解き放ったために完全体への進化が出来にくくなった。

仲間が沢山いるならまだ気にしないでいられたが、見知らぬ場所で見知った仲間がブイモン達だけと言うのは正直キツい。

一応ワームモンも仲間になったが、今のままでは連携もあまり取れないだろう。

「それにして…あの時、D-3に入ってきた光は何なんだろうな?」

「僕達のデジヴァイスに今までとは違う…えっと…Xローダーだっけ?それと同じ機能がいくつか付いたようだ」

デジモンを中に収納し、データを再生する機能。

他にもD-3には無かった機能が追加され、D-3の形をしたXローダーみたいな状態になっている。

「D-3X(クロス)ってとこかな…明日、タイキさん達はマッシュモン族がいる集落に向かうらしいから、俺達も一緒に行こうぜ」

「ええ」

「うん」

大輔達は明日に備えて寝ることにし、こうして大輔達の異世界大冒険の1日は終わりを告げた。 

 

第3話:進化とデジクロス

 
前書き
大輔のエクスブイモンは派手な活躍はないけど、見応えのあるバトルが結構あったりするんだよね… 

 
賢と一応の和解して翌日。

微笑みの里から北に数里歩いた所にあるという、マッシュモン族の集落である茸の里にシャウトモン達に案内してもらいながら向かうことになった。

「そう言えば一乗寺。お前、優しさの紋章はどうなった?」

「D-3Xの中だよ。このデジタルワールドに着いた途端に紋章が吸い込まれたんだ。」

賢がD-3Xを大輔とヒカリに見せると、D-3Xのディスプレイに優しさの紋章が浮かび上がる。

隣でシャウトモンが道案内を任されたことに愚痴をこぼしながら騒いでいたが、自分達にはどうすることも出来ないので取り敢えずスルーの方向で行くことにした。

「うっが~!!何で俺がそんなことの道案内しなきゃいけないんだよお~!!」

「なあ、シャウトモン。お前はタイキ達に命を救ってもらったんだろ?マッハレオモンの戦いだってタイキがいなけりゃ逃げられたかやられてたかもしれないんだし…お前も男なら恩ぐらい返せよ」

「ぐぎっぎぎぎぎぎぎぎ!!分かってらあ、それくらい!!でもキングだぜ!?デジタルワールドの王様だぜ!?こんな誘いを受けて何で平然としてられるんだよおーっ!!」

「まあ、俺達民主主義の国の生まれだから。あ、デジノワ食う?」

「俺、そういうの興味ねえし…頂きます」

「僕も王様はちょっと…」

「みんなが幸せに暮らせればそれでいいじゃない」

タイキ、大輔、賢、ヒカリに言われたシャウトモンは叫ぶ。

「ガーーーッ!!近頃の若いもんはっ!!でもデジノワは下さい!!好物なんで!!」

ガフガフとデジノワを食いまくるシャウトモンにゼンジロウが呆れたように見遣る。

「わあっ…!!」

「アカリさん?どうしたの?……あ」

アカリの声に反応してヒカリがアカリの視線を追うと、そこには美しい花園があった。

「「綺麗…!!」」

「グリンゾーン名物、微風の花園だぜ!」

2人が顔を輝かせながら花園を見つめているとスターモン(初めて見た時、大輔達が知るスターモンとは全然違うため、最初はスターモンと信じられなかったのは言うまでもない。)が花園について説明してくれた。

「大分歩イタ。少シ休憩シヨウ」

バリスタモンが休憩を言い渡すのとほぼ同時にアカリは花園に向かう。

「ちょっと見てくるっ!!」

「アカリさーん、デジモンに気をつけて下さいねー!!」

「分かってるー!!」

大輔がアカリに向かって叫ぶとアカリからも返事が返ってきた。

「……ねえ、大輔君。どうしてアカリさんには敬語なの?アカリさんは京さんと同い年なのに…」

「なあ、ヒカリちゃん。京とアカリさんを比べるなよ。アカリさんに凄く失礼じゃないか…アカリさんは少し気が強いけど面倒見が良くて明るくて優しいし、おまけに家事とかも出来るし…ドジでうるさい京と比べるなんて失礼だぜ…」

アカリも気が強いが、京みたいに面倒な女子ではないため、大輔はアカリをさん付けしているのだ。

「………ふーん」

大輔がアカリを褒めるのを聞いていると胸がモヤモヤするような感覚をヒカリは覚えた。

「ヒ、ヒカリ…!!く、苦…しい…!!」

抱かれていたテイルモンがヒカリの腕を叩く。

どうやら気付かぬうちに抱いていた腕に力を入れていた模様。

「あ、ごめんねテイルモン」

「本当、タイキさんはいいですよね。アカリさんみたいな幼なじみがいて。俺の幼馴染みはうるさいだけだし、はっきり言ってアカリさんが幼馴染みのタイキさんが滅茶苦茶羨ましいです。」

「はは……あいつには本当に世話になりっぱなしだよ。俺が無茶出来るのもあいつのおかげだし、アカリにはこれからも俺の傍にいてもらわないと…って、どうしたんだお前ら、顔が赤いぞ?」

「あー、タイキさん…自覚ないんですね?」

「天然というか何というか…」

「アカリさん、苦労しそうだわ…」

無自覚の惚気を喰らった大輔達に微妙な空気が流れる。

次の瞬間にアカリの悲鳴が聞こえて、大輔達が慌てて向かうとそこには…。

「あれは…昨日のバグラ軍の逃げ残りか!?」

ブイモンが去っていく丸裸のライノモンを見遣りながら言うと、アカリと兎のようなデジモン、そして複数のドリルを持った獣のデジモン…。

「ドルルモン…!?」

「あん…?」

タイキが初めて会うはずのデジモンの名前を言い当て、ドルルモンは目を見開いた。

そしてドルルモンから事情を聞いて、ドルルモン達も茸の里に向かうようであり、折角なので共に向かうことになった。

「へえ…じゃあ、ドルルモンとキュートモンはキュートモンの両親を捜してんのか…にしてもここのデジモンには家族まであるのか」

「あんたらのいたゾーンは違うのかい?とにかく、バグラ軍の侵攻で離れ離れになっちまったらしくてな…まあ、俺自身は特にアテのない旅だったんだが、道連れになった縁で親捜しを手伝ってんのさ。しかし驚いたぜ!そこの人間の兄ちゃんが俺の名前をズバリ言い当てたのはよ!辺境の少数部族なんだが…何だい、知り合いでもいたのかい?」

「あっ…ああ…そんなとこ…」

「?…」

タイキの言葉にアカリが不思議そうに見遣る。

「あれ?タイキさんはデジタルワールドに来るの初めてですよねアカリさん?」

「う、うん…そうだけど…」

ヒカリの問いにアカリは頷いた。

「旦那も茸の里にゃ寄る予定なんだろ?折角だから俺達と一緒に行こうぜ!」

「群れんのはあんま好きじゃねえんだけどなぁ…まあ、あいつも久しぶりに楽しそうだし、たまにゃあいいか…」

スターモンの言葉にドルルモンの視界に映るのはブイモン達やピックモンズとはしゃぐキュートモンの姿。

それを見てドルルモンはタイキ達と共に茸の里に向かうのであった。

「確か、コードクラウンって言うのを貸してもらうんだよな?」

「うん、それがあれば私達のいた場所に帰れるかもしれない。早く帰らないと」

「早く帰らないと、あの女が何をするか分からない。ただでさえ1日過ぎているんだ…」

大輔達が元の世界に想いを馳せる中、茸の里に着いて、長老の家に向かったのだが、マッシュモンズに妨害されてしまう。

「ならんならん!我らマッシュモン族の秘宝の力をタダで借りようなどと、不貞不貞しいにも程があるっシュ!!」

「余所者はとっとと立ち去るがいいっシュ!!」

「何だと!?少しくらい貸してくれてもいいじゃねえかよ!!」

「そうよ!!ちょっと借りるだけじゃない!!」

「遙々訪ねてきた隣の里のもんにその言い草は無しだろ!!」

余りの言い草に大輔、アカリ、スターモンが怒鳴るがマッシュモンズはどこ吹く風である。

「お前ら微笑みの里の者がだらしないから、このグリンゾーンをバグラ軍にいいように荒らされてるっシュ!!」

「おかげでこっちも迷惑してるっシュ!!」

「おいお前ら…戦いもしない癖によくもそんな勝手なことを言えるな!お前らを焼き茸にして食うぞ!!」

「何だったら腕っ節をてめえらで試して見るかあ!?」

キレたブイモンとシャウトモンがマッシュモンズの言葉に激怒して殴りかかろうとした時。

「まあ、待ってくれ。微笑みの里の若者達よ…」

「「長老!!」」

家から出て来たのはマッシュモン族の長老であった。

「聞けばその者達、異世界から迷い込んだ人間の子供だと言うではないか…しかも伝説のXローダーとそれに似た機械を持ち…デジクロスと不思議な力でバグラ軍の部隊を撃退したと言う…。そのような者に力を貸したとあっては、この里がバグラ軍に狙われるかもしれん…ここは引き下がってくれんか若いの…」

「なっ…何だとぉ!?てめえそれでも一族の…」

「いいんだシャウトモン!!」

長老の言葉に怒鳴ろうとしたシャウトモンだが、タイキがそれを止める。

「タイキ…!!」

「長老の言うことも尤もだ…別の方法を探すさ!!」

こうして大輔達は茸の里を後にして、里の近くで夕食を摂ることになった。

「ケェーーーっ!!どいつもこいつも腰が引けてやがる!!」

「まあ、マッシュモン族は昔っから意地悪で有名だからなぁ…」

「そういうとこは私達のいた所と共通ね」

ドルルモンがそう言うとテイルモンがスープを飲む。

「おめえも澄ました顔してんじゃねえよ!!里でそいつの親御さん捜すんじゃなかったのかよ!!」

「里で似たような奴は見かけなかったそうだ。」

「やっぱ猫舌なのか?少し冷ますか?」

「おう、悪いね兄ちゃん」

ドルルモンは猫舌なためにスープは冷ましてから食べることに。

「何だよ!何で俺ばっかカリカリしてんだよお~!!?」

「くっそ~!あの腰抜け茸共!タイキに止められなかったらぶっ飛ばしてやるのに!!」

「ブイモ~ン!お前だけだぜ俺の味方は!今日は自棄だ!!食うぞ~!!」

「おーう!!」

「お前ら、貴重な食い物を自棄食いすんなー!!」

自棄食いしようとする怒れる2匹に大輔が怒声を上げた。

「ふう…」

夕食からしばらくして、眠れないために夜空を見上げていた大輔だが、賢がそちらに歩み寄る。

「本宮君…お疲れ…」

「おう…あいつらには参ったぜ…貴重な食い物で自棄食いしようとするなんてよ」

最終的に大輔がシャウトモンとブイモンを殴って鎮圧した。

「なあ、一乗寺。お前少し楽しそうだったな」

「あ…ごめん…僕は……」

「いいんだよ、前みたいに人を見下しきった顔よりずーっと良い顔してるぜ。少なくても、ここにいる時くらいは肩の力を抜いてもいいんじゃねえか?ここじゃあデジモンカイザーなんて知らねえんだし」

「そう言う訳には…」

「一乗寺、確かにお前はデジモンカイザーとして色々悪いことしちまったかもしれねえけどさ。今のお前は前と違うんだ。他人の痛みだってちゃんと分かる。お前が必死に罪を償おうとしているのは俺もヒカリちゃんも分かってるぜ。」

「…………」

「でも……どうしたって償いきれない罪もある」

突如、後ろから聞こえてきた声に振り返るとそこにはドルルモンがいた。

「ドルルモン?」

「悪いな、色々聞こえちまったんだよ。でも、兄ちゃんはまだ幸せな方だ。あんたを理解しようとして受け入れようとしてくれる奴がいるんだからな…確か、大輔だったよな?理解者は大事にしなよ」

ドルルモンは賢に寂しげに微笑むとそのまま目を閉じようとしたのだが。

爆音が響き渡り、全員が茸の里を振り返る。

「茸の里が…!!」

「ありゃあ、プテラノモンの爆撃編隊だぁ!!」

「酷い…!!」

「嫌な奴らだったけど、だからって放っておけない!!デジメンタルアップ!!」

「デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、轟く友情!ライドラモン!!」

「テイルモンアーマー進化、微笑みの光!ネフェルティモン!!」

「ワームモン、僕達も!!」

「うん!ワームモン進化、スティングモン!!」

ブイモン達を進化させるのと同時に茸の里に向かう大輔達。

「べ、別のデジモンになったっキュ…」

「デジモンが別のデジモンに変化するなんて聞いたこと無いぜ…」

「俺達もあいつらに負けてられねえ!俺達も行くぜ野郎共!!」

「Year!!」

先に向かうライドラモン達を追うようにシャウトモン達も茸の里に向かう。

「お…おいおいおい。お前らにゃ関係ないだろうが!?余所の里の奴らの問題だろ!?」

「い…一応様子は見に行った方がいいか…?」

「ああ、そうだな!!」

タイキやゼンジロウも茸の里に向かい始める。

「あらら…お前らもかよ!?全くお節介な奴らだな!付き合ってらんねえや!行こうぜキュートモ……なあーーーっ!!?」

目を離していた隙にキュートモンはバリスタモンに乗って茸の里に向かっていた。

「バ…バグラ軍に街が焼かれるのを黙って見てられないキュ!」

「いや…だからって、お前がついてってもどうなるもんでもないだろうがよ!!ったく、どいつもこいつも…っ!!」

そして先に着いたライドラモン達はマッシュモン達に迫るミサイモンを迎撃する。

「ブルーサンダー!!」

ライドラモンが放った電撃弾はミサイモンを粉砕した。
大輔は周辺を見回した。

少し前まで平穏だった里が、理不尽な攻撃を受けており、此方に気付いたプテラノモンがライドラモン向けて爆撃を仕掛けてくる。

ブイモンのアーマー体には飛行能力がないため、プテラノモンに苦戦を強いられる。

ネフェルティモンもスティングモンも数を減らそうとするが、プテラノモンの数が多いために激しい爆撃は続く。

「よくも…よくも茸の里を…許さねえ…てめえら絶対に許さねえぞ!!!」

バグラ軍の理不尽な暴力に対する怒りが頂点に達し、大輔のD-3Xが光り輝いた。

「こ、これは…」

光に気付いたライドラモンは進化を解除し、D-3Xの光を受け入れた。

「ブイモン進化、エクスブイモン!!」

今まで出来なかった通常進化がダークタワーがないことと、理不尽な暴力に対する怒りによって出来るようになった。

「ブイモンが…進化した…」

嬉しいことにエクスブイモンには翼があり、アーマー体ではマグナモン以外は出来なかった空中戦が出来るようになった。

「よし、これなら…!行くぞ!!」

不慣れながらも翼を羽ばたかせ、エクスブイモンはプテラノモンに突撃し、そしてシャウトモン達もミサイモンの攻撃からマッシュモン達を助けていた。

「お…お前、何故ここにっシュ!?」

「っせーな、通りがかっただけでぇっ!!」

シャウトモンが叫んだ時、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

「グフフフフフフフ…まさか…こんなに早く貴様に復讐出来る日が来ようとはな…」

「何ぃ…!?」

地面から飛び出したのはマッハレオモンと6体のドリモゲモンである。

「ガハハハハ!!ドリモゲモン共の鼻では少々不安だったが…ついに手に入れたぞ、グリンゾーンのコードクラウンの器…!!」

「あいつ…!!そうか…あいつか…あいつが里を…一乗寺、ヒカリちゃん。プテラノモン達を頼む…!!」

「え!?」

「本宮君!?」

エクスブイモンはマッハレオモンに向かってかなりの勢いで急降下する。

「げっ……あ…あいつ…あそこまでボコボコにされたのに生きてやがったのかよ!?」

シャウトモンが驚くが、長老はマッハレオモンが手にしている物に気付く。

「あ…あれは地下神殿にコードクラウンの器として安置しておった我らが里の秘宝…奈落のトリュフ!!」

「猛将にして知将!!我が主タクティモン様は長らく下調べをしておられたのだ。ここの地下神殿に持ち主に無限の力を与えると言う奈落のトリュフがあることをなあ…!!」

「そうかよ…てめえはそんなことのために里を襲ったのかよ!!」

「ぐおっ!?」

背後からエクスブイモンの奇襲の蹴りをまともに喰らい、勢い良く吹き飛ぶマッハレオモン。

「うおっ!?危ねえ!!」

咄嗟に長老を押し倒したことで巻き添えを避けたシャウトモン。

「き、貴様は…あの時の…また変化したのか…!!」

「そんな物の為に里を焼いたのか…なら、俺達はてめえを許さねえ!!」

大輔の怒りがエクスブイモンの力になるかのようにマッハレオモンの顔面を殴り飛ばす。

「がっ!?」

「喰らえっ!!」

仰向けに倒れたマッハレオモンに何度も拳を叩き込み、最後は全力の一撃を鳩尾に叩き込んだ。

「す、凄え…」

「寧ろブイモンが里を滅ぼすんじゃ…」

エクスブイモンの容赦のない猛攻にシャウトモンは思わず呟き、アカリも思わず呟いてしまった。

「あ…ぐ…ば、化け物め…奈落のトリュフの力があれば貴様など…!!」

マッハレオモンは奈落のトリュフの力を使おうとするが、それを見た長老が慌てる。

「い…いかん。その力は危険じゃ!!お主自身の身を滅ぼすぞ…!!」

「グ…ハハハハハ…!!それくらいの力でなくては手に入れた意味がないわ!!奈落のトリュフでパワーアップした力に後悔しろ化け物め!!」

奈落のトリュフを握り潰したマッハレオモンは部下のドリモゲモンの元に向かい、ドリモゲモン達を吸収した。

「な、何!?あいつももしかしてデジクロスを!?」

「いや、あれは合体と言うより吸収だ。」

ヒカリと賢が吸収されていくドリモゲモン達を見つめながら言うと、マッハレオモンが巨大化していく。

「グフッフフフフフフ…ファファファファファファ!!こっ…これが奈落のトリュフの力かあぁぁぁあ!!?」

「あいつ巨大化しやがった…て言うか、臭っ!?何だありゃあ!?」

マッハレオモンから漂うあまりの悪臭に大輔は思わず鼻を摘まんだ。

「ファファ…ファ…な…何と甘美な香り…!力が…力が溢れて来るぞおおおおおおお…」

「な…生ゴミみたいな臭いしかしないぞぉ!?」

「あ…あいつ、目つきが変だよ!正気じゃない…!!」

ゼンジロウとアカリがマッハレオモンの悪臭と異常さに引く。

「長老、奈落のトリュフとは何なんですか!?パワーアップにしては少し異常ですよ!?」

マッハレオモンのあまりの変わり様に賢がスティングモンから飛び降りて長老に尋ねる。

尋ねられた長老は少しだけ戸惑いながらも奈落のトリュフの説明をした。

「あ…あの、奈落のトリュフは禁断の茸!!コードクラウンを守る最後の罠として仕掛けてあった物なのじゃ…」

「罠…!?」

「そうじゃ…力弱き者が手にすればその強力な幻覚作用により魂までも吸い尽くされ、力ある者が手にすれば、魂と肉体が暴走し、一時的に強大な力を得るが、やがて魂をすり減らして自滅する…!!」

「何だって!?」

「そ…そんなっ…!じゃああいつ…」

「ひょっとして…上司から騙されて…コードクラウンを手に入れるための捨て駒にされたのか…!?」

「けっ…!どちらにしろ、奴を倒さねえと自滅される前にこの里が滅びちまう!!ロックダマシー!!」

「メテオスコール!!」

「ホーンブレイカー!!」

「クヒッヒヒヒヒィ!!なぁんだその蚊が刺したような攻撃はぁ~!?」

シャウトモン達が攻撃を仕掛けるが、ドリモゲモンを吸収してパワーアップした今のマッハレオモンには並大抵の攻撃は通用しない。

「ウオ!?オオオオっ!!」

直接攻撃を仕掛けてきたバリスタモンの角を掴み、シャウトモン目掛けて叩きつける。

「シャウトモン!!よくも!!エクスレイザー!!」

「ロゼッタストーン!!」

「スパイキングフィニッシュ!!」

「グオオオオオ!?」

エクスブイモン達の一斉攻撃を受けたマッハレオモンはいくらか後退し、今のうちにタイキはシャウトモンの元に向かう。

「シャウトモン!!」

「来んじゃねえ!!」

シャウトモンの怒声にタイキは思わず足を止めた。

「お前らの言う通りさ…確かにこりゃ俺達デジモン同士の戦争だ…!お前らを巻き込む謂われはねえ…さあ…逃げなタイキ!!」

「だ…だったら、お前がこの里を守る理由もないだろ!?あんなに悪く言われて…」

「へっ…そういうわけにもいかねえ…例えこんな奴らのにやけ顔だろうとな…誰かの笑顔が曇ってんのは俺は見過ごせねえんだ!それが微笑みの里者の粋ってもんよ…!!」

シャウトモンの言葉にタイキは何かに気付いたかのように口を開いた。

「…!そうか…!!放っとけない…放っとけないんだなお前は…!デジタルワールド全体が笑顔を失っているのが…!!それを取り戻すために…このデジタルワールドの戦国時代に終止符を打つ!!それが…お前の言う王様になるってことなんだな…!?」

しかしシャウトモンはそんなタイキの言葉に疑問符を浮かべる。

「はあ…!?何だよタイキ。俺がそんな優等生に見えるか?俺様の夢はなタイキ…そうやって平和になったデジタルワールドのてっぺんから俺の魂のロックを響かせて…世界中をドハッピーに盛り上げることよ!!それが俺様の目指すキングだ!!」

それを聞いた全員の視線がシャウトモンに集中した。

「(…タ…タイキ以上の馬鹿を初めて見た…!)」

「…アカリ…ゼンジロウ…ごめん。どうしよう…俺、こいつの夢、放っとけない…」

「なっ、何いい~!?」

「ああっちゃあ…大馬鹿が超馬鹿に宛てられちゃったか…」

「良いじゃないですかアカリさん。シャウトモンの夢はとても素敵だと思うな私」

「え!?ヒカリちゃんも!?」

「まあ、前向きな夢でいいと思います」

「賢君も!?」

「やっぱり男は夢をでっかく持たないとな!!」

「大輔君まで~…みんなあの超馬鹿に宛てられちゃった…」

タイキと大輔達はシャウトモンに歩み寄る。

「付き合うぜシャウトモン!!2人でキングになろう!!今日から俺の夢はお前の夢で…お前の夢が…俺の夢だ!!」

「タイキ…!!」

「俺達も出来るだけ付き合うぜシャウトモン。お前のキング姿を見せてくれよ!!」

「お前ら…っ…へっ!!」

タイキと大輔の言葉にシャウトモンは涙を拭って笑みを浮かべた。

「だが、楽な相手じゃあないぜ!?X2の力でも勝てるかどうか…」

「いや…楽勝さ!エクスブイモン達もいるし…何より、今日はあいつだっているしな!!」

「うおっ!?」

タイキの視線を追うとそこにはドルルモンがいた。

「(ドルルモン…凄え…タイキさんはこんな時だってのによく周りを見てる…)」

大輔がタイキに感心すると、ドルルモンが降りてきた。

「(気付いていたのかよっ…この急場でよくもまぁ、周りを見てる奴だな…)」

ドルルモンも大輔と同様のことを思いながらタイキの元に向かう。

「見せてやろうぜ!!1つになった俺達のロック魂って奴をさ!!」

「ななななななぁにをブツブツ言っているのだだああ~!?真面目に俺とととたたた戦う気がないのならああぁああ…とっととと潰れて消えてしまええぇええ!!!?」

「やらせるか!エクスレイザー!!」

「カースオブクィーン!!」

「ムーンシューター!!」

奈落のトリュフの影響を受けたミサイモンをエクスブイモン達が迎撃した。

「「「タイキさん!!」」」

「おう!!シャウトモン!!バリスタモン!!ドルルモン!!」

「お…おい!何を…」

「デジクロス!!」

シャウトモン、バリスタモン、ドルルモンの3体が合体し、誕生したデジクロス体はヒカリの目を見開かせた。

「あれは、オメガモン!?」

「いや!!今の俺はシャウトモンX3だ!!こいつは俺に任せな!!行っくぜえ!!!」

どことなくオメガモンを彷彿させるシャウトモンX3はマッハレオモンと組み合うが、完全にシャウトモンX3がマッハレオモンを上回っている。

「凄い、あのパワーは完全にエクスブイモン達を上回っている!!」

賢がシャウトモンX3のパワーを見て驚愕する。

「いっ…今の姿の俺がパワー負けしているだとおおお!!?」

マッハレオモンは奈落のトリュフでパワーアップしたはずにも関わらず何故押されるのか理解出来ていない。

「ぐわっ…何故っ…何故雑魚共の力を足し合わせただけでこれだけのパワーがああっ!!」

「X(クロス)だって言ってるだろ!!足し算じゃないんだ!!」

「それが分からない時点でお前の負けなんだよ!!」

タイキと大輔が叫ぶのと同時にシャウトモンX3は拳を振り上げる。

「ハイアドモスフェリックプレッシャー!!」

手首のタービンを高速回転させ、強烈な一撃を繰り出すと、大輔が指示を飛ばす。

「エクスブイモン!!今だ!!」

「ああ、決めようぜシャウトモン!!」

「おうよ!!」

シャウトモンX3とエクスブイモンは同じように両腕を交差させ、同時に必殺技を放った。

「エクスレイザー!!」

「スリービクトライズ!!」

2体から放たれた2つの光線を同時に喰らったマッハレオモンは一瞬で蒸発し、そしてタイキは落ちてきた物体をキャッチする。

「それがコードクラウンなんですか?」

「多分…」

マッハレオモンの消滅と他に敵がいないことを確認したヒカリ達はタイキと大輔の元に集まる。

「タイキ!も…物凄かったな今の…!」

「これがあれば、元の世界に帰れるかもしれないの?」

「あ…ああ…」

「(何てこった…まさかこの俺が、デジクロスしてバグラ軍と戦うとはな…皮肉なこともあったもんだぜ…)」

「でもさ、これどうやって使うんだろ?」

「…何かただのSDカードにしか見えないけどなぁ…」

「あ、もしかしてXローダーとD-3Xに差し込むんじゃないんですか?ほらここ…」

「正解よ、本宮大輔君」

「え?」

振り返るとそこにはタイキやゼンジロウと同い年くらいの女の子がいた。

「ウフフフフフ…♪初めまして、本宮大輔君、工藤タイキ君。やっぱり綺麗!あなた達の色…」

少女の視線の先にはタイキのXローダーと大輔のD-3Xがあった。 

 

第4話:XローダーとD-3X

大輔は不思議そうに目の前に突然現れた少女を見つめながら尋ねる。

「えっと…お姉さんは誰ですか?どうして俺やタイキさんの名前を?」

「私は天野ネネ…どうして私があなた達のことを知っているのかと言うとあなた達のことをずっと見てたから…」

そう言うとネネは大輔とタイキの腕に自分の腕を絡ませた。

「え!?え!?」

「私…あなた達のファンなんですもの!私、戦う強い男の子が好きなの!!」

「んなあーーー!?」

「え、えーーー!?」

アカリとヒカリがネネの爆弾発言に激しく動揺する。

「あ…う…」

そして色恋沙汰に鈍感なタイキはとにかく、大輔はネネの発言と行動に赤面して硬直している。

何故なら女の子に、しかもネネのような美少女にそのようなことを言われたり、されたりした経験など皆無だからだ。

「はっ…はいはいはい。強い男の子ならここに!!江東区最強の中学生剣士!!剣ゼンジ…」

「アカリ・ドストライク!!!!」

「あひん!!?」

「ゼンジロウさん!?」

アカリの必殺技、アカリ・ドストライクと言う名の肘打ちがゼンジロウの鳩尾に炸裂し、あまりの痛みに悶えるゼンジロウに賢が駆け寄るのであった。

「あ、あの!!だ…大輔君から離れて下さい!!」

「そうよ!!ちょっとあんたいきなり馴れ馴れしいんじゃないのぉ!!?」

ヒカリは大輔の腕を掴んでネネから引き離し、アカリはタイキの前に立ちながら威嚇する。

「あらら…ごめんなさい。憧れの殿方達が目の前にいたものだからつい…本当は強い女の子も大好きなんだけどね、陽ノ本アカリさんに八神ヒカリさん。」

「へひっ!?」

ネネはアカリの顎に触れながら更に言葉を紡ぐ。

「残念だけど八神ヒカリさんはともかく、あなたには資格がないの」

「へっ…はっ…し…資格ぅ!?」

「そうそうコードクラウンの使い方だったわね。タイキ君、大輔君…コードクラウンとXローダー…そしてD-3Xだったかしら?ちょっと私に貸してもらえるかしら」

「はい」

「ほい」

大輔とタイキは戸惑うことなく、あっさりとD-3XとXローダーをネネに渡す。

「簡単に渡しちゃ駄目ーっ!!」

「易々と渡すなーっ!!」

「(…何て澄んだ赤…とても熱く…激しい…けど、潔く清々しい…潤いのある炎…こっちのは何て綺麗な青…暖かくて…全てを包み込むような…優しい光…!!いいな…いいな…!でも…2人共、私と交わるには少し澄み過ぎてるいるかも…)」

「?」

「ネネさん、どうしたんですか?」

黙ってD-3XとXローダーを見つめるネネを不思議そうに見つめるタイキと大輔。

「ううん…ただ綺麗だなって…このコードクラウンが各ゾーンの支配者の証であることは知ってるわね?そしてその持ち主は本来遠く隔てられているゾーンの間を行き来する次元の道を開くことが出来る…Xローダーにはここに差し込むけど、このD-3Xの場合は…」

D-3Xの横のスリットにコードクラウンを差し込み、大輔にD-3Xを返す。

「天に翳して言ってみて!ゾーン移動!」

「は、はい。ゾーン移動!!」

叫んだ次の瞬間に宙に穴が開いた。

「ちゅ…宙に穴が開いた!!」

「私達がデジタルワールドに来た時の穴と似てる…!!」

「…この穴は…俺達の世界に通じてるのか?」

「さぁ…それは行ってみないと分からないわね。もしその先があなた達の望むゾーンじゃなかったら…その時はそのゾーンのコードクラウンを探せばいい。いつか望みのゾーンに行き着けることもあるでしょう…それに…このデジタルワールドに散らばる全てのコードクラウンを手にした者には…デジタルワールド全ての支配者としてこの世界そのものを創り変える力が与えられると言われているわ…そうなれば何処に行くのも思いのまま…」

「ってこたぁ…そのコードクラウンを全部集めりゃ、デジタルワールドのキングになれるってことか!?」

「この世界の王になりたいと言うなら…それも1つの方法ではあるわね。けど今は多くのゾーンのコードクラウンはバグラ軍が押さえているわ。彼らとの戦いは避けられないでしょうけどね」

それを聞いたシャウトモンとブイモンは強気の笑みを浮かべた。

「へっ…!望むところだぜ!!デジタルワールドを荒らすバグラ軍をやっつけて…コードクラウンを取り戻す!上等じゃねえか!!」

「バグラ軍を倒した後はコードクラウンの力で俺達は俺達のいた場所に戻る!!」

「ふふ…期待してるわ小さなドラゴンさん達♪けど…注意してね?デジタルワールドの覇権を狙う者は他にもいる…敵はバグラ軍だけじゃないかもよ?」

「君とか?」

「もしかしてネネさんもデジタルワールドの覇権を狙ってんですか?」

「うーん、内緒!ふふっ…やっぱり2人共面白い子ね。でもコードクラウンの使い方と…強い男の子が好きってことは本当だよ?」

「「っ!!」」

ネネのその言葉にヒカリとアカリは過剰に反応した。

「出来ればずっとあなた達のファンのままでいたいな…頑張ってね大輔君!タイキ君!」

それだけ言い残して、ネネはこの場を去っていった。

「いきなり現れたかと思えばあっさり行っちゃいましたねゼンジロウさん…」

「ああ…」

賢は呆気に取られながら、ゼンジロウは残念そうに呟く。

「な、何なのあの人…いきなり現れたかと思えば、大輔君やタイキさんに抱きついたり、ファンって言ったり…」

「全くだわヒカリちゃん!!何者よあの蛇女!!勝手なことばかり言って~!!騙されちゃ駄目よタイキ!!大輔君!!いいように利用されてぼろ雑巾のように捨てられるのがオチよ!!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて下さいよアカリさん!!」

強く肩を揺さぶられる2人は何とかアカリを落ち着かせる。

「別に嘘は言ってないんじゃないかなあの子。隠し事は色々してるみたいだったけどさ、それにまだ利用しようとしてるんじゃなくて、利用出来るか試してる感じだったし…」

因みにタイキの声はネネに届いていた。

「(鋭すぎるのは、ちょっと可愛くないかな…)」

ネネは笑みを浮かべながらそのままモニタモン達と共に茸の里から去った。

「(俺にはネネさんが無理して笑ってるように見えたけどな…何か悩みでもあるのかな?)」

「大輔君…何、ネネさんの行った方を見つめてるの?」

「へ?いや、別に…って、ヒカリちゃん…何で怒ってんの?」

「知らない!!」

「???」

そのまま距離を取るヒカリに大輔は疑問符を浮かべるしかなかった。

「タイキ殿ーっ!!」

聞き覚えのある声に振り返るとジジモン達が駆け寄ってきた。

「あっ…マッシュモン達…それにジジモン様達まで!!」

「茸の里が襲われてるって聞いて駆けつけたんだけど…」

「既に事を収めてしまった後だったとは…いやはや大した手並みですわい!!」

「いや~それほどでも~」

「ゼンジロウさんはただ見ていただけじゃないですか」

ゼンジロウの言葉に思わず賢がツッコむ。

タイキは長老に気付くとコードクラウンを見せる。

「あっ…!マッシュモンの長老様!!コードクラウン…何とか取り戻したんだけどさ…良かったらもう少し俺達に貸しておいてくれないかな」

「事情はジジモン殿から聞いた…バグラ軍に所在が知れた以上、それはお主らが持っておった方が寧ろ安全じゃろう…」

「「ただし!!」」

「ん?」

「わシュら2人をクラウンの守り人として旅に連れて行くっシュ!!」

「それがコードクラウンをお前らに託す条件っシュ!!」

「え…?」

「お前らがぁ~!?」

「おいおい、お前ら一体どういう風の吹き回しだよ?」

ブイモンがマッシュモンズに尋ねるとマッシュモンズは明後日の方向を見遣りながら説明する。

「べ…別に身を呈して里を守ってもらったことに感謝してるとか…」

「格好いいからわシュらもデジクロスしてみたいな~とか思ったわけじゃないっシュよ!?ただお前らちょっと頼りなさそうだから力を貸してやるだけっシュ!!」

「「「(素直じゃないな~)」」」

素直になれないマッシュモンズに対して思わず同じことを思ってしまった大輔達であった。

「ああ…分かったよ!頼りにしてるぜマッシュモンズ!!」

「シュ~ッシュッシュ!!よろしく頼むっシュよマイブラザー!!」

「過去のことは水に流して楽しくやるっシュ!!」

シャウトモンの肩に手を置きながら言うマッシュモンズ。

「わしらもお供しますぞタイキ殿!大輔殿!シャウトモンの想いは我ら微笑みの里者全ての願いでもある。微力ながらこの力、役に立ててくだされ!!」

「うん…!ありがとうジジモン様!!」

「なあ、ドルルモンはどうする?一緒に来るか?俺達と一緒にいれば色々なゾーンに行けるかもしれないぞ?キュートモンの親捜しだってその方が都合が良いんじゃないか?」

大輔がドルルモンに尋ねるとドルルモンは少しの間を置いて頷いた。

「そうだな…このグリンゾーンでキュートモンの親を捜すのも手詰まりになってきたし、この時世、ゾーンを渡れるチャンスもそう多くないし…悪いが次のゾーンまで便乗させてくれ」

「次のゾーンまでと言わないで私達と一緒に戦わない?あのオメガモンみたいな合体にはあんたが必要みたいだし」

「悪いなお嬢さん。俺はバグラ軍と事を構えるつもりはないんでね。それに群れるのは苦手なんだ」

「そう、分かったわ」

テイルモンが共に戦わないかと尋ねるがドルルモンは拒否した。

流石に無理強いは出来ないため、テイルモンはすぐに諦めた。

「さて…じゃあ、俺達人間のことなんだけど…」

「俺達は残りますよ。俺達が知る場所に行って、そこから帰らないと」

「そうしないとちゃんと戻れないかもしれませんから」

「分かった。アカリ!ゼンジロウ!!」

大輔とヒカリの言葉に頷くと、タイキはアカリ達に向かって口を開く。

「…タイキ…」

「あの道の先が…願い通り、俺達の世界に繋がっていたとしても…俺もうしばらくこの世界でこいつの夢に付き合ってみようと思う!その時はアカリ…」

「た…タイキ。私っ…私ね…!」

アカリが言い切るより先にタイキが口を開いた。

「一緒について来てくれないか?俺やっぱお前がいないと、どんどん無茶ばっかやっちまいそうでさ。そういう時いつもみたいにお前に止めて欲しいんだ!頼むよアカリ!!」

アカリは赤面し、タイキから顔を逸らす。

「わ…分ぁかってるわよ。最初からそのつもりだったてぇの!!ったく、面倒な性格してるんだからあんたはっ…!ったく…勝手なこと…ばっかり…!」

アカリの背後でリリモンとサンフラウモンは意味深な笑みを浮かべていた。

「「うふふふふふ」」

「…な…何よ…」

「アカリ可愛いっ!!」

「可愛い可愛い可愛~い~!!」

「何っっじゃあ~っ!!降ろせえ~っ!!」

「あー、可愛い可愛い」

「可愛いなー、もう」

リリモンとサンフラウモンに抱き付かれ、ふわふわと浮かぶアカリ。

「「「あはは…」」」

それを見ていた大輔達は苦笑しか出ないのであった。

「お…俺も行くぞタイキ!」

「ゼンジロウ!!」

「しゅ…宿命のライバルが激しい戦いに身を投じる決断をしたというのに。俺だけ1人だけおめおめと帰れるか!!」

「そっか…うん!ありがとうゼンジロウ!!」

「(剣道の話だけじゃない!!ここで引き下がれば一生こいつには勝てん気がする…!!)」

「よぉし…じゃあ、みんなで行こうっ!!デジモン達は一度XローダーやD-3Xの中に入ってくれ!!次元の道ではぐれたりしたら大変だからな!!」

XローダーとD-3Xにデジモン達を入れると、タイキが確認を取る。

「みんな、いいな!?」

「「「はい!」」」

「うん!」

「何時でも来おい!!」

「行くぞ!!」

6人の子供達は次のゾーンに繋がるゲートに飛び込む。

こうしてグリンゾーンでの戦いは終わり、子供達は新たな戦いの場へと向かう。  

 

第5話:合体竜人パイルドラモン

茸の里で手に入れたコードクラウンで新たなゾーンに向かった大輔達。

ゲートから落ちた場所は何と極寒の大地であった。

下は雪だから怪我は無かったが…。

「寒うぅぅ!!」

あまりの冷たさに雪から飛び出す子供達。

「どどどど何処よ此処ぉ~っ!!北海道!?シベリア!!?南極~っ!!?」

雪まみれとなり、ガタガタと震える子供達。

「いえ、多分デジタルワールドですね。僕達の世界では氷山が宙に浮いてたりしませんから」

「「「…あ~…」」」

「て言うか寒いな!!俺達、薄着だし…」

大輔はヒカリに自分のジャケットを着せたために今では大輔が一番の薄着である。

「だ、大輔君、風邪引いちゃうわ!!」

「いいんだよ!!ヒカリちゃんに風邪引かれたら俺が困るんだ!!太一さんに殺されちまう!!」

「え?何?ヒカリちゃんのお兄さんってそんなに危険人物なの?」

それを聞いて思わずアカリがツッコんでしまった。

「ち、違いますよ!!」

アカリのツッコミにヒカリは慌てて言い返す。

「ここは…常雪の大地、スノーゾーン!!寒冷地に適応したデジモンしか住むことの出来ぬデジタルワールド有数の厳寒地域ですじゃ!!」

ジジモンがXローダーの中で説明する。

どうやらXローダーとD-3Xの中では寒さの影響はない模様、ずるい。

「それにしても…皆さんは薄着だ。こんな所に長居していたら凍死してしまう…」

賢が何とか寒さを凌ぐ場所がないかと辺りを見回すが、洞窟すらない。

「シュッシュッシュッ!!皆さん、お困りのよ~シュねぇ!!?」

「マッシュモンズ…?」

Xローダーから聞こえてきたマッシュモンズの声に全員が耳を傾ける。

「我々とバリスタモンをリロードするっシュ!このマッシュモンズがいかに有り難~い味方か思い知らせてやるっシュ!!」

【…!?】

そしてマッシュモンズとバリスタモンをリロードしてマッシュモンズの指示に従い、デジクロスさせる。

「バリスタモン!!マッシュモン!!デジクロス!!」

「バリスタモンMC!!」

バリスタモンとマッシュモンがデジクロスして巨大な家となる。

「マッシュモンとバリスタモンがデジクロスして家になった!?」

「いっ、家~!!?」

「凄い…」

「で…伝説のデジクロスの力をこんな風に使っていいのぉ~!?」

「いっ…今は四の五の言ってられない!!早く中へ入ろう!!」

「さあ、早く!!風邪を引かないうちに!!」

子供達は一斉にバリスタモンMCの中に入ると、そこにはとても快適な空間が広がっていた。

「うわあ…凄え豪華」

「暖かいし、快適そう」

「デジクロス…戦闘以外にもこんな使い道があるなんてね」

戦闘以外にも使えるとはデジクロスの用途は普通の進化より幅広いようだ。

「シュ~ッシュッシュシュ、驚くのはまだ早いっシュよ~!!とくと味わうがいいっシュ!!グリンゾーンの食通達を唸らせた我が奥義…マッシュフルコース!!」

しばらくしてタイキ達の前に並べられるグリンゾーンの食通達を唸らせたと言う奥義の産物。

「いや…奥義って、普通に料理じゃんこれ!!」

「奥義っシュ!!」

「いや、料理だろ…」

「奥義っシュ~♪」

「どっちでもいいじゃん、美味そうだし!冷めないうちに食べようぜ!!」

子供達とデジモン達は出来立てのマッシュフルコースを食べ始めた。

「美味い!!」

「へえ、見た目に似合わず美味しいわ」

「美味しい!お代わりキュ~!!」

「出汁が効いてるわね~!」

ブイモンやテイルモン達がマッシュモンの茸料理を絶賛する。

「シュ~シュシュシュシュシュ!!貴様らなんぞこの奥義で美味しくヘルシーにビタミンと食物繊維を摂取し…骨は丈夫に、お肌はツルツルになって…阿鼻叫喚の快便地獄に苛まれるがいいっシュ!!」

「食欲失せるようなこと言うなよ…」

「何かやな言い方してるけど普通に美味しいよね?」

ゲンナリする大輔。アカリはリリモンに顔を向けながら尋ねる。

「マッシュモンは意地悪な言い方をしないと人に親切も出来ないのよ」

「厄介ですね種族特有の性格は」

リリモンの説明に賢は思わず呟いてしまった。

「良かったのバリスタモン?」

「あんなのとデジクロスしちまって…」

「結構快適ダ」

ジュークボックスとなったバリスタモンに尋ねるワームモンとシャウトモンだが、バリスタモンは結構快適らしい。

ドルルモンは気付かれないように静かにバリスタモンMCの中から出る。

「ん?ドルルモン?」

「俺が見て来るよ。大輔達は食べててくれ」

「あ、じゃあ頼みますタイキさん。」

タイキはマッシュモン型コートのマッシュフルコートで身を包むと、ドルルモンの元に向かう。

「それにしてもデジクロスかあ…俺達のD-3Xでも出来るかな?」

「分からないけど、Xローダーと同じ機能が付いてるんだから出来るんじゃないかな?」

「じゃあエクスブイモンとテイルモンがデジクロスしたら…」

「………エクスブイモンとテイルモン」

大輔とヒカリの脳内にエクスブイモンにテイルモンの耳や尻尾が生えたようなデジモンが浮かんだ。

「あんた達、とてつもなく失礼なこと考えてない?」

ジト目で大輔とヒカリを見遣るテイルモン。

「「いいえ」」

テイルモンの問いに即座に首を振る大輔とヒカリ。

「(うーん、やっぱり一番の理想は、一番エクスブイモンに体格が近いスティングモンだよな…)」

初めてのデジクロスならば出来るだけ体格が近い方がいいだろう。

「よし、なあ…一乗寺…」

賢にデジクロスの相手を頼もうとしたのだが、その前にタイキが慌てて入ってきた。

「バグラ軍が出たぞ!みんな!準備を!!」

タイキの言葉に全員がすぐに飛び出し、戦闘体勢に入った。

「まずいな…こっちはまだ完全に体力の回復が出来ていない。このゾーンに侵攻していたバグラ軍ならこっちより遥かにこの地を理解してるはずだ…」

賢が周囲の敵を見渡しながら、此方のコンディションはあまり良くないことに顔を顰めた。

「へっ!バグラ軍が出たっつっても慌てるこたぁねえ!どうせ倒して回る予定なんだしよ!!」

「馬鹿!群れ同士の戦いってのはな…同じ頭数でも地勢や陣形で戦力が全く変わるんだ!!先に相手を見つけて準備出来た方が圧倒的に有利なんだよ!!」

「(そうだな…サッカーと同じだ。同じ数でも作戦やチームワークで圧倒されちまう)」

ドルルモンの言葉に大輔は頷いた。するとヒカリがある方向を指差す。

「大輔君、あれ…!!」

指差した先にはムシャモンを従え、巨大な刀を携えた武人を思わせるデジモン。

「赤いXローダーの少年と…失われた力を使う子供達…!!」

「っ!…タ…タクティモン!!まずいぞ!!ありゃバグラ軍最高幹部の1人、タクティモンだ!!あ…あんな奴が直接侵攻してるゾーンに迷い込んじまってたのか…!!?」

タクティモンと呼ばれたデジモンはドルルモンの姿を見ると口を開いた。

「…ほう?貴様…ドルルモンか、我が軍を裏切り、姿を眩ました貴様が、よもやその者達と共に我が前に現れようとはな…」

「…っ…」

「ええっ!?」

「ド…ドルルモンが…バグラ軍だった…!?」

全員の視線がドルルモンに集中し、タクティモンは更に言葉を紡いでいく。

「いかにも…かつては死神の風と恐れられ、多くの街村を焼き滅ぼした我が片腕よ…」

「そ…そんなキュ…ド…ドルルモンが…」

「…くっ…」

「そこのキュートモンは滅ぼした里の生き残りか何かか…?罪滅ぼしでもしているつもりかもしれんが…守る者と滅す者の区別も曖昧な半端者は元々我が軍にいるべきではなかったのかもしれんな…」

「きっ…貴様っ…!!」

「落ち着けよドルルモン!!今はこの状況をどうにかすんのが先だろ!?」

激昂するドルルモンを大輔が慌てて制し、タイキも頷いて作戦を即座に考えて全員に伝える。

「そうだな、俺達を包囲するために奴は戦力を分散している!こっちの最大の戦力を一点集中させて、包囲の一角を崩して突破するんだ!地の利が向こうにあるってんなら、軍団対軍団の戦いから1対1の戦いに持ち込むんだ!サッカーならディフェンスラインをあげてきた相手にカウンター仕掛けてキーパーと1対1に持ち込む感じかな…」

「それしか方法はないかもしれませんね」

タイキの作戦に賢も大輔達も賛同し、ブイモン達も構える。

「(…確かにX3の圧倒的なパワーなら、あのタクティモンに対抗出来るかもしれん…!それにエクスブイモン達と連携すれば、より可能性が高まる…不意を突いて先に指揮官を抑えられれば追撃をかわすのも容易になる!やってみるしかないか…)」

「シャウトモン!!バリスタモン!!ドルルモン!!デジクロス!!」

「シャウトモンX3!!」

「ブイモン進化、エクスブイモン!!」

「ワームモン進化、スティングモン!!」

「デジメンタルアップ!!」

「テイルモンアーマー進化、微笑みの光!ネフェルティモン!!」

「一斉攻撃!!タクティモンに全火力を集中するんだ!!」

タイキがシャウトモンX3とエクスブイモン達に指示を飛ばす。

「うおおおおおお!!初っ端から飛ばすぜえええ!!スリービクトライズ!!」

「エクスレイザー!!」

「カースオブクィーン!!」

「ムーンシューター!!」

勢い良く放たれた4体の技は1つとなり、強大な威力を誇る一撃となるが…。

「ほう!何と潔い初手か…若いが澄んだ感性を持つジェネラルよ…その意気や……鋭し!!だが…壱の太刀…」

鞘に入れたままの刀を地面に勢いよく突き刺す。

同時に4体の合体攻撃が炸裂した。

「っしゃーっ!!一撃だぜっ!!」

「待てっ!!油断するなっ!!」

勝利を確信したシャウトモンだが、異変に気付いたドルルモンが叫ぶ。

すると合体光線から何かが出て来た。

「っ!!何だ…!?」

それはタクティモンの刀であった。

4体の合体光線をいとも簡単に斬り裂いている。

「まずい!!エクスブイモン!!みんな!!離れろーっ!!!」

大輔が急いで指示を出すが手遅れであった。

「その切っ先や…鈍し!!兵の心の迷いが刃を曇らせておるわ…!!鈍がっ!!!鬼神突!!」

タクティモンの強烈な突きが4体に炸裂。

シャウトモンX3のデジクロスは解除され、ネフェルティモンはテイルモンに退化してしまう。

そして攻撃が比較的浅かったのか、エクスブイモンとスティングモンは退化はしなかったが大きく吹き飛ばされた。

「エクスブイモン、大丈夫か!?」

「スティングモン!!」

大輔と賢が慌てて2体に駆け寄ると、エクスブイモンとスティングモンは何とか起き上がる。

「だ、大丈夫だ…でもあいつ…滅茶苦茶…強い…」

2体の深刻なダメージに賢は顔を顰める。

「……どうすれば…このままでは負ける…」

「諦めんな…お前は俺達のデジタルワールドを変な奴から守りたいんだろ?今までのこと償いたいんだろ?だったら最後まで諦めんな…!!それに…まだ手がある…」

「手…?」

「…デジクロスだ。エクスブイモンとスティングモンをデジクロスさせて、タクティモンを倒す」

大輔が賢にD-3Xを見せながら説明する。

成長期くらいの強さのシャウトモン達が合体してあれ程なのだ。

成熟期同士の合体ならタクティモンと渡り合えるかもしれない。

「僕が本宮君のデジモンと…?でも僕は…」

自分の犯した罪が大輔とのデジクロスを躊躇させる。

「ここでやられちまったら…俺達の世界のデジタルワールドが滅茶苦茶にされて、家族や仲間を悲しませちまう…ここでやられちまったら、やりてえ事も出来なくなるじゃねえか……」

自分がいなくなったら、悲しむ人。

賢の頭に、大切な人の顔が浮かんだ気がした。

自分を想ってくれる父と母。

「……僕には、やらなければならない事がある。ここでやられるわけにはいかない……何より…これ以上家族を……悲しませたくない……!」

「一乗寺…いや、賢!!頼む、お前の力を俺に貸してくれ!!」

「……ああ!!」

2人の視線はタイキ達に向かうタクティモンに向けられた。

「待ちやがれ!!」

「む…?」

「どこ見てやがる…お前の相手は俺達だ!!頼む、エクスブイモン!!」

「おう、任せろ大輔!!」

先程のタクティモンの一撃を受けて立つことすら困難なはずのダメージを受けているにも関わらず、エクスブイモンとスティングモンは力強く立ち上がった。

「(あれほどの深手を負っているのにも関わらず戦意が微塵も衰えていない…それどころか増している…!!)」

「エクスレイザーーー!!」

「ぬうん!!」

エクスブイモンの光線をタクティモンは刀を盾にすることで防いだ。

「(…先程の一撃よりも威力が上がっている…!!)」

「スパイキングフィニッシュ!!」

「むっ!!鬼神突!!」

防いだ直後の隙を突いたスティングモンのスパイクとそれに対応して繰り出したタクティモンの刀が激突した。

不意を突いたとは言え力の差は大きく、完全に力負けしたスティングモンのスパイクは砕け散り、スティングモンは吹き飛んだが。

「「まだまだあ!!」」

2人が即座にD-3Xを連結させると、エクスブイモンとスティングモンのデジクロスが発動する。

「エクスブイモン!!」

「スティングモン!!」

「「ダブルクロス!!」」

エクスブイモンとスティングモンがデジクロスし、スティングモンの外郭をエクスブイモンが纏ったような竜人型デジモンが降臨した。

「パイルドラモン!!」

「(何だ…奴から迸るあの力は…普通のデジクロスでは有り得ぬ程の力の高まり…あれはただのデジクロスではない…失われたはずの進化の力も影響しているのか…!!)」

あの2体の合体はただのデジクロスでは説明出来ない何かがある。

それを感じ取ったタクティモンは初めて構えを取った。

「久しく見ぬ強者よ…。貴様らの闘志に敬意を表し、今の私の全身全霊を持って相手をしよう…!!」

「タクティモンが構えた…!!」

ドルルモンがタクティモンが本気で挑むつもりなのだと言うことに気付いた。

パイルドラモンも両腕からスパイクを出し、いつでも動けるように構えた。

木に積もった雪が地面に落ちる。

「「……っ!!」」

それが合図となり、両者は同時に動いた。

「うおおおおおお!!」

「ぬうん!!」

スパイクと刀が勢い良く激突する。

今度は力負けせず、受け止めることが出来た。

「エスグリーマ!!」

両腕のスパイクによるラッシュ攻撃をタクティモンは刀を使ってそれらを捌く。

「ふっ…!久しいな、これ程の重みのある一撃は…!!迷い無き心…強き信念を持つ者のみが出せる力…!!」

「俺達は負けない!お前に勝って、皆と一緒に生きて帰るんだ!!デスペラードブラスター!!」

パイルドラモンはタクティモンを弾き飛ばすと、両腰の生体砲を構え、タクティモンに向けて強烈な砲撃を放つ。

「壱の太刀!!」

刀を地面に突き刺し、それによる衝撃波で砲撃を受け流すが、タクティモンはまだしも後方の部隊に甚大な被害が出る。

「うわああああ!?」

「あ、あいつら、何て戦いしてるの…!?」

ゼンジロウとアカリが戦いの余波で吹き飛ばされそうになるが、バリスタモンが支えることで防いだ。

しかし、タクティモンは先程のように砲撃を斬り裂いてパイルドラモンに肉薄し、再びあの一撃を繰り出そうとする。

「受けよ!!鬼神突!!」

パイルドラモンの胸にタクティモンの突きが炸裂…したかのように見えた。

「むっ!!?」

「へっ…この技を待ってたんだよ!!」

パイルドラモンは鞘の先を両手で覆うように掴み、攻撃を防いでいたのだ。

そしてパイルドラモンの両腰の生体砲がタクティモンに向けられる。

タクティモンが離脱しようと腕に力を込めるが、パイルドラモンも全力で掴んでいるために動かない。

「エネルギーフルチャージ!フルパワーのデスペラードブラスターだあああああっ!!!!」

極限までエネルギーを溜めた生体砲から放たれた砲撃がタクティモンに炸裂した。

砲撃に飲み込まれたタクティモンは爆炎に飲まれる。

「やったのか…?あのタクティモンを…?」

三元士最強のタクティモンを倒したのかとドルルモンは信じられない物を見るかのようにパイルドラモンを見遣る。

「…まだだ…畜生、全力で攻撃したのに。タクティモンには全然効いてないぜ…」

全員がパイルドラモンの視線を追うと、爆炎の中から出て来て服や鎧に多少の焦げ目がついた程度のタクティモンの姿があった。

タクティモンの纏う覇気はまるで衰えていない。

「いや…私が僅かとは言え傷を負うのは数百年来無かったことだ。進化とデジクロスのパワーが合わさったとは言え、たった2体のデジクロスで三元士に迫る力を得たことは素直に誇るといい。」

タクティモンがパイルドラモン達に背を向けた。

「…!?」

「このまま戦い続けても兵を無駄に失うのみ。ここは尻尾を巻いて退くとしよう。失われた進化の力を持つ者達よ、次に相見える日を楽しみにしているぞ…」

タクティモンが背中の大砲から信号弾を放ち、撤退の合図を出す。

タクティモンが去るまでパイルドラモンは警戒を怠らなかったが、タクティモンの姿が見えなくなったのを確認して、大輔と賢は安堵の息を吐いて、座り込んだ。

「大丈夫か!?大輔、賢!!」

「デジクロスしたとは言え…あのタクティモンと互角に渡り合うとは思わなかったぜ…」

ドルルモンの言葉に大輔は首を横に振る。

「いや…あいつはまだまだ本気じゃなかった。いや、本気は出していたんだろうけどな。今の状態で…あいつは“今”の自分に出せる本気しか出していなかった。結局、あのでかい刀を抜かせることも出来なかったしな。あの刀を抜いた時がタクティモンの本当のフルパワーを発揮出来るんだろ…今のあいつと善戦出来る程度じゃ話にもならねえよ…」

今のタクティモンと善戦出来る程度では刀を抜いて真の力を発揮したタクティモンには勝てないと、大輔はそう思った。

「それに今回は初見だから通じた部分もありますから、2回目は今回みたいにいかないでしょう」

賢も大輔と同意見であり、次の戦いでは今回みたいにはならないだろうと断言する。

【…………】

全員が沈黙する中、上空から何かの駆動音が聞こえた。

「ふむ…刀を抜いていなかったとは言えあのタクティモンと対等に渡り合えるデジモンを従えているか…工藤タイキだけと思っていたが…本宮大輔と一乗寺賢…お前達も引き入れるとしよう」

【!?】

上空を見上げると巨大な飛行型デジモンに乗った少年がいた。

「あんた…誰だ?」

「蒼沼キリハだ。本宮大輔」

天野ネネに続く2人目の人間との邂逅である。 

 

第6話:物質融合

大輔達はデジタルワールドに迷い込んだ人間の1人である蒼沼キリハと対面していた。

「で?蒼沼…キリハさん?俺達に何か用ですか?」

何時でも動けるように警戒している大輔にキリハは自分の判断は間違っていなかったようだと笑みを浮かべる。

「あのネネとか言う女に聞いた。赤いXローダーとXローダーに似た物を持っている者達がスノーゾーンでバグラ軍幹部と鉢合わせているとな…」

「ネネさんに?それにしても、デジタルワールドにはまだ俺達以外の人間が迷い込んでいるかもしれないのか…」

「あっ…あの女、一体何を考えてんのよぉ~!!」

大輔の後ろでアカリが怒りに震えているが取り敢えずキリハの話の続きを聞くことにした。

「腹の底の知れん女だが…おかげで貴様らを無駄死にさせずに済んだ。俺はお前達の戦いをずっと見てきたのだ…俺の部下になれ工藤タイキ!!本宮大輔!!一乗寺賢!!お前達には将としての才がある…!!俺の元でその才を華開かせ、共にデジタルワールドに覇を唱えようではないか!!」

「えっ…ええっ!?これって…スカウトって奴~!?」

「なる程、確かにパイルドラモンはタクティモンと渡り合ったデジモン…そしてそのパートナーである大輔達はジェネラルからすれば喉から手が出る程に欲しい存在だわ…タイキもまだまだ未熟な点が目立つけど磨けば光るダイヤの原石…」

「タイキさんの素質を考えれば大輔君達と一緒に引き入れたいと思うのも当然だわ」

テイルモンとヒカリの言葉にキリハは頷いた。

「察しがいいな、ふむ…貴様らも貴重な空戦能力を持つようだし…貴様らも引き入れるとしようか。」

「おいおい、ジェネラル達ごと俺達の軍団を取り込んで戦力アップか?そりゃちょいと虫が良すぎるぜ兄ちゃん!!」

「俺が欲しいのはそこの工藤達とパイルドラモン達だけだ。貴様らのような屑デジモンは要らん…どこなりと消えてしまえ」

キリハが欲しいのはタイキ達とバグラ軍にも対抗出来るパイルドラモン達であって、シャウトモン達は眼中にないようだ。

「んにゃっ…んだとぉコラぁ!!?」

「あんな乳臭いデジモンといても将としての勘が鈍るだけだ…貴様らの才を伸ばすための兵と戦場…全て俺が用意してやる。バグラ軍を打倒するためにそれが最良の選択なのだ!来い!!」

「…断る!!」

タイキはキリハの誘いを断る。

「!何だと…?」

「俺はただ…こいつをデジモンキングにして、大声で歌って笑ってるデジタルワールドが見てみたいだけだ!!」

「タイキさん…」

「うおおおお、タイキィ~!!」

大輔はタイキの言葉に笑みを浮かべ、シャウトモンが感動の涙を流した。

「お前の手に入れるデジタルワールドがそんな世界だとは俺には思えない!!」

「!っ…貴様は…知りたくはないのか!?自らの才能をどこまで伸ばせるのか…己の力でどれだけ大きな野望を叶えられるのかを!!」

「…興味ないね!自分の力が試したいなら余所でやってくれ!俺達には俺達の目指す勝利があるんだっ!!」

付き合いきれないと言いたげにタイキはキリハに背を向けた。

「…それは…いずれ俺とも雌雄を決する時が来るということだぞ…!?その時、戦って勝つ自信があると…?」

「俺は正直お前のことなんてどうでもいい!けどいつか戦うってんなら…その時までにお前以上の強さを手に入れるまでだ!!」

「…ほう…フフ…フフフフフフフフ!!面白い…工藤タイキとはそんな男か!益々手元に置いておきたくなったぞ貴様を…!!」

キリハは顔に手をやりながら笑う。

しかしヒカリはそんなキリハを見て嫌な予感を感じた。
そしてヒカリの予感は的中する。

「…だが…その生温い考え方だけは矯正する必要があるな…リロード…!!グレイモン!!」

キリハのXローダーから飛び出したのは太一のアグモンが進化したグレイモンとは細部が異なる存在であった。

呼び出されたグレイモンは跳躍し、パイルドラモン達に向けて尻尾を振るう。

「ブラスターテイル!!」

パイルドラモンは咄嗟に大輔達を庇う。

グレイモンの尾は地面に叩き付けられ、それによって凄まじい衝撃波を発生させた。

「あれ…グレイモンなの!?」

「う、うむ!!グレイモンはあまりの戦闘能力と凶暴さ故に時に主たるジェネラルすら食い殺すと言う…」

「僕達のいたデジタルワールドのグレイモンより相当凶暴そうだ!!」

「グレイモン!!工藤タイキのデジモン達を始末しろ!そんな甘い覚悟では…いずれ全てを失うのだということを今のうちに奴は知らねばならんのだ!!」

「ホーンストライク!!」

グレイモンが姿勢を低くし、頭部の角を突き出して此方に突撃してくる。

「パイルドラモン!!」

「エスグリーマ!!」

賢が指示を飛ばし、パイルドラモンはスパイクを出すとグレイモンの角に叩き付けた。

パイルドラモンとグレイモンの力比べはパイルドラモンが勝ち、グレイモンを吹き飛ばす。

「ほう…グレイモンが一方的に力負けしたか……パイルドラモン…ジェネラル共々、益々欲しくなったな…」

「グワッハハハハハハハハァ!!」

血を噴き出しながらも高笑いしながら起き上がるグレイモン。

「おい見たかキリハ!!奴め、俺のホーンストライクを弾き返しやがったぞ!!タクティモンと言い、強い奴ってのはいるもんだなぁ!!」

「ああ、蛇鉄封神丸を抜かせられなかったが、あのタクティモンと渡り合っただけのことはある。」

「蛇鉄封神丸…あのでかい刀の名前ですか…?」

「そうだ…あの刀、蛇鉄封神丸は一度抜かれればそのあまりの威力にゾーンその物を崩壊させてしまうと言われている…故に奴は自らそれを封印しているのだ。荒唐無稽な噂話だが…信じるか?本宮大輔」

「(…あの戦いを見た後だと、あながち噂だとも思えないんですけど…)」

「あんな化け物みたいな強さを見たらただの噂話とは思えないですよ。あの刀って、そんなにヤバい物だったのか…」

「怖じ気づいたか?本宮大輔?」

「ん~…そりゃあ怖い気持ちもありますけど、それ以上に本気のタクティモンと戦って勝ちたい気持ちの方が強いです!!負けっぱなしなのは性に合わないんで!!」

「「大輔君!?」」

大輔の予想外過ぎる発言にアカリとヒカリが思わず叫んだ。

「ふっ…やはり俺の見込んだ通りだ…此方も全力で行かせてもらうぞ!!メイルバードラモン!!グレイモン!!デジクロス!!」

「メタルグレイモン!!」

グレイモンとメイルバードラモンがデジクロスし、メタルグレイモンとなって襲い掛かる。

「メタルグレイモン…俺達の知ってるメタルグレイモンよりパワーがありそうだな!!頼んだぜパイルドラモン!!」

「おう、勝負だ!!エスグリーマ!!」

「トライデントアーム!!」

メタルグレイモンの超高温の爪とパイルドラモンのスパイクがぶつかり合う。

「やるな!!」

「そっちこそな!!」

パイルドラモンは距離を取り、生体砲を構え、メタルグレイモンも全兵装を展開した。

「デスペラードブラスター!!」

「ギガデストロイヤー!!」

2体の必殺技が激突する。

威力はパイルドラモンが上回っていたためにメタルグレイモンが多少だが、ダメージを受けている。

「ぶわっはっはっはっは!ギガデストロイヤーを押し返しやがった!面白くなってきたぞ!!」

楽しそうなメタルグレイモンに対し、パイルドラモンは顔を顰めている。

「(まずい…そろそろ限界だ…このままだとデジクロスが解除される。)」

タクティモンとの戦いで相当体力を消耗したパイルドラモンは生体砲に触れる。

それを見たメタルグレイモンも全兵装を展開したが…。

「デスペラードブラスター!!」

砲撃はメタルグレイモンではなく地面に放たれた。

「何!?」

予想外の行動にメタルグレイモンとキリハが目を見開き、煙が晴れた時にはパイルドラモンや大輔達はいなかった。

「逃げたか…」

「んなああああ!?俺はまだ全然楽しみ足りんぞおおおお!?」

「奴はタクティモンとの戦いで消耗していたからな…」

「負傷した他の戦力のことも考慮し、このまま戦い続けては敗北の可能性があると判断したか。」

メイルバードラモンがそう言うとキリハも頷いた。

「ふん…戦闘力だけでなく判断力もあるようだな。そうでなくてはな。だが…このエリアのコードクラウンを持っていない限り、そう遠くへ行けた物でもない。すぐに狩り出してやるぞ…!!」

そして離脱したパイルドラモンは近くの洞窟の前に降りるとデジクロスが解除され、幼年期に退化している。

「チビモン…限界だったんだな…」

「ミノモン、初めてのデジクロスなのに無理をさせてすまない。」

「腹減った…」

「分かった食い物だな?沢山食って回復しろ」

大輔が鞄から食べ物を出してチビモンとミノモンに差し出す。

そしてタクティモンとの戦いでダメージを負ったシャウトモン達はキュートモンの手当てを受けている。

「お疲れ様大輔君、一乗寺君も…パイルドラモン、凄かったね」

「強いけど、1回の進化で幼年期に戻っちまった。あんまり気楽に使えないな」

「超進化と同じだ。慣れれば数回くらい出来るようになる。」

超進化経験済みのテイルモンが言うと大輔と賢も頷いた。

「でも、出来れば1人で完全体の力が出せるようになれればなあ」

「無理よ、一乗寺君はともかく大輔君は紋章がないじゃない…」

「うーん、フレイドラモンとライドラモンが完全体くらいの力を出せれば…ん…?もしかしたら……試してみる価値はあるかも」

「?どうし…」

「ドルルモン!!」

ヒカリが言い切る前にアカリの声が響き渡る。

その声に全員がそちらに向くと、傷ついたドルルモンがここから去ろうとしていた。

「どこ行くのよ、その体で…今は早く傷を治さないと…」

「言ったはずだ。次のゾーンまで便乗させてもらうだけだってな…それに、今のあいつに俺の怪我を治せるかな…?」

ドルルモンの言葉に全員がハッとなり、視線がキュートモンに向けられた。

「ド…ドルルモン…!」

キュートモンの脳裏にドルルモンとの思い出が過ぎる。

「俺がバグラ軍だったってことは本当だ…多くの街村を焼き滅ぼしたってのもな」

「確かにタクティモンはそう言ったけどさ…」

大輔は確かにタクティモンがそう言っていたことを思い出す。

「けど…今はそうじゃねえ!!何か理由があるんだろ!?バグラ軍にいたことだって…」

シャウトモンの問いにドルルモンは俯きながら口を開いた。

「理由なんてねえ…あの頃の俺は力だけが正義だと信じてた。強けりゃあ何をやっても許されるんだってな…正直…どれだけの村を滅ぼしたのかさえ、碌に覚えてねえのさ…その中に…キュートモンのいた村があったかどうかすら…な。」

「キュ!!キュウ~~~~ッ!!」

キュートモンは泣きながらドルルモンから逃げ出した。

「キュートモン…おい、ドルルモン。良いのかよ!!?」

食べ物を食べて回復し、成長期に進化したブイモンがドルルモンに駆け寄る。

「良いんだよ。ブイモン、シャウトモン。お前達は良い奴らだあいつと別れる前に…お前らと出会えて良かったよ。賢、お前のことを理解して罪さえ受け入れてくれた友達を大事にしろよ」

「ドルルモン…」

「キュートモンのこと…頼む!!」

キュートモンのことをタイキ達に託し、ドルルモンは洞窟から飛び出して行く。

「えぇ…あ、おい!!待てよぉ!!」

「ドルルモン!!」

「タイキっ!?」

「あいつを行かせちゃ駄目だっ!!みんなの心を1つにしないと…俺は…俺達は勝てない!!…どあっ!?」

ドルルモンを追い掛けようとするタイキだが、何かに躓いて転んでしまった。

「大丈夫ですか?タイキさん?」

「っててて、くっそ~。な…何か雪に埋もれて…って、うわあ!?」

「う…ううう…」

「タクティモンの部下のムシャモン…にしては少し変ですね…?」

「うん、何かボロボロっぽい」

賢とワームモンが雪に埋もれながら倒れているムシャモンっぽい何かを見遣る。

「とっ、殿ーっ!!あれ!!?」

「わっ!?」

突如跳ね起きたムシャモンっぽい何かがタイキ達に気付くと大袈裟に驚く。

「なっ…何じゃお主らっ!!?さ…さては落ちのびた拙者を追って参った落ち武者狩りかぁ~!?かくなる上は徒に抵抗する気はござらん。某とて武士の端くれ!往生際は心得てござる!!さあ、煮るなり焼くなり好きにするが良い~っ!!さあさあ…あれ?」

タイキ達はムシャモンっぽい何かに攻撃するどころか逆に距離を取り、全員を代表してヒカリが言う。

「あ…あの、私達はそれどころじゃなくて…攻撃しないなら逃げてもいい…」

「そ…そんなこと言わずに煮たり焼いたりしてくれい!!拙者の一世一代の見せ場なんじゃ~!!」

「いやああああああ!?」

「何してんだてめえーっ!!」

ヒカリにしがみついたムシャモンっぽい何かにヒカリは悲鳴を上げ、大輔はムシャモンっぽい何かに回し蹴りを繰り出した。

「あ!珍しい~!!そいつムシャモンじゃなくてオチムシャモンよ!!」

【オチムシャモン…?】

リリモンの言葉に全員が疑問符を浮かべ、しばらくして全員が落ち着いた頃にオチムシャモンが語り始めた。

「如何にも…拙者はオチムシャモン!!立派な落ち武者となるべくバグラ軍に入ったが…タクティモン様が強すぎて中々良い負け戦に巡り会えなくてのう」

「お前みたいな部下がいたんならタクティモンが滅茶苦茶苦労したのが分かるな。」

「ええ」

大輔とテイルモンが蔑みの目でオチムシャモンを見遣る。

「そうこうしているうちに今度の戦でお主らの攻撃で吹っ飛ばされて、主君と離れ、1人迷子になっておったのじゃ…」

「オチムシャモンはムシャモンの亜種でね。戦に負けて落ち延びるロマンに全てを賭ける変わり種のデジモンなのよ!!」

【ええ~…?】

「捻くれ過ぎだ。そのロマンは!!」

「デ…デジモンって本当色んな奴がいるんだなぁ…」

オチムシャモンの捻くれ過ぎにも程があるロマンに全員が微妙そうな顔になる。

「そういうわけで大輔殿!拙者を蹴り飛ばしたついでに打ち首獄門にして川原ににさらしたりしてくれんかのう?」

「するか!!!」

怒鳴りながらオチムシャモンを蹴り飛ばす大輔。

「痛たたた…おや、そう言えば…お主らの隊にドルルモンがおらんかったか?奴はどうしたんじゃ?」

オチムシャモンの言葉に全員が目を見開く。

「!!…お前…!ドルルモンのこと知ってるのか!?」

「おうともよ!!共にタクティモン様の軍で同じ釜の飯を食った仲じゃ!ドルルモンは代々戦士の一族らしくてな。直向きに強さを求めて戦う猛々しい男じゃったよ…まあ、縁起が悪いとか言われてあまり仲良うはしてもらえんかったがのう…全く付き合いの悪い奴じゃったわい!!」

【いやそれはドルルモンが正しい】

オチムシャモンの発言に全員がツッコんだ。

「待てよ…じゃあ…お前、ドルルモンがバグラ軍を抜けた理由を知らないか!?」

「そうよ!強さが全てだったドルルモンが何であんなキャラに変わっちゃったの…?」

タイキとアカリは同僚だったオチムシャモンならドルルモンがバグラ軍を抜けた理由を知っているのではと思って尋ねた。

「ああ…そりゃ、あの事件がきっかけじゃろうなぁ…」

「「事件…!?」」

“事件”と言う単語にタイキと大輔が反応する。

「昔…とある戦場でな。奴は幼いデジモンばかりで構成された訓練中の部隊を指揮しとった…それが何故か敵部隊の主力の足止めを命ぜられたんじゃ。タクティモン様の指示でな…ドルルモンが隊を離れたその時…タクティモン様はその戦線を仲間ごと砲撃するように命ぜられた!!大戦果じゃったよ…何せ、こちらの弱小の部隊と引き換えに敵の主力を一網打尽に出来たんじゃからのう!じゃが…戦場に戻ったドルルモンが見た物は…累々と横たわるかつての教え子達の姿じゃったと言う…それ以来…あらゆる犠牲を厭わず、ただ勝利だけを目指していた奴の戦い方は変わっていった…。」

「…それで?」

大輔がオチムシャモンに話の続きを促す。

「そしてある日、同じように捨て駒にされようとした部隊を命令に背いて脱出させ、自らも姿を眩ませたんじゃ…その作戦は…タクティモン様の戦史に残る数少ない、失敗の記録となったよ」

「だからドルルモンは僕にあんなことを言ったのか…」

賢の気持ちを察しているような言葉は同じ罪を犯した者だからこそ言えたのだろう。

「ドルルモンは…その時、初めて仲間を失う辛さを知ったんだね…」

オチムシャモンの話を聞いて、キュートモンは涙を滲ませながら口を開いた。

「ド…ドルルモンは…僕の前で一度も心の底から笑ったことが無かったキュ…いつも冗談めかしたり…淋しそうに笑うだけで…!!(そんな…そんな傷付いた心を隠して僕のことを…!!)」

「キュートモン!!」

洞窟の入り口に向かって駆け出すキュートモンに全員が振り返る。

「僕…僕、謝りに行ってくるキュ!!ドルルモンはまだきっとすぐ近くに…キュ!!?」

洞窟の入り口付近で急停止するキュートモン。

そこには何と、メイルバードラモンがいた。

「メイル…バードラモン…!!」

「しまった…見つかっちまったか……」

大輔は思わず顔を顰め、舌打ちした。

「…俺は耳も利くぞ…こんな雪の降る音しかしないような場所で大声で話すものではないな…」

「(まずい…ブイモン達もシャウトモン達も回復しきってない…でも、このままじゃ逃げられない…よし!!)賢、キュートモンと一緒にドルルモンを連れ戻してくれ。」

「本宮君…!?」

「アカリ…お前も賢と一緒に行ってくれ!!このまま逃げ出したんじゃあいつは独りぼっちになっちまう!それじゃ駄目なんだ!!そんな戦い方してちゃ…俺達は前に進んで行けないんだ!!」

「…うん!!」

「分かった…頑張ってくれ!!」

賢とアカリは力強く頷くと、キュートモンを連れてドルルモンを追い掛ける。

「?…何だ何だ、まだ何かゴタゴタしているのか?やれやれ…こんな奴ら俺1人で簡単に片付けられるものを。お前が出るまでも無いんじゃないか?キリハ…」

「全戦力を持って完膚無きまでに叩き潰す!!その甘さへの絶望を奴の魂に刻みつけてやるのだ!!」

「ヒカリちゃんとテイルモンはメイルバードラモンを頼む。グレイモンは俺とブイモンが…シャウトモン達は他の奴らを頼む!!デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、燃え上がる勇気!フレイドラモン!!」

進化するのと同時に一気にグレイモンに肉薄し、殴り飛ばす。

「ぐおっ!?」

そして倒れたグレイモンの尾を掴み、砲丸投げの要領で振り回す。

因みに接近してきたガオスモンはフレイドラモンが振り回しているグレイモンを叩き付けることで吹き飛ばした。

そして勢いが充分に乗ってきたところでグレイモンを投げ飛ばす。

「うおりゃああああああ!!」

投げ飛ばされたグレイモンは勢い良く地面に叩き付けられ、雪を舞い上げた。

「デジメンタルアップ!!」

「轟く友情!ライドラモン!!ブルーサンダー!!」

フレイドラモンからライドラモンに切り替え、倒れているグレイモンに電撃弾を連射する。

「まだまだまだまだあ!!」

発射回数が10を軽く超えた時、ライドラモンは息を荒く吐きながら煙が上がっている場所を見つめる。

「ぬおおおお!!」

グレイモンが煙を突き破り、ライドラモンに向かって突撃してきた。それを見たライドラモンはすぐに回避する。

「ブルーサンダーを10発以上喰らったのにまだ動けるなんてな。タフにも程があるぞ」

「ぶわぁっはっはっは!!これくらいの傷で伸びていられるか!!久しぶりに大暴れ出来る相手に出会えたんだからなあ!!」

「そうかよ!!ブイモン進化、エクスブイモン!!」

ライドラモンからブイモンに退化、直後にエクスブイモンに進化し、グレイモンに突撃する。

「どりゃああああ!!」

「グルオオアアアア!!」

エクスブイモンとグレイモンの拳が激突し、周辺に凄まじい衝撃波が迸る。

「戦況に応じてパワー重視とスピード重視、バランス重視に切り替える能力か…デジクロスもせずに単体であのような戦いが出来るとは…あのデジモンの値打ちは上がるばかりだな…中々良いデジモンを従えているな本宮大輔。」

「へっ!!まだまだ俺達の力はこんな物じゃないですよ!!」

「ほう?切り替え能力だけでなくまだ有るというのか?」

「まあ、まだ成功するかまでは分かりませんけどね!!」

大輔は軽く戦況を見る。

シャウトモンX2はガオスモン達を抑え、ネフェルティモンはメイルバードラモンを抑えているが、此方の体力は万全ではないためいずれ不利になる。

ならば短期決戦を仕掛けるしかない。

「一か八かの賭けだ!!勇気のデジメンタル!!友情のデジメンタル!!マテリアルクロス!!」

「え!?」

「道具の…デジクロスだと!?」

ヒカリとキリハが1つになるデジメンタルを見つめる。

勇気と友情のデジメンタルは1つとなり…新たなデジメンタルとなる。

「き、希望のデジメンタル!?よりにもよってタケルのかよ!?くそ!!デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、地上最大の希望!サジタリモン!!」

ブイモンが希望のデジメンタルでアーマー進化したのは、どことなくフレイドラモンとライドラモンの面影を持つデジモンであった。

「まさか…デジメンタルをデジクロスさせたの!?」

「デジクロスアーマー体と言ったところかしら…」

ヒカリが目を見開き、ネフェルティモンが呟くと、キリハがXローダーを構えた。

「フレイドラモンとライドラモンがデジクロスした姿と考えて良さそうだ。単体でデジクロスをするとは面白い。此方も全力で行かせてもらうとしよう…メイルバードラモン!!グレイモン!!デジクロス!!」

「メタルグレイモン!!…さあ、お前の力を見せてみろ!!」

「へっ、サジタリモンの力を甘く見るなよ!!」

メタルグレイモンの兵装がサジタリモンに向かって展開され、勢い良くビームを発射した。

「サジタリモン、回避しながら距離を詰めるんだ!!」

サジタリモンはビームを軽やかにかわしながらメタルグレイモンに肉薄した。

「ライドラモン以上の高速移動だと!?」

「スピードだけじゃないですよ、パワーだってフレイドラモン以上だ!!何故なら…」

「喰らえ!!」

「ぐおっ!?」

「ただのアーマー進化じゃない、進化の力に加えてデジクロスのパワーも合わさってるんだ!!」

メタルグレイモンがサジタリモンの拳を顎に喰らい、仰向けに倒れた。

キリハとの戦いはまだ続く。 

 

第7話:シャウトモンX4

サジタリモンとメタルグレイモンの戦いは拮抗していた。

初めはサジタリモンのスピードで翻弄し、クロンデジゾイドの矢と格闘技で優位に立っていたが、直にメタルグレイモンはサジタリモンの動きに慣れてきたのだ。

「トライデントアーム!!」

「くっ…メテオギャロップ!!」

メタルグレイモンの爪をかわし、脳天に跳躍蹴りを叩き込むサジタリモン。

多少怯んだが、大したダメージを受けてはいない。

「グハハハハッ!!いいぞ!!もっと本気を出してこい!!」

サジタリモンにメタルグレイモンの回し蹴りが炸裂する。

咄嗟にサジタリモンは両腕を交差して防御することでダメージを軽減した。

「チッ…勇気と友情のデジメンタルのマテリアルクロスはメタルグレイモンと互角か…!!」

「(賢…アカリさん…急いでくれ…)」

大輔は賢とアカリがドルルモンを連れ戻してくれると信じて、サジタリモンに指示を飛ばす。

「くっ…邪魔するんじゃねえ!!」

「ロゼッタストーン!!」

シャウトモンX2とネフェルティモンが迫るガオスモンを薙ぎ倒す。

「サ、サジタリモンが押され始めて来たわ…このままじゃ直にやられちゃうわよ!?本当にドルルモンは来るのぉ!?」

「ピンチだドンドコ!!」

リリモンとドンドコモンがサジタリモンが押され始めたのを見て慌て始める。

「分からない…」

【ええ!?】

「俺は…あいつの気持ちを全て理解出来る程、あいつのことを知らない…けど…あいつが今までキュートモンのことを守ってきたのは、きっとまだ戦士としての誇りが心に燻ってるからだと思うんだ…!!こんな賭け事みたいことに突き合わせちゃってごめん…!けど俺は…俺はっ…!!」

次の瞬間、タイキの真横からガオスモンが2体迫る。

「キャッツアイ!!」

「ロックンローリング!!」

エネルギー切れで退化したテイルモンがガオスモンの動きを止め、スターモンが回転した状態での体当たりを喰らわせた。

「テイルモン!!スターモン!!」

「“けど俺はドルルモンが放っとけない”だろ!!」

「あんたの言いたいことくらい分かるわよ。全く、太一と言い、大輔と言い…無茶ばかりして…ゴーグル着けた男はみんなこうなわけ?」

「遠慮なんかすんな!!タイキはシャウトモンの兄貴の認めた俺達のジェネラルだぜ!?2人が創るデジタルワールドの未来を見るまで俺達はやられたりしねえよ!!」

「っ!!…うん…なろうな…キングに…!!俺達みんなで!!(アカリ…賢…キュートモン…ドルルモンを頼む)」

そして一方、賢はワームモンをスティングモンに進化させ、アカリとキュートモンと共に森の中を駆け抜けた。

「あっちにドルルモンの臭いがするキュ!!」

「よし、見付けた!!」

スティングモンの視界にドルルモンが入ると急いでドルルモンの前に着地し、アカリとキュートモンと賢を降ろした。

「キュートモン…お前ら何で…俺の居場所が分かって…」

「ぼ…僕…ドルルモンの臭いだったらすぐ分かるキュ!そ…それに…途中、所々マーキングした後があったから…どっちに行ったかすぐ分かっちゃったキュ…」

「厄介だね習性は」

キュートモンはもじもじしながら説明し、アカリは赤面しながら明後日の方角で咳払い、賢は呆れたように見つめる。

「(しまったーーーっ!!お…俺としたことが動揺のあまりなんつーミスを!!)」

動揺のあまり仕出かした己のミスにショックを受けているドルルモンにキュートモンが口を開いた。

「僕…ドルルモンに一言謝りたかったキュ…」

「…謝る…?」

「バグラ軍のはぐれ者からたまたまあなたの過去のことを聞いたの…!!」

「だから茸の里で僕にあんなことを言ったんだね…」

「ドルルモンがあんな辛い目に遭ってバグラ軍を抜けたなんて知らなかったキュ…そんな気持ちを隠して僕には笑いかけてくれてたのに…怖がったりして…きっと傷つけちゃったキュ…」

「お…おいおいおい…どこまでお人好しなんだよお前は…!言ったろ!?俺はお前の村を滅ぼした奴なのかもしれないんだぜ…!!」

「でも…ドルルモンはそのことを反省したから…!バグラ軍も抜けたし、キュートモンの親捜しも手伝ってるんでしょう!?だったら…私達と一緒にデジタルワールドのために戦って欲しいの…!!」

アカリの言葉にドルルモンは表情を暗くする。

「反省…か…賢、お前なら分かるんじゃないのか?何をしたって償えない罪があることを…」

「うん…僕はこことは違う所でデジモンカイザー…悪人となって沢山のデジモンを支配して苦しめた…殺してしまったデジモンだって数え切れない…街も村も焼き滅ぼして…パートナーのワームモンすら一度は殺してしまった…」

「賢君…」

アカリは隣の賢がそのようなことをする人物だとは信じられなかった。

何かの冗談ではないかと思ってしまう。

「再生したワームモンのデジタマを探していた時は…心の何処かで許されたいと思っていたのかもしれない……あんな酷いことをしておきながら、そんな事…出来るはずがないのに……でも、僕は……逃げない…ワームモンや僕を受け入れようとした本宮君、僕の家族のためにも…自分の罪から……絶対に逃げない……認めたくない事も……全部認めて、生きて行く…罪を償う為に…」

「そうか…似ているようで全然違うな…俺達は…」

賢の話を聞いて、自嘲の笑みを浮かべるドルルモン。

「俺はお前のようにはなれなかった。キュートモンの面倒を見てきたことだって罪滅ぼしなんてもんじゃねえ、ただの自己満足だ…お前に恨まれるのが怖くって俺は本当のことが言えなかったんだからな…俺は…日々自らの技を磨きながら、決して自らデジタルワールドの戦乱に加わろうとしない自分の一族に疑問を持っていた…何のために自分の強さはあるんだろうってな…だから一族を離れ、バグラ軍に入った。そこで自分の力をひけらかしていい気になってたのさ。敵味方構わず犠牲を撒き散らしながらな…一族の連中は分かっていたんだ!そんな風に力を使っても周りや自分を傷付けるばかりなんだってな…滑稽なもんさ!俺は誇らしげに牙や爪を振るいながら、その実、一族の誇りに泥を塗り続けていたんだ…!」

「ドルルモン…君は…」

「何も言うなスティングモン。だから…俺はもう戦わないのさ。今更、正義の味方面して平和のために戦うなんざ…俺には烏滸がましい。フ…タイキ達には悪いが…これが俺の最後の面目なんだ。」

ドルルモンの言葉に賢達は何も言えなくなるが、キュートモンは口を開く。

誰よりもドルルモンと長い時間を過ごしてきたから。

「ドルルモン…僕は…僕はドルルモンにそんな寂しそうに笑って欲しくないキュ!!もっと前を見て…未来の幸せのために笑って欲しいキュ…!!」

「キュートモン…」

「ヒャッ…ヒャヒャヒャヒャヒャ!残念だったな!!貴様達に明日はない…我らがジェネラルは赤の軍に関わる殆どのデジモンを抹殺せよとご命じだ!!」

全員が声に反応して上を見上げるとガオスモンとボムモン、そしてバロモンが此方を見下ろしていた。

「(ブルーフレアの刺客…!スティングモン達が後をつけられたか…!)賢!アカリ!キュートモン!乗れっ!!俺達だけでも脱出するぞ!!スティングモンは援護を…」

「だっ…駄目キュ!!」

「「「キュートモン!!」」」

ガオスモンに向かっていくキュートモンにアカリ達は叫ぶ。

勢いをつけてキュートモンはガオスモンに頭突きをした。

「ガオッ…!?」

そしてガオスモンにしがみついて噛み付く。

「ばっ…馬鹿!!何やってんだ離れろ!!」

「たっ…戦ってキュ!!ドルルモン!!烏滸がましくても…恥ずかしくても…戦士の誇りはきっと戦うことでしか取り戻せないキュ!!見ててキュ!僕だって…僕だって一緒に…!!」

「駄目だキュートモン、離れるんだ!!」

もう1体のガオスモンがキュートモンを尾で弾き飛ばす。

「キュートモン!!」

「お前達!!」

スティングモンがガオスモン数体を蹴り飛ばし、倒れたキュートモンにドルルモンが駆け寄る。

「馬鹿野郎!!何だってお前はっ…里の仇かもしれない俺なんかのために…!!」

体を張り、ボロボロになってまで自分のために戦おうとしたキュートモンにドルルモンの目に涙が浮かぶ。

「だって…だって…!2人で…一緒に旅してきたからキュ…」

ドルルモンの前足に落ちたのはキュートモンの涙だった。

「一緒に色んな物を見て…色んな臭いを嗅いで…一緒にお腹を空かせたり…雨でずぶ濡れになったり…ぽかぽか日向ぼっこしたり…風を切って走ったり…!…ドルルモンは僕のもう1人の家族キュ…だから心が傷付いたままでいて欲しくないキュ…!!」

「いるじゃないかドルルモン…君にも…君を理解して、君を受け入れてくれる存在が!!」

「…っ!!」

「フン…!今更お前のような腰抜けが加わっても何も変わらんわ!!かかれボムモン共!!奴らを吹き飛ばせ!!」

【ボムボーム!!】

迫り来るボムモン達。

しかし賢がD-3Xを握り締めるとディスプレイに優しさの紋章が映し出され、薄紅色の輝きが放たれた。

【!?】

全員が思わず停止し、薄紅色の輝きを見つめる。

スティングモンが薄紅色の光に包まれていき、形を変えていく。

見る角度で色が変わるプリズムのような鎧を身に纏う昆虫型に。

「スティングモン超進化、ジュエルビーモン!!」

ジュエルビーモンは槍を大上段に構え、全てのエネルギーを槍に収束させていく。

「ここから先は戦士の誇りを取り戻したドルルモンの聖戦だ。お前達のような奴らに汚されてたまるか!!」

「ま、待てーっ!!」

「スパイクバスター!!!!」

光速で振り下ろされた槍によって生じた衝撃波はボムモン達ごとバロモンを吹き飛ばした。

スティングモンがジュエルビーモンに進化するよりも少し前、とうとうサジタリモンがメタルグレイモンの攻撃をまともに喰らってしまい、とうとうマテリアルクロスによるアーマー進化も解けてしまう。

「ぐあっ!?」

「ブイモン!!限界か…」

「万全の状態でないにも関わらずよく戦ったと褒めてやろう…」

もうメタルグレイモンでなくても一掃出来ると判断したのか、メタルグレイモンはデジクロスを解除してグレイモンとメイルバードラモンに分離している。

そして次にグレイモンとメイルバードラモンが次の標的に向かおうとした時、キリハの後方の森が吹き飛んだ。

「何だっ…!!?」

吹き飛ばされていくバロモン達を見て、タイキは全てを悟って笑みを浮かべた。

「みんなー!!」

ジュエルビーモンの肩に乗った賢とドルルモンの背に乗ったアカリとキュートモンが現れ、タイキ達の前に移動した。

「ドルルモン!!…と誰?」

「ああ、彼はジュエルビーモン…スティングモンが進化して…今はミノモンです。」

「完全体に進化したのか、まあ…俺も新しいデジクロスでパワーアップしたからな!!」

ブイモンが威張る隣でシャウトモンがドルルモンに駆け寄る。

「おい遅えよ!!美味しい所だけ持ってく気かぁ!?」

「…ジェネラル、タイキ殿。戦士ドルルモン…義によって参戦仕る…!!…何てな!もうしばらく世話になるぜタイキ!!俺としたことが小難しく考え過ぎていたようだ…!守りたい物がそこにある…戦士が戦う理由なんてそれで充分なのにな…!!」

ドルルモンの言葉にタイキは笑みを浮かべた。

「ああ…よろしくドルルモン…!」

「戦場に茶番劇を持ち込むのがよくよく好きなようだが…そんな奴1人増えたところでこの戦力差を覆せるか…!?」

「さあ、どうかな…?大輔達は休んでいてくれ!!後は俺達がやる!!シャウトモン!スターモンズ!!…バリスタモン!!ドルルモン!!デジクロス!!」

「バリスタモンSR(シクステッドランチャー)!!」

「シャウトモンSH(スターホイール)!!」

バリスタモンとドルルモンのデジクロスはバリスタモンをベースにした6つの砲門を持つ姿。

シャウトモンとスターモンズのデジクロスはシャウトモンが武器化したスターモンズをシャウトモンが握っているような姿である。

「さぁっ…行っくぜええええええ!!!」

武器化したスターモンズをプロペラのように高速回転させ、シャウトモンX2どころかサジタリモンに匹敵する速度でグレイモンに突撃した。

「何だっ…!?こいつスピードが…!!くそっ、チョコマカとっ!!」

シャウトモンSHはスピードを活かしてグレイモンを撹乱する。

グレイモンは尾を振り回したりして薙ぎ払おうとするが全て空振りで終わる。

「あんな簡単なデジクロスでサジタリモンに匹敵する高機動形態だと!?」

「フン!俺が捕まえてやるっ!!」

「させるかっ!!」

「シクステッド・ストーム!!」

バリスタモンSRがグレイモンに加勢しようとするメイルバードラモンに一斉掃射をし、近寄らせない。

「ぬおおおおおおおお!!?」

「バリスタモンSR…凄い火力だわ…!!」

ヒカリに抱き締められたテイルモンはバリスタモンSRの火力に舌を巻く。

「(かなりの高威力…!そ…それに何という連射だ!!俺の装甲では連続で喰らえば一溜まりもないぞ…!!くっ…これではグレイモンに近付けん!!)」

キリハはグレイモン達の戦いを見ながら状況の分析をしていた。

「(スピードでグレイモンを翻弄し、火力と射程でメイルバードラモンを寄せ付けない…。一見戦力差を埋め、互角の勝負に持ち込んだように見えるが…あの武器にグレイモンに致命的なダメージを与える威力はない!!いつかは逃げ切れずに攻撃を喰らう…)」

確かにメタルグレイモン時には劣るが、時間が経てばグレイモンはサジタリモンの時同様、シャウトモンSHの動きを見切って反撃に出る。

サジタリモンとメタルグレイモンの戦いを見ていたタイキがそれに気付かないはずがない。

「(ではあれも時間稼ぎに過ぎないとすれば…?)まさか!奴の本当の狙いは…」

「フフフ…!それは…お前だーっ!!」

茂みの中から飛び出してきたのは今まで、何も目立つ事をしていなかったゼンジロウとマッシュモンズである。

「(やはり俺自身か!!)」

ゼンジロウとマッシュモンズのその存在感の無さを活かした見事な奇襲である。

「くっ…ガオスモン!!」

「ガオオオス!!」

「「ママーッシュ!!」」

「とおう!」

残りのガオスモンをリロードしてゼンジロウとマッシュモンズを迎撃しようとするが、ゼンジロウは普段から想像出来ないような身軽な動きで飛び越え、マッシュモンズがガオスモンを抑えた。

「はっはははは、俺式デジクロス!!このゼンジロウCS(チビックソード)はこんな形ながら我が愛刀、江東丸の長さや握り心地を忠実に再現しているのだ!!」

「光刀丸…!?」

ピックモンズをデジクロスさせた剣を構えながらキリハに突撃するゼンジロウ。

「それが何故だか分かるか蒼沼キリハ!!」

「知るか!木の枝でも振っていろ!!」

「それはな!俺を江東区一の中学生剣士たらしめた我が奥義…繊細かつ華麗な小手を再現するためだーっ!!」

ゼンジロウのCSによる小手がキリハに炸裂し、Xローダーを叩き落とす。

「ぐっ…Xローダーがっ…」

「今だタイキーっ!!」

「ああ!!流石、江東区No.1!!シャウトモン!!バリスタモン!!ドルルモン!!デジクロス!!」

シャウトモンとスターモンズ、バリスタモンとドルルモンのデジクロスを解除し、3体を再びデジクロスさせる。

「シャウトモンX3!!」

「ブラザー!!次は俺達も行くぜえっ!!」

「よおし!!スターモン!ピックモンズ!!デジクロス!!」

スターモンとピックモンズがデジクロスすることで大剣・スターソードとなり、シャウトモンX3がそれを手にすることで更なる力を得る。

「シャウトモンX4!!!」

スターソードを握り締め、グレイモンとメイルバードラモンに突撃する。

「あっ…新しいデジクロスだとっ!?」

「怯むなグレイモン!!あれこそ付け焼き刃だっ!俺達の敵ではないっ!!」

「応!!」

メイルバードラモンとグレイモンがシャウトモンX4に攻撃するが勢いはまるで衰えない。

「とっ…止まらない…!!」

「(こちらのデジクロスを封じ、単騎戦力として優位に立つ戦術…確かに見事に嵌められたが…)だっ…だが、何なんだこのパワーはっ…!!?」

「このXローダーの震えを感じても分からないのかキリハ…!!力や技を組み合わせるだけじゃない…!!想いと想いを繋いで高め合う…!!デジクロスは…絆の力だ!!」

「バーニングスタークラッシャー!!」

シャウトモンX4がスターソードによる全力の一撃をグレイモンとメイルバードラモンに叩き込み、吹き飛ばした。

それを見た大輔とヒカリ達は自分達の勝利を確信したのである。 

 

第8話:戦いの終わり

シャウトモンX4の全パワーを込めた一撃はグレイモンとメイルバードラモンを吹き飛ばした。

しかし次の瞬間にエネルギーを使い果たしたからか、デジクロスが解除されてしまう。

「どわわっ!?」

デジクロスが解除されたシャウトモン達はそのまま重力に従って地面に落下した。

「グレイモン!!」

メイルバードラモンはともかく、グレイモンはシャウトモンX4の一撃をまともに喰らったためにキリハはグレイモンに駆け寄る。

そしてグレイモンの状態を見てキリハは気付いた。

「(パイルドラモンの攻撃で受けた傷よりダメージが大きい…!?)」

「ウグッ…!オオオオ…」

シャウトモンX4の攻撃によって出来た左胸の傷を押さえながら口から血を吐くグレイモン。

「(たった一撃だが…奴の威力を上回ったと言うのか…!!)」

「グウッオオオオオオ…お…己えええぇっ!!?キリハ!!奴だ!!奴をリロードしてデジクロスさせろっ!!あんな奴ら一瞬で灰にしてやるっ…!!」

「…駄目だ。ここは撤退する。」

撤退…その言葉を聞いたグレイモンが思わずキリハを見遣る。

「タクティモンも…いや、他にも多くの勢力がこの戦いを監視しているはずだ。まだ手の内を全て晒すわけにはいかん…!!」

事実、タクティモンのみならず天野ネネもこの戦いを監視していた。

このまま戦い続けて全ての手の内を晒してしまえば対策を立てられてしまうとキリハは危惧したのだ。

「貴様っ!!!」

グレイモンの巨大な手がキリハの首を掴んだ。

「この俺に敗北の屈辱を飲めと言うのかっ…!!」

首を掴まれ、命の危機に曝されているのにも関わらず、キリハは冷静である。

「よしんば奴らを倒せたとしても…今の状態で戦えば此方も更に深刻なダメージを受ける。そこを他の勢力に狙われれば一溜まりもない…俺の首を折って溜飲を下げるか!?折るがいい!!だが、貴様らがこんなつまらん戦場で死ぬことは許さん!!反吐を吐いてでも生き残り、必ずパイルドラモンやタクティモン以上の敵と相討ちになって…死ね!!!」

「ぬ…」

キリハの言葉に気圧されるグレイモンを見てメイルバードラモンが愉快そうに笑みを浮かべた。

「フ…キリハの方が役者が上だぞグレイモン。こんな男だから俺達もジェネラルに選んだんだろう?」

「ぐぬぬぬぬぬ…こんっっっ畜生おおおぐやじいいいいいい!!おいお前ら、絶対また戦おうな!!て言うか俺が勝つまでやろうな!!?」

「「うっわ、マジ迷惑!!?」」

悔し涙を流しながら駄々っ子のようにドタバタするグレイモンに呆れるアカリとサンフラウモン。

どこまでも諦めの悪い奴である。

「お前そろそろXローダーに戻れ。工藤!!」

キリハはタイキにある物を投げ渡す。

それはスノーゾーンのコードクラウンであった。

「あ、これ…」

「スノーゾーンのコードクラウンじゃないですか、キリハさん手に入れてたんですね。じゃあ、どっちみちコードクラウンを手に入れるにはキリハさん達と戦わなきゃいけなかったんだ…」

大輔とヒカリがタイキの掌のコードクラウンを見つめる。

「コードクラウンは勝者にこそ与えられるゾーンの支配者の証だ…故に今はお前達に預けておく。いずれお前達が俺の部下になるまではな!また会おう!!」

メイルバードラモンに乗り、この場を去って行くキリハ。

「勝手なこと言うなーっ!!」

「もう二度と来なくていいっシュよ~!!」

「どっかでバグラ軍にやられちゃえー!!」

「まあまあ、キリハさん達との戦いでドルルモンは完全に仲間になったし、俺達だってマテリアルクロスとかジュエルビーモン…X4、色々大きな物を手に入れられたじゃないですかー。おーい、キリハさーん!次は俺負けませんよー!!絶対にまた勝負しましょうね!!!」

【余計なことを言うなー!!】

キリハに再戦を望む大輔に全員のツッコミが炸裂した。

「…だそうだぞキリハ?」

「フ…本宮大輔…不思議な奴だ…それに…(不思議と言えば奴もそうだ。自らの才や可能性には興味が無いなどと言いながら、他人の馬鹿げた夢のためには命すら賭けてその才能を使う。だが…何だろうな、奴らと競い合うことが俺自身の可能性を開くようにも感じる…)」

キリハは笑みを浮かべながらこの場を後にした。

「別にキリハさんは悪い人じゃないと思うんだけどなー」

「それは大輔君だけじゃないかなあ…」

大輔の言葉にヒカリは顔を引き攣らせながら言う。

一方デジタルワールドのどこかで戦いを見ていた存在であるタクティモンは全てを見届けるとこの場を後にしようとする。

隣のリリスモンがタクティモンを見遣る。

「あら…コードクラウンは?スノーゾーンからは手を引くの?」

「奴らを倒すのは何時でも出来る…デジクロスと失われた進化の力…些か興味が沸いた…今少し泳がせて様子を見るのも悪くない…」

「(あらあら…パーフェクト優等生のタクティモンさんが今日は妙に燃えていらっしゃること!久しぶりに大暴れしたからかしら…でも分かるわぁ…あんなに可愛い男の子達なんですもの…タクティモンに内緒で私が食べちゃおうかしら…!)」

そして此処とは違う場所で一部始終を見ていたネネ達は…。

「で…我らが姫君はこの者達をどう見るかね?」

「みんな充分な素養の持ち主だと思うわ。けど、タイキ君とキリハ君の色は純粋過ぎて…きっとあの2人は混じり合わないわ…」

「それは残念だ…!あれだけの素材だと言うのにね…ではネネ…君の花婿には誰がより相応しいだろうか?」

「もおっ!その言い方よしてよね!」

「………」

そしてスノーゾーンではタイキが考え事をしていた。

「(天野ネネに…蒼沼キリハ…か)」

「どしたの?」

アカリがタイキの様子に気付いて声をかける。

「いやさ…俺達やあいつらがこのデジタルワールドに飛ばされて来たのって、何か意味があるのかなって…」

「それは多分タイキさん達が選ばれたから…」

ヒカリが言い切るよりも先に向こうから声がかかる。

「おお~い!待ってくれタイキ殿~!!わしも仲間に入れてくれ~!!」

「オチムシャモン!?」

「仲間ってお前…バグラ軍はどうすんだよ!!」

「私達について行ったら確実に裏切り者認定されるわよあんた?」

「いや、よく考えたらタクティモン様の軍におってもそうそう負け戦なんて巡り会えんじゃろ?その点、お主らとおれば負け戦には不自由しなさそうじゃ!いやあ、良い主君に巡り会い申した!」

「なあ、タイキ。あいつ一発殴っていいか?」

「私達が負けること前提なのがムカつくわね」

「あれなら殴っても罰は当たらないだろ」

シャウトモン、テイルモン、ブイモンがこめかみに青筋を浮かべながら言う。

「何を言ってるんだ!僕らは心正しき正義の味方じゃないか!…だが許す」

直後、オチムシャモンはシャウトモン達にボコボコにされた。

「つ…つれないこと言わずに拙者と落ち延びましょうぞ~!殿って呼んでいい?」

「あ…何かもう」

「好きにして下さい…」

「まあ、色んなゾーンを回ってみるしかないさ!この世界はまだまだ俺達の知らないことばかりなんだからな!!」

「ああ…そうだな!行こう、次のゾーンへ!!」

「次はもっと暖かいゾーンがいいな~」

子供達はゲートに飛び込み、新たなゾーンへと向かう。

一方、タクティモンはある人物の元に向かっていた。

「…君の魂に熾る…黒い炎の揺らぎが見えるようだ。新たなジェネラル達…それ程のものなのかねタクティモン」

「未だ種火に御座る。なれど一度薪の中に放られれば、天壌を焦がす轟火ともなりましょう。陛下に賜ったこの刀の封印…解いて頂く日が来るやもしれませぬ」

タクティモンは跪き、異形の姿のデジモンにそう伝える。

「君にそこまで言わせるとは…我が宿願…成就する日が近いかもしれぬな…」

バグラ軍皇帝・バグラモンが異形の右腕を見つめながら呟くのであった。 

 

第9話:スイーツ地獄

キリハ達との戦いからしばらく経ち、タイキ達の冒険は順調に進んでいた。

冒険初期のテンポの悪さを帳消しにするかのようにゾーンを攻略し、コードクラウンは5つ目となる。

「大分戦力も充実してきましたから冒険のテンポも良くなって来ましたね」

他のゾーンに行き、そのゾーンを侵攻しているバグラ軍を撃破してコードクラウンや仲間を増やしていったタイキ達。

「それにコードクラウンも5つ目だし…」

「ブイモン達も幼年期に退化しなくて済んできたし」

「さっきのリバーゾーンも結構楽勝だったよねー!」

賢、ゼンジロウ、大輔、アカリの順番で言う。

「何せX4のパワーが凄いからなあ!仲間のデジモンも少しずつ増えてきたし…これなら結構簡単にバグラ軍もやっつけられるんじゃないか?」

最近シャウトモン達の地力も上がっているのかX4の力も増しているように思えるゼンジロウはそう言うが、それをタイキが否定する。

「いや…Xローダーに触れてると何となく分かるんだけどさ…X4はマテリアルクロスのサジタリモン、超進化のジュエルビーモン…そしてあのメタルグレイモンとほぼ同レベルくらいだと思う。だからこの間は確実に勝つために奴らを分断させるしかなかったんだ!多分まだタクティモンやパイルドラモンには敵わないだろうし…」

「まあ、キリハさんも切り札があるみたいでしたし、俺達も今より強くならないと!!」

大輔もパイルドラモンにデジクロスして倒したのがそこらの完全体なら調子に乗っていたかもしれないが、初デジクロスの相手があの化け物じみたタクティモンだったのが幸いしたようだ。

上には上が存在することを知れたのは大輔にとって良かったかもしれない。

「(X4とサジタリモンは完全体並みに強くてワームモンは完全体に進化出来るようになって…今じゃ私達が一番弱いんだよね…)」

勿論、ネフェルティモンは主力メンバーの1体だが、完全体相当の力を手にしたシャウトモン達と比べればかなり劣り、今では直接戦闘ではなくサポートがメインとなっている。

「あ、そうだ……なあ、ヒカリちゃん。後で少し試してみたいことがあるんだ。」

ヒカリの様子に気付いた大輔はヒカリにある提案をする。

「え?」

「サジタリモンとネフェルティモンをデジクロスさせたいんだよ。サジタリモンは確かに強いけど空が飛べないじゃんか。ネフェルティモンとデジクロスすればその弱点を補えそうなんだよ」

「デジクロス…か…うん、やろうよ大輔君」

確かにサジタリモンは強いが、飛行能力がないために、空中の敵には若干不利である。

「まだまだ強くなれるよ俺達もさ。」

「そうね」

「私達はまだまだ強くなれるわ」

大輔の提案に頷くヒカリ。

テイルモンも悪くないと思ったのか頷いてくれた。

「あっ…デジタル空間を抜けるよっ!!」

「あれはっ…」

「うっひょおおおお!ケーキ!ケーキの街だあああああ!!」

デジモン達の中でも屈指の甘党であるブイモンが歓喜の悲鳴を上げた。

【…って…また空からかーいっ!!】

「うっひょおおお♪」

「きゃあああああ!?」

大輔達はクッキーの地面に落下。

ブイモンは着地と共に近くのチョコの木にかぶりついて一気に平らげ、ヒカリは生クリームの中に沈んだ。

「っててて…!でも何か柔らかい地面で助かったな…」

「…あれ?これもしかしてクッキーか?」

「と言うかこれ全部お菓子だよ大輔」

「あ、本当だ…お菓子の家とかそんな次元じゃねえな」

お菓子の街並みを見渡しながら大輔がぼやいた。

「ってか、ヒカリ君。埋まっちゃったぞおっ!?」

「ヒカリちゃん大丈夫!?」

「ぷはっ!生クリームまみれになっちゃった…でも、何か凄く良い香り…」

指についた生クリームを舐めるとヒカリはあまりの美味しさに打ち震えた。

「お、お…美味しい~!!」

「美味~い♪」

「ほ、本当に美味し~い!!」

あまりの美味しさにヒカリとブイモン、アカリの歓喜の声が上がる。

「うわっ、本当だ!これ最高級の生クリームだぞ!?うんめぇ~!!」

「こっちのケーキもふわふわして滅茶苦茶美味いですよ!!」

「街の一部食べちゃって良いのかな…」

大輔もケーキを一口食べるが、スポンジがふわふわで今まで食べたケーキで最高に美味いと表情を輝かせた。

「おやおやおや、大丈夫ですか旅の方々!?…!ややっ…!?そのご容姿…尖った黒髪にゴーグル…5人の人間の仲間…!ま…まさかあなた様方は…!!」

ケーキ型のデジモン達にこのゾーンの主の元に案内されるタイキ達。

「よくぞおいで下さいました。ジェネラル・タイキ様とその御一行!!ここはスイーツゾーン!!デジタルワールド中のパティシエの集まるお菓子の聖地ですわ!私はここのコードクラウンを預かる女主人、ウェディンモン!!この子達は我が従者、ショートモン達ですわ!」

ケーキのドレスのような物を纏っているデジモン、ウェディンモンが自己紹介する。

「へへっ!俺達も中々、有名になってきたじゃねえか!」

「はい!ここ最近多くのゾーンをバグラ軍から解放してきた皆様の活躍は…戦乱に苦しむこのデジタルワールドで小さな伝説となりつつあるのです!」

「そう言えば、とても平和そうな街だったけど…ここはまだバグラ軍の侵攻を受けていないのか?」

タイキがこのスイーツゾーンがバグラ軍の攻撃を受けることなく未だに平和なことについて尋ねる。

「フフ…お砂糖は最高のエネルギー源でしてよ?ここのスイーツで滋養をつけた我が精鋭達がバグラ軍の侵入を防いでいるのです!!」

「ふうん、あんた達は見かけによらず強いのね」

「まあ、テイルモンも見た目は成長期だけど成熟期だから強いしな」

「でも、それだとコードクラウンは貰えないな…」

賢の呟きに大輔も頷く。

「バグラ軍を倒した時のお礼って形でコードクラウンを貰ってたしな。流石にバグラ軍に侵攻されてないゾーンのまでは…」

「いえ!このデジタルワールド全体を救うために戦っておられるタイキ様達に…このコードクラウンをお預けすること。私は異存ありませんわ!」

「えっ?じゃあ…」

「貰っちゃっていいのコードクラウン!?」

「ただし…このコードクラウンを託すためには…スイーツゾーンに伝わるある試練を乗り越えて頂かなくてはならないのです…!!」

「試練?」

「いかにも!!」

ウェディンモンの後ろのカーテンが開き、とてつもない大きさのウェディング・ケーキが姿を現した。

「このゾーン最強のスイーツ…!スーパーウルトラミラクルダイナミックスペシャルワンダーギャラクティカパワフルギガンティックウェディング・ケーキ…一気食い!!」

「「「ええええええ!!?」」」

とてつもない大きさのウェディング・ケーキに全員の目が見開かれた。

「てっぺんが見えねえぞこれ!!これタイキと大輔と賢だけで食えっつうのかよ!?」

「一緒に人間界からいらしたお仲間には力添えを認めましょう…ですがデジモンは手出し無用!!これはあくまでジェネラルの資質を試すものなのです…!!」

「オ…美味シソウ…俺モ食ベテミタイ…」

「そ、そんな…うぁあああんまりだあああああ…」

「俺は見てるだけで胸焼けがしてきたぜ…」

「正直見るだけでお腹一杯だわ…」

バリスタモンとブイモンは涎を垂らし、ドルルモンとテイルモンは見てるだけで辛そうである。

「…やるしかねえか…タイキさん、賢、ゼンジロウさん、アカリさん…!!やりますよ!!」

【おう!!】

大輔達が超巨大ウェディング・ケーキを食いきると言う大試練に挑む。

「あれ?そう言えばヒカリはどこに行ったんだ?」

「ああ、ヒカリ様でしたら、生クリームまみれでしたので先程…」

ブイモンがヒカリがいないことに気付き、近くのショートモンに尋ねる。

ヒカリのいる場所は言うまでもなく。

「うーん…カモミールの良い香り…」

「キュ~♪」

生クリームまみれとなったヒカリは身体についた生クリームを落とすために風呂に入っていた。

何故かキュートモンも一緒である。

「スイーツは美味しくてお風呂は良い香りがして、平和で…」

「もうこのゾーンから出たくないキュ~」

「本当、最高だね!!」

「本当にね~」

ヒカリの言葉にキュートモンとは違う人物の声が応じた。

「!?誰……っ!!?天野…ネネさんっ!!?」

「あら、ヒカリさん。お久しぶり!こんな所で会うなんて奇遇ね~。あら?ヒカリさんどうしたの?エンジェウーモンがレディーデビモンと対面したような顔して」

隣にはヒカリと同じようにティーカップ型の風呂に入っていたネネの姿があった。

「き、奇遇なんて嘘吐かないで下さい!あなたが私達のことを監視してるのは分かってるんですよ!今度は何を悪巧みしてるんですか!!?」

「あら?半分は本当なのよヒカリさん。近所に行きつけのクレープ屋さんがあるの!で…残り半分の悪巧みの方はね…?タイキ君と…特に大輔君を誘惑しに来・た・の♪」

色気のある表情を浮かべてヒカリに迫るネネにヒカリの脳裏に大輔に迫るネネの姿が浮かんだ。

「え…ええええ!?だ、だ…駄目ええええ!!」

顔を真っ赤にしてネネを止めようとするヒカリにネネは思わず吹き出した。

「冗談よ冗談♪(あー、この娘ったら可愛いし、からかうの面白いわぁ…)」

「な…っ…か、からかわないで下さい!!」

「ふふふ…ヒカリさん可愛い…でも大丈夫よ。あなたの大輔君を取ったりしないから…私の目的のために…少し貸して欲しいだけなの…彼が一番波長が合うから…」

湯船から身を乗り出してヒカリの顎に手をやるネネ。

「えっ…?波長…?」

「大丈夫…もうすぐあなた達はこの恐ろしい争乱から解放されるわ…!人間界に帰るチャンスだって近く回って来るかもしれない…だから…安心して、私に全てを任せて欲しいの…」

「え…?ネネさん…それって…どういう…こ…と…?」

突如ヒカリの意識が朦朧とし、そのままキュートモンと共に眠ってしまう。

「見事な幻術だわペックモン。」

潜んでいたペックモンがヒカリとキュートモンに幻術をかけたのだ。

「ネネ様…急ぎませんと赤の少年達も…」

「ええ…(ごめんなさいね。でも本当にもう誰にもあなた達を傷つけさせたりしない…)」

ペックモンはネネにバスタオルをかけてやり、ネネはヒカリに歩み寄る。

「この罠だらけのデジタルワールドは優しいあなた達には厳しすぎる…もうすぐなの…もうすぐ私が全てに決着をつけるから…!」

一方で、超巨大ウェディング・ケーキ…スーパーウルトラミラクルダイナミックスペシャルワンダーギャラクティカパワフルギガンティックウェディング・ケーキを食していた大輔達だが…莫大な量にタイキとゼンジロウ、賢は既にリタイアし、大輔とアカリが踏ん張っていたのだが…。

「くっ…もう、限…界…」

「かなり食ったはずなのによお…」

「…まだまだ全然残ってるな…と言うか、あの大きさからすればひと摘まみ分しか食えてないんじゃないか?良いなあ大輔達」

ブイモンがウェディング・ケーキの大きさを見て思わず羨ましそうに呟く。

「はっきり言って、ここまでクリアさせる気が皆無な試練も珍しいわよね…」

テイルモンは辟易したようにウェディング・ケーキを見つめながら呟く。

「俺…コーヒーか水が欲しい…」

苦しそうにケーキを頬張りながら呟く大輔。

「タイキはリタイアしちゃうし…もう少し胃袋を鍛えさせれば良かった…」

「で…でも、腹一杯になっても、胸焼けしても…これ滅茶苦茶美味いですよ。ウェディンモンもショートモン達がお菓子作りが本当に好きなんだって分かります…本当に凄えよみんな…」

「っ…!」

その言葉にウェディンモンとショートモン達は少し過剰に反応した。

「どうしたウェディンモン?ショートモン?」

ウェディンモンとショートモン達の反応が気になったブイモンが尋ねる。

「い、いいえ…何でもありませんわ…」

「それにしてもヒカリはまだ風呂に入ってんのかな?」

「確かにヒカリは長風呂派だけどここまで長いのは珍しいわね…」

ブイモンは未だに風呂から戻ってこないヒカリに首を傾げるブイモン。

ヒカリのパートナーであるテイルモンもヒカリが長風呂派なのは知っているが、ここまで長い時間入っているのは珍しいとテイルモンも首を傾げた。

「大丈夫だ…て言うか、ヒカリちゃんが来ても状況は好転しないと思う…俺はまだ…ぐう…」

とうとう力尽きた大輔とアカリは床に倒れ伏した。

「だ、大輔!アカリ!!後ついでにタイキ達!!お前達の死は無駄にはしない!!お前達の意志は俺達が継いでやるからなーーー!!」

「いやいや、あんた大輔達を勝手に殺すんじゃないわよ」

号泣するブイモンにテイルモンが横で呆れながらツッコミを入れた。

「しかし…流石にこいつはリタイアだな。ヒカリが戻るのを待って後日に再チャレンジさせてもらえりゃいいんだが…」

「いえ…結構ですわ!私達が丹精込めて作ったこの一品…ここまで味わって頂いて感無量ですわ。その情熱に免じて…苦しませずにあの世へ送って差し上げましょう…!!」

ウェディンモンの雰囲気が変わり、ショートモン達もフォークの槍を構えた。

「…な…?何ぃっ!!?」

「…そりゃどういうこった、女主人さんよ」

「うふふふ…それはこういうことですわ勇者様方」

背後から蝙蝠の群が飛び出し、一カ所に集まるそこから現れたのは…三元士の1体にして七大魔王の一角…リリスモン。

「あらあら…折角のジェネラル達とのご対面なのに…随分無様な格好でおいでだねぇ…」

「なっ…リ…リリスモンだとっ!?奴にまで目を付けられてたのか俺達は…!?」

「ムカつく奴ね…何だか知らないけどぶっ飛ばしてやりたくなるわ…」

「落ち着けよテイルモン…でもリリスモンって確か、タクティモンと同じ三元士だよな!?」

「ああ、こりゃ有名になるのも良し悪しだぜ…」

ブイモンがテイルモンを宥めながらリリスモンを見て言うとドルルモンが肯定した。

「なるほど…最初からスイーツゾーンはバグラ軍に占領されていたんだ!!」

「くっ…私としたことがこんな単純な罠にかかるなんて…罠に対する勘が鈍くなってしまったようね…」

ワームモンとテイルモンがウェディンモン達を睨みながら言うとリリスモンが笑みを深めた。

「うふふ…そうよ…このウェディンモンは賢い娘でね…私達がこのゾーンに攻め行って早々に降伏してきて、私に極上のスイーツを貢ぎ続けることを条件にこっそりこのゾーンを安堵してあげてるってわけ!」

ショートモンからムースが盛られた器を受け取ると美味しそうに食べ始める。

「お前上司に怒られないかそれ?」

「んん~っ!だあぁぁって、この娘の作るムース、本当に最高なんだもん。それにバレなきゃいいのよ♪」

「それでいいのか三元士…」

聞いたブイモンは思わずがっくりとなった。

「…………それにしてもあなた、何処かで会ったかしら?」

「は?何の話だよ?」

リリスモンはブイモンに誰かの面影を見て尋ねるが、ブイモンはリリスモンとは初対面なので疑問符を浮かべている。

「…いえ、気のせい…ね。それにしても回りくどいことをするわねぇ?あいつらに食べさせるお菓子に私の魔法毒を少し混ぜてやるだけで殺すのも生きたまま操り人形にするのも思いのままなのに…」

「け…ケーキに毒っ…!?い…いえ…リリスモン様にそのようなお手間を取らせるなど滅相もありませんわ…」

毒と言う単語にウェディンモンは動揺したのを意識が朧気ながらもしっかりと大輔は見た。

「(そっか…ウェディンモン達は…)」

「これこの通り、ジェネラル達は無力化しましたわ!後はデジクロス出来ない残りのデジモンを始末するのみ!!」

「だとぉ…」

「ふざけるな!!汚い真似しやがって!!」

「その腐った性根を叩き直してやるわ」

「戦いもせずゾーンを明け渡したお前如きに負ける俺達だと思うなよ…!!」

「僕達だって大分強くなったんだ。お前達なんかに負けない!!」

ウェディンモン達に対して怒り心頭のシャウトモン達が臨戦体勢に入る。

「ふん…!リリスモン様の恐ろしさも知らずに大口叩くんじゃなくてよ!!さあ、行きますわよお前達っ!!レッツ!!スイィーーツッ!!」

【イエス!!マダム!!】

ウェディンモンがキャンドモンとショートモン達を吸収し、巨大なデジモンへと変貌を遂げた。

「オォーーッホッホッホッホッホ!!さあ!スイーツゾーンの女主人が甘いばかりでないことを教えてあげましてよ!!」

リバース・ウェディンモンへとパワーアップし、ブイモン達にかなりの勢いで迫るのであった。 

 

第10話:リリスモン

ウェディンモンはリバース・ウェディンモンとなり、ブイモン達に迫る。

「けっ!バグラ軍お得意の吸収合体か!!」

「そんなので私達を止められると思ったら大間違いよ!!」

迫り来るリバース・ウェディンモンにブイモンとテイルモンが拳を握り締めた。

「デジクロス程ノパワーアップジャナイハズ、勝チ目ハアル!!」

「ったりめーだ!!行くぜぇっ!!ロックダマシー!!」

「シルクスレッド!!」

「ドリルバスター!!」

「ヘヴィスピーカー!!」

4体の攻撃が一斉に放たれ、リバース・ウェディンモンに炸裂した。

「ヤッタカ…!?」

「所詮、スポンジと生クリームの体だ…倒せないまでもかなりダメージを与えたはず!!」

事実、攻撃を受けたリバース・ウェディンモンの顔半分が吹き飛ばされている。

「オホホホホ…流石、噂の勇者様方…デジクロス出来ずとも中々良い技をお持ちのようね?ですが…この私を倒すには些か力不足でしてよ…!!」

少しの時間はかかったが、リバース・ウェディンモンの吹き飛ばされた身体の部分が修復されていく。

「自己再生能力か!?」

「いや、あいつはケーキの城を吸収して身体を修復しているのよ!!見なさい!!」

ブイモンがリバース・ウェディンモンには自己再生能力があるのかと思ったが、テイルモンが仕組みに気付いてリバース・ウェディンモンの真下を指差す。

「この城どころか…このスイーツゾーン全てが私の体と言っても過言ではありませんわ!ふふふ…デジクロスばかりが強くなる術ではなくてよ?さぁ…この無限にも等しい再生能力を…上回ることが出来てっ!!?クレイジー・クラッカー!!」

右腕のクラッカーが全て炸裂し、バリスタモンがシャウトモン達の盾となり、素早いブイモン達はすぐさま回避した。

「調子に乗るなよ!!ブイモンパンチ!!」

「ネコパンチ!!」

勢いをつけて突進したブイモン達はリバース・ウェディンモンの身体をぶち抜き、ドルルモンがすかさず攻撃したが再生されてしまう。

「(チッ…!一撃の威力が足りねえ!奴の巨体を吹き飛ばせる攻撃力が必要だ…)」

「駄目だ、効いてない!!サジタリモンにアーマー進化出来ればあんな奴簡単に倒せるのに…」

「私もホーリーリングを失ってなければ…」

「フォーク・ダンス!!」

「ぐあっ!!?」

リバース・ウェディンモンの左腕のフォークの槍を突き出し、シャウトモンは何とか咄嗟に防御するが吹き飛ばされてしまう。

「(X4にさえなれりゃワケもない相手だが…くそっ!まんまと罠に嵌まったぜ!)」

「こんにゃろ!!ブイモンヘッド!!」

ブイモンが頭突きを繰り出してリバース・ウェディンモンの体を再びぶち抜くが、すぐに再生されてしまう。

「う~っ…くそ、体が生クリームまみれになっちまった…でもこれ美味いからいいや」

腕に付いたクリームをペロリと舐めるとホワ~っとなるブイモン。

「あんたね…」

こんな時まで食欲を失わないブイモンにテイルモンは呆れ顔だ。

「ハッ!?ナイス名案を思い付いたぞ!!倒せないならあいつを食っちまえばいいんだ!!」

「迷案の間違いでしょ!!と言うかあんたはただケーキを食べたいだけでしょうが!!それにあんなの食べたら私達まで胸焼けするわ!!あんたの欲望はどこまで底無しなのよ!!アホなこと言ってないで早くあいつを攻撃しなさい!!」

「あらら…お困りのようね?小さなドラゴンさんに子猫さん♪」

「「え!?」」

「あ…ネネ…さん…?」

間抜けなやり取りをするブイモンとテイルモンの後ろにいたのはネネである。

「(?…何、あの娘…)」

「可愛い大輔君達がピンチみたいだったから…いても経ってもいられずに助けに来ちゃった♪」

「Xローダー…じゃあ、ネネさんもジェネラル…選ばれし子供…?」

「私にはあなたが必要なの大輔君…だから…今は私があなたのことを守るわ…リロードッ…!スパロウモン!!」

ネネのXローダーから現れたのは戦闘機を思わせるデジモンであった。

「デ…デジモンヲ、リロードシタ!」

「あの娘もジェネラルだったのかよ!!」

「さぁ…踊りなさいスパロウモン!!久々に壊し甲斐のある相手がいるわよ…!!」

「ギュギューン!へえ~ネネがそんな風に言うなんて久しぶり!楽しみだな~♪」

空中を旋回しながら言うスパロウモンを見たリバース・ウェディンモンは安堵した。

「オ…オホホホ…どんな屈強なデジモンが出て来るかと思えば…スピード勝負の手合いかしら?だったらこうよ!!速ければ速いほど避けづらい全方位攻撃っ…!キャンドルサービスインフェル…」

「どーん!!」

リバース・ウェディンモンが技を言い切る前に超高速でスパロウモンは距離を詰め、勢いを加算した強烈な体当たりでリバース・ウェディンモンの体をぶち抜いた。

勢いが勢いだったためにブイモン達が開けた穴よりも遥かに大きい。

「うわ…凄いな」

「見ての通りスパロウモンはスピードを活かした攻撃が得意なの、ああいう相手にはパワーよりもスピードを活かした攻撃の方が良いかもしれないわよドラゴンさん?」 

「(なっ…!?何をされた!?今!?ちょ…超高速の…単なる体当たり!?)だ…だがどんな損傷だろうと…今に修復し…」

「どどーん!!」

「あがあっ!?」

修復する暇を与えないスパロウモンの突進。

大輔もネネの言葉が正しかったのだと思い始めた。

「なる程…単純だけど…あれは効くな…スパロウモンってデジモンの超高速スピードを活かしたヒット&アウェイ…あれならウェディンモンの再生能力は関係ない…再生する前に吹っ飛ばされるからな…」

大輔は腹を押さえながらゆっくりと立ち上がった。

「あら?横になっていても良かったのよ大輔君?」

「そうはいきませんよ」

「あははははー!凄い凄ーい!!どんどん元に戻ってくや!!これならどんどん壊せるねーっ♪クラッシュ・ブーム!!」

「ぐぶえええええっ!!?」

分身が見えるほどのスピードで体当たりを喰らわせ、リバース・ウェディンモンを沈めた。

「何てスピードなの…?究極体でもこれほどのスピードを出せる奴なんかどれくらいいるか…」

テイルモンはスパロウモンの圧倒的とも言えるスピードに目を見開いた。

「あがっ…がっ…(さっ…再生が追いつかないっ…!!)」

再生が完了する前に攻撃を繰り返し受けたことでリバース・ウェディンモンも限界が来た。

「ちょ…ちょっとやり過ぎじゃねえか?」

いくら自分達を騙したとは言えスパロウモンの容赦のない猛攻にスターモンは思わず呟く。

「(あらあ…?何か旗色悪いわねえ、色々使える娘だと思って飼ってたけど…戦闘じゃこんな物かしら?)…まあ…可愛い女の子のジェネラルまで出て来て何だか楽しくなってきたことだし…私も少し遊んであげようかしら…♪」

力を放出するリリスモン。

その放出されているその力の質にテイルモンは戦慄する。

「こ、こいつ…もしかして暗黒系の究極体級…!?ヴェノムヴァンデモンが霞んで見えるわ…!!」

「(高みの見物してたリリスモンまで動き出しやがった!こりゃいよいよ脱出の算段しといた方がいいかもな…)」

ドルルモンが脱出するのを視野に入れ始めた時、ネネのXローダーから声が響く。

「私も出ようネネ。三元士が相手では流石にスパロウモンでも分が悪いだろう。」

「いいのね…?」

「我らチームトワイライトもそろそろ御披露目の頃合いだろう?ここは派手に行こうじゃないか!!」

「…分かったわ」

「!?何だ…?あいつまだ何かやるつもりか…?」

「リロード…!!ダークナイトモン!!」

闇から現れたのは漆黒の騎士型のデジモン。

リリスモンが咄嗟に魔法陣の盾を展開するが、ダークナイトモンは槍による連続突きで魔法盾を容易く粉砕した。

「(安い魔法盾じゃ防げない…私の知らないこんな強豪が…?)」

「な、何よ…あの…どす黒い力の塊みたいな奴は…」

神聖系だからかダークナイトモンの内包する力を本能的に察したテイルモンの身体が震える。

「フハハハハハハ!見知り置き願おうか!!来たるべき闇の時代の覇者…!このダークナイトモンの名をっ!!」

「滅茶苦茶極悪そうな奴だな…」

大輔がダークナイトモンとリリスモンの戦いを見つめながら呟く。

実際にその感想が間違っていなかったことを知るのはそう遠くなかったりする。

「ツインスピア!!」

槍による連撃を叩き込み続けるダークナイトモンに対してリリスモンは再び展開した魔法盾でそれを防御する。

「(私を防戦一方に追い込むなんて…こんな魔王クラスの実力者が今までバグラ軍の情報網を逃れて身を潜めていたと言うの?)ふふ…ごめんあそばせ?デジタルワールドの名士の方々とは概ね顔見知りのつもりだったのですけど…どちらの田舎貴族様でしたかしら!!?」

リリスモンが毒爪で反撃するが、ダークナイトモンはそれを難なく捌く。

「フハハハッ!?そうですな…地獄の野辺から来たとでも申しておきましょうか!!」

ダークナイトモンが高笑いしながら言うと、リリスモンは舌打ちする。

一方でスパロウモンとリバース・ウェディンモンの戦いも終わりを迎えようとしていた。

「ギュルルーン!ランダムレーザー!!」

「あがっがががががあっ!!?」

スパロウモンのレーザーを受けたリバース・ウェディンモンが感電し、完全に戦闘不能状態に。

「(意外と脆かったわね…能力は強力だけど、戦いに慣れたデジモンじゃなかったということかしら…)」

「あれれ?もう動かなくなっちゃったよネネ」

「そうね…さっさととどめを刺してしまいましょう。」

「ヒイイッ!!?わっ…分かったわ!コードクラウンは渡すからっ…!!な…何ならリリスモンの代わりにあなた達にスイーツを納めても良くってよ!!?」

「ちょ…ちょっと!?何、ナチュラルに裏切ってんのよあの娘っ!!」

リリスモンがリバース・ウェディンモンを見遣った時の隙を突いて攻撃を浴びせるダークナイトモン。

「ははっ!余所見はいけないなあ、御婦人!!私というダンスの相手がいるではないですか!!」

ダークナイトモンが槍をリリスモンに突き出す。

それをリリスモンは右手で掴むと華奢な体からは想像もつかないような怪力でダークナイトモンを投げ飛ばした。

「!ムオッ…」

予想外のことに対処出来ずに勢いよく叩きつけられるダークナイトモン。

「あ゙ーー~~っ…坊や?ちょっと調子に乗り過ぎじゃあないかしら…お姉さん、おいたする子は好きじゃないなぁ…」

闇の中から出現するのは巨大な醜い異形の腕。

「エンプレス・エンブレイズ!!」

「うおおおおおおお!!?」

異形の腕がダークナイトモンを押し潰そうとするが、ダークナイトモンは間一髪でその腕の一撃をかわす。

「なっ…何てぇ戦いだ…」

「本気を出してきたわね三元士…こいつを始末しなさいスパロウモン。私達も加勢に回った方がいいかもしれないわ。」

「ヒッ…」

「待ってくれ、ネネさん!!こいつはもう戦えない、降参だってした。わざわざとどめを刺さなくてもいいだろっ!!」

ネネに歩み寄りながら大輔はとどめを刺させるのを止めさせる。

「ふふ…優しいのね大輔君。でも駄目。一度誰かを裏切って傷つけた者は何度でも裏切りを繰り返すものよ?自分が誰にも信じてもらえないことにいつも怯えているから…他者からの信頼を守り通すことに……価値を見いだせないのよ…」

「(…何でそんな寂しそうな顔で言うんだよ…)でも、駄目だ。この世界には始まりの町がない…死んだらそのまま死んじまうんだ。確かにウェディンモンは俺達を騙したさ、でも…」

大輔はリバース・ウェディンモンを庇うように両者の間に立った。

「ウェディンモン達は誰かを傷つけようとしてやろうとした訳じゃない。俺達を倒したいならリリスモンの言う通りに毒を菓子に混ぜりゃあ良かったんだ。けどそれをしなかったのはウェディンモン達が菓子作りに誇りを持ってたからだ!!俺も菓子じゃないけど、ラーメン屋になるって夢がある。だから分かるんだよウェディンモン達の気持ちが…!!あんなに滅茶苦茶美味いケーキや焼き菓子を作れたんだ。それだけ好きなんだよ菓子作りが…自分達のゾーンをバグラ軍に明け渡してまで作ろうとした大好きなお菓子に…あんな毒なんて入れたくねえよな…!それにウェディンモンはスイーツゾーンのデジモン達の上に立つ奴として何も間違ったことはしてない!!菓子作りだけじゃない…スイーツゾーンを守るために…スイーツゾーンに暮らすデジモン達を守るためには、そうするしかないじゃないですか!!」

「彼らのお菓子作りに対する気持ちが純粋なのは理解出来るわ。でもそれは嘘や裏切りが許される理由にはならないのよ大輔君」

「分かってます。でも、ウェディンモン達は菓子作りに凄え誇りや夢を持ってるんです。俺もいつか美味いラーメンを作って、沢山の人に食べてもらいたいって夢に誇りを持ってる。だから…俺は絶対に退かない!!」

「!大輔君っ…」

「なっ…何だよお前っ!!ネネを困らせるようなこと言うなっ!!」

大輔の言葉に反感を覚えたスパロウモンは構わずリバース・ウェディンモンに突撃しようとする。

「そいつは敵だっ!そんな奴がどうなったって関係ないだろっ!!」

「スパロウモン!」

スパロウモンを止めるために大輔はテイルモンに指示を出す。

「テイルモン!!そいつを止めてくれ!!」

「全く、仕方ないわねこのお人好しは!!キャッツアイ!!」

「え!?」

テイルモンのキャッツアイで動きが停止したスパロウモン。

「ブイモン!!今よ!!」

「おうっ、お任せ!!」

「スパロウモン、お前は確かに強いデジモンだよ。でもお前の強さは圧倒的なスピードがあってこそだ。そのスピードが封じられたお前は…そこらの雑魚とてんで変わらないんだよ!!喰らえ、ブイモンヘッド!!」

落下の勢いをプラスした頭突きはスパロウモンの脳天に炸裂し、地面に叩きつけた。

「ブイモン、テイルモン!!そいつを抑えてくれ…」

「痛てて…この、放せ!放せよ!!」

「放せと言われて放す馬鹿がいるわけないでしょ!!」

「放したら何をするのか分かってるからな!!」

ブイモンとテイルモンがスパロウモンを抑え込む。

「(やれやれ!子供達は暢気なものだっ…こちらはそんな常識の通じない怪物の相手をしているというのにね)ぬうん!!」

肩のブレードで異形の魔獣を引き裂いたダークナイトモンは即座にリリスモンの方を見遣るが、リリスモンの姿が見えない。

「(!?リリスモンは…)」

闇に紛れ込んで、ダークナイトモンの死角を突き、毒爪を向けるリリスモン。

ダークナイトモンは何とかリリスモンの接近に気付き、槍を突き出すが。

「むうっ!!」

互いに距離を取ると、リリスモンの毒爪を受けた左腕から煙が出る。

「(!っ…いかんなこれは)」

ダークナイトモンは片手で印を結ぶと即座に毒爪を受けた左腕を切り落とす。

「わっ!?何だこいつ自分の腕を…!!?」

シャウトモンがダークナイトモンが切り落とした腕を見たのと同時に、切り落とした腕が腐り溶けた。

「ひえーっ!!」

「く…腐って溶けちまったぁ!!?」

スターモンとシャウトモンが腐り溶けていくダークナイトモンの腕を見て後退する。

「(あらゆる物体を腐食する魔性の毒爪、ナザル・ネイル…もう数瞬処置が遅れれば、全身を蝕まれ命はなかった…!!やはり怖い相手だ三元士とは…この私が片腕と引き換えに報い得たのが…)」

リリスモンは右手で左の頬に触れていた。

あの時のダークナイトモンの槍が掠っていたのだ。

「きっ…傷っ…わっ…私の顔にっ…傷をっ…!傷をおおおおおお!!!!」

激怒したリリスモンの力が暴走を起こし、暴走した力は時空を裂いた。

「何!?」

「うわわわわ、何だあっ!!?」

「身体が引っ張られる~っ!!」

「や…奴の怒りが時空を裂いたのか!?」

「あ…あれに飲み込まれたら帰って来れませんわよ!!」

「というか…放っておけばこのゾーン全体が吸い込まれて消滅するな。」

「嘘おおん!?」

ダークナイトモンの言葉にシャウトモンは驚愕する。

「やれやれ…女のヒステリーは怖いものだがここまでくると…」

怒りを発散して正気に返り、リリスモンは自分の生み出した歪みを見つめる。

「(いやん!!私ったら何時の間に爆発してた?またゾーンを消滅させちゃって…皇帝陛下に怒られちゃう~!!ま…まあ…いっか!厄介そうな敵を始末出来ることだしね!コードクラウンは後で拾いに来るとして…美人の血でも吸いに行こっと!)」

リリスモンは巻き込まれないうちにこのゾーンから脱出した。

そしてブイモン達に抑えられているスパロウモンは…。

「ああもうっ!放せよ!!」

「だああもう!!暴れるな馬鹿!!」

「落ち着きなさい馬鹿!!」

「スパロウモン、今はあの時空の裂け目を…」

「うるさいうるさいっ!!ネネを困らせる奴の言うことなんて聞けるかーっ!!」

スパロウモンが光線銃を放つが、大輔達だけでなくスパロウモン自身も喰らい、時空の歪みに吸い込まれていく。

「だ、大輔!!ブイモン!!テイルモーン!!」

何とか起き上がった賢が時空の歪みに吸い込まれる大輔達を見て叫ぶ。

「ス…スパロウモン!!」

ネネも時空の歪みに吸い込まれていくスパロウモンを見て叫ぶ。

「くっ!」

ブイモンは咄嗟に近くにいたテイルモンの手を掴み、アカリに投げ渡す。

「ブイモン!?」

「俺達は帰る!!必ずな!!」

そして大輔達は時空の歪みに吸い込まれた。

「くっ…いかんな。このままでは我々も…!!」

ダークナイトモンは印を結び、マントに複雑な魔法陣を浮かばせる。

「むんっ!!」

ダークナイトモンが時空の歪みを自身の魔力で覆うと、流れが止まる。

「流れが止まった…時空の歪みを力で抑え込んだのか…?」

賢は時空の歪みとダークナイトモンを交互に見遣りながら呟く。

「何をするのダークナイトモン!?」

「時空の裂け目を閉じる!全く…こんな所で蓄えた魔力を消費してしまうとはとんだ計算違いだよ」

「!」

「ま…待てよ!!今閉じたら吸い込まれた大輔達はどうなるんだよ!?」

それを聞いたタイキが慌てて立ち上がる。

「大輔…!!」

賢は大輔が吸い込まれた時空の歪みを見遣り、何とかするために考えを巡らせるのである。 

 

第11話:半壊の奇跡

時空の歪みに吸い込まれたブイモンとスパロウモンはデジタル空間の巨大な欠片に落下した。

「よっと、ふう…何とか助かったな~」

「ひぎゃっ!!もお~っ!!何でこんなことになるんだよぉ!!」

ブイモンは普通に着地出来たが、スパロウモンは地面に落下した。

「そうだよなあ、スパロウモン。どうしてこんなことになったんだろうなあ?」

「それはお前のせ…」

振り返って文句を言おうとしたスパロウモンだが、この時のブイモンの顔はキリハのグレイモンが可愛く見えるくらいに凶悪な人相をしていた。

「に、逃げろ~!!」

「あ、おい!!危ないぞ!!」

身の危険を感じて逃げ去ろうとしたスパロウモンだが、突如身体がデータ分解を起こし始めた。

「痛っ…!?なっ…何これ!?痛っ!!痛たたた!!」

「あ~あ…だから言ったのに」

スパロウモンのデータ分解を見てブイモンは言わんこっちゃないの表情をする。

「あわわわわわわ…だあっ!?」

落下するスパロウモンに呆れた表情で歩み寄るブイモン。

「だから言ったろ危ないって、前にバリスタモン達から聞いたことがある。デジモンはゾーンを離れたら正常なデータとして安定出来ないんだってさ。今、俺達が立っている所は多分どっかのゾーンの欠片だ。俺達が正常でいられるのはこの欠片のおかげだろうな。分かったか高速馬鹿?」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!?」

頭をブイモンに踏まれてグリグリされているスパロウモンが悲鳴を上げる。

「大体お前がちゃんと大人しくしてればこ~んな目に遭わなくて済んだんだけどな~?お前反省とか我慢って言葉を知らないのか?ええ?しかも原因のお前が逃げだそうとするし、これはネネに代わって厳しい厳しい愛のお仕置きが必要のようだなあ?」

悪魔の笑みを浮かべながら拳を鳴らすブイモンにスパロウモンは恐怖の表情を浮かべた。

「ひぃいいいい!?」

愛のお仕置きは結構過激なため、飛ばさせて頂きます。

しばらくして全身ボコボコ、頭にデカいタンコブを5個も作ったスパロウモンが号泣していた。

「よし、愛のお仕置き完了」

スパロウモンへの愛のお仕置きが完了し、満足そうに手を叩くブイモン。

「う…うう…痛い…痛いよお…止めてって言ったのに…」

「お前がウェディンモン達にやろうとしたことはさっき俺がやったのと同じことだ。お前は降参したウェディンモン達を殺そうとした。自分がウェディンモン達と同じ立場になって少しは分かったろ?相手にどんなに止めてくれって言っても止めてもらえない怖さをな」

「…………」

それを言われたスパロウモンは黙るしかなかった。

「反省しろスパロウモン。俺にボコボコにされて少しは分かったろ?」

「でも…敵はいくら壊してもいいってネネが言ってたもん」

「だから何だ?お前ネネ以外に…友達はいないのか?だったら寂しい奴だな~」

「ば、馬鹿にしないでよ!!い、いるよ!!コトネやシュリモンとかモニタモンとかペックモンとかモニモンとか…」

「(コトネ?)じゃあ、お前はネネが敵って言えばモニタモン達を笑いながら殺せるか?」

「っ!!」

「殺せないだろ?相手を敵か味方で判断するなよ。みんな理由があって戦ってるんだ。もしかしたら中には賢のように敵だったけど分かり合える奴もいるかもしれない」

「で、でも…そ…それじゃあどうするんだよ!?襲ってくる奴がいたら戦わないとやられちゃうだろ~っ!!」

「別に戦うなって言ってるわけじゃない。大輔の先輩の太一とヤマトが言ってたんだ。喧嘩もしないでいたら、一生友達になんかなれないんだって。戦いも自分の気持ちをぶつける方法の1つなんだ。お前はネネの言うことをしっかり聞くようだから…お前にとってネネのこと大事なんだろ?」

「へっ?あ…ああそうだよ!ネネは僕の一番の友達なんだ!本も読んでくれるし、歌も歌ってくれるし、お菓子だって焼いてくれる!!僕、ネネのことが大好きだよ!!」

ブイモンのいきなりの問いに一瞬ポカンとなるが、すぐに肯定した。

「そうか…本当に大好きなら、大事に思ってるなら、ネネの言うことに何も考えないで聞いてるだけじゃ駄目だぞ。友達なら…友達が間違った道を進もうとしている時、殴ってでも、怒鳴ってでも、そいつを助けてやらないといけない。それが出来ないと、ネネが本当に苦しんでる時に助けてやることなんて出来ない。」

「…?…なっ…何言ってるんだよ。難しくて僕よく分かんないよ…」

「まあ、時々思い出して考えてくれればいいさ。さて腹も減ったし飯にするか」

腰にかけていた布袋から少し形の崩れたおにぎりを出し、4つのうち、2つをスパロウモンに渡す。

「食え、戦いのせいで崩れて形は悪いけどヒカリとアカリが握ってくれたおにぎり。美味いぞ!」

「…………」

スパロウモンはブイモンからおにぎりを受け取った。

一方、大輔はデジタル空間を漂っていた。

「うーん、ブイモン達はどこ言ったんだ?ブイモンがいれば何とかなるかもしれないんだけど…ん?」

D-3Xから何かが聞こえてきたため、D-3Xを手にして耳を傾けると…。

『このゲートを保持しておくだけでも莫大な魔力を消費し続けているんだぞ!!』

『けどそれではスパロウモン達は二度と戻ってくることは出来ないわ!!』

D-3Xを通じて聞こえてくるのはダークナイトモンとネネの会話である。

『スパロウモンは我々の計画に必ずしも必要な要素ではない!!』

『けど強力な戦力だわ!失うわけには…』

「ダークナイトモンとネネさんの声…しかし物騒な会話だな。険悪そうだ」

『一戦力のために計画に支障をきたしては本末転倒だろう!下がりたまえ、今すぐそのゲートを閉じる!』

「やべえな、早くブイモン達を…お!?」

大輔はブイモン達を発見してそちらに向かう。

「初めて会った時は僕も赤ちゃんだったし、ネネ達もこの世界に迷い込んだばかりでさ!お互い右も左も分からずにそりゃあ大変だったんだ。」

「達?ああ、ネネと出会った時に他にも誰かいたのか」

「うん、コトネって言ってネネの妹なんだけど、3人で力を合わせてあちこち渡り歩いて、行き着いたシノビゾーンのモニタモン達と仲良くなって、やっとジェネラルやデジクロスについても教えてもらえたんだ!」

「それで?」

「けど、しばらくしてコトネの具合が悪くなって、ずっと眠ったまま目を開けなくなったんだ。」

「眠ったまま?…もしかして病気か?」

「分かんないよ。その時なんだ。あいつらが…スカルナイトモンとデッドリーアックスモンが里にやってきたんだ!あいつらコトネのことを助けてやるからってネネと取引きして…」

「スカルナイトモンとデッドリーアックスモンって何だよ?」

「ダークナイトモンだよ。あいつはスカルナイトモンとデッドリーアックスモンがデジクロスした奴なんだ。」

「へえ~、それならあいつの強さも納得だ」

「僕はあいつら嫌い。あいつらのチームに入ってからネネちょっとだけ怖くなっちゃったし…って…」

「ふんふん、よしお前らについて結構分かったぞ」

ブイモンはおにぎりを完食し、ゴロリと寝転がる。

「いけない!これ秘密だったっけ!馬鹿っ!余計なこと聞くから…げぼおっ!?」

「やかましい、お前が勝手に喋ったんだろ」

スパロウモンの口を殴って強引に黙らせるブイモン。

それを見ていた大輔は苦笑しながら歩み寄る。

「あ、大輔」

「なあ、スパロウモン。どうせならもっとネネさんのことを教えてくれ。どうしてあんな風に寂しそうな顔をするのかを…」

「大輔…大丈夫か?」

「ああ、でも少し腹がキツいから歩いて消化させてくれ」

腹をさすりながらブイモンから水筒を受け取り、水を一気飲みした。

「サンキューブイモン。助かったぜ」

欠片の地面を歩きながら、大輔はケーキ消化のために軽く歩き始めた。

「ネネさんはコトネちゃんを助けるためにダークナイトモンと取り引きしたんだよな?じゃあ、ダークナイトモンの目的は?あいつ、親切そうには全然見えねえぞ」

「さあ…ネネは知ってるみたいだけど僕は聞いてないよ?」

「計画に必要な3人のジェネラル…俺やタイキさん達を使った何かの儀式に何かしようとしてるんじゃないか?」

「ああ、儀式に必要なのは大輔だよ。ネネが言うには大輔が一番波長が合うんだって」

「俺だけ?でも俺とネネさんだけじゃ足りないじゃないか」

「ああ、最後の1人はコトネだよ。コトネもジェネラルなんだ」

「へ?ああ…だから、俺だけなのか…さて…そろそろ脱出するか、ブイモン…あれ?ブイモン?」

「大輔ー!!こっち来てくれ早く!!」

「どうしたブイモン!!」

ブイモンの声にスパロウモンと共に向かう大輔。

そこには巨大な石版と…。

「罅割れた黄金の…デジメンタル…?」

無数の罅が入った黄金のデジメンタルが置かれてあった。

一方、スイーツゾーンではダークナイトモンがゲートを閉じようとしていた。

「待って!ダークナイトモン!大輔君のことはどうするの…?彼は私達の計画に欠くことの出来ない3人目のジェネラルよ…」

「君は何故か彼のことを気に入っているようだが…最悪、3人目は捕らえた彼女や工藤タイキ君、蒼沼キリハ君を含めたジェネラルを使うことも出来る。バグラ軍と戦うために蓄えた魔力をこれ以上消費するリスクを負えない!例の儀式に支障が出る可能性もある!!」

「か…彼が一番波長が合うのよ…もう少しだけ待つ価値があるわ…」

「(もしかして大輔達を庇おうとしてるのか…?)」

「何だ何だ…?」

後ろから聞き覚えのある声が聞こえたために全員が振り返った。

「げえ!?キリハ!?」

「工藤タイキ達がスイーツゾーンに現れたと言う話を聞いて飛んできてみれば、随分と妙なことになっているな。おまけに人のことを勝手に使うの使わないだの…勝手なことを言ってくれるものだなダークナイトモンとやら、貴様がその女の黒幕か…」

「キリハ君…」

一方デジタル空間にいる大輔達は罅割れた黄金のデジメンタルを拾い上げると、石版の文字を解読していた。

「ブイモン、スパロウモン。分かるか?」

「何これ?古代デジモン文字じゃないか。こんなの読めないよ…」

「古代デジモン文字?何言ってんだよ全く脳味噌まで空っぽとは…えっと…」

ブイモンは石版の文字をじっと見つめるが…。

「ああ、駄目だ。殆ど掠れててよく分からない。でもこれだけは分かる。“如何なる危機…奇跡を起こして…黄金の聖騎士”…後は“ロイヤルナイツの守りの要”…くらいしか読めないな」

「ふーん…この黄金のデジメンタル…使えればここから脱出出来る可能性がかなり上がるけど…デジメンタルアップ!!」

黄金のデジメンタルが輝きを放ち、ブイモンを覆い尽くす。

「ブイモンアーマー進化、奇跡の輝き!マグナモン!!」

しかしマグナモンの鎧は、戦ってすらいないのに亀裂が走っていた。

進化直後は黄金の輝きを纏っていたので、気付かなかったが、光が収まった時、そのあまりの見た目に大輔は顔を顰めた。

使用した黄金のデジメンタルの破損状態がそのままマグナモンの鎧に反映され、高純度クロンデジゾイドの鎧が罅だらけの状態だったのだ。

「何とか進化出来たか…脱出の時まで保ってくれればいい。マグナモン!!スパロウモン!!デジクロス!!」

「マグナモンBM(ブーストモード)!!」

マグナモンの鎧の背部にスパロウモンがくっついたような姿だが、マグナモンとスパロウモンの機動力が掛け合わされているため、機動力は究極体を含めて上位に位置するだろう。

「行くぜ!!」

「ライトオーラバリア…」

「フルスピードで行くよ!!」

「「ノヴァストライク!!」」

バリアを張り、空気抵抗を無くすとマグナモンの両肩両腰のブースターとスパロウモンのバーニアが噴き出し、超高速スピードで飛び立つ。

「これなら1分もかからずに脱出出来るぜ!!」

マグナモンBMが凄まじいスピードでデジタル空間を移動している時、再びスイーツゾーンでは…。

「やあ…これは失礼をした!お初にお目にかかる蒼沼キリハ君!!気を悪くしないでくれたまえ!私は君の実力を高く評価し、バグラ軍を倒すため手を組めればと…」

「リロード、サイバードラモン!!」

キリハのXローダーから飛び出したのはエイリアンを思わせるデジモンであった。

「ギギィッ!!」

「なっ…!!」

サイバードラモンはネネに向かって突撃する。

「(私の知らない戦力がっ…?)くっ…リロード!!シュリモン!!」

ネネもXローダーからシュリモンをリロードし、迎撃させる。

「(彼の言う切り札の1枚ということ!!?)」

サイバードラモンは一回転し、シュリモンに尾の先端を叩きつける。

「きゃあっ!!」 

「むっ…」

そしてネネを突き飛ばし、ダークナイトモンの頭部に槍を突き立てる。

「貴様と組むつもりはない。それとその穴、もうしばらく閉じないでもらうぞ。本宮大輔を我が部下に迎えるのは既に俺のバグラ軍打倒計画の一部だからな…」

「おやおや怖いなあ…だが、今私を殺せばこのゾーン全体が崩壊することになるが…?」

「知らんな、俺の作戦に菓子など不要だ…コードクラウンさえ手には入ればいい」

「あ…あの野郎、また勝手なこと言いやがって…!!」

しかしキリハの言葉に異議を唱える者がいた。

それはキリハのパートナーの1体のグレイモンである。

「ちょっと待てキリハ!!俺のおやつを買ってくれる約束はどうなるっ!!」

「たまには我慢しろ!また虫歯になるぞ」

「…!!」

次の瞬間、サイバードラモンに弾き飛ばされたシュリモンがキリハとメイルバードラモンを背後を取る。

「ぬうっ!?」

メイルバードラモンはシュリモンを薙ぎ払おうとするが、それをかわしながら接近し、右腕の手裏剣をキリハの首に。

「動かないでキリハ君…今、ダークナイトモンを失うわけにはいかないの…!心配しなくても私がその穴を閉じさせは…」

「サイバードラモン!」

ネネの言葉を遮ってキリハはサイバードラモンに指示を飛ばす。

「俺が殺されたら、そいつの身体を完全に破壊しろ」

「なっ…!」

「頭を砕かれれば死ぬ手合いとは限らんぞ」

「(…何という胆力だ…安い見栄から蛮勇に走っているのではない。最大限の保身を保ちつつも目的のため不足があれば命を懸けて補うという覚悟…!!凶犬と評するのは些か礼に欠けるか…虎だな…この少年は)やれやれ…我がジェネラル・ネネといい、君といい…そして工藤タイキ君達といい…どこまでも人気者だな彼は。それほどまでの魅力が彼にあると言うのかな?」

「この俺が認めた男だからな。奴は軟弱な現代人とは違い、どのような苦境にも真っ向からぶつかっていける男だ。奴と工藤タイキ達を手に入れ、最強の軍を作り上げる。邪魔をするならば貴様らを始末するだけだ。」

「ど…どこまでも自分勝手な奴だなあいつ…第一現代人って言ったらあいつもだろ…!!」

「でもキリハさんの言っていることは間違っていませんよタイキさん。大輔はどんなに厳しい状況でも諦めたりしない強い奴ですから」

「賢ちゃん…うん、そうだね…」

タイキがキリハを嫌そうに見ながら言うと、賢はキリハの言っていることは間違っていないと言う。

実際キメラモンとの戦いでは絶体絶命の危機はいくつもあった。

しかしヒカリ達が諦めた時、大輔のみ諦めなかったからこそマグナモンと言う奇跡を起こせたのだ。

ただいま現在進行形で奇跡を起こしている最中でもあるわけだが。

「よし、出口だ!!マグナモン!!スパロウモン!!頼むぜ!!」

「「OK!!」」

「みんな、ただいまー!!」

超高速で帰還したマグナモンBMと大輔。

途中でサイバードラモンを吹き飛ばしてしまったが、それを見たタイキ達は驚愕、キリハは笑みを浮かべたのであった。 

 

第12話:激怒

マグナモンとスパロウモンのデジクロス体であるマグナモンBMによる超高速移動でデジタル空間からギリギリのタイミングで脱出した大輔達。

しかし、飛び出した瞬間にダークナイトモンに槍を突きつけていたサイバードラモンに激突してしまい、吹き飛ばしてしまうのであった。

「あ…悪い…それからサンキューな、スパロウモン。クロスオープン!!」

吹っ飛ばしてしまったサイバードラモンに謝罪しながら大輔はマグナモンとスパロウモンを分離させた。

「大輔、無事だったか!あの金ピカ鎧のデジモンは何なんだ?」

「このマグナモンはブイモンですよタイキさん。」

「あ、確かに面影があるな」

タイキが駆け寄り、大輔にマグナモンのことを尋ねる。
大輔の説明にタイキは納得したが、マグナモンの姿を見たダークナイトモンは思わず驚愕してしまった。

「(マ、マグナモン…デジタルワールドの神々に仕える聖騎士集団・ロイヤルナイツの守りの要だと!?まさか、あのブイモンが変化した姿だと言うのか!?数々の変化に加え、ロイヤルナイツへの変化すら可能とする…本宮大輔が従えているブイモン…一体どれほどの力を秘めていると言うのだ…!?)」

ダークナイトモンは表情には出さないが驚愕している。

マグナモンのクロンデジゾイド合金の鎧は所々罅割れている状態ではあるが自分は愚か、リリスモン以上の力を感じられた。

まともに戦えば例え自分が万全の状態でも相手にさえならないだろう。

「ふう…それにしてもマグナモンとスパロウモンのデジクロス体のブーストモード…中々癖になるスピードだったぜ。なあ、スパロウモン」

「本当本当!!また一緒に飛ぼうねーっ!!」

「またマグナモンに進化出来る機会があればな」

「よう、本宮。相変わらずお前の周りは騒々しいな。そして幾度も幾度も起こるデジモンの大きな変化…お前は見ていて飽きん男だな」

「へ?あれ、キリハさんじゃないですか?何でここにいるんですか?あ、もしかしてキリハさんもスイーツゾーンの菓子を食いに来たんですか?美味いですよ。特にケーキは絶品でした」

「菓子目当てはグレイモンだけだ。俺はお前達を追ってきたのだ。また新たな力を手にしたようだな本宮大輔。随分とボロボロだが、凄まじい力を秘めていること位は分かる。益々お前を部下にしたくなったぞ」

「あ…はは……どうも…」

久しぶりの再会だが、相変わらずのキリハに思わず大輔は苦笑した。

「わーい、ただいまネネー!!」

「も…もういいわシュリモン!キリハ君を放して!」

スパロウモンの無事を確認したネネは指示を出し、シュリモンはキリハを放してダークナイトモンはゲートを閉じた。

「やれやれ…我が方のスパロウモンまで抱き込んでの脱出とは恐れ入る。おまけにロイヤルナイツの守りの要への変化まで可能とは」

「ロイヤルナイツ…?」

聞き覚えのないロイヤルナイツと言う単語にタイキ達がダークナイトモンを見上げた。

「ここにいる全員が聖騎士集団・ロイヤルナイツを知らないか…」

少しの間を置いて、ダークナイトモンはロイヤルナイツについての簡単な説明をする。

「ロイヤルナイツとはデジタルワールドの神々に仕える伝説の13体の聖騎士集団。その力は圧倒的であり、デジタルワールドでも伝説とさえ言われた魔獣すら簡単にあしらう程と言われている。マグナモンもそのうちの1体であり、強者揃いのロイヤルナイツの中でも際立って防御力に優れ、ロイヤルナイツの守りの要とも言われている。」

「ほう…デジタルワールドの神に仕えるデジモンか…ますます本宮大輔を部下にしたくなったぞ…」

「しつこいぞお前」

上機嫌でマグナモンを見遣るキリハを見てタイキが苛ただしげに言う。

「そんな凄いデジモンにブイモンが…えっと、マグナモンだっけ?鎧がボロボロで、今にも壊れそうだけど…大丈夫…?」

アカリはマグナモンの纏う鎧があまりにもボロボロなのが気になって尋ねる。

「そうだな、マグナモン。大丈夫なのかお前?」

元々ボロボロだった奇跡のデジメンタルを使用したアーマー進化のため、大輔も尋ねたが…。

「大丈夫……と言いたいけど…奇跡のデジメンタルは耐久限界をたった今……越えた」

「え?それってどういう…」

マグナモンの言葉にタイキが疑問符を浮かべた瞬間。

「…………………こういうことさ」

次の瞬間、マグナモンの鎧に大きな亀裂が入る。

【!?】

「マグナモンの鎧が!?」

次々にマグナモンの鎧が嫌な音を立て、かなりの勢いで崩壊していく。

崩壊し、鎧全体に無数の深い亀裂が入った瞬間、マグナモンはブイモンに退化し、黄金のデジメンタルはバラバラとなって崩れ落ちる。

「ふう…やっぱり1回限りか」

床に転がるデジメンタルの破片を拾いながらブイモンはぼやいた。

「1回限り?あの変化は1回が限度ということか?」

バラバラになったデジメンタルの破片を見て、キリハがブイモンに尋ねる。

「そうだよ、まあ…デジメンタルを使わなかったらあそこから脱出出来なかったから仕方ないけど」

「ふむ…しかし、1回限りとは言えあのロイヤルナイツに変化したと言うのは事実…君達の素晴らしい素質が分かるよ。まるで君は大きな可能性の塊だな本宮大輔君。それに…皇帝バグラモンが唯一恐れると言われるデジクロスの力…その力を操る6人のうち5人のジェネラルとその軍団が今ここで一堂に会している。しかも本宮大輔君達はデジクロスとは違う変化の力を有している…正に歴史的瞬間!!デジタルワールドの希望の未来を予感させるようではないかね!!」

「(……随分とわざと臭い言い方だな。これはスパロウモンが嫌うわけだぜ…)」

「薄ら寒い芝居は止めろ!!貴様とは組まんと言ったはずだ…!!」

キリハはダークナイトモンの言葉を芝居と称して一蹴し、それを聞いたダークナイトモンは溜め息を吐いた。

「付き合い悪いな君は」

「あなたはどう?タイキ君、大輔君。私はあなた達とこそ同盟を結びたいと考えていたわ。リリスモンの力は見たでしょう…?あれでも直接的な戦闘能力は三元士の中で一番低いと言われているわ。そしてその上には皇帝バグラモンが控えている…。」

「(あの馬鹿げた強さで三元士最弱なのかよ…確かに戦力アップは必要だ…ダークナイトモンのことが無けりゃあな)」

「バラバラに戦っていてはとても勝ち目のない戦いだわ。私達は協力して彼らと戦っていくべきだと思うの…」

「…確かに…ネネさんの言ってることは正しいですよね。ダークナイトモン…いや、スカルナイトモンやデッドリーアックスモンとの取り引きのことが無けりゃあ同盟もいいかなと思います。ネネさん…あんたの妹さんを助けるためにスカルナイトモンとデッドリーアックスモンと…一体どんな取り引きをしたんですか?」

「っ!!…スパロウモン…!?」

大輔がコトネやダークナイトモンと取り引きをしたことを知っていることにネネはスパロウモンに振り向く。

「ご…ごめん。ついうっかり喋っちゃった…」

秘密をついうっかり話してしまったスパロウモンは気まずそうに謝罪する。

「他にあんたの妹さんを助ける方法はないんですか?何だったら俺も一緒に探します。」

「妹?」

「(何の話だ…?)」

タイキとキリハが疑問符を浮かべながら大輔を見遣る。

大輔はタイキ達の視線に気付きながらも構わず言葉を続ける。

「上手く言えませんけど…凄え嫌な予感がするんです。スカルナイトモン達との取り引きが!!」

「これはまた嫌われたものだ…私は1人の紳士としてこのデジタルワールドの平和を取り戻したいだけだよ!そのためにこのネネや君達、他のジェネラルとも手を取り合いたいと思っている…」

ダークナイトモンの言葉にキリハは嘲笑を浮かべながら口を開いた。

「ふん!よく言う…!!スノーゾーンでそいつらとタクティモンが鉢合わせたのも貴様らのお膳立てじゃないのか…!?帳尻合わせに俺まで呼びつけておいてな…大方、XローダーかD-3X、コードクラウンに細工でもして…利用する駒として工藤タイキ達やそのデジモン達の実力を確かめたい…あるいは引き出したいと思ったのだろう。」

「(あ~…あの時か…でもタクティモンと戦わなかったら俺達はここまでパワーアップ出来なかったし…)」

チラリとD-3Xを見遣るが、例えキリハの言っていた通りだとしても、取り敢えず得た物は多かったので大輔は細工されたことは気にしないようにすることにした。

「全く、大した洞察力だ…いやはや、彼のようなジェネラルが敵に回るなど考えたくもない!なぁ、ネネ…。無礼は詫びよう。ま、確かに我々は善人の集まりではないよ。だが少なくとも理性的だ。なりふり構わずゾーンを侵略するバグラ軍とは違う…どうかね?私達が君達を戦力として利用するように君達も私達を利用すればいい。」

「お互いのことを疑い尽くすという信頼関係の築き方もあるわ。私はあなた達との腹の探り合い結構楽しんでいるのよ?」

「…そんな寂しい信頼関係なんて…俺は嫌だ。一緒に戦う相手を信じることさえ出来ない。いつ裏切られるかも分からないで、何時そうなるかで怖がらなきゃいけない関係なんて絶対に!そんな薄っぺらな信頼関係で…バグラ軍に勝てるなんて、俺は到底思えない!!」

「ふむ、交渉決裂か。残念だよ本宮大輔君…出来れば平和的なやり方で済ませたかったのだがね。まあ、かけておいた保険が無駄にならずに済んで良かったと思うとしよう。」

「え…!?」

「保険だと…?」

「ド…ドルルモン!!」

瓦礫を押しのけながら慌ててやってきたのはヒカリと共に風呂に入っていたはずのキュートモンであった。

「っ!キュートモン…!!今までどこにいたんだ!ヒカリと風呂に入ってたんじゃ…」

「た…大変キュ!ヒカリが…ヒカリが…!!」

「どうしたんだ!?ヒカリが…?」

「ああっ!!?」

「ヒカリちゃん!!?」

シャウトモンとアカリの声にドルルモンはすぐに向こうを見遣る。

「なっ…ヒカリちゃん!!」

ダークナイトモンの掌の上には拘束された意識を失っているヒカリが浮かんでいた。

「大輔君、君の大事な姫君だ。彼女を失いたくはないだろう?これを見てもまだ強情でいられるかな?」

「…人質なんて卑怯だぞ!!」

その言葉にタイキが叫ぶ。

ヒカリを拘束している魔法陣のような物は恐らく、いや確実に大輔が断ればヒカリの命を奪うものだろう。

「彼女を返すのと引き換えに…大輔君…あなたに私達の元に来て欲しいの。私達の目的のために、あなたが必要なのよ!安心して、彼女は眠っているだけ…あなたが従ってくれれば決して傷つけたりしないわ…!!」

「…っ!!」

大輔は人質に取られたヒカリを見つめると拳を握り締め、唇を噛み締める。

それにより爪が掌に食い込み、唇が切れ、手袋が血に染まり、口から血が流れる。

「…見下げ果てたぞっ!!」

ヒカリを人質に取り、無理やり大輔を従わせようというあまりにも非道極まりない行為にキリハは激怒し、グレイモンをリロードする。

リロードされたグレイモンだけでなく、流石の冷徹な戦略家であるメイルバードラモンも怒りを覚え、ダークナイトモン達に向かおうとする。

「女を人質に取って相手を屈服させようなど、戦士の風上にも置けぬっ…!!」

「今ここで我が炎に焼かれ、我が牙に砕かれるか…!!?」

グレイモンとメイルバードラモンがダークナイトモンに突撃しようとするのを大輔が手で制した。

「キリハさん…止めて下さい…」

「彼女に俺に対しての人質の価値は低い!!お前が手を出せんのなら俺がこいつを…!!」

「止めて下さい!!!」

大輔はゴーグルを首にかけると勢い良くキリハに土下座して懇願する。

【!!】

「キリハさん、止めて下さい。お願いします…!!ヒカリちゃんは…ヒカリちゃんは…俺の大事な人なんですよ……っ!!」

「大輔…っ」

ゼンジロウが辛そうに大輔を見つめる。

大輔が少しだけ顔を上げると額を切ったのか、額から血が流れていた。

今までの勇ましい大輔の姿は何処にもなく、その痛々しい姿にアカリは無意識に涙を流す程であった。

「…あんた達、恥ずかしいと思わないの!?まだ小学5年生の大輔君にこんなことして!?」

「っ…」

アカリが非難するが、ネネはともかくダークナイトモンはどこ吹く風である。

「…止めろ、グレイモン、メイルバードラモン。本宮、お前も頭を上げろ」

「…すいません…」

止まってくれたキリハに礼を言うと大輔は額の血を拭って、立ち上がるとネネに向き直る。

「ネネさん、約束して下さい。俺がネネさんについて行けば、ヒカリちゃんを返してくれるんですよね…?」

「無論だとも!このダークナイトモン。騎士として一度交わした約束は…」

「うるせえ!俺はお前に聞いてるんじゃねえ…俺は今、ネネさんに聞いてるんだよ…!!!」

凄まじい形相でダークナイトモンを見上げ、睨み据える大輔。

「(っ!!この少年…まるで…地獄の鬼だ…!!)」

その凄まじい気迫はダークナイトモンを震え上がらせる。

「…約束するわ…言葉でこう言うことに意味はないのでしょうけど…命を懸けてもいい…」

「…………分かりました。約束…ですよ。」

「大輔っ!?その女の言うことを鵜呑みにするのか!!?」

「ドルルモン…」

「……」

止めようとするドルルモンを制したのはタイキとシャウトモンである。

「お前ら…」

「ドルルモン、ここは堪えてくれ。一番悔しいのは…一番腸(はらわた)が煮え繰り返っているのは…ヒカリを人質に取られた上に、あんな奴に無理やり従わされる大輔なんだ…」

握り締めたタイキの拳は怒りで震えていた。

「本宮…」

「すんません、キリハさん。キリハさんだってあの野郎に滅茶苦茶キレてたのに…俺の我が儘を聞いてくれてありがとうございます」

「…これでも紳士のつもりなんでな。淑女(レディー)の命が懸かった場面で俺も少々軽率だった…。それに、いずれお前には俺の部下になってもらう予定だ。上に立つ者として部下の頼みを聞き入れる度量も持っているつもりだ」

「キリハさん…」

「あら…ヒカリさんが羨ましいわ。あなたに突き飛ばされた淑女がここにもいるのだけど…」

「俺は出歯亀趣味の女を淑女とは呼ばん…!!」

そう言い捨てて、キリハはネネを視界から外す。

「そう…そうそう、あなたはタイキ君を仲間にしたいようだけど…あなた達の色は純粋過ぎて…混ざらないわ」

「貴様に言われる筋合いはない…!!」

「……大輔君、念の為にこれを着けさせてもらうわ。」

ネネは大輔の両腕にギロチンの刃がある手枷をはめた。

「何ですかこれは?」

「ダークナイトモンが作った手枷よ。私から20m以上離れるとこの刃が落ちて両腕を切り落とされるわ。大輔君には夢もあるんだし…腕を失いたくはないでしょ?くれぐれも無理に逃げようとは考えないでね」

「げえ…分かりましたよ。俺も両腕無くしたくないし…じゃあ、先にヒカリちゃんを返して下さいよ」

「…分かってるわ。ダークナイトモン!!ヒカリさんを解放して」

「そんなに睨まなくても良いではないかね。約束は守ると言っているだろう?」

ヒカリは解放され、賢がゆっくりと落ちていくヒカリを受け止めるのを確認したネネはXローダーを取り出す。

「リロード…オニスモン!!」

「でかっ!?」

現れた巨大な鳥型のデジモンを見てブイモンが驚く。

「な…何だありゃ、滅茶苦茶でけえぞ!!」

「オニスモン!古代のデジタルワールドを荒らし回ったとされる伝説のデジモンじゃ!!生き残りがおったとは…!!」

ジジモンがオニスモンの説明をすると大輔はブイモンにダークナイトモンに利用されないようにD-3Xを渡した。

中には当然だが、デジメンタルのデータも中には入っている。

「大輔…」

「それじゃあ行ってくる」

「ゾーン移動!!」

「…大輔!!」

「ん?」

ブイモンの声に大輔が振り返る。

「何かあっても俺達が必ず助け出す。逃げる時のために休んでろよ」

「そうする、誰かさんがふざけた真似しなきゃな…しばらくヒカリちゃんを頼んだぜ」

「私の目の前でするような話かね…」

「目の前でする話だよ。自分のしたことを振り返ってみろよ」

ダークナイトモンの言葉を一蹴する大輔は何時でも動けるようにするために体を休めようと横になる。

「ね…ネネ…!ぼ、僕ね!大輔達ってそんなに悪い奴らじゃないと思うんだ…そりゃあ、ブイモンにはボコボコにされちゃったけど…だからあまり仲が悪くようなことしないで…あいつらと一緒にコトネを助ける方法を探すことも出来るんじゃないかな?」

それを聞いたネネがスパロウモンと共にデジタル空間にいた大輔とブイモンを見遣る。

「(…そう…!私の傍以外にも…この子の居場所が…!)」

安堵の表情を浮かべるネネ、スパロウモンのために一芝居打つことにした。

「ネネ…?」

返事をしないネネにスパロウモンは不思議そうに見つめる。

「スパロウモン、降りなさい。あなたとはこれまでだわ。」

「(……?)」

目を閉じていた大輔はネネの言葉に反応して少しだけ目を開けるとネネ達を見遣る。

「…え…?な…何を言っているのネネ…?」

「前々から思っていたのだけど、大事な秘密を漏らしてしまったり、簡単に言いくるめられてしまったり…あなたは兵士として奔放過ぎるわ。これからの戦いには不要な…いえ、危険な存在ですらある。3人目のジェネラルを手に入れるため、どうしても戦力が必要だったからあなたを使っていたけど、ようやく切り捨てることが出来るわ。今までありがとう。これからは自由に生きなさい」

スパロウモンを降ろすとネネ達を乗せたオニスモンは飛び立った。

「そ…そんな…」

「お、おいっ!こりゃどういうこった!?あの女、何で急にお前のことを…」

「ど…どうして!?どうしよう!!?ネネが僕のこと要らないって…!!」

「…さあな…でもお前が話した時、俺達を向いたことが気になるな…」

ブイモンはネネの真意に頭を悩ませるが、その時背後から身動ぎする音が聞こえて振り返る。

「…んっ…」

「ヒカリ!!」

目を覚ましたヒカリに駆け寄るテイルモン。

「テイルモン…何で私はこんな所に…?」

「ヒカリさん…」

「賢君…大輔君は…?どうしてキリハさんが此処に?」

「それは…」

賢が言うべきかどうかで悩んでいたが、それよりも早くキリハが口を開いた。

「お前はダークナイトモンと天野ネネに本宮大輔の人質として利用されていたのだ。そして本宮大輔はお前を救うために自らダークナイトモン達の手に落ちた」

「え…?」

「キリハ!!」

「隠していても仕方あるまい。今までのことを彼女は知らなくてはならない」

それを聞いて動揺するヒカリ。

タイキがキリハに詰め寄るが、隠していてもバレることであるのは確かだ。

賢はようやく重たい口を開いて今までここで起きたことを全てをヒカリに伝えるのであった。  

 

第13話:同盟

デジタル空間を移動するオニスモンとそれに乗るダークナイトモンと大輔達。

「(デジタル空間なのに一切影響を受けてないってことはオニスモンとダークナイトモンは相当強力なデジモンってことか…リリスモンとの戦いを見ていると、ダークナイトモンはパイルドラモンとほぼ互角レベル…オニスモンは……伝説とまで言われてるんだ。滅茶苦茶強いデジモンに違いねえ…)」

「ふふ…珍しいな。君があんな急拵えの芝居を打つとは…。余程スパロウモンのことが心配だったと見える。いやはや私も信用がないな。」

ダークナイトモンの言葉にネネは素知らぬ顔で口笛を吹く。

「(急拵えの芝居?スパロウモンを降ろしたのはこれからやる儀式はやっぱり危険なもんなんだな)」

「おおっ!デジタル空間を抜けるぞ!!我らがゾーンへようこそ!大輔君!!」

デジタル空間を抜けた瞬間、体が雨に打たれる。

「何だこのゾーンは…凄え雨…」

「レインゾーン。デジタルワールドで流れた涙が集まり、耐えることなく降り注いでいると言われている常雨の大地…」

ネネがこのゾーンの説明をするとオニスモンは城の先端に着地した。

「この城があんたのアジトか」

「そう、我が居城、ダーク・クリスタルパレスだよ。」

黒水晶で覆われた城に入り、ダークナイトモンの後をついて行く大輔。

「少々肌寒いのは我慢してくれたまえ。この黒鉄(くろがね)のボディーは暑さ寒さには疎くてね…」

「な…っ!?何だよこりゃあ!?モノクロモンやカブテリモンやスカルグレイモンにガルルモンにエンジェモン…アンドロモンやエアドラモン、メラモン…キリハさんのグレイモンやメタルグレイモンとは違うグレイモンにメタルグレイモンまで…」

見たこともないデジモンもいるが、中には大輔が見たことのあるデジモンもいくつかいた。

全員水晶の中に閉じ込められているが。

「ほう!大輔君。今では珍しいタイプのグレイモンとメタルグレイモンまで知っているとは、中々物知りじゃないか。どうかね、私の自慢のコレクションだ…いずれも名のある強豪デジモンばかり。ふふ…集めるのに苦労したよ…!そこのネネにも随分活躍してもらったものだ…!!」

「このデジモン達…まるでピクリとも動かねえけど…死んでるのか?」

「生きているよ?今は水晶の中で眠ってもらっているがね。今に目覚めることになる!これから始まる我が聖戦のために…!!」

水晶の中には大輔達のデジタルワールドでもかなり強力なデジモンも閉じ込めている。

倒すだけでも苦労するのに生きたまま閉じ込めるのは更に大変なはずだ。

ネネを利用してどんな手を使ったのか知らないが、これだけの数となるとダークナイトモンの高い実力も分かるというものだ。

「さあ諸君。儀式を始めよう…!!新たなる闇の歴史が今これより紡がれるのだ!!」

奥まで辿り着くと、そこには水晶に閉じ込められた…。

「どこかネネさんに似てる…まさかあの子が…?」

「そうよ、あれが私の妹のコトネよ」

花を握り締めて眠るコトネを見て、まるで彼女が閉じ込められた水晶が棺のように見えた。

一方、スイーツゾーンで今までのことを聞いたヒカリは震えていた。

「そんな…私が私が捕まったから…大輔君が…私のせいで…」

「ヒカリのせいじゃないわ!!悪いのはダークナイトモン達よ!!」

「そうだヒカリ君!!君は何も悪くないじゃないか!!」

「早く…早く助けに行かないと!!」

「どうやってだ八神ヒカリ?まず問題点は2つある。1つはダークナイトモン達の居場所、もう1つはどうやってゾーンを渡るつもりだ?コードクラウンが無いだろう?」

「そ、それは…」

「何とかしてその問題点をクリアしない限り大輔達は助け出せない。なあ、スパロウモン…お前、ネネのデジモンだろ?行き先に心当たりはあるんじゃないか?」

「…多分、レインゾーン…」

「レインゾーン…そこがダークナイトモン達のいるゾーンか。後はレインゾーンに行くためのコードクラウン…なんだよな…スイーツゾーンのコードクラウン…レインゾーンに繋がってないかなあ」

「あまり安易な希望に縋らん方が良いぞ」

ブイモンがスイーツゾーンのコードクラウンを見つめるが、キリハはあまり期待しない方がいいと言う。

「うがーっ!こうなりゃあ、気合いだっ!みんなゾーンの果てまで走れーっ!!」

悩みすぎて頭がバーストし、自棄を起こしたシャウトモンが叫ぶ。

「(アホだっ…!!タ…タイキは何でこんな奴の夢のために…!?)」

「もう、気合いと根性でどうにかなるレベルじゃないんだけどなあ…」

最早これには流石の賢も苦笑するしかない。

「モニ?」

【え?】

声が聞こえて全員が振り返ると、そこにはモニタモンの赤ちゃん版と言えそうなデジモンがいた。

「モニ!」

「このデジモンはネネさんがいつも抱えていたデジモンじゃないか」

賢がこのデジモンの目線に合わせるように屈みながら言う。

「モニモン!何でこんな所に…?」

スパロウモンが尋ねると、モニモンの顔にネネの映像が映る。

「…なさんがこの映像を見ているということは、大輔君が私達に捕らえられ…ダークナイトモンが自らの野望を叶えようとしていることでしょう…そうなれば最早、彼を止めることは誰にも…例え皇帝バグラモンにすら出来ないでしょう。だからせめて…あなた達には真実を知ってもらい…彼の目の届かぬ所へ逃げて欲しいの…!!」

それは…モニモンに残しておいたネネからのメッセージであった。

「賢ちゃん、これって…」

「静かに」

「ダークナイトモンの目的は、3人のジェネラルからデジクロスの力を操る資質…交わりの旋律(クロス・コード)を引き出し、それを1つのジェネラルとXローダーに集めることによって、負のデジクロスの力を齎すXローダー…ダークネスローダーを作り出し、またそれを操り、ダークナイトモンの意のままに動くジェネラルを手に入れることです」

「ダークネスローダー…?」

ブイモンが疑問符を浮かべながら、ネネのメッセージに耳を傾けた。

そして、レインゾーンのダーク・クリスタルパレスでは大輔がネネ本人から同じ話を聞いていた。

手枷は外されたが、逃げられないように檻に入れられている。

「ダークネスローダーの齎す力…強制デジクロスは…相手のデジモンの意志に関係なく一方的にデジクロスし、その力のみを取り込むことの出来る邪悪な力よ。」

「(ダークネスローダー…デジモンカイザーだった頃の賢が使っていたD-3と同じ…いや強化版みたいなもんか…)」

ネネの話に耳を傾けながら、ダークネスローダーと暗黒D-3が似ていると大輔は思った。

他のデジモンの意志を無視したような機能が似ている。

「この力を使うことで、ダークナイトモンは理論上無制限にパワーアップを繰り返すことが出来る…この城のデジモンを取り込むだけでも、少なくとも三元士以上の力を得るでしょう…」

「あんな奴が三元士以上に…まずいな…」

「安心して大輔君。」

「ん?」

「彼は悪人だけど合理主義者よ。クロス・コードを失い、ただの人間に戻るあなたからは興味を失い、放置するだけでしょう…どこまでアテになる情報か分からないけれど…果てない荒野の世界。コリドーゾーンのコードクラウンが人間界に繋がっているという噂があるわ。いつかヒカリさん達と合流して…それを探してみるのもいいかもね」

「コリドーゾーンってとこのコードクラウンが現実世界に繋がってる?」

それを聞いた大輔が思わず聞き返した。

でも何故自分にそんな情報を与えるのだろうか?

「どうして俺にそんなことを?ネネさんはコトネちゃんと一緒に現実世界に帰るのが目的じゃないんですか?ていうか、ダークナイトモンの目的とコトネちゃんを救うことに何の関係が…まさかあんた、ダークナイトモンの意のままに動くジェネラルに!?」

大輔はネネが何をしようとしているかに気付いた。

一方スイーツゾーンでネネのメッセージを聞いていたブイモン達は。

「数年前…孤児の赤子だったスパロウモンを助けようとして私はXローダーを手に取り…妹と共にこのデジタルワールドに迷い込みました。始めは戸惑うことばかりでしたが…少しずつ知人も増え、この世界の仕組みや…デジクロスの力についても知り…ようやく本格的に人間界へ帰る方法を探し始めようとした矢先、妹のコトネが体調を崩し…眠ったまま意識が戻らなくなってしまったのです。そんな折、私達の前に現れたのが、スカルナイトモンとデッドリーアックスモン…ダークナイトモンの正体…デジクロスする前の姿です。」

「スカルナイトモンとデッドリーアックスモン…スパロウモンの話でも出たな」

「あの姿はデジクロスした後だったのかぁ!!?」

「なる程な…あの強さにも少しは合点がいくぜ…」

たった2体のデジクロスでリリスモンとそこそこ戦えるレベルになるのだとしたら、単体時も相当な強さなのだろう。

ネネのメッセージはまだまだ続く。

「彼らは私に語りました。体に宿るクロス・コードを見出され、ジェネラルとしてこのデジタルワールドに来るはずだったのは私だけで、妹はただ近くにいて、巻き込まれただけだった…ところが偶然にもコトネも不完全ながらクロス・コードを持っていた…!そのことが幼いコトネの体に負担をかけ、生きる力を奪っているのだと…」

「クロス・コードってそんなに体に悪いのか?でも大輔達は平気そうだぞ?」

「恐らく不完全だからよ。内包した不完全な力ほど体に害がある物はないわ」

そして再び、レインゾーンでは…。

「私達は早くに両親を亡くして遠縁の家に預けられたわ。コトネはたった1人の肉親なの。私は何があってもこの子を失いたくなかった…!彼らがダークネスローダーを作り出す過程でコトネの体からクロス・コードを取り除くことが出来ればあの子を助けることが出来る…私はそれがどんな災厄をデジタルワールドに齎すかを承知で彼らの陰謀に加担することを決めたの…」

「ダークネスローダーをネネさんに使わせるために…あの野郎は何するつもりなんだ?」

「ダークナイトモンは魔術を使って私の心を永遠に封じ込め、意のままに操る用意があると言っていたわ…私はこれからデジタルワールドに永遠の闇の支配を齎す本物の魔女になるのよ。それが…私がダークナイトモンと交わした取り引き…」

それを聞いた大輔は…そしてスイーツゾーンでネネのメッセージを聞いていたヒカリ達も驚愕していた。

「そっ…そんなっ…!嘘でしょネネ…!!?」

「成る程な、ネネがお前を遠ざけたのはダークナイトモンに強制デジクロスされないようにするためか!!ふざけやがって!!マグナモンへの進化が今でも出来るなら一瞬であいつを消し飛ばせるのに!!」

「…許せねぇっ…!」

拳を握り締めるシャウトモン。

その横でキリハも吐き捨てるように言う。

「ふん…!確かに度し難いな、あのダークナイトモンという輩はっ…!」

「違ぇっ…こんな悲しいことがまかり通ってる…今のデジタルワールドが許せねえっ!!」

「シャウトモン…」

「俺達ぁてんでんバラバラに生きてんだ…そりゃあ、いがみ合ったり喧嘩したりすることもあるだろうさ…!!けどっ…全力でぶつかり合って分かり合うことが出来りゃあ…みんなそれぞれのハッピーを掴み取ることが出来るはずだ…!!こんな一方的に…誰かの都合で誰かの心が押し潰されるなんてことがあってたまるかっ…!!」

シャウトモンの言葉を聞いた全員の心に何かが響いた。

「ジェ…ジェネラルのみんな!お願いだっ!!僕をネネの所に連れて行って…!!」

スパロウモンがタイキ達に土下座をして懇願し始めた。

「僕の体に登録されたログをXローダーかD-3Xで辿ればネネ達のいるレインゾーンに行くことが出来るはずだ!!行って何が出来るのか分からないけど…僕は…僕はネネの傍にいなきゃ…!!」

「…頭を上げてくれスパロウモン。大輔やネネさんを救いたいのは僕も同じさ。僕は行きますよレインゾーンへ!!」

「俺も行くぞ!シャウトモンが言ったように…あんな奴の都合のためにあの娘の心が押し潰されそうになってるなんて…放っとけない!!」

「私も行きます!!大輔君を、ネネさんを助けたい!!」

賢、タイキ、ヒカリがそう言うとアカリ達も頷いた。

「俺もレインゾーンに行こう」

何とキリハまでレインゾーンに向かうと言う。

「何でお前が?」

「本宮大輔は俺の部下になる男…それを潰されてたまるか。それにあのダークナイトモンの外道っぷりが気に障った…故に叩き潰す!!」

タイキが尋ねるとキリハは大輔の救出とダークナイトモン討伐が目的のようだ。

「ありがとうございますキリハさん。心強いです」

「精々足を引っ張らんようにするんだな一乗寺賢」

「おいおい、本当に奴らとやることになってしまったぞ。」

「珍しいな、キリハのあんな態度は…ありゃあ噂に聞くツンデ…」

「おっと、みなまで言うな?後でぶっ飛ばされるぞ」

メイルバードラモンがグレイモンの口を閉ざすが間に合わず、グレイモンはキリハにぶっ飛ばされた。

「(凄え…)」

グレイモンの頭に出来たタンコブを見てブイモンは思わず胸中で呟いた。

「大輔君…今、助けに行くから…」

ヒカリの呟きが聞こえたキリハはヒカリに尋ねる。

「本宮大輔の元まで行ったら何を言うつもりだ八神ヒカリ?」

「え?そ、それは…迷惑をかけたから謝りたくて…私が人質にされたからこんなことに…」

その言葉にキリハは思わず溜め息を吐いた。

「本宮大輔に言うべき言葉は断じて謝罪などではないぞ八神ヒカリ。」

「え?」

「俺が人質にされたお前を無視してダークナイトモン達にグレイモン達を向かわせようとしたのを本宮大輔が止めたという話は覚えているな?」

「は、はい」

「…土下座だ。」

「……え?」

土下座という単語にヒカリは目を見開いた。

「…激昂した俺達を止めるために、お前を救うために…奴は俺達に土下座をしたのだ。勢いを付けすぎたためか、額から血を流してまで、止めてくれと懇願し、お前を大事な女なのだと言っていた…」

「大輔君が…?」

「奴の愚直なまでに真っ直ぐな性格を考えれば、あのような外道に従うなど腸が煮え繰り返る程のはずだ…しかし、そんな自分の誇りよりも…お前が余程大事だったのだろうな。誇りを捨ててまでお前を救おうとした本宮に謝罪するのは、奴の決意に泥を塗ることになるぞ。」

キリハの言葉にアカリも頷くとヒカリの肩に手を置いた。

「キリハ君の言う通りよヒカリちゃん。ヒカリちゃんが大輔君に言わなきゃいけないのは“ごめんなさい”じゃない…“ありがとう”よ」

「…はい…!!キリハさん、アカリさん…!!」

怪我をしてまで、屈辱に耐えてまで自分を救ってくれたことに対しての感謝の言葉を伝えるために絶対に大輔を救うと決めたヒカリ。

「お前は幸福者だぞ。あのような男に大事にされているのだからな」

「へっ!?あ、あの…」

キリハの発言に赤面するヒカリ。

「こほん、では行きましょうか…」

脱線しそうなので、賢が咳払いするとスパロウモンの力を借りてレインゾーンに。

「(…もう1人気に障る輩は…気高い淑女の決意に泥を塗りつけた…蒼沼キリハという男だ!!この恥を雪がずに王を名乗れるかっ…!!今行くぞ天野ネネっ…!)」

キリハは口には出さなかったもう1つの目的、天野ネネ救出を胸にレインゾーンに向かうのであった。 

 

第14話:激突

ネネから全ての話を聞いた大輔は思わず膝をついていた。

「…ネネさん、ごめんなさい…ネネさんの気持ちも考えないで、俺達…色々と酷いこと言っちゃいましたよね?」

「何を謝っているの…今まで多くのデジモン達を騙し…傷つけて、悪女魔女と言われるだけのことは充分にして来たわ。そのことに何一つ責任を取ろうともせず、素知らぬ顔で消えようとしている。恨まれる理由はあっても同情される理由なんてないわ…」

「でも…っ!!ネネさんだけが悪いんじゃねえよ…俺にもネネさん達と同じくらい年が離れた姉貴がいる…ネネさんと違って家事洗濯は駄目駄目で、理不尽で部屋の片付けすら俺に押し付けて、文句ばかりで嫁の貰い手がいるのかなって俺に心配させるくらいで、ネネさんの爪の垢煎じて飲ませてやりたいくらいの超絶駄姉ですけど…」

「(ひ、酷い言われよう…)」

「でも、そんな駄姉でも…もし姉貴がそんなことになったら…俺もネネさんと同じことしてた。だって…どんなにムカついても姉貴は…俺のたった1人の姉ちゃんだから…!!」

涙を流しながら言う大輔に、ネネは立ち上がって上着を脱いで、ハンカチを取り出した。

「優しいのね大輔君。口は悪くてもきっと大輔君のお姉さんも大輔君のことを大事にしていると思うわ。だってこんなに優しい子なんだもの。きっとお姉さんも素直になれてないだけよ…。再会したら素直にお姉ちゃんって言ってみなさい?きっと喜んでもらえるわ」

上着を大輔に着せて、ハンカチで涙と額の血を拭く。

「痛っ…ネネさん、上着…」

「冷えたでしょう?さっき少し雨にも濡れたしね…」

「でもそれはネネさんだって…」

「いいの…心も体も全部取り引きの材料にしてしまって、あなたにしてあげられることがもうこれくらいしかないのよ…その上で厚かましくも…あなたの優しさに甘えたい…!!コトネと…スパロウモン達のことをお願い…!!あの子達は誰かに私の罪を擦り付けられるかもしれない…!!それにスパロウモンには…私に懐いてくれるのをいいことに嘘ばかり教えてしまったわ…!あの子がこれ以上道を踏み外さないように導いてあげて欲しいの…!!」

「………分かったよネネさん…しばらくの間、スパロウモンもコトネちゃんも俺が守る…」

「ありがとう…大輔君…」

「そして!!今は無理でもいつかネネさんを助ける!!」

「え?」

「ネネさんがいなくなったらスパロウモンやコトネちゃん達は悲しむ。だから何が何でも絶対に助け出す。」

大輔はスパロウモン達を守り、ネネを救うと言い出す。

「ネネさんは全てが終わったら、自分のやったことにケリをつけるんだ!それが辛いなら、俺だって力を貸すから!!」

「だ…大輔君…でもっ…」

「大丈夫、クロス・コードが無くてもデジメンタルとかは使えるだろうし、デジクロスだってまだ賢やヒカリちゃん達もいる。まだまだ戦えるさ!!俺は…ネネさんが罪の意識に囚われたままなのが嫌なんだ!!だから、絶対に助ける!!何が何でも!!」

「ありがとう…大輔君。本当に優しい子…最後にあなたと話せて良かった…。私に希望をくれて…ありがとう」

「あー…少年少女達。」

声に気付いて大輔とネネが見上げると、ダークナイトモンとその腹心…ダスクモンがこちらを見下ろしていた。

「盛り上がっているところ、空気を読まずに悪いのだが…そろそろいいかね?儀式の準備が整ったのだ。」

ダスクモンが腕にかけていた手枷をネネに差し出す。

「…これは?」

「見ての通り手枷だ。着けてもらいたい。君の尊い覚悟を疑うわけではないが…こと自らの命が懸かっている時、人は最後まで何をするか自分でも分からないものだ。僅かな気の迷いが儀式に致命的な影響を与えるかもしれない…君と私…双方にとっての保険と思ってほしい…嫌かね?」

「…いいわ」

「ネネさん…っ…」

ネネは手枷を着け、鎖に繋がれた。

「さて…今ここに、全ての準備が整い…我が積年の願いが叶う時が…いや、全てが始まる時が来たのだ…!!」

ダークナイトモンが指を鳴らすと、コトネが入った水晶が砕け散り、そしてゆっくりとダークナイトモンの隣の椅子に降りた。

「今まで…本当にありがとうネネ…!君の働きによって儚い夢に過ぎなかった我が野望がこうして現実のものとなるのだ…!凍てついた我が魂にも…今は感動を禁じ得ないよ…」

ダークナイトモンは自身の胸に手を翳しながら言う。

「けっ、薄ら寒い芝居しやがって…」

吐き捨てる大輔にダークナイトモンは溜め息を吐いた。

「やれやれ…君もノリが悪いな。ああ…そうだ。礼と言ってはなんだが、1つ面白い小話をしてあげよう」

「小話…?」

ダークナイトモンは小話と言う名の残酷な真実を言う。

「君の妹…コトネが不完全なクロス・コードを持っていたことによって体に負担がかかり、眠りについたという話…あれは実は嘘だ」

「…何?」

「……え…?」

ダークナイトモンの言葉に一瞬思考が止まってしまった大輔とネネ。

「この子は…寧ろ君や大輔君よりも強力なクロス・コードを体に宿している。彼女の体に負担をかけているのは、本当はその強力すぎる力だ。」

「…ど…どうい…う…こと…?」

「まさか…お前が意のままに操るジェネラルってのは…コトネ…ちゃん…じゃねえだろうな…?」

ダークナイトモンの言葉に嫌な予感を覚え始めた2人の声は震えている。

そしてダークナイトモンは大輔の言葉に満足そうに頷いた。

「うむ、正解だ。流石に鋭いな大輔君!我がジェネラルの候補として私が真に求めていたのはネネではなく、彼女…コトネと言うことだよ」

「じゃあ…てめえがネネさんに手枷を着けたのはネネさんが逃げないようにするだけじゃなくて…ネネさんの目の前でお前の操り人形にされるコトネちゃんの姿を見せるためか…っ!!」

「素晴らしい洞察力だ。正にその通りさ…良かったねネネ。君は命も心も失うことはないんだ。生きたまえ、妹のいない世界で…犯した罪と生み出した憎しみの全てを背負ってね」

それを聞いたネネの表情は呆然とした物から徐々に絶望の表情に変わる。

「てめえ…っ!!」

奥歯を噛み砕かんばかりにダークナイトモンを睨み据える大輔。

しかしダークナイトモンは口元を押さえながら肩を震わせていた。

「クッ…!ブフッ…グフッフフフフフ…グワァーーーッはっはっはっはっはっは!!ヒィーーーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!!!ヒァーーッハッハッハッハッハッハァ!!!!」

「てめえええええ!!」

ネネへの嘲笑にとうとう我慢の限界を超えた大輔が叫ぶが、ダークナイトモンの嘲笑は止まらない。

「本来気高く、慈悲深い君が自らを悪女と任じ…取り返しのつかない罪に手を染め、絶望の淵に堕ちてゆく様は……正直、そそったよ…」

ダークナイトモンはネネの元に歩み寄る。

そして指でネネの顔を上げさせ、ダークナイトモンは醜悪な笑みを浮かべる。

「ああ…!!何と哀れな姫君なのだろう君は…!!ほおら…今正に最後の罪が君の足元から生まれようとしているよ?見たまえ!」

ネネの影に異変が起き、大輔とネネの視線が自然にそちらに向かう。

「なっ…!?」

「な、何だあの化け物は!?」

ネネの影から伸びているのは、複数の眼を持った怪物である。

「おやおや、化け物とは酷いな大輔君。あれも歴としたデジモンだよ。シェイドモンと言ってね、人の影に潜み、宿主の絶望を喰らって羽化する魔界のデジモンだよ…」

「あんなのが…デジモンだってのか…?」

「私の計画の最後の要となる存在だ…かねてより君の影の中に奴の幼生を植え付けておいたのだ…ここまで見事に育つとは!これが3人のクロス・コードを吸収し、依代たるジェネラルに憑依することによって、その者の持つXローダーをダークネスローダーへと変えるのだ…!!さあっ…シェイドモン!!彼らのクロス・コードを喰らえっ!!」

ダークナイトモンが叫んだ瞬間、魔法陣が浮かんだ。

「うあっ!?こ、この模様が…クロス・コード!?」

「きゃあっ!あっ!!あああああ!!」

大輔、ネネ、コトネの体に紋様が浮かび上がり、全身に激痛が走る。

「がああああ!!?畜生…ダーク…ナイトモン…!!」

「フハハハハハ!!化かし合いは私の勝ちだなネネ!!本宮大輔君、私を警戒しすぎてD-3Xとデジモンまで置いてきたのが仇となったな!!見よや兄上っ!!私はっ…私は今こそあなたを越えっ…」

次の瞬間、城が揺れ、大輔達のクロス・コードの吸収が止まった。

「ぐっ、何だ!?」

大輔はバランスを崩して倒れる。

「この揺れは…地震などではないな…」

「だっ…ダークナイトモン様っ!!報告します!!城の南東に中規模の戦闘型デジモンの部隊が展開中!!強力な長距離砲でこの城に狙撃をっ…!!」

来たのだ、彼らが…大輔達以外のデジタルワールドの希望達が…。

外道騎士・ダークナイトモンとの戦いが始まろうとしている。 

 

第15話:進化の光

賢は見事なまでに正確な射撃に感心していた。

「弾着!!」

「戦果報告っ!!」

メイルバードラモンがエネルギー砲の弾着を確認すると叫び、すかさずキリハが結果の確認を取る。

「敵城塞中央上部に命中!!見張り塔と思われる施設を粉砕!!」

「メタルグレイモンとサイバードラモンのデジクロス体、メタルグレイモン+サイバーランチャー、中々の威力と正確さですね…」

「当然だ。次弾装填っ!!」

「感心してる場合じゃないでしょ賢!何いきなり撃っちゃってんのおーっ!!?」

「大輔やネネさんに当たったらどうすんのよ!!」

キリハの隣にいる賢にツッコミを入れつつ、リリモンがキリハに詰め寄り、サンフラウモンはキリハの頭に噛みついた。

因みにタイキ達とは別行動中でシャウトモン、ブイモンとテイルモン、スパロウモン以外のメンバーは此処にいる。

「ぐっ…鬱陶しいぞ観葉植物共!まあ見てろ!本宮大輔と天野ネネはダークナイトモンにとって失うことの出来んカードだ…何があろうと奴はそれを守る!第二射っ、撃ぇっ!!!」

「「きゃああああああっ!!」」

発射時の余波で吹っ飛ぶリリモンとサンフラウモン。

エネルギー砲は凄まじい勢いで中腹部に向かうが当たる直前で四散した。

「ビームが四散した!!中腹部に強力な魔法盾が張られているぞ!!」

「ふん…これで奴らの居所が知れたな…」

「ええ、さあ…ここからが本番です!!」

「ご…強引ぐまいうぇい…」

「ていうか賢、冷静すぎ…!」

転がっているサンフラウモンとリリモンが隣に立っているキリハと賢にツッコミを入れる。

そして城内にいるダークナイトモンも部下のマミーモンに指示を出す。

「ハーピモン、ゴーレモン部隊を出せっ!!オニスモンにも迎撃させろっ!!正面から向かってくるだと…?そんな寡兵で今更何をするつもりかね蒼沼キリハ君…!」

そして城外では、キリハと賢も敵部隊が出て来たのを確認する。

「キリハさん、僕達が道を作ります。ジュエルビーモン!!」

「了解!スパイクバスター!!」

居合いの要領で槍を光速で横薙ぎし、それによって生じた衝撃波で前方の敵が吹き飛ばされた。

「キリハさん、今です!!」

「全部隊突撃開始!!メタルグレイモン!!ドルルモン!!バリスタモン!!デジクロス!!」

「ランページグレイモン!!」

メタルグレイモンがドルルモンとバリスタモンをデジクロスしたことで、より突破力を増した形態でジュエルビーモンと共に突撃する。

「うおおおおお!!」

「グルルオオオオ!!」

先頭のランページグレイモンとジュエルビーモンが咆哮しながら敵を薙ぎ倒す。

「サイバードラモンは上空のオニスモンを牽制しろ!!奴に介入されればこちらの突破力を削がれる!!」

「ギギィッ!!」

キリハの指示を受け、サイバードラモンはオニスモンに突撃する。

「彼我戦力差…11対1と言うところか」

「ふん!大将首を取らん限り、生きては帰れんと言うことだな」

「まあ、ここは敵の拠点ですからそれくらいは想定の範囲内ですが。」

「そういうことだ。ランページグレイモンとジュエルビーモンを先頭に長蛇の陣で突入する!!この軸からはぐれればたちまち敵の大軍に飲まれて命は無いものと思えっ!!」

「「了解!!」」

キリハの言葉に賢とジュエルビーモンが力強く答える。

【了解じゃなーい!!お家に帰りたーーーい!!!】

リリモン達の叫びが戦場に木霊した。

「ランページグレイモン!!僕が援護する、思いっ切り暴れてくれ!!」

「おうよ!!俺はっ…俺はこんなっ…大暴れが大好きだーーーっ!!!!」

ジュエルビーモンの援護を受けながらランページグレイモンは前方の敵を吹き飛ばしていき、城内で戦況を見ていたダスクモンが驚愕している。

「ばっ…馬鹿な!?この戦力差で何故こちらが押されるのだっ!!?」

ダスクモンの後ろでダークナイトモンが冷静に分析する。

「敵の長蛇陣に綺麗に分断されて両翼の大半が全くの死兵だ!当然だな…やれやれ…我が軍の烏合の衆っぷりを露呈してしまった形だが…ま…少々時間を稼ぎさえすればよい…一乗寺賢君がいるならば工藤タイキ君達もいるはず…青の軍とあのブイモン達は強制デジクロスの素材として魅力的である…!!」

「だ…駄目よ、今来ては…!もう間に合わない…!!」

「変だなあ…」

キリハ達の戦いに違和感を感じた大輔が思わず呟く。

「?大輔君…!?」

「今はジュエルビーモンとグレイモンの実力差を活かした連携で有利だけど、城の中に入れば挟み撃ちにされちまう。それをあのキリハさん達が気付かないわけが…」

「儀式を続けるぞ!!さあ、シェイドモンよ!!残りのコードを吸収し、コトネへの憑依を完成させ…」

ダークナイトモンが言い切る前に後方の壁が吹き飛び、スパロウモンとネフェルティモンが突入してきた。

「ネフェルティモン!?スパロウモン!?」

「ヒカリ、いたわ!!大輔よ!!」

「大輔君!!」

「ネネーっ!!」

「大輔!!ネネ!!助けに来たぞ!!」

「てめっ…!何してやがる変態野郎っ!!」

シャウトモンの拳がダークナイトモンの脳天に炸裂し、地面に叩き付けられる。

「(な…っに!!?)」

自分に起きたことが信じられず、目を見開くダークナイトモン。

「よう、大輔。悪かった!!遅くなってさ、ほらD-3X」

「サンキュー、ブイモン……」

ブイモンからD-3Xを受け取ると、ヒカリに向き直り、ヒカリは血は既に止まったが、額の傷を見て辛そうにしている。

「大輔君…その…」

「ごめんなヒカリちゃん」

「え?」

言おうとした言葉を遮られて言われた謝罪の言葉にヒカリは目を見開く。

「ヒカリちゃんが風呂に入っているにしては遅すぎることにもっと気付いてれば良かったんだ。それよりもウェディンモン達と暴れていた時にヒカリちゃんが来ないことにおかしいって気付いてれば…危険な目に遭わせて…ごめん…」

頭を下げる大輔にヒカリは首を横に振って大輔の手を握り締めた。

「大輔君のせいじゃないよ、私が油断しちゃったからだよ」

「でも…ヒカリちゃんは俺のせいで…」

「大輔君」

「っ…」

大輔の言葉を遮るように言うと、ヒカリは笑みを浮かべながら言う。

「…助けてくれて、ありがとう」

その言葉に思わず大輔の目に涙が滲んだが、それを強引に拭うとブイモンに向き直る。

「ブイモン、行くぞ!」

「おう!!」

「マテリアルクロス!デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、地上最大の希望!サジタリモン!!」

勇気と友情のマテリアルクロスでサジタリモンにアーマー進化させると、ヒカリと目を合わせる。

「サジタリモン!!」

「ネフェルティモン!!」

「「ダブルクロス!!」」

「サジタリモンSM(スフィンクスモード)!!」

デジクロスによってサジタリモンの下半身がネフェルティモンの物に変わり、より強力な聖なる力と飛行能力を手にした状態になる。

「江東流星斬っ!!ちぇすとおお~っ!!」

ゼンジロウがゼンジロウCSを振るい、鎖を断ち斬る。

「あ…あなたは…!」

「ふっ…!ネネさんのピンチと聞いて馳せ参じました…」

「あ…ありがとう。ええと…ツムリデン次郎君!!」

「ハハハ、こんな時にもユーモアを忘れないなんて流石ネネさん!」

「おーい、ゼンジロウさーん。信じたくない気持ちは分からなくはないですけど今のネネさんは素です素。本気で間違えてますよ名前」

「間違いやすいのよねゼンジロウさん」

「orz…」

「………まあ、元気出せよ」

orzの体勢で崩れ落ちるゼンジロウを流石に哀れに思ったのか、サジタリモンSMがそっと肩に手を置いてやった。

「そうそう、いずれ良いことがあるわよ。」

「「紡ぎ・全自動」」

「剣ゼンジロウだ!!」

サジタリモンとネフェルティモンの間違いにゼンジロウはツッコんだ。

「ネネッ!!」

「スパロウモン!?」

「グッ…ム…!?(い…今のパワーはなんだ…!?不意を突かれたとは言え、この私が…一撃で叩き伏せられるなど…!!)」

「おい、ダークナイトモン…よくもふざけた真似しやがったな…ネネさんの心を踏みにじりやがって!!やれ、サジタリモンSM!!」

「お任せ、メテオネイルクラッシャー!!」

サジタリモンとデジクロスしたことで大幅に強化されたパワーとスピードによって繰り出されたサーベルレオモンの爪をコピーした爪はオリジナルにも匹敵する威力を誇る。

「速…」

回避が間に合わず顔面に受け、仰向けに倒れる。

「スパロウモン!私…私…!!」

「何も言わないでネネ!!ネネの苦しみを分かってあげられなくてごめん…!!もう絶対…ネネのことを1人になんてしないから!!待ってて!!コトネを取り返してくる!!」

スパロウモンはコトネを取り戻すために向かっていく。

「………」

「と…とにかくそういうわけだからっ!」

咳払いしながらネネに歩み寄り、手枷を外すアカリ。

「あんたが一人ぼっちで頑張んないといけなかった理由は分かんなくもないけどさ!もうあの馬鹿やお人好しの大輔君に一切合切バレちゃったんだから…観念して私達のこと頼んなさい!!あんたはもう何があっても1人じゃないんだからねっ!!」

自分を指差しながら言うアカリ。

その言葉に今まで張り詰めていた糸が切れたかのように涙が流れ落ち、ネネはアカリに抱きついた。

「も…もおお~しっかりしてよお~っ!!ちょ…調子狂うじゃないの~!!」

サジタリモンSMが猛攻を仕掛けるが、ダークナイトモンはそれを捌いている。

「サジタリモンとネフェルティモンのデジクロス体なのに!?」

「多分、デジクロス体としての強さはパイルドラモンより少し弱いくらいなんだ…完全体相当のサジタリモンがベースなのに…」

「コトネッ!!」

後少しでスパロウモンはコトネの元に着く。

「ムッ…させん…!!」

それに気付いたダークナイトモンはサジタリモンSMを弾き飛ばし、スパロウモンの前に立ちはだかる。

「どけえーっ!!」

スパロウモンとシャウトモンがダークナイトモンに向かっていく。

一方、城外で暴れまわっているキリハと賢達は。

「ジュエルビーモン!!最後の1体だ!!」

「うおおおお!!」

城門前の最後の1体を殴り飛ばして気絶させると、賢はキリハに報告した。

「キリハさん、城門前の敵を全て撃破しました。」

「うむっ!潜入組から連絡は!?」

「ヒカリさんからメールが来ました。大輔とネネさんは解放出来ましたが、ダークナイトモンの激しい抵抗を受け、ネネさんの妹さんは未だに捕まっ…」

賢が言い切る前に上空が照らされた。

思わず上を見上げると、オニスモンが口から破壊光線であるコズミック・レイをサイバードラモンに放っていた。

サイバードラモンはそれを軽やかにかわすが、光線は凄まじい威力で山をいくつも消し飛ばした。

「ちょ…!!?無茶苦茶強いじゃないあのオニスモンって奴!!」

「じゃが、サイバードラモンとやらも上手くあしらっておる!!適度に攻撃して注意を引きつけ…それでいて無謀な突進は一度も仕掛けとらん!!」

「い…以外にクレバーな奴なの?」

サンフラウモンがサイバードラモンのジェネラルであるキリハに尋ねる。

「ああ見えて並みのデジモンより遥かに高い知能を持っている。思考のシステム自体が我々と大きく異なっているために意志の疎通は困難だがな…」

「意志の疎通が困難だと言うのなら、どうやって仲間にしたんです?スカウトしようにも会話が出来ないんじゃ…」

「奴も俺達同様、強者を求めてデジタルワールドを彷徨っていてな。グレイモンが目をつけられて、まあ、戦いになったわけだ」

「…で、三日三晩2人してどつき合っていたらな?なーんか自然にお互いの言いたいことが分かるようになっとったんだ…」

「ふーん、馬鹿と天才は紙一重ってことかしらねー」

賢の質問にメイルバードラモンとランページグレイモンが答える。

それを聞いたリリモンは失礼なことをサラリと言い放った。

「天野ネネの妹は未だに捕らえられているか…ダークナイトモンめ、必死だな。ならばこのまま突入し、我らの手でダークナイトモンの首を取ってやるまでのこと…!!」

「やるのかキリハ…!!」

「正面から乗り込むの!?大丈夫?こういうのって罠とか待ち伏せとかあるもんじゃないの!?」

「その点は問題ないと思うよ。ランページグレイモンの火力を考えれば」

「火力?……まさか」

「こういうことだ。取って置きの挨拶だ。」

ランページグレイモンが城門に向けて全兵装を展開し、それらを解放した。

「ギガテンペスト!!!」

城門前にいた気絶しているデジモンと待ち伏せしていたデジモン達を吹き飛ばした。

「ごめん下さい…というわけだ。」

「なるほど…これが拠点突撃時の挨拶……勉強になりますよキリハさん」

「賢、お願いだから悪い影響を受けないで…」

サンフラウモンが懇願するように言うと次の瞬間に数体のレアモンが現れた。

「ま…まだ出て来るのぉ!?」

「ふん!数だけはうじゃうじゃと…!!」

突如、ドルルモンとバリスタモンが分離するとそれを見た賢はジュエルビーモンと共に着地した。

「キリハさん達は先に行って下さい!!僕は後続の敵を食い止めつつ、サイバードラモンと共闘してオニスモンを撃破します!!ドルルモンとバリスタモンは後続の敵を食い止めつつ後退するんだ。」

「ど…どうしたのよ!?みんなで一緒に行けばいいじゃない!!」

サンフラウモンの疑問に答えたのはドルルモンである。

「戦場で一番怖いのはな、敵に包囲されることなんだ。支援もない状態で四方八方から攻撃を受ければどんな強者でも耐えられん!!ダークナイトモンとの決戦には1体でも強力な戦力が必要だ。大輔達と合流した時に邪魔になる敵兵を1人でも減らさんといかん!!この狭い城内は足止めにはピッタリなんだ!!」

「それにオニスモンを撃破すれば奴は逃げるための手段を失い、戦力も大幅にダウンする。確実にダークナイトモンを追い詰め、倒すにはこちらも多少のリスクを負わなくてはね」

ドルルモンと賢の言葉を聞いたキリハは伊達にドルルモンがタクティモンの片腕と呼ばれていないことを、賢が大輔のデジクロスパートナーであることを再認識する。

「(あのタクティモンに片腕と呼ばせ、本宮大輔の相方なだけのことはあるか…!)フッ…精々奮戦するがいい…!!生き残れたなら我が部下に迎えてやらんでもないぞ!?」

「ごめんだね!お前さんの指揮はピリピリして肩が凝りそうだぜ!!」

「今は大輔の相方で満足していますので、僕も遠慮します!!(大輔は僕を救ってくれた…今度は僕が大輔を助ける番だ!!)」

「スパイクバスター!!」

即座にジュエルビーモンは槍を横薙ぎに振るい、前方の敵を一掃する。

「バリスタモン!!ドルルモン!!デジクロス!!」

「バリスタモンSR!!シクステッド・ストーム!!」

賢がバリスタモンとドルルモンをデジクロスさせ、バリスタモンSRの一斉掃射で入り込む敵を薙ぎ倒す。

「賢!!ココハ俺達ニ任セテ、ジュエルビーモンハ、オニスモンヲ!!」

「分かった!!」

オニスモンの元に突撃するジュエルビーモン。

ジュエルビーモンの接近に気付いたオニスモンが光線を放ってくるが、それをかわしながら槍で一閃する。

オニスモンの体に僅かな傷を刻んだ。

「やっぱりそう簡単には倒せないか」

賢は知らないが、オニスモンは賢達の世界では究極体に分類されるデジモン。

賢はタクティモン以来となる格上との戦いに身を投じることとなった。

「スパイクバスター!!」

槍を光速で突き出し貫通力の高い衝撃波を繰り出すが、オニスモンの体に僅かな傷がつくだけ、オニスモンはジュエルビーモンに光線を放とうとする。

「さて…ジュエルビーモンの攻撃じゃ、奴の体に僅かなダメージしか与えられない……体…?そうだ…ジュエルビーモン!奴が光線を放った直後に、奴の体内に!!」

「分かった!!」

オニスモンが必殺技を放つ。

ジュエルビーモンはギリギリで回避して、口からオニスモンの体内に侵入した。

「はああああ!!」

ジュエルビーモンはオニスモンの体内で何度も拳を繰り出し、苦痛のあまりオニスモンが悲鳴を上げる。

「流石の伝説のデジモンも、体の内側はどうしようもない!!行け、ジュエルビーモン!!」

「スパイクバスター!!」

体内で槍を光速で突き出し、それによって生じた衝撃波でオニスモンの背が内側から吹き飛ぶ。

背が吹き飛んだオニスモンは絶命し、落下していく。

オニスモンを撃破した賢はヒカリにメールを送り、そしてヒカリは自身のD-ターミナルにメールが来たことに気付き、確認する。

「みんな!!賢君とジュエルビーモンがオニスモンを倒したわ!!」

「何だと!?出鱈目を言うな!!オニスモンがそう簡単に…」

城の外を見遣ったダークナイトモンが見た物は、背が吹き飛び、絶命して落下していくオニスモンの姿。

「馬鹿…な…!?」

「俺達の力を甘く見たな紳士さん!!メテオネイルクラッシャー!!」

「ラウディロッカー!!」

サジタリモンSMとシャウトモンがダークナイトモンを殴り飛ばす。

「(どっ…どういうことだっ…!!?サジタリモンはともかく、シャウトモンは単体ではバグラ軍の地方司令官にすら敵わないレベルのデジモンのはず…そんな奴が…何故私にこれほどのダメージをっ…!?そ…それに…奴の体から溢れ出している金粉のような光の粒は何だ…!!?本当にあれは“シャウトモン”というデジモンなのか…!!?)」

「大輔君、あれは!?」

「ヒカリちゃんにも見えるか!?あれは進化の光だ!!シャウトモンは進化しようとしてるんだよ!!」

「進化…そうか、強い決意があいつを変えようとしている…!今までのシャウトモン以上の何かに…進化しようとしているんだ!!」

「馬鹿なことを言うな!!一度ある姿に生まれついたデジモンがその性質を大きく変えることはない!!皆、その分を守り、限られた可能性の中で死んでいく…それがデジモンと言うものだっ!!」

タイキ達の言葉をダスクモンが否定し、タイキ達に突っ込んでいく。

ダスクモンの剣をゼンジロウが弾いてくれた。

「そんな風に決めつけなくたっていいだろ!!」

「ゼンジロウ!!」

「人間だってデジモンだって…強くなろうと頑張ってりゃ変わることがあってもいいじゃないか!!」

「その通り!!」

「ギギィ!!」

「ガッ!!?」

賢と退化したワームモンを乗せたサイバードラモンがダスクモンを蹴り飛ばす。

「賢、やったな!!」

「ふふ、まあね…サイバードラモンはダスクモンの相手を頼めるかい!!?」

「ギィ!!」

起き上がり、再び向かってこようとするダスクモンをサイバードラモンが迎撃する。

シャウトモンがダークナイトモンを蹴り飛ばし、スパロウモンはコトネの元に。

「コトネッ!!もう大丈夫だからねっ!みんなで一緒にこんな所から早く出よ…」

「スパロウモン!!後ろ…ぐはっ!?」

サジタリモンSMがスパロウモンの後ろに現れたデジモンに気付き、叫ぶがダークナイトモンに弾き飛ばされた。

「えっ…!?きゃんっ!!」

デジモンはスパロウモンを弾き飛ばす。

「ツワーモンか…!?」

「ネネさん、何だよあのデジモンは!?」

「し…知らないわ!あんなデジモンが配下にいたなんて…!!」

「Hey殿下!!だらしないネ!!」

ツワーモンと呼ばれたデジモンはダークナイトモンに愛用の槍を投げ渡す。

「応!!ネネの監視にお前の存在を伏せておいたのがここで役に立つとはな…!」

今まで使っていた武器を口で咥え、愛用の槍を受け取る。

「(そうだっ…このような雑魚にかかずらって立ち止まっておるわけにはいかぬ…!!)トリーズン・ヴォーテクス!!」

ダークナイトモンの周囲から闇の波動が噴き出し、シャウトモン達を弾き飛ばす。

「うわあああ!?」

「がっ!!ぐがあっ!!?」

「ぐあああああ!!!」

石版に叩きつけられたシャウトモンを右肩のブレードで抑え、スパロウモンを槍でもう1つの石版に叩きつけた。

「スパロウモン!!」

「シェイドモン、コトネを確保しろっ!!残りのクロス・コードは後で吸収すればいいっ!!青の軍と奴らを迎え撃つために今は早急に強制デジクロスの力が必要なのだっ!!」

オニスモンが撃破された今、サジタリモンSM達とまともに戦える存在はダークナイトモンのみ、このままでは数に押され、敗北してしまう。

ダークナイトモンの命令に従い、シェイドモンはコトネの元に向かう。

「だっ…駄目え!!コトネーーーッ!!!」

ネネが駆け出した次の瞬間、壁が吹き飛んでメタルグレイモンが現れた。

「キリハさん!!?」

「奴だ!!引き裂けぇ!!」

メタルグレイモンがシェイドモンをトライデントアームで引き裂こうとするが…。

「ヌウウオオオオオ!!!」

ダークナイトモンがメタルグレイモンに体当たりを喰らわせ、妨害した。

「ぐあっ!!」

「キリハ君!!?」

キリハはそれによって地面に落下し、メタルグレイモンは地面に叩きつけられた。

「チェックメイトだ!!闇の勝利だっ!!行けぇ、シェイドモン!!」

「ギイィ!!」

「くそ、間に合わねえ!!」

大輔達が走り出すが、とてもではないが間に合わない。

その時、ネネは自分のXローダーが反応していることに気付く。

「(まさかっ…!?)しっ…シェイドモン!!天野ネネ!!強制デジクロス!!!」

「ネネさん、何を!?」

それを聞いた大輔達が驚愕する。

「なあっ…!?馬鹿な!何を血迷ったことを…!!!」

ネネとシェイドモンに異変が起きた。

人間とデジモンのデジクロスが…始まったのである。 

 

第16話:奇跡を起こせ

強制デジクロスによってシェイドモンがネネの体に吸い込まれ、融合していく。

「あっ…天野…ネネ…!!君という…君という女はっ…!!」

キリハは落下したことにより怪我をしたのか、頭から血を流しながらも何とか立ち上がる。

「キ…リハ…君…?はっ…離れ…て…!わっ、私…!もうすぐ…本物…の…!魔女にっ…!!」

「魔女などではないっ!!この涙は…気高い真の淑女の涙だっ…!!騎士の流す血と引き換える価値があるっ…!!必ず…君を取り戻す!!この俺の全ての誇りを賭けるっ…!!」

「……不思議な人ね…あなたは…」

とうとう限界が来たのかネネは意識を失い、次に目を開けた時、それはネネではなかった。

「っ!!」

「触れるな下郎っ!!」

「ぐうっ!!」

ネネに弾き飛ばされたキリハを咄嗟にタイキが受け止めた。

「…お見苦しい姿で御前に立つことをお許し下さい殿下…」

「っ!シェイドモンか…!!?」

「はっ…!!」

「(ばっ…馬鹿なっ…!?人間と…デジモンがデジクロスするなど…!!い…いや…このデジタルワールドにあっては人間もまたデータの塊…!!人とデジモンが融合することによって新たな力が齎されたという伝説もないわけではない…!!そ…それに、シェイドモンとネネはあの時まだ影に取り憑くという形で半ば融合状態だった…そのことがネネのXローダーに強制デジクロスに近い力を与えたのか…?)っ!Xローダーは…!?」

「これに…」

シェイドモンの掌にあるのは変化したネネのXローダーであった。

「(変化しているっ…!!古文書にあったダークネスローダーに違いあるまい…)…ネネと分離することは?」

「…出来ませぬ。強制デジクロスの力が影響しているのやも…」

「…だろうな…(だが意識はシェイドモンが支配している…人とデジモンの意識の有り様の違いがどう作用したか分からぬが…その点はネネのアテが外れたわけか…何というイレギュラー…!!状況が錯綜し過ぎている…!この状態を解析し、2人を分離させることは不可能に近いだろう…幾百年待ち続けた千載一遇のチャンスが…っ!!?)」

「大輔君…ダークナイトモンの様子が…」

「もしかしたら、ダークネスローダーに異常が起きたのかもな」

大輔達からすれば、コトネではなくネネがシェイドモンと同化したというくらいの認識しかない。

ダークナイトモンは顔を上げ、シェイドモンに指示を出す。

「シェイドモンよ…」

「はっ!」

「試してみねばなるまい。ダークネスローダー…完全とは言わなくてもある程度の力は発揮するはず…」

「御意!ダークナイトモン…!ダスクモン!!」

シェイドモンは強制デジクロスの対象をダークナイトモンとダスクモンに。

「!?でっ…殿下…!?」

「…強制デジクロス…!!!」

「おっ、お待ちをっ…!!わ…私は殿下の腹心として長らく…っ、ウオオオオオオオオ!!?」

ダスクモンの意志を無視して、ダスクモンはダークナイトモンに取り込まれ、リリスモンとの戦いで失った左腕の代わりとなる。

「…ふむ…」

「あ、あの野郎…自分の仲間さえ…」

サジタリモンSMが不愉快そうにダークナイトモンを見つめる。

そしてダークナイトモンは左腕となったダスクモンを見つめ、今の状態を確認した。

「(9割方、私が支配出来ているが…僅かながらダスクモンの意識が生きているのを感じる…)」

ダスクモンであった左腕は、ダークナイトモンの意志とは関係なく小刻みに震えている。

「(完全に同化させるにはある程度時間が必要だろう…。三元士クラスのデジモンを一方的に取り込むことは出来まい…寧ろ私の方が取り込まれる危険が大きい…!!)」

恐らく実力差がありすぎる相手に不完全な強制デジクロスでは例えベースがダークナイトモンであろうとも逆に意志を抑えつけられ、取り込まれる可能性があるのだろう。

「(天野…ネネ…!!道化風情がよくも…よくもやってくれたものだ…!!……いや……彼女だけでない…この不愉快な茶番劇はこいつら全員で引き起こした物と言えるだろう…この高貴なる私の計画をこんな…こんなゴミ虫共がっ…!!)おっ…の…れえええエエエエエエェェェエエ!!」

永きに渡って企ててきた計画を妨害されたダークナイトモンの怒りが爆発する。

「シェイドモン!ツワーモン!!この城を破棄するっ!!これよりは流浪の身となり、力を蓄え、再起を図ることとなろう…!だがその前に!!この忌まわしき柵(しがらみ)を今ここで清算するっ!!」

「ほざけ!清算されるのはどちらの方か思い知らせてやる!!」

「ここまで来てホイホイ逃がすと思ってんのか!?」

「オニスモンはもういない!!ご自慢の最高戦力も逃げ場もないぜダークナイトモン!!」

メタルグレイモン、シャウトモン、サジタリモンSMが叫ぶ。

「黙れぇ!!出でよデビドラモン!!」

ダークナイトモンが叫ぶと複眼の竜型デジモンが現れ、ダークナイトモンの隣に降り立った。

「デビドラモンか…それくらいで俺達を止められると…」

大輔の言葉を遮るようにシェイドモンはダークネスローダーを構えた。

「モノクロモン、カブテリモン。強制デジクロス!!」

「!?」

「な…何をするつもりだ…?」

「ガルルモン、スカルグレイモン。強制デジクロス!!クワガーモン、エアドラモン強制デジクロス!!メタルティラノモン、メガドラモン。強制デジクロス!!アンドロモン、メタルマメモン強制デジクロス!!デジクロス!!デジクロス!!デジクロス!!」

デジクロスを繰り返して現れたのは、大輔達がやっとの思いで倒したキメラモンと、3年前に太一達が倒したムゲンドラモンであった。

「キ、キメラモン!?」

「ムゲンドラモン!?」

賢とヒカリが目を見開いてキメラモンとムゲンドラモンを見つめるが…。

「キメラモン!!ムゲンドラモン!!」

「お、おい…まさか…」

「強制デジクロス…!!」

キメラモンとムゲンドラモンを強制デジクロスしたことで今まで見たことがない程に醜悪で強大なデジモンが誕生した。

「ミレニア…モン…!?」

脳裏に浮かんだ名前を口にする賢。

あのデジモン…何故か見覚えがあるような気がするのだ。

「フハハハハハハハハ!!見たまえ!!何という醜い姿だ!!古のデジタルワールドを暴虐の元に支配したと言われるミレニアモンの再来だよ!!尤も…これだけ多くの意識が混濁しているのだ。狡猾な知恵者だったと伝えられる嘗てのミレニアモンとは違い…そいつは狂気のままに食らい破壊するだけの正に獣だがね…!!君達の夢も!!理想も!!誇りも!!信念も…!!全て心を持たぬ化け物に食らい尽くされて終わるのだ!!!」

「ふざけるな!!お前の思い通りになると思うなよ!!」

サジタリモンSMが叫ぶと、大輔が立ち上がる。

「そうだなサジタリモン。タイキさん、キリハさん。それからヒカリちゃん達も力貸してくれませんか?」

「大輔!?」

「本宮っ…!?」

「ミレニアモンは…あいつらはダークナイトモンに無理やり暴れさせられてるんです。助けてやらないと…!!」

サジタリモンSMが即座にデジクロスを解除して分離、退化し、それを見た大輔がD-3Xを構えた。

「ハハハハハ!!立ち向かうつもりかね!止めた方がいい!!伝説によれば無限の再生と自己増殖を行うミレニアモンは攻略不能なデジモンらしいぞ!?素直に絶望したまえ!!君達はここで死ぬのだ!!奇跡など起きぬっ!!」

「うるせえ!!黙れぇ!!強制デジクロスの力に頼った図体だけの腰抜け野郎が!!!ネネさんは奇跡を起こしたぜ!お前がいつも見下していたネネさんがな!!」

大輔がダークナイトモンに向かって叫び返す。

「ネネさんはお前みたいな最低野郎に人生や心を滅茶苦茶にされても、最後まで諦めたりしないで、足掻いて足掻いて足掻きまくって、お前の計画を妨害する奇跡を起こしたんだ!!」

それを聞いたタイキとキリハの中で何かが沸き上がるような衝動が芽生えた。

「大輔……ああ…ネネは最後まで諦めなかった。だから俺達も最後の最後まで足掻こう!!」

それを聞いたシャウトモンが走り出す。

「兄貴っ!?」

「(何だこりゃあ…!!胸の…胸の奥から何かがっ…!!)」

「そうだ…な…!これしきのことで挫けていては彼女に笑われるっ…!!」

キリハも立ち上がり、メタルグレイモンを突撃させる。

「(胸の奥から燃え上がるようなパワーが込み上げてくる!!これはっ…キリハ達から流れ込んで来るのか…!!?)」

「シャウトモン進化!!オメガシャウトモン!!」

「メタルグレイモン進化!!ジークグレイモン!!」

シャウトモンとメタルグレイモンが進化し、ミレニアモンに突撃した。

「ブイモン進化!!エクスブイモン!!」

「ワームモン進化!!スティングモン!!」

「行くぞ、賢!ヒカリちゃん!!…エクスブイモン!!」

「スティングモン!!」

「ネフェルティモン!!」

「「「エヴォリューションクロス!!!」」」

「パイルドラモンHM(ホーリーモード)!!」

パイルドラモンの外郭がネフェルティモンとデジクロスした事により純白に染まる。

進化とデジクロスを完了した3体はミレニアモンに技を繰り出す。

「ハードロックダマシー!!」

「トライデントファング!!」

「セイントスティンガー!!」

オメガシャウトモンが拳から炎を放ち、ジークグレイモンが左腕の爪とパイルドラモンHMの両腕から出した光針でミレニアモンの体を引き裂く。

「あの2体も変化したと言うのか!?更に新しいデジクロスまで…しかし、何故あのミレニアモンが押されているのだぁっ!!?」

「ギルルオオオオオオ!!」

ミレニアモンが背中のサイコブラスターと口から反撃の熱線を放ってきた。

3体はそれを回避しながら必殺技を繰り出してミレニアモンに傷を負わせていく。

「くっ…押し込みきれるかっ…!?」

「いや…駄目だキリハさん!!ミレニアモンはどんどん回復してる!!封印されたデジモン達を今も取り込み続けてるんだ!!」

「…ならキリハ…大輔…聞いてくれ!今あいつと決着をつけるのは諦める!」

「何だとっ…!?」

「このまま戦っても城のデジモン達の犠牲が増えるばかりだ!!」

「じゃあ、どうすんですか?」

「俺達全員のXローダーとD-3Xを使ってゾーン移動の要領で次元の穴を開ける…!そこにミレニアモンを押し出すんだ!!デジタル空間に放出すれば奴が暴れてもどこにも被害を出さずに済むし…いつかあいつ自身を助けるチャンスがあるかもしれない…!!」

「…これ以上、“放っとけない”を抱え込むつもりか…?面白い…!!貴様がどこまでやり遂げられるか見届けてやるぞ工藤タイキ…!!」

「確かにそれ以外にミレニアモンを止める方法はありませんね…」

「全員の力を合わせればきっとゲートを開けます!!」

賢とヒカリも追い付き、D-3Xを構えた。

「それじゃあ行きますよ!!」

「あの巨体を通すんだ!全力でやるぞ!!」

「無論だ!!我が決意、侮るな…!!」

「「「「「デジタル・ゲートオープン!!!!!」」」」」

XローダーとD-3Xを翳し、ミレニアモンの後ろに巨大なゲートを開く。

「パイルドラモン!!頼む!!」

「今だっ!!オメガシャウトモン!!」

「ジークグレイモン!!奴をこのゾーンから叩き出せっ!!!」

「インペリアルドラゴンインパルス!!!」

「オメガ・ザ・フュージョン!!!」

「ファイナルストライクス!!!」

パイルドラモンHMが巨大な大砲を背負った竜のオーラを纏い、オメガシャウトモンは何かのデジモンのようなオーラで全身を包み、ジークグレイモンは光の矢となってミレニアモンに突撃した。

「「「うおおおおおお!!!」」」

ミレニアモンをゲートの中に叩き入れ、デジタル空間に放り出すことに成功したのである。 

 

第17話:クロスハート

レインゾーンでのダークナイトモンとの戦いから数ヶ月が経過した。

大輔達はバグラ軍に侵攻されていると言うコリドーゾーンに向かっており、コリドーゾーンの村にバグラ軍の大軍が押し寄せてきていた。

「も…もうこのコリドーゾーンも終わりだっ…!」

「バグラ軍め…このデジタルワールド全てを戦乱に巻き込むつもりか…!!」

「諦めるな!!」

岩山から姿を現したのは、大きな軍団を率いたタイキ達であった。

「全軍突撃だ!!」

大輔が指示を飛ばし、エクスブイモン達が飛び出す。

「あ…あの旗はチーム・クロスハート!!やはりこのゾーンに来ていたのか…では、あの少年が」

「工藤タイキ…!!敵方の司令官はジェネラル、工藤タイキであります御大将!!」

対するバグラ軍の大将はタクティモンである。

「敵の大将はタクティモン様ですぞ殿!!最早これまで!!拙者と共に落ち延びましょうぞ~っ!!」

「いや別にまだ何もされてないよ!!」

「落ち延びたいなら君だけでやってくれオチムシャモン!!寧ろタクティモンが今率いているのは偵察のための少数部隊、今なら奴を押さえ込めます!!」

賢がオチムシャモンにツッコミを入れ、タクティモンの部隊を分析した賢がタイキに言う。

「ああ!タクティモンさえ抑え込めば撃退出来る!行くぞ!みんな!!シャウトモン!バリスタモン!!ドルルモン!!スターモンズ!!デジクロス!!」

シャウトモン達をデジクロスさせ、シャウトモンX4にすると、スターソードによる一撃を叩き込んでタクティモンまでの道を作る。

「一撃で敵の本陣までの道が開けたっ!!」

「何という威力…!!あれがチーム・クロスハートの主力、シャウトモンX4か…!!」

「(なるほど…噂通り、あのオメガモンを彷彿とさせる姿をしているわね…)」

テイルモンとウィザーモンの横をコトネを肩車した大輔と、その横を走るヒカリの姿があった。

「コトネちゃん!!しっかり捕まってろよ!?」

「はいでち!だいしゅけしゃん!!タイキしゃんに遅れを取るなーっ!!もっとスピードアップでち!!」

「え?いいの?そんじゃあリクエストに応えて一気にスピードアップっ!!」

コトネのリクエストに応えて一気にスピードアップ。

「にょおおおおお!!?や、やっぱり普通でいいでち…」

「はいはいお姫様」

振り落とされそうになったため、必死に大輔にしがみつくコトネ。

少し涙目なのはご愛敬だ。

「もう、大輔君ったら…」

ヒカリは苦笑しながら大輔とコトネを見つめる。

「な…何、あの子!!?」

「あんな幼い子供がクロスハートに…!?」

「それに…あの2人……いや、まさか…ね…もう2人はあんな歳じゃないし…」

ウィザーモンが目を見開きながら大輔達を見つめ、テイルモンは大輔達を見て一瞬目を見開いたものの、気のせいだと言うかのように頭を振る。

「賢、待たせたな!!」

「遅いぞ大輔!ヒカリさん!!」

「ふふ、ごめんね賢君。さあ、コトネちゃん。一緒に頑張ろ?」

「コトネ!行くよっ!!」

「合点でち!!シャウトモンX4!!スパロウモン!!デチクロス!!」

「シャウトモンX5!!」

シャウトモンX4がスパロウモンとデジクロスすることで、スパロウモンの空戦能力を得た姿となる。

「エクスブイモン!!」

「スティングモン!!」

「ネフェルティモン!!」

「「「エヴォリューションクロス!!」」」

「パイルドラモンHM!!」

そしてエクスブイモン達もエヴォリューションクロスをし、パイルドラモンHMに。

シャウトモンX5はタクティモンに向かって行き、パイルドラモンHMは雑魚の殲滅に向かう。

「…ほう…また新しい力を手に入れたか、赤の少年…そしてあの少年達も…」

「行くぞタクティモン!!」

「今日こそ決着つけてやるぜえっ!!」

「…参る…!!」

シャウトモンX5の剣とタクティモンの刀がぶつかり合う。

どちらも一歩も譲らず…いや。

「バグラ軍第一の将と言われるタクティモンと互角に戦っている…!!」

「て言うか…ちょっと押してるんじゃないの…!!?」

「(スピード、パワー共にパイルドラモンと同等か…)…近頃はクロスハートと名乗っているようだな…?」

「心意気が俺達の取り柄なんでね!」

「ほう…!成る程、これだけの力を手に入れたのだ。その心意気…おさおさ侮るまいぞ。だが…この戦乱の果てに君達を待つ、真の修羅道…果たして意気だけで渡っていけるかな…?」

シャウトモンX5の剣によってタクティモンの刀が弾かれ…いや、わざと弾かれたのだ。

「剣を…!?」

「三の太刀・改、地鎚閣!!」

刀は勢い良く後方の岩山に突き刺さり、凄まじい勢いで岩がシャウトモンX5に向かって伸び、それはシャウトモンX5に直撃した。

「ぐああっ!!?」

そしてタクティモンは刀を再び手にし、シャウトモンX5に向かって突きの体勢を取る。

「鬼神突!!」

「げっ…!?」

剣で防御しようとしたが間に合わない。

衝撃で剣が吹き飛ぶ。

「やられたっ…!」

ウィザーモンとテイルモンがシャウトモンX5の敗北だと思い始めたが…少なくてもシャウトモン達の地力は以前より格段に上昇していた。

「(ムッ…!?)」

「ってててて…相変わらず効くなあ、こん畜生っ…!!」

「痛っ!痛たたっ!!ちょっ…背中痛いんですけどっ!?」

シャウトモンX5は咄嗟にスパロウモンの背を盾にすることで直撃を避けたのだ。

…いや、スパロウモンは直撃を喰らったが。

「けどっ…捕まえたあっ!!」

「ムオッ…」

「ウオオオオオオ!!メテオインパクト!!!!」

その隙にシャウトモンX5はタクティモンを捕まえると、岩に向けて吹き飛ばす。

それは岩山を突き破り、タクティモンを向こう側まで吹き飛ばした。

「あいつを吹っ飛ばした…!?」

「何という戦いだ…!」

「グムッ…(何とな…ここまでとは、彼らも着実に三元士レベルの力を手に入れつつある…!)」

「インペリアルドラゴンインパルス!!」

巨大な竜のオーラを纏って、タクティモンの部下の大半を屠るパイルドラモンHM。

「パイルドラモンHM、右だ!!」

「デスペラードブラスター!!」

パイルドラモンHMが右方向の敵に砲撃をを放って殲滅した。

「よし、数ではこっちが完全に有利になったな」

大輔がそう言いながら、シャウトモンX5の方を見遣る。

「がっはっは!どうだこら!!ようやく一矢報いてやったぜぇ!!痛ててててて!!」

「いやもうこっちは10矢分くらいやられまくってるんだけどね」

ボロボロとなったシャウトモンX5の言葉に同じくボロボロのタイキが言う。

「不景気なこと言うなよ!これから10発でも20発でもやり返してやるさ!」

「お前なあ…いい加減もう少し慎重な戦い方ってもんを…」

「ひ~ん、痛いよ~!」

シャウトモン、ドルルモン、スパロウモンがそれぞれ言うが。

「…いや…実際…」

土煙からタクティモンが姿を現した。

「大した物だ。この私が戦場で地に伏せるなど、ここ数百年来無かったことだよ。素直に感心する。」

傷をつけたのがパイルドラモンで地に伏せることが出来たのはシャウトモンX5と言うことらしい。

「ちっ…涼しい顔しやがって!俺のメテオインパクトがモロに入ったってのによ」

「…彼らのように進化の力を使わないのかね?」

それを聞いたシャウトモンX5が思わず顔を顰めた。

「(…ったく、何でそんなこと知ってんだよこいつらは…)」

「急拵えの模造品とは言え、たった一度の変化であのミレニアモンを圧倒した力だ。今使えばこの私さえも倒せると思わないかね?」

「へっ!てめえなんざ、あんな力使わなくたってなぁ…」

「うん、ぶっちゃけまだどうやって使っていいか分かんないんだあの力。大輔達に聞いても駄目だった。」

何度か進化の力を使えないかと試してみたのだが、見事に駄目であった。

普段使っている大輔達にも尋ねてみたが、彼らも感覚で使っているため分からないとのこと。

「…タイキぃ~…」

「隠しても仕方ないだろ!タクティモン!あんたは何か知らないか?バグラ軍もこの力には興味があるんじゃないのか?」

「デジタルワールドの戦乱の未来を占う要因の1つ…我が君はそう見定め、関心を払っておられる…」

「なあ…皇帝バグラモンは何でこんな戦争を続けるんだ…?単なる支配や権力を得ることがこの世界で意味があることなのか…?」

人間の世界ならともかく、デジモンの世界で支配し、権力を得てどうするつもりなのか…タイキは常に疑問に思っていた。

「一介の武人たる某の語ることではない…私は陛下のお与え下さった戦場で刃を振るうのみの男よ…さて…戦況は我が軍に不利なようだ。尻尾を巻いて逃げるとするかな。追撃してくるかね?」

「しないよそんな怖いこと!巻いた尻尾から何が出て来るか分かったもんじゃない!」

「ふ…陛下は君達の戦力がこの世界に齎す影響に興味を持っておられる。つまらん戦場で野垂れ死んでくれるなよクロスハート!」

「た…タクティモンが軍を退いていくぞ!!」

「うわーっ、正面からあいつの部隊を退けたの、これで2回目よ」

1回目はパイルドラモンが、2回目はシャウトモンX5がタクティモンを退けた。

「ちぇっ!どうにも釈然としねえ勝ち方だぜ!」

「まあ、勝ちは勝ちさ!俺達はこのゾーンを守ったんだ!(…あれ?何かこの戦場、前にもどっかで見たことがあるような…?)」

それはタイキ達がデジタルワールドに来る前に見たタイキの夢なのだが、本人はすっかり忘れていたのであった。 

 

第18話:数ヶ月間の変化

今から数ヶ月前、ミストゾーンの一角にて、リリスモンと黄金の鎧を纏ったデジモンが激闘を繰り広げていた。

「マグナムキック!!」

「くうっ!!」

強烈な蹴りを受け、魔法盾を粉砕されたリリスモンは岩盤へと勢いよく叩き付けられた。

「はあっ…はあっ…最弱とは言え腐っても三元士か…まさか俺が片腕を失うことになるなんてな…!!」

マグナモンには左腕がなかった。

戦いの最中に毒爪を受けたことで腐食し始めた腕を即座に斬り落としたことで命を繋いだのだ。

「くっ、ロイヤルナイツ・マグナモン…ここまでやるなんて…」

相性が最悪のマグナモンの熾烈な攻撃を受けたことでリリスモンもボロボロであった。

片腕を失ったことを除けば、マグナモンのダメージはリリスモンより小さい。

おまけに毒爪の脅威を再認識したことでマグナモンには隙が無くなっている。

共にいた配下はマグナモンによって殲滅されたことで完全にリリスモンは劣勢であった。

「リリスモン…三元士のお前もここでお終いだ!!」

「終わるのは…あんたよ!!エンプレス・エンブレイズ!!」

異形の腕をマグナモンに繰り出すリリスモン。

マグナモンは目を見開くと、周囲の空間を急速圧縮・瞬間膨張させた。

「シャイニングゴールドソーラーストーム!!!」

レーザー光は異形の腕を容易く粉砕し、リリスモンに直撃した。

「やったか…」

煙が晴れると、ボロボロとなったリリスモンが傷だらけとなった自分の体を見つめて震えていた。

「か、か…体に…私の体に…よくも…よくも傷をおおおおおおっ!!!!」

スイーツゾーンの時のように爆発したリリスモン。

しかも今回は全身に凄まじいダメージを受けたこともあり、爆発の規模もまた凄まじかった。

「なっ!?ぐ…うわあああああ!!!」

マグナモンは歪みに吸い込まれ、デジタル空間に放り出されてしまうのであった。
 
そして数ヶ月後の現在。

アカリはバリスタモンMCの中で、医薬品と食料の遣り繰りをしていた。

「(レインゾーンでのダークナイトモンとの戦いから数ヶ月…ダーク・クリスタルパレスに捕らわれていた多くのデジモン達を解放したことをきっかけに、私達のクロスハートとキリハ君のブルーフレアは大きくその勢力を拡大しました。)」

「ほーい、みんなー。ごっはーん!ご飯の時間だよ~♪」

外ではリリモンがお玉でフライパンを叩いて食事の時間を伝え、サンフラウモン達が全員に料理を運んでいく。

「(今や小さな伝説などではなく…バグラ軍に対抗出来る現実的な希望として、デジタルワールド全体から期待を寄せられつつあります。)」

「よう来て下されたジェネラル・タイキ殿、大輔殿…!!このコリドーゾーンのコードクラウンをお預けしましょう…微力ながら、我々もお力添えさせて下され!」

そしてクロスハートのNo.1であるタイキとNo.2の大輔はゴツモンの長老からコードクラウンを受け取っていた。

「ありがとう、ゴツモンの長老様!」

「期待に応えられるように頑張るぜ!」

「(けれど…何とか、デジタル空間に追い出すことに成功したミレニアモンは行方不明で…巻き込まれたデジモン達を助け出す目処は全く立たず…取り逃がしてしまったダークナイトモンも何か悪いことを企んでいないはずがなく…何よりシェイドモンと融合して連れ去られてしまったネネさんのことも心配で…タイキの放っとけないの種は増える一方です。そうそう!あの戦いの後、ようやく助け出されたネネさんの妹…コトネちゃんの正体には驚きました…)」

それはミレニアモンをデジタル空間に押し込み、少し落ち着いた時である。

『コトネ…!しっかりしてコトネ!』

『んみゅうううう…ぽえ?』

『コトネッ!僕だよ!分かる!』

スパロウモンがコトネに自分のことが分かるのかどうかを尋ねる。

『あー、スパロウモンしゃん。もう朝でちか?オッスオッス。あり?ここどこでちか?姉しゃまは?』

『あっ…コ…コトネ!ネネはね…』

スパロウモンがネネのことをコトネに伝えようとしたのだが、大輔達に気付いた。

『おやおや、何だか知らない顔が大勢いましゅねえ!オッスオッス!』

『コトネ…びっくりさせちゃうかもしれないけど』

『あいや!ここはデジタルワールド!明日隕石が降ってきても盆と正月が一緒に来てももうあたちは驚きましぇん!始めまちて皆しゃん!!あたちの名前は天野コトネ!!』

『何そのポーズ?』

謎のポーズを取りながら自己紹介したコトネに思わず大輔はツッコんでしまう。

『混迷のデジタルワールドに迷い込んだ花も恥じらう17歳!!』

『嘘を吐くなよ、嘘を。ネネさんの歳を越えてるだろ』

それを聞いた大輔が思わずツッコむ。

『…マイナス120ヶ月!!』

『マイナス120ヶ月…マイナス10年…つまり7歳ね』

『はいここ笑う所っ!!何でちか、アメリカンジョークの通じない人達でちねー!!…で?スパロウモンしゃん、姉しゃまは!?姉しゃまはどこでちか!?』

戸惑う全員から目を逸らしてスパロウモンに向き直るコトネだが、ネネの身に起こった残酷な真実を聞くことになるのであった。

「(どうも無防備な状態で大量のクロスコードを吸われたのが逆に良かったらしく、体への負担が減って数年ぶりに目覚めることが出来たのです!執念と言うか…結局ネネさんは最初に願っていた彼女の目的をほぼ果たしたことになります。けれどその結末はコトネちゃんにとってはとても辛いことで…普段は気丈に振る舞ってネネさんを助けるため、私達に強力してくれていますが、時々私達に見えないところで落ち込んでいる時もあるみたいです。でも…)」

出された料理に手をつけず、ただ見つめているコトネ。

「コトネ…食欲ない…?」

食事に手をつけないコトネにスパロウモンが心配そうにしている。

そんな大輔はスパロウモンを少し離し、コトネの頭に手を置いた。

「だいしゅけしゃ…」

「………」←とても面白い顔をしてます。

「…ぶふっ!?だいしゅけしゃん、変な顔!!」

吹き出し、笑い出すコトネに大輔は優しく頭を撫でてやる。

「笑ったなコトネちゃん。ネネさんのことがあったから仕方ないけど…ネネさんを助けた時、ネネさんの傷付いた心の傷の一番の薬はコトネちゃんの笑顔なんだから、コトネちゃんは笑顔でいないと。大丈夫、ネネさんは必ず助け出すし、それまでの間は俺がコトネちゃんを守る。ネネさんとの約束だからな、ほらコトネちゃん。ネネさんが好きなクレープをショートモン達に作ってもらったんだ。一緒に食べよう」

「……はいでち!!」

「チョコと苺、どっちがいい?」

「苺がいいでち!!」

「ほい。」

コトネに苺クレープを手渡し、一緒に食べる。

それを見たヒカリはミルクティーとコーヒーを淹れたカップを持って行く。

数ヶ月の間に、ヒカリの髪は伸びており、そして使っていた髪留めはボロボロになってしまったので無くなっている。

髪留めがなくなっているため、小学2年生時の髪型に近くなっていた。

「大輔君、コトネちゃん」

「ん?あ、ヒカリちゃん」

「ヒカリしゃん?」

ヒカリの声にクレープを頬張っていた大輔とコトネが振り返る。

「コーヒーとミルクティー淹れてきたの。飲んで」

「ありがとうヒカリちゃん」

「ありがとうでち、ヒカリしゃん」

ヒカリからそれぞれコーヒーとミルクティーを貰い、一口啜る。

うん、美味い。

ヒカリも自身のクレープとミルクティーをテーブルに置いて一緒に食べ始めた。

「(大輔君とヒカリちゃんがコトネちゃんの面倒を見てくれているから、コトネちゃんは元気にやっています。やっぱり弟と妹だからか、コトネちゃんの気持ちが分かるようです。特に大輔君はネネさんとコトネちゃんと同じ年の差のお姉さんがいるから他人事と思えないらしいです。以前、大輔君がコトネちゃんの面倒を見ていた時に、大輔君のお姉さんはどんな人なのかを聞いてみたんですが…)」

その時、アカリに尋ねられた大輔は何故か遠い目をしながら語った。

『正直言って姉貴にネネさんとアカリさんの爪の垢煎じて飲ませてやりたいって感じですかね?料理をすれば空間を歪ませる暗黒物質を生成し、家を火事にしかけた回数は数知れず。はっきり言って俺は母さんにコトネちゃんくらいの時から家事とか習い始めましたね。他にも洗濯をすれば洗濯物を滅茶苦茶にし、掃除をすれば何故かする前より汚れていると言う始末。家事が壊滅的な癖して何故か偉そうだし、自分の部屋の後片付けまで俺に押し付けて…何であんなに偉そうなんだよ…あいつは何様だ?姉様か?あ、な~んか胃が痛くなってきた…』

『そう言えば、前にも大量の暗黒物質を作ってたよな大輔の姉ちゃん。この前なんかどんな化学反応を起こしたのか鍋の底に穴が開いて、湯気のせいでゴム手袋が溶けて無くな…』

『あ、それ以上は言わなくて良いわブイモン』

腹を押さえて膝をついた大輔。

後に大輔に謝罪するヒカリ(以前の大輔に対する発言に対しての物だと思われる)と、冷や汗を流しながら大輔を見つめるタイキ達の姿があったと言う。

「(大輔君とヒカリちゃんの関係は時間経過と共に親密になっていきます。ヒカリちゃんはあれ以来髪を伸ばしています。何でも“アカリさんみたいに支えられる人になりたいから、まずは形から入ってアカリさんくらいに髪を伸ばす”って…いやー、照れるな~。あれ以来ヒカリちゃんが大輔君に好意を抱いているのは確実なんですが、今想いを伝えても、ネネさんを助けるために必死に頑張っている大輔君の迷惑になるかもしれないと言っていました。)」

それを聞いたアカリとリリモン達は思わず呆れかえってしまった。

寧ろ迷惑どころか、喜んでヒカリを受け入れてくれるだろうに。

「(そんなことあるはずないのにねえ…正直大輔君が可哀想だわ全くもう、ヒカリちゃんもさっさと素直に告白して大輔君と付き合っちゃえばいいのにと何度思ったか…)」←自分のこと棚に上げる奴。

一方、外ではウィザーモンとテイルモンはクロスハートの面子を見渡していた。

「噂には聞いていたが…やはり凄いな。長いことデジタルワールドを旅してきたが…これだけの面子が揃っているのは初めてだ!」

「そして妙に食料事情が充実している…」

「見ろ!サンドゾーンの女神の戦士、ベルゼブモンだ!三元士の1人、リリスモンを仇として狙っているという」

茸クリームスパゲティを食べているベルゼブモン。

「あれはコロシアムゾーンの若きチャンピオン、アグニモンだ…まさか彼がクロスハートに参加しているとはな…」

「隣の無茶苦茶食べてるのは誰?」

茸炊き込みご飯、しめじ汁、茸コロッケ、茸サラダ、茸春巻きを食べているアグニモン。

そして隣で大盛茸カレーを無茶苦茶食べているフェアリモン。

「あそこにいるのはスタディゾーンの伝説の総番、バンチョーレオモンじゃないか!?彼が歴史の表舞台に姿を現すなど何百年ぶりだろう…?」

茸ラーメンと茸餃子を食べているバンチョーレオモン。

その隣ではペックモンが茶を啜っている。

「打倒、バグラ軍を掲げるに相応しい壮々たるメンバーだな」

「にしちゃ、何か威厳ってもんが…みんな何か食べてるし」

「現在ファクトリーゾーンに侵攻中の蒼沼キリハ率いるチーム・ブルーフレアも同程度の戦力を保有しているらしい…この二大勢力がどう連携を取ってバグラ軍と戦っていくかがこのデジタルワールドの戦国時代の行く末を決めると言われているが…今のところ、この2人のジェネラルに表立った協力の意志はないらしい…」

「感慨深げに語ってるのは良いけどさ。私達、その工藤タイキに用があってこんな田舎のゾーンにやってきたんでしょ?」

「あぁ、そうだったな。忙しい身の上だろうが…会ってもらえるといいが。」

「それに少し気になることがあるわ。クロスハートのNo.2とその補佐がね」

「本宮大輔と八神ヒカリ…君にとって縁深い名前だからな」

「…ええ、あの子達も今では大人になってるはずだし……っ!!この気配は…」

何かを感じたテイルモンはそちらに向かって駆け出す。

「テイルモン!?」

ウィザーモンが目を見開いて呼ぶが、構わずそちらに向かう。

「この気配は…あいつだわ!!」

ある物を探していた時、自分と共にいてくれた存在の気配。

何度も喧嘩することがあったが、ウィザーモンといられるようになるまでは嫌味混じりながら常に傍にいてくれた存在の気配。

「この気配は…あいつの…あいつもクロスハートにいたのね!!マグナモ…」

黄金の鎧を纏ったデジモンの姿が脳裏を過ぎり、テイルモンが近くまで近付くと思わず叫んだ。

コトネ達と共に食べていた大輔達が振り返り、ヒカリのテイルモンは食べていたクレープを落とし、ブイモンは目を見開いた。

「「わ…たし…?」」

「テイルモンが…2人ーーーっ!!?」

2匹のテイルモンが顔を見合わせ、呆然となりながら言う。

ブイモンは異常事態に思わず叫んだ。

「テイルモン、どうしたと言うんだ?…君は!?」

「ウィザーモン!?」

テイルモンを追いかけてきたウィザーモンを見たヒカリのテイルモンは目を見開く。

ウィザーモンもウィザーモンで瓜二つのテイルモン2匹を見て目を見開くのであった。 

 

第19話:ゴチャゴチャ

瓜二つの2匹のテイルモンの対面。

その他諸々の原因で思考停止を起こしていた一同だが、話を聞くことにした大輔達。

取り敢えずウィザーモン達をバリスタモンMCの中に案内する大輔達。

「…大輔と賢が最初の冒険で一緒に戦った?」

「そうよ、私達の知る大輔達は太一達よりも先にブイモン達との出会いを済ませて、ヒカリを巻き込んで向こうの問題に対処してたのよ。そして私がヴァンデモンと一緒に向こうに行った時にヒカリと大輔達に会った。あの時のブイモンは今でもムカつくわ…何処までも人を小馬鹿にして…!!まあ、色々な違いはあってもこいつが行き倒れていた時に水を飲ませてやったのは変わらないみたいだけど」

「あの時は助かったよテイルモン。」

「はいはい、それでこいつは敵の攻撃から私達を庇って勝手に死んじゃうし…!残された私やヒカリの気持ちを考えなさいよっ!!」

「すまない、でも…君に会わなかったら…僕は意味の無い命を長らえただけ…僕は君を庇ったことに一片の後悔もない」

「…っ、全くあんたって奴は……」

「苦労するわねあんたも…私のとこのウィザーモンもそうだったわ…」

自分のために命を散らしたウィザーモン。

もっと素直になっていればウィザーモンに伝えられたことは沢山あったのに。

今は後悔ばかりだ。

「大丈夫かテイルモン?」

「ごめん、あんたに悪意がないのは分かってるけど、あいつと同じ顔で私の心配するのは止めて。鳥肌が立つから」

「そっちのブイモンとテイルモンは仲が悪いの?何で同じブイモンとテイルモンなのにこんなに仲が悪いんだ…?」

近くで話を聞いていた賢が尋ねるとウィザーモンが頷く。

「何せ顔を合わせる度にブイモンとテイルモンは殴り合いや罵倒の言い合いだったからなあ。デジタルワールドには様々な平行世界があるとも言われている。もしかしたら、君達にも僕達の知る大輔達のような可能性があったかもしれないな」

「平行世界ね…少し不安になってきたな…」

「賢?」

「いや、何でもないよ。取り敢えず、このテイルモンはヒカリさんのテイルモンとは同一人物のようだ。世界の違いで色々違いはあるようだけど」

「見た目はホーリーリングの有無で大輔達にも分かるしね」

賢とワームモンの言葉に一同は頷く。

「それにしても別世界の自分やヒカリと会えるとは思わなかったわ。おまけに大輔やマグナ…じゃなくて見るだけでムカつくクソ犬ブイモンまで」

「ちょ!?何でそこまで言われなきゃいけないんだよおっ!!?」

「俺やブイモン…じゃなくてマグナモンまでいたのか?」

「ええ、色々なことにカタがついた後…死んだこいつのデータをサルベージするために私とヒカリについて来てくれたのよ。大輔と…当時ブイモンだったあいつはね。」

「当時ブイモンだった…?」

「ええ…あいつはマグナモンに進化して、ウィザーモンがデジモンの形を保てるようになった時、実力と信念…今までの冒険の功績を認められて、ロイヤルナイツ入りを果たしたの。今ではロイヤルナイツの守りの要なんて大層な位置にいるわ」

「え?進化したのか?この世界には進化がないんじゃ…」

「…いつの間にか進化の概念がデジタルワールドでは消えていたのよ。私も何故か今では進化出来なくなったし、多分、私が知る限り…ブイモンがマグナモンに進化したのがデジモン最後の進化ね」

「俺達の世界のデジタルワールドにはありふれた力なんだけど…何とか向こうに行けるコードクラウンが見つかればなあ」

「あ、でも…コリドーゾーンのコードクラウンが手には入ったから私達も現実世界に帰れるよ」

ヒカリはコリドーゾーンのコードクラウンは手には入ったから、現実世界に帰り、電車などで帰ればいいと考えている。

ヒカリはタイキ達も自分達と同じように、この自分達の知るデジタルワールドとは違う歴史のデジタルワールドに飛ばされたのだと勘違いしていたのだ。

「お待たせしました。」

「あ、サンキュー。ショートモン」

ウィザーモンとテイルモンにケーキと紅茶を出すショートモンに礼を言う。

「にしても、こっちのブイモンは今どうしてるんだ?」

「知らないわよあんな腐れ蛙、あいつはロイヤルナイツで私はそこら辺にいるデジモンの1体に過ぎないもの。身分に違いがありすぎて昔みたいに会うことも出来ないわ。ふん!!まあ、ムカつくけど実力は高いあいつのことだからバグラ軍とどこかのゾーンで戦ってるんじゃない?噂によればミストゾーンに潜伏して三元士のリリスモンと戦っているらしいわよ」

「リリスモンと!?ブイモンは大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ、あいつの実力だけはそこそこ信頼出来るし、少なくてもロイヤルナイツに入れるくらいの実力があるんだから1対1ならリリスモンにだって簡単に負けないわよ」

「ブイモンのこと信じてるんだねテイルモン。」

「まあね、喧嘩ばかりだったけどあいつがいなかったら、ウィザーモンのデータ集めもまだ終わっていなかったかもしれないし」

「こっちの世界のブイモンかあ…会ってみたいなあ」

「あいつの身分が身分だしね。正直姿をチラッと見れればラッキーってとこじゃない?」

「いやあ、俺ってそこまで凄いのか~」

「お前じゃないぞ、こっちのお前だぞ」

鼻高々と言いたげなブイモンの表情を見て、大輔がツッコむ。

テイルモンはケーキを一口食べてぽややんとしている。

「やあ!待たせちゃって悪いね!疲れちゃってさっきまで休んでてさ…君達が俺に用があるって人?」

すまなそうに笑いながらこちらにアカリとシャウトモンと共に向かうタイキ。

「こちらこそ忙しい時に申し訳ない。それどころか食事まで出してもらって感謝している」

「ふ~ん…話題のジェネラルにしちゃ冴えない顔してるわねー」

タイキにしがみつきながら言うテイルモン。

「こら、失礼だぞテイルモン。」

「いやー行く先々で言われます。で、用って?」

「まずは自己紹介させて欲しい。僕はウィザーモン。有り体に言えば学者だ。デジタルワールドの在り方や人間界との関わり合いについて研究している。知っているだろうが、彼女はテイルモン。僕の助手というか、用心棒というか…縁あって一緒に旅をしている」

「よろしくね」

「僕があなたを訪ねた理由は、あなた達の持つXローダーかD-3Xとコードクラウンの力を貸してもらいたいからだ。工藤タイキ…僕達を人間界に連れて行ってもらえないだろうか?」

「人間界に!?」

取り敢えず外に出て、ウィザーモンの話を聞くことにした。

「僕は前々からこのデジタルワールドの有り様に疑問を抱いていた。君達人間から見てこのデジタルワールドはどう見える?物理法則は無視され、魔法や超能力が当たり前のように罷り通る…この世界の住人である僕達デジタルモンスターもそうだ。生物学的な発生論を無視しているばかりか、明らかに生物でも実体を持たない物までが意志を持ち、生まれながらにして言葉すら話す…そして…そんなことが自問出来る程に、我々は人間界の常識に通じているのだ。生まれてから一度もそんな世界に行ったことはないのにね…」

「いえあの…俺、生まれてから一度もそんなこと疑問に思ったことないんですけど」

「不覚ながら俺もだぜ…確かにおかしいことだらけだが、そりゃそういうもんだと割り切って生きてきたからな」

「俺は…何となくだけど、とてもよく出来たバーチャルリアリティのゲームの中に飛ばされちゃったんじゃないかと思ったな。作為的…って言うのかな?誰かがそんな風に作らないとこんなハチャメチャな世界にはならないと思うんだ。」

タイキの言葉に大輔達も顔を見合わせた。

自分達はデジタルワールドはこういう世界だと思っていたから違和感を感じていなかったが…。

「バーチャルリアリティのゲームか…的を射た発想だと思う。だがそうなると、そのゲームのプログラムを演算処理する計算機が必要になるが、何しろこの世界を構成する情報はあまりにも巨大かつ精巧だ。コードクラウンで行くことが出来るということは、人間界…君達の宇宙はデジタルワールドからは1つのゾーンだと認識されていると言うことなのだ。」

「ああ、確かに言われてみれば…」

今まで意識していなかったが、コードクラウンを使えば現実世界に帰れると言うことは、デジタルワールドからは一部のような扱いを受けているのだろう。

「寧ろデジタルワールドの方が君達の宇宙を包括する更に上位の構造である可能性が高い…仮に君達の宇宙全てを演算処理のリソースとして用いても処理出来る情報量ではないということだ。」

「な…何か言ってること難しくてよく分かんないんですけど!」

「まあ、流して流して、私もよく分かってないし、要点は後でちゃんと纏めてくれるわ。」

アカリが冷や汗を流してテイルモンに尋ねるが自分にもさっぱりとのこと。

「それでお前さん、人間界に行って何しようってんだ?」

「僕はこの世界がデジタルワールドと呼ばれていること自体にこの不思議のヒントがあると思っている。この世界が人間のイメージや想像力の影響を強く受けているのは間違いないのだ。いや寧ろ…有り様全てを定められていると言っても過言ではない。僕は是非一度、実際に人間界に行ってこのことを調査してみたい!このことは単に学術て意味だけでなく、この世界が多くのゾーンに分裂してしまった理由やそこから起こった戦乱を解決するヒントを得るチャンスなのだ!」

「…成る程ねえ…確かにそのうち一度様子を見に行こうと思ってたけど…」

「けどバグラ軍のことはどうすんだよ!人間界を調べる間、ジェネラルがいなくなるのはまずいんじゃねえのか?」

「でちたらあたちが残りましゅ!」

「コトネ!」

シャウトモンの尤もな発言に応えたのは最年少のコトネである。

「そんな…コトネちゃんこそ先に人間界に帰るべきよ!!」

「そうよコトネちゃん!!」

「姉しゃまを助け出すまであたちは帰りましぇん!!」

アカリとヒカリの言葉にコトネはネネを助け出すまで帰らないと拒否する。

「…確かにクロスハートのメンバーは充実してきている。ジェネラルが1人いればこの戦線を維持するくらいは何とかなると思うがな…」

「でもこの子1人残していくなんて…」

「ん!それじゃ俺も残るよ!」

コトネを心配するアカリにゼンジロウは自分も残ると言い出す。

「ゼンジロウ?」

「こいつに怪我でもさせたらそれこそネネさんに申し訳も立たないしな…タイキ達は久しぶりに羽を伸ばしてくりゃいいさ!…いでででででで!!」

頭に押し付けるようにしていたゼンジロウの手にコトネが噛み付き、ゼンジロウが悲鳴を上げる。

「おい、コトネちゃん。止めなさい」

「はいでしゅ、だいしゅけしゃん」

大輔に言われてすぐに噛みつくのを止めるコトネ。

そして大輔が膝の上をポンポンと叩くとちょこんと納まる。

「(くっ…何て可愛げのない……)」

「(コトネちゃん、大輔に懐いちゃってるなあ…)」

ゼンジロウと賢が大輔を見遣りながら胸中で呟く。

「でも、本当にいいのか?」

「はいでしゅ、だいしゅけしゃんとヒカリしゃんはデートでもして来て下しゃい」

「デッ…!?」

「は…はは…(ませてるなあ…)」

コトネの爆弾発言にヒカリは肩を震わせ、大輔は苦笑した。

「どうするよタイキ!行くってんなら俺もついて行くぜ?お前さんの故郷ってのを一度見てみたいしな!」

「(確かに…俺達はこの世界について知らなすぎる。この世界がいくつものゾーンに分かれた理由や皇帝バグラモンがどうしてこんな戦争を起こしたのかが分かれば…ただ戦って勝つ以外の戦争の終わらせ方も見つかるんじゃないのか…!?)…うん…デジタルワールドの戦乱を終わらせるヒントが人間界にあるかもなんて考えてなかったな…一度人間界に帰ってみるか!」

「じゃあ、明日の朝に一度帰りましょうか」

賢がそう言うと全員が頷き、現実世界に一旦帰還することにしたのである。

「ところで大輔、その布袋の中身は一体?」

「ああ、これか?デジタル空間で手に入れたデジメンタルだよ。もうバラバラで使い物にならないけど」

「あら?これ、奇跡のデジメンタルじゃない」

テイルモンが懐かしそうにデジメンタルの破片を摘まみながら呟く。

「奇跡のデジメンタル…知ってんのか?」

「当然よ、私からしてもかなり縁のあるアイテムだもの…何処で手に入れたのよこれ?」

「デジタル空間の破片にあったんだよ。ボロボロだったけどな」

「凄いな…こんな破片だと言うのに凄まじいエネルギーを感じる…これなら修理出来るかもしれない」

「本当か!?」

ウィザーモンの言葉に表情が輝く大輔。

「ああ、だが時間をくれないか?少し時間がかかりそうだ」

「頼むよ」

奇跡のデジメンタルの修理をウィザーモンに任せて、明日に備える大輔達であった。 

 

第20話:並行世界

現実世界に帰還するため、デジタル空間を通るタイキ達。

「これが次元の回廊か…やはり凄いものだな、ジェネラルとXローダー、D-3Xの力というのは。」

「そうそう!こんな状態になってからの私達の旅の苦労は何だったのって感じ!!」

大輔のD-3Xに入れられたウィザーモンとテイルモンの言葉に全員が反応する。

「普通はたまたまゾーン同士が接近して時空の壁が薄くなるのを狙って移動するしかないからなぁ」

「何処ニ時空ノ通リ道ガ現レルカ予測スルノハカナリ難シイシ…ドノゾーンニ辿リ着ケルカモ殆ド運次第ダ」

「へえ、それだと俺達が今までしていたゲート移動やコードクラウンを使ったゲート移動は滅茶苦茶便利だったんだな」

「私達はこれが当たり前だったから実感が沸かないけど、凄く不便だね」

大輔とヒカリは今までのゲート移動がどれだけ便利だったかを知る。

「ああ、ヒカリ。バグラ軍ではデジタル空間の研究が進んでいて比較的自由にゾーンを移動出来るらしいが…その技術やデジモンを吸収合体させる技術などの殆どは皇帝バグラモン自身によって齎されたものらしい…。荒野の賢人と謳われる程のその知識をどうやって得たのか…全く得体の知れないデジモンだよ。」

「けど俺ら全員ついて来ちまって良かったのかぁ?」

「行きたいって言っといて何だが、ジェネラルの護衛にしちゃ大所帯過ぎねえか?」

タイキのXローダーからのスターモンとシャウトモンの言葉にタイキは笑みを浮かべる。

「うん…確かにそうなんだけどさ、最初から一緒に戦ってきたみんなにも、一度俺達の世界を見て欲しかったんだ…!お前らがどう人間界を感じるかが、デジタルワールドの今を知る手掛かりになるような気がしてさ!さあ…もうすぐ出口だ!デジタル空間を抜けるぞっ!!」

デジタル空間を抜け、全員が着地…というか落下する。

「ここは…?」

「現実世界の…どこ…?」

「随分と発展しているね…」

大輔達が辺りを見回しながら呟く。

「「…と…東京だ…」」

「「「(東京!?)」」」

タイキとアカリの言葉に大輔達が振り返る。

「ちょ、タイキさん…それってどういう…」

「大輔ぇ!!」

「な、何だブイモ…ンーーーーっ!!?」

向こうを見遣れば勝手に出て来ているシャウトモン達の姿があった。

「(ウィザーモンまで出てる…!!)」

「ヒューッ!馬鹿でけえ建物だなぁ!!」

「あれ全部人間がおっ建てたのかあ!!?」

「寧ろこの辺り一帯が公園として造成された場所のようだ。凄まじい規模の治水工事だな…」

シャウトモン達に集中する視線に大輔達は危機感を抱き始める。

「「「まずい…!!」」」

大輔、ヒカリ、賢がでかい布を取り出してシャウトモン達にかぶせると抗議の声が聞こえようと無視して演技をした。

「はい、皆さん!この布の下には沢山の人形があります!!しかあし!!」

「ワン・ツー・スリー!!」

「はい!!」

賢が布を取っ払うと、シャウトモン達が消えていた。

【おおー!?】

「はい、俺達の手品を見てくれてありがとうございました。それじゃあさいならー!!」

「お兄ちゃん、手品またやってー!!」

「ごめんな!!この手品は1回しか使えないんだ!!」

D-3Xにシャウトモン達を入れた大輔達は即座に逃走。

「ウィザーモン…」

「すまないヒカリ、うっかりしていた…!」

「何だよいきなり…」

「人間界にはね、デジモンみたいな知的生命体は人間しかいないのよ。あんたらみたいな常識外れのモンスターがウロウロしてたらそりゃみんなビックリするわ!私やブイモンは猫や犬のフリ出来るからいいけどねー」

シャウトモンの愚痴にテイルモンが説明した。

「げげっ!不便だなそりゃ!」

「テイルモンは人間界のこと詳しいキュ!?」

「テイルモンは昔、人間界で過ごしたことがあるんだ」

「その時、今で言う私のジェネラルの人間の女の子と腐れ縁のブイモンのジェネラルの男の子とその他の仲間とデジタルワールドを冒険したこともあるわよ!!」

【ええ!!?】

「…言ってなかったの?」

「「「す、すみません…」」」

テイルモンがジト目で見遣ると、大輔とヒカリと賢が顔を逸らした。

「て…テイルモン!君は一体…!?」

「まあ、長生きしてると色々あんのよ!ついて来て!隠れやすい場所知ってるから」

こうしてテイルモンに案内された場所はヒカリとヒカリのテイルモンからすれば懐かしい場所である。

「ここは…懐かしいわ。私がヒカリのことを思い出した場所…」

「確かにここなら大丈夫そうだな。」

「にしても、随分と古くなったな……俺達…もしかして…」

「大輔君……」

「……」

「…?あんた達、どうしたのよ?」

表情が暗くなる大輔達にテイルモンが疑問符を浮かべている。

「なあ、そろそろ出してくれよ大輔~!俺達も人間の街を見て歩きてえよお~!!」

「おい……さっきのテイルモンの言葉を思い出せよ。この世界の人間にお前らが姿を見せると大パニックになるから」

「お願いだから我慢してよシャウトモン…」

「ええ~っ!!そんなのテレビで見んのと同じじゃねえか!!俺達に人間界のことをちゃんと見て触れて欲しかったんじゃないのかよ~!!」

「う~ん、そりゃそうなんだけど…」

「ふっふっふ、まっかせなさい♪こんなこともあろうかとちゃんと準備してたんだから!」

「したのは僕だけどな」

【?】

ウィザーモンが詠唱し、魔法陣を展開すると、テイルモンが人間の女性の姿になった。

「おおおおお!!?」

「じゃあん!どう?決まってるでしょ」

「うおおおお凄えーっ!!」

「格好良い~~!!」

「変身の魔術だ。彼女に無理矢理習わされた時は何かと思ったが…これは有意義だったな」

「何かヒカリちゃんに似てるな」

「当たり前でしょ?この姿のモデルはヒカリなんだから。服は私のオリジナルだけど…ブイモンとそっちの私は…」

「うおっ!?これ、大輔かあ!?」

「懐かしい…!!小さい頃のヒカリだわ…!!」

ブイモンとヒカリのテイルモンは小学2年生時代の大輔とヒカリをモデルにした姿と服装となった。

髪や目の色は当然ブイモン達の色になっている。

「ってことはあれか!?俺達もそいつで人間の姿になれるってことか!!?」

「モチ!!さあ、その辺歩いている人を参考にあんた達の格好を考えるわよお!」

【YEAH!!】

「生き生きしているなぁ」

「あまり難しいデザインは止めてくれよ」

「何かあっちのテイルモン、滅茶苦茶元気だな」

「ブイモン達ともっと早く会っていたらあんな感じだったのかな?」

大輔とヒカリが向こうとこっちのテイルモンの性格の違いに苦笑する。

双子でも育つ環境が違えばと言うことなのだろうか。

しばらくしてシャウトモン達の姿が決まった。

「おおーっ!!?」

「へえ、悪くないな!」

「キューッ!!」

「フンガ!」

「えへへ、昔の賢ちゃん!!」

皆、それぞれのお似合いの姿になる。

因みにワームモンは一緒に初めてデジタルワールドを旅した時の賢…つまり小学3年生時の姿となっていた。

「ちょおおっと待てコラーーーっ!!何で俺らだけアヒルなんだぁーーっ!!」

ダーーーーーックス!!!!!!

…何故かスターモンズはアヒル姿だった。

「あはははは!似合ってる!超似合ってるよ!!」

「似合いすぎて腹が…腹が痛い!!」

アカリやブイモン、シャウトモン達が腹を抱えて爆笑する。

「クェーッ!!納得いかねぇーっ!!!」

「さて…僕も何か適当な姿にならないとな。うん、彼の姿を借りるとしよう」

「ん?誰に…」

「では行こうか諸君」

大輔が聞く前にウィザーモンが姿を変えた。

その姿は何処からどう見てもオタクと呼べる姿であった。

「「「「ぶうううう!?」」」」

「「待て待てーい!!」」

大輔とブイモン、ヒカリとヒカリのテイルモンが吹き出し、アカリとテイルモンが止める。

「あんたそんな格好で私の隣を歩く気!?」

「そんな格好って…本人に失礼だろ」

「駄目駄目!折角だからうんとカッコ良くしようよ!!」

「生き生きしてるなぁ」

「ていうか、ウィザーモン。流石にそれはねえわ」

「僕もそう思う」

「もう少し見た目に拘ろうよ?」

「むう…」

大輔達にも駄目出しを喰らい、オタクから元の姿に戻り、アカリとテイルモンを見遣る。

「(女心ってよく分からない…)」

「あ!あのジャケットイケてない!?」

「悪くはないけど派手すぎてイメージがねえ…あいつなら似合いそうだけど」

アカリとテイルモンがウィザーモンの相応しい姿を探しまくっている。

「にしても…どうしてこんなに古いんだ?まるで未来に来ちまったような…ん?」

「大輔君、どうしたの?」

「あそこ、ヒカリちゃんの…」

指差した先はヒカリ達八神一家が暮らすマンションの一室にいる女性は…。

「あれは…何かヒカリに似てないか?」

デジモン故に視力がいいブイモンが呟く。

向こうではウィザーモンの人間の姿が決まり、人間の姿となったウィザーモンを見てテイルモンが誉めていたが…。

「何ですって?ちょっと見せてみなさい…何か持ってる…ウィザーモン。少し拡大出来ない?」

「分かった」

ウィザーモンが魔法で水晶なような物を作り出すと、女性のいる一室を映し出した。

「ヒカリさん…?」

賢が呟いたようにその女性はヒカリにそっくりであった。

ヒカリが成長すればこのような姿になるだろうと思えるくらいにそっくりである。

女性の持つ物を見たテイルモンは目を見開く。

「ヒカリのDー3…!!間違いない…あれは私のパートナーのヒカリよ!!」

久しぶりにパートナーの姿を見たからか、テイルモンの表情が綻ぶ。

しかし大輔達からすれば自分達の置かれている状況を知ってしまうことになる。

「「………」」

「まさか、ここは僕達からすれば未来…しかもこっちの大輔達とは違う歴史を歩んだ世界なのかも…」

「え?え??どういうこと?」

「未来とか違う歴史って何のことだ?」

「タイキさん、今…平成何年でしょうか?」

「え?今は201X年だろ?」

「つまり…約10年後…僕達は2002年の夏にデジタルワールドに来たんですよシャウトモン達のいる」

「2002年~!?10年以上も違うじゃない!?じゃあここはヒカリちゃん達からすれば未来ってこと~!?」

アカリが大輔達が約10年前の人間であることに驚愕している。

「ただの未来ならまだ受け入れようがあるんですけど、ここの大輔とヒカリさんのDー3はDー3Xに変化してるから…多分、この世界は僕達からすればパラレルワールドの未来…なんでしょうね…」

「………」

「…大輔、君……」

顔が真っ青なヒカリを見て、大輔は少し重い溜め息を吐いた。

「ヒカリちゃん………すいません。少し別行動にしませんか」

「でも、大輔達だけじゃ…」

心配するタイキ達だが…。

「ただの気分転換です。じゃあ、また後で…さっきの公園で合流しましょう!!」

「ああ、待ってくれ。お金だ…後、そちらのテイルモンには…」

ウィザーモンが差し出したのはテイルモンからすれば見慣れた黄金の輪。

「ホーリーリング!?」

「正確にはホーリーリングのコピーだ。こちらのテイルモンのホーリーリングをコピーした物、君ならもしかしたらある程度力を引き出せるかもしれない…」

「ありがとうウィザーモン。大事にするわ」

「…ところでこの金は?」

いきなり渡された金に大輔は困惑する。

「魔法で作った」

「…大丈夫なのか…?それ…」

「大丈夫…だと思う」

微妙な表情を浮かべる大輔とウィザーモン。

はっきり言って偽札を使おうとしてるようなもんである。

「じゃあ…」

大輔達並行世界組はタイキ達は別行動を取ることに。

「……………」

「にしても10年後か…10年でこれだけ変わるもんなのか」

「いくら僕達の世界とは違う歴史を歩んでるとしてもね…あ、あれは何だろう?見てくる」

「え?こんな時にか?」

「うん、折角10年後に来たんだ。見れるだけ見ておこうと思って。じゃあ、また後で」

それだけ言うと、賢はワームモンと共に電化製品店に向かうのであった。

「あいつタフになったなあ」

再会した時に比べて精神的にタフになった気がする。

「…羨ましいな…私、凄く不安で…大輔君達がいないと多分、不安に押し潰されそうになっていたかもしれない。」

帰れる可能性のある冒険だった最初や、確実に帰れる2回目の冒険とは違って帰れる可能性があるのかどうかさえ分からない。

今でも不安に押し潰されそうになるヒカリ。

「大輔君…私達…帰れるかな…?」

「…分からない。でも…」

「え?」

「諦めたら帰れる可能性さえ掴めないよヒカリちゃん」

「っ!!」

それを聞いたヒカリはハッとなる。

確かにそうだ。

もう駄目だと諦めて何もしなければ帰れる可能性すら掴めない。

「もし冒険が終わって帰れなくてもデジタルワールドを探し回って帰る方法を見つければいい。諦めるなよヒカリちゃん。絶対に帰れる、ていうか帰る」

「うん…そうだね…諦めない限りいつか帰れるよね…」

「うん、今は…10年後の未来を見てみようぜ?ある意味貴重だよなあ、未来世界の見学って、俺達タケルや太一さん達より得してね?」

「ぷっ!そうだね!!」

プラス方向で考えれば未来世界の見学など絶対出来ないため、そういう点では得しているだろう。

ここには自分達の知り合いがいないため、ヒカリは意を決した。

「ね、ねえ…大輔君…」

「ん?何?ヒカリちゃん…?」

顔を赤らめ、言い辛そうにしているヒカリに疑問符を浮かべている大輔。

ブイモンとテイルモンは気を利かせて距離を取った。

何度か口ごもりながらもようやくしっかりとした言葉を大輔に伝えた。

「大輔君さえ良ければなんだけど…私と…その……デ、デート…しよ…?」

「へ?」

一瞬何を言われたのか理解出来なかった大輔。

少し離れた場所でガッツポーズするブイモンとテイルモンであった。 

 

第21話:デート

ヒカリからデートに誘われた大輔は完全に思考が停止していた。

「(えっと…デート?デートってあれか?男と女が買い物したり飯食ったりするあれか?)」

そんな当たり前のことさえ理解出来ない状態の大輔。

因みに思考停止しているが故に表情の変化がまるでないため、ヒカリはヒカリで不安になっていた。

「(だ、大輔君…返事してくれないなあ…どうして…?…って、私って大輔君に遊びに誘われたりしても流してたり、久しぶりに会ったタケル君との時間を優先してたりしてたからいきなり誘われても信じられないに決まってるじゃない!!ああ~!私の馬鹿!!大輔君に嫌われるようなことばっかりしてた!!…どうしよう、断られちゃうかな…?)」

「…………」

無言の大輔に気まずそうなヒカリ。

ブイモンとテイルモンはそんな2人をハラハラしながら見ていた。

「くっ、何してんのよ大輔は!!ヒカリに誘われてるんだからYES or OKしかないでしょ!!」

「いやあ、そりゃあ仕方ないだろ?今まで大輔が遊びに誘っても流されてたんだから。だからいきなり誘っても信じられるわけないって。ぶっちゃけ今までが今までだからデートの誘いを大輔に間髪入れずに断られてもヒカリは文句言えないぞ」

「ぐっ!!確かに今までのことがあるから否定出来ないわね…」

ブイモンの言葉が正論過ぎて流石にヒカリの味方であるテイルモンも否定出来ない。

「あ、あの…その、大輔…君…嫌なら…私…」

今までの自分の態度が悪かったから信じてもらえないのはヒカリも分かる。

もし断られても今度は信じてもらえるように行動し、自分が大輔に片思いして好かれる努力をする。

「えっと、ヒカリちゃんは俺でいいのか?」

「え?」

大輔のいきなりの問いにヒカリは目を見開く。

「いや、ヒカリちゃん。タケルとか京と話すことが多かったからさ。ぶっちゃけ俺、迷惑なのかなと思ってて…その…デートの相手…俺で…いいの?」

大輔の言葉にヒカリは慌てて首を縦に振る。

それを見た大輔は赤面し、手で口元を押さえた。

「うわ…っ…ヒカリちゃんから誘われるなんて夢みたいだ…滅茶苦茶嬉しい…」

前なら何かに誘った瞬間、大騒ぎをした大輔だったからそんな反応をされるとヒカリも赤くなる頬を隠さないと恥ずかしくてやりきれない。

「夢じゃないよ…その…いいかな大輔君?」

「デート相手、俺でいいなら………あ、そうだ。賢にメールしないと…あ、良かったD-ターミナルで出来る…」

2人は赤面しながらも賢にメールを送る。

「ん?」

賢はD-ターミナルを取り出してメールの確認をし、メールの内容を見た賢の口元が綻ぶ。

「賢ちゃん…あ、これもしかして…」

「僕達はお邪魔みたいだ。別の所でご飯を食べよう」

「うん!!」

そうやって笑い合う賢と昔の賢の姿をしたワームモンの2人はまるで本当の兄弟のように見えた。

「でも賢ちゃん、このお金…本当に大丈夫かな?」

「大丈夫だと思う…僕達のお金が10年で使えなくなるとは思えないけど念のため…仕方ない…仕方ないんだ。僕達は…っ!!」

魔法で精巧に作られたお金…賢とワームモンは凄まじい葛藤の末使うことにした。

そして大輔達は大輔が好きなラーメンを…ヒカリ達も現実世界のラーメンを食べてみたくなったためラーメン店に来たのだが。

「超特盛りギガンティックチャーシュー麺。10分以内で完食すれば賞金10万円の奴」

ブイモンがチャレンジメニューに挑戦していた。

「では制限時間は10分、始めえ!!」

「頂きまーす!!」

ブイモンが箸を高速で動かし、複数の卵が超巨大丼から一瞬で消えた。

【へ?】

呆然となる店員達。

デジモンの中でも相当な大食漢であるブイモンは凄まじい勢いで麺を啜っている。

まだ5分も経っていないのに半分近くまで減っている。

しかもまだまだ余裕そうだ。

「うん、美味い!!」

次はチャーシューにかぶりつく。

チャーシューを噛んで飲み込み、再び麺を啜った。

近くで見ていると食べてもいないのにお腹一杯になりそうなので大輔とヒカリとテイルモンはブイモンから少し離れた場所で食べている。

「…何かごめん」

「あ、ううん。いいよ、私もラーメン食べたかったし」

「凄い食欲ねえ…」

ブイモンが超特盛りギガンティックチャーシュー麺を食べて4分くらいして…。

「御馳走様!!」

超特盛りギガンティックチャーシュー麺をあっさりと打ち負かした見た目7~8歳くらいのブイモンに見物人から歓声が上がる。

「………っ」

【店長!!?】

店長らしき人物は自分が研究に研究を重ねて作り出したチャレンジメニューをあっさりと破られたことにショックを受けて真っ白な灰となっていた。

「「「(ご愁傷様…)」」」

流石にこれは相手が悪すぎたの一言だ。

大輔達は店長らしき人物に合掌した。

「なあなあ!!」

「え、えっと…何だいボク?」

「お代わり!!今度はこれよりもっと多めで!!」

【おおおおおおおお!!】

お代わりを求めるブイモンに見物人達は更に歓声を上げるのであった。

因みにお代わりも綺麗に平らげました。

「へへ!!美味いラーメンを食べるだけでお金貰えるなんてな~」

「私はあの店の店長達が哀れに見えたわ。店のチャレンジメニューをあっさりと破られた挙げ句、更に量を増やしたお代わりまであっさりと完食されて」

満足そうにお腹をさするブイモン。

大輔は店長にヤケクソ気味に渡された倍の賞金の20万円を見つめる。

一応10年後も自分達が使っているお金だったようである。

「取り敢えず、賞金貰えたし…一応金は10年前と変わらないようだし…」

「ブイモン、大食い選手権に出ればぶっちぎりでNo.1になれそう」

というかブイモンは自分達の世界ではある程度我慢してくれていたのだなと思い知った大輔である。

「えっと…どうしようこれ?」

「大輔君が持っていた方がいいんじゃないかなこれ?…食費大変そうだし」

「ありがとうヒカリちゃん、本当に」

ブイモンの食欲と胃袋の許容量の本気を見た大輔はヒカリの言葉に感謝した。

それはもう心底に。

そして色々な商品を見て回り、自分達のいた世界とは違う世界の未来だとしても現実世界を満喫していた。

「(今の流行の服を買えば私達の世界で流行の先取りになるのかな?)」

そんなことを考える余裕が出て来たそれはきっと隣にいてくれる大輔のおかげ。

「ヒカリちゃん、少し待ってて」

「?」

大輔は何かに気付き、人混みの中に突入した。

少しして4人分のアイスクリームを器用に持ってヒカリ達に差し出した。

「疲れたろ?アイス食って休もう」

「ありがとう!!」

大輔とヒカリが同じベンチに、ブイモンとテイルモンが別のベンチでアイスクリームを食べ始めた。

「…美味しい」

「それは良かった。」

普通のアイスクリームなのに何時もより美味しい気がする。

「今日は凄え楽しかった。ありがとうヒカリちゃん」

「うん、私も凄く楽しかったよ……また、大輔君とデートしたいな…今度は私達の世界で……」

「…うん、邪魔者(京)がいないとこでな…」

大輔の頭の中に浮かぶのは興味本位で突っ込んで来そうな幼なじみである。

恐らく大輔とヒカリのデートを聞きつけたらストーカー紛いのことを仕出かす可能性が高いと思った。

「ふふ…誰にも邪魔されない場所でね」

ヒカリも何となく大輔の言いたいことが分かったため苦笑しながら頷いた。

確かに京ならば恋愛に対しての好奇心が一杯だから自分達がデートしようと聞きつけたら確実に警察のお世話になりそうなことを仕出かすような予感がした。

「…それでヒカリちゃん…その、デートしといて今更かもしれないけどさ」

深呼吸し、大輔は表情を引き締めるとヒカリに向き直る。

ヒカリはそれを見ただけで自然と胸が高鳴るのを感じた。

「え?何?大輔君…?」

「俺、ヒカリちゃんが好きだ。俺にとってヒカリちゃんは何が何でも守りたいくらい凄く大事な女の子だよ。」

「うん…」

ヒカリは大輔の額に触れた。

キュートモンによって治療されたことで傷跡はないが、自分のために出来た傷があった場所。

「凄く大事…だからさ…その、俺の傍にいて…俺にヒカリちゃんを守らせてくれないかなあ…?」

大輔からの告白を受けたヒカリは顔を赤らめながら頷いた。

「でも、守られてばかりは嫌。私も大輔君を支えられるように頑張るから…アカリさんみたいに大好きな人を支えられるように…」

「ヒカリちゃん…」

「あの~、大輔」

「ヒカリ…そろそろ丁度いい時間じゃないかしら?」

「え?あ、うん…そうだね…あ!!」

「ん?あ…」

向こうを歩いているのは多分この世界の大輔とヒカリだった。

自分達とは違う歴史と人生を歩んでいる自分達。

それでも2人の穏やかな表情を見て、2人の仲は良好くらいなのは分かった。

「大輔、ヒカリ。良いのか?追わなくて…?」

「良いんだよ、俺達は俺達…あっちの俺達にはあっちの俺達の未来があるんだ。」

「…うん、私達には私達の未来があるよね…行こう大輔君」

「ああ、それじゃあ賢にもメールしたし、早くタイキさんと合流…」

次の瞬間、向こうから凄まじい轟音が響き渡った。

「!?」

「何!?」

「大輔、デジモンの気配だ!!」

「急ぐわよ、この世界でデジモンに暴れられたら大変なことになるわ!!」

「うん…行こう大輔君!!」

「ああ、一緒にな!!今ならどんな相手にも負ける気がしねえ!!」

ヒカリと共に駆け出し、心に想いと新たな力が高まっていくような感覚を覚える大輔。

途中で賢とワームモンと合流して爆発地点に向かうのであった。 

 

第22話:皇帝聖竜

大輔とヒカリは賢と合流して爆発の発生元に向かうとそこにはキリハとメタルグレイモンの姿があった。

「キリハさんとメタルグレイモン!?」

「危ない!!」

謎のデジモンと戦っているメタルグレイモン。

デジモンはメタルグレイモンにトラックを投げ飛ばし、メタルグレイモンがそれを真っ二つにするが…。

「純情エメラルドチョップ!!」

「グガッ…!!」

強烈な手刀を喰らい、メタルグレイモンが地面に叩き付けられ、キリハが落下していく。

しかしドルルモンがキリハを救出した。

「ヒカリちゃん、賢、行くぜ!!」

「「うん!!」」

「ブイモン進化、エクスブイモン!!」

「ワームモン進化、スティングモン!!」

「デジメンタルアップ!!」

「テイルモンアーマー進化、微笑みの光!ネフェルティモン!!」

「「「エヴォリューションクロス!!」」」

「パイルドラモンHM!!喰らえー!!」

「ブルアアッ!?」

顔面に全力の回し蹴りを叩き込んで転倒させる。

「大輔君、ヒカリちゃん、賢君…」

「ごめんなさい、アカリさん。心配かけちゃって…もう大丈夫です!!」

「本当に?」

「はい、大輔君がいるから大丈夫です!!」

「むむ?もしかして…じゃなくてキリハ君、こんな所で暴れたらみんなが危ないじゃない!!」

大輔とヒカリの雰囲気の変化に気付いたアカリだが、今はそれどころではないとキリハに詰め寄る。

「見なさいよ!!関係ない人を大勢巻き込んで…こんなのがあんたの戦い方だって言うの!?」

アカリの後ろにはメタルグレイモン達の戦闘に巻き込まれた人々の姿があった。

「っ!…ふ…ん…!俺は現代人と言う奴が嫌いだ…!下手に知恵をつけて根性がついて来ないから言い訳ばかりが上手い…!」

「ドルルモン、キリハさんはどうしたんだ?滅茶苦茶機嫌悪いけど?」

「…実はな」

大輔達はドルルモンから別行動していたタイキ達に何かあったのかを聞いたのである。

キリハの機嫌が悪いのはタイキの小学校時代の友達のタツヤのことであった。

タイキと一緒に陸上の選手をしていたのだが、大きな怪我をしてしまったらしい。

昔のタイキは今のタイキとは違い、昔は自分でやりたいことを見つけて周りを巻き込むタイプだったらしく、興味のあることにすぐにのめり込んで並行してやり続ける人間だった。

しかしある時のタイキは陸上にハマり、タツヤと共にオーバーワークの練習をしてしまいタツヤを大怪我させてしまったらしい。

それ以来タイキは自分が何をしたいのか、何になりたいのか言わなくなってしまったのだ。

逆に困っている人を見たら、特に真剣に何かを取り組んでいる人を見るとなりふり構わず助けるようになった。

そこがキリハは気に食わなかったようだ。

「…成る程、確かにタイキさんの性格なら自分が傷つくよりも堪えるだろうな…でもそれって…こう言っちゃなんだけどさ、それってタイキさんの自己満足じゃないのか?そのタツヤさんって人は陸上にハマって頑張ってたんだろ?タイキさんのライバルだったんだろ?俺だったら、そんな簡単にライバルに諦められたらふざけるなってなるぞ…」

「でも大輔君、みんなが大輔君みたいに強いわけじゃないんだよ…?」

「……」

大輔達が会話している横でキリハとアカリの会話も続く。

「工藤タイキも同じだ…!現実を正面から見ることの出来ない腑抜けた現代人だ…!俺は…(俺は奴となら、同じ厳しさで現実を見て互いを高め合えると…)」

「タイキは腑抜けなんかじゃないっ!!ううん…みんなそうなんだよ?もやもやした気持ちを引き摺って…それでも自分の納得出来る生き方を探そうとしてもがいているんだよ!?キリハ君は自分や他人を傷つけてでも思ったことをやり通すって決めたけど…他の人はそうじゃない別の答えを探してる途中なのっ!!待ってなさいよ…!タイキだって必ずタイキなりの答えを見つけて戻ってくるんだからっ…!!」

アカリの言葉にキリハは呆然としていたが、次の瞬間笑った。

「フッ…フフッ…ハハハハハ!!全く、とんだ淑女様だ…!!あんな腑抜けには勿体ないな…!!ま…こんな不条理な事故でくたばられては、こいつらが腑抜けた生き様を悔いてる様も拝めんというもの。場所を変えるとするか…」

「それがいいです。あのままではパイルドラモンはともかく、メタルグレイモンがやばいです」

賢が指さすと、パイルドラモンHMはまだまともにやり合えているが、メタルグレイモンがボコボコにされている。

「ぐはははははーっ♪あべしっ!!」

「パイルドラモン、場所を変えるぞ!!」

「了解!!」

パイルドラモンHM達は大輔達を回収し、別の場所に向かう。

「メタルグレイモンがこてんぱんにのされちゃうなんて…あいつどういうデジモンなのよ!?」

「三元士、ブラストモン…その圧倒的なパワーと頑強な装甲はあのタクティモンすら凌駕する…!個体としては間違いなくデジタルワールド最強の生命体の一角だろうな」

「あのタクティモン以上?」

「えっ…でも、三元士最強ってタクティモンじゃないの?」

アカリの問いにドルルモンとキリハが反応する。

「ああ、それはな…」

「馬鹿なんだ。物凄く」

「「「「へっ…?」」」」

「まあ、見てろ」

素っ頓狂な声を出す大輔達だが、キリハはドルルモンから降りてブラストモンに向かう。

「おい、ブラストモン!」

「何だぁあ、正々堂々戦う気になったかああ~っ!?」

「ああ…決着をつけようじゃないか。ジャンケンで勝負だ!!」

「「「「はあ!!?」」」」

「貴様、俺様を馬鹿にしているなっっっ!!?」

「何だお前、三元士の癖に知らないのか?ジャンケンとは…デジタルワールドの創造神、グーモン・チョキモン・パーモンの三柱が果てしない闘争の果てに繰り出したそれぞれの必殺拳を模した三手を使って行われる神聖な闘技だ!!この世界の覇権をかけて戦う我々にこれ以上相応しい戦い方は有り得ないと言えよう…!!」

「(えええええ、何その投げ槍な嘘ーーーっ!!!)」

「(そんなんで信じる馬鹿がいるのか…?)」

「ブルアアア、知らなかったあああ!!そんな素晴らしい戦い方があったなんてえええぇ!!」

「(いたああああ!!?)」

「(えええええ、信じちゃったし!!)」

大輔とアカリが驚愕で目を見開いた。

「因みにここにおわすのが闘技ジャンケンの世界チャンピオン、パイルドラモン様だ!!」

「え?」

ブラストモンの相手に抜粋されたのはパイルドラモンHMであった。

「「「「「なんとーっ!!!」」」」」

「そしてあれに見えるのが…闘技ジャンケンの神聖なる土俵…第六台場だ!!」

キリハが示した場所は立ち入り禁止の島である。

「ぬおおぉお、よぉし、そこで決着をつけようぞおおお!!」

「(えええええええ…え?あっ…確かにあそこ立ち入り禁止の島だから安全かも…!)」

「(キュートモン、今のうちにパイルドラモンHMとメタルグレイモンの回復だ)」

「(キュ!)」

ドルルモンがキュートモンに回復の指示を出し、そして少し離れた場所にこの状況を見ている者達がいた。

「おやおや~?周囲に被害を与えない場所に移動しつつ…工藤タイキの到着までの時間を稼ぐつもりだネ♪」

「あの蒼沼キリハがこんな策を取るとは…」

ダークナイトモンの配下であるツワーモンとシェイドモンであった。

「よし…全快したぞ…その前に…」

パイルドラモンとネフェルティモンが分離する。

「パイルドラモン?」

「ヒカリとネフェルティモンはタイキ達を捜してくれ、あいつを倒すにはタイキ達の力が必要なんだ」

「…でも」

「大丈夫、簡単にやられたりはしないさ」

「分かった…信じてるからねパイルドラモン!」

ヒカリとネフェルティモンにタイキ捜索を任せてブラストモンとパイルドラモン達が向かい合う。

「さぁ~あああ、決着をつけるぞおおおぉぉ!!蒼沼キリハあああ~っ!!!!」

「ああ!だがその前にルールを確認しておこうか。闘技ジャンケンでは先に100本勝った方が最終的な勝者となるのだ。」

「(多っ!?)」

隣で聞いていたアカリが思わずツッコむ。

「何いいい!?そんなに何度も勝負するのかああ~っ!!?」

「三大神の決戦は実力が伯仲し、何百日にも及んだと言う。その戦いに敬意を払ってこのルールがあるのだ。数百回に及ぶであろう勝負を我々は一手たりとも気を抜かず撃ち合わねばならぬ…正に腕が砕けんばかりの苦行となるだろうな。どうした…怖じ気づいたか!?」

「何だとおお!望むところだあぁ~っ!!!」

キリハの挑発を受けてブラストモンがやる気を出す。

「上手いな…時間は充分に稼げそうだ。」

「こ…こんな手が通じるのはあいつだけキュ…!」

「ブルァァアアア、デジタルワールドを創り給いし神々よ御照覧あれえぇぇぇぇ…!我ここに乾坤一擲の拳を捧げ奉らあああああん!!!!」

天に拳を掲げると、凄まじい力を放出した。

「きゃあああ!ななななな何これえええ!!?」

「きっ…気合い!!?ただの気合いだ!!奴め、キリハの嘘を真に受けて気合いが入りやがった!!」

気合いだけで吹き飛ばされそうになる大輔達。

「…さぁーああああああ、行くぞぉおおお、1本目えぇぇえええ!!ジャン…」

「あ…あわわわ、なっ…何かヤバくない!!?」

「みんな下がれ!!!!」

キリハ達を庇うようにパイルドラモンが前に出て構えた。

「ケエェェェエエン…!!」

「(ただ力を入れるだけじゃ駄目だ。全てのパワーを右腕に…!!)」

「グーーーーっ!!!!」

「パーーーーっ!!!!」

カッ!!

ドッッッゴオオオオンッ!!!

パイルドラモンのパーとブラストモンのグーが激突した。

「絶対ジャンケンで出る音じゃなーい!!」

「どっ…どういうレベルの馬鹿力よこれえ~!!」

「直撃したら粉々になるぞっ…!!パイルドラモンは!?」

アカリ、テイルモン、ドルルモンが叫ぶが、真っ向からブラストモンのグーを受け止めたパイルドラモンは…?

「ぐはあ!!」

ジャンケンには勝ったが、完全に力負けして地面に叩きつけられている。

「X5とほぼ互角のパイルドラモンが一方的に力負けした…!?」

力負けしたパイルドラモンの姿に、信じられない物を見たかのようにドルルモンが呟いた。

「うぬうううう、今度は負けんぞおおお~っ!!」

「パイルドラモン、また来るぞ~!!」

「ぐっ!!」

「ジャン…!ケエエエン…!!チョキ!!」

「グー!!」

ブラストモンはチョキ、パイルドラモンはグーで応戦するものの、再び力負けしてパイルドラモンは吹き飛ばされた。

「パイルドラモン、しっかりしろ!!」

「大丈夫…まだやれる!!」

「急いでくれヒカリさん…!!」

ヒカリとネフェルティモンはタイキ達を捜し回っていたのだが、正面からオメガシャウトモンとタイキがやってきたのを見て急停止した。

「タイキさん!!オメガシャウトモン!!」

「ヒカリ!?もう大丈夫なのか!?」

「はい、私はもう大丈夫です。タイキさん、ブラストモンが!!」

「分かってる、俺達も今向かってる所だ。」

「タイキさん、何かすっきりしましたね?」

今までのタイキと比べて表情がずっと生き生きとしている気がした。

「ああ、古い友達と会ってさ。昔話をちょっと…」

「ふふ、アカリさんの言う通り、タイキさんはタイキさんの答えを見つけて戻って来たんですね!!キリハさん達は第六台場で戦っています!!」

「第六台場だな!!でも、どうしてそんなとこで…?キリハのことだから周りの被害なんて気にせず戦っているかと思ってたのに…」

「アカリさんですよ。アカリさんがキリハさんを説得したんです。タイキさんのこと、信じてたんですよ。誰よりも」

「そっか…やっぱりアカリがいないと駄目駄目だな。幼なじみだからっていつも助けてもらって…」

「…あの、タイキさん?もしかしてアカリさんがタイキさんのお世話するのをただの幼なじみだからって思っているんじゃ…?」

「え?違うのか?」

その言葉にヒカリは思わず叫んでしまった。

「ち・が・い・ま・す!!確かに幼なじみも理由の1つでしょうけど、アカリさんはタイキさんのことが好きなんですよ!!“like”じゅなくて“love”の好きなんです!!」

「……………え?」

「(ああ…言っちまった)」

「(ツッコミたい気持ちは分からないわけじゃないけどねえ…)」

それを聞いたオメガシャウトモンとネフェルティモンが胸中で呟く。

「え?えええええええ!?そ、そんな馬鹿な!?ア、アアアアカリがあああああ!!!?」

「幼なじみってだけでここまでお世話なんかしません!!」

ヒカリの兄である太一には幼なじみの空がいるが、流石にアカリのように献身的に世話を焼いたりはしない。

最初は理解出来ていなかったタイキが徐々に赤面し、動揺を静めるために謎の盆踊りをし始めた。

「え?あ、いや…その…俺は…俺はっ!!?」

「タイキ…そろそろ行こうぜ」

「みんなが待ってるわよ」

「へ?ちょ…待って…」

動揺しているタイキに構わずオメガシャウトモンとネフェルティモンは第六台場に向かう。

一方、ブラストモンとジャンケンで戦い続けているパイルドラモンは。

「はあ…はあ…」

外郭に罅が入り、立っているのもやっとな状態のパイルドラモンの姿があった。

「何でジャンケンであそこまでボロボロになるの…?」

「あんな馬鹿力じゃ…例えHMでも…!!」

「けっ…桁違いすぎる…!!これがデジタルワールド最強のパワー…!!」

「(奴の底力…馬鹿さ加減…!…全て読み違えた…!!完全なる…戦術ミス…!!奴を調子づかせ、こちらは逃げ場を失った…!!)」

「ジャンケン…!!」

「また来る!!」

「ぐ…おおおお!!」

パイルドラモンが力を振り絞って迎え撃とうとするが、
横から凄まじい速度でオメガシャウトモンが姿を現した。

「ビートスラッシュ!!」

オメガシャウトモンの蹴りがブラストモンに横っ面に炸裂した。

「ぱぶらっ…ぬあぁにいぃいいいい」

「タイキッ…!!」

「大輔君、賢君!!お待たせ!!」

「お帰りヒカリちゃん。」

「タイキさんもよく…タイキさん…?」

無言のタイキに疑問符を浮かべる賢。

「タイキ…ちょ、どうしたの?黙り込んじゃって?」

「エ!?イ、イヤア、何デモナイヨ?アカリサン」

「何でもないなら何で私と目を合わせないのよ!!こら、ちゃんと人の目を見て話しなさい!!」

「ア、アカリサン!!止メテ下サイ!!!」

アカリがタイキと目を合わせようとするが、タイキも踏ん張って阻止する。

「何だ?何時もと様子がおかしいが?」

「ごめんなさい…ごめんなさいアカリさん…私、タイキさんに暴露しちゃいました…」

「何?どういうことだ?」

ヒカリの言葉に疑問符を浮かべながらキリハが尋ねる。

「実は…かくかくしかじかのブイモンヘッドで…」

「ふむ…工藤タイキはさっきとは別の意味で腑抜けになってしまったということか」

「ごめんなさい…私のせいで…タイキさんが別の意味で腑抜けに…!!」

「いや別にいいんじゃねえのヒカリちゃん?ああでもないとタイキさん気付くの滅茶苦茶遅れたぜ?」

「同意見だ。あのままでは、あの腑抜けと陽ノ本アカリ嬢は確実に進展せんだろうから寧ろあれで良かったかもしれん…おい、腑抜け」

大輔の言葉にキリハは同意するとタイキを呼ぶ。

「キリハ!?」

「別の意味で腑抜けになったようだが、随分とマシになったじゃないか。ようやく貴様にも出来たようだな、いかなる犠牲を払ってでも自らの目的を果たすという覚悟が…!!」

「はあ!?誰かを傷付けて夢を叶えたって嬉しくなんかないよ!俺はキリハみたいなやり方なんて絶対認めないからな!…けど…同じ夢を追う仲間と痛みや苦しみを分け合うことなら…今なら出来る!俺もっと…みんなの覚悟や決意を信じなくちゃいけなかったんだ…!!」

それを聞いたキリハは苦笑し、そして深い溜め息を吐いた。

「呆れ果てた…貴様は結局そこ止まりか。俺達の色は決して混じり合わないと言う天野ネネの見立ては正しかったらしい…貴様を部下に迎え、バグラ軍と戦うという戦略は間違っていた。」

「えっ…えええ!!?諦めてくれるの!!やった!!超ラッキー!!!」

「故に今から貴様には俺のライバルになってもらう」

「へっ!?」

「仲間として混じり合い、共に高みを目指すのが無理というなら敵としてぶつかり合い互いを磨き合うまでのこと!!」

「い、いや…」

「そりゃあいいですねタイキさん。キリハさん頭も運動神経もいいからタイキさんのいいライバルになれますって」

「だ、大輔…でも俺は」

「どうせだから紳士のキリハさんに女の子の扱いを教えてもらったらどうなんですかタイキさん?」

「がふっ!?」

満面の笑顔のヒカリから放たれた鋭利な言葉の矢がタイキの純情(爆笑)ハートを撃ち抜いた。

「キリハさんだったらタイキさんの無茶ぶりについて行けそうだからいいんじゃないですか?」

「け、賢まで…」

賢までキリハの味方をする始末であった。

「4対1で俺の勝ちだ。今日から貴様は俺のライバルだ、異論は認めん。」

「俺はお前の相手なんてするつもりは…」

「ならば陽ノ本アカリ嬢の目を見て話してみろ。そうすれば考えてやってもいい」

「…………」

無理であった。

「30秒経過、時間切れです。今日からめでたく…お2人はライバル同士です」

「「おめでとうございまーす」」

大輔達がタイキとキリハの関係を祝福した。

「くそおおお……」

「では行くぞ我がライバル、タイキ!!我々の戦いに水を差す無粋なバグラ軍などとっとと駆逐してしまおうではないか!!」

「…仕方ないなぁ、もう!!」

「パイルドラモン、行けるか!?」

「ああ、キュートモンに少し治してもらった。」

「ヒカリちゃんとネフェルティモンはアカリさん達を安全な場所に」

「分かった。みんなを向こうに行かせたらすぐに戻るから!!」

ネフェルティモンはアカリ達を少し離れた場所に連れて行く。

「うぬうううううう…ちょっぴりお馬鹿な俺様でも知っているうう。ジャンケンでキックを出しちゃいけませええええん!!」

「メタルグレイモン進化!ジークグレイモン!!」

メタルグレイモンも進化し、オメガシャウトモン、パイルドラモンと共に突っ込んでいく。

「デスペラードブラスター!!」

「プラズマレールガン!!」

「ヘヴィメタルバルカン!!」

3体がエネルギー弾を連射し、ブラストモンに直撃させていく。

「グッ!!ムッ…ヌウオオオオオオォッ!!」

それを少し離れた所で見るデジモン達がツワーモンとシェイドモンの他にもいた。

「すっ、凄い!あのブラストモンを押していますお師匠様!!」

「何てことだ!我々ロイヤルナイツでも1対1じゃ苦戦を免れない相手なのに!!(そ…それにこの気配は…最初の戦いで消息を経った我が僚友達の…!?)あ…ああもう、この目が治ったら加勢に行って色々確かめられるのに~っ!!」

「「「お師匠様、威厳威厳っ!!」」」

ロイヤルナイツ最速の聖騎士・アルフォースブイドラモンが頭を抱えてジタバタし、弟子のデジモン達に止められていた。

「うおおおおおお!!一気にケリを着けるぜえっ!!オメガ・ザ・フュージョン!!」

「ファイナルストライクス!!」

「エスグリーマ!!」

3体が一気にケリを着けるためにブラストモンに向かってとどめを刺すために突撃する。

しかし、ブラストモンはこれで終わるような相手ではなかった。

「ヌゥ~ウウウゥウ…舐あぁめるなあああ!!」

煙を突き破って飛び出したのはまるで堪えていないブラストモン。

「何っ…!?ぷあっ!!」

「グムっ…!!」

ブラストモンはオメガシャウトモンとジークグレイモンを受け止めると、パイルドラモン目掛けて叩き落とす。

「ぐああああっ!?」

「グハッ!!」

「ぎっ…や…野郎~っ!!」

「ミ…ミレニアモンを圧倒した2体といくら消耗してるからって、あのパイルドラモンを含めた3体掛かりの猛攻だぞ!!堪えてないってのか…!!?」

「あ…あんなのどうやって倒しゃいいんだよぉ!!」

「「まだまだあーっ!!」」

「「限界を…超えろーっ!!」」

「オメガシャウトモン!!」

「ジークグレイモン!!」

タイキとキリハが互いのXローダーを連結させる。

「「ダブルクロス!!」」

「シャウトモンDX!!」

ボディは殆どジークグレイモンで右腕がオメガシャウトモンのボディが変化した銃剣となり、高い機動力と攻撃力を兼ね備えた姿となる。

そして大輔と賢の想いが極限まで高まったことでパイルドラモンは更なる進化を会得した。

「パイルドラモン進化!インペリアルドラモンDM(ドラゴンモード)!!」

「パイルドラモンがもう一段階進化した…と言うことは…」

「究極体だわ!!」

パイルドラモンは一段階進化し、黒金の装甲に赤い翼と白い鬣を持ち、古代デジタルワールド期に君臨したと言われているインペリアルドラモンDMへと姿を変えた。

インペリアルドラモンDMは飛翔し、シャウトモンDXがブラストモンに猛攻を仕掛ける。

「なっ…何だぁあああ~!!!何で俺の攻撃を喰らって倒れないんだああっ!!」

「うぉお!!」

「ガルァアアア!!」

シャウトモンDXとブラストモンの互いの拳が炸裂する。

「ぐぁ!!」

「うぬあ!!」

「こんの…まだっ…やるかあっ!!エレキバスタークロス!!」

シャウトモンDXの銃剣がブラストモンの頑強な装甲を削る。

「グワッギャアアアアアアッ!!!!」

「ポジトロンレーザー!!」

追撃にインペリアルドラモンDMが背中の大砲から光線を発射し、ブラストモンに炸裂させた。

「行けえ!!インペリアルドラモン!!」

「スプレンダーブレード!!」

「グゥギャアアアァアアア!!?」

インペリアルドラモンDMの両前足に付いているブレードでブラストモンの胸にX字の傷を刻む。

「うっ…ぐ…おおおお…!!」

シャウトモンDXとインペリアルドラモンDMの猛攻に今まで揺るがなかったブラストモンがとうとう膝を着いた。

「えっ、えええええ~っ!!ブラストモンが…」

「いっ…いかん!ここまでの攻防は予想していなかった…!このままでは…!!」

「「畳み掛けるっ!!シャウトモンDX!!バリスタモン!!ドルルモン!!スターモンズ!!グランドクロス!!」」

「シャウトモンX6!!」

シャウトモンDXが残りのメンバーとデジクロスし、今までの形態とは異なり体も相当に巨大化した。

シャウトモンの武器であったスタンドマイクを巨大化させた物を握り締めている。

「ヒカリちゃん!!」

「うん!!インペリアルドラモンDM!!ネフェルティモン!!デジクロス!!」

「インペリアルドラモンHDM(ホーリードラゴンモード)!!」

インペリアルドラモンDMもネフェルティモンとデジクロスすることで更なる力を得る。

インペリアルドラモンDMの黒い装甲が純白に染まり、より強力なパワーとスピード、そしてネフェルティモンの聖なる力を扱えるようになった姿である。

「うわあ…まるでロイヤルナイツの始祖様のようです!お師匠様!!」

「何だって!?くっ、ああもう!一体全体何がどうなってるんだあああ!!?」

「「「お師匠様、威厳威厳っ!!」」」

頭を抱えてジタバタと叫ぶアルフォースブイドラモンに弟子達が叫ぶ。

「ブルアアア、まぁた変わりおってえ、いい加減に俺様に粉!!砕!!されろぉおお~っ!!!!絢爛!!クリスタルボルケーノ!!」

地面を殴り、それによって生じた爆発の勢いを利用してシャウトモンX6とインペリアルドラモンHDMに突撃してくる。

シャウトモンX6はスタンドマイクにエネルギーを、インペリアルドラモンHDMは右前足のブレードに聖なる光を纏わせた。

「クロスシューティングロッカー!!!!」

「セイクリッドブレード!!!!」

2体の攻撃はブラストモンを真正面からねじ伏せた。

「(ああ~っ!今度は第六台場が…!!)」

「なっ…何というパワーだ…!!2体掛かりとは言えあのブラストモンを正面から力でねじ伏せてしまった…!!」

ウィザーモンが驚愕しながら言う。

シャウトモンX6とインペリアルドラモンHDMは警戒するが、煙から時空の歪みが見えた。

「大輔君、あれ…」

「デジタルゲートだ…」

「奴め!逃げる気かっ!!後顧の憂いだ!!ここで奴を潰す!!」

「インペリアルドラモン、早く攻撃を…」

「待て、キリハ、大輔!」

「「!?」」

急に高度が落ち始めたシャウトモンX6とインペリアルドラモンHDM。

「わ…悪ぃ、ちいとガス欠だぁ…」

「シャウトモンが限界なんだ!!進化してると言ってもここまでのデジクロスはベースになってるデジモンに負担が大き過ぎる!!」

「エクスブイモンも限界か…そうだよな、あんなに頑張ったもんな…」

「ごめん、大輔…」

消耗したシャウトモンX6とインペリアルドラモンHDMはゆっくりと着地するのであった。 
 

 
後書き
インペリアルドラモンHDMは白いドラゴンモードですね 

 

第23話:神の予言

ゆっくりと下降していくシャウトモンX6とインペリアルドラモンHDM。

あまりの負担に分離、退化した時にはシャウトモンとブイモンはヘロヘロ状態となっていた。

「ブイモン、大丈夫か?」

「う~ん、パワー使いすぎた…」

「こ、これは流石の私もクラクラするわ…」

「ふわわわわ…」

あれだけのパワーを引き出す進化なのでテイルモンとワームモンもそれなりに負担があったようだ。

「みんな!!」

「おう、アカリさん!!勝ったぜ!!」

「やったな!凄かったぞ!」

「まさかあのブラストモンを倒しちゃうなんてねえ…」

ウィザーモンの称賛の言葉にタイキは笑みを浮かべる。

「ありがとう!けど…今はゆっくりと喜んでもいられないんだ。すぐにでも体勢を立て直してデジタルワールドに戻らないといけない…!」

【………?】

大輔達はタイキの言葉に疑問符を浮かべている。

少しして弟子のデジモン達と共に現れた1体のデジモン…先程のアルフォースブイドラモンが現れ、大輔達に全てを話す。

神の予言した黙示録の戦争を。

“赤黒の双頭竜が天を征く時、生と死、天と地、有と無、過去と未来。

あらゆる有意情報(データ)を無意情報(ノイズ)へと換える炎が世界を覆うだろう。

多くの魂が安息を求めて彷徨うが、それすらも竜に喰われて新たなる原初の混沌を肥やすのみ…。

嘆きと共に2つの宇宙は互いを押し潰し、一条の光、一片の闇さえ射さぬ永き灰色の時代を迎えるであろう…。”

アルフォースブイドラモンがどのような方法を使っているのか分からないが、全員の頭の中に予言の内容とイメージを流していく。

「そして…神の示した滅びの刻限まで、もう2ヶ月あまりしかないのだ!!それまでにバグラ軍を駆逐し、奴らの企みを阻止しなければならない!」

「何だって…たった2ヶ月しかないのかよ!?」

残りの期間を聞いた大輔が思わずアルフォースブイドラモンに聞き返してしまう。

アルフォースブイドラモンは大輔の問いに静かに頷いた。

「あ…後2ヶ月でデジタルワールドも人間界も滅びちゃう…!?」

「……正直、あまりにも話が大きすぎて理解が追い付かないな…」

アルフォースブイドラモンの能力で予言の内容とイメージを見聞きしたアカリと賢は今でも信じられないと言いたげな表情である。

「予言と言ったが…そんな呪(まじな)いめいた物が本当にアテになるのか?」

キリハの問いにもアルフォースブイドラモンはすぐに答えてくれた。

「正確にはホメオスタシスによる超々高精度の因果演算の結果だ。何か手を打たなければ高確率でそうなる…としか言いようがない」

アルフォースブイドラモンの言葉にウィザーモンが反応し、今度は彼が前に出た。

「待って下さい!未来を形成するあらゆる因果を演算処理出来ると言うのなら、その過程において滅びの原因やその対処法を知ることも出来るのではないのですか?」

ウィザーモンの問いにアルフォースブイドラモンは頷きながら口を開いた。

「確かにホメオスタシスはこの宇宙を構成する全てのデータを閲覧し、演算する権限を持っているけど…そのデータが何を意味するかは、逐一非常に複雑な解析をしてみないと分からないんだよ」

「成る程…全知ではあるが、全識ではない…ということですね…」

「ええと、どゆこと?」

アカリが思わずウィザーモンの助手兼用心棒の方のテイルモンに尋ねる。

「一定のルールに従って出力された情報じゃないと意味が分かんないってことかな?例えば私達デジモンだって本質的には0と1で記された配列(コード)なんだけど…それだけ見ても何が何だか分かんないでしょ?」

「ん~…確かにな…配列だけじゃ何が何だかさっぱりだし…まあ、光子郎さん辺りなら分かるかもしれないけどさ」

テイルモンの言葉に大輔も同意する。

「だが、稀にいくつかの手掛かりから未来を構成するデータの一部が鮮明に解読されることがある。これは偶然による要素が大きくて、故に我々はこのことを“予言”と言っているんだ」

「…差し当たっては、目下一番の脅威であるバグラ軍を倒せってことか…」

「はい!現在のデジタルワールドに大きな影響を与えているバグラ軍と“赤黒の双頭竜”が無関係であるとは考えにくいです」

「バグラ軍を倒すことが滅びを回避することに直接繋がるか…少なくとも重要なヒントを得られるというのが、お師匠様やロイヤルナイツの結論なんです」

ドルルモンの言葉にアルフォースブイドラモンの弟子であるルナモンとコロナモンが頷いた。

「やれやれ…何だか厄介事が増えてしまった感じだな」

メイルバードラモンの言葉にタイキは苦笑しながらも口を開いた。

「でも確かに見えてきた…!少なくとも俺達が何を知らないといけないのか。そのために何をしなきゃいけないのか…それが分かっただけでも人間界に来た大きな収穫だよ!」

タイキの言葉にバリスタモンが口を開く。

「デモソレハ、後タッタ2ヶ月デ三元士ヤ皇帝バグラモンヲ倒サナケレバナラナイト言ウコトダ」

「言う程容易いことじゃないぜぇ!!?」

バリスタモンに続くようにシャウトモンが言うが、大輔達は自信に満ちた笑みを浮かべている。

「それはどうだろうね…?」

「俺達は今までの戦いで大きくパワーアップしてきた」

「仲間だって沢山増えた。」

「俺達が今までの戦いで築き上げてきた物は決して小さくはない!!」

「それを全てぶつければ勝てない戦いじゃあないと思うぜ!!」

賢、大輔、ヒカリ、キリハ、タイキの順で言う。

そしてタイキはキリハに手を差し出した。

「チーム・クロスハートは、チーム・ブルーフレアに同盟を申し入れる!あんな奴ら、ちゃっちゃと倒して俺達の巡り合いの戦いにも決着をつけないとな」

「最高の戦場になる!未来を掴み取るために…!!」

キリハもそれに応え、この瞬間にデジタルワールドの希望の二大勢力が手を組んだ。

外に出ていたメンバーから歓声が上がる。

「あの、ジェネラル・キリハがなあ…こりゃ大事になるわい」

バロモンが呟き、隣ではコロナモンとアルフォースブイドラモンが会話している。

「デジタルワールドに帰ったら残ったナイツも再結集しなくては!!」

「ああ!みんなしぶとい奴らだ。きっとどこかで反撃のチャンスを狙っている…!」

「それにしても…大分過去を変えちゃったなあ…昔の俺とかどうなるんだろ?」

「過去?」

「キリハも驚いただろ?俺なんて昔の自分にまで出会してさぁ…」

「何を言っている。時間が巻き戻ったとでも言うのか?」

キリハの言葉に目を見開くタイキとシャウトモンであった。

一方、ブイモンはアルフォースブイドラモンに呼ばれ、近くに歩み寄る。

「何だよアルフォースブイドラモン?」

「いきなりですまない…単刀直入に聞こう。君はマグナモンの関係者なのかい?君からは我が僚友と同じ気配を感じたんだ。」

「へ…?ああ、もしかしてこっちの世界の俺のことを言ってんのか?悪いけど俺はそっちの俺じゃない」

「え?それってどういう…」

「私が説明するわ、一応マグナモンとは知り合い…と言うか腐れ縁だし。こいつは並行世界のマグナモン…ていうかマグナモンになる前の存在なのよ」

テイルモンがアルフォースブイドラモンに説明する。

「成る程…!並行世界か…確かにぼ…私はかつて平行世界から来た存在と共に戦ったことがある!君達もそうなのか…」

「んー、多分そうだな」

「並行世界の存在とは言え、僚友とまた会えて嬉しいよ」

「そっか…」

ブイモンは知らないが、アルフォースブイドラモンはある意味ブイモンの可能性の一部とも言える存在。

何となく似ている部分もあるためアルフォースブイドラモンを見上げるブイモンであった。

そして、数日後のデジタル空間ではミストゾーンでリリスモンと戦い、左腕を失いながらも追い詰めたことでリリスモンを爆発させてしまい、デジタル空間を漂うことになってしまったマグナモンの姿があった。

「くっ、このままじゃ……!?」

突如感じた力にマグナモンは目を見開いた。

「何だ…この力は…まさか…俺!?」

違う場所から感じ取った力にマグナモンは意識をハッキリと取り戻し、一気にブースターを噴かしてその力を目印にして突き進むのであった。 

 

第24話:同一人物

 
前書き
原作でハブられたマグナモン参上。 

 
クロスハートとブルーフレアが同盟を組んだ後、数々の戦いを経て全員の力が最高潮にまで高まり、タイキ達の絆もまた極限まで深まった。

まあ、タイキの恋愛問題に関しては…ようやくアカリと目を合わせられるくらいに進歩はした。

そして今日はとうとう、バグラ軍との最終決戦。

「行くぞ、みんな!!」

「最終決戦だ!みんな力を振り絞れ!!」

クロスハートNo.1&2のタイキと大輔の言葉にジェネラル達がXローダーとD-3Xを取り出した。

「「「オメガシャウトモン!!ジークグレイモン!!バリスタモン!!ドルルモン!!スターモンズ!!スパロウモン!!グレートクロス!!!」」」

「シャウトモンX7!!」

「「「エクスブイモン!!スティングモン!!ネフェルティモン!!エヴォリューションクロス!!!」」」

「パイルドラモンHM!!パイルドラモンHM進化!インペリアルドラモンHDM!!」

いくつもの絆を力に変えた超闘士と聖なる光を放つ皇帝聖竜が空母ホエーモンから飛び立った。

後ろからも飛行能力を持つ面子が追従してくる。

「キィィ~ッ!!とうとう来たわね悪ガキ共っ!!このジュピターゾーン、クラウドキャニオンに隠されたバグラ大魔殿を探し出すとは…!お子ちゃまにしちゃ上出来だけど…少々おイタが過ぎたようね!こんな所まで来なければ…皇帝陛下からお預かりしたこの子達の恐ろしさを知らずに済んだのにねぇ!!」

リリスモンの後ろには、ホウオウモン、グリフォモン、プクモン、ヴェノムヴァンデモン、グランクワガーモン、メタルシードラモン、プレシオモン…そして、アルカディモン。

どれもこれも究極体に分類される強力なデジモン達である。

「凶獣アルカディモン…!!ホウオウモン、グランクワガーモン、グリフォモン…!!い…いずれも伝説の中で目にするような魔獣ばかりじゃぞ!!」

「奴らにとってもここが最終防衛ラインだ!出し惜しみ無しだな…」

「あ…あんなに沢山…!いくらX7とインペリアルドラモンでも一度に相手にするなんて…!!」

「みんな怯むな!!他のメンバーと連携して確実に倒していくんだ!!」

大輔が指示を飛ばしていくが、リリスモンの余裕の笑みは変わらない。

「あんたらの快進撃もここまでよ!!さあっ…100年以上お腹を空かせてきたこの子達に…美味しく頂かれちゃいなさ…!!」

その時、いきなり上空の雲が吹き飛んだ。

「ブレス・オブ・ワイバーン!!!」

「アージェントフィアー!!!」

巨大な飛竜型エネルギーと雲を吹き飛ばして現れたデジモンのパイルバンカーが炸裂した。

「間に合ったか…!!よし、タイキ!!僕も出してくれ!!」

アルフォースブイドラモンがタイキに自分も出してくれと叫ぶ。

「アルフォースブイドラモン!目は…!?」

「大丈夫!!Xローダーの力で何とか修復出来たよ!」

「よおしっ…!」

次々に舞い降りる聖騎士型デジモン達。

「まっ…まさか!!あの戦いの後にまだこれだけの生き残りが…!?」

「リロード!!アルフォースブイドラモン!!」

「(神に仕えるデジタルワールドの守護騎士達…!!ロイヤルナイツ!!!)」

現れたロイヤルナイツはドゥフトモン、クレニアムモン、デュナスモン、ロードナイトモン…そしてリロードされたアルフォースブイドラモンの計5体。

「集められたのはこれだけか…」

「スレイプモンやデュークモンが他のゾーンでバグラ軍の大部隊を討伐している。」

「ですがまだ多くのナイツが行方不明で…!」

「問題ない…!長い戦争で消耗しているのは奴らとて同じだ。かつて天界が急襲された時はこんな物ではなかったぞ!!」

「この私が美しく蹴散らして差し上げましょう。ラララ~♪」

ドゥフトモンとコロナモンがアルフォースブイドラモンに報告するが、デュナスモンとロードナイトモンは問題なさそうに言う。

天界を攻められた時はこんな比では無かったのだろう。

「そうか…(後、どれだけのナイツが生き残っているか分からないが…今ここに駆け付けなかったということは、やはり彼はもう…テイルモンから聞いた彼が潜伏していたというミストゾーンは既に崩壊し、そこに潜伏していたという彼ももしかしたら…)」

「アルフォースブイドラモン?」

「どうした?」

様子がおかしいアルフォースブイドラモンに気づいたシャウトモンX7とインペリアルドラモンHDMが尋ねる。

ハッとなったアルフォースブイドラモンがすぐに指示を飛ばす。

「X7とインペリアルドラモンのどちらかはリリスモンを!他の奴らは我々が叩く!!特に真ん中のアルカディモンは少々厄介な攻撃をしてくるんだ。戦い慣れた僕達が相手をした方がいいだろう」

「OK!頼んだぜ!!」

「分かったアルフォースブイドラモン。よし、敵の主力部隊はロイヤルナイツに任せて、俺達はリリスモンと雑魚を潰す!!」

「っしゃあぁ!!行くぜブラザーズ!!!」

「喰らい尽くしておしまいっ!!」

ロイヤルナイツの半数近くを入れた連合軍とバグラ軍の主力部隊が激突する。

「喰らえ!!メガデス!!」

インペリアルドラモンHDMが口から放たれた圧縮した暗黒物質がプテラノモンの群れを一掃する。

外した数体の敵が迫るが、インペリアルドラモンHDMが全身に超高温の風を纏う。

「エターナルジール!!」

インペリアルドラモンHDMを中心に広範囲に超高熱風を発生させ、自身を包囲していた相手を一瞬で焼き尽くす。

たった1体で多くの雑兵を蹴散らすインペリアルドラモンHDMは正に皇帝竜の名に恥じぬ鬼神の如き強さを遺憾なく発揮した。

しかし、アルカディモンの付近にいた空母ホエーモン達が突如データ分解していく。

「大輔君!!アルカディモンの近くにいた空母ホエーモン達が!!」

「ああ、データ分解されてる!!あれは一体…!?」

消滅した空母ホエーモンを見たヒカリと大輔が目を見開く。

「奴に不用意に近付きめさるな!!ドットマトリックス効果でどんな装甲も粉々にされますぞ!!」

クレニアムモンの言葉に全員が目を見開く。

「いつ攻撃したのかさえ分からなかった…」

「見えない上に防げない攻撃なんてどうすればいいんだ…!?」

賢とゼンジロウが顔を険しくするが、ドゥフトモンが剣を構えながら此方に近付き、アルカディモンの必殺技を説明する。

「デジタルな物質やエネルギーを表す0と1の配列の隙間にナノバイトサイズの微細なノイズコードを侵入させ、無為化し、破壊する…。裏技的魔技、“ドットマトリックス”!!その威力は不可知にして不可避!!が…このドゥフトモンが一度目にしたことがあるという事実が唯一にして致命的な脆弱性である!」

ドゥフトモンは剣に意識を集中し始めた。

「(既にその技は私によって解析され、完璧なワクチンプログラムが完成している!!)今だ!!アルフォースブイドラモン」

「応っ!!」

ドゥフトモンが作成したワクチンプログラムの支援を受けたアルフォースブイドラモンが両腕のVブレスレットから光剣を発現させる。

アルカディモンのドットマトリックスがアルフォースブイドラモンに炸裂するが、ワクチンプログラムによって完全に無効化された。

「な…何よこれ、ドットマトリックス効果が発動しないじゃない!!いや!これは…崩壊したデータが瞬時に復元していると言うのっ!!?」

「(貴様の跳梁も、最早今日までだ!!)ドラゴンインパルスX!!!」

「ギョオオオオオオ!!」

竜のオーラを纏い、両腕の光剣でアルカディモンを両断、粉砕する。

「ガアアアアア!!」

残った魔獣であるヴェノムヴァンデモンが必殺技のヴェノムインフューズを放った。

それはアカリ達のいる空母ホエーモンに向かっている。

「しまった!!」

あれでは最速の聖騎士であるアルフォースブイドラモンでも間に合わない。

しかし突如、空間が歪み黄金の閃光が飛び出した。

「あ、あれは!?」

「マグナ…モン…!?」

歪みから飛び出したのはロイヤルナイツの守りの要、マグナモンである。

「ミラクルグリッター!!!」

マグナモンはクロンデジゾイドの鎧から光を放ち、ヴェノムヴァンデモンの光線を押し切って直撃、最後の魔獣も撃破された。

「マグナモン、君は…」

「悪かったな、遅くなった。でも最後のパーティーには間に合ったようだな!!」

「全く君はいいとこばっかり持っていくんだから…でもどうしてここに?」

「デジタル空間を彷徨っていたら偶然、不思議な力を感知してな。それを目印にして来たわけだ。あちこちに移動するから全然出られなかったけどな」

「マグナモン!!」

「大輔…それにヒカリも…その姿…懐かしいな…でも大輔もヒカリも大人になっているはず…彼らは?」

「彼らは並行世界の過去から来たんだ。細かい話は後にしよう、戦えるかい?」

「当たり前だ。後ろに守るべき者がいる限り俺は戦う。それが並行世界とは言え大輔達なら尚更だ。」

デジタル空間を彷徨っている最中も修復は続けていたので、左腕がないことを除けば戦える状態だ。

マグナモンも参戦したことで連合軍の勢いは更に増していく。

広範囲への攻撃を得意とするために殲滅能力が高いインペリアルドラモンHDM、マグナモン、デュナスモンの攻撃でバグラ軍は瞬く間に数が激減していく。

「そっ…そんな…!かつて神界の軍勢を圧倒した魔獣共がこうも易々と…!!?」

「リリスモン!!てめえも余所見してる場合じゃないぜぇっ!!」

シャウトモンX7が愛用のスタンドマイクを握り締め、リリスモンに突撃する。

「ちょ…調子にお乗りでないよっ!!」

リリスモンの後方に巨大な魔法陣が展開され、シャウトモンX7に闇の波動が直撃するが、ダメージを与えるどころか動きを鈍らせることすら出来ない。

「とっ…止まりなさいよっ!!私の最強の攻撃魔法が命中してるでしょおっ!?」

「ウオオオオオッ!!クロスバーニングロッカー!!」

「ギャアッ!!?」

シャウトモンX7がスタンドマイクに業火を纏わせて全力で振るう。リリスモンは魔法盾を張るが、容易く粉砕されてしまい、右手の爪が欠けてしまう。

「(だっ…駄目だわ!!最早並みの魔王級デジモンの力を大きく超えているっ!!)」

完全に不利となってしまったリリスモンが撤退した。

「あ!てめえ待ちやがれっ!!」

「逃がさないぞ!!」

「主力がやられて総崩れになってるな」

「X7!!インペリアルドラモン!!無理に追うな!!ロイヤルナイツのみんなも待ってくれ!!あそこにはバグラモンやタクティモンもいるんだ。下手に突撃したら手痛い反撃を喰らうかもしれねえ!!」

「くそ…」

「分かった、大輔」

大輔の指示にシャウトモンX7とインペリアルドラモンHDMは渋々とリリスモンの追撃を止めた。

【連合軍の勝利だーっ!!ついにバグラ軍を大魔殿にまで追い詰めたぞ!!】

敵の本拠地、ジュピターゾーン上陸作戦成功。

ロイヤルナイツ半数近くがいたとは言え、破竹の快進撃であった。

取り敢えずは一度着陸し、休息を取ることにした大輔達である。 

 

第25話:憤怒

バグラ軍の主力部隊を撃破し、少しの間休息を取ることにした大輔達。

マグナモンは他のロイヤルナイツから今までの出来事を聞いていた。

「ヒカリちゃん、そろそろコトネちゃん達戻ってくるんじゃないかな?」

「うーん…あ!」

後方にゲートが開き、そこからウィザーモン達を迎えに行ったコトネ達が戻ってきた。

「ただ今帰りまちたーっ!!」

「人間界楽しかったーっ♪」

「どうだった?」

「人間界でのデジモンの痕跡は出来る限り消してきた。監視カメラの情報を改竄したり、ネットにデマを流しまくったり、“怪物を見た”と熱心に証言する人の記憶を直接魔法で操作したりしてしまって…大変だったよ」

タイキの問いにウィザーモンは溜め息を吐きながら答えてくれた。

「おかげでちっとも遊ぶ暇が無かったわ!」

「デジモンの存在が現実世界で知られたら大パニックなるもの…お疲れ様ウィザーモンにテイルモン。そうそう、マグナモンも来てくれたわ!無事だったのよ」

ヒカリがウィザーモン達に労いの言葉をかけ、テイルモンにマグナモンのいる場所を指差した。

「マグナモン?え?ちょ、あんた!?左腕どうしたのよ!?」

マグナモンの肘から先がない左腕を見て慌てて駆け寄る。

「リリスモンの爪にやられた。幸い処置が早かったから問題はない…久しぶりだなテイルモン…少し痩せたか?ホーリーリングが本体のドブネズミ?」

「ブチッ、ええ~そうね!最後にあんたに会ったのはどれくらい前だったかしら?あんたも元気そうで何よりだわ、この胃袋ブラックホールの馬鹿騎士クソ犬」

「ほう?言ってくれるなネズミの分際で」

「言ったがどうしたってのよ?ええっ?」

久しぶりの再会をし、昔のように会話するマグナモンとテイルモン。

憎まれ口を互いに叩きながらもウィザーモンとは違う意味で2人の深い絆を感じさせた。

「口が悪いなあの2人。」

「あれがマグナモンとテイルモンの会話さ。僕も久しぶりに聞いたな、あの2人の会話を」

タイキがいつマグナモンとテイルモンが喧嘩をするのかとハラハラしながら見ているが、ウィザーモンは懐かしそうに2人の会話を聞いていた。

「喧嘩友達みたいなもんか」

「そう言うことだ…まあ、それだけでもないんだが。」

「…………」

「テイルモン?」

急に黙りこんだテイルモンにマグナモンは疑問符を浮かべた。

「あんたね、無茶ばっかしてんじゃないわよ………心配したのよ…凄く……ミストゾーンが崩壊したって聞いた時…あんたも死んだんじゃないかって…」

「…………」

よく見るとテイルモンの目が潤んでいる。

心配をかけたようだと流石のマグナモンも気付いた。

「安心しろ、俺は簡単には死なない。俺のしぶとさはお前が誰よりも知ってるだろ」

「ええ、でも…あんまり無茶しないでよ。あんたみたいな奴でもいなくなったら悲しいのよ」

「………悪かったなネズミ」

「うっさい、アホ犬」

最後に互いに憎まれ口を叩きながら笑い合うマグナモンとテイルモンにウィザーモンは微笑む。

「それにしても、僕の研究もようやくここまで進んだのに…結局試すことが出来なかったなあ…」

「?」

ウィザーモンがマントから取り出したのは、何とXローダーである。

「それはっ…!!?」

「Xローダー…大輔達のD-3Xの技術も取り入れているから正確には見た目がXローダーのD-3Xと思ってくれ」

【えええええええ!!!?】

ウィザーモンがあっさりと言い放ち、タイキ達は驚愕した。

「そ…そういうことって出来るもんなの!?」

「確かにXローダーもD-3Xもとてつもなく精巧で一部魔法的な知識も必要とされるが、XローダーとD-3Xはあくまでただの機械だよ。寧ろ優れているのは一部の人間だけが持つクロス・コードを利用するというアイデアだな。デジクロスの無かった時代にこのことに気付いた最初の制作者は正に天才だよ。これでクロス・コードを持つ人間をスカウトして戦力アップ出来ればと思ったんだけどなあ…」

「と…とんでもないことを考えてたのね…」

「(…数百年前のデジタルワールドから飛ばされてきたスパーダモンやアルフォースブイドラモンはデジクロスやXローダーのことは知らなかった…。D-3Xは例外だからいいとして、ジェネラルの伝説はその数百年の間に生まれたことになる。デジモン達を自在に融合させ、次元の道を渡る能力……多分このXローダーを最初に作ったのは…けど…俺の予想が正しければ…そいつは何でこんな物を作って俺達をデジタルワールドに呼び寄せたんだ…?それにあの後、キリハやコトネに確認してみたら、未来の人間界から時間を越えてデジタルワールドに来ていたのは、俺達3人だけだった…!!この符号は一体何なんだ?何かまだ俺達が…ひょっとしたら皇帝バグラモンさえ見落としている絡繰りがこの戦争にはある…?)」

タイキは次々に浮かんでくる疑問に頭を悩ませる中、大輔はテイルモンと会話しているマグナモンに歩み寄る。

「マグナモン…いや、ブイモン」

「大輔…」

「すっげえ…立派になったなあ。お前」

自分のブイモンと比べても分かる。

目の前の自分のパートナーの可能性とも言えるマグナモンの完成された強さが。

「ありがとう。」

その言葉にマグナモンも微笑み、大輔はチラリと大魔殿を見遣る。

「変化なし…と…」

「全く気味が悪いな」

「キリハさん?」

「へっ…!?な…何が!?」

大輔とタイキがキリハの言葉に反応して振り返る。

「奴らの静けさがだ。お前達はそうは思わないのか?俺達に包囲されるに任せて反撃どころか偵察に出る素振りもない。かと言って浮き足立って雑兵が逃げ出すような様子もない…。アルフォースブイドラモンの話から察するに…この戦争をバグラ軍が優位に進められたのは、“赤黒の双頭竜”の捜索でロイヤルナイツの多くが神界を留守にしている間に急襲し、デジタルワールドを多くのゾーンに分裂させることによってナイツを分断出来たからだ。裏を返せばその時点でロイヤルナイツ全員を相手取って、確実に勝てるだけの戦力をバグラ軍は持っていなかったことになる…この1年程の戦争で戦力を消耗し…ロイヤルナイツの約半数までもが連合軍に集結した今、戦局は奴らにとって極めて不利な状態にあると言えるだろう。それが何だ…?この静けさは!俺には皇帝バグラモンの思惑が読めん。起死回生の秘策を隠しているのか…或いは、戦争以外の勝敗以外に何か別の目的があるのか…」

「別の目的…ですか…」

「しっかし…前から思ってたけど、お前現代人の癖によくそんな戦争のことで頭がまわるよなあ」

「ふん、ガキの頃から親父の書斎にあった兵法書ばかり読んでたからな。」

ゼンジロウの言葉にキリハは鼻を鳴らしながら言う。

「「あんたみたいなのもちゃんと親から生まれたのねー」」

2匹のテイルモンの言葉に一同は苦笑か呆れてしまう。

「当たり前だ!もう亡くなったが、一代で巨万の富を築き上げたやり手の実業家で俺は尊敬していたんだ!!が…病気で父が死んだ時に年の離れた兄達が考えたのは少しでも多くの遺産をふんだくっていかに自堕落に生きてゆくかということだけだった…事業を受け継いで発展させてゆくべきだと言った俺は徹底的に蚊帳の外にされたよ。」

「どんだけの無能なんだよそいつら…モガモガ」

「こら、ブイモン」

ブイモンの口を咄嗟に塞ぐ大輔。

「構わん。まあ、無能な兄達のことなどどうでもいいが…今日明日の仮初めの安寧のために、進取の気性を失い…他人にも自分の心にも薄っぺらい嘘を吐いて魂を腐らせていくのが今の時代の処世術だと思うと、無性に虚しく…腹立たしくてな。その点、兵法と言うのは嘘がない。いつ死ぬか分からない時代に大望を抱いた人間の生き様は何処までも真摯だ。そんな折に俺はXローダーの声に導かれてこいつらに出会った。後は言うまでもない。ここで生き、戦い。自分がどれほどの高みまで至れるか挑戦し続け…いつかは死ぬ。俺にとっては理想の生き方だ!」

「(…だが、最近のキリハは少々変わってきた。人間の中にも自分と同じように真摯に自らの生きる道を…探し続けている者がいることに気付き始めている…)」

キリハの言葉にすぐ傍でキリハを見てきたメイルバードラモンが胸中で呟く。

「うんうん、いいなあ青春だなあ。みんな色々な生き方を探し求めている…僕も若い頃を思い出すよ。君もそう思うだろマグナモン?」

「まあな…今でこそ大分落ち着いたけど、昔は俺も無茶苦茶やったもんだ。」

しみじみしながら言うアルフォースブイドラモンにマグナモンも同意する。

「あんたは今でも無茶苦茶でしょ」

「黙れハツカネズミ。下水道に叩き込むぞ」

「マグナモンはともかくアルフォースブイドラモンは今でも充分子供っぽいと思うけど…」

テイルモンと喧嘩をする時を除けば物静かなマグナモンと比べればアルフォースブイドラモンはまだ子供っぽい部分がある。

「もっと若い頃もあったの!ロイヤルナイツになる前はパートナーと一緒にそりゃあ色んな冒険をして…一度や二度世界を救ったりしたもんさ!」

胸を張りながら言うアルフォースブイドラモン。

「またまたそんな大袈裟な…」

「大袈裟なんかじゃないですよぅ!!そのくらいの大冒険の末、その信念と実力を磨き抜いた者でないとホメオスタシスはロイヤルナイツとして選ばないんです!!お師匠様達は本物の勇者なんですよ」

「フフフ…」

「おい、そのにやけ顔とピースは止めろ。そろそろいい歳だろお前も」

にやけながらピースするアルフォースブイドラモンにマグナモンがツッコむ。

「とにかく、ロイヤルナイツはここを含めた数々の並行世界のデジタルワールドの中でも信念と実力を極限まで磨き抜いた聖騎士のみ選ばれる。こいつは並行世界の八神太一…つまりヒカリの兄貴のパートナーデジモンだったんだよ」

「太一さんの!?」

「お兄ちゃんの!?」

「「パートナーデジモン!?」」

アルフォースブイドラモンの正体の衝撃の事実に大輔とヒカリが驚愕する。

「ウォーグレイモンじゃないわけ?」

「こいつはな、テイルモン。デジモンがゲームとして普及されていた世界でアグモンがバグ進化を起こして本来なら高確率でブイモンから進化するはずであるエクスブイモンの派生種であるブイドラモンに進化して今の姿に進化したらしい…本人は何故かもうアグモンとかブイドラモンだった頃なんて覚えてないけどな。」

小声でアルフォースブイドラモンの正体を大輔とヒカリとヒカリのテイルモンに教えるマグナモン。

「じゃあ、アルフォースブイドラモンは並行世界のアグモンなの?」

「そういうことになるな、八神太一とその他の奴らと共に世界をこいつは救った…俺もだけどな」

ヒカリの問いにマグナモンは肯定し、アルフォースブイドラモンは目を細めた。

「そう…この戦争の前にもデジタルワールドは幾度も大きな危機を迎え…そしてしばしば今回のように人間の子供の力を借りて乗り越えてきたんだ。今回もきっとそうなると僕は信じているよ。そして…この戦いが終わった後のことについて今のうちに話しておかなければいけないことがあるんだ。」

「話…?」

アカリが疑問符を浮かべながら尋ねる。

アルフォースブイドラモンの代わりにマグナモンが説明する。

「人間界とデジタルワールドが繋がるのは大抵デジタルワールドが危機に瀕して時空が不安定になった時のみ。今回はデジタルワールドが複数のゾーンに分かれてしまったことが原因だろう。皇帝バグラモンを討ち、全てのコードクラウンが揃えばこの世界は元に戻る。そうなれば時空の繋がりも正され、ゲートは閉じられるだろう」

「つまり…」

「この戦いが、お前達が共にいられる最後の戦いと言うことになる」

シャウトモンにマグナモンは言い淀むことなく伝える。

「なあ、マグナモン。過去の並行世界から来た俺達はどうなるんだ?」

「そうだね、僕達はタイキさん達みたいにはいかないし」

「かつてのデジタルワールドの争乱で並行世界に飛ばされた者もいる。その時は普通に帰れたし問題はないだろ。もし無理ならクロックモンを呼んできてやる」

「クロックモン?」

「コンピュータのタイマーを司る、時の守護者デジモンだ。コンピュータやネットワーク全ての時間と空間を管理している。奴なら元の世界に帰せるかもな…まずは三元士を…」

次の瞬間、空母ホエーモンが吹き飛ぶ。

【何っ!!?】

「敵襲っ!?」

ヒカリのテイルモンが吹き飛ばされた空母ホエーモンを見遣りながら叫ぶ。

「みんなーっ!!敵襲っ!敵襲だよーっ!!」

「だ…大魔殿とは全く別の方向から所属不明のデジモンの大部隊が…!!」

ワームモンとコロナモンとパンダモンが慌てて此方に走ってきた。

「伏兵だと…!?他のゾーンを侵攻していた部隊も全て押さえていたはずだ!!どこに隠れていたと言うんだ…!!?」

「そ…それが何だか…」

「違うんです!変なんです!見たこともない巨大で醜悪なデジモンの軍団と言うか…群れが、ここ以外に大魔殿付近にも出現してバグラ軍の守備隊とも戦っているんです!!」

「…バグラ軍では…ない…?」

「まさかっ…!!」

パンダモンとコロナモンの報告を受けたタイキ達は脳裏に奴の姿が浮かんだ。

「(ダークナイトモン…!!)」

拳を握り締める大輔。

「ど…どうするタイキ!!せっかく包囲したのが…」

「出直して体勢を立て直すような時間ももう無いぞ…!」

ゼンジロウとキリハの言葉にタイキも頷いた。

「うん…行こう!!大魔殿へ!!何か碌でもないことが起きそうな気がする…!俺達は事態の中心にいなくちゃいけない!!」

「頼む!!外の敵は我々ロイヤルナイツで引き受けよう。今回の戦いを導いてきた英雄は君達だ!!皇帝バグラモンを倒し、この世界の平和を取り戻して来てくれ!!」

「フッフーン!任せんしゃい!!」

「なっなっ、何か燃えてキターッ!!?」

「燃えてるぞお前」

アルフォースブイドラモンの言葉にやる気を出すコトネと燃えるゼンジロウ。

そしてそれに冷静にツッコむマグナモン。

隣でシャウトモンはとうとう冒険の終わりの時が来たのだと今更ながらに思い知る。

「(分かってたさ…この戦いが終わればタイキ達は…!そりゃそうだ。あいつらにゃ、人間としての未来が待ってるんだからな…)」

「…大丈夫かシャウトモン?この2ヵ月、DXやX7で何度も戦ってきたからな…」

「へっ…!!誰に向かって物言ってやがる…未来のデジモンキング、シャウトモン様だぜぇ!?(それがどうした…!!最後まで全力で響かせるだけさ…!!)」

「ブイモン、お前もDMやHDMで戦い続けてきたけど大丈夫か?」

「問題ないさ、さっきたらふく食ったからな!!」

ブイモンも闘志を充分に燃やしながら言う。

「さぁ、ブラザーズ!!デンと座って動かねえ向こうの親玉に一泡吹かせに行こうじゃねえか!!!」

最後の戦いに望む今回の戦いの英雄達。

全員が決戦に備えてXローダーとD-3Xを構えるのであった。 
 

 
後書き
ML大輔は並行世界には行ってないので 

 

第26話:憤怒 中編

大魔殿に向かうためにデジモン達を再びデジクロスさせたタイキ達。

しかしここで、大輔から予想外の進言を受けた。

「タイキさん、俺とインペリアルドラモンは別ルートで侵入します。その間…ヒカリちゃんと賢を頼みます」

「え!?」

「だ、大輔君!!?」

いきなりのことに目を見開くタイキ達だが、大輔は別行動を取る理由を説明する。

「キメラモンとムゲンドラモンの軍団を作れるのはあいつらしかいない」

「…ダークナイトモンとシェイドモンだね?」

賢の言葉に頷く大輔。

「あいつは…ダークナイトモンだけは許さねえ…ネネさんを利用して傷つけたあいつだけは絶対に…あいつを見つけだして叩き潰す。そうすればバグラモンや三元士との戦いで邪魔されないで済む」

「な、なら…私と賢君も一緒に…」

「インペリアルドラモンのベースになっているのはエクスブイモンだから…ベースのデジモンのジェネラルの俺がいればインペリアルドラモンはフルパワーで戦えるはずだ。俺…ダークナイトモンを見たら、自分を抑えられるかどうか全然自信がない。みんなやヒカリちゃんにそん時の俺の顔を見て欲しくないんだ」

「そんな…今まで一緒に頑張ってきたのに…」

「ヒカリちゃん…頼むよ。今回だけ…今回だけ俺の我が儘を聞いてくれよ。頼む…!!」

ヒカリの肩に手を置いて言う大輔を見て、梃でも動きそうにないと理解したヒカリは目に涙を滲ませながら俯いた。

「ずるいよ大輔君…そんな風に言われたら私、何も言えなくなっちゃうよ…」

「ごめんなヒカリちゃん」

「でも…約束してね大輔君…絶対に無事に帰ってくるって!!」

「勿論!!じゃあ行ってくる!!」

インペリアルドラモンHDMに乗り込み、ダークナイトモンを捜しながら大魔殿に先に向かう大輔。

タイキ達もシャウトモンX7に乗り込み、大魔殿に突入して玉座の間まで一直線に向かう。

そして壁をぶち破って、バグラモンに迫ろうとするが、タクティモンが攻撃を仕掛けてきたために阻まれてしまう。

「へっ…!三元士が2人も残っていなさるたぁ…華々しいラストバトルになりそうじゃねえかぁ!!」

遂にバグラモンと対面したシャウトモンX7とタイキ達。

タクティモンはバグラモンの前に立つと懇願する。

「陛下…終の戦場と見受けます。賜ったこの剣の封印…解いて頂きたい。武人の我が儘で御座る。何卒…」

「よかろう、君の内に眠る修羅…存分に解き放つがいい!!」

バグラモンが異形の右手を鳴らすとタクティモンの蛇鉄封神丸の封印が解かれた。

「悟の太刀…五稜郭!!」

抜刀と同時に繰り出された高速の斬撃がシャウトモンX7に迫る。

「えっ…!!」

その斬撃の速さに人間であるタイキ達は愚か、シャウトモンX7ですら反応が遅れた。

「がっ…!!?」

「X7…!!?」

「カアアアア!!エンプレス・エンブレイズ!!!!」

斬撃をまともに喰らって吹き飛ぶシャウトモンX7。

リリスモンも即座に印を結んで、魔法陣から異形の腕を出現させ、シャウトモンX7を押し潰す。

「ぐあああああ!!」

そんな隙を逃すわけもなく斬りかかるタクティモン。

「げっ…!?うっ…動けねえ…」

「応戦!!セブンビクトライズだ!!!」

「うおおおおおお!!セブンビクトライズ!!」

キリハの咄嗟の判断によって異形の腕を打ち消し、シャウトモンX7は自由を取り戻す。

しかし威力の大半を殺がれたのか、タクティモンのマントで容易く防がれた。

「大丈夫っ!?」

「いっ…一撃でやられるとこだったぜ…!!」

解き放たれたタクティモンの蛇鉄封神丸は邪悪な蛇のような瘴気が溢れ出し、蛇の顔模様のような物が刻まれた禍々しい刀だった。

「蛇鉄…封神丸!!?」

「あれが真の姿か…!」

蛇鉄封神丸から放たれるあまりの禍々しい瘴気に圧倒されそうになるタイキ達。

「リリスモン?」

「野暮は承知の上よ。あっちだって、てんこ盛りのデジクロス体なんですもの。私もちょっかいくらい出させてもらうわ」

「あの刀の力がここまでとはな…」

「こ…この上、リリスモンやバグラモンまで一度に相手にするんでちか~!?」

「へっ…!こりゃ思ったよりヘビーだぜ…!!」

力を解放した蛇鉄封神丸の力はキリハの予想を遥かに上回っていた。

リリスモンとバグラモンまで相手にするとなれば確実に勝ち目は薄い。

「(正直三元士のどちらかは指揮のために前線に出ていると思ってたけど、やはりこいつらには戦争そのものよりも重要な目的かあるのか…!?)」

「さあ、リベンジマッチよ!!皇帝陛下には指一本触れさせ…」

リリスモンの言葉を遮り、突如地面から現れる何か。

【!!?】

それはダークナイトモンに取り込まれた三元士であるブラストモンの体だった物である。

地面から飛び出したのは多くのデジモンを強制デジクロスで取り込み、最早ダークナイトモンとしての原形を留めていない異形の化け物となったダークナイトモンと追従するシェイドモンの姿が。

「フヒッヒヒヒヒ。中々楽しいゲームが始まっているではないかね!!どれ、1つこの私も混ぜておくれ!!?」
「姉しゃまっ!!」

「ダークナイトモン…!!あっ…あの姿は、うわっ!!?」

ダークナイトモンの開けた穴に落ちていくシャウトモンX7とタイキ達。

「君達は精々そこの化け物と楽しく遊んでいてくれたまえ!!なぁに心配無い!!皇帝バグラモンはこの私が倒し、デジタルワールドに平和を齎してみせよう!!このダークナイトモンの名の元、死と暗黒の平和をね…!!」

「!!その姿…ブラストモンをっ…己ぇぇぇ!!!」

ダークナイトモンに取り込まれたブラストモンの仇を討つべく、リリスモンはダークナイトモンに突撃した。

一方、城外ではマグナモン達がキメラモンとムゲンドラモンの軍団を相手にしていた。

「はああああ…シャイニングゴールドソーラーストーム!!!」

自身に迫るキメラモンとムゲンドラモンを出来るだけ引き寄せ、空間を急速圧縮・瞬間膨張させ、黄金のレーザー光でキメラモン数体、ムゲンドラモン数体を消し飛ばす。

「スパイラルマスカレード!!」

ロードナイトモンも体の帯刃を自在に操り、キメラモンを斬り刻んだ。

「むうんっ!!エンド・ワルツ!!」

魔槍を高速回転させ、ムゲンドラモンを斬り刻むクレニアムモン。

「やれやれ、キリがありませんなぁ!!」

「ざっと見て400体以上の合成デジモンがひしめき合っている…!」

ドゥフトモンは機動力に優れた獣形態のレオパルドモードとなってキメラモンを相手にしていた。

「こいつらは多分、強制デジクロスとやらで作り出されたんだろうな!!」

「も…もしそうなら…こっ…この数を揃えるのに何体のデジモンが犠牲になったんだ…!?」

「少なくても犠牲の数が4桁を軽く超えるのは確かだ…それにしてもキメラモンとは…若い頃の変態仮面騒動の嫌な思い出が蘇るぜ!!マグナムキック!!」

強烈な回し蹴りを叩き込み、キメラモンの頭部を粉砕するマグナモン。

次の瞬間、大魔殿の一部が吹き飛ぶ。

「「!?」」

アルフォースブイドラモンとマグナモンが急いで大魔殿を見遣る。

「X7!!?」

「と、あれはタクティモンですね~♪」

そこには競り合うシャウトモンX7とタクティモン。

タクティモンの刀をスタンドマイクの柄で防ぐが、あまりの衝撃に耐えきれずにシャウトモンX7は地面に叩きつけられる。

「あの刀は…蛇鉄封神丸!!前の戦いで3体以上のロイヤルナイツを同時に圧倒した力だ…!!X7がいくら強くてもこれでは…!」

「アルフォースブイドラモン、そっちにキメラモンが向かったぞ!!」

ムゲンドラモンの相手をしていたマグナモンがアルフォースブイドラモンに向かって叫ぶ。

「くっ…邪魔だあっ!!アルフォースセイバー!!」

アルフォースブイドラモンはキメラモンの頭部を光剣で斬り裂き、瞬時に撃破する。

「加勢に行きたいが…こっちの戦線も余裕がない!!保ってくれよX7…!!」

此方に迫るキメラモンやムゲンドラモンを見て苦々しげな表情を浮かべるアルフォースブイドラモン。

「シャウトモン!!」

「離れてろタイキ!奴はやべえぞ!!」

「!だ…だけどジェネラルと離れ過ぎたら充分なパワーが…うわっ!?」

「(俺達も奴も扱う力が大き過ぎる!タイキ達を巻き込んじまうっ…!!)」

「「(シャウトモン…!?)」」

タクティモンとの戦いにタイキを巻き込まないようにと飛び立つシャウトモンX7。

デジクロスしているドルルモン達はシャウトモンから妙な違和感を感じていた。

一方、大魔殿ではダークナイトモンに挑んだものの、力及ばず返り討ちにされてしまい、壁に磔にされたリリスモンの姿があった。

そしてバグラモンの目の前に立つダークナイトモン。

「グフッフフフフフフ…あ…あの強大なX7を圧倒している!そ…その使い手たるタクティモン共々、空恐ろしい程の威力ですな…蛇鉄封神丸…!!デジタルワールドを分断するために古代の超兵器、ゼロアームズ<オロチ>のデータを元に建造されたものと聞き及びます。全く…兄上の成されること…創られる物にはつくづく驚かされますよ…!!」

「(…!?…兄…上…!?)」

リリスモンは意識が朧気ながらも驚愕する。

それは近くで聞いていたウィザーモンとテイルモンも同様だった。

「なっ、何の話してるのよあいつら…!?」

「ダークナイトモンとバグラモンが兄弟…!!?(い…いや…あの姿のモノをダークナイトモンと呼んで良いのかどうか…どういう経緯か分からないが…弱ったブラストモンを強制デジクロスで取り込んだんだ!もしや、人間界でのあの戦いその物が奴が仕組んだ物だったのか…!?)」

「ブブフッ…フフフフ…そっ…その圧倒的な才覚…力…清廉な魂…!ありとあらゆる栄光を約束された大天使としてこのデジタルワールドに生を受けた兄上とは逆に…私は世界から憎まれ…蔑まれるばかりの惨めな小悪魔だった…!」

兄弟であるにも関わらず、あまりにも差があり過ぎることが両者の間に大きな溝を作り出した。

「そ…その憤り…!身を焦がす焦燥…!!だ…だが今はそれも少年の日の甘酸っぱい思い出のように感じますよ…!私は力を手に入れたっ…!!いっ…いや…これから全てを手に入れるのだ!!力をっ!!栄光をっ!!!このデジタルワールドに君臨する…絶対の王に…!!」

ダークナイトモンの言葉を聞きながら、バグラモンは一瞬だけ視線を無傷の壁の方に向けた。

「(この凄まじい力…並行世界の過去から来た少年のデジモンか…)」

「シェイドモン!!強制デジクロスだ!リリスモンを取り込むっ…!!」

ダークナイトモンがシェイドモンに強制デジクロスをするように指示を出す。

しかし、シェイドモンはそれを制する。

「殿下。先日、ブラストモンを取り込んでから日が浅くまだ安定しておりません。今また魔王級デジモンを取り込めば殿下の自我が…」

「五月蝿いっ!!」

「!!」

シェイドモンの警告を無視して、その体を握り潰そうとするダークナイトモン。

その姿にかつての冷静だったダークナイトモンの面影は全くない。

「自我っ…自我だとっ!!?ごっ…こっ…これから私が手にする栄光と比べてそんなものにどれ程の値打ちがあるというのだっ…!!」

「かはっ…!あっ、あぐっ…」

「貴様などダークネスローダーに付属する部品に過ぎんのだ!!物が口答えするな…!!!」

「かはっ…!はっ…はい…」

そして、ただ黙ってその光景を見つめ、表情を全く崩さないバグラモン。

力に溺れて変わり果てた弟の姿を見てバグラモンは何を思ったのだろうか…。

「なっ…何よあれ、タイキ達の話よりキャラがぶっ飛んでるわよっ!?」

「無理なデジクロスを重ね過ぎて自我が崩壊しかけているんだ…!!(あんな奴がデジタルワールドの覇権を握ればバグラ軍どころの脅威ではない…!!と…止めなければ!!だが、我々の力では…)」

そう、ブラストモンを取り込んだ時点で最早ダークナイトモンは並みの魔王級を超えている。

そんな相手にウィザーモン達が挑んだところで結果は分かり切っている。

解放されたシェイドモンが強制デジクロスのためにダークネスローダーを構えた時であった。

「来る…」

「「!?」」

今まで無言だったバグラモンが声を発したことにダークナイトモンとシェイドモンが振り返った瞬間、壁に亀裂が入った。

「弟よ…君が怒らせた…地獄からの鬼が…!!」

亀裂が入った壁の向こう側から放たれている鬼のような憤怒の気配にバグラモンが汗を一筋流した。

「「ダークナイトモーーーーンっ!!!!」」

次の瞬間、壁が吹き飛び、憤怒の表情を浮かべた大輔とインペリアルドラモンHDMがダークナイトモンに襲い掛かるのであった。 
 

 
後書き
次回はダークナイトモンフルボッコ 

 

第27話:憤怒 後編

大魔殿の壁をぶち破って現れた大輔とインペリアルドラモンHDMは勢い良くダークナイトモンに襲い掛かる。

「俺はお前が許せねえーーーっ!!!」

「インペリアルクローーーー!!!」

ダークナイトモンに勢いよく迫り、インペリアルドラモンHDMは両前足の爪を叩き付けた。

「がっ!?」

まともに喰らったダークナイトモンが錐揉み回転しながら吹き飛ぶ。

「「大輔とインペリアルドラモン!?」」

「よう、久しぶりだなダークナイトモン。しばらく見ないうちに随分と気色悪い姿になったな。まあ、お前にはお似合いの姿だぜ?」

「ガ…ギギ…貴様…本宮大輔とインペリアルドラモン…!!」

「どうした自称絶対の王様?お前の言う王様の姿ってのは地面に這い蹲っているのがお似合いの姿のことを言うのか?」

「さっさと立てよ?それともさっきの一撃でもうグロッキーか?」

見下したような大輔とインペリアルドラモンHDMの冷たい目と声色にコンプレックスを刺激されたダークナイトモンが起き上がる。

「い、一撃を…っ、入れた位でいいいい気にっ、なるなああああ!!」

インペリアルドラモンHDMに殴りかかろうとするダークナイトモンだが、次の瞬間、脳天に凄まじい衝撃が走り、ダークナイトモンは再び地面に叩きつけられていた。

「なあ…にぃ…!!?」

「えっ?な、何が起こったの!?」

「お、恐らく、ダークナイトモンの頭に右前足を振り落としたんだと思う…」

テイルモンもウィザーモンも何が起こったのか分からないと言う表情である。

「ブラストモンも可哀想にな、後…お前に取り込まれたデジモン達も…お前に吸収されて、利用されたデジモン達…そしてお前が利用して苦しめてきたネネさんの苦しみと痛みを…たっぷりと味わいやがれっ!!インペリアルドラモン!!!」

「おうっ!インペリアルクローーーー!!!!」

「ギャアアアアアア!!!」

立ち上がる暇すら与えずインペリアルドラモンHDMが凄まじい速さで両前足を繰り出し、ダークナイトモンに反撃すら許さずに一方的に叩きのめす。

「…凄まじいな…これが夢と希望が満ちていた時代を生きていた者達と…今の我々とのポテンシャルの差か…」

「うおおおおおお!!」

「っ!!」

インペリアルドラモンHDMの左前足をギリギリでかわして顔面を殴りつけた。

「ヒッ!!…ヒヒヒヒ…ど、どうっ、だ…ブラストモンを取り込んだっ、いい今の私のっ、パワーはっ!!」

「…こんなもんか?お前のご自慢のパワーってのは?はっきり言ってブラストモン単体の方がまだ強かった…あいつの方がまだ力の使い方が分かってたな」

「っ!!?」

ダークナイトモンの渾身の一撃は見事に顔面を捉えていた。

それも完璧に、手応えさえあった。

徐々にインペリアルドラモンHDMに押し返されなければ申し分ない一撃…のはずだった。

誰もが驚愕する中、唯一バグラモンだけはその光景に動揺していない。

「(当然だな、大振りすぎてどこを狙うのかが分かり易すぎる…狙われた箇所にインペリアルドラモンの全パワーを回せば受けるダメージは小さくて済むというわけだな)」

「いくら強制デジクロスをしまくったからって、ベースになるデジモンがただの馬鹿じゃあ、ブラストモンのパワーも宝の持ち腐れってわけだな…ネネさん達が受けた痛みと苦しみを数千倍にして返してやるよ…覚悟しやがれダークナイトモン!!」

静かに憤怒の炎を燃やす大輔。

「だああああっ!!!」

今度はインペリアルドラモンHDMの左前足がダークナイトモンの横っ面に炸裂した。

「ギッ!!?」

「忠告してやるよダークナイトモン。お前は一生王にはなれない。負け続けるんだよ俺達みたいなのがいる限りなっ!!!」

「ポジトロンレーザー!!」

零距離ポジトロンレーザー。

まともにレーザーを喰らったダークナイトモンがのたうち回る。

「お前の薄汚ない腕に…胸糞悪い面にようやく攻撃することが出来るんだな!!」

「セイクリッドブレード!!!」

インペリアルドラモンHDMはダークナイトモンの腕を握り潰すと顔面に前足のブレードで裂傷を刻み、ブラストモンの体の一部が床に叩きつけられた際に砕ける。

「ヒギャアアアアア!!!!」

腕に、顔面に、体中に走る激痛に悲鳴を上げるダークナイトモン。

その凄まじい光景にウィザーモン達は息を呑む。

「何と…ダークナイトモンが一方的に…」

「どっちも最低の相手には容赦のないとこは共通ね。私はあいつとの最終決戦を思い出すわね。こっちはシリアスだけど」

「お前だけは絶対にぶっ飛ばしてやる!!お前が苦しみと屈辱を与えた奴らに代わってな!!そいつらがお前から受けてきたのは地獄程度じゃ味わえない苦しみと屈辱だぜダークナイトモン!!遠慮なく腹一杯喰らいやがれ!!!!」

大輔の怒号が玉座の間に響き渡る。

インペリアルドラモンHDMの絶え間ない猛攻を受け、地面に転がるダークナイトモンは息絶え絶えの状態であった。

「シェ、シェ、シェ…イドモオオオオン…奴を…強制デジクロスで…取り込…」

「止めておきたまえ、不完全な強制デジクロスでは逆に君が取り込まれて彼らの力の糧になるだけだ。(それ以前に強制デジクロスの時間すら与えてはくれんだろうな…)」

強制デジクロスでインペリアルドラモンHDMを取り込むことで難を逃れようとするダークナイトモンをバグラモンが制した。

インペリアルドラモンHDMはシェイドモンに向けて凄まじい殺気を放って行動を妨害していた。

シェイドモン自体の戦闘力はさほど高いわけではない上に人間のネネがベースとなっているのでインペリアルドラモンHDMに対して完全に無力である。

その気になれば一瞬でシェイドモンを気絶させることも可能だろう。

「流石のお前もこれで終わりだなダークナイトモン。俺達はお前みたいな奴に良いようにされてたのか。情けないぜ」

冷たく見下ろす大輔にダークナイトモンが口を開いた。

「さげ…すむな…」

「ああ?」

「私を…蔑むなああああっ!!」

起き上がり、殴りかかろうとするダークナイトモンだが、インペリアルドラモンHDMが殴り飛ばし、大砲から最大出力の光線を放ってダークナイトモンに直撃させた。

「あ…ああ…あああ…」

「まだ生きてんのか…耐久力だけは大したもんだな…」

「ああ、さっさと片付けてしまおう。こんな奴に時間をかけ過ぎた」

インペリアルドラモンHDMが左前足のブレードに聖なる光を纏わせ、倒れ伏すダークナイトモンに振り下ろそうとした瞬間であった。

「…出でよ、ディアボロモン」

「ギィイイイイ!!!」

バグラモンがディアボロモンを召喚し、ディアボロモンはインペリアルドラモンHDMに強烈な体当たりを喰らわせた。

「何!?」

「あ、あれはディアボロモン!?あんな奴まで…」

驚愕するテイルモン。

完全に虚を突かれたインペリアルドラモンHDMが城外に叩き出される。

大輔は重力操作がされている防護壁内にいたため無傷であるが。

一方、城外に叩き出されたインペリアルドラモンHDMを見たマグナモンは叩き出したデジモンを見て目を見開く。

「あれはディアボロモンか!?」

「ディアボロモン!?見たことも聞いたこともないデジモンだ…君はあのデジモンを知っているのかマグナモン?」

「ああ…キメラモンの次に嫌な思い出があるデジモンさ。ディアボロモンが相手では流石のインペリアルドラモンも分が悪いかもな」

「何だって?」

確かにディアボロモンからはかなりの力を感じるが、インペリアルドラモンには及ばないと思えるのだが。

「奴が厄介なのは戦闘力じゃない。俺がまだロイヤルナイツに加入する前の話だ…。ネットワーク世界に存在するバグや不正プログラムなどのカスが寄り集まって誕生したデジモンでな。凄まじいスピードで成長し、通常のデジモンには不可能な“単体増殖”によって大量のコピー体を生み出す能力を持っている。まだ未熟だったとは言え、俺の仲間は奴に良いようにやられ、奴の無数のコピーで埋め尽くした空間に誘いこまれた後にリンチにされてな。少なくても俺が知る限り、実力、性格共に最悪のデジモンの1体。俺達の戦いを見ていた人々の願いの力がなければ勝てたか分からない。ディアボロモンの一番厄介なのは何を仕出かすのか分からないところだ。」

マグナモンが当時のディアボロモンとの戦いを思い出したのか苦々しげに言う。

ディアボロモンはスピードを活かしてインペリアルドラモンHDMに攻撃している。

「チッ…ポジトロンレー…」

「ギィイイイイ!!」

何とか叩き落とそうと背中の大砲にエネルギーを込めた瞬間、背中にエネルギー弾を受ける。

「っ!?何!?」

インペリアルドラモンHDMが振り返るとディアボロモンがもう1体いた。

「隠れてやがったのか!?HDM、拡散式のポジトロンレーザーで…」

言い切る前にディアボロモンが2体から4体、更に4体から8体へと凄まじい勢いで数を増やしていく。

「ま、まずい!!早く攻撃を!!」

「ポジトロンレーザー!!」

拡散式の光線を放ち、ディアボロモンを撃ち抜こうとするが、インペリアルドラモンHDMが倒す数よりもディアボロモンの増殖スピードの方が圧倒的に早い。

気付いた時にはディアボロモンの数が30000体を超えていたのである。 

 

第28話:新たな力

インペリアルドラモンHDMがディアボロモンに城外へと叩き出されてから数分後、シャウトモンX7とタクティモンの戦いは激しい物になっていく。

「うおおおおおおっ!!!」

2体は空中で激しい攻防を繰り広げる。

タイキ達を巻き込まないようにするため、シャウトモンX7とタクティモンはどんどん地上から離れていく。

「(シャウトモン!!飛ばし過ぎだぞ!!タイキ達から離れ過ぎている!!そうでなくても何度ものDXやX7へのデジクロスでお前の体には無理が…!!)」

「(うるせぇ!んなモン屁でもねえ!!あんな奴、俺達だけで倒してやらぁっ!!)」

ドルルモンが止めようとするが、シャウトモンはそれを聞かずに戦闘を続行する。

「…………」

「何時ものシャウトモンらしくない…」

ヒカリの言葉にアカリも同意見とばかりに頷いた。

「…シャウトモン、私達に遠慮してる…?」

「そんな…何で今更そんなこと気にするんだよ…。今までどんな苦しい戦いだって一緒に乗り越えて来ただろおっ!!」

「(戦いはもうすぐ終わる。俺達の冒険も終わる…!人間界へのゲートは閉じて、タイキ達は帰っちまう…!!俺達は俺達だけで戦っていけなきゃならねえんだ。それを証明することが…ここまで付き合ってくれたあいつらへの手向けってもんだろぉ!!?)」

シャウトモンX7のスタンドマイクとタクティモンの蛇鉄封神丸が擦れ違い様に交差し、両者共に互いに背を向ける。

先に動きを見せたのは、タクティモンであった。

タクティモンの仮面の一部が割れ、割れた仮面からは黒い瘴気が僅かに溢れ出ている。

「………見事…」

「…っ!」

「…っ!タクティモンの仮面が…!」

「この一撃…正に汝らの意気の賜なり…!!!なれどその切先、今一歩…鈍し!!」

「ぐあああああああっ!!!」

次の瞬間、シャウトモンX7を先程の擦れ違い様に受けた衝撃が襲い、あまりのダメージにデジクロスが解除された。

「シャウトモ…」

次の瞬間、向こうから爆音が響き渡り、全員が向こうを見遣るとインペリアルドラモンHDMが30000体以上のディアボロモンにリンチされていた。

巨体故にかわすことも出来ず、攻撃してもかわされるか、撃破スピードを大幅に超える速度で増殖する。

「な、何だあのデジモンは!?」

「ディアボロモン…!?」

単体で増殖するという異常な能力にキリハは目を見開き、ヒカリは光子郎に見せてもらったかつて兄達を苦しめた悪魔の姿に顔を青ざめた。

「解き放たれたか…かつてデジタルワールドを荒らし回り、陛下によって封印された悪魔が…!!」

1体1体のディアボロモンのエネルギー弾によるダメージは軽微だ。

しかし塵積もれば何とやらで30000以上の攻撃は流石のインペリアルドラモンHDMでも耐えきれる物ではない。

ダークナイトモンとの戦いの時のようなことも出来ないため、インペリアルドラモンHDMにダメージが溜まっていく。

「「インペリアルドラモン!?」」

ヒカリと賢が嬲られているインペリアルドラモンHDMを見て目を見開いている。

それを見ていたマグナモンも慌ててそちらに向かおうとする。

「まずい!アルフォースブイドラモン、この場は任せたぞ!!」

マグナモンは最大速度でインペリアルドラモンHDMとディアボロモンが戦っている場所に向かう。

「(テイルモン、聞こえるか?)」

「(マグナモン…?)」

向かう途中に念話で大魔殿内にいるテイルモンに話しかけるマグナモン。

「(インペリアルドラモンがディアボロモンの攻撃を受けて危機に瀕している。お前の力が必要なんだ…!!)」

「(でも、今の私には進化の力は…)」

「(そんなの関係ない。進化なんか使えなくても大輔達の力になれればそれでいい!!今から大魔殿の近くを通る、出て来い!!)」

「(ああもう、分かったわよ!!その代わりしっかりと受け止めなさいよね!!)」

テイルモンは開いた壁から飛び出し、マグナモンに受け止められた。

「行くぞテイルモン!!」

「ええ!!」

「インペリアルドラモン!!大輔君!!」

「タイキさん、キリハさん。すみません、僕達はインペリアルドラモンの元に!!」

ヒカリも賢も見てはいられなくなり、急いでそちらに向かう。

インペリアルドラモンHDMの元に向かおうとするヒカリと賢の後ろ姿を見つめながら、タクティモンは蛇鉄封神丸を掲げた。

「多くのデジモンが爪や牙など闘う術を持って生まれ…果てない闘争の末に命を落としてゆく。この蛇鉄封神丸を振るう器として…数万年来溜まり続けた武人デジモン達の無念の残留魂魄のデータを練り固めて作られたのがこの私だ。」

「(ス…数万年分ノ怨念…!)」

「(魂を操るって言う、皇帝バグラモンの能力か…?)」

「(俺達ぁ、そんなもんと戦ってたのかよっ…!!)」

「この命と信念の全てを懸けて…磨き抜いた魂…!鍛え抜いた技…!その殆どが無念の敗北と死の元に戦場で最期を迎えた…。陛下は我らが無念を酌み…この刃に最期の振り降ろし場所を与えて下さったのだ…!!」

「(大勢の武人が命懸けで貫こうとして貫けなかった信念と…俺なんかが短い人生ん中ででっち上げたちっぽけな夢…くっ…、比べモンにならねえ…!!)」

あまりの比べ物のならなさに、諦めの表情を浮かべるシャウトモン。

「佳き戦であった。いざ…我が士道、完遂せん!!」

「(俺ぁ、こんな独り善がりな夢で…何て所までみんなを連れて来ちまったんだ…!!)」

シャウトモンに向けて振り下ろされる蛇鉄封神丸。

「シャウトモーーーン!!」

タイキの叫びが響き渡る。

「っ!!…?…」

目を瞑るシャウトモン。

しかし、降り降ろされたはずの刃が体を貫いた感触がなく、それどころか届いていないのだ。

目を開けると、そこには蛇鉄封神丸に体を埋め、体に亀裂が入ったスターモンの姿があった。

降り降ろされる直前に刀に体当たりを喰らわせ、軌道をずらし、シャウトモンの命を救ったのだ。

「ス…スターモン!!お前っ…!」

「あっ…兄貴ほどの男が何を弱気になってやがるっ…!!それが俺が…俺達が憧れた男の面かよ…!?ったく…しっ…仕方ねぇ兄貴だぜ!兄貴に自信がねえってんなら…この俺が何度だって言ってやる…!!兄貴のドリームは宇宙一クールででイカすぜっ…!!!魂のロックで世界中をドハッピーに盛り上げるんだろぉ!?みんなその夢に惚れ込んで自分達の夢を預けてるんだ!!遠慮なんてしてんじゃねえぇーーーっ!!!」

「…っ!…」

旅する以前から、シャウトモンを慕い、共に戦ってきた友の言葉。

その言葉にシャウトモンの前に立つ、旅の間に出来た仲間達。

「…ああ…そうだぜシャウトモン…!!お前さえ諦めなけりゃ俺達は何度でも立ち上がれるんだ…!!」

「私達だってシャウトモンの夢の続きが見たいよっ…!!」

「男なら信じた道を貫き通すでーーーち!!」

「(此奴等っ…!?)」

ゼンジロウにバリスタモン。

アカリにドルルモン。

コトネにスパロウモン。

大魔殿にいるウィザーモンのブランクだったXローダーが淡く色付き始める。

片方は薄桃色、もう片方は薄緑色。

クロス・コードに反応しているわけではない。

ただ純粋に仲間を想う熱き想いに応えるかのように、更なる力を与える。

「バリスタモン!!」

「ドルルモン!!」

「スパロウモン!!」

「「「進化ーっ!!」」」

進化の光を突き破って現れたのは新たな戦士達。

「アトラーバリスタモン!!」

「イエーガードルルモン!!」

「ラプタースパロウモン!!」

バリスタモンは全身がより大型化しカブトムシに近い姿となり、ドルルモンは全身をマント付きの鎧で覆い、ドリルの槍、巨大な爪のような盾を装備した騎士のような姿に、スパロウモンは腕はなくなったが巨大な脚が生え、名前に違わず猛禽類を思わせる姿になった。

そして一方、インペリアルドラモンHDMはディアボロモンの猛攻によって限界を迎えようとしていた。

「メガデス…!!」

口と背中の大砲から暗黒物質を同時に放つ。

放たれた2つの暗黒物質は1つとなってより強大な破壊力を誇る一撃へと変化し、前方のディアボロモンを10000体近く粉砕した。

しかしディアボロモンはインペリアルドラモンHDMの必死の反撃を嘲笑うかのように増殖していく。

ここまでインペリアルドラモンHDMとの相性が最悪なデジモンに大輔は歯軋りした時である。

「大輔君!!」

「大輔!!」

「賢、ヒカリちゃん!?」

ディアボロモンが道を塞ぐ前に何とか大輔とインペリアルドラモンHDMに駆け寄ることが出来た。

「大丈夫!?」

「ヒカリちゃん…賢…どうして…」

「大輔君と一緒に戦うために来たの!!」

「インペリアルドラモンは僕とヒカリさんのパートナーでもあるんだよ?」

「大輔君、頑張ろう?私達が3人がインペリアルドラモンと力を合わせれば絶対に負けないよ!!」

「…ああ!!まだ負けるわけにはいかねえよな!!こんな所でよ!!俺達はどんな時でも、最後まで戦ってきたんだ!!」

2人の言葉に大輔の目に闘志が戻る。

「そうだぜ大輔!!」

「それでこそ大輔よ!!」

「「「マグナモン!!それにテイルモンも!!」」」

ディアボロモンを弾き飛ばして大輔達に駆け寄るのはマグナモンとテイルモン。

「大輔、お前は最後までどんな時も諦めたりはしなかった」

「だから私もヒカリもみんなも最後まで戦えたのよ!!」

「マグナモン…テイルモン…ありがとう、お前達の力を貸してくれ!!」

「「当然だ(よ)!!生きる世界が違っても、並行世界だろうと俺(私)達は、仲間だ(よ)!!」」
例え、世界が違っても大輔とヒカリであることに変わりはない。

ならば、彼らもまた自分達が守るべき存在なのだ。

「よおし、気合い入れていくぞ!ヒカリちゃん!!賢!!」

「「うん!!」」

「「「インペリアルドラモンHDM!!マグナモン!!テイルモン!!パラレルクロス!!」」」

本来交わるはずのない平行世界の自分自身との合体。

同一人物同士のデジクロスが通常のデジクロスよりも強大な力と奇跡を生み、インペリアルドラモンHDMが大きく力を変えた。

「インペリアルドラモンHDM、モードチェンジ!HFM(ホーリーファイターモード)!!」

人型形態となったことでより、以前よりも小回りの利く動きが可能となり、攻撃力も竜形態時よりも大幅に増している。

インペリアルドラモンHFMを見たロイヤルナイツの面々はその神々しい姿に目を見開いた。

「お…おお…!!」

「何という美しい姿のなのでしょう、ララ~♪」

「まるで我らがロイヤルナイツ始祖、インペリアルドラモンPM(パラディンモード)のようだ…!!」

ドゥフトモン、ロードナイトモン、アルフォースブイドラモンが呟く。

インペリアルドラモンHFMはロイヤルナイツの始祖、インペリアルドラモンPMに似ていたのだ。

強いて違いを言うなら、インペリアルドラモンPMが持つ聖剣、オメガブレードを持たないことだろうか。

「本当の戦いはこれからだぜ!!」

インペリアルドラモンHFMが無数のディアボロモンを睨み据えた。 

 

第29話:EX6とHFM

新たな力を得たインペリアルドラモンHFMは全方位から放たれたディアボロモンのエネルギー弾を全身に光のバリアを纏って防ぐ。

「お返しだ!!ギガデス!!」

インペリアルドラモンHDMの名残である胸部の竜の口が開いた。

そこから砲台が出現し、エネルギーの充填が終わるのと同時に強烈なエネルギー波を放つ。

その威力は単発のメガデスを優に超えており、爆発に巻き込まれ、ディアボロモン達が蒸発していく。

「凄い!!」

流石に合体メガデスには及ばないが、単発以上の威力は凄まじい。

「ポジトロンレーザー!!」

右腕に装着された大砲を天に翳し、無数の拡散光線を放つ。

光線は雨のように降り注いでディアボロモンを貫いていき、凄まじい攻撃力を見せた。

30000体いたはずのディアボロモンが瞬く間に数を減らしていく。

ディアボロモンは数を増やそうとするが、それを超える撃破スピードによって追い詰められていった。

一方、進化によって新たな力を手にしたアトラーバリスタモン達。

「アトラーバリスタモン!!行っけええええええっ!!」

「フンガ!!プラズマクラック!!!!」

角に電撃を収束させ、広範囲に向けて放たれた。

タクティモンはそれをかわしつつ、目の前で起きた奇跡に驚愕する。

「(ジェネラルではないあの2人の子供の意気までもが進化を促したと言うのかっ!!?今の電撃…伝説の“八雷神”に準ずる威力だっ…!!)」

それをタイミングを見ていたアカリがイエーガードルルモンに指示を飛ばす。

「イエーガードルルモン!!今っ!!!!」

「!!」

「ヴァイスシュピラーレ!!!」

イエーガードルルモンの槍、シュツルムスティンガーの先端のドリルが高速回転し、タクティモンに向けて繰り出された。

しかしタクティモンは跳躍してかわし、地面のみを吹き飛ばすだけで終わる。

「!!かわされたっ…!」

「オーライでちっ!!ラプタースパロウモン!!」

タクティモンの真上に移動し、捕獲に成功する。

「ムッ…!」

「捕まえたぞっ!!でやああああっ!!ラプターグラップル!!」

高度を上げ、一気に降下してタクティモンを地面に叩き付けた。

「どうだっ…!?へっ!!?」

次の瞬間、土煙を突き破ってラプタースパロウモンに向けて放たれる斬撃。

「マズイ!ロケットバンカー!!」

「シュバルツナーゲル!!」

アトラーバリスタモンが右腕をロケットのように射出して斬撃を砕き、イエーガードルルモンは攻撃兼防御用のザッシュシールドの爪で斬り裂くことで、ラプタースパロウモンを斬撃から守った。

「(…!!…防いだだと…)」

「へっ…へへへ…見ろよ兄貴。あいつらの気合いを…元はと言えば全部兄貴が火をつけたんだぜぇ…!!?ブスブスと燻ってた…あいつらのハートに…!!!」

瀕死の状態にも関わらず不敵な笑みを浮かべながら言うスターモン。

「…!!…スターモン……!」

「…なあ、シャウトモン。確かに俺達…この戦いが終わったら元の世界に帰る。大輔達も元の時代に帰る。俺達はそれぞれの時代のあっちに沢山の夢や目標をほったらかしにしたまんまなんだ…!!そりゃ…デジモンと離れちまえばジェネラルだってただの子供さ!夢を追うって言っても…今までみたいなド派手な大冒険とはいかないだろうけど。それでも…お前のくれた言葉は何時でも俺に勇気をくれる!明日のその先へ…真っ直ぐに…走り続けて行くための勇気を…!!」

「!…へっ…!だせぇ…だっせぇなぁ俺…!!そんな当たり前のことを慌てて忘れちまったんだからよ!!(そうさ…例え、お前がどこにいようと、何になろうと…俺達は何時までも最高の相棒だ…!!)」

笑みを浮かべて立ち上がるシャウトモン。

それは先程とは違い、何時ものシャウトモンの表情であった。

「行こう!シャウトモン」

「Oh Yeah!!」

タイキと共にタクティモンに向かっていくシャウトモン。

「我らの誇りを示せっ!!」

「グルルオオオオオ!!」

キリハもまたメタルグレイモンを突撃させ、進化の光に包まれるシャウトモンとメタルグレイモン。

オメガシャウトモンに進化し、イエーガードルルモンと交戦しているタクティモンに向かっていく。

「!!」

オメガシャウトモンは蹴りを繰り出し、タクティモンを弾き飛ばす。

「「「「「オメガシャウトモン!!ジークグレイモン!!アトラーバリスタモン!!イエーガードルルモン!!ラプタースパロウモン!!エヴォリューションクロス!!!」」」」」

「シャウトモンEX6!!」

進化した全員によるデジクロス体は、輝かしい黄金のボディとなり、無駄のないスマートなフォルムとなった。

右腕にラプタースパロウモンの尾が変形した剣、ソル・キャリバー。

左腕にはイエーガードルルモンのシュツルムスティンガーが変形したデモリッションホーンを装備している。

「(おお…何という尽きせぬ意気…!!尽きせぬ闘志…!!これも武運か…終の戦場でこのような敵と相見えようとは…!!)」

「決着をつける!!ソル・キャリバー!!」

シャウトモンEX6のソル・キャリバーとタクティモンの蛇鉄封神丸が激突した。

「セイクリッドブレード!!」

一方、インペリアルドラモンHFMは爪から光の剣を発生させ、最後の1体のディアボロモンを撃破する。

「やった!!これで最後!!」

「しつこい奴だったが、これで終わりだ。次はタクティモンを…」

「駄目だ。タクティモンとの一騎打ちを邪魔しちゃいけない。男と男の真剣勝負をな。俺達は…」

「ああ…」

インペリアルドラモンHFMはこちらに迫り来るムゲンドラモンとキメラモンの軍団を見遣る。

「邪魔者を全て倒す!!」

インペリアルドラモンHFMは力を解放し、無粋な邪魔をするキメラモンとムゲンドラモンの軍団の殲滅に向かうのであった。

そして大魔殿でも変化が起きていた。

インペリアルドラモンHDMによって瀕死の状態だったダークナイトモンがリリスモンを強制デジクロスで取り込み、息を吹き返したのだ。

「グフッ…!グブフフフッフフフフ…とト取りェ込んだ…!マま魔王リリスモンささえも、こ、この体に…!!」

前以上に言葉を言えなくなったダークナイトモン。

インペリアルドラモンHDMに与えられたダメージは完全に治ってはいない。

しかし、無理な強制デジクロスによって最早痛覚すら麻痺してしまったのか、平然としている。

「ヒヒッ…ヒハハハ、力だ…力が湧き上がる…!!ナ何でも壊せる…!!誰でも殺せるっ…!!!」

「な…なんと言うことだ…!!あれだけのダメージを受けていながら、リリスモンを取り込んだだけで…いや…もう痛覚すら失っているのかもしれない…」

あらゆる力が混ざり合ったダークナイトモンを見て、ウィザーモン達は戦慄している。

「ももっ…最早、何人も我をオ侮らぬ…!サ、蔑まマれることも…オ…脅かされることもも…無い…!!ヒッ…ヒヒ…!!アッ、アアア…こ、この世に生を受け…ココッ…これ程穏やかな心持ちになったことが今まであっただろうか?」

今までの人生を思い返したダークナイトモンは涙を流しながら言う。

「こっ…皇帝陛下、逃げなされーっ!!あなたまで取り込まれればもう奴を止めることが出来なくなるっ…!!」

オチムシャモンが見かねて叫ぶ。

バグラモンがダークナイトモンに取り込まれれば、最早誰も止められなくなる。

「ササ…サア…お前も私にト取り込まれるがいい…共にこの平穏をキョキョ享受しようぞォ…」

その言葉はまるでバグラモンを知らない者のように言っているように聞こえた。

「君は…私が誰なのか分かるかね?」

バグラモンの問いにダークナイトモンは…。

「…!?ダ…ダ…レ…」

バグラモンが自身にとって何なのか分からないようだ。

少し前まで兄と呼んでバグラモンのことを。

「自分の名前を…覚えているかね…?」

「?…ナ…ナマ…ナ…マ…エ…」

度重なる強制デジクロスによって自分の名前すら思い出せない状態となってしまったようだ。

しかし、今のダークナイトモンにとって自身の名前などどうでもいいことに過ぎなかった。

「ソソ…ソンな物はドどうでも…いい…ナなな名前などイらない…チチ力をヲ…チカラを…私ニッ…ヨこせッ…!!ヨコ…?…」

力を貪欲に欲するダークナイトモンの姿はあまりにも哀れである。

バグラモンの目から涙が一筋流れた。

「それが答え…長く長く続いたこの巡り合いの戦いの答えか」

「(な…ミ…ダ…?)」

「今の時代の人の魂は呪われた業を克服出来なかった…そういうことなのだな。君とインペリアルドラモンの戦いを見ていた時から…薄々感づいていた…最早、我々が彼らのようなポテンシャルを持てないことを…」

バグラモンの涙を見たダークナイトモンは自分に脅えているのだと勘違いし、上機嫌になる。

「フヒ…!ヒヒヒヒヒ!!おっ…脅えているのだなっ!!ここッ…この私にっ…ヒヒヒ!イい今に取り込んでデヤヤ…しっ、シェイドモ…」

「シェイドモン」

ダークナイトモンの言葉を遮るかのようにバグラモンがシェイドモンの名を呼んだ。

「長きに渡りご苦労だった。現時点を持って君の任を解く」

「…?…」

「はい」

バグラモンの言葉を理解出来なかったダークナイトモンだが、シェイドモンはバグラモンの言葉を聞いて頷いた。

「!?…?…シェイドモ…」

「どんな無体な仕打ちにも耐えて君に仕えるシェイドモンを不思議には思わなかったのだろうな…傲慢もまた君に課せられた業の1つだ。Xローダーの知識やシェイドモンの幼生は君の可能性を確保するために私が与えたのだ。…それが誰によって齎されたのかも、最早君は覚えていまいが…」

バグラモンの隣に現れたのはダークナイトモンの忠臣のはずのツワーモンであった。

「デジタルワールドは…電子的なデータを介して人の心に照らし出され…認識されるもう1つの宇宙だ」

「!?…?…!?…」

「そしてダークナイトモン。我が弟よ…君は人の絶望の心をその魂に反映して生まれたのだ。私は人がその絶望を…未来への虚無感を克服しうるかを試すために、Xローダーを作り…素養ある人間を召喚し、絶望と希望の相克の舞台を演出した。」

「!何だと…!!(Xローダーをバグラモンが…!!?)」

それを聞いたウィザーモンが驚愕するが、そんな彼に構わずにバグラモンの話は進む。

「然して…答えは出た。君の勝ちだダークナイトモン。いずれ人の絶望を映し出して…このデジタルワールドも今以上の狂気と…恐怖と汚濁にまみれた世界に成り下がろう…その前に…」

シェイドモンのダークネスローダーが光り輝く。

「デジタルゲート・オープン!!」

「いざ…!!呪われし未来との決別をっ…!!!」

空間の歪みから何かが姿を現す。

それはかつてレインゾーンでタイキ達にデジタル空間に放り込まれたミレニアモンであった。

「「ミッ…」」

「ミッ…レ…ニ…アモ…」

リリモンとサンフラウモンが驚愕し、僅かに記憶を取り戻したのか、ダークナイトモンはミレニアモンの名を呼ぶ。

「我がインビジブルスネークアイズで補足し、回収したのだ。いずれ運命が彼を必要とした時のためにな…」

「ミレニアモン、ダークナイトモン…」

ダークネスローダーを構えるシェイドモン。

ミレニアモンを見上げていたダークナイトモンは狂気の笑みを浮かべる。

「…ッヒ…ヒッヒ…そぉぉうだ、来ぉぉい…!!共に2つの世界を呑み込んでやろうぞォォ…!!ヒィーッヒッヒッヒッヒッゴ…ギャアアアアアアア!!!!」

ミレニアモンに上半身を喰われたダークナイトモンの悲鳴が上がる。

「強制デジクロス…!!!」

ミレニアモンとダークナイトモンを強制デジクロスしたことにより、大魔殿の上部が吹き飛ぶ。

大輔達、タイキ達、インペリアルドラモンHFM達の視線がそちらに向けられた。

「最早未来にその名を呼ばれることはないだろうが…忌まわしき太古の伝説に倣い、敢えてお前を名付けよう…」

「「赤黒の…双頭竜…!!!」」

大輔とタイキは見つめる。

ミレニアモンと度重なる強制デジクロスで肥大化したダークナイトモンが強制デジクロスすることで誕生した怪物…。

「ズィードミレニアモン…!!!」

莫大な情報質量であらゆるデジタル物質を吸収し…重力と時間さえ操り、世界を滅ぼしかけた怪物が出現したのである。 

 

第30話:ズィードミレニアモン

バグラモンがインビジブルスネークアイズで回収したミレニアモンと度重なる強制デジクロスで肥大化したダークナイトモンが強制デジクロスしたことで誕生した怪物、ズィードミレニアモン。

それを見たタクティモンとシャウトモンEX6。

「おお…我が君よ…遂に道を見極められたか…!!」

「くそっ…!やっぱてめえらの仕業だったのかよぉ!!デモリッションホーン!!!」

左腕のデモリッションホーンでタクティモンを狙うがかわされ、繰り出した一撃は地面を吹き飛ばすだけで終わる。

吹き飛ばした岩もタクティモンが纏った斬撃で粉々になる。

「何なんだよ!!どうしてそう何もかもぶっ壊したがるんだ!!この世界に何か恨みでもあんのかよぉ!!」

「陛下は悟られたのだ!!最早、人の心には膿み腐っていくだけの未来しかないのだと…!その鏡たるデジタルワールドもまた然り…故に滅ぼす!!この世界が醜さと苦痛の沼に飲み込まれる前にな…!!無の太刀、六道輪廻!!」

「ぐあっ…!!」

タクティモンは纏った斬撃を飛ばし、シャウトモンEX6に叩き込む。

「ま…まだ戦えるのかよあいつ…!!し…進化したみんながデジクロスしてるのに…!!」

「(いや…多分デジクロス体としてのパワーはX7の時ほど上がっていないんだ!!スターモン1人欠けただけでこんなに差が…!!)」

「スターモン!!スターモンしっかり!!」

「!?」

アカリの声に振り返るタイキ。

キュートモンが治癒術をかけ続けているにも関わらず全然治っていない。

「タクティモンの刀の瘴気のせいで、僕のキズナオールの効果が殆どないキュ~!!このままじゃ…このままじゃスターモンが…!」

「っ!何だって…!!」

「へっ…へへ…どうやらここまでみてえだぜ…ま…まぁ、俺なんかにしちゃ上出…」

「なっ…何言ってるんだ!!諦めるな!!必ず助かる方法がある!!みんなで王になるんだろっ!?俺達の作るデジタルワールドの未来を見るまで、やられないって言ってくれたじゃないか…!!」

「(そ…そうだったぜ…へっ…!!ヘヴィーな約束しちまったもんだ…そっ…そうだ…死んでる場合じゃねえ!!あ…兄貴達ばっかあんなに大活躍してるってのによぉ…!!)」

とうとう限界が来たのか、データ粒子となりかけていくスターモン。

「っ!スターモンの体が…!!」

「(おっ…俺だって暴れたりねえ…!!つーか、目立ち足りねえぞコラァ…!!コッ…コンチクショオオーッ!!)」

スターモンが胸中で叫んだ次の瞬間、ピックモンズがスターモンの周辺に集まる。

「っ!?」

「な…何…!?ピックモン達が…!?」

「この光は一体…っ!?Xローダーが勝手に反応しているぞ!?」

キリハがXローダーの変化に気付いて取り出す。

タイキとコトネのXローダーも同様の変化が起きている。

「辺り一帯に物凄い量のエネルギーが満ち溢れてる…」

「(っ!…おめえらっ…!!粋な真似してくれるじゃねえか…!!スターモン!!ピックモンズ…!!!)ジョグレス進化ーっ!!!!」

【どわっ!!】

変化の際に生じた衝撃で吹き飛ばされるアカリ達。

「シューティングスターモン!!」

流星の如く飛んでいく新たな力を得たスターモンもとい、シューティングスターモン。

「(っ!何だと…!!どうやって我が瘴気を…!!?)」

「なっ…何何何っ!?デジクロスしたのお!!?」

「いや、違う!!これは…」

「(あれは進化だ!!傷ついて足りなくなっていた進化のためのエネルギーを融合する事で補ったんだ!!)」

そしてシューティングスターモンはシャウトモンEX6の隣に移動した。

「Hey!待たせたぜブラザー!!」

「スターモン!!お前っ…!!」

死にかけていたはずのスターモンの予想外の復活にシャウトモンEX6は目を見開く。

「シューティングスターモンだ!!さぁ勢揃いだぜ兄貴!!?ド派手に見せつけてやろうぜ!!俺達流の未来の切り拓き方をよぉ!!」

シューティングスターモンの言葉にシャウトモンEX6は笑みを浮かべた。

「へっ!そうだな…一丁やるかあ…人の業だろうが、絶望だろうがっ…俺達のドリームでぶっ飛ばしてやる…!!今はデータの海に還れ、タクティモン…!!」

「(何なのだこの力は…!!陛下の見出し得なかった人の心のポテンシャルがまだ…!?)」

「何時かその顰めっ面も…!!ケラケラ笑えるようなドハッピーな未来を…!!俺達が作ってやるぜぇっ!!!」

拳に業火を纏わせた状態でシューティングスターモンを構えるシャウトモンEX6。

「(嗚呼…その魂や正しく…閃光(するどし)…!!!)」

「リュウセイロックダマシー!!!!」

シャウトモンEX6とシューティングスターモンの連携技がタクティモンの蛇鉄封神丸の刀身を粉砕したのである。

一方、ズィードミレニアモンが誕生した大魔殿では…。

「うっ…うう…」

「な…何が起こったっシュ~!?」

「ミレニアモンとダークナイトモンがデジクロスして凄まじい衝撃波が…」

どうやら強制デジクロスによって生じた衝撃波によって今まで気絶していたようだ。

「ちょっ…!見て…あれっ…!!」

リリモンが指差した先にはズィードミレニアモンが超至近距離にいた。

「ギャアアアアアアアッ!!!」

「ななっなななな、何か出たっシューッ!!」

「な、何ということじゃ…あれは…あれは正しく…ズィードミレニアモン…!!!!」

ジジモンがズィードミレニアモンを見上げて驚愕する。

「知ってるの長老様!?」

「デジタルワールドの各地に細々と伝わる災厄の伝説じゃ…その莫大な情報質量であらゆるデジタル物質を吸収し…重力や時間すら操って、遂には世界そのものを滅ぼしかけたと言う…激しい戦いの末、息絶えたミレニアモンの暗黒の魂が永い時の果てに蘇生した姿じゃとも言うが…バ…バグラモンめ、肥大したダークナイトモンとミレニアモンを融合させることによって無理矢理作り出してしまいおった。」

尋ねたリリモンの問いに答えるようにジジモンはズィードミレニアモンの伝説と、誕生した理由を説明した。

「バグラモンとシェイドモン…ネネさんはどうなったの!?」

「分からん…じゃが…既に奴に飲み込まれてしまったかも知れん…」

「そ…そんな…!」

「(赤黒の双頭竜…ズィードミレニアモン…!!皇帝バグラモンはホメオスタシスの予言を知っていたのだろうか…?まるで運命が予言をなぞるのを望んでいるようではないか…!!)」

「うむ!こうしちゃおれん!!ここは落ち延びて事の次第をタイキ殿と大輔殿に報告せねば!!さあ、皆の衆、張り切って敗走しましょうぞ~っ!!」

「あんたってば落ち延びられればホンット何でもいいのね…」

嬉しそうなオチムシャモンにリリモンやウィザーモン達は最早、呆れるしかなかった。

「でも確かにバグラモンとダークナイトモンにも色々因縁があったみたいだし…バグラモンも最初から世界を滅ぼすことが目的じゃなかったようだし」

「シェイドモンがバグラモンの回し者だったこととか…ここで起こったことは奴を倒すための何かのヒントになるかも知れないっシュね!」

「!!」

マッシュモンの言葉によって何かに気付いたウィザーモン。

「(今のズィードミレニアモンはあくまで強制デジクロスによって作り出されたデジクロス体…!!ならば…まだきっと手の打ちようはある…!!)」

「キルルルルル…」

ズィードミレニアモンの左の赤い頭部がウィザーモン達に向けられた。

「「な…何かこっちのこと見てるっシュよおお~っ!!?」」

片方の赤い竜の口に凄まじい高密度のエネルギーが収束していく。

「わ…わしらのことを排除する気かっ…!?」

「(いかん…!!ここで我々が全滅するわけには…!すまないテイルモン、マグナモン…!!)」

ズィードミレニアモンの赤い竜の口から眩い光が放たれた。

「ひえーっ!!ななな、何か撃ってきたーっ!!!?」

「みんな一カ所に集まれ!!」

ウィザーモンが叫び、リリモン達は一カ所に集まる。

それを見たウィザーモンは杖をリリモン達に向け、風を集めていく。

【へっ!?】

「ブリンク・ブリーズ!!」

杖から突風を発生させ、リリモン達を吹き飛ばした。

「頼んだぞみんな!ここで起こったことを必ずタイキ達と大輔達に伝えてくれ!!彼らならきっと活路を見出してくれる…!!僕は出来る限り奴を観察して情報を集…うおおおおおっ!!?」

光に飲まれたウィザーモン。

リリモン達は何も出来ずに落下していくのであった。

「…ウィザーモン…?」

「どうした?」

インペリアルドラモンHFMの一部となっているテイルモンが大魔殿を見遣り、同じくインペリアルドラモンHFMの一部となったマグナモンがそれに気付いてテイルモンに尋ねた。

「…何でもないわ…(何なの…?この不安は…?)」

一方、シャウトモンEX6とシューティングスターモンの連携技はタクティモンの刀を粉砕しただけでなく、タクティモン本人にも致命傷を負わせた。

「フッ…フフフ…!!何とも天晴れな一撃よ…!!この虚ろな魂に久しく熱き炎を灯しおったわ…!!」

「タクティモン…」

「良かろう、その猛々しさで…何度でも…何度でも…命の限り…!未来に挑み続けるがいい…!!おおお…!!」

タクティモンは両腕を天に掲げながら叫ぶ。

「我、志ある主の下、戦場に臨み…遂に誇れある敵を得たり!!我、武人の本懐を遂げたり!!幾万年の呪詛も業も今ここに晴れん!!!!(フッ…この堅物が呵々と笑う未来とな!?面白いっ…!!!)」

タクティモンの体がデータ分解し、幾万年もの呪詛と業が晴れたのを証明するかのように、データ粒子が桜吹雪のように散っていった。

「(タクティモン…俺はやはりお前のことが許せん。だが…もし生まれ変わってもう一度会うことがあれば…もう一度信念を懸けてこの刃を交えたい…そう思うよ…)」

かつての片腕として、1人の戦士として、もしまた会えるのなら己の信念と誇りを懸けてタクティモンと戦いたい。

イエーガードルルモンは桜吹雪のように舞うタクティモンのデータ粒子を見つめながら胸中で呟くのであった。

「さあ…後は…あいつだ…!!」

最後の三元士であるタクティモンは倒れ、残る問題はズィードミレニアモンのみ。 

 

第31話:絶望を希望に変えるために

タクティモンをシャウトモンEX6が、ディアボロモンをインペリアルドラモンHFMが、キメラモンとムゲンドラモンの軍団の殆どをロイヤルナイツとインペリアルドラモンHFMが撃破した。

そしてインペリアルドラモンHFMとロイヤルナイツ5体がズィードミレニアモンの元に急行した。

「ズィードミレニアモン…ホメオスタシスの予言に出ていた“赤黒の双頭竜”の正体がこんな化け物なんてな!!」

平行世界の自分自身達であるマグナモン、テイルモンとデジクロスしたことでデジモンとして最強クラスの実力を得たインペリアルドラモンHFMをして化け物と言わしめるズィードミレニアモン。

「あんな巨大なデジモン、見たことない!!」

「いや…デジモンと呼んでいいのかどうか…!!」

「正直…勝てるのかどうか分からねえな…」

あまりのズィードミレニアモンの凄まじさにインペリアルドラモンHFMに乗っている大輔達も表情を顰めた。

「くっ…!有力な候補の1つだったのに…!!出現の兆候を掴めずに、むざむざ復活を許してしまうなんて…!!」

ズィードミレニアモンの誕生を阻止出来なかったことにアルフォースブイドラモンは悔しがる。

「フン…!だがその復活の現場に我々ロイヤルナイツが居合わせたことまで予言通りとは行くまい…!?今ここで塵1つ残さず焼き尽くしてくれるっ…!!」

「っ!?デュナスモン!?」

「ま…まさか、“あれ”をやるつもりですか~!?」

「!?おい、“あれ”って何だよ?」

疑問符を浮かべるインペリアルドラモンHFMだが、アルフォースブイドラモン達の慌てようからデュナスモンがとんでもないことを仕出かすつもりなのは分かった。

「それは後で話す。今はここから退避するのが先だ!!」

同化しているマグナモンの声が響き渡り、アルフォースブイドラモン達がアカリ達に避難を促す。

「わわーっ!!離れて離れてっ!!」

「へっ…何何っ?」

「全軍退避だ!!デュナスモンが奴を殲滅する!!」

全身からオーラによる無数の飛竜を出現させ、ズィードミレニアモンの周りに巨大な渦を発生させる。

「ドラゴンコライダー!!!!」

そしてそのエネルギーを一気に一点に集中させ巨大な温度爆発を起こし、大魔殿が一瞬で蒸発した。

「おわーっ!!!何だあの火の球は…大魔殿が一瞬で蒸発しちまったぞぉ~っ!!?」

「あれが俺達が全軍退避を促した理由さ…」

「ロイヤルナイツ屈指の威力を誇るデュナスモンの秘奥技でした…」

「あれ威力あり過ぎて乱戦になると使えないんですよね~♪」

「なる程、あの威力なら納得だ」

「寧ろあの人が世界滅ぼすんじゃないの…?」

マグナモン、アルフォースブイドラモン、ロードナイトモンがあまりの破壊力にドン引きしているタイキ達に説明する。

大輔とアカリの呟きに全員が頷いてしまった。

「瞬間的に恒星の核(コア)程の高温に達するあの渦の中心で生き延びられる生命体はいない…。さしもの伝説の魔獣とてあれなら…!!」

「ドラゴンコライダーはインペリアルドラモンFMの惑星破壊砲と言われるフルパワーのギガデスに匹敵する威力がある…!!あれで倒せないならどうしようもない」

ドゥフトモンとマグナモンが爆炎を見つめながら言う。

様子を窺っていたデュナスモンだが、爆炎の中を動く物を見た。

「!!」

デュナスモンは目を見開くが、次の瞬間に爆炎から何かが伸びて、デュナスモンを捕らえた。

「何っ!!?何だこれはっ…!?うっ、うおおおおおお!!?」

デュナスモンの異変に気付いたアルフォースブイドラモンが声を荒げる。

「デュナスモン…!?デュナスモン!何があった!!応答しろっ!!!」

「ね…ねえ、見て…!!炎の中から何かが…」

アカリの言葉に全員が爆炎の方を見遣ると全員の目が驚愕で見開かれた。

「………………馬鹿な…」

「キルルオオオオオ!!!」

爆炎が消え、爆炎の中心だった場所には無傷のズィードミレニアモンの姿があった。

「ズィードミレニアモンがまだ生きてる!?」

「あ、あんなとんでもない超必殺技を喰らったのに無傷ってどういうこった…!?」

「無傷どころか前より遥かに巨大化している…!?」

ヒカリ、大輔、賢が目の前で起きている異常事態に目を見開き、巨大化したズィードミレニアモンは周辺の物体を吸収し始めた。

「ななな何か足元の地面をぐんぐん吸い込み始めたんですけどーっ!!」

「ま…まさか…ドラゴンコライダーのエネルギごとデュナスモンも吸収されちまったのか…!!?」

アカリとドルルモンの言葉に全員が表情を引き攣らせる。

「全軍撤退だ!!出来る限り、奴から離れろ!!直にここも飲み込まれるぞっ!!」

「タイキ!!大輔!!」

キリハが指示を出し、タイキと大輔にリリモン達が駆け寄る。

「リリモン達…!!良かった…無事だったのか!」

「あれ…?ウィザーモンは?」

「…実は…」

タイキ達は大魔殿で起きた出来事を知り、全てを聞いたテイルモンは泣き崩れた。

「そんな…ウィザーモン…ウィザーモン…!!」

泣き崩れるテイルモンを優しく抱き締めてやるマグナモン。

「タイキ達に…あそこで起こったことを伝えてくれって…」

「必ず奴を倒すヒントになるからって…!私達のことを…!!」

大魔殿にいたメンバーは涙を流すか、悔しそうにしていた。

「1つ聞く…ズィードミレニアモンの放った光にウィザーモンは飲み込まれたんだな?」

「う、うん…」

マグナモンの問いに答えるサンフラウモン。

「そうか…テイルモン。ウィザーモンは生きている。ズィードミレニアモンの必殺技、タイムデストロイヤーは対象を時空の彼方に吹き飛ばす技だ。お前1人で捜すのは難しいだろ?この戦いが終わったら、一緒にウィザーモンを捜そう…。昔のように…」

「マグナモン…でもあんたはロイヤルナイツ…」

「そんな物はどうでもいい。そんな地位よりも仲間の方がずっと大事だからな…俺達は…苦楽を共にした仲間だ。そうだろ?」

優しく微笑みながらテイルモンの頭を撫でてやるマグナモン。

テイルモンは今はその優しさに甘えたくて、マグナモンの胸に顔を埋めた。

「(成る程な…あの化け物が作られた経緯…そしてバグラモンと天野ネネ…シェイドモンが恐らくは既に取り込まれてしまっているとなればやはり…)」

大魔殿での出来事を聞いたキリハはある策を思いつく。

逆転の策を。

「(…あれ?確かダークネスローダーの強制デジクロスは不完全で、取り込んだ相手の力を物にするには時間がかかるんだよな?なら…!!)」

大輔もまた何かに気付き始めた。

その時、ズィードミレニアモンの周囲で起きている現象を解析していたドゥフトモンが此方に戻ってきた。

「ミスター蒼沼!!奴の周囲で起こっている吸収現象の解析結果が出た!君が考えていた通りだったぞ…あれはデジクロスだ!!その圧倒的な情報質量で…ありとあらゆるデータを強制デジクロスして吸収しまくっている…!!奴が巨大になる程、吸収のスピードも幾可級数的に上がっていく…このデジタルワールドや人間界が全て飲み込まれるまで後数日と言ったところだろう」

「予言で示された滅びのタイミングと一致している…!!」

掌に拳を叩き付けるアルフォースブイドラモン。

「あのデュナスモンすらあっさり吸収されてしもうた…既に数個のゾーンが奴に取り込まれておる…!最早、いかなるエネルギーを持ってしても奴を破壊することは出来んでしょう…無念だが、お手上げでござる…!」

クレニアムモンの言葉を聞きながらもタイキの頭の中には1つの策が浮かんでいた。

「(ありがとう…ありがとうウィザーモン…!!お前のくれたヒントが無けりゃ…ここでもう全てが終わっていた…!!)キリハ!!大輔!!」

「貴様と同じ考えだ」

「同じくです」

「お前ら早っ!!」

タイキと同じ策を思い付いていたキリハと大輔は即答する。

【…?】

全員の視線が3人に集中する。

「奴を倒す方法は存在する…!!」

「多分に博打じみた策ではあるがな…!」

「ズィードミレニアモンを倒すにはジェネラル全員とパートナーの力を合わせる必要がある…!」

タイキ達はズィードミレニアモン攻略法を全員に説明する。

「沢山のデジモンを融合させて、ズィードミレニアモンを作り上げている力…強制デジクロスの力は完全じゃない!ネネが…命を懸けてダークネスローダーの完成を妨害してくれたからだ!!あれが無ければ、もう奴を止める術は無かっただろう。」

「あのダークナイトモンを見た限り、不完全な強制デジクロスは取り込んだ相手の力を完全に物にするにはある程度時間がかかるみたいなんだ…そこで…」

「俺達ジェネラルとシャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMで奴に突入し…吸収されるまでの時間を使って天野ネネを助け出し…奴を解体する!」

タイキ、大輔、キリハの説明に賢は理解したように頷いた。

「成る程、ズィードミレニアモンの巨大な情報質量の前ではX7もインペリアルドラモンもそう長くは存在は維持出来ない。しかし2体の超パワーを僕達人間が存在するためだけに割り振ることが出来れば…ズィードミレニアモンの体内を長時間自由に行動出来るはず!!」

「そしてシェイドモンと強制デジクロスしているのはネネ自身の意志だ。彼女の心に呼び掛けて眠りから覚ますことが出来ればそれは解くことが出来る。そしたら少なくともズィードミレニアモンを繋ぎ止めている力の供給は止めることが出来る…!」

タイキ達の作戦にドゥフトモンが待ったをかける。

「待ってくれ、だが…今のズィードミレニアモンを作った強制デジクロスはシェイドモンの意志では?それにあれだけの情報質量となれば、最早自重から発生する情報重力だけで強く押し固まっているはず…言うなれば情報のブラックホールだ!デジクロスが解除されればそれで分解してくれるとは限らないぞ…!?」

「それについても考えはあるんだ」

ドゥフトモンの言葉にタイキは笑みを浮かべながら、その“考え”をロイヤルナイツ達に説明する。

「…!ああ、成る程…成る程ねえ…!」

「確かにそれは…博打だな…」

「ク…ククク…!!でもそれに縋るしかないな…!」

アルフォースブイドラモンとドゥフトモンは目を見開き、マグナモンは肩を震わせて笑う。

「マグナモン、テイルモン。また力を貸してくれ。インペリアルドラモンをHFMにするためにはお前らの力が必要なんだ。」

「大輔、俺達の間にそんな言葉は必要ないぞ」

「住む次元は違っても私達は仲間よ。力くらい何時でも貸すわ。それに私もこういう危険な博打は結構好きよ?」

マグナモンとテイルモンは頼もしい笑みを浮かべて言う。

「でも私は分の悪い賭けじゃないと思うな!」

「ああ!少なくとも何も出来ずにここで待ってるより、よっぽどマシだぜ!!」

アカリとゼンジロウも気合い充分と言った感じだが。

「いや…この戦いが終わった後、どれくらい人間界とのデジタルゲートが安定しているか分からない。念の為、アカリとゼンジロウは先に人間界に戻っていてくれ!」

「「!?ええっ…!!?」」

「確かにX7とインペリアルドラモン。俺達ジェネラルは全員突入する必要があるが…それ以外のメンバーは少ない程いいんだ。ズィードミレニアモンに吸収されずに維持しなければならない情報は少ないほどいいからな。」

「X7とHFMの超パワーならアカリさんやゼンジロウさんがいても大丈夫かもしれないけど念には念を入れてです。すいませんけど…」

キリハがアカリとゼンジロウに説明し、この作戦の失敗は許されないため、ある程度個人の気持ちを尊重してくれる大輔すらアカリとゼンジロウの参加を許そうとはしなかった。

「っ!けど…!!お…俺達だってXローダーを…!!」

「Xローダーの力の一部を使ってデジモンを進化させることは出来たけど…デジクロスが使えるジェネラルになった訳じゃないんだ。クロス・コードってのは先天的な物みたいだからな」

「で…でも…!!そんなっ…!せっかくここまで一緒に冒険してきたのに…!!」

目に涙を滲ませながら言うアカリに胸を痛ませながらも、タイキはアカリの肩に手を置いて、ゆっくりと口を開いた。

「アカリ…これから始まる最後の戦いで…本当にどうしようもないくらいピンチになって追い詰められた時…お前が傍にいたら“まあ、ここで終わりでも良いか”とか馬鹿なこと考えちまうかもしんない。アカリには俺の帰りを待ってて欲しいんだ。その…帰ったらアカリに伝えたいことがあるんだよ…」

きっかけはヒカリの言葉が最初だった。

ヒカリの言葉でアカリを見る目が変化したことでタイキのアカリに向ける感情が“大切な幼なじみ”から“大切な女の子”に変わったのだ。

無茶ばかりする自分を献身的に支えてくれる彼女が大事だからこそ、絶対にズィードミレニアモンを撃破し、未来を手に入れたいのだ。

だから…彼女を連れて行くわけにはいかない。

「タイキ…」

「その…伝えたいことがあるから、待っててくれよ。必ずアカリの所に…絶対に帰るからさ……」

「…うん、約束よ…必ず帰ってきて…!!」

「おう…!!…ん?」

視線を感じて2人が振り返ると意味深な笑みを浮かべているのが数名、赤面しているのが数名いた。

「若いって言うのは良いなアルフォースブイドラモン」

「うん…青春だなあ…」

「ふん、腑抜けめ。ようやく覚悟を決めたか」

「そうですねえ、キリハさん。ヒカリちゃんの暴露から…本っ当に長かったですねえ…」

マグナモンから始まってアルフォースブイドラモン、キリハ、大輔が呟く。

「「2人共可愛い!!可愛い可愛い可愛~い!!」」

「「何っっじゃあ~っ!!」」

かつての時のようにリリモンとサンフラウモンが抱き付く。

今回はアカリだけでなくタイキまでふわふわと浮かぶのであった。

数分後…ようやく落ち着いた連合軍。

「と、とにかく…アカリ、行ってくる。アカリも気をつけて人間界に戻れよ?」

「ふん、私がついてないと寝坊ばっかで、忘れ物ばかりして…着る服やご飯も適当でっ…!!食べた後歯磨きしないし、怪我しても唾つけて放ったらかしだし、風邪引いてもすぐ布団から出て遊んでるしっ…!!あっ…言いながらなんかムカついて来たかも…」

「タイキしゃん…」

「アカリさん…苦労したんですね本当に…」

「どんだけ世話焼かれてんだ」

アカリから凄まじい怒りのオーラが噴き出し、内容を聞いたコトネ、ヒカリ、シャウトモンが思わず呟く。

他のメンバーはあまりの凄まじい怒りのオーラと世話の内容に冷や汗を流していた。

タイキは口笛を吹きながら明後日の方角を見遣っていた。

「そんなあんたが私の心配とか100年早いわよ!分かったからちゃっちゃと行って世界救って来なさい!ヒカリちゃんや大輔君達に迷惑かけるんじゃないわよ!?」

「は、はい…」

「ヒカリちゃん、私は一緒に行けないけど…頑張って!!」

「はい!アカリさん…今まで本当にありがとうございました!私…アカリさんのこと絶対忘れません!!」

目に涙を滲ませながら、ヒカリはアカリに抱き付いた。

これでアカリと一緒にいられるのは最後だから、尊敬した彼女を絶対に忘れないように。

「「………」」

大輔と賢はそんなヒカリを優しく見守っていた。

そしてヒカリはアカリから離れ、こちらに駆け寄る。

「よし…行きましょうか」

大輔がD-3Xを取り出し、タイキ達もそれぞれXローダーとD-3Xを構えた。

「「「オメガシャウトモン!!ジークグレイモン!!バリスタモン!!ドルルモン!!スターモンズ!!スパロウモン!!グレートクロス!!!」」」

「シャウトモンX7!!」

「「「エクスブイモン!!スティングモン!!ネフェルティモン!!エヴォリューションクロス!!!」」」

「パイルドラモンHM!!パイルドラモンHM進化!インペリアルドラモンHDM!!」

「「「インペリアルドラモンHDM!!マグナモン!!テイルモン!!パラレルクロス!!!」」」

「インペリアルドラモンHDM、モードチェンジ!インペリアルドラモンHFM!!」

シャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMが飛び立ち、それを静かに見送るアカリ。

「アカリ君…」

シャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMがズィードミレニアモンの近くまで到達した時、アカリの目から止め処なく涙が流れた。

「(タイキ…みんな…どうか…どうか無事で…!!)」

涙を流しながら手を組み、大切な少年と苦楽を共にした仲間達の無事をアカリは祈るのであった。

「後少しでズィードミレニアモンに接触するぞ!!」

「Hey、ブラザーズ。突入だぜえ!!思い残すことはねえかぁ!!?」

「思い残すこと?そりゃあもう…」

「大有りだ、こん畜生っ!!!!」

「やらなければならないことだって山積みだしっ!!」

「意地でも生きて帰ってやるっ…!!!」

「生きて、元の世界に帰るんだからっ!!!」

大輔、タイキ、賢、キリハ、ヒカリの順で叫ぶ。

コトネはテンションが上がってはしゃいでタイキに抑えられている。

「っしゃあーっ!!行くぜオラーーーッ!!!!」

「これで最後だ。後悔しないよう、全力全開で行くぜーーーっ!!!!」

「オール・オメガ・ザ・フュージョン!!!」

「バリア展開!!!」

シャウトモンX7は全身にオーラを纏い、インペリアルドラモンHFMは全身にインペリアルドラモンHDM時に展開していた防護壁を全身に纏ってズィードミレニアモンに突撃していった。

残されたメンバーは…。

「やれやれ、結局全て若者達だけに任せてしもうた…せめてこの老兵もマグナモンのようにデジクロスして連れて行ってもらえればなあ…」

「まあまあ、そこは仕方がないよ!マグナモンとテイルモンは別次元とは言え、彼らのパートナーだし、デジクロスってのはただ強いデジモンをゴタゴタくっつければ良いってモンじゃないらしいしね」

クレニアムモンの言葉にアルフォースブイドラモンは苦笑しながら言う。

「美しい仲間の絆が無限のパワーとなるのです。ラララ~♪」

「それより今の波動は…」

歌って踊るロードナイトモンをスルーしてアルフォースブイドラモンはドゥフトモンを見遣る。

「ああ、やはり彼は我らが盟友、オメガモンの因子の一部を受け継いでいる可能性があるな。であれば…やはり彼はもうこの世には…」

「ああ…あのタクティモンの強さを見たとは言え…彼が負けるなんて俄には信じられないけどね…(それにしても大輔のゴーグルは彼の物にそっくりだ…それにヒカリの名字…八神……もしかしたらあの2人は、君の関係者なのかな…?太一…)」

かつてデジタルワールドを共に冒険したアルフォースブイドラモンのパートナーの姿が脳裏に浮かぶ。

所々思い出せない部分があるが、彼と交わした会話は今でも忘れたりしない。

シャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMはズィードミレニアモンの体内へ侵入するのであった。 
 

 
後書き
アルフォースブイドラモンもといゼロマルは進化に関する記憶のみが曖昧な状態。本人も気になってはいるけど大好きな太一との記憶は健在だからまあいいかで済んでいる。  

 

第32話:絶望を希望に変えるために 中編

絶望を希望に変えるべく、ズィードミレニアモンの体内に侵入したタイキ達と大輔達。

「ぐっ…痛ててて…タイキさん、みんな大丈夫ですか?」

「な、何とか…ここは…?」

「どうやら侵入には成功したようだな…」

「…ああ…!」

「コトネちゃん?ああっ!?」

コトネの声に反応し、ヒカリが上を見上げた途端に声を上げた。

「X7…!!」

「インペリアルドラモン…!!」

「X7しゃん…インペリアルドラモンしゃん…」

大輔達も視線を遣ると壁の一部となり、身動き1つしないシャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMの姿があった。

「この中で俺達を存在させるために、2人はパワーの殆どを使ってくれてるんだ…」

「だが、保って数時間だ!急ぐぞ!!」

「(待て大輔!!)」

「(お前も待ちなタイキ!!)」

マグナモンとシャウトモンの声が大輔とタイキの頭に響く。

「(これを持って行け、俺が若い頃に手に入れた剣…ロングソードだ。無いよりマシだろ)」

マグナモンが大輔に差し出したのは蒼を基調とした一振りの両刃剣。

名前の割に小さい気がするが、ブイモンの体格に合わせた刃渡りなので、ブイモンからすれば確かにロングだろう。

クロンデジゾイドの中でも軽量のブルーデジゾイドなので人間の大輔でも簡単に持てる。

「(俺からも餞別だぜ!持ってきな!)」

シャウトモンもまた護身用のために自身の愛用のスタンドマイクをタイキに貸す。

「「サンキュー!!」」

大輔もタイキも別次元のパートナーと自身のパートナーに礼を言いながら突き進む。

「それにしても気持ち悪いとこだな…」

「沢山のデジタル物質やデジモンが取り込まれてるんだ。謂わば沢山の魂がズィードミレニアモンの腹に収まってるようなもんさ…綺麗な場所でも違和感ありすぎだよ」

大輔の感想に賢が走りながらツッコむ。

確かに沢山の魂が強引に収められている場所が綺麗な場所では違和感バリバリである。

しばらく走ると大輔達のD-3XとXローダーの反応が強くなる。

「むむむ~!こっちから姉しゃまの臭いがするでち~!!」

「それ変態臭い。ネネさんのXローダーの反応が近い!ズィードミレニアモンの体の中でも機能が生きていて助かった…」

もしD-3XやXローダーの機能が死んでいたらネネを見つけるのに時間がかかっただろう。

大輔は自分達の運の良さに感謝しながら突き進み、そしてある場所を曲がった時、水晶のような物に閉じ込められたネネの姿があった。

「ネネっ…!」

「ネネさん…って、ちょっとヒカリちゃん?前が見えないんだけど?」

「見ちゃ駄目~!!」

「ホアーっ!!なな何とあられもないお姿に~っ!!いい今お助けしまちーっ!!」

ヒカリは大輔の目を塞ぎ、コトネはネネの姿を見て赤面、目を自身の手で塞いでいる。

「何とな…よもやこんな所まで…君達がやって来ようとはな…」

【バグラモン…!!?】

奥から出て来たのは何とバグラモンであった。

「ホメオスタシスの予言には無かった事態だ…」

「(最悪だ…まさか皇帝バグラモンが…)」

「(滅びを見届けるために残っていたのか…!)」

バグラモンが残っていたのは賢もキリハも予想外だったらしく、表情を顰めた。

タイキと大輔はそれぞれのパートナーから借りた武器を構えた。

しかしバグラモンはそんなことを気にせず語り始めた。

「…かつて私は、人間の持つ希望と絶望…それぞれのポテンシャルを計るべく、Xローダーを作り、人間界に放った。Xローダーはそのプログラムに従い、幾人かのクロス・コードの素養を持つ少年少女をデジタルワールドに招き入れた…蒼沼キリハ、天野コトネ…君達もそうして招かれた人間だ。だが…工藤タイキ!!そして過去の並行世界の少年少女達よ!!君達は何者なのだ?君達だけが今とは違う時間、違う世界から私の関知しない力によって召喚された…君達の存在が予言に数々のイレギュラーを齎したのだろうか…尤も…今となっては、結末自体に大きな変化を与えるものではないが…」

バグラモンが異形の腕を一振りした。

【!?ぐあっ!!!?】

一瞬理解出来なかった大輔達だが、衝撃波をモロに喰らって吹き飛ばされる。

ズィードミレニアモンの肉壁に叩きつけられた大輔達。

「がっ…」

「きゃんっ…!!」

「あぐ…っ!」

生身の人間に魔王級デジモンの攻撃は弱めの衝撃波でも威力は凄まじく、相当なダメージを与えた。

「うっ…う…!」

「ゲフッ…!!」

「あっ…!ああ…!」

「ゴホッ…!」

ヒカリとコトネは痛みに震え、キリハと賢は吐血している。

「君達と共に世界の終焉を見届けたくもあったが…聞き入れるまい?君達は住む世界が違おうとも大きな夢を叶えうる才覚の持ち主だ……未来は惜しかろう…せめてここまで運命に抗ったことを誇りに…ここで眠るがいい…」

「な…んだとぉ…!」

「キリハ、コトネ。動けるか!?」

「賢もヒカリちゃんも動けるよな?俺とタイキさんが時間稼ぎをするから、ヒカリちゃん達はネネさんを!!」

「ネネを頼んだぞキリハ!!」

「大輔!?」

「たっ…タイキ、貴様っ!!」

「ネネを助けることが出来れば最後の作戦は確実に勝てるからな!全ての誇りを懸けてあの娘を取り戻すんだろ色男!!」

「さあ、早く!!バグラモン相手じゃ、俺達がどこまで時間を稼げるか分からないんで!!」

スタンドマイク、ロングソードを構えるタイキと大輔。

別次元の未来と過去のリーダーの最後の共闘が始まった。

「「うおおおおおお!!」」

大輔とタイキがバグラモンに向かって突っ込んでいく。

「生身の人間が魔王級のデジモンに立ち向かう…愚かとは言うまい。その胆力…高いモチベーション…正にジェネラルの器量と言えるだろう…工藤タイキ!本宮大輔!」

「(出来るだけ時間を稼ぐ!!死ぬわけにはいかねえ!!)」

「(動けない程のダメージを受けてもいけない…!!)」

スライディングでバグラモンの攻撃をギリギリで回避する大輔達。

「早く!!今の内に!!」

大輔が賢達に叫び、キリハはコトネを賢はヒカリと共にズィードミレニアモンの心臓部となるダークネスローダーの元に駆ける。

「是非もないが…くたばってくれるなよタイキ!!大輔!!」

「必ず助けてくる!!それまで頑張ってくれ!!」

「ムゥ…!」

バグラモンがダークネスローダーの元に駆けるキリハ達を見て、動きを止める。

「ダークネスローダーとネネさんはズィードミレニアモンの心臓みたいなもんだ…そっちに向けてはあまり本気で攻撃出来ねえだろ!?」

剣を全力でバグラモンに振り下ろす。

「何を企んで…っ!?その剣はクロンデジゾイドメタル製か!!」

剣を掌で受け止めたが、微かに痛みが走り、僅かに後退させた。

「そうさ!!ロングソードは大抵は完全体か究極体が装備しているレアメタルのクロンデジゾイド製だ!!これなら人間の俺でもあんたに僅かでもダメージを与えられる!!」

「チッ…」

「っ…うわあ!?」

バグラモンが再び衝撃波を繰り出して大輔を吹き飛ばす。

「大輔く…」

振り返ろうとするヒカリに…。

「振り返るなー!!」

「っ!!」

「俺なら大丈夫だ…ヒカリちゃんは…自分のやることに専念するんだ…みんなで…掴もうぜ…未来…!!」

「っ…うん!!」

「ヒカリさん!!早くD-3Xを!!」

「分かった!!」

キリハ達はXローダーとD-3Xを構えた。

「幼いが、君もまた1人の淑女と見た!やれるな!?」

「はいでち!!」

「それでは行きますよ!!」

賢、キリハ、ヒカリ、コトネのXローダーとD-3Xをダークネスローダーに翳す。

「XローダーとD-3Xを介して彼女の意識に接触するつもりか?だが…!」

「お前の相手は俺達だって言ってるだろ!?」

タイキはボムモンを取り出し、バグラモンに投げつける。

右腕で防がれてしまうが、それでいい。

「どりゃああああ!!」

大輔が振るった剣を今度は右腕で受け止めた。

「………君達を評するのに…小癪などと言う言葉は使いたくないぞ工藤タイキ君…本宮大輔君…!」

「「何とでも言ってくれ」」

大輔とタイキは笑みを浮かべながら距離を取った。

そしてXローダーとD-3Xによるネネの意識との接触をしていたキリハ達は暗い空間を漂っていた。

「何て暗い…悲しい空間なの…?」

「まるであの黒い海のようだ…」

「…ここは…?」

「どうやらXローダーを通して精神だけが別の世界を体験しているようだな。(差し詰めここは、天野ネネの夢の中と言ったところか…何とまあ、陰気な世界だ…)」

「あっ…!」

「コトネちゃん?」

「ヒカリしゃん、あっち!!」

コトネが指差した先には黒い影に拘束されたネネがいた。

「ネネさんだ!!急ぎましょう!!」

「ホアーっ!!姉しゃまーっ!姉しゃまーっ!!ご無事でちたか~!!」

「ようやく迎えに来たぞ天野ネネ…!!」

「ネネさん、待たせてごめんなさい!!」

キリハ達は急いでネネの元に駆け寄る。

「さあ、早くこんな所から帰るでち~!!」

「大輔君達も待ってます!!」

「今、大輔とタイキさんはバグラモンと戦ってます!!急ぎましょう!!」

「ああ!共にこの化け物を…」

「…れ…ない…」

「…!?」

ネネの言葉にコトネは目を見開く。

「私は…沢山…沢山…傷つけて…嘘を吐いて…一番大切な友達まで騙してその心を汚した…帰る所なんて…ない…」

「何を言う、君はっ…」

「姉しゃまが頑張ったからこの世界を救うチャンスが生まれたんでちっ!!」

「ネネさん、気をしっかり持って!!」

「…!?この感覚は…!?」

凄まじい悪寒を感じて振り返る。

「っ!!」

キリハ達も同じように振り返ると、黒い複眼の怪物がいた。

「彼女ハ…返サヌ…我ガ君ノ大望ノタメ…」

「まさかっ…シェイドモンかっ!?うおおっ!!」

黒い影に拘束され、動きを封じられるキリハ達。

「オ前達モ…ココデ我ガ夢ニ墜チルガイイ…」

「成る程…!貴様が彼女に悪夢を見せ続けていたわけか…丁度良い!貴様にも用があってここに来たからな…」

「君がいるのは寧ろ好都合だよ…!!」

「?…」

不敵な笑みを浮かべて言うキリハと賢にシェイドモンは訝しげな表情を浮かべた。

一方、タイキと大輔はバグラモンの攻撃で再び吹き飛ばされた。

そろそろ2人の体力は限界を迎えようとしていた。

「はあっ……はあっ…ぐっ……」

「うっっっっ…いっ……ってぇぇえええ…」

「天野ネネの意識はシェイドモンによって守られている。そこな4人の心も今に闇に飲まれよう…君達ももう…休みたまえ。最早苦しむ必要もあるまい。ここで諦めたとして、誰も君達の勇猛と献心を疑いはしない…」

「ぐっ…気遣いどうも…あんた…優しいな…優しいからデジタルワールドが汚れていくのを放っておけなくて…先に世界を消しちまおうと考えたのは…一応あんたの気持ち…分かるよ」

「けど、そんなあんたが、何で悪の親玉なんてやって不幸を撒き散らしてるんだ!?無闇な破壊はあんたの望む所じゃなかったはずだ…!」

大輔とタイキは傷だらけになりながらも、バグラモンに向かって言う。

「…悪には悪の拠り所があってはいけないのかね…?この世界においてデジモンは神は神、魔は魔、善は善、悪は悪として生まれ、死ぬまでその性質を変えることはない。悪に生まれた者は世界を呪うことを宿命づけられ、いつか必ず正義の名の下、全ての名誉を奪われて滅ぼされる…哀れな我が弟が…決して世界を愛せなかったように…!何故こんな不平等があるのか…?かつて大天使だった私は、何度もホメオスタシスにそのことを問うた…。だが、ホメオスタシスはその都度“見守るように”と答えるばかりだった…。業を煮やした私はこの世界の仕組み自体が間違っているのだと神に挑み…そして敗れた。雷に半身を焼かれ…純白だった翼も黒く焦げて散り…地上の辺境に墜ち、最早死を待つばかりだった私は…全くの偶然からそれを発見したのだ…!神のメインサーバ…情報樹イグドラシル…!!!」

「神のメインサーバ…情報樹イグドラシル…?」

初めて聞くその名に大輔は疑問符を浮かべた。

「かつて…その制御AIの極端な合理的思考から人間界をデジタルワールドに対する脅威として滅ぼそうとして急遽破棄されたシステム…ホメオスタシスはその時の教訓を踏まえて建造された穏やかで保守的な神なのだ…私はこの霊木の一部を切り出し、失われた半身に移植することによって命を長らえ…それと同時に莫大な力と知識を得た…!そして知ったのだ!!かつて…進化とは、デジモンにとってもっとありふれた出来事だったのだ。」

「…確か…マグナモンとテイルモンが言っていたな。このデジタルワールドには何時の間にか進化の概念が消えていたって…最後に進化したのはこの世界のブイモンがマグナモンに進化した時だって…」

「ほう…私以外にも進化の歴史を知る者がまだいたというのか…そのうちの1人がロイヤルナイツのマグナモン……君なら分かるのではないかね本宮大輔君?今のこの世界の異常さが…何故なら君は進化がありふれていた時代から来たのだからね。」

「正直…違和感を感じてばっかだったよ。デジモンは進化して強くなって成長するのが当たり前だと思っていたから…。生まれたらそのまんまなんて違和感しかなかった。マグナモンもテイルモンも最初は違和感しかなかったようだし…」

本人達はかつての冒険をあまり語ってはくれなかったが、この世界の自分達と別れてデジタルワールドに帰った時、あまりの変わりように戸惑ったようだ。

「そう…我々は本来強く願えば“変わり得る”種族だったのだよ…!!…だが、人の心から夢が失われて行くにつれ…我々は世界の有り様ごとその性質を変えていった…“変わり得る自分”を信じられなくなっていったのだ」

それを聞いたタイキは思わず疑問をぶつけた。

「け…けど…!だったらどうしてマグナモンとテイルモンやあんた以外そのことを誰も知らないんだ!?長生きのジジモン様や…ロイヤルナイツ一の知恵者のドゥフトモンだって進化のことは知らなかった。」

「恐らく、その2人は歴史の変化が終わるまで人間界にいたのだ。だからその2人は変化の影響を受けず、かつてのデジタルワールドにありふれていた“進化”を知っていたのだろう工藤タイキ君。このデジタルワールドにおいて、記録と歴史は等価な物なのだ。人間界のそれとは違う…曲がりくねった時間軸を持つもう1つの宇宙だと言ってもいい。人の意識が変われば、この世界は歴史ごと移ろって行くのだ…!!」

「つまり、今のデジタルワールドはタイキさん達の世界の時代の人の心を映してる…ってことか?」

大輔の言葉にバグラモンは肯定した。

「その通りだ本宮大輔君。話は戻すが、イグドラシルのメインフレームにはかつて生きた様々なデジモンのデータが記録されていた…私は復元したそれらのデータに仮初めの魂を吹き込むことにより、軍団の基礎を編制し…各地の悪のデジモンを糾合することによって帝国を作ったのだ。彼らの拠り所を作り…また世界の行く末を見極める力を得るために…!!」

「「………」」

「そして答えは得られた…!!この世界が恐怖と汚濁に飲み込まれるまで最早猶予はない!!魂の尊厳を守るために我々は自ら決着を付けねばならんのだ!!」

「勝手に決めるんじゃねえよ!!あんたは良くても他の…自分なりのやり方で必死に未来を手に入れようとしてる奴らはどうなるんだ!!未来が欲しくて必死に足掻いてる奴らの気持ちは…!!」

「出会いはっ…!!新しい希望を何度だって人の心に生み出すんだ!!一人ぼっちで出したそんな結論で世界を消させたりしない!!」

「子供の理屈で何が救えるものか…!!最早、問答に意味はないようだな…!!」

大輔とタイキを仕留めようとバグラモンは迫る。

2人はD-3XとXローダーを取り出した。

「まだだ!!まだ足掻いてやる!!」

「未来を…奪わせはしねえ!!」

「シャウトモンX7!!」

「インペリアルドラモンHFM!!」

「「クロスオープン!!」」

シャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMのデジクロスが解除され、シャウトモンとブイモンが飛び出す。

「「うらあああああっ!!」」

シャウトモンとブイモンがバグラモンに殴りかかる。

「何っ…!?(この気配は…それにこのブイモンのパワーは一体…!?)」

咄嗟に魔法盾で防ぐバグラモン。

シャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMがいた場所では残ったデジモン達が全ての力を振り絞っていた。

「(マグナモン!しっかりしなさい!!)」

「(バグラモンとの戦いのために殆どのパワーをブイモンに渡すなんて…本当に無茶するわね!!)」

「(別の世界の大輔を守るのはあいつでないといけないんだ…)」

弱っているマグナモンに叫びながら2匹のテイルモンは必死に力を振り絞っていた。

テイルモン達だけではない、みんな必死だ。

「(俺達全員ノ力デ、シャウトモンヤタイキ達の存在ヲ支える…!!)」

「(だが…X7とHFMの超パワーはもう無いぞ!!)」

「(マグナモンのパワーも殆どブイモンが持ってるから…)」

「(保って後…数分…!!)」

バリスタモン、メイルバードラモン、ワームモン、ドルルモンがタイキ達の勝利を願いながら踏ん張る。

そしてシャウトモンとブイモンとぶつかり合うバグラモン。

「(成る程、マグナモンからパワーを分け与えてもらったようだな。並行世界とは言え同一人物…同一人物同士のパワー譲渡は通常以上のパワーアップを果たすようだ。それに…あの気配は…)」

バグラモンの視線がシャウトモン達に向けられる。

「(ロイヤルナイツ、オメガモンか…!?私とタクティモンが2体掛かりで…しかもイグドラシルシステムで秘奥技、“オメガインフォース”をクラッキングすることでようやく討ち取ったあの最強の戦士のデータの一部をこのデジモンは受け継いでいるのかっ…!?)」

オメガモンのデータを受け継ぐシャウトモン、マグナモンのパワーを授かったブイモン。

最強のロイヤルナイツのデータを、ロイヤルナイツの守りの要のパワーを持つ2体がバグラモンの前に立ちはだかる。

バグラモンの目にはオメガモンとマグナモンが目の前に立っているようにさえ見えた。

「己…!!オメガモンと言い、マグナモンと言い…あの2体はどこまでも我が覇道を阻むか…!!」

「「うおおおおおっ!!!!」」

シャウトモンとブイモンがタイキと大輔から渡された武器を構え、咆哮しながらバグラモンに向かっていく。

そしてネネを救うために精神世界にいるキリハ達もまた必死に抗っていた。

「ネネ…さん…!!」

ネネを助けようと手を伸ばすヒカリ。

「モウ…諦メロ…我ガ闇ノ内ニ安息を得ルガイイ…」

「うるさい…僕達は…皆で生きて帰るんだよ…っ!!」

シェイドモンの甘い誘惑の言葉に必死に抗う賢。

「その…通りだ…っ!!ここまで来て…負けるわけにはいかん!!」

キリハは必死に腕を伸ばしてネネの腕を掴む。

「目を覚ませ、天野ネネ!帰るんだ!!君はこんな所で朽ち果てていい女じゃない!!」

「い……や…!私のことは…放って…おいて…私の…犯した罪は…大き過ぎる…私は…私を…許せない…!」

「許すだと!!?傲慢だな!!人の許しなど本人が決めるようなことではないっ…!!この俺が決めるのだ!!!」

「「「(ええ゙ーっ!!?)」」」

キリハの発言に今までの緊迫した空気が吹き飛んでしまった。

「罪…?罪が何だ!?君は強い女だ!どんな重い罪だって引き摺って歩いてみせろ!!そんな物は君の美しさに華を添える飾りの1つに過ぎん!!」

「何…を…あなたは何を言っているの…?」

「君の気高い生き様に惚れたと言っているのだ!!だから諦めん!!絶対に手に入れてやるっ…!!」

キリハの告白にネネの目に光が戻った。

「ネネさん…ネネさんのおかげで、私達はここまで成長出来たんですよ?あなたがいなかったら、デジタルワールドも現実世界も終わっていたんです!!あなたのおかげで世界を救うチャンスを手に入れられたんですよ!!」

ヒカリに続くようにコトネが話し掛けた。

「姉しゃま…!コトネは…コトネはまた姉しゃまに甘えたいでち…!でもそれと同じくらい…姉しゃまのことを助けたいでち…!支え合って一緒に生きたいでち…!!」

ネネは妹を見つめる。

あんなに甘えん坊だった妹が何時の間にこんなに強くなったのだろうと。

キリハは笑みを浮かべてコトネの頭を撫でた。

「ネネさん、あなたにもいます。あなたを理解しようとし、あなたを受け入れようとする人が…目の前に2人も!!」

「君1人で荷が重いなら肩を貸してくれる奴はいくらだっている…傍にいることは出来なくなっても支えようとしてくれる奴もな…この子だって…君の知っている頃よりずっと強くなった…!さあ、ネネ…心を希望で満たせ!俺達は出会った!!その絆があれば…希望はいくらでも生み出すことが出来る…!」

キリハ達の言葉にネネの心が希望の光で満ちた。

その瞬間、現実の世界にも変化が起き、何とネネが閉じ込められた水晶から光が放たれたのだ。

「ぬうっ…!?」

バグラモンだけでなく、ブイモンやシャウトモンすらあまりの眩い光に目を庇った。

「何だっ…!?」

「分からないかバグラモン!?あれは希望の光だ!!キリハさん達はネネさんを救い出せたんだよ!!」

大輔が自分達の勝利を確信し、笑みを浮かべた。

「バグラモン!あんたはただ絶望を与えるためだけに…弟にシェイドモンの幼生を託したのか…!?」

「!?何の話だ…!!」

タイキの言葉の意味が分からず、バグラモンはタイキ達を見遣る。

「ひょっとしたらあんた自身も気付かずに作っていた可能性の話さ!!絶望の心を糧にシェイドモンが行った羽化…それは一種の暗黒進化とでも言うべき物だ!じゃあ、それが…希望の心による物だったら…」

「始まるぜ…希望の心に満ちた進化が!!」

水晶に罅が入り、進化の光が溢れ出た。

「シェイドモン進化、ルミナモン!!」

水晶を砕いて現れたのは、シェイドモンが希望の心による進化で誕生したルミナモンと合体したネネ。

キリハ達もネネが解放されたことにより意識を取り戻したようだ。

「ネネさん…良かった…本当に…っ…」

「大輔君…!みんな…!!私…!私…!!」

涙を流しながらも希望に満ちた表情を浮かべるネネは本当に美しかった。

大輔はようやくネネを救えたのだと安堵の笑みを浮かべていた。

「何だ…これは…!?私の知らないシェイドモンの可能性だと…!?」

「大輔君!!」

ヒカリは大輔の元に駆け寄り、支えた。

「こんな…こんなボロボロになって…!!」

涙を流すヒカリを安心させるように大輔は笑みを浮かべた。

「大丈夫だ、こんくらい!!さあ、ヒカリちゃん。みんなで未来を掴もうぜ!!」

「みんな、D-3XとXローダーを!!」

「ありったけのクロス・コードを振り絞るでち!!」

「7人分だ…もらったな!」

「さあ…ネネ!みんなで未来を創ろう…!!」

全員がD-3XとXローダーを構えた。

バグラモンは大輔達が何をしようとしているかに気付き、止めようとする。

「まっ…まさか君達は…!?止めるんだっ!止めろっ!!そんなことをしても世界に絶望が溢れるだけだっ…!!」

「うおおおおお!!!」

「でやああああ!!!」

シャウトモンとブイモンがバグラモンに体当たりし、妨害を阻止する。

「ぐうっ…!?」

「今だみんなあっ!!全力全開だっ!!」

「行けぇタイキ!!全力でぶちかませ!!俺達の…未来へのシャウトを!!!」

「「「「「「「ズィードミレニアモン…!!!強制クロスオープン!!!」」」」」」」

7人のクロス・コードの力でズィードミレニアモンを強制解体した。

ズィードミレニアモンの脅威は去ったのである。 
 

 
後書き
この作品ではバグラモンがロイヤルナイツでオメガモンの次に警戒していたのがアルファモンとマグナモンです。アルファモンは言うまでもなくアルファインフォース。マグナモンはどのような危機に瀕しても奇跡の力で乗り切ると言う、奇跡という超常現象を味方にする能力がありますからバグラモンにとってはかなり厄介な存在なんです。マグナモンはバグラモンと戦争の初戦でオメガモンの前に交戦しましたが、イグドラシルシステムで奇跡を起こす能力をクラッキングされ、敗北してミストゾーンに飛ばされたと言う設定であります。 

 

第33話:絶望を希望に変えるために 後編

ズィードミレニアモンがタイキ達によって強制解体されていくのを見届けたアルフォースブイドラモン達。

「ズィードミレニアモンが分解していく…!!」

「やったんだ!タイキ様達が勝ったんだ!!」

バンチョーレオモンとパンダモンが解体されていくズィードミレニアモンを見つめながら叫ぶ。

「(バグラモンが無意識に願っていた希望…それがシェイドモンの幼生に託されていることを見越してここまで大胆な作戦を成し遂げてしまった…!!)」

「感嘆せざるを得ないな…あの少年達には」

ロイヤルナイツの面々ですらズィードミレニアモン解体を成功させたタイキ達に感嘆せざるを得なかった。

「あっ…!?」

突如スパーダモンが叫び、師匠のアルフォースブイドラモンが振り向く。

「どうしたの?」

「お師匠様、あれっ!あれは!!?」

スパーダモンが指差した先にはアルティメットカオスモン、メギドラモン数体、アルゴモン数体が地上のデジモンに襲いかかっていた。

それを見ていたデュナスモンとマグナモンに助けられ、共に脱出していたタイキ達も驚愕する。

「なな何でちか、あのでっかいのは~っ!!?」

「あれは伝説の魔獣、アルティメットカオスモン、メギドラモン、アルゴモンじゃないか!?」

マグナモンが傷付いた大輔達に癒しの光で傷の手当てをしながら目を見開く。

「ズィードミレニアモンから分離して出て来たのか!?」

暴れているアルティメットカオスモン達を見たリリモン達、大魔殿侵入組はアルティメットカオスモン達が、大魔殿に水晶の中に封じ込められていたデジモンであることに気付いた。

「ね…ねえ!あれって…!!」

「うん!大魔殿の中で水晶づけになってた奴らだよね…!?」

「…なっ…何と言うことだ…!!」

膝をついたバグラモンにブイモン達が振り返る。

「どうしたバグラモン!?」

「あれは私が大魔殿に封印し続けてきた…怒りや憎しみ…人の心の暗黒面を反映して変質してきたデジモン達だ…!!人の絶望の心…未来への虚無感を喰らい、肥大し続ける奴らを封じ込めておくのも限界だった…!今に滅びよりも不幸なことが起こる…!あらゆる命が生きたまま永遠に呪いの炎で焼かれ続けることになるのだ…!!その前に…せめてその前に全ての魂に安息を与えることが出来ればと私は…!!君達は…とんでもないことを仕出かしたのだぞ…!!」

バグラモンの言葉を聞いてシャウトモンとブイモンは互いに笑みを浮かべた。

大輔達も同様だ。

「へっ!!なあんだ、簡単じゃねえか!後はあいつらをぶっ飛ばしゃハッピーエンドってことだろ!?上等だぜ、やってやらぁ!!」

「1体1体のパワーは凄まじいけど俺達みんなの力を合わせればあいつらに勝てるはずだ!!」

シャウトモンとブイモンの言葉をバグラモンは否定する。

「…それが不可能だから言っているのだ…!!君達は人の心の勇気や喜びを反映して生まれてきたデジモンだろう…夢と希望に満ちていた過去の時代ならば可能性はあっただろう。だが…最早人の心にはあの絶望を克服するポテンシャルは無い…!!私の旅は…!長く長く続いたこの巡り合いの戦いは…!!…そのことを確かめるためにあったのだから…」

バグラモンの元にシャウトモンがツカツカと歩み寄り、バグラモンの耳元で全力全開で叫んだ。

「勝手に終わらせんなこらぁっ!!俺達ぁ、まだ生きてる!!巡り合いの戦いとやらの決着は今からつけてやるんだ!!バグラモン!!てめえだって自分じゃ気付かなくても希望を捨て切れて無かったじゃねえか!!見ろよ!!」

「クロスオープン!!」

シャウトモンが指差したのはルミナモンとのデジクロスを解除しようとしているネネの姿…。

ヒカリとコトネ達がネネの服等(恐らくヒカリかアカリの物)を持ってネネを隠す。

「ルミナモン!!」

次の瞬間には服を着たネネと彼女と分離したルミナモンがいた。

「うわあ、シェイドモンの面影が全く無いね」

「げげっ!こいつが元シェイドモンかよ!」

「可愛くなりすぎだろ!!」

ワームモン、スターモン、ドルルモンがルミナモンを見ての感想を一言。

「…この子もあなたの苦悩をずっと気遣っていました…けれど…最後は希望を信じてくれたわ…!」

「馬鹿な…!?どうやってシェイドモンの心を救ったと言うのだ…」

「歌えよバグラモン!!暗い所で理屈ばっかこねくり回しても本当の気持ちは伝わらねえ!!叫んで!ぶつかり合って!!俺達は分かり合うんだ!!」

「よっしゃあ!!正真正銘の最終決戦だ!行くぜえ!!」

ブイモンの叫びが合図となり、最後の戦いに向かう。

「行くぜ!!」

大輔達がD-3XとXローダーを構え、それぞれのパートナーを進化させる。

一足先に人間界に帰還したアカリとゼンジロウもタイキ達の勝利を願う。

メギドラモンの業火で吹き飛ばされるリリモン達。

とどめを刺そうとするメギドラモンにバンチョーレオモンの蹴りとアグニモンの拳が炸裂し、そして怯んだ隙にベルゼブモンがとどめを刺す。

「ばっ…馬鹿な!無理だ!!人の心に…我々デジモンに…!これ以上のポテンシャルなど…あるはずが…!!」

次の瞬間、バグラモンの目に信じられない物が映る。

大輔達と共に戦うデジモン達が次々と姿を変えていったのだ。

「デジモン達が、進化を取り戻している…!?」

「昔のようになってきたなテイルモン。この世界の大輔とヒカリ達が子供の頃に冒険したデジタルワールドのように」

「ええ、テイルモン超進化、エンジェウーモン!!」

かつてのデジタルワールドを知る数少ない存在であるマグナモンとテイルモンが進化したエンジェウーモンも共に突撃する。

「(そうさ…どんなに白けた面した奴の心の中にも…どんなに苦しくて悲しい心の中にだって…夢ってのは絶対消えずに燻り続けてるんだ…!!いつかでっかく…燃え上がるチャンスを信じて…!!)」

他のデジモン達に次々と起こる進化に、バグラモンはその理由に気付いた。

「そっ…そうか…!!彼らが繋げたのだ!!(今はまだ秘められた人の心の可能性と…私達デジモンを…!!)」

「よし、パイルドラモン。景気良く行くぜ!!」

「おう!!パイルドラモンHM進化、インペリアルドラモンHDM!!メガデス!!」

進化したインペリアルドラモンHDMの放った暗黒物質はメギドラモンを一撃で粉砕した。

「エンジェウーモン!!」

「ええ、マグナモン!!」

「ミラクルグリッター!!」

「ホーリーアロー!!」

マグナモンの光とエンジェウーモンの矢が一筋の閃光となってアルゴモンを貫いた。

「僕達も続くぞ!!」

アルフォースブイドラモン達、ロイヤルナイツもインペリアルドラモンHDM達に加勢する。

「おお…おおお…!!愚かな私の起こした戦乱も空しくはなかった…!!未来を求めた長い旅路が…少年達の可能性を解き放ったのだ…!!」

度重なる進化と言う奇跡にバグラモンの心に希望が満ちていく。

インペリアルドラモンHDMは一直線に魔獣最強のアルティメットカオスモンに向かっていく。

「マグナモン!!」

「エンジェウーモン!!」

「「了解!!」」

大輔とヒカリの意図に気付いた2体は頷いた。

「「「インペリアルドラモンHDM!!マグナモン!!エンジェウーモン!!パラレルクロス!!!」」」

「インペリアルドラモンHDM、モードチェンジ!インペリアルドラモンHFM!!」

インペリアルドラモンHDMとマグナモンとエンジェウーモンをデジクロスさせ、再びインペリアルドラモンHFMにモードチェンジさせた。

それを見たタイキ達もXローダーを構えた。

「「「「オメガシャウトモン!!ジークグレイモン!!アトラーバリスタモン!!イエーガードルルモン!!ラプタースパロウモン!!エヴォリューションクロス!!!」」」」

「シャウトモンEX6!!」

オメガシャウトモン達をデジクロスさせ、再びシャウトモンEX6に。

「ん?」

「大輔?あ…あれは…」

大輔達の視界に映るのはダークナイトモンのデジクロス前の姿のスカルナイトモンとデッドリーアックスモンであった。

「行くぞ」

「え?いいの?」

そんなスカルナイトモン達を見て、どうでも良さそうに言う大輔にヒカリと賢は目を見開く。

あんなに怒っていたと言うのに。

「いいんだよ、もう充分過ぎるくらいぶっ飛ばしたから、あれにはもう殴る価値もねえ」

無関心と言った感じでインペリアルドラモンHFMを追い掛ける大輔達。

「グッ…!ム…どっ…どこだここは!?何があったと言うのだ…!?(ガルフモンを取り込んでからの記憶が定かではない…!!ぶ…無様な!力に狂わされ、自我を失っていたというのか!!?そ…そうだ私はっ…三元士達を取り込み…大魔殿で兄上を追い詰めて…?)」

スカルナイトモンに何者かの影が掛かり、スカルナイトモンは咄嗟に上を見上げた。

「!?うわああああああ!?」

アルゴモンがスカルナイトモンを見下ろしていた。

ダークナイトモンの力を失った今のスカルナイトモンでは一溜まりもないだろう。

「(な…何だったのだ。私と生とは…!?世界を呪い…狂気に飲まれ…迎える死がこ…こんな…こんな…!!?)」

アルゴモンがスカルナイトモンを仕留めようと光線を放つ。

「ヒッ…いっ…嫌だっ…!!」

次の瞬間、バグラモンが光線とスカルナイトモンの間に入り、イグドラシルの霊木の腕で光線を受け止めた。

「!?兄上っ…!!?」

「君とは…ただ少し語り足りなかっただけなのかもしれないな……そうすればもっと正直に君の可能性を信じることが…フフ…だが、私のような朴念仁にも悪の親玉が務まったのだ。案外君も聖騎士くらいやれるんじゃないかね?」

徐々に霊木の腕に入っていく亀裂。

しかし、バグラモンは気にせず笑みを浮かべながら言葉を紡いだ。

データを分けた世界でたった1人の弟に肉親としての言葉を与えるために。

「頑張りなさい、私の弟よ。本当の栄光を手に入れるのだ…!」

「な…何故…!?この憎しみにまみれた生に、何故愛という報いがあるのです!!?」

凍てついていたスカルナイトモンの心に暖かい何かが灯る。

しかしそれが何なのかに気付くにはスカルナイトモンには時間と経験があまりにも足りなさ過ぎた。

笑みを浮かべたバグラモンは限界以上の力を振り絞り、アルゴモンと相討ちとなるのであった。

「何故だ兄上、何故だーーーっ!!!」

最後の巡り合いの戦場にスカルナイトモンの絶叫が響き渡る。

黄金の超闘士・シャウトモンEX6と純白の皇帝聖竜・インペリアルドラモンHFM。

連合軍を代表する2体が残った最後の魔獣、アルティメットカオスモンに突撃する。

「「「「「「「オールデジモンズ…!!」」」」」」」

シャウトモンEX6とインペリアルドラモンHFMに全てのデジモンが融合していく。

「「「「ファイナルクロス!!!」」」」

「「「エンシェントクロス!!!」」」

「シャウトモンX7SM(スペリオルモード)!!!!」

「インペリアルドラモンHFM、モードチェンジ!インペリアルドラモンPM(パラディンモード)!!!!」

X7の全身が超巨大かつ金色になり、背中と頭部からは大きな天使の翼が生え、胸部のV字だけが燃えるような赤色となった姿に。

インペリアルドラモンHFMも大勢のデジモンと融合したことでインペリアルドラモンと言うデジモンの持つ潜在パワーを極限まで引き出した純白の古代聖騎士へと姿を変えた。

インペリアルドラモンPMはロングソードが数々のデジモンのパワーを得たことで変化したオメガブレードを、シャウトモンX7SMはスタンドマイクに全エネルギーを収束させて生み出した大剣を握り締めた。

「決めるぜ!!ファイナルクロス…」

「この一撃に全てを懸ける!!オメガ…」

2体の究極のデジモンの全身全霊の一撃が振り下ろされる。

「「ブレエエエエイドオオオオッ!!!!!!」」

その2体から繰り出された聖剣と大剣の一撃による凄まじい破壊力はアルティメットカオスモンを容易く粉砕し、光の柱を天に昇らせた。

こうして、長く長く続いた巡り合いの戦いは終わったのである。 
 

 
後書き
次回でクロスウォーズ終了 

 

第34話:並行世界との別れ

アルティメットカオスモン、メギドラモン、アルゴモンを撃破し、少しの休息の後。

「本当に良いのか?」

鞘に納まったロングソードを見つめながらブイモンはマグナモンに尋ねた。

「ああ、今の俺が持っていても宝の持ち腐れだ。寧ろその剣に新たな可能性を与えたお前が持っていた方がいいだろ…」

「マグナモンはこれからどうするの?」

「テイルモンの迷子捜しに付き合うさ。心配だしな」

「本当…ここまで来てまた迷子ってどういうことよ全く!!」

ウィザーモンが次元規模の迷子になってしまったことにプンプンと怒るテイルモン。

「まあ、落ち着け…あいつのデータを集めて世界中を駆け巡って復元も含めて数百年もかかった旅に比べれば遥かにマシだろ」

「まあね…そうそう、データのサルベージの方法だけど…」

テイルモンは並行世界の自分にデータのサルベージ方法を教えた。

「でも、良いのかい?君はロイヤルナイツだ。ロイヤルナイツがホメオスタシスの元から離れて…」

「知るか、今回の戦いはバグラモン以前に保守的過ぎたホメオスタシスが原因だ。邪魔をするならロイヤルナイツを抜けてやると脅してやった。」

「神様脅したのかよお前?」

「ふん、俺は世界がどうなろうと知ったことじゃない。俺が戦うのは仲間のためだ。ホメオスタシスのためじゃない」

呆れる大輔にマグナモンは鼻を鳴らしながら問題発言を言い切った。

「さて、クロックモン。大輔達を元の世界に案内してやれ。もし、しくじればお前の今年の給料は0になると思え」

「ラジャー!!」

絶対にしくじれないとクロックモンは気合いを入れた。

「そうそう、大輔。ウィザーモンから預かっていた物を返しておくわ」

テイルモンが差し出したのはウィザーモンに修理を依頼した奇跡のデジメンタルであった。

バラバラの状態であったにも関わらず、完璧に復元されている。

「奇跡のデジメンタル…サンキュー」

「それ、ウィザーモンから聞いた話だと完全に復元出来なかったみたい。オリジナルより性能が低くなっているらしいから気をつけて」

「充分だ。」

D-ターミナルに保存されたデジメンタルを見て、大輔達は自分達の世界に帰るのだった。

そして向こうではコトネとスパロウモンが抱き合って号泣していた。

「嫌でち~!スパロウモンしゃんとお別れなんて嫌でち~!!」

「わぁああん!僕もだよぉコトネ~っ!!」

「コトネ…スパロウモン…!」

ネネもまた目に涙を滲ませながら、モニモンを抱いていた。

「ああ…いたいた!」

突如聞こえた声にネネ達が振り返る。

そこにはロイヤルナイツにしてかつてデジタルワールドを救った英雄のパートナーデジモン、アルフォースブイドラモンがいた。

「天野ネネさんだね!帰る前に会えて良かった!君達に頼みたいことがあったんだ!確かにもうすぐ次元の道は閉じてしまうけど…何しろ騒動の種に困らないこのデジタルワールドだ。いつ新しい事件が起こって人間界にも影響が出ないとも限らないからね!そこで…もし人間界で新しくデジモンがらみの事件が起こった時のために…」

アルフォースブイドラモンの頼みにネネ達の表情は輝いた。

そして一方、タイキとキリハ達はクロスハートとブルーフレアを解散させ、誰よりも苦楽を共にしたパートナーと最後の別れを交わしていた。

「最後の命令だ。安い死に方だけはするな」

「無論よ!貴様こそ新しい戦場で半端な戦い方をするんじゃないぞ!」

拳を互いに突き出して軽くぶつけ合うキリハとグレイモン。

「キリハ…!お…俺は…俺はなあ…!!お前と肩を並べて戦えたことを……誇りに…!くっ…」

涙を流すメイルバードラモンの頭にポンと手を置くキリハ。

「お!行くのか?」

「うん…次元の道もそろそろ限界みたいだしな。」

「そっか…しっかり者のアカリがついてんだ。俺が心配することじゃねえが。ま、のらりくらりと頑張んな!」

「のらりくらりって…それが別れ際に言う台詞かよ!」

「男と男の別れなんざこんなモンよ!例え遠く離れてても俺達ぁ、ソウル・ブラザーだ。それで充分だぜ!!湿っぽくしても始まんねえ!!オラ行った行ったあ!!」

「わっとと…!」

軽く蹴られるタイキ。

周りをよく見るとキリハは既にいなくなっていた。

タイキは溜め息を吐きながら移動する。

「(何だよ、1年間一緒に戦ってきた相棒だろぉ?カラッとするにも程度ってもんが……いい王様になれるのかなぁ、あいつ…)」

次の瞬間、苦笑しながらタイキは足を止めた…いや、止められた。

「行くなよぉ…!」

タイキの服の裾を掴みながら号泣するシャウトモン。

「もっと…もっと一緒に冒険しようぜぇ…!!このデジタルワールドにゃあ…まだ見ぬ秘境が、手強い悪者が…!まだまだわんさか残ってる…!!この世界にいればお前さんは本物のヒーローなんだぜ!!?俺はっ!俺はずっとお前と一緒に…!!」

「シャウトモン」

泣き崩れるシャウトモンの肩に手を置きながら言葉を紡ぐタイキ。

「確かに俺達の世界で夢を追うって言うのは…デジタルワールドで冒険するような痛快で格好いいことばかりじゃなくて、どっちかって言うとコツコツ頑張ったり、じっと我慢しなきゃいけないことの方が多いかもしれない…けどさ…それでも俺、この胸のワクワクが放っとけないんだ…!!俺が本当に何を目指すのかまだ分からない。大輔やキリハみたいに明確な目標があるわけでもないし。」

キリハは人間界に戻ったら一から勉強をし直し、事業を受け継いで、父親以上に発展させ、堕落している兄達を悔しがらせてやると言っていた。

大輔もラーメン屋になるためにマッシュモン達のような料理を得意とするデジモン達から学び、元の時代に戻った後も夢のために前へ進み続けるだろう。

自分も大輔やキリハのように夢へ進みたいのだ。

「今度は逃げ出さずに…真っ直ぐに追いかけて行きたい…!シャウトモン…お前みたいに…!!そして…いつか夢を叶えて、“俺は俺の夢のキングなんだ!!”って胸を張って言えるようになったら…!また一緒に冒険しよう…!!全員揃うのは無理かもしれないけど、夢を分け合った俺達クロスハートのみんなで…!!!」

「……………約束だぜ…!!」

「約束だ…男と男の…!」

シャウトモンは涙を拭いながら立ち上がる。

「…へっ…行きな!俺ぁ先に俺の夢を叶えてくらぁ」

「ああ!ボリューム最大で頼むぜえっ!!」

タイキも次元の道を通り、途中でクロックモンに導かれている大輔達と会い、笑顔で別れた。

そしてシャウトモンは待たせている仲間の元に。

「シャウトモン!」

「準備出来てるよ!」

「(分かってるさ、タイキ…!!世界の向こうまで響かせてやらあ…!!)」

舞台に立ち、シャウトモンは観客に向かって静かに語り始めた。

「これから、俺達のソウル・ブラザー達に歌を贈る。人間界に帰っちまうタイキ達と、タイキ達とは違う別の世界に帰っちまった大輔達にこの2つの歌をなあ!耳かっぽじって聞きやがれ!!!まず1曲目!!butter-fly!!!」

シャウトモンが叫ぶと観客達も叫び、シャウトモンの歌が響き渡る。

その歌は次元の道を走るタイキ達にも届いていた。

中学生となったアカリ。

1人、剣道の素振りをするゼンジロウ。

そして彼の元に来た天野姉妹と動物化したスパロウモン達。

父親の建てたビルを見上げるキリハ。

そして次元の道を抜け出して元の世界に戻るタイキ。

タイキとシャウトモンの脳裏に浮かぶのは、仲間と共にデジタルワールドを駆け巡った記憶。

「次行くぜえ!2曲目、ターゲット~赤い衝撃~!!」

2曲目…今度は過去の並行世界の過去へと帰る大輔達に贈る歌。

次元の道を通っていた大輔達は途中で賢とワームモンと別れて、自分達が飛ばされた場所に向かって突き進む。

この冒険で、強く成長した賢。

自分を理解し、受け入れてくれる存在を手に入れた彼は自分の罪にも真っ向からぶつかることが出来るだろう。

大輔もヒカリも数々の試練を乗り越えて心身共に強くなった。

2人はこれから先、何があっても互いに手を取り合って支え合って戦える。

時空の道から飛び出した大輔とヒカリは穏やかな表情で空を見上げた。

そして向こうのデジタルワールドではドルルモンがキュートモンを乗せて駆けていた。

「黙って出て来ちゃって良かったキュ?」

「お前の親を捜す旅はまだ途中だからな。なぁに、奴のダミ声はどこに行っても聞こえてくるさ!それにな!こりゃタイキの受け売りだが…この世界はまぁるい球みたいな形をしていて、例え別々の方向を歩き出しても真っ直ぐに進み続ければ…いつかまた必ずどこかで出会えるんだとよ!!」

「キュー!!」

「走っていけば尚更だ!!」

「キューーーーッ!!」

ドルルモン達は荒野を駆け抜けていった。

そして別の場所でも…。

「本当にあんた良かったわけ?」

「良いって言ったろ。ホメオスタシスよりもお前の方が大事だ。ウィザーモンのことは俺も深く関わったからな」

「ありがとう…あいつら大丈夫かしら?」

「心配する必要はないだろ。サルベージ方法は教えたし、それに向こうには向こうの俺がいるんだからな」

「あんた何さり気なく自分自慢してんのよ…さっさとウィザーモンを見つけましょう。そしてどこかで行き倒れていたらまた水を飲ませて、さっさと3人であの2人の所に帰りましょ」

「そうだな…よし行くぞテイルモン!!」

「フルスピードで飛ばしなさいよマグナモーン!!!」

テイルモンを背中に乗せ、マグナモンはフルスピードで世界を回り始めたのであった。 

 

第35話:帰還

元の世界に帰還した大輔達、2人は穏やかな表情を浮かべていた。

「やっと終わったな、いや…俺達の戦いはまだまだこれからだな」

「うん…賢君の言っていたダークタワーをデジモンにする女の人だよね?」

「どうしてダークタワーをデジモンに出来るのか、デジタルワールドを滅茶苦茶にするのか…全て吐かせてやるぜ…」

指の関節を鳴らしながら低い声で言う大輔。

ヒカリは苦笑しながらも止めようとはしなかった。

「でも大輔君。私達、1年間向こうにいたよね?髪とか伸びちゃったし」

「ヒカリちゃん家はデジモンを知ってるんだろ?太一さん以外に全ては話せないにしても、髪が伸びたことに関してはデジタルワールドで育毛剤作用のある薬液を被ったでいいんじゃないか?実際デジタルワールドにありそうだし。」

「と、通せるかなあ?それで?」

「変に疑われるような態度を取らなきゃ普通に押し通せるぜ?普通の人なんか信じられないぜ絶対。未来の並行世界行って暴れてきましたなんてさ」

人間の嘘は堂々としてれば以外とバレない物である。

「うーん…お兄ちゃんには全て話した方がいいかな?」

「いいと思う。何時かはみんなにもすべて話すべきだと思ってる。さて、家族のことは何とかなるとして、一番の問題は伊織達だ。伊織達どうする?」

「へ?伊織君達?」

一番の問題が伊織達であることにヒカリは思わず首を傾げた。

「その女のことを伊織達に言っても情報源が賢だろ?俺達はあの1年間があったから賢とは親友の間柄になれたけど、伊織達からすれば極悪なデジモンカイザーだ。信じちゃくれねえだろ…適当に言おうとしても伊織と京はしつこく細かいこと聞いてくるぜ?伊織は知識の紋章を受け継いだし、京はあんな性格だしな」

「確かに…」

伊織は知りたがる心を強く持っているし、京も聞きたいことにはしぶとく食い下がるだろう。

「正直、伊織と京の態度によっては別行動も考えなきゃいけねえ…出来ればあまりしたくねえんだけどな…タケルは…まあ、納得しちゃくれないだろうけど、理解はしてくれるだろ」

「特に伊織君…賢君のこと凄く怒ってるもんね」

「真面目過ぎるんだよあいつは。真面目過ぎて自分が納得出来ないことを受け入れられないんだ。どんなに納得出来なくても受け入れなきゃいけないこともある。そうだろヒカリちゃん。クロスハートに暗黒系が入った時、ヒカリちゃんはあまりいい顔しなかったもんな」

「う、うん…今なら悪くないデジモンなら平気なんだけど」

今までの経験から暗黒系を苦手にしていたヒカリだが、今ではある程度は克服した。

実際、暗黒系デジモンの力が必要になる場面もあったわけで、これから先の戦いを考えると賢とワームモンの戦力は絶対に欲しい。

しかし、伊織達が賢を拒絶してチームワークが乱れるようならば、あまり考えたくはないが別行動を視野に入れなければならない。

「ふーっ、しばらくは問題山積みだな…とにかく…また明日な」

「うん…またね大輔君」

急いで自宅に向かう2人。

ヒカリは帰宅し、急いで自室に入り、服を着替えた。

流石に買った覚えのない服を着ていると怪しまれるからだ。

「よう、ヒカリ。帰ってたのか…って、どうしたお前?髪伸びてるし…背も少し伸びてないか?」

タイミングが良いのか悪いのか、太一が部屋に入ってきた。

「え、えっと…お兄ちゃん、これから私が話すことは全部本当だから驚かないで聞いて」

「…ああ……大事なことなんだろ?言ってみろよ」

真剣な表情を浮かべるヒカリに太一もまた真剣な表情を浮かべてヒカリの話に耳を傾けた。

一方大輔も自宅に帰ると大輔の姉のジュンが突っかかってきた。

「大輔、あんた何時までのんびり遊んでんのよ。あんたにお使い頼もうとしてたのに!!」

「おい、人が帰って最初に言うことがそれかよ…」

額に手を置いて深い溜め息を吐いた。

「あれ?あんた少しでかくなってない?少し声が低くなったような…」

「気のせいだろ、人を便利屋扱いしてるから間違えるんだろこの女子力0」

「何ですって!?父さんと母さんがいない時、あんたに美味しいご飯作ってんの誰だと…」

「父さんや母さんがいない時は俺が作ってたろ。家事関係で俺に偉ぶるなら卵焼き…いや、せめて目玉焼きくらい作れるようになるんだな、料理を作れば暗黒物質を生み出して、洗濯すれば服はボロボロ、整理整頓も俺以上に駄目駄目で京の姉貴の百恵さんからは同情までされてんだぞこっちは…」

「うぐぐ…だ、大輔の癖に…!!」

「ふう…で?買いたい物って何だよ?」

「え?行ってくれるわけ?珍しいー」

珍しい物を見たと言いたげなジュンに青筋が浮かびそうになるが堪える大輔。

その時、レインゾーンでのネネの言葉を思い出す。

『優しいのね大輔君。口は悪くてもきっと大輔君のお姉さんも大輔君のことを大事にしていると思うわ。だってこんなに優しい子なんだもの。きっとお姉さんも素直になれてないだけよ…。再会したら素直にお姉ちゃんって言ってみなさい?きっと喜んでもらえるわ』

「…………」

「じゃ、このお金で何時もの雑誌買ってきて。」

「分かった…じゃあ、行ってくるよ…………姉ちゃん」

「え?」

ジュンが振り返った時には既に大輔はいなかった。

「あいつ…今、“姉ちゃん”って…」

久しぶりに呼ばれたジュンは無意識に表情が綻んでいた。

「よし、たまには私があいつに何か作ってやるとしますか!!」

気合いを入れるジュンだが、それは大輔からすれば余計なことであった。

コンビニに行っていつもの雑誌を買って(京は今日は休みらしいためいなかった)帰宅したのだが、凄まじい悪臭に顔を顰めた。

「…………まさか!!」

急いで家に入り、キッチンに飛び込むとフライパンに暗黒物質を載せたジュンの姿があった。

「お帰りー。大輔、今日は私がオムライスを作って…」

「んじゃあ、味見してくれよ姉貴」

スプーンで一口分オムライス(と呼ぶのもオムライスに失礼な物体)を掬い、ジュンの口に放り込んだ。

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!?…ガクッ…」

「作った本人すらダメージを喰らうのかよ…」

あまりの不味さに失神したジュンを見て呆れた表情を浮かべる大輔であった。

「でも大輔の姉ちゃんが作ったにしてはまだまともな方だよな~」

D-3Xから出て来たブイモンがオムライス?を見つめながら呟く。

以前は鍋に穴が開いたり、ゴム手袋が溶けたりしたから単純に悪臭を撒き散らし、気絶するほど不味い程度ならまだ安心出来る物である。

「これマジでどうするか…捨てようにもこんな有害物質……そうだ!!」

大輔は何かを閃き、幾重にも封印(小型の古いタッパーに入れる→新聞紙で包む→小さい箱に入れる)を施し、明日学校に持って行くことにしたのであった。

そして八神家では、ヒカリの話を聞いた太一が複雑そうに聞いていた。

「大輔と一乗寺と一緒に未来のデジタルワールドに行って、そっちで1年間過ごしてきたのか?」

「うん、と言ってもパラレルワールドみたいだから、私達の未来がそうなるとは限らないみたい」

「ふうん…俺じゃない俺が育てたアグモンが高確率でブイモンが進化するデジモンにか…何か変な感じだな」

「やっぱりそう思う?」

「ああ、やっぱりアグモンはグレイモンのイメージが俺には強いからな…」

やはり慣れ親しんだ姿の方が印象が強いのか、それ以外の姿と言うのは違和感があるようだ。

「あっちのアグモン…アルフォースブイドラモンも格好良かったよ。神様に仕えて、可愛いお弟子さんが3人もいたんだから」

「へえ…見てみたかったな。そっちのアグモン…」

「向こうのマグナモンとテイルモンも私達を見て喜んでいたから、多分アルフォースブイドラモンもお兄ちゃんに会えば喜んだよ」

「そっか…大輔には礼を言いに行かなきゃな。俺の代わりにヒカリを守ってくれてな……後、一乗寺も許してやるか。ヒカリが世話になったようだしな」

「お兄ちゃん…ありがとう」

賢を許してくれた太一にヒカリは嬉しそうに笑みを浮かべる。

「それでお兄ちゃん、デジクロスは他のデジモンも合体させられるみたいだから、アグモン達も合体させられるかもしれないよ?」

「うーん…見てみたいような、見たくないような…。アグモンが変なデジモンになったら泣くぞ俺。ところでヒカリ、お前その髪どうすんだ?背が伸びたのはまだいいけど、流石にいきなり髪が伸びたら怪しまれるんじゃないか?何なら俺が切ってやろうか?」

「え゙?そ、それはちょっと遠慮したいかな~?せっかくここまで伸ばしたんだし。勿体ない…お母さん達にはデジタルワールドで髪が伸びる何かを浴びたってことにしてお兄ちゃん!!」

「い、いやあ…お前がいいんならそれでいいんだけど。学校じゃどうすんだよ?」

流石に学校では騙すことなど出来ないのではないだろうか?

「だ、大輔君が何とかしてくれるよ!!」

「…一体どうやって大輔に誤魔化させるつもりなんだお前?何か嫌な予感がしてきたぜ…」

大輔とヒカリに降りかかりそうな物ではない気がするが、何か嫌な予感を感じた太一であった。 

 

第36話:アルティメットアルマジモン

 
前書き
途中でアルマジモンは

「」←から

アルマジモン「」←になります 

 
大輔は1年ぶりに訪れた学校に懐かしげに席に座る。

「おはよう、大輔君」

「ん?おお、タケルか。おはよう」

「あれ?大輔君、声変わりしてない?それに少し大きくなったような…」

「後で教えてやるよ。ちゃんとした理由をな…あ、ヒカリちゃんだぞ」

「おはよう大輔君、タケル君」

「おう、おはようヒカリちゃん…やっぱり髪はそのまんまにしたのか」

「あはは、せっかく伸びたから…」

「あれ?ヒカリちゃん、昨日までは普通に短かったよね?何でいきなり肩にかかるくらい長くなってるの?」

「…詳しいことは後で話すから……ね?」

タケルの質問を何とか回避するが、他のクラスメートはそうはいかない。

次々に質問を受ける羽目になるヒカリだったが…。

「仕方ない…原因を教えてやるよ。これだ」

幾重にも厳重な封印が施された例のアレを出す。

「大輔、何だこりゃあ?」

「うちの姉貴が作った本人曰わくオムライス。全員死にたくなかったら窓を開けろ、耐性がない奴らは…ガスだけで死ぬかもしれねえ」

【死!?】

取り敢えず窓を全開し、封印を解き放つ。

次の瞬間、凄まじい悪臭が漂い、咄嗟に口や鼻を押さえるが、それでもこの悪臭は防げない。

顔面蒼白で涙目になった女子生徒が表情で止めてくれと懇願する。

大輔は手慣れた手付きで再封印を施した。

数分後、臭いがマシになった時、全員がようやく心置きなく新鮮な空気を吸えた。

「大輔君、タケル君が気絶してるんだけど?」

床に大の字で寝転がるタケルに、ヒカリが指差す。

「ああ、こいつ至近距離でガスを喰らったからな。後で保健室に連れて行くか。とまあ、これが俺とヒカリちゃんの変化の原因だな。俺の場合は声変わりと身長、ヒカリちゃんの場合髪と身長だな。」

「……食べたの?」

「えっと、大輔君のお家にお邪魔して…」

「俺も何だかんだで姉貴が作ったもんだからなあ」

【偉いっ!!】

「あれは痛かったぜ、骨がミシミシと伸びて体の内側が骨で突き破られそうになる感覚、何回か花畑が見えた。」

それを想像してか一部のクラスメートには体を擦っている者も見えた。

「一応こんなんでも姉貴が作った物の中じゃ、まだマシなレベルなんだぜ?下手すりゃ化学反応を起こして鍋やゴム手袋が溶けたりするからな」

【そうなの!!?】

「当たり前だろ?だから今回はこんな程度で済んでんじゃねえか」

それを聞いたクラスメート達は大輔の姉に恐怖を抱いた。

「ああ、このことは秘密な。うちの姉貴は気に入らない奴に容赦ねえから、これを食わされたくなかったらな」

全員がコクコクと頷いた。

ヒカリは噂以上の威力に少し涙目になっていた。

事前に聞いていたからすぐに口と鼻を押さえることは出来たが、それでも耐性がないヒカリには結構な威力だった。

余談だが、今日のことをきっかけにジュンは大輔のクラスメートから恐れられるようになるのである。

そして放課後、パソコン室に集まった子供達。

「ねえ、大輔。あんたらの教室から凄い悪臭が出たって凄い噂になってんだけど?」

「姉貴の暗黒物質」

「OK、理解したわ。ていうか、何でそんな物学校に持って来てんのよ!!?」

「辻妻合わせだ。それじゃあ話すかね。昨日の出来事をさ…あれは昨日の復興作業が終わって、俺とヒカリちゃんが一緒に帰った時だ…」

1年間もの冒険の物語を聞かせた大輔とヒカリは賢のことも含めて話した。

やはりというか、伊織達はあまり良い顔はしなかったが。

「まあ、とにかく。向こうで1年間過ごして今ここにいるってことだ。今の俺達はプラス1歳されてるからよろしく」

「じゃああんたとヒカリちゃんは私と同い年?うわあ、何か変な感じ」

「俺もだよ。お前は俺より年上ってのが当たり前だと思ってたからな。正直不思議なもんだ…」

感慨深げに言う大輔。

1年間もの冒険で大輔は確実に変わったと京は思った。

「あんた変わったわね、大人しくなったって言うか…」

「これでも一応軍団…クロスハートのNo.2だったんだよ。感情で突っ込んでばかりじゃ敵と戦う上じゃ駄目なんだって思い知っただけだよ。でも同時に前みたいに気持ちと勢いだけじゃ自分の気持ちを誤魔化せなくなってきた…かもな。成長ってのも考え物だな」

溜め息を吐きながら言う大輔。

確かにとタケルは思う、成長するのと同時に今まで見えてこなかった物が見えるようになると言うのはタケルにも覚えがある。

「でね、大輔君はキリハさんやタイキさんから色々学んでたし、私達のジェネラルになってもらおうと思ってるの」

「ジェネラルって何ですか?」

「簡単に言えばリーダー。1年間もの間、クロスハートにみんなに指示を出したりしてたから適任だと思う…痛っ!?」

「ヒカリちゃん、あまり俺にそういうの任せないでくれよ…リーダーより突撃隊長の方がまだマシだ…」

ヒカリの額にデコピンを喰らわせ、深い溜め息を吐いた大輔。

「(何か仲良くなってる…もしかして2人は…)」

「とにかく、京。久しぶりのアレ頼む」

「久しぶり?ああ、成る程。それじゃあ!!今回は何時もより気合い入れて行くわよ!!デジタルゲート・オープン!!選ばれし子供達、出動!!」

謎のポーズを取りながら久しぶりの掛け声と共にデジタルワールドに。

「……久しぶりのこっちのデジタルワールドだな。」

「うん、やっぱり落ち着くね」

「向こうのデジタルワールドってそんなに違うんですか?」

「まあな、色々違うから最初は戸惑うことばっかだった…。」

「でも何とかそれを切り抜けてこれたよね、大輔君。指示をお願い!!」

「だから俺は……はあ…もういいや」

「諦めちまったよ」

早々に諦めた大輔をブイモンが呆れたように見上げる。

「やかましい…。京、D-ターミナルで調べてくれ。」

「分かったわ」

D-ターミナルを取り出し、調べ始める京。

大輔は京からD-ターミナルを借りていくつかの地帯を見つめる。

山岳地帯ではゴツモンが木を倒し、岩を整えたりしている。

「タケルはゴツモン達がいる山岳地帯、そして都市は…」

都市地帯もかなり破壊されている。

休憩中なのか映像ではガジモン達にレッドベジーモンがカレーを配給していた。

「俺は都市に行くだぎゃー!!」

「配給のカレーが食いたいとか抜かしたら問答無用で叩きのめすからな」

「…………」

黙り込むアルマジモン。

D-ターミナルに映る配給のカレーに目が釘付けである。

「図星か、罰としてアルマジモンはこの中で一番厳しい湖地帯作業だ!!」

「ええー!?」

「何か文句あるのか?」

「ないだぎゃ」

「よろしい」

ダークナイトモンすら震え上がらせた鬼の気迫でアルマジモンを黙らせた大輔。

「鬼だぎゃ…悪魔だぎゃ…」

「え?お前1人で全部の地帯を受け持ってくれるのか?それはいい心掛けだ、デジタルワールドのみんなも喜んでくれるぜ」

「わー!!湖地帯の作業頑張るだぎゃー!!」

「田園地帯か…こういうのは俺がした方が…」

「待って、私も行きたい」

「…ん。じゃあ、ヒカリちゃんに頼んでいいか?」

「ありがとう」

「俺は都市だ。ブイモンのパワーを活かせそうだしな。京は悪いけど海岸地帯を頼む。」

「分かったわ、普通の人選ねえ」

「カレー~…」

しかしアルマジモンは諦められないのか、名残惜しそうに都市の方向を見つめている。

「諦めて下さいアルマジモン。あれはみんなのご飯ですよ」

「仕方ないな。俺のおやつを分けてやるよ」

「?」

ブイモンが差し出したのは6枚のバタークッキーで、それを見たテイルモンは思わず目を見開いたのである。

「そ、それはまさか伝説のズノークッキー!?」

「ズノークッキー…とは何ですかテイルモン?」

目を見開くテイルモンにホークモンが尋ねる。

「ズノー(頭脳)クッキーって言うのはDHA、その他諸々の脳の働きを助ける物質を多く含んでいるクッキー。つまり食べれば頭がすっきりして頭がよくなるクッキーよ」

「何か不味そう。でも頭がすっきりするのは魅力よね」

「俺とヒカリちゃんも食ったけど普通のバタークッキーだったぞ味は」

「お前らも食うか?丁度よく全員分ある」

「え?いいの?じゃあ頂きます。」

ブイモンが更に小袋からクッキーを取り出して全員に配る。

全員がズノークッキーを口に運んだ。

「………あ、本当に味は普通のクッキーだわ」

「でも不思議と頭がすっきりするような…」

「今なら何でも分かる気がします…」

初めて食べる京達だが、味も普通のバタークッキーのために好評であった。

「んぐっ!?」

「アルマジモン!?」

急に倒れたアルマジモンに駆け寄る伊織。

「何だ!?まさか喉に詰まらせたのか!?」

「ええええ!?水!!水!!」

慌てる大輔に、どこかに水がないかと辺りを見回す京だったが、アルマジモンはゆっくり立ち上がる。

アルマジモン「何も問題はありません。僕の体には何の異常もありませんよ。皆さん、ご心配をお掛けしました」

「そ、そうですか…それは良かった…………え…?」

【!!!!?】

言葉遣いが急激に変わったアルマジモンに全員が驚愕で目を見開いた。

「あ、あんたどうしたわけ?」

テイルモンが冷や汗を流しながらも尋ねるが、変わり果てたアルマジモンは疑問符を浮かべるだけ。

アルマジモン「何か僕に問題でもありましたか?僕自身は何も感じませんが、僕が気付いていない異変がある可能性も否定は出来ませんね。異常があれば教えて頂きたいのですが…」

「いや…異変っていうか…異常っていうか…あまりにも…」

アルマジモン「どうやら問題はないようですねテイルモン。さあ、伊織。時間は有限です。早くデジタルワールドの復興のために湖地帯を目指しましょう」

「あ、待って下さいアルマジモン!!」

アルマジモンは伊織と共に華麗に去った。

【………………】

「………コホン、どうやらズノークッキーの力でアルマジモンの頭がすっきりしたようだな」

「すっきりどころか人格にまで影響が出てたよ!!」

「あんなのアルマジモンじゃなーい!!」

ブイモンが咳払いしながら言ったが、あまりの変わりようにタケルと京が叫んだ。

「て言うかズノークッキーを数枚食っただけであの変わりよう…どんだけ脳みそ使ってなかったんだあいつは…」
大輔が去っていくアルマジモンを見つめながら呟く。

こうして様々な衝撃を残しつつ、一同はそれぞれの場所に。

都市に来た大輔は即座にブイモンをエクスブイモンに進化させて、巨大な瓦礫を撤去しながら大輔はカレー作りを手伝うことに。

エクスブイモンが参加したことで瓦礫の撤去作業はかなり進み、休憩の時間となって飲み物を受け取った。

「悪いけど後、8本くれないか?他のとこで作業してる奴らがいるんだ。」

飲み物を受け取り、他の地帯で作業している仲間に持って行く。

「えっと…まずはヒカリちゃん…ん?反応がもう1つ…タケル?おい!!」

「エクスブイモンと大輔君…あ、エクスブイモンはブイモンが進化したのよ」

「あ、そうなの?どうしたの大輔君?」

「こっちは一段落したから飲み物の差し入れだ。何で山岳地帯に行かせたお前らが此処にいるんだ?まさかサボリか?」

ギロリと睨む大輔にタケルは慌てて首を横に振る。

「違うよ!!僕達はただどうしてデジタルワールドに来られるのかなって話を…」

「まだ全ての敵を倒せていないからだろ?」

「え?」

「向こうのマグナモンが言ったんだ。現実世界とデジタルワールドが繋がるのは大抵デジタルワールドが危機に瀕して時空が不安定になった時のみだって、現実世界とデジタルワールドがまだ繋がってるってことはまだまだデジタルワールドを危機に瀕する存在がいるってことだろ(賢が言っていた女も原因の1つだろうな)…」

「大輔君、そんな冷静な考え方が出来…アギッ!?」

失礼なことをほざこうとしたタケルの尻に大輔の渾身の回し蹴りが炸裂した。

「ふざけんなタケル。蹴るぞ」

「~っ!!~っ!!」

元々サッカーをしていた上に1年間もの冒険の間で鍛え上げられた足の威力は半端ではなく、タケルを悶絶させるだけの威力があった。

「大輔君…」

「ああ…いつか、京と伊織も覚悟を決めなきゃいけない時が来る…デジモンを倒すって覚悟をな。運良く今回は3年前や向こうの冒険より恵まれてる。京達は復興作業、戦いは俺達に任せてもらうって手もあるな。」

「でもそれ、何の解決にも…」

「いいんだよ、戦いたい奴だけ戦えば。あいつら優しすぎるから」

「そ…そうだね、僕…僕も同意見だ、よ…。」

「全然決まってねえぞタケル」

尻を押さえながらブルブル震えながら言うタケル。

大輔の言う通り全然決まってない。

「今だけはゆっくりと過ごしたいもんだな」

デジタルワールド特有の空を見上げながら呟く大輔。

「そうだね」

大輔と共に空を見上げるヒカリ。

後に伊織とアルマジモンがトータモンの恥ずかしい場面を見てしまい、激怒させて追い掛けられる羽目になるのだ。

しかし偶然大輔達の元に来て、トータモンの口に例のオムライスを放り込み、あまりの不味さに気絶させて難を逃れた。

今日の復興作業を終え、家でゆっくりしていた大輔だが…。

「ねえ、大輔。あんたのクラスメート達に私、化け物を見るような目で見られてんだけど何で?」

「さあ?日頃の行いが悪いからじゃねえの?」

因みに封印具をエクスブイモンに消し飛ばしてもらった。

暗黒物質もトータモンが処理して(食わせたとも言う)くれたし、最近のデジモンは優しい。 

 

第37話:これからの戦い

デジタルワールドに来ては復興作業の繰り返し。

大輔はこのまま何事も起こらなければいいと思うのだが、そういうわけにはいかない。

「勇気のデジメンタル、友情のデジメンタル。マテリアルクロス、デジメンタルアップ」

「ブイモンアーマー進化、地上最大の希望!サジタリモン!!」

【わあああああ!!】

サジタリモンへの進化を見た園児達がはしゃぐ。

「よし、アーマー進化やマテリアルクロスは普通に出来るな。」

最初エクスブイモンに進化させようとした時、何故か出来なかったため、アーマー進化やマテリアルクロスならどうだと思ってやってみたらアーマー進化は可能のようだ。

「これがデジクロスなんですか?」

伊織の問いに大輔は頷く。

「デジクロスの一部な、今のは勇気のデジメンタルと友情のデジメンタルを融合させて作った希望のデジメンタルで進化させたサジタリモンだ。これならブイモンでも完全体の力を出せる。」

「完全体…」

完全体相当のパワーと聞いてパタモンが呟く。

「テイルモンもコピーとは言えホーリーリングを着けてんだし、今ならネフェルティモンも完全体相当の力になってんじゃないか?」

コピーとは言えホーリーリングを身に着けて戦闘能力自体は取り戻した。

完全に成熟期に相応しい戦闘力を持った状態で進化するわけだからそれに相応しいパワーアップをするのではと大輔が尋ねる。

「うーん、そこはまだ分かんないわ。確かにパワーは大分上がってると思うけど進化してすぐにデジクロスしちゃうからネフェルティモン自体の戦闘力は分かんないわよ」

「ああ、確かに。何時も進化した後にデジクロスして戦ってたしな。ワームモンともな」

「私と大輔君と賢君で沢山の敵と力を合わせて戦ったよね、パイルドラモンHMとかインペリアルドラモンHDMにデジクロスさせて進化させたり」

大輔とヒカリが賢との思い出を語る度に京達、特に伊織が不機嫌になっていく。

自分達は全く知らない冒険、培われた力、そして絆。

それがあのデジモンカイザーの賢が共有したのが気に入らないのか。

「取り敢えず、マテリアルクロスが出来るならアーマー体同士のデジクロスなら出来るはずだ。ヒカリちゃん、やってみるか?」

「うん、いいよ…でも…」

「普通の進化が出来ないのは…引っ掛かる…少し周りを見てみるか。」

大輔とヒカリがD-3Xを構えた。

「「サジタリモン!ネフェルティモン!ダブルクロス!!」」

「サジタリモンSM!!」

「じゃあ、俺とヒカリちゃんは周りを見てくる」

「何も無かったらすぐに戻るから!!」

「じゃあ、サジタリモン。頼んだぜ!!!」

「「了解!!」」

サジタリモンSMのパートナーである大輔とヒカリは背に跨がると周辺の見回りに行く。

「何か一気に仲良くなったわねあの2人」

「数々の苦難を共に乗り越えたことにより生まれた絆…でしょうか?」

「うーん、何か凄い疎外感を感じるなあ。最初の頃の京さん達もこんな感じだった?」

「そうねー、何か置いてきぼりにされてるみたいでちょっとね」

「…あいつと一緒に築き上げてきた力……」

アルマジモン「伊織…元気を出して下さい。今はデジタルワールドの復興作業に尽力を尽くしましょう。」

「ねえ、ズノークッキーの爽快感がまだ抜けてないのアルマジモン?」

アルマジモン「?何を言っているのですかパタモン?僕は何時でもこんな感じですよ……だぎゃ」

【あ、戻りかけてる】

パタモンの問いに答えるアルマジモン。

最後に何時ものがついたためにアルマジモンが元に戻りかけてることに気付いた。

そして上空で周辺を見回っていた大輔達。

「大輔君、進化出来なかったのはやっぱり…」

「ああ、多分。ダークタワーの機能が復活したからだ。そろそろ敵も本腰入れてきてんのかもな…」

「…やっぱり賢君を受け入れてくれそうな雰囲気じゃないね…」

「仕方ねえって、1年間一緒にいた俺達とは違うんだよヒカリちゃん。時間が必要なんだ…こういうのは」

「…うん…」

「ヒカリちゃんだってあの1年間があったから賢を受け入れられたんだろ?大丈夫、いずれ受け入れてくれるって、あいつらは頑固だけど良い奴らだから」

「ふふ、大輔君がそう言うと本当にそう思えてくるから不思議」

「どうも…あれ…?ダークタワーが…消えてる……?」

いつの間にかダークタワーが消えていた。そして街から発生した轟音。

「今の…街から!?」

「消えたダークタワー…そして街から聞こえた轟音…まさか!!頼んだぜサジタリモン!!!」

「任せろ!!」

街に向かって最大速度で向かうサジタリモンSM。

パワーはパイルドラモンに劣るが、スピードは上回るため、すぐに到着出来た。

「「伊織(君)!!!」」

吹き飛ばされていた伊織を大輔が受け止め、伊織に攻撃を仕掛けたデジモンを見遣る。

「サンダーボールモン…向こうで戦ったことがある。小さい癖に攻撃力があるのが厄介なデジモンだ。」

「サジタリモン、お願い!!」

「任せろ、奴を叩き落とす!!」

一気にサンダーボールモンとの距離を詰め、ネフェルティモンの前足で地面に勢いよく叩き付けた。

「大輔、あいつは…」

「やっぱりそうか…サジタリモン、早くあいつにとどめを!!」

「ホーリージャッジメント…」

「止めて下さい!!」

「うおっ!?」

伊織が止めようとしたことで照準がぶれ、サジタリモンSMの強力な聖なる光を纏った矢はサンダーボールモンから大きく外れてしまう。

「何すんだ伊織!?」

「それはこっちの台詞です、大輔さん…とどめを刺そうとしたでしょう!?」

「当たり前だろ!?やらなきゃこっちがやられるんだからな!!」

「だからって殺さなくても良いでしょう!?追い払えば…」

「あいつのことに関しては後で説明してやるから、今は大人しくして…げっ!?」

物音が聞こえて振り返ると体中に罅が入ったサンダーボールモンが迫っていた。

「まずい…!!」

伊織達に気を取られていたSMはサンダーボールモンの接近に反応が遅れてしまった。

防御の体勢を取ったが、真横から現れた緑色の影がサンダーボールモンを弾いた。

緑色の影の正体、それはスティングモンと賢。

「今だ!大輔!!ヒカリさん!!」

「サンキュー、賢!!あの時を思い出すなあ!!」

あの時、向こうのデジタルワールドでの初めての戦いの時も賢とスティングモンに助けられた。

「粉微塵にしてやるわ!!」

「メテオネイルクラッシャー!!」

ネフェルティモンとサジタリモンの声が響き渡り、ネフェルティモンの爪はサンダーボールモンを粉砕した。

それを見た伊織の表情は青ざめた。

「よし、片付いたな」

「うん」

笑みを浮かべる大輔とヒカリに伊織は恐怖を抱く。

SMはサジタリモンとネフェルティモンに分離し、地上に降りた。

賢とスティングモンも同様に地上に降りる。

「あんた達、何てことしたの!!?」

青ざめた表情で大輔達に詰め寄る京。

「あ~、京。落ち着いて聞いてくれ。実はなあ」

「聞きたくありません!!」

「え?」

伊織の叫びに大輔とヒカリが振り返る。

体を震わせ、怒りに満ちた表情で大輔達を見つめる伊織の姿があった。

「僕は止めたのに…それなのに。サンダーボールモンを殺して、平然と笑っていられる大輔さん達が信じられません!!」

「伊織君…」

ヒカリが目を見開きながら伊織を見つめる。

伊織は大輔達に背を向けて走り去った。

「ちょ、ちょっと伊織!?」

慌てて伊織を追い掛ける京。

タケルは表情を引き締めて大輔達に向き直る。

「大輔君、ヒカリちゃん…後、一乗寺君も…話してくれるよね?」

「ああ…実はな…」

大輔は地面に落ちた欠片を拾うと、その欠片をタケルに見せた。

「これはサンダーボールモンの偽物の体の欠片だ。」

「体の…欠片!?デジモンは死ねば完全に消滅するはずだよ!?それにこれは…」

少しの間を置いて欠片も消滅する。

「普通のデジモンならそうなります。でもダークタワーから作られたデジモンは少し違うんです。」

タケルは全ての事情を聞くことになる。

ダークタワーデジモンとダークタワーデジモンを作り出せる女のことを。 
 

 
後書き
伊織君大激怒しました。説明していなかったこともありますが、デジモンを倒して平然としているのが許せなかったんです。
因みにダークタワーデジモンは破壊された場合、少し大きめの欠片は少しの間存在出来る設定です。  

 

第38話:明かされる正体

タケルはダークタワーデジモンのこと、そしてダークタワーデジモンを作り出せる謎の女のことを知る。

そして先程消えてしまったとは言え、サンダーボールモンを形作っていたダークタワーの欠片を見たため疑いようもない。

「成る程、だからダークタワーが何時の間にか消えていたのか…だったら早く…って、無理か…僕達はそれを教えられても信じることが出来なかっただろうし…」

実際、サンダーボールモンを形作っていた欠片と言う証拠が無ければいくら大輔とヒカリが言ったところで信じられなかったろう。

「京と伊織のことを頼めねえか?あんなんじゃ、俺達の話聞いてくれそうにねえもん」

「…いいの?このままじゃ大輔君とヒカリちゃん。悪者扱いだよ?」

「仕方ねえよ。伊織と京にそう思われんのは正直キツいけどさ…無理に理解させようとしても……頑固な奴は難しいんだ……お前もそうだろ?頑固者?」

「い、言い返せないな…」

苦笑するタケルだが、賢を見遣って表情を引き締めた。

「君のことは全て…かは分からないけど大輔君達から聞いた…僕はまだ君を許せないけど…1年間大輔君達を支え続けてくれたことや、さっき助けてくれたことには礼を言うよ。ありがとう」

「いえ…僕の罪はこんなことで贖えるとは思ってません。これからも自分の罪と向き合って償っていくつもりです。じゃあ、僕はこれで…」

「ああ、またな賢…。」

賢は大輔達に背を向けて去っていく。

「何か変わったね、一乗寺君」

「あれが本当のあいつなんだよ。今までは何か黒い何かに捕らわれていただけさ」

「黒い?」

「よく分からねえけど、デジクロスを繰り返す度にあいつのことが分かるようになっていくんだ。カイザーだった頃の賢は黒くて冷たい何かに捕らわれていたんだ…」

「その正体は分かるの?」

「分からねえ…賢の記憶はどういうわけかバラバラって感じなんだ。何つーか、記憶の所々が途切れてるみたいな」

「記憶障害の可能性があるってこと?」

「そうじゃねえと思う…ただ、賢は大事な物を…家族を失って悲しんでたのを誰かにつけ込まれちまったんだ。誰だか知らねえが許せねえ……」

自分達のデジクロスは特別なのか、心が混ざり合って、自分と他人との境界線が分からなくなる。

賢が兄を失って深く悲しんだこと、そしてその悲しみをつけ込まれたこと……。

「家族を…か…」

「タケル?どうしたの?」

遠い目をしたタケルが心配になったのかパタモンがタケルを見上げながら尋ねる。

「あ、いや…それを聞いたらちょっと他人事とは思えなくて…大事な物を失う気持ちは痛いほど分かるからさ…いて当たり前だと思っていた家族を失う気持ち…僕も分かるよ」

自分の家族は離婚して離れ離れになり、多分二度と1つになりはしないだろう。

そして大事な物を失うのはあの忌々しいデビモンの件で痛いほど分かる。

「そっか、多分俺よりお前の方が賢のこと分かってやれるんじゃないか?俺は…大事な物を失ったことがないから…あいつの本当の悲しみに気付いてやれてないんじゃないかって思うし」

「そうかな?大輔君みたいに何も言わないで傍にいて励まして引っ張ってくれる存在って結構嬉しいもんなんだよ?」

「だといいけどな。じゃあ、タケル…悪いけど…京と伊織のこと…頼むわ。ほとぼりが冷めたら説明するから」
「分かった。京さんと伊織君のことは僕に任せて、君達は君達で頑張って」

「おう、あんがとな」

「ごめんね、タケル君。私達がちゃんと説明しなかったからこんなことになっちゃって」

「いいよそんなの。それじゃあまた明日学校で」

大輔達もゲートを潜って帰ると、パソコン室には京と伊織はいなかった。

「帰るか、送るよヒカリちゃん」

「ありがとう。それじゃあ、また明日ね」

「うん…また明日…頑張って」

今の自分に出来ることはほとぼりが冷めるまで京と伊織を守ることだとタケルは空を見上げながらパタモンと共に帰路についた。

そして翌日、偶々京と伊織と出会した大輔達だが、京は気まずそうに伊織は大輔達を睨みながら去っていった。

「うーん、伊織と京には刺激が強すぎたかもな」

「笑い事じゃないよ大輔君、僕にこんな滅茶苦茶重い雰囲気の場所に放り込むつもり?」

「頑張れタケル。苦労人キングのヤマトさんの弟のお前なら出来る」

「酷いよ大輔君!!僕と一緒に無限大な夢に向かって飛び立とうって誓いは嘘だったのかい!!?」

「あれ?俺お前にそんな誓いしたっけ?」

「タケル君、意味分かんないこと言わないで」

微妙な表情を浮かべる大輔とヒカリ。

「はああ…いいな、ヒカリちゃん。僕も大輔君の愛情が欲しいよ…!!」

悲痛な表情で言うタケル。

「「「「っ…!?」」」」

ド・ン・引・き…!!!!!

タケルの爆弾発言に大輔とヒカリは顔が真っ青になった。

「冗談だよ♪」

笑顔で言い放つタケル。

「悲しげな表情で言うなよ…!!」

「僕も本気で驚いたよタケル」

ブイモンとパタモンがドン引きしながら言う。

「あはは♪まあ、京さんと伊織君のことは任せて君達は一乗寺君と一緒に行きなよ…今じゃ、僕達より彼と一緒の方が動きやすいんじゃない?大輔君もヒカリちゃんもさ」

「…本当に悪いな。今度家に泊まりに来ねえか?ご馳走すんぜ?」

「え?いいの?」

「だ、大輔君!!駄目よ!?タケル君は大輔君の愛情を狙ってるのよ!!?」

タケルを威嚇しながら言うヒカリ。

「冗談だってば…」

まさか冗談をここまで真に受けるとは思わず、タケルは引き攣り笑いを浮かべた。

まあ、自業自得だが。

「にしても、前は大輔君がヒカリちゃんに執着してたけど、今はヒカリちゃんが大輔君に執着してるって言うのは面白いね。残念だなあ、僕も一緒に冒険出来たら色々分かったのに」

「…っ、タケル君の意地悪…」

「僕だけ除け者にした仕返しだと思ってくれればいいよ」

「仕方ねえだろ、俺達だっていきなり向こうに飛ばされたんだからよ。誘いたくても無理に決まってるだろうがよ」

「分かってる。それじゃあまた明日ね」

「おう」

「…うん」

大輔とヒカリはタケルに別れを告げ、一度自宅に戻って田町に向かうことにした。

タケルはパソコン室に向かうと、重苦しい雰囲気がパソコン室を満たしていた。

「(うん、重苦しい。大輔君とヒカリちゃんには後で僕とパタモンにハンバーガーとか奢ってもらわないとね。)」

「(ねえ、タケル。滅茶苦茶重苦しい雰囲気だね)」

「(そうだね)さあ、京さんと伊織君もデジタルワールドに行こうか!!」

タケルが重苦しい雰囲気を振り払うように明るい声を出したのであった。

そして田町では、賢がワームモンを入れた鞄を持って帰路についていた。

「よっ!」

「賢君!!」

大輔とヒカリが此方に歩み寄り、賢も笑顔を浮かべて2人に向けて歩み寄った。

そして一乗寺家に到着し、母親に友達として紹介する。

「母さん、紹介するよ。僕の友達の本宮大輔君に八神ヒカリさん」

「「初めまして」」

会釈をしながら挨拶すると、賢の母は嬉しそうに笑みを浮かべた。

「まあ!!賢ちゃんがお友達を連れてくるなんて…!!」

「へへ、賢には世話になってます!!」

「賢君にはいつも助けてもらっています。」

大輔もヒカリも笑みを浮かべてそう言うと賢も照れながら笑った。

「みんな、お腹空いてないかい?良かったら一緒におやつを食べようよ。母さん、悪いんだけど…」

「ええ、今用意するから少し待ってて頂戴ね」

嬉しそうにキッチンに向かって行く。

「いいお母さんだね」

「うん…悲しませてばかりだったから、今はどんな些細なことでも喜ばせてあげたいんだ。昔の僕には勇気が無かったから…父さんや母さんに真正面から話し合っていればきっと治兄さんも…」

「過去は変えられねえけど、未来をどうにかすることくらいは出来るって」

「そうよ賢君」

「…ありがとう、行こうか」

賢は大輔とヒカリを自室に案内し、母親が用意してくれたフルーツパウンドを味わう。

「美味しい!!」

優しい味にヒカリは笑みを浮かべる。

「美味いな、これ」

ブイモン達もフルーツパウンドを美味しそうに食べており、最後の一切れをブイモンが食べようとした時である。

D-ターミナルにタケルからメールが来ていた。

“ゴーレモンが水の街のダムを破壊しようとしてる。早くデジタルワールドに来て欲しい。”

「水の街のダムをゴーレモンが怖そうとしてるらしい。行こうぜ」

「ああ!!」

「じゃあ、ヒカリちゃんが代わりに何時もの頼む」

「分かったわ、デジタルゲート・オープン!選ばれし子供達、出動!!」

「…何それ?」

「京…眼鏡の奴が決めた掛け声だよ。あれがないと締まらなくなったって言うか…」

「へえ…」

ヒカリの掛け声に賢は不思議そうに大輔に尋ねると、大輔も苦笑しながら説明したのであった。

一方、ミミのSOSを聞いて水の街のダムに来ていたタケル達。

イービルリングやイービルスパイラルがないため、シュリモンやディグモンの動きが鈍い。

唯一まともに動けているペガスモンもゴーレモンのパワーに圧倒されてしまっている。

「駄目だ、やっぱり僕達だけじゃ止めることさえ出来ない!!さっき大輔君達にメールを送っておいて正解だった…。」

「タケルさん!?あの人達に連絡したんですか!?」

「そうだよ?いけない?」

「だってあの人達はサンダーボールモンを殺したんですよ!?」

「あれには理由があったからだよ…」

「理由があったら、デジモンを殺していいとでも言うのですか!?」

「伊織君…今は君の意地よりも街を守ることを優先すべきじゃないかな?君の意地と…街と街に暮らすデジモンの命…どっちが大切なんだい?」

「っ…」

伊織が俯いて唇を噛み締めた時であった。

「メテオギャロップ!!」

聞き覚えのある声が響き渡り、前を見るとサジタリモンがゴーレモンを蹴り飛ばし。

「ロゼッタストーン!!」

「スパイクバスター!!」

巨大な石版と拳から繰り出された衝撃波がゴーレモンを大きく吹き飛ばす。

「待たせたな」

「遅いよ君達!!」

「助けに来てくれた…」

「丁度良い機会だ。ここでゴーレモンのガワを剥いでやるぜ!!」

「うん!!」

「「サジタリモン!!ネフェルティモン!!ダブルクロス!!」」

「サジタリモンSM!!!」

サジタリモンとネフェルティモンがデジクロスし、ゴーレモンに一気に肉薄する。

「メテオネイルクラッシャー!!」

ネフェルティモンの爪がゴーレモンのガワを吹き飛ばした。ガワが吹き飛んだことで、内部のダークタワーが露出した。

「な、何あれ!?」

「あれはダークタワーだよ。あのゴーレモンはダークタワーが変化した物だったんだ」

「知っていたの!?」

「…はい、京さん達が帰っちゃった後に大輔君達から聞きました。伊織君…分かっただろ?君にも。大輔君達は無闇に命を奪うような人達じゃないことを。僕も一乗寺君と少し話して…少なくてももう、デジモンカイザーじゃないんだって分かりました…見ているだけじゃ気付かない物ってあるんですね…」

「……………」

「謝らなきゃ…私、大輔とヒカリちゃんや…一乗寺君に…!!」

黙り込む伊織、そして今まで大輔達を疑っていたことを恥じた京。

その京の想いにD-3が応えるかのようにホークモンに力を与えた。

「ホークモン進化、アクィラモン!!」

ホークモンは鷹のような巨大な鳥へと姿を変えた。頭部に強靭な角が生えている。

「アクィラモン、あいつの正体はダークタワーよ!デジモンじゃないの!!」

「そうだったのか!そうと分かれば、遠慮はしないぞ!!」

「京!!」

「大輔!!ヒカリちゃん!!…賢君も…ごめんなさい!!話も聞かないで疑ったりして、ごめん!!」

大輔達に向かって叫ぶ京のその言葉に大輔達は笑みを浮かべる。

「京さん…!!」

「私達、仲間よね!!一緒に…戦う仲間!!」

「当たり前だろ!!さあ、小さな喧嘩はお終いだ!!京、とどめはくれてやるぜ!!」

「メテオネイルクラッシャー!!」

強烈な一撃がダークタワーの塊に炸裂してアクィラモンの元に吹き飛ぶ。

「アクィラモン!!今だ!!」

「グライドホーン!!」

アクィラモンの角が鋭く伸び、そのまま勢い良くダークタワーの塊に突っ込んで行く。

ダークタワーの塊はアクィラモンの一撃で粉砕された。

そして全員のデジモンが退化し、一カ所に集まる。

「本っ当に、ごめん!!」

頭を下げて謝罪してきた京に大輔は戸惑う。

幼なじみがこんな風に謝罪した時などあっただろうか?

「いや、別にいいって。ちゃんと説明しなかった俺達も悪いしよ」

「そうですよ京さん。頭を上げて下さい。」

大輔とヒカリが言うと、京は頭を上げて賢に歩み寄る。

「賢君…助けてくれてありがとう…疑ってごめんね。今度は私が助けてあげるから!!」

「え?あ、ありがとうございます」

「テンパって逆に助けられるんじゃねえぞ」

「何ですって!?」

「2人共、落ち着いて下さい。井ノ上さん、あなたの気持ち。受け取りました。ありがとうございます」

穏やかな笑みを浮かべる賢に京は思わず赤面した。

「っ…(う…わあ…賢君って、こんな綺麗に微笑うんだ…)」

デジモンカイザー時代の雑誌などで見た作り笑いとは全然違う。賢の素の笑顔に京は見惚れてしまった。

「(なあ、タケル、ヒカリちゃん…これって…)」

「(うん…可能性はあるね…)」

「(可能性どころかビンゴじゃないかしら?)」

チラリと見ると、笑顔を浮かべながら疑問符を浮かべている賢と赤面しながら賢を見つめる京の姿があった。

「「「(…応援してあげよう)」」」

幼い故か疑問符を浮かべまくっている伊織に苦笑しながら京の恋を応援することにした。

子供達はミミや賢、それぞれ帰路につくのであった。 

 

第39話:新たなデジクロス

ダークタワーをデジモンに変える女の存在を知り、賢が加わることで6人メンバーとなったので3人1組になって、ダークタワーを破壊する班と復興作業をする班に分かれてやっている。

復興作業は先代メンバーが暇になれば手伝ってくれる。

並行世界冒険組はただいまダークタワー破壊の真っ最中で賢は破壊する予定のダークタワーの1本に触れた。

「以前の僕なら…デジモンカイザーだった頃なら、このダークタワーについて何か分かったかもしれない…けど……今の僕には…これがどういった仕組みになっているのか……全く分からない…」

「戻りたいのか?デジモンカイザーに?」

「いや、そう言う訳じゃないよ大輔。あの時の僕は、自分でも分からない程頭がスッキリしていて……何でも分かる気がしたんだ……でも、一番大切な事が分かっていなかった……」

「……賢君…」

「ごめん、早くダークタワーを破壊してしまおう。」

話を打ち切って、ダークタワー破壊に専念する。

「ところで賢君、大輔君」

「「?」」

「デジクロス…もう少し増やしてみない?」

「ヒカリちゃん?増やすってどういう意味だ?」

「ほら、今までエクスブイモンをベースにしてデジクロスしてたけど、スティングモンをベースにしたらどうなるのかなってずっと思ってて…」

「ふむ…確かに今まで考えたことなかったね…スティングモンベースのデジクロス体…」

「パイルドラモンになるだけじゃないのか?」

「分からないよ?もしかしたら全く別のデジモンになる可能性だってある」

「もしかしたらホークモン達ともデジクロス出来るかもしれないじゃない?」

「じゃあ、京達呼んで、色々試してみるか?」

「うーん…まずはスティングモンとエクスブイモンで試してみようよ!!」

ヒカリの提案に頷き、スティングモンとエクスブイモンをデジクロスさせるためにD-3Xを構えた。

「「スティングモン!!エクスブイモン!!ダブルクロス!!」」

スティングモンをベースにしたデジクロスを試してみることにした大輔達であった。

「ディノビーモン!!」

スティングモンがベースとなったことで昆虫の性質が色濃く出たディノビーモンへと姿を変えた。

「ディノビーモン!どうだ、パイルドラモンの時と比べて?」

「そうだね…パイルドラモンよりもスピードに特化した形態のようだ。」

スティングモンベースであるためか、主な人格はスティングのようだ。

ディノビーモンは近くのダークタワーを見つめ、残像が残る程のスピードで接近し、エクスブイモンの爪で破壊した。

「おお、速え速え」

ディノビーモンのかなりのスピードに感心する大輔。

「パワーのパイルドラモンにスピードのディノビーモン。戦略が広がるね…」

以前、究極体への進化を試してみたのだが、インペリアルドラモンのDMとHDMへの進化は不能だった。

色々考えたが、向こうとこちらとの一番の違いであるダークタワーが原因かもしれないと賢が言っていたので取り敢えずダークタワーを全て壊したら試してみようということに。

「うん、京さんにも頼んでみようかな?」

「そうだね、同性の方が頼みやすいし、やりやすいかもしれない」

「んじゃあ、余り者ってことでタケルと伊織のパートナーでデジクロスやってみるか?」

ヒカリと京のパートナーのデジクロスはヒカリが出来るとしてタケルと伊織はどちらもノーマルD-3なので、デジクロスは大輔か賢、ヒカリが手伝わなければならないだろう。

「ディノビーモン、あっちの塔もぶっ壊すぞ」

「分かった。」

新たなデジクロス体を得た大輔達はダークタワーの破壊の勢いが増していくのである。

それなりの数を破壊して、今日はこれくらいにしようと帰りの準備をしようとした時である。

ヒカリのD-ターミナルにメールが入った。

D-ターミナルを開き、メールの内容を確認するヒカリ。

「…大変!!近くに異変が起きて、暗黒のパワーが増大しているんだって…」

「マジか?」

「タケル君達も既に向かってるみたい。急ぎましょう!!」

「「分かった」」

ディノビーモンに乗り、暗黒のパワーの増大地点に向かうのであった。

到着したのは、かつて活動をしていたデジモンカイザーの要塞が墜落した場所。

そこで暴れていたのはオオクワモンで必死にエンジェモン達が応戦していたが、やられるのは時間の問題だろう。

しかしパイルドラモン以上のスピードを持つディノビーモンはエンジェモンが吹き飛ばされる直前にオオクワモンを弾き飛ばした。

「お待たせ」

「遅いじゃない馬鹿ー!!」

サラリと言う大輔に叫ぶ京。

「すみません、ちょっと距離があったものですから…」

「いやいや、別にいいわよ気にしなくて」

「「京さーん、態度変わりすぎ」」

ヒカリとタケルが大輔と賢への態度の変わりようにツッコむ。

「ふざけてる場合ではないでしょう!!どうするんですか!?このままではあの要塞が爆発します!!」

伊織はふざけているような雰囲気に怒声を上げる。

「簡単だ。あの要塞を粉々に吹っ飛ばす!!」

「そんなこと出来るんですか?」

「出来るさ、このパイルドラモンならな!!」

D-3Xが光り輝き、ベースがスティングモンからエクスブイモンに変わるとパイルドラモンに切り替わる。

そして大輔はヒカリと賢を見遣る。

「ヒカリちゃん、賢!!エンジェモン達のデジクロスを!!パワーがありそうなアクィラモンとアンキロモンをベースにしてみよう!!」

「分かった、京さん。やりますよ」

「え?やるって何を?」

「アクィラモン!!テイルモン!!デジクロス!!」

アクィラモンをベースにし、テイルモンとデジクロスさせるとアクィラモンの飛行能力とテイルモンの格闘能力と俊敏性を合わせたようなデジモンが誕生した。

「シルフィーモン!!」

「う、嘘ー!?アクィラモンとテイルモンが合体したー!?」

「アンキロモン、エンジェモン…デジクロス!!」

賢がアンキロモンとエンジェモンをデジクロスさせると、アンキロモンのパワーと装甲、エンジェモンの聖なる力を宿した土偶のようなデジモンが誕生した。

「シャッコウモン!!」

「アンキロモンとエンジェモンが合体した!!」

「よし、デジクロスはしっかりと出来るようだ。後は任せたよ高石君、伊織君。」

デジクロスはさせたが、デジクロス元のデジモンはタケル達のパートナーのために後はそれぞれに任せる。

「全員、パイルドラモンに乗り込んでくれ。パイルドラモンを先頭に一気に要塞を突入して破壊する!!遅れたら姉貴の暗黒物質食わすからな!!」

「みんな!!迅速な行動を心掛けるように!!」

【了解!!】

それを聞いたタケルの言葉に全員が頷いた。

「それじゃあ、行くぜーっ!!」

「はい!!」

「ま、待って欲しいだぎゃー!!」

パイルドラモンを先頭にシルフィーモンとシャッコウモンが追従する。

しかしシルフィーモンはともかくシャッコウモンはそんなにスピードがあるわけではないので距離を離されていく。

仕方がないのでパイルドラモンがワイヤーを伸ばして強引に引っ張っていく。

「痛っ!!痛だだだだっ!!痛いだぎゃあ!!ぶっ!?口の中に砂が…っ!!」

「大輔さん、シャッコウモンが…シャッコウモンが引き摺られています!!」

伊織の言う通り、シャッコウモンが地面に引き摺られていた。

「今は時間がないから、少しくらいの痛みは我慢してもらう。」

「す、少しどころじゃないがやあ!!」

見る見るうちにシャッコウモンの白銀のボディが砂まみれになっていく。

「…はっ、オオクワモン、子供らをやっておしまい!!」

合体したデジモン達に呆気を取られていた例の女はオオクワモンに指示を飛ばし、要塞に向かっているパイルドラモンに突撃させたが…。

「邪魔だ!エスグリーマ!!」

スパイクを出し、オオクワモンを薙ぎ払う。

「シルフィーモン!!シャッコウモン!!今だ!!」

「トップガン!!」

「ア、アラミタマ!!」

賢が叫ぶとシルフィーモンの放ったエネルギー弾、そして何とか起き上がったシャッコウモンの光線がオオクワモンに炸裂してオオクワモンを容易くデータ粒子にした。

「うおおおおお!!」

パイルドラモンが要塞の壁を破壊して一気に動力炉があった場所に辿り着いた。

「到着だな」

「ひ、酷い目に遭っただぎゃ…」

「どうした?デジクロスして大して戦いもしていないのにそんなボロボロになって?」

「誰のせいだぎゃあ…!!」

疑問符を浮かべているパイルドラモンに、今なら怒ってもいいんじゃないかとシャッコウモンは思った。

「今はそんなことはどうでもいいだろ」

「どうでもいいって…」

大輔にサラリとどうでもいいと言われたシャッコウモンはショックだった。

「この要塞を粉々にぶっ壊すんだ。デジクロスの完全体なら出来るはずだ!!」

「任せろ大輔。今の俺達にこれくらいのことは余裕だ。行くぞ!デスペラードブラスター!!」

「トップガン!!」

「アラミタマッ!!!!」

パイルドラモン達、デジクロス完全体が要塞を吹き飛ばしていく。シャッコウモンだけエラく気合いが入っていたが。

必殺技を連発し、要塞内部を破壊して外に出ると内部から空に向かっていくつもの光の柱が伸び、少しの間を置いて巨大な要塞が轟音と共に吹き飛んだ。

これで、このデジタルワールドに存在していたデジモンカイザーの痕跡はダークタワーを除いて消滅したのであった。 

 

第40話:哀れな蜘蛛

デジモンカイザーの要塞を破壊し、そして一同はデジクロスについて話し合っていた。

どうやら自分達の場合、相性が良くないデジモンは強化パーツに近い状態になるが、デジモンのデータの相性が良い場合は完全に融合して通常デジクロスよりも強力な力を引き出せるらしい。

因みにテイルモンとアクィラモンのデジクロスをテイルモンをベースにした場合は超進化の足りないエネルギーをアクィラモンが補う形になったのか超進化版の個体よりも強力なエンジェウーモンが誕生し、エンジェモンとアンキロモンの場合も同じ作用が起きているのか、より強力なホーリーエンジェモンが誕生したのである。

これにはパタモンとテイルモンは歓喜した。

デジタルワールドに紋章を解き放ち、滅多になれないと思っていたエンジェウーモンとホーリーエンジェモンの進化をアクィラモンとアンキロモンとデジクロスの力を借りてとは言え進化出来るようになったのだ。

特にエンジェウーモンもホーリーエンジェモンも暗黒系には相当強いデジモンだ。

状況に合わせてベースとなるデジモンを切り替えていけば、様々な状況に対応出来るだろう。

「んで、デジクロスでベースになるデジモンを切り替えていけば、パワーやスピード、相手の属性に合わせて戦えばかなり有利に戦えるな。」

「ああ、シャッコウモンはエネルギー系の攻撃を吸収、無力化出来る。これはかなり便利な能力だ。」

「シルフィーモンはエンジェウーモンみたいに聖なる力は持たないけど格闘能力やスピードはエンジェウーモンより上ね」

「デジクロスで状況に応じて戦えるようになったから今までより有利に戦えるようになったね」

今まで完全体に進化出来ないと言う不安がデジクロスのおかげで解消されたため、タケルも表情に余裕が現れていた。

因みにデジクロス完全体のパワーの確認はダークタワーで試しているから問題ない。

伊織の次に不信感を露わにしていたタケルも賢が選ばれし子供のメンバーのNo.2としてデジタルワールドに貢献したのを間近で見た為か、今では賢のことをそれなりに信用するようになってきた。

「じゃあ、今日はこの辺で。解散。」

そして子供達のD-ターミナルにあの謎の女からのメールが届いたのは、それから数日経った時であった。

“私に会いたいのなら、ギガハウスにいらっしゃい”

挑戦的なメールを受け、大輔達は例のギガハウスに向かったのである。

「でかいな」

「おう、でかい」

大輔とブイモンが思わず呟く。

ギガハウスの名に恥じないサイズだ。

このサイズではキメラモンやムゲンドラモン、ミレニアモンすら猫みたいな物だろう。

「なあ、賢」

「ん?何だい?」

「これってどう考えても罠だよな?」

「うん、間違いないだろうね」

「なら、わざわざ罠と分かり切ってるのを素直に普通に行く必要はねえよな?」

「え?大輔君、行かないの?」

タケルは大輔なら例の女を叩き潰すために向かうと思っていたのだが。

「いや、行くぞ?ただ、挨拶に普通より気合い入れるだけだ。賢、ヒカリちゃん。まずはデジクロス」

「…何か展開が読めてきたな」

「うん…」

でもテイルモンとワームモンを進化させ、デジクロスさせる。

「人ん家に入るには挨拶が必要だよな。」

「え?ええ、まあ…」

伊織が疑問符を浮かべながら頷くとパイルドラモンHMの生体砲にエネルギーが充填されていく。

「ま、まさか…」

引き攣り笑いを浮かべ始めるタケルを無視してギガハウスへと向けられる生体砲。

「ちょ、ちょっと…!?」

「ごめん下さーーーいっ!!!!」

エネルギー波が扉を吹き飛ばし、そして潜んでいた昆虫型デジモン達を気絶させた。

「これってどう見ても…」

「キリハさんの影響よね…」

「馬鹿ー!!いきなり何ぶっ放してのよーっ!!」

「敵に居場所がバレたりしたらどうするんですか!?」

幼なじみの暴挙を止めようと、大輔にしがみつく京と伊織。

「だああもう!!鬱陶しいから止めろ!凸と栗頭!!大丈夫だよ、俺達をわざわざこんな場所に誘うくらいだ。とっくの昔に俺達の居場所は知られてるだろうよ。そして何かの罠が張られている可能性もあるから、その罠の可能性ごとそいつを吹っ飛ばすしてやるんだよ、このギガハウスごとな!!!」

【何ですとー!?】

ヒカリと賢を除いた全員の叫びがギガハウス中に響き渡る。

「2発目、発射っ!!」

「デスペラードブラスター!!!」

【わああああ!!?】

再び放たれたエネルギー波。

大輔は発言通り、ギガハウスごと女を吹っ飛ばすかのようにエネルギー波が放たれていく。

途中で女の叫びが聞こえても構わずにエネルギー波を発射、更に蛙が潰れたような声が聞こえても構わずに発射。

発射…発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射発射!!!!!!

10分間、エネルギー波を乱射し続けた結果。

「あ…女の人発見」

パタモンが大の字で、真っ黒焦げになって、うつ伏せで倒れている女を発見した。

「よしよし、これで女を捕まえられるな」

「最近大輔が怖い」

「まあ、でも戦術的には間違ってないからいいんじゃないですか?」

「簡単に引きずりおろせたから結果オーライってことにしませんか?」

ヒカリと賢は大輔のフォローをしながら無様な女を見遣る。

「う…ぐぐぐ…」

【あ、生きてる】

ゆっくりと起き上がる女に全員が思わず呟いた。

「ぐっ…何て恐ろしい子供達なの…何回か天国への扉が見えたわ…」

「安心しろ、お前は天国じゃなくて地獄行きだから」

「うるさいわよ!!っていうか、あんたらどういう神経してんのよ!!ギガハウスに着いていきなり攻撃を仕掛ける普通!?」

「だってお前の都合に一々付き合ってられないし。それに戦う時は常に全力で敵を叩き潰すのが相手への礼儀だってキリハさんが言ってたぜ」

「捨てちゃいなさいそんな礼儀!!ああもう、今回ばかりは頭に来たわ!!泣いて謝っても許してやらないからね!!」

女の姿が徐々に変わっていく。

まるで蜘蛛のようで、所々に人間だった時の名残がある為、普通のデジモンにはない不気味さがある。

「それがお前の正体か」

「そう、私はアルケニモン。私の正体が見られて、あなた達幸せなのかしら?それとも不幸なのかしら?」

「そりゃあどういう意味だ?」

「蜘蛛の姿の私と戦って、あなた達に勝ち目は無いのよ!!」

パイルドラモンHMに飛びかかるアルケニモン。

「…ふん」

しかし考えて欲しい。

変身してデジモン形態になったのはいいが、パイルドラモンHMから受けたダメージは全く回復していない。

その上アルケニモンの相手はオメガシャウトモンやジークグレイモンと肩を並べて戦えるパイルドラモンHMなのである。

…結果は数分後に明らかとなった。

「…またつまらぬ者を殴ってしまった」

「そ…そんな…この私が…!?」

あっさりと返り討ちにされ、ボロボロとなったアルケニモンが横たわる。

「取り敢えずお前はここで倒す。お前を倒せばダークタワーをデジモンにすることは出来なくなるからな」

腕から光針を出し、アルケニモンに向けた。

「お前にいくつか質問がある。お前は何でデジタルワールドを荒らすんだ?どうしてダークタワーをデジモンにすることが出来るんだよ?」

大輔の言葉にアルケニモンは嘲笑を浮かべた。

「何て無意味な質問なんだ…何故デジタルワールドを荒らす?それが私の生きる目的だからだよ!ダークタワーにしてもダークタワーの本当の意味も知らないお前らに説明したって、理解出来ないだろう」

「そうかい、答える気はねえと。まあ、これだけは分かるぜ?お前を倒せばデジタルワールドを荒らす奴が消えてダークタワーデジモンが生まれないことくらいはな。みんなもいいな?アルケニモンを倒す」

タケルとヒカリはあまり良い顔をせず、京と伊織は特に動揺していた。

京達が何か言う前に大輔が口を開いた。

「見たくねえ奴は向こう行ってろ。こいつみたいな奴はあの戦いで嫌って程見てきたからな。生き延びたら何を仕出かすか分からないから倒せる時に倒した方がいい」

大輔から出た正論に京と伊織は黙り込む。

「…じゃあな」

光針をアルケニモンに向かって振り下ろそうとした時。

「そうはさせないぜ!!」

真上から放たれた電撃を咄嗟にそれを斬り払う。

「…マミーモン!!」

「アルケニモン、助けに来たぜ!!」

「仲間か!!」

包帯を全身に巻きつけたミイラ男のようなデジモン。パイルドラモンHMは即座にマミーモンと呼ばれたデジモンに向かう。

「スネークバンテージ!!」

マミーモンが放った大量の包帯。

パイルドラモンHMはそれを払ってマミーモンを両断しようとするが。

「っ…いない!!」

「退きな!!」

マミーモンの声が響き渡り、後ろを見遣るとそこには銃を乱射して大輔達をアルケニモンから離し、アルケニモンと共に脱出しようとしているマミーモンの姿があった。

「お前みたいな化け物と真正面からやってられるかよ!!」

アルケニモンを抱えてギガハウスから脱出するマミーモン。

「くっ!!」

追いかけようとするが、アルケニモンとマミーモンの姿は何処にもない。

どうやら逃げられてしまったようだ。

「くそ、逃がしちまった」

「大丈夫だ。次がある」

悔しがる大輔を賢が宥める。

今までのデジモンとは全く違う存在のアルケニモンとその仲間のマミーモン。

まだまだ戦いは終わりそうにないとパイルドラモンHMは深い溜め息を吐いた。 

 

第41話:親密となる方法

アルケニモン、マミーモンを逃がしてしまい、度々復興作業の妨害を受けるが、徹底的に叩きのめして(マミーモンはアンデッドのためにこちらにはパイルドラモンHMやサジタリモンSM、エンジェウーモンやホーリーエンジェモン、シャッコウモンとアンデッドに対して有効な戦力が充実しているのも原因であろう)逃げられる日々が続く。

しかし、彼らは小学生(例えそうは見えなくても)なので、たまにはゆっくりと過ごしたい時もある。

今回はアルケニモンとマミーモンも動けないのかデジタルワールドに異変は発見されなかったため、今回は英気を養うことにした。

「こういう風にのんびり出来るのは久しぶりだなあ」

「そうだね」

ヒカリが焼いてくれたのだろうクッキーをかじり、そしてコーヒーを飲む。

「美味い。ヒカリちゃん、また腕を上げたな」

「ふふ、ありがとう」

「ねえねえ、大輔君?ヒカリちゃん?」

「「?」」

タケルがニコニコと笑いながら爆弾発言をする。

「そろそろキスくらいした?」

その発言にヒカリはクッキーを落とし、大輔はコーヒーで咽せた。

因みにヒカリが落としたクッキーはブイモンが口でキャッチしてみせた。

「ま、まだしてねえ!!」

「“まだ”ってことはする予定なんだね?」

「タ…タケル君…」

「ふ、2人共、何時の間に…」

赤面する2人に京はマジマジと見つめる。

確かに最近仲が良すぎると思っていたが、まさかそんな仲にまで進展していたとは。

それを聞いていた伊織がタケルの服を引っ張る。

「どういう意味なんですか…?タケルさん…」

しかしタケルは伊織の問いには答えずに、にこにこしているだけだけであった。

こんな時のタケルには何を言っても無駄だと言うのは付き合いもそれなりに長くなってきた伊織には分かる。

「…このカップケーキ、甘さが控え目ね。私好みの味だわ」

「そのカップケーキは大輔が作ったんだ。ヒカリのクッキーもサクサクで美味いな」

「当たり前でしょ、私のパートナーよ?」

仲良くお菓子を食べるブイモンとテイルモンは並行世界の旅のおかげで大分仲良くなっている。

並行世界の大輔達が見たら羨ましがるだろう。

主に手間の関係で。

「とにかく、お前に俺達のことをとやかく言われる筋合いはないぜ?」

「まあ、そりゃあそうなんだけどさ…ヒカリちゃん泣かしたら…太一さん怒るよ?」

「まあ、確かにな…でも泣かせたりはしねえよ。ヒカリちゃんを守るために悲しませたら意味ねえだろうが」

「分かってるなら良いんだよ。それにしてもこのカップケーキ美味しいね、大輔君にこんな才能があったなんて意外」

「お前の尻を真っ赤に燃やしてやってもいいんだぜ?しばらく座れないように」

こめかみに青筋を浮かべながら笑みを浮かべる大輔。

「(ヤバい、からかい過ぎた…!!あの回し蹴りは勘弁だよ…!!)ごめんごめん……幸せになってよ2人共…君達の晴れ舞台には絶対出席するから」

「お前気が早過ぎだ」

「…………」

赤面する2人に伊織はここで全てを察した。

信じられない事だが…大輔とヒカリが付き合っていたことに。

「…タケルさん」

伊織はタケルを見遣ると、タケルはそれに気付いてクスリと笑う。

「伊織君、僕とヒカリちゃんは君が思うような関係じゃないよ。」

伊織にはどうしても信じる事が出来なかった。

てっきりヒカリはタケルを、タケルはヒカリを好きだと思っていた。

「人間関係って言うのはちょっとしたことで変わるんだよ。ヒカリちゃんの一番が大輔君になったようにね。いつか伊織君にも分かる日が来るよ。それにしてもこのカップケーキは美味しいね。いいなあヒカリちゃん、大輔君の愛情を貰えて」

「っ、まさか…まだしつこく大輔君の愛情を狙ってるのタケル君!?」

「ええええ!?タ、タケル君…そんな趣味が……」

「冗談だってばヒカリちゃん……京さんも本気にしないでよ……」

ヒカリと京の発言に引き攣り笑いを浮かべるタケル。

この日は伊織にとって分からないことが多い日だった。

まだまだ幼い伊織には分からなすぎることばかりで、そして学校を出ようとした時、大輔とヒカリと京の会話を3人には悪いと思いながらも立ち聞きしてしまった。

「ねえ、大輔とヒカリちゃんって賢君との付き合いが長いのよね?もし好きな物とかあったら教えてもらえないかな?」

「え?どうしたんですか京さん。」

「ほ、ほら…私、賢君に助けてもらってるし、そのお礼って言うか」

「ああ、そう言えばお前は賢に惚れてんだっけか?」

大輔の発言に京は赤面しながら大輔の胸倉を掴んだ。

「…何であんたがそんなこと知ってんのよ…?」

「いや、お前…あれでバレてないと思ってたのか?伊織やアルマジモン以外全員気付いてるぜ?」

「嘘ー!?」

赤面しながら驚愕する京に苦笑しながらヒカリは口を開いた。

「賢君、パソコンとかに興味あるし、話題も合うと思います。賢君嫌いな物は無かったよね?」

「ああ、あいつ結構菓子も好きだし、特に干し果物を沢山入れたケーキが好きだったな」

「干し果物…フルーツパウンドとかいいかな?」

「いいんじゃねえか?変に金かけた物よりも自分のために手間暇かけた菓子とか渡した方がずっと喜ぶぜあいつの場合?」

「そうですよ京さん」

「うん…私、頑張ってみる。大輔、ヒカリちゃん。手を貸して」

京も意を決してフルーツバウンド作りに励むことにして大輔とヒカリの手を借りることにした。

「お前は良い奴を好きになったよ京」

「うっさい」

赤面しながら言う京だが、満更ではなさそうだ。

それを見ていた伊織は少しだけ怖かった。

かつて賢が犯した過ちを、みんなが早くに忘れてしまう気がして。

そして京が賢に好意を抱き始めたことにも怒りを感じ始めた。

「(みんなはあの人がしたことを忘れたんですか…?)」

何時の間にかみんなが賢を仲間として受け入れており、タケルすら賢を受け入れてしまっていた。

「明日俺の家に来いよ。」

「分かった。ありがとう」

大輔達が別れたのを見て伊織はすぐに隠れると京がいなくなったのを見て、大輔が声をかけた。

「伊織、盗み聞きは感心しないぜ?」

「………」

大輔の声に伊織はゆっくりと出て来て何か言いたげな伊織に大輔もヒカリも苦笑している。

「あの、大輔さんとヒカリさんがお付き合いしてるのは本当なんですか?」

「ん…まあな」

「うん、そうだけど?」

少し照れ臭そうにしながら肯定する大輔とヒカリ。

「でも…こういう言い方は失礼かもしれませんが、ヒカリさんは大輔さんよりもタケルさんと仲が良かったじゃないですか?たった1年の冒険で簡単に…」

「伊織君からすればたった1年でも…私達からすれば色々気付かされる1年だったの…大輔君のこととか、賢君のこととかね」

ヒカリの口から賢の名前が出た瞬間、伊織の表情が変わる。

「どうして京さんを一乗寺賢の所へ行かせようとするんですか?」

「何ってあいつの力になってやろうとしているだけさ」

「京さんに何かあったらどうするんですか!!」

「何かあったらって…お前はまだ賢を疑ってんのか?あいつの行動を自分の目で見てもまだ信じらんねえのか?」

「当たり前です!僕はあいつを信じられない!!大輔さんもヒカリさんもどうして、あいつの事を信用出来るんですか?忘れちゃったんですか、あいつのやったことを!!」

「忘れてねえさ、でもあいつは俺とヒカリちゃんからすれば1年間苦楽を一緒にした仲間なんだよ。」

「自分のしたことも忘れて笑っているような人が仲間なんですか!?」

「それはどういう意味だ…」

それを聞いた大輔の声が低くなったが、伊織は怒りでそのことに気付かない。

「だってそうでしょう!?あんなことをして笑っているなんて、罪の意識がないに決まってます!!僕は大輔さん達のように過去に敵だった人とすぐに打ち解けられませんし、あの人も大輔さん達と比べて僕とあまり話そうとしない。僕があいつを信用していないのと同じように、あいつも僕達の中で一番僕を信用していないに決まっています!大体…」

「…伊織、お前そろそろ黙れ」

声が低く、冷たく伊織を見下ろす大輔に伊織は口を閉ざした。

「お前が賢と行動するのが嫌なのも、賢に助けられるのも悔しいのは分かる。デジモンカイザー時代のあいつのやったことに一番怒っていたのはお前だからな。それくらいは俺でも分かる。でもな、賢は自分のしたことを忘れたことなんて一度もない。今は精神的な余裕をある程度取り戻しただけで罪悪感から解放されたわけじゃないんだ。カイザー時代のやったことばかり見て、今の賢のことを見ようともしないであいつの気持ちを勝手に決めつけて否定するのは止めろ。賢がお前に話さないのも、お前が賢が歩み寄ろうとすればあからさまに嫌な顔をするからだろ。話して欲しいならお前のその態度から直せ。」

「な…っ?」

「あいつはあいつなりにタケル達やお前に歩み寄ろうとしてるんだ。それをお前の勝手な勘違いであいつの気持ちを踏みにじるのは止めろ。これ以上あいつを悪く言うなら俺はお前を見損なう。」

冷たく伊織を見据える大輔の視線に伊織は何も言えなくなる。

「なあ、伊織。俺はお前を信じてた。お前なら今の賢を見て今は無理でもいつかは分かってくれるって、それなのにお前はカイザーだった頃の賢の罪ばかり見て、今の賢を見ようともしないでそんなことを言う。正直残念だった」

大輔はヒカリと共にこの場を去り、俯いたままの伊織だけが残された。

そして翌日、京は本宮家に寄り、大輔とヒカリの協力を得て手作りフルーツパウンドを作って一乗寺家に。

「うう…緊張する……でも頑張れ私。逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ…」

「はい」

インターホンを鳴らすと、賢がいきなり出て来た。

まさかいきなり本人が出て来るとは思わなかった京は箱を落としてしまうが地面に激突する前に何とかキャッチ出来た。

「えっと、すいません。驚かせちゃったみたいで」

「へっ!?いやいやいやいや!!私も急に来ちゃってごめんね!!これ、いつも助けてもらってるお礼!!フルーツパウンドを作ったの!!ヒカリちゃん達から手伝ってもらったから味は……っ!!?」

箱を開くと、さっきの衝撃で形が崩れたフルーツパウンドが姿を見せた。

「(さっき落とした時の衝撃でー!!?)ご、ごめんね!?作り直して…ああー!?」

京が言い切るよりも先に賢は形の崩れたフルーツパウンドの一切れを手に取って一口。

「け、賢君!!無理して食べなくて良いからそんな形が悪い奴!!」

「別に無理なんかしてませんよ?とても美味しいです。ありがとうございます京さん」

飲み込んで京に向かって微笑む賢の優しさに思わずジン…っとなる。

「あ、ありがとう…次はちゃんとしたのを持ってくるから!!」

「え?ありがとうございます。」

そして京は一乗寺家でお茶をご馳走になり、賢が送ると言って井ノ上家にまで京について来てくれた。

「賢君、どうして伊達眼鏡なんかかけてるの?お洒落?」

「え、あ、違います。前よりマシになりましたけど、僕はまだまだ目立ちますから…」

新聞を読むとまだ賢のことは記事に出る“失われた天才”など今の賢を否定するような様々なことが記事に出ている。

「(デジモンカイザーだった頃の賢君より今の賢君の方が優しくて格好良いのに…)」

そう考えて、顔に熱が回る。

確かにデジモンカイザーだった頃の賢は能力的に優れていたが、今の賢の方が人として大事な物を沢山持っているというのに大人はそんなことも分からないのか。

「あ…」

帰りの途中に偶然、伊織と出会した賢と京。

「伊織、あんたどうしたの?」

「それは…」

伊織は賢に目を遣ると目を伏せた。

大輔との会話が脳裏を過ぎり、賢を見ることが出来なくなり、そのまま走り去ってしまった。

「ちょ、伊織!!あんた何なのその態度は!!戻って来なさーい!!!!」

京が怒声を上げるが、賢はそれを止めた。

「いいんです。僕がしたことを考えれば伊織君の態度は当然のことですよ」

少し寂しそうに笑う賢に京は胸の奥に痛みが走ったような感覚を覚えた。

「でも賢君は頑張ってるのにあいつは…賢君が話しかけようとしたら嫌そうにするし、本っ当に頑固ね!!はあ、明日大輔に相談してみよ…賢君、今日はありがとう」

「いえ、僕の方こそ。ご馳走様でした。とても美味しかったです。」

「いやいや…あれくらいで良ければいつだって賢君のために色んなお菓子を作ってあげるわよ!(って、これじゃあ告白みたいじゃなーい!!)」

言ってしまって後悔する京。

しかし言葉の意味に気付かなかった賢は普通に笑みを返した。

「ありがとうございます。明日もまた…頑張りましょう」

それだけ言うと、賢は去っていく。

京は去っていく賢の背中を見つめながら強敵だと確信した。

「(でも、だからこそやる気が出て来たわ!!自分を磨いて磨いて磨きまくっていつか賢君を振り向かせてみせるわ!!)」

闘志を燃やしながら空を見上げる恋する乙女、井ノ上京。

大輔とヒカリはまだまだこの2人の恋模様に巻き込まれそうである。 

 

第42話:優しさのデジメンタル

放課後、ヒカリと共に先にパソコン室に来た京はブツブツと昨日の伊織のことでヒカリに愚痴を言っていた。

「本っ当に伊織の態度は何なわけ?賢君が近寄ればあからさまに嫌な態度取るし、昨日だって賢君と目を合わせようとしないでさっさと帰っちゃうし」

愚痴を言いながらヒカリが焼いてきた焼き菓子を頬張る京だが、出来れば味わって食べて欲しいなとヒカリは思った。

「やっぱり伊織君からすればまだまだデジモンカイザーだった頃の印象が抜けてないんですよ。」

「ただ頑固過ぎるだけよ。そりゃあ私だってカイザーだった頃の彼がやったことは許せるものじゃないと思う。でも未来のデジタルワールドを救ったり、私達を助けてくれたり、復興作業を率先して手伝ってくれてるのにあいつときたらもう……!!私はあんな子に育てた覚えはないわよ!!」

「京さんは伊織君のお母さんじゃないでしょ……?」

京の発言にヒカリが苦笑しながらツッコむ。

「とにかく……せめてもう少し仲良くしてくれないかな?このままじゃ、戦いにも影響出ちゃうんじゃない?」

「それはそうですけど……」

「放っとけ」

「あ、大輔君。タケル君も」

大輔とタケルがパソコン室に入ると、ブイモンとパタモンが2人に駆け寄り、2人はそれぞれのパートナーを抱き上げた。

「無理に納得させようとしても頑固頭の奴は難しいんだよ。あいつのペースで受け入れさせるしかねえよ。あ、クッキー貰っていいかな?」

「大輔君には別のがあるの、はい」

「ありがとう」

もう1つの小袋からクッキーを1枚手に取ってぱくり、うん…美味い。

「いいな、大輔君。ヒカリちゃんの愛…」

タケルが言い切る前に大輔はタケルの尻を全力で捻り抓ってやった。

「……っ!!……っ!!!」

あまりの痛みに声すら出ないタケル。最早両者の力関係は完全に逆転していた。

「タケル、学習しようよ…」

尻の抓られた部分を押さえて悶えてるタケルをパタモンは呆れたように見つめていた。

少しして伊織がパソコン室にやってきた。

「すみません、遅れました…」

「やっと来たか。京、頼むぜ」

「はいはい、デジタルゲート・オープン!!選ばれし子供達出動!!」

何時もの決め台詞を発して一同はデジタルワールドに向かった…のだが。

【痛っ!?】

何故かゲートのテレビの画面が岩壁の方を向いており、そこから勢い良く出てきた大輔達は当然額をぶつけてしまう。

「痛って~…」

「な、何でこんなとこにゲートがあんのよ~…」

「み、みんな…大丈夫…?」

「だ、大丈夫じゃない…」

まだ尻のダメージは癒えておらず、額だけでなく顔面を打ったタケルは他のメンバーで最もダメージがでかい。

「なあ、タケル…お前最近運がないな」

「そうだね、大輔君からお尻を抓られたり蹴られたり…」

「それはタケル君が悪い」

ヒカリからズバリと言われたタケルはゆっくりと立ち上がった。

「あ…」

「あ、賢君じゃない。」

「どうも京さん。昨日はありがとうございます…って、どうしたんですか額?」

「少しドジっただけだから気にしないで!!」

賢は額にダメージ…特に顔面を打ったタケルを見遣り、ゲートのテレビを発見するとテレビの画面が向いている方向を見て…。

「(あそこで打ったのか…)」

「痛そうだね賢ちゃん。」

全てを察して苦笑する賢と思わず呟くワームモンであった。

「とにかく今日はこのエリアの復興作業を手伝おう。見たところダークタワーは無いようだからな」

【了解!!】

全員が頷いた時であった。D-3XとD-3に反応が出たのは。

【?】

全員がD-3XとD-3のディスプレイを見つめると、それはデジメンタルの反応であった。

「デジメンタル!?まだデジメンタルはあるの!?」

「そりゃあ…賢の優しさのデジメンタルじゃねえか?ほら、優しさの紋章あるしよ」

「そっか、優しさの紋章があるなら優しさのデジメンタルがあっても不思議じゃないよね」

「じゃあ、優しさのデジメンタルかもしれない何かを探すか。あって困る物じゃないしな」

大輔の言葉に全員頷いてデジメンタル探しを開始した。それを少し離れた場所で見つめるアルケニモンとマミーモン。

「なあ、アルケニモン。何でこんなとこに来たんだ?」

「……あんたは本当に馬鹿ね。あの忌々しいガキんちょ共が、またダークタワーを倒してデジタルワールドを元通りにしようとしてるのよ。それを見て何とも思わないの?」

「俺は別に何にも?」

寧ろマミーモンからすれば溺愛しているアルケニモンと共にいられればそれでいいので、子供達がデジタルワールドを復興させていようが何でも良いのだ。

「この馬鹿!!」

「痛って~…!!」

アルケニモンの拳骨がマミーモンに炸裂し、マミーモンを悶絶させた。

そして反応に向かって進んでいく大輔達。

そこにはかつて勇気のデジメンタルを発見した場所を思い出させる洞窟であった。

「あそこだな…何か、勇気のデジメンタルを見つけた時のことを思い出すな。」

「あの時はまさかこうなるとは思わなかったけどね」

大輔とヒカリは洞窟の中を見渡しながら呟く。

洞窟の奥には勇気のデジメンタル同様、優しさの紋章が刻まれた優しさのデジメンタルが安置されていた。

「優しさの…デジメンタル…」

「やっぱりここは優しさの紋章の持ち主である賢君よね!!」

「確かにな。ほら、賢」

「僕から?」

「大丈夫だよ、お前なら。優しさの紋章を輝かせることが出来たならきっと優しさのデジメンタルを持ち上げられるさ」

「…分かった」

賢は屈んで優しさのデジメンタルを掴むと簡単に持ち上がった。

優しさのデジメンタルが賢の物だという証だ。

「やったな、賢」

「今更デジメンタル1つ手に入ったところでどうなるんです?」

「ダークタワーが機能している所かあまりエネルギーを消費したくない時に使えるしな。まあ、どんな敵が来てもやられるつもりはないけどな」

「それはどうかしらねえ!!」

聞き覚えがある声が聞こえたため、洞窟から出るとそこには何と。

【マミーモンとマミーモンのおまけのアルケニモ何とか!!】

その発言にアルケニモンがずっこけた。

「ちょーっと待ちなさい!!何で私がこいつのおまけなのよ!!こいつより私の方が登場早いんだから!!それから私はアルケニモンよ!!後一文字くらい頑張んなさいよ!!」

「だってお前、マミーモンに比べると影が薄いというかインパクトが薄いというか…」

「んな!?」

「お前ら、アルケニモンを悪く言うのは許さないぞ!大体アルケニモンが俺のおまけって…俺の…おまけ?……はっ!!?」

マミーモンの脳内。

アルケニモンはマミーモンのおまけ→マミーモンとアルケニモンはセット扱い→つまり恋人同士!?

「………おいお前ら、よせよ…照れるじゃないか…」

「何意味分かんないこと言って照れてんのよあんたは!?」

都合のいい脳内補完をしたマミーモンにアルケニモンの鉄拳が炸裂した。

「げふう!!?ああ…こ、これが愛の鞭…」

アルケニモンの鉄拳を喰らったマミーモンは仰向けに倒れて気絶した。

「さあ、出ておいで!!」

アルケニモンが指を鳴らすと、複数のスナイモンが飛んできた。

「へっ、今更こんなの…」

「あんた達はともかく、他の3体はどうかしらね!!」

「え!?」

スナイモンが複数掛かりでタケル達に攻撃を仕掛けるのを見て咄嗟に賢は伊織と京を引っ張る。

大輔、タケル、ヒカリの3人と賢、京、伊織の3人に離されてしまう。

「まずい、奴らの狙いは…」

「デジクロスってのは合体するデジモンが近くにいて出来るんだろ?つまりこれだけ離されたらあんたらは全力で戦えない!!」

デジクロスで最も強大な力を発揮出来る組み合わせから離された大輔達。

「よし、勝ったね!出ておいでヴァーミリモン!!」

次に現れたのはモノクロモンの色違いの上位世代であるヴァーミリモンが咆哮しながらこちらに迫って来る。

「きゅう…」

「あんた何時まで寝てんのよ!さっさと起きな!!」

「アルケニモ~ン…!!」

気絶しているマミーモンを叩き起こすがアルケニモンとイチャつく夢を見ていたマミーモンは目を覚ますのと同時にアルケニモンに迫る…が。

「何考えてんのよ!!」

「痛って~!!」

再びマミーモンに拳骨1発を落として今度こそ覚醒したマミーモン。

「「「デジメンタルアップ!!」」」

「ブイモンアーマー進化、地上最大の希望!サジタリモン!!」

「テイルモンアーマー進化、微笑みの光!ネフェルティモン!!」

「パタモンアーマー進化、天駆ける希望!ペガスモン!!」

「僕達も!!」

「うん!!」

「ワームモン進化、スティングモン!!スティングモン超進化、ジュエルビーモン!!」

「「デジメンタルアップ!!」」

「ホークモンアーマー進化、弾ける純真!シュリモン!!」

「アルマジモンアーマー進化、鋼の英知!ディグモン!!」

ワームモン以外はアーマー進化で対抗し、ヴァーミリモン、アルケニモン、マミーモン、そしてスナイモン数体を相手にしなければならなくなった。

数は此方が上だが、質は向こうが上だ。

ダークタワーデジモンは通常のデジモンよりも戦闘能力が高い。

ヴァーミリモンとスナイモン数体はサジタリモン達、マミーモンとアルケニモンと残りのスナイモン数体はジュエルビーモン達に。

「スパイダースレッド!!」

「ひゃあははははっ!!」

「ぐっ!?」

アルケニモンの糸とマミーモンの射撃がジュエルビーモンに繰り出される。

避ければシュリモン達に当たると判断したジュエルビーモンはそれを斬り払う。

「草薙!!」

「ゴールドラッシュ!!」

シュリモンとディグモンは自分達で何とか手に負えるスナイモン達の相手をする。

しかしスナイモンはダークタワーデジモンでなくても個体によっては完全体すら圧倒するようなデジモンである。

いくら経験を積んで強くなってもまだ1対1では苦戦する相手だ。

「タケル、ヒカリちゃん!!どっちでもいい!!デジクロスだ!!」

「大輔君!!」

サジタリモンと最も距離が近いタケルとペガスモンが近付く。

「サジタリモン!ペガスモン!デジクロス!!」

「サジタリモンKM(ケンタウルスモード)!!」

サジタリモンの下半身がペガスモンの物になったためによりケンタウルスに近くなったサジタリモンが駆ける。

「喰らえ!!メテオギャロップ!!」

ヴァーミリモンの顔面に飛び蹴りを喰らわせ、地面に叩き付けた。

しかし、スナイモン達はネフェルティモンに狙いをつけ、執拗に攻撃する。

「ペガスモンとデジクロスした今のサジタリモンなら…ヒカリちゃん、行くぞ!!」

「うん!!」

「「サンクチュアリバインド!!」」

サジタリモンKMとネフェルティモンが連携技の拘束技でスナイモン達を拘束すると矢を構えたが。

「ヴァーミリモン!!」

アルケニモンが叫ぶとヴァーミリモンはサジタリモンKMとネフェルティモンを狙う。

それに気付いた2体は技を中断してしまった。

「おらおらおらあ!!」

マミーモンはジュエルビーモンから距離を取って攻撃する。

近接戦闘を得意とするジュエルビーモンを相手に接近戦を挑むような馬鹿な真似はしない。

「どうすれば…」

サジタリモンKM達が追い詰められていくのを見た伊織が呟く。

「…こうなったら一か八かよ。シュリモンとディグモンを賢君にデジクロスしてもらうのよ!!」

「ええ!?」

京の提案に目を見開く伊織。

それはつまり賢の力を借りなければならない。

自分達のD-3にデジクロスの機能がないからだ。

「今のまま戦うよりマシよ。伊織、このままじゃ私達負けちゃうかもしれないのよ!?」

「でも、僕はあの人に借りは…!!」

「いい加減にしなさいよ伊織!!みんなとあんたの意地のどっちが大事なの…」

「京さん!!逃げて下さい!!」

「逃げるだぎゃ伊織ぃ!!」

シュリモンとディグモンの叫びが響き渡る。

何時の間にかスナイモンが腕の鎌を振り落とそうとしていた。

「うわああああ!?」

「きゃああああ!?」

「危ない!!」

賢が2人を突き飛ばす。

スナイモンの鎌は賢に直撃はしなかったが、勢い良く吹き飛ばした。

「ぐっ…」

「大丈夫!?」

「は、はい…」

「ど…どうして、僕を助けたんですか…?僕はあなたを信用しないで、避けてばかりいたのに…」

「理由なんて無い…僕が助けたいと思ったから助けただけだよ…さあ、伊織君と京さんは下がって…」

ふらつきながらも立ち上がり、戦おうとする賢を見て京はゆっくりと伊織に振り返る。

「ねえ伊織?あんたはあの姿を見てもまだ賢君がカイザーのままだと思う?彼を信用出来ないの?」

「…………」

伊織は何も言わない…否、言えないのだ。

自分と京を体を張って助けてくれた賢に伊織は何と言えばいいのか分からない。

「伊織、いい加減素直になりなさいよ。変に意地張ったって全然意味ないわよ。今のあんた、自分が認めたくないことから目を逸らしてるだけだわ」

「っ…僕は…」

「伊織、あんたも本当は気付いてるんじゃないの?今の賢君は前の賢君じゃないって…」

「でも僕は彼がしたことは…」

「前の賢君の罪ばっか見るんじゃなくて今の賢君を見なさいよ!!何時までもウジウジしてんじゃない!!」

伊織の腕を引っ張って賢の元に。

「京さん?」

「賢君、デジクロスよ!!ディグモンとシュリモンをデジクロスして!!このままじゃ負けるわ!!」

「でも、伊織君は…」

チラリと伊織を見遣る。

伊織が自分を嫌悪しているのは知っている。だから彼とのデジクロスは無理ではないかと思った。

「……やりましょう一乗寺さん…」

「伊織君…」

「借りは…返します…」

「分かった、君と京さんの力…借りるよ…」

「そうはさせないよ!!」

D-3Xを構える賢の姿を見たアルケニモンは妨害しようとするが。

「ヘブンズジャッジメントアロー!!」

サジタリモンKMの矢がスナイモンを貫き、そのままアルケニモンに迫ってきたため、アルケニモンはそれを回避しなければならず、妨害は出来なかった。

「ジュエルビーモン!ディグモン!シュリモン!デジクロス!!」

「ジュエルビーモンDS(ドリルスライサー)!!」

ジュエルビーモンの左腕がディグモンを模した大型のドリルとなり、背中に巨大手裏剣を装備している。

「ドリルファング!!」

左腕のドリルを高速回転させ、スナイモンの体に風穴を開けると、残りのスナイモンは巨大手裏剣を投擲して薙ぎ払う。

「強い…!!」

「スパイクバスター!!」

ジュエルビーモンの放った衝撃波がアルケニモンとマミーモンに迫る。

「うわああああ!?な、何で雑魚2体のパワーを足しただけで…」

「足し算じゃないんだよデジクロスは!!デジクロスは絆の力なんだ!!」

吹き飛ばされていくアルケニモンとマミーモンを見て、サジタリモンKMはヴァーミリモンを吹き飛ばすと、すぐにデジクロスを解除、退化させた。

「よーし、ウィザーモン!!お前が修理してくれた奇跡のデジメンタルを使わせてもらうぜ!!デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、奇跡の輝き!マグナモン!!」

「う…っ!?」

ロイヤルナイツの守りの要、マグナモン降臨。

あまりの眩い光にアンデッドのマミーモンは苦しむ。

マグナモンは即座に自身の状態を確認する。

あれだけボロボロだった奇跡のデジメンタルを使用可能にするウィザーモンの技術力は大したものだが、完璧とは言えずに、最大技のエクストリーム・ジハードと次点で強力な技であるシャイニングゴールドソーラーストームが使えなくなっているのだ。

しかしそれ以外の技は使える。

「これで終わりだ!ぶっ飛べ馬鹿コンビ!プラズマシュート!!」

両肩・両腰のアーマーから発射されたミサイルと掌から放たれたプラズマ弾がアルケニモンとマミーモンに炸裂した。

「「うわああああああ!!?」」

ミサイルとプラズマ弾を受けたマミーモンとアルケニモンは放物線を描いて吹き飛び、ヴァーミリモンと残りのスナイモンは瞬く間に消滅したのであった。

「どうも、ありがとうございました」

「え?」

いきなり礼を言われた賢は目を見開く。

「今回大きな借りを作ってしまいました。いつか必ず返させて頂きます」

「え?借り?何のことだい?」

「ほら、あの時…私と伊織を助けた時のことを言ってるのよ賢君…」

「あ、そうなんですか…別に気にしなくてもいいのに…」

京に説明されて気にしなくていいと言うが…。

「駄目です。いつか必ず、お返しします」

「…分かった」

そして今日は現実世界に戻ることにした大輔達。

伊織は祖父と向かい合い(チューチューゼリー片手に)、人生の先輩である祖父に尋ねてみることにした。

「お祖父様…相談があるんですけどいいでしょうか?」

「おお、伊織。何じゃ?わしに答えられるなら何でも答えてやるぞ」

伊織の真剣な表情に祖父の主税もまた表情を引き締めた。

「僕の知っている人に…内容は言えませんが、悪いことをしてしまった人がいるんです。今、そのことを償っている最中なんですが、僕はその人のことを絶対に許さないと思ってました…でも…」

「………」

主税は黙って孫の次の言葉を待つ。

「大輔さんやみんながその人を仲間として受け入れていくのを見て、絶対に許さないと思っていたその人に助けられて…僕はどうすればいいのか分からなくなってしまいました…。」

主税は孫の悩みに気付くと笑みを浮かべながら口を開いた。

「確かに悪事は許されぬことじゃ」

主税の言葉に伊織は顔を上げた。

「お主の真っ直ぐな性格もあってその者を余計に許せない気持ちは分かる。じゃがな伊織…その者は自身のしたことを心底悔いて償っている最中なのじゃろう?世の中には“罪を憎んで人を憎まず”と言う諺もある。感情のままにその者の償いたいと思う気持ちやその者の行動まで否定してはいかん…」

「お祖父様…」

その言葉に伊織は思わず俯いてしまった。

「人が罪を犯すのは、そのような結果になってしまうまでに、それなりの事情があったりもする。お主はまず、そこから学ばねばならんな…大丈夫じゃ、お主はわしの孫で浩樹の息子なのじゃからな」

「…はい!!」

「では…」

主税は美しい輝きを放つ月を見上げながら月見チューチューゼリーを楽しむのであった。 

 

第43話:妹離れ

賢と伊織が和解の一歩を踏み出したことを喜びながら、ヒカリを八神家に送るために歩いていた。

因みにブイモンは先に家に帰っている。

「でも、おじさんと鉢合わせしないか心配だな」

「どうして?」

「いや、だって俺…この前、おじさんに滅茶苦茶睨まれてたしさ…」

この前もヒカリの家の前まで送っていったら、ヒカリの両親が出迎えたのだ。

ヒカリの母親、裕子はともかく…。

『どうも、おじさん。久しぶりです』

挨拶する自分の顔を見て、ヒカリの父親、進は明らかに、分かりやすく顔を顰めていた。

自分とヒカリがお付き合いしている仲だと知っているはずなので、多分改めて一緒にいるのを見て複雑だったのだと思う。

『君…大輔君…だよな…?しばらく会わないうちに大きくなったな…』

一応自分のことを覚えていてくれていたことには安心した。

『はい』

その時の大輔は普通に返したが、進は大輔の言葉に何も言わずに複雑そうに大輔を見つめていた。

その時の沈黙の痛々しさはまだ記憶に新しい。

「おじさんに嫌われてるな俺は…多分と言うか絶対」

「…そんなことないと思うけど」

ヒカリは苦笑いして大輔を見つめる。まあ、進の気持ちは大輔からしても分からないでもないのだ。

たった1人の可愛い娘に男が出来たことが気にならないわけがない。

いつか自分の元から娘を掻っ攫っていく輩が現れることを、父親はいつも危惧する生き物なのだと大輔は京の母親から聞いたことがある。

ジュンは…まず嫁の貰い手がいるのかが分からない。

「まず姉貴には家事の基本から叩き込まねえとな。いつか死人出すぞあれは…」

「あ…あははは…」

実際に実物を見たヒカリは苦笑いを浮かべるしかなかった。

しかもあれでまだマシなレベルだと言うのだから驚きだ。

ヒカリを八神家まで送り届けると裕子が出て来た。

「ただいまお母さん」

「お帰りヒカリ。それに大輔君も、いつもヒカリを送ってくれてありがとうね」

「いえ、俺はただ…ヒカリちゃんを危ない目に遭わせたくないから当然のことをしただけで…」

赤面しながらも言う大輔が微笑ましいのか裕子は笑みを浮かべながら見つめる……そんな3人を複雑そうに見つめる太一と進。

太一は最初は普通にしていたのだが、大輔と出掛ける際にお洒落に気合いを入れているヒカリの姿を見て改めて2人の関係を再認識した模様。

「大輔君、夕食うちでどう?」

裕子がいつもヒカリを送ってくれる礼に夕食を一緒に食べないかと勧めてくれたのだが…。

「「……………」」

裕子の後ろから自分を睨む太一と進の視線から大輔は居心地悪そうにしながら遠慮することにした。

「いえ、俺は……」

「一緒に食べようよ大輔君!!」

「「え!?」」

ヒカリの発言に太一と進はびっくり。

ヒカリはキッ…と太一と進を睨むと大輔を見遣る。

「一緒に食べようよ。いつも送ってくれたり、色々助けられてるからお礼がしたいの!!大丈夫、お父さんにもお兄ちゃんにもちょっかい出させないから!!」

「そうよ、いつもヒカリがお世話になってるし、せめてこれくらいはね!!」

「は、はあ…じゃあ…頂きます……」

太一と進のキツい視線をかわしながら、大輔はヒカリに連れられてヒカリの部屋に。

「はあ…」

「ごめんね大輔君。我が儘言っちゃって…でも日頃からお礼したかったし…」

「もう充分、お礼を貰ってるんだけどなあ……お菓子とかさ。それにヒカリちゃんが傍にいてブイモン達がいるだけで俺は充分…」

「お菓子なら大輔君だって作ってくるじゃない…大輔君は欲が無さ過ぎ…」

ヒカリは大輔の言葉に拗ねたように言う。

「そうかなあ、俺は充分欲張りだと思うけど」

「全然!!もっと欲張っても罰は当たらないよ絶対!!」

「うーん…」

欲張れといきなり言われてもまるで思い浮かばない大輔であった。

「大輔君、ヒカリー。ご飯よー」

「「はーい!!」」

呼ばれた2人は部屋から出てリビングに向かう。

「「………………」」

テーブルにはご馳走が並んでいた。

「さあ、大輔君!!食べて食べて!!大輔君のためにおばさん、腕によりをかけて作ったのよ!!」

「い、頂きます…」

「(お母さん、気合い入れすぎ……)」

大輔は客用の箸を手に取り、料理を口にした。

「どうかしら大輔君?お口に合うかしら?」

「え?あ、とても美味しいです。」

裕子の手料理はとても美味しい物だ。

大輔を突き刺す2つの視線が無ければもっと美味しいと感じられたかもしれない。

「お父さん、お兄ちゃん。大輔君を見てないで早く食べたら…?」

ヒカリは笑顔の下に怒りを隠しながら太一と進に言うと、ヒカリの怒りを感じ取った2人は即座に箸を手に取る。

夕食を食べ終え、大輔はヒカリと共に食器の片付けをした。

「ヒカリちゃん、おばさんの料理。凄く美味かったよ」

「うん、ごめんね。お兄ちゃんとお父さんが……」

「別にいいよ、気持ち分かるし」

ヒカリの言葉に大輔は苦笑しながら言う。

「もう……お兄ちゃんとお父さんたら…」

「なあ、ヒカリちゃん。さっきの続きだけどさ…ヒカリちゃんはもっと欲張っていいって言うけど…正直これ以上は見つからなかった。ヒカリちゃんが傍にいてくれて、家族やブイモン達がいて、タイキさん達と冒険したこととか、今の冒険もあって毎日毎日楽しいのにこれ以上ってのは見つかんないよ。正直…俺は恵まれ過ぎてんじゃないかって思う時もあるんだよ…だから…さ…」

「大輔君…」

「まあ、望むってんならこういう風に、ヒカリちゃんや太一さんやみんなといられればいいなって思うよ。ヒカリちゃんは?」

「ん…私もそう思う…かな…」

2人の間に流れる空気はとても穏やかであった…。

「じゃあ、ご馳走様でした。おばさん、おばさんの料理。凄え美味しかったです。」

「ええ、またご馳走するわね大輔君」

「おじさんと太一さんも…どうしたんですか?」

大輔が向こうを見遣ると、何故か落ち込んでいる2人の姿があった。

「気にしないで大輔君。自分の小ささに落ち込んでるだけだから」

「え?あ、ああ…じゃあ…」

疑問符を浮かべながらも大輔はそのまま背を向けて帰って行き、そして翌日の石田家…。

「何だよあれ?あんな台詞反則だろ。あんな良い台詞言われたら認めないわけにはいかないじゃんかよ~」

「なあ、太一。いきなりお前に押し掛けられて泣きつかれてる俺はどうすればいいんだ?」

「聞いてくれよヤマト!!」

「無視か」

「実はかくかくしかじかのほにゃららで…」

太一はヤマトに昨日の出来事を話す。

「へえ…あいつそんなことを…。確かにいい雰囲気でそんな台詞聞いたら認めない訳にはいかないな。お兄ちゃん」

「うるせえ!!…昔は“お兄ちゃんお兄ちゃん”言ってたのに今では“大輔君、大輔君が、大輔君は”だぜ?ああ…こうして妹は兄離れしていくのかあ…」

「俺は弟だから理解出来ない心境だな」

多分ヤマトはタケルに彼女が出来ても良かったとは思っても太一のように嘆いたりしないだろう。

「畜生…大輔とヒカリ(ついでに賢)の1年間の冒険が憎い…!!」

ギリッ…と歯軋りしながら言う太一。

まだまだ愚痴が長くなりそうだと今の内に布団を干しに行って買い物に行くかと、たった1人でブツブツ愚痴を言う太一を放置してヤマトは部屋を後にしたのであった。 

 

第44話:暗黒究極体

今日も今日とて、大輔達はデジタルワールドの復興作業をしていた。

「よし、みんな。キリの良いとこで休憩しようぜ」

【はーい】

大輔が休憩を言い渡すと全員が頷いた。

「ねえ、大輔君。飲み物は何がいい?」

「俺?…じゃあコーヒーがあればコーヒー。無けりゃあ何でもいいや」

「分かった、行ってくるね」

「なあ、大輔」

「?」

ブイモンが声をかけてきたため、振り向く大輔。

「タイキ達やシャウトモン達、元気にしてるかな?」

「どうだろうなあ、多分元気にはしてるだろうけど俺達からすれば未来だもんな…並行世界だけどよ」

「きっとあいつらは」

「「ん?」」

振り返るとそこには焼き菓子のクッキーを提供しているテイルモンの姿があった。

「それぞれ自分達の夢を追いかけてる真っ最中よ。」

「テイルモン、お前は行かなかったのか」

「ヒカリに頼まれてね。ほら、あんた達の分」

「ありがとな」

「サンキュー!!」

大輔もブイモンもクッキーを食べ始めた。

そしてしばらくしてヒカリも戻ってきてコーヒーを渡してくれたのでそれを受け取って一口飲む。

クッキーの甘味とコーヒーの苦味に大輔は思わず口元を綻ばせた。

「ふ~…美味いクッキーを食べながらコーヒーを飲む…至福の一時ってのはこういうのを言うんだろうな…」

「甘い甘い!!至福の一時ってのは隣に愛しい彼女がいる時のことを…ぶべらっ!!?」

「いきなり叫ぶんじゃないわよ!!格好つかないでしょうが!!」

【ん?】

振り返るとそこにはアルケニモンに殴り飛ばされたマミーモンと殴り飛ばした体勢のまま叫ぶアルケニモンの姿があった。

「また出たなマミアルコンビ!!」

ブイモンがクッキーをモゴモゴさせながら叫ぶとアルケニモンがツッコむ。

「略すんじゃない!!そして口の中の物を飲み込んでから喋りな!!とにかく今日こそあんた達の最期だよ!!こっちはダークタワー100本使った自信作を引っ提げてきたんだからね!!」

「そうだ!!アルケニモンの髪を100本も使ったんだぞ!アルケニモンの髪!!貴重な髪ぃ!!!」

マミーモンからすればダークタワーよりもアルケニモンの髪が重要らしくアルケニモンの髪を強調している。

「あんたはうるさいのよ!!殴るわよ!!」

「もう…殴られてます…ガク…」

再びアルケニモンクラッシュでぶっ飛ばされたマミーモンであった。

茶番に気を取られている内に100本のダークタワーの融合が完了した。

「グオオオオオオオッ!!!」

100本のダークタワーが融合して誕生したのは漆黒の竜戦士…ブラックウォーグレイモンであった。

「黒いウォーグレイモン…」

「そんな…ブラックウォーグレイモンなんて…」

「あいつら…とんでもない奴を…」

大輔がブラックウォーグレイモンを見て呟き、光属性のパートナーを持つヒカリとタケルはブラックウォーグレイモンの放つ暗黒の波動に鳥肌を立てた。

精神的に不安定となっている2人を戦わせるのは危険と判断した大輔と賢はD-3Xを構えた。

「「エクスブイモン!スティングモン!ダブルクロス!!」」

「パイルドラモン!!」

エクスブイモンとスティングモンがデジクロスし、パイルドラモンとなり、ブラックウォーグレイモンと向き直る。

「京、伊織。ヒカリちゃんとタケルを連れて離れてろ」

「え!?」

「どうしてですか!?」

「2人はブラックウォーグレイモンの暗黒の波動を受けて精神が不安定になっている。そんな2人を戦いに加えるわけにはいかない」

京と伊織の疑問に賢が答えると、確かにタケルとヒカリの体は小刻みに震えている。

「分かったわ、勝ちなさいよ!!」

「さあ、どうかな?勝てるか分からねえよ。今回ばかりはタクティモンやブラストモン程じゃないにしろ、桁外れの奴みてえだからな」

「それじゃあ始めるか…デジクロスのパワーとダークタワー100本分のパワー…さあて、どっちが上かな…?」

京達がこの場を離れたのを確認して、パイルドラモンは構えた。

「…グオオオオ!!」

次の瞬間、ブラックウォーグレイモンはパイルドラモンの懐に入っていた。

「(速い!!)」

パイルドラモンに向けて繰り出される竜系に致命的なダメージを与える“竜殺し”の名を冠する爪…ドラモンキラー。

その威力は竜系に限ればある程度の実力差すら埋める程の威力を誇る。

「舐めるなよ!!」

それを両腕から出したスパイクでブラックウォーグレイモンのドラモンキラーを受け止める。

「オオオオオオッ!!」

「だあああああっ!!」

スパイクとドラモンキラーの超速ラッシュのぶつかり合い。

単純なステータスならば究極体であり、ダークタワーデジモンである故に通常種よりも高いスペックを誇るブラックウォーグレイモンが上回っている。

しかしパイルドラモンも1年間にも及ぶ巡り合いの戦いの中で培ってきた経験がブラックウォーグレイモンとの実力差を埋めている。

一旦距離を取り、ブラックウォーグレイモンが両腕を天に翳す。

「ガイア…」

「ん?ダークタワーデジモンが喋った…?」

パイルドラモンは改めてブラックウォーグレイモンを見つめる。

ブラックウォーグレイモンの瞳には今までのダークタワーデジモンとは違う何かがあった。

「…フォース!!!」

パイルドラモンに向けて勢い良く投擲されたエネルギー弾。

「そらあっ!!」

パイルドラモンは両手を組んで全パワーを集中させて自分に迫るエネルギー弾を弾く。

弾かれたエネルギー弾は戦いを観戦していたアルケニモンとマミーモンに迫り、逃げようとしたが間に合わず、エネルギー弾の爆風で吹き飛ばされた。

「考え事してる場合じゃないな!!」

再び激突する両者。

パイルドラモンはブラックウォーグレイモンの大振りな攻撃を受け流し、腹部に拳の強烈な一打を叩き込む。

「ぐうっ!?」

「!?お前、痛いのか?」

腹部に走った痛みに苦悶の表情を浮かべるブラックウォーグレイモンにパイルドラモンは目を見開いた。

ブラックウォーグレイモンは腹部を押さえていた腕を離すと…。

「強いな…!!」

獰猛な笑みを浮かべた。

それを見たパイルドラモンは気付いた。

信じられないことだが、ブラックウォーグレイモンには“心”があるのだと。

「心を持ったダークタワーデジモン…こいつは少し…やばいかな?」

そう言いながらもパイルドラモンの表情は笑ってる。

心を持たないダークタワーデジモンは能力は高いが単調な動きしかしないため、慣れてしまえば簡単に倒せる。

しかしブラックウォーグレイモンにはダークタワーデジモン特有の高ステータスとそれを活かす心がある。

久しぶりの全身全霊を懸けた戦いにパイルドラモンも闘志を燃やす。

「ブラックウォーグレイモン…何でお前に心があるのかなんて今はどうでもいい。お前は今の俺の全身全霊の力でぶっ倒す!!」

「やってみろ!!」

再び激突する両者。

パイルドラモンはブラックウォーグレイモンの攻撃をかわしていくが、少しずつ当たるようになってきた。

「っ!!(こいつ、さっきより動きが良くなってる!!俺の動きを学習してるんだな!!)」

動きだけでなく、攻撃も先程のような大振りではなく、完全にとはいかないが動きに無駄を無くした物になってきている。

「オオオオオオッ!!!」

「っ、成る程な。生まれつき究極体だから他のデジモンとは比べ物にならない伸び代があるってわけか!!」

時間経過と共にブラックウォーグレイモンのパワーもスピードも上がってきている。

「ドラモンキラー!!」

「エスグリーマ!!」

スパイクとドラモンキラーが再び激突し、ブラックウォーグレイモンは強引にそれを払うと左腕のドラモンキラーでパイルドラモンの胸を貫こうとするがパイルドラモンはそれを後ろに倒れるように回避し、逆立ちの要領でブラックウォーグレイモンの顎を蹴り上げる。

「エレメンタルボルト!!」

掌から放たれた電撃がブラックウォーグレイモンに炸裂する。

「ぐあ…っ!?」

「はあああああっ!!!」

感電したところをパイルドラモンはブラックウォーグレイモンを腹を殴る。

何度も何度も何度も殴りつける。

「ぐっ…!!調子に乗るなっ!!」

パイルドラモンの拳を受け止め、背負い投げの要領で地面に叩きつける。

「くたばれ!!」

地面に叩きつけたパイルドラモンに向けてドラモンキラーを振り下ろす。

「ちっ!!」

パイルドラモンはブラックウォーグレイモンに足払いをかけ、体勢を崩して両腰の生体砲を構えた。

「くたばるのはお前だ!!デスペラードブラスター!!」

零距離で放たれたエネルギー波にブラックウォーグレイモンが飲まれていく。

ブラックウォーグレイモンはエネルギー波を両腕を交差させることで防ぐがドラモンキラーを失ってしまった。

「お前の厄介な武器はぶっ壊れた!!ここから先は単純な殴り合いだ!!」

「…来いっ!!」

パイルドラモンとブラックウォーグレイモンが同時に駆け出した。

パイルドラモンの蹴りがブラックウォーグレイモンの側頭部に入り、ブラックウォーグレイモンの拳がパイルドラモンの腹部に入る。

「「ぐ…おおおおお!!」」

拳と蹴りの応酬が続く。

パイルドラモンの外郭に罅が入り、ブラックウォーグレイモンの鎧の一部が吹き飛ぶ。

負けない。

今の2体の気持ちはただこれのみ。

しかし、凄まじい速度で成長し続けるブラックウォーグレイモンにパイルドラモンがついて行けなくなり、とうとう完全に力負けして吹き飛ばされた。

「貰ったぞ!ガイアフォース!!!」

吹き飛ばしたパイルドラモンに向けて放たれた渾身の一撃はパイルドラモンに見事に直撃した。

それを見たブラックウォーグレイモンは勝利を確信するが…。

「うおおおおおおおおお!!!!」

爆煙から飛び出したのは外郭に無数の罅が入り、全身に傷を負ったパイルドラモン。

「何!?」

目を見開くブラックウォーグレイモン。

パイルドラモンは全て力を拳に込め、ブラックウォーグレイモンの横っ面を殴りつけた。

「ぐはあ!?」

勢い良く吹き飛ばされるブラックウォーグレイモン。
強く背を打ったが、直ぐに起き上がって構えた。

「ぐっ、貴様…!……?」

ブラックウォーグレイモンはパイルドラモンの異変に気付いた。

パイルドラモンのエネルギーがどんどん萎んでいくことに、とうとうデジクロスが解除され、進化まで解除されてしまった。

「く、くそ……エネルギー切れかよ…」

「…終わりか…少し名残惜しいが…」

悔しそうに言うブイモンと悔しそうにブラックウォーグレイモンを見つめるワームモン。

ブラックウォーグレイモンは深く息を吐きながら構えを解いたが、気を抜いた途端に体中に激痛が入る。

「っ…」

「大輔ーっ!!」

救援に来た京と伊織。

それを見たブラックウォーグレイモンはこれ以上の戦闘は体が保たないと判断して心に満ちる何かを感じながらこの場を去った。

こうして元の世界に帰って初めての敗北をした大輔達であった。

「ブラックウォーグレイモンか…強かったな…よし、決めたぞ」

大輔は去っていくブラックウォーグレイモンを見つめながら何かを決心したように呟いたのであった。 

 

第45話:対話

ブラックウォーグレイモンとの戦いで敗北したブイモン達は…。

「うーん、負けちまった。悔しいなーもう」

「すみませんブイモン、全然悔しそうに見えません」

コンビニのパスタをズルズルと啜りながら喋るブイモンに伊織がツッコむ。

それは大輔を除いた全員が頷いた。

「何処に行くんだろう……ブラックウォーグレイモン……戦う為に生み出されたデジモン」

「あいつは多分、今は傷を治してより強い相手を捜してるよきっと」

ブイモンがデザートのケーキを頬張りながら言うと何故そんなことが分かるのかと京達がブイモンを見つめる。

「いやー何かなー。あいつと殴り合っていたらさあ、なーんかあいつのことが何となく分かるようになった」

「ふーん、戦闘馬鹿同士、共感したってことかしらねー」

【テイルモン…】

サラリと酷いことを言うテイルモンに全員は苦笑した。

ブラックウォーグレイモンに心があり、戦闘の一部始終を聞いたテイルモンはそいつは絶対戦闘狂だと確信していた。

「なあ、大輔。俺は嬉しいぞ、あんな奴がいて。あいつまだまだ強くなるぞ」

「だよな、生まれつき究極体だから成長も半端ないだろうしな。俺達が強くなるためには強い仲間とか必要不可欠だし…正直ブラックウォーグレイモンの戦い方は俺達に近いんだよな。相手に小細工無しで真正面からぶつかるって言う…正直凄えと思ったな。まだまだ強い奴は沢山いるって実感した…ヒカリちゃん、俺は決めたよ」

「ブラックウォーグレイモンをスカウトするの?」

大輔の考えを何となく察したヒカリは念の為、大輔に尋ねた。

「ヒカリちゃ~ん。流石にそれはないわよ~。」

「あ、バレた?」

「え!?嘘、当たり!?」

ヒカリの言葉に笑いながら京は否定するが、まさかの大輔の肯定に驚愕。

「だってあいつ強いし、これから強敵と戦うなら強い仲間が必要だろ」

「正しい!!君の言ってることは正しいよ!!でも相手はダークタワーデジモン…しかも闇の力を必要以上に増大させて生まれた存在なんだよ!?」

タケルが個人的な感情があるにせよ大輔の無謀な行動を止めようとする。

「クロスハートには暗黒系デジモンの魔王型のベルゼブモンが仲間になってくれたよなヒカリちゃん?」

「あ、うん。そうだね、後はバケモンとか沢山の暗黒系デジモンが仲間になって助けてくれたよね」

「私、もう暗黒系とか慣れちゃったわ。あの冒険で」

「うん、正直完全にとはいかないけど耐性出来ちゃったかも」

「ヒカリちゃんまで…」

茶を啜りながら言うテイルモン、大輔の隣でサラリと言ってのけるヒカリにタケルは愕然となった。

「実際、暗黒系ってだけで敵ってのはどうかと思うぞタケル。案外話が通じる奴かもしれないだろ?」

「まあ、あいつとの話し合い(殴り合い)は大変そうだけどな。“仲間にしたければ俺を倒してみろ”とか…」

「今、何か物騒な感じに聞こえたんだけど…」

「気のせい気のせい」

京がブイモンを見遣りながら言うとブイモンは満面の笑顔で言う。

「君達は3年前のことを知らないから…!!ヒカリちゃんも忘れたのかい?闇の恐ろしさを!?」

「忘れないわ…今でも完全に恐怖を克服出来ていない…でも、あの冒険がある程度の余裕を与えてくれたの。闇に対する恐怖への」

「正直、バグラモンとの会話で色々気付かされるところも沢山あった。俺はダークタワーデジモンってだけで心があるデジモンの存在を否定したくない。闇にだって優しい居場所があったっていいじゃないかよ。」

バグラモンとの会話で大輔も色々と考えさせられた。

闇にだって暖かな居場所があってもいいはずだ。

そして相手が闇の存在でも分かり合えるという希望をベルゼブモン達は与えてくれた。

「…………」

大輔の表情を見てタケルは大輔は自分の考えを変えるつもりが全くないことを悟って俯いた。

「大輔君、約束して。絶対に無茶はしないって」

「どうかな?それなりに無茶しないといけないかも」

「もう!!」

笑いながら言う大輔にヒカリは怒ったように大輔を見つめるのであった。

一旦解散となり、子供達はそれぞれの自宅に帰って行った。

自宅に帰ったタケルはリビングでかつての記憶を思い出していた。

今でも、たまにあの日を夢で見たりする。

消えていくパートナーの姿を見ているしか出来ずパートナーの名を叫んでいた無力な自分。

どんどん気持ちが暗い方向に向いていったその時。

「……あ」

インターホンの音に我に返ったタケルはすぐに玄関に向かい、急いで扉を開けるとそこには…。

「ようタケル。」

包みを持った大輔が手を上げて挨拶をした。

「大輔君…どうしたの?」

「ブラックウォーグレイモンのスカウトを一番嫌がってたお前の説得みたいなもんかな?…冗談はこれくらいにして…はっきり言って俺はお前のことを知らなさすぎるから。話してくれよタケル、何でそこまでして闇を憎むのかを。」

「僕に構わずにブラックウォーグレイモンをスカウトすればいいじゃない」

「お前は馬鹿か?お前はアホか?仲間の気持ちを完全に無視なんか出来るか。男同士腹割って話そうぜタケル。自分の気持ちを隠してばかりじゃ相手に何も伝わらねえんだからよ」

大輔が呆れたように言うと包みを差し出した。

「お前飯はコンビニ弁当ばっからしいから飯作っておいたから後で食え」

「あ、ありがとう…」

2つの包みを受け取る。

小さな鍋にタッパーに入ったご飯…どうやら鍋の中身はカレーのようだ。

リビングにある椅子に座り、向かい合う大輔とタケル。

そしてタケルは静かに口を開いて話し始めた。

タケルが闇を嫌悪する理由、3年前の冒険でエンジェモンが自分の命と引き替えにデビモンを倒した時の事を。

「そんなことがあったのか…」

「あの時、僕はどんなに願った事か…時間が巻き戻せる物なら…けど、時間は戻らない。嫌でも向き合わなければならない現実。僕は底なしの絶望の中、自分の運命を呪っていた…」

「悪かったな、タケル。辛いこと思い出させてよ。でもなタケル。お前や太一さん達が戦ったのがたまたま闇のデジモンだっただけで全ての闇のデジモンが悪い奴とは思えねえんだ。実際に俺とヒカリちゃんは何度かそいつらに助けられてる。ブラックウォーグレイモンだってたまたまダークタワーデジモンに生まれちまっただけさ。あいつを作ったのはアルケニモンだ。俺達人間が親や生まれを選べないように…あいつも選べないじゃねえかよ」

「…………」

「前にバグラモンが言われたことがある。“悪には悪の拠り所があってはいけないのか?”って…デジモンは神様は神様、光は光、闇は闇、善は善、悪は悪として生まれて死ぬまでその性質を変えることがないらしい。悪に生まれたデジモンは世界を呪うことを宿命づけられて、いつか正義に全ての名誉を奪われて滅ぼされる…。バグラモンはさ、悪の親玉だったけど元々はデジタルワールドの神様に仕えていた大天使のデジモンだったらしいんだよ。」

バグラモンは大輔達が戦ったデジモンだとは聞いていたが、デジタルワールドの神に仕える大天使デジモンであったことは知らなかったため、驚愕するタケル。

「敢えて悪の親玉になったんだよバグラモンは、光から闇になって、悪のデジモン達の拠り所になって世界の行く末を見極めるために。弟のことで諦めちまったけど、最後の最後で未来を信じてくれた…なあ、タケル。俺はさ、信じてえよ。甘いと思われても馬鹿って思われても良い。光と闇だって、いつかは分かり合えるかもしれないじゃんか」

「大輔君…」

「あ、一応言っとくダークナイトモンみたいな屑野郎は徹底的に叩きのめすからその辺は勘違いすんなよ?」

「う、うん…(叩きのめすって…)」

見てみたいような、見たくないような…いや、やはり見たくないかもしれない。

「少なくてもよ、闇のデジモンにだって友達や仲間のために命を懸ける奴もいるんだってことは信じてくれよ。ブラックウォーグレイモンは多分強い相手と戦ってそれに勝ちたいんだよ。パイルドラモンとの殴り合いでの意地を見てるとな」

「………分かった…信じて…みるよ。でももしブラックウォーグレイモンがデビモンみたいな奴だったら…」

「ああ、そん時はお前の考えに任せる。さて、飯にするか。温め直すからキッチン借りるぞ」

カレーを温め、ご飯をレンジで温め直して皿に盛る。

「ほれ、食え」

「「頂きます」」

タケルは気付かぬ内に笑みを零していた。

仲間とは言え久しぶりの手料理である。

大抵が市販の物やインスタント食品でハッキリ言って、タケルは手料理に餓えていた。

カレーを口に運ぶタケルとパタモン。

「「美味しい!!」」

タケルとパタモンのことを考えて辛みを抑えてくれたのだろうか、何よりこの滑らかな舌触りは何だろう?

「バナナだよ。」

「「バナナ!?」」

「カレーの隠し味にすりおろしたバナナを入れたんだ。程良い甘味とまろやかさが出るんだ。覚えとけ」

「そうなんだ…この前もお兄ちゃんのカレーをご馳走になったんだけどこれがまた辛くて……何でもいいって言った僕が悪いんだけど」

「タケル、台所の帝王にそれは禁句だ。次は俺ん家に食いに来いよタケル。飯くらい食わせてやっから」

「……ありがとう」

「お代わり!!」

「へいへい」

パタモンから皿を受け取ってカレーを盛り付ける。

もっと多めに持ってくるべきだったと後悔する大輔だったが、取り敢えずデジタルワールドに行き、ブラックウォーグレイモンをスカウトして駄目なら話し合い(殴り合い)でどうにかするとタケルに説明するのであった。

「ねえ、大輔君。いっそのこと殴り合いって言った方が清々しいよ?」

「気にすんな」

鍋とタッパーを持って高石家を後にする大輔であった。 

 

第46話:聖騎士VS竜戦士

アルケニモンとマミーモンは目の前の出来事に冷や汗を流していた。

ブラックウォーグレイモンを連れ戻すために貴重なダークタワーを200本も使って作り出した完全体のダークタワーデジモンの20体のマンモンが手も足も出ずに一方的にブラックウォーグレイモンに蹂躙されていく。

「弱い…!!弱すぎる!!もっと…もっと強い敵を出せえええええ!!!!」

前回の戦いでパイルドラモンから受けた傷は完璧に修復されていた。

ブイモンの予想通り、ブラックウォーグレイモンは傷を癒した後は、より強い敵を求めてデジタルワールドを放浪していたのだが、アルケニモンとマミーモン、そして20体のマンモンと対面して戦いに入ったのだ。

「ウオオオオオ!!」

しかしブラックウォーグレイモンが動けば相手の姿は弾ける。

ただそれを繰り返すだけで数は減っていく。

相手の数がいくら多くても、これでは全く意味は無かった。

「ぬうんっ!!」

突進してくるマンモンをブラックウォーグレイモンが爪で引き裂いて粉砕する。

生まれてすぐ戦ったのが歴戦のデジモンだったために、ただ突進を繰り返すだけの単純な動きは洗練された動きをするパイルドラモンと比べて少し戦えば攻撃は簡単に避ける事が出来た。

「(何故だ…!!戦いは俺が有利だ…それなのに何故あの時感じた感覚が来ない!?)」

あのパイルドラモンに勝った時に感じた心地のいい感覚が全く来ない。

寧ろ弱いもの苛めをしているような錯覚すら覚えた。

「俺は…!!」

こんな戦闘にもならないものをさせたことに対する苛立ちを込めた視線をアルケニモンとマミーモンに向ける。

究極体の殺気混じりの視線に完全体のアルケニモンとマミーモンは冷や汗を更に流す。

「もっと…強い相手と戦いたいんだあああああっ!!!」

両腕を天に掲げてパイルドラモンとの戦いの時よりも数段上のエネルギーを込めた必殺技をアルケニモンとマミーモンに向けて投擲した。

「「うわああああああ!!?」」

ブラックウォーグレイモンの投擲したエネルギー弾がアルケニモンとマミーモンを吹き飛ばした。

2人は放物線を描いてすっ飛んでいく。

「凄え一撃だな。初めて戦った時より強くなってる。だからこそ仲間にしたくなる!!」

「お前達は…」

現れたのは初めて戦ったデジモン達。

そして自分に不思議な感覚を与えてくれた敵。

「俺達はお前と話をするために来たんだよ。」

大輔の言葉にブラックウォーグレイモンは疑問符を浮かべながらも口を開いた。

「話?俺と戦う為か?」

かなり考えが安直だが、戦う為に生まれた者には当然の考えだろう。

それを聞いた大輔は苦笑しながら口を開いた。

「まずは話をしてからだ。戦うのはそれからだ。回りくどいのは好きじゃねえ。ブラックウォーグレイモン、俺達の仲間になってくれないか?」

「仲間?」

まさかのスカウトにブラックウォーグレイモンは目を見開く。

「俺達は選ばれし子供って存在で、アルケニモンやマミーモンみたいな連中と戦ってんだ。あいつらはまだ弱いけど、デジタルワールドにはまだまだ沢山の強い敵がいるかもしれない。だから、お前みたいに強い仲間が欲しいんだ。悪くない話じゃないだろ?俺達と一緒にいればデジタルワールドの覇権を狙う強いデジモンとも戦えるチャンスが来るぜ?」

強い相手と戦いたいと言うブラックウォーグレイモンにとってこれはかなり魅力的な条件のはずだ。

ブラックウォーグレイモンは少し考えると、口を開いた。

「成る程…悪くはない…」

「だろ?」

「だが!!」

ブラックウォーグレイモンは力を解放して構えた。

圧倒的な暗黒の波動…しかしその中にどこまでも純粋な闘志を燃やしながら。

「……………」

「俺は自分より弱い奴の言う事は聞かない!俺を従えたければ俺以上の力を示すんだな!!」

「へっ、やっぱりな。こうなると思ったぜ。じゃあ俺達も前以上の本気で行かせてもらうかな?」

取り出すのは奇跡のデジメンタル。

余程の相手でない限り使わないそれを使うと言うことは最初から本気で行くつもりなのだ。

「デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、奇跡の輝き!マグナモン!!」

マグナモンに進化させ、ブラックウォーグレイモンと相対させる。

「さあ、ブラックウォーグレイモン。やろうぜ?はっきり言って言葉で説得するよりも力で語り合った方が俺達からすれば手っ取り早いしな」

「それが貴様の本気か?」

「まだまだ力は残してるけどそれはお楽しみだ。俺の本気を見たかったら力ずくで出させてみな!!」

「いいだろう……!!必ず貴様の全力を引き出させ、また俺が勝つ!!」

「やってみな!!」

ブラックウォーグレイモンの拳を拳で受けたマグナモンは思わず笑みを浮かべた。

「(やっぱりな、こいつは成長してるんだ。このまま持久戦でチマチマとやり合う内に成長されたら奥の手を使うことになる。ここは…)」

ダメージすら成長の糧にしているんじゃないかと錯覚するほどブラックウォーグレイモンの成長率は凄まじい。

ブラックウォーグレイモンはダークタワーデジモン故に、スタミナもほぼ無尽蔵だ。

スタミナ切れもエネルギー切れもないのなら持久戦においては今までの敵より厄介だろう。

「ぬっ!?」

「最初から全力で行くぞ!!」

一気に力を全開にし、ブラックウォーグレイモンの爪を弾いて顔面を殴りつける。

吹き飛ばされるブラックウォーグレイモンを追い掛け、反撃の隙を与えずに殴り続ける。

「ぬっ!ぐううっ!!」

全身を襲う拳の弾幕にブラックウォーグレイモンは何とか耐えきり、マグナモンの両拳を受け流しながら、腹部に体当たりを叩き込む。

「ぐあっ!?」

腹部を襲う衝撃にマグナモンは表情を歪め、吹き飛ばされるが即座に体勢を立て直して爪を構えて突撃するブラックウォーグレイモンを迎撃する。

「マグナムパンチ!!」

「ドラモンキラー!!」

拳と爪がぶつかり合い、凄まじい衝撃波を周囲に撒き散らす。

「(やはり強い、先程の奴らとはまるで違う!!)」

楽しい。

やはり楽しい。

強い存在との戦いは堪らなく楽しい。

しかもこれよりもまだ強い力を隠しているのだというのだから驚きだ。

「(見たい…これよりも強い力とやらを…そしてその力を持った奴と戦いたい!!)絶対に貴様の本気を引き出してやる…!!」

「やってみな…!!言っとくけどちょっとやそっとで見れると思わないことだな!!(いいかみんな、デジクロスは仲間との絆が力になる。あいつをぶちのめす。今はただそれだけを考えろ!!)」

【了解(だぎゃ)!!】

そしてマグナモンのパワーも上がり、ブラックウォーグレイモンとの戦いも更に熾烈になっていく。

このままでは埒が明かないとブラックウォーグレイモンは一旦距離を取って両腕を前に翳してエネルギー弾を生み出す。

「受けてやるぜ…」

同様に両腕を前に翳して真っ向から受けて立とうとするマグナモン。

掌に莫大なエネルギーが溜まっていく。

「ガイアフォース!!」

「プラズマシュート!!」

同時に放たれたプラズマ弾とエネルギー弾が激突する。

威力はほぼ互角…いや。

「お前の全力ってのは…これっぽっちかーーー!!!」

「っ!!」

更にプラズマ弾の威力を上げると、プラズマ弾はエネルギー弾をぶち破ってブラックウォーグレイモンを飲み込んだ。

そしてブラックウォーグレイモンのドラモンキラーとブラックシールドの破壊に成功する。

竜の因子を持つマグナモンにとって最も脅威であるドラモンキラーを破壊しなければ危険なのだ。

しかも防御手段である盾まで破壊出来たのは幸いだ。

「ぐっ…」

「どりゃああああ!!」

体勢を立て直す暇など与えずに殴り飛ばす。

ブラックウォーグレイモンが失った武器は彼の強さを大きく支える物でもあるため、かなりの戦力ダウンだ。

「舐めるなあ!!」

しかしブラックウォーグレイモンも簡単にはやられてはくれない。

戦いの最中に成長し、嵐のようなマグナモンの攻撃を受け続けたことでようやく見切れるようになったのだ。

「はあっ!!」

マグナモンの蹴りを受け流して小型のエネルギー弾を放つ。

「ぐおっ!?」

今まで大型のエネルギー弾しか放ってこなかったので、てっきり大型しか放てないと思っていたが違うようだ。

「(小型に圧縮することで攻撃範囲が狭くなる代わりに破壊力とスピードが増してる。)」

しかしブラックウォーグレイモンの技はこれだけではない。

ワクチン種のウォーグレイモンにはない多彩な技がブラックウォーグレイモンの特徴だ。

「ウォーブラスター!!!」

連続で放たれるエネルギー弾をマグナモンはそれを身軽な動きで回避、弾いていく。

「随分色んな技を持っているな…!!」

これほど多彩な技を持つ究極体など一体どれくらいいるだろうか?

「ガイアフォース!!」

ウォーブラスターのエネルギー弾に気を取られているマグナモンに極限まで圧縮・小型化したガイアフォースのエネルギー弾を投擲する。

咄嗟に防御してダメージを最小限にするが、ブラックウォーグレイモンの戦い方に溜め息を吐いた。

「ふう…正直羨ましいくらいの成長速度だ。敵からすれば俺達もそう見えたのか?」

勝利と敗北を繰り返しながらも実力を上げていった自分達も敵からすればあれと同じだったのだろうか?

今では確認のしようもないけれど。

最早自身とブラックウォーグレイモンとの力の差はあまりない。

このままでは前回の二の舞だ。

だから切ることにする現時点の切り札を。

「ブラックウォーグレイモン、お前はやっぱり凄えや。マグナモンのパワーにも怯まねえで真っ向からぶつかってきた。益々仲間になって欲しくなった。見せてやるぜブラックウォーグレイモン。これが今の俺達の最高の力だ!ジュエルビーモン!ネフェルティモン!ペガスモン!アクィラモン!アンキロモン!エヴォリューションクロス!」

「マグナモンVM(ウィンクルムモード)!!」

純白の肉体と白銀の鎧を身に纏うマグナモンVM。

先程と比べて圧倒的な力を目にしてブラックウォーグレイモンの体は震えていた。

それは恐怖ではなく歓喜。

「(これが奴の本気…!!これほどの力が…!!)ようやく本気を見せたか…見せてもらうぞ!!貴様の真の力を!!」

一気に距離を詰め、マグナモンVMに向けて渾身の右ストレートを繰り出す。

「…遅い」

左手を顔面の前に翳してブラックウォーグレイモンの拳を受け止めた。

それも簡単に。

「何!?」

「今から言っとくぞブラックウォーグレイモン。いくらお前が成長しても今のお前は勝てない。それは何でか分かるか?」

「ぐはあっ!?」

何時の間にかブラックウォーグレイモンの腹部にマグナモンVMの膝がめり込んでいた。

油断など一切していなかったのに何故自分は攻撃を喰らっている?

「今の俺のいる場所はお前のいる所の遥か上だ。一朝一夕で追い付ける実力差じゃない」

単純にブラックウォーグレイモンの反応速度を上回る速度で膝蹴りを叩き込んだ。

ただそれだけ。

「行くぞおっ!!!」

再び繰り出される拳と蹴りの連撃。

ブラックウォーグレイモンは何とか耐えきろうと防御に全パワーを回してもまるで意味を為さない。

ブラックウォーグレイモンの防御力を遥かに上回る力で攻め続けるマグナモンVM。

「ぐ…おおおお!!ガイア…フォース!!!」

辛うじて耐えきって渾身のエネルギー弾を放つものの、マグナモンはそれを殴りつけて粉砕してしまった。

「なっ!?」

「終わりにしようぜブラックウォーグレイモン…ミラクルグリッターーーーッ!!!!」

マグナモンVMのアーマーから放たれた灼熱の光はブラックウォーグレイモンに向かって伸びていく。

ブラックウォーグレイモンは避けようとするが、あまりのダメージにふらついた。

「しま…ぐああああああ!!?」

ブラックウォーグレイモンに光が直撃し、ブラックウォーグレイモンの絶叫が響き渡る。

「ふう…」

煙が晴れると、マグナモンVMは深い息を吐きながら倒れているブラックウォーグレイモンに向かって歩き出す。

「ぐっ…」

「おっと無理するな。俺の必殺技をモロに喰らったんだ。」

起き上がろうとするブラックウォーグレイモンだが、マグナモンがそれを制した。

「………俺の……負けだ…」

少しの間を置いてブラックウォーグレイモンが敗北を認めた。

「じゃあ、俺達に力を貸してくれるか?」

「…俺は負けた…お前達に従おう…」

「従うとかじゃなくて、仲間だよ。それにしてもお前は凄いよ。正直普通のマグナモンで充分じゃないかと思ってたのにさ…」

マグナモンVMは分離し、ブイモンに退化するとブラックウォーグレイモンを見据えた。

「また勝負しようぜブラックウォーグレイモン。俺もお前ももっと強くなってさ」

「……いいだろう。だが次は負けん」

「へへ、そうこなくちゃ」

「うーん、やっぱり戦闘馬鹿だわこの2人。」

ブイモンとブラックウォーグレイモンを見てテイルモンはぼそりと呟くのであった。 

 

第47話:見守る者

ブラックウォーグレイモンとの激闘を終えてスカウトに成功した大輔達は現実世界でダークタワーを破壊、復興作業を繰り返す日々を送っていた。

時たまブラックウォーグレイモンを交えて特訓(マグナモンの状態で)をしていたりする。

「ふう…今日も疲れたな。ブラックウォーグレイモン、傷は治ったか?」

「問題ない、この中では傷の修復速度が早まるようだな」

100本のダークタワーデジモンのブラックウォーグレイモンは外に出ると相当の影響を与えてしまうようだが、D-3X内なら世界に影響を与えないで済むので現実世界では基本的にD-3X内…まあこれはブイモン達にも言えることではあるが。

「ブラックウォーグレイモン、お前からすれば現実世界ってどういう世界に見える?やっぱりお前から見てもデジタルワールドに比べれば不思議な世界なのか?」

「………分からん。ただ、平和で衣食住に恵まれているが、そこに住んでる人間はどこか満足しておらず、何か不安を抱えているような奴が多かったな」

大輔の問いにブラックウォーグレイモンは少しの間を置いた後に答えてくれた。

「うーん、やっぱりお前もそう思うか。そりゃあ人間は俺みたいに簡単に何でも割り切れたりする奴ばかりじゃない。色々失敗して、何が起こるのか分からない明日に不安を抱えてる奴が多いのかもな」

「不安か…生きるために邪魔になるならばそんな物など感じなければいい。何故一々不安を感じなければならない?」

「うーん、でも多分俺達がデジタルワールドで危険な目に遭っても生きていられんのはその不安とか怖さを感じることが出来る心があるからじゃないか?」

「?」

疑問符を浮かべるブラックウォーグレイモンに大輔は言葉を紡いでいく。

「何て言うかな…不安とか怖いとか感じることが出来ないと…俺が言うのもあれだけど、後先考えないで無茶ばかりする命知らずの無鉄砲な奴ばかりになっちまう。そう言う無鉄砲さにブレーキをかけるために不安とか怖さを感じることが出来る心があるんじゃないか?お前もそうだろブラックウォーグレイモン?戦いの最中、危機感を感じて無意識に心に体が引っ張られることってないか?」

「…まあ、無くはないな」

戦いの最中に危機感を感じて無意識に体が動くこともたまにある。

「だが、俺は100本のダークタワーから生まれた無機物だ…無機物である俺に何故心があるのだろうな…」

ブラックウォーグレイモンの疑問に大輔は少し頭を悩ませた。

「うーん、100本のダークタワーが融合してブラックウォーグレイモンになる途中に何か起きたとか色々考えられるけどさ、取り敢えずあるんだからそれで良いんじゃないか?寧ろ心があってラッキーなんじゃないかお前?」

「何故だ?」

「よーく考えてみろよ心がないってことは他のダークタワーデジモンと同じようにアルケニモンの操り人形みたいなもんだ。お前からすればアルケニモンの操り人形なんて嫌だろ?」

「当然だ」

「心がないとお前の好きな戦いが何の面白味もないただの作業に成り下がるんだぜ?」

「………む…う……しかし、心があって他に何が得られる?」

唸るブラックウォーグレイモンだが、他にも疑問があるのか大輔に尋ねる。

「うーん、仲間とかライバルとか…こういうのは俺じゃなくてデジモンの方が良さそうだ。明日聞いてみるか?」

「そうしよう」

翌日、デジタルワールドに到着してD-3Xから出されたブラックウォーグレイモンはいきなり質問した。

「心とは何だ?心があって何が得られるのだ?」

【へ?】

いきなり質問された賢達は目をパチパチさせた。

「いきなり聞かれてもさっぱりだろ。実はな…かくかくしかじかのほにゃららなんだ」

「それじゃあ分かりませ…」

「「ああ、成る程…ダークタワーデジモンであるブラックウォーグレイモンに何故自分に心があるのかを疑問に思って、取り敢えずあるならそれでいいってことで落ち着いたけど、心があって何が得られるのかを知りたくなったんだね?」」

意味不明な説明法に伊織が顔を顰めるが、賢とヒカリはあっさりと内容を理解して説明してくれた。

これが付き合いの長さと深さか。

「「何で分かるの?」」

「「いや、何となく」」

タケルと京の当然の疑問に賢とヒカリは何となくで済ませた。

こればかりは付き合いの長さと深さの問題だ。

そしてブラックウォーグレイモンの疑問に頭を悩ませる一同。

「心があればうみゃー食い物に感動出来るだぎゃあ!!」

「あんた食べ物ばっかりね。えっと…仲間とか…」

「それは昨日俺が言った」

アルマジモンの言葉に呆れながらテイルモンが頭を悩ませながら言うが残念ながら先に言われていた。

「うーん…例えば私の場合は1人でケーキ」

「心があれば、色々なことを感じることが出来ますよ。例えば、平和な街を見て穏やかな気持ちになったりとか、友達と一緒にいて楽しいと思えたりとか。もしかしたら未知の物を見聞きして触れた時の感動とか」

京の1人でこっそりケーキを沢山食べた時の感動を説明しようとしたが、伊織がそれを遮ってブラックウォーグレイモンに言う。

「未知の物とは?」

「え?えっと…」

「君は生まれたばかりだからデジタルワールドの全てを知ってるわけじゃないでしょ?見たことない物とか場所なんて沢山あるはずだよ」

タケルが言うとブラックウォーグレイモンは確かにと頷いた。

今までは強い相手を捜していたため、周りのことなど気にかけていなかった。

「とにかく戦うことばかりが楽しいことじゃないと思うの。例えば…はい」

ヒカリが箱から焼き菓子をブラックウォーグレイモンに差し出す。

「それは?」

「カップケーキ。ブラックウォーグレイモンは食べ物を食べたことないでしょ?」

「…?別に食物の摂取など不要…」

「ちょっと口に入れてみろよ。もしかしたら食えるかもしれないじゃないか」

「…………」

促され、渋々と口の中にカップケーキを放り込むと不思議な感覚が口内を満たす。

「ど、どう…?」

無言のブラックウォーグレイモンにドキドキするヒカリ。

一体どんな答えが彼から飛び出るのだろうか?

「…不思議な…悪くない感覚だ。」

「え?」

「口の中に入れた途端、今まで感じたことのない感覚を覚えた。悪くない…この感覚はなんなのだ?」

「多分、美味い…だろうな」

「美味い?」

「ヒカリちゃんのカップケーキ…と言うかお菓子は美味いからな。食った瞬間嬉しくなるって言うか…」

「美味い…この感覚が美味いということなのか…」

「因みに口に入れて不快になったら不味いだ」

「うむ、分かった」

究極体と言えど生まれたばかりのブラックウォーグレイモンは分からないことが多い。

本日もダークタワーを破壊して特訓の後ブイモンと会話していた。

「お前は何故強い?どうやってそれ程の力を得たのだ?」

「んー、俺だけの力はそんなに強くないぞ。俺の力はみんなの力があるから強いんだ。」

実際ブイモンの強さは仲間の力があっての物なので、単体の力はどうしても劣ってしまう。

「やっぱりさ、1人だけの力じゃどうしても限界があるんだ。でもみんなの力を合わせれば1人じゃ倒せない敵や出来ないことを乗り越えることが出来るんだよ。お前もいればきっとどんなムカつく奴からもみんなを守りながら倒せるようになるんだろうな。」

「…不思議な奴だな貴様は………」

ブラックウォーグレイモンはブイモンを見つめながら呟く。ブイモンは疑問符を浮かべた。

「そうかあ?」

「ああ、そうだ。」

ブイモンとブラックウォーグレイモンの様子を大輔とヒカリは静かに見守っていた。

「どうやら上手くやれてるようだな。正直みんながまだ苦手意識持ってるなら色々手を回さなきゃいけないところだったけど。」

「次からはブラックウォーグレイモンのためにカップケーキを多めに焼かないとね」

あまり表情には出さなかったが、カップケーキを気に入ってくれたらしいブラックウォーグレイモンにヒカリは笑みを浮かべながら言う。

「その時は俺も手伝うよ。」

大輔も笑顔を浮かべながら言うと、ヒカリと共にブイモンとブラックウォーグレイモンの元に向かうのであった。 

 

第48話:不思議な少女

大輔達は現在、ダークタワーを破壊するために森に来ていたのだが、一緒に歩いていたテイルモンがふとその歩みを止めて樹海の中を見回す。

不自然に存在するダークタワーもここにはなく、何かがテイルモンの頭に引っかかっていた。

「……テイルモン?」

そして、少しの間を置いてテイルモンは思い出す。

「……ここ!私が本物のホーリーリングを無くした所だ!!」

「ホーリーリングを!?」

慌てて、ヒカリ達はテイルモンの元へ駆け寄る。

「間違いない。あの時は、デジモンカイザーが暴れていたから探せなかったけど……」

大輔達がデジタルワールドに来る日よりも前にテイルモンはこの森でイービルリングによって操られたユニモンから必死に逃れ、気付いた時には尻尾に填めていたホーリーリングが無くなっていたのだ。

「あれ?じゃあそのホーリーリングは?」

「…これは貰い物だ。私ではない私が使っていたホーリーリングのコピー。このホーリーリングでは私の本来の力は使えない。」

京がテイルモンの尻尾に填まっているホーリーリングを指差しながら問うと、テイルモンは少しの間を置いて答えてくれた。

「…本物のホーリーリング…か…よし、探してみるか。もしかしたら…」

「私の本来の力を発揮出来るようになるかもしれない」

「……もしかしたら拾われてるかもしれないけどな。ホーリーリングって稀少なんだろ?拾って悪用しようって奴もいるかもな」

「……あまり想像したくないな…まあ、あれからもう何日も経っているから有り得なくはないけど…」

「じゃあ、テイルモンのホーリーリングが拾われて悪用されてないことを願って探すとしますか!!」

ブイモンが元気よく言うと全員が頷いた。

「取り敢えず手分けして……」

「(来……て…)」

「?」

突如、頭の中に響いてきた声に大輔は勢い良く振り返るが、振り返った先には誰もいない。

「大輔君、どうしたの?」

タケルが疑問符を浮かべながら大輔に尋ねる。

「今、声が聞こえなかったか?」

「え?いや別に?何も聞こえなかったよ?大輔君、幻聴でも聞いたの?ボケるにしても早過ぎ……あがっ!?」

失礼なことを抜かすタケルの尻に膝蹴りが炸裂。

地面に突っ伏し、尻を押さえて痙攣するタケルを伊織達は呆れ半分、憐れみ半分の視線を寄越した。

「タケルさん……余計なことを言ったら痛い目に遭うっていい加減学びましょうよ…」

「タケル君って…もしかしてマゾって奴なの?」

それを聞いたタケルが起き上がる。

「いやいや違うよヒカリちゃん!?ただの冗談なのに短気な大輔君が手をあげるから…」

「冗談でも言う相手を間違えてんのよタケル君…」

タケルの言葉に京もツッコんだ。

「と言うか誰!?ヒカリちゃんにマゾなんて言葉教えたの!?」

【………………】

「………………ブフッ!!」

「ブイモン!!君か!!」

全員が明後日の方向を見遣るがとうとう堪えられなくなったブイモンが噴き出した。

「全く馬鹿やってる場合じゃないだろ…ホーリーリングを探さねえとな」

「原因は君…何でもないですごめんなさい」

蹴りを繰り出そうとする体勢に入った大輔にタケルは即座に謝罪した。

「何かタケル君が大輔をからかっていた時期が遠い昔のように思えてくるわねー」

「はい、今では問答無用でお尻に蹴りが入りますからね」

京と伊織が大輔とタケルを生暖かい目で見つめながら呟くのだった。

大輔はブイモン(D-3X内にブラックウォーグレイモン)と共に森を静かに歩いていた。広大な樹海の中で1つのホーリーリングを見つけ出すのは骨が折れるだろう。

「(来て…)」

「っ!!まただ」

「え?何だよ大輔?」

「声が聞こえるな」

「ブラックウォーグレイモン、お前にも聞こえるのか?」

「ああ…そして声の主の力…大きいがとても無邪気な力だ…闇の力だが、光にとても近い…」

D-3X内にいるブラックウォーグレイモンと会話する大輔に何か除け者にされたような感じがしたのかブイモンはムスッとしている。

「どうしたブイモン?」

「何でもない!!」

ムスッとした表情を浮かべながらそっぽを向くブイモンにブラックウォーグレイモンはこっそりと深い溜め息を吐いた。

しばらく歩くと段々と薄暗い森の中が明るくなっていく。

所々に花が咲いており、重苦しい雰囲気が軽くなっていくような気がした。

「(来て…1人は寂しいの…私の所に来て…)」

「声が大きくなった…ここだな…何処にいるんだ?返事をしてくれ!!」

「お前は何処にいるのだ?」

「(私の声が聞こえたの?私の所に来てくれたの?)」

「ああ、そうだよ。君の声が聞こえたから此処まで来たんだ。」

「お前は何処にいる?場所を教えろ」

D-3Xから出たブラックウォーグレイモンも声の主に興味が湧いた。

力は自分に大きく劣るだろうが、光に限りなく近い闇の力の持ち主が気になりだしたのだ。

「(ここ!!私はここにいるの!!早く、早く来て!!)」

「あそこだな?」

「さっさと行くぞ」

「ああっ!?ちょっと待ってくれよお!!」

先に進んでいく大輔とブラックウォーグレイモンを追い掛けるブイモン。

「(不思議な空間だ…デジタルワールドであろうと俺が存在するだけで何らかの影響を与えると言うのにこの空間では何の変化も起きない…俺の闇の力が影響を与える前に浄化されているのか?)」

それなのに違和感は全く感じないどころかとても居心地がいい。

「(この空間は声が聞こえる者ならば例え異端の存在でも受け入れる場所なのか…)」

胸の奥に暖かい何かが灯るような感覚を覚えたブラックウォーグレイモン。

しばらく歩くと、銀色の髪の少女が満面の笑みで迫ってきた。

「わあ!来てくれたの!?ありがとう。ずっとずっと1人で寂しかったの!!」

「「…………」」

駆け寄って来た少女に大輔は目を見開き、ブラックウォーグレイモンは少しの間を置いて驚愕する。

「お前は…デジモンだな?」

「うん!!そうだよ!!」

見た目は人間の女の子に見えるが、よくよく見ると普通の人間とは違う部分もある。

「名前は?」

「名前?知らない」

あっさりと言う女の子デジモンに絶句する大輔。

「名前を知らないなんて…どう呼べばいいんだ…?」

「あなたの名前は?」

「…本宮大輔、大輔でいいよ」

「うん!!おっきくて黒いあなたは?」

「ブラックウォーグレイモンだ」

「ブラック…ウォー…グレイモン…?名前長いねえ。ブラックって呼んでいい?」

「…好きにしろ」

「うん、よろしくねブラック!!」

「俺はブイモンだ!!よろしくな!!」

明るく挨拶するブイモンに女の子デジモンは目をパチパチさせた。

「何?この青蛙?」

「んなあ!?」

「うーん……名前を思い出すまで何て呼ぶか…」

硬直してるブイモンを無視して女の子デジモンの代わりの名前を考える大輔。

本人は名前なんて知らなくても構わなそうだが、自分達からすれば名前が無いのは不便だった。

「う~ん、夏…親しみを込めてなっちゃんってのは?」

「なっちゃん?」

「うん、夏だからなっちゃん。夏は俺達にとって特別な季節なんだ。新しい友達になる君にあげる代わりの名前」

「夏…なっちゃん…なっちゃん!!うん!私、今から夏…なっちゃん!!」

「単純なの…」

「うるさいよ!出来損ないの海豚(イルカ)!!」

「何だとおっ!?この無駄にでかい白兎!!」

「止めろ、下らんことで喧嘩するな鬱陶しい」

「ごめんねブラック」

「むぐぐぐ…っ」

喧嘩してる2人を強引に引っ剥がすブラックウォーグレイモン。

なっちゃんは申し訳なさそうに謝るが、ブイモンは歯軋りしてなっちゃんを睨みつけている。

「なっちゃん、ブイモンは俺の大事なパートナーなんだ。あまりそういう風に言わないでくれ」

「パートナー?」

「一番頼りになる相棒さ」

大輔の説明になっちゃんは頬を膨らませた。

「私も大輔のパートナーになりたい」

「え?」

「んなああああ!?駄目だ駄目だ駄目だあああ!!大輔は俺のパートナーだ!お前みたいな奴に大輔をやれるかああああ!!」

驚愕し、目を見開きながら叫ぶブイモンに大輔は苦笑しながら首を横に振った。

「どうして?何で?」

悲しそうに大輔を見つめるなっちゃんに大輔はゆっくりと口を開いた。

「俺にとっての一番のパートナーはこいつだけだし、多分なっちゃんがパートナーになっても、俺はなっちゃんのポテンシャルを100%発揮出来ない。でも…仲間になることは出来る。このD-3Xがあれば、なっちゃんの傍にいて、一緒に戦うことが出来る。なっちゃんは…デジクロス要員になるだろうけど」

「???よく分からないけど、大輔と一緒にいられるなら何でもいい!!」

疑問符を沢山浮かべながらも、なっちゃんは大輔の傍にいられるならとD-3Xに触れた。

「その代わりブイモンと仲良くな?」

「ゔ……ゔゔゔ…わ、わ、分か…った………」

凄まじい葛藤の末、なっちゃんは了承した。

「ブイモンもいいな?」

「分かった分かった。仕方がないから大輔の傍にいさせてやるよ。ふんっ」

「むうう…!!」

「何故こいつらは仲が悪いんだ…?」

「性格の相性が最悪なのかなあいつら?」

呆れ顔のブラックウォーグレイモンと苦笑する大輔。

なっちゃんとブラックウォーグレイモンをD-3X内に入れようとした時であった。

「困るのだがな…彼女を連れて行かれては…彼女を取り込んで完全に復活することが出来なくなる…」

「誰だ!?」

振り返ると山のように大きく、強靭な四肢を持つ魔獣で、下半身には全てを飲み込む程の大きな口が付いているデジモンがいた。

「クーックックック…ようやく…ようやく見つけたぞシスタモン・ブラン…」

暖かな空間が暗くおぞましい空間に変わる。

「貴様、何者だ?」

「私はかつてアポカリモンと呼ばれた者…今ではガルフモンとして生まれ変わった」

「アポカリモン…確か、太一さん達が倒したデジモンだったな。その生まれ変わりだって?」

ガルフモンは大輔の言葉に笑みを浮かべた。

「そう、私はかつて選ばれし子供に敗北し、自爆を試みたが、デジヴァイスの力によって阻止され、僅かな残骸となって暗黒空間を漂った…そして暗黒空間の中で飛び散った残りの残骸とデジモン達の無念を取り込んでガルフモンの…今の姿になれたと言うわけだ。だが、アポカリモンとしての力と姿を取り戻すには力が足りない。だから…」

「この空間を作り出せる莫大な力を持つナツ…いや、シスタモンを取り込んで復活しようと言うのか?」

「その通り…お前も私と同じ暗黒の存在だ。特別に取り込んだ後も意志を残してやっても良いぞ?」

「ふざけるな!俺は貴様の一部になど絶対にならん!!」

「おい、ガルフモン。アポカリモンの生まれ変わりだか何だか知らないけどな。俺の仲間を取り込むだの何だの…ふざけんな!!」

ガルフモンの言葉に激怒するブラックウォーグレイモンと大輔。

「どうやらもう1回叩きのめしてやらないといけないみたいだな。おい、なっちゃん。危ないから下がってなよ」

なっちゃんを下がらせると、ブイモンも拳を鳴らして戦闘体勢に入る。

「(こいつみたいな得体の知れない奴には小手調べなんか要らねえ!!)デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、奇跡の輝き!マグナモン!!」

「頼んだぜ、マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!」

「「うおおおおおお!!!」」

マグナモンとブラックウォーグレイモンが同時にガルフモンに突撃した。

ガルフモンの豪腕が2体に向けて振り下ろされるが、それをかわして攻撃に移行した。

「プラズマシュート!!」

「ウォーブラスター!!」

プラズマ弾とミサイルの一斉掃射と連続エネルギー弾がガルフモンに直撃する。

「ぬおっ!?」

よろめいたガルフモンにマグナモンとブラックウォーグレイモンは追撃を繰り出す。

「ミラクルグリッター!!」

「ガイアフォース!!」

鎧から放つ光と負のエネルギー弾がガルフモンに直撃した。

「「…やったか……?」」

「この程度でこの私を倒せると思っていたのかな?」

「「何!?」」

背後から聞こえた声に戦慄を覚えたマグナモンとブラックウォーグレイモンは振り返るが既に手遅れであり、下半身の巨大な口の中に吸い込まれてしまった。

「ああ!?」

「マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!」

吸い込まれてしまったマグナモンとブラックウォーグレイモン。

残ったのはなっちゃんと大輔のみ…。

「あの2体は間もなく消化吸収され、私の一部となるだろう。その上でシスタモン・ブランを取り込めば私はかつての…いや、それ以上になれる!!」

ガルフモンが笑みを浮かべながらなっちゃんを見下ろすと、口から闇の波動弾を放った。

「魔法盾展開!!」

詠唱し、槍を構えると魔法盾を展開して波動弾を受け止めた。

「なっちゃん!!」

「大輔、大丈夫!?」

「ああ」

「ほう、成長期でありながら我が一撃を防ぐか…益々取り込みたくなったぞ貴様を」

なっちゃんの力を目にして益々彼女を取り込みたくなったのか、ガルフモンが醜悪な笑みを浮かべる。

「(マグナモンとブラックウォーグレイモンの攻撃をまともに喰らったのに大してダメージを受けてない、とんでもなくタフな奴だ。奴を倒すにはマグナモンとブラックウォーグレイモンをデジクロスさせるしか…でもどうやって?)」

マグナモンとブラックウォーグレイモンはガルフモンの体内だ。どうやって2体をデジクロスさせる?

「(何とかしてあの2人の所に行かないと…でも…俺があいつの体の中に入って無事でいられるわけがないし…)」

「く…ぐうう…!!」

再び放たれたガルフモンの攻撃を魔法盾で必死に防ぐなっちゃんを見て何かが閃いた大輔。

「なあ、なっちゃん。俺達を包み込むようなタイプのバリアって張れないか?」

「え?張れるけど、どうして?」

「へへ…、一か八かの賭けさ」

疑問符を浮かべるなっちゃんに大輔は笑みを浮かべた。

「さあ、これで終わりだ。シスタモン・ブランを取り込んで私は世界を滅ぼし、私が世界を支配する!!」

ガルフモンが下半身の口を開けた瞬間。

「今だ、なっちゃん!!」

「うん!!」

なっちゃんが槍を構えて詠唱をし、彼女と大輔を包む円形のバリアが展開され、一気に口の中に突入した。

そしてガルフモンの体内ではマグナモンとブラックウォーグレイモンが消化吸収されまいと必死に足掻いていた。

「くっ…このままじゃ、消化されちまう…」

「奴の一部など冗談ではない…!!」

技を当てて無理矢理脱出しようとするが威力が足りず、焼け焦げてはいるが、穴は開いていない。

このままでは…。

「マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!」

「大丈夫!?」

「大輔!?」

「ナツか!?」

バリアに守られた大輔となっちゃんがまだ消化されていないマグナモンとブラックウォーグレイモンを見て安堵の表情を浮かべた。

「なっちゃんにバリアを張ってもらったんだ」

「ああ、成る程な…」

自分達ですら危険な場所に大輔達が入れるわけがないので納得した。

「マグナモン、ブラックウォーグレイモン。反撃開始と行こうぜ!!」

「おう!!」

「…ああ」

大輔がD-3Xを構えた。

「マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!アンノウンクロス!!」

「行くぜブラックウォーグレイモン!!」

「ふん…貴様に俺の力が使いこなせるか見せてもらうぞ…!!」

デジモンとダークタワーデジモンの全くアンノウン(未知の)な合体。

光が消えた時にはマグナモンの鎧は銀色に変化し、背中に翼と両腕にドラモンキラーを装備して体色は蒼から漆黒に変わっていた。

「マグナモンBW(ブラックウォリアー)!!!」

「行け、マグナモン!!」

「プラズマガイアフォース!!」

負のエネルギーを纏った紅いプラズマ弾が炸裂し、ガルフモンの体内に傷を作る。

「うおおおお!!ブーストトルネード!!」

両肩、両腰のブースターを噴かして高速回転し、銀色の竜巻となって突進する。

「ガッ!?アアアアアア!?」

突如襲う激痛に悶え苦しむガルフモン。

マグナモンBWがガルフモンの体をぶち破って脱出し、大輔となっちゃんも脱出に成功していた。

「脱出成功!!さあ、ガルフモン!!覚悟しろ!!プラズマガイアフォース!!」

プラズマ弾と誘導ミサイルが一斉掃射され、ガルフモンに直撃する。

「ば、馬鹿な…光と闇が交わっただと!?有り得ん!!」

「有り得るんだよ、お前の目の前で起きてるだろうが!ダークネスグリッター!!!」

黄金の輝きと闇の輝きが混ざり合い、銀色の閃光が鎧から放たれた。

「そ、そんな…ひ、光と闇が交わるなど…そんな奇跡が…うわああああああ!!!!」

光と闇の閃光に飲まれたアポカリモンの生まれ変わり、ガルフモンは断末魔の叫び声を上げて消滅した。 
 

 
後書き
この作品にメイクーモンはいない…いないのデス!! 

 

第49話:ブラックアグモン誕生

アポカリモンの生まれ変わりであるガルフモンをデジモンとダークタワーデジモンの未知数の合体で叩き潰した大輔達。

その光と闇の合体攻撃の破壊力は周囲の暗黒の力すら容易く粉砕してみせた。

「わーい、勝った!!」

「おう、なっちゃん。ガルフモンからシスタモン・ブランなんて名前が出たけどどうする?」

「うーん、大輔から貰った名前がいい。ナツかなっちゃんでいい」

「おう、分かった。」

「おい、なっちゃん」

「?」

「その…助かった。ありがとう…認めてやるよ、お前も大輔のパートナーになることを…でもお前は2番目だ!!大輔のファーストパートナーは俺、セカンドパートナーはお前だ!!」

大輔の1番のパートナーデジモンはあくまで自分だと言うマグナモンBWに大輔は苦笑、同化しているブラックウォーグレイモンは呆れ顔を浮かべていた。

「別にいいよ今はそれで、大輔の1番は私が貰うから」

「何!?」

喧嘩をする2体だが、先程より険悪ではない。

何だかんだで認め合ったんだなと大輔は笑った。

「大輔君!!今のは何な…の…?」

慌てて駆け寄ってきたヒカリと賢達だが、目の前の光景に目を疑った。

大輔の腕にしがみつく銀髪の可愛らしい少女。

「だ、大輔君…その子…誰?」

「ああ、この子はデジモンのシスタモン・ブランのナツちゃん…愛称はなっちゃんだ。ほら、なっちゃん。挨拶するんだ」

「はーい、えっと…シスタモン・ブランでナツって言うの。大輔から貰ったナツって名前の方が気に入ってるからナツか、なっちゃんって呼んで?」

「んえええ!?あなたデジモンなのおおおお!?」

驚愕する京。

確かにエンジェモンなど人間に近いデジモンを見てきたが、なっちゃんはそれ以上だ。

「うるさい…ねえ…」

「な、何?」

京の声のでかさに顔を顰めながらもヒカリに歩み寄るなっちゃん。

ジッと見つめる彼女に居心地悪そうなヒカリである。

「あなた…私に近い何かを感じるよ?」

「え?」

なっちゃんに言われてヒカリは彼女を見つめる。

確かにどこか彼女には近い何かを感じた。

タケルもタケルでなっちゃんから何かを感じるのか戸惑ったような表情を浮かべている。

「(この子は…闇?…いや、それにしては光に近すぎる…この子は一体…)」

闇には間違いないがあまりにも光に近い。

何というかあまりにも純粋と言うか透き通っているというか…。

今まで闇を感じる者は同じような精神構造をしており、狡猾で自分以外の存在を下に見て、何より冷酷だった。

しかしなっちゃんはそんな者とは正反対であり、寧ろ暖かさを感じる光に近い。

「その姿、マグナモンとブラックウォーグレイモンがデジクロスしたんですか?2体がデジクロスしなければならないくらい強いデジモンがここにいたんですか?」

「ああ、アポカリモンの生まれ変わりのガルフモンがいてさ。そいつをマグナモンとブラックウォーグレイモンのデジクロス体で叩き潰した」

【へー…えええええええええ!!?】

サラリと言われた爆弾発言にこの森が震え上がるくらいの音量の叫びが響き渡る。

数分後。

「落ち着いたか?」

「あ、はい。お騒がせしました」

何故か敬語のタケルに違和感を感じながらも、大輔はヒカリや賢に向き直る。

「なっちゃんも連れて行く。いいよな?」

「ああ、勿論。」

「私もいいよ?」

話していく内に仲良くなったのか、なっちゃんはヒカリに抱きついている。

「クロスオープン!!」

マグナモンとブラックウォーグレイモンが分離、退化してしまった。

そう、何故かブラックウォーグレイモンも退化の光に包まれてしまった。

「ふう…む?」

唖然としながら自分を見つめる大輔達にブラックウォーグレイモンだったものが訝しげに辺りを見回す。

ブラックウォーグレイモンだったものは困惑していた。

自分の手がいつもよりも小さいことに、目の前の大輔達がいつもより大きい上に辺りの景色が全く違う。

これは一体どうした事か?

「……………お前達、巨大化したか?」
【お前(あなた・君・あんた・おみゃー)が小さくなった(のよ・んですよ・んだぎゃあ)んだよ!!!】

ブラックウォーグレイモンだったものの天然発言に全員がツッコミを入れた。

そう、どういうわけかブラックウォーグレイモンは黒い…ウィルス種のアグモン、ブラックアグモンに退化してしまったのだ。

「何で!?どうして!?何故何WHYーーー!!?」

「多分、大輔さんのD-3Xの力を受けたことで進化と退化の能力が備わったんじゃないでしょうか?」

動揺し、パニクった京を無視して伊織が自分の考察を言うが、間違ってはいないだろう。

恐らく奇跡を起こす奇跡のデジメンタルの力の影響を受けているのもあるかもしれない。

「にしても成長期の姿になったおかげで随分と闇の力が小さくなったな。触れないと闇の力があるのかどうかも分からなくなっちまった。」

「闇の力は殆ど感じないわね」

「うん」

テイルモンもパタモンはブラックアグモンの闇の力が聖なる光に覆われ、無駄に力が外部に漏れないような状態になっていることに気付く。

これが奇跡の名を冠する奇跡のデジメンタルの力か。

「とにかく、今日からよろしくななっちゃん!!」

「うん!!」

新たな仲間、シスタモン・ブランことナツ…なっちゃんを迎え入れる大輔達であった。 

 

第50話:あっさり終わる聖石編

ブラックウォーグレイモンがブラックアグモンへの退化と進化の能力を得たことでブラックウォーグレイモンの様々な問題が解決した。

しかし今度はアルケニモンとマミーモンがホーリーストーンを破壊してデジタルワールドに災いを齎そうとするが、その現場を目撃した大輔達によって…。

「インペリアルドラゴンインパルス!!」

パイルドラモンHMの必殺技の突進を喰らって1個目のホーリーストーン破壊は失敗に終わり。

「トップガン!!」

「アラミタマ!!」

シルフィーモン、シャッコウモンの必殺技をモロに喰らって吹き飛び、2個目も失敗。

「セイントエアー!!」

「ヘブンズゲート!!」

3個目もエンジェウーモンのセイントエアーで力を奪った後にホーリーエンジェモンの即死技の鬼畜コンボで追い詰める。

「邪悪なる者を、ゲートの向こうの亜空間に葬り去るのです!!」

ご丁寧に説明までしてくれたので残りの力を振り絞って逃げ出し、3個目も失敗。

「ちょっとあんた!誰があんたを作って…」

「お前の指図など受けん!!」

大輔のD-3Xから飛び出してきたブラックアグモンがブラックウォーグレイモンに進化し、色々喚くアルケニモンとマミーモンにエネルギー弾を投擲して吹き飛ばす…。

4個目も見事に失敗。

「デスペラードブラスター!!」

最早会話など不要とばかりに生体砲を構えてエネルギー波を放って吹き飛ばすパイルドラモン。

5個目も見事に失敗。

「ミラクルグリッター!!」

6個目も当然のようにマグナモンが光線を放って倒した。

アルケニモンよりアンデッドのマミーモンの方のダメージが深刻だったのは言うまでもないだろう。

「プラズマガイアフォース!!!」

最後の中華の泉にあったホーリーストーンの破壊も、最早自分達とは別次元の存在であるマグナモンBWのプラズマ弾と誘導ミサイルを喰らって失敗に終わった。

「うぐぐぐ!!ホーリーストーンの破壊は子供達に阻止されちゃったし、大体あいつらの戦力が異常過ぎるのよ!!何であいつ(ブラックウォーグレイモン)まで子供達についてんのよ!!?」

「なあ、アルケニモン。もう諦めようぜ?俺達でどうにか出来るレベルじゃないよあいつらは」

「馬鹿お言いでないよ!!ここで逃げ帰ったらどんな制裁が待っているか…」

「このまま負けを繰り返すよりもさっさとボスに報告しようぜ?」

プライドの高いアルケニモンからすれば一方的にやられてばかりは癪に障るのだろうが、マミーモンの言う通り最早自分達でどうにかなるレベルの相手ではないため、諦めてボスに新たな指示を仰ぐべきだ。

このまま戦いを挑んでも返り討ちにされるのがオチ…というか何回かデータの海に還りかけたため、よく生きているなと自分で自分のタフさに感動さえしたものである。

「…………グググ…仕方ないわね、今回だけは負けを認めてあげるわ!!でも次は勝たせてもらう…覚悟しなさい選ばれし子供達!!」

「アルケニモン…今回だけって…俺達は負けっぱなしなんだぜ…」

「うるさいわよ!!」

「へぼおっ!!」

アルケニモンの鉄拳がマミーモンの顔面に炸裂した。

取り敢えずアルケニモンとマミーモンをデジタルワールドから追い出すことが出来たのである。

そして大輔達は。

「皆さんのお陰で、無事営業が始められます!」

「チャーシューメン!」

デジタマモンの中華料理店にて、デジタマモンとバクモンが、嬉しそうにそう言った。

「ささやかですが、私からのサービスです」

子供達の前にあるのは、積み重なって小さな山を作った中華饅だった。

【頂きます!!】

「ああ!それ私が狙ってたのに!むごおっ!!?」

「代わりにそれ食ってろ」

「大輔さん!!京さんが喉を詰まらせて顔が真っ青になってます!!」

「すみません、水!!水を下さい!!」

大輔が手に取ってかぶりついた中華饅を狙っていた京が大輔に突っかかるが、大輔は1つの中華饅を掴んで京の口にねじ込むと、戦闘不能状態にする。

伊織とタケルが段々青ざめていく京を見て慌てて水を取りに向かう。

「それにしてもホーリーストーンは全て守り通せたな。」

「うん、あ…大輔君。口元に…」

口元の食べカスを拭うヒカリ。

「え?あ、ありがとうヒカリちゃん」

「ああ!!それ俺が取ろうとした中華饅なんだぞ!!」

「早い者勝ちよ!!」

「くっ、どうやらお前とは決着をつけなきゃいけないようだな白鼠!!」

「上等よ!!どっちが格上なのかあんたの体に覚え込ませてあげるわ、この青蛙!!」

「2人共頑張れ~!!」

「ナツ…あまり煽るな」

ブイモンとテイルモンの喧嘩を煽るなっちゃんと溜め息を吐きながら諫めるブラックアグモン。

「何だかブイモンとテイルモン。凄く仲良く…なりましたか?」

「お前なんかお前なんかお前なんかお前なんか」

「あんたなんかあんたなんかあんたなんかあんたなんか」

互いの頬に拳をめり込ませながらグリグリする2匹にホークモンが冷や汗を流しながら呟く。

「ふふふ…あれが今の2人の友情表現なんだよ。並行世界の喧嘩友達だった2人に影響を受けたようだね」

「並行世界ですか?」

「僕達が冒険した世界はこことは全く違う歴史を歩んだ世界なんだ。向こうのブイモンとテイルモンは会う度に喧嘩三昧だったらしいし」

伊織の疑問に賢が説明する。

「僕達は?」

「影も形も無かったね」

パタモンの疑問に賢はあっさりと答えた。

「何それ不公平じゃない!!」

生死の境から復活した京は激怒しながら立ち上がる。

「仕方ないですよ。僕達の世界と向こうじゃ色々違うみたいですし…それに完全にいないと言う訳でもなさそうだし」

「仕方ないね!!」

ふう…と溜め息吐きながら言うワームモン。

「ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい!!」

「「うるさい!!」」

殴る対象を京に切り替えたブイモンとテイルモンは京を殴って黙らせたのであった。

こうしてホーリーストーンを巡る争いは終わった。 

 

第51話:現在の子供達

ホーリーストーンを守り通した大輔達はダークタワーを破壊しながら復興作業をしていたが…。

「この辺りのダークタワーは全て壊したな」

「うん、もう何処にもないよ。」

大輔の言葉にヒカリは辺りを見回しながら答えた。

「大輔、腹減ったよ」

「そうだな、そろそろおやつにするか」

「僕、沢山お萩を作ってもらいました!!」

「僕もドーナツを焼いてもらったんだ。」

「私はクッキー!!」

「パウンドケーキ…結構大量だな。食い切れるか?」

伊織はお萩、賢はドーナツ、ヒカリはクッキー、大輔はパウンドケーキを出す。

残りはコンビニのお菓子だ。

「作りすぎたお萩と焼き菓子達は葬らねばならない。俺の腹の中に…!!」

「私のお腹の中に~!!」

「一杯食べてね2人共」

お萩と焼き菓子達を虎視眈々と狙うブラックアグモンとなっちゃん。

それを見たヒカリが苦笑しながらお萩と焼き菓子を差し出すと一気にかぶりついた。

「頂きぃ!!」

「貴様!!それは俺のドーナツだぞ!!」

狙っていたドーナツを手にしたブイモンに向かって吠えるブラックアグモン。

「何だよ、全部同じだろ!!」

「ふざけるな、返せ!!」

ブイモンの手にあるドーナツを賭けて争うブイモンとブラックアグモン。

「すっかり馴染んじゃって…」

「あ~ん♪」

テイルモンが呆れたように呟き、ドーナツを口に放り込んだブイモンは満足そうな笑みを浮かべた。

「ぐっ!!己ぇ!!ならば!!」

ブラックアグモンは大輔の焼いたチョコパウンドケーキのみを口に放り込んだ。

「んなあああ!?ブラックアグモン、お前俺のチョコパウンドケーキを!!」

「貴様が先に俺のドーナツを食ったんだろうが!!」

「俺はあのチョコパウンドケーキを最後の楽しみにしてたんだー!!」

「食い物の恨みは恐ろしいと言うことだ!!身を持って味わうがいい!!」

「こんのおおおおお!!ブラックアグモン、勝負だああああ!!」

「望むところだ!!ここで貴様との決着を…」

「うるせえぞ!この馬鹿コンビ共!!」

「「ぐふう!!?」」

脳天に繰り出される拳骨にブイモンとブラックアグモンは同時に倒れた。

「何してるんだろうね?」

「仲良いんだか、悪いんだか…」

「普段は仲がいい癖にこんな下らないこと揉めるのよね」

パタモンとワームモンとテイルモンが倒れ伏すブイモンとブラックアグモンを見ながら呟く。

「頂きまーす」

倒れ伏すブイモンとブラックアグモンを無視してお萩をぱくりのなっちゃん。

「「ああ!?」」

一番大きいお萩を食べられたブイモンとブラックアグモンが思わず叫ぶ。

なっちゃんはお萩を美味しそうに頬張っている。

「なっちゃん、口にあんこが付いてるわ」

「ん~」

ヒカリがなっちゃんの口に付いたあんこを拭ってやる。

「そんなあああ…あのでかいの俺が狙っていたのにぃいいい…」

「くっ…思わぬ伏兵が…大輔!!ヒカリ!!貴様らはナツの教育がなっとらんぞ!!」

「「へ?」」

「貴様らはナツの親代わりだろう!!親代わりならば人の物の横取りは諫めるべきだろうが!!」

ブラックアグモンの言葉は確かに正しい。

正しいのだが…。

「これはお前だけの物じゃねえよ!!」

赤面しながらも拳骨がブラックアグモンに炸裂。

ブラックアグモンに再びたんこぶが出来上がった。

「ねえ、親代わりって何?」

「大輔とヒカリがあんたのお父さんお母さん代わりってことよ」

テイルモンがクッキーをかじりながら説明する。

「うーん…大輔がお父さんでヒカリがお母さん?…お父さん、お母さん?」

「「っ!!」」

なっちゃんの発言に更に赤面する2人。

それを見てからかいたくなったのかタケルがニヤニヤと笑いながら口を開いた。

「あれえ?返事がないよ大輔お父さんにヒカリお母さ…ぎゃあっ!?」

座っているから尻叩きは出来ないため、太股を思いっっっきり抓って黙らせた。

「タケルさん…学習しましょうよ。だからヒカリさんにまでマゾって呼ばれるんですよ」

隣で悶えるデジクロスパートナーを見下ろしながら呆れたように呟く。

「お父さんお母さーん♪」

「な、なっちゃん…恥ずかしいから止めて…」

抱き付くなっちゃんに赤面しながらもヒカリは満更でもなさそうな感じだ。

「ヒ、ヒカリちゃん…そんな顔してたら説得力が…」

「アカリさん・ドストライク!!」

かつてゼンジロウを悶絶させたアカリ直伝の捻りを加えた肘打ちがタケルの鳩尾に炸裂した。

「あひん!!?」

「タケル君の馬鹿!!みんなの前で恥ずかしいこと言わないでよ!!」

「ヒ、ヒカリちゃん…いつこんな技を…?」

「ああ、それアカリさんの必殺技か。ヒカリちゃん尊敬してたもんな。いつ継承したのか知らないけど」

「今のかなり強力な肘打ちだったけどタケル君、大丈夫?」

「む、無理…」

ピクピクしながら必死に答えるタケルである。

まさかヒカリからあのような強烈な肘打ちを喰らうことになるとは思わなかったため、無防備でアカリ・ドストライクを喰らってしまった。

「いい加減学習しなよ。毎回軽口を言っては大輔に尻を蹴られ、抓られ。ヒカリさんからアカリさん直伝の肘打ちを喰らって…正直マゾ扱いされて当然だと思うよ?」

流石に呆れて物が言えないと言いたいのが賢の顔に出ている。

「まさか君から哀れみの視線を受ける日が来るとはね…うん、僕軽口言うの止める。」

「実現出来ればいいわねえ~」

「…何時まで経ってもパニクる悪癖を治せない京さんだけには言われたくない気がする」

「同感ですね」

「何ですってえ!?」

京のからかい混じりの言葉にタケルは思わず呟き、伊織も頷いた。

「あんた達ねえ!!私の辞書に“失敗”の文字は存在しないのよ!!」

「ついでに“反省”の文字もありませんね。他にも色々と、京さんの脳内辞書に刻んだ方がいいですよ」

「…ムカつく」

京の反論も伊織にあっさりと切り捨てられ、京はムスッと頬を膨らませた。

とにかくこの辺りのダークタワーは全て破壊したため、今日はこれで終わりになるのであった。

「ふう…」

「今日は大変だったなヒカリちゃん。ブイモンとブラックアグモンが喧嘩したり、なっちゃんがふざけたりで」

「でもブラックアグモンに関して良い傾向だよね。お菓子で喧嘩するなんて。」

「本当に…人もデジモンも変わるよなあ…」

あのブラックウォーグレイモンが仲間になってこんな下らない喧嘩をする仲になるなんて思わなかった。

「ふふ…そうだね…アカリさん…元気にしてるかなあ?」

「大丈夫だってヒカリちゃん。アカリさんならきっと、タイキさんを尻に敷きつつ仲良くやってるさ。今頃、タイキさんの夢に付き合ってる最中さ」

大輔とヒカリは笑いながら空を見上げたのであった。

「そう言えばそろそろ12月だな…12月と言えばクリスマスだよな代表的なの。ケーキとかご馳走とか…あいつらマジでどうしようか?」

「いっそのこと話しちゃえば?」

「それも1つの手だよなあ、いざとなったらなっちゃんの魔法で記憶を…」

「う、うーん…」

それは大問題な行為だと思うが、デジモンを見て大パニックを起こすようならそれも1つの手かもしれないとヒカリは思うことにした。

「まあ、クリスマスよりもっと重大なことが12月にはあるんだけどな」

「え?」

クリスマスよりも重大なことが12月にある?

疑問符を浮かべまくるヒカリに大輔は苦笑した。

「12月16日…ヒカリちゃんの誕生日だろ?」

「あ」

色々あってすっかり忘れていたヒカリ。

それを見た大輔は思わず苦笑してしまった。

「やっぱりヒカリちゃんは覚えてなかったか。」

「あ…う…その、だって色々あったし!!」

「ああ、分かってるよ。だからこの前の冒険は誕生日祝うなんて出来なかったし、今回は絶対に祝ってあげたいんだ。プレゼントは何か欲しいのない?出来るだけヒカリちゃんのリクエストに応えるから」

「う、ゔーん…少し考えさせて下さい…」

「後残りの期間は23日…3日前に何が欲しいか決めてくれよ?」

「はーい、頑張ります」

12月16日の3日前までに何か欲しい物を考えなければならない…ある意味戦いよりも難しい大問題であった。 

 

第52話:誕生日プレゼント

12月16日になるまで後残り1週間になり、ヒカリは自宅で頭を悩ませていた。

「ゔーん…」

「どうしたのヒカリ?そんなに悩んじゃって?」

娘の悩んでいる姿に裕子が尋ねてきた。

「お母さん、私の誕生日そろそろじゃない?」

「ええ、そうね」

「大輔君が誕生日プレゼントは何がいいのかって…」

「あらあ!!良かったわねヒカリ!!」

大輔がヒカリに誕生日プレゼントを贈ってくれることを聞いた裕子は大輔への好感度をアップさせた。

「もしかして、誕生日プレゼントを大輔君に何を頼めば良いのか悩んでるの?」

「…うん……」

「幸せな悩みね~。」

「からかわないでよお母さん!!私、本気で悩んでるんだから!!」

「ふふふ…ごめんなさいね…」

娘の悩みがあまりにも微笑ましい内容のために裕子は笑みを浮かべた。

ヒカリはこのままでいても思いつかないと思って気分転換に外に出た。

「はあ……」

ヒカリは溜め息を吐きながら何か無いかと頭を悩ませる。

「(正直…大輔君が傍にいてくれるだけで充分だし、欲しい物なんて簡単には見つからないよ……)」

ヒカリは欲しい物が見つからず、大輔をがっかりさせてしまうんじゃないかと思い、再び溜め息を吐いた。

「「……はあ…………え?」」

溜め息を吐いたのは自分だけではなかった。

驚いて顔を上げるとそこには…。

「空さん?」

「ヒカリちゃん…」

武之内空がいた。

ヒカリは思わぬ出会いに目を見開き、空もまたヒカリを見て目を見開いていた。

「それで?ヒカリちゃんは何を悩んでいたの?」

誰もいない公園のベンチに座って空がヒカリに尋ねた。

「実は大輔君が私の誕生日プレゼントは何がいいかって…」

「へえ…で?ヒカリちゃんは何が欲しいのかで悩んでるの?」

「はい…色々悩んでるんですけど欲しい物なんて全然見つからないし、私はただ大輔君やみんなが居れば充分で…でも無いなんて言ったら大輔君をがっかりさせちゃうかも…って、何笑ってるんですか空さん!!?」

肩を震わせ、口元を押さえて笑いを堪えている空を見てヒカリは顔を真っ赤にして怒る。

「ふっ…ふふふ…ご、ごめんねヒカリちゃん…でも前は大輔がヒカリちゃんに執着してたのに、今ではヒカリちゃんが大輔に執着してるのを見てるとつい…ね…」

「むう…」

ムスッとしながら空を睨みつけるヒカリを見て空は笑みを浮かべた。

「(本当にヒカリちゃんは変わったわ。大輔ばかり変わった変わった言われてたけど…)」

大輔だけでなくヒカリも良い意味で変わった。

確かにヒカリはいい子ではあるのだが、自分の要求はあまり言わず、我慢ばかりするところがあってどこか危ういところがあったのに今では大輔に自分の要求を言うことがあるらしく、これはかなりいい傾向だと空は思う。

「(きっかけがあれば人は変わる…異世界の冒険でヒカリちゃんも大輔も成長したんだわ)」

小さい頃から見てきた後輩達が成長していくのは素直に嬉しいと感じる。

「あれ?ヒカリちゃんと空さん?」

「え?大輔君?」

「散歩してたらヒカリちゃんと空さんの姿が見えたからさ。珍しいね」

「え?あ、うん…あ、あの…大輔君。」

「ん?」

言いにくそうにするヒカリだが、意を決して正直に言うことにした。

「ごめんなさい、欲しい物…まだ見つからないの…」

「そっか…いや、何か俺の方も悩ませちゃったみたいでごめん。」

苦笑しながら謝る大輔にヒカリは慌てて首を横に振る。

「ヒカリちゃんは、欲しい物が大した物じゃないとか、何も無いとかじゃ大輔ががっかりするんじゃないかって思ってるのよ」

「え?」

「ちょ、空さん!?」

「そんなことないって、ヒカリちゃんが欲しいって言ってくれたならどんな物だって出来るだけ用意するし、無いって言われたら俺がヒカリちゃんが好きそうなの探して贈るからさ。なあ、ヒカリちゃん。欲しい物が見つからないなら正直に言ってくれ。」

「うーん…」

何か、何かないだろうか?

誕生日プレゼントになりそうな物は…ヒカリの悩みに悩んだ結果…。

「ケーキ…」

「ん?」

「大輔君が作ったケーキ…がいいかなって…」

「何のケーキがいいんだヒカリちゃん?」

「苺が沢山載ったショートケーキがいい…出来れば」

大輔の耳元で囁くヒカリに大輔は目を見開いて…。

「食べ切れるの?」

「好きだから大丈夫!!それに私だけスイーツゾーンで大輔君達が食べた…えっと…スーパーウルトラミラクルダイナミックスペシャルワンダーギャラクティカ…何だっけ?」

「スーパーウルトラミラクルダイナミックスペシャルワンダーギャラクティカパワフルギガンティックウェディング・ケーキな。あれは物凄い苦行だったぜ…?」

確かに美味しかったが、食べても全く減らないケーキに大輔達は戦い以上の苦しみを味わった。

「でもケーキでお腹一杯になるって言うのは憧れない?」

「まあ…うん…」

「だからお願い大輔君!!」

ヒカリに上目遣いで頼まれて断れると思っているのだろうか?

大輔は即座に頷いた。

「いいよ、ヒカリちゃんがそれでいいなら。」

「ありがとう!!大輔君の誕生日には私が焼いてあげるから!!」

「甘さ控えめのチョコレートケーキで」

「了解♪」

最近甘いのが苦手になりつつあるため、ヒカリにもし焼くなら甘さ控えめの物を依頼する。

隣で聞いていた空は温かい紅茶を飲みながら和んでいた。

「(いいわあ…若いわねえ…)」

年寄り臭いことを呟きながら紅茶をもう一口。

「ところで空さんは何でヒカリちゃんと?」

「そう言えば空さん思いっきり溜め息吐いてましたよね?」

「「何か悩み事ですか?」」

「え!?あ、あの…」

自分に矛先が向いたことに空は慌てる。

「「悩み事ですか?」」

「そ…その…」

「「話して下さい」」

「…はい」

気圧された空は大人しく事情を話すのであった。

「「クリスマスにヤマトさんにプレゼント?そして告白?」」

「そ、そうなのよ…でもどういうのがいいのか分からなくて」

照れながら説明する空だが、大輔とヒカリは空に気付かれないように小声で会話する。

「(ヒカリちゃん、空さんがヤマトさんのこと好きなの知ってたか?)」

「(ううん、知らないよ?どうしよう大輔君?)」

「(いやいや、どうしようも何も…人の恋路を邪魔したらサジタリモンやペガスモンに蹴られちまうから、ここは空さんとヤマトさんを生暖かく見守りながら応援しよう)」

「(うん、分かった)」

会話を終了させ、空の話に再び集中する2人。

「それでプレゼントに悩んで取り敢えず気分転換に散歩していたらヒカリちゃんに会ったのよ…」

「「そうなんですか」」

「ふう…ヤマト君にプレゼントしようにも何がいいか…」

「ヤマトさんは手作りの物がいいんじゃないですか?ほら、基本的にヤマトさんは…自分で作るから…人が自分のために作ってくれた物…喜ぶと思いますよ?」

「手作り…」

「今の時期だとマフラーか手袋…後は…」

「手作りのお菓子かな?」

「マフラー…手袋…お菓子ね…」

「ヒカリちゃん、ヤマトさんはバンドのボーカルなんだよな?なのにあの人マフラーしないし、ヤマトさんにはマフラーがいいんじゃないか?」

「でもクリスマスだし、お菓子も良いよね?」

「…………よし、決めたわ」

「「空さん?」」

急に立ち上がった空を見遣る大輔とヒカリ。空の瞳には凄まじい闘志が燃え盛っていた。

その凄まじい気迫に気圧される2人。

「(凄え気迫だ…!!)」

「(空さん、ヤマトさんに真正面から挑むつもりなのね…!!)」

その時、バンドの練習をしていたヤマトは謎の悪寒に襲われたと言う。

「ありがとう大輔君、ヒカリちゃん。答え…出たわ…」

「あ、はい…」

「良かったですね…」

そしてそのままこの場を去っていく空。

「空さん…あんたどこの戦場に行くつもりですか…?」

大輔の呟きにヒカリは何も言えなかった。

そしてヒカリの誕生日当日となり、大輔はヒカリのリクエストの品を持って八神家に。

「お邪魔しまーす」

「いらっしゃい、大輔君。本当に作ってくれたんだね」
「ヒカリちゃんの我が儘は叶えたいからな」

リビングに箱を持って行き、テーブルを箱を開けると1ホールのショートケーキ。

どこかの店で売られていても遜色ないくらいの出来で上に均等に置かれた沢山の苺にヒカリは目を輝かせた。

「わああ…!!」

「これ大輔が作ったのか?」

素晴らしい出来栄えのケーキに太一は感心したように呟いた。

「はい、まあ、何回か失敗しましたけどね」

言うまでもないかもしれないが、失敗作は全部ブイモンのお腹の中である。

「なあ、大輔。お前パティシエ目指してんのか?」

「いえ、ラーメン屋です」

「勿体ねえよお前!!いっそのことラーメン屋とケーキ屋を兼業しちまえ!!」

「考えときます」

「本当に貰っちゃっていいの!?」

目を輝かせて言うヒカリに大輔も笑みを浮かべて言う。

「勿論、ヒカリちゃんのために焼いたんだからさ……本当に食べられるの?」

「好きだから平気!!」

「ヒカリだけ1ホール…ずりぃ……」

「あ、太一さん達の分もあります。ブイモンが殆ど食っちまったけど何とか人数分」

大輔は小さい箱を開けると、3人分の長方形のショートケーキが入っていた。

「あら~、私達の分まで。ありがとう大輔君。」

「いえ…余り物押し付けるみたいで悪いかなって思ったんですけど…」

「そんなことないわ、ヒカリのために本当にありがとう大輔君。ヒカリがあんなに嬉しそうなの初めて見るもの」

余程嬉しかったのか、ヒカリの表情は今までにないくらいの笑顔である。

「じゃあ、俺はこの辺で」

「え?帰っちゃうの?」

「だって俺、邪魔じゃ…」

「邪魔じゃないよ!!そうだよねお母さん?」

「そうね、大輔君。一緒にヒカリの誕生日を祝いましょう?」

「………ありがとうございます。」

女性陣の勢いに押された大輔は苦笑しながらヒカリの誕生日を祝うのであった。 

 

第53話:クリスマス

ダークタワーも残り僅かとなり、大輔はブイモンをマグナモンにアーマー進化させ、手っ取り早く残りのダークタワーを破壊する。

「プラズマシュート!!!」
ミサイルとプラズマ弾が周辺のダークタワーを瞬く間に粉砕し、消し去った。

「うわあああ、相変わらず見事なくらい強烈な一撃だわ」

周辺のダークタワーをあっさり消し飛ばした一撃に京は感嘆したように呟く。

「よし、これでデジタルワールドのダークタワーは全てぶっ壊したな」

「うん、長かったね」

「まあ、マグナモンがいたから破壊自体はスムーズに進んだけどな」

広範囲への攻撃を得意とするマグナモンに進化可能だったのが幸いだった。

もし出来なかったらここまでスムーズな破壊は出来なかったろう。

「さあて、ダークタワーは全てぶっ壊したし。今日はゆっくりしようぜ…」

「あの…」

「どうしたの?」

賢が言いにくそうにしているが、ヒカリが促す。

「実は母がうちでクリスマスパーティを開いて、みんなに来てもらえって…」

「「勿論行く」」

苦楽を共にしてきた仲間からのお誘いに断れるわけがないと大輔とヒカリは即答。

「京は?」

「勿論行きますよね京さん?」

意味深な笑顔を浮かべる2人に京はこめかみをピクピクさせる。

「わあ、その意味深な笑顔が腹立つ。勿論行くわよ!!絶対に!!ええ、何が何でも行くわよ!!」

「タケルは?伊織は?」

「うん、勿論行くよ?行くからその握り締めてる拳を解いてくれたら嬉しいかな?」

「はい、僕も行きます。喜んで行きます。前の僕の態度が悪かったからなんでしょうけど、その笑いながら睨むのは止めて下さい。」

「よし、よく言った。もし嫌だなんて言ったら…」

「ど、どうするつもりだったんですか?」

「……………さあな?」

ニヤリと笑いながら言う大輔に悪寒を感じた伊織であった。

「(行くって言って良かった……!!)」

体を恐怖でカタカタ震わせる伊織であった。

そしてクリスマス当日……ある場所で大輔達はある人物達を待っていた。

「何だよ、急に呼び出したりして」

「実は、太一さん達に俺達からクリスマスプレゼントがあるんです」

「プレゼント?」

地面の上に置かれていた巨大な靴下の中から飛び出したのは、太一達のパートナーデジモンであるアグモン達だった。

久しぶりに会う自分のパートナーに、彼らは喜びの声を上げた。

「アグモンじゃないか!」

「ガブモン!」

「随分久しぶりだなあ!」

「大輔達に連れてきてもらったんだよ!」

ミミにもアメリカへのゲートを開き、同じように靴下の中に隠したパルモンを送っている。

あちらが朝になれば、きっとミミも喜んでくれることだろう。

「ありがとう、みんな!」

「どういたしまして」

「皆さんに喜んで頂けて、僕達も嬉しいです」

今年はどうやら、それぞれにとって最高のクリスマスになりそうだ。

そして一乗寺家に着いてクリスマスパーティーを満喫する大輔達。

「去年はクリスマスどころじゃなかったからな」

「それ以前にいつデジタルワールドじゃ、クリスマスだったのかも分からなかったしね」

「クリスマスパーティー出来なかったなんて損してるわねー。」

「そんなことないですよ京さん。戦いで勝ったら祝勝会みたいなのやったからそんなに損じゃなかったかも。」

3人が思い出すのは戦いに勝った後にした祝勝会の馬鹿騒ぎ。

今ではもうタイキやシャウトモン達の叫び声もアカリやリリモン達の笑い声も聞こえないけれど。

「「「…………」」」

遠い目をする3人。

因みにブイモン達はお菓子を貪り食っている。

「そうそう、ブイモン」

「んあ?」

「この戦いが終わったら私と一緒に旅しない?」

「?」

いきなりの誘いにお菓子を食べる手を止めて首を傾げた。

「ウィザーモンのデータのサルベージよ」

「……ああ、あっちの俺達がやったっていうアレか?良いぞ別に」

「いいの?」

まさかあっさり了承してくれるとは思わなかったテイルモンは目を見開いている。

「んー?何かあいつら見てたら対抗意識が湧いてきたと言うか…絶対あいつらよりデータを見つけてやる」

「ああ、なるほどね。まさかウィザーモンも自分のデータで張り合いが起きるなんて思わなかったでしょうね」

理由を聞いたテイルモンが深い溜め息を吐いたが、断られるよりはマシかと前向きに考えることにした。

「大輔君、サルベージって?」

「ウィザーモンの散らばったデータを回収してウィザーモンを復活させるんだよ。デジタマ以外じゃこれしか方法がないんだと」

「それって大変なんじゃ…」

「大変だろうな、デジタマより遥かに小さいデータ片を1つ1つ回収してくんだから…勿論俺達も協力するけどな」

タケルの言葉に大輔はそう言うと菓子を一口食べた。

「ブイモン…ありがと」

「気にすんな」

短い言葉のやり取りの後、再び菓子を頬張るブイモンとテイルモン。

向こうの自分達に出来たことが自分達に出来ないはずがない。

この戦いが終わった後に続く旅に気持ちを弾ませながら。

「ねえねえ、このお菓子も食べていいの?」

「いいけどさ、なっちゃん。食い過ぎでお腹壊さないようにな」

なっちゃんが袋を開けてスナック菓子を食べ始める。

ブラックアグモンは黙々とクッキーを頬張っている。

賑やかで楽しいパーティー、しかしその楽しい気持ちも京のD-ターミナルに送られたメールの内容によって吹き飛ぶことになった。

「みんな!!現実世界にデジモンとダークタワーが現れたって!!場所は…」

それを聞いた全員が立ち上がり、一斉に駆け出した。

「デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、奇跡の輝き!マグナモン!!」

「ブラックアグモン進化、ブラックウォーグレイモン!!」

「先に行く!!」

「うん、私達も直ぐに向かうから!!」

「もしかしたらあっさり終わってるかもな!!」

大輔を乗せたマグナモンとブラックウォーグレイモンは凄まじいスピードで中学生バンドコンテストが開催される会場に向かう。

「くそ、インペリアルドラモンなら全員を乗せてあっさり行けるのによ!!」

「無い物ねだりしても仕方ない。今は使える力でどうにかするしかない。」

インペリアルドラモンDM系統には劣るが、マグナモンとブラックウォーグレイモンのスピードは素晴らしく速い。

あまり時間をかけずにコンテスト会場に到着出来た。

「太一さん!!みんな!!」

「大輔!!」

「良かった、無事だった…マグナモン、ブラックウォーグレイモン!!」

「プラズマシュート!!」

「ガイアフォース!!」

プラズマ弾とエネルギー弾が超スピードでダークタワーに接近すると、一瞬で消し飛ばした。

するとこちらに気付いたデジモン達が襲い掛かる。

「……ライトオーラバリア!!」

一気に巨大なバリアを張って、近付いてきたデジモン達を弾き飛ばす。

「ブラックウォーグレイモン、殺すなよ!!」

「分かっている…ぬうん!!」

ブラックウォーグレイモンが右腕を大きく横に振るうと、凄まじい風圧が起き、空を飛ぶデジモン達は為す術なく吹き飛ばされてしまう。

因みに太一達も風圧で吹き飛ばされそうになったが何とか堪えた。

「どりゃああああ!!」

「うおおおおお!!」

マグナモンとブラックウォーグレイモンは必殺技どころか得意技すら使わずに一撃で気絶させていく。

格下の完全体や成熟期からすれば自分達の得意技でさえ必殺技と何ら変わらない威力だと分かっているのだ。

「アグモン、加勢するんだ!成熟期なら俺達にだって!!」

「分かった、太一!!」

完全体は厳しいが成熟期の相手なら自分達にも出来る。

後輩ばかりに戦わせてたまるかとアグモン達も成熟期に進化して加勢してくれた。

「サンキュー!!」

「マグナモンとブラックウォーグレイモンは完全体を!!」

グレイモンが風圧で吹き飛ばされて体勢を立て直そうとしているダークティラノモンに頭突きを喰らわせながら叫ぶ。

マグナモンとブラックウォーグレイモンはもんざえモンとメガドラモンに突撃する。

力の差を感じ取って逃げようとする2体だが、それよりも早く2体に接近し、手刀を叩き込んで気絶させた。

「マグナモン!!」

「ネフェルティモン?」

ヒカリを乗せたネフェルティモンがマグナモンに寄ってきた。

「こっちは粗方片付いたわ。後はデジタルワールドに帰すだけよ」

「そうか、良かった。」

「まあ、あんた達が弱らせてくれていたおかげでそんなに苦労しなかったわ」

確かに向こうを見遣るとグレイモン達は苦戦することなく、ダークティラノモン達を気絶させていた。

光子郎のノートパソコンを利用してゲートを開き、デジタルワールドに強制送還する。

「今日は、せっかくパーティやってたのに、ごめんな」

賢の自宅であるマンションの前で子供達は彼を見送る為に揃っていた。

「いえ、いいんです」

「来年があるし、来年はもっとバーッとやろうぜ」

「うん、それじゃあ……」

ワームモンを抱えてマンションの中に立ち去る賢。

「……………」

「大輔君、どうしたの?」

「いや、ダークタワーが何で現実世界に現れたのか気になってよ?いや、アルケニモン達の仕業なのは分かってるんだ。でもあいつらの目的はデジタルワールドを破壊することだったはずだ。どうして現実世界にダークタワーを建てる必要があるんだ?進化妨害、ダークタワーデジモン…そして中華の泉で偶然復活させたチンロンモンの言っていたダークタワーの世界のバランスを崩す力…現実世界のバランスを崩して奴らに何の得が………何ですか?」

タケルの言葉に答えながら考える大輔。

しかし自分に集中する視線に気付いて振り返ると愕然としている先輩達。

「へ?あ、いや…その…」

「お前でもそこまで考えるんだな」

「お、お兄ちゃ…!!」

引き攣り笑いを浮かべる太一、そして失礼なことを言うヤマトにそんなヤマトの発言に顔を真っ青にするタケル。

大輔はヤマトの発言に微笑んだ。

伊織も京もこれから起こるであろう惨劇に顔を真っ青にする。

呆れたように見つめるのはヒカリ、ブイモン、テイルモン、ブラックアグモン、なっちゃんのみ。

「ヤマトさん」

「何だ大す…うがあ!!?」

ドゴオンッ!!!

ヤマトの尻に回し蹴りが凄い音を立てながら叩き込まれた。

いつもタケルに繰り出される物より遥かに強烈な一撃であった。

「(ぼ、僕のより凄い…あれでも手加減してくれてたんだ…)」

「~っ!!~っ!!!~~~っ!!!!」

尻を押さえて転げ回るヤマトを冷たく見下ろしながら大輔は口を開いた。

「流石兄弟だな、失礼なとこが本当にそっくりだよ」

「本当に変わったなあ…」

「これくらいしなきゃ暴走が止まらない馬鹿とか(シャウトモン等)がいたんで」

一方、未来の並行世界のデジタルワールド。

「ぶぇえええっくしょいっ!!」

「シャウトモン、風邪カ?」

盛大なくしゃみをするシャウトモンにバリスタモンが疑問符を浮かべながら尋ねた。

「いやあ、そんなことねえと思うんだけどよ…」

鼻をかみながら首を傾げるシャウトモンであった。

そして再び大輔達のいる世界では大輔が未だに悶絶しているヤマトを無視して全員に解散を指示した。

「みんな、帰ろう」

「「「「「はーい」」」」」

ヒカリ、ブイモン、テイルモン、ブラックアグモン、なっちゃんが返事をした。

「え…でもよ…」

悶絶しているヤマトを見遣りながら太一が口を開こうとするが。

「帰ろう」

【はい】

有無を言わせぬ迫力で言い放つ大輔に全員は素直に頷いてこの場を後にする。

尻を押さえて悶絶するヤマトを放置しながら…。 

 

第54話:皇帝竜復活

クリスマスの騒動から翌日の朝、姉の悲鳴を聞いて大輔は慌ててリビングに向かう。

「どうした姉貴!?何が…」

「昨夜BSフジ生放送中、突然現れた黒い塔に驚いた観客が大混乱を起こし、怪物を見たという奇怪な事件が発生しましたが、今日になって同じものと見られる黒い塔が、突如世界中に出現した事が分かりました……」

見慣れたダークタワーがパリに、ニューヨークに、香港に…世界中に当たり前のように建っていた。

「とんでもないことになったな、大輔」

「ああ…」

D-3Xの中からブイモンが話しかけてきた。

「くそ…っ、どいつもこいつも…どうして大人しく過ごせねえんだよ、くそったれ!!」

苛立たしげに叫ぶ大輔はニュースで日本でダークタワーとデジモンが現れたと言う田町に向かうことをヒカリのD-ターミナルにメールを送る。

「っ!?」

同じくニュースを見ていたヒカリはD-ターミナルに送信されたメールを読み上げた。

「ヒカリ、何してんだ?光子郎の所に行くぞ!!」

「うん、お兄ちゃん。大輔君は田町に行くって」

「田町って…こんな時にか!?」

「こんな時だからだよ。田町にもダークタワーとデジモンが現れて、1人だけだと危ないわ!!」

いくらワームモンが強かろうと1体だけでは多勢に無勢である。

「(大輔君、賢君をお願い!!)」

苦楽を共にした仲間の身を案じながらヒカリは太一と共に泉家に。

一方田町ではダークタワーが機能しているために優しさのデジメンタルでワームモンをアーマー進化させ、ダークタワーを破壊しようとした。

しかし、街で暴れているトリケラモンに阻まれてしまい、このままでは父と母が暮らす街が…。

「プラズマシュート!!」

街で暴れているトリケラモンに向けて放たれたプラズマ弾と誘導ミサイル。

威力を限りなく落としたために精々トリケラモンを怯ませるだけで終わった。

「待たせたな賢!!」

「遅いぞ大輔!!」

「これでも急いで来たんだけどなあ!!」

勢いよくプラズマ弾を投擲してダークタワーを粉砕した。

トリケラモンは雄叫びを上げながらマグナモンに突進してきた。

「チッ、興奮状態のせいか力の差が分からないようだな。」

舌打ちしながら片手を前に出すマグナモン。

トリケラモンが頭部の角を突き出して突進する。

トリケラモンの必殺技、トライホーンアタック…シンプル極まりない攻撃だが、トリケラモンのパワーを活かした必殺技だ。

「!?」

「悪いが眠ってもらうぞ。安心しろ、目が覚めた時にはデジタルワールドだ!!!」

片手でトリケラモンの突進を止めると、脳天に容赦のない殴打を叩き込んだ。

「くっ、流石に旗色が悪いね!!逃げるよマミーモン!!」

「お、おう!!」

「…何処へ逃げるつもりだ?」

「逃がさないんだから!!」

「「っ!!」」

マミーモンとアルケニモンが振り返るとブラックウォーグレイモンとなっちゃんがいた。

「ここに貴様らがいたのは好都合だ。いい加減目障りだったからな…ここで消えてもらうとしよう」

「あ、あんた!!誰があんたを作ってやったと…」

「安心しろ、苦しまないよう…一瞬で息の根を止めてやろう…!!」

ドラモンキラーを構えるブラックウォーグレイモンと槍を構え、力を解放して成長期でありながら並みの成熟期を上回る力を発して槍を構えるなっちゃん。

アルケニモンとマミーモンの顔色が真っ青になった…その時である。

「悪いが…そいつらに死なれたら困るんだ。まだまだ働いてもらわなければならないからね」

「ん?」

「誰…?」

「「ああ、ボス!?」」

ブラックウォーグレイモンとなっちゃんが振り返り、マミーモンとアルケニモンが安堵の表情を浮かべてボスと呼んだ。

青白い肌と痩せこけた体、尋常ではない危険な意志を孕んだ双貌。無造作に伸びた長髪、着込んだロングコートも相まって、どこか危険人物のような雰囲気を漂わせている。

「ーーーーっ!!?」

男の纏う異様な何かに恐怖を抱いてブラックウォーグレイモンの後ろに隠れる。

「貴様…何者だ?ただの人間ではないな…?」

「…及川悠紀夫…そいつらの創造主さ…ブラックウォーグレイモン…100本のダークタワーから生まれたデジモン…そしてそこにいる闇でありながら闇ではないデジモン…お前達の力…利用価値がありそうだな」

「何だと?」

ブラックウォーグレイモンが及川と言う男の発言に不快そうな表情を浮かべた。

「ブ、ブラック…」

「?…どうしたナツ?」

ブラックウォーグレイモンの背後に隠れて震えているなっちゃんの姿にブラックウォーグレイモンは目を見開く。

「あ、あの人…普通じゃないよ…!!」

「鋭いな…残念だ。時間があればその力は是非欲しかった…」

「「っ!?」」

及川の体から醜くどす黒い何かが現れ、及川が手を前に翳すと凄まじい闇の波動が放たれ、ブラックウォーグレイモンとなっちゃんを吹き飛ばした。

「うおおおお!?」

「きゃあああああ!?」

吹き飛ばされたブラックウォーグレイモンはなっちゃんを抱えると地上すれすれで体勢を立て直した。

「な、何だ今のは…あれが人間の持てる力か…!?」

ブラックウォーグレイモンは大量の汗を浮かべながら不敵な笑みを浮かべてアルケニモンとマミーモンを従えながら去っていく及川を見て目つきを鋭くさせる。

「ぐっ…」

「「ブラックウォーグレイモン!!なっちゃん!!」」

「ブラックウォーグレイモン、アルケニモンとマミーモンは!?」

「…すまん、逃した」

マグナモンの問いにブラックウォーグレイモンが悔しげに言う。

大輔は体を震わせるなっちゃんを何とか落ち着かせようと抱き締めていた。

「大輔、これからどうする?日本にあるダークタワーを破壊するだけなら今日中に出来るけど、世界中となると…」

マグナモンからブイモンに退化すると大輔に尋ねる。大輔が今最も頭を悩ませている問題である。

マグナモンとブラックウォーグレイモンをデジクロスさせてもとてもではないが1日でどうにか出来る問題ではない。

やはり一度泉家に向かうべきかと全員に指示を出そうとした時であった。

【ん!?】

天から伸びてきた光がブイモン、ワームモン、ブラックウォーグレイモン、なっちゃんに当たる。

「ん!?」

「これは…」

「何だこの光は…力が漲るだと…?」

「ん…何だか力が湧いて…シスタモン進化、シスタモン・ノワール!!」

なっちゃんが進化し、成熟期のシスタモン・ノワールに進化する。

「なっちゃんが成熟期に進化した?おまけにブラックウォーグレイモンの暗黒パワーが完全に漏れなくなっちまった。」

「ブイモン…」

「ああ、今なら出来るかもしれないなインペリアルドラモンに」

「っ、本当かい?ワームモン?」

もし本当なら世界中のダークタワーの破壊作業の効率が大幅に向上する。

インペリアルドラモンはそれだけ超高機動を誇るデジモンなのだ。

「やろう!!」

「ああ!!」

ブイモンとワームモンを成熟期に進化させ、D-3Xを構えた。

「エクスブイモン!!」

「スティングモン!!」

「「エヴォリューションクロス!!」」

「パイルドラモン!!…パイルドラモン進化、インペリアルドラモンDM!!」

大輔と賢は久しぶりに目にした。

巨大な体、黒と金の装甲、そして紅い翼を持つ皇帝竜の名を冠するデジモンを。

そしてその姿は泉家にいるヒカリ達も見ていた。

「大変です!ただいま、眩い光に包まれて、怪獣が更に大きく姿を変えました!!」

パソコンの画面で興奮気味に喋るニュースキャスターとその背後のビルの間から姿を見せたインペリアルドラモンDMを見て、思わず呟いた。

「インペリアルドラモン…DM…」

「ヒカリちゃん、あれがそうなの?」

「うん、今までどんなに練習しても出来なかったのに…」

「恐らく並行世界の未来では進化を失ってしまった年月が長かったためにエネルギーが満ちていたのだ。だから大輔達とブイモン達が条件を満たせば容易に進化出来た。」

ヒカリの隣にいる青年が説明してくれた。

チンロンモン復活のお陰で、今の姿に戻れたゲンナイが。

「何で未来のことを知ってるの?もしかしてこの世界のホメオスタシス?私達のことをこっそり調べていたのね…悪趣味だわ」

テイルモンが苦々しげに言うと、ゲンナイは苦笑した。

「まあ、そう言うな。お前達もチンロンモンの光を浴びた…今ならデジクロスの力を借りなくても容易に完全体になれるはずだ」

「…完全体…私達もようやく本領を発揮出来そうだわ」

「でも、インペリアルドラモンDMに進化出来たのは良いんだけど…FMにモードチェンジ出来るのかな…?」

ヒカリは思わず呟いた。

インペリアルドラモンDMは確かに強力ではあるが、インペリアルドラモンと言うデジモンが真価を発揮するのはモードチェンジしたインペリアルドラモンFMの方だ。

ヒカリのその疑問にはゲンナイが渋い表情を浮かべて顔を横に振る。

「残念ながら、チンロンモンのデジコア1つではインペリアルドラモンDMへの進化を促すだけで精一杯らしい。伝説のロイヤルナイツの始祖の片割れの力を引き出すのは四聖獣の力を持ってしても困難だということだろう…だが、既にロイヤルナイツの守りの要への進化とブラックウォーグレイモンまでいるのだから充分インペリアルドラモンFMの穴埋めは出来るだろう」

実はホメオスタシスはチンロンモンのデジコア提供のことでかなり悩んだのである。

既に戦力は未来世界で得た力で大幅な強化がされている。

ロイヤルナイツの守りの要と100本のダークタワーで出来たダークタワーデジモンまでいるというのにこれ以上の強化はデジタルワールドのパワーバランスを崩しかねないのではないのかと、しかし世界中を回るにはインペリアルドラモンDMの力が必要不可欠であるためにホメオスタシスは了承した。

「そうですか…」

ヒカリは少し残念そうに画面に映るインペリアルドラモンDMを見つめていた。

そして田町の大輔達はインペリアルドラモンDMに乗り込んで日本中のダークタワーを粉砕した。

「なあ、インペリアルドラモン?お前、ダークタワーの探知能力なんかあったか?」

「いや、あの光を浴びたことでダークタワー探知能力を得たようだ。」

「ふん、話している暇があるのか?デジモン達をデジタルワールドに帰さねばならんだろう?」

「私も進化しちゃったから張り切っちゃうよ~!!」

「うん、なっちゃん。成熟期に進化出来て嬉しいのは分かるけど抱きつかないでくれるかな?」

「大輔、君…顔が真っ赤…」

「賢、それ以上言ったら殴る」

現実世界に現れたデジモン達をデジタルワールドに強制送還させた後、ブラックウォーグレイモンはブラックアグモンに、なっちゃんはシスタモン・ブランに退化し、泉家に到着するとヒカリ達と合流した。

「予想以上の速さだ…」

予想よりも早く終わったことにゲンナイは目を見開いている。

「大輔君、賢君。無事で良かった…」

「ありがとうヒカリさん。心配かけたね」

ヒカリに笑みを浮かべながら言う賢。

「それにしてもインペリアルドラモンは相変わらず圧倒的ね」

テイルモンが相変わらず圧倒的な力を誇るインペリアルドラモンDMの巨体を見上げながら呟く。

「大輔達だけに任せるのではない。お前達にも、役割はある」

全ての選ばれし子供達が力を合わせる時が来たのだ。

「……教えて下さい。ゲンナイさんは、今まで何をしていたんですか?」

伊織の疑問に、ゲンナイはすぐに答えてくれた。

「3年前、デジタルワールドが現実世界に異常接近したのを覚えているかな?」

「はい、覚えています」

「あの事件の後、世界中の人達が目撃したアポカリモンとの最終決戦…それ以来、各国の軍の研究所や各情報機関で秘密裏にデジモンとデジタルワールドの研究が行われてきたのだ。下手にデジモンが公になれば、何に悪用されるか分からない…。私達は、それとなくデジタルワールドやデジモンの存在を否定するようにデータを組み替えていたのだ」

「それってゲンナイさんにも仲間がいるんですか?」

“達”と言う単語が気になった京がゲンナイに質問をする。

ゲンナイはその問いに頷くと、京に笑みを向けた。

「ああ、今、私の仲間は世界中の選ばれし子供達と行動を共にしている」

「それよりもゲンナイさん、ダークタワーが現れた場所を教えてくれないか?」

大輔が尋ねるとゲンナイは頷く。

ゲンナイが画面に手を翳すと、何も操作していないにも関わらず、画面には世界地図が現れる。

「これが現実世界にあるダークタワーか…?」

「ニューヨーク、香港、モスクワ、メキシコ、パリ、シドニー…か…」

大輔と賢が世界地図を見つめながら呟く。

「この6カ所…デジタルワールドはD-3でなければ開けない。そこでお前達はインペリアルドラモンでその世界の6カ所に飛び、現地の選ばれし子供達と力を合わせてデジモン達をデジタルワールドに追い返して欲しいんだ」

「ああ、インペリアルドラモンDMに進化出来たことで世界一周も何とか出来そうだ。今日中に終わらせられそうだぜ」

「インペリアルドラモンだと世界を回るのに30分とかからないだろう……現地では私の仲間が待っている、行け!選ばれし子供達よ」

そう言うとゲンナイは消えた。

恐らく自分の任務に戻ったのだろう。

「ああ…ゲンナイさん…」

「消えた…」

「きっとまた、自分の任務に戻ったのでしょう」

「よーし!俺達も行こうぜ、世界へ!!」

「光子郎…」

太一の言葉に頷いた子供達の後ろから、光子郎を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、光子郎の母の佳恵が何か大きな包みを持って立っていた。

光子郎は佳恵の元へと駆け寄っていく。

「お母さん…心配しないでください、その…なるべく、早く、帰ってきますから…」

光子郎の言葉に、佳恵は微笑んで手元の包みを光子郎に差し出す。

「これは…?」

「何か…みんなが出かけるような気がして…おにぎり、作ってきたの…」

光子郎は大切そうにその包みを受け取ると、佳恵を見上げた。

「ありがとう、お母さん」

光子郎の感謝の言葉に佳恵は嬉しそうに微笑む。

「それじゃあ行きますよ。出来るだけ時間短縮したいんで…ヒカリちゃん、賢。行くぞ!!」

「「分かった」」

大輔、ヒカリ、賢がD-3Xを構えた。

「「「オールデジモンズ…アンノウンクロス!!!」」」

インペリアルドラモンDMに京達と太一達のパートナーが融合していく。

「インペリアルドラモンXDM(イクスドラゴンモード)!!!」

見た目はインペリアルドラモンHDMとあまり変わらないが、仲間達の力を1つにしたので大幅にパワーアップしている。

インペリアルドラモンXDMは凄まじいスピードで世界中を駆け巡るのであった。 

 

第55話:ニューヨーク

インペリアルドラモンXDMに乗って、日本を発った選ばれし子供達は本来ならばそれなりの装備がなければいることすら出来ない大気圏を容易く凄まじいスピードで移動している。

背中の防護壁によって酸素が確保され、空気抵抗を遮断されているためか子供達は全員無事である。

「便利だな、このバリア」

「ある程度重力制御されているからインペリアルドラモンが逆さま飛行しても大丈夫ですよ」

太一がインペリアルドラモンXDMの防護壁に触れながら呟くと賢が説明してくれた。

「光子郎さん、メンバーの振り分けを頼みます。因みに俺はニューヨークに行きます。英会話が出来る俺はニューヨークに言った方がいいし」

「え?大輔君、英会話出来るの?意外」

「まあ、誰にだって取り柄の1つや2つくらいあるって」

「はい、馬鹿兄弟の尻に回し蹴り!!」

「「ぎゃふっ!?」」

「た、タケル!!ヤマトー!!」

再び大輔の回し蹴りが炸裂した。

本当に懲りない兄弟である。

全員はもう慣れたのか太一以外誰も反応すらしてくれなかった。

光子郎がメンバーを考え始める。

「とにかくメンバーを決めちゃいましょうか」

ヒカリと光子郎は香港。

伊織と丈はシドニー。

タケルと太一はパリに。

京と空はモスクワ。

それぞれ降り立ち、分離をしていくごとにインペリアルドラモンXDMは速度を落としていくが気にするほどではない。

アメリカに到着し、アメリカの選ばれし子供であるマイケルと合流するとヤマトと賢はヘリでメキシコに。

大輔はブイモン、ブラックアグモン、なっちゃんと言う些か過剰戦力メンバーでマイケルと共に飛行機でニューヨークに。

「それにしてもマイケルの親父さんがまさかハリウッドスターなんて思わなかったな?」

「ハリウッドスターって?」

「えっと…何て説明すりゃいいのかな?ハリウッドスターってのはハリウッド映画に出てる有名俳優がハリウッドスターって呼ばれて、マイケルの親父さんがそれなんだよ…。簡単に言うとマイケルの親父さんは凄え人ってこと」

疑問符を浮かべまくって尋ねてくるなっちゃんに大輔は何と説明したものかと悩んだが、一応出来る限りの説明をした。

「へえー凄い人!!大輔が言うんだから凄いんだ!!」

キラキラと目を輝かせながらマイケルの父親を見つめるなっちゃん。

その無垢な視線にマイケルもマイケルの父親も微笑んだ。

「ところで大輔、彼女は前に会った時いなかったけど…大輔のガールフレンド?」

「いや、ガールフレンドじゃないぞマイケル?」

「なっちゃんはデジモンなんだ」

ブイモンの説明にマイケルもベタモンも驚く。

「名はシスタモン・ブラン。だが本人は大輔から与えられたナツという名を気に入っている。」

「だから私を呼ぶ時はナツかなっちゃんって呼んでね?」

「ふふ、分かったよナツ」

和やかな空気が飛行機の中に流れるが、目的地に到着したことですぐに頭を切り替えて飛行機から降りた。

ニューヨークのセントラルパークでミミと合流した大輔。

「久しぶりですねミミさん。せっかくのクリスマスがこんなことになって…」

「ええ…こんなことにならなきゃ最高のクリスマスだったけどね…大輔君、随分逞しくなったね?初めて会った時とは全然違うわ…みんなと仲直り出来た?」

「はい、心配かけてすみません。そしてありがとうミミさん。そうだ、新しい仲間を紹介します…なっちゃん、ブラックアグモン」

「うん」

「…………」

「あなた達は?」

初めて見る2体にミミは疑問符を浮かべる。

「こっちがシスタモン・ブランのナツ。俺はなっちゃんって呼んでます…そして隣のブラックアグモンはブラックウォーグレイモンがブラックアグモンに退化したんです」

「へ?この子、デジモン?それにパートナーデジモンじゃない子が…あ、でもレオモンはデジヴァイスの光を浴びて究極体に進化出来るようになってたし、有り得なくはないかも!!とにかくよろしくねなっちゃん!!クロちゃん!!」

「うん!!よろしくね、ミミ!!」

「おい、何だその…“クロちゃん”…と言うのは?」

微妙そうな表情を浮かべるブラックアグモンはミミにその呼び方について尋ねる。

「ブラックアグモンって何か長いから。それにブラックアグモンよりクロちゃんの方が可愛いわよ?」

「せめてブラックと呼んでくれないか…?」

「えー?可愛くなーい」

むすっとなっているミミにブラックアグモンはどうしたものかと頭を悩ませている。

「それにしても大輔君、デジモンとは言えこんな可愛い女の子を傍にいさせるなんてやるじゃない。ヒカリちゃんピンチかもねー」

「いやそんな…あれ?ミミさんに俺とヒカリちゃんのこと話しましたっけ?」

ふと疑問に思い、大輔はミミに尋ねた。

「あ、太一さんにメール送った時に“ヒカリが大輔と…大輔とおおおおお”って凄く長い愚痴聞かされちゃったの」

「何かすんません」

それを聞いて凄い罪悪感を感じた大輔は即座に謝罪して、ブイモンは辺りを見回す。

「んー、あ…いた。お前がゲンナイさんの仲間か」

ゲンナイの仲間らしき者を発見したブイモンが駆け寄る。

「そう、私はベンジャミン。よろしくブイモン。」

「同じ顔だな~。もう少し顔のバリエーション増やした方がいいんじゃない?」

「ははは、確かにその通りなんだが、今はその時間がなくてね」

「つまり時間があればやるのか」

ベンジャミンも苦笑しながら言う。

同じ顔だから色々苦労することもあるようだ。

マイケルの父は佳恵お手製のおにぎりを食べ終わって横になり、ベタモン達が残ったおにぎりを食べている中、ミミのD-ターミナルが鳴り響く。

「サムって子から、ロッフェラーセンターでジュレイモンが暴れてるって!」

「え!?じゃあ、止めに行かないと…………ロッフェラーセンターってどの辺?」

ニューヨークの地理はよく分からない大輔はミミとマイケルに尋ねた。

「僕達が案内するよ、大輔達はついて来てくれ」

「よし、私も力を貸そう。東京でゲンナイがやったように、チンロンモンのパワーを授けよう」

「それって、もしかして私、超進化出来るの!?」

パルモンが嬉しそうにベンジャミンに尋ねた。

ベンジャミンはパルモンに頷き、大輔が出したD-3Xに手を翳すと、チンロンモンの力を注がれたD-3Xは眩く発光して、デジモン達をその温かな光で包み込んだ。

「行くぞ、デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、地上最大の希望!サジタリモン!!」

「ブラックアグモン進化、ブラックウォーグレイモン!!」

「シスタモン・ブラン進化、シスタモン・ノワール!!」

「パルモン進化、トゲモン!!トゲモン超進化、リリモン!!」

「ベタモン進化、シードラモン!!」

全員が進化してロッフェラーセンターに向かうと、そこで子供達の目に飛び込んできたのはビルによじ登るジュレイモンの姿だった。

リリモンがすぐさまジュレイモンに向かう。

「花の首飾り!!」

リリモンが花の首飾りを出して、ジュレイモンの体を締め付けるが、それはあっさりと引き千切られてしまう。

「どうして!?」

「悪性のウイルスに冒された訳じゃないからよ!」

「そう、興奮して暴れてる!」

「なら…トリケラモン達と同じように気絶させるしかないな…ブラックウォーグレイモン。ジュレイモンをビルから叩き落としてくれ」

大輔がブラックウォーグレイモンに指示を出す。

「リリモンとシードラモン、なっちゃん、サジタリモンはジュレイモンが落下した後、すぐに一斉攻撃。そうすればジュレイモンも気絶するさ」

「りょーかい」

「分かった、大輔」

なっちゃんとサジタリモンが頷いてそれぞれの武器を構え、大輔は近くのサムと言う選ばれし子供とパートナーデジモンのフレアリザモンに英語で同じ説明をした。

「大輔って英会話出来たのね」

「日本に来る前はアメリカで暮らしてたらしいよ。日常会話なんて軽く出来るらしい」

「へえ~、大輔って帰国子女だったんだ!!」

後輩の意外の新事実に目を見開くミミであった。

「じゃあ、ブラックウォーグレイモン。ジュレイモンを叩き落として一斉攻撃。あ、ブラックウォーグレイモンは入るなよ?究極体の攻撃は確実にオーバーキルだから」

「…分かった」

大輔の指示にミミも思わず頷いた。

究極体の攻撃力を身を持って知っている彼女は大輔の言葉に同意した。

「それじゃあ…Mission Start!!!」

「あら、良い発音」

「うおおおおおお!!」

ブラックウォーグレイモンは勢い良く飛翔し、背後に回るとゴリラのドラミングのように胸を叩いていたジュレイモンを蹴飛ばした。

それはもう豪快に。

「全員攻撃体勢!!」

「「「了解!!」」」

大輔が英語で指示を飛ばしてミミ達は頷いた。

英語が理解出来ないサジタリモンとリリモン、なっちゃんは疑問符を浮かべていたが、辺りを見回して場の雰囲気で攻撃準備。

ジュレイモンが真下のスケートリンクに落下した瞬間。

「フレイムレーザー!!」

「アイスアロー!!」

「フラウカノン!!」

「ミッキーバレット!!」

「ジャッジメントアロー!!」

「ぐわあああああ!!?」

5体の必殺技がジュレイモンに炸裂し、ジュレイモンは吹き飛んで気絶してしまった。

「全く、手間取らせやがって」

気絶したジュレイモンを見つめた大輔の呟きがロッフェラーセンターに響き渡る。

その後、駆けつけてきてくれた他の選ばれし子供達と協力し、大輔のD-3Xでデジタルゲートを開いて大輔達はデジモン達をデジタルワールドに送り返したのであった。 

 

第56話:魔王の配下

ニューヨークのデジモン騒動を終わらせた大輔達は騒ぎ立てる空と京を強引に引き摺ってインペリアルドラモンXDMに乗せる。

「うわーん、ピロシキー!!ボルシチー!!」

「日本でも食おうと思えば食えるだろ」

「本場のが食べたいのー!!」

「うるせえ、凸!!」

騒ぎ立てる京に大輔の怒声が響き渡る。

「ヒカリ~、ニューヨークのクリスマスツリーは綺麗だったよ」

「本当?」

「うん、来年はヒカリもニューヨークに行って見に行こうよ」

「え、えっと…そう簡単に不法入国出来ないんじゃ…」

今回は軍隊などがデジモンに気を取られていたから何とか入国出来たが、何もない時に向かえば問答無用で攻撃か何かをされるだろう。

「まあ、なっちゃん。もう少し待て。いずれ連れてってやるよ」

「はーい」

「にしても、アルケニモンとマミーモンめ…現実世界のあちこちにダークタワーを建てやがって…」

「そのことなんだが、大輔…」

「ん?」

「俺は…黒幕を見た」

「何!?いつ?どこで!?」

大輔がブラックアグモンに詰め寄り、全員の視線が向けられた。

「アルケニモンとマミーモンの創造主を名乗る及川悠紀夫という男だ。見た目は…貧弱そうな人間だったがな」

「見た目は人間?」

「人間にしては異質な奴だ。奴の体から妙な影が噴き出したかと思えば次の瞬間吹き飛ばされていた。究極体の姿だった俺がだ…」

「その及川悠紀夫って奴…どんな奴だった?」

「ふむ…」

ブラックアグモンは及川悠紀夫の特徴を言い始める。

丈はポケットからメモ帳を取り出して及川悠紀夫の特徴をメモ帳に書いていく。

「はい」

丈が及川悠紀夫の特徴を書いたメモ帳のページを取って大輔に差し出す。

「すみません…みんな…家族にこういう特徴の人を知らないか聞いてみてくれないか?」

大輔は丈に頭を下げ、仲間に情報収集を頼むと、全員が頷いてくれた。

「さあて…しばらく忙しくなりそうだなあ」

「ぼやくなぼやくな。俺達も力貸すからさ」

太一が大輔の肩をポンと叩きながら言うと大輔も頷いた。

「大輔…お前さあ、成長したよなあ」

「初めてデジタルワールドに行ってからもう1年以上経ってるんですよ?成長の1つや2つくらいしますよ」

「前以上に生意気で暴力的になったけどな゙っ!!?」

脛に炸裂する回し蹴り。

尻に来ると予想していたヤマトは予想外の攻撃対処出来ずにモロに喰らってしまう。

「まあ、とにかく。向こうの世界で沢山の影響を受けました。俺もヒカリちゃん達も」

「…………」

大輔の言葉にタケルは思わずヒカリを見遣り…。

「な、何…?」

「…………うん………確かにね。ヒカリちゃんも色んな意味で変わったね」

真剣な表情で頷くタケルにヒカリは表情を引き攣らせる。

「何?タケル君?何が言いたいの?言いたいことがあるなら言えばいいじゃない…!!」

「ヒカリさん!!アカリさん直伝の肘打ち、アカリさん・ドストライクは駄目だ!!」

「大丈夫、今回はただのアカリさん・ストライクだから…!!」

「全然大丈夫じゃない!!」

「早まらないでヒカリ!!」

賢とワームモン、テイルモンがアカリ直伝の必殺技を繰り出そうとするヒカリを止めた。

「まあとにかく今日は解散。また明日ってことで」

取り敢えず今日はゆっくり休んで明日に備えようと大輔は解散を言い渡す。

そして翌日…東銀座にデジモンが出現し、大輔は慌てるが、ブイモンが寝坊してしまい、叩き起こすとマグナモンに乗せてもらい東銀座に向かった。

一方、東銀座では。

「どうした?でかい口を叩いておきながらこのざまか?」

「ぐっ…!!」

ブラックウォーグレイモンとスカルサタモンが睨み合う。

他の完全体を倒して調子に乗っていたスカルサタモンだが、いきなり現れたブラックウォーグレイモンに圧倒されている。

因みにブラックウォーグレイモンと一緒に東銀座に向かったはずのなっちゃんはまだ追い付いていない(置いていかれた)。

「ウォーブラスター!!」

ブラックウォーグレイモンがエネルギー弾を連射し、スカルサタモンを攻撃する。

それを回避するが、エネルギー弾に神経を回していたスカルサタモンの隙を突くように一気に接近し、顔面を殴り飛ばす。

ブラックウォーグレイモンは吹き飛んでいくスカルサタモンを追い掛け、追撃を仕掛けていく。

殴る、ただひたすら無慈悲にスカルサタモンを殴り続ける。

「ぎゃああああ…!?」

「あいつらは甘いから貴様にも無意識に手加減をしてくれたかもしれんが俺はそうではない。さっさとこんなつまらん戦いなど終わらせてやる。」

鋭い回し蹴りを繰り出してスカルサタモンを吹き飛ばした。

「ぐ…ぐぐぐ…」

よろめきながら起き上がるスカルサタモンにブラックウォーグレイモンは掌に掌サイズの小型のエネルギー弾を作り出す。

「つまらん戦いだった。さっさと消えるがいい…!!」

スカルサタモンに狙いを定めたブラックウォーグレイモンはエネルギー弾を投擲しようとする。

「…ん?…ヒヒッ!?」

表情を険しくしていたスカルサタモンがある物を見つけ、ニヤリと笑いながら移動した。

「む?」

スカルサタモンが取った行動に訝しむブラックウォーグレイモンだが、次の瞬間に目を顰めた。

「いっひっひ!これなーんだ!」

スカルサタモンは子供達の乗ったスクールバスを軽々と持ち上げた。

バスの中の子供達が、助けを求めて泣き叫んでいる。

「人質のつもりか?」

「そーうだ。こいつらを殺されたくなかったら…」

「やれ、俺は構わん」

【な!?】

ブラックウォーグレイモンの発言にスカルサタモンだけでなく周囲の仲間まで驚愕する。

「しかし分かっているのか?貴様が生きていられるのは人質がいるからだ…つまりそれが貴様の命を繋いでいる…ぬうぅうん!!」

ブラックウォーグレイモンの暗黒パワーに聖なるパワーが混じり始める。

「あ、暗黒パワーと聖なる力が混じり…」

「ククク…聖なる力が混じってしまっては“暗黒のガイアフォース”とは呼べんかもな…さあ、バスを破壊するならするがいい!!人質がいなくなった瞬間、ここが貴様の死に場所となるのだからなあ!!」

闇と光。

相反する力を融合させたエネルギーは凄まじく、ただ溜めているだけでも、全てを吹き飛ばすほどの力が場に淀んでいる。

それを見ていたスカルサタモンの表情は引き攣っていた。

ブラックウォーグレイモンは本気だ。

バスを破壊した瞬間、出鱈目な力を持つエネルギー弾を容赦なく投擲するだろう。

「さあ、バスを破壊しろ。一瞬で塵にしてやろう…!!」

「あ…う…」

少し後退した瞬間、全身が銃弾で撃ち抜かれていた。

「あ?」

全身に風穴が開いたスカルサタモンはゆっくりと落下していく。

「ブラック、今!!」

「遅いぞナツ!!これでくたばるがいい!!」

バスをなっちゃんが持ち上げ、ブラックウォーグレイモンは落下するスカルサタモンを上空に蹴り上げるとエネルギー弾を投擲した。

「ぎゃああああ!!?」

エネルギー弾が直撃したスカルサタモンは断末魔の叫び声を上げながら消滅した。

光と闇、相反する力が1つとなった一撃の威力は凄まじく、もしブラックウォーグレイモンが上空に打ち上げてくれなければと思うとヒヤヒヤするレベルであった。

「なっちゃんが来るまでの時間稼ぎの演技だったのね、ブラックウォーグレイモン」

「まあな…」

「よいしょ…」

なっちゃんが少し離れた場所にバスを置いて此方に駆け寄ってきた。

「ヒカリ~、バス守ったよ」

「うん、なっちゃん。偉いわ」

「ふふん♪」

シスタモン・ブランに退化したなっちゃんはヒカリに抱き付き、ヒカリは微笑んでなっちゃんの頭を撫でてやった。

「みんな!!」

「大輔…」

大輔が向こうから息を切らしながら走ってきた。

「東銀座に現れたデジモンは?」

「大丈夫、ブラックウォーグレイモンが倒してくれたわ」

「ごめん、ブイモンが寝坊したせいで」

「悪い悪い、深夜番組の秘境大冒険が面白すぎて」

「……中々やるな、選ばれし子供達よ」

「…誰だお前?」

聞こえてきた重苦しい重圧を孕む声にマグナモンが子供達を守るように立ちはだかる。

現れたデジモンはマグナモンを鋭く見据えながら口を開いた。

「……デーモンだ。一乗寺賢を渡してもらおうか?」

「賢に何の用だ?」

大輔がデーモンと名乗ったデジモンを睨み据えた。

「一乗寺賢の体内には我らが必要としている物が埋め込まれているのだ。これ以上犠牲を出して欲しくなければ、来てもらおうか」

「てめえ舐めてるのか?こっちにはマグナモンとブラックウォーグレイモンがいるし、他にも仲間がいるんだ。どっちが有利不利かは一目瞭然だろうが」

「…確かに全員で来られては厄介だがな。だが、その6匹に戦える力が残っているかな?」

【!?】

デーモンの視線がアグモン達に向けられた。

「どういう意味だ!?」

太一が声を荒げる。

デーモンは意に介さず、淡々と言葉を紡いでいく。

「その6匹は今までデジタルワールドにいたのだろう?急激な環境の変化に体がすぐに適応出来ると思うか?」

確かにスカルサタモンから攻撃を受けた後、追撃すらされていないのにも関わらず間もなく退化してしまった。

「その6匹は戦力にはならん。そこの2体以外は取るに足らん存在…大人しく一乗寺賢を渡せ。渡さなければ…」

「お生憎様だね!!」

その時、デーモンと子供達に割り込む形で大型トラックが走ってきた。

トラックの後部に掴まっていたのはアルケニモンで、彼女を睨みながらデーモンは尋ねた。

「……お前達、何者だ!」

「名乗る必要なんて無いね……一乗寺賢、あんたは私達と一緒に来るんだ」

「何っ!?」

「子供達がどうなっても良いのかい?」

そう言うと、アルケニモンがトラックの荷台を開くと、そこには相当の数の子供達がいた。

その光景に、なっちゃんはふと朝のニュースを思い出した。

「今日の朝のニュース…小学生が行方不明って…」

「お前達が誘拐したのか!?」

「まぁ、人聞きの悪い…この子達は自分から私達についてきたんだ」

子供達は暗い笑みを浮かべ、まるで感情を失ったようにこちらを見ていた。

「何故…何でなんだ!?」

「何でなんだろうねぇ…それは追々教えてあげるよ…私達についてきたらね」

そう言って、アルケニモンは意地悪く微笑んだ。

賢は悔しそうに唇を噛み締め、アルケニモンを睨みながら、手を握り締める。

意を決してトラックへ向かって歩いて行った。

「賢!」

「賢君、駄目よ!」

「行っちゃ駄目!」

大輔とヒカリとワームモンの言葉に、一瞬賢の足が止まった。

「…来るな」

ワームモンの言葉も虚しく、賢はそのままトラックの荷台に乗り込んだ。

そして、その扉をアルケニモンが乱暴に閉め、この場を去っていった。 

 

第57話:怒り爆発

賢と子供達を伸せたトラックが凄まじい勢いで走り去っていく。

「逃がすか!!プラズマ…」

「ケイオスフレイム!!」

「ぐあっ!?」

ミサイルを放とうとした時、デーモンがマグナモンに向けて火炎を放った。

「…お前…」

火炎の直撃を受けたマグナモンはデーモンを睨み据える。

「一乗寺賢は私が手に入れると言ったろう…!!貴様らは私のしもべ達と遊んでいるがいい…!!」

デーモンが上空に手を翳すとデジタルゲートを開いてそこから…。

「デジタルゲートを開いた…それにあそこから…」

ヤマトは目を見開いてデーモンが単体で開いたデジタルゲートを見つめると、そこから暗黒系デジモンの群れが飛び出してきた。

「我がしもべ達だ。戦闘力自体は貴様らが倒したスカルサタモンには劣る…しかし…」

デジタルゲートから飛び出した暗黒デジモン達は街を攻撃し始めた。

「ああ!?」

「街が!?」

攻撃されていく街を見た京と伊織が悲痛な叫びを上げる。

「時間稼ぎにはなるだろう。さあ、早くしなければこの街が廃墟になるぞ。レディーデビモン、マリンデビモンよ」

「「はっ!!」」

レディーデビモンとマリンデビモンがデーモンの前に出現した。

「私自らが奴らを追う。お前達は時間を稼げ」

「「御意!!」」

それだけ言うとデーモンは闇に紛れてこの場を去り、アルケニモン達のトラックを追い掛けた。

「待ちやがれ!!」

「ここから先は通行禁止よ」

レディーデビモンが大輔達の前に立ちはだかる。

「一乗寺賢の体には我々に必要不可欠な物がある。貴様らに邪魔などさせんぞ…」

マリンデビモンが邪悪な笑みを浮かべながら言う。

「何で…どうして…?どうしてこんな酷いことをするのよ!?」

京が怒りながら叫ぶ。

それを聞いたレディーデビモンが呆れたように答えた。

「さっき言ったでしょ?あの坊やの体には私達に必要な物があるのよ。それを手に入れるために必要なことをやっている…もしかしたら開花するかもしれないしね…!!」

「開花…?何を言っているのかは知りませんが、私欲のために無関係な人達を巻き込むなんて許せません!!」

「それが何がいけないのかしら!?冷酷非情!!それが私達、私達の生き方を邪魔するのなら女子供でも容赦はしない!!あなた達も自分のやり方に刃向かう者を屠って今があるんでしょ!!やっていることは私達と同じよ!!」

「「違う!!」」

レディーデビモンの言葉に叫ぶ京と伊織だが、構わず言葉を紡ぐ。

「違わない!!自分達にとって“悪”と感じる存在を屠ってきたからあなた達は存在する!!力こそが全てなのよ。どちらのやり方が正しいのかは後世の歴史と勝利だけが決めること!!」

レディーデビモンは手を手刀の形にし、それを鋭利な槍にする。

「ダークネススピア!!」

レディーデビモンの攻撃の標的にされたのは京だった。

「っ!!」

「京さん!!」

反応が遅れた京の顔が驚愕に見開かれ、ホークモンが盾になろうとしても間に合わない。

「…………」

「くっ!?」

マグナモンが間に入り、レディーデビモンの腕を簡単に掴み、レディーデビモンが必死に振り解こうとしても、力の差がありすぎてびくともしない。

「お前の言う通りだよ。俺達は自分の前に立ちはだかってきた敵を倒してきたから今があるんだ。俺達がしていることはお前らと大差ないだろうな…でも…俺はお前達が許せねえ。俺は世界よりも仲間や家族が大事だ。その仲間を…」

拳を強く握り締める大輔。

力が強すぎたのか皮膚が傷つき、血が流れ始めた。

「てめえらの勝手な都合で振り回そうとしているのが許せねえ…!!」

「はああああ…ミラクルグリッター!!」

D-3Xが大輔の怒りをマグナモンの力に変えてくれる。

仲間を傷つける者は許さないという純粋な想いに奇跡のデジメンタルが応えてくれた。

「そ、そんな…この力は…!?」

「げ、限界がないのか!?」

黄金の閃光に飲まれたレディーデビモンとマリンデビモン…そして付近にいた暗黒デジモンを粉砕した。

「でやああああ!!」

マグナモンは金色の閃光となって街を荒らすデジモン達を粉砕していく。

「大輔とマグナモンだけに任せてられるか!!アグモン、もう少しだけ踏ん張ってくれ!!」

「うん、行くよ太一!!」

この戦いだけ保ってくれればいいとアグモン達は再び立ち上がって進化した。

完全体に進化してこちらに迫る敵を迎撃する。

限界が近くなっているのか、メタルグレイモン達の動きが鈍いが…それでも体を動かして戦う。

「「………」」

「京さん…」

「伊織君…」

隣で悩んでいるデジクロスのパートナーにタケルとヒカリは、ゆっくりと歩み寄る。

「京さん、戦いたくないなら私達に任せて下さい」

「伊織君も無理して戦わなくてもいい。無理する必要はないんだよ」

「怖いなら戦わなくていい。戦いは戦いたい奴がやればいいんだよ。」

前から言い続けていたことだ。選ばれし子供としての役目が、楽しい事ばかりだとは限らない。いや寧ろ辛い事の方が多いくらいだ。ヒカリとタケルは前回の戦いで、大輔も異世界の戦いでそれを知っているからこそ、まだ何も知らない伊織達にこうやって逃げ道を作ってやっている。

「「…………」」

「本当に無理すんな。賢のことは俺とヒカリちゃんとタケルに任せて帰れ」

精神的に脆い部分がある伊織と京に殺伐とした戦場は絶対に似合わない。

せめて2人だけにはこんな恐ろしい光景を見せたくなかった。

「さあ、早く帰れ」

大輔の声はとても穏やかで先程まで激怒していたとは思えない程である。

「大輔さん…でも…」

「私達だけ…」

「いいんだ、伊織、京…。お前らはいい奴だもんな…タケルも言ってたろ?無理しなくていいって…今までありがとな」

それだけ言うと大輔はマグナモンとブラックウォーグレイモン、なっちゃんの元に向かう。

「マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!アンノウンクロス!!」

「マグナモンBW!!」

マグナモンとブラックウォーグレイモンをデジクロスさせ、マグナモンBWにさせると、ドラモンキラーでデビドラモンを両断した。

「(良いんだろうか?大輔さん達に戦いを押し付けて逃げるなんて…)」

伊織の耳に家を破壊され、一組の夫婦が悲痛な声を上げた。

「(…これは、許される事なんだろうか。悲しむ人々を救える力を自分は持っているのに、戦いたくないからと、人々を見捨てる事が正しいんだろうか…?)」

今は亡き父…火田浩樹はこんな息子を見たら何と言うだろうと思い、伊織は表情を引き締めた。

「戦います…」

「伊織君…」

「上手く言えませんけど…ここで逃げたら、僕…一生後悔すると思います。僕も…戦います…」

伊織の目はまだ揺らいでいるが、タケルは伊織の覚悟を信じた。

「分かった、一緒に戦おう伊織君!!」

「はい!!」

タケルと伊織、アルマジモンも戦場に向かい、残されたのはヒカリと京とホークモンのみ。

「……どうして…こんなことになるの…?」

大輔、ヒカリ、タケル、伊織…そして賢とずっと一緒にいれれば、それだけで良かった。

楽しくデジタルワールドを冒険出来れば、それで良かったのに。

「京さん…」

「どうしてこんな酷いこと出来るのよ…!?何で…!?どうしてよ…!!?」

あまりにも酷い光景に京は泣いていた。

悔しくて悲しくて、街を平然と荒らす奴らが許せなくて、そんな言葉に言い表せない様々な感情が溢れ出したように、京の頬を涙が伝う。

賢を己の私欲のために振り回そうとするだけでなく無関係な人々まで戸惑うことなく巻き込むデーモン達に京が受け継いだ愛情が、純真が、その行為を許せないと叫んでいた。

「京さん…戦いましょう?」

「ヒカリちゃん…」

京の手を握り締め、ヒカリが強い光を宿した瞳で見つめる。

「京さんの気持ちは正しいんです。何もしないで後悔するより、精一杯やって後悔した方がずっといいですよ…大丈夫、京さんは1人じゃない。辛い時は私達が傍にいますから」

「………」

「私も敵を倒すことだけが正しいとは思ってません。大輔君達だってそうです。戦うことはとても辛くて苦しいこと。私だって出来れば戦いたくなんかない。誰かが傷付くところなんて、見たくない。でも、その苦しさとは絶対に天秤に掛けられない物があるんです。」

そう言ってヒカリは戦場の方を見遣る。

マグナモンBWが高機動を活かしてかなりのペースで倒していくが、まだデジモンの数は多く、街は攻撃されていく。

京は涙を拭ってヒカリに向き直る。

「ヒカリちゃん…私も戦う。何もしないで後悔するくらいなら精一杯がむしゃらにやってから後悔した方がマシだわ!!」

「はい!!」

ヒカリ達も戦場に向かい、参戦した。

「京!?」

「私も戦うわよ!!何もしないで後悔なんかしたくないもの!!」

「そうか、行くぞ!!マグナモンBW!!ロングソード!!マテリアルクロス!!…ブラックマグナブレード!!」

ロングソードがマグナモンBWのデータを得たことで黒を基調とした長剣となった。

「喰らえ!!」

剣に闇と光のエネルギーを纏わせた状態で振るうと、エネルギー波が暗黒デジモン達に炸裂した。

デーモンが繰り出した暗黒デジモン軍団を全滅出来たのは今から十数分後である。 

 

第58話:憤怒の魔王

何とか全員で力を合わせ、暗黒デジモン達を全滅させたものの、無理をさせ過ぎたのか、アグモン達は戦いが終わるのと同時に大量の汗を流しながら座り込んだ。

「これ以上はもう無理です。アグモン達をデジタルワールドに帰さないと」

アグモン達は3年前を除けば長時間現実世界にいたことがないため、これ以上現実世界に留まるのは危険だと判断した光子郎はデジタルワールドに帰すことにした。

「待って、僕達の残りのパワーを全てブイモンに渡そう!!」

このまま帰るよりもこの先、デーモンとの戦いを控えているブイモンにチンロンモンのパワーを渡した方がいいと判断したアグモン達はブイモンに残されたチンロンモンのパワーを与える。

力が漲り、疲れが癒えていく感覚がする。

「サンキュー!!」

「後は任せたよ!!」

ブイモンはアグモン達に礼を言い、アグモン達はブイモン達に全てを託してデジタルワールドに。

「…行くか!!」

「どうやって?僕達はアルケニモン達がどこにいるのか分かりません。」

「…俺には分かる。俺はダークタワーデジモンだ。アルケニモン達の居場所くらい分かる」

ブラックアグモンがアルケニモン達がいる場所を向きながら呟く。

「よし、ブラックアグモン。案内してくれ…多分、そこにはデーモンがいる。行ったらもう引き返せないぞ。覚悟は良いな?」

大輔がヒカリ達に顔を向けるとヒカリ達も頷いてくれた。

「行くぜ!!」

ブラックウォーグレイモンを先頭にしてブイモン達は進化し、アルケニモン達がいるであろう場所に向かう。

途中で大輔達はある場所に向かっていることに気付く。

「ん?この先は光が丘…?」

「光が丘……ヴァンデモンがゲートを開いて、私が初めてやって来た場所」

「そして、私がデジタマを見つけた場所……その光が丘で何が……またあの場所で、何が起ころうとしているの?」

「…少なくても碌でもないことだろうな。アルケニモン達とそのボスの及川悠紀夫、そしてそこらの暗黒系とは明らかに別格そうなデーモン…このままじゃ光が丘の未来は明るくないだろうな…」

及川とアルケニモン達もデーモンも光が丘の人々が犠牲になろうと知ったことではないだろう。

そして時間をかければかけるほどに、賢や光が丘の未来は暗い方向に向かっていくだろう。

「くそ…」

唇を噛み締める大輔にヒカリはそっと声をかけた。

「焦らないで大輔君。焦りは判断力を鈍らせるってキリハさんに教わったでしょ?」

ヒカリのその言葉に大輔はハッとなった。

そうだ、焦りは判断力を鈍らせる。

今回の敵は三元士レベルの相手だと判断し、焦っていては足元を掬われかねない。

「…ありがとうヒカリちゃん」

「…どういたしまして」

「ウワア、大輔君トヒカリチャンノ周リニ綺麗ナオ花畑ガ見エルヨー」

至近距離にいたタケルは遠い目をしながら呟いた。

「馬鹿なことを言ってる場合ですか!!早く追い付かなければ!!」

このままではどれだけの犠牲が出るか分からない。

一刻も早く急がなければ。

「ああ、分かってる。急ぐぞ!!」

大輔が声を張り上げ、マグナモン達は猛スピードで光が丘を目指す。

「それにしてもあちこち渋滞があるけど被害が全くないわ」

「多分、デーモンは及川達の目的地に先回りしてるのかもな。賢を手に入れるならそっちの方が確実だと思ったんだろ。今回ばかりは感謝しねえといけねえな…」

大輔は深い溜め息を吐きながら光が丘に向かうと、そこにいるであろう親友の元に。

一方、光が丘では…。

「…暗黒の種を貰いに来たぞ」

デーモンが言葉を発し、トラックの助手席から降りてきたのは及川であった。

「ふん……デーモン自らがお出ましとはご苦労な事だな。他の奴らはどうした……あのガキ共にやられたか?」

「……言葉は慎重に選んだ方が身の為だぞ」

及川の挑発にデーモンは威厳は保ったまま返した。

恐らくデーモンからすればこれが一番優しい警告なのだろう。

何故異質な存在とは言え、人間である及川を攻撃しないのか…?

人間だから手加減しているというのは断じてないだろう。

「素直にこちらに渡せばよし……そうでないなら、力ずくで奪うまでだ!!」

「まあ、そう慌てるなって……そんなに欲しけりゃ持っていけ」

詰め寄るデーモンを宥めるような口調で言うと、及川は音高く指を鳴らした。

するとトラックの荷台のドアが開き、中からアルケニモンに連れ出されて賢が姿を現した。

暗黒の種を子供達に植え付けてしまえば、もう賢に用は無い。

賢がデーモンに利用されようとも、及川にとっては関係の無い事だった。

賢がデーモンに差し出される直前、金色の閃光がデーモンに激突した。

「っ!貴様!!」

「よお、デーモンさん。さっきの不意打ちのお返しをさせて貰うぜ?大輔!!」

「マグナモン!!ロングソード!!マテリアルクロス!!マグナブレード!!」

金と蒼を基調とした長剣になり、マグナモンはそのままデーモンに向けて振り下ろした。

振り下ろされた聖なる光を帯びた一撃。

「ぬん!!」

デーモンは咄嗟に真剣白刃取りで剣を受け止める。

「チッ!!このまま叩き斬ってやる!!」

「ほざくな!!」

マグナモンとデーモンが激突し、ブラックウォーグレイモン、なっちゃん、デジクロス体のホーリーエンジェモンとエンジェウーモンが及川達の前に立つ。

「ボスに手出しはさせないよ!!」

アルケニモンとマミーモンがブラックウォーグレイモン達に向かっていくが、ブラックウォーグレイモンは右腕を横薙ぎするだけで2体を吹き飛ばした。

「お前の好きにはさせん!!」

ブラックウォーグレイモンが勢い良く及川に殴りかかる。

普通の人間ではなく、究極体の姿の自分を軽々と吹き飛ばしたため、手加減は不要と判断したのだ。

「ふん…」

及川の体から再び黒い影が吹き出し、片手でブラックウォーグレイモンの一撃を受け止めてしまった。

「なっ!?」

ブラックウォーグレイモンの一撃を片手で受け止められたことにブラックウォーグレイモンだけでなくヒカリ達まで驚愕した。

「あのブラックウォーグレイモンの一撃を片手で!?」

「に、人間じゃないの!?」

それを見た伊織と京は目の前で起きていることに目を見開いている。

「100本のダークタワーのエネルギー…貰おうか」

及川がニヤリと笑うと、ブラックウォーグレイモンの体から暗黒エネルギーが漏れ出し、及川に吸収されていく。

「ぐああああああ!?」

「ブラック!!」

「ぐっ、お、己!!」

力が一気に抜けていく感覚に意識を失いそうになったが、咄嗟にチンロンモンの聖なる力を放出した。

「ぐあっ!?」

咄嗟に手を離す及川の掌は火傷を負ったような状態となった。

「ぐっ…」

いきなりエネルギーの大半を持って行かれたブラックウォーグレイモンは膝を付いた。

「…それは聖なる光…何故お前にそんな力が…!?」

「俺はチンロンモンや大輔のD-3Xの影響を受けているのでな。聖なる力もある程度だが操れるようになった…!!」

「くっ、これではお前の力はこれ以上奪えないか…仕方ない!!」

及川が身を翻してトラックに向かおうとする。

「「待て!!」」

ホーリーエンジェモンとエンジェウーモンが技を放とうとするが、アルケニモンとマミーモンが立ちふさがる。

「おっと、攻撃したら子供達の命はないよ」

「子供達を死なせたくないだろ?だったら何もするんじゃない!!」

「卑怯な…」

ホーリーエンジェモンが光剣を消し、エンジェウーモンも矢を消して2体を睨む。

「何してやがる!!さっさと車を出せ!!」

及川の怒声にアルケニモンとマミーモンは慌てて向かい、去っていく車を京と伊織は追いかけようとするが…。

「待て…今はデーモンを優先すべきだ。奴を倒さねば光が丘は火の海となるぞ」

マグナモンとデーモンの激突を見て、ブラックウォーグレイモンが呟く。

「喰らえ!!」

マグナモンは剣をデーモンに向けて勢い良く投擲した。

「そんなもの…」

投擲された剣を弾いた瞬間、顔面に衝撃が走った。

「ぬう!?」

「悪いが手加減はしないぞ!!この一撃で吹き飛ばしてやる!ミラクルグリッター!!」

「ぐおおおおお!?」

デーモンに向かって一直線に伸びていく閃光をまともに受けた。

「やったあ!!」

「いや…」

賢の拘束を解きながら京がガッツポーズをした。

「はあ…はあ…」

いくらチンロンモンの光で回復したとは言え、度重なる連戦によって疲弊していたことによりブイモンに退化してしまう。

「ふう…流石に無茶をし過ぎたかな…」

「この程度か?」

煙から姿を現したのはマントが吹き飛び、本来の姿を曝したデーモン。

「お前、あれに耐えたのか?」

「当然だ。私は七大魔王の一角…例え聖なる光を使うロイヤルナイツと言えども簡単に倒されたりはせん」

「なるほどな…やっぱり三元士レベルのデジモンのようだな。ならこいつで行くぞ!!ブイモン進化、エクスブイモン!!」

「ワームモン進化、スティングモン!!」

「「エクスブイモン!!スティングモン!!ダブルクロス!!」」

「パイルドラモン!!パイルドラモン進化、インペリアルドラモンDM!!」

「「「インペリアルドラモンDM!!ホーリーエンジェモン!!エンジェウーモン!!ブラックウォーグレイモン!!シスタモン・ノワール!!アンノウンクロス!!」」」

「インペリアルドラモンXDM!!」

「ほう、そんな進化もあるのか」

インペリアルドラモンXDMがデーモンに凄まじい勢いで向かっていく。

デーモンは全身に力を漲らせ、インペリアルドラモンXDMと同等の体格となるとインペリアルドラモンXDMと取っ組み合いをする。

「中々のパワーだ。スピードも悪くない。だが…」

「!?」

腕を掴まれたインペリアルドラモンXDMは勢い良く地面に叩きつけられた。

「私と戦うなら先程のマグナモンの方が良かったな」

「ぐっ!?」

「確かにその形態も聖なる力を宿しているようだが、所詮は完全体2体分だ。私を倒すには圧倒的に力が足りん」

「どうかな…やってみないと分からない!!セイクリッドブレード!!」

「愚かな、スラッシュネイル!!」

光を纏った刃と闇の爪がぶつかり合う。

最初は互角の打ち合いをするが、しかし手数の差で押され始める。

「うぐ…!!」

インペリアルドラモンXDMの体に傷が付き始める。

「所詮は四足歩行のデジモン…二足歩行のデジモンと比べれば小回りが利かん。ハンマーナックル!!」

「ぐはっ!?」

デーモンの拳がインペリアルドラモンXDMの顔面に炸裂し、吹き飛ばすのと同時に飛翔した。

「フレイムインフェルノ!!」

デーモンの重ねた両手の中で、業火が渦を巻きデーモンはその炎を、インペリアルドラモンXDM目掛けて撃ち出す。

「ぐっ!!ポジトロンレーザー!!」

業火と光線がぶつかり合う。

「ほう?中々やるものだ。更に力を引き上げても良さそうだ…!!」

業火の勢いが増し、それによってインペリアルドラモンXDMの光線が押され始めた。

「ぐっ!!くそお…!!」

インペリアルドラモンXDMも負けじと光線の威力を上げる。

「不味いな…パワーが足りない…」

大輔は顔を顰めながら呟く。

「大輔君、アグモン達からチンロンモンのパワーを貰ったけど。それでもエネルギーが足りないの?」

「ああ、FMにモードチェンジするにはまだブイモンにエネルギーが足りない…!!」

大輔が言うと、ヒカリは表情を暗くする。

「……今更かもしれませんが、何とかして、デジタルワールドに追い返す事は出来ないんでしょうか?」

「そうよ!!誰かからノートパソコンを貸して貰えば…」

その時、デーモンの高笑いが京の言葉を遮り、炎を放ち続けたままデーモンは両手を掲げる。

するとデーモンの頭上の空間に歪みが現れ、それは見る見る内に広がり現実世界とデジタルワールドを繋げる穴へと変化した。

「ほら、望み通りゲートを開いてやったぞ」

その穴の向こうに見えるのは、見慣れた荒野が広がる世界。

「あいつ…自分だけでデジタルワールドへのゲートを開けるのか?」

「そうだ。私達は現実世界、デジタルワールドへのゲートを開くことが出来る。つまり両世界を自由に行き来出来るのだ。」

デーモンが嘲笑を浮かべながら言う。

「じゃあ、お前をぶっ潰すしかねえってことかよ…!!」

「いや、お前達に私は倒せん…!!」

更にデーモンの業火の勢いが増し、インペリアルドラモンXDMに迫る。

インペリアルドラモンXDMも必死にパワーを上げるが追い付けない。

「駄目よ……私達じゃ、勝てない……!」

「諦めるな、まだ勝てる方法があるはずだ。」

「気休めは止して下さい!」

「伊織…」

「だってそうでしょう!?インペリアルドラモンでも敵わない、デジタルワールドに追い返しても意味が無い!それなのに、その上まだどのような方法があると言うんですか!もう、お終いなんだ!」

「いや…後少しなんだ。後少しエネルギーがあれば何とかなるんだ…問題はそのエネルギーを何処から調達すれば…」

「エネルギー…?そうだ、ホーリーエンジェモン達のチンロンモンのパワーをブイモンに渡すんだ!!そうすれば…」

タケルがホーリーエンジェモン達のチンロンモンの力をブイモンに渡すことを思いついた。

「そうか…すまねえ…お前達の力を貰う!!」

インペリアルドラモンXDMの体が光り、ホーリーエンジェモン達のパワーがベースとなるエクスブイモンに渡されたのだ。

「インペリアルドラモンXDM、モードチェンジ!インペリアルドラモンXFM(イクスファイターモード)!!スーパーポジトロンレーザー!!」

「むっ!?」

人型形態となったことで光線の規模と勢いが増し、デーモンの業火が押され始める。

デーモンは慌てて業火の勢いを強めたが、即座にインペリアルドラモンXFMの胸部の竜顔が開き、小型の砲門が出現する。

「ギガデス!!」

胸部から放たれたエネルギー波はデーモンの業火を突き破った。

「ば、馬鹿な!?ぐああああああ!!」

エネルギー波と光線はデーモンに同時に炸裂した。

「「っ!!」」

京と伊織が立ち上がって上空の煙を見上げ、賢は静かに呟いた。

「やったのか…?」

「いや、まだだ!!インペリアルドラモン!!」

まだ倒せていないと判断した大輔は指示を飛ばすとインペリアルドラモンXFMは翼を羽ばたかせ、煙を突き破って一気にデーモンとの距離を詰める。

「っ!!」

煙の奥にいたのは全身に火傷を負ったデーモン。

デーモンは目を見開いて接近して来るインペリアルドラモンXFMを見つめる。

「だああああああ!!」

拳と蹴りの乱打をデーモンをデーモンに浴びせる。

「ぐっ!!調子に乗るな!!」

デーモンが左腕を掴むとインペリアルドラモンXFMの左腕の手甲を破壊する。

「ドラゴンキック!!」

構わずインペリアルドラモンXFMの踵落としがデーモンの脳天に炸裂した。

踵落としを喰らったデーモンは地面に叩きつけられた。

「よし、インペリアルドラモン!!そいつをデジタルワールドに!!デジタルワールドでカタを付けるぞ!!」

大輔達はインペリアルドラモンXFMの光に包まれ、インペリアルドラモンXFMの肩に。

そしてデーモンを上空のゲートに押し込む。

「大輔君?」

「これ以上は危険だ。デジタルワールドなら被害を気にしないで戦える」

デーモンが出現させたゲートを潜り抜け、デジタルワールドに移動する。

「さあ、始めようぜデーモン。ここで終わらせてやる」

「終わらせるだと?笑わせるな!!フレイムインフェルノ!!」

インペリアルドラモンXFMに迫る灼熱の業火。

それをインペリアルドラモンXFMは光のバリアを展開し、それを受け止めた。

「…はあっ!!」

気合いを入れると業火は消え、インペリアルドラモンXFMはすぐにバリアを解除してデーモンの顔面を殴り飛ばして回し蹴りを喰らわせた。

「ぐっ!!」

「どうした!?七大魔王の力ってのはこの程度か!!」

「調子に乗るな…!」

インペリアルドラモンXFMとデーモンが乱打戦を繰り広げる。

しかし真の力を解放したインペリアルドラモンXFMはデーモンを上回り、デーモンの攻撃の打点をずらし、的確にデーモンの急所に打撃を当てていく。

「ぐはあっ!!?」

「お前は確かに強い。でも俺にはみんなの力が宿ってるんだ。真の力を解放したことでようやくみんなの力を全開にして戦える。お前1人の力には絶対に負けない。俺達の力を見くびったのがお前の敗因だ」

「己!!」

デーモンは飛翔して再び必殺技を放とうとする。

「いいのか?その位置で…?その位置は俺が遠慮なく最大級の必殺技を放てる位置だ。」

竜顔が開いて小型の砲門が出現すると、腕の大砲を連結させた。

「フレイムインフェルノ!!消し飛べ!!」

デーモンの全力が込められた業火がインペリアルドラモンXFMに迫る。

「消し飛ぶのはお前だ!!これが全力全開のギガデスだあああああ!!!」

連結砲から放たれたエネルギー波の出力・規模は凄まじく、先程のエネルギー波よりも数倍の威力があった。

エネルギー波により業火は容易く掻き消される。

「!?うわあああああ!!?」

超強烈なエネルギー波に飲まれたデーモンはデータ粒子となって消えていく。

「や、やったんですか…?」

「…ああ」

尋ねてきた伊織にインペリアルドラモンXFMは優しく微笑みながら答えた。

【やったー!!】

七大魔王・デーモン撃破。

闇の存在として最強のデジモンの1体を倒せたことに子供達は歓喜した。

「やったね大輔君!!」

「ああ!!」

抱き締めあう大輔とヒカリ。

「まあ、タケルが思い付かなかったら負けてたけどな」

「あはは、まさかこうも上手く行くとは思わなかったけど」

「賢君!!私達、勝ったのよね!?これは夢じゃないわよね!!?」

「はい、デーモンは倒せましたよ京さん」

喜びのあまり賢に抱き付く京だが、ハッとなってすぐさま賢から離れる。

「あ、あはは!!ご、ごめんね賢君!!つい…」

「京さん、顔がトマトのように真っ赤です…あうっ!?」

「お黙り!!」

ツッコミを入れる伊織に京の拳骨が炸裂した。

分離・退化したブイモン達は晴れ晴れとした表情でデジタルワールド独特の空を見上げた。 

 

第59話:久しぶりの人装

デーモンを撃破して心身共に疲れ果てた子供達。

しかし、暗黒の種を植え付けられた子供達の様子と、黒幕の及川とマミアルコンビを捜さねばならないと今までの情報を纏めていたのだが。

「よし、こっから先は俺達に任せてお前らは休め」

「更なる情報収集と及川捜索は私達に任せなさい」

「ゆっくり体と心を休ませればいいよ」

【へ?】

ブイモンとテイルモン、ワームモンの言葉になっちゃん以外のメンバーが疑問符を浮かべた。

「俺はテイルモンとワームモンと話し合って決めたんだ。大輔達は度重なる戦いで心労が溜まってる。だから情報収集と及川捜索は俺達に任せてお前らは買い物するなりぐっすり寝るなりリフレッシュして来い!!」

「で、でも、ブイモン達だけで情報収集や人捜しは無茶なんじゃ…」

「「「ふふん♪心配ご無用!!こんなこともあろうかと、ちゃんと用意してある(わ・の)!!」」」

「用意したの私なんだけどね~」

なっちゃんは溜め息を吐きながら槍を構えて詠唱し、ブイモンとテイルモン、ワームモンの足元に魔法陣を展開する。

「むむむむ…とりゃあああ!!」

気合いを入れ、一気に力を解放してブイモン達を懐かしの人間姿に。

「「「じゃあん!!どう(だ)?驚いた(でしょ・か)?」」」

そう、未来の並行世界でなったブイモン達の人間姿なのである。

「「「ああ、その姿は!?」」」

【おおおおお!?】

「凄ーい!!」

「ブイモン達が人間になっただぎゃあ!!」

「これはまた…」

「て言うかこれって大輔達?」

「そう、私達は大輔、ヒカリ、賢の小さい頃の姿をモデルにしてるのよ。あんた達も…まあ、出来るだけしてあげてもらうわ」

テイルモンがホークモンを見て一瞬だけ微妙な表情を浮かべたが、なっちゃんを見遣って合図を送る。

「それじゃあ、アルマジモン、パタモン、ホークモンを変身させま~す」

「だぎゃあ!!」

「タケルだあ!!懐かしい~!!」

アルマジモンは幼稚園時代の伊織、パタモンは3年前のタケルの姿となり…。

「ちょーっと待って下さいなっちゃん!!異議あり!!何で私だけニワトリなんですか!!?コケコッコーーーーー!!!!!?」

何故かホークモンだけはニワトリ姿だった。

「あはははははは!!似合ってる!似合ってるわよホークモン!!」

「似合いすぎて腹が…腹が…息が出来な…死ぬ…!!」

腹を抱えて爆笑するテイルモン。

笑いすぎて窒息死しかけているブイモンとなっちゃん。

アルマジモンとパタモンも指差して爆笑。

顔を背けて体を小刻みにプルプルと震わせているブラックアグモン。

「異議あり!!」

「待った!!ホークモン、に、似合ってるわよ…っ!!」

「京さん、いっそのこと笑ってくれた方がマシです。」

顔を真っ赤にして必死に笑いを堪えている京。

それならいっそのこと大声で爆笑してもらった方がマシである。

「まあまあ、落ち着けよホークモン。ぶっちゃけ京の顔でお前の声は合わなすぎる。」

「うぐっ…」

「それでブラックは…」

「俺もか?」

「当然!!一番格好良くしてあげる!!この中で一番男前な人をモデルに…」

それを聞いた太一達は身嗜みを整え始めた。

因みに先代組も集まっており、誰が指名されるのかと唾を飲み込みながら…。

「モデルは当然、大輔!!」

「え?俺?」

「だああああああ!!?」

なっちゃんはブラックアグモンの人間の姿を大輔に指名し、それを聞いた太一はずっこけ、他の先代男性陣は落胆。

「髪の色は究極体と同じ色で~」

「あ、なっちゃん。身長はお兄ちゃん達くらいの方が良いんじゃないかな?」

「それ良い考え!!後、服は…」

「別に適当で構わ…」

「「駄目っ!!!!!」」

「!?」

適当で構わないと言おうとしたブラックアグモンの言葉を遮って声を張り上げるなっちゃんとヒカリにブラックアグモンは目を見開く。

「成長(仮)した大輔君の姿を借りるんだから、もっともっと格好良くお洒落しなきゃ!!」

「そうだよ!!大輔の姿で適当な格好なんて絶対絶対許さないんだから!!」

「う、うむ…わ、分かった…分かったから落ち着いてくれ……」

ヒカリとなっちゃんの同時攻撃とあまりの迫力に冷や汗を流しながらタジタジのブラックアグモン。

「ブラックアグモンが押されてます…」

「凄いなあ…」

伊織とタケルは何処からか持ってきたファッション誌を読み漁っているヒカリとなっちゃんに引き攣った表情を浮かべていた。

「あ、ヒカリ!!このジャケットなんかどうかな!?」

「うーん、格好いいけど少し派手かな?この黒いコートとか…ブラックアグモン、大輔君と同じで黒とか似合いそうだし。」

「いいねそれ、でも…こっちの…」

盛り上がるヒカリとなっちゃん。

そして居心地悪そうに2人の間に座らされているブラックアグモン。

悔しさの余りに歯軋りする太一。

太一の隣で深い溜め息を吐くヤマト。

「まあ、ヒカリちゃんとなっちゃんからすれば大輔が一番男前に見えるのは仕方ないか、恋は盲目と言うし…。なあ、タケル。お前なら分かるだろ?」

自信たっぷりにタケルの肩に手を置くヤマトだが…。

「え?僕はブラックアグモンが人間の姿になるならお兄ちゃん達よりも大輔君がモデルなのが一番だと思うよ?」

「っ!!!!?」

弟からの思ってもみなかった凄まじい破壊力を秘めた言葉の衝撃を心に受けたヤマトは硬直する。

「だってブラックアグモンは殆ど大輔君のパートナーデジモンみたいなもんだし…」

タケルの言葉はヤマトには届かなかった。

ショックの余りに頭の中が暴走していたからだ。

「(な、なん…だと…!?タ、タケルまで俺より大輔の方が男前だって言うのか!?タケルまで大輔の虜にされちまってたって言うのか…!?)」

本人達に聞かれたら問答無用の鬼の鉄蹴と魔王の鉄拳が飛んできそうな内容が頭の中に何度も過ぎる。

その時、錯乱しているヤマトの肩に優しく手を置く太一。

「…太一……」

「分かる…分かるぜヤマト!!お前のその気持ちが!!」

「た、太一ーーーっ!!!」

感極まって太一に泣きつくヤマト。

「すまなかった!!弟妹を失うのはこんなに辛いとは思わなかった…!!」

「ああ…俺達の苦しみは俺達にしか分からねえ…!!」

「太一…!!」

「とにかく凄い気迫ですね。たかが服装のことなのに」

呆れ果てたように後ろで繰り広げられる茶番から目を逸らして未だにブラックアグモンの服装に頭を悩ませているヒカリとなっちゃんを見てぼやく光子郎。

「泉先輩?いくら泉先輩でもその発言はヒカリちゃんやなっちゃんと同じ女の子として許せませんねえ…」

「み、京君…?」

眼鏡を光らせながら凄い威圧感を放つ後輩に引く光子郎。

「女の子っていうのは…好きな人のためなら些細なことでも真剣になれる生き物なんですよ…」

「そ、そうですか…す、すみませんでした…京君…」

すぐに京にペコペコと頭を下げる光子郎。

これではどちらが先輩で後輩なのか分からない。

「よーし!!決まった!!」

「ブラックアグモン!!早く早く!!」

「う、うむ…」

2人の気迫に気圧されながらもブラックアグモンは展開された魔法陣に足を踏み入れた。

「なっちゃん!!お願いね!!」

「任せてヒカリ!!絶対に…絶対に成功させてみせるから…私とヒカリの2人で作った姿を!はあああああああっ!!!」

「(出来ればその気迫と意志の強さは戦いの方で発揮して貰いたかったのだがな……)」

そして大輔が3年分くらい成長したような姿となったブラックアグモン。

髪は黄色、目の色は金色でブラックウォーグレイモンの要素を残しつつ、ヒカリ達が頭を悩ませて決めた黒いチェスターコート、下は灰色のクルーネックスウェット、黒スキニーと言った格好となったのである。

「わあ、ブラック似合う似合う」

「そ、そうか?」

「うん」

「…………」

「あの、ヒカリちゃん。何で俺の方をジッと見てるの?まさかブラックアグモンが着てる奴を俺にも着て欲しいとか?」

「…………」

大輔の言葉に無言で頷くヒカリ。着て欲しいと彼女の目が言っている。

「いや…でも…」

「大輔君…」

上目遣いで懇願するように見つめると大輔は折れてくれた。

「全く…分かったよ。ヒカリちゃんの我が儘に付き合うよ」

口では呆れたように言いつつも、大輔のヒカリを見つめる目は優しい。

「やった♪なっちゃん、魔法で服を作って!!」

「分かった♪」

ヒカリは嬉しそうになっちゃんに服を頼み、こうして大輔はヒカリが満足するまで着せ替え人形に。

「大変だな、大輔…」

着せ替え人形にされている親友に苦笑する賢。

「大輔君、次はこの服を着て!!」

「分かったからそんなに焦らなくても…」

「ふふ…本当に良い傾向だわ」

空は苦笑しながら2人を見つめた。

ヒカリの目が輝いているのが分かる。

自分の要求を真っ直ぐに伝えるのは以前のヒカリはしなかった…いや、出来なかった。

「きっかけがあれば変わるのね…あんた達にもきっかけが来ればいいんだけどね」

絶望し、大泣きしている恋人と幼なじみに苦笑しながら空が言う。 

 

第60話:情報収集と突撃ご飯

大輔達は情報収集などをブイモン達に任せて、ゆっくり休むことにした。

ヒカリを自宅に招待(その時、太一が猛反対したがなっちゃんに槍の穂先を向けられて沈黙した)し、ヒカリと共に自分のベッドに腰掛けた。

「…ふう」

「ごめんね大輔君。無理させちゃって」

「いや、俺も楽しかったし。正直ブイモン達が提案してくれて助かったかもしれない。思っていた以上に疲れてたようだ俺達」

京と伊織に至っては張り詰めていた糸が切れたのか、自室でぐったりと寝ているとジュンから聞いた。

「大輔君は大丈夫?」

「ん?」

「向こうでの戦いが終わってからも休んだのなんて少ししかないじゃない。」

「うーん、まあ…疲れてるっちゃあ疲れてるけど、じっとしてるのは何か落ち着かないと言うか…ほら、俺ずっと最前線組だったじゃん。動き回ってばかりが当たり前だったからなあ」

確かに大輔はタイキやキリハと同じく常に最前線で戦っていたし、今回も自分達のリーダーとして動いている。

「体壊さないでね?」

「うん、体壊して迷惑をかけるわけにはいかないしな。ブイモン達が作ってくれた休み時間を有効に使うとするかな。ヒカリちゃん、飯は炒飯でいいか?」

「うん、そうだ。一緒に作ろうよ。」

「…それもいいかも。一緒に作って一緒に食べよう」

大輔とヒカリはジュンが早まった真似をしないうちにキッチンに向かい、昼食作りに励むのであった。

一方、情報収集に当たっているブイモン達は…。

「超ウルトラメガシンカDX盛り豚骨ラーメン。10分で食べ切れれば賞金20万の奴を」

「お、お待ち~…」

ブイモン達はラーメンを食べていた。

暗黒の種を植え付けられた子供達の様子を粗方見たため、昼食タイム。

「頂きま~す!!」

ブイモン、アルマジモン、ブラックアグモンはラーメンを啜り始める。

ブラックアグモンはブイモンとアルマジモンと比べて上品だが、食べる速度が凄い。

テイルモンとパタモンとなっちゃんは少し離れた場所で食べていた。

因みにホークモンはペット禁止のために店の前で鎖で繋げられている。

「…………コケコッコーーーーッ!!!!(泣き)」

美味しそうなラーメンを前にしてホークモンは見ることも食べることも出来ずに天に向かって滝のような涙を流しながら叫んだ。

「「「御馳走様(だぎゃあ)」」」

ブイモン、アルマジモン、ブラックアグモンは超ウルトラメガシンカDX盛り豚骨ラーメンをペロリと平らげた。

見物客は拍手喝采、店長は真っ白な灰となった。

「化け物ね…」

「えっと賞金20万円が3人分だから…」

「店の損額は60万円だね…」

「……ご愁傷様」

真っ白な灰となっている店長を哀れむように見つめるテイルモンであった。

「……ラーメンを食べただけで60万円も貰えるとは…泣いていたが俺達は勝者だ。敗者から貰える物は貰っておこう。」

「あんた鬼ね」

テイルモンが札束を見つめているブラックアグモンに言うと溜め息を吐いた。

「私は何も口にしていないんですけどね」

「仕方ないだぎゃあ、ニワトリだし」

「せめて今の姿を変えようと言う優しさは無いんですかあなた方には」

【うん】

「似合っているのだからいいだろう」

「コケエエエエエエーーーーッ!!!!!」

変えようとする気ゼロの仲間にホークモンは怒りの咆哮を上げた。

因みにホークモンにはコンビニの寿司を与えた。

「でも、本当に暗黒の種は胸糞悪い物だな。人を見下したり怒鳴り散らしたり、自分より下の奴はいなくなれ~な痛い性格になるんだからな。」

実際ブイモンは1人の女の子が野良猫を蹴飛ばしたのを見て、思ったのは怒りを通り越して哀れみである。

高い学力や能力を得た代わりに人として大事な物を沢山失った哀れな存在だ。

その時、偶然発見したのは野良猫を蹴り飛ばした川田のり子だ。

「よう、猫蹴り女」

「あんたは…最近私の周りをウロウロしてたチビね」

「お前にチビなんて言われたくないね。少し話さないか?」

「何で私があんたみたいな凡人チビなんかと話さないといけないのよ?」

「凡人ね、凡人以下の犯罪者一歩手前の奴に言われたくないね」

のり子の嘲笑を皮肉の笑みで返すブイモン。

のり子はその笑みに苛立つが“犯罪者”と呼ばれたことに疑問を抱く。

「犯罪者ですって?」

「お前、猫を蹴ったろ?」

「それが何よ?」

「もしそれを俺が警察に言ってたらどうなってた?野良とは言え動物を蹴り飛ばしたんだ。えっと、何て言うんだっけ?」

「動物虐待。立派な動物愛護法違反ね」

「そうそれ、お前は動物虐待したことで警察のお世話になるかもしれなかったんだぜ?」

「っ…今はあの猫なんかいないわ!!」

「どうかな?猫の毛は細かいからまだ靴にくっついてたりするんじゃねえの?まあ、いいけど…どれだけ頭が良くてもやって悪いことさえ分かんないような大馬鹿を天才って言うなら凡人の方が遥かに偉大だね。お前さ、何のために及川に暗黒の種を植え付けて貰ったんだ?」

「何であんたなんかに…」

歯軋りしながらブイモンを睨むのり子。

「答えろ」

目つきを鋭くし、殺気を放ってのり子の口を強引に塞ぐ。

「まさか一度や二度の失敗か何かで簡単に諦めて天才になりたいから及川の誘いになんて乗ったなんて言うならさ…お前…よくそれで人を凡人とかって見下せるな?」

殺気の密度が増し、のり子は顔色が真っ青になる。

「勝手に諦めて、勝手に絶望して、偶然天才になれる道具をくれる奴がいたからそれに手を出して、道具の力で手に入れた力で威張り散らすしか能がない根性なしが人を見下せるなんて凄いなあ。お前なんかよりずっと辛くて苦しい思いをしても前を向いている奴もいるのにな?お前さ…大した努力もしない癖に借り物の力を見せつけて威張り散らすとか…人を舐めるのもいい加減にしろよ…根性なしの大馬鹿野郎」

尻餅をついて怯えている彼女を見て、殺気を消してブイモンは踵を返す。

「帰ろうぜ?相手にするだけ馬鹿らしいや」

「そうね、そうしましょ」

ブイモンとテイルモンはそのままこの場を去る。

パタモン達は慌てて追いかけ、ブラックアグモンとなっちゃんはのり子を見遣る。

「っ…な、何よ…?」

「「いや…哀れな子(存在)だと思っただけ(だ)」」

「な…っ?」

目を見開くのり子に構わずこの場を後にするブラックアグモンとなっちゃんであった。

そして、ブイモンは肩が凝ったらしくテイルモンに肩を解して貰っていた。

「ああ~、慣れないことなんかするもんじゃないな」

「しかしあんたちょっと言い過ぎよ?誰だって大輔みたいに前向きでいられるわけじゃないし」

「ああ、でもショック療法にはなるかな~って」

「記憶喪失とかじゃないんだから…」

ブイモンの言葉に呆れ果てるテイルモンであった。 

 

第61話:子供のままでいたかった大人

 
前書き
及川って後から見ると凄い共感する。 

 
取り敢えず情報収集その他をやっていたのだが、ダークタワーデジモンのブラックアグモンはある異変に気付き、ブラックアグモンの指示に従ってある寺の方に向かった。

そこには暗黒の種が発芽し、花となった暗黒の花を摘み取っている最中であった。

「及川悠紀夫…!!」

直ぐにデジモン姿となり、戦闘体勢に入った。

なっちゃんはシスタモン・ノワール、ブラックアグモンはブラックウォーグレイモンに進化する。

「邪魔はさせないよ!!」

「目障りだ!!」

立ちはだかるアルケニモンとマミーモンだが、ブラックウォーグレイモンが一蹴する。

「黙ってみていろ。この子がどうなっても知らないよ?」

「ぬう…」

「卑怯!!」

ブラックウォーグレイモンとなっちゃんが悔しげに及川を睨み据える。

花を吸収し終わった及川はのり子を突き飛ばす。

「もう、お前に用は無い」

「おっと」

ブイモンが突き飛ばされたのり子を受け止める。

のり子の肌色はまるで紙のように真っ白な状態になっており、肉体的にも精神的にも危険なようだ。

ブイモンはのり子を巻き込まない場所に連れて行く。

死んだように眠るのり子を見て、及川の甘言に乗り、安易に暗黒の力を手に出したのり子の軽率さ、暗黒の力の恐ろしさを思い知らされる。

「俺は及川に利用されたお前に同情なんかしないぞ。今の状態はお前の軽率さが招いたことなんだからな」

「冷たいな、もう少し思い遣りのある言葉を言ってあげたらどうだい?」

のり子への言葉を聞いた及川が溜め息と共に肩を竦めながらブイモンに言う。

「こいつの自業自得だろ、俺は努力もしないで簡単に諦める奴が嫌いなんだ。」

何かを得たいなら相応の努力が必要なのだ。

何か得るために行動し、努力してきた大輔達の姿を間近で見てきたからこそ、安易に身近な力に縋り、その力を振りかざすのり子が許せなかった。

「おやおや手厳しい。」

ブイモンの言葉に及川は微笑みながら言う。

「それにしても君達も人間の姿になれるとはね。てっきり俺が作ったこいつらくらいしか出来ないと思っていたんだが」

吹き飛ばされて悶絶しているアルケニモンとマミーモンを親指で指しながら言う及川。

「なっちゃんやウィザーモンとかの魔法が必要だけどな。」

「基本的に君達の姿はパートナーを小さくした姿のようだね…。1人は何故かニワトリだったようだが…」

「好きでニワトリでいたわけじゃありません!!」

自分だって出来るなら普通の人間の姿でありたかった。しかし姿はなっちゃんに任されているため仕方なくニワトリの姿で過ごす羽目になっていた。

「それで?お前は何のためにこんなことを?力を手に入れて世界征服って魂胆か?」

「世界征服なんてしないさ、ただ俺はデジタルワールドに行きたいだけだよ。そのためには暗黒の種の力が要るんだ。お前達がダークタワーを破壊しなければもっと早く行けたはずなんだが。」

溜め息と共に紡がれた言葉にブイモンは目を細めた。

「お前、デジタルワールドに行きたかったのか?何でだ?って言うかどうしてデジタルワールドを知ってるんだ?」

「俺は君達のパートナーと違って偶然デジタルワールドの存在を知ることが出来たんだ。デジタルワールドに行きたかったのも…浩樹との約束だからだ」

「浩樹?」

「火田浩樹。3年前にロンドンで死んでしまった俺の親友さ、デジタルワールドを見ることも行くことも出来ずに逝ってしまった…無念だったろうなあ…」

空を見上げて遠い目をしながら言う及川。

「浩樹って、伊織の父ちゃんだぎゃあ…」

アルマジモンの呟きにブイモン達は及川を見つめる。

「そうだ…君の人間の時の姿は浩樹の息子の小さい頃の姿のようだね…子供の頃の浩樹にそっくりだ…名前は確か…」

「伊織だぎゃあ…」

「伊織…息子がデジタルワールドに行って冒険しているとあいつが聞いたらどうしたのかな?笑うかな?それとも悔しそうにするのかな?」

微笑みながら言う及川にブイモン達は戦闘体勢を解いた。

「どうやら根っからの悪人じゃなさそうだな」

「俺は元々無用な争いは避けたい方でね。君達が邪魔さえしなければ攻撃はしないさ。」

「及川、お前にいくつか聞きたいことがある。答えて貰おうか?」

「……いいだろう。計画は最終段階に入った。最早君達が何をしようと止めることは不可能だ…。答えられる範囲でなら答えてあげよう」

「まず1つ目。どうしてデジモンカイザーに賢を選んだんだ?選ばれし子供なら太一達もいたじゃないか。太一達を知らないわけじゃないだろ?」

「ふむ、確かに彼らのことは知っている。しかし俺の計画は選ばれし子供なら誰でもいいわけじゃない。彼は暗黒の種を持った選ばれし子供だった。彼のお兄さんである一乗寺治君の葬式で彼を見た時、分かったんだよ。彼の体内には暗黒の種があるとね」

「なる程、賢を選んだのはそう言うことか」

「じゃあ、次の質問よ。ダークタワー…あれは何なのよ?」

ブイモンの次にテイルモンが及川に尋ねる。

デジモンの通常進化阻害、ダークタワーデジモンの素材、様々な効果を持った暗黒の塔のことを。

「ダークタワーか…あれは元々はダゴモンの海と言うデジタルワールドと似ているようで違うあった世界にあった奴だ。進化を妨害したり、ダークタワーデジモンの素材になったりと色々な使い道があるが……その最大の効果は、デジタルワールドの環境を変えてしまうこと」

「デジタルワールドの環境を変えることがあんたの願いに繋がるって言うの?」

テイルモンの言葉に及川はニヤリと笑った。

「デジタルワールドの環境をかえることで大人でもデジタルワールドに行くことが出来るようにするためさ。」

そう、基本的にデジタルワールドはデジタルワールドが危機に瀕した時、世界を救える可能性を持った子供達だけが行くことが出来る世界。

それはまるで、子供しか行くことの出来ないネバーランドのよう。

「ゲートを開く事は出来たが、行くことは出来なかった……穢れちまった大人を、デジタルワールドは受け付けないってことかな。で、仕方なく俺の遺伝子で作ったこいつらをデジタルワールドに行かせた」

「なる程、そして私達にボコボコにされて、逃げては挑んでくるの負のスパイラルに陥ったわけね」

「うるさいわね!!」

「まあ、結果的にはな。」

テイルモンの言葉にアルケニモンがこめかみに青筋を浮かべながら叫び、及川はアルケニモンとマミーモンの情けない戦歴を思い出しながら溜め息を吐いた。

一応アルケニモンとマミーモンは敵対策に完全体として作ったのだが、やはり簡単には行かなかった。

「そう言えば未来の並行世界のアルフォースブイドラモンも言っていたな。基本的にデジタルワールドはデジタルワールドが危機に瀕した時、人間の子供を呼ぶって」

「並行世界だと?」

「俺とテイルモンは少しばかりこことは違う歴史を歩んだ未来のデジタルワールドに行ったことがあるのさ。そこには違う歴史を歩んだ大輔やヒカリ、俺やテイルモンとかもいたんだ。今だからネタバレするけどデジクロスは並行世界の未来のパワーアップ方法なんだよ」

ブイモンの言葉に及川は興味深そうに見遣る。

何だかんだで及川も光子郎のようなタイプの人間なのか並行世界には興味が湧いたようである。

「並行世界…こことは違う歴史を歩む世界…今までは有り得ない物とばかり思っていたが…」

「デジタルワールドには色んな並行世界があるらしいから。他にもまだまだあるかもな。それで、最後の質問。暗黒の種は何なんだ?」

「暗黒の種はダークタワーの代わりさ。俺はどうしても自分で行きたかった……そこで彼を利用してダークタワーを建てさせたのに、全部ぶち壊されてしまった。だから計画を変え、デジタルワールドでバリアの役目を果たすと言う暗黒の種を子供達に植え付けたんだ。」

以前はなりたいと願っていた選ばれた存在を利用し、そして敵対することになるとは皮肉だ。

「…本来なら見ることが出来ない可能性の世界も存在するとは…デジタルワールド…益々行きたくなって来たぞ…だが、後少し!!後少しで俺の…俺達の夢が叶うんだ!!後少しでデジタルワールドのゲートを潜ってデジタルワールドを……あの時からどんなに待ちわびたことか……!浩樹、君が生きていたら誘ったのにごめんよ……!」

後少しでデジタルワールドに行ける。

それを考えると今まで張り詰めていた物が緩んだのか号泣した。

「どうしましたボス!?」

いきなり泣き出した及川にアルケニモンとマミーモンは困惑する。

「だって、後少しで夢が叶うんだよ!?デジタルワールドを見ることも出来ずに逝ってしまった浩樹の分までデジタルワールドを見て回り、あいつに教えてやれるんだ!!後少しの辛抱だ浩樹!お前が見ることが叶わなかったデジタルワールドを俺が…」

「お父さんは友達が罪を犯してまでデジタルワールドに行くなんて絶対に望みません!!」

「何?」

及川はハッとなって声のした方を振り返るとそこには…。

「伊織!?どうしてここにいるだぎゃあ!?」

「隣の爺さん誰だよ?」

アルマジモンが目を見開いて伊織を見遣り、ブイモンは伊織の隣の主税に疑問符を浮かべた。

「伊織の祖父ちゃんだぎゃ」

「なるほど」

アルマジモンの説明にブイモンが頷いた。

「お前は浩樹の息子…小さい頃の浩樹にそっくりだ…そしてお前は…?」

親友の忘れ形見と言える伊織を見た後、隣の老人を見つめる及川。

どこか見覚えがある気がするのだが、それを見た主税は目を細めながら口を開いた。

「…やはり覚えとらんか…最後に会ったのは大分昔じゃったからのう…昔から無口で友達の少ない子じゃったが、まさかこんな事になっているとは……伊織の祖父と言うより、君の友人、火田浩樹の父と言った方が良いな」

「浩樹の…お父さん!?」

及川は呆然としながら、親友の父親の主税を凝視している。

「君達はデジタルなキャラクターが、自由に生きていくことの出来る世界の存在を信じていたようじゃったな…。わしは自分の息子のそんな姿に、不安を感じてそんな夢みたいな話をすることを禁止してしまったんじゃ。その時の悲しそうな顔は今でも覚えておる。それから、青年に成長しても君達はデジタルな世界の存在を信じて、2人だけで夢を膨らませていたんじゃな。が、浩樹の突然の死。あの時の君の落ち込み様は普通じゃなかった。考えてみれば当然のことじゃ。君にとって友人と言えるのは、浩樹だけだったからなぁ…。あの時、わしがもっと君の力になってやれたらとそう思うとな…。」

主税は贖罪にも取れる言葉を淡々と紡いだ。

もしあの時、幼かった息子や及川に夢を描く事を禁じなかったら。

涙を落としながら墓の前から去り行く及川の背中に何か一言でも声を掛けてやれたら。

もしかしたら何かが変わっていたのかもしれない。

しかし過ぎてしまった過去を変えることは出来ない。

いや、出来る存在はいるかもしれないが、人間の身では到底不可能なことだ。

「…今更こんなことを言うのも何じゃが、わしの友人になってくれんか?浩樹の子供の頃のことを、一緒に話す相手が欲しいんじゃ…。」

その言葉を聞いた瞬間に及川の心に希望の光が差した。

晴れやかな表情をして、主税によろよろと歩み寄る。

「……浩樹と、一緒の頃…。おじさん、っ…ぐああああああああああ!!」

しかし、次の瞬間に及川はいきなり苦しみ始め、嬉しそうな表情から一変した。

今度は負の感情を全面に出したような表情になり、僅かに残っていた人の心すらも失って他人を傷付ける存在に成り果てた及川が初めに取った行動は、親友の父だったはずの主税を、この世から抹消することだった。

「チッ!!」

誰よりも早く動けたのは究極体のブラックウォーグレイモンのみで、主税を抱えて及川の攻撃をかわした。

「ぐっ…」

「ブラック!!大丈夫!?」

しかし、無事とは言い難く、ブラックウォーグレイモンは脇腹を抉られ、血が流れ出す。

なっちゃんは直ぐに治癒魔法でブラックウォーグレイモンの傷を治し始めた。

「ああ、そうだよ…やっぱり私は1人でなければ…今までも、そしてこれからもずっと。そうだ、私は暗黒の種を全て刈り取らねばならない。私の願いを叶え、デジタルワールドへ行くために…」

及川はそう言うと、高笑いしながら走り去って行った。

「ぐっ…早く…大輔達の元に戻らなければ…」

「喋らないで下さい!!」

伊織が無理をして体を動かそうとするブラックウォーグレイモンに叫ぶ。

「伊織…早く大輔達にメールを送れ…デジタルワールドに繋がるゲートを全て閉ざさなければ、現実世界もデジタルワールドもあいつの思い通りにされてしまう…!!死期を見失った愚かな亡者にこれ以上好きにされてたまるか…!!」

ブラックウォーグレイモンは及川から攻撃を受けたことで曖昧ながらも敵の正体を掴み始めていた。

まず自分達がしなければならないのは現実世界に存在するデジタルワールドに繋がるゲートポイントの遮断。

最後の戦いが近付いている。 

 

第62話:強き想いは奇跡を起こす

情報収集から帰ってきたブイモン達から全ての事情を聞いた大輔は取り敢えず、なっちゃんから傷の手当てを受けているブラックアグモンから指示を受けてゲンナイの元に来ていた。

「とまあ、こういうことがあったんで。デジタルゲートを閉じて欲しいんですよ」

「分かった…今からデジタルゲートを閉じよう。しかし選ばれし子供でさえないのにデジモンやデジタルワールドの存在を認知している人間がいたとは…」

「光が丘のこととかも知っていたようだし。そう言えば伊織の親父さんもデジモン見たんだっけか?ある意味特別な子供だったのかな?及川や伊織の親父さん」

「そうかもしれないな。しかし彼のしていることはデジタルワールド側からすれば到底許されることではない。デジタルワールドと現実世界は表裏一体。デジタルワールドの環境が変われば現実世界にも悪影響が出る。下手すれば世界の破滅にも繋がりかねん」

「分かってるよ。及川の気持ちは分からなくはないんだけど、伊織の親父さんはきっと親友が悪いことをしてまでデジタルワールドに行くのを望まないと思う。だから何としてでも止めないといけない伊織の親父さんのためにも、及川のためにも、デジタルワールドのためにもな」

「そうか…では君は現実世界に戻って及川達を任せる。私はデジタルワールドに繋がるゲートを全て一時遮断しよう。」

「分かった。じゃあ、ゲンナイさん。頼むよ」

大輔がこの場を後にしようと立ち上がった時、ゲンナイは何かを思い出したようにコートのポケットからある物を取り出した。

「そうだ、大輔。君にテイルモンに渡して欲しい物があるんだ。」

「俺に?…って、それ…もしかしてホーリーリング?」

ゲンナイが大輔に差し出したのはテイルモンが無くしたはずのホーリーリングであった。

何故ゲンナイがテイルモンのホーリーリングを持っているのだろうか?

「そう、デジモンカイザーに回収され、彼の移動要塞の暗黒のエネルギー供給の制御に使われていたんだ。君達がキメラモンを倒した後に私が回収した。」

「へえ、でもどうしてホーリーリングを?」

「…実はホーリーリングの力でアーマー進化と同じく古代の進化の1つであるジョグレス進化と呼ばれる融合進化のエネルギー源にしようと思っていたんだが…」

「俺達が未来でデジクロスの力を手に入れたから不要になったってことですか?」

「そう言うことだ。ジョグレス進化よりも優れたエネルギー効率や高い汎用性を持つデジクロスが使えるようになっていたのは我々からすれば嬉しい誤算だった。返そうにもタイミングが…」

「…まあ、下手すれば要塞と一緒に消し飛んでいた可能性が………ん?要塞?」

要塞のことを思い出した大輔。

あの要塞は暗黒エネルギー供給の制御にホーリーリングが使われていた。

つまり、ホーリーリングが無くなれば暗黒エネルギー供給の制御が出来なくなり…。

「もしかしてあのカイザーの要塞が爆発しそうになったのはゲンナイさんがホーリーリングを回収したせい?」

「…………………まあ、そうとも言えるな」

「おい、爺!!」

大輔の怒声が響き渡る。

そして2002年12月31日、光が丘にて。

「と言うわけで返すぞテイルモン。」

「なる程、どんなに探してもホーリーリングが見つからなかったわけだわ」

呆れたようにオリジナルのホーリーリングを身に付けるテイルモン。

因みにコピーのホーリーリングはヒカリが預かっている。

太一と空以外の選ばれし子供達の視線の先には、橋の上で列を作っていく暗黒の種を植え付けられた子供達がいた。

どこからともなく現れた彼らは当たり前のように前からいた子供の後ろに並ぶ。

子供達は及川を待っているのだ。

「デジタルワールドに繋がるゲートはゲンナイさんに頼んで一時遮断してもらった。及川がどんな手を使ってもデジタルワールドには行けないはずだ。」

「そう………それにしても、事態がますます悪くなってる気がするのは私だけ…かな…?」

「ブイモン達の話を聞く限り、及川は普通の人間じゃないのは確かだ。ブラックウォーグレイモンにダメージを与えるなんて普通の人間に出来るはずがない。及川の体から吹き出たって言う影…まるでシェイドモンを思い出すな…ん…?…シェイド…モン…?…まさか…」

「大輔君?」

目つきが鋭くなった大輔にヒカリは心配そうに見つめる。

「なあ、ヒカリちゃん。ヒカリちゃん達が現実世界で倒した敵の中で殺しても死なさそうな、執念深そうな奴って知らないか?」

少なくても自分が知る中ではそう言う敵はいないので、ヒカリに尋ねる大輔。

「うん。いるよ……ヴァンデモンが…」

「ヴァンデモン?」

「うん、前にも話したけど。ヴァンデモンは一度エンジェウーモンに倒されたんだけど究極体のヴェノムヴァンデモンに進化して復活したの。多分私が知る敵の中で一番執念深そうなデジモンと言ったら……」

「ヴァンデモンになるわけか。正直さあ…ダークタワーとか暗黒の種とか…俺達選ばれし子供でさえ見ることも出来なかったのをデジタルワールドに行ったことさえない人間の及川がどうやって知ることが出来たのか気になるんだ。」

「うん、それで?」

ヒカリは真剣な表情で大輔の言葉に耳を傾け、近くで様子を見ていた賢達も同様に耳を傾けた。

「ゲンナイさん曰く、暗黒の種はデジタルデータで精神的な物のためか、普通の人間には見えないらしい。でも及川には見えている。しかも摘み取ることも出来る。もしかしたら及川はデジモンか何かに取り憑かれてるんじゃないかって思うんだ…暗黒の種を扱えそうなデジモンに…現実世界で死んだデジモンは幽霊みたいな状態になるんだろ?もしかしたらシェイドモンみたいに取り憑くことも出来るかもしれない」

「確かに…ウィザーモンも幽霊みたいな状態になっていたし…。確かにあの状態なら誰かに取り憑くことは可能かもしれないわ」

テイルモンもウィザーモンの状態を思い出しながら大輔の言葉に頷いた。

確かにあの幽霊のような状態なら生命体に取り憑くことも可能なのではないかと思えてくる。

「じゃあ…まさか、及川にはヴァンデモンが取り憑いている…?」

それに気付いたヒカリの体が震えだした。

ヴァンデモンはヒカリからすれば恐怖の対象である。

ウィザーモンを殺し、自分を捜すために無関係な人々まで巻き込んだ冷酷なデジモン。

震えるヒカリの肩に大輔はそっと手を置いた。

「大丈夫だよヒカリちゃん。もしそうだとしてもみんなの力を合わせれば何とかなる。それに…ヒカリちゃんは俺が守るからさ。心配しなくていい」

「大輔君…うん、ありがとう…」

暖かな空気が2人の間に流れる。

「ウワアアアア、大輔君トヒカリチャンノ周リニ綺麗ナオ花畑ガ見エルヨー」

遠い目をしながら呟くタケル。

どこか羨ましそうな京。

苦笑している賢。

暖かな空気に疑問符を浮かべる伊織。

微笑ましげに見守る先輩達。

反応は様々だった。

次の瞬間、光子郎の携帯の着信音が鳴る。

電話に出た光子郎の耳に入ったのは、聞き慣れた母の声である。

「あ、光子郎?今、光が丘の駅前にいるんだけど」

「ええっ!?」

佳恵の爆弾発言に慌てて光子郎が橋の下を覗き込むと、電話ボックスの中にいるのを発見したのだ。

「どうして来たんですか!」

はっきり言ってここは危険な場所だ。

佳恵のような一般人がいていい場所ではないので、光子郎の態度も当然だろう。

「それは、ほら……石田さんに高石さん、一乗寺さん、武之内さんに城戸さんのお兄さん。皆さん今度の事で色々動いていらっしゃるでしょう?でもうちだけ……それで、代わりと言っちゃあなんだけど、おにぎりを作ってきたの」

「お、おにぎりですか…」

それを聞いたデジモン達は嬉しそうな笑みを浮かべた。

クリスマスの時も同じ物を貰った事があり、それはとても美味なる物であった。

「…分かりました。今から行きますから、そこで待ってて下さい!…それじゃあ、ちょっと行ってきます」

光子郎は急いで佳恵の元に向かうのであった。

「…………そうか、大人達も頑張ってくれてるんだな…」

「そう言えば大輔君の家ではもうブイモン達バレちゃったんだっけ?」

「うん、流石にデジモン3体を隠し通せないしな。あの時ブイモン達が稼いでくれた金があって助かった。おかげで飯は何とかなってるよ」

「デジモン3体分…」

それを聞いたヒカリは少し口元を引き攣らせた。

デジモン3体分が満足するまでの量を作るなど想像出来ない。

特にブイモンとブラックアグモンは大食漢なのだし。

「そうそう、姉ちゃんに料理とかその他諸々教えてんだけどようやく…ようやく卵焼きを焼けるようになったんだよ」

「え?嘘?」

「本当だよ。諦めなきゃ願いは叶うって本当だったんだな」

暗黒or有害物質しか作れなかったジュンが普通の物を作れるようになったと言うのは正に奇跡だろう。

それだけ彼女の料理は危険度が高過ぎたので思わずヒカリは信じられなかった。

「取り敢えずそこまで行くのに物凄く大変だったのは分かるよ」

「…………まあ…ね…」

思わず遠い目をする大輔。

まともな卵焼きを作れるようになるまでとんでもない苦難があったのはヒカリにも容易に想像がついた。

何だかんだで結局連れて来てしまったのか、光子郎と佳恵が子供達の元にやって来た。

「お待たせしました」

「皆さんご苦労さま。おにぎりを作ってきたのよ、良かったら食べて」

「どうもすみません」

ヒカリが差し出された重箱を受け取る。

【ありがとうございました】

子供達は声を揃えて佳恵に礼を言う。

「じゃあ、もう帰って下さい」

「もう少しいちゃ駄目?」

「何が起こるか、分かりませんから……」

こればかりは絶対に譲れない光子郎に佳恵は寂しそうな表情をし、それを見たヤマトはフォローを入れる。

「光子郎の気持ちも分かってやって下さい。お母さんを大切に思うからこそ、言ってるんです」

「それは分かってるけど……あの子達ね……」

渋々と頷きながら佳恵は視線を子供達に向けた。

「はい」

先程見た時よりも更に子供達の列は伸びており、同じ親として心配になるのか佳恵は辛そうに呟いた。

「あの子達のご両親、心配にならないかしら……」

「なるでしょうね……」

子供の身を心配しない親などいない。

心配しないのは余程の最低な人間くらいだ。

しばらくじっと見つめていた佳恵だが、何か閃いたのか明るい声を上げた。

「そうだわ!私、あの子達のご両親に話してみる!自分達の子供が何をしているか、自分達の目で確かめて下さいって!!」

「あっ、それいい考えです!!」

「よね!じゃあ、早速行ってくる!皆さんさようなら、無茶は駄目よ光子郎!!」

「はい」

佳恵は有言実行とばかりにこの場を去っていった。

「……親が来て、どうにかなるって問題なのかしら」

「いくら親と言っても、暗黒の種は取り除けませんからね」

しかし佳恵を見送った後に京と伊織は肩を落としながら呟く。

「いや、分からないよ。気持ちが届けば、何かが起こるかもしれない」

「うん。私達は今まで、そういう奇跡を何度だって見てきた」

そう言ったのは、タケルとテイルモン。

大輔も子供達の列を見遣りながら口を開いた。

「今回の騒動はあいつらの親も遠因の1つだろ。あんな状態になるような気持ちに気付けなかったんだからな…だからあいつらの親にも責任を取らせてやるんだ」

もし、暗黒の種に縋らなければならないくらい悩んでいたのなら、何故あの子供達の気持ちに気付いてやれなかったのか。

もしかしたら何かが変わっていたかもしれないのに。

「家族が来て、分かり合うことさえ出来れば、暗黒の種の成長を止めることが出来るかもしれない。根拠はあるよ?僕の中にある暗黒の種の成長が止まったのは、父さんと母さんの僕への愛に気付いたから…だから彼らもきっと…」

優しさの紋章の所有者である賢らしい優しさの込められた言葉に京達は頷いたのだった。

「……来たぞ」

ブラックアグモンが今まで閉じていた目を開いて呟いて向こうを見遣ると確かに及川がいた。

「行くか、慌てないで行くぞ。人質を取られたら動きにくくなる。」

大輔はゆっくりと立ち上がって及川と子供達の元に歩み寄ると、ヒカリ達も慌てて立ち上がって追いかけていく。

「よう」

大輔が声をかけると及川と子供達を阻む形でアルケニモンとマミーモンが出ることで、一般人達の悲鳴を上がる。

「邪魔はさせないわ」

「悪いけど、戦いに来たわけじゃねえんだ。負けを認めに来たんだよ」

「「は?」」

目を見開く2体を無視して大輔は及川を見つめる。

「大した物だよあんたの作戦は…世界中にダークタワーを建てることで俺達を世界中に散らせて、暗黒の種を欲しがる子供達を捜し出して、見事に暗黒の種を手に入れて子供達に植え付けてもう俺達にはどうしようも出来ない所まで来ちまった。これはもう負けを認めるしかねえわ。俺達の完敗だ」

溜め息を吐きながら言う大輔に及川は笑みを浮かべた。

「まあ、お前達には散々邪魔されたが、最後に笑うのは俺だったようだな。」

「うん…まあ、どうせ何も出来ないならいくつか聞いてもいいか?気になることがあるんだけど?」

「……いいだろう。最後だから俺に答えられる範囲でなら答えてあげよう」

「じゃあ、ここに子供達を集めたのは暗黒の種が発芽した暗黒の花を摘むためか?」

「そうさ、暗黒の花を摘んでやらなきゃ、体中から暗黒の芽が吹き出して人間のまま暗黒の樹木に変わってしまうからな。」

「暗黒の樹木?でも賢には何の変化も無かったぞ?カイザー時代の時もな」

大輔の問いに及川は、今まで隠されていた重大な事実を語り始めた。

「そいつの種はオリジナルだから上手くそいつと共生出来たんだ……だがこいつらはコピー。適合出来ないのを無理矢理植え付けたんだから、当然結果も違ってくる」

「なる程…それを知っててそいつらにそんな物を植え付けたのかよ…」

「それでもいいと望んだのはこいつらだ」

「そうか…」

大輔はゆっくりと子供達を見回す。

「おっと、それは軽蔑の眼差しだな。特別な存在が凡人を見下す時の目だ。覚えておくと良い」

「そいつはどうも、人生の先輩からの有り難ーい忠告として頭に叩き込んどきます。次の質問…ここで何をするつもりなんだ?」

「デジタルワールドに行くのさ」

「余計な事を言うんじゃないよ!!」

マミーモンがあっさりと大輔の質問に答え、隣のアルケニモンが叱責した。

「別に構わんさ。あいつらにはどうすることも出来ない。攻撃しようにもこちらには子供達がいる。俺達を止めることは不可能だ」

及川はノートパソコンを取り出しながら言うと、それを弄り始めた。

「デジヴァイスもないのにどうやってデジタルワールドに行くつもりだ?」

「馬鹿め、俺がアルケニモンやマミーモンをデジタルワールドに転送出来た事を忘れたのか。ここで転送したんだよ」

「どんな機能をそのパソコンに付けたんだよ?」

「デジヴァイスだけがデジタルワールドへ繋がるゲートを開ける訳じゃないということさ」

そう言って及川はノートパソコンの画面を子供達に見せると、画面に表示されていたのは、かつて太一達がデジタルワールドから現実世界に戻るために使用したあの石版であった。

それを見た先代の選ばれし子供達は目を見開く。

「後少しでゲートが開く…後少しで!この日をどれだけ待ちわびたか…浩樹君が生きていたら誘ってあげられたのに…君の分まで俺がデジタルワールドを見てやるからな。さあみんな、一緒に歌おう!行こう、行こう、デジタルワールドに行こう」

左手にノートパソコンを持ち、右手を指揮者のように振りながら及川は子供達を促すと子供達も及川に合わせて歌い出す。

「大輔君…」

「ああ、良いぞ…こいつらは俺達がゲートを閉じたことに気付いてない…ヒカリちゃん、賢…ゲートを開こうとして開かなかった時に慌てた所を一気に畳み掛けるんだ」

「「分かった…」」

大輔とヒカリ、賢がすぐにデジクロス出来るように身構えた。

「よーし、最後はこれだ!」

そう言って、及川は最後のカードを選択した。

デジタルワールドに繋がるゲートは開かない…はずだったのに及川達の前にゲートが現れたのだ。

「!?」

「ほら、開いた!さあ行こう、みんな!」

歌い続けながら及川と子供達はゲートに飛び込み、慌ててアルケニモンとマミーモンが後を追う。

「ちょっと大輔!?ゲンナイさんに頼んでゲートを閉じて貰ったんじゃないの!?」

「あ、ああ…そのはずなんだけど…」

「じゃあ、どうしてゲートが開いたんですか!?」

「…まさか、あの爺…光が丘のゲートだけ閉め忘れたんじゃねえだろうな…?とにかく追いかけるぞ!!」

京と伊織が大輔に詰め寄るが、流石にこればかりはどうにもならないため、デジタルワールドで捕まえることにした大輔はヒカリ達と共に及川達を追いかけ、ゲートを潜った。

大輔達が潜って間もなくゲートが閉じる…。

「って、何だこりゃ?」