おっちょこちょいのかよちゃん
登場人物紹介
前書き
主要登場人物の紹介です!
山田かよ子(やまだ かよこ)
小学三年生。おっちょこちょいで何かと失敗する。その一方で杉山に恋をしている。
杉山さとし(すぎやま さとし)
スポーツが得意でクラスの頼れる存在。恋愛には興味はあまりないがかよ子から好かれている事もあり、彼からもそれなりの優しさを見せている。姉がいる。
大野けんいち(おおの けんいち)
杉山の親友であると共に、彼と同様頼れる存在。スポーツが好きで特に清水っ子らしくサッカーが好き。冬田から好かれているが、本人は硬派の為、すぐに振っている。
冬田美鈴(ふゆた みすず)
顔に似合わない乙女チックで大野の事が好き。何度も振られてはいるが、それでも諦めずにアタックする。ワガママで上手くいかないと泣き喚き、皆を困らせる。
さくらももこ
かよ子の友達。かよ子同様におっちょこちょいな所がある。
富田太郎(とみた たろう)
通称「ブー太郎」。語尾に「ブー」を付ける口癖がある。大野と杉山を非常に尊敬している。トミ子という妹がおり、大事にしている。
穂波たまえ(ほなみ たまえ)
まる子の親友だが、時々まる子についていけずに心の中で「アルプスの少女 タミー」に変身して叫ぶ事がある。
長山治(ながやま おさむ)
物知りで頼りになる存在の男子。病弱の妹・小春を大事にしている。
藤木茂(ふじき しげる)
卑怯だが根は悪い奴ではない。クラスメイトの笹山に恋している。
後書き
他にも「ちびまる子ちゃん」既存のレギュラーキャラ、原作・アニメで登場したゲストキャラ、果ては小説オリジナルキャラも多数登場します!
1 おっちょこちょいの少女の物語
前書き
本編始まります!おっちょこちょいについては作者もよく調査しました。
静岡県の清水市(現・静岡市清水区)。そこに住む山田かよ子はおっちょこちょいな女子である。大小問わず何かととんでもない失敗をやらかしてしまうのだ。
かよ子は両親と共に三人暮らし。父はこれといって特徴はない平凡な男性。母は専業主婦で、隣人のおばさんとは仲がよいが、昔から深い交流があるらしい。母は娘ほどおっちょこちょいな所はあまり見られないのでかよ子のおっちょこちょいは父親譲りかもしれない、とかよ子は思っていた。
学校は家から徒歩17分ほどの入江小学校に通っている。友人としてまるちゃん(正確にはまる子)ことさくらももこという自分と同じくおっちょこちょいな女子と気が合う。そして穂波たまえや土橋とし子という友人などもいる。三年生になった今でもよく彼女らと共にいる。
そんなかよ子は恋する女子でもあった。恋する相手は杉山さとしという男子である。彼は親友の大野けんいちと共にかよ子のクラスで頼れる存在であった。しかし、中々思いを上手く伝えられない上、大野に恋する冬田美鈴が幾度もアタックしては相手にしてもらえないという現状を見て、上手く伝えても杉山から断られ、迷惑がられるのが怖かった。その上、とある騒ぎでまる子にクラス全員に自分が杉山が好きだと思いきり明かされて恥ずかしくなった。まあ、杉山自身には想いは間接に伝わったのだが・・・。
四月も後半になれば新しい三年生のクラスにも慣れ、大変な事はあっても学校生活は楽しく感じていた。とある日、かよ子は目覚まし時計が鳴ると共に起きた。
(遅刻しちゃう・・・!!)
かよ子は起きるなり、すぐ着替え、歯磨きをするが、間違えて母の歯ブラシを使ってしまった。そして食卓に着くと・・・。
「あら、かよ子、早いわね」
「え?」
かよ子は時計を見た。よく見たら起きる予定の時間よりも一時間早い。
(目覚まし、掛け間違えちゃった・・・)
かよ子はこの日もいきなりおっちょこちょいをしてしまったと思った。まあ、遅い時間に設定するよりも幾分増しではあるが・・・。
かよ子は朝食を食べ、忘れ物がないか確認する。
(大丈夫だよね・・・?)
教科書も、ノートも、筆入れもランドセルに入っている。他に持っていくものとすれば体操着。ちゃんと入っている。
「行って来まーす!」
かよ子は家を出た。その時、前を歩く男子高校生とぶつかりそうになった。
「あっ!」
「おっ、かよちゃん、おはよう」
その男子高校生は母と交流の深い隣人のおばさんの甥であった。名前は三河口健という。中学生になってから何らかの事情で実家を離れて彼の父の姉にあたるというおばさんの家に居候しており、今は電車で二駅先の清水市内の高校に通っている。
「あ、隣のお兄ちゃん、おはよう」
「まだ時間あるから急がなくていいと思うよ」
「うん・・・」
(いきなりおっちょこちょいしちゃったよ・・・)
三河口はかよ子と少し歩き、駅の方向へ向かってかよ子と別れた。
学校には難なく到着した。
「かよちゃん、おはよう!」
昇降口にはたまえがいた。
「たまちゃん、おはよう」
二人は3年4組の教室へと向かう。かよ子は自分の席に着くと教材をランドセルから取り出して机の中にしまった。
朝礼、一時間目、二時間目と何もなかった。しかし、三時間目の体育でとうとうやってしまった。体操着を忘れた訳ではない。ドッジボールをやっていて、パスしようか、アタックしようか迷った挙げ句、投げたら相手にボールを捕られてしまったのだ。勿論反撃を喰らってアウトになる。以外な所でおっちょこちょいをしてしまった。
体育が終わるととある男子が声を掛けた。自分の好きな杉山だった。
「山田あ、お前またおっちょこちょいしたな。気をつけろよ!」
「杉山君・・・!!う、うん、ごめん・・・」
かよ子は好きな男子の前で恥をかいてしまい、これではきっと杉山から嫌われる一方ではないかと懸念した。
「かよちゃん、大丈夫だよ、元気出しなよお!アタシだって今日も寝坊して遅刻しそうになったんだからさあ~」
まる子が慰めた。
「まるちゃん・・・。うん、そうだよね。でも、どうやったらおっちょこちょいって治るのかな?」
「まあ、そうだよね~。アタシも気になる事あるよお~。そうだ、長山君なら分かるかも!物知りだからねえ~」
休み時間、かよ子はまる子と共に物知りな男子、長山治におっちょこちょいの治し方について聞きに行った。
「おっちょこちょいの治し方ね・・・。そうだな、まず一つ目は慌てないように落ち着く事だね。そんな時には深呼吸をするといいよ」
「深呼吸か・・・」
「二つ目は人の話をちゃんと聞くように心がける事だね。おっちょこちょいの人は聞いていると思っていても聞けてない事が多いから、分からない事があったら質問したり、メモしたりするといいよ」
(分からない事があったら、メモする・・・!!)
「それから三つ目は集中する事を高めることだね。まずは興味がある事や趣味があればそれに集中するといいよ」
「うん!ええと、まとめさせて。一つは落ち着いて・・・、二つ目は・・・」
かよ子は纏めるのが少々大変にしていた。
「いいよ、こっちがメモを書くよ」
長山はメモを書いて二人に差し出した。紙にはこう書いてあった。
おっちょこちょいの治し方
1.落ち着く事。その為には深呼吸をする事
2.人の話をちゃんと聞く。それには質問やメモを取る
3.集中力を高める。それには興味ある事や趣味があればそれから集中する
「ありがとう、長山君」
「かよちゃん、良かったねえ~頑張ろうね!」
「うん!」
(私、いつまでもおっちょこちょいでいたくない・・・!!)
かよ子は自分の為にも、そして好きな男子の為にもおっちょこちょいを治したかった。
かよ子は今の自分を変えたかった。たとえ今までの日常が変わってしまってでも・・・。
後書き
次回は・・・
「中断された日常」
かよ子の下校中、地震のような振動が起きた。地震かと思っていたが、清水の街に姿を現したのは・・・。
2 中断された日常
前書き
《前回》
山田かよ子はおっちょこちょいを治そうと長山からおっちょこちょいの治し方を教わる。そしてその治し方を実践しようと決めるのだった!!
長山からおっちょこちょいの治し方を教えて貰ったかよ子は下校していた。
(長山君が教えてくれた事、いつも意識しないと・・・!)
かよ子は実践すると決めた。・・・と、その時、地面が縦に揺れた。
(な、何・・・?地震・・・!?)
かよ子は慌てて尻餅をついた。
(ど、どうしよう・・・!?そうだ、深呼吸、深呼吸!!)
かよ子はゆっくりと深呼吸した。地震はすぐにおさまった。
(ふう、落ち着いた・・・)
かよ子は立ち上がると地面についたスカートの部分を手で払い、先程の地震で不意に何か落とし物しなかったか確認して家に帰った。
かよ子は帰宅した。
「只今」
「かよ子、お帰り。さっき地面が揺れたけど大丈夫だった?」
「うん、何とか。あれ、地震だったのかな?」
「そうね、そうだといいけど・・・」
夜、父も帰って来て、夕食にしていた。その時、テレビのニュースで昼間の地震についてアナウンサーが報道を始めた。
『本日、午後3時55分頃、各地で大きな揺れが観測されました。地震とは思われますが、気象庁によりますと、震源地は特定できず、広範囲での揺れにしては、プレートのぶつかり合いが確認されていないとの事です』
(え?じゃあ、あれが地震じゃなきゃ、一体何なの!?)
かよ子は真相が気になった。
夜、かよ子はなかなか眠れなかった。
(地震じゃないなら、何だったんだろう・・・?)
そのせいで寝付けなかった影響でかよ子は寝坊してしまった。
「ああ、遅刻、遅刻!!」
かよ子は急いで朝食を食べて、登校した。
(昨日の変な事のせいだ!)
かよ子は寝坊の原因を昨日の謎の現象に責任転嫁したかった。3年4組の教室に入ろうとして担任の戸川先生にあってしまった。
「おや、山田さん」
「あ、先生。おはようございます」
「山田さん、あともう少しで遅刻でしたね。気を付けて下さいね」
「はい・・・」
かよ子は恥ずかしくなった。
かよ子は地震もどきの現象ばかり気にしてこの日の授業に集中できなかった。算数の授業中・・・。
「山田さん。山田さん・・・?」
「あ、はい!?」
「山田さん、この計算問題を前に出て解いてください」
「はい!」
かよ子は席を立った。ところがその時、机の上の筆記具を手で払うように落としてしまった。
(またおっちょこちょいしちゃったよ・・・)
かよ子は昨日の事はあまり考えないようにした。かよ子はまる子やたまえ、土橋とし子に休み時間に昨日の事を話した。
「そうそう、私もその事で気になってたよ」
とし子も昨日の謎の現象で頭がいっぱいのようだった。
「アタシなんか神様が怒ったのかと思ってさあにもう遅刻しません、忘れ物しませんってお祈りしてたよお~」
「まるちゃん・・・」
たまえはまる子の行動にやや引いた。
「でも、私何か起こりそうな気がするんだけど、気のせいかな?」
「かよちゃん、大丈夫だって。気にしすぎだよお~。命なんかとられないって」
まる子が安心させるつもりで言った。
「うん、そうだよね・・・」
かよ子はその後はこれといったおっちょこちょいな事は特に何もしなかった。下校時、かよ子は大野と杉山が一緒に帰っている所を目撃した。
(す、杉山君・・・。昨日の事、杉山君と大野君はどう思ってるんだろう?聞いてみたいけど、なんか相手にされなさそう・・・)
かよ子は聞くか、聞くまいか悩んだ。
と、その時、大野と杉山が立っている所とかよ子が立っている間の位置で道路が爆発した。かよ子は顔を腕で抑え、すぐに前を見た。
「す、杉山君!大野君!」
かよ子はつい先程まで前にいた二人の名を呼んだ。目の前の路面は爆発でアスファルトの破片が散らばっていた。かよ子は二人の安否を確認する為に走った。大野と杉山は爆発の拍子で少し吹き飛ばされたが、幸い、大きな怪我はなかった。
「や、山田あ!俺達は大丈夫だ!!」
杉山が答えた。
(杉山君・・・。無事でよかった・・・!!)
「だが、一体何だったんだ?」
大野は周りを見回した。別の道路も見ては他の道路のアスファルトも爆破であちらこちら粉々に飛び散っている部分があった。
「何か変だ。巻き込まれるかもしれないから急いで帰ろうぜ!」
大野は二人に提案した。
「うん!」
「ああ!」
かよ子と杉山は大野の提案に乗り、急いで帰った。
(やっぱり昨日の地震や今日の道路の爆発。偶然じゃない!!)
かよ子は怪しげな気配を感じた。その時、遠くの方に一人の女性の人影が見えた。
(あの人は・・・?)
かよ子はもしや彼女が犯人かと思った。だが、もしそうだとしたら立ち止まっているとやられてしまうかもしれない。かよ子は今は兎に角急いで家に帰った。
女性は道路が荒れた清水の街を見ていた。
「29年前に戦争放棄してから弛んだ日本を叩き直せって言われてやってみたけどやりがいあるわね」
女性の元に一人の男性が現れた。
「ああ、世界革命の対象にはうってつけだな。この国は」
「兄さん、でも私達を呼んだ人はどうしてこの場所を選んだのかしら?『トーキョー』とか『オーサカ』っていう所の方がもっと人がいて思い知らせやすいと思うのに」
「ああ、俺も聞いてみた。そうしたら、ここに『手強いもの』が潜んでいるという事だ」
「『手強いもの』・・・?」
「ああ、この世や俺達がいる世とはまた別の世界からの贈り物を持っている者だよ」
かよ子は帰宅した。
「只今!はあ、はあ」
「お帰り、かよ子。どうしたの?」
「学校から帰ってる途中、道路が爆発してびっくりしたの!」
「ええ!?」
その報告にかよ子の母は一瞬、信じられなくなった。
「そうだったの。大変だったわね」
「うん・・・」
かよ子は手を洗い、自分の部屋に行った。
(何なんだろう・・・。私がおっちょこちょいを治そうとしたら神様が気にくわなかったのかな?)
かよ子は昨日の地震や今日の道路の爆発が自分と関わりがありそうで恐怖心を持った。その時、母が部屋に入ってきた。
「かよ子」
「お母さん・・・」
「これ、昔お母さんが使ってたものなの。これ、あげるわ」
かよ子の母が差し出したものは一つは本でもう一つは魔女が主人公の漫画に出てくるような魔法の杖のようなものだった。
「この本にこの杖の使い方が載ってるわ。困った時に使ってね」
「うん・・・!!」
かよ子はその本を見た。普通の人ならば意味不明な字で何て書いてあるか分からなかったろう。しかし・・・。
(わ、私には読める・・・!!)
かよ子にはその本の意味不明な文字が解読できたのだった。
後書き
次回は・・・
「異世界からの刺客」
母親から貰った杖の使い方を理解したかよ子はその杖を携帯する事に決めていた。そして謎の強風が起きた時、かよ子は出来事の元凶と顔を合わせる・・・。
3 異世界からの刺客
前書き
《前回》
かよ子は下校中に地震のような揺れを感じた。しかし、地震とはないと聞き、さらにその翌日、杉山に大野と共に謎の道路の爆発に巻き込まれる。その後、かよ子は母親から貰った謎の杖と本を貰う。杖の説明書であるその本は意味不明な文字ではあるが、かよ子はその文字を読めた!!
かよ子は翌日、ランドセルに昨日母親から貰った杖と本を忍ばせた。かよ子はその杖が不思議な力を呼び起こせる事も分かった。その為の条件とはあるものを杖で指す事で、その指した対象から能力を得るのだ。
(兎に角、もしあの人がこの事件の犯人なのなら、やってみるしかないよね・・・!!)
かよ子は昨日の道路の爆発の際に逃げる時、一人の人間が立っている姿を目撃している。もしその人物が犯人なのならその人物と対峙しなければならないと考えていた。
かよ子は学校に着いた。クラスは昨日の事件で騒然としていた。体育館での朝礼においても校長はその話を取り扱っていた。いつもは長すぎると退屈にしている児童もこの日ばかりは息を呑んで聞いていた。
「え~、この先何があるかわかりません。私達先生方も児童の皆さんが常に無事である事を祈り続けます」
15分にも及ぶ校長の話は終わった。教室から戻る途中、かよ子は大野と深刻そうに話す杉山の顔を見た。
(杉山君・・・。もし昨日のような事に巻き込まれたらやだな・・・。あの杖で何とか助けたい・・・!!)
かよ子は自分の手で杉山を守る事ができたらいいのにと考えていた。
休み時間、かよ子は窓から外を眺めていた。心を落ち着かそうと少し深呼吸をした。
(私、おっちょこちょいだからお母さんから貰ったあの杖も心を落ち着かせないと使いこなせないよね・・・)
その時、かよ子は遠くから昨日見たものと同じ人影を確認した。
(あれは確か・・・!!)
かよ子は感じた。まさかあの人物が犯人なのではないかと・・・。
「見つけたわよ。倒すべき敵・・・」
女性は昨日「兄さん」と呼んだ男性から標的である「手強いもの」を確認した。
「まさかあの子供とはね・・・」
かよ子はその後、昨日から見たその女性が気になった。まさかその人物が杉山を襲うなんて事があり得るのか。ただ、昨日の道路の爆発は無差別な襲撃だ。あってもおかしくないだろう。
昼休みとなった。かよ子は長山に昨日の道路の爆発や一昨日の地震について聞いてみた。
「う~ん、あの揺れが地震じゃなかったらあれかな?隕石が衝突したとか・・・。それに道路の爆発はよくわからないけど、自然に起きるなんておかしいから、やっぱり誰かの仕業かな?」
「そっか・・・。ありがとう」
その時だった。外の風が強くなり、外で遊んでいた一部の児童が吹き飛ばされた。かよ子達がいた教室にも開いている窓から風が吹き込んでいた。
(こ、これ、何・・・!?もしかして・・・!!)
かよ子は風で捲れるスカートを抑えながら深呼吸した。そして自分のロッカーに閉まったランドセルから杖を取り出し、教室を出て校庭へと向かった。校庭へ出ると強風で木の枝が何本かへし折られて散らばり、児童達は震えている者もいれば、風に耐えようとしている者もいた。その場には昨日と先程、二度見た人影の女性がいた。
「ついに出てきたわね」
「だ、誰なの!?」
「私はアンナ。この世から追放された者よ」
「この世から追放された者!?」
「そうよ。これからこの日本が弛んでるから変えてくれって言われてね、もっといい国にするのよ」
「ならどうしてこんな危害を加える事するの!?」
「そうしないとわからないからって言われたのよ!」
「誰に!?」
アンナはかよ子の質問に答えず、風を呼び起こした。かよ子もその風に吹き飛ばされて校舎の壁に背中をぶつけた。
「倒すべき敵にしては容易そうね。んじゃ、丸焼きにしてあげるわ!」
アンナはマッチを取り出して点火した。その火が火炎放射のようにかよ子に襲いかかる。かよ子は死ぬかと思った。しかし、母から貰った杖の使い方の本の内容の一部を思い出した。
【杖は炎を対象に向けると炎の操る能力を得られる。】
あの説明書にそんな記述があった事をかよ子は思い出した。
(なら・・・)
かよ子は杖を襲いかかる炎に向けた。炎はかよ子の体を包んだ。
「あっけなかったわね・・・」
アンナはこれでかよ子は焼死したと思った。だが、その時、炎が今度はアンナの方に向かって還ってきた。
「え!?」
アンナは慌てて逃げようとした。だが、逃げ切れない。アンナは火傷を負いそうになる。その時、彼女の上から大きな水が降りかかった。
「アンナ、見くびりすぎだよ」
別の男性が現れた。アンナが「兄さん」と呼んだ男性であった。
「兄さん」
「態勢を立て直すぞ」
二人は去ろうとした。
「待って!!」
かよ子は呼び止めた。男性が答えた。
「君が俺達の倒すべき敵か。俺はアレクサンドル。この国に革命を起こすために来たのだよ」
「だからってこんな事・・・!!」
「決戦は明日の夜だ。その時に俺と妹のアンナでお前を倒す。じゃあな」
アレクサンドルと名乗った男性はアンナと共にどこかへ消え去った。
「アレクサンドルとアンナ・・・。この国に革命って・・・?」
かよ子は二人が何者か、革命を起こすとはどういう意味なのか全く分からなかった。だが、明日の夜、かよ子はあの二人と決戦をする。これは逃げられない戦いだと思った。
「山田あ!」
杉山がかよ子に呼び掛けた。
「す、杉山君!?」
「お前すげえぜ!あんな奴と戦ったなんてよ!かっこよかったぜ!!」
「う、うん、ありがとう・・・!!」
「その杖、魔法の杖か?」
杉山はかよ子が持っている杖を見て気になった。
「あ、昨日お母さんから貰ったんだ・・・。困った事があったらこれを使いなさいって」
「そうか、お前にとって役に立ちそうだな!」
「うん!」
「だがよ」
大野が話に入って来た。
「あいつらは明日の夜にお前と決戦をするらしいな」
「うん、そうだね・・・」
「そうだ、山田、お前一人で不安じゃないのか?」
「え?うん、確かに、私、おっちょこちょいだし・・・」
「何かあったら俺達も手伝ってやるよ。大野、できるか?」
杉山は親友にかよ子の援護ができるか尋ねた。
「ああ、やってやるよ!」
「ありがとう、杉山君、大野君!!」
かよ子は頼れる男子達に礼をした。
(決戦は明日の夜・・・。向こうも万全の準備をしてくるはず・・・。私も備えないと!!)
かよ子は覚悟を決めていた。昼休みは終わり、児童たちは皆それぞれのクラスの教室へと戻っていくのであった。
後書き
次回は・・・
「決戦の時は訪れた」
弛んだ日本を治す為に異世界から来たというアレクサンドルとアンナとの戦いに備えるかよ子、杉山、大野。そして翌日の夜、かよ子の家は決闘場となる・・・。
4 決戦の時は訪れた
前書き
《前回》
日本に革命を起こすために来たというアレクサンドルとアンナの兄妹と出会ったかよ子。母から貰った杖で学校の校庭に現れた二人を何とか退けたが、アレクサンドルは翌日の夜に決戦を予告する。杉山と大野もかよ子に加勢してくれることになった!!
三河口健はアスファルトが粉々になった道路を見ていた。
「漫画のような出来事だな。あるいはゴジラかウルトラマンの世界か・・・」
この非常な事態は三河口も非現実過ぎる事が起きていると感づいていた。
(今後、何らかのテロが起きそうだな。例えば、宗教戦争とか、海外でテロやってるはずの日本赤軍が国内で、活動するとか・・・)
三河口の予想は物騒なものばかりだった。ただ、世間に落ち着きがない事であるのは事実である。
かよ子は昼休みの事件の後、戸川先生から心配されていた。
「山田さん、昼休みは襲撃してきた人から生徒達を見事に守って大変でしたね。お疲れ様でした」
「はい」
「先生達も助けられなくてすみませんでした」
「私は大丈夫です」
(でも明日の夜、あの二人は来る・・・。それまでに準備をしないと!!)
かよ子は立ちはだかる敵との対面の時まで猶予がありそうでないと感じた。
かよ子は明日の戦いの話をする為もあって杉山に大野と下校するところだった。
「明日の夜、俺と大野でお前の家に行くよ」
「うん、ありがとう・・・でも二人とも夜遅くになっておうちの人に怒られない?」
「大丈夫だ。こっちも断っておくし、安心しろ!」
「でも、これって命を懸けた戦いだし・・・」
「何言ってんだ!」
杉山の一言でかよ子ははっとした。
「お前一人で何とかできるのかよ!?」
「え、いや・・・」
「そうだぜ!俺も杉山もお前が心配なんだぜ!あんな奴等に殺し合いみてえな事約束されてよ!」
「うん、そうだよね。私、おっちょこちょいだから変なポカやってやられちゃうかもしれないもんね・・・」
「兎に角あいつらが二人ならこっちは三人だ!」
「うん!」
人数が多ければよいというわけではないが、頼れる男子達がいて大丈夫な気がした。
(アレクサンドル、アンナ・・・。絶対にあなた達の思うようにはさせないよ!!)
かよ子は勝利を心の中で宣言した。
アレクサンドルとアンナは日本平から見える富士山を眺めていた。
「このシズオカって所もあの美しい山があって綺麗ね」
「ああ、『あの方』がいう革命の象徴になるかもしれないだろう。死んでからの話だが、俺は日本って所に来て良かったと思うよ」
「ところで兄さん、あの子を倒したら次はどうするの?」
「そうだな、他の地を静粛させよう。どこかは『彼ら』の指示次第だがな・・・」
かよ子は母に杖と説明書の本をくれた礼を改めてしていた。そして明日の決戦も報告しなければならないとも考えていた。
「お母さん、あの杖と本ありがとう。役に立ったよ・・・」
「え?あらよかった。でも、今日は大変だったわね。学校に二人組の男女が襲いかかったんでしょ?」
「うん、昨日の道路の爆発とも関係があるようなんだ」
「きっとそうね。今日、その二人が来た時、杖を使ったんでしょ?」
「そうだよ。あの二人も私を狙ってるみたいなんだ・・・。それで明日の夜、私、あの二人と戦うよ・・・!!」
「そう・・・。かよ子。分かったわ。でも、これはかなり命を懸けた戦いになるわよ」
「私もそんな気がしてるよ。それでね」
かよ子はあの二人の男子が介入すると聞いたら母は許さないのではないかと不安に思った。
「杉山君と大野君も一緒に戦ってくれるって言ってくれたんだ。お母さん、駄目かな?」
「そんな事ないわ。杉山君と大野君の家にも電話してみるわ」
「うん、でも二人を巻き込んで大丈夫かな?」
「大丈夫よ。かよ子にとって頼もしい相手じゃない。きっと勝てるわ。お母さんとお父さんも一緒にいるわ」
「うん、ありがとう!」
かよ子の母は大野と杉山の家に電話を入れた。それぞれの母親はやや困惑していたが、二人の覚悟も強い事もあってかよ子の母を信じる事にした。
(杉山君達にどうしても迷惑かけられないよね。今からでも練習をしとかないと・・・!!)
かよ子は昼のアンナとの対峙では炎を手にして炎の操る能力を手にして己の焼死を防いだが、次はどんな攻撃で来るか分からない。別の能力の使用法も理解しておかないとと思い、改めて説明書を読み直した。
(でも、どうしてこの本の字、私には読めるんだろう・・・?)
かよ子はこの謎の文字が気になった。そういえばアンナとアレクサンドルは異世界から来たという。この杖と本も異世界のものなのか・・・。そしてかよ子の母が持っているという事は・・・。
翌日、かよ子は途中、たまえにとし子と合流した。
「あ、かよちゃん!」
「たまちゃん、とし子ちゃん、おはよう。まるちゃんは?」
「いつもみたいに寝坊してるのかもね」
「そ、そうかもね」
「かよちゃん」
たまえは昨日の話をしようとする。
「昨日は凄く活躍してたね」
「え?うん、ありがとう」
「杉山君も感心してたよね」
とし子も窓からかよ子の戦闘の様子を見ていたのだった。
「うん・・・」
かよ子はある事も思い出した。それはこの日の夜、決戦を行う予定なのだ。その場には杉山と大野も来る。もし負ければ此方の命はない。かよ子は緊張の昂りを感じた。
(でも必ず勝たないと・・・!!)
かよ子は昨日は杖を使って練習した。杖で庭の石に向け、石を岩のように大きくしたり、岩を転がしたりと石を操る能力も杖にはあるとわかった。
(この杖なら何とかできるよね・・・!?)
かよ子は己の武器を改めて頼りにしていた。
かよ子の母は隣のおばさんと話をしていた。
「かよちゃんが決戦ね。あの事件の犯人と」
「心配にはなってますけどクラスの頼もしい男子も味方になってくれてますから大丈夫だと思うんですが」
「大丈夫だと思うよ。あの杖あげたならかよちゃんも使いこなせるんじゃない?」
「そうですよね・・・」
「山田」
学校で杉山が大野と共にかよ子に話しかけた。
「す、杉山君・・・」
「今日の夜、お前の家に行くよ。だが、お前の母さんがよう俺達が来る事をオーケーしたよな」
「あ、うん、そうだよね。本当は迷惑かけてるのに・・・」
「でも、山田の母さんも何かあるんじゃねえのか?」
大野はかよ子の母が決戦の参加を許可した理由について考察していた。
「そうかもね・・・。私も分からないけど・・・」
「よし、決戦に備えようぜ、杉山!」
「おお!」
夕方の山田家。かよ子の家族は集まった。その場には大野と杉山もいる。二人はサッカーボールや野球のボールやバットなど、武器になりそうなものを持ってきていた。
(アンナとアレクサンドル・・・。この家に来るのかな・・・)
かよ子は二人は待ち合わせ場所を告げていなかったので自分達がどこにいるのかと迷っているのではないかと思った。
(って、私みたいなそんなおっちょこちょいしないか・・・)
かよ子は自分にツッコミを入れた。その時・・・。
「皆お揃いね」
「だが、人数が多ければいいという訳ではないぞ」
お待ちかねの二人組は訪れた。ここから殺るか殺られるかの闘いが始まる。
後書き
次回は・・・
「魔法の杖と頼もしき男子達」
アレクサンドル、アンナとの闘いが始まった。応戦するかよ子の家族と杉山、大野。かよ子は己の武器を使用するが、苦戦してしまい・・・。
5 魔法の杖と頼もしき男子達
前書き
《前回》
異世界から来たというアレクサンドルとアンナと決闘する事になったかよ子。かよ子は母親から貰った不思議な杖と自分が恋する相手・杉山とその親友・大野を頼りに闘いに備える事とする。その決闘場となった夜の自分の家に杉山・大野・そして両親と共にアレクサンドルとアンナを迎え、戦いを始めるのであった!!
戦いは始まった。
「それじゃ、皆殺しといくか!」
アンナが地面を足踏みする。山田家の庭の地面が爆発した五人はその勢いで吹き飛ばされた。
「俺も行くぞ」
アレクサンドルが砕けた地面の欠片を蹴る。かよ子は慌てて避けた。地面の欠片は弾丸のようにかよ子の家の壁面に当たり、銃弾のようにそこには穴が開いた。
「力学的な能力も俺は持っているぞ。それに・・・」
アレクサンドルは屋根の上にいる猫を見て、掌を猫に向けた。猫が近寄る。
「俺は『この世の人間』だった頃は動物学を専門としていた。動物を操る能力も持っている。この猫を猛獣にする事も出来るぞ」
アレクサンドルが寄せた猫が巨大化した。猫は皆を食べようとするかの如く襲い掛かろうとする。
(どうしよう、どうすれば・・・!!)
かよ子は冷静さを失った。その時、杉山がサッカーボールを猫に思い切りぶつけた。猫は「ニャー!」と言って目を瞑った。
「山田!チャンスだ!!」
「う、うん!」
杉山に促され、かよ子は杖の使用しようとした。しかし、どれから能力を得るべきか・・・。
「かよ子、これを使え!」
かよ子の父はカッターナイフをかよ子に向けて投げた。
「カッター・・・?」
かよ子は本に書かれてあった事を思い出した。
【刃物および刀の類を対象にすると杖は剣の能力を得られる。】
かよ子は杖をカッターに向けた。その時、杖は一本の剣に変わった。
「杖が剣に変わったからって何よ!」
アンナは構わずかよ子に向けて突風を引き起こした。しかし、かよ子は剣を一振りした。突風は薙ぎ払われた。
「・・・え?」
「いいぞ、山田!」
「う、うん!」
かよ子は剣を一振りしてアレクサンドルを振り払った。アレクサンドルが塀に打ち付けられると共に、猫を操る事に集中力が途切れたのか、猫が小さくなった。
「この・・・!!」
アレクサンドルが立ち上がり、再び猫を巨大化させようとする。しかし、大野が野球のボールをノックさせた。アレクサンドルはとっさに避けたものの、能力を行使できなかった。
「二度と同じ手は使わせねえぞ!」
「くそ!」
「兄さん!」
アンナは大野に向かって火を放つ。
「大野!!」
杉山が叫んだ。これでは大野は火傷を負い、下手すれば焼死する。
「大野君!」
かよ子の父がアンナに体当たりをする。そしてかよ子もまた剣を一振りさせて大野を襲う炎を消した。
「かよ子!アンナを斬るのよ!」
かよ子の母が叫んだ。
「え?!」
かよ子は人を斬って殺人罪に問われるのではないかと一瞬心配した。しかし、杉山が構わず叫ぶ。
「ためらうな!行けえええええ!!」
「杉山君・・・!!うん・・・!!」
かよ子は杉山の叫びで迷いを振り切った。かよ子は剣を振りかざす。アンナの腹部を切った。
「あ、あ・・・。ああああああーーーっ!!」
アンナは痛みによる叫び声を挙げた。ただ、切れた腹部から出血はせず、代わりにアンナの体が光りだし、そして光の粉となって彼女は消失した。
「アンナ・・・!!」
アレクサンドルはアンナが消えた事で冷静さを失った。
「よくも妹を!!」
アレクサンドルは石を拾うとかよ子に向かって飛ばした。かよ子は剣で弾こうとしたが、逆に自分の剣が弾かれた。剣は元の杖に戻った。
(しまった・・・!!)
かよ子は終わりかと思った。
「これで終わりだ!!」
アレクサンドルはかよ子に向けて石をもう一つ、発射しようとする。
「かよ子、あの石の能力を得るのよ!」
母が叫んだ。かよ子は本に書かれてあった事を思い出す。
【石を対象にすると石を巨大化させる、石を軽々と運ぶなどの能力を得られる】
アレクサンドルが石を発射した。彼の能力なら石を発射すればかよ子の胸を撃ち抜く事は容易い。ところが、かよ子はその石に杖を向けた。石はかよ子の前で止まり、巨大化した。かよ子はその石をアレクサンドルに向かって返り討ちにする。
「石なら水で簡単に押し流せるぞ!!」
アレクサンドルは水を出した。かよ子が巨大化させた石がアレクサンドルが出した水の勢いで動きを止められた。石はかよ子に向かって流れて行く。
「これでお前は石と家のカベに挟まれて圧殺だ!」
「や、山田あああ!!やめろおお!!」
杉山はサッカーボールを見つけるとアレクサンドルに向けてシュートした。アレクサンドルの顔にボールがぶつかり、アレクサンドルは能力を行使する集中力を失った。水の流れが止まる。
「よし!」
かよ子は石をアレクサンドルに向けて発射する。もうその石の動きを阻害する者はいない。アレクサンドルが起き上がって再び能力を行使しようとするもかよ子の父が棒を竹刀のように振り回したり、杉山や大野が彼を抑えつけたりする為に思うようにできない。
「くそっ、邪魔しやがって!!」
(そうか、アレクサンドルは何か自分に直接ダメージを受けると能力の使用が途切れるし、ああやってお父さんや杉山君達に邪魔されると能力が使えないんだ!!)
かよ子はアレクサンドルの弱点を見抜いた。ならこの石でアレクサンドルを圧殺させようと思った。
「かよ子、だめよ!!」
「え!?」
「石を大きくさせたままアレクサンドルを潰そうとしてもお父さんや大野君、杉山君まで犠牲になるわ!!」
「あ、そうか!」
「さっきアレクサンドルがやったように撃ち抜くのよ!!」
「うん!!」
アレクサンドルは三人に邪魔されて能力が使えない。かよ子は石を元の大きさに戻した。
「行けえ!!」
かよ子は杖を一振りさせた。石は新幹線かそれ以上の速さで跳ぶ。そしてアレクサンドルの額を撃ち抜いた。
「ああああ!!」
アレクサンドルは頭部の激痛で絶叫する。そして体が光り出し、アンナと同様に光の粉となって消えていった。
「俺達は・・・、勝ったのか・・・?」
杉山は今の現状が一瞬理解できなかった。
「もう終わったわ。私達の勝ちよ」
かよ子の母は断言した。アレクサンドルとアンナの兄妹にかよ子達は勝利したのだ。
「やったな、山田!」
「お前、カッコよかったぜ!!」
「う、うん!ありがとう!!」
大野と杉山から感心されたかよ子は非常に赤面したが、おっちょこちょいでしくじる結果にならなくてよかったと安堵した。
(よかった。杉山君達も無事で・・・)
かよ子は好きな男子との共闘で勝利した事に嬉しく感じた。そして母がくれた不思議な杖にも感謝するのであった。
後書き
次回は・・・
「それでもライフはいつも通り」
アレクサンドルとアンナを倒したかよ子達。翌日、かよ子は杉山に大野と昨日の話をして盛り上がる。そしてかよ子の生活は不思議な現象が起きてもまた続いて行く・・・。
6 それでもライフはいつも通り
前書き
《前回》
異世界から来たというアレクサンドルとアンナの兄妹と決闘を始めたかよ子達。苦戦しながらも大野や杉山、かよ子の両親達との協力もあり、何とか勝利を収めるのだった!!
隣人の壮絶な戦いを三河口は己の叔母と観戦していた。
「山田さん達、勝ちましたね」
「まあ、かよちゃんが貰った杖があるならきっと勝てると思ったわ」
「俺が加勢しても良かったかもしれませんが」
「いいよ、いいよ。健ちゃんの力は強すぎるから。それにお陰でかよちゃんもあの男の子達ともっと仲良くなれたみたいだしね 」
「そうですね。大野君と杉山君でしたっけ。あの二人は本当に頼りがいがありますね。俺なんかよりも・・・」
かよ子の母は大野と杉山をそれぞれの家に帰した。礼はまた後ですると言って。
翌朝、かよ子は昨日の決闘で疲れてしまっていた。しかし、そんな理由で学校は休めない。疲労感を残しながらも学校へ行った。あわや遅刻かという状況で3年4組の教室に到着した。
「おはよう~、かよちゃん!珍しいねえ~こんなギリギリに来るなんて」
「まるちゃん・・・」
いつも遅刻寸前で登校するまる子よりも遅かった。
(仕方ないか。昨日が大変だったし・・・)
その直後、はあはあ、と言いながら二名の男子が現れた。大野と杉山だった。
「はあ、遅くなっちまったぜ・・・」
「す、杉山君!お、大野君!?」
「あれえ~、二人とも珍しいねえ~」
「ああ、寝坊しちまったよ」
かよ子は少しはおっちょこちょいが治ったかもしれないと思った。しかし、昨日の大決戦の疲労の影響なのか算数の授業中で居眠りをしてしまった。
「山田さん、山田さん!?大丈夫ですか?居眠りをしてはいけませんよ」
戸川先生に起こされてかよ子は恥をかいてしまった。やはり自分のおっちょこちょいは何一つ改善なしだと実感した。その授業の後、杉山と大野が話しかけてきた。
「よう、山田!疲れて寝ちまうなんてすげえな」
「あ・・・。うん」
かよ子は好きな男子に知られてみっともなく思った。
「やっぱり昨日の戦いで疲れちまったんだな。俺も杉山もそれで今日寝坊しちまったんだよ」
「え、そうなの!?」
「そりゃあいつら手強かったもんなあ!」
「うん。あ、そうだ。私のお母さんが今度お礼をしたいって言ってたよ」
「おう、わかった」
かよ子は好きな杉山と会話が弾んで嬉しかった。
(なんだかいつもの生活に戻ったかもしれない。でも、これだけ杉山君と話せるなんて・・・)
その後、かよ子はまる子やたまえと下校していた。
「かよちゃん、良かったねえ~」
「え!?な、なにが!?」
「もう~、とぼけちゃってえ~。大野君に杉山君と楽しく喋ってたじゃ~ん」
「あ、それはその・・・」
かよ子は昨日の事を話そうと思った。
「昨日ね、二人は一緒に戦ってくれたんだ。一昨日の昼休みに学校を襲いに来た人達から」
「ええ!?そうだったの!?」
「うん、その事を話してたんだよ」
「そっかあ~、杉山君も見直してるよお~」
「うん、きっとそうだよ!」
「え?うん、そうだよね」
かよ子は昨日のあの時、自分がアンナとアレクサンドルを撃退したら杉山からカッコよかったと言われた。本当に杉山から自分は見直されたかもしれない。
かよ子はまる子、たまえと別れて家に帰ると、母から声を掛けられた。
「かよ子、お礼の準備ができたわ。明日大野君と杉山君をウチに呼んであげなさい」
「うん!!あ、お母さん」
「え、何」
「この杖、とても役に立ったよ。ありがとう」
「よかった。大事に使ってね。この杖は別世界から貰った物なのよ」
「そうだったの!?」
「そうよ。お母さんもこの杖で何度か助けられたのよ」
「そうだったんだ・・・」
かよ子にとっては驚きの事実だった。そしてあの杖があるから自分は今こうして生きているのだと実感するのであった。
(でも、別世界から貰ったもの・・・。アレクサンドルとアンナはこの世から追放された者ってって言ってた・・・。前は私達と同じ地球の人間だった・・・。別の世界ってあるんだ・・・)
その時かよ子は謎に思った。この世から追放されたという事は、人は死後、異世界で生きているという事なのか。そしてアンナは「この日本が弛んでるから変えてくれって言われてやっている」と言った。しかし、誰に頼まれたのだろうか。そしてその人物(いや、何らかの組織かもしれない)は「日本を変える事」を目的に違う世界の人間を召喚したのか?しかし、かよ子にとってはまだ考えても分からない事だった。
翌日、学校にてかよ子は休み時間にサッカーして帰って来た大野と杉山に声を掛けた。
「す、杉山君。お、大野君・・・!!」
「山田、どうしたんだ?」
「お母さんがこの前のお礼をするって言ってたんだ。今日、私の家に遊びに来てくれるかな?」
「おお、いいぜ!!」
「うん、ありがとう!」
(また杉山君がウチに来てくれる・・・!!)
かよ子はまた杉山が自分の家を訪れることになってとても嬉しく思った。
家に帰って20分後、かよ子の家に待ち人は来た。
「こんにちは!」
「あら、杉山君、大野君。上がって」
かよ子の母は二人を家に上がらせた。そして娘の部屋に行く。
「かよ子、杉山君と大野君が来たわよ」
「うん」
かよ子は部屋を出た。居間に大野と杉山はいた。かよ子はまたあがってしまった。
「き、来てくれてありがとう・・・」
「ああ、折角お前が呼んでくれたんだからな」
「うん」
「はい、お礼にこのクッキーを買ってきたわ」
「うわあ、美味そうだな!」
「まあ、ほんのお礼よ。かよ子も一緒にどうぞ」
「うん」
かよ子は杉山、大野と共にクッキーを食べようとした。かよ子は緊張でクッキーを手から落としてしまった。クッキーはテーブルの下に落ちた。
「山田、お前も相変わらずのおっちょこちょいだな!」
「うん、そうだね・・・」
大野も杉山も笑った。かよ子も恥ずかしがりながらも笑った。おっちょこちょいでもこうして杉山、大野といる事で時間は流れて行く。どんな不可解な現象が起きてもおっちょこちょいな生活は相変わらず続いているんだとかよ子は改めて感じた。
後書き
次回は・・・
「四人の少年少女グループ」
ゴールデンウィークが過ぎたある日の事、かよ子は大野に恋している女子・冬田美鈴と出会うが、冬田は大野が何か秘密にしている事があるという。大野と杉山はブー太郎にまる子と共にあるものを建造しており・・・。
7 四人の少年少女グループ
前書き
《前回》
異世界から来たアレクサンドルとアンナの兄妹との決闘に勝利したかよ子は後日、共闘してくれた大野と杉山を家に呼び、クッキーを御馳走した。相変わらずのおっちょこちょいをしながらもかよ子は好きな男子との一時を過ごす事ができたのであった!!
今回からはアニメ「ちびまる子ちゃん」2期269話「ヒミツ基地を作ろう」の巻、271話「ヒミツ基地乗っ取られる」の巻をかよちゃんと冬田さんも入れてアレンジさせたエピソードです!
清水市の羽柴家。山田かよ子の隣の家に居候している男子高校生・三河口健は自身の叔母である羽柴奈美子とその夫である利治とテレビのニュースを見ていた。ニュースはこの前の地震のような出来事の事件である。あれは地震ではなく、異次元とのぶつかり合いと報道していた。さらにこの前清水市にアレクサンドルとアンナとかいう人物が襲撃して来た事も報道されていた。なお他の地でも行政機関の襲撃やターミナル駅の爆発が起きたという。
「それにしてもあのアレクサンドルとアンナって奴以外にも暴れている奴がいるんですね。それもあの地震もどきの事件を境に始めて」
「だが、異次元との繋がりがこんなあからさまに起きるって事はあまりあり得ないんだがな」
利治氏は異次元の存在を知っているように言った。
「今の世界と別の世界って普段から繋がっているんですか?」
「あまり目立たないところで繋がっているんだよ」
「それにウチらの世界だけじゃどうにもならない事ってあるんよ。だから他の世界から静かに助けられているんよ。例えば神とか仏に祈ったりとか神社でお祓いやって貰ったりとかね。隣の山田さんがかよちゃんに渡したあの杖もそうなんよ」
奈美子が続けて説明する。
「そうなんですか。しかし、それでも俺が持っている力というのはどうにもならないかもしれませんが・・・」
「そんな事ないって。清水に来てから変わってると思うよ」
「そうですよね・・・」
三河口は間借りしている部屋に入った。元々この家には奈美子と利治の他に三人の娘、すなわち三河口の三姉妹の従姉がいたのだが、今は結婚や進学などで既に自立している。三河口が借りている部屋はかつてこの羽柴家の長女・ゆりが使用していた部屋である。三河口が居候を始めた時は長女と次女・ありは既に自立しており、三女・さりは三河口が中学三年生の時に専門学校進学を機に名古屋で独り暮らしを始めた。
「俺の力、強力すぎるんだよな・・・。今は何とかやっているけど・・・」
アレクサンドルとアンナの兄妹との決闘から数日経ち、かよ子は杖をさらに使いこなそうと思い、杖の説明書となる本を読んでいた。その本はこの世のものとは思えない文字で記されているのだが、なぜかかよ子にはその文字が読めた。ゴールデンウィークは特にこれといった旅行の計画はなく、ただ家にいたり、同じくそんな余裕がないという理由で何の計画もないまる子と遊んだくらいである。
(この前の戦いはお父さんやお母さん、杉山君に大野君のサポートがあったから倒せたけど、私一人じゃ絶対に殺られていた・・・。おっちょこちょいしないようにやらないと杉山君からも愛想つかされるかもしれない・・・!!)
かよ子はそう思い、特訓を続けていた。
「かよ子」
母がノックをして部屋に入ってきた。
「ちょっと一休みしたら?」
「あ、うん」
かよ子は台所に降りてきては母が用意してくれた用意してくれたプリンを食べる。
「お母さん」
「え?」
「また、誰かが攻めてくるって事あるかな?」
「そうね・・・。でも大丈夫よ。その杖があれば十分に太刀打ちできるわ」
「うん・・・」
かよ子はプリンを食べた後、外の空気を吸おうと思い、家を出た。あの兄妹との対決は夢じゃないと改めて思うと自分に勝負を仕掛けて来る者が他にも現れるかもしれないと思った。もしそうなら、自分の家族や学校の友達、さらには周囲の知り合いにも危害が及ぶ可能性がある。実際、あの戦いでは杉山に大野、自分の両親も共闘してくれていたが、迷惑かけたと思われてもおかしくはないのだ。
かよ子は外で一人の女子が落ち込みながら立っている姿が見えた。大野に恋する女子・冬田美鈴だった。
「あれ、冬田さん、どうしたの?」
「あ、山田さあん、実は大野君が最近秘密にしてる事があるらしいの。いつもどこかに行ってるんだけど、教えてくれなくて、さっき跡をつけてたらばれちゃって怒られちゃったの。もしかして大野君、他の女の子と遊んでいるのかしら・・・!?う、うわあああ~ん!!」
冬田は説明を終えると共に大泣きしてしまった。
「ふ、冬田さん、泣かないでよ・・・。もしかしたら大野君は杉山君と遊んでいるだけかもしれないよ・・・」
「そうかしらあ・・・」
かよ子は冬田を落ち着かせようとした。その時、己の発言が気掛かりになった。
(でももし大野君が杉山君と何か秘密があるとしたら、何なんだろう?でも私が知ろうとしたら杉山君に嫌われるかもしれない・・・)
「また今度調べに行こうよ!」
「うん、そうね」
とある高台。杉山は「まる子」ことさくらももこに「ブー太郎」こと富田太郎と共にある工作をしていた。杉山は金槌で木に釘を打っていた。
「よおし、できたぜ」
「あとは大野君を待とうブー!」
「んじゃ、休憩しようかあ~」
三人は一休みした。そして少しして大野が来た。
「大野君、お帰りブー!」
「おお、遅くなってわりいな。いい木がなくてあちこち回ってたよ」
「ああ、気にすんなって。大野は疲れただろうから少し休めよ」
「いいのか?」
「俺達はさっき休んだからな。よし、ブー太郎、さくら、俺達は続きを作るぞ!」
「了解だブー!」
「賛成~」
大野は休憩し、杉山、ブー太郎、まる子は作業を再開した。
学校の休み時間。杉山と大野、ブー太郎、そしてまる子が教室から出て行くところをかよ子は発見した。
(やっぱり杉山君も大野君と何かあるんだ・・・。でもなんでまるちゃんとブー太郎もいるんだろう・・・?)
「山田さあん、やっぱり大野君達、何かあるわよねえ?」
冬田が話しかけてきた。
「うん、そうだね」
「もしかしたら大野君、私じゃなくてさくらさんが好きなのかしらあ!?」
冬田は大野に嫉妬した。
「で、でも杉山君とブー太郎もいるからそれはないと思うよ・・・」
「わからないわあ!山田さん、放課後調べるわよお!」
「う、うん、そうだね・・・」
二人は調査を実行する事にし、待ち合わせ場所を決めた。
かよ子と冬田は大野、杉山、ブー太郎、まる子のいずれかを発見したら尾行しようとしていた。その時、かよ子は遠くにブー太郎の姿を発見した。ブー太郎は工具を持っていた。
「あ、ブー太郎だ」
かよ子はブー太郎に話しかけようと思い、接近した。ところが、案の定ここでおっちょこちょいをやってしまった。横から自転車に乗った男性とぶつかりそうになった。足を轢かれたり、跳ねられたりはしなかったが、避けようとして転んでしまった。
「全く、気を付けろよ!」
男性は注意の言葉を吐いて去った。
「山田さあん、大丈夫う?」
「うん、大丈夫だよ。あ・・・」
かよ子は膝をすりむいていた。だが、そんな事を気にしている場合ではない。
「ブー太郎は?」
「そう言えばどこ行ったのかしら?」
二人はブー太郎を見失ってしまった。気を取り直そうとするも、何の手がかりを掴めなかった。
杉山、大野、ブー太郎、そしてまる子の四人は秘密の工作を続けた。そして数日が経ち、その工作は完成した。
「やっとできたブー!」
「ああ、これが俺達の秘密基地だ!!」
「凄いねえ~」
「よし、皆!表札に名前を書こうぜ!」
杉山が提案した。
「いいな!」
そして四人は名前を書いた。そして表札を基地へ上る為の梯子の付近に飾った。
「そうだ、記念にさあ、この秘密基地のメンバーのグループ名決めようよお!」
「そうだな!」
大野はまる子の提案に乗った。
「何て名前にするブー?」
「アタシゃ一つ考えてるのがあるんだ?」
「どんな名前だブー?」
「ここはお茶と蜜柑と次郎長で有名な清水だからね、『次郎長』がいいと思うんだ!」
「カッコいいな!よし、『次郎長』で決まりだ!」
杉山が賛成した。こうして秘密基地の完成と共に、そこを根城とする組織「次郎長」が結成された。
後書き
次回は・・・
「奪われた秘密基地」
秘密基地を造った組織「次郎長」。捜索を続けるかよ子と冬田は不思議な人物と出会う。その一方、杉山達が建造した基地はあるグループに奪われてしまい・・・。
8 奪われた秘密基地
前書き
《前回》
最近大野の行動が気になって尾行しているクラスメイト・冬田美鈴と出会ったかよ子。調査をするも、真相の究明に失敗する。杉山はその大野にブー太郎、そしてまる子と共に秘密基地を建造していたのであった!!
かよ子は杉山、大野、ブー太郎、まる子の四人が一体何を計画しているのか手がかりが掴めぬままだった。
(杉山君達、何の秘密があるんだろう・・・?)
かよ子はまる子に聞いてみようと彼女に声をかけた。
「あ、あの、まるちゃん・・・」
「あれ、かよちゃん、どうしたの?」
「最近、杉山君や大野君、ブー太郎と一緒に何してるの?」
「え?いや~、ただ遊んでるだけだよお~」
まる子は惚けた。
「そうなの?」
「あ、そのお~」
「山田!何なんだよ、さくらにそんなにしつこく聞いて!」
杉山が現れた。
「す、杉山君・・・」
「俺達は何もしてねえぞ!なあ、さくら!」
「あ、うん・・・」
「う、ごめん、杉山君、まるちゃん・・・」
かよ子は杉山に嫌われたような感がした。
清水市内の高校。三河口は放課後になっても勉強を続けていた。彼は元々勤勉な一面がある。しかし、勉強ばかりという訳ではない。今どきの高校生のように、遊びほうけたい気分になる時もある。
(ふああ~、もう学校出るか・・・)
三河口は下校しようと思った。帰りに本屋にでも寄り道しようかと考えた。その時、同級生も丁度帰る所だった。
「あれ、濃藤」
「おお、ミカワじゃん」
メガネの男子、濃藤徳崇。三河口の友人の一人だった。高校に入って以降は彼とつるむ事が多い。今の三河口の性格ならクラスどころか同じ学年の誰とでも親友のようになっているが。
「今日も勉強か?」
「ああ、テストが近いからな」
「まあ、俺も同じだよ。それにしてもどうもウチの妹がさ・・・」
「君の妹がどうかしたのか?」
濃藤には小学三年生の妹がいる。その妹は最近何かあったらしい。
「最近帰るのが遅くて気になるんだよ」
「ただ遊んでいるだけじゃないのかね?」
「いや、何かを感じ取ったみたいなんだよ」
かよ子はまる子から秘密を吐いて貰おうとして杉山から嗜められた事で杉山から嫌われそうな気がして不安だった。
(もしあれで杉山君が離れていっちゃったらどうしよう・・・?)
かよ子はその事で物思いに更けながら下校していると、冬田が声を掛けてきた。
「山田さあん」
「ふ、冬田さん!」
かよ子は驚いて振り向くなり踵から躓いて尻餅をつくという恒例のおっちょこちょいをやってしまった。
「あ、大丈夫う?」
冬田は転んだかよ子を気遣った。
「うん、大丈夫だよ。ところで冬田さんはどうしたの?」
「大野君達の事、何かわかったか聞きに来たのよお」
「いや、何も・・・。まるちゃんに聞いてみようとしたけどダメだった。それで杉山君から怒られちゃったんだ・・・」
「そうだったのお・・・。さくらさん、大野君達と陰でコソコソ付き合ってるのねえ!許せないわあ!!」
(それは違うと思うけど・・・)
かよ子は何も言えなかった。
「山田さあん、今日も大野君達を追跡するわよお!」
「う、うん・・・」
冬田の積極的な提案に断れないかよ子であった。二人は一旦別れ、ランドセルを置くなり再び待ち合わせ、血眼になって捜索を始めた。だが、誰も見つける事ができなかった。
(もしかして今日は集まってないのかな・・・?)
かよ子はそのような気がした。
「大野君達、いないわねえ・・・」
二人が捜索に疲れてきたその時、一人の女性の姿が見えた。栗色のパーマがかかった長い髪をして若い成人女性のようないでたちだった。まさに美女そのものだった。
「貴女達」
その女性は二人に話しかけてきた。透き通るような美しい声だった。
「もしかしてあの少年達を探しているのですか?」
「あの少年達・・・?」
「名前は大野けんいち君、杉山さとし君、富田太郎君、さくらももこちゃんと言いましたわね」
「・・・え!?」
かよ子も冬田もその女性が今自分達が気になっている四人の名前を知って驚いた。
「す、杉山君達が何をやっているのか知ってるんですか!?」
「ええ、高台に秘密基地を造ったのですよ。ですが、そこに何か無駄な争いが起こる気配がするのです」
「無駄な争い・・・!?」
二人は女性は超能力者なのかと一瞬恐ろしくなった。
「もしかして大野君達悪者になっちゃうんですかあ!?」
冬田は我慢できずに質問した。
「いいえ、そうではありません。戦場は彼らが造った秘密基地なのです。そこを乗っ取ろうとした同じ四人の少年少女のグループと対決する可能性があるという事です」
「秘密基地・・・」
(もしかして杉山君達はその秘密基地を造る事を内緒にしていたの・・・?)
かよ子は杉山達の秘密を知った事はスッキリしたが、秘密を知って彼らに悪いと思った事や、この女性が言う無駄な争いが起こると思うと逆に心がざわめいた。
「その秘密基地が造った高台を教えてくれますか?」
「ええ、いいですよ。私にお掴まりなさい」
かよ子と冬田は女性の来ているワンピースのような白い布地を掴んだ。女性はいつの間にか背中に羽を生やし、ジャンプすると空を飛んだ。
(こ、この人、天使・・・!?)
かよ子は推測した。
「あ、貴女は一体、誰・・・?」
「私?ああ、申し遅れましたわね。私はフローレンス。異世界から来た者です。私は人々の平和を維持しようと動いています」
「異世界から・・・?」
かよ子は前にアレクサンドルとアンナの兄妹が来た時のように異世界の人間は皆この地球を攻撃する事ばかりが目的ではないと感じ取った。
「貴女は山田かよ子ちゃんですね。貴女のこの前の活躍は素晴らしかったですわ」
「え、ええ!?知ってるの!?」
「ええ、貴女の持ってる杖は私のいる世界のものなのですよ」
「そうだったんだ・・・」
「それに貴女はその杖の使い方を示した本の解読に成功なされました。貴女には不思議な能力があるのです」
「な、何の話をしているのお?」
冬田は二人の話についていけなくなった。
「この山田かよ子ちゃんは他の人にはない不思議な能力があるという話ですよ」
「そうなのお!?山田さん、凄いわあ!」
「い、いや、でも、私、おっちょこちょいだし・・・」
「いいえ、貴女がおっちょこちょいなのはその能力の代償なのかもしれませんわよ。兎に角、そろそろ高台に近づきます。不意に私から手を離さないようにお気をつけてくださいね」
「はい・・・」
三人は高台に到着した。かよ子と冬田はフローレンスから手を離すと、そこに一本の大きな木が見えた。そこに梯子があり、そこに表札が見えた。表札には「大野、杉山、ブー太郎、まる子」の名前があり、「次郎長の秘密基地」と記されてあった。
「次郎長?」
「あの四人のグループの名前ですね」
「そうなんだ、まるちゃん達、この秘密基地を造るのを秘密にしてたんだね・・・」
「大野君、私も誘ってくれたらいいのにい・・・」
「貴女達、お隠れなさい。誰か来ますわ!」
フローレンスは足音を聞きつけ、二人に催促した。三人は低木の茂みに隠れた。その場に四人の少年少女が現れた。しかし、杉山達ではない。見知らぬ四人組だった。
「ここに俺達の町を守れる力があるのか?」
「うん・・・。そうだって言われたの・・・」
「それで秘密基地があるのか・・・。へえ、『次郎長の秘密基地』だってよ!名前も大野、杉山、ブー太郎、まる子?わけわかんねえな」
「山口、それ、グループ名じゃねえのか?」
「そのようだな、だが次郎長よりももっとカッコいい名前にしようぜ!」
「名案でやんす!」
(もしかしてあの子達、杉山君達が造った基地を・・・!!)
かよ子は危惧を感じた。もしかしたらあの少年達が杉山や大野、ブー太郎、まる子と敵対する相手ではないのかと・・・。
「フローレンスさん、止めなくていいんですか?」
「それはまだあの子達が悪い事をしていると決まったわけではないので今は様子を伺うしかできませんわ」
「そんな・・・!」
その時、冬田は冷静さを失って「や、やめてえ!大野君達が造った基地をお!」と絶叫してしまった。
「だ、誰だ!?」
少年達は振り向いた。彼らが周囲を確認した時は誰もいなかった。
かよ子と冬田、そしてフローレンスは別の場所へと避難していた。
「山田かよ子ちゃん、冬田美鈴ちゃん、彼等と貴女達のお友達との争いが起きるようでしたら、またお会いしてお伝えしますわ。それでは」
フローレンスは羽を広げ、どこかへ去った。
(杉山君、秘密を知ってごめんね・・・。でも、争いなんてやめて・・・)
かよ子は心の中で杉山に謝った。
翌日、大野、杉山、ブー太郎、そしてまる子の四人は例の秘密基地に向かった。だが、表札を見ると「山口、川村、ヤス太郎、すみ子」と書かれており、「義元の秘密基地」と書かれてあった。
「な、何だよ、これ!」
「勝手に基地に上がり込んだ奴らか!」
「許せないブー!」
「一体この子達何処の誰なんだろうねえ!」
四人は秘密基地を乗っ取った者達への怒りを露にするのだった。
後書き
次回は・・・
「交差する組織同士」
杉山、大野、ブー太郎、まる子の四人の組織「次郎長」は秘密基地を占領した山口、川村、ヤス太郎、すみ子の四人からなる組織「義元」と顔を合わせる。だが、彼等には特殊な力があり・・・。
9 交差する組織同士
前書き
《前回》
かよ子と冬田は最近秘密があるらしい大野、杉山、ブー太郎、まる子の謎を知ろうと追跡している途中、平和維持の為に動いているという異世界の女性・フローレンスと出会う。フローレンスは二人に無駄な争いが起こる可能性があると悟る。そして杉山達が造った秘密基地の事を知ると、別の少年少女の四人組がその秘密基地を乗っ取ってしまった。
濃藤すみ子。小学三年生の女子である。彼女は何日か前の謎の地震もどきの現象以来、日本で何らかの事件が起きるニュースを耳にしており、とても気持ちが落ち着かなくなってしまった。
ある日、すみ子は同級生の山口芳弘、川村承太、ヤス太郎こと安田太郎の三人と下校していた。
「すみ子、きっと何ともねえよ!」
「ああ、お前自身にに何か危害が及ぶわけじゃねえんだ。元気だせよ」
「そうでやんす!何かあったら山口君と川村君が守ってくれるでやんす」
「おい、ヤス太郎、俺達を当てにすんなよ!」
ヤス太郎は山口に突っ込まれた。
「でも、お二人は最強コンビでやんす・・・」
「ありがとう、みんな・・・」
下校中、一人の人物と遭遇した。その人物は茶髪の若い男性だった。
「そこの君達・・・」
「な、なんだ、お前は!?」
「私はイマヌエル。異世界から来た者だよ。君達はこの前の地震のような現象を覚えているかい?」
「え・・・?は、はい・・・!覚えてます・・・!」
すみ子は返答した。
「それで最近、胸騒ぎが止まらないんです。何だか大変な事が起きるような気がして」
「そうか、君のその異変は正に偶然でも気のせいでもないのは事実だよ。今この日本は危機に陥っている。違う世界からの者が攻め始めて来ている」
「違う世界・・・?」
「そうだよ。あの地震もどきは他の世界とのぶつかりあいなのだよ」
最初は馬鹿馬鹿しいと思っていた山口、川村、ヤス太郎の三人も息を呑んで真剣に聞いていた。
「私は平和をモットーとする世界から来てこの世界の平和を維持しようと動いているのだよ。君達にだってできる事はあるのだよ」
「オイラたちに何ができるでやんすか?」
「それはだね・・・」
イマヌエルは高台の方角を指差した。
「向こうの高台から広々とした景色が見える。そこに君らが戦える為のアイテムが見つかるよ」
「それで俺達は立ち向かえるのか?」
川村が質問した。
「ああ、君らは十分に力になれるよ」
イマヌエルはそう言って消えていった。すみ子達は高台へ向かった。そこには手作りの基地があり、そこにイマヌエルが告げたこの世を守る為のアイテムはあった。そして四人はその基地を自分らの根城にし、組織「義元」を結成した。
かよ子は葛藤の中にいた。好きな男子が冬田にフローレンスと確認した四人組の少年少女と喧嘩して欲しくないと思い、止めたいのだが、秘密を知って杉山から嫌われるのも怖かった。
(どうすればいいのかな・・・?)
フローレンスは高台の基地を遠くの場所から見る。
(確かにあの基地、よくできたものですわ・・・)
その時、別の人物が現れ、彼女声を掛けてきた。
「フローレンスか。そこで何をしているんだ?」
「イマヌエル・・・。私はこの世界、特にこの日本に大きな災いが起き始めていますので少し胸騒ぎが起きていますの。貴方こそ何をなされておいでですか?」
「私も君と同じだよ。それで心が落ち着かぬ少女を見て災いを抑える為の道具を高台に置き、授けたのだよ」
「そうですか、その子達が争いを起こさなければ良いのですが・・・」
「どういう意味だ?」
「その子達がその高台にある基地を乗っ取って喧嘩を始める可能性がありますの」
「何?まさか・・・」
「次郎長」の構成員、大野、杉山、ブー太郎、まる子の四人は集合していた。
「全く、許せねえぜ!」
「あの山口、川村、ヤス太郎、すみ子って何者なんだブー?」
「兎に角、今日もすぐに基地へ向かうぞ!」
杉山は提案した。皆も「うん!」と頷いた。その様子を遠くからかよ子と冬田は見ていた。
「山田さあん、大野君達あの基地に行くわよお、私達も行きましょう!」
「う、うん、バレないようにね・・・!!」
(お願い、杉山君・・・。秘密基地の事は死ぬほど謝るけど、喧嘩なんかしないで・・・!!)
かよ子は迷い続けた。
大野、杉山、ブー太郎、まる子の四人は秘密基地のある高台に向かう。かよ子と冬田も見つからないように尾行した。
そして例の高台の秘密基地に到着した。そこには既に別の四人組がいた。杉山達も当然食って掛かる。
「おい、おめえら!!」
「ああ?」
四人組の一人の男子が返事した。
「お前ら、俺達の基地で何やってんだ!?」
「降りてこいブー!」
「アンタ達、こんな事やっていいと思ってんのお!?」
「次郎長」の面々が吠える。しかし、相手の四人も吠え返す。
「うるせえな、ここはもう俺達の基地なんだよ!」
「おい。お前ら大野と杉山だろ?」
「な、なんで俺達の事知ってんだあ!?」
杉山が動揺した。
「お前ら最強コンビは俺達の町でも有名だからな!だが、俺山口と・・・」
「この川村はお前ら最強を超える無敵コンビだ!」
「何が無敵だブー!大野君と杉山君がずっと強いブー!」
大野と杉山を慕うブー太郎が反論した。
「なんでやんすか、『ブー』って。お前、面白いでやんす」
小柄な男子がブー太郎を面白がった。
「何だとブー!」
ブー太郎は「~でやんす」という男子に激昂した。
「降りてこないなら俺達が降ろさせるぜ!」
大野は四人を引き摺り降ろそうと基地に近づいた。
「そうはさせるか!ヤス太郎、やれ!」
山口はヤス太郎に命じた。
「了解でやんす」
ヤス太郎はパチンコを出して大野の横を狙撃した。煙が巻き上がる。「次郎長」の四人はは周囲が見えなくなった。冬田は「大野くうん!」と叫ぼうとしたが、かよ子に口を抑えられ、阻止された。
「くそっ、前が見えねえ!」
「お前ら『次郎長』なんてグループ名結成したようだがよお、『次郎長』なんて弱えんだよ!俺達のグループ名は『義元』だぜ!」
「何さ、『ヨシモト』なんて、そんなお笑いの事務所みたいな名前のどこが強いのさあ!?」
まる子が川村に反論した。
「『吉本新喜劇』の『吉本』じゃねえ!戦国武将・今川義元の『義元』だ!この!」
川村はバズーカを発砲した。杉山君は吹き飛ばされる。
「このバズーカは突風を引き起こせるんだぜ!山口、やれ!」
「おう!俺の矢は破壊力高いぜ!」
山口は弓矢を持ち、矢を放った。四人は逃げようとするも、ブー太郎の背中に矢が刺さった。ブー太郎は体全体の痺れを感じた。
「ブー太郎!大丈夫か!?」
「う、動けないブー・・・」
大野は矢を抜き、杉山と共にブー太郎を抱える。「次郎長」は一旦退散した。
(す、杉山君達が造った基地が・・・)
傍観していたかよ子は体が震えていた。
「お、大野君達の基地をお・・・。それにあんな乱暴してえ・・・」
冬田は我慢できずに飛び出した。
後書き
次回は・・・
「守りたい清水市」
山口、川村、ヤス太郎、すみ子によって結成された組織「義元」。かよ子は「義元」の構成員・すみ子から「次郎長」の基地を乗っ取った理由を知る。そして次の課題は・・・。
10 守りたい清水市(まち)
前書き
《前回》
杉山達組織「次郎長」は秘密基地を乗っ取った組織「義元」と対峙する。だが、彼らには異世界から来たイマヌエルと言う者から貰った武器があり、返り討ちにされてしまう。そして冬田が我慢できず、「義元」の元へ飛び出した!!
組織「次郎長」を追い払った組織「義元」は勝利の喜びを挙げていた。
「へへ、やったな山口!」
「俺の『毒矢』は結構聞くな!」
「お二人、強いでやんす!」
「ヤス太郎、お前もナイスパチンコだったぜ!」
「照れるでやんす・・・!!」
「あの・・・」
先程から内気になって戦線に立てなかったすみ子が声を発した。
「どうした、すみ子?」
「やっぱりやりすぎだったんじゃ ・・・」
「そんな事ないぜ、今のこの町を守る為だ。それにあのイマヌエルって奴から貰ったこの武器があれば怖いものなしだぜ!」
その時、一人の女子が絶叫して近づいてくるのが見えた。
「あなた達い!!大野君に何て事するのよお!!」
「ふ、冬田さん!」
かよ子は慌てて冬田を追いかけた。四人組に食って掛かる冬田は好きな男子を傷つけられたあまりで怒り狂っていた。
「何だお前?」
「何か大仏みたいでやんす!」
「もう許さないわあ!」
冬田は基地に近づく。しかし、ヤス太郎がパチンコを冬田に向けて狙撃しようとする。かよ子は小石を見つけるとそれに杖を向けて石を操る能力を得た。
(この石を壁にして冬田さんをあのパチンコから守らないと!)
かよ子は石を巨大化させて冬田を防御しようとする。巨大化した石は冬田の頭上に浮かんだ。その時にはヤス太郎もパチンコを発射していた。パチンコの玉は石に当たると大量の水を吹き出した。
「水玉でやんす。水で押し流されるでやんすよ!」
水が石を押し流す。このままだと冬田は巨大化した石の下敷きとなってしまう。
「きゃ、きゃああーー!」
冬田は何もできずに悲鳴をあげた。かよ子も石を退かせば何とかなるがそうすると冬田がずぶ濡れになってしまう為、なす術が思い当たらなかった。
(ダメだ、どうすれば冬田さんを・・・!?)
その時、冬田の周りを何らかの膜のような物がドーム状となって彼女の頭上に落ちてくる石や水を防いだ。石は粉々になり、水は周囲に跳ねてなくなった。ドームも一瞬で消えた。
(え・・・?)
かよ子は何が起きたのか理解できなかった。冬田が何か魔法か超能力でも使用したのだろうか?それとも別の誰かが助けたのか?そう考える間もなく、謎の物体が冬田をさらった。
「向こう見ずな行動しては裏目に出ますわよ」
冬田を救ったのはフローレンスだった。
「フ、フローレンスさん!?」
「ここは退散しましょう。私に掴まりなさい」
「はい!」
かよ子もフローレンスに掴まった。フローレンスは飛行した。
「何だあいつは!?」
「やっちまおうぜ!」
山口は矢をフローレンスに向けて放った。フローレンスは矢に体を向けた。すると矢は念力を受けたかのように勢いを失い、落下した。
「な、なんだ、あれは!?」
飛び去る女性と他女子二名を見る「義元」の四人。すみ子は一人の女子を見て何かを感じた。
(あの子ももしかして私と同じように・・・)
かよ子、冬田、そしてフローレンスは神社へと降り立った。
「冬田美鈴ちゃん、冷静さを失いすぎですよ」
「はい、ごめんなさあい・・・」
「フローレンスさん」
かよ子は質問する。
「この喧嘩を止めるにはどうすればいいんでしょうか?それにあの子達も普通じゃない力を持ってます!」
「先ずは交渉するしかありませんわ」
「で、でもどうやって!?」
「山田かよ子ちゃん、落ち着きなさい」
フローレンスの眈々とした口調にどこかしらの力強さを感じ、かよ子は黙った。
「あのグループの中の一人、濃藤すみ子ちゃんはこの世界の異変を恐ろしく感じています。そこで私と同じ世界から来たイマヌエルという者が彼女にこの世界を守る為の道具を授けたのです」
「この世界を守る為の道具・・・。つまり、私のこの杖と同じような物なの?」
「はい、彼等が持っています道具も私達の世界から授けた物なのです」
「それならどうしてまるちゃんや杉山君を攻撃したの!?」
「それはあの子達が「能力」を手に入れた事で喜んで使い方を勘違いしているからですよ」
「それについて私も呆れたよ」
どこからかまた別の人物が現れた。
「イマヌエル、貴方も聞いていたのですか」
「ああ、私はこの世界を無理に変えようとする者達に対抗する為の道具を寄越したつもりなのにこんな事に使われるとはな。これは私も責任を感じているよ」
「そうですか、山田かよ子ちゃん、冬田美鈴ちゃん、この争いを私達で止めなくてはなりませんわ」
「うん、私もそう思うよ・・・」
「それでは交渉を始めましょう。私達は貴女達を濃藤すみ子ちゃんの所へ連れていきますわ」
「はい!」
フローレンスはかよ子を、イマヌエルは冬田を連れて飛び立った。
「あいつらまた基地を取り返しに来るかもしれねえぜ」
「ああ、また来ようぜ!」
グループ「義元」の四人は基地を出て別れた。すみ子は基地の元の所有者に迷惑を掛けてしまったという罪悪感があった。
(あの子達に何か悪い事しちゃったな・・・)
すみ子はイマヌエルから授かった道具として不思議な力を持つという銃があった。しかし、自分は戦闘には参加できなかった。己の罪悪感から。その時、すみ子の前に何者かが現れた。一人はイマヌエルだった。
「イマヌエルさん・・・?」
「濃藤すみ子君。君の友達は私が授けた武器の本当の目的を忘れてしまっている。君に無駄な戦いを止めるのに是非協力して欲しいのだよ」
「うん、でも私にできるかな・・・?」
「ああ、戦いを止めるのは君一人ではない。ここに君と同じ事を考えている者達を連れて来たよ」
「え?」
すみ子はイマヌエルと共にいる別の者達を見た。
「この女性はフローレンス。私と同じ世界から来た者だよ。そしてこの二人は隣町の小学校の女子、山田かよ子君と冬田美鈴君だよ」
「え?こ、こんにちは・・・」
「こんにちは・・・」
かよ子とすみ子はお互い挨拶しあった。
「私もこの世界の異変が気になってるんだ。それでお母さんから貰ったこの杖を武器にしてるんだよ。この杖もイマヌエルさんやフローレンスさんの世界の物なんだって」
「そうなんだ・・・」
「すみ子ちゃんって言ったよね?すみ子ちゃんもイマヌエルさんから武器を貰ったって?」
「うん、そうよ。私、この前の地震のような現象が起きてからこの清水がどうなっちゃうのか心配になってるの。そんな時イマヌエルさんと出会ってあの高台にこの世界を守る為の道具があるって言われて学校の友達と行ったらその道具を見つけたんだけど、そしたらあの秘密基地があったのよ・・・」
「そうなんだ・・・」
「でもだからって人の基地を奪っていいのお!?」
冬田はまだ落ち着きを取り戻していないようだった。
「その基地からは私達の住んでる社宅があって海も町も私達の通う学校も見えたの。それであの風景をいつまでも残しておきたいって思ってそれで基地をとっちゃったの・・・。あの子達にも悪いと思ってるし、私もこの争いを私は止めたいの・・・」
「そっか・・・。すみ子ちゃん、私も本当はこの喧嘩を止めたいよ。でも私には基地の事を教えてくれなかったし、止めようとすると秘密を知った事になって怒られちゃうんだ・・・。それに私、秘密基地を造った一人の杉山君が好きなんだ。それで嫌われるのが怖いんだよ・・・」
「分かったわ。協力しよう!」
「うん!」
かよ子達は喧嘩を鎮静させる作戦を立て、すみ子と別れた。
杉山、大野、ブー太郎、そしてまる子の「次郎長」は退散したのち、街角に着いていた。ブー太郎の体の痺れはやっと収まった。
「うう、やっと動けるようになったブー」
「しかし、あいつらにどう対抗しようか・・・」
杉山は考えた。そして数日前の山田かよ子の家での闘いがなぜか脳裏に蘇った。
(あいつらの武器、なんか普通じゃねえな・・・。山田のあの魔法の杖みたいに・・・)
その時、四人の前に一人の人物が現れた。
「お主らが組織『次郎長』か・・・」
「誰だ!?」
その人物はいかにも江戸時代の武士のような格好で眼帯をしていた。
「某は森の石松。嘗てこの世で次郎長の子分として生きていた者だ・・・」
後書き
次回は・・・
「四つの不思議な石」
杉山達は「森の石松」と対面する。石松は四人に不思議な石を託す。そしてかよ子と冬田はフローレンスから飛行が可能な羽根を貰い、「義元」のメンバーのすみ子は心の中でこの争いを止める事に努めとうと考える・・・。
11 四つの不思議な石
前書き
《前回》
かよ子と冬田はフローレンスとイマヌエル、そしてグループ「義元」の一人・濃藤すみ子と交渉。かよ子はすみ子もまたこの世界の異変が気になっているという事・武器の入手と秘密基地を乗っ取った経緯を知る。この戦いを終わらせる事をお互い誓い合う。そして退散した杉山達「次郎長」の前に現れたのは!?
かよ子と冬田はフローレンスとイマヌエルによって自分達の町に連れて帰って貰った。とある十字路で降ろして貰った。
「フローレンスさん、イマヌエルさん。ありがとう」
「それではまたお会いしますわ。さようなら」
「あ、あの・・・!!」
かよ子は二人を呼び止めた。
「何かあるのか?」
「あの秘密基地の事、私が知ったら杉山君に嫌われるんじゃないかって心配なんだ。大丈夫かな?」
「そ、そうよねえ!私も大野君に嫌われそうで心配だわあ!」
「大丈夫ですよ。彼等もきっと理解してくれます。但し、他のお友達に言いふらしませんようにする事が条件ですよ」
「はい、ありがとうございます」
「ああ、そうそう、私からは此方を差し上げますわ」
フローレンスは背中から羽根を二枚抜き取りかよ子と冬田に渡した。
「この私の羽根で空を飛ぶ事ができます。高速かつどこまでも飛行できますわ。飛ぶ時は常にこの羽根を身につけて放してはいけませんよ。途中で放しますと落ちてしまいますからね」
「うん、ありがとう、フローレンスさん」
「それではさようなら」
フローレンスとイマヌエルは飛び去った。
「冬田さん、この喧嘩止めよう!」
「そうねえ、大野君達の為にもねえ!!」
杉山、大野、ブー太郎、まる子からなる組織「次郎長」は石松と名乗った男と対面していた。
「い、石松ってあの『森の石松』う~!?」
まる子は驚きを露にした。
「それでその石松が俺達に何の用だ?」
大野が質問した。
「某は組織結成の際に我が親分の名を使用した事で喜んだ。某はお主らを次郎長親分のように強くしてやりたいと思ったのだ」
「オイラ達をどう強くするんだブー?」
「某はこの四つの石をお前らに授けたい。この石には力があるのだ」
石松は四つの石を杉山達に渡した。杉山には黄色の稲妻模様の石を、大野には木の葉が描かれた石を、ブー太郎には水のような青い石を、そしてまる子には炎のように赤い石が渡された。
「杉山さとし、お主の石は『雷の石』。雷を操る事ができる。時には天候操作もできる。大野けんいち、お主の石は『草の石』。植物を巧みに操れる。草を伸ばして鞭にしたり、種を弾丸のようにしたりな。富田太郎、お主の石は『水の石』。水を操る能力がある。水を掴んだり、水上を歩く事もできるぞ。さくらももこ、お主の石は『炎の石』。炎を操る能力だ。炎を手に持つ事や己の体に触れた相手を熱で火傷させる事もできる。この石は今後お主らにとって大いなる事に役立つであろう」
「大いなる事って何だブー?」
「今この世界、特にこの日本は破滅へと導かれる危機にある。その石はそれを防ぐ為の鍵になるという事だ。では」
石松は幽霊のようにスッと消えてしまった。
「ねえねえ、この石どうする~?」
「もしかしたらあの石松って奴の言うように役に立つし、『あいつら』にも対抗できる筈だ。この石を使えるように練習だ!」
「賛成だブー!」
大野の意見に皆賛成した。こうして「義元」から秘密基地を取り返す為、自己強化の為に石を操る練習を始める「次郎長」の面々だった。
すみ子は自分達「義元」と元の基地の持ち主である「次郎長」との対立を沈めようと決めていた。家に帰る途中、兄と遭遇した。
「あれ、すみ子、今日も遅くまで遊んでたのか?」
「うん、お兄ちゃん・・・」
「元気ないな、何か嫌な事あったのか?」
「うん、実は私達が見つけた秘密基地の元々の持ち主の子が来て怒らせちゃったの。山口君達は追い払ったんだけどあの子達に申し訳なくて・・・」
「そうか、それは息苦しいな・・・」
「それでその喧嘩を止めたいの・・・」
「よし、俺も協力しようか?」
「ううん、お兄ちゃんに助けを呼ぶと汚いって言われちゃうわ」
「そうだね。それにすみ子にはその不思議な銃できっと止められると思うよ」
「うん、ありがとう。お兄ちゃん」
「よし、帰ろうぜ」
「うん」
すみ子の兄・濃藤徳嵩は妹の持つ不思議な銃を見ても、不審に思ったり取り上げたりはしなかった。寧ろすみ子がこの世の危機を感じている事もそのすみ子の銃が不思議な力を持つ事も既に気付いており、彼女の為にもそのままがいいと分かっていた。
翌日の放課後、「次郎長」は石松から貰った石を使いこなす為の特訓を引き続き続けた。
「行くぜ!」
杉山は電撃の槍を繰り出せるようになっていた。
「杉山君、凄いブー!」
「これでイチコロできるかもしれねえぜ!」
「よし、俺もやってやるぜ!」
大野は周囲の木の葉に渦を巻かせて嵐を産み出したり、草を伸ばさせて刀のようにしたりしていた。
「大野君もやるねえ~」
「さくら、ブー太郎、お前らもやってみろよ」
「うん、ブー」
ブー太郎は手から水を出して水鉄砲をかました。すると木の枝を一本折った。
「おお、やるな、ブー太郎!」
杉山が褒めた。
「よおし、アタシもやるよお!」
まる子は火炎放射した。その他、炎の渦を作り出したり、地面に炎を通してマグマを造ったりした。
「よし、明日は決戦だ!」
「俺達のこの石の力で基地を取り返すぞ!」
「おう!」
四人はそれぞれが持っている石をぶつけ合った。
同じ頃、かよ子と冬田はフローレンスから貰った羽根で高台まで飛行していた。
「あ、あの子達い・・・。今日もいるう!」
「でも急に首突っ込んだらまた昨日みたいに返り討ちにされちゃうから今日はそのままにした方がいいよ」
「そうねえ・・・」
「今日はまるちゃん達来てないね・・・」
「もしかして諦めたのかしらあ?」
「それはわからないけど・・・」
かよ子と冬田は待ちぼうけしてもいつまでも「次郎長」の面々は来ないので引き上げることにした。
「義元」の面々は秘密基地にいた。
「あいつら今日は来ないでやんす」
「そうだな、俺達に敵わないと思って諦めたんじゃねえのか?」
「なら、安心だぜ。このいい景色を取られたくねえしな」
しかし、すみ子はあの四人組が簡単に諦めるとは思えなかった。
(でも、私はこの喧嘩を止めてあの子達にも本当の理由を言って許してもらわないと・・・。あの山田かよ子ちゃんって子も私みたいにこの世界がおかしくなる予感がしてるって言ってたし、この清水を守る為にもできればあの子達とも協力したい・・・)
すみ子は心の準備は万全にしていた。
後書き
次回は・・・
「決戦「次郎長」vs「義元」」
大野、杉山、ブー太郎、まる子で組成された「次郎長」と山口、川村、ヤス太郎、すみ子で組成された「義元」が遂に再激突。この戦いを止めるために冬田、フローレンス、イマヌエル、そしてかよ子が動き出す・・・。
12 決戦「次郎長」vs「義元」
前書き
《前回》
杉山達組織「次郎長」は生前次郎長の名子分であった森の石松と出会う。そして彼から不思議な力を持つ石を貰う。そしてこの石を利用して組織「義元」に対抗する為の特訓を始めた!!
ちなみに前回杉山君達が貰った石はポケモンの「進化の石」を元ネタとしています。
「次郎長」は石松から貰った力の石を使いこなす為の練習を続けており、調整を終了させて帰るところだった。
「よし、決戦は明日だ。絶対に基地を取り返すぞ!」
「おう!!」
奪還を誓い合う四人だった。
かよ子は夜も悩み続けた。
(杉山君・・・。ごめんね、秘密を知って・・・。でも無駄な喧嘩はやめて・・・!!)
「かよ子、御飯よ」
母が呼んだ。部屋に入ると、娘は息苦しそうな顔をしていた。
「あら、どうしたの、かよ子?」
「お母さん・・・」
かよ子は母に言うべきか悩んだ。しかし、この秘密をばらしてしまえばフローレンスの忠告を無視することになるのでさらに悩んだ。
「う、ううん、なんでもない・・・」
「そう、でも、何かあったら相談するのよ」
「うん・・・」
(きっと誰にも言っちゃいけないと言われている秘密があるのね・・・)
かよ子の母は追及しなくても察する事ができた。
「ま、御飯食べて元気出して」
「ありがとう・・・」
翌日、学校でかよ子は大野、杉山、ブー太郎、まる子の四人が集合しているのが見えた。
「いいか、今日決戦だ!」
「この石でコテンパンにするブー!」
この会話はひそひそと会話していたので遠目で見ているかよ子には聞こえなかったが、今日あの秘密基地を取り返すつもりだと読む事ができた。
(今日、戦うつもりなんだ、杉山君達・・・)
冬田も四人の会話を盗み見ていた・・・。
(大野くうん・・・)
清水市の高校では濃藤は妹が喧嘩を鎮められるか気がかりだった。
「濃藤、やっぱり妹が心配なのか?」
三河口が聞いてきた。
「あ、うん」
「俺達も止めに行くか」
「いや、俺達が関わると妹にも迷惑だからな」
「じゃあ、遠目から見物してみるか」
「うん、そうするか」
「君、いい兄貴だな。俺の兄貴とは大違いだよ・・・」
「お前、兄貴いるんだ」
「ああ、実家にね。でも、すぐ殴るし、細かい事で首を突っ込む奴だよ。正直、おばさんの家に居候してある意味楽だよ。従姉妹のお姉さん達がいなくなってちょい寂しいけど・・・」
濃藤は三河口の生い立ちが過酷なものだったと改めて気づいた。
かよ子達が住む街とは隣の地区の小学校。すみ子は川村に呼ばれた。山口にヤス太郎もいる。
「すみ子、今日も秘密基地いこうぜ!」
「う、うん・・・」
「どうしたんだ、元気ねえな」
「うん、あの基地を造った子達の事が気になって・・・」
「あいつらの事なんてどうでもいいさ。とったなら俺達の物だぜ」
(それで本当にいいのかしら・・・?)
すみ子は思い切って和平交渉を試みようとした。
「でも、勝手に盗ってあの子達に酷い事したなって思うの。やっぱり本当の事を言って謝った方がいいわよ!」
「何言ってんだ!お前の為だぜ!!俺達が住むこの町をいつまでも守るつもりであの基地を貰ったんだ!今更何後悔なんかしてんだよ!」
「私は別に後悔なんて・・・」
「なら心配すんな!!」
「うん・・・」
かよ子と冬田はこの日も秘密基地の取り合いによる喧嘩を気にしながら下校していた。
「山田さあん、やっぱり先に高台に行って大野君達の喧嘩を止めた方がいいんじゃあ・・・」
「ダメだよ、私もそうしたいけど、また首を突っ込んでやられたら意味ないよ。フローレンスさんとイマヌエルさんが教えてくれるよ」
「う、うん・・・」
(杉山君、ごめんね、秘密を知って・・・。喧嘩を沈めてくれたら絶対に忘れるようにするから・・・)
かよ子は杉山への罪悪感を今でも忘れていなかった。
大野けんいち、さくらももこ、富田太郎、そして杉山さとしの四人からなる「次郎長」は高台に向かう。目指すは「義元」が乗っ取った自分らの秘密基地である。そこに組織「義元」はいた。
「懲りねえな、オメエら」
川村の言葉に杉山は返す。
「この前は油断しちまってが、今度は負けねえぜ」
「俺達宇宙一のコンビだって事証明してやるよ!」
大野は返上を誓う。
「お前も簡単にやられるなでやんす」
ヤス太郎はブー太郎に挑発した。
「望む所だブー」
「行くぞ!」
大野の掛け声で「次郎長」の四人は突進する。
「へへ、川村、バズーカで吹き飛ばせ!」
「おうよ!」
川村はバズーカの発砲の準備する。地面を爆破して彼等を吹き飛ばすつもりだった。
「させるか!」
大野が草の石を使う。周囲の草が伸び、川村の手足に絡まった。
「うわ、動けねえ」
「ヤス太郎、ほどけ!」
山口はヤス太郎に命じた。
「了解でやんす!」
ヤス太郎はパチンコを使う。
「『カッター玉』でやんす」
ヤス太郎はカッター玉で川村に巻き付く草を伐った。
「この野郎、俺のこの『硬直の矢』で動けなくさせてやるぜ!」
山口は矢を放とうとする。杉山に向かって矢は飛ぶ。
「そうはいかねえぜ!」
杉山はにやりと笑って雷の石を使った。矢は途中で止まり、電気の力を浴びる。そして山口の方へ矢は方向転換した。
「やべ、こっちに来る!」
「山口!」
川村は山口を襲う矢にバズーカを放った。矢は吹き飛び、地に落ちた。
「この『眠り玉』で眠らせるでやんす!」
ヤス太郎はパチンコで大野と杉山をを狙撃した。杉山は石の力で返り討ちにしようとするが、眠り玉は杉山の額に命中し、杉山は眠ってしまった。
「おい、杉山!」
「杉山君の敵とるブー!」
ブー太郎が水の石の力を使う。強力な水鉄砲を発射し、ヤス太郎を襲った。
「冷たいでやんす!」
「ヤス太郎!」
山口はブー太郎に矢を放つ。ブー太郎は今度は渦を作り出し、盾にして山口の矢から守ろうとした。しかし、渦は矢によって消失した。
「これは『無力化の矢』だ。どんな能力も打ち消しちまうぜ!」
「何!?この野郎!」
大野は草の石の力で草や木の葉の嵐を作り出した。ヤス太郎は嵐の中の木の葉でパチンコを弾かれたが、川村はバズーカで大野に目眩ませの為の弾を放った。
「うおっ、見えねえ!」
大野は眩しさで目を開けられず、抑えた。
「さくら、ブー太郎、やってくれ!」
「あいよ!」
まる子は炎の石の能力を行使した。山口、川村、ヤス太郎に熱風を浴びせた。
「あ、あちー!」
「川村、バズーカで冷気を出せるか?」
「ああ!」
「させるかブー!」
ブー太郎が水の石の力で大波を作り出した。山口も、川村も、ヤス太郎も溺れた。
「うわああ!」
「いいぞ、お前ら!」
大野はブー太郎とまる子の奮闘を賞賛した。
すみ子は基地にて震えていた。
(み、皆、もう戦うのやめて・・・!!)
すみ子は己の持つ銃で何とか喧嘩を治めたかった。しかし、この激しい戦では和平交渉が難しいと感じて何もできなかった。
フローレンスとイマヌエルはこの戦いを傍観していた。
「あの子達にもお伝えしなければなりませんわね」
「そうだな」
二人は飛び立った。喧嘩を鎮める協力をしてくれる女子二名、山田かよ子と冬田美鈴に伝える為に。
後書き
次回は・・・
「武器を授けた本当の意味」
かよ子と冬田はフローレンス、イマヌエルと共に秘密基地のある高台へと急ぐ。そして「次郎長」と「義元」の激しい戦闘の中、仲間をやられたすみ子は追いつめられてしまい・・・。
13 武器を授けた本当の意味
前書き
《前回》
組織「次郎長」と「義元」の決戦が始まった。その闘いは激戦となる中、すみ子の恐怖心が増していく。そしてフローレンスとイマヌエルはその戦いを止めるために二人の少女の元へと向かった!!
かよ子は胸騒ぎが収まらなかった。
(杉山君・・・!!)
その時、誰かが窓を叩く音が聞こえた。かよ子は驚いて椅子から転げ落ちてしまった。
「いたたた・・・」
「山田かよ子君、私だ、イマヌエルだよ」
「イマヌエルさん!?」
「大変だ、とうとう争いが始まってしまったよ。止めに行かなければならない」
「うん、行くよ!」
かよ子は家を出てフローレンスから貰った羽根を使い、宙に浮いてイマヌエルと共に秘密基地のある高台へと向かった。
冬田の所にもフローレンスが現れた。
「冬田美鈴ちゃん、争いが始まりましたわ!」
「ええ!?」
冬田もフローレンスから貰った羽根で空を跳んだ。
(大野くうん・・・)
冬田とフローレンスは高台へと急いだ。
「次郎長」と「義元」の戦闘は続く。まる子の熱風、ブー太郎の波攻撃によって山口、川村、ヤス太郎はやられた。杉山はヤス太郎の「眠り玉」を喰らった為、未だに寝ている。大野は川村の目眩ませを喰らって目が開けられなかったが、ブー太郎の反撃でやっと見えるようになった。
「よし、さくら、ブー太郎、後は基地にいる女子だ!俺は杉山を起こす!」
大野はまる子とブー太郎に命じた。自分は杉山を起こそうとした。
「さあ、あんたの仲間はやられたよ!あんたまでやられたくなかったら降りてきな!」
まる子が吠える。一方のすみ子は動けなかった。
「拒否するならこっちから行くブー!」
ブー太郎が水の石の能力を行使する。水鉄砲を地面に打ち付け、上がった。
「や、やめて!」
すみ子は銃を発砲した。しかし、ブー太郎に何のダメージはない。
「その銃、オモチャかブー?」
ブー太郎は構わず水鉄砲を飛ばす。しかし、すみ子に当たらない。すみ子は銃で見えない壁を作り出していたのだった。
「な、お前も能力があるのに何で戦わないブー?」
「う、それは・・・」
「すみ子!おい、やめろ!」
山口、川村、ヤス太郎が再起して基地の入り口に近づいた。
「何だ、まだやる気か?しぶとい奴らだな!」
大野は草の石を、まる子は炎の石を使おうとした。杉山はまだ起きない。山口も弓矢の、川村はバズーカの、そしてヤス太郎はパチンコの再支度を終えていた。
「お願い、皆もうやめて!」
すみ子が嘆きの言葉を放った。皆は「えっ!?」とすみ子の方を向いた。
「すみ子君の言う通りだ、諸君」
別の声がした。
「イマヌエルさん!?」
すみ子は自分ら「義元」に武器を授けた相手が現れ、驚いた。
「大野くうん、喧嘩はやめてええええ!!」
「えっ、冬田!?」
その場にイマヌエル、フローレンス、冬田、そしてかよ子が到着した。
「大野くうん!この子達は悪者じゃないわあ!」
「はあ?何言ってんだ?それから何でお前と山田が来たんだよ!?」
大野は冬田の言っている事が理解できなかった。
「皆さん、下らない争いはお止めなさい」
フローレンスが告げる。
「だ、誰だブー!?」
「私はフローレンス、そしてこちらはイマヌエル。私達は異世界から来て平和維持の為に動いています」
「異世界だと!?」
大野は前に杉山やかよ子と共に異世界から来たというアレクサンドルとアンナの兄妹と対峙した時や石松と出会って草の石を貰った時を思い出した。
「君達、私が授けた武器を使う対照を間違えているよ。それからその武器を託した本当の意味を理解していない」
「え!?」
「今この世界はある人間達によって侵食され始めている。その人間達は自分達と同じ理想を持つ世界の者達と結託し、この世界、特に日本を再び戦争への道へ誘おうとしているのだよ。私は君達にそれを止め、この世界の平穏を取り戻す為にこれらの武器を託したのだよ。基地の取り合いの喧嘩の為ではない」
「う・・・」
山口達は自分らの行為を愚かしく感じた。
「貴方達にも忠告すべきですわね」
フローレンスは「次郎長」の面々にも諭さなければと思った。かよ子はブー太郎、まる子、大野を見て、そして杉山を見た。杉山は倒れていた。
「す、杉山君!!」
かよ子は杉山がこの抗争でまさか殺されてしまったのではないかと思って杉山の元へ駆け寄った。
「杉山君、嫌だ、死んじゃだめ!!」
かよ子は泣きながら杉山を起こそうとする。フローレンスが近づいた。
「大丈夫ですよ、山田かよ子ちゃん。杉山さとし君は眠っているだけです。今起こしてあげますわ」
フローレンスは杉山の顔に手を当てた。そして5秒程で杉山は何もなかったかのように起きた。かよ子はまた自分がおっちょこちょいをしてしまったと己を恥ずかしく思った。
「・・・ん?何があったんだ?」
「杉山君、今まで寝ちゃってたんだよ!秘密基地の取り合いで!」
「ああ、そうか・・・。って山田あ!?何でお前が基地の事知ってんだよ!?」
「う、ご、ごめん・・・」
かよ子は謝るしかできなかった。もう杉山から嫌われると思った。
「杉山さとし君」
「だ、誰だ!?」
「私はフローレンス。この世界の平和を維持する為に異世界から来た者です。山田かよ子ちゃんは貴方達に基地の取り合いの喧嘩を止める為に協力して貰っていたのですよ」
「秘密基地の事はフローレンスさんから聞いたんだよ。ごめんね、秘密を知っちゃって・・・」
「ああ、そうだったのか・・・」
「杉山さとし君、大野けんいち君、富田太郎君、そしてさくらももこちゃん。貴方達が持っていますのは森の石松から貰いました『力の石』ですわね?」
「あ、ああ、そうだ・・・」
大野が答えた。
「石松は貴方達にその石を授けました時、何とおっしゃいましたか?」
杉山は石松の言葉を思い出した。
《今この世界、特にこの日本は破滅へと導かれる危機にある。その石はそれを防ぐ為の鍵になるという事だ》
「貴方達が石の能力を使いこなせていますのは素晴らしいですが、もっと倒さねばなりません敵はもっといるのです。石松の言いましたようにもっと大きな事に役立てなければなりませんよ」
「う・・・」
「そうだったぜ・・・」
「ごめんなさいブー・・・」
フローレンスはイマヌエルの方を向く。
「イマヌエル。濃藤すみ子ちゃんにこの基地を見つけ、それらの武器を手にした本当の理由を喋らせてあげましょう」
「そうだな。すみ子君、皆にも話して解らせる時だよ」
「うん・・・」
すみ子は基地から降りてきた。
「ごめんね、基地を勝手にとって・・・。私、実はこの前の地震のような現象があって、この町がどうなるのか恐くなっちゃったの。そしたらこのイマヌエルさんに会ってに日本が違う世界から攻められているって聞いたの。それでこの町を守りたかったらこの高台に行くといいって言われたの。そしたらここにイマヌエルさんが置いてくれた武器があって私達はそれを手にしたんだけど、そこにはこの基地があって登ってみたら見晴らしがよくて、私達の町まで見えてきれいだったの。表札を見て誰かが造った基地だってのは分かってたんだけど、この眺めをずっと見ておきたいって私が言ったら私の友達がじゃあここ俺達の基地にしようって言ってくれたの。全ては私のワガママが悪いの。ごめんね・・・!!」
すみ子は少し泣きながら謝った。
「そうなんだよ、すみ子ちゃんは悪気はなかったんだよ!だから許してあげて!」
かよ子もすみ子の肩を持った。
「そうか、お前らこの子の為にこの基地を乗っ取ったのか!」
大野は基地を乗っ取った理由を知って驚いた。
「ああ、そうだよ・・・」
「色々悪かったな」
「でも、凄いよな、お前らあんな基地造るなんて、それにその石も凄いぜ!」
山口は感心した。
「お前らだってそのイマヌエルって奴から貰ったその武器すげえ手強かったぜ!」
「ああ・・・」
「それから・・・」
杉山はさらに続ける。
「俺達、この前異世界から来たって奴と闘った事があるんだ。今後そういう奴が来る可能性はある。その時は何かあったら共に協力しねえか?」
「本当でやんすか!?」
ヤス太郎は驚いた。
「ああ、そうだな。これから何が起こるか分からないしな」
川村は賛成した。
「あのさ」
かよ子は皆に聞く。
「この眺めを見るくらいなら基地に上がらせてもいいじゃない?」
「山田・・・。ああ、そうだな」
杉山は賛成した。
「かよ子ちゃん、ありがとう」
「いやあ・・・」
「君達が分かってくれたなら、私達はそろそろ行こうか」
「そうですね」
フローレンスとイマヌエルは宙に浮きだした。
「あ、あのお!」
冬田は二人を呼び止めた。
「何ですか?」
「この羽根は持っていていいんですかあ!?」
「はい、困った時にお使いください。貴方達がこの世界を守る為に大いに役立てる事を期待しています。それでは」
フローレンスとイマヌエルは空を高く上がっていく。そして見えなくなった。
(フローレンスさん、イマヌエルさん、私、この世界守るよ・・・)
かよ子は二人にそう誓うのだった。
後書き
次回は・・・
「これからの町の為に」
二つの組織同士の和解に成功したかよ子達。杉山組織「義元」に自身が以前異世界からの敵と戦った事を告白する。そしてすみ子はこの清水を守る事を誓う・・・。
14 これからの町の為に
前書き
《前回》
かよ子は冬田、フローレンス、イマヌエルと共に杉山達の争いの鎮静化に動き出す。その戦の場に到着した時、すみ子が基地を乗っ取った理由を語り出す。そしてお互いの和解に成功すると共に今後まだ見ぬ敵が訪れたその時、共闘する事を誓い合うのだった!!
三河口と濃藤は高台に来て濃藤の妹達の喧嘩および戦いの和平の様子を傍観していた。
「濃藤、君の妹、活躍してたな」
「ああ、俺達が手を出さなくてよかったかもな」
「ああ、俺達もそろそろ失礼しよう」
「なあ、ミカワ」
「ん?」
「あのイマヌエルとフローレンスってのは一体何者なんだ?」
「平和維持の為に動いているみたいだな」
(この前、かよちゃんと闘ったアレクサンドルとアンナの兄妹と同様異世界から来たが、あいつらとは目的が全く違う。異世界でも様々な種類があるようだな・・・)
三河口は異世界について考察していた。
「俺はあの二人がまたここに来てなんか手を貸してくれそうな気がするな」
「そうだな。きっとどこかで俺達の前にも現れるさ」
三河口は濃藤の発言は予言のように感じた。
組織「次郎長」と「義元」の和平交渉に成功したかよ子はフローレンスとイマヌエルと別れ、さらにすみ子達「義元」と別れる事になった。
「じゃあ、もし何か異変があったらこの基地に置手紙をするからそれを読んだらまた集まろうぜ」
「ああ!」
かよ子、冬田は組織「次郎長」と共に帰る。しかし、かよ子は己の罪を思い出した。
「あ、あの、杉山君・・・!!」
「何だよ?」
「ご、ごめんね・・・。ほ、本当は私、秘密基地の事知っちゃいけないはずなのに知っちゃって・・・。基地の事は忘れるよ・・・。それから誰にも言わない・・・!!」
かよ子は流石に杉山から嫌われると思った。
「ああ・・・。いいよ。確かに最初はお前にも秘密にしたかったんだが、あのフローレンスって奴がお前に知らせちまったんだし、それにお前と冬田が止めようとしなかったら俺達はこの石の使う目的を間違ったまま使っていたしな・・・。」
「え・・・?」
かよ子は杉山は許しているのかと察した。
「今度、お前もあの基地に上がらせてあの景色を見せてやるよ!」
「う、うん、ありがとう!」
そして冬田は大野に対して頭を下げようとした。
「大野くうん、ごめんねえ・・・!!」
「泣くなよ、おい!もう気にしてねえよ。ただ、あの秘密基地の事はばらすんじゃねえぞ!」
「うん・・・。やっぱり私、大野君好きよお~」
「おい、抱きつくなよ、暑苦しいな・・・」
そしてブー太郎とまる子はある事を思いついた。
「そうだ、今度からはあそこを秘密基地じゃなくてその『異世界』ってとこからの敵を倒す為の作戦会議する場所にしようブー!」
「そりゃいいねえ~」
すみ子は帰る途中、兄に会った。
「あ、お兄ちゃん」
「すみ子・・・」
「今日ね、隣町の子と仲直り出来たの!」
「そうか、よかったじゃん」
「うん!」
「この銃、本当の『敵』が来た時に上手く使えるようにするわ!」
「ああ、きっとできるよ」
濃藤自身も妹同様、異世界からの侵略によるこの清水の将来が不安だった。だが、すみ子がその能力を行使できるのならば問題はないと彼女を信じた。
かよ子は家に帰って来た。
「かよ子、おかえり」
「只今、お母さん」
「お母さん、今日ね、隣町の学校の子と友達になれたんだよ!」
「あら、よかったわね。きっと何かトラブルを解決したのね」
「う、うん。え、どうしてわかるの!?」
「そりゃ昨日まで何か悩んでたみたいだったからね。でも、かよ子ならきっと自分で解決できると思ってあえて口を出さなかったのよ」
「そ、そうだったんだ・・・」
かよ子はある事を思い出した。
「そうだ、お母さん。この杖なんだけど、別の世界からのものなんだよね?」
「え?ええ、そうよ」
「この杖が元々あった世界の人に会ってその人から聞いたんだ。その人はこの世界の平和を守る為に今動いているんだって」
「そうだったのね・・・。時間があればまたその杖の事、詳しく教えてあげるわ」
「うん・・・」
組織「義元」は学校にて「次郎長」との和平の時の杉山の発言を思い出した。
「異世界の人間は実在していたのか。もしそんな奴が出た何て情報が出たら今度はあの武器を間違えないように使おうぜ!」
山口はイマヌエルが自分達に授けた武器の本当の目的を間違えないようにしようと決めた。
「うん!」
すみ子はいつかはあの組織「次郎長」やあの山田かよ子という女子と共闘する日が来るといいなと思っていた。これからのこの清水の平和を維持するために・・・。
かよ子の母は娘が学校へと出て行った後、彼女にあげたあの杖の事を思い出した。
(そう、あの世界の人が来たのね・・・。きっとまた会えるかもしれないわね・・・)
かよ子の母はあの杖のお陰で今こうして生きている事を振り返った。「あの時」は大変だった。生きていけるすら分からなかった。だが、ある人物と出会ってその杖と使い方を示した本を貰い、生き抜いてきた事を。これをいずれ娘にも教えることになるだろう・・・。
そして放課後、大野、杉山、ブー太郎、そしてまる子の四人からなる組織「次郎長」は例の秘密基地へと行って清水の街並みを眺めていた。
「それにしてもいつ見てもこの眺めは綺麗だねえ~」
「あのすみ子って子もきっこの景色が好きなんだなブー」
「俺達も石松から貰った石、今度は正しく使おうぜ!」
大野は呼び掛けた。
「そうだな!」
石松は遠くから組織「次郎長」を見守る。
(あの四つの石・・・。きっとあの少年少女達はきっと世界を保つ事に役立ててくれるであろう・・・)
「石松」
その時透き通るような声がした。石松は振り向く。そこには一人の女性・フローレンスがいた。
「ああ、お主は大天使・フローレンスか」
「私もイマヌエルも貴方があの少年少女にあの石を託しました事は分かっています。なぜ彼らを選んだのですか?」
「それはな、我が尊敬する親分と同じ名を組織の名としてくれた事が嬉しかったのである」
「その気持ちだけですか?他にも理由がありますでしょう?」
「ああ、あるぞ。それはだな、彼らの体内には正義なる強さを宿している。その能力がある事を某は見ていたのだ」
「そうですよね、きっと彼らならこの世界を守れますよ」
「だな、では某は失礼しよう」
石松は姿を消した。フローレンスもこの清水を離れる為に旅立つ。
(また、お会いする事になりますわね、山田かよ子ちゃん、冬田美鈴ちゃんも・・・)
かよ子は杉山から石松という人物に出会って不思議な石の話を聞いていた。
(杉山君達のあの石も、この私の杖、すみ子ちゃん達がイマヌエルさんから貰ったあの武器も、そして私と冬田さんがフローレンスさんから貰ったこの羽根も・・・)
かよ子はいずれは杉山達「次郎長」、すみ子達「義元」と共にアレクサンドルとアンナのようなこの世界を勝手に改変するような者と戦う時が来ると感じていた。だが、それまでこの生活を何とか取り戻さなければならぬと思った。この人生は止まる事なく続いているのだから・・・。
後書き
次回は・・・
「秀才の兄、病弱な妹」
かよ子のクラスメイトの男子・長山治は色々な事を知っている博識な少年。彼の妹・小春は病弱で再び一年生をやる羽目なってしまっていた。その小春が体調を崩したと聞いたかよ子はお見舞いの為に長山の家へと向かう・・・。
15 秀才の兄、病弱の妹
前書き
《前回》
杉山達からなる組織「次郎長」と隣町の小学校のすみ子達「義元」の争いを沈めたかよ子達。杉山と基地に上がらせてもらえる事を約束してもらえたかよ子は杖の秘密が気になるのだった!!
今回からはあの秀才な男子が活躍します。長山君がメインの話も一度は執筆してみたかったものです!
一人の少年は秀才だった。何もかも物知りで、成績も優秀だった。だからってそれを鼻にかける事もしない。その為か多くの友人ができた。そんな何も悪い事がないように見える彼でも一つの心配事があった。妹の体である。少年の妹は昨年大きな病にかかり、入院沙汰となった。そのせいで妹は進級できなかった。再び一年生をやっているのだ。
「もう一回、一年生なんてやだよう!お兄ちゃん!!」
妹はそう言って泣き続けた。兄は自分の博識さの引き換えなのだろうかと自分を責める事もあった。そして兄は妹が大きな病にかからず、今度こそ彼女を進級させて欲しいと願った・・・。
羽田空港。そこには一人の男性と女性が到着ロビーにいた。
「ここが貴方の国ね、オサム」
オサムと呼ばれた男は答える。
「ああ、戦争に負けてアメリカの言われた通りにした結果、生温い体制になっちまったんだとよ。かくいう俺も日本の敗戦の時は生まれていないがな」
「それで、この日本のどこをターゲットにするというの?」
「静岡の清水って所だよ。そこに俺達の計画を脅かす可能性のある武器があって、その持ち主を抹殺するという事だ。そして俺達にさらに利用できるであろう奴もいるんだ」
「そう?誰なの?」
「まだ子供だがかなりの物知りだ。上手くこっちの物にできればの話だが・・・」
「まあ、やるしかないわね。ところでどうやって行くの?」
「モノレールってのを使い、そこから山手線って列車を使い、東京駅から新幹線って速い列車を使うよ」
「シンカンセンってそんなに速いの?」
「ああ、『君が生きていた』頃にあった汽車とはえらい違う程だ」
「まあ、何でもいいわ」
二人は静岡県に向けて東京モノレールに乗車した。
梅雨の時期が近づくにつれ、気温も湿度が上がり、暑く感じるようになった。かよ子の家も衣替えを済ませていた。かよ子は水色の半袖ワンピースで登校した。
「あ、かよちゃん、おはよう~」
途中でまる子、たまえ、土橋とし子に会った。
「まるちゃん、たまちゃん、とし子ちゃん、おはよう!ってああ~」
かよ子はこけそうになった。
「相変わらずかよちゃんはおっちょこちょいだねえ~」
(でもまるちゃんも今日体操着忘れそうになっちゃったじゃない・・・)
かよ子のおっちょこちょいを指摘するまる子にたまえは心の中で突っ込んだ。かよ子は四人で登校する事にした。学校に着き、昇降口で四人は長山に出会った。
「あ、長山君おはよう」
とし子が長山を呼んだ。
「やあ、土橋。それからさくら、穂波、山田」
長山は少し元気がなかった。
「どうしたの?元気ないね」
とし子が心配になった。
「うん、実は妹の小春が体壊しちゃって今日学校休んでるんだ」
「そっか、小春ちゃん大変だね」
たまえは長山の妹が気の毒に思った。
「そうだ!今日小春ちゃんのお見舞いに行こうよ!長山君、いいかな?」
まる子が提案した。
「え?うん、いいよ」
「皆で行こうか」
「うん!」
皆賛成した。
「ありがとう、皆」
長山は四人に感謝した。
「あの、長山君・・・」
かよ子は長山に話し掛けた。
「何だい?」
「私、この前長山君が教えてくれた通りにおっちょこちょいを治そうとしてるんだけど、なかなか上手く行かなくて、今日も転びそうになっちゃったよ・・・」
「ああ、すぐに治せる訳じゃないよ。少しずつ、段々と治すようにすればきっとよくなるよ」
「うん・・・。ありがとう」
かよ子は長山に礼をすると共に自分がおっちょこちょいを治すように小春の病気も治る事を願った。
放課後、かよ子達は長山の家へと向かった。
「只今」
「お邪魔します」
長山の母が出迎えた。
「あら、いらっしゃっい」
「母さん、皆小春のお見舞いに来てくれたんだ」
「あら、ありがとうね」
長山の母は皆を小春の部屋へと通した。
「小春、僕の友達がお見舞いに来てくれたよ」
「こんにちは、小春ちゃん」
「こ、こんにちは・・・」
長山の妹は弱々しい声で挨拶した。
「小春ちゃん、すぐに元気になれるよ。そしたらまたお友達に会えるよ」
まる子は声を掛けた。
「うん、ありがとう!こはる、がんばってげんきになるよ!また1ねんせいなんていやだもん!」
(小春ちゃん、病気ばかりなんて嫌だよね・・・。私だったら杉山君に会えなくて寂しいかな・・・)
かよ子はもし自分が病気がちだったらどうなるか考えた。
「おにいちゃん、おねえちゃんたち・・・」
「どうしたんだい?」
「いま、あじさいさいてるよね?」
「うん、梅雨時だから咲いてるよ」
「こはる、あじさいみたい・・・」
「そうだね、治ったら一緒に行こう!」
「うん!」
しかし、長山は裏では妹の病気が長引いて紫陽花を見せる事ができるか心配だった。
(どうか小春の為に紫陽花を見せられたら・・・)
長山はそう思った。
(小春ちゃんに紫陽花、見せてあげられたら・・・。そうだ・・・!!)
かよ子は数日前、杉山達と隣町の小学校のグループとの抗争を鎮めた時を思い出した。
(あの時フローレンスさんから貰った羽根があれば今すぐ見れるかも・・・!!)
「小春ちゃん、今すぐ見に行けるよ!」
「できるのかい?」
「大丈夫だよ。私、不思議な羽根があるんだ!それで空を翔んで紫陽花が咲いている所へ行こうよ!」
「かよちゃん・・・。まさかそれもおっちょこちょいの一つじゃ・・・」
たまえは邪推した。
「ううん、本当だよ!今持って来るよ!ちょっと待ってて!」
かよ子はランドセルを忘れて長山の家を飛び出した。
「かよちゃん、ランドセル置いてっちゃったね」
「またおっちょこちょいしちゃって・・・」
「いや、山田はわざとランドセルを置いてったのかもしれないよ」
「え?」
「ランドセルがあると走るのに大変だし、嘘つきとも思われたくないからじゃないかな」
「そうかもしれないねえ~」
かよ子は家に帰ると机の中にしまった羽根を取り出した。母にランドセルを忘れて「もう、何やってるのよ」と呆れられたが、家に出るとすぐ羽根を巨大化させ、飛び乗り、長山の家へと向かった。
かよ子が戻ってきた。それも空を翔んで。
「あ、かよちゃん!」
「ごめん、遅くなって!」
「うわあ、そらとんでる・・・!」
小春はかよ子の飛行姿に見とれた。
「小春ちゃん、この羽根に乗って紫陽花見に行こう!」
「うん!」
「ねえねえかよちゃん、アタシも連れてってよお~」
「うん、皆で行こうよ!」
かよ子は羽根に小春の他、まる子、たまえ、とし子、そして長山も乗せた。羽根は人数に問題なく翔んで行った。そしてかよ子達は紫陽花が咲く場所を上空から探した。
後書き
次回は・・・
「紫陽花の咲く場所」
長山の妹、小春の為に紫陽花が咲いている場所を探すかよ子達。そしてあの人物達が遂に清水に到着し、あの少女は不吉な予感を感知する・・・。
16 紫陽花の咲く場所
前書き
《前回》
かよ子はクラスメイトの秀才の少年・長山治の家へ行き、彼の病弱な妹・小春と出会う。小春は紫陽花を見たがっており、かよ子は小春の願いを叶える為にフローレンスから貰った羽根を使用し、小春を長山、まる子、たまえ、とし子を羽根に乗せて紫陽花が咲く場所を探すのだった!!
新幹線の車窓を見て女は列車の早さに驚いていた。
「凄い速いわね」
「ああ、静岡は一時間程で着くよ」
「ま、楽しみね。そのシズオカって所をターゲットにした理由は何なの?」
「それはここには富士山というこの国で最も高い山がある。その山は神聖な存在とされているんだ。そこから周囲の人間に力を与えているらしくてな」
「その人間を静粛させたら次はどうするの?」
「次にその山の神を降伏させ、我々に協力させる。その為にここにいる博識な少年をこちらの物にして最良の意見を考えて貰うのさ」
「へえ、良く考えたわね」
かよ子達は巨大化した羽根に乗って飛行し、紫陽花が咲く場所を探していた。
「紫陽花、どこかな?」
「う~ん・・・。あ、あったよ!」
とし子が発見した。
「え?よし、降りるよ」
かよ子は羽根を降下させた。羽根はかよ子が頭の中で思うように動いたり止まったりするので難なく使いこなせた。皆はサファイアやアメジストのように美しい青や紫の紫陽花に見入った。
「うわあ、きれいだあ・・・。おねえちゃん、ありがとう」
小春は兄のクラスメイトに礼をした。
「うん、そうだ、小春ちゃん、またこの紫陽花見たくなったらいつでも連れてってあげるよ」
「ほんと?」
「本当だよ」
かよ子は約束した。
「うん!」
「それじゃ、帰ろうか」
かよ子はまず長山の家へと向かい、長山と小春を降ろした。
「まるちゃん、たまちゃん、とし子ちゃんも家まで送ってあげるよ」
「おお~、ありがとう、かよちゃん」
「あ、でもランドセルが・・・」
たまえの一言でかよ子はランドセルの事を思い出した。
「あ、いけない!忘れるとこだったよ!」
「かよちゃんのおっちょこちょい、相変わらずだね」
とし子も苦笑した。かよ子は恥ずかしくなり、赤面した。ランドセルを取り、かよ子はまる子、たまえ、そしてとし子をそれぞれの家へと送ってから帰宅した。かよ子はある事を閃いた。
(そうだ、杉山君にもあの紫陽花、見せてあげたいな・・・)
長山はかよ子達が帰った後、かよ子の不思議な羽根について顧みていた。
(そういえば山田のあの羽根、空を飛べたな・・・)
長山はかよ子の羽根が以前の地震のようで地震でない現象や、日本各地で何者かによる異常な襲撃との関連性があるのではないかと感じた。さらに彼女は学校を襲った二人組と戦闘をしていた事がある。その時もあの二人組もかよ子も現実的とは思えない戦いをしていた。この世の「日常」は今失われつつあるのか・・・。長山はそう推理していた。
(もしそうならどうすればいいんだろう・・・?)
そんな時、小春が声を掛けてきた。
「お兄ちゃん」
「どうしたんだい?」
「こはる、また、あのあじさいみたい・・・」
「ああ、そうだね。今度は元気になったらお兄ちゃんが連れてってあげるよ」
「うん・・・!」
男女二人は静岡に到着していた。
「ここがシズオカってところね」
「ああ、まずはホテルで寛ぐか」
(目指すはあの清水か・・・。房子総長もいい場所を選んだな・・・)
翌日、かよ子は急いで学校へ向かった。いつもより30分も寝坊してしまったのだった。
(はあ、はあ、はあ・・・!!)
何とか間に合った。朝礼の後、かよ子は長山から声を掛けられた。
「山田」
「な、長山君・・・」
「昨日は小春に紫陽花を見せてくれてありがとう。小春、凄く喜んでたよ」
「う、うん・・・!」
「ところでさ」
長山は話を続ける。
「最近どうも世界が変な風になってきてる気がするんだ。あの地面の揺れからね。山田もいつの日かそんな奴と戦っただろ?」
「う、うん、そうだよ」
「その時、山田も不思議な力を持ってたよね?」
「うん、私、不思議な能力を持った杖で戦ったんだ。その杖は私自身はお母さんから貰ったんだけど元々は別の世界の物なんだって。今日空を翔ぶのに使った羽根もついこの間その世界の人が来てくれたんだ」
「へえ。『別の世界』ってあるのか」
「そうだよ。その世界ってのは他にあるらしいんだ。その杖や羽根をくれた人のいる世界は平和を維持する為の世界だったよ。でも前に学校を襲った人はそれとはまた別の世界の人間なんだよ」
「そうか。やっぱり現実が歪み出しているのか・・・」
「うん、だから私、元の日常を取り戻す為に戦う事にしたんだよ」
「そうか、僕は山田ならきっとできると思うよ」
「え?うん、ありがとう!」
二人の男女は清水の街を歩く。そんな時、町の不良が三名、ぶつかってきた。
「オイ、オッサン、オバサン!チョッと気い付けやがれよ~」
「貴方達がぶつかって来たんでしょ?謝るのは貴方達の方よ」
「アア!?エラそうなオバサンだな!痛え目に遭いたくねえならさっさと金だしな!」
「そんなにお金が欲しければ働いて得なさい」
「何だと!?屁理屈ばっか言いやがって!」
「やっちまうか!」
不良達は二人に襲いかかる。しかし、女は右手を出すと、不良を触りもせずに壁に叩きつけた。
「な、何だ!?」
「貴方達、私は『この世』の人間だった頃、息子を処刑された事があるのよ。それも貴方達より若い年で」
「だ、だから何だよ!?」
「私は憎しみがある。私はボリシェビキという組織で暴力の必要さを学んだの。死んで別の世界に行った後、ニホンセキグンという組織の人間と会い、この世に戻ってきたのよ」
(ぼりしぇびき・・・?にほんせきぐん・・・?その組織はまさか・・・!!)
不良が組織名を聞いて気付いた時には遅かった。
「本当の『暴力』とは何か教えてあげるわ」
女は指を鳴らす。不良達の体が破裂した。
「見苦しいくらいにやっちまったな」
「まあ、このくらいの制裁は当然のものよ」
二人は散り々りになった不良達の肉片や服の切れ端をその場に残したまま歩いていった。
清水市内のとある小学校。そこに濃藤すみ子という女子がいる。彼女は授業中、急に胸騒ぎを覚えた。保健室に行って安静にはしていたが、それでも落ち着かない。
(来てる・・・!!とても恐ろしい予感が・・・!!)
休み時間に、クラスメイトの山口、川村、ヤス太郎が見舞に来た。
「すみ子、大丈夫か?」
「ううん、とても落ち着かないわ。前に地震みたいな現象の時の胸騒ぎよりもずっと激しいの・・・!!」
「山口、もしかして『敵』がこの清水市内に入って来たかもしれねえぜ!」
「ああ、その可能性、ありだな。あの秘密基地に行って、『次郎長』の皆にも知らせないとな」
彼らはこの清水市を守る為、組織「義元」を結成していた。以前、イマヌエルとかいう人物から貰った武器で隣町の組織「次郎長」と秘密基地を巡って争いをしていたが、今は協力関係にあった。四人は放課後、例の高台の秘密基地へと向かう事にした。
後書き
次回は・・・
「再びの暗躍」
組織「次郎長」は「義元」の山口からすみ子の異変があったという事を基地にあった置き手紙を通して知る。その後、清水市内で起きた殺人事件の現場を目撃し、杉山はかよ子へと電話する・・・。
17 再びの暗躍
前書き
《前回》
かよ子は長山の妹・小春に紫陽花を見せに不思議な羽根で連れて行く。その翌日、かよ子は長山からその事について礼をされると共に彼に異世界の事を話す。一方、二人組の男女が清水市を訪れたその時、女性がすれ違って因縁をつけてきた不良を殺害する。そして別の小学校では濃藤すみ子が恐ろしい胸騒ぎを覚えるのだった!!
大野、杉山、ブー太郎、そしてまる子の四人で構成される組織「次郎長」は秘密基地に行く事を考えていた。
「今日、秘密基地行ってみよーぜ」
「そうですね、ブー!」
皆は放課後!高台に造った秘密基地へと向かった。基地に上がると一通の手紙が置かれていた。
「何だ?」
大野は手紙を読んでみる。内容はこう書かれていた。
「次郎長」の皆
今日、ウチのすみ子の様子がとてもおかしかった。とても胸騒ぎがすると言っていた。もしかしたら清水に恐ろしい敵が来た可能性がある。俺達はまた明日、基地に来る。もしそっちにも何か変な事があったり起きたりしたら教えてくれ。
「義元」の山口
「すみ子ちゃんってあの子かあ~」
「ああ、俺達ももしかしたらこの石を使う事になるかもしれないな」
「オイラもやな感じがするブー・・・」
四人は基地に入り、清水の景色を見た。この景色が失われる恐れができてしまうとなると彼らも落ち着かなくなってしまった。
(前に山田の家で戦ったアレクサンドルとアンナって奴みたいなのが来ているのか・・・?)
杉山は自分に恋する女子の家での戦いを思い出し、まさかと思った。もしかしたらまたその女子を殺害する事を目的とした奴なのかと・・・。
(『アイツ』の事がどうしても気になるな・・・)
「杉山、どうかしたのか?考え事か?」
大野に聞かれて杉山は我に返った。
「あ、その・・・。なあ大野、前に山田かよ子の家で戦ったアレクサンドルとアンナの兄妹の事、覚えてるか?」
「ああ、そいつらがどうした?」
「俺はまさかそいつらのように山田を狙う奴が来たんじゃないかと気になったんだ」
「そいつら、誰だブー?」
「前に学校に襲いかかって来た奴等だよ。その時は山田かよ子が追い払ったんだが、その後、山田の家で決闘したんだ。俺と大野もやっつけるのに手伝ってやったんだ」
「ええ、かよちゃんが!?」
「ああ、また山田を狙おうとしている奴が来たんじゃないかって気になってんだ」
「か、かよちゃんが危ない!どうしよう!?」
まる子はその場で慌てた。
「まだそうと決まった訳じゃねえ。山田には俺が言っとくよ」
「杉山君、かっこいい~。かよちゃんと一緒になりなよお~」
「おい、からかうなよっ」
長山は家に帰ると小春の看病を行った。
「熱は下がったね」
「うん、おにいちゃん、こはるにまたあじさいをみせて・・・」
「うん、もちろん連れて行くよ」
長山は妹が明日には学校に行ける見込みになって安心した。そして翌日に早速紫陽花を見せてあげようと思った。
大野、杉山、ブー太郎、まる子は秘密基地を後にし、町に戻った。その時、警察やら町の人が集まっていた。
「な、何事だ!?」
「次郎長」の四人は現場に近づいた。その場には木を大事にしているという佐々木のじいさんもいた。
「ああ、佐々木のじいさん、どうしたの!?」
「おや、まるちゃん達。実はですね、ここでバラバラになった人の遺体がありましてね、今警察が取り調べをやっているんですよ」
「ええ!?」
杉山達も現場を見た。遺体は片付けられて確認する事はできなかったが、周囲に血痕が撥ねたように残っていた。
「バラバラになった遺体・・・。お、恐ろしいブー・・・!!」
「杉山、これ、もしかして・・・」
「ああ、可能性は高いな」
急いで皆は警戒しながら家に帰った。
かよ子は宿題を終わらせるとおやつを食べ、そして部屋で漫画を読んでいた。その時、母が入って来た。
「かよ子、杉山君から電話よ」
「ええ!?」
かよ子は驚き、電話に出た。
「も、もしもし・・・」
「山田あ!お前、無事だったか!」
「え!?何かあったの!?」
「ああ、町で殺人事件があったんだ。それも人の体がバラバラになっちまっていたんだ!これはただの殺人事件じゃねえ、きっと異世界からの人間の仕業に違いないと思うんだ!」
「え、ええ!?」
「もしかしたらアレクサンドルとアンナって奴等みたいにお前を狙っている奴かもしれない!気を付けろよ」
「う、うん!!」
「じゃあな」
かよ子はその話を聞いて恐ろしくなった。外を出歩く時は非常に警戒しなければならないと己を気を付けた。何しろ自分はおっちょこちょいなのだから。
翌日、かよ子の父が新聞を読むと、恐怖に駆られた。
「昨日、清水に殺人事件があったみたいだね」
「ええ!?新聞見せて!!」
かよ子は父に新聞を見せて貰った。新聞の記事の見出しには『静岡県清水市内の住宅地で殺人事件発生』とあった。
(清水市内で・・・!!)
かよ子は新聞の記事の詳細を読んだ。以下のように書かれていた。
【6月3日未明、静岡県清水市内の住宅地にて男性3名と思われる遺体が粉々になっているのが発見された。犯人は現在の所分かっておらず、警察は捜査を続けている。】
(これ、杉山君が電話で言ってた事件・・・!?)
かよ子は恐ろしく感じた。また別の異世界からの人間がこの清水市に訪れており、そして狙うのは自分かもしれないと・・・。
「もしかして・・・」
「ああ、前にきたあの兄妹みたいに別世界の人間の仕業かもしれないね」
「うん・・・。お父さん、私外歩く時、気を付けるよ・・・」
そして登校する時間になった。
「かよ子」
母が娘を呼ぶ。
「お母さん・・・?」
「たとえどんな敵が来たとしても、恐れちゃ駄目よ。その杖があるんだからね」
「うん・・・。私、絶対に負けないよ!行ってきます!」
かよ子は家を出て行った。これからどんな敵が来ようと負けないと決心しながら。
後書き
次回は・・・
「次なる敵のお出まし」
かよ子は昨日の殺人事件を新聞で確認した事を杉山に報告する。そしてすみ子は胸騒ぎが止まらずにいた。放課後、組織「次郎長」と「義元」は秘密基地に集合し、かよ子は病気が治った小春を長山と共に紫陽花の咲く場所へ再び向かうが・・・。
18 次なる敵のお出まし
前書き
《前回》
組織「次郎長」は秘密基地で「義元」からすみ子に異変があったという手紙を受け取る。その後、町で殺人事件が発生し、かよ子は杉山からその事を電話で聞く。翌日、新聞にその記事が載っており、かよ子は異世界からの敵が訪れたのかと不安になるのだった!!
長山は小春の病気が治った為、妹と一緒に家を出た。
「行って来まーす」
小春は学校に行けて嬉しそうだった。
「おにいちゃん、こはる、がっこうのともだちにはやくあいたいな」
「うん、楽しみだね」
その時、向かいの家から一人の男子高校生が現れた。彼の名は北勢田竜汰という。
「あ、おはようございます!」
「おお、治君、小春ちゃん。おはよう。小春ちゃん、元気になったか」
「うん!」
小春は元気よく返事をした。
「それじゃあな!」
北勢田は駅の方角へと向かった。長山達も学校の方へと向かった。
北勢田は駅で電車を待つ。そこにちょうどクラスメイトの男子も現れた。
「お、ミカワ」
「北勢田、おはよう」
三河口は昨日の事件の話を始める。
「ところで北勢田、昨日の事件は尋常じゃないよな」
昨日の事件とは人間の肉片が木っ端微塵にされて殺害された事件の事である。
「そうだな。俺も何か感じるよ」
「前に地震のような現象から異世界から来たという奴がテロを起こし続けているからな。これも関係が深いと思うんだよ」
「そうだな。普通あんな殺され方ありえんよな」
(今度の奴はどんな奴何だ・・・?)
三河口は次の敵はどんな者か、そして隣に住む女の子がまた標的になりそうな予感がした。
かよ子は学校に着くなり杉山を見ると照れながら声を掛けた。
「す、杉山君・・・!!お、おはよう・・・」
「おう、山田」
「あの、昨日の事件、新聞に載ってたよ。私、何だかまた怖くなっちゃった・・・」
「山田・・・。弱音吐くなよ!」
「え?」
「お前のその杖ならきっとどんな相手でもやっつけられるぜ!それに今度も俺が味方してやるよ!」
(す、杉山君・・・)
かよ子は好きな男子からそう言われてさらに心を打たれた。
「う、うん、そうだね、頑張るよ!」
その時、長山も教室に入ってきた。
「あ、長山君、おはよう!」
「ああ、山田。そうだ、小春の病気が治ったんだ。また小春を紫陽花が咲いてる所へ連れてってくれるかな?」
「うん、いいよ!」
かよ子は承諾した。その時、杉山はかよ子が外に出る予定である事を悟った。
(山田・・・。あいつ、危ないかもしれねえよ・・・)
杉山は大野に話しかける。
「大野。今日山田かよ子は長山の妹を連れて紫陽花が咲いている所へ行くつもりだ。だが今日山口達とも会うつもりだし、その後、行かねえか?」
「ああ、いいぜ」
(杉山、お前、それだけ山田を気にしてるのか。ま、俺にはどうでもいいけどよ・・・)
すみ子はこの日も胸騒ぎが治まらなかった。
「すみ子、安心しろよ。今日は隣町のあいつらとも会う。何か情報があって原因が解ればきっと大丈夫だ」
山口が励ました。
「うん・・・」
かよ子は家に帰ると長山の家へと向かった。
「こんにちは!」
「ああ、山田。よく来たね」
長山が出迎えた。
「こんにちは・・・」
病気から回復した小春はさらに明るくなった感があった。
「小春ちゃん、こんにちは!」
「小春、また紫陽花見に行けるよ!」
「うん!」
「それじゃあ、行こうか!」
かよ子は例の羽根を出して巨大化させた。そこに自分が乗り、次に長山兄妹を乗せて飛行した。
杉山と大野はまる子、ブー太郎を引き連れて例の秘密基地へと向かった。
「大野君、杉山君、本当に異世界からの敵が現れたみたいなのかブー?」
ブー太郎が質問した。
「ああ、昨日の殺人事件も普通じゃない殺され方だった。それに異世界からの敵なんて馬鹿馬鹿しいと思うかもしれねえが、実際に俺と杉山は山田かよ子の家でそういう奴と闘った事がある。俺達が出会った石松とかフローレンスとかとは違ってきっとこの世界を襲撃するために動いている奴だ」
「そ、そんなブー・・・」
「だから石松は俺達にこの石を持たせたはずだぜ。そいつもこの日本は破滅の危機にあるって言ってたしな。その可能性があるかもしれない。それならこの石を使うことになるだろう」
「分かったブー!」
皆は基地に付いた。「義元」の面々も丁度到着した。
「あ、お前ら!」
「おお!」
「昨日殺人事件があったんだ。殺され方が普通じゃなかった。きっと異世界からの敵の仕業だ!」
大野が報告した。
「ああ、俺達も朝そのニュースを新聞で読んだ。すみ子もいつもより心が落ち着かない様子だったんだ!」
山口も報告で返した。
「これから本当の闘いをする事になるかもしれないな!」
「まさにその通りである」
一人の男が現れた。組織「次郎長」を結成した杉山達に不思議な能力を持つ石を渡した森の石松だった。
「森の石松!?」
「お主ら、今この清水に敵が訪れている。そしてその敵の側に付く人間もこの清水に訪れている」
「マジか!それで山田かよ子が巻き込まれる可能性はあるのか!?」
杉山が質問した。
「おそらく山田かよ子が襲われる可能性はある。彼女も不思議な能力をもっているからな」
「杉山、山田にも連絡した方がいいぞ!」
「ああ」
その時、杉山はある事を思い出した。
(そういえば山田は俺と喋った後、長山と話していたな。確か長山の妹の病気が治ったって事で紫陽花が咲いてる場所へ連れて行くとか・・・)
「皆、紫陽花が咲いてる場所を探してくれ!」
「え!?」
「山田はきっとそこにいるかもしれねえんだ!」
「うん、分かったよ!」
皆は基地に上り、紫陽花の咲いている場所を探した。しかし、遠すぎて確認できない。
「お主ら、紫陽花の方角はあちらだ」
石松は一つの方角を差した。
「よし、行こう!」
皆は石松が差した方角へ向かう。すみ子はさらなる胸騒ぎを覚えるのだった。
女は男と共に町を歩く。
「結局、昨日は会えなかったわね」
「ああ、だが、今日こそは見つけんとな」
そして二人は一人の男子高校生とすれ違った。その高校生に怪しまれている事も知らずに・・・。
「あら、あそこで飛んでる子がいるわね」
女は飛行物を発見した。その飛行物には二人の女子と一人の男子が乗っていた。
「あの能力はやはり異世界から貰った力だ。オリガ、遂に見つけたぜ」
北勢田は学校帰りに男女の二人組とすれ違った。そして不吉な予感がした。
(この感じ・・・。三河口が言っていた殺人事件の犯人な気がする・・・!!)
北勢田は走り出した。
かよ子は長山兄妹と共に紫陽花の咲く場所を探す。そしていつの日か来た場所と全く同じ場所へと辿り着いた。
「着いたよ!」
「うわあ、おねえちゃん、ありがとう!」
小春はかよ子にお礼をした。
「どういたしまして。紫陽花、今日も綺麗に咲いてるね!」
「うん!」
かよ子達は紫陽花の美しさに見とれていく。と、その時、後ろから女性の声がした。
「貴方達」
「え?」
三人は後ろを振り向いた。そこには外国人の大人のような女性がいた。
「あの、誰ですか・・・?」
「私はオリガ。貴方達、さっき羽根に乗って飛んでいたわね?」
「あ、はい・・・」
かよ子は返答した。
「貴女は不思議な能力を持っている。そうでしょう?」
「う、それがどうかしたんですか?」
「貴女の力はとても恐ろしいものだって聞いたからよ。そして一緒にいる男子は物知りなのかしら?」
オリガという女は長山の方を見た。
「いや、そんな・・・」
(この人、まさか・・・!!)
かよ子は気付いた。この女は自分と長山を狙っていると。
「それだけ謙遜していると言う事はその通りみたいね。では、貴方は私と協力して頂戴。そちらの貴女は・・・」
オリガの台詞にかよ子は息を飲んだ。
「ここで消えてもらうわ」
後書き
次回は・・・
「隙見せぬ猛攻」
オリガという女性に唐突に命を狙われ、苦戦するかよ子達。かよ子の安否が心配で急ぐ杉山達。そして、苦戦するかよ子の前に最悪にももう一名敵が・・・。
19 隙見せぬ猛攻
前書き
《前回》
異世界からの敵が清水を訪れていると感じ取った杉山達。一方かよ子は病気が治った小春の為に紫陽花が咲いている場所へ再び案内する。その時、オリガという女性が現れ、長山を連れてかよ子を消そうとする!!
オリガの台詞に条件反射するかの如くかよ子は杖を取り出した。
(異世界からの敵だ!!)
かよ子は川原に落ちてある石に杖を向け、石を操る能力を得た。
(山田のその能力、やはり・・・!!)
長山はかよ子が不思議な能力を使用しているとすぐわかった。かよ子は石を弾丸のようにしてオリガに発射した。しかし、石はオリガの体に当たる直前で砕けた。
「そんなあからさまに狙う攻撃では私を倒せないわよ」
(まさか、どうやって守ったの・・・!?)
かよ子にはその原理が理解できなかった。
「私は『この世界の人間』だったころ、私が支持していた組織が失脚し、私は逮捕・収監されてとても非常に辛酸を舐めたわ。私には今、憎しみしかないのよ。そんな私の憎しみは強大な者。どんなものか教えてあげましょうか」
オリガは近くにいる猫を見ると、指を鳴らした。すると、猫の体が一瞬でバラバラになった。かよ子はその恐ろしさを見て一瞬でおぞましくなった。次は自分の番かと。
「さあ、次は貴女の番よ」
オリガは視線をかよ子に向けると指を鳴らす。もう何もできない。自分はこれで死ぬ。そう思った。
杉山達「次郎長」、山口達「義元」の面子は石松が示した方向へと急いだ。
(山田・・・。無事にいてくれよ・・・!!)
クラスメイトの女子を心配する杉山。
(あの子がもしかして・・・)
すみ子は以前、自分のグループと隣町のグループの抗争の鎮圧に協力してくれたあの女子に恩があった。あの女子には無事でいて欲しいとすみ子はそう思った。
北勢田は三河口が居候しているという家にいた。
「おい、ミカワ」
「北勢田か、どうした?」
「さっき変な奴とすれ違った。ぞっとする予感だったんだ!」
「何!?もしかしたら異世界の人間かもしれんぞ!そいつを探そう!どんな奴だった!?」
「男女のペアだ」
「わかった!」
二人は怪しげな男女の捜索に動こうとした。
「あ、健ちゃん」
三河口の叔母が甥を呼び止めた。
「おばさん?」
「これを持って行きなよ」
おばさんは二人にお守りを渡した。
「このお守り、貴方達の力を出せるはずよ」
「はい、ありがとうございます」
三河口と北勢田はお守りを手にして走り出した。
オリガは指を鳴らす。彼女の思う通りになるならばこれで山田かよ子の体は服ごとバラバラになり、一緒にいた少年をさらい、計画は成功するはずだった。かよ子自身もまた、死を覚悟していた。しかし、何も起きなかった。オリガは何かの気のせいで失敗したのかと思い、もう一度指を鳴らす。しかし、その少女は体が砕け散りもせず、傷一つも負っていない。
「な、なぜ?どうして何も起きないの!?」
「そ、そんなの、知らないよ!」
かよ子は反撃のチャンスだと思った。かよ子は再び石を操る力を得て、石を巨大化させた。そしてオリガを潰そうとした。オリガは慌ててなんとか石を砕いた。そしてオリガは高速移動でかよ子に接近する。かよ子の杖には石を操る能力がまだあったので、石で壁を造って防いだ。しかし、オリガはその壁を突き破った。
「どうやら物理的に殺すしかないようね」
オリガはナイフを取り出した。かよ子を刺そうとする。この近距離では避けられない。その時・・・。
「や、やめて・・・!!」
小春が石ころを拾い、オリガに向けて投げた。オリガは小春の投石に急いで対応して撥ね返した。その隙にかよ子は何とか後退りし、後ろにジャンプして避けた。草の薄さに腕を少し切った。
(切れ味のある草・・・。そうだ・・・!!)
かよ子は杖の使用方法を記した本に書かれてあった一文を思い出した。
【刃でない場合、切れ味の鋭いものであるならば、切り刻む能力を得られる】
(この草、能力として使えるかも・・・!!)
かよ子は草に杖を向けた。杖は光りだし、先に丸鋸を付けていた。
「この子、邪魔して・・・!」
オリガは小春に視線を向けると、瞬殺しようとした。
「い、妹に手を出すな!」
長山は妹を庇った。その時、オリガは指鳴らしをやめた。この時、長山はふと気がついた。
(殺す時は指を鳴らせばすぐにできるのに僕が小春を庇うと殺すのをやめた・・・?)
長山は考察する。殺害の対象は目に見えていないと殺せない。そして、彼女はあからさまな攻撃では効かないと言った。なら今小春の投石が意表を突く攻撃でなかったらそちらに対応してかよ子はあっさりとやられていた。それならば・・・。
「山田、今だ!」
「うん!」
かよ子も長山も阿吽の呼吸だった。かよ子は能力を得て装備された杖先の丸鋸をオリガに向けた。オリガは何とか跳ね返した。
「山田、普通に狙っても跳ね返される!遠回りして狙うんだ!」
「遠回りして狙う?うん!」
かよ子は長山の言う事が理解できた。遠回りして狙うと言う事は対象をそのまま狙うのではない。つまり、野球の変化球のように放物線を描きながら狙うと言う事だ。かよ子は再び草から切断の能力を得て丸鋸を杖先に装備した。だが、鋸はオリガに真っ直ぐ飛んだ。
「馬鹿なの?あの少年も言う通り、真っ直ぐ狙っちゃ跳ね返すわよ!」
オリガは簡単に目の前に来た丸鋸を破壊した。
「そうだよね。でも私は鋸は『二枚』造ってるよ!」
「・・・え?」
その時、オリガの背中に何かが刺さった。かよ子は能力を得る際、丸鋸を二枚造っていた。そして一枚はオリガの真正面に飛ばし、もう一枚はオリガの背中に回り込んで飛ばしたのだった。
「あ、あああーーーーーーーーーーっ!!」
オリガは背中に刺さった鋸の痛みで耳をつんざくような悲鳴を挙げた。
「いいぞ、山田!」
「うん!」
ところが、その時、オリガの体に刺さった鋸が外れた。
「オリガ、手伝いに来たぜ」
別の男が現れた。
「オサム、遅いじゃない、何してたのよ?」
「ああ、すまん、援軍が来ないように結界みたいなものを張っていてな」
「だ、誰なんだ!?」
長山は聞いた。
「俺は丸岡修。君か、博識な少年は。名は確か長山治。俺と同じ名前だな」
「だから何だ?」
「お前の博識さを是非我々に活かしてもらいたい」
「どういうふうに?」
「それは、この日本を昔の強さに戻す為だよ!」
(昔の強さ・・・!?そうか・・・!!)
長山は感づいた。昔の日本の強さとはいかなるものか。それは、ハワイやサイパン、グアム、台湾やタイ、ビルマ、満州、朝鮮半島など、様々な国を占領・支配していた太平洋戦争の頃の日本、いわゆる大日本帝国そのものだった。
後書き
次回は・・・
「訪れた援軍」
杉山達は石松や「義元」の面々と共にかよ子を探す。そして三河口と北勢田も長山を探す。その一方、かよ子と長山はオリガと丸岡に対して劣勢となってしまい・・・。
20 訪れた援軍
前書き
《前回》
異世界から来たオリガと対面したかよ子、長山、そして小春。長山を奪取を目的とするオリガの一瞬で生物の体をバラバラにする能力に怯えるかよ子。しかし、オリガのその能力はなぜかかよ子には通用せず、かよ子はオリガと激戦を繰り広げる。だが、丸岡修という男がオリガの援護に現れ、長山は丸岡は戦争をしていた頃の日本に戻す事が彼らの目的と知る!!
杉山達は敵のいる場所を探す。
「なかなか見つかんねえな」
(くそ、山田・・・。やられてなきゃいいんだが・・・)
その時、共について行た石松がある事に気付いた。
「これでは見つからんな」
「どうしてだブー?」
「おそらくお主らに気付かれぬような結界を張っているに違いないな。某に任せよ」
石松は刀を振りかざす。その時、杉山達は急に川原の方に今まで見えなかった姿があった。その姿は・・・。
(いた!あれは・・・!!)
かよ子も長山もこれでは生きて帰れない予感がした。ようやくオリガの弱点を掴めたと思いきや、援軍が現れてしまえば、いくら博識な長山でも簡単に弱点を見いだせないかもしれない。
「あ、貴方も異世界から来たの!?」
かよ子は丸岡修に質問する。
「いいや、俺はこの地球の人間だよ。俺はこの日本が戦争に負けてから弱くなったと聞いた。そして俺は考えた。この日本を変えるには武力を取り戻すと。それで我が所属する組織は死によってこの世から追放され武力を必要としてきた人間達が住む世界と繋げ、協力を要請したのだ」
「あ、貴方達が・・・!!」
かよ子は気づいた。あの地震擬きの現象は彼が、いや、彼が属する組織が異世界とこの世界を繋げた事で発生したものだと。
「そうだ。この日本は弱くなりすぎた!平和何かに頼ってな!」
「そ、そんなの間違ってるよ!」
「なら、お前みたいな小学生に日本が護れるのか!?」
「そういう訳じゃないけど・・・」
「なら我々の活動を邪魔するな!その為にお前を殺す!だが、オリガの能力がなぜか効かなかったからな。さては凡人とは異なる『何か』があるな!」
「う・・・!!」
かよ子はこの男が何を言っているのか一瞬判らなかった。
(ぼんじんと異なる何かって?)
しかし、それを考える隙はなく、丸岡は襲いかかってくる。丸岡はかよ子に銃を向ける。かよ子は石の能力を得て防ごうとした。
「そんな手は効かんぞ。俺の能力の一つとしてお前は『すぐに打ち倒せる敵』として認識されるよう設定した。勝ち目はない!」
かよ子は震えた。勝てないのかと。
「オリガ、あのガキを捕えろ!」
「ええ!」
オリガは長山を捕まえにかかる。長山は小春を連れて逃げようとした。と、その時、オリガに電撃が浴びせられた。かよ子も、長山も、小春も、丸山も、周りを見回した。
「そこにいたな!」
(す、杉山君!!)
その場には杉山、大野、まる子、ブー太郎からなる組織「次郎長」、そして隣町の小学校の組織「義元」がいた。
「はあ、はあ、見つからないな」
三河口と北勢田は北勢田の隣人である長山と小春の兄妹を探すもなかなか見つからなかった。
「町中よりもっと広い所にいるかもしれんぞ」
「みたいだな」
その時、何らか電気がショートするような音を三河口は耳にした。
「北勢田、河原の方かもしれない!あっちはまだ見てないしな」
「わかった!」
二人は河原へと急いだ。
「てめえ、何してんだ!」
杉山は激昂した。
「何って?俺達は邪魔者を排除しているだけだが?」
丸岡は平然と答える。
「そいつらは俺達の学校の友達だ。邪魔者じゃねえ!」
(す、杉山君!!)
「しかし、ここの場所はお前らに見えないようにしてある筈だ。なぜ見える!?」
「その理由は、某がお主の結界を破壊したからである」
丸岡の後ろで声がした。
「お、お前は!?」
「某は森の石松。お主らに対向する為に来た」
「森の石松だあ!?」
「貴方も消す対象になるわね」
オリガは石松を見て殺害しようとした。
「やべ、石松がやられる!」
大野は草の石の力を利用し、河原の草を操作してオリガの手足に絡ませ、動けないようにした。
「な、何よこれ!?」
「今ださくら!あいつを草ごと燃やせ!」
「うん!」
大野の命令でまる子は炎の石の力を行使した。炎がオリガを襲う。
「やったか?!」
しかし、オリガは無傷だった。草は燃えたが、オリガは火傷すら全く負っていない。
「君達、このオリガって人には真向からの攻撃が聞かないんだ!」
長山が皆に教えた。
「なんだって!?」
「む、よくも教えてくれたわね!」
オリガは長山に怒りを向けた。しかし、長山を殺す事は丸岡の意に反する為にできない。彼を生け捕りにしなければならなかった。オリガは電撃やかよ子のカッター攻撃で体を一部傷つけられたが、それでも長山を追う。
「お、おにいちゃんをとらないで・・・!!」
小春が切実に兄を守ろうとした。
「それなら貴女もお兄ちゃんと一緒に行く?オサム、どうかしら?」
「それも悪くねえな」
オリガは長山の妹に飛びかかった。
「やめろ!僕の妹に何をする!」
「このやろ!」
山口が加勢しようと河原に降り、矢を放った。オリガの足元の地面に矢が刺さると、砂埃が舞い上がった。オリガの視界が遮られた。
「川村、ヤス太郎、手伝ってくれ!」
「よし!」
川村も河川敷に降り、長山を、山口は小春を確保した。
「ヤス太郎、俺達を浮かせろ!」
「了解でやんす!」
ヤス太郎はパチンコを発射した。山口達は浮上した。
「う・・・、どこに行ったの!?」
オリガが確認できた時には既に遅かった。長山達は既に川原上の道路に引き上げられていた。
「『浮き玉』でやんす!」
「この野郎、逃がさんぞ・・・!!」
丸岡は追おうとするも、その前に石松が立ちはだかる。
「ただでは済まさんぞ、お主!」
こうして戦いは激しくなった。
後書き
次回は
「大日本帝国の復活」
かよ子の戦いの場に集結した、「次郎長」、「義元」。三河口と北勢田もその場に到着する。そしてオリガに丸岡と生死と長山を賭けた死闘を続けていく・・・。
21 大日本帝国の復活
前書き
《前回》
オリガと丸岡に苦戦するかよ子達。その時、森の石松、杉山達組織「次郎長」、隣町の学校の組織「義元」が救援に現れる。一方、かよ子の隣の家に住む高校生・三河口健と長山の家の近くに住む北勢田竜汰はかよ子達の行方を捜していた!!
長山は山口達に聞く。
「き、君達は?」
長山の質問に山口が答える。
「ああ、俺達は隣町の学校にすむもんだ。大野や杉山達と協力して異変の起きる場所を探していたんだよ」
「そうだったのか。それにしても君達もどうやら『この世のものじゃない能力』を持っているね」
「ああ、そうだよ。鋭いな」
「まあね。でも、あの男はどうも僕を狙ってるんだ。それにあの女性の方は真正面から狙っても防がれる。それに相手の体を簡単にバラバラにして殺す事もできるんだ」
「何だって!?嫌な敵だな」
「まあ、兎に角こっちは大勢いるんだ。総力戦と行こうぜ!」
川村は案じた。
「あ、かよちゃんも助けなきゃ・・・!!」
すみ子は河川敷にいるかよ子の姿を見た。かよ子は丸岡と対峙している状態である。丸岡に対して石松が刀を振りかざす。丸岡は何とか避けた。
「ふん!」
(こいつも『簡単に倒せる敵』と設定しないと・・・!!)
丸山はそう認識するよう設定し、発砲した。だが、それを見たすみ子も己の銃でかよ子と石松の周囲にバリアを張った。
「何っ!?くそ、オリガ、あいつら纏めてやれ!」
「了解!」
オリガはその場にいる小学生達を諸共抹殺しようとした。だが、今度は石松が切り込みにかかり、できなかった。
「面倒くさい事になったわね・・・」
「ああ、何とか上手くやれればな」
三河口と北勢田は異変の現場へと向かう。そして到着した。
「あそこだな、ん!?」
三河口はその場に自分が知る女子がいた事に気づいた。
(かよちゃん!!大野君や杉山君達も。濃藤の妹とその友達もいるぞ!)
「あいつらは一体何なんだ!?」
「おそらくこの日本を変えようと考えてる奴らだろう。今無理に出ると返り討ちに合うかもしれん。様子を見よう」
「何だと!ウチの近所の子もいるんだぞ!それに子供に対して相手は大人だ!」
「ああ、俺が住む家の隣に住む子もいるし、濃藤の妹もいるさ。だが、そのウチの隣に住む子も不思議な力を持ってるし、その子も前に異世界からの敵を倒している。さらにヤバくなったら俺達が出ればいい」
「わ、わかった!」
北勢田は三河口が嘘を付いているようには聞こえなかったので一応は従う事にした。
「お前ら、一体何しに清水に来たんだ!そして目的は何なんだ!?」
大野が丸岡とオリガに質問した。
「それはこの日本を変える為さ。今の状態では非常に弱くなっちまっているからな」
丸岡が答えた。
「つまり、戦争中の日本に戻すって事かい?」
長山が更に質問する。
「そうだ、昔のような他所の領土を物にできる軍事力のある大日本帝国を復活させるのだ!」
(こいつ、前にアレクサンドルとアンナと同じ事を言ってやがる!!)
杉山も大野も以前学校を襲った兄妹と同じ発言をしていた事を思い出した。
「何を言ってるんだい?そのやり方は多くの人を犠牲にしてきたんだ!そんな事でいい日本になる筈がないじゃないか!」
長山が反論する。
「減らず口だな!折角いい知恵を沢山持ってるから仲間に従ったのによ!」
「僕は君のような人間の為に動くなんてできないし、そうしようとも思わないぞ!」
「皆、こいつらは長山君をさらうのが目当てだよ!」
かよ子が口を挟み、皆に忠告した。
「そうだったな、こんな話を聞いている場合じゃなかったぜ!」
皆は我に帰り、戦闘を再開した。
「皆、あのオリガって女性は相手を一瞬で殺せる能力がある。下手すれば全滅してしまう!」
「ああ、やられないようにしないと!すみ子、お前の銃で防御が張れるよな!」
「うん・・・!!」
すみ子は地面に銃を撃った。
「無駄だ、俺の認識術で無効にしてやる!」
丸岡は自分が考えた通りに認識する事でそれを現実にさせる能力を会得している。例えば、相手から見て自分をカッコいいと認識させるよう頭の中で考えれば周囲は丸岡をカッコいい二枚目の男性と思え、一羽の鳩を周囲が鶏と認識させるように思い浮かべればその鳩は周囲の人々には空を飛ぶ不思議な鶏と見える、といったものだ。また、それだけではなく、自分自身の意のままに認識する事も可能である。
「オリガ、これで消せるぞ!」
「分かったわ」
しかし、石松が邪魔に入る。
「させぬ!」
石松がオリガに刀を向けて妨害する。
「山田かよ子。某の刀の力を借りよ!」
「う、うん!」
かよ子は石松の刀に杖を向けた。かよ子の杖が刀に変わる。
「この男にかかれ!」
「わ、分かった!!」
かよ子は兎に角石松の言葉に従うことにした。
「させるか!」
丸岡はかよ子に向けて発砲する。その時、ブー太郎が水の石の力を行使して丸山を水圧で押し流した。かよ子は構わず刀を丸岡に振り下ろす。だが、丸岡を斬る事ができない。
「・・・え?」
「悪いが俺は『認識』だけではなく『矛盾』についての術も会得している。つまり本当なら俺は刀で斬られるが、頭の中で矛盾を作り出す事によってお前の刀は俺を斬る事ができないようにする事ができる。簡単に言えばできる事をできなくさせるという事だ」
かよ子は丸岡のあまりにも反則的な能力に何も言えなかった。
「杉山、何だ、アイツの能力?」
「ああ、あまりにもふざけすぎているぜ」
「大野君、杉山君!オイラとさくらであの男を止めるブー!」
「私も手伝うよ・・・!」
「ありがとう、すみ子ちゃん!」
「分かった、俺達は女の方を何とかする!」
「大野、杉山、俺達も手伝うぜ!」
「ああ、サンキュー!」
山口と川村は大野杉山に加勢した。
「ヤス太郎、お前はすみ子達を手伝え!」
川村はヤス太郎に命じる。
「はいでやんす!」
「おにいちゃん、みんなたたかってくれてるね・・・」
「ああ、でも・・・」
長山は自分や妹、そしてかよ子を護ろうと動いている皆に感謝したが、恩を返していないと感じていた。
「僕もこうして見ているだけじゃいけない・・・!!」
後書き
次回は・・・
「認識と矛盾の脅威」
丸山、オリガとの闘いを続けるかよ子達。かよ子にまる子、ブー太郎、すみ子、ヤス太郎が相手にする丸山の認識術・矛盾術はどちらも手強く・・・。
22 認識と矛盾の脅威
前書き
《前回》
かよ子と長山、オリガと丸岡との闘いに森の石松、隣町の学校の組織「義元」、そして杉山達組織「次郎長」が加わった。三河口と北勢田もたどり着き、戦闘の準備を行う。かよ子達は長山を守る事ができるのか!?
三河口と北勢田は小学生達の奮闘を見守る。
「北勢田、どうだ、あの子達を見て。やられているように見えるか?」
「いや、全く見えない。寧ろ感謝したくなるくらいだよ。俺達の出番、いらないかな」
「だが、この戦いは非常に激しいものになる。俺達も支度を忘れんようにしないとな」
「ああ、分かってる」
かよ子は丸岡を相手に立つ。まる子、ブー太郎、すみ子、そしてヤス太郎も加勢した。
「やい、お前!さっさとこの町から出ていけブー!」
「ふん、簡単に出て行けるわけがなかろう。清水にはいい材料がそろってんだからな。できればお前らも俺達の為に動いてくれれば光栄だがな」
「バカ言ってじゃないよお!かよちゃんをこんな目にしてえ!!」
「だが、この山田かよ子は凡人とは明らかに違う能力を宿している。さっきのオリガの瞬殺攻撃が効かなかったんだからな」
「でも、私は・・・!!」
かよ子は言葉に詰まった。途中、何を言おうとしていたのか。
「・・・ただのおっちょこちょいだよ・・・!!」
「そうだな。それはお前の持っている能力の代償とも言えるものだ。お前のその杖を使いこなせるのだからな」
かよ子は丸岡の言葉からなぜ自分がこの杖を使用しているのかを一瞬顧みた。この杖の説明書たる本の文字は普通の人間では分からないものだった。だが、かよ子はその文字を読めた。そしてこの杖を使用している。もしあの文字が読めなかったらここで戦う事もできず、この杖もただの棒でしかない。
「この杖の事を知ってるの?」
「ああ、俺には分かる。その杖が平和を望む者が使用するためにあるものだからな。それにお前らが持ってるその石やパチンコ、銃もそうだ。だが、それではこの日本は弱体化の一途を辿る事になる。それを今すぐ捨てろ!!」
「お前の命令なんか聞かないでやんす!」
「なら力づくでお前ら諸共倒す!」
丸岡は頭の中でかよ子達が立っている地面を見てすぐにそこに底なしの穴ができて皆落下死する事を思い浮かべた。そして現実化させた。かよ子、まる子、ブー太郎、ヤス太郎、すみ子は急に足元に落とし穴ができて下に落ちた。
「あああああああああああーーーーーーーーー!!」
皆の悲鳴がこだましてそして消えた。
「あっけなく終わったか・・・」
丸岡は長山に接近する。
「さあ、長山治!!俺の仲間になれ!」
「い、嫌だ!!」
「無駄だ。俺の認識術でお前は俺の仲間にならなければいけないという気持ちになる」
丸岡は頭の中でこの博識な少年が自分の仲間になるといい事が起きると思わせるよう想像した。そして長山は丸岡の思う通りにされる。
「わ、わかった。仲間になるよ。何でもするよ・・・」
その時、小春が止めに入った。
「おにいちゃん、いやだ、こはるをおいていかないで・・・!!」
「小春・・・」
だが、長山は行こうとしてしまう。
「でも、お兄ちゃんはこの世界を変える為にあの人と一緒に行かなきゃいけないんだ」
「いやだ、いやだよ・・・!!」
丸岡は己の計画が成功に近づいたと実感したた途端、急に体の近くで爆発が起き、吹き飛ばされた。
(な、何だ!!)
「簡単に長山君は渡さないよ・・・!」
山田かよ子の声がした。丸岡は吹き飛ばされた衝撃の痛みに耐えながら必死で後ろを振り向く。そこに先ほど地の中に落としたはずのかよ子達がいた。
三河口はかよ子達が地中へと姿を消していく姿を見た。
「北勢田、おばさんから貰ったお守り使うぞ!」
「え!?あ、ああ・・・!!」
三河口と北勢田は三河口の叔母から貰ったお守りを取り出した。
「な、何で、お、お前らが・・・!!」
丸岡は先ほど地中に入れたはずのかよ子達がその場にいて驚いた。
「落ちた時に急に止まってね、それでヤス太郎君の浮き玉で浮いて戻って来たんだよ!なんで止まったかは私達にも分からないけど・・・」
「それでオイラの火薬玉で爆発させたのでやんす!!」
その時、長山は我に返った。
「い、一体、僕は何を・・・」
「おにいちゃん・・・!!」
小春は泣きながら兄にすり寄った。
「こ、この野郎・・・!!」
一方、大野、杉山、山口、川村はオリガを相手としていた。
「君達、オリガは一瞬で人を殺せてしまうんだ!目に見えないようにした方がいい!」
「なら俺が行くぜ!」
川村はバズーカを発砲した。周囲が煙に包まれる。オリガは再び彼らの姿を見失った。指を鳴らしても狙いが定まったのかさえ分からない。
(ど、どこにいるのかしら・・・?)
その時、蔓が伸びてきてオリガの体に巻き付き、目隠しされた。
「相手が見えなきゃ殺せねえよな」
一人の少年の声がした。大野が草の石の力で蔓を操っていたのだ。もちろんオリガには大野がどこにいるか分からなかった為、オリガ自身はその攻撃を防ぐことはできなかった。
「よし、これでとどめだ!!」
山口が矢を放つ。その矢は毒矢としてオリガの背中に刺さった。オリガは自分自身の力が抜けていくように体が弱くなっていくことに気付いた。
「オリガ・・・!!」
丸岡はオリガがやられる所に気付き、オリガは不死身の体であると周囲に認識させるようにした。すると、オリガはくたばる事はなかった。
(丸岡の認識術ではオリガも丸岡もどっちも倒せない・・・!!)
長山はどうすべきなのか考えた。その時、先程の自分が催眠術を掛けられたかのように丸岡の仲間になる要求に従う事になっていきそうになった事を振り返った。そこで丸岡がヤス太郎の火薬玉の衝撃にやられた時、その認識術が途切れた事に気がついた。
(そうだ、途中で不意打ちをすれば・・・!!)
長山は攻略法を見つける事ができた。
後書き
次回は・・・
「イチかバチかの隙狙い」
丸岡やオリガの弱点に気付いた長山。かよ子達はオリガ、そして丸岡を上手く倒す事ができるのか。そして、その決着が着いた時、二人の高校生が裁きを下す・・・。
23 イチかバチかの隙狙い
前書き
《前回》
丸岡修にオリガとの闘いは続く。オリガの一瞬で生物を殺める能力と丸岡の思いのままに認識し、どんな行為にも矛盾を発生させる能力に苦戦するかよ子達。そんな時、長山が攻略法を見出したようで・・・!?
三河口と北勢田は御守の力を行使した。
「さすが、おばさんのお守りが効いたよ」
「何が起きたんだよ?」
北勢田には何が起きたのかさっぱり解らなかった。
「ああ、奴が地面に穴作ってかよちゃん達を落とした時、この御守がそれを途中で止めたんだよ。このままだとあの子達は地球の内部へ落ちて二度と戻れなくなる所だった」
「そうだったのか」
「そろそろ御守の他の能力を行使しよう」
「他の能力ってどんな物だよ?」
「『あいつら』を抑える事さ。かなりの強敵だからその分、体力にも負荷がかかるぞ。覚悟はいいか?」
「ああ、もちろんいいさ」
長山は先程の丸岡のしくじりで思いついた。丸岡が認識術を発動させない所を狙えばいい。だが、丸岡もオリガと同様、簡単にそれは狙いにくい。丸岡は隙を見せる事がないし、彼自身も隙を突かれないような対策をしている筈である。
(そうだ!!)
長山は最後の手段を思いついた。だが、それは非常に危険すぎる。失敗する可能性の方が高い。だが、一か八かでやるしかない。
かよ子は丸岡を妨害しようと策はないかと考えた。
「ちょっと、このお!燃やしてやるよお!!」
まる子が炎の石の力を行使した。炎が丸山を襲う。だが、丸岡は矛盾術を使う。人間は普通炎に当たると体は燃えてしまうのだが、丸岡は自身の能力で燃える事はなかった。
「何無駄な事を。俺の認識術と矛盾術は簡単に破れんぞ。お前らに勝ち目はない!!」
その時だった。丸岡は誰かに突き飛ばされた。
「あ、な、長山君!!」
かよ子は長山が丸岡に体当たりして来たのを目撃した。
「この、やめろ!」
「こいつ、ナメたマネを!」
丸岡は認識術でもう一度、長山を己が物にしようと認識術を行使した。しかし、今度は何故か効かなかった。
「な、何故だ!?」
そしてオリガにもかけた認識術が弱まっていく。オリガが山口の毒矢によって再び弱まっていく。
「う、う」
「オリガ!」
「さくら、こいつを燃やせ!!」
「うん!!」
まる子は大野に言われて炎の石の能力を行使し、オリガに火炎放射した。
「こ、これでやられる訳にはいかないわ」
オリガは己の力でまる子の火炎放射から防ぐ。だが、石松が刀をその炎かざし、別方向から刀についた炎をオリガに向けて切り込みに行った。
「なんの・・・。これでやられるわけないわよ。真正面からの攻撃は私には効かないのだから」
だが、その時、かよ子もまた己の杖を石松の刀にについた炎に向け、炎の能力を手に入れて、また別方向からオリガに向けて炎を放っっていた。
「え・・・?あ、あああーーー!!」
オリガは熱さで苦しむ。だが、皆の攻撃は続く。そしてオリガは燃えつきた。炎が燃え尽きると、オリガの焼死体はなく、代わりに光の粉が出て天へと昇って行った。前にかよ子が杉山と大野と共に倒したアレクサンドルとアンナの兄妹と同じように。
「こ、こいつら・・・!!」
丸岡はオリガを失った為か冷静さを失った。先ほどのオリガにはいかなる攻撃も一切通用しなくなるう認識術がいつの間にか効かなくなり、それどころか自身の能力がいつの間にか無効化されたた為ある。それも誰によってなのか。あの子供達に自身の力を無効化できるはずがない。では一体誰がやったのか。
「さて、次はお前の番だな」
杉山は丸岡を睨む。それに続いてその場にいる皆が丸岡を睨んだ。丸岡はこれでは蜂の巣の中にいるような状態と見て己の目的だった長山の奪取もこれ以上実行しようとはしなかった。
「くそ、なぜ俺の能力が破れたのかは知らんが、覚えてろ!!」
丸山岡は情けなくこの場を走り去った。
「この野郎!」
杉山は雷の石の力を行使しようとする。しかし、石松がそれを止めた。
「待て、杉山さとし」
「何で止めんだよ、石松!?このまま見逃したらまた何かして来るかもしれねえぞ!!」
「ならん、あやつはオリガと違ってこの世の人間だ!ここで奴も殺めたらお主が裁かれてしまうぞ!」
「く、くそ!!」
「それにあやつは今はこれ以上は攻める事はできん。また来たるその時にまた懲らしめればよい。如何にせよ、あの長山治とその妹の長山小春を守る事ができたのだからな」
長山とその妹が来た。
「皆、ありがとう。そして貴方は一体?」
「某は森の石松。お主の友に力を分け与えた者だ。この四人が持つ石はまさにそれである。そしてこの者達が持つ武器も平和を主義とする者から貰った物である」
「山田の杖は・・・?」
「山田かよ子の杖も平和を主義とする世界からの物だ。だが、この世界が異世界がぶつかり合う前から持っていたようだが」
「うん、元々はお母さんが持っていたんだ・・・」
「そうか、お主の母上が持っていたのも気になるな」
「うん、今度聞いてみるよ」
「皆の者、大健闘ご苦労だった。各々の家に帰るとよい」
「でも、丸岡が待ち伏せして襲ってくる可能性はないのか?」
杉山が聞いた。
「それはなかろう。お主らによって丸岡修の計画は潰れたのだからな。今の奴も能力は使えまい」
「でも丸岡の能力はとても強力じゃないの?」
「もしかして僕が丸岡に体当たりして邪魔したからかい?」
「いや、それだけで奴の能力が弱体化したわけではない。他の者がどうやら弱体化させたらしいな」
「誰なんだろう?」
三河口と北勢田は御守りの力を最大限に行使した。だが、体力をかなり持って行かれたために、二人共体がへろへろでしゃがみ込んだ。
「何とか、やったな・・・」
「ああ、あの男も尻尾を巻きやがったぜ。北勢田、追いかけるか?」
「ああ、俺の手でボコボコにするよ!」
丸岡はまさかの敗走に心を取り乱した。計画は失敗し、オリガは倒され、そして自身の能力がなぜか無効化された。最も気になる事がなぜ簡単に破れるはずがない己の能力がなぜ敗れたのか。その時・・・。
「よお、何でお前の能力が無効化されたか知ってるか?」
後ろから声がした。
「な、何だ、お前ら!?」
丸岡は振り向くと、二名の高校生くらいの男子がいた。
「俺は三河口健。凡人と違う能力を持って皆から嫌われ、この静岡県の清水に逃げてきたクズ野郎だよ」
「おめえの能力はこの御守りで潰してやったぜ!」
北勢田は三河口の叔母から貰った御守りを丸山に見せた。
「この野郎・・・!!」
「こいつは近所の子がお前にさらわれると知ってブチ切れてるぜ」
「こ、この・・・」
丸岡はその御守りで自身の能力は無効化されないという認識術や御守りで無効化される事が上手くいかないようにする矛盾術を試行した。
「この御守りはお前の認識術も矛盾術もそのものをなしにしちまうからどう設定したって無駄だぜ」
「くそ!!」
丸岡はピストルを取り出しで二人のお頭に穴を開けようとした。だが、その前に北勢田が走って近づいて丸岡に飛び掛かって左頬を殴った。
「調子のんじゃねえぞ!!」
続いて三河口が歩いて迫る。丸岡は発砲した。しかし、弾は三河口を撥ね返し、丸岡を狙う。丸岡の手首に当たった。
「俺に悪意を持たせた奴には天罰がくだるのがオチだ。お前はどんな仕返しを喰らうか知らんよ」
その時、丸岡は急に吹き飛ばされた。そして清水市から隣の静岡市へと飛び、電柱に背中をぶつけて住宅街の路地に落下していった。
後書き
次回は・・・
「動き出す者達」
オリガは倒し、丸岡は清水から追い出された。かよ子は今後の清水の未来が脅かされ続ける事に懸念を続ける。そして丸岡のいる『組織』では、新たなる動きが・・・。
24 動き出す者達
前書き
《前回》
長山や組織「次郎長」、「義元」、そして森の石松の協力もあり、かよ子は何とか異世界の人物・オリガを撃破する。計画が潰された丸岡はその場から逃げるも、陰でかよ子達の助太刀をしていた高校生男子・三河口と北勢田によってさらなる制裁を喰らったのだった!!
かよ子達はまた敵が現れたら共闘する約束をして解散した。
(でも、あの丸岡の能力も無効化は一体誰がやったんだろう?)
そしてかよ子はまたもう一つ、己が所持する魔法の杖は一体何なのか、今度母に聞いてみようと考えた。
長山は妹と帰る。
「二人共、無事だったか?」
「あ、むかいのおにいちゃん・・・!!」
「もしかして、知ってたのかい!?」
「ああ、気になって見に行ったんだ。あの野郎は俺が叩きのめしといたよ」
「あ、ありがとう」
三人は帰っていった。
三河口は帰宅後、叔母の奈美子に例の御守を返還した。
「おばさん、この御守、凄く役に立ちました」
「やっぱりね」
「でも、どうしてこの御守には相手の能力を封じる能力があるのでしょうか?」
「それはね、富士山を祀る富士宮神社の御守なんよ。富士山の強大な力が入ってるんよ」
「そうですか、富士山の神様はとても強いんと改めて気づきました。それから」
三河口は報告を続ける。
「かよちゃん達が戦っていた相手はオリガとかいう異世界から来た女でもう一人は丸岡修という男でした。この名前、どこかで聞いた事ありますか?」
「マルオカオサム・・・?」
奈美子はその名前を聞いてはっとした。
すみ子はこれが異世界からの敵との決闘だと思うと改めて心臓が震えた。だが、震えているばかりではいけない。もっと自分も戦力にならなければ自分は生き残れず、そしてこの清水の未来が無くなってしまう。絶対に強くなると決めた。
すみ子は翌日学校に向かうと、また感じる。この清水だけでなく、学校の友達も。そして今ここに生きている自分も。絶対に守ると。
「すみ子ちゃーん!」
同じクラスの女子の友達と出会う。
「あ、おはよう!」
すみ子はその友達と学校へ急ぐのであった。
かよ子は学校へと歩く。そしていつものおっちょこちょいが始まった。歩道橋の階段で躓き、転びそうになってしまったのだ。
(はあ、相変わらずのおっちょこちょいだよ・・・)
かよ子は己を情けなく思いながら再び学校へと向かう。途中で長山とその妹小春に出会った。
「あ、山田、おはよう!」
「おはよう・・・」
「あ、長山君、小春ちゃん!おはよう!」
「山田、昨日はありがとう」
「う、ううん、長山君も活躍してたよ!」
「いやあ、でも、君のその魔法の杖、凄い能力があるんだね」
「うん、様々な物質に向けると向けた物質と似たような能力が持てるんだ。火とかを向ければ炎を操れるし、剣とか刃物に向ければ剣に変身するんだよ。今度また敵が来たらいつでもこれを使って戦う事にしたんだ」
「うん、僕も絶対に山田ならやっていけるよ」
「でも、まだおっちょこちょいしてるんだ。昨日も杉山君達やすみ子ちゃん達隣町の子が来てくれなかったらきっとすぐに丸岡やオリガに倒されてたと思うんだ。前に学校に二人組の兄弟が来た時も杉山君と大野君が協力があって倒したんだよ。まだまだ一人じゃ心細いよ・・・」
「そうか、でも君ならきっとこの未来を守れるよ。僕はそう思うよ」
「ありがとう。あの、こんな事頼んじゃ利用してるようで悪いって思うんだけど、昨日は長山君にも助けて貰ったし、もしなんかあったら長山君にも協力、お願いしていいかな?」
「え?ああ、いいよ。僕もこの謎が気になっていたからね。僕を利用しようとした丸山はこの日本を戦争中の頃、つまり軍事力を持っていた頃に戻そうとしている。それで異世界の人間を連れて来て協力してその目的を達成しようとしているんだ。もしかしたらいつか前の地震みたいな現象も異世界とこの世界がぶつかり合ってそれで異世界の人間が来るようになったんだと僕は思うんだ」
「うん、そうかもしれないね」
「僕からも是非君と協力するよ」
「ありがとう、長山君!」
かよ子は共闘できる仲間を増やした。そして長山もまたこの元の日々を取り戻す為、そして丸岡達の目的や異世界と繋がった謎を解き明かす為に闘い続けようと決意した。
石松は組織「次郎長」が造った秘密基地のある丘から清水市の街並みや海を臨む。
(あの丸岡修という者・・・。あやつは確か異国で暴れている組織のもの・・・。まさか、この日本を破滅に導くつもりか・・・?)
石松は考える。自分や親分の次郎長が生きてきたこの清水を利用してこの地球にどのような異変を起こすつもりなのか・・・。
清水市内のとある高校。三河口と北勢田は昨日の事でお互い労い合っていた。
「北勢田、今日、お宅の向かいの兄妹は元気に学校へ行ったかい?」
「ああ、なんとかね」
「それにしても昨日の丸岡って奴なんだが、おばさんに聞いてみたらな・・・」
三河口は言葉を続ける。丸岡が属する組織の名前を口にすると、北勢田は息を呑んだ。
「そんな奴が清水に来たってわけか!?」
「ああ、これからまた戦う事になるだろうな」
数日後、中東のある国とある建物。丸岡のいる組織の根城としている建物である。
「全く、丸岡、小学生相手に何しくじってんだよ。房子さんも少し呆れ気味だったぞ」
「日高、すまんな、だが、これで分かった事が一つあるんだ」
「何が分かったんだよ?」
「静岡の清水って所には俺達が呼び寄せた異世界とは別の世界とつながっているという事だ。その世界の武器を持っている奴らがいたからな」
「というと?」
「あそこを攻めるにはかなり大変ではあるが、その分撃ち落としがいがあるという事だ。作戦を立て直さんとな」
丸岡の属する組織は本格的な清水の襲撃に動き出す。そこに住む魔法の杖を持つ小学生の女子や、凡人とは違う為に清水へ逃げたという高校生の男子、そして森の石松から力を貰った小学生達を粛清させる為に・・・。
後書き
次回は・・・
「かよ子の母、山田まき子」
ある日、かよ子は母に異世界の杖をなぜ所持していたのか、そしていつ、どこでそれを手に入れたのかを質問しようとする。母・まき子は隣に住むおばさんやその甥も集合し、その杖についての話をする・・・。
25 かよ子の母、山田まき子
前書き
《前回》
オリガに勝利し、丸岡を追い払ったかよ子達は再びいつもの生活を再開する。そしてかよ子はこれからの闘いの仲間を増やした。そして丸岡は自身の属する組織にて作戦を立て直し始める・・・。
今回からはかよちゃんの持つ杖にまつわる話を取り上げたいと思います。ちなみにかよちゃんが持つ杖の「何かの物質に杖を向けると向けたものに関する能力を得る」というのはゲーム「星のカービィ」のカービィの吸い込みによるコピー能力からヒントを得ました。
梅雨どきだから雨は降り続ける。しかし、珍しくこの日は晴れていた。かよ子は学校からの帰り道、道路に所々にある水溜まりをよけながら、まる子、たまえ、そしてとし子の四人で帰っていた。
「かよちゃ〜ん、水溜り踏んで靴濡らさないよ・・・、う・・・」
そう言ったまる子が水溜りの上をバシャっと言って自分の靴と靴下を濡らしてしまった。
「ま、まるちゃんも気をつけないと・・・」
たまえが気弱そうに忠告した。
「うん、アタシもおっちょこちょいなの忘れてたよ~」
「そういえばさあ」
とし子が話題を変える。
「かよちゃん、この前長山君を悪い人達から守ったんだってね、すごいよ。ちょっとは変わったんじゃないかな?」
「うん、でも、あの時は長山君にも助けられたし、それに、一人は取り逃がしちゃったからまたいつ襲ってくるかわかんないよ・・・」
「そうだね、用心しなくちゃね」
「でも杉山君も凄い関心してたよお~」
かよ子は好きな男子の名前を言われて赤面した。
「で、でも、杉山君にも助けて貰ったし・・・」
「でも、かよちゃん、杉山君にもいいところアピールできてるよ!」
たまえが励ました。
「う、うん、ありがとう、たまちゃん」
かよ子はやがて三人と別れ、家に着いた。
かよ子は家に帰ると忘れないようにと思い、宿題に取り掛かった。宿題のプリントを学校に置いてきていなくて持ち帰っていた事はおっちょこちょいの自分にとっては非常にホッとする事であった。15分ほどかけて宿題を終え、かよ子は下の階に降りた。母が彼女を呼ぶ。
「かよ子」
「あ、お母さん、今宿題終わったよ」
「そう、じゃ、今日は隣のおばさんも呼んでる予定なの」
「え?どうして?」
「ちょっと話をしようと思ってね」
ちょうどその時、インターホンがなった。
「あら、噂をすれば」
かよ子の母は玄関へと行った。
「まきちゃん、来たよ〜」
隣のおばさんはかよ子の母の名が「まき子」と言う為、彼女の事は「まきちゃん」と呼んでいた。
「奈美子さん、健ちゃんもお上がりになって」
(え、隣のお兄ちゃんも来てるの?)
かよ子はなぜおばさんの甥も来るとは予想しなかった。彼も呼ぶ事が必要なくらいの話をするのだろうか?
「や、かよちゃん。手ぶらじゃなんだからケーキ持ってきたよん」
隣のおばさんと甥の三河口が入ってきた。
「おばさん、ありがとう」
そして母も一緒に戻ってくる。
「それじゃ、話を始めましょうか」
「ところで、話ってどんなの?」
「それはね、かよ子に渡したあの杖の事よ」
「私の杖?」
「そうよ。あれはかよちゃんのお母さんが元々使ってたんよ」
「おばさんもお兄ちゃんも知ってたんだ・・・」
「うん、俺にもその話は知ってるし、かよちゃんの活躍も聞いてるよ。アレクサンドルとアンナの兄妹との決闘、秘密基地争奪戦の鎮圧、丸岡修の長山君拉致の阻止・・・。あの兄妹との決闘は隣で見てたし、秘密基地の取り合いについてはすみ子って子の兄貴と同級生だから遠くから見てたよ。丸岡についても長山君って子の近所に住んでる知り合いが俺のさらに別の同級生がめちゃくちゃ怒ってたからさ、その戦いの様子を見てたんだ。君達が丸岡の落とし穴に落ちた時は・・・」
三河口はポケットから一つの御守を取り出した。
「このおばさんの御守で地底まで落ちるのを止めたんだ。その後、丸岡の認識術と矛盾術を無力化させてかよちゃん達はオリガを倒し、逃げた丸岡を俺とその同級生の二人でぶっ飛ばしたわけだよ」
「そうだったの!?」
「うん、ごめんな、もっと近くで助けてやれなくて。実は俺にも『能力』があってね。それもとても強力すぎるからあまり使わないようにしてんだ。あの時は丸岡を遠くにふっとばしたからね。あれでも手加減したつもりだが・・・」
「え・・・?」
かよ子は三河口にも自分が魔法の杖の説明書を解読できたり、オリガの相手の肉体をバラバラにして瞬殺するのを防ぐような謎の能力が備わっているのかと疑った。
「まあ、俺の話はまた今度話すよ。今日は君のお母さんとそのかよちゃんの杖の話を聞きに来たからね」
かよ子の母は紅茶とおばさんが持って来たケーキを準備を終え、話を始めた。
「それでお母さん、この杖はいつから持ってたの?」
「そうね、かよ子と同じ小学生の頃からだったわね・・・」
「そうだったね。あの時は戦争が終わったころだったね」
まき子も奈美子も当時の苦悩を思い出していた。
「戦争か・・・」
戦後生まれのかよ子にも三河口にも戦中、そして終戦直後の明日の見えないような辛酸を味わった事がない。しかし、かよ子の母も三河口の叔母も思い出すだけで暗くなり、苦しく、そして辛く思い出すほど自分達にも戦争の恐怖や苦渋が伝わっていくのであった。
「ああ、ごめんね。二人とも」
「いえ、お気になさらず、戦争っていうのがとても恐ろしいものだというのが改めて分かりましたからね、にも関わらず、『あいつら』はまた始めようとするんですから・・・」
「そうね、戦争が終わって日本が負けてから大変だったわ。特に食料が足りなくて、あの頃は米軍が憎らしくて、私達も米軍のジープが通りかかる度にいつ酷い事されるか分からなかったわ。ある時、お腹が減って歩き疲れた時、ジープが通りかかって来てアメリカ兵が降りてきて私に近づいてきて連れ去られると思ったけど、チョコレートをくれたのよ。アメリカの人は怖い人ばかりじゃないってあの時分かったわ」
「ちょっとまきちゃん、杖の話から逸れてるよ」
奈美子が突っ込んだ。
「ああ、そうだったわね。あの杖は・・・」
まき子は続ける。
「食糧不足で悩んでいた時に、異世界の人から貰ったのよ」
後書き
次回は・・・
「家を失くした少女」
終戦直後の物資不足の日本、かよ子の母・まき子は家を空襲で破壊され、ひもじい思いをしながら明日の見えない日々を過ごしていた。食料を見つけようと歩き回り、彼女が出会ったのは・・・。
26 家を失くした少女
前書き
《前回》
梅雨時に珍しく晴れた日、かよ子の母・まき子はかよ子、隣に住むおばさん・羽柴奈美子とその甥・三河口に娘に渡した不思議な杖についての話を始めようとする。その杖は終戦直後に異世界の人間から貰った物だと明かすのであった!!
(異世界から貰った物・・・!!そういえば前にフローレンスさんと会った時もそう言ってたし、私には不思議な能力があるって言ってた・・・!!)
かよ子は以前平和の為に動いている異世界からの女性・フローレンスに会った時の事を思い出した。
(戦争が終わった後の時も異世界と繋がっていたのかな?)
かよ子はそれを気にしながら母の話を聞く事にした。
1945年8月の終戦、日本は負けた。米軍の空襲で都市部は破壊されつくした。当時の姓は北条だった為、北条まき子と名乗っていた頃の山田まき子は何とか家族と共に戦火から逃れようと走り続けた為か、何とか生き延びた。しかし、家は焼け崩れてしまった。それからは常に外にいるような状態で何もできなかった。何もかも失くしてしまった。大事な教科書も、読んでいた本も、隠し持っていたお菓子も・・・。食べ物など入手困難で、飢えをどうしのごうか苦労したものである。沢山水を飲むなどしたものである。
(いつになったら食べられるの・・・?元の生活に戻れるも・・・?)
先の見えない中、まき子は食べ物を探そうと歩き続けていた。食料の配給が再開しても食糧不足の為、配給が遅れる事の方が多く、配給など当てにならなかった。魚や貝でも獲ろうかと思い、海に出てみたが、見つからない。そんな時、まき子は一人の年上の女子と出会った。
「あれ、まき子ちゃん・・・?」
「もしかして、隣の奈美子お姉ちゃん・・・?生きていたんだ!!」
隣に住んでいた奈美子に出会った。空襲の際、どこに逃げていたか不明だったが、生き延びていたのだ。
「いやあ~、まき子ちゃんも生きてて良かったよ」
「うん!でも、どうしてたの?」
「貝とか魚とか探して食べようかと思ってたんだけど、なかなか見つからないし、釣れないし・・・」
「私もだよ。日本が負けたからかな。アメリカに港とか取られちゃったし・・・」
「うん・・・」
二人は諦めて帰ろうとした。
「まき子ちゃん、海がダメなら山行ってみない?」
「そうだね・・・」
二人は山の方へと向かう。何か木の実があればいいと思ったが、そこにも見つからない。
「はあ、お腹すいたな・・・」
何も食べられるような物が見つからず、二人は諦めて帰ろうとした。その時・・・。
「貴女達」
どこからか女性の声がした。
「え!?」
二人は誰かいるのかと思い、見回したが、そこには姿は見えなかった。
「私はそこにはおりません。貴女達は今、ひもじき思いを成されている。そうでしょう?」
「そ、そうです」
奈美子はとりあえず返答した。
「私は三穂津姫。富士山・御穂の神です。貴女方をお助けする為にお呼びしました。御穂神社の所へお行きなさい。そこに貴女達をお助けできる『もの』がございます。では」
それ以上は謎の声は聞こえなかった。
「奈美子ちゃん、どうしよう?」
「とにかく、言われた通り、御穂神社に行ってみよう」
二人は御穂神社へと向かった。
まき子と奈美子は御穂神社の焼け跡に辿り着いた。ここは何とか戦火を免れており、鳥居も、社殿もそのままだった。
「それにしてもこんな所に何があるんかね?」
「うん、でもここに私達を助けてくれるものがあるっていうし」
「かつがれただけじゃないの?あの声ももしかしたら誰かの悪戯だったりして」
「う、う〜ん」
「いいえ、私は貴女方を騙してはいません」
先程と同じ声がした。二人は周りを見回すと、上から一人の女性が舞い降りてきた。二人は天女かと一瞬思った。
「私こそが貴女方をお呼びしました、です。貴女方は只今相当な苦労をしておられる。ですが、私なら貴女方の今の状態を変える事ができる物があります」
「今の状態を変える物?それってどこにあるの?」
「あの神馬の所にございます。あちらにある杖と護符がまさにそれです」
三穂津姫が指を指した方を見ると確かにその神馬に杖と護符あった。
「それは平和を願おうとする世界から贈られた杖と護符。北条まき子さん、貴女はこちらを、三河口奈美子さん、貴女はこの護符をお持ちなさい」
二人は三穂津姫から言われた通りに杖と護符を手にした。
「これにはどんな意味があるの?」
まき子は質問する。
「貴女が持つ杖は様々な物に向ければその物を型取る言葉ができます。例えば炎に杖を向ければ炎を操る事ができ、風が吹いている時に杖を出せば竜巻を作ったりなどの風を操る事ができます。説明書もお付けしましたのでお読みになられてください」
「じゃあ、これは?」
奈美子が続けて質問する。
「貴女のその護符は富士山のが込められたものです。何か苦痛な事に耐えられぬ時が訪れた時、その護符は必要な、あるいは役立つ物を授けたり、それがある場所へと導きます」
「凄いねえ!」
「但し、単なる私利私欲には効果がありませんのでお気をつけてください。説明書もございます」
御穂の神は説明を続ける。
「今のような苦痛の時期には大いに役立つはずでしょう。しかし、貴女方の生活が安泰になってきた時無闇に使うと天罰が下ります。ではよく考えてお使いになられてください。では」
三穂津姫は天に昇って姿を消した。
「これ、慎重に使わなきゃね、まきちゃん」
「うん」
「これで食べ物でも出せればなあ〜」
奈美子は呑気な事を考えた。その時、奈美子の護符が光りだした。
「え!?」
二人は驚いた。護符は奈美子の手を離れ、海の方へと向かった。
「お、お〜い!」
二人は護符を追いかけた。海の前で護符が止まった。そこから二人の所に魚が飛んできた。魚はマグロだった。
「うわあ、マグロだ!見るの久しぶりだよ!」
「その護符のお陰だね!」
二人はマグロを一匹ずつ、持ち帰るのだった。
後書き
次回は・・・
「久しき食事」
かよ子の母、まき子の思い出話は続く。まき子は持ち帰ったマグロについて、いい料理ができないか考えた所、三穂津姫から貰った杖を利用する事を考える・・・。
27 久しき食事
前書き
《前回》
終戦直後、かよ子の母・まき子とその知り合いの女性・奈美子は食料を探していた。そんな時、二人は御穂津姫の声を聞き、言葉通りに御穂神社に向かうと、不思議な力を持つ杖と護符を手にする。奈美子はその護符の能力を行使すると二人は海からマグロを手に入れたのだった!
かよ子は母の話を聞いて母の苦渋を改めて知るのであった。
(そうだったんだ、普通の人なら信じられないと思ったけど、お母さんは終戦後にそんな経験をしてたんだね!)
三河口も愕然としていた。
「かよちゃんのお母さんが杖を、そしておばさんが護符を貰ったんですか」
「そうだよ。あの富士神社の御守もあの護符の力が入っていたんよ」
富士神社の御守とは三河口がオリガや丸岡を撃退する際に使用していた御守の事である。
「それで、お母さんはその時、どう杖を使ったの?」
「その杖でマグロの料理を作るのに活かしたのよ」
まき子は話を続けた。
まき子は奈美子と別れ、マグロを両親の所へ持っていった。
「只今〜」
「あら、まき子、お帰り。あら、マグロじゃない!」
「うん!」
「まき子、その杖は何だ?」
父が聞いた。
「ああ、これ、不思議な杖なんだ。信じられないと思うけど御穂神社に行って神様みたいな人から貰ったんだよ」
「それは何に使えるの?」
「ええと、一緒に使い方を書いた本が書かれてあるんだ」
まき子は本を開いた。しかし、文字は見た事もないもので仮名でもアルファベットでもない。
「まき子、貴女かつがれたんじゃないの?返しに行った方がいいんじゃない?」
「そんな、あれ・・・?」
まき子は改めて本を見る。すると、見慣れない文字が自分には読めるようになっていた。
「じ、字が読める?」
「え?」
「ちょっと待って」
まき子は本をめくって他のページを開いてみた。そして、一つの項目に目をつけた。
【料理の道具に杖を向ければ、様々な料理を一瞬で作る事ができる】
「お母さん、何か料理道具は?」
「そうね、ここに鍋ならあるけど」
「うん、ありがとう」
まき子は古びた鍋に向けて杖を向けた。鍋がその時、光りだし、マグロが鍋に吸い込まれるように動き出した。
「な、何が始まるんだ?」
三人は目を丸くして鍋の様子を見た。鍋は少ししてマグロの刺身を出した。
「す、凄い!魔法の鍋だ!」
「いや、杖が鍋に魔法をかけたんだ!」
三人は感激した。母は刺身を別の器に移した。
「これでご飯やお味噌汁があればいいのにね」
母はそう言うと、鍋は茶碗に入った白米のご飯を三膳出した。
「す、凄いね!」
三人はご飯を取り出すと鍋は次は味噌汁を出した。
「凄いわね、お母さんこんなご馳走久しぶりだわ」
「うん!」
三人は久々の食事を大いに楽しんだ。あの時のマグロの味は今でも忘れられない。食べ終わると鍋が出した食器は消え、鍋は自動洗浄され、再び元の鍋に戻った。
まき子はこの杖を幾度か頼りにした。料理の時以外にもどう使えるのか本を読んでみた。色々な事が書いてある。それも見た事もない字なのに読めるのだ。
翌日、まき子は奈美子と出会った。
「ええー!?鍋が魔法の鍋になって刺身にもなったの!?凄いな!家はマグロに芋って不釣り合いな組み合わせだったんよ〜!!」
奈美子は話を聞いて羨ましく思った。
「まあ、でも、食べられただけいいじゃん」
「まあ、芋はウチの弟が何とか手にしたんだけどね。そうだ、何か他にも食べられたらいいな」
奈美子は持っている護符に何かを感じた。すると、お金が70円ほど出てきたのだ。
「ご、護符がお金を出した」
「そうだ、奈美子ちゃん、市場行こうよ!アメリカ軍から残飯を分けてもらって配っている人がいるってお父さんが前にも言ってたんだ」
「じゃあ、行ってみるか」
二人は市場へと向かった。
市場、いわゆる「闇市」は賑わっていた。二人は入って商品を見ると、食品はあれど配給時の値段の何倍もの値段だった。普通の人ならまず買えない。
「色々あるね」
「うん、これだけあるならお米も買えるよ」
その時、急に騒ぎが起きた。
「かっぱらいだーーー!」
そこで商いをしている男性の一人の声だった。二人は周りを見回すと、その時、一人の少女とぶつかった。少女は髪を伸ばし、顔は煤で汚れていた。その少女は白米や肉の缶詰を手にしていた。少女は慌てて走り去った。
「あ!お金が!」
奈美子はその少女からお金をすられていた事に気づいた。そしてすぐ先程叫んだ男性が現れた。
「どこに行ったんだ?」
「あ、あの!」
まき子はその男性を呼び止めた。
「その子はあっちに行きました!」
まき子は少女がにげていった方向と反対側の方を指差した。
「よし、あんがとよ、孃ちゃん!」
男性は向かった。
(あの子、親を亡くしちゃったんだ、だから盗みをやるしか生き延びる方法がないんだね・・・)
「まき子ちゃん」
「え?」
「さっきあの子に、お金盗られた」
「ええ!?」
「どうしよう、何も買えなくなっちゃったよ」
しかし、護符の力なのか、すぐまた新しいお金が出てきて、奈美子のもんぺのポケットの中にそれらが貯まる感触を奈美子は感じた。
「あ、新しいお金」
「よかったね、きっと恵んでくれたんだよ!」
「うん、何を買おうか・・・?」
二人は何を買おうか悩んだ。その時、油と煮込み料理の臭いがした。並んで待っている人も多い。二人は店の看板を見てみると、そこには「安いシチュー」とあった。戦中から二人にとってはシチューというのは海軍の偉い人が食べるメニューというイメージで自分達には縁がないものだと思っており、折角だから口にしてみようかと思った。
「10円なら十分間に合うね。並ぼうか!」
「うん!」
二人はシチューの行列の最語尾に並んだ。やがて15分程してやっと自分達の番にありつけた。
「シチューお願いしまーす!」
「あいよ!」
店主はドラム缶から煮込んだシチューを器によそい、二人が座る席のカウンターに置いた。中には色々な具が入っていた。人参、玉ねぎ、グリーンピース、中にはスパゲッティやうどんの切れ端と思われる物、そして欠片としてだが肉も入っていた。
「色々入ってるね!」
「ああ、アメリカ軍の人が余った食材を分けてくれたもんでね」
二人は一見雑に入っているだけの煮込み料理に栄養の多さを感じ、平らげた時には人生で初めてといえるくらい満腹となっていた。
食べ終わった後、二人は白米の缶詰と肉の缶詰をお土産に買って市場を出た。
「これ持ち帰ったらお父さんとお母さん喜ぶよ!」
「そうね」
その時、二人の人物が揉めていた。一人は先ほど盗難被害に遭った市場の男性でもう一人は先ほどのかっぱらいの少女だった。
「こら、返せ!!」
「やだ、やだ、やだ!!」
まき子と奈美子はその様子を目撃した。
(あの子、さっきの子だ!!)
後書き
次回は・・・
「戦災孤児の苦悩」
戦災孤児の少女と出会ったまき子と奈美子はその少女を救い出す。だが、少女以外にも空襲で親兄弟を亡くした少年少女の多さの実情を目の当たりにし、二人は何かできないかと考える・・・。
28 戦災孤児の苦悩
前書き
《前回》
かよ子の母・まき子の話は続く。まき子は御穂津姫から貰った杖でマグロの料理を作り上げる。翌日、まき子と奈美子は闇市で残飯シチューを食べる。その後、市を出ると戦災孤児の少女が盗難をして掴まっていたのを目撃した!!
かよ子は親を亡くした子供もいた事を知って心が痛くなった。もし自分が両親を亡くしてしまったらどうやって生きていけるのだろうかと考えたくなった。
(そうか、お母さんはそれでもおじいちゃんもおばあちゃんも無事だったんだ・・・。たとえお腹が空いててもまだ幸せな方向だったんだね・・・)
「それで、その戦災孤児の子をどう助けたんですか?」
三河口は話の続きを求める。
「もちろん、奈美子さんの護符の力を使ったのよ」
まき子と奈美子は先ほど盗みを犯した少女が被害者の男性に取り押さえられている所を発見した。
「さっきの子だね」
「どうしようか?」
まき子は男性に声を掛けた。
「あ、あの・・・!!」
「何だね?」
「その子を許してあげてください。盗んだ分のお金私が払いますから。奈美子ちゃん、いいかな?」
「あ、いいよ」
奈美子は余ったお金を出す。
「そ、そうかい。わかった、孃ちゃん達に免じて見逃してやるよ」
男性は奈美子からお金を貰うと市場へと戻った。
「あの、大丈夫?」
まき子は孤児の少女に声をかけた。
「ふん、幸せもんめ!同情なんかいらないよ!」
少女は走り去ってしまった。
「恩知らずだね!あの子」
奈美子は折角助けてやったのに失礼だと感じた。
「う、うん・・・」
まき子はあの少女の苦悩が気になった。二人は家に向かって帰る途中、二人組の警察官にあった。
「おい、君達」
警察官は呼び止めた。
「は、はい?」
「その米と肉の缶詰は闇市で買ったのかね?」
「は、はい」
「それは違法で送られて来た食品だ。没収する!」
「え、ええ!?」
二人は折角手にした食料をここで失うなど嫌だった。これでは親に食べさせるものががなくなってしまう。
「い、嫌です!それじゃあ、何も食べられないです!!」
「やかましい!よこせ!!」
まき子はどうすべきか慌てた。
(そうだ、この杖を使って撃退しよう・・・!!)
まき子は考えた。しかし、どう使用するか。その時、風が吹いた。
「あ・・・」
まき子はこの風を杖の力として活用できるか考えた。この記述が本に載って会った事を思い出した。
【風に杖を向ければ突風および竜巻を起こすなど風を操る能力を得られる】
まき子は杖を風に向けた。その時、杖先に風が発生した。まき子は杖を振ると竜巻が大きく発生し、それによって警官を吹き飛ばした。
「うわあああーーー!!」
警官達は悲鳴をあげながら竜巻によって二人から遠ざけられた。
「奈美子ちゃん、今のうちに逃げよう!」
「うん!」
二人は走って逃げた。そしてやがて両親のいるところに何とか辿り着けた。
「た、只今〜!!」
「まき子、お帰り」
「今日は市場からご飯と肉の缶詰手に入れてきたよ」
「まさかかっぱらんたんじゃないよな?」
「いや、まさか!ちゃんとお金だしたよ!」
「あんたそんなにお金あったかしら?」
「あ、信じられないはなしだけど奈美子ちゃんが持ってる不思議な護符がお金を出してくれたんだ」
「そうか、よかったな」
まき子の非現実的な話に珍しく両親は疑いもしなかった。昨日の不思議な杖を見た影響もあるのだろう。夕食は白米に肉は牛肉だったので、まき子の杖の力でビーフステーキにして食べた。
まき子は父の「まさかかっぱらんたんじゃないよな?」と疑う台詞から市場で出会った戦災孤児の少女の事を思い出した。
(あの子、どうしてるのかな・・・?)
まき子は彼女が気になってしまった。
まき子は次の日も食料調達の為に出掛けていた。あの市場にもう一度行ってみようか考えた。だが、奈美子がいないとお金は出せない。いつもと異なる道を歩いている時、路上で寝ていたり、ただ何もせずに座っていたりしている子供達がいた。彼らは戦災孤児だとすぐにわかった。その中には昨日の少女もいた。
「おい、お前」
まき子は一人の少年に呼ばれた。
「金か食いもん持ってたらよこせ」
「な、ないよ」
「ほう、お前、俺達が親失くして自分はこうならなくて良かったって思ってんだろ?」
「そ、そんな事ないよ!むしろ辛そうに見えて気の毒だよ」
「同情なんかいらねえよ!あっち行け!」
少年に言われてまき子はその場を離れざるを得なくなった。
「う・・・」
まき子はあの戦災孤児達の事を考えると他人事になれなくなった。そしてしばらくして奈美子が訪れた。
「お〜い、まき子ちゃん」
「奈美子ちゃん・・・」
「どうしたの?」
「あの、実は昨日の子に会ったんだけど、沢山同じように親を亡くした子がいたんだ。奈美子ちゃんの護符で何とかできないかなって思って・・・」
「そうか、できるかな?」
奈美子は己が持つ護符を見た。その時、護符が光り出した。
「何だろ?」
その時、一人の男性が舞い降りてきた。
「君達」
「は、はい?」
「我が名は十次と申す。君らはあの戦災孤児の子達を救いたいと思うかね?」
「はい、あの子達がとても辛そうなのです」
「よかろう。私が政府やGHQに談判してこよう。いい知らせができたらまた君達の前に現れて教えるよ」
十次はそう言って消えた。
「それだけ?」
「本当にやってくれるのかな?」
二人は半信半疑になった。
総理官邸。当時の内閣総理大臣は復興への行動に追われていた。
「はて、休憩するか」
その時だった。
「総理」
自分の他、誰もいないはずの部屋から声がした。
(な、何だ!?疲れすぎによる幻聴か!?)
「私は十次という異世界から来た者である。生前、この国で児童福祉に励んだ者だ」
「はあ!?」
総理には訳の分からない事であった。
「今、日本各地にて空襲で親を失い、途方に暮れる戦災孤児が沢山いる。GHQらと協力して彼らを救済せよ」
「な、何を言って・・・!?」
「戦災孤児の子供達の安全な住み場所を提供してくれと言う事だ。無理だというのかね?」
「わ、わかった、やってみよう・・・」
「よかろう。では私は次にGHQに頼みに行く」
ジュージは消えた。
(戦災孤児・・・、か)
GHQの本部にも十次は現れた。
「貴方方」
「な、何だ、貴様は!?急に現れて!!」
「私は異世界から来た者だ。今戦争によって親を亡くした多くの子供達が苦しんでいる。彼らを救済する為の措置をとりたまえ。それでは」
十次は消えた。
「子供達の救済か・・・」
「元帥、どうしますか?」
「まあ、あの男の言う事に間違いがなければ調査してみよう」
これによってGHQと日本政府は戦災孤児の救済に動き出した。身寄りのない子供達の為に親類および引き取り手を探した。
数日後、まき子と奈美子はこの日も食料調達の為に動いていた。この日も米や肉の缶詰を市場から仕入れ(もちろん奈美子の護符の力で出した金で払った)、各々の家へ帰った。ところが途中警官とばったり会ってしまった。
「おい、お前ら!!」
「しまった・・・」
「まき子ちゃん、杖!」
「あ、うん!」
まき子は周辺に落ちてある石に杖を向けた。石を巨大化して警官に転がす。警官はボウリングのピンのように弾かれた。
「よし、逃げよう!」
「うん!!」
二人は警官に追いつかれないように全力疾走した。
「はあ、はあ・・・。もう追ってこないかな?」
「うん、巻いたみたいだよ」
その時、二人はある子供たちが多くの大人に連れて行かれる光景が見えた。
「あれ、あの子達、親を亡くした子達だよね?」
「うん、どこかに連れて行かれちゃうのかな?」
その時、いつの日か市場でかっぱらいをしていた少女が見えた。
「あんた達・・・」
その少女もまき子達に気付いた。
「え?どうしたの?」
「実はウチの親戚が生き延びてて、引き取ってくれる事になったんだ」
「そっか、よかったね、安心したよ」
「うん、じゃあね」
その少女は親戚の所へ戻った。
「あの子達、よかったね・・・」
「うん・・・」
「ああ、政府とGHQが協力してくれたのだ」
二人は振り向くと、そこには十次がいた。
「今、身寄りのない子供達を親戚や引き取り手などを募っており、浮浪児となる事を防いでくれているのだ」
「十次さん、やっぱりやってくれたんですね!ありがとうございます」
「ああ、君らの願いが届き、私もホッとしている。それでは」
十次は姿を消した。
「奈美子ちゃん、その護符の力、本物だったね」
「うん、できない事はなかったんだね」
そして戦争からの復興が進んでいき、まき子も奈美子もまともな住まいに住めるようになったのだった。
後書き
次回は・・・
「アイテムは次の世代へ」
戦争からの復興を進める日本で、まき子と奈美子の前にある人物が現れ、二人にそれは必要なくなったと告げる。しかし、その人物は同時にまた日本が新たな争いを起こし始めた時、自分の次の世代に渡すべきと悟り・・・。
29 アイテムは次の世代へ
前書き
《前回》
終戦直後の日本、かよ子の母・まき子と友人の奈美子は戦災孤児を救いたいと考える。その時、奈美子の護符が能力を発揮しだし、二人の前に十次という異世界の人間が現れる。十次の首相やGHQとの交渉によって戦災孤児達を親戚や引き取り相手に引き取らす事に成功したのだった!!
「でも、その護符や杖はいつまで使い続けてたの?」
話の途中、かよ子は質問した。
「それはね、戦後の混乱が収まった時までよ」
かよ子の母は話を続けた。
戦後の食糧不足や治安の不安定さも落ち着きを取り戻していく中、まき子や奈美子はそれぞれのアイテムに頼る事を続けていた。
「これのおかげで乗り越えて行けたね」
「うん、私もこの杖の能力で何とか身を守れたしね」
「うん、新しい家もできたし、これからも守ってくれるかな?」
その時、二人は謎の声を聞く。
「北条まき子さん、三河口奈美子さん」
この声は二人とも聞いた事があった。ひもじくて食料探しをしていたあの時と同じ声、つまり御穂津姫の声だった。
「その声は、御穂津姫!?」
「はい、その通りです」
御穂津姫は二人には御穂神社に来るようには促さず、今度はその場に現れた。
「貴女方は今までその杖や護符で救われ続けてきましたが、貴女達の生活が安定しつつある今、それらを封印しなければなりません」
「え!?どうして!?」
「それはこの方からの進言です。その杖や護符が元々あった世界から来た者をつれて来ました」
御穂津姫の隣に一人の女性が現れた。その女性は栗色の長い髪をしていた。
「初めまして。私の名前はフローレンス。平和を司ります世界から来ました。そしてその杖と護符は私達の世界の物で私が戦争で敗れました日本に力を与えます為に御穂津姫に渡しました物なのです」
フローレンスと名乗った女性は説明を続けた。
「それで、確かに貴女方の杖や護符は終戦直後の混乱を乗り越え、戦災孤児の救済にも貢献されました。しかし、これは信じられません事だとは思いますでしょうが、その道具の使用があからさまになり続けていますと他の世界の人間がそれを狙う恐れがあるのです」
「他の世界の人間って?」
「戦争を正義と思う世界が存在します。その者達は嘗てはこの世界の人間でしたが、最悪の形でこの世を去り、その憎しみが増大化させてこの現世に復讐の機会を狙っているのです。今、この日本は終戦を迎え、新しい憲法が施行されました今、これからの日本は平和の道を続けます予定ではありますが、また再びその憲法を破り、戦争の道へと歩ませる者が出てきますはずです。その時まで、その杖と護符の封印を私から願います。そして、貴女方のご子息がこの世に生まれ落ち、育ちが進みゆきます時にそれらを受け継がせてください」
「う、うん・・・」
「私の世界では貴女達がここまで歩み続ける事ができました事を光栄に思っております」
「うん・・・!絶対に私達の子供に渡すよ」
「はい、遠い未来の話にはなりますが、必ずお子様達に貴女方の能力は受け継がれます。不安にならないでください」
フローレンスは話を終えた。
「それでは御穂津姫、私の話は以上です」
「了解です。そのように今大切にその道具をしまわれてください。再びこの国が間違った方向に向かいそうになるその時まで」
「分かった・・・」
「それでは」
二人は天に昇るように上昇し、そして消えた。
「まき子ちゃん」
奈美子は心の準備の確認を問う為にまき子に声をかける。
「封印しようか」
「そうだね」
二人はそれぞれ新居にて自分の部屋を貰ったのでその机の引き出しの中にしまった。
やがて歳月は経ったが、二人はそれ以後もその杖や護符を忘れる事は無く、結婚後もその道具は持ち続けた。それからその杖をまき子は娘・かよ子が生まれ、小学三年生になったその時、娘に受け継がせたのだった。
「それだけその杖は役に立ったのよ」
「うん・・・」
「あの、お母さん、実は私も前にそのフローレンスさんって人に会った事があるんだ」
「あら、そうだったの」
「杉山君達が造った秘密基地を隣町の子達と取り合いになった時、その喧嘩を止めようと動いていたんだ」
「そうだったのね。実は私も前に地震のような事が起きた時、御穂津姫姫にも会っているのよ」
「え!?そうなの!?」
「その時私の前に現れてこう言ったの。『その杖の封印を解く時が訪れました。その杖の力を娘さんに引き継ぎなさい』ってね」
「そうだったんだ」
かよ子は思った。この杖は母親が平和を主とする世界から貰ってきた尊い品だ。この世界の異変から守るために慎重に使わなければならない、と。
「それで、おばさんはその護符を誰に引き継がせるの?」
かよ子は隣のおばさんに聞く。
「そうね、健ちゃんは甥だから、うちの娘かな?」
「誰にですか?」
三河口も自分の従姉の三姉妹の誰に継がすか気になった。
「そうだね、まだ考えてなかったね。そろそろ渡さないとね」
「はい・・・」
「長話をしてたら6時過ぎちゃったね。それじゃ、失礼するよ」
「はい。あ、かよちゃん」
三河口はおっちょこちょいの少女の名を呼ぶ。
「え?」
「もし何かあったら俺も手伝うよ」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
奈美子とその甥は帰った。
かよ子はその杖を改めて見る。絶対にこの杖でこの世界を守る。丸岡と言う男は一度取り逃がしたが、彼は異世界からの侵略者ではなかった。あの男が、いや、あの男が属するグループが異世界とぶつけて協力したというならば、絶対に彼らの野望を打ち砕く。
(おっちょこちょいはもうできないし、したくない・・・!!)
かよ子は己の改善を渇望する。
(それから、杉山君も失いたくない・・・)
同時に好きな男子の事も考えた。そして、杉山に相応しい女子になりたいと願う。
そして、また時は進んでいく。
後書き
次回は・・・
「夏のプール授業」
三河口が通う高校はプールの授業を楽しんでいた。同じ頃、かよ子の通う小学校でも水泳の授業があり、かよ子は杉山の前で案の定のおっちょこちょいをやってしまう。その後、三河口は叔母から従姉妹が一時的に帰ってくると聞き・・・。
30 夏のプール授業
前書き
《前回》
かよ子の母・まき子と友人の奈美子は戦後の混乱が落ち着き始めてきた時、御穂津姫と再会する。そして彼女によって連れてこられた異世界の人間・フローレンスによって杖と護符を封印する事を約束される。その目的が日本が戦争への道を進みそうな時、それぞれの子供に受け継がせる事であると知ったかよ子は日本を間違った方向に進ませる者に打ち勝ち、好きな男子に相応しき女子になりたいと改めて思うのだった!!
今回からは前回のエピソードでも言及されたかよちゃんの隣の家のおばさんが持っている護符についてより掘り下げたいと思います。そして、7話で名前のみ出てきたおばさんの娘の一人を登場させたいと思います!
今年の梅雨は続く。だが、雨が一旦休止すれば晴れるが、これもまた大変である。何しろ雨水が浸透された地面から日射によって水分が蒸発していく。そうなると、湿度が非常に高くなり、汗もかきやすく、それによって体力を奪われる人も多いのだ。
7月の初めとなり、久々に3日続けて晴れた。三河口が通っている高校はやっとプールの授業が久々にできるのだ。
「プール久々だな」
三河口のクラスメイトである濃藤がそう呟いた。
「俺、どうせ雨だから海パン持ってこなくてもいいか思ったがな」
北勢田はそう言った。
「そしたら晴れた日にプール入れないじゃんよ」
濃藤はそう突っ込んだ。
「だな」
「ちなみに俺は海パンを予め先週のうちに持っていったよ」
三河口が言った。
「そこまでするのか?」
「ああ、俺小学生の頃、すぐ忘れ物するからね、こっちに来てからら念入りに準備しようとしてんだ」
「小学生の頃、ね・・・」
濃藤と北勢田は三河口自身が小学生の頃までは実家暮らしだったとは聞いていたものの、清水に移住した理由は二人にとっては訳の分からないものだった。本人の話では三河口は小学生の頃、不良で学校からかなりの問題児とされた為、半ば強引に実家のある町から追い出される形で親戚の家へ居候になったと聞く。また、三河口の実の親は本気で息子を少年院に引き渡す事も考えていたという話もあるらしい。
だが、今の彼にはそのような素行の悪さは見られない。むしろ好少年だった。
プールの授業はこの日は準備体操をして、その次にクロールで一班五人のリレーをやる。リレーの班はホームルーム中にくじ引きで決めていた。体育は通常は男女別にやるのだが、この水泳に限っては男女合同だった。
三河口は濃藤や北勢田とは別の班だった。
「あ、三河口君も一緒なんだ・・・」
三河口に話してきたのはクラスの女子、徳林奏子だった。
「ああ、奏子ちゃん」
「それじゃあ、始めるぞ」
体育教師の声で始まった。奏子は最初に泳いだ。そして二人目、三人目と続き、そして三河口は四人目だった。その三河口の泳ぎはとても早い。マグロの泳ぎのようにスイスイ進む。そしてアンカーにバトンタッチ。6班ある中で最初は5番目だったが、三河口の泳ぎの速さで結果は2番目だった。
「三河口君、凄い速かったね・・・」
「ああ、泳ぐの好きだからね」
奏子は三河口に話しかけたくて、質問した。
「そうなんだ・・・」
その後、授業は続いた。
かよ子の小学校でもプールの授業だった。この日はまずビート板で泳いでいた。大野と杉山が泳ぎを競い合っている。
(す、杉山君・・・)
かよ子は杉山の泳ぐ姿に見惚れていた。
「ねえ、ねえかよちゃ〜ん」
不意にまる子から呼ばれた。
「え!?ま、まるちゃん!!」
「杉山君に見惚れてんでしょ〜?」
「そ、そんな事ないよ!!」
かよ子は慌てて否定した。後退りすると、丁度そこで泳いでいたブー太郎とぶつかってしまった。
「あ、ブー太郎、ごめん!」
「気をつけろよブー」
(はあ、またおっちょこちょいか・・・)
かよ子は己に呆れた。異世界からの襲撃者を撃退した事があってもおっちょこちょいは結局は治らぬままである事に。
「まあ、まあ、かよちゃん。気を取り直しなよ〜」
「そうだよ、杉山君だってきっとかよちゃんの事見直してるよ!」
一緒にいたたまえもかよ子を励ました。
「う、うん。そうだよね・・・!!」
その時、ホイッスルがなった。
「そこ、お喋りが長いぞ!ちゃんと泳げ!!」
三人は体育の先生から叱られてしまった。
「ご、ごめんなさ〜い!」
かよ子は持っているビート板で泳ぎ続けた。少しして体育の先生は皆にタイル拾いのゲームをやらせた。
かよ子はタイルを水の中に潜り、プール内のタイルを探す。そして、一枚見つけた。
「あ、あった!」
その緑色のタイルは彼女にとってやっと見つけたタイルだった。かよ子はタイルを拾い上げた。と、その時・・・。
「やるな、大野!もう4枚もとったのかよ!」
杉山の声が響いた。
「おう、お前も3枚じゃねえか!」
「よし、逆転してやるぜ!」
ちなみにこの時かよ子は杉山の声で振り向いた隙にタイルを手から放してしまった。
「あっ!」
かよ子はまたおっちょこちょいをやってしまった。結局自身は落としたタイルは拾えずに終わってしまった(ちなみに大野と杉山はそれぞれ5枚も拾っていた)。
「よし、そろそろ終わりの時間だ〜!」
体育教諭が皆にプールから引き上げるよう命じる。かよ子はプールから出た・・・、と思いきや、プールサイドのはしごから足を滑らせてプールの中へ落ちてしまった。
「かよちゃん、大丈夫?」
かよ子の次に上がろうとしていたとし子が心配した。
「う、うん、大丈夫だよ・・・!」
運の悪いことに、その醜態は好きな男子に見られてしまった。かよ子はその後、杉山から呼ばれた。
「よっ、山田。相変わらずのおっちょこちょいだなあ!」
「す、杉山君・・・!」
かよ子は自分がみっともなく見えてしまった。
「でも、それがお前らしいかもな」
「う、うん・・・。でも、絶対におっちょこちょい治してみせるよ・・・!!だって、いつも杉山君達に頼ってばっかりじゃ悪いし・・・」
「山田・・・」
杉山自身もかよ子が自分を変えようと努めている事には気づいていた。その時、冬田の声が聞こえた。
「大野くうん、泳ぐ姿かっこよかったわあ~」
冬田は大野にくっつこうとしている。
「ああ、サンキューな、冬田・・・」
冬田の猛アタックに何も言えないかよ子と杉山だった。
七夕が近くなった為、どこのクラスの教室にも笹が飾られるようになった。
「かよちゃんも短冊に何か書こうよ」
たまえが提案した。
「え?う、うん、そうだね・・・」
しかし、かよ子は何をお願いすればいいのか悩んだ。「杉山君と結婚できますように」と考えたが、恥ずかしい。「おっちょこちょいを治せますように」でも現実的だが、どこかもったいない気がした。
「あらあ、山田さあん、何書くか迷ってるよお?」
冬田が現れた。
「う、うん・・・」
「正直な事書いた方がいいと思うわよお〜」
「冬田さんはなんて書いたの?」
「もちろんこれよお」
冬田が持っている短冊には「大野君と両想いになれますように」と書いてあった。たった今恥ずかしく思ったように自分には恋愛の願い事など書けない。流石乙女チックな冬田らしいとかよ子は思った。
(私は・・・)
かよ子は思い切って書いた。「清水の平和が守れますように」と。どこかの特撮ヒーローみたいな願い事かもしれないが今考えられる最も切実な願いはこれだ。
(また、この清水を襲う人が来るかもしれないからね・・・!!)
「へえ、かよちゃんの願い事、とってもかっこいいね!」
たまえが褒めた。
「たまちゃん、あ、ありがとう・・・」
三河口は居候中の家へと帰宅した。
「只今帰りました」
「ああ、健ちゃん。いいところに」
「え?何かあるんですか?」
「ああ、たった今、名古屋にいるさりから電話があってね」
「さりちゃんから?」
さりというのは羽柴家の三女・さりの事で、つまり三河口の従姉である。
「今度帰ってくるって」
「そうですか・・・」
三河口は従姉との再会がなぜか楽しみになった。彼が中学生になると共にこの家に来た時はさりだけは独立した他の二人の姉と異なりまだ家におり、なんだかんだで仲良くしてもらえたからだろうか。
(今どうしてんだろ?専門学校出てからは遊んでるとか言うけど・・・)
三河口は従姉の近況が気になった。
後書き
次回は・・・
「帰って来た従姉」
三河口は居候している家に従姉・さりが帰って来た。さりは隣のかよ子達にも声をかける。だが、その遠く離れた場所でまた「新たな敵」が清水へと向かう・・・。
31 帰って来た従姉
前書き
《前回》
久々の晴れの日、学校はプールの授業を行っていた。かよ子はまる子にたまえと話しかけて先生に注意されたり、タイル拾いでタイルを落としてしまったりとおっちょこちょいぶりを発揮してしまう。その後、かよ子は短冊に切実な願いを書く。一方、かよ子の隣の家に住む三河口は従姉が帰ってくると聞くのであった!!
とある雨の日の朝、かよ子は家を出ようとすると、母から止められた。
「かよ子、傘忘れちゃだめよ」
「あ、ごめん!」
雨の日だというのに傘を忘れるなど恥ずかしいおっちょこちょいをやってしまったと思った。その時、隣の家から三河口も出てきた。
「あ、三河口のお兄ちゃん!」
「ああ、おはよう、かよちゃん」
かよ子は母に行ってきますと言って三河口と歩いた。
「そうだ、かよちゃん、明日ね、俺の従姉が帰ってくるよ」
「ええと、あのお姉さんだっけ?」
かよ子は三河口の従姉とは幼稚園児の頃に会った事がある。自身が小学校入学と共に家を出て今は名古屋にいるという。
「そうだよ。楽しみかい?」
「うん、あまり会ってないからね」
「俺も楽しみだよ」
途中で二人は別れた。
かよ子は学校で降り続く雨を見ていた。そしてクラスメイトの女子の会話を耳にする。
「ねえ、ねえ、今年の七夕、雨みたいだよ」
「本当?織姫と彦星、会えないね〜」
かよ子はその会話を聞いて織姫と彦星を自分と好きな男子に例えてみた。そうなるととても辛くて切ない。特に、異常事態が起きている今年ならなおさらそれが現実になる可能性がある。
(七夕の日が雨でも、この願い事、叶ったらいいな・・・)
清水では七夕の後にも伝統的な祭事がある。それは日本平の花火大会、そして清水みなと祭りなどがある。以前は巴川にて灯篭流しもあったが、川の汚染の問題で休止中である。その為、今は川田守という人がその川を綺麗にするために活動している。
三河口は学校にてせっせと次の授業の科目の準備をしていた。そんな様子を奏子が遠くから見ている。
「ねえ、ねえ〜、そんなに三河口君が気になってんの〜?」
「え?」
奏子は友人の中川瞳に声を掛けられた。
「う、うん・・・。今度の日本平の花火大会に一緒に行きたいなって思って」
「じゃあ、聞けばいいじゃん」
「う、うん・・・」
奏子は好きな男子の所へと向かう。
「あの、三河口君・・・!」
「ああ、奏子ちゃん」
「今度、日本平でやる花火大会、一緒に行かない・・・?」
「うん、いいよ」
三河口はあっさりと承諾した。
「あ、ありがとう」
奏子は赤面しながら礼をした。
(三河口君とデートできるなんて・・・)
「奏子ちゃん」
「え?」
「今週末に従姉が帰ってくるんだ」
「そうなんだ。女子?男子?」
「女子だよ。名古屋に住んでるんだ。俺も気になってるんだが」
「へえ、楽しみだね・・・」
奏子はその三河口の従姉に会ってみたいと思った。
かよ子は冬田が嬉しそうな顔をしているのが見えた。
「冬田さん、どうかしたの?」
「ああ、山田さあん、実は明日から雨でしょ〜。私のおじいちゃんが新しいレインコート買ってくれたのよお〜。大野君に見せたらなんて言うかな〜、って思ってねえ〜」
「そ、そうなんだ・・・」
かよ子は何も言えなかった。冬田は確かに以前、大野、杉山、ブー太郎、そしてまる子と共に造った秘密基地を組織「義元」に乗っ取られた際に、その争いを鎮める為に貢献し、大野からは感謝された事がある。とはいえ、普段は大野に暑苦しくアプローチしているので、大野が「似合う」とか「可愛い」とか言うかは謎だった。それをはっきり言っても冬田を傷つける事になってしまうのでかよ子はとりあえず「大野君から『可愛いな』って言われるといいね・・・」とは言っておいた。
(雨か・・・。この前は折角晴れたのにな・・・)
かよ子は雨を憂鬱に思った。
東海道新幹線の車内。そこに一人の女性が名古屋から乗車していた。一時間ほどしてて列車が静岡に到着すると同時に下車した。そして静岡市と清水市を結ぶ列車に乗り換えた。清水市内の小さい駅にて降りるとそこからとある家に到着した。
「只今~」
「あ、さり、お帰り!」
さりと呼ばれたその女性は母親に上がられた。
「健ちゃんいる?」
「いるよ」
さりは実家に居候している従弟に会いに行った。その従弟は学校から帰って勉強疲れなのかその場で昼寝していた。さりは従弟の顔を覗く。
「健ちゃん、久しぶり~」
「・・・ん?」
三河口は目を開けた。その場に年上の女性がいた。三河口は従姉の羽柴さりだとすぐ気づいた。
「ああ、さりちゃん。ご無沙汰しております・・・」
三河口は従姉とはいえ、年上だからか常に敬語で接している。三河口は起き上がった。
「すみません、折角帰って来たというのに寝てしまって・・・」
「いいよ、気にしないよ」
「隣のかよちゃんは元気にしてんの?」
「はい、おっちょこちょいやってますけど元気ですよ」
「んじゃ、会いに行こうっと」
さりは隣家へと向かう。三河口も付き添った。
かよ子は母と話していた。
「お母さん、今日隣のおばさんのところのお姉さんが帰ってくるんだって」
「ああ、さりちゃんね。おばさんから聞いたわ」
その時、インターホンが鳴った。かよ子の母が玄関に向かうと、噂をすればの隣家の羽柴家の娘だった。その従弟もいた。
「こんにちはー!」
「あら、さりちゃん、久しぶり!」
「おばさん、久しぶりです!」
「あ、お姉ちゃん・・・!」
かよ子も玄関へと出た。そして相変わらずのおっちょこちょいをやってしまった。廊下を滑って転んでしまった。
「ああー!!」
「相変わらずのおっちょこちょいね」
かよ子は恥ずかしくなってしまった。
「で、さりちゃん、何かあるのでは?」
三河口が聞く。
「ああ、そうそう。折角帰って来たし、皆で私の家で食事如何ですか?」
「え!?いいんですか!?おばさん、驚きますよ!」
「いいって、いいって!」
こうしてかよ子の家族も羽柴家にて食事することになった。
(お姉ちゃんと食事するなんて久しぶりだな・・・)
かよ子にとって楽しみな食事となった。
かよ子とその両親は羽柴家で御馳走になった。羽柴家の食卓には味噌汁、おひたしがあり、山田家の食事と変わらないが、御飯はうなぎとの混ぜご飯、おかずはフライドチキンのような鶏にトンカツに味噌が乗っていた。
「すごーい!」
かよ子はあまり見たことのない料理に目を光らせた。
「これはひつまぶしって鰻料理よ。これは手羽先で、こっちは味噌カツ。みんな名古屋の名物よ」
さりが説明した。かよ子はよだれをたらしたい気分だった。
「うわあ、美味しそうだね!私も名古屋行ってみたいなあ」
「ちょうど静岡県の隣だから新幹線で一時間くらいで行けるよ。それ以外にも美味しい物はあるし、水族館やお城とかもあるよ~」
「うわあ」
「さりちゃん、帰るついでにかよちゃんも名古屋へ連れて行ったらいかがでしょうか?」
三河口がさりに聞く。
「何言ってんのよ、かよちゃんだって学校があるでしょ」
「ああ、そうでしたね」
皆はどれも名古屋名物の食事を楽しんだ。そしてかよ子は手羽先が上手く食べなくて苦労した。またいつものおっちょこちょいをやってしまったと思った。さりから食べ方を教えて貰ってなんとか食べられるようになった。
「手羽先は酒にぴったりだな」
奈美子の主人・利治はそう言う。
「もちろん、合うよ~」
利治は赤ワインと一緒に呑んだ。
「お。こりゃいける!」
「では、私も」
かよ子の父も便乗した。二人にとってもいい味で手羽先はワインにぴったりマッチした。やがて食事も終わり、かよ子達は自分の家へ帰る事にした。
「それじゃね」
「おやすみなさい」
かよ子はあと一言、さりに声を掛けようとした。
「あの、さりお姉ちゃん・・・!!」
「え?」
「明日、一緒に遊んでいい?」
「うん、いいよ」
かよ子は明日を楽しみにしながら両親と共に自分の家へと戻った。
異世界からこの現世に呼び出された男が今テルアビブを出て日本へと向かっていた。
「弟よ、この世界に戻って来られて嬉しいぞ」
「ああ、兄貴」
「ところで、日本の清水に何故拘る?」
「我々の計画を脅かす道具があるんだ。それを奪ってしまおうというのが房子さんの命令だよ」
「ほう」
「それに清水では大雨が降る予定だ」
「ならばその雨を強めようではないか。天よ、我に仕事を与えよ!!」
後書き
次回は・・・
「雨天の日曜日」
雨の日、外で遊べないかよ子は隣の家で三河口やさりと共に、まる子やたまえを呼んで人生ゲームをして満喫する。一方、テルアビブから二人の男が日本の清水へと向かう・・・。
32 雨天の日曜日
前書き
《前回》
三河口の従姉の羽柴さりが清水へ帰省しに来た。かよ子の家族はその夜、羽柴家で名古屋の名物を御馳走になる。そして遠く離れた場所では二人の男が日本へと向かっていた!!
今回からは1974年に清水市を襲った「七夕豪雨」を元ネタとしています。
三河口は入浴を済ませた後、テレビを見ているさりに呼ばれた。(ちなみにさりは既に風呂を済ませていた)
「あ、健ちゃん、このドラマ見ようよ、私いつも楽しみに見てるんだ」
「はい、では」
二人はドラマを見た。このドラマはもちろんさりのみならず、彼女の母の奈美子もいつも見ていた。ドラマはやがてコマーシャルに入った。三河口は従姉に質問する。
「ところでさりちゃん」
「え?」
「今はどんな仕事をしているんですか?」
「ああ、商店でアルバイトよ。でも結構充実してるよ」
「はい、ところで、名古屋でも何か変な現象が起きているのではないでしょうか?」
「ああ、あるわね。ある時、商店街を歩いた時、街の人が急にバタバタ倒れちゃった事があるの」
さりは否定しなかった。
「それで、どうなったんですか?」
「その後、驚いたけど、私も急に意識を失って倒れたわ。起きたらいつの間にか夜になってた・・・」
三河口はその話を聞いて体が震えた。彼女にあの事を伝えようかと・・・。だが、コマーシャルが終わり、ドラマが再開された。
「あ、始まった」
さりと三河口はドラマが終わるまで見続けていた。
翌日、かよ子はいつもより寝坊してしまった。慌てて顔を洗い、着替える。外は雨だった。
「雨か・・・。外で遊べないな・・・」
かよ子は隣の家の娘と遊ぶ約束をしていたのだが、外が雨では何もできない。だが、そんな時、インターホンが鳴った。
「おはようございます」
だが、さりは現れた。
「かよ子、さりちゃんよ」
「あ、お姉ちゃん!」
「今日は雨で残念よね。私の家に来なよ~」
「うん、ありがとう!」
かよ子はさりにつれられて隣の羽柴家へと移った。しかし、何をして遊ぶのか。
「しかし、三人で何をしますか?」
三河口が聞く。
「そうね、私の部屋に人生ゲームが入ってるからそれで遊ぼうか」
「でも、三人じゃ足りない気がしますが」
「そうだ、私、友達呼ぶよ」
かよ子はまる子やたまえでも電話で呼ぼうかと考えていた。とりあえずまる子とたまえは来てくれた。
「お~い、かよちゃ~ん」
「まるちゃん、たまちゃん!ごめんね、雨の中なのに」
「いいよ、いいよお~。でも今日は隣の家なんだね」
「うん、お隣の家のお姉さんが名古屋から帰ってきてるんだ」
「そっかあ~」
かよ子は二人を家に入れた。かよ子はさりと三河口を紹介する。
「この人が隣の家のお姉ちゃんとその従弟のお兄ちゃんだよ。お姉ちゃん、お兄ちゃん、友達のまるちゃんとたまちゃんだよ」
「羽柴さりです。宜しくね」
「そのさりの従弟で居候している三河口だよ」
その時、三河口はまる子を見ると、ただの小学生でない事に気付いた。彼女を見ただけで普通の人とは異なる感じがしたのだ。それはかよ子に対しても同様である。
(この子は、さくらももこ・・・。あの時、大野けんいちや杉山さとし、富田太郎と共に秘密基地を造り、更には北勢田の家の向かいに住む長山治を狙いに来たオリガと丸岡に対して奮闘していた・・・。そして『炎の石』を所持している・・・)
だが、三河口は今はその事については置いておくことにした。
「で、何するのお~?」
「人生ゲームだよ」
こうして皆は人生ゲームをして楽しんだ。ゲームの結果は、たまえが一位で所持金も最多だった。二位さり、三位はまる子、四位かよ子、五位が三河口だった。
「雨、止みそうにないね」
「うん」
「いいよ、いいよ、皆にご馳走するわよ」
さりはそう言って母と共に台所へと向かった。
「はて」
三河口は話を続ける。
「ええと、まるちゃんだったね」
「はい?」
まる子は呼ばれてびくっとした。
「君は確か森の石松から『力の石』を貰っていたね」
「ど、どうしてそんな事しってるのお!?」
まる子は驚いた。そしてかよ子は三河口が一体これから何をするのか胸騒ぎがした。
「そりゃあ、俺も最近続くこの世の異変が気になってるんだ。かよちゃんも持ってる不思議な杖も異世界のもので、元々はかよちゃんのお母さんが持っていたんだ。俺のおばさん、つまりあのお姉さんのお母さんも異世界からの道具を子供の頃に貰っていてそれで戦後の食糧不足の中を生き抜く事ができたという訳なんだよ」
「そうだったんだ・・・」
「まるちゃんもかよちゃんもそんな凄い物を持ってるの!?でも、どうして!?」
たまえは驚いて気になった。
「それは、この日本は今、ある組織に狙われているんだ。その為に異世界と繋げて異世界の人間と協力してこの日本を無理やり変えようとしている。それに対抗する為だよ」
「まるちゃん達がそんな危険な戦いに・・・」
たまえは心配した。
「たまちゃん、確かに君の親友のまるちゃんやおっちょこちょいを気にしているかよちゃんがとても心配なのは分かるよ。でも、二人には対抗できる能力があるからこそ選ばれたんじゃないかと思うんだ」
(お兄ちゃん・・・)
かよ子はこの高校生がそんな事を言うとは思いもしなかった。でもその分、三河口は自分の事を信頼してくれているのからこそ今のようなことが言えるのだと改めて気づいた。
「そうだよね、頑張って敵をぶっ叩こう~、ね、かよちゃん!」
「う、うん・・・」
かよ子はまる子の呑気な言い方に閉口しながらも今の町を守り続けたいと考えていた。
昼食は名古屋のきし麵だった。これもさりの土産だという。
「いただきまーす!」
きし麵はとても薄っぺらだったが、とても美味しかった。
「これも美味しいね!」
「うん、名古屋は美味しいものがいっぱいだよ」
「昨日はね、味噌カツにひつまぶしや手羽先も食べたんだよ」
かよ子は昨日の夕食を説明した。
「いいねえ、アタシも名古屋行ってみたいよお~」
「是非来てみなよ」
「でもウチのお父さんもお母さんもいっつもダメって言うんだ、お金がないって」
「そっかあ」
「さりちゃん、連れて行ってあげたらいかがでしょうか?」
「いいかもね。私のお金も貯まればね」
皆は昼食を満喫した。やがて、まる子とたまえは帰っていった。
「私も帰らないと・・・」
「そうだね、明日学校だもんね」
奈美子はそう言うと、さりに呼び掛ける。
「さり、ついでにかよちゃんを隣に送っていきな」
「うん」
かよ子は隣家にも拘わらずさりに送られる形で家に帰った。
「かよちゃん」
「え?」
「異世界の敵と戦った事があるって?」
「う・・・」
かよ子はさりに勘づかれて動揺した。
「そ、そうなんだ。でも、お母さんから貰った杖があるんだ。それで何とか勝ってきたんだけど、それに私の好きな男子まで巻き込んじゃったんだ・・・」
「そうか、大丈夫だよ。その男子はどんな子なの?」
「正義感が強いんだ。それに困った時にはいつも助けてくれるよ・・・」
「そうなんだ。その男子の為にも頑張んなきゃね。じゃあね」
「う、うん、さようなら・・・」
かよ子は自分の家に入った。そして自分の好きな男子の事を思い出す。
(杉山君・・・。私、絶対に負けないよ・・・!!おっちょこちょいしても異世界の悪い人にもその人達を送り込んだ組織の人にも・・・!!)
二人の男は日本へと向かう。
「そういえばこの清水では雨が降り続ける予定だな」
「そうそう」
「ならその雨の力を強めよう。俺にとってはいい事になるだろう、いや、絶対にそうなるのだからな!!」
「それで奴らを見つけて静粛させるって根端かい、兄貴?」
「ああ、洪水騒ぎになればきっと奴らも動き出すだろうし、その方が見つけるのに容易い。天よ、我に仕事を与えよ!!」
後書き
次回は・・・
「夜中の大豪雨」
時が経つにつれ、激しくなりゆく雨。そして町内の避難勧告が発令される。雨を不安に思う杉山、隣町に住むすみ子。そしてかよ子の家族も高台の公民館へ移動を始めたその時、彼女が目にしたものは・・・。
33 夜中の大豪雨
前書き
《前回》
雨の日の日曜日、かよ子はさりと三河口、そしてまる子にたまえと共に人生ゲームをして遊ぶ。そして二人の男が日本へと着々と接近するのであった!!
夕方になると、雨は弱まるどころかむしろ強まるばかりであった。杉山は自分の家の窓からもその様子を見る。
(雨、強いな・・・)
「酷いわね、この雨、まるで洪水になりそうだわ」
杉山の姉が呟く。
「姉ちゃん、この家大丈夫なのかな?」
「分からないわ。ここも高台とは言えないからね」
雨は時が経つにつれ、激しさを増してゆく。
山田家でもかよ子は降り続く雨を見ていた。
「酷いわね」
母もその様子を見る。
「うん。洪水になると学校休みになっちゃうんだよね」
「そうね。行けるような状態じゃないからね」
(そうなると杉山君に会えないな・・・)
かよ子は意気消沈した。
「そういえば、ここの地盤はそんなに高い方じゃないよな」
「そうね、海にも近いからね」
かよ子はそれを聞くともっとぞっとした。
(わ、私の家、どうなっちゃうんだろう・・・?とにかくこの杖だけは手放さないようにしよう・・・)
隣の家の人間でも大雨の様子を見る。三河口はこの雨が普通でない異常な感じがした。
(この感じ・・・。異世界の人間が来た時と同じ感触だ・・・!!)
以前爆破された道路を見た時も同じような気持ちになった(その時は異世界からの侵略者やその人物達と手を組んだ組織の事は知らなかったが)。
「おばさん、あの護符、何か反応していませんか?」
三河口は叔母に聞く。
「護符?ああ、見てみるよ」
奈美子は護符を確認しに行った。
「健ちゃん、護符って?」
「信じられないとは思いますが、叔母さんが終戦後、異世界の住人から貰ったという護符ですよ」
(護符・・・。異世界・・・!!)
さりはかよ子を送る時にも異世界の杖を聞いてはいたが、自分の母親も異世界の道具を所持しているとは思いもしなかった。
(お母さんもかよちゃんのお母さんと一緒に異世界の道具を貰っていたんだね・・・!!)
その時、叔母が戻って来た。護符を持っている。
「やっぱり護符が反応してるよ」
そして、外から避難勧告が流れる。
『低地の皆さん、大変です。川が溢れました。これからますます浸水する可能性があります。高台の公民館に避難してください』
すみ子の住む地域でも警報が発令されていた。
(この胸騒ぎ・・・。間違いない。異世界の人間だ!この大雨は絶対普通のものじゃない!!)
「すみ子、警報出たぞ。避難所に行こう」
「う、うん・・・」
兄に呼ばれてすみ子は避難所へと向かった。
「お兄ちゃん・・・」
「ん?」
「私、なんか胸騒ぎがする・・・!!」
「やっぱり変な気がすると思ったのか。俺もだよ」
濃藤は以前、妹が異世界からの敵と奮闘した事を三河口と北勢田から聞いていた。妹は今、その予感がしていたのではないかと彼は思っていた。
かよ子達は避難勧告発令の為、両親と共に家を出た。
「それにしても今までの雨とは比べ物にならないくらい酷いな」
「かよ子、あの杖は持ってる?」
「う、うん!」
さすがにおっちょこちょいのかよ子でもその杖だけは忘れる事はなかった。既に雨水は増えており、かよ子の膝の上にまで使っている。上手く歩けず、泳いだ方が進めると皮肉を言いたいくらいだ。その時、戦艦大和のようなものが現れた。しかし、戦艦にしては水線長が短く、幅も道路を通れる程度である。
「あ、皆、これに乗って!!」
デッキに見えたのは隣のおばさんだった。
「あ、奈美子さん!」
皆は戦艦についていた梯子でデッキにのぼり、ハッチの中に入った。そこには奈美子の主人、その娘、そして甥もいた。
「あ、かよちゃん!」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
内装が戦艦の中みたいで驚くと共に、三河口とさりに会えて少し嬉しかった。
「すごいね」
「叔母さんが護符の力で出した戦艦だよ」
「私は外国の客船みたいなのがよかったんだけどね」
「そんな贅沢言ってる場合じゃないよ」
奈美子が窘めた。
「はあい・・・」
かよ子は三河口が険しい表情をしているのに気づいた。
「お兄ちゃん」
「え?」
「どうしたの?」
「ああ、この豪雨に変な胸騒ぎを感じるんだ。異世界からの敵が来たような感触をね」
「え!?じゃ、じゃあ、やっぱりこれは異世界の敵の仕業なの!?」
「そうかもしれないね」
その時、奈美子が呼び掛ける。
「雨が強くなってきたよ!さり、健ちゃん、避難に遅れている人を助け出すよ!!」
「はい!」
「わ、私も行く!!」
かよ子も動き出す。皆、動き始めた。
冬田は雨が家の屋根を打つ音で眠れなかった。
(雨が酷いわあ・・・)
遠くから避難勧告が発令される声が聞こえたが、幸い冬田の住んでいる所は高台の方の為、道路の浸水は免れている。
(大野くうん、私怖いわあ・・・)
冬田は好きな男子の事を考える。大野の家は浸水の被害に遭っているのではないかと。
(やっぱり大野君の事がとっても心配だわあ・・・!!)
その時、冬田は以前フローレンスという異世界の女性から貰った羽根を思い出す。今ならそれで大野の様子を確認できるのではと考えた。冬田はベッドから出て、机の引き出しにしまっていた羽根を取り出した。そして窓から羽根に乗って出ていった。
二人の男は日本の上空に辿り着いた。そして大雨の様を見て喜ぶ。
「弟よ、見たまえ。雨が強くなっているぞ!天が私に仕事をやりやすくしているぞ!」
「よかったな、兄貴!」
悪天候にも関わらず三保の飛行場に普通に着陸した。
「はて、奴等を探さないとな」
「こういう時こそ動いているはずだからなあ」
旧約聖書のような洪水の中、かよ子達は床上浸水で二階へ避難する人達の救出に乗り出し、戦艦で公民館へと送っていた。その時、かよ子は聞き覚えのある声を耳にした。
「助けて〜!!」
「あ、たまちゃん!!」
かよ子はクラスメイトの穂波たまえが両親と共に屋根に登っているのが見えた。
「かよちゃん、確か君はフローレンスから不思議な羽根を貰っていなかったか?」
「え?あ・・・!!」
かよ子は三河口の言葉で寝た子を起こされた気分になった。杖を持ってきたのにあの羽根を忘れてしまった。この一大事におっちょこちょいをやってしまった。
(どうか、あの子を・・・!!)
さりはそう考えると、急に奈美子の護符が震えだした。護符が光ると、急にたまえの家族が瞬間移動したかのように戦艦のデッキに移動した。
「かよちゃん!」
「たまちゃん、よかった~、無事で・・・!」
「どうもありがとうございます」
たまえの両親も礼をした。しかし、かよ子はなぜたまえ達が瞬間移動できたのか気になった。自身は杖を使用していない。
「い、今のはおばさんが・・・!?」
かよ子はおばさんが能力を行使したのかと思った。
「え?何もやっとらんよ」
「じゃあ、お兄ちゃん?」
「いや、俺にはそんな能力はないし、護符の力は使えない」
三河口も否定した。
「さりちゃん」
三河口は従姉に質問する。
「もしかして、この子達を助けたいと思いませんでしたか?」
「う、うん、そうなんだ」
「もしかしたら、さりちゃんの能力で護符が動いたのかもしれませんね」
「そ、そうなんだ、凄いよ!!」
「そうかな・・・?」
「兎に角、皆を公民館に運ぶよ!」
「はい!」
一行は救出した人々を公民館に連れて行き、そこで降ろした。そしてまだ救助待ちの人々を助けに浸水しゆく低地へと戦艦を動かした。その一方で三河口は胸騒ぎがなぜか収まらなかった。次は別の地区を廻る。その時、かよ子は好きな男子の姿が見えた。
「す、杉山君・・・!!」
後書き
次回は・・・
「大雨に動き出す者」
かよ子は杉山の家族を救出し、さらには長山の家族も発見する。冬田は大野の安否を心配し、そしてすみ子は胸騒ぎが収まらずに飛び出した所、ある人物と出会う・・・。
34 大雨に動き出す者
前書き
《前回》
雨の続く夜、羽柴家では奈美子の護符が反応する。かよ子の家族も公民館に避難しに行く途中、かよ子達は奈美子の護符の能力で出した戦艦に乗せて貰い、羽柴夫妻、さり、三河口と共に避難に遅れている人の救出活動を行う。そして隣町ではすみ子も大雨で公民館へ避難し、冬田は大雨で眠れずに好きな男子を探しに行く。さりの思いに奈美子の護符が応え、かよ子の友人のたまえの家族を救い出した時、かよ子はあの男子の家族を発見する・・・!!
冬田は羽根に乗って大野を探し続ける。
(大野くうん・・・、待っててえ・・・!!)
冬田は大野を捜索しながら大野から感謝され、「俺、お前が好きになっちまったよ」と言われる様子を妄想した。
(やあん、大野くうん・・・)
その時、冬田は飛行機が飛んでくるのが見えた。
「なんでこんな天気に飛行機が飛んでるのお・・・!?」
かよ子は杉山の家族を発見した。杉山の家は床上浸水しており、家族は二階に避難している。
「す、杉山君・・・!!これに乗って!!」
「え?山田あ!?」
杉山はかよ子が戦艦のような物体に乗っているのが見えた。
「乗ってくれ!」
三河口も促す。戦艦を何とか杉山の家の二階の窓に近づけた。
「お、おう!」
杉山達は戦艦に乗った。
「杉山君、無事で良かった・・・!」
「ああ、サンキューな。でも、これ、なんだ?」
「このおばさんが持ってる護符の能力で出した戦艦だよ」
「すげえ!」
かよ子はさりを紹介する。
「この人はそのおばさんの子だよ」
「かよちゃんの隣の家に住んでいた羽柴さりよ。宜しくね」
「ああ、どーも」
次にさりが三河口を紹介する。
「こっちは私の従弟の三河口健よ。今、私の実家で居候してるの」
「君が杉山君か。君の活躍も見ていたよ」
「そうなのか?」
「ああ、アレクサンドルとアンナの兄妹との戦いも、オリガや丸岡との戦いもかなり奮闘していたね」
「ああ・・・」
「皆、兎に角中に入って」
奈美子は杉山の家族を戦艦の中に入れた。
「おばさん、俺も何かできる事があったら手伝います!」
杉山はかよ子の母やさりの母に協力を申し出た。
「そうね」
「ちょっとさとし、出しゃばるんじゃないよ」
杉山の姉が注意しようとした。
「姉ちゃん、助けてもらったんだ、何もしねえわけにはいかねえよ!」
「何言ってんの、こんな大変な時に!」
杉山の母も息子を止めようとする。
「あ、あの、おばさん、お姉さん・・・!!」
かよ子は杉山の母と姉に顔を向けた。
「え?」
「す、杉山君は、私が困った時に色々と助けてくれたんです・・・。だから出しゃばりなんかじゃありません!私も本心では杉山君を頼りたいんです。私はおっちょこちょいだし・・・、それに、私・・・」
かよ子は恥ずかしがりながら台詞の続きを言おうとする。
「す、す、杉山君の事が好きだから・・・!!」
かよ子は告白した。杉山の姉や両親は杉山さとしに恋する女子が今この場所にいると分かって胸がざわついた。
「さとしが、好き・・・!?」
かよ子は自爆してしまったと感じた。
「はい・・・」
三河口も立ち上がる。
「杉山さとし君のお母さん、お姉さん。俺はかよ子ちゃんの隣の家に居候している三河口健というものです。こんな事言っては信じられないかもしれませんが、かよちゃんは以前に命がけの戦いをした事がありました。その時、息子さんやその親友の大野けんいち君の協力もあって乗り切ってきたのです。俺もさとし君の協力があると十分助かります。俺からもお願いします」
(お兄ちゃん・・・)
かよ子の両親もさりの両親も同感に思う。
「そうね、異世界からの敵を倒せたのも杉山君がいたからよね」
「そうだな、あの時は感謝してるよ」
「皆さん・・・。分かりました。では、私達も協力します。さとし、迷惑かけるんじゃないわよ」
「おう!」
杉山の家族も加えて一同は救出作業を再開した。
公民館の中、すみ子は震える。
「お兄ちゃん・・・!」
「すみ子?」
「やっぱり胸騒ぎが止まらない・・・!!」
「やっぱり異世界からの敵か?」
濃藤は妹の正常ではない様子に、自身も胸騒ぎが激しくなり始めた。
「父さん、母さん、俺、すみ子をトイレへ連れてくよ」
濃藤は両親にそう言って妹を外へ連れ出した。
「やっぱり来てるよ、敵が・・・!」
「そのようだな、行ってみよう」
「うん・・・」
すみ子はイマヌエルから貰ったあの銃を手放さず持っていた。高地にある公民館の玄関から見ると、低地の道路は地面が見えず最早水路のようになっている。
「お兄ちゃん、水の中、進めるようにやってみるよ・・・!」
すみ子は銃の引き金を引いた。すると、二人の周囲にボール膜ができて、閉じ込めた。
「これで濡れずに水の中に進めるわ・・・!」
「よし!」
濃藤兄妹は膜を低地の方へ飛ばし、浸水中の道路の中を進んだ。
飛行場に着陸した後、二人組の男は大雨の中、再び離陸した。
「弟よ、素晴らしいな!こんな大変な事になれば、人は動かぬはずがない!」
「ああ、後は例の物を手にして、その持ち主を抹殺するだけだな」
その時、二人は上空に飛んでいる「何か」を発見した。
「兄貴、女の子が空を飛んでるぞ!!」
「もしかしたら、『平和を司る世界』からの羽根を使ってるな!」
「ここは生け捕りがいいか?」
「そうだな、何か知っているかもしれんな、それで吐き出させるか」
飛行機は上空を飛行する少女に接近した。
大野は家族で避難する途中だった。だが、水位が上がり過ぎて、坂を登るにも大量の雨水がなだれ込み、苦労していた。
「くそっ、ひでえ雨だな・・・!!」
大野は為す術はないか考えた。
(『あれ』を使ってみるか・・・!!)
大野は嘗て杉山、ブー太郎、そしてまる子と共に森の石松から「能力の石」貰った。大野は植物を出し、自在に操る「草の石」である。大野はその能力を行使してみることにした。その時、芽が出て、巨大な葉を作り出した。
「よし、父さん、母さん、この葉の上に乗ってくれ!!」
「え?」
大野の両親は驚いたが、兎に角息子に従う事にした。そして大野は同じく避難に動く人々に呼びかける。
「この木の葉の上に乗ってくださーい!」
大野は人々を巨大な木の葉の上に乗せて公民館へ運んだ。
「よし!父さん、母さん、俺は他に避難に遅れてる人を運んでくる!」
大野は公民館を離れて救出に動き出す。
かよ子達は救出を続けると、そこにまた知っている少年少女を見つけた。長山と小春、そしてその両親である。北勢田の家族もいた。
「あ、長山君、小春ちゃん!!」
「山田!?杉山君も!」
「長山あ!お前もこれに乗れえー!」
「う、うん!」
長山は家族で戦艦に乗った。北勢田やその近所と思われる人達も乗せた。
「ありがとう!溺れるところだったよ」
「う、うん・・・」
「北勢田、無事で良かったよ」
長山は向かいの知り合いが見知らぬ高校生男子と知り合いで驚いた。
「お兄さん、この人知ってるのかい?」
「ああ、同じ学校だよ」
「長山君には紹介がなかったね。俺は三河口健。北勢田の学校の友人で山田かよ子ちゃんちの隣の家に居候しているよ」
「よ、宜しくお願いします。でも、これ、戦艦かい?凄いよ!」
「こ、これね、このおばさんが出してくれたんだよ」
「何か不思議な能力でかい?」
長山は鋭い。
「ええ、この護符の力でね」
さりは自分の母が持つ護符を指して答えた。
「私は羽柴さり、私のお母さんがこの護符を持ってるの」
「杖に護符、か・・・」
長山はかよ子の杖と奈美子の護符を照らし合わせて考える。
「どうしたの?」
かよ子は博識な男子に質問する。
「ああ、杖に護符ってそれぞれトランプのクラブとダイヤに当てはまるんだ」
「それがどうかしたのか?」
「トランプではスペードは剣、クラブは杖や棍棒、ダイヤはコインとか護符、そしてハートは聖杯、いわゆるカップを意味してるんだ。もしかしたら・・・」
「もしかしたら?」
「今、この日本のどこかにスペードに相当する物とカップに相当する物があってそれを誰かが持っているんじゃないかなってね・・・」
「そうね、会ってみたいわね」
そう話しているうちに他の助けを求める人が現れた。かよ子達は救出作業を再開した。
冬田は飛行機を発見した。そして自分の所へ接近する事に気付いた。
「ええ!?何で私に近づいてくるのお!?」
冬田は飛行機を避けようとした。しかし、飛行機は追ってくる。
「逃げても無駄だぜ・・・」
男は飛行機のドアから出て手榴弾を投げた。その手榴弾は紙飛行機のように真っ直ぐ飛んで、冬田の羽根の後方で爆破した。冬田はバランスを崩され、羽根から落ちそうになった。羽根の先を掴んでなんとか落下を回避した状態となった。そして飛行機に先回りされた。
「そこの嬢ちゃん、この飛行機乗りな!」
「ええ!?」
冬田は自分を攻撃した相手だと分かっていた。要求など呑める筈がない。
「い、嫌よお!!」
「なら力ずくだ!」
冬田は男に足首を掴まれ、羽根も縮んでしまった。
「何するのよお!」
「その羽根は異世界の羽根だろ。質問に答えて貰いたい」
「こんな大雨に何言ってんのよお!私は大野君を助けに・・・、きゃああ!!」
冬田は銃口を額に突き付けられた。
「こんな大雨を降らせたからこそ、探してんだよ。その羽根を使っているって事は異世界と繋がりがあるんだろ。異世界からの最大の武器である杖とか護符とか知っていたら教えろ」
「ツエ、ゴフ・・・?」
後書き
次回は・・・
「冬田美鈴、危機一髪」
冬田は二人組の男から異世界からの道具についての尋問を受ける。そんな時、先程の冬田を襲った爆発は大野、すみ子、そしてかよ子達にも発見されており・・・。
35 冬田美鈴、危機一髪
前書き
《前回》
大雨の夜の中、かよ子は三河口らと共に杉山や長山の家族を救出し、さらに救出活動を続行する。すみ子は恐ろしいほどの胸騒ぎを感じて兄と共にその原因となるものを探しに行く。そして大野が心配でたまらない冬田は大野を探しに出た所、飛行機に乗る二人組に襲撃されてしまった!!
すみ子は先ほど、何かしらの爆発音とその火薬のようなものが光る様子が見えた。
「あれは、何・・・!?」
その時、すみ子は体が熱苦しくなる思いがした。兄も同じである。
「すみ子、もしかしたら、『敵』かもしれないな」
「行ってみよう、お兄ちゃん・・・!」
すみ子は銃を下に発砲した。そして二人を包む球体は急速に上昇した。
大野は何かの爆発の光を感じた。
「な、何だ?」
雨で爆発の炎は数秒で消えてしまったが、大野の目にははっきりと見えた。
(もしかしたら・・・!!)
大野はまさかこんな間が悪い時に異世界からの敵か、異世界とこの現世を繋げた人間が攻めてきたのではないかと思った。
避難所として使用されている公民館へ人を下ろし、大野は再び出発する。
「父さん、母さん、ここで待っていてくれ!すぐに戻ってくる!」
「ちょっ、けんいち!!」
父の声を聞く間もなく大野はすぐに爆発の正体を探りに草の石の力を使い、木の葉に自身を乗せて行った。葉と幹の付け根が伸びて行って蔓のようになり、大野は爆発場所へと急ぐ。
かよ子達ももちろんその爆発を見逃してはいなかった。
「今の爆発って・・・!?」
三河口は尋常ではない感触がした。北勢田も同じである。
「あいつらだ」
「え!?」
「健ちゃん、『あいつら』って!?」
「異世界からの敵か、異世界と無理矢理この世界を繋げた者が来たと思います。そしてこの雨もきっとそいつらの仕業・・・!!」
「ええ!?」
「公民館に運んだらあの爆発の場所まで行ってみましょう」
「そうね」
皆は救出者を避難所へ運び終えると、すぐさま戦艦で爆発地へと向かった。
冬田は二人組の男から尋問される。
「この清水には何か不思議な杖や護符があるんだろ?何も知らないのか!?」
「し、知らないわあ・・・!!」
「じゃあ、この羽根は何だ!?異世界からのだろ!」
(フローレンスさんから貰った羽根え・・・!!)
「し、知らないわあ!!」
「嘘つけ!この羽根を持っている者が異世界の事を知らないわけがない!吐かなければまずはこの羽根を貰って探し出す!」
「やめてえ、フローレンスさんから貰った羽根をお!」
「フローレンス!?やはりこれは俺達と敵対する世界からの羽根なんだな!!」
「あ・・・」
冬田は口が滑ってしまったと思った。だが、もう遅い。
「言えないんだったらここで死んでもらおうか」
「い、いやああああ!!」
(お、大野くうん、助けてえ!!)
冬田はもう生きて帰れないと思った。ところがその時、何かが噴射された。男達は硬直した。
「くそ、体が動かん!」
「そうなってんだ!?」
冬田は何が起きたか自分でもわからなかった。その時、飛行機のドアから誰かが入って来た。一人は高校生ほどの男子だが、もう一人は見覚えがあった。嘗て大野達の秘密基地を乗っ取り、友達となった隣町の学校の女子・濃藤すみ子だった。
「お前ら。誘拐か!?」
「お前らこそなんだ!?」
「通りすがりだよ」
その高校生はそう言うとすぐさま拳を二人の男の頬に突き付けた。二人はすみ子によって動きを封じられている為、迎撃もできずに殴られた。冬田はその隙に羽を奪還した。
「あ、貴女、いつかの・・・。大丈夫!?」
「ええ、大丈夫よお」
「私の銃で今この二人は5分だけ動けなくしたから今のうちに逃げよう・・・」
「ええ」
三人は飛行機のドアから脱出した。すみ子は銃の引き金を引く。球体の膜が張られた。
「これで水の中に入ったり、空を飛ぶこともできるよ・・・」
三人は飛行機から離れた。
ブー太郎は雨音のせいであまり寝つけなかった。また、避難勧告も出ている。ブー太郎の住む家の地区は浸水を免れてはいたものの、屋根に穴が開くかというくらい雨の勢いは強烈なものであった。
(大野君と杉山君、大丈夫かなブー?)
心配で眠れない自分とは対照的に、妹のトミ子は爆睡していた。と、その時、窓が光った。ブー太郎は雷かと思ったが、雷鳴はしていない。窓を見てみると、爆発したかのような光が見えた。雨なのですぐに消えてしまったが。
(も、もしかして・・・!?)
ブー太郎も以前「次郎長」の他のメンバーに組織「義元」、クラスメイトの山田かよ子や長山治とその妹の小春と共にオリガという異世界からの女性や丸岡という謎の男と戦った事がある。もしかして彼らのような者が攻めてきたのかと思った。
「い、行ってみるしかないブー!」
ブー太郎は石松から貰った水の石を持ち、家を出た。
かよ子達は爆発のある場所へと急ぐ。そして、飛行機が見えた。
「こ、こんな雨なのに飛行機が飛んでる!?」
「何だって!?」
杉山も疑い、目を丸くしてみた。確かに上空には飛行機が飛んでいる。そして杉山は何やら巨大な植物が移動している様子も見えた。
「あ、大野だ!」
「え、大野君!?」
かよ子も驚いた。かよ子、杉山、長山は大野に手を振りながら叫んだ。
「お〜い、大野お!!」
「お、大野君!!」
「大野君、こっちだよ!!」
大野もちょうど声に気づいた。葉の上から戦艦のデッキの上に降りる。
「杉山!?山田に長山も!どうしたんだ!?」
「俺達は向こうで何か爆発があったんでそこに向かってんだ!」
「まじか!俺もだよ」
「そ、それじゃあ、一緒に!」
「そうだな。それにしてもこれ、戦艦か?」
「うん、そうだよ!」
「山田の知り合いの人が出したんだ」
「凄いな」
大野を戦艦の中に入れると、かよ子の両親の他、見知らぬ男子高校生や大人がいた。
「この人達は私の家の隣に住む人だよ」
三河口が大野に近づいた。
「君が大野けんいち君か。俺は三河口健。山田かよ子ちゃんの隣の家に居候してる高校生だよ」
「宜しく。どうして俺の名前を知ってんだ?」
「ああ、それについては異世界の敵との戦いを通して知っているんだよ。君らによってオリガが倒された後逃げた丸岡に一泡吹かせたのは俺とこの友人だよ。このおばさんがこの護符によって出したアイテムの能力を使ってね。ちなみにこの戦艦もおばさんが出したんだ」
「そうだったのか」
「俺もその友人も今何かしらの胸騒ぎを感じているよ。これはきっと異世界からの敵やその世界を無理に繋げた『組織』の人間が近づいてきたからに違いないと思うな。その場所が今爆発が起きた場所だよ」
「なら飛行機が飛んでいる所がもっと怪しいな!今すぐそこに行こうぜ!!」
「う、うん、そうだね!」
皆は戦艦を飛行機のある方角へと進めた。その時、さりが窓から何かしらの物体が近づいてくるのを見つけた。
「何か近づいてくるわよ!」
「え!?」
皆は窓越しにさりが見ていた窓の方向を確認する。透明な球体が水の中を浮いて動いている。そこには少女が二名、高校生ほどの男子が一名いた。
「ミカワ、あれ濃藤だぞ!」
「本当だな、濃藤の妹もいるぞ!」
「す、すみ子ちゃん!!一緒にいるのは・・・、冬田さん!?」
かよ子はすみ子はともかく、なぜ冬田が一緒にいるのか謎に思った。
「兎に角、助けてあげよう!」
利治の声で皆は救出にかかった。
(あの子達を助けてあげて・・・!!)
さりはそう願うと、球体が戦艦の方に吸い寄せられるように近づいた。かよ子や三河口、杉山、大野、北勢田はデッキに出た。
「す、すみ子ちゃん!!」
「あ、かよちゃん・・・!!」
「濃藤、大丈夫か!?」
「ミカワに北勢田・・・。ああ、俺は大丈夫だよ」
冬田は大野の姿を見ると、大泣きして飛びついた。
「お・・・、大野くうん!!うわああああああん!!」
「何だよ、冬田!?何があったんだよ!?」
大野は迷惑そうに思いながら聞いた。
「わ、私い、あの飛行機の人達に捕まってえ、逃げてきたのお・・・。それで、杖とか護符とかあるかって聞かれたのお!それでこの人達が助けてくれたのよお」
「杖、護符・・・?」
杉山ははっとなった。
「間違いない、奴等だ!!」
かよ子も周囲の皆も驚かずにはいられない。かよ子は冬田が羽根を持っている事に気づいた。
「ふ、冬田さん、その羽根で私達を飛行機の所へ連れて行って!」
かよ子は冬田に頼んだ。
「う、うん!」
冬田は羽根を広げた。
「俺も行くぜ!」
「俺も!」
「僕も!」
大野も、杉山も、長山も名乗りをあげる。だが、三河口が待ったをかける。
「待て!」
「な、何だよ?悪いのかよ?」
三河口の言葉に杉山が異議を唱える。
「全員で一斉に行っても纏めて返り討ちになるだけだ。数名残って奇襲に回るべきだ」
「そ、そうだな」
「じゃあ、誰が行って誰が残る?」
「杉山君と大野君で真正面に行って、さりちゃんに付き添いをしてもらおう。何かあったら護符の力を活かしてもらう。さりちゃん、お願いできますか?」
三河口は従姉に確認をとる。
「うん、いいわよ」
「すみ子ちゃん、君のあの球体はイマヌエルから貰ったその銃で作ったよね?」
「う、うん、そうよ・・・」
「ならすみ子ちゃんとかよちゃんで反対方向から狙うんだ。付き添いに杉山君のお姉さんにお願いしていいかな?」
「私?いいわよ」
「そして俺達はこの戦艦を使う。それでいいか?」
「三方から狙うって事だな」
北勢田は理解した。
「冬田さんだっけ、君の羽根を大野君達に貸してあげてくれ」
「え、ええ、大野君の為ならいいわ!」
冬田は羽根を大野に差し出した。
「サンキューな、冬田。絶対に返す!」
「うん、大野君・・・」
冬田は好きな男子の役に立てた事が何よりも嬉しかった。長山や三河口、濃藤、北勢田、冬田、かよ子やさりの両親などは戦艦に留まった。作戦は開始された。
後書き
次回は・・・
「三方向から襲撃せよ」
「敵」を撃退する作戦を開始したかよ子達。まず、大野、杉山、さりが謎の飛行機に潜入する事に成功した。そしてかよ子、すみ子、杉山の姉が別方向から狙い、戦艦からは三河口や濃藤、北勢田、かよ子の両親達が遠距離攻撃の体制を敷く・・・。
36 三方向から襲撃せよ
前書き
《前回》
大野が心配で外で飛び出した冬田は飛行機に乗る二人組の男に掴まり、尋問を受けてしまう。だが、濃藤兄妹に助けられ、かよ子や大野、杉山、三河口達とも合流する。事情を聞いたかよ子達は飛行機に乗る二人組の男を迎え撃つ作戦を開始した!!
ブー太郎は水の石の能力を行使した。水の上に立って移動する。
「富田太郎」
己をフルネームで呼ぶ声がした。森の石松だった。
「石松!?」
「お主もこの大雨は尋常でないと思ったか。某もだ」
「ああ、これはもしかしてオリガとか丸岡とかみたいな奴の仕業かブー?」
「いかにも」
その時、雨の中、飛行機の飛ぶ音がした。
「なんでこんな大雨で飛行機が飛んでいるんだブー!?」
「うむ、あれが最も怪しい。行くぞ!」
ブー太郎と石松は飛行機へと向かった。
まる子の家は幸い高地の方だった為、まる子はこの大変な状況でも普通に爆睡していた。他の「次郎長」のメンバーが必死で出動しているとも知らずに。
徳林奏子の住む地区は何とか浸水を免れてはいたが、奏子はクラスメイトの男子・三河口が無事か心配だった。遠くから避難勧告も聞こえているので彼が無事に避難できた事を今は祈るしかなかった。
(三河口君・・・)
奏子は眠れずに窓を見た。未だに雨は強く降っている。さらには飛行機の音も聞こえた。
(三河口君が無事でいられたらな・・・)
飛行機に乗る二人組の男はすみ子による硬直攻撃の効き目がやっと切れた所で、体を動かせるようになっていた。
「やっと硬直が解けたぜ」
「くそ、だが、あいつらも何か知っているかもしれんぞ」
「何としても奴等を探すか」
「いや、その必要はない。近づいてきている。俺にはそう感じるんだ。天は仕事の成果をくれたのだ!」
「仕事の成果?」
「ああ、今そのアイテムを持つ者が近くにいるんだ。天よ、我に仕事を・・・」
その時、雷が急に落ちた。ただし、落雷ではない。同時に飛行機がその場で勝手に静止し、動かなくなった。
「うわああ、何だ!?」
「よう、お邪魔するぜ」
二人は振り向いた。少年がニ名、大人の女性が一名入ってきていた。
「お前らは何だ!?」
「この清水に住んでる最強コンビだ!」
「貴方達こそ何者なの?」
「俺は奥平純三。この世界を変える為に動く誇り高き日本赤軍の一人だ!」
「日本赤軍!?」
「そして我が名はバーシム。日本赤軍の一人として二年前に死んだが、重信房子総長により、本名を捨て、この世界に戻ってきた」
「でも日本赤軍はアラブを拠点に動いているはず。なぜわざわざ戦争放棄した日本を襲撃するの?」
「その目的は大日本帝国の再建だ。そんな御託はともかく、お前は護符を持っているな!」
さりは見抜かれてぎょっとした。
「ちょうど良い所に来てくれたものだ。一つ要のものが手に入ったな。天よ、我に仕事を与えてくれた事を感謝する!」
「さあ、お前ら纏めて死んでもらうぞ!」
奥平は手榴弾を出した。
「させるか!」
大野が草の石の能力を行使する。蔓が伸び、奥平を締め付けた。
「うお!」
「なら俺がやる!天よ、我に仕事を与えよ!」
バーシムがそう唱えると、皆の体が動かなくなった。
「く、くそ、これでは動けねえ・・・」
「突撃が裏目に出たな」
バーシムはさりに近づこうとする。しかし、その時、バーシムは跳ね返された。
「な、何だ!?」
「護符の、力ね・・・」
さりは自分と大野、杉山を守ろうという気持ちを持っていた為に護符の力が働き。バーシムは近づく事ができなかったのである。
「この野郎、だから手に入れるのは難しいのか!だが、目標の一つはそこにある!何が何でも手に入れる!天よ、我に仕事を与えよ!!」
戦艦に残った者達は遠距離攻撃の準備をした。
「さりちゃんが出した物が戦艦で良かったよ」
三河口はさりに遠くから感謝した。
「でもこれ砲撃できんのか?」
北勢田が聞いた。
「ああ、よく見たら砲弾がセット済だし、替えの弾丸もここにある」
「それじゃ、健ちゃんと濃藤君、北勢田君、セットしよう」
「はい」
利治の命令に三人はセットした。
「あ、あのお・・・」
「どうしたの?」
冬田の呼びかけにかよ子の母が答えた。
「大野君は無事に、戻って来てくれるんでしょうかあ?」
「大丈夫よ。大野君も前に強敵と戦って打ち勝った事があるるわ。それに大野君と杉山君のコンビは最強だと思うわ」
「で、でも、私、大野君に戻ってきて欲しいんです。好き、だから・・・」
「そうなのね。冬田さんは大野君が好きなのね」
「は、はい・・・」
「実はね、ウチの子も杉山君が好きなのよ」
「そ、そうなんですかあ・・・。でも、一回大野君には好きだって言ったんですが、振られてしまってえ・・・。でも、それでもそんな大野君がますます好きになってるんです」
「そうね、きっと分かってくれるわ」
「ありがとうございますう」
その話をしているうちに三河口達は作業を進めていた。
「濃藤、翼を狙え!胴体を狙うと杉山君達も巻き添えになる」
「OK!」
濃藤は発砲した。
バーシムの呪文のような叫びでさりは持っていた護符が念力のようにバーシムの方へ動いている事に気づいた。
(お母さんの護符が・・・!!)
大野も杉山も動けない。絶望である。その時、爆発音がして、飛行機がぐらぐら揺れた。
「うわあああ!何だ!?」
皆は叫んだ。窓ガラス越しから煙が見える。奥平とバーシムは見ると右の翼が燃えていた。飛行機のバランスも崩れ落ちる。
「くそっ、墜落しちまう!」
バーシムはこの爆破で呪文の力が途切れてしまったため、さりの持つ護符を奪う事ができず、杉山達は再び動けるようになった。
「な、何があったんだ!?まさかまた別の敵か!?」
杉山は見回そうとしたが、機体が揺れているので上手く動けない。
「違うわ。誰かが戦艦から砲撃したのよ」
「あの戦艦、それもできるのか!すげえ!!」
かよ子達は飛行機が戦艦からの砲撃によってバランスを崩した所を見た。
「今よ、突撃するわよ!」
「うん!」
かよ子、すみ子、杉山の姉は飛行機へと近づいた。
「よし、北勢田、反対の翼だ!」
「おう!」
北勢田も発砲した。見事左の翼に命中した。
「うわああ!!」
「くそ、迎え撃ってやる!」
奥平がライフル反対側の出入口から出ようとする。しかし、扉から水が吹き出た。
「な、何だ!?」
水が止んで改めて扉口を確認すると、球体のような物が浮かんでいた。女子が三人いる。
「反対の翼に当たった・・・!」
すみ子も戦艦からの砲撃に勿論気づいていた。かよ子は杖の説明書となる本の文章の一部を思い出した。
【水など液体に杖を向けると水を操る能力が得られる】
「よし、今だ!」
かよ子は雨水に杖を向け、水の操る能力を手にした。そして飛行機の扉に向けて放水する。すみ子が作った球体のバリアに穴を開けたが、球体が壊れる事はなかった。内側からの攻撃は例外なのであろう。
かよ子、すみ子、そして杉山の姉は飛行機に乗り込んだ。そして扉の前に立つ相手は怖じ気づくどころかむしろ喜んでいた。
「お前は・・・。来たか!兄貴、俺達の獲物がもう一つ来たぞ!」
「獲物・・・?もう一つ・・・?」
かよ子は冬田が大野に泣きついて言った言葉を思い出した。冬田は先程までこの飛行機内で尋問を受けていた。それも護符とか杖とか知っているかと。
「もしかして、日本を戦争の国にしようとしてる人だね!」
「ええ!?」
すみ子も杉山の姉も驚いた。また別の男が現れた。
「ここに杉山君、大野君、お姉ちゃんもいるんでしょ!?」
「ほう、来たか、杖を持つ者!我が名はバーシム。異世界から舞い戻ってきた!!さあ、その杖を渡してもらおうか」
「山田あ!?そこにいるのか!?」
聞き覚えのある声がした。
「す、杉山君!?」
「絶対に渡すなあ!」
奥平がライフルをかよ子に向けた。そして発砲する。
「さ、させないわ・・・!」
すみ子が己の銃の引き金を引いた。目の前に壁紙が現れ、ライフルの弾丸を跳ね返した。
「ならば、俺の能力だ。天よ、我に仕事を与えよ!」
かよ子は杖が勝手に動き、バーシムの所へ持っていかれるのを感じた。
「つ、杖が・・・」
「弟よ、これで杖も護符も一気に手に入るぞ!ふはははは!!」
バーシムも奥平も喜びに溢れた。その時、窓ガラスに強力な水鉄砲がかかった。水圧で窓ガラスが割れる。同時にバーシムの能力も途切れた。杖と護符が途中で落ちる。
「な、何だ!?」
かよ子は今度こそ取られまいと杖を拾った。
「遅くなっちまってわりいな!」
現れたのは隣町の学校の男子、山口、川村、ヤス太郎、そしてブー太郎と石松だった。
後書き
次回は・・・
「飛行機内での決戦」
多くの者達が奥平とバーシムの乗る飛行機で集合し、戦いが始まる。だが、三河口達が乗る戦艦の砲撃によってボロボロの飛行機は墜落へと進んでおり・・・。
37 飛行機内での決戦
前書き
《前回》
かよ子達は冬田を尋問した飛行機にいる二人組の男を迎撃すべく、三河口の発案でさり、大野、杉山の片方から狙う班、かよ子、すみ子、そして杉山の姉のもう片方から狙う班、そして三河口、濃藤、北勢田、冬田など戦艦に残り遠距離攻撃を図る班に分かれる。先にさり達が飛行機に着くが、二人組の男の正体は日本赤軍の一員・奥平純三と異世界の人間・バーシムだと知る。最初は二人の攻撃に苦しむが、かよ子達も追いついて加勢。三河口達の遠距離砲撃も成功するが、バーシムの能力で異世界の杖と護符が奪われかける。しかし、新たな援軍として森の石松とブー太郎、山口、川村、ヤス太郎が現れた!!
「大野君、杉山君、大丈夫かブー!?」
ブー太郎は飛行機に乗り込むと、己の二人の親分に出会った。
「俺達は大丈夫だ!」
「あら、二人の友達?」
「はい、ブー太郎って言うんです」
「ブー太郎!そこに杉山君がいるの!?」
かよ子の位置からは杉山達の姿が死角となって見えなかった。
「山田かよ子!?勿論いるブー!」
「すみ子!来たぞ!」
「山口君、川村君、ヤス太郎・・・!!」
「ふん、人が増えたって簡単に倒さんぞ!」
飛行機がまた揺れた。戦艦からの砲撃で翼を損傷した為である。
「この飛行機が墜落する前にお前ら纏めて殺ってやる!」
奥平はライフルを辞め、手榴弾に持ち変えた。
「させないでやんす!」
ヤス太郎はパチンコを発射した。奥平の全身が動かなくなった。
「うわああ、何だこれは!?」
「『痺れ玉』でやんす!」
「弟よ、俺が取り除く。天よ、我に仕事を・・・」
バーシムは呪文を唱えようとしたが、山口が矢を放った。
「うお、あちち、燃える!」
「俺が放ったのは『火矢』だ。体が燃えるぞ!」
「くそ・・・、このままでは兄貴が・・・、消えちまう・・・」
奥平は痺れて動けない体を何とか動かそうとした。そんな時、飛行機がさらにグラついた。飛行機は5メートル程度まで降下している。
「やべ、このままじゃ墜落しちまうぜ!」
大野はなす術がないかと焦った。
「杉山さとし、お主の『雷の石』の能力を行使せよ!」
「お、おう!」
杉山は雷の石の能力を行使した。
「やべえぞ、あの飛行機が落ちてくる!」
三河口達も飛行機が墜落しゆく様を見ていた。
「お、大野君が巻き添えになっちゃあう!嫌あ!!」
冬田は悲痛の声を挙げた。
「と、兎に角、このままだと誰かの家に当たる。被害の少なさそうな所へ移さないと駄目だ!」
「長山君、どうやってやればいいと思うか?」
三河口は長山に質問する。
「うーん、皆が飛行機から脱出してそこから狙えばいいかな?」
「よし、皆が脱出できる事を祈るか!」
全員待機を決行した。その時、飛行機が止まった。
「飛行機が止まったぞ!」
かよ子の父が驚いた。
「誰かが何かしたんじゃないの?」
まき子はそう考える。
(さりちゃんかしら?それとも杉山君・・・?)
杉山は雷の石の力で飛行機が止まった。
「ど、どうして飛行機が止まったの!?」
かよ子には訳が分からなかった。
「『雷の石』の力でこの機体の磁力と地面の地磁気を制御したのだ。これで杉山さとしの能力の使用が途切れない限り飛行機は浮遊し、墜落する事はない」
「あちちーーー!」
バーシムは焼ける身体に苦しむ。
「熱いなら水攻めにするブー!」
ブー太郎はバーシムに水圧攻撃をした。火は消えたが、バーシムは機体の壁に打ち付けられた。
「や、やめろ・・・!」
奥平は痺れた身体を無理に動かす。奥平は手榴弾を投げた。杉山、大野、さりのいる位置へと向かう。
「危ねえ!」
川村がバズーカを発砲した。手榴弾にあたってその場で爆発した。そして火の粉が舞ってその場で消えた。
「天よ・・・、我・・・、に・・・」
バーシムが苦しみながらも呪文を唱えようとしていた。
「ヤス太郎、その男は呪文を唱えようとしてるよ!眠らせて!」
「了解でやんす!」
ヤス太郎はパチンコを発射した。眠り玉だった。バーシムは眠った。それを石松が斬り込もうとする。
「おのれ・・・。あ、に、き、を・・・!!」
奥平は悪あがきのように動く。服に隠し持っていたリボルバーを出し、石松を撃った。
「石松!」
だが、石松は振り向き、奥平からの銃弾を弾いた。だが、奥平はあるスイッチを押した。
「自爆スイッチを押した。お前ら纏めて死ね!」
「何だって!?逃げるぞ!!」
大野、杉山、さりはかよ子のいる方へと向かう。ブー太郎、山口、川村、ヤス太郎も急ぐ。
(このままじゃ巻き添えになる!!)
さりはそう思うと護符の力が発動した。皆は瞬間移動し、気がつけば戦艦の中に戻っていた。
「あ、あれ・・・?」
かよ子は突然の瞬間移動であっけにとられた感じだった。
「皆、帰ってきたのか!」
かよ子の父は驚いた。ブー太郎、山口、川村、ヤス太郎も加えて。
「大野くうん、無事だったのねえ!!」
冬田は泣きながら大野に抱き着いた。
「おい、冬田、抱き着くな・・・!!」
「よし、最後の砲撃・・・、ん?」
三河口は異変に気づいた。
「飛行機が爆発してバラバラになったぞ!」
「ええ!?」
皆は戦艦の窓を見る。爆発と共にバーシムと奥平が乗っている飛行機が爆発し、バラバラとなった。
「あの飛行機に乗ってたのは誰だったんだい?」
かよ子の父が尋ねた。
「二人いて一人は異世界から来た奴です。そしてもう一人は日本赤軍の人間でした」
さりが答えた。
「日本赤軍!やっぱりそうだったのね」
奈美子はやはりと思った。
「前に清水に来たあの丸岡って奴と同じ組織の奴か!」
北勢田は胸糞悪いような気分になった。
「でも、いつすみ子の友達まで来て、どうやって戻って来たんだ?」
濃藤が質問した。
「俺達も気づいたんだ、この大雨、何か怪しいって。それで捜索していたらブー太郎と出会ってさ。それであの飛行機がクサいと思ったんだよ。そしたらすみ子達もいたってわけさ」
川村が説明した。
「でも、日本赤軍の奥平って奴が飛行機の自爆スイッチを押したんだ。それに気づいたらいつの間にかここに瞬間移動したんだ」
大野が代わって説明する。
「それ、この護符の力ね。皆に助かって欲しいって祈ったの」
さりが補足した。
「そうか、それで護符の力が働いて皆を瞬間移動させたのか」
長山は考察した。
「そうよ」
「護符だって?」
山口が謎に思った。
「ええ、これよ」
さりが山口達に護符を見せた。
「これか」
「でも、あんたは一体誰でやんすか?」
ヤス太郎が質問した。
「私は羽柴さり。山田かよ子ちゃんの隣の家に住んでいた者よ。今は名古屋に住んでいるけどね」
「この護符も異世界からの物ですか?」
「ああ、そうだよ、君らの武器と同じく、平和を司る方の異世界の物だよ。イマヌエルやフローレンスの世界のね」
三河口が質問に答えた。
「マジか」
「それにしてもあのバラバラになった飛行機の中の人達、どうなったのかしらあ?」
「わからんな・・・」
皆が会話に夢中になっている間に窓を見ると、飛行機の姿はなく、奥平とバーシムの生死は誰にも分からなかった。
「あ、そうだ、さっき戦艦で攻撃した後、飛行機の墜落が止まったけど、あれは何があったの?」
かよ子の母が質問した。
「ああ、俺がこの『雷の石』を使って止めたんだ」
「雷の石?」
さりは不思議そうに杉山が持っている稲妻模様のある石を見た。
「ああ、『森の石松』から貰ったんだ。さっきも俺達の前に出てきて飛行機が墜落しそうになった時、この石を使えって言ったから使ったんだよ」
「そうだったんだ・・・。でも、石松はどこ!?」
かよ子は見まわしたが戦艦の中に石松はいなかった。
「まさか、あの爆発の中に・・・!?」
「安心せよ、某はここにおる」
石松が幽霊のように現れた。
「貴方が『森の石松』?」
杉山の姉が確認した。
「まさにその通りである。某も脱出に成功した」
「貴方も異世界から来たの?」
さりが質問する。
「いかにも。この国の異変を食い止める為に動き出した。ここにいる大野けんいち、杉山さとし、富田太郎、そしてここにはおらぬがさくらももこの四名が、組織を結成してな、その名が我が親分の名を使用してくれた事に謝意を感じ、彼らに敵と戦う事を願って四つの石『雷の石』、『草の石』、『水の石』、そして『炎の石』を渡したのだ」
「俺が持っているのが『草の石』だ」
「オイラのは『水の石』だブー」
「そしてさくらが持っているのが『炎の石』だぜ」
「そしてこの者どもが持っておるのも敵に抗う為の武器なのだ」
石松は山口達が持つ武器を指して説明した。
「そうだったのね。よくわかったわ」
「うん、ん・・・?」
かよ子は気づいた。雨を打つ音が少し弱まっている事に。
「雨、弱くなってる・・・?」
かよ子は外へ出た。雨は先ほどよりも弱まっていた。
「きっと、あの雨、あいつらが降らせていたんだね・・・」
かよ子はバーシムと奥平による雨だったと改めて気づいた。
(私達の町を、こんな水浸しに・・・!)
かよ子は異世界および日本赤軍による浸水を恨み続けるのであった。
後書き
次回は・・・
「収まりゆく雨」
奥平とバーシムを撃退し、雨は小振りとなっていく。しかし、学校は休校となってしまい、公民館でかよ子は大野、杉山や長山達と共に朝を迎えることになる・・・。
38 収まりゆく雨
前書き
《前回》
飛行機内で日本赤軍の一員・奥平純三と異世界の男・バーシムと闘うかよ子達。彼女らに石松、ブー太郎、山口、川村、ヤス太郎が加勢し、奥平とバーシムを追い詰めるが、奥平は自爆スイッチを作動。だが、さりの思いが異世界の護符と連動し、瞬間移動で戦艦に戻る事ができた。だが、かよ子は雨を強めて清水の町を荒らした二人を恨み続けるのだった!!
飛行機の自爆スイッチを押した奥平はバーシムを何とか連れていた。飛行機は自爆したものの、バーシムを連れてパラシュートを何とか出して脱出した。
「くそ、何が何でも見つけて・・・」
奥平は民家の屋根に着地した。その時、別の飛行機が現れた。
「純三、乗りなさい」
女性が現れた。
「総長!」
奥平が総長と呼ぶその女性は日本赤軍の総括・重信房子だった。
「貴方もしくじってくれたわね。まあ、兎に角、次の作戦に移りましょう」
「はい」
重信は飛行機は奥平とバーシムを乗せ、パレスチナへと進んでいった。
奏子は夜も眠れずに窓の雨を見ていた。飛行機が爆破されたり、何らかの砲弾が飛ぶ様が確認され、恐怖心を持った。
(三河口君、大丈夫かな・・・?)
かよ子は弱まる雨を見ていた。
「雨が弱くなってくね」
「ああ、あいつらの仕業なんてな、雨乞い師みたいな事してくれるぜ」
「わ、私、杉山君が無事で良かった・・・」
「山田・・・。俺もお前達が来てくれて助かったぜ。サンキューな」
かよ子は照れた。
「う、うん、どう、致しまして・・・」
「あら、お似合いね、お二人さん」
さりがからかった。
「そ、そんな、ち、違うよ・・・」
かよ子は誤魔化そうとした。杉山も恥ずかしくなった。
「救出作業も済んだし、皆で公民館に行こうか」
「ところで」
大野は山口達に聞く。
「お前らんちは大丈夫なのか?」
「ああ、俺達は高台の方だったから大丈夫だよ」
「俺も」
「おいらもでやんす」
「分かった。冬田、この羽根、お前に返すよ。これで山口達をそれぞれの家へ送ってやってくれ」
「大野くうん・・・」
冬田は大野の為に仕事ができると思って嬉しくなった。
「うん、分かったわあ!」
「あ、ついでに私もお父さんとお母さんが心配してると思うから私達が行く予定の公民館へ連れてって・・・」
冬田は羽根を使って山口、川村、ヤス太郎、そしてすみ子とその兄を連れて行った。
「オイラも戻るブー」
ブー太郎は水の石の能力を行使して水の踏台を作り、サーフィンのように水の上に乗って戻る。
「じゃあなブー」
「おう、またな」
ブー太郎と別れると皆は公民館へ向かう。
「では、某も失礼致す。では」
石松はスッと幽霊のように消えた。
「それにしてもこの浸水じゃ明日は臨時休校だな」
三河口は呟いた。
「わ、私の学校もそうかな?」
かよ子が聞く。
「そうだね、かよちゃんも、長山君も、大野君も、杉山君も避難を余儀なくされる状況だし、君の学校の多くの児童も避難で学校どころじゃなくなるよ」
「うん・・・。う、ふあああ〜」
かよ子は深夜での戦いだった為か欠伸をしてしまった。
「あ・・・」
不謹慎だったかなと、かよ子は思った
「はは、気にするなよ。もう公民館だよ」
かよ子の父は全く気にしていなかった。
「うん・・・」
公民館に到着すると、戦艦は役目を終えた為か光って消えた。
「けんいち!心配してたのよ」
大野の両親もその場にいた。
「ああ、父さん、母さん、ごめんな・・・」
「大野さん、ごめんなさい。私達が息子さんに人助けに協力させていただきました」
かよ子の母が弁解した。
「そうだったんですか・・・。どうもすみません」
その一方で、長山も家族と再会していた。
「おにいちゃん、あいたかったよ・・・」
「ああ、小春、お兄ちゃん、帰ったよ」
「大野、俺達も休もうぜ」
「そうだな」
「山田も眠いだろ。休めよ」
「うん・・・」
公民館は人がいっぱいでどこの会議室も人でいっぱだった為、階段や廊下で佇む者もいた。かよ子もたまたま空いていた廊下のスペースで大野や杉山、長山と仮眠した。
(杉山君と一緒に夜を過ごせるなんて・・・)
かよ子にとっては大変な夜であったが、好きな男子と夜を共にする事ができるのにはどこか嬉しく感じるのであった。
冬田はすみ子達を送っていた。
「ありがとう、冬田さん」
「ええ」
「また、会うかもしれないわね」
「そうねえ、また敵が襲ってきたら一緒に戦いましょうねえ!」
冬田はすみ子達を下ろし終えると、自分の家へと戻った。
(疲れたわあ・・・)
冬田はベッドに入るとすぐに寝てしまった。
翌朝、雨は小降りにまで弱まった。ブー太郎は夜の戦いの疲れから寝坊してしまった。
「いつまで寝てるんだいブー!?」
母に起こされた。
「ご、ごめんブー・・・」
「丸尾君から電話だよブー!」
「わ、分かったブー」
ブー太郎は電話に出た。クラスメイトで学級委員の丸尾末男の声が聞こえる。
「富田君、学級委員としてお知らせします。今日はスバリ、休校でしょう!!」
「分かったブー」
ブー太郎は電話を切った。深夜の戦いで疲れていたので学校が休みなのは嬉しいが、同時に大野や杉山達が心配でもあった。
かよ子が起きた時には午前8時を過ぎていた。
「お、山田も起きたか」
「お、おはよう」
かよ子は空腹感を感じた。
「はあ、お腹減ったな・・・」
「ああ、配給も来るかな?浸水した店の食料は多分駄目になってる筈だし、高地にある店とかの在庫があればいいんだが・・・」
そして、5分後、案内放送が流れる。
『皆さん、食料として付近のお店のパンを支給して参りました。玄関前で順番にお並び下さい』
「パンだってよ、大野、山田、長山、行こうぜ!」
「おう!」
「北勢田、俺達も行こうか」
「ああ」
皆は順番にならんで玄関前に停まったトラックに積んであるダンボール入りのパンを待った。
「いろいろあるね」
パンはクリームパン、メロンパン、あんパン、焼きそばパン、コロッケパンなど、菓子パン・惣菜パン問わず多種多様だった。かよ子はクリームパンを貰った。大野はあんパンを、杉山はホットドッグを、長山はコロッケパンを貰って食べた。
「それにしても今日は学校休みになるかな」
大野は思う。
「この大雨じゃ、授業はまず無理だよ。この雨じゃ、学校まで被害が及んでいると思うよ」
長山はそう推察した。その時、アナウンスが流れた。
『大雨により、本日は清水市内の全ての幼稚園、小学校、中学校および高等学校は休校となりました』
「休校、か・・・」
「つまんねえな」
「でも、仕方ねえよな」
かよ子達はそんな会話をしていた。もし家にいて休校ならば杉山に会えずに寂しい思いをしていたかもしれないだろう、とかよ子は思った。
休校の連絡は冬田の家にも来ていた。
「はあ~、大野君に会えないわあ~、つまらないわねえ・・・」
冬田は学校で大野に会えない事に溜め息をついた。
「さりちゃん、今日は帰れませんね」
「ええ、でもあともう二、三日だけ、健ちゃん達と一緒にいられてよかったかもしれないわね」
「そうですか、バイトは大丈夫ですか」
「うん、電話で言っておくわ。きっと解ってくれるわよ」
「そうですね、さりちゃんが帰る前の日には皆で送別会、やりたいですね」
「いいわね、お父さん、お母さん、やろうよ!」
「もう調子に乗って・・・。ま、いいわよ」
三河口はかよ子達の元へ行く。
「皆、さりちゃんが帰る日に皆で送別会をしないかい?」
「お姉ちゃんの送別会・・・」
かよ子は幼い頃からお世話になっている為、その話に乗らないわけにはいかなかった。
「うん、やろう、やろう!」
「いいな!」
かよ子も、杉山も、大野も、長山も賛成した。三河口はさりに伝える。
「皆も賛成してますよ、さりちゃん」
「ありがとう。そうだ、折角だから清水のマグロがいいわね」
さりは送別会をありがたく思うのであった。
後書き
次回は・・・
「水浸しの町の復元」
ようやく雨が止み、清水の町は低地を中心に水に浸かってしまった。その光景を見てただ呆然とするしかできないかよ子達。その時、さりの願いに対して護符の力が応え出す・・・。
39 水浸しの町の復元
前書き
《前回》
七夕の夜の闘いは終わった。しかし、かよ子達は公民館で夜明け、そして朝を迎え、学校は休校となった。さりの帰りも延期を余儀なくされる事になり、三河口はかよ子達にさりの送別会をやらないかと提案するのであった!!
雨は11時過ぎにようやく止んだ。かよ子達は公民館を出て清水の町を見る。一見ヴェネツィアのような水の町として美しく見えるかもしれないが、浸水は浸水だった。
「私達の町が・・・」
「ああ、あいつらよくもやってくれたよな」
かよ子も、杉山も、大野も、長山も、他の皆も大量の雨水沈んだ町の様を見た。
「これで水が完全に干上がるのは何週間かかるんだろうか?」
三河口は呟く。
「晴れてくれないとな・・・」
北勢田もそう思う。
「こんな大雨せめて水不足の国に回せたらその国にとっては恵みの雨になるのにな」
「でも、日本は元々雨が多い国だから仕方ないよ」
長山も話に入る。
「干上がる・・・。水不足の国・・・。そうだ・・・!!」
さりはその会話を聞いてはっと思った。
「お姉さん、どうしたの?」
かよ子はさりが気になった。
「この雨水を干上がらせて水不足に悩む国に回せたらなって思ってね」
「で、できるかな?」
その時、護符が光りだした。
すみ子とその兄は家族で水に埋もれた低地を見ていた。
「埋もれちゃったね・・・」
「ああ、水を掃きだすのも大変だろうな・・・」
この雨では干上がるのを待ち続けるしかないであろう。しかし、簡単に干上がるのか。それが心配だった。その時、水が急に水蒸気と化していった。
「な、何だ!?」
水は水位を下げていく。
(急に水がなくなっていく・・・。もしかして、あのかよちゃんの知り合いのお姉さんの護符の力かな?)
すみ子はそう予測した。
冬田は休校の連絡による電話を終えると好きな男子の事を考えた。
(大野くうん・・・。どうしてるのかしらあ・・・?)
冬田はあの戦いの後の大野が今どういう状況なのか気が気でなかった。冬田はフローレンスから貰った羽根を使用する。目指すは大野達が避難している公民館だ。
「待っててえ、大野くうん・・・!!」
冬田は羽根を見て浸水した町を見る。だが、その浸水した地区に異変が起こった。浸水した地域の水位が下がり始めたのだ。
「急に水が干上がってるう!?」
なぜこうなったのか、冬田には理解不能だった。
「み、水が干上がってく・・・!!」
かよ子は急な水位の低下に驚いた。やがて沈んでいた地面が見えていき、水は蒸発後、雲に戻る事はなかった。寧ろ晴れていった。
「す、凄い。これも護符の力?」
かよ子はさりに聞く。
「そうね、健ちゃんの干上がるとか水不足の国に降ったらいいとかいう話を聞いてそう思ったの」
「さりちゃん、やっぱりその護符の能力が使えるんですね」
「そうみたいね」
「凄えぜ、これでもしかしたら世界を守れるかもな!」
杉山が感激する。
「でも、私利私欲とかには使えんよ。異世界の敵とか日本赤軍が二度と来ないって言う願いも聞くかわからんし」
奈美子が補足した。その時、何かが飛んでこっちに向かって来た。
「大野くうん!!」
冬田だった。
「ふ、冬田!?何で来たんだよ」
冬田の突然の登場に大野は驚いた。
「だって大野君が心配だったからよお!」
「俺は平気だよ!」
冬田の暑苦しさに何も言えない一同だった。
「でも、水が干上がってるけど何があったのお?」
「ああ、俺の従姉が護符の力で干上がらせてくれたんだ。干上がった水はきっと水不足で困っている国で雨として降らせてくれるはずだよ」
三河口が答えた。
「ならよかったわあ。明日からまた学校で会えるわねえ!」
冬田は大野の手を掴んだ。大野はうっとおしそうな顔をしていた。
「送ってあげるわあ、大野くうん」
「いいよ、父さんに母さんと歩いて帰るから」
「そんなあ、恥ずかしがってえ」
困惑する親友に杉山が冷やかす。
「いよっ、お似合いだぜ!」
「杉山、お前まで・・・」
「けんいち、いいじゃない、お言葉に甘えたって」
「そうだね、折角送ってくれるんならいいかな」
「はあい!」
「ったく、父さんと母さんまで・・・」
結局大野は家族で冬田に送ってもらった。
「冬田さん、凄い積極的だよね。私だったらあんな事できないよ・・・」
「え?」
かよ子は杉山に聞かれて恥ずかしくなった。
「私はあんな事寧ろ断られそうで恥ずかしくてできないと思うんだ」
「そうか、でもお前も色々頑張ってたぜ。あの時お前達が飛行機に乗り込むのが遅かったら俺達もやられてたかもしれないんだ」
「杉山君・・・。でも私はまた私の問題に杉山君達を巻き込んじゃったし、すまないって思ってるよ」
「気にすんなよ、何かあったらいつでも協力してやる」
「杉山君・・・。ありがとう!」
「あら、さとしもかよちゃんを大切にしてるのね」
杉山の姉が話に入ってきた。
「ね、姉ちゃん!俺は山田とは同じクラスメイトとして接してるだけだよ!」
杉山は困惑した。
「さて」
かよ子の母はその会話をよそに奈美子に話しかけようとする。
「奈美子さん、私は杖を娘に引き継がせたし、さりちゃんも護符を使いこなす能力があったし、引き継がせたらどうかしら?」
「うん、そうね・・・」
奈美子は娘に護符を持たせた方が良いかもしれないと思った。
「さり」
奈美子は娘を呼ぶ。
「え?」
「この護符、元は私が使ってたんだけど、この先何が起こるか分からんし、持っておきなさい」
「いいの?」
「うん、でも本当に必要だと思った時に使うんよ」
「はい」
さりは母から護符を受け取った。
「それじゃ、雨も上がったから、戻ろうか」
「うん!」
皆はそれぞれの家に戻った。かよ子は自分の家に戻る。
「でも、テレビや洗濯機は水に浸かって壊れちゃったのかもしれないな」
かよ子の父はテレビの電源が入るか確認した。テレビは問題なく着いた。冷蔵庫も洗濯機も、掃除機も問題なく使えた。
「もしかしたらこれもお姉ちゃんの護符のお陰かな?」
「そうかもしれないわね」
かよ子はこの町を無傷の状態に戻してくれたさりに改めて感謝した。
(お姉ちゃん、ありがとう・・・)
謎の地震が起きてから、元の日常が失われてしまったが、最悪の場合から少し戻せた感じがかよ子にはした。完全な日常に戻すには時間がかかるかもしれないが、それでも時は回り続け、空間は保ち続ける。
後書き
次回は・・・
「四種の聖なるアイテム」
学校は再開され、かよ子は学校の期末のテストに臨む。その一方、森の石松はあるところに行って「ある物」についての情報を得る。三河口は奏子を居候中の家に招待する。そして東京にはある「異世界の道具」を持った少女が夏休みに静岡県へ行く事を企画する・・・。
40 四種の聖なるアイテム
前書き
《前回》
七夕豪雨の翌朝、清水の町はすっかり雨水に浸かっていた。そんな時、三河口の「こんな大雨せめて水不足の国に回せたらその国にとっては恵みの雨になるのにな」という発言に対してさりはある事を思いつき、その護符の能力が発動される。その時、雨水の水位が急に下がり始め、町は元の姿に戻ったのだった!!
今回は豪雨のエピローグおよび次のエピソードのプロローグのようなものです。そして「ちびまる子ちゃん」2期242話に登場した一話限りの登場でありながら杉山君とのカップリングで人気が高い「あの子」が登場します!
森の石松。死後、平和を司る世界へと移されていたが、かつて住んでいた世界が日本赤軍が行った異世界との接続により、再び清水に舞い戻ってきたのである。その石松は今、御穂神社にいた。
(ここか・・・。三保は今でも美しい・・・)
そして石松は呼ぶ。
「御穂津姫」
石松が呼んだのはこの神社の神だった。
「貴方は森の石松ですね。何か御用でしょうか?」
「ああ、聞きたい事がある。お主が29年前に二人の少女に渡したという杖と護符についてだ」
七夕の大雨から二日後、小学校は再開された。かよ子の隣の家の娘(今は名古屋に住んでいて、帰省の身である)さりの能力によって水は干上がり、電化製品も無傷の状態に戻した。また本来は流されたり、どこかに散らかっていたりしていてもおかしくない児童の物や置物などはそのままとなっていた。
(護符の能力ってここまで復元できるんだ・・・!!)
そんな時、かよ子を呼ぶ声が後ろから聞こえた。
「おっはよ~、かよちゃん!」
「あ、まるちゃん、おはよう」
「いや~、昨日は休みでアタシゃのんびりできたよお~。今日も学校休みだったらよかったのにねえ~」
(まるちゃん・・・)
かよ子は大雨の中の戦いで「次郎長」のメンバーである大野、杉山、ブー太郎は参戦していたが、まる子がその場にいなかった事を思い出した。
「でも、私あの時は大変だったよ」
「え、どうして?学校が休みでよかったじゃん」
「私の家浸水しちゃったし、それに異世界からの人間が襲ってきて大変だったんだよ!」
「え!?そうだったのお~!?」
休みをただ喜んでいるまる子に少し呆れたかよ子であった。その時、大野、杉山、ブー太郎も近づく。
「おい、さくら。お前、一昨日の夜、どうしてたんだ?」
「あ、いや、その・・・。寝てた」
「お前、『炎の石』持ってんなら『次郎長』の一員としての役目を忘れんなよ!」
「そうだブー!オイラの所も浸水は避けられたけど、出動したんだブー!」
「ご、ごめん、ごめん・・・」
皆から叱責を喰らうまる子であった。
「某はその杖と護符という道具の事についてよく知らん。渡した意図と共に答えて貰いたい」
御穂津姫は石松の質問に答える。
「それはあのお二方が空襲を受けた後の苦悩で手を差し伸べたかったからです。我々の世界の『道具』にはその世界の住人も知らぬ機密の道具もあるのです」
「機密の道具とな?」
「はい、それは四つの道具です。剣、杯、そして私がフローレンスから三河口奈美子、今の羽柴奈美子と山田まき子へ渡してほしいと頼まれた杖と護符。これをよく知っているのは大天使・フローレンスとイマヌエルと渡してほしいと頼まれた者のみです。戦後の混乱で苦しむ者のうち、生き抜きたい意志を強く持つ者四名を選抜し、各々の神社で祀られているという者を呼び、分け与えたのです」
「しかし、なぜフローレンスもイマヌエルも直接渡さなかったのであるか?」
「それはあの方々はそれらの道具を渡すのに各々の場所が離れてしまってはすぐには渡せませんし、神社に祀られている私達なら当時は私達のこの世界とこの地球への移動がしやすいと考えられたのです。その為、該当された者達へ『道具』を渡す場所が神社になったのです」
「そういう事か。剣と杯は他の地の者が所有しているのであろうか?」
「はい。剣は厳島の地、広島という所に、杯は東京、今の江戸にございます」
御穂津姫は言葉を続ける。
「剣、杯、杖、護符。これらはトランプという西洋のかるたのような物に示される四つの紋印から型どったものです。剣はスペード、杯はハート、杖はクラブ、そして護符はダイヤです。平和を司る世界の中でも強力な力を発する物であるゆえに、極秘物として扱われているのです」
「それ故か。決して他の者には言いふらさんと約束する」
「いえ、既にその必要はありません。武力を主とする世界との繋がりが激しさを増し、かつこの世にも及んでいる今、その情報は共有せざるを得ません。今その大きな戦いが始まっているのですから」
「確かにそうであろうな」
清水市内の高校も授業が再開されていた。三河口は奏子から心配されていた。
「三河口君、無事で良かったね」
「ああ、ありがとう」
「私、あの夜眠れなくて窓見てたら飛行機が飛んでたり爆発があったりして、びっくりしたよ」
「ああ、あの地震みたいな現象から信じられないと思うけど異世界の人間とか日本赤軍が攻めてきてるんだ」
「ええ!?」
奏子は信じがたい事実に驚いた。
「あの大雨もそいつらが意図的に降らせたんだ。でも、まあ、やっつけたから一応は安心だよ」
「うん」
「そうだ、今日俺が居候してる家に来るかい?従姉もまだいるし」
「うん、そうするよ!」
かよ子はたまえに大雨の中での戦いを話していた。
「そうだったの!?大変だったね」
「うん、でも皆で何とかやっつけたよ。それで隣の家に住んでたお姉さんが明日清水に帰るから送別会するんだよ。たまちゃんも行く?」
「ごめんね、私今日ピアノのお稽古あるんだ」
「いいよ、いいよ」
かよ子は送別会が楽しみだった。帰る時、かよ子は大野と杉山、ブー太郎と集合場所を打ち合わせた。
「今日のお姉さんの送別会、私の家の隣の家に集合だよ」
「オーケー!」
「じゃ、後でな、ブー!」
皆は別れようとした。かよ子はその後、まる子も誘う。
「あ、まるちゃん、明日、隣の住んでるお姉さんが名古屋に帰るんだ。今日、送別会やるんだけど一緒にどうかな?」
「いいねえ〜、行く、行く!ご馳走楽しみだねえ〜」
まる子は食い意地がはった。
「もう、まるちゃんったら・・・」
何も言えないかよ子だった。
三河口は居候している家へ奏子を招待した。
「只今帰りました。今日は友達を連れてきました」
「友達?」
「あ、徳林奏子と言います」
「ああ、宜しくね」
三河口は奏子を連れて居間に入った。その時、さりも入ってきた。
「健ちゃん、お帰り。あら、友達連れてきたの?」
「はい」
「徳林奏子です」
「こんにちは。三河口健の従姉の羽柴さりです。宜しくね」
「あ、あの、この辺り、大雨の被害とかは大丈夫でしたか?」
「え?ああ、大丈夫よ。浸水はしたけど、今は干上がったわ」
「そうですか、よかった・・・」
「良かったって?」
「私、三河口君と日本平の花火大会に行こうって誘ったんです」
「日本平の花火大会?良かったね、健ちゃん、デートじゃん」
「さりちゃん・・・」
三河口は赤面した。
「やあね、顔赤くしちゃって」
さりも奏子も笑った。奏子はクッキーをコーヒー牛乳をご馳走になった。三河口がトイレに行ったところで、さりは奏子に話しかける。
「奏子ちゃん」
「え?」
「もしかして健ちゃんが好き?」
「う、は、はい・・・」
「健ちゃんは小学生の頃まで、色々と大変でね、それで中学生の頃からここに住むようになったのよ」
「はい、それは聞いてます」
三河口は自身の過去を隠す事はなく、学校の同級生達に話していた。
「でも、今の三河口君はそうは見えません」
「そうよね、健ちゃんは人と違う『もの』を持っていて、それを抑える為に清水に来たの。それは何か、何か恨みとか憎しみを持つとその相手に怒ってとんでもない攻撃をしちゃう能力だって」
「そうだったんですか!?」
「うん、でも今はそれを抑えられてるみたいよ」
「でも私、それでも三河口君が好きなんです」
「健ちゃんは奏子ちゃんとは仲良くしてるし、能力を暴走させる事はないと思うわ」
「はい」
そして奏子は帰る時になった。
「それではありがとうございました」
「またおいでね」
「奏子ちゃん、花火大会、楽しみにしてるよ」
「三河口君・・・、うん、じゃあね!」
奏子は三河口の最後の言葉が嬉しくなり、帰って行った。
「さて、そろそろ皆来るね」
30分ほどしてかよ子が杉山達を連れてきた。
「こんにちは!」
「あら、こんにちは」
そしてかよ子の両親、濃藤とその妹、すみ子、北勢田も訪れ、利治も帰ってきた。
「それじゃ、楽しい送別会にしよう!」
皆は送別会を行う場所へと向かった。
東京。ここに一人空襲後の混乱を乗り越えようとする者に一つの杯が与えられた。その杯は様々な分子を入れるとその精霊を生み出す杯だった。それを木の枝などを使用して植物の精霊を生み出し、様々な木の実を作らせ、飢えを凌いだという。混乱も収束し、その杯は長らくしまわれていたが、29年ぶりに使用される事となり、その者の娘に引き継がれた。その娘は安藤りえといった。だが、りえの住む所は東京から横浜まで跨がる工業地帯の中だった為、空気が悪く、喘息が持病となってしまった。りえはその杯に空気を入れ、風の精霊を作り出して自身の周囲の空気を浄化する事で何とか凌いでいた。
「りえ」
りえは母からある提案をされた。
「この夏休み、静岡のおばあちゃんの家に遊びに行ってみたら?あそこは空気はそんなに汚れてないからね」
「え?うん、楽しみにするわ」
りえはこの夏休み、静岡県へと遊びに行く事に決めたのだった。
後書き
次回は・・・
「護符の所持者、名古屋へ戻る」
名古屋へ戻るさりの送別会を行うかよ子達。そして次なる作戦を開始する日本赤軍。そして東京ではとある少女が清水へ行く事を予定しており・・・。
41 護符の所持者、名古屋へ戻る
前書き
《前回》
森の石松は御穂神社にて御穂津姫と出会い、自身でも知らない極秘情報という平和を司る異世界の強大な4つのアイテムの存在を知る。かよ子はまる子やたまえをさりの送別会に招待する。そして東京ではある少女が静岡県に行く事を予定していた!!
パレスチナの日本赤軍の要塞。丸岡修は奥平純三に和光晴生、日高敏彦と共にいた。
「しかし、奥平。お前はよくバーシムが消えないように戻ってこれたな」
「ああ、兄貴が『この世の人間』だった頃から房子さんにとって大事な存在だったからな」
「『偽装結婚』だがな」
その時、房子が現れた。
「でも、結局は杖も護符も獲れなかったでしょうが」
「はい、すみませんでした」
「作戦を変更しましょう。『あの世界』からあの人を呼ぶ事にしたわ。目的は杖も護符も後回しにして剣と杯よ」
「それはどこにあるんですか?」
和光が質問する。
「剣は広島。そして杯は東京よ」
「『あの人』ってのは?」
次に日高が質問した。
「嘗てこの世の戦争で独裁者として動いた名将よ」
海鮮専門の料理店でさりの送別会を行った。海鮮にしたのは漁港のある清水だからマグロが食べたいというさりの意向による。勿論、反対する者はいなかった。
「皆来てくれてありがとうね。もうちょっといたくなっちゃうよ」
「それなら帰るのを延ばしてもいいんじゃないかブー?」
「そういう訳にもいかないわよ。バイトもあるし」
「そ、そうだよね・・・。あっ!」
かよ子はサーモンの刺し身を箸から落としてしまった。皿の上に落ちたので問題なく食べられるが。
(また、おっちょこちょいしちゃったよ・・・)
「かよちゃんのそのおっちょこちょい、案外可愛いわよね」
「う・・・」
さりにそう言われてかよ子は恥ずかしくなった。皆も笑う。
「でもまあ、それが山田らしいですよ」
「す、杉山君・・・」
皆にとって楽しく充実した送別会となった。
さりが名古屋へ戻る日が訪れた。さりは学校へ行こうとする従弟に言う。
「健ちゃん、また会おうね」
「はい」
「あの奏子ちゃんと上手くやるのよ」
「分かりました・・・」
三河口はさりに何を言うんだと心の中で突っ込みたくなった。三河が学校を出て90分後、さりも実家を出る。奈美子は娘を車で静岡駅まで送った。
「それじゃ、その護符、有効に使うんよ」
「うん」
さりは母と別れ、新幹線の駅の改札を通り、新大阪行きのこだまに乗車した。さりは車内である事を予定する。
(世界の異変か・・・。今度連休取ったら神戸のゆり姉の所に行ってみよう)
さりは自分の姉の事を考えた。
かよ子は学校から帰るとすぐに隣の家へ行った。
「こんにちは」
「あら、かよちゃん」
おばさんが出迎えた。
「お姉さん、無事に帰りましたか?」
「うん、問題なく帰ったよ」
「良かったあ〜」
かよ子は安堵した。
「おばさん、お姉さんは今名古屋に住んでるんですよね?」
「うん、そうよ」
「もし、異世界や日本赤軍が来た時、大丈夫かなって」
「確かに心配やけどね。まあ、大丈夫だって信じないと。かよちゃんもお母さんから杖を貰ったのもお母さんがかよちゃんの事信じてるからよ」
「うん・・・」
かよ子は己を顧みた。おっちょこちょいな自分でもできる事はあるんだと。
「あ、そうだ、明日はテストだ、勉強しないと!それじゃ、失礼します・・・、って、あ!!」
かよ子は門を出た途端、爪先を塀にぶつけてしまった。
「いたたたた・・・」
かよ子はまたおっちょこちょいをやってしまった。
「落ち着きなよ、かよちゃん」
「うん・・・」
かよ子を足を引きずりながら自分の家へ戻った。
奏子は勉強しながら、日本平の花火大会を楽しみにしていた。
(三河口君と一緒に花火見れたら、楽しいな・・・)
奏子はそう思いながら、勉強を続けた。期末テストまで時間は殆どない。しかし、その後には日本平良での花火大会が待っている。必ずこのテストを乗り越えると奏子は決めた。
(はあ、はあ、勉強大変だな・・・)
かよ子もテスト勉強に追われていた。その間の夕食、かよ子は父からこんな事を案じられた。
「かよ子、テスト終わったら日本平の花火大会見に行こうか!」
「え・・・!?うん!」
かよ子は喜んだ。その為にはテストを乗り切らなければならない。かよ子はその先の花火大会を楽しみにするのだった。
同じ頃、羽柴家から電話がかかった。奈美子が出る。
「もしもし、羽柴です」
『あ、お母さん、札幌のありでーす』
「ああ、あり!久しぶり」
ありとは、羽柴家の次女でさりの姉である。今は結婚で札幌に住んでいた。
『清水にすんごい雨っ振ったけど大丈夫だったの?』
「うん、大丈夫よ。さりや健ちゃんとかが色々頑張ってたからね」
『そっか、安心したよ。そうだ、健ちゃんが居候してんだってね』
「うん」
『夏休みに札幌においでよ、って、言っといて』
「うん、分かったよ」
『そんじゃ、お父さんにもよろしくー』
ありは電話を切った。
「健ちゃん」
奈美子は甥を呼ぶ。
「ありが夏休みに札幌来ないかって」
「ありちゃんが・・・。分かりました。伺ってみたいと思います」
三河口は承諾した。
「うん、ありにも伝えとくね」
りえはピアノが得意である。将来の夢は勿論ピアニストである。しかし、三年生になった春のある時、謎の揺れが起きた。そんな時に母からある杯を貰った。その杯は何か物質を入れるとその物質の精霊が現れるという不思議な杯だった。ある時、その杯を狙う異世界からの敵が現れた。だが、その杯の能力を使用して何とか撃退した。あれ以降、なぜか自分の夢が叶わないような予感がしてしまった。元の日常が失われたような感だったのだ。
「りえ、大丈夫よ。ピアニストにきっとなれるわよ」
母も心配した。りえの父も心配した。
「大丈夫だよ。そうだ、お父さんの知り合いに教会のシスターやってる人がいるんだ。教会のピアノを貸して貰えるよう頼んどくよ」
「ありがとう、お父さん」
りえは静岡に行ったら、気分転換のみならず、そこでも教会のピアノで特訓すると決めた。何しろ9月にあるピアノのコンクールに参加するのだから・・・。
期末テストが始まった。今日は算数のテスト、そして明日は社会のテストがある。おっちょこちょいして字を間違えたり計算ミスしては何にもならないと思い、かよ子はテストに臨んだ。
(ゆっくり、深呼吸をしよう・・・)
かよ子は深呼吸をした。素早く答えを書かずにゆっくりと問題を読み、名前の書き忘れがないか確認した。何度も何度も・・・。次の日は理科、そして休みを挟んで最後は国語のテストだった。かよ子は落ち着いて乗り越える事ができたと感じた。あとは結果が良い事を祈るのみだった。
後書き
次回は・・・
「剣を持つ者」
期末テストを終え、学校は夏休みへのカウントダウン体制となった。その間、三河口は奏子と日本平の花火大会を満喫し、かよ子も花火大会へ向かう。だが、その裏では日本赤軍がある物を奪う為に、強大な異世界の人物を日本へ送り込む・・・。
42 剣を持つ者
前書き
《前回》
かよ子達は隣の家に住むおばさんの娘・さりの送別会を行う。その後、三河口は夏休みに札幌に住むさりの姉・ありの所に行く事になる。そしてかよ子は猛勉強の末、期末テストを迎える!!
期末テストが終わり、かよ子達は肩の荷が降りた気分だった。
「ふう〜、やっと終わったねえ〜。アタシゃ全然解かんなかったよお〜」
「まるちゃん、普段勉強してないからじゃ・・・」
たまえはまる子に突っ込んだ。
「だって疲れてるって言ってんのにお母さんったら、さっさと勉強しなさいって怒るんだよお〜、お陰でやる気なくなっちゃったよ」
まる子のめちゃくちゃな言い訳にたまえもかよ子も何も言えなかった。そんな時、かよ子は大野と杉山の会話を聞く。
「なあ、大野、お前、日本平の花火大会、行かねえか?うちの姉ちゃんも友達と行くんだ」
「ああ、俺も丁度家族で行く事にしてたんだ」
「そりゃいいな」
(す、杉山君・・・。大野君と花火大会行くんだ、いいな、私も会えたらいいな・・・)
かよ子は日本平の花火大会に期待を膨らませた。また、その会話は冬田も盗み聞きしていた。
(大野君、日本平の花火大会行くのねえ・・・。私も行ってみよう〜)
冬田はその花火大会で自分の浴衣姿を見た大野に「お前、すげえ似合ってるぜ!」と言われて照れる所を妄想した。
パレスチナの日本赤軍本部。房子はその場所にできた光と闇が混ざったような混沌とした穴にいた。
(私達はこのパレスチナで攻撃を仕掛けて、日本を変えるチャンスを待っていた・・・)
この穴は異世界との出入り口となっている。その時、声が聞こえた。
「重信房子。また我が世界の者を使いに出して欲しいと?」
「はい、」
「だが、これまでに幾人の者が抹殺されておる。次こそ成功なるのか」
「はい、方針を変えます」
「そうか、では、こちらもそろそろ主戦力を投入する」
声の主はそう言った後、二人の男が穴を通して現れた。
「私はアドルフ」
「そして私はべニートだ!」
「この二人は貴様らの世界から消えた後、我が世界でも相当の実力を持っている。簡単には消せまい」
「そうですね、ありがとうございます。では、まずは・・・」
房子はアドルフとべニートにこれからの作戦を伝えた。
三河口が通っている高校でも日本平の花火大会で話題が持ち切りだった。
「ねえねえ、奏子は三河口君と行くんでしょ?良かったね!」
友達の瞳に言われて奏子は恥ずかしくなった。
「う、うん・・・」
「いいね、楽しみだね」
さらに友達である本多夏美にまで羨ましがられた。
「うん・・・」
テストの結果はかよ子はどの科目も何とかいい点だった。
「良かった、おっちょこちょいしなくて・・・」
特に国語は82点と最高得点の記録を更新した。他の科目もなかなかの出来だった。かよ子はまる子にたまえ、とし子と一緒に帰ろうとしていた。
「ああ・・・」
「ま、まるちゃん、どうしたの?」
「テスト、全然出来なくてさあ~、お母さんにめちゃくちゃ怒られちゃうよお~」
まる子をどう慰めていいのかわからないかよ子達であった。かよ子はその後、皆と別れて母にテストの答案を見せた。
「かよ子、頑張ったのね。お疲れ様」
「うん」
「浴衣を出してあげたわ」
かよ子の母は娘の水色基調で赤や黄色、青など様々な色の水玉模様の浴衣を出し、かよ子に試着させた。
「うん、ありがとう!」
「これで、花火大会も楽しみね」
「うん!」
日本赤軍の一員・丸岡は房子の命令でベニートを連れて広島市へと訪れていた。
「ここに俺達の計画を脅かす危険な道具があるという」
「ゲンバーク以上かね?この町はかつてその被害を受けた事があるハーズだ」
べニートが聞く。
「ああ、その通りだ」
「では、出動しよう」
二人は剣を持つ者を捜索し始めた。そしてくまなく探した所、一軒の民家を見つけた。
「すみません」
「はい、はい」
少し年老いた女性が応対した。
「この家に『剣』ってありますか?」
「はあ?」
「とぼけても無駄だ!この家に終戦直後に不思議な剣を貰った者がいるって突き止めてんだ!」
女性は震えた。丸岡はこの女性の反応から間違いはなかったと思った。
「な、何の事かしら?」
「これ以上シラを切るつもりならこちらから捜索する!」
丸岡達は勝手にその家に上がりこんだ。
「ちょっと、困ります!しょ、正太!」
女性は息子の名前を呼んだ。丸岡は正太という男の部屋に行き、遭遇した。
「お前か、剣を持つ者は!」
「な、何だ、お前らは!!」
「『剣』を貰いに来た者だ」
「渡すもんか!」
正太は剣を取り出し、対抗する。正太は剣を一振りした。この剣は正太が原爆の攻撃から辛うじて生き延びた時、厳島神社の神から授かったものであり、その剣にはただ斬る以外にも竜巻や嵐を作り出したり、相手の攻撃を受け止めてそのまま反射させる事ができる。
「無駄だ。俺の矛盾術で何もできなくさせてやる」
丸岡はその剣が今までできた事をできなくさせるようにした。言わば、その剣を使用しても能力を使用する事もただ斬る事もできないのである。
「お前はこれで終わりだ!」
丸岡はピストルを出して発砲した。正太は剣で銃弾を撥ね返す能力を行使しようとしたが、丸岡の矛盾術でできず、七発、正太の頭や胸、腹に当たった。
「へへ、清水にいる少女の杖よりも容易く奪えたな」
「正太!ちょっと、アンタら、何しとるんじゃけん!?」
「おっと、この婆さんも静粛しておかないとな」
「私がヤールよ!」
ベニートが呪文のように喋り出した。
「恐ろしき黄人よ、倒れろ!」
ベニートの呪文で正太もその女性も急に燃焼した。
「これで終わりだ。フハハハハハ」
ベニートと丸岡は剣を手にして家を出る。
「そしてこの家系も皆、消滅させとけ」
「おう、恐ろしき黄人のあの家系を消滅させよ!」
ベニートが唱えた。その場では何も起きなかったが、その剣の持ち主の血縁関係に当たる親戚が急死したのは確かである。そして正太の家は一瞬で炎上した。丸岡は近隣の住民に気づかれぬように認識術で自信とベニートが見えないように設定した。
「剣は手にした・・・。これを本部に持ち帰れば計画は一つ達成だ」
周辺の住民が火事で大慌てする中、丸岡は計画達成に喜んだ。
その火事の様を、一人の女子高校生が遠くから見ていた。その女子も静岡県に住むとある男子と同様の異常な感触を覚えるのである。
夕暮れになり、かよ子は両親と共に浴衣に着替えて日本平の付近へと向かった。
「おっとっと・・・」
「もう、ゆっくり歩きなさい、本当におっちょこちょいなんだから」
「う、うん」
三人はバスを乗り継ぎ、日本平に到着した。現地は既に混雑しており、杉山達を探すのにはこれでは無理だとかよ子は感じた。そんな時、羽柴夫妻とも出会った。
「あら、こんばんは」
「ああ、どうも、こんばんは。あれ、健君は?」
かよ子の父が聞く。
「学校の友達といますよ。どうやら誘われちゃってね、その誘った子も女子なんですよ」
「女子・・・、か・・・」
かよ子は三河口を誘ったという女子の行動力に尊敬したくなった。自分にももう少し勇気があれば杉山を誘えたかもしれない、と思った。やがて、空は暗くなり、花火が打ち上がった。
「綺麗な花火ね」
「うん!」
(杉山君も今こうして大野君と花火見てるのかな・・・?)
かよ子は好きな男子の事を考えた。
そして違う場所では三河口は黄緑基調で木の葉柄の浴衣を纏った奏子と共に花火を見ていた。
「ここの花火は綺麗だね」
「うん!」
奏子は三河口と一緒でとても嬉しかった。その時、一人の大仏のパーマの女子がうろちょろ歩いているのが見えた。桃色基調の浴衣を着ている。
(ん、あの子はかよちゃんの友達の冬田美鈴じゃないか。大野君でも探してんのか・・・?)
三河口はとりあえず冬田は無視して花火の堪能を奏子と共に楽しんだ。
冬田は人混みの中で好きな男子を探す。
(大野君、どこかしらあ・・・?)
その時、冬田は途中である男子に声を掛けられた。
「あれ、冬田じゃないか!?どうしたんだい?」
この声が大野だと冬田は嬉しかったのだが、呼んだのは長山だった。長山は妹の小春や両親と一緒だった。
「な、長山くうん・・・」
「どうして花火見ないで歩き回ってるんだい?」
「いや、そのお・・・」
「まあ、混雑してて危ないからここで一緒にいようよ」
「ええ、そうねえ・・・」
冬田は結局長山の家族と一緒に花火を鑑賞する事になった。
北勢田や濃藤も別の場所で花火を鑑賞していた。勿論二人だけでなく他の友達ともいた。
「それにしてもミカワは今楽しんでんのかな」
「まあ、そうじゃない。徳林さんの方が誘われたし、あいつも楽しみにしてたんだよね?」
濃藤はに聞く。
「うん、きっとキスでもやってたりして」
一同は吹きそうになった。
大野と杉山はそれぞれの家族と共に花火を鑑賞する。
「最高の花火だな」
「ああ」
杉山は今は物騒な日々とはいえ、こうした日常は失われて欲しくないと思うのだった。それについては大野も同意だった。
(『あいつ』もこの花火、見てんのかな・・・?)
杉山はクラスメイトのおっちょこちょいな女子の事を考えていた。
ブー太郎は妹のトミ子を高台の秘密基地へと連れて行っていた。
「お兄ちゃん、ここはどこだブー?」
「兄ちゃんが友達と造った秘密基地だブー。ここからでも花火が見えるブー」
ここは日本平から離れているが、花火は見えた。
「うわあ、きれいだブー」
「それじゃ、基地に上がろうブー」
兄妹は基地に上った。そこにはあの四人組もいた。
「おお、お前、ブー太郎でやんす!」
「あれ、お前達もいたのかブー!」
「ああ、日本平の方は人がいっぱいだからな。ここなら空いているし、特等席だと思ったんだ」
「確かにそうだな、ブー。今日は妹を連れてきたブー」
「トミ子って言いますブー。宜しくブー」
「宜しくね、トミ子ちゃん・・・」
富田兄妹は「義元」の皆と花火を見るのだった。
様々な色の花火が打ち上がる。かよ子達はその花火を楽しみながら時を過ごしていった。
後書き
次回は・・・
「始まった夏休み」
花火大会が終わり、かよ子は帰りに「あの男子」とばったり出会う。そして終業式、かよ子はまる子の大量の荷物を持って手伝いながら下校する。そしてパレスチナでは丸岡が奪取した異世界の剣が「あの世界」へ・・・。
43 始まった夏休み
前書き
《前回》
期末テストを終えたかよ子は日本平の花火大会を満喫する。一方、日本赤軍は異世界からまた新たなる人物を召喚し、丸岡修とその異世界の人物の一人・ベニートを広島に連れて行き、その地で異世界の剣を奪取した!!
花火大会を終え、皆が帰っていく。かよ子達も勿論帰ろうとしていた。
「それにしてもこの混雑じゃ、バスも混雑しそうですね」
「なんなら、車出したんで送りますよ」
「ああ、ありがとうございます」
利治が車を運転して来ていたのでかよ子の家族は羽柴家の自動車で帰る事になった。民族大移動のように客が帰る。その時、かよ子は聞き覚えのある声で呼ばれた。
「おお、山田じゃねえか!」
かよ子は振り向いた。
「あ、す、杉山君・・・!!」
かよ子は花火の終わりとはいえ、好きな男子に会えて嬉しかった。杉山は彼の家族や大野とその両親と一緒だった。
「お前も来てたのか。いい花火だったよな!?」
「うん、綺麗だったよ!」
その時、二人の高校生のカップルが見えた。よく見ると男子の方は三河口だった。
「あ、隣のお兄ちゃん!」
かよ子は三河口に手を振った。
「ああ、かよちゃん。杉山君や大野君も一緒か」
「そのお姉さんはもしかして彼女?」
「え!?あ・・・。そうと言っていいのか、違うと言っていいのか・・・」
三河口は返答に詰まってしまった。
「三河口君、この子達は?」
奏子は三河口に質問した。
「ああ、この子は隣の家に住んでいる山田かよ子ちゃんだよ。この二人はそのかよちゃんの友達の杉山さとし君と大野けんいち君」
「宜しくね」
「こんにちは!」
「いよっ、仲良し!」
杉山が冷やかした。
「おいおい、杉山君まで・・・」
「まあ、でも楽しめたんでしょ?」
叔母が聞く。
「は、はい・・・。それで俺達はバスも混雑すると思うんで歩いて帰るつもりです」
「そう、折角主人が車出したんだから乗ってきなよ」
「いえ、山田さん達を乗せるんでしょ?それなら定員オーバーになりますよ」
「それもそうね。ま、二人で楽しんで帰ってね」
「はあ・・・。了解しました」
一行は三河口に奏子と別れ、出口を出ると駐車場の方へ向かった。
「それじゃ、山田さん、私達はこれで失礼します」
「はい、お休みなさい」
大野や杉山の家族と別れてかよ子達は羽柴家の車に乗った。車に乗るのは久々だが、かよ子は車の窓から見える清水の夜景が美しく見えた。
(杉山君に会えて良かった・・・)
かよ子にとっては最高の花火大会だった。
「冬田、今日は万一の事を考えて車で来たんだ。送ってくよ」
「あ、ありがとう・・・」
冬田は長山の家族に送って貰えるのは嬉しかったが、自分は愛しき大野と会う事ができなくて残念だった。
(大野君と花火見たかったなあ・・・)
冬田は長山達と共に花火大会の会場を後にした。
三河口と奏子は歩く途中、学校の友人達とばったり対面した。
「おい、楽しかったか?」
「う・・・」
「う、うん、楽しかったよ」
北勢田の質問には奏子の方が答えた。
(まあ、折角だから皆で楽しく帰るか・・・)
三河口はそう思い、集団で帰る事にした。
「ところで、皆はバスかい?歩きかい?」
「ああ、バスすげえ混むと思うから歩きだよ」
「そうか」
一同は歩いてそれぞれの帰路へ向かった。
高台の秘密基地でもブー太郎達は帰る事にした。
「それじゃ、またなブー!」
「おう、じゃあな!」
終業式の日となった。かよ子達は体育館にて校長の話を聞いていた。どの児童もこんな暑苦しい季節なのだから、そんなにぐだぐだ長く話さないでいいだろうと思った。25分以上経ち、ようやく話が終わった。それぞれのクラスの教室に残り、夏休みの宿題や、過ごし方について注意事項などの説明が続き、ようやく帰れるのだ。かよ子は不必要になった物は前の日から少しずつ持ち帰っていたのだが、まる子はそれを怠っていたので大変な下校であった。何しろ抱えきれぬ程の大量の荷物なのだから。
「ああ、ええ、重い・・・」
「まるちゃん、手伝うよ!」
「私も・・・」
「私も・・・」
かよ子はたまえ、とし子と共にまる子の荷物を一部持つ事にした。
「たまちゃん、とし子ちゃん、かよちゃん、ごめん・・・」
まる子の家の前まで荷物を持っていき、後はそれぞれの家へと帰っていった。
「はあ、少し遅くなっちゃったよ・・・」
かよ子は空腹だった。終業式の日は午前のみのため、給食はない。(テスト返却の時から、午前授業となっていた為、必然である。)ちなみにクラスメイトで食べる事に命を掛けている小杉太は給食がなくて不満がっていた。
「た、只今・・・」
「あら、遅かったわね」
「うん、まるちゃんが荷物をあんまり持ち帰ってなかったから手伝ってたの」
「そうなのね。まあいいわ。ご飯できてるわよ」
「うん、ありがとう」
パレスチナの日本赤軍本部。丸岡は広島で手にして持ち帰った剣を房子に差し出していた。
「杖の時とは違って今度はきっちり奪えたのね」
「はい」
「それで、これはどうするんですか?」
「『あの世界』に預けるのよ。全ての物が揃った時、その世界と我々の能力に大いなる力が得られるの。今の日本を変えられるくらいにね」
房子は異世界との出入り口である混沌の穴に剣を授けた。
「レーニン様、これが貴方の敵の世界の物であり、この世界を変える力を持つ剣です」
「ほう、重信房子、これであと杯、護符、杖が来れば、我が世界は理想を叶えられる。あと三つ、急げよ」
「はい」
出入り口の向こうの声の主は剣を吸い取るように貰った。
夏休みも数日経ち、東京に住む一人の少女・安藤りえが荷造りをしていた。
(いよいよ明日ね・・・)
りえは親戚のおばあさんが住むという静岡・清水へ行く予定でいたのだった。
かよ子はたまには外に遊びに行こうと外へ出た。その時、隣の羽柴家が車を出していた。
「あ、おはようございまーす!!」
「あ、かよちゃん、おはよう」
「どこか行くんですか?」
「ああ、健ちゃんがウチの娘で、この前来たさりの姉のありのいる札幌へ行く事になったから静岡駅まで送るところなんよ」
「そうですか」
「かよちゃん、北海道土産送るよ」
「うん、行ってらっしゃい!」
奈美子は車を出した。
「札幌かあ・・・」
かよ子は外を出歩く。暑く、帽子を被ったものの、それでも汗が出る。丁度みつやに到着し、かき氷のイチゴを頼んだ。
「ふう」
かき氷は冷たくて美味しかった。その時、とし子が来た。
「あ、かよちゃん!」
「とし子ちゃん!」
「かき氷か、私も貰おう」
とし子もかき氷を食べた(シロップはメロンである)。
「そうだ、お母さんがアイスクリーム作りしてるんだ。よかったら午後ウチに来ない?」
「うん、いいね!」
かよ子はとし子と別れる。その後、すぐに走ってしまった為か、途中で腹痛になり、帰宅するなりトイレに直行するといういつものおっちょこちょいをやってしまった。
後書き
次回は・・・
「教会のピアノ」
三河口は札幌へ向かった。そしてある少女が東京から訪れていた。そんな時、かよ子のクラスメイトの藤木茂は教会から聞こえるピアノの音に恐怖を覚える・・・。
44 教会のピアノ
前書き
《前回》
花火大会の終わり、かよ子は杉山と大野、そして彼らの家族と出会い、最高の花火大会だったと実感する。そして終業式を迎え、夏休みが始まった!!
今回からはアニメ「ちびまる子ちゃん」2期238話「夏休みの思い出」をアレンジしたエピソードとなります。作者の別作品「とある3年4組の卑怯者」で主人公を務めた藤木が登場します。
三河口は叔母に車で静岡駅まで送られた。
「それじゃ、行ってまいります」
「ありにも宜しくね」
「はい」
三河口は叔母と別れ、新幹線の東京方面のホームに向かった。そして東京行きの新幹線に乗車した。
(札幌か・・・。遠いよな・・・)
本来ならば、飛行機の方が速いのだが、休み期間という事もあり、運賃が安めの列車と船で行くことにした。三河口は新幹線に乗車中、何らかの感触を覚えた。しかし、日本赤軍や異世界の敵の時とは異なる、また別の感触だった。かよ子やさりが近くにいる時のように。その時、反対方向の新幹線とすれ違っていた事に気付いた。
(何だろう、反対側の列車に乗っていた誰かに感じたのか・・・?)
そして静岡駅。一人の少女が両親と共に新幹線から降車した。
「ここが静岡ね」
りえは静岡市内の空気を吸った。東京は少し違う。空気は東京よりは綺麗だった。
「さ、りえ、乗り換えるよ」
「うん」
りえは清水に行くために静岡と清水を往来する列車に乗り換えた。
かよ子はこの日はとし子の家でアイスクリームを御馳走になっていた。
「美味しいねえ!」
「うん、喜んでくれて嬉しいわ。ありがとう」
とし子の母は感謝した。食べ終わると話をする。
「ところで、とし子ちゃんは休みはどこか行くの?」
「う〜ん、東京のおばあちゃんちかな・・・?かよちゃんは?」
「そっか、私は今は予定ないんだよね。何かあるかな・・・?宿題するだけかな?」
かよ子は三河口が札幌へ行った事や、三河口の従姉のさりが名古屋に住んでいる事から札幌や名古屋へ行ってみたいとは思った。
「まあ、どこかへ行きたいね・・・」
かよ子は適当に誤魔化し、帰る事にした。そして、宿題の「夏休みの友」の続きをやりながら、自由研究をどうしようか考えた。
りえは清水に到着した。そして祖母に会った。
「おばあちゃん、久しぶり」
「りえ、久しぶりね」
りえはまず持ってきた学校の宿題をやった。翌日は父の知り合いの教会のシスターと会い、ピアノを借りる予定だった。
三河口は青森行きの急行列車に乗った。その列車で一晩かけて青森へ行き、そこで津軽海峡の連絡船に乗船して、また北海道内の列車に乗る。だか、三河口は新幹線の車内で起きた感触は何だったのか、気になっていた。
翌日、りえは教会のシスターと出会った。
「こんにちは」
「こんにちは。貴女が安藤りえちゃんね。お父さんから話は聞いてるわ。是非ともこのピアノを使っていいからね」
「はい、ありがとうございます」
りえは早速ピアノの椅子に座り、練習を始めた。
藤木茂。かよ子のクラスメイトで困った事があると適当に誤魔化したり、ウソを付いたり、すぐ逃げ出す為、クラスメイトから「卑怯」と呼ばれている男子である。また、彼は恋する男子でもあり、クラスメイトの笹山かず子に恋していた。だが、夏休みはその笹山に会えず、彼にとっては非常に憂鬱な夏休みであった。早く学校が始まって欲しいと思っていた。
彼が教会を通りかかっている時、ピアノの音が聞こえた。
(ピアノの音だ・・・。誰かが弾いてるのかな?)
その時、ピアノの音が途中で止まった。
(急に消えた・・・?幽霊か何かなのか!?)
藤木は恐ろしくなった。
「ひい〜!」
藤木は走って逃げ出した。逃げる途中、大野と杉山に出会った。
「よお藤木、どうしたんだ?」
「あ、大野君、杉山君!聞いてくれよ!教会に幽霊が出たんだ!!」
「幽霊!?お前、何言ってんだ?」
大野はバカバカしく笑った。
「そうだな、マジでありえねえぜ」
杉山も笑う。
「ほ、本当だよ!!教会からピアノが弾いてると思ったら急に止まったんだ!」
その時、まる子とたまえも現れた。
「あれえ〜、アンタたち、どうしたのお〜?」
「ああ、さくら、穂波。藤木がよお、幽霊が出たって怖がってんだよ!」
「ええ、幽霊!?」
まる子は驚くと、ぞっとした。
「まるちゃん、そんなのある訳ないよ・・・」
冷静なたまえは突っ込む。
「藤木、何か勘違いしてるんじゃないの?教会のシスターが弾いてたんじゃないの?」
「ち、違うよ、本当に途中で止まったんだ!」
「まあ、俺達で突き止めようぜ!」
「そうだな!」
「明日の10時に教会の前で集合だ!」
「おう!」
皆は約束した。
(嫌だよお・・・)
藤木は弱音を吐いた。
三河口が札幌市内の駅に到着したのは夕方だった。
「やっと札幌か・・・」
「健ちゃん」
三河口を名前で呼ぶ声がした。羽柴家の次女で従姉のありである。
「ありちゃん」
「遠くて疲れたでしょ、送ってあげるよ」
ありは車を出していた。
「はい、ありがとうございます」
三河口はありの出した車でに乗った。さりの姉だが、さりとはまたどこか違う所がある。
「札幌は清水と違って涼しいでしょ?」
「はい、確かにあまり汗かいてませんね」
「札幌って夏を過ごすには快適よ。まー、冬は雪が沢山積もって寒くて大変だけどね」
「はい。俺は寒いの苦手ですから。ところで旦那さんは?」
「ああ、仕事終わりにして帰るとこだと思うよ。そういえば、悠ちゃんも私も何か変な感触するようになったんだよねー」
「ああ、俺もです」
話の続きをしている途中、ありが今住んでる家に到着した。
「まあ、長旅だったし、ゆっくりしていって!」
「はい」
かよ子はこの日も宿題を朝のうちに済ませてしまおうと思っていた。「夏休みの友」と呼ばれる漢字と計算のドリル部分は3分の2は終わらせた。その時、急に声が聞こえた。
「貴女がまき子さんの娘、山田かよ子さんですね」
「え!?」
かよ子は振り向くと、天女のような女性がいた。
「私は御穂津姫。その杖を貴女のお母さんに渡した者です」
「御穂津姫・・・!」
かよ子はその名を母から聞いた事があった。
「それで私に何か用なの?」
「はい、今この日本が攻めを受けているとご存知ですね?」
「攻め・・・?」
かよ子はすぐに理解した。今、日本が異世界の敵や日本赤軍に攻められているという事を。
「そ、それで?」
「それで私は今、感じたのです。東京という所でしたね。そこから貴女と共闘できるかもしれない方が今清水にいらっしゃっているのです」
「その人って?」
「年は山田かよ子さんと同じで、その人は杯を持っています。貴女の杖と同じ、平和を司る世界からの杯です」
(杯・・・。そういえば長山君も似たような事言ってた・・・!!)
かよ子は思いついた。その杯の持ち主と知り合って今後連絡を取れるようにしておけば日本を守り抜く事ができるのではないか、と。
「その人はどこにいるの!?」
「只今、教会におります」
杉山は大野、まる子、たまえ、藤木と共に教会の前にいた。
「や、やっぱりよそうよ」
藤木は恐れを持ちながら言った。
「お前、今更怖じ気づくなよ」
「そうだよお、最初に言い出したのは藤木だよ〜」
「僕は別に探検しようとは思ってないよ」
「だってお前見たんだろ?」
「うん・・・」
「藤木の勘違いじゃないの?」
たまえは疑った。
「勘違いじゃないよ、本当に見たんだ。ここでピアノの音が急に消えたんだ・・・!」
「もしかして教会のシスターがピアノ弾いてただけなんじゃない?」
「でもシスターだったとしても消えるのはおかしいぜ」
「って事は・・・。やっぱり幽霊〜!?」
「お前男の癖に往生際が悪いぞ」
大野が藤木を窘めた。
「俺なんてもし幽霊がいたら握手してもらうぜ」
「杉山君は幽霊を見た事ないからそんな事言えるんだ」
「じゃあ、藤木が見たのは一体なんだったんだろうね?」
「だからその正体を突き止める為に今日、こうして集まったんだろ?」
杉山がまる子に確認した。
「あ〜、そうだった。今からドキドキしてきたよお〜」
「兎に角、ピアノの音が聞こえるまで待ってようぜ」
大野がそう言った途端、ピアノの音が聞こえた。
「よし、行ってみるか」
杉山が乗り出す。皆は行く。だが、藤木は引き返そうとした。
「ぼ、僕、ちょっと用事が・・・!」
「ちょっと藤木!一人で逃げるなんて卑怯だよ!」
藤木は自分の異名である卑怯と言われて止まった。
「わ、分かったよ、行くよ・・・」
「俺達はこの謎を証明するという義務があるんだ」
皆は教会の中に入った。ピアノの音は講堂から聴こえた。
「誰が入る?」
まる子が聞く。
「す、杉山君が行きなよ!幽霊と握手したいって言ってたじゃないか!」
藤木が提案した。
「お、俺!?分かったよ・・・」
杉山はどきりとしたが、深呼吸をして戸を開けた。その時、向こうに何者かがピアノを弾いていた。
「で、出たーーー!!幽霊だあーーーーー!!」
杉山は驚き叫ぶ。
「うわあーーー!!」
「キャーーー!!」
皆も絶叫した。
後書き
次回は・・・
「東京から来た少女」
安藤りえと出会った杉山達。大野達は早速りえと仲良くなるが、杉山はなぜかりえが気に食わず、口喧嘩する。そしてかよ子は御穂津姫の話を聞き、東京から来た少女に会いに行こうとするが・・・。
45 東京から来た少女
前書き
《前回》
三河口は従姉・ありに会うために彼女の住む札幌へ向かう。そして大野と杉山はクラスメイトの藤木茂が教会でピアノの音を聴いて不審に思ったという事を耳にして、まる子やたまえと連れてその正体を探ろうとする。そのピアノの音の正体は・・・!?
かよ子は御穂津姫と話しを続けていた。その時、母が入ってきた。
「かよ子、お昼よ。あ・・・」
「まき子さん、ご無沙汰しております」
「御穂津姫・・・」
かよ子の母は、かつて杖を貰った相手の一人と再会したのだった。
「一体、どうしたの?」
「実は、まき子さんに授けた杖、奈美子さんに授けた護符と同じ『象徴』となる道具、杯を持つ者がこの地に訪れている事をかよ子さんに伝えたかったのです」
「そうなの?」
「お母さん、御穂津姫、私、午後、その人に会ってくるよ!」
「分かったわ、気をつけてね」
「私が幽霊?」
ピアノの音の正体は伴奏の練習をしている一人の少女だった。
「ほらっ、ちゃんと足もあるでしょっ?」
「幽霊だなんて、とんだ勘違いだったなあ」
大野も落ち着いた。
「ホント、藤木が幽霊を見た、なんて言うから」
「・・・僕は別に幽霊だなんて・・・」
まる子は少女に話しかける。
「幽霊だなんてとんでもないよね」
「そうだね、天から舞い降りた天使って感じだね♡」
藤木はその少女にメロメロになっていた。一方の少女は自分が幽霊だの天使だのに例えられて苦笑した。
「私、一応、安藤りえって名前があるんだけどな」
「りえちゃんか。私はさくらももこ。みんなから『まる子』とか『まるちゃん』って呼ばれているんだ」
「私は穂波たまえ。たまちゃんって呼んでね」
「僕は藤木茂。宜しくう~♡」
皆は自己紹介をする。
「俺は大野けんいちだ」
「俺は杉山さとしな」
「アタシ達皆3年4組のクラスメイトなんだよ」
「本当っ!?私も小学生3年生よっ!」
「ええ!?大人っぽいからもっと年上かと思ったよお~」
まる子達は自分達がりえと同い年である事に驚いた。
「私は東京の小学校に通ってるの。おばあちゃんちに遊びに来ているのよ」
「東京かあ~。凄いねえ~。杉山君なんて幽霊と握手するなんて張り切ってるのにねえ~」
「ああ、折角のチャンスだったのにがっかりだよ・・・」
杉山は意地悪っぽく言った。
「あら、結構驚いてたじゃない。杉山君って案外臆病なのね」
りえは杉山をからかった。
「それはお前が紛らわしい事してたからだろお!」
杉山は反発する。
「あら、私はピアノを弾いてただけじゃない」
「大体、なんで教会のピアノを弾いてんだよ!」
「だって、おばあちゃんちにはピアノないもん」
「でもだからって教会のピアノを勝手に使っていいのか!?」
「残念でした。私のお父さんがここのシスターと知り合いでね、許可は貰ってあるわよ」
「だったら最初からそう言えよ!」
「杉山君、そう言う言い方はよくないよ」
「そうだよ、りえちゃんが折角練習してるのに失礼じゃないか!」
まる子と藤木は杉山に注意した。それを大野が止める。
「まあ、まあ。そうだ、りえもここにいる間、俺達と遊ばねえか?」
「そうだね、折角会えたんだし!」
「ありがとう、そうさせてもらうわっ!」
りえは清水で友達ができて嬉しかった。
三河口は札幌に住む従姉・ありが今住む家にいた。ありの夫・悠一とも対面していた。
「そういえば七夕の夜の大雨は酷かったってねー」
「ああ、ありのお父さんとお母さんもいたんだよな?」
「はい」
「その後、一日で干上がったってね」
「はい、さりちゃんが浸水した町を見て叔母さんが持っていた不思議な護符の力で干上がらせたのです」
「その護符ってのは?」
「叔母さんが戦後の食糧難に苦しんでいた時に、異世界からの人間から貰ったそうです。それで戦後の混乱を乗り越えたとか」
「そうだったの・・・」
「まあ、四月の地震みたいな現象以来、変な事が起きてるからな。異世界の人間とか訳の分からん奴が攻めたり」
「札幌にも来ているんですか?」
三河口は従姉の婿に聞く。
「ああ、それでこの前、異世界からの人間ってのが出てきたんだ。そいつは平和の為に動いてんだとさ」
(異世界の人間・・・!!)
「どうもお母さんがその人の事を知ってるみたいなの。今、日本を守る為に各地で呼び掛けているんですって」
「平和の為に動く・・・」
三河口は七夕豪雨の時に出会った森の石松や、濃藤の妹達が出会ったイマヌエル、そして彼女らとかよ子達が秘密基地の事で揉めた時に出会っていたフローレンスの事が頭に浮かんだ。
「その人の名前は何とおっしゃいました?」
「ああ、イマヌエルと言ったな」
かよ子は昼食後、教会へと向かった。例の杖を持って。御穂津姫も同行していた。御穂津姫は方角を示す。
「あちらの教会になります」
「ありがとう」
「それでは、私はこれで失礼します」
「え、行っちゃうの?」
「教会というのは私にとっては異教の場所で神社を司る者である私にはあまり相応しくない場でありますから。それでは」
御穂津姫はそう言って消えてしまった。
「神社に教会かあ〜、確かに場違いかもね・・・」
かよ子はこの先は一人で教会に進む。教会に入った。
「あら、貴女、どうしたの?」
かよ子はどきっとして振り向いた。幽霊かと思ったが教会のシスターだった。
「あ、あの、私・・・」
かよ子は心を落ち着かそうと深呼吸した。
「こ、ここでピアノを弾いている子がいるって聞いて会いに来たんです」
「ピアノを弾いている子・・・。りえちゃんの事ね。今お昼ごはん食べに行ってていないけど、午後も来るって言ってたからここで待ってたら会えるわよ」
「は、はい、ありがとうございます」
かよ子はピアノのある礼拝堂の長椅子に座って待つ事にした。15分ほど待った。かよ子杯の所有者がどんな子か気になって緊張でドキドキした。ただ一つ言えるのは名前が「りえ」という事から女の子であるという事だ。そして礼拝堂のドアが開く。かよ子はどきりとした。
「あ・・・!」
教会のシスターが入った。
「貴女、りえちゃんが来たわよ」
「え・・・!」
シスターと共に一人の少女が入ってきた。茶色の髪に白いワンピースを来た少女だった。かなりの美少女だ。
「は、はじめまして・・・!」
「こんにちは」
緊張するかよ子に対して相手の少女は普通に挨拶した。
「この子がりえちゃんに会いたがっていたのよ」
「や、山田かよ子です。宜しくお願いします!」
「私は安藤りえ。宜しくね」
「それじゃ、仲良くね」
シスターは礼拝堂を出た。
「あ、あの・・・」
「どうしたの?」
かよ子は思い切って言った。
「あ、貴女、もしかして、異世界の『杯』を持ってるの?」
「え、どうしてそんな事・・・?」
りえは質問で返す。
「それは、私も異世界の人から貰った物を持ってるから・・・。これが、その杖だよ・・・!!」
かよ子はりえにその杖を見せた。
「これが・・・!!そうよ、私も、その杯ってのを持ってるわよ」
りえも手提げから杯を取り出した。
「この杯に物質を入れるとそれに対応した精霊が出てくるの。土とか入れると大地の精霊とか、水を入れると水の精霊とかね」
「そうなんだ、私の杖も色んな物質に杖を向けるとその物質を操る能力がつかえるんだ。火に向ければ火が使えるし、石に向ければ石を作り出したりできるよ。それでこの清水を襲う敵を撃退した事があるんだ」
「そうなのね、私の住む東京にも出てきたわよ。その時もこの杯の能力で精霊を出して戦ったわ」
「そうだったんだ・・・。そうだ、今日本は日本赤軍とかその赤軍から呼び出された異世界の敵とかに襲われているんだ。もし何かあったら連絡とろうよ!」
「え?そうね」
二人はお互いの住所を教え合った。
パレスチナの本部。日高はある命令を房子から受けていた。
「日高、アドルフと共に杯を持つ者からその杯を手にするのです」
「了解」
そして房子はある事を思いながら窓を見る。
(護符を持つ者も、杖を持つ者がかなりの強敵・・・。でも杖の所持者はただの小学生で、おっちょこちょい・・・、か・・・)
房子は思う。なぜ所持者が小学生だというのにこんなに苦労するのか。そして、その少女には何が宿しているといるのか・・・。
後書き
次回は・・・
「ピアノへの情熱」
異世界の杯の所持者・安藤りえとの接触に成功したかよ子はりえと遊ぶ約束をする。そして杉山達もりえと会っていた事に驚く。一方、その杉山は自分と喧嘩したりえが気になっているようで・・・。
46 ピアノへの情熱
前書き
《前回》
教会でピアノを弾いていた安藤りえと遭遇した杉山達。まる子達は早速りえと友達になるが、杉山はいきなりりえと喧嘩を始める。そして三河口は札幌にて従姉のありとその夫・悠一から平和を司る異世界の人間に出会っていた事を聞かされる。そしてかよ子は母が嘗て出会った御穂津姫と対面し、異世界の杯の所持者が清水に訪れていると聞き、教会にてその所持者であるりえとの接触に成功した!!
杉山は今日会った東京の少女の事を考えていた。
(何だよ、あの気の強え女・・・)
あの気の強さ、腰を抜かした事で臆病者と馬鹿にされた事・・・。
(山田かよ子とはえらい違いだ・・・。女じゃないと言っていいな)
しかし、杉山にはあの安藤りえという女子に何かがあると感じていた。
かよ子はりえと話をしていた。
「それで私ね、将来ピアニストになりたいの。それでピアノを練習してるんだ。来月コンクールもあるし」
「ピアノのコンクールか・・・。頑張ってね!」
(そういえばたまちゃんもピアノやってたよね・・・。たまちゃんには失礼かもしれないけどたまちゃんよりもピアノ上手そう・・・)
「そうだ、かよちゃんにピアノを聞かせてあげるわ。今練習してるのは『亜麻色の髪の乙女』って言って今度のコンクールで弾く予定なのっ!」
「いいの?ありがとう!」
りえはピアノの方へ向かう。そして「亜麻色の髪の乙女」を弾き始めた。曲調も、りえの指使いも、素晴らしかった。だが、途中で音をミスしてしまった。
「あ、ごめんね、ミスしちゃって」
「大丈夫だよ、凄い上手だったよ!」
「ありがとう」
「そうだ、りえちゃんはどうして清水に来たの?」
「ああ、それはね、私、実は東京って空気が汚れてるから、喘息気味になっちゃって・・・。それで私のおばあちゃんがこの清水に住んでるから、ここに来たの。清水は空気綺麗だからね。おばあちゃんの家にはピアノがないから、お父さんがここの教会のシスターと知り合いで教会からピアノを借りる許可も貰ったの」
「そっか、大変だよね、練習しないと」
「ええ、でも、午前にもここに来た子達と早速『友達』になれたから明日はその『友達』と遊ぶつもりでいるの」
「えっ、もう友達できたの!?凄いね!」
「ええ・・・。そうだ、かよちゃんも一緒に遊ぶ?」
「私もいいの?」
「勿論よっ」
「うん!」
かよ子とりえは約束した。
かよ子は帰宅した。
「只今」
「あ、お帰り、かよ子。その『杯』を持ってる子と会えたの?」
「うん、会えたよ。すっごく可愛い子だったよ!」
「よかったわね」
「明日も会いに行っていいかな?」
「構わないけど、その子はピアノの練習をしているんでしょ?あまり練習の邪魔しないようにね」
「大丈夫だよ。遊ぶ約束もしてるんだ」
かよ子は明日を楽しみにしていた。
「あ、そうだ・・・」
かよ子はある事を思い出し、電話を掛けた。掛けた相手は長山だった。
『もしもし・・・、あれ、山田?』
「な、長山君。じ、実は・・・、この前、長山君が言っていた事、間違ってなかったんだ」
『え、本当かい?』
「私の杖はトランプの『クラブ』、さりお姉さんが持ってる護符は『ダイヤ』を表したものだけど、今、その『ハート』を表す杯を持ってる人が清水に来てるんだ。私、今日、その人に会ったんだよ」
『本当かい?どんな人だった?』
「私達と同じ三年生で、東京から来て教会のピアノを借りて練習してるの。名前は安藤りえっていうんだ」
『やっぱりそうだったのか・・・。それは誰から聞いたんだい?』
「御穂津姫って御穂神社の神様が現れて聞いたんだ」
『御穂神社の神か・・・。分かった、ありがとう』
「うん、じゃあね」
お互い電話を切った。
長山は電話を切った後、考える。
(御穂神社の神が山田のお母さんにあの杖を渡し、その隣の家の人のおばさんに護符を渡したって訳か・・・)
そして長山はある事を考えた。
(行ってみよう、御穂神社へ・・・)
翌日、かよ子は早速例の教会へと向かった。入口に到着すると、他に何名かがいた。よく見ると、学校の友達だった。まる子にたまえ、藤木、そして大野と杉山だった。
(す、杉山君達がなんで教会に・・・!?)
かよ子には理解できぬ事であった。まる子たちは教会に入っていく。かよ子も後を付いて行った。
(そういえば、りえちゃんは私が来る前にも他に友達ができたって言ってた・・・。もしかして、それってまるちゃんや杉山君達・・・!?)
かよ子は気づかれずについて行こうとしたが、おっちょこちょいをここでやってしまう。廊下の曲がり角を曲がろうとした途端、肘を壁にぶつけてしまったのだ。
「何だ!?」
前にいた皆が振り返った。かよ子はばれてしまい、あたふたした。ぶつけた肘の痛みを手で抑えながら、かよ子はその場で動けなくなってしまった。
「か、かよちゃん!?」
「な、なんでお前がいるんだよ!?」
「あ、いや、その・・・」
その時、礼拝堂のドアが開いた。
「あら、皆、おはよう」
「ああ、りえちゃん」
「あ、遊びに来たよ~」
「ありがとう」
その時、りえはその奥にかよ子がいるのを見つけた。
「あら、かよちゃんっ!」
「り、りえちゃん・・・」
「り、りえちゃん、山田とも友達なのかい・・・!?」
藤木が驚いて聞いた。
「うん、昨日皆が帰った後に会ったの」
「そうだったんだ・・・」
「そっか、りえちゃんが友達になった子って、杉山君達だったんだね・・・!!」
「うん、もしかして、皆かよちゃんの友達なのっ!?」
「そ、そうなんだよ」
りえは世界の狭さに驚愕した。
「そうだ、かよちゃんも一緒に遊ぼうよ!」
たまえが呼んだ。
「う、うん!」
「山田あ、おっちょこちょいに気を付けろよお!」
「す、杉山君・・・!」
かよ子は好きな男子から冷やかされて恥ずかしくなった。
「まず、何からやろうかあ?」
まる子が聞く。
「俺、空き缶持ってきたんだ、缶蹴りやろうぜ!」
大野が提案した。
「いいわねっ!」
こうして皆は外に出て遊びに行った。
皆は缶蹴りをして遊んだ。缶蹴りというのはスリルがあるが、鬼の方も逃げる方もかなり走り回るので労力がいる。かよ子も何度か鬼になったりした。そしてある時、藤木が鬼になって逃げている所、杉山はある姿を発見した。少し離れてりえがせき込んでいた。
(あ、あいつ・・・)
杉山は考えた。風邪が流行っているわけでもないのに彼女だけむせこんでいるのは普通じゃないと。彼女にいったい何かあるのか、と。
皆は汗びっしょりになって疲れた。
「はあ~、缶蹴りって案外体力使うなあ~」
藤木はもうくたくたになってしまっていた。
「うん・・・」
「何を言ってんだ。次はドッジボールだ!」
大野が提案する。
「ドッジボールもいいけど、その前に休憩しねえか?」
「そうだね、アタシゃアイスが食べたくなってきたよお~」
「うん、僕も、丁度アイスが食べたい気分だったよ!」
「じゃあ、みんなでみつやにアイスを買いに行こうかよ!」
たまえが提案した。
「みつや?」
りえが聞く。
「私達がよく行くお菓子やアイスを売ってる店だよ」
「へえっ、行きましょうっ!」
皆はみつやへと向かった。途中、かよ子は歩きながら、杉山の顔を盗み見た。普段なら大野と楽しく話すはずだが、この時に限ってはりえの方ばかりを見ている。
(す、杉山君・・・)
かよ子は疑った。大野と同様、本来杉山は硬派のはずだ。にもかかわらず、りえの事を気にしているという事は・・・。
(もしかして、す、杉山君、りえちゃんの事が・・・)
かよ子は心の奥底にて猜疑心と嫉妬が込み出した。しかし、杉山に確認する勇気は出なかった。
皆はみつやでアイスを買った後、神社の木陰でそれを食べる事にした。
「りえちゃんは毎日ああやってピアノの練習してるのお~?」
「うん」
「夏休みだって言うのに、毎日練習してるなんて偉いね!」
「ホント、アタシなんていつも宿題もしないでダラダラしてるだけだよお~。いつもお母さんに怒られてるよ」
(まさか、まるちゃん、まだ宿題やってないんじゃ・・・)
かよ子は推測した。
「私ね、将来ピアニストになりたいのっ!それが夢なのっ!」
「ピアニストか、凄いね!」
「りえちゃんならきっとなれるよ。凄いピアノが上手いんだもん!」
まる子とたまえは感心した。
「昨日弾いてた曲は何なのお?」
まる子が聞いた。
「『亜麻色の髪の乙女』って曲よ」
「亜麻色?どんな色?」
「薄い茶色って意味よ」
「じゃあ、りえちゃんにぴったりの曲だねえ~!」
「まさに亜麻色の髪の乙女って感じだなあ~」
まる子と藤木はそう思った。しかし、杉山はそうは思わない。
「コイツのどこが乙女なんだよ」
「それどういう意味っ!?」
「だって乙女ってもっとおしとやかだろお?お前全然そうじゃないもんな」
「悪かったわねっ。臆病者のくせして」
「臆病なんかじゃねえよ!」
杉山はカッとなった。
「私を幽霊だと思って腰抜かしてたのって誰だっけ?あの時の杉山君の顔、とても変だったわよ」
りえはさらに杉山を挑発した。
「お前な!」
「す、杉山君!りえちゃん、やめてよ!」
かよ子は思わず、二人の喧嘩を制止した。
「そうだぞ、山田の言う通りだ、喧嘩はよせよ」
大野も止めた。お互いはそっぽを向いてしまった。かよ子はやはり先ほどの杉山のりえが気になるような素振りに見えたのは気のせいだと思うのであった。
後書き
次回は・・・
「喘息のハンデ」
長山は御穂神社に行き、御穂津姫との対面を試みる。一方、りえは皆とプールに行かないかと誘われるが、拒否する。杉山は缶蹴りの時に彼女が咳をする姿を見て、何らかの理由があると推測するが・・・。
47 喘息のハンデ
前書き
《前回》
教会にて異世界の「杯」の所持者である安藤りえとの対面に成功したかよ子はりえの「亜麻色の髪の乙女」の演奏を聞く。一方、長山は御穂神社に行く事を考える。翌日、かよ子はりえと遊ぶ為に待ち合わせの教会に向かうと、杉山達と出会い、彼らもりえと友達になった事を知る。しかし、缶蹴り鬼をして遊んだ後、杉山とりえは喧嘩を始めてしまった!!
今回もアニメ「ちびまる子ちゃん」2期238話「夏休みの思い出」の巻にかよちゃんを交えてアレンジした内容になっています。喘息について調べてみたんですが、喘息は症状が重い場合はプールの水に含まれる塩素によって発作が出てしまう恐れがあるとの事です。ですからアニメでもりえちゃんはプールを拒否したのではないかと作者は考察しています。でも、プールでの水泳は喘息改善にもなるという結果も出ていますが・・・。
三保神社の鳥居に長山は訪れていた。
「ここに三保神社があるんだな・・・。山田の杖やさりってお姉さんの護符もここの神から貰ったのか・・・」
その時、声が聞こえる。
「そこの貴方、如何なされましたか」
女性が降りてきた。
「僕は長山治。君は御穂津姫かい?」
「その通りです」
女性は否定しなかった。
「あの、一つ聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「ええ、どうぞ」
「僕の学校の友達の山田かよ子が持っている不思議な杖なんだけど、何か知ってるかい?」
「ああ、あの杖ですか。はい、もちろんです。あれは平和を司る世界におきまして最も強力な力を持つ道具です。山田かよ子さんのお母様に渡し、その娘のかよ子さんがその所有者としての意志を受け継いでいるのです」
「それから、僕の考えでは、その杖と同じ力のものがあるらしいけど・・・」
「ご名答です。護符、杯、そして剣・・・。これらが日本にいる四名に渡したのです」
「うん、護符を持ってる人は今名古屋にいて、杯を持っている人は東京にいて今清水に遊びに来ているらしいんだ。剣を持っている人は?」
「広島という地にいるのですが・・・」
御穂津姫は顔を曇らせた。
「広島にいるんだね?」
「ところが、敵の人間に倒され、奪われたとの情報が入りました」
「・・・ええ!?」
神社の近くの木陰でまる子はある提案をする。
「そうだ、りえちゃん、明日は泳ぎに行こうよ!」
まる子が提案した。
「そうだね、学校のプール空いてるよ」
藤木はりえと泳ぐ時に夕陽の光る砂浜でりえと恋に落ちる所を妄想した。
「うん、やっぱり夏は海だね!」
「藤木、学校のプールだよ」
「ごめん、私水着持ってないの」
「誰かに借りればいいじゃん。きっと楽しいぜ!」
「そうだよ、一緒に行こうよ」
「あ、あのね、実は私、カナヅチなんだっ!」
りえはそれでも水泳を嫌がる。
「でも小さいプールだから泳げなくても平気だよ?」
「そうだよ、それにたとえ嵐が来ても、僕が命を懸けてりえちゃんを守って見せるさ!」
藤木はカッコつけた。
(嵐って、だから学校のプールだってば・・・)
たまえは心の中で藤木に突っ込んだ。
「・・・でも、明日はピアノの練習あるし、やっぱやめとく。来月のコンクールもあるし・・・」
「ピアノコンクールか・・・。それなら仕方ないよね」
かよ子もコンクールの為ならその通りかと思った。
「でも、りえちゃんくらいピアノが上手ならこれ以上練習しなくてももう十分だと思うけどなあ」
「藤木君は優しいのね」
「え?う・・・」
藤木は照れた。
「でも、私よりピアノが上手い子なんて、他にもいっぱいいるのよ」
「そうか・・・。ライバルが沢山いるんだね。でも、私、りえちゃんがきっとコンクールで一番だと思うんよ!」
「かよちゃん・・・、うん、ありがとう!明日も練習しなくっちゃ!」
「うん、そうだね」
その会話をよそに杉山はある事を考えていた。
(缶蹴りやっていた時に咳・・・。それから、プールに入る事を嫌がる・・・。違うな、カナヅチとかじゃないな)
その後、皆はドッジボールをして楽しんだ。かよ子はそこでも足を滑らせてよけきれずにボールに当たったりとお約束のおっちょこちょいをやってしまった。
「はあ、疲れた」
「今日は楽しかったわ。ありがとう」
「ああ、りえはこれから練習か?」
大野は聞く。
「うんっ」
「大変だね」
「そんな事ないわ。ピアノ弾くのは好きだし、楽しいし・・・」
「そうだよね。私もピアノやってるけど、弾いてみて楽しく感じてるんだ」
「たまちゃんもピアノやってるのっ?」
「うん、でもりえちゃんほどじゃないけどね・・・」
その一方で藤木はピアノが上手い子は本当に可愛いと思った。
(そうだよな、ピアノ上手い子は本当に可愛いよな・・・。笹山さんだってそうだし、いっそりえちゃんにも何かアピールできたらな・・・)
そして藤木は何か言おうとする。
「ぼ、僕もピアノじゃないけど、スケートは得意なんだ!それで将来はオリンピックに出たいって思ってるんだ!」
しかし、藤木の発言で盛り上がる事はなかった。
「藤木~、スケートは冬だよお~」
「う・・・」
「じゃ、せめて冬休みにでもまた清水に来たら見せてあげるよ」
「うーん、来れるかどうか分からないわ・・・」
藤木のアピールは空回りに終わった。皆はそれぞれの家を紹介した。
「私の家はあっちだよ」
「俺んちは向こうだぜ」
「あ、あそこが私の家だよ」
「そうなんだ。私のおばあちゃんの家はこっちよ」
「へえ、かよちゃんちとそこまで離れてないね」
「ほ、本当だ・・・」
りえの祖母の家はかよ子の家とは曲がり角を2つ超えたほどだった。
「それじゃ、また明日ねえ~」
「うん、バイバイっ!」
皆は別れた。だが、かよ子は大野と杉山の跡を追いかけた。
「あ、あの、杉山君・・・」
「どうした、山田?」
「りえちゃんの事なんだけど・・・」
「りえがどうかしたか?」
かよ子は思い切って言ってみる。
「杉山君はどう思ってるの・・・?」
「ああ、気が強くて乙女じゃないぜ。もう男と言っていいかもな」
「そっか・・・。でも、やっぱり気のせいかな?」
「何が気のせいだよ?」
「あの・・・。な、何でもない・・・!!」
かよ子は杉山はりえに好意を持っているのではないかと聞くのをやめた。怒鳴られると思ったから。
「でも、お前、りえの事何か知らねえか?」
「え?」
「あいつ、缶蹴りしていた時、せき込んでいたのを見たんだ。それにプールを嫌がったのもカナヅチとかじゃないと思うんだ。それに・・・」
「それに?」
「あいつには何か違う感触がするんだ。前に異世界の敵や日本赤軍とはまた違った感触をしたんだ」
「杉山君・・・」
かよ子には杉山の鋭さに驚いた。
「実はりえちゃん、喘息気味なんだ。それから、私の持ってるこの杖と同じように、異世界の杯を持ってるんだ。その杯には精霊を生み出せる能力があるんだって」
「そうか、だからプールを嫌がったのか」
「でもさあ」
大野も話に入る。
「プールは喘息を治すのにも効果があるって聞いた事あるぜ」
「まあ、それでもすぐに水に浸かるのよくないんだろ。山田、俺、明日りえに会いに行ってくるよ」
「うん・・・」
りえは本当はプールで皆と遊びたい気があった。
(私、喘息でさえなければ入れたかも・・・)
りえは喘息の影響で水泳をすると発作を起こしそうなのを恐れている。以前、学校の水泳の授業で呼吸が困難になり病院へ運ばれた事があった。その後遺症もあり、水に浸かる事に抵抗を感じ、以降水泳の授業は見学せざるを得なかったのである。
北海道の札幌市。三河口は従姉の一人、ありとその夫の家にいた。
「健ちゃん、明日帰るでしょ?」
「はい」
「今日はカニを御馳走してあげるわ」
「ああ、どうもありがとうございます」
一行はとある飲食店に行ってカニ料理を食べた。それを食べながら三河口はありやその夫が言った言葉を思い出していた。
(あのイマヌエルがここに来ていたのか・・・)
そして自身も、静岡県に住むあの小学生の女子も、高校の友人達も巻き込まれる事を予想しており、その為にイマヌエルやフローレンス、森の石松などといった平和を司る世界の人間の力を借り続ける事になると思った。
これから日本で起こりうるであろう大きな大きな抗争に・・・。
後書き
次回は・・・
「杯の能力」
夏休みの宿題をしているかよ子の元にりえとその母が現れる。そしてかよ子とまき子は真希彼女の家族ぐるみで同盟を組む事になる。そしてプールで遊んだ後、杉山は教会へ行き、「ある事」を試す為にりえを挑発しようとする・・・。
48 杯の能力
前書き
《前回》
長山は御穂神社にて御穂津姫と接触し、異世界の最上位の能力を持つアイテムの事を知るが、そのうちの一つである剣が日本赤軍に奪われたと知る。一方、かよ子達はりえをプールに誘うが、りえは自分がカナヅチである事を理由に頑なに拒否する。だが、杉山は本当の理由を見抜いていた。そして従姉のありが住む札幌に滞在中の三河口は大きな戦争の予感を覚える・・・。
かよ子は翌日は午後に皆でプールに行く予定でいた。午前は夏休みの宿題に勤しんでいた。そんな時、インターホンの音がした。かよ子の母が応対すると、かよ子の部屋に向かった。
「かよ子、お客さんよ」
「え?う、うん」
かよ子は居間へと降りてきた。そこにいたのは一人の女性と、もう一人はりえだった。大人の女性の方はおそらくりえの母親だろう。
「り、りえちゃん!?」
「あら、ウチのりえともうお友達になったのね」
「はい、昨日から一緒に遊んで貰ってます」
「ありがとう。ウチの主人がこの清水の生まれでね、遊びに来ているんですよ。東京は工場が多くて人も多いし、この子喘息になっちゃったのよ。それでこの清水は海の風もあって空気が綺麗だからこの子にもいいと思ってきたの」
「そうなんですか。そういえば確かそちらも異世界から貰った杯がありますよね」
(はっ・・・!)
かよ子はもしかしたらりえとその母はその話をする為に来たのではないかと推測した。
「はい、うちの子に持たせています」
「私の所も杖を持っておりまして娘に持たせています。うちの子もおっちょこちょいな所がありますがそれでも学校の友達の協力もあって異世界の敵に勝ってきました」
「そうなんですか、東京にも出てきました。りえはこの杯を利用して精霊を作り出して戦って勝利してきました。その他にも空気を利用して風の精を呼び出し、周りの空気を綺麗にして喘息の悪化を防ぎました」
「それから4月に起きた地震のような振動の影響で異世界の敵が来て、さらには日本赤軍までもが攻めてきました。お互い日本赤軍から守るためにも平和を必要とする世界から貰った道具を持つ者同士これから連絡を取り合うという事ですね。私もこの清水の神社の神からそうするように聞きました」
「そうですね、これから何か動きがあったらそうしましょう。りえ、どうかしら?」
「かよ子も、どう思う?」
「えっ!?」
かよ子とりえはお互いに目が合った。
「そ、そうだね、何かあったら心強く思えるね、私、おっちょこちょいだし・・・」
「かよちゃんと一緒なら私も心配ないわ」
「りえちゃん・・・」
「OKよ。これで何かあっても大丈夫ね」
お互いの母子は同盟を結んだ。りえとその母は帰ろうとする。
「りえちゃん」
「え?」
「今日も練習、頑張ってね」
「うん、ありがとう」
「あ、あの・・・、それから・・・」
「何?」
「やっぱり、喘息のせいでプールに入れないんじゃないの?」
りえは見抜かれたと思った。
「・・・うん、実はそうなんだ。前に学校のプールの授業で呼吸困難になった事があってね、それでプールに入れないんだ」
「そうだったんだ・・・」
「ごめんね、本当は皆と遊びたかったけど、また別の遊びしよう。じゃあねっ!」
「うん・・・!」
りえは山田家を出た。
三河口は札幌駅でありとその夫に見送られていた。
「それじゃ、お父さんとお母さんに宜しくねー」
「はい、お世話になりました」
三河口は列車に乗りこんだ。
(また長旅か・・・)
かよ子は午後はまる子達とプールで泳いで楽しんだ。帰る途中、皆はりえについての話をする。
「りえちゃんも来ればよかったのに〜」
藤木は残念がっていた。
「今日もピアノの練習してるのかね~?それにしてもりえちゃんがカナヅチだってのは以外だねえ~」
「うん」
「そういえばあいつ、全然日に焼けてなかったよな」
大野と杉山は真相を知っていた。杉山は考えた。
(喘息の影響、か・・・)
「でも、泳げなくてもプールに入っているだけで楽しいのに」
「明日もう一回誘ってみようか」
たまえは提案した。
「そうだね」
「やめとけよ」
杉山は止めた。
「え?」
「あいつがプールに入りたがらないのはそれなりの理由があるんだ。何回さそってもまた断られるだけだぜ」
「す、杉山君・・・」
かよ子は杉山がいきなり言った事に驚いた。
「プール以外であいつと遊んだほうがいいぜ」
「そんなあ・・・」
「で、でも、私も杉山君の言う通りだと思うよ。しつこく言っても逆に嫌がられるだけだと思うし・・・」
「そうだな」
大野は賛成した。
「ちぇ」
「僕が命を懸けてりえちゃんを守ってやるって思ったのに・・・」
皆と別れた後、かよ子は好きな男子から呼ばれた。
「山田」
「え?」
「俺、夕方、教会に行ってみるよ」
「え?」
「りえの事をよく知りたいしさ。じゃあな」
杉山は喧嘩したりえにその能力を試してみたかった。かよ子はなぜか嫉妬心が込みあがった。
(す、杉山君、もしかして、りえちゃんが・・・!!)
夕方、杉山は教会へ向かった。ピアノを弾く音が聞こえる。りえはまだ練習していると杉山は察した。杉山はかよ子からりえは「異世界の杯」を持っていると聞いた。以前、森の石松から「力の石」の一つである「雷の石」を貰った時は、これで山口や川村達から乗っ取られた秘密基地を取り返す為の闘い使用しようと考えた。だが、かよ子や冬田、そしてフローレンスの介入でその行為が間違っていると気づいた。あの時と同様、りえの杯の能力を試す為だけにその石を使用するのは石松やフローレンスの意に反していることになり、彼女にも悪いと思うし、自身も外道な事をしているとは感じている。だが、それでもかよ子の言っている事は間違っていない事を確かめたかった。
教会に着いた。ピアノの音がする。あの「亜麻色の髪の乙女」だった。礼拝堂に入る前、途中で音が止まった。杉山は何があったのかと中を覗こうとした。その瞬間、ドアが開いた。
「また幽霊だと思った?」
「お前、しつこいぞ・・・」
「えへへっ。ところで私に何か用?」
「お前、昨日缶蹴りしていた時に咳こんでたし、プールを嫌がってたし、本当は体が悪いんだろ?」
「私がっ!?やだっ、急に変な事言わないでよっ!」
りえはバカらしいと思い、笑った。
「真面目に答えろよ。お前の事は全て山田かよ子から聞いてんだよ。お前が喘息だって事も、東京は空気が汚れてるからここのきれいな空気を吸う為に清水に来ている事も」
「う・・・」
りえの表情が複雑になった。
「お前、異世界の『杯』を持ってんだよな?」
「う、うん」
「それ、照明させてくれ。あの山田の杖と同じように」
「え?」
「俺、この石を持ってんだ。これも異世界の『石』で『雷の石』ってんだ。これで電気を操り、雷を作ったり、放電する事ができる。だから、その杯で俺と勝負しろ」
「そ、そんな・・・」
杉山は挑発を図る。
「お前、か弱いってガラじゃねえだろ?」
「わ、分かったわよっ、外に出なさいよっ!」
りえはピアノの傍に置いてある杯を取って戻ってきた。
「これがその『杯』よっ!見せてあげるわっ!」
りえは杉山に見せると共に外に出た。
「さあ、来なさいよっ」
「自分からは来ないのか。なら!」
杉山は石の能力を行使した。石から雷が放電される。なんとりえはその雷に杯を向けた。杯が雷を吸収する。そして、その中から何らかの生物が飛び出した。全身が黄金色の人間のような姿だった。
「これは『雷の精霊』よっ。その能力はこんなもの」
雷の精霊は手から電撃を放った。近くの木の枝が折られた。
「今は枝で済ませたけど、木の幹を折る力もあるわよ。それでも闘う?」
「う・・・。分かったよ」
「へえ、やめるの?やっぱりあんたって臆病者なのね」
杉山は挑発で返された。
「何だと!?」
杉山は雷の石を使用を続けた。りえに電気ショックを浴びせるかと考えた。だが、別の方向から放電が起き、雷が消滅した。
「な、何だあ!?」
「す、杉山君、りえちゃん!!」
そこには「杖」の所有者である山田かよ子が来ていた。
後書き
次回は・・・
「東京で暴れる者」
ありと別れ、東京駅に到着した三河口が「ある人物」と出会い、ある用件を頼まれる。一方、りえの杯の能力を試そうとし、彼女と喧嘩寸前だった杉山を止めようとしたかよ子は・・・。
49 東京で暴れる者
前書き
《前回》
かよ子の家にりえとその母が訪れ、今後に向けて離れていても共闘する事を誓い合う。杉山はプール帰りの後、教会向かい、異世界の杯の能力を試す為にりえを挑発して、闘いを行う。だが、二人の闘いをかよ子が止めに入った!!
三河口は上野駅に到着した。その時、彼を呼ぶ声が聞こえた。
「三河口健」
「え?」
三河口は振り向く。その時、一人の男性がいた。
「私だ。平和を司る異世界のイマヌエルだよ」
「イマヌエル・・・」
三河口はイマヌエルの事は知っていた。彼は三河口の友人の濃藤徳嵩の妹とその友達に異世界の敵と対抗する為の武器を授けた張本人だからである。
「何か用なのか?」
「ああ、今この東京で異世界の敵が動いている。止める協力をしてもらいたい」
「何、その場所は分かるか?」
「ああ、工業地帯の所だ」
「つまり、京浜工業地帯のところか。だが、俺一人で止められるか」
「心配はいらない。君には一人でも強力な能力を宿している」
「分かった」
「私は存在を知られると不都合なので共には行けないがその場所を示す。その場所へ行ってくれ」
三河口はイマヌエルによって示された工業地帯へと向かった。しかし、三河口は自身の能力を改めて見つめ直す。
(俺の恐ろしい能力が本当に発揮できるのか・・・?)
かよ子は杉山がりえに会いに行くと聞いて不安になった。
(やっぱり、杉山君、りえちゃんに会いに行って喧嘩するんじゃ、それとも、りえちゃんの事が好きに・・・!!)
かよ子は思い切った。
「お母さん、ちょっと教会に行ってりえちゃんに会いに行ってくる!すぐ帰ってくるよ!」
「え?」
かよ子は教会の方へ走る。その様を途中、かよ子の父が娘が走っているのが見えた。
「只今。さっきかよ子が走っていたのが見えたけど何だったんだろ?」
「ああ、教会の方へ行くって」
「教会へ?何故に?」
「実はね、私が持っていた杖と同じ能力を持つ物を持ってる人が東京から遊びに来ててね、今朝会ってたのよ」
「そう言う事だったのか」
東京の工業地帯付近の住宅にてアドルフと日高は歩き回っていた。
「くそ、音も光も何の反応がねえ・・・」
「ヒダカ、本当にここに『敵』がいるのか?」
「ああ、『杯』の所有者がいるはずなんだ」
日高は中退とはいえ物理学卒であり、物理的な能力を使用して異世界の杯の所有者の住処を探していた。その時だった。
「ったく、日本赤軍とその召喚された異世界の奴が彷徨いてるって聞いたから寄り道したが、お前らか」
二人は振り返った。そこには高校生ほどの男子がいた。
「何だ、お前は?」
「通りすがりの高校生だが」
その高校生は言葉を続ける。
「おたくらが近くにいるほどどうも激しい胸騒ぎを覚えるんだが、日本赤軍と異世界の人間だろ?」
日高はこの高校生が普通の人間でないと気付いた。
「だとしたら何だ?」
「お前らを退治する」
日高は感じた。この男子は只者ではないと。
「アドルフ!殺れ!」
「おう!」
アドルフは生物を瞬殺する能力がある。その能力を行使した。しかし、その能力はなぜかその男子には効かなかった。
「な、何だ、こいつは!?」
「俺にそんな手が使えると思うのか」
アドルフと日高は急に金縛りをかけられたかのように動かなくなった。認めたくないのだが、その男子に屈してしまったかのようだった。
「俺を怒らすとどうなるか教えてやる」
その時、住民達が次々と家から現れた。
「何だい、アンタら!」
「この不審者め!」
住民達がこの男子に洗脳されたかのように二人に襲いかかる。日高とアドルフは住民達に袋叩きにされてしまった。
「出ていけ、そして帰れ、ゴミクズども」
その男子は念力をかけるかのように二人を遠くへ吹き飛ばした。手も出さずに。住民達は帰って行った。
「俺の能力は危険すぎるんだよ。だから小学生の頃、嫌われ者だったんだよ。くそったれが・・・」
その男子もその街を出ていった。
「杉山君、りえちゃん!!」
かよ子は教会の外の庭で対峙していた杉山とりえを見つけた。杉山は雷の石を使用していた。一方のりえの付近には黄金色の体をしたの人間型の生物のような物体いた。おそらくりえが杯の能力で作り出した精霊だとかよ子は察した。杉山は雷の石の能力を行使している所からかよ子は杖の使用法を示した本の一節を思い出した。
【電気を使用する品および雷を発する雲に向けると雷を操る能力を得られる】
かよ子は杉山が放った電撃に杖を向け、雷を操る能力を得て、その放電で杉山の電気を打ち消した。
「かよちゃんっ!?」
「や、山田あ!?なんでお前があ!?」
「そ、それは、ふ、二人共、け、喧嘩しそうだったから、し、心配で、き、来たんだよ!!」
かよ子はあたふたしながら言った。
「ああ、ごめんね、私もカッとなっちゃったわ」
「それで、お前も来たのか。ワリいな、迷惑かけてよ。こいつの杯の能力を試そうとしてついやっちまったよ」
「じゃ、じゃあ、やっぱり、あれはりえちゃんが出した『精霊』!?」
「そうよっ、あれは「雷の精」よっ。あれで雷の技が使えるのっ」
「そうなんだ、私のこの杖もね、今の杉山君の電撃に向けて雷を操る能力を持つ事ができたんだよ」
「それで、今電撃同士で迎え撃って打ち消したのね」
「うん、お願いだから、そんなんで喧嘩は、止めて・・・!!それに、『敵』は他にいるはずだよ・・・!!」
「ああ、そうだったな、俺達の敵は日本赤軍やそいつらに協力してる異世界の奴らだよな」
「そうだ、プールに誘うのはやめるから、明日は代わりに花火やろうよ!」
「うんっ、いいわねっ!」
「ああ、そうだな」
三人は約束した。
「りえ」
杉山は東京の少女を呼ぶ。
「邪魔して、悪かったな。ピアノの練習、頑張れよ」
「う、うん、ありがとう」
三人は帰った。
三河口は一用事を済ますと東京駅に戻っていた。その時、イマヌエルが現れた。
「お疲れ様だ、三河口健」
「イマヌエルか、あいつらは対峙したよ」
「ああ」
「ところで、聞きたい事がある。俺の従姉が持っている護符や、山田かよ子ちゃんの持っている杖は君達の世界ではどんな存在なんだ?」
「それは、最上級の強さを持っている。これが戦争を司る者や悪事を企む者に渡ると全ての世界のバランスが崩れてしまうのだよ」
「それで従姉に何か呼びかけていないか?」
「ああ、あり君の事か。君の三姉妹の従姉も君や山田かよ子君などと同じように特別な能力を宿している。きっとこの『戦い』に大きく貢献してくれるからな」
三河口はこれ以上は追求しなかった。「戦い」の意味は彼にはすぐに理解できた為である。
「君にはその特別な能力が全て揃っている。稀有な人材だ。君もきっと世界を救うための大いな鍵になれるよ。では」
イマヌエルは消えた。
(稀有な人材、ね・・・)
三河口は己の能力は恐ろしき物かと思っていたが、考え直す事にした。そしてそして新大阪行きの新幹線に乗車した。
かよ子は家に帰ると丁度三河口と会った。
「あ、隣のお兄ちゃん!」
「かよちゃん、只今」
「北海道から帰ってきたんだね!」
「うん、そうだよ。かよちゃんにお土産あげよう」
三河口はかよ子に一つの箱を渡した。
「『白い恋人』って言ってホワイトチョコレートをクッキーでサンドしたお菓子だよ」
「あ、ありがとう!」
三河口は話を続ける。
「ところで、帰りに東京の方でイマヌエルに会ってきたよ」
「イマヌエ、ル・・・!?」
かよ子は勿論その名を忘れてはいなかった。隣町の小学校に異世界の敵などと戦う為の道具を渡した人間だからである。
「ど、どうして・・・!?」
「東京に彷徨いてる赤軍や異世界の敵を追い払って欲しいって頼まれてね。それで一泡吹かせたよ」
「東京・・・、そうだ、もしかして・・・!!」
「ん?」
「今東京の子が清水に遊びに来てるんだ。その子は異世界の『杯』を持ってて、私の杖みたいにかなり大事なアイテムみたいなんだ。今日はその子と助け合う事を約束したんだよ」
「そうか、じゃあ、奴らが探していたのはその東京の子かもしれないね。名前は何ていうんだい?」
「安藤りえだよ」
「オーケー、俺も会っておきたいな」
「うん、いいよ」
その時、話し声が聞こえたのか、かよ子の母が現れた。
「あら、かよ子、帰ってたの?入りなさい。あら、健ちゃん。札幌から帰ってきたの?」
「はい、たった今帰りました。では、失礼します。じゃあね、かよちゃん」
「うん、バイバ〜イ」
かよ子も三河口もお互い家に入った。
後書き
次回は・・・
「清水の夜の花火」
かよ子は三河口を連れて彼をりえと引き合わせ、彼も杯の存在を改めて確認する。そして三河口は自身の持つ能力をりえに暴露する。そしてその夜、かよ子達は皆で花火をする事になる・・・。
50 清水の夜の花火
前書き
《前回》
ありの住む札幌から清水へ戻る途中、三河口は東京駅にて平和を司るイマヌエルと出会い、京浜工業地帯の中のとある町へと寄り道する。一方、清水の教会では杉山がりえの持つ杯の能力を試そうと彼女と喧嘩を始めており、かよ子は何とか止めに入る。そして皆で花火をする事を約束し、家に帰ったかよ子は同時に札幌から戻って来た三河口と再会した!
三河口は家に入ると、奈美子と利治に土産を渡した後、あり達が異世界の人間に会っていた事を伝えた。
「そうだったんね、それだけ準備を進めてるんだね」
「はい、それで、俺も東京で『敵』がいるって聞いたんで寄り道して懲らしめてきました」
「そうか、それは大変だったね」
「他の人には危害は加えんかった?」
「はい、ていうか、住民達がそいつらに怒って袋叩きにしてました。あとは俺の能力で遠くに吹き飛ばしましたよ」
「ふうん、よくやったね」
「そういえば、さっきかよちゃんに会った時、東京の子が遊びに来てるって聞いたんですが、ご存知でしたか?」
「うん、まき子ちゃんから聞いたよ」
「杖や護符と同等の道具である『杯』を持っているとか。俺が東京で退治した相手はその『杯』を狙っていたのかもしれないって思うんです」
「そうか、確かに間違ってないかもね」
かよ子は食事を終えると、丁度電話が掛かってきた。
「はい、山田です」
『もしもし、長山ですが』
「な、長山君!?どうしたの!?」
『実は昨日、御穂津姫にあって来たんだ。僕の予測した通り、平和を司る世界にはその平和を維持する為の強力な能力を持つアイテムが四つあるんだ。君の杖や名古屋のお姉さんの護符、そしてその東京からの女の子が持ってる杯、そして剣があるんだ』
「そっか、長山君の言ってる事は合っていたんだね。剣は何処の人が持ってるの?」
『それが・・・、剣は・・・』
長山はこの続きを伝えるのに抵抗感を感じてしまった。
『広島にあるんだけど・・・』
「広島に?」
『日本赤軍に盗られたって聞いたんだ・・・!!』
かよ子は一瞬凍りついた。そして、我に返る。
「・・・えええ!?」
『だから、君の杖や、あのお姉さんの護符、そしてその東京の子の杯は何としても守り抜かないと駄目だよ』
「うん、分かった。ぜ、絶対に、あの杖は渡さない・・・!!」
『うん、じゃあね』
かよ子は電話を切ると共に、体が震えあがるのを感じた。
「かよ子、どうしたの?」
「お母さん、今、長山君から聞いたんだけど、この杖や名古屋にいるお姉さんの護符、りえちゃんの杯と同じくらいの能力がある剣が広島にあったんだけど、日本赤軍に取られちゃったんだって・・・!!」
「ええ!?かよ子、これからもっと戦いは厳しくなるかもしれないわ。でも、大丈夫よ」
「どうして?」
「かよ子の仲間は沢山いるんだから」
「お母さん・・・。うん・・・」
かよ子は思い出した。そうだった。自分は一人じゃない。両親、まる子やたまえ、杉山や大野、とし子、長山、そしてブー太郎などといった学校の友達、隣の家の人、そしてこの杖があるからこそ隣町の学校の子や東京の子、そしてフローレンスやイマヌエル、森の石松といった平和を司る異世界の人間と多くの味方がいる。日本赤軍に対抗する為の勢力を広げれば決して無力ではない。かよ子はそう信じた。
翌日、かよ子は三河口と共に教会へ向かった。
「へえ、そのりえちゃんってのはピアノが上手なんだ」
「うん、今『亜麻色の髪の乙女』って曲を練習してるんだって。将来の夢はピアニストって言ってたよ」
「うん、そのくらいから練習を続けていたら、きっとなれるよ」
「そうだよね。ところで・・・」
「ん?」
「長山君って学校の友達から聞いたんだけど、私の『杖』や名古屋のお姉さんの『護符』、それからりえちゃんの『杯』に、広島にあった『剣』が異世界の中で影響力の大きい道具なんだって。でも、その剣が赤軍に盗られちゃったって長山君が言ってたんだ」
「え?!まずいな、取り返さんとな。でも、まだ、そこまで戦いは激しくはなってないから、そのタイミングも先になるね。イマヌエルは札幌の従姉の前にも現れて赤軍や異世界の敵と戦いになるかもしれないと呼びかけていたんだ」
「そうかあ、イマヌエルさんも大変だね」
教会に到着した。ピアノの弾く音が聞こえる。りえは既にピアノの練習を始めていると察した。
「なかなかよく弾けてるな」
三河口には音色を聴くだけで分かった。
「うん」
ピアノの音が止まった。かよ子はそのタイミングを計らって礼拝堂のドアを開けた。
「りえちゃん、おはよう」
「あ、かよちゃん、おはようっ!」
かよ子は同行している高校生の男子を紹介する。
「りえちゃん、この人は私の家の隣に住んでる人だよ」
「初めまして、俺は三河口健っていうんだ。君が異世界の杯を持っている、安藤りえちゃんだね?」
「は、はい」
りえはシスター以外の年上の人が現れた為か畏まった。
「俺の従姉も異世界の『護符』を持っていて、君の杯やかよちゃんの杖と同じくらいの実力を持っているんだ。俺は特に異世界の道具は持っていないが、凡人と違うものを持ってるんだ。昨日清水に帰る途中、平和を司る異世界の人間に出会って東京にいる『敵』を追い払ってくれと頼まれたんだ。その時は俺の恐ろしい能力で追払ったんだが、恐らく東京にいたそいつらの狙いは君の杯じゃないかと思うんだ」
「そうだったんですかっ!?」
「うん、君の家族とかよちゃんの家族が同盟を結んだ事は正解だと思うよ。俺も協力するよ」
「は、はい、ありがとうございます。あの・・・」
「ん?」
「貴方が持ってる能力ってのは何ですか?」
「そうだな・・・、何ていうか自分に危害を加えそうな奴とか敵とかが近づくと胸騒ぎがするとか、相手をすぐに威圧させたりとか、何の攻撃も効かずにこっちからは相手を吹き飛ばしたりとかの災難を降りかける能力だな。それで実家を追い出されて親戚のおばさんの家に居候してるんだ」
「そうなんですか・・・」
「まあ、清水に来てからはそんな事を平気で人前でする事は減ったよ。俺はこれで失礼するよ。君のピアノ、応援してるよ」
「あ、ありがとう。さよなら・・・」
かよ子は三河口についていった。
「かよちゃん、今日は何か遊ぶ予定あるかい?」
「あ、うん、夜にりえちゃんや杉山君達と花火やるんだ」
「そっか。買ってあげるよ」
「あ、ありがとう!」
その後とかよ子は皆と今夜花火で遊ぶ事を電話で伝えた。いつものメンバーは教会の付近にある空き地に集まった。皆は花火で遊ぶ。藤木は花火をしながらりえに見惚れていた。
(りえちゃんと花火するなんて最高の夜だな・・・)
藤木はそう思っていた。
「ねえ、りえちゃんって普段友達と何して遊んでるのお?」
まる子が質問する。
「皆とそんなに変わらないよ。缶蹴りとか鬼ごっことか・・・。でも、こうして花火をする事はないかな」
「どうして?」
たまえが聞く。
「皆、電車で少し離れた所に住んでるの」
「って事はりえちゃんは電車で小学校に通ってるの!?」
かよ子は驚いた。
「そうよ」
「羨ましいねえ~」
「別に羨ましくなんかないわよ。朝なんて凄く混んでて大変よ」
「そっか、東京は人がいっぱいいるもんね。偶然モモエちゃんに会えるなんてことは?」
たまえは聞いてみた。
「別に東京に住んでるからって、テレビに出てる人に簡単に合えるわけじゃないわ」
「でも、東京っていっつもパーティーしてたり、高級な料理食べてるイメージがあるよね~」
「・・・残念ながら、私は普通の小学生よ」
その時、大野が呼び掛ける。
「おうい、皆、打ち上げ花火やるぞ!」
「おお~」
打ち上げ花火の準備を行う杉山が導火線に点火して、皆は離れた。しかし、何も起こらない。
「あれ、花火上がんないね?」
「不発だったのかな?」
「誰か様子見て来いよ」
「んじゃ、藤木、アンタ行ってきなよ」
「ええ~、僕がかい!!?」
藤木は自分に振られて驚いた。
「『僕が命を懸けてりえちゃんを守って見せる!』って言ってたじゃん」
「・・・、で、でも」
「私が行くわよ」
りえが名乗りを上げた。
「だ、ダメだよ、危ないよ」
かよ子は止めようとする。
「大丈夫よ。杉山君、マッチの火をこの杯に入れて」
「え?ああ・・・」
杉山はりえが取り出した杯にマッチの火を入れた。その時、杯からトカゲのような生物が出てきた。
「ひえええ~、食べられるう~」
藤木は大袈裟に驚いた。
「違うわよ、これは炎の精霊よ。あの花火をつけてくれるかしら?」
「よかろう、楽しき花火をな」
炎の精霊は打ち上げ花火のところに行き、改めて導火線に点火し、杯の中へと消えた。そして今度はちゃんと花火が上がった。美しく、赤や緑、金色の火を噴きだしていく。
「流石、豪華だねえ~」
「うん、夢のようだね」
そしてりえが呟く。
「綺麗・・・」
そのりえが見惚れる様を杉山は見ていた。
後書き
次回は・・・
「別れの寄せ書き」
花火を楽しんだかよ子達はりえが明後日東京に帰る予定だと聞き、寂しく思う。そしてかよ子はりえに対して別れの寄せ書きを書くことを提案する。しかし、杉山だけはそれを書く事を拒否し、その後、寄せ書きを受け取ったりえは・・・。
51 別れの寄せ書き
前書き
《前回》
かよ子はりえと札幌から戻って来た三河口を引き合わせ、それぞれの情報を共有する。そしてその夜、かよ子とりえはまる子、たまえ、大野、杉山、藤木を連れて花火を楽しむのであった!!
花火を終えたかよ子達は帰ろうとした。
「私、こんな花火楽しかったわ。皆のお陰よ。本当にありがとうっ!」
りえは皆に花火の感想を述べると共に、謝意を示した。
「明日もまた遊ぼうね」
「でも、私・・・、明後日帰らなくちゃいけないの」
「ええ!?」
皆はショックを受けた。
「もう帰っちゃうのかい!?」
「もっとりえちゃんとやりたい事色々あったのに!」
「何か、ずっと一緒にいるような気になってたんだよな・・・」
「そうだ、帰りに皆で見送るよ!何時の電車?」
「ううん、見送りはいいわ。見送られると余計悲しくなっちゃうから。それに泣いちゃったらカッコ悪いから・・・!!」
「そうか・・・」
「本当に色々遊んでくれてありがとうっ・・・!」
「うん・・・」
かよ子達は泣きたくなったが、堪えた。皆各々の家へと帰宅してゆく。帰り際、りえはかよ子にこう言った。
「かよちゃん」
「え?」
「明日、かよちゃんの家に行くよ。友達になってこれからの事に協力してくれるお礼をしにね」
「うん!・・・あ、あの・・・」
かよ子はある事を思い切って聞いてみる。
「りえちゃんは、す、杉山君の事・・・、好きなの・・・!?」
「えっ!?」
りえは一瞬凍りついた。
「うっ、そんな事は・・・。意地悪ばっかで最低よ。でも、何か気になるわね・・・」
「そう、か・・・。うん、じゃあね」
かよ子はりえと別れた。
かよ子は帰宅すると、母に伝えた。
「お母さん、りえちゃん、明後日東京に帰るって。それで、明日お礼を言いにウチへ寄るんだって」
「あら、そう」
「でも、何か寂しくなるよ・・・」
「でも、りえちゃんの方が寂しいんじゃない?寄せ書きでもしてあげたらどうかしら?」
「寄せ書き・・・?うん、そうするよ!」
翌日、かよ子は色紙をみまつやで購入して、皆をとある空地に呼び寄せた。
「それで、ここにね、りえちゃんにメッセージを書いて寄せ書きするんだ。そうすれば、りえちゃんも私達の事、覚えていてくれるよ」
「ひえ〜、かよちゃん、やるねえ〜」
「お、お母さんが提案してくれたんだよ・・・」
「そうだね、寄せ書きがあればいつでも僕達の事、思い出せるもんな」
「うん、私達の気持ちも伝わるしね」
かよ子はやや照れた。
「それじゃ早速一人ずつ書いていこうぜ」
皆は一人ずつ色紙に寄せ書きをする。まる子は「また花火しようね」、たまえは「ピアノ頑張ってね」、大野は「今度こそプールに行こう」、藤木は「この次はボクが守ります」と書いた。
(私は何て書こう・・・)
かよ子は思い切って書いた。「絶対にこの世界を守ろうね」と。
「つ、次は杉山君だよ・・・」
「俺はいいや」
「ええ!?何で!?」
「皆で書かなきゃ意味ないじゃん!」
「そうだよ、りえちゃんに失礼じゃないか!」
まる子も藤木も杉山に反論した。
「そういうの苦手なんだ。俺、ちょっと用事あるから、またな」
杉山はそう言って去っていった。
「す、杉山君!!」
りえは教会のピアノを使って練習する最後の日となり、最後の練習をしていた。その時、礼拝堂のドアが開いた。
「あれ、皆、どうしたのっ?」
かよ子達が入って来た。
「りえちゃん、最後にと思って皆で色紙に寄せ書きしてきたんだ」
「あ、ありがとう・・・」
「杉山君は用事があるって言って書かなかったんだ・・・」
「そっか・・・、皆、私の為にどうもありがとうっ・・・!!」
りえは感動で泣きそうになった。
「だってえ、アタシ達ずっと友達じゃん」
「来年もまた一緒に遊ぼうね!」
「うんっ・・・、私、皆の事、本当に忘れないから・・・。本当だよっ・・・!!」
「りえちゃん・・・」
「コンクール頑張れよ。応援してるからさ」
「うんっ!」
「じゃあね!」
皆は教会から出て行った。だが、りえは杉山が書いていない事に不審に思った。
(なんで杉山君だけっ・・・!?)
杉山はインターホンが鳴ったので玄関の戸を開けた。
「はい、・・・う」
相手はりえだった。
「どうしたんだよお?」
「これっ、何で杉山君だけ書いてないわけっ?」
「俺、そういうの苦手なんだ。何書いていいかよくわかんねえし・・・」
「我儘言ってないでちゃんと書きなさいよっ!」
「ちょっと待てよ。別に俺一人だけ書かなくてもいいだろ?」
「よくないっ!絶対よくないと思うっ!明日、教会のピアノを借りたお礼を言いに行く事になってるのっ。1時までにシスターに渡しておいてくれればいいわっ」
「だから俺は書かないって・・・」
「だめっ!そう言う事だからっ・・・」
りえは怒り顔から笑顔に変える。
「じゃあねっ・・・」
りえは去った。
「なんだよ、あいつ・・・」
杉山は何て書いていいか迷った。
かよ子は家に帰った。
「お母さん、りえちゃんに寄せ書き、渡せたよ」
「よかったわね、お疲れ様」
午後になり、誰かが山田家のインターホンを鳴らした。かよ子の母が出る。
「はい。あら、安藤さん!?」
現れたのは杯の所有者の母だった。その所有者である娘もいた。
「かよ子、りえちゃんよ」
「うん」
かよ子は下に降りてきた。
「りえちゃん!!」
「かよちゃんにお礼を言いに来たのっ。友達になってくれた事や私達とこれからの戦いに協力してくれた事にね」
「私も静岡に来てよかったと思うわ。りえと友達になってくれてありがとうね」
「は、はい。こっちも楽しかったです」
「安藤さん。また何かあったらお互い連絡を取り合いましょう」
「はい、それではまたいつか」
「あ、それからかよちゃん」
「え?」
「杉山君の家に言って寄せ書きを書かせたわ。やっぱり杉山君に書いてもらわないと意味ないと思ったの」
「そ、そうだったんだ。書いてくれるといいね」
「うん、じゃ、またいつかねっ!」
安藤親子は山田家を後にした。かよ子はりえについてある事を思う。
(りえちゃん、私にとって最高の友達で、恋のライバルになるかもね・・・)
かよ子はそう考えるのであった。
後書き
次回は・・・
「夢を叶える為に」
りえはシスターから杉山のメッセージが加筆された寄せ書きを貰う。杉山が書いた言葉は一体何なのか。そしてかよ子、杉山、りえがそれぞれの思う事とは・・・。
52 夢を叶える為に
前書き
《前回》
りえと花火を楽しんだかよ子達はりえが明後日が東京に帰る日だと聞かされる。見送りを断られたかよ子はりえの為に色紙を用意して寄せ書きを書く事を提案するのだが、杉山は断ってしまう。そのまま寄せ書きをりえに渡したかよ子ではあるが、りえは気に食わず、何が何でも杉山に寄せ書きを書かせに行った。そしてかよ子とりえは今後もまた連絡を取り、共闘し合う事を誓い合うのだった!!
三河口は居間の戸窓からりえとその母が出て行く所を見た。
(りえちゃん、かよちゃんの家に挨拶に来たか・・・。あの二人が共闘したら最強無敵のコンビになりそうだな・・・)
三河口はそう考える。
「まきちゃん、東京の人と同盟結べたんだね」
「はい、かよちゃん達も東京の子と仲良くなれたそうですよ」
「そうなん、ああ、そう。健ちゃんが札幌でありから聞いた事やその杯を持ってる人が清水に来てる事、今電話でさりにも伝えたんよ」
「それで、さりちゃんは何て言ってましたか?」
「今度神戸に行ってゆりにも聞いてみるって」
ゆりとは奈美子の娘で、さりとありの姉である。
「ゆりちゃんの住む神戸にも何か起きているのかを確かめにですか?」
「うん、そう言ってたよ」
翌日、りえは教会のシスターにピアノを借りた礼をしていた。
「ピアノを使わせて貰ってありがとうございました」
「どういたしまして。ピアノのコンクール、応援してるわ。あ、そうそう」
シスターは色紙を差し出した。これはかよ子達から貰い、杉山に書くように渡した寄せ書きだった。
「杉山さとし君って子がりえちゃんに渡すように言ってたわ」
「ええっ!?」
りえは寄せ書きを見た。確かに杉山のメッセージも加えられている。
(杉山君・・・。書いてくれたんだ・・・。ありがとうっ・・・!!)
「あ、ありがとうございますっ!」
りえはシスターにも、杉山にも謝意を込めて言うのだった。
杉山は考える。自分の心の中はどうなっているのか。
(俺はあいつと喧嘩した。だが、あいつは喘息でもピアノへの情熱が凄い・・・)
杉山は疑う。まさか自分はりえの事が気になって致し方ないのかと・・・。
新幹線の車内の中、りえは改めて寄せ書きを見る。
(皆、ありがとう・・・!また、清水に行こうっ・・・!そして、皆にまた会いに行こうっ・・・!!)
その時、車窓から富士山が見えた。
「うわあ、綺麗っ・・・!!」
りえは静岡県は素晴らしいと思った。そこで築いた人間関係のみではなく、美味しいマグロの獲れる漁港、落ち着いた雰囲気の街並み、そして近くで見える富士山・・・。来年も必ずこの静岡の清水に訪れようと思うのだった。
日本赤軍の本部。日高はアドルフと共に戻っていた。杯の奪取の失敗を房子に報告した。
「失敗ですと?その通りすがりの男子高校生に吹き飛ばされて?」
「はい、その男子に対してなぜか急に怖気ついてしまい、アドルフの虐殺もなぜか通用しなかったのです」
「そうですか・・・」
房子は気になっていた。日高とアドルフを怒りで吹き飛ばしたという高校生を。以前、清水の地で丸岡が認識術が通用せずに念力の如く遠くへ飛ばされたという相手も高校生の男子だった。その男子には何の能力が宿してあるというのか。そしてこの男子も今後の計画に支障をきたす恐るべき存在だと房子は警戒するのであった。
「でも、剣が手に入っただけでもよしとしましょう」
かよ子は長山と電話していた。
『そうか、同盟を組んだんだね』
「そうだよ。ごめんね、会わせてあげられなくて」
『いいよ、こっちもちょっと小春が体調崩しちゃったからね』
「小春ちゃんは今は元気になったの?」
『ああ、明日は一緒に家族で静岡のデパートへ行くつもりだよ。小春にもそこのレストランでご馳走するつもりでね』
「そっか、楽しんでね」
『うん、じゃ、またな』
かよ子は電話を切ると、東京へ戻った杯の所持者を気になった。
(りえちゃん、どうしてるかな・・・?)
その時、御穂津姫が現れた。
「山田かよ子ちゃん」
「御穂津姫?!」
「お疲れ様でした。杯の所持者との同盟を見事に組まれましたね。これからさらに戦いは激しくなりますが、必ずこの結果は良い方向へと導かれるでしょう」
「う、うん」
「それでは」
御穂津姫は消えた。
(戦い、か・・・)
かよ子は考える。そういえば長山は御穂津姫から杖、護符、杯と同等の強さを持つ剣が日本赤軍に奪われてしまったと伝えられた。御穂津姫の言う通り、激しい戦が始まるだろう。だが、たとえそこでおっちょこちょいしようが、必ず元の日常を取り戻す。かよ子はそう誓った。
(それにしても、杉山君・・・)
かよ子は好きな男子に若干嫉妬する。杯の所持者と喧嘩したり、能力を試したり、それでもどこかりえを気にしているような感じだった。そう考えているうちに、まる子達が遊びに来た。
「かよちゃ〜ん、遊ぼ〜」
「う、うん!」
夕日が映る中、皆はりえの事を考えていた。
「りえちゃん、今頃どうしてるんだろう?」
「もう東京に着いてる頃だろうね」
「きっとピアノの練習してるんだろうな」
「それにとても可愛かったしね」
杉山はリフティングしながら言う。
「ああ、あいつならきっとなれるさ。すっげえ気の強えピアニストに・・・」
この時、かよ子は杉山の顔が赤いのを確認した。夕日のせいか、それとも、彼女に惚れているのか・・・。
(りえちゃん、私にとって恋のライバルかもね・・・)
東京の家に帰ったりえはら自宅のピアノに清水の友達からの寄せ書きを飾った。
「りえ、寄せ書き書いてもらってよかったわね」
「うんっ!」
りえは杉山の大きく書かれたメッセージを見た。そこには「絶対に夢、叶えろよ!」とあった。
(杉山君、私、やっぱり杉山君が好きになっちゃったかもねっ・・・)
そしてかよ子のメッセージを見る。「絶対にこの世界を守ろうね」と書いてある。
(そうよねっ、折角同盟を組んだんだもんねっ・・・)
りえは信じていた。今後手強い敵と戦う事になった時、かよ子達と共闘できる日が来るであろうと。ピアニストの夢を叶える為にも必ず異世界の敵や日本赤軍を打ち倒すと。そして、まずは来月のコンクールに臨む。
そして、また時は進んでいく。
後書き
次回は・・・
「一年生の頃」
清水市に住む小学三年生のおっちょこちょいの少女、山田かよ子。彼女はいつ、なぜ、杉山さとしを好きになったのか、そのきっかけが明らかとなる・・・・。
53 一年生の頃
前書き
《前回》
教会のシスターから「完璧な寄せ書き」を見たりえはそれを見ながらまた清水へと訪れたいと思う。そしてかよ子はりえの事を共闘する心強い仲間と思うと共に恋のライバルと意識するのであった!!
今回からは外伝と行きましょう。なぜかよちゃんが杉山君を好きになったきっかけを私的に創作してみました!!という事で、かよちゃんの過去話となります。
かよ子は宿題を続けていた。「夏休みの友」も終わり、読書感想文および自由研究に勤しんでいた時だった。
「う〜ん・・・」
自由研究はやはり工作にしようと思ったが、何にしようか悩む。
(それにしても杉山君はどうしてるかな・・・)
かよ子はまた好きな男子の事を考えていた。ついこの前、東京の少女・安藤りえという女子に会った時、杉山はもしや彼女と相思相愛と貸しているのではと疑ってはいるが、それでも杉山への想いは変わらない。
(そういえば私が杉山君を好きになったきっかけって何だったったけ・・・?)
かよ子は一年生の頃を思い出す。
小学校へ入学して少し経った。山田かよ子は生まれつきのおっちょこちょいだった。当然、慌てては階段で転んだり、廊下で滑る。教科書を音読すれば、読む行を飛ばしたり、同じ行を二度読んでしまったりする。
(はあ、情けないなあ、私ってどうしてこんなにおっちょこちょいなんだろう・・・?)
かよ子は自分自身が少し情けなく思った。
「ねえねえ、かよちゃ〜ん」
「あ、まるちゃん」
クラスメイトのさくらももこ、通称まる子だった。同じおっちょこちょいをしやすいという理由で友達になった。その親友である穂波たまえとも友達になった。
「かよちゃんもおっちょこちょいよくするよね〜。アタシもなんだよ〜。今日も宿題忘れちゃったしさあ〜」
(まるちゃん、そういえば三日連続で忘れてるよね・・・)
かよ子は流石に宿題を忘れるまではしない。まる子のおっちょこちょいぶりには心の中で突っ込みたくなった。かよ子は校庭の方を見る。そこにはクラスメイトの大野けんいち、杉山さとし、そしてサッカー少年の長谷川健太がサッカーをやっていたところだった。
「お、今日も大野君と杉山君、あ、ケンタもサッカーやってるねえ〜」
「う、うん、三人ともスゴイよね・・・」
かよ子はあの三人のようにしっかりした男子と結婚できたらいいなと思っていた。
下校途中、かよ子は大野と杉山の姿を見る。
(はあ〜)
かよ子は少しでもあの二人と接する事ができればいいと思った。そして家に帰る。
「只今〜」
「お帰り、かよ子」
「うん」
かよ子はおやつを食べながら自分の事で物思いに耽っていた。
「かよ子」
「えっ?」
かよ子は母に呼ばれて我に返った。
「どうしたの?ボーッとして」
「あ、その、私ってどうしてこんなにおっちょこちょいなんだろうって思って」
「あらあら、そんなに気にする事ないわよ。気をつけてばいいだけの事よ」
「う、うん・・・」
(かよ子のおっちょこちょいか・・・。誰に似たのかしら・・・。それとも・・・)
別の日。この日は体育でドッジボールをやっていた。かよ子達、特に女子は逃げるのに精一杯だった。
「はあ、はあ・・・」
そして、かよ子はアウトになってしまった。
「あ、ああ・・・」
かよ子は外野へ行った。その時、かよ子はまだ内野に残る杉山が必死でアタックを繰り出し、ボールを投げられても何とかキャッチするその姿。かよ子は見惚れてしまった。
「おうい、山田あ、ボール行ったぞ!」
「あ、うん、ごめん!!」
かよ子は慌ててボールを拾った。
(そうだ、杉山君にパスしよう・・・!)
かよ子は杉山に向けてボールを投げた。この時はなんとかおっちょこちょいをしなかった。ボールは見事杉山に渡ったのだ。
「サンキューなあ、山田!」
「う、うん!」
かよ子は杉山に言われて嬉しくなった。そしてかよ子はこの時、ますます杉山が好きになっていくのであった。
だが、話す事はできたものの、どう話しかけていいか分からない。話す理由も特にない。それにこんなおっちょこちょいではまともに相手なんてしてくれないだろう。結局自分にとって杉山は高嶺の花だった。
(杉山君とどうやって話せばいいんだろう・・・。普段から親友として接してる大野君みたいになれたらいいのに・・・)
かよ子は落ち込んだ。
そんな時、かよ子は担任の先生から頼まれたプリントを職員室から運んでいた所だった。その時、途中で二人組の男子がぶつかり、足を引っかけて来た。
「ああ!」
かよ子は転んでプリントが散らばった。
「ったく、どこまでもおっちょこちょいな奴だぜ!」
「気を付けろよな!」
「ご、ごめん・・・」
かよ子はプリントを拾った。その時、男子がプリントを踏みつけた。
「ああ、それは大事なプリントなんだよ!」
「へへ、取りたかったら取ってみろよ!」
「いやだ、足を放してよ!」
「るせえんだよ!」
かよ子は泣いてしまった。その時、助け人が現れた。
「おい、お前ら!」
「自分からぶつかって来たんだろ!?謝れよ!」
大野と杉山だった。
(す、杉山君・・・、大野君・・・!!)
「ああ、コイツがぶつかって転んだんだぜ。俺達は悪くないっつーの!」
「何言ってんだ!お前らがわざとぶつかって足引っ掻けたところを見てたんだぞ!」
「ああ!?」
その時、女性の先生が現れた。
「ちょっと、何してるの、貴方達!?」
「ちいっ、先生が来やがった!」
二人が去ろうとした。
「先生、こいつらがウチのクラスの女子にわざとぶつかって足を引っかけて転ばしたんです!」
杉山が告発した。
「何ですって!?」
もちろんこの男子二人は叱られた。大野と杉山はかよ子のプリント拾いを手伝った。
「す、杉山君、大野君・・・。ありがとう・・・」
「なあに、クラスメイトの一人なんだから、このくらいは当たり前ってもんだよ!」
「杉山君・・・。うん、ありがとう!」
かよ子は助けられる場面とはいえ杉山と喋るタイミングが掴めて嬉しかった。
その時こそがまた杉山とに近づくことができた瞬間だったとかよ子は回想していた。
後書き
次回は・・・
「またクラスメイトに」
かよ子は今度は二年生に進級して杉山とまたクラスメイトになった時の事を回想する。授業・掃除・運動会と杉山は大野とのペアで色々と活躍を続けていた・・・。
54 またクラスメイトに
前書き
《前回》
夏休みの宿題に勤しむかよ子は1年生の頃の自分を思い出す。その頃はクラスメイトの男子・杉山を好きになったきっかけ、彼に少しでも近づく事ができたのだった・・・。
かよ子は昔の事に耽り続ける。
(あれから杉山君と近づけたって気がしたかな・・・。でも、進級する時、クラスメイトじゃなくなるかもしれないって正直不安になったな・・・)
かよ子は今度は二年生になった時の自分を思い出す。
二年生になり、かよ子はまた杉山と同じクラスになった。これは奇跡か、それとも神の力なのか。
(よかった、また杉山君と同じクラスになれた・・・!!)
かよ子は好きな男子とまたクラスメイトになれて嬉しかった。
「おう、大野お!お前もまた同じクラスか!」
「ああ、また二人で張り切って行こうぜ!」
杉山は大野とまた同じクラスメイトになれた事をお互い喜び合っていた。
(杉山君、よかったね、また大野君と同じクラスで・・・)
かよ子は杉山と大野の最強で頼れるコンビが健在である事を安心に思った。
そしてとある日に杉山、大野と共に掃除当番になった。かよ子は杉山の前で醜態を晒さぬようにと気をつけた。かよ子はせっせと箒で塵を掃く。そして塵取りで集める係に渡していた。
(杉山君にいいところを見せようと!)
かよ子は不意のおっちょこちょいに気をつけた。そして、雑巾がけに入った。
「よし、始めるぜ!」
「ああ!」
大野と杉山は全力の雑巾がけを始めた。その渾身の意気込みは床が光るように綺麗になった。
(す、凄い綺麗になってる!)
かよ子は自分にはここまで綺麗な雑巾がけはできないと思った。そして掃除は後半に入った。大野と杉山は机と椅子を動かす。二人が軽々と机と椅子を動かす。その二人がまたかよ子は羨ましかった。
(よし、杉山君の為にも頑張んなきゃ!)
かよ子は自分も杉山と大野のように机を運ぶのを手伝おうとした。ところがだった。足を滑らせて机ごとひっくり返そうになった。
「ああっ!」
「危ねえ!」
あの頼れるコンビが助けてくれた。大野が机を抑え、杉山がかよ子の体を支えてくれた。
「危なかったな」
「す、杉山君。ありがとう・・・」
そしてかよ子は机を抑えた大野にも礼をする。
「大野君もありがとう・・・」
「本当におっちょこちょいだな、お前!気をつけろよ」
「うん、ごめんね・・・」
杉山に注意されてかよ子は恥ずかしくなってしまい、泣きそうになった。
「おい、山田、泣くなよお・・・。机運ぶのは俺達でやるからよお、お前は箒で履いたり雑巾がけをしてくれ」
「うん」
かよ子は杉山の言う通りに箒で掃いたり雑巾がけをしたりした。
「よし、終わったな」
掃除が終わり、皆は下校した。かよ子は杉山と喋りたかった気分だった。
「あ、あの、杉山君・・・!!」
「何だよ?」
「ご、ごめんね、おっちょこちょいして迷惑懸けて・・・!!」
「ああ、気にするなよ。お前も掃除頑張ってたじゃねえか。気にするなよ」
「う、うん・・・!!」
「何かあったら助けてやるよ」
「うん・・・!!」
かよ子はそう言われてどこか嬉しくなった。そして気付いた。杉山にとっても自分はクラスメイトの一人なんだと。
「じゃあなあ!!」
「うん、じゃあね!」
杉山は大野と帰って行った。
二年生になっても大野・杉山コンビは活躍した。この時は100m走、学年別リレー、大玉転がしなどで目立った。
(杉山君、凄い・・・!!)
この大野と杉山はクラスの要だった。何があって頼りになる。体育でも活躍し、困った事があっても助けてくれた。
ある時、かよ子はクラスメイトの女子二名と一緒に帰っている時だった。話題は大野と杉山の事である。
「ねえねえ、大野君と杉山君、今日もかっこいいよね」
「うん、今日のサッカー、凄い活躍したもんね」
「ねえねえ、かよちゃん」
「・・・え?」
「かよちゃんもあの二人、いい男子だと思うよね」
「う、うん、そうだね」
「私、ああいう人がお嫁さんだったらいいなあ~」
「大野君と杉山君、どっちが好き」
「え~、選べない。どっちも」
「欲張りねえ」
(私は、杉山君かな・・・)
かよ子は恥ずかしくて口に出して言う事ができなかった。だが、自分より杉山が他の女子に取られてしまったら自分はどうなってしまうんだろうかと思った。
さらにまた別の日。この日は元日だった。かよ子は両親と共に初詣に行っていた。
(今年こそはおっちょこちょいしませんように・・・)
かよ子は神社の神にそう誓った。その時、ある家族とすれ違った。杉山の家族だった。
「おう、山田!」
「す、杉山君・・・!」
かよ子は思わず照れた。
「明けましておめでとうございます」
お互いの家族も挨拶した。
「あら、さとしの友達?」
杉山の姉が聞く。
「ああ、そうだよ」
(杉山君のお姉さんかあ・・・)
かよ子は杉山の姉が美女に見えた。
「山田、今年も宜しくな。それじゃあな!」
「う、うん、宜しくね!」
かよ子は嬉しかった。新年早々好きな男子に会えた事が。かよ子は今年は今迄より良い事がきっとあると思うのだった。
新年になっても大野・杉山コンビは活躍していた。おっちょこちょいの自分も勿論、幾度も彼らに助けられた事は言うまでもない。
その事を思い出しながらかよ子は読書感想文を片付ける為に図書館へと向かった。同時に自由研究の工作に最適な参考本も探そうと思った。
後書き
次回は・・・
「伝わった想い」
三年生になり、友人のさくらももこに秘密にしていた事を教えたかよ子。だが、そんな時、かよ子はまる子と喧嘩した上にクラス中から変な疑いをかけられる。そして杉山にもある事が知れ渡り・・・。
55 伝わった想い
前書き
《前回》
かよ子は夏休みの宿題をしながら二年生になった時の事を回想する。その時の杉山と大野のコンビは授業・掃除・運動会問わず様々な場面で活躍していたのだった!!
かよ子は図書館で読書感想文に読む本と自由研究の工作の参考にする本を借りた。その時だった。
「おう、山田あ!」
かよ子はどきっとした。あの自分の好きな男子だった。
「す、杉山君!」
「お前ももしかして読書感想文の宿題か?」
「う、うん。あと自由研究の参考になる本も借りたよ」
「そっか、実は俺もなんだ。あれはちと面倒くさいよなあ。でもやんないと山田笑太みたいになっちまうから気を付けないとな」
「う、うん、そうだね」
山田笑太とはかよ子のクラスメイトのバカ男子だった。いつも「アハハハ」と笑う男子で、いつもテストは0点、宿題も毎回やってこないというクラス一の問題児だった。
(そういえば山田とも同じ苗字でなんか関わり合ったっけ・・・)
「じゃあなあ」
「う、うん、じゃあね」
かよ子は杉山と別れた。かよ子は三年生になったばかりの時を思い出す。
三年生になった。
「あ、かよちゃ〜ん!また同じクラスになったんだねえ〜」
「ま、まるちゃん、たまちゃん!!」
かよ子はまる子やたまえとは一年生の頃同じクラスだったのだが、二年生の頃は違うクラスとなっていた。
「同じクラスになれたねえ〜」
「うん!また、宜しくね!」
そしてかよ子にはもう一つ、嬉しい事があった。
「杉山、また、同じクラスか!」
「よし、二人で張り切って行こうぜ!」
(やった、杉山君ともまた同じクラスなんだ・・・!!)
かよ子は三年連続で好きな男子と同じクラスになれたのだ。
「大野君と杉山君かあ〜。あの二人がいるとクラスは安泰って感じだねえ〜」
「うん、あの二人、頼りになるもんね」
(また、杉山君に助けて貰えるかな・・・?)
ある日、かよ子はまる子と共に帰っていた。
「ねえねえ、まるちゃんは将来の夢って何?」
「私は漫画家かな?かよちゃんは?」
かよ子は迷った。まる子にこの事を伝えようか、と。
「わ、私は、は、恥ずかしいけど・・・、お、お嫁さんになる事かな・・・」
「へえ〜、お嫁さんに!」
「私、おっちょこちょいだから、しっかりした男子と結婚したいなって・・・」
「うわあ、誰!?」
「う・・・」
かよ子は返答に迷った。だが、言ってみようと思った。
「す、杉山君・・・!!」
「へえ、杉山君かあ〜、あれはしっかり者だから将来安泰だよお〜。かよちゃんは見る目があるねえ〜」
「えへへへ、そうかな?」
それぞれの秘密はお互いに打ち明けたつもりだった。だが、ここでとんだ誤解が始まる。
「ちょっと、かよちゃん」
「まるちゃん、どうしたの?」
「漫画家の事、長山君に喋ったでしょ?」
「え!?長山君に?ううん、喋ってないよ」
かよ子には身に覚えのない事であった。
「うそ!だってアタシかよちゃんにしか言ってないのに、長山君知ってたもん!そんなの変じゃん!!」
「だって、本当に言ってないもん!信じて!」
「信じたいのに信じられないよ。だってかよちゃんにしか言ってないんだから。私だってかよちゃんの好きな人誰にも言ってないのにさ」
その時、遠くから山田笑太が入り込んでくる。
「え?山田かよ子のすきなひと?だれだい?おしえて、おしえて!!」
山田を無視してまる子は言葉を続ける。
「兎に角、もう信じられないよ」
まる子はそう言って去った。
(そんな、私、誰にも言ってないよ・・・。誤解だよ・・・!)
かよ子はおっちょこちょい同士の友達を失う事に心が落ち着かなくなった。それどころかまる子に自分が杉山が好きだという事を言いふらされそうなのが不安だった。
(杉山君、どうすればいいのかな・・・?)
かよ子はふと好きな男子の事を考える。だが、そんな事で杉山が助けてくれるとは思えない。
「おい、山田。おまえがすきなひとってだれだい?オイラとおなじみょうじのよしみでおしえてよお~」
しかし、同じ苗字の山田かよ子に無視される山田だった。
家にいると、母が部屋に入ってきた。
「どうしたの、電気もつけないで。はい、新しいノート買ってきてあげたわよ」
「どうもありがとう」
「元気ないんじゃない?」
「別に、平気だよ」
「そ、ならいいけど。かよ子、ちゃんとノートに名前書きなさいよ。後でおやつ用意してあげるから」
「はあい」
母は部屋を出た。
(はあ、憂鬱だなあ、まるちゃん誤解してるよ。どうすれば解ってくれるかな・・・」
その時、かよ子はノートに「山田が」と書いてしまった。
「あ、間違えちゃった。これじゃ、『山田がよ子』だよ。どうして私ってこんなにおっちょこちょいなんだろう・・・」
翌日、まる子は誤解に気付いた。まる子と長山は二年生の頃も同じクラスで長山はその二年生の時の文集でまる子が漫画家になりたいと書いていたから知っていたのだという。
だが、ここでとんでもないことが起きてしまった。山田に名前を書き損じたノートを見られてしまい、自分は山田が好きと周囲から勘違いされる羽目になってしまった。
その時だった。
「何言ってんのさ!かよちゃんが好きなのはね、山田じゃなくて杉山君だよお!!!」
冷静さを失ったまる子によって自分が杉山だと公開されてしまった。誤解された上に思い切り周りに秘密を明かされてしまった。
(これが杉山君に聞こえたら終わりだよ・・・)
だが、その後日、杉山から呼ばれた。
「山田」
「す、杉山君!?」
「お前、俺が好きなのか」
「う、うん、嘘じゃないんだ。で、でも・・・」
かよ子は赤面した。
「もし、迷惑だったら、やめるよ、ごめんね・・・!!」
「いいよ、気にすんなよ。だが、おっちょこちょいを治すように頑張れよな」
「う、うん!!」
杉山からは嫌われなかった。でも、おっちょこちょいを治したい。そう思うかよ子だった。
(それであのノートを山田が見てとんでもない事になって、まるちゃんに自分が杉山君が好きだって明かされちゃったけど、あの時のまるちゃんには寧ろ感謝したよ・・・。杉山君に気持ちを伝える事ができたんだから・・・)
だが、その後、かよ子の元の日常が脅かされたのも事実だ。日本赤軍や異世界の人間達から元の日常を取り戻すためにかよ子はまた戦い続ける。そう思いながら、かよ子は夏休みの宿題を進めるのだった。
後書き
次回は・・・
「森の石松の物語」
夏休みがあり、2学期が始まった。かよ子は杉山達と例の秘密基地に向かう。そんな中組織「義元」や森の石松と再会する。かよ子達は石松に二つの異世界について詳しく聞こうとして・・・。
56 森の石松の物語
前書き
《前回》
夏休みの宿題を進める為に図書館で杉山と出会ったかよ子は三年生になった時の自分を思い出す。その時はまる子とはとんだすれ違いがありながらも杉山に自分に想いを伝える事ができた時だった・・・。
夏休みが終わった。かよ子にとって2学期の始まりだった。それにしてもかよ子にとっては長いような短いような夏休みだった。夏休みの宿題に明け暮れ、東京から自分が所持する「杖」と同じく、異世界の「杯」を所持する少女と同盟を組むと共に楽しく遊んだ。さらに昨日は自分の宿題は終わったというのにヘトヘトな事態だった。なぜなら友人の「まる子」ことさくらももこが夏休みの宿題を全くやっていないという事で電話で助けを求められ、わざわざ彼女の家まで行って手伝ってあげた。なお、この時、たまえととし子も来ており、自分を含めて三人はまる子の家族共々彼女によって夏休みの最後の日を潰されてしまった。
それで若干疲れ気味の状態で登校した訳ではあるが、それでもクラスメイト達にいつもの教室で再会できた事は嬉しかった。
間もなく体育館で始業式が始まる。そんな時、まる子は大慌てで教室に入ってきた。案の定、いつもの寝坊だろう。
始業式で校長の20分以上にも及ぶ話を終え、教室に戻った3年4組の皆は宿題提出に明け暮れる。山田が「オイラ、しゅくだい、ぜ〜んぜんしてないもんね〜」と笑っては先生を困らせていた。その後、大事な話などを終えると、この日は学校は終わりとなり、解散となった。
「なあ、山田あ!」
「す、杉山君!」
かよ子は好きな男子に呼ばれてどきっとした。
「午後なんだけどさ、俺達と一緒に久々に秘密基地に行こうぜ」
「え、いいの?」
「ああ、俺達『次郎長』と一緒に行こうぜ」
「うん、ありがとう!」
「え、えええ〜、皆行くのお〜!?」
急に冬田が割り込んできた。
「ふ、冬田さん・・・」
「私も連れてってえ〜」
「お、おお、分かった。大野達にも聞いてみるよ・・・」
「ありがとう〜」
冬田は午後は大野と共に楽しく過ごせると思うとワクワクするのであった。
大野は冬田も秘密基地に行きたがっていると杉山から聞いた。
「ええ〜、冬田も〜!?」
「冬田が行きたいって言ってんだ」
「そう言われてもなあ・・・」
「ええ!?そんなに私がいるとだめなのお!?ねえ、大野くうん!!」
冬田が暑苦しく近寄ってきた。そして、今にも泣き出しそうな顔だった。
「わ、分かったよ、お前も来いよ・・・」
「ありがとう!」
大野は冬田の強引さに承諾するしかなかった。
家に帰り、昼食を食べ終え、かよ子は大野、杉山、ブー太郎、そしてまる子からなる組織「次郎長」が造った秘密基地のある丘へ向かった。そこには「次郎長」の皆、そして冬田、さらには一時基地を乗っ取り、対立したが後に同盟を組む事になった隣町の小学校の組織「義元」もいた。
「あれ、皆集まったんだね!」
「ああ、俺達の学校も丁度今日が始業式で午前で終わったんだ」
「そうか、まあ、兎に角、基地に上がろうぜ!」
皆は基地に登った。清水市の眺めはいつでも美しい。
「それにしても大雨が降ったときはどうなるかと思ったけど、あっという間に干上がったな」
「ああ、それね、私の隣の家に住んでるおばさんの所のお姉さんが干上がらせてくれたんだよ。異世界からの『護符』の能力を使ってね」
「そうだったのか・・・」
「そうなんだ・・・。あ、そうだ・・・!」
すみ子は持っていた手提げから袋を取り出した。
「夏休みに奈良へ旅行に行ってきたんだ・・・。これ、お土産の鹿サブレだよ・・・」
「お、サンキューだブー!」
皆は鹿サブレを食べ、同じくすみ子が持ってきたジュースを飲みながら談笑した。
「それにしてもこの夏休みは『敵』は来なかったな。お前達の方は何かあったか?」
山口が聞く。
「そうだな、この山田の杖と同じ強さを持つっていう異世界の『杯』の持ち主と会ったんだ。そいつは今東京に住んでて、夏休みに静岡に遊びに来てたんだ」
「それで、おばあちゃんの家に遊びに来て、教会のピアノで練習してたんだよ。私、その子と今後協力する事を約束したんだ」
かよ子が杉山に続いて説明する。
「そうでやんすか」
「もしかしたら他にも俺達に協力できる人がいるかもしれねえな」
川村はそう思う。
「楽しそうだな、お主ら」
スッと森の石松が現れた。
「森の石松!?」
「さよう、お主らも充実した余暇を過ごしていたようだな」
「う、うん・・・」
「山田かよ子、お主が江戸から来たという女子と同盟を組んだ事は御穂津姫から聞いた。彼女もお主らの良き味方となるであろう。この動きは今日本中で動き出しておる。某がいる世界も協力をしなければな」
「ありがとう。あの、石松さん・・・」
かよ子は石松に聞いてみる。
「異世界には二つあるけどそれぞれどう言う関係なの?」
「ほう、お主がそのような質問をするとはな」
「俺も知りたくなって来たな」
「オイラもブー!」
「アタシも〜」
「はは、そうだな、お主らも知る権利はあるからな。では教えよう。確かに平和と抗争、二つの異世界がある。お互いは理念が全くの正反対なのだ。この世の世界を調律させる為に動いているのだが、某がいる平和を司る世界は治安の安定化を行う事を要として動いているのだが、争いを司る世界は多くの戦、及び武力を振りかざす事を要として動いているのだ。それ故に協力する事ができずに対立しあっているのだ。そもそもこの世界はよほどの事態でなければこの世に干渉する事は頻繁には起こりえない。日本赤軍とか名乗る過激派が無理に異世界と繋げる行為を行った故にこのような異常事態が起きているのだ」
かよ子は気づいた。ではあの時の地面の揺れは日本赤軍が異世界とこの世を無理矢理繋げた事によるものだと。
「そうなんだ。石松はどうしてその平和の世界にいる事にしてるの?」
「それはだな、某には我が親分・清水次郎長の意志である義侠心を持っているからなのだ」
「ギキョーシン?何それえ?」
「弱気者を見捨てておけぬ性という事だ。それが故に平和を司る世に呼ばれたという事だ」
「そうか。なあ」
大野が質問しようとする。
「お前は実際にこの世にいたんだよな。死んでからはどうしてたんだ?」
「そうだな。教えるとするか。お主らにも大事な事かもしれぬからな」
騙し討ちに会って斬られ、異世界へ辿り着いた後の石松。彼の物語が皆に今、語られる。
後書き
次回は・・・
「昇天後の地」
石松は自身の死後の後に起きた過去をかよ子達に語り始める。昇天後に辿り着いたその地で石松は本当の平和というのは何なのかを学び直し、そして第二次世界大戦による日本の敗戦を知る事に・・・。
57 昇天後の地
前書き
《前回》
2学期が始まり、かよ子達は始業式の後、杉山達組織「次郎長」や長山、冬田と共に秘密基地へと訪れる。その場で組織「義元」の四人組や森の石松とも再会。そして石松がこの世に戻って来た理由・経緯をかよ子達は聞く事になるのだった!!
石松は皆に死後の自身の行動を語る事にした。
(石松の物語ってどんなんだろう・・・)
かよ子は石松についてより知りたくなった。
金比羅山の参りの帰路の途中、遠江(今の静岡県浜松市)にて都田の吉兵衛に騙し討ちに遭って斬られた森の石松は死後の魂が何処へ向かうか知る由もなかった。
(親分、申し訳ありませぬ・・・)
石松は自身が騙し討たれ事を情けなく思い、また、親分である清水の次郎長への罪悪感で溢れていた。
そして、長き眠りの後、石松は目がようやく覚めた。ここは極楽か、それとも地獄か・・・。
「ここは・・・」
「貴方が日本という国にいました『森の石松』ですね?」
石松の視界に入ったのは二人組の男女だった。
「ああ、そうであるが、お主らは?」
「私はフローレンス。こちらはイマヌエルです。ここは平和を司ります世界。生の世界にて人々への人情と平和と思いやり、いずれかの心を持っていました人物が入ります事を認められています」
「君はその人情が認められこの地に来たのだよ」
「某が、か・・・。親分に取り返しのつかぬ失態を犯したというのに・・・」
「そんな事はございません。貴方の親分、清水の次郎長は貴方を最も信頼しておりました。都田の吉兵衛は貴方の親分によってその仇討ちを喰らいました。親分であります次郎長に感謝なさい」
「ああ、そうであるな・・・」
「ですが、この世界では斬ります事は必要ありません。貴方がおりました日本も文化を変遷させておりまして、ただ人を斬り殺しまして静粛させます時代は廃れつつあります」
「誠であるか!?」
「はい、ただ人を殺害します事は命の尊さを考えません愚かな行為とされつつあります」
「つまり、君も生前の自分とは考えを改めなければならないという事だよ」
「そうか、分かった。某も考えを改めよう」
石松は自身の考えを変えるべく、己の修行を行う事にした。
そして、石松は人をあっさり斬る事は人権を壊す事になると知り、斬るためにはまず非人道的な人間のみにする事であると己に悟った。
「よし、己は時代に合わせられた!」
石松はそう確信した。その時、石松を呼ぶ声がする。嘗て聞き覚えのある声だった。
「石松。元気にしておったか」
「ん・・・?お主らは、大政と小政ではないか!!」
石松を呼んだ二人組の男は自身と同じく次郎長の子分であった大政と小政だった。
「我々はこの地で以前と生き方を変えたのだ」
「ああ、某もだ。単に斬り捨てるのは時代遅れと聞いた。時代は変わりつつあるのだな。この地でまた共に生き、我々が生きていた世を見守ろうではないか」
「そうだな!」
そして石松は他の子分仲間とも再会をする事ができたのである。
だが、あの世は必ずしも間違えた方向に行ってしまった。第二次世界大戦によって、日本は負けた。石松らの親分がいた駿河、今の静岡県・清水も空襲によって壊滅的な被害を受けてしまった。
「ああ、何という事を・・・!!親分が栄えさせた駿河の地を・・・!!」
石松も、大政も、小政も、悔しがり、大いに泣いた。
「貴方達」
石松の所にフローレンスが現れた。
「貴方達の国が焼け野原になりましたその悲しみ、私にもよく分かります。祖国が惨めな目に遭います事は誰にでも我慢できます事ではありませんから」
「我々に何とかできぬか?」
石松はフローレンスに頼み込む。
「この世界の全ての人々もこの大戦に悲観的になられておりますが、多くの人々が安易に現世に向かいます事はあの世のバランスを崩す怖れがあります。私やイマヌエルで何とかやってみましょう」
フローレンスは石松達の元から去った。
「本当に、我らが国は元に戻れるのか・・・?」
石松は祖国の復興を願った。
フローレンスはイマヌエルと対談していた。
「ドイツや日本など、多くの敗戦国が苦しんでおられます。何とかできましたらよいのですが」
「そうだな。我々も動かぬわけにもいくまい。特に日本の壊滅的な被害は私も見ていられない。さらに原爆とか言うものを落とされた地の人間は大いに苦しむ事になるだろう。よし、最大限の尽力をしよう。その為のあの四つのアイテムを授けるのだ」
「あの最上位の能力を有しますものをですか?」
「ああ、一時的にだ。あの国には寺とか神社とかいう日本の神や仏を祀るものが多い。そこの神にはここの世界と向こうの世界を繋げる事ができるからな、交渉してみよう」
石松は本当に日本の再生は成功するのか半ば不安だった。
(どうか・・・。我が駿河を・・・!!)
「石松」
フローレンスが現れた。
「日本に住んでおられます四人の子供にこの世界の重要な道具を授けました。ご安心なさい。そしてその能力できっと日本は復興の道を辿りますでしょう」
「ああ、ありがとう。フローレンス。だが、『重要な道具』とは?」
「それにつきましてはこの世界でも最大の機密情報となります為、お教えはできませんが、ただ一つ言えますのは、この世界でも最上位の能力を持ちます道具です。今私達にできます事はそれだけではありますが、その道具で日本の復興を促します道に繋げます事ができますでしょう」
「ありがとう。某もその復興の様子を見守りたいと思う」
石松は大政や小政、その他の同志達と共に自身の国の復興を見守った。そして人々は食糧難から脱却し、新たな建物が作られ、町は急速に各地の要となる都を中心として発展していき(あちらの世界では高度経済成長というらしい)、江戸、今の東京でオリンピックという国際的な競技が催されるという戦前以上に賑わったのである。
後書き
次回は・・・
「敵勢力の出現」
石松が死後住んでいた世界は平和を司る場所ではあったが、決して安泰ではなかった。ある時、戦争を正義とする世界の人物が襲撃に現れる。石松は彼らがどのような人物か、そして戦争を正義とする世界とはどのようなものか、フローレンスとイマヌエルに質問する・・・。
58 敵勢力の出現
前書き
《前回》
かよ子は石松の死後の話を聞く。石松は遠江にて騙し討ちに遭った後、平和を司る世界に辿り着き、フローレンスとイマヌエルに出会う。そして己を鍛え直し、大政に小政などの同志達と再会した石松は、第二次世界大戦にて敗戦し、荒廃した日本の復興の姿をその世界から見守っていたのであった!!
かよ子は石松の話を聞いていると、ある事を思い出した。
(じゃあ、お母さんや隣の家のおばさん、りえちゃんのお母さんがその道具を貰えたのは石松のお陰なのかもしれない・・・!!)
かよ子は以前、母が異世界の杖を手にした経緯を聞いた事がある。それはフローレンスから御穂津姫を通して貰った事は知っていたが、今回の石松の話にてさらにその前の出来事を聞いた為、繋がりを感じる事ができた。
石松は話を続ける。
「だが、必ずしも安泰という訳ではなかった。無差別に尊き命を奪う事を正義とする世界の者とも争わなくてはならなかったのだ」
「それって戦争を正義とする奴らの事かブー?」
「誠に」
平和を司る異世界。石松は己が今いる世界から嘗て自身が住んでいた世界を見守り続けていた。そんな中、同志の一人である関東の綱五郎と共に酒を飲みあっていた時の事である。
「綱五郎。某らは刀をこれといった事に使用していないが、これこそあちらの世では無闇に使用する時代ではないとの事であるし、単なる飾りにしか思えなくなってきた」
「確かにそうであるな。ここでは戦などありえぬ地であるから・・・」
その時、外で爆発音が聞こえた。
「な、何事であるか!!」
「大変だ~!!」
大政が飛び込んできた。
「何があったのだ!?」
「急に何者かがこちらに攻めてきたぞ!」
「ばかな!!この世界ではそのような考えは時代遅れのはずであるぞ!!」
「それがそいつらの思考は我々とは全く異なっているようなのだ。先ほど、この世界の人間が三人ほど抹殺された!!」
「何だと!こんな事があってなるのか・・・!!」
「石松、この刀を使用する必要が出てきたかもしれぬ」
「どうやらそのようであるな」
石松も綱五郎も、戦いに参加しようとした。
(すまぬ、フローレンス、イマヌエル・・・。お主らとの契りに背いてしまって・・・)
石松と綱五郎、さらに大政、小政は仲間を集めた。そして現場に向かう。
「何奴、出会え!!」
その時、怪しげな男が現れた。眼鏡を掛けた西洋人の男性だった。
「何者だ、お主は!?」
石松達は刀を向けながら問答した。
「私はトロツキー。この世界はヘーワとかいうシソーに取りつかれて弛んでいる。その為、ブリョクを持つ事が必要なのだ」
「何だと!?その武力とやらの思想は既に時代遅れのはずだ!!」
「それは貴様らが勘違いしているからなのだ。何がヘーワだ。そんなものは弱き事だ」
「下らぬ事を申すな!尊き命を何だと思っておる!?」
「命はブリョクとボーリョクの為にある!!それが尊さというものなのだ!!」
(何をメチャクチャな事を言う輩であろうか!!)
「貴様らも逆らうのであるならば消すぞ!!嫌なら私に寝返るのだ!!」
トロツキーは要求した。
「石松、どうする!?」
綱五郎が確認をとる。
「簡単に要求を呑める筈がなかろう。フローレンスやイマヌエルとの約束を破棄するなど以ての外である!!」
「悪いが我々は断る!!」
石松は主張した。
「何だと!?ならば約束通り抹殺しよう!」
「約束なんかしておらぬ!そっちが一方的に決めたのであろう!!」
「やかましい!トーヨーのサルどもめが!」
トロツキーは怒りの形相で石松達を消そうとした。その時・・・。
「おやめなさい!!」
「侵略者め、何しに来た!?」
フローレンスとイマヌエルが現れた。
「私の邪魔をするな!!私の攻撃で貴様ら皆殺しだ!!」
トロツキーは一挙に抹殺しようとした。しかし、何も起こらなかった。
「何故だ、なぜ、何も起こらない!?」
「君の能力は我々が張った見えないバリアで無効化した。これ以上我々の世界で好き勝手するのなら、これだけでは済まさんぞ」
「この野郎ども!覚えてろよ!」
トロツキーの集団は退散した。
「貴方方、お怪我は?」
「ああ、某は無傷である」
「だが、ここの住人三人があのトロツキーとか言う奴の集団に殺されてしまった!」
小政は報告した。
「何と言います事でしょうか・・・」
「フローレンス、イマヌエル。某達もお主らの約束に背いて奴らに刀を向けてしまった事はお詫び致す。だが、彼らは一体何者なのだ?」
「あの者は争いを正義とします世界の人間です。現世におきまして恨みを抱いたきました者、虐殺や暴力主義者として生きておりました者はその世界へと住み着きます」
「まさか奴らが我々の世界にまで干渉するとは思いもしなかった。だが、これは急な事態だったし、君達の行為はやむを得ん事だから責めるつもりはないよ」
「だが、我々にはその争いを司る者達に対抗できるのであろうか?」
「勿論ございます。ですが、その武器は必ずしも敵の勢力に対してのみであり、回復作用および防御を強化します作用のあります能力を除いて、決して味方に対して使用しましてはいけません。たとえ仲違いしました時であってもです」
「分かった。誓おう!」
「分かりました。では貴方達がお持ちであるその刀を強化致しましょう」
フローレンスとイマヌエルは指を差した。その時、二人の指から光線のような物体が発射され、石松達の刀を光らせた。刀は特に変化はなかった。
「一体何をしたのであるか?」
「刀を強化致しました。貴方達が生前の世界におりました時よりも斬る力を強めております。また横に一振りする事で見えない壁を作って相手の攻撃を防ぐ事ができます」
「これなら奴らにも十分太刀打ちできるよ」
「恩に着る。本当にすまぬ・・・」
「いいんだ。君達にもこの世界の一員だからね」
「ありがとう。また奴らが来たら必ず迎え撃つ」
石松達は昇天後の新たな戦いに決して屈しないと誓うのだった。
後書き
次回は・・・
「親分との再会」
平和を司る世界と戦争を司る世界の抗争は続く。そしてその抗争はかよ子達の住む世まで巻き込むという混沌とした状態になった事をかよ子は改めて顧みる。そして石松の過去話が続く中、石松達は己の「親分」と再会する・・・!!
59 親分との再会
前書き
《前回》
かよ子達は石松の死後の話を聞く。石松は平和を司る世界にて刀を使う事のない生活をしていたが、ある時、トロツキーという男が現れて石松の住む地を襲撃する。フローレンスとイマヌエルの介入によりトロツキーは去るが、石松達はその世には戦争を司る世界が存在していると知る。そしてフローレンスとイマヌエルによって石松達の刀は強化された!!
かよ子は石松の話からある事を一つ聞きたくなった。
「それじゃ、石松はこっちに戻ってくる前にもその異世界の敵と戦ってたの?」
「いかにも。その争いを司る世界の者共が日本赤軍などという奴らと同盟を結んでな。それで奴らの行き来が激しくなったのだ」
かよ子は気づいた。アレクサンドルとアンナの兄妹が異世界の杖を持つ自分を倒そうとしていた事も。オリガが丸岡によって日本に連れて来られた時、長山を攫って自分を殺害しようとした事も。そして大雨の夜に奥平がバーシムを連れて大雨で町を混乱させ、杖と隣のおばさんの護符を奪いに来た事も。何もかも日本赤軍の手引で異世界の人間が安易に行き来できるようになり、元の日常が崩れてしまったからこうなったと改めて気付いた。
「ねえねえ、石松う〜」
まる子が石松を呼ぶ。
「アンタ次郎長の子分でしょ〜?アンタの親分は『そっち』にいないのお〜?」
まる子にしては呑気な質問だった。
「勿論、おる。では親分との再会の経緯を話そうではないか」
戦を司る世界との戦いの最中、石松達は相手に自分達の世界に侵食されないように戦い続けていた。
「はあ、いつになったら終わるのやら」
大政は次々に相手を撃退しながら疲れている様子を見せた。
「ああ、あの世界そのものを滅ぼさねばならぬようだ」
その時の事だった。どこからから声がした。
「お主ら。拙者抜きでよくぞここまで戦ってこられたな」
「え?」
石松達は振り向いた。
「話はフローレンスやらイマヌエルとやらから聞いておる。お前らにまた会えて嬉しいぞ」
石松はこの声を忘れていはいなかった。あの、自分が世話になった清水次郎長だった。
「お、親分!!次郎長親分ではありませぬか!!」
石松も、大政も、小政も、綱五郎も、全ての者達が親分との再会に涙した。
「やっと拙者もこの地に来たる事ができた。これもあの両人のお陰だ。だが、此処も安心ではないと聞いた」
「はい、今単なる殺し合いのみを正義とする世界の人間がこの地を襲っているのであります」
「やはりな。その者達に屈せぬように私も支援をする。今、我々が嘗ていた世界の人間をこの地へ送り届ける為に今、フローレンスとイマヌエルは今増員を図っておる」
「そうですか。それなら安心かもしれません」
「拙者も全力で戦う。他の者も力になってくれるぞ」
「はい!」
皆は更なる思いで今後の戦いに臨もうとした。そして何処からか声が聞こえた。
『皆様、全体に呼びかけたい事がございます。本部への集合をお願い致します』
フローレンスの声だった。
「我々皆に呼びかけたい事だと?何かあるのだろうか?」
「まあ、行ってみようではないか」
皆はフローレンスとイマヌエルがいる本部へと向かう事にした。
平和を司る世界の本部。そこはフローレンスとイマヌエルが常駐している。その集会所部分に多くの人がいた。
「全ての人間を呼び寄せているのだから、面積を広げた方がいいな」
イマヌエルは集会所を拡大した。拡大とはいえ、相手には窮屈感を覚えさせない為に広く見えるよう錯覚させるだけである。石松達もいた。その場には様々な人種が集まっている。
(一体、全ての者をかき集めて何を呼び掛けるというのだ?)
石松はそう思いながら集会所の場にいた。
「皆様。お集まりいただきましてありがとうございます。本日皆様にお集まりして頂きましたのは大事な事でございます」
「今、この世界は別の世界の人間に狙われている。それに対抗する為にとはなんだが、この世界の人間を『前の世』からさらに増員させた。平和を司る地でありながら戦うなどありえんかもしれないが、これも戦争を正義とする者に侵食されないようにする為にはやむを得ない。皆で協力して戦うように求む」
(そうか、その為に次郎長親分を召喚したのか!!)
石松は理由が分かった。だが、親分を利用されたという思いはなく、再会させてくれた事に寧ろ感謝していた。
「では、皆様、団結しましょう。ここの世と我々が嘗ておりました世の平和を願って!!」
平和を司る異世界の全ての人々は団結を誓い合った。集会が終わると皆は帰る。だが、一人の女性がフローレンスとイマヌエルに泣きながら話している。
「あの奥方は何者であろうか?」
「はて、西洋の人間だったようだが」
石松と小政は女性の元に行ってみた。
「フローレンス、イマヌエル」
「あら、何か?」
「この奥方は何故に泣いておられる?」
「ああ、こちらの方は嘗てフランスという国の貴族の娘でありましたのですが、この方の母が戦争を正義とします世界の人間になってしまいましたという事なのです」
「私は、母上を敵に回す事になりました。どうすればよろしいのか・・・」
その女性はただそう言って泣くのみだった。
「奥方。我々もできる限りの協力をする。お主の母上をこの世界に引き抜こうではないか!」
「だが、それはできないのだよ。戦争を正義とする世界と平和を正義とする世界は相容れないものだから、向こうの人間をこっちの人間として変えさせる事はできないのだよ。だから、不本意ながらも戦うしかない」
「そうであるか・・・。お主、名は何と申す」
「テレーズと申します。母は生前、縁起でもない発言をなされて国民の反感を買ったという事で処刑されました。前にその母上にお会いしたのですが、その憎しみが増大していき、向こうの世界の人間となってしまったのです」
「それは辛い事であろうな・・・。我々も常に協力致す」
「はい、ありがとうございます」
石松達は本部を出て歩く。ところがその時、女性が走りながら現れた。
「そちらのお方共。ここにテレーズという女性はおらぬか?」
「な、何者だ、お主は?」
「私はあの子の母、アントワネットだ」
石松達はテレーズの母と聞いてぎくりとした。しかもたった今、彼女の母は戦争を正義とする世界の人間となってしまったと聞く。
「悪いが、その質問に答える事はできぬ」
「なんですと、下賤な民め。私が生前、何をしてきたと思っていますの?」
アントワネットは憤慨した。そして魔法のようにハープが彼女の手に現れた。
「貴方方に制裁の音楽を!」
(さてはあの楽器で某達を苦しめるつもりだな!!)
石松達はそう予感した。そして直ちに刀を取り出して空中で横に振った。ハープは真っ二つなった。
「このハープは簡単には壊れないわよ」
アントワネットはそう言うと指を一振りするだけでハープを元に戻してしまった。
「お、恐ろしい!」
石松は無限な戦いを強いられると思った。だが、親分が動く。
「お前ら。拙者の新たなる能力を見せてやる」
「親分!?」
次郎長は刀を振りかざす。その瞬間、アントワネットは吹き飛ばされた。次郎長はさらに襲い掛かる。
「出て行け。侵略者よ!」
次郎長はさらに刀を振りかざす。大地が爆発し、地の砕片が飛び散った。
「ああ!?」
アントワネットは悲鳴を挙げた。
「命が惜しければ撤退せよ。でなければ斬る!!」
別の人間達も集まってきた。
「何だ、侵入者か!?」
「よし、加勢するぞ!!」
「お、覚えておきなさい。必ず出直します!!」
アントワネットは去った。
「撃退させたは良かったが、あのテレーズって奥方が気になるな・・・」
「そうだな。後で会ってみるか」
石松は小政と共にテレーズに報告しようと考えた。
石松と小政はテレーズに会いに行った。
「そこのテレーズという奥方やら」
「あら、さっきの東洋のブシとかの方。何か?」
「お主の母上とやらが先ほど侵攻してきた。名はアントワネットと申しておった」
「何ですって!?母上が!?」
テレーズは恐怖に陥った。
「臆するでない。今は追い払った」
「あ、ありがとうございます」
「いつでも我々が味方になる。なぜなら、平和の世界の同志なのだからな」
「はい・・・」
テレーズは泣きながら礼をした。だが、今後の戦いは激しくなるばかりである。
後書き
次回は・・・
「再びのあの世へ」
戦争を正義とする世界、平和を正義とする世界。この二つの戦いはかよ子達が住む世界にも干渉することになる。フローレンスとイマヌエルは「前の世」への派遣を募集し、石松は生前帰る事ができなかった駿河の地を再び踏みたいと思い、派遣者になる事を望む・・・。
60 再びのあの世へ
前書き
《前回》
森の石松の昔、石松らは遂に親分である清水次郎長と再会する。次郎長は戦争を正義とする世界の人間との戦いに備える為に増員された一人であった。そんな中、石松達はテレーズという女性と会い、彼女は平和の世界の人間となった一方、母親が戦争の世界の人間となった事を憂い、フローレンスとイマヌエルに泣きついていた。石松達はそのテレーズの母・アントワネットと遭遇してしまうが、次郎長によって追い返すのだった!!
かよ子達は石松の話を聞き続けていた。
「それで、あの世にはこの世で生きていた人間達が送り込まれていったのだ。そんな中、あの世界の者達はこの世界の過激派の組織と手を組んでこの世にも干渉するようになった」
「それってあの日本赤軍って集団?」
「いかにも。それに伴いこの世にも奴らは現れた。フローレンスとイマヌエルもこの世が脅かされる事を懸念し、この世の人々にも助けを求めているのである」
「それで俺達が選ばれたのか」
「ああ、だが、人選には条件がある。それぞれの人間に不思議な能力を持っている事である。一つは異様な、あるいは何らかの危害が起きそうな時に胸騒ぎがしたり、体調に異変をきたす見聞の能力。二つは相手敵意を感じた時に攻撃を行い、また、自身が襲われそうになった時、自然とその身を守る武装の能力、そして三つは相手に自身の存在で威圧を与える威圧の能力。この三つのいずれか一つ以上の能力を有す者を戦う為の主力者として選んでおる」
「それで俺達にはその能力があるって事か・・・」
「左様」
「だから、私は何かが近づくと胸騒ぎがするんだ・・・」
「じゃあ、私が前にオリガと戦った時、オリガの相手の体をバラバラにする能力が私に効かなかったのはその能力のものなの?」
かよ子はオリガとの戦いで自分がなぜ彼女の能力で殺されなかったのか気になった。
「いかにも。山田かよ子の持つ能力は防御に特化された武装の能力である」
「そうだったんだ・・・」
「それで、日本赤軍がそっちの世界と無理矢理行き来させた時、俺達の所にお前が降りてきたんだな」
杉山は確かめた。
「その通りである」
戦争を正義とする世界との戦いが続く中、石松はしばし休息中であった。その時、急に大地が揺れた。
「な、この世で地震か!?」
石松達は驚いて飛び上がった。そしてしばらくして止んだ。
「だが、ここは地球でも何でもない。おかしくないか?」
その時、フローレンスの呼び出しが出た。
『皆様、緊急事態の発生が起きました。これからお伝えしなければなりません事がございます。本部へお願い致します』
「どうやら本部へ向かう必要があるな」
皆は本部へ出動した。以前と同様、集会所はイマヌエルの能力によって拡張されて見えるようになっていた。皆がほぼ集まった所でフローレンスは演説を始める。
「皆様、再びお集まり頂きましてありがとうございます。先ほど私が言いました緊急事態といいますのは私達と対立しています戦争を正義とします世界が我々が嘗ていた世界の組織と接触し、同盟関係を結びましたという事です」
皆はざわついた。一人の者が質問をする。
「その世界の組織とはなんだ?」
「それは、日本人の組織です」
「なぬ!?」
石松も、大政も、小政も、その他同志、そして彼らの親分の次郎長も大きく動揺した。
「ですが、日本人の組織ながらも、日本は戦争放棄をしておりまして、その組織は今はパレスチナに活動拠点を置きましてテロ行為を行っています。彼らの目的は彼らの祖国・日本を再び戦争への道に向かわせます事です」
(そんな・・・。その日本赤軍とやら、我が国を破滅に導くつもりか!!)
石松はその組織への憤りが一気に胸にこみあがって来た。
「その世界の人間はその日本を戦場とし始めています。私達もこの世界にある武器を対抗者達に支給しなければその日本を崩壊します」
「それで日本の神社という所の日本の神と協力して向こうの世界と繋げる道を作ってもらい、幾人はそちらに常駐してそこの人間と共闘してもらう。我々も最大限の協力をする」
「向こうの世界と・・・」
石松は是非とも生前の世界へと戻ってみたいという気持ちがあった。だが、本来の目的は向こうの人間達にこの世界の戦いの道具を渡して協力・共闘してもらう事である。興味本位での訪問など許されざる事であろう。
(できれば某が行きたいのであるが・・・。そして今のあの駿河の地をもう一度見たく、守りたい・・・!!)
「石松」
石松は親分に呼ばれる。
「お主、行ってみてはどうか?」
「え、宜しいのですか!?」
「勿論だ。お主はあの世で生きていた時、騙し討ちに遭って駿河の地に戻れなかったからな。戻ってみてあの地にいるのを楽しみながらそこの人間と共闘してみるのは如何であろうか?」
「は、はい、某も同じ事を考えておりました!是非とも行かせて下さい!そして、必ずや駿河を、いえ、日本を守ってみせます!!」
次郎長の情で石松の望みは叶った。そして、次郎長と石松はフローレンスとイマヌエルに名乗り出た。
「フローレンス、イマヌエル。某もその世に行っておきたい。我が国を守りたいのだ。そして平和であり続けたい・・・」
「石松・・・」
次郎長も前に出る。
「拙者も石松は大変信頼している。石松は生きて駿河の地に戻る事はできなかったのだから、その心残りもある。どうか彼の願いだった駿河への帰還も兼ねて派遣できないだろうか」
「そうだね、任侠に溢れた石松ならきっと大丈夫だろうね。それにフローレンスによって刀も強化されているし、いってやってもいいだろう」
「そうですね。それでは貴方がいました駿河、今ではその地帯は静岡や清水と呼ばれています所へ派遣致しましょう」
「ありがとう」
「向こうにあります神社の主と相談をしてきます。答えが出ますまで少々お待ちください」
フローレンスは去った。
「大丈夫だ。フローレンスが戻ってきたらこっちから呼ぶよ。もう帰って大丈夫だ」
「ありがとう。恩に着る・・・!!」
石松は感動の涙を流した。
そして石松の所にフローレンスが現れた。
「石松、只今三保という神社にあります御穂津姫と相談しました所、許可が得ました。行きましょう」
「おお、ありがとう!」
「石松、行ってこい!」
「必ず生きて帰って来いよ!!」
「おう!」
親分や仲間と別れた石松はフローレンスと共に行く。着いた所はとある洞窟のような場所だった。ここは石松でさえ訪れた事がない。
「ここは・・・?」
「この洞窟はあまり知られていません秘密の場所です。この奥に生前の世界へと通じています道があります」
洞窟の奥地に着く。一見何もないが、フローレンスは指を出した。その場所に地図が浮かび上がる。そしてフローレンスは日本のある部分を拡大させた。
「御穂神社へ!」
そしてその地図から大きな黒い穴が広がった。
「あの穴に入りなさい。その先は御穂神社へと繋がっています。その神社に祀られています御穂津姫がお待ちしていますのでその方にお会いしてください」
「承った!!」
「ご検討をお祈りします」
石松は穴に飛び込む。そして長い空間をゆく。
その出口は神社だった。
「ここが駿河の御穂神社・・・」
石松は懐かしく感じた。
「森の石松ですね」
誰かが石松を呼ぶ。
「お主はもしや御穂津姫であるか?」
「はい、貴方の事はフローレンスから聞いています。フローレンスからこの四つの石を預かっております。この石を四人の人にお渡しください。渡す対象の人物は普通の人とは異なる能力を宿す者が条件です。何かの気配によって胸騒ぎを覚える見聞の能力、何らかの攻撃を与え、自身を防御する武装の能力、そして相手を怯えさせる威圧の能力を持つ方です。見分け方は既にフローレンスによって能力者が近づくとその者が光るようにされてあります」
「ああ、では行って参る」
石松は探しに行った。そして、高台にある基地を見つけ、その基地の設立者は自身の親分の名を組織名とした事に感銘を受けた。そしてその者達には偶然にも能力を持つ者だったのである。
後書き
次回は・・・
「石松の願い」
石松の昔話は終わり、かよ子達は自分達が宿している能力を改めて確認する。そして基地を後にして家に帰ると共に、かよ子はある事実を受け止める・・・。
61 石松の願い
前書き
《前回》
かよ子は石松がこの世に戻って来た経緯を聞く。ある時、戦争を正義とする世界が日本赤軍という日本人の過激派と同盟を組んだという話をフローレンスとイマヌエルから聞いた石松達。石松は前世への派遣を望み、親分の次郎長の情によって派遣が認められこの清水へと帰って来たのであった!!
石松の話は終わった。
「それで某はお主らを見つける事ができたのだ」
「それでか」
「ねえ、ねえ、石松〜。アタシにゃどんな能力があるのお〜?」
まる子がボケるように聞く。
(自分で考えろよ・・・)
杉山は心の中で呆れた。
「そうだな。お主は豪雨の時に何も感じずに出動しなかったな?つまり、見聞の能力ではない」
「でも、アタシゃお母さんやお姉ちゃんに怒られてばっかりだし、威圧の能力でもないねえ〜」
「つまり、武装の能力が備わっておるという事になる」
「私は見聞の能力があるけど・・・」
すみ子は己に備わっている能力を顧みた。
「俺達にはおそらく武装の能力だな」
山口、川村、ヤス太郎も自身の能力を確認する。
「あ、私もだ・・・」
かよ子も先ほど気付いたように防御に特化した武装の能力を持っている事を確認する。
「俺達は・・・」
「大野けんいち、杉山さとし、お主らは武装の能力は武装の能力だ。そして富田太郎、お主も武装の能力を持っておる」
「そうだったのかブー」
「私はあ?」
冬田が聞く。
「お主は、武装の能力が備わっておるな」
「ありがとう~」
(大野君にとっていいパートナーとして戦えるかしらあ・・・)
冬田は大野の右腕になれる事を想定し、大野から見直されて両想いになれる事を妄想した。
「そういえば威圧の能力を持っている人が出てきてないけどいるの?」
かよ子は石松に聞く。
「そうだな。威圧の能力を持っている者は実は他二つの能力と比較すると希少なる能力であるので所有者は少ない。だが、ここに一名おる」
石松は長山の方を見た。
「え・・・?僕・・・?」
長山は信じられなかった。
「いかにも」
「でも僕は何も発揮できてないよ・・・」
「一見そう見えるかもしれぬが、お主の頭の切れる才能からなる発案で皆を肯かせておる。それに某が知る限りではもう一名おる」
「それって・・・?」
かよ子は聞く。
「山田かよ子、お主の隣の屋敷に住む男・三河口健だ」
「え、三河口のお兄ちゃんが・・・!?」
かよ子は驚いた。
「まさに。お主らがオリガや丸岡と闘った後に丸岡を威圧させて遠くへ吹き飛ばしたというのを聞いておるな?」
「う、うん・・・。でも、どうして知ってるの?」
「ふと、あの者と単独で会った時に聞いておるし、イマヌエルがたまたまこちらの世界に来た時にも聞いた。お主らが知らぬところでも某は他の者と度々連絡を取っておる」
(そっか、だから札幌から帰る時に東京で寄り道して赤軍や異世界の人間を追い払ったって言ってたんだ・・・)
かよ子は思った。
「それだけではない。あの男は能力を持つ者でも稀有な存在だ。なんと見聞、武装、威圧、三種類の能力を全て宿しているのだ」
「ええ!?そうなの?」
「いかにも」
かよ子は母が杖を所有する事になった話を聞いた時、三河口も人とは違う能力を持っているが、強力すぎるという事を話していた事を思い出した。その三つの能力を持っているからこそ、彼は自分の能力が強すぎると言っていたのだとかよ子は改めて理解した。
「でも、あのお兄ちゃんが武器を持たないのはなんで?」
かよ子はさらに石松に質問する。
「それはだな、あの者が自覚する通り、能力の影響力が他の者と比べて大きい。今は武器に頼らずとも能力のみでいけるという事である」
「そうなんだ・・・」
「もう某の話を語っていると日も暮れてしまっておるな。お主らの親も心配しているからそれぞれの屋敷へ帰るとよい」
「うん、じゃあねえ!」
「おう、またな!」
皆はそれぞれ帰宅していく。かよ子は思う。
(あのお兄ちゃんが凄い能力を持っているなんて・・・)
かよ子は三河口がこの清水に来た理由や経緯などをいずれは知りたいと思った。
かよ子は帰宅すると明日からの学校の準備をする。そしてテレビを見ながら夕食を食べ、そして風呂に入り就寝とするいつもの生活だった。だが、それでも己の使命を忘れたわけではない。日本赤軍や戦争を正義とする世界の人間によって壊された元の日常を完全に取り戻すにはその人間達を倒さなくてはならない。そしておっちょこちょいも治したい。かよ子の誓いは固かった。
森の石松は秘密基地のある高台より清水の街を見渡す。
(親分、フローレンス、イマヌエル・・・。某が選んだあの子達ならきっと役に立ってくれます・・・。そしてこの世や我々の世界の平安を維持する原動力になるでしょう・・・)
石松は平和を司る異世界の同志たちの事にそう誓う。自身が嘗てこの世の人間だった頃の事、討ちに遭い帰り着く事ができず、別世界の人間となってようやく戻ってこれた清水。戦争の悲劇を乗り越えて漁港の場として再び栄えたこの地を日本赤軍や戦争を正義とする世界の者に支配され、滅ぼされてたまるかという気持ちを持ちながら石松は何処かへと去るのであった。
翌日、またかよ子は学校へ足を運ぶ。そして学校でまる子やたまえ、とし子といった友人と出会う。好きな男子・杉山とその親友・大野と出会う。秀才少年・長山と出会う。
そしてまた、時は進んでいく。
後書き
次回は・・・
「文化祭準備始まる」
三河口の通う高校では文化祭の準備が始まる。三河口のクラスは焼き鳥と鶏の唐揚げの模擬店を行うことになる。一方、かよ子は全校清掃にて杉山や大野達と一緒に校庭の清掃を行う・・・。
62 文化祭準備始まる
前書き
《前回》
丘の上の秘密基地で森の石松の話を聞いたかよ子達はそれぞれが持つ異能の能力を確認し合う。そしてかよ子は隣の家に住む高校生男子が三種類の異能の能力を持っている事を知り、彼が気になると共に、この杖を赤軍や異世界の敵から守り抜く事を誓い続けるのだった!!
今回はかよちゃんの隣の家に居候するあの高校生の学校がメインの舞台となります。なお、かよちゃんの通う学校の全校清掃は「ちびまる子ちゃん」の映画「大野君と杉山君」の冒頭のシーンを元にしています。
羽柴さり。母・羽柴奈美子の後を継いで異世界の道具「護符」の所持者となった女性である。彼女は地元の清水を出て今は名古屋で一人暮らしをしていた。そして七月に久々に静岡市の清水に帰省していたが、そこで七夕豪雨に遭遇した。そしてあれから二カ月たった今、再び遠出している。前回とは異なり、次は新幹線で新大阪駅まで行き、別の電車に乗り次いで兵庫県へと向かっていた。
さりが着いた所は兵庫県の県庁所在地・神戸市。さりはその住宅街のある一軒の家に向かう。
「来たわね、さり」
「ゆり姉、久しぶり」
さりの姉・すなわち羽柴家の三姉妹の長女・ゆり。現在は結婚の為、祝津の姓を名乗っていた。
「今日は主人もいるし、上がって」
「うん」
さりは上がった。
「母さんから聞いたよ。異世界の護符を貰ったんだってね」
「うん、でも、これは異世界の人間や日本赤軍と闘う事になった時に使う事にしているよ」
「母さんがそんなのを持ってたなんて驚きね。でも、あの謎の地震以来、変な事が起きているわね。異世界の人間が攻めたり、清水で豪雨だったり・・・。最近神戸でも異世界の人間が来たのよ」
「ええ!?大丈夫だったの!?」
「なんとかね。ウチの隣に住んでる高校生の子が何とか倒したわ」
「高校生の子・・・?」
「ええ、その子は平和を司る異世界から来たっていう人から貰ったんですって。そろそろ来るわ」
祝津家のインターホンが鳴った。入って来たのは一人の女子高校生だった。おとなしそうな女子だった。従弟と同じくらいの年頃に見えた。
「隣に住んでる鷺森光江ちゃんよ。高校二年生なの。光江ちゃん、こっちは名古屋に住んでる私の妹よ」
「初めまして」
「どうも、こんにちは・・・」
従弟と同年代である事は当たった。さりは姉と姉の主人、そしてその鷺森光江と会話した。
清水市内の高校。異世界の「杖」の所持者、山田かよ子の家の隣に居候している男子高校生・三河口健が通っている高校である。この高校は9月の終わり頃に文化祭を催す予定である。三河口のクラスは7月頃に何をするかを決めていた。露点として焼き鳥とから揚げを販売をする事になり、教室内ではサッカー部にPKゲームをする会場として貸し出す事になっていた。文化祭実行委員に抜擢された北畠圭助と神戸真希がそれについて学級会で話を仕切っていた。
「それじゃ、スケジュールはこんな感じ。土日でコンロや鍋などの道具を用意して、当日売り込みする班と、食材を調達して料理する班、そして店の看板を作る班の三班に分ける。それでいいか?」
皆に異論はなかった。班分けがされた。濃藤と北勢田は売り込む班となり、三河口は料理する班に割り当てられた。
「三河口君もなんだね」
「ああ、奏子ちゃん」
奏子も三河口と同じ料理する班に割り当てられていた。
「頑張ろうね」
「うん」
奏子は照れていた。それぞれの班は話し合いをして、元の授業に戻った。
かよ子が通う小学校ではこの日は放課後に全校清掃を行う予定だった。班分けではまる子、はまじこと浜崎憲孝、そして大野と杉山だった。
(す、杉山君と一緒だ・・・!!)
かよ子は好きな男子と同じ班になれて嬉しかった。
「あ、かよちゃんも一緒の班かあ~」
「ま、まるちゃん・・・。宜しく!」
(はあ、つまんないわあ~。大野君と別の班だなんてえ・・・)
冬田は好きな大野と別の班になって残念がっていた。かよ子達五人は校庭の掃除を行う予定だった。
「よし、皆行くぞ!」
大野が呼び掛ける。
「うん!!」
皆は校庭に行った。
「さくら、倉庫から箒と塵取り持って来いよ」
大野が命じた。
「はっ、はいっ」
まる子は道具を取りに行く。
「あ、まるちゃん、私も行くよ!!」
かよ子も手伝いに行った。まる子とかよ子は箒と塵取りを取りに行く。その間に男子達はスコップの準備していた。かよ子、まる子、はまじは草むしりを行う。その時、大野と杉山は大きな切り株を見つけていた。
「大野、この切り株なんだけどどうする?」
「こんなもん、俺達二人で十分だぜっ。俺はスコップで堀起こすからお前は木を引っ張れ」
「オーケー!」
大野がスコップで掘る。そして杉山が切り株を抜こうとする。二人だけでも大変な作業だというのに手伝ってもらおうともしていない。
(やっぱり私、手伝おうかな・・・)
かよ子は思い切って聞いてみた。
「あの、杉山君、大野君・・・」
「何だよ?」
「わ、私も手伝おうか?」
「ああ、大丈夫だよ。草むしりを続けてくれ」
「う、うん・・・」
かよ子は引き下がった。分業した方が効率的なのかなと同時にかよ子は考えた。それともへんなおっちょこちょいやって迷惑かけそうだったからなのか・・・。大野と杉山の二人の力で切り株はなんとか抜く事ができた。
「大野と杉山、スゲーな」
「うん、あんな大きい切り株抜けたんだもんねえ~」
「うん・・・」
かよ子も二人の凄さに見惚れてしまった。
かよ子の母・まき子は羽柴家にて奈美子と話をしていた。
「もう文化祭の季節なのね」
「うん、まきちゃんもどうかな?」
「ええ。うちの子も楽しむと思うわ」
「そうね」
かよ子は家に帰り、おやつの時間にて母から声を掛けられた。
「かよ子、今月の終わりの休日に隣の健ちゃんの通ってる高校で文化祭があるんだけど、行ってみる?」
「え?うん、行きたいな!」
かよ子はあることを思いついた。
「そうだ、まるちゃんとか誘ってもいい?」
「もちろん、いいわよ。そうだ、杉山君とかも誘ってもいいわよ」
「え?」
かよ子は母の唐突な発言で顔を赤らめた。
「う・・・、で、でも、来てくれるかな・・・?」
「大丈夫よ、誘ってみたら?」
「う、うん・・・」
一人の大学生が静岡県の清水市に行く事を計画していた。
後書き
次回は・・・
「文化祭招待大作戦」
三河口の通う高校で文化祭の話を聞いたかよ子は勇気を持って杉山と大野を文化祭に誘おうとする。一方、三河口は焼き鳥・唐揚げに使用する鶏肉の仕入れ先を探していた・・・。
63 文化祭招待大作戦
前書き
《前回》
異世界の護符の所有者・羽柴さりは神戸にいる姉・ゆりに会いに行く。そしてその地でも異世界の敵が現れたという情報を知り、異世界の道具を授けられたという女子高生・鷺森光江と出会う。三河口の高校では文化祭の準備が始まり、かよ子は杉山や大野と共に全校清掃として校庭を掃除するのだった!!
さりは光江が帰った後、ゆりやその旦那と食事していた。また、さりは夏休みに従弟が札幌にいるもう一人の姉・ありの所に行っていた事を母から聞いた事も喋った。
「ふうん、ありも平和の世界の人と会ていたのね」
「うん、あり姉も大丈夫かな?」
「まあ、姉として信用するのみね。それだけありも向こうの人から頼られてるって事じゃないのかしら?」
「まあ、きっと大丈夫だろ」
「うん、そうよね・・・」
翌朝、かよ子は好きな男子を高校の文化祭に誘う事ができるのか不安に思いながら家を出た。その時、丁度隣の家から出てきた三河口と遭遇した。
「やあ、かよちゃん、おはよう」
「あ、お兄ちゃん、おはよう・・・」
「今月の終わりの休日に俺の所の高校で文化祭があるんだけど行ってみるかい?」
「うん、行くよ。私もお母さんから聞いたよ」
「杉山君や大野君も誘ってみると楽しくなるかもね」
「う・・・。か、からかわないでよ・・・!」
かよ子は恥ずかしくなってしまった。
「はは、ごめんよ」
「それに、杉山君達、来てくれるかな・・・?」
「まあ、ウチのクラスの教室ではPKもできるから、面白くなると思うがな」
「PKってサッカーの?」
「そうだよ」
(それなら喜んでくれるかな?)
かよ子は少し望みを持った。
「それに俺の友達の北勢田が長山君達を誘うって言ってたし、濃藤も妹のすみ子ちゃん達を呼んでたから楽しくなると思うがな。食べ物とかのお代は俺が一部出してあげるよ」
「う、うん、ありがとう。私、頑張って誘ってみるよ!!」
かよ子は頑張ってみようと思った。そして三河口と別れる時、何もないのに躓きそうになってしまった。
かよ子は学校に着くと長山と出会った。
「ああ、山田、おはよう」
「な、長山君、おはよう・・・」
かよ子は長山で思い出した。長山も向かいの高校生男子から文化祭に誘われているという事を三河口が言っていた。
「あ、あの、長山君・・・!!」
「何だい?」
「長山君は高校の文化祭に行く予定だよね?」
「ああ、あの高校の文化祭かい?もちろん、行くよ」
「そうだよね。私も行くよ。楽しみだね」
「ああ、会えるといいね」
長山と別れるとかよ子は先ず考えた。
(うん、そうだ、まずはまるちゃん達を誘ってみるか・・・)
かよ子はまる子、たまえ、とし子の三人を誘ってみた。
「あ、あの、皆・・・」
「何、かよちゃん?」
「今月の休みの終わりの休日に、私の家の隣に住んでるお兄ちゃんの高校の文化祭があるんだけど、一緒に行かない?」
「文化祭!?いいねえ~、行く行く~!」
まる子は賛成した。
「私も行ってみようかな?」
「私も!」
「うん、ありがとう!」
「文化祭はいいよねえ~、お祭りみたいにいろんな食べ物が食べられるんだよね~、たこ焼きとか焼きそばとか、かき氷とか色々食べたいなあ~」
食べ物の事しか頭にないまる子に少し呆然とするかよ子、たまえ、とし子であった。そしてかよ子は本当の目的を思い出した。自分の好きな男子は今大野といる。
(よし、頑張ろう!!)
かよ子は杉山と大野の所に行った。
「あ、あの、杉山君、大野君・・・!!」
「山田あ?一体どうしたんだよ?」
「実はね、私の隣の家に住んでいるお兄ちゃんが通ってる学校で文化祭があるんだ。よかったら一緒に行かない?」
「文化祭か・・・。面白そうだな、ちょっと行ってみようぜ、大野!」
「おう!」
「ありがとう、実はね、サッカーのゲームができる所もあるんだよ!」
「そっか、それならますます楽しみだな!!」
「うん、ありがとう!!」
「いや、いや、誘ってくれてサンキューな!」
(杉山君・・・!!)
かよ子は作戦が成功してホッとなった。
そして冬田はその様子を盗み見していた。
(山田さあん、一体大野君に何を誘ってたのお!?)
冬田は慌ててかよ子の所に向かう。
「や、山田さあん!」
「え、ふ、冬田さん!!?」
「さっき、大野君達と何を話してたのお!?」
「ああ、その、高校の文化祭に誘ったんだよ・・・」
「ど、どこの高校の文化祭なのお!?」
冬田は迫る。
「あ、ウチの隣の家に住んでるお兄ちゃんが通ってる学校・・・」
「ええ!。私も行きたあい!!」
「わ、分かったよ、いいよ・・・」
かよ子はその高校の住所を教えた。大野の事になると手が付けられなくなる冬田であった。
三河口の通う高校のクラスでは、通常の授業の後、準備の続きに取り掛かっていた。こちらでは看板作りの班が看板用に使用するダンボール・模造紙を調達していた。
「よし、これでダンボールに文字を書いた模造紙を張り付ければいいな」
「色どうしようか?」
「こんな感じで行こう」
早速模造紙に文字を書く作業に取り掛かった。
一方、北勢田や濃藤など売り込みの班は学校を出てどこでコンロなどを用意できるか店を探していた。そこでガスコンロをレンタル可能な店を見つけた。
「よし、ここで頼むか」
そして調理する班。から揚げや焼き鳥に使用する鶏肉をどの店から仕入れるか考えていた。
「どこの店に肉屋があるかな?」
「ちょっと探してみよう」
一部は商店街へ、さらにほかの一部は味付けなどを検討した。三河口と奏子は店探しに回っていた。
「ここだけでも肉屋が何軒もあるね」
「せっかくだから一つの店に一遍に頼んでもお店の人が困るだろうから、焼き鳥用の肉とから揚げ用の肉で店を分けよう。そうすれば仕入れる人も大変じゃなくなると思うよ」
「うん、そうだね」
奏子は三河口の案に乗った。同行していた者も異議はなかった。こうしてから揚げ用に使う鶏肉、焼き鳥用に使う肉とで仕入れる店を分けて予約し、皆は学校に戻った。
三河口は濃藤、北勢田、そしてクラスメイトのと共に帰る。
「ガスコンロは2つ借りたよ。焼き鳥用のと唐揚げ用ので別にしたぜ」
「そうか、こっちも肉屋は商店街で見つけたよ。焼き鳥用と唐揚げ用で別々の店にしたよ。そしてさらに二つの班に分けて持ち帰れば両方の店に回って調達する必要がなくなるからね」
「いい時間の節約だな」
「うん、それに今年は忙しくなるかもな」
「忙しくなるって?」
「ああ、隣の家にいる女の子が友達を招待するからね。案内してやったり、おごったりしなきゃならんな」
「そうか」
三河口は家に帰る頃には七時を過ぎてしまうのであった。
とある学生が、朝の清水駅に到着する列車の時刻表を調べ、運賃を下調べしていた。
後書き
次回は・・・
「藤木茂の好きな人」
三河口が通う高校の文化祭にはかよ子や長山達の他、クラスメイトの笹山かず子も行く予定となっていた。それを藤木が羨ましそうに見ていることに気付いたかよ子は藤木の元に行き・・・。
64 藤木茂の好きな人
前書き
《前回》
三河口のが通う高校の文化祭に杉山と大野を招待した事に成功したかよ子。ついでに、まる子、たまえ、とし子、冬田も連れて行く事になる。また、長山も文化祭に行く事になっていたのだった!!
作者の別作品「とある3年4組の卑怯者」で主人公として活躍させた藤木をここでもメインで出してみようと思いました。ただ、あちらの作品とは設定を変え、ここでは基本は笹山さん一途で行く予定です。
さりはゆりのいる神戸から名古屋へ帰る途中だった。
(ゆり姉もあり姉も『あの事』に関わる事になってるのか・・・)
さりは母から貰った護符を持つ。これがあるからこそ「敵」には負けたくない。そうさりは思っていた。
奏子は家に帰るのが7時過ぎとなってしまっていた。その向かいから一人の小学生の女の子が近づいてくるのが見えた。隣の家に住んでいる小学3年生の女子である。
「あら、かず子ちゃん、今日はピアノ?」
「うん、遅くなっちゃって。お姉さんは?」
「私はね、学校の文化祭の準備があって遅くなったの」
「文化祭かあ・・・」
「かず子ちゃんも行く?」
「うん、行きたい!」
「それじゃ、一緒に楽しもう。おやすみ」
奏子とそのかず子と呼ばれた女の子はそれぞれの家へ帰った。
翌日、かよ子は学校にてまる子、たまえ、とし子と文化祭の話で持ちきっていた。
「それでかよちゃん、そのお兄ちゃんはどんなお店やるのお〜?」
「焼き鳥と唐揚げだよ」
「うわあ~、美味しそうだねえ~」
「他にもお兄ちゃんのおばさんの話だとわたあめやたこ焼きにパンケーキとかやるお店もあるし、ダーツとか釣りとか色んなゲームもあるし、吹奏楽や合唱とかの演奏もあるよ」
「うわあ、楽しそうだね!」
「ねえ、ねえ、もしかして高校の文化祭の話してるの?」
クラスメイトの笹山かず子が話に入って来た。
「うん、そうだよ。笹山さんも知ってるの?」
「うん、私の家の隣のお姉さんがその高校に通ってるの」
「そうなんだ、会えるといいね」
「うん」
なお、その遠くから一人の男子が羨ましそうに見ていた。クラスメイトから事あるごとに「卑怯」呼ばわりされている藤木茂である。
(笹山さん、高校の文化祭行くんだ・・・。いいなあ、僕も一緒に行きたいな・・・)
藤木は笹山が好きだった。だが、なかなか好きだと言えない。それにこんな卑怯な自分なんかの気持ちなど伝えても振られるのが怖かったのだ。
(ああ、笹山さん・・・)
その時だった。
「あれ、藤木がさっきから見てるけど・・・」
「え、あわわ、あわ!!」
藤木は気づかれて慌ててしまった。
「藤木君、さっきからどうして私達を見てるの?」
笹山も藤木によった。
「藤木〜、アンタもしかして自分もその高校の文化祭に行きたいんじゃないのお〜?」
「そ、そんな事思ってないよ!!」
藤木は慌てて誤魔化した。
「じゃあ、何で見てたの?」
かよ子も藤木に近寄った。
「あ、いや、なんでだろうね〜?」
藤木は何とか言い訳を考えようとする。しかし、思いつかない。
「いいじゃない、とぼけなくたって〜」
「よかったら藤木君も一緒に行かない?」
「え、いいのかい?」
「ええ、楽しくなるわ。近所のお姉さんも頼んでみるわ」
「ありがとう!」
藤木は嬉しくて舞い上がった。
(ああ〜、笹山さ〜ん!)
(藤木君、さっきは誤魔化してたのに、誘われるとあんなに嬉しくなって、何なんだろう・・・?)
かよ子は藤木が怪しく思った。
休み時間、かよ子はまる子、たまえと話していた。
「ねえ、ねえ、藤木君ってどうして私達の話を聞いてて、それで誘われて嬉しくなってたの?」
「ああ~、かよちゃん、実はね、藤木は笹山さんが好きなんだよ~」
「ええ~、そうなんだ!!」
「でも卑怯を直さなきゃ、藤木の恋は一方通行だろうね~」
「う、うん・・・」
(でも、私もおっちょこちょいだし、私の杉山君への恋って一方通行かもしれないし・・・)
かよ子は自分も藤木の事が言えないと思った。
「でも、笹山さんは優しいし、藤木が好きになるのも分かるんだけどね・・・」
「まあ、そうだよね」
一方、藤木の方は嬉しすぎて興奮が収まりきれていなかった。
(ああ、笹山さん・・・)
「藤木君」
友人の永沢君男に不意に呼ばれた。
「君、もしかして笹山と高校の文化祭に行ける事がそんなに嬉しいのかい?」
「い、いや、そ、そんな事ないさ!!」
「じゃあ、何でそんなにウキウキしてるんだい?」
「そ、それは、その・・・」
藤木は適切な言い訳が思い浮かばなかった。
「ま、まあ、まあ、永沢君も一緒に行かないかい?」
「僕はお断りだね。それより君、本当に笹山と文化祭を楽しめると思ってるのかい?」
「ど、どういう事だい?」
「君、運がないだろ。ヒヤシンスも腐っちゃったくらいだからね。もしかしたらその肝心の文化祭の当日に笹山が来れなくなっちゃうなんて事があるかもしれないね」
「え、ええ~!?」
藤木は不安に駆られた。
まき子は奈美子の家にいた。
「そうなの。さりちゃんが神戸のゆりちゃんの所に」
「それで、ゆりも異世界の人間と関わってたんだって。そのゆりの隣の家に住んでる健ちゃんと同じくらいの年の子も異世界の道具を貰って戦ってた事があったんだって」
「そうなの。全国的に闘いが激しくなってるのね」
「うん、大きな闘いになりそうね・・・」
「あ、もうこんな時間、そろそろかよ子が帰ってくる頃だわ。じゃあ、失礼します」
「うん、じゃあね」
まき子は自分の家に戻り、娘を待った。その10分後、かよ子が帰って来た。
「只今」
「お帰り」
かよ子は早速宿題を済ませ、おやつの煎餅とどら焼きを食べる。
「かよ子、隣のおばさんの子で名古屋にいるさりちゃんなんだけど」
「さりちゃん、あのお姉ちゃんかあ・・・」
かよ子はさりと七夕豪雨の時に日本赤軍の一員と戦争を司る世界からの刺客に対して共闘した事を思い出した。
「さりお姉ちゃんがどうしたの?」
「神戸に住んでるさりちゃんのお姉さんのゆりちゃんの家に行ってきたんだって」
「それで、どうしたの?」
「ゆりちゃんも異世界の人間と関わってたんだって。そのゆりちゃんの隣に住んでる女の子も異世界の道具を貰って戦った事があったのよ」
「そ、そうだったんだ・・・。そのゆりお姉ちゃんの隣に住んでる女の子ってどんな子なの?」
「高校生よ。隣の健君と同じ年頃よ」
異世界の敵や日本赤軍の闘いが激化しつつあるとかよ子は感じ取るのであった。
「かよ子、大丈夫よ。その杖があればきっと元の日常が戻るわ」
「うん、そうだよね!」
笹山は夜、近所の高校生の女子に電話していた。その女子高生は文化祭の準備で日々帰りが遅くなっており、さらにこの時間に外に出ると親に心配されるために躊躇った。
「あの、お姉さん」
『あら、かず子ちゃん、どうしたの?』
「実は文化祭の事なんだけど、私の学校のクラスの子を誘ったんだけど、いいかな?」
『あら、もちろん、いいわよ』
「うん、ありがとう」
『でさ、その子って女子?』
「ううん、男子」
『へえ、かず子ちゃんが男子を誘うなんてね』
「え?でもまあ、誘ったっていうか、私が友達とその話してたら向こうが行きたそうな顔してたから・・・」
『まあ、まあ、二人で楽しみなよ。その子、きっとかず子ちゃんが・・・』
「え?」
『ううん、なんでもない。じゃあね』
「うん、お休みなさい」
お互い電話を切った。
一人の大学生が別居中の弟の事を考えながら静岡県の清水市に行く事を画策していた。
後書き
次回は・・・
「文化祭前夜の心配事」
文化祭も近づき、三河口達は準備に明け暮れる。そしてかよ子は楽しみになり、まる子やたまえ、杉山や大野、長山らとの会話を弾ませる。そして藤木は笹山が風邪を引いてしまった事で、一緒に行けなくなるのではないかと不安になる・・・。
65 文化祭前夜の心配事
前書き
《前回》
かよ子達が文化祭の話をしていると、クラスメイトの笹山かず子が話に入り、彼女も文化祭に行く予定だと言う。それを端から聞いていた藤木は心の中で自分も好きな女子・笹山と文化祭に行きたいと思い、かよ子達に見ていた事を気付かれる。そして笹山に誘われて文化祭に行く事になり、藤木は喜ぶのだった!!
三河口はこの日も文化祭の準備に立ち会って影響で居候先の家に帰宅するのが遅くなってしまった。
「只今帰りました」
「やあ、お帰り」
「大変だったね」
三河口は帰るなり、手を洗うと誘く夕食が置いてある食卓についた。
「ところで、今日、さりから電話あったんだけどね、神戸のゆりちゃんに会ってきたんだって」
「ゆりちゃんに?」
「うん、ゆりちゃんもその旦那さんも異世界の人間に会ってたって言ってたんよ」
「はあ、かなり戦いも激しくなってるんですね」
「まあ、日本赤軍や戦争の世界の人に対抗する為に平和の異世界の人間も日本中のあちこちに共闘を呼び求めてるってことだね」
「はい、文化祭の最中にそいつらが襲ってくるかもしれませんね・・・」
「うん、ないといいんだけど、気を付けた方がいいね。健ちゃん、お代わりする?」
「はい、いただきます」
三河口はいろいろと行動していたためにお代わりを叔母に読まれていた。
翌日、かよ子は家を出ると共にある事を考えた。文化祭が楽しみな事と共に異世界の人間や日本赤軍との戦いが日に日に激化している事に不安を感じている事である。
(う~ん・・・。長山君に相談してみよう・・・!)
かよ子は博識の少年をあてにした。そして学校に着いた後、長山の元へよった。
「あ、あの、な、長山君・・・!!」
「ああ、山田、おはよう。どうかしたのかい?」
「実はね、お母さんから聞いたんだけど、私の隣の家に住んでるおばさんの子なんだけど・・・」
「ああ、あの異世界の『護符』を持ってる人かい?」
「うん、そのさりさんって人には神戸に住んでるゆりお姉さんがいるんだ。その神戸にいるゆりお姉さんに会いに行ったんだって。それでね・・・」
かよ子は思い切って続きを言ってみる。
「そのゆりお姉さんも平和の異世界の人間と関わっていて、そこで一緒に戦う事を頼まれたんだって」
「そうか、それだけ闘いが激しくなってるんだね。山田」
「え?」
「文化祭の事なんだけどもしかしたらその隙に彼らが攻めてくるかもしれない。念の為、杖を持っていた方がいいよ」
「う、うん、私も丁度そう思ったよ・・・」
「大丈夫だよ。その杖は異世界でも最強の方に部類される道具の一つなんだからきっと追い払えるよ」
「うん、そうだよね、ありがとう!」
「よう、山田あ!」
杉山も寄って来た。
「す、杉山君!」
「もう文化祭も近くなってきたよな、俺も大野も凄い楽しみにしてるぜ」
「わ、私も」
「ああ、そうだ、長山も行くんだよな?」
「ああ、そうだよ」
「長山も一緒に楽しもうぜ!」
「うん」
かよ子は文化祭がますます楽しみになった。だが、心の隅には異世界の人間か、日本赤軍が攻めてくる事を懸念しており、緊張感も備わっていた。
朝のホームルームとなった。戸川先生の話が始まる。
「おはようございます。暑さも少し和らいできましたね。今日は笹山さんが風邪を引き、熱を出して欠席されているとの事です」
(笹山さんがお休みか・・・)
かよ子は笹山も高校の文化祭に訪れる予定である事を知っていたので、もしかしたら笹山はその体調不良で来られないかもしれないと思った。
(あ、でも・・・、それ以上に心配してるのが・・・)
かよ子は藤木の方を見た。藤木の方がかよ子以上に不安になっていたのだ。
(さ、笹山さんが休みだって・・・!?)
藤木は絶望の大波に溺れる事になった。なにしろ、文化祭当日までその熱が長引けば折角そこで笹山との貴重かつ楽しい時間を過ごす事が幻に終わってしまうのだ。
(もし笹山さんが来れなくなったらどうしよう・・・!!)
藤木は泣きそうになった。
授業の合間の休み時間、かよ子は藤木を見つけると、彼の近くに向かった。
「藤木君」
「ああ、山田かよ子か。何だい?」
「あ、ちょっとこっちに来て」
かよ子は藤木を人気のない廊下へと連れて行った。
「藤木君、昨日、まるちゃんやたまちゃんから聞いたんだ。藤木君は、笹山さんが好き、なんだよね?」
「う・・・!!い、いや、そんな事ないさ・・・」
「嘘つかなくていいよ、藤木君、凄く嬉しがってたし」
藤木は誤魔化そうとしたが、かよ子には通用しなかった。
「う・・・」
「私だってね、杉山君が好きなんだ。でも私、おっちょこちょいだから、受け入れてくれるか分からないんだ」
「そういえばさくらがばらしちゃってたね」
「あの時はとても恥ずかしかったけど、気持ちだけは伝える事ができたよ。でも、それでも付き合えたとかそういうわけじゃないし・・・」
「でも、君はおっちょこちょいでいいよ。僕は卑怯って言われるんだよ。笹山さんに好きなんて言ってもこんな僕なんて相手にしてくれるわけないし。それに・・・」
「それに?」
「僕は運の悪い男だし、笹山さんに何かといいとこ見せようとしても、空回りするし、裏目に出て逆に不愉快にさせる男だし・・・。それに今日だって笹山さんは休んだじゃないか。もしかしたら文化祭に来られないかもしれない・・・」
藤木はますます暗い顔になった。
「藤木君。そんなマイナスな事考えちゃ駄目だよ!」
「え?」
「笹山さんの熱が文化祭の日までに下がる事をお願いしなくちゃ!お祈りしよう!」
「あ・・・、うん」
「そうすれば笹山さんの熱も下がるはずだよ。それから藤木君の気持ち、きっと笹山さんにも伝わるよ。私だって結果オーライなんだけど、杉山君に伝わったんだ。もっと自身持とうよ!」
「ああ、うん、そうだよね。ありがとう!」
かよ子は何とか藤木を元気づけさせた。そしてチャイムが鳴った。
「あ、もう授業が始まっちゃう!」
二人は急いで教室に戻った。
清水市内の高校。校内は本格的な文化祭の準備へと突入していた。三河口は唐揚げ・焼き鳥に使用する肉屋への予約は済ませていたので、看板作り及び屋台の立ち上げに回っていた。模擬店の区画を行い、そこに集会用テントを設ける作業である。労働が必要な為、皆体操着に着替えていた。濃藤はクラスメイトと共にその集会用テントを持って来た。
「テント持ってきたぞ」
「よし」
皆はテントの脚を組み立てた。十人ほどが取り掛かった。何しろ失敗したら怪我人が出る恐れがある為、人数は多め、かつ慎重にやらなければならないのだから。
「よし、立った立った!」
テントは無事に立ち上がった。そして借りる予定のガスコンロや家から持参する事になった鍋を持って来る。屋台の準備も順次進んでいた。
三河口はまたこの日も遅くなった。
「三河口君」
「ああ、奏子ちゃん」
「一緒に帰ってもいいかな?」
「いいよ」
三河口は奏子と共に夕方のバスに乗った。
「あの、三河口君って誰か誘ってるの?」
「ああ、今居候中の家の隣に住んでる子を誘ったよ」
「へえ、私も近所の子を誘ったんだ。小学三年生の女の子だよ」
「偶然だね。俺が誘ったのも小三の女子だよ」
「へえ、もしかしたらその子と同い年同士仲良くなれるといいね」
「そうだといいね」
二人は駅前でバスを降り、電車に乗った。二人は同じ駅で降りたが、方向が異なる為途中で別れた。
「じゃあね~」
「うん、またね」
(三河口君と一緒に帰れてよかった・・・)
奏子は三河口と距離を縮められた感がして嬉しくなった。
(文化祭、頑張ろうね、三河口君・・・)
三河口は文化祭の最中に異世界の敵だの、日本赤軍の人間だのが攻めてくるのではないかと心配になった。
(この文化祭こそが、学校の皆が一番楽しみに、そして盛り上がる時なんだよな・・・。そんな時に奴らが来てメチャクチャにするんじゃないかね・・・。いや、考えすぎか?)
例の地震のような現象が起きてからは清水も不安になったものである。どれだけの敵がこの清水市に来襲して来た事か。アレクサンドルとアンナの兄妹、オリガ、丸岡修、奥平純三、バーシム・・・。そして東京の地ではアドルフ、日高敏彦が来襲していた。だが、全国的に見れば自分達が関わっていない遠い地でも襲撃しているとか。現に札幌に住んでいるありもイマヌエルと共闘を頼まれており、神戸のゆりの家の隣人の女子高生が異世界の道具を持って戦っているとか・・・。それに奈美子から護符を受け継いださりのいる名古屋にも襲来する可能性もある。
(まあ、奴らがかよちゃんの杖を狙うというならば、寧ろ文化祭の地で招き入れ、俺も護衛も兼ねるって作戦でもいいか・・・)
三河口は居候の家へ帰宅していった。
一人の大学生が大学の講義を終えて家に帰りながら、別居中の弟の事を考えていた。
後書き
次回は・・・
「前夜祭で」
文化祭の前日となった。かよ子や杉山などが楽しみにする中、藤木は笹山と共に文化祭に行く希望が持てるのか。そして三河口は不安を抱えながらも前夜祭を満喫する・・・。
66 前夜祭にて
前書き
《前回》
三河口は叔母から名古屋にいる従姉のさりが神戸にいるさりの姉・ゆりに会いに行った事を聞き、戦いの激化を予感する。一方、かよ子が通う小学校では、笹山が風邪をひいて欠席してしまい、藤木は笹山と文化祭に行けなくなるのではないかと不安に思う。そんな中、文化祭の準備は着々と進むのだった!!
文化祭の前日になった。かよ子は学校を出ると共に明日が楽しみだった。
(早く明日にならないかな・・・?)
かよ子は途中、杉山と出くわした。
「あ、す、杉山君・・・」
「おう、山田あ!」
「おはよう・・・。あ、あの・・・」
「何だよ?」
「明日の文化祭、楽しみにだね」
「おう、皆で周ろうな!」
「うん!!」
そしてかよ子と杉山は途中、笹山と合流した。熱が下がったのか。かよ子は笹山の元へ向かう。
「あ、笹山さん・・・!!」
「あ、山田さん、杉山君。おはよう」
「熱下がったんだね」
「うん、昨日の夕方にやっと下がったの。文化祭には行けるわ」
「よかった・・・!実はね、藤木君が凄い心配してたんだよ」
「え?藤木君が?」
「うん、笹山さんと一緒に行けなくなったらどうしようってね」
「そうなんだ。私の事を・・・」
笹山はなぜ藤木がそんなに自分と行きたがっているのか気になった。
「山田、どうして藤木がそんなに心配してたんだ?」
「さあ、その・・・」
かよ子は真の理由を笹山の前で言うのは控える事にした。
三河口はこの日は前夜祭の影響でいつもより1時間ほど早く登校していた。かなり早めの登校でクラスメイトの真希と校門で出会った。
「あ、おはよう、三河口君」
「ああ、真希ちゃん」
「やる気いっぱいだね。頑張ろうね」
「うん」
そして濃藤が入ってきた。
「お、ミカワ、神戸さん。早いな」
「濃藤、お前もやる気満々か」
学校に次々とクラスメイトが集まった。
「それじゃ、食材を持ってくるよ」
三河口達食材の調達班は商店街の肉屋へ鶏肉を貰いに行った。
かよ子は学校に着くとまる子にたまえと話していた。
「笹山さんも文化祭に行けそうでよかったよね」
「うん、藤木君もきっと安心してるよ」
「ああ、ちょっとお〜」
まる子が指をさす。その方向には笹山が藤木の机に向かっているところだった。
「笹山さんが藤木の所に行ってるよお〜」
かよ子もたまえもその藤木と笹山の方角を見た。
「藤木君、私の事、心配してたのね。ありがとう」
「いやあ・・・」
藤木は照れていた。大野と杉山も藤木の席と近いので、その様子をすぐ聞いていた。
(そうか、藤木の奴・・・)
杉山もすぐに理解した。
「藤木も案外幸せものだねえ〜、もし笹山さんの熱が下がらなきゃきっと文化祭に行くのやめてたよお〜」
「うん、そうだね」
かよ子はこの時、自分と藤木の立場を入れ替えて仮定した。
(もし、私も杉山君がなんかあって来れなくなったらきっと藤木君みたいに落ち込むかもしれないかな・・・)
好きな人が約束した場所に来れなくなるとそのショックも大きくなるのは誰でも同じではないかと同時に思った。
三河口はクラスメイトと肉屋で鶏肉を仕入れた後、学校に戻って調理を始めた。焼き鳥は串刺しして焼いて、タレあるいは塩を振りかければいいが、唐揚げは揚げる為、油が跳ねて大変である。三河口は唐揚げの方をやっていた。
「よし、上手く揚がった」
唐揚げを5個ほど紙コップに入れて、販売する。味付けはプレーン、塩、マヨネーズ、ケチャップ、レモン汁の5種類、そして焼き鳥の方は1本を紙コップに入れて、味付けは塩かタレの2種類である。
この文化祭の前夜祭は一般公開はせず、生徒、教員に対してのみ販売を行う。隣のクラスの男子二名が買いに来た。片方は焼き鳥を、もう一人は唐揚げを買った。
「お、どっちもうめえ!」
二人の感想は売る側・作る側には安堵でよかったと思えるものだった。
「よし、この調子で売るか!」
皆は唐揚げと焼き鳥を売り続けた。
かよ子は藤木の所に行く。
「藤木君」
「ああ、山田か」
「よかったね、笹山さんの熱、下がって」
「あ、うん。僕もホッとしたよ」
「ついでに折角だから、明日思い切って笹山さんに告白してみたらどうかな?」
「え、ええ!?そ、そんな、無理だよ」
「大丈夫だよ。笹山さんも藤木君を嫌ってるように見えないし、上手く言うよ」
「う・・・、うん」
「じゃ、頑張ってね。また明日、文化祭で会おうね」
かよ子は藤木の元を離れると今、なぜ自分が藤木の恋を応援しているのか気になった。
「あの、三河口君」
「え?」
三河口は真希から呼ばれた。
「少し休んでいいよ。皆休んだし」
「え、あ、そうか。ありがとう」
気づけば四時間。三河口は休まずぶっ通しで唐揚げを揚げ続けていたのだった。三河口は料理の手を他の者に任せて周りを歩いた。
(はて、何を買おうか・・・)
三河口は兎に角、三年生のあるクラスの焼きそば、そして二年生の他のクラスが販売しているフライドポテトを買って飲食用に設置されたテーブルと椅子に座って食べた。
(今の所は特に何も起きてない・・・。か)
三河口は今は異世界の敵や日本赤軍が近づいた時に起きる胸騒ぎがしていない事を確認してまた店に戻って仕事に戻った。屋台にいた濃藤が三河口が戻って来たのを見た。
「あれ、ミカワ、もう休んだのか?」
「うん、もう十分だよ」
三河口は調理を再開した。
かよ子は下校しながら考える。
(藤木君もやっぱり私と似てる・・・。好きな人がいるけど、なかなか好きって言えない事・・・。私も杉山君には自分から好きって言えなかった・・・)
かよ子は自分と藤木は似た者同士だと改めて感じるのであった。
「あら、山田さあん」
「ふ、冬田さん!?」
冬田がいつの間にかいた。
「明日は楽しみねえ」
「あ、うん、そうだね」
「大野君と一緒に文化祭を楽しめるなんて私幸せだわあ~」
「うん、よかったね」
ロマンチストな冬田にどう反応するべきか迷うかよ子であった。
「それじゃあ、また明日ねえ~」
「うん、バイバイ」
二人はそれぞれの家へと向かった。
前夜祭を終えた皆は屋台に集まっていた。北畠が音頭を取る。
「それじゃ、明日の文化祭の本番も今以上に頑張ろう!」
こうして皆は解散した。三河口は奏子と共に帰る。
「三河口君、今日は凄い頑張ってたよね。私も三河口君の唐揚げ食べてみたけど、とても美味しかったよ」
「ああ、ありがとう。それなら売れるかな」
「うん、きっと売れるよ」
「まあ、肉屋がいい鶏肉を用意してくれたからだよ」
「でも、三河口君の料理も凄い上手だよ!」
「そこまで言われちゃ照れるなあ・・・」
「本心だよ。明日も頑張ろうね」
「うん」
なお、その二人の後ろを濃藤と北勢田が見ていた。
「北勢田、ミカワと徳林さん、いい感じだな」
「ああ、なんか付き合いそうだな」
夜、奏子は近所の小学生と電話していた。
『お姉さん。ごめんね。一人増えちゃって』
「いいよ、たくさん来てくれるとこっちは嬉しいわ。じゃ、おやすみ」
『おやすみ』
二人は電話を切った。
一方、山田家ではかよ子がテレビを見終わって消していた。
「明日は楽しい文化祭だから、もう寝よう」
かよ子は居間の電気も消した。父も母も眠っていた。
翌朝、一人の大学生が早朝に起床し、列車に乗って行った。
後書き
次回は・・・
「文化祭の開幕」
いつもより早く起床し、駅で皆と待ち合わせをしていたかよ子は三河口の通う高校へと向かう。そして三河口は僅かな気がかりを持ちながら調理の支度を行う・・・。
67 文化祭の開幕
前書き
《前回》
文化祭まであと一日となり、三河口が通う高校では前夜祭を行っていた。一方、かよ子が通う小学校では笹山が風邪から回復し、藤木が安堵していた。そして明日に備えてかよ子は早めに寝るのだった!!
かよ子は起床した。時計を見るとまだ6時前だった。
(早いな・・・。こういうなんか楽しい事があると、早起きするものなのかな?)
この日は隣の家に居候している男子の学校の文化祭の日だった。そこでまる子やたまえ、そして大野や杉山と共に楽しむのだ。かよ子は母から貰った杖を見る。
(もし何かあったらどうしよう)
かよ子は万が一の事を考えた。もし「敵」が祭中に襲撃してきたら・・・。かよ子は念の為に杖も持って行く事にした。ダイニングキッチンに降りると父も母もいた。
「ああ、おはよう」
「おはよう」
今日は普通の朝を迎えたが、まだ元の日常は戻っていない。羽目を外しすぎないようにと気をつけた。そして自身の体質(?)であるおっちょこちょいにも気をつけようと思った。
藤木は意気揚々として家を出た。今日は自分が恋する女子・笹山と文化祭を楽しむヒなのだから。待ち合わせ場所である駅へと向かい、笹山を待った。
(ちょっと早く来すぎたかな・・・)
藤木はウキウキしていた。ニヤケながら待っている為、通行人から変に見られていた。そして何処からか声が聞こえた。
「あらあ?藤木君じゃなあい。何ニヤニヤしてるのお?」
(もしかして、笹山さん!?)
藤木は期待しながら声の方向を向いた。しかし、相手は冬田だった。
「何か気持ち悪いわよお」
「う・・・。冬田さんこそ朝からなんでここにいるんだよ?」
「そりゃ大野君達と高校の文化祭に行くのよお」
(文化祭・・・。そうか、大野君や杉山君達も行くのか・・・)
「ああ、そうだったのか」
藤木は冬田と共に駅で過ごす羽目となった。藤木は落ち込んだ。
(なんで冬田さんといなきゃいけないんだよ・・・。笹山さんだったらなあ・・・)
(なんで藤木君なんかと一緒に大野君を待ってなきゃいけないのよお・・・)
冬田も大野から誤解されそうで気分をぶち壊されたような感じだった。
そして二人を呼ぶ声がした。
「あれ、藤木君と冬田じゃないか」
藤木にとってはこれが笹山だったら、冬田にとってはこれが大野だったら良かったのだが、来たのは長山だった。長山は家族で来ていた。
「長山君・・・」
「君達も文化祭に行くのかい?」
「ええ、そうよお。私、大野君達を待ってるのお」
「そうなんだ」
(早く笹山さん、来ないかな・・・)
(早く、大野君、来ないかしらあ・・・)
「じゃあ、僕達は先に行くよ。じゃ、また後でね」
長山の家族は先に電車に乗った。藤木と冬田は引き続き待ち人を待つ事になった。そして、5分ほど経って大野と杉山が現れた。
「あ、大野くうん、おはよう〜」
冬田は大野に抱きつきたい気持ちだった。そしてたまえととし子、そしてブー太郎も来た。そして、次に来たのは・・・。
「あ、皆、おはよう~。早いね」
かよ子とその両親だった。
「ああ、後はさくらだけだな」
「つうか、あいついつも遅刻するからな。寝坊するんじゃねえのか?」
大野が邪推した。
「まあ、そうかもな。ところで藤木は誰を待ってんだ?」
「え?あ、いや、僕は誰を待ってるんだっけ・・・?」
藤木は笹山を待ってるとは恥ずかしくて言えず、とぼけた。
「藤木君は、笹山さんを待ってるんだよね?」
かよ子は確認をとろうとした。
「え、あ、いや、そんな事・・・」
藤木は赤面して慌てた。
「へえ、笹山も行くのか」
「うん、その高校に近所のお姉さんが通ってるって言ってたよ」
たまえが説明した。そして・・・。
「藤木君、お待たせ」
藤木にとって待ち人来る。笹山が母と来た。
「あら、笹山さん。おはようございます」
かよ子の母は笹山の母に挨拶をする。
「おはようございます。皆さんも文化祭へお出かけですか?」
「ええ、ウチの隣に住んでる知り合いの甥子さんがその高校に通っていらっしゃるので」
「そうなんですね」
「藤木君、折角だから、皆で行こうよ」
「え?あ・・・」
藤木は本心では笹山と二人で行きたかった。
「う、うん」
かよ子には口では承諾したが、藤木の表情が少し暗く見えた。
(藤木君、笹山さんと二人きりでいたいのかな・・・?)
笹山は冬田やたまえと話している。一方、大野と杉山は長山やブー太郎と談笑しているが、藤木は笹山と話せないどころか、男子勢との会話にも入れていなかった。
「それにしてもさくらは何やってんだ?もう集合から4分も遅れてるぞ」
「うん、次の電車に乗らないともう文化祭始まってるよね」
「仕方ないわね。申し訳ないけど次の電車が来るまでまるちゃんが来なかったらもう行ってしまいましょう」
かよ子の母がそう言った途端、まる子が走って来た。
「ごめん、ごめ~ん、寝坊しちゃったよお~」
「お前、学校じゃなくても寝坊かよ」
大野が呆れて突っ込んだ。
「でも、揃ったなら皆で行きましょう」
こうして一同は駅の改札を通り、電車に乗った。笹山はまる子やたまえ、冬田と談笑を続ける。かよ子もその中に入っていたが、藤木は元気が全くないのを見て彼が気がかりになった。
「ところでさあ、笹山さんのその近所のお姉さんってどんな店やるのお?」
「焼き鳥と唐揚げよ」
「や、焼き鳥と唐揚げ!?あのお兄ちゃんと一緒だ!」
かよ子は偶然に驚いた。
「『あのお兄ちゃん』って?」
「あ、私の隣の家に住んでるお兄ちゃんだよ。私もその人から誘われたんだ」
「へえ、もしかしたらお姉さんと同じクラスかもしれないわね」
「うん、もしそうなら驚きだよ」
「そういえば長山君の近所に住んでる高校生のお兄さんも隣のお兄ちゃんと友達で、文化祭に行くって言ってたな・・・」
「あ、長山君も行く予定なの?」
「あ、そういえば家族で先に行ってたわあ」
「へえ」
笹山は世界はとても狭いと感じた。
三河口達は食材の仕入れ、調理器具の準備等を行い、既に料理の支度は整った。
「よっしゃ、頑張って売りまくるぞ!!」
北畠の掛け声で皆はやる気をみなぎらせた。なお、当の三河口は心のどこかで例の「アレ」に似たような感触を覚えていた。
(これは・・・。いや、単なる緊張感なのだろうか・・・)
三河口は兎に角、今は料理する事に身を捧げる事にした。
そして文化祭はオープンした。飾り付けられた校門、そして校庭には吹奏楽部や軽音楽部などがライブを行えるようにステージも設けられた。
かよ子達は会場の丁度の時間に高校に到着した。
「おお、すげえぜ、これが文化祭か!!」
「皆、楽しんでね」
一方、藤木は笹山と楽しめるかどうか不安に思っていた。かよ子は藤木の方ばかり気になっていた。
「かよちゃん、どうしたの?」
とし子が聞いてきた。
「あ、いや、なんでもないよ」
かよ子はただ運に任せるしかないと思い、校内に入っていった。
一人の大学生が静岡駅で新幹線から降車し、在来線の東海道本線に乗り換えた。
後書き
次回は・・・
「消えぬ憂鬱感」
文化祭が始まり、三河口は唐揚げを揚げる作業に没頭する。一方、校舎内の展示を周っていたかよ子達は美術部の絵や漫画研究会のオリジナル漫画を楽しむのだが、藤木は笹山と関わる事ができず・・・。
68 消えぬ憂鬱感
前書き
《前回》
かよ子はまる子、たまえ、とし子、笹山、大野、杉山、そして藤木と共に高校の文化祭へと行く。だが、藤木は本心では笹山と二人で行きたかったのだが、大人数で行く事になり、笹山が振り向いてくれず不安になるのだった!!
森の石松は三保の松原にいた。
(今の所は何者も攻めて来てはおらぬが・・・はて)
その時、何者かが石松を呼ぶ。
「貴方がイシマツですね」
石松は西洋人の女性がいるのに気づいた。
「そう言えばお主は・・・」
「私はエレーヌと申します。私は一度でいいからこの極東・ジャポンのシズオカ・シミズに行きたかったのです。ですが、今、別の世に行く事でその夢を叶いに来たのです」
「そうであった。お主は西洋の地にいて、何れはこの日本に行きたがっていたと申したな」
「あい」
フランス語では「はひふへほ」の発音が存在しない。その為、今、エレーヌは「はい」と答えたつもりだが、「は」が「あ」になってしまったのである。
「どうだ、この清水は。素晴らしいであろう」
「ええ。ですが、この地に敵が攻めてくると聞いてウローレンスから貴方の増援を頼まれました」
「なぬ!?また新たな敵が来たのか!?」
「ええ」
「了解した。我々で探し出して協力を申し出よう!」
かよ子は校内に入ると、校内は露店があって賑わっていた。
「これが文化祭か、なんか夏祭りみたいだブー」
「ああ、すげえな」
「なんか食べようか?」
かよ子が尋ねる。
「おいおい、山田。もう食うのか。小杉みてえだな」
「あ、そうだった。私、おっちょこちょいだな・・・」
確かにまだ10時頃だった。昼食にしてはまだ早すぎた。
「それじゃ、校舎の中の展示とか楽しもうよ」
かよ子の母が提案する。
「う、うん」
皆は校内に入る。そこで長山の家族と合流した。
「あ、長山君!!」
「やあ、皆、折角だから一緒に周ろうか」
「ああ、そうだな」
三河口は料理に回っていた。唐揚げを揚げる。焼き鳥を焼く側も順調き焼けていた。
「ミカワ、そのくらい揚げたなら十分だよ」
濃藤に言われて三河口は我に返る。
「え?ああ」
唐揚げは大部揚げられていた。だが、まだ開会から時間も間もない為か買いに来た人もまだおらず、揚がった唐揚げが溜まっていた。中川瞳も労ろうとする。
「三河口君、少し休みなよ」
「うん、そうするよ」
三河口は料理の手を止めた。
(まあ、まだ昼には早いし、すぐには来ないか・・・)
そして二人の三年生の女子二名が買いに来た。二人共唐揚げを買ったのだった。そして別のクラスの男子が焼き鳥を買った。
「買ってくれた人がようやく出てきたな」
「でも、まだ校内の生徒だ。沢山の人に来てもらわないとな」
クラスメイト達の会話の中、三河口は何らかの胸騒ぎを感じ取っていた。
(これは一体、何なのか・・・)
かよ子達がまず最初に入ったのは美術部の展示がある美術室だった。
「うわあ、いろんな絵があるねえ!アタシもこんな絵描いてみたいなあ~」
まる子は感激だった。絵画には名画の写し描き、様々な風景の写生のもの、アニメや漫画のキャラクターの写し描きや、オリジナルの絵もあった。
「どれもすげえ描けてるなあ」
「さくらさんならきっと描けるんじゃないかしら?」
「よおし、アタシ、高校生になったらこの美術部に入るよお!」
「ま、まるちゃん、まずは中学を出なくちゃ・・・」
かよ子は突っ込んだ。
「ああ、そうだったねえ~」
皆は笑った。そして次の展示へと向かう。次に興味を持ったのは三年生の教室にて展示されている漫画研究会の展示だった。
展示された漫画を読んでみると、どれも面白い。
「おお、この漫画面白れえな!」
「ああ!」
大野と杉山は男子生徒が描いたSF短編の漫画に興味を持った。
「ねえ、ねえ、大野くうん、私もこんな漫画面白いと思うわあ」
冬田が見ていたのは恋愛漫画だった。
「私も大野君とこんな恋出来たらいいわねえ」
「は、はあ・・・」
大野は反応に困った。その一方で、藤木は笹山が自分に顔を向きもする事なく文化祭を楽しんでいる事に自分が寂しく、そして虚しく感じた。
(ああ、何でこうなんだろ・・・?笹山さんは僕なんかやっぱりどうでもいいのかな・・・?)
藤木はこの文化祭を憂鬱に思う。もう帰ってしまおうかと思った。
(こうなったら、トイレに行くふりをして、行っちゃおう・・・)
藤木はそーっとするようにその場を離れる。
「あれ、藤木、どこ行くの?」
まる子に気付かれた。
「あ、いや、トイレだよ!」
藤木は誤魔化した。
「あら、場所分かる?」
かよ子の母が聞いた。
「はい、大丈夫です」
「でも、迷子になったりすると大変だわ。誰かがついていってあげないと」
「い、いえ、大丈夫です!」
藤木はその場から離れた。しかし、かよ子にはどうも怪しく見えた。
「ちょっと待って、私、追いかける!」
「あ、かよ子!」
「山田あ!!」
かよ子は藤木を追いかけた。藤木はトイレの方に向かっていない。階段を降りようとしていた。
「藤木君、待ってよ!」
「や、山田、何だよ?」
「トイレってのは嘘でしょ?本当は笹山さんが自分に振り向いてくれなくて寂しくて帰ろうとしてたんでしょ?」
「・・・え、あ、いや、そんな事ないさ!」
「でも、トイレはそっちじゃないよ。向こうだよ」
「え?ああ、ごめん、間違えたよ」
(なんだよ、止めないでくれよ・・・)
藤木はかよ子がうっとおしく思いながらトイレの方へ向かった。
「山田あ!」
「かよちゃん!」
皆がかよ子の方へ向かう。
「どうしたんだよ?」
「あ、藤木君がなぜか階段を降りようとしてたからトイレの方を案内してたんだ」
「お、かよちゃんやるねえ」
「う、うん・・・」
(違うな、そうじゃねえ・・・)
杉山は推測した。かよ子は絶対に藤木が帰ろうとしていたのを止めようとしていた、と。
「山田」
杉山が聞く。
「え?」
「藤木は、やっぱり笹山が好きなのか?」
「う・・・、実は、そうなんだ・・・」
「なんか、そんな気が俺もしてたよ。あいつ、昨日笹山と話してすげえ嬉しがってたし、今日も俺達との会話が楽しくなさそうで、笹山の方をチラチラ見てたからな」
「杉山君・・・。気づいてたんだ」
「ああ」
「私、ちょっと笹山さんにお願いしてみようかな?」
「何をだよ?」
「もうちょっと藤木君の方に振り向いて欲しいって」
かよ子は藤木の想い人に話しかけてみる。
「あ、あの、さ、笹山さん・・・」
「え?なあに?」
「もう少し藤木君にも、振り向いて挙げて・・・。藤木君、笹山さんと文化祭に行くのを楽しみにしてたんだよ。でも、なかなか笹山さんに話しかけられなくて寂しく感じてるんだよ」
「でも、藤木君は他にも大野君とか杉山君とか、長山君とかの男子もいるし・・・」
「そういう問題じゃないんだよ。藤木君は笹山さんと本当は一緒に楽しみたいんだよ!だから、もう少し藤木君を気にかけて・・・!!」
「う、うん・・・」
笹山はなぜかよ子は自分に藤木と深く関わるよう要求するのか、その理由も意図も解らなかった。
一人の大学生が清水駅を降り、ある高校へと向かった。
後書き
次回は・・・
「空回りは続く」
すみ子達組織「義元」や三河口の叔母とその夫も高校を訪れ、文化祭を楽しむことになる。一方、校内を周っているかよ子達は杉山達がゲームを楽しもうとする。藤木も笹山にいいところを見せようとするのだが・・・。
69 空回りは続く
前書き
《前回》
三河口は唐揚げの揚げ作業を行っていた。一方、かよ子達は食べるには早いとして校内の展示を見に行く事にする。美術部や漫画研究会の展示を楽しむかよ子達だが、藤木は笹山に話しかける事もかけられる事もなく、トイレを装って帰ろうとする。それを止めたかよ子は笹山にもう少し藤木に振り向いてと乞うのだった!!
三河口のクラスが営業する唐揚げと焼き鳥の模擬店にもようやく客が増えるようになった。
「よし、そろそろ仕事再開しなきゃな」
三河口は料理を再び始めた。少しして・・・。
「こんにちは・・・」
「あ、すみ子じゃねえか」
濃藤は妹が来た事に喜んだ。友達の山口、川村、ヤス太郎も来ていた。
「うん、来たよ・・・」
「お、この焼き鳥と唐揚げ美味しそうでやんす!」
「そうだな、貰ってみるか」
「よし、俺が出すよ」
濃藤は四人分払った。すみ子と川村は唐揚げを、山口とヤス太郎は焼き鳥を食べた。
「おお、うめえ唐揚げだな」
「この焼き鳥もうめえぜ!」
「美味いでやんす」
「ミカワ、よかったな、お前が揚げた唐揚げ好評だな」
「ああ、ありがとう」
「三河口君って料理上手だよね。以外!」
三河口は褒められてなんて反応すればいいか解らなかった。
(濃藤の妹達が来ているならば、この感触は起きない・・・。でも、なんだろ・・・)
三河口は謎の感触が続いた。そして・・・。
「あら、健ちゃん、頑張ってるね」
叔母とその夫が来ていた。
「ああ、おばさん、おじさん、来ていただいてありがとうございます」
「売上どうなの?」
「ああ、順調です」
「そんじゃ、私達周り見てくるね。頑張るんよ」
「はい」
三河口は奈美子と利治を見送った。
「それにしても、健ちゃん、驚かないかな?」
「ああ、あまり仲良くないしな・・・」
二人はある事を懸念していた。
かよ子達はゲームができる所を回っていた。そこで野球部主催のボールでダーツをやるコーナーがあった。
「お。これやろうぜ!長山と藤木、ブー太郎もどうだ?」
大野が提案する。
「うん、いいね」
「オイラもやるブー!」
「う、うん・・・」
「どうしたんだよ、藤木、元気ねえな」
「あ、その・・・。そんな事ないさ!」
杉山が耳元で藤木に呟く。
「笹山にいいとこ見せるチャンスだぜ」
「あ、う、うん」
四人はダーツに挑戦した。手作りの的は外から1点、2点、3点、4点と続き、中心部が5点となっていた。ルールはボールは2回投げる事ができ、6点以上取ると、飲み物が貰える。8点で、スナック菓子、さらに10点満点の景品はぬいぐるみや人形、さらにはサッカーのボールや野球セットなどがあった。
「うわあ、いろいろあるねえ~」
「私、あれ欲しいな」
「あれって?」
かよ子は聞く。
「あのウサギさんのぬいぐるみ。あれ、可愛いなって思って・・・」
薄い桃色のウサギのぬいぐるみが置いてあった。
「ふ、藤木君がきっと獲ってきてくれるよ!」
「藤木君が!?」
「お、おう、やれるよな、藤木!」
杉山も藤木を刺激しようとした。
「あ、う、うん・・・!!」
「よし、俺からやるぜ!」
大野が張り切った。
「大野くうん、頑張ってえ~」
冬田が応援した。大野がボールを投げる。ボールは1個目は的のど真ん中に命中した。2個目も同様、命中した。
「やったぜ!」
「大野くうん、凄いわあ~」
冬田は好きな男子のかっこいい姿が見れて嬉しかった。大野は10点満点の景品としておもちゃのピストルを貰った。
「長山、先行っていいぜ」
杉山は長山に先を譲った。
「うん、やってみるよ」
「長山君、頑張って〜」
藤木は反応した。笹山が長山を応援する。まさか笹山もやはり自分みたいな卑怯者なんかより大野や杉山、長山の方がいいのかもとまた思うのであった。
長山がボールを投げる。3点の的に当たった。そして2回目。次は4点の的に当たった。合計7点。長山は缶ジュースを貰った。
「はは、残念だったよ」
「でも、7点で景品貰えたじゃねえか。なかなかやるよ」
「そうだよ。長山君もいい投げ方だったよ」
とし子と大野が称賛する。
「うん、ありがとう」
長山は貰った缶ジュースを小春にあげた。
「ありがとう、お兄ちゃん・・・」
「よし、次はオイラだブー!」
ブー太郎が投げる。1回目は4点。2回目は5点と合計9点だった。景品としてスナック菓子の袋を貰った。
「藤木、次、お前、行けよ」
杉山が促す。
「あ、いや、僕は・・・」
「藤木君、頑張って!」
「笹山さん・・・」
笹山の言葉に藤木は奮起しようとする。
「うん、やるよ、絶対に10点取るよ!」
藤木は張り切った。かよ子も藤木を応援したくなった。藤木はボールを投げる。
(笹山さーん!!)
だが、力み過ぎてしまい、的から外れてしまった。
「あ・・・」
「藤木、落ち着いて!」
「うん・・・」
藤木は二回目を投げた。2点の的に当たった。
「ああ〜・・・」
まる子が落ち込んだ顔をした。笹山も心配そうにしていた。
「落ち込むなよ、俺が代わりに取ってやる」
「す、杉山君・・・!!」
かよ子は杉山に釘付けになった。
「杉山君、頑張って・・・!」
杉山がボールを投げる。杉山は10点満点だった。杉山は景品としてウサギのぬいぐるみを手にした。
「す、凄い、杉山君・・・!!」
「やるねえ~」
(いいよなあ、杉山君は・・・)
藤木は杉山を羨ましがった。
「藤木、お前に預けるよ。お前の手で笹山にあげろ」
「え?いいよ・・・」
「遠慮すんなって」
「う、うん・・・」
杉山は藤木にぬいぐるみを渡した。
「はい、笹山さん、杉山君が獲ったんだけど、あげるよ・・・」
藤木はそのぬいぐるみを笹山に渡す。
「うん、ありがとう、藤木君」
(笹山さん・・・)
藤木は少し嬉しかったが、かよ子や杉山の情によってできた行為なので、どこか切なく感じてしまうのだった。
「杉山君、なんかかっこよかったよ」
「ああ、藤木が少し可哀想に見えたからな」
「でも、杉山君は欲しいものなかったの?」
「いいよ、俺は。楽しめればいいんだ」
皆は次を廻った。次はサッカーのPKができるゲームがあった。勿論ここでも景品は貰える。2回まで挑戦でき、1回目の挑戦でゴールすればスナック菓子、2回目ならばお茶や缶ジュースなどの飲み物が貰える。ただし、失敗すればポケットティッシュだった。
「あ、あそこ、隣のお兄ちゃんが言ってたゲームだ!」
「よおし、今度はアタシもやろう~」
まる子が張り切った。
「ま、まるちゃん・・・!?」
「よし、さくらもやるか」
こうして大野、杉山、ブー太郎、長山、藤木、そしてまる子の六人でやることになった。まず大野が挑戦する。見事に1回目でゴールインした。続いて杉山も1回目でゴール。二人はポテトチップスの袋を貰った。ブー太郎は1回目は外したが、2回目は当たり、缶入りのお茶を貰った。長山は1回目は手作りのゴールのポールにあたって弾かれたが、2回目は成功した。長山はジュースを貰った。
「藤木、アンタ次行ってきなよ」
「え?あ、いや、さくら先行けよ・・・」
「もう、よおし、やるよお~」
「まるちゃん、頑張って!!」
まる子はボールを蹴った。だが、ボールはゴールの上を行ってしまった。そして二回目。今度はゴールインした。まる子はジュースを貰う。
「ほら、藤木もやれよ」
「う、うん・・・」
藤木はボールを蹴った。しかし、一回目は蹴りそこねた。改めて蹴り直し。しかし、ポールに掠りもせずに外れた。二回目を蹴る。
(次こそ笹山さんにいいとこを見せないと!)
藤木はボールを蹴った。しかし、次も大きく外してしまった。また藤木は好きな女子の前で醜態を晒してしまった。藤木は残念賞のポケットティッシュを貰った。
「おい、藤木は元気だせよ」
杉山は宥めようとする。
「う、うん・・・」
「ふ、藤木君、こんなんでくよくよしちゃ駄目だよ!」
かよ子も慰めようとした。
「ねえねえ、私達もなんか遊びたくなっちゃったよね」
たまえが提案した。
「そうだね、どこかないかな?」
皆は女子も遊べそうな所を探した。
「藤木君、気を取り直して行こうよ」
「さ、笹山さん・・・」
藤木は笹山に気に掛けられて嬉しかった。一瞬二人が関われてホッとするかよ子であった。
一人の大学生が文化祭が催されている高校の門を潜った。
後書き
次回は・・・
「訪れた男」
かよ子達女子はヨーヨー釣りを楽しんでいた。一方、調理を続けていた三河口は休憩する事にし、奏子と共に校内を周る事にするのだが、彼らの前に一人の大学生が現れる・・・。
70 訪れた男
前書き
《前回》
三河口が通う高校の文化祭を訪れたかよ子達。大野や杉山達男子はゲームができるコーナーでゲームを行う事とする。藤木も笹山にいいところを見せようとするも空回りを繰り返して恥をかき続けてしまったが、笹山に気にして貰えた事で少し嬉しく感じるのであった!!
すみ子は山口、川村、ヤス太郎と共にある事を期待していた。
(もしかしたらかよちゃん達に会えるかしら・・・?会えたらいいわね・・・)
皆は様々な模擬店を廻り、綿飴やパンケーキを食べた後、体育館で行われるライブを観劇する事にした。
三河口のクラスの焼き鳥・唐揚げ屋は昼になると繫盛し始めた。三河口は2時間以上も唐揚げを揚げる作業を続けており、汗だくになった。
「三河口君、もう二時間もやってるし、少し休憩していいよ」
「そうだよ、お前だけまだ休んでねえじゃん」
真希と北勢田が慮った。
「え?ああ、そうだったね」
三河口は三角巾とエプロンを外した。
「じゃあ、好きな所らせてもらうよ」
三河口は店を離れた。三河口は何を買って食べようか考えた。その時・・・。
「あ、三河口君!」
「ああ、奏子ちゃん」
「一緒に廻らない?」
「うん、いいよ。そうだ、奏子ちゃんも近所の子を誘ってんだよね?一緒に探そうか?」
「うん、ありがとう。そうだ、まだ何か食べてないよね?私、何か奢るわ」
「え?それ、男の俺が奢るのが普通じゃないのかな?」
「ううん、三河口君料理頑張ってたから私が奢りたいわ」
「あ、ありがとう。お言葉に甘えるよ」
三河口は奏子と祭の模擬店を周った。
「じゃあ、あの焼うどんをまず貰おうかな」
「うん」
奏子は一年生のクラスが販売している焼うどんを二人分買った。
「奏子ちゃんもか」
「うん、丁度三河口君と一緒に食べたいなって思ってね」
「そっか、それなら美味しくなるかな」
「う、うん」
「そうだ、飲み物もいるね」
「あ、そうだね、あそこにラムネとか売ってるからあそこにしない?」
「いいよ」
奏子は一年生の別のクラスが売っている飲み物の模擬店にてラムネを二本購入した。そして二人は休憩所として設けられたベンチとテーブルのある場所に腰かけて焼うどんを食べようとした。
(はて、かよちゃん達はどこにいるのか。校内にあるゲームとかを楽しんでいるのだろうか・・・)
「三河口君、一緒に食べたら校内の中のゲーム廻ろうよ」
「いいよ。皆見つかるかもしれないね」
かよ子達はストラックアウトやサッカーのPKなど、男子が夢中になるゲームばかり見ていたので、今度は女子も遊べるようなゲームを探していた。
「あ、あそこのヨーヨー釣り楽しそうだよ」
とし子が提案した。
「うん、いいね!」
「こはるもやりたい・・・」
「よし。じゃあ、小春の分はお兄ちゃんのお金で出すよ」
「おにいちゃん、ありがとう・・・!」
女子達はヨーヨー釣りを楽しんだ。まる子、たまえ、とし子、笹山、小春、そしてかよ子はヨーヨーを釣ろうとした。
(笹山さん、楽しそうだな・・・。僕もやりたいなあ・・・)
藤木は笹山を羨ましがる。もし自分が笹山と二人きりだったら、一緒にヨーヨー釣りを楽しんでいたかもしれないのにと思い、落胆した。
「藤木、お前もヨーヨー釣りたいのか?」
杉山が質問する。
「あ、いや、そんな事ないさ!そんな女子の遊びなんて・・・」
藤木は慌てて誤魔化した。しかし・・・。
「ねえ、ヨーヨー釣りやってみる?」
「うん!」
両親と遊びに来た男の子がヨーヨー釣りをやろうとしているのが見えた。
「ヨーヨー釣りに男女関係ねえと思うんだがなあ」
「い、いいんだ。僕は。君達もやろうとするつもりないだろ?」
「ああ、俺達もさっきまでゲームしてたからな・・・」
杉山は藤木は素直じゃないと思いながらもそれ以上は追求するのを辞めた。
女子達は楽しくヨーヨー釣りを行った。皆一個ずつヨーヨーを釣って満足気味だった。
「それじゃあ、そろそろお腹空いてきたんじゃないかしら?」
「そうですね、そろそろ模擬店を見に行ってみましょうか」
親達が提案する。
「いいねえ〜、アタシゃそれが一番楽しみだったんだよお〜」
「ま、まるちゃん・・・」
かよ子はまる子の食い意地にやや引いた。たまえやとし子、笹山も少し引いていた。皆は外の模擬店のコーナーへと向かった。
「あ・・・!」
外に出た途端、小春が声を挙げた。
「向かいのお兄ちゃんだ・・・!!」
「え?」
長山兄妹が向いた方向には北勢田竜汰がいた。
「よっ、治君、小春ちゃん」
北勢田は長山の両親にも挨拶する。
「こんにちは。随分友達連れて来たね」
「うん、皆楽しそうにやってるよ」
「そっか、なんか奢ってあげるよ」
「でも北勢田君一人じゃ大変そうね。私達も出すわ」
長山の両親が思慮する。
「はい、すみません」
皆は模擬店のコーナーへ向かう。その時、北勢田は大野や杉山、ブー太郎の姿を見た。
「そういえば、君達、前にも会ったよな。確か、大雨の時だっけ」
「ああ、そうでしたね」
「あの時は色々活躍してたね」
「いやあ、俺達は単なる人助けをしてただけですよ」
杉山は謙遜した。
「へえ、大野君や杉山君達そんな事してたなんて凄いわね」
笹山の言葉に藤木は反応した。
(う・・・、笹山さん、もしかして、僕よりも大野君や杉山君の方が・・・!!)
藤木は落ち込んだ。
(そういえば、あの時はただ僕は何もしてなかったな・・・)
「ああ、でも、ブー太郎や山田や長山も人助けに協力してたぜ」
「いやあ、でも、私おっちょこちょいだったし、それにあの時は隣のおばさんやおじさんも手伝ってくれたからね・・・」
「隣のおばさんとおじさんって三河口の?」
「あ、うん、そうだよ・・・」
「そういえば三河口も休憩してると思うから会えると思うぜ。ついでに一緒に探してみるかい?」
「う、うん、お願いします・・・!!」
三河口と奏子は焼きうどんを食べ、ラムネを飲みながら談笑していた。
「そういえば、たこ焼きも食べたくなってきたな」
「あ、買ってくるわ」
「いいよ、さっきのお返しで今度は俺が奢るよ」
「あ、ありがとう・・・」
三河口はたこ焼きの模擬店へと向かった。
一人の大学生が、たこ焼きを二人分買っている高校生を見つけた。
三河口は奏子とたこ焼きを食べる。
「たこ焼き、美味しいね!」
「うん、そういえば俺の従姉の一人が神戸に住んでて、本場の大阪のたこ焼きを食べた事あるって言ってたな・・・」
「従姉ってこの前私が会ったあの人?」
「いいや、その従姉は名古屋に住んでいて、その人の一番上の姉にあたる人だよ」
「え?よくわかんなくなってきた・・・」
奏子は三河口の親戚の関係に混乱した。
「ええと、ウチの従姉は三姉妹で、2ヶ月前に会ったのが一番のさりって言って名古屋に住んでるんだ。真ん中はありって名前で札幌に住んでいるよ。それで一番上のお姉さんがゆりって言って神戸に住んでいるんだ。その一番上のゆりちゃんの住んでる神戸が大阪に近いから大阪のたこ焼きを食べた事があるんだって。かなり美味かったらしい」
「へえ、大阪のたこ焼きも食べてみたいね」
二人はたこ焼きを食べ終わると、それぞれが招待した小学生の子を探すために廻り始めた。と、その時、だった。
「おい、健」
「え?」
三河口が自分を下の名前で呼ばれた事に気付いた。振り向くと、そこには一人の大学生ほどの男がいた。
「こんなとこで何やってんだよ、オイ!」
三河口はその男に凍り付いた。そしてその男に乱暴に連れて行かれた。
「あ、ちょっと、待ってください!三河口君をどこに連れて行くんですか!?」
奏子は追おうとする。
「悪いね、このバカが迷惑懸けて」
「そんな、バカなんて・・・」
奏子は止めようとする。
「邪魔すんな!」
男は強引に奏子を振りほどいて奏子の顔にフックをかました。
(ど、どうしよう・・・!!)
奏子は殴られた顔を抑えながら。恐怖を感じた。
後書き
次回は・・・
「学祭内の捜索劇」
かよ子達は学祭内の模擬店の食事を楽しんでいる所、三河口が大学生のような男に連れ去られたという情報が入る。かよ子達は三河口を探し始めるのだが、彼を連れ去った男の正体は・・・。
71 学祭内の捜索劇
前書き
《前回》
休む間もなく唐揚げを揚げ続けていた三河口は奏子と共に休憩する事にする。二人で知り合いの小学生に会いに行こうとしていた所、大学生程の男が現れ、三河口を連れ去った!!
かよ子達はは食事を楽しんだ。かよ子は焼きそばやたこ焼などを食べた。まる子は食い意地のあまり、チョコバナナやなども食べていた。
「君、よく食べるね・・・」
北勢田もまる子の大食いに驚いた。
「いやあ、文化祭といえばいろんな美味しい物が食べられる事だからねえ・・・」
「お前、少しは遠慮しろよ・・・」
大野が突っ込む。
「そうよお、さくらさあん、食いしんぼうなんて女の子らしくないわよお!」
冬田も大野に追従するように言った。
「はい、はい・・・」
「そうだ、お兄さん、お兄さんたちが売ってる唐揚げと焼き鳥の店を紹介してくれないかい?」
「ああ、いいよ」
北勢田は皆を自分のクラスの模擬店へ連れて行った。北勢田や三河口が経営する焼き鳥と唐揚げの店は軌道に乗っていた。
「ここがウチの焼き鳥と唐揚げの店だよ」
「うわあ、美味しそう!」
「そうね、皆の分、奢ってあげるわ」
親たちは子供達に焼き鳥と唐揚げを奢ってあげた。かよ子、たまえ、ブー太郎、杉山、藤木は唐揚げを、まる子、大野、冬田、笹山、長山、小春は焼き鳥を食べた。
「この唐揚げ、美味しいね!」
「焼き鳥もうめえぜ!」
「あれ?そいえば君達は確かウチの妹達と友達になってた子だったよね?」
生徒の一人が尋ねた。
「え?」
「妹のすみ子って名前なんだけど」
「すみ子・・・。ああ、すみ子ちゃんのお兄さんだね!」
かよ子は思い出した。
「すみ子ちゃんも来てるの?」
「うん、午前中に友達と来て焼き鳥と唐揚げ食べてったよ」
「ありがとう、会えたらいいな!」
「すみ子ちゃんって?」
とし子が聞く。
「隣町の小学校の女の子だよ。ちょっとした事があって仲良くなったんだ」
「へえ、会えたらいいね」
その時だった。一人の女子高生が走って店に来た。
「ねえ、大変よ!」
「あ、お姉さん!」
笹山が歓喜の声を挙げた。
「え?あ、かず子ちゃん!」
「あ、もしかしてこのお姉さんが笹山さんの知り合いのお姉さんなの?」
「ええ、そうよ」
「結構友達連れて来たのね」
「うん、最初はこの藤木君を誘うつもりだったけど、この学校の生徒と知り合いがいる友達が多くて皆で行く事になったの」
「へえ」
「ところで大変な事って?」
濃藤が聞く。
「ああ、そうそう、三河口君が知らない男の人に無理やり連れて行かれたの!探してほしいの!」
「え!?」
かよ子にも衝撃的だった。何しろ隣の家に居候している高校生男子だったのだから。
「三河口って山田んちの隣にいるあの高校生の事だよな!?俺達も探すぜ!」
「分かった、皆で探そう!」
かよ子達は三河口の捜索を始めた。その時、かよ子の脳裏にある事が浮かんできた。
(もしかして、異世界の敵か、日本赤軍・・・!?)
かよ子はそんな気がして不安になった。
「そうだ、私、この羽根を使って空から探すわあ!」
冬田はフローレンスの羽根を取り出して空から探した。
「よし、俺達も手分けして探すぞ!」
皆動き出す。クラスメイト達も店番・調理をしている者を除き、三河口の捜索をクラスで行った。
杉山や大野はある事を確認し合う。
「なあ、大野。あの三河口さんが連れて行かれたって事は日本赤軍とか異世界の敵なんだろうか?」
「いや、違うと思うぜ。奴等ならもっと激しい胸騒ぎがするはずなんだが、それがなぜか感じねえんだ」
「って事は違う別の人か!」
大野と杉山は日本赤軍でも異世界の人間でもない敵と察知した。
(でも前に石松から聞いた話では三河口には能力があるから追っ払えるはずなんだが・・・!!)
杉山はそう疑いながらも濃藤やブー太郎と共に探し続けた。
冬田は上空から文化祭内に異常がないか偵察していた。
(そうだわあ、もしいい所を見せたら大野君からあ・・・)
冬田はもし自分が手柄を立てる事ができたら大野から「やるじゃねえか、冬田!俺、お前が好きになっちまったぜ!」などと言われる所を妄想した。
(や~ん、大野くうん・・・!!)
かよ子はまる子、たまえ、とし子、そして両親達と共に探していた。そんな時、奈美子に利治と合流した。
「あら、まきちゃん達、どうしたの?」
「あ、奈美子さん大変よ!健ちゃんがなんか男の人に連れ去られたって聞いたから皆で探してるのよ!」
「ええ!?」
(やっぱり・・・)
奈美子はある事を告白しようと思った。
「あの、その男の人っていうのは、きっと・・・」
長山の家族も北勢田と共に探す。
「三河口って人は確かあの大雨の日に一緒に敵と戦ってくれたお兄さんの友達だよね?」
「ああ、その通りだよ」
「聞いた話じゃ、結構強い能力を持ってるはずなんだけど、それを使わないって事は、相手は異世界の人間でも日本赤軍でもないんじゃないかって思うんだ」
「そうか、となると・・・」
「『あの事』とは関係なく三河口さんに何かの恨みがある人かもしれない」
「よし」
奏子は藤木、笹山を連れて三河口を捜索する。
「お姉さん、その三河口君ってどんな人?」
「そうね、結構優しいし、唐揚げ揚げるのも上手だし、凄い頑張ってたかな・・・」
「うわあ、もしかしていい男子ね」
(いい男子・・・)
藤木は自分も笹山にとっていい男子って言われるようになりたいと思った。だが、卑怯な自分じゃ無理かもって少し思っていた。
「ところで今日かず子ちゃんが連れて来た文化祭に行きたいって言ってた子ってその子?」
「うん、藤木君っていうの」
「こ、こんにちは・・・」
「私は徳林奏子。笹山かず子ちゃんの家の近くに住んでるの。ごめんね、こんな事に巻き込んじゃって」
「いえ、いいんです、元々、運悪いし・・・」
「そんな・・・」
(もしかして、この藤木君って子、かず子ちゃんの事好きなのかもね・・・)
冬田は上空から異変がないか確かめる。その時、人気の立たぬような体育館裏にて一人の高校生男子が別の男性と喧嘩しているような様子が見えた。
(あ、あれだわあ!!大野君に教えなきゃあ!!)
冬田は今度は大野のいる場所を探した。まず冬田はかよ子達の姿を見る。
「ああ、山田さん達い!見つけたわよお!この羽根に乗ってえ!」
「え!?うん!!」
かよ子は冬田の羽根に乗せて貰った。そして次に長山達を見つけ、笹山達、そして遂に念願の大野達を見つけた。
「大野くうん!!あのお兄さんがいたわよお!!乗ってえ!!」
「まじか!」
大野、杉山、濃藤は冬田の羽根に乗った。
「この羽根、凄いわね!」
笹山は少し興奮していた。
「これね、異世界の人から貰ったのよお!」
一方、藤木は落とされないかそわそわしていた。かよ子は三河口が心配だった。隣の家のおばさんから三河口と「関係の深い人物」である事を聞いていたからである。
「あ、いた!!」
濃藤が指を差した。方向は人気のない体育館裏かつゴミ捨て場の近くであった。一人の高校生が大学生くらいの男性に殴られ、蹴られている。暴行されている人物はまさに三河口だった。
「お兄ちゃん!!」
かよ子は思わず叫んだ。
「なんだ、お前ら?」
暴行している男が聞く。
「このお兄ちゃんの友達だよ!」
かよ子はビクビクしながら答えた。
「皆、来たのか・・・」
「ミカワ、大丈夫なのか?」
濃藤、北勢田、そして奏子がボロボロの三河口を心配する。
「あ、ああ・・・」
「また、テメエはそうやって人に迷惑懸ける!」
男は三河口を非難した。
「何言ってんだよ、人をこんなに痛めつけて!お前の方が迷惑かけてんじゃねえか!!」
杉山は相手の男を非難する。
「は、テメエこそ偉そうに!!」
「お前は一体誰なんだよ!?」
大野が聞く。その時、三河口が立ち上がった。
「こいつは・・・、俺の兄貴・・・、三河口響だよ」
後書き
次回は・・・
「武装の能力」
三河口を暴行する男の正体が彼の兄だと知ったかよ子達は、異世界の道具を使うか迷う。肉弾戦しかないと思い、道具抜きで三河口響と戦おうとする杉山達だが、そんな時、奏子にある能力が発動し・・・!!
72 武装の能力(ちから)
前書き
《前回》
文化祭を楽しむかよ子達は、徳林奏子から三河口が見知らぬ男に連れ去られたという話を聞き、三河口の捜索を行う。冬田が三河口のいる場所を確認し、皆で向かった所、現場では三河口が理不尽に暴行されている様を見る。暴行の相手はなんと三河口の兄・三河口響だった!!
なお、このエピソードより三河口健の兄・三河口響という男が登場しましたが、本作においては「三河口」というのは基本的には兄・響ではなく弟・健の事を指す方針で行きます。
奈美子、利治など一部を除く皆は暴行をする男が三河口の兄と聞いて信じられなかった。
「でも、だからって、どうしてこんな事をするの?文化祭を荒らしてるわけじゃないのに」
かよ子は三河口の兄という男に聞く。
「こいつは俺を怒らせてばっかりだからだよ!こんな奴ここでも迷惑かけやがって!」
三河口の兄・三河口響という男は三河口を非難するだけだった。
「こいつは何にも迷惑かけてねえ!お前が迷惑だろうが!?」
濃藤と北勢田も抗議した。
「うるせえんだよ、高校生の癖してエラそうな口聞きやがって、おめえらぶっ飛ばされてえのか?」
「響君、やめんさい、健ちゃんはそんな事せんよ。昔と違うんだから」
奈美子は事を知っているのか、落ち着いて響を抑えようとした。
「本当かよ?こんなすぐ喧嘩売るような奴がこの学校にいて大丈夫なのかよ!?」
「そういうお前の方こそが三河口さんに迷惑かけてんじゃねえのか!?」
杉山も反論する。
「あ!?んだと!?オメエもぶっ飛ばしてやろうか!?」
響は杉山達の方に向かう。かよ子は杖の能力で撃退すべきか思った。杉山達も「石」を使うか迷った。しかし、相手は日本赤軍でもなければ異世界からの侵略者でもない。無闇に使用するのは避けたいところだった。
(ん、そういえば・・・!!)
かよ子は以前、石松の昔話を聞いていた時に、三河口自身が特異となる三つの能力全てを宿していると石松から聞いた。しかし、なぜ三河口はここではその能力を一切使用しないのだろうか。相手が日本赤軍でも異世界の敵でもないからなのだろうか?
「なら俺達が相手になってやる!」
三河口を救おうと震えながらも立ち向かう濃藤と北勢田。肉弾戦しか術がないかと不安に思いながら立ち向かう大野と杉山。ただ震えるかよ子達女子勢と長山、そして今にも逃げだしそうな藤木。
「濃藤、やるしかねえか」
「ああ」
二人は不祥事で学校から処分を受ける覚悟だった。
「ああ、じゃあ、テメらからやってやるよ」
三人は戦闘態勢に掛かろうとする所だった。が、その時・・・。
「いや、やめてーーー!!」
奏子が叫んだ。その途端、響の体が動かなくなった。そして、勢いよく壁に叩きつけられた。
「お願い、もうこれ以上三河口君や、皆に手を出さないで・・・!!」
響はさらに今度は地面に体を打ち付けられた。
(こ、これは・・・!?)
かよ子はこれは武装の能力だと察した。だが、三河口がやっているように見えない。あの女子高生がやっているかのように見えた。
「これは・・・!?」
「武装の能力・・・」
「三河口君はこの文化祭の準備に一生懸命取り組んでたの・・・。それに三河口君が作った唐揚げはとても美味しくていい評判だったの・・・。だから、三河口君は誰にも迷惑懸けてない!!だから、やめて・・・!!」
「徳林さん・・・」
「そうだ、これ以上ミカワをやるんだったら俺達も動くし、最悪、警察呼ぶぞ!」
「う・・・」
「響君」
隣の家のおばさんは響による。
「私も四、五年健ちゃん預かってるけど、今まで無意味に人を傷つける事はなかったんよ。それにもしそうじゃなきゃ、こんなに友達が出来てないはずよ」
「ち・・・、わかったよ」
響はこれ以上暴力を振るうのを止めることにした。
「折角来たんだし、響君も文化祭楽しんだら?」
「ああ、わかったよ」
騒動は何とか収まった。
その後、響は叔母・叔父と共に回るようになり、弟からなるべく離すようにした。三河口はかよ子達と共に回ることになった。
「なあ、あんた」
杉山が三河口に質問する。
「あの時、あんたの兄ちゃんがやられた時、どうして『能力』を使わなかったんだ?」
「ああ、それはだな、正確には『使わなかった』と言うよりは、『使えなかった』と行った方が正しいかな」
「『使えなかった』だって?」
「お兄ちゃんにも能力が使えない時ってあるの・・・!?」
かよ子は意外に思った。確かにこの男子高校生は丸岡を自身の能力で遠くに吹き飛ばし、夏休みには東京の地でその能力を使用してアドルフとかいう異世界の人間と日高敏彦という日本赤軍の人間を成敗させている。武装、見聞、威圧の能力全てを宿す三河口ならばそれも不可能ではないはずなのだが、なぜできなかったのだろうか?
「ああ、清水に来て能力を無闇に使わないように抑えた結果、何ていうのかな、一般人には効かなくなったようなんだ。もしかしたらこれも君が持っていた杖とか叔母さんが持っていた護符の影響なのかもしれないな」
「う、うん・・・」
「それにさっきの兄貴が抑えつけられたあの様は俺の能力によるものではない」
「え?って事は・・・」
「濃藤も北勢田も何もしてないだろ?」
「あ、ああ」
「となると、奏子ちゃんがやったんじゃないのかい?」
「え?私・・・?」
奏子はその時を振り返った。確かにあの時は三河口を守りたいという一心だった。だが、あんな念力のようにあの男をやっつけるなんて・・・。
「もしかしたらお姉さんにも不思議な能力を持ってるのかもね・・・」
「ああ、武装の能力を持ってるかもしれねえな」
大野は推測した。
「ブソーノチカラ?それって何?」
「相手に触らずとも相手を攻撃したり、防御したりする能力だよ」
かよ子は説明した。
「私が・・・」
奏子は自分がまさかそんな能力があるとは信じられなかった。
「俺も同じ能力を持っているから家族から嫌われて清水に来たんだよ」
「そうだったんだ・・・」
「奏子ちゃん、その子達が君が呼んだ子かい?」
「うん、笹山かず子ちゃんと藤木茂君よ。かず子ちゃんは近所の子で、藤木君は来たいって言ってた子なの」
「そうか・・・。かず子ちゃんか、可愛い子だね」
「え・・・」
笹山は照れた。その一方で、三河口は藤木の方を見た。
「藤木君・・・、どうやら君はかず子ちゃんに惚れてんのかな?」
「え・・・!?」
藤木は急に顔を赤くして恥ずかしがった。
「それで来たかったんじゃないのかい?」
「あ、いや、そんな事・・・」
藤木は誤魔化した。どうして本当の事を素直に言えないのだろうかとかよ子は少し呆れるのだった。
「文化祭は楽しんでるかね?」
「あ、はい・・・」
「いいや、そうでもなさそうですよ。さっきまでゲームやってたんですけど、笹山にいいとこ見せられなくて・・・」
「それで寂しそうにしてましたし・・・」
「大野君、杉山君・・・」
藤木は恥ずかしなった。
「それじゃあ、こうしようか。二手に分かれよう。奏子ちゃん、かず子ちゃんに藤木君と一緒に回ってくれるかな?俺達は残りのメンバーで周るって事で」
「え?うん、いいわよ」
こうして二手に別れる事になった。奏子は笹山と藤木、そして笹山の両親と共に周り、かよ子達と別れた。
「お兄ちゃん、これでいいの?」
かよ子は確認する。
「ああ、あの藤木茂って子が笹山かず子って子が好きそうだって事が大野君と杉山君の発言から読み取れたからね、俺の友達に付き添わせておけば大丈夫かなって思ったんだよ。藤木君にとって良い事になればいいんだが」
「じゃあ、俺達も周るか」
かよ子達も三河口や大野、杉山達と再び文化祭を楽しみ始めた。
後書き
次回は・・・
「二人で楽しめた時」
三河口を発見し、再びかよ子達は文化祭を楽しむ事にする。体育館の所ですみ子達「義元」とも再会をした後、すみ子達は模擬店へ、かよ子達は体育館で演劇部の演劇を見ることにする。そして藤木は笹山と楽しいひと時を過ごせるのか・・・。
73 二人で楽しめた時
前書き
《前回》
三河口を暴行する彼の兄・三河口響を止めようとするかよ子達。異世界の道具を使用する事に躊躇うが、奏子が武装の能力を行使して皆を守り、彼女に異能の能力が宿っている事を皆は知る。騒動を収めた後、響は叔母・叔父と行動する事になり、三河口の提案で藤木と笹山を奏子に引率させ、かよ子や三河口達・残りのメンバーで行動する事にしたのだった!!
かよ子達は文化祭巡りを再開した。
「ミカワ、俺達は妹達を捜すよ」
「ああ、いいよ」
濃藤はかよ子達と別れた。
「はて、皆はいろいろ楽しんだのかな?」
「ああ、ゲームとかもいろいろ楽しんだぜ」
「んじゃ、体育館でそろそろ演劇部が演劇をやるからそれを見に行ってみようか」
「うん!」
皆は体育館へと向かった。その時だった。
「いやあ~、最高の演奏だったな」
「俺も興奮したぜ!」
「そっか、俺も音楽好きだからね」
「あ!」
かよ子は再会に驚いた。すみ子達隣町の小学校の面々だった。すみ子の兄も彼女達と合流できたようだ。
「かよちゃん達・・・!」
「おう、やっぱりお前らも来てたか!」
「ああ、すみ子に誘われてな。文化祭ってのは結構楽しいものだよな」
「今、俺達は軽音楽部のコンサートを聞いてきたとこだったよ。すげえ会場が盛り上がってたぜ!」
山口は感想を述べる。
「次にやるのは演劇部だけど、見てくかい?」
すみ子の兄が聞く。
「ああ、俺達も丁度その気分だったんだ。君達はどうする?」
三河口はすみ子達に聞く。
「オイラ達はちょっと外の空気を吸いたくなったんでまた模擬店の方をまわるでやんす」
「そっか、んじゃ、またな」
かよ子達は体育館へと入り、すみ子達は模擬店のコーナーへと向かった。
奏子の引率により藤木は笹山と少し楽しめると思うとホッとした。一方の笹山はかよ子達と別々の行動になるのは少し寂しかったが近所に住む奏子と一緒に周遊できるのは嬉しかった。
「校内のゲームのコーナーとか展示のコーナーとかは殆ど楽しんだのよね?」
「うん。男子達はサッカーや野球のゲームとかやったし、ヨーヨー釣りもやったわ」
「それじゃあ、なんか作り物とかやってみない?美術部は絵の展示もやってるけど、別の場所では粘度でいろんなものを作るコーナーもやってたわよ」
「いいね、藤木君、そこ行こうよ」
「う、うん、いいよ」
藤木は笹山と二人で粘土作りができると思うと楽しくなった。入った一年生の教室では粘土で好きなものが作る事ができるのだ。中には美術部が飾ってある粘土の作品が並んでいた。犬や猫、人形、自動車や電車などの試作品が並んでいた。
「やあ、粘土で何か作ってみるかい?」
美術部の男子生徒が問いかけた。
「はい、お願いします!」
「ぼ、僕も!」
二人は粘土を作る手順を男子生徒から聞いて作成を始めた。
「粘土やってるとなんか図工の授業みたいだよね」
「え・・・、あ、うん・・・」
藤木は途中で笹山が話しかけられて戸惑ったが、少し嬉しくもあった。
「何作ろうか?」
「う、うん・・・」
二人は粘土作りで少し迷いながらも楽しんだ。笹山は猫を作ることにしたが、藤木はなぜか笹山ばかりを見ながら作っていた。
「藤木君、何、私ばっかり見て・・・」
「あ、いや、その、実は・・・」
二人の作る様子を見ながら奏子は推測する。
「藤木君はもしかしてかず子ちゃんを作ろうとしてるんじゃないの?」
「え・・・!?」
「え、そうなの!?」
笹山も驚いた。
「実は・・・。そうなんだ・・・。なるべく綺麗に作るよ!」
「ありがとう、楽しみにしてるわ」
「いやあ、ははは・・・」
奏子はやはりこの男子は笹山が好きなんだと改めて感じるのであった。形作りが終わると、次に色塗りを行う。
「藤木君、結構上手にできたわね」
奏子は藤木が笹山の顔そっくりの形の粘土に感想を述べた。色塗りをしたその粘土は本人そっくりだた。
「ありがとう。藤木君、嬉しいわ」
「あ、うん、笹山さんの猫もとても可愛いよ」
「ありがとう」
笹山もまた照れた。二人はそれを美術部の生徒に手渡す。
「お疲れ様。二、三十分で乾くからその時にまた来てね」
「はい」
奏子達は教室を出ると案内を続ける。
「今度どこ行ってみる?」
「そうね・・・」
「体育館で演劇部が演劇始まるから観てみない?」
「うん、行きたい!藤木君、どうかな?」
笹山は藤木に確認をとる。
「うん、いいよ」
(笹山さんと演劇観る・・・。まるで本当のデートだな)
藤木は浮かれた。やはりこの文化祭に来てよかったと思った。夏休みに出会った安藤りえという女子に恋していた時期もあったが、好きな女子とここまで親密になれるなんて藤木にとってはこの上ない幸運だった。
体育館の館内にはパイプいすが置かれており、観客席と化していた。かよ子達もそのパイプ椅子に着席する。
「あのステージの方で吹奏楽部がコンサートやったり、合唱部が合唱披露したり、大道芸部がマジックや独楽回しやジャグリングなどいろいろやってるんだよ」
三河口が説明した。
「凄いわあ!」
少ししてかよ子は遠くの方に奏子や藤木、笹山、そして笹山の両親も館内に入って来た事に気付いた。
「あ、笹山さん達もいるわあ!呼びましょうかあ?」
冬田は提案した。
「いいや、やめといたほうがいい。藤木君にとっては笹山さんと一緒にいられるチャンスなんだから俺達が関わると彼の気分を壊すことになるよ」
三河口が制した。
「は、はあい・・・」
(ま、いいわあ。私はこうして大野君といられるんだからあ・・・)
冬田は大野と文化祭を楽しむだけでも十分満足だった。
(でも、藤木君、笹山さんと何か楽しそう・・・)
かよ子は藤木がようやく文化祭を楽しめているのではないかと感じるのであった。
「お、演劇が始まるぜ」
皆は劇の観賞に浸った。
演劇が終わり、かよ子達は体育館を出る。
「ああ、面白かったね」
「ああ、俺も演劇部の演劇を見るのが好きでね、去年も楽しみにして観たんだ」
三河口は奏子を呼ぶ。
「奏子ちゃん」
「三河口君・・・。今年も観てたんだね」
「うん、ところで二人の調子はどうかな?」
「二人って?」
「かず子ちゃんと藤木君の事だよ」
「ああ、上手くやってたわ・・・」
「なら、二人にも楽しい一時を過ごせた訳って事か・・・。ん・・・!?」
その時、三河口の表情が急に変わった。
「お、お兄ちゃん、どうしたの?」
かよ子は三河口を不審に思い、質問する。
「急に胸騒ぎがしてきた・・・、もしかしたら・・・!!」
「俺もしてきたぜ・・・!!」
杉山も胸騒ぎを感じた。
(もしかして、まさか・・・)
その違和感からかよ子は何の事が分からない訳がなかった。
石松はエレーヌと共に「敵」を捜す。
「どちらに潜んでおろう・・・」
「でも、確かにこの地にいることは確か・・・」
すみ子は胸騒ぎが始まった。
「はあ、はあ・・・」
「すみ子、どうしたんだ?」
「あ、あいつらが来ている・・・!!」
「あいつらって・・・、まさか・・・!!」
「まさか、赤軍や異世界の人間か・・・!?」
「間違いないな」
一緒にいるすみ子の兄もそう答えた。彼にも見聞の能力が備わっているのだ。
「まさか、やっぱり来てるの!?」
かよ子はそわそわした。
「ああ、この文化祭を荒らしながら君の杖とかを奪いに来たのかもしれんぞ!」
その時だった。
「やはり、お主らもこの祭り事におられたか」
「も。森の石松!?」
「大変だ、皆の衆!『敵』がこの地に現れた!!」
「何だと!?」
皆は驚きを隠さない訳にはいかなかった。
後書き
次回は・・・
「文化祭の緊急事態」
かよ子達の前に現れた石松とエレーヌ。すみ子達と合流して「敵」の行方を追う事にしたかよ子達だが、その「敵」を発見したその時、とんでもない事が発生する・・・。
74 文化祭の緊急事態
前書き
《前回》
三河口の提案により藤木と笹山は奏子の引率によってかよ子達と別れる。藤木と笹山は粘土の工作を体験して藤木は笹山と二人で楽しめたと実感する。一方、かよ子達は体育館で演劇部の演劇を鑑賞する。だがその後、三河口やすみ子などが胸騒ぎを覚える。かよ子達の前に石松が現れ、「敵」が来た事を知らされるのだった!!
かよ子は石松に聞く。
「その相手はどんなの?」
「まだわからぬ。だが、応援としてこちらからもこの者が来てくれた。名はエレーヌという」
「どうも、こんにちわ。私もお力になれるように頑張ります。どうかご共闘を・・・」
エレーヌという西洋人のような女性が挨拶した。
「あ、はい」
「な、何が起きてるんだい!?」
藤木は顔も唇も真っ青にして質問した。
「変な奴が攻めて来たかもしれねえんだ」
大野が答えた。
「へ、変な奴!?」
「ああ、前に変な奴が学校に襲ってきたりしてただろ。そのような奴だよ」
「え、ええ!?」
藤木は怖がった。
「そうだな、藤木君達は避難した方がいいな。ただし、藤木君。逃げる時はかず子ちゃんと一緒に逃げ給え。一人で逃げるなよ」
三河口は藤木にそう告げる。
「え、どういう事だい?」
「君は、この笹山かず子ちゃんが好きなんだろ、彼女を精一杯守り抜けよ!」
「う・・・!」
藤木は動揺した。
「俺達は叔母さん達や他の皆と合流しよう!策を立てねば!」
「う、うん!」
かよ子はこの時に備えて杖を持っていておいてよかったと思った。そして、おっちょこちょいをしないようにと気を付けながら。
「奏子ちゃん、かず子ちゃんと藤木君達と一緒にいてあげられるかい?」
「え、うん、いいわ、あ、三河口君・・・」
「え?」
「怪我しないでね・・・」
「う、うん・・・」
奏子は三河口が兄に暴行された現場を見ていた為、あと彼が好きな事もあったのか気を使いたかったのだ。
「北勢田、濃藤と合流しよう」
「そうだな」
皆は濃藤とその妹のすみ子を捜した。
「私達はどうする?」
「そうね、一旦校舎の中に行こうか」
奏子は笹山達を誘導した。
「では、某達も別行動を足らせていただく」
「うん!!」
石松、エレーヌとも別れた。
かよ子達はすみ子ら組織「義元」の面々を捜す。
(すみ子ちゃん達も大丈夫かな・・・)
その時、奈美子達と遭遇した。その旦那や三河口の兄・響もいた。
「あ、隣のおばさん!!」
「まきちゃん、健ちゃん、かよちゃん達も!」
「奈美子ちゃん、大変よ!健君達によるとまた『敵』が来たらしいの!」
「は!?」
だが響には言っている意味が通じない。
「お前、またくだらねえ事やってんじゃねえだろうな!?」
「じゃあ、お前は一人で文化祭楽しんでやがれ!」
「あ、てめえ!!」
「やめてよ、こんなところで兄弟喧嘩してる場合じゃないよ!!」
かよ子は思わず制止に振り切った。
「かよちゃん・・・!!」
「お兄ちゃんはくだらない事なんかちっともやってないよ!!今までで何度か私達に協力してくれたし、助けて貰ったもん!三カ月前の大雨の時だって、赤軍の人とかと一緒に戦ってくれたし、東京にいる悪い人を一人でやっつけてたんだよ!!」
「ちっ、こいつめ・・・」
「かよ子、兎に角そのすみ子ちゃん達を捜しましょ」
かよ子の母は娘に促す。
「うん」
「響、お前はどうする?俺達と『敵』を探すか、それとも下らん事としてほっとくか」
「じゃあ、一緒に探してやるよ、お前が一番危ないからな」
響は弟に嫌味を言いながら一行に加わった。
すみ子達もまた捜索に当たっていた。
「すみ子、何か感じるか?」
山口が聞く。
「うん、とても息が苦しくなるくらい・・・」
「となると、もう近くに奴がいるって事か・・・」
すみ子の兄はそう推測する。その時・・・。
「濃藤!!」
濃藤は三河口達が近づいてくるのが見えた。
「ミカワ、北勢田・・・!!」
「今、俺達は異常な胸騒ぎがしているが、お前はどうだ!?」
三河口は質問した。
「ああ、俺もめちゃくちゃしてる。妹も同じだ!!」
「やはり、『奴』は近くにいるんだな!」
大野は確認をとる。
「ああ・・・」
三河口は右の方に視線を向けた。そこに一人の男がいた。
(もしや・・・)
かよ子は三河口に聞く。
「三河口のお兄ちゃん、もしかして・・・」
「ああ、間違いない、あの男だ・・・!!」
三河口は作戦を考える。
「大野君と杉山君とブー太郎とまるちゃん、君達はあの男の後ろに回ってくれるかい?」
「あ、ああ・・・」
杉山達は三河口に従いながらこちらに近づきそうな男性の裏に回った。
「北勢田、濃藤、俺達でゆっくり近づこう。そしてかよちゃん達、『武器』の用意を忘れるなよ」
「うん・・・!!」
かよ子は杖を見られないように手を忍ばせた。あの男は日本赤軍のメンバーか、それとも異世界からの刺客なのか・・・。
「あの、そこのおじさん」
三河口は一人の男性に声を掛けた。
「何だ?」
「ようこそ文化祭にお越しいただきありがとうございます。ところで俺は貴方に近づくと、胸騒ぎがするんですけど、この前は、たしか貴方オランダにいた筈じゃないですか?」
「お前こそ、俺がお前らとそこのガキどもを知らんとでも思ってんのか」
「いえ、だってアンタ日本赤軍でしょ?西川純って」
「てめえ、やっぱり!!東京で日高を襲った高校生だな!!」
西川純と呼ばれた男は拳銃を突き出す。だが、急に巨大な蔓が現れ、西川を巻き付けた。
「ナイスだ、大野!」
大野が草の石の能力を行使した。
「さて、降参してもらおうか。出なきゃ、今度はその蔓に炎を付けてバーベキューにするぞ!」
「そ、それはどうかな・・・?」
「何?」
その時、爆発音が聞こえた。多くの「ワーー!!」「キャーー!!」という悲鳴が聞こえた。かよ子は振り向いた。模擬店の調理用のコンロのガスボンベが急に爆発した。三河口のクラスの焼き鳥店も含まれている。
「ど、どういう事!?」
かよ子はこれはただの事故ではないと察しがついた。その時、すみ子が更なる吐き気がするくらいの胸騒ぎがした。
「て、敵は、他にもいるわ・・・!!」
「何だって!?」
かよ子は見回した。混乱となる模擬店コーナーの中でコソコソと逃げた男がいた。
「み、水はオイラが消すブー!」
ブー太郎は動こうとする。
「だめだ!!あれはガスボンベを使った火だ。水じゃ消えないし、寧ろもっと燃え広がる!!」
三河口が制止する。
「ど、どうしよう・・・!!」
かよ子は焦る。
「水がだめなら土で消す!」
「そうだ、ヤス太郎、お前、土を使う玉あったよな!」
川村がヤス太郎に確認する。
「ああ、そうだったでやんす!『土玉』行くでやんす」
ヤス太郎は土玉をパチンコで放った。1個のみならず幾度も連発する。
「かよちゃん、ここに石がある!」
三河口は石をかよ子に投げた。
「これで石の能力を得てヤス太郎を援護するんだ!」
「うん!!」
かよ子は石に杖を向けた。ヤス太郎が土によって火を弱めた部分に向かい、かよ子も石や砂などを作り出して消火を急いだ。火は弱まっていった。
「それだけで『俺達』を止められると思うなよ・・・」
西川は苦し紛れに笑った。
「何!?」
かよ子達は他の客達、先程別れた笹山や藤木などの安否がより心配になった。
校舎の窓から奏子達は模擬店コーナーの炎上を見ていた。
「山田さん達、大丈夫かしら・・・」
「大丈夫よ、私の友達もいるんだから・・・」
その時、校内でも悲鳴が聞こえた。
「何!?」
「ひ、ひいい~!!」
藤木は恐怖で震えた。笹山も恐怖で動けなくなる。
(まさか、こっちにも変な人が・・・!!)
その時、銃弾のような物が遠くの壁に刺さった。奏子は確認して見ると尖った金属の破片だった、多くの人が逃げ、その後には男が一人いた。
「な、何、貴方は!?」
「俺は、日本赤軍だ。我々の計画を邪魔する奴等を抹殺しに来た。ほう、この娘、人質に良さそうだな」
「お、お姉さん!!」
(み、三河口君、助けて・・・!!)
奏子も足がすくむ。男は手に仕込んだ金属の破片を奏子に投げて襲い掛かった。
後書き
次回は・・・
「祭中のテロ」
奏子、笹山、藤木を襲撃するもう一人の日本赤軍の構成員。模擬店コーナーの火災を消し止めたかよ子達は三河口が西川を尋問している間にもう一人の赤軍を追い、そして対峙する・・・。
75 祭中のテロ
前書き
《前回》
石松とエレーヌから敵が文化祭に侵入していると聞いたかよ子達はすみ子達と合流後、赤軍の一人、西川純を発見し、拘束に成功する。しかし、侵入者はもう一人おり、その人物が模擬店コーナーの各々の店舗のガスボンベを爆発させ、火災を発生させる。ヤス太郎のパチンコやかよ子の杖の能力で消火させる。そして藤木、笹山と逃げた奏子はもう一人の赤軍と対面し、襲撃される!!
日本赤軍の男は奏子に向けて攻撃した。
「お姉さん!!」
笹山は思わず泣きそうな顔で叫んだ。だが、その金属は奏子に当たらずに途中で跳ね返った。
「うわっ、いてえ、なぜ跳ね返ったんだ!?」
男は自分に刺さった金属を慌てて抜いた。
「ここに敵はおったか!」
石松とエレーヌが現れた。
「あ、貴方達は確か・・・」
「某は森の石松である」
「私はエレーヌでございます」
「お主、まさにそれは『武装の能力』であるな!」
「え?う、うん・・・」
「よく凌いでくれました。ここは私達にお任せください。お逃げになって」
「う、うん、行こう!」
奏子は笹山と藤木、そしてその両親を連れて逃げた。皆は何とか体育館裏の目立たない所に避難した。
「日本赤軍の者よ、お主の相手は我々だ!!」
「ホウ、お前は異世界の刺客だな。この山田義昭が消してやる!」
石松とエレーヌ、日本赤軍の山田義昭との決戦が始まった。
かよ子の石の能力、ヤス太郎の土玉による土消火によって火は小さくなっていった。
「ふう、何とか大火事にならなくてよかった・・・」
かよ子は蔓に捕まっている日本赤軍のメンバー・西川の方を見た。
「おい、西川、お前の仲間はどこにいる?」
三河口は西川に聞く。
「どうしてこんな文化祭を荒らすの?」
かよ子も聞く。
「それがチャンスだと思ったんだよ。ハーグの事件では広島から奪った異世界の剣で上手くいったからな。次こそは杖を奪ってそれを試して、上手くいったら今度は杯と護符だ。強い日本の復活を目指す為にな!!」
「いや、絶対に渡さない!!」
かよ子は反論した。
「かよちゃん、もう一方の相手を『義元』の皆と探してくれ!」
「うん!」
「健ちゃん、私も行くわよ」
「おばさん・・・、はい、お願いします!」
そして三河口は周囲に呼びかける。
「誰か警察を呼んでください!!日本赤軍が高校の文化祭でテロを起こしていると!!」
「さあて、連れて来たお前の仲間はなんて名前だ!?」
三河口は尋問を続けた。かよ子は奈美子、山口、川村、ヤス太郎、そしてすみ子からなる組織「義元」の面々と別の敵を捜しに校内に入った。
石松とエレーヌは山田義昭との戦いを続けていた。
「金属攻撃を喰らえ!お前ら異世界の奴でも効くぞ!」
山田は金属飛ばしを銃撃の如く乱発した。石松は何とか刀で跳ね返す。そしてエレーヌは腕を一振りさせた。エレーヌの能力であり、金属は二人に当たらずその場に落ちた。
「やるな、だが、これでも精密機械メーカーに僅かな期間だけだが勤めてた身だぞ。先程の模擬店コーナーのガスボンベの余りを奪って来た。これで爆破道具に作り替える事も俺はできるぞ!そうすればお前らもお陀仏だぜ」
山田はガス爆発で吹き飛ばそうとした。その時だった。なぜかガスボンベは不発だった。
「そうはさせないぜ!」
「何だ?」
山田は後ろを振り向いた。小学生の子供や大人の女性一名がその場にいた。
「アンタね、もう一人の敵ってのは」
奈美子は男を睨みつけた。
「その爆発はすみ子の銃で無効化してもらったぜ!」
「お、お前ら・・・」
「皆の衆!この者は金属などを使用するぞ!その場に落ちておる!」
「金属・・・、なら・・・!」
かよ子は咄嗟に閃いた。金属に杖を向けた。杖は物を何でも切断する能力を得た。杖先に丸鋸を装着している。
「山田かよ子!この者は赤軍だ。殺生はならぬぞ!」
「うん!傷つけない程度にやる!」
かよ子は丸鋸を発射した。ガスボンベは真っ二つになり、中身のガスが出た。山口が矢を射る。矢は山田の腕に刺さり、山田は痺れて動けなくなった。
「これでお前は動けないぜ。後はお前を連れて警察に突き出す」
「皆は危ないから私が確保するわ」
奈美子は山田を捕まえた。
「某も警護の為に付き添わせていただこう」
「私も」
「ええ、その方がありがたいわ」
石松とエレーヌも同行した。
騒ぎの中心地となった模擬店のコーナー。三河口は西川への尋問を続けていた。だが、西川は答えないままだった。
「一緒に来た奴の名前は何だ!?俺の恐ろしい能力を発動させてもいいのか!?」
三河口は怒りの頂点に達した。
「あ、てめえ・・・。またとんでもねえ事しやがって・・・」
響は弟の姿を見る。その時だった。
「う、うう・・・」
西川は急に意識を失った。
「これは・・・。ミカワの能力か・・・」
「ああ、あの時、丸岡を吹っ飛ばした時みてえだな・・・」
たまえととし子もこの男子の凄さに驚愕していた。
「あの人・・・、凄いね」
「うん」
三河口は威圧の能力を最大限に発動させた。西川が気絶するほどの威力だった。
「はあ、はあ・・・」
「皆、怪我はない・・・?」
「ええ、お姉さんは?」
「私は大丈夫よ」
奏子は改めて自分の行動を顧みる。三河口を守ろうとして彼の兄を触れずに地に叩きつけたり、先程も日本赤軍と名乗る男の攻撃を何もせずに撥ね返した。三河口は中学生の頃から実家を離れてこの清水に来た理由が普通の人と違う「もの」を持っているからと言うが、自分ももしかして・・・。
「山田さん達、大丈夫かしら・・・」
「そうね、行ってみようか・・・」
皆はその場を離れた。
かよ子達は山田義昭を連行しながら模擬店コーナーへと戻っていた。その場には三河口が西川への尋問を続けていた。
「お兄ちゃん、他の仲間を連れて来たよ」
「かよちゃん・・・。ああ、ありがとう。西川の方は気絶している」
「に、西川・・・」
山田は痺れながら蔓に巻き付けられている西川を見る。
「警察には連絡したからもうすぐ来るよ」
利治が答えた。
「う、うん・・・、おじさん、ありがとう」
「大野君、西川はもう答えられん。巻き付けている蔓を解いてやってくれ」
「あ、ああ」
大野は蔓を解き、西川を降ろした。その時、パトカーのサイレンが鳴った。
「これで、私達、やっと日本赤軍を捕まえたんだね・・・」
かよ子は振り返った。思い出せば、長山を奪いに来た丸岡修も、大雨を降らせて襲撃して来た奥平純三も、取り逃がしていた。今度は本当に捕まえる事ができたんだと。これで、相手の勢力も少しは縮小できるのではないかとかよ子は少し今後に期待を膨らませた。
後書き
次回は・・・
「あと一歩の所で」
警察が到着し、西川と山田は逮捕された。赤軍のテロで文化祭は中止となり、かよ子達は帰る事になる。一方、二人を護送する警察達は途中である人物と対面する事になり・・・。
76 あと一歩のところで
前書き
《前回》
西川と共に文化祭に侵入したもう一人の赤軍のメンバー・山田義昭に襲撃されそうになる奏子、藤木、笹山。だが、彼女達の前に石松とエレーヌが現れ、奏子の異能の能力の影響もあり、九死に一生を得る。奏子達を避難させ、石松とエレーヌは山田と交戦するが、その場に乱入したかよ子達の応援もあり、山田の拘束に成功。そして西川と山田はその場に駆け付けた静岡県警に引き渡されるのであった!!
静岡県警が来て、西川と山田が遂に逮捕される時が来た。警察は赤軍のメンバー達を獲捕されていく。
「私達、初めて日本赤軍を捕まえたんだね・・・」
かよ子はその光景を改めて確認するのだった。その時、奏子が藤木と笹山、そして笹山の両親を連れてかけつけてきた。
「皆、大丈夫?」
「奏子ちゃん、ああ、奴らは捕まったよ」
「あ・・・」
奏子達も赤軍達が警察に逮捕される様を見た。
「あれが、日本赤軍・・・」
「凄いよ、僕なんかじゃ、絶対にやっつけられないよ・・・」
藤木はその場にいた大野や杉山を羨ましく思った。自分にも彼らのような勇気があれば笹山も自分を見直してくれるのにと思った。
だが、その時、杉山が異様な胸騒ぎを感じた。三河口や濃藤、北勢田、すみ子なども同様だった。
「なんだ、これは・・・」
「ああ、西川の気配でもさっきかよちゃん達が捕まえた奴の気配でもないな」
「まさか、別の奴が・・・!!」
「ええ!?今すぐにでも・・・!!」
「待て、山田かよ子!」
石松が静止した。
「どうして!?」
「この戦いの激しさでお主が出てもさらに危うくなるのみだ。杖を奪取する為の絶好の機会となってしまうぞ!!」
「あ、そうだった・・・」
かよ子は冷静さを忘れてまたおっちょこちょいをやってしまったと思った。飛んで火に入る夏の虫になってしまう所だった。
「かよ子、石松の言う通りよ。無理して今、杖を奪われたらとんでもない事になるわ」
「うん・・・」
「まずは、この荒らされ様を直す必要があるわね」
奈美子が見回しながら言った。
「はい」
三河口、濃藤、北勢田、そして奏子は己の店舗に行く。
「皆、大丈夫か?」
「うん、怪我人はいなかったよ」
真希が答えた。
「よし、店を直すか・・・」
その時、放送のチャイムが鳴った。
『ご来場の皆様に連絡致します。大変申し訳御座いませんが、今回の文化祭は異常事態発生の為、これにて打ち切りとさせて頂きます。生徒の皆様は片付けを始めてください。ご来場の皆様、本日はご来場頂きましてありがとうございました。そして、大変な事態に巻き込んでしまい、大変申し訳御座いませんでした』
「よし、エレーヌ、某と共に捕まった赤軍の者達の追跡をしてくれるか?」
「あい、畏まりました」
「では、我々は奴らを追う。お主ら、気をつけて帰るのだぞ」
「うん」
「かよ子、帰るわよ」
「うん、あ、す、杉山君・・・」
かよ子は好きな男子の元へ近づく。
「どうしたんだよお?」
「ごめんね、折角文化祭を楽しもうと思ったのに、こんな大変な事に巻き込んじゃって・・・」
「ああ、気にすんなよ」
「俺達も帰ろうぜ」
大野が提案する。
「なあ、皆」
山口が皆に尋ねる。
「今日も色々協力してくれてありがとうな」
「ああ、だが、お前らも一人とっ捕まえていい活躍だったぜ」
大野は「義元」の活躍を賞賛した。
「じゃあ、また会ったら戦おうぜ、じゃあな!」
「うん!」
組織「義元」は撤退した。
「ねえ、あの子達って誰なの?」
笹山が質問する。
「隣町の学校の子だよ。前に色々あって友達になったんだ」
「へえ、山田さんって違う学校にも友達がいるのね」
「う、うん・・・」
県警によって西川と山田は護送される。だが、パトカーは途中停車した。
「ちょっと、そこのお姉さん、車道を立ってちゃ危ないよ。どきなさい」
西川と山田ははっとした。もしや、助け舟と・・・。
「どくのは貴方達の方よ」
「何!?」
警官たちはまさかと思った。女性は剣を持っている。
「ハーグでも使われたこの『剣』を試させてもらうわ。フビライ、まずは奴等の意識を奪いなさい」
「アイヨ」
その時、背後からモンゴル人のような衣装をして髭を生やした男性が現れた。
[脱魂]
フビライはモンゴル語でそう唱えた。その時、警官達が次々と昏睡状態に陥り、フビライの手にボールのような物ができた。
「この人の達の魂はここにあるヨ。今だヨ」
「純、義昭。お疲れ様」
「房子総長・・・」
西川は自身のリーダーに跪いた。
「申し訳ございません。杖の奪取は失敗しました」
「いえ、大丈夫です。それでも、もう一つの作戦は成功されました。それにハーグの事で折角奪還した義昭もまたすぐ逮捕されるなど私には我慢なりませんから。ね、義昭?」
「ああ、勿論です。西川、あれを取り出してやれ」
「へい」
西川は義昭に言われてポケットの中の小型の機械を取り出した。ボイスレコーダーのようなものだった。
「流石は精密機械のメーカーの元従業員ですね」
「ああ、これで『奴』の実力を上手く研究・勉強に使えますよ」
「では、次は私の番ね」
房子は剣を一振りした。パトカーは遠くへ吹き飛ばされた。
「これでいいわ。フビライ、私達が去ったら警察達の魂を元に戻しなさい。貴方達は私に掴まりなさい」
「アイヨ」
西川と山田は房子に掴まり、房子は剣を一振りさせて風を起こし、その場から跳んで去った。
[脱魂]
フビライはモンゴル語で再びそう唱えた。魂を元に戻された警官は一体何があったか分からなかった。
「では、私も戻るか・・・」
と、その時、叫び声が聞こえた。
「こ、これは何だよ!?」
「あいつは何者でやんすか!?」
フビライは四人の少年少女に姿を見られた。
「お前、異世界の人間だな!!」
一人の少年がバズーカを取り出した。
「そちらこそ敵かネ?」
「お前こそ何者だ!?」
「私はフビライ。日本を今度こそ私のものにして貰うヨ!」
「何を!」
一人はバズーカ、一人は弓矢を、さらに一人はパチンコを、そして最後の少女は拳銃を取り出した。フビライは三度モンゴル語の唱和で四人の魂を奪い取ろうとする。
「させぬ!」
背後からフビライは何者かに刺された。森の石松だった。石松がフビライの背中から刀で刺したのだった。
「お前、私が自分自身を脱魂して、他の者に憑依する事もできるのだヨ。そうすれば私本体への攻撃は無効になるヨ」
[憑依]
フビライはモンゴル語でそう答えた。
「は!」
石松はフビライに体を乗っ取られた事に気付いた。
「私は今、お前の身体に取り付いた。私がこの刀でお前を切り刻めばお前もどの世からも消失するヨ。私は平気だけどネ」
石松の体に憑依したフビライはもぬけの殻となった自身の体から刀を抜き、石松の首を自分で斬ろうとする。
「石松!!」
エレーヌは一踊りした。その時、石松は自分で自分の首を斬るような姿勢から解放された。フビライの憑依の能力が解かれたのだ。
「今、貴方の能力を途中で解除する踊りをさせていただきました。」
「こ、この・・・」
「なら、チャンスだ!」
一人の少年のバズーカが発砲された。フビライが吹き飛ばされる。
「う、この・・・」
「よし!」
フビライは再び自身の魂を抜いて、他の者に憑依しようとした。しかし、できない。
「生憎ですが、私のこの踊りは能力が1踊り10分は制限されます」
「なぬ・・・」
「よし!」
一人の少年が矢を放った。見事フビライに命中した。そしてバズーカがもう一度発砲され、パチンコも飛ばされた。
「う、うおおお・・・。私の夢が・・・。今度こそ叶うと思ったのに・・・!!」
フビライは光となって消えた。
「それじゃあ、私達も帰りましょうか」
かよ子の母は提案する。
「うん、そうね、響君はどうするの?ウチに泊まる?」
奈美子は響に確認をとる。
「いや、そのまま帰りますよ」
「そう、じゃ、気を付けてね」
響はさっさと帰ろうとする。
「なあ」
響はかよ子達に顔を向けた。
「あのバカがまたなんかやったらボコボコにしとくよ」
「あのお兄ちゃんはそんな事しないよ!」
かよ子は反論した。
「そうだ、お前、勘違いにも程があるぞ!」
杉山もかよ子の肩を持った。
「・・・」
響は何も言わずただ睨みつけて去った。
「帰ろうか、私達も」
たまえが呼び掛ける。
「うん・・・」
かよ子はこの杖が奪われなかったのは幸いだが、折角の文化祭がこんな荒らされた事に日本赤軍への怒りがさらに高まったのだった。
後書き
次回は・・・
「エレーヌの羽衣」
文化祭から帰るかよ子達はパトカーが滅茶苦茶にされている様を見て日本赤軍の長が現れたと石松から聞かされる。そして帰る途中、藤木は笹山からある事を確認される。一方、後始末を終えた三河口達の前にはエレーヌが現れ・・・。
77 エレーヌの羽衣
前書き
《前回》
かよ子達の活躍により、赤軍の構成員・西川純と山田義昭の逮捕された。しかし、護送中に赤軍のリーダー・重信房子と異世界の人間・フビライが現れ、彼女らの襲撃によって西川と山田を逃がされる。そして房子は後始末をフビライに任せて立ち去るが、フビライは石松やエレーヌ、そしてすみ子達に発見され、討伐されたのであった!!
三河口達は散らばった食材を見る。
(こんなに食材を粗末にしやがって、あいつら・・・!!)
「三河口君・・・」
「ん?」
奏子が呼ぶ。
「酷いね、あの人達」
「うん、あいつらを何としても倒さないと、日本はまた間違った道へと進んでしまうからね」
「間違った道って?」
「再び日本を戦争の国とする道だよ」
「そんな・・・」
「まずは片付けようか」
「うん・・・」
三河口達はクラス名と共に模擬店コーナーの片付けと清掃を始めるのだった。
かよ子達は帰るとその道路の大通りが混乱していた。パトカーがひっくり返ったり、横倒しにされている。
「あれってさっき赤軍の奴を護送したパトカーだったよな?」
「ああ、なんで?」
「あれは別の敵によるものだ」
石松とエレーヌが現れた。
「別の敵?」
かよ子は聞く。
「左様、日本赤軍の長が我々の世界におる『剣』を使って吹き飛ばし、さらに異世界の者を召喚してその者の能力を利用して赤軍の者を助け出して撤退したのだ!」
「そ、そんな・・・。折角捕まえたと思ったのに・・・!!」
「『剣』・・・。前に御穂津姫から聞いたんだけど、広島で奪われたあの異世界の『剣』かい!?」
長山が質問した。
「いかにも。まあ、異世界の者は我々と組織『義元』の皆で葬り去る事はできたが・・・」
「そうだったんだ・・・」
「お主、健闘ご苦労だった。では、また、共闘しよう」
「うん・・・」
皆は石松にエレーヌと別れた。
「石松」
「何だ?」
「私、あの学舎に一旦戻ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わん」
エレーヌは高校の方角へと向かった。
かよ子達は電車に乗る。石松の言葉を思い出しながら。
《日本赤軍の長が我々の世界におる『剣』を使って吹き飛ばし、さらに異世界の者を召喚してその者の能力を利用して赤軍の者を助け出して撤退したのだ!》
(日本赤軍の長って・・・)
皆も文化祭の騒動の疲れで談笑できる気分ではなかった。皆は無言で車内を過ごすのだった。
(でも、絶対に杖は渡さない・・・!!)
電車を降り、皆は別れる。
「それじゃ、皆さん、お疲れ様。気を付けて帰ってね」
「うん、さようなら〜」
皆は帰ろうとする。その時、藤木は笹山に呼び止められる。
「藤木君!」
「え?」
「今、ふと思い出したんだけど・・・」
「え?」
かよ子も思わず立ち止まってその場を盗み聞きしようとする。
「かよ子、何してるの?」
「あ、ごめん・・・」
かよ子は慌てて親に付いていった。そして転びそうになった。
「もう、おっちょこちょいなんだから・・・」
一方、笹山に呼び止められた藤木はその場に立ち止まる。
「あの時、お姉さんの友達のお兄さんの言葉で私も少し驚いたんだけど、藤木君は、本当に、私の事、好きなの・・・?」
「え?あ・・・」
藤木は返答に詰まる。ここで本当の事を伝えたらどうなるか。本当に自分の気持ちを受け入れてくれるのだろうか。それとも、振られるか。
「実は、僕・・・、き、君の事が・・・、す、す、・・・」
「え?」
「好きなんだ・・・!!」
藤木は自爆覚悟で言った。
「そうだったのね・・・」
「笹山さん・・・」
「だから、私と文化祭楽しみたかったのね」
「うん、でも、空回りばっかりだったよ。いいとこ見せられなくて」
「ううん、そんな事気にしてないわ。最後は大変だったけど、藤木君と楽しめて良かったわ」
「笹山さん・・・」
「じゃ、学校でね、またね!」
笹山は両親と共に帰った。
(笹山さん・・・。ありがとう・・・。僕も楽しかったよ)
藤木は今回の文化祭に来て良かったと感じるのであった。
(よおし、笹山さんにもっと仲良くなれるように頑張るぞ!!)
藤木もまた帰っていくのであった。
文化祭のテロの後始末も終わり、三河口のクラスメイト達は集合した。
「それじゃ、今日は色々大変な目に遭ったけど、焼鳥や唐揚げは順調に売れたし、皆帰って休もう!解散!!」
皆は帰る。
「ミカワ」
三河口は濃藤と北勢田に呼ばれた。
「今日、お前、大変だったよな。兄貴にやられて、それで今度はテロと来たし」
「でも、どうして兄貴に対して能力を使わなかったんだ?」
「ああ、それは前はその能力を普通に使ってたけど、清水に来てからは使うのを控えると決めたんだ。そのせいか、日本赤軍とか異世界の敵とかといった相手にしか使えなくなったんだろうね。でも、兄貴にやられた時は奏子ちゃんに救われたよ」
傍で聞いていた奏子が照れた。
「い、いや、私は・・・」
「奏子ちゃん、俺達と一緒に変えるかい?」
「う、うん」
三河口、濃藤、北勢田、そして奏子は校門を出る。その時だった。
「あ、貴方達、お待ちになって!」
エレーヌが現れた。
「アンタ、確かエレーヌと言ったな」
「はい、貴方達、本日はお疲れ様でした。何とか『敵』の撃退に協力したお礼を申し上げたいのです。それで、徳林奏子さんでしたね、貴女は?」
「わ、私?」
「貴女は『武装の能力』をお持ちでしたか・・・。私、貴女の今後の活躍に期待したく、こちらを差し上げたいと思います」
エレーヌは奏子に帯のような物を差し出した。
「これは私がいる世界の羽衣です。この羽衣を身に纏えば飛行もでき、自分や守りたいものの対象を守りたいと思った時に相手の攻撃を防いでくれるものです。今後、日本赤軍や私達の敵との戦いもさらに激しさを増していきますのできっと役に立ってくれるでしょう。よくお考えになってお使いください。それでは」
エレーヌは去った。奏子は手に持った羽衣をどうしようか迷う。
「この羽衣、どうしよう・・・」
「エレーヌは君を選んだんだから、君が持っておくといいよ」
「う、うん」
「俺達ももしかしたら徳林さんを頼りにするかもしれない。じゃあ、また何かあったら協力しないか?」
濃藤は提案を持ちかけた。
「そうだね」
皆は帰って行った。
響は帰宅の為に新幹線に乗車していた。
(あの野郎・・・。本当に成長したのか・・・?)
いずれにせよ彼にとって忌まわしい弟である事には変わらない。
石松とエレーヌは再合流した。
「それでは私はあちらの世へ戻りましてウローレンスとイマヌエルに報告していきます」
「ああ、気を付けてな」
エレーヌは石松から離れた。
(奴らめ、勢いを増しおって・・・!!)
石松は更なる戦いの激化に心臓の鼓動を強めた。
かよ子は家に着いた。
「それじゃ、私は今回の事を電話で娘達にも伝えておくわ」
「それがいいわね。さようなら」
皆はそれぞれの家に入った。
「かよ子、東京のりえちゃんにも手紙で伝えたほうがいいわよ」
「うん、そうだね」
かよ子は東京の杯の所持者に手紙を書こうとする。
りえちゃんへ
この前隣に住んでるお兄さんが通ってる高校の文化祭に行ったら、日本赤軍が攻めてきました。杖は奪われずに済んだけど、今後が心配です。そちらは何か変わった事はありませんか?では、さようなら。
山田かよ子
かよ子は手紙を書き終えた。
(そういえば、藤木君と笹山さん、どんな話してたんだろう・・・?)
かよ子は藤木にとって最高の思い出だったか、それとも最悪の思い出だったか、今のかよ子にはまだ知らなかった。
そして、戦いが激しくなると共に、時は進んでいく。
後書き
次回は・・・
「隣人の高校生」
かよ子の隣の家に住む高校生・三河口健。彼はなぜこの清水に来たのか。そして彼はなぜ実の家族と決別したのか、かよ子達は羽柴家に上がり込んで真相を知ることになる・・・。
78 隣人の高校生
前書き
《前回》
三河口達は赤軍によって荒らされた学校の後始末を行う。かよ子達は帰宅中、逮捕したはずの西川と山田が赤軍の長によって逃がされたと石松から聞いて落胆する。一方、藤木は笹山が自分の気持ちに気付かれたが、彼女から文化祭を楽しめたと言われ、嬉しく感じる。そして三河口は濃藤に北勢田、奏子と帰る途中、エレーヌと遭遇し、エレーヌは飛行能力や防御をより強める事の出来る異世界の羽衣を奏子に渡して平和の異世界へと帰って行くのであった!!
今回からは何かと1話から登場しているあの高校生の過去に迫ります。なお、三河口健のモデルは作者・飛騨川自身です。
秋が深まり涼しくなった。かよ子は高校の文化祭での事を思い出していた。隣人のおばさんの甥・三河口健の兄が現れ、彼を人に迷惑かけているという理由で暴行していた事、さらには日本赤軍がテロを引き起こしたという事・・・。
(赤軍の攻撃もそうだけど、そういえばあのお兄ちゃんはなんでおばさんの家にいるんだっけ・・・?お兄ちゃんのお父さんとお母さんは・・・?)
かよ子は母に聞いてみる。
「お母さん・・・」
「え、なあに?」
「隣のおばさんちのお兄ちゃんの事なんだけど・・・」
「ああ、健君の事ね」
「あのお兄ちゃん、どうして隣のおばさんの家に住んでるんだっけ?お兄ちゃんのお父さんとお母さんってどうしてるの?」
「ああ、そうね、健君が来たのまだかよ子が幼稚園に行ってた頃だからね。そろそろ話してあげてもいいわね。お隣のおばさんにも言っておくわ」
「うん、ありがとう」
かよ子は礼をした。
まき子は隣の家で奈美子に相談する。
「奈美子さん、うちの子が健君がなんで清水に来たか知りたがってたんだけど、健君に話してあげてもいいかしら?」
「健ちゃんの事?うん、健ちゃんにも言っとくよ」
奈美子は承諾した。
その頃、三河口は部屋で横になっていた。
「健ちゃん」
叔母が入ってきた。
「はい」
「隣の山田さんとこのかよちゃんが健ちゃんがウチに来た理由や経緯を知りたがってたって聞いたけど、かよちゃんに話してあげてもいいかな?」
「あ、はい、自分の口で言いますよ。そうだ、この情報は他の皆にも知ってもらう必要があるかもしれませんね。かよちゃんの友達にも教えとこうかなと思うんですが」
「うん、いいよ。そこは健ちゃんに任せるよ」
「はい」
朝、かよ子は丁度家を出たところ。三河口も家を出た所だった。
「やあ、かよちゃん。おはよう」
「あ、三河口のお兄ちゃん・・・」
「おばさんから聞いたよ。俺の昔話聞きたいんだってね」
「あ、うん・・・」
「かよちゃん達にももっと詳しく教えてあげなきゃいけない時が来ると思っていたんだよ」
「そうなんだ・・・」
「杉山君や大野君、いや、組織『次郎長』の皆や冬田さんや長山君とかも連れて来た方がいいよ。俺が住んでるおばさんちに呼んでくれるかな?」
「うん!」
学校でかよ子は大野と杉山に話しかける。
「あ、あの、杉山君、大野君・・・」
「おう、山田あ。どうかしたのか?」
「実は私の家の隣に住んでる三河口ってお兄ちゃんが清水に来た理由を杉山君達に話したいって言ってたんだ・・・」
「ああ、あの兄ちゃんか・・・。行ってみるか、大野!」
「ああ、そういえば次郎長もあの三河口って兄ちゃんには三つの不思議な能力を全部持っているって石松が言ってたよな。俺も気になってきたぜ」
「うん!ありがとう!あと『次郎長』の皆も知った方がいいって言ってたからブー太郎とまるちゃんも誘ってくれるかな?」
「ああ、いいぜ」
かよ子は次に長山を誘った。
「あの、長山君」
「なんだい?」
「私の隣の家に住んでるお兄ちゃんが清水に来た話を聞かせたいって言ってたんだ。私も聞いてみたくなったんだけど、長山君もどうかな?」
「ああ、いいよ。そういえば文化祭の時、三河口さんのお兄さんが来て言いがかりつけて乱暴してたよね。それももしかしたら関係があるかもしれないね」
「え、ああ、そうだね」
次にかよ子は冬田を誘う。
「冬田さん、私の隣の家に住んでるお兄ちゃんが清水に来た理由を聞かせたいって言ってたけど冬田さんも行く?」
「え、私があ?私は別にい・・・」
冬田は渋った。
「大野君も来るよ」
「ええっ、大野君もお!?行くわあ!!」
大野の名を出されるとつい人が変わる冬田だった。
かよ子は自分の家に帰ると、すぐ隣の家の門へと行く。
「ああ、かよちゃん」
三河口が丁度帰ってきたところだった。菓子や飲み物を持ってきていた。
「今日の事、皆に話したら来てくれるって」
「そうか、ありがとう。俺も友人達も呼んだよ」
「そうなの?」
「うん、すみ子ちゃん達も来ると思うよ」
「うん、わかった、楽しみだね」
やがて、長山や冬田、組織「次郎長」が来て、やがて濃藤、北勢田、奏子、組織「義元」、そしてたまえも来た。たまえが来た理由としてはまる子が親友だから誘ったのだろう。皆は羽柴家に入って三河口が間借りしている部屋では狭いと思い、居間に集まった。
「皆、集まったね。それじゃ」
三河口は用意した飲み物と菓子を皆に振舞った。
「それじゃ、今日は皆来てくれてありがとう。俺の昔話を聞きにね」
「なあ、三河口さん」
杉山が呼ぶ。
「俺達、石松から聞いているんだが、不思議な能力は三種類あって、あんたはその全てを持っているんだってな」
「うん、もちろんだよ。だが、文化祭の時には兄貴に対しては発動する事ができなかった。それは俺は異世界の敵とか、日本赤軍とかいった『本当の敵』にしか使えなくなったんだ。でも、小学生の頃、俺が清水に来る前の事だな、普通の人にも平然と使って人を傷つけてきたんだ」
「今のお前はそう見えないがな」
濃藤が言った。
「うん、ここに来て凶暴な性格を変えようと決めたんだ」
「でも、私は三河口君がそんな風には見えないわ。文化祭の準備も片付けもあんなに頑張ってたんだもん・・・」
「でも、頭の中身も性格も変えなきゃいけないって思ったんだ。だから今の自分がいるんだよ。それじゃ、俺が小学生の頃の話をすべて聞かせよう」
三河口はジュースを飲んで話を始めた。
後書き
次回は・・・
「凶暴な小学生」
横浜に一人の小学生がいた。その児童は非常に暴力的で、前代未聞の問題児とされていた。しかし、そんな少年を受け入れてくれる人間がいた。それは清水にいる親戚の家だった・・・。
79 凶暴な小学生
前書き
《前回》
かよ子は隣のおばさんの甥、三河口がなぜ実家を離れておばさんの家に居候しているのか気になり出す。杉山達かよ子のクラスメイトや三河口の友人に隣町の子達がおばさんの家に集合した日、三河口は自分の過去を語り始める!!
「それじゃ、俺が小学生の頃の話をすべて聞かせよう」
かよ子は真剣な顔になりながら、話に耳を傾けようとした。
神奈川県横浜市。とある小学校に一人の男子児童がいた。その男子は怒りっぽく、すぐ人間関係でトラブルを起こしてばかりいた。その男子の名前は三河口健といった。
小学1年生の頃、ただ皆は休み時間に鬼ごっこをしていた。自分も皆と遊びたかった。だが・・・。
「あ、三河口はだめ」
「何でだよ、僕もやりたいよ!」
「ダメっつったらダメだ」
「何だよ、ケチ・・・!!」
三河口は仲間外れにされたその哀しさと怒りを抱いた。その時だった。三河口は鬼ごっこしている皆をぶん殴った。それもかなり勢いよく。先生に呼び出されて叱られたのは言うまでもない。当然親にも電話が来た。母に叱られた。
そして些細な事ですぐ喧嘩した。体育の授業でマット運動していた時、順番で揉めて相手を蹴り飛ばした。担任の先生からビンタを喰らってこう言われた。
「そんなに喧嘩すんならもう学校来なくていいよ!!」
三河口は叱られて泣いた。体育館を抜け出して校庭の隅で泣き続けていた。学校はこんなに嫌な所だと思うと行くのも嫌になった。そして何をやっても親に叱られる。兄とも喧嘩してはいつも弟の自分がけしかけた、自分が原因だという理由で親にはいつも自分だけが怒られる。家に居場所もない。
(なんだよ、もう・・・)
三河口には友達がいなくなった。休み時間は遊ぶことなく、図書室で本を読んでいるか、ただ机の上でボーっとしているだけだった。
ただ、そんな彼にもただ1つだけの楽しみがあった。夏休みに静岡県清水市にある親戚のおばさんに行く事だった。そこの叔母やその旦那、従姉達は優しく、遊んでくれた。
(この家の子だったら、いいなあ・・・)
三河口はいつも横浜の実家に帰る日になった時はその家や家族と別れるのが寂しくてたまらなかった。
暴力的な児童は進級しても変わらない。次の担任の先生からも三河口の事は暴れすぎのゴクツブシとしか思われなかった。叱られる毎日だった。とある日だった。たまたま言い合いになった女子に怒りを表した時、手も触れずに念力の如く途中にあった机や椅子をなぎ倒し、壁に叩きつけた。その女子は大泣きして、保護者同士で謝罪する事態となった。
「アンタはどうしてそんな事ばかりすんのよ!!」
母親に物凄く怒られたどころか、兄にも嫌な弟だといって激しく殴られた。だが、その時だった。兄が急に撥ね返された。そして三河口は兄への反抗の罰も併せて夕食抜き、家を出された。父親が帰ってきても母は父に入れさせないようにした。
家に出されたままの男の子はここにいるのが嫌になってどこかへ行ってしまった。外は夜となって暗かったが、帰るつもりはなかった。やがて三河口は警察官に会った。
「君、こんな遅くに一人で歩いてちゃ危ないよ」
「あ、すみません・・・」
「おうちはどこだい?」
「・・・帰りたくない」
三河口は何度もそう言ったが警察官はそうはいかなかった。三河口は交番へと連れて行かれた。学校で騒ぎを起こした事や兄弟喧嘩で家を出された事は一応喋った。とりあえず父が来てくれ、なんとか家に入れてくれたが、それでも母や兄との関係は険悪なままで何も変わらなかった。
そしてこの凶暴な態度は教師にまで矛先が向かうようになる。3年生の頃の担任の先生には「何も成長してない」と言われ、教師を吹き飛ばした。4年生にはこんな自分が嫌だと思い、飛び降り自殺を図った事がある。その時だった。即死してもおかしくないはずなのに、なぜか助かった。自分は死んで当たり前だと思ったのに死ぬ事もできないのか。これが学校でも問題となり、少し学校を休むように言われた。母は夏休みに親戚のおばさんの家に連れて行かないと言った。しかし、事情を母から聞いた叔母はそれは可哀想すぎる、娘達も三河口と会いたがっていると言われて何とかなった。従姉達はそんな凶暴な自分を恐れずに可愛がってくれた。三河口自身もこの時にようやく自分が自分らしくいられるのはこの家にいる時ではないかと思った。だが、その叔母さんの家の娘達もいつまでもいてくれるわけではなかった。この間に長女のゆりが大学に進学するという事で一人暮らしをする事となり、清水を離れてしまった。
5年生の頃の夏休み、三河口は従姉のさりと二人きりになる時があった。確か風呂から出た後にさりに部屋に呼ばれた時である。
「健ちゃん」
「さりちゃん・・・?」
「お母さんから聞いたんだけど、家でも学校でもとても辛い思いしてるの?」
「うん、怒ると急に暴れて自分でも抑えられないくらいになるんだ。それで兄貴からも嫌われたし、父さんや母さんも俺を少年院に入れようと考えてるんだって」
「ええ!?そんな、酷い!」
「それに、学校に戻ってもまた何か問題起こすんじゃないかって思うと心臓がビクビクして体もそわそわして・・・」
さりはその泣きそうな従弟の様子が正常ではないと思った。
「健ちゃんはこの家の方がいい?」
「うん、いつも帰る度に寂しくなってしょうがないんだ」
「そうなんだ。私も寂しいわ。ゆり姉はもう家を出ちゃったけどあり姉ももう高ニだから再来年になったら家を出るかもしれないの。そうなると私一人よ」
「そうなんだ・・・」
「健ちゃんがここにいて私の弟になってくれたらいいかも」
「うん、俺もさりちゃんと一緒だったらな・・・」
「だが、俺は本当に少年院行きとなったんだ」
「ええ!?」
皆は驚いた。今の三河口の性格からするとありえない事であろう。しかし、あれだけ暴れたというのならば仕方がないのかもしれないともかよ子は思った。
そして、本当に三河口は県内の少年院に送られた。ここには万引きや置き引きなどの盗みをしたり、傷害事件を起こしたりなどした少年少女が集まっていた。三河口は社会復帰していけるのか不安に思いながらも矯正訓練を受ける事となった。兎に角感情的になる事を抑えよう、あんな恐ろしい能力は封印しようと自分自身も努力した。そんな時、ある人物が面会に来た。なんと清水に住んでいる叔母だった。
「健ちゃん、元気にしてる?」
「叔母さん・・・。はい」
「あのね、健ちゃんが少年院に出たらウチで引き取ろうと思ってね。今の家に帰ったって辛いんじゃないかって思ったんよ」
「は、はい・・・」
「大丈夫よ。ありは家をでちゃうけど、さりがまだいるし、さりも喜ぶよ」
「はい、ありがとうございます」
三河口は兎に角叔母に恩に着るしかなかった。
(これで、俺は辛い思いをしなくていいのだろうか・・・)
三河口は院内の少年少女とは特にトラブルは起こさなかった。そして出所する時には、中学生になる前となっていた。家に戻って実の家族と別れる事にはあまり寂しさを感じなかった。寧ろもう戻りたくないと思った。引っ越しは叔母が家に来て手伝ってくれたという。
そして三河口健は中学生からは清水市での生活となったのである。
後書き
次回は・・・
「親戚の家へ」
清水での三河口の新たなる生活が始まった。小学生の頃とは全く違った環境や少年院での社会復帰の訓練の影響もあり、特に問題ない生活を送れるようになったのだが、その生活には別れもあった・・・。
80 親戚の家へ
前書き
《前回》
三河口の過去話が始まった。彼は小学生の頃、些細な事で激怒し、気付かぬうちに能力が発動して児童や教師を傷つけて行き、家族からも嫌われるようになり、少年院生活を経験していた。だが、親戚のおばさんの救いで少年院出所後は横浜の実家ではなく清水で暮らすようになったのであった!!
三河口の話を聞いた一同はこの時から武装、見聞、覇王の能力を発動させていたのかと知ると、少年院送りは確かに辛いだろうと思った。
「お兄ちゃんは少年院で自分を変えようとしてたんだね」
かよ子は感想を述べた。
「うん、もしかして少年院帰りだから俺が恐ろしく思うかい?」
「ううん、そんな事、気にしないし、どうでもいいよ。お兄ちゃんが変われたならそれでいいよ」
「じゃあ、ここに来てからの話をしよう」
少年院を出所した三河口は父の姉である叔母の家に居候する事になり、清水市内の中学校に通う事となった。荷物の移動は引越センターにも協力してもらったが、三河口自身は叔母の自動車で清水へ行く事になった。
そして叔母の家に着いた。門をくぐり、叔母の主人とその娘、すなわち三河口の従姉のさりがいた。
「やあ、よく来たね」
「よ、宜しく、お願いします」
三河口は利治とさりに挨拶した。
「健ちゃん、これから一緒だね」
「こら、さり」
さりの父は軽く注意する。
「ごめん、ごめん」
「さりは健ちゃんに凄く会いたがってたんよ」
「だってあり姉もいなくなって一人になっちゃったからね」
「喧嘩もしたくせに」
「でも、俺と兄貴の喧嘩と比べるとそんな激しいものではないのでは・・・」
三河口は急に畏まった。
「まあ、気にしないで」
羽柴家の家族は三河口を疎ましく思う事はなかった。三河口は空き部屋となっていた長女・ゆりの部屋を借りる事となった。
(ここで新しい生活が始まるのか・・・)
三河口はそう思うと、さりが部屋に入ってきた。
「健ちゃん、今日は来た記念に一緒に寝てあげる」
「え!?」
さりは自分の布団をわざわざ持ってきた。
「でももう中学生になるんだし、今日だけよ」
「はい・・・」
三河口はさりと雑談しながらやがて眠りについた。
その翌日、隣の家の人が来た。
「あら、まきちゃん」
「こんにちは」
「そうだ、昨日からね、ウチの甥っ子が住む事になったんよ」
三河口は居間に入った。
「この子が横浜から来た三河口健ちゃん、健ちゃん、お隣の山田まき子さんよ。私の古い友達なんよ」
「始めまして、三河口です。宜しくお願いします」
「宜しくね、そうだ、ウチの子も紹介するわ」
まき子は連れて来た幼稚園児くらいの女の子を紹介した。
「娘のかよ子よ。おっちょこちょいだけどよかったら一緒に遊んでね」
「はい、よろしくね」
「こ、こんにちは」
「そうだ、健ちゃん、かよちゃんとも一緒に遊ぼうよ」
その場に一緒にいたさりが提案する。
「うん」
三河口はさりにかよ子と双六したり、ビー玉を弾いて遊んだりした。
「そういえばその時がかよちゃんと初めて会った時だったな」
「あ、そういえば・・・」
かよ子もまたその時を思い出した。
「まあ、話を続けよう」
中学校生活は小学校の頃と異なり、難なく過ごせた。皆と遊んだりもしたし、勉強も勿論疎かににせず取り組んだ。やっと自分らしくなれたとも三河口は実感するのであった。そして男女問わず友達ができ、小学生の頃のような凶暴な行為に手を染める事はなかった。自分は更生したのだ、と三河口はそう実感した。
従姉のさりや、隣人の女の子・かよ子とも交流して三河口はこの清水の生活が最高であると共に、もう二度と横浜の実家には戻りたくないとも思った。だが、それでも実家の家族はやはり年に一度はこの家を訪れる。そんな時は彼らに会わぬようにと、さりの姉であるゆりやありの住むアパートなどに疎開したものであった。ゆりやありも三河口の事を邪険に扱う事なく接してくれた。
また、さりとの付き合いも永久に続くものではない。三河口が中学三年生に進級すると同時にさりも名古屋の専門学校に進学する為に清水を離れる事になってしまった。
「健ちゃん、ごめんね、離れる事になって。寂しい?」
「はい、でも、また会えますよね?」
「うん、いつでも手紙とか出すし、電話もするわ」
さりの両親や隣の山田家と共に新幹線の静岡駅にてさりを見送った。もう一人だ。だが、同時に自分は高校受験が待っている。さりが通っていた高校に行こうと三河口はそう誓うのであった(なお、幸いにもさりが通っていた高校は男女共学だった為、問題はなかった)。
そして、三河口は受験勉強に励んだ。そして、さりが通っていた高校に入学する事ができたのだ。
「・・・という事だ。それで、色んな事があったが、君達にも会えて俺は十分幸せだったよ」
「うん・・・」
「今日は俺の話を聞いてくれてありがとう。長話になってしまったが」
「いいや、俺、アンタの事よく知る事ができてよかったよ」
杉山が感想を言った。
「だが、俺はまたあの『忌まわしき能力』を発動させる事になっちまったんたがな」
「そ、そんな事ないよ!」
かよ子か抗議した。
「え?」
「お兄ちゃんの能力で赤軍をやっつけたし、この前の文化祭だって赤軍相手に必死でその能力を使って捕まえたよ!後で逃げられちゃったけど」
「ああ、そうだったね」
「それに私も忌まわしき能力だなんて思わないわ」
「奏子ちゃん・・・。それでも、俺は少年院入りを経験しているんだが・・・」
「そんなこと気にしないわ。ね、皆?」
「ああ、そうだな」
「俺も!」
皆はそれでもこんな白い目で見られてもおかしくない経歴の自分を受け入れてくれた事にありがたく感じた。
「ありがとう、皆」
その時、叔母が入って来た。
「皆、もう5時過ぎたよ」
「ああ、そうだね。皆今日はありがとう」
三河口と叔母は皆を帰らせた。
「あ、かよちゃん」
「え・・・?」
かよ子は三河口から呼び止められた。
「この前の文化祭に来てくれてありがとう。午後は大変な目に遭わせちまったけど」
「ううん、私も楽しかったよ。それに、藤木君と笹山さん、なんか前より仲良くなったみたいなんだ」
「ああ、あの二人が・・・。そっか、良かったね。そうだ」
三河口が思い出すように言う。
「そのお返しとして来月の運動会、応援に行くよ」
「え?うん、ありがとう!じゃあね」
「ああ」
かよ子は隣の高校生ともっと関係を深める事ができたと改めて思うのであった。
そして、時はまた進んでいく。
後書き
次回は・・・
「運動会に向けて」
かよ子の通う小学校では運動会が近づいていた。それぞれの役割、そして行う競技が決定し、大野がクラスの隊長、杉山が副隊長を担う事になる。そして毎朝、運動会に向けての早朝練習が始まった・・・。
81 運動会に向けて
前書き
《前回》
三河口は中学生時代の昔話を行う。居候する事になった清水のおばさんの家で従姉のさりに歓迎され、かよ子と初めて出会った事、従姉との別れ、そしてさりが通っていた高校への受験。話を終えて皆が帰る時、かよ子は三河口からかよ子の通う小学校の運動会を見に行くと約束されるのであった!!
今回からは運動会のエピソードです。「ちびまる子ちゃん」の映画第1作の運動会のエピソードを脚色したものです。なお、りえちゃんの手紙にあるビルの爆発については実際にありました連続企業爆破事件を元ネタとしています。
10月に入り、かよ子の学校では運動会が近くなっていた。クラスの会議の結果、大野と杉山が隊長と副隊長を務めることになった。そして、かよ子はこういう時にはあの二人が長としては適任だと思った。
「大野くう~ん、頑張ってえ~、私も応援してるわあ~」
冬田は暑苦しく大野に近寄った。
「ああ、お前も頑張れよ・・・」
「やあん、ありがとおう~」
冬田は嬉しくて興奮した。そしてクラスは運動会の準備に取り掛かる。かよ子は長山などと共に片付け中心の係なので本番の片付けまでは他の係の手伝い中心となった。
(よし、おっちょこちょいしないように頑張んなきゃ!!)
かよ子はそう誓った。そして三年生が行う競技も決定した。男子は障害物競走と騎馬戦、女子は借り物競争と大玉転がしを行う予定だった。そして見世物として沖縄民謡を踊る事になった。また、皆は練習の為毎朝7時半には集合する事も決まった。
(7時半か・・・。寝坊しないように気を付けなきゃ!!)
7時半となると6時前には起きなければ余裕がない。かよ子は少し心配しながら下校した。
「只今」
「お帰り」
かよ子はまず母に報告する。
「お母さん、明日から運動会の練習で、朝7時半に集合だから早く行かなきゃいけないんだ」
「分かったわ、早く起こすから今日から早めに寝なさいね」
「うん」
「あ、そうそう、東京のりえちゃんから手紙が来たわよ」
りえというのは東京に住む異世界の杯の所有者・安藤りえの事だった。三河口が通う高校の文化祭で日本赤軍がテロを起こした事をかよ子は手紙で彼女に伝えたのでその返事が来たのである。かよ子はそのりえの返事を部屋に持ち込んで中身を読んだ。
かよちゃんへ
お手紙ありがとうございます。赤軍が来たなんて大変だったね。私もかよちゃんが無事で何より安心しました。こちらは大きな会社のビルが幾つか爆発する事件があってそわそわしています。こちらはついこの前、ピアノのコンクールが合ったんだけど、優勝しました。今度は関東ピアノコンクールに参加する予定です。こっちも何かあったら連絡するね。
安藤りえより
(りえちゃん・・・、そっか、東京も色々大変なんだ)
かよ子は東京での事件にもぞっとした。
夜、かよ子はいつもより30分ほど早く寝た。居間にてかよ子の両親が会話する。
「かよ子は今日は寝るの早いね」
「明日から運動会の練習が始まるからね、7時半集合だから早く起きなきゃいけないんですって」
「そうか、大変だね。ところで、東京の安藤りえちゃんからかよ子へ返事が来たって言ってたね」
「そうそう。東京でも企業のビルの爆発事件が相次いでいるそうよ」
「これも日本赤軍とかと関係あるのかな?」
「そうね、明日電話で聞いてみるわ」
翌朝、かよ子が起きたのは5時40分頃だった。二度寝すると遅刻すると思ったので、その時点で顔を洗い、着替えた。
「お母さん、おはよう」
丁度母も起きた所だった。
「あら、先に起きたのね。凄いわ」
かよ子はその後、母の朝食の準備の手伝いを行った。そして6時40分を過ぎた頃に家を出て7時過ぎには既に学校に到着した。
「あ、たまちゃん、おはよう」
「おはよう、かよちゃん」
たまえも既に来ていた。それだけではない。殆どのクラスメイトも「眠い」とは言いながらもちゃんと来ていたのだ。約1名を除いては。体操着に着替えてからかよ子は気づいた。
「あれ、まるちゃんは?」
「まだ来てないみたいだね」
この大事な早朝練習でさえも遅刻かと自分以上のおっちょこちょいに少し呆れるかよ子であった。
「よっ、山田あ!」
かよ子は杉山と出会った。
「あ、杉山君・・・!!」
「流石に寝坊はしなかったか」
「うん、気にしてたのかいつもより早く起きちゃったんだ・・・」
「そうか、練習頑張ろうな!」
「うん!あ、そうだ、杉山君・・・」
「ん?」
「夏休みに東京に来た安藤りえちゃんって覚えてる?」
「あ、ああ・・・、あいつか・・・」
杉山は少し顔を赤くした。
(杉山君、りえちゃんが・・・)
かよ子は微かな焦燥感を覚えた。
「で、りえがどうかしたのか?」
「この前の高校の文化祭の事で手紙出したら、昨日返事が来たんだ。りえちゃんの住んでる東京でも会社のビルが爆破される事件が起きてるんだって」
「まじかよ!?あいつも大丈夫かな?」
「うん、でも、りえちゃん、ピアノコンクールで優勝したって。それで関東のコンクールの出場の資格貰ったんだ」
「そうか、あいつのピアノ、最高だもんな」
「うん」
「よーし、皆、集合だ!!」
その時、校庭にて大野が呼ぶ。そして隊長・大野、副隊長・杉山を前に皆集合した。
「全員集まったか?」
「あれ、さくらさんは?」
「まるちゃんがいない!」
「何!?あいつ・・・」
大野と杉山は寝坊癖のズボラな女子に怒りを覚えた。
「まあ、いいや、皆、校庭一周してそれから準備体操だ!」
皆はランニングして準備体操を始めた。準備体操を終わった頃、まる子がようやく現れた。大野と杉山はもちろん怒る。
「さくら、遅いぞ!皆ちゃんと来てるのに遅刻したのはお前だけだ!!」
「罰として校庭三周走れ!」
まる子は走らされた。
「その他の者は競技と踊りの練習だ」
「さっさと移動しろ」
初日は男子は騎馬戦、女子は借り物競争の練習を行った。かよ子も転んだり、ゴールの方角を間違えるなどのおっちょこちょいをしないように気を付けながら練習に励んだ。練習の中、かよ子はちらっと男子の騎馬戦の練習を盗み見る。大野と杉山の指揮で男子達は連携力を高めていた。
(杉山君達凄い強いなあ・・・)
かよ子はきっと大野と杉山が統率する騎馬隊なら最強無敵だと思った。借り物競争および騎馬戦の練習が終わると次は沖縄民謡の練習を行う予定だった。この時はランニングで借り物競争の練習に参加できなかったまる子も合流した。
「よし、朝の練習はこれまでだ。放課後は応援の準備に取り掛かるからな」
「授業が終わっても帰るなよ」
皆は解散した。そしてかよ子はまる子に声を掛ける。
「まるちゃん、まさかこの日も遅刻するなんて・・・」
「ああ、ホントだよお~、急いで走ったのに、また走らされるなんて・・・」
「私でも遅刻はしなかったよ・・・」
「おっちょこちょいのかよちゃんも来てたなんて・・・」
それを傍で聞いていたたまえととし子は一体どっちが酷いおっちょこちょいなのか分からなくなっていた。
朝10時半過ぎた時の、山田家。まき子は家事を全て終えた後、ある家に電話した。
『はい、安藤です』
「おはようございます。東京の安藤さんですか。夏休みにお会いしました静岡・清水の山田です」
『ああ、山田さん!ご無沙汰しております』
「先日は娘のかよ子がりえちゃんに出した手紙なのですが、昨日、無事にそのお返事頂きました。どうもありがとうございます」
『いえいえ、こちらこそりえもかよちゃんから手紙を貰って喜んでましたよ。あと、手紙を読んで心配もしていました』
「ああ、そうでしたか、所でりえちゃんのお返事なんですが、東京で様々な企業のビルが爆破されていると聞くんですが、それって日本赤軍とかが関係してあるんでしょうか?」
『ああ、あれは日本赤軍ではなく、極左暴力集団という組織による犯行と言われています』
「極左暴力集団・・・?」
『東アジア反日武装戦線とも言いまして、メンバーの一部が北海道出身で反日やアイヌの革命を目的とする組織の事ですね』
「そうなんですか・・・。安藤さん達も巻き込まれないようにお気をつけなさってください」
『はい、ありがとうございます。では』
「失礼いたします」
お互い電話を切った。まき子は別勢力の脅威を感じた。異世界の敵や日本赤軍とはまた違った東アジア反日武装戦線の脅威に・・・。
かよ子は朝の練習で眠たそうにしながらも授業に臨んでいた。途中で・・・。
「山田さん、山田さん?」
かよ子は戸川先生に起こされた。
「は、はい!」
「大丈夫ですか?居眠りをしてはいけませんよ」
「ご、ごめんなさい・・・」
かよ子は恥ずかしくなったが、どこかでいびきが聞こえた。まる子もまた居眠りをしていたのだった。当然彼女も注意された。
「皆さん朝の運動会の練習で疲れているのですか」
皆もちろん「はい」と答えた。しかし、その疲れにも耐えながらも授業を受講するのであった。
後書き
次回は・・・
「北海道と沖縄」
放課後の運動会の準備も終わり、下校したかよ子は東京の爆破事件の元凶が東アジア反日武装戦線という組織である事を母から聞く。そんな中、かよ子は運動会の競技・沖縄民謡の特訓を続けて行く・・・。
82 北海道と沖縄
前書き
《前回》
かよ子の通う小学校では運動会に向けた準備が始まった。片付け係を担い、早朝の練習に参加するかよ子は東京に住む安藤りえから返事が届く。東京では都内のビルの爆発が相次いでいると知る。かよ子の母・まき子は東京のりえの母に電話し、極座暴力集団、別名・東アジア反日武装戦線によるものと知るのであった!!
授業が終わり、かよ子は片付け係の為校庭に集合して道具の片付けの手順を他の学年・クラスの片付け係と共に聞いていた。
(終わった・・・。間違えないようにしなきゃ・・・)
かよ子は長山から声を掛けられる。
「山田、もしかしておっちょこちょいしなか心配なのかい?」
「うん・・・」
「大丈夫だよ。なんかあったらこっちも手伝うよ」
「あ、ありがとう、長山君・・・」
かよ子は教室に戻って下校しようとする。
「おっ、長山、山田、帰って来たか」
「うん」
大野が皆に呼び掛ける。
「おし、皆、明日は皆で沖縄民謡の練習をするからな。特にさくら、明日は絶対遅刻するなよ」
「は、はい・・・」
まる子は指摘されてギクッとした。そしてかよ子はまる子にたまえと下校した。
「まるちゃん、今度は遅刻しちゃだめだよ」
「う、うん・・・」
そんな時、二人は校門にてある光景を見た。
「ああ、藤木と笹山さんだあ〜」
「仲良く歩いてるね」
三人は二人の会話を盗み聞く。
「藤木君、今日朝から頑張ってたわね」
「あ、うん、でも、へましないかな」
「そんな事考えないでよ。私も応援してるから、一緒に頑張ろうね」
「うん、ありがとう」
藤木は照れていた。
「藤木君、この前の文化祭で笹山さんに気持ち伝わったんだね・・・」
「ああ、あの時だね、あの後、大変だったけど・・・」
「でも藤木も笹山さんともっと仲良くなれて良かったんじゃないの〜」
「う、うん、そうだよね・・・」
かよ子は自分と藤木を重ね合わせた。自分だって好きな杉山と仲良くなれてどれだけ嬉しい事か。藤木も好きな女子に想いが伝わってよかったと心の中で安心するかよ子であった。
かよ子は下校した。
「只今」
「お帰り、かよ子」
「お母さん、明日も早朝練習やるから早めに家出るよ。明日は沖縄民謡の練習するよ」
「はい、はい、あ、そうだ。りえちゃんの返事について今日東京のりえちゃんのお母さんと電話したわ」
「え・・・、それで!?」
「東京の事件は『東アジア反日武装戦線』って組織が起こしてて日本赤軍とは関係ないって」
「ひがしあじあはんにち・・・?」
かよ子には名前が長すぎて頭に入らなかった。
「要はね、今の日本のやり方に歯向かってる組織なの。あと北海道出身の人も含まれててね、その人達の人権を取り返そうとする目的もあるのよ」
「北海道の人の人権・・・?」
「北海道には昔、アイヌって民族が住んでいたのよ。でもそのアイヌの子孫の人がアイヌ人だって事で仕事が貰えなかったりする差別が起きてたの。それでアイヌの人権を守れって事なのよ」
「そんな事があったんだ・・・」
「かよ子は運動会で沖縄民謡を踊るって言ってたわよね?実は沖縄にも似たような歴史があるのよ」
「沖縄にも・・・」
「沖縄は昔は日本じゃなくて琉球王国って独立した国だったの」
「リューキューオーコク・・・?」
「そうよ、でもその後、日本の領土の一部になったんだけど、戦争で一度、アメリカの領土になってたの。一昨年、沖縄が日本に戻って来たのよ。でも、沖縄県は他の県とはとても離れているから、文化とかも違う事が多いし、方言の関係でも普通の日本人とは差別されて来たのよ」
「そんな事があったんだ・・・。お母さん、私、その沖縄の人の気持ちも持って沖縄民謡を踊るよ!!」
「うん、それがいいわね」
(よし、明日も頑張って早起きするぞ・・・!!)
かよ子は日本国内で起きていた差別問題の現実に少し感傷的になりながらも明日の早朝練習に備えた。
隣の羽柴家。そこの甥・三河口は電話で名古屋に住む従姉・さりと話していた。
『健ちゃん、酷い文化祭だったわね。響君にイジメられて、赤軍まで襲ってきて・・・』
「まあ、何とかなりましたが・・・」
『私も行きたかったな、文化祭・・・』
「はい、そちらは今の所は問題ないですか?」
『名古屋は今は何ともないよ。もし何かあったら護符の能力で健ちゃんやかよちゃんを呼び出すかもしれないわね』
「ですね、それでは」
お互い電話を切った。今の所、三河口には敵が攻めて来るような違和感は感じてはいなかった。
かよ子は運動会の練習や準備などで疲労が溜まっていた為、9時半過ぎと早めに寝た。ベッドに入るとすぐに寝てしまった。そして、6時20分頃に起きた。今度は母に起こされた。
「ごめん、お母さん!寝坊するところだったよ」
もし母が起こさなかったら、あるいはその時点で目覚めなかったら遅刻は確定だったろう。
かよ子は急いだ。7時15分と集合の15分と何とか間に合った。一方、丁度はあはあと息を切らしながら昇降口に入ってきた者が二名。藤木と山田笑太だった。
「あ、山田、藤木君、おはよう」
「あ、山田かよ子〜。オイラ、ねぼうしちゃったじょ〜」
「僕もだよ・・・。ハア、ハア」
三人は急いで教室に向かった。皆着替えてる途中だった。かよ子達も急いで着替えた。校庭の場には大野と杉山が既にいた。
「あ、杉山君、大野君、おはよう・・・」
「おう、山田あ!今日も頑張って早起きしたか!」
「うん、でも今日はちょっと寝坊しちゃったよ・・・」
「まあ、でもおっちょこちょいしなかったじゃねえか」
「え?う、うん、そうだね・・・」
クラス全員が集合した・・・、と思いきや、また一名来ていなかった。昨日大野に遅刻を指摘、警告されたばかりのあの女子だった。言われても暖簾に腕押しでは流石に大野と杉山も頭に来るであろう。ランニングと準備体操を終え、沖縄民謡の踊りの手順を確認した。そして、一通り踊ったところでようやくまる子が来た。大野は当然激怒する。
「バカッ!!あれほど遅刻するなって言っただろ!!!」
そしてまる子は一人、ブー太郎に踊りを教えて貰っていた。副隊長・杉山が呼びかける。
「その他の者はもう一度初めから踊るぞ。いいな!」
皆は沖縄民謡の練習を再び行う。かよ子は昨日の母の北海道のアイヌや沖縄の人の差別の話を思い出した。沖縄の人々も同じ日本の、いや、地球人の一員なんだと思いながら踊りの練習に励むのであった。
なお、この日は民謡を踊る時の布が先生から配布され家に帰って衣装の縫いを母にやって貰たのだった。そして男女とも毎朝、競技も踊りの練習も懸命に励み、まる子は毎日の如く遅刻しながらも運動会の日は近づいて行くのだった。
後書き
次回は・・・
「運動会の開幕」
森の石松は三河口達にかよ子の小学校の運動会の警護を依頼する。そしてかよ子達3年4組は全力を尽くすと誓い合う。そして児童達の保護者達も訪れた中、運動会が開会される・・・!!
83 運動会の開幕
前書き
《前回》
かよ子は道具の片付け係においておっちょこちょいをしないようにと常に意識する。帰宅後、かよ子は母から東京で起きているビルの爆破事件は極左暴力集団、通称「東アジア反日武装戦線」による暗躍と知る。その組織の結成の所以はアイヌ民族の血を引く人間が差別されて来た事、そして沖縄でもそこの人間の差別があった事も聞いたかよ子は沖縄の人の気持ちも考えながら沖縄民謡の練習に臨むのだった!!
森の石松はまる子が必死に走っていく姿を見た。気付かれぬよう追ってみると彼女の通う小学校だった。大野に遅刻した事を怒鳴られている。
(さくらももこか・・・。あの者には炎の石を持たせたが。あの者、何か弛んどる・・・。組織『次郎長』の構成員として恥ずかしくないのか、全く・・・!)
石松はまる子に呆れながら姿を消した。
三河口は北勢田、濃藤と下校中、石松と出会う。
「三河口健、北勢田竜汰、濃藤徳崇」
「森の石松・・・?」
「去る日の祭り事はご苦労であった。ところでだが・・・」
「頼み事か?」
「ああ、山田かよ子らがいる学び舎では運動の競い合いがあるそうであるな」
「ああ、運動会の事だね」
「お主ら、護衛を頼みたいのだが・・・」
「ああ、いいよ。俺達も丁度見に行こうと思ってたところだからね。でも濃藤は妹さんが通う学校でも運動会があるって言ってたから生憎いけないんだが・・・」
「いや、有難い。向こうの方の学び舎も護衛がおれば問題はなかろう」
「そうだね」
夜、かよ子はある事を誓いながらベッドに入った。
(絶対におっちょこちょいしないように気を付けよう!!そして杉山君達に恥をかかさないように・・・!!)
そう誓って眠りについた。
杉山も練る準備をしていた。
(明日の運動会、必ずベストを尽くしてやる!大野と共に皆を動かしてきたし、俺達の特訓の成果を見せるんだ!!)
杉山も強い決意を持って寝た。
かよ子の通う小学校の運動会が始まった。かよ子は運動会当日ですら遅刻ギリギリで到着したまる子とばったり出会った。
「あ、まるちゃん、急いで!もう皆着替え終わってるよ!」
「ええ!?」
まる子は急いで体操着に着替えた。そして時間になった。大野と杉山が黒板の前に立つ。
「よし、皆!今日は待ちに待った運動会だ!!全力で戦うぞ!!」
大野の言葉に皆は「オー!!」と返事をした。
かよ子の両親は娘の運動会の観戦に出かける。
「あ、まきちゃん!信彦さん!」
隣人の奈美子が呼ぶ。信彦というのはかよ子の父の名前である。
「健ちゃんもかよちゃんとこの運動会観に行くって」
「あら」
「この前の文化祭に来てくれたお礼もあるし、もしかしたら赤軍とかが乱入してテロを起こさないか警備も兼ねる為だって。健ちゃん、迷惑かけんようにね」
「はい、畏まりました。宜しくお願い致します」
「あら、宜しく。かよ子も喜ぶわ」
校庭には多くの保護者達が現れた。三河口は長山の両親と同行していた北勢田と合流した。
「お、北勢田」
「ああ、ミカワか」
「今の所は俺の心臓は異常なしだが、そちらは?」
「こっちも特にない」
「なら、開会を待つか」
「あら、三河口君、北勢田君じゃない」
二人は聞き覚えのある声の方を振り向いた。
「奏子ちゃん!?」
「徳林さんも来てたのか」
「うん、近所の子が出てるからね」
「笹山かず子ちゃんかい?」
「ええ、そうよ」
「最近藤木君とは仲良くやってるかね?」
「まあ、本人に聞いてみないと・・・」
「それにしてもここの小学校に通ってたら俺ももっとマシな小学校生活になってたのかな・・・」
「あ・・・」
北勢田と奏子は三河口の波乱で壮絶な小学生時代の話を聞いている為、返答は上手くできなかった。
「まあ、この運動会の観戦を楽しんでみるか」
「ええ、そうしましょうよ」
運動会の開会の時刻となった。まず全校生徒が整列する。6年生の一人が選手宣誓を行った後、校長の(無駄に長い)話を終えた。生徒達は各々の指定された応援席に着く。そしてかよ子達はまずは最初に行われる1年生の玉入れを観戦した。続いて2年生の時間制限ドッジボール、そして6年生のリレーが始まる。まる子は自分の姉が走る番になり、姉を思わず応援した。そしてクラスメイト達もまる子の姉を応援する。彼女は恥ずかしがりながらもその応援に応えて全力疾走した。そして次は4年生のソーラン節、そして3年生女子の借り物競走が始まった。
(よーし、おっちょこちょいしないぞ!!)
次々の女子達が走ってカードを拾い、書かれた物や人を持って来たり連れて来る。そしてかよ子が走る番となった。
「お、かよ子の番か」
「かよ子、頑張って!」
両親は娘を応援する。体育の先生の銃の発砲と共にかよ子含む6名の女子が走り出す。そしてカードを拾う。カードには「1年生の女子」とあった。かよ子は1年生の応援席へ向かった。
「ねえ、誰かカードに『1年の女子』って書いてあったんだ、誰か来てー!!」
かよ子は呼ぶ。
「こ、こはる、いく!!」
応えたのは長山の妹・小春だった。
「小春ちゃん!ありがとう!」
かよ子は小春を連れてゴールへと向かった。結果は3等だった。
「かよちゃん、やるな」
「まさか、小春ちゃんを連れて行くとは」
「カードに『1年生の女の子』って書いてあったのかしら?」
「だろうね」
「あ、次はかず子ちゃんが走る番ね!」
奏子は笹山を応援した。笹山は玉入れの玉を借りて2等でゴールした。
「かず子ちゃんもやるね」
「ええ」
その時、「笹山さん、凄いぞ!!」と叫んだ男子がいた。
「あれは藤木君かね?」
「そうみたいね」
高校生三人は笑った。一方の笹山は恥ずかしがった。
(もう、藤木君ったら・・・!!)
次は冬田の走る番が来た。
(大野くうん、頑張るわあ!!)
冬田は大野の事を考えてやる気を漲らせた。冬田は駆ける。カードを拾うと「帽子」とあった。女子は鉢巻の為、男子の助けが必要である。
「だ、誰か帽子貸してえ!」
冬田は叫んだ。その時、4年生の男子が現れた。
「俺の持ってけ!」
「ありがとおう!」
冬田は帽子を貰って走った。結果は4等だった。
(はあ、もっと早く着けられたら大野君にも褒められたのに・・・)
冬田は少し落ち込んだ。
次は3年生男子の障害物競走だった。跳び箱を跳び、平均台を渡り、網を潜って最後はケンケンパッをしてゴールである。
(笹山さん、頑張るよ!)
藤木は笹山の事を考えながら走り出した。だが、藤木は途中で網を足に引っ掛かって抜けなくなるハプニングを起こしてしまい、結局ビリの6等となってしまった。
(はあ、笹山さん・・・)
藤木は恥をかいたと思い、落ち込んだ。そして長山が走る。長山は3等だった。次は杉山が走る。
(す、杉山君、頑張って・・・!!)
かよ子は心の中で応援した。杉山は走る。跳び箱をあっさり跳び、平均台も何の不安もなく渡った。そして網もさっと潜ってケンケンパッをする時には2位以下に大きく差を付けた。もちろん1等で決めた。
(凄い、杉山君!!)
かよ子は心の中で杉山を祝福した。そして大野が走る番が来た。
「大野くうん、頑張ってえ~!!」
冬田は大声で大野を応援した。大野も圧倒的な速さで1等となった。障害物競走が全て終わり、男子達が退場する。大野が席に戻るやすぐに冬田が出迎えた。
「大野くうん、凄かったわあ~!」
「ああ、サンキューな、冬田・・・」
大野は冬田に引きながら礼をした。
「す、杉山君、1等、おめでとう・・・」
「え、ああ、お前も借り物競争、頑張ってたな」
「う、うん・・・!!」
かよ子は嬉しくなった。
「藤木君、お疲れ様」
藤木は笹山から声を掛けられた。
「あ、うん、でも、ビリだったよ」
「でも藤木君だって頑張ってたわよ」
「ありがとう、笹山さん・・・」
藤木は笹山から慰められて嬉しくなった。次に5年生の大縄跳びが始まった。そしてまだ踊りを披露していただけの4年生の競技が始まった。ピンポン玉に乗せたスプーンを運びながら走る競技だった。それが終わると昼休みとなった。
後書き
次回は・・・
「激戦化する後半戦」
運動会は続く。休憩の昼食で両親や三河口と顔を合わせるかよ子。北勢田と顔を合わせる長山。奏子と顔を合わせる笹山と藤木。そして運動会は午後の部に入っていく・・・。
84 激戦化する後半戦
前書き
《前回》
かよ子の小学校で運動会が始まった。三河口達も「敵」からの警護も兼ねて観戦する中、三年生の女子達は借り物競争で奮闘する。3等という結果になったかよ子は杉山から労わられ、杉山や大野は障害物競走で大きく活躍するのであった!!
三河口、北勢田、奏子は運動会の観戦には夢中になっていたものの、例の警護は忘れてはいなかった。なお、三河口も北勢田も外敵が近づくにつれて起きる心臓の胸騒ぎを感じる事はなかった。
「俺達も飯にするか」
「だが、お邪魔するわけにも行かないからな・・・」
「私、お弁当作ってきてあげたから、かず子ちゃんの所に行くわ」
「了解。ま、俺達も顔を出しに行くか、北勢田」
「そうだな」
三河口はかよ子のいる所へ、北勢田は長山の所へ、奏子は笹山の所へと向かった。
かよ子は両親と再会していた。
「かよ子、お疲れ様」
「うん、借り物競争は3等だったけどね。午後は大玉転がしと沖縄民謡やるよ」
「頑張ってな」
そんな話をしている中、あの高校生が現れた。
「やあ、かよちゃん」
「あ、隣のお兄ちゃん・・・」
「借り物競争の活躍、見てたよ。杉山君も頑張ってたところも勿論拝見させて頂いたよ」
「う、うん、見に来てくれてありがとう・・・。そうだ、午後も応援してね」
「勿論、では」
「あら、折角だから健君も一緒に食べたらどうかしら?」
「いいんですか?俺はよそ者ですし、『敵』が来ないよう警備もしているわけですし」
「いや、いや、気にしなくていいよ」
「恐れ入ります。ではいただきます」
北勢田は長山の家族の所にいた。
「治君、小春ちゃん、お疲れさん、頑張ってたね」
「うん、こはる、たまいれ、がんばったよ・・・!!」
「そういえば借り物競争にも連れられてたね」
「だってあのおねえさんにもおせわになったし・・・」
「あ、そうだったね」
長山が自分が異世界の敵に連れ去られそうになる事件を思い出した。
「それじゃ、午後も応援してるよ」
奏子は笹山の家族に自分の手作り弁当を振舞っていた。
「お姉さん、ありがとう。お弁当まで用意してもらって・・・」
「いいのよ。かず子ちゃんも頑張ってたんだから。そうだ、折角だから藤木君も呼んであげようか?」
「え?藤木君を?」
「お互い応援し合ってたでしょ?」
「いやあ、その・・・」
奏子は一度立ち上がる。そして藤木を探すなり彼を呼ぶ。
「あら、藤木君」
「あ、貴女はええと・・・」
「笹山かず子ちゃんの隣に住んでる徳林奏子です。この前はウチの高校の文化祭に来てくれてありがとうね」
「あ、はい」
「お弁当作って来たから藤木君もどうかしら?」
「いいんですか?ありがとうございます!」
藤木にはこの上ない幸運だった。笹山家がいるシートに藤木を呼びよせた。
「あ、藤木君」
「えへへへ、お邪魔します」
「どうぞ」
藤木は奏子の手作りの野菜炒めやポテトサラダを御馳走になるのだった。
「二人共、午後も頑張ってね」
「はい!」
午後の部が始まった。最初は1年生女子による大きい被り物を4人で被って前が見えなくなる中の競走だった。そして今度は1年生男子のPK合戦、そして5年生女子のムカデ競走、5年生男子の二人三脚、そして今度は3年生が沖縄民謡を披露する時が訪れた。大野と杉山が呼びかける。
「皆、間違えても慌てるな」
「落ち着いて踊れよ」
かよ子はその時、母親の言葉を思い出した。沖縄の人間は日本の他の都道府県とは異なる文化を持っていた為に差別されたという事実がある。そういえば午前の部で4年生がソーラン節を踊っていた事も思い出せば、北海道にいたアイヌ民族の子孫も差別されていた事実も思い出した。
(文化や民族が違っても同じ人間なんだ・・・!!)
かよ子はその気持ちを胸にしまいながら踊りに臨んだ。踊りは自分は一度も間違えなかった。早朝練習の成果であろう。
「沖縄民謡か・・・」
三河口達も沖縄民謡に見惚れていた。
「皆、踊り上手いわね」
「そういえば沖縄がアメリカから戻ってきてもう二年か・・・」
「そうね、思えば沖縄の人も苦労してたのよね」
「今もしてるよ。アメリカの基地の問題とか・・・」
「ああ、そうだったな」
沖縄民謡は終盤に入った。だが、ここでとんでもないハプニングが起きた。まる子が踊りを間違えた。内側に入る所を外側へ行ってしまった。その為、まる子は輪に入れず、一人だけ踊るような形になってしまった。一方のかよ子はそこまでのおっちょこちょいはしなかった。
踊りが終わり、退場した後、まる子は大野から注意を喰らう。
「お前、毎日練習に遅刻するから恥かいたんだぞ」
「そうだね・・・」
その後、6年生の綱引きが始まった。まる子の姉はここでも頑張っていた。
(まるちゃんのお姉さん、いや、6年生の皆さん、頑張れ・・・!!)
かよ子は応援した。白組の2対1で勝利した。そして2年生達が50m走を行う。そして3年生女子の大玉転がしの番となった。2人1組で玉を転がす。かよ子はたまえとペアを組んだ。
「たまちゃん、私、おっちょこちょいしないように気をつけるよ!!」
「う、うん」
そのかよ子を杉山は次の騎馬戦に備えながらなぜかおっちょこちょいしないように祈っていた。
「笹山さーん、頑張れ!」
藤木が笹山を応援する。笹山はまる子と組んでおり、息を合わせて白組が優勢となった。
(ま、まるちゃんと笹山さん、凄い・・・!!)
かよ子も負けていられないと思った。そして自分の番が来る。かよ子は深呼吸した。かよ子はたまえと息を合わせて玉を転がした。そしてコーンのある場所をUターンしてまた戻る。そして次の人に玉を引き継ぐ。かよ子は転ぶなどのおっちょこちょいをしないでよかったと思った。結果は白組の勝利となった。
(かよちゃん、よく頑張ったな・・・)
三河口はかよ子の頑張りを賞賛した。
(あいつ、よくおっちょこちょいしなかったな・・・)
杉山もかよ子の頑張りを認めていた。
「杉山、次は俺達の出番だな」
「ああ」
杉山、大野ら男子達は次の種目である騎馬戦に備えるのだった。
後書き
次回は・・・
「虚しき勝利」
大野と杉山の見せ場である3年生の騎馬戦が始まった。二人の組は相手を次々と圧倒させていくが、そんな時、大野が絶体絶命のピンチに陥ってしまい、運動会は複雑な結末に・・・。
85 虚しき勝利
前書き
《前回》
運動会は昼休憩となり、昼食を食べたかよ子は、午後に行う沖縄民謡を披露する。その時、まる子が踊りを間違える失態を犯してしまう。そして大玉転がしではたまえと組んだかよ子はおっちょこちょいをする事なく白組の勝利に貢献する。そして大野と杉山達男子勢は騎馬戦に臨む!!
大玉転がしを終えたかよ子達は退場していく。そして次は3年生男子の騎馬戦だった。大野、杉山を始めとする男子達は全員集合した。
「皆、兎に角恐がるなっ。ピンチになったら俺か杉山が助けに行く」
「俺か大野は絶対助けに行くからな。ヤバくなったら呼べよ」
「分かったな」
こうして3年生男子の騎馬戦が始まった。
(す、杉山君、頑張って!!)
「大野くう~ん、頑張ってえ~」
冬田は大声で応援した。
「僕、大丈夫かな・・・」
藤木は杉山の馬係だった。
「藤木、弱気になるなよ。俺がいるんだからさ。笹山もきっと見直してくれるぜ」
「う、うん・・・」
大野の組、杉山の組は次々と紅組の騎馬を落としていく。その時、丸尾がやられそうになった。
「ヒエエエエ~。大野君か杉山君、ズバリピンチでしょう。助けてくださ~い!!」
丸尾は悲鳴を挙げながら助けをむ。大野と杉山はそれぞれと取っ組み合っている相手から離れて丸尾を助けに行こうとした。
「ヒエ~、もう駄目~」
その時だった。
「待たせたな」
大野と杉山の騎馬が援軍として訪れた。
「お前丸尾をいじめるなよ」
「俺達のクラスの学級委員なんだぜ」
こうして丸尾を襲っていた紅組の騎馬は倒された。騎馬戦は続く。白組は善戦だったが、紅組も盛り返す。制限時間もあと僅かとなる。だが、あと3分となって大野が取っ組み合っている所・・・。
「げっ!囲まれた!!」
大野の騎馬が紅組の騎馬4組に包囲されてしまったのだ。
「杉山ーーー!!」
大野が杉山を呼ぶ。しかし、杉山は離れた所で別の騎馬を倒した所だった。杉山は振り向くと、大野が劣勢でやられている。
「おい、大野の騎馬を助けに行くぞ!」
「うん!」
杉山を乗せている前方の藤木は大野の方向に向けて急いだ。だが、遅かった。大野は倒された。
「お、大野くう~ん!!いやあ~」
冬田は悲痛な声を挙げた。
「くそお、よくも大野をお!!やるぞ!」
杉山は大野の仇を1名倒した。そしてもう1名を。そして時間が終わった。白組の勝利だったが、大野がまさか倒されるとは誰にも思わなかっただろう。
(くそお、間に合わなかった!!)
杉山は大野を助けられなくて悔しかった。かよ子も勿論好きな男子の心情は読み取れた。
(杉山君・・・。大野君を助けるのに間に合わなかった・・・。悔しいよね・・・、杉山君・・・!)
(よかった・・・。僕は最後まで杉山君を倒れなかった。笹山さん、僕の事、見直してくれるかな・・・)
杉山と騎馬を組んでいた藤木は笹山から褒められる所を妄想した。杉山は大野を心配しに行く。
「大野お!」
「杉山・・・」
大野は立ち上がった。
「おめえ遅いんだよ!なんでもうちょっと早く来なかったんだ!!ちきしょう・・・!!」
杉山も大野にキレられて謝る気になれなくなった。
「バカヤロー、俺の力を借りなきゃ負けちまうお前なんて最初っから弱いんだよ!!」
杉山は心にもない事を言ってしまった。
「何だと、コノヤロー!!」
二人の喧嘩が始まった。
(本当は、俺だってお前を助けたかったんだよ・・・!!)
「おい、やめろよ!!」
「やめるブー!」
他の男子が喧嘩を止めようとした。4組の男子は険悪なムードで退場する形となってしまった。応援席に戻っても取っ組み合いの喧嘩は続いた。二人の喧嘩を止めるのに女子達も止めようと必死になった。かよ子も勿論止めに入った。だが、中に割って入った時、大野の手の払いがかよ子の顔に当たってしまった。
「かよちゃん!!」
まる子が心配した。
「私はいいから二人の喧嘩を止めて・・・」
取っ組み合いは何とか収まったが、大野と杉山の仲がすぐに修復する事はなかった。なお、藤木は・・・。
「笹山さん、僕、何とか杉山君と騎馬組んで生き残ったよ!!」
「うん、お疲れ様。でも、あの二人が喧嘩して大丈夫かしら・・・」
「あ・・・」
藤木は笹山から思ったほどの労りは受けられなかった上に、笹山は大野と杉山の喧嘩の方を気にしていた為、少し寂しく思った。自分が空気を読まない行動を取った事もあるが、本当に運の悪い男子である。
そして、2年生の背負い籠ボール入れも、4年生女子の玉拾い競争(玉入れに使用した球を制限時間内に可能な限り集める競争)、4年生男子のバケツリレーも、そして全学年生が参加する大玉送りも、二人は全く話もせず、お互いそっぽを向いた。
「大野君と杉山君め、こんな時に内輪揉めするなよ」
観戦してる三河口も愚痴をこぼした。
「だよな、あれじゃあ、負けちまうぜ」
「大丈夫かしら・・・」
結果はかよ子達4組がいる白組が僅差で勝利した。しかし、他のクラスは大喜びしたものの、4組だけは誰も笑っていなかった。大野と杉山が喧嘩した事を引きずっていた為に。
(杉山君・・・。大野君・・・)
かよ子も勝ったのにどうしても嬉しくなかった。運動会は閉会した。かよ子と長山は片付け係の為、競技で使用した用具・機材などを倉庫や放送室に戻す作業をしていた。用具の片付けが全て完了すると、かよ子は長山と話しながら教室に帰る。
「長山君・・・」
「何だい?」
「杉山君と大野君、大丈夫かな?」
「さあ、それは自然と仲直りするのを待つしかないかもしれないね。無理に仲直りさせようとしても余計に怒らせるだけだと思うよ」
長山もそのくらいのアドバイスしかできなかった。
「うん・・・」
教室に帰ってもしーんとした感じだった。そして帰る。その時、かよ子は思い切って杉山を追いかけた。
「す、杉山君・・・!!」
「山田・・・。お前、頑張ってたな」
「うん、でも・・・。最後の大野君との喧嘩・・・」
「ああ、あいつが勝手に怒ってただけさ。ごめんな、お前にまで迷惑かけちまって」
「でも、杉山君も大野君から離れてた所にいたから間に合わなかったのは仕方ないよ。杉山君のせいなんかじゃないよ!」
「あ、ああ、だが、大野との事から離れさせてくれ」
「うん・・・、じゃあね」
かよ子は杉山と別れた。
「はあ〜」
勝ったのに憂鬱なんて本当に虚しい勝利であるとかよ子は思った。
「杉山君と大野君が喧嘩して落ち込んでんのかい?」
「え?」
三河口が待ち構えていたように現れた。
「辛いと思うけど自然に仲直りするのを待つしかないだろうね。俺的には途中で『別の敵』が来なかったのが不幸中の幸いだが」
「う、うん、そうだね」
「まあ、何かの縁で仲直りするだろ」
三河口はそう言いながらかよ子にジュースを奢った。
「だといいんだけど・・・」
「でもかよちゃんも頑張ってたし、かよちゃんも誕生日が近いだろ。かよちゃんのお父さんとお母さんもウチのおばさんもおじさんもかよちゃんの誕生会やろうって話になってんだ。どうかな?」
「あ、うん、ありがとう・・・!!」
かよ子は息苦しい事を乗り越え、そして今度は自分の誕生会の事を考えるのであった。
後書き
次回は・・・
「かよ子の誕生会」
かよ子はまる子やたまえ、ブー太郎を誕生会に誘う。そして、かよ子は杉山を誘いたいのだが、勇気が持てず、ブー太郎に代理を依頼することになる。そしてかよ子の誕生会が行われる・・・。
86 かよ子の誕生会
前書き
《前回》
大野と杉山男子達は騎馬戦に臨む。活躍する二人だが、大野の騎馬が包囲され、杉山が助けに行くも間に合わず大野は敗れる。結果的には杉山達白組が勝利するも、大野は杉山の助けが遅いと言いがかりをつけ、二人は喧嘩してしまい、4組はこの二人の喧嘩を引きずり、勝利を喜べなかった。その事で傷心したかよ子は帰る途中、三河口と会い、次の日曜にかよ子の誕生会を考えていると告げられるのであった!!
運動の後日も大野と杉山の中は険悪な状態が続いていた。
「はあ、あの二人、まだ仲直りしないブー・・・」
二人の子分であるブー太郎もどうすればいいかわからず途方に暮れていた。
「長山君も隣の家のお兄ちゃんもほっといて自然に仲直りするのを待つしかないって言ってたけど、やっぱり駄目だね」
かよ子も同様に途方に暮れていた。
「アタシもたまちゃんと喧嘩した事あるけどそれでも仲直り出来たのにねえ~」
まる子も呆れるように言う。
「でも、二人共、何ていうのかな・・・。プライド高いっていうのか・・・。だからお互い素直になれないんじゃ・・・」
たまえが解説する。
「そうかもしれないね・・・。あの・・・」
かよ子は思い切って言ってみた。
「今度の日曜、私の誕生会やるけど、来ない?」
「あ、そっかあ~、もうすぐかよちゃんの誕生日だもんねえ~」
「いいね、行くよ」
「私も!」
たまえとまる子は乗り気だった。
「オイラも言っていいかブー?」
ブー太郎は男子の自分も行っていいか迷った為、確認してみる。
「もちろんいいよ。ブー太郎にも色々お世話になってるし」
かよ子は躊躇いもせず承諾した。何しろブー太郎も組織「次郎長」の構成員として、異世界の敵や日本赤軍との戦いでかよ子と共闘した縁もある。
「ありがとうブー!」
「よかったねえ~、ブー太郎」
「あ、そうだ」
たまえがある事を思いつく。
「折角だから杉山君も誘ってみたら?」
「え?す、杉山君も?来てくれるかな・・・」
かよ子は顔を赤くした。
「オイラも誘ってやるブー」
ブー太郎が杉山の所へ行く。
「あの、杉山君」
「ああ、ブー太郎、どうかしたか?」
「今度の日曜、山田かよ子の誕生会があるんだけど杉山君も行かないかブー?」
「俺がかあ?」
杉山が驚いた。
「まあ、行ってみるか。特になんも用ねえし」
「よかったブー。山田もきっと喜ぶブー」
(きっとじゃねえ、絶対あいつは喜ぶだろうな・・・)
そそしてブー太郎はかよ子達の所へ戻る。
「杉山君も行くって言ってくれたブー」
「ごめんね、ありがとう、ブー太郎」
「気にするなブー。こんなのお安い御用だブー」
かよ子は家で母にまる子、たまえ、ブー太郎、杉山が誕生会に参加する事を伝えた。
「楽しい誕生会になりそうね」
「うん!」
三河口は濃藤と喋っていた。
「んで、俺と北勢田と奏子ちゃんはかよちゃんとこの小学校に警備に行ったけど特に何もなかったよ」
「まじか。こっちも何も異常がなかったよ」
「ああ、だが、奴らはいつ攻めてくるのか。それとも・・・」
「それとも何だよ?」
濃藤が質問する。
「名古屋に住んでる従姉の護符を狙いに名古屋を襲うか・・・」
「変な事言わんでくれよ」
「失礼、失礼」
そして三河口は今度の日曜の事を考える。
(はて、かよちゃんの誕生会か・・・)
杉山は迷っていた。
(山田の誕生会か・・・。あいつには何だったら喜ぶんだろう・・・?)
杉山は女子へのプレゼントが何が適切か知る由もなかった。そこで姉に相談する。
「なあ、姉ちゃん」
「あら、さとし」
「今度の日曜、山田かよ子って女子の誕生会に招待されたんだけど、女子へのプレゼントって何を渡したらいいか俺わかんないんだ。姉ちゃんだったら何だったら嬉しいんだ?」
「あら、そうね、リボンとかカチューシャとかのアクセサリーとか、女の子向けの文房具とかがいいかもしれないわね。一緒に探しに行ってみる?」
「ああ、わりいな、姉ちゃん、ありがとう!」
この時、杉山の姉はこの弟は案外女子に優しいんだなと感じた。
「ところでアンタ、運動会の時、大野君と喧嘩したっていうけど、ちゃんと仲直りしなさいよ」
「う・・・、ほっといてくれよ・・・」
杉山は大野の名を出されると気を悪くした。
(全く、大丈夫かしら・・・)
姉は弟を
かよ子の誕生会当日。山田家の居間は父と隣の家のおじさん(奈美子の主人の利治)、そして三河口が行った。誕生会の準備に取り掛かっていた。かよ子の母が予約していたという誕生日ケーキを隣のおばさんと共にケーキ屋から持ち帰って来た。そして、寿司やフライドチキンなどの料理、準備は完了した。
「後は皆が来るのを待つだけね」
「うん」
そしてまる子とたまえ、ブー太郎、そして杉山が現れた。
「かよちゃん、誕生日おめでとう!!」
「ありがとう、来てくれて!!」
かよ子は歓迎した。そして皆で歌を歌い、食事となった。
「う~ん、どれも美味しいねえ~」
まる子は食事の感想を言う。
「それじゃ、プレゼントをあげないとね」
「俺から行こう」
まずは三河口が出てきた。
「お、お兄ちゃん、やるねえ~」
三河口が箱を渡す。それは猫の頭がついた長い筆入れのような物だった。
「猫の頭の所が蓋になってるケースだよ。筆入れにしてもいいし、あの杖をしまうのに使ってもなんでもOKだよ」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
続いてたまえがプレゼントを贈る。
「これ、私から」
たまえのは10色のボールペンだった。
「たまちゃん、ありがとう」
「これ、アタシから。アタシお金なくてさあ~、このくらいしかできなかったよ」
まる子からのプレゼントはまる子が自分で描いた絵だった。
「かよちゃん、不思議な杖持ってるから魔法使いになって箒で空飛んでるかよちゃん描いて見たんだ~」
「わあ、ありがとう!私も魔法使いみたいにあの赤軍とか異世界の敵をやっつけられたらいいな。ありがとう!」
まる子は照れた。
「オイラはこれだブー」
ブー太郎からは兎の形をしたポシェットだった。
「おお、ブー太郎、珍しく豚じゃないねえ~」
「そりゃ、トミ子の知恵を借りたんだブー」
「ありがとう、ブー太郎」
「へえ~」
「あとは杉山君だね」
「あ、ああ・・・」
そして杉山が出したのは、なんと赤・青・黄色の三種類のリボン型の髪留め。
「おお、杉山君もいいの選んだねえ~」
「ああ、女子の誕生日プレゼントって何あげたら嬉しいかわかんねえから姉ちゃんに聞いたら手伝ってくれた。そしたらアクセサリーとかぬいぐるみとかがいいんじゃないかって・・・」
「うん、ありがとう、杉山君!」
かよ子は嬉しくてたまらなかった。
「この中じゃ杉山君のプレゼントが一番最高のプレゼントだブー!」
「うん、そうだね!」
「杉山君も、君のお姉さんもなかなかいいセンスしてるじゃないか」
「ああ・・・」
杉山は照れた。そしてその後は皆でゲームをやったりしてかよ子にとって最高の誕生会となったのであった。
そして、時は進んで行く。
後書き
次回は・・・
「石松の改革作戦」
赤軍の長・重信房子は戦争主義の世界の人間に次なる計画を打ち明ける。そして石松はズボラで姉と喧嘩ばかりするまる子を不安に思い、ある事を実行する・・・。
87 石松の改革作戦
前書き
《前回》
かよ子の誕生日を祝う「誕生会」を日曜に行う事になった。かよ子はまる子やたまえ、ブー太郎、そして杉山を招待する。そしてかよ子にとっては楽しい誕生会となるのであった!!
さくらももこ。怠惰で、勉強も宿題もろくにせず、家事の手伝いも一切避ける。その上姉に迷惑をかけては喧嘩していた。
「まる子のバカ!!」
「お姉ちゃんのスットコドッコイ!!」
このように姉妹喧嘩で母から叱られる事が日常茶飯事となっていた。石松は彼女の情けなさを気付かれぬように垣間見る。
(全く、さくらももこめ、あの体たらくで、皆の足手纏いになりそうであるな・・・)
石松も呆れ気味であった。そして石松はそのズボラ少女の姉に目を付けた。
(あの者の姉君の方がまさにこれからの戦いに的確かもしれぬ・・・)
思えばあの豪雨の時も他の組織「次郎長」の三名は赤軍の奥平やバーシムと交戦したというのに彼女だけは参加していなかった。それも爆睡して戦いすら気付かなかったとか。
石松はあの少女にも協力を呼び掛けるよう決意した。
パレスチナにある日本赤軍の本部。赤軍総長・重信房子は大日本帝国の復活作戦を次なる段階へと薦めようとしていた。
(あの高校の文化祭では杖の奪取は失敗に終わったが、あの男子生徒の能力を吸収して利用する事はできそうね・・・)
そして異世界への入口へと向く。そこに一人の男がいた。
「重信房子か」
「レーニン様、いい情報をお伝えいたしましょうか」
「たわけ、いつになったら他の三つの道具を手にするというのだ。アドルフを連れて杯を狙ったというのに失敗し、次こそはと思って杖を狙おうとしてまた失敗した。そっちも信用を損ねすぎだ。さらに杖を奪い取る作戦では私が使いとして出したフビライを実質捨て駒にしただろうが」
「その事については申し訳ございません。ですが、その作戦を邪魔した者の能力を利用する事はできると思います」
「邪魔した者?」
「ええ、前に杖を奪おうとして行かせた西川純と山田義昭には別のある手を使わせたのです」
「ある手?」
「山田義昭は嘗て精密機械のメーカーに勤めていました。彼が発明した小型の盗聴器のような物を西川の服のポケットに忍び込ませ、強力な能力を持った高校生の能力を一時的に複製する事ができたのです」
「高校生の能力だと?」
「はい、見聞・武装・威圧を容易く行う事ができる能力です。それを複製した機械を量産させれば、私達も無限の能力を得て、さらにお互いを強める事ができるという訳です」
「なるほど、それは頼もしい。そしてこちらの敵もまた何かを始めようとしている。抑えられれば良いが・・・」
「ええ、今、義昭に機械の量産をさせていますのできっとうまく行きますよ。この剣はお返しします。かなり役に立ちました」
「はは、私の手でかなり強化できたろうな。我が能力も混ぜ込ます事ができたのだから」
「はい。それでは失礼いたします」
房子は「自分の世界」へと戻った。
「杖、杯・・・。なら、護符といくか・・・」
房子は次なる作戦を練るのであった。
かよ子はまる子の姉妹喧嘩の愚痴を聞いていた。
「もう~、お姉ちゃんったらすぐ怒るんだから、やんなっちゃうよお~」
「う、うん・・・」
だが、本当に姉に非があるのだろうか、と悩むかよ子であった。
「でも、まるちゃん、それって本当にお姉さんが悪いの?」
「あ、・・・」
まる子はそれに対して答える事ができなかった。
一方の杉山は運動会の一件以来、大野とは全く口を聞いていなかった。姉にも指摘されたが、何もできなかった。
(杉山君、大野君とまだ仲直りしていないんだ・・・)
かよ子は杉山の方も心配した。
かよ子は音楽の授業の為、音楽室に移動していると、誰かがの怒り声が聞こえた。
「全く、あの、バカまる子はホントしょうがないんだから。私が大事にしていた鉛筆使ってなかなか返さなかったのよ!!」
「バカまる子」と言っていたという事はつまりまる子の姉である。
(やっぱり、まるちゃんが悪いんじゃん、どうしてまるちゃん、お姉さんに対して素直になれないんだろう・・・)
かよ子は大野・杉山との喧嘩と同様、まる子も姉との険悪な関係がこれからの「戦い」に影響を及ぼさないか心配になって来た。
まる子の姉・さくらさきこは下校し、新しいノートを買いに行こうとする。その時、いかにも時代劇のような格好の男が現れた。
「そなた、さくらももこの姉上・さくらさきこであるな?」
「え、ええ、そうだけど・・・」
「某は森の石松。お主の妹に今の日本が赤軍という組織によって戦の国に戻そうとされている事を教え、彼らと戦う為の道具を授けたのだが、どうもあの怠慢なようでは某も頼り難いと考えておる。お主も姉としてあの妹の印象は如何なものか?」
「え?そりゃあ、あんなのバカすぎるわよ。私の物勝手に使っては失くすわ、ダメにするわ。ホント、世界一ダメで最低な妹よ!」
「如何にも姉上としては厳しい評価であろうな。だが、それ以上に今の世に異変が起きている事に気付いておるであろう?」
「ええ、妹も高校の文化祭で日本赤軍とか言うのが襲って来たって言ってたし、最初はバカな事とか言ってたけど、本当にテレビでやってたわね。それに、前に学校に変な奴が襲って来たって言うし・・・」
「いかにも。繰り返すが、あの者は大野けんいち、杉山さとし、そして富田太郎と共に組織「次郎長」を結成したのにも関わらず、その四人組も危うい状況にある。さくらさきこ、お主もあの者達や某との闘いに是非協力したいのであるが・・・」
「私が?できるかしら・・・」
「ああ、お主にも『敵』と闘う為の道具を授ける。某が死んだ後の世から持って来た物だ」
石松が出したものは瓶の中に入った七つの宝石だった。
「うわあ、綺麗な宝石ね!」
「さよう。異世界の敵及び日本赤軍と闘うのに使用する宝玉だ。では、使い方について説明致そう」
石松は瓶の中の宝石のうちルビーの物をだした。
「この紅玉は打ち勝つ可能性を高める力だ。もし相手を倒したいと思う時こそ発揮し、敵を倒す可能性が高くなる」
石松は次はアメジストを出す。
「この紫水晶は心を落ち着かせ、自身を守る力だ。何か絶望的な場面に遭遇した場合はこれを使うとよい」
次はエメラルドの宝石を出す。
「この緑玉は病及び怪我を治す力がある。さらに自身の防御力を高める事もできるぞ」
そして濃い青い宝石を出した。
「これは尖晶石だ。自身を強化す力だ。己の肉体が強化される」
次に橙色の宝石を出す。
「これは琥珀だ。相手の力を引き寄せる力を持つ。相手が何らかの能力を持っていた場合、それを己が物として行使する事ができる」
そして石松は黄色の宝石を取り出した。
「この黄玉は未来を予知する力がある。そして己が抱いた幻想を可能な限り現実とする事ができる」
そして石松は最後の一つ、尖晶石とはまた異なる紫のようにも見える、いわば青紫色の宝石・サファイアを出した。
「この蒼玉は良好な機会を与える力だ。お主を良い方向に導く時に強く輝く」
「ありがとう。でも、これがまる子に見られたら、あの子欲しがりそうで取られるかもしれないわ」
「それには及ばん。某はいつでも護衛の為にここにおる。もし何かあったら某がお主の妹に裁きを下す」
「うん、ありがとう」
姉は宝玉が入った瓶をスカートのポケットにしまった。
「では、また会おう」
石松は去って、そして消えた。
「まる子に見られないようにしよう・・・」
さきこはそう思い、新しいノートを買いに行った。
後書き
次回は・・・
「能力複製の機械」
赤軍の長・重信房子は山田義昭にある機械の製造・量産を依頼する。そしてかよ子は三河口が修学旅行で広島に行く話をまる子やたまえと盛り上がり、そして長山にも話に混ぜると共にある事を思い出す・・・。
88 能力複製の機械
前書き
《前回》
姉妹喧嘩を繰り返すまる子に呆れた石松はまる子の姉に目を付ける。一方、赤軍の長・重信房子は戦争を正義とする世界の主にある事を報告し、次なる作戦を練る。石松はまる子の姉・さくらさきこにこれからの戦いに参加して欲しいと願い七つの宝玉を渡すのであった!!
さくらももこの姉・さくらさきこは石松から貰った異世界の宝玉を妹に見られないように気をつけた。
(あの子、こういうのに限って敏感になるから気をつけなきゃ・・・)
さきこは帰るとまる子は部屋を散らかして漫画を読んでいた。
(まる子がいると駄目ね・・・)
姉はノートのみを包み紙から出して名前を書いてランドセルに入れた。そして宿題をするふりをしていた。
「ごはんよ」
「はあ~い」
妹はすぐに出て行く。そして今だと思い、その宝玉を机の中にしまった。
パレスチナの赤軍本部。房子は本部に直結した加工場に行く。そこには山田義昭がいた。この加工場は精密機械メーカーに勤めたことのある山田の為に日本を征服する為の武器を製造・量産する為に建設したものである。
「義昭、機械の調子はどうかしら?」
「ああ、いい調子ですよ。作るのには手間かかってますが、もう3個ほどはできましたよ」
「それにしても修や敏彦を吹っ飛ばして純を気絶させたって事はその男子高校生はそれ程不思議な能力があるって事ね?」
「はい、ですが、聞いた話ではそういう似たような能力を持つ者は他にも何名かいて、平和を良しとする世界の人間が我々に対抗する武器を授けてるとか」
「そのようね。修や純三も実際に立ち会ってるわ。でも、異世界の四つの最強の道具である剣の複製は無理だけど、修はその男子生徒は強すぎる能力だって行ってたからこの機械があれば私達自身もサイボーグみたいに強力な人間になれるわね。ちょっと試していいかしら?」
「ええ、そいつを身体のどこかに着けるか、持っておくかで効果があります。鞄とかの中に入れて鞄を持っておいても効果は出ますよ」
房子は義昭が製造したボイスレコーダーのような機械を試しに使用した。
「その赤いボタンを押せば能力が発動できます」
房子は義昭が言ったように赤いボタンを押した。房子は地面を叩いた。その時、地が割れた。まるで彼女が空手をやったかのように。
「そしてその能力を使わない場合は緑のボタンを押して解除する事ができます」
房子は緑のボタンを押して義昭に返した。
「それにしてもこれが私達日本赤軍全員分あればもう無敵ね」
「はい」
そして房子は次の手を定める。
(杖の所持者以外にも、清水には何人もの手強い敵がいるのか。でも、純三が見たという護符の所持者の話は純も義昭も何も言っていなかった。同じ清水にあるというのにどこにあるのか・・・)
房子は気になる。杯は東京に、杖は静岡・清水にある。護符も清水にあったはずなのに所持者は今、どこにいるのか・・・。
(ならば・・・。日本全土をしらみつぶしてでもさがすか・・・。あの時のように・・・)
かよ子は学校でまる子にたまえと会話していた。
「隣のお兄ちゃんね、学校の修学旅行行ってるんだって」
「修学旅行~、いいなあ、ウチは夏休みさえどこにも旅行に行けないから羨ましいよお~」
まる子は羨ましがった。
「で、場所はどこなの?」
たまえが質問する。
「広島だって」
「へえ、広島か・・・。ちょっと遠いね」
「うん、どれだけ遠いんだろう・・・」
かよ子は長山の所に行って聞いてみる。
「長山君、広島ってここからどれだけ遠いかな?」
「ああ、そうだね、ここからだと新幹線で岡山まで言ってそこからまた電車で2時間ほどかかるね」
「凄い遠いね」
「うん、来年新幹線が博多まで開通する予定だからそれならもう少し移動が楽になると思うよ」
「そうだ、長山君の近所のお兄さんも今修学旅行で広島行ってるよね?」
「うん、そうだよ。でも、あそこは確か異世界の剣が日本赤軍に奪われたところなんだ・・・」
「あ、そうだったね・・・。そんなところにお兄ちゃん達が行くんだ・・・」
かよ子は今、奪われた剣がどうなっているのか。異世界の敵や日本赤軍に悪用されているのか。それはかよ子にはまだ分からなかった。
三河口達は修学旅行の地・広島に行く道中だった。新幹線に乗車中、三河口は列車が途中駅の名古屋に到着した時にふと思った。
(名古屋か・・・)
三河口は従姉の一人を思い出した。その時、隣の席に座っている濃藤が呼ぶ。
「なあ、ミカワ。この名古屋にお前の従姉が住んでんだよな」
「ああ、そうだよ。今、どうしてるかな・・・」
三河口は途中下車してでも、と思ったがそういう訳にもいかなかった。列車は名古屋駅を発車した。そして岐阜羽島、米原、京都、新大阪と駅を過ぎる。東海道新幹線としての区間はそこまでで新大阪から西は山陽新幹線となる。そして新神戸駅に到着した。
「ここが神戸か・・・」
「神戸がどうかしたか?」
濃藤が再び尋ねた。
「ああ、ここにも俺の従姉の一人が住んでるんだ。名古屋に住んでる方の姉にあたるよ」
「お前、兄貴とは駄目だけど、従姉とは仲いいんだな」
「確かにそうだな・・・」
「それにしても広島は遠いな。岡山着いたらまた特急列車に乗り換えか。せめて京都か奈良か大阪でもよかったんじゃないか。原爆の事を学ぶって目的があるとはいえ」
「まあ、遠い分、楽しんでやろうじゃないか」
そして三河口も濃藤も己の身体に異変がないか確認する。例のあれと言った胸騒ぎは起きなかった。
房子は義昭が製造した機械を試す。気迫だけで周囲にある岩が砕けた。
「これをあの人達に持たせれば・・・」
房子は異世界の最強の道具の残り三つを必ず手に入れると誓った。日本を変える為に・・・。
三河口達はようやく広島に到着した。その時は夕方になっており、生徒達はくたびれたというような感じだった。宿泊所の旅館にバスで移動して皆は寛いだ。
かよ子は広島の事が気になった。
(三河口のお兄ちゃん、広島でなにも起こらなければいいな・・・)
かよ子は隣人の高校生男子の無事を祈った。
後書き
次回は・・・
「広島の女子高生」
石松は杉山の姉に出会い、「戦い」への協力を求める事にする。一方、広島へ修学旅行に行っている三河口達は地元の高校の生徒達との交流会の際、自分達と同じ能力を宿す女子と対面することになる・・・。
89 広島の女子高生
前書き
《前回》
かよ子はまる子やたまえ、長山らと共に三河口達が修学旅行で言っている広島の話で盛り上がると共に、その広島では異世界の最上位の道具の一つ・剣が奪われた地でもあると言う事を思い出す。一方、赤軍は残りの強力な道具・杖、杯、および護符を手に入れる為にある機械を開発したのだった!!
杉山君のお姉さんの名前って特に設定されていないので、どんな名前にしようか結構迷いましたね・・・。また、42話で僅かに出てきたとある女子高生が本格的に登場し、その話の伏線回収をしたいと思います。
杉山もと子。中学生で杉山さとしの姉である。下校中に友達と別れた所、ある人物と出会った。
「お主、杉山さとしの姉であったな」
「あら、貴方はどこかであったような・・・」
「さよう、大雨の時に日本赤軍及び異世界の敵とお主の弟君やその友人達と闘った森の石松だ」
「ああ、そうだったわね」
「あの時はよく健闘してくれた。今更であるが感謝したい。だが、日本赤軍や私のいる世界の敵は多く、今後はさらに激しい戦いが予想される。お主の弟は高校という学び舎の祭りにおいても赤軍と闘っておった」
「ああ、弟からも聞いているわ」
「それで、姉君であるお主にも協力を願いたい」
「え?」
「お主にはこの道具を授けよう。某が死後に住む事になった世界の道具だ」
石松が授けたのは丸い玉だった。
「何これ、玉?」
「その通り、敵を攻撃する事が可能な玉だ。その玉が緑に光る時は水、炎、土、風などの自然を利用して相手を攻撃する事ができる。そしてその玉が黒く光る時は闇の力、いわば相手に気付かれずに攻撃が可能だ。そして橙色に光る時には己の気合いを込めて相手を触れもせずに攻撃する事ができる。ただし、私利私欲に使わぬように気を付けよ」
「ええ、分かったわ、ありがとう」
「お主も弟気味と同じくの活躍を祈る」
石松はどこかへと消えて行った。
(異世界の玉ね。さとしも大野君とまだ仲直りしてないし、あの二人が不安だしね・・・。私も何とかしておかないと・・・)
もと子はそう思って玉を握りしめ、常に身から放さないのであった。
かよ子は未だに杉山が大野との関わりを避けている事にやがて自分まで寂しく思うようになった。放課後、かよ子は大野、杉山、ブー太郎、そしてまる子が建造した高台にある秘密基地へと向かう。
(これ、折角杉山君達が造ったのに・・・。早く仲直りして欲しいよ・・・)
かよ子はそう思いながらこの基地でのやりとりを思い出す。ここですみ子達隣町の小学校の生徒と出会った。そしてここでお互いの争いを冬田やフローレンス、イマヌエルと共に抑え、共闘する相手になれた。そしてここで2学期の始まりに石松の過去話を聞いた。かよ子は基地に登る。
(もう一回、杉山君とここからの町の風景を見れたらな・・・)
そんな時、別の人物達が登って来た。
「あれ、かよちゃん・・・」
「あ、すみ子ちゃん・・・」
すみ子に山口、川村、ヤス太郎だった。
「お前一人で珍しいでやんすな」
「うん、実はね・・・」
かよ子はこの前の学校の運動会で大野と杉山が喧嘩した事を「義元」の面々に話した。
「そんな事があったのか」
「でも、なんかあったらきっと仲直りする時が来るよ・・・!!」
「うん、きっとそうだよね・・・!!」
かよ子はそう信じたかった。そして、すみ子が話題を変える。
「あ、そうそう、私のお兄ちゃん、修学旅行で広島行ってるの・・・。今度皆にもお土産持って来るわね・・・」
「そうだ、私の家の隣のお兄ちゃんも言ってたな・・・」
「そう言えば同じ高校だったよな」
「うん、あ、そうだ、あそこ、異世界の剣があるって聞いたんだ」
「異世界の剣?」
山口が気になった。
「うん、私の杖と同じ異世界で一番強力な道具なんだ。でも、日本赤軍に奪われちゃったんだって」
「マジか!?これからの戦いも大変になるだろうな」
「うん」
三河口達はこの日は原爆ドームを廻り、被爆経験者の体験談を聞いた後、厳島神社を訪問した後、土産選びをしていた。三河口は叔母とその旦那用、そしてかよ子にあげる物と分けて仕入れた。そして生徒たちは旅館に戻る。
(明日は地元の高校と交流するのか・・・)
女子達の明日はそこの高校の生徒と文通相手にでもなろうかという会話をよそに三河口は己の身体の異変を確かめる。特に違和感はなかった。
(この状態が続けばいいのだが・・・)
そして翌日、その交流する相手の高校へと向かった。体育館にてクラス別に決まったクラスの生徒と挨拶したりするのである。三河口と色々な生徒と挨拶した。その時だった。
(なんだ、この気配は・・・)
よく感じる気配だが、赤軍や異世界の敵が来る時とは違った。近づくと、一人の女子高生が三河口に近づいていた。スケバンのようないでたちでスカートは普段は長くしていたのを先生に咎められて無理矢理短くしたような感じだった。
「ちょい、あんた・・・」
「え?」
(やはりこの感触はこの生徒によるものか・・・)
「あんたに近づくとなんかいつもと違うような胸騒ぎが感じるけんな」
「ああ、俺には凡人と違って恐ろしい能力を持ってるからね」
「それ、うちも同じじゃけんよ」
「そうか、もしかして君、異世界の敵とか日本赤軍とかと闘った事があるのかい?」
「ようわかるのう。実はそうなんよ。変な奴らに会ってそしたらうちがコテンパンにしたんよ。それに夏にうちの近所で火事が起きた時も胸騒ぎがしたんよ。そこの家族は皆死亡、急にそこの家の親族は皆死んでもうたってな」
「なぬ!?となると奴等か。そいつらと戦ったのか!?」
「いんや、敵と戦ったのは別の日の事よ」
「そうか・・・。戦う時は武器を使うのかい?それとも俺みたいに敵と感じたらすぐに相手を攻撃したとか」
「うちは武器を持っとらんけん、敵と思ってぶっ飛ばして追っ払ったんよ」
(つまり相手は異世界の敵で、俺みたいに武器無しで相手を倒したって訳か・・・)
「そうか、俺の学校にも他にも異能の能力を持つ者がいるんだ。連れてくるよ」
三河口は濃藤、北勢田、そして奏子を呼んだ。
「彼らも異世界の敵や赤軍と闘ったんだ。特にこの女子は異世界の羽衣を持っているんだ。奏子ちゃん、この人に見せてあげてもいいかな?」
「いいわよ」
奏子は文化祭の帰りにエレーヌから貰った羽衣を取り出し、その女子高生に見せた。
「中にはこのような異世界から貰った道具で戦う物もいる。俺はたまたま赤軍の奴とかは武器無しでも自分の能力でやっつけられたんだがな・・・」
「ほう、あんたも結構強いんね」
「でも俺はその能力のせいで人から怖がられて家族からも嫌われて、少ね・・・」
「あーっとっとっと!!」
濃藤と北勢田は慌てて三河口の口を抑えた。
「そこまで言わなくていい。イメージ悪くなるからよ」
「すまん、すまん、兎に角、日本赤軍との戦いは激しくなっているという事だ。もし何かあったら今後また会えて協力できるかもしれない。俺は三河口健、宜しく」
「俺は濃藤徳嵩だ」
「俺は北勢田竜汰」
「私は徳林奏子よ」
「うちは鯉沢輝愛。宜しく」
そして交流会は終わった。
翌日、三河口達は清水へと帰る事になった。帰りの新幹線にて三河口は昨日出会った鯉沢輝愛の事を考えていた。彼女もいつの日かは自分達と共に大いなる戦いの渦に関わるであろうと・・・。
日本赤軍の本部。房子は探し求めようと決めた。行方が分からぬ護符のありかを。
(絶対に見つけてみせるわ・・・。そして杖も杯も、我が物とする・・・)
房子は策を練り続けていく。
さきこは異世界の宝玉を妹にバレぬように隠し持つ。
(これは絶対に渡さないわ・・・)
杉山さとしの姉・もと子は玉を見つめる。
(これで私達の未来を守りたい・・・)
かよ子は杉山と大野が仲直りする日を待ちながら三河口の帰りを待っていた。
(広島、どんなところだろう・・・)
そんな時、ドアが鳴った。
「かよ子、隣のお兄ちゃんよ」
「え?はーい!!」
かよ子は玄関へと出た。
「かよちゃん、只今」
「お帰り!」
そして次々と戦いに参加する者が増える中、時はまた進んでいく。
後書き
次回は・・・
「広島の土産」
かよ子は三河口から渡された広島土産をまる子、たまえ、とし子、そして杉山にあげようとする。一方、三河口の従姉で札幌に住むありは異世界のとある人物と出会い、連続企業爆破事件の犯行グループの鎮圧を請われる・・・!!
90 広島の土産
前書き
《前回》
杉山の姉は森の石松と出会い、不思議な玉を渡され、石松に何かあったら共闘して欲しいと頼まれる。そして三河口は修学旅行のプログラムの一環として広島市内の高校と交流し、そこで出会ったスケバンのような女子・鯉沢輝愛と出会う。彼女から夏休みに近所のとある家が火事になり、その家の親族も全員急死したという情報を耳にするのであった!!
北の大地・北海道に住む煮雪あり(旧姓羽柴)は、買い物の帰りにある人物に出会った。
「お主、イマヌエルと出会い、戦いの事を知っている和人であるな?」
「ええ、貴方は?」
「我はシャクシャイン。かつてこの地の首長だった。今、この国の首都にて悲劇な事が起きている」
「東京の連続企業爆破事件の事?」
「ああ、それらは一部の者に我らの子孫なる者が関わっていると向こうから聞いている。確かに私もこの世の人間だった頃は和人と争い、騙し討ちに遭った身ではあるが、今の世にて我が民族の人権を尊重した事を認められて平和を司る世界の者もなった。だというのに我が末裔どもがあのような非道な事を行えばアイヌの誇りを汚す事になる」
「ああ、わかるわ。確かに主人もアイヌの子孫だし、アイヌの差別も確かに私も酷いと思うわ。でも、確かにそれでアイヌの人権が守られるって訳じゃないのよね。でも、私達にできる事ってあるの?」
「勿論だ、イマヌエルと交渉している身ならば信用できる。奴等を止めて欲しいのだ。もしかしたら日本赤軍という奴等と同盟を組む可能性があると聞いているからな」
「日本赤軍・・・!!」
ありはその名を聞いてぞっとした。
「今すぐとは言わん。主人と相談するとよい」
学校でかよ子はまる子にたまえ、とし子を呼んだ。
「隣のお兄ちゃんがこの前、修学旅行から帰って来たんだ。お土産渡すから今日私の家においでよ」
「うわあ〜、ありがとお〜」
その時、猛スピードで食い意地の張った男子・小杉太が来た。
「何、お土産だって、何か美味いもんか!?」
「こ、小杉・・・」
かよ子は小杉の悪食には十分熟知していた。いや、かよ子どころか全ての皆が小杉の頭の中は全て食欲に支配されている事はご存知の事である。
「ち、違うよ、綺麗なアクセサリーを貰ったからまるちゃん達にあげるんだよ!」
かよ子は嘘をついた。
「そ、そうだよ。食べ物じゃないよ」
たまえもかよ子に同調する。
「ちぇ・・・。今度食いもんだったら俺を呼んでくれよ!」
小杉は残念がってその場を離れた。
(ふう、もしここで本当の事言ったらお土産全部小杉に食べられちゃうとこだったよ・・・)
かよ子はそう思った。そして放課後、かよ子は思い切って杉山に声を駆ける。
「あ、あの、す、杉山君・・・」
「山田あ?何だ?」
「実は隣のお兄ちゃんが修学旅行のお土産くれたんだ。杉山君にも分けてあげるから私の家に来てくれるかな?」
「え?おう、いいぜ。サンキューな!」
「うん!」
かよ子は嬉しくなった。
かよ子の家にまる子、たまえ、とし子、そして杉山が来た。
「あれ、杉山君も来たんだ」
とし子が少し驚いた。
「ああ、あいつに誘われてな」
かよ子の母が出迎えた。
「あら、中に入って。今、うちの子呼ぶわね」
まき子は二階に行き、娘を呼ぶ。
「かよ子、まるちゃん達が来たわよ」
「あ、うん」
かよ子は降りて来て皆と居間に集合した。
「ねえ、ねえ、かよちゃん、お土産って何~?」
まる子が聞いた。
「これだよ」
かよ子は三河口から貰った土産を出した。
「紅葉の形してるね」
「これ、もみじ饅頭って言うんだよ。広島で一番有名なお菓子なんだって」
「へえ、美味しいね」
「やっぱり小杉呼ばなくて良かったねえ~」
「ちょっと可哀想かもしれなかったけど・・・」
「え、小杉がどうかしたのか?」
杉山が質問する。
「実は小杉が私達の話を聞いてて物凄いスピードで来たんだ。『食いもんなら食わせろよ!』って。でも私嘘ついたんだけど・・・」
「ま、いいんじゃねえか。あいつが来ると全部食われて俺達は結局食えなくなっちまうだけだし・・・」
「うん、そうだよね」
皆は笑い合った。
「これで大野君がいたら仲直りできたかもね・・・」
とし子はそう思ったが、杉山は断言する。
「それはねえよ。あいつ、甘いもん好きじゃねえし・・・」
「あ、そうか・・・」
そして皆はゲームして楽しんだ後、帰って行った。
「はあ、宿題するか・・・」
かよ子は宿題を始めるのであった。
三河口は帰宅後、叔母から札幌に住む従姉・ありから電話があった事を聞いた。
「ありちゃんが東京へ行くんですか?」
「うん、連続企業爆破事件の犯人のグループを抑えようって事で行くって言ってたんよ」
「しかし、ありちゃん一人で大丈夫でしょうか?」
「うん、まあ、ありも異世界の人に言われて行くからね」
「俺も援軍に言った方がいいでしょうか?東京には杯の所有者もいるし、何かの事があったらその子が危ないかもしれません」
「それは嬉しいけどね、ここはありに任せるべきだと思うよ。それに健ちゃんも学校あるでしょ?」
「なら、名古屋のさりちゃんに援護を頼むべきでは?」
「いや、私がさりに護符を渡したのは敵に護符の場所を撹乱させる意味もあるんよ。さりに下手に動かれてもいかんよ。もし必要ならありが自分から呼ぶでしょうね」
「分かりました。ありちゃんを信じます」
「それに現に隣のかよちゃんだって小学生だけど異世界の敵を倒せてるんだから、ありだって簡単にへまはしないよ」
「そうですよね」
三河口は従姉の健闘を祈るしか今はできなかった。
ありはシャクシャインと出会った事を夫と相談する。
「そうか、わかった俺も行こう。何かあると大変だからな」
「ありがとう」
そしてありは自分の姉と妹、そして実家の両親と居候している従弟の事も考える。
(絶対に抑えないと・・・)
かよ子はどうか杉山と大野が仲直りして欲しいと願い続けていた。
(お願いします、どうか杉山君と大野君が仲直りできるようにしてください・・・)
今後の戦いで仲間割れなど本当はあってはならない。あの二人の中が修復しない限り元の日常は戻ってこないだろうと思うかよ子であった。
後書き
次回は・・・
「東アジア反日武装戦線の暗躍」
東京で連続企業爆破事件を起こす組織・東アジア反日武装戦線。そんな組織の元にに日本赤軍の一人が交渉をしに現れる。その一方、羽柴家の次女・ありは夫と共に東京へ渡り、かよ子は来月、合唱コンクールがある事を思い出す・・・。
91 東アジア反日武装戦線の暗躍
前書き
《前回》
かよ子は三河口が修学旅行で訪れた広島の土産をまる子やたまえ、とし子、そして杉山に配り与える。その頃、札幌では三河口の従姉かつ羽柴家の次女であるありが異世界から来て、嘗てのアイヌの酋長・シャクシャインと出会う。東アジア反日武装戦線という組織の鎮圧を請われたありは夫と共に東京へ向かう事を決意するのであった!!
日本赤軍の本部。房子は異世界の護符の在処と共にある事に目を付けていた。房子の部屋に和光晴生が入ってきた。
「総長、御用とは?」
「ええ、晴生、今東京で次々と大手企業のビルを爆破させる事件をご存知かしら?」
「ああ、連続企業爆破事件の事ですね。それがどうかしたのですか?」
「あれを行っている東アジア反日武装戦線を知っているでしょ?あの人達を利用できればと思ってね。今、異世界の杯は東京にあるし、彼等に頼んで見た方が効率いいと思うの。そうすれば、私は護符を手にする手立てを考える事に専念できる。晴生、交渉できるかしら?」
「はい、やってみましょう」
和光は日本へと旅立つ支度を始めた。
翌日、ありは夫・悠一と共に空港にいた。これから羽田空港行きの飛行機に搭乗する。
(日本赤軍・・・、東アジア反日武装戦線・・・。そこまで日本を破滅に導きたいのかしら・・・)
ありは飛行機に乗り、昨日の電話で母から聞いた事を思い出す。
『あり、明日東京行くの?』
「ええ」
『これを覚えておきなさい。あの東京には異世界の杯を持っている子がいるわ。もしかしたらその子を襲う可能性があるかもしれないって事をね』
「ええ、分かったわ」
(そういえば、さりも異世界の護符をお母さんから貰ってたし、隣の山田さんも異世界の杖を持ってて娘のかよちゃんに渡したのよね・・・)
ありは異世界の道具を考えた。飛行機は羽田空港へと向かう。
11月に入り、涼しくなっていた。とはいえ、清水は温暖な気候なので気温の低は激しくはなかった。しかし、涼しくなっている事に変わりない。かよ子の学校では全校朝会の校長の話は相変わらず長く、体育館でやっても外でやっても身体が震えて我慢ができなった。
「はあ、やっと終わったね・・・」
かよ子も寒くて震えていた。
「うん、アタシゃ寒くてトイレ行きたいよお〜」
まる子は猛スピードでトイレに行った。
「もう、まるちゃんったら・・・」
東アジア反日武装戦線。アイヌ民族の人権、今の日本を滅亡を目的とする集団である。警視庁にも住所が知られていない本部にて構成員達は集まる。
「さて、8月は三菱、先月は三井のビルを爆破したが、まだ今の腐った日本を変えるに至っていない。その為に多くの邪魔となる社を消さなくてはならない」
総長・大道寺将司は伝える。
「そこでだ、今年の大きな変化が起きた。地震のような現象が起き、異世界の人間が現れるようになったのだ。そこで、段々とそれが日本赤軍の仕業と判明してきている。そこで、彼らも今、この腐ったこの国を元に戻そうとしているとの事だ。もし彼らを上手く使えたらいいのだが・・・」
斎藤和が意見を述べる。
「でも、聞いた話では赤軍の静岡の清水にある高校の文化祭でテロを起こしたそうですよ。それに幾度と東京や静岡にも来ているので会える機会はありますよ」
「だといいがな」
斎藤和は別の職として貸本屋を営んでいる。その時、一人の男が入って来た。
「貸本屋か・・・。文学部卒の俺には絶好の所ですね」
「そりゃありがとうございます」
「ところであんた、こうして貸本屋やってるけど・・・」
男は斎藤の耳元で囁いた。
「東アジア反日武装戦線やってるでしょ?」
斎藤はビクッとした。
「もしや、貴方は警察?」
「いえ、いえ、とんでもない。私はね・・・」
男は小声で続ける。
「日本赤軍ですよ」
「あ、あの・・・!?」
斎藤は驚いた。
「これはこれは、ありがとうございます。我々はね、貴方のいる組織をお待ちしていたのですよ」
「そうですか、ウチのリーダーも是非同盟を組みたいと言っていましたので・・・」
「わかりました。では今度の会議にて是非ご参加を・・・」
「ああ、いいでしょう」
ありと悠一は東京に到着していた。
(東京ね・・・。そういえば異世界の『杯』を持ってる子がいるとか)
「さて、まずはホテルにチェックインするか」
「そうね」
二人は空港付近のホテルにてチェックインした後、ありは夫に頼み出る。
「ちょっと母に電話してくるわ」
「ああ、いいよ」
ありはホテル内の公衆電話を借りて実家の母に電話をした。
かよ子はまる子にたまえと下校していた。
「もう来月はクリスマスか・・・」
「そういえば今度はクリスマス合唱コンクールがあるから大変だよね」
「うん、もしかしたら毎朝か放課後練習するのかもね」
「放課後ならともかくアタシゃ朝はやだなあ〜」
「でも放課後だって習い事で出られない子がいるから、朝しかないんだよ」
たまえが解説する。
「う、うん・・・」
「まるちゃん、運動会の練習の時みたいに遅刻しないでね」
「そうだよ、かよちゃんはおっちょこちょいでも遅刻しなかったんだよ」
「遅刻しそうになった時もあったけどね・・・」
「は、ハイ・・・」
東アジア反日武装戦線の本部。斎藤は大道寺を始め、全組織全構成員に日本赤軍の和光を紹介した。
「この方があの日本赤軍の一人、和光さんですよ」
「どうも、よろしく」
大道寺は話を始める。
「それで、今回の議題だが・・・、折角日本赤軍の方が来ていただいたのだからその方の意見を是非聞いておきたい」
「ああ、我が総長、重信房子が行った異世界との距離を近づけた事により異世界の協力者が出ている。だが、我々の計画を邪魔する奴がいるのも事実だ。そこで我々が最も脅威とされているのが、平和を良しとする異世界の奴がこの日本の人間に我々に対抗する道具を寄越している。特に我々の中で最も恐ろしいとされているのが、杖、杯、護符、そして剣だ。まあ、剣は広島にあって我々が回収した。課題は残りの三つを回収する事だ。杖は静岡の清水、護符は清水にあったが、今どこにあるか行方不明。ただ、杯はこの東京都内にあるのは確かだ。我々が送り込んだ異世界の人間が東京でその杯を持っている子に倒されたと情報が入ったから、貴方にはその杯を回収して欲しいのだ」
「ほう、異世界の杯か・・・」
「房子様もそれを望んでおられる。だが、相手もなかなか手強い。夏に私の仲間の日高敏彦という者が杯を手に入れる為に東京に訪れたが、通りすがりの高校生とやらの妨害を受けて失敗してしまった。だが、我々も協力は惜しまん」
「それは有難い」
「では、連絡を取り合わないとな・・・」
ありは実家の母と電話する。
「お母さん」
『ああ、あり』
「私達、今東京に着いて羽田のホテルに泊まってるところ」
『あら、お疲れ様。気をつけてね』
「でも、東アジア反日武装戦線とか赤軍のいるところって見つけられるかしら?」
『大丈夫よ。異世界の人間に頼まれたんでしょ。見つかるよ』
「うん、そうよね・・・」
ありは電話を切った。そして敵の行方・在処についてありはまだ知る由もなかった。
御穂神社。石松は御穂津姫と話す。
「なぬ!?赤軍と敵の奴等が江戸の極左の組織と組む事を検討していると!?」
「ええ、それが起きると大変な事になります。そこに住む杯の所持者に危害が及ぶ恐れもありますからね。それを抑えるには今シャクシャインという人に頼まれて東京に滞在している者がおります」
「分かった。この地も不安であるのだが・・・」
「その方につきましてはご安心を。嘗ての護符の所持者の娘の一人です。きっと防いでくれるでしょう」
「そうか、某も祈ろう・・・」
石松は祈った。東京にある杯が守られる事を。
後書き
次回は・・・
「合唱コンクールへの道」
かよ子のクラスではクリスマス・イブに行われる合唱コンクールの会議を行っていた。かよ子は独唱の部分を歌うという大役を担う事になる。そして東京を訪れたありと悠一はシャクシャインからある道具を授かる・・・。
92 合唱コンクールへの道
前書き
《前回》
日本赤軍の総長・重信房子は赤軍の一人・和光晴生に東京で連続企業爆破事件を起こす東アジア反日武装戦線と協力関係を築く為に彼らとの交渉を命じる。そして日本で東アジア反日武装戦線と接触する事に成功した和光は赤軍と東アジア反日武装戦線の同盟を結ぶ事に成功する。一方、かよ子の隣人のおばさんの次女・ありが夫の悠一と共に東京へ訪れるのだった!!
ありは羽田空港付近のホテルより外出した。
(それにしても見つけられるかしら・・・)
その時、シャクシャインが現れた。
「あら、シャクシャイン、来てくれたの?」
「うむ、私以外でも来ておる。尽力する」
「ありがとう」
三河口は登校しながら東京に滞在中の従姉の事を気にしていた。
(ありちゃん、大丈夫かな・・・?)
かよ子のクラスではクリスマス合唱コンクールに向けての学級会を行っていた。学級委員である丸尾末男とみぎわ花子が教壇の前に立つ。
「皆さん、静かにしてください!今からクリスマスに行われる合唱コンクールについて決めたいと思います」
「歌う曲は『大きな古時計』です」
「ズバリ名曲でしょう」
児童達からはシケた歌とか良い歌とか意見は様々だった。
「ピアノ係は誰がいいか、立候補を決めてください」
その時、お金持ちのお坊ちゃま、花輪和彦が立ち上がった。
「Hey、ボクがやろうじゃないか。ボクは3つの時からギルバート先生にpianoのlessonをして貰っているのさ。自慢じゃないけどもうモーツァルトも弾けるんだよ」
「そのギルバート先生って何人?」
まる子が聞いた。
「イギリス人さ」
「何で日本の清水にいるの?家出?」
「しっ、知らないよ。ボクはprivacyにはかかわらない主義なのさ・・・」
花輪は返答に困った。他のクラスメイトからも怪しまれたり不安の声が挙がった。
「きっ、キミ達、別にボクの先生が誰だって別にいいじゃないか。こんなpianoの上手いボクがclassにいた事だけでもluckyだと思いたまえ・・・」
花輪は何とかその場を凌いだ。
「では次に独唱してもらう人を決めて貰います。ほんの一小節ですが、独唱の部分があるのです。1番、2番、3番一人ずつお願い致します」
だが、独唱に名乗り出る者は勇気がないのか、面倒臭いだけなのか、ただ歌に自信がないのか、なかなか出てこなかった。
「では、推薦をお願い致します」
「はい」
女子の一人が立ち上がった。
「私は女子では山田さんがいいと思います」
「え・・・、私?!」
かよ子が自分が指名されて少し焦った。
「歌のテストでもいい声してたしね」
「賛成」
(私が・・・、できるかな・・・?)
かよ子はおっちょこちょいな自分に独唱などできるか不安だった。
「大丈夫だよ、かよちゃん、いい声してるもん」
「頑張れよ!」
皆は周囲から期待と応援の声が飛ぶ。
(それなら・・・)
「ズバリ、山田さん、やってくれますね?」
丸尾も確認を取る。
「はい、頑張ります」
(よーし、おっちょこちょいしないように練習しないと!!)
かよ子は燃えた。そして次に他2名の独唱者の選定に行く。そんな中、藤木はある事を考えた。
(そうだ、僕が行ってみようかな。それなら笹山さんも見直してくれるかも・・・)
藤木はそう思った。
「あ、あの、僕がやります!!」
藤木は名乗り出た。しかし、皆から不安の声がでる。
「藤木で大丈夫かしら?」
「あいつ歌のテストでズル休みしたそうだしな」
藤木はかよ子の時とは完全に正反対な反応に体が震えた。
「う・・・、何でもないです・・・」
藤木は引き下がるしかなかった。そして別の女子が立ち上がる。
「笹山さんがいいと思います」
「笹山さん、よろしいですか?」
「はい」
藤木は笹山を羨ましがった。
(いいなあ、笹山さん・・・。僕もなれば一緒に頑張ろうってなれたのに・・・)
会議は続く。
「では、男子が欲しいのですが・・・」
はまじが提案する。
「丸尾、お前学級委員なんだからやれば?」
「エエー、私が!?私、歌だけはちょっと・・・」
その時、ブー太郎が提案した。
「大野君がいいと思いますブー。前の歌のテストで大野君、凄い上手くて先生に褒められてたブー」
他の生徒達も賛成する。
「俺?」
「大野君、ズバリ、やってくれますね?」
「おう、しょうがねえなあ」
大野は賛成した。
「その他の人は高音部と低音部に分かれてください」
この時、まる子とたまえ、杉山は高温、ブー太郎、藤木、長山は低音となった。
「藤木君」
藤木は永沢に呼ばれた。
「あ、永沢君、君も低音なんだ。頑張ろうよ」
「君こそ、足を引っ張らないでくれよ」
「う・・・」
「それに君、独唱に立候補しただろ?歌のテスト当日に休んだ君みたいな卑怯者なんかじゃ務まらないよ。仮に練習しても本番で怖くてずる休みして逃げるかもしれないかもね」
「う・・・」
「永沢君、そんな事まで言わなくもいいでしょ!」
「さ、笹山さん・・・」
「藤木君だって頑張れるよ。藤木君、頑張ってね」
「う、うん、僕、頑張るよ。笹山さんも応援するよ!」
「ありがとう」
藤木は笹山に庇って貰って申し訳ないと思いながらも笹山と話せて嬉しかった。一方のかよ子は大役に抜擢されたやる気と責任感に満ちていた。
「山田あ、お前、独唱やるんだろ」
「す、杉山君・・・」
「頑張れよな、応援してるぜ!」
「うん、ありがとう!」
かよ子は好きな男子に励まされた事で嬉しくなり、もっとやる気になるのであった。
ありと悠一はシャクシャインと会話する。
「それで、私達にどうやって始末できるのかしら?」
「その事であるが、これを渡したいと思う」
シャクシャインがありに渡したのは宝石が沢山繋がった首飾りだった。
「このタマサイには各々の神の魂が籠っておる。『エク・カムイ』と唱えればその場で対応した神が出てきてくれる。そしてお主は煮雪ありの夫の者・煮雪悠一であるな?お主は確かアイヌの末裔だと聞いた。お主にはこれを授ける」
悠一に渡されたのはブレスレットのような物だった。
「このテクンカネは我々の世界の人間を呼び起こし、共闘をしてくれる。ここの世に滞在する者もいるので、きっと誰かが助けに来てくれるだろう」
「ありがとう」
「ところで、私達がその過激派と巡り合うタイミングなんだけど・・・」
「それについては向こうの世界でフローレンスという者とイマヌエルから聞いた。彼らはこの地にいる異世界の杯の所有者を襲撃する事を目的としているとの事だ。その者の住む地で迎え撃てばよい」
「了解。ありがとう」
「私も行こう」
「そうね」
三人は出発した。
かよ子は家に帰ると早速歌の練習をしていた。
(歌詞を間違えないように、音を外さないように・・・)
かよ子は自主練を続ける。おっちょこちょいをしない為に・・・。
後書き
次回は・・・
「迎え撃ちを図れ」
ありが東京で戦う事で不安を募らせる三河口は従姉の無事を祈るしかできなかった。そしてありとその夫・悠一は東アジア反日武装戦線と交戦する事になるが、さらにその裏では・・・。
93 迎え撃ちを図れ
前書き
《前回》
クリスマスの合唱コンクールに向けての学級会で3年4組は「大きな古時計」を歌う事になる。その中には独唱部分がある為に1番、2番、3番それぞれの独唱を担当する人物を決めることになり、かよ子が1番を、笹山が2番を、そして大野が3番を歌う事になる。そして、かよ子の隣人のおばさんの次女・ありとその夫・悠一は異世界の人物・シャクシャインから異世界の道具を貰うと共に東京に潜む東アジア反日武装戦線の退治を行う!!
申し訳ございません、今回、あのおっちょこちょいな女の子は全く出番無しになってしまいました・・・。
ありと悠一、そしてシャクシャインが来たのは東京南部の工業地帯の中の町だった。
「聞いた話では、ここに杯の所持者である和人がおるとの事だ。そこで奴等を迎え撃つ」
「了解したよ」
「私も」
「・・・む」
「シャクシャイン、どうしたの?」
「私に感じるのだ。奴等の気配が・・・」
シャクシャインは見回した。
「間違いない、あの者どもだ!」
「え?」
ありと悠一は見回すと四人組の男女の姿が見えた。
(あれが東アジア反日武装戦線のメンバー・・・!?)
「どうする?」
「厄介事になる前に追い払わねば」
「そうね」
三河口は従姉の無事を祈ると共に、何も動けない自分が情けなかった。
(ありちゃん、大丈夫かな・・・)
「三河口君、どうかしたの?」
奏子が聞いてきた。
「ああ、実はね、札幌に住んでる従姉の一人が今東京にいるんだ」
「東京に?どうして?」
「東京の企業のビルを爆破させてる連中がいてね、そいつらが赤軍と組む可能性があると言われて止めに行っているとの事だよ」
「そんな!大丈夫なの?」
「うん、本当は俺も援護に行きたいけど、ただ、祈るしかない・・・」
ありは四人組の男女に話しかけた。
「あの、そこの人達・・・」
「何ですか?」
「もしかして、なんか『杯』とかいうものを探してるのですか?」
その四人組は「杯」という言葉に反応した。
「それがどうした?」
「どうもこうもね・・・」
悠一が出てくる。
「お前ら、東京のあちこちのビルで爆破事件を起こしてる奴等だって聞いたんだよ。ここから立ち去って貰おうか」
「・・・バレたらならしょうがないか。俺達は東アジア反日武装戦線のグループの一人、『狼』だよ」
「やっぱりね!」
「お前ら、聞いた話では杯どころか日本赤軍と組む予定とか聞いてるぞ!」
「そこまでバレてるの?」
「狼」のメンバーの一人の女性が気付いた。
「それなら、ここでお前らも纏めて消してやる。片岡、アサカワ、やれ!」
「了解!」
片岡がある物を投げていた。シャクシャインは見抜いた。
「あれは手で投げる爆弾だ!!」
シャクシャインは自身の刀で片岡が投げた手榴弾を無力化させた。
「この!」
悠一はシャクシャインから貰ったテクンカネを発動させた。その時、異世界の人間が二名現れた。
「我が名は徳川家康。お主ら、我が発展させた江戸で何を考えておる!」
「我が名は上杉長員。家康殿、そしてお主ら、助太刀に参る!」
「ああ、ありがとう」
ありも己のタマサイを発動させる。
「エク・カムイ!」
ありが唱えると、様々なカムイが飛び出した。
「お主がシャクシャインによってタマサイの所持者となった和人だな?我はアイヌの創り主、アイヌラックルだ。これらは我を引き継ぐ神だ。やれ!」
「了解!!」
アイヌラックルによって多くの神が組織「狼」に対抗した。そして悠一によって召喚された家康と長員も抗戦する。
「この、やるわね!」
アサカワと呼ばれた女は薬品をばらまいた。そして発火した。
「纏めてバーベキューにされちゃいな!」
「何たることを!」
「ならば我が!」
アイヌラックルが青い雲を作り出した。
「水になれ!」
その時、青い雲は雨のように降り、アサカワが発火した炎を消した。そして家康が刀を振りかざす。
「我と長員の刀は勝利と健康を齎す妖刀だ。お主らを成敗してくれる!」
家康が振った刀によって「狼」のメンバー達は吹き飛ばされた。
「トカプチュプカムイ、とどめを刺すのだ!」
「了解!太陽の光よ、裁きを下せ!」
トカプチュプカムイは唱えた。
「これで奴らは気絶し、動けんであろう。その間に法を取り締まる組織に引き渡すのだ」
シャクシャインは告げる。
「ああ、警察ね」
組織「狼」はトカプチュプカムイの能力で完全に気絶し、あり達は警察に通報して彼らの身柄を引き渡す予定でいた。しかし・・・。
「な、なぬ、なぜだ、なぜ効かぬ!?」
「保険として別に一人付けて貰ったんだよ」
「何だと!?」
別の人物が一人現れた。
「俺が無効化させてもらったぜ」
「お前も東アジア反日武装戦線か!?」
「いいや、俺は日本赤軍だ」
「え!?」
皆が驚いた。
「俺は和光晴生。ここにある杯を奪う為に東アジア反日武装戦線と組んだが、まさか邪魔が入るとはな」
「・・・って事はもう同盟を結んでるって事!?」
「この愚かしい和人め、簡単にはさせんぞ!」
シャクシャインはげ激昂し、和光に立ち向かう。だが、何もせずに弾き返された。
「うおっ、な、なんだ!?」
「ははは、なめんなよ。簡単にやられんぞ」
「まさか・・・、貴方も能力が・・・」
ありは自分の従弟が自分には凡人とは異なる能力を持っているという事は聞いた事がある。その従弟が自身の家に寄った帰りにこの地で同じく異世界の人間と日本赤軍が杯を奪いに訪れた際に(その時肝心の所有者は清水に遊びに行っていて留守だったが)自身の能力を使用して追い払ったと母から電話で聞いた事がある。
「赤軍にもそうやって普通の人と違う能力を持っているっていうの?」
「は?いいや、違うな。静岡の清水にいる、高校生の能力がめちゃくちゃ強いって聞いたから、そいつらがいる高校の文化祭で俺の仲間がそいつの能力を一部を吸い取らせて貰ったんだよ。その吸収した機械からそいつと同じ能力を発揮できる機械を仲間が量産したのさ」
和光はポケットから小さい機械を取り出した。ありは説明がついた。
(そうか、それで健ちゃんの高校の文化祭を狙ったのね!!)
ありは従弟を利用した事に怒りが込み上がった。
「この・・・、神達、裁きを!」
ありは全ての神に言った。カムイ達は和光や組織「狼」に攻撃を仕掛ける。家康、長員も攻める。だが、和光の持つ機械によって全て無効化されてしまった。
「ははは、どんな攻撃も守れるぜ。んじゃ、こっちから行くか!」
和光が襲い掛かる。ありも悠一ももう逃げられない、ここでくたばるのかと思った。
「さ、させるか!!」
その時、悠一のテクンカネが光り出した。
「助太刀、参る!!」
別の眼帯の男が和光に刀で対抗した。しかし、和光のパワーに押されず、壁に叩きつけられた。
「貴方は!?」
「某は森の石松。助太刀に来た」
「人増えても無駄だぜ」
和光は石松に襲いかかる。
「まずお前から消してやる」
石松はあの時と同じ恐怖を思い出した。清水にある学び舎での祭り事にてフビライに憑依され、首を斬られかけた事を。あの時はエレーヌの援護があって何とかなったが、今度は完全に消されると思った。そうしたら大政や小政といった同志、親分の次郎長にも申し訳無い。もうここまでか・・・。その時、バキッという音がした。石松は何とか刀で和光の手を抑えた。
「な、何!?」
「何が起きたのかしら?」
「まさか!」
和光はポケットから機械を取り出した。機械はいつの間にか破壊されていた。
「な、なぜ、壊れた!?」
「人の能力をそのまま悪用しますなんて最低ですわね」
別の人間二名が現れた。
「お、お主はフローレンス、イマヌエル!!」
「家康、長員、シャクシャイン、そして煮雪夫妻達、ここまでよく耐えてくれた。そして、森の石松、来てくれてありがとう。後は我々で片付ける」
「何!?確か、こいつらは、平和の世界の主となる奴だったはず・・・」
和光と組織「狼」は身体が震えた。イマヌエルが指を彼等に向ける。電気ショックでも受けたかのように彼等は気絶した。ありが召喚したカムイはタマサイの中に還っていった。家康と長員も帰る事にし、二人に告げる。
「ご苦労だった、また何かあったら誰かが助けに参る」
家康と長員はその場で透明となって消えていった。
「ありがとう、フローレンス、イマヌエル」
「ええ、後は警察にご連絡をお願い致します」
ありは公衆電話を見つけて通報した。
「これで何とかなったわね」
「いや、まだだよ」
「え?」
「東アジア反日武装戦線は他にもメンバーがいる。ここで君達を足留めさせて残りのメンバーで杯の所持者を襲うつもりだ」
「何だと!?」
「その場所に連れて行ってくれるかしら?」
「はい、よろしいでしょう、私達におつかまりなさい」
ありはフローレンスに、悠一はイマヌエルに掴まった。フローレンスとイマヌエルは飛び立った。
後書き
次回は・・・
「杯を守り抜け 」
ありと悠一はフローレンスやイマヌエルと共に東アジア反日武装戦線の他のメンバーを捜索する。そして彼らを発見した時、異世界の最上位の道具の一つである杯を持つ女子が狙われる・・・!!
94 杯を守り抜け
前書き
《前回》
東京を訪れたありと悠一は東アジア反日武装戦線と交戦する。そのグループの一つ「狼」に対してシャクシャインから給与されたタマサイとテクンカネで応戦するが、彼らは既に赤軍と手を組んでおり、異能の能力をそのまま行使できる機械を赤軍の和光晴生から与えられていた。フローレンスやイマヌエルの介入により辛勝した二人だったが、戦いはまだ終わりではなく、他のメンバーが杯の所有者を狙っていると聞いたあり達は別のメンバーのいる現場へと急ぐのだった!!
安藤りえ。東京に住む小学三年生の女子であり、異世界にて最上位の能力を持つ杯の所有者でもある。りえは下校中に咳こんでいた。
「ゴホッ、ゴホッ・・・」
工業地帯のある地域では本当に過ごすのが辛い。さらには寒さも相まって風邪を引きやすくなる頃である。その為、のど飴を舐める事は毎日と言ってもよい。
「りえちゃん、今日も大変だね・・・」
りえのクラスメイトかつ親友でもある溝口みゆきが心配した。
「うん、静岡はよかったな、空気綺麗で・・・」
りえはあの夏休みの事を思い出す。
「私も静岡行ってみたいわ」
もう一人の友達である藤沢鈴音はりえの夏休みの話を聞いていたので一度は静岡へと行ってみたいという気持ちでいた。
「そうね、いつか一緒に行こうね」
その時、目の前に二人組の男女が立っていた。
「何かしら?」
「貴女、杯ってのを持ってるのかしら?できれば、こっちにくれるかしら?」
りえはビクッとした。杯と聞いたならば相手はおそらく異世界の敵か日本赤軍であろう。
「・・・嫌よ」
「何だと?」
「嫌よっ!絶対に渡さないっ!」
りえはもう一度答えた。
「何、なら、お前事奪ってやるよ」
「り、りえちゃん、逃げよう!」
「う、うんっ!」
三人は反対方向に向かって走り出した。だが、向かいにも別の三人組がいた。
「逃げられないぜ、お前ら纏めてやってやるか」
りえ達はもう戦うしかないと思った。
「りえちゃん、やるしかないわね」
りえ達は決意した。
ありと悠一は、フローレンスとイマヌエルに連れられて上空から東アジア反日武装戦線の他のグループのいる場所を探し、突き止めようとしていた。
「色んな人がいて見分けがつきにくいわね」
「はい、でも、その杯を持ちます者は小学三年生の女の子であります」
皆は工業地帯にある町にいた。
「おい、あれは!?女の子達が囲まれてるぞ!」
「まさにあの地に間違いない」
「少し離れた所に降ろさせてください。私達の姿は本当はあまり見られますといけませんので」
「いいわよ」
フローレンスとイマヌエルは二人を少女達と一つ向かいの曲がり角で降ろした。
「それでは、ご健闘を」
「ええ、さようなら」
フローレンスとイマヌエルは飛び去った。
「あり、行こうか!」
「ええ!」
その時、シャクシャインが現れた。
「お主らも丁度来おったか!」
「シャクシャイン!今杯の所持者が襲われている所なんだ」
「了解した!」
三人は現場へと急ぐ。
「さっさとよこしたまえ」
男の一人はりえ達に迫る。
「りえちゃん、下がってて」
鈴音はりえの前に立った。
「私が相手するわ」
鈴音が三人組の相手に対して出したのは錫杖のような物だった。
「なんだ、それは、君は法師かなんかかね?」
「そうだと思っても仕方ないわね」
鈴音は錫杖を振りかざす。その時、炎が飛び出して三人組の周りを取り囲んだ。
「この杖はね、炎と氷の能力を持っててね、相手を焼き尽くしたり、凍らせたりする事ができるのよ!」
対する二人組の男女にはみゆきが対抗した。みゆきが出したものはブーメランのような物だった。
「行け!」
みゆきがブーメランを二人組の男女に向かって投げるとブーメランから光線が出て周囲を爆発させた。
「そのブーメランは投げると危ないよ!当たったらもっと危ないね!」
ブーメランはみゆきの手に戻った。だが、また別の爆発が起きた。
「え!?」
「こっちも爆弾持ってんのよ!」
女が手榴弾を投げる。だが、みゆきも同時にブーメランを投げて応戦した為、りえ達には無償で済んだ。一方の鈴音が相手した三人組の男もなんと炎を突破していた。
「なんで、あの炎に火傷一つも負ってないの・・・!?」
鈴音には予想もつかない事であった。
(二人が戦ってる間に私も守んなきゃ・・・!!)
りえはみゆきが起こした爆発で転がったアスファルトの破片を杯に入れた。
「出てきて、地の精霊っ!!」
すると、地の精霊が現れた。その姿は小柄な老人だった。
「あいつらを追っ払ってっ!」
「了解した」
地の精霊は岩の壁を作り上げた。
「ふん、そんなもん、爆弾で壊せるぜ!」
男の一人が手榴弾を投げた。だが、地の精霊が作り出した岩の壁は頑丈で壊れなかった。
「く、手強い壁だな」
「あの赤軍の人から貰った機械を使うか」
(赤軍の人から貰った機械・・・!?)
りえは相手の会話に違和感を覚えた。赤軍の人間から貰った機械という事は少なくとも彼らは日本赤軍ではないのか。では異世界の人間か。その時、敵の一人が体当たりで岩の壁をぶち壊した。
「な、なんと!儂の鉄壁の壁が!!」
地の精霊にも予期せぬ事であった。
「なんで、貴方達は日本赤軍じゃないのっ!?」
りえは聞く。
「いいから寄こしな!」
相手はりえの質問に答えず、迫ってくる。
「返り討ちにしてっ!」
りえは地の精霊に命じた。鈴音も錫杖を使い、凍らせようとし、みゆきもブーメランで攻撃しようとした。だが、どれも利かなかった。
「まさか、私達みたいに元から持ってる能力があるのっ!?」
「はあ?そんなのなくても平気なんだよ!さあ、その杯を貰おうか!」
男の一人がりえに飛び込んでくる。りえは男の威圧に押されて動けなくなった。だが、その時、バギッという音がした。
「んだ!?」
「地の精霊、守ってっ!」
地の精霊は地面を爆発させた。そして男は他の者共々吹き飛ばされた。そして誰がやったのか急に電撃が発生し、りえ達には当たらなかったが敵は一瞬で気絶した。
「この人達、急に気絶しちゃったよ!」
みゆきは急な出来事に驚いた。
「何があったのかしら?」
「大丈夫、貴女達!?」
三人組の男女がその場に駆け付けた。
「貴方達は・・・!?」
「俺は北海道から来た煮雪悠一、こちらは妻のありだ。そしてこの人は異世界から応援に来たシャクシャイン。今の電撃は妻のこのタマサイという首飾りでアイヌの神を召喚して起こしたものだよ。それからこいつらは日本赤軍じゃない。東アジア反日武装戦線だよ」
「それって・・・」
「今都内の企業のビルを爆破している集団なんだ。奴らはいつの間にか日本赤軍と手を組んでいたんだ」
「それに静岡の清水に住む私の従弟の能力を複製して機械にしたものを使ってるからさっきの岩の壁や囲まれた炎を突破できたのよ。赤軍はその機械をこの人達に渡していたわけ」
ありは一名の人物のポケットを探ってある物を取り出した。
「これだわ。壊れちゃったけど」
「これを壊したのは俺のこのテクンカネってブレスレットで呼んだ二人の異世界の人間だよ」
「これが・・・」
「ああ、私が授けた物だ」
「そういえば貴女ね。杯の所有者ってのは」
「はい、安藤りえって言います。そういえば清水に従弟がいるって言ってましたよね?私、夏休みに清水に行った事があるんです。それに異世界の杖を持っている子とも会いました」
「へえ、もしかして、その杖の所有者って山田かよ子ちゃんって子?」
「は、はいっ!どうして知ってるんですかっ!?」
りえは驚いた。
「私。清水生まれでね、その実家に従弟が居候してるの。実家はそのかよちゃんの隣の家なのよ。それから異世界の護符ってのも知ってる?」
「あ・・・」
りえは夏休みに清水を訪れた日々の事を思い出した。確かかよ子が連れて来た高校生男子は自分は凡人とは違うものを持っている、さらに、その人物が連れて来た高校生男子は確か従姉が自分の杯やかよ子の杖と同様の位を持つ異世界の護符の所有者である、と言っていた。
「はい、夏休みに高校生の男の人とあってその話を聞きました。名前は確か・・・」
「三河口健っていうのよ。そして異世界の護符の所有者は私の妹なの」
「そうだったんですか・・・」
「俺達は君の持ってる杯を奪いに来た奴等を追い払う為に来たんだ。それで、君達のその杖とブーメランも異世界のものなのかい?」
悠一が聞く。
「はい!」
みゆきが答えた。
「そうか、俺達は明日北海道へ帰るけどまた君達と会えるかもしれないね、こいつらは俺達が警察に連絡しておくよ。君達は急いで帰るんだ」
「は、はい、さようならっ!」
りえ達は帰って行った。悠一とありも近くの電話ボックスにて警察に通報して空港のホテルへと戻るのであった。
(今日の事、かよちゃんにも伝えておいた方がいいわね・・・)
りえはそう思いながらみゆき、鈴音と共に下校し、電車通学の為、近くの駅にて電車に乗車するのだった。
フローレンスとイマヌエルは遠くからその様子を見ていた。二人は東アジア反日武装戦線が和光から託された機械を相手に気付かれずに念力のように破壊していたのだ。
「何とか杯は守り抜けたね」
「はい、ですが、また奪おうと赤軍は考えますでしょう」
「その時にまた、助けに行くべきだね」
二人は自分達が住む世界へと帰って行った。
かよ子は歌の練習をし続けていた。だが、歌の練習を続けるうちに喉が疲れてしまった。
「はあ、はあ、休憩しよう・・・」
かよ子は水でも飲もうと下の台所に降りた。
「かよ子、歌ってたのね」
「うん、クリスマスの合唱コンクールがあってね、私のクラスは『大きな古時計』を歌うんだよ。それで、私、1番の独唱の部分を歌う事になったんだ」
「あら、頑張ってね」
「うん!」
かよ子は母から水を貰って飲んだ。
後書き
次回は・・・
「遠方の出来事」
おばさんの娘やりえが東京で東アジア反日武装戦線や赤軍と戦っていた事を知り、脅威を感じるかよ子。りえは清水にいる友達の事を思い出す。かよ子は戦いの激化を実感すると共に合唱コンクールの練習を進めて行く・・・。
95 遠方の出来事
前書き
《前回》
東京に住む杯の所持者・安藤りえは下校中、友人と共に東アジア反日武装戦線に襲撃される。しかし、かよ子の隣の家のおばさんの次女・ありとその夫・悠一、そして異世界から援護に訪れたシャクシャインが助太刀に入り、彼らを撃退する事に成功するのだった!!
かよ子は休憩後も歌の練習を続けていた。夕食後も、入浴後も。
「かよ子、もう何時だと思ってるの?」
母が部屋に入って来た。
「え!?」
時計を見ると既に時間は9時半を過ぎていた。確かにこんな時間に歌っていたら近所迷惑となってしまう。
「それに練習のしすぎで身体を壊したら大変よ。むりしないでね」
「う、うん、おやすみ・・・」
練習に夢中になるというおっちょこちょいをやってしまったかよ子はさっさと寝る事にした。
三河口は叔母から東京での話を聞いていた。
「それで、ありちゃん達は東京で東アジア反日武装戦線の連中を纏めてコテンパンにしたんですか」
奈美子は電話でありから聞いていた為、ありとその夫が異世界の杯を奪おうとしていた者を纏めて成敗したという事を知っていた。
「うん、ありも杯を持ってる女の子と会ったって言ってたよ」
「杯の所有者・・・。ああ、安藤りえちゃんの事ですか」
「ああ、名前覚えてたんね」
「はい、夏休みにかよちゃん達が会ってましたし、何かあったら一緒に戦うって約束もしてましたからね」
「そういや、そうだったね」
翌日、山田家は朝食時のニュースにて、東京都内にて東アジア反日武装戦線のメンバー全員と共に日本赤軍のメンバー一名が逮捕されたというニュースが入っていた。
「東京・・・、って事は・・・!!」
「そうね、りえちゃんの住んでいる所ね」
「りえちゃん、大丈夫かな?」
「きっと大丈夫よ。でなきゃ被害者の名前が出てくるじゃない」
「う、うん、そうだよね」
「でも、赤軍のメンバーが混じってるって事はどういう事なんだ?」
かよ子の父が気になった。
「あ、うん・・・」
「もしかしたら東アジア反日武装戦線は赤軍と同盟を組んだ可能性が高いわね」
かよ子は背筋が凍るような感じだった。戦いはまた激しくなっていると。
かよ子は家を出ると丁度三河口と遭遇した。
「ああ、かよちゃん、おはよう」
「隣のお兄ちゃん、おはよう!」
かよ子は足を滑らせて転びそうになってしまった。
「昨日のニュース聞いたかい?東京のビルの爆破をしたグループが纏めて逮捕されたってやつ」
「うん、それに赤軍の一人もいたんだよね。りえちゃんが心配だよ・・・」
「ああ、それについてだが、北海道の従姉が東京へ来てやっつけてくれたよ」
「そ、そうなの!?」
「うん、おばさんから聞いた。それにその従姉はりえちゃんとその友達とも会ったとね」
「よかった・・・」
「だが、逮捕された東アジア反日武装戦線って奴等は赤軍に頼まれてりえちゃんの杯を奪いに来たそうだよ。それに俺が持ってる能力が使える機械を発明したとか」
「いつの間に?」
「うん、だから、かなり大変な事になるよ」
かよ子はその会話を聞いて震えた。三河口の能力は相手を威圧させる威圧の能力、どんな攻撃も撥ね返したり、攻撃をすればかなりのダメージを与えたりする武装の能力、恐ろしい敵が近づいてくると胸騒ぎがする見聞の能力全てを兼ね備えている。この世で異能の能力を持つ者の中でも稀有な存在だ。それを赤軍が同等の能力を持つとなるととんでもない事になる事はかよ子でも分かった。
(それでも、この杖は渡さない・・・!!)
かよ子は赤軍やら異世界の敵やらが攻めてこようが、自分がどんなおっちょこちょいをしようが、必ず元の日常を取り戻す。そう誓い続けた。
房子は和光が東アジア反日武装戦線共々逮捕されたと聞く。
「晴生が逮捕されたわね」
丸岡と日高もその話を聞く。
「しかも、北海道から来た夫婦も揃って返り討ちにしたとか・・・」
「それに日高が行った時も清水の高校生の男子にやられたしな」
「嫌な事思いださないでくださいよ、丸岡さん」
「剣はうまく行ったのに何で他の三つは上手く行かんのだ?」
「きっと相手も勢力を伸ばしているのでしょう。でも、晴生や東アジア反日武装戦線の逮捕は取引の道具に使うしかないわ」
「取引の道具?」
「ええ、護符の行方が清水市からなくなっているという事よ。それを見つけ出す為にね・・・」
房子を始めとする日本赤軍は執念深く、異世界の最上位と言われる道具を手に入れようとする。それさえあれば日本を強い国にする事ができる為である。
(杯は仕方ないとして、今度は護符と行くわ・・・)
ありと悠一は飛行機に乗って北海道へと戻る。
(昨日は何とか杯を守り切って反日武装戦線達は逮捕できたけど、これで終わりという訳にはいかないでしょうね・・・。きっと実家の隣の家のかよちゃんが持ってる杖やさりの護符も狙ってくるはず・・・)
ありは昨日の自分達の行動は単なるその場しのぎでしかない事と顧みるのであった。
合唱コンクールの為の練習が始まった。早朝は近所迷惑になりかねないという理由で練習時間は放課後となった。指揮者となった丸尾が(なお学級会では指揮者を決めておらず、丸尾が勝手に自分が就任していた。皆は絶対歌いたくないからやりたかったのだろうと推測した)練習を課した。そして丸尾がミスを続ける度に幾度も練習を繰り返したかよ子は独唱の部分ではまだ少し自信がなかったのか、少し声が小さくなってしまった。
(また、おっちょこちょいしちゃったな・・・)
かよ子は恥ずかしくなってしまった。この猛練習は運動会の早朝練習と同様に厳しいものであった。だが、完全下校時刻である午後五時を過ぎたら帰らなくてはならなかった。
「はあ、またおっちょこちょいしちゃった・・・」
かよ子は今回の失敗でくよくよしてしまった。
「山田」
「す、杉山君!?」
振り向くと自分の好きな男子がかよ子を呼んでいた。
「お前、結構頑張ってるよな」
「うん、でも今日は声が小さくなっちゃったよ・・・」
「大丈夫だって。お前、結構いい声してたからよ。自信持てよ!」
「う、うん・・・!あ、そうだ・・・」
「あん?」
「昨日、東京のりえちゃんが杯を盗られそうになったんだ」
「マジか!じゃあ、昨日の爆破事件のグループと赤軍一人が逮捕されたっていうのはそれが関係してんのか?」
「うん、赤軍は東京のテロリストと組んで杯を狙ってたらしいんだ。隣のお兄ちゃんの従姉のお姉さんが東京へ向かって何とか守れたけどね・・・」
「あいつら・・・。もしかしたら、今度はお前の杖かもしれねえ。気を付けろよ」
「うん・・・!」
りえは自室のピアノを弾いていた。途中、ピアノの上に飾っていた色紙を見る。
(皆・・・)
この色紙は夏休みに清水に遊びに行った時、友達になった子達からの寄書だった。
(かよちゃん、杉山君・・・。私も、絶対にこの杯は渡さないわっ・・・!!)
りえは誓った。遠くの友達と共に元の日常を取り戻すと。
別の日、かよ子の元に手紙が届いた。よく見ると・・・。
(りえちゃんからだ・・・!!)
かよ子は封を開けて手紙を読んだ。
かよちゃんへ
この前、私の杯を狙ってきた人たちがいたわ。でも友達と一緒に何とか追い払ったわ。それに、北海道から来た人も助けてくれたのよ。その人はかよちゃんの事、知ってたわ。実家が清水って言ってたから、もしかしたら、かよちゃんの知り合いかもね。それじゃあ、またいつか会おうね。私は今度のピアノコンクールの関東大会に向けて頑張るわ。
りえ
(りえちゃん・・・、やっぱり、あの事件に関わってたんだ・・・!!北海道の人ってのはやっぱり隣のお兄ちゃんの従姉の人だよね・・・)
かよ子もまた遠くの友達とこの日本を守って元の日常を取り戻すと誓うのだった。
そして、時はまた進んでいく。
後書き
次回は・・・
「三たびの特訓」
三河口は赤軍の次の狙いはさりの持つ護符ではないかと推測する。一方、かよ子は「大きな古時計」の歌の練習を日夜問わず続けていた。そんな中、笹山から一緒に練習しないかと誘われる・・・・!!
96 三たびの特訓
前書き
《前回》
東京で日本赤軍と東アジア反日武装戦線が揃って逮捕されたというニュースを耳にしたかよ子は夏休みに会った杯の所持者・安藤りえの安否を気にする。そして合唱コンクールの練習に励むと共にりえから受け取った手紙よりその東京の事件に関わっていた事が事実であると知るのだった!!
赤軍、次は何を狙う?杖か?護符か?あるいはまた杯か???
三河口はクラスメイトの濃藤、北勢田に自分の従姉とその夫が東アジア反日武装戦線および日本赤軍メンバーの拘束に貢献していた事を言った。
「マジかよ、お前の従姉がか・・・」
「ああ、その時、かよちゃんの『杖』や名古屋の従姉の『護符』と同じ位の能力を持つ『杯』の所有者の女の子とお会いしたって事だ」
「ああ、それ、妹も言ってたな。隣町の学校の女の子が不思議な杯を持ってる子と会ったなんて事を聞いたって」
濃藤が妹の言葉を思い出すように言った。
「ああ、だが、その杯の所有者がいる東京と同様、清水も標的とされているのも確かだ。文化祭の時も襲って来たからな」
「ああ、そして一つ問題がある・・・」
「問題って?」
北勢田が聞く。
「広島にあった剣は赤軍に奪われたし、杖はこの静岡・清水、そして杯は東京にある。残りの護符は杖と同じく元は清水にあったが、おばさんが名古屋の従姉に持たせたので在処は名古屋に移っている。これについて奴等はその事実を把握しているのか、いないのか。もし知ってたら、次はその護符をいただきに名古屋の従姉へ襲撃にかかるだろう。知らなければ護符を狙いに異世界の人間を送り込んで捜させるかもしれん」
「それじゃ、奴等はまた色んな所で暴れ始めるって事か?」
「そうなるな」
濃藤も北勢田も三河口の考察に異議はなかった。
日本赤軍の総長・重信房子は己が繋げた異世界との出入り口に向かう。
「レーニン様」
「重信房子か。何の用だ?」
「只今苦労しております異世界の最強無敵の武器である杖、杯、護符のうち、杯は東京に、杖は静岡にあるのですが、護符の場所が分からないのです。そこで、そちらの方々に協力をして頂いて捜索をお願いしたいのですが」
「捨て駒に使うつもりか」
「いえ、見つけるだけです。護符の所持者の場所が分かればそこを徹底的に狙います」
「分かった。また一人でも失えばこちらも戦力が低下すると思え。こちらも人員が無限という訳ではないからな」
「はい、気を付けます」
かよ子は風呂の中で「大きな古時計」の独唱部分を歌っていた。自分が最も目立つところなのでおっちょこちょいしたら恥ずかしい。そうしない為にも放課後、家に帰った後でも練習するのだ。
「おじい~さんの~、生まれた朝に、やって~来たとーけいさ~。今は、もう、動かない、その、とーけーい~♪」
かよ子は息継ぎを間違えたかなと自己反省していた。あまりにも長湯していると湯が冷めて両親に申し訳ないので、もう風呂から出る事にした。
(それにしてもこの猛練習、運動会以来だな・・・。それに・・・)
かよ子は自室に戻る。母から継がれた物であり、異世界の中で最上位の能力を持つ杖を見た。
(その前はこの杖を使いこなせるように練習してたんだっけ・・・。それに先月は運動会の練習を必死にやった・・・。そうなると三度目の猛特訓かもしれない・・・)
もうすぐ12月に入る。だが、戦いはまだまだ続く。かよ子は最悪の事が思いついた。
(もし、合唱コンクールの時に攻めてきたら・・・!!)
かよ子はそんな懸念をしていた。三河口の高校の文化祭の時も赤軍が攻めてきた。そうなると今度は行事の途中に容赦なく攻めてくる可能性もゼロではない。
(いや、今はそんな事、考えてる場合じゃないや・・・!!)
かよ子は歌の練習を再開した後、寝るのだった。
三河口は名古屋に住む従姉・さりと電話していた。
『あり姉が東京へ行ってたの?』
「はい、それで杯の所有者である女の子とも会って彼女を赤軍と同盟を組んだ東アジア反日武装戦線から守ったとの事です」
『「杯」ってもしかして私の護符やかよちゃんの杖と同じ異世界で一番強いってされてる道具よね?』
「ごもっとも。赤軍は清水にある杖や東京への杯を徹底的に狙ってくるでしょう。名古屋は異世界の敵とか赤軍とかは攻めて来たという情報はありますか?」
『ううん、こっちには今の所ないわよ』
「しかし、奴等は今度は護符の場所を探していつかは攻めてくるかもしれません。お気をつけて」
『うん、もう、健ちゃんったら、いつの間にかそんな畏まっちゃって~』
「う・・・」
三河口は何も言えなくなった。
『ところで、奏子ちゃんとは上手く行ってるの?』
三河口はさらに何でそんな事聞くのかと思いながらも質問に答えようとする。
「はい、彼女も文化祭の時に異世界の道具を貰っていますので何かあったら一緒に戦ってくれますよ」
『そっか、健ちゃんも何かあったら守ってあげるのよ』
「はい、百も承知ですよ」
『だよね~、んじゃ、おやすみ~』
「おやすみなさい」
お互い電話を切った。
翌日、かよ子は起きた時、布団から出ると冷気を感じた。温暖な清水でも寒くなってきているのである。
(ああ、寒いな・・・)
そう思いながら、顔を洗い、着替える。そしていつもの朝食である。この日は食パンだった。
「今日は蜂蜜つけて食べなさい。蜂蜜は喉にいいのよ」
「うん、ありがとう!いただきます」
かよ子は朝食を食べ終え、そして歯磨きをして学校に行く準備ができた。コートを着ると母が呼び止めた。
「今日は寒いからマフラー巻いていきなさい」
「うん、ありがとう。行ってきまーす」
かよ子は家を出た。間もなく12月という時期の為、寒くなっている。その上、この日は風が強く、余計に寒く感じた。
(風が強くて上手く歩けないよ・・・)
そんな時、笹山と出会った。
「あ、山田さん、おはよう」
「笹山さん、おは・・・」
また吹き出した強風が二人を襲った。二人共捲れそうなスカートと飛ばされそうな通学用帽子を抑えた。
「今日は風が強いね・・・」
「うん・・・」
その時、男子用の通学帽が飛んできた。笹山がそれを拾う。
「はあ、はあ・・・」
そしてその帽子の持ち主と思われる男子が走って来た。藤木だった。
「あ、藤木君、おはよう!」
「あ、笹山さん・・・。おはよう。えへへへ・・・」
藤木は好きな女子に会えて思わずにやにやした。
「藤木君、朝から笹山さんに会えて嬉しそうだね」
「う、そ、そうかな・・・?」
藤木はとぼけた。
「もう、とぼけないでよ。行こう、はい!」
笹山は藤木に帽子を返して三人で学校へと向かった。藤木は帽子を飛ばされた時は自分は本当に運が悪いと思っていたが、笹山と会えて一緒に登校までできたので朝からいい事があったなと思うのであった。
「ところで笹山さんは独唱の部分自信ある?私、家でも練習してるんだけど、うまく行ったか心配なんだ・・・」
「ああ、それ、分かるわ。私はピアノもやってるからピアノで音取りしながらやってるの」
「え?そうなの!?いいなあ、私もピアノで練習できたらいいな・・・」
「よかったら今度の日曜、私の家で一緒に練習しない?」
「いいの?ありがとう!」
「そうだ、よかったら藤木君もどうかしら?」
「え?でも、僕は独唱しないし・・・」
「いいじゃない。自主練にもなるんだから。お菓子も用意するわ」
「笹山さん・・・。うん、ありがとう!」
藤木にはこれ以上のいい事があって嬉しく思うのであった。
放課後もまた3年4組の皆は合唱コンクールの練習を行う。かよ子はこの日の独唱部分は以前よりは声を響かせることができた。繰り返し、幾度も歌い直す。笹山も、大野も、独唱部分は上手く歌えていた。
「ハイ、皆さん、ズバリ、今日はそこまででしょう!お疲れ様でした!!」
五時になり、下校時刻となった。かよ子はまる子、たまえと下校することになった。
「かよちゃん、今日の独唱、上手かったねえ~」
「うん、前より凄い声が綺麗だったよ!」
「あ、ありがとう、まるちゃん、たまちゃん・・・。それで今度の日曜、笹山さんの家で一緒に練習する約束してるんだ」
「おお~、いいじゃない~、笹山さんちは手作りのお菓子が食べられるからねえ~。アタシも行きたいなあ~」
「まるちゃん、かよちゃんは歌の練習をしに行くんだよ・・・」
「ああ、そうだったねえ~」
かよ子は本番への意識を高めると共にいつ赤軍や異世界の敵が来るかそわそわするのであった。
後書き
次回は・・・
「ピアノで練習」
かよ子は放課後のクラス全員での練習や笹山の家でピアノを使っての音取りなど猛練習に励み続ける。その一方、赤軍は本拠地を移動すると共に異世界の道具の一つを奪取する事に目を付けていた。それは杖か、杯か、それとも護符か・・・。
97 ピアノで練習
前書き
《前回》
赤軍は護符の在処を探し出す為に戦争を正義とする世界の長にある事を依頼する。そしてクリスマスの合唱コンクールの練習をするかよ子は笹山の提案で笹山に藤木と三人で笹山の家でピアノで音取りをしながら練習する事にしたのだった!!
かよ子は帰宅後、母に報告する。
「お母さん、今度の日曜、笹山さんの家に行く事にしたよ。一緒に歌の練習するんだ」
「あら、いいわね。頑張ってね」
「それに笹山さんちはピアノがあるから、ピアノ使って練習するんだよ」
「それなら、いい練習になるわね」
「うん!」
一方、藤木は今度の日曜が楽しみで胸を躍らせていた。
(今度の日曜は笹山さんと一緒に練習だ・・・。楽しみだなあ・・・)
藤木は歌の練習をした時の事を妄想した。笹山から「藤木君、いい声してるわね」「凄い上手くなったわ、藤木君」などと言われる場面を想像するのであった。
さりは仕事を終えて家に帰る。疲れて料理するのが面倒だったので、蕎麦屋へ寄って天そばを食べる事にした。
(杖に杯、護符、か・・・)
さりは母から引き継いで異世界の護符の所有者となった。だが、杖の所有者や杯の所有者と異なり自分には母から護符を引き継いでからは直接敵が襲い掛かって来た事はない。いつ自分が狙われるのかは時間の問題だ。
(ただ、奴等は護符が名古屋にあるのに気づいていないだけかもしれない・・・。健ちゃんの言う通り探しにまた日本中を攻撃してくるかも・・・)
さりはそんな事を考えながら天そばを食べた後、帰宅するのであった。
12月に入った。かよ子のクラスでは風邪で2名ほど、欠席していた。だが、欠員がいても歌の練習は中止にはならない。かよ子はまた必死に独唱部分を中心に練習に励む。
「それでは行きますよ。さんはい!」
丸尾が指揮棒を振る。
「おーお~きなのっぽの古時計、おじいーさんの、時計ー♪百年いつも、動いーていた、ごじま~んのとーけいさ~♪」
そしてかよ子が担う1番の独唱部分をかよ子が一人で歌う。
「おじい~さんの~、生まれた朝に、やって~来たとーけいさ~♪」
(よかった、上手く歌えた・・・)
そして続きを皆で歌う。2番を担う笹山も、3番を担う大野も順調だった。
「今は、もう、動かない~~~・・・、その、と~け~い~・・・♪」
3番の最後の節はかなりスローとなる。その事には皆留意しなければならなかった。
「ハイ、では、もう一度行きましょう!」
練習は5時まで続いた。
日本赤軍のリーダーである房子はパレスチナの地を去ろうとする。
「総長。本部をレバノンに移すとはどういう意味ですか?」
西川純が質問する。日本の静岡・清水にある高校の文化祭でテロを起こした人物であり、さらには杖の奪取こそ失敗はしたもののそこにいる高校生男子の強力な異能の能力の複製する事に成功した男である。
「今、晴生が東アジア反日武装戦線のメンバーと共に逮捕されているのよ。もしかしたら晴生は警察に無理矢理私達の事を吐かされるかもしれないわ。そうなると、インターポールも動き出す恐れもあるかもしれないの。今の本部ではいつ突き止められるか分からないから攪乱させるのよ」
「ですが、あの異世界との入とは離れてしまうのですが、大丈夫ですか?」
「心配ないわ。向こうには出入口の場所を伝えておいたから、新しい本拠地の近くに移動してくれるわ。そして本格的に護符の在処を見つけ出させてもらうのよ」
「はい」
赤軍達はレバノンへと向かった。
日曜日、藤木は頭がクラクラしていた。更にはいつもより鼻が詰まるし、くしゃみも止まらない。おまけにいつもより寒気がする。
「茂、大丈夫かい?顔赤いよ」
母が心配する。
「へ、平気だよ。それに、今日、笹山さんちで一緒に歌の練習するんだ・・・」
「何言ってんの!熱計りなさい!」
藤木の母は体温計を用意した。藤木の熱は37.9℃だった。
「熱もあるじゃない。残念だけど、笹山さんには私から連絡しておくから今日は休みなさい!」
「そんな、嫌だよ!」
「我儘言うんじゃないよ!寝てなさい!!」
結局藤木は最高の日になると思われたこの日曜が風邪のせいで全てが台無しとなってしまった。
(笹山さんに会いたかったのに・・・。歌の練習、一緒にしたかったのに・・・)
藤木は布団に包りながら泣くしかなかった。
かよ子は笹山の家に来ていた。
「笹山さん、こんにちは」
「こんにちは、山田さん。それじゃあ、練習頑張ろう」
「うん、あ、藤木君は?」
「それが、藤木君、風邪ひいちゃって来られなくなっちゃったんだって」
「そうなんだ・・・」
かよ子は藤木が気の毒に思った。なにしろ折角好きな女子と一緒に練習できるチャンスだというのに感じな時に風邪を引いてしまうなんてとても運が悪いとしか言いようがない。
「藤木君、心配だね・・・」
「ええ・・・」
笹山も藤木が心配に思った。まさか藤木が練習が嫌で仮病でも、と邪推したが藤木は自分が好きなんだから寧ろ喜んで来るはずである。
(そうよね、私の考えすぎよね・・・)
二人はピアノを使った練習を始めた。ピアノがあると音程が分かりやすくていい練習になる。
「山田さん、音も結構合ってるわ」
「ありがとう。笹山さんもいい声だったよ」
「ありがとう」
笹山の母が部屋に入って来た。
「二人共、少し休憩しましょう。お茶の準備ができたわよ」
「あ、ありがとうございます・・・!!」
かよ子は紅茶とクッキーを御馳走になった。
「このクッキー私とお母さんで作ったのよ」
「うわあ、凄いね」
「私、お菓子作るの大好きで、今度ケーキも作ろうかなって思ってるの」
「笹山さんはピアノ上手いし、お菓子も作れるし、おっちょこちょいの私と大違いだよ・・・」
「そんな事ないわよ。ピアノなら私よりも城ヶ崎さんとか穂波さんとかの方が上手だと思うわ。お菓子作りもまだ一人で何でもできるわけじゃないし・・・」
笹山は謙遜した。
「そ、そうなんだ・・・」
ピアノと聞くと、かよ子はふと東京にいる杯の所有者の事が頭に浮かんだ。彼女もピアノが好きでピアニストを目指している。いつの日かの前のピアノのコンクールでは優勝して、関東代表になった。ついこの間、赤軍と組んだ東アジア反日武装戦線の人間に襲われたが、隣人のおばさんの次女の介入もあり何とか救われた。彼女は今どうしているのだろうか・・・。かよ子は心配になった。
「山田さん、どうかしたの?」
「あ、いや、ボーっとしちゃったよ。ははは・・・」
かよ子は慌てて誤魔化した。
「あ、かず子」
笹山の母は娘を呼ぶ。
「今日来れなかった藤木君にもクッキーを分けてあげに行ったら?藤木君も今日来る予定だったでしょ?」
「うん、そうね、私も同じ事を考えてたの」
「それがいいね。藤木君も喜ぶよ」
かよ子と笹山はその後、練習の続きを20分ほど行った後、笹山家を出る事にした。かよ子は帰宅の為に、笹山は藤木の家へクッキーを届ける為に。
「藤木君、元気になってくれるといいな」
「笹山さん、もしかして、笹山さんも藤木君が好きになってるんじゃ・・・?」
「え・・・!?」
笹山は動揺した。
「い、いや、そんな事ないわよ。私はただ、藤木君の事を友達の一人として大事に思ってるだけよ・・・」
「そうなんだ・・・」
途中の分かれ道、かよ子と笹山は別れた。
「じゃあね~」
藤木は笹山に遭えずに寂しく、安静にしていた。
(笹山さんに遭いたかったのに・・・)
その時、ドアのインターホンが鳴った。藤木の母が出る。暫くして、母が部屋に入って来た。
「茂、笹山さんがアンタにクッキー持って来てくれたよ」
「笹山さんが・・・!?」
「うん、茂の事、心配してたよ」
藤木は笹山が自分の事を心配しに来てくれた事に感謝の意を示すのだった。
(笹山さん、ありがとう・・・!!)
後書き
次回は・・・
「護符の在処」
本拠地の移転に成功した赤軍は護符を狙う。合唱コンクールの練習をする中、かよ子はあるニュースを聞いて恐ろしくなる。それは異世界の敵が各地で暴れ出した事だった・・・!!
98 護符の在処
前書き
《前回》
かよ子は笹山の家で笹山、藤木と合唱の練習をする予定だったが、藤木が風邪を引いてしまい、かよ子と笹山の二人で練習する事に。笹山は藤木の見舞いとして練習後に手作りのクッキーを藤木の家へ届けに行くのだった!!
赤軍はレバノンへの本部完全移転を成功させた。
「さて、本部の移転は終わった。次は護符を探し出すのよ!」
「はい!」
房子は狙う。杖を、杯を、そして行方不明の護符を。そして今保持している剣とその三つを合わせれば自分達は無限の能力を得られる。そして大日本帝国は復活するのだ。
(天の先、地の果て、どこまででも手にするわよ・・・)
笹山の家で歌の練習を終えて翌日、藤木はこの日も欠席していた。
(藤木君、風邪が長引いているんだね・・・)
かよ子も風邪を引かないようにと気を付けた。後、もう一つ心配な事がある。それは、自分の好きな男子、杉山が運動会以来、未だに大野と喋る事を避け続けている。これからの「戦い」でこの仲違いをいつまでも続けていればこちらが不利になる。だが、仲直りの糸口は未だに見つからなかった。
放課後はいつものように合唱コンクールに向けた練習だった。
(よし・・・!)
かよ子は昨日の笹山家のピアノで音を取って練習した成果を見せようと意気込んだ。この日の独唱部分も上手くいったと実感する事ができた。
「スバリ、お時間が来たでしょう!お疲れ様でした!」
練習の終わり、かよ子は杉山に呼ばれる。
「おう、山田あ・・・」
「す、杉山君・・・!!」
かよ子は急に顔を赤くする。
「ど、どうしたの・・・?」
「お前、独唱の部分、すげえ上手かったぜ。頑張れよな」
「う、うん、ありがとう・・・!実はね、昨日、笹山さんちのピアノで音取りしながら練習したんだ」
「ピアノでか、そりゃいい練習だな。俺も頑張んないとな・・・」
杉山はピアノと聞いてふと夏休みにあった東京の少女の事を思い出す。
「杉山君、どうかしたの?」
「え?あ、ああ、ピアノの事考えたら東京にいる『あいつ』の事を急に思い出しちまったんだ」
「もしかしてりえちゃんの事?」
かよ子はふと杉山がりえに何らかの想いがあるのではないかと夏休みの時に察した事を思い出した。杉山はりえにどんな想いを持っているのか・・・。
「ああ、あいつの身に何かあったかどうか気になったんだ」
「りえちゃんなら、9月のピアノコンクールで優勝して今度は関東のコンクールに参加する予定だって言ってたよ。私、りえちゃんと時々文通してるんだ・・・」
「そうか・・・。お前も仲良くなったもんな・・・」
「でも、この前、襲われかけたんだって」
「マジで!?まさか赤軍か!?」
「うん、それから東京のビルを爆破してるグループが赤軍と協力してりえちゃんの杯を狙ったんだ・・・!!」
「マジかよ!?大丈夫だったのか?!」
「うん、隣のお兄ちゃんの従姉の人が助けに来て追い払えたって・・・」
「なら、俺も安心したぜ。夏休みにはあいつと喧嘩もしたけど俺、りえのピアノ、応援してんだ・・・」
「う、うん、私もだよ・・・」
「じゃあ、俺達もコンクール頑張ろうな!じゃあな!」
「バイバイ・・・!!」
(杉山君、やっぱり、りえちゃんが好きなのかな・・・?)
かよ子は杉山を疑った。でも、こんな時に好きな男子を疑うのは良くないのかなとも思うのであった。
「只今」
かよ子は帰宅した。
「お帰り、かよ子。りえちゃんが手紙が来たわよ」
「え?ありがとう」
かよ子は早速自分の部屋に行く。机の上に杯の所有者からの手紙があった。
かよちゃんへ
お元気ですか。私、先週、埼玉で行われた関東のピアノのコンクールでも見事に優勝しました。今度は関東代表として全国のピアノコンクールに出場することになったの。寒くなったけど風邪を引かないようにお気をつけてください。
りえより
(りえちゃん、関東のピアノコンクールでも優勝したんだ・・・。凄いな・・・)
かよ子もりえに負けていられないと思った。自分も今後の合唱コンクールの為にも。そしてりえを恋のライバルとして意識しながらも・・・。かよ子は早速返事を書く事にした。
りえちゃんへ
手紙ありがとう。こっちは学校で行われるクリスマス合唱コンクールの練習をしています。おっちょこちょいしないように歌を頑張っています。こっちの友達もみんな元気だよ。またいつか会おうね。じゃあね。
かよ子より
かよ子は返事を書き終えた。
そんな中、東京都の多摩地区にて異世界の敵が暴れていた。
翌日、かよ子達はテレビにて朝のニュースを見ていた。
『昨日、東京都の多摩地区にて異世界の敵と名乗る人物が暴れる事件が発生しました。この影響で多くの建物や乗用車が破壊され、大量の重軽傷者を出したとの事です。犯人はそのまま去りました』
「異世界の敵・・・!?また暴れ出したの・・・!?」
かよ子は驚いて牛乳をこぼしてしまった。
「あ・・・」
かよ子はいつものおっちょこちょいをやってしまった。ふきんでテーブルを拭いた。
「そうね、もしかしたら、名古屋にいるさりちゃんの護符を探しているかもしれないわね・・・」
「そんな・・・。それで赤軍は異世界の敵を使って護符を探しに日本中のあちこちを狙うっていうの・・・?」
「そうかもしれないね」
かよ子はぞっとした。
隣の羽柴家でもその異世界の敵の暴動事件のニュースを耳にしていた。
「叔母さん、叔父さん、これって・・・」
「ああ、間違いないね。おそらくさりが持ってる護符を探してるんだろ」
「そうなると、いつバレるか、時間の問題ですね」
「それに見つかるまで絶対にやめないと思うから、あちこちで被害は起きると思うよ」
三河口はそう思うと落ち着かなくなった。
かよ子は学校に着くと、その場には藤木がいた。友人の永沢と話している。
「藤木君、風邪、治ったんだ」
「うん、熱も昨日でやっと下がったよ」
「君、まさか歌うのが嫌でズル休みしたんじゃないだろうね?」
永沢は変な勘繰りをする。
「そ、そんな訳ないじゃないか!」
「そうよ、藤木君がそんな事する訳ないじゃない!」
笹山が近づいて藤木を庇った。
「藤木君はこの前の日曜、私や山田さんと歌の練習する約束してたのよ。でも、その時から藤木君が風邪引いてたって電話があったのよ」
「そうかい?君、卑怯者の上に嘘つきだからね」
「本当は笹山さんと練習したかったんだよ!熱が出て、それでも行きたかったんだけど母さんにも止められて、行けなかったんだよ!」
「そうよ、永沢君、酷いわ!」
「ふん、笹山がそう言うなら信じてやるよ」
永沢はこれ以上は何も言わなかった。
「笹山さん、ごめんよ、練習行けなくて・・・。クッキーもありがとう。美味しかったよ」
「私も藤木君が元気になってくれて良かったわ。また、頑張ろうね」
「うん!」
藤木が笹山に元気づけられる様子を見て遠目から見ていたかよ子も何故か安堵するのであった。
休み時間、かよ子はまる子にたまえと話をする。話題は勿論東京にいる杯の所有者の事だった。
「昨日、りえちゃんから手紙が届いたんだ。そしたら関東のピアノコンクールでも優勝して今度は全国ピアノコンクールに出場するって書いてあったよ」
「りえちゃんが?凄いねえ〜」
「うん、凄いピアノ上手だもんね」
「お、懐かしい話してんな」
大野が話に入ってきた。
「あ、大野君・・・」
「大野君、夏休みに会ったりえちゃんって覚えてる〜?」
「ああ、ピアノがすげえ上手い子だろ?あん時は杉山の奴が喧嘩しちまってよ」
「うん、そのりえちゃんがピアノコンクールの関東の代表になったんだって」
「おお、すげえな。あいつは将来ピアニストになりたいって言ってたもんな」
「また会えるかな〜?」
「きっと会えるよ・・・」
「うん、そうだよね!」
そんなかよ子達の会話を杉山は遠くから聞く。大野が会話に入って来て、あの強気な東京の少女の話をしていたのが聞こえた。
(あいつ、頑張ってんだな・・・。喘息とかを気にしないで・・・)
そして放課後はいつものように合唱の練習だった。その間、異世界の人間が埼玉県、千葉県、神奈川県の各地で暴動を起こした。
後書き
次回は・・・
「暴れ出す敵達」
護符の持ち主を突き止めに多くの異世界の人間が送り込まれる。そんな時、東京の拘置所に捉えられた赤軍のメンバーに東アジア反日武装戦線の元に赤軍の長が赴き・・・。
99 暴れ出す敵達
前書き
《前回》
赤軍はレバノンへ本拠地を移した後、護符を見つけ出す為の行動に入る。そしてに各地へ戦争主義の世界の人間が送り込まれ、暴動を引き起こす。合唱コンクールの練習を続けていたかよ子にとっては恐ろしく感じていたのだった!!
房子はレバノンの新本部にて会議する。
「まだ護符の場所が解っていないのね」
「はい、東京の多摩地区にはなく、今首都圏を周って探させています」
丸岡が答えた。
「首都圏に見込みがなかったら違う地区を狙うのよ」
「はい」
「ついでに私は東京に行ってくるわ」
「何をしにですか?」
「そこに拘置されている晴生と東アジア反日武装戦線の者達を救い出すのよ」
練習が終わり、かよ子達は下校した。
「かよちゃん、今日も歌、上手かったねえ〜」
「ま、まるちゃん、ありがとう・・・。でも、問題は本番でおっちょこちょいしないようにしないと」
「それもそうだよね」
「そうだ、まるちゃん・・・」
かよ子はまる子が異世界の「力の石」の一つ、炎の石を持っている為に聞くことにした。
「この前、東京の多摩って所で異世界の敵が暴れたって」
「そうなの?」
「そうなのって・・・。私、朝、テレビで見たんだよ」
「ごめん、ごめん、アタシゃニュース見ないからさあ・・・」
かよ子は何も言えなかった。
夜にもニュースで新たな報道が入った。異世界の敵が神奈川、埼玉、千葉にも現れたというのだ。
「きっと護符を探して暴れまわってるんだね・・・」
「ええ、名古屋のさりちゃんが無事だといいんだけど・・・」
山田親子は不安でしかなかった。
夜中の東京都内の拘置所。房子はその場にいた。
「ここに晴生達がいるのね」
房子は異世界の剣を振りかざす。その拘置所の門を破壊する。
「行くわよ。アドルフ」
「了解」
アドルフとはかつて異世界の杯を狙おうとした異世界の人間である。夏に日高敏彦と共に東京の地へ訪れたのだが、その場に現れた高校生の男子によって日高諸共コテンパンにされてしまった。房子は拘置所の出入り口を破壊する。
「な、何だ!?」
どうやら派手な破壊行為だった為、看守を起こしてしまったようだ。
「安心したまえ。ホロコースト!」
看守達は一瞬で死んだ。
「晴生!どこにいるの?」
房子は部下を探す。そして見つけた。和光晴生は寝ていた。
「晴生!私よ」
「そ、総長!」
「ここの看守は皆やっつけたわ。東アジア反日武装戦線の皆は?」
「近くの別独房です」
「分かったわ」
房子は剣を振るう。そして独房の鉄格子を破壊し、東アジア反日武装戦線のメンバーを救出した。
「今のうちよ」
「はい!」
房子はアドルフ、和光、そして東アジア反日武装戦線の構成員達を連れてその拘置所を去った。
かよ子は寒くなってきた為、朝起きるのが辛くなって来た。その為、起きるのが遅くなってしまった。
「急がないと!!」
いつものおっちょこちょいをしながらもかよ子は走って登校した。
「もう、おっちょこちょいなんだから・・・」
母は娘が去った後、ぼやいた。
まき子は昼間のニュースを見ていた。
『昨夜、東京都内の拘置所が破壊され、身柄拘束中の日本赤軍のメンバー・和光晴生と東アジア反日武装戦線のメンバー全員が脱走いたしました。脱走した犯人達は今の所行方が分からない状況です』
「え!?」
都内の拘置所にいる東アジア反日武装戦線のメンバーと赤軍の一人は確か隣の家の奈美子の娘の一人・ありとその夫の手によって逮捕に追い込んだものではないか。彼女らの決死の行為が無駄なものにされるとはまき子にとっては身体全体が怒りで震えるものであった。
この日、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県で異世界の敵が出現し、暴れた。
放課後の合唱の練習、この日もかよ子はおっちょこちょいをせずに独唱部分をこなした。そして全体的に形はかなり良くなっていると丸尾は思った。
「それでは、五時になりましたね。ズバリ、本日はここまででしょう!」
3年4組の皆は下校する。
「只今」
かよ子は帰宅した。
「かよ子、大変よ!」
「ど、どうしたの!?」
「この前東京で逮捕された赤軍の一人とテロ集団が脱走したの!」
「ええ!?りえちゃん達が捕まえたっていう・・・!!」
「きっと別の赤軍のメンバーが助けに行ったのよ!」
「大変な事になるね・・・」
かよ子は杯の所有者がまた心配になるのだった。だが、今夜はニュースはそれだけでは留まらなかった。異世界の敵が群馬、栃木、茨城、山梨の4県にて出没したとテレビで報道された。
「また異世界の敵が出たのか」
「怖いね・・・」
(私の杖は盗られない様にしないと・・・)
かよ子も杖の所有者として気を付けなければならないと改めて感じるのであった。
房子ら赤軍の護符捜索は続く。
「首都圏になければ北海道、東北、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄、余す事なく探しつづけるのよ!」
そして異世界の敵は続けて召喚された。
三河口は首都圏が次々と異世界の人間に襲撃されるニュースを見て恐怖に駆られた。
(せっかくありちゃんやりえちゃん達の協力で捕まえた連中が脱走するなんて、こんな事があっていいのか・・・。そんなにこの国を戦争への道に導きたいのか・・・!!)
そして三河口は予期した。もしかしたら護符の在処を聞きにこの地にも出没するのではないかと。
すみ子達が通う学校でも、関東の各々の地区が異世界の侵略に脅かされたと生徒達が恐怖に包まれており、すみ子や山口、川村、ヤス太郎達もまた落ち着く事ができなかった。
(もしかしたら、また、清水にも来るのかな・・・)
すみ子は不安に思う。そして、隣町の学校にいる杖の所有者の事も心配になった。なお、すみ子達の学校ではクリスマスの日に学芸会を行う予定であり、すみ子達のクラスは劇を行う予定であり、白雪姫の演劇を行うのであった。
(劇中に襲ってこないといいんだけど・・・)
すみ子はそう願った。
そんな恐怖が続く中でも、合唱コンクールの練習は続いた。
「今は、もう、動かない、そのとーけーい~♪」
かよ子も、笹山も、大野も、各々の独唱部分は完璧に近くなっていた。かよ子は毎度のおっちょこちょいをしなくてよかったと思うのであった。
すみ子達は劇の練習を終えて帰るところだった。その時、急に胸の鼓動が激しくなった。吐き気がするくらいに。
(来てる・・・!!奴等が近くに・・・!!)
すみ子は山口、川村、ヤス太郎を呼ぶ。
「山口君、川村君、ヤス太郎・・・!!」
「どうした、すみ子?」
「吐き気がするくらい、心臓が激しくなってるの・・・。また、敵が来たわ・・・!!」
「何だって!?」
三河口は奏子と共に下校していた。
「寒くなって来たね」
「うん」
「私、スカートが寒くて辛いわ」
「確かに、ストッキングとか指定してくれてもいいんじゃないかって俺も思うな」
「三河口君って女子に優しいわね」
「いやあ・・・」
三河口は照れた、と同時に急に体が震え出した。寒さによるものとは全く異なる震えだった。
(これは、まさか・・・!!)
「三河口君、寒いの?震えてるわよ」
「いや、これは、寒さによる震えじゃない・・・。これは・・・」
同時に三河口は胸騒ぎを覚える。
「間違いない・・・!!異世界の敵か赤軍が近くに来ている!!」
「え!?」
「そいつらを探して抑えないととんでもない事になるぞ!奏子ちゃん、エレーヌから貰った羽衣を持ってるか?」
「うん、いつもお守りとして大事に持ち歩いているわよ」
奏子は鞄から文化祭の終わりの時にエレーヌという異世界の人間から貰った羽衣を取り出した。
「よし、その羽衣を使って濃藤と北勢田を連れて来てくれ!そして怪しい奴等も見つけてくれるか?」
「自信ないけど、やってみるわ!」
「ありがとう!俺も奴を探すと共に隣の家の子の安否を確認するよ!」
「分かったわ!」
奏子は羽衣を首にかけた。その時、羽衣の能力によって彼女は浮遊し、天女の如く空へと向かった。
「さて、かよちゃんの通学路を探るか」
残った高校生男子はかよ子の通学路を沿って急ごうとした。相手は赤軍か、それとも、戦争を正義とする世界の人間か・・・。
かよ子は練習を終えて、まる子にたまえ、そしてとし子と下校していた。
「かよちゃん、今日も歌、上手かったね」
「う、うん、練習のお陰かな」
「でも、風邪ひかないように気を付けてね」
「じゃあねー」
かよ子は友達と別れる。そして自分の家へと向かう。
「あの、ちょっと君」
「え?」
かよ子は振り返ると、古代の日本の役人のような格好の人物がいた。
後書き
次回は・・・
「近づいてきた男」
奏子は濃藤、北勢田を見つけ、三河口は見聞の能力を頼りに敵を捜す。そんな時、かよ子に近づいた男は異世界の敵が暴れている話をし、かよ子はその男は怪しくないと思い、護符や自分の持っている杖の話をするのだが・・・。
100 近づいてきた男
前書き
《前回》
赤軍の長・重信房子は東京に向かい、そこに拘置されている赤軍の一人・和光晴生と東アジア反日武装戦線の面々を救い出す。そして護符の持ち主を探し出す為に異世界の敵が暴れ始める中、清水市内ではすみ子や三河口などが恐ろしい胸騒ぎを覚える。そして合唱コンクールの練習を終えて下校するかよ子の元に一人の男が近づいて来た!!
奏子は異世界の羽衣を使用して空中を廻る。そして濃藤を発見した。
「あ、濃藤君!」
「徳林さん!?」
「三河口君が敵の気配を感じたの!一緒に来てくれる!?」
「ミカワが?分かった、行くよ!」
奏子は濃藤の肩にも羽衣をかけて飛び立った。
「これ、徳林さんが文化祭の終わりにエレーヌって人から貰った羽衣かい?」
「そうよ、こんな風に空を飛ぶことができるの。あと、北勢田君も見つけなきゃ」
「ああ」
二人は飛び立った。途中、北勢田も見つけた。
「北勢田君!」
「徳林さん!?濃藤も!どうしたんだ!?」
「三河口君が敵の気配を感じ取ったの!来てくれるかしら?」
「よし、分かった!俺も感じていたよ!」
三人は奏子の羽衣で空中に飛び立った。
三河口はこの激しい心臓の鼓動を手掛かりに敵を捜していた。その時、また違った感触を覚えた。
(ん、この感触・・・)
三河口は周りを見回す。その時、一人の女子の姿が目に入った。
(あの子は、確か、かよちゃんの・・・!!)
「おうい、君!」
「え?」
「君、確かかよちゃんの友達のまる子ちゃんだったっけ?異世界の炎の石を持っている」
「う、うん、そうだけど・・・」
まる子はこの男子の事は何度も会っているので知らない訳ではなかった。
「俺はかよちゃんの隣の家に住んでる者だ。異世界の敵と思われる奴が近くに来ている!もしかしたらかよちゃんの杖が奪われるかもしれないんだ!急でなんだが協力してくれるかい!?」
「ええ、かよちゃんが!?」
まる子は心の中で面倒くさいと思った。
「君、友達がどうなっても知らん顔するつもりなのか?」
「う・・・」
(たまちゃんならすぐにでも行くけど・・・)
「君、石松から選ばれて炎の石の所有者になったんだろ。面倒くさいなんて思うならその石は君にとって何だ?ただのお宝か!?」
「う・・・、分かった、行くよお~」
「よし、かよちゃんを援護に行くぞ!」
その時、誰かがまる子を呼んだ。
「あら、まる子!?」
「お姉ちゃん!?」
「その人、誰?」
「君、もしやまる子ちゃんのお姉さんかい?」
三河口は一発で見抜いた。
「そ、そうだけど・・・」
「俺はまる子ちゃんの友達・山田かよ子ちゃんの隣の家に住んでいる三河口健という者だ。俺が通ってる高校の文化祭に君の妹が来てくれた事は感謝しているし、運動会も見させてもらったよ」
「う、うん・・・」
「君ももしかして、石松から異世界の道具を貰ってないか?」
まる子の姉は見抜かれた。この男、頭が切れると思い、少し恐ろしくなった。
「も、持ってるわ。これよ」
まる子の姉は石松から貰った七つの宝石を取り出した。
「今、俺の知り合いである山田かよ子ちゃんが危ないんだ!君もその宝石で協力してくれるか!?」
「わ、分かったわ」
「よし、俺について来てくれ!」
三人は向かった。
かよ子は下校中、飛鳥時代の役人のようないでたちの人間に話しかけられた。
「君、異世界の杖の所持者だね?」
「は、はい」
男は優しく話しかけた。
「今、この国は大変な事になっている。今、異世界の敵が護符を狙って今、暴れ出しているんだ」
(やっぱり、そうなんだ・・・!!)
「私は異世界から君を助けに来てね、イルカって言うんだ」
「イルカ・・・。可愛い名前ですね」
「はは、可愛いか・・・」
「はい、海に住んでるあのイルカみたいで。」
「そうか、ゆっくり話そうか」
イルカという男を公園に連れて行った。
「異世界の人間があちこちの都を暴れまわらせているって話だそうだか」
「うん、護符を持ってるお姉さんが大丈夫か心配なんだ・・・」
「へえ、護符を持ってるお姉さんか・・・。その人は今どこにいるんだい?」
「名古屋だよ」
「そうか、見つからないで済むといいね。ところで、君のその杖を見せてくれるかな?」
「うん」
かよ子は躊躇いもなく杖を取り出した。
「これを色んなものに杖を向けるとね、向けたものと同じ能力を得る事ができるんだよ」
「へえ、凄い杖だね。護符や剣、杯と同じくらい強力なものだとか・・・」
「うん、フローレンスさんとイマヌエルさんくらいしか知らなかったっていうものだったんだって。でも、これを狙いに戦争が正義だっていう異世界の人や赤軍が来て大変なんだ」
「そうか・・・。この杖があれば怖いものなしかな・・・?」
イルカはその時、かよ子から杖を強引にひったくった。
「あ、何するの!?」
「杖は貰った!!フハハハハハ!!」
イルカはその場から駆け足で去る。
「ま、待ってー!!」
かよ子はやってしまった。とんでもないおっちょこちょいを。
「これで杖は手に入れた!護符の場所も分かった!!」
「待てーー!!」
かよ子は追いかける。その時、別の男性二名が立ちはだかった。同じく朝廷の役人のような格好をしている。
「杖がなければお前も無力だ」
「だ、誰!?そこをどいて!!」
「我は蝦夷」
「我は馬子。杖を失くしたからにはサッサと消えて貰おうか」
かよ子は一人で、杖無しでどうすればいいのか分からなかった。
「我々蘇我氏は仏教を広めた事で知られる。我のこの念仏で静粛してくれる!南無阿弥陀仏・・・」
馬子が念仏を唱える。
「い、嫌だ!」
だが、防御に特化した武装の能力を持つかよ子にはその念仏攻撃は通用しなかった。
「なぬ?」
「父上、我々の攻撃が通用せぬとは、何かの間違いか何かでは!?」
「いや、異世界の道具を持つ者には何か異なる能力があると聞く。つまり、この者は攻撃を防いでしまう能力があるのだ!」
相手がごちゃごちゃ喋っている間にかよ子はその場を突っ走ってイルカを追いかけようとした。
「もう、相手にできない!」
かよ子は猛ダッシュする。
「蝦夷!この娘、入鹿を追いかけようとするぞ!取り押さえよ!」
「はっ!」
蝦夷と馬子が取り押さえようとする。だが、かよ子の武装の能力が発動した。馬子と蝦夷がかよ子に触ろうとする直前に弾き飛ばされた。
「うおおおーー!!」
かよ子は蝦夷と馬子を無視して杖を奪った入鹿を追い駆け始めた。
「かよちゃん・・・!!」
「え・・・!?」
かよ子は途中、すみ子、山口、川村、ヤス太郎と遭遇した。
「すみ子ちゃん達・・・!!」
「何があったんだ!?」
山口が聞く。
「わ、私の杖が盗られちゃった!!」
「何だって!?」
その時、蝦夷と馬子が起き上がった。
「待て、小娘!!」
「こいつらは俺達が食い止める!お前は杖を盗った奴を追いかけろ!」
「うん・・・!!」
かよ子はフローレンスから貰った異世界の羽根を取り出し、飛行した。
三河口はさくら姉妹と共にかよ子や敵の行方を探す。
「どこにいるのお~?」
「俺の胸騒ぎ次第では近くに違いない」
その時、まる子の姉の黄色い宝石が光り出した。
「あら・・・?」
「それは君の宝石の能力か」
「ええ、七つの宝石があってそれぞれ違う能力を持つって言われているの」
「ええ、凄い!まる子も欲しい~」
「ダメよ、私の物よ」
「ええ、まる子のと交換してよ!」
「嫌よ!」
「やめろ!!」
三河口は怒鳴って姉妹喧嘩を鎮めた。
「この宝石は君のお姉ちゃんのだろ。欲しがってもくれないし、勝手に盗ったら君の『炎の石』も没収されるぞ。奪って悪用したら、自分に天罰が下る事を覚えておけ」
「ぶー・・・」
まる子は不貞腐れた。
「で、この宝石は何を見せてくれるんだ?」
「待って!」
黄色い宝石・トパーズは姉に未来の行動を頭に移させた。飛鳥時代の役人のような人間が杖を持って喜んでいる。それを何らかの組織に献上する姿が見えた。
「今、予知能力なのを感じたわ。なんか昔の人間みたいな人が棒のような物を持って誰かにあげようとしていた」
「棒・・・。つまり、かよちゃんの杖だ!奴等はかよちゃんの杖を奪いに来たのか!」
「ええ!?」
「俺の胸騒ぎでは奴は近くにいる・・・」
三河口は目を閉じた。そして・・・。
「あっちの方角だ!奴は異世界の奴だから空も容易く飛んでしまうぞ」
「空を飛ぶ・・・。私に任せて!」
まる子の姉はトパーズとサファイアを取り出した。トパーズが光りだし、三人は空を飛んだ。
「す、凄い!」
「この黄色い宝石はトパーズって言ってさっきみたいに未来予知して、私が想いついた空想や幻を現実にしてくれるの。次はこの青い宝石を使うわよ!」
そしてサファイアの能力が発動された。
「このサファイアは私達にチャンスをくれるの!」
そのサファイアに導かれたように三人は高速移動する。そして杖を持った「敵」にあっという間に接近した。
「待て、お前!」
三河口はその敵を呼ぶ。
「何だ、お前は!?」
「その杖を返してもらおうか!」
「お断りだね!」
「てめえ・・・!!」
三河口は威圧の能力が発動された。
(こ、こいつ、能力を・・・!!)
後書き
次回は・・・
「蘇我氏の一族」
入鹿と交戦する三河口とさくら姉妹。蝦夷、馬子と交戦するすみ子達、組織「義元」。激しい戦いを繰り広げた後、かよ子の失態に対して三河口は・・・。
101 蘇我氏の一族
前書き
《前回》
三河口は異世界の敵が来るような異常な気配を感知し、奏子に濃藤と北勢田を呼びに行かせ、自身はさくら姉妹を引き連れて敵の討伐に進む。一方、かよ子はイルカという善人面した男と出会い、彼を平和を正義とする世界の人間と思う。異世界の護符に関する情報を提供し、自身の持つ杖を見せる。だが、イルカに騙されてしまい、杖を奪われる。杖と護符の情報を手に入れてその場を去ろうとするイルカの前に現れたのは三河口とさくら姉妹だった!!
かよ子は羽根に乗って杖を奪った入鹿を捜す。
「なんであんなおっちょこちょいしちゃったんだろう・・・」
その時、同じく飛行している者がいた。
「あら、君は確か三河口君ちの隣の子・・・?」
「はい、確か、お姉さんは笹山さんちの近所の・・・」
「そうよ」
「あ、長山君ちの近所のお兄さんにすみ子ちゃんのお兄さん!」
「ああ、ミカワが敵が来たっていうから徳林さんのこの羽衣で飛んできたんだ」
「あの、実はね・・・、私、杖、盗られちゃったんだ・・・!!」
「ええ!?」
三人は驚いた。
「どんな奴だった!?」
濃藤が質問する。
「名前はイルカって言って、昔の人みたいな感じだったな・・・」
「兎に角探しに行きましょう」
「うん」
皆は杖の捜索を始めた。その時、何処からか叩きつけられるような音が聞こえた。
「何!?」
「あっちの方角だ!」
濃藤が指差した所はまた別の飛行物体がいた。
「あれは・・・、ミカワじゃねえか!?」
「三河口君!?」
(と、隣のお兄ちゃんが・・・!?)
かよ子は三河口も助けに来てくれたんだと思うと有り難く、また申し訳無いと思った。
三河口は怒りに燃える。その怒りは入鹿を怖じけ付けさせた。
(こいつ、威圧感を・・・!!)
そして三河口は入鹿の懐に飛び込む。そして首根っこを掴んで地へ投げ落とした。
「うわああ!!」
そして三河口も地に降り、入鹿から杖を奪う。
「まるちゃん、石の能力で火炎放射しろ!」
「え?う、うん!」
まる子は炎の石の能力を行使した。入鹿はその身体を焼き付くされる。
「あちー!あちちちちち!!!」
その場にかよ子達も駆け付けた。
「い、イルカが・・・。燃やされてる・・・!!」
身体を焼かれた入鹿は光となって消えた。まる子とその姉も地に降りた。
「かよちゃん・・・」
「隣のお兄ちゃん・・・」
「ほら、杖だよ・・・」
三河口は杖をかよ子を投げ返した。かよ子はそれを受け取ろうとして、取ったはものの、尻餅を突いてしまった。
「かよちゃん、大丈夫!?」
「まるちゃん、それにまるちゃんのお姉さんも・・・。ありがとう」
「うん、杖が戻ってきて、よかったね」
まる子の姉も一安心したと思った。皆も杖を奪還できてよかったと思い、ホッとする。だが、三河口だけはしかめっ面だった。
「かよちゃん・・・」
「え?」
「おっちょこちょいにも程があるぞ!あんなに容易く杖を盗られるなんて!!杖の所有者として情けないと思わないのか!!」
かよ子は初めて三河口から叱責を喰らった。周りの皆も驚いた。
「う、うん、私も、相手が優しく寄って来たから平和の世界の人間かと思ったんだ。ごめん・・・」
「ごめんどころじゃねえだろ!まだ、俺の胸騒ぎは収まっていねえ!まだ敵はいる!」
「そう言えば俺も、胸騒ぎがしている・・・!!」
北勢田も感じていた。
「そうだ・・・!!すみ子ちゃん達が・・・」
「ん、ウチの妹がどうかしたのか?」
「戦ってるんだ、別の敵と・・・!!」
「何!?現場へ行くぞ!」
「う、うん!!」
「皆、私の羽衣に掴まって!」
「まるちゃん、まるちゃんのお姉さん!この羽根に乗って!」
「うん!」
皆はすみ子達が戦っている現場へと向かった。
組織「義元」は蝦夷・馬子と対峙していた。
「お前ら、昇天させてやる。大伴、物部を失脚させた蘇我の力でな!南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
馬子と蝦夷が経を唱える。
「させない・・・!!」
すみ子は銃を発砲した。四人の周りに膜が張られ、相手の攻撃を弾いた。
「お前ら、眠らせるでやんす!」
ヤス太郎はパチンコを発射した。
「南無阿弥陀仏・・・」
だが、蝦夷はその念仏でヤス太郎の攻撃を無効化した。
「効かないでやんす!」
「なら、俺達が!」
川村はバズーカを、山口は弓矢を使って攻撃した。だが、馬子と蝦夷は念仏を唱え続ける事で二人の攻撃は弾かれた。
「く・・・、あの念仏が癪に障るぜ!」
「あいつらの能力を使わせないようにしないと手も足も出ねえぜ!」
すみ子も銃を発砲して自分達を守り続ける。しかし、これを続けても相手の念仏攻撃を防ぐのみの為、相手を倒しきれない。こちら側の攻撃も、相手に防がれる。これでは長期戦は避けられない。
「くそ、キリがねえ!」
「いつまで念仏唱えてやがる!」
その時、かよ子達が戻って来た。
「すみ子ちゃん達!!」
「か、かよちゃん、お兄ちゃん達・・・!!」
「おめえら蘇我氏か・・・。入鹿は倒してもらったぞ!」
「む・・・、南無阿弥・・・」
だが、蝦夷も馬子も振るえている。
「くそ、ダメだ、この男の前ではなぜか立ちすくむ。蝦夷、撤退するぞ!」
「了解!」
馬子と蝦夷は空中へ逃走しようとする。
「させないわ!」
奏子は羽衣を投げつけた。その時、羽衣が蝦夷の口に猿轡された。
「今だ、蝦夷は念仏を唱えられん!かよちゃん、まるちゃん、二人でやれ!」
「うん!」
まる子が炎の石の能力を行使する。かよ子はまる子が出した炎に杖を向け、炎を操る能力を得た。猿轡で口を封じられた蝦夷は念仏を唱えられない為、自身の能力で保身する事もできなかった。蝦夷が焼かれ、光となって消えた。だが、奏子の羽衣は燃えずにそのまま奏子の元へと戻った。
「あとはお前だ!」
皆は馬子に矛先を向けようとした。
「な、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
しかし、馬子は去ってしまった。
「取り逃がしたか・・・」
濃藤は妹達を気にする。
「皆、よく頑張ったな」
「ああ、でも、結構手強かったぜ」
「文化祭の時に戦った奴より手強かったでやんす」
「文化祭の時・・・?」
かよ子は何の事か気になった。
「ああ、俺達が帰る途中、異世界の敵が来たんだ。石松やエレーヌって奴と一緒に倒したんだがな」
「そうだったんだ・・・」
「それにしてもあいつらは南無阿弥陀仏とか仏教にすがってるような感じだったな」
北勢田は回想する。
「奴等は生前、蘇我氏の一族として君臨していた者達だ」
「ソガシ・・・?」
かよ子は何それと思った。
「そう言えば私、社会の授業で聞いた事あるわ」
まる子の姉が思い出すように言った。三河口が説明する。
「ああ、1500年ほど前、大伴氏、物部氏と並ぶ三大勢力とされていた一族だ。蘇我稲目の頃に勢力を出し、大伴氏が勢力を失うと、物部氏と激しく争ったんだ。仏教の導入や次の天皇を決める、いわば皇位継承でね。稲目に変わって息子の馬子が物部氏を滅ぼし、蘇我氏の天下となるんだ。だが、馬子は自分への反逆を考えていた崇峻天皇を殺害し、推古天皇や聖徳太子が生きていた頃は暫くは慎んでいたが、聖徳太子が死ぬと、また横暴になり、馬子の子・蝦夷は自分が天皇以上に威張った振る舞いをし、蝦夷の子・入鹿は聖徳太子の子を殺害したりして蘇我氏は更に横暴になっていったんだ。だが、入鹿が中臣鎌足、中大兄皇子に殺害され、蝦夷が自害して蘇我氏の勢力は弱まったという訳だ」
「ふうん、蘇我氏って結構勝手な事してたのね。ウチのバカな妹みたいに・・・」
まる子の姉は妹を睨み付ける。
「う・・・。アタシはそんな事・・・」
「お姉ちゃんの宝石を欲しがったのはどこのどいつだったっけ?」
「う・・・」
「帰った後、また欲しがるなよ。でなきゃ、その炎の石も石松に没収されるからな」
「は、はい・・・」
まる子は何も言えなかった。
「ところで・・・」
三河口はかよ子の方を見る。
「かよちゃん、入鹿にまさか護符の場所を喋ったんじゃないだろうな・・・」
「う・・・、ごめん・・・。言っちゃった・・・」
「ごめんで済むか!!これじゃ赤軍が名古屋の従姉を狙いやすくなるだろうが!!」
「う、うう・・・!」
かよ子は涙目だった。
「ミカワ、よせよ!もう、仕方ないじゃねえか。かよちゃんだって騙されたんだから」
「そうよ、あんまり怒っちゃ可哀想よ」
北勢田と奏子はその場を取り繕おうとした。
「まあ、ここまでにするか。俺は帰ったら叔母さんや叔父さん、名古屋の従姉に連絡する。兎に角、皆も大変だったね。暗くなってきたから帰ろう」
「うん」
皆は帰った。
「お兄ちゃん・・・。ごめん、おっちょこちょいして・・・」
「まあ、どちらにしてもさりちゃんが心配だな・・・。まあ、大雨の時にあの護符を使いこなせてたんだから十分太刀打ちできると思うが・・・」
かよ子は気まずく思いながら、三河口と帰宅した。
何とか逃げおおせた馬子は己の父、稲目と対面した。
「父上、申し訳ございませぬ、蝦夷と入鹿はやられました・・・」
「勢力低下は仕方あるまい。護符の場所は分かったのか?」
「はい、入鹿が聞きだしました。『ナゴヤ』という所にあるそうです」
「そうか、報告しないとな」
「はい・・・」
稲目と馬子は清水の地から去った。
この日、日本各地で異世界の敵が現れた。
後書き
次回は・・・
「標的は名古屋」
三河口は名古屋にいるさりにかよ子が騙されて護符のある場所を異世界の敵に教えてしまった事を電話で報告する。三河口の叱責を喰らってから精神を病んだかよ子は合唱の練習に身が入らなくなり・・・。
102 標的は名古屋
前書き
《前回》
清水市を襲来して来た蘇我氏達に対して三河口はまる子、さきこのさくら姉妹と共にかよ子の杖を奪った入鹿を撃破し、杖を奪還する。そして蝦夷に馬子と交戦しているすみ子達「義元」の元へ向かい、かよ子達は蝦夷を撃破、馬子を撤退させることに成功するが、かよ子は入鹿に杖を騙し取られた事に加え護符の所有者の居場所を喋った事で三河口から激しく叱責されてしまう。そして同じ頃、日本各地で異世界の敵が暴れていた!!
兵庫県神戸市。そこに鷺森光江という異世界の道具を持つ女子高生がいた。光江は学校から帰る途中、爆音が聞こえた。
「な、何やねん!?」
光江は爆音地へと走る。多くの人々が逃げ惑っていた。よく見ると二丁拳銃で暴れている者がいた。
「おい、護符の場所を教えろ!」
(護符・・・?)
光江は護符と聞いて頭に浮かんだ。確か隣に住んでいる祝津ゆりという女性の妹が異世界の護符の所持者であり、その人物と対面した事がある。まさかこの男は護符を探しにやって来たというのか・・・。
「護符はどこだ!?」
だが、多くの建物が爆破で炎上し、中には怪我人も出た。
(んな事考えとる場合ちゃうか!あいつを抑えんと!)
光江は一つの御守を取り出した。
「ちょっと、ここに護符はないわよ!やめんさい!」
「あ!?黙れ、小娘!このガヴリロ様を舐めんな!」
ガヴリロと名乗った男は光江に両手にある二丁の拳銃を発砲し、光江を狙う。
(湊川、生田、長田の神の能力よ・・・!!)
光江が持つこの御守は異世界の人間から貰った物である。ガヴリロの拳銃攻撃は光江には通用せず、弾は消えた。
「何!?テメエ、異世界の道具を持ってんな!」
「そうよ!」
(どうかあいつを鎮座させて!)
光江はそう願う。そして自分自身に宿る能力も使用する。
「な、なんだ、この威圧感は!?」
ガヴリロは光江から感じる威圧の能力で怯えてしまった。そしてもう一度、拳銃を発砲する。だが、光江に命中しなかった。そして光江の御守が発動する。
「あ、あ、うわあああ・・・」
ガヴリロは御守の間接攻撃を喰らった。ガヴリロは苦しむ。そして身体が砕け散って光となった。光江はガヴリロは異世界の敵と認識しつつ、相手の目的を顧みる。
(あのガヴリロって男・・・。異世界の護符を探してた・・・。隣のお姉さんの妹さんが持っているあれかも・・・。伝えなきゃ・・・!!)
光江は家に帰った。
三河口は帰宅後、叔母の許可を得てさりに電話を掛けた。
「さりちゃん!」
『あら、健ちゃん、どうしたの?』
「大変です。清水に異世界の敵が現れて、隣のかよちゃんが相手に騙されて護符の在処を喋らされました!」
『え!?』
「しかも、敵は確認できる限り二人は倒しましたが、一人取り逃がしました。そいつが赤軍に報告するかもしれない・・・!!」
『分かった、こっちも気を付けるわ』
「はい」
電話を切ると、奈美子が質問する。
「異世界の敵が現れたって?」
「はい、かよちゃんに接近して善人のふりをして護符の場所を聞いて杖を奪ったんです。杖は盗り返しましたが・・・」
「大変ね。さりが何とか守りきるのを祈るしかないね」
「はい・・・」
かよ子は昨日の一件で落ち込んでいた。その事は母にも話したが、母は三河口ほどきつく叱りはしなかった。
「確かにそれは大変な失敗ね。でもさりちゃんが持ってる護符もかよ子の杖と同じくらい強力な筈だからきっとさりちゃんも対応できるわよ」
「う、うん・・・」
かよ子はその事で精神が病み、合唱の練習をせずに寝てしまった。そして今に至る。
(私のせいで、護符が盗られたら・・・)
レバノンの日本赤軍本部。房子は見つからずの護符の情報について早く手にしたかった。
「総長」
日高が入って来た。
「あら、敏彦、どうしたの?」
「静岡の清水に派遣させた蘇我氏の者を連れてきました」
二人の飛鳥時代の朝廷の役人のような人物が房子の部屋に入室した。
「貴方達は稲目と馬子ね」
「はい」
「蝦夷と入鹿は?」
「申し訳ございませぬ。杖の所有者並びに異世界の道具の持ち主達に倒されました」
「何ですって!?」
「はい、あと一歩で杖を奪ったところで別の者に追い打ちを喰らいました。ですが・・・」
馬子が続ける。
「入鹿は見事に杖の所有者から護符の場所を聞きだす事に成功しました」
稲目が続ける。
「場所は、ナゴヤという所にございます」
「名古屋ね・・・。貴方達がこの世に生きていた頃、『尾張』と呼ばれていた所よ」
「ああ、さようでございますか」
「蝦夷と入鹿を失った事は辛いけど、これ以上の捜索行為は無用ね。敏彦、日本全国の捜索をしている者達に攻撃を辞めて引き上げさせなさい」
「了解しました。皆にも伝えます」
敏彦、稲目、そして馬子は退室した。
「護符は名古屋ね・・・」
房子は目的達成に少し近づいたと思い、微笑んだ。
かよ子は昼間だというのにベッドで横になっていた。そんな時、母が入って来た。
「かよ子。まだ落ち込んでるの?」
「いや、その・・・」
「隣の健ちゃんが入って来たわよ」
「え?」
三河口が入って来た。
「かよちゃん、この前は怒鳴ってごめんな」
「う、うん・・・。私のおっちょこちょいが原因で護符の場所を知られちゃったんだし・・・」
「でも、その分、異世界の敵があの後、各地で暴れまわる事はなくなったんだ。その事については安心していいが、俺の従姉に何かあったら必ず助けに行こう」
「うん、そうするよ・・・!!」
「それより、合唱コンクールの練習はいいのか?」
「あ、うん・・・」
かよ子はこの前の自分の失態を気にして合唱コンクールの事に身が入らなくなっていた事を思い出した。
「杉山君も心配するぞ」
「あ、う、うん・・・」
かよ子は好きな男子の名前を出されて我に返った。
「頑張るよ!」
「元気になってよかった。じゃあな」
三河口は部屋から出て行った。
(そうだよね・・・。合唱コンクール、頑張んなくっちゃ!!)
合唱コンクールの日は近い。かよ子も皆で歌う部分も独唱部分も必死で頑張った。だが、その時、大野が少し声鼻声で声が掠れているような感じだった。
「大野君、大丈夫ですか?」
「ああ、心配すんな・・・」
だが、皆は心配だった。疎遠状態だった杉山でさえ大野が心配になった。練習の終わり、冬田が大野に近寄ってくる。
「大野くうん、声、掠れてるけど大丈夫う?」
「ああ、平気だよ、心配すんな、じゃあな」
大野はそのまま帰って行った。
「山田・・・」
かよ子は杉山に呼ばれた。
「す、杉山君!?」
「お前、今日もいい声してたぜ」
「あ、ありがとう・・・」
「どうしたんだよ?」
「実は私・・・、この前、異世界の敵に会って・・・」
「それで?」
「何か優しく寄って来たから平和の世界の人間かと思って護符の場所を教えちゃったんだ・・・」
「まじかよ!?お前もおっちょこちょいだな」
「うん、隣のお兄ちゃんには凄い怒られちゃったんだ・・・」
「でも、その護符を持ってる人って確か名古屋にいたよな?」
「うん」
「それにその護符はお前の杖と同じように結構強い能力を持ってんだろ?あのお姉さんなら大丈夫だろ。大雨の時も活躍してんだからな」
「うん、そうだよね」
「俺だって、いつでも助けてやる」
「ありがとう、杉山君・・・!」
その時、笹山が近づいてきた。
「山田さん、独唱の所、凄く良かったわよ」
「う、うん・・・、ありがとう・・・」
「おう、笹山と結構上達してたぜ!」
「杉山君、ありがとう。それにしても大野君が心配よね」
「確かに、今日、声掠れてたもんね」
だが、杉山には知らん顔だった。
「平気だろ、あいつらなら。じゃあな」
杉山はさっさと帰ってしまった。
「杉山君、まだ大野君と仲直りできていないのね」
「うん・・・」
かよ子はまだ別の問題があった事を思い出した。杉山が大野と仲直りしなければこの先戦いに苦労すると。その端で藤木は笹山が羨ましそうに見ていた。
(いいなあ、笹山さん、杉山君や山田と楽しく喋って・・・)
「あら?」
笹山が藤木が自分の方に見ているのに気づいた。
「藤木君」
「え!?」
「どうしたの?良かったら私達と一緒に帰らない?」
「いいのかい?ありがとう!」
藤木は喜んだ。そして三人で帰り、藤木には笹山と一緒に帰れて嬉しいと思うのであった。
後書き
次回は・・・
「最悪の日」
ゆりが神戸で異世界の敵が暴れた事を実家の母や名古屋に住む妹のさりに電話で呼び掛ける。かよ子は笹山に藤木と共に下校するのだが、野良犬と遭遇し、藤木はある行動に出てしまい・・・!?
103 最悪の日
前書き
《前回》
戦争主義の世界の人間・馬子と稲目から護符の場所の情報を得た赤軍のリーダー・重信房子は護符を狙う事に意気込む。一方、自身の失態を三河口に叱責されて精神的に病んでいたかよ子は合唱コンクールに練習に身が入らない。そんな彼女の元にその三河口が現れ、「杉山が心配する」と言われて我に返ったかよ子は再び練習を始めるのだった!!!
羽柴家に電話が鳴る。三河口は電話を出た。
「はい、羽柴です」
『あら、その声は健ちゃんね』
「はい・・・、とすると、神戸のゆりちゃんですか?」
『正解』
三河口の従姉で羽柴家の長女・ゆりだった。
「叔母さんに今、変わりましょうか?」
『ええ、お願い』
「叔母さん、ゆりちゃんです」
三河口は叔母と代わった。
「はい、ゆり、どうしたん?」
『実はこの前、神戸に異世界の敵が現れて暴れてたの。隣の家の女の子が異世界の御守で倒したけど、その敵は「護符はどこだ!?」って言ってたって聞いたわ。もしかして、さりが持ってる護符を狙ってるんじゃないかしら?』
「そうみたいね。ウチの所にも隣のかよちゃんがそれで襲われかけたんよ」
『山田さんとこの?』
「うん、健ちゃん達で追っ払ったけどね」
『そうだったの・・・』
「かよちゃんも騙されて護符の場所を教えちゃったから私もさりが心配よ」
『そうね、私も姉として心配だわ』
「それじゃ、気をつけてね」
『はい、じゃあね』
お互い電話を切った。
ゆりは次は名古屋の妹に電話をかける。
「もしもし、さり」
『ゆり姉!?どうしたの?』
「この前、神戸で異世界の敵が現れたのよ。隣の家の光江ちゃん覚えてる?」
『ああ、光江ちゃんがどうしたの?』
「その敵を光江ちゃんが倒したの。その時、敵は護符を探していたそうよ。つまり、赤軍達はさりの護符を狙っているわ!」
『う、うん・・・!!』
さりは落ち着かなくなった。
「あとそれだけじゃないわ。母さんから聞いたけど清水でも山田さんとこのかよちゃんが異世界の敵に騙されて護符の場所を教えちゃったそうよ」
『ああ、それ、健ちゃんから聞いたわ』
「だから、十分気を付けて。護符を手放さないようにね」
『うん、気を付けるわ』
「それじゃ、お休み」
お互い電話を切った。さりはもう安全ではないと自覚した。
かよ子は藤木、笹山と共に下校していた。
「笹山さんも山田も目立っていいなあ・・・。僕なんか合唱だけだもん」
「そんな事気にしなくていいわよ。藤木君も合唱の一人として役に立ってるわよ」
「笹山さん・・・。えへ、ありがとう・・・」
藤木は笹山にそう言われて嬉しかった。
「わ、私も、本番でおっちょこちょいしないように気をつけなくちゃ・・・」
「大丈夫よ、山田さんもいい声してるわ」
「うん、ありがとう」
と、その時だった。
「ウーッ、フーッ・・・!!」
横から野良犬が現れた。
「キャー!」
「う、うわあ、に、逃げよう!!」
藤木は急に笹山の手を掴んだ。かよ子も逃げようとするが、転んでしまう。
「あ、あ・・・」
かよ子は慌てて杖を取り出した。その時、風が吹いた。かよ子は杖を出し、風を操る能力を得た。そして杖は竜巻を作り出し、野良犬を遠くへ吹き飛ばした。
「はあ、何とかなった・・・」
しかし、藤木と笹山はその場にはいなかった。
藤木と笹山は何とか逃げおおせた。
「はあ、はあ、もう大丈夫だよ、笹山さん」
「でも、山田さんを置いて行っちゃったじゃない!どうして山田さんを見捨てたの?」
「で、でも、僕だって怖いし、笹山さんに怪我をして欲しくなかったんだ!」
「私は良くても山田さんが怪我したらどうするのよ!?」
「う・・・」
「私、山田さんの所へ行ってくる!!」
笹山は藤木から離れた。
「ま、待ってよ笹山さーん!!」
しかし、笹山を呼び止める事はできなかった。
かよ子は立ち上がった。
「急いで帰ろう・・・」
その時だった。
「山田さーん!」
「笹山さん・・・!!」
「ごめんね、先に逃げちゃって・・・。藤木君ったら山田さんを見捨てるんだから・・・」
「うん、確かに卑怯だったね。でも、この杖で何とかやっつけたよ」
「杖?」
「うん、色んな物質に向けるとその物質の力を操れるんだ。さっきは風が吹いたから風の能力で竜巻を作って野良犬を追い払ったんだよ」
「へえ、凄い杖ね。そういえば近所のお姉さんから聞いた気がするわ。この前、山田さんがその杖盗られそうになったからやっつけたって」
「実はそうなんだ・・・」
「そうか、でも、怪我しなくて安心したわ。一緒に帰ろう」
「うん!」
そして翌日、かよ子と笹山は藤木の机の元へ行く。
「藤木君!」
「な、何だよ!?」
「昨日、私を置いて逃げるなんて、卑怯だよ!」
「ご、ごめんよ、僕だって怖かったんだよ!」
「今更謝っても遅いよ!笹山さんはすぐ戻って私の所に謝りに行ったよ!藤木君はその後、どうしたの?」
「か、帰った・・・。笹山さんが行っちゃったから」
「ありえないよ!そんなの!!」
「そうよ。ひどいわ!」
その時、周りのクラスメイトが話を聞いており、藤木を非難していく。
「うわー、最低!」
「笹山さんはともかく、なんでかよちゃんを見捨てるの!?」
「本当に卑怯!!」
そしてまる子とたまえも寄って来た。
「ええ!?藤木が!?」
「あのおっちょこちょいのかよちゃんを置いてきぼりにするなんて!いくらかよちゃんが杖を持ってるからって!!」
藤木は非難の的となってしまった。そして隣の机の永沢が留めの一言を浴びせる。
「藤木君、君、山田を見捨てて逃げたのかい?君は本当に筋金入りで底抜けの卑怯者だね。君とはもう絶交だよ」
藤木はもう頭の中が真っ白になった。笹山とも口を聞いて貰えなくなった藤木にとって人生最悪の日になってしまった事は言うまでもない。
さりはこの日も仕事をしていた。だが、いつ敵が護符を狙いに来るか分からない。神戸の姉に会った時、ゆりの隣の家に住む女子高生が異世界の敵を倒し、その敵は護符を捜していたと電話で姉から聞いた。
(兎に角、絶対に離さないようにしよう・・・)
さりはそう思った。
異世界の敵が日本全国で暴れていた頃、札幌にすむ煮雪ありは自分達と杯の所有者とその友達と共に赤軍の命令で杯を狙った東アジア反日武装戦線が脱走した事にはさらなる戦慄を覚えた。そんな時・・・。
「煮雪あり!」
シャクシャインが現れた。
「大変な事になった。敵が暴れておる!そのタマサイで私と共闘してくれ!」
「ええ、いいわ!」
ありは市街地へと向かう。そこに暴れる者がいた。多くの人が逃げ、北海道警すら苦労していた。その者はレコードで音楽を流すと、様々な建物を破壊していた。
「破壊をやめんか!」
「なら、異世界の護符の場所を教えたまえ!」
「何訳の分からん事を言っている!」
「ならお前らもこの音楽で殺めてやる!」
男は蓄音機内のレコードを入れ替える。そしてその音楽は建物は破壊しなかったが、人が倒れて行った。
「く!」
シャクシャインは剣を振るう。音楽が急に消えた。
「何だね!?私の邪魔をするのは!」
「邪魔は貴方の方よ!」
「いかにも、お主の攻撃は私が消してもらった!お主は何者だ!?」
「このダヌンチオ様を知らぬとは!お前らも消してくれる!」
「させると思う!?エク・カムイ!」
ありはタマサイの能力を行使した。半分人間で半分獣のカムイが現れた。
「ミントゥチか!」
「あいつを始末して!」
「了解!」
ミントゥチはダヌンチオを懐に飛び込む。
「自滅する気か?フハハハハ」
「大丈夫かしら?」
ありは気になった。だが、ミントゥチが体当たりしただけで、ダヌンチオは苦しんだ。
「あのミントゥチは天然痘を媒介させる能力があるのだ。ミントゥチの攻撃を受ければ死は免れまい」
「なるほど」
「うお、おおお・・・」
ダヌンチオは苦しみ、そして光となって消えた。
「煮雪あり、ご苦労だった。では」
シャクシャインは去って行った。だが、ありはある事が頭に浮かんだ。
(あのダヌンチオって男、異世界の護符を探してた・・・?)
後書き
次回は・・・
「合唱コンクールの異変」
お互い妹を心配し合うゆりとあり。そして合唱コンクール当日が訪れた。意気込むかよ子だが、大野の声が掠れており、ブー太郎が心配する。そんな中、合唱コンクールが開幕する・・・。
104 合唱コンクールの異変
前書き
《前回》
赤軍の次の狙いは護符である事が分かったさりは自身の不安に駆られる。その頃、藤木、笹山と共に下校していたかよ子達は野良犬と遭遇し、襲われそうになる。藤木は笹山を連れるがかよ子をその場に残して逃走する。かよ子は杖で風を操る能力を行使して追い払ったが、翌日笹山と共に藤木に詰め寄り、クラスメイトからも非難を受けた藤木は最悪の日となってしまうのだった・・・。
レバノンの赤軍本拠地。房子は考える。
「もうクリスマスの季節ね・・・。クリスマスプレゼントはやはりあれらのみ・・・」
房子が戦争を正義とする異世界の主に献上するクリスマスプレゼント。それはあの三つの道具である。杯、護符、そして杖。早くクリスマスプレゼントを揃えなければと思う房子であった。
ありはダヌンチオを倒した後、相手が「護符はどこだ?」と言っていた為、もしや母から妹に引き継がれた護符の事かと思った。そして、数日後、神戸に住む姉・ゆりから電話が来た。
『もしもし、あり』
「お姉ちゃん、どうしたの?」
『東アジア反日武装戦線が赤軍によって脱走したって聞いたわ』
「そうよ、私達が東京に行ったのは何の為だったのかしら・・・」
『それだけじゃないわ。実家の隣の山田さんとこの娘さんが異世界の敵に騙されて護符の場所を教えちゃったらしいの。相手はきっとさりの護符の場所が分かったに違いないわ』
「それじゃ、さりが一番危ないって事!?」
『そうなるわね。さりの護符も最上位の強さって聞くからさりもドジは踏まないと思うけど・・・』
「うん、名古屋にもちょっと行ってみようかな・・・」
『そうね、心配なら行ってあげてもいいかもしれないわ。じゃあね』
お互い電話を切った。
(さり、大丈夫かしら・・・?)
ありは妹が心配になった。
この日は12月24日クリスマス・イブ。つまり、クリスマスの合唱コンクール当日だった。かよ子は遅刻、そして喉に気を付けようと思い、早く寝て、早起きした。
「あら、かよ子、おはよう」
「おはよう」
「喉の調子はどうかしら?」
「うん、全然大丈夫だよ」
「良かったわ。コンクール、頑張ってね」
「うん」
「そっか、今日は合唱コンクールだったな。頑張れよ」
父が応援の言葉を送った。
「うん、おっちょこちょいしないように頑張るよ!」
かよ子は学校に到着した。
「よっ、山田あ、おはよう!」
「す、杉山君・・・。おはよう!」
「今日、頑張れよな!」
「うん・・・!」
かよ子は好きな男子から言われてやる気が更に漲った。そんな時、大野が入って来た。
「大野君、おはようブー!」
「ああ、おはような」
「あれ、大野君、ちょっと声がおかしいブー」
ブー太郎は心配になった。
「そ、そんな事ねえよ」
大野は否定した。
(大野・・・)
杉山は大野の声が掠れている事に気付いていた。運動会の喧嘩以来、口を聞いてはいなかったが、暫くそのような状態が続くと、どうしても彼が気になってしまうのだった。
一方の藤木は野良犬からかよ子を見捨てた一件以来、笹山とは口を聞いておらず、合唱コンクールにも何も意気込みを感じなくなってしまっていた。
朝のホームルーム、戸川先生が話を始める。
「今日は合唱コンクールです。皆、毎日の練習の成果を思う存分発揮しましょう」
皆が「はいっ」と返事した。
そして、合唱コンクールが始まった。1年生から順に学年毎に歌を披露する。次に2年生、そして3年生の番となった。自分のクラスの番が近づくにつれ、緊張のボルテージが上がる。だが、おっちょこちょいはしたくない。かよ子はそう思った。
『次は3年4組の「大きな古時計」です』
(よし、絶対におっちょこちょいしないぞ・・・!!)
かよ子は深呼吸をした。丸尾の指揮で花輪が前奏を弾く。そして1番の合唱が始まる。
「お~おきなのっぽの古時計、おじい~さんのとけい~♪百年、い~つも、動い~ていた、ごじま~んのと~けいさ~♪」
かよ子の独唱の番が来た。絶対に音を外してはならない。そして練習の成果を見せてやる。
「おじい~さんの生まれた朝に、買~って来たと~けいさ~♪」
上手く歌えた。かよ子はおっちょこちょいをしなかったのだった。そして合唱に戻る。
「今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪百年休まずに、チクタクチクタク、おじいさんと一緒に、チクタクチクタク、今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪」
1番が終わった。短い間奏を過ぎ、2番に入る。
「な~んでも知ってる古時計、おじい~さんのとけい~♪きれい~な、花嫁、やってきた、その日~も動~いてた~♪」
2番の独唱部分。今度は笹山が歌う。
「嬉しい~事も、哀しい事も、皆知ってると~けいさ~♪」
(笹山さん、綺麗な声だったよ・・・)
藤木は心の中で褒めた。だが、合唱に戻り、藤木は歌い出しが遅れてしまった。
「今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪百年休まずに、チクタクチクタク、おじいさんと一緒に、チクタクチクタク、今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪」
そして二度目の間奏にはいる。一度目よりは少し長い間奏である。そして、3番に入る。
「ま~よ~中に、ベルがな~った。おじい~さんのとけい~♪お別~れのと~きがき~たのを、皆に教え~たのさ~♪」
そして3番の独唱部分。今度は大野が歌う。
「てんご~くへ・・・♪」
その時だった。大野の声が出なくなった。
(しまった、声が、でねえ・・・!!)
大変な事態である。だが・・・。
「の~ぼるおじいさん、時計~ともお~別れ~♪」
別の人間が歌った。それは杉山だった。
(す、杉山君、独唱も凄い・・・!!)
かよ子はそう思った。
(杉山・・・)
大野も杉山に対して何か思う。そして合唱部分に戻る。
「今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪百年休まずに、チクタクチクタク、おじいさんと一緒に、チクタクチクタク、今は、もう、動かない~・・・、そのと~け~い~♪」
合唱が終わり、花輪が終奏を弾く。そして曲は終わった。嵐のような大きな拍手が聞こえた。クラスの皆は退場する。そしてかよ子は改めて思った。
(あの杉山君と大野君のコンビが帰って来たんだ・・・)
そして上の学年、クラスの合唱が続き、合唱コンクールは閉幕した。3年4組は全体で2位となったのだった。
「かよちゃん、独唱すごくよかったよ!」
まる子、たまえ、そしてとし子がかよ子に労わりの言葉を送った。
「あ、ありがとう。おっちょこちょいしなくて頑張ったよ」
そして、ブー太郎は杉山の所に行く。
「杉山君、大野君の代わりに速攻で独唱をするなんて凄いブー!」
「ああ、実は俺も正直、あいつが心配だったんだよ・・・」
その時、大野は杉山の所に行く。そして出なくなった声を思い切り出そうとする。
「杉山・・・。ありがとう・・・。後、運動会の時・・・」
「大野、気にすんなよ、俺だって行くのが遅くて悪かったよ。それに、お前も練習、頑張ってたじゃねえか」
「あ・・・、ああ・・・」
(杉山君、大野君、やっと仲直り出来たんだね・・・)
かよ子は安堵した。
「大野君、杉山君、仲直り出来て良かったブー・・・!」
「おいおい、ブー太郎。、泣くなよお!」
ブー太郎は感動の涙を思わず流してしまった。そして杉山はかよ子の所へ行く。
「山田、お前の独唱、とても良かったぜ!」
「あ、ありがとう、杉山君・・・!!」
かよ子は好きなん男子から言われてとても嬉しかった。一方の笹山も皆から労わりの言葉を貰っていた。
「笹山さん、お疲れ様~」
「ありがとう!」
藤木は思い切って立ち上がった。今自分も労わりの言葉を送れば自分にもきっとありがとうと言ってくれて、あの日の事の事はもう許してくれるだろうと予想した。
「あの、笹山さん・・・」
「え?」
「笹山さんの、声、凄く・・・、よ、よ・・・」
藤木は照れていた為、言葉が詰まる。その時、永沢が口を挟む。
「藤木君、君、笹山の独唱に惚れて歌い出しが遅れただろ」
「え、いや、そ、そんな事ないさ!」
「いいや、僕見てたんだ。君が口を開くのが遅かったし、少し遅れてたよ」
「い、いや、それは、歌詞が出てこなかったんだよ!」
「言い訳かい!?」
「ええ、藤木歌い遅れたの?2番の所」
「そうだ、俺、隣で聴いてたけど藤木遅れてたぜ」
「ホント、何やってんのかしら?」
藤木はかよ子や笹山とは対照的に非難で注目の的となってしまった。
「さ、笹山さん・・・」
笹山は藤木に振り向きもしなかった。藤木は皆から非難され、笹山からはそっぽを向かれ、最悪のクリスマス・イブとなってしまった。
三河口が通う高校ではこの日が終業式となっていた。
「三河口君」
奏子が声を掛ける。
「今日、一緒に商店街を歩かない?クリスマス・イブだから三河口君と一緒に過ごしたくて」
「え?ああ、いいよ」
さりは仕事の後、店のクリスマスパーティーに参加する予定であった。その後、何らかの爆音が聞こえた。
「な、何!?」
さりや会社の皆は何だと思い、窓を見た。街が荒らされている。
「あれは・・・!!」
さりは思わず商店街へと出た。相手は集団でいた。
「何してるのよ!?」
「あ、黙れ!」
男は枯葉を投げた。手裏剣のように去りに襲い掛かる。
(はっ!)
さりは護符の能力を行使した。火炎放射をして枯葉を焼き尽くした。
「それは護符だな!見つけたぞ!護符の所有者!」
さりははっと気づいた。この男は日本赤軍だと。
後書き
次回は・・・
「狙われた護符の所持者」
さりは赤軍と遭遇し、異世界の敵までもを召喚され、窮地に立たされる。そんな時、さりの護符の能力がかよ子や三河口、杉山達清水に住む皆に降りかかる・・・!!
105 狙われた護符の所持者
前書き
《前回》
クリスマス合唱コンクールの日が訪れ、かよ子は練習の成果を出す為にコンクールに臨む。「大きな古時計」の1番の自身の独唱は上手く歌えたが、3番の独唱を担当する大野の声が出なくなるというハプニングが起きてしまう。そんな危機を救ったのが大野と喧嘩していた筈の杉山だった。杉山が代わりに独唱を行う事で、運動会以来二人は仲直りをする事ができた。しかし、名古屋では護符の所有者で、かよ子の家の隣のおばさんの娘・さりが赤軍の襲撃を受けてしまう!!
すみ子の学校ではクラス別学芸会を行っており、白雪姫の劇を成功に収めていた。
「山口君の王子様役、かっこよかったわよ・・・」
すみ子は山口を褒めた。
「ああ、でもすみ子も裏方として頑張ってたぜ!」
「うん、ありがとう・・・」
なお、この時、川村もまた裏方を担っており、ヤス太郎は小人の役を演じていた。
(もうクリスマス・イブか・・・)
すみ子はそう思う。クリスマスは皆楽しみにしている期間だ。何か楽しい事ないかなと思った。
さりは街を荒らす男が日本赤軍の一味だと勘付いた。
「お前だな、護符の所有者は!さあ、その護符を寄こせ!」
「渡すわけないでしょ!」
「なら、力づくで奪うまでだ。バーシム、サラーハ、出てこい!」
(バーシム、サラーハ・・・!?)
さりはサラーハはともかく、バーシムの名前は聞いた事がある。清水に帰省していた時、大雨の中、出会ったあの男に会った事がある。まさかそのバーシムが来ているというのか。
「この名古屋の地にいたとはな。天よ、我に仕事を与えよ!」
バーシムが唱える。バーシムとサラーハが急接近してくる。さりは再び護符の能力を行使した。その時、靴が変形した。そして踵部分の砲から炎が噴射し、さりは空中へと待った。
「空へ逃げやがったか」
「追えるぜ、あんな奴」
サラーハは倒壊していない建物をやすやすと登った。さりはサラーハが太った体つきにも拘らず機敏に動けるとは恐ろしく思った。その時、サラーハは唱える。
「空に浮かぶ建物を!」
さりは一瞬、何を言っているのやらと思ったが、急速に周りがコンクリートか煉瓦のような物に包まれた。これでは動けない。
「これで動けん、今だ、バーシム!」
「天よ、我に仕事を与えよ!」
さりを囲んだ空中に浮かぶ建築物は赤軍の男の元へ吸い寄せられていく。
(これで終わるわけにはいかないわ!)
さりは護符の能力を行使する。サラーハが造り出した建築物は粉々に砕け散った。
「何!?」
「護符の能力を舐めるんじゃないわよ!」
さりは護符の能力をもう一度行使する。ガトリングが出てきた。ガトリングを赤軍の男に向かって発砲する。だが撥ね返されてしまった。
「え!?」
「ハハハ!俺にこんな攻撃が通用するか!」
さりは靴のジェットでもう一度飛行した。しかし、いくら清水にいる女の子の杖と同等の強さがある護符とはいえ3対1で勝ち目はあるのか。
(どうか、私に援軍を・・・!!)
さりはそう願った。その時、護符が光り出した。
三河口は正午頃に居候の家に帰宅した後、叔母に断って出かけた。
(あの奏子ちゃんって子、健ちゃんと上手く行ってるみたいね・・・)
奈美子はそう思った。三河口は待ち合わせ場所で奏子と出会った。
「ごめん、待ったかい?」
「ううん、大丈夫よ、てか、時間まで10分もあるし・・・」
「はは、俺は遅刻嫌いでね・・・」
「じゃあ、一緒に色々と行ってみよう」
「うん」
二人は歩く。清水は温暖な地域の為、雪が降る事は滅多にない。
「いつも思うけど、ここは冬でも雪は降らないね」
「うん、三河口君がいた横浜は振ってたの?」
「あまり降らないよ。でも1年に1度、2月頃に降るけど、その時は一気に積もるよ。札幌に住んでる従姉は雪の中で大変だろうな」
「そうね、あ、富士山が雪被ってるわ」
清水からも見える富士の山は上部に雪を被っていた。
「凄いな、近くの御殿場とか裾野とか、山梨の身延や富士五湖は雪降り始めてるからな」
やがて二人は商店街の喫茶店に入る。
「それにしても名古屋の従姉のお姉さん、大丈夫なのかしら?」
「分からん、何の情報も来ていない。神戸や札幌の従姉にも事情は行き届いてるんだが・・・」
かよ子は成功感を持って帰宅した。
「只今!」
「お帰り、かよ子。合唱コンクール、お疲れ様」
「うん、私、自分で言うのも何だけど、おっちょこちょいしないで歌えたよ!それから杉山君が大野君と仲直り出来たんだ!」
「あら、あの二人が?良かったわね」
「独唱の所で大野君の声が出なくなって杉山君が代わりに歌ったんだよ。それがきっかけで仲直りしたんだよ」
「そうなの、良かったわね」
その時、ふと不思議な音が聞こえた。
《助けて・・・》
「え?」
「あら?」
「お母さん、今、『助けて』って聞こえなかった」
「ええ、聞こえたわ」
また、声が聞こえる。
《名古屋にいる羽柴さりです。赤軍と異世界の敵が攻めてきたわ。今すぐ来て欲しいの!》
「かよ子、これは隣の叔母さんの娘のさりちゃんの声よ!」
「う、うん、でも今すぐ名古屋に行け・・・?」
その時、ブラックホールのような穴が出現した。
「かよ子、これできっとさりちゃんの所に行けると思うわ。急ぎましょう!」
「うん!」
かよ子とその母は黒い穴に入って行った。
ブー太郎は漫画を読んでいる時、不思議な声が聞こえる。
《助けて、名古屋にいる杯の所有者の羽柴さりです。誰か私を支援して!》
ブー太郎は気のせいかと思った。だが・・・。
「な、何だブー!?」
すぐそこに黒い穴があった。
(そういえば護符の所有者って前に会った気がするブー・・・!!)
ブー太郎は勇気を振り絞って穴に飛び込んだ。
杉山や、その姉の所にも不思議な声が聞こえた。大野やまる子とその姉、冬田、そして隣町のすみ子達の所にも。それぞれが穴に入る。
「姉ちゃんも行くのか?」
「ええ、もちろんよ」
杉山の姉も護符の所持者の援護に向かった。
石松は三穂津姫と話す。
「なぬ、尾張にいる護符の所有者が襲われていると!?」
「はい、石松も援護していただけますでしょうか?」
「三穂津姫の命なら勿論承る!」
石松は飛び去った。
「健闘を祈っております、皆様・・・。私も支援しなければ・・・」
三穂津姫は別の方向へと飛び立った。
濃藤の家に一人の女性が現れた。
「濃藤徳崇さんですね?私は三穂津姫。御穂神社の神です。今、貴方のご友人の三河口健さんの従姉であり、異世界の護符の所有者である羽柴さりさんが危険な状態に陥っています。貴方も妹さんと同じく援護をお願い致します」
「俺に?でも、俺には何ができるんだ?」
「こちらをお渡しします」
三穂津姫が渡したのは剣だった。
「これは運命の剣です。これで相手を倒す事ができます。場合によっては味方に対してこれを振るう事でその人物を良い結果へと招く事も出来ます」
「ありがとう」
その時、声が聞こえた。
《助けて、名古屋にいる杯の所有者の羽柴さりです。誰か私を支援して!》
「これはミカワの従姉の声か!」
そして黒い穴が現れた。
「そこに入れば名古屋へひとっとびです」
「ああ、行ってくる!」
濃藤は靴を用意し、穴に入った。
北勢田の所にも三穂津姫が現れた。
「北勢田竜汰さんですね?私は三穂津姫。御穂神社の神です。今、貴方のご友人の三河口健さんの従姉が大変な目に遭っております。援護をお願い致します」
「ミカワの従姉が!?でもその従姉って確か・・・」
「はい、名古屋におります。そして貴方用の道具が丁度出来ましたのでこちらをどうぞ」
三穂津姫が北勢田に渡したのは剣のような物だった。
「それは電脳の刃です。トーマス・エジソンが発明した電球やグラハム・ベルが発明した電話機と同じく電気の能力があります。これによって相手に電撃を浴びせたり、場合によっては貴方が想像したものを機械化して実現させる事もできます。これを持って異世界の護符の所持者の援護に行ってきなさい」
「ああ、今すぐ名古屋に行くには新幹線が・・・」
北勢田が躊躇っているうちに声が聞こえた。
《助けて、名古屋にいる杯の所有者の羽柴さりです。誰か私を支援して!》
「今、声が!」
「それは三河口健さんの従姉・羽柴さりさんの助けを求める心の声です。護符の能力を行使したのですね」
そして北勢田の近くに黒い穴ができた。
「その穴に入ればその護符の所有者の所に行く事ができます」
「分かった、行ってくる!」
「お気を付けて」
北勢田は支度を急ぎ、黒い穴へと入って行った。
長山の所にも三穂津姫が現れる。
「長山治さん」
「貴女は、三穂津姫!」
「大変です、護符の所有者が危険な目に遭っております。急いで援護をお願い致します」
「う、うん!」
「それから貴方用の道具を」
三穂津姫が出したのは眼鏡のような道具だった。
「これは神通力の眼鏡です。普通の眼鏡と同じように目が見えるようになるのはもちろんですが、遠くの場所を見たり聞いたり、危険予知などができます。また、相手や自分の過去や未来、考えている事を見通したり、高速移動したりできます」
「ありがとう」
その時、声が聞こえた。
《助けて・・・。護符の所有者・羽柴さりです。今、赤軍に襲われてるの!!助けて!!》
そして黒い穴が出現する。
「護符の能力による穴ですね。ここを通って護符の所有者を援護するのです!」
「うん、分かった!」
長山は神通力の眼鏡を持って穴へ飛び込んだ。
三河口と奏子は喫茶店でコーヒーや紅茶を飲んだ後、街を歩いていた。奏子は好きな男子と楽しいひと時を過ごせて嬉しかった。その時・・・。
《助けて・・・。護符の所有者・羽柴さりです。今、赤軍に襲われてるの!!助けて!!》
不思議な声が聞こえた。
「奏子ちゃん、従姉の声が聞こえた気がするんだが・・・」
「うん、私も」
その時、目の前にブラックホールのような穴があった。
「きっとさりちゃんが助けを呼んでんだ。急がないと!」
「三河口君、私も行くわ!」
二人は黒い穴に飛び込んだ。
かよ子とその母は黒い穴に入った後、長い闇の中を抜け、白い穴を見つけた。かよ子は眩しくて目を閉じる。そして・・・。
「こ、ここは・・・」
かよ子達は護符の所有者がいる名古屋にいた。
後書き
次回は・・・
「クリスマス・イブの乱」
護符の所有者のいる名古屋に来たかよ子達。かよ子や三河口、そして彼女らと関わりを持った人々もさりの援護に訪れる。名古屋を舞台に護符の争奪戦が激化していく・・・!!
106 クリスマス・イブの乱
前書き
《前回》
かよ子の隣の家に住むおばさんの三女・さりが赤軍と召喚してきた異世界の人間に襲撃される。さりはかよ子や三河口など、清水に住む人達に護符を利用して助けを求め、かよ子達は名古屋へと瞬間移動する!!
かよ子達は名古屋の地にいた。
「ここは名古屋ね」
「しゅ、瞬間移動したの!?」
かよ子は驚きでいっぱいだった。
「そうね、さりちゃんの護符の能力ね」
その時、すぐそばに隣のおばさんがいた。
「あら、まきちゃんにかよちゃん」
「お、おばさん!?」
「私も娘の声が聞こえて黒い穴を通って来たんよ。これも護符の能力ね」
そして次々と人が現る。まる子も、冬田も、ブー太郎も、山口も、川村も、ヤス太郎も、濃藤兄妹も、長山も、そして大野や杉山姉弟、三河口や奏子もいた。
「皆も、来てたの!?」
「ああ、さりちゃんの声が聞こえて、黒い穴が現れたんだ。その穴に入ればさりちゃんに会えるかもしれないって思ったんだよ」
三河口が説明した。その時だった。
「皆!?来てくれたのね!!」
護符の所有者が近づいた。
「さりちゃん、大丈夫ですか!?」
三河口は従姉を心配した。
「うん・・・。でも、赤軍も異世界の敵もいるわ!」
「何だって!?」
「ほう、援軍を呼んだか」
皆は声の方向を向いた。
「誰だ、お前は!?」
山口が聞く。
「俺か?日本赤軍の岡本公三だ!」
「岡本公三!?確か、二年前のテルアビブ空港で無差別に民間人を殺したクズの分際か!」
三河口はそう罵倒した。
「口を慎め、無礼な奴め!」
岡本はどこから出したのか木の葉の嵐を巻き起こし、皆を攻撃しようとする。
「来る・・・!」
すみ子は銃を発砲した。見えない膜で皆を岡本の攻撃から守った。
「ナイスだ、すみ子!」
川村が褒める。
「なら、バーシム、行け!」
「バーシム!?あの大雨の日に出やがった奴か!」
杉山は振り向いた。後ろにバーシムがいる。
「天よ、我に仕事を与えよ!」
破壊された建物の瓦礫が皆を襲う。
(皆を安全な場所に!)
さりはそう願うと、護符が皆を別の場所へ移動させた。
「やってくれるな、テルアビブの時のように暴れる気か!」
三河口は怒りに燃える。
「暴れる?黙れ、クソガキが!」
「行くぜ、組織『次郎長』!」
「うん!」
「了解だブー!」
組織「次郎長」の四人は力の石を取り出した。
「また、あの石か!」
バーシムは清水の七夕豪雨の時にその石を確認している。
「お前ら、二度も同じ手は使わんぞ!」
「気を付けて、バーシムの他にもサラーハって男を取れてきているわよ」
「サラーハ!?」
かよ子は見回す。そして別の男を見つけた。きっとその男がサラーハであると気づいた。
「お前ら檻の中に入れてやる!」
サラーハは両手を上げると、急にかよ子達は檻に囲まれた。
「どうしよう・・・!?」
「俺がやる!」
濃藤は三穂津姫から貰った運命の剣を振りかざす。檻は壊れた。
「濃藤、その刀は?」
「ああ、三穂津姫から貰ったんだ。自分や相手の運命を決める剣なんだ」
「そうか」
「お兄ちゃん、凄い・・・!!」
かよ子は感心した。
「分かれて戦ったほうがいいな」
「ほう、まあいい。杖も護符もあるならこっちは一石二鳥だぜ!」
「さ、させないよ・・・!!」
かよ子はおっちょこちょいをしないようにと気を付けた。
「さりちゃん、かよちゃん、奏子ちゃん、俺、長山君、冬田さんで岡本を相手にしよう!『次郎長』の皆とまるちゃんのお姉さん、杉山君のお姉さんでバーシムを、『義元』の皆と濃藤、北勢田でサラーハを相手だ!」
「ええ!?私、大野君と戦いたあい!」
冬田が異議を唱えた。
「こんな時に我儘言ってんじゃねえ!俺と来い!!」
「嫌だあ!!」
冬田は泣き喚いた。
「健ちゃん、行かせてあげたら?」
叔母が進言する。
「仕方ありませんね、勝手にしろ!ただし、大野君達の足引っ張んなよ!」
「はあい!」
冬田は泣き止むと急に嬉しくなった。
「かよちゃん、羽根を出して飛んでくれ!」
「うん!」
かよ子は羽根を出して飛んだ。
「長山君は何か道具を貰ったのかい?」
「うん、この神通力の眼鏡を貰ったんだ!」
「よし、それを使ってくれ!」
「うん!」
長山は岡本の攻撃を見通した。そして植物を出して使う攻撃、だが、かよ子の杖やさりの護符の攻撃が通用せず、怖気させる事も読み取った。
「お兄さん、相手は何か攻撃が通用しないみたい」
「何!?」
「俺の攻撃なめんなよ」
岡本が攻撃してくる。尖った木の枝を出して攻撃してくる。
「かよ子、あの枝に杖を向けるのよ」
「うん!」
かよ子は本の内容を思い出した。
【木の枝、針、棘などに杖を向けると針を発射する能力を得られる】
かよ子は木の枝に杖を向ける。そして三河口が前に出て武装の能力で無効化する。奏子も羽衣で防ぐ。そしてかよ子は杖を木の枝に向ける。
「行け、針!」
かよ子は針を岡本に向けた。だが、撥ね返された。
「ハハハ、そんな物が聞くか!」
「ど、どうして・・・!?」
「お前もまさか、武装の能力を・・・!!」
「はあ、お前、文化祭で西川と義昭に利用されたのに気づいてないのか?」
「何!?」
三河口は思い出した。確か札幌に住むありが東京にいる杯の所持者の援護に行った時、そこで戦った赤軍の人間は自分の能力を複製した機械を使ってありとその旦那を苦しめたとか。
(あの文化祭で西川達はどさくさに紛れて俺の能力を複製したのか!!)
三河口はこうなったらと思い、玉砕覚悟で岡本に飛び込んだ。
「てめえ!!」
一方、バーシムと対峙している杉山達は石を駆使しようとする。冬田は飛んできた。
「あ、貴方はあ!」
冬田は忘れもしない。大雨の時に自分の羽根を奪おうとした男だった。
「あの時はよくもお!」
冬田は怒りに燃えた。大野は草の石で草を操り、杉山は雷の石で放電し、ブー太郎は水の石で水を噴射、まる子は炎の石で火炎放射した。
「私も加勢するわ!」
「私も!」
まる子の姉・さくらさきこ、杉山の姉・杉山もと子も石松から貰った道具を使用する。
「邪魔な者は消す!天よ、我に仕事を与えよ!」
バーシムは唱えた。その時、さきこの持つ緑色の宝石が光った。
「何!?」
バーシムの攻撃が聞かなかった。
「このエメラルドみたいな宝石で私達を守ったのよ!」
そして、赤い宝石が光る。
「このルビーが私達に勝つ可能性を高めてくれるのよ!」
「ナイスだ!さくらのお姉さん!」
「私も行くわ!」
杉山の姉・杉山もと子も石松から貰った玉を出す。
「はあああ!!」
玉が橙色に光った。橙色の光線が発射し、バーシムに襲いかかる。
「兄貴を殺させるかよ!」
手榴弾のような物が飛んできてもと子の攻撃がその手榴弾と相打ちに終わる。ヘリコプターが上空に見えた。
「弟よ、来ていたか!」
「ちい、あいつもいたのか!」
大雨の日に現れた赤軍の一人、奥平純三も来ていた。
一方、組織「義元」と濃藤、北勢田はサラーハと対峙していた。
「ふっ飛ばしてやるぜ!」
川村はバズーカを出すと共に発砲し、サラーハを吹き飛ばす。
「させるかよ!」
サラーハは一瞬でコンクリートの壁を造り出した。
「どうやらあいつの能力は建物を咄嗟に造り出す能力のようだな」
「なら、俺がやってやる!」
北勢田は三穂津姫から貰った電脳の刃を振りかざす。その時、大砲が発射した。その大砲は発砲する。だが、普通の大砲と異なり、砲弾ではなく光線を発射した。サラーハの造り出したコンクリートが一瞬で溶けた。
「何だ、こいつ!?」
「北勢田、俺も行くぜ!」
北勢田と濃藤はサラーハの所へ飛び込んだ。
「お前は裁きを受けろ!」
濃藤は運命の剣を振り、北勢田は電脳の刃を振りかざした。
「うわあああ!!」
サラーハは濃藤と北勢田の攻撃で苦しむ。
「俺は、もう一度、死ぬのか・・・」
サラーハは光となって消滅した。
「サラーハ!」
別の相手と戦っているバーシムは戦友の消滅に悲嘆した。
三河口は決死の覚悟で岡本に飛び込む。
「お兄ちゃん、無茶しないで!」
かよ子が叫んだ。
「俺はお前と同じ能力を使えるんだぜ。舐めてんだろ」
岡本は威圧感を三河口に突き付けた。
「なら、俺も!!」
三河口もまた岡本に威圧感を与える。だが、両者とも一歩も引かない。
「同じ能力同志だと正常に聞かないのかしら・・・?」
かよ子の母は気になった。
「おら、俺の能力はこれだけじゃねえぞ!マリア様よ!」
岡本は誰かを呼ぶように叫んだ。そこには修道女のような女性が現れた。
「なんだ、あれは!?聖母マリア!?」
後書き
次回は・・・
「邪悪なるマリア」
バーシムや岡本、奥平との戦闘を続けるかよ子達。だがそこに、岡本が召喚した聖母マリアがかよ子達をを襲う。どんな攻撃も防御も通用しないマリアに誰も全く対処できず・・・。
107 邪悪なるマリア
前書き
《前回》
さりの護符の能力で護符の争奪戦の現場となっていた名古屋へと瞬間移動したかよ子達。そこには赤軍メンバー・岡本公三に大雨の時に襲って来た男・バーシム、そして異世界から召喚されたサラーハがさりの護符を狙っていた。冬田達はバーシムと、すみ子達はサラーハと、そしてかよ子達は岡本と交戦する。御穂津姫から授けられた道具を手にした濃藤と北勢田の活躍でサラーハは撃破するも、バーシムに赤軍の構成員・奥平純三が加勢し、更にはかよ子達が相手している岡本は聖母マリアの霊を出現させた!!
バーシムは奥平の加勢によって守られた。しかし、サラーハを失ってしまった。
「よくも・・・。天よ、我に仕事を与えよ!!」
バーシムは炎の玉のような物を出し、組織「義元」、濃藤、北勢田に襲い掛かる。
「させないわよ!」
さきこの琥珀色の宝石が光り出す。炎の玉はまる子の姉に吸い寄せられた。
「お姉ちゃん!」
「馬鹿め、自滅する気か?」
だが、その火の玉はさきこに近づいた所でまたバーシムと奥平を襲う。
「げっ、俺達の方へ来た!」
バーシムはイチかバチかの策に出た。
「天よ、我に仕事を与えよ!」
バーシムは己と奥平の身を守った。
「ちっ、しぶてえ奴だな!」
杉山はそう思うと、また雷の石を使う。
「貴様ら、これでお陀仏にしてやる!」
奥平が杉山達に手榴弾を投げつけた。更に、咄嗟に爆竹に点火して投げた。
「あ、あぶねえ!」
「皆・・・!!」
すみ子が銃を放つ。皆を防ぐような囲いを出して奥平の攻撃を防いだ。だが、付近の建物が炎上する。
「く、オイラが消すブー!」
ブー太郎は水の石を使って放水し、周りの炎を消火する。
「オイラも手伝うでやんす!」
安太郎も協力し、パチンコで水玉を飛ばし、消火した。
「そうだわ!」
さきこは黄色の宝石の力を利用する。バーシムが皆に倒される所だけは予知できた。そして紫色の宝石の力を使って心を落ち着かせた。もと子もまた、玉を使用する。
「あのバーシムってのはきっと倒せるわ!」
「自然の力よ!」
まる子の姉、そして杉山の姉が動く。杉山の姉は炎と水の力を利用してバーシムに、さきこは琥珀の力で杉山の姉の玉の能力を一部引き寄せ、強化させた。そして、まる子の姉のルビーの宝石が光る。
「て、天よ、我に仕事を・・・」
「言わせねえよ!」
濃藤の剣がバーシムの呪文を封じた。今度は奥平が爆竹を投げる。北勢田が刃を振るって機械の鳥を出し、機械の鳥は爆竹を加えてしまう。爆竹はその場で消滅した。
「俺達もやるぞ!」
大野が草の石を、杉山が雷の石を、まる子が炎の石を使う。さきこのサファイアの宝石の力でバーシムを倒すチャンスが高められる。
「うわああ・・・!!」
バーシムは過剰ともいうべき様々な攻撃を受け、光となった。
「大野君、凄おい!」
冬田は褒めた。
(お前、何もしてねえだろ・・・)
大野は突っ込んだ。
「あ、兄貴・・・!!」
「あとはお前だ、大人しく降参しろ!」
その時、すみ子が別の胸騒ぎを覚えた。北勢田や杉山も。かよ子達の方向を見た。
「な、何あれ・・・!?」
そこには強大な修道女のような人物がいた。
かよ子はその場でシスターのような女性が現れたのを見た。
「な、何、この人!?」
かよ子は驚いて羽根から落ちそうになった。
「呼んだのは貴方様ですね」
女性は喋った。
「ええ、マリア様。私に力をこの邪悪な者どもに裁きを与えてくださいませ!」
「よろしいでしょう」
「お前ら、乙女マリア様の裁きを喰らうのだ!!」
「乙女マリア様・・・!?」
かよ子には分からなかった。すみ子が銃で皆を守ろうとする。
「そんな手が通用するかよ!」
すみ子の守りはマリアには通用しなかった。
(この人はキリスト教徒なの!?それとも・・・)
かよ子には知る由もなかった。岡本は高校時代、熊本にあるキリスト教の高校を出ているのである。聖母マリアを召喚する能力を会得したのだった。マリアが皆に襲い掛かる。だが、三河口、さり、山口や川村、大野、杉山、そしてかよ子も武装の能力が作用され、攻撃を防いだ。
「てめえ、マリア様をこんな悪事に利用するとは、全てのキリスト教徒を敵に回してんのと同じだぞ!」
三河口が非難する。
「そんな事言ったって俺の操るマリア様は俺を正義と見てくれているのだ!」
「やるな、岡本!」
「ほらほら、俺の方に構ってていいのかな?」
皆は反対側の奥平が次の手榴弾を投げている所が見えた。だが・・・。
「させるか!」
誰かが手榴弾を粉々にした。
「い、石松!来てくれたの!?」
かよ子は石松の参上に驚いた。
「ああ、三穂津姫の命令でな」
「マリア様、もう一度裁きを!」
岡本がマリアに命じる。
「畏まりました」
マリアの攻撃が来る。そして岡本が植物を急に生やした蔓が伸び、かよ子達を封じようとする。
(このままじゃ、やられる!)
さりが護符の能力を行使する。蔓が一瞬で凍り付いた。
「私も手伝います!」
奏子も羽衣を振り回して風を起こし、蔓を薙ぎ払って消滅させた。
「く・・・、だが、これで無効化させてやる!純三、お前も使え!」
「ああ!!」
岡本は機械の能力で威圧の能力を使う。奥平もすみ子やさりなどが動けなくなる。だが、かよ子や三河口などは防御に特化した武装の能力が発動されて何とかなったがあのマリアを打ち破るにはどうすればいいのか、策が見つからない。石松も簡単に行っては返り討ちにされると見てすぐには動けなかった。奏子はエレーヌの羽衣を使う。羽衣はマリアを巻き付けたが、すぐに外されてしまった。その時・・・。
「エク・カムイ!」
別の声の叫び声がした。別の人間が来て、マリアを襲った。
「な、何ですか!?」
「あれは・・・!?」
そして、急にマリアが苦しみだす。
「あああ・・・!!」
マリアが消えた。
「さり、健ちゃん、皆、大丈夫!?」
「そ、その声は・・・!!」
かよ子は応援が来たのかと思うと、少し安堵した。三河口やさりも、さりの母、かよ子の母も聞き覚えがある。
「な、何だ、お前らは!!」
そこには女性が三人、男性が一人いた。
「遅くなってごめんね」
「貴方が出したそのマリアを出す能力はこの私の妹が封印させたわ」
「あの人達は・・・!!」
かよ子はどこかで見た事があるようなないような気がした。
「妹や従弟、母さん達をよくも苦しめてくれたわね!」
女性三人の正体は、さりの二人の姉、かつ三河口の従姉でもある祝津ゆり、煮雪ありとその夫、煮雪悠一、そしてゆりの隣の家に住む女子高生、鷺森光江だった。
後書き
次回は・・・
「羽柴家の三姉妹」
戦いの現場にさりの姉・ゆりとあり、ありの夫に神戸の女子高生も現れ、形勢はかよ子達の方に傾いた。しかし、羽柴家の三姉妹が集結すると共に、また別の人間が・・・!?
108 羽柴家の三姉妹
前書き
《前回》
かよ子の家の隣人のおばさんの娘・羽柴さりがいる名古屋で赤軍に異世界の敵と戦うかよ子達。かよ子は杉山達と共にバーシムを何とか撃破するが、赤軍の一人、岡本公三が強大かつ無敵ともいえる聖母マリアの精霊を出現させる。さらに加勢に来た奥平純三に二人が持っている異能の能力を引き出す機械を使用し、攻撃も防御もできなくなり、かよ子達は窮地に陥る。その時、マリアが急に消滅し、その場にはおばさんの娘であり、さりの姉である煮雪ありと祝津ゆり、そしてありの夫の悠一、ゆりの隣の家に住む女子高生・鷺森光江が援軍として現れた!!
かよ子達の助けに現れたのはさりの姉のありとゆり、そしてありの夫とゆりの隣の家にす住む女子高生だった。
「ゆり姉、あり姉、光江ちゃん!」
「さり達、助けに来たわよ!」
「我も参った!」
「お、お主はアイヌの首領・シャクシャインではないか!」
石松はシャクシャインの登場に驚いた。
「石松、知り合いなの?」
「ああ、『向こうの世』で共に戦った事がある!」
「お前、ぶっ飛ばしてやるぞ!」
悠一が動き出す。悠一の持つテクンカネが発動した。
「そんなもんでどうやって俺達を・・・」
岡本は嘲笑った。が、その時、ガシャという音がした。
「何!?」
岡本は機械を取り出す。見聞の能力、武装の能力、そして威圧の能力全てを使用できる機械がいつの間にか壊れていた。
「そういえば晴生が逮捕された時も・・・」
「そんな卑怯な手は私には通じないよ」
別の男の声がした。
「あれは・・・。イマヌエルさん・・・!」
すみ子は覚えていた。自分達組織「義元」に道具を授けた主を。イマヌエルは右手を出す。
「今、赤軍達は金縛りにした。気絶させろ!」
「はい!」
イマヌエルの命によって三河口は岡本に威圧感を与え、濃藤が剣を振る。岡本は気絶した。奥平の方も北勢田が刃で電気ショックを与えて気絶させた。
「この、やろ・・・!!」
奥平は気絶の際、呟いた。
「私はあまりいられない。後始末はできるか?」
「う、うん、できるよ!」
かよ子は答えた。
「分かった。私はあまり的に姿を見せたくないのでね、では、失礼するよ」
イマヌエルは消えた。
「よし、後は愛知県警に連絡すればいいわ。私、行ってくる」
さりは公衆電話を探しに行った。
「ゆり、あり、よく来てくれたんね。ありがとう」
奈美子は娘に感謝した。
「ええ、母さんや山田さん達も来てたのね」
「は、はい・・・。こんにちは」
かよ子はゆりやありにも挨拶した。
「貴女がかよちゃんね、久しぶりね」
「さりから聞いているわ。大雨の時に杖の所有者として頑張っていたそうね。それに、母さんから文化祭での活躍も聞いているわ」
「はい、でも、まだおっちょこちょいで・・・」
「私も健ちゃんから話聞いてるわよ」
「ど、どうも・・・」
かよ子は照れた。
「あ、そうそう、この人は私の旦那よ」
ありは自分の夫を紹介する。
「悠一と申します。宜しく」
「久しぶりね、悠一君」
「光江ちゃん、君も異世界の道具を持っているのか?」
三河口は光江に聞く。
「ええ、神戸の三つの神社の力が入った御守を持っとるの」
「三河口君、その子と知り合いなの?」
奏子が質問した。
「ああ、中学生の頃、神戸のゆりちゃんの家に行った時に会った事があるよ」
「鷺森光江言います」
光江は奏子達にも挨拶した。
「光江ちゃんも俺達と同じ高校二年生だよ」
「マジか」
かよ子から見て光江は大人しそうな女子に見えた。
「ああ、そうそう、この子達は俺やかよちゃんの友達です。皆様々な能力を持っているんですよ」
三河口が光江や悠一、従姉達に紹介した。
「そうなん、お疲れ様ね」
「でも、戦いは激しくなっているはずです・・・」
皆は名古屋の街の荒れ様を見た。その時、さりが戻って来た。
「警察に連絡すんだわよ。お姉ちゃん達、悠一さん、光江ちゃん、来てくれてありがとう・・・」
「いいのよ。妹の為なら。ねえ、お姉ちゃん?」
ありは長女に確認する。
「そうね、でも、三人がこうして集まったの久しぶりね・・・」
「皆家出ちゃったし、健ちゃんが居候してるくらいよね」
「はい、でも、三人は仲良くていいですね。俺と兄貴とではえらい違いですよ」
「そんな事気にしなくていいの」
「そうですよね・・・」
「兄弟姉妹っていいな・・・。私って一人っ子だから羨ましいな」
奏子が呟いた。
「まあね」
「人によって主観は違うけどね」
「僕は妹は可愛いし、兄弟っていいと思うよ」
長山は意見を言った。
「私も、お兄ちゃんがいてくれてありがたいな・・・」
「おい、すみ子・・・」
すみ子も意見を言う。
「俺も姉ちゃんが来てくれて助かったぜ。でも、その玉、いつ手にしたんだ?」
「ああ、これね。アンタが大野君と喧嘩してたから石松が不安になって私に応援を求めてね、その時に貰ったのよ」
「そ、そうだったのか?」
「もう大丈夫なの?」
「ああ、もう大野とは仲直りしたぜ」
「そう、大野君、ごめんね、弟が迷惑かけて」
「いえ・・・、俺も・・・、すみませんでした・・・。ゴホ、ゴホ・・・」
大野は出ない声を思い切りだす。
「あら?」
「大野君は今日の合唱コンクールで声が出なくなっちゃったんです!」
冬田が説明した。
「そうだったの・・・」
「へえ、お前らの学校は合唱コンクールだったのか。こっちは劇やったぜ。白雪姫のな。山口は王子の役ですみ子が白雪姫をやったんだ」
「そうなんだ。こっちの合唱コンクールはこいつも独唱部分頑張ってたんだぜ、な、山田!」
杉山がかよ子の方を向く。かよ子は顔が赤くなった。
「う、うん、ありがとう・・・」
「でも、アタシのお姉ちゃんはホントケチでオカチメンコだよお~」
「何言ってんのよ!私だってアンタみたいな世界一バカな妹を持ってる事が最大の恥よ!」
さくら姉妹は喧嘩を始める。
「おい、やめないか、二人共」
三河口は喧嘩を止めようとする。
「でも、ブー太郎は妹のトミ子と仲いいよな」
「あ、ああ、そうだブー」
「お前、妹いたんでやんすか」
「ああ、そうだブー」
「そうそう、妹も『ブー』っていうんだよお~」
やがて、愛知県警が来る。県警の警部が事情を聞いた。
「いやあ、クリスマス・イブの大変な中、お疲れ様でした。まさか赤軍が愛知県にも来るとはね」
「いえ、いえ・・・」
「ところで、他の敵はいねえのかな?」
杉山は気になった。
「確かに、支援する奴が来てもおかしくねえな」
山口もそう思った。だが、その時・・・。
「う・・・!」
「あ・・・!」
三河口やすみ子、北勢田や濃藤が胸騒ぎを覚えた。
「お、お兄ちゃん、すみ子ちゃん達、どうしたの?」
かよ子が気になった。
「別の敵が来ている・・・」
「ええ!?」
皆は驚いた。かよ子は慌てて杖を手から落とすといういつものおっちょこちょいをやってしまった。
「私の仲間の逮捕なんて許さないわよ」
どこからか女性の声が聞こえた。
「だ、誰!?」
皆は周りを見回した。別のヘリコプターが飛んできている。一人の女性が降りてきた。その女性は剣を持っている。
「私はリーダーの重信房子よ」
後書き
次回は・・・
「日本赤軍の長」
かよ子達の前に赤軍のリーダー、重信房子が姿を現した。房子はかよ子達にある物を見せるが、それは広島で奪われたという異世界のとある最上位の道具の一つであり・・・!!
109 日本赤軍の長
前書き
《前回》
名古屋での護符争奪戦、岡本公三が召喚した聖母マリアの威圧に対応できずに苦戦するかよ子達。だが、その場にさりの二人の姉・ありとゆり、そしてありの夫の悠一と神戸の女子高生・鷺森光江が加勢し、形勢逆転。悠一が召喚したイマヌエルによって能力を行使する機械を破壊し、岡本と奥平を戦闘不能にさせる事に成功した。だが、その直後、一台のヘリコプターが飛来し、そこに現れたのは赤軍のリーダー・重信房子だった!!
藤木茂にとってこのクリスマスは最悪だった。笹山に嫌われてしまい、更には合唱コンクールではその笹山の独唱に聞き惚れて歌い遅れて皆から責められるなど散々なクリスマスである。
(もう嫌だ、笹山さんから嫌われて、皆から卑怯だって言われて・・・)
そして藤木は意味もなく外に出た。
かよ子達の前に現れたのは日本赤軍の長・重信房子だった。
「貴女が!?」
かよ子はその赤軍のリーダーの女性を見て怒りが込み上がった。自分達から元の日常を奪った女が憎い。
「名古屋で護符を貰うつもりだったけど、杖の持ち主も来てくれたのね。丁度いいわ。その杖と護符を私にくれるかしら?」
「言われて渡す程馬鹿じゃないわ!」
さりが反論する。かよ子も続く。
「わ、私だって、いくらおっちょこちょいでもこれだけは渡せないよ!」
「まあ、言ったって渡す訳ないでしょうね。戦って貰うわよ」
皆は房子に牙を向く。房子はある物を出す。
「これを使うわ」
「そ、それは、もしかして!!」
長山は思い出すように房子の持つ剣を見る。
「長山君、知ってるの!?」
「これは恐らく三穂津姫が言ってた広島で奪われた異世界の剣だ!」
「異世界の剣!あれが・・・!!」
三河口も怪しむ。
(って事は広島で鯉沢輝愛が夏に感じ取った火事による胸騒ぎってのはこの剣が奪われた事だったのか・・・!!)
「行くわよ」
「お主に使えるのか!?その剣は選ばれし者にしか使えんはずだ!!」
石松も抗議した。
「そう思ったでしょ?でもこの剣を『あの世界』の人に渡したら私達に使えるようにしてくれたのよ」
「『あの世界』・・・まさか!」
「間違いない!」
かよ子は石松とシャクシャインとの会話で気付いた。
「『あの世界』って・・・。戦争を正義とする世界の事だね!」
「そうよ。もうお喋りはおしまいにさせてもらうわ!」
房子は剣を振りかざす。皆は今まで感じた事のない強風がかよ子達を襲う。
「す、すげえ強い風だ!嵐とか台風のレベルじゃねえぞ!」
「こんな能力があの剣にあったのか!?」
「くそお!全員能力発動だ!」
三河口やかよ子、奏子達防御の武装の能力を持つ者達が能力行使する。房子の暴風を防いだ。さりの護符が光り出す。そしてかよ子は杖を房子の剣に向ける。さりは急に飛行し、さらに新幹線かそれ以上の速度を出して房子に飛び込んだ。
「自爆特攻かしら?」
房子は剣をさりに向ける。だが、さりの方が早かった。さりが体当たりをかました。房子はヘリコプターの中に押し戻され、向かいのヘリコプターの壁にぶつかった。
「ああ!!」
そしてさりは高速でかよ子達の元へ戻った。そしてかよ子はその強風に杖を向け、風を操る能力を得た。
「これでやっつける!」
かよ子は竜巻を巻き起こした。だが、房子が乗っているヘリコプターは落ちなかった。
「あれ・・・!?」
そして向かい風がかよ子達を襲う。
「くそ!防御だ!」
かよ子や奏子、三河口達は向かい風を抑えた。
「きっと、あの人が山田が作り出した竜巻を利用し返したんだ!こうなったら・・・!!」
長山は三穂津姫から貰った神通力の眼鏡の能力を行使した。房子の行動を先読みする。赤軍の長は岡本と奥平を回収して撤退するつもりだ。
「房子は逃げるつもりだ!」
「くそ、なら!!」
警部が怒鳴り出す。
「重信房子、逃げるとかいう卑怯な行為は諦めてさっさと諦めろ!お前は多勢に無勢だ!それからお前の手で東京の東アジア反日武装戦線の連中や和光晴生を逃がしたのも聞いている!」
(あの人が逃がしたのね・・・!!)
ありは覚えていた。自分やその夫、そして東京の杯の所有者と共に逮捕に追いやった組織や赤軍の男を。そしてその組織が逃げ出したのはあの女の作戦によるものだったと。
「エク・カムイ!」
ありはもう一度カムイを呼び起こした。だが、房子はヘリコプターを無理に近くへ操縦させ、気絶した奥平に剣を振るう。
「何する気なの・・・?」
かよ子は房子の行為が分からなかった。仲間まで殺害するのか、と。しかし、予想に反して奥平は起き上がった。
「純三、撤退するわよ」
「そ、総長、はい・・・」
そして奥平をヘリコプターに乗せる。
「逃がすか!」
濃藤は運命の剣を振るった。だが、それ以上の強さの剣を持つ房子には敵わなかった。
「ヘリを壊すか!」
北勢田も電脳の剣を使う。飛行機のような物体を作り出した。その飛行機が房子の乗るヘリコプターを襲う。
「そんな小細工も通用しないわ」
房子は剣を振るう。北勢田が造った飛行機は爆破され、炎上する。だが、ありが呼び起こしたカムイが来る。だが、房子はそれも簡単に薙ぎ払ってしまった。房子は岡本に剣を振るい、呼び起こした。
「起きたわね、公三。撤退するわよ」
「くそ、起こしちまったか!」
「こうなったら、護符と杖で行くかない!」
長山はそう思う。
「僕の神通力も使うよ」
長山はヘリコプターを止めた。
「この野郎!」
奥平はまた爆弾を投げる。
(そうだ、この杖はあの爆弾にも聞くはず・・・!!)
かよ子は爆弾で説明書の文言を思い出した。
【火薬など爆発物に向ければ火薬を作り出し、操る能力を得られる】
かよ子は奥平が投げた爆弾に杖を向ける。かよ子の杖から丸い爆弾が出た。
「行けえ!」
「かよちゃん、私も手伝うわ!」
「あ、ありがとう・・・!!」
かよ子はヘリコプターに向かって投げる。さりの護符も光る。何とかよ子が発射した爆弾が分身した。
「させるかよ!」
岡本が木の根のような物を出してかよ子の爆撃を防いだ。
「くそ、取り逃がしちまったか・・・」
シャクシャインも石松も去り行くヘリコプターを見る。
「でも、何とか杖も護符も守れた事だけでもよしとすべきよ」
「うん・・・」
だが、かよ子は見る。名古屋の街が赤軍によって荒廃してしまった。地元の人にとっては最悪のクリスマス・イブとなってしまっただろう。
「すみません、赤軍を取り逃がしてしまって・・・」
さりは警察達に謝った。
「いえ、いえ、今度こそあいつらを抑えないとですね。それにしても凄い戦いでしたね。やはり異世界というのは実在していたんですか」
警部は感心した。
「はい。戦争を正義とする世界と平和を正義とする世界の二つがあり、戦争を正義とする世界の人間は赤軍と、私達は平和を正義とする世界の人間と組んでいるのです」
「そうだったのか。これからも気を付けないとな。それでは」
県警達は去った。
「皆、私の為に来てくれてありがとう・・・」
さりは皆に礼をした。
「ううん、お姉ちゃんも無事でよかった・・・」
かよ子は涙が出ていた。
「うん、皆を戻してあげるね。あ、母さん」
「ん?」
「明後日、帰るよ」
「ああ、おいで」
そして皆はさりの護符の能力で元居た地へ帰還するのであった。
後書き
次回は・・・
「さらなる激動へ」
清水に戻ったかよ子達はクリスマス・イブを迎える。その時、何の用もなく外に出ていた藤木は一人の女性と出会う。藤木はその女性に自身の悩みを話し、ある決意を固めるが・・・。
110 さらなる激動へ
前書き
《前回》
赤軍の長・重信房子と相対したかよ子達。房子は広島で奪ったという異世界の剣を使用してかよ子達を圧倒する。だが、かよ子達も怯まずに反撃を行い、激しい戦いとなるが、あと一歩追い詰めた所で房子は奥平・岡本諸共撤退してしまう。戦いを終えたかよ子達はさりの護符の能力でそれぞれが元いた所に戻るのだった!!
かよ子は清水に帰った。
「かよ子、お疲れ様。大変なクリスマス・イブだったわね」
「うん、でも・・・」
かよ子は思う。この日、始めて日本赤軍のリーダーに会った。とても恐ろしそうな女だった。
(絶対に渡せない・・・。この杖は・・・!!)
かよ子はまた誓う。そしてもうすぐ始まると予感する。大きな大きな戦いが。
三河口と奏子は元の商店街へ戻った。
「奏子ちゃん、ごめんよ・・・。折角二人で楽しめた所だったのに赤軍の奴の邪魔が入って・・・」
「ううん、そんな事どうでもいいわ。気にしないで。また、何かあったらいつでも私を頼りにして・・・」
「あ、うん・・・。じゃあね」
「バイバイ・・・」
二人は別れた。
房子は全員に撤退命令を出した。
「く、欲張ったツケかしら?」
「総長、申し訳ございません」
「こうなったら政府も利用するべきね。何の為の日本赤軍なのか・・・」
「勿論、この腐り果てた日本を治す為ですよね」
奥平が答える。
「そうね、大日本帝国の復活は近づいて来ていると思えばいいわ」
かよ子の家では父が予約していたというクリスマスケーキを買って帰って来た。
「只今」
「あ、お帰り、お父さん・・・」
「どうしたんだ?元気ないな」
「実はね、隣の羽柴さんとこのさりちゃんが赤軍に襲われて皆で助けに行ったのよ」
「そうだったのか!?大変だったな・・・」
「うん・・・」
「名古屋の街は凄い大変だったわ。赤軍にあちこち破壊されて・・・」
「うん、高校の文化祭の時よりもずっと酷かったよ・・・。それから、赤軍のリーダーにも会ったんだ」
「赤軍のリーダーだって!?」
かよ子の父もこのニュースには驚かない訳には行かなかった。二人はそれ以上は何も言えなかった。これからの戦いに緊張感が出てくる山田家のクリスマス・イブの晩餐はあまり楽しいとは言えなかった。
ただ何かをする用がないというのに、藤木茂は外に出ていた。夕焼けの中、富士山が見える場所に来ていた。
(ああ、いいな、あの富士山は堂々と立ってて・・・。俺なんか、なにもできない卑怯者なんだ・・・。笹山さんには嫌われるし、皆から卑怯、卑怯って言われるし・・・。僕なんかここに居ても意味ないよな・・・)
藤木にとっては絶望のクリスマス・イブである。そんな時、ある人物から声を掛けられた。
「おやおや、そこの坊や、どうしたのかしら?」
藤木は振り返った。そこには美しい女性がいた。
「実は、クリスマスが楽しくなくて・・・。いつものように皆から卑怯、卑怯って言われて、好きな女の子からは嫌われるし、もう自分も、ここにいるのも嫌になって・・・。うう・・・」
藤木は喋るうちに段々泣き始めた。
「酷い子達ね。よってたかって皆でいじめて・・・。可哀想に・・・。そうだ、この私が坊やをこんな嫌な所から解放させてあげましょう」
「で、できるんですか?」
「ええ、坊やの願いを叶えてあげるわ。まずは私が楽しい所に連れて行ってあげるわね。もう、ここには戻る事はないわ。いいかしら?」
藤木は一瞬葛藤した。このまま戻らなくて親が心配しないか。友達の永沢とかが心配しないか・・・。
「あ、でも・・・」
「迷っているのね。でも、皆も坊やの事をよく思っていないんじゃないかしら?卑怯者だって。それに好きな女子からも疎まれて。私は絶対に坊やをそんな可哀想な事はさせない。坊やに相応しい嫁も用意するわ」
「え・・・」
藤木はその女性に言われて思う。このままいてもどんなケースでも卑怯と罵られるし、好きだった女子・笹山かず子がそんな卑怯な自分にまた振り向いてくれるはずもない。藤木の迷いは消えた。
「はい、お願いします。でも、行く前にちょっと待っててください」
「ええ、いいわよ。坊やの準備ができたらいつでも連れて行くわ」
「はい!」
藤木はまず自宅に戻る。そして手紙を書き始める。そして封筒にしまい、家を出る。
(父さん、母さん、ごめんよ・・・。でも、ここにいても僕の卑怯は治らないんだ・・・)
そして藤木は自分が書いた手紙を持って走り出す。そこは「かつて好きだった」女子の家の前だった。
(笹山さん、もう僕にとって君は遠い過去の人なんだ。もう、君を忘れるように努力するよ・・・)
藤木はその手紙を笹山家のポストに入れた。そしてあの女性が待っている所へ戻った。
奏子は帰宅途中、走って通り過ぎる少年を見つけた。
(あれは確か、藤木君・・・?)
呼び止める暇もなく、その少年は走り去ってしまった。
「それじゃ、行きましょう」
「うん」
藤木は女性に連れられる。連れて行かれた場所は清水港だった。その港の海で大きい穴が現れた。二人はその穴に飛び込んで消えた。
レバノンの赤軍本部に戻って来た構成員達が集う。
「結局、どれも纏めて貰おうという計画は失敗しましたね。どうしましょう」
「そもそも、それらを守る為に別の異世界の道具が沢山送られているし、そいつらの援護が厄介ね。援護する者も消さないといけないけど、何らかの異能の能力も迷惑ね・・・。義昭、機械の更なる量産をお願い」
「了解」
その時、異世界からの声が聞こえる。
「重信房子、聞こえるか?」
「は、はい・・・」
房子は答える。自分がレーニン様と呼ぶ、男の声だった。
「今。我が世界の者が静岡の清水から一人の男児を連行し、我が世界の元に預けてあると聞いた」
「どんな者なのですか?嘗て修に連れてくるように頼んだ長山治のような賢くて頼りになる男子ですか?」
「いいや、気が小さき少年だ。唇は常に紫色のな」
「その者が役に立つのですか?抵抗などは?」
「ああ、何もなかった」
「これはいいかもしれませんね」
「例えばどんな事か?取引の道具などに使用するのか?」
「ええ」
「貴様らの好きにするが良い。ただ、杖も、護符も、杯も、何れも奪い損ねおって。いい加減しくじりなしで取る事ができんのか?」
「申し訳ございません。練り直します」
「全く・・・」
レーニンは消えた。丸岡は聞く。
「総長、異世界の人間が一人の少年を連れて来たのですか?それも向こうの世界に預けてあると?」
「そうよ」
「その者に何か能力は?」
「特になかったみたいね。向こうの世界でも戦いが激しくなっているのだからスパイにも使えるわ」
房子は勝利の可能性がこちら側に傾いたかのような確信を得た。
(さて、日本政府・・・。年賀状を送りつけるわよ・・・)
かよ子はクリスマスプレゼントに父親から動く子猫のロボットを貰った。本物のペットを飼った気分で楽しんだが・・・。
(こんなふうに元の日常がこう続けばいいのに・・・。絶対に杖は渡さない。そして負けない・・・)
新たな、かつ、激しく、そして、生死を争う戦いに巻き込まれると予測するかよ子は絶対に元の日常を取り戻す事を渇望し続ける。
そして、激動の時へと進んでいく。
後書き
次回は・・・
「本拠地にて」
クリスマスの日が訪れる。戦争を正義とする世界、赤軍の本部、そして平和を正義とする世界の本部。それぞれの人々は各々の計画を成功させる為に色々と策を練り出して・・・。
111 本拠地にて
前書き
《前回》
護符争奪戦の舞台となった名古屋から戻って来たかよ子達は落ち着きのないクリスマス・イブの晩餐を迎える。その頃、笹山に嫌われ、合唱コンクールでのミスを皆から非難され絶望を感じていた藤木は謎の女性に出会う。女性は「楽しい所に連れて行く」「嫁を用意する」という条件で藤木を見知らぬ地へと連れて行く。そして赤軍は護符、杖、杯を何としても手に入れる為に次の手に取り掛かるのであった!!
今回はクリスマス・イブの後の話かつ、日本各地で異世界の道具を貰い、今後かよちゃん達と関わるであろう人達の外伝となります。
静岡県・清水市内にある藤木夫妻は共働きであった。二人共、家で待っている息子の為に早めに帰って皆で楽しくクリスマス・イブを楽しもうとしていた。だが、二人がそれぞれの職場から帰ってくると・・・。
「あれ、茂がいないわ」
「一体どこで何をしているんだ?」
夫妻は息子の友達の家へ電話を掛けた。だが、どのクラスメイトの家にも息子が遊びに行ったという情報はなく、いつまでも息子が帰ってくる気配もない為、不安になった二人は警察へ捜索願を提出する事になった。
かよ子は自身の失態が隣の家のおばさんの娘が襲われる事に繋がった事で罪悪感を感じていた。そんな中、かよ子は好きな男子の顔が頭に浮かんだ。その男子は親友と運動会の時、一時喧嘩したが、合唱コンクールを機にやっと仲直りできた。なのに、元の日常を修復する事はできるのか。
(杉山君・・・。私、どうすればいいの・・・?)
とある世界。ここは抗争など争い、いわば「戦争」を正義とする世界である。レーニンは漢服を来た女性を呼んでいた。
「妲己よ。あんな冴えるように見えぬ男子を連れて本当に役に立つのかね?」
「ご安心くださいませ。あの坊やは拒否反応を一切していませんわ。この地で楽しくさせています。それにあの坊やは挨拶代わりに『卑怯』と呼ばれているそうで、意外と役に立つかもしれませんよ」
「なら、よかろう・・・」
「他に何か?」
「いや、使えるならそれでよいのだ。帰ってよろしい」
「はい」
妲己は自分が住んでいる所へと帰る。
(あの坊やも不自由なくさせておかないと・・・。それから、あの坊やは確か恋に溺れる者・・・。でも、嘗ての恋人から愛想を尽かされた・・・。さて、嫁はどのような者がお似合いなのかしら・・・)
そして妲己は考える。
(なるべく美しい可憐な者が良かろう・・・。この世の人間か・・・。それともまだ生きている娘をさらうか・・・)
そして平和などを正義とする世界とどう戦うか、考えなければならなかった。連れて来た少年をどう利用すべきか・・・。
赤軍の本部。山田義昭は例の機械を量産する。
「あの機械が壊れる原因としては・・・」
義昭は考える。和光及び彼が東アジア反日武装戦線に渡して杯の所有者を狙おうとした時は、平和の世界から来たという人間の能力であっけなく破壊されてしまった。さらに、名古屋にて護符の所有者から護符を奪い取りに奥平や岡本を派遣させた時も同様に破壊された。
(奴等の能力で壊れるのなら、どのような対策が必要なのか・・・)
義昭にはその答えが出なかった。
「義昭」
「ふ、房子総長!!」
義昭は房子がいきなり現れた事に驚いた。
「機械の破壊の理由が分かっても対策がでなければ仕方ないわよね」
「はい、そうなんです・・・」
「なら、大量に量産しておけば、何とかなるかもしれないわね。それに予備も幾らか必要になるけど・・・」
「はい、資材は大丈夫でしょうか?」
「安心なさい。向こうの世界とちょっと交渉してくるわ」
房子は立ち去った。
(あの世界にいい案があるというのだろうか・・・?」
義昭は房子がどうするのか自分には知る由もなかった。
房子は異世界の人間と話す。
「レーニン様」
「重信房子か。何か用か?」
「はい、私の部下にこの機械を作らせているのですが、この機械を強化して頂きたいのです」
「何を言っている。また注文するのか。貴様ら剣を手にしてから他の道具の奪取には失敗を重ねているではないか。一体何度私を失望させてくれた?何でも頼みを聞いてこちらも『はい、分かりました』で済む訳にはいかん」
「申し訳ございません。それは我々の実力不足と相手の妨害によるもので・・・」
「そんな言い訳はもう聞き飽きた」
「はい、ですが、東アジア反日武装戦線という組織と同盟を結ぶことができましたので、我々に勝利が傾くのです。それにこの機械は敵を察知でき、攻撃も防御も強化され、更には気合だけで相手を戦闘不能に追い込むことができる機械なのです。この機械をレーニン様の世界でも実用できます」
「それを使えば、杖も、杯も、護符も、手にする事が可能なのだな?」
「はい。ただ、一つ問題は平和を正義とする世界のある人物の能力によって簡単に壊されるという事です。それを解決する事ができればいいのですが・・・」
「平和を正義とする世界か・・・」
レーニンは考えた。平和を司る世界。それは生前、平和の為に尽くした二人が治める世界。その二人の能力は恐ろしい。あの二人さえ封じる事ができればとレーニンは考えていた。
「分かった。考えてやろう。だが、今度こそ残りの三つの道具を手にするのだ」
「はい」
房子は機械をレーニンに渡した。
平和を司る世界の本部。フローレンスはその場でただ黙然としていた。
「フローレンス、悩み事かね?」
イマヌエルが現れた。
「はい、戦争を司る世界との戦いも、日本赤軍のテロも、片付けなければなりません事が色々ありますのです。その為に前世の方に人々を派遣させ、平和を守リます為に道具を持たせましたのですが・・・」
「確かに、相手に我らが世界の最上位の強さを持つ四つの道具が狙われる現状となっているね。そのうち、広島にある剣が奪われたし、杖や杯は何とか守り続けられている。だが、護符が名古屋の地に渡った時、相手はその護符を探しまくった結果、護符の在処まで知られてしまった。このままではこの世界自体も危ないし、折角各地に道具を授けた意味が薄れている」
「はい、こうなりましたら、危険な懸けにでますしかありませんね・・・。彼等を私達の世界に来て頂きまして、是非とも戦いに参加してもらいませんと・・・。そして、もう一つの課題としまして、剣の奪還も図りませんといけませんね」
「そうだな、赤軍と戦争の世界との干渉を断ち切る為にも、彼等の勢力の拡大を防ぐ為にもあの剣がこっちに戻ってくればいいのだが・・・」
フローレンスとイマヌエルにも解決必須かつ難関な課題にぶつかっている現実を顧みるのであった。
後書き
次回は・・・
「気の強き宮城女」
クリスマスの朝、かよ子は藤木が昨夜から行方が分からなくなっていると聞かされる。そして宮城県仙台市。そこには異世界の人間から不思議なマフラーを貰った気の強い女子高生がいた。そしてそのマフラーには九つの不思議な能力を宿していた・・・。
112 気の強き宮城女
前書き
《前回》
名古屋での護符の奪取に失敗した赤軍は次の手を考える。そして戦争主義の世界では赤軍へ半ば失望の念を持ちながらも杖、護符、杯を奪取を催促する。そして平和を正義とする世界では様々な問題に頭を悩ませていた!!
クリスマスの朝、かよ子は母からある質問をされる。
「かよ子、藤木茂君ってかよ子のクラスメイトの男子でしょ?」
「え?う、うん・・・」
「その藤木君の行方不明なんですって」
「え!?」
かよ子は驚いた。確か藤木は野良犬から逃げる時、自分を見捨てて笹山だけ連れて逃げた件および合唱コンクールにて笹山の独唱部分に聴き惚れて歌い出しが遅れた件でクラス全員から非難を受けていた。それを気にしてここからいなくなったのか。単なる家出ではないとかよ子は思った。
「そういえば、藤木君は、合唱コンクールの後、歌い出しが遅れて皆から責められてたよ。あと笹山さんから嫌われた時からずっと元気がなかったんだ・・・」
「もしかしたらそれを気にしていなくなったのかもしれないわね・・・」
宮城県仙台市。東北地方最大の都市である。そこに一人の男勝りな女子高生がいた。名は青葉政美。彼女もまた四月の地震もどきの謎の現象以来、元の日常が失われた感があった。
(どうしたのかな・・・)
そして五月に入ったある時、彼女の住む自宅近辺の市街地で爆発が起きた。その時、彼女は下校途中だった。
「な、何!?」
政美は現場へと急ぐ。そこには一人の外国人風の男がいた。宮城県警達が止めようとするが、男は地面を爆破させて警察官達を吹き飛ばした。
「あいつ・・・!!」
政美は怒りに燃えてその場へ突っ込んだ。
「やい、あんた!ここで何暴れてんのさ!」
「は!?女は黙ってろ!お前もここで死に至らしめてくれる!」
男は政美に銃を構えた。銃から出てきたのは弾ではない。光線だった。政美は何とか避けた。
(なんだよ、あの光線銃!?SF漫画かよ!!)
政美はそんな時、男が破壊したと思われれる建物の瓦礫に躓いて転んでしまった。近くの道路が念力のように浮かび、政美の頭上を襲う。避けられない。このままでは圧殺される。
(し、死んでたまるか・・・!!)
だが、道路の岩は政美に当たらず、その場で粉々になった。
「え・・・?」
政美は訳が分からなったが、兎に角、相手に近づく。
「この町で暴れんな!!」
「うるさいね!」
男は光線銃で攻撃する。だが、彼女にはなぜか撥ね返される。政美は怒りの拳をその男のどてっぱらに突き刺した。もう一発、今度は顔を殴る。男は無様に退散した。
「なんだよ、あれ・・・」
政美はあの男は只者ではないと思った。だが、警察に逮捕されたわけではないので、また暴れる可能性がある。とはいえ、これ以上相手にしてもキリがないと思い、彼女もその場を去った。と、その時・・・。
「何という事か・・・。我が街をこのような荒れ地にするとは・・・!!」
別の男がその場で悲観そうに見ていた。右目に刀の坪を眼帯代わりに付けている。
「あんたは?」
政美はその武士のような人間に話かけた。
「我が名は政宗。この地を城下町として栄えさせた」
(じゃあ、あの、伊達政宗って事・・・?)
政美はそう推測した。
「お主、たった今、あの男と戦ったであろう」
「うん、でも、あいつはまたやって来るかもしれないよ」
「それにお主は何と武装の能力が備わっているのか」
「ブソーのチカラ?何それ?」
「要は凡人とは異なる能力をお主は宿しているという事だ。お主、名は何と申す?」
「青葉政美・・・」
「青葉政美、か・・・。私が築城した城や私と似せたような名だ・・・。そうだ、青葉政美、あの男は残虐なる者だ。奴に留めをさせるよう、この道具を授けよう。今、私がいる世界の上の者から預かっている物だ。どうやらこれはお主に相応しそうだ」
政宗が政美に手渡した物はマフラーのような物だった。
「これは首に巻く物である。名は確か『まふらー』とか言うたな。これを巻けば九つの能力を行使できる」
「九つの能力?」
「そうだ、一つ目は過去や未来を見通したり、物を浮かせたり、瞬間移動したりする事ができる超能力、二つ目は空中を飛行する能力、三つ目は相手や物を探知する能力、四つ目は全身を兵器とする能力、五つ目は堅い防御と怪力の能力、六つ目は熱に強くなり、炎を噴き出す能力、七つ目は動物、無機物関係なく変身できる能力、八つ目は魚のように水中でも活動できる能力、そして九つ目は目にも止まらぬ速さで移動できる加速能力だ」
「へえ、ありがとう。是非使ってみるよ」
「だが、私利私欲にはあまり使ってはならぬぞ。本当に命を賭けた戦いの為に使用するのだ。何かあったら私も戦おう」
「ありがとう」
「では、私は失礼する。また会おうぞ、新たなる戦士・・・」
政宗はそのまま去った。
「九つの能力か・・・。まるで『サイボーグ009』そのものだね・・・」
政美はそのマフラーをそのまま持って帰った。
そして、翌日、授業中に爆音が聞こえた。そして、政美の通う高校が爆発した。体育の授業をしている生徒達が次々と避難する。政美のクラスの皆は窓から校庭を見た。地面が爆破されている。
(あれは・・・!!)
その場には昨日の男がいた。政美は鞄の中からマフラーを取り出し、首に巻いた。
(飛行能力もあるって政宗は行ってたね・・・)
政美は窓から飛び出した。そして飛行した。
「やい、あんた!」
「お前は昨日の女か」
「もう、暴れさせないよ!」
「ほう、このヴャチェスラフ様に盾突く気か!」
「悪いけど、昨日の私とは違うよ!」
政美は両腕をショットガンのようにに銃撃した。ヴャチェスラフに命中した。
「うおおお!!」
「これだけで倒れないなら・・・!」
政美は超能力を行使した。瞬間移動する。
「どこだ、どこへ行った・・・!?」
そして加速能力を使用しながら左手から長いナイフを出し、迅速にヴャチェスラフの首を斬った。
「あ、あああ・・・!!」
ヴャチェスラフは光となって消滅した。
「私は、奴を倒したの・・・?」
政美は気になった。
「やったな。青葉政美」
「え?」
そこに政宗がいた。
「奴は戦争を正義とする世界の人間だ。完全に葬り去られたのだ」
「ありがとう」
「だが、これですべてが解決したわけではない。これから激しい戦いが待っているのだ。どうか我々の世界の人間と共闘して欲しい」
「分かったよ。いつでも戦ってその戦争を正義としてる下衆なやつらを叩きのめしてやるよ」
「そうか、では、また会おう・・・」
政宗はどこかへと消えて行った。
「戦いね・・・」
そして彼女もまたすべてが赤軍による仕業と分かり、赤軍や戦争を正義とする世界の人間を憎むようになった。そして時は過ぎ、クリスマスの時にもまた仙台の地で暴れていた異世界の人間をそのマフラーの能力を駆使して葬り去ったのである。
後書き
次回は・・・
「神奈川県警と群馬県警」
神奈川県警に所属する警官と群馬県警に所属する警官はお互いライバル同士だった。その正義感の強い警官二人にもフローレンスとイマヌエルが現れ、とある道具を授かっており・・・。
113 神奈川県警と群馬県警
前書き
《前回》
クリスマスの朝、かよ子は藤木の行方が分からなくなっていると聞かされる。話は変わり、宮城県仙台市には男勝りな女子が政宗という異世界の人間から九つの能力を持つマフラーを貰っていた・・・。
かよ子は藤木の失踪が気になった。
「お母さん、藤木君がいなくなったのはもしかしてだけど、異世界の人間とか赤軍とかと関係あるのかな?」
「可能性はゼロじゃないわね。でも、そうと決まったわけじゃないし・・・」
「うん・・・」
(やっぱり藤木君、笹山さんに嫌われたショックなのかな・・・。もし私も杉山君に嫌われたら凄く落ち込むかな・・・)
かよ子は野良犬に襲われそうになった時、笹山を連れて逃げ、自分を見捨てた藤木に辛く当たりすぎたかなと振り返っていた。
笹山の家にも藤木の両親からの電話が来ていた。そして笹山は野良犬の事件以来、疎んじた藤木が今度は逆に心配になるのだった。
(あの時、やっぱり辛く当たりすぎたかしら・・・)
その時、母が入って来た。
「かず子、手紙が入って来たわよ」
「え?」
母から受け取った手紙は差出人が書かれておらず、単に「笹山かず子さん」と書かれているだけだった。
警察というのは国および市町村の治安を守るのが仕事ではあるが、異世界の人間の侵略、日本赤軍の大日本帝国復活計画が始まり以降、それが上手くいかなくなってしまった。その中で二人の警官が戦争を正義とする世界の人間および日本赤軍に闘志と悪意を剥き出しにする二人の警官がいた。一人は神奈川県警の椎名歌巌、もう一人は群馬県警の関根金雄だった。二人は出身地は異なっていたが警察学校時代に成績上のライバルかつ友人として警察として誇りを持って来た男である。椎名は神奈川県警、関根は群馬県警と異なる地に配属されたが二人の交流は今でも続いている。
椎名は警察としての能力だけでは敵を撃退できなかった事が悔しかった。だが、そのような敵が近づいた時、心臓に違和感を感じた事や実際子どもの頃、級友などと喧嘩した時、自分でも驚くほどの蹴りや殴りの威力が強かった事があった。そんなある時、椎名は非番の日、自宅付近で散歩していた所、ある人物から声を掛けられた。
「椎名歌男、君は確か神奈川県警の人間だったね」
「あ、ああ、そうだが、あんたは一体?」
「私はイマヌエル。平和を司る世界から来た者だよ。君は戦争を正義とする世界の人間が各地で暴れている事を知っているね」
「ああ、もちろんだよ。あいつらぜってえ許せねえよ」
「その闘志・・・、よし、これから恐ろしい戦いとなっていくに違いない。君にはこれを渡したいと思う。戦争を正義とする世界の人間と闘う為の道具だ」
イマヌエルが椎名に渡したのはボールのような物だった。
「それは水の攻撃を呼び起こす玉だ。どんな場所でも急に地面から潮が満ち出し、相手を水責めにする事ができる。その潮を利用して水の楯を作る事も可能だ。そして攻撃・防御を辞めたいときはそう思えば潮は干上がってくれる。ただし、私利私欲には使ってはならないよ」
椎名は考えた。この異変を収束させるにはいざという時に使用するしかないと。
「分かった。約束しよう。これで元の日常を取り戻すようにするよ」
「私も何かあったら協力しよう。では」
イマヌエルは消えた。
(あのイマヌエルという者・・・。どこかでまた会えそうな気がするのは気のせいなのか・・・)
一方、群馬県警に配属された関根も異世界の敵に遭遇した事があった。彼にはそのような敵が近づいて来た時には胸騒ぎを覚えていた。また、相手のあまりにも非現実的な攻撃にもなぜか自分には効かなかった。しかし、その敵を取り押さえる事はできなかった。そして非番の日・・・。
「関根金雄さんですね」
関根の前に一人の女性が現れた。
「ああ、そうだが・・・」
関根はこの者も異世界から来た者かと推測した。だが、自分が戦った敵とは異なる感触だ。こちらは安らぎを与えてくれるような感触だ。
「私はフローレンスと申します。平和を司ります世界から参りました。貴方は先日、戦争を正義とします世界の者と戦いましたね」
「ああ、間違いない」
「今、この日本は戦争を正義とします世界の人間の侵略および日本赤軍といいます過激派の標的とされつつあります」
「ああ、だが、戦争の世界の奴はともかく、どうして赤軍が関わってくるんだ?」
「それは、赤軍は、何れこの国に戦争を復活させようと感がていますからです」
「何だと!?」
「赤軍はその目的を達成します為に異世界と今の世界を繋げました。それで異世界の人間の干渉が激しくなっていますのです」
「そうか、それで訳の分からん事になっているのか!」
「はい、それに貴方にも彼らの野望を食い止めます為に協力をお願いしたいのです。どうぞこちらを・・・」
フローレンスが差し出したのは刀だった。
「貴方はこの前橋の出身ですね。これは『忠治の刀』といい、群馬県にあります赤城山および侠客・国定忠治の能力が込められました刀です。これからの戦いにきっと役に立ちますでしょう。但し、異世界の敵との戦いなどを除き、無闇に振るいますのはお控えください」
「分かった。絶対に約束する」
「では、またいつかどこかでお会いしましょう・・・」
フローレンスはそう行って飛び立ち、消えていった。
「国定忠治や赤城山の能力か、キザなボクちゃんにぴったりかもね・・・」
関根はそう思った。
そして、椎名と関根は電話をした。
「椎名、今日、異世界の人間からすげえ刀を貰ったぜ。なんせ、国定忠治や赤城山の能力が込められた刀だってよ」
『お前もか?』
「『お前もか』ってどういうこったよ?」
『実は俺も異世界の人間とか言う奴から水を操る玉を貰ったんだ』
「まじか、なんかあったら一緒に戦えたらいいな」
『おう、じゃあな』
お互い電話を切った。この二人の警官もやがて元の日常を取り戻す戦いに参加する事になる。
後書き
次回は・・・
「独りぼっちの女の子」
横浜に住む一人の女の子がいた。彼女は人間不信の友達を自ら作らず、孤立を続けており、家族や弟までもを拒絶する有様だった。信じられるのが昔仲良くなった女の子から貰った人形のみであるその少女にも日常は壊れて行く・・・。
114 独りぼっちの女の子
前書き
《前回》
かよ子は藤木の失踪の因果を考える。笹山はある手紙を受け取る。そして二人の警察官に異世界からの道具をフローレンスおよびイマヌエルから授かり、今後の戦力として期待されていた・・・。
杉山の家にも藤木が行方不明という電話が来ていた。
(藤木の奴が行方不明だなんて・・・)
杉山は急に家を出た。そして向かうはあのおっちょこちょいの女子の家だった。
「こんにちは」
「あら、杉山君、かよ子に用?」
「はい」
「今、呼ぶわね」
かよ子の母は娘を呼んだ。
「す、杉山君・・・!!どうしたの!?」
「お前の家にも藤木がいなくなったって電話が来たのか気になってな。俺にも来たんだよ」
「うん、でも赤軍や異世界の敵なのか、単なる家出かまだわからないよ」
「ああ、でも、もし敵達だったら、かなりやべえ事になるかもって思うんだ」
「うん、私も杖は渡さない、渡せないよ!」
「ああ、俺も石松から貰ったこの石でぶっ倒してやるよ」
「うん!」
「じゃあな、いい年をな・・・」
「うん、よいお年を・・・」
杉山は帰って行った。
神奈川県横浜市。そこに一人の女の子がいた。女の子は鳥橋のり子という。のり子は独りぼっちだった。弟が生まれても、その弟を邪魔のように思っていた。邪険に扱えば自分が親に怒られる。学校にも居場所がない。友達ができてもその子は他の友達と遊んでしまう。のり子はその友達の輪に入ろうとはせず、誘われても断った。そしてその友達を恨んで急に吹き飛ばして怪我をさせた事があった。その為どこでも孤立を続けていた。
(あのももこちゃんとは、もう会えないのかな・・・)
のり子は幼稚園児の頃、母の出産の関係で静岡県の清水市にあった小鳥屋を営む祖母の家に預けられた事がある。そしてその小鳥屋に遊びに来ていたももこという女の子と友達になれた。にもかかわらず父親によってまた横浜に戻された。あれ以来、祖母は暫くして小鳥屋を廃業して横浜に来た為、あれ以来一度も清水には行っていない。
(私は一人なんだ・・・。もう、友達なんて要らない・・・)
のり子はいつしか孤独を望んでいた。そして清水のももこから貰った人形だけが話し相手だった。
(私が信じられるのはこの子だけ・・・)
のり子はその人形に清水で友達になった女の子の名前を付けた。
そんなある時、弟が自分の人形を勝手に見ている様を見て怒った。
「私のももこに何してるの!」
のり子は弟に詰め寄った。そして平手打ちで弟を壁に頭をぶつけさせて泣かした。
「のり子、やりすぎよ!暴力ふるうなんて!」
のり子は母に叱られた。
「私、何も悪くないもん!私のももこにいたずらしようとしてたのが悪いんだもん!」
「手を出したのはのり子でしょ!謝りなさい!」
「嫌だ!のり子は悪くないもん!!」
のり子はその場から逃げ出した。
(ママも、パパも、あんな弟も、皆、嫌い・・・!!)
のり子はそう思い、泣いた。
小学三年生になったある時、下校中に地震のような衝撃が起きた。あのももこは無事なのか。家に着いた。ももこと名付けられた人形は無事だった。
(よかった・・・)
数日後、のり子の前に一人の男が現れた。外国人のような男性。
「アナタ、異能ノ能力ヲ持ッテイマスネ?」
「は、だ、誰!?」
「失礼シマシタ。私ハ、マシュー、ト申シマス。コノ前ノ、地震ノユレノヨウナ現象、覚エテイマスネ?」
「う、うん・・・」
「ソノセイデ今、コノ世界ノ日常ガ壊レヨウトシテイルノダ。ソレヲ食イ止メル為ニ君ニモ協力シテ頂キタイ」
「でも、私に何ができるの?」
「コノ人形ヲアゲマショウ。貴方ノ身ニ何カ危険ナ目ガアッタラソノ人形ハ助ケテクレマス。タダシ、コレハ絶対ニ無闇ニ使ッテハイケマセンヨ。異世界ノ敵ガ攻メテ来タ時ニ使ウノデス」
マシューがのり子に差し出した。その人形は金髪で目が青く、青いワンピースに白いエプロンドレスを着ていた。
「う、うん・・・」
のり子にはその人形は怪しく見えた。
「私、キャロライン、宜しくね」
人形が喋り出した。
「きゃあ!」
「ソノ人形ハ君ノ話シ相手ニナッテクレマスヨ。私ハ暫ク上ノ命令デコノ横浜ニ暫クタイザイシテイマス。何カアッタラ私モ助ケニイキマス。デハ」
マシューは去った。
「のり子ちゃん、今、この日本は危ない目に遭ってるの。一緒に戦ってくれる?」
「う、うん」
のり子は喋る人形に気味悪がった。でも、家に持ち帰った。
「私を呪ったりしない?」
「私、呪いの人形じゃないわよ。この国の各地でもマシューが今いる世界の人間達がここに来て色んな人達にこの国を守り、戦う為の道具を渡しているの。私もその道具の一つなのよ」
キャロラインは説明した。人形とは思えない表情豊かだ。
「うん・・・」
こうしてのり子はキャロラインとの生活が始まった。のり子はキャロラインにももこという人形を紹介した。昔、清水という所に住む女の子から貰ったという事ものり子はキャロラインに説明した。
「そうだ、のりちゃんがそのももこちゃんと仲良くなれるようにしてあげる」
キャロラインは指を人形に向けた。
「のりちゃん・・・」
「も、ももこが喋った!」
「これで賑やかになるわね」
「ありがとう、キャロライン・・・」
そしてのり子は二人に確認する。
「二人共、他の友達と遊んだりしない?」
「絶対に遊ばない!」
「ありがとう、私、二人が頼りだわ!」
のり子は孤独と感じる事はなかった。弟が入って来た。
「それ、新しい人形?」
「あんたには関係ないわ!」
「見せてよ」
その時、キャロラインが喋り出す。
「いいわよ」
「あ、キャロライン!」
のり子はキャロラインがいきなり約束を破るのかと思った。しかし・・・。
「これが私よ」
なんと弟はその場で気を失って寝てしまった。
「大丈夫よ。暫く起きないわ。三人で楽しみましょ」
「うん、ありがとう」
のり子はキャロラインが邪魔の排除をしてくれた事に感謝した。
数日後、ある時、近所で爆音が聞こえた。
「キャー!」
「ワー!」
のり子には何だか分からなかった。
「な、何?」
「のりちゃん、敵が来たわよ!私を連れて外を出て!」
「う、うん!」
のり子は家を出た。街の中を走る。そこに一人の外国人のような男性が無限にナイフを飛ばしている。多くの通行人が無差別に刺されていく。
「鳥橋のり子」
マシューが現れた。
「マシューさん、あれは何?」
「アレハ、ムハメド、トイウ男ダ。私ガイル世界ト敵対スル者。私ガ授ケタキャロライントイウ人形ヤ私ト共に戦ッテクレルカイ?」
「のりちゃん、私も力になる!だから、あの敵を倒そう!」
「キャロライン・・・。うん・・・!」
のり子は腹を決めた。その時、キャロラインが巨大化した。
「えい!」
キャロラインの手から光線が放たれる。光線はナイフを破壊し、男の腕に命中させた。
「うおおお!!誰だ!?」
男は方向を向いた。
「貴様コソ、ナニヲシテイル!?」
「黙れ、俺はこの国が腐っていると聞いてこの地に戦の素晴らしさを教えているのだ!」
「何て、めちゃくちゃな事を言ってるの!」
「めちゃくちゃじゃねえさ!お前、平和の世界の人間だな?」
マシューは気付かれた。
「ダカラ、何ダトイウ?」
「てめも、纏めて消してやる!このヨコハマとかいう人間ども、このムハメド様から戦の素晴らしさを教わりな!!」
「やめて!」
のり子も怒った。
「ええい!」
キャロラインが手をムハメドに向けた。念力を掛けたのか、ムハメドが動かなくなった。
「この、こざかしい真似を!」
ムハメドは体が動かない状態でナイフをキャロラインの方へ向けた。
「キャロライン!」
その時、キャロラインは元の人形の大きさに戻って、ナイフを回避した。
「のりちゃん、私と合体して!」
「合体!?できるの?」
「うん!」
キャロラインはのり子に飛び込んだ。そしてのり子は自分の体の中にキャロラインが入っていた。
「のりちゃん、これで列車のように速く走ったり、相手に光線を放ったりできるよ!それから、のりちゃんは、攻撃を行う能力を持ってるから私と合体するともっと強くなれるの!」
「そ、そうなの!?」
「二人共、説明シテイル暇ハナイ、アイツヲ倒スノダ!」
「俺は体が動かなくてもナイフは飛ばせるんだぜ!」
ナイフが来る。
「のりちゃん!」
「うん!」
のり子は走り出す。列車のような速さだった。それでナイフを避ける。
「私モ戦ウヨ!」
マシューは手から砲弾を発射した。ムハメドに当たる。
「コレデ奴ハ能力ヲ使エナイ!今ダ!」
「うん!」
のり子は自分の手から光線が出た。合体の影響でキャロラインの能力がのり子にも使える為である。光線はムハメドに命中、先程よりも更に強い威力で。
「あ、あああ!!てめえ、よくも・・・!!」
ムハメドは光となって消滅した。同時にキャロラインがのり子の体外へ出た。
「鳥橋のり子、君トソノ、キャロラインノこんびねーしょん、最高ダ。私ハ君ヲ選ンデヨカッタ」
「でも、どうして私を選んだの?」
「ソレハ、君ニハ攻撃ニ特化した武装ノ能力ヲ持ッテイルカラダヨ」
「ブソーのチカラ?」
「つまり、何もしなくても攻撃を与えるという事よ」
キャロラインが説明した。それでのり子は振り返る。弟に暴力を振ったら予想以上のダメージを与えたり、他の友達と遊ぶようになった友達を何もせずに吹き飛ばしたりしたのはその武装の能力が原因だと。
「うん・・・。私、キャロラインと頑張る」
「ソウダネ、コレカラコノ横浜ヲ守ッテイコウ。ソレデハ」
マシューは立ち去った。のり子は人形・キャロラインと共にこれからの戦いに身を投じて行く。
後書き
次回は・・・
「千葉に来たハーフ少女」
千葉県に住む一人の女子高生がいた。その女子はイギリス出身で小学生の頃に来日した女子。その女子も四月の時に地震のような現象の際、異世界の敵と遭遇していた・・・。
115 千葉に来たハーフ少女
前書き
《前回》
杉山も藤木が失踪したという情報を聞き、驚愕する。そして横浜では孤独な女の子が異世界の人間から喋り、戦いの武器として、さらに友達として接してくれる不思議な人形を託されたのだった!!
かよ子の父は新聞の夕刊を読んでいると、かよ子をその場に呼んだ。
「かよ子、新聞に藤木君の事が載ってるよ」
「ええ!?」
かよ子は父に新聞を見せて貰った。見出しは「清水市の小学三年生男子、行方不明」とあった。
「やっぱり藤木君だ・・・!!」
かよ子は新聞を読む。
【24日夕方頃、静岡県清水市内に住む小学三年生・藤木茂君(9)が行方不明になった。両親は共働きであり、父・守さんと母・まさえさんが仕事から帰った時、息子の姿がおらず、茂君クラスメイトの家に電話をしたものの、どこの家にも遊びに行ったという連絡はなかったという。静岡県警も最近起きている異世界から来たと名乗る者の襲撃および日本赤軍との関連性も併せて捜索をしている。】
(藤木君・・・。やっぱり、あの時、笹山さんから嫌われたのを気にしていなくなったんだ・・・)
かよ子は卑怯とはいえクラスメイトの一人がいなくなると少し寂しく感じるのであった。
千葉県に一人の女子がいた。彼女の名は花沢咲菜・マリエル。変わった名前に聞こえるが実は彼女は日本出身ではない。元はイギリスに住んでおり、10才の頃に父の仕事の関係で日本に来たのである。父は日本人だが、母はイギリス人である。その為、来日当初は日本語は片言ではあり、イギリスと日本のカルチャーショックを受けたりとしたものだが、今はそのような事はなく、日本の生活に慣れており、友達などからは「マリエル」と呼ばれている。高校生になってから好きな男子もできた。ところが高校二年生になったある時、地震のような現象が起きた。
(な、何、これ・・・!?)
マリエルは日本は地震が多いと聞く。大正時代に起きた関東大震災では多くの命が失われたとも聞いた事がある。だが、その時、「バン!」と爆発する音がした。
「わ、What!?」
マリエルは見回す。住宅の一角が爆破されている。
(あそこは・・・!!)
マリエルは向かった。あの方角には自分の好きな男子の家がある。爆破に巻き込まれた人々が数名いた。
「ひ、久水君・・・!!」
久水蓮次郎。マリエルが片思いしているクラスメイトの男子であった。彼は爆発に巻き込まれて崩れた塀から何とか避けたところだった。
「ま、マリエルじゃねえか・・・」
「大丈夫なの?」
「あ、ああ・・・。何とか避けられた」
その時、また別の爆発がした。マリエルと久水のいる付近の電柱が倒れる。マリエルは久水の手を引っ張って電柱から避けた。
「誰が暴れてんのよ!?」
マリエルは見渡す。と、その時、後ろから攻撃が来るような感触を覚えた。
「久水君、逃げて!」
「おい!」
マリエルは更に違う方向へと走った。また爆発が来た。もし今の予知夢のような感触がなかったら二人共あの爆発に巻き込まれてお陀仏であったろう。
「一体、何なの・・・?」
その時、謎の太った女性がその場に立った。
「去れ!悪しき者よ!」
女性はそう言うと、爆発が止んだ。更にまた別の声が聞こえる。
「チッ、平和の世界の人間か・・・!!」
男の声だった。
「そこの者、大丈夫であったか?」
「はい・・・、あ、貴女は、一体・・・?」
「そうだな。ブランデー・ナンとでも呼んでくれ。そこのお嬢、見聞の能力を持っておるな?」
「ケンブンノチカラ?何それ?」
「たった今、お前さんは己の所に攻撃が来ると予知して爆発から避けたであろう。それこそまさに見聞の能力なのだ」
「はあ・・・」
「今、この世界に歪みが生じている。私はその歪みを元に戻す為に活動しているのだ。お主にこれを授けよう」
ブランデー・ナンがマリエルに渡したものは本だった。
「これは本?」
「お前さんはイングランドの血が流れておるだろう。祖国は四つの国が合わさったものである事を知っておるな?」
「ああ、イングランドの他に、スコットランド、ウェールズ、そして北アイルランドね」
実際、日本で使用される「イギリス」とか「英国」とかいう呼称は現地では通用しない。英語での正式名称は「ユナイテッド・キングダム・オブ・グレート・ブリテン・アンド・ノーザン・アイルランド」、縮めて「UK」と呼ばれるのが一般的である。マリエルはその中でイングランド地区のマンチェスター出身なのだ。
「それはその四つの国の伝承が込められた魔導書だ。これを使えばお前さんは戦える」
「本当に?」
「そうだ。伝承を実体化させる事ができるのだ。ただし、私利私欲に使ってはならないぞ。では」
ブランデー・ナンはスッと消えた。
「マリエル、その本、どうすんだ?」
「まあ、帰ったら読んでみるわ」
マリエルは家に帰ると早速その魔導書を呼んだ。文字はこの世の字とは思えないものだが、彼女にはなぜか読めた。「ウィッティントンと猫」だの「ジャックと豆の木」だのよく知っているような童謡や人魚や幽霊の話もあった。そして自分もよく知るマザー・グースの話もある。
(こんなの本当に現実になるのかしらね・・・?)
マリエルにはまだ半信半疑だった。
そして別の日、家を出る際にマリエルは念のためにその魔導書を鞄に仕込んでおいた。そして感じた。またあの爆発が訪れそうな予感が・・・。
(これが、あのブランデー・ナンが言っていた「見聞の能力」・・・?)
そして登校中、電車に乗ろうとして駅に着いた所、後ろで爆音が聞こえた。多くの人が吹き飛ばされている。
(で、出た・・・!!)
マリエルはその爆発の原因となる人間を目にする事になった。
(あの男が犯人ね・・・!!)
マリエルはこの本を使ってみようと思った。そして本を開いた。開いたページは「ライオンとユニコーン」の項目であり、そこからライオンとユニコーンが実体化して現れた。二体は男に攻撃した。
「ぐはっ、何だ!?」
「アンタね、昨日の爆発魔は!」
「この小娘、ミハイロ様に楯突く気か!」
ミハイロは手から爆弾のような物を噴射した。マリエルは避ける。そしてユニコーンがミハイロに体当たりし、ライオンが噛みついた。
「いてえ!この野郎!!」
ミハイロは噛まれた痛みで苦しがる。
(これだけじゃまだ倒せない・・・!!)
マリエルはもう一度本を開いた。本から鵞鳥に乗ったおばあさんが現れた。マリエルは彼女こそがマザーグースだと思った。
「留めは私がやるよ。私を呼んでありがとう。お嬢さん」
マザーグースはそう言って鵞鳥に乗ったままミハイロに向かう。
「行け、我が鵞鳥よ!」
鵞鳥は口から水を噴射した。強力な水圧だった。
「うおおおお!!てめえ・・・!!」
ミハイロはその水鉄砲の水圧で腹に穴を開けられた。そして光となって消滅した。
「これでやっつけたのかしら・・・?」
「ああ、そうだとも」
マザーグースとライオン、ユニコーンが戻って来た。
「あいつはこの世界の人間じゃないからね。殺められると光となって消えるのさ」
マザーグースは説明した。
「そうなんだ・・・」
「じゃ、私達は戻るよ」
マザーグースも、彼女に使える鵞鳥も、ライオンも、ユニコーンも本の中に入って行った。
「やったな。花沢咲菜・マリエル」
「ブランデー・ナン・・・」
いつの間にかブランデー・ナンがマリエルの後ろにいた。
「あの者をライオンとユニコーン、そしてマザー・グースの能力を利用して倒すとは素晴らしかった」
「え、ええ、ありがとう・・・」
「だが、これで戦いは終わったわけではない。まだ元の日常を取り戻すには更なる戦いを要するであろう。だが、私はお前さんを信じるよ。この世界の日常を取り戻す存在の一人としてね。では・・・」
ブランデー・ナンは消えて行った。
「元の日常を取り戻す・・・、か」
マリエルは驚く通行人の目を気にせずそのまま駅の改札を通り、登校の為に電車に乗るのだった。そして彼女もまた大いなる戦いに身を投じて行く事になる。
後書き
次回は・・・
「九州の熱血中学生」
クリスマスが過ぎ、新年に向けて準備をするかよ子は母に頼まれたお使いの途中、笹山と遭遇する。そして熊本にはサッカーに熱意を持つ中学生男子も異世界の敵と遭遇していたのだった・・・。
116 九州の熱血中学生
前書き
《前回》
かよ子は父に見せられた新聞でも藤木の失踪が報道されている事を確認する。そして千葉にはイギリス人のハーフの女子高生にもイギリスの話の登場人物を出す魔法の本を武器として貰っていたのだった!!
クリスマスは過ぎ、新年に向けてかよ子の家では大掃除を始めていた。クリスマスツリーを片付け、自室の机を片付け、要らない物は次々と処分した。そして母に掃除機をかけて貰っただけでなく、窓拭きもやった。
(こんな時に誰かが襲ってきたら・・・)
かよ子はふとそんな事を考えてしまう。そんな中、かよ子は母から買い物を頼まれた。商店街へ行き、年越しそばやみかんなどを買うのである。かよ子は自分の部屋の掃除を終えた為、買い物に行く事になった。その商店街にて、笹山と遭遇した。
「あ、笹山さん・・・!!」
「山田さん・・・」
かよ子は笹山に思い切って聞いてみた。
「あ、あの・・・!藤木君の事なんだけど・・・!!」
「あ、うん・・・、私もちょっと反省してるわ」
「うん、私もあの事はもう気にしてないよ」
「あの事」とはかよ子達が野良犬に襲われそうになった時に、藤木は笹山のみを連れて逃げ、自分を置き去りにした事である。
「うん、それに合唱コンクールの時、藤木君は歌い出しが遅れた事も皆に責められてたからそれで
もっと辛くなったんじゃないかって思ったの・・・。それに、私宛に手紙が届いてて、そしたら藤木君からだった・・・」
「え?藤木君から手紙が来てたの!?」
「うん、後で私の家に行ってみる?」
「あ、でも、私もお使いの途中だから後で行くよ」
「うん、待ってるわ」
かよ子は買い物を済まして、家に帰った後、笹山の家へと急ぐのだった。
九州・熊本。そこに一人の中学生の男子がいた。名前は尾藤海斗。サッカー部に属するサッカー男子である。だが、彼もまた、謎の地震のような衝撃により元の日常を失ってしまったのだった。
それは中学二年生の時。部活の最中だった。入部してきたばかりの新入生にとっても恐ろしい事だったろう。急に空が暗くなった。サッカー部以外のグラウンドで活動中の陸上部や野球部、テニス部もその異変に驚いた。
「うおらあああ!」
どこからか声が聞こえた。天から多くの人間が降るように現れた。
「に、逃げるぞ!」
サッカー部の部長の命で尾藤も他の生徒と共に逃げた。人間達は暴れるように生徒達を襲い始めた。その様子を見た尾藤は震えると共に怒りを表した。
「や、やめろーーー!!!」
尾藤は叫んだ。その時、襲撃して来た人間達の動きが止まった。尾藤は近くにあるサッカーボールを見ると、すぐさまそれを蹴って人間に当てようとした。
「ぐわああ!!」
尾藤の蹴ったボールは一人の襲撃者に命中した。普通のシュートではありえないダメージだった。襲撃者の体を貫通してその襲撃者は光となって消滅した。尾藤地震にも何なのか分からなかった。
(兎に角、そこらのボールを蹴ってみるか!)
尾藤は転がっているボールを蹴って他の襲撃者に当てた。顔に当たれば首が跳ぶ。その他の部位なら貫通する。どちらにしても光となって消えていく。
(一体、何なんだ、ありゃ?)
その時、別の声が聞こえた。
「皆の衆、撤退せよ」
残った襲撃者は姿を消した。暗くなった空は元に戻った。多くの生徒達が怪我を負った。教師達も今の恐怖で呆然としていた。どの部も再開できるような状況ではなかったので教員側は生徒達をすぐに帰らせた。
(許せねえ、何なんだ、あいつらは!!)
尾藤は自分の学校の生徒を無差別に攻撃してきた連中への憎悪が収まっていなかった。そして帰った。そしてテレビのニュースではとんでもない情報を耳にした。熊本市内の神社・藤崎八幡宮や阿蘇の阿蘇神社の門が破壊されたという。
(これも、きっと奴等の仕業なんか!!)
これはどう考えても尋常ではない。翌日も同じ事が起こった。今度は市街地が襲われたという。そしてまた次の日、また空が暗くなった。
(また奴等か!!)
人間が降って来た。三人の人間が尾藤を取り囲んだ。
(俺を殺す気か・・・!!)
尾藤はそう思い、先手必勝と考え、その人間を蹴り飛ばした。そして後の二人もやられる前にやった。その時だった。
「そこまでだ!」
別の誰かが現れ、三人を一気に斬った。
「そこの者、大丈夫であったか?」
「あ、はい、あんたは?」
「私は清正とでも呼んでくれ。今、この地は大変な事になっておる。まあ、説明している暇はなかろう。また後で話をしよう。では」
清正は消えた。
(今の清正とは、敵か、味方か?)
尾藤はまず学校へと急いだ。
授業中、尾藤は授業に集中できなかった。それどころか、殆どの生徒もあの攻撃のせいで授業に身に入らず、教師側もまたぎこちない授業の仕方であった。皆いつ襲撃されるかおかしくない状況だと見ているのか、と落ち着かないのである。その午後の授業中、また空が暗くなった。グラウンドにまたあの人間が現れた。体育の授業をグラウンドで行っている生徒や教員を中心に狙われる。
(あ、あいつらだ!!)
尾藤は怒りに震える。そして緊急事態として放送が流れる。
『全校生徒、全教員の皆様、何者かが襲撃に参りました。直ちにお逃げください』
皆は教室を出た。ごった返す。廊下が生徒だの教員だのでごった返す。尾藤もまた逃げた。
(くそ、逃げるだけしかできんとか・・・!!)
尾藤はグラウンドに出た。襲撃者たちが何人もいる。部活動の時よりも数が多い。
「尾藤海斗!」
尾藤は見回す。そこに清正がいた。
「き、清正!?」
「奴等はこの地に現れおった!これを使うが良い!」
清正はボールのような物を渡した。
「お主は球を蹴る運動が得意であるな?それを蹴れば更なる破壊力を生み出す!蹴ってみよ!」
「え?あ、ああ!!」
尾藤は躊躇わず清正の言う通りにその球を蹴った。球は風のように素早く飛ぶ。襲撃者の体を貫通し、首をはねた。それも一人だけではない。球は更に回転を増し、次々と襲撃者を攻撃した。
「す、すげえ・・・」
「あれは我が魂を込めた球だ。己の攻撃による武装の能力と合わさって更なる威力が出ておる!」
そして他の生徒達も尾藤の凄さに驚かされていた。球は尾藤の所に戻って来た。その時、別の声が聞こえる。
「貴様・・・。よくもわが軍の兵を次々と葬ってくれたな!」
「だ、誰だ!?」
声の主が現れた。
「お主だな!こやつらを操っていた者は!」
「誰だ、お前は!?」
「我が名はバフティヤール。仏教とかいう穢れた宗教を成敗させた英雄だ!」
「ふざけんな!仏教のどこが穢れてんだ!そもそもなぜこんな事をする!?」
「この腐った国をより良くする為だ」
「何だと!そうやって人を無差別する事が良き事だと思っとんのか!?」
「尾藤海斗。口で分かる奴ではない。その球を使うのだ!」
「あ、ああ!!」
「我も行くぞ!」
清正もバフティヤールに飛び込んだ。
「愚かな奴らめ、イスラームの素晴らしさを教えてくれる!アッラーよ、我にこの聖戦に勝利を!」
バフティヤールは叫んだ。次々と新しい兵が現れる。
「この二つの槍で殲滅させてくれる!」
清正は腕を伸ばすとどこからか二本の槍が出現した。
「この時間の槍と空間の槍で貴様を葬らせて貰う!」
清正はまず右手にある時間の槍を地に叩きつけた。バフティヤールの兵が消えた。
「お主が兵を召喚する前の状態に戻させてもらった。そしてお主にはこの空間の槍を喰らえ!」
清正はバフティヤールに空間の槍を投げる。だが、バフティヤールは持っている剣でその槍を弾いた。
「はは、槍など対した事ないな」
だが、その時、バフティヤールが持っていた剣が、いや、バフティヤール自身もまた地に落ちた。
「な、何だ、立てない・・・!?」
「この空間の槍でお前もまたこの地面に吸い付くようになる。暫くは立てん。今だ、尾藤海斗!」
「おう!」
尾藤は清正から貰った球をバフティヤールに蹴る。
「き、貴様ら・・・!!」
バフティヤールに球が命中した。それも勢いは止まらない。更に球から炎が出た。バフティヤールが燃えて行く。
「あああ!!」
バフティヤールは燃え尽き、光となって消滅した。球は炎を消し、尾藤の足元に戻って来た。
「清正、ありがとう、すげえ役に立ったよ」
尾藤は球を清正に返そうとした。
「いや、礼を言うのは我の方だ。それからその球はお主の武器として持っておけ。今、この世はとんでもない歪みが生じておる。命を懸けた危険な戦いが待っておるかもしれん。一緒に戦ってくれるか?」
「ああ、絶対に元の日常を取り戻すと!」
尾藤は清正に誓った。そして彼もまた、大いなる戦いに関わっていく事になる。
後書き
次回は・・・
「残された手紙」
かよ子は笹山の家に行き、藤木からの手紙を見せて貰う。そして平和を司る世界、戦争を司る世界、そして日本赤軍、かよ子達が住む世界の人間、それぞれが大いなる戦いへの移行に備えて行く・・・。
117 残された手紙
前書き
《前回》
かよ子は母から頼まれた買い物に行く途中、笹山と遭遇し、藤木から手紙が来ていたと知り、買い物を終えると笹山の家へと急ぐ。熊本にはサッカーに燃える中学生の男子が異世界の敵と戦う為に武器になるボールを手にしていた!!
次回以降は今まで以上の激しい展開になると思います。登場人物も今まで以上に増えると思いますので、次回からは随時作中のオリジナルキャラの紹介・解説もしていこうかなと思います。
日本赤軍の長、房子は手紙を書く。
「できたわ、年賀状が。これで勝利は私達の方に傾くはず・・・」
「これで今度こそ残りの三つの道具を我らの者にできますね」
「修、貴方の矛盾術なら届ける事も可能でしょう」
「ああ、やってやりますよ」
房子は政府への「年賀状」を丸岡に託した。
(これで杖、護符、杯は私の物になる・・・)
房子はそう望んだ。今、戦争放棄で弱体化した日本。そしてアメリカの支配に置かれたままの情けない状態になり果てた。その国を元に戻すには四つの強力な道具が必要である。それは、杯、護符、剣、そして杖。剣は手にした今、奪取に手こずる三つの道具を何としても手に入れる。そうすれば日本は強くなる。房子は計画を進めていく。
戦争を正義とする世界。レーニンは今、日本という国から一人の少年をこの世界に住まわせている。彼には平和の世界を滅ぼす目的を持つ。この事が日本赤軍の目的達成にもなるのなら彼らと協力する姿勢を惜しまない。だが、これまでの闘いで多くの仲間が葬られた。そして平和の世界の人間も「向こうの世界」の人間の為に道具を持たせて対抗策を施している。相手にとって最上位の能力を宿すアイテムの一つ、剣を持っている点ではこちらにも勢いを少し強められたとはいえ、完全に優勢とは言い難い。今、赤軍の構成員が量産しているという機械があれば勝機はこちらにも傾くらしいのだが・・・。
(奴等め、どこまで腐った頭をしている・・・。だが、必ず私が正しいという事を知らせてくれる。最後に勝つのはこの私なのだ・・・!!)
レーニンは「あの世」の人間だった頃の自分を思い出す。戦争で革命を起こし、その力でソビエトを創り出した。だが、死を体験した後、元々何もなき無だったこの地に魂が辿り着いた時、レーニンはこの地でソビエト連邦のような強力な国を造った。だが、そこには邪魔となる者がいた。平和が大切だとぬかす連中が。その者を完全に排除しない限りは自身の理想は現実にはならない。そして赤軍の目的と協力し合えばそれぞれの目的達成はどちらにもメリットがある。レーニンは今まで以上の大いなる戦いを画策するのであった。
こちらは平和を司る世界。その場にはこの平和の世界の創り主・フローレンスとイマヌエルがいた。
「フローレンス、赤軍も『あっちの世界』も容赦なく動いている。本来ならばここまではやりたくないのだが、こっちも奥の手を出さなければならないようだね」
「はい・・・。書類は山ほどありますが、これらを送らねばなりません。あの国を守ります為にも、そしてこの世界を守ります為にも・・・」
フローレンスとイマヌエルは用意した書類に手を付け始めていた。
(杯の所有者、護符の所有者、杖の所有者・・・)
この二人を始めとするこの世界の人間は戦争を正義とする世界の人間の思うがままにさせてはならないと思い、そして赤軍との同盟に対して自分達も対抗策を練った。だが、戦いがどちらの世であろうと更に激しくなる。
(もうすぐ、また会えそうですわね、山田かよ子ちゃん・・・)
フローレンスはそう思いながら、書類整理を進めた。
三河口は奏子と電話をしていた。
「何、あの帰りに藤木君を見たって?」
『うん、かず子ちゃんの家から走っていく所見たのよ』
「つまり、それからどこかへいなくなったって事か?」
『かず子ちゃんが藤木君から手紙を貰ったって言ってたわ』
「手紙?」
三河口は動揺した。
『君を諦める、とか、もう二度と会わない、とか書いてあったって』
「そうか、ありがとう。それじゃ、よいお年を」
三河口は電話を切った。
(って、よいお年になれるのかね・・・)
三河口は赤軍も、異世界の敵も今まで以上に動くと警戒していた。そして大きな戦いが始まると予感していた。激動の1975年となると。
杉山は年賀状を書き終えてポストに出していた。親友の大野へは勿論、様々なクラスメイト、その中には自分を好きになっている女子への年賀状もあった。
(負けるわけにはいかねえよな・・・)
杉山はポケットの中にある雷の石を持って思う。必ず元の日常を取り戻すと。そしてふと、あのおっちょこちょいの女子が頭に浮かんだ。
かよ子は買い物を済ませた後、急いで笹山の家へと向かった。
「さ、笹山さん・・・!」
「あ、山田さん、入って」
かよ子は笹山の家に入り、彼女の部屋へと連れて行かれた。そして笹山は一通の手紙を出してかよ子に見せた。かよ子はその手紙を読む。
笹山さん
この前は卑怯な事して本当にすみませんでした。こんな卑怯者なんかじゃ笹山さんは好きになれないよね。僕にとって君は過去の人なんだ。もう君の前には顔を出さないので許してください。僕も君の事は忘れるよう努力するよ。じゃあね。
藤木
かよ子は読み終わると手紙を笹山に返す。
「やっぱり、あの野良犬の事で藤木君に冷たく当たったからいけなかったのかしらって今思うの。もっと早く許してあげれば・・・」
「笹山さん・・・。大丈夫だよ、きっと藤木君見つかるよ」
「うん・・・」
そしてかよ子は笹山の家を後にした。これはただの失踪なのか。それとも赤軍や戦争を正義とする世界の人間が絡んでいるのか。かよ子にはまだ解らなかった。
(もし私も杉山君がいなくなったら、笹山さんみたいにとても寂しくなるのかな・・・?いや、そうだよね・・・?)
かよ子は家に帰り、正月に向けての準備を進めるのだった。そんな夕方、誰かが山田家に入って来た。
「こんにちは」
「あら、健君じゃない」
訪れたのは三河口だった。母が出迎える。
「かよちゃん、いますか?」
「あら、ちょっと待っててね」
かよ子は母に呼ばれる前に現れた。
「隣のお兄ちゃん・・・」
「かよちゃん、君の学校の男子・藤木君の事なんだが・・・」
「藤木君が何?」
「笹山さんだっけ?その子の近所に住んでる俺の友達が名古屋での戦いの後、帰りに藤木君を見たって言うんだ」
「ええ!?そういえば私も今日、笹山さんちに行ったんだ。藤木君から手紙が来てたって」
「そうか、別れの手紙かね?」
「うん、『僕はもう君を忘れるよ』って書いてあったんだ・・・」
「解った。俺も帰るよ。だが、これは奴等が絡んでる可能性があるよ」
「うん、私も気を付ける・・・」
「じゃあね」
三河口は帰って行った。かよ子も今後、何が起こるかわからない緊張感で年を越す事になる。
そして1974年はもうすぐ終わる。
後書き
次回は・・・
「年の終わりと始まり」
大晦日になり、年越しそばを食べた後、山田家と羽柴家は揃って初詣へと出かける。そこでかよ子はある人物と出会う。それぞれが1975年への思いを募る中、「あの人間」が計画を完了させる・・・!!
118 年の終わりと始まり
前書き
《前回》
かよ子は買い物を済ませた後、笹山の家へと向かう。彼女から見せて貰った藤木からという手紙には、「君の事は忘れる」という別れの文章が記されていた。赤軍や異世界の人間も動き出す中、1974年は終わりに近づくのだった!!
今回からは今まで以上の大きく、かつ激しさを増す展開となるでしょう・・・。
オリジナルキャラ紹介・その1
三河口健 (みかわぐち けん)
かよちゃんの家の隣に住むおばさんの甥。初登場第1話。神奈川県横浜市出身。武装・見聞・威圧と三つの異能の能力を全て有する高校二年生。小学生の頃にその能力を乱発して周囲は勿論、家族からも恐れられ、少年院生活も経験している。父の姉である叔母の羽柴家に居候後は一般人に対して無闇に能力を行使する事はなくなった。異能の能力は強力だが、それで十分とされているのか現時点で異世界の道具は授けられていない。その為、赤軍相手には互角以上に戦えるが、異世界の敵には勝つ事はできても留めはさせない。好きな食べ物は麵類、刺身。
日本赤軍の一人、丸岡修は東京の中心部にいた。自身の認識術で周囲には見えない、いわば透明人間のような感じで歩いているのだ。その為、誰にも気づかれる事はなかった。
大晦日。年越しそばを食べながら紅白歌合戦を見ていた山田家は食器の後片付けをしていた。
「もうすぐ1974年も終わるな」
「うん・・・」
「除夜の鐘を聞きに初詣行こうか」
「そうだね」
かよ子はその為か夜更かしをしていたのだ。山田家はいつも御穂神社まで行って初詣をしていた。今年もその予定である。出かける準備を終え、丁度家を出ると、隣の羽柴家の姿も見えた。奈美子と利治の娘のさりも帰省していた。
「お、山田さんとこもいつもの御穂神社に?」
「はい、そうです」
「一緒に行きましょうか」
「はい」
かよ子達は羽柴家と共に御穂神社へと行くのだった。この日はバスは初詣対策として終夜運転を実施していたので、その為か夜中の清水の街は賑やかだった。
「あれ、車使わないの?」
「旦那も私も酒飲んじゃったからね」
「そうなんですね・・・」
やっぱり大人達にとっては酒を飲む事は楽しいものであろう。実はかよ子の父もそばを食べながら飲酒をしていたのだ。
「ねえ、かよちゃん」
さりがかよ子にある質問をする。
「かよちゃんの学校の男の子が行方不明だって聞いたわ」
かよ子はあの卑怯者の別名で知られている男子の事だとすぐに分かった。
「うん、その男子の親から電話がウチに来たんだ・・・。まだはっきりとは決まってないけど、もしかしたら異世界の敵か、赤軍が関わっているかもしれないって思って・・・」
「そうね・・・。なんかそんな気がするわね」
皆は歩いている途中、除夜の鐘が聞こえた。もう1974年は終わった、と皆は改めて思う。
「もう、終わったんだね」
「ええ、今年も宜しくね、かよちゃん」
「うん・・・」
皆は御穂神社に辿り着いた。神社にはすでに行列となっていた。
「起きてる人、多いね」
「ああ、新年だからな」
そんな時、かよ子はある人物から呼ばれた。
「おう、山田じゃねえか」
「す、杉山君・・・!?」
かよ子は好きな男子の登場に驚いた。
「お前も家族で来たのか?」
「うん・・・」
「俺もだぜ」
よく見ると杉山の両親や姉もいた。
「あ、明けましておめでとうございます・・・」
「明けましておめでとうございます」
お互い新年の挨拶をした。
「やあ、明けましておめでとう、杉山君」
「ああ、三河口さん」
「君もここに来るという事はもしかして大野君とも待ち合わせているんじゃないのか?」
「はは、バレたか。実はそうなんだ」
そして杉山君を呼ぶ声がした。
「おーい、杉山、お、山田もいたのか」
大野が両親と共に現れた。
「どうも、明けましておめでとうございます」
山田家と杉山家、そして大野家はお互いに挨拶をする。
「では、お参りを始めますか」
皆は列に並ぶ。そしてようやく自分達の番が来た。かよ子達は例をして10円玉を賽銭に投げ入れ、鐘を鳴らし、手を合わせる。そこでかよ子は考えた。
(私は何を願えばいいのかな・・・?おっちょこちょいが治る事?杉山君と一緒にいられる事?それとも・・・)
かよ子ははっと思った。そうだ。もっと願わなければならない事がある。
(元の日常を取り戻せますように・・・。それを願わなきゃ・・・!!)
さらに思い出せば母も隣のおばさんもこの地で異世界の杖と護符を貰ったという。その二つの能力で二人は戦後の苦しみを生き抜いてきた。だが、今度は自分達が元の日常を取り戻さなければとかよ子は改めて気づいた。
三穂津姫はあの杖の所有者と護符の所有者が先代・当代揃って御穂神社に来た事を嬉しく思っていた。
(きっと、この戦い、終わらせましょう。皆様方・・・)
そして大野の家族と杉山の家族もまた参拝する。杉山は「今年も大野と一緒に元気でやっていけますように」と願い、大野もまた「今年も杉山と仲良くやっていけますように」と頼んだ。
「お兄ちゃんやお姉さんは何てお願いしたの?」
かよ子は護符の所有者とその従弟に聞く。
「俺は『今年もこの清水で楽しく暮らせますように』ってね」
「私は『今年で奴等を倒せますように』ってお願いしたわ」
「そっか・・・。私は迷ったんだ・・・。『おっちょこちょいを治せますように』とか、『杉山君と仲良くやっていけますように』とか考えたけど、『元の日常を取り戻せますように』って頼んだよ」
「そうか、それが一番いい願いだね。実は俺、欲張りにももう一つ頼み事をしたんだ」
「え?」
「健ちゃんったら、欲張りね」
「ま、お二人と同じものですよ。『必ず赤軍や異世界の敵の思い通りになりませんように』ってね」
「そ、そうだよね」
「あ、杉山君、大野君・・・」
かよ子は杉山と大野が戻って来たところを呼んだ。
「二人は何てお願いしたの?」
「俺は勿論『今年も大野と一緒に元気でやっていけますように』だ」
「俺も『今年も杉山と仲良くやっていけますように』だぜ」
「うん、私も二人のコンビいつでも応援するよ」
「ありがとな」
かよ子は杉山にそう言われて嬉しく思った。一時運動会の騎馬戦で喧嘩した二人だったが、今年こそはそんな事がないようにとかよ子も願っていた。
一方、別の神社。笹山はそこで初詣に来ていた。そこには近所に住む奏子も家族ぐるみで一緒に参拝していた。
(お願いします。藤木君が戻って来てくれますように・・・)
笹山はクリスマス・イブ以降、行方不明となっている男子が非常に心配でたまらなかった。あの野良犬に襲われそうになった時、自分を助けてかよ子を見捨てた件で怒り、クリスマス合唱コンクールの後でも皆に責められた事が原因でいなくなったんだという自分への責任感でいっぱいだった。だが、あれから一週間以上、更には年が明けても未だに見つからない。今、どうしているのだろうか。
「かず子ちゃん、藤木君が心配?」
「う、うん」
「大丈夫よ。きっと見つかるわ」
「そうよね・・・」
(藤木君、今、どこにいるのかしら・・・?)
笹山は不安のまま、神社を後にした。
新年最初の朝。かよ子は起きるのが遅くなってしまったが、9時前だった。
「お母さん、ごめんなさい。寝坊しちゃって」
「いいのよ。気にしないで。私も起きたばかりだから。お父さんなんてまだ寝てるのよ。昨日お酒飲んでたからかしら」
「う、うん・・・」
9時過ぎ、ようやく父が起き、山田家の朝の食事が始まった。もちろん元日の為、おせち料理である。改めて「いただきます」ではなく、「明けましておめでとうございます」と言ってから食べた。
また、朝に初詣に行く者もいた。すみ子は家族で近くの神社に初詣に出かけた。今の所自分の胸の中に異常な感触はない。すみ子は安心して参拝をする。
(今年こそ、皆と楽しく過ごせますように・・・。そして、元の日常を取り戻せますように・・・)
すみ子は切実な願いを祈願した。
「すみ子」
すみ子は兄に呼ばれる。
「こんな事言っちゃ癪に障るかもしれないが、絶対に『あいつら』を倒そうな」
「お兄ちゃん・・・。うん・・・!!」
また別の場所では、長山が家族で付近の神社に参拝していた。
(小春が元気になれますように・・・。そして、元の日常に戻れますように・・・)
長山は妹の身体の心配と共に、これから始まるであろう大きな戦いへの心の準備をするのであった。
冬田は祖父と共に初詣に行く。そして鈴を鳴らしながら祈る。
(今年も大野君と一緒にいられますように・・・)
冬田は好きな男子の事を考える。もしかしたら大野と両想いになれるかもと思うと急に頭が舞い上がるのであった。
ブー太郎もまた家族で初詣を行う。
(お願いしますブー・・・。今年も大野君と杉山君の役に立てるように頑張りたいですブー・・・)
ブー太郎は石松から貰った「水の石」の所有者として、そして大野と杉山の子分として役に立ちたいと思うのであった。
丸岡はレバノンへと戻る。そして長時間の空旅の後、本部へと戻った。
「総長、只今帰りました」
「お帰り」
「日本の正月ってあんなに賑やかだと改めて思いましたよ。政府も賑やかになりますかね・・・」
「ええ、要求に応じなければ痛い目見るでしょうからね」
重信房子が統率し、軍事政権があった大日本帝国の復活を目指す日本赤軍。そしてその組織と組む争いを正義とする世界。彼らはこれから一体日本国をどう揺るがすのだろうか・・・。
後書き
次回は・・・
「届いた年賀状」
元旦、かよ子はクラスメイトからの年賀状を貰う。そんな中、かよ子は自身が好きな男子・杉山からの年賀状がないかどうかを確認する。そしてその中には東京に住む杯の所有者からも年賀状があり・・・。
119 届いた年賀状
前書き
《前回》
大晦日の夜、1974年の終わりと1975年の始まりを過ごすかよ子は隣の羽柴家と共に御穂神社で初詣に出かける。その神社では、杉山に大野と出会い、共に初詣を行う。そして他の皆もそれぞれ戦いを終わらせたいという気持ちを持って参拝するのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その2
羽柴奈美子 (はしば なみこ)
かよちゃんの隣の家に住む女性。旧姓・三河口。初登場4話。三河口健は甥にあたる(奈美子の弟が三河口の父)。戦後、異世界の護符を手にして食糧不足を乗り越えてきた。現在、異世界の護符は三女のさりが受け継いでいる。好きな食べ物はゆで卵、りんご。
石松は三保の松原にて日の出を見ていた。
(新たな年が始まったのか・・・)
だが、戦いは激しくなるばかりである。杖の所有者が御穂神社に初詣に来てくれた事は三穂津姫にとっても嬉しい事であろう。それによって勝利が齎されるとよいのだが・・・。
(親分、某は何とか戦い抜いておられます・・・。『そちら』の方の状況は如何でしょうか・・・)
石松は「向こうの世界」の親分や同志の者達、そしてそこの人間達の事を考える。向こうも戦いは激しくなっているはずなのだ。
(果たして、我々は勝てるのか・・・。そしてこの国を守れるのか・・・)
それは石松にも出せぬ答えであった。
元日の昼、かよ子の家族は届いた年賀状を整理していた。
「これがかよ子宛てのね」
母はかよ子に彼女宛の年賀状を渡した。まる子やたまえ、とし子などの友達は勿論、学級委員の丸尾からも年賀状が来ており、「三学期の学級委員は是非私に一票をお願い致します!」とあった。一体どれだけ彼は学級委員になる事に拘っているんだかと苦笑した。そして、かよ子はある事に期待を寄せる。
(杉山君からの年賀状、あるかな・・・?)
かよ子は探してみた。そして、あった。
(よかった、あって・・・)
かよ子は落ち着いた。年賀状に書くとしてお決まりの文言「新年あけましておめでとうございます。今年もよろしく」は勿論、「困った事があったらいつでも助けてやるよ」とあった。
(杉山君、ありがとう・・・。私の年賀状も届いたかな・・・?)
かよ子は自分が出した年賀状に杉山がどう反応するか気になった。そして年賀状を探る。そしてあの「杯の所有者」である東京の女の子からの年賀状もあった。その年賀状には「今度の休日にまた遊びに行きます」とあった。
(りえちゃんとまた会えるんだ・・・)
だが、ここでかよ子は同じ戦いの仲間として、そして恋敵(?)としてりえとまた会える事を期待するのであった。
一方、杉山の家。杉山は親友である大野から来た年賀状を見た。「運動会の時は悪かったな。でも、また今年も一緒に頑張ろうな」とあった。
(大野・・・)
杉山はそして別の年賀状を見る。ブー太郎からも「今年も子分として宜しくお願い致しますブー」と書いてあった。
(あいつ、ここにも『ブー』って書くのかよ・・・)
杉山は心の中で突っ込みたくなった。そしてあのおっちょこちょいの女子からも来ていた。
(山田・・・)
杉山はかよ子からの年賀状の裏を見る。そこには「去年は色々私の事助けてくれてありがとう。今年も宜しくね」とあった。
(ははは・・・、あいつ、おっちょこちょいだからな・・・。でも、あいつは命懸けた戦いをしてるんだ・・・。俺も何とか助けてやらないと・・・)
その時、不意に姉が現れた。
「あら、さとし。それ、あの山田かよ子ちゃんって子からのじゃない」
「ね、姉ちゃん!ノックぐらいしてから入ってくれよ!」
杉山は姉の登場に驚いた。
「はいはい、ごめんなさいね。あんた案外、あの子の事、気にしてるのかしら?」
姉はそう言って出て行った。
(確かに、あいつの事気にしてるかもしれねえな・・・。あいつが俺の事好きだからか?)
かよ子は母にりえからの年賀状を見せた。
「お母さん、りえちゃんから年賀状が来たよ」
「あら、良かったわね。お母さんの所にもりえちゃんのお母さんからの年賀状が来たのよ」
「え、そうなの!?」
「『今度の休日にまた来ます』って言ってたわ。成人式の日があってその連休に来ると思うわ」
「成人式の日の連休か・・・」
かよ子はりえとまた会えると思うと待ち遠しく、同時にまた何か大事な話でもあるのではと思った。
大野の家では大野も自分に来た年賀状を確認していた。真っ先に杉山から来た年賀状を見た。「運動会の時は本当にごめんよ」とあった。
(あいつ・・・。やっぱり気にしてたのか・・・)
大野は運動会の時に杉山と喧嘩した事があり、一時期は口を聞くことがなかった。しかし、クリスマスの合唱コンクールの時、自分が独唱する部分で声が出なくなってしまい、即刻で杉山が代わりに歌ってくれた。やはり、その間、自分も杉山もどこかで仲直りしたいという気持ちがあったのだろう。そして大野は次の年賀状を見る。冬田からだった。「大野君と今年も素敵に過ごせたらいいわね」と書いてあり、読むと気分が悪くなりそうな文だった。気を取り直し、ブー太郎からの年賀状を見る。「今年も子分として精一杯お役に立てるよう頑張りますブー」とあった。
(そうだな・・・、あの戦いも終わらせないとな・・・)
大野は杉山やブー太郎達と共にあの戦いを終わらせ、元の日常を戻したい。そう思っていた。
冬田は大野からの年賀状で自分の思いが伝わったか気になっていた。
(ああ、私の王子様、大野くうん・・・)
笹山は自分に届けられた年賀状を見る。女子の友達の年賀状が多いが、その中で数少ない男子からの年賀状があった。その一人の中にあの行方不明の男子から来たものもあった。
(藤木君からの・・・)
きっと行方不明になる前に書いて出したのだと笹山は思った。その中に「今年こそは卑怯な事しないように頑張ります」とあった。
(藤木君、今、どこにいるの・・・?)
かよ子は正月の空を見上げた。
(こんなのどかなお正月なのに緊張感がする・・・。でも、またりえちゃんに会えるし、きっと一緒に戦える時が来るよね?それまで待っていよう・・・)
かよ子は誓い続ける。絶対に元の日常を取り戻すと。そんな中、母が部屋に入って来た。
「かよ子、とし子ちゃん達よ」
「あ、うん」
かよ子は玄関に出る。
「かよちゃん、明けましておめでとう」
「とし子ちゃん、明けましておめでとう」
まる子とたまえもいた。
「皆で羽根つきやろうと思ってるんだけど、一緒にどうかな?」
「うん、やろう!」
かよ子は皆で近くの公園に行き、羽根つきして遊んだ。そして、羽根を変な方向に飛ばしたり、羽根を突く時に羽子板が手から外れたりしてしまうなどのおっちょこちょいをしながらも羽根つきを楽しむのであった。
そして三が日が過ぎ、さりが名古屋へ戻る日が訪れた。さりの両親、そして彼女の従弟、そして山田家も新幹線の静岡駅にて彼女の見送りを行う。
「それじゃ、さり、気を付けるんよ。護符はちゃんと持ってるね?」
「うん」
「お姉さん、また会おうね・・・」
「うん、また休みができたら戻るよ」
新大阪行きの新幹線が到着した。さりは乗車する。
「じゃあね」
そして列車は発車した。かよ子はさりを見送ると共に三学期が近づいているとまた実感するのであった。
後書き
次回は・・・
「混乱する政府」
平和を正義とする世界と戦争を司る世界。こちらでも激しい攻防が続いていた。その一方で、かよ子の住む世界では日本赤軍からの年賀状が内閣に届き、議会が騒ぎ出す・・・。
120 混乱する政府
前書き
《前回》
かよ子は届いた年賀状を確認する。そこには自分の好きな杉山からも来ており、更には夏休みに出会った杯の所有者・安藤りえからも来ていた事を確認し、彼女がまた清水に遊びに来る事を知ると思うと待ち遠しく思うのであった!!
今回、かよちゃん登場無しですみません。次回はちゃんと出します。
オリジナルキャラ紹介・その3
羽柴さり (はしば さり)
三河口の甥で羽柴家の三女。初登場31話。七夕豪雨の日にて赤軍の奥平純三と異世界の人間・バーシムを追い払う事に貢献した。その後、母から異世界の護符を受け継ぎ護符の所有者となる。現在は名古屋で一人暮らしをしている。攻撃・防御双方の武装の能力を有している。好きな食べ物は豚カツ、シュークリーム。
ここは平和を正義とする世界。現世にて平和の為に活動していた、あるいは人の為に活動していた人間が辿り着く場所である。そこに暮らす人間は本来ならば穏やかに暮らしているはずなのだが、この世界には戦争を正義とする世界が縄張りを奪おうとし、平和主義であるにも拘らず武器を持って戦うという異常事態になっていた。そこに清水の次郎長は子分の大政・小政らと共に戦争を正義とする世界からの侵略者を追い払っていた。
「く、奴等の侵食が増え続けおる!」
「へい、我らの陣地も前より縮小している模様です!」
「く、だが、我々の戦いの疲労も既に限界を超えておる。一旦撤退しよう」
次郎長の兵団は引き下がった。現在次郎長はフローレンスとイマヌエルによって新しく建てられた屋敷を根城とさせて貰っていた。次郎長はそこで休む。
(はて、石松、お前は『向こうの世界』でよくやっているか・・・)
自身の部下の一人・森の石松の行動に関してはフローレンスとイマヌエルから間接に聞いてはいるものの、派遣させて以降、彼はこちらの世界にあまり戻っていない為、少し心配になっていた。また、秋の時にエレーヌという女性が援護に赴き、石松が赤軍によって召喚された敵にあと一歩で殺される所を彼女に助けられたと聞く。次郎長は少し眠りについた後、呼び出しの声が出た。この平和の世界を統治する女性の声だった。
『全ての者、これからの作戦会議を行います。本部においでになられてください』
「作戦会議・・・。一体どのような事か!?」
次郎長は子分らと共に本部へと向かった。
こちら内閣総理大臣官邸。現在首相を務める三木武夫は日本各地で異世界の人間だの赤軍だのが国内で暴動を起こしている様に頭を悩ませていた。何しろ前総裁の田中角栄が日本列島改造論を打ち出したものの、その結果が単なる物価の上昇のみのうえ、オイルショックの影響もあり、金権政治として世間の評価を下げられて辞任した事でつい去年12月より自身が総理になったのである。そして元旦から数日が過ぎ・・・。
「総理!赤軍から年賀状なるものが届きました!」
副総理兼経済企画庁長官から急遽呼び出された。
「赤軍からの年賀状だと!?」
三木首相は半信半疑で驚いた。年賀状は通常の年賀はがきではなく、封筒で届いた。副総理から受け取ると首相は危険な登山をするわけでもないのに恐る恐る封を切った。
迎春
三木武夫総理大臣および三木内閣官僚の皆様
この度我々日本赤軍は昨年は今の腐れ果てた日本国を再建すべく異世界の人間と協力して動いております。大日本帝国を復活させる為に我々に協力していただきたい事がございます。以下をご覧ください。
・異世界の道具とされている杖、護符、杯をこちらに集め、我々赤軍の元へ集めてください。杖は静岡県清水市在住の山田かよ子という小学三年生女の子が、護符は愛知県名古屋市在住・勤務の羽柴さりという女性が、杯は東京都在住の安藤りえという小学三年生の女の子が保持しております。1月20日に羽田空港にてお待ちしておりますのでその時までに回収し、お納めください。
・国会に憲法改正を行い、戦争放棄を撤回し、軍事政権の復活を求めてください。
以上の条件が吞み込めない場合はこちらも実力行使で道具を奪取し、我々が内閣の行政権のみならず、国会の立法権、裁判所の司法権全てを握らせて頂きます。要求に応じてくれたらクリスマス・イブの辺りから行方不明となっている静岡県に住んでいた藤木茂という小学生の男子をそちらにお返し致します。この少年は今、異世界にてお預かりしております。吉報をお待ちしております。
日本赤軍最高幹部政治委員 重信房子
(確か静岡県に住む小学三年生の男子が行方不明という話はテレビでも見ている・・・。その異世界とやらに誘拐されているのであるならば・・・。だが、この国は戦争放棄をしている・・・。軍を持つ事など断然国会も反発するし、全国民の怒りを買うに違いない・・・)
三木は葛藤に悩まされる。
そして、緊急議会が始まった。国会議員がいる中で総理は発言する。
「先日、日本赤軍から年賀状なるものが届きました。要求内容としては異世界の道具である杖、護符、そして杯を日本赤軍に渡す事、そして憲法改正を行い、軍事政権を復活させる事です」
議員は騒然とした。そして文句がとんでくる。
「冗談じゃない!この国は戦争放棄をすると決めているのだ!また戦争への道に進むなんて論外だ!」
「赤軍の要求に簡単に納得できるか!」
三木首相は野次の中、話を続ける。
「だが、要求を呑まないと実力行使に出るとある。これは脅しではなく、本気だと私は思う!それに要求に応じれば、今行方不明になっている静岡県に住んでいる小学生男子を解放すると書いてありました」
「人質解放の為に総理は要求に容易く応じるつもりですか!?」
「そのつもりはない。だが、異世界の杖、護符、杯を持っている者に何とか協力を申し出なければならない」
「協力を申し出てどうするおつもりですか!?あの道具が異世界から貰ったという事はただの杖や護符、杯ではないはずだ!!」
一人の議員が反抗し、他の議員も「そうだ、そうだ!!」と野次を飛ばした。
「この旨は勿論各々の所有者に伝え、情報を集めたいと考えている・・・」
「情報を集めたらどうするおつもりですか!?」
首相は返答に困った。
「それは彼女らの意見を尊重し・・・」
その時、部屋の扉がゴン、ゴン、とノックされた。
「だ、誰だ!?」
一同は驚いた。男女二名が入って来た。
「議会中、邪魔をしまして申し訳ございません。その異世界の杖、護符、および杯につきまして私達に説明させてください」
「何者だね!?」
「私はフローレンス。そしてこちらはイマヌエル。私達は異世界から参りました者です」
異世界から来た者として議員・官僚達は騒然とした。
「では、そのフローレンスにイマヌエルとやら、こちらに来て説明をお願いしよう」
「フローレンス、私が話そう」
イマヌエルが喋り出す。
「異世界には二つの世界があります。平和を主義とする世界、そして戦争を正義とする世界。その二つの世界の中で私達は平和主義とする世界を創り出しました。ですが、その別の世界、戦争を正義とする世界ができ、我々が住む平和主義の異世界を脅かしているのです。その上、その戦争主義の世界の人間達は日本赤軍と同盟を組み、協力し合ってそれぞれの目的を達成しようとしているのです」
「で、その異世界の道具ってのは何かね?」
三木首相が質問した。対してフローレンスが返答する。
「それは、この日本が終戦を迎えました時、我々が貧困に喘ぎます当時の子供達に授けました道具です。東京の者に杯を、静岡の者に護符を、同じく静岡の者に杖を、そして広島の者に剣を。この、杯、護符、杖、そして剣は我々の世界において最上位の能力を有します道具なのです。終戦の混乱が収まりました時、その授けた四つの道具を持つ子供達に一度封印し、次の代の子に引き継ぎますようにお願い致しました。しかし、剣のみは相手は継ぐ子はおろか結婚もしていませんでしたので、日本赤軍にそのまま奪われましたのです。他の三つ、杯、護符、杖は元の持ち主の子に受け継がれ、赤軍や異世界からの侵略者に対抗しております。その杯、護符、杖を赤軍に渡しますと、間違いなくこの国は赤軍に乗っ取られます」
「じゃあ、あんたらに何か策はあるのか?」
議員の一人がぶっきらぼうに質問した。
「勿論、練ってあります」
イマヌエルはそう言うと手を床にかざす。発言台の上に杯、護符、そして杖が現れた。
「これは私達が授けた道具の偽物です。これを赤軍との取引にお渡しください。そして、我々もグズグズしてはいません。赤軍の総長が四月の下旬に行った戦争を正義とする世界とこちらの世界の接続、それによってこの地に自身のような振動が起きました。それに対して我々は異常事態して日本各地の老若男女に異世界の道具を与え、守るように戦ってきました。ですが、杖、護符、杯の場所が分かってしまった今、これ以上『ここ』に置いて戦わせるのはまずい」
イマヌエルに代わってフローレンスが喋る。
「その為に、一旦杯、護符、杖の所有者を含め、その道具の所有者達を私達の世界に一旦お預かりしまして戦ってほしいのです。私達の世界と協力して戦争を正義とする世界を滅し、藤木茂といいます少年と剣の奪還の為に。そうしますと赤軍の勢いも失えます」
「そして日本国憲法第九条は絶対に改正しないで欲しい。私達からもお願い致します」
副総理は首相に確認をする。
「どうします?総理」
「・・・分かった。その異世界の道具を授けられたものを異世界に派遣して戦争を正義と考える者を静粛して貰う事にする。そして赤軍にはこの偽物を授け、憲法は改正しない!」
三木首相は決断した。
「ありがとうございます。会議の邪魔をしまして本当に申し訳ございませんでした」
「それでは失礼します」
フローレンスとイマヌエルは退室した。
「では、私達も戻りましょう」
「ああ」
二人は自分達の世界へと戻って行った。間もなく始まる大いなる大戦に備える為に。
後書き
次回は・・・
「異世界からの依頼状」
三学期が始まり、かよ子は学校へ急ぐ。3年4組のクラスメイト達と再会したが、一人の男子が未だ行方不明だった。始業式を終えて帰って来たかよ子の元にはある手紙が届いており・・・。
121 異世界からの依頼状
前書き
《前回》
三木首相の元に日本赤軍から憲法九条の改正および杖、護符、杯の所有者の持つそれぞれの道具の引き渡しを要求する手紙が届き、議会は騒然とする。その時、その国会にフローレンスとイマヌエルが現れ、偽物の杖、護符、杯が渡される。それを赤軍の取引に使用し、憲法九条の改正はしない事を誓い続けて欲しいと二人は願うのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その4
煮雪あり (にゆき あり)
かよ子の隣人のおばさんの次女。旧姓・羽柴。初登場41話。現在は結婚し、北海道に住んでいる。なお、「煮雪」という苗字は珍しいがアイヌ民族系の実在する苗字である。アイヌに由来する神を呼べるタマサイを持つ。好きな食べ物はカレーライス、ホットケーキ。
三学期が始まり、かよ子はコートを着て寒さを感じて家を出て行く。
「行ってきま~す!!」
「行ってらっしゃい」
まき子は娘を見送った後、ポストを開けた。その時、二通の封筒があった。まき子が普通の郵便物とは違和感があった。一通は自分宛。そしてもう一通は娘宛だった。
(これは一体・・・!?)
まき子はまず自分宛の封筒を開けた。読むうちに感じ取った。大きな戦いが間もなく始まるという事を。
かよ子は学校に行く途中、ある人物と会った。
「あれ、まるちゃんのお姉さん」
「え?ああ、確か、かよちゃんだっけ?」
「は、はい」
まる子の姉と会った。
「明けましておめでとう。今年も宜しくね」
「は、はい、宜しくお願いします・・・」
かよ子はお辞儀をした所、帽子を落とすといういつものおっちょこちょいをやってしまった。かよ子は帽子を拾い、改めてまる子の姉に質問する。
「と、ところでまるちゃんは?」
「まる子?あのバカ、また寒い、寒いって言って布団にくるまってるのよ。また遅刻ギリギリで来ると思うわ」
「そ、そうなんだ・・・」
かよ子はまる子に新年早々遅刻しないで欲しいと思うのだった。
「あ、よし子さんだ、じゃあね、かよちゃん」
まる子の姉は友達の所へと行き、かよ子と別れた。
かよ子は学校に着いた。
「あ、かよちゃん、あけましておめでとう!」
「たまちゃん、とし子ちゃん、おめでとう!年賀状ありがとう」
「うん、今年も宜しくね」
「それにしてもまるちゃん、まだ来ないね」
「うん、途中でまるちゃんのお姉さんに会ったんだけど、寝坊してるんだって」
「新学期早々寝坊なんだ・・・」
たまえは苦笑した。
「おう、山田あ!」
後ろからかよ子を呼ぶ声がした。
「す、杉山君・・・!!」
かよ子は杉山の顔を見て赤面した。
「年賀状、ありがとうな。今年も何かあったらいつでも助けてやるぜ」
「うん、ありがとう・・・!!」
かよ子はそう言われて嬉しく思った。そして遅刻ギリギリのところでまる子が現れた。
「はあ、はあ、間に合った・・・」
「ま、まるちゃん・・・」
「ああ、皆・・・。明けましておめでとう・・・」
まる子は肩で息をしており、挨拶をするのにも苦労した。そしてすぐに戸川先生が入って来た。
「皆さん、明けましておめでとうございます。冬休みはどうでしたか?」
楽しかったと言った者もいれば、紅白やレコード大賞を見ていたと言う者、旅行に行っていたという声も聞こえた。だが、3年4組全員が出席という訳ではなかった。欠席者一名。しかも、病気や怪我ではなかった。理由は行方不明である。
「ですが、そんな中、藤木君の行方が未だに分からない状況です。藤木君が戻ってくる日を待ち続けるしかありません」
戸川先生は深刻そうに言った。クラスの皆は普段は卑怯者だのと非難しているもののこの日ばかりは不安な反応をしていた。
(藤木君、どこに行っちゃったんだろう・・・?)
かよ子にも藤木の行方は未だ解らない。また、笹山も不安でいっぱいだった。新学期には戻ってきて欲しいと願っていた。だが、登校中遭遇する事もなく、教室に入っても彼の姿はなかった。そして彼が奇跡的にこの教室に入って来てくれる事を祈った。だが、彼はまる子が遅刻ギリギリで来た後も、戸川先生が入って来た後もその場に姿を現さなかった。児童達は始業式の為、体育館に集まった。そして校長のいつもの無駄に長い話を聞く羽目となっていた。だが、校長はここである問題を取り上げた。
「ええ、日本赤軍だの異世界の人間だの変な人間が激しくなっていますね。皆さんも襲われないように気を付けてください。あと、これと関係があるかどうかは分かりませんが、我が校の三年生の男子がクリスマス・イブの日から未だに行方不明となっております。皆さんも誘拐されないように十分気を付けてください」
名前を出すまでもなく、藤木の事だとかよ子は感づいた。さらに校長の話はダラダラ続く。
「そういえば先生もこんな赤軍だの異世界だの何だので気を張り詰めた事は三十年前の戦争の時以来でしょう。あの時は空襲が酷くて・・・」
自身の戦争の体験談を延々と披露していた。25分以上経ってようやく話は終わった。児童達は各々のクラスの教室へと戻る。始業式の日は学校は午前のみの為、帰りの会を終えて皆下校した。
かよ子は帰宅した。
「只今」
「お帰り、かよ子。そうだわ、部屋に大事な手紙が来たから机に置いておいたわよ」
「大事な手紙・・・!?」
かよ子は心臓の動きが激しくなった。一体大事な手紙とは何なのか。かよ子は自分の部屋に入った。机の上には封筒が置いてあり、「山田かよ子様」とあった。かよ子は早速中身を見た。
「これは・・・!!」
封筒の宛名は日本語の仮名や漢字が使われていたが、内容はこの世の物と思えぬ文字だった。杖の使用法を記した説明書と同じ文字だった。だが、かよ子にはその文字が難なく読めた。
迎春 この手紙を受け取った皆様へ
今、日本赤軍が勢いを強めていると共に我々の世界でも戦争を正義とする世界の人間に圧力が強まり、平和を正義とする世界が弱まりつつあります。そんな中、赤軍は日本政府に憲法の改正および私達が戦後貧困に喘いでいた者達に渡した四つの道具のうち、杯、護符、杖を献上する事を要求してきました。残りの一つ・剣は既に赤軍に奪われており、残りの三つが全て揃ってしまえば、この日本は再び戦争への道へと進む事となり、我々の世界も滅する恐れがあります。そうなれば、この地球は無慈悲な戦争を起こす星と化してしまうでしょう。三つの道具を献上する要求についてはこちらで既に対策を練っておきました。そして、今、そちらの世にある杯、護符、杖はこれ以上この地にあるとさらに危険です。所有者は一旦私達の世界に戻すという形で私達の世界に来て頂き、他にも敵と戦う為の道具を授けている者、異能の能力を有している者も私達の世界に来て共闘を願います。平和主義の世界が争いを行うなど矛盾した行為ではありますが、貴方達の住む日本を間違った方向へ向かわない為です。目的は戦争を正義とする世界の撲滅、そして異世界の剣の奪還、そしてクリスマス・イブの日から行方不明となっている藤木茂という少年の奪還です。戦争を正義とする世界の人間に連れて行かれ、前述の政府への取引の道具として利用されている事が明らかになりました。時は一月二十日、近くの神社などへお越しください。そこに祀られている神が我々の世界への道を通してくれるでしょう。我々で兵団を組み、必ず守りましょう。終わりに、私達平和の世界の者達はこの手紙を受け取ってくださった皆様を信じております。では、約束の日にちにお会い致しましょう。
平和を正義とする世界の本部
フローレンス
イマヌエル
(フローレンスさんとイマヌエルさんがくれた手紙なんだ・・・)
だが、この文章に衝撃的な事を知ることになる。クリスマス・イブの夕方から行方不明の藤木が異世界にいるという事を。
(やっぱり、藤木君は異世界に行っちゃったんだ・・・!!)
かよ子は今まで以上の決意でこの戦いに備えなければならないと思うのだった。
後書き
次回は・・・
「大戦の日までに」
かよ子に届いた手紙は隣の三河口にも、すみ子や杉山、大野、長山などにも届く。三河口の三姉妹の従姉にも届いたとの情報が入り、各々も戦いに備えなければならぬと気を張り詰める。そんな時、大野の家では別の問題が・・・。
122 大戦の日までに
前書き
《前回》
三学期が始まり、かよ子は新年最初の登校をする。始業式で校長の長い話を聞いた後、帰って来たかよ子の元には異世界の人間・フローレンスとイマヌエルからの手紙が届いていた。その内容は共に異世界にて戦い、戦争主義の世界の撲滅、剣の奪還、そして行方不明の藤木茂の救出と言うものだった!!
オリジナルキャラ紹介・その5
祝津ゆり (はふりつ ゆり)
羽柴家の長女でさりとありの姉。初登場62話。二人の妹の纏め役。実家にいた頃は妹達の喧嘩を止める役をしていた模様。現在は結婚して神戸に住んでいる。武装の能力を持つ。現時点ではどのような武器を所持しているのかは不明。好きな食べ物は押し寿司、ケーキ、カステラ。
かよ子は手紙を読み終えると母が部屋に入って来た。
「かよ子、手紙を読んだのね」
「うん・・・」
「お母さんの方にも来たわ。私も行く事になるの。かよ子、向こうの世界に行くという事は今まで以上に危険な戦いになるわ」
「うん、おっちょこちょいして迷惑にならないか心配だよ・・・」
「でも、隣のおばさんの家にも来ているし、隣のお兄ちゃんも一緒に来てくれるわ」
「うん、私、今まで以上に頑張るよ!」
かよ子の決心は並ならぬものだった。
三河口は居候中の家に戻って来た。
「只今帰りました」
「健ちゃん、お帰り。そうだ、健ちゃんにも手紙が来てたよ」
「え?はい」
三河口は部屋に行き、手紙を見た。内容はかよ子の所に来たものと同じ内容だった。
(向こうの世界に行くのか・・・。この大戦の時は必ず訪れると俺は予感していた。だが・・・)
三河口は内容にふと気づいた。
(藤木茂ってかよちゃんのクラスメイトだよな・・・。奏子ちゃんの近所に住む笹山かず子って女の子を好きになっていた・・・)
三河口はふと電話を掛けた。
「もしもし。徳林奏子ちゃんのクラスメイトの三河口と申します。奏子ちゃん、いますか?」
掛けた相手は奏子だった。
『もしもし。三河口君、どうしたの?』
「実は帰ったところ、俺宛てに手紙が来ててね。それも異世界からで内容はその手紙を受け取った者は異世界に来てそこの人間と共闘して欲しいというものだったんだ」
『あ、私の所にも来たよ』
「そうか、これは必然か偶然なのか・・・。それより、その手紙によると赤軍は政府に異世界の道具・杯・杖・護符を渡す事と引き換えに行方不明の藤木茂って子を返すとの事だ。これで俺は藤木君は異世界に連れて行かれたと確信したんだが・・・」
『うん、私もそれは嘘じゃないと思う』
「その藤木って男子は確か奏子ちゃんの近所に住む笹山かず子ちゃんが好きだった男子だよな?」
『うん、そうよ』
「やっぱりか・・・。奏子ちゃん、俺達が異世界に行く日が来たら一緒に戦おう』
『うん、私も頑張るわ!』
「それじゃ、失礼」
『うん、またね』
お互い電話を切った。三河口は叔母の元に行く。
「おばさん、これから大変な事になりますね」
「手紙を読んだんね・・・。でも、大丈夫よ。赤軍でも異世界の敵でも、必ず勝たなきゃって思わんとだめよ!」
「はい・・・。ですが、文化祭の時、赤軍の奴に俺の能力を複製され、その機械を量産して奴等も俺と同じ能力を持つとなると・・・」
「大丈夫!そんなんで気にしちゃあかんよ!その対策をこれから練りゃいいんだから!」
「・・・はい」
長山の家にも手紙が来ていた。長山にもその字は読めた。長山は威圧の能力を持っているゆえに三穂津姫から神通力の眼鏡を貰っていたからだろう。
(遂に戦うのか・・・。そしてやっぱり藤木君は異世界にいたのか・・・!!)
長山はこの依頼を断るとバチが当たると思い、決意を固めた。
冬田にも異世界からの手紙が来た。
(ええ、始まるの・・・!?)
冬田は恐怖を感じた。
(大野くうん、私、どうすればいいのかしらあ・・・?)
すみ子の家にも異世界からの手紙は届いていた。
「お兄ちゃん、異世界の人からの手紙が来てたよ・・・」
「ああ、俺もだよ」
「お兄ちゃん・・・、私達、大丈夫かな・・・?」
「そう信じるしかない。兄ちゃんも行くし、すみ子の友達も行くだろ?きっと大丈夫だ」
「うん・・・!!」
すみ子は兄の言葉によって異世界の戦いに参戦すると決めた。
ブー太郎の家にも手紙は来た。
(異世界の剣・・・?もしかして山田かよ子が持ってる杖とあの名古屋の姉ちゃんが持ってる護符と同じ最強の強さを持つ物なのかブー?)
そしてブー太郎もその文を読む事でもう一つのことを理解した。
(ふ、藤木、やっぱり異世界にいたのかブー!!)
そしてブー太郎は自分も異世界で戦わなければならないと自覚する。そして電話を掛ける。
「大野君」
『どうした、ブー太郎?』
「大野君の所に、異世界からの手紙、届いたのかブー?」
『ああ、来たぜ。俺は行くつもりだ。こんなの断るわけにはいかねえ。俺達の未来もかかってんだからな』
「解ったブー。オイラも行くブー!!」
『サンキューな、ブー太郎。流石俺達組織「次郎長」の一人だ!』
「いやあ、それじゃ、ブー」
ブー太郎は電話を切った後、今度はもう一人の親分、杉山に電話を掛ける。
「もしもしブー、杉山君?」
『おう、ブー太郎、どうしたんだ?』
「実は、オイラの所に異世界からの手紙が来たんだブー。杉山君の所にも来ているのかブー?」
『ああ、来たぜ。俺は行くぜ。この頼みを聞いたなら断るわけにはいかねえんだ』
「そうですね、ブー。オイラも頑張るブー!」
『そうだな、一緒に元の世界を取り戻そうぜ!』
「はい、宜しくお願いしますブー!」
ブー太郎は電話を切った。
さくら姉妹の所にも異世界からの手紙が来ていた。
「ええ、異世界行くのお~、面倒くさいなあ・・・」
「あんたねえ、そんな呑気な場合じゃないのよ。そうやってぐうたらできるのも今のうちかもしれないのよ」
「いいじゃん、お姉ちゃん、一人で行ってきなよ~」
「バカ言ってんじゃないわよ!あんた、前に異世界の敵が来た時、あの高校生の人から叱られたでしょ!ちょっとはその石持ってる事に責任持ちなさいよ」
「え~、じゃあ、お姉ちゃんにあげるよ」
「要らない」
緊張感を持つ姉と怠惰な妹であった。
北勢田は異世界からの手紙を読む。
(遂に大きな戦いが来るのか・・・)
北勢田は決意する。この手紙の依頼を断るわけには行かないと。
かよ子の家に三河口が訪れた。
「こんにちは」
「あら、こんにちは」
「お、お兄ちゃん・・・」
「山田さん、そしてかよちゃん・・・。そちらにも異世界からの手紙が届きましたか?」
「ええ、届いたわよ」
「わ、私の所にも来たよ!」
「やっぱりな、藤木茂って子は異世界にいる。彼は確かかよちゃんのクラスメイトだったよな?」
「うん・・・」
「俺の所にも同じ手紙が来た。きっと、今まで以上に激しい戦いになると俺は思う」
「うん、私も気を付けるよ」
「そして、あの剣も絶対に取り返そう。俺の従姉達も来るとの事だよ」
「あの剣・・・!!」
かよ子はその剣を覚えていた。自分の持つ杖と同じ最上位の能力を有する道具である事。夏に赤軍に奪われ、赤軍の長がクリスマス・イブの日に名古屋で使用していた事。
「うん!」
「それじゃ、失礼します」
三河口は家を出て行った。
(絶対にその剣を取り戻し、藤木君も連れて帰る!!)
かよ子は決意した。
杉山はブー太郎と電話をする前にその手紙を読んでいた。そしてブー太郎との電話を終えた後、もう一度手紙を読んだ。
(戦いか・・・)
そして杉山は自分を好きになっている女子が頭に浮かぶ。そして東京のあの気の強いピアノが特異な女子も。
(あいつらもきっと大変な目に遭うんだろうな・・・)
杉山は夏休みに会ったその女子に悪戯はしたものの、どこかで違う思いを感じていた。しかし、あのおっちょこちょいの女子の事も見捨てずにはいられなかった。そして部屋のドアがノックされる。
「さとし」
姉が入って来た。
「ああ、姉ちゃん」
「あんたのとこにもこの手紙来たでしょ?」
「ああ、うん・・・」
「勿論、手段は一つって解ってるわよね?」
「ああ、行くつもりだぜ・・・」
「なら、必死で頑張るのよ。それから大野君とも喧嘩しちゃダメよ」
「わ、解ってるよ」
「そうよね・・・」
姉は部屋を出て行った。
(俺は何の為に異世界に行く?そうだよな、あの赤軍のバカな事を成功させない為、元の日常を取り戻す為だよな!!)
杉山は己を振り返った。
大野はにも異世界からの手紙を読むことはできた。
(行かなきゃダメだよな・・・。杉山達と共に・・・)
大野も覚悟を決めた。自分の為にも親友の杉山の為にも、そして多くの友達、この日本の為にも元の日常を取り戻すと・・・。その晩、大野家の夕食にて・・・。
「父さん、母さん、俺は異世界に行かなくちゃいけないんだ。元の日常を取り戻す為に、この異世界からの手紙がその証だよ」
「あら・・・。そうなの」
大野の両親は息子の決意に反対はしなかった。大野の両親は戦いとは無関係の人物ではあるが、息子の勇気ある行動や山田かよ子を襲おうとした異世界の人間を親友の杉山達と共闘した事、それから様々な事件に巻き込まれながらも打ち勝っていった事から息子を心配するどころか、応援していたのだ。
「解ったわ。頑張っていきなさい」
「でもな、けんいち・・・」
大野の父が少し小声になって言った。
「父さん?」
「実はさっき母さんには言ったんだけど・・・。父さん、四月から東京へ転勤なんだ・・・!!」
大野は父の報告に寝耳に水どころかえっ、と思った。
後書き
次回は・・・
「転校の噂」
かよ子の母は商店街で大野の母と遭遇する。大野の母から主人が転勤で東京に行くという話を聞き、それをかよ子にも報告する。大野の転校も免れないと気づくかよ子ではあるが、その転校の話は広がり、杉山の耳にも・・・!!
123 転校の噂
前書き
《前回》
異世界からの手紙を読んだかよ子達は必ず元の世界を戻すという決意を固める。だが大野の家では大野は父から予期せぬ事が告げられていた!!
大野君の転校の話も映画「大野君と杉山君」から引用しています。
かよ子の母は一人で買い物に出かけていた。何しろ平日の日中の為、娘も夫も家にいない。そんな時、商店街にて大野の母とばったり会った。
「あら、山田さん」
「大野さんも買い物ですか?」
「はい、あ、そうだ、山田さんの所に異世界の手紙なんてのが来てませんでしょうか?」
「はい、来ましたよ。私も娘も異世界へ行く予定になっております」
「そうでしたか。息子一人で不安と思いましたが、山田さんがいて安心です」
「それに、向こうの世界の人達も色々と手助けしてくれるはずですので、大丈夫ですよ」
「はい、あの、それと、もう一つ言わなければならない事がありまして・・・」
「はい・・・?」
「実は、主人が・・・、今年の春から東京へ転勤になりまして・・・」
「え?東京へ?」
体育の授業。この日は体育館でバスケットボールをやっていた。かよ子は杉山に、冬田は大野に見惚れていた。
「いよ!」
「それ!」
バスケのゴールに易々とボールを入れてしまう二人に他の男子達は全く叶わなかった。
「大野くうん、素敵だわあ~」
(す、杉山君、凄い・・・!!)
体育が終わった後、かよ子は杉山に話しかけようとする。
「あ、あの、杉山君・・・。今日のバスケ、凄いかっこよかったよ」
「へへ、そうか、サンキューな」
その一方、冬田は大野に暑苦しそうに近寄った。
「大野くうん、凄いカッコよかったわあ~」
「ああ・・・」
どう反応すればいいのか分からない大野だった。何しろ異世界で戦って元の日常を取り戻す事も必要だが、大野にはもう一つの問題があるのだった。だが、誰にもすぐに告白できなかった。勿論親友である杉山にさえも。
「ところで、山田」
「え!?」
「異世界からの手紙、来たか?」
「ああ、あの手紙?うん、来たよ」
「これから大変な戦いが始まるんだな・・・」
「うん、私のお母さんも行くって」
「そうか、俺も大野も、俺の姉ちゃんも、ブー太郎も行くぜ!」
「うん、ありがとう・・・!!」
かよ子は杉山達といればこの杖はきっと守り抜けられると信じていた。
かよ子は大野、杉山、ブー太郎、そして長山に冬田、まる子、たまえと帰る。
「そうそう、僕の所にも異世界からの手紙が来たんだ。近所のお兄さんの所にも来たって」
「そうなんだ、長山君の所にも・・・」
「アタシの所にも来たけど、わざわざ来てもらってんのにアタシ達が行く事はないと思うなあ~。アタシゃ遠慮させてもらうよ」
まる子は空気を読まない発言をした。
「お前、正気かブー?」
まる子は皆から非難の目を皆から向けられた。
「う・・・」
「さくら、俺達は元の日常を取り戻す為に、異世界の敵だの赤軍だのと闘う為にこの石を持ってんだぜ。自分は面倒くさいから嫌ですで通用する話じゃねえんだ」
「そうよお!私も行くのよお!ね?大野君?」
「あ、ああ・・・」
大野は素っ気なく反応した。杉山は大野がいつもと違うと感じた。彼に何か悩みでもあるのかと・・・。
「わ、解ったよ~、そうだ、たまちゃんも行こうよ」
「穂波はその異世界からの手紙、貰ってるのかブー?」
「い、いいや、私の所には来てないよ・・・」
「じゃあ、穂波は行く資格はねえな」
「そんな、たまちゃんがいないと・・・」
「わがまま言うなブー!」
「そうだぞ、遊びに行くんじゃねえんだ」
「そんなあ・・・」
「まるちゃん・・・」
「たまちゃん・・・」
「私待ってるからね、頑張ってね・・・」
「ごめんね、たまちゃん、連れていけなくて・・・」
まる子とたまえはどこかのドラマのように哀しく向き合った。
「たまちゃん」
かよ子もたまえに呼び掛ける。
「たまちゃんの日常も私達できっと元に戻すからね!」
「ありがとう、かよちゃん」
たまえはかよ子に礼をした。
かよ子は家に帰った。
「只今」
「お帰り。そうだ、今日、買い物してたらね・・・」
母は顔が暗そうだった。
「どうしたの?」
「大野君のお母さんに会ったのよ」
「それで?」
「実は大野君のお父さん・・・、四月から転勤なんだって」
かよ子は一瞬、沈黙に陥った。
「え・・・、って事は・・・」
「そうね、大野君も転校する事になるわね」
「そ、そうなんだ・・・」
かよ子はクラスメイトの一人がいなくなるという事実を知って寂しく思った。
(でも、これを杉山君が知ったら・・・)
大野の転校を彼の親友であり、自分が好きな男子である杉山がそれを知るときっとショックを受けるだろうと思った。そしてかよ子は一つの事を決める。
(大野君が転校するまで、この戦いを終わらせないと・・・!!)
翌日、かよ子は登校の途中、たまえと合流した。
「おはよう、かよちゃん」
「たまちゃん、おはよう、あの・・・」
かよ子はあの事を言おうかどうか迷っていたが、思い切って言う事にした。
「お母さんが昨日、大野君のお母さんと会ってね、そしたら大野君がお父さんの転勤で東京に行っちゃうんだって」
「ええ!?」
たまえは彼女にとって寝耳に水の事だったので非常に驚いた。
「そうなんだ・・・」
「うん、だから私、杉山君と大野君のコンビはずっと続くって思ってたから、寂しくって・・・。せめて大野君が引っ越すまでに何とか元の日常を戻したいんだ・・・」
「うん・・・、そういえば、かよちゃん、異世界に行くんだよね?」
「そうだよ」
「私、かよちゃん、信じてるよ・・・」
「うん、ありがとう、たまちゃん」
かよ子は「一般人」であるたまえの分も頑張らなければと思っていた。
だが、時間が過ぎると、大野の転校の噂は広まって行った。
「ねえ、ねえ、大野君転校するらしいよ」
「ええ、本当!?」
かよ子はなぜこんなに早く噂が広まったのか知る由もなかった。きっと大野の母がクラスメイトの親に会う度にその旨を言ったからなのだろうか。
(こ、この事杉山君が知ったら・・・!!)
かよ子は杉山が親友の転校をどう反応するか気になった。そして大野が教室に入って来た。そして杉山は早速大野に問答する。
「大野お、お前、転校するなんて噓だろ?皆噂してるぞ」
大野は黙ったままだった。杉山はもう一度確認する。
「嘘だろ?」
だが、大野は噂を否定しなかった。
「・・・本当だよ。俺も昨日知った」
そして杉山は大野を問い詰める。
「どこだよ?」
「東京だ」
「東京?遠いじゃねえかよ」
「俺だって行きたかねえよ」
クラス中がこの口論に注目した。杉山が好きなかよ子も、大野が好きな冬田も、例外ではなかった。
「中学も高校も一緒のとこ行くって決めたじゃねえかよ!」
「しょうがねえだろ!親が決めた事なんだ!」
「大野・・・、お前・・・!!」
杉山は感情的になった。
「馬鹿野郎!お前みたいな約束破りどこかへ行きやがれ!!」
「何だと!?」
大野も逆上した。
「俺はな・・・。お前なんかがいなくなっても大将なんだ!」
「俺だってお前みてえな解らず屋と一緒にいたかねえよ!」
「んだとお!?てめえ、ちょっと表出ろお!!」
「ああ、やってやるよ!!」
大野はランドセルを置くとすぐ様教室を出て行った。
「大野君、杉山君!!」
ブー太郎は慌てて二人の後を追いかけた。
(もしかして、決闘でもするつもりなの・・・!?)
かよ子はその予感しかしなかった。
「ちょ、大野君、杉山君!」
まる子とたまえも追いかける。
「ま、待ってえ、大野くうん!!」
冬田も必死で追いかける。
(もし、二人が喧嘩するのなら、止めなくちゃ・・・!!)
かよ子も大急ぎで教室を飛び出した。
後書き
次回は・・・
「『次郎長』の内粉」
大野の転校に納得いかない杉山は、大野と体育館裏で決闘する。かよ子やブー太郎、冬田達が止めに入ろうとする。そして石松もその場に駆け付け、内紛を起こした二人にある罰を与えると通告し・・・!!
124 「次郎長」の内紛
前書き
《前回》
買い物の途中で大野の母にあったまき子は、夫が東京へ転勤になるという情報をかよ子に伝える。かよ子はそこで大野が転校してしまうという事実を知る。大野の転校の噂はクラス中に広まり、杉山にもその噂は耳に入る。そして大野に問い詰め、否定しなかった大野に対して杉山は大野と運動会以来の喧嘩をしてしまう!!
オリジナルキャラ紹介・その6
徳林奏子 (とくばやし かなこ)
三河口が通う清水市内の高校の友人の一人。初登場30話。笹山の近所に住む。三河口に好意を寄せている。防御特化の武装の能力を宿す。77話にて異世界の人物・エレーヌより貰った防御・迎撃・飛行が可能な羽衣を使用する。好きな食べ物は肉団子、パフェ。
大野と杉山は校舎の裏へと行く。それを追う、かよ子、ブー太郎、まる子、そしてたまえ。
(杉山君・・・、止めて、大野君と喧嘩しないで・・・!!)
かよ子は願う。運動会の時のように喧嘩などすると自分の心まで傷ついてしまうからである。
「もしかして、あの石、使ってるかな・・・?」
「だとしたら、ヤバいブー!」
大野と杉山は校舎裏に来た。
「大野、俺はお前がいなくても大将だという事を解らせてやる」
「こっちだってお前みたいな解らず屋全力でぶっ飛ばしてもらうさ」
お互いは異世界の石を持っている。
「この野郎!」
大野は草の石の能力を行使した。草が伸びて杉山を巻き付こうとする。対して杉山は雷の石の能力を行使する。大野が出した草に電撃を通す。だが、草には全く聞いていなかった。実は植物は電気を通さないのだ。杉山は草に巻き付かれる。そして大野は杉山を巻き付けた草で杉山を振り回した。
「うお、うお・・・」
杉山は目が回りそうになった。だが、このままやられるわけにはいかない。杉山は振り回されながらももう一度電撃を行う。今度は電撃は槍のようになって大野を狙った。
「させるかよ!」
大野は目の前に大木を出して電撃を防いだ。そして大野は杉山を校舎の壁にぶつけようとした。だが、その時・・・。
「大野くうん、やめてえーーー!!」
冬田が急に現れた。そして大野に掴みかかった。
「は、放せよ、冬田!」
「嫌よお!こんな事で喧嘩するなんてえ、大野君らしくないわあ!」
冬田は涙目で訴えた。その一方、杉山は壁にぶつけられようとされた所で草が解けて地面に落ちた。
「やってくれたな・・・!!」
杉山は大野に電撃を浴びせようとする。だが、何者かが妨害した。
「や、山田・・・!!」
かよ子がその場に立って遮っていた。杖を使った様子が見られない。おそらく彼女に宿されている防御特化の武装の能力が行使されたのだろう。
「杉山君、お願いだから喧嘩しないで・・・。これ以上やるなら私も本気出すよ・・・!!」
かよ子は杖を今でも使おうかと考えていた。
「大野君、杉山君、止めるブー!!」
ブー太郎、まる子、たまえもその場に到着した。
「やめてよ、こんな事で喧嘩するの・・・」
「そうだよ、二人共落ち着いてよ!」
「う、うるせえな・・・。あいつが勝手に東京に行っちまうから・・・」
「親の転勤なんだから仕方ねえだろ!!」
「同じ事繰り返し言ってんじゃねえ!」
杉山は雷の石をもう一度使って放電しようとした。その時・・・。
「よさぬか!!」
上から声が聞こえてきた。森の石松だった。石松は刀で杉山の放電を吸収した。
「い、石松!?」
「醜い内紛などしおって・・・。この大事な時にそんな事をしておる場合なのか!?」
「う・・・、く・・・」
二人は石松の正論に何も言えなかった。
「内輪揉めを続けるのであるならば、お主らの石を没収するぞ!!」
「う・・・、わ、解ったよ・・・!!」
杉山は雷の石を捨てるように投げた。
「俺はこんなのなくても大将なんだ!!」
そう言って杉山は走り去った。
「す、杉山君・・・!!」
かよ子は追いかけようとした。
「待て、山田かよ子」
「え?」
「お主にも伝えておかねばならぬことがある」
「伝えておかなきゃいけない事って・・・?」
「フローレンスとイマヌエルからの手紙を読んで存じていると思うが、その杖は赤軍が政府によこせと命じておる。だが、二人はその対策として偽物を総理大臣とやらに寄こした。こちらの策が知れたら水の泡となる為、約束の日までにその杖の使用を控えてくれぬか」
「うん、解った・・・」
「大野けんいち」
石松は大野に顔を向ける。
「その草の石はどうする?大戦の時までに自分が持っているか、それとも内輪揉めを続けるつもりなら某に返すか?」
「いや、使わねえよ・・・。約束すらあ」
大野は俯いた。かよ子は杉山が捨てて行った雷の石を拾う。
「大野君」
かよ子は自分が好きな男子の親友に質問を試みる。
「何だよ?」
「この『雷の石』、大野君が持っていてよ」
「何でだよ!?アイツの石なんかを俺が持ってどうすんだよ!?お前は杉山が一人でも十分大将だって認めたのか?俺が石二つ持ってねえと弱いってのか!?」
「そうじゃないよ!私は杉山君の大野君のコンビが一番なんだよ!それに私は杉山君が好きだし、きっとあのセリフも本心で言ったんじゃないと思うんだ!私だって杉山君と大野君がいたからおっちょこちょいしても立ち直れたんだよ!この杖をお母さんから受け継いだ時、アレクサンドルとアンナを倒せたのも、オリガを倒せたのも、大雨や文化祭の時に赤軍が襲ってきた時に返り討ちにできたのも、二人がいたから頑張れたんだよ!私一人だけだったらおっちょこちょいで何もできなかったもん・・・」
かよ子は涙目になる。そして深呼吸して話を続ける。
「だから、その証として大野君が持っていて・・・。捨てたり、しないで・・・」
「わ、解ったよ・・・」
大野はひったくるように雷の石をかよ子の手から取り上げた。そして先に、教室に戻って行ってしまった。
「もう、朝の会の時間だ、戻らなきゃ・・・。あ、石松・・・」
かよ子は石松に顔を向ける。
「今行った事、絶対に守るよ。そして・・・、絶対におっちょこちょいしないよう気を付けるよ!」
「承知した」
かよ子達は戻る。一方、冬田はまだ泣いていた。
「冬田さん、まだ泣いてるの?」
たまえが聞く。
「だってえ、本当は私だってえ・・・。大野君がいなくなっちゃうととても寂しいのよお・・・!!」
「冬田さん・・・」
「そ、そうだよな、ブー。オイラだって大野君と杉山君が最強のコンビが離れ離れになるなんて正直信じられないブー・・・。いや、信じたくないブー!!」
ブー太郎も涙目だった。
「ブー太郎・・・」
皆は大野が東京に行ってしまうと思うと寂しさが離れなくなってしまうのだった。
杉山は教室に戻ったきり、何もせず先程の喧嘩の回想に耽っていた。
《しょうがねえだろ!親が決めた事なんだ!》
《馬鹿野郎!お前みたいな約束破りどこかへ行きやがれ!!》
《俺はな・・・。お前なんかがいなくなっても大将なんだ!》
《俺だってお前みてえな解らず屋と一緒にいたかねえよ!》
杉山はふと肩が震えていた。かよ子達が教室に戻ると、杉山が肩を震わせているのが見えた。かよ子は思い切って杉山の所に行く。
「杉山君・・・」
「何だよ?」
杉山は僅かながらにも泣いていた。
「あの・・・」
雷の石を大野に預けたと言おうとしたが、余計に癇癪を起すと思い、別の話に切り替えようとした。
(あぶない、おっちょこちょいする所だった・・・)
「私、杉山君は本当は寂しいんでしょ?でも、素直になれなくてあんな事言っちゃったんじゃないの?」
「う、うるせえなあ、今は一人にしてくれよ!」
「う、ご、ごめんね・・・。でも、異世界には一緒に行ってくれる?」
「・・・さあな」
杉山はそれ以上は答えようとしなかった。かよ子もそれ以上質問するのは止めた。
かよ子は休み時間、まる子にブー太郎、冬田、そして長山と会話していた。
「ねえ、放課後、一緒に秘密基地行かない?」
「そうだなブー、オイラも丁度同じ気分だったブー?」
「なら、大野君も連れて行き・・・」
「冬田さん、止めといたほうがいいよ。大野君はそんな気分になれないと思うよ」
「う、うん・・・」
長山は大野の転校の噂が流れた後、大野と杉山が喧嘩したという事情をかよ子達から聞いていた。
「兎に角、僕達だけでも気晴らしに行こう」
「うん、そうだね・・・」
後書き
次回は・・・
「秘密基地での誓約」
秘密基地に向かったかよ子達は隣町の小学校の面々と顔を合わせる。そんな時、大野の転校の悲報を彼らにも伝えるのだが、その一人である、すみ子も転校することになるという事実を知る事になり・・・。
125 秘密基地での誓約
前書き
《前回》
大野が転校するという噂を聞いて衝撃を受けた杉山は運動会以来の大野と喧嘩をしてしまう。体育館裏でそれぞれの石を使用して戦う二人だったが、かよ子や冬田、ブー太郎、まる子、たまえ、そして森の石松に阻止される。これ以上喧嘩するなら各々の石を没収すると宣言した石松に対し、大野は喧嘩をしないと誓うが杉山は石を捨ててしまう。かよ子は友達だった証として大野に雷の石を渡したのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その7
濃藤徳崇(のうどう のりたか)
三河口のクラスメイトでアニメ「ちびまる子ちゃん」2期271話「ヒミツ基地乗っ取られる」の巻に登場したすみ子の兄。初登場8話。見聞の能力と防御特化の武装の能力を持つ。その場の運命を己の意志で操作できる運命の剣を振るう。ただし、異能の能力を注ぎ込まないと強力な効果は発揮できないので使用者の加減も必要な道具である。好きな食べ物は天丼、アメリカンドッグ。
三河口が通う高校。三河口は濃藤、北勢田、そして奏子と共にある事を確認し合う。
「さて、皆の所にも異世界からの手紙が来てたか。これは今まで以上の戦いになるな」
「ああ、あの・・・」
「なんだ、濃藤?」
「実は俺・・・、春から引っ越すんだ。転校する事になる」
「何!?場所はどこだ!?」
皆は驚いた。
「京都だよ」
「京都か・・・。遠いじゃねえか。兎に角、濃藤の転校の前までにこの戦いを終わらせる事にしよう!」
「うん!!」
四人は既に覚悟を決めていた。
放課後、かよ子達はあの秘密基地に行った。ブー太郎とまる子、冬田、そして長山も誘った。
「それにしても大野君が転校しちゃうなんて寂しいね」
「うん、今朝、それで喧嘩したんだ・・・」
かよ子は朝の出来事を長山に説明した。
「それで杉山君が怒ってその石を捨てちゃったんだ。私、大野君に渡したんだけど、大野君もそれが気に入らなかったみたいで・・・」
高台の秘密基地に到着した。今でも壊れる事なく立っている。
「この杉山君と大野君、ブー太郎、そしてまるちゃん達『次郎長』が造った秘密基地・・・。四人がもう一度ここに集まる事、あるかな・・・?」
「あって欲しいブー・・・」
その時、別の誰かが現れた。
「おうい、お前らもいたのか」
隣町の学校の組織「義元」の面々だった。
「あ、久しぶり・・・」
すみ子達から見てかよ子達は浮かない顔をしていた。
「どうかしたのか?」
山口が聞く。
「実は、大野君と杉山君が喧嘩したんだブー・・・」
ブー太郎が答えた。
「大野と杉山が喧嘩!?」
すみ子が悲愴に思った。
「そうなんだ、寂しくなるね・・・」
「あの、実はな、こっちも寂しい事が起きちまったんだ・・・」
「それって何だブー?」
川村が答えた。
「実は、すみ子も転校する事になっちまったんだ・・・」
「ええ!?」
「どこに転校するんだブー!?」
「・・・京都の方なの・・・」
すみ子は小声で答えた。
「京都お?遠いわねえ・・・」
「うん、だから、私・・・」
すみ子は少し泣きながら言葉を続けようとする。
「転校する前にこの戦いを終わらせたいんだ・・・」
「戦い・・・。じゃあ、すみ子ちゃん達の所にも異世界からの手紙が来たんだね?」
かよ子は確認した。
「ああ、俺達は行くつもりだぜ」
「オイラ達も行くブー」
「絶対に元の日常を取り戻そう!」
「うん・・・!!」
「ただ、問題は大野君と杉山君が喧嘩した事で、オイラ達、異世界でやって行けるか心配だブー・・・」
「大丈夫でやんす!オイラ達も協力して敵を倒そうでやんす!」
「そ、そうだなブー」
皆は誓い合った。異世界で戦争を正義とする世界を滅亡させる事、そしてこの日本を日本赤軍の思うがままにさせないという事を。
三木首相はこの三つの道具、杯、護符、そして杖を確認する。これを約束の日に赤軍に渡す予定でいる。無論これは平和を正義とする世界の人間から貰った偽物である。もし赤軍が偽物だと気づいた場合、自分達はどうなるのやら、そこまで予想する事はできなかった。
(どうか、この作戦、上手く言ってくれ・・・!!そして、絶対に戦争への道へは進ません・・・!!)
首相は約束の日が近づくにつれてソワソワするのであった。
かよ子は秘密基地のある高台から家に帰る。途中、三河口と遭遇した。
「お、かよちゃん」
「隣のお兄ちゃん」
「何かあったみたいだね」
「うん、実は大野君が東京へ転校しちゃうんだ・・・。それで朝、杉山君と喧嘩したんだ・・・」
「喧嘩?こんな大事な時に・・・。しかも、合唱コンクールの時に仲直りしたばかりなのにかよ」
「うん、だから、心配なんだ・・・」
「そうか、俺の友達の濃藤って奴も京都へ転校しちまうんだって。すみ子ちゃんも勿論転校だろうな」
「うん、さっきすみ子ちゃん達に会って聞いた・・・」
「かよちゃん、この戦い、遅くとも三月までには終わらせないと駄目だね」
「うん、私もそのつもりでいるよ・・・。後、絶対に元の日常を取り戻して、杉山君と大野君を仲直りさせるよ・・・!」
「おっちょこちょいしてでも果たそうね。それじゃ」
「うん、バイバイ」
お互いはそれぞれの家に入った。
「只今」
「お帰り、かよ子。そうだ、今度三連休でしょ?りえちゃん達が遊びに来るわよ」
「あ、うん、そうだったね・・・」
かよ子はあの杯の所有者の事を考えると共に夏休みに会った日々も思い出す。
(あの時か・・・。そう言えば杉山君、りえちゃんと喧嘩するくらい、仲良かったんだっけ・・・)
かよ子は所持者の少女が自分にとって恋敵でも会った事を思い出した。
(りえちゃんに、この事、話してみようかな・・・)
かよ子は再会を楽しみにすると共に彼女にも解決に協力しようかと考えるのであった。
平和を正義とする世界の本部。フローレンスとイマヌエルは政府に寄こした三つの最上位の道具の偽物を渡した事について成功を願っていた。
「フローレンス、政府が赤軍に『アレ』を渡す日と、見方をこちらに集める日、日程を敢えて重ねているが、向こうも気付いているんじゃないのかい?」
「その可能性もあります。ですが、どちらにせよ、赤軍はあの四つ全てを手にしまして向こうの世界に改造させますに違いありません。そうしましたら、勝ち目はなくなります」
「だろうね」
その時、その場に光が現れた。そして手紙が出現した。
「手紙・・・?」
フローレンスは手に取る。
「静岡県に派遣させています森の石松からですわ」
二人は手紙を読む。
フローレンス
イマヌエル
我が地で大変なことが起きた。「石」を持たせた大野けんいちと杉山さとしが喧嘩を起こした。大野けんいちが転校という別の地の学び舎へ行く事が発端となった。某は没収を警告したが、杉山さとしは彼が持っている雷の石を捨てた。なお、その石は杖の所持者である山田かよ子が大野けんいちに持たせている。この内紛をどう処遇すべきか、ご両人に意見を求めたい。
森の石松
「大野けんいち君と杉山さとし君が喧嘩だと!?」
「困りましたわね。山田かよ子ちゃん達もかなり感傷的になっていますでしょう・・・」
「兎に角、石松に返事を出さないとね」
「返事は私が書きますわ」
フローレンスが返事を引き受けた。
レバノンの赤軍本部。そして戦争を正義とする世界との出入口。房子はレーニンと会話する。
「レーニン様。もう準備は整いました」
「だが、偽物だったらどうする?」
「それはもうありません、たとえそうなりましても強行で奪い取ります。何しろ政府に宣告したのですから」
「解った。だが、『向こうの世界』も政府も所有者達も必ずしも指を銜えているわけではない事を頭に留めておけ」
「畏まりました」
奏子は帰宅中、ピアノの稽古に行く笹山と遭遇した。
「あ、かず子ちゃん、ピアノ?」
「うん」
「そうだ、かず子ちゃん、お姉さん変な事言うかもしれないけど、今度から異世界へ行くの」
「異世界へ・・・!?」
「うん、だから、藤木君をきっと探してきて連れて来て帰るからね」
「うん・・・。あの、お姉さん・・・」
「なあに?」
「私、藤木君に冷たくした事、謝りたいの・・・。それに、藤木君がいなくなったのも私のせいだって思ってるから・・・」
「そうね。きっと藤木君も寂しがってるわ」
「うん、じゃ、行ってきます」
「バイバイ」
笹山はピアノ教室へと向かう。奏子は今笹山に行った約束を必ず守ろうと思うのだった。
そして学校が休みの日になった。東海道新幹線の新大阪行きの列車が東京駅を発車した。
「皆、どうしてるかしら・・・?」
「きっと元気でいるわよ」
その新幹線列車の中には異世界の道具で最上位の能力を持つ杯の所有者・安藤りえが両親と共にいた。
そして大きな戦いの日は近づいて行く。
後書き
次回は・・・
「杯の所持者の再訪」
異世界の最上位の道具の一つ・杯の持ち主である安藤りえと再会したかよ子。そしてりえの家族を山田家に呼び寄せると共に、杖、護符、杯の先代の所有者が集合する・・・!!
126 杯の所持者の再訪
前書き
《前回》
高台の秘密基地に訪れたかよ子達は隣町の小学校の面々と再会する。大野と杉山が大野が転校する事で喧嘩した事を伝えたかよ子達だが、実は隣町の小学校のすみ子も京都へ引っ越す予定である事を告げられ、異世界での戦いを勝利で終わらせると皆で誓うのだった!!
杉山は大野と喧嘩した事、そして自ら雷の石を捨てた事を思い出していた。
(俺だって本当はあんな事言いたくなかった・・・。なんで俺はこんなに最低な奴なんだ・・・)
杉山は確かに石松から貰った石を赤軍や戦争主義の世界の人間に対してではなく、本来共闘すべき人間に対して使ってしまっていた。一度目は秘密基地を山口や川村達から取り返す為の戦いに使用し、二度目は安藤りえの持つ杯の能力を試す為に彼女を挑発して使用し、さらに三度目は大野が転校するという事で喧嘩の道具として使ってしまった。
(俺達は離れてても最強コンビのはずなんだよな・・・!!)
杉山は己を呪う。そして元の日常をぶち壊した赤軍や異世界の悪人諸共憎む。しかし「奴等」を倒せたとしても大野の転校は取り消せない。別のベクトルで元の日常が壊される事になった。
(今の俺には『道具』はねえ・・・)
杉山は異世界からの手紙をもう一度読む。このどこの世界の字でもない字は杉山には読めた。そして躊躇う。今の自分が異世界に行って一体何ができるのか・・・。
かよ子は両親と共に静岡駅を訪れていた。また隣のおばさんも同行していた。目的は異世界において最上位の能力を持つ四つの道具の一つである杯を持つ者を出迎える為である。そして午後14時過ぎに新幹線列車が来た。
「あ、かよちゃん、久しぶりっ!」
「りえちゃん・・・!!久しぶりだね・・・!!」
杖と杯、それぞれの所有者は再会を喜んだ。
「安藤さん、どうもあけましておめでとうございます」
「本年もよろしくお願いいたします、山田さん」
お互いの親も挨拶する。
「こちら隣に住んでいる羽柴奈美子さんです」
かよ子の母が紹介する。
「初めまして」
「はい、どうも宜しくお願い致します」
「隣のおばさんが、荷物とかを運んでくれるって」
「まあ、それはそれはありがとうございます」
皆は駅を出た。そして安藤家は奈美子の車に乗せて貰った。
「じゃ、かよちゃん、また後でね」
「うん」
奈美子の車に乗せて貰ったりえはかよ子と別れた。そしてかよ子達は家に戻る。かよ子はある事を考えていた。
(杉山君が喧嘩したって事、りえちゃんに相談したほうがいいのかな・・・?)
夏休みにりえが杉山と会った時、二人は一見喧嘩ばかりしていたが、杉山はどこかでりえを気遣っているような行動が見えた。杉山もりえに少し気があるように見えたので、もしかしたら何か役に立てるかもしれないと感じた。
りえ達は祖母の家に荷物を預けた後、かよ子の家へと向かった。奈美子の車に引き続き乗せて貰って。奈美子は運転中、ある話をする。
「ところで、秋頃、東アジア反日武装戦線が赤軍と組んで襲ってきたって話、娘から聞きましたよ」
「え?ああ、あの札幌から来たって人のお母さんですか?」
「はい、ウチの次女です。そして私の三女がりえちゃんの杯やかよちゃんの杖と同じ最上位の能力を持つと言われる異世界の護符を持っています」
「そうだったんですか!?」
りえは思い出した。夏休みに会った高校生男子の従姉が異世界の護符を持っていると言った事、東京で東アジア反日武装戦線の人間と共闘した女性は彼女の妹が異世界の護符を持っていると言った事を。では、この女性は嘗て異世界の護符を持っていた人物である、とりえは解釈した。
「うん、今後一緒に戦う事になるかもしれんね」
「はい」
羽柴家に取り残されていた三河口と利治は退屈しのぎに碁を打っていた。
「それにしても俺達が異世界に行くとなると叔父さん一人でここに残す事になりますからどこか申し訳なく感じますね」
「まあ、仕方ないさ。今の俺にできる事は皆を応援する事だからね」
「はい・・・」
外で車のエンジンの音がした。おそらく奈美子が運転している車が戻って来たのだろう。
「どうやら戻って来たみたいですね」
しばらくして奈美子が家に入って来た。
「二人共、『杯の所有者』が来たよ」
「はい、今、参ります」
二人は隣の山田家へと向かった。
山田家に到着したりえ達は居間にてかよ子とある話をした。
「そう言えば清水で藤木君って子が行方不明になったって聞いたわ」
「うん、そうなんだ。実は私が野良犬に襲われそうになったところを見捨てて逃げちゃって、それでクラスの皆から卑怯呼ばわりされて落ち込んじゃったんだ」
「えっ、そうなのっ!?」
「それで皆から白い目で見られてもしかしたらそれが原因で異世界に行っちゃったのかもしれないって思うんだ」
「あの優しい藤木君が・・・」
りえは寄せ書きの色紙を思い出した。杉山の「絶対に夢、叶えろよ!」の言葉に気を取られていたが、藤木はそこに「この次は僕が守ります」と書いてあった。
「藤木君にも、ちょっと怖がりな所があったのね」
「うん・・・」
「藤木君も助けに行かないとね」
「う、うん・・・!!」
かよ子達にとっては藤木の奪還も必要不可欠であるのは事実だった。だが、かよ子以上に藤木がいなくなって心配しているのは笹山なのだが。
(あの事、言おうかな、どうしようかな・・・?)
かよ子は杉山の事を言おうかどうかそわそわしていた。その時、三河口と奈美子の主人が家に入って来た。
(ああ、おっちょこちょいしちゃったよ・・・)
かよ子は言うタイミングを失った。
山田家にはかよ子やりえとそれぞれの家族が集まっていた。
「あ、いつかのお兄さん」
「安藤りえちゃん、だったね」
りえは三河口を見て思い出した。
「はい」
「あれから色々大変だったろうね」
「はい」
「俺の従姉とその旦那が赤軍と手を組んだ東アジア反日武装戦線の連中を追い払って助けたとは聞いたが、クリスマス・イブの日もそっちは大変だったみたいだね」
「そ、そうだったの!?」
かよ子は思い出した。クリスマス・イブの日。合唱コンクールが終わった後、名古屋に住むさりが赤軍に襲われ、皆で助けに行った時であり、丁度藤木が失踪した日でもある。
「ええ、こっちにも赤軍が来て大変だったわ」
「そうだったんだ・・・。こっちも大変だったよ」
「そうそう。護符を持ってるウチの娘が襲われてね、私達もかよちゃんも、皆で名古屋まで瞬間移動で助けに行ったんよ。その瞬間移動は娘の護符の能力(ちから)」によるもんだけどね」
「そうだったんですか・・・」
「何とか守れたけどね」
「りえちゃん、東京ではどんな事があったのか教えてくれないかしら?」
「はい、分かりました」
りえは説明を始めることにした。
後書き
次回は・・・
「杯の所有者のクリスマス・イブ」
りえがクリスマス・イブに起きた赤軍との戦いを語り出す。彼女は友達と下校中に赤軍に杯を奪われかけていた。赤軍の好きを見せぬ猛攻にりえ達は苦戦しており・・・。
127 杯の所有者のクリスマス・イブ
前書き
《前回》
杉山は大野と喧嘩し、自身の道具である雷の石を放棄した事で自分に何ができるか分からなくなっていた。一方、かよ子達は静岡駅で杯の所有者である安藤りえを出迎える。かよ子の家に山田家、安藤家、そして羽柴家のおばさんと甥の三河口が集合し、りえはクリスマス・イブの日に赤軍に襲われていたのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その8
北勢田竜汰 (ほくせだ りょうた)
長山の近所に住む高校生男子で三河口の友人の一人。初登場18話。長山と親しいと共に彼の妹の小春の体調も少し心配している。見聞の能力と攻撃に特化した武装の能力を持つ。電脳の矛を武器として、電撃を喰らわせたり、想像した物を機械やロボットとして出現させて戦う。好きな食べ物はおでん、ほうれん草のおひたし。
りえはクリスマス・イブの日に自分に何があったのか説明を始めた。
「あの時、ウチの所に今度は赤軍も来たの」
「ええ!?」
かよ子は驚いた。そして叫んでしまった事を恥ずかしく思って縮こまった。
クリスマス・イブの日の東京。りえの学校は終業式だった。下校時刻となり、りえは友達のみゆきに鈴音と帰ろうとしていた所・・・。
「ん・・・!?」
変な音が聞こえた。
「何?この音」
りえだけではなく、鈴音とみゆきにも聞こえたらしい。
「嫌な音ね。どこから聴こえるのかしら?」
(・・・やってみるか)
りえは気になって杯を取り出した。
「りえちゃん、何するの?」
「この音を吸収するの。それで音の精霊を出すのよ」
りえはこの異様な音を吸収する。そして音の精霊が現れた。鳥のような精霊だった。
「我が名はハミング」
「ハミング。この変な音がどこから聴こえるか調べてくれるかしら?」
「ああ、いいともさ」
ハミングは空を周り、偵察行為を始めた。
「それにしても、私達がこの音に反応して、他の人が全く気にしていないのがどうも変だよね・・・」
みゆきは怪しんだ。周りの人には全くこの嫌な音がなぜ三人以外の周囲には何も反応がないのか異様だった。
「もしかして、私達にしか聴こえない音だったりして・・・」
その時、ハミングが超速で戻って来た。
「お主達、大変だ!この音は赤軍が発している!そして奴等はすぐ近くをうろついていやがる!!」
「何ですってっ!?」
りえは驚いた。
「それもこの音はお主ら異能の能力を持つ奴にしか聴こえない。迂闊に近づくと終わりだぞ!」
「ええ、解ったわっ!」
りえはできれば戦闘を避けたかった。以前、りえ達は都内でビルの爆破事件を引き起こしている東アジア反日武装戦線の人間に襲われかけた事があった。しかもその人物達は異能の能力を発動できる機械を赤軍の人間から渡されたと聞く。自分達に接近している赤軍の人間ももしかしたら同じ機械を所持しているのかもしれない。りえは杯を、みゆきと鈴音も道具を取り出して備えた。校外に出たが、一向に攻めてくる気配がしない。勿論嫌な音も聴こえ続けている。しかし・・・。
「よう、嬢ちゃん達、知らんぷりしてその場を過ごそうと下って無駄だぜ」
三人は正面を見た。一人の男が歩いてきている。
「誰っ!?赤軍っ?反日なんとかという組織っ?」
「ほう、もうバレバレか。日高、もういいぜ」
三人の後ろからもう一人の男が現れた。りえ達は完全に挟み撃ちにされた。
「ああ」
「悪い事は言わない。その杯をくれたら立ち去るよ」
「嫌よっ、絶対に渡さないわっ!」
「そうは行くかな?俺の『認識術』でお前は俺に従う事になるのだ」
「させないよ!」
みゆきが前に出る。彼女は防御に特化した武装の能力を有している為に、その男の攻撃を自分の能力で防ぎつつ、異世界のブーメランで迎撃しようと考えていた。
「それで俺が抑えられると思ってんのか?」
男はそう言うと、みゆきも鈴音も、そしてりえも恐ろしさに怖気づいた。
(あの男子の威圧の能力とはこんなものなのか・・・。凄いな・・・)
男は嘗て清水で異世界の杖を頂こうとした時に、とある高校生男子に睨まれて自分の攻撃が通じないどころかそれだけで威圧され、無様に吹き飛ばされた事を思い出した。同じ日高と呼ばれたもう一人の男もこの地で杯を奪おうとした際に同一人物と思われる男子高校生に同じような目に遭ったとか。
(この機械さえあればもう怖いものなしだな)
そして西川に山田という男が文化祭に侵入してその男子の異能の能力を全て複写させ、同じように似た能力を発動させる機械を開発させた。男は近づく。
(この女子は杯を俺に差し出すべき物と認識させる・・・!!)
男は認識術を使った。りえは催眠されたかのように男の頭の中で思っているがままの如く、杯を差し出しそうになる。
「り、りえちゃん、ダメ!!」
鈴音は叫ぶ。みゆきはりえを抑えつけた。その時、「バギッ!!」と音がした。
「何だ!?」
「丸岡、機械が壊れたぞ!」
日高が叫んだ。
「何だと!?」
「今だ!」
みゆきはブーメランを投げる。丸岡のどてっ腹に命中し、丸岡はその場から遠ざけられた。そしてりえは我に返った。
「はっ、私は一体っ・・・?」
「りえちゃん、今あの男に杯をあげようとしてたんだよ!」
みゆきが説明した。
「そ、そうだったのっ!?」
りえは己の失態を知った。対して日高の方は鈴音が対抗した。鈴音が錫杖を振る。冷気が放射され、日高は冷気に包まれ、足が凍り付いた。
「このやろ・・・!!」
日高は道路のアスファルトを粉砕して。氷漬けから脱した。砕け散った氷を蹴る。その威力は弾丸の用だった。だが、鈴音はそれを錫杖の炎で溶かした。だが、日高も容赦するはずがない。鈴音が出した炎を魔術か超能力のように強化させ、三人を焼殺しようとした。
「させないわよっ!」
りえが杯を出した。炎を吸い込み、炎の精霊を召喚した。
「サラマンダー、向かい火で抑えてっ!」
「了解!」
サラマンダーは向かい火で三人を防いだ。一方、丸岡を相手にしていたみゆきはブーメランをもう一度投げて丸岡に対抗した。だが、丸岡は自分のもう一つの術である矛盾術を使用した。ブーメランは丸岡に命中することなくそのまま戻ってしまった。
「もう、しぶとい能力だね!」
みゆきはもう一度ブーメランを投げる。
「何度やっても同じだ!」
丸岡はまたブーメランを矛盾術で通さないようにした。だが、そのブーメランは光線を発射した。しかし、それも丸岡の矛盾術で無効化された・・・、と思ったが、
「うおっ!!」
光線がなぜか丸岡に命中した。丸岡は眩しくて目を瞑り、遂には光線の勢いで後ろへまた引きずり降ろされた。
(なぜだ!術は途切れさせなかった筈だ!!)
丸岡はなぜこのような事態になったのか、そして異能の能力を使う為の機械が破壊されたのか理解できなかった。そして日高の方は向かい火に苦労していた。そして風が吹いた。りえはチャンスと思い、その風を杯に出し、杯から風の精霊が現れた。風の精霊は少女のような姿だった。
「私はシルフ。風の聖霊よ」
「あの炎を風で強くしてっ!」
「了解!」
シルフは風を起こし、日高を襲う炎の威力を強めた。日高が火の海に飲まれそうになる。そんな時、どこかからヘリコプターが飛んできた。そして上空から水のようなものが滝のように落ちて来て、炎を消した。
「修、敏彦!」
その場にはいつの間にか一人の女性がいた。
「そ、総長!!」
(ソーチョー?)
りえはこの女性が誰か気付いた。かの日本赤軍のリーダーであるという事を。
「ここは撤退よ。ヘリコプターに乗りなさい」
「りょ、了解!」
丸岡と日高はヘリコプターから出てきた縄梯子で逃げる。りえはシルフとサラマンダーに命じる。
「シルフ、逃がしちゃダメっ!」
「了解」
シルフは突風を引き起こして縄梯子を揺らし、サラマンダーは縄梯子を燃やそうとした。しかし、総長と呼ばれた女性が剣を一振りする。二体の精霊の攻撃を無効化したどころか、精霊達を消滅させた。
「何?あの剣・・・」
りえ達は女が持っている剣は何なのかと気になった。
「二人は本部へ戻りなさい。私は名古屋へ行くわ」
女性は丸岡と日高にそう言ってヘリコプターの内部に入り、ヘリコプターはそのまま去って行った。
「二人共、大丈夫っ!?」
りえは友人たちの安否を確認した。
「ええ、大丈夫よ」
そして背後からある女性が現れた。
「杯は何とか守り切れましたわね」
その女性は平和の世界の人間・フローレンスだった。
後書き
次回は・・・
「死守したその後」
りえのクリスマス・イブの過去話が続く。フローレンスと出会ったりえは赤軍が異常に強化されている理由が清水に住む高校生男子の能力を複製した事実を知る事になる。そしてりえはかよ子からある事を聞かされ・・・!!
128 死守したその後
前書き
《前回》
異世界の最上位の道具・杯の所有者である安藤りえと再会したかよ子。りえはクリスマス・イブの日に赤軍の一員である丸岡修と日高敏彦と交戦した事を語り出す。りえは赤軍相手に友達と共闘するも苦戦していたのだった!!
かよ子は自分が名古屋で戦っていた時と同じ頃にりえも赤軍と戦っていた事に改めて戦慄を覚えた。
(りえちゃんにそんな事があったなんて・・・!!)
それに杯、護符、そしてかよ子が持つ杖のある場所が既に特定されてしまった以上、自分達の命が危うくなるという事もかよ子には怖くてたまらなかった。
りえ達が赤軍と戦った直後、フローレンスが現れた。
「フ、フローレンスさんっ!?」
三人がなぜ彼女の名を知っているのは、鈴音とみゆきは異世界の道具であるブーメランと錫杖を彼女から貰っていたからである。
「三人共、大変な戦いでしたわね。表に出られませんで申し訳ございませんでした。しかし、あの赤軍の人間が貴女達に有利に追い詰めます事ができましたのは清水市に住みます高校生男子の異能の能力を乗っ取りまして、それを機械としました物を使用していましたからなのです」
「そう言えば先月そんな機械を持っている人に会って襲われた事があるわ」
「東アジア反日武装戦線の事ですね。その時も北海道から訪れました人によって一緒に戦っていましたね」
「知ってたの?」
鈴音は驚いた。
「はい。貴女達が見えない所で密かにその機械を破壊させて頂きました。そして先程の丸岡修と日高敏彦の機械も私が気付かれませんうちに壊させて貰いました」
「そうだったの・・・」
「はい、すぐにお助けします事ができずに申し訳ございません。私は敵にあまり姿を見られますと厄介なことになりますので」
「でも、機械を壊してくれただけでも助かったわ。ありがとう」
「はい。しかし、今、別の地でも同じ戦いが繰り広げられていますでしょう」
「も、もしかしてかよちゃんの持つ杖を狙って清水へっ!?」
「いいえ、彼女らの狙いは護符です。その持ち主の居所を知ります為に各地へ戦争の世界の人間を派遣させていましたのです」
「その護符の場所って・・・」
「名古屋です。私と同じ世界の者・イマヌエルに今、行って貰っています。守り切れます事を祈りますのみです。それでは、失礼致します」
フローレンスは透明になるように消えた。
「護符、名古屋・・・」
りえは夏休みに会ったかよ子やある高校生男子の事を思い出した。そしてその高校生男子の従姉であり、そして北海道から助けに来た煮雪ありという女性の妹でもある。その人物が名古屋にいて危機にさらされている。いずれ、杖を持つかよ子やその護符を持つ女性と三人で集まりたいと思った。だが、その護符の所持者が無事である事を祈るしかないのだった・・・。
「りえちゃん、フローレンスさんとも知り合いだったんだ!驚いたよ!」
かよ子は感想を言った。
「うん、かよちゃんも会った事があるの?」
「うん、一度ね。お母さんも子どもの頃会った事があるんだよ」
「奇遇ね。それにしても赤軍が使っていたという機械なんですが・・・」
りえの母は話題を切り替えた。
「ああ、それは、私の甥の能力を機械化したものですよ」
奈美子が答えた。
「はい、俺が通っている高校に西川純に山田義昭っていう赤軍の人間が侵入してきた時に俺の異能の能力をいつの間にか複製して機械化したのです」
三河口が詳しく説明した。
「俺には見聞、武装、そして威圧、三つの能力をすべて持っています。奴等はおそらく機械を量産しているでしょう。そうなるともっととんでもない事になります」
「確かに三河口のお兄ちゃんみたいな人が増えるとこちらも劣勢になっちゃうよね」
「そうだ、その機械はそのフローレンスやイマヌエルという人しか壊せないみたいですが、その機械を壊す方法は何か聞いていないかしら?」
まき子はりえに質問する。
「いいえ、聞かなかったです」
「でも、向こうの世界に行った時に解るかもしれませんね」
「そうですね。フローレンス達にも聞いておきましょう」
そしてりえ達はお暇する時間が来た。かよ子はあの事を言おうとする。
「それじゃ、山田さん、羽柴さん、今日はどうもありがとうございました。また宜しくお願い致します」
「はい、ではまた」
「あ、あの、りえちゃん・・・!!」
かよ子はりえを呼び止めた。
「えっ?」
「実はね、大野君が四月から転校することになってね、それで杉山君が喧嘩しちゃったんだ・・・」
「ええっ!?」
「それで、お願いがあるんだけど、明日、杉山君の家に一緒に行ってくれるかな?」
「うん、いいわよ」
りえは承諾した。
「ありがとう」
りえとその母は山田家を後にした。隣のおばさんが車でりえ達を送って行った。
「それでは俺達も失礼しますよ」
「うん、じゃあね」
三河口と利治も家を出た。
りえは先代の護符の所有者であるおばさんの車の中で夏休みに会った杉山の事を考える。教会のピアノを弾いていたら皆から幽霊と間違われ、ピアノを勝手に使ったと杉山に言いがかりを付けられて喧嘩し、自分を乙女じゃないとけなされるわ、挙句、挑発されて杯を使って喧嘩までした。だが、りえはそれでもあの杉山の事が気になっていた。東京に帰ってからも・・・。
(たしか杉山君の友達って、大野君って言ったっけ?転校するからって喧嘩するなんて・・・)
そしてりえは考えた。
(やっぱり、杉山君、案外臆病じゃない・・・)
りえはそう考えた。親友がいなくなって寂しくなるのが嫌で喧嘩したのだと。
(杉山君・・・。あんた、それでいいのっ?これから大変な事が待っているってのにっ・・・!!)
りえは杉山との再会に緊張が同時に走った。
「りえ、着いたわよ」
「え?うん、ありがとうございました・・・」
りえはおばさんに礼をして車を降りた。
(かよちゃん達も大変ね・・・。藤木君がいなくなっただけじゃなく、杉山君と大野君が喧嘩するだなんて・・・)
りえは祖母の家に入った。
かよ子はりえにお願いしたとはいえ明日がお互いにとってどのような結果になるか想像もつかなかった。
(もし、杉山君とりえちゃんがまた喧嘩したらどうしよう・・・)
かよ子は懸念した。
後書き
次回は・・・
「杉山さとし、思いがけぬ再会」
大野との喧嘩以来、杉山は自分に何ができるのか自問自答を繰り返していた。かよ子とりえはそんな杉山の元を訪れる事にするのだが、りえと杉山は夏休みの時のように睨みあってしまい・・・。
129 杉山さとし、思いがけぬ再会
前書き
《前回》
クリスマス・イブの日、りえはフローレンスと出会い、異能の能力を行使する事ができる機械を赤軍が開発していた事実を知る事になる。そしてりえは杉山と大野が大野が転校するという事で喧嘩した事をかよ子から伝えられ、杉山の家に赴く事を頼まれたのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その9
煮雪悠一 (にゆき ゆういち)
羽柴家の次女・ありの夫。初登場45話。ありとは大学時代から付き合い始めた。北海道で生まれ育ち、アイヌ民族の子孫である。異世界の人間を召喚する事ができるテクンカネ(アイヌ民族のブレスレット)を用いて戦う。攻撃特化の武装の能力を持つ。好きな食べ物は鮭、ウニ、
杉山はただ何もせずボーっとしていた。
「さとし」
姉が部屋に入って来た。
「ね、姉ちゃん?」
「アンタ、もうすぐ戦いに行くのよ。そんなんでいいの?」
「う、うるせえなあ、ほっといてくれよ!」
「何よ、それ。そうだ、昨日、石松に会ったわよ。大野君と喧嘩したんだって?」
「う・・・」
(石松の奴・・・。姉ちゃんに言いふらしたな・・・!!)
「それに大野君が転校するって聞いたわ。ちゃんと仲直りしなさいよ」
姉はそのまま部屋を出た。
「くそお・・・」
杉山は大野との喧嘩を思い出す。大野は親の都合だから仕方ねえだろと言った。しかし、本当はそんな言葉など望んではいなかったし、喧嘩などするつもりはなかった。寂しかったのだ。それで心にもない事を言ってしまった。「俺はお前なんか居なくなったって大将なんだ」と。
(俺に一体、何ができるんだよ・・・?)
杉山は自問自答を繰り返していた。大野と仲直りする為に、そしてこの歪んだ日常を取り戻す為に・・・。
翌日、かよ子はりえと山田家にて待ち合わせた。
「かよちゃん、おはよう」
「おはよう、りえちゃん」
二人は約束通り、杉山の家に行く。二人は道中、雑談する。
「そういえば、まるちゃんやたまちゃんは元気かしら?」
「うん、でも二人共、二人の喧嘩を気にしてるよ」
「そうなのね・・・。ところで、かよちゃん、杉山君の事、好きなの?」
「ええ!?」
かよ子は動揺した。
「う、うん・・・、実はそうなんだ・・・」
かよ子は恥ずかしく思いながら肯定する他なかった。
「だから、杉山君が大野君と喧嘩するのが見てられなかったし、慌てて止めたんだ・・・」
「やっぱり、実は私も杉山君の事、気になってたの・・・」
「りえちゃんも、杉山君が好きなの?」
「ええ、喧嘩もしたけど、どうも気になってたの・・・」
「じゃあ、やっぱり私達、恋のライバルだったんだね!」
「ええ、そうね」
「私なんておっちょこちょいだから、りえちゃんには勝ち目ないかな・・・」
「そうかしら?それは杉山君次第だと思うわ」
りえは恋敵にしては意外と謙虚な態度だった。
「それにしても異世界に連れて行かれたって言う藤木君の事なんだけど、なんか私の事気になってた感じなのよね。寄書にも『この次はボクが守ります』って書いてあったし」
「え?う、うん、でも藤木君は他の女の子もがきなんだ」
「え?」
「うん、でも私が前に野良犬に襲われた所を見捨てた事でその女の子から嫌われちゃったんだ。それで藤木君はその女の子の家に別れの手紙も書いて行ったんだよ」
「そうなの。他に好きな女子がね・・・。藤木君って案外恋しやすいのね」
「そうかもね」
そして二人は杉山家に到着した。かよ子はインターホンを鳴らす。杉山の母が出た。
「あら、山田さん」
「こんにちは。杉山君、いますか」
「あら、ちょっと待っててね」
杉山の母は息子を呼ぶ。お待ちかねのあの男子が来た。
「なんだ、山田か」
「杉山君、今日、『あの子』連れて来たんだけど・・・」
「『あの子』・・・?」
杉山は一瞬誰の事か解らなかった。だが、その時、かよ子の後ろにもう一人、女子が現れた。
「久しぶりねっ、杉山君っ!」
「お、お前・・・!!」
杉山はりえを見て夏休みに彼女と喧嘩した日々を思い出した。
「来てたのか・・・」
「ええ。かよちゃんにこの休みに清水に行くって年賀状出してたからねっ。ところで・・・」
りえは本題に入ろうとする。
「あんた、大野君と喧嘩したってかよちゃんから聞いたわ。それから持っていたあの石も手放したってね。こんな大変な時に異世界で戦えるの?」
「う・・・、お前に関係ねえだろ!あいつが勝手に言っちまうんだ!俺はあいつなんかいなくたって大将なんだよ!!」
「一人でも十分大将なのっ?じゃあ、これからの戦いで一人でも戦えるのっ?結局アンタは友達がいなくなるのが嫌で喧嘩したんでしょっ!?仲直りしなさいよっ!」
「うるせえなあ!」
「仲直りもできないのっ!?アンタはやっぱり『臆病者』ねっ!!」
「何だと、この野郎!!」
二人は睨みあった。
「違うってんならちゃんと仲直りしなさいよっ!」
「余計なお世話だ!!」
かよ子は仲裁に入ろうと試みる。
「ふ、二人共・・・!!」
かよ子は何を言おうか迷った。
「お願い、私は喧嘩する為に二人を会わせたんじゃないよ!」
「あ・・・」
りえは我に返った。
「ごめん、カッとなっちゃって」
りえは杉山の方にもう一度振り向く。
「んで、あんたは行くんでしょうね?異世界に」
「う・・・」
「行かないのっ?なら『臆病者』ねっ。私は行くわよっ!」
「もうほっといてくれ!!」
杉山は扉を乱暴に閉めた。
「何よ、あれっ・・・!」
「す、杉山君・・・!!」
かよ子は扉を叩いた。
「杉山君は異世界に行くよね。私は、来てくれるって信じてるよ!」
かよ子はこの言葉が杉山に聞こえているのか解らないが、兎に角そう訴えた。
「・・・かよちゃん、行こう」
「・・・うん、ごめんね、結局喧嘩させちゃって」
「そんな事ないわよ。でも、夏休みに会った頃からホント自分勝手よね」
かよ子はりえが杉山を批判していながらもどこかで寂しく感じているように思えた。やはり自分と同じように杉山の事が好きだからか。そして変わり果ててしまった杉山に元に戻って欲しいと渇望しているのだろうか。
「そうだ、他の友達とも会っておきたいわ」
「うん、いいよ」
かよ子はりえを自分の家に連れて行き、まる子やたまえを電話で呼んだ。
一方、杉山は扉を閉めた後、かよ子の訴える声はきっちり聞いていた。
《杉山君は異世界に行くよね。私は、来てくれるって信じてるよ!》
(俺は山田やりえの為に何ができるんだよ・・・。この日常が戻せたって大野の転校がなくなるわけでも、仲直り出来るわけでもねえ・・・。大野は俺といたくねえんだ。親友だって思ってたのは俺だけだったんだ・・・)
その時、姉が現れた。
「さとし、何よ、乱暴にドア閉めて」
「それはその・・・」
「それに相手はかよちゃんみたいじゃない。あんな態度でいいの?」
「いいよ、別に。向こうが勝手に来たんだからよ・・・」
杉山は自室へと行ってしまった。
後書き
次回は・・・
「共闘の約束」
かよ子は大野やまる子、たまえ、長山らを家に呼び寄せ、りえと談笑する事を決める。そんな時、冬田がかよ子の家に向かう大野の姿を見て、大野が気になってしまう。そんな時、長山と遭遇した冬田はかよ子の家に上がり、りえと相対するが・・・!?
130 共闘の約束
前書き
《前回》
かよ子はりえと杉山を久々に顔を合わせる。夏休み以来の接触となった二人だったが、大野と喧嘩した事についての問題の解決にもならずに二人はまた喧嘩してしまう。杉山は元の日常を戻せても何も変われない事に辛く考え続けるのだった!!
大野は自分が持っている草の石、そして嘗て杉山が持っていてかよ子が自分に持っていて欲しいと頼んだ雷の石を見ていた。
(でも、あいつは俺がいなくたって大将だってそう言ったんだ・・・。こんなの思い出の品にしろって事なのかよ・・・)
その時、母が入って来た。
「けんいち、山田さんから電話よ」
「山田から?」
大野は電話に出てみる。
「もしもし」
『あ、大野君?山田だけど』
「どうしたんだよ?」
『えっと、夏休みに会った安藤りえちゃんって子、覚えてる?』
「え?ああ、どうかしたのか?」
『今、ウチに遊びに来てるんだ。大野君もし暇だったら一緒に遊ばない?』
「ああ、そうだな・・・。行ってみるよ」
『ありがとう。待ってるよ』
大野は電話を切った。
(安藤りえか・・・。そういえばあいつ、夏休みに来た時、杉山と喧嘩してたっけな・・・)
大野は夏休みの事を思い出しながらかよ子の家へと向かった。
かよ子はりえの他、まる子にたまえを呼んでいた。
「まるちゃん、たまちゃん、久しぶりねっ!」
「うん、アタシもまさかりえちゃんとまた会えるなんて夢にも思わなかったよお~」
「私も」
「うん」
まる子とたまえは再会を喜んだ。大野への電話を終えたかよ子が部屋に入って来た。
「今、電話で大野君呼んだよ。あ、そうだ、りえちゃんは知らないと思うけど、長山君って男子も呼んでみたよ」
「え?どうして長山君を~?」
「長山君も私の杖とかりえちゃんの杯とか色々調べててくれてたし、会っておいた方がいいかなって思ってね」
「そうね、是非会いたいわ」
りえは否定しなかった。そして皆は大野と長山が来るのを待つのであった。
冬田は自分がコレクションしているシールを買っていた。なおそのシールは「変な顔シール」と言って時にはクラスメイトにも配っていた(嬉しがっている人は皆無なのだが本人はその事には全く気付いていない)。冬田は帰ろうとする途中、とある男子の姿を発見した。
(あ、あれ、大野君!?)
冬田は慌てて確認する。間違いなく己の後ろ姿だった。
(大野君、どこへ行くのかしらあ・・・?)
冬田はこっそり大野の跡を追うのだった。そして追跡すると共に大野はとある家に入って行った。そこはクラスメイトの山田かよ子の家だった。
(大野くうん、なんで山田さんの家にい・・・!?)
冬田はもしかしたら大野がかよ子に恋でもしたのかと邪推した。
「こんにちは」
「あら、大野君」
かよ子の母は大野が家に来たために出迎えた。
「かよ子は二階にいるわよ」
「はい」
大野はかよ子の母に連れられてかよ子の部屋へ向かった。
「かよ子、大野君来たわよ」
「よっ!」
「あ、大野君」
「久しぶりねっ」
「ああ、夏休み以来だな」
大野は東京の少女との再会を喜んだ。
冬田は一進一退していた。大野はかよ子の家で一体何をしているのかと。その時、長山が現れた。
「あれ、冬田じゃないか」
「な、長山くうん・・・」
冬田は今にも泣きそうな顔だった。
「一体どうしたんだい?」
「大野君が山田さんの家に入って行ったのお・・・。もしかして山田さあん、大野君の事が好きになったんじゃ・・・」
「いや、違うよ、山田は東京の友達が遊びに来てるから呼んだんだよ。僕も呼ばれているんだ。その友達は異世界の杯を持ってるんだって」
「杯い?」
「うん、異世界の道具で山田の杖と同じくらいの強さを持ってるんだって」
「そうなのお?なら私も行くわあ!お願い、私も一緒に行っていい!?」
「う、うん、いいんじゃないか・・・?」
長山は冬田の圧力に押された。長山は冬田を連れてかよ子の家にお邪魔する羽目となった。
「こんにちは」
「あら、長山君、こんにちは」
「こんにちはあ・・・」
「あら、貴女は確か冬田さんだったわね」
「東京から来た友達が来たって聞いてきたのですが」
「ええ、そうよ。上がって」
長山と冬田はかよ子の母に連れられてかよ子の部屋へと向かう。
「かよ子、長山君来たわよ。あと、冬田さんも来てたわ」
「え?冬田さんも?」
かよ子にとって冬田が来たのは予想外だった。
「やあ、山田。途中で冬田と会って連れてって欲しいって言われてさ、連れて来たよ」
「こ、こんにちはあ・・・」
冬田はかよ子の部屋を見る。その場に大野はいた。まる子とたまえもいる。だが、冬田は大野の隣にもう一人、知らない少女がいた。
(こ、この子お・・・)
冬田はまさかこの女子が大野と付き合っているのではないかと邪推した。
「い、いやあ、大野くうん!!」
冬田はその場で泣いてしまった。
「ちょ、ふ、冬田さん、泣かないでよ!」
「だってなんで大野君が知らない女の子といるのよお!これって恋なのお!?うあああん!!」
冬田は泣き喚く。かよ子や長山達はどうしようとあたふたした。りえはその急に泣き出した子を見て、訳が分からなくなった。
「はあ?冬田、お前、何言ってんだ?」
大野が呆れた。
「・・・え?」
「冬田さん、この子は東京から来た友達だよ。別に大野君と付き合ってるわけじゃないよ」
「そ、そうだったのお・・・?」
冬田は泣き止んだ。かよ子はりえに二人の紹介をする。
「りえちゃん、急にごめんね。こちらは長山治君。物知りな男子だよ。で、こっちは冬田美鈴さん。大野君が好きなんだ」
「初めまして、安藤りえです。宜しくね」
「宜しく」
「宜しくう・・・」
りえと長山、そして冬田はお互い挨拶した。りえは自身が持っている杯の説明を長山と冬田に行った。
「それで、これで何か物を入れると、その精霊が出てくるの。例えば火を入れたら炎の精霊が、水を入れたら水の精霊が出てくるの。これで赤軍とか異世界の敵とかと闘ってきたのよ」
「それがか」
「凄い道具ねえ」
「そうだ、皆、こんな手紙来たかしら?」
りえは一枚の紙を皆に見せた。フローレンスとイマヌエルからの手紙であり、異世界に来て欲しいという手紙だった。
「あ、俺にも来たぜ!」
「私も来たわあ」
「僕もだよ」
「アタシにも来た来た」
大野、冬田、長山、まる子は肯定した。
「ごめん、私、貰ってないんだ・・・。それになんて書いてあるの?」
「ええ、たまちゃん、読めないのお!?」
まる子は驚いた。
「ごめんね、まるちゃん」
「そっか、たまちゃんは異能の能力ってのを持っていないのね」
「あ、そうそう、俺達はこういう石を持ってるんだ。さくらも出せよ」
「あ、うん・・・」
大野とまる子は石を出した。
「俺のは草の石で植物を操ったりする事ができるんだ。さくらのは炎の石で火とかを操る事ができるんだぜ。他にも俺達の仲間でブー太郎って奴がいてな、そいつは水の石を持っていて水を操る事ができるんだぜ」
「凄いわね。杉山君が持ってる石みたいね」
りえは杉山の名を出すと大野はムッとした。
(あ、大野君、傷ついちゃったかな・・・?)
かよ子は慮った。
「ああ。まあ、そうだな」
大野は感情を抑えようとした。
「僕はこの眼鏡を貰ったよ。神通力が使えるんだ」
長山は自分が御穂津姫から貰い、名古屋での戦いに使用した道具を説明した。
「私はこれよお、フローレンスさんって人から貰った羽根で空を飛べるのお~」
「フローレンスさん・・・、フローレンスさんに会った事あるのっ?」
「ええ、そうよお~」
「私の東京の友達にもフローレンスさんから貰った道具を持っているの。今度異世界での戦いに行く予定だからもしかしたら私達の友達にも会えるかもしれないわね」
「そ、そうだね。あ、それからね、私達の隣町の学校にいる子にも異世界の道具を持ってる子がいるんだ。その子達にもりえちゃんを会わせられたらいいね」
「へえ、手紙にも書いてあったけど、そういう人沢山いるのねっ」
「でも行くのアタシゃめんどいなあ~」
「さくら、バカ言ってんじゃねえよ。行く行かないとかいう次元の話じゃねえだろ」
「そうよお、私達は元の日常を取り戻すのよお!ねえ、大野君!」
冬田は急に大野の肩を持つつもりでまる子を批判した。
「え?ああ」
大野はわずかに困惑した。
(この冬田さんって子、大野君が好きなのね・・・)
りえは冬田が自分とはまた違う恋をしていると感じた。それに対して自分は杉山に対してどうして素直になりきれず、喧嘩になってしまうのかと気になっていた。
その後、かよ子達はお菓子を食べたりして過ごした。そして帰る時間となった。
「皆、今日はありがとう。私は明日、東京に帰るわ」
「そっか、また学校始まるもんね」
「前もそうだったけど見送りは要らないわ。異世界で会おうね。そして一緒に戦いましょうっ!」
「うん、僕らも約束するよ!」
「うん、じゃあね~」
皆は帰って行く。なお、冬田はりえに変な顔シールを友達の証としてあげたが、りえは微妙な反応だった。一方、かよ子は杉山とりえを引き合わせた時、結局何の結果も得られなかった事が気がかりなのであった。
(杉山君、異世界の戦いに来てくれるのかな・・・?)
後書き
次回は・・・
「それぞれの気持ち」
りえに家族は東京へ帰る為、羽柴家の車で静岡駅まで届けて貰う事になった。三河口はりえに杉山と会ったという事を確認する。そして三河口やりえは何を思うのか・・・。
131 それぞれの気持ち
前書き
《前回》
かよ子はりえを家に招き入れ、更にはまる子やたまえ、大野に長山も招待する。更には冬田も乱入し、大野がりえと付き合っているのではと疑ってヤキモチで大泣きしてしまったが、勘違いと分かると仲良くなり、皆で異世界で共に戦うと誓うのだった!!
りえは祖母の家に帰った。
「只今」
「りえ、お帰り」
母が出迎えた。
「杉山君って子とはどうだった?」
「また喧嘩しちゃったわ。それにかよちゃんにも当たりが強かった・・・」
「そうだったの・・・」
りえはいくら喧嘩したとはいえ、それでも杉山が心配でたまらなかった。
(本当にこの先、大丈夫なのかしら・・・?)
だが、りえにはかよ子達の他、長山治に冬田美鈴といった仲間もこれからの戦いに参戦してくれると思うと少し味方が増えてくれたようで大丈夫かもしれないと自信が持てていた。
翌日、この日は成人式という事もあり、袴姿の男女が歩く姿が見られた。
(りえちゃん、今日、帰るのか・・・)
かよ子はりえの事を考える。しかし、夏休みの時のような哀愁に漂うような事はなかった。
(異世界で、一緒に戦おうね、りえちゃん・・・!!)
一方、りえは帰るための荷造りをしていた。
「それじゃ、おばあちゃん、またね」
その時、一台の車が停車した。
「おはようございます」
山田家の隣に住むおばさんだった。その甥もいる。
「折角なんで駅まで送りますよ。健ちゃん、荷物運び手伝ってあげて」
「はい」
三河口はりえ達の荷物を持ち、車のトランクに入れた。
「ところでりえちゃん」
「え?」
「昨日、杉山君に会いに行ったんだよね?」
「あ、うん・・・」
りえは少し沈んだ表情だった。
「どうやら喧嘩したようだね」
三河口はりえの表情から察した。
「ええ・・・」
「君にまで当たるなんて相当ムシャクシャした気持ちになってんだな。だが、杉山君はきっと本当は大野君が転校する事で素直になれずに喧嘩したんだと思うよ。本当は寂しがっているはずだよ」
「でも、私も、『臆病者』呼ばわりしちゃったわ。異世界に行くか行かないかって私が聞いたら『ほっといてくれ』って言われたから私もカッとなっちゃって」
「『臆病者』ね・・・。ま、杉山君の事は俺やかよちゃんに任せておいてくれよ。何とか大野君と仲直りさせるようにしておくからさ」
「ええ」
安藤家の人達は奈美子の車に乗った。
「それじゃ、さようなら」
「さようなら」
三河口は同乗せずにその場で見送った。
(杉山君め・・・。大野君と喧嘩したままでいいのか?そのままで異世界へ向かえるのか?)
三河口は居候の家へと戻る。だが、その前にかよ子の家へ立ち寄った。
杉山は昨日の事を思い出した。
(なんであいつ、俺の前に出やがったんだよ・・・!!)
杉山はりえの言葉を思い出す。
《結局アンタは友達がいなくなるのが嫌で喧嘩したんでしょっ!?》
(俺は確かに大野がいなくなるのが寂しかったからあんな事言っちまった・・・。じゃ、お前に何ができるんだよ・・・)
杉山は手放してしまった雷の石を思い出す。
(俺は、あんなのなくたって別にいいんだよ・・・!!元の日常が戻ったって大野の転校が取り消しになるわけじゃねえんだ!!)
杉山は少し泣いていた。
大野は自分の持つ草の石と嘗て杉山が持っていた雷の石を持って眺めていた。
(杉山・・・。俺だって本当はお前とずっと一緒にいたかったよ・・・。でも、お前は俺なんかいなくたって大将なんだろ・・・?)
大野はこの二つの石が本当に自分と杉山が親友であった事の証になるのだろうか?大野にはまだ分からなかった。
奈美子の車によって静岡駅まで送って貰ったりえ達は彼女に礼をしていた。
「どうもありがとうございます」
「ええ、次は異世界でお会いしましょう」
「異世界・・・、ええ、そうですね」
りえ達は思い出した。このおばさんは嘗て異世界から貰った護符の所有者で会った事、そしてその護符は今、娘に引き継いでいるという事を。
「さようなら」
りえ達は新幹線のりばの改札を通った。そして東京行きの列車に乗る。
(かよちゃん、皆、今度は異世界で会おうね・・・)
そしてりえは杉山の事を思い出す。
(杉山君、来てくれるのかしら・・・?)
突き放された態度を取られながらもりえは夏休みの時から喧嘩しておきながら自分のピアノを応援してくれていた者の一人である杉山が異世界に来てくれる事を願った。車窓に富士山が見える。
(あの富士山、いつ見ても綺麗ね・・・)
りえはまた皆と会える日を楽しみにするのであった。今度は異世界で。
かよ子は三河口と会っていた。
「りえちゃんは杉山君を『臆病者』呼ばわりしていた事を心の中で反省していたよ」
「そうだったんだ・・・」
かよ子は同じ共闘する「仲間」であるとともに「恋敵」でもある女子の本心を知ったような気がした。
(りえちゃんは実際に現場を見ていないけど、あんな喧嘩しちゃ、ショックを受けちゃうはずだよね・・・)
そしてかよ子は好きな男子の事を考える。
(お願い、杉山君・・・。この戦いが終わってからでもいいから、大野君と仲直りして・・・。できれば大野君が転校する前に。それで、大野君が気持ちよく皆とお別れできるように・・・)
かよ子は二つの課題が己に課せられていると感じる。一つは赤軍や異世界の敵との大きな戦いを終わらせて、赤軍からこの国を守る事、そしてもう一つは杉山と大野を仲直りさせる事。それが課題だった。
「今度は杉山君を何とかさせないとな・・・」
三河口は呟いた。
「お兄ちゃん、杉山君の事は・・・」
「ああ、ほっといた方がいいのかもしれんな。でも、その前に異世界の戦いに行くのか行かないのか、覚悟を決めて貰わないと駄目だと思うよ」
「うん・・・」
「それじゃ、俺はこれで失礼するよ」
三河口はかよ子の部屋から出て行った。
(杉山君、きっと来てくれるよね・・・?)
りえは東京の家に帰宅した。そして自室のピアノに飾ってある色紙を見る。これは夏休みにかよ子達が書いてくれた寄書だった。
(『絶対に夢、叶えろよ!』って、あんたはどういう気持ちでこれを書いたのっ・・・!?)
そしてもう一人の男子のメッセージを読む。
(『この次はボクが守ります』・・・。逆に私達が助けに行く事になっちゃったわね・・・。でも、杉山君と違って優しい所もあったわね・・・)
そして、あの女子のメッセージも見る。
(『絶対にこの世界を守ろうね』、か・・・。そうよね・・・)
りえは心の中でこの女子の寄書の文言を約束しなければならないと思った。
そして開戦の日は近づいて行く。
後書き
次回は・・・
「上層部からの処遇」
大野と杉山の喧嘩について石松は三穂津姫からフローレンスからの手紙を受け取る。手紙の指示通りに杉山には異世界に来るように、大野には草の石と雷の石、両方を持って来るように促そうとして・・・。
132 上層部からの処遇
前書き
《前回》
りえはかよ子達と異世界での共闘を誓い、東京に帰るが、大野と喧嘩した杉山が気になってしまう。そしてかよ子や三河口も杉山に異世界で共に戦ってほしいと願うのだった!!
森の石松は三穂津姫からある手紙を受け取っていた。
「フローレンスからの手紙です」
「ああ、ありがとう」
石松は以前、大野と杉山がそれぞれの石を喧嘩に使用した事に激怒して没収を警告した。大野は使用しないと約束した一方、杉山は石を放棄し、かよ子によって大野に持たせていた。それについてフローレンスとイマヌエルの判断を求めていたのだった。
森の石松
手紙を読ませていただきました。貴方と山田かよ子ちゃんの判断は間違っていませんと思います。ですが、杉山さとし君にはそれでも予定通りこちらの世界に来て頂きますように伝えておいてください。大野けんいち君には草の石と雷の石、両方とも持って来ますようにお伝えしますよう、お願い致します。
フローレンス
(そういう判断であったか・・・。まあよい、某から二人にも伝えておこう・・・)
かよ子は異世界に行く日が近づいているといるのに杉山と大野がそれぞれ避け合っている事態をどうしても解決する事ができなかった。以前、休日を利用して東京から異世界の杯の所有者である安藤りえを杉山と再会させても何もならず、むしろ杉山はかよ子をも避けるようになってきた感があった。
(杉山君、それでいいのかな・・・?)
かよ子は思い切って杉山に話しかけて見た。
「す、杉山君・・・」
「何だよ?」
杉山はぶっきらぼうに応答した。
「ごめんね、この前は、急にりえちゃんを連れて来て・・・」
「いいよ、あんな生意気な事言われて怒っただけだからよお・・・」
「でも、杉山君は一緒に戦ってくれるよね?」
この問いは以前から何度もかよ子はしていた。しかし、杉山は・・・。
「さあな・・・」
と、肯定も否定もしない有様だった。
「私は、来てくれるって、信じてるよ・・・」
かよ子はそう言って杉山から離れた。
「山田、やっぱり杉山君、機嫌悪いかブー?」
ブー太郎が聞いてきた。双方の子分として彼も心配なのであろう。
「うん、それに異世界に一緒に行ってくれるか心配になって来たよ・・・」
杉山は一人で下校していた。その時、杉山の前に一人の男が現れた。森の石松だった。
「杉山さとし・・・」
「何だ、石松か」
「お主に伝えておく事がある。今、お主は石を放棄した状態ではあるが、予定通り異世界の戦いには参加していただきたい」
「道具が何もない俺に何ができるんだよ?行ったってしょうがねえだろ?」
「愚か者!命令は命令なのだ!断るつもりか!?」
「うるせえよ!」
杉山はその場から走り去った。
「待て!杉山さとし!!」
しかし、杉山は止まらない。しかし、石松は止めようとせず、次の行動に移行した。
大野は下校中、石松と遭遇した。
「大野けんいち」
「石松じゃねえか、何だよ?」
「この前の喧嘩についてなのだが、お主、いつの日か秘密基地なる物を建造した際にフローレンスにイマヌエルという者どもに会った事を覚えておるか?」
「フローレンスにイマヌエル?ああ、あの時の事か・・・」
「その事についてその二人と相談してきた。お主には草の石と雷の石二つを持って異世界に来て貰いたいとの事だ」
「え?ああ、分かったよ。何を考えてんだ、一体?」
「某には解らぬ。だが、向こうにも何か考えがあるのだろうな」
「ああ、とりあえず言う通りにするよ」
「では、待っておるぞ。必ずお主が学び舎を変える前にこの戦を終わらせようぞ!」
石松は飛び去った。しかし、石松には杉山の方が気がかりであった。
(あの者はどうすればよいのだろうか・・・?)
かよ子は下校中、三河口と遭遇した。
「あ、隣のお兄ちゃん・・・!!」
「かよちゃん・・・」
「まだ、杉山君は機嫌悪そうかい?」
「うん、よく解ったね。これも見聞の能力?」
「いいや、たまたまだよ。俺は杉山君とかかよちゃんとかに対しては能力は使えなからね」
「ああ、そうだったよね」
かよ子は以前、三河口が少年院を出て清水に訪れてから赤軍や異世界の人間以外に対してしか異能の能力が発動されなくなった事を思い出した。
「杉山君、異世界に行くのか聞いても『さあな』って返すだけで、行くのか行かないのかはっきりしないんだ・・・」
「そうか・・・。大野君と喧嘩した事を今でも引きずっているのか。それで、『あいつとは一緒に行きたくない』って気持ちがあるのかもしれんな」
その時、石松が現れた。
「山田かよ子、三河口健」
「石松・・・」
「フローレンスとイマヌエルからの命令で、大野けんいちには草の石と雷の石両方を持って来るように言ってきた。一方で杉山さとしの方なのだが、異世界に来て貰いたいとは伝えたのだが、奴は許可も拒否もせずにその場を離れてしまったのだ」
「・・・それで、俺達に何かして欲しいという事か?」
「ああ、そうなのだが・・・」
「でも、私でも無理だったんだ。今日聞いても『さあな』って答えてくれなかったし・・・」
「それに前に東京に住む杯の所有者に説得させようとかよちゃんは試みたのだが、それでも上手く行かなかったとの事だ」
「杯の所有者が?誠か?」
「ああ、だが、結局喧嘩しただけで糠に釘に終わったそうだ。だよね、かよちゃん?」
「うん・・・」
「そうか、当日まで待たねばならぬのか・・・」
石松は苦労した。
「いや、俺が説得させてこようか?」
三河口が名乗り上げた。
「よいのか?」
「ああ、俺は武器もないし、異能の能力も杉山君に対しては使えん。杖の所有者や杯の所有者の説得でダメでも、武器でやり合うのでもダメだから素手の俺が行くしかないだろうな」
「そうか、済まぬ。三河口健、お主に頼もう」
「いいともさ」
「それでは、失礼致す」
石松は去った。
「お兄ちゃん、大丈夫なの・・・?」
「ああ、それっきゃ手がないだろ。だから石松は俺達の所に来たんじゃないのか?」
「う、うん、そうだよね・・・」
「もう時間はないからね。俺が何とかしてあげるよ」
かよ子は三河口が落ち着いた態度で言っていたのを見て相当自信があるのだろうかと感じた。
(お兄ちゃん・・・、大丈夫かな・・・?)
かよ子は大丈夫であって欲しいと信じた。
後書き
次回は・・・
「杉山を説得させる者」
かよ子や長山、ブー太郎、冬田達は異世界への戦いに行く為に学校でクラスメイト達と一時的な別れを惜しむ。そして三河口は下校後、杉山に会いに行き、ある所へと連れて行く・・・!!
133 杉山を説得させる者
前書き
《前回》
石松は大野と杉山の喧嘩について三穂津姫を通してフローレンスからどう処遇すべきかの手紙を受け取る。杉山はりえとの喧嘩依頼、異世界に行くのか行かないのか答えを不明瞭にし続ける。かよ子と三河口の前に石松が現れ、杉山をどうにかして欲しいと頼まれ、杉山の説得に三河口が名乗り出るのだった!!
石松が去った後、三河口はりえが東京に帰る日に行った事を思い出した。
《でも、私も、『臆病者』呼ばわりしちゃったわ。異世界に行くか行かないかって私が聞いたら『ほっといてくれ』って言われたから私もカッとなっちゃって・・・》
(『臆病者』ね・・・)
三河口にとっては大野と共に皆から頼られる存在とされていた杉山が臆病者だなんてそうは思えなかったが、かよ子やりえ、石松の問いに答えないというのは如何なものかと三河口は思った。
(もう旅立つ日まで日数が少ない。何としても杉山君を行かせるようにしておかないと・・・)
「杉山君は俺が何とか説得させるよ」
「うん、ごめんね、お兄ちゃんにまで迷惑かけちゃって・・・」
「そんな事ないよ。俺がかよちゃんと同じ年頃の時は、かよちゃんのおっちょこちょいよりもずっと人に迷惑かけていたよ。だから、悪いなんて思わなくていいよ」
「うん、じゃあね・・・」
三河口はかよ子と別れた。
翌日、かよ子はまる子やたまえ、ブー太郎に長山と話していた。
「大野君と杉山君、このままで大丈夫なのか心配だブー・・・」
「うん、実は今日隣のお兄ちゃんが杉山君を説得させるって言ってるんだ・・・」
「隣のお兄ちゃんってあの少年院にいた事があるっていう?」
「うん、でも、私、隣のお兄ちゃんならきっと杉山君を説得できるような気がするんだ。それともこれって気のせいかな・・・?」
「まあ、信じるしかないね」
「皆、行っちゃうのか・・・」
たまえは自分だけ選ばれていない為に心細く感じていた。特にまる子が行ってしまう事が寂しくてたまらないのであった。
「たまちゃん・・・」
「穂波、確かに心配かもしれないけど、他にも沢山来る人もいるし、僕達には敵に対抗する為の武器があるから大丈夫だよ」
「うん・・・」
「まるちゃん達、絶対に帰ってきてね!」
たまえは少し泣いていた。
「うん・・・。本当はたまちゃんも連れて行きたいんだけどね・・・」
その一方、冬田は大野の方ばかりを見ていた。
(大野君は転校しちゃう・・・。絶対に、大野君が転校する前までに戦いを終わらせなきゃあ!!)
そして冬田は親友のみぎわ花子に自分が大いなる戦いに参加する事を伝えた。
「みぎわさあん・・・。私、命を懸けた戦いに行ってくるわあ。絶対に私、大野君の役に立てるようがんばるわあ!」
「ええ、絶対に生きて帰ってきて頂戴ね、冬田さん!!」
「勿論よお!!」
二人はお互い誓い合った。
清水市内の高校。三河口は授業が終わり、帰る所だった。彼は濃藤、北勢田、奏子と共に担任の先生には休学を申し込んではいたが、先生は理由を聞くと流石に不安がっていた。だが、これは行くか行かないかという次元の問題ではなく、向こうの世界の人間の力にならなければならないという使命である事、そうしないとこの国は赤軍に乗っ取られ、また戦争への道へ進んでしまうという事は理解してくれたので承認してくれていた。
「皆、すまん、今日は急がなきゃいけない用があるんだ。それじゃな」
三河口は濃藤達にそう言って走り去った。
「何だよ、急がなきゃいけない用って?」
「もしかしたら、近所の子から聞いたんだが、その子のクラスメイトの一人、大野君ってのが転校しちまうらしい。それで親友の杉山君ってのと喧嘩したとか」
北勢田は推測した
「文化祭や名古屋で一緒に戦ったあの子達?」
奏子が確認する。
「ああ、もしかしたらその仲直りをあいつがやるんじゃないかって思うんだ」
「なんでミカワがその二人の事を気にするんだよ」
「あいつが住んでる家の隣にも、そいつらのクラスメイトの女子がいるし、一緒にミカワの昔話も聞いてたからな」
「三河口君、大丈夫かな・・・?」
杉山は下校した。母が出迎える。
「只今」
「お帰り。さとし。もう異世界に行く日近いのよ。準備何もしてないけどいいの?お姉ちゃんはもう準備進めてるわよ」
「う、でも俺に何ができるんだよ?」
杉山はそう言って自分の部屋に行ってしまった。
(あんな奴・・・)
その時、何かの感触がした。赤軍とか戦争主義の世界の人間の感触ではない。自分の味方のような感触だった。母が呼んだ。
「さとし、三河口君って高校生の人が会いたいって来たわ。山田さんの隣の家に住んでるっていう」
「三河口・・・?」
杉山はその名を覚えていた。自分を好きになっているおっちょこちょいの女子の家の隣に居候しており、横浜の実家を離れてこの清水にやって来た男である。杉山は玄関に降りてきた。
「よお、杉山君。元気だったかな?」
「アンタ、何しに来たんだよ?まさか山田みたいに同じ事聞くのか?」
「いや、その前に来て欲しい所がある。俺について来てくれるか?」
「え?ああ」
杉山はコートを用意し、三河口と共に外に出た。
「なあ、杉山君」
「何だよ」
「石松から聞いた話だが、大野君と喧嘩してどうなんだ。気分がスッキリした訳じゃないだろ?」
「でも、アイツが親の都合だとか言い訳しやがったんだよ」
「親の都合は子供にはどうにもならんのは確かだ。だが、君は大野君と喧嘩別れしてそのままでいいも思ってんのか?それとも、君は大野君に何て言って欲しかったんだ?君のクラスのかよちゃんやブー太郎君とかも、別れても君と大野君には親友でい続けていて欲しいって願ってるハズだ。大野君だって本心で言った訳じゃなかろう」
「そんなのアンタにわかんのかよ!?」
「俺だって何もかも知っている訳じゃない。だが、戦いの為の石を捨てたそうじゃないか。かよちゃんから聞いたが、それから異世界に行くのか行かないのかはっきり言ってないだろ。安藤りえちゃんにも同じ事を聞かれても彼女に突き放した態度とって喧嘩したそうじゃないか」
「だからそれが何だってんだよ?」
「君はそれでいいのか?」
「いいんだよ、俺は、一人でも大将なんだよ!」
「そうか、君は自分を『大将』だと思うのか。道具も失くしたままで、質問に答えられずだというのに・・・」
「うるせえ!!」
「じゃあ、俺とやるか?君が大将だと言うのを証明する為に・・・」
「う・・・。ああ、やってやろうじゃねえか・・・!!」
杉山は何を始めるのか解らなかった。その後は二人共無言だった。
二人は高台に来ていた。そこには例の秘密基地があった。
「ここは・・・!!」
「君はこの秘密基地を大野君にブー太郎君にまるちゃんと造っただろ?その苦楽もどうでもいいものなのか?」
「う・・・、なんでアンタがここを知ってんだよ?」
「前に君達が隣町の学校の子達にこの基地を乗っ取られて戦った時を見てたんだよ。隣町の学校のすみ子ちゃんって子を覚えてるか?俺は彼女の兄貴と学校の友達でね、その友達も妹が心配で見てたんだよ」
隣町の学校の児童に乗っ取られた時。それは石松から貰った力の石を初めて使用した時だった。あの時はフローレンスにイマヌエルという異世界の人間にこの戦いは間違っていると咎められ、さらにかよ子や冬田も現れてこの戦いを止めようとした時だ。
「大野君がいなくても大将ってんならなぜこの基地を大野君達と造った?なぜ今まで皆と一緒に戦って来た?そしてなぜ異世界に行くか行かないかの質問に答えを出さない?本当に一人でも大将ならそれを証明しろよ」
(こ、この高校生とやるのか・・・?)
杉山は心臓の鼓動が激しくなった。
「何だ?相手が高校生だからってビビってんのか?」
「んなわけねえだろ!!」
「じゃあ、来いよ。道具はなくても君には異能の能力がある筈だ。安心しろ。俺は元から武器は持ってねえし、異能の能力は使わねえよ」
三河口は学ランを脱いだ。この二人の決闘が始まる。
後書き
次回は・・・
「大将か、それとも臆病者か」
高台の秘密基地の前にて、杉山と三河口の戦いが始まる。杉山と三河口が歩く様子を見たブー太郎はかよ子にその旨を伝え、二人はかよ子の羽根を利用して現場へと向かう。果たして杉山さとしは大将か、臆病者か、その審判は・・・!?
134 大将か、それとも臆病者か
前書き
《前回》
異世界に行くのか行かないのか、答えをはっきりさせない杉山に三河口が説得を試みる事になる。三河口は放課後、杉山に会うと共に彼を高台の秘密基地に案内し、大野と喧嘩したままでいいのかと問う。それでも大将だと言い張る杉山だったが、それを証明する為、三河口との真っ向勝負が始まった!!
ブー太郎は豚まんを買いに行く途中だった。そしてその途中、二人の人影を発見した。一人は杉山だった。そしてもう一人は高校生男子だった。確かあの男はかよ子の家の隣に住む男子ではなかったか。
(杉山君、それからあの高校生、どこに行くんだブー?)
ブー太郎はこっそり見つからないように跡をついて行った。この道はブー太郎も通った覚えがある。この道は自分達が建造した秘密基地のある高台に通じる道だ。そしてあの二人はその秘密基地の前にて止まった。ブー太郎は二人の会話の一部始終を聞いていた。
(ま、まさか、あの二人、喧嘩するのかブー!?)
ブー太郎はそわそわした。
「ああ、やるさ!俺は大将なんだ!!」
杉山は武装の能力を発動させた。杉山が三河口を殴ろうとする。しかし、三河口は避けた。
「この!」
杉山のもう一撃パンチを決めようとする。三河口は今度は避けずに全身で止めようとした。三河口の腹に杉山の拳が刺さる。しかし、三河口はその腕を掴んだ。だが、杉山の能力も負けていない。三河口を拳で全力で押し倒した。
(だ、誰かに伝えないとブー!!)
ブー太郎ははっと思い出す。あの高校生はかよ子の知り合いだ。彼女に伝えればいいのではないだろうか。
(よし、山田を呼びに行くブー!!)
ブー太郎は一旦その場を去った。
すみ子は山口達に呼ばれた。
「すみ子、俺達はもうすぐ異世界に行くし、お前も京都に転校しちまうからな。あの基地に行こうぜ」
「秘密基地に・・・?うん・・・」
組織「義元」は放課後、あの秘密基地へと向かうのだった。
かよ子は母に質問する。
「お母さん、異世界に行くには杖とか以外に何がいるかな?」
「そうね、杖の能力を出せるものを持って行くといいわ。ライターとかは炎の能力が使えるし、石の能力を使うなら、小石を拾うべきね。それから、夏休みに使った花火残ってるかしら?」
「花火?何に使うの?」
「花火ってのは火薬を使ってるからね。爆弾を操れる能力を使えるのよ」
「ああ、そうだったね!」
かよ子は杖の使い方記された紙の一節を思い出した。
【火薬及びそれを原料とした物を杖に向けると火薬を操る能力を得られる】
「うん、探してみるよ!」
かよ子は物置を探してみた。そして使い残された花火を発見した。
「お母さん、花火、まだ残ってたよ!」
「そうね、それ、持って行くといいわ」
「うん!」
その時、インターホンが鳴った。
「あ、かよ子、出てくれるかしら?」
「うん」
かよ子は玄関に向かい、ドアを開ける。
「はーい」
「や、山田・・・」
「ブー太郎!?どうしたの?」
「大変だブー!お前の知り合いの高校生が杉山君と喧嘩を始めたブー!!」
「ええ!?どこで!?」
「あの秘密基地のある高台だブー!」
「うん、私も行くよ!」
かよ子は杖を持って行こうとしたが、ここで杖を使ったらフローレンスが画策している作戦が台無しになってしまう。かよ子はやむを得ず杖を置いて行き、フローレンスから貰った羽根を使用した。羽根が巨大化する。
「ブー太郎、乗って!」
「ブ、ブー!」
かよ子とブー太郎は現場へと急いだ。
(お兄ちゃん、杉山君を説得させるってこういう事なの・・・!?)
かよ子は三河口の意図が理解できなかった。
三河口と杉山の決闘は続く。三河口は抑えつけられたが、杉山の腕を離さなかった。そして隙をついて足払いして杉山を横に倒した。
「うお・・・」
「その武装の能力は攻撃特化のようだな」
(こいつ・・・。能力を使わないでこのくらいのダメージなのか?)
杉山はもう一度、パンチを繰り出すだが、三河口は横に避け、杉山の肩を捉える。そして横に投げた。
「うおっ・・・」
杉山は投げられたダメージは軽かったが、この高校生相手に何かを感じた。
(攻撃してくるか・・・!?)
杉山は予感した。こっちに近づいて攻撃してくると。杉山は立ち上がった。予感通り、三河口は近づいて来た。
「畜生!」
杉山はもう一度殴りかかる。だが、三河口の蹴りが来た。武装の能力を利用したパンチに対して相手の蹴りは普通の蹴りだ。しかし、それでも三河口の足を止める為のパンチにしかならなかった。そして三河口は後退する。
(今だ!)
杉山はもう一度殴りかかる。しかし、また素早く避けられた。そして後ろに回り込まれた。そして、右腕を掴まれた。
(こいつ・・・)
杉山は震えていた。
「どうした?何震えてんだ?俺は能力は何一つ使ってないぜ」
杉山はなぜ自分が何も能力を一切仕様していない高校生に対して震えているのか自分にも解らなかった。
「来いよ、杉山君。大将なんだろ?勝てるだろ?何も能力が使ってない俺と違って能力が使えるんだからよ」
「くっ!」
杉山は掴まれている右腕を振り払った。三河口が吹き飛ばされる。
(やったか・・・!?)
しかし、三河口はそこまで遠くには吹き飛ばされなかった。また三河口が近づく。
「これで留めのつもりか?」
杉山はまた震えた。また殴りにかかる・・・、が、三河口が先に足を蹴り払った。
「あ・・・」
杉山はそこで転ばされた。
すみ子達は例の高台に来ていた。
(しばらくここに来る事はできなくなるのね・・・)
だが、その時、音が聞こえた。先に誰かが来ていたのだ。
「誰か来てるでやんすか?」
四人が茂みから見ていると、そこには隣町の学校の小学生がいた。杉山だった。もう一人は高校生だった。その二人が喧嘩をしている。
「あいつ、杉山じゃねえか」
「もう一人のあの高校生は確かすみ子の兄ちゃんの友達だったよな?確か文化祭や名古屋での戦いでも協力してた・・・」
「うん・・・。でも、どうして・・・?」
すみ子は不思議がった。
かよ子とブー太郎は羽根に乗って高台の方へ上がっていた。
「あ、あそこだブー!」
ブー太郎は杉山と三河口が喧嘩している様子を発見した。かよ子が確認した時には杉山は三河口の蹴りで転ばされていた所だった。
「す、杉山君、お兄ちゃん・・・!!」
転ばされた杉山に三河口はこれ以上は手も足も出さなかった。
「そこまでだ。杉山君。明らかに君の方がはるかに有利だというのにこの様だ。なんで、君は俺の目の前で震えた?大将ならそうならずもっと俺にダメージを与えている筈だ。それから君には迷いが出ている。雷の石を捨てた事から自分が異世界で何ができるか解らなくなったからだろ!?」
「う、うるせえな・・・」
「じゃあ、何で異世界に行くか行かないかの質問に答えない?行かないって答えるのなら単なる弱虫だが、それ以前に答えないなんてよ・・・」
三河口は一瞬深呼吸をした。かよ子とブー太郎も端からその話を聞く。
(お兄ちゃん・・・!?杉山君に一体何を言うつもりなの・・・!?)
「てめえは『大将』のひとかけらでも何でもねえよ!りえちゃんの言う通り、ただの『臆病者』だ!!」
かよ子はこんな冷酷な三河口の姿を見るのは珍しかった。いや、以前、蘇我氏の一族が清水に訪れて杖が奪われた時も彼は非常に激怒していた。つまり、これは単なる喧嘩ではないという事なのか・・・。
「しかし、俺だって異世界の道具なしで向こうへ行く身だ。異能の能力を全て持っていたとしても道具を持たない俺は最弱の部類かもしれん。だが、きっと俺にも何かできる事があるかもしれないし、杉山君にだって君にしかできない事がある筈だ。君にしかできない方法で元の日常を取り戻す術を探し、大野君と仲直りして、離れ離れになってもずっと友達でいると誓って送り出すんだ。異世界に行くか行かないかは俺は聞かない。必ず来い!それだけだ」
三河口は脱いだ学ランを拾って着直す。その時、すみ子に山口、川村、そしてヤス太郎が、上空からかよ子とブー太郎が現れた。
「杉山君、お兄ちゃん・・・!!」
「皆、見てたのか・・・。兎に角、やるだけの事はやったよ」
「でも、杉山君と喧嘩なんて・・・」
「そう見えても仕方ない。だが、こうでもしないと解ってくれなかったかもしれないからな・・・。俺は帰らせてもらうよ」
三河口は高台を降りて行った。
「杉山君、大丈夫かブー?」
「ああ、お前ら、わりいな・・・。俺は行くよ。行くしかねえんだろ?異世界に・・・」
「うん・・・」
「なあ、折角来たんだし、基地に上がらねえか?」
川村が提案した。
「うん、いいなブー!」
皆は基地に上がって清水の街並みを見た。すみ子はもうすぐこの町とおさらばしなければならないと思うと少し心が痛んだ。
(そうか、すみ子ちゃんも転校するんだったね・・・)
かよ子は大野だけでなく、すみ子も清水を去ってしまうという現実に少し悲しく思った。そして杉山はこの時、心の奥である事を考えるのであった。
後書き
次回は・・・
「混沌たる異世界への出陣」
異世界へと出発する日が遂に訪れた。名古屋のさり、札幌のありや悠一、神戸のゆりや光江、東京のりえとその友達、そして静岡の清水ではかよ子達が各々の神社を通して出発する。大いなる戦いの渦に飛び込む為に・・・!!
135 混沌たる異世界への出陣
前書き
《前回》
大将なのかどうか決闘を始める杉山と三河口。その様を一部見たブー太郎はかよ子に報せ、二人は決闘現場となっている秘密基地へと急ぐ。三河口に敗北した杉山は自身は大将ではなく臆病者だと告げられると共に、必ず異世界の戦いに参加するように促される。そしてすみ子達隣町の友達も訪れた中、三河口はその場を去り、かよ子達は基地に上がって清水の街を展望するのであった!!
次回よりあの異世界が舞台となります!今まで以上の激しい戦闘が待っていると思いますが、かよちゃん達の活躍を期待してください!!そして「あの人」が再登場するかも!?
三河口は居候中の家に帰宅した。
「只今帰りました」
「お帰り。どこ行ってたん?」
「かよちゃんの友達を説得しに行っていました」
「もしかして杉山君って子?」
「はい、かよちゃんの異世界に行くのかと言う質問にはっきりと答えないんで、必ず来いと言ってきました」
「そうなん?」
「後は杉山君次第ですが・・・」
かよ子は基地から見える清水の街の景色を見た後、日が暮れた為に帰る事にした。
「それじゃ、俺達も帰るか」
「うん・・・、じゃあね・・・」
かよ子達はすみ子達隣町の子と別れた。そして、杉山にブー太郎と一緒に帰る。
「杉山君・・・。オイラ、杉山君に来て欲しいブー。一緒に戦って欲しいブー!」
ブー太郎は切実に願った。
「ああ・・・」
「そうだよ、あのお兄ちゃんも本当は心配なんだよ。今の杉山君が心配で・・・、私も杉山君が来てくれないと元の日常が取り戻せないかもしれないし・・・」
かよ子は泣きそうになりながら言った。
「解ったよ。行ってやるから泣くな」
「うん・・・」
しかし、杉山は考える。今の自分に何ができるのか。そしてその答えは今出なくても向こうに行って解るのか・・・。
(俺にしかできない日常の取り戻し方・・・)
そして来たる一月二十日は訪れた。
名古屋にある熱田神宮。護符の所有者である羽柴さりはその境内にいた。
(この神社が名古屋一の神社みたいだけど・・・)
その時、一人の「神」が現れた。
「貴女ですね、護符の所有者たる者は?」
「はい」
「私は熱田大神。例の物は用意してありますね?」
「はい、こちらに」
さりは護符と例の手紙を差し出した。
「宜しい。あの世界へお連れ致しましょう。ただし、貴女にとっても過酷な大戦となるでしょう。命を落とすと元の世界に帰れませんよ」
「はい、覚悟しています」
「それでは」
熱田大神は剣を出した。そしてその剣を一振りする。黒い穴のような物体が出現した。
「この穴を潜りなさい。そうすればあの世へ迎えます」
「はい」
「では、御武運を」
さりは穴に入って行った。
北海道札幌市に住む煮雪ありとその夫・悠一は市内にある円山公園に来ていた。ここには北海道神宮がある所なのだが、秋に火災で消失していた(東アジア反日武装戦線の仕業とする説が深いが真偽は定かではない)。なぜここに来たか、ここにはシャクシャインの案によるものである。
「二人共、待っておった」
シャクシャインが現れた。
「シャクシャイン・・・。でも、この神社は火事で焼かれたのよ。ここで本当に大丈夫なの?」
「心配には及ばん。ここの神は今でもここにいる」
その場に三人の祭神が現れた。
「私は大国魂神。こちらは大那牟遅神と少彦名神。貴方方の事はシャクシャインから聞いておりますぞ。それでは御両人をあの世界へとお連れ致そう。かなり命を懸けた戦いになるが、覚悟はできていますかな?」
「はい」
二人は肯定した。
「では、二人共、始めるぞ」
「はい」
大国魂神は大那牟遅神と少彦名神と共に大麻を出し、地面に突き立てた。その瞬間、地面に光が現れた。
「この中に入れば『向こうの世界』に行けます。では、健闘をお祈りいたしますぞ」
「はい、あり、行こう」
「ええ」
二人は光の中へ入って行った。
兵庫県神戸市。祝津ゆりと彼女の隣人の女子高生・鷺森光江が湊川神社の境内にいた。ゆりは主人に別れの言葉を告げる。
「それじゃ、行ってくるわ」
「ああ、必ず帰ってくる信じとるさかいな」
その時、一人の人物が現れた。
「お主らか、大戦に向かう者とやらは」
「はい」
「拙者は楠木正成なり。智・仁・勇の心を忘れずに戦に臨むが良い」
正成は刀を振り下ろす。大きな風の渦が出現した。
「飛び込むのだ、そこに『向こうの世』はある」
「はい、行こう、光江ちゃん」
「はい」
ゆりと光江は渦の中に入り、そして消えた。正成はゆりの旦那を見る。
「お主、妻とあの女子の無事を祈り続けよ。きっと勝利を掴んでくれるであろう」
「はい、俺も信じます」
広島県廿日市市の厳島神社。スケバン女子高校生・鯉沢輝愛はその場にいた。また、見知らぬ人物が三名ほどいた。
(この人達も異能の能力や武器を持っとるんか?)
その場に三人の女神が現れた。
「本日はようこそお越しいただきました。私は市杵島姫命、そしてこちらは田心姫命に湍津姫命でございます。貴女達が元の日常を取り戻す為の大戦に参加される方ですね?」
「はい」
「それでは皆様をあの世へいざないましょう」
近くの海水が渦のようになり、トンネルの入り口のようになった。
「この隧道を通ってください。そうすれば平和を司る世界に辿り着きます」
「ありがとう」
選ばれし者達が海水のトンネルを潜って行く。鯉沢はある道具を持っていた。
(この銃で奴等をゲテ物にしたるわ・・・)
東京都大田区にある磐井神社。そこに異世界の杯の所持者・安藤りえは両親と友達のみゆきに鈴音と共にいた。そこに応神天皇という一人の祭神が現れる。
「ようこそ、杯の所持者、安藤りえ。そしてその母君、そして溝口みゆき、藤沢鈴音。これから大戦が待っておる。命に関わる恐れもあるが、覚悟はあるか?」
「はい!」
「よかろう。では、その道を開く」
応神天皇は手を出すと、近くに大きな黒い穴が現れた。
「この穴の中に入れば平和を司る世界に行く事ができる。行くがよい」
「はい。みゆきちゃん、鈴音ちゃん、行こう」
「うん」
りえ達は穴に入り、平和を司る世界を目指した。
そして静岡県清水市にある御穂神社。異世界の杖の所持者・山田かよ子は両親、隣のおばさん、三河口、まる子、大野、杉山、冬田、ブー太郎、長山、そして隣町の学校の山口、川村、ヤス太郎、すみ子、そしてすみ子の兄の濃藤、北勢田、奏子、まる子の姉、杉山の姉がいた。杉山は大野とは距離を置いていた。
(杉山君・・・)
かよ子は杉山が来てくれたと安心すると同時に大野との仲直りができていない事に不安も感じていた。
「皆さん、よくお集りになりましたね」
三穂津姫が現れた。
「これから大いなる戦いが待っております。貴方達の日常を取り戻す為の大事な戦。覚悟は宜しいですか?」
「はい!」
かよ子は答えた。
「それではお通しいたしましょう」
拝殿から蒼色の穴が現れた。
「こちらがこの世界と平和を司る世界の通り道となっております。ご武運を願っております」
「はい、ありがとうございます」
かよ子達は穴に入っていく。
(絶対に元の日常を取り戻す・・・!!そして杉山君と大野君を仲直りさせる・・・!!)
かよ子は二つの課題を自覚し、異世界へと赴く。杖を最大限利用する為に道具はある程度用意した。異世界までおっちょこちょいなどする訳にはいかない。
各地の神社にて多くの者達が異世界での戦いに参戦していった。
そして大きな大きな戦が幕を開ける。
後書き
次回は・・・
「政府、命懸けの取引」
かよ子達が異世界へ旅立つ時と同じ頃、首相は赤軍と顔を合わせていた。首相は赤軍の要求を呑まない為にもある作戦を成功しようとする。そして3年4組のクラスは出席者が大幅に減って寂しくなっていた・・・。
136 政府、命懸けの取引
前書き
《前回》
異世界へ向かう日が訪れた。かよ子達は御穂神社に集まり、御穂津姫によって異世界への入口を開いて貰い、異世界へと向かう。そして日本各地で多くの選ばれし者達が異世界へと旅立っていくのであった!!
いよいよ今回から異世界が舞台です!!
とある世界の某屋敷。かつて殷王朝の女帝として生きていた妲己はそこで多くの女性を遊ばせていた。
「どうかね、坊や?ここのおなごどもは美しいであろう?」
「うん・・・」
そこにいる一人の少年は遊女達に見惚れていた。
「ここにいる女性達を坊やの嫁にして上げてもいいぞ」
「そうだな、お前も私と同じ女が好きだからな」
その屋敷の王もその場にいた。女性達は少年に寄り添う。
「私を嫁にしてくださって」
「私でよければ・・・」
「いいえ、私が!」
(迷うなあ・・・)
少年は多くの女性に群がられて暑苦しいとは思ったが、前にいた「地」ではこのように人気者になる事はなかったので嬉しくも感じていた。
「一緒に温泉に行きましょ。私が背中流してあげますわ」
「ええ!?私も行きます!」
(ど、どうしよう・・・?)
「皆と一緒に行ってやっては良いではないか?おなご、好きであろう?」
妲己が進言した。
「は、はい!」
少年は顔を赤くして遊女達と温泉へと向かうのであった。
かよ子達が異世界へと向かった時と同じ頃、羽田空港に三木首相とその官僚達はいた。
(とうとう来るのか・・・!!)
そして声が聞こえた。
「おはようございます、三木首相」
「お、お前らか・・・?」
首相は目を疑った。数名の男女が現れたが、実際の赤軍のメンバーとは顔が違う。整形でもしたのだろうか?
「諸事情で顔を変えております」
「分かった、ホテルの会議室へ通してやれ」
首相達は彼女らを空港のホテルにある会議室へ通した。
「修、認識術を解いていいわ」
「了解」
配下の男が答えると、顔が変わった。リーダーの重信房子、軍事委員の丸岡修、政治委員の足立正生、そして同じく政治委員の吉村和江の顔になった。
「この丸岡修の認識術で私達の顔を周りからは全くの別人に見えるようにしていたのです」
「そ、そう言う事だったのか」
「それでは話を始めましょう。例のあの道具は持って来て頂けましたでしょうか?」
「ああ、それぞれの所有者に頼んで届けて貰ってある」
首相は官僚の一人に礼の道具を持って来させた。
「これが護符、杖、そして杯だ。それから憲法9条の改正についてだが・・・」
首相は恐る恐る語りだす。
「我々が統率するという形で陸海空軍を持つ事にした。無論、大日本帝国憲法の頃にあったように国民に兵役の義務を持たせようと思う。四月に正式に改正しよう」
房子は改正時期にピンと来た。
「四月?なぜそんな時期にですか?明日からでも宜しいのでは?」
「それはだな、新年度と言う事でその時の方が丁度いいと思ったのだが・・・」
首相は嘘の口実作りに苦労した。
「明日からに、遅くとも来週でお願いできますか?」
「う・・・」
首相は頷くしか選択肢がないと察した。
「分かった、お望み通り明日から改正にする・・・」
「ありがとうございます。もしこの約束を破った場合、どうなるか分かっておりますね?」
「あ、ああ・・・」
「では、この政治委員の足立正生と吉村和江に同行させて頂きましょう」
(なぬ!?)
首相も、官僚も驚いた。これでは本当に全国民の前で交戦権復活の宣言をする羽目となる。
「宜しいですね?」
房子はやや高圧的な態度で確認した。
「ああ」
対して首相は反対できずに承認してしまった。
「では、ありがとうございます。正生、和江、お供しなさい」
「はい」
「それでは、こちらは頂きます。では修、認識術を」
「了解」
丸岡は認識術で房子と自身を、そして吉村と足立も別人の顔にした。
「では、御機嫌よう、首相」
房子は丸岡と共に会議室を出た。
(この、赤軍め・・・。覚えてろよ・・・!!)
首相は取引には成功したものの監視役を付けられて心の中でイライラした。
「では、首相、お願いがあります」
足立が言葉を発する。
「NHK、民放問わず各放送や様々な新聞、雑誌記事を集めて会見をお願いしますよ。戦争を再び復活させるとね」
「う・・・、分かった」
その頃、かよ子達の通う小学校の3年4組の教室。クラスは寂しく感じていた。何しろ7名もの欠席が出ている。それも6名は異世界の戦いに身を投じているためであり、残りの一1名はクリスマス・イブの夕方から行方不明となっているのである。
「たまちゃん、まるちゃんやかよちゃん達、行っちゃったね」
「うん、そうだね。私、まるちゃん達が心配だよ・・・」
とし子やたまえはそのような会話をしていた。
(まるちゃんやかよちゃん、おっちょこちょいするから心配だな・・・。私も行きたかったけど・・・)
たまえは隣のいない親友の机を見て不安に思う。たまえは異能の能力を宿しておらず、敵に対抗する武器も持っていない為に異世界からの召集令状を受け取っていない。その為同行する事はできなかったのだ。
(まるちゃん、どうか無事でいて・・・!!)
たまえは皆の無事を切実に願った。その一方、笹山はクリスマス・イブの日から行方不明になっている男子の事が未だ心配だった。
(藤木君、早く戻ってきて・・・!!)
近所の女子高生やニュースから藤木が異世界に連れて行かれたと聞く。彼の安否が一刻でも早く明確になって欲しかった。そして野良犬に襲われそうになった時、彼がかよ子を見捨てて逃げた事も許してあげたく、かつその時以降邪険な態度を取った事も謝りたい一心だった。その時、戸川先生が入って来た。
「おはようございます。皆さん、席に着いてください」
戸川先生の言葉で皆は着席した。
「本日から暫く、大野君、さくらさん、杉山君、富田君、長山君、そして山田さんが諸事情の為、お休みいたします。また、藤木君も未だに行方不明となっております。少し寂しくなりますが、頑張っていきましょう」
戸川先生はかよ子達が危険な冒険に出ている事や藤木が異世界の地にいる事はあえて口にしなかった。戸川先生自身も生徒をあまり心配させたくないという気持ちがあったのである。しかし、異世界の敵や赤軍が攻め続けている事は事実の為、誰も授業に集中できるような状態ではなかった。
その頃、さくら家では・・・。
「お母さんや、じいさん見なかったかね?」
まる子の祖母がまる子の母に聞く。
「え?見ていませんが、出かけたんですか?」
「ああ、どこにもいないんじゃよ」
「どこ行ったのかしら?」
まる子の祖父が行方不明となっていたのだった。
そして御穂神社から異世界への入口を潜り抜けたかよ子は異世界への通路を渡り歩いていた。
(この先に異世界が待っているんだね・・・)
かよ子は改めて認識する。そして緊張で胸の鼓動が激しくなっている事も感じた。
「かよ子、そわそわしてるの?」
母に聞かれた。
「う、うん・・・」
「お母さんも子供の頃同じように思っていたわ。いつも空襲警報が鳴り止まなくて。この先、生きていけるか心の中でいつも不安だったわ。学校では国の為にいつでも死にますなんて言ってたけど本当は死ぬって恐怖があったのよ」
「お母さん、そうだったんだ・・・」
「でも、異世界に行けるなんてアタシゃワクワクしてるよ。それに学校にも行かなくていいなんてさあ~」
山田親子に対してまる子は非常に呑気だった。
「アンタ、遊びに行くんじゃないのよ」
姉が窘めた。
「石松はもう先に向こうにいるのか?」
大野が気になった。
「そうかもしれませんね、ブー」
そして長い通路の終点には広大な空間が広がっていた。
「ようこそ、異世界へおいでいただきました」
「例の手紙はお持ちでしょうか」
そこには中学生くらいの女子が二名いた。
後書き
次回は・・・
「再会、そして合流」
異世界へと辿り着いたかよ子達。だがその場には思いがけない人物が追って来ていた。そしてかよ子達は今までに知り合ってきた人物と再会する事になる・・・!!
137 再会、そして合流
前書き
《前回》
三木首相は赤軍の人間に偽物である事を隠して杖、護符、そして杯を赤軍に引き渡す事に成功する。だが、憲法9条の改正をすぐにでも改正する事を求める赤軍の長・房子達は政治委員の足立正生・吉村和江を首相の監視下に置かせ、交戦権の復活を余儀なくされる目に遭ってしまう。かよ子達が抜けた学校の3年4組の教室は欠席者が続出した事で寂れてしまっていた。そしてかよ子達は遂に異世界へと足を踏み入れた!!
友蔵をこの話に絡ませる予定はなかったのですが、多分孫可愛さと寂しさで癇癪起こすのではないかと思い、とりあえず登場させました。周りの事態をひっかき回さないといいんですが・・・。
異世界の某地。西洋系の女性が攻め込むように歩き出す。そこには多くの人々がバリケードを張っていた。
「この先は通さんぞ!!」
「ナポレオン様やラマルク将軍の栄誉に掛けて!!」
人々は叫ぶ。
「邪魔よ」
女性は香水を取り出すと、周囲に振りかけた。バリケードは一瞬で溶解する。
「何!?消された!?」
そして女性はバリケードを設置した守衛隊にも香水をかけた。
「あ、ああーーー!!」
守衛達は苦しみながら消滅してしまった。
「この菫の香水は私が愛せない者や汚らわしき者は一瞬で消え去らしてくれるのよ」
女性はその先を行く。
(さあ、待っていなさい、テレーズ!母の言う事をちゃんと聞くのよ!!)
女性の名はマリー・アントワネット。嘗て自分は贅沢な暮らしをし、民衆の苦しい生活に見向きもしない事で国民たちから顰蹙を買い続け、結果処刑される事になった王妃である。平和を正義とする世界の陣地を進みながらアントワネットは娘を探す。
「アントワネット。貴女は間違った方向に進んでしまったわね」
「お、お母様!?」
アントワネットの前に現れたのは彼女の母・マリア・テレジアだった。
かよ子達は異世界のとある地へと辿り着いた。
(ここが『私達が住んでいる世界』とは違う世界・・・)
そこには二人の女の子がいた。中学生程の女子で、西洋系のような顔立ちだった。
「あの二人にこの手紙を見せればいいのかな・・・?」
すみ子は気になった。
「どうやらそうに違いない。今、『例の手紙はお持ちでしょうか?』って言ってたし」
すみ子の兄は察した。
「じゃ、行きましょう」
かよ子の母はそう言った途端・・・。
「ま、まる子~!!」
奥から誰かが走って来た。
「お、おじいちゃん!?」
「なんでおじいちゃんがいるのよ?」
まる子とその姉は祖父・さくら友蔵の登場に驚いた。
「だって、儂、まる子とお姉ちゃんが心配でしょうがなかったんじゃ~。寂しくて、つい、つい、ついて来たんじゃ!!」
まる子の祖父はその場で泣いた。
(まるちゃんのお爺さんがいつの間に・・・)
かよ子はその場で泣き出す老人にどうすればいいのか解らなかった。
「あの、まるちゃんのおじいさん・・・」
かよ子の母はまる子の祖父に聞く。
「お孫さんを心配する気持ちは解りますが、この手紙はお持ちでしょうか?」
まき子は異世界から送られた手紙を見せた。
「なんじゃ、それは、どこの国の言葉じゃ?」
「この世界から送られた手紙です。これを受け取っていない人はこの世界に入れないんです」
「おじいちゃん、これだよ」
まる子とその姉は祖父に手紙を見せた。
「ああ、まる子もお姉ちゃんも持ってるなら大丈夫じゃ。儂も行けるということじゃな」
友蔵はあっさりと元気になった。
「いえ、そうではなく・・・」
まき子も友蔵が理解を間違えていると思い、説明し直した。
「この手紙を貰った本人じゃないと駄目なんです。さくらさん自身にこの手紙が渡されましたか?」
「はて・・・、ワシは貰ったかどうか・・・」
友蔵は自身の記憶を探った。
「いいや、貰ってないわよ。私とまる子宛てに来たわ」
さきこは断言した。
「あ、そうじゃった。でも、まる子の友達のお母さんがいるなら儂も来て大丈夫じゃろ」
あまりに楽観的な友蔵に呆れるまき子であった。
「それでは駄目なんです。私は娘と同じこの手紙を貰っているからここにいるんです。おじいさんがこの手紙を直接貰っていないのでは駄目なんです」
「な、なんと!!」
友蔵はショックを受けた。
「い、嫌じゃ、嫌じゃ!!儂はまる子達を危険な目に遭わせたくないんじゃ~!!」
(どこまでも我が儘なじいさんだな・・・)
三河口は心の中で思った。
「おじいちゃん、悪いけど帰ってくれるかしら?」
さきこは頼んだ。
「お姉ちゃん、大丈夫なのかい!?その恐ろしい敵とやらに殺されたならワシは黙ってられん!!」
「まあ、そこで見送るならいいでしょう。皆、行きましょう」
まき子はこれ以上相手をしても埒が明かないと思い、先に進む事にした。皆はその場にいる二人の少女に手紙を見せる。
「ありがとうございます。お進みください」
かよ子もその女子に自分の手紙を見せる。
「最高位の道具・杖の所有者・山田かよ子さんですね?おいでいただきありがとうございます。では、お進みください」
「あ、はい」
かよ子は緊張のあまりお辞儀をして進んだ。他の皆も手紙を見せると共に先に進む。まる子は後ろで待っている祖父が気になった。
「まるちゃん、行こうよ」
かよ子が呼び掛けた。
「う、うん・・・」
そして、祖父が叫ぶ。
「ま、まる子~!!頼む!儂はまる子の祖父じゃ!どうか儂も行かせておくれ~!この通りじゃ!!」
友蔵は土下座した。
「手紙はお持ちでしょうか?」
「手紙なら孫が持っとる・・・」
「お孫さんではなく、貴方はお持ちですか?」
少女は聞き返す。
「儂は持っとらん!でもまる子達が心配なんじゃ」
友蔵は強行突破しようとする。しかし、見えない壁によって弾き返された。
「私達の世界から送られている手紙がないとここから先はお通りできません」
「頼む、通してくれ~」
まる子はその場へ戻ろうとする。
「お願いだよお~。おじいちゃんも連れて行かせてよお~。この手紙を見せればいいんだから」
まる子は祖父に手紙を渡そうとする。
「申し訳ないですが手紙は受け取った本人しかお使いできません。別の人に譲渡して通す事も認められておりせん」
「そんなあ・・・」
「まるちゃん、仕方ないよ。行こう」
かよ子はまる子の腕を掴んで引っ張った。
「そうだぜ、そういう決まりだから仕方ねえじゃねえか」
「うん・・・」
皆は先へ進んだ。その場に一人の女性がいた。
「あ、お母さん、健ちゃん、かよちゃ~ん!」
隣人のおばさんの娘・羽柴さりだった。
「お姉さん、いたんだ」
「勿論」
「さり、はしゃぎすぎよ」
「このくらいどうって事ないじゃん」
もう一人女性がいた。さりの姉のありだった。夫の悠一もその場にいる。
「ありや悠一君もいるのね」
「こ、こんにちは」
かよ子は礼をした。
「かよちゃん、久しぶりね」
「うん」
「皆、来てたのね」
「久しぶり・・・です」
また別の女性と女子高生が一名、現れた。
「ゆりちゃん、光江ちゃん」
さりとありの姉・ゆりと彼女の家の隣に住む鷺森光江だった。
「他にも沢山来てるね」
「ああ・・・」
杉山は素っ気ないような素振りだった。大野と喧嘩している影響もあるのだが。
「かよちゃん、大野君と杉山君って子、なんか離れてるわね」
さりが聞いた。
「うん、喧嘩しちゃって・・・。大野君が四月から東京へ転勤になっちゃうんだ・・・」
「そうなの・・・。何か悪い感じで来ちゃったみたいね・・・」
「うん・・・」
その時、また別の女子が現れた。
「あらっ、かよちゃんっ!!久しぶりっ!」
そこには杯の所有者・安藤りえがその場にいた。彼女の母親やその友人と思われる女子が二名いる。
「りえちゃん!」
「あら、こんなに友達がいるのね」
「かよちゃん、その子は・・・?」
すみ子が誰なのか気になった。
「ああ、東京に住んでる安藤りえちゃんだよ。異世界の杯を持ってるんだ。りえちゃん、私の隣町に住む友達だよ」
「宜しくね。こちらは私の学校の友達よ」
「宜しく・・・」
りえは友達の鈴音とみゆきをかよ子達に紹介した。一方のすみ子達も挨拶をした。
「おい、お前、三河口じゃねえか!」
一人の男子高生がかよ子達の所に寄って来た。
「お前は確か・・・」
三河口はその男子とは面識があるようだった。
「三河口君、知り合いなの?」
奏子が聞く。
「ああ、小学校の頃の友人、湘木克也だよ。お前も異能の能力があったのか?」
「ああ、この斧を持ってんだ。こいつで水に火、木の三つを自在に操る能力があるんだ」
「ほう」
「お前は小学生の頃、なんだかんだで暴走してたけど、今は落ち着いていそうだな」
「ああ、清水に来て変わったんだよ。実はあの時俺が暴れたのは能力の暴走によるものだったんだ」
「そうか、俺もそんなんだと思ったよ」
「でも、今は無闇に暴走する事はなくなったよ。おばさんの家に来た影響もあるかな」
「そうか」
「前に兄貴が清水に来た時はボコボコにされたがな」
「マジかよ。そんな事があったのか」
「ああ、お前の兄貴も元気かい?」
実は三河口の兄と湘木の兄は友人同士である。
「ああ、大学生活楽しんでるぜ。そうだ、こちらは俺の学校の友達、濃藤徳崇、北勢田竜汰、徳林奏子だよ」
「宜しく」
(なんか、同窓会みたいな感じだね・・・)
そしてかよ子と同じ年頃の少女がこちらを見ている。
「あ、ももこちゃん、ももこちゃん・・・!!」
一人の女子がまる子を本名で呼んで近づいて来た。
「あれ、ええと・・・」
「忘れたの、私のり子だよ」
「のり子・・・。あ!小鳥屋ののりちゃんだね!?」
「うん、また会えて良かった・・・。あの時貰った人形、今でも大事にしてるよ!」
のり子と名乗った女子は感動の涙を流すのであった。
「ありがとう~、私、もう会えないかと思ったよお~」
「のり子ちゃん、知ってる子なの?」
その場にいる人形が喋った。
「うん、ももこちゃんって言うんだよ」
「に、人形が喋った!!」
まる子は喋る人形に驚いた。かよ子は命懸けの戦いに参加すると解っていながらもこのような和気藹々とした雰囲気を見て少し心が落ち着くのであった。
「まるちゃん、昔の友達に会えて良かったね」
「うん、のりちゃん、こっちは友達のかよちゃんだよ~」
「友達・・・」
「こんにちは」
のり子はなぜかかよ子の方を冷めた目で睨みつけた。
後書き
次回は・・・
「唯一の友達」
友蔵は必死で二人の少女に通行を乞うも、叶わずに土下座を続ける。のり子は昔仲良くしていたまる子が他の友達が出来た事に気に食わず、癇癪を起しだす。さらに三河口達は広島のスケバンの女子とも再会し・・・。
138 唯一の友達
前書き
《前回》
異世界に到着したかよ子は二人の少女と相対する。その二人に手紙を見せようとして先を進むのだが、その場に招集されてもいないのに孫が心配のあまりにいつの間にかついて来ていたまる子の祖父・さくら友蔵もいた。自分も行きたいと駄々をこねる友蔵だったが付き合いきれぬと見てかよ子は二人の少女に手紙を見せて先に進む。そしてその先には隣の家のおばさんの娘や杯の所有者の安藤りえなど多くの選ばれし者達がいた。三河口も小学時代の友人・湘木克也と、まる子は幼稚園児時代に会ったという鳥橋のり子と再会する。しかし、のり子はまる子が他の友達と共にいた様子を見て・・・!?
友蔵は二人の少女に泣きながら土下座を続ける。
「頼む!行かせてくれ!まる子が、心配なんじゃ!!」
「お気持ちは解りますがこれは決まりですので」
「ならその決まりを作った人に合わせてくれ!頼む!」
「生憎ですがその人達も他の御用が色々とありましてそちらに構っている暇はないのです」
「そんな!儂にまる子達を見殺しにしろと言うのか!?嫌じゃ~」
友蔵はただひたすらに泣き続ける。その時、横から誰かに蹴飛ばされた。
「どけ、じじい!邪魔じゃ」
「え!?う、うおっ!!?」
友蔵は呼ばれた相手に怖気づいた。制服のスカートを長くし、髪型もパーマをかけている、いわばスケバンの女子高生だった。
「ふ、不良じゃ~!い、命だけは・・・!!命だけは勘弁してくれ~!!」
友蔵はそのスケバンを見ると喚き、怯えた。
(ったく、なんじゃ、このせせろーしいいじじいは・・・)
スケバンは老人を無視して二人の少女に手紙を通す。
「ようこそ、おいでいただきました。鯉沢輝愛様ですね。どうぞお通り下さい」
(あ、あの不良も手紙を!?)
友蔵は驚いた。次に来る人もまた手紙を二人の少女に渡して先に進む。友蔵は一人の男性を捕まえて頼んだ。
「アンタ、頼む。その手紙を儂に譲ってくれ!向こうに儂の孫がおるんじゃ!行かせとくれ!」
「は、はあ!?」
男性は訳の分からない要求をする友蔵に困惑した。
「す、すぐに返すから!」
「あ!」
友蔵は男性から手紙をひったくって走り出す。
「これで通しておくれ!」
「あの、先ほども言いましたように別の人の手紙で通る事もできません」
「そんな!」
友蔵は再び先へ行こうとするもまた弾かれてしまった。
「あの、返してください」
男性は友蔵から手紙を取り返し、二人の少女に見せてその場を去った。
「ま、まる子・・・。まる子お~!!」
友蔵は泣き喚き続けた。
かよ子はのり子に睨みつけれ、震えてしまった。
「ももこちゃん、どうして・・・!?私がももこちゃんのただ一人の友達だったのに!!」
「の、のりちゃん!?」
「ももこちゃんのバカ、バカ、バカ!私よりも他の友達がいいの!?」
のり子は急にまる子を触る事なく念力の如く地面に叩きつけた。おそらく彼女は武装の能力を持ち、それが発動されたのだろう。
「の、のりちゃん、ごめん・・・」
「嫌だ!許さない!」
「のり子ちゃん、止めて!!」
のり子が持っている人形が叫んだ。その時、のり子がダメージを与えていたまる子への能力が解け、まる子は再び起き上がれるようになった。
「・・・キャロライン?」
「折角ももこちゃんと会えたのに、そんな傷つけるの駄目だよ。学校の他の人達と違って仲良くならなきゃダメよ!」
「キャロライン・・・。ごめんね。そうだったね」
「のりちゃん・・・。横浜に帰っても辛かったんだね・・・。あの小鳥屋のおばちゃんはどうしたの?」
「お店を止めて横浜で一緒に住むことになったんだけど、去年死んじゃったんだ」
「そうなんだ・・・。離れてもずっと友達でいるよ」
「うん・・・!!」
「のりちゃん、これは遊びじゃなくて命を懸けた戦いだよ。遊ぶなら二人でもできるけど、今は他の人達と一緒に協力しなきゃダメなの。でも、のりちゃんならきっとももこちゃんだけじゃなく、きっといろんな人たちと打ち解けられるって信じてる。だから、喧嘩しないで・・・」
「うん、ごめんね。ももこちゃん、皆」
「大丈夫だ、俺達とも仲良くなろうぜ!」
大野の言葉でのり子はここにいる皆が戦いの仲間になる事に留意しなければならないと感じた。
「オイラもブー!」
「私も協力するわよっ!」
「私も・・・」
皆が自分を受け入れてくれる事に感謝するのり子だった。
「あれ・・・。貴女のその杖に杯・・・」
キャロラインはかよ子の杖やりえの杯を見た。
「凄い強さを発してるわ・・・。それに・・・」
キャロラインはさりの持つ護符も見た。
「あの護符も・・・」
「ああ、これね、ここの世界で一番強い力がある道具なんだよ。私のこの杖も、りえちゃんの杯も、あのお姉さんの護符もね。元々はお母さんの物だったんだ。りえちゃんやこのお姉さんの護符もそれぞれのお母さんから引き継いだんだよ。お母さん達はこれで戦後の食糧難を乗り越えてきたんだ」
「そうなの。私よりも随分前に作られたのね」
「キャロラインちゃんもこの世界で作られたのかしら?」
さりが聞いた。
「そうよ。私はここで作られて生まれたの。それでのりちゃんの友達として『敵』と戦って来たのよ」
「そうなんだ・・・」
その一方、三河口は湘木や光江などとも交えてのんびりと会話していた。
「俺達と同年代の奴も何人かいるね。中学生とかも大人もいるし、警官の人もいるのか」
北勢田は周りを見回す。
「よう、久しぶりじゃの、われら」
スカートを極端に長くし、パーマをかけた典型的なスケバンの女子高生が現れた。
(す、スケバン・・・!?)
光江は現れたスケバンに少し怖気づいた。
「鯉沢輝愛か。久しぶりだな」
三河口は落ち着いた表情だった。
「三河口、知り合いなのか?」
湘木が質問する。
「ああ、修学旅行で広島に行った時、現地の高校と交流する機会があってね、その時に会ったんだ」
「われ、ウチを覚えとってくれたんか。嬉しいのう。んで、こいつらは?」
鯉沢は光江や湘木を見た。
「ああ、違う学校に通う俺の友達だよ」
「へえ、ウチは鯉沢輝愛。広島から来たんよ」
「俺は湘木克也だ」
「私は鷺森光江」
「ウチはこの銃で奴をボコボコにできるんよ」
鯉沢は持っている銃を見せびらかした。
「銃?俺達と会った時は道具持ってないって言ってたが、その後に貰ったのか?」
「ああ、異世界の敵が『護符はどこだ』とかぬかしとるけん、その時、元就とかゆう奴からもろうたんや。こいつでボコボコにした。そういや、随分と澄んだ感触がするけんのう。この二人のガキとこの姉ちゃんから・・・」
鯉沢はかよ子とりえ、そしてさりを見た。
「わ、私・・・!?」
かよ子は鯉沢に睨まれて怖くなった。相手がスケバンだからだというのもあるが。
「よくわかるな。実はその二人の子はそれぞれ異世界の杖と杯を持っている。そしてその敵が探していた護符の持ち主が、この俺の従姉なんだよ」
「へえ、われの従姉か?」
鯉沢はさりを睨んだ。
「よ、宜しくね」
さりは年下相手とはいえ、やはりスケバンだからか少し震えて挨拶した。
「お兄ちゃん、この人は一体?」
かよ子は三河口に聞いた。
「ああ、広島の高校に通う女子高生だよ。修学旅行の時に会ったんだ」
「このガキ、知り合いけん?」
「ああ、隣の家に住んでいるんだ。かよちゃん、この人はかよちゃんの杖にりえちゃんの杯、さりちゃんの護符で強い感触を持っているから俺よりも強い見聞の能力があるようだ。それに初めて会った時も俺が普通の凡人と違う事にすぐ気づいたしな」
「そうなんだ」
「それに、彼女は夏に非常に不気味な感触を覚えたと言っていた。杖と同等の能力があると言われる異世界の剣が奪われたのを感知したんだろうな」
「異世界の剣・・・!?あの赤軍の女の人が使ってた・・・!?」
かよ子達はクリスマス・イブの日にさりの護符を守る為に名古屋で戦った際に重信房子という赤軍の長と遭遇した事がある。その人物が使っていた剣が広島で奪われていた事をこの見聞の能力を持つこのスケバン女子高生が感じるのもおかしくないとかよ子は思った。
友蔵は土下座しながら通行を二人の少女に乞い続ける。
「頼む、通しておくれ~。この老いぼれジジイの我儘をどうか聞いとくれ~」
「幾ら頼まれても規則は変えられません。申し訳ございませんがお引き取り下さい」
「そ、そんな事できん!孫が、孫が心配なんじゃ!!」
その時、その場に一人の男性が現れた。
「アンネ、ハンナ、もう手紙を渡した人は皆来ただろう。君達ももう行っていいよ」
「はい、イマヌエル様。でも、この人がどうしても帰ってくれないのです」
「この人?」
イマヌエルはそこで土下座している老人がいるのを確認する。
「手紙を持っていないのにお孫さんが心配だと言ってこの先に行きたいというのです」
「私達が帰るよう頼んでも聞かないのです」
「そうか」
友蔵からしてイマヌエルは神のように見えた。
「か、神様ですか!?どうかさくら友蔵七十六才、孫の命が心配なのです。貴方様の為なら何でも致します。どうかこの先へ行かせてください!!」
「はあ・・・」
イマヌエルも困惑した。
かよ子は多くの人々がいる中で激しい戦いが始まる事に緊張が高まる。
「大丈夫かな・・・?おっちょこちょいしないかな・・・?」
「大丈夫よ。かよ子。その杖があるんだから」
母が心を落ち着かせた。
「うん・・・」
その時、声が聞こえる。
『選ばれし皆様、お待ちしておりました。私達の戦いに参加してくださります事を感謝致します。この先に開かれます階段をお通り下さい』
「フ、フローレンスさんの声だ・・・」
かよ子は嘗て出会った異世界の女性を思い出した。そして多くの人が進み、かよ子達も続く。そこには開かれた扉があり、下り階段があった。
後書き
次回は・・・
「選ばれし者達への説明会」
多くの人々と共にある大広間へと通されたかよ子。そこでフローレンスとの再会に喜び、おっちょこちょいをやってしまう。そして大広間でフローレンスはこの地に皆を呼び寄せた経緯と共に今の日本の危機的状況の説明を始める・・・!!
139 選ばれし者達への説明会
前書き
《前回》
孫が心配でたまらないまる子の祖父・さくら友蔵は守衛役を務める二人の少女に自分も通してくれと乞い続けるが、通してもらえずにいた。横浜の少女・鳥橋のり子はまる子がかよ子達と共にいるのを見て文句を言うが、彼女の人形・キャロラインが止めに入って事なきことを得る。そしてかよ子はこの地での戦いが始まる事に緊張を覚える!!
オリジナルキャラ紹介・その10
藤沢鈴音 (ふじさわ すずね)
杯の所有者で東京に住む安藤りえの友達。初登場第94話。控えめでおとなしい性格。炎と氷を操る錫杖を使って戦う。好きな食べ物はカレーライス、アイスクリーム。
かよ子達は階段を降り、地下道と思われる道を進む。そしてその先に扉があった。中に入ると巨大な広間となっていた。
(す、凄い・・・。こんな広い部屋・・・)
かよ子からしてこの場は童話に出てくるようなお城の舞踏会の会場のような部屋だった。そしてそこに一人の女性が立っていた。
「フ、フローレンスさん!!」
かよ子は思わず前に行った。しかし、その途中で転んでしまった。
「あ・・・」
転んだかよ子の元にフローレンスが近寄る。
「ご無沙汰ですわね、山田かよ子ちゃん、お元気でなによりです」
「は、はい・・・」
かよ子からしてフローレンスと会うのは杉山達「次郎長」とすみ子達「義元」の秘密基地の取り合い合戦を鎮静させた時以来だった。
「でも色々と大変でした。杉山君と大野君が喧嘩しちゃって・・・」
「ああ、その事は石松から聞きましたよ。でも、きっと仲直りします術はあります筈ですわ」
「は、はい・・・」
「では、もうすぐここに来てくれました皆さんの為に説明会を始めますわ」
「はい・・・」
フローレンスは元居た壇上に戻る。そしてその場にイマヌエルが現れた。
「フローレンス」
「どうかしましたか?」
「このさくら友蔵さんとうさくらさきこ君とさくらももこ君のお爺様が孫が心配で行きたいと言うんだ。断っても断っても帰らないんだ。仕方ないから通してやりたいと思う」
「は、はい。困りましたお爺様ですわね・・・。お通しましょう」
(え、まるちゃんのおじいちゃん、結局来るの・・・!?)
かよ子は驚いた。そして声が聞こえた。
「まる子〜!お姉ちゃ〜ん!!どこじゃ〜!?」
「おじいちゃん、ここだよ〜!」
まる子は手を振った。
「まる子〜!よかった、よかった・・・」
まる子と友蔵は感動の抱擁をした。
「おじいちゃん、帰った方が良かったと思うけど・・・」
「ああ、お姉ちゃん、無事じゃったか!」
「まだここに来ただけで何も始まってないよ・・・」
「あ、そういえば・・・」
姉の言葉に友蔵とまる子は心がしらけた。
「あのジジイ、来やがったか」
鯉沢は胡散臭そうにぼやいた。
「それでは選ばれし皆様、この決戦にご参加して頂きました事にお礼を申し上げたいと思います。私はフローレンス。この平和主義の世界を治めます者の一人でございます」
「そして同じくイマヌエル。皆、私達と会った事が多いだろう」
「今、貴方方が住まわれております日本は赤軍といいます過激派集団に狙われております。そしてその赤軍が我々と敵対しています戦争主義の世界と手を組みまして赤軍は日本国の交戦権を復活させ、周辺諸国を植民地化しますといいます野蛮な行為、そして戦争への参加を再び行います事が目的と分かりました。そしてそれと平行しますように我々の世界でも敵対します世界が出現し、この世界を侵略しつつあります。私とイマヌエルは貴方方の世界から昇天し、この世界を訪れました時は何もありませんでした。そこに住めるような世界を創りたいと思い、地、水、風、炎を生み出し、平和を願っていました者たちをこの世界に呼び寄せましたのです。この世界を創りました時に四つの道具が生まれました。それが、地を司ります護符、水を司ります杯、風を司ります剣、そして炎を司ります杖です。そして第二次世界大戦の終わり、壊滅的な被害を被りました日本の四人の少年少女にその道具を授けましたのです。29年間、この地に預けられました間、日本は復興の道を辿っていきました。ところが、私達の世界で戦争や虐殺などを正義とします者が現れ、その者達がまた別の世界のこの地で創り出してこの世界を脅かしていますのです。彼らがいつあの四つの道具の存在を認知しましたかは定かではありませんが、彼らはその道具を手に入れて自分らが思うがままの世界を作ろうとしていますのです。そしてそんな中、さらなる歪みが生じました」
(さらなる歪み・・・!?)
かよ子はもしやと思った。
「先程喋りました日本赤軍といいます過激派が日本を再び戦争への道へ進めます為に『私達の敵の世界』と組む事に成功し、敵の世界の人間達が安易に貴方方の世界を行き来できますようになってしまったのです。皆さんはあの世界と世界の繋がり、いわば地震のような現象が起きました事を覚えていますのではないでしょうか?」
(やっぱり・・・)
かよ子は四月の終わりに起きた地震のような現象が赤軍によるものとは解っていたものの、赤軍の行動にさらなる怒りを覚えた。
「我々はそれに対抗します為、貴方方に協力したく、私達の世界の人々を派遣しまして、戦います為の道具を授けましたのです。しかし、剣の所有者・渋川正太(しぶかわしょうた)氏は道具を引き継ぐ子女がいまませんでした事も仇となりまして赤軍との戦いに敗れ、命を落とし、剣は赤軍に奪われました」
(御穂津姫が言っていた剣・・・。それは名古屋で赤軍のリーダーが使っていた・・・!!)
長山は夏に御穂津姫に会った時の事、そして名古屋で羽柴さりの持つ護符を守り抜く為に戦った後に赤軍の長・重信房子が例の剣を持っていた事を思い出した。
「そして我々は今、劣勢に陥っております。そしてこの日、赤軍は憲法9条の改正と共に護符、杖、そして杯を寄こせと日本政府に命令してきました。私達はそれに対しまして偽の道具を政府に渡して取引の道具に使用させました」
(その為に石松は私に出発の日までに杖を使わないように言ったんだ・・・)
かよ子は転校の事で杉山と大野が喧嘩した事を思い出した。
「そして彼らに偽物を渡しました事がバレませんように護符の所有者・杯の所有者・杖の所有者と共に多くの異能の能力を持ちます者達を私達のこの世界に呼び寄せ、赤軍の交戦権復活の計画および私達の世界の陥落を阻止します為に戦っていただきます。私達の世界は今劣勢ですが、皆様がお力お貸ししていただけますならきっとこの状態を塗り替える事ができますと私達は信じています。私達の為に戦っていただけますか?」
フローレンスは改めて皆に確認した。
「行きます!」
「そうだ、そうだ!」
「戦争はもうごめんだ!!」
皆は同調した。
「かよ子、頑張れる?」
かよ子は母から確認された。
「うん、絶対に負けないよ。たとえおっちょこちょいをやっても・・・、いや、絶対におっちょこちょいはしないようにこの杖とフローレンスさんから貰ったこの羽根で戦うよ!お母さんだって子どもの頃戦争で辛い目にあったよね?私、お母さんに同じ思いをさせたくないし、私だって戦争は嫌だもん・・・」
そしてかよ子には一つの目的があった。
(この戦いを終わらせるて、杉山君を大野君と仲直りさせる・・・!!)
かよ子には大野と杉山が二度目の喧嘩をした時の心の傷があった。大野が転校する前に杉山には彼と仲直りして欲しい。その為にも元の平和な日常を取り戻したいと思っていた。
「い、嫌じゃ、戦争は嫌じゃ~」
友蔵が泣き喚いていた。
「あのジジイ、帰れよ・・・」
鯉沢がぼやいた。
「まる子、お姉ちゃん、戦うのか!?そんなの、おじいちゃん、心配じゃ!!儂も戦うぞ!」
「ありがとう、おじいちゃん!」
まる子は喜んだ。
「しかし、お爺さん」
三河口が現れた。
「アンタはイマヌエルのお情けでここを通されただけです。現に手紙を受け取っていませんし、イマヌエルが折れなかったらここに入って来られなかった。アンタに何ができるんですか?」
三河口は辛辣な質問をした。
「そうよね、おじいちゃんは足手まといになりそうかも・・・」
まる子の姉も口を揃えた。
「そ、そんな・・・」
友蔵はしょんぼりした。
(まあ、ほっとくか・・・)
三河口はそれ以上は喋らなかった。一方、杉山は無言で俯いていた。
(俺にしかできない事・・・。赤軍・・・、戦争正義の奴等・・・)
杉山が一体何を考えているのか、それを知っているのは彼自身のみだった。
後書き
次回は・・・
「大戦前夜の宴」
説明会は続く。そしてフローレンスは皆に四つの役割を担って貰う為、それぞれの役割分担を発表する。戦争主義の世界の領土の攻め込み、平和主義の世界の領土の死守、異世界の剣の取り返し、そして藤木茂の奪還、かよ子達はどの役割を担う事になるのか・・・。
140 大戦前夜の宴
前書き
《前回》
平和主義の世界の本部の大広間に到着したかよ子達はフローレンスとイマヌエルよりこの地の戦いの説明会を聞く事になる。そして日本を再び戦争への道へと進む事を阻止する為にも選ばれし者達は立ち上がり、異世界への戦いに臨むのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その11
溝口みゆき (みぞぐち みゆき)
杯の所有者・安藤りえの友人。初登場94話。やや気の強い性格をしている。投げると光線が放たれ、周囲を爆破するブーメランを使用する。好きな食べ物はチャーハン、プリン、ヨーグルト。
房子と丸岡は飛行機でレバノンへと向かう。
「これで全ては揃ったわね」
「はい、本拠地でレーニン様に献上したらもう安心だ」
「しかし、あれは偽物ではないかしら?」
「まだ疑ってんですかい?」
「ええ、でも本物のようで何か仕掛けでもあるんじゃないかしら?」
「まさか、それに和江と正生を向こうに送りつけましたし、憲法9条の改正も確約されるはずですよ」
「だといいんだけど・・・」
フローレンスの説明会は続く。
「皆様、ご同意ありがとうございます。私達の世界の人達も貴方方に全力で協力してくださります。そして皆様にはそれぞれの役割をお願いしたいと思います。担っていただきます役割は四つ。一つ目は『本部周辺の守備』。私達も迎撃してはいますものこの本部を狙います者が後を絶ちません。その為我々の世界の周囲を警護し、侵入してきました敵と戦っていただきます。二つ目は『敵に支配されている場所の攻撃』。これは私達の世界は今戦争を正義とします世界に次々と領土を奪われています。その地を奪還しに動いていただきます。三つめは『剣の奪還』。今、敵の方に剣がありますと思われますが、その剣を取り返す役目です。そして四つ目は『藤木茂君の捜索・救出』。赤軍は政府に憲法9条改正と護符・杖・杯の献上の交換条件として静岡県清水市に住む藤木茂君といいます少年をお返ししますと言いましたが、その割には全く返しますつもりに見えません。しかし、クリスマス・イブの夕方にその少年は敵の世界によって連れ去られましたと判明しております。その藤木茂君を探し出して頂きたいのです」
(藤木君はこの世界にいる・・・)
奏子は隣の家に住む笹山かず子が藤木がいなくなって寂しがっていた事を思い出した。
「皆様にそれぞれどの役割を担って頂きますかは手紙の色変わりで決めましょう。本部守備します者は黄色、領土攻め込みをしていただきます者は緑色、剣の奪還に行きます者は赤色、そして藤木茂君の救出をしていただきます者は青色に手紙を変色させます」
(手紙が変わる・・・。私はどれを担当するんだろう・・・?)
かよ子は自分の係がどれになるかドキドキした。とはいえ、どの役割にせよ、全力で行わない訳にはいかないが。
(私、大野君と一緒がいいわあ・・・)
冬田は大野と一緒の役割になれる事を願った。
「では、変色させましょう」
フローレンスは指を鳴らした。それぞれの持っている紙の色が変わる。かよ子の手紙は・・・。
「あ、青になった・・・」
かよ子は気づいた。つまり、自分に課された役割は藤木を奪還する事であると。
(杉山君はどうだろう・・・?)
杉山の手紙は緑だった。彼の役目は敵地の進撃だった。
(杉山君とは違う役目か・・・)
冬田の手紙は緑だった。
(私のは緑・・・。大野君のはあ!?)
冬田は大野の手紙を確認する。大野は青だった。
(ええ~、私、大野君とが良かったのにい~、どうして、どうしてえ!?)
冬田は泣きそうになった。
(どの役目になったって今の俺には何もできねえ・・・!!)
杉山はどの役割に当てられようが自分には関係ないと考えていた。
「私は黄色だから本部を守る係ね。健ちゃんはどこ?」
さりは従弟に聞く。
「俺は赤です。剣を取り返しに行く事になりますね」
「あら、私と光江ちゃんと同じね」
ゆりと光江は赤に変色した手紙を見せた。
「健ちゃん、一緒ね」
「宜しくね」
「はい、ただ武器を持たぬ俺が役に立てるかどうか心配です。それに赤軍は俺の能力を複製した機械を量産してますから、俺と同等の力を得ているはずですし、それを戦争主義の世界の連中に持たせているとなるとかなり大変な事になるかもしれません・・・」
「大丈夫よ。きっと」
「はい・・・」
「皆さん、役割は決まりましたね。それでは戦いの前の宴と参りましょう。一旦壁に避けてください」
人々は壁に避けた。フローレンスは腕を一回転させると、そこにはテーブルが現れ、様々な料理や飲み物が乗っていた。
「本日は食べて飲んでゆっくり休んでください。この世界の最初の一日を楽しんでくださいね」
まる子と友蔵は食べ物に目を光らせた。
「おじいちゃん、食べ物がこんなに!」
「ああ、食べなきゃ損じゃな!できればウチにも持ち帰りたいのう」
さきこは妹と祖父の食欲に呆れた。
「あ、そういえばまるちゃんは手紙は何色に変わったの?」
かよ子が聞く。
「アタシゃ青だよ。だから藤木を探す事になるね」
「藤木君ってあの家が火事になった子かい?」
友蔵が聞いた。
「それは永沢だよ・・・」
「んじゃ、あの子か。いつも食べすぎな子じゃな」
「それは小杉・・・」
かよ子も、まる子も、大野やブー太郎も友蔵の勘違いぶりに心がしらけた。
「藤木ってのは唇が紫の男子だよ」
「ああ、そうじゃったか」
「まるちゃん、私も一緒だよ」
「あ、そうなんだあ~」
「俺も藤木を捜すぜ」
「オイラもだブー」
「大野君、ブー太郎・・・。私、おっちょこちょいしないように頑張るよ!」
「皆、頑張ってね。私はここの守備をやることになったわ」
まる子の姉は黄色に変色した手紙を見せた。
「そっか、お姉ちゃんは違うのか・・・」
友蔵はまる子とさきこで役割が異なる事で少し落ち込んだ。できればこの二人と一緒に行動したいと考えていたからである。
(儂は何方に行こうか・・・。お姉ちゃんはここに残るようじゃから・・・。よし、まる子じゃ、まる子と共に行こう!!)
友蔵は決意した。そして晩餐は続いて行く。
「りえちゃんはどこを担当するの?」
かよ子はりえに質問した。
「私は緑になったから攻め込みよ。私の友達も同じだって」
「へえ。私は藤木君を助けに行くよ」
「藤木君、か・・・。頑張ってねっ!」
「うん!」
「で、杉山君はどうなの?」
りえは杉山に聞く。
「お前には関係ねえだろ!」
杉山は素っ気なかった。
「何よ、失礼ねっ!」
「りえちゃん、杉山君もりえちゃんと同じ攻め込んで行く係だよ!」
かよ子は慌ててフォローした。
(全く、臆病者なんだから・・・)
「りえちゃん、あんな男子ほっとこうよ!」
みゆきがりえに忠告した。
「うん・・・」
「それで、君のその杖がりえちゃんの杯と同じくらいの強さがあるのね」
みゆきがかよ子に聞く。
「うん、そうなんだ。お母さんから貰ったんだよ」
「うわあ、魔女みたい!」
「そうかな・・・?」
かよ子は少し照れた。その中、さりとありが割って入って来る。
「杖と杯の持ち主も案外仲良いのね」
「あ、おばさんのとこのお姉さん達!」
「ご無沙汰してます」
りえはありとは東アジア反日武装戦線の襲撃の際に対面しているので面識があったが、さりとは護符の所有者としての存在は聞かされてはいた者の、顔を合わせる事はこの地が初めてであった。
「こっちが護符の持ち主の私の妹よ」
「羽柴さりです。宜しくね。ここに最強の道具が三つ揃ったわけね」
「へまやるんじゃないよ、さり」
「私ってそんなに信用ないの?」
「ありお姉さん、さりお姉さんとは大雨の時でも色々助けてくれました。おっちょこいする私と違って役に立つよ!」
「かよちゃん・・・」
「そうね、失礼したわね」
皆が宴で楽しく食事や会話をする一方で、三河口はフローレンスとイマヌエルの元に言っていた。
「フローレンス、イマヌエル」
「貴方は三河口健さんですね。見聞・武装・威圧三つの能力を全て兼ね備えし者。何でしょうか?」
「敵が今ここに攻めてくるかどうかという切羽詰まった状態の筈だが、そんな時に呑気に宴をやっていて大丈夫なのだろうか?今すぐにでも動かなければならないと思うのだが」
「確かにそう思われますのも解ります。しかし、赤軍は政府にこの日に杖、護符、そして杯を渡せと要求しています。首相の三木武夫氏もその交渉を終えました所ですし、赤軍達も受け取りました物がまだ偽物とは気づいていませんはずです。その時に特に山田かよ子ちゃん、羽柴さりさん、そして安藤りえちゃんが今動けば向こうの世界に知られ、赤軍に渡しました物が偽物とバレます可能性は100%となります。その為、招集当日の行動を控えていただく意味もございます」
「そうか。よく分かったよ」
「そうだ、三河口健さん。貴方は三つの能力を宿すがゆえに私達は今までは道具無しでも十分戦っていけますと判断していましたが、赤軍が能力を複製し、同じように能力を行使できる機械を発明されましては辛いでしょう」
「ああ、この世界では俺は最弱かもしれん」
「そんな事はございません。この手紙をお渡し致しましょう。貴方の為に用意しました。移動中にでもお読みになられてください」
「我々も君の活躍を祈っているよ」
「はい、ありがとうございます」
三河口は手紙を受け取って戻って行った。
「三河口君!」
奏子に呼ばれて三河口は行く。
「ああ、すまん」
「ミカワはどの係だい?」
濃藤が聞いた。
「剣の奪還だよ」
「俺達と同じだな」
「鯉沢さんや湘木君も同じだったわよ」
「そうか、従姉のゆりちゃんや光江ちゃんも剣の奪還だったよ」
三河口は友達と同行する事を意識すると共にフローレンスから貰った手紙が気になった。
後書き
次回は・・・
「監視下に置かれた首相」
赤軍の政治委員・足立正生と吉村和江に監視されながら記者会見を行う事になった三木首相は放棄した交戦権の復活及び再び軍を持つ事を宣言する選択しか用意されていない状況に会った。そんな首相を救うのは・・・!?
141 監視下に置かれた首相
前書き
《前回》
大戦に参加する為の説明会が始まった後、フローレンスは皆に「領土の攻撃」「本部の守備」「剣の奪還」そして「藤木茂の救出」、どれを担って貰うか、手紙を変色させる事で班分けを行う。かよ子は班分けの結果、大野やまる子などと共に藤木の救出を、三河口やゆり、光江などは剣の奪還を、冬田やりえ、杉山は領土の攻撃を、そしてさりやかよ子の母親などは本部の守備を担う事になった!!
宴は続く。
「ももこちゃん!ももこちゃんは手紙、何色になったの?」
のり子がまる子に質問した。
「ああ、青だから藤木を捜しに行くよ」
「あ、私もだよ。その藤木って人知ってるの?」
「え~、そりゃ、卑怯な男子だよ。なんかあると逃げるし、なんだかんだでウソつくんだよね~。完全に悪い奴って訳じゃないんだけどさあ」
「そうなの?なら、どうしてそんな子がさらわれたの?」
「言われてみればそうだね~」
「確かにそうだよな」
大野が話に入って来た。
「あいつだったらすぐ逃げるはずだ。つまり、藤木を攫った奴は善人面して藤木に近づいて連れてったって可能性が高いな」
「うん、そうだよね。それに私、藤木君が笹山さんに出した手紙を見せて貰ったんだ・・・」
「笹山さん?」
「ああ、ウチの学校にいる女子だよ。藤木が好きになってるんだ」
「『笹山さん、僕は君の事を忘れるようにするよ』って手紙に書いてあったから異世界の人に騙されて連れて行かれたんじゃないかな?」
かよ子はそう考察した。長山も話に関わる。
「ありえるね。兎に角藤木君の安否はどうなっているかだね。でもフローレンスが藤木君を取り返す係を決めているって事は藤木君は生きている可能性はあるって事だよ。僕は本部の守備に就くから一緒には行けないけど確かめるべきだね」
「うん!」
そして友蔵が孫を呼ぶ。
「まる子や、料理がこんなに残っとるぞ!」
「ああ、行く行く!」
食欲で思考が支配されている二人にまる子の姉はあの二人大丈夫か不安になるのだった(そもそも友蔵はこの戦いに招集された身ではない)。
フローレンスは先代の杖、護符、杯の所有者が集まっている所に向かった。
「ご無沙汰しております。皆様」
「フローレンス・・・」
「道具をそれぞれの娘さん方にお渡ししました今の貴女方の役目は『本部の守備』ですが、この本部内で皆様の状況を確認します業務を担っていただきます。詳細は明日、説明致します」
「ありがとう」
「フローレンス。私は首相官邸の所へ行って来るよ」
イマヌエルは告げた。
「はい、向こうも心配ですからね。お気を付けまして行ってらっしゃいませ」
イマヌエルは部屋から出ていった。
杉山は誰一人とも喋っていなかった。
「杉山」
隣町に住む男子・山口が呼んだ。
「何だよ?」
「お前、大野と喧嘩したままだけどそのままでいいのかよ?」
「お前に関係ねえだろ」
「お前も攻め込みに入る役割だろ。川村やヤス太郎、すみ子も一緒だ。俺達と行動しようぜ」
「悪いが一人にさせてくれ」
「・・・分かったよ」
山口は杉山から離れた。いつからあんなに愛想が悪くなったのかと山口は思うのだった。
三木首相は赤軍の政治委員、足立正生と吉村和江の監視の中、官僚達によってテレビおよび新聞や雑誌の記者達を集めていた。
(赤軍め・・・。敢えて二人の構成員を付けるとは、嘘をつかせない為か・・・)
「首相、嘘ついたら承知しませんよ」
足立がそう一言告げただけで戦慄と共に急に怖気づいた。
「わ、分かった・・・」
三木はオドオドしながら発言台の前に立つ。
(放棄した戦争を再び行うなど国民に絶対に反感を買うだろう・・・。全国の大学の学生はきっとデモを起こすに決まっとる・・・!!)
「ええ、本日赤軍との交渉を行いました・・・」
カメラのフラッシュがたかる中、首相の心臓は激しく鼓動する。
(できれば全国民の為にもこんな要求に応じたくない・・・。しかし、ノーと答えたならばこの国は赤軍に支配される・・・!!)
「結果・・・」
首相は思い切って言おうとした所、バキッという音がした。
(な、なんだ、なんかの抑圧から開放されたような感触だ・・・!!)
「憲法9条の改正は拒否しました!!」
「な、何だと!?」
足立と吉村は約束を破られた事に激昂した。
「総理!どういうおつもりか!?え!!?」
足立が詰め寄る。たが、その時、足立と吉村は金縛りのように動かなくなった。
(誰か助けが来たのか・・・!?)
そう思いながら首相はコメントを続ける。
「赤軍の為より全国民の為に絶対に戦争はしません!!」
記者達は首相の決断になんと屈強な総理だというような反応をした。一方で吉村と足立はなぜ自分達が動けないのか不審に思った。侵入者でもいるのか。ポケットの中に隠し持っていた機械も壊されていた。そして、失神した。
「やれ、やっぱり赤軍も策を立てていると思ったよ」
人目のつかぬ所にイマヌエルはいた。
記者会見が終了し、三木首相は会見の現場を去り、裏の地に議会の時に会った人物を見た。
「三木総理、お疲れ様です」
「お前は確かイマヌエルと言ったな。奴らの失神はお前の仕業か?」
「はい、赤軍も我々の作戦に対し何か策を立てていると思い、参りました。兎に角、その政治委員と名乗る足立正生と吉村和江は私が回収致します」
「ああ、私もお前が来てくれなかったら赤軍の思うがままにされ、全国民から非難を買っていたに違いない。ありがとう」
「どう致しまして。偽物の護符、杖、杯もお渡しを済まされたようですし、本物の道具の持ち主達も私達の世界に呼び寄せております。彼らが偽物だと確信するのはかなり後になるでしょう」
「そうか」
「では、私は失礼致します」
イマヌエルは念力のように気絶した足立と吉村を近くに寄せて姿を消した。
「それでは皆様、色々な人と交流しましてお楽しみいただけましたでしょうか?宴はこれでお開きにしたいと思います。後で皆様には宿泊用の部屋を用意いたしますのでそのままお待ちください」
フローレンスは宴の終了を告げた。
「まる子、明日からじゃな!儂はいつもまる子と一心同体。どこまでも着いてくぞ!」
「ありがとう、おじいちゃん!」
その時、フローレンスは友蔵の所へ向かった。
「さくら友蔵様ですね。今、何と仰いましたか?」
「ああ、儂はまる子と一緒に行動させていただきますぞ!どんな時でも孫の傍にいてやりたいのです!」
「お気持ちは解りますが、私達は貴方を正式に認めておらず、お情けで通されましただけです。貴方には能力は一切ございません。厳しい事を言いますが、私は貴方は無駄な犠牲者を巻き込みたくありませんし、貴方も命は大事にしていただきたいです。お孫さんが気になりますのも解りますが元の世界にお戻りします事をお薦めします」
友蔵は青ざめた表情となった。
「何と!い、嫌じゃ、嫌じゃ、まる子と別れたくな〜い!!」
友蔵は泣きながら我儘を言った。
「しかし、これは危険な戦いなのです。私も色々と別の用が沢山ありますし、手を差し伸べきれません事もあります。お孫さん達は異世界に対抗できますだけの力がありますから呼びましたのです。貴方には残念ながらありません」
「しかし、もしまる子に何かがあったらどうするんじゃ〜!?」
「藤木茂君の奪還班には警察の方、大人の方もおります。ご安心下さい」
「それでも儂はまる子が・・・」
「貴方はご自分の命が惜しくありませんのですか!?」
フローレンスが怒りを露わにした。
「まる子の為なら命など惜しくない!」
友蔵は断言した。
(何て融通の聞きませんおじいさんです事・・・)
フローレンスは折れるしかないと思った。
「・・・解りました。足を引っ張りませんようにしてください。但し、私は貴方の命は保障しかねますので自己責任でお願いします」
フローレンスは呆れてその場を離れた。
「あ、ありがとうございます!」
友蔵は涙して礼をした。
(まるちゃんのおじいさんがいて、大丈夫なのかな?)
かよ子は非常に不安だった。彼が足手まといな事をするのではと。
「まるちゃんのおじいさん」
かよ子は友蔵に言う。
「あまり、無茶しないで下さい・・・」
かよ子はそう言うしかなかった。
「大丈夫じゃ!儂はまる子の為なら何でもするからの!」
友蔵は何処かズレた返答をした。
「おじいちゃん、あんまりまる子を甘やかさないでね」
まる子の姉が友蔵に釘を刺した。
「分かっとるよ、お姉ちゃん!」
(本当に分かってるのかな?)
かよ子やさきこは不安になった。
フローレンスは客人達の部屋の用意をし終えると、その場に徳林奏子が現れた。
「あの、フローレンスさん・・・」
「貴女は徳林奏子さんでしたわね?三河口健さんのご友人の」
フローレンスは彼女がエレーヌという女性から羽衣を授かっている事も覚えていた。
「はい、それで、藤木君が行方不明になった原因なんですが・・・」
「心当たりがありますのですか?」
「はい、藤木君には好きな女の子がいて、その子に振られた事で傷ついたんだと思います。クリスマス・イブの日に私は藤木君が走り去っていくのを見ました。それで、好きだった女の子の家に藤木君からの手紙があって、『もう君の事は忘れるようにする』って書いてあったんです」
「それなら、そのクリスマス・イブの日に敵の世界が清水に現れ、藤木茂君を連れて行きましたという可能性もゼロではありませんね。徳林奏子さん、情報をありがとうございます。ところで、私からも質問します。藤木茂君の事をよくご存じのようですが、お知り合いなのですか?」
「あ、はい。ていうか、その藤木君の好きな子が私の家の近所に住む子なんです。その子も『冷たく当たるんじゃなかった。もう許してあげたい』と言っていました」
「そうですか・・・。その女の子の名前は何とおっしゃいますか?」
「笹山かず子ちゃんです」
「笹山かず子ちゃん・・・。ありがとうございます。貴女は剣の奪還の班なので藤木茂君の救出には立ち会えません事に残念と思いますかもしれませんが、その報告は藤木茂君を呼び戻します為のいい情報になりますでしょう」
「はい、ありがとうございます」
フローレンスは笹山かず子という女の子の名を記憶に留めるのであった。
後書き
次回は・・・
「偽物は不具合を起こす」
フローレンスによって用意された部屋でかよ子達は就寝する。その一方、杖、杯、護符を手にした赤軍達は戦争主義の世界の本部にてレーニンと共にその道具を使用して理想の世界を創り出す計画に入るが・・・!?
142 偽物は不具合を起こす
前書き
《前回》
かよ子達が異世界での最初の夜に宴を楽しんでいる途中、三木首相は赤軍の監視の中で記者会見を行う事を余儀なくされていた。しかし、それを振り切って首相は会見で憲法9条の改正の拒否を宣言。詰め寄る政治委員の吉村と足立だったが、イマヌエルの介入で二人は失神させられ首相は事なきを得る。そして宴が終わった後、フローレンスは奏子から藤木の失踪の情報を聞き、藤木の好きな女子の名前が笹山かず子という事を記憶するのだった!!
大広間にフローレンスが戻って来た。
「皆様、就寝の準備ができました。それぞれのお名前が扉に掛かれておりますのでご自分の部屋を確認しましてお休みください。部屋はこチラの廊下を出まして右手の階段を昇って1階上の場所、部屋は個室となっております。個人情報の心配はございませんのでご安心ください」
人間達はフローレンスによって案内された部屋へと向かった。
「お母さんとは別々か・・・」
「あら、寂しいの?普段から一人で寝てるじゃない」
「う、うん、そうだよね。おやすみ」
「おやすみ」
かよ子は母と別れた。
「かよちゃん、おやすみっ!」
「また明日な!」
「うん・・・!!」
かよ子はりえやすみ子、ブー太郎や冬田などといった友達と別れて行く。三河口達などの高校生やさりなどの大人ともおやすみの挨拶をする。そしてかよ子にはある男子への挨拶を試みる。
「す、杉山君・・・!!」
「何だよ?」
「お、おやすみ・・・」
「ああ・・・」
杉山は素っ気なく反応して部屋に行った。
(杉山君・・・)
かよ子はこの世界に来てからあまり人と話すのを避けている状態の杉山が気が気でなかった。
かよ子は部屋に入った。シャワー室も、トイレも、洗面所も完備されており、ベッドやテレビなども揃っていた。そしてベッドの上にはパジャマも用意されており、宿と同等かそれ以上のもてなしにかよ子は驚いた。かよ子はは入浴を済ませ、ベッドに入った。
(明日から戦いは始まる・・・)
かよ子は杖を見る。母・まき子が子供の頃、戦後の苦しみを乗り越えるのに貢献し、娘である自分に引き継がれ、これで杖を狙う戦争主義の異世界の人間や赤軍を返り討ちにしてきた。
(この杖があれば・・・。ここでの戦いを終わらせて、また私達にも元の日常が戻るのかな?いや、そうしないと駄目なんだよね?)
かよ子は思い出す。四月の終わりのあの異変を。そこから異世界の人間が攻め、赤軍が日本を戦争への道へ再び進ませようとしている事を。そして日常は失われる。今、杉山は大野と喧嘩した事で完全に心を閉ざし、野良犬から自分を見捨てた件で藤木は笹山から嫌われたどころか、クラス全員から嫌われ者となり、笹山を始め皆と決別をする為に異世界へ失踪、そして赤軍と自分達が戦うと同様にこの世界でも平和を正義とする世界と戦争を正義とする世界がいがみ合い続ける。この二つの戦いは関連が深く、戦争を正義とする世界を滅すれば赤軍は日本の交戦権を復活させるに協力できる相手がいなくなる。その利害の一致により、自分達が異世界での戦いに参加する事は避けられない事だとかよ子は自覚した。
(絶対におっちょこちょいしないよ・・・。藤木君を取り返し、この戦いに必ず勝って、杉山君と大野君を仲直りさせて、元の日常を取り戻すもん・・・!!)
かよ子はそう誓ってベッドに入った。
房子と丸岡はレバノンの本拠地へ戻って来た。
「総長!」
和光と西川が出迎えた。本部内には赤軍のみならず東京で連続企業爆破事件を実行した東アジア反日武装戦線の面子もいた。
「皆、政府との取引に成功したわ。これが杯、護符、そして杖よ」
「これで向こうの世界に渡れば、『向こうの世界』の人達に有利に働きますし、戦争の大切さを日本どころか全世界に伝えられますね」
「ええ、今から持って行くわよ」
皆は異世界への入口に向かい、その地を通り抜けた。
「レーニン様」
「貴様ら、来たか」
「約束通りにこの三つの道具を手に入れる事ができました。それにあの手紙を出してからこれらの所有者は使用した形跡がないので政府に送った事に間違いありません」
「そうか、遂に手に入れたか。それならば我々の願いも遂に叶う。あの忌々しい奴等との戦いもこれで終わりになる」
「そして私達の計画も成功に近づきます。お互いにとっても利点が大きい」
一同はレーニンに率いられとある一室に入った。
「ここは・・・!!」
房子を始めとする赤軍の一同もこの部屋に入るのは初めてだった。部屋の中には巨大なストーブのように見える機械があり、その一角には異世界の剣が既にその場にあった。レーニンはおそらくそこでこの剣を強化していたのかと房子は予想した。
「さあ、護符、杖、杯を置くのだ」
「畏まりました」
房子は護符を、丸岡が杯を、そして日高が杖を機械の置き場に置いた。
「起動するぞ。これで我が世界を強化できる。そして私が嘗ていた世界、つまり貴様らがいた世界でも貴様らの理想通りの世になる。起動するぞ!」
レーニンは機械を起動した。機械がビビビとなって光り出した。
「遂に来るのね・・・。私達の理想の世界が創られる時が・・・」
その時、機械の光が一瞬消えた。
「・・・え?」
皆が唖然とした。そして機械が縦に、そして横にガタガタ震えた。
「何だ、この不自然な動きは?重信房子、この道具は本当に本物の護符、杖、杯なのか!?」
「はい、偽物のようには見えませんでした」
(やっぱり偽物なの・・・!?)
房子はレーニンに献上する前から怪しんでいたが、騙された事に政府に怒りが込み上がった。その時、どこからか声が聞こえた。
「君達の計画は既にこちらにはバレている」
「この声は!?誰なの?」
房子は聞いたが、声の主は返事をせずにテープレコーダーのようにそのまま話を続けた。
「君達が政府から渡された杖、護符、そして杯は偽物だ。そしてここで君達がこれらを理想を実現する為の道具として使う時にこれが偽物と判明する仕組みとなっている。その偽物は君達の計画を狂わせ、そこの世界の人間も弱体化していく仕組みとなっている。今そこにある剣は本物の為、弱体化は不完全だが、剣もいずれ取り返す。首を洗って待つがいい。そして『戦争正義の世界』の主よ、この偽物が起こした不具合で君の身体は上手く動けなくなり、能力も使えなくなるだろう。そして改めてこちらも宣戦布告する。味方となる人々をこっちの世界にも呼び寄せた。剣を返すと共に奪われた地域を平和主義の世界へ返しに、そして藤木茂君を元の世界に戻しにね」
声は話し終わった。
「う、うわあああ・・・」
レーニンは身体が麻痺して動けなくなった。
「こ、こんなの・・・。皆、偽物を早く機械から取り除きなさい」
「はい!」
丸岡、日高、奥平が偽物の道具を取り除いた。しかし、糊で粘ついたように杖も、護符も、杯も離れなかった。
「総長、離れません!」
「何ですって!?修、矛盾術を使うのよ!」
「了解!」
修は外れない偽物の道具が外れるという矛盾を仕掛けた。しかし、効果はなかった。
「総長、駄目です、外れません!」
「ええ!?」
反則級ともいえる丸岡の能力でも通用しないとは驚きである。
「あの機械を借りてやりなさい!」
「はい」
丸岡は見聞・武装・威圧の能力を出す機械を借りた。しかし、それでも道具は外れなかった。
「どうして・・・」
房子は敵の策にハメられて焦燥した。
「か、体が動かぬ・・・」
「レーニン様!しっかりしてください!!」
「ダメだ・・・。私自身では上手く身体が動かせん・・・。どうか、私の代行で動ける者が必要だ・・・」
「代行で動ける者?どういう意味ですか?」
「誰かを私の身体に取り入れ、私の代わりとして動いて貰うのだ。誰か、頼む・・・」
「誰か、やってくれる人いない?」
房子は仲間に助けを求めた。しかし、誰も名乗り出なかった。
「どうやら他の人を呼ばなければならないわね・・・。そういえばこの世界にも私達の世界から平和主義の世界の味方に付いて戦っている人がいると聞いたわ。強引に引き抜いてレーニン様の代行として取り付くしかないわね・・・」
房子は自分達もこの世界の戦いに参加しなければならないと察した。
「こうなったら・・・」
房子はトランシーバーを出した。実は政治委員の足立と吉村には連絡が取れるように二人に能力を出す機械ともう一つ、持たせていたのである。
「正生、和江、道具は偽物だったわ。首相に繋ぎなさい」
しかし、応答はない。
「正生!!和江!!どうしたの!?」
房子はもう一度二人を呼んだ。しかし、足立の声も吉村の声も聞こえなかった。
後書き
次回は・・・
「機械の攻略法」
「この世界」に戻って来た森の石松は親分や子分仲間との再会に喜ぶ。そして異世界の一日目の朝を迎えたかよ子達はその場で朝食を楽しみ、フローレンスとイマヌエルから注意する点の説明が始まる・・・!!
143 機械の攻略法
前書き
《前回》
異世界最初の夜の宴が終了する時、三木首相は政治委員の足立正生と吉村和江の監視の中、記者会見を行っていた。軍事の保持の復活を赤軍から要求されて葛藤する中、首相は記者会見で憲法の改正の拒否を表明、足立と吉村に詰め寄られるものの、イマヌエルの介入で事なきを得る。そして異世界では能力を一切持たずにお情けで通された友蔵がまる子と同行すると言い、フローレンスに反対されるも横車を押す事に成功する。しかし、かよ子達は友蔵が足手纏いにならないか不安となるのだった!!
石松は「この地」に戻って来た事を懐かしく思った。
(親分や大政、小政は元気にしているであろうか・・・)
石松が嘗て自分が住んでいた地域は戦争主義の世界の人間に占領されてしまい、本部付近の地へ引っ越していた。その時・・・。
「おお、石松じゃねえか!」
「この声は・・・、増川仙右衛門ではないか!」
石松は子分仲間と再会した。
「よく戻って来たな!」
「今、次郎長親分や皆の衆は無事であるか!?」
「ああ、今、何とか俺達の仲間は誰一人かけてねえ。だが、奴等はひっきりなしに攻め手やがんでえ、ついこの前、アントワネットとかいう西洋の女が侵略しておる!!」
「アントワネット・・・!!」
石松はその名を覚えていた。アントワネットは敵の世界の者となったが、娘のテレーズという女は今自分達がいる世界の人間だ。おそらくまた娘を無理やり引き抜いて調教するつもりだと石松は見抜いた。
「で、アントワネットはどのような状態だ!?」
「あやつは防壁を張った連中どもを殺して突き進んでおり、その母上方が止めに行っているとの報せが来ているのだが・・・。」
「我々も止めに行かねばな・・・」
「ああ、まずは皆に顔を合わせろや」
千右衛門は石松を移転後の屋敷に連れて行った。
「親分、皆、石松が帰ってきたでい!」
「石松、無事だったか!」
大政や小政、綱五郎、吉良の仁吉、大野の綱吉などの仲間がその場にいた。
「ああ!」
「石松、よくぞ帰ってこられた!!」
親分の次郎長が涙して子分との再会に涙した。
「親分、今、此方の戦いも激しくなっておられると聞きました。あのアントワネットとやらがまた暴れておるようですね」
「ああ、今奴の母上なる者が止めに行っておるが、加勢は必要であるな」
「なら、今・・・!!」
「早まるな、石松!」
「え!?」
「今、無理に加勢しても返り討ちにされやすい!フローレンスやイマヌエルの支持を仰ぐのだ!」
「へえ、畏まりました」
石松は今後どのように動くのか緊張が高まった。
「石松。あんたは『あっちの世界』でも頑張ってんじゃないか。今はちと休みなよ」
次郎長の妻であるお蝶が石松を落ち着かせた。
「ああ、そうであるな・・・」
しかし、石松にとっては嘗ての清水の地でも問題は起こっていた。何しろ大野けんいちと杉山さとしが喧嘩した事に関して今、彼らがどのような状態か気がかりあったのである。
イマヌエルが本部に戻って来た。
「イマヌエル、お疲れ様です」
「ああ、日本政府の方は大変な事になっていたよ。憲法改正を確実に公表させる為に赤軍の政治委員を付けていたんだ」
イマヌエルは足立正生と吉村和江を担いでおり、その場で降ろした。その時だった。
『正生!!和江!!応答しなさい!!』
別の声がした。
「どうやら通信機器も持たせていましたようですね」
「ああ、此方から没収してこの二人は監禁しよう」
イマヌエルは足立と吉村を別の場所に移動させた。
かよ子は目が覚めたその時、窓から朝日が差し込んでいるのを確認した。
(この世界にも朝、昼、夜はあるんだね・・・)
かよ子は自分が住む世界と遜色ないと感じた。ただ異なる点はこの世界に辿り着く者は自分がいる世界で平和を願っていた者や人の為に徳を積んだ者という事である。
「ふああ~」
かよ子は欠伸をしながらベッドを出て顔を洗い、そして着替えた。勿論、あの杖は忘れずに持って部屋を出た。
「あ、かよちゃん、おはようっ!」
杯の所有者・安藤りえと遭遇した。
「あ、りえちゃん!ってあああ!!」
かよ子はは振り向くと共に足を滑らせて転びそうになってしまった。
「もう、おっちょこちょいね」
りえの友達二人も現れた。
「おはよう、二人共」
「あ、みゆきちゃん、鈴音ちゃん、おはよう!」
「お、おはよう・・・!!」
「今日からだね」
「うん」
「兎に角、広間に行きましょう」
皆は広間へと向かった。
「おはよう、君達」
「長山君!」
かよ子は長山と会った。
「君達も出発だね。僕はここに残る事になるけど、健闘を祈るよ」
「うん、長山君はこの場所を守る役割なんだよね。頑張ってね!」
「ああ、ありがとうな」
皆は広間に到着した。夜の宴と異なり、朝はきっちりとテーブルと椅子が並んであった。そこにナイフやフォーク、パンやライスと和洋問わず様々な料理が置かれている。
「おはようございます。皆様」
その場にフローレンスはいた。
「フローレンスさん!おはようございます」
「皆様、どうぞ、お好きな席にお付き下さい。朝食は皆が揃いましたらですよ」
「はい!」
皆は適当に席に着いた。多くの選ばれし者が広間に入り(一名そうでない者がいるが)、席に着く。三河口は同級生や旧友、知人達と同席しており、さりは姉のありとゆり、そして姉妹達の母と同席し、組織「義元」の皆もまとまって席に着いていたが、大野と杉山は離れて座っていた。
(大野君・・・。大野君の隣へ座るチャンスだわあ!!)
冬田は大野の隣の席を狙った。駆け足で大野の隣の椅子の背もたれに手を付けた。
(やったわあ!)
「ふ、冬田!?」
大野は冬田が隣に来て驚いた。
「お、お、おはよう・・・大野くうん・・・」
「おお・・・」
冬田は大野の隣に座る事ができてもじもじした。フローレンスが挨拶を始める。
「皆様、おはようございます・・・。あら、一人いませんわね?」
「ま、まる子じゃ、まる子がおらん!」
「さくらももこちゃんですわね。分かりました。私が起こして参りましょう」
「わ、儂も行く~!」
フローレンスと友蔵はまる子のいる部屋に向かった。
「まるちゃん、この日も寝坊してるの・・・?」
かよ子はズボラな少女が心配になった。
「かよちゃん、まるちゃんって結構寝るのね」
りえが聞いてきた。
「いつもこんな感じだよ。学校でも遅刻ギリギリで来るんだ・・・」
「へ、へえ・・・」
ようやくまる子が現れた。
「こんな大事な時に寝坊しませんでください」
「ご、ごめんなさあい・・・」
まる子はフローレンスに叱られて空いている椅子に着く。
「それでは皆様、改めましておはようございます。朝食をお楽しみ下さい。朝食が済みましたら本格的に動き始めます。では、いただきます」
皆は食事を始めた。かよ子はりえ達と談笑しながら食べ、杉山は誰とも話さず黙々と食べていた。冬田は大野の隣でもじもじしたまま、その快感に浸ってあまり食が進んでいなかった。一方、まる子とその祖父は自分の家じゃあまり食べられない朝食という事でありとあらゆるものを食べまくっていた。
皆は朝食を終えた。
「皆様、お食事の出発前に注意点を説明しますので支度が整いましたらまたこの場にお集まりください」
皆は解散し、それぞれの部屋に戻り、支度をする。暫くして皆、再度集まった。今度は今まで説明を担っていたフローレンスに代わってイマヌエルが喋り出した。
「皆様方、戦いに出かけられる前に一つ注意しておく事がございます。今、赤軍は貴方方のような異能の能力を使用できる機械を使用し、その一部を敵の世界の人間に与えてこの戦いを有利にしている状態です」
「機械って・・・。確か健ちゃんの能力を複製した機械ね」
ありは察しがついた。
「はい」
従弟はそれに返答した。その機械についてありが質問を投げかける。
「その機械について何だけど、壊す方法とかはあるの?」
「いい質問だよ。機械を持っている者に攻撃を仕掛けようとしても武装の能力による防御で相手に傷一つ負わせることは無理だ。だが、今できる事は一つだけある。それは、攻撃対象を機械を持っている相手ではなく機械そのものを狙えばいい」
「機械を狙う・・・、か」
「念力などが使える道具を持つ者がいれば相手がどこに隠していようが攻撃はできる。他にもう一つ・・・」
「もう一つとは?」
「私達は政府に偽の杖、護符、杯を渡した。昨日、政府はそれを赤軍との取引に用いた為、赤軍がそれを手にしている。彼らが偽物を使う事で計画を狂わせ、不具合が生じさせる仕組みだ。それによって機械の調子悪くさせるからくりを仕掛けておいた。ここまで出向く者はおそらくその事に気付いてはいないと思う」
(そっか、それならきっと倒せるよね・・・?)
かよ子はそう自信を持った。
「それではそろそろ出発の時ですわ。皆様、外においでください」
皆は本部の外に出た。正門玄関を出るとそこは巨大な庭園となっていた。
後書き
次回は・・・
「冬田の我儘」
本部の庭へと出た戦いの選ばれし者達。フローレンスは皆に通信用の小型電話機を支給するが、元の世界に戻るという勧告を蹴った友蔵に存在が迷惑と敢えて非難する。そんな時、友蔵の我儘から冬田までもが・・・。
144 冬田の我儘
前書き
《前回》
石松は子分仲間および親分の次郎長との再会を喜ぶが、「生前の世界」でも「死後の世界」でも問題事を抱えている事に頭を悩ませる。そして異世界での朝を迎えたかよ子は朝食を楽しみ、そして出発の時が訪れ、本部の外へと出るのだった!!
マリー・アントワネットについては「ベルサイユのばら」などを読んで憧れている人も多いとは思いますが、彼女は自分は贅沢な生活をしている割に苦しんでいる民衆の事を一切考えていなかったという点から、「戦争正義の世界」の住人として登場させています。彼女と言えば小麦粉がなくてパンが作れないと反乱を起こした民衆に対して「パンがなければケーキを食べればいいんじゃない」と不謹慎な発言をした事で有名ですよね。(なお、後の研究でこの発言はしていない事が明らかになっています)。
皆は本部の正面玄関を出ると、そこには庭が広がっていた。
「この先一帯は私達の世界がある安全地帯ですが、元々はこの地の殆どは私達の世界のものでしたのです。しかし、戦争を正義とします世界の侵略によって多くの領土を奪われてしまいました」
フローレンスは説明を続ける。
「その為、私達の世界でも多くの物が命を落としてしまい、元の住処を奪われ、この付近への移住を余儀なくされています状態です。しかも、この地域には結界を張って守っています者もいますが、敵もこの本部周囲を崩落しに狙っていますのも事実です。その為に領土攻撃班は奪われました土地を取り返します役目を、本部守備班は本部の地域を敵から守護します役名を担って貰います。また、皆様が情報を伝達できますようにこちらを支給しましょう」
フローレンスは指を鳴らすとそれぞれの皆の前にロウソクのような物が現れ、かよ子達はそれを手に取った。
「こちらは小型化されました電話機です。上の膨らんでいます部分から声を出し、下の尖っています部分から相手の声を聞く事ができます。また、皆様の意志と連動してお伝えしたい相手にだけ伝達します事も可能です。但し、あくまでも業務報告や事態の連絡に使用してください。私用ばかりに使いました場合は没収しますのでよく考えて使ってくださいね」
「まる子、もし儂がまる子と離れてしまってもいつでも連絡するぞ!」
「うん、ありがとう、おじいちゃん!」
まる子と友蔵はどこかの恋人同士かのように見つめ合った。まる子の姉は何しに来たのか疑いたくなるくらい呆れた。
(まるちゃんのおじいちゃん、大丈夫かな・・・?)
かよ子も不安になった。何しろ友蔵は異能の能力を持たず、この戦いに招集された身でもない。孫が心配でたまらず、勝手に来ただけである。それもここに来れたのはイマヌエルの情けである。フローレンスは戻れと伝えたものの、孫の命が心配を理由に渋々受け入れただけである。友蔵が瀕死の危機に陥ったら・・・、とかよ子は懸念していたが、今はそんな事を気にするのはやめた。
「剣奪還班の役目は少数勢力ですが非常に危険な役目になります。戦争主義の世界の本部に突入しなければなりませんのでそこの世界の長や赤軍と真っ向勝負になります事は避けられませんでしょう。しかし、私達が選抜しました10人の人達はかなり高い実力を誇ります者達です」
かよ子は剣奪還班の面子を確認した。三河口を始め、その従姉の祝津ゆり、すみ子の兄の濃藤徳崇、長山の家の近所に住む北勢田竜汰、笹山の近所に住む徳林奏子、そしてゆりの隣の家に住んでいるという鷺森光江、スケバン女子の鯉沢輝愛、三河口の旧友の湘木克也、そして他に見知らぬ女子高校生二名だった。一人は気の強そうなポニーテールの黒髪の女子で、マフラーを巻いている。もう一人はブレザーの制服(他の女子高生は皆セーラー服)で茶髪の三つ編みの女子だった。顔を見てみると少し日本人には見えず、西洋風の顔をしていた。
(あの人、外国の人、かな・・・?)
かよ子はそう思った。
「祝津ゆりさん」
「はい?」
ゆりがフローレンスに呼ばれた。
「貴女にこの班の指揮を任せます。ここから北西の方角にあります海域に私達の味方でありますクイーン・ベスといいます女性にこの手紙をお渡しください。そこで剣を取り返します為の鍵となります物が手に入ります」
フローレンスはゆりに手紙を渡した。
「ありがとう」
「そして藤木茂君救出班ですが・・・」
フローレンスはかよ子達の方を見た。
「藤木茂君をよく知る者が多いですが、殆どが子供です。その為、安全面も考えまして警察官の方も引き連れていただきます。神奈川県警の椎名歌巌さん、群馬県警の関根金雄さんにもご同行させていただきます事に致します」
「解りました。責任を取ってこの子達の命を守ります」
「了解です」
椎名と関根は返事をした。
「それから・・・」
フローレンスは友蔵の方を見た。
「さくらももこちゃんとさくらさきこちゃんのお爺様。自分勝手な行動は慎んでください。貴方達の我儘や勝手な行動で皆さんの迷惑に繋がりますので」
「大丈夫です!絶対にまる子は儂が守ります」
友蔵は自身満々に言ったが、フローレンスはそう言う事ではないという気に食わない顔だった。
「私が言いたいのはそう言います事ではありません。貴方は藤木茂君の救出に共に向かいますと決めましたんですよね?」
「ああ、そうじゃ!」
「貴方のすべき事の優先度は藤木茂君を救出します事です。お孫さんのお傍に居続けます事ではありません。繰り返しますが、私は貴方を認めました訳ではありません。私やイマヌエルからしましたら非常に迷惑です。正直、ここまで我儘すぎます人は初めて見ました」
フローレンスは珍しく罵倒した。
「す、すまんかった・・・」
かよ子はいつもは優しそうなフローレンスがこんなに怖く見えたのは初めてだった。
「救出班の皆様、心細くなりませんように付き添いとしまして更に石松や清水の次郎長などにもお願いしてきます。頑張ってくださいね」
フローレンスはすぐに穏やかな表情の戻った。
(さくらさんのおじいさんがあそこまで言って受け入れられるのならあ・・・)
冬田はある事を考えた。
アントワネットとテレジア、生前母と娘だった二人は敵同士として対面した。
「お母様・・・悪いですけどここを通してください」
「無理ね。汝、間違った方向になぜ進む?お前の娘、我が孫は国民の為に考えようとした。なのに汝は贅沢をする事に思考が支配されているからこそ民衆の批判を買った」
「昔の事などどうでもいい話・・・。娘を引き抜く為にはお母様でも容赦しませんわ!」
「何をぬかすか!」
テレジアは剣を抜いた。そしてその剣を地に刺す。
「この宝剣が生む結界で汝を撥ね返させてくれる!!」
テレジアは剣から結界を発動させた。この結界は悪しき者を撥ね出す力があり、アントワネットも弾き返せる・・・、筈だった。
「お母様、同じ手がもう通用すると思って?」
アントワネットはその場で動かなかった。
(なぬ!?聞かぬ?)
アントワネットはハープを出す。
「何時、新たな力でも手に入れたか?」
「お聞きになります?これですわ」
アントワネットは一つの物体を取り出した。
「これと私のハープを組み合わせればお母様も昇天、いや、地獄行きですわね」
アントワネットは薄汚い笑みを浮かべてハープを弾く。
(く・・・、もう私にこれ以上の事は無理か・・・!!ならば・・・!!)
テレジアは宝剣の力で瞬間移動を試みた。しかし、宝剣は移動させたが、自身はなぜか転移しなかった。
「粛清の音楽を!」
「ああ、己・・・!!」
テレジアは消滅した。
「愚かなお母様・・・。この赤軍とやらから貰った道具、本当に役立つわね・・・」
アントワネットは次に進む。
(そういえばあの皇帝もこっちに出向いてるとか・・・。私とは馬が合わないようだけど・・・)
フローレンスは告げる。
「それでは私の話はここまでとなります。それでは・・・」
「あ、ま、待って下さあい・・・!!」
冬田は挙手した。
「何ですか?」
「私、やっぱり藤木君の救出の班にさせてくださあい・・・」
「は?」
「私、そっちがいいんです!!」
「しかし、貴女は領土攻撃班です。変更は私からの指示がありません限り認めません」
「でも、私大野君とがいいのお~!」
冬田は訴えた。
「貴女まで何です!駄々をこねれば思い通りになりますとお思いなのですか?指示に従いなさい!」
「お願いします!大野君と一緒にさせてください!」
冬田は涙目で訴え続ける。その時、バチン!と平手打ちの音が響いた。
「あの孫好きジジイに便乗して自分まで我儘言えば許してくれると思ってるのか!?輪を乱す気か!?」
三河口が怒鳴った。
「健ちゃん!」
ゆりは止めようと声を掛けたが、三河口はそのまま続けた。
「お前は赤軍や戦争主義の世界の人間の計画を食い止める為に来たんじゃないのか!?デート気分で異世界に来たのか!?」
「だってえ、大野君転校しちゃうんだもおん・・・」
冬田は泣きながら言った。
「大野君が好きだから役割を変えてくれなんてそんな都合の良すぎる事が簡単にできるか!?そんなに命じられた事が気に入らねえなら元の世界に帰れ!!」
かよ子は三河口がこんなに感情的に叱責する様を見るは杉山と決闘して以来だった。三河口は優しそうで案外厳格な所があるんだと改めて知る事となった。三河口に怒鳴られて冬田はさらにすすり泣いた。
「健ちゃん、もうやめなさい」
「はい、すみませんでした」
ゆりの言葉で三河口は引き下がった。その際に大野に尋ねる。
「大野君、君からも冬田さんに一言言ってやれ」
「え?俺?」
大野は何を言おうか迷った。
「冬田、あんまり我儘言うんじゃねえよ。フローレンスだって困ってんじゃねえかよ。自分の命じられた事ちゃんとやれ」
「大野君、うん、そうよねえ」
冬田はすぐ様立ち直った。
「冬田さん、大野君が相手だと素直になるね・・・」
「ああ、他の相手だと泣いて我儘になるのにブー・・・」
かよ子とブー太郎は冬田についてそんな会話をしていた。
(そういえば杉山君も私と違う班だったな・・・)
かよ子は殆どの人と関わりを避けている杉山が気になった。
後書き
次回は・・・
「藤木の行方」
冬田はフローレンスによって自身の羽根を強化して貰う。本部守備班でありながら藤木救出班の補佐を行う役目を任された長山は藤木が今、何処で何をしているのか彼の持つ神通力の眼鏡で探知すると・・・。
145 藤木の行方
前書き
《前回》
戦争を正義とする世界の住人・アントワネットは嘗ての母親であるテレジアと交戦する。娘の横暴を止めようとするテレジアだったが、赤軍の機械を借りたアントワネットを攻略しきれずに倒されてしまう。そしてかよ子達がそれぞれの目的の為に闘いへ動き出そうとする時、冬田が藤木救出班への移動にしてくれと駄々をこねだす。三河口の激しい叱責と大野からの呼びかけにより、冬田は立ち直ったのだった!!
冬田の我儘が収まった所でフローレンスは彼女に寄る。
「貴女にお渡ししました羽根を攻撃班に皆の移動手段として使用して欲しいのです。しかし、今の泣き虫で我儘な貴女では力不足ですわね。冬田美鈴ちゃん、羽根をお出しください」
「あ、は、はい・・・」
冬田は羽根を取り出した。フローレンスは羽根に手を向ける。フローレンスの指から五色の光線が放たれ、冬田の羽根に当たる。そして羽根は白の羽根から赤、青、緑、黄、茶の五色の羽根へと変色した。
「貴女の羽根に五つの能力を宿しました」
「五つの能力う?」
「はい。古代の中国で生まれました『五行思想』と言います自然哲学をご存知でしょうか?」
「ゴギョーシソー?何それえ?」
「火・水・木・金・土の五つの元素から成り立ちますといいます思想です。日本の曜日でも火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日と五つの曜日に漢字に使用されています。この羽根で操れます五つの能力は一つ目は炎、二つ目は水、三つ目は木や木の葉などの植物、四つ目金属、五つ目は土や砂、です」
「フローレンスさあん、ありがとうございます!」
冬田は礼をした。
「藤木茂君の場所は今の所私達の方でも掴めていません。そこで長山治君」
「はい?」
「貴方は本部守備班ですが、時には藤木茂君救出班の補佐をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「僕が・・・?」
「はい、その神通力の眼鏡を使用して藤木茂君を見ます事ができます筈です」
「解った、見てみよう」
長山は神通力の眼鏡で藤木がどの地にいるのかを見通した。そこは温泉だった。
(こ、これは・・・)
長山はあまり見てはいけない物を見てしまったような感じだった。そこに藤木が裸で女性達と一緒に温泉に入浴し、談笑している様子だった。
「ふ、藤木君は温泉に入ってる。それに女性と一緒に・・・、何か楽しそうだ」
「ええ!?温泉!?」
かよ子は藤木は監禁とかされているのかと予想していたのだが、苦しめられている様子が見られず、寧ろ楽しんでいると思うと驚きだった。もしかして今、自分がこの戦いや赤軍と政府の取引に気付いていないのかと・・・」
「いいねえ~、温泉、アタシも行きたい、ね、おじいちゃん?」
まる子は喜んでいた。
「ああ、温泉、楽しみじゃあ~!」
まる子と友蔵は呑気に言った。
「まるちゃん、私達は旅行に来たんじゃないんだよ。藤木君を連れ戻しに行かなきゃ。温泉でのんびり何てそんな暇なんかないよ」
かよ子は忠告した。
「あ・・・」
「ももこちゃん、気を抜かないでよ・・・。ももこちゃんがそんな子だったなんて・・・」
のり子も昔一緒に遊んだ女の子がこんなズボラとは少しがっかりしていたようだった。
「二人共、かよちゃんやのりちゃんの言う通りよ」
まる子の姉も窘めた。
「はい・・・」
二人は注意の的を受けて頭が真っ白になった。
「その温泉はどの方角になりますか?」
フローレンスは引き続き長山に問う。長山は神通力の眼鏡でまた確認する。
「ちょっと遠いけど、向こうの方角だ!」
長山が指を差す。
「その方角・・・、東北東の方角ですわね」
(東北東の方角・・・。そこに今藤木君が入っている温泉があるって事だね・・・!!)
かよ子は確信した。
一人の男が火炎放射で森林を燃やして突き進む。邪魔となる者を次々と焼き払い、戦場を焼け野原にして行った。
「へへ、俺様に逆らう奴は皆死んじまうんだよ、バーカ!!」
男は携帯用の酒瓶の蓋を開ける。
「ぶへ~」
酒瓶を捨てると、男はチッ、と舌打ちした。
「もう酒は終わりかよ。まあ、そろそろここまで出向けたんだ。あそこにある地の邪魔者を焼き払って酒を貰って行くとすっか」
男が向かう方向、それは敵対する世界の一番の根城とされる場所であった。
レーニンを行動不能にされた赤軍達は彼の代行と成りうる者を求めていた。
「誰もレーニン様の代わりとして動ける者はいない用ね。私達もこの戦いの前線に出ざるを得ないわ」
「そうですね」
「それに正生と和江の連絡も付かないし・・・」
足立正生と吉村和江に持たせたトランシーバーは別の世界にいたとしても通信が可能な道具だった。しかし、応答がないという事は二人がどこかで紛失したか、それとも二人が敵に囚われたかのどちらかである。
「私は兎に角本部に戻るわ。修、代理で皆への指示をお願い」
「了解しました」
房子は自分の住む世界の通り道である穴を通った。
フローレンスに代わってイマヌエルが喋る。
「それでは皆様の役割の簡単な詳細は概ね理解できたと思うが、他に質問はあるかな?」
三河口が挙手した。
「不謹慎な質問ですが・・・」
「ああ、いいよ」
「敵の世界の人間が死んだり殺されたりすると光となって消滅するようですが、もし我々がこの地で同じ目に遭った場合、光となって消えるのでしょうか?それとも遺体は残るのでしょうか?」
(お、お兄ちゃん、そんな質問を・・・!!)
かよ子はぞっとした。
「う~ん、君達の世界の人をここに連れて来たのは今回が初めてだから我々にも判らないな」
「い、嫌じゃ、嫌じゃ!!儂は死にたくな~い」
友蔵は大泣きした。
(だったら素直に帰れよ・・・)
「了解しました。兎に角、犠牲者なしで任務を遂行する事に努めます」
三河口は泣き叫ぶ友蔵を鬱陶しく思いながらイマヌエルの返答に反応した。
「それでは本部守備班は周囲の境界で迎撃をお願い致します。それでは、先代の護符、杖、杯の所有者達はこちらに・・・」
まき子、奈美子、りえの母が本部のある建物へと戻った。そしてとある一室に入った。大広間とも異なるまた別の部屋だった。そこに一枚の地図のパネルがあった。
「ここにありますのが私達の世界の地図です。この中央から南部の辺りが私達の本部のある地域です」
フローレンスが差した本部周辺の場所は青く染まっていた。
「この青く塗られています場所が私達平和主義の世界の領土です。しかし、御覧の通り以前は全てが私達の世界とされていましたのですが、レーニンという男が戦争主義の世界を創り出した事で領土の争奪戦が始まりましたのです」
フローレンスは地図の多くが赤で塗られた場所を指す。
「ここが戦争主義の世界とされています場所です。急速に勢力が拡大しまして殆どの領土が彼らの物とされてしまいました。そしてここにある細かい点ですが、私達この世界の人々は白い点、貴女達『あちらの世界』からやってきました人々は黄色い点、そして戦争主義の世界の人々は黒い点とされています。細かく表示はされてはいますが、これは私達が皆様に持たせました通信機器がこの地図に反映させています」
「この赤い点はなんなの?」
かよ子の母は聞く。
「赤い点・・・?ああ、私達も初めて見ましたね。今は敵の本拠地に居座っているような状態ですが、戦争主義の世界の人間でないとなると、きっと赤軍や赤軍と同盟を組みました東アジア反日武装戦線の人間ではありませんかと思われます」
「赤軍達がここにいるって事はもう『向こう』にある護符、杖、杯が偽物だと解っているんじゃないの?」
奈美子は聞く。
「はい、恐らく。そして私やイマヌエルが予想・懸念されます事は二つです。一つは赤軍は本物の三つの道具を強引にも手に入れる為にそれらの所有者であります三人の住みます地を戦争主義の世界の人間を送り込みながら襲撃します事。もう一つはもし私達が皆様をこの世界に引き入れたか解っていますならば、この地で争奪戦を行います事でしょう」
「大変になってきたんね・・・」
「ただ、問題になっています事は、先程仰りました藤木茂君は異能の能力を持ちません身ですので、この地図では確認します事ができません事です」
「ああ、それでさっき長山君に行方の捜索を頼んだのね」
「はい」
「ん?今、この本部の近くに黒い点があるわ・・・!!それも二つ・・・!!」
りえの母が確認した。
「つまり・・・!!」
フローレンスは感づいた。敵が二人、この地に近づいているという事を。
領土攻撃班、剣奪還班、そして藤木茂救出班はそれぞれ出発することになった。
「それじゃ、皆の健闘を祈るよ」
その地にはイマヌエルも見送っていた。
「大野くうん・・・」
冬田は大野に告げる。
「が、頑張ってねえ、私がいないけど・・・」
「おう、お前も泣いて皆に迷惑掛けんじゃねえぞ」
大野は素っ気なく言って藤木救出班と共に向かう。
「す、杉山君・・・!!」
かよ子は好きな男子を呼ぶ。
「頑張ってね・・・」
「ああ・・・」
杉山もまた素っ気なかった。
「はて、領土攻撃班は範囲が広いから、更に各々で攻撃する方角で別れた方がいい。では・・・」
その時、遠方が炎上し始めた。
「あれは!?」
いきなり皆に配布された通信機器からフローレンスの声が聞こえた。
『皆様、直ぐ本部付近に敵が二名来ております!本部守備班は迎撃をお願い致します!』
「もう来たのか・・・」
「ぐへへ、遂に来たぜ、ここにな・・・」
そして敵は目の前に現れた。
後書き
次回は・・・
「炎を操る暴君、ネロ」
いきなり本部に敵が現れた。かよ子の杖にりえの杯、さりの護符を纏めて奪おうとするその敵に対して本部守備班が対抗する。かよ子達を逃がし、護符を持つさりが敵の標的にされるも本部守備班も必死の迎撃を開始する・・・・!!
146 炎を操る暴君、ネロ
前書き
《前回》
長山は本部守備班でありながらかよ子達の藤木の救出のサポートをフローレンスから求められる。長山は神通力の眼鏡で藤木の場所を居場所を探知するが、彼は女性達と温泉で楽しんでいるという、その温泉のある東北東へとかよ子は目指す事になる。そして出発しようとする時、いきなり本部に敵が現れた!
かよ子の父は一人の朝食を寂しく思った。
「はて、母さんやかよ子は大丈夫だろうか・・・」
そして新聞を見る。一面の見出しは・・・。
【三木首相、赤軍の要求を拒否】
「首相が拒否した?」
記事の内容を読む。
【1月20日夜、三木首相は日本赤軍政治委員・足立正生と吉村和江がいる中、都内で記者会見を行った際、憲法九条の改正を行わない事を明らかにした。政治委員の足立と吉村はその場で失神し、以後行方が分からなくなっている。なお。赤軍のもう一つの要求である異世界の護符、杯、そして杖を引き渡す要求には応じた模様】
(護符、杯、杖を引き渡す要求に応じた?いや、かよ子が持ってた杖は本物だ。つまり、赤軍が持っているのは偽物という事になる・・・)
かよ子の父は今後、ある事を懸念した。異世界の敵か赤軍がこの家を襲うのか、もし異世界の人間達の計画に気付いたならば向こうの世界を戦場に奪取しに行くのか・・・。
目の前に一人の男が立ちはだかった。
「何だ、こんな所にウジャウジャ人がいやがって・・・。燃やされに来たのか?」
かよ子はこの男に少し恐れをなした。
(こ、怖い・・・、強そう・・・)
「この地を乗っ取りに来たな?」
イマヌエルは男に問う。
「ほう、嬉しい話じゃねえか。こっちの世界の長もいてくれるとはな」
男は見た。
「これは・・・。杖に護符に杯じゃねえか!赤軍の奴等に渡ったと思ったがな」
「本部守備班!迎撃だ!他の皆はここから離れるんだ!」
イマヌエルは命じた。
「山田、あの羽根を出すブー!」
「う、うん・・・!!」
かよ子は羽根を取り出した。
「み、皆、乗って!!」
かよ子は藤木救出班に乗るよう呼びかけた。ブー太郎、大野、まる子、のり子、警官の椎名歌巌と関根尚雄、そして友蔵が飛び乗った。
「やい、杖、逃がすか!」
男は逃げるかよ子達を向けて火炎放射した。
「ギャー!炎じゃあ~!」
友蔵は怯えた。
「させるか!」
椎名は玉を出して大水を噴射する。しかし、椎名が出した水は炎に飲み込まれた。
「水が効かないだと!?」
「ここはボクちゃんが!」
関根は刀を上から下に振った。炎が振った刀によって軌道が下に向かった。藤木救出班は去った。
「私達も行くわよ」
「はい、奏子ちゃん、羽衣を!」
「うん!」
奏子は羽衣を出すと、魔法の絨毯のように広がり、剣奪還班も去った。
「ふん!」
杉山は急いで走り去った。
「ちょっと、杉山君っ!どこ行くのよっ!」
「あ、りえちゃん!」
りえは杉山を追った。りえの友達も追う。
「冬田さん、だっけっ?その羽根で私達を乗せてっ!」
「ええ!?う、うん・・・」
冬田はりえに頼まれて羽根にりえ達を乗せて飛び立った。
「やい、杯持ちの小娘も逃げんのか!」
男はりえの方向にも火炎放射をした。りえは杯を向けた。炎の精霊・サラマンダーが現れた。しかし、男の炎が強く、瞬殺されてしまった。
(効いてないっ・・・!?)
りえは驚く。そして男にかなりの恐怖感を持った。そして領土攻撃班も総員去り続けた。本部守備班が残った。
「あんたの相手は私達よ!」
さりが叫んだ。
「んー?」
男は見た。
「ほう、護符は俺様にくれるというのか。そんなら貰うぜ。テメエら揃ってこのネロ様の燃えカスとなりな!!」
ネロと名乗った男は火炎放射をした。さりは護符の能力を発動する。水が激流となってネロに襲いかかった。
「バーカ!!俺様の炎に水なんぞが聞くかよ!」
ネロが出す炎は水を容易く打ち消してしまった。
(水が効かない炎なんて・・・)
さりは先程の椎名の迎撃の水も炎で打ち消されたのように耐水性のある炎があるのかと驚いた。
「ヒヒヒ・・・」
さりは恐怖を感じた。そして守備班全員も動けなくなる。
「ネロとか言ったわね。アンタはこの本部を焼き尽くす気なの?」
「ああ、そりゃそうさ。俺様は建築の天才でもある。もっと美しいものに建て替えようじゃねえか」
ネロは火炎放射した。さりは護符を使用する。見えない結界がネロの炎を弾く。
「そんなもんが通用するかよ!」
ネロの炎はあっさりとさりが張った結界を燃えつくした。
「これでテメエらは火達磨だ!ぐわははは!!」
「こいつ!」
一人の中学生がボールを蹴り飛ばした。しかし、ネロに当たらず、そのまま撥ね返された。
(こうなったら・・・!!)
長山が神通力の眼鏡を使用する。火の手に囲まれた皆を瞬間移動させた。
「逃げても無駄だぜ。この赤軍の奴等から貰ったコイツでな、さらに前よりも調子いいんだ!」
ネロは機械を見せびらかした。
(あの機械か・・・!!)
長山は機械に念力を掛けた。そしてネロの持つ機械は一瞬で破壊された。
「およ!?」
さり達は恐怖心がなくなっていった。
「ふん、種明かししたのが命取りね。水が効かないなら・・・!!」
さりは護符の能力を発動する。岩石や砂がネロに向けて発射される。
「やられるか!」
ネロは炎を出す。炎は獅子に変化した。岩石を噛み砕く。そして一人の男子高校生が持っていた銃、女性が持っているブレスレットで多くの土砂でネロや炎の獅子を生き埋めにした。
「お、おおーーー!!」
ネロは土砂で埋められて叫び声をあげた。
「やった・・・」
ネロを倒したのかとさりは思った。しかし、土砂の山から炎が現れ、土砂を吹き飛ばした。ネロは平気で立ち上がった。
「これで俺様を倒したつもりか?」
(だめだった・・・!!)
「うらあ!」
ネロは火炎を鞭のようにしてさりに襲い掛かった。さりは慌てて武装の能力を発動させて己を守る。
「やめろ!この!」
一人の男性がネロを持っていた刀でネロを斬ろうとした。
「邪魔だ!」
しかし、ネロの火炎放射を受け、それを払うのにやっとだった。
(あいつ・・・!!)
さりはネロに近づかれた。
「女!何が何でもテメエを燃やしてやる!」
「ふ、ふざけんじゃないわよ!」
さりはネロに飛び込んだ。
「ほう、そっちからくれるのか。有難いな・・・」
ネロは相手から降伏してくれたかと思った。と、その時、何かが腹部に刺さった。
「うお!?」
「これは燃やせなかったみたいね・・・。もう終わり・・・よ!」
護符の所有者はあるものをネロから引き抜いた。金剛石の槍だった。それはさりが護符の能力を通じて出したものだった。
「何!?俺様が、やら、れ・・・た・・・?」
ネロは光と化した。
「これでやっつけたの・・・ね?」
「ああ、間違いない」
イマヌエルが現れた。
「イマヌエル・・・。どうして戦いに参加しなかったの?」
さりは聞く。
「済まない、君達の戦いを見たかったのとあまり私が前線に出ると相手の手の内が知られてしまうからなんだ。名古屋で君が襲われそうになった時も、杯の所有者が赤軍や東アジア反日武装戦線に襲われた時もネロが持っていた赤軍が発明した機械を破壊したが、その時も気付かれずに壊したんだ。ただ、クリスマス・イブの時の君の名古屋での戦いでは君のお姉さんの旦那によって呼ばれた身だから前に出てしまったが・・・」
「そうだったの・・・」
「さあ、誰か皆にネロを倒した事を報告してくれないか?散らばった皆も君達が無事か不安に思っているに違いない」
「わ、私がやるわ」
杉山の姉が名乗り出た。支給された通信機器を取り出す。
「こちら本部守備班。先程襲ってきた男は倒しました。全員無事です」
「こんな戦いが始まるのか・・・」
さりは呟くと、別方向で戦いに行った二人の姉と弟のように可愛がった従弟の無事を祈った。
移動中のかよ子は通信機器で報告を聞いていた。
「杉山君のお姉さんの声だ・・・。あの『敵』を倒したんだって・・・」
「そっか、良かったね~」
「お、お姉ちゃんは、お姉ちゃんは大丈夫なのかい!?」
友蔵はかよ子に迫った。
「全員無事って聞いたから大丈夫だと思います・・・」
かよ子は友蔵を暑苦しく思いながら返答した。
「お姉ちゃん、良かった、良かった~!儂がまる子の方に着いて行ったばっかりにお姉ちゃんの傍にいてやれなくて!」
友蔵は涙を流した。
「アンタ、大袈裟ですよ。それに戦いは始まったばかりです」
椎名が忠告した。
「ああ、すまんかった、すまんかった・・・」
その一方、杉山の姉が報告したという事でかよ子は急に杉山の事が気になった。
(杉山君・・・。どうしてるのかな・・・?)
アントワネットは機械から赤い光が放ち、そして消えた事を確認した。
(ネロが倒された・・・?仕方ないわね、あの男、結構単細胞だったから・・・)
そしてアントワネットは本部の陣地内を突き進む。娘を捜す為に。
(テレーズ・・・、もう次こそ私に抗ったら容赦しないわよ!!)
後書き
次回は・・・
「姿を消した杉山」
かよ子達は東北東の方角へと進もうとするも、直ぐ近くに敵が接近していた。一方、りえは一人で勝手二遠ざかっていく杉山を追いかけようとする。その時、杉山は一体何を考えるのか・・・。
147 姿を消した杉山
前書き
《前回》
本部を襲撃しに来た異世界の敵・ネロと交戦する事になった本部守備班。かよ子達を先に行かせ、さり達がネロの迎撃を行うことになる。水の攻撃でも消火できないネロの炎の攻撃に対してさり達は苦戦するも、彼が赤軍から支給されたという異能の能力の機械を長山が破壊し、さりが護符を利用して出現させた金剛石の槍でネロに留めを刺す事に成功する。だが、別の敵が本部に侵攻していた!!
かよ子達は東北東の方角に向かっていた。
「この先に藤木君がいるんだね・・・」
「でも藤木のいる温泉ってどれだけ離れてんだ?」
大野が気になった。
「距離はかなり遠いわね」
のり子の持つ人形・キャロラインが説明した。
「この人形・探知もできるの?」
かよ子は驚いた。
「うん」
のり子は素っ気なく答えた。ブー太郎は本部で会った時から彼女を非常に無愛想な女子だと思っていた。
「探知できるなら間違った方向に進む事もないだろうな」
警官の椎名はそう言った。
「・・・なあ、さっきネロが倒されたと聞いただが、まだ俺の胸騒ぎが収まんねえ、寧ろひどくなってんだ」
大野が言う。
「・・・て事はまだ『敵』がいるの!?」
かよ子は近くに襲撃者がいるとなると不安になった。
本部のとある一室。平和主義の世界の主と先代の杖、護符、杯の持ち主は地図を確認する。
「本部守備班が一人の侵入者を倒しましたね」
「ええ、でも、もう一人残ってるわね」
まき子は確認した。その方向には自分の娘も含まれる藤木救出班が近づいている。
「藤木君の救出班が近づいているわ!」
「分かりました。本部守備班に援軍に行かせます。こちらの陣地を出ます前に交戦しますから時間が惜しくなります。山田まき子さん、お願いできますか?」
「分かったわ」
まき子は通信道具を使用する。そして藤木救出班と本部守備班を対象に連絡する。
「もしもし、本部守備班。藤木君救出班の進む方向に別の敵が来ているわ。彼らの援護をお願いします」
まき子は連絡を終えた。そして娘の無事を祈る。
(かよ子・・・。無事でいて・・・!!おっちょこちょいしても頑張るのよ・・・!!)
りえはみゆき、鈴音、そして冬田と共に杉山を追いかける。
「待ちなさいよっ、杉山君っ!!どこ行くのっ!?」
りえは叫ぶ。
「うるせえ!ついてくんな!!」
「何言ってんのよっ!一人じゃ危ないわよっ!」
「俺は一人で平気だ!」
みゆきは仕方ないと思い、持っているブーメランを投げて杉山の背中に当てて杉山を転ばせた。四人は杉山に追いついた。
「一人で勝手に動いて、いい加減にしなさいよっ!」
杉山はすぐに立ち上がった。
「うるせえ、お前はピアノでも弾いてやがれ!」
「何ですってっ!?アンタって本当に最低ねっ!そうやって私達から逃げてっ!やっぱりアンタは『臆病者』ねっ!」
杉山は「臆病者」という言葉に過剰に反応した。
「てめえ・・・!!」
杉山はさらに怒りを募らせた。りえ達は羽根ごと急に吹き飛ばされた。
「キャアーーー!!」
りえ達を悲鳴を挙げて遠ざけた。杉山はあの事を思い出した。夏休みに会ったりえと喧嘩ばかりしていた事、その際、教会でピアノを弾いていた彼女を幽霊と思って腰を抜かした事から「臆病者」呼ばわりされた事、運動会の時に大野と喧嘩した事、そして大野が転校すると聞いて大野と喧嘩した時、石松から自分が持っていた「雷の石」を没収すると通告され、自らの意志で捨てた事、そしてりえと再会し、再び「臆病者」と非難された事、そして自分を好きになっている杖の所有者の知り合いの高校生と決闘して、今の自分を「大将」ではなく「臆病者」とりえと同じ言葉で罵られた事、そしてその決闘の時にその高校生から「自分にしかできない事があるはずだ」と言われた事・・・。
(俺にしかできねえ事、今はこれしかねえんだ!!)
杉山はりえ達の事は気にせずさっさと行ってしまった。
(見せてやるよ、道具なんかなくても、俺だけしかできねえ、この戦いを終わらせる事・・・!!)
杉山は杖の所有者、そして杯の所有者に心の中で伝える。
(俺が大野がいなくなっても大将になれるよう、いつまでも最強コンビでいられるようにするにはこうするしかねえんだ・・・。悪いな・・・!!)
そしてあの高校生に問いかける。
(俺にしかできねえ事ってあるよな・・・?そうだよな・・・!?)
そして杉山は支給された通信機器をその場で捨てた。
りえ達は吹き飛ばされた事で杉山を見失ってしまった。
「・・・、どこ行ったのよっ、もうっ!」
「りえちゃん、あの杉山君って自分勝手ね」
鈴音がりえに言った。
「ええっ、ホント最低な事しかできないのよっ!夏休みに静岡で会った時もあんな感じだったしっ・・・」
「兎に角、連絡しよ!」
みゆきは通信機を取り出した。
「こちら溝口みゆき。杉山君が一人で勝手に行動し始めました。さっきまで私達が追っていましたが、見失って行方不明です!」
りえは杉山が何処に行ったか気がかりになるのだった。
(一体、何処行ったのよっ・・・!?)
本部の一室。溝口みゆきからの報告を受けた先代の杖、護符、杯の所有者は驚いた。
「杉山君が行方不明!?」
「また別の問題が出てしまいましたわね・・・」
フローレンスは通信機器を出す。
「こちらフローレンス。杉山さとし君、何していますのですか?応答お願い致します」
しかし、返事はない。
「杉山さとし君!?」
フローレンスは地図を確認する。杉山の位置は本部から真北の方角を少し進んだ位置のはずにあった。しかし、連絡が来ないという事は・・・。
「どうやら通信機器を捨てましたらしいですわね」
フローレンスは杯の所有者とその同行者、そして他の領土攻撃班に連絡を取る。
「こちらフローレンス。杉山さとし君が行方不明になりました。同行していました安藤りえちゃん、溝口みゆきちゃん、藤沢鈴音ちゃん、そして冬田美鈴ちゃんと合流できます領土攻撃班の方、いますか?いましたら彼女らの元へ行って下さい」
そして、返答が来た。
『こちら煮雪あり。夫の悠一と共に彼女らの元へ向かいます』
護符の所有者の姉だった。
「畏まりました。宜しくお願い致します」
とある屋敷。そこに一人の女性がいた。彼女の名はテレーズ。嘗て少女時代にフランスでの幽閉生活に苦しみ、更には王女となってからもオーストリアやイギリスへ亡命をしたりと苦労の多い女性であった。
(おばあさまが帰ってこないわ・・・。一体何しているのかしら・・・?)
その時、テレーズの元に一つの剣が現れた。
「これは、おばあさまが持っていた宝剣・・・!!」
テレーズはその宝剣を持つと、声が聞こえた。
[テレーズ、私だ。祖母のテレジアだ。今、お主の母上・アントワネットがまた攻めている。私は今やられた。こう宝剣はお主に引き継ごう。そしてあの忌まわしい我が娘、そしてお主の母上をどうか倒しておくれ・・・]
自身の祖母・テレジアの声だった。
「おばあさま・・・」
テレーズは泣いた。しかし、今の自分に祖母の宝剣で母を倒すなどできるのだろうか。いや、やるしかない。テレーズは動き出す。そして、誰かが入って来た。
「テレーズ」
「貴方はイマヌエル?」
「今、君の母君がこの付近に来ているのが分かると思うが、君のおばあさまであるテレジアが倒されたとの情報が入った。それが故に君がその宝剣をテレジアから引き継がれたのだろう」
「はい。ですが、私が前線に立てるのでしょうか?」
「大丈夫だよ。嘗ての世界の人間達を呼び寄せて君と共に戦ってくれる。彼らが君達を守ってくれるはずだし、君もまた手助けにやって来た人達を援護するんだ」
「分かりました。来て頂いた皆様の為にも頑張ります!」
「ありがとう」
テレジア出発した。嘗て国民から贅沢な生活ばかりをして反感を買った事で自分を幽閉生活に追い込み、かつこの世界で自分を脅かし、更には祖母を殺したあの恐ろしきかつ憎き母を必ず制圧する為に。イマヌエルの言葉で勇気を持った嘗ての王女は前線に立っていく。
かよ子は敵のいる方向へと進む。そして見つけた。
「あいつだ!」
一人の女性が向かっていた。
「おい、お前!」
大野が叫ぶ。
「何かしら?貴方達」
女性はかよ子達の方を向いた。
(この人が敵・・・!?)
後書き
次回は・・・
「贅沢な王妃、アントワネット 」
藤木救出班が敵とぶつかったという情報を受けてさりはまる子の姉や長山、そして尾藤海斗という中学生の男子を護符を利用してかよ子達の元へ送り届ける。そしてかよ子の杖を狙おうとしたアントワネットはかよ子達を追い詰める・・・!!
148 贅沢な王妃、アントワネット
前書き
《前回》
一人で走り去っていく杉山を追うりえは彼に追いつくも、彼の武装の能力で弾き飛ばされてしまう。その一方、藤木を取り返す為に出発したかよ子達は戦争主義の世界の人間となった女・アントワネットと遭遇する!!
ネロを倒したさり達本部守備班は次なる敵が入り込んだという情報を聞いた。
「また別の敵が来たのね・・・!!」
「僕、行ってきます!」
長山が名乗り出た。
「私も行くわ!あのバカな妹とおじいちゃんが心配だからね!」
まる子の姉も動き出す。
「俺も着いてくとよ!」
中学生の男子も現れた。
「あ、ありがとうございます!」
「俺は尾藤海斗。熊本から来た男だ」
「私はさくらさきこって言います」
「僕は長山治です」
お互い自己紹介した。その時、さりの護符が光った。
「皆を瞬間移動させるわよ。気を付けてね」
「はい!」
尾藤、さきこ、長山はその場から消えた。
かよ子達藤木救出班は一人の女性と相対していた。
「お前、俺達の敵だな!」
「あら、何かしら、貴方達は?」
女性は話しかけられた相手を確認する。子供が五人、大人が二人、そして老人が一人だった。そして一人の少女を見る。
「あら、貴女のその杖、赤軍が貰ったんじゃないのかしら?」
「あ、あれは偽物だよ!」
「偽物?じゃあ、貴女の杖は本物なのね?」
女性は確認した。
「私がその杖を貰おうかしら」
「嫌だ、渡さない!」
「なら、力ずくで貰うわよ!このアントワネットがね!」
アントワネットはハープを取り出した。
「静粛の音楽を!」
アントワネットに対してかよ子は武装の能力を発動させた。しかし、防ぎきれなかった。杖の使い方を表した本の一節を思い出す。
【音に杖を向ける事で音および相手に刺激を与える音波を操る事ができる】
かよ子はハープの音に杖を向けた。かよ子の杖からも音が奏でられる。その音がアントワネットを攻撃する。しかし、アントワネットのハープに勝てなかった。
「効かない・・・!?」
「愚かね。この赤軍とやらから貰った道具があるのよ」
アントワネットはとある道具を見せびらかした。
「な・・・!!」
「皆、あの機械を狙って!」
のり子の人形・キャロラインが指示する。
「うん!」
「その機械、壊させてもらうぞ!」
椎名が機械の破壊の為に水の玉を発動させた。関根も機械を刀で斬ろうとする。大野も草の石の力で草の剣を出し、ブー太郎も水の石で激流を出し、まる子もまた炎の石で火炎放射した。のり子の人形・キャロラインもまた自身の念力で機械を壊そうとする。
「貴方達皆本当に愚かなる事。そんな事でこの道具を請わせると思っているのかしら?」
「何!?」
皆はアントワネットの機械を対象に攻撃したはずだった。しかし、何も起こらない。
「私はこの便利な道具を三つも持っている。さらに強くなるし、ファッションリーダーでもあるこの私のドレスは鎧よりもかなりの強度なのよ!」
「何だと!?」
「私を止められると思ったら大間違いよ・・・」
そしてアントワネットに睨まれてかよ子達は硬直した。隣に住む高校生男子の威圧の能力と同じような、いやそれ以上の強さに恐れをなした。
「あ、ああ・・・」
かよ子達は一瞬のうちに気絶してしまった。
フローレンスは様子を見る。
「藤木茂君救出班と敵がぶつかりましたわね」
「ええ、かよ子達、大丈夫かしら?」
まき子は不安になった。
「その敵はかなりの強力で厄介な相手ですわね。それにその人と闘っていました私達の仲間が倒されました」
「その仲間っていうのは?」
奈美子が聞いた。
「マリア・テレジアです。彼女の孫娘でありますマリー・テレーズは私達の世界の人間なのですが、テレジアの娘であり、テレーズの母上でありますマリー・アントワネットは戦争主義の世界の人間となっております」
「『ベルサイユのばら』とかいう漫画に出てくるあのハプスブルク家の?」
「はい、その通りです」
「でも、私はあの人結構美人で優雅だと思ったのに・・・」
りえの母はそう印象を持っていた。
「確かに華やかな生活をしていました事は確かです。しかし、自分ばかり贅沢をしていまして貧困に喘ぎますフランスの国民達の怒りと非難を買いますことになり、革命が起きますとオーストリアへの逃亡を計画しますが失敗に終わりまして処刑されましたのです。戦争主義の世界の人間の長はその自己中心的な性格を買われて彼女をこの世界に呼び寄せましたのでしょう。そしてアントワネットは自分の娘を私達の世界から引き抜きます事を画策しています」
「引き抜き?そんな事できるの?」
「本来私達の世界と向こうの世界では相容れませんので無理です。ですのにアントワネットはそれでもテレーズを無理矢理自分の味方にしようとしています。此方も幾度も追い払ってはいますのですが、非常にしつこく、さらに厄介でなかなか倒せていませんのが現状です」
その時、フローレンスの通信機がブーッ、と鳴った。
『こちらイマヌエル』
「はい、フローレンスです。どうしましたか?」
『情報が来ていると思うがパリ・コミューン達やテレジアが倒された』
「はい、私も承知しております」
『だが、テレジアが持っていた宝剣は孫のテレーズに引き継がせた。生前の世界の人間も連れて戦わせていると言って助け合ってくれと頼んだら引き受けてくれたよ』
「テレーズがテレジアの宝剣を使おうとしていますのですか?」
『その通りだよ。フローレンス、一応本部守備班の一部もアントワネットとの戦いの現場に向かってはいるが君には次郎長一派に藤木茂救出班への援護を呼び掛けてくれるかい?』
「畏まりました」
フローレンスはまき子達に告げる。
「では、私は援軍を求めに行って参ります」
フローレンスは瞬間移動の如くその場から消えた。
(かよ子・・・!!)
まき子は娘がやられない事を祈るのみだった。
テレーズは進む。祖母が自分の為に残した宝剣を持って。あの憎き母の思うがままにされたくない。臆病な自分を捨てて闘志を向き出す。
(お母様・・・。おばあさままで殺して・・・。許しませんわ!!)
アントワネットは勝利を確信した。
「これで終わったわね」
アントワネットは気絶したかよ子達をハープの音で殺生して留めを刺そうとした。だがその時、ボールのような物が飛んで来てアントワネットのハープを吹き飛ばした。
「だ、誰なの!?」
アントワネットは見回した。
「俺達だよ」
別の人間が三人、アントワネットの後ろにいた。本部守備班の尾藤海斗、長山治、そしてさくらさきこが援軍に駆けつけたのだった。
後書き
次回は・・・
「作動しなかった機械」
まる子の姉や長山、そして尾藤、さらには次郎長一派が援軍に現れ、かよ子達に加勢する。そして形成はかよ子達の方に傾く。と思いきや、アントワネットにはまた別の手を使用してかよ子達を追い詰めようとして・・・!?
149 作動しなかった機械
前書き
《前回》
ネロに続いて現れた敵側からの侵略者・アントワネットと遭遇したかよ子達は彼女の完璧な攻撃と防御に苦労させられる。ハープの音色でかよ子達を失神させたアントワネットは勝利を確信し、杖を奪おうとする。しかし、彼女を妨害する者としてかよ子の友達の一人・長山にまる子の姉、そして熊本から来た中学生・尾藤海斗が現れた!!
清水次郎長一派のいる屋敷。その場に森の石松はいた。
(あの者達、既にこの世界に来ている筈であるが・・・)
その時、戸を叩く音がした。
「はい」
お蝶が応対する。
「皆様、お元気でしょうか?」
「あ、あんたは!!」
お蝶が飛び込むように戻って来た。
「皆、フローレンスが来たよ!」
「なぬ!?」
一同は玄関に現れた。
「フローレンス、どうかしたのか!?」
「前の世界の人々を昨日から招集させ戦いに参加させておりますが、その中で今杖の所有者達はアントワネットと戦っております」
「杖の所有者がアントワネットと戦っていると!?」
次郎長はアントワネットとは交戦した経験があったので名を忘れる事はなかった。
「貴方達には杖の所有者達の支援をお願い致します。さらに戦争主義の世界の地の何処かに藤木茂君といいます少年がおり、杖の所有者達にその仕事をお任せしております。彼女らとの同行をお願いできますでしょうか?」
「畏まった。行くぞ、皆の者!」
「おう!」
石松や大政、小政など子分達は異議を全く唱えずに次郎長について行った。
気絶した杖の所有者達で組成される藤木救出班にまる子の姉、長山、そして尾藤が援護に現れた。
「あんたね、敵ってのは!」
さきこは威嚇する。
「・・・ん?」
長山はアントワネットを神通力の眼鏡で透視した。
「赤軍から貰った機械を三つ持っているな!」
「ふん、それが分かったところでどうするというのかしら?」
アントワネットは菫の香水を出した。
「貴方達全員、浄化させて貰うわよ!」
「させるか!」
尾藤はボールを蹴った。香水の破壊を試みる。しかし、そのまま跳ね返された。
「ち、あの機械か!」
「ならあの機械を!」
長山は念力でアントワネットが仕組む機械を破壊する。しかし、効果がない。
「機械の破壊を別の機械で守っているのか!」
「贅沢な事しとんな!」
「とっとと消えなさい!」
アントワネットが香水で三人を抹殺しようとする。その時、さきこの持つ宝石の一つ、琥珀が光りだす。さきこがアントワネットの香水の能力をそのまま発した。
「無駄よ!この道具があれば・・・」
しかし、香水は破壊された。ただ幸運だったのはアントワネットのドレスの能力でアントワネット自身は浄化されなかった事である。
(道具が作動しなかっただと・・・!?)
「ちょっと私、妹達の方を見ていくわ!」
さきこは紫水晶の能力によって心を落ち着かせる事ができた為に、心に余裕が持てた。
「皆、しっかりして!」
しかし、皆は気絶している。
(はっ、そうだわ。このエメラルドで・・・!!)
さきこのエメラルドが光り出した。かよ子達が起きる。
「はっ、私達は一体・・・?」
「お、お姉ちゃん!?どうしてここにおるんじゃ!?」
「話は後よ!あの女を倒さないと!」
「あ、そうだった!!」
かよ子は自身がアントワネットの道具で気絶させられた事を思い出した。
「子供とて許さぬぞ!」
アントワネットは木の箪笥をいきなり出現させた。皆を吸い込もうとする。そして赤軍から貰た機械で攻撃力を高めて消失を試みた。
「てめえ!」
尾藤はボールを蹴った。
「無駄だ!この道具で跳ね返されるだけ・・・」
しかし、道具は作動しなかった。箪笥は尾藤のボールで粉々に粉砕された。
「な、なぜだ!?なぜ道具が作動しない!」
そしてブー太郎の水の石が発動し、水圧を出す。のり子のキャロラインも念力を行使する。まる子も炎の石で火炎放射を、大野もまた草の石で木の葉の手裏剣を、椎名も激流を出し、関根も刀を振りかざす。さきこの七つの宝石全てが光り出す。長山も神通力の眼鏡を使用し、尾藤もボールを蹴る。
(今度こそ・・・!!)
アントワネットは道具の作動を試みる。今度は皆の攻撃は道具で防御された。
「今度は言う事を聞いたみたいね」
「ならば拙者と戦うか!?」
また別の声が聞こえた。
「い、石松・・・?いや、沢山いる・・・」
侠客の集団が現れた。
「お前はいつかのサルども!」
「アントワネットとやら。お主はまた荒らしに来おったのか!」
「違うわ。娘を連れて来たのよ」
「軽率な。貴様の娘が簡単に応じると思っておるのか!」
「嫌でも連れて行くわ」
「それでも貴様らの世界の者共は荒らしておる事に間違いはなかろう!この次郎長が成敗させてくれる!」
「できるかしら?このドレスは硬いのよ!」
「某の刀もお主に負けぬくらいに鍛え上げておる!全員かかれ!」
「おう!」
全員アントワネットに攻めにかかる。しかし、次々と跳ね返された。
「皆!」
「大丈夫だ!心配するでない!」
(そうだ、私もあの刀を・・・!!)
かよ子は杖を小政の刀に向けた。杖を剣に変化させた。
「いけえ!」
「あら、貴女が来てくれるのね」
(あの機械を剣で壊せば!)
かよ子は決死の懸けで機械の破壊を試みた。
「馬鹿ね。私はこの道具で守られるのよ!何度言っても解らないの!?」
アントワネットは機械で自分も機械そのものも守られるを信じていた。しかし、機械はまた作動しなかった。アントワネットのドレスは破られなかったが、中にしまっていた機械は破壊された。
「何ですって!?どうして言う事を聞いてくれないの!?」
アントワネットは頭に血が昇り、薔薇の香水を出した。
「同じものをもっとったんか?」
「いいえ、さっきとは別の香水よ!」
アントワネットは自分に香水を降りかけた。
「この香水は私への愛を注いでくれる者を呼び寄せる効果があるの。ああ、来て!フェルセン!!」
その時、別の人間が現れた。
かよ子の通う小学校。たまえは隣にいる親友がいなくて寂しがっていた。
(まるちゃんとまた会えないなんて・・・。まるちゃん、早く戻ってきて・・・!!)
たまえは寂しさで少し涙ぐんでいた。
「たまちゃん」
とし子がたまえを呼ぶ。
「まるちゃんもかよちゃんも戻って来られるか心配だね」
「とし子ちゃん、うん、私も凄く心配だよ・・・」
たまえは思い出した。あの異世界では夏休みに出会い、今月にも清水に訪れた安藤りえという女子も赴いている事を。さらには冬田や長山、大野に杉山、ブー太郎もいる。皆無事で戻ってくる事を祈る事しか今のたまえやとし子にはできなかった。その一方、笹山はこの日も藤木が早く戻ってくる事を願っていた。
(お姉さんも大丈夫かしら・・・?)
笹山の近所に住む女子高生も異世界の戦いに向かっている事を考えるとどうしても心配でたまらなかった。
フローレンスとイマヌエルが本部に戻って来た。
「イマヌエル、そちらこそお疲れ様です」
「ああ、先代の所有者達は今あの地図のある部屋にいるんだよね?」
「はい、参りましょう」
二人は地図のある場所に戻る。
「只今戻りました。今どのような状況でしょうか?」
「今、アントワネットとかいう所にまた新しい敵が現れたわ!」
かよ子の母が報告する。
「なんですって!?」
フローレンスが驚いた。
(テレーズ、間に合ってくれ・・・!!)
イマヌエルはアントワネットの娘の到着を祈った。
アントワネットは生前から愛していた男・フェルセンを召喚した。
「フェルセン、ありがとう、来てくれて!」
「ああ、愛しきアントワネット。大丈夫かい?」
「チッ、一人でも厄介だってのに助けが来やがって!」
椎名は面倒臭い事になったと思った。
「この下衆共が!我が愛しきアントワネットを!」
フェルセンが周囲を見る。そしてかよ子に向けた。
「あの子が持っている杖はもしかして・・・?」
「ええ、そうよ、最強の杖よ!」
「じゃあ、レーニン様に渡されたあの杖は偽物って訳か!」
フェルセンはかよ子の元へ向かう。
「さあ、貰おうか!」
「嫌だ!」
かよ子は防御特化の武装の能力を発動した。しかし、フェルセンにはなぜか効かない。
「山田、この男も機械を持っている!きっと攻撃の武装の能力で打ち消したんだ!」
「そ、そうか!」
しかし、かよ子にはなす術がない。
「君、俺の刀に杖を向けろ!」
警官の関根が促す。
「うん!」
「させるか!」
フェルセンがかよ子の腕を弾く。杖がかよ子の手から離れた。
「これで・・・」
フェルセンが杖に手を伸ばす。しかし、弾かれた。
「何者だ!」
また別の女性が現れた。
「させませんわ!おばあ様の敵ならば、お母様でもその愛人でも許しません!!」
長くこの地で母に怯えていたマリー・テレーズだった。アントワネットは娘を睨む。
「テレーズ・・・!!」
後書き
次回は・・・
「母と娘の戦い」
かよ子達の元に援軍として現れたテレーズは宝剣でアントワネットとフェルセンを迎撃する。だが、アントワネットのドレスで完全に防御され続け、誰もとどめを刺す事ができない。この状況を打破する方法は・・・!?
150 母と娘の戦い
前書き
《前回》
アントワネットと交戦するかよ子達。まる子の姉達や次郎長一派が応援に駆け付けるも、アントワネットは自身の愛人・フェルセンを召喚する。二人の強烈な連携でかよ子は杖を取られかけるも、その窮地を救うのはアントワネットの娘・テレーズだった!!
かよ子はまた現れた女性に驚いた。
(この女の人、味方なの・・・!?)
「貴女が杖の所有者ですね。そして次郎長の方々、私達の味方をしてくださる皆様方、私も戦います!」
「テレーズ!お主、行けるのか!?」
「はい、おばあ様が残して下さったこの宝剣があります!」
テレーズは自分の持つ剣を皆に見せた。
「それはお母様の宝剣ではないか!」
「テレーズか・・・。こんな奴らとつるむより母親の側に寝返った方が身の為だぞ」
「私は決して言いなりにはなりません!」
(テレーズ・・・、前に会った時よりも大いに変わっておる!!)
石松は驚いた。テレーズが以前よりも強気になっている事を。
「おばあ様の敵、取らせて頂きます!」
「やれるものならやってみるがよい!」
「杖の持ち主!早く杖を!」
「う、うん!」
かよ子は促されて杖を拾った。アントワネットはハープを速攻で直し、フェルセンは手を前に出す。
「貴様らに裁きを下してくれる!」
その時、さきこのエメラルドが光る。そして武装の能力を持つ者達はそれを発動させる。
「簡単にくたばると思うなよ」
フェルセンの念力のような能力が発動する。かよ子達は能力で防ごうとするも、かなり労力を使ってしまう。
「フェルセン、私も協力するわ!」
アントワネットはスピネットを出し、そして弾き始める。かよ子達の能力が無効化され、次郎長一派も気絶してしまった。
「くっ!」
かよ子はスピネットに杖を向けた。音の操る能力を再び得た。
(あのフェルセンって男の念力を解除しないと!)
かよ子はフェルセンに負けじと杖をフェルセンに向けて音波を発射する。
「頑張ってください、杖の所有者!」
テレーズは宝剣を振るう。フェルセンの念力が無効化された。そしてかよ子の杖の出す音波でフェルセンが気絶させられた。
「この愚かな娘め・・・!!」
アントワネットはスピネットでテレーズを静粛しようとした。対してテレーズの宝剣からは炎が現れ、アントワネットを襲う。しかし、アントワネットのドレスの能力でアントワネット自身は無傷だった。
「テレーズ・・・。お前、自分の母親を何だと思っている!!」
アントワネットは激怒した。そしてスピネットをもう一度弾く。
「制裁の音楽を与えるわ!」
「アントワネット!私も手伝うよ!貴様ら、私の念力で心臓を握りつぶしてくれる!」
フェルゼンが加勢する。しかし、効果が全くなかった。そしてバキッという音がした。
「な、なぜだ!?それからなぜ機械が!?」
「僕が壊したよ」
「それからアンタの攻撃は私が防がせて貰ったわ」
長山とさきこが名乗り出た。長山の眼鏡で機械は破壊され、さきこのエメラルドが光っていた。
「おお、凄いぞ、お姉ちゃん!」
友蔵が褒めた。
「お母様、覚悟!」
テレーズが母親に飛び込む。
「愛しきアントワネット!今助ける!」
フェルセンはアントワネットを助けようと念力でテレーズの動きを封じた。
「山田かよ子!某の刀の力を与える!」
「うん!」
石松に促されてかよ子石松の刀に杖を向け、杖を剣に変化させた。
「フェルセンの相手をせよ!」
「うん!」
かよ子はフェルセンに襲い掛かる。
「俺も行くぜ!」
「オイラもブー!」
「アタシも!」
「私もよ!」
大野の草の石、ブー太郎の水の石、まる子の炎の石、そしてのり子の人形が総攻撃する。そして・・・。
「・・・ん?」
大野はポケットの中にあるもう一つの石が光り出す。
「雷の石・・・?」
雷の石が放電した。そして大野の草の石から出された茨の槍でフェルセンを突き刺す。
「うわああ!」
フェルセンはアントワネットを助けようとするあまりに隙を突かれて総攻撃によって念力で防ぎきる事ができなかった。
「留めだよ!」
かよ子は剣でフェルセンの首を撥ねた。フェルセンは光となって消滅した。そしてテレーズはアントワネットのスピネットを破壊する。
(後はこのドレスを・・・!!)
しかし、テレジアから引き継がれた宝剣でもドレスは破れなかった。
「なら首を!」
テレーズは首の切断を試みる。しかし、なぜかアントワネットの首が斬れない。
「この首飾りで私の首は守られるわ!私はいつも用意周到なのよ!馬鹿娘!!」
アントワネットは指を鳴らした。牛が、鳥が、山羊が、羊が、豚が現れる。
「この愚かな娘を食い殺しなさい!」
アントワネットは動物たちに命令した。
「させるか!」
長山は神通力の眼鏡で動物たちを金縛りにした。
「今だ!」
次郎長がアントワネットに飛び掛かる。しかし、次郎長の刀をもってしてもアントワネットのドレスは非常に硬い。関根も刀で攻撃したが、歯が立たず、尾藤のボールでシュートしても効果がなかった。かよ子も剣に変化した杖で試みたが、それでも暖簾に腕押し状態であった。
「どうすればいいの・・・!?」
かよ子は困惑した。
「皆!」
「キャロライン・・・?」
のり子の人形・キャロラインが呼び掛ける。
「アントワネットはあのドレスや首飾りを身に付けてるからそれを脱がせばいいわ!念力とか使える人はアントワネットの身体を服や首飾りから脱がしたり引き離せばいいのよ!」
「な、何だと!?」
アントワネットは弱点を突かれて動揺した。
「やってみるわ!」
さきこのトパーズが光る。そしてアントワネットは身ぐるみを残して身体を別の場所へ転移された。アントワネットは恥ずかしさで赤面し、身体を蹲らせた。
「おお、なんと!!」
友蔵はアントワネットの裸体に興奮した。
「何をする!この破廉恥な者共!!」
その時、テレーズがアントワネットの背中を剣で突き刺した。
「お母様、覚悟!」
「テレーズ・・・、この、親不孝者め・・・!!」
アントワネットは光と化した。
「皆様、ありがとうございます・・・」
テレーズは礼をする。
「そんな事ねえぜ。一番アンタが頑張ってたじゃねえか」
「はい・・・」
「あ、そうだ、報告せんとな」
尾藤は通信器を取り出した。
「こちら尾藤海斗。もう一人の侵入者・アントワネットは杖の所有者達と共に倒した」
尾藤は報告を終える。
「皆様、私も貴方達と共に戦います。宜しいでしょうか?」
「はい、もちろんOKです!ね、皆?」
まる子の姉は周囲に確認した。
「ああ、心強いな」
「はい、こちらこそお願いします!」
そして藤木救出班は本部区域を出る為に羽に乗る。
「杖の所有者達、そして次郎長様達、この地に連れてこられた少年を救いに向かいのですね?」
「うん、そうだよ」
かよ子は答えた。テレーズは宝剣を上空へ向けた。青い光線が一つの方角へと放たれる。
「貴女達がこれからお探しになる藤木茂という少年はあの光線の方角の一帯にいます」
「うん、さっき長山君から温泉に入ってるって」
「はい、今はそうかもしれませんが、匿われている場所は別の場所。嘗て東洋の国の帝王達が住んでいるといわれる危険な地域です。それは雪の降り続く森林の付近に都として存在しています。味方が増えて心強いとは思いますがお気をつけて」
「ありがとう、そっちに進むよ」
「ええ、行ってらっしゃいませ!」
藤木救出班は出発した。
「お姉ちゃん、元気でなあ!」
友蔵は孫娘の一人に手を振る。
「う、うん・・・」
「孫想いのお爺様ですわね」
テレーズは友蔵を賞賛していた。
「え、ええ・・・」
さきこは苦笑した。何しろ友蔵はこの地に呼ばれた身ではなく、ただ孫が心配でたまらずに来たみであるからである。そしてテレーズは祖母から受け継がれた宝剣を見る。
(おばあ様、仇は取りました・・・)
《テレーズ、お前はよく頑張ったよ》
(・・・え?)
テレーズは今、テレジアの声が聞こえたような気がした。これは宝剣の能力で出されたものなのか、それとも自分の幻聴か・・・。
別の場所ではまた平和を正義とする世界の人間が宙を舞いながら進んでいた。
「あの人達が応援に来てくださったのね・・・。援護しなければ・・・」
その女性の名前はエレーヌと言った。懐かしさを兼ねてある人物達への援護へと向かう。
後書き
次回は・・・
「自分だけの武器」
本部の区域を抜けたかよ子達は藤木を探しに進む。その一方、剣奪還班として動く三河口は宴の際にフローレンスから貰った手紙を読んでいた。武器を持たぬ三河口にとってその手紙の内容は彼にある希望を持たせる事になる・・・。
151 自分だけの武器
前書き
《前回》
娘・テレーズを強引に引き抜きに訪れたアントワネットとその愛人・フェルセンとの戦いに苦しむかよ子達。そんな時、アントワネットの娘のテレーズが助っ人としてかよ子と共闘する。フェルセンを撃破し、アントワネットの何でも防御するドレスや首飾りの攻略に苦しむ一同だったが、のり子の人形・キャロラインがドレスの中身だけを狙えばいいと察する。のり子の念力とさきこの宝石で無理矢理裸の状態にされたアントワネットはテレーズによって始末される。そしてかよ子達は藤木の救出へ向かい、長山達は本部で守備を続けるのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その12
鷺森光江 (さぎもり みつえ)
神戸の女子高に通う高校生で先代の護符の所有者の長女・ゆりの隣人。初登場第62話。いつもどこか悲し気な顔をしており、やや控えめな性格。過去に何か深い傷を負っているようだが・・・?数少ない威圧の能力の持ち主。神戸の神の力が籠った御守を使用して戦う。威圧の能力を流し込むとさらなる力を発する。好きな食べ物はあんパン、ホットケーキ。
長山達はかよ子達藤木救出班が去った後、イマヌエルの声が聞こえた。
『皆、アントワネットの撃退お疲れ様。君達はそちらの方の守護をやって貰えるかな?』
「はい!」
『テレーズ、君も戦えるかい?』
「ええ、勿論ですわ」
『よし、では健闘を祈る。それでは』
通信は終了した。尾藤はあの小学生の女子が持つ杖とネロを倒した女性の持つ護符で思い出した。
(あの杖と護符・・・。きっと母さんが子供の時に会った不思議な子って人達の娘なんだろ・・・。あの二人のお母さんもな・・・)
本部の一室。かよ子の母はホッとした。
「よかったわ。あの子・・・」
「ええ、しかし、まだ戦いは始まったばかりですわ。やっと藤木茂君の救出に向かえます」
フローレンスは地図を指差した。藤木救出班は平和を正義とする世界の区域を脱した事を示す点が見えたのだった。
かよ子達藤木救出班は本部区域を脱した。
「藤木君、どこにいるかな・・・?」
「君、名前は確か山田かよ子ちゃんと言ったかな?」
関根が聞いた。
「はい」
「藤木君っていうのはさっきの眼鏡の少年の能力からして温泉を楽しんでいたようだが、自分が人質にされていると気づいていないんじゃないのかい?」
「あ、はい、私が野良犬に襲われそうになって藤木君は私を見捨てて逃げたんです。それでクラスの皆に責められて私達の世界にいるのが嫌になっちゃったんじゃないかと思います」
「そうか、それなら、いい所に連れて行くって言われてそれを鵜呑みにしたって可能性が高いな。それにしても裸で女と温泉なんて羨ましいガキだ」
「関根、お前も女好きだからな」
「あ、バレちゃった?」
その一方、友蔵はご機嫌だった。
「いやあ~、ここに来てよかったのう~、食事は美味しいし、さっきの女の人の裸なんて見れて儂は興奮したぞい!温泉が楽しみじゃ!」
「は?」
友蔵は皆から睨まれた。
「アンタは何もしてないでしょうが」
「言っときますが私達は遊びに来たんじゃありません。向こうの世界だったらアンタを逮捕してましたよ。調子乗らないでください」
「す、すみません・・・」
友蔵は謝った。
(もしかして藤木君、帰るの嫌がるんじゃないかな・・・?)
かよ子はそう予想した。
別の場所の上空。こちらは剣奪還班。そのうちの一人、三河口はフローレンスから貰った手紙を読んでいた。
三河口健殿
私達は貴方は三つの能力を宿します稀有な存在として道具なしでも十分戦力としてやっていけますと思っていましたが、秋に赤軍がそちらの学び舎の祭事に攻めてきたというエレーヌの報告及び赤軍が発明した機械がその時、その場に現れた西川純と山田義昭が貴方の能力を複製された事を知った所でこちらも貴方への支援もしなければならないと思いました。しかし、貴方の強大な能力を持つ者に相応しき道具を生み出す事が容易にできずにいます。貴方は確か実家を離れ、親戚である先代の護符の所有者の家に居候していると聞いております。それはその家にある護符と隣の家にある杖があるからこそ貴方を静岡県の清水市に導きましたのかもしれません。私は貴方に相応しき武器はこの世界の最高位の道具「杖」「護符」「杯」「剣」を上回る物と考えます。それを踏まえて私は貴方を剣奪還班に選抜致しました。しかし、それを生み出す条件はその四つの道具が必要と考えます。四つの道具が全て揃った時に貴方の武器は生み出されるでしょう。それでは御武運を。
平和を正義とする世界の主
「おい、ミカワちゃん、何の手紙読んどるけん?」
鯉沢が急に呼んだ。
「ああ、フローレンスから貰った手紙だよ」
「ラブレターか?おんどれモテモテのお!」
鯉沢は冷やかした。
「違うよ。てか、いつ俺がモテモテになった?」
「へん、ウチもいい男思ってんけんな~」
鯉沢は煙草を加える。
「ちょっと、未成年の癖して煙草吸わないでよ。私、煙草の匂い嫌いなんだよ」
一人の女子が文句を言う。
「吸いたくてしかたないんじゃけんよ!」
鯉沢は逆切れした。
「じゃ、ちょっと離れる」
女子は奏子が広げた羽衣から降りたと思ったら飛行した。
「君、飛行できるのか?」
北勢田が聞く。
「ああ、このマフラーで九つの能力が使えるんだよ」
男勝りな口調の女子は答えた。
「ええと、貴女、名前何て言うの?」
奏子が聞いた。
「青葉政美」
女子は答えた。
「それにしても本部から出たら随分恐ろしそうな気配を感じるけんな」
「殆ど戦争主義の世界の地と化しているからね」
「いっちょぶっ倒すか」
「無駄な襲撃はやめなさい」
ゆりが鯉沢を統制した。
「私達の目的は異世界の剣を取り戻す事よ。攻撃は領土攻撃班に任せて必要な時だけ戦闘態勢に入りなさい。いいわね?」
「はいよ」
その一方、三河口は手紙からある事を考察した。
(フローレンスとイマヌエルが考えている事はつまり、俺に剣を持って来させてそれが済んだらさりちゃんとかよちゃん、そしてりえちゃんの持つ護符、杖、杯を本部へ集めさせる。そこで俺だけの戦いの道具を作る事ができるという事か・・・)
「ねえ」
茶髪で日本人のような英国人のような女子が三河口を呼ぶ。
「ん?」
「そのに手紙は何て書いてあるの?」
「ああ、俺は武器を持っていなくてね、その剣を取り返し、俺の従姉が持っている護符、山田かよ子って子が持ってる杖、そして安藤りえって子が持ってる杯を揃った所でおそらく俺の武器が出来上がるって事だよ」
「武器を持っていないの?ここで戦えるのかしら?」
「ああ、赤軍ならともかく、この世界の人間じゃ圧倒はできても倒しきれんだろうね」
「大丈夫よ。私の従弟はそれでも見聞、武装、威圧の三つの能力を持っているのよ。貴女も色々手助けしてあげてね」
「はい・・・。え?い、従弟さんなんですか?」
「ええ、それに護符の所有者は私の妹なの」
「そうなんですね・・・」
「他にもう一人の妹が領土攻撃班に回っているわ」
「俺の従姉は三姉妹なんだ」
「そう・・・。仲好さそうね」
「あの、ところで貴女は見た目が外人っぽいけど、ハーフなん?」
光江が聞く。
「ええ、私は花沢咲菜・マリエル。学校ではマリエルって呼ばれてるわ。お母さんがイギリス人で小学生の頃に日本に来たのよ。今は千葉に住んでるの」
「君の武器はどんなのだい?」
濃藤が聞く。
「そうね、この本よ。ブランデー・ナンって人から貰ったの。私の住んでる国のいろんな童話の登場人物が出せるのよ」
「うわあ、童話の世界に入ったみたいやね!」
その時、爆発音が響いた。
「領土攻撃班の誰かが戦い始めたんか?」
光江は下を見る。皆も続けて下を見る。
「あれは四人組の小学生だね」
政美が探知能力を使用して説明した。
「全く、極端に胸騒ぎをさせてくれるけんな」
ゆりは通信機器を出す。
「こちら剣奪還班、祝津ゆり。近くで戦ってる人、返事できるかしら?」
返信が来た。
『こちら山口。今敵と交戦した』
「濃藤、山口って事はお前の妹の友達じゃねえのか?」
三河口が確認を取る。
「そうか・・・!!」
後書き
次回は・・・
「従姉は毒使い」
敵と交戦するすみ子達「義元」。そんな彼らの元にゆりが支援しに向かう。戦いを始める羽柴家の長女はどのような戦いを見せて行くのか。そして四人の元には更に別の人物が駆け付ける・・・!!
152 従姉は毒使い
前書き
《前回》
戦争正義の世界本部にあるという異世界の剣を奪い返しに向かう三河口達剣奪還班。三河口がフローレンスから貰った手紙より自分の武器が持つ為の条件があると知る。そんな時、彼らの付近で濃藤の妹・すみ子達が敵と交戦していた!!
羽柴家の長女の戦闘スタイルはどのようなものなのか?今回でようやく明らかになります!ていうか、妹二人と比べて明かされるのが遅かったですね・・・。
剣奪還班は小学生四名が敵と交戦している事について関わるかどうか悩んでいた。
「はて、ゆりちゃん、どうしますか?」
「手助けしたい気持ちはあるけどね・・・」
その時、全員の通信機器から声が聞こえる。
『こちらフローレンス。剣奪還班の皆様、聞こえますか?』
「聞こえるわ」
ゆりが応答した。
「そちらに今、領土攻撃班が戦っています筈です。彼らは小学生の四人組で心細いと思います。その内一人の女の子は濃藤徳崇君の妹の濃藤すみ子ちゃんです。援護をお願いできますでしょうか?」
「やってみるわ」
『ありがとうございます。それでは御武運を』
ゆりは呼び掛ける。
「皆、私はあの子達の援護に行ってくるわ。誰か瞬間移動させてくれる人はいるかしら?」
「それなら私が」
政美が応える。
「政美ちゃん・・・ね。それじゃ、私を近くへ移動させて他の皆はそこから支援して攻撃してね。何かあったら連絡よ」
「はい、それでは」
政美が超能力でゆりを移動させた。
「三河口君、ゆりさんってどんな道具持ってるの?」
奏子が三河口に聞く。
「え?」
三河口はゆりがどのような戦闘スタイルかは全く知らなかった。名古屋でさりの援護に現れた時もどう戦っているのかも確認していない。
「実は俺も解らん。光江ちゃん、知ってるか?」
三河口はゆりの隣に住む光江に振った。
「ええと・・・」
光江は答えようとする。
「確か、毒でも使ってたような・・・」
「毒?」
山口、川村、ヤス太郎、そしてすみ子の四人は軍勢と遭遇していた。
「小僧どもか・・・。さっさと片付けちまうか」
「何者だ?」
「私はコノート公とでも呼んでくれ。邪魔立てする気なら子供でも容赦はせん。かかれ!」
コノート公は部下の隊に攻撃を命じた。
「来るぞ!」
山口は矢を放ち、川村はバズーカを打ち、ヤス太郎はパチンコを発射する。しかし、相手に全く通用しない。
「山口、全員例の機械を持ってるぜ!」
「ああ、これじゃあ埒が明かねえ!」
相手が砲撃する。すみ子が銃でバリアを張るが、いとも容易く破られた。隊の爆発に四人は巻き込まれ、吹き飛ばされた。
「ワー!」
「キャー!」
命は無事だったが、あまりにも劣勢すぎる。その時、通信が来た。
「こちら剣奪還班、祝津ゆり。近くで戦ってる人、返事できるかしら?」
山口が応答する。
『こちら山口。今敵と交戦した』
しかし、コノート公の軍隊の二発目の砲撃が来る。対して山口は慌てて矢を放つ。爆発を起こして相手を攻撃する矢だったが、相手の砲撃の方が上だった。
「川村、ヤス太郎、すみ子!!」
山口は見回した。しかし、返事はない。軍隊は隙なく近づいてくる。その時、コノート公が止まり、後ろを振り返った。
「何だ!?」
後ろから煙が上がっていた。
「くう!」
「早く、守れ!」
煙が広がる。兵隊達は無事だったが、機械が破壊される音がした。
「うわああ!」
(敵か?味方か?)
その時、山口は自分が何処かに吸い込まれていくような感触がした。そして瞬間移動された事が確認される。
「ここは・・・?」
仲間もいた。
「川村、ヤス太郎、すみ子!お前らも無事だったか!」
「うん・・・」
「この人が助けてくれたでやんす!」
「無事でよかったですわ」
西洋人の女性がいた。以前、すみ子の兄が通う高校の文化祭の帰りにフビライを倒すのに共闘してくれた人物だった。
「アンタは確か、エレーヌ!」
「ご無沙汰しております。私の能力で遠くへ移動させました」
「それで今の煙は何なんだ?」
「あれは剣を奪還する方による毒の煙です」
「毒の煙?」
「ええ、ここにいれば安全です」
ゆりはコノート公の兵の後ろに回り込み、息を毒の煙と化して機械の破壊を試みていた。
「こちら祝津ゆり。そっちで遠距離攻撃できる人、奴等の機械を破壊して!」
「了解!」
「俺も行くぜ!」
政美が超能力で、濃藤が運命の剣で兵隊の方に向ける。二人で一気に兵隊達が持つ機械を破壊した。
「俺もゆりちゃんの援護に行きたいんだが・・・」
「道具持っとらん奴は引っ込んどれ」
鯉沢が三河口に釘を刺した。
「・・・そうだな」
三河口は鯉沢の台詞にムッと来たが抑えた。ゆりは兵の攻撃を武装の能力の防御で跳ね返し、接近して拳を突き込む。突き込まれた兵たちが一瞬で溶解する。
「こ、この女!?」
コノート公は一瞬で自身の兵を溶かす女に恐ろしさを覚えた。
「貴方、子供相手に随分と容赦ないなんて大人げないわね」
「女!お前も倒してやる!」
コノート公は剣を振って火薬を発生させた。しかし、ゆりには通じない。それどころか火薬を捉えて無力化してしまう。
「残った者共、やれ!」
「政美ちゃん、私を戻しなさい!」
『え?はい!』
ゆりは姿を消した。
避難したすみ子達の元に通信が来る。
「こちら剣奪還班。相手の礼の機械は破壊したわ。後はやれるかしら?」
「あ・・・」
「もちろん、後はとどめを刺す!」
『解ったわ。では私達は先を急がせて貰うわね。それじゃ』
通信が切れた。
「皆様、行けますか?」
「うん・・・!!」
組織「義元」は再び立ち上がる。そしてエレーヌは上空へ去る姿を見た。
(あれはシミズの地で徳林奏子さんに差し上げた羽衣・・・。上手く使いこなせていますわね・・・。頑張って剣を取り返してください・・・)
「ヤス太郎、眠り玉を使え!」
「了解でやんす!」
ヤス太郎は眠り玉をパチンコで発射する。コノート公が眠りに落ちる。行きりの兵も皆寝てしまった。
「川村、俺達でやるぞ!」
「おう!」
山口は矢で射貫く。川村はバズーカを発射する。爆発が起き、コノート公の軍勢は光となって散った。
「全員やったのか・・・?」
「はい。コノート公の軍勢は全滅しました」
エレーヌは答える。
(しかし、コノート公は確か女帝ヴィクトリアの手先・・・。次に誰が来るのか・・・)
エレーヌは心の奥で懸念した。
ゆりが羽衣の上に戻って来た。
「ゆりちゃん、凄い健闘でしたね。しかし、毒使いというのは初めて知りました」
「ええ、私のこのアンクレットが出してるのよ」
ゆりは自身の左の足首にある紫のアンクレットを見せた。
「これで触れた相手を溶かしたりできるわけ。息を毒の煙にしたり、触れた水を毒薬にしたりする事ができるのよ」
ゆりは種明かしをした。
「それじゃ、急ぎましょうか」
剣奪還班は戦争主義の世界の本部へと向かう。
後書き
次回は・・・
「倒しきらなかった理由」
コノート公の軍勢を倒したすみ子達はエレーヌによって共闘できる相手を呼び出され、その者達と行動する事になる。そしてゆりはなぜ全員を倒さなかったのか、三河口は尋ねる。様々な人物が戦闘を次々と進めて行く・・・!!
153 倒しきらなかった理由
前書き
《前回》
コノート公の軍勢に苦戦するすみ子達を援護すべく、ゆりは自分の能力や毒を精製する道具を使用して敵を追い詰める。そしてエレーヌも援護に現れ、すみ子達は再び戦線に復帰し、コノート公の軍の討伐を完了させるのだった!!
コノート公の軍勢を倒した組織「義元」は通信する。
「こちら領土攻撃班。コノート公とかいう奴等を倒した!」
フローレンスからの返答が来る。
『お疲れ様です。そのまま先に進んでください』
「了解。行くぞ」
「しかし・・・」
エレーヌが止めた。
「貴方達が勝てたのは剣奪還班の者の援護が大きいです。四人では心細いと思いますので私が援軍をお呼びしましょう」
エレーヌは腕を一回振り回した。
「何方かこの少年少女と共闘してくださる方?」
その時、別の声が聞こえた。
「私が行きましょう!」
騎士が一人現れた。女性だったが、男性のような勇ましさを持っていた。そしてその部下と思われる兵が十名ほどいた。
「ジャンヌですね。ありがとうございます」
「ああ、エレーヌ。貴女の言う少年少女とはこの者達だな?」
「は、はい・・・!」
「我が名はジャンヌ。私も君達と戦おう!」
「あ、ありがとう」
組織「義元」なエレーヌやジャンヌの軍と共に進む事になった。
剣奪還班は禍々しい気配のする戦争主義の世界の上空を進む。
「ところでゆりちゃん」
三河口は従姉に聞く。
「え?」
「先程の連中達、ゆりちゃん一人でも留めをさせた筈。どうして倒しきらずにそのまま戻ったのでしょうか?」
「そうね。それは向こうの仕事だと思ったし、こっちは早く剣を取り戻さないと行けないでしょ?それで後はあの子達に任せたわけ」
「・・・はい」
「それに健ちゃんが昨日フローレンスから貰ったその手紙からして剣さえ本部に持ち帰れば次は他の三つを一緒に揃える必要があるんでしょ?健ちゃんだけの武器を作る為にね」
「そうですね・・・」
そして進む。だが、三河口はある事を考えていた。
(ところで杉山君、りえちゃん達を振り切って逃げたそうだが、一体何を考える?それが君にとってこちら側の為になるのか?かよちゃん達も心配するぜ・・・)
本部の一室。先代の杖、護符、杯の所有者達は地図を確認していた。フローレンスとイマヌエルもいる。
「あの子達も援護が来ましたか」
「ああ、剣奪還班の援護で彼らの劣勢を塗り替えた。あの十人を剣奪還班に選抜した結果は間違っていなかったようだね。それから、安藤りえちゃん達の所に羽柴奈美子さんのもう一人の娘さんが到着したようだ」
「でも、杉山君は何処行っちゃったのかしら?」
「そうですね・・・」
その頃、一人の少年が遊び相手の女性達と温泉を楽しんだ後、ある女性の屋敷に戻っていた。
「お帰り、皆の衆。食事を用意させてあるぞ」
「茂様、行きましょ、行きましょ!」
「うん!」
自分が誘拐され、かつ政府と赤軍の取引に利用されているとは気づかない少年はこの世界での生活を楽しむ。人々は食堂へと向かう。
「茂様、こちらは林檎と砂糖で作った飲み物がございます」
「こちらは葡萄と砂糖で作られております」
「こっちはですね、蜜柑と砂糖で作られていますよ。どれにしますか?」
「う〜ん、全部貰おうかな?」
「贅沢ですね!」
結局、全ての飲み物を貰い、食事をする。
「この麻婆丼は私が作らせて頂きました」
「こちらは挽き肉を使った西洋の料理で私の力作でございます」
料理係の女性が作った西洋の料理とはいわばハンバーグたった。
「ありがとう、どれも美味しいよ!」
「ありがとうございます。私がお嫁なら何時でもこのような食事を・・・」
「あら、私の方がいいわよ」
「け、喧嘩しないでよ!」
少年に止められ、二人の食事係の女性は我に帰った。
「さて、紂王様。私は一旦失礼しますわ」
「おう」
妲己は別の部屋へ向かう。そしてとある道具を出す。
『こちら赤軍。敵の勢力が巻き返し始めた!』
「どうやら、この地も危なくなって来たわね・・・」
その頃、杉山を見失ったりえや冬田達は援軍を待った。
(杉山君ったら、何してくれるのよっ・・・!!)
りえは喧嘩しつつも、裏では好意を持っていた男子からの仕打ちに悪意を覚えていた。
「大野くうん、早く来てえ・・・」
冬田は好きな男子の登場を待つ。そして、「大丈夫か、冬田?これからはどんな時も俺が守ってやるぜ」などと大野から言われる事を妄想していた。
「冬田さん、残念だけど大野君は来ないと思うわ」
りえが断言する。
「どうしてえ!?」
「だって大野君はかよちゃん達と藤木君の救出に行ってるはずよ。それに、もう助けてくれる人が来たわ」
大人の男女が二名、現れた。
「皆、大丈夫!?」
かよ子の隣の家に住むというおばさんの娘の一人、ありとその夫・悠一だった。
「はい」
「皆、俺達と行動しよう」
ありは通信機を取り出す。
「こちら煮雪あり。杯の所有者達と合流しました」
『畏まりました。共に行動をお願い致します』
「ありがとうございます。冬田さんだっけ、その羽根で私達を乗せてよ」
みゆきが頼む。
「え、ええ・・・」
冬田は大野と一緒が良かったと心の中で不満に思いながらも皆を羽根に乗せて移動した。
一人の女王がその場で一人の将軍が率いる軍勢の消息を知る。
「・・・コノート公が倒された。あんなに優勢だったのに・・・」
その女性は嘗てイギリスを帝国としてアジア・アフリカなど多くの国々を植民地にした女帝だった。一人の男性が女王の部屋に入る。
「ヴィクトリア女王様。只今敵の本部へ侵攻していたコノート公が倒されました」
「そうみたいね。どうやら我々が生きていた頃の世界の人間がこの地に敵に肩入れしているとか・・・」
「いかにも」
「でも我々も同じ。奪われた領土は奪い返すのみ。全員世界統一の為に!」
「はっ!」
部下の男は敬礼した。そして部屋を出た。
「私は嘗て女帝として民衆から支持を得た身・・・。植民地化する事で強くなれる・・・」
ヴィクトリア女王はとある地での戦いに目を向ける。
「それにしぶといわね。同じ祖国の女王であるというのに、何度も攻め入って・・・」
ヴィクトリア女王の傘下の軍はある艦隊とも激突を繰り返していたのである。その場所はとある海。戦争主義の世界の本拠地であるレーニンのいる場所の近辺の海の守護をレーニンからの依頼により軍を派遣させているのだが、それでも襲撃する隊がいる。赤軍という日本の過激派が発明した機械によってこちらが優勢に傾くとはいえ、それでも彼女からしても、レーニンからしても鬱陶しい存在だった。
「いい加減にしなさい、クイーン・ベス、ブランデー・ナン・・・。忌々しい・・・」
女帝は各地で派遣した軍隊に早々と平和主義の世界の侵略完了を願った。
そして杖の所有者達は行方不明のクラスメイトの卑怯な男子を連れ戻す為に進む。
「くそ、胸がすげえざわつくぜ・・・」
大野の見聞の能力が強まっている。
「もしかしたら、敵がもっと近づいてるのかもしれないね・・・」
かよ子はこの北東の方角に藤木がいると確信しているが、自身は見聞の能力を持っていない。しかし、それでも緊張による心臓の鼓動は激しくなっていった。
後書き
次回は・・・
「容赦なき金属攻撃」
藤木の救出に向かうかよ子達にいきなり敵が来襲する。戦闘態勢に入るかよ子達だったが、銀の槍が襲ってくる。杖を利用して上手く迎撃しようと試みるかよ子ではあったが・・・!?
154 容赦なき金属攻撃
前書き
《前回》
ゆりの助力でコノート公の軍を撃破したすみ子達はエレーヌによってジャンヌを召喚され、彼女達と同行して奪われた領土を攻め込む仕事を行う事とする。多くの者が戦いでの仕事を進めようとするのであった!!
かよ子達は一人の行方不明の男子がいると思われる方角を進む。
「おお、まる子、綺麗な眺めじゃのう~」
「うん、限りない地平線が綺麗だよお~」
しかし、大野が文句を言う。
「何言ってんだ、俺達は遊覧飛行してんじゃねえんだぜ」
「ももこちゃん、気が抜けすぎてるよ!」
のり子も旧友に呆れて叱責する。
「ご、ごめん、ごめん・・・」
「さくらももこと言ったか。弛んどるぞ!責任を持って務めに励まんか!それからそこの老人!」
次郎長は友蔵を呼ぶ。
「は、はい!」
「お主はただ来ておるだけであり、引率の役目にもなっておらん!」
「す、すみませんでした、親分!!」
友蔵がなぜか時代劇のような跪き方をした。
「それに近づいて来てるぜ、奴等が!」
無数の銀の槍が攻撃してきた。
「ぎえええ!!死ぬ~」
それまで呑気だった友蔵も猛烈な悲鳴を挙げて蹲った。
「連中か!」
かよ子は下を見た。軍隊がこちらを狙っていると解った。
「皆の者!戦闘の準備だ!」
「え、えいえいおー!」
友蔵は場違いな掛け声を出した。
本部の一室。かよ子の母は藤木救出班の行方を辿ると、また敵にぶつかった様子を発見した。
「かよ子達の所にまた敵が・・・」
「はい、しかも、敵の世界ですから更に激しい戦闘になりますでしょう」
フローレンスは通信道具を取り出す。
「こちらフローレンス。領土攻撃班で北東の方角にいます方。藤木茂君救出班が敵と当たりました。彼女らの援護をお願い致します」
『了解』
女性の声が聞こえた。
かよ子はあの銀の槍に杖を向けて試みた。
(確か金属なら使える・・・!!)
そして杖の使い方の一節を思い出す。
【金属の物質に向ければ金属類を自在に操る能力を得られる】
かよ子の杖は白金の巨大な盾と化した。そして銀の槍を跳ね返す。
「オイラもやるブー!」
ブー太郎も洪水の如く水を噴射させて相手を押し流す。しかし、機械から出した武装の能力で無力化された。だが、それはブー太郎からして、敵のいる方向を示す鍵ともなった。
「あそこだブー!」
「よし!」
関根は刀で円を描く。描いた円から遠くにいる相手がルーペの如く近くに見えた。
「これで何をしているのか見えるぞ!」
「お前もその人形でやるブー!」
ブー太郎はのり子に依頼した。
「うん!キャロライン!」
「了解!」
のり子の人形が念力を発する。相手の兵の機械を次々と破壊した。
「接近するよ!」
かよ子は皆に呼び掛けた。そして皆は敵の隊に突入した。椎名が玉を使い、大波を出し、兵を蹴散らす。そして大野が茨の槍で相手を突き刺した。
「うおお!」
「機械が壊されたぞ!」
「チッ!」
「貴様ら、だからと言って怯むな!」
その時、関根が刀で突風を出し相手を薙ぎ払った。
「お前ら、邪魔だよ!」
「なんだ貴様!?」
「ボクちゃんかい?キザな男、関根金雄様だよ」
「関根、カッコつけてる場合じゃねえぞ!」
椎名が呼ぶ。
「あいよ!」
関根と椎名は前に立つ。
「貴様ら、この世界の人間ではないな?」
隊長と思われる人物が現れた。
「そうだが。一つ質問しよう。藤木茂という少年を捜しているが心当たりはないか?」
「知るわけがなかろう」
「クローマー伯爵様!後ろから別の敵が!」
「何!?」
クローマー伯爵と呼ばれた男は後ろを振り返った。子供が数人、そして老人が一人、さらに日本刀を持った集団が現れた。かよ子達はのり子の人形の能力で椎名と関根が喋っている隙に瞬間移動していたのだった。
「えい!」
かよ子の杖が鉄の槍となってクローマー伯爵の兵に襲い掛かる。対して兵たちは楯で防御した。次郎長一派も対抗する。だが、兵達も無数の槍や剣を分裂させるように増やして対抗した。
「こうなったら!」
大野が草の石で花を出した。花粉が放出される。
「てめえら眠りやがれ!」
「そんな手が通用すると思うか?」
クローマー伯爵は強大な白金の丸屋根を出して大野が出した花を閉じ込めた。同時に大野達も閉じ込められる。
「大野君!」
かよ子は振り返ったが、そこで転んでしまった。とんだおっちょこちょいをやってしまった。
「山田かよ子!」
かよ子は起き上がると、兵が一人、かよ子に近づいていた。かよ子は鉄の槍を楯に変化させて守った。
「ほう、あの小娘、あの最強の杖をもっているのか」
クローマー伯爵が近づいた。
「貰うぞ、その杖!」
「させるか!」
大政が槍でクローマー伯爵を突きそうとした。
大学生程の女性二名はとある女性の兵と行動を共にしていた。
「敵の地にいる少年の救出部隊へ援護の要請か」
「ああ、そうや」
「向かうぞ。確かその部隊には杖の所有者もいると聞く。我が兵の馬に乗りなさい」
「はい。明日香、行くで!」
「うん!」
大政が刀でクローマー伯爵を刺す。しかし、クローマー伯爵は無傷だった。
「貴様!?、何の防御の術だ!?」
「私は様々な金属を操られる事を知っているのかね?」
クローマー伯爵は大政を斬りにかかる。その時、関根が国定忠治の刀で横入りして大政を守った。
「全く隙のない奴だな」
関根の刀はクローマー伯爵の剣と渡り合ってはいた。
「だが、私の武器は幾つにも増やせるのだぞ」
「何!?」
クローマー伯爵は銀の槍を出して飛ばす。
「関根!」
椎名は水を出して槍を押し流した。
「私も!」
かよ子は楯を剣に変化させて一騎打ちしている兵を斬ると、クローマー伯爵と交戦している関根の元へ向かった。次郎長や石松も来る。
「山田かよ子!某達も助太刀するぞ!」
「ありがとう!」
「数を増やして私をやろうとしても無駄だ!」
クローマー伯爵は無数に槍を増やしてかよ子達を攻撃する。その時だった。
「そこやな」
どこからか別の人の声がした。そしてまた別の兵が現れる。クローマー伯爵の兵をなぎ倒す。その中に二人の大学生程の女性が現れた。
「アンタら、大丈夫やったか!?」
大阪弁で喋る女性に会った。
「はい、ありがとうございます」
かよ子は礼をした。
「私達は援護に参った。お前が杖の所有者か。私はラクシュミー。こちらはお前と同じ世界から来たりし上市明日香と高田あやだ。共に戦おう」
「はい!」
「ラクシュミーとやら。援軍感謝する!」
次郎長も礼の言葉を放つ。
「何を、数が増えた所で勝てると思うな!」
クローマー伯爵はラクシュミーにも牙を向ける。
(せっかく助けが来てくれたんだ・・・。無駄にできない・・・!!)
その時、通信機から声がした。
『こちら、ブー太郎だブー!山田、聞こえるかブー!?』
「ブー太郎!?」
後書き
次回は・・・
「勇ましき王妃、ラクシュミー」
クローマー伯爵が出した白金のドームに閉じ込められた大野達は脱出できずにいた。そんな時、ラクシュミーは外側からそのドームを破壊しようと試みる。クローマー伯爵の優勢が続くのか、それともかよ子達が形勢逆転になるのか・・・!?
155 勇ましき王妃、ラクシュミー
前書き
《前回》
藤木を探しに向かうかよ子達に無数の銀の槍が襲い掛かる。その襲撃を行ったクローマー伯爵と交戦する事になったかよ子達ではあるが、大野やブー太郎達が白金の丸屋根に閉じ込められてしまい、窮地に陥ってしまう。そんな中、大学生の上市明日香と高田あや、女性の兵・ラクシュミーが援軍としてかよ子と共闘する!!
大野達はクローマー伯爵が作り出した巨大な白金のドームに閉じ込められたままだった。大野やブー太郎、まる子が持つ力の石やのり子の人形・キャロラインの能力をもってしても簡単には破壊できなかった。
「チキショー、かてえなこいつ!」
「わ、儂はここでずっと孤独死してしまうのか~、嫌じゃ、嫌じゃ~!!」
友蔵は喚いた。
「や、山田に通信するブー!」
ブー太郎は通信機を取り出す。
「こちら、ブー太郎だブー!山田、聞こえるかブー!?」
ブー太郎はかよ子との連絡を試みた。
『ブー太郎!?うん、聞こえるよ!今、助けも来たんだ!』
「助けブー?」
『うん!』
かよ子の通信を女子大学生の二名が聞いていた。
「仲間からの通信なんか?」
「はい!あそこに閉じ込められているんです!」
かよ子はドームの方を指差した。
「私がやってみよう」
ラクシュミーがライフルをドームに向けた。一瞬のうちに丸屋根は姿を消した。
「おお、出られたぜ!」
「この女!許さんぞ!」
クローマー伯爵が銀の槍を無数に出して攻撃する。
「させへんで!」
上市明日香は手袋をはめた両手で銀の槍を受け止め、そして触っただけで打ち消した。高田あやも持っている刀の柄から急に赤と緑に光る刀身を出し、対向していく。高田が持つ刀の光からは龍が現れ、銀の槍を噛み砕いていった。
「くそ!私の攻撃が阻まれるとは!」
クローマー伯爵は防御の体制に切り替えた。巨大な金の楯を出した。
「これで私に攻撃は通じん!」
そしてクローマー伯爵は残った兵に命令を出す。
「皆の物!あの小娘の杖を奪え!」
「了解!」
「させるか!」
ラクシュミーはライフルを発する。多くの兵が失神する。そして上市の拳で兵の身体を貫き、そして高田の持つ竜を放つ刀が兵を喰らい、葬って行く。そして残るはクローマー伯爵のみとなった。しかし、上市や高田の攻撃、ラクシュミーのライフルでも金の楯は崩せなかった。
「この私が簡単に倒せるか!」
その時、クローマー伯爵の地面から何かが現れた。茨の槍だった。
「うおっ!」
茨の槍はクローマー伯爵の足に突き刺さった。
「地面の中からの攻撃は防げなかったみたいだな」
茨の槍は大野の草の石の能力によるものだった。そしてかよ子の金の鉾に変化した杖で楯を壊される。
「金の楯は金の鉾を突き通さない事はないんだね」
もはやクローマー伯爵は窮地だった。しかし、金の楯を破壊した反動か、かよ子の杖も元に戻ってしまった。
「山田かよ子!某の刀を使え!」
「うん!」
かよ子は石松の刀に杖を向け、杖を剣に変化させた。
「えい!」
かよ子はクローマー伯爵の身体を両断した。
「ま、まさか、私がやられる、とは・・・。すまぬ、ヴィクトリア女王、様・・・」
クローマー伯爵は光となって消滅した。
「アンタ、凄い活躍やったで!」
「うん、小学生とは思えんな!」
上市と高田はかよ子とその杖を凄く思った。
「あ、ありがとうございます・・・。あ、そうだ、今、あの男の人が『ヴィクトリア女王』って呼んでたんだけど、その人って・・・?」
「それは戦争主義の世界の女王の一人だ。この世界が戦争主義の世界に染められた理由の大半はその女王に仕える者達の攻撃によるものなのだ」
ラクシュミーは説明する。
「あの女王は嘗てイギリスの女王だった。あの者達は多くの国を自分の物にしようと欲張りで私は好かん。私は生前、インドを治めていたが、イギリスは私がいた国まで占領し、好き勝手な事をしてくれた。私の国も支配されじと反乱を起こしたが、結局は報われなかった」
「そうだったんですか・・・」
「この地でも好き勝手されたくない。それでフローレンスとイマヌエルによってこの平和を正義とする世界の人間となったのだ。杖の所有者達、お前達の目的は敵の世界にいるとされる少年の救出だな?」
「はい、藤木君を連れ戻すのが私達の役目です」
「そうか、この先はかなり危険な戦いになるだろう。お前達、確か日本という国の発展に尽くしたものの一人だな?」
「如何にも。清水の次郎長と申す」
「この娘達の支援に尽くすが良い。我々はこの一帯を取り返しに行く。行くぞ、上市明日香、高田あや、皆の者!」
「は、はい!」
ラクシュミーは自身の兵と共に上市、髙田と共にその奥へ進んだ。
「あの人、カッコよかったなあ・・・」
かよ子はラクシュミーに見惚れていた。
「ああ、あの女の人はまるで神様じゃ!」
友蔵が大袈裟に賞賛した。
「あの者も国の為に平和を願っていた者だからな・・・」
石松はそう評価した。そして皆は目的の地へと進んでいった。
ラクシュミーは手下の兵や高田、上市と共にクローマー伯爵が拠点としていた建物を襲撃した。
「これで完了か・・・。二人共、本部や周囲を守備している者にも連絡だ」
「はい」
上市が通信機を取り出して連絡を取ろうとする。
「こちら領土攻撃班、上市明日香。東側の領土を取り返しました」
『了解しました。お疲れ様です。本部守備班の一部をそちらに移動させます』
フローレンスの返答する声が聞こえた。
「それでは我々も進むぞ」
そしてラクシュミーは杖の所有者の事を考える。
(杖の所有者よ、先に先に進むのだ・・・。平和を手にするために、これ以上命を落とす事のないように・・・)
本部ではかよ子の母が娘達の班が突破できた事にホッとしていた。
「まきちゃん、かよちゃん達次進めるね」
「はい、あの子ったらおっちょこちょいだからホント心配で・・・」
「山田かよ子ちゃんは領土攻撃班の支援がありましたからこそ活躍できましたが、上手く杖を使いこなせていますから娘さんを信頼してください」
「それではフローレンス、私は席を外させて貰うよ。向かいたい所があるからね」
「はい、行ってらっしゃいませ。私も貴方達の世界に行って参ります」
「え、どうして?」
「赤軍や『向こうの世界』の人達は偽物の杖に護符、杯を渡されました事に気付いています筈です。赤軍の長、重信房子はきっとそれぞれの所有者のいる東京、静岡、名古屋へ向かい、探し回りますでしょう。無駄な被害を抑えます為です。そしてイマヌエルは、首相に憲法九条の改正を約束させます為に派遣させました赤軍の政治委員を拘束しまして今、監禁しています所なのです」
「ここに赤軍がいるの!?」
りえの母は驚いた。
「はい。もしかしたら、赤軍の別の仲間が助けに行きます為にこちらに攻めます可能性がありますかもしれません。皆様、戻りますまで私達の代理で状況の把握をお願い致します」
「解ったわ」
フローレンスとイマヌエルは部屋を出て行った。
後書き
次回は・・・
「赤軍の長、危険な遭遇」
イマヌエルは監禁した赤軍の政治委員と「話し合い」を試みる。そしてフローレンスはかよ子達が住む世界で赤軍の暴動を止める為に動き出す。そしてかよ子達の前には次なる敵が・・・!!
156 赤軍の長、危険な遭遇
前書き
《前回》
クローマー伯爵の襲撃に苦慮するかよ子達だったが、大学生の女性二名に嘗てインドの女王として生きたラクシュミーの援護により形勢逆転させ、クローマー伯爵の軍勢の撃破に成功する。かよ子達は藤木の救出の為に先に進み、本部にいるフローレンスとイマヌエルも各々の「仕事」の為にある行動を開始する!!
オリジナルキャラ紹介・その13
鯉沢輝愛(こいざわ きあら)
広島に住むスケバンの女子高校生。初登場42話(ただし本格的な登場は89話)。三河口を凌ぐ程敏感な見聞の能力と攻撃に特化された武装の能力を持つ。広島弁訛りで喋り、気性も荒い。未成年で喫煙したり、パーマをかけてスカートの裾を長くしたりと典型的な不良である。原子力を利用した銃を使用し、光線で相手を溶かしたり、原爆のような弾を飛ばして爆発を起こす。好きな食べ物はお好み焼き、桃。
本部のとある部屋。赤軍の政治委員・吉村和江と足立正生はそれぞれ別室で監禁されていた。拘束こそはされていなかったが、それぞれの部屋からはどうやっても扉を開ける事はできない。二人はある時、声が聞こえた。
「吉村和江、足立正生、聞こえるか?」
「な、何者だ!?」
『我が名はイマヌエル。さて、話し合いの時間といこうか』
吉村と足立は別の部屋へと瞬間移動させられた。
「こ、ここは・・・?」
二人はとある椅子に座らされていた。しかし、椅子に張り付けられたように立ち上がる事はできない。そこにはイマヌエルがいた。
「さて、君達は一度戦争放棄した日本にどうして交戦権を再び持たせたいのか?」
「それは勿論、今の日本が弱くなっちまったからだろ」
足立が答えた。
「しかし、そうでもないようだ。日本は経済が成長し、アメリカなどとも肩を並べられる経済大国になっているのだよ。まあ、川に流した工業排水による人体への毒が問題ともなっているが」
「何を言ってる!今の日本に必要なのは軍事力よ!そんな経済だの工業の発展だのはどうでもいいの!」
吉村が激昂した。
「どうやらまだ分からぬようだな。少し失礼する。ちょっと待ちたまえ」
イマヌエルは頭が固い連中と思いながら部屋を出た。
フローレンスは「生前の世」への道を進んでいた。その時、通信機が鳴る。
「はい」
『こちらイマヌエルだ。赤軍の政治委員の二人には口で言ってもどうやら伝わらないようだ。解放させるのは難しいな』
「そうですか。しかし、そうしませんとあの国に無関係な人達が巻き込まれます恐れがありますからね。今、赤軍の長は本物の『三つの道具』を探し出します為に暴虐の限りを尽くしますかもしれません。それを食い止めればと思います。あの二人の解放は今の所保留としましょう」
『そうだね』
通信を切り、フローレンスは東京都、静岡県、そして愛知県の神社に祀られている神を呼ぶ。
「皆様、赤軍の人間が何処にいますか、捜索して頂きたいのです。赤軍は我々の策に嵌り、本物の杖か護符、あるいは杯を探しています筈です。放置しておりますと、無差別に多くの人に危害を加えます可能性がありますのです」
「了解しました。お探ししてみましょう」
「ありがとうございます」
それぞれの神社の神達は一旦姿を消した。そして三分程して名古屋の祭神・熱田大神が戻って来た。
「フローレンス殿。我が地の付近におりました」
「畏まりました。行きましょう」
フローレンスは愛知県へと向かった。
赤軍の長、重信房子は愛知県の上空へとジェット機を飛ばしていた。
(どこだ、もう一度襲ってやるわ・・・!!)
その時、声が聞こえた。
「もうここに護符はございませんよ」
「だ、誰!?」
房子は周りを見回した。そして一つの方向に一人の女性が浮遊していた。
「私はフローレンス。平和を正義とします世界の者です。赤軍の長、重信房子。貴女は護符や杖、剣を探し出します為に街を荒らしますのですか?」
「当たり前よ。私達の取引を邪魔したのは貴女ね?下衆が!」
「多くの人を巻き添えにします事を厭いません貴女も上品と思えませんが。それから『この世界』にはもう三つの道具、何れもございません」
「は!?」
「私達の世界に既に回収してあります。信じます信じませんはそちらの勝手ですが、ここで無意味な攻撃を続けますか?それとも「あちらの世界」で探しますか?向こうで仲間に確認してみては如何でしょうか?それでは」
フローレンスはその場から姿を消した。
(あの女・・・!!この機械なら解る筈・・・!!)
房子はとある高校生の持つ三つの異能の能力のうち、探知できる能力を使用した。だが、護符の気配は一切感じられなかった。
(あのフローレンスとやらが言ってる事は本当か・・・!!)
房子は日本上空から撤退する事にした。
(レバノンへ戻って修達と合流しないと・・・!!)
フローレンスは別の場所へと向かう。
(もう一つやらなければなりません事が・・・)
フローレンスは一人の女子高生・徳林奏子から藤木茂という少年の失踪の件について少しながらも詳細を知る事ができたのである。自分の卑怯と言われる行動で好きな少女に疎まれた事、そしてその少女は少年が失踪した事についてもっと早く許してあげればよかったと後悔している事。その少女こそ藤木茂救出の鍵になるとフローレンスは確信していた。
清水市のとある小学校。たまえととし子は体育の授業でマラソン大会に備えて一緒に走っていた。皆は寒さで大変だった。
「寒いね、たまちゃん」
「うん、でも『向こう』に言ってるまるちゃんは休めて良かった、って思ってるかもね」
たまえはまる子の事を思い出した。しかし、風邪で休んでいる者もいたが、それ以前の事情で休んでいる者もいる為、非常に少人数な感は否めなかった。その一方、笹山は友人達と走るが黙々と走る。脳内で「卑怯者」と呼ばれる行方不明の少年の事が頭から離れずにいた。
「藤木君、こんな寒い日にマラソンしなくてある意味運がいいかもしれないね」
「そうだね、まあ仮に行方不明になってなくても仮病で休んでいただろうね」
クラスメイトの山根強と永沢君男はそのように藤木を貶すような会話をしていた。
(やっぱり藤木君はそれでも休むのかな・・・?)
笹山はそう考えていた。
その頃、クローマー伯爵との交戦を終えて次に進んでいたかよ子達藤木救出班は学校の友達の事を考えていた。
「そういえばたまちゃん達は今頃マラソン大会の練習してるのかな・・・?」
「ああ、そういえばこれからの体育はその予定って聞いたブー」
「そうなの!?アタシゃラッキーだねえ・・・。走る必要がないんだもん」
まる子の面倒臭い発言で皆は沈黙した。
「ももこちゃん、私の学校も同じようにマラソン大会の練習してる筈だよ。ももこちゃんと一緒の学校だったら一緒に頑張りたかったのに・・・!!」
のり子が不謹慎とも言いたげな表情でまる子を見た。
「のりちゃん・・・。ごめん・・・」
その時、大野はある予感をしていた。
「おい、また攻めてくる奴がいるぞ!」
大野の予想は当たった。そして白い物質が飛んできた。
「うおっ、なんだ!?」
「これは・・・。塩!?」
「塩じゃと!?しょ、しょっぱいぞ~!これを集めればお母さん達も安心するはずじゃ!」
「じいさん、そんな呑気な話じゃございませんぞ」
友蔵は関根に諌められた。その時、友蔵は腹痛を起こし倒れた。
「う、うう・・・」
「おじいちゃん!!」
まる子が祖父を心配する。
「どうやらこの塩は毒らしいな」
椎名が玉で塩を溶かす。ブー太郎もまた水の石で塩を溶解した。そして皆は塩の飛ぶ方向を確かめた。
「あいつか!さくら、火炎放射だ!」
大野はまる子に命令する。
「でも、おじいちゃんが!」
「私がやるわ!キャロライン!」
「ええ!」
キャロラインは透視能力で塩を飛ばす者を確認した。
「のりちゃん、合体するよ!」
「うん!」
のり子とキャロラインが一人に同化した。
「はあ!」
のり子とキャロラインが光線を放つ。しかし、塩を飛ばす者もまた塩の壁を作って妨害した。しかし、それでも二人は諦めない。塩の壁を何とか破って機械を念力で破壊した。
「ももこちゃんのおじいさん、今、解毒するわ!」
のり子は友蔵の腹に触る。その時、友蔵の腹中でボッという音がした。
「おお、治ったぞい!」
そして一同は相手に近づく。
「ふ、この黄巣様の塩を突破するとは・・・!!」
(この人、塩を武器にする・・・。となると・・・!!)
かよ子はある事を頭に閃かせた。
後書き
次回は・・・
「塩を調理せよ」
塩を操る黄巣と交戦するかよ子達藤木の救出班。かよ子は相手が塩を使うという事で閃かせた対抗策とは何か。そしてフローレンスはかよ子達が住む静岡県清水市へと再訪する・・・!!
157 塩を調理せよ
前書き
《前回》
イマヌエルは捕虜にした赤軍の政治委員・足立正生と吉村和江への話し合いを試みるが、二人は今の日本には軍事力を再び持つ事が必要と主張するのみで会話が纏まらずにいた。フローレンスは生前の世界にて杖、護符、杯を探し回る赤軍の長・重信房子と接触し、「この世界」に何れもないと告げる。そしてクローマー伯爵を撃破したかよ子達の前に次なる敵が!!
かよ子は塩を操る黄巣と交戦していた。次郎長一派も塩を刀で跳ね返し、椎名とブー太郎は放水して塩を溶かす。あの黄巣が操る塩の最良な対処法を一瞬で閃かせた。
(そうだ、料理に使えば・・・!!)
かよ子はリュックからフライパンを取り出した。それに杖を向ける。
「それ!」
杖がフライパンに変化した。かよ子はそれで塩を受け止める。
「これを料理にさせて貰うよ!」
「おお、君の杖にそんな能力があるのか!」
椎名は驚いた。食塩には様々な用途がある為か、黄巣が出した塩を何でも料理にしてしまうのだった。
「よし、俺が奴の近くに言ってやるぜ!」
大野は草の石で巨大な樹木を出し、枝に飛び乗った。そして木が自在に動く。更に巨大な枝で黄巣を殴り飛ばした。
「留めはボクちゃんがやるよ!」
関根も飛びかかった。黄巣は慌てて塩の壁を造る。しかし、大野の草の石で出した木の枝の攻撃で壁を粉々にされ、関根が国定忠治の刀で黄巣の首を撥ねた。
「うおおお!てめえら、俺の塩を・・・!!」
黄巣は光となって消滅した。
「あっけなく倒したか・・・」
「皆!」
かよ子は降りた大野と関根を呼ぶ。
「さっきのあいつの塩で色んな料理が造れたよ!一緒に食べよう!」
「おっ、サンキュー!」
大野と関根はのり子の人形(この時同化していたのり子とキャロラインは黄巣が倒された時に同化を解除していた)による瞬間移動でかよ子の羽根の上に戻った。
「これは、塩だけでこれだけ旨そうな食い物が沢山作れるとはな。お主の杖も凄い能力だ!」
次郎長はかよ子の杖を賞賛した。
「あ、ありがとう・・・」
「おおお、ハンバーグだ!貰おう!」
まる子は好きなハンバーグを先に貰った。
「ここには鯵の塩焼きじゃ!」
友蔵は鯵を貰った。皆で食事となった。
「あんたの杖ならあたしも料理の手間かからなくて済むね。あたしゃ楽だよ」
お蝶は呟いた。
「そうだな。しかし、本部から食事の支給は来る筈ではあるがな」
「そうなの?」
「ああ。ま、お主の杖で料理で斬る時とできない時があろう。その時は本部に連絡するといい」
「うん」
かよ子は相手が塩を操る相手だったので今回はこのように料理に使用することはできたが、そうでない時は本部から食事の調達を願い出る事という柔軟な対応が必要だと感じた。
さりは本部から支給されたサンドイッチをまる子の姉や杉山の姉、長山に尾藤などと食していた。
「あの、その護符やあの山田かよ子って子が持ってた杖なんですが、俺のお袋は昔静岡の清水ってとこに住んでたんですよ」
「そうなの?」
「はい、空襲で親失くして同じ孤児になった子達と一緒に食料盗んだりしていたそうです。ですが、暫くして親戚が無事だったんでその家に引き取られたんですが、不思議な予感したと言うとりました」
尾藤が説明した。
「もしかして、その護符や山田の杖の元の持ち主に尾藤君のお母さんが会った事があるかもしれないね」
長山はそう推測する。
「そうね。尾藤君のお母さんとウチのお母さんやかよちゃんのお母さんにも会わてあげたいわね」
その頃、杉山の姉は一人で違う事を考えていた。
「もと子ちゃんだっけ?もしかして弟さんの事を考えてるの?」
「ええ、あのバカ、自分勝手なんだから・・・。大野君やりえちゃんって子と喧嘩して・・・。一体今どこで何してんのかしら?」
「大丈夫よ。きっと見つかるわ」
しかし、こんな危険な地で通信機まで捨てて、何を考えているのか、それは杉山さとし本人以外には全く考える事ができなかった。
本部の一室。イマヌエルは各々に瞬間移動で食事の提供をしていた。
「我々の世界でも食料は必要だからね。君達も休憩したまえ」
「ありがとう、イマヌエル。ところでうちの子達の方は大丈夫かしら?」
まき子は娘の方を気にしていた。
「ああ、また次の敵を突破しているからね。一応、確認してみよう」
イマヌエルは通信機を取り出した。
「こちらイマヌエル。藤木茂救出班、食事の用意はできてはいるが、いるかい?」
『こちら藤木救出班、椎名歌巌。食事なら大丈夫だ。今塩を操る敵がいて杖の所有者がそれを利用していろいろな料理を出してくれた』
「そうか、了解。この先にもっと手強い敵がいるのでお気をつけて」
『了解』
藤木救出班との通信は終わった。
「向こうは食事は間に合っていたよ」
「良かった・・・」
「それでは向こうにも食事を与えに行くとするか」
イマヌエルは礼の部屋へと向かった。
監禁されている赤軍の足立と吉村の所に食事が運ばれた。
『安心したまえ。餓死させるつもりはない』
「それで私達がお前らの要求を認めるとでも思っているのか?」
『そんな風には思っていないさ。ただ、こっちからしたら死なれちゃ困るからね』
「ふん・・・」
房子は丸岡に連絡を入れる。
「修。こちら重信房子。今、杖も杯も護符もそっちにあるって本当なの!?」
『はい、そのようです。それから現に多くの連中が平和主義の世界の方に取り入れられ、こちら側に攻撃を続けて戦争主義の世界の人間は次々と撃破されている状態です!中には護符や杖の持ち主にやられた奴もいます!』
「何ですって!?今、そっちに戻るわ!」
房子はレバノンの赤軍本部へと戻ることにした。
(あいつら・・・!!手を打って・・・!!)
そして今、偽物の道具の能力で身動きが全くできない状態である戦争主義の世界の長・レーニンの事も考えた。
(レーニンをどう回復させるか・・・!?)
その一方、フローレンスは愛知県から静岡県へと向かっていた。
(静岡はあちらの方角・・・)
そして静岡県に入る。浜松にある天竜の杉林を越え、焼津の漁港を見渡し、そして静岡の市街地を飛び越えて清水へと訪れた。
(ここが清水の地・・・)
フローレンスは久々に訪れたこの地を少し懐かしく感じた。
(私がこの地に訪れました時、杖の所有者はここにいました・・・。そして護符の所有者は未だ受け継がれていませんでした・・・)
フローレンスはとある丘の上に来た。そこには例の四人が苦労して建てた秘密基地が今でも立っていた。
(ここで大きな基地の取り合いで激しい戦いが行われました・・・。しかし、私やイマヌエル、山田かよ子ちゃんと共にその闘いを抑えます事ができました・・・)
この地には幾度となく敵が襲って来た。自分達と敵対する世界が赤軍と提携し、無理矢理この世界と繋がってしまった時、アレクサンドルとアンナの兄妹がこの地を荒らしまわったとか。それから杖や護符を狙う者が現れる。その途中、長山治という少年が拉致されそうになったり、護符は娘に引き継がれたが、異能の能力を持つ者で最強とされる高校生男子が赤軍に利用されたり、引き継がれた護符を探し出す為に杖が奪われそうになったり・・・。
(確か、あの少女は学校に行っています筈・・・。今お会いしますには都合が悪いですわね・・・)
フローレンスはそう思いながら時を待ち続けるのであった。
後書き
次回は・・・
「蘇我氏の一族、再び」
藤木奪還の為に先に進もうとするかよ子達。だが、以前、護符の所有者の居場所を聞き出す事に成功し、かよ子から一度杖を奪取する事に成功したあの男達が復讐の炎を燃やす為に・・・!?
158 蘇我氏の一族、再び
前書き
《前回》
塩を巧みに操る男・黄巣を調理する能力を利用して撃破したかよ子達はその塩を使った料理を楽しむ。そして赤軍の長・房子は自分達の世界には既に杖、護符、杯がない事を知り、急いで本拠地へ戻る。そしてフローレンスは「ある目的」の為に清水の地を再訪していた!!
さり達本部守備班は領土攻撃班が一部の地域を奪還したという報告を受けて守備範囲を広げていた。
「ここの方の敵は滅ぼされたようね」
さりは長山、杉山の姉、まる子の姉、そして尾藤を連れて護符の能力で出した飛行機で周囲を飛行していた。
「しかし、廃墟みたいな感じたいな」
「まあ、すぐに復興は無理だよ」
「それにしても、すぐに取り返そうとする敵がいるのかしら?」
さきこは気になった。
「取り返した地を放っておいたら相手に取り返されやすくなるわ。だからこうして本部守備班が守る範囲を広げる必要があるのよ。それに・・・」
さりは見回した。
「もうあそこに攻め入った敵が来てるのよ」
「え!?」
もと子が下を見た。その時、通信が鳴る。
『こちら羽柴奈美子。さり、聞こえる!?』
「お母さん!?」
『今、そっちに敵が来ているの、解る?』
「うん、見えるわ」
『今、イマヌエルから聞いたけど、そいつらはアブー・アブドゥッラーっていう人よ。交戦する事になるわ』
「了解。今、片付けてくるわ」
さりは通信を切った。
「皆、今私のお母さんから連絡あったから聞こえてると思うけど、あそこに今、アブー何とかって奴がいるわ。返り討ちにするわよ」
さりは飛行機を降下させる。長山はその近くにいるアブー・アブドゥッラーとかいう男を神通力の眼鏡で確認する。
「あれだね」
長山は念力でアブー・アブドゥッラーを金縛りにしようとした。ところが、急にアブー・アブドゥッラーの姿が消えた。
「え?消えた!?」
「もしかしたらそいつの能力かもしれないわね」
さりは護符の能力を発動させる。探知機のような物を出現させた。
「これで奴等の場所が解るわ。近づく度に音が鳴るの」
さりがそう言った瞬間、探知機がブー、ブー、とやかましく鳴った。
「え・・・。もう近くに・・・!?」
その時、七つの方向から槍が飛んできた。槍とは思えないほどに飛行機が木端微塵にされる。
「あ、あああーーーー!!」
皆は飛行機が破壊された勢いで落下した。その時、長山の神通力やさりの防御による武装の能力、さきこのエメラルドによる防御の力が働いたおかげで、皆は無傷で地に降りる事ができた。しかし、どこを見回してもアブー・アブドゥッラーの姿が見えない。
(どこにいるの・・・!?)
さりはいつ、自分の護符が奪われるか解るものではなかった。
「私が!」
「僕も行くよ!」
長山は神通力の眼鏡で透視能力を利用した。アブー・アブドゥッラーの姿を捜す。アブー・アブドゥッラーはさりのすぐ傍にいた。
「あそこだ!」
「了解!」
もと子は石松から貰った玉でアブー・アブドゥッラーに気付かれないような攻撃を行った。しかし、攻撃が通用しない。
「ああ、そうか、機械の能力ね!」
そして姿を消した状態のままアブー・アブドゥッラーはさりの護符を取ろうとする。しかし、護符の所有者が急に姿を消した。そして、護符の所有者の姿が急に何人にも増えた。
「分身の術を使った!?」
さきこは護符の能力に驚いた。
「さあ、アブー何とか!?姿を見せなさい!でないとこの護符は渡さないわよ!」
(どっちにしても渡す気ないけどね・・・!!)
「そんな手に引っ掛かるか・・・」
アブー・アブドゥッラーは一向に姿を消したままである。
(どこまで陰険な奴・・・!!)
とある屋敷。二人の男は攻める用意を考えていた。
「馬子。今、杖の所有者がこの近辺に来ているという情報が入った。今度こそ攻めに行くぞ」
「はい、父上。あの時は助けが沢山来た上に窮地に陥りましたが、今は赤軍から貰ったこの道具があればなお無敵・・・。それに倒された蝦夷と入鹿の敵を取る絶好の機会と見ております」
「今度は我も前線に立つ。怯まず進むぞ!」
「はい!」
この二人は嘗て清水の地を訪れた蘇我氏の一族の者であった。杖の奪取に一時的に成功し、更には護符の所有者の居場所の情報を知る事に成功した者達である。とはいえ、杖はすぐにとある高校生男子に取り返され、一族のうち二人をその清水での戦いにおいて失ってしまったのだが。
本部の一室。かよ子の母はまた娘がいる藤木救出班に敵が近づいているのが解った。
「あら・・・」
「まきちゃん、どうしたん?」
「かよ子の所にまた敵が来てるわ・・・!!」
「どれどれ・・・?この二人は・・・!!」
イマヌエルは脳裏に思い浮かべた。
「これは蘇我氏か!」
「蘇我氏・・・!?」
「ああ、清水に忍び込んで善人面して山田かよ子君に護符の場所を喋らせて杖を奪ったという奴等だ。おそらくその時に倒された仲間の敵討ちを兼ねて杖を狙ってきているのかもしれない」
「解ったわ、今すぐ連絡するわ!」
まき子は通信機を使用した。
かよ子達藤木救出班は通信機が鳴っているのに気づいた。
「こちら藤木救出班だ」
『その声は大野君ね?かよ子の母です』
「お母さん!?どうしたの!?」
かよ子は母が連絡してきた事で驚いた。
『かよ子、「蘇我氏」って覚えてるかしら?』
「ソガシ・・・?」
かよ子はふと思い出した。蘇我氏とは清水市にも訪れた事がある。その内の入鹿という人間に騙されて護符の場所を教えてしまい、杖を奪われた失態を思い出す。あの時はすみ子達やまる子の援護もあり、入鹿と蝦夷を滅ぼす事に成功したのだが、あと一人、馬子は取り逃がしてしまった。その上、三河口から杖を簡単に盗られた事や護符の所有者の居場所をばらしてしまった事を激しく叱責された。嫌な思い出が脳裏に蘇る。
「お母さん、思い出したよ。思い出すだけで腹が立って来た・・・!!」
「うん、でも怒りすぎでおっちょこちょいしないようにね」
「うん・・・!!」
母に言われてかよ子はおっちょこちょいに気を付けようと思った。
「ソガシ・・・?誰だっけ?」
当時現場に居合わせていた筈のまる子はその事を忘れていた。
「あの時だよ、私の杖を盗った人達!私達が合唱コンクールの練習してた時だよ!」
「ああ、あの時かあ・・・」
「そのソガシってどんな美人さんかね~?」
友蔵は場違いな発言をした。
「おじいさん、蘇我氏ってのは殆ど男ですよ」
椎名が突っ込んだ。
「え・・・」
友蔵はその場で凍り付いた。
「兎に角、やられる前にやるしかねえな!」
大野は草の石を使って木の葉の手裏剣を発射した。のり子の人形も手から光線を出して迎撃を試みた。その時、撥ね返される様子を確認した。
「向こうだ!」
「よし!」
関根は刀で突風を引き起こし、攻撃した。しかし、撥ね返された。その時、関根の身体が急に動かなくなった。
「な、何だ・・・!?身体が動かん・・・」
「え!?」
「あの時の我々とは違うぞ!!」
蘇我氏の二名がかよ子達の方に近づいて来た。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
かよ子はあの忌々しい思い出が蘇る。ブー太郎が火炎放射を、大野は草の石の他、雷の石も使用し、椎名も玉で周囲に塩を満たせて攻撃する。しかし、二人の念仏によって全てが撥ね返される。
「さあ、貰うぞ。小娘、お前の杖もな。南無阿弥陀仏・・・」
かよ子は警戒心を高めていると共に身体がこわばって震えてしまった。
(この威圧感・・・。前に会った時とは違う・・・!!)
後書き
次回は・・・
「杖を再び狙う」
蘇我氏の稲目と馬子の威圧の能力や念仏で手も足も出せないかよ子達。そしてアブー・アブドゥッラーの姿を消す術に翻弄されるさり達。杖の所有者と護符の所有者に攻略の術はあるのか・・・!?
159 杖を再び狙う
前書き
《前回》
奪還された本部の領域を守備するさり達はまた新たな侵略者と相対する。そして藤木の捜索の為に進むかよ子達の前に立ちはだかったのは嘗てかよ子から杖を騙し取ろうとした蘇我氏の一族だった!!倒された入鹿と蝦夷の敵を取る事も兼ねて杖を再び狙おうとする馬子と稲目に対して迎え撃とうとするかよ子達だったが、赤軍から支給された機械の影響で以前よりも格段に手強くなっていた!!
本部の一室では護符の所有者及び杖の所有者が敵と交戦している様子を見ていた。
「さりにかよちゃん、大丈夫なんかね・・・」
「はい」
「大丈夫ですよ、お二人の娘さんなら」
りえの母が二人を安心させようと言った。
「そうだね、彼女らは実際にこの地でも単独ではないと言え敵を返り討ちにしているからね。信用しようじゃないか」
「はい・・・」
まき子は自分の娘と友人の娘の無事を祈った。
かよ子は蘇我氏の二人に対して怯えていた。しかし、杖を盗られた事のトラウマだけではない。かなりの威圧感を放っていた。この二人も赤軍からあの三つの能力を使える機械を支給された影響もあるかもしれないとかよ子は予想した。
「まずはこいつらの機械を破壊しないとな・・・。さくら、火炎放射だ!」
「え?う、うん・・・」
まる子は炎の石で火炎放射した。しかし、簡単に弾かれる。ただ念仏を唱えるだけの二人の男は何もせず平気で近づいてくる。
「おい、のり子とか言ったな!その人形であいつらの機械のしまってある場所を確認して壊すんだ!」
「う、うん!!」
のり子の人形は念力を使用した。しかし、攻撃対象は蘇我氏自身ではなく、彼らの持つ機械にしていた。にもかかわらず壊れない。
「だめ・・・!!なかなか壊れない!なんで?あの念仏の能力?」
「間違いねえぜ・・・」
「くそお!」
次郎長の子分達も、次郎長も迎撃した。しかし、二人の念仏で金縛りにされてしまう。
「我は馬子」
「我は稲目。貴様らは消えて貰う。そして小娘、貴様は我らに杖を渡すのだ」
馬子と稲目は念仏を唱えて次郎長一派を抹殺しようとした。
さり達はアブー・アブドゥッラーと交戦していた。さりは護符の能力で分身を出して幻惑はしているが、姿を消したままのアブー・アブドゥッラーを見いだせない。
「長山君、眼鏡で見破れる!?」
さりは長山に頼んだ。
「兎に角、やってみるよ!」
長山はアブー・アブドゥッラーの姿を確認する。その時、さきこのルビーが光った。アブー・アブドゥッラーの姿が見えた。
「あそこだ!」
「よし、やるわ!」
さきこのルビーは光り続けると共に、コバルトスピネル、サファイア、トパーズも纏めて光る。アブー・アブドゥッラーの姿が丸見えとなった。さりは護符の能力で漫画に出てくるようなレーザーガンを出現させた。さりはレーザーガンでアブー・アブドゥッラーの持つ機械目掛けて射撃する。尾藤もボールを蹴った。
「そう簡単にやられてたまるかよ!」
アブー・アブドゥッラーの姿が再び見えなくなった。
「ど、どこ行ったの!?さっき宝石で見えるようにしたのに!?」
「奴は姿を消したんじゃない!別の場所へ移動したんだ」
「となると・・・!?」
アブー・アブドゥッラーは既に別の場所から攻撃していた。さりの分身が消えた。
「貰うぞ・・・。お前の護符」
さりはアブー・アブドゥッラーが見えぬまま護符を奪われる事に恐れをなした。一か八かでも守り抜くしかないと思い、武装の能力での防御を図った。しかし、姿を消したアブー・アブドゥッラーは襲ってこなかった。いや、襲えなかった。
「なぜだ!?なぜ、攻撃が効かん!?」
アブー・アブドゥッラーは分からなかった。赤軍から支給された機械で武装の能力と威圧の能力、両方を放っているにも関わらず、護符を奪い取り、所有者を抹殺できなかった。
「不具合だ!機械が不具合を起こしてるんだ!!」
長山が察した。
「なら、今のうちに!」
もと子は気合いを入れた。玉が黒色に光る。姿が消えたままのアブー・アブドゥッラーにダメージを与える。
「ああ、ああ!!なぜ、姿を消しているのに・・・!!」
そして、長山の眼鏡でアブー・アブドゥッラーの姿が丸見えだった。尾藤がボールを蹴って攻撃した。アブー・アブドゥッラーはもう一度機械の利用を試みた。そして、瞬間移動する。
「ちっ、外した・・・!、」
「不具合が治ったのね・・・!!」
さりは周囲を見回す。その時だった。
「はあっ!」
一人の男が現れ、槍を振るった。アブー・アブドゥッラーの姿がまた現れた。
「清正!久しぶりやな!」
「おお、尾藤海斗。それにお主は護符の所有者か!?」
「ええ」
「この清正も助太刀する!成敗だ!」
「されてたまるか!」
清正の攻撃に対してアブー・アブドゥッラーは機械による武装の能力で防御した。
「その道具を壊せばよいと分かっておる!」
「分かってても無駄だぞ!!」
清正はもう一度、アブー・アブドゥッラーの機械の破壊を試みた。
かよ子はここで馬子と稲目によって次郎長一派を消され、自分の杖を奪われてたまるかという気持ちで慌ててリュックから無造作に何かを掴んだ。掴んだのは花火だった。
(花火・・・!!)
かよ子は花火に杖を向け、火薬を操る能力を得た。
「ええい!!」
かよ子はおっちょこちょいしてでも無造作に杖を振り続けた。しかし、稲目と馬子の念仏で弾かれる。しかし・・・。
「うおーーっ!!」
一発当たった。稲目と馬子が遠くへ吹き飛ばされた。
「当たった・・・?」
「ナイスだね!」
関根が褒めた。二人が遠くへ吹き飛ばされた影響か、次郎長達にかかっている金縛りが解けた。
「よし!」
石松は斬り込みにかかった。
「まだやられるわけにはいかん!南無阿弥陀仏!!」
稲目は念仏で結界を張った。石松の刀は通らなかった。しかし、途中で結界が破られた。
「なぜだ!?あの道具を使っているというのに!?」
「どうやら機械に不具合が起きたようだな」
椎名は解説した。
「よし、石松どの、ファイトじゃ〜!」
友蔵が応援する。石松も、次郎長も、大政も、小政も、斬りにかかった。
「父上、ここは私が!南無阿弥陀仏・・・!!」
今度は馬子が結界を張った。皆が弾かれる。
「ならもう一回!」
かよ子は爆弾を杖で出現させ、結界の破壊を試みた。しかし、結界は爆破されなかった。
(あの結界じゃなくて、やっぱり機械を狙わなきゃだめか・・・。通るかな?)
かよ子は結界を無視して機械の破壊を行う為に爆弾を出現させ、投げた。しかし、それでも結界で守られた。
「あの小娘、我の道具を破壊するつもりだったな!?」
(よ、読まれた!?)
かよ子はもしや機械による見聞の能力を馬子が使用したのではないかと思った。
「諦めて差し出すが良い!愚かな小娘!南無阿弥陀仏・・・」
稲目と馬子がまた接近して来る。他の次郎長の子分達が迎撃しても、大野が草の石を、ブー太郎が水の石を、まる子が炎の石を、椎名が水の玉で激流を出しても、関根が刀を振るっても二人を止める事ができなかった。
(あ、あ・・・、こうなったら・・・!!)
かよ子は羽根を移動させて撤退を試みた。しかし・・・。
「え!?動かない!?」
「逃げるなど意味のなき事を」
「え、ええい!!」
かよ子はやけっぱちで爆弾を杖で出現させて馬子と稲目にぶつけた。
「そんな手が使えるも思っているのか?」
「ひ、ひいいいーーー!!どうか、頼む!許しておくれ!!」
友蔵は土下座して命乞いを試みた。
「命乞いなどくだらん、纏めて消してやる」
のり子はキャロラインと同化する。
「キャロライン!」
「うん、のりちゃん、対抗しよう!」
のり子と同化したキャロラインは念力で稲目と馬子を遠ざけようとした。
(相手の持つ機械もどこかで不具合を起こすはず・・・)
しかし、念力も効かない。この時に限って機械が不具合を起こすなどそのような都合のいい事は起こる事はなかった。
(だ、だめ・・・!?)
のり子とキャロラインの同化が馬子と稲目の念仏によって解除される。次郎長達は苦しめられ、皆は馬子と稲目の持つ威圧の能力で恐れをなして動けなくなる。さらに友蔵は気を失ってしまった。
「さあ、もう一度杖を貰うぞ」
かよ子は武装の能力で抵抗しようとする。その時・・・。
「ぐあっ!!」
「おおっ!!」
稲目と馬子が勢い良く後方へ飛ばされた。
「な、何が起きたの!?」
かよ子には何が起きたか理解できなかった。
「貴方方、仏の教えを間違えましたね」
一人の僧侶がその場にいた。
「あ、あの人は誰・・・!?」
後書き
次回は・・・
「正しき仏法の説き手、玄奘」
かよ子達の前に現れた法師は稲目と馬子は仏法を間違った解釈と批判する。そしてかよ子達に逆転の勝機が訪れるのか・・・!?そしてさり達に加勢した清正で護符の所有者達はアブー・アブドゥッラーへの留めを狙う・・・!!
160 正しき仏法の説き手、玄奘
前書き
《前回》
アブー・アブドゥッラーに苦戦するさり達に清正という男が助太刀に現れる。そして蘇我氏の稲目と馬子の念仏を上手く攻略できずにいたかよ子は杖を取られかけられる。だが、一人の僧侶がかよ子を防御する。その僧侶は一体・・・!?
かよ子はその場に現れた一人の僧侶に目を向ける。
「あ、あの人は・・・!?」
「貴様・・・、平和主義の人間か?」
「その通りです。貴方達の思う仏法はまさに外道。正しき仏の使い道ではない」
僧侶は持っていた杖で地面を突く。
「本当の仏法と言う物を知りなさい!」
「な、何を舐めたマネを!我々の仏法こそ完璧なのだ!!南無阿弥陀仏・・・」
稲目と馬子は結界を張って己を護ろうとしたが、結界が出せなかった。
「貴方達は唐の国、いえ、貴方達が『死ぬ前』の頃は隋と言いましたか、そこから教わった仏法を更に間違えて解釈しただけ。私は仏の生まれた地、天竺まで言って本当の仏法とは何かを学んできたのです。貴方達が結界を張れなかったのは私の出す仏法の能力に対抗する事ができなかった、つまり正しい仏法の使い方ではないのです」
僧侶はかよ子達の方に目を向けた。
「貴女ですね、杖の所有者は?今、この二人を倒す好機です!」
「うん!」
かよ子は杖から火薬を出現させて攻撃した。しかし、弾かれる。
「あれ?」
「貴女は今、この二人を狙って撃ちましたね?それでは効果がありません。彼らの持つ道具を狙わなければ!」
「あ、そうだった!!」
かよ子はおっちょこちょいをやってしまったと思いながらも、稲目と馬子が持つ能力を行使する道具を火薬を投げて破壊した。機械が粉々に砕けた。
「し、しまった!!」
「父上、ここは退却を!!南無阿弥・・・」
「させません!!」
僧侶は数珠を取り出した。稲目と馬子は金縛りにあったように動けなくなる。
(今だ!!)
かよ子はそう思い、火薬を馬子と稲目の方に投げた。
姿を消して攻防するアブー・アブドゥッラーに苦戦していたさり達は清正の加勢によって形成逆転の好機を得た。清正がアブー・アブドゥッラーの機械目掛けて槍を投げた。
「そんな手が通じるか・・・」
アブー・アブドゥッラーは姿を消して撹乱を図った。しかし、機械がバキッと壊れる音がした。
「何!?」
「我の空間の槍は姿を消しても避ける事はできない。だから貴様の能力でくらます事ができなかったのだ」
そして清正はもう一本槍を出して地面に突き刺した。
「これは時の槍。これでお前は動けぬ。今だ!お主ら!」
「よっしゃ!」
「うん!」
さりは護符で出したレーザーガンを撃ち尾藤はボールを蹴り、もと子は緑に変化した玉で熱風を出して攻撃した。そしてさきこのルビーが光る。自分の「時間」を止められたアブー・アブドゥッラーは動けぬままやられて、光となり消滅した。
「これでやっつけられたのね・・・」
「いかにも。お主ら、よくぞ健闘された」
「ああ、そうやな」
さりは以前戦ったネロよりも強敵だったと個人的に感想した。
かよ子は爆弾攻撃で稲目と馬子を圧倒する。以前、彼らに杖を奪われた事の恨みもあって3、4発も投げた。
「おおおーーー!!」
稲目も、馬子は爆撃に苦しむ。そして二人は光となって消滅した。
「やっつけた・・・」
「お疲れ様です。よくやりましたね、『杖の所有者』」
「あ、はい、あ、みんなが・・・」
かよ子は稲目と馬子の攻撃で動けない皆を見る。
「大丈夫です。私が解きましょう」
僧侶は杖を振り回した。その時、次郎長達は起き上がる事ができ、大野達は普通に動けるようになり、友蔵は何があったとばかりに起き上がった。
「は、儂はどうなったんじゃ!?まる子、まる子お〜!大丈夫か!?」
「大丈夫だよ、おじいちゃん、あの人が助けてくれたんだよ」
「おお!?」
友蔵は僧侶を見た。
「ありがとうございます!貴方はもしや、仏様ですか?これはどうも、ありがたい、ありがたい。これで儂も孫も命が助かりました。どうもありがとうございます、ありがとうございます・・・」
僧侶は大袈裟に感謝する友蔵に苦笑した。
「いえ、私は仏ではなく、玄奘と言う者です」
「そうか、げんじょうという仏様であったか!」
友蔵は勘違いし続けた。
「それより、あの二人はどうなったんじゃ?」
「それなら、この杖の所有者が成敗されました」
「いや、成敗だなんて・・・。でも玄奘さんがいなきゃ勝てなかったよ・・・」
かよ子は謙虚に答えた。
「そうだ、玄奘さん、正しい仏法を学んだってどういう事?」
玄奘は説明を始めた。
「そうですね、私は唐の国にいたのですが、私は自分が学ぶ仏法が本当に正しいのかと思い、国の法を犯して出国したのです」
「トー?どこじゃ?」
友蔵が聞いた。
「今の中国ですよ」
椎名が答える。
「私は仏の生まれた地と言われる天竺へ向かい、本当の仏法を学ぼうとしたのです。しかし、その道は険しく、幾度も死にかける目に遭いました」
「テンジク?なんじゃ、そんな国どこにあるんじゃ?」
「おじいさん、天竺ってのは今のインドの事ですよ」
椎名は再び解説した。
「インド?なら、飛行機や電車を使えば楽に行けるではないか!」
「あのねえ、玄奘が生きてた頃は1400年も前の事ですよ。日本は飛鳥時代です。そんな時代に電車も飛行機もある訳ないでしょうが!おじいさん、少し黙っててくれますか?」
椎名は友蔵に呆れるように怒った。玄奘は話を続ける。
「そして長い歳月を経てようやく天竺に到着する事ができ、私はその地の法典を読み、これが本当の仏法だと確信する事ができました。それらを祖国に持ち帰り、広めようと思い、唐に戻る決心をつけたのです」
「でも法を犯して国を出たから何か処罰とかはなかったの?」
「ええ、私が帰国した頃には唐の情勢は変わっていましたので、寧ろその情報の編纂を頼まれました」
「そっか・・・。だから正しい仏法の能力を使って馬子や稲目達を倒せたんだね」
「いえ、私は支援をしたまで。実際に倒したのは杖の所有者、貴女ですよ」
「おお、かよちゃん、やるねえ〜」
「オイラ、こんな凄いお坊さんに助けて貰って良かったと思うブー!そうでなきゃオイラ達全滅だったブー!」
ブー太郎は玄奘を称賛した。
「ありがとうございます」
その頃、紂王の屋敷では妲己が機械の不具合が起きているという情報を得ていた。
「紂王様、赤軍とやらから支給された機械に所々不具合が発生しているとか」
「そうだな。それに幾人かこちらの世界の人間が倒されておる。決してこの地には入らせないように気をつけよ」
「はい」
妲己はいつ敵が襲撃し、「あの少年」を取り返しに来るか、懸念しなければならなかった。しかし、仮に奪還できたとしてもその少年が有り難く思うかは不明だが・・・。
後書き
次回は・・・
「羽根の強化」
藤木を奪還する為に先へ進もうとするかよ子達に対して玄奘はかよ子の羽根を見てある事を施そうとする。そしてとある屋敷では「ある少年」は不自由なく楽しい生活を送っていたのであった・・・!!
161 羽根の強化
前書き
《前回》
杖を狙う稲目と馬子の念仏攻撃に苦戦するかよ子達。しかし、彼女達の前に玄奘という僧が現れ、彼の仏法によって形勢逆転する。そしてかよ子の杖の火薬を操る能力で二人の撃破に成功する。同じ頃、さり達も護符を狙おうとするアブー・アブドゥッラーの撃破に成功した!!
かよ子は己の杖を奪った因縁のある蘇我氏の一族を滅ぼし、次へ行こうとしていた。そして倒す為の手助けをしてくれた法師・玄奘にも礼をする。
「玄奘さん、本当にありがとうございました。私達はこの先へ進みます」
「はい、お気をつけて・・・、と言いたいところですが・・・」
「え?」
かよ子はまだ玄奘が何か言いたい事があるのかと思った。
「貴女のその羽根は・・・?」
「ああ、フローレンスさんから貰った羽根です」
「そうですか、しかし、そのフローレンスの羽根は単に皆を乗せて飛ぶだけの能力のようですね」
「え?は、はい・・・」
かよ子が冬田と共に貰ったこの羽根は確かに単に飛行する為の移動手段でしかなかった。本部からの出発の際は、自分の羽根は冬田と異なり、一切の強化はなされていない。
「それでは、その羽根に私の法力を与えましょう」
玄奘は自分の右手に巻物を出現させ、それをかよ子の羽根に乗せた。その時、羽根が緑色に光り出した。
「こ、これは・・・?」
アブー・アブドゥッラーを倒したさり達は清正の力を確認していた。
「尾藤君はそのボールを清正から貰ったのね?」
「はい」
「如何にも」
「それでその槍は?」
「我が槍はそれぞれ時と空間を操作する槍である。であるからして先程の奴が何処へ姿を消しようと空間の槍はあやつの持つ道具を貫く事ができたのである」
「そうなのね・・・」
「あ、清正。一つ聞くけど、この尾藤君のお母さんが私のいた清水って所の生まれなの。日本を襲った空襲って覚えてる?」
さりは質問する。
「如何にも、その情報はフローレンスやイマヌエルから聞いておる」
「その時、孤児になってた尾藤君のお母さん達は親戚の家に引き取られることになったんだけど、不思議な感じがしてたんだって。何か心当たりあるかしら?」
「ああ、お主の母上がその護符を使用して十次と言う者をそちらの世に召喚した事から始まる。十次は戦災孤児とやらの救済の為に日本の政府にGHQとやらに頼んで孤児の救済に尽力したとな。まあ、お主の護符とかは我々のこの世界でも秘密の事項だあるが故、このくらいしか聞いておらんのだが・・・」
「そっか、それで、尾藤君は私の護符やかよちゃんの杖に不思議な予感を覚えたのね。その十次って人は今も元気にしてるのかしら?」
「う・・・、すまぬ、実はその十次とやらは既に倒されてしまった・・・」
「倒された!?」
「ああ、殺戮を正義とする世界の者でベニートというやらと交戦したのであるが、敗れて殺められたと聞く・・・」
「そんな、そうだったんだ・・・。お母さんにも会わせたかったのに・・・」
さりは落ち込んだ。
「その仇、私が取るわ・・・」
「俺もいくと!」
「うむ、お主らのその気があれば十次もきっと喜ぶであろう」
さり達はもう一つの目的を持ち始めた。
その頃、紂王と妲己の屋敷。一人の少年は昼寝していた。
(・・・)
いつもは学校で午後の授業に眠気に耐えながら受講しているのだが、ここに来てからはそのような苦痛はなくなった。何と快楽な地だろうと少年は思っていた。その時、誰かに手を握られた。
「え?」
少年は起き上がった。いつの間にかこの屋敷の一人の少女が添い寝をしていた。
「あ、すみませんでした・・・。私、茂様に夢中になってつい・・・」
「いや、いいよ、気にしないでさ・・・」
少年は女の子と寝るなど生まれて初めての事でとても驚いた事ではあるのだが、少し嬉しくもあった。もしかしたらこの子を好きな子にしても「あの世界」のように卑怯な事をしても愛想を尽かされる事や、遠くに住んでいるからという理由で別れが必ず来るという事はないだろう。
(えへへ・・・)
少年は顔がにやついた。
「茂様、嬉しそう・・・」
「あ、いや、そんな・・・」
その時、別の女性が入って来た。
「茂様、よく寝られま・・・、な、何をしているのですか、不届き者!」
「も、申し訳ございません!」
添い寝した遊女は思い切り寝台の外へ出た。
「いいよ、僕は気にしてないよ!」
「まあ、茂様がそう仰るのであるならば・・・」
入って来た女性は気を取り直して言葉を続ける。
「一緒に御遊びになりませんか?本日は茂様の住んでいたという国から取り寄せた玩具があるのです」
「うん、行くよ!」
少年は部屋を出た。
別のとある場所。ヴィクトリア女帝はクローマー伯爵の軍が壊滅したとの情報を耳にしていた。
「コノート公に続いてクローマー伯爵もやられた・・・!?」
「はい、倒したのは杖の所有者、そして嘗て我々の植民地化に反対したラクシュミーという王妃です」
「杖の所有者、ラクシュミー・・・!!」
女帝は怒りで手が震えた。
「その者が動く目的は?」
「はあ、それは今の所不明です。しかし、方角からして中華の街に向かっています」
「どちらも抹殺しなさい。向こうの街の人間とも連絡を取り合って杖を頂く計画も立てるのよ」
「はい」
女帝は軍の調整を図り出した。
玄奘が出した巻物によってかよ子の羽根が緑色に光り出した。
「こ、これは・・・?」
「私の仏法の法力を貴女の羽根に流し込みました。この羽根があれば時には結界を張って守ってくれるでしょう。但し、結界も絶対の壁という訳ではございません。あまりいないとは思いますが、私以上の強力な仏法を持つ者には耐え得る事はできません。また、異教の能力を得ている者との戦いとなりますと、私自身は何とか対処する事はできたのですが、その相手に対しては効くかどうか微妙な所です。しかし、それでも何も施しがされていないよりはましですが」
「玄奘さん、ありがとうございます・・・!!」
「所で皆様の目的は?」
「私達はこの世界に消えて行った友達を助けに行くんです」
「そうですか。この先はもっと険しく、恐れ多い道となるでしょう。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「はい!」
かよ子達藤木救出班は玄奘の法力を得た羽根に乗ってその場を去った。
「はて、あの者達が進む道は、私が進んだ道と同じくらい、いや、それ以上の危険なる道であろうか・・・」
玄奘は呟いた。
かよ子達藤木救出班は先へ進む。
「ところで、あの玄奘って人、なんか『西遊記』の三蔵法師みてえな人だったな」
大野が玄奘に対する感想を述べた。
「確かに、インドへ向かうってところが似てるブー」
「ああ、確かあの人がモデルになったらしいな・・・」
椎名はそう言った。
「そうなんですか。なら凄い人ですね・・・」
そして一行は先へと向かった。
後書き
次回は・・・
「放課後に現れた女性」
アブー・アブドゥッラーの撃破に協力した清正と行動する事にしたさり達。長山は清正から自身もまた赤軍に狙われている身である事、その理由を知らされる。そして清水の地に立ったフローレンスはある「少女」への接触を試みる・・・!!
162 放課後に現れた女性
前書き
《前回》
アブー・アブドゥッラーを倒したさり達は共闘した槍の使い手・清正と同行する事になる。そして尾藤の母が清水出身で空襲で両親を亡くした戦災孤児だった事、そして彼女らを救う為に尽力したという異世界の人間・十次という人物はベニートという男と交戦し、戦死したという情報をさりは知ることになる。さりはその十次の敵を取りたいと渇望する。そしてかよ子は自身の羽根を一人の僧・玄奘によって結界を張る事ができるように強化して貰い、藤木の捜索に再び動き出すのだった!!
本部の一室。かよ子の母は娘が敵をまた撃破した事に安堵した。
「よかったわ、また突破したのね・・・」
「そうだね、それに玄奘が来てくれて良かったよ」
「ゲンジョーってのはどんな人なんですか?」
「昔、中国が唐の時代だった頃に法を破ってインドへ向かい、仏教を学んだ僧の事だよ。本当の仏教とは何かを学んだ事で有名で、『西遊記』の三蔵法師のモデルにもなったんだ」
「奈美子ちゃん、さりちゃん達も別の敵を追い払えましたね」
「ああ、ホットしたよ」
イマヌエルはもう一つ、ある事を気にする。
(フローレンス・・・。もしかして藤木茂君を呼び戻す為の布石としてまさか・・・)
さり達は領土攻撃班の新たな連絡が来るまでアブー・アブドゥッラーを倒した場所でそのまま待機を続けていた。
「それにしてもこの世界はこの世界も結構広いわね」
「ああ、お主らがいて、我々も死ぬ前に生きていた頃の世界程広大ではないにせよ、全ての領土を我々の世界にするには多少の時間を費やすことになるであろう」
清正がその場にいた。
「そうやな、だけんど、俺達の守備範囲が広くなったら、守る場所も増えて大変になるんじゃないんか?」
「ああ、だが、我々の世界の者も協力を惜しまん。その為に我もこうして助太刀に来たのだ」
「確かに、その方がありがたいね」
「そうだ、お主、長山治と言う者であるな?」
清正は長山の方に目を向けた。
「は、はい・・・」
「お主は以前、赤軍の人間にその頭脳を狙われたと聞く。奴等はお主を狙う事を諦めていないわけではない事を頭に入れておくが良い」
「う、うん・・・」
「本来ならばフローレンスとイマヌエルはお主もまた杖の所有者と共に『向こうの世界』に囚われている小童の救出班に同行させてやろうという予定であったが、その一件を踏まえて敢えてこの本部守備班にしたのが真意だ。下手に動かぬよう、気を付けよ」
長山は以前、日本赤軍の丸岡修という男と彼に連れられてきたオリガという女に自身を狙われかけた事がある。その時はかよ子達や隣町の学校の生徒達の活躍によって連行は免れているのだが。
「解った」
長山は自身も狙われいる身である事を改めて認識した。
3年4組の皆は体育の授業が終わった後は非常にヘトヘトの状態であった。
「はあ、疲れた・・・」
たまえはそう言ってとし子と共に教室に入った。
「私も息が切れて大変だよ・・・」
とし子も走ってばかりでかなりしんどく感じていた。
「私今日ピアノだから集中できるかな?」
「やるしかないよ。私も今日エレクトーンのお稽古だし・・・」
二人は着替えると、帰りの支度を始めた。この日は体育の授業が最後だったため、他のクラスメイトも同じように着替えた後にランドセルを出して教材を片付けていた。そして戸川先生が入り、終礼が始まる。
「皆さん、マラソン大会の練習、お疲れ様でした。寒くなってきていますので風邪を引かないように気を付けてくださいね。では、さようなら」
皆は下校した。
フローレンスは高台から清水の街と清水港を見下ろし続けていた。
「そろそろ学校が終わります頃ですわね。これ以上グズグズします訳には行きませんか・・・」
フローレンスは姿を消して飛び立った。
(しかし、笹山かず子ちゃんと言いますのはどんな子でありましょうか・・・)
フローレンスは異能の能力を持たぬ者の事に関しては政府の人間などを除き情報を殆ど知らない。フローレンスは笹山かず子という女子の名前を教えてくれた徳林奏子の事を思い出した。
(あの方は確か、このあたりのお住まい・・・)
フローレンスはとある住宅街に降下する。フローレンスは見渡すと「徳林」という表札が目に入った。
(もしかしてあそこは徳林奏子ちゃんの家?となると笹山かず子ちゃんの家は・・・?)
フローレンスはこの近所で目的の女の子に会えると確信した。そして周囲を見回すと、「笹山」と表札が書かれた家を発見した。
(おそらく・・・!!)
笹山はいつもの如く下校していた。
「笹山さん、じゃあねえ」
「うん、またね」
友達と別れて笹山は一人そのまま帰る。
(今日は宿題やったら休もう・・・)
笹山も体育でのマラソン大会の練習で疲労が溜まっていた。そしていつもの如く帰宅する。普段なら近所の女子高生と会う事が多いのだが、その女子高生は今、クラスメイトの山田かよ子達と共に異世界の戦いに身を投じている為、暫く会う事はない。だが・・・。
「ん?」
笹山は一人の女性が急に姿を現した。栗色の神に全身白いワンピースのような服を着ている。
「貴女が笹山かず子ちゃんですか?」
「は、はい・・・」
笹山からしたら見知らぬ女性ではあるが、どこか優しそうな感じのする女性だった。
「私はフローレンスと申します。平和を正義とします世界から来ました者です。貴女の事はご近所に住まわれていますといいます徳林奏子ちゃんから聞いております」
(あのお姉さんの知り合い・・・?)
笹山は疑わなかった。いや、寧ろ疑う必要がなかったのだ。
「貴女は今、この世界から消えました藤木茂君が心配になっていますのですね?」
「は、はい・・・」
「藤木茂君は今、私がいます世界と敵対します世界におります。今解っています事はそれだけですが、藤木茂君は今、政府の取引に使用されています。難しい話をしますが、藤木茂君を返してほしければ日本を再び戦争への道に進ませますように日本赤軍は要求をしました。その要求は私達によって対処しましたが、それでも藤木茂君を返しますつもりはありませんのではと私は赤軍を疑っています。笹山かず子ちゃん、貴女は確か藤木茂君が恋していました女の子でありますと徳林奏子ちゃんからお聞きしておりますが?」
「はい、そうです。藤木君は私の事が好きになっていたんです・・・」
「そうでしたか。まあ、立ち話もなんですし、貴女もかなり疲れていますようですから、家にお入りになって下さい。準備ができましたら窓から私を呼んでください。疲れにつきましては私が取り除いて差し上げましょう。少しよろしいでしょうか?」
フローレンスは笹山の額に指を突けた。その時、笹山の体の疲れが一気に消えた。
「す、凄い・・・」
笹山はフローレンスの能力に驚いた。
「それではやりたい事を済ませてください。いつまでもお待ちしております」
「はい」
笹山は家に入った。そしてクリスマスの日に届いたあの手紙を思い出すのだった。
後書き
次回は・・・
「失踪の呵責」
笹山の前に現れたフローレンスは彼女の部屋にて持て成しを受けながら藤木との関係を聴取する。そして笹山はクリスマス・イブの日に届いた「ある手紙」をフローレンスに見せる。そしてフローレンスは笹山に二つの提案をする・・・・!!
163 失踪の呵責
前書き
《前回》
かよ子達がいない学校でたまえやとし子は寒さに耐えながらマラソン大会の練習に励んでいた。そして清水に到着したフローレンスは奏子から聞いた藤木が好きになっていたという笹山かず子との接触にせいこうするのだった!!
かよ子達藤木救出班は先に進む。
「こちら椎名歌巌。馬子に稲目という奴等を撃破した。これより先に進む」
椎名が本部に連絡を入れた。対してイマヌエルが返答する。
『了解。それから山田かよ子君の羽根に玄奘の能力が流し込まれたのではないだろうか?』
かよ子は気づくのが早いと思った。
「は、はい、そうです!」
「了解。君の羽根はさらに強力になっている事は事実だ。但し、過信しないように」
「はい、了解です!」
かよ子は目的達成の為に更に先へ進むのであった。
笹山は家に入ると、宿題を済ませた。その後、おやつも用意した。その時、あのクリスマスの日に届いた手紙も出す。そこには「もう君の事は忘れるようにする」という旨が書かれた藤木からの手紙だった。
(この手紙を見せれば解ってくれるかしら・・・?)
笹山はとりあえずフローレンスを呼ぶ事にした。
「フ、フローレンスさん・・・!!」
笹山は窓から呼んだ。約束通りフローレンスが現れた。
「お待ちしておりました」
フローレンスは飛行して入って来た。
「あの、これどうぞ」
笹山はおやつとして持って来た手作りのクッキーをフローレンスに差し出した。
「これはこれは・・・。では手を清めさせていただきます」
フローレンスは手を出すと水の塊が出現し、手を潤させた。
「この水の塊で手を消毒させますことができますのです」
「凄い・・・」
フローレンスはクッキーを貰い、ゆっくり味わいながら食べた。
「手作りですか?」
「はい、お母さんと作りました」
「そうですか。とても美味しいですね」
「ありがとうございます」
笹山は自分の手作り料理を美味しいと評価されてとても嬉しく思った。
「さて、本題に入らせていただきますが・・・」
笹山はごくりと唾を呑んだ。
「藤木茂君とは確か同じ学校に通っていると聞きました」
「はい、前に私が藤木君と山田かよ子さんって女の子と一緒に学校から帰る途中の事でした。その時、野良犬が出てきたんです。藤木君は私を連れて逃げたんですが、山田さんの事は見捨てて逃げたんです。私は藤木君が山田さんを見捨てた事に怒ったんです」
「山田かよ子ちゃんはその野良犬に襲われます事なく無事でしたのですか?」
「はい」
「確かに藤木茂君の行いました事は正しいとは言えませんわね。それで愛想を尽かしましたのですね?」
「はい、その通りです・・・」
笹山は力なく答えた。
「それで、クリスマス・イブの夕方にこんな手紙が届いたんです」
笹山は藤木からの手紙をフローレンスに見せた。フローレンスは手紙を読む。「今、自分がいる世界」では通用しない言葉だったので、脳内で翻訳機能をしてその手紙を読んだ。
「そうでしたか・・・。しかし、藤木茂君は貴女と山田かよ子ちゃんに謝りませんでしたか?」
「一応謝りました。次の日に・・・、でも私も山田さんも今更謝っても遅いってその時は許しませんでした」
「『その時は』ですね・・・。今はどうしたいと思っていますか?」
「今は・・・。藤木君を・・・」
笹山は昔の事を思い出しながら涙がこぼれる。こぼれながらも答え続けようとする。
「許してあげたいです・・・」
フローレンスは笹山の思い出し泣きを見てある事をしてあげたいと考えた。
「・・・そうですか。今、『私がいます世界』では山田かよ子ちゃん達が藤木茂君の救出に向かっています。今、『私がいます世界』では『敵対します世界』と戦っています。今、私は日本各地で選ばれし者達に頼みまして『私がいます世界』に招き入れまして戦ってくれています。貴女の学校でも幾人かその異世界へ向かっています事はお気づきになっていますでしょう?貴女の近所に住みます徳林奏子ちゃんもその一人です」
「はい・・・」
(今、お姉さんや山田さん達は戦って動いてくれている・・・。藤木君を取り返す為に動いてくれている・・・)
笹山は近所に住む女子高生が戦っている。そして自分のクラスメイト達も戦っている。なのに自分は無力だ。そのままただ皆が帰ってくるのを待ち続ける事しかできていない。それでいいのか。
「私が招聘しました人は皆何かしらの能力を宿します人。ですが、厳しい事を言いまして申し訳ございませんが、笹山かず子ちゃんにはその能力を持っていませんね。しかし、藤木茂君が戻ってきて欲しいとそれでも願いますならば・・・」
笹山は改めて顔を上げた。
「私は貴女を私が住む『平和を正義とします世界』にお連れ致しましょう。藤木茂君を連れ戻しにですね」
「私が、行っていいんですか?」
笹山は自分も行っていいのかと思い、半信半疑になった。
「はい、急な話で驚かれましたか?」
「は、はい・・・」
「今すぐ来なさいとは言いません。行きますか行きませんかは貴女のご判断次第でお任せしております。私達の方もできます限りの事は手をお貸ししますが、危険な冒険になります事は確かです。それでも藤木茂君に戻ってきて欲しいと願いますならば私はお連れ致します。それでは・・・」
フローレンスは笹山にある物を差し出した。それはボールペンのような白い物だった。
「私はこれで失礼致します。時間を与えますので決意が決まりましたらこの道具の上の蓋を押してください。いつでも私は参ります。それでは」
フローレンスはその場で姿を消した。
「あの人は一体・・・?」
笹山は天使のような人物にどこかしらの不思議さを感じた。そしてフローレンスから渡された道具を確認する。
(行くか、行かないか・・・)
笹山は改めて考え直す。自身もまた、欠席しているクラスメイト達や近所の女子高生がいる異世界に向かうか、それとも、そのまま皆に任せてその場で藤木が戻ってくるのを待つか・・・。
フローレンスは三保神社に移動していた。
「御穂津姫」
「如何なされましたか?」
「私を『あの世界』にお戻し下さい」
「了解しました」
「それから一つ、貴女にお伝えしたい事がございます」
「お伝えしたい事?」
「一人の女の子を私がいます世界にお通しします可能性がありますかもしれません。その為に世界を繋ぐ道を常時お開けしていただけますでしょうか?その子の名は笹山かず子ちゃんと申します」
「了解しました」
フローレンスは自分が今統括する世界に戻るのだった。笹山の答えを待ちながら。
(きっと笹山かず子ちゃんはすぐに答えを出しますでしょう・・・。そして『杖の所有者』山田かよ子ちゃん達にとって大きな力にもなります・・・)
後書き
次回は・・・
「異世界の夕刻時」
藤木の救出に向かうかよ子達は異世界で夕暮れを向かう事になる。夕食の時間が訪れる、休息時とするのだったが、かよ子はこの休み時を敵が襲ってくるのではないかと心配になっており・・・。
164 異世界の夕刻時
前書き
《前回》
学校から帰ってきた笹山は異世界から訪れたフローレンスと出会う。笹山はフローレンスに藤木の失踪の件について、藤木が嫌われ者になった経緯を話し、やクリスマス・イブの日に届いた手紙を見せる。そしてフローレンスは笹山に異世界に向かって藤木の救出に動き出すのか、藤木が戻ってくるのを待ち続けるのか、選択肢を与える。そして笹山に決意が決まった時の為のボールペンのような道具を託して平和主義の世界へと帰るのであった!!
かよ子達は藤木を取り返す為に異世界を飛行する。日が暮れて来た。
『皆の者、本日任務ご苦労様。夕刻となったので食事を支給する』
イマヌエルが通信機で全員に連絡を入れた。
「おお、まる子、夕食じゃ!」
「そうだね、まる子お腹が空いてしょうがなかったよお~」
まる子と友蔵は食欲に満ちていた。
(呑気なんだから・・・)
かよ子は内心呆れつつも、何が出るのか少し気になった。皆の前にお盆が出現する。そして飲み物として緑茶にご飯、味噌汁、塩もみ野菜に鯖の焼魚と質素だった。そしてデザートに桃のゼリーだった。
「ええ~、こんなのお~、まる子、ハンバーグが良かったのに~」
「さくら、贅沢言ってんじゃねえよ」
大野が窘めた。
「さくらもももこ、お主、ここに来てから弛んどるぞ!食べられるだけで十分有難いと思え!」
「ブー・・・」
まる子は不満であまり食べる気がしなかった。
「ももこちゃん、文句言わないで一緒に食べようよ!私、ももこちゃんと一緒に食べると幸せに感じるもん!」
のり子も説き伏せようとする。
「のりちゃん、うん、分かったよ・・・」
「ありがとう」
のり子が珍しく笑顔になった。
(何だよ、コイツ、笑えば可愛いのにブー・・・)
ブー太郎はまる子にしか心を開かないのり子に対して少し変に思うのであった。
「それにしても大丈夫かな?」
かよ子はある事を気にしていた。
「ある事って何だブー?」
「こうして食べている時に襲われないかなってふと思って・・・」
「大丈夫だよ、かよちゃん!そいつらもきっと食事中だよ!それにあのお坊さんの能力でこの羽根で守ればいいんだしさ!」
まる子が元気づけた。
「うん、そうだよね・・・」
かよ子は心配を拭って安心して食事した。
別の地、さり達本部守備班もまた食事の刻として休息していた。
「それにしても護符で一応結界は張ってるけど、襲ってこないかしら?」
「まあ、結界を張っている以上、問題はなかろう」
「そうね」
さりもまた食事中の敵の急襲を気にするのだった。
その頃、本部の一室。先代の杖、杯、そして護符の所有者達もイマヌエルに呼ばれて食事にした。
「皆さんも休息するといいよ」
「そうね」
皆が食事する場所へ移動した所、丁度フローレンスが戻って来た。
「フローレンス、戻って来たか」
「はい、只今戻りました」
「一体何をしに行ってたの?」
りえの母が質問した。
「ええ、赤軍の長・重信房子が私達が差し出しました偽物の道具に気付きましてまたそれらを狙いましょうと東京、名古屋か静岡を襲撃しますのではと思い、会ってきました」
「え?命懸けの行動じゃん!」
「はい、しかし、ここに護符も杖も杯もありませんと伝えておきました。これで『向こうの世界』で不用意な攻撃はなくなりますでしょう。そしてもう一つ・・・」
フローレンスは言葉を続ける。
「行方不明の藤木茂君が好きになっていましたと言います笹山かず子ちゃんって子にもお会いして参りました」
「笹山かず子ちゃん・・・?誰なの?」
りえの母が聞く。
「うちのかよ子の学校の友達ですよ」
「はい、その子にお会いしまして藤木茂君の失踪前の動向を聞いてきましたのです。笹山かず子ちゃんも藤木茂君に戻ってきてくださいと願っています。もしかしたら藤木茂君の奪還に何らかの貢献ができますかもしれません」
「もしかしてその笹山さんもこっちに呼び寄せるって事?」
「選択肢は与えましたがその可能性もあります。確かに不安に思われますかもしれませんが、藤木茂君を呼び戻します為には失礼ですが少なくともさくらももこちゃんとさくらさきこちゃんのお爺様よりはお役に立てます筈です」
「そうね・・・」
かよ子達は荒野での休息時、椎名と関根が交代で見張りをする形で他の者には睡眠をとらせていた。しかし、かよ子達は不安で上手く熟睡できなかった。
(こんな時に攻めてきたら・・・)
かよ子はそんな事を考えていた。他の皆も同意見であった。そして・・・。
(ん・・・、眩しい・・・?)
何か光が差してきた。もう朝になったのかとかよ子は思った。
「おい、来るぜ」
大野が皆を起こした。
「ん、なんじゃ?もう朝か?」
友蔵は寝ぼけていた。
「違いますよ、敵ですよ」
「敵!?」
「もしかしたらバレているかもしれません。ここはひとまず場所を移動させたほうがいい。かよちゃん、できるかな?」
椎名はかよ子に頼んだ・
「うん、やってみるよ・・・!!」
かよ子は羽根を移動させた。玄奘の法力によって強化された羽根は敵の妨害がなく動けた。しかし、敵は普通に追ってくる。
「攻撃が来るぞ!」
大野が喚起した。攻撃は羽根が結界を作り出して防げたが、相手も攻撃を止める気配がない。
「私と椎名で外に出ますよ。皆は結界の内側から援護頼むよ」
「はい!」
椎名と関根は羽根から降りて迎え撃ちを図った。
「何者だ!?」
そこには一人の男がいた。
「貴様こそなんだ?この神聖なる私を誰だと思っている?」
「自分で言って恥ずかしくないのか?」
「はあ?私はローマ皇帝でもあるカール5世様だ。先ず貴様ら下衆共から裁きを下そうか。そして向こうにある杖を頂こう」
「関根、奴も例の『あれ』を持っているはずだ」
「ああ、まずそこから狙うよ」
関根は刀を突っ込ませる。
「うおおお!!」
「ふん、愚か者め、そんな手で私を潰せるか!」
カール5世は関根を弾こうとした。関根は弾き返された。
「貴様らこの私に近づけると思っているのか?」
カール5世が光線を発射した。
「うお。だー!」
関根は国定忠治の刀で光線を斬り消した。その時、カール5世の背中に向けて激流が押し寄せて来た。
「奇襲を使ったか。なかなかの戦略である。だが・・・」
椎名が使った潮水の攻撃は容易く防がれてしまっていた。
「貴様が後ろに回る事くらいは気づいていた」
「な・・・!!」
かよ子達はカール5世と椎名、関根の戦いを傍観している場合ではなく、どうかしないととそわそわしていた。
「私達も援護しないと、でもどうやってやろう・・・?」
「お前、その人形に機械の場所を探知させるブー!」
ブー太郎はのり子に頼んだ。
「わ、分かったよ・・・」
のり子は命令された事に気に食わないと思いながらもキャロラインに頼んだ。
「キャロライン、あいつの持ってる機械が何処にあるか探して」
「うん!」
キャロラインは探知した。しかし、その時、キャロラインが「きゃあっ!」と悲鳴を挙げた。
「ど、どうしたの!?」
「向こうの貴様ら、私の中を探ろうとしたな?この神聖なる私の弄ろうなど不謹慎なる下衆共め、成敗させてくれるわ!」
カール5世は羽根上のかよ子達の場所にも気づいているようだった。
「何で場所が解るの?」
「おそらく見聞の能力だ!赤軍が発明した機械とやらで探知できるのだ!」
石松が解説した。
「こうなったら某の『奥の手』を使うべきだな・・・」
「石松、さてはあれを使うと言うのか!?」
かよ子は石松にまた別の能力があるのかと気になった。
「『奥の手』!?一体何なの!?」
「某のこの目だ」
石松は眼帯を外した。
後書き
次回は・・・
「石松の左目」
石松がカール5世に対抗して左目を露わにする。彼の左目には一体何があるのか。その後、疲れたかよ子が眠ったその時、夢の中にある声が聞こえてくる・・・!!
165 石松の左目
前書き
《前回》
藤木を探しに向かうかよ子達は夜を迎えた為、休息する事にする。ところがかつてローマ皇帝解いて生きて来たカール5世がかよ子達を襲撃する。のり子の人形・キャロラインが攻略の為に彼が仕込む機械を探知しようとするが、カール5世に見抜かれてしまう。そんな時、石松が奥の手として眼帯を外す!!
石松は隻眼であるのは知っているのですが、これを活用したいと思い、今回の設定が出来上がりました。
石松は左目の眼帯を外し、かよ子に見せた。石松の左目は黄金色だった。
「そ、その目は・・・!!」
「これで奴を出し抜く」
石松はカール5世の方を向いた。
「山田かよ子、お主の羽根に宿っておる玄奘の法力を借りるぞ!」
かよ子の羽根が金色に光る。その時、大きな鬼のような物体が現れた。
「お・・・、鬼!?」
「いや、大物主神を呼び出した。金毘羅宮に奉られておる祭神の一人だ」
「石松、本気でやるのか?」
次郎長は慮る。
「構いませぬ。大物主神!あの者の能力の源を探れ!」
「了解した」
大物主神は数多の光る糸を発現させた。
「な、何だ!?」
カール5世も、関根も、椎名も巨大な神の姿に絶句した。糸がカール5世の二つの個所に張り付いた。
「あの二つの場所だ!」
「貴様、まだ私が本気を出していないと気づいていないな?主の力を思い知るがよい!」
カール5世は十字を手で描いた。
「主よ!」
カール5世から巨大な物体が現れた。イエス・キリストのような感じの容貌だったが、あまりにも禍々しさが感じられた。
「な、なんじゃ?あれは?」
「主よ。この者に裁きを!」
「宜しい。愚かなる者よ」
「神に愚かなる者などおらぬ」
二体の神が同時にせめぎ合った。お互い引けを取らない。
「どっちも譲らないブー!」
「何を呑気に見物している!戦うぞ!」
「う、うん!」
かよ子達も戦闘態勢に入った。かよ子は杖を次郎長の刀に向けて剣に変化させた。皆各々の道具を出して攻撃する。
「大野けんいち!お主には雷の石があろう!」
「あ、ああ・・・」
大野はかつて杉山の物だった雷の石を持っていた。杉山と喧嘩した時に彼が手放してかよ子に頼まれて預かっていた物である。
「大物主神の糸に石の力を与えるのだ!」
「ああ、やってみる!」
(わりいな、杉山・・・。使わせて貰うぜ!)
大野は雷の石を使用した。金色の糸に雷が吸収される。大物主神が放電された。そして糸にも雷撃が伝導され、糸を伝ってカール5世か隠し持っている異能の能力を持つ機械を破壊した。
「な、なんだと?破壊されただと!?」
「今だね!」
関根はカール5世に飛びついて首を撥ねようとした。椎名も水圧で攻撃する。
「主よ、私をお守りください!」
主の力によって椎名と関根の攻撃が無力化された。かよ子達の攻撃も主は撥ね返す。かよ子の剣に変化していた杖も変化が解けてしまった。
「お主、自身が操る神に余所見をさせたな!大物主神!雷の力で己を強化した!」
大物主神が雷撃を放つ。雷の石よりもはるかに強い攻撃だった。
「何!?うお・・・」
主は大物主神の攻撃をまともに受けた。
「あの電撃を使えば・・・!!」
かよ子は主に放たれた電撃に杖を向けた。杖は雷の力を帯びる。
「えい!」
かよ子はカール5世が出した主に攻撃した。しかし、意味がなかった。
「山田かよ子!あちらは杖であっても倒しきれぬ!出現させた方の者を狙え!」
「う、うん!」
かよ子はおっちょこちょいをやってしまったと思いながらもカール5世に攻撃する。
「主よ、私をお守りください!」
カール5世は主に自身の加護を乞うた。
「ああ」
「貴様の相手は私だ!」
大物主神が糸で主を拘束した。そして糸が黒い蛇に変化した。蛇は主を吸収させる。
「お、おおおお・・・」
カール5世が出した主は消滅した。
「ええい!」
かよ子はカール5世に向けて放電した。カール5世は電撃を喰らう。
「あ、あああ・・・!!」
カール5世は黒焦げにされた後、光と化した。
「やった・・・」
「いい所持ってっちゃって、もう~」
関根がかよ子をからかった。
「終わったか・・・」
石松は左目を眼帯で隠した。そして疲弊でぐったりしていた。
「石松、大丈夫なのか?」
「ああ、石松は金毘羅参りをした影響もある。石松自身も金刀比羅宮の祭神を呼び寄せる力を会得で来たとはいえ、『神』や『仏』という存在は我々とも異なる存在であり、強大な存在でもあるのだ。山田かよ子、お主らがいる清水の三保神社に祀られている御穂津姫もその一人だ」
次郎長が説明した。
(そういえば・・・)
かよ子は名古屋でのさりの持つ護符の争奪戦に参加した時も、赤軍の一人、岡本公三が聖母マリアを召喚した事がある。その時は機械の助力もあったのだが、自身の持つ杖や誰の攻撃も通用せず、防御しようにも撥ね返す事はできなかった。それだけ神と言うのは強力な分、扱ったり接したりするのは本来は容易ではないとかよ子は思い知った。
「神様を使うってのはとても大変な事なんだね・・・」
「左様。石松のように扱えば大きな代償が生じる事もあるのだ。まだ夜は明けておらぬ。もう一休みしよう」
「うん」
かよ子達は再び羽根の上に睡眠を取る事にしたのだった。
そんな中、かよ子はいる異世界の中とはまた違った次元に存在していた。周りは闇一色で誰もいない。
(ここはどこ・・・?)
その時、声が聞こえた。
[よくも倒したな・・・。我が姉や兄を・・・]
「だ、誰!?」
[そして我が戦友達も消してくれたものだ。貴様、ただで済ますと思うな・・・。貴様の想い人を私の一部として吸収し、働かせて貰おう・・・]
「想い人・・・?」
声はそれ以上聞こえなかった。
(想い人・・・?それって好きな人って意味・・・)
かよ子は「想い人」の意味を考える。
(もしかして杉山君が・・・!?杉山君、杉山君・・・!!)
かよ子は好きな男子の事を考える。だが、意識が遠のいていった。
既に朝日が昇っていた。かよ子は目を開けた。
「山田、大丈夫かブー?」
ブー太郎が横にいた。
「ぶ、ブー太郎・・・。私、どうしてたの?」
かよ子は自分が何をしていたのか分からなかった」
「お前、さっきまで寝言で『杉山君!』って何度も行ってたんだブー」
「杉山君の事・・・?そういえば・・・」
かよ子は夢の中で謎の声がしたのを思い出した。ただし内容が中々思い出せない。
(でも確かええと・・・)
「きっとうなされていたのであろうな」
小政が推測した。
「そうだ、石松は大丈夫なの?」
「ああ、労力を消耗してはいたが、今は起き上がれるようになった」
一方、大野はかよ子からあの親友の名を出されてある事が頭に浮かんだ。
(杉山か・・・。そういえば夜中の戦いでもこいつの石を使わせて貰った・・・)
大野は杉山が持っていた雷の石がカール5世及び彼が召喚した神を撃退させることに成功した。自分が転校すると知って杉山と喧嘩になった際、杉山が手放し、かよ子に頼まれて持っている石である。
(あいつは、転校する俺にどうして欲しかったんだ・・・?)
大野は改めて思う。かよ子は行方不明の杉山が気になる。だが、今の己の使命はまた別に行方不明となっている藤木茂の救出である事を確認する。
(藤木君を取り返したら、今度は杉山君を探し出す・・・!!)
かよ子は次の次である目標を掲げた。
後書き
次回は・・・
「少年を追い続ける」
朝になり、再び藤木の捜索に動き出すかよ子は杉山が今どうしているのか気になり出す。そして杉山を連れ戻しに行こうとするりえ達はある人物から襲撃を受け、交戦する事になる・・・!!
166 少年を追い続ける
前書き
《前回》
カール5世と交戦し、苦戦するかよ子達。そんな時、石松が眼帯を外し、その左目の能力を行使する。その時、神である大物主神が出現される。だが、カール5世もイエス・キリストを出現させて応戦する。二体の神がせめぎ合う中、かよ子達も加勢し、カール5世を撃破する。その後、朝が訪れるまで睡眠するかよ子はある夢を見る。そんな時、かよ子はふと杉山の事を思い出すのだった!!
異世界での二日目を迎えたかよ子達藤木救出班は通信機でフローレンスから連絡が来た。
『藤木茂君救出班の皆様、おはようございます。そちらに夜襲が確認されましたが、大変でしたね。朝食をご用意しますのでお待ちください』
フローレンスによって皆に朝食が提供された。お盆が出現した。この日の献立は食パンに苺ジャム、生野菜のサラダにベーコン、そしてヨーグルト、飲み物はコーヒー牛乳という組み合わせだった。
『お召し上がりくださいませ。それでは』
「ほう、洋風の朝食とはな。某達も滅多に口にしないから珍しい。この『じゃむ』とか『ぱん』とかは今の日本ではよく食されていると聞くが美味なのか?」
次郎長は皆に聞いた。かよ子が答える。
「うん、凄く美味しいよ!」
「そうか。ではそろそろそちらの寝坊助も起こしてくれ」
「え・・・。あ、まるちゃん!」
まる子は友蔵諸共未だに爆睡していた。
「まるちゃん!おじいさん!」
「ふええ・・・、もうちょっと・・・」
「ああ、いい気持ちじゃのう・・・」
「はあ、困った奴だぜ」
大野は呆れた。
「ももこちゃん、ももこちゃん!」
のり子は怒りながらまる子を叩き起こした。
「ふえ?」
「もう朝ご飯だよ!私、ももこちゃんが起きてくれないと嫌だ!!」
「へ?ああ、ごめん・・・」
「それからおじいちゃんも起こして!」
「う、うん。おじいちゃん!」
「おや、まる子、起きたのかい?今日は学校ないからのんびりしてもいいんじゃぞ・・・」
友蔵は未だ寝ぼけていた。
「何を言っているのですか?もう朝食の時間ですよ!いらないなら私達でいただきます!」
椎名も叱る。
「え・・・。お、本当じゃ!すまなかった!!」
友蔵は我に返り、謝罪した。そして朝食を見る。
「おお、いつもと違う朝食じゃ!これがパンか!これはなんじゃ?豆腐か?」
「それはヨーグルトだよ」
かよ子が説明した。
「よーぐると・・・?なんとっ!美味い!!」
友蔵はヨーグルトを口にして興奮した。
「朝からこんないいご飯が食べられるなんてアタシゃ幸せだよ~。ウチじゃ絶対食べられないからねえ~」
「儂もじゃあ~」
二人はいつもと違う朝食に浮かれていた。
(一体何しに異世界来たんだか・・・)
かよ子は心の中で呆れた。そして夜中から明け方にかけて見た夢の内容を思い出そうとする。
(あの夢、一体・・・?なんだったんだろう・・・?杉山君、今、どうしてるの・・・?)
かよ子は自身の好きな男子が今、どこで、何をしているのか気がかりであった。
安藤りえ。異世界の最上位の道具の一つの杯を所持している小学三年生の女子である。りえは友達の鈴音にみゆき、そして東アジア反日武装戦線や赤軍の襲撃の際に共闘した煮雪夫妻、そして静岡にいる杖の所有者の友人・冬田美鈴と行動を共にしていた。皆も丁度朝食を終えていた所だった。
(・・・杉山君、どこに行ったのよっ!!あの臆病者!!)
「ところで皆」
ありは確認する。
「今日も杉山君を追いかける?」
「は、はいっ!それで連れ帰しますっ!」
りえは間髪入れず質問に答えた。
「いいわ。でも、私達は戦争の世界の領土を平和の世界に取り返すって事も忘れちゃだめよ」
「はい・・・」
りえは自分が領土攻撃班の一人である事である事を顧みた。杉山の事が気になるが自身の本来の仕事も忘れてはならないとりえは思った。
「取り返しを続ければ杉山君にきっと追いつくはずよ」
「はい、そうですよねっ!」
「冬田さん、先に進んでいいかしら?」
「あ、はあい・・・」
りえ達は先に進んだ。
その頃、ヴィクトリア女帝の屋敷。朝食を済ませた女帝はある報告を受けていた。
「女王様、風の便りでは杯を持つ者もこちらに接近しているとの事です?」
「また邪魔者か・・・。剣を奪い返そうとする輩にクローマー伯爵を滅した杖の所有者の他にまた厄介な仕事をしなければならないのか」
「ですがそちらの方にはエンプレス・マチルダが接近しております」
「エンプレス・マチルダ?祖国の民衆に嫌われた女であろう。信頼ない」
「しかし、彼女は神聖ローマ皇后の一人。神を操る者でありますが」
「他所の国で育った女の癖に図々しい・・・」
紂王の屋敷。とある少年は遊女の少女と手を繋いで朝食に向かっていた。
「茂様。今日は何して遊びます?」
「そうだな・・・。たまにはスケートしたいな・・・」
「すけーと?何ですか、それ?」
「氷の上で滑るスポーツだよ」
「わあ、楽しそうです!でもここには氷はないですね・・・」
「どこか雪や氷がある所はないかな?」
「そうですね・・・。雪が降り続ける所ならありますよ。妲己様に頼んでみますね」
「ありがとう!」
少年は朝食の場へと進む。
りえ達は冬田の羽根で先へと進んでいた。
「どうもこうもこの先杉山君ってのが無事なのか分からないんだが・・・」
悠一は呟く。そして提案する。
「闇雲に探すよりもいい方法があるはず。探知できるような道具を持ってる人がいるといいんだが・・・」
「あ、それなら長山君に聞いてみるといいわあ!」
冬田が提案した。
「よし、冬田さん、その長山君に連絡してくれるかしら?」
ありが頼む。
「はあい!」
冬田は通信機で長山に繋いだ。
(これで大野君に繋げたらいいのにい・・・)
冬田は内心ではそう思っていた。
「長山くうん!」
『冬田、どうしたんだい?』
長山が応答が来た。
「長山君、だったわね?私は護符の持ち主のさりの姉のありよ。杉山君のいる所を探知できるかしら?」
『はい、今やってみます。少し待っててください』
長山は少し黙った。
「どうしたのかしらあ?」
「すぐに分かるってわけじゃないでしょ。ちょっと待ってあげるといいんじゃないかしら」
だが、その時、一行に何かが襲い掛かった。冬田の羽根から皆が振り落とされる。
「キャアーーー!!」
「助けてえ!!」
冬田の悲鳴に羽根が動いた。羽根は急に巨大な花を出して冬田達の落下を防いだ。
「これが冬田さんの羽根の力っ・・・?」
りえは驚いた。そして周りを確認する。12人もの人間に包囲されていた。
(これって一体っ・・・!?)
長山は杉山の行方を捜索中だった。
「冬田さんとかあり姉の声がしたけど杉山君を捜してくれって頼まれたの?」
さりが聞いた。
「はい、冬田達は杉山君の行方を探してるみたいです」
「そっか・・・」
(そう言えば杉山君って異世界に来てから誰とも喋ってなかったわね・・・)
りえ達は12人の人間と対峙していた。
「何よっ、あんた達っ!?」
しかし、相手は常に同じ声で喋る。
[貴様ら、主に逆らいし者共。始末しよう]
「はあっ!?」
その時、人間達は大石が飛び、斧や剣を持って襲い掛かる。
「この!」
みゆきがブーメランを投げる。ブーメランから光線が放たれ、斧や剣、石を破壊する。鈴音も錫杖から氷を出して敵を凍りつくす。しかし、彼らはすぐに動けた。
「効かない・・・?」
「もしかして、『道具の攻撃』が通用しない相手かもしれないわ」
ありはタマサイの能力を利用する。
「エク・カムイ!」
ありはアイヌの神・カムイを召喚した。
「我は疫病の神・パヨカカムイ。貴様らを成敗してくれよう」
パヨカカムイは弓を放った。人間達は苦しみ、そして消滅した。
「お姉さん、凄いですね!」
みゆきは褒めた。
「まあね」
「12人の使徒を容易く葬るとはな・・・」
別の声が聞こえた。
「誰なのっ!?」
「私か?我が名はエンプレス・マチルダ。神聖なる女王よ」
後書き
次回は・・・
「カトリック界の皇后」
杉山を取り返しに動くりえ達はエンプレス・マチルダと交戦する。カトリックを信仰していた彼女は12人の使徒を召喚してりえ達を苦戦させる。この皇后を打破する策はあるか。そんな時、悠一のテクンカネである人物達が加勢に入り・・・!?
167 カトリック界の皇后
前書き
《前回》
異世界での二日目の朝を迎えたかよ子は杉山の行方がふと気になる。一方、杉山を追い続けるりえ達は12人の男達と遭遇する。友達のみゆきや鈴音、ありと悠一との共闘で撃破するが、真の敵が現れる!!
今回登場する阿弖流為と母禮についてですが、阿弖流為の資料は多少ありますが、「母禮」については漢字の読みすらも不明で資料もあまりないので、ここでは「もれい」と読んでください。旧版の集英社の「日本の歴史」では片仮名で「モレ」という表記も見受けられましたが。
りえ達は一人の女性と相対していた。
「エンプレス・マチルダ?」
「そうよ。私はカトリックの世界でも偉大なる皇后なのよ」
「かとりっく・・・?」
「キリスト教の宗派の一つだよ」
悠一が説明した。
(キリスト教・・・!!)
りえは夏休みに静岡県に住む祖母の家にいた時を思い出す。あの時は教会のシスターに頼んでピアノを借りて「亜麻色の髪の乙女」の練習をしていた。杖の所有者やあの杉山を始めとする現地の子と友達になったのもその時だ。
「お前のそれは、杯ね?」
「だったら、何?」
「貰うわよ」
エンプレス・マチルダはまた使徒の召喚術を使用する。
「させないよ!」
みゆきがブーメランを投げた。しかし、容易く弾かれた。
「まて、どうやらあの機械の能力だろう」
悠一のテクンカネが発動する。その時、シャクシャインと別に男が二人、現れた。
「お主らか!助太刀に参るぞ!」
「シャクシャイン、その男は?」
「この二人は阿弖流為と母禮。蝦夷の族長として活躍した者共だ」
「我々も共闘しよう」
「ありがとう」
「そこの女、それは神を呼ぶ道具だな?」
阿弖流為はありのタマサイに目を付けた。
「ええ、そうよ」
「私達の力を重ねれば倒せるはずだ。母禮、行くぞ!」
「おう!」
だが、エンプレス・マチルダは怯まない。
「そちらの数が増えたって、この主の12人の使徒は無敵なのだ!意味はない」
エンプレス・マチルダは再び12人の使徒を召喚させた。
「また手強いのが現れたわねっ!鈴音ちゃん、もう一回、氷を出してっ!」
「う、うん・・・」
りえに言われて鈴音は錫杖から氷を放出した。りえは杯に氷を吸収させ、氷の精を出した。氷の精霊は青い髪に白い肌、そして白いワンピースを着る女性だった。
「氷の精霊、倒してっ!」
「いいわ!」
氷の精霊は氷の壁を作り出す。
「そんなんで防御したって無駄よ!」
「煮雪あり、阿弖流為に母禮と共に瞬間移動させる!攻撃はその時だ!」
「うん!」
シャクシャインは杖を出し、ありと阿弖流為、母禮を瞬間移動させた。
「主、イエスの12人の使徒よ、主に反する者の裁きを!」
12人の使徒は雷撃を放つ。そして、先程のように飛ばしてきた。
かよ子達は先を進む。荒野が続いていた。そこには草木が少しあるだけだった。
(こっちの方向に藤木君がいる・・・)
かよ子達はそう確信して先を急ぐのだった。
「それにしても寂しいとこだなブー」
「うん、でも、いつ現れるか分からないし、私もおっちょこちょいしないようにしないと・・・」
かよ子達は「神」を操る強者と交戦したり、睡眠中に襲撃されたりと余裕がなかった。そしてかよ子は「あの夢」を思い出す。
(杉山君・・・、今、どこにいるの・・・?)
かよ子は好きな男子が頭から離れなかった。そしてかよ子が見た「謎の夢」も気になり続けていた。
りえが杯で出した氷の精霊は氷の壁を作り出した。その氷の壁はとても強固で12人の使徒の攻撃をすべて防いでいた。
「流石、『こちらの世』で最大級の能力を持つ道具ね。でも、神の使徒達の攻撃にいつまで耐えられるかしらね!」
エンプレス・マチルダは使徒達に攻撃を命令する。
「まずいぞ、このままでは氷の壁を保てるのも時間の問題だ!」
「みゆきちゃん、地面を掘れるっ?」
「え、うん、やったことないけど、やってみるよ!」
みゆきはブーメランを地面に投げつけた。地面が爆破して、穴が開いた。
「これで穴を掘れば何とかなるわっ!」
「なるほど、そういう事だね!」
みゆきのブーメランで地の爆破を繰り返す。
「我も手伝うぞ!」
シャクシャインも掘削を手伝った。地面は少しずつ爆破されていく。
「よし、私もっ!」
りえは杯に掘り出された土の塊を杯に入れた。大地の精霊・ノームが現れる。
「ノーム。地面から攻撃できる?」
「任せとれ」
一方、シャクシャインによって瞬間移動したありと阿弖流為、母禮はエンプレス・マチルダの後方に回っていた。
(聖書に出てくる人間だの神だのを操るなんてどこまで身の程知らずなのかしら?私も人の事言えないかもしれないけど・・・)
ありはクリスマス・イブの日に妹のさりが襲撃された現場である名古屋にて赤軍の岡本公三が聖母マリアを召喚した事を覚えている。「神」を操る事はかなり強力な力となる分、敵に回すと対処しきれない。その時、自身がアイヌのカムイを召喚する事でしか対処法がなかった。
(阿弖流為と母禮の能力で強化できるのかしら?)
ありは兎に角、阿弖流為と母禮を信用するしかなかった。
エンプレス・マチルダによって召喚された12人の使徒は氷の壁を容赦なく砕こうとする。
「いつまでもそこで隠れていられると思ったら無駄よ!」
そして氷の壁は粉砕される。
「ははは・・・」
しかし、破壊した氷の壁の先には杯の所有者もその連れもいなかった。
「い、いない!どこに行った!?」
エンプレス・マチルダは赤軍から支給された機械を確かめる。機械は壊れていなかった。そこから出す見聞の能力では皆氷の壁の向こうにいるはずだった。
「こんな事って・・・」
その時、彼女の立つ地が揺れ、地面が砕かれた。エンプレス・マチルダは弾き飛ばされる。
「あああ!!な、何だ!?」
エンプレス・マチルダは弾き飛ばされながら確認する。そこには杯の所有者、そしてその連れ、更には見知らぬ老人の小人がいた。
「この地の精霊を出して地面を進んでいたのよっ」
「な・・・、使徒達、攻撃よ!」
12人の使徒はりえ達を襲撃する。
「エク・カムイ!」
また別の女性が叫んだ。12人の使徒が地砕きに巻き込まれる。そして土の槍が発され、消滅された。
「な・・・!?」
背後にありがいた。
「その機械、不具合を起こしたみたいね」
その時、何者かが接近してきた。阿弖流為と母禮が地面から飛び出してエンプレス・マチルダを挟み撃ちにしたのだった。エンプレス・マチルダの機械が壊された。
「よ、よくも!!」
「杯の所有者達よ!使徒を召喚される前に纏めてかかるのだ!」
「ええっ!」
りえはノームに攻撃を、鈴音は錫杖の炎を噴射し、みゆきはブーメランを投げて光線をまき散らして爆破させた。
「お、おおお!!」
エンプレス・マチルダは火傷と共に爆撃をまともに喰らい、ノームの大岩を体に打ち付けられ、気を失った。
後書き
次回は・・・
「先に進むのみ」
長山は神通力の眼鏡ね杉山の行方を探るがとんでもない事実が発覚し、りえ達に報告する。それを聞いていたさりも本部に連絡を行う。そして一部の領土攻撃班が杉山の奪還に参加する事を決め、同じくそれを聞いたすみ子達組織「義元」は・・・。
168 先に進むのみ
前書き
《前回》
12人の使徒を操る女・エンプレス・マチルダと戦闘になったりえ達は悠一のテクンカネで阿弖流為と母禮を召喚し、更に杯の能力で氷の精霊、そして地の精霊で対抗する。氷の精霊と鈴音の錫杖で作り出した氷の壁で防御しつつみゆきのブーメランで地面を掘削し、大地の精霊による地からの攻撃、さらにありが召喚した神、みゆきのブーメランでエンプレス・マチルダを完全に追い詰めた!!
「終わったわね」
りえは瀕死となったエンプレス・マチルダに近づく。
「エンプレス・マチルダとか言ったわね。最後に聞くけど、杉山さとし君って子を探してるけどどこにいるか分かる?」
「スギヤマサトシ・・・?」
「私達の所から去って行った男の子の名前よ」
「私は、そんな子、知らない・・・。知りたきゃ、私達の本部や、セキグンとやらの組織に聞けば・・・?」
エンプレス・マチルダは力なく答えた後、息絶える。そして光となって消滅した。
「エンプレス・マチルダはその杉山君について何も知らなかったようだね」
「ええ」
「シャクシャイン、この先には町とかあるのかしら?戦争の世界が乗っ取って住んでいる所とか?」
「ああ、いくらでもある。きっとお主らとぶつかったら殺す気でいるつもりだろうな」
「私は・・・、行くわよ。杉山君を見つけに、それで乗っ取られた町も取り返してねっ!!」
りえは探し続けたいと渇望する。夏休みに喧嘩しながらも自分が喘息である事に気にかけてくれ、寄せ書きの色紙にも「絶対に夢、叶えろよ!」と書いてくれたあの男子を。
「冬田さん、私達を羽根に乗せてっ!」
「え、ええ!」
皆は先を急いだ。
藤木救出の為に進むかよ子達藤木救出班はとある町に来ていた。どこか昔の中国を思わせるような町だった。
「やな感じがするぜ」
大野は懸念した。
「どうしてじゃ。折角街に来たんじゃから休ませて貰えばよいではないか。のう、まる子?」
ズボラなまる子でも呑気な友蔵の言葉にも流石に引いた。
「あのね、この町に住んでいるのは敵ですよ。いつ襲ってくるか分からない状況なんですよ」
関根は友蔵を叱責した。
「そ、そうなのか!?」
友蔵は頭を抱えて怯えた。
「この羽根、玄奘さんの能力で強くなってるけど、大丈夫かな?」
かよ子はできれば自分達の姿を見せずに飛行できればと思った。その時・・・。
「おい、なんだ、あれは?」
「敵だ!」
「ぶっ倒せ!!」
どうやら町の住人に気付かれてしまったらしい。かよ子は慌てふためく。
一方、本部守備班を担う長山は、神通力の眼鏡で杉山の行方を探っていた。
(どこだ、杉山君・・・)
そして長山は杉山の姿をようやく発見した。
(いた・・・!!)
眼鏡から見える杉山は異世界の敵と相対しており、更には赤軍の人間と思わしき人物といる。共に行動しているみたいだった。
(あれは・・・、赤軍のメンバーじゃないか!?)
長山はとんでもない様子を見てしまった。慌てて杉山に連絡しようとするが、繋がらない。
(そうか、通信機を捨てたんだっけ?)
長山は領土攻撃班のりえ達に連絡を入れた。
りえ達の通信機が鳴った。
「はい、もしもし」
『こちら長山。皆、杉山君は赤軍の人間と会ったみたいだ!』
「ええっ!?」
皆は驚いた。
「解ったわっ、今すぐ連れ戻しに行くわっ!!」
『ああ、しかし、解ってると思うけど、赤軍が固まっている所みたいだから無茶するなよ!』
「ええっ!!ありがとうっ、気を付けるわっ!!」
りえはすぐ様通信を切った。
さりは連絡を終えた長山に聞く。
「長山君、杉山君が赤軍に会ったって?」
「はい、声までは聞こえませんでしたが」
「その杯を持ってる女の子が杉山君を助けに行ったって事・・・?」
「はい、そうみたいです!」
「本部にも連絡を入れた方がいいと思うわ。これ・・・。もし赤軍の所にいたらあっさり殺されるか生け捕りでも人質として取引にされるかのどっちかよ!」
「は、はい!!」
さりは通信機で本部の方に連絡を入れた。
「こちら本部守備班・羽柴さり」
『こちら本部のイマヌエルだ。どうかしたか?』
「今、杯の持ち主の女の子達が私の姉と共に杉山君を連れ戻しに行くって連絡があったの。杉山君を連れ戻しに行く行動をさせても大丈夫かしら?もしいいなら別の領土攻撃班にも援軍をお願い」
『そうか、杉山さとし君の救出か。許可しよう。一部の領土攻撃班に安藤りえちゃん達との合流を命じるよ』
「ありがとう」
『ところで杉山さとし君の行方については解っているかい?』
「はい。長山君の眼鏡で確認しました。今、杉山君はなぜか赤軍と行動を共にしています」
『何だって!?すぐに連れ帰さなければならない所だ。一体何されるか解らん。連絡ありがとう!』
通信は切れた。
(これで大丈夫かしら・・・?)
同じ頃本部の一室。りえの母は心配になった。
「りえ、大丈夫かしら?赤軍の所に行くって事は敵の本部に行くって事でしょ?」
りえの母は娘が心配になった。
「安藤さん、大丈夫ですよ。私の娘とその夫もいますし、本部に向かうって事はもしかしたら剣を取り返しに行っているさらに別の娘に甥と合流できるかもしれませんよ」
奈美子はりえの母を落ち着かせようとした。
「しかし、大きく離れた経路を通っているから剣奪還班と合流できるかは難しい。兎に角、領土攻撃班の一部を杉山さとし君の連れ戻しに参加させよう」
「イマヌエル、お願い!」
各地で奮戦する領土攻撃班にイマヌエルからの指令が下る。
『こちら本部、イマヌエル。領土攻撃班の皆。只今杯の所有者達が行方不明の杉山さとし君を追跡中だが、只今赤軍と行動を共にしている事が明らかになった!彼女らだけに任さず付近にいる者、なるべく合流して共闘を求む!』
イマヌエルの通信が切れた。
「おい、立家。やべえ話やな」
「ああ、今、俺達の付近を移動しとるんやないんか?」
二人の高校生がイマヌエルの連絡を聞いて不安な顔をしていた。二人は鎌山健次郎と立家隆太。大阪の高校に通っている。鎌山は風を操って攻防を行う鎌を、立家は遠距離、近距離と問わず自在に攻撃が可能な鉄爪を使用する。二人は領土攻撃班を担っていた。
「お前達、気弱になるな。全力で援護する。私も協力を惜しまん」
同行しているこの世界の男性が進言した。そして更に同行している女性にも呼ぶ。
「虞よ、移動できるか?」
「はい」
虞と呼ばれた女性は頭の髪飾りとしてつけていた赤い花を出して花弁を舞わせ、皆を空中移動させた。
イマヌエルからの情報はすみ子達にも届いていた。
「杯の所有者ってあの東京の女の子だろ?行けるか?」
「私達の方角からして無理ですね」
山口の言葉に対してエレーヌは断言した。
「そうか、仕方ねえ」
「でも、領土攻撃班は数多くいる。他の人間達に委託できるはず。私達は相手の領土を奪い返す事に専念しよう」
さらに同行しているジャンヌもそう答えた。
「・・・ん?」
「ジャンヌさん・・・、どうしたの・・・?」
「来ているんだ・・・。敵が!!」
「は・・・」
すみ子も言われて胸の鼓動が激しくなった。さらに異様な音、匂いだけでも違和感を感じた。すみ子の見聞の能力はここに来てから心臓の身でなく、鼻や耳でも感知できるようになっていたのだ。
「本当だ・・・。それもかなりの大群が・・・!!」
「何だと!?」
「か、返り討ちにするでやんす!!」
ヤス太郎はパチンコで周囲を発砲した。
「ヤス太郎、危ない・・・!!」
すみ子が銃で結界を張った。大量の矢が飛んできたが、結界で防いだ。
「なんて攻撃だ!」
ジャンヌは耳を澄ます。
「・・・来てるのは義教って男の軍だ」
「ヨシノリ!?」
「か、囲まれてるぜ!」
川村はバズーカで吹き飛ばした。しかし、あまり効果がない。
「チッ、機械で防いだか!」
「そこの邪魔もの共、貴様らに逃げ道はない、ここで焼き討ちにされるが良い!!」
一人の男が叫んだ。
「あ、あれだ!あれが義教!!恐怖政治を行ったという奴だ!!」
ジャンヌが指を差した。しかし、組織「義元」は義教の軍に包囲されてしまっており、逃げる術もなかった。
後書き
次回は・・・
「苛烈なる将軍、義教」
入り込んだ町の住民から襲撃される事になったかよ子達は返り討ちを図るが、その中にある女性がかよ子の杖を確認して狙う。そして異能の能力の機械を持つ義教の猛攻にすみ子達は大いに苦戦してしまい・・・!?
169 苛烈なる将軍・義教
前書き
《前回》
エンプレス・マチルダを撃破したりえは彼女から杉山についての情報を得ようとするも何も収穫なしで終わる。そしてイマヌエルに協力を仰ぎ、一部の領土攻撃班の者が杉山捜索に係り出す。一方かよ子達藤木救出班はとある町に到着するがそこで住民の襲撃に遭う。そして地理的な関係でりえの頼みに応じる事ができなかったすみ子達組織「義元」は義教という人間の軍勢と交戦する!!
かよ子達藤木救出班は戦争主義の世界の町で住民から激しい襲撃に遭っていた。
「ボクちゃんに任せな!」
関根は国定忠治の刀を振りかざした。大きな風が起き、住民を次々と吹き飛ばし、なぎ倒していく。
「や、やめとくれ、可愛そうじゃ~」
友蔵が止めようとする。
「ああ、ここで手加減しておくよ」
関根は呆れながらも刀を鞘に納めた。しかし、住民達が反撃の為、投石の攻撃を開始する。羽根の結界が働いてかよ子達の方にはダメージはなかったが、それでも相手は止める気配がない。
「くそ、キリがねえ!」
大野は草の石の能力を行使する。そして投石を受け止めた。
「えい!」
かよ子も石に杖を向け、石を操る能力を得る。住民達の投石よりもはるかに大きい石を出現させ、投石を薙ぎ払う。
「山田、羽根を進ませろ!」
「うん!」
かよ子は羽根を進ませ、町からの撤退を図る。ブー太郎も水の石の能力で投石を押し流し、椎名も水を放水させて投石を防いだ。町からはまだ抜けられない。だが、その時、一人の女性が立ち塞がった。
「お前達、ここに現れたからには逃げる事はできぬ」
そして女性はかよ子を見る。
「そこの女子、それは最強たる杖であるな?」
かよ子は自分の杖が狙われると思うとどきりとした。
「その杖、頂こうか!」
すみ子達組織「義元」は義教の軍に包囲されていた。
「どうしよう・・・。これじゃ、勝てない・・・」
「者共、やれ!」
義教の兵が襲撃を続ける。
「瞬間移動しましょう」
エレーヌは皆を移動させた。そしてジャンヌはある予知を聞く。
(すぐ私達がここに瞬間移動した事に気づく・・・。赤軍に渡された道具の不具合を起こすのを待ち、それまでは可能な限り機械を狙うのみ・・・)
「奴らはあそこじゃ!」
「チッ!」
川村はバズーカで迎撃を試みた。しかし、相手を吹き飛ばす事はできなかった。
「バカめ、そんな物でわしらを倒せるか!」
義教は刀を振るう。炎が放射された。すみ子達を火炎が襲う。
「う・・・!」
すみ子は銃で結界を張る。ヤス太郎もパチンコで水玉を発射した。しかし、結界は安易に破られ、水玉で消火する事もできなかった。
「容赦せぬぞ・・・」
義教から何かの威圧感が感じられる。すみ子も山口も、川村も、ヤス太郎も動けなくなった。
(一か八かですね・・・)
エレーヌは左手を振るった。そして透視した。義教の所に機械は二つある。
「ジャンヌ、見えますか?」
「どれ?」
エレーヌは透視した義教が持つ機械をジャンヌに見せた。
(あれか・・・)
ジャンヌはまた「神の声」を聞く。
(機械は二つ・・・。今片方の機械に不具合が出てきた・・・)
「エレーヌ、今片方の機械が不具合を起こしているぞ!」
「了解しました!」
エレーヌは足を一振りした。機械が破壊された。
「なぬ!?あの機械が破壊されたと!?」
「義教様、いかがなさいますか!?」
「構わん、やれ!あの女諸共殺すのだ!」
義教の軍が攻撃を激化させる。
「何だと!?エレーヌとジャンヌを守るぞ!」
「義元」の皆は守備体勢に入った。
「すみ子、銃だ!」
山口が命じる。
「うん・・・!!」
すみ子は銃で周囲に結界を張った。何とか防御には成功した。
「そんなもので守り切れると思うな!儂の軍は結界だろうがいかなる防御でも破壊できるのだ!やれ!」
義教の兵が矢を放つ。矢は炎に変化し、すみ子の銃で発生させた結界を容易く燃やした。
「あ・・・!」
すみ子は焦った。
「させないでやんす!」
ヤス太郎が水玉を飛ばして消火する。川村もバズーカで迎撃する。
「はあ、はあ・・・!」
守備体勢を続けているものの、戦いを終息させる為の糸口が全く見つからない。そしてエレーヌも舞い出した。
「な・・・!?」
義教からは敵が姿を消したように見えた。
「奴等はどこにいった!?」
「姿を消したのか!?」
義教の兵達も慌てる。
「こざかしい真似を・・・。そんなんでこの義教様から逃げられると思うなよ!」
エレーヌの技は実際には瞬間移動したのではなく、皆の姿を消しただけだった。
「今です!義教からはあなた達の姿は見えておりません!攻撃の時ですわ!」
「ああ!!」
組織「義元」は反撃を開始する。山口は矢を放った。地面に刺されば爆発し、地砕きを起こす矢である。矢は義教の軍の付近に刺さると共に爆発し、多くの兵を葬った。
「うおおお!!」
「うがあ!」
義教は劣勢と感じる。
(これでは我々に不利だ。だが、あの女は瞬間移動したのではない。姿を消しただけか!)
義教はまだ生き残っている兵に呼び掛ける。
「皆の衆!奴等は姿を消しただけだ!全員怯まず攻撃するのだ!」
「了解!」
義教の兵は槍を振り回したり、矢を放ったりして攻撃した。周囲を構わず炎や地の攻撃を行う。
(しまった、バレた・・・!!)
すみ子はエレーヌが自分達は姿を消しただけと相手に悟られたと感づいた。慌てて銃で周囲に結界を張る。先程の結界ではすぐに破られたため、すみ子は複数回発砲して何重もの結界にして対処した。結果、義教の軍からの攻撃を幾度も防ぐ事はできた。川村やヤス太郎も山口に続いて迎撃を始める。
「しかし、やってもやってもキリがないでやんす!」
「ああ、相手も容赦なく攻撃が続くからな、こっちの攻撃も相手の攻撃で打ち消されちまう!」
「なら私も防ぎますわ!」
エレーヌは扇を取り出した。
「これで相手の攻撃への通りがさらに良くなります!」
「どれ、やってみるか!」
山口は矢を放つ。放った矢は大きな爆発を起こし、義教の軍を更に殲滅させる事に成功した。一方の義教の軍も負けじと更に激しい攻撃を行う。
「皆の者!よくここまで耐えてくれた。私も戦いの準備ができた。共に行こう!!」
その時、ジャンヌが威勢のいい声を挙げた。
「兵達よ!私は今、神と同化する!」
「はっ!」
ジャンヌに使える少数の兵達はジャンヌに跪いた。ジャンヌの目が赤色に光る。そしてジャンヌは別人の姿となった。
「聖マルグリット、召喚!」
そして聖マルグリットと化したジャンヌは義教に牙を向く。
「非道なる殺戮者!私が成敗させてくれようぞ!」
「な・・・。やれるものならやるがよい!」
苛烈なる攻撃を繰り出す義教と神の声を聞くと共に聖人なる神と同化したジャンヌ。二人の決戦が始まる。
後書き
次回は・・・
「聖人との同化」
聖マルグリットと同化したジャンヌが反撃を始める。彼女は一体どのような術を使用するのか。そして義教の軍と組織「義元」軍配はどちらに上がるのか。そしてかよ子達は侵入した町を治める女性と対峙する・・・!!
170 聖人との同化
前書き
《前回》
領土の奪還を担うすみ子、川村、山口、そしてヤス太郎達組織「義元」は義教という人間の軍の襲撃を受ける。エレーヌの姿を消す作戦を見破られてしまい、義教の異能の能力を発動させる機械がどこにしまわれてあるのか探知する。そしてエレーヌの援護を得て組織「義元」も反撃する。そしてジャンヌが聖マルグリットを召喚、彼女と一心同体となって参戦する!!
聖マルグリットと同化したジャンヌが動き出す。
「ジャンヌさん・・・。どんな攻撃をするの・・・?」
「兵よ!今より我の能力を借りて戦え!今こそ蜂起するのだ!」
「おう!」
ジャンヌは指先から光を放つ。その光からは西洋の翼と大きな爪を持った竜が現れた。その竜は3匹現れ、角や体色は1匹は橙色、もう1匹は青色、更にもう1匹は紫色の光沢を出していた。
「皆の者!あの竜に乗りなさい!」
「はい!」
ジャンヌが率いる兵は青と橙の竜に乗る。すみ子達も紫色の竜に乗った。
「な!?」
「なんだあの怪物は!?」
「化け物だ!!」
義教の兵は竜を見て恐れをなした。
「何弛んどる!返り討ちにするぞ!」
三匹の竜は火炎放射した。それぞれの体色と同じ色の炎が義教の兵を襲う。
「うわああ!」
「おおお!!」
次々と兵が殲滅されていく。
「くう!わしにその手を使って逆らうとは・・・!!」
義教は腰に差している刀を抜いた。義教の刀は大きな結界を張った。
「残りの者!今回は引き上げるぞ!」
「え!?倒さなくていいんですか!?」
義教の従者が一人、質問した。
「ここは不利だ!撤退する!」
そして義教はすみ子達に撤退の言葉を吐く。
「貴様ら、今回はここまでにしてやる!だが、次会った時はこのようなものでは済まさんからな!!」
義教は残った兵と共に去る。
「逃がすかよ!」
山口は矢を放つ!しかし、義教の刀が出した結界によって弾かれてしまった。竜の火炎放射も弾かれた。そして炎が逆流してくる。
「ゲッ!炎がこっちに逆流してくるぞ!」
「私が!」
エレーヌが両手を差し出した。炎が消えた。3匹の竜は地に降り、皆を降ろした。
「ちっ、逃げやがって、卑怯者が!!」
「またあの人達は体制を整えるでしょう。立て直される前に追いましょう」
「その前によいか?」
ジャンヌが呼んだ。
「え?」
「聖人マルグリット、能力を与えてくれてありがとう」
ジャンヌが元の姿に戻った。そして竜が消えた。
「すまん、変化を解いて。聖人と同化するという行為はとても大変な事なのだよ・・・」
ジャンヌには大きい疲労感を持っており、息切れもしていた。
「ああ、大変だったよな・・・。でも、アンタの能力、凄かったよ!」
山口が賞賛した。
「ありがとう」
「ジャンヌ、お疲れでしょう。貴女の兵も併せて少しお休みください」
「ああ」
「よし、少し休んでから行く事にしよう」
一行は一旦休息を取る事にした。
妲己は匿っている少年が氷の上を滑る北国の遊びの話を遊女から聞いていた。
「ほう、その遊びを坊やがやりたいと?」
「はい。さらに北の方角にずっと雪が降り、氷が浮かぶ氷雪地帯へ行って遊びに行かせてみては如何でしょうか?」
「それはよいであろう。ところでどんなものが必要なのか詳しい者に聞いて見る」
「はい、ありがとうございます」
遊女が去ると、妲己は一つの情報を耳にしていた。
「何々、敵の一人の人間を赤軍が生け捕りにしたのか。それも向こうから降伏という形で・・・」
妲己は屋敷を出て移動した。
「馬を出しておくれ」
「畏まりました」
馬の世話係に馬を用意して貰い、妲己は出発した。この屋敷で飼われている馬は非常に速く走る事ができ、歩くだけでも普通の馬や車よりも非常に速かった。
(そのすけーととかいうもの、それから生け捕りにしたのはどのような人間なのだろうか・・・)
一方、ヴィクトリア女帝の屋敷。エンプレス・マチルダが杯の所有者によって倒されたという報告を受けていた。
「倒されたか・・・」
だが、女帝にとっては彼女の事などどうでも良かった。
「ところで、杖と杯、それぞれの持ち主はこの世界に侵入しているのに誰も食い止められないとはそれだけ強大な能力の持ち主のようね」
「はい」
女帝の側近は返事をした。
「只今、別の兵を派遣させましょう」
「そうね。お願い」
義教は組織「義元」、およびエレーヌやジャンヌの軍から撤退し、己が住んでいる屋敷に戻った。
「はあ、はあ・・・」
義教は己の部屋に戻る。少し休息した後、側近が入って来た。
「義教様、赤軍の人間がお見えになっております」
「丁度良い、通してやれ」
「はっ」
義教の元に現れたのは赤軍の構成員・西川純だった。
「義教様。かなりお疲れのようで」
「赤軍の者よ。お主らが分け与えたあの道具、時折まともに作動しない時がある。これは一体どういう事だ!?」
「申し訳ございません。手に入れたと思った異世界の三つの道具が偽物でその影響でレーニン様の身体が正常に動かなくなり、更には機械にも不具合が生じた模様です」
「その不具合とは何だ?」
「時々機械が正常に動かなくなる事です」
「そんな不良の品を寄こすな!それにレーニン殿が動けなくなってどうするというのだ!?」
「お待ちください!レーニン様は別の人間と一心同体にする事で再び動けるようになります」
「一心同体?と言うと?」
「今、敵勢力の一人がこちらに寝返ってくれたのですよ。レーニン様も復活できると信じております」
「なら、よかろう。レーニン殿が復帰するまで、わしは時が来るのを待たせていただく」
「はい、では失礼いたします」
西川は部屋を出て行った。
かよ子達藤木救出班は戦争主義の世界の中の町で一人の女性と対峙していた。
「だ、誰なの?」
「私は趙姫。この町を治める者。よくもこの町を荒らした罪としてその最強たる杖を頂こうか!」
「ちい、どうしようもねえな!」
大政が槍を構える。そして振るった。
「これでも喰らえ!」
大政の槍は風を起こし、趙姫を吹き飛ばした。しかし、趙姫はびくともしなかった。
「この女子も機械を持っておる!」
「大政、それでいい!某が次に行う!」
次郎長が切り込みに掛かった。
「私に近づこうだなんて自滅に近いぞ」
「なぬ!?」
趙姫の目と体が緑色に光り出した。そして別の姿へと変化する。頭部は人間の姿のままだったが、その頭には角が生え、口の歯は牙のように伸び、体は牛のような姿となった。
「ば、化け物だブー!」
ブー太郎はその恐ろしい変化に震えた。
「私は饕餮の姿に変化する事ができるのだ。貴様、喰らいつくしてくれる!」
「な・・・!!」
次郎長が趙姫に食殺されそうになる。次郎長は刀を振る。
「でえーい!」
大きな風が槍状の塊となった。しかし、趙姫はそれを容易く噛み砕いた。だが、その隙を突いて次郎長はその場から離れる。次郎長はのり子の人形・キャロラインの能力でかよ子の羽根に瞬間移動で戻って来た。
「なら、こいつを喰らえブー!」
ブー太郎は放水する。しかし、避けられた。饕餮と化した趙姫がかよ子達が乗る羽根に接近して来る。
「ひえええ!!近づいてくる~!!」
友蔵は怯えて腰を抜かした。
(来る・・・!!どうか、結界で防いで・・・!!)
かよ子は羽根の結界が作用する事を祈った。
後書き
次回は・・・
「噛み砕かれる攻撃」
饕餮の姿で襲い掛かる趙姫に対してかよ子は自身の羽根の結界で防御しようと試みる。結界で彼女の攻撃は防ぎきる事ができるのか。そして大野達が攻撃をするも趙姫になかなか留めを刺せない状況であり・・・。
171 噛み砕かれる攻撃
前書き
《前回》
すみ子達組織「義元」は義教という人間と交戦する。そんな時、彼女らと同行するジャンヌが聖マルグリットと同化し、形勢を逆転させる。しかし、義教本人を取り逃がしてしまう。一方、かよ子は趙姫という女と交戦するが、饕餮の姿に変化する彼女に対抗できず、趙姫がかよ子の元に杖を奪いに接近してきた!!
本部の一室。かよ子の母達が各々の様子を確認している。
「領土も少しずつ取り返せていますわね」
「ええ・・・」
かよ子の母は娘がいる場所を確認する。どうやら娘はまた新たなる敵と交戦しているらしい。
「あら、かよ子達がまた戦ってるわ!」
「本当ね。よく狙ってくること」
「やはり杖の持ち主だからだろう。奪い取りたいと言う輩も少なくはないはず」
イマヌエルが解説した。
(かよ子、大丈夫かしら・・・?)
まき子はおっちょこちょいの娘がまた心配になるのだった。
かよ子達は饕餮に変化した趙姫と交戦する。趙姫は饕餮という怪物に変化する能力を持っていた。その饕餮の姿になった趙姫がかよ子達が乗っている羽根へと襲いにかかる。
(お願い、羽根の結界、聞いて・・・!!)
かよ子は羽根で防げるか不安だった。この羽根はフローレンスから貰ったものであり、暫くは飛行して移動する為に用いていたが、稲目と馬子の戦いでは彼らの能力で移動を封じられるという窮地に陥った。だが、その場に現れた玄奘という法師によって事なきことを得ると共に彼に羽根に法力を流し込まれて結界を張る能力を会得したのだ。趙姫が近づいた。そして羽根の周囲に緑色の膜が張られた。羽根が出した結界である。趙姫は結界を噛み砕こうとする。しかし、その結界は簡単に破れなかった。
「う、うう・・・!」
趙姫は意地でも結界にかじりつく。そして、趙姫は跳ね飛ばされた。そして結界の影響か変化を解かれ、元の人間の女性の姿に戻る。
「よし、反撃だ!」
大野が草の石の能力を行使した。花を出し、花粉を放出する。趙姫を眠らせた。しかし、弾かれた。
「やっぱり機械を持ってんな!おい、鳥橋だっけ?お前しまの人形で探知してくれ!」
「うん!」
のり子はキャロラインを利用した。キャロラインが趙姫が持つ機械の場所を探知する。そして、彼女の着る漢服の中にしまってある事を確認した。
「皆、趙姫は服の中に機械を仕込んであるわ!」
「よし!そこを攻撃だ!」
大野は草の石で茨の槍を出して攻撃する。だがその時、趙姫がもう一度変化し、饕餮の姿となった。そして大野が出した茨の槍を容易く噛み砕いて無効化してしまった。その時、大野のポケットにある雷の石が光り出した。
(ん・・・?杉山の石・・・?)
雷の石が放電する。趙姫は電撃で痺れたが、牙や爪でかき消した。しかし、少し動けないようだった。
「少し聞いてるみたいだブー!」
「電撃・・・、なら効くかも!」
「だが、怪物になったあの女は機械をどこに仕組んでんだ?」
大野はのり子にもう一度聞く。のり子の人形はまた捜索を行った。
「・・・だめ、饕餮になった趙姫にはどこに機械があるか分からないわ」
「ちいっ!」
「大野けんいち!」
石松が呼ぶ。
「な、何だよ?」
「お主の持つ草の石と雷の石、両方を使うのだ!」
「え?あ、ああ!」
「山田かよ子、その杖で大野けんいちが放つ雷を操る能力を得るのだ!」
「う、うん・・・!!」
大野とかよ子は石松の意見に同意した。
「さくらももこ、富田太郎、椎名歌巌!鳥橋のり子の人形で趙姫の後ろ側へ移動させてもらうのだ!」
「わ、わかったブー!」
「行くよ、ももこちゃん、ブー太郎君!」
のり子の人形・キャロラインによってまる子とブー太郎、そして椎名は瞬間移動した。趙姫がまた近づいてくる。
「今度こそ、その結界を壊してやるわよ」
「さ、させない・・・!!」
「今だ!」
大野は草の石で木の葉の手裏剣を出し、雷の石で放電した。かよ子は雷の石が出した雷に杖を向け、雷を自在に操る能力を得た。趙姫はまず大野が出した草の手裏剣を爪で切り刻んだ。そして大野とかよ子の雷撃が来る。これもまた牙で受け止める。
「同じ手を・・・。うっ!?」
趙姫は電撃を牙で受けきれなかった。
(あの赤軍とかいう連中から貰った機械とかいう道具で守られるはず・・・)
赤軍から貰ったという道具で自身を完全に防御できると趙姫は今まで確信していた。これなら自身が創り上げてきたこの町も守られると。しかし、その機械が今は作動していない。趙姫は雷の石と杖の能力二つから放たれる電撃で更なる衝撃を喰らい、人間の姿に戻ってしまった。
「あ、あ・・・」
「今よ、趙姫の機械に不具合が起きてるわ!」
「こ、この・・・」
その時、後ろから洪水のような大きな水と火炎放射、そして前方にも大木の枝と電気の攻撃が来る。前方の攻撃はかよ子と大野、後方の攻撃はブー太郎、椎名、そしてまる子によるものだった。これで過剰攻撃ともいえる攻撃で趙姫の機械は破壊され、彼女も消し去る事ができる。
「やった・・・?」
かよ子は勝利を確信したかった。しかし、趙姫が持つ機械はすぐに復旧し、全て防御されてしまった。
「そ、そんな・・・!!」
「もう許さないわ・・・!」
趙姫は三度饕餮の姿に変化しようとする。
「大人しく杖を渡して全員死ね!」
「う、うおお!!どうか、命は・・・。命だけは〜!!」
友蔵は泣きながら命乞いをした。しかし、趙姫はかよ子の羽根に近づいて来る。椎名とブー太郎の水の攻撃、まる子の炎の攻撃も防がれた。そして趙姫はまた羽根の結界の破壊を試みる。牙や爪を使って何としても壊そうとするも、上手く行かない。
「くう、これでは埒があかぬ・・・」
その時、関根の国定忠治の刀が光り出した。
「ん?」
「あう?」
結界の光が関根の刀に取り込まれる。
(こ、これは・・・!?)
そして関根は刀が結界と同じく緑色に光るのを確認した。
「関根金雄!刀に結界の力が加わったのかもしれぬ!それで趙姫に向けて振ってみるとよい!」
次郎長が指示した。
「そんならやってみるか!」
関根は方を振った。その時趙姫から何らかの気力が吸い取られ、それが刀に伝わるように感じた。
「山田かよ子、関根金雄の刀に杖を向けよ!」
「うん!」
かよ子は関根の刀に杖を向け、剣に変化させた。変化した剣も今までとは異なる感じがした。かよ子と関根は各々の刀と剣を振る。趙姫は跳ね飛ばされた。そして趙姫から電気のような何かが関根の刀に吸収される。
「これは・・・?」
関根の刀には壊れた機械が取り付けられていた。
「そうか、その刀で機械を吸い寄せたんだ!」
大野は考察した。そして下方にいるブー太郎達も逆転のチャンスと確信する。趙姫の後ろから大量の水が流れ寄せてくる。趙姫は飲み込むなり爪や牙で弾くなりして対処したが間に合わない。更には別方向からまる子の炎の石による火炎放射が来る。
「炎は水に弱いはずなのに?」
趙姫は対処しきれなかった。そして反対方向から大野の草の石により出現した大木の槍、さらに雷の石の電撃が来る。
「お、おおお・・・」
趙姫は人間の姿に戻り、そして光となって消滅した。
「倒した・・・」
かよ子はホッとした。
「変身する奴もいるんだな」
そして椎名とブー太郎、まる子はキャロラインの能力で羽根の上へと瞬間移動して戻ってきた。
「ま、まる子、無事じゃったか!?」
「おじいちゃん、大丈夫だよ!」
祖父と孫はお互い号泣した。
「感動の再会やってる場合じゃないですよ。先に進みましょう」
椎名が窘めた。
「うん!」
かよ子は羽根を進める。そして羽根の結界の凄さを改めて思い知った。
(玄奘さん、羽根の結界、凄い役に立ったよ、とても強いよ・・・!)
そしてかよ子は考える。
(藤木君を取り返したら杉山君を探しに行こう・・・!!)
藤木救出班は町を出た。
本部の一室でも藤木救出班が趙姫を撃破した事にまき子は安堵していた。
「よかった、かよ子・・・」
「玄奘の法力によります結界が功を奏しましたわね」
そして、フローレンスは懸念する。
(ここから先は恐らく赤軍や東アジア反日武装戦線も迎撃しますに違いありませんでしょう・・・。健闘をお祈りしませんと・・・。それから・・・)
フローレンスはとある少女の事も思い出す。
(あの子の思いが藤木茂君救出班の為に大いに貢献できますと信じたいです・・・)
後書き
次回は・・・
「統一と死の思想の組織」
剣を取り返しに戦争主義の世界の本部へと進む三河口達はとある集団と遭遇する。その集団に対して9人の高校生と一人の毒使いの女性からなる剣奪還班が戦を始める・・・!!
172 統一と死の思想の組織
前書き
《前回》
とある町を治める女王・趙姫と交戦するかよ子達は妖怪・饕餮の姿に変化して戦う彼女に苦戦する。のり子の人形の能力で彼女の異能の能力を出す機械を探り当てる事で攻略し、彼女の機械が不具合を起こしたタイミングも狙う。だが、肝心なところで最後のチャンスを逃してしまうが、関根の刀が機械を無効化させた所でかよ子の剣に変化した杖、大野の草の石と雷の石で趙姫を撃破するのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その14
椎名歌巌 (しいな うたお)
神奈川県警所属の警察官。初登場113話。武装の能力を持つ。赤軍などのテロリスト壊滅に闘志を燃やす。イマヌエルから託された水を出現させて攻防し、時には水を干上がらせる能力を持つ水の玉を使用する。名前の元ネタやモデルは落語家の桂歌丸。好きな食べ物はかき揚げ、チャーハン。
こちら剣奪還班。徳林奏子の持つ羽衣で戦争主義の世界の本部へと移動している最中であった。三河口は以前よりもかなり激しい胸騒ぎおよび不審な音や恐怖を感じるようなにおいを感じていた。見聞の能力は見たり聞いたりのみではなく心の中の予感やにおいでも敵が近いかどうかを察知する事ができているのである。
「全く、ものすごう恐ろしい気持ちが収まらんじゃけんなあ」
三河口と同様かそれ以上の強力な見聞の能力の持ち主である鯉沢も非常に気にしていた。
「見聞の能力を持ってる人、皆そうなの?」
三河口の従姉・祝津ゆりは確認した。彼女は武装の能力を持っているが、見聞の能力は持っていない。
「はい」
濃藤や北勢田、マリエルや光江も同意見だった。
「くう~、吐き気がするくらいやな」
「マジで吐くなよ」
鯉沢に対して湘木が冗談交じりに言った。
「ああ、でも、ここにいるとめっちゃ気分悪うなるな」
「それだけ敵の本拠地に近づいてるって事だろうな」
「じゃがのう、うちらを狙ってくる奴等がすぐそばにおるんや」
「ああ、俺もそんな気がしたよ」
三河口は鯉沢の意見に共感した。
「つまり、今、どこかにその敵がいるって事ね」
ゆりは判断した。
「奏子ちゃん、皆を降ろして」
「え?あ、はい」
奏子は羽衣を降下させた。皆が降りる。
「いたよ」
政美がマフラーに備わる能力の一つである探知能力を利用して確認した。
「どこじゃ?」
「あの森の方だよ」
その時、政美が指した方角から銃声が聞こえた。三河口達を襲うと分かっていたのか見聞と武装の能力を発動させ、更に奏子の羽衣が巨大化して防いだ為に皆無傷だったが。
「こっちもぶっ放すか!」
鯉沢が銃を出して発砲した。火薬が一発飛んだがそれだけで木々が粉砕され、焼き尽くした。敵が複数人現れた。
「貴方達、何者なの?」
「俺達かあ?この世の統一を目指す黒手組だ!」
集団の中の一名が答えた。
「クロテグミ?」
「我々が目指すのはこの世の統一、それに逆らう者は死、それがモットー。貴様らのうちに丁度我が仲間を殺害した者がいるな?ガヴリロとネジョの敵、そこの娘二人、お前らは必ずここで死んでもらう!」
光江はガヴリロの名を聞いて思い出した。神戸で護符を捜しに訪れ、街を荒らした者の名であったからである。その際は返り討ちにし、ガヴリロは死亡したが。
「ねじょ?誰やったっけ?」
「ヒロシマとかいう所へ派遣させて貴様に殺された奴だ!」
「ああ、あのクソ野郎じゃったか」
鯉沢は12月に自身に起きた事を回想した。
冬の広島。鯉沢は下校中に駅前のバスロータリーで煙草をふかしていた(本来未成年の為喫煙は禁止であるが)。その時、異様な感じを覚えた。
(この気・・・!!あの時と同じや!!)
鯉沢は近所の家が全焼し、そこの居住者が親族諸共消された事件を思い出した。「あの時」とはその時である。ただ、まるっきり同じという訳ではなく、また別の気配も覚えた。
「お主か。鯉沢輝愛とかいう者は」
「へ?」
一人の男性がその場にいた。それも戦国時代の侍のような格好だった。
「なんじゃ、おんどれ?時代劇ごっこか?それとも、いつかの時代に生きた亡霊けえ?」
「ああ、嘗てはこの地で生きており、異世界から来た。元就と申す。お主のこの銃を授けるようにと上の者や厳島の神から頼まれた」
元就と名乗った男は鯉沢に一丁の銃を手渡した。
「なんや、この銃?」
「お主の父上や母上は原爆とかいう恐ろしい物を喰らった者と聞く。それの者の平和を願う為の怨みが籠った銃だ。この上のネジのような物を動かせば光線を出す状態および火薬を出したりする状態に切り替える事ができる。今、敵は近くにおる。戦えるか?」
「ああ、やったろうけんな」
鯉沢は銃を持って出陣した。その時、銃声が聞こえた。
「あっちやな!」
鯉沢は走る。そしてその「敵」と遭遇した。
「フヘへへ・・・」
「おい、おんどれ!!」
「なんだ、女?もしかして護符の持ち主か?」
「なんやそれ?んなもんあらんけん、消えろ!」
鯉沢は元就から貰った銃を発砲した。光線が放たれる。
「おおっと!」
敵の男は攻撃を避けた。
「ネジョ様にそんなもんが通用するか!」
男は返り討ちとして鯉沢に銃を向ける。
「ちい!」
鯉沢も銃で応戦する。相打ちとなり、お互いへのダメージはなかった。しかし、道路や建物にネジョの銃撃の跡ができた。
「鯉沢輝愛、もう一つの能力を使え!」
元就が現れた。
「え?おう!」
鯉沢は銃の上のダイアルを反対に回した。
「ただし、相手を狙え。周囲を狙ったらこの街は29年前の時と同じ惨状となる」
「わかった」
29年前の惨状とはこの地に原爆が投下された時の事を指していると鯉沢はすぐに理解した。相手はネジョのみ。他の周囲を犠牲にしない事が条件に鯉沢は発砲した。
(こいつもまた銃で迎撃する気やな!)
鯉沢はもう一発発砲した。一発目はネジョの銃にある程度防がれた。しかし、もう一発目はネジョを吹き飛ばす。
「な!?お、お、おおおーーー!!」
ネジョは皮膚が吹き飛ばされたような感じになり、グロテスクな見た目となった。
(これが原爆と同じような脅威、か・・・)
ネジョは息絶えると共に光となって消滅した。
「よくやったな、鯉沢輝愛」
「ああ、これで倒せたん?」
「いかにも。その銃があればお主は敵を倒す事ができる。ただし、この世の人間に向けて殺生を行った場合は儂が取り上げ、貴様は罪を犯す事になる。よく考えて使う事だ」
「ああ・・・」
元就はその場から消えた。
(ネジョかおねしょか知らんが、前にも似た事あったがあん時はここまで倒しきれんかった・・・。これでうちにもぶっ倒せるんじゃな・・・)
鯉沢は修学旅行で広島に訪れた静岡県の高校生達を思い出しながら帰った。
ゆりが指揮を取る。
「奴らは邪魔立てする気よ。戦いは避けられないわ。輝愛ちゃんにマリエルちゃん、北勢田君、先陣を取って。濃藤君、政美ちゃん、光江ちゃん、奏子ちゃん、後ろ側から皆の支援よ。湘木君、健ちゃんと私で周りを手当たり次第攻撃するわよ。健ちゃん、私と一緒に来て!」
「はい!」
全員は指示に従った。北勢田、鯉沢、マリエルが先方を取る。
「うらあ!」
鯉沢は発砲した。銃の光線で周囲を溶解する。北勢田が持っている矛で電気の力を使って機械じかけの大鬼を出した。大鬼が手から電撃を出して黒手組のメンバーを攻撃した。しかし、効果はない。
「やはり機械の能力で守ってるか」
『三人共』
政美の声が北勢田、鯉沢、マリエルの脳内に響く。
『機械をまず壊せ』
「あいよ」
「俺にできるぜ!」
北勢田は電脳の矛を振る。矛に電気が集められた。
「これで奴らの機械は使い物になれないぜ」
「おし!」
鯉沢は原子光線を発射する。黒手組のメンバー二名が光線を浴びて消滅した。
「テメエら!」
また別の黒手組メンバーが反撃に出る。しかし、どこからから砲撃が飛んできた。政美が遠距離発砲したのである。
「うおっ!」
黒手組の一人が吹き飛ばされる。
「おい、大丈夫か!?」
仲間が駆け寄る。しかし、その隙にトランプのカードの形をした兵が襲撃して来た。
「な、なんだ!?」
黒手組の仲間が銃で応戦する。しかし、倒しても倒してもまた新しいトランプ兵が出現する。
「私が出したトランプ兵は無限よ!」
マリエルが持っている本から「不思議の国のアリス」に登場するトランプ兵を召喚したのだった。トランプ兵は黒手組の仲間を蜂の巣にして葬った。
「む、別の所から敵が来とる!」
鯉沢は別方向からの敵を確認する。しかし、炎であっさりとやられた。政美が遠距離から火炎放射したのだった。そしてまた別方向から敵が近づく。しかし、湘木が斧から木の根を出して敵を絡みつけた。
「があっ・・・!」
湘木の斧の攻撃で敵は木の根に命を搾り取られて消滅した。一方、三河口が別の黒手組メンバーに対して威圧の能力を発揮する。メンバーが気絶したところでゆりが毒の拳を突き付けて溶解させた。
「健ちゃん、ありがとう」
「いえ、やったのはゆりちゃんですよ」
後方担当の濃藤、奏子、政美、光江にも後ろからまた別の黒手組のメンバーが現れた。勢いのある銃撃で責めて来る。しかし、奏子の羽衣で返され、光江の御守で彼女の威圧の能力を強化して殺めた。剣奪還班に黒手組メンバーが倒されていく。残り一人となった。
「貴様ら・・・」
「もう貴方一人だけよ」
先陣担当の三人、遊撃担当の三人、そして後方担当の四人が最後の一人に近づいて来た。
「このアピス様の力は銃撃だけじゃないんだぜ。まとめてくたばれ!!」
「何!?」
アピスが変化した。
「こ、これは・・・!?」
アピスは牛の姿になった。
後書き
次回は・・・
「黒手組の長の力」
黒手組の長・アピスは牛の姿に変化するが、禍々しい気を発していた。剣奪還班の皆がその力に屈せず倒す事ができるのか。そして戦争主義の世界の本部では偽物の杖、護符、杯の影響で動けなくなっていたレーニンに体を提供する者が赤軍によって連れてこられるのだが・・・!?
173 黒手組の長の力
前書き
《前回》
戦争主義の世界の本部へと向かう剣奪還班は黒手組なる組織の襲撃を受ける。彼らと交戦し、次々と敵を葬り去る三河口達であったが、最後に残ったリーダーの男・アピスが何と牛の姿に変化し・・・!?
黒手組のリーダー・アピスが牛の姿に変化した。
「なんや、ただの牛かいな」
「でも、禍々しい気配感じるわ」
牛になったアピスが黒い煙幕を吐いた。
「み、見えねえ!」
「これは・・・?」
三河口や奏子などは武装の能力で煙幕を回避した。
「だめだ、煙幕が途切れねえ」
政美が探知能力を使う。
「え?まだ機械の能力が働いている・・・?しかも三つ持っている!!」
「そうさ、別の機械がそれぞれ守り合っている。だから私の機械は壊れずに済んだのだ」
「な・・・?俺の電脳の矛が効かなかったのか!?」
「貴様ら、この闇の中で地獄に連れて行かれるがよい・・・!!」
皆は意識を失いかけた。機械の威圧の能力が働いているからである。
(やら、れて、たまるか・・・!!)
三河口は執念で耐えようとした。
赤軍のリーダー・重信房子は和光晴生と会っていた。
「房子様」
「晴生、どうしたの?」
「レーニン様を再び動けるように手伝ってくれる人を連れてきました」
「大丈夫なのかしら?」
「ええ、こちらに寝返ってくれましたからね」
「ならいいでしょう」
そして和光が連れて来た一人の少年を見た。
「貴方は・・・!?」
戦争主義の世界の本部。レーニンは偽物の杖、護符、杯の影響で動けないままだった。
「レーニン様」
赤軍のメンバー・和光晴生が入って来た。
「何、だ・・・?」
「貴方に力を貸してくれる人を連れてきました」
入って来たのは一人の少年だった。
「こんな、小童が、私の、代わりになる、と、いうのか・・・?」
「はい、名前は杉山さとしと言います」
「そうか、杉山さとし。私に触れるが良い」
少年はレーニンに触れる。そして、レーニンが動き出し、杉山を取り込んだ。「杉山さとし」と「レーニン」は今、同じ体となり、レーニンは再び動けるようになった。
アピスは牛の姿になり、吐息として吐いた煙幕で皆を閉じ込め、そのまま殺めるつもりだった。
「終わりだ・・・」
しかし、煙幕が消された。周囲に水が溢れる。
「な、何だ!?」
斧の姿が見えた。湘木だった。
「お前の煙幕はこの斧の水の力で消したぜ」
「こやつ・・・!!」
「それだけじゃないわ。皆それぞれが持つ異能の能力が合わさって発動して防ぎきったのよ」
「この・・・。もっと成敗してくれる!」
アピスが飛びかかる。三河口はすぐ様考える。
(俺の威圧の能力なら抑えられるかもしれんが、奴の機械は三つ。つまり三人分、三倍の力が出る。防げるか・・・?)
三河口は威圧の能力を発動した。
「む、そこの男、それで私を殺せると思っているのか・・・。私は神の力を使っているのだ!!」
その時、三河口とアピスで睨み合った。
(この小僧・・・!!)
アピスもこの男が只者でないと感じていた。一方の三河口も己の能力行使に膨大な負担が来ていると感じていた。
「光江ちゃん、健ちゃんに加勢して!」
「はい!」
ゆりの指示で光江が御守を使う。光江の持つ威圧の能力が御守に流し込まれ、アピスを迎え撃つ。
「・・・な!」
機械が正常に作動しなくなった。だが、同時に三河口、光江、アピス、皆能力が使えない状態となる。
「濃藤君、今よ!」
「はい!」
濃藤が運命の剣を発動させる。アピスの姿が人間に戻り、更に機械が破壊される。濃藤が高速でアピスに剣で串刺しにした。
「こいつ・・・!」
アピスは貫かれた事が致命傷となったようで、その場で光となって消滅した。
「濃藤、やったな」
「ああ」
だが濃藤は高速で動けたのは自分自身ではなく剣がそうさせた事を振り返った。
「政美ちゃん、まだ敵はいる?」
ゆりが政美に確認した。
「いいや、一人もいません」
「それじゃ、もう先へ行きましょう」
皆は奏子の羽衣に乗って飛び立った。目的は敵の本拠地に乗り込み、異世界の剣を取り返す事である。
起き上がったレーニンはとある部屋に行き、モニターのような物で周囲の状況を確認する。
「何と、我等の領土が次々と奪われている!重信房子、これはどういう事だ!?」
「はい、あの杖、護符、杯は我々がここに来るまで偽物となるのが判明しない仕組みとなっていたのです。それで私は『自分の世界』に行って略奪を図ったのですが・・・」
「それで?」
「平和の世界の女に既に本物もこの世界にないと言われました。そしてその持ち主も他の能力者達と共にこの世界で戦っているとの事です」
「なぬ!?」
「それに聞いた話では幾人かが敵の世界の人間と協力して領土を奪っているとか。そして幾人かは倒されております。その中にはその持ち主の三人も含まれているとの事です」
「こちらも早く体制を整え直すべきだ。赤軍や反日武装戦線の奴等も戦わせろ!」
「はい、今向かわせております」
レーニンは確認する。その時、房子が持っている通信用の機械がなる。
「はい、こちら重信」
『こちら。黒川芳正。今、杖の持ち主の所に接近しています』
「宜しい。奪いなさい」
『了解』
通信が切れた。
「杖か・・・。一度入鹿が手にしたが取り返されたとか聞く。そして残る蘇我氏は全滅したそうだな」
「はい、これも杖の持ち主の仕業です」
「それから、貴様らが造った機械の元となった男がいる集団もこっちに近づいて来ている」
「彼らの目的は剣を取り返す事でしょう」
「そうか」
その時、声が変わった。
「レーニン様?」
「また会えるのか・・・。俺は絶対に大将になってやるって言ってやりてえな」
その声は同化した少年の声だった。
「は?」
「構わぬ。同化している少年の意志がまだ動いておるのだ。その男の集団も黒手組を壊滅させてくれたものだ。ヴィクトリア女帝にも危険を知らせねばなるまい」
かよ子達は趙姫を倒した後、疲弊していた。
「やれやれ、次々に襲って来やがって」
大野ですら疲れを見せていた。
「儂もヘトヘトじゃ」
友蔵も寿命が縮まる思いだった。しかし、当の本人は特に何もしていないのだが。その時、通信道具が鳴った。
『藤木茂君救出班の皆様、かなり疲弊しておりますと思います。昼食の休憩となさってください』
「あ、ありがとうございます」
皆の元にハンバーガーとフライドポテト、そしてオレンジジュースが現れた。
「ほう、これは確かアメリカでよく食べられていると聞く」
次郎長はハンバーガーを見て珍しく思った。
「親分、これはまさに美味です!肉とこのぱんに野菜が一気に食べられるとは!」
小政が早速伝えた。
「ほう」
皆も食べる。
「美味しいねえ~。アタシゃこういうの食べたかったんだよお~」
「まさに美味い!」
まる子と友蔵はハンバーガーとフライドポテトを美味しそうに頬張った。かよ子はハンバーガーを食べると、挟んでいるハンバーグを落としてしまった。
「ああ・・・」
かよ子はハンカチで拭こうとした。
「大丈夫よ、かよちゃん」
のり子の人形・キャロラインが喋った。キャロラインの念力で落ちたハンバーグが消え、かよ子のスカートについた汚れも落ちた。
「ありがとう、キャロライン」
そして藤木救出班は一時の休憩をするのだった。
ヴィクトリア女帝の屋敷。女王近々に連絡が来た。
「こちらヴィクトリア」
『こちらレーニン』
「レーニン殿!?無事だったの!?」
『ああ、こちら本部に剣を取り返そうとする愚か者どもが近づいて来ている。周囲に援軍を寄越して固めてくれ』
「分かったわ。杖や杯の持ち主はどうするの?」
『それはこちら赤軍や反日武装戦線の連中に応援に行かせる。気にするな』
「了解」
ヴィクトリア女帝は早速側近を収集した。
「剣を取り返す輩が近づいて来ていると聞いた。なるべく本部の周囲を固めよ。そして、クイーン・ベスにも気をつけるのだ」
「了解しました」
ヴィクトリア女帝は別の女王に敵意を向ける。
(もう滅ぼせるわ・・・)
後書き
次回は・・・
「組織『さそり』の襲来」
さりは本部守備を担当していた福岡の少女を救助し、彼女の仲間の救助及び援護へと急ぐ。そしてかよ子はある夢を見る。その謎の夢から覚めた後、ある過激派達とぶつかる事に・・・!!
174 組織「さそり」の襲来
前書き
《前回》
黒手組と交戦する剣奪還班は敵を圧倒的な攻撃で次々と撃破していき、残る首領・アピスと対峙する。そしてアピスは最後の手段として牛の姿に変化し、彼らを殺めようとするも失敗して葬られた。その一方、偽物の杖・護符・杯で動けなくなった戦争主義の世界の長・レーニンの元に彼に身体を提供すると言う者が連れて来られる。その者は杉山さとしであり、レーニンと杉山の身体が融合した!!
オリジナルキャラ紹介・その15
関根金雄 (せきね かねお)
群馬県警所属の警察官。初登場113話。椎名の友人でライバル。彼と同じく赤軍や東アジア反日武装戦線の壊滅に燃える。国定忠治および赤城山の力が込められたという忠治の刀を武器とする。見聞の能力を有する。好きな食べ物はラーメン、天丼。
一人の女の子が走って逃げていた。
(はあ、はぐれちゃった・・・!!)
女の子は異世界で本部守備を担当していた。学校の友達三人、そしてこの世界の味方になってくれる人物と行動していたのだが、敵の襲撃を受けて散り散りになってしまったのだ。
「はあ・・・、はあ・・・」
女の子が疲れて動けなくなる。その時、一台の飛行機が飛んできた。
(まさか・・・!!)
女の子は別の敵だったと思うとこれでは死を覚悟するしかないと思った。飛行機が着陸し、大人の女性が降りて来る。
「大丈夫?どうしたの?」
女性は聞いてきた。
「実は私、逃げた来たんばい・・・。はあ、はあ、とっても大変な目に遭ってん・・・」
女の子は福岡弁で喋っていた。
「そうだったの。私は羽柴さり。異世界の護符の持ち主よ。この飛行機は私の護符で出したの。対処しきれない敵がいたって聞いたんで援護に来たわ」
「あ、ありがとう。私、羽井玲衣子。友達といたんやけど、敵の攻撃に何にもできんかて・・・」
「それで助けを求めて通信機で援護頼んだのね」
「はい・・・」
「友達と連絡取れる?」
「はい」
玲衣子は通信機を出して散った友達に連絡を取る。
「こちら羽井玲衣子。皆大丈夫?」
『こちら鶴井。皆大丈夫よ』
「了解。今、護符の持ち主と会ったけん、そっち向かうよ」
『ありがとう、待っとるよ』
通信を切った。
「それじゃこの飛行機に乗って」
「はい」
さりは玲衣子を飛行機に乗せた。機内には中学生程の男子と小学生の男子が一名ずつ、そして高学年か中学生程の女子が二名、そして武将のような人間が一名いた。
「こちらは尾藤海斗君にさくらさきこちゃん、杉山もと子ちゃん、長山治君よ。で、この人が『ここの世界』の清正っていうの」
さりが紹介し、玲衣子も長山達に自己紹介した。
「ところで、襲ってきた敵ってどんな奴だったの?」
さりは質問する。
「そいつは、多数の人間を連れて来たんよ。地面を爆発させるし、どこからか沢山の水を出して溺れさそうとするし、それで私らを『お前ら金にしてやる』とか変な事言うて来るけん、何とか戦おうとしたけど、手に負えん。散り散りになったのも地面の爆発によるもんばい」
「そうだったの。よく皆助かったわね」
「で、その『金にする』っていうのは?」
「おそらくアメリカ大陸の侵略者として生きていた者らしいな」
清正が説明する。
「侵略者?」
「ああ、スペインという国の人間は財産を豊かにする為にアメリカ大陸を発見しては征服の為にそこに住む住民を虐殺し、その者達の財産を略奪したのだ」
「例えばメキシコとかコロンビアとか?」
「左様。更にはそこに金が眠ってあると言う情報を聞き、それを狙う為に侵略した者もいる。そしてアフリカとかいう大陸の人間をさらっては奴隷として売って死ぬまで労働させたという話も聞く」
「そんな酷い奴が来たわけ?とんでもないわね。急ぎましょう!」
さきこは話を聞いて憤った。皆は玲衣子の友達と合流する為にさりが出した飛行機で先へと進むのだった。
昼の休憩をしていたかよ子は眠くなり、寝てしまった。その夢は暗闇の中だった。
(この夢は・・・?)
[貴様の想い人は私の物となった・・・]
(『私の物』?それ、どういう事・・・?)
そして気が遠くなっていった。
本部の一室。まき子達が昼休を終え、イマヌエルと共に各々の動向を確認していた。
「敵が本部に侵入してきたようだ。西側の方が攻撃されている」
「ええ!?」
「今、羽柴さり君達に救援に向かわせている。そして東の向こうの方の杖の所有者は・・・」
「かよ子達がどうかしたの?」
「また別の敵と当たりそうになっている。しかも、来ているのは・・・、この世界の人間じゃない」
「って事は赤軍!?」
「そうかもしれない。でなきゃ赤軍と同盟を結んでいる東アジア反日武装戦線かもしれないな」
(かよ子・・・!!)
異世界の敵でも厄介だというのに赤軍や東アジア反日武装戦線の人間とぶつかったらとんでもない事になってしまうとまき子は心配で体が震えてしまっていた。
「山田、大丈夫かブー?」
かよ子はブー太郎に起こされた。
「ブー太郎・・・。私、どうしてたの?」
「お前、何か息苦しくなっているかのようにうなされていたんだブー」
「私が・・・」
かよ子はふと思い出した。
(そうか、あの夢・・・!!)
かよ子はその「夢」を必死に思い出そうとする。
(一体、何だったんだろう・・・?)
しかし、脳ミソはすぐに限界が来た。
「かよちゃん、大丈夫だよ、きっと不安もなくなるよ!」
「そうじゃ、儂なんか今までの不安な事も殆ど忘れとるぞい!」
まる子と友蔵が励ました。しかし、まる子はともかく友蔵は単に忘れっぽいのではと皆は心の中で突っ込みたくなった。
「・・・なあ、もっと嫌な気配がするぜ」
大野は危機感を感じていた。関根も同様である。
「もしかして、また儂らを殺しに来たのか!?」
友蔵は怯える。かよ子は迷っている場合でなく、杖を使う準備をする。
(どんな敵・・・?この世界の人間?それとも赤軍・・・?)
「来たよ!」
関根は気づいた。早々と国定忠治の刀を振るう。遠距離で爆発した。
「あそこだ!」
「よしブー!」
ブー太郎が水の石の能力を発動する。水攻めにするつもりだった。しかし、再び爆発が起きる。何と水が逆流した。
「な、逆流したブー!」
大波がかよ子達を襲う。羽根の結界が発動された。何とか守りきれたが、水は収まらない。
「なら、こいつで吸ってやる!」
大野が草の石を発動させた。木々が現れ、水を吸収させる。しかし、吸収した木はすぐに枯れてしまった。
「な、これはどういう事だ!?」
「毒だ!水に毒を流し込んで逆流させたのだ!」
次郎長が説明した。
「その通りだ。さそりのような強力な毒を使う我々だからこそできる攻撃なのだ」
敵がいつの間にか接近して来ていた。彼らが履いている靴は普通の靴と異なり、飛行機のように飛べるようになっていた。
「あ、貴方達は・・・!?」
かよ子は聞く。関根も続いて言う。
「お前ら、この世界の人間じゃないな!」
「も、もしかして、赤軍!?」
「いいや、俺達は東アジア反日武装戦線。その中の組織『さそり』だ!」
「東アジア反日武装戦線だと!?」
椎名も関根も警察として見過ごせない相手であった。何しろ東アジア反日武装戦線は東京都内の数々のビルを爆破する事件を起こしているからである。
「そうだ。俺はその一人、黒川芳正だ!」
「同じく宇賀神寿一」
「同じく桐島聡」
「貴様らが…。逮捕させて貰う!」
「へん、サツもいるのか」
「なら、攻撃開始だな!」
組織「さそり」の攻撃が始まった。桐島が手榴弾のような物を空中に投げた。爆発し、煙が出る。
「毒の煙だ!山田かよ子、結界で守り抜け!」
「うん!」
羽根の結界が働いた。毒煙が防がれる。
「結界か・・・。なら、これだ!」
黒川は銃を取り出し、羽根に向けて発射した。
「バカだねえ~、結界だから聞くわけないじゃん」
「本当じゃ。結界は何でも守ってしまうからのう」
まる子と友蔵は呑気に行った。しかし、緑色の光が消えた。
「え・・・!?壊された!?」
かよ子達は仏法による強力な結界が破られてしまった事で焦った。
「それが杖か!貰うぞ!」
宇賀神が靴の飛行能力を利用して接近して来る。
「ひい・・・」
かよ子は恐ろしさで羽根から落ちてしまった。
「あ・・・!ああ!!」
この羽根の下は毒の水が溢れている。もう駄目かとかよ子は絶望する。
「はは、とんだしくじりをしてくれた!杖を貰おうか!」
宇賀神がかよ子に近づいて来た。
(やられる・・・!?)
後書き
次回は・・・
「金を狙う侵略者」
羽根から落ちてしまったかよ子は宇賀神に接近される。杖は盗られてしまうのか。そして玲衣子の仲間を助ける為に動くさり達は彼女の仲間を襲った敵と交戦するのだが・・・!?
175 金を狙う侵略者
前書き
《前回》
本部守備を担当していた羽井玲衣子という少女を救出したさり達は彼女の仲間を探しに向かう。そしてかよ子達の元には東アジア反日武装戦線の組織「さそり」が襲来する。玄奘によって強化されたかよ子の羽根の結界が彼らの毒の攻撃で消されてしまい、かよ子はその焦燥で羽根から落下してしまう!!
羽根から落下したかよ子の元に東アジア反日武装戦線の宇賀神が飛行して接近して来る。
「さあ、選べ、杖を渡すか、ここで溺れ死ぬか」
「う・・・!」
その時、急に水が干上がった。
「な、何だ!?」
かよ子がその場から姿を消した。
「かよちゃん、大丈夫!?」
まる子が心配した。
「う、うん・・・。何があったの?」
「私がこの玉で水を干上がらせたのだよ」
椎名が説明した。
「かよちゃんの方は私のキャロラインが瞬間移動させたのよ」
「のり子ちゃん、キャロライン、ありがとう・・・!」
「おい、呑気にしてる場合じゃねえ!こっちにも攻撃が来るぞ!」
「うん!」
かよ子達は抗戦を開始した。
清水市内のとある小学校。笹山はこの日はあまり授業に集中できない状態だった。
(昨日の事、夢じゃない・・・)
笹山はとある道具の事を思い出した。ボールペンのような道具で異世界から来たというフローレンスから貰った道具だった。しかし、異世界に行くという事はとても危険であるという事でもある。山田かよ子達に藤木の事を任せたままでいいのか。それとも命の危険を承知してまででも自分も行くか、迷っていた。
「笹山さん、ボーっとしてるね。どうしたの?」
とし子が心配になって聞いてきた。今、給食の時間であり、笹山は食事が進んでいないのだった。
「え?あ・・・、ごめん、今日は疲れてて・・・」
笹山は慌てて給食のおかずに手を付ける。その時、食い意地を張った男子・小杉が配膳台の前で嬉しそうに叫ぶ。
「ぐへへへ。今日は欠席してるやつが多いからプリンも余り放題だぜ!!こんなに食えるかな??」
「おい、ずるいぞ小杉、俺達も欲しいぞ!」
男子達はプリンの取り合いの言い争いをする。
「男子達は呑気だね。でももしまるちゃんがここにいたらプリンの取り合いに参加してるかも・・・」
「そうね・・・」
(プリンか・・・)
笹山はあの紫色の唇で卑怯な男子の事が頭から離れない。
(そういえば藤木君ももしかしたらプリン欲しさに参加してたかも・・・?)
三人の小学生、男子2人と女子1人は逃げおおせたものの、一人の友達とはぐれてしまった。
「羽井が助かったならいいが、こっちに来れるか!?」
「分からないわ」
その時、地面が砕けた。
「間に合わなかったか!」
「貴様ら、逃げても無駄だ。ここで死んでもらおうか」
襲撃して来た敵の軍勢に追いつかれた。
「皆の衆、この愚かなガキどもを殺せ!」
「させるか!」
一人の男が庇った。この小学生達と同行していた者である。
「また貴様か。いい加減降参したらどうだ!?」
侵略者が威圧しようとする。しかし、持っていた機械が作動しなくなった。
「お・・・?」
そして男の軍勢がへばりついた。
「これは・・・?どういう事だ?」
その時、飛行機が一台飛来してきた。飛行機から人々が降りて来る。
「貴様だな?侵略者というのは?」
「お前は?」
「我が名は清正。貴様の機械はこの時の槍で作動せぬままだ。そして貴様らがへばりついているのはこの空間の槍がそうさせている」
そして別の女の子が一人、降りて来た。
「皆、大丈夫たい?」
「羽井!無事やったんか!」
「うん」
そして別の女性が降りて来た。護符の持ち主・羽柴さりだった。
「侵略者ね」
さりは護符を出し、鉾を出した。
「でーい!」
さりは鉾を振り回し、侵略者の軍勢を薙ぎ払った。
「貴様、それは護符だな。金よりも価値ある物を持って来てくれたもんだ」
「うるさい。あんたは結局誰なのよ?」
「俺が誰かって?アメリカ大陸を発見した英雄、エルデナンド様に決まってるだろうが」
「その英雄が戦争を正義としてるわけ?」
「私にお任せを!」
小学生3名と同行していたこの世界の人間が落雷を起こす。その地が爆発する。
「うおおお!」
幾人もの兵が消された。
「今だ、時の槍で機械の動きは封じておる!とどめを刺すなら今だ!」
「了解!」
さりは護符で出した鉾で攻撃する。
「これでやられると思うな!」
エルデナンドが持っていた剣で鉾に迎撃する。
「貴様、金にされるか、奴隷にされるか、それともここで死ぬか選べ!」
「はあ?」
その時、さりの鉾が砕かれた。
「これで貴様も終わりだ!」
エルデナンドは清正の日本の槍も剣を振っただけで折ってしまった。
「なぬ!?」
「立てる、立てるぞ!それにいいものを見た!護符を寄こせ!」
その時、ボールが飛んできて、エルデナンドの顔に命中した。
「うごっ!?」
尾藤のボールだった。
「テメエは・・・!!」
「あ?」
「今度は逃げんばい!」
玲衣子がある物を取り出した。1本のペンのようなものだった。玲衣子はペンを一振りする。黒い三日月形の光が現れエルデナンドの軍を襲う。
「ふん、同じ手を・・・!!」
エルデナンドは機械を使って武装の能力を発動させて防ごうとする。しかし、作動しなかった。
「え?」
エルデナンドは慌てて剣で三日月の光を薙ぎ払った。
「なぜ作動しない!?」
「貴方の機械とやらは私の先ほどの落雷で使えなくした」
「道真さん、ありがとう!」
そしてさりが護符の能力を発動させる。共に降りて来たさきこの宝石も光る。そしてもと子の玉が黒に光った。
「まとめて金にしてくれる!」
エルデナンドは自身の術でさり達を金塊にしようとした。だが、長山の神通力の眼鏡とさきこの持っているエメラルドの宝石がその攻撃を防いだ。さりの護符からは鏡が現れる。
「終わりにしてくれるわよ!」
さりは鏡でエルデナンドの術を反射させた。
(くう・・・!!)
エルデナンドは窮地に立った。自身が金塊となる。そして気付かぬうちにもと子の玉の攻撃が来る。そして尾藤ももう一度ボールを蹴る。金塊となったエルデナンドは砕け散った。
「やったの?」
「でも、光になっとらんたい。どこか怪しい」
皆は周囲を見回した。エルデナンドどころか彼についていた兵達も姿を消している。
「エルデナンド!?どこたい?」
その時、声が聞こえた。
《くくく、今回はしくじったが、今度はそうはいくまい。楽しみに待っていろ・・・》
「逃がした!?」
さりは倒しきれなかった事を悔しがった。
「仕方あるまい。奴等が戻ってくるまでこちらも体勢を立て直しましょう」
道真が告げる。
「そうね」
「あ、あの・・・」
玲衣子がさり達に話しかける。
「助けてくれて、ありがとう・・・」
「いいわよ。また奴らが来たら助けに行くわね」
「うん!」
さり達は玲衣子達と別れた。
後書き
次回は・・・
「夢の中に現れた謎の声」
東アジア反日武装戦線の組織「さそり」と交戦するかよ子達藤木救出班は反撃に出る。皆が総力戦とする中、彼らを追い払う事はできるのか。しかしその後、かよ子達の元に謎の声が聞こえてくる。その声が放った言葉とは・・・!?
176 夢の中に現れた謎の声
前書き
《前回》
羽根から落下したかよ子は東アジア反日武装戦線の宇賀神に杖を奪われそうになるもの、椎名やのり子の間一髪の救出で何とか免れる。その一方、はぐれてしまった玲衣子の仲間を助ける為に協力するさり達は侵略者・エルデナンドと交戦する。さりの護符で出した鉾や清正の槍が破壊されるアクシデントはあったもののの、追い払う事には成功した。だがエルデナンド本人には逃げられてしまった・・・!!
玲衣子達と別れて護符で出した飛行機に乗り、領土攻撃班が奪い返した土地に向かうさりは清正にある質問した。
「そう言えば清正、さっきエルデナンドの攻撃で二本の槍折れちゃったけどどうするの?」
「ああ、気にするでない。既に長山治の神通力で頼んでここに持って来てもらった。そうだ、羽柴さり、一度本部の方へ飛ばさせて貰えないだろうか?」
「え?本部は逆方向よ」
「ああ、別の乗り物を用意して欲しいのだ。それで我は鉄鋼の主と呼ばれる所に向かい、この槍を鍛え直させて貰うのだ」
「わかったわ」
さりは護符の能力を発動した。また別の飛行機が現れた。
「空中にまた飛行機が・・・」
「では長山治。我を向こうに瞬間移動してくれ」
「うん」
長山の瞬間移動で清正は別の飛行機に移った。清正を乗せた飛行機は本部へと向かった。
「大丈夫かしら?」
さきこは気になった。
「まあ、平気でしょ。あの飛行機も自動操縦だし」
自動操縦の飛行機はさり達の目的地へと運んだ。
「そうだ、エルデナンドが逃げたって事、伝えておかないと。奴等はきっとまた攻めてくるわ」
「ええ、そうね」
もと子が通信機を取り出す。本部及び他の本部守備班及び領土攻撃班に伝えた。
「こちら杉山もと子。今、エルデナンドという人間が西側を攻めて撃退。しかし、取り逃がしたわ。また襲ってくるかもしれない。気を付けて!」
もと子は連絡を終えた。
本部に連絡が行き届いていた。
「エルデナンドか・・・。とんでもない者が来てくれたものだな」
「そんなに恐ろしい人なん?」
奈美子が聞いた。
「ああ、かつてアメリカ大陸を征服した人間、『コンキスタドール』の一人だよ」
「それって、アメリカに侵略してそこの原住民を迫害して黒人を奴隷として売ったり強制労働させた人の事?」
「そうだよ。きっと奴等はここを征服して豊かになろうと考えていたんだろう」
「そんな人達まで・・・」
その一方、まき子は娘が心配になっていた。
(おっちょこちょいして迷惑かけないで、かよ子・・・!!)
かよ子達藤木救出班は東アジア反日武装戦線の組織「さそり」と対峙する。
「もうおっちょこちょいしないよ!」
かよ子はリュックから花火を取り出し、火薬を扱う能力を得る。
「行け!」
かよ子の杖から砲弾が3発飛ばした。1発宇賀神を襲う。対して残りの2発は黒川と桐島の所を襲う。黒川達は爆薬で応戦した。
「私も行くよ!」
のり子がキャロラインと同化する。
「ええい!」
のり子の持つ武装の能力とキャロラインの能力で光線が放たれる。しかし、「さそり」達に全くダメージを負っていなかった。
「何、意味のない攻撃をしてやがる!」
「そうかしら?自分の機械をよく確認してみたら?」
「何!?」
黒川は能力を出す機械をポケットから取り出して確認した。機械は壊れていた。
「ちい、機械を壊す為の光線だったのか!!」
「ももこちゃん、今だよ、」
のり子がまる子に留めを刺すよう告げる。
「う、うん!」
まる子が炎の石で火炎放射した。かよ子も炎に杖を向けて炎を操る能力を得た。
「いけ!」
東アジア反日武装戦線に炎の攻撃が来る。各々の足に付いていた飛行用の靴が炎で破壊された。黒川達は地面に落ちる。
「おおお!」
関根が刀を振る。
「後はボクちゃんがやるよ!」
遠距離で振ったが、黒川達は金縛りにあったように動かなくなった。
「さて、後はここで生け捕りに・・・」
[貴様らか。杖の所有者と藤木茂とかいう少年を取り返しに行こうとする輩は]
どこからか声が聞こえてきた。
「誰だ、どこにいる!?」
大野が叫ぶ。しかし、声の主は出てこない。
[生憎だが私はここにはいない。なぜなら貴様らと対面するにはまだ早すぎるからだ]
「この声・・・」
かよ子はどこかで聞いた事のある声と感じる。何とか記憶を辿る。そして、思い出した。
「この声、確か夢の中で出てきた声だ!」
「なぬ!?つまり、お主はこの声でうなされていたというのか!?」
石松が聞く。
「うん!」
[ほう、驚いたな。私の声が杖の所有者に聞こえているとはな。私はレーニン。この世界を統治する者だ]
「統治!?誰がんな事させるか!」
[今までこちらも動けない状態が続いていたが、やっと一人の少年の身体を取り込む事で克服する事ができたのだ]
「一人の少年だと?」
(もしかして・・・!?)
[さあ、誰の事か言うまでもなかろう。それよりも貴様ら藤木茂とかいう少年を奪還を目的としているようだが、仮に成功したとしても少年は喜ぶかな?]
「藤木は連れ去られたんじゃないのか?」
大野は質問を続ける。
[ああ、我が世界の人間が連れて行った。だが、連れた者の話によるとここの世界の生活を満喫しているとの事だ。果たして連れ帰っても逆に追い返されるだけだろう]
「う、うるさいブー!それでも連れ帰すブー!!」
[勝手にするが良い。東アジア反日武装戦線の奴等は帰させて貰う]
黒川達が光に包まれた。
「ま、待て!」
かよ子は阻止しようと羽根から降りるも、弾き返された。黒川、宇賀神、桐島はその場で消えた。
「行っちゃった・・・」
「く、連続企業爆破事件の犯人達をようやく捕まえられると思ったのにな・・・」
椎名はぼやいた。
(連続企業爆破事件・・・)
かよ子は思い出す。その東アジア反日武装戦線は赤軍と協力関係にあり、一度はりえの持つ杯を奪取しようとしていたとか。
(あれがりえちゃん達が戦った集団だったんだ・・・)
そしてかよ子はレーニンの言葉を思い出す。一人の少年の身体を取り込んだという事は・・・。
(やっぱり杉山君・・・?)
かよ子は好きな男子の身体を取り入れたのではと思った。しかし、今はまだ確証はなかったので何も言えない。
「山田かよ子、先に進めよ」
次郎長は促した。
「うん・・・」
かよ子は羽根に乗り、先へと進むのだった。
撤退したエルデナンドはもとの屋敷に戻って来た。
「おう、エルデナンド。無事だったか」
「ピサロか、ああ、しかしヤバい状態だった。護符の持ち主にやられる寸前だったぜ。他にも色々いてよ、反撃しまくってきやがった」
「おう、こっちも俺達の縄張りを荒らしに来た奴等がいてよ、迷惑この上ねえ」
その時、二人の元に声が聞こえる。
[エルデナンド、ピサロ。今、貴様らの陣地に杯の持ち主が来ている。赤軍の連中も出向かせてやっているので共闘して杯を奪って来い]
「杯の持ち主だと!?」
[ああ、だが、連れとして神の力を操る女もいる。そいつにも十分注意せよ]
「了解」
「ピサロ、一休みしたら向かおう」
「そうだな」
エルデナンドとピサロは一時の休みを経て、杯の持ち主の討伐に向かった。そして一人の男と合流する。
「ピサロにエルデナンドの軍か。俺は山田義昭。エルデナンドは護符の持ち主達に機械を壊されたらしいな。新しいのを持ってきたぜ」
「ああ、ありがとうよ」
「ところで、杯の持ち主ってのはどんな奴だ?」
ピサロが質問する。
「女のガキだ。だが、甘く見んなよ。赤軍の仲間も狙おうとしたことがあるが、返り討ちにされている」
「ああ、気を付けるぜ。何にせよ、俺は護符の持ち主にメタメタにされて胸糞悪い思いしてるからな!」
「それでは共に行こう」
山田義昭は杯の持ち主を考える。和光晴生が東アジア反日武装戦線と組んで襲撃した時も、丸岡修と日高敏彦が組んでクリスマス・イブの日に狙った時も失敗に終わった。さらには政府との取引で貰った杖、杯、護符は偽物でこれによって機械にも不具合が生じてしまった。この問題をどう打破できるか、機械の製造者である山田には悩む課題であった。
(だが、今の俺には機械は幾つでもあるぜ・・・)
現状は数に勝ると考えていた。
後書き
次回は・・・
「少年を連れて行った者」
東アジア反日武装戦線の組織「さそり」を本部に戻したレーニンは妲己からある注文を受ける。その注文で杉山は藤木は彼女の住処にいると勘付く。その時、杉山の捜索を続けるりえ達の元にまた次なる刺客が現れる・・・!!
177 少年を連れて行った者
前書き
《前回》
東アジア反日武装戦線の組織「さそり」との戦いを続けるかよ子達は杖を取られかけそうになったものの、かよ子の杖で砲弾を操る能力を行使、さらにのり子の人形を利用して彼らの異能の能力を出す機械を破壊する。形勢逆転に成功し、捕えようとするも戦争を正義とする世界の主の声が聞こえる。それがかよ子の夢の中で聞こえた声と一致していると解ると、声の主は黒川達を離脱させてしまう。そして護符の奪取および領土の侵攻に失敗したエルデナンドは仲間のピサロと共に杯に狙いを定め・・・!?
レーニンは東アジア反日武装戦線の黒川芳正、宇賀神寿一、そして桐島聡を本部に戻した。
「レ、レーニン様!」
「構わぬ。私も少し奴等の事を甘く見ていた。だが、この地に奴等が近くなればなる程劣勢になるという訳だ」
レーニンに取り込んだ少年が心の中で思う。
(本当に欲しいのか・・・)
その時、一人の女性が現れた。
「レーニン様」
妲己だった。
「妲己、何の用だ?」
「私や紂王様の屋敷で保護している少年についてですが」
「あの少年がどうかしたか?貴様に任せているのだから相談する必要もあるまい」
「いえ、私の所の遊び相手の娘を嫁にしてやるとは言ってもなかなか選べていないのです。もしかしたらと思い、今敵と協力している人間を誰か生け捕りにして嫁に迎えてやろうかと考えていた所です」
(少年・・・?もしかして・・・)
「それって藤木の事か?」
レーニンの声が変わった。
「はあ?」
妲己も声が変わったので変に驚いた。
「失礼。急に同化している少年が現れるのだ。構わぬ。但し、反撃に出られる可能性はあるぞ。気をつけよ」
「御意。それからもう一つ質問が」
「何だ?」
「レーニン様は氷の上で滑る遊びをご存じでしょうか?確か『すけーと』とか言っていましたが、あの少年がやりたいと言っているのです。必要な道具とかはありますか?」
「専用の靴がある。こちらで用意するので待っておれ」
「これはこれは、ありがとうございます」
レーニンと同化する少年はこの時、確信した。
(スケート・・・。間違いねえ、藤木はこいつの屋敷の中にいる!)
何しろスケートを好む男子と聞いて思い当たるのが背が高く、紫色の唇で学校では卑怯者として有名なあの男子しかいない。レーニンは別の場所へと移動する。砦を出て、工場のような所に辿り着いた。
(レーニン、何をする気だ・・・)
工場でレーニンが機械の前で行う操作を少年は自分の事のように感じていた。終了のレバーを引くと、ベルトコンベアーから幾つものスケート靴が出てきた。そしてそれらは一足ずつ箱に収められる。30分程時間が経って作業が全て終わるとレーニンは二人の人間に箱入りのスケート靴を馬車に乗せて運ばせた。そしてレーニンは戻る。
「レーニン、スケート靴をなぜそんなに用意するんだ?」
「杉山さとしよ、妲己は保護している少年を哀れんだつもりでこの世界に連れて来た。事情を聞くと『向こうの世界』で想っていた娘に愛想を尽かされたとの事でな。妲己は今、自分の住む屋敷にてその少年を多くの遊女達と遊ばせて楽しく暮らさせているのだ。妲己はその遊女達を嫁にしていいとは言っているが少年はどうも気が多くて全く選べていないのだ」
「そういう事か・・・」
レーニンは本部へと戻り、馬車を引いたスケート靴の運送者から靴の箱を貰い、それを妲己の元へ持って行き、渡した。
「これで楽しめるであろう」
「ありがとうございます。では失礼」
妲己は去って行った。
(あの女の所に動けばな・・・)
かよ子は東アジア反日武装戦線の組織「さそり」との戦いでまた疲弊してしまっていた。
(それにしてもあのレーニンって声・・・)
かよ子はその声の主が夢の中で出てきた人物の声と同じであると既に確信している。もしあの夢が正夢だとしたら・・・。
(杉山君は赤軍達と協力してる・・・!?)
かよ子はそうとしか考えられなかった。
「それにしても確かに藤木は長山の眼鏡で見せて貰った通り、今の生活に満足してるかもしれねえな」
大野は推測した。
「確かにのお、儂もまる子とゆっくり温泉に入りたいもんじゃ!」
友蔵は呑気に言った。
「だが、どうにせよ、その藤木君という少年は自分が人質になっている事や政府との取引の道具として利用されている事に気付いていないと考えられるな」
椎名もそう推測する。
「でも、やっぱり、藤木君に本当の事伝えないと、駄目だよね?」
かよ子は聞く。
「ああ、そうだな」
「私はそれでも藤木君を連れ帰さないとって思うんだ。さっきはおっちょこちょいしちゃったけど、藤木君が嫌だって言っても藤木君の言う事をあっさり聞き受けるなんておっちょこちょいはしたくない・・・!!」
「オイラも同じだブー!」
「アタシもだよ!あの逃げてばっかの卑怯者をガツンと言わせてやんなきゃね!」
「おお、まる子、カッコいいぞい!」
友蔵が孫を褒める。
「えっへん!」
まる子も褒められて少しいい気になっていた。だが、かよ子は藤木の事と同時にもう一つ自分の好きな男子の事が頭に浮かぶのだった。
エルデナンドとピサロは杯を奪いに赤軍の人間と共に向かう。
「だが、女のガキも連れと共に動いているのが厄介だ。それに神を使う奴だから別の奴も連れて行きたかったんだがな・・・」
山田義昭は本心では聖母マリアを召喚できる岡本公三も加えればアイヌの神とやらを扱う女と互角に戦えるはずなのだが、生憎岡本は別の仕事に回っている為、呼び寄せる事はできなかったのである。
こちらは領土攻撃班の一員である杯の所有者の部隊。安藤りえ達は杉山さとしを追う為に進む。今は戦争主義の世界に占領された平原に来ていた。
(杉山君、あんた、赤軍に殺されたいの・・・?ホント、バカねっ!!)
その時、銃弾が大量に飛んできた。
「何だ!?」
幸い、ありや悠一達の武装の能力が働いた為、まともに喰らう事はなかった。
「いい餌がお出ましだな」
「あの女のガキ、杯を持ってるぞ!」
りえ達は顔を上げた。
「どれどれ・・・」
軍の長ともいえる人物が顔を出した。頭は少し禿げており、ロシア人のような出で立ちだった。
「杯はレーニン様の手に渡っていないと聞いたが、これは丁度いい」
「これを貰おうって言うのっ・・・!?」
「それは勿論、このツェサレーヴィチ・コンスタンチンの名誉になるからな!かかれ!」
ツェサレーヴィチ・コンスタンチンの兵がりえ達を砲撃する。普通の銃撃と異なり、火山のような爆発に電撃のような攻撃が来る。
「迎撃せぬと黒焦げになるぞ!」
「ち・・・!」
「冬田さん、私達を降ろして」
「え、ええ!」
冬田は遠くでりえ達を降ろした。そして悠一はテクンカネを発動する。
その頃、本部ではかよ子の母達がそれぞれの動向を確認していた。
「・・・む?」
「どうしたの、イマヌエル?」
「どうやら、安藤りえ君達が厄介な軍と相対したらしい。それに煮雪悠一氏の道具が私を呼んでいる。失礼するよ」
イマヌエルは瞬間移動のように消えた。
「りえ・・・!!」
「りえちゃんとなると奈美子ちゃんのとこのありちゃんもいるはず・・・」
「そうね」
「イマヌエルが加勢しますとなりますと大丈夫でしょう。それに羽柴奈美子さんの次女の煮雪ありさんもアイヌの神を操ります者ですから、形勢逆転の可能性もあります。現に東京で東アジア反日武装戦線の人間が杯を狙おうとしました時も」
フローレンスは弁解する。
「しかし、本当はあまり私やイマヌエルが前線に出向きますのはあまり宜しき事ではありませんのですが」
「どうして?」
「この世界は私とイマヌエルが創り上げました世界あり、その創造主が倒されますとなると、この世界は完全に劣勢となり、滅亡は確実に近くなります。それに敵達は羽柴奈美子さんの甥の三河口健さんの能力をそのまま複製しました機械を使っていますとなりますと・・・」
「イマヌエルにも危機が起きる・・・!?」
まき子は懸念した。
「はい」
りえは電撃に対して杯を向けた。雷を操る精霊が現れた。雷の精霊はツェサレーヴィチ・コンスタンチンの軍にそのまま電撃を返す。しかし、弾かれた。
「フハハハ、攻撃が通用するか!」
(いや、あの機械を持っているはず・・・。それを壊せればっ・・・!!)
りえはそう思った。ありもアイヌの神をタマサイで召喚した。男と女、二人の神が生まれた。二人の神は五色の雲を作り出した。神が黒い雲を投げる。
「な、何だ!?この暗闇は!?」
黒い雲は闇となり、兵を飲み込んでいく。
「ちい、上手く行かぬか!」
ツェサレーヴィチ・コンスタンチンは劣勢に感じるが、怯む訳に行かないと攻撃を続ける。みゆきがブーメランを投げて迎撃する。投げたブーメランから光線が出て爆発が起きる。だが、向こうも電撃と爆撃で攻撃した。
「おし、これで近づけるぞ!」
だが、そこにまた新たに一名、現れた。
「貴様、機械を複数持ってるな?」
「イマヌエルさんっ・・・!?」
後書き
次回は・・・
「同じ顔の女」
ツェサレーヴィチ・コンスタンチンと交戦するりえ達にイマヌエルが加勢する。その闘いの果てはどうなるか。だが同じく杯の奪取を狙うエルデナンドとピサロも赤軍の山田と共にりえ達の元に着々と接近していた・・・!!
178 同じ顔の女
前書き
《前回》
レーニンに身体を提供し、共同体となった杉山は妲己という女に会った。そこで彼女がスケート靴の発注を依頼した事で杉山は藤木は彼女の住処にいると確信した。またかよ子はレーニンの声から杉山は戦争を正義とする世界の人間や赤軍の側に寝返ったと感じてしまう。そして杉山の捜索に動くりえ達に戦争を正義とする世界の人間・ツェサレーヴィチ・コンスタンチンが杯を狙いに襲撃する!!
イマヌエルがりえ達に加勢する。
「ツェサレーヴィチ・コンスタンチンとか言ったな。貴様は四つ機械を仕込んでいるのが見えるぞ」
「ほう、千里眼か?」
「イマヌエルさん、どういう事っ!?」
「この男は機械を四つ持っている。だからどれを狙おうにも別の機械が守ろうとして結局壊れないのだよ。以前にも複数機械を持っている者がいて、手こずらせる原因となっている。だからさっきの君の雷の精の攻撃では彼の機械は壊れる事がなかった」
「じゃあ、どうするのっ!?」
「不具合を狙うか、纏めて狙えばいい」
「ならば!」
同行していた阿弖流為と母禮がツェサレーヴィチ・コンスタンチンへと襲い掛かる。
「まとめてかかっても意味があるか!」
しかし、二人の刀が機械に意図的に不具合を起こし、破壊させた。
「今だ、奴等を倒すのだ!」
「了解!」
「杯の持ち主よ、これを使うが良い」
ありが召喚した神がりえに青色の雲を渡した。その雲からは水が湧き出た。
「ええ!」
りえが杯に水を向け、杯が水を吸い取る。女性の姿をした水の精霊が出現した。
「私はウンディーネです」
「あいつをやっつけてっ!」
「はい」
ウンディーネが巨大な渦巻を出す。ツェサレーヴィチ・コンスタンチンとその軍に襲い掛かった。
「ぐほっ、ぐほっ!」
ツェサレーヴィチ・コンスタンチンは息ができなくなり、苦しむ。そして味方の軍も水圧に巻き込まれて殺められた。
(やられて、たまるか・・・!!)
コンスタンチンは己の剣で電撃を発動する。ウンディーネにも電撃が浴びせられ、水が消えた。
「ああ・・・!!」
水から解放されたコンスタンチンは逃げようとする。
「逃がさないわ!」
鈴音が錫杖から氷を出してコンスタンチンの馬の足を凍らせて動きを封じた。だが、コンスタンチンは今度は炎を発火させて氷を溶かす。
「隙を見せたな!」
だが、融解している間にシャクシャインが接近してきていた。シャクシャインが出した槍でコンスタンチンは両断させられた。
「おおお!!」
コンスタンチンは消滅した。
「やった・・・」
「シャクシャイン、見事だ」
「ああ、恩に着る」
だが、その時、通信機が鳴る。全員通信機を取り出した。
『こちらフローレンス、また「別の敵」が来ています!警戒してください!』
「ええっ!?」
フローレンスの言う通り、また別の敵が現れた。
「あいつらだ!」
「きゃああ、来ないでええ!!」
それまで戦いに参加できていなかった冬田が羽根から火炎放射した。しかし、そこの相手もまた機械を持っている為か、防がれた。
「あれは・・・赤軍の人間に、コンキスタドールの者だ!」
本部の一室。先代の護符、杖、杯の所有者達はフローレンスと共に次の敵がりえ達に接近していることに気付いた。
「やっと倒したばかりなのに、また次の敵が来てるの!?」
「はい。しかも今度は赤軍の人間を出向かせています」
「りえ・・・!!」
りえの母は娘とその友達が心配になった。
りえ達はようやくツェサレーヴィチ・コンスタンチンを撃破したと思った所でまた別の敵が近づいて来た事にいい加減にして欲しいと感じていた。
「ツェサレーヴィチ・コンスタンチンと戦っていたのか。結局俺達の前座となったな」
「あんたは赤軍ね。別の二人はこの世界の連中みたいだけど」
ありは尋ねる。
「アア、俺は山田義昭。この機械の造り手だ」
「あっ、あの人お!」
冬田は山田を指差した。
「知ってるのっ!?」
「確か高校の文化祭で大野君達と戦った時にいたわあ!」
「おお、てめえは!!」
エルデナンドはありを見て驚く。
「護符の持ち主じゃねえか!貴様、ここまで先回りしてやがったか!」
「は?」
ありには何の事かは分からない。
「さっきのテメエにしくじられた恨み、今晴らしてやるぜ!」
エルデナンドが急に攻撃を始める。ありもタマサイで出した神で返り討ちを狙う。先程の五色の雲を操る男女の神がまだいたのでその二人の神が操る雲を使って迎撃を試みた。赤い雲が投げられる。黄金色の壁と白銀色の壁が出現した。
「これは金に銀、これで儲けられる!」
エルデナンドはその壁をそのまま吸収した。
「な・・・!!」
「煮雪あり、あのエルデナンドやピサロはコンキスタドールの一人、金を手にする為にアメリカ大陸の原住民を虐殺し、侵略した者だ」
「あれが・・・」
「おい、護符の所有者、無駄な抵抗はやめて俺様達に護符を差し出せ!ついでにその杯もな!」
「人違いじゃないのかしら?」
(私を見て護符を出せと言った・・・。つまり、こいつ、さりと会っている・・・!!)
ありはおそらくこのエルデナンドは護符を持つ妹と勘違いしていると察した。
「あのエルデナンド、どうしてありをさりちゃんと間違えているんだ?さりちゃんと戦った事があったのか?」
悠一も不思議に思う。
「何呑気に見物してやがる!」
ピサロと山田義昭が見ていた悠一やりえ達に襲い掛かる。
「させるか!」
イマヌエルが手を突き出した。りえ達の周りに見えない結界が張られる。山田の金属の手裏剣やピサロの剣の攻撃を防いだ。
「簡単に守れると思うなよ」
「何!?」
イマヌエルの結界が破られた。
「ええっ!?」
平和の世界の主の能力はそんなに弱いはずはない。りえ達も疑った。みゆきが迎撃にブーメランを投げる。だが、ピサロの剣で簡単に弾き返された。みゆきが自分のブーメランをどてっ腹に受けた。容赦なく山田が放つ金属の手裏剣が襲い掛かる。鈴音が錫杖で氷の壁を作る。だが、容易く破られた。ウンディーネも手裏剣で消滅してしまった。りえは山田の金属の手裏剣を杯で吸収する。そして鋼の精霊を召喚した。鋼の精霊は髭を生やし、長髪で鉾と楯を持つ男性の姿だった。
「我はハーデス」
ハーデスは山田の金属の手裏剣を楯で全て吸い寄せた。そしてそれをそのままそっくり返す。だが、簡単に弾かれた。その隙にりえはピサロに近づかれた。
「ここで死ね!」
だが、ハーデスがりえの前に立った。ピサロの剣とハーデスの鉾がぶつかり合う。
「ハーデス、頑張ってっ!」
りえが己が出した精霊を応援する。だが、簡単に鉾を弾かれ、楯で守ろうとするも、楯もあっけなく両断されてしまった。
「そんな・・・!!」
そしてハーデスもピサロによって両断されて消滅した。その時、横から光線が出てピサロを襲撃した。ピサロは瞬時に避けた。
「お前ら、例の機械を複数に、しかも大量に持っているな!」
イマヌエルは山田とピサロを睨みつけた。
「よく知ってんな」
「よくわかる。何しろ私には見え見えだよ」
「なら話は早い!」
「イマヌエル!」
阿弖流為と母禮、そしてシャクシャインが刀や槍を構える。
「その機械を壊してやるぞ!」
「馬鹿め、簡単に壊れるか!」
「それでいい!」
三人の気迫、そしてイマヌエルの能力が合わさる。その時、悠一がテクンカネが発動させる。一人の男性が現れた。赤茶色の皮膚をしており、杖を持っていた。
「ようやく報復の時が訪れたか」
「き、貴様は・・・!!」
「我が名はアタワルパ。憎きピサロよ、今度は貴様が処刑される番だ!!」
「やれるもんならやってみやがれ!!」
「ピサロ、敵は小細工を大量にしている。気を付けろ!」
山田が忠告した。
「了解!」
アタワルパの杖が爆発する。あまりにも眩しく、ピサロは機械を利用して防ごうとした。しかし、ピサロが仕込んでいる機械が全て破壊された。
「アタワルパの能力に私とシャクシャイン、阿弖流為、そして母禮の能力を流し込ませた。だから、お前の機械は全て破壊されたのだ!」
「何なら!」
みゆきがブーメランを投げる。
「させるか!」
山田が妨害を試みる。しかし、りえがまた杯で吸収、ハーデスを再び召喚した事で防がれた。ブーメランから光線が出てピサロの周囲を爆発させる。
「おおお!!」
「ピサロ!!」
ありとエルデナンドの戦いが続く。エルデナンドの攻撃に対してありは神で防御する。
「護符の持ち主、嘘つくんじゃねえ!さっさと護符を渡しやがれ!」
「いつまで寝ぼけてんのかしら?私は護符の持ち主じゃないわよ!」
ありはバラしてやろうかと考えた。
「護符の持ち主は私の妹よ!アンタ、さては妹と戦った事があるわね!」
「ああ、その姉貴ならぶっとばしがいがあるかもしれんな!」
エルデナンドが機械で威圧の能力を発動させる。
「う・・・」
ありは能力を喰らい失神しそうになった。
後書き
次回は・・・
「太陽の子の報復」
威圧の能力をまともに受けてしまったありはエルデナンドの攻撃で金塊にされそうになる。ありは金塊と化するのか、それとも回避するのか。そしてりえ達は山田とピサロから杯を守り抜く事はできるのか・・・!?
179 太陽の子の報復
前書き
《前回》
杉山を捜索しに動くりえ達はツェサレーヴィチ・コンスタンチンの襲撃を受ける。苦戦するも悠一のテクンカネで召喚されたイマヌエルの加勢もあり、彼の異能の能力を出す機械を破壊し、コンスタンチンを撃破する。だが、その戦いの直後、赤軍の山田義昭がピサロとエルデナンドと共に襲撃する。ありはエルデナンドと交戦するが苦戦させられ、己の身体を金塊にされる術を掛けられる!!
かよ子は連戦の疲労で頭がフラフラしていた。
「山田かよ子、少し眠れ」
次郎長が促す。
「うん、でも・・・」
「でも、何だ?」
「またあの夢を見たらって思うと・・・」
「夢、だと?」
「そういえばお前、よくうなされてたよな」
大野も思い出した。
「あの、レーニンって人の声が夢の中で聞こえたの、思い出したんだ・・・」
「そうか、だが、それで寝れんというのも後々に響いて良くないぞ」
「うん・・・」
かよ子はとりあえず横になった。
ありが失神しそうになる。
(殺、される・・・?)
ありはそのまま意識を失った。
「終わったな、女、貴様事金にして持ち帰ってやる!」
エルデナンドはありの身体を金塊にしようとした。ところが・・・。
「な・・・、できんだと!?」
一輪の花がありの額に落ちた。赤い花だった。ありはそのまま起きた。
「これは・・・」
「そこの娘、大丈夫か?」
別の男女および高校生男子と思われる人物二名が近づいて来た。
「はい!」
「気を緩めるな!」
ありは戦いの途中だった事を思い出す。
「エク・カムイ!!」
ミントゥチが召喚される。
「ふざけやがって!!」
エルデナンドは地面を爆発させ、周囲の人物を亡き者にしようとした。だが、ありが召喚したミントゥチによって水の渦が出され、砕かれた地面が水に吸い込まれる。そして男女の神が黄色の雲を投げて地面を元に戻す。
「この女!」
エルデナンドがまた威圧の能力を使ってありを失神させようとする。だが、機械が不具合を起こした。
「な、発動しろ!」
ありは別の神を召喚した。パヨカカムイが現れる。そしてエルデナンドに病を媒介させるべく取り付いた。だが、エルデナンドの機械の一つから武装の能力が発動し、パヨカカムイを撥ね返す。だが、パヨカカムイは食い下がらず、さらに分裂して機械を狙った。機械が壊れて使い物にならなくなる。
「俺の機械が!!」
エルデナンドが慌てる。パヨカカムイがすぐ近くで襲撃する。
「こうなったら!」
エルデナンドは自身を金にして攻撃を防いだ。
「しぶといわね、自分の身体を金にして防ごうだなんて悪足掻きもいい加減にしなさい!」
「黙れ!」
「我々が生きます!」
二人の男女の神が白い雲をエルデナンドに投げた。金になったエルデナンドに草が生え、更に虻や蜂が攻撃していく。
「うご、うご・・・!!」
エルデナンドが苦しみ、もがく。
「変化を解いたほうがいいんじゃないかしら?」
「なんの・・・!!」
エルデナンドは崩れた。
「崩れた・・・?」
高校生男子二名は何もできずに見て震えていた。
「あの女、すげえ・・・!!」
「俺達は何もできへんかった・・・!!」
一方、りえ達は山田義昭にピサロと交戦していた。
「倒した・・・?」
みゆきのブーメランによる爆発でピサロを倒せたのかとりえ達は思う。しかし、ピサロははあ、はあと息を切らしていながらも何とか生きていた。
「な・・・!!」
「俺の機械は全て壊れていなかったからな」
ピサロは自身の仕込んだ機械を壊されてはいても山田が仕込んでいた機械は全て破壊されていなかったので事なきを得ていたのである。
「な・・・!!生きてる!?」
「ピサロ、ひとまず退却だ!」
山田が促す。
「おう」
ピサロと山田は周囲に金の結界を張って瞬間移動しようとする。
「させるか!ピサロ!お前だけでも葬ってくれる!!」
アタワルパが太陽の力を借りた光線をピサロに向ける。結界が一瞬で破壊された。
「させるか!」
「アタワルパとやら、私も協力する!」
援軍として現れた男がアタワルパに加勢する。
「項羽!ありがたい!」
項羽と呼ばれた男が刀をアタワルパの太陽の光線に向ける。アタワルパの光線はシャクシャイン、阿弖流為、母禮、イマヌエル、さらに項羽の能力が混ざり、強力となる。そしてピサロは体が液状化していった。
「終わりだ、ピサロ、報復させてもらった!!」
「そんな・・・」
ピサロは生前に因縁のある皇帝の報復を成功させられるなど屈辱にしかないと思い、光と化した。
「ピサロは倒されたが、仕方あるまい。杯は今度こそ必ず貰うぞ!!」
山田義昭がピサロの術で消えていく。
「取り逃したっ!」
ありはエルデナンドが崩れて行く様を見た。
「これは・・・」
ピサロを倒し終えたイマヌエルが近づく。
「煮雪あり君、エルデナンドは倒せていないよ。身体を金にして傀儡にして安全な所に移動したんだ」
「そうだったの・・・」
ありは倒し損ねた事に悔しく思った。
「イマヌエル、あのエルデナンドは私を護符の持ち主と間違えていたけど、さりと会っているの?」
「ああ、君達を襲う前に本部の領域を襲撃していたんだ。小学生のグループのいる所を狙ったんだけど、羽柴さり君達に反撃されたんだ」
「そうだったのね・・・」
ありは妹も案外やるなと思った。
「あ、アンタ、凄い戦いだったよ!」
高校生男子二名がありの前に現れた。
「す、すみません、折角来たのに援護できなくて・・・」
「ああ、大丈夫よ。もしかして敵の本拠地乗りこみに協力してくれる為に来てくれたの?」
「はい、俺は鎌山健次郎で、そしてこっちは立家隆太。大阪から来ました高校生です」
「もしかしてイマヌエルに頼まれて杉山君って男の子の救出に協力しに来てくれたの?」
「はい、わいらもお供します!」
「ありがとう」
「そこの女子、物凄い戦いであった。我が名は項羽。そしてこちらは妻の虞だ。この鎌山健次郎と立家隆太と共に行動し、協力していた者。先程お主が気絶してもすぐに起き上がれたのは虞の花の能力によるものだ」
「そうだったの。ありがとう。もし助けがなかったら、きっと私死んでたわ」
「いえ、私はできる限りの事をしたまでです・・・」
「援軍が来てくれたなら大丈夫だね。それでは私は本部に戻らせて貰うよ」
イマヌエルはその場から飛び去って行った。
「では私も失礼しよう。エルデナンドを取り逃がした事は悔しいが、ピサロへの前世の報復は無事果たしたのだから。煮雪悠一と言ったな。また何かあったらその道具で私を呼ぶといい。また一緒に戦える時を楽しみにしよう」
「はい」
「そして杯の持ち主よ」
「えっ?」
「その杯は今でも十分強力な武器のようだが、何れはさらに強力になれる。戦いと共に極めるのだぞ」
「はいっ、頑張りますっ!」
「それでは」
アタワルパが光に包まれる。そして消えた。
「それじゃ、先進みましょ」
ありが促した。
「はいっ!」
皆は冬田の羽根に乗る。
(杉山君・・・。絶対に取り返すからねっ!私はあんたがいてくれないとっ・・・!!)
りえにはある思いがあった。
かよ子は疲労で眠っていた。そしてまた夢を見た。暗闇の空間である。自分以外には誰の姿も見えなかった。
(何だろ・・・?)
そしてレーニンと思わしき声が聞こえる。
[貴様らにあの少年を救う事は叶わぬ。会えたとしても絶対に戻るのを拒まれるだろう・・・]
(あの少年・・・?拒まれる・・・?)
かよ子には「少年」と聞いてもしかしてと思った。
後書き
次回は・・・
「李の森の夜」
かよ子達は李の木が生い茂る森へと到着した。戦いを忘れて李狩りを楽しむかよ子だったが、夕食時になっても食後になってもまる子と友蔵が戻って来ない。道に迷ったのかと心配したかよ子達は二人の捜索に動き出す・・・!!
180 李の森の夜
前書き
《前回》
エルデナンドと交戦し金塊にされそうになったありだったが、虞美人の介入によって形勢を逆転、エルデナンドを追い払う事に成功する。そしてピサロに対しては悠一のテクンカネでピサロと因縁のあるアタワルパを召喚する事でピサロを葬る事に成功する。そして杉山の捜索を行うりえ達に項羽と虞美人の軍、大阪の高校生・鎌山健次郎、立家隆太も加わった!!
かよ子が起きた頃には既に夜となっていた。
「はっ・・・。ごめん、寝ちゃって!」
「気にすんなよ。俺達も少し寝ちまったし、襲って来た奴はいねえよ」
大野がかよ子を落ち着かせた。
「うん・・・」
羽根は森の上を通っていた。羽根の結界が光り、灯りを灯しているように光った。
「森の上にいるんだ・・・!」
「まる子、あれは李じゃ!」
友蔵が森の木々を指差した。
「おお、美味しそう~、かよちゃん、羽根降ろしてよお~」
「・・・え?」
「まあ、気晴らしによしとするか」
石松はこの祖父と孫に呆れながら言った。
「そうだな」
かよ子は森の中に羽根を降ろした。
「凄い、こんなに李の実がなってる・・・!!」
「よし、お姉ちゃんや皆のお土産にしよう!」
「よお〜し、李狩りだあ〜」
まる子と友蔵は李の実を摘む。
「あ、まるちゃん!!」
「全く、しょうがねえなあ」
大野も呆れる。
「あまり離れすぎるなよ!何かあったら連絡するのだ!!」
次郎長が警告した。
「はい、は〜い!」
次郎長はまる子のいい加減な返事に本当に解ったのかと半分疑っていた。
そして平和を正義とする世界の本部。夕食時としてまき子達は各々の戦士達の行方を確認する部屋から別室へと移り食休としていた。フローレンスとイマヌエルは食事を用意し、まき子達に用意すると共に各々の人々に送っていた。
「ところでイマヌエル、安藤りえちゃん達の所にコンキスタドールの者二名が赤軍と共に現れまして大変でしたとの事ですが?」
「ああ、何とか返り討ちにはできたのだがね。項羽と虞美人やが加勢したから更に安全になってくれるといいんだが。だが、あの機械とやらを発明した山田義昭が大量に持ち込んでいたから下手すれば私も死んでいたかもしれない」
「あの機械が複数持たれますと厄介ですわね。剣を取り返す時に解決されます筈ですが・・・」
「ああ、確か『偽の剣』はクイーン・ベスに持たせているからな。今も彼女はあの海域で部下と戦わせながら剣奪還班が来るのを待っている筈」
「はい、あの危険な所にいながらも善戦させて頂いていますが・・・。兎に角貴方もお休みなされて下さい」
「ああ」
全ての皆に食事を送るとフローレンスとイマヌエルも食事を始めた。
かよ子達は李狩りを楽しんでいた。石松や大政、小政の刀で実を切り取る。
「これならただ単に食うのみならずお主の杖の能力で美味な料理にできるかもしれんな」
「うん、デザートにやってみるよ!」
かよ子達は羽根に戻った。そして丁度フローレンスから通信が来た。
『皆様、お疲れ様です。食事の用意を致します。ごゆっくりなさって下さい』
かよ子達の所に食事が現れた。クリームシチューに生野菜のサラダ、そしてロールパンにマーガリンだった。
「うわあ、美味しそう!」
「本日の食事は西洋風か」
「それにしてもさくら達はまだ帰ってきてないのか」
「え?ももこちゃん・・・!!」
皆はまる子とその祖父がまだ姿を見せていない事に気づいた。
「全く、いい加減な奴等だ!」
次郎長は呆れる。
「山田かよ子、お主の通信機でさくらももことその祖父殿を呼べ」
「うん」
かよ子は通信機をまる子や友蔵へと繋げる。
「まるちゃん!」
『あ、かよちゃん、どうしたのお〜?』
「どうしたの、じゃないよ!もうご飯の時間だよ。皆心配してるよ!」
『あ、ごめん、ごめん。李集めに夢中になって遅くなっちゃったよお〜』
「まるちゃんのおじいちゃんは一緒にいるの?」
『いるよお〜、ね、おじいちゃん?』
『おお、勿論じゃ!かよちゃんとやら、皆で一緒に食べよう』
「分かったから、早く戻ってきてよ!皆心配してるよ!」
『わ、解ったよお〜』
かよ子は自分とまる子、どっちがおっちょこちょいが酷いのかと改めて比較したくなった。
「先に食おうブー」
ブー太郎が促した。
「うん・・・」
かよ子達は食事を始めた。
ところが、かよ子達が食事を終えても、10分経っても、20分経ってもまる子と友蔵は戻って来なかった。
「一体あの二人は何やっているのだ!?」
石松はあまりの遅さにイライラが止まらなくなった。のり子は通信機を出す。
「ももこちゃん、どこ行ったの!?」
しかし、応答がない。
『ごめ〜ん、道に迷っちゃって・・・』
「馬鹿野郎!もっと早く言え!!」
大野も通信機を取り出してまる子を叱責した。
『ごめん・・・、って、ああ!!』
『おお!!』
まる子と友蔵の悲鳴が聞こえた。
「おい、どうした、さくら!?」
「何者かに襲われたのかもしれないよ!」
お蝶が推測する。
「本部に通信せよ!」
「了解!」
関根が通信機で本部へ連絡を取る。
「こちら藤木救出班、関根金雄。さくらももこちゃんとそのおじいさんの友蔵さんが行方不明になった!今、李の茂る森にいる!」
『了解しました、只今確認致します!』
フローレンスが応答した。
フローレンスは各々の動向を確認する部屋に向かってまる子と友蔵の行方を確認した。
「どれどれ・・・」
フローレンスはその映像の地図にて李の森の場所を確認する。そこにはかよ子達藤木救出班が地図上に森に点で密集している。そして少し離れた所に二つの点がある。フローレンスは通信機で藤木救出班に連絡する。
「皆様、こちらフローレンス。只今さくらももこちゃんとそのお爺様は西の方に逸れて進んでおります・・・、ん?」
『どうした?』
椎名が応答と共に尋ねた。
「気を付けてください!二人の所に敵が接近しております!今さくらももこちゃんの所にも連絡いたします!」
『了解!』
まる子と友蔵は李を集めて一攫千金を狙ったかのように嬉しく思っていたところ、一匹の龍が現れた。
「おおお~!!」
「ひい~!!」
まる子と友蔵は腰を抜かし、李をその場に落としてしまった。
「ま、まる子、逃げるんじゃあ~!!」
「うん!」
まる子と友蔵は慌ててその場から逃げた。その時、通信機が鳴った。
「は、はい!」
『こちらフローレンス。さくらももこちゃん、そのお爺様。今お二人の近くに敵が接近しております。お気を付けください!』
「ああ、今龍みたいなのが出てきて逃げとるんじゃあ~!」
『逃げています?お爺様はともかく、さくらももこちゃんには『炎の石』がありますでしょう!それで迎撃しなさい!』
「あ、そうか!」
まる子はポケットから炎の石を取り出した。慌てて火炎放射で龍に対処する。龍が炎に包まれる。
「凄いぞ、まる子!!」
友蔵が褒めた。しかし、龍は全く何も感じなかったようでピンピンしていた。
「え?」
龍が火を吹いて襲い掛かった。
「ぎゃあ、燃やされる~!!」
「ひええ!来るな!」
まる子はもう一度火炎放射を試みた。しかし、互角程度で単に自身に炎を浴びるのを防ぐ程度にしかならない。
(もう駄目じゃ・・・!!)
その時、水が現れた。龍の炎が消される。
「さくら!」
「まるちゃん!」
かよ子達が羽根に乗って現れた。ブー太郎の水の石の能力と椎名の水の玉で龍の炎を消火したのであった。
「この龍め!」
関根が刀を振るう。三日月形の光が現れ、龍を両断した。
「倒した!やった~!」
「いや、まだ倒したわけじゃねえ!まだ敵はいるぞ!」
「ええ!?」
「来たか・・・。ここまで出向いたかいがあったわけだな・・・」
「誰なの!?隠れてないで出てきなよ!」
かよ子は吠える。
「さあ、どうしようか・・・貴様らの前にはあまり姿を見せたくないものだな」
どこから聞こえるか分からない声が聞こえる。
「のり子ちゃん、キャロラインで探せる?」
かよ子はのり子に聞く。
「やってみるわ!」
のり子の人形・キャロラインが透視能力を利用した。
「向こうにいるわ!」
「よし!」
関根がもう一振り刀を振る。風が巻き起こされ、敵を襲う。しかし、何かに守られたかのように攻撃が通用しなかった。
「ん?あの人、何かで書いてるわ!」
「え?」
敵は書道で使う筆を使って紙に書いていた。その紙には漢字で「龍」、「護」と書かれていた。
「おそらく紙に字を書いて攻撃してくるんだわ!」
「ええ!?」
キャロラインの透視能力でさらに敵は「声」という字を書いた。
「よくこの蔡京様の能力を読み取ったな。しかし、杖はここで頂こう!」
「渡さない、ここで倒す!」
かよ子が蔡京に宣告した。
後書き
次回は・・・
「書の使い手、蔡京」
まる子と友蔵を襲撃した男・蔡京と交戦する事になったかよ子達。紙に字を書いて書いたものを実物化させる能力に対してかよ子達は総攻撃にかかる。かよ子は蔡京の筆の能力を杖で写し取ろうと試みるが・・・!?
181 書の使い手、蔡京
前書き
《前回》
李の茂る森に到着したかよ子達はまる子と友蔵に連れられて李狩りを楽しむ事になる。李狩りを終え、夕食に戻るがまる子と友蔵が戻って来ず、フローレンスの協力で二人がいる方角を教えて貰い、迎えに行くが、蔡京という男の襲撃を受ける。何とか現場に到着したかよ子達は蔡京との交戦を開始する!!
かよ子は羽根で蔡京に接近した。筆に杖を向ける。
(確か筆とかにも使えたはず・・・!!)
かよ子は杖の使い方の一節を思い出す。
【筆記物に向けると自在に絵及び字を描き、それを実物化する能力を得られる】
かよ子は羽根から降り、蔡京の筆に杖を向けた。
「させるかよ!」
杖の複製攻撃が効かなかった。
「奴も機械を持っている!その武装の能力で弾かれたのだ!」
石松が解説した。
「そんな!」
「鳥橋!人形を使え!」
「うん!」
のり子はキャロラインと同化する。
「皆の者!我らも参戦だ!」
次郎長が斬り込みに入る。地面が爆砕され、さらに周囲の木々が切り倒された。
「俺も行くぜ!」
大野が草の石を取り出す。そして茨が現れ、地面に突き刺した。
(これで何とかなってくれ!)
「貴様らここで死にな!」
蔡京は紙に「死」という字を書いた。
「山田かよ子!蔡京は全員皆殺しにする気だ!」
「ええ!?」
「私が皆を羽根の上に戻すよ!」
のり子が人形の能力を利用して全員を羽根の上に戻した。蔡京の死の攻撃が来る。しかし、羽根の結界で防ぎ、皆無事生存できた。
(この結界で何とか守れた・・・!!)
その時、蔡京の元に茨が現れ、機械を貫通して破壊した。
「な!?」
「その機械は壊させて貰ったぜ!」
大野の草の石の能力によるものだった。
「ちい!こうなったら!!」
蔡京は錯乱し、「殺」と書いた。
「杖の持ち主、これで死ね!」
だが、防御特化の武装の持ち主のかよ子には通用しなかった。それどころかかよ子に自身の筆に杖を向けられ、杖を筆に変化させられた。
「これでやっつけるよ!」
かよ子は空中で鳥を描く。鳥が蔡京をつついて狙う。
「そんな手が通じるか!」
蔡京が紙にまた書こうとする。だが、その時、紙が燃えた。
「なぬ!?」
「させないよ!」
まる子が炎の石の能力を利用して燃やしたのだった。
「おお、カッコいいぞ、まる子!」
友蔵が褒めた。
「これで書ける紙はなくなったな!」
「何を!これなら!」
蔡京は地面に書こうとした。書いた言葉は「爆」。地面が爆発する。そして「炎」とも書く。爆発と共に森の一帯が炎上した。
「ここは我々が!」
椎名が水の玉を使って水を撒く。
「オイラもやるブー!」
ブー太郎も水の石で消火した。
「もう許さないよ!」
のり子が怒りで溢れる。
「まだやってやるぞ!」
蔡京はまた地面に何か書こうとする。だが、先程かよ子が実物化した鳥に筆を奪われた。
「ま、待て!」
「隙あり!」
いつの間にか石松と吉良の仁吉が回り込んでおり、蔡京を斬りつけた。
「うおおお!!」
蔡京は二人に斬られて光と化した。
「やったな、仁吉!」
「おうよ!」
しかし、まだ森には燃えている地帯もある。
「まだ燃えてるブー!」
「キリがねえな!」
「拙者らに任せい!」
次郎長は刀を時計回りに振り回した。子分達も刀を次郎長に向けた。
「復興せよ、李の森!」
次郎長が叫ぶ。その時、炎が消えて行く。そして森は切り倒された木々が元に戻り、焼けた李の木が元に戻った。
「す、凄い、戻った・・・」
かよ子は時間が巻き戻るような復興に驚いた。
「山田かよ子、お主もよくやってくれた」
石松が褒めた。
「いや、そんな事してないよ」
「いや、あの鳥を出して蔡京の筆を奪っていなければ某も仁吉も斬る事はできなかったであろう。感謝致す」
「う、うん・・・」
「よし、皆、本部に連絡だ」
次郎長が促した。
「ああ」
関根が本部へと通信機を繋げる。
「こちら藤木救出班、関根金雄。李の森にいた蔡京とかいう敵を倒した!そして燃えかけていた森も次郎長たちによって無事に元に戻った」
フローレンスが応答する。
『お疲れ様です。夜分によく頑張ってくれました。それから・・・』
(何だろ・・・?)
『さくらももこちゃん、そのお爺様、その李狩りはいけませんとは言っていませんので李を取りますのは自由ですが、勝手な行動して皆様の迷惑が掛かっていますのです。無鉄砲な行動は慎んでください。それからお爺様、下手をすれば貴方は命を落としていましたかもしれません!』
「す、すまん!」
友蔵は謝った。
『はっきりと言いますが、貴方にできます事は本当に何もありません。次軽はずみな行動をしましたら本部へ強引に連れ帰し、謹慎させますからね』
声だけとはいえ、フローレンスの口調に怒りがこもっているのをかよ子は感じ取った。
「そ、そんな・・・」
『嫌なら、従ってください』
「はい・・・」
「ごめんなさい・・・」
まる子と友蔵はしょげた。
『では、皆様おやすみなさいませ』
通信が切れた。
「ももこちゃん」
「のりちゃん?」
「お願い、もう勝手な行動しないで!」
「う、うん・・・」
(こいつ、案外、さくらを友達想いになってるんだな、ブー)
ブー太郎はのり子に対してある思いがあった。
(他の皆にも愛想がよければいいのに、オイラにも・・・)
ブー太郎はのり子が気に食わないと思いながらも複雑なある思いを感じていた。
「そうだ、お腹空いたよお〜」
「そうじゃ、ご飯の時間じゃ!」
「ご飯ならここだよ」
まる子と友蔵は羽根の上にある二人分の食事をかよ子に紹介されて食べた。
「おお、シチューか、まあまあかな」
「おお、美味い、美味い!」
まる子と友蔵はようやくの晩餐にがっついた。
「それじゃ、俺達は寝るぜ」
「私も、おやすみ」
かよ子達はまる子達が食べ終わる前に寝た。
フローレンスは食事の場へと戻った。
「はあ・・・」
「フローレンス、かよ子達は無事だったの?」
まき子は心配になって聞いた。
「はい、無事に撃退できました。それにしてもさくらももこちゃんとそのお爺様には本当に振り回されます。我儘など聞きますべきではありませんでしたね」
「まあ、そうね・・・」
まき子も友蔵に関しては孫がいない寂しさでついて来ただけなので内心、心配と迷惑の気持ちがあった。
「それでは皆、休むといいよ」
「ありがとう、イマヌエル」
先代の杖、護符、杯の所有者達は就寝に入った。
笹山はピアノの稽古からの帰りに藤木の家を通り過ぎた。
(あ・・・)
あの男子が戻って来たら、と思ったが、藤木の家は暗いままだった。彼の両親は共働き故に帰るのが遅く、藤木は出前を取る事が多いと聞く。しかし、灯りがついていないという事はまだ両親も帰ってきていないという意味だと笹山は感づいた。
(やっぱりあれを使うべきかしら・・・)
笹山は思い出す。フローレンスという女性から貰ったボールペンのような道具を。だが、まだ決断ができていなかった。
後書き
次回は・・・
「運ばれたスケート靴」
妲己は紂王の屋敷にスケート靴を運んで戻って来た。その屋敷にいる一人の少年と遊女達はスケートに行く日を楽しみにする。そして別の場所ではすみ子達組織「義元」が中世のフランスのような街に到着し・・・!!
182 運ばれたスケート靴
前書き
《前回》
李の森で書いた字を具現化させる男・蔡京と交戦するかよ子達。かよ子は蔡京の筆を杖で能力を得て、杖を筆に変えて描いたものを実物化させる能力を得る。他の皆の総攻撃で蔡京を撃破させることに成功した!!
さり達は護符で出した宿泊施設にて眠っていた。宿のような建物ができており、インフラの整った個室までが完備されていた。そして夜明けが少し来る前に起きた。
(この護符ってホント凄いわね・・・)
さりは改めて護符の強力さを思い知った。母も戦後の食糧難や戦災孤児問題をこの護符で乗り切り(その戦災孤児には同行している尾藤海斗の母親も含まれていた)、清水へ帰省していた時に豪雨に巻き込まれた時も自身の意思が護符に通じて浸水した町を干上がらせた。クリスマス・イヴの日の戦いでも一人の力ではないとはいえ何とか戦えたのもこの護符があってこその結果であろう。異世界での戦闘でもネロやアブー・アブドゥッラー、エルデナンドなど本部へ侵入する者を撃退している。そして寝床や遠方への移動などにも困らぬように役には立っている。流石この世界で生み出された最上位の道具の一つであるだけの事はある。
(また来るかもしれないわね・・・。領土攻撃班の攻撃をすり抜けて・・・)
さりは寝ても覚めても気を張り詰めていた。別室で寝ていたさきこ、尾藤、長山も起きた頃だった。
かよ子達藤木救出班は李の森で朝を迎えていた。かよ子はこの日は何の夢も見る事はなかった。
「おう、山田」
「大野君、おはよう・・・」
大野やブー太郎、他の面々は起きていた。
『おはようございます、皆様、朝食の準備が整いました。そちらに送りますので受け取り下さい』
イマヌエルの声だった。この日の朝食は和食で、御飯にワカメやネギ、椎茸のすまし汁に鮭にお浸しだった。
「それじゃあ、・・・って」
かよ子はまる子と友蔵が寝坊している様を見ていた。
「ももこちゃん!!起きてよ、ご飯だよ!」
のり子がまる子を半ば強引に起こした。
「ええ?ああ~」
まる子は寝ぼけていた。
「もう、寝坊しないでよ!」
「ごめん、ごめん・・・」
まる子は謝った。
「おい、友蔵さん、起きてください!もう朝ですよ」
椎名も友蔵を起こす。
「うう・・・、朝、か・・・。ああ、いい気持ちじゃのう・・・」
友蔵が起きた。そしてまる子が朝食の献立でがっかりする。
「はあ〜、鮭かあ・・・。ハズレだな・・・。李があればなあ〜」
「ああ、夜に落としてしもうたからのう・・・」
まる子と友蔵は集めた李を蔡京の襲撃で全て落としてしまったのである。
「そうだ、かよちゃん、杖で何とかしてよお〜」
「え?」
「山田かよ子、仕方あるまい。こやつの我儘に付き合ってやってくれ。李ならお主らも集めたであろう?」
次郎長が確認する。
「う、うん・・・」
かよ子は己の李とおたまを出しておたまに杖を向けた。料理を美味しくする能力を持った杖を李に向ける。李がヨーグルトに変わった。
「これなら美味しいねえ〜」
「どれどれ・・・?」
かよ子も李味のヨーグルトを嗜む。
「李のヨーグルトも美味しい・・・!!」
「美味しいブー!」
「それじゃ、もう一回李狩りじゃ!」
「駄目だよ!藤木君の所に行かなきゃ!」
かよ子は友蔵の提案を却下した。
「そうか・・・」
朝食の食器が下げられ、かよ子は出発の支度に入った。
「それじゃ、行くよ!」
かよ子は羽根を上昇させ、一行は李の森を出るのだった。
妲己がレーニンの元から自分への屋敷に戻って来た頃には朝になっていた。
「お帰りなさいませ、妲己様。随分とお疲れのようですね」
門番が出迎えた。
「ええ、休ませていただくわ。馬も休ませておあげ」
「はっ、畏まりました。」
妲己は己の部屋に戻り、状況を確認した。
(付近にはまだ来ていない・・・、か)
「妲己、大丈夫かね」
紂王が部屋に入って来た。
「ええ、寝不足でございます。お休みにさせて下さい」
「ああ」
妲己は寝台で横になった。
ある少年は一人の遊女と楽しく喋りながら朝食会場に向かっていた。話し相手の遊女は明るい感じの女子だった。
「ねえねえ、茂様。その『すけーと』って面白いんですかー?」
「うん、僕はいつも滑ってたよ」
「私にできるかなー?」
「教えてあげるよ」
「ありがとうございます!もし私が茂様のお嫁になれたらなー、いつでも一緒にすけーとしに行きます」
「ありがとう」
朝食の場に皆集まったが、妲己の姿はなかった。
「紂王様、妲己様はどうされたのですか?」
「ああ、妲己なら昨日レーニンの所に行って疲れているから休んでいるよ」
「そうですか」
この日の朝食も和洋と関係なく楽しめる豪華な朝食だった。
「ああ、そうだ、茂様。妲己様がその『すけーと』とかいうのに使う靴を持ってきたとの事です。雪の降る山にて氷の張った湖がさらに北の方にあります。明日、楽しんでみてはいかがでしょうか?」
「そうだね、そうするよ!」
そして兵を務める男性が入って来た。
「皆様、妲己様が氷の上を滑る遊びに使う靴をご用意されました。食後に大きさをお確かめくださいとの伝言です。それでは失礼致します」
「ありがとうございます!」
兵は出て行った。少年達は食後に大広間に行く。多くの靴が箱の中に入っていた。
「凄い!」
少年は足のサイズを確認する。
「丁度いいのがあった」
「よし、これで明日楽しみましょう!」
「うん!」
少年達はスケートの日を楽しみにするのであった。
寒さに震えながら笹山は登校していた。すると、前を歩く女子二人の会話を耳に挟む。
「ねえねえ、今度の土曜久々にスケートしに行かない?」
「いいね!スケート教室以来かな?」
「うん!」
「上手く滑れるかな?」
「他に誰か誘おうかな?男子にも声掛けて皆で行くともっと楽しいよ!」
笹山はスケートという言葉で思い出した。
(スケート、か・・・。藤木君、スケート得意だったっけ・・・)
笹山はまたあの失踪した男子の事を思い出すのだった。
すみ子達「義元」は華やかそうな西洋の街並みに突入していた。街自体は美しいものの、恐ろしい胸騒ぎが止まらない。つまり、ここには敵勢力が住んでいる地という事になる。
「この地・・・。まるで昔のフランスのようですわ・・・」
エレーヌが呟いた。
「昔のフランスでやんすか?」
「はい。中世の我が国は貴族が贅沢で豊かな暮らしをしている一方で、一般の民は非常に貧しい暮らしを強いられていたのです」
「となると、強い奴がここに潜んでいるって訳だな・・・」
「殲滅に入ろう!」
ジャンヌが一声挙げる。
「よっしゃ!」
川村がバズーカを発砲する。街中を煙に変える。ジャンヌも姿を変える。大天使・ミカエルの力を借りたジャンヌは街に火を舞った。
「おおおーーー!!!」
その街の住民と思われる人物が悲鳴を挙げる声が聞こえた。
「よし・・・!!」
すみ子が銃を発砲した。周囲の膜が皆を包んで浮遊する。膜は炎の中に入って行くが、皆は膜の力で守られた為、燃える事はなかった。
「よし、手当たりで攻撃するぞ!」
「おう!」
山口が様々な矢を放つ。火薬と化して建物を爆発させ、川村もまたバズーカで建物を次々と吹き飛ばす。ヤス太郎も手当たり次第にパチンコの玉を飛ばして殲滅に加勢した。
「降伏しなさい!ここの者達!この地は平和を司る世界の物へと返させて貰います!」
エレーヌが布告する。その時、一部の炎に大きく砂が被さり、消火された。
「出たな、我らの敵め!」
一人の女性が現れた。
「お前がこの街の女王か!?」
山口が問答する。
「生憎だが、女王は逃がした。このシュヴルーズ公爵夫人が相手しよう!」
組織「義元」とシュヴルーズ公爵夫人の戦いが始まる。
後書き
次回は・・・
「陰謀主義の公爵夫人」
シュヴルーズ公爵夫人と交戦する事になったすみ子達は街の女王は逃がしたという事を公爵夫人の口から聞かされる。公爵夫人はどこに異能の能力を出す機械を仕込んでいるのか。そしてその女王はどこに行ったのか・・・!?
183 陰謀主義の公爵夫人
前書き
《前回》
李の森で蔡京を撃破したかよ子達は藤木を取り返す為に森を出る。そしてフランスを思わせる街に到着したすみ子達組織「義元」はその場で攻撃を開始する。そしてシュヴルーズ公爵夫人という女性との交戦が始まった!!
レーニン(杉山さとしの身体を核として動いている身ではあるが)はとある場所で状況を房子と共に確認していた。
「ほう、ところどころ襲撃が起きている。今、ルイ13世の王国に連中が攻撃しかけているとな」
「はい、他地区でも数々の街や川や山が奪い返されております」
「そうか・・・。重信房子。あの機械はまだあったか?」
「え?はい・・・」
「1個でいい。持って来い。それにこちらに来て剣を取り返さんとする連中も近づいているであろう?」
「はい」
「私もこの小僧を取り込んだのみではさらなる強化が望めん。また取り込む事ができるという事はまた新しい力を持つ事ができるという事だ。また一から我が能力を再構成する必要があるという意味でもあるが」
「畏まりました」
赤軍の長は今いる部屋から出て行った。
(再構成?どういう事だ・・・?)
取り込まれている少年はレーニンの言う言葉にこれからどうするというのか知りたくなった。
すみ子達は襲撃した街に住むシュヴルーズ公爵夫人と相対する。
「この街を荒らした罪を償ってもらうぞ!」
公爵夫人は襲撃者の面子を見て落胆する。
(こやつら・・・。杖や杯、護符の持ち主でも何でもないのか・・・。く、こんな雑魚共にやられるなど屈辱・・・!!)
「それはこっちのセリフだね!」
川村が発砲する。しかし、効果がなかった。シュヴルーズ公爵夫人もまた赤軍から支給された機械を持つ身であったのだ。その機械で防御を行ったと一行は判断した。
「皆!エレーヌと共に攻撃に入れ!防御は私がやる!」
ジャンヌが指示する。
「おう!」
ジャンヌは唱える。
「聖マルグリットよ、どうか、護りの力を!」
ジャンヌの頭上から天使が現れた。
「そんなもの、憎しみの投石を喰らうがいい!」
シュヴルーズ公爵夫人が大量の石を飛ばした。
「水玉で返り討ちにするでやんす!」
ヤス太郎がパチンコで水玉を飛ばす。ただ、石を防ぎきれない。ヤス太郎は幾度も玉を飛ばした。
「聖なる石を汚しおって!」
シュヴルーズ公爵夫人が睨む。機械から出る威圧の能力だった。
(う、体が動かねえ・・・)
山口達は金縛りにあったかのように公爵夫人に怖気づいた。
「耐えよ!」
その時、ジャンヌが召喚した聖マルグリットが皆を光で包む。皆にかかっていた威圧の能力が解かれた。
「今なら何とかいける・・・!!」
「機械の場所を探りますわ」
エレーヌが両手を左右に出して手首を回す。シュヴルーズ公爵夫人の機械の場所の探知を試みた。
「ありました。ドレスの左の袖です!」
「よっしゃ!」
山口は矢を放つ。
「ふ、そんな手、防いでくれるわ!」
しかし、その矢は公爵夫人を対象にしなかったからか、機械に命中し、爆破した。ドレスの袖も破れた。
「ああっ!」
シュヴルーズ公爵夫人は爆発に驚く。
「今だ、皆の衆!あの公爵夫人を倒せる!」
「了解でやんす!」
「おのれ!大事なドレスを!」
公爵夫人はドレスを破かれた事や機械を破壊された事に激怒し、巨大な岩ですみ子達に砲撃した。
「危ない・・・!!」
すみ子が銃を出す。岩石を壁で防ぐと共にシュヴルーズ公爵夫人に撥ね返した。
「きゃ、きゃああーーー!!」
公爵夫人に撥ね返す前よりも増した勢いで岩石がぶつかる。シュヴルーズ公爵夫人は避ける事も出来なかった。
「ああ・・・。もう、だめか・・・」
公爵夫人は瀕死の状態となる。そんな彼女にエレーヌが浮遊しながら近づき、告げる。
「この街は私達の世界に返還させていただきます」
「ふ、勝手にするがよい・・・。だが、女王はもう逃走に成功した。この地は、奪い返されるであろう・・・。それからあの杖、杯、護符も・・・、貰って、な・・・」
シュヴルーズ公爵夫人は最後の言葉で足掻きながら消滅した。その頃、ジャンヌの兵も丁度戦いを終えて戻って来た。
「皆様、この街の人間どもは殆ど殲滅しました!」
ジャンヌも召喚した聖マルグリットが消した。
「お疲れ様。濃藤すみ子、素晴らしき迎撃だった」
「あ、はい・・・。ありがとうございます」
すみ子は照れながら礼をした。エレーヌはただ一人無表情になっていた。
「エレーヌ。どうかしたのか?」
川村が聞く。
「はい。シュヴルーズ公爵夫人は女王を逃がしたと聞きました。つまり、ここに住んで統括していたと思われる人物は逃がしたという事です。もしその人物が生きていればこの地をまた奪還する可能性があるかもしれません。貴方達、もしかしたらその女王が報復として杖や杯、護符の持ち主を狙う可能性があるでしょう。本部守備班やそれぞれの持ち主に連絡をするべきです」
「分かった!」
山口は通信機を取り出して他の領土攻撃班、本部守備班、および藤木救出班に連絡を告げる。
「こちら領土攻撃班、山口。今、西側にある戦争主義の世界の街を取り返した。だが、そこにいる女王が逃げたという事だ。杖、杯、護符の持ち主、警戒してくれ!」
『了解。気を付けるわ』
護符の持ち主が返答した。
『ええ!?う、うん・・・!!』
杖の持ち主も返事が来る。
『解ったわっ!』
杯の持ち主の声も聞こえた。
(かよちゃん達・・・。守り抜いて・・・!!)
すみ子は切実に願った。
かよ子は山口の報告を受けてオロオロしていた。
「どうしよう、また私達の所に襲ってくる・・・!?・・・って、ああ!!」
かよ子は足を滑らせて羽根から落下してしまう。
「かよちゃん!」
のり子の人形の念力で完全落下は免れ、元の羽根の上に戻った。
「全く、おっちょこちょいすんなよ」
大野が窘めた。
「しかし、あの者達が戦っていた相手は西側の方だ。我々を襲うには方角が違いすぎてここまで襲いに来るだろうか?高速か瞬間で移動できる能力を持たぬ限りはな」
石松が考える。
「そ、そうか・・・」
「いずれにせよ、来る可能性はないとは言えん。頭に入れておこう」
「うん・・・」
かよ子はいつ障壁が来ようと構えなければと覚悟した。
レーニンは地図のような映像である事を確認していた。
「ほう、アンヌ王妃が難を逃れたか・・・」
レーニンは別の部屋へ移動する。
「どこへ行く気だ?」
核となる少年が質問する。
「なに、命を逃れた者に手を貸すのみだ」
ある馬車の群れが大急ぎで走行していた。
「シュヴルーズ公爵夫人・・・。ああ・・・、我が頼りの者、無事であろうか・・・」
一人の王妃が涙を流していた。
「きっとご無事ですよ」
「ええ、そうよね・・・」
長く走り続けた後、ようやく安全と思われる場所に到着した。
「はあ、はあ・・・」
「アンヌ王妃、ここなら安全です」
「ああ、ありがとう」
その時、その場に赤軍の人間が現れた。
「そこの王妃」
「あ、貴方は?確か赤軍の人間ね!」
「ええ、丸岡修と申します」
トランシーバーを取り出す。
「こちら丸岡修。レーニン様、逃げたという王妃と合流に成功しました」
『よかろう。トランシーバーを王妃に貸してやれ』
「はい。こちらでレーニン様と話ができます」
「え、ええ」
アンヌ王妃は丸岡からトランシーバーを受け取った。
「レーニン様」
『アンヌ王妃、無事だったか』
「ええ、何とか。公爵夫人達は?」
『今確認した所、倒されてしまったようだ』
「え・・・!?」
アンヌ王妃は聞きたくない事を耳にしてしまったと思った。
「そ、そんな!!ああ、公爵夫人!!」
王妃は号泣した。
『王妃、哀しいか。それならばお主も戦うが良い』
「戦う・・・?」
『そうだ、その憎しみを平和を司る世界の者やその者どもに肩入れしている者共にぶつけて始末する事だ。お主のいる位置ではそうだな、護符の持ち主が近い。南の方角にいる境界地の護符の持ち主から護符を手にするのだ』
「護符の持ち主・・・。ええ、恨みは晴らすわ!」
『丸岡修。貴様も同行せよ』
「了解」
アンヌ王妃は悲しみと憎しみを込める。
(仇を取るわよ・・・!!)
さり達は境界地の移動の為に領土攻撃班が殲滅した所へまた移動していた。
「お主ら!」
誰かが呼ぶ声がした。
「その声は・・・、清正!」
清正だった。
「二本の槍が治ったんか?」
「ああ、無事、この通りだ」
清正の持つ時の槍、そして空間の槍は元通りになっていた。
「それじゃあ、次へ行きましょう!あ、そうだ・・・」
さりはある事を伝えなければならないと思った。
「実は領土攻撃班の子が襲撃した街で敵の女王の人が逃げ切ったとか聞いたの。もしかしたら私達の所に来るかもしれないわ!」
「何と!我も警戒しよう。それでこの者も同行してくれることになった」
一人の女性が現れた。
「こんにちは。テレーズと申します」
後書き
次回は・・・
「護符を奪いに来た王妃」
テレーズを同行者に加えることになったさり達の元に早速襲撃者が現れる。アンヌ王妃と名乗る女と赤軍の丸岡修が護符を狙いに来ていた。強敵の登場にさり達は勝ち目が薄いと見て護符の能力で他の本部守備班に援護を求めようとするが・・・!?
184 護符を奪いに来た王妃
前書き
《前回》
山口、川村、ヤス太郎、そしてすみ子で構成される組織「義元」は戦争主義の世界のとある街を襲撃し、シュヴルーズ公爵夫人と交戦し、何とか撃破する。だがその街の女王は逃がされたとの事でエレーヌは杖、護符、杯の所有者に危害が及ぶのではと懸念する。そして平和主義の世界を死守するさり達の元に清正が戻って来る。そして彼と共に現れたのは・・・!?
こちら本部守備班。さり達護符の所有者の一行は清正と共に現れたテレーズと会った。
「テレーズ・・・?」
「そういえば・・・、ああ!!あの時の!!」
さきこは思い出した。妹達がアントワネットとかいう女性との対峙の時に援軍に訪れた時、勝利に貢献した女性だった。
「思い出してくれましたか」
「はい」
「『杖の所有者』達は今無事でしょうか?」
「ああ、皆藤木君の救出に進んでいます」
「となると、私が護符の能力で皆を援軍に行かせた時に会ったのね」
「はい、そうです」
テレーズはさりの方に振り向く。
「貴女が『護符の所有者』ですね?」
「ええ。羽柴さりよ」
「テレーズがここに来られたのは報復として欧州の王妃が赤軍の者と共にお主の護符を奪いに来ると彼女の剣が予知したからなのだ」
清正が説明した。
「王妃・・・」
「さりさん、もしかしてさっき山口君達が滅ぼしたって街に住んでいた王妃じゃないですか?」
「・・・は!そうね。となるとその当てつけに私を狙うって訳ね!!」
「全くその通りだ」
また別の声が聞こえて来た。
「あ、あんたは・・・、赤軍!?」
「そうだ。ほう、あの時の秀才のガキもいるのか」
長山はその男に見覚えがあった。
「お前ね。護符の持ち主とやらは」
また別の女性が現れた。
「あんたがその王妃って訳ね!」
さりは長山に確認を取る。
「長山君、会った事あるの?」
「はい、あの赤軍の人は前に僕を連れて行こうとしてました!」
「貰うわよ、私の住む街を消された恨みを消して、お前達の命もね!」
赤軍と恨みに満ちた王妃との戦いが始まる。
羽井玲衣子。本部守備班の一人であり、境界の西側を三人の同級生と共に死守している。以前、エルデナンドという侵略者から消されそうになった所を護符の持ち主達に救われた事がある。
(あの人達、大丈夫ばい?)
「羽井玲衣子嬢、不安な事がおありですかな?」
この世界の住民であり、玲衣子達と共闘している道真が聞いてきた。
「あ、その、護符の持ち主が今大丈夫しとっかな思うて・・・」
「ええ、そこは祈るしかありませんね」
その時、どこかしらから声が聞こえる。
『護符の持ち主です。今、赤軍と会ったわ。支援をお願い!!今出す黒い穴を通って!!』
聞いた事のある声だった。そして黒い穴が現れた。
「この声・・・。護符の持ち主の声やん!」
「え?よし、急いで助けに行くぞ!」
玲衣子達は穴を通った。
さりの護符が別行動中の本部守備班に自動で助けを読んでいた。
(これで増援が来れば・・・!!)
さりはそう思っていた。そしてアンヌ王妃と丸岡が攻撃を始める。
(先ずはどんな攻撃にも通じると認識させて・・・)
丸岡が認識術を設定した。アンヌ王妃の攻撃が全て通り、無効化されないと。
(そして矛盾術だ!)
丸岡は護符の能力に矛盾を起こさせた。
「このアナ・マリーア・マウリシアが裁きを下す!!」
アンヌがはめている手袋から光を放つ。
「なっ!」
さり達はその光をまともに受けた。武装の能力を持っているにもかかわらずである。
(俺やアンヌの持つ機械が働いているか・・・!!)
丸岡にアンヌ王妃が持つ機械の武装の能力がさり達に勝っていたのだった。
(あとはこれだな・・・)
丸岡が機械を通して威圧の能力を発動させる。
(目が見えない・・・。身体が動かない・・・)
さりが倒れた。
「しまった。このままでは護符が容易く奪われてしまうぞ!!」
清正は懸念した。
「お前らも消えて貰うよ」
丸岡が告げた。
「くう!」
清正が時の槍と空間の槍を視力が戻らない中、闇雲に投げた。
「そんな物、意味ないわ!」
アンヌ王妃が槍の攻撃をあっけなく手袋で無効化した。
(このままでは消される・・・!?)
清正が折角槍を新調したのにここで倒されるのかと絶望的になった。
「これで護符は貰うわよ。そして貴方達全員、消えなさい!!」
アンヌ王妃が消滅の光線を手袋から放った。
玲衣子は友達と共に護符で作られた空間移動の穴を通る。
(あの人、大丈夫とか?)
出口が見える。しかし、自分達がいた所と同じ場所だった。
「え?どげんなっとんばい?」
「おかしか!」
「どうやら護符の所有者と相対している者の仕業のようですね」
道真が冷静に答えた。
「どうすんばい?」
友達の男子が聞く。
「なら!」
玲衣子はペンで空中に円を描く。
「これで移動するばい!」
「おう!」
一行は円の中に入った。
同じ頃本部の一室。かよ子の母達は境界付近の護符の所有者に異変に既に気付いていた。
「大変な事になったぞ。赤軍まで加勢に来た!」
「それって?」
「ああ、丸岡修とかいう人間だ。聞いた話では以前にも6月に清水に現れて長山治君を利用する為に連れて行くのと共に杖を奪いに来ている。さらにクリスマス・イブの日には杯の所有者とも戦っている奴だ!」
「え?じゃあ、あん時健ちゃんが追っ払ったのがそいつ?」
奈美子がいう「あの時」とはまだ護符を娘に引き継ぐ前の事、甥とその友人に富士山の神の力が籠ったお守りを護符で出して二人に持たせた時だった。
「ああ、それだけじゃない、彼は広島にある剣を奪った本人だ!それに奴の能力はかなり厄介だぞ!」
「ええ!?さり、大丈夫なん?」
「兎に角こちらからも連絡を行う!」
イマヌエルは通信機を出して本部守備班全員に連絡を出す。
「こちら本部イマヌエル。本部守備班全員に告ぐ。只今護符の所有者が赤軍及び強敵と交戦中!空間移動を施す為、可能な者援軍求む!」
イマヌエルは動員を求めるのだった。
「イマヌエル、私も参りましょう」
「フローレンス、君が動いて大丈夫なのか?」
「はい、それほどの強敵ならば護符の所有者もただではすみませんはずです」
フローレンスが外へ出た。
「ところでイマヌエル。その赤軍は長山君を利用しようとした事があるみたいだったけど、どうして長山君が必要なの?」
まき子は赤軍の人間がなぜ長山が必要になったか気になっていた。
「それは長山治君は秀才な少年だ。非の打ち所がない。赤軍はそれゆえに彼の才能を利用して計画を完成させたがっているんだ。それにもう一つ、彼を藤木茂君の知り合いでありながら藤木茂救出班ではなく本部守備班に配属させた理由は・・・」
「それは?」
「長山治君には数少ない威圧の能力を持つ者ではあるが、三河口健などの他の持ち主とは異なり敵の世界の創り主にとっては彼の能力を利用すればこの世界を上手く乗っ取りやすいのだよ。彼を他の班に配属させたら赤軍や敵勢力の人間にとって敵地に出向いている山田かよ子君、安藤りえ君と共に襲撃する対象になってしまうんだ。前にも清水で彼が襲われた事があったと聞くからね、護符と共に本部守備班全員で守って貰いたいんだ」
イマヌエルは願った。全員で護符と共に長山治を保護しぬく事を。
アンヌ王妃と丸岡は勝ち誇った。
「終わったか・・・」
光が消える。全員死によって消滅すると全員予想していた。しかし、さり達は倒れてはいたものの、死んではいなかった。
「な、これは・・・!?」
「どういう事!?私の力は誰にも妨げられないはず!」
一人の女性が倒れることなく立っていた。剣をかざしながら。
「この宝剣でラファエルとアズライールの能力を使わせてもらいましたわ」
その女性はテレーズだった。
後書き
次回は・・・
「手袋と宝剣」
アンヌ王妃の手袋に対し、テレーズが己の宝剣で迎撃する。テレーズはその宝剣の能力でさりの護符を守り抜く事ができるのか。そして他の本部守備班の人間が次々と応援に現れる・・・!!
185 手袋と宝剣
前書き
《前回》
本部守備班を担うさり達はテレーズという人間と出会う。だが彼女らの所に街をすみ子達に襲撃されて逃げて来たというアンヌ王妃が赤軍の丸岡修と共に現れる。だがアンヌ王妃の手袋に丸岡の認識術と矛盾術に苦しめられてしまい、昏睡する。護符を手にしたと思ったアンヌ王妃と丸岡だったが、テレーズが祖母・テレジアから受け継いだ宝剣がさり達を防御した!!
アンヌ王妃はテレーズが五体満足で立っている事が気に食わなかった。
「私の攻撃が効かなかったですって!?厚かましい!丸岡修殿!あの女にも制裁を!」
「あいよ!」
丸岡は矛盾術を行使した。しかし、効かない。
「この宝剣が全てを守ります!」
「何!?」
そして宝剣から光が放たれる。
「ふざけた剣ね!まとめてやっつけてやるわよ!」
アンヌ王妃の手袋の光とテレーズの宝剣の光、それぞれの光がぶつかり合う。
「王妃、威圧の能力を出すぞ!」
「了解!」
丸岡とアンヌ王妃が機械より威圧の能力を発動させた。
「これであの女も倒れる。そしてこいつら全員討ち死にだ・・・」
しかし、効かない。
「これで私の宝剣が突破されるわけにはいかない!ミカエルよ!」
テレーズは宝剣の能力を最大限に発動した。テレーズの宝剣の光線がアンヌ王妃の手袋の光線に威力が勝る。そして、丸岡、アンヌ、二人の機械が全て粉々に破壊された。
「な!?」
「あ、あの剣を撃破しないとあの女は倒せぬ!」
「なら、認識術と矛盾術を最大限に使わせて貰う!」
丸岡はアンヌ王妃の攻撃は全て通じる認識術をかけ、テレーズの宝剣の攻撃および防御は全て通用しなくなるという矛盾術を掛けた。
(これでは機械を壊した意味がない・・・!!)
その時、声が聞こえた。
《テレーズよ。聞こえるか》
聞き覚えのある声だった。
「これは、テレジアおばあ様?」
《左様。アズライールの能力を借りて皆を起こすのだ。戦う者達を回復させれば勝機はこちらに傾く》
「やってみます!」
テレーズは倒れている皆に剣を向けた。皆が起きた。
「は・・・」
さり達が起き上がった。
(私は確かあの女の攻撃でやられて・・・)
「皆様、逆転のチャンスです!」
「う、うん!」
そしてさきこのサファイアが光り出す。その時、丸岡の矛盾術と認識術が解除され、アンヌ王妃の手袋も無効化された。そしてさりの護符が光り出すし、地面から二台の大砲が出現した。
「行け!」
大砲から巨大な砲弾が放たれた。丸岡とアンヌ王妃が弾き飛ばされる。
「あああ!!」
「て、撤退しましょう、王妃!」
「逃がすか!」
清正が時の槍を地面に刺す。丸岡とアンヌ王妃が金縛りにあったように動かなくなった。
「もう一発!」
さりが大砲を言葉で自動発砲させた。アンヌ王妃が粉砕されて消滅した。丸岡については長山が眼鏡で念力を丸岡にかけ、自分の方に寄せた。
「て、てめえ・・・」
丸岡は矛盾術を発動させた。長山の念力が途切れた。
「しまった!」
丸岡を取り逃がすかと思った。その時・・・。
「させんばい!」
「え?」
四人の少年少女が穴から現れた。その内の一人の男子が縄跳びに使う縄のような物の先端を投げた。丸岡の矛盾術が解除された。
「何!?」
「お前の能力はこれで暫く使えんで!」
「ちい!ならてめえから片付けてやる!」
丸岡が現れた者達の能力を無効化させるよう別の矛盾術を行使した。しかし、また、別の人間が他の所から現れた。男性の三人組だった。一人はギターを、もう一人はトランペットを、更に一人は太鼓を持っており、いかにも音楽バンドのような人物達だった。
「俺達も手助けするぜ!」
三人組が各々の楽器を奏で始める。丸岡の周りに渦が巻き、丸岡の視界が遮られる。更には丸岡に電撃を喰らわせる。
「おおお・・・!!」
丸岡は矛盾術で回避した。
「三人共、あの人は赤軍の人間よ!殺しちゃまずいわ!」
さりが呼び掛ける。
「何!?」
「よし、俺がとどめを刺してやる!」
また別の一人がトランペットを吹く。術を全て無効化かつ使えなくする音波を発した。
(な、矛盾術が使えん!?)
丸岡も流石に対処できなかった。
「これで何とかなるはずだ」
「お疲れ様でした、皆様」
フローレンスが現れた。
「フローレンス!?」
「あの赤軍の人間は私が始末しておきましょう」
フローレンスは渦の中に飛び込んだ。
「だ、大丈夫なんか・・・?あの渦に当たりよったら簡単に溶かされたるばい!」
「大丈夫です。私には貴方達の攻撃を喰らいますような事はございません」
そしてフローレンスは丸岡と対峙する。
「貴様は・・・」
「貴方には眠って頂きます」
フローレンスは指を丸岡に向けた。丸岡が昏睡した。そしてフローレンスは渦を消し、皆の前に姿を現した。
「皆様、危ない所でしたわね。テレーズ、素晴らしいご活躍でした。貴女のおばあ様も素晴らしく思われていますに違いありません」
「ええ・・・」
「それにしてもそいつはどうするの?」
さりが聞いた。
「この人は私本部の方に預からせていただきます。それにしてもこの人は能力が非常に厄介ですからね、相当厳重に監禁しなければなりませんでしょう。皆様、よくご健闘になられました」
「あ、はい・・・!」
フローレンスは丸岡を連れて本部へと飛行して戻って行った。
「皆、私達の為にありがとう」
「いやあ、俺達遅れてすいません!」
三人組の男性は謙遜した。
「うちらも、お姉さん達が無事でよかったばい・・・」
「あら、玲衣子ちゃん。友達と来てくれたの?」
「うん・・・」
「俺達も助けに来ました!」
「ありがとう、戻って大丈夫よ」
「うん・・・」
玲衣子達は同級生達と共に持ち場に戻って行った。玲衣子がその場で円を描き、皆はその穴の中に入って行った。
「それじゃ、俺達もこれで失礼します」
三人組の男性も一人の男の太鼓によって一瞬で消えて行った。他の本部守備班も各々の道具の能力で戻って行った。さりは通信機を出して連絡した。
「こちら本部守備班、羽柴さり。アンヌ王妃って女を倒したわ。それから赤軍の丸岡って男もフローレンスが来て回収したわ」
『了解』
各々から返事が来た。
「あのアンヌって人は結局どんな人なの?」
さきこはテレーズに質問する。
「あの人は我が国だったフランスの王妃の一人です。生まれはスペインですが。フランスの政治を行っていたのですが、お母様と同様に市民の事を考えていなかったので可愛らしい女性と思われていましたが、それでも反感を買われたとか。あの人の姪が私と同じ名前だと思うと何か恥らしい・・・」
「同じ名前なのね」
「そういえば昔のフランスは市民はとても苦しんだって聞くな」
長山も思い出すように呟いた。
「はい。貴方達が戦いましたお母様、アントワネットも同じく、自分は贅沢をする一方、国民の苦しい生活など顧みなかったのです」
「そうだったのね・・・」
「長山治さんと言いましたね」
「あ、うん?」
「フローレンスから聞いていますが、貴方のその賢さで一度赤軍に狙われたそうですね。あの赤軍の男もきっと貴方が狙いのかもしれません。お気を付けてください。貴方の賢さを赤軍に利用されると敵の世界の方が優勢になる可能性が高いのです。フローレンスもイマヌエルも貴方を藤木茂救出班に選抜しなかったのはその可能性を考えて本部の区域に置いていたのでしょう」
「うん、気を付けるよ・・・」
長山は己も狙われやすい身であると改めて知るのだった。
(この宝剣とアンヌ王妃の手袋のぶつかり合い、激しいものだった・・・。ハプスブルク家やブルボン家との戦いはこのくらいかそれ以上の過酷なもの・・・)
テレーズはアンヌ王妃の手袋と自身の宝剣の凌ぎ合いを振り返るのだった。
「奴等を倒したか・・・」
山口達は護符の所有者からの報告を受けていた。
「エレーヌ、あのアンヌ王妃ってのが私達が倒した侯爵夫人ってのと関係あるの・・・?」
すみ子は確認した。
「はい、アンヌ王妃はシュヴルーズ公爵夫人を側近として信頼していた者です」
「つまり、そいつを倒したから、その王妃が怨みを持って襲ってくるって事はもうないでやんすね」
「いえ、そのアンヌ王妃の家系もまだいるはずです。浮かれている場合ではありませんね」
「うん、そうよね・・・」
かよ子達はさりからの報告を聞いてホッとした。
「本部守備班が赤軍とぶつかったのか」
「ああ、護符が狙われそうになったとな」
「でもあのお姉さんや長山君、無事だったんだね・・・。よかった・・・」
かよ子はホッとした。
「まあ、私みたいにおっちょこちょいしない、か・・・」
かよ子達は先に進むのだった。
後書き
次回は・・・
「動き始める帝王」
己の身体の動きを保つ為に杉山を自身の体内に取り込んだレーニンは捕虜となった赤軍の人間を奪還する為に行動を開始する。そして丸岡を本部へと連行したフローレンスの元にある声が聞こえてくるのだが・・・!?
186 動き始める帝王
前書き
《前回》
アンヌ王妃や丸岡によって倒されかけたさりや長山達だったが、テレーズの宝剣の防御によって護符や長山の奪取は回避される。そして再起したさりは護符で本部守備班を招集させ、アンヌ王妃を撃破し、丸岡を捕え、その場に現れたフローレンスによって回収された。その報告を受けたすみ子やかよ子達は落ち着いて次へと進む!!
戦争を正義とする世界の本部。レーニンの元に赤軍の長・重信房子が異能の能力が出せる機械を持って来た。
「お待たせいたしました、レーニン様」
「ありがとう」
(こいつ・・・、この機械で何をする気だ?)
取り込まれた少年、杉山さとしは不可解に感じた。
「あの偽物の道具で私の身体を封じおって・・・。繋ぎとしてこの力を吸収するか・・・」
レーニンの身体に機械が吸い込まれる。
「これで『あの者』達と同じような能力が持てる。それにこの小僧も取り込んでいる為に一部の能力もさらに強くなるはずだ」
「それは良かったですね」
「だが、幾度も連中はしくじりおって・・・。全く不甲斐ない奴等だ」
「は、はい・・・」
(こいつ、『あの高校生』みてえになったって事か・・・!!)
「では、状況を確認しよう」
レーニンは別室に移動し、ある場所に地図のような物が映像の如く張り出されている部屋へと向かった。
「ところで、護符の奪取に派遣させた貴様の徒である丸岡修の様子がおかしいぞ。奴は本部へと向かっている。重信房子、貴様のその通信の道具をこの台に置くのだ」
「はい」
房子はトランシーバーを映像の下にある白い台に乗せた。丸岡修の様子が映し出された。
「こ、これは!?」
丸岡はとある女性によって担がれている。
「あれは敵の世界の長の一人らしいな」
「敵の世界の長ですって!?」
「ああ、奴の能力は非常に強力だ。それを打ち破れるのは殆どおらん。非常に不愉快な女だ。協力者として杖、護符、杯の所有者はじめ、多くの『向こうの世界の人間』を派遣させているだけでも厄介だが、己まで前線に出おって」
レーニンは動き出す。
「おい、まさか、行くというのか?」
もう一人の声、「杉山さとし」が聞く。
「ああ、それに赤軍の僕ども二人も捉えられていると聞くからな。動かねばなるまい・・・ん?」
レーニンの姿に異変が起こる。そして杉山さとしの姿になった。
「ここは俺が行くよ。そうしねえと面白くならねえからな」
「お前は・・・」
「貴様、また勝手に出おって!!」
「それに、俺にはあいつらに世話になった礼もしてえんだよ」
「礼だと?」
「ああ。それにまだお前は本格的に動けねえ」
「そうか、まあ、監視社会にソ連を創り上げた私だから遠隔で攻撃する事も可能だが、それでやろう」
レーニンは己の意志を丸岡修に繋げた。
フローレンスは丸岡を本部へと護送していく。
(しばらくこの男は起きませんから、足立正生と吉村和江と同じく個室監禁に・・・)
その時、丸岡は急に起きた。
『丸岡修、聞こえるか?レーニンだ。今は女に気付かれるといかんし、この声は貴様にしか聴こえん。喋ってはならぬぞ。今は敵の本部へとわざと連れて行かれるのだ。そして政治委員の足立正生と吉村和江を救出するのだ』
(了解・・・)
丸岡は無言で返事した。その際、丸岡は認識術を己に寝ているとフローレンスに認識させた。
「・・・まさか、起きてますか?」
フローレンスは仮に起きても狸寝入りで誤魔化すだろうと考えていた。
「起きていますのですね、そうでしょう?丸岡修さん。貴方の認識術は見破られていますよ」
フローレンスはそれでもあえて丸岡を本部へ連れて行った。フローレンスは瞬間移動の如く本部へと戻った。そして建物内のある個室へと入る。
「ここに入れておきましょう・・・」
フローレンスは丸岡をベッドに置いた後、部屋を去った。
(かかった・・・!!)
丸岡は認識術を行使する。出入口の扉をすり抜けられると認識させて扉を抜けた。
「やはり、わざとここへ連れて行かれます事を図っていましたか」
すぐ前にフローレンスが待ち伏せしていたのだった。
「ああ、そうだよ。確かに俺の術はてめえに通用しねえ。だが・・・」
丸岡はそれでもにやりと笑う。
「その術を俺自身にかける事は無効にならねえよな?」
丸岡は己に認識術を掛ける。すぐ目の前に囚われている二人がいて、彼らに会いに行けるという認識を自分に掛けた。
「な・・・!!」
丸岡はいつの間にか吉村と足立の部屋へと駆け込んだ。
「足立、吉村、無事だったか」
「ええ」
「逃げるぞ」
丸岡は認識術で先に見える廊下がすぐにレーニンや房子達のいる所に繋がるという認識を立てた。
「待ちなさい!」
フローレンスが追う。
『丸岡修一人の力だけではないぞ』
別の声が聞こえた。
「な、誰ですか!?その声は!?どこにいますのですか!?それとも別の場所から遠隔して話していますのですか!?」
『鋭いな。いかにもその通りだ。平和を司る世界の主の一人よ。私の力を奴等にも一部与えているのだ』
「となりますと、貴方は戦争を正義とします世界の長ですわね。名は確かレーニンといいます・・・」
『そうだ、そちらが預かっているという足立正生と吉村和江は返却させていただく』
丸岡、足立、そして吉村が姿を消す。フローレンスが阻止を試みるも何らかの眩しい光が放たれ、フローレンスに目潰しを喰らわせた。
(しまった、あの者が動かれますなんて、しかし・・・)
フローレンスは一つの事が引っ掛かった。開けられない目を閉じたまま敵の世界の帝王に聞く。
「貴方は偽物の護符、杖、杯で動けなくなっています筈です。それにあの機械も偽物の道具の作用で不具合も生じますようになっています筈です。なぜ、動けますのですか!?」
『それは・・・、俺が協力したからだよ』
レーニンの声が少年の声に変わった。
「その声は・・・!!」
フローレンスは驚愕した。そんな事があっていいのか。招集した者の内に一人裏切り者が出てきた事が。暫くしてフローレンスはやっと目が開けられるようになった時には赤軍の人間は姿を消していた。
戦争を正義とする世界の本部。レーニンと房子の元に丸岡と政治委員の足立、吉村が瞬間移動のごとく現れた。レーニンはトランシーバーを台から外し、房子に返した。
「修、よく戻ってこれたわね。正生、和江、無事でよかったわ」
「ええ、ご迷惑をおかけしました」
「しかし、すみません。護符を奪えず・・・」
「今はいいのよ」
房子は宥めた。
「これで赤軍の欠員が戻って来たか。これで貴様らの勢力も再び万全になるな。またあの機械を持って劣勢になっている我が世界の者共に支給するのだ」
「了解しました」
房子達は退室した。
「俺のあの一言であの女も相当ショック受けてんだろうな」
「それだけで十分だったのか?」
「ああ、それに俺にもお前達と一緒になって大将だって事を解らせてやりてえんだ」
杉山さとしは思い出す。あの日、おっちょこちょいの女子の隣に住む高校生との決闘で敗れた時を。
(俺は、臆病者なんかじゃねえ!大将になってやるんだ!それで・・・)
杉山さとしが心の奥底で何を考えているのか、これだけはレーニンでも知らなかった。
後書き
次回は・・・
「人食い鬼、ナポレオン」
藤木の救出に動き続けるかよ子達の元にまた次の刺客が立ちはだかる。かよ子達と激しい攻防になるが、相手はかなりの強敵で革命を起こした英雄から領土拡大の為に野心に溺れた者だった。その男はナポレオンといった・・・!!
187 人食い鬼、ナポレオン
前書き
《前回》
さりの持つ護符を奪取しに来た丸岡を本部へと護送するフローレンスだったが、同じ頃ある少年の力を借りて復活した戦争主義の世界の長・レーニンが復活。レーニンはテレパシーを利用して丸岡に捕虜とされている赤軍の政治委員・足立正生と吉村和江の奪還を命じる。そして丸岡の認識術で足立と吉村の奪還を許してしまう事になり、フローレンスは己のしくじりを悔いる。テレパシーで話しかけるレーニンにフローレンスは問答するのだが、杉山がレーニンの協力者となった事を知る!!
オリジナルキャラ紹介・その16
青葉政美 (あおば まさみ)
仙台に住む女子高生。初登場112話。男勝りの気の強い性格をしている。武装の能力を所有する。超能力、飛行、索敵、体の一部の武器化、怪力、火炎放射、生物・無機物問わずの変身、水中移動、高速移動の九つの能力を使用可能なマフラーを用いて戦う。本作では三河口ら剣奪還班として行動中。好きな食べ物はおかかのおむすび、カステラ。
フローレンスは赤軍の政治委員を取り返された己の失態を悔やんでいた。
(な・・・、あの子が、裏切り者、に・・・)
それだけではなかった。一人の少年が敵側に寝返ったという事実を受け入れられずにいた。そして各々の動向を確認する部屋に戻った。
「フローレンス、赤軍の人間が攻めてきたって聞いたが」
イマヌエルが確認する。
「はい、丸岡修によって足立正生と吉村和江を取り返されました。失態を犯してしまい、申し訳ございません」
「ああ、そう思ったよ。なにしろ二人の気配が消えたからね」
フローレンスはもう一つの事が気になった。敵の世界の長が遠隔で丸岡を援護していたと共にそのレーニンが動く為の核としているのが一人の少年と言う事だった。
(安藤りえちゃん達が杉山さとし君の捜索をしていますとなりますと伝えませんといけません・・・。しかし、それともう一つ・・・。剣を取り返します者達にもこの事実を伝えませんと・・・)
こちら藤木救出班。かよ子達は先に進んでいる。
「しかし、赤軍の者をひっ捕らえたとなると向こうも痛手を負うだろう」
次郎長は分析する。
「うん。それならきっと敵も倒しやすくなるはずだよね・・・」
かよ子はもう一つ、あの男子の事を思い出す。
(杉山君・・・。藤木君を取り返したら、今度は杉山君を連れて帰るよ・・・!!りえちゃん達の手助けしないと・・・!!)
一群の騎馬隊が追う。
「足止めをして、杖を奪うぞ」
「はい!」
(妻よ・・・。その杖を共に見せてやろう・・・)
その男は革命を起こした男であると共に、殺戮を繰り返し、帝王と化した暴君であった・・・。
かよ子は周囲を見渡す。平野が広がっていた。
「ここは何もないけど、いったいどんなところなの?」
「聞いた話では、ここに住んでいた者は祭りなどをして遊んでいたようだ。だが、その者達も敵の侵攻で一人残らず虐殺されてしまったとの事だ」
大政が説明した。
「そんな、ひどい・・・!!」
「あたしもここに住んでいる豚とか鳥とかを貰った事があったよ。あん時は豚カツとか焼き鳥とか作ったなあ」
「お蝶の料理は美味いからな。お主らにも食わせてやりたいくらいだ」
「おお!楽しみじゃ!」
「また遊びに行きたいねえ」
「まるちゃん、私達は遊びに来たんじゃないんだよ」
かよ子は忠告した。
「う・・・」
「おい、また何か攻めて来る気配がするぜ!」
大野が不安げになった。
「なぬ!?」
関根が指を差す。
「あそこだ!!」
それは騎馬隊だった。
「いたな!やるぞ!!」
騎馬隊が攻めて来る。矢と投石が羽根に乗るかよ子達を襲う。
「う!!」
羽根の結界が働いた。
「纏まるとまずいな。一部の者、羽根から降りるぞ!」
次郎長が促した。
「うん!」
のり子の人形・キャロラインが一部の人間を瞬間移動させる。かよ子やブー太郎、大野などは羽根の上に残ったが、石松や椎名、関根などは別の場所に移動し、二手に分かれた。かよ子は花火をリュックから取り出し、爆薬を操る能力を得る。
「いけっ!」
かよ子が火薬を飛ばす。軍隊の一部に命中した。
「ふ、そんなものが怖いと思うか!」
「・・・え?」
軍は傷一つも負っていない。機械から武装の能力が働いているとかよ子は感づいた。
「あの者は・・・、ナポレオンだな!」
羽根に乗っている次郎長が解説した。
「ほう、ナポリタンか!美味しそうな名前じゃな」
友蔵が聞き間違いをした。
「ナポレオン!嘗てはフランスで革命を起こした英雄だが、無理に領土拡大を行い、その為に殺戮や自分の軍の犠牲すらも顧みなかった事から人喰い鬼と罵る者もおる」
「ひ、人喰い鬼・・・!?」
かよ子は顔が真っ青になった。
「山田かよ子!オロオロしておる場合ではない!お主は絶対に結界から出るな!」
「うん!私の杖が狙いなんだよね!?」
「いかにも」
喋っている間にもナポレオンの軍勢は攻撃を続けてくる。地面に降りた石松や大政が迎撃に出る。
「ナポレオン!何処だ!?」
「邪魔者をまずは片付けるとするか」
ナポレオンはまず石松達を始末しようとした。
「のり子ちゃん!」
「うん!」
のり子とキャロラインが合体する。飛んでくる矢を超能力で跳ね返す。しかし、合体に限界を感じた。
「う・・・、これは?」
急に合体が解かれた。
「まずいな、威圧の能力を出されたか!」
石松はこれでも劣勢と感じていた。石松は右目の眼帯を外す。
「貴様らは領土を次々を奪ってくれた。崇徳院の怨霊によって呪われよ!」
「石松、右目を使ったか!」
次郎長は石松を心配した。
「ち!俺達もグズグズしてる暇はねえな!」
大野が草の石を、ブー太郎が水の石を出す。茨が鞭や槍となってナポレオンの軍勢を薙ぎ払おうとブー太郎が大きい渦潮を作り出して溺れさせようとした。しかし、依然、彼らは異能の能力を使用できる機械を所持している為、効果がない。しかし・・・。
「う、うごっ!?」
一部の兵が抹殺された。機械に不具合が起きたようだった。
「今が好機かもしれぬ。山田かよ子、お主の杖も使え!」
「うん!」
その時、大野が持っているもう一つの石、雷の石(元々は杉山の物だったが)が光、雷が現れた。
(そうだ、あれで雷を使う能力を出せば・・・!)
かよ子は雷の石に杖を向け、雷を操る能力を得た。
「いけえ!」
かよ子の杖から雷が放電される。
「ぐあああ!!」
多くのナポレオンの兵が黒焦げにされて消滅した。
「な・・・、杖の能力、あれが・・・!!」
ナポレオンは自身の持つ機械に宿す見聞の能力でそれが杖による雷撃と見切った。
「あの小娘か・・・!子供とて容赦はせん!」
ナポレオンの馬が跳んだ。それも馬にしては尋常ではないほど。
「え、ええ!?」
かよ子は驚いた。
「な・・・」
「早く、あの子達を守らねば!}
椎名が促す。
「おうよ!」
関根が忠治の刀を振るう。ナポレオンを吹き飛ばそうとした。しかし、彼の武装の能力が働いたのか、効果がなかった。ナポレオンがかよ子の乗る羽根に近づいてくる。
「あ・・・、で、でも、この羽根の結果で守られるはず!」
「杖を寄こして死ね!」
ナポレオンの威圧の能力が働く。防御に特化した武装の能力を持つかよ子はそれで羽根の結界と合わせて防ごうと試みた。
「あ・・・」
かよ子の意識が遠のく。
「山田かよ子!」
次郎長が呼ぶ。しかし、かよ子は起き上がれなかった。ナポレオンが剣を振りかざす。しかし、ナポレオンの剣をもってしても羽根の結界は破れなかった。能力は通じても羽根の結界は剣には無力だった。
「これでは山田かよ子が危ない!」
「よし、俺の槍を喰らわせてやる!」
大政が槍を出現させた。
「でえーい!」
大政が槍を大きく振るった。
「一体、何が起こるんだ!?」
椎名達には大政がこれから何を行うのか分からなかった。
後書き
次回は・・・
「大政の槍」
かよ子の杖を奪おうと、結界に弾かれながらも喰らいつくナポレオン。彼女の防御に加勢しようと次郎長の子分の一人、大政が振るった槍はナポレオンにどう通用するのか・・・!?
188 大政の槍
前書き
《前回》
行方不明の藤木を奪還する為に捜索を続けるかよ子達藤木救出班はナポレオンという男と遭遇し、交戦する事位になる。かよ子達は迎撃するのだが、ナポレオンの持つ異能の能力の機械を使ってかよ子達を苦しめる。かよ子は己の杖を取られまいと武装の能力で防ごうとするが、ナポレオンの威圧の能力で気を失ってしまう。だが、ナポレオンもかよ子の羽根の結界を破る事ができない。そこに大政が迎撃する!!
気を失ったかよ子はまだ起き上がれずにいた。
「お前は結界の中に入れねえ。その前に俺達でぶっ倒してやるぜ!」
大野が宣告する。
「やれるものならやってみるがよい!」
ナポレオンは剣でまた結界を破ろうとする。
「こんな結界・・・!!」
大政が槍を振るう。
「これでも喰らえ!」
大政から白い光が放たれ、かよ子の羽根の結界を包んだ。
「こ、これは・・・!?」
椎名と関根は大政の行動に驚いた。
「大政の槍は自在に銅や鉄などの作り出せるのだったな・・・」
石松が説明した。
「そんな事が・・・!!」
かよ子の羽根が大政の槍の能力で結界が鋼に包まれる。
「これは何・・・!?」
「これは、大政の能力だ!」
「大政の?」
「大政は己の槍で金属を精製する事ができるのだ」
次郎長が説明した。
「そうか」
「これならナポレオンも苦労するであろう」
ナポレオンは剣を振るうが、大政の出した鋼は硬度が高く、逆に自分の剣が折れてしまった。
「な・・・!!」
「大政、やるな!」
「おう!」
ナポレオンは下方を確認する。
「あの者の仕業か・・・!」
ナポレオンは馬を降下し、大政に襲いかかる。
「貴様の剣は折れた、どう抗うという!?」
「機械を壊させて貰うぞ!」
関根が忠次の刀を振る。しかし、効かなかった。
「こやつ、機械を複数持っとるな!」
「え!?」
のり子は自分の人形を使って探知した。
「キャロライン!」
「うん!」
キャロラインが機械の数を確認する。
「・・・この人、機械を六つ持ってるわ!」
「六つも!?」
「これでは手強すぎる!山田かよ子も気絶するわけだ!」
「この!」
関東の綱五郎が銃を発砲する。しかし、ナポレオンにあっけなく防がれた。次郎長のまた子分の一人、法印大五郎も錫杖を使用して結界を張る。しかし、ナポレオンの機械の威圧の能力が働き、あっけなく破られた。
「為す術がない・・・、か!!」
「余に不可能な事はないのだ!纏めて殺す!歩兵達よ!」
ナポレオンが歩兵に殺害指令を出した。
「な!!」
「くう!!」
大政がもう一度槍を振るう。鋼鉄が無数に出現し、ナポレオンの歩兵達を返り討ちにした。
「歩兵達には機械を仕込んでおらんのだな!」
「ああ、私だけで十分だ!」
「それで、貴様は武装の能力を持て余しておるぞ!それで歩兵達も守れたはずだ!」
「構わぬ!自分が勝てる為なら捨て駒も厭わん!」
「腐った奴め!」
大政はもう一度無数の鋼鉄の槍を飛ばした。そしてナポレオンにも飛ばす。
(力づくでも・・・!!)
しかし、ナポレオンに弾き返される。その槍が石松達の所へ逆戻りしていく。
「撥ね返されたぞ!」
「く!」
のり子の人形の念力、関根の刀の振りによる粉砕により、石松達の攻撃は回避された。しかし、依然と劣勢のままである。
次郎長は大政の鋼の包を刀で消した所で状況を確認する。
「な、我々が劣勢とな!」
次郎長は子分達が苦戦している事に何とかしなければと考える。
「山田かよ子、起きよ!」
しかし、かよ子は気絶したままだった。
「なら!」
大野はポケットから雷の石を使用する。電気ショックでかよ子を起こした。
「うわっ!わ、私、どうしてたの・・・!?」
「山田、起きたか!今大変な事になってんだ!」
「大変な事!?」
「下を見よ!」
かよ子は羽根の下を確認する。のり子や次郎長の子分たちがナポレオンの軍勢に苦戦していた。
「か、加勢しないと!」
「山田かよ子、拙者の刀を利用せよ!」
「うん!」
かよ子は次郎長の刀に杖を向け、杖を剣に変化させた。そして羽根を地上へと急降下させた。
「ナポレオン!絶対に倒すよ!」
「かよちゃん、気を付けて!この男、機械を六つ持ってるわ!」
キャロラインが伝達した。
「六つ・・・!」
「そうだ、貴様の行動は無駄な抵抗に過ぎん!」
かよ子は足が震える。剣に変化した杖でこの革命家の首を斬る事ができるのか。機械を狙おうにも機械同士が護り合って跳ね返されるだけである。
「だからって、杖を簡単に渡すおっちょこちょいなんかしないよ!」
「オイラ達も手伝うブー!」
ブー太郎達も加勢する。
「よし!行くぞ!」
ブー太郎の水の激流、大野の石の能力による大木の殴り攻撃、そして雷の石の放電、まる子の石の火炎放射、四つの力の石が纏めてナポレオンに襲いかかる。しかし、それでも容易く防がれた。
「跳ね返してその結界を壊してくれる!」
ナポレオンは四つの石の攻撃を反射して結界を強引にでも破るつもりだった。それでも羽根の結界は強固で破れなかった。そしてそれだけではない。
「破れん・・・!何!?」
ナポレオンは目を丸くして驚いた。羽根の上に杖の所有者の姿が見えないのだ。
「私はここだよ!」
「な!」
かよ子は大野達の攻撃の隙にナポレオンの背後に周り込んでいた。
「えい!」
かよ子は機械を破壊できる可能性が著しく低いと解ってはいても、それでも僅かな可能性を信じて剣をナポレオンに突き刺したり、斬りつけたりした。そして壊れる音が聞こえた。
「貴様・・・!!」
「四つ、壊したよ!あと二つ壊されたら何もできないよ!」
「貴様・・・!!殺す!」
ナポレオンはかよ子に怒りの形相を向けた。
「くう!」
大政は槍をまた振るった。青銅の巨大な楯がかよ子の前に現れた。更に後ろから小政や石松、関根が襲い掛かる。
「貴様の剣は壊れている!あとはその機械を頼るのみだ!」
「だが、その機械もまだあと二つあるのだよ!愚か者共!」
ナポレオンは更に言葉を続ける。
「それに私の武器は剣だけではないぞ!」
ナポレオンは懐からバラを取り出した。
「このバラが何を意味するか解るか?」
「薔薇、だと・・・!?」
ナポレオンの薔薇の香りが広がる。
「な・・・!!」
石松達は幻覚を見せられた。懐かしき駿河の街の風景が石松に見える。椎名には己が管轄している横浜の街が、関根には前橋の街が、そしてのり子には祖母が嘗て経営していた小鳥屋の中に見えた。しかし、結界の中にいる者達や、防御特化の武装の能力が働いているかよ子には通じなかった。
「ここが、我々がいた駿河の地!懐かしい・・・」
石松は幻影に浸る。
「まずいぞ!皆惑わされておる!さくらももこ、お主の炎の石でナポレオンの薔薇を燃やせ!」
「う、うん!!」
まる子は炎の石の能力で薔薇を燃やそうと試みた。しかし、ナポレオンの武装の能力の防御が働いて撥ね返されてしまう。その間に騎馬兵や歩兵が迫る。
「奴らが幻に浮かれている間に殺せ!」
「な!」
「山田かよ子!大政の槍の能力を得られるか?」
「大政の槍?」
かよ子は杖の使い方の一節を思い出した。
【槍などに杖を向けた場合、杖を変化させたり、そのまま無数の槍を飛ばす能力を得る事ができる】
「うん!」
かよ子は剣となっている杖の変化を解き、大政の槍に杖を向けた。杖が槍に変化する。
「拙者も援護する!」
次郎長が刀を振るう。そしてかよ子が槍でナポレオンのバラに向けて振るう。無数の金属の槍で攻撃した。
「剣も槍も効かんのが解らんか!」
しかし、ナポレオンの武装の能力の防御が破られた。
「何!?」
「拙者の刀はお主の機械を狙う為に振るった。今、貴様の機械は一時的にではあるが無力化されておる!」
「くう!」
「行くよ!」
かよ子はナポレオンのバラを槍で粉々にした。
「・・・はっ!」
「俺達は一体・・・!?」
惑わされていた者達は幻影の縛りから解放された。
「あとはこれでとどめだよ!」
かよ子は槍の攻撃をナポレオンに向ける。
「それはどうかな?」
ナポレオンはまた別の花を取り出した。
「この娘、斬るぞ!」
「おう!」
「・・・え?」
かよ子は振り向いた。石松達子分がかよ子に襲い掛かる。椎名や関根、そしてのり子も同様に攻撃して来る。
「杖を寄こせ!!」
「え・・・!?どういう事!?」
後書き
次回は・・・
「ダリアは裏切りの花」
椎名、関根、のり子や石松達がかよ子達を急に襲撃する。これはナポレオンの能力によるものなのか。そして彼らの洗脳を解く方法が見つけられないかよ子に起死回生の策はあるのか・・・!?
189 ダリアは裏切りの花
前書き
《前回》
嘗て革命家として生きていた男・ナポレオンとの戦いに苦戦するかよ子達。大政の槍の能力で鋼でナポレオンの接近を妨害させるが、攻撃が効かず、劣勢が続く。ナポレオンの威圧の能力で気絶させられたかよ子は大野によって何とか起こされ、杖を剣に変化させてナポレオンの持つ六つの機械のうち四つを破壊させる事に成功する。だがナポレオンは薔薇の花を利用して石松達に幻影を見させて混乱させたり、更には別の花を利用して石松達子分、椎名に関根、のり子達がかよ子を急に襲わせた!!かよ子達藤木救出班の一部に裏切り!?
石松達次郎長の子分、二人の警官、そしてまる子のかつての友達がかよ子の杖を奪い、殺そうとして来る。
「や、やめて!どうしたの、皆!?」
かよ子には訳が分からない。なぜ急に襲い掛かるのか。のり子の人形がかよ子に念力を掛ける。しかし、それに対してかよ子は能力で防ぐ。椎名の水撃や関根の刀の攻撃、そして子分達の攻撃も何とか防ぎながらかよ子は逃げる。それだけではない。まだナポレオンの兵は残っている。
「これでは無勢すぎるぞ!」
「一体何が起こってるブー?」
「あやつの花だ!あれを壊せばよい!それに一時的に奴の機械は無力化されておる!」
「よし、行くよ!かよちゃん、待ってて!」
まる子は炎の石の能力を行使して火炎放射した。
「二度は喰らわねえよ!」
ナポレオンは花を持ったまま攻撃を避けた。
「ちい!」
大野の草の石や雷の石、ブー太郎の水の石もまた加勢に入る。しかし、ナポレオンの兵が防御して妨害する。
(これじゃあ、もう無理!)
かよ子は絶体絶命と感じた。何しろ相手は同じ仲間が裏切り、さらにはナポレオンの兵もいる。いくら防御特化の武装の能力があっても全ては防ぎきれない。
「もう劣勢だ。小娘のその杖を私に寄こせば命だけは助けてやる!」
「山田かよ子、口車に乗るな!」
次郎長はかよ子を止めた。
「やむを得ん!」
次郎長は羽根から降りる。
「石松、大政、小政、綱五郎、大五郎、お前ら目を覚ませ!!」
次郎長は呼びかける。しかし、石松達は今度は次郎長に目を向けると、殺しに掛かる。
「親分だ、殺せ!」
「な!!」
次郎長はもう手詰まりと感じた。ところがその時・・・。
「革命家であろう方が夫とは恥ずかしいわ!」
別の女が現れていた。その女はナポレオンの仮面を被っている。
「お前は、ルイーザ!」
「そうよ、元バカ夫!念力でその花を壊すわ!」
ルイーザと呼ばれた女は念力のようなものを発動した。しかし、何も起きない。
「どういう事?」
「機械の無力化の細工が切れたのだ!」
次郎長はもう一度刀を振るう。そして機械が無力化される。
「ルイーザとやら!もう一度だ!」
「ええ!!」
ルイーザが念力を発動した。花が粉々になった。
「なっ・・・!!」
ナポレオンの持つ花が壊れた。
「・・・はっ、某達は一体!?」
石松達は我に帰る。洗脳が解けたのである。
「お主ら!目が冷めたか!ナポレオンに洗脳されていたのだ!」
「何ですと!こやつ!!」
石松達は自分達を洗脳された事に激怒した。大政が銅や鉄、金剛石の槍を自分の槍から無数に出現させた。そしてナポレオンの歩兵や騎兵を撃破した。そしてのり子の人形がナポレオンの機械を念力で破壊した。
「くう・・・!!」
ナポレオンはこうなったら逃げるしかないと思い、逃走体制に入った。
「お、追いかけないと!」
かよ子は羽根に戻り、ナポレオンを追いかけた。
「ナポレオン、絶対に逃さない!」
かよ子は羽根でナポレオンを追いかける。かよ子は四つの力の石を借りて、杖で火炎放射したり、放電したり、茨の棘を噴射したり、激流を流した。しかし、それでもナポレオンに避けられる。だが、まる子の火炎放射がナポレオンの服にかかった。ナポレオンが慌てる。
「くそ!援護を!」
ナポレオンは姿を消した。
「逃げた・・・」
かよ子は留めを刺せなかった事を悔しがった。
「山田かよ子!」
「貴女達、運よく助かったわね」
仮面を被った女性が仮面を外す。ルイーザの素顔は美しかった。
「貴女が杖の持ち主ね。私はルイーザ。あのバカ皇帝の妻よ」
「ナポレオンの奥さんなの!?」
「ええ、皇帝としての誇りばかり気にして領土を奪って殺戮を繰り返す外道だから今は愛想を尽かしたけどね。そうだ、さっきあのバカ夫が使っていた花はダリアよ」
「だりあ・・・?」
「ええ、ダリアには『裏切り』という意味があるのその花を使って貴女達の仲間は洗脳を受けて貴女を裏切る行動を起こしたの」
「我々がそんな事を!?親分、山田かよ子!申し訳ない!」
石松達子分が土下座した。
「そ、そんな、土下座なんてしなくていいよ!ナポレオンの花が悪いんだから!」
かよ子は謝罪する石松達にあたふたした。
「でも、ナポレオンが持ってる花は壊してもまた新しいのを持って来る筈よ」
「まだ花があるの!?」
「あのバカ夫の味方としてジョゼフィーヌという元妻がいるの。その人がバラやダリアを栽培しているのよ」
「そうなんだ、ナポレオンやその奥さんを倒したいけど、今私達は藤木君を取り返しに行かなきゃ行けないんだ」
「ああ、一人の男の子を取り返す為に貴女達は動いているってフローレンスとイマヌエルから聞いているわ。私があのバカ夫を追いかけるから貴女達は目的を達成させなさい。頑張ってね」
「うん、ありがとう!」
かよ子達はルイーザと別れ、先に進んだ。
ナポレオンは己の屋敷に戻る。
「お帰りなさい、貴方」
一人の可憐な女性が出迎えた。
「只今、ジョゼフィーヌ」
「疲れているみたいね」
「ああ、後妻のマリア・ルイーザの邪魔で杖を盗り損ねたんだ」
「まあ、あの人が・・・!」
「愛しきジョゼフィーヌよ、薔薇とダリアの花はまだあるか?」
「ええ、今沢山栽培中ですわ」
ナポレオンは花園を確認する。そこには大量の薔薇とダリアが咲いていた。
藤木救出班は先に進む。
「ダリアは裏切りの花・・・」
かよ子は思う。この世界に来てから幾度も見る夢の中でのレーニンの声からもしかしてと思う。
(もしかして杉山君、私達を裏切って・・・)
かよ子は好きな男子の事についてそれ以上は考えたくなかった。そしてもう一つ。自分達が捜している藤木茂についてもレーニンは仮に会えたとしても追い返されるだけとも言及していた。
(もしかしたら藤木君も帰りたくないって私達を追い返す・・・?)
かよ子はふとそんな懸念をするのだった。
「ももこちゃん」
のり子がまる子に聞く。
「のりちゃん・・・?」
「ごめん、私、バカな事して・・・」
「いいよお~、あの花のせいなんだからさあ~」
「でも私、今まで友達が別の友達と遊ぶと裏切られたような気持ちがしてて・・・、でも、私は皆で一緒にいるのは本当の裏切りじゃないって解ったの。ももこちゃんもあの時、幼稚園の友達を紹介してくれた時も三人で一緒に遊びたいって考えてたんでしょ?あの時、ごめんね・・・!!」
のり子はいつの間にか泣いていた。
「い、いいよ、もう、そうだ、今度また遊ぼうよ」
「いいの?」
「うん、今学校でたまちゃんって友達がいるんだ。いつか三人で遊ぼうよ!」
「うん、ありがとう」
まる子とのり子はそんな会話をしていた。
「まる子・・・、よかったのお・・・!!」
友蔵は感動の涙を流した。そしてかよ子はある事を相談する。
「もしかして藤木君は戻りたくないって言うのかな・・・?」
「何言ってんだ、それでも連れ帰すさ」
「そうだなブー!今やってる事が卑怯だって教えなきゃダメだブー!」
「うん、そうだよね」
かよ子は大野とブー太郎の言葉に少し励まされる感じがしたのだった。
後書き
次回は・・・
「胸騒ぎの鎮静」
西側の領土を平和を正義とする世界のものに戻す為に動いているすみ子達組織「義元」だったが、すみ子の胸騒ぎは悪化していく一方だった。ジャンヌの提案で休息をし、エレーヌの能力ですみ子の胸騒ぎを取り除こうとするのだが、その場に・・・!?
190 胸騒ぎの鎮静
前書き
《前回》
ナポレオンと交戦し、かよ子はナポレオンの隠し持つ異能の能力を発する機械を杖を剣に変化させる能力を駆使して六つのうち、四つ破壊する事に成功するが、急に石松達子分や椎名、関根、のり子がかよ子を襲撃する。裏切りで窮地に陥ったかよ子だったが、ナポレオンの妻というルイーザの介入、さらには機械の不具合もあってなんとか石松達を正気に取り戻し、ナポレオンを撤退させる。ルイーザの話によると石松達はダリアの花の能力で洗脳され、裏切りをさせられていたと知る。ルイーザに礼をしてかよ子達は先へ進む!!
オリジナルキャラ紹介・その17
花沢咲菜・マリエル (はなざわ さきな マリエル)
イギリス・マンチェスター出身のハーフ。母がイギリス人。初登場115話。小学生の頃に日本の千葉県に引っ越し、今は千葉県内の高校に通う。特殊な見聞の能力を所有しており、相手の動きを予知する事ができる。ブランデー・ナンから貰ったイギリス文学の登場人物及びアイテムを出現させる事ができる本を使用する。本作では三河口などと共に剣奪還の計画に参加する。同じ高校に通う男子・久水蓮次郎という男子に好意を寄せている。好きな食べ物はローストビーフ、最中・どら焼きなどの和菓子。
ヴィクトリア女帝の屋敷。彼女はある報告を受けていた。
「ほう、ナポレオンが手傷を負わされて撤退したと」
「はい」
「仕方ないわね。ジョゼフィーヌとかいう妻が愛おしいだけの男だからな」
女帝はどうするか今後の行動を練る。
(レーニン・・・、復活して動けるようになったと聞くけど?)
「ところで、クイーン・ベスを倒しに行った援軍はどうしてる?」
「今、向こうの本部の防衛隊と異なる経路で合流したそうです」
「そうか」
かよ子達は先に進む。
(またすぐ胸騒ぎがするな・・・それもまたいつも以上に・・・!!)
大野は見聞の能力の影響か、またどこか凶々しさを感じていた。
「大野君、どうしましたブー?」
「ああ、また嫌な予感がするんだ」
「そういや、俺もするな」
関根もだった。
「それにしても、この世界、本当に広いね。まだ、藤木君のいる所につかないよ」
かよ子は改めて異世界の広さを感じるのだった。
「世界は広いんじゃのう」
友蔵は呑気だった。
一方、戦争主義の世界の本部。レーニンはある地点を確認していた。
「何と言う事か・・・。我らの陣地が減少し続けている」
「はい」
「領土を取られたら奪い返すのみだ!」
「了解しました」
房子はトランシーバーを出して赤軍や東アジア反日武装戦線の皆に連絡した。
「皆の者!杖、杯、護符を奪うのみならず、この世界の領土を脅かすものも次々と始末せよ!」
『了解!』
こちら領土攻撃班、濃藤すみ子達の集団。すみ子は常に胸騒ぎがしてたまらなかった。
「すみ子、大丈夫か?」
山口が心配する。
「うん」
「それだけ見聞の能力が働いているという事は敵が沢山いる地に入っているという事ですね」
「エレーヌ、この子を少し休ませてやった方がいいんじゃないか?」
ジャンヌが提案する。
「そうですね。さらに進めばこの子にとっても毒かもしれませんから」
すみ子達の集団は一時行動を止めた。
「濃藤すみ子ちゃん、少し宜しいでしょうか?」
エレーヌがすみ子の額に手を当てた。すみ子の胸騒ぎが収まった。
「心の不安を取り除かせていただきました。ただ、この効果は無限に続くわけではない事に留意してください」
「ありがとう、エレーヌ・・・」
すみ子は救われた気がしてホッとした。
(私、なんか、皆に迷惑かけてるのかな・・・?)
同時にすみ子は申し訳ないという気がしてならなかった。そしてまた別の気配がした。
「また来てるわ・・・!!しかも今度はさっきとはまた違った気配が・・・!!」
「また違った気配だって!?」
「『違った気配』・・・。これはこの世界の人間じゃないね」
「というと?」
「赤軍だ!皆の者、準備せよ!」
「了解!」
皆は戦闘態勢の準備に入った。
「野郎、出やがれ!」
山口は矢を放った。前方が炎の海と化した。
「どこでやんすか?」
ヤス太郎もパチンコで玉を飛ばす。地面を爆発させた。
「向こうの方からする・・・!」
すみ子が指をさす。その方向は上空だった。
「何、上からだと!?」
一行は上を見上げる。
「させません!」
エレーヌは一踊りする。空中で何かが止まった。火炎瓶だった。
「水玉で消すでやんす!」
ヤス太郎はパチンコで水玉を放った。しかし、なぜか水が消えなかった。そのまま火炎瓶は割れ、その場に炎が広がる。
「な・・・」
「油を仕込んだ火炎瓶だ。水など意味ない」
上から赤軍の男が現れた。
「お前は!」
「俺か?俺は赤軍の日高敏彦!ここから先は通さんぞ」
日高が火炎瓶を投げた。その時、山口はふとすみ子の兄が通う高校の文化祭の時を思い出した。その時、赤軍が襲撃して来た時も火災が発生したが、水では通じなかった。
(確かすみ子の兄ちゃんの友達は水じゃなくて土で消してたよな・・・)
「ヤス太郎、土玉だ!」
「了解でやんす!」
ヤス太郎は土玉をパチンコで飛ばした。火炎瓶を土で埋める事で炎の周囲の酸素を奪い、消火に成功した。
「ち、そこまで考えてるとはな。西川達が文化祭の時にしくじったのも分からなくもないな」
日高は木製のボールを投げた。地面に当たっただけで地面が砕かれる。それも物凄い速さで四方八方に跳び、山口達の足場を悪くした。
「くう!」
川村がバズーカを発砲した。皆を浮かび上がらせる。
「赤軍!退いてもらいます!」
「やれるものならやってみろ!」
「私達を舐めるな!」
ジャンヌが飛び上がる。そして神を呼ぶ。
(大天使ミシェル、我々に導きを・・・!)
ジャンヌの手に秤が現れた。
「戦力の調整を!」
ジャンヌの秤の左の皿は敵の、右の皿は自分達の戦力を示すものだった。右の皿が上がり、左の皿が下がった。
「今の我々の戦力ではやや不利だ!調整する」
ジャンヌはさらに大天使ミシェルの能力で剣を出した。右手に剣、左手に秤、正に大天使ミシェルの構図だつた。秤が水平になる。
「大天使ミシェルの能力を受けよ!」
ジャンヌが剣をかざす。ジャンヌの従兵も剣を出す。地が揺らぎ、水が溢れ、炎が飛び、風が吹く。それに対して日高は武装の能力で防ごうとした。
「聞くかよ!」
日高はさらに巨大な虫を出現させた。
「何だあれ?」
「俺はな、ワラジムシの話が好きでね!」
巨大なワラジムシは水も風も飲み、炎や地も貪り食った。
「ちい!」
川村は日高に向けてバズーカを発砲する。狙うは日高の持つ機械だった。しかし、防がれた。
「くう、あいつも機械を複数持ってるな!」
「おのれ、もっと調整させてやる!」
ジャンヌが秤を更に調整させる。右の皿が下に、左の皿が上に傾いた。ジャンヌの軍勢から剣から炎が飛び交う。ワラジムシを焼殺しようとした。エレーヌも加勢で人踊りする。炎がさらに強化された。ワラジムシは炎を喰らいきれず、焼かれてしまう。
「それで簡単に倒せるか!」
その時、すみ子はまた別の嫌な感触を覚える。しかし、同時に心を落ち着かせる感触を覚えた。ワラジムシが焼かれて姿を消した後、また別の姿が現れた。
「あれは・・・」
「岡本、いいぞ!」
山口達はその姿に見覚えがあった。巨大なる聖母マリア。それは護符の持ち主を守るために名古屋で赤軍と戦った時に現れたものだった。
(また別の赤軍の人がいる・・・!!)
すみ子はそう勘付いた。
「皆の衆、迎撃に成功させるぞ!」
ジャンヌが一声掛ける。ジャンヌの兵や組織「義元」、エレーヌの力が強まる。ジャンヌが持つ秤の能力によるものである。マリアが光線を放つ。
「うおおお!」
すみ子も怠けじと銃を発砲する。聖母マリアの周囲に結界が施される。マリアの光線がすみ子が出した結界で弾かれ、自分に当たった。
「う、ぐぐぐ・・・!」
「マリア様!このクソガキ・・・!!」
別の赤軍の男、岡本公三が現れた。威圧の能力を発動させる。
「あ、ああ・・・」
ジャンヌの秤が左下に傾く。
「こちらの戦力が低下していく、だと・・・!?」
ジャンヌの従兵達も脱力していき、気絶者が現れる。
(だめ、終わり・・・!?)
すみ子は絶望したその時・・・。
「こんなんで終わるなんて情けないね」
後ろから一人の女子が現れた。先程からする心を落ち着かせる感触の正体はこの女子か、とすみ子は感じた。
(あの子は・・・!?)
後書き
次回は・・・
「生物を操る者」
すみ子達の前に現れた少女はスケッチブックより様々な生物を取り出して日高や岡本に対抗する。そしてかよ子達は今目的の少年が今どうしているのか、平和主義の世界の領土を守備を行っている長山に連絡をして眼鏡を通して確認を求める・・・!!
191 生物を操る者
前書き
《前回》
平和を司る世界の領土を奪還する為に動き出している濃藤すみ子達は赤軍所属の男・日高敏彦に岡本公三と対峙する。日高の火炎瓶の攻撃、岡本の聖母マリア召喚に対して迎撃するすみ子やエレーヌ、ジャンヌ達であったが、岡本の威圧の能力で劣勢に。そこに一人の少女が現れ・・・!?
すみ子達に近寄った少女は無表情で素っ気なさを感じだった。
「私がやるわ」
少女はスケッチブックのような物を取り出した。
「貴女は・・・!?」
「いいからどいて」
少女が前に出た。
「水の生き物」
少女がそう呟くと、イルカやクジラ、サメにタコ、イカなど水生生物が数多く現れた。そしてジャンヌは秤が水平に変わる事を確認する。
「秤が水平になった。巻き返すぞ!」
「はい!」
エレーヌがまた一踊りして少女が出した生物の行動を強めた。岡本や日高が武装の能力を発動して防御する。しかし、機械に不具合が生じていた。イルカやクジラの体当たりで機械が破損する。そして聖母マリアはタコやイカの墨攻撃、サメの噛み砕き攻撃によって勢いが失われていった。
「まさか、またマリア様が!?」
「大天使ミシェルの能力だ」
ジャンヌは右手に剣、左手に秤とまさに大天使ミシェル(別名ミカエル)の構図でいた。この能力で神の能力が働いていたのだった。
「覚悟!」
ジャンヌが聖母マリアの首を斬る。
「お、おおお・・・!!」
マリアはうめき声をあげながら消えて行った。
「ちい、これでも喰らいやがれ!」
日高が瓶を投げた。小麦粉が入っていた。だが、同時に爆発が起きた。
「な、爆発だ!!」
すみ子が銃を発砲した。周囲に結界を張り、すみ子や少女達への爆撃を防いだ。
「すみ子、助かったぜ!」
山口が礼をした。
「許さんでやんす!」
ヤス太郎はパチンコを放った。火薬玉だった。
「もう一度召喚だ!」
岡本は聖母マリアを再び召喚した。ヤス太郎の火薬玉を無効化させると共に、マリアが結界を発動させ、岡本と日高の姿が消えていく。
「取り逃がしたか・・・」
その時、爆発が起きる。
「な、何だ!?」
「日高敏彦とかいう男が火炎瓶や粉塵爆発の瓶を置いて行ったのだ!逃げるぞ!」
そしてあの少女はまたスケッチブックを出す。
「鳥」
鷹や鷲などの鳥が次々と現れた。少女は勿論、すみ子やエレーヌ達も用意された鳥に乗って難を逃れた。
「お前は一人でいるのか?」
山口は少女に聞く。
「うん」
「一人で大丈夫なのかよ?良かったら俺達と行動しねえか?」
「別にいい。ここなら安全だから降ろすよ」
少女は川村の提案をあっさり断り、鳥達を別の地に降ろした。
「ありがとう」
「うん、あとはいいね」
少女は鳥に乗ったままどこかへと行った。
「そういえばあの子の名前聞かなかったな」
「うん、また会えるよ・・・」
「そうですね、ところでで体制を立て直さなければなりません」
「ああ、この方角だとまた赤軍の連中と鉢合せは免れん。もう少し西の方角へ廻れば攻め込みやすいが、一つの山がある。その山を越える事ができればいいが」
ジャンヌは提案した。
「なら、その山を越えていこうぜ」
「ああ、だが、雷鳴が常に鳴り響く山だ。雷の山と呼ばれている。嘗ては『デンキ』なるものを集めやすい所であったが、戦争を正義とする世界の一つになってしまっている。そこも取り返す必要があるぞ」
「了解でやんす!」
「ですが、濃藤すみ子ちゃんをもう少し休ませてあげてください。それから本部にこの事を連絡をお願い致します」
「俺がやるよ」
川村が通信機を取り出した。
「こちら領土攻撃班、川村!今赤軍の人間二名と対峙した。ここからは危険な為俺達は『雷の山』を通る道を進みたいと思う」
『了解した。あそこは危険な地なので不意に雷撃を喰らわないように注意してくれ』
イマヌエルが応答した。
「了解」
すみ子達は雷の山の方角へと向かった。
少女は鳥に乗って少し東の方へと向かう。
「おお、戻ってきたか」
「全く、一人で移動されては困るでごわすよ」
二人の男が出迎えた。一人は髭を生やした男、もう一人は肥満体型の男だった。
「ごめん、利通、隆盛」
「ところで、助けに行った者共は無事だったのか?」
「うん」
少女はそっけなく答えた。
(本当に役に立つね・・・)
少女は今までこの世界に来るまでにこのスケッチブックを活かす事があまりなかったのでその反動からか、有効に使える事に心の中で嬉しく思っていた。
「次、どこに行く?」
「ああ、かなりの強者がおる地帯はあそこだ」
「うん、行こう」
少女はチーターを召喚して乗り、チーターを疾走させた。
こちら紂王の屋敷。妲己は朝帰りの疲れから疲弊して眠っていた。その地に紂王が入って来る。
「妲己・・・。随分と疲れているのだな。寝ているそなたも美しい・・・」
紂王は添い寝したい気分ではあったが、接吻に留めた。
(はて、効いた話では、あの『藤木茂』という少年を奪い返さんとする輩が近づいているらしいが、果たして如何なものだろうか・・・。折角この世界に送り込まれて住み慣れたこの館も捨てがたいが、やはり別の地に移動して逃げた方が良いか・・・。あの少年や愛しい妲己の為にも・・・)
しかし、紂王はある事が頭に浮かんだ。
(だがあの少年はまだ己の嫁を決めていない・・・)
紂王は頭を悩ませていた。少年は今、遊女達と遊んでいた。
かよ子達は羽根を飛ばすのに疲れていた。
「疲れた・・・」
「山田かよ子、少し休むが良い。そろそろ昼飯どきだ」
次郎長が案じた。
「うん・・・」
その時、通信機から声が聞こえて来た。
『皆さん、お疲れ様です。そろそろ昼食時となりましたのでお送り致します』
皆の前に昼食が送られてきた。献立は天ぷら蕎麦だった。
「天蕎麦か、久々だな」
「おお、うめえ!」
次郎長の子分達が食事時を楽しんだ。
「ああ、美味しいねえ~」
「うん、ももこちゃんといると美味しく感じるよ・・・」
皆は美味しく食べていた。
「それにしても藤木君のいる所はまだなのかな?」
「だいぶ近づいているとは思うが、奴らも帰すとは思わん。着いた時も全力で戦う事を忘れるな」
「うん・・・!!」
かよ子は改めて緊張感を覚えた。そして自分の好きな男子も頭に浮かぶ。
(藤木君を取り返したら、今度は杉山君を連れ返す!!)
かよ子は連れ戻さなければならぬ人物が二人いる事を思い出した。
(あのレーニンって男のところにいる・・・。夢の中にも出てきて・・・。でも、手強そう・・・!!)
「そうだ、藤木って今どこにいるのか分かるかブー?」
「そうだな、本部守備班を担うお主らの友である長山治に聞いてみたら如何であろうか?あるいはフローレンスやイマヌエルなど本部に問い合わせるとかな」
「うん、ブー」
「俺は長山に連絡を取ってみるぜ」
ブー太郎は食後に通信機を取り出して本部に質問する。
「こちら藤木救出班の富田太郎だブー!オイラ隊は今藤木がいる所に近づいているのかブー?」
『はい、こちらフローレンス。今順調に近づけています。そのまま進めば大丈夫です』
「了解だブー。ありがとうブー」
『但し、向こうも警備や対策を練っています可能性も無ではありませんのでお気をつけてください』
一方、大野は長山に連絡を取る。
「こちら藤木救出班。大野だ。長山、聞こえるか?」
『大野君、どうしたんだい?』
「今、藤木が今何をしているか、お前の眼鏡で確かめて欲しいんだが」
『解った、今、確認するよ。ちょっと待っててくれよ』
長山は暫く黙った。皆は息を呑んで長山の報告を待つ。
『見えたよ。藤木君は今、女の子達と遊んでいる所だよ』
「つまり、今動いてねえって事だな?」
『うん、そうなるね』
「サンキュー、長山!」
大野は礼をして通信を終えた。
「このまま突っ切るブー!」
「ああ、それから藤木は動いてねえみたいだ」
「解った。羽根を飛ばすよ!」
かよ子は羽根を再び動かした。
(藤木君、浮かれてるのもそこまでだよ・・・。笹山さんが待ってるし、それを解らせないと!)
かよ子達は藤木を奪還するためにまた動き出す。
紂王の屋敷ではある男から連絡が来る。
『紂王』
「その声はレーニンか」
『左様。貴様の屋敷にいる少年についてだが、それを取り返さんとする者達が近づいて来ておる。警護しつつ迎撃か逃亡の準備を始めた方が良い』
「ただ、妲己から明日は雪の降る地へと遊びに行く予定を立てているのだが」
『そうか、終われぬように気を付けよ。ならば、そちらに援軍を寄こそうではないか』
「ああ、頼む」
紂王は懸念していた。
(この地を捨てざるを得ぬかもしれぬ・・・、か)
後書き
次回は・・・
「少年の記憶の中」
紂王の屋敷にいる少年は未だに自分の嫁とする女性を決められずにいた。そんな少年の元に赤軍の和光晴生が訪れる。彼は少年に協力しようとして彼の記憶を探ろうとする。そしてかよ子達の元に次に現れた敵は・・・!?
192 少年の記憶の中
前書き
《前回》
赤軍の日高敏彦および岡本公三に苦戦するすみ子達組織「義元」だったが、スケッチブックを持った一人の少女の加勢によって形勢逆転に成功し、何とか引き上げる。そしてスケッチブックの少女と別れた後、すみ子達は雷の山を目指す!!
本部の一室。かよ子の母達はフローレンスやイマヌエルと共に食休した後、また各々の動向を探る。
「エレーヌやジャンヌ達が引率しています濃藤すみ子ちゃん達はこの雷の山へと向かいますわけですね。この山の争奪戦も激しくなりますでしょう」
「そんなに危険な山なの?」
まき子は質問した。
「はい。元は電気を発する山として多くの電気や雷の力を操ります道具を製造します元となりました。しかし、それも戦争主義の世界との戦いの争奪戦が勃発しました結果、敗れてしまい、多くの人達が犠牲となりました」
「とても貴重な山って事なんね」
「はい」
戦争主義の世界にある紂王の館。こちらは昼食時となっていた。
「あ、茂様。お昼時ですよ!行きましょう」
「うん」
少年は遊女達と遊んでいた。食堂へと向かう。
「こちらは麻婆丼といいます」
「わあ、美味しそうだね!」
少年は遊女達と共に麻婆丼を食べた。
「どうでしたでしょうか?」
料理を担当した女性が少年に聞く。
「うん、とても凄く美味しかったよ!」
「ありがとうございます」
女性は少し照れ気味に礼をした。やがて食後、妲己が食堂に入って来た。
「妲己、起きたのか?」
「ええ、よく寝てしまったわね」
「あ、妲己さん、僕の為にわざわざスケート靴を用意してくれてありがとうございます」
「ああ、明日皆で滑りに行って楽しむとよい。皆坊やと一緒に遊べる事が楽しみだからな」
「はい」
「しかしだ・・・」
紂王が話を止める。
「藤木茂とやら、お主はここに来てから色々な女子と遊んでいるが、もうこの中で嫁にしたいと思う者はおるのかね?」
「あ、ええと・・・」
少年はいつも遊ばせて楽しませて貰っている少女達を見た。だが、自分が優柔不断である事を改めて思い知らされる。
「決められない、です・・・。皆、可愛くて・・・」
遊女たちは「ええーー!?」と声を出した。
(もしかして、嫌われる・・・!?」
少年はそう懸念していた。
「もう皆可愛いだなんて、照れますよ~」
「よし、なら私が茂様に相応しいお嫁になれるように努力しないと・・・!」
「あ、いや、その・・・」
「もう、照れちゃってえ~」
少年は顔を赤らめながらも困惑した。
(どうしよう、永沢君ならすぐに決めてくれるかも・・・)
ふと少年は「嘗ての」親友が頭に浮かぶ。
(い、いやいや、もう、絶交したんだ・・・。忘れないと!!)
「もしかしたら、お主はもっといい女子が好みではないのか?」
「え?」
「この地に来る前に今までに会った女子で気になった者はいるかな?そなたが一目惚れしただけでもいい」
(一目惚れ、え、ええと・・・)
少年は自分の記憶を思い切って探ってみる。忌々しい思い出と共に学校での記憶、色々な地での記憶・・・。しかし、旅行に易々と行ける家庭環境ではなかったので、旅先で可愛い女子に会った記憶というのもない。
(やっぱり、笹山さんかな・・・?)
ふと学校で好きだった女子の顔が思い出される。しかし、ある少女を置いて野良犬から逃げた事で皆から責められた事、合唱コンクールの彼女の頑張りを褒めようとしたところで皆から歌い出しが遅れた事で労わりをかけられたその女子とは対照的に自分は非難という形で注目が集まってしまった事から過去の存在として忘れるように決意していた。
(いいんだ、いいんだ、笹山さんは・・・!!)
やはり、自分には可愛いと思った女子はその笹山かず子とかいう少女以外にいない。となると何がなんでもこの遊女達を嫁にしなければならないと思った。だが、誰かを選べば、選ばれなかった者には不満がられるかもしれない。
「やはり、いないみたいではあるな」
「う・・・」
ここにいる遊女達も皆可憐ではある。一方で「前の世界」にいた時には今まで自分が一目惚れした事のある女子はいない。その時、兵が一人、入って来た。
「紂王様、赤軍の人間が訪れました」
「なぬ?」
紂王はその場を外した。
「まあ、ゆっくり考えるといい。選べないからといって坊やを責めたりはしない。それに気にする事はない。ここの女子達も選ばれなかったからといって文句は言うはずがない筈だ。祝言を嬉しく思うし、いつでも遊んでくれる」
「は、はい」
少年はそう言われると心が少し落ち着いた。
(それじゃあ、あの子達のどれかを貰おう・・・)
少年はそう思った。だが、そうなる度に選べなくなるものである。
「藤木茂、お前に会いたいと言う者が現れたぞ」
「え、僕に?」
一人の男が現れた。
「和光晴生と言う者だ」
「よう。坊主が藤木茂という奴か」
「は、はい」
少年は現れた男に少し怖気づいた。
「今、この坊やの嫁をどうしようか悩んでいたところなのだよ」
「嫁、か。ガキの癖に色男だな。で、どいつを嫁にすんだ?」
「実はその・・・」
少年は返答に詰まった。
「実はまだ決められていないのだよ」
妲己が代弁した。
「そうか、前の世界では好きだった女子から嫌われたと聞く。他のガキに会った記憶もないのか」
「は、はい・・・」
「単に思い出せないだけじゃないのか?まあ、お前の記憶を映像で探ってみてもいいんじゃねえか?」
「え?できるんですか?」
「ああ、これでも俺は映画が好きだった。この世界と繋ぐ事ができてから映画についていろいろな能力を持つ事ができたんだよ。んじゃ、見てみるか」
こちら本部守備班。さり達はテレーズも交えて侵略者の迎撃の待機をしていた。
(あの時はテレーズがいたから何とかなったけど、そうじゃなかったら護符を取られていた・・・。奴等はまた対策を講じて来るはず・・・!!)
さりは赤軍の丸岡修という男との戦いで敗北して以来、護符を守る事に神経質になっていた。その時、通信機が鳴る。
『本部守備班の皆、東側の地区を奪還した。前進してくれ』
イマヌエルの声がした。
「行こうか、皆」
「はい」
さりは同行者と共に護符で出した飛行機で奪還された地区へと進んだ。
和光は少年を別の部屋に連れて彼の記憶を映像として探る事にした。あまりにも恥ずかしい記憶があるというので紂王や妲己、そして遊女達とは隔離させ、さらに自分の恥をかいた記憶は映像化しないという条件で探索した。帽子のような物を少年の頭につけ、帽子に接続されている一本のコードと共に反対側には8ミリカメラがあった。和光はそれを使用して少年の記憶を見る。それはある高校の文化祭で同級生が盛り上がっていた話だった。
「ああ、西川や山田が行った文化祭での事か。あの杖を持つガキに『昔好きだった女子』にぞっこんになってるって事を見抜かれたんだな」
「う・・・」
少年は否定できなかった。
「これだけじゃだめだな。もう少し前の記憶を見てみるか」
和光は少年の記憶の巻き戻しを図る。それは夏の出来事だった。
(ん、あの教会は・・・?)
少年には見覚えがある近所の教会だった。そして嘗てのクラスメイト達と共に協力してその中に入った。そして出会ったのは・・・。
「あ、あの子は・・・!!」
少年は思い出した。あの夏休みの日に一目惚れした少女の事を。それは少年にとって完全に忘却されていた記憶だった。
(あのガキは・・・!!)
和光も映像に映し出された少女の顔を覚えていた。
こちら藤木救出班。かよ子達はまた藤木を取り返す為に進む。
(藤木君、女の子達に溺れてるのも今のうちだよ・・・!!)
かよ子はそう思って進む。その時、ズシン、ズシンという音が聞こえて来た。
「あ、あれは何・・・!?」
何かまた自分の杖を狙う者が訪れたのかとかよ子は感づいた。
「ああ、どうやらそのようだな」
大野もかよ子の意見に同意していた。そしてその音は近づいて来た。
「ええ!?」
「か、怪獣ブー!?」
訪れたのは恐竜のような生物だった。
後書き
次回は・・・
「映画の怪獣」
かよ子達の前に映画に出てくるゴジラが現れ、かよ子達に襲い掛かる。藤木救出班は分散して戦い、ゴジラの撃破を試みる。だが、今までとはまた違った敵で対処が難しく、そんな時、次郎長がある考えを発案し・・・!?
193 映画の怪獣
前書き
《前回》
紂王の屋敷に匿って貰っている一人の「少年」は未だに誰を嫁にするか決められないでいた。その彼の元に赤軍の構成員・和光晴生が訪れる。少年の記憶を介して嫁に相応しい少女を探そうとするのだが、彼の夏休みの記憶の中にある少女が蘇る。一方、かよ子達は謎の怪獣と遭遇していた!!
かよ子達は怪獣のような物体と遭遇した。
「こ、こんなのもこの世界にいたの!?」
「いや、こんな怪物は何処の世界にもおらぬ!もしかしたら誰かが生み出した術かもしれぬ!」
「あれは・・・、映画のポスターで見た事がある!」
椎名は思い出すように言った。
「ゴジラだ!」
「ゴジラ!?あの映画に出てくるあのゴジラですかブー!?」
「ああ、間違いない」
「でも、どうしてゴジラがこの世界にいるの!?実在しないのに」
「もう一度言うが、あれは妖だ!誰かが出したものなのだ!」
石松はもう一度かよ子に説明した。そんな話をしているうちにゴジラはこちらに放射熱線を繰り出してきた。地面が粉砕されていく。かよ子達は羽根の結界が働いた為に無傷だったが、羽根は大きく揺れた。
「おおお〜!さすが映画の怪獣じゃ!」
友蔵は場違いの感心をしていた。
「兎に角なんとかしねえと!」
「またナポレオンの時のように別れて戦わねばならぬ!鳥橋のり子!お主の人形で瞬間移動させてくれ!」
次郎長はのり子に頼んだ。
「うん!」
のり子の人形で各々が分散する。かよ子と次郎長、友蔵は羽根に残ったが、他の皆は別の地に移動した。ゴジラがかよ子を狙って近づきながら放射熱線を浴びせようとする。羽根の結界で防がれたが、撃退しなければ本当の安全ではない。
「あの光線を使えるようにすれば・・・!!」
かよ子はゴジラに杖を向ける。炎を操る能力を得た。かよ子は炎でゴジラを迎撃しようとした。次郎長も刀を使用してかよ子の杖の力に加勢させた。ゴジラの熱戦とかよ子の火炎放射がぶつかり合う。互角なのか、力に優劣をつけ難い状況となっている。
(これでは持たない・・・!!)
その時、何かがゴジラの行動を封じた。ゴジラが「ぐおお、ぐおお!!」と呻き声を挙げている。
「あ、あれは一体・・・!?」
ゴジラの背中に何かが付いている。
「あれは、大五郎の札!あやつ、ここで法力を発動させたか!」
「ああ、あの体が大きい人だね?」
「左様」
そして、蔓がゴジラに巻き付かれる。
「あれは大野君の草の石の力!」
各々が攻撃に動いていた。
大野は石松、小政と共にいた。
「その調子だ、大野けんいち」
だが、ゴジラが大野達の方向に目を向ける。ゴジラの腕力は余りにも凄く、大野の蔓をいとも容易くちぎってしまった。
「やべ、切られた!」
「よっし、俺も行くぜい!」
小政が跳んだ。ゴジラが呻き声をまた挙げる。その時には先程跳んだ小政がすぐに戻って来ていた。
「あれ、小政!?もう戻ったのか!?」
「今、斬りつけたでい!」
「小政の居合は雷のように痺れて素早いのだ。では、某も!」
石松は刀を地面に突き刺した。ゴジラの動きが鈍くなっていく。
「皆の衆!やるのだ!」
石松の声はかよ子と次郎長にも聞こえていた。
「山田かよ子、今こそ勝機だ!」
「うん!」
かよ子は火炎放射を繰り出す。ゴジラに炎が燃え移る。
「ぐおお!」
「やった・・・!?」
しかし、ゴジラから更に強力な火炎放射が繰り出される。
「ええ!?だめ!?」
「逆効果じゃあ~」
友蔵が真っ青になる。
「奴にとって炎は栄養のようなものなのかもしれぬ!別の能力を使うのだ!」
「う、うん・・・!!」
かよ子はリュックの中から色々なものを取り出したが、どれがいいか分からない。
「どうしよう、どうしよう・・・!?」
「おっちょこちょいをするでない!某の刀を使え!」
「う、うん・・・!!」
かよ子は次郎長の刀に杖を向け、杖を剣に変化させた。
「羽根を奴の近くに動かすのだ」
「うん!」
だが、ゴジラはすぐにかよ子の羽根を掴みとろうとした。だが、羽根の結界に何とか守られた・・・、と思いきや、すぐに結界が破られそうになってしまう。
「え・・・!?結界が・・・!?」
「山田かよ子、己の武装の能力を羽根に流し込め!」
「うん!」
かよ子は羽根に手をかざす。ゴジラに握りつぶされそうになった結界がゴジラを弾く。ゴジラが尻餅を突いた。
「はあ、はあ、何とかなった・・・」
「だが、これだけではまだまだだ。すぐに襲い掛かるぞ!」
のり子はまる子、ブー太郎に関東の綱五郎と共にいた。
「のり子とか言ったなブー!お前の人形であいつを止められないかブー!?」
「うん、やってみる!キャロライン!」
キャロラインが念力を発動する。ゴジラが金縛りに遭う。ゴジラがなぜ己の身体が動かないのか謎に思っていた。
「よし、俺の拳銃で一発ぶちかます!」
綱五郎が三発、発砲する。一発目は水が溢れてゴジラを溺れさせる。二発目は雷が現れてゴジラを感電させた。そして三発目はゴジラを冷凍させた。ゴジラが動かなくなる。
「こちら富田太郎だブー!ゴジラを綱五郎が凍らせたブー!やるなら今だブー!」
ブー太郎は通信機で連絡した。
「私の念力もまだ働いてるわ!」
のり子の人形も報告した。
かよ子の方に連絡が来る。
「山田かよ子、今なら行けるぞ!その剣に変化したの能力であの怪物を倒すのだ!」
「でも、どうすればいいの?」
「拙者の刀の能力であの怪物の体内へ瞬間移動させる!」
次郎長が刀を羽根に刺す。急に瞬間移動され、赤くて暗い内部にあった。
「ここが、ゴジラの身体の中・・・?」
「奴はまだ凍っている状態の筈だ!今しかない!」
「うん!」
かよ子は羽根で壁まで移動してそこに剣に変化した刀を突き刺す。
「拙者も手伝ってやる!」
次郎長もまた刀で斬りつける。二人の刃がゴジラの体内を傷つける。そして傷口が更に大きく開いて行く。
「ぐおおお・・・!!」
かよ子達からは耳をつんざくような悲鳴を挙げた。ゴジラの悲鳴が響いていたのだった。そして体内に大きな振動が起きる。
「山田かよ子、連絡をするのだ!」
「うん!」
かよ子は通信機を取り出して報告する。
「こちら山田かよ子!今、ゴジラの体の中に入って斬ったよ!今何が起きてるの?」
『こちらブー太郎だブー!大変だブー!綱五郎の凍り攻撃が解けてゴジラがまた熱線を発したブー!』
「ええ!?」
「山田かよ子、拙者にも伝えさせてくれ!」
「うん!」
次郎長はかよ子の通信機に口を近づける。
「いいか、皆の者!奴に炎の攻撃はあまり効かぬ!別の攻撃を仕掛けるのだ!拙者と山田かよ子は怪物の体内から攻撃する!」
『了解!』
椎名と関根は神戸の長吉と共にいた。
「あのかよちゃんと次郎長二人で大丈夫なのかね?」
関根は心配になった。
「大丈夫だ!我々も奇襲を仕掛ければよい!」
「できるのか?」
「ああ、我が刀で遠隔で攻撃できるぞ!」
長吉は刀を向けた。
「今だ、椎名歌巌、関根金雄!ここからでもお前達の攻撃は十分通る!」
「よし、分かった!」
椎名は玉を取り、水撃を試みる。だが、離れた所から水が溢れ、ゴジラを押し流す。
「凄いぞ、椎名!ボクちゃんも!」
関根が刀を振るう。ゴジラの首の大半が斬られる。
「ぐおおお、ぐおおお・・・」
しかし、ゴジラはすぐさま傷口を塞ぎ、容易く再生してしまう。
「何たる回復力だ!倒しきれぬ」
「確か映画で見た事があるが、ゴジラは回復力も物凄いらしい!」
「なら、闇雲でも攻撃を続けるしかない!」
「おう!」
椎名も関根も攻撃を続行する。
のり子の人形も念力でもう一度ゴジラを封じる。
「うご、うご!」
ゴジラがまた動かなくなる。
「こうなったら!」
のり子とキャロラインが同化する。その間に内側からかよ子と次郎長が斬撃を、外側から椎名の水撃、関根の斬撃が続く。そして別の場所から草の手裏剣や茨の槍がゴジラを襲う。そして雷撃も来た。おそらく大野が持っている草の石と雷の石の力によるものだとまる子とブー太郎は勘付いた。
「オイラも行くブー!」
ブー太郎も水の石の力でゴジラを横に倒す。
かよ子と次郎長は内部から更に斬りつけ続けている。
「ええい!」
「はっ!」
「かよちゃん、次郎長様、頑張るのじゃあ~」
友蔵もめいいっぱい応援する。そして内部から別の空気が入る感触がした。気付いた時にはゴジラの体内から外が見えていた。
「ぐおお・・・」
ゴジラが倒れる。
「やった・・・?」
両断されたゴジラは体が再生する事はなかった。
「倒したの・・・?」
「ああ、体を両断されてしまえば、この『ごじら』とかいう怪物も再起不能みたいだな」
そしてゴジラは姿を消した。かよ子は羽根を地面に降ろす。
「皆!」
かよ子は皆を呼ぶ。
「俺達は無事だ!」
「大丈夫だブー!」
「皆、無傷だったようだな」
「うん、良かったよ・・・!」
かよ子は安心した。
「まる子お~、無事じゃったか!」
「おじいちゃあ~ん」
まる子と友蔵は感動の抱擁をした。
[ほう、倒されたか、まあ、少しの足止めにはなったという事か]
「・・・え?」
どこかから声が聞こえた。聞き覚えのある声だった。
「この声は・・・!レーニン!!」
後書き
次回は・・・
「忘れていた恋人」
かよ子達の元に戦争主義の世界の長が聞こえてくる。そしてその人物によってとんでもない目に遭わされてしまう。その一方、とある少年の記憶を確認した和光は次の段取りへと移行する・・・!!
194 忘れていた恋人
前書き
《前回》
急に現れたゴジラの襲撃を受けるかよ子達。次郎長の案で別れて攻める事になる。法印大五郎の法力や大野の草の石やかつて杉山の物だった雷の石の力、関東綱五郎の拳銃、のり子の人形の念力、そしてかよ子の剣の能力でゴジラを何とか撃破した。その直後にかよ子達に聞こえたのは戦争主義の世界の長・レーニンの声だった!!
かよ子は声の主が戦争を正義とする世界の長だと気付いた。
「レーニン!何の用なの!?」
[貴様達が和光晴生の出した映画の生物を倒した時には貴様らも強くなっているとこちらも実感した。まあ、奴の能力で少しは時間稼ぎと足止めになった事は間違いないか]
「和光晴生!?赤軍の人間か!」
椎名は思い出した。
[流石は警察。赤軍の人間の名前を網羅している訳だな。だが、倒されたその分、目的地から遠ざかって貰おう]
その時、倒した筈のゴジラが再生した。
「え?」
「ぐおおお!!」
ゴジラが地面を叩く。凄まじい地響きが起きた。
「皆、羽根に戻れ!」
次郎長が促し、全員羽根に戻った。ゴジラの尻尾が羽根を打ち飛ばす。
「あ、ああ〜!!」
かよ子達は遠距離へと飛ばされた。
和光は紂王の屋敷を出ていた。そこの屋敷の馬を借りて本部に戻る途中にあった。
(まさかあの藤木って奴があの『少女』と会っていたとはな・・・。しかも、見え張りやがって・・・)
和光は紂王の屋敷で少年の夏休みの記憶に驚いていた。
「あれは、杯の持ち主のガキじゃねえか!」
和光は東アジア反日武装戦線と同盟を組むために東京へ出向いていた時に杯の所持者を狙いに来た事があった。その時の少女が少年の夏休みの記憶では清水にいたのだった。
(そうか、だからあの時日高が行っても見つからずにあの高校生にギタギタにされたって訳だな・・・)
少年の夏休みの記憶が続く。一緒に缶蹴り鬼を楽しんだ記憶、アイスを食べた記憶、そして夜に花火を楽しんだ記憶・・・。
『僕が命を懸けてりえちゃんを守ってみせるよ!』
「もういいか、外すよ」
和光は少年の頭についている帽子を外した。
「お前、『あの子』にも鼻を伸ばしてたんだな」
「で、でも、その子は東京に住んでるし、それにもう会えないと思います・・・」
「いいや、嫁が欲しいんだろ?今すぐにでも会わせてやるよ」
「え?」
「その子に会わせてやるっつったんだ。楽しみにしてろよ」
和光は道具を片付けて部屋を出た。そして紂王や妲己に挨拶する。
「あのガキにピッタリの嫁が見つかったよ。連れてきてやるから待ってろ」
「本当かね?」
「ああ、俺達にとっても都合のいい相手だからな」
和光は先程の行為を振り返り終わると共にトランシーバーを取り出した。
「こちら和光。いま紂王の屋敷から出て帰る所」
『何かいい情報でもあったのか?』
「ああ、あのガキの記憶を探ってみたが、いい嫁が見つかった」
『そんな事はあの妲己や紂王に任せればいい話であろうが』
「まあ、待ってくださいって。これが以外と我々に関係のある良いネタなんだよ。あのガキは杯を持つガキと会った事があるんだ。そのガキを嫁にさせてやるって事よ。つまりだな」
和光はしめたとニヤリと微笑む。
「杯を分捕る時にゃ持ち主のガキは殺さずに生け捕りにした方がいいって事だ。その方が面白え」
『杯の持ち主を、か?』
その時、相手の声が変わった。
『やっぱり、藤木か?』
「はい?」
『失礼。取り込んだ少年が時たま出てくるのだ』
「そうか、ところで俺が出したゴジラが杖の持ち主達を足止めしているはずですが、上手く行ってますか?」
『今確認した所、怪物は倒されたが、私の力で一時的に復活させて目的地から遠ざけた。杖の奪取は失敗したがな』
「そうか、まあ、また何度でも出してやるよ」
『それより、貴様に与えた映写機なるものの作り具合は良いものらしいな』
「はい、山田義昭とあの雷の山を乗っ取ったお陰よ」
『なら、今私が取り込んでいる少年の記憶も見てみたいものだ』
「あいよ、今、そっちに戻らあ」
少年は自身の記憶を振り返った。夏休みに会ったあの少女は東京に住んでいる。もう会えないと思っていたが、本当にあの人は連れて来てくれるのだろうか。
(もし会えるのなら・・・)
少年は胸の鼓動が激しくなるのを感じた。その時、自分の部屋に誰かが入って来た。
「茂様、どうされましたか?」
屋敷の遊び相手の女性が二名現れた。
「いや、何でもないよ・・・」
少年は己の思考を読み取られまいと誤魔化した。
「悩みがあるのではないですか?あの男の人が来てから」
「それに誰をお嫁にしようか迷い続けてるって紂王様から聞きましたよ〜」
「う・・・」
少年はもしかしたら早く決めて欲しくてウズウズしているのかと推測した。
「でも、大丈夫ですよ。たとえ私達を選ばなかったとしても私達はずっと茂様のお友達ですよ〜」
「私も茂様の幸せを祝福させていただきます!」
「ありがとう・・・」
少年はホッとした。やはりこの世界は最高だ、と思うのであった。
領土攻撃班の上市明日香と髙田あやはそこの住人、ラクシュミーと共に東側の領土の侵攻および奪還に動いていた。
「ここも我々の領土だった地。攻め込むぞ!」
「はい!」
ところがそこの領土に住む者が攻撃にかかる。
「貴様らが来る事は解っていた。ここで死ね!」
敵は何千人もいた。大量の矢が雨のように振りかざされた。上市の手袋で結界が張られて何とか防いだ。
「誰やねん、あれは!?」
「あれはロシアの革命を起こした民衆共だ!多勢に無勢すぎる!」
しかし、だからといって逃げても勝ち目はない。
「ええい!」
髙田が龍を召喚する。龍が火を噴くが、矢で火がかき消されるというありえない事態が起きた。
(逆転の余地はあるのか・・・!?)
ラクシュミーにも不安が募る。高田の出した龍が民衆を噛み砕こうとする。数人を食殺した程度だった。その時だった。空から民衆に向けて球状の物体が幾つか降って来た。その物体は大きく爆発した。
「ワー!」
「キャー!!」
三人は何事かと思った。別の集団が来ていた。
「そこの皆様、大丈夫でしたか?」
西洋風の女性がいた。そして護符を持つ成人女性が一名、他に中学生の女子が一名、そして小学校高学年くらいの女子に小学生くらいの眼鏡の男子、中学生男子、そして戦国武将のような人物がいた。
「今のは私の護符で出した大砲によるものよ」
「貴女は、護符の所有者!?」
「手助けしたるぜ!」
中学生男子がボールを蹴った。ボールは火花を散らして民衆を襲う。
「あの民衆達にもあの厄介な道具が提供されている。しかも数が多いからさらに厄介だ!」
ラクシュミーが解説する。
「よし!ならばその機械を壊せばいいのね!」
護符を持つ女性が護符を出す。
「羽柴さりさん、私も手助けします!」
「私もだ!」
西洋風の女性が剣を空に向け、戦国武将のような男は槍を地に刺した。
「今よ、機械は壊せたはずだわ!」
「よし!皆の者、やるぞ!」
中学生の女子がボールのような物を出して陰から民衆に黒い槍で攻撃した。そして眼鏡の男子も神通力などを使用して攻撃する。
「よし、後は私達の攻撃だ!」
ラクシュミーの軍は剣で光線を放つ。上市の手袋からも青い炎が現れて民衆を薙ぎ払い、髙田の剣から出た竜も多くの民衆を食殺した。
「うわー!」
「ギャー!」
民衆はやられた。そして倒された。
「やったか・・・」
上市達は護符の所有者に礼を言う。
「あの、おおきに」
「いいよ、先に進みなよ。ここは私達がいるから」
「はい!」
「よし、行こうで!」
領土攻撃班の者達は先に進んだ。
「こちら領土攻撃班、髙田あや!一つの街を取り返したで!」
髙田は通信機で本部に連絡するのだった。
さり達は奪還した街を見る。
「でもさっきの戦いで廃墟になっちゃったわね」
「大丈夫です。復興できますよ。貴女の護符の能力でね」
「あ、うん」
さりは護符を出した。破壊された建物が別の建物に変貌していく。
「す、凄い、これは・・・」
「ここは我々日本の者が住んでいた地区だった。そこにあの革命なる者を起こした者が侵攻してきたのだろうな」
「そうだったのね」
「ここの屋敷を借りて少し休むといいでしょう」
「ええ」
さり達は街の屋敷を宿宿借りしながら平和主義の世界の領土を守護する事にした。
後書き
次回は・・・
「飛ばされた場所で」
ゴジラの攻撃でかよ子達藤木救出班は目的地から大いに遠ざけられてしまった。飛ばされた場所は何処か、イマヌエルとの連絡で確認する。一方、とある屋敷では一人の少年がある事を楽しみにしていた・・・・!!
195 飛ばされた場所で
前書き
《前回》
赤軍の和光晴生が召喚したというゴジラを撃破したかよ子達だったが、その場に戦争主義の世界の長・レーニンの声が聞こえ、倒したはずのゴジラが復活し、その攻撃でかよ子達は遠くへ飛ばされてしまった。そして赤軍の和光晴生はとある少年の嫁に相応しい相手が自分達や戦争主義の世界の人間との利害が一致している事に都合よく思う。そして領土攻撃班の領土奪還にさり達本部守備班が援護に向かい、一部を平和主義の世界として取り戻す事に成功したのだった!!
本部の管制室。かよ子の母達は本部守備班からの連絡を受けていた。
『こちら本部守備班の羽柴さり。領土攻撃班の援護をして東側の街の奪還に成功したわ。暫くテレーズ達とそこで待機する』
「了解しました。敵が侵入してきましたら迎撃お願い致します」
『了解』
「さりは順調なんね」
まき子は娘が無事で心が落ち着いた。
「しかし、山田かよ子ちゃん達ですが、今、高速で目的地から遠ざかっていますのですが、何がありましたのでしょうか?」
「私が聞いてみるよ」
イマヌエルが通信する。
「こちらイマヌエル。藤木茂救出班。何が起きた?」
しかし、応答がない。
「何か危険な状態に遭いましたのかもしれませんわね。地図の様子ですと赤軍や敵の人間と交戦した様子や何も気配が感じられませんでしたから。暫く待ってみましょう」
「そうだね」
「かよ子、無事かしら・・・!?」
まき子は娘が心配になった。
「きっと大丈夫だよ。まだ点が消えてないという事は命に別状はないという事だよ」
「そうよね・・・」
かよ子は気が付くとまた知らぬ場所にいた。そこは谷の中だった。
「かよちゃん、気がついたんだねえ〜」
「まるちゃん・・・。そうだ、私達って・・・」
かよ子は先程まで自分達がどうなったか思い出していた。
「そうか、私達はあのゴジラと戦ってそしたらレーニンが出てきて、またそのゴジラが出来てきて・・・」
かよ子は頭がこんがらがった。
「左様、あのゴジラという怪獣によってここ迄飛ばされたのだ」
石松が捕捉した。
「そうだった・・・」
「ここは、本部に連絡した方がいいな」
椎名が通信機を取り出す。
「こちら藤木救出班、椎名歌巌。レーニンという男の攻撃で目的地より遠くの方へ飛ばされた。谷底にいる」
『ああ、連絡がつながったか。こちら本部のイマヌエル。レーニンの攻撃と言っていたが!?』
「ああ、ゴジラのような怪獣が現れてそいつを倒したらレーニンの声が聞こえて来た。奴のセリフからするとその怪獣とやらが赤軍の和光晴生とかいう者が作り出したものらしい。レーニンは倒した怪獣を再び呼び起こしてその怪獣の攻撃によって目的地から遠ざけられたという事だ」
『了解。今皆がいる谷は様々な山脈が存在する「混沌の山脈」の中だ。緑がない大きい山が東の方角に当たる。もう夕方になっているし、あまり無理をしないほうがいいだろうから、ひとまずそこで休憩した方がいい』
「了解」
通信が終わった。
「イマヌエルの言葉に従う方が良かろう。今日はここで休む事にして、あの岩だけの山を越えて目的地に向かうとしよう」
次郎長が提案した。
「うん、ごめん、皆、おっちょこちょいしちゃって・・・。それがなければここまで飛ばされる事にならなかったのに・・・」
かよ子は罪悪感でいっぱいだった。
「山田かよ子、あの襲撃はお主の失態ではない。誰でもレーニンが出てくるのは予想だにせぬことであったのだから気を落とすな」
石松が慰めた。
「そうだよ、かよちゃん、こんな事で落ち込んじゃだめだよ!」
「そうだブー、オイラ達は意地でも藤木を取り返すブー!」
「だからここでメソメソすんなよ!」
まる子が、ブー太郎が、大野にかよ子が励まされる。
「まるちゃん、ブー太郎、大野君・・・。うん、そうだよね!」
かよ子はくじけまいと思うのであった。それを傍から見ていたのり子は考える。
(ももこちゃん達、一人だけの友達じゃなく、皆であの子を励ましてる・・・。そっか・・・)
のり子も言葉を掛けようと進む。
「かよちゃんだっけ・・・?私も精一杯手伝うよ!」
「のりちゃん・・・。ありがとう!」
そして藤木救出班は谷で一夜を過ごす事になる。
戦争を正義とする世界の本部。レーニンはある物を用意させた。2台の自動車だった。
「自動運転が可能な自動車だ。これで和光晴生を迎える」
自動運転する自動車のうち1台は本部を出た。
「はて、貴様が中心となって動くか?」
「ああ、いいぜ」
「レーニン様、杯を所有者ごと奪うという事ですか?」
「その通りだ。重信房子、貴様にも付いて来て貰おう」
「畏まりました、レーニン様」
「本部の警備は他の者に任すがよい」
「はい」
レーニンと重信房子はもう1台の自動車に乗車し、出発する。
かよ子達藤木救出班は谷で夜を過ごす。
「それにしてもここは冷えるのお〜」
友蔵は寒がっていた。通信機を出す。
「ちょっと、フローレンスさんとやら、ストーブを用意してくれんかの?」
『ストーブ!?仕方ありませんわね』
羽根の上にストーブが現れた。この日は麻婆豆腐に卵スープと中華風の献立だった。
「はあ〜、明日こそハンバーグ出ないかな〜」
まる子は願う。その時、フローレンスの声が聞こえる。
『皆様、食後にこちらをどうぞ』
皆の前にプリンが出てきた。
「うわあ~、プリンだあ~。やったあ~」
「まる子や、良かったのお~」
「ほう、『ぷりん』か。西洋の菓子だな」
次郎長は味見をした。美味と思った。
「アタシも今度この『ぷりん』を作ってみたいね。この世界に来て食べた事はあるけど、貰いものだからね」
「そうだったな、いつの日か西洋出身の者から教わってみてはいいと思いますな」
綱五郎は案じた。その一方、かよ子はプリンの甘さを噛みしめながら攻撃に屈したくないと思う。
(レーニン・・・)
かよ子はふとある事が思い出される。
(杉山君・・・、今どうしてるの?もしかして、本当に、あいつらの方に寝返ったんじゃ・・・!?)
かよ子は杉山の近況もいち早く知りたかった。そう思いながら日が暮れた。
紂王の屋敷。少年は己の部屋の寝台に入る。その時、ドアがノックされた。
「茂様!」
「あ、はい!」
元気そうな遊女が入ってきた。
「明日の『すけーと』、楽しみですね!私も、他の者も皆楽しみにしてますよ!それじゃ、お休みなさーい!愛してまーす♡」
「うん、お休み」
遊女は戸を閉めた。
(スケート、か・・・。久々に滑ってジャンプやスピンを皆に見せてみるか!)
少年は自分がスケートしてジャンプやスピンを披露する姿を想像した。
(もしあれが・・・)
少年は「学校」にいた好きな女子に「凄い」と言われる所を妄想する。
(いや、いや、もう忘れたんだ!!)
少年は気を取り直す。そして夏休みに会った「少女」に見せる所を思い出した。
(そうだ、あの時・・・!!)
少年は夏休みに会った「少女」にスケートができるとアピールした事があった。だが、季節が違うという事で反応が微妙に終わってしまった。
(見せたいな・・・、僕のスケート姿を・・・!!)
少年はそう願いながらも明日を楽しみにしながら眠るのだった。
かよ子達もまた眠りにつく。
「お休み・・・」
「ああ、お休み」
羽根の結界が働いてくれたとはいえ、あの怪獣は結界ごとこの羽根を追い払ってしまった恐ろしい怪獣である。玄奘によって強化された羽根であるというのにとても無力に思った。
(負けたくない、杖を盗られたくない・・・!!)
かよ子は以前、異世界の人間に一度、杖を騙し盗られた事があった。それ以来、杖の所有者としての自覚も強くしたいと思っていた。
後書き
次回は・・・
「同体化した少年」
本来の目的地に向かうべくかよ子達藤木救出班は東の方角を目指し、混沌の山脈を脱出しようとする。だがそこには赤軍の人間が現れる。そこには更に戦争主義の世界の長・レーニンも現れる。そしてそのレーニンの声が変わるが、その声は・・・!?
196 同体化した少年
前書き
《前回》
かよ子達藤木救出班はレーニンによって再生されたゴジラによってとある山脈の中へと飛ばされてしまった。かよ子は己のおっちょこちょいのせいだと自分を責めるのだが、皆の声に支えられ、気を取り直す。その一方、赤軍の重信房子と戦争主義の世界の長・レーニンはある目的の為に動いていた・・・!!
オリジナルキャラ紹介・その18
尾藤海斗(おどう かいと)
熊本県に住む中学生。初登場116話。サッカーに打ち込んでおり、部活もサッカー部に所属している。清正から託された蹴ると炎を噴き出して勢いをつけて相手を攻撃する不思議な球を使用して戦う。攻撃重視の武装の能力を所有している。彼の母は嘗て清水に住んでおり、戦災孤児として先代の杖や護符の所有者と会った事がある。好きな食べ物はチャーハン、うどん。
かよ子は谷の中で一夜を過ごしていたが、ふと急に目が覚めた。しかし、まだ夜は明けていなかった。
(こんなに早く目が覚めるなんて・・・)
別に例のレーニンが出てくる夢でうなされていた訳ではない。ただ何となくである。皆は眠っていた。まる子は寝相が悪く、ゴロゴロ転がりながら寝ていた。
「何か、落ち着かない気分だな・・・」
かよ子には見聞の能力は持っていない。しかし、心のどこかで落ち着かない感じがしていた。それは目的地から遠ざかってしまったからか、それとも自分の好きな男子が赤軍達の側に寝返ってしまったからか、もっと言えばその両方なのか・・・。
(イマヌエルさんは、あの山を越えればいいって言ってたな・・・)
かよ子は緑のない、土のみの山を見た。そして日が出るまでそのまま見つめていた。
「おお、山田かよ子、起きていたのか」
「石松・・・」
石松が起きていた。
「うん・・・、早く起きちゃって」
「まあ、遠くの地に飛ばされたのだ。悔しい余りであろう。だが、挫けるでない。必ず目標は達成するべきだ」
「うん、そうだよね・・・!!」
そして皆が大体起きて来た。
「あ、かよちゃん、おはよう~」
「まるちゃん、おはよう」
そして声が聞こえた。
『皆様、おはようございます。朝食の御用意ができましたのでお召し上がりください』
フローレンスの声だった。今朝は和食風だった。鯖に米、味噌汁にお干たし、そして海苔だった。
「ちぇっ、今日は外れかあ・・・」
まる子は少し不貞腐れた。
「さくらももこよ、飯の献立に当たり外れなど関係ない。気に入らなければ食わなければよかろう」
石松が窘めた。
「ぶー・・・」
「私、ももこちゃんがそう言うの言うと嫌だ・・・」
のり子が悲しげに言った。
「あ、うん、ごめん・・・」
「よし、食ったら先行こうぜ」
大野が案じ、皆は了承した。そして食べ終わると、かよ子は羽根を動かし始める。
「それじゃ、行くよ!」
羽根は飛ばした。山脈の山々のうち、緑のない山を飛んでいった。
「次郎長さん」
「何だ?」
かよ子が質問する。
「この山脈は色々な山があるよね。どうして一つの山脈に緑があったりなかったり、火山や雪山、さらには雲が上に乗ってる山とかあるの?」
確かに、この山脈の山々は多様な性質を持っている。
「この山々には様々な性質を持っているように作られたのだ。西洋にある四大元素および東洋、特に中国から伝わる五行説の源となるようにな」
「四大元素?五行説?」
「四大元素とは炎、水、地、風の事、五行説とは炎、水、木、金、そして土の五つの事だ。お主の杖は杯、護符、剣と共に四大元素を司る最強の宝具の一つ。杖はその中で炎を司る役割であるのだ。フローレンスとイマヌエルはこの地を作り出した時にその元素の源をこの山脈としたのであろう」
「そうなんだ・・・」
山脈を越えた所、大野や関根が異常な程の胸騒ぎを覚えた。
「この胸騒ぎは・・・、近くに『敵』がいるぜ!」
「ええ!?」
「何だ、あの車は?」
綱五郎が一点を指差した。自動車が通っていた。
「あれは・・・!」
かよ子達が発見すると同時に車から人間が二人降りてきた。一人は女でもう一人は男だった。
「杖の所持者か」
「レーニン様、丁度いい時に出会いましたね」
「ああ、寄り道するか!」
「あの人は・・・!」
かよ子はその女を覚えていた。クリスマス・イブの日に名古屋で赤軍達と戦った日に現れた赤軍のリーダーだった。あの時は広島から奪ったという異世界の剣を用いていた。
「絶対に杖は渡さないよ!」
かよ子は強気になる。
「本部に連絡せよ!」
石松が促した。
「了解!」
椎名が通信機を取り出して本部と連絡を取る。
「こちら藤木救出班、椎名歌巌!赤軍の長に異世界の男一名と対面した!」
『なんですって!?』
「通信したって何のいい事がある?」
男が呟いた。そしてかよ子達を睨む。
「くっ!」
かよ子の羽根の結界が男の攻撃を防ぐ。
「ふ、やはり機械では借り物の威力にしかならんか。威圧の能力とやらでもな」
そして男の声が変わった。
「よう、こんな所まで来てたなんてな」
かよ子達にとって聞き覚えのある声だった。
「・・・え?」
本部の管制室。かよ子の母達が杖の所有者の様子を確認する。
「うちの子がまた敵とぶつかったって!?」
「はい、赤軍の長に更に敵の勢力の人間です!」
フローレンスはその位置にいる点に違和感を感じる。本来、戦争主義の人間であるならば点の色は黒になるはずである。しかし、点は黒と黄、交互に表示されていた。
「この点は一体?敵ですか、味方ですか・・・?」
フローレンスはもう一度藤木救出班に連絡する。
「こちらフローレンスです。皆様が相対していますのは赤軍の人間ともう一名はどなたなのですか?」
『フローレンスさん、レーニンって人とあたってるけど・・・。声が杉山君に変わった・・・』
「杉山さとし君に!?」
フローレンスは思い出した。戦争主義の世界の長・レーニンは偽物の護符、杖、杯の能力が作動して動けなくなった事。しかし、赤軍の丸岡修がこちらに監禁していた足立正生と吉村和江を奪還された際にレーニンの声が聞こえた時、「あの少年」の声が聞こえた事。つまり、レーニンは杉山さとしの身体を吸収してそれを「核」として動いていると言う事である。
(しかし、どうしてあのレーニンが動いていますのでしょうか?他の者に出向かせますよりも自分で行きます方が都合がいいのですか?)
イマヌエルが呼ぶ。
「フローレンス、大丈夫か?」
「いえ、私が以前、赤軍の人間を取り返されますといいます失態を犯しました時、レーニンの声が聞こえましたのです。その時、杉山さとし君の声も聞こえまして・・・。つまり、レーニンは杉山さとし君を取り込みまして、杉山さとし君の身体で動いてていますといいます事になります」
「何だと!?」
イマヌエルにとっても信じ難い事であった。
「お前ら、また会ったな」
その声は紛れもなく杉山さとしの声だった。
「その声は・・・、杉山君!杉山君なの!?」
「そうだよ」
相手は否定しなかった。
「俺はこいつの身体と一体となって動いているんだよ。自分が大将だって事を解らせる為にな」
「杉山・・・」
大野の拳が怒りで震えた。
「おめえ、いつからそんなクズに成り下がったんだよお!!」
大野はレーニンを、いや、杉山を殴りにかかった。しかし、呆気なく弾き返された。
「うおっ・・・!」
「大野君!」
「大野けんいち!」
「無駄よ、レーニン様にも『あの機械』を持たせて吸収しているのよ」
房子が説明した。
「あの人!剣はどこなの!?今持ってるの!?」
「それは貴女達にとって知る必要の無い事よ」
赤軍の長の女性はあえて明かさなかった。
「折角通りかかった駄賃だ。杖諸共貰おう!」
杉山からレーニンの声に戻った。
「山田かよ子!羽根から出るな!」
「うん!」
かよ子は次郎長の指示に従った。
「山田、お前、羽根を改造したのか?」
杉山の声に変わった。
「ほう、桐島聡達東アジア反日武装戦線との戦いや、昨日の和光晴生が出した怪獣の能力からして羽根に結界が張れるようだな。だが、我が威圧の能力とやらで気絶させてくれる!」
レーニンがかよ子を睨みつける。かよ子はレーニンの圧が身体に来て震えるのを覚えた。威圧の能力が効いているのだ。次郎長達も気絶してしまった。
(私の武装の能力や結界でも駄目なの・・・?耐えたい・・・!それに・・・)
かよ子はある願いをを持っていた。
(このレーニンが杉山君を取り込んだっていうなら連れ戻したい・・・!)
その時、越えたばかりの山脈から音が飛び出した。
「・・・え?」
かよ子は振り向いた。山脈の火山から炎が噴火していた。その炎がかよ子に、いや、かよ子の杖に結界を貫通して降りかかった。杖が桃色に光る。
「これは・・・?」
かよ子ですら驚いた現象だった。
「あの山から杖に力を・・・?」
房子でも理解不能だった。
「これは・・・!!」
レーニンは苦しみ出す。
「重信房子!杖は後回しだ!杯の持ち主を追うぞ!」
「え、ええ!今日はここまでよ!次は必ず貰うわ!」
二人は車に乗る。
「い、行かせないよ!」
かよ子はリュックから花火を取り出し、火薬を操る能力を得た。しかし、武装の能力なのか、撥ね返された。
「行っちゃった・・・」
かよ子はレーニンの言葉を思い出す。
「杯の持ち主を追う・・・?」
そしてあの二人の狙いが解った。目的はりえの持つ杯と。
後書き
次回は・・・
「目指すは杯」
赤軍の長と戦争主義の世界の長が第一に狙うのはりえが持つ杯だと解ったかよ子は慌ててりえに連絡を取る。だが杉山を追う為に進むりえ達の前に一人の女性が立ちはだかる。その女性は狐の姿に変化し・・・!?
197 目指すは杯
前書き
《前回》
ゴジラによって山脈の中に飛ばされたかよ子達は藤木奪還に向けて再び動き出す。ところがその場に赤軍の長・重信房子と戦争主義の世界の長・レーニンが立ちはだかる。そしてそのレーニンは杉山を身体の核として取り込んでおり、杉山もまたレーニンの側に協力している事をしる。襲撃を受けるかよ子達だが、山脈の火山がかよ子の杖に力を貸してレーニン達を撃退させる。だが、レーニンと房子の目的はりえの杯だとかよ子達は知る!!
かよ子はレーニン達の狙いが杯だと解ると直ぐ様通信機を取り出した。
(りえちゃん達が危ない・・・!!)
かよ子は杯の所有者へと連絡を試みた。
「こちら山田かよ子!りえちゃん!!」
『かよちゃんっ、どうしたのっ!?』
「今、赤軍の女の人に異世界の敵と会ったんだ!その人達の狙いはりえちゃんの杯だよ!気を付けて!!」
『ええっ!気をつけるわっ!』
「それから異世界の人なんだけど、その人はレーニンって言って、実は・・・」
『えっ?』
「杉山君を取り込んで動いているよ!」
『何ですってっ!?兎に角、私達も杉山君を探してた所だから強引にも連れ返すわっ!ありがとうっ!』
「うん!」
連絡を終了した。
(私じゃなくてりえちゃんをレーニンは、いや、杉山君は狙った・・・)
かよ子は邪推した。
(いけない、こんな時にヤキモチなんか妬いてる場合じゃなかった・・・)
その時、通信機から連絡が来た。
『こちらフローレンス。藤木茂救出班の皆様、何がありましたのですか!?』
「フローレンスさん・・・?」
妲己はまた屋敷を出る事になった。
「全く、レーニン、また呼び出して・・・」
妲己は見送る遊女に告げる。
「いいか、あの坊やと楽しく遊んでやるのだぞ」
「了解しました!行ってらっしゃいませ!」
妲己は馬に乗って向かった。
「しかし、坊やの嫁に相応しきおなごが見つかったと連絡があったとはな。どんな娘か・・・」
かよ子達の元にフローレンスから連絡が来た。
「フローレンスさん、レーニンって人と赤軍の人が襲ってきたんです!」
『レーニンですと!?』
「はい、それで杉山君がレーニンと一緒にいました・・・。一心同体みたいになってました・・・」
『そうでしたか。山田かよ子ちゃん、他の皆様は如何なされていますか?』
「レーニンの攻撃で気絶しています!」
『分かりました。今、起こしましょう』
皆が起きた。
(凄い、フローレンスさん・・・。そういえばあの時も杉山君を起こしてた・・・)
「山田かよ子、無事だったか!?」
次郎長が慮った。
「うん、私は大丈夫!でも、レーニンと赤軍の女の人達はりえちゃん達を襲うつもりだよ!」
「りえちゃんをお!?」
「大丈夫なのかよ?」
『皆様、起きましたか?こちら本部のフローレンスです。皆様が無事でよかったです。杯の持ち主につきましては我々や領土攻撃班の者が対処致します。先に進んでください』
「はい!あ、フローレンスさん」
『はい?』
「私、さっきレーニンに襲われそうになった時、近くの山脈の火山が杖に力を貸してくれたんです。あの山は一体・・・?」
『はい、その山脈には四つの道具、杖、護符、杯、そして剣の能力の源が含まれていますのです。その山が杖を守りましょうと言う気持ちに応えて山田かよ子ちゃんをレーニンから守りましたと言います事です』
「はい、ありがとうございます!」
『では私達も切羽詰まっていますのでこれで失礼いたします』
通信が終了した。
(りえちゃん、無事でいて・・・!!)
かよ子は戦友であり恋敵のような杯の所有者の無事を祈りながら先へ進むのだった。
杯の所有者・安藤りえは杖の所有者の報告を受け心臓の鼓動が強くなっていた。
「杉山君がこっちに来るわっ!」
「す、杉山君があ!?」
冬田も驚いた。
「兎に角、敵の人間が杉山君を取り込んでいるって事だわっ!」
その時、通信機からまた連絡が入った。
『こちらイマヌエル!山田かよ子君からの連絡が来ているとは思うが、そちらに赤軍の人間および敵の世界の長が来ている!こちらも数名援軍に向かうぞ!』
「あ、はい!」
「悠一さん、そのテクンカネでイマヌエル達を呼んだ方がいいんじゃないかしら?」
ありが夫に案じた。
「そうだな。それにしても敵の世界の長が来るとなるととんでもない戦いになるはずだ!」
悠一はテクンカネを発動した。項羽のように古代の中国の武将のような男が現れた。
「そなたは劉邦ではないか!」
「項羽!」
「まさか嘗ての敵同士と共闘する事になろうとはな!」
「おう!杯を護る為だ!何が何でも死守するぞ!」
「ありがとう、劉邦!!呼んだのは俺だ!」
悠一が名乗り出た。
「お主か、フローレンスとイマヌエルから連絡は来ている。そしてこの小娘が杯の所有者だな?絶対に迎え撃とう!」
「はいっ!お願い致します!」
その時、が、感知した。
「く、来たるで、奴らが!!」
「もう杉山君が来たのっ!?」
りえはそう予測した。
「向こうの方角だ!」
シャクシャインが北東の方角を指した。
「まず俺がやってやる!」
鎌山が鎌でかまいたちを起こした。しかし、すぐに消滅してしまった。
「おおっと!危ない事してくれるね!」
相手は馬に乗った女性だった。
「お前が杯の所有者か。確かに可憐な容姿をしておるな」
「えっ?」
「頂こうか、お前事」
女性が変化した。巨大な狐の姿に変化した。だが、尻尾が九本もあった。
「何やあれは!?」
「きゅ、九尾の狐!?」
九尾の狐となった女性は青い炎を噴き出した。
「ええいっ!」
りえは杯を出し、炎に向けた。炎の精霊が召喚される。炎の精霊は火炎放射をして狐の炎に拮抗する。
「りえちゃん!私達も行くよ!」
みゆきがブーメランを投げた。鈴音も錫杖で炎を巻く。
「ギャアア!」
九尾の狐には案外効いているようだった。
「わいもや!」
立家は駒爪から電撃を浴びせる。バギッと破壊される音がした。
「ありがとうっ、みんなっ!」
「これは機械が壊れる音ね」
「よし!」
りえは立家の電撃に杯を向け、今度は雷の精霊を召喚させた。ありも神を呼び出し、項羽と劉邦も攻撃にかかる。
「す、凄いわあ・・・」
「冬田さん、見惚れてないで一緒に戦って」
「あ、はあい・・・」
ありに促されて冬田も加勢しようとする。しかし、九尾の狐は倒れていなかった。
「む!別の敵が来ているぞ!」
項羽が告げた。
「え?」
「妲己よ、よく来てくれた」
「この声は・・・!」
車が現れた。降りてきたのは一人の男性と一人の女性だった。
「貴女が杯の持ち主の女の子ね」
「我が名は民主を立ち上がらせし者であり、武力を持つ事を正義とする者の主・レーニン。どうあがこうが、杯は頂こう」
そしてレーニンの声が変わった。
「それからお前は俺を探してたんだろ?やっと会えたな」
りえは感づいた。
「え?杉山君!?」
後書き
次回は・・・
「少女は生け捕りに」
杉山が己の身体をレーニンに売って赤軍や戦争主義の世界と手を組んだことに激怒したりえは杉山をそのまま倒そうと牙を向ける。だがりえを狙いに来た妲己も合わさってりえ達は苦戦してしまい・・・!?
198 少女は生け捕りに
前書き
《前回》
赤軍の長・重信房子、そして戦争主義の世界の長・レーニンと対面したかよ子だったが、レーニンは杉山と同体化した事、そして彼らはりえの杯を奪う事を優先している事と知ると、かよ子はりえに早急に連絡した。そしてりえの方には九尾の狐に変化する女・妲己が襲撃する。迎撃するりえやあり達だったが、その場には房子とレーニン、そしてレーニンと同体化した杉山が現れた!!
りえはその場に現れた男・レーニンの声が杉山に変わった事に驚いた。
「あんたはレーニンって言ってたけど、杉山なのっ!?」
「私はレーニンだ。偽物の道具のせいで自分の身で動けぬようになってしまったので代わりの身体を取り込んだのだ。そうしたらその杉山さとしという少年が私に身体を提供してくれたのだ」
声がレーニンのものに戻った。
「つまり、こいつといれば俺は大将になれるんだよ」
レーニンの声がまた杉山に変化する。
「どこが大将よっ!裏切るなんて臆病者じゃないっ!」
りえは杉山の意見を否定した。
「あんたそのものをぶっとばすわっ!」
りえの怒りが爆発する。
「杉山君、君の優先する事は赤軍や敵の世界の人を倒す事でしょ?大将になる事は今はやってる場合じゃないはずよ」
ありが神を召喚した。
「貴様の首を討ち取るぞ!嘗ての敵、劉邦よ、この者達と共闘しよう!」
「おう!」
項羽と劉邦も協力し合う仲となる。
「できるのかしら?」
房子が拳銃を発砲した。
「何、動けぬ!?」
項羽も、劉邦も、彼等に従う兵達もその場で硬直した。
(あの女、前に名古屋で会った時は剣を使ってたけど、これがあの女の能力なの!?)
ありはアイヌラックルに攻撃を指示した。
「アイヌラックル、この女も、狐も、片付けて!」
「了解」
「項羽、劉邦、怯むな!」
悠一のテクンカネが光る。彼等の硬直が解けた。
「恩に着る、煮雪悠一!」
項羽も劉邦が再び動き出す。そしてアイヌラックルが炎と雷の攻撃を狐と房子に攻撃する。
「ふうん・・・、私も狙うのね」
房子は余裕そうな表情だった。
「どういう意味よ?」
「お姉さん、俺達も攻撃します!」
鎌山と立家もそれぞれの鎌と爪を使って攻撃する。しかし、赤軍の女は何ともなかった。
(健ちゃんの能力を複製した機械ね・・・)
ありは挑発を試す。
「あんた、名古屋で会った時は剣使ってたけど自分が持ってる能力ないんじゃないの?」
「は?」
房子は笑った。
「シャクシャイン、来るんじゃないかしら?」
「ああ、間違いない!」
阿弖流為と母禮も先手を狙った。
「私も行きます!」
鈴音が錫杖で房子を氷漬けにしようとした。
「そんなのが聞くかしら・・・」
どの攻撃も効いていないようだった。
「効いて・・・ない!?」
そしてレーニンから恐ろしい気配を感じた。
「う・・・」
りえが怖じ気づき始めた。失神しそうになる。
「お前、どうしてそんなに俺を追いかけるんだ?」
レーニンが杉山の声で喋った。
「それはアンタが逃げたからでしょっ・・・!」
りえは必死に抗議した。
「安心しろ。俺はこうして戻って来てやったんだ」
「あんた、上から目線で喋るんじゃないよ!」
みゆきが怒ってブーメランをレーニン、いや、杉山に向かって投げつけた。しかし、九尾の狐の火炎放射で押し返されてしまう。みゆきは狐に睨まれ、気絶する。
「もう私も変化する必要なさそうね」
狐は女性の姿に戻った。しかし、雷撃が女性を襲う。
「あ、ああっ!」
「させへんよ!」
立家が爪から電撃を浴びせた。
「邪魔者め、消えて貰おうか!」
「妲己、私も協力するわ」
房子は短刀を出して立家に向けて攻撃する。
「危ない!」
虞美人が赤い花を出して結界を張る。
「女、いい加減にせよ!杯はどう足掻こうが決して渡さん!」
劉邦が鉾を振るう。暴風が起き、妲己や房子を狙う。
「この風は!?」
「この風は普通の風起こしではないぞ!貴様らの邪気も吹き飛ばし、成敗させる風だ!」
妲己や房子のみではない。レーニンにも効いているようだった。
「ほう、いい攻撃だな。しかし、それらの攻撃も水の泡だ」
レーニンが異能の能力を解き放つ。劉邦の風がかき消された。
「重信房子、妲己、とどめを刺せ」
「了解」
房子が拳銃を発砲する。周りが爆発に呑まれていく。
「よし!」
妲己が再び九尾の狐に変化してりえをまた襲う。りえは威圧の能力を受けて動けなくなった。
「させんぞ!」
シャクシャインが立ちはだかり、妲己の行動を防ごうとする。
「貴様、邪魔だ!」
「はあ!」
シャクシャインが槍を出した。妲己が火炎放射する。それに対してシャクシャインも槍で炎を薙ぎ払う。そしてどこからか大水の攻撃が妲己を襲った。
「いやあ、止めて、止めて、止めてえええ!!」
冬田が羽根から大波を出して襲っていたのだった。
「どうしてこんな事しなきゃいけないのお!?杉山くうん、そんなことしたらあ、大野君が困るわよお!お願いだからいい加減仲直りしてえ!!」
冬田は泣きながら訴えた。
「やかましい娘だ」
「待てよ」
レーニンの声が杉山の声になった。
「大野にはここに来る前に会ったぜ。だが、俺はあいつがいなくても大将になれるって解ったんだよ。その為には『こいつら』の側につくという事だ」
「そんなあ・・・。そんなの、間違ってるわよお!」
冬田は訴えた。
「ワリいな。だが、これが俺にしかできねえ事なんだよ!こいつは貰ってくぜ」
杉山がりえを杯ごと奪おうとした。
「ダメえ!」
冬田の羽根から大木の幹が現れ、杉山を殴り飛ばそうとした。
「渡さないわ!」
ありもアイヌラックルを差し向け、杉山を、いや、レーニンを近づけさせないようにした。そしてみゆきももう一度、ブーメランを投げる。しかし、房子の援護による銃撃、妲己が持つ機械による防御、そしてレーニン自身の武装の能力の防御で全て防がれてしまった。そして威圧の能力をレーニンはりえに向ける。しかし、りえは動けなくなるだけで、気絶とまでは行かなかった。
「ふ・・・。機械を吸収したのでは上手く行かんな。妲己、貴様も威圧感を放て」
「了解」
妲己からも威圧の能力が発動された。
「させるか!」
シャクシャインや阿弖流為達ももう一度、恐れずに果敢にレーニンや妲己に飛びかかった。しかし、全て弾かれた。
「邪魔だ、ここで死んでもらおうか」
「やめろ!」
悠一のテクンカネが光る。シャクシャインや阿弖流為、母禮がレーニンや房子の攻撃から光に守られた。
「レーニン、同化していましたか」
フローレンスが現れた。
「貴様・・・」
「レーニン、いいえ、杉山さとし君、貴方は『そちら』に寝返りまして何をしたいのですか?」
「ふ、俺は大将になる為だよ。大野がいなくてもな」
「それで大将になれますとお思いですか?貴方は大野けんいち君が転校しますと言います事で喧嘩をなされ、そしてその私情をこの戦いに持ち込みます上にそれで我々や共闘します筈の皆様と敵対しまして、何をお考えになられますのですか!?」
「ワリいな・・・、ごたごた話をしている暇はねえんだ」
その時、何かが鳴った。
「こちらレーニンだ。何かあったか?」
『こちら戸平和夫。剣を奪い返そうとする者が接近している模様!』
「なぬ!?くう、フローレンス、そして貴様ら、ここまでだ!妲己、重信房子、今だ!」
「ええ」
妲己は動けなくなったりえをそのまま気絶させ、房子は銃撃を行う。フローレンスによって房子の銃撃は防がれた。そしてフローレンスは九尾の狐の姿の妲己を襲う。フローレンスが光線を放つが、妲己が急に念力のようなものでりえを動かし、楯にした。
(な・・・!!)
フローレンスは自ら光線を消す。あの女の変化能力は非常に厄介と感じた。
「私はここで立ち去る。妲己、その杯の持ち主の子娘は貴様に任せる」
「了解」
「行かせますか!」
フローレンスが何としても止めようと妲己とレーニンをを金縛りにしようと試みた。しかし、機械による武装の能力で防御された。
「貴様ら、ここで生涯を閉じるが良い!」
妲己が妖術を用いた。皆が龍に飲み込まれるような幻影を見せられる。
「な・・・、虞美人、皆様を避難してください!」
「はい!」
虞美人が花を使用し、皆をその場から離脱させた。
りえは意識を失っていた。
[貴様を元・剣の所有者のように殺すつもりはない。杯は貰い、生け捕りにさせていただく]
意識を失う闇の中、そのような声が聞こえた。
(生け捕り・・・?)
りえはこれから己が何処へ連れて行かれるか知る由もなかった。
とある岸では軍隊が引き揚げていた。
「女王、ヴィクトリア女帝の援軍がまた現れて行きます!」
「ちい、ここも劣勢になってきているか・・・。こちらにも最強・無敵の精鋭が来るとフローレンスにイマヌエルから聞くが、早く訪れてきて欲しいものだ・・・」
「もう我慢は終わりになるようだよ」
別の女性が現れた。
「ブランデー・ナンか。どういう事だね?」
「もうあそこにお見えになったからだ」
ブランデー・ナンと呼ばれた女性が指を差す。そこに一名の女性、九名の少年少女の姿が見えた。
後書き
次回は・・・
「偽物の剣」
一人の女王の元に辿り着いた剣奪還班はその女王と共に剣の本格的な争奪戦の段取りを開始する。そして三河口は女王から剣奪還の為、そして今後の戦いを有利とするに必要となる物を受け取るのだが、それは・・・!?
199 偽物の剣
前書き
《前回》
九尾の狐に変化する女・妲己や赤軍の長・重信房子に戦争主義の世界の長・レーニンと遭遇したりえ達はその場にいる人物達で総力戦で返り討ちにしようとする。しかし、杉山を取り込んだレーニン達には異能の能力を出す機械がある為に撃退しきれず、りえはそのまま杯ごと妲己に連れ去られてしまう。その一方、とある岸には一人の女性と九人の高校生が到着していた!!
剣奪還班は海岸に訪れていた。
「ここの海岸にクイーン・ベスとやらがいるんけんか?」
鯉沢は周りを見回した。
「れにしても、よう不気味な岸じゃけんのう。でも向こうだけ澄んだ気配がしちょる」
「私も、女王みたいな人が見えるね」
政美はマフラーの能力の一つ、探索能力を利用した。
「もしかしたらその人がクイーン・ベスって人なのかもしれないわね。近づいてみましょう」
ゆりは進言した。そして待機している女王のような人物、そしてその兵士達の元へ訪れた。
「もしもし。貴女がもしかしてクイーン・ベスですか?」
「左様。もしや貴女方が剣を取り返しに来た者達かな?」
「ええ、この手紙をフローレンスから預かっているわ」
ゆりがクイーン・ベスに手紙を渡した。クイーン・ベスはその手紙の封を開けて読む。
クイーン・ベス殿
この手紙を持たせました者達が異世界の最上位の宝具であります剣を取り返します役目を担います者達です。その中でも鍵となります人物が三河口健といいます少年です。その者に私がお預かりさせました例の物・偽物の剣を彼に持たせてください。そしてこの者達が海上のヴィクトリア女帝の警護兵の殲滅および機械の無力化に貢献してくれますでしょう。
フローレンス
「三河口健という少年はいるかな?」
「俺の事だが」
三河口が前に出た。
「君にこれを渡せとフローレンスから伝言を受け取っている」
クイーン・ベスが渡した物は剣だった。
「これは・・・、異世界最上位の剣?」
「そう見えるだろう。外見ほほぼ剣そのものだが、これは偽物だ。本物はあの本拠地にある」
クイーン・ベスは指を指す方角は北の方だった。三河口や鯉沢からして異常な程の禍々しさを感じさせる建物だった。
「あれが、戦争主義の世界の本拠地・・・?」
光江が呟いた。
「左様。ヴィクトリア女帝の手先である警護の者が増えており、我が無敵艦隊も劣勢に傾いてしまっている状態だ。お前達がその状態を塗り替えられるという精鋭達と聞く」
「でも、警護の人間が増えていたら簡単に剣を取り返せない筈じゃないかしら?」
ゆりが懸念した。
「それに関してだが、他に一名、協力者に来て貰っている」
また別の女性が現れた。
「あ、ブランデー・ナン!」
マリエルが現れた女性の姿を見て再会に喜んだ。
「マリエル、知ってるのか?」
湘木が聞いた。
「ええ、私の本はこの人から貰ったの」
「久しぶりだね、花沢咲菜・マリエル。また会えて私も嬉しいよ」
「では、ブランデー・ナン。お前の作戦を教えて頂きたい」
「ああ、皆の情報はフローレンスとイマヌエルから聞いていてね、先ずは敵に気づかれずに進む事だね」
「その為には?」
ゆりが聞いた。
「徳林奏子、お主の羽衣は水中の中で皆を包めて移動させる事ができる。それで敵をかい潜ればよい。必要に応じて濃藤徳崇の剣で守りつつ青葉政美の水中移動する能力で邪魔な敵は奇襲せよ。それからだな、花沢咲菜・マリエル。お主の本の一種に『ジャックと豆の木』の話があるだろ?」
「え、ええ・・・」
「その豆の木の巨人の家に三河口健を封印するのだ。偽物の剣を用意してある事を直前まで知られてはよくないのでね」
「つまり、本部突入は健ちゃんとマリエルちゃんでやる訳ね」
「あとは祝津ゆりの指揮に任せよう」
「了解。マリエルちゃん、本を用意して」
「はい」
マリエルは本から豆を出した。それを地に投げると豆から芽が出て、急速に巨大化し、その天空にある家から巨人が出て降りてきた。
(こんなところで巨人を出して目立たんだろうか・・・)
三河口はそう懸念した。
「お呼びかな?ご主人」
「ええ、この人を貴方の家に匿わせて。必要な時にまた呼ぶわ。乱暴に扱わないでね」
「ああ、よかろう」
豆の木の巨人は三河口を掌に包みこんで家へと戻って行った。そして豆の木は縮んで元の豆に戻ってマリエルの本の中に戻った。
「あいつ、食われへんかな?」
鯉沢が冗談を言った
「こっちで作戦を潰してもしょうがないでしょ」
「それじゃ、奏子ちゃん、皆を羽衣に包んで行きましょう」
「ゆりさん、私は必要に応じて水中移動するよ」
「いいわよ」
「それでは、我々も盛大に援護する。気を付けて参るがよい!」
「はい」
皆は奏子の羽衣に包まれて海の中に入って行った。
かよ子達藤木救出班は目的地への方角へと進み直した。
(りえちゃん達、大丈夫かな・・・?杉山君、あのレーニンと同化してるから、凄い手強くなってる筈・・・)
「山田かよ子、杉山さとしと杯の所有者の事がどうしても気がかりなのか?」
石松が尋ねた。
「あ・・・、う、うん・・・」
「きっと何かあったら同行者も連絡を皆に寄こすであろう。今は彼女らの無事を祈るしかあるまい」
「そうだよね・・・」
かよ子はなぜか杉山にヤキモチを焼き始めていた。
剣奪還班は羽衣を使用して海中へと潜って戦争主義の世界の本部へと向かっていた。
「なあ、ここは気持ちワリいくらいの胸騒ぎがするけんのう」
「おそらく、クイーン・ベスの艦隊を撃墜しようとする連中だろうな」
北勢田が考察した。
「一応、私達も狙われている身よ。迎撃はしておくべきね」
その時、マリエルには何か戦闘が始まるような未来が見えていた。
「・・・もしかして、海上で戦闘が始まる。そんな予感がしたわ」
「予感?それも見聞の能力なん?」
光江が聞いた。
「ええ、私はなぜか次に人が何をしようとするのか頭から聞こえて見えるの・・・」
「どうやら、マリエルちゃんの見聞の能力は健ちゃんや輝愛ちゃんとかと違って未来予知ができるのかもしれないわね」
ゆりは察知した。その一方で政美は探知能力を使用していた。
「マリエルの言ってる事は間違ってないよ・・・。敵の勢力がうじゃうじゃいる」
「濃藤君、君の剣で私達が気付かれないようにできるかしら?」
「はい」
濃藤は運命の剣を羽衣に刺した。羽衣が先程よりも高速で移動した。
「政美ちゃん、敵が動いたら奇襲をしていいわよ。ブランデー・ナンもそう言ってたし」
「はい」
ゆりが指示を出した。政美は海上の様子をマフラーの能力で察知した。
「私達の上は敵だらけだね・・・。行ってくるよ!」
政美が瞬間移動で羽衣の中から離脱した。
「青葉さん、無事に戻って来られるかしら・・・」
光江が心配した。
「でも、水中でも一番動けるのは彼女だから信じるしかないだろうな」
北勢田が答えた。
青葉政美は九つの能力を持つマフラーの中で水中でも魚や鯨、海豚のように普通に生息、行動可能な能力を利用して周囲を巡回していた。
(あれが敵の船の底か・・・。よし!)
政美は船の甲板に接近した。そしてその船底を突き破る。他の敵船も次々と穴を空けた。
「こちら青葉政美!今敵の船底の数機穴を空けた!今戻る!」
政美は超能力の一種・瞬間移動で羽衣の中に戻って来た。
「何機か沈むと思うよ」
「政美ちゃん、お疲れ様」
そして剣奪還班は敵の本拠地へと進む。
クイーン・ベスは敵の船が沈み始める様子を見た。
「今が機会のようだな。行くぞ!」
クイーン・ベスは船に乗り込み、自身の艦隊を出航させた。そして配下の者達に告ぐ。
「全員に告ぐ。剣を取り返さんとする者達の援護で敵の船が次々と傾きかけている。反撃をするなら今だ!」
「了解!」
艦隊が船から砲撃をかました。
「ヴィクトリアよ・・・。増兵も無意味に終わらせてくれる!」
クイーン・ベスは剣奪還班の援護で事態を優勢へと傾かせていく。
「クイーン・ベス。私はブランデーを一杯頂こう」
「お前はブランデーが命の次に大事だな」
クイーン・ベスは冷やかした。ブランデー・ナンは携帯用の酒瓶を出して飲んだ。ブランデー・ナンの周りに炎が現れ、彼女はその場から消えた。
(移動の能力を持つブランデーか・・・)
奏子の羽衣は砲撃の中を抜けて岸の一角に辿り着いた。
「あっちはやばいけんのう」
鯉沢は戦いの最中の海を眺めた。
「本部の裏側に回ったみたいだな」
濃藤は見回す。
「ああ、この辺りの守衛は殆どクイーン・ベスの艦隊が陥落させた」
「ブランデー・ナン!?先回りしてたの?」
マリエルが驚いて聞いた。
「ああ、瞬間移動のこのブランデーを飲んだんだ。私はブランデーを飲む事で能力が発揮されるからね。だが、ここからが問題だよ。剣の奪還は簡単にはいかんと思う。私に考えがあるのだよ」
ゆりはブランデー・ナンの意見を無視する手はないと察した。
「その考えって・・・?」
後書き
次回は・・・
「敵の本部への侵攻」
剣の奪還を進めるゆり達はブランデー・ナンと作戦を立て続ける。ブランデー・ナンは三河口の偽物を作り出して敵を攪乱させる事を提案する。そして遂に戦争を正義とする世界の本部への侵攻が始まる・・・!!
200 敵の本部への侵攻
前書き
《前回》
クイーン・ベスから偽物の剣を託された三河口は作戦としてマリエルの本で出された豆の木の巨人の家にて待機する事になる。クイーン・ベスにブランデー・ナンと共に剣奪還の作戦を決めた剣奪還班一同は奏子の羽衣で皆を包み、水中を移動して戦争を正義とする世界の本部へと接近する!!
三河口は豆の木の巨人の家に閉じ込められていた。巨人の家のテーブルは彼にとってはあまりにも広すぎる。陸上競技のトラック並の広さだった。ゆりやブランデー・ナンの作戦とはいえ、ここの場での待機はやや落ち着かなかった。何しろ三河口からしたら外の状況が知りたかったからである。
「コーヒーでも飲むか?」
豆の木がコーヒーを出す。コーヒーカップも大きかった。
「ああ、頂くよ」
カップの縁は三河口の顎の下にあったので三河口は池に口をつけるような飲み方で飲んだ。
(あまりにものんびりしていると肝心な時に動けなくなる・・・、か)
三河口は側に置いた剣があるか確認した。
ゆりはブランデー・ナンが考えている本部に攻め込む方法を質問した。
「その考えって・・・?」
「まず今は三河口健が鍵となる人間だ。クイーン・ベスが渡した偽物の剣はフローレンスとイマヌエルが用意し、日本赤軍に渡した偽物の杖、杯、護符の所に近づいた時、敵の世界の人間や赤軍の勢力を弱体化可能にできるのだ。だが、三河口健を他の偽物の道具三種に確実に近づけるにはその三つが置いてある所を探らなければならない。見聞の能力があり、彼を閉じ込めている本を持つ花沢咲菜・マリエルがその場所を誘導して欲しい。但し、三河口健の事は敵共からも知られている。敢えて奴等を錯乱させる方法として、彼の傀儡も用意したい」
「傀儡・・・?そうね、北勢田君、君のその矛で健ちゃんそっくりの機械をいくつか出せるかしら?」
「はい」
「それから青葉政美にはマフラーにある変身能力で三河口健に成りすまして赤軍と戦って頂きたい」
「私?」
政美は男に変身する事にやや抵抗があった。
「無理?」
ゆりが聞いた。
「いえ、やってみます」
「それからこの本部は赤軍の本部へと通じる道がある筈だ。その赤軍本部にて異能の能力を利用する事ができる機械を製造する場所があるという事。そこの場所の破壊も行って頂きたい」
「そうすれば、私の従弟の真似をする人がいなくなる訳ね・・・。輝愛ちゃんと北勢田君、それから奏子ちゃん、三人で赤軍の本部に行ってその機械を造ってる工房を片付けてきて」
「おうよ」
「北勢田君は健ちゃんそっくりの機械を作ってからでいいわ。奏子ちゃんの羽衣で移動してね」
「はい」
「それじゃあ、残りの五人で時間稼ぎも兼ねて赤軍と交戦するわよ」
「はい!」
「私も手伝うよ。さっき通った海からの敵の追撃はクイーン・ベスの艦隊が防いでくれると思うからそこはあまり心配しなくて良い。何しろ先程の青葉政美の奇襲で一部はやられて四苦八苦しているはずだからね」
「それじゃあ、皆、行くわよ!」
「はい!」
「おう!」
「それからマリエルちゃん、通信機でどうなっているか健ちゃんにも連絡しといて」
「はい」
三河口はコーヒーを飲んだ後、何もせず大人しくし続けていた。
(待つだけでこんなにそわそわするとはいつぶりだろうか・・・)
その時、通信機が鳴った。三河口は直ぐ様応答する。
「はい、こちら三河口」
『こちらマリエル。海を渡り終えた所でこれから敵の本部に乗り込むわよ。私が三河口君の持ってる偽の剣を置く場所に連れて行ったら豆の木の巨人と一緒に召喚するわ。他の皆は能力を出す機械の破壊やそれらの時間稼ぎに赤軍と戦うつもりよ!OK?』
「はい、了解。マリエル一人で本部の建物の中に乗り込むのか?」
『ええ、でも、私もそれなりに本の中にある色んな物出して戦うわよ』
「ああ、気を付けろよ。こっちも出番が来るまで大人しくしている」
『うん』
マリエルとの通信を終えた。
(そろそろ本番に来たって事か・・・)
赤軍のメンバーの一人、西川純と奥平純三は本部付近に敵が来るような胸騒ぎを機械を通して感じ取っていた。
「奥平、ここらへんだ」
「思ったよりもものすごく近づいているぜ!」
そして二人は本部周辺を巡回していた。そして、空から何かが飛んでいた。
「西川、あれじゃねえのか!?」
「ああ、撃ち落としてやらあ!」
マリエルは本から鵞鳥に乗ったマザー・グースを出して鵞鳥に乗った。鵞鳥は飛び立ち、他の皆と別れた。マリエルは見聞の能力で相手の動向や偽物の三つの道具を心臓の鼓動などで感知した。
(どこかにある筈・・・)
そして何らかの未来予知が見えた。自分を狙う者が近づき、命を取ると。
「マザー・グース!私達を襲う人が来てる筈だわ!」
「了解、粉屋の粉よ、出よ!」
マザー・グースは小麦粉を出した。
「小麦粉?何に使うの?」
「まあ、見てなって」
マザー・グースは小麦粉を投下した。爆発が起きる。
「あの小麦粉で爆発を起こせるんだよ」
そしてマザー・グースの鵞鳥は侵入できそうな窓や出入り口を探す。
「・・・、どこなら安全かしら?」
その時、通信機が鳴った。
「はい、こちら、マリエル」
『こちら濃藤だ。今お前にとって安全な道を俺の剣で確保するから待ってろ!』
「え?うん!」
通信が切れると共に、建物の壁に穴が空いた。
「今、私のいる所の近くに穴が空いたわ!」
『よし、そこから入ればいい!』
「Thanks!」
マリエルは英語で答えて本部の建物に侵入した。
奥平と西川は小麦粉の爆発を受けたが、武装の能力で何とか防御した。
「ちい、面倒くさい奴が来やがった!」
「追うぞ!」
「お前ら、俺が相手してやる」
「え?」
二人は振り返った。その場に一人の高校生程の男子がいた。
「お前は、清水にいたガキじゃねえか!」
「生きてやがったか!わりいがお前一人じゃ倒せねえぜ!俺がお前の能力を写し取ったのを忘れたか!?」
「なら、これはどうだ?」
清水の男子高校生は手から電撃を放った。生憎、西川と奥平は武装の能力で再び防御に入った為、無傷だった。
「こざかしい!」
西川は手榴弾を投げた。
「この手榴弾は分身するぜ!」
手榴弾は複数に分裂し、男子高生を狙った。爆発が起きた。少年の腕が二人の前に落ちた。
「呆気ねえな」
しかし、奥平がそれを拾うと生身の骨や血肉がなく、導線などが腕に入っていた。
「なに、ロボットだったのか!?」
その時、別の襲撃が来た。二人の機械が壊れる音がした。
「よう、偽物に気づいたみてえだな」
斧を持った少年がその場にいた。
濃藤は運命の剣を戦争を正義とする世界の本部に剣を刺していた。
(マリエルが入れる道を・・・)
最上位の道具の一つである本物の剣が取り返せるように濃藤は自分の剣に願をかけていた。マリエルから建物の中に入れるようになったという連絡を終えると共に、周囲を確認する。
(来てるな、連中が!)
「おい、お前、そこで何してる!?」
一人の男性が濃藤の元に近づいて来た。
「へん!」
濃藤はまず剣を相手に向けた。ガシャ、ガシャ、と音が聞こえた。
「お前、機械を五つも持っていたのか」
「良く分かったな!」
「邪魔だ、大人しくしてもらおう!」
濃藤は男を昏倒させようと剣を敵に向けた。しかし、防がれた。
「何だ?お前、何か能力を持っているのか?」
「違うね、私よ」
また別の女性が一名現れた。
後書き
次回は・・・
「赤軍本部へと繋がる道」
戦争を正義とする世界の本部での剣争奪戦が始まった。マリエルは異世界の剣が安置されている部屋を探す為に本部の建物内の捜索を始める。そして赤軍本部への道を探す北勢田、奏子、鯉沢は赤軍の追撃を受け・・・・!?
201 赤軍本部へと繋がる道
前書き
《前回》
戦争を正義とする世界の本部へと行く為に海を渡った剣奪還班はブランデー・ナンと作戦を決める。マリエルが本部の建物内に侵入して異世界の剣の置いてある場所に三河口を連行し、ゆり、光江、政美、濃藤、湘木の五人で本部周囲の赤軍の人間と交戦、そして奏子、北勢田、鯉沢の三人は赤軍の本部へと導く道を探し、異能の能力を発揮する機械の工房へ乗りこむ役を担う。そして剣争奪戦の本格的な戦いが始まった!!
平和を正義とする世界の本部。イマヌエルはフローレンスが出向いた戦争主義の人間と領土攻撃反撃の安藤りえ達が戦闘現場から急に離れた距離へ移動した事で驚いていた。
「こちらイマヌエル、フローレンス、煮雪あり君、煮雪悠一君、聞こえるか!?」
イマヌエルは通信を試みたが応答がない。
「ウチの子は大丈夫なのかしら!?」
りえの母が非常に心配になった。娘と連絡が取れなくなっている事もあると焦るのも仕方がないとかよ子の母、まき子や三人の娘を戦わせている奈美子は思っていた。
「しかし、わからん、連絡が来ない・・・」
「こちら、フローレンス、です・・・」
「フローレンス!無事か!?」
『はい、私や煮雪悠一さんや煮雪ありさん、藤沢鈴音ちゃんや溝口みゆきちゃんや鎌山健次郎君、立家隆太君、ほか同行しているシャクシャインや項羽、劉邦などは無事です!しかし・・・、安藤りえちゃんの姿がありません!』
「安藤りえ君の姿が見えない・・・?まさか!」
イマヌエルは最悪の結果が脳裏によぎった。杯は奪われ、所有者は殺害されたと。
(剣に続いて杯まで敵の手中に収まると更に劣勢になってしまうぞ・・・!!)
湘木は二人の赤軍へと接近していた。
「お前はあの高校生の仲間か?」
奥平が聞いた。
「だとしたら何だ?」
「死んでもらおうか!」
奥平が手榴弾を投げた。対して湘木が斧を振るう。大水を出して手榴弾を押し流す。そして手榴弾は爆発し、奥平と西川は波に呑まれた。
「うご、うご・・・」
「安心しろ、殺しはしねえよ」
奥平と西川は遠くへと押し流されていった。
「よし、他の皆の援護に行くか」
湘木はその場を離れた。
赤軍の政治委員である足立と吉村は建物内部の警護に入る。
「忌々しい連中が来やがって!」
「剣だけは守らないとね。捕まえて殺すか私達がやられたみたいに監禁させてやりたいわね」
二人は平和を主義とする世界の人間に監禁された事があった為か、敵への牙をかなり剥き出しにしていた。
マリエルは濃藤の助力もあって戦争主義の世界の本部の内部に侵入に成功した。
「ここからは面倒な事に巻き込まれるのは避けられないわね」
マリエルは見聞の能力があるとはいえ、今のままでは敵に囲まれる事もおかしくないと判断した。そしてその見聞の能力が今、働く。予知夢の如く先が読めた。二人の男女が剣を渡すまいと警護をしている様子が一瞬映像のようにマリエルの目に映った。それだけではない。赤軍だの東京で連続企業爆破事件を起こした東アジア反日武装戦線の面々が増兵として本部に集まっていく様子さえも見えた。
「マリエル、こちらの行動が読まれたらお終いだ。こちらも諜報係や援軍を増やした方が良い」
「ええ!」
マリエルは本を開いた。二人の妖精が現れた。
「私はシルヴィー」
「僕、ブルーノ」
「シルヴィー、ブルーノ、これから私はマザー・グースと一緒に剣のある場所を探すわ。この建物の中を見回して敵が何処にいるか察知して」
「ええ、良いわよ」
「うん、僕達、空、飛べるし、暗示も掛けてやる!」
「あんたの出鱈目な暗示は信じてないけどね。瞬間移動して何かあったら知らせるわ」
シルヴィーとブルーノは屋内を巡回した。そしてマリエルはまた本から別の人物達を出した。身長15センチ程の小人の兵が何百と現れた。
「『ガリバー旅行記』に出てくるリリパット王国の小人の兵団ね。この建物内の警護をしている人を見たら戦ってくれるかしら?その時間稼ぎとして私は剣のある場所を探すわ」
「了解!」
兵士達は敬礼をして周囲を周った。
「マザー・グース、急ぎましょう」
「そうだね」
マリエルはマザー・グースの鵞鳥に乗って剣が保管されている場所を探した。
北勢田、奏子、鯉沢は赤軍本部へと通じる道を捜す。奏子の羽衣で移動しつつ、鯉沢や北勢田の見聞の能力でその道を探る。
「道らしき道があらへん、どうなっとんじゃけんなあ?」
鯉沢はイラつき始めていた。
「でも近づいている筈だ。この近辺にある事は間違いねえよ」
だが、二人は違和感を感じていた。その違和感が地面にあった。
「徳林さん、羽衣から降ろしてくれ」
「ええ」
三人は羽衣から降りた。
「この地面が怪しいな!」
「うちも同じやこの地面の下が怪しいのう!」
「つまり・・・、赤軍の本部へと通じる道は地下道って事!?」
「よし、試させてもろうたる!」
鯉沢は銃を出して発砲した。原子光線が地面を粉砕し、溶かす。その穴を三人は除くとトンネルのような道があった。
「ここか!行くぞ!」
「うん!」
三人はまた羽衣に乗って地下道へ降下した。
「追っては来てねえよな?」
「ああ」
そして三人は道を進むと、そこに黒い穴があった。
「もしかして、ここか・・・?」
「ああ、一番不気味な感触がするけんのう」
「行くわよ!」
三人は黒い穴を通過しようとした。その時、鯉沢が後ろを振り向いた。
「おい、後ろ来とるで!」
「何!?」
「お前ら、そこで何してる!?」
赤軍の構成員が一名、追手として現れた。
「あいつは、赤軍の一人、山田義昭だ!」
「行かせるかよ!」
機械から威圧の能力を発動した。奏子は羽衣で防ごうとする。しかし、効果がなく、三人は気絶しそうになる。
「あいつ・・・。機械を沢山仕込んでるな・・・!!」
北勢田は矛を山田に向けた。北勢田の電脳の矛が山田の持つ機械から電力を奪い取った。気絶しかけた奏子と鯉沢が再び起き上がる。
「死にたくなかったら逃げな!」
鯉沢は銃を発射した。原子光線を山田に向ける。地下道の周囲が崩れ落ちる。
「俺は機械なしでも戦えるぜ!」
山田はそのまま機械を投げる。機械が手榴弾のように爆発した。奏子は羽衣や武装の能力を駆使して自分達へのダメージを防いだ。
「おい、トク、まともに戦っちゃ時間のムダじゃ、先に進ませい!」
「うん!」
三人は黒い穴の先へと進む。
「待て!お前ら!」
「お前は俺が相手してやる」
後ろから別の男子高校生が現れた。異能の能力を発動させる機械の源となった男だった。
「お前か・・・!恨みを晴らしに来たのか!だが、テメエと遊んでる暇はねえんだ!」
山田は三河口に機械投げつけた。三河口はそれを迎撃し、機械は空中で爆発し、三河口に当たらなかった。
「まだまだあるぜ!」
山田は3個同時に機械を投げた。今度は三河口に当たった。胴体と腕がバラバラになる。
「ふ、くたばったか・・・」
山田は先へ進んで北勢田達を追いかけた。しかし、バラバラにされたその三河口は実は北勢田が電脳の矛出した偽物だった。
濃藤は東アジア反日武装戦線の女と相対していた。
「日高敏彦を倒したくらいで安心しない事ね」
濃藤は厄介な事になったと思った。
「このアサカワ様が成敗させるわ」
アサカワと名乗った女は瓶の蓋を空けた。濃藤は運命の剣を向けた。
(この瓶の中身がどんな物か知らんが成敗させないと!)
濃藤は試みるが、瓶の中身から煙が出てきた。
「この瓶の薬品にそんな物は効かないわよ!」
アサカワの出した薬品が濃藤の剣を無視して濃藤を攻撃する。濃藤は武装の能力を発動させて防御する。だが、これでは持久戦となってしまう。その時、更に後ろから電撃がアサカワを襲った。
「キャアア!な、何よ!?」
「お前は俺が相手する」
三河口がアサカワを攻撃していたのだった。
(北勢田が出したミカワの偽物か!)
濃藤はしめたと思い、痺れて動けなくなったアサカワに剣を向けた。アサカワは気絶する。
「ありがとうな」
「ここは俺が警備する」
濃藤は偽の三河口と共に行動する事になった。
(マリエル、ミカワ、無事でいてくれよ・・・!)
北勢田、奏子、鯉沢は黒い穴の中を抜けた。そしてその出口を出ると・・・。
「ここが本部じゃな!」
「ああ、間違いねえ」
その建物はレバノン国内にある赤軍の本部だった。
後書き
次回は・・・
「機械の工房へ」
鯉沢、北勢田、奏子は赤軍の本部に到着し、異能の能力を発揮する機械を製造している工房の攻撃を始める。そして戦争主義の世界の本部区域の戦いも激しさを増す中、それぞれの目的を達成できるのか・・・・!?
202 機械の工房へ
前書き
《前回》
戦争主義の世界の本部に到着した剣奪還班は剣を取り返す為の本格的な戦いを開始する。マリエルが三河口を連れて剣が置かれている部屋を探し、奏子・北勢田・鯉沢が異能の能力を発動させる機械を製造する工房の襲撃を、ゆり・濃藤・光江・政美・湘木の五人で本部の建物の周囲の敵の交戦に取り掛かる。マリエルは本から妖精や小人を出して捜索や襲撃に当たらせる。そして北勢田・奏子・鯉沢は追撃する赤軍の山田義昭を振り切ってレバノンにある赤軍本部へと通じる穴を通り抜けた!!!
鯉沢、北勢田、奏子はレバノンの赤軍本部に到着した。
「ここが赤軍の本部か」
「気持ちわりいとこじゃけんのお」
「兎に角三河口君の能力を複製した機械ってのを探しましょう」
三人は本部周囲を巡回する。そして工場のような場所を発見した。
「これをぶち壊しゃ、あの厄介な機械を作れへんけんな」
「やるぞ!」
三人は作戦を開始した。
ゆりはブランデー・ナンと行動を共にしていた。
「向こうのクイーン・ベスの艦隊は順調に戦えてるのかしら?」
「ああ、先ほど青葉政美の水中移動能力で船を次々と沈めたからね」
「それじゃあ、帰りは同じ道を通った方がいいわね・・・」
爆音や喧騒が聞こえてくる。
(やってるわね・・・。私ものんびりしてられないわね・・・!!)
「ブランデー・ナン、私達も行きましょう」
「ああ」
ゆりはブランデー・ナンと共に赤軍や東アジア反日武装戦線との戦いへ向かう。
山田義昭が去った後、その場に一人の少年が現れた。しかし、それは一人の少年の姿に擬態した青葉政美だった。政美はゆりの命令で変身能力で彼女の従弟・三河口健に成りすましているのである。そして先ほどまで変身能力で自身を透明化しながら飛行能力で飛んでいたのだった。
(北勢田が出した三河口の機械・・・)
そして政美は探知能力を利用する。湘木の戦闘現場でも、もう一体三河口に似せた機械が破壊された事を確認した。
(北勢田が出した機械は合計7体・・・。うち2体が壊されたって事か・・・)
そして、自身の所にも敵が近づいている様子も察知した。
和光は本部へと急いでいた。何しろ剣を取り返そうとする者が本部に侵入するという連絡を聞いたからである。
(ったく・・・。しょうがねえ、この車で本部に戻るまであと30分程だぜ・・・!)
その時、またトランシーバーから通信が聞こえる。
『こちら重信房子、晴生、聞こえる?』
「総長?はい、こちら和光晴生、聞こえます!」
「貴方の能力で本部の方へ救援できるかしら?」
「しかし、今ここからだと本部到着までまだ少し時間が掛かります!」
『分かったわ、私達もできるだけ急ぐわ!』
通信が切れた。
(なら、あれを出してやるか・・・!!)
光江は赤軍の一人、戸平和夫と遭遇していた。
「お前も剣を取りに来た奴だな?返り討ちに、いや、生きて帰れると思うなよ!」
「そっちこそ私を甘くみんなや!」
光江が御守の効力を発する。自身の持つ威圧の能力を御守に流し込み、それを戸平への攻撃に使用する。しかし、異能の能力を持つ機械が作動したのか、あっさりと防がれた。
「そんなんで俺を倒せるか!」
戸平がその機械を利用して威圧の能力を発動させた。しかし、光江も威圧の能力を所持する者でもある。お互いの威圧の能力がぶつかり合った。どちらも動かない状態となる。
(よし、今やね!)
光江は再び御守を使用した。戸平を昏倒させようとする。
「無駄だ!」
しかし、再び武装の能力が発動され、防御された。
(同じ事、か・・・)
「今度はこっちから行かせてもらうぜ!」
戸平が武装の能力で攻めにかかる。光江自身には武装の能力はない。正面でやりあえはしないと判断した。
(御守の別の能力を利用すれば・・・!)
戸平がナイフを出して光江を刺そうとする。その時、光江の周りに白い衣が現れた。戸平のナイフが弾かれ、更には戸平本人も吹き飛ばされた。さらに後ろには本部の壁があった為に戸平は体を打ち付けられた。
(マリエルと健君が戻りやすいようにせんと、か・・・)
光江は戸平が動かないうちにその場を離れ、他の敵を片付けに行った。
「お前は、清水のガキか!久しぶりだな」
(この男・・・、確か、赤軍の仲間で丸岡修とか言った・・・)
政美は三河口に変身しているために自身が三河口と思われていた。
「お前か、何の用だ?」
政美は三河口の口真似をした。
「勿論、お前を片付けに来たに決まってんだろ。剣を返しに来たんだろ?」
「ああ、そうだ」
「だが、てめえもここ迄だ!サッサと死にな!」
丸岡は包丁を取り出した。そして切っ先を向けただけで相手を殺傷できるという認識術を己に掛けた。
「それはどうかな?」
政美は加速能力を使用する。高速で移動するので丸岡は狙いを定められなかった。そして後ろを捕まれた。政美は今度は怪力能力を行使する。強引に丸岡の手からナイフを分捕った。そして丸岡も投げ飛ばした。
(な、こいつ・・・、道具を手にしたのか!?)
丸岡はそう錯覚した。兎に角地に落ちても痛みも怪我も一切なしという矛盾術をかける。丸岡は地面に落下しても痛みを一切感じる事なく立ち上がった。
「いつどんな道具を手にしたか知らんが、ここで消す!」
(長期戦になるか・・・)
政美はそう思いながら三河口の姿のまま戦い続ける。
「二人とも、まずうちがやったる。下がっとれ!」
鯉沢が羽衣から降りて銃を発砲した。山田の時に出した光線と異なり今度は弾丸だった。地面を揺るがす程の爆音、そしてきのこの形をした雲が現れた。そして工房の瓦や壁が次々と吹き飛ばされていき、炎上した。三人には幸い、奏子の羽衣や彼女の防御特化の武装の能力が働いていた為、無傷だった。
「よし、次は俺が使えなくさせてやる!」
北勢田が矛を向けた。矛から放電され、周囲に散らばっていた機械が破壊された。
「これで奴らは新しい機械を作れへんのう!」
鯉沢は馬鹿笑いした。
「ああ!お前ら!よくも俺の工房を!」
三人は振り返った。山田義昭が後から追いついて来た。
「許さねえ!てめえらも戦争犯罪者だ!」
「はあ、戦争犯罪者はどっちだよ!」
「そうよ!世界中で色んなテロ起こしてるのに!」
「うるせえ!お前らここで皆殺しにしてやる!」
山田が金属の一部を地面に突きつけた。地面が爆発を起こし、三人を襲う。奏子は羽衣で自分らを防御した。
「北勢田君、鯉沢さん、乗って!」
「おう!」
北勢田、鯉沢は羽衣に戻った。
「逃げられると思うな!」
山田は別の金属を羽衣に向けた。奏子は迎撃を試みたが今度は羽衣ごと吹き飛ばされた。
「ああー!」
三人は羽衣から落ちる。そして尖った金属の一部が矢のように大量に飛んできた。
「くそ!」
北勢田は電脳の矛で塊のような物を出して金属を磁石のように吸い付けた。鯉沢も銃の光線で金属を溶かし、羽衣から離れてしまった奏子は武装の能力で己を防御した。
(羽衣・・・、来て!)
奏子はそう願った。羽衣が奏子の元へ来る。
「今度こそ行きましょう!」
「ああ!」
三人は奏子の羽衣に乗って元の場所へ戻る。
「待ちやがれ!」
後ろから襲う山田に対して鯉沢が銃で応戦する。本部の建物を狙い、破壊された壁が山田を襲った。
「うおっと!」
山田は辛うじて壁の瓦礫を避けた。
「へん、待てと言われて待つバカいるか!」
鯉沢は捨て台詞を吐いた。三人は黒い穴へ戻る。
「こちら北勢田、赤軍の工房は木っ端微塵にした。これで暫く奴らは機械を量産する事はできねえはずだ!今、そっちに戻る!」
北勢田は通信機で他の剣奪還班に連絡した。
『了解、気を付けて戻って来て!』
ゆりが応答した。
「了解!」
三人は黒い穴へと戻って行く。
マリエルはマザー・グースの鵞鳥と共に剣の置いてある場所を探す。そして、ある感知をした。更に自分達を襲撃すると言う予知もした。
(こっちに攻めてきた訳ね・・・!!)
「マザー・グース、邪魔者が近づいて来てるわ!返り討ちの準備よ!」
「了解!」
その時、妖精のシルヴィーが現れた。
「マリエル、剣は4階の部屋にあるわ。偽物の杯、杖、護符と一緒よ!それでそこにまた赤軍の人が二人、警護しているわ!」
「警護を?まあ、厳重にしてるってのは読んでたけどね!」
「いたぞ!あの女だ!」
追手が現れた。しかし、銃声が聞こえるが、襲って来ない。
「進め!主人に指一本触れさせるなー!」
先程マリエルが本から出したリリパット王国の小人兵士が足止めして戦い始めた。
「その必要がなくなったみたいだね」
「4階へ行きましょう。シルヴィー、案内!」
「うん!」
マリエル達は目的地へと向かう。
後書き
次回は・・・
「異世界の剣」
剣奪還班と赤軍達の剣を掛けた争奪戦は続く。赤軍の政治委員・足立正生と吉村和江は剣を奪われないように警護を続けていた。だが彼らの元にマリエルが突入する。そしてマリエルは豆を本から出して三河口を召喚し・・・!!
203 異世界の剣
前書き
《前回》
戦争主義の世界の本部の地下道にある黒い穴を発見した北勢田、奏子、鯉沢はそこを通行し、レバノンにある赤軍の本部へと辿り着く。異能の能力を発揮する機械およびその機械を生産する工房の破壊を敢行する。そして戦争主義の世界の本部周辺で残りの者が赤軍や東アジア反日武装戦線と交戦する中、マリエルは本から召喚したシルヴィーという妖精に剣の場所を捜索して貰い、小人の軍勢に自身の護衛を頼みながら目的地へと進んでいく!!
前回マリエルが出した妖精・シルヴィーとブルーノというのは「不思議の国のアリス」の作者・ルイス・キャロルが著した小説「シルヴィーとブルーノ」の主人公の妖精の姉弟が元となっています。ただ、こちらはアリスと比べると日本では知名度が低いですが・・・。
房子とレーニンは自分らの本部へと大急ぎで向かう。
「それでレーニン様、杯はお持ちで?」
「ああ、それなら妲己に預けた」
「妲己に?あれは杯の持ち主の女の子だけが狙いでしょ?わざわざあの子と同じ場所に持たせたらすぐに一人でも取り返しに行かれる危険があるのではないですか?」
「こちらも何も考えていないわけではない。あれでもあの女は顔が広い方だ。杯は他の者に渡すかもしれぬ。それに今我が元に持ち帰れば剣のついでに取られるかもしれぬからな」
「まあ、赤軍が警護しているから何とかなると思いますが・・・」
「だが、貴様らも幾度しくじった事か・・・」
その時、レーニンのトランシーバーから通信が来た。
「こちらレーニンだ」
『こちらヴィクトリア。そちらに派遣させている私の軍が劣勢に傾きだしたとの情報が入った!何がどうなってるの!?』
「剣を取り返さんとする者がクイーン・ベスの艦隊とやらと協力関係にあったのだろう」
『それではクイーン・ベスに軍配が上がってしまうじゃない!どうしろと言うの!?』
「剣を取り返そうとする者が同じ所を戻るかもしれぬ。その者達を先ずひっ捕らえて取引に使用せよ。剣を渡し、その場から撤退すれば貴様らを襲撃する事はせぬという条件でな」
『通じるのかしら?絶対に信用されないわよ』
「信用されぬ前提で言っておる。それで更に追撃するのだ」
『解ったわよ』
ヴィクトリア女帝は乱暴に答えた。通信が切れた。
「さて、貴様の手下でできなかったら私がやる」
「はい・・・」
その一方でレーニンの体の「核」となっている少年は、ある事を思っていた。
(剣を取り返すのはあの高校生達の集団だろ?面白え・・・!!)
妖精・ブルーノは気づかれる事なく剣を保管している場所に侵入する事に成功していた。
(あれ、敵だな・・・)
ブルーノは唱え始める。
「機械、使エナクナレ・・・」
政美は丸岡と戦闘を続ける。政美は今度は火炎放射能力で丸岡を牽制した。だが、丸岡は矛盾術で自身は如何なる炎に焼かれないとした為、効果はなかった。
「さて、終わりにさせてもらおうか!」
丸岡は武装の能力で政美が放った炎を彼女に向けて焼殺しようとした。しかし、政美も超能力で炎の動きを止めた。もう一度火炎放射能力を行使する。
「何度やっても同じ事だぞ!」
丸岡は武装の能力で炎を跳ね返す。しかし、跳ね返した所に政美はいなかった。
「何?」
「よう、俺はここにいるぜ」
後ろに三河口がいる。
「てめえ、いつの間に回りこんだ?」
丸岡は拳銃を出してどんな弾も彼に当たるという認識術を立てた。2発発砲し、弾が三河口に命中する。
「終わったな・・・」
しかし、三河口はその場で爆発した。
「何!?」
中身はコードや半導体だった。
「き、機械だと・・・!?」
そして地面が揺れる。
「俺はここだよ!」
地面が浮かび、丸岡が投げられる。
「なっ、お前・・・!?」
「さっきの炎で地面に潜ってたんだよ」
政美は加速能力で丸岡を高速でぶん殴った。丸岡は遠くへ飛ばされた。
奥平と西川は湘木の斧で遠くに飛ばされていた。
「はあ、はあ、あいつの斧・・・、何なんだよ」
「おい、奥平。俺の機械が壊れちまってるぜ」
「俺もだよ」
「よう、お前ら」
「て、てめえは!」
そこに現れたのは異能の能力の源となった男・三河口健だった。
「何の用だ?」
「ふ、あの文化祭以来だな。あの時の怨みを晴らしてくれる!」
西川は拳銃を持っていた。水鉄砲だったが、中身は硫酸だった。
「異能の能力が通じないように改造された硫酸だ。効き目はねえぜ」
案の定、硫酸攻撃は三河口に通用した。同時に三河口から火花が散り、爆発した。
「うお!」
「何だ、あれは!?」
奥平と西川は爆破後の三河口を確認した。バラバラになった男の身体は生身ではなかった。中には導線や金属が入っていた。
「これは・・・?ロボット!?」
「偽物か!」
二人は悔しがった。
「あら、何を悔しがっているのかしら?」
後ろから女の声がした。大人の女性だった。
「テメエはあいつの仲間か?」
「だとしたら?」
「これはどういう事だ?本人はどこにいる?」
「自分で探してみれば?」
奥平は手榴弾で、西川は硫酸で攻撃する。
「お前は武器を持っていないみたいだな。いちころだ!」
しかし、女は硫酸を触っても何ともせず、手榴弾もかわして接近し、首にチョップをかました。
「う、ああ・・・」
奥平と西川は全身を麻痺させられ動けなくなった。
「殺しはしないわよ」
女は進む。二人はその女が三河口の従姉・祝津ゆりであり、毒を使用するという事を知らなかった。
湘木は本部の周囲で別の三人組の男と相対していた。
「貴様、剣を取り返しに来たのか?」
三人組の男の一人が聞いてきた。
「・・・だとしたら何だ?」
「殺す」
一人がミサイルのような物を投げて来た。対して湘木は斧で蔓を出し、それを受け止めて投げ返した。ミサイルが爆発する。しかし、相手も機械より武装の能力を出して防御した。
(く・・・、3対1じゃやり辛いな・・・。三河口、早く剣を取って来てくれ!)
湘木はそう願いながら戦い続ける。
光江は赤軍の構成員・戸平を撃破した後、別の場所を移動していた。そして本部の扉を見つけていた。
(そうだ、この戸から中に入ってみるか・・・)
光江は扉に入る。その中で小人の兵達を爆薬で薙ぎ払っている男女二名がいた。
「全く、キリがないわね」
「ったくよお!」
(あれはきっとマリエルが出したんかな?)
光江はそう思い、不意打ちを仕掛ける。電撃を二人組の男女に当てる。しかし、彼らも機械を持っている為か防がれた。
「な!?」
「また誰かが来たな?」
「あんたら赤軍なん?」
「は?俺達は東アジア反日武装戦線の『大地の牙』だ!」
(東アジア反日武装戦線!?)
足立正生と吉村和江は剣の保管場所の警備を続ける。
「来るかしら?」
「そんな気配はするが・・・」
その時、歌が聞こえた。
「ロンドン橋が落ちまする♪」
「へ?」
途端に扉と扉付近の壁の一部が破壊された。
「ここね。本当に警護してるのね」
現れたのは鵞鳥に乗った老婆と一人の西洋人のような東洋人のような三つ編みの女子だった。少女が鵞鳥から降りる。
「赤軍ね」
「貴女、剣を取り返しに来たのかしら?」
「それならどうする?」
「お前を始末するに決まってるだろ!」
足立と吉村は機械を利用して威圧の能力を少女に掛けた。しかし、少女は気絶するどころか一切動じない。
「ど、どうなってるんだ?」
「やった!機械、使えてない!」
後ろから声がした。小さい少年が飛び回っている。
「ブルーノね、ありがとう」
「へへ!」
「こいつ、こざかしい事を!」
そして少女は本からある物を出す。豆が現れた。少女はそれを手にした途端、床に投げた。豆から急に植物が生え、木が現れた。
「な・・・、木が生えた!?」
足立も吉村も驚きだった。豆の木は天井を突き破る。
「巨人、出番よ!」
上からズシン、ズシンという音が聞こえた。巨人が現れた。巨人の図体が大きいため、天井の穴が更に広がった。片手には一人の少年が握りしめられていた。その少年は剣を手にしている。
「マリエル、ここが目的地だな?」
「ええ、三河口君、あそこに剣があるわよ!」
マリエルが指を差した。
「あれだな!」
「行かせるか!」
足立と吉村が足止めを試みようと銃を出したが、三河口の威圧の能力と武装の能力で全く効かず、二人は撥ね返され、豆の木の巨人の手に抑えつけられた。三河口が丸い台の前に立った。
「これが本物の剣・・・?」
剣の他、護符、杖、杯もあった。これは政府が取引に使用したという偽物であると三河口は察した。
(赤軍の連中の誰もが取り外せなかったというこの装置から俺が取り出せるのか?)
三河口はそう思いながらも躊躇う時間はないと思い、本物の剣に触った。剣は取れた。
「な・・・!?剣が取れた!?」
「レーニン様や房子総長ですら取れなかったというのに!」
足立と吉村がそう言っている間に三河口は偽の剣を代わりに台に置いた。その時、台から黒い光が放った。
「これは・・・?」
かよ子達藤木救出班は標的とする少年を救出する為に羽根を飛ばし続ける。その時、大野が違和感を感じていた。
「う・・・」
「大野君、どうしたの?」
「向こうから、嫌な気配がしてくんだよ」
「向こう・・・?」
かよ子は大野が指差した方向を確認する。馬が走っている様子が見えた。
「あいつの気配だ!だが別の感触もするぜ!」
「え?」
かよ子もその馬をよく確認する。
「私がもっと良く見せるわ!」
のり子の人形が超能力を駆使して馬を虫眼鏡で見るように拡大させた。馬に一人の女性が乗っている。そしてまた別の少女が乗っていた。
「あれは・・・、りえちゃん!?」
後書き
次回は・・・
「機械の無力化」
かよ子達が発見したのは一人の女に連れ去られているりえだった。かよ子達はりえを連れ去る女・妲己と相対する。そして戦争主義の世界の本部にて異世界の最上位の道具の偽物全てが揃った時、放たれた黒い光の正体は・・・!?
204 機械の無力化
前書き
《前回》
剣奪還班と赤軍および東アジア反日武装戦線の剣争奪戦は続く。マリエルは剣を保管してある場所に辿り着き、「ジャックと豆の木」に出てくる豆の木の豆を出し、三河口と豆の木の巨人を召喚させる。三河口は偽物の護符、杯、杖と共に置かれている剣を偽物に置き換える。その四つの道具が揃った時、道具が置いてある台から黒い光が放たれた!!そして藤木の救出に動くかよ子達はりえを発見し・・・!?
かよ子は馬に乗っている女と共に杯の所有者が乗っている事に衝撃的だった。
「ちょっと、あっちへ寄っていい!?」
「ああ、杯の所有者がいるとなると何か一大事であるのかもしれぬからな!」
次郎長は承諾した。かよ子は羽根を女の所へ急ぐ。
「待って!?」
「ん?」
女はかよ子の方を振り向いた。
「貴女は誰?何でりえちゃんを抱えてるの?」
女は機械からの見聞の能力でかよ子が仕込んでいる杖を見た。
(この小娘・・・、杖の所持者、か)
「私はこの小娘をある少年の嫁として迎え入れようとして連れて行っているだけだ。何か悪いかな?」
「貴様、惚けるな!その者は確か杯を持つ娘の筈だぞ!つまり貴様はその小娘を殺めて杯を奪ったな!?」
石松が激高した。
「杯?何の事やら」
女は惚けた顔をし続けた。
(りえちゃんを・・・、杯を取るなんて・・・、許さない!!)
かよ子は一旦羽根から降りて杖を取り出した。
「今すぐりえちゃんと杯を返して!出ないと今ここであんたをやっつけるよ!!」
「私とやろうってのか。面白い。ついでにその杖も我々の世界の物としよう!そうすれば後は護符を狙うのみになるからな!」
女は笑みを浮かべた。同時に威圧感がかよ子を襲う。
「な!?」
「山田かよ子!羽根の上へ戻れ!」
次郎長が呼んだ。
「うん!」
かよ子は羽根から戻る。
「この妲己様を舐めるでないぞ!」
妲己と名乗った女は変化した。狐の姿になった。しかし、尻尾が九本もある。
「これは九尾の狐か!」
椎名は驚いた。妲己の威圧の能力は羽根の結界で防がれた。
「そんな結界、消してやる」
妲己が尻尾から光を放つ。そしてかよ子達の目の前に一人の少年が現れた。
「よう、お前ら」
「お前は、杉山!?」
大野が嘗ての親友の登場に驚いた。
「す、杉山君!?」
「ワリいな、今まで」
「す、杉山君!」
かよ子は好きな男子ゆえにやっと会えたと思い近づこうとした。羽根から降りようとする。
「待て、山田かよ子!!それはあの女が出した幻だ!行くな!」
次郎長が制止した。
「・・・え!?」
「全く、紛らわしいね!」
関根が忠治の刀を振るう。杉山の姿が両断される。
「す、杉山君!」
かよ子は叫び声を挙げた。
「全く、あっさり見破られるとは・・・」
「お前、それで俺達を惑わして杖を取ろうとしたな!」
「そ、そんな・・・!」
かよ子は絶望した。
「私、あんたを許さない!」
かよ子は杖を向けた。
「ふん!」
妲己は尻尾を振るう。大量の岩が落ちて来た。
「これで消えな!」
「かよちゃん!」
「山田かよ子!」
「山田!」
かよ子を大量の岩が襲う。しかし、かよ子はその岩に杖を向け、石を操る能力を得た。かよ子は妲己が出した岩よりも更に巨大な岩を出現させた。その岩は多くの岩を弾く。
「そんな岩、私に効かないよ!」
他の皆も怠けている場合ではなかった。ブー太郎は水の石で、椎名は水の玉で大水を出して岩を押し流し、大野は草の石で巨大な蔓を出して岩を捉えて遠くへ投げた。のり子の人形も岩を念力で粉砕した。
レーニンは赤軍の総長・重信房子と共に本部へ急ぐ。既に本部の建物は見えていた。
「よし、もう見えてきたぞ!」
その本部から黒煙が見え、爆音が響く。
「な、もう攻められている!?」
「ヴィクトリア女帝の艦隊が守護に当たっている道がやられたようだな!」
(あいつが、来てるのか・・・!)
レーニンの体の核となって取り込まれている少年・杉山さとしはそう思った。その時、レーニンが苦しがった。
「あ、あああ・・・!!」
「レーニン様!?」
「私の能力が奪われていくようだ・・・」
レーニンは車から降りた。
「今のお前じゃ苦しそうだな。俺が代わるよ」
レーニンの身体の核としている少年が現れた。
「杉山さとし、貴様・・・」
「俺が見に行くよ。それまで待ってな」
レーニンが杉山の姿に変わった。
「西側の海路はクイーン・ベスの艦隊が邪魔をしておる。先程の道を進め」
「おう」
三河口とマリエルは偽物の道具四種が揃った時に放たれた黒い光を見ていた。
「何が起きてるんだ?!」
「本部に連絡した方がいいんじゃないかしら?」
「ああ」
マリエルの提言で三河口は通信機を出した。繋いだ相手は本部である。
「こちら剣奪還班・三河口。今、敵地の本部に侵攻し、異世界の剣の置いてあった場所を偽の剣に置き換えた!クイーン・ベスから貰った剣だ!そうしたら偽物の道具を置いている台から黒い光が放たれた。これは一体何なんだ!?」
『こちら本部イマヌエル。偽物の道具を四つ揃えたのか。それは偽物の道具が揃った時、赤軍が開発した機械を全て無力化させると共に、戦争を正義とする世界の長の能力を低下させる、二つの効果が発動されるのだよ』
「機械が無力化・・・!?」
三河口は自分の能力が複製された苦しみから逃れたと感じた。
「そうか・・・、了解、すぐそちらに剣を持って行く」
三河口は通信を終えた。
「よし、今度は全ての皆に連絡だ!」
三河口は今度は他の剣奪還班、そして領土攻撃班、本部守備班、そして藤木救出班に連絡を繋ぐ。マリエルはその間、小人達やシルヴィー、ブルーノや豆の木の巨人を使役して足立と吉村の動きを封じていた。
「こちら剣奪還班、三河口!今、異世界の剣を手にした!それからこれによって敵の本部では杯、剣、杖、そして護符の四つの偽物の道具が集まった事で奴等が持ってる異能の能力を出す機械も無力化される!」
『こちら祝津ゆり。頑張ったわね。戻る支度をするわ。待ってて』
「了解!」
だが、その時、瞬間移動で別の人物が現れた。
「お前は・・・!!」
三河口は知っていた。自分が居候している家の隣に住む少女の想い人だった。
レバノンにある赤軍の本部へと通じる通路に戻って来た北勢田、奏子、鯉沢は三河口の報告を受けていた。
「ミカワ、やったのか・・・!!」
「私達も合流しましょう!」
三河口の姿のままで丸岡と交戦する政美は丸岡を殴った後、ゆりから連絡が来た。
『こちら祝津ゆり。政美ちゃん、健ちゃんが剣を取ったわ。クイーン・ベスの艦隊がいる海辺へ皆を瞬間移動させて』
「了解」
政美は返答した。
「んじゃ、あんたとはここまでだよ」
政美は丸岡に告げた。
「おい、待て、逃げるのか?」
「いいや、逃げるんじゃないさ。もう剣は貰ったからね」
「は?」
「それから私は三河口健じゃないよ」
政美は変身能力を解いた。丸岡は全く別人の女子に姿が変わった事に驚いた。
「お前、偽物か!」
「本物の三河口はもう剣を取り返したってさ。それじゃ」
「待て!」
姿を消していく政美に対して丸岡は矛盾術で政美を移動できないようにした。しかし、何かが丸岡を包んだ。丸岡の矛盾術は防がれた。政美は姿を消した。
「何だ!?」
「お前はいつかの野郎じゃねえか」
機械の工房の破壊から戻って来た北勢田、奏子、鯉沢だった。
「てめえは、いつかの・・・!!」
丸岡は北勢田の顔も覚えていた。嘗て杖と長山治という少年を奪いに清水を訪れた時、三河口と共に自分をコケにした男子高生だった。
「おめえもいたのか」
「あ~ん、こいつの胸騒ぎ、どこかで覚えがあるけんのう」
鯉沢も思い出すように言う。
「そうか、おんどれやな。剣を取って持ち主もぶっ殺したってクズは!」
北勢田は矛を、鯉沢は銃を丸岡に向ける。その時、テレパシーが聞こえた。
『こちら青葉政美。全員撤退するよ!』
「あ、了解!」
「おんどれとはここまでや!次会うたらギタギタのメタメタにしたるけんのう!」
三人の高校生は姿を消した。
かよ子達にも通信機を通して三河口の言葉が聞こえていた。
(三河口のお兄ちゃん、やったんだ・・・!)
「今だ!」
次郎長や石松、大政、小政ら子分達も総攻撃に掛かった。妲己が出した岩を粉砕する。
「くう〜」
九尾の狐は再び姿を現した。
「もう機械は使えないよ!」
かよ子は留めのチャンスが来たと感じた。杖はまだ石を操る能力を持っている。
「いけえ!!」
かよ子は杖で妲己に巨大な岩石を放った。
後書き
次回は・・・
「杉山の真意」
妲己と交戦するかよ子は妲己に悪あがきの嫌味を言われて取り乱す。その一方、戦争主義の世界の本部にて杉山と対面した三河口は撤退する前に彼が戦争主義の世界の人間および赤軍の側に着いた理由を問うのだが・・・!?
205 杉山の真意
前書き
《前回》
かよ子達はりえを連れ去った妲己と交戦する。そして戦争主義の世界の本部にて最上位の道具四種が揃った時、黒い光が放たれ異能の能力を出す機械が完全に無効化された。そして撤退の準備を始める時、三河口とマリエルの前に戦争主義の世界の長と杉山が現れた!!
杉山君が三河口の質問に対して答えた言葉は一体何だったのか?今後明らかになると思うのでお楽しみに・・・!!
かよ子は妲己の持つ異能の能力を出す機械が存在意義を失った事で好機と捉えた。かよ子は石を操る能力を得た杖で巨大な岩石を妲己へ飛ばす。
「いけえ!」
妲己はこのままでは劣勢と見た。
「ちい!」
妲己は妖術を出す。そして杖の所有者に暗示を掛けた。
「杖の所有者よ、貴様はおっちょこちょいらしいな。ここでも私を倒せないというしくじりを起こす事になる」
「え?」
かよ子は何を言っているのか訳が分からなかった。
「おっちょこちょいは生まれつき。そしてそれは杖の所有者としての資格を母親の代から引き継いだ事の証なのだ。そのおっちょこちょいは一生治る筈がない」
「な、何を言ってるの!?」
「貴様、くだらぬ悪あがきはよせ!」
「仲間をそんなにかき集めたところで貴様は自分の使命を果たせない。仮に果たせたとしてもそのおっちょこちょいで皆に迷惑をかけるし、貴様の想い人にも迷惑がられる事になるのだ」
「う、うるさい!」
かよ子は巨大な岩石を八発も連射した。
「はあ、はあ・・・!!」
かよ子はこれで妲己は岩で圧殺されたかと思った。そして羽根をそのまま狐がいた所へと急ぐ。
「りえちゃん、りえちゃん!」
しかし、杯の所有者の返事はない。
「杯は!?杯はどこ!?」
かよ子はりえの杯だけでも取り返せばと思った。しかし、りえも、杯もどこにもなかった。
「私・・・、また、おっちょこちょいやっちゃった・・・!?」
かよ子はそう思った。自分でりえを殺してしまったのか。
「どうしよう、どうしよう・・・!?」
かよ子は慌てて泣いてしまった。
「か、かよちゃん、泣いちゃ駄目だよ・・・」
まる子が慰めようとする。
「そうじゃ、儂も泣いてしまうぞ〜。うおおお〜!!」
友蔵は更に大泣きした。
「待て、本当にそうなのか!?本部の守護に当たっている長山治に杯の持ち主の安否を確かめてみたら如何か!?あの妲己とか言う者、幻術をお主らに掛けておる当たり、巧妙にこの場を切り抜けたかもしれぬ」
「ああ、俺が連絡してみるよ!」
大野は通信機を取り出し、長山に連絡を試みた。
光江は東アジア反日武装戦線の組織「大地の牙」と交戦していた。二人組の男女は容赦なく手榴弾を投げる。光江は何とか御守の能力を利用して防ぐが、相手もまた怯む気配がない。
(東アジア反日武装戦線ってこんなに手強いの!?)
光江は威圧の能力を御守に流し込む。その時、女性の方が銃を出して発砲した。光江に攻撃は来なかった。しかし、本来なら光江の今の攻撃ならば気絶して暫く動けなくなるはずだが、二人は五体満足に立っていた。
「な、なんで倒れへん!?その銃で防いだんか!?」
「ああ、この銃があれば異能の能力を利用した攻撃は怖くないね」
(な・・・、専用の道具まで用意されとるなんて・・・!!)
その時、脳内に政美の声が聞こえた。
『こちら青葉政美。撤退するよ!今瞬間移動させる!』
「ええ、お願い!」
光江の姿が消える。
「あの野郎、逃げやがったか!」
湘木は3対1で敵とやり合っていた。三人の男は爆薬を大量に投げて湘木に襲いかかる。湘木は武装の能力で防御し、さらに斧で水を発生させ、爆薬の炎を払った。
(これじゃ、いつまでもつか分かんねえ!)
その時、政美から光江やマリエルに対しての時と同じ声が聞こえた。
『こちら青葉政美。撤退するよ!今瞬間移動させる!』
「こちら湘木!ああ、頼んだ!」
湘木の姿がその場から消えた。
「逃げたか!」
「ちい、機械が無力化されてなかったら奴を止める事ができたのによ!」
濃藤は剣を建物に刺してマリエルが出入りできる道を確保し続けていたが、政美のテレパシーが来る。
『こちら青葉政美。撤退するよ!今瞬間移動させる!』
「了解」
濃藤は政美の超能力でその場から離脱した。
三河口は杉山と相対する。だが、彼からは赤軍や敵の世界と同じく凶悪な気配を感じていた。
(聞いた話では誰かが戦争主義の世界の長と身体を共有させたと聞くが・・・)
「杉山君、お前、まさか、戦争主義の世界の長に身体を寄越したのか?」
「寄越した?俺はこいつの仲間になって身体の核として動いてんだ」
「まさにこの少年はこのレーニンの身体の核。私と共闘すると誓ったのだ」
声が代わった。同時に顔も別人に変化する。同じくその場にいたマリエルには先の行動が読めた。
(こいつ・・・、三河口君と剣の能力を吸い取って自分の物としようとしている・・・!)
「貴様の能力、吸収させてもらうぞ」
レーニンが三河口の能力を吸収しようとする。吸収は三河口の武装の能力では防御できなかった。
「巨人!三河口君を連れて戻って!」
「おう!」
豆の木の巨人は三河口を掴んで木に戻る。
「待ってくれ!」
三河口が途中で静止した。
「え?」
「杉山君、お前がレーニンの側についたのは赤軍の目的を達成させる為か?それとも、これが元の日常を取り戻す為に自分にしかできない事だと考えたからか?どっちだ?」
レーニンの姿が杉山の姿にまた変わる。
「俺は・・・」
杉山さとしは答える。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そうか・・・、豆の木の巨人、戻っていいぜ」
「ああ」
「マリエル、この事は皆に内緒にしてやってくれ」
「え?う、うん」
豆の木の巨人は三河口と共に木の上の自宅に戻る。木は縮み、元の豆に戻った。マリエルは豆を本に戻し、マザー・グースの鵞鳥で逃げようとした。
「逃がすか!」
杉山がまたレーニンの姿になった。
(剣を取り返す為に私ごと三河口君を殺す気ね・・・!!)
「貴様は生かさんぞ!」
レーニンの手から風が発生した。その風圧がマリエルを襲う。
「くう!」
リリパット王国の小人達がマリエルの盾となる。しかし、呆気なく倒され、消えてしまう。
(・・・はっ!)
しかし、マリエルは次の予知が訪れた。誰かが強制にでもこの地から離す事を。その予想通り脳内に声が聞こえた。
『こちら青葉政美。マリエル、瞬間移動させるよ』
「うん、お願い!」
マリエルの姿が消えていく。レーニンはあと一歩で剣を奪い返した物を捕らえ損ねた結果となった。
「よくも・・・、許さん!」
レーニンは杉山に八つ当たりする。
「何故に出てきおった。剣を取られたではないか!」
杉山は答える。
「でも、お前は強くなれたじゃねえか。俺もそんな気がするぜ。安心しろ。最後に勝つのは大将になった俺だからな」
なお、この時杉山の真意を聞いた者は三河口とマリエル、およびレーニンとマリエルが本から出した者達のみである。
大野は長山に連絡した。
「こちら大野!長山、今、安藤りえが狐に変身する女に連れ去られてるのを見た。山田の攻撃で女はやっつけたが、巻き添えを喰らったかもしれん!お前の眼鏡で確かめてくれるか!?」
『こちら長山だけど、そんな事があったのかい!?兎に角調べるよ!』
長山も大野の報告を受けて驚愕気味な反応だった。かよ子はオロオロしていた。
「どうしよう・・・。あの女の人を倒したと一緒にりえちゃんまで殺したら、私、最低だよ・・・」
かよ子は自己嫌悪していた。りえも自分と同じく杉山に好意があるように思っていたが、いくら恋敵でも殺生まではする気ではなかった。
「私、最低だ・・・。杖を持つ資格、ないよ・・・」
その時、長山から返事が来た。
「見えたよ。その安藤りえって子。馬に乗った女の人に乗せられてるよ!」
「え・・・、大丈夫だったの!?」
「恐らく勝てぬと思い、撤退したのであろうな」
石松は推察した。
『確か、その子が杯の持ち主だったんだよね?』
「う、うん・・・」
『その女の人が杯も持ってるんだ!それからその人もまた藤木君がいる所と同じ方角に向かってるよ』
「・・・え!?」
「サンキュー、長山!」
通信を終えた。
「山田かよ子、何れの目的にせよ、行く先は一つだな!」
「・・・うん!」
かよ子は藤木の奪還の為、そしてりえと杯を取り返す為、二つの目的の為に東北東の方角へ動き出す。
後書き
次回は・・・
「海上の撤退戦」
かよ子はりえが妲己に拉致される姿を確認した事をりえの友達に報告しようとする。そして再集合した剣奪還班は本部より撤退する為、迎撃を備えているヴィクトリア女帝の艦隊を殲滅し、クイーン・ベスの艦隊との合流を急ぐ・・・!!
206 海上の撤退戦
前書き
《前回》
異世界の剣を奪取した三河口だったが、その場に杉山と同体化した戦争主義の世界の長・レーニンと相対する。三河口は杉山の本心を探った後、政美の超能力でマリエルと共にその場から離脱した。そしてかよ子は妲己に向けて岩石の攻撃を飛ばした際、間違えてりえごと殺害してしまったのかと自己嫌悪に陥ってしまったが、長山の捜索でりえは生きている事を知り、安堵する。さらにりえを連れた妲己が進む方角が藤木がいる方角と一致している事からかよ子達は藤木のいる場所へと急ぐ!!
かよ子はりえは無事だと言う事を知ってまた動き出す。
「そういえばあのりえって子、友達と一緒じゃなかったのかブー?」
「あ、そうだね・・・」
かよ子は気になった。もしりえが連れて行かれたならば彼女の友達も無事とは言えない筈だ。
「りえちゃんの友達に連絡してみるよ!」
かよ子は通信機を出してりえの友達へ連絡を試みた。
「こちら山田かよ子!りえちゃんの友達、誰か聞こえる!?返事して!」
しかし、返事はない。
『山田かよ子ちゃんですか?』
りえの友達とは異なる別の声がした。
「この声は、フローレンスさん!?」
『はい、安藤りえちゃんのお友達は気を失っていますが無事です。私達でやられます前に安全な場所へと移動させましたのでご安心下さい』
「あ、はい、ありがとうございます・・・」
『ところでそちらが安藤りえちゃんの友達の安否の確認をしに通信しましたといいます事はもしかして安藤りえちゃんと会いましたのですか?』
「はい、りえちゃんは女の人に連れ去られてました!私達が向かう方向と同じ所へと向かっています!」
『分かりました。安藤りえちゃんの救出及び杯の奪還は他の方に任せますので引き続き藤木茂君の救出に向かってください』
「は、はい!」
大野達との通信を終えた長山は、さりに呼ばれる。
「長山君、かよちゃん達との話を耳に挟んだんだけど、そのりえちゃんって子、杯の持ち主の子よね?」
「うん、山田や大野君達が見たって言うんだ。それにその安藤りえって子が女の人に連れ去られてるのを」
「って事は杯も取られたって事!?」
「ええ!?」
同行しているさきこや杉山の姉・もと子も、尾藤も、そしてテレーズも驚きを隠せなかった。
「って事は杯が敵の手中に収まってしまったって事になります!折角剣を取り返せたというのにまた別の問題ができてしまったという事ですよ!」
テレーズが説明した。
「剣・・・。杯・・・」
さりは考える。この二つは自分が持つ護符やかよ子が持つ杖と同じく、「この世界」において最上位の強さを持つ聖なる道具である。
(ゆり姉や健ちゃん達が剣を取り返し、それで異能の能力を持つ機械も無力化できた・・・。でも今度は杯を取られた・・・。かよちゃんの杖もいつ取られるかおかしくない状況だし、私の護符も・・・)
さりは己への警戒を緩めるわけにはいかなかった。だが、ある事が頭に浮かぶ。
(そう言えばあり姉がその杯を持ってる子と一緒にいたんじゃ・・・!?)
さりは自分の姉が気になった。
本部に繋がる海上でヴィクトリア女帝の艦隊がレーニンから通信で指示を受ける。
『こちらレーニン。剣を奪った者共がそちらに逃げた!クイーン・ベスの艦隊諸共迎え撃って皆殺しにしろ!』
「りょ、了解!!」
海兵達はただでさえ苦戦を強いられている状態であるのに無理な注文と思いながらも奪い返さなければという使命を持った。
戦争主義の世界の本拠地の海辺に剣奪還班は集合していた。ゆりは三河口から剣の奪還の報告を受けた後、政美の能力で海辺へ瞬間移動してい貰っていたのだった。
「マリエルちゃん、健ちゃんを豆の木から出してあげて」
「はい」
マリエルは本から豆を出し、豆の木の巨人が三河口を掴んで降りてきた。
「ありがとう、巨人。戻っていいわよ」
「了解」
巨人は木の上にある家へと戻り、豆の木は元の豆に戻った。マリエルはそれを本に戻した。
「おう、これが例の剣やな。あの時、広島から取られたちう」
鯉沢は三河口が持つ剣に顔を近づけた。
「さて、ブランデー・ナン。これからどう戻るか何か策は?」
ゆりはブランデー・ナンに質問した。
「はて、奴らはその剣を狙って追撃ちや迎撃を仕掛けてくる。さっきの花沢咲菜・マリエルの本を使ったやり方を二度使うのでは攻略されやすい。海を行く者と徳林奏子の羽衣で空を移動する者で二手に別れた方が良い。海を行く者でクイーン・ベスに加勢するのだ」
「了解。それじゃ、奏子ちゃんと濃藤君と健ちゃん、三人は羽衣で先に行きなさい。濃藤君の剣で羽衣や剣の気配を消すようにするのよ」
「はい」
奏子は羽衣を広げ、三河口と濃藤は奏子と共にその上に乗った。
「それじゃ、先に失礼します」
「無事を祈るわ」
三人は海の上空へと飛んで行った。濃藤が運命の剣を羽衣に刺した為か、すぐに姿が消えた。
「あの運命の剣は別の道具の能力をより強める事も可能なのだよ」
ブランデー・ナンが説明した。
「それじゃ、残りの皆で海を行くよ」
「うん!」
マリエルが本を開く。海の上に巨大な船が現れた。旗にはドクロのマークが掲げられていた。一人の高貴のようでいかつそうな男がその船から姿を現した。
「ようこそ。我が海賊の船へ」
「『ピーター・パン』に出てくる海賊船ね」
「左様。乗るとよい」
ブランデー・ナンが促した。
「まさか、殺されないよね?」
政美が疑った。
「まさか。私が交渉するわ」
マリエルが船長の前に挨拶する。
「フック船長ね。私はマリエル。ここから出る為、そしてクイーン・ベスの艦隊が有利に傾く為に一緒に戦ってほしいけどいいかしら?」
「おう、いいとも。お嬢さん達が手にしたお宝は手に入れたようだな」
「ええ、今、その『お宝』を持ってる人は別行動でいないけど、この海を越えた後で落ち合う約束をしているわ」
「了解。共に戦おう!スミ―、出航しよう!」
「合点承知!」
フック船長の海賊船は三河口、奏子、濃藤を除く剣奪還班を乗せて出航した。
クイーン・ベスの艦隊はヴィクトリア女帝の艦隊とぶつかり合っている最中だった。
「怯むな!」
先程の政美の奇襲で戦況はこちらに傾きかけてはいたものの、気が抜けない状況であった。そして自身も船に乗り、前線に立っていた。
「女王様、あちらに高速で走る船が一隻あります!」
「どれどれ・・・」
クイーン・ベスは察した。
「戻って来たんだね・・・。剣を取り返して・・・!!」
フック船長の海賊船に乗る剣奪還班は攻撃を始める。
「私達を狙いに来たわね・・・。戦闘態勢に入るわ」
ゆりが指令を出す。
「フック船長、あの船達を撃ち落とせるかしら?」
「ああ、やってやるともさ。皆の者、かかれい!」
フック船長は水夫達に命令した。水夫たちは砲撃の用意を始める。バーン、バーン、という船の大砲の発砲音が聞こえた。その威力はすさまじく、一気に3,4隻の船を吹き飛ばした。
「俺もやってやる!」
北勢田が放電した。多数の船が黒焦げにされ、爆発される。一方、ヴィクトリア女帝の艦隊は窮地に立たされる一方であった。
「政美ちゃん、水中移動で仕留め損ねを片付けて来て」
「はい」
政美は海中に潜った。魚のように呼吸に苦しむ事無く平気で沈没していく船の残骸や人々を確認する。命が助かった者は水上へ向かおうとする。
(させるかってんだよ!)
政美は左手を長い剣に変化させ、溺れる者を辻斬りしていく。その際中、砲撃がさらに強まる音が政美には聞こえていた。政美は探知能力を利用する。
(別方向からクイーン・ベスの艦隊も攻めて来てるな・・・)
一方、海賊船の船上では湘木が斧で巨木を出してそこから伸びる枝が敵の船を捉えてマストを折ったり、船をひっくり返していく。鯉沢も原子光線で多くの船を爆破していった。そして彼等の攻撃を光江の御守の能力で更に強化され、敵の艦隊は一気に殲滅した。
「船長、向こうにるのはクイーン・ベスの艦隊みたいだけど、向こうへ向かってくれるかしら?」
マリエルが頼んだ。
「どうやらそうみたいだな。よかろう」
フック船長は操縦室に向かった。船をクイーン・ベスの軍に向かわせた。
「クイーン・ベス!」
クイーン・ベスの乗る船に近づいた所でゆりが呼んだ。
「おお、勇士達か!剣を取り返せたのか?」
「ええ、今剣は安全の為、持ってる人は別行動を取らせているわ」
「そうか。ヴィクトリアの艦隊も崩壊に成功した。協力に礼を行っておく」
「そうだ、祝津ゆり。青葉政美がまだ水中にいる。戻るように伝えないと」
ブランデー・ナンが促した。
「ああ、そうだったわね。こちら祝津ゆり。政美ちゃん、船に戻って来て」
『了解』
政美が甲板上に戻って来た。
「私達も共に向こうの岸に戻るよ」
クイーン・ベスの軍の船とゆり達を乗せたフック船長の海賊船は岸へと戻った。
戦闘の様子を見物しながら三河口、奏子、濃藤は進む。その時、クイーン・ベスの艦隊を発見した。
「ゆりちゃん達はクイーン・ベスと再合流したみたいだな」
「ええ。あの海賊船みたいなのは何なのかしら?」
「マリエルの本で出したんじゃないか?」
三人は先回りで岸に到着し、ゆり達が来るまで待機した。そして待ち人達は訪れた。
「おお、あれが剣か!」
クイーン・ベスが歓喜の声を挙げた。
「ほう、宝はあの剣と言う訳だな」
フック船長も三河口が持つ剣を確認した。ゆり達が海賊船から降りた。
「船長、スミー、ありがとう」
「また用があったら呼んでくれ」
マリエルは海賊船を本の中に戻した。
「よし、我々はまた領土の攻防を続けるよ。諸君は本部へその剣を届けるのだ」
「ええ、行ってくるわ」
剣奪還班は奏子の羽衣に乗り、元来た道を戻る。
後書き
次回は・・・
「剣奪還班の分割」
妲己やレーニン・赤軍のリーダーとの戦いでやられた後、意識を取り戻したありはりえの捜索を全体に呼び掛ける。その報告を受けた後、剣奪還班はあり達のもとへ向かい、作戦の変更、そして次なる目的を決める・・・!!
207 剣奪還班の分割
前書き
《前回》
戦争主義の世界の本部から異世界の剣を奪還した三河口達剣奪還班はクイーン・ベスの艦隊と再合流する為に海上で敵対するヴィクトリア女帝の艦隊の突破を試みる。剣を安全に運ぶ為、三河口、濃藤、奏子は先行し、残りの者で敵艦隊を殲滅させる。そして後は平和主義の世界の本部へと剣を輸送するのみとなった!!
和光晴生が本部に到着した頃には時既に遅しだった。そして同じく本部に到着した房子を発見する。
「総長、これは一体!?」
「どうやらやられてしまったようね。折角杯を奪えたというのに・・・」
そして建物付近へ進む際に西川と奥平がのびているのを確認した。
「順三、純、大丈夫!?これはどういう事なの・・・?」
しかし、二人は喋る事も出来なかった。
「晴生、レーニンの所へ急ぐわよ!」
「はい!」
二人は建物内の扉へと急ぐ。
「重信総長!」
東アジア反日武装戦線の三人組の組織「さそり」が現れた。
「剣は取られたの!?」
「はい、俺達はさっきまで斧を振る高校生のガキとやってたんですが、その隙に剣を取られたようです!」
「そうみたいね。それにこの建物の有様・・・!!」
房子は半壊した本部の建物をもう一度見る。
「東アジア反日武装戦線の皆で剣を取った人達を追いなさい。杯は取る事に成功したと聞いたから私達赤軍で杖と護符を取りに行くわ。この世界の人のさらに大物と共にね」
「はい!」
「重信房子、和光晴生」
レーニンがその場に現れた。
「まずいことになってしまったぞ。四つの道具を揃える装置に三河口健とかいう小童に剣を偽物に置き換えられた上に貴様らが製造した機械も完全に使用不可能になってしまった!」
「何ですって!?」
さらにトランシーバーから声が聞こえる。
『こちら山田義昭!三人組の高校生にウチの本部の工房が破壊された!!』
「ええ!?」
房子にとっては追撃ちをかけるような凶報だった。
ありはレーニンの攻撃を虞美人の移動術で何とか回避していたが、暫くその疲れで意識を失っていた。
「・・・う」
「お目覚めですか?」
フローレンスがその場にいた。
「・・・え、ええ。私達は一体?」
「レーニンに妲己といいます人の攻撃を受けかけましたのです。虞美人の能力でその場から離脱しました為に命は助かりましたが・・・」
「『ましたが』って?」
夫の悠一がその場にいた。
「りえちゃんがいないんだ。もしかしたらと思うんだが」
ありは見回す。りえの姿だけはない。
(・・・まさか、杯を取られた!?)
「杯を取られたかもしれないって事ね。今皆に連絡するわ」
ありは通信機を出して領土攻撃班、本部守備班、剣奪還班、そして藤木救出班全てに連絡した。
「こちら領土攻撃班、煮雪あり!異世界の杯を持つ安藤りえちゃんが行方不明!誰か見たって人いたら連絡お願い!!」
ありはとんでもない失態を犯したと思いつつ返事を待つ。
かよ子達はありの報告を受けて気づいた。
「りえちゃんの捜索願いだ・・・!!」
「山田かよ子、我々が今目撃した事だ。連絡するのだ!」
次郎長が促した。
「うん!」
かよ子は通信機に口を近づけた。
「こちら山田かよ子!私、見たよ、りえちゃんを!」
『本当!?かよちゃんの所にいたの?』
「狐に変身する女の人に連れて行かれてるのを見たんだ!捕まえようたしたけど見失っちゃったんだ!」
『ええ!?方角は?』
「私達が向かう方向と同じだよ!」
『ありがとう!』
(隣のおばさんとこのお姉さん、りえちゃんと一緒に行動してたんだね・・・!!)
「私達もりえちゃんを助けに行かなきゃいけないかな?」
「いや、我々の目的は藤木茂と言う者の救出だ。二つの目的を一気に達成するには無理がある。他の者に依頼した方がよかろう」
「う、うん・・・」
さり達もありの報告を受けていた。
「やっぱりあり姉と一緒だったんだ!長山君、さっき眼鏡で見せた事をこっちからも私のお姉さんに連絡して!」
「う、うん!」
長山は通信する。
「こちら長山治!そのりえちゃんが女の人に連れて行かれているのを僕の眼鏡で確認したんだ!」
『了解、ありがとう!』
(その杯の持ち手の子、大丈夫かしら?)
剣奪還班もその報告を受ける。
「杯の持ち主が行方不明?つまり杯が取られたって事なの?」
「確か杯の持ち主の子はありちゃんや悠一さんと共に行動していたはず。二人は一度東京へ出向いて赤軍や反日武装戦線から杯を守る為に戦った縁もありますからね」
三河口がゆりに説明した。
「そうなの。あり、悠一君、聞こえるかしら?ゆりよ。今こっちは剣を取り返したところ。私達が今そっちに向かうから待ってて!」
『う、うん』
『待ってます!』
そしてゆりは政美の方に顔を向ける。
「政美ちゃん、探知能力で私の妹を探して!」
「はい」
政美は探知能力で目や耳を最大限に駆使した。
「ゆりさんの妹って護符の持ち主の人?」
マリエルが聞いた。
「いや、別の妹だ。護符の持ち主の姉貴であり、ゆりちゃんの妹でもある」
「そうだったわね」
「いた!」
政美はやや東を指差した。
「よし、行きましょう!」
剣奪還班は寄り道する。
「ええ!?待ってられないわあ!!それにりえちゃんが大野君達と会ってるなら今すぐにでも急いでいかなくちゃあ!!」
冬田は騒いでいた。
「落ち着きなさい、冬田美鈴ちゃん。先程、レーニンや妲己にやられまして自分達が死にかけました目遭いましたのを忘れましたか?それにこれからどうしますか、救援が参りますから考え直します時です!」
フローレンスが制した。
「それなら私一人でもお!」
冬田は羽根に一人で乗ろうとする。しかし、羽根が巨大化しなかった。フローレンスが強制的に羽根を無効化したのだった。
「お待ちなさいと言いましたでしょ!」
「ちょっと、冬田さんだっけ?あんた静かにしなさいよ」
りえの友達の溝口みゆきも胡散臭そうに言った。
「でもお・・・!!大野君達が見たってえ!それならここでじっとしているわけにはいかないわあ!!」
「少し黙らせました方がいいですわね」
フローレンスが指を冬田の額に突き付けた。冬田はその場で意識を失い、倒れた。そしてフローレンスは本部に連絡を取る。
「イマヌエル、そろそろ昼食どきですわね」
『ああ、各々に配膳するよ』
皆は昼食の時間とした。
「煮雪ありさん、貴女のお姉様がいらっしゃいますまでお待ち致しましょう。新たな仕事ができまして面倒ではありますが、剣が取り返せました事は朗報でもあります」
「そうね、お姉ちゃんや健ちゃん達、やったのね・・・」
昼食後、暫くしてゆり達剣奪還班があり達の元にやって来た。
「来たわよ」
「お姉ちゃん!」
「フローレンスもいたのね」
「はい、そうだ、この子も起こしませんと」
フローレンスは冬田を起こした。
「わ、私は一体・・・」
「寝てたのよ。騒いでたから」
鈴音が説明した。ゆりはあり達の周囲を確認する。
「これだけの人員でも敵わない程の強敵だったって訳?」
「はい、実は戦争を主義とします世界の長も現れました訳で・・・」
「杉山君と同化したあいつか」
三河口が確認した。
「現地にお会いなされましたのですね?」
「ああ、剣を取り返した時に一度鉢合わせた。だが、杉山君の姿になったんだ。その後、奴はまた襲いかかろうとして何とか逃げ仰せたのだが、奴は俺の能力や剣の能力を吸収したような感じだった。前よりも強くなっているかもしれん」
「そうですか、報告ありがとうございます。私は先に本部へ戻らせて頂きます。他に色々と片付けなければなりません事がありますので」
フローレンスは姿を消した。
「そうだ、かよちゃんや長山くんって子の報告だとりえちゃんはかよちゃんの向かう方向に行ったって聞いたの」
「かよちゃん達の方角へ向かってる?確か剣の持ち主は剣を取られた時に殺されたけど、そのりえちゃんって子は生け捕りなの?なんか引っかかるわね」
(山田さん達の方角・・・!!なら大野君に会えるかもしれない!)
冬田は少しの期待を膨らませた。
「私達も剣を早く持ち帰りたかったけど全員で班を複数に分ける必要があるわね。あり、悠一君、貴女達は杯と、その持ち主、どっちを取る?」
「杯も大事だけど、りえちゃんも心配です」
悠一が答えた。
「分かったわ。その女の子や杯の奪い返しに私達を手を貸してあげるわ」
「お姉ちゃん、ありがとう!」
ありは姉に礼をした。
「濃藤君と北勢田君と奏子ちゃん、三人は妹達について行ってくれる?」
「はい!」
「三人共健ちゃんの学校の友達よ。奏子ちゃん、皆をその羽衣に乗せてあげて」
「はい」
「湘木くんと健ちゃん」
「はい」
「二人は引き続き剣を本部へ届けに行って来て。その子の羽根に乗せて貰ってね」
「え、ええ!?」
冬田は残念がる声を漏らした。
「何よ?気に食わないの?」
「私・・・、その・・・」
「りえちゃんの救出に行きたいんだろ?大野君に会えるかもしれないと思って」
三河口に読まれた。
「う・・・」
「そういえば貴女は出かける時もフローレンスにそんな我儘言ってたわね。我慢しなさい。その大野君って子と一緒にいればデート気分で浮かれるでしょ。むしろ邪魔になるだけよ」
「は、はあい・・・」
冬田は反論できなかった。
「これ以上油売れないわ。二人共、追っ手が来る前に先に行って」
「はい、早くしろ」
三河口に催促されて冬田は羽根を広げて三河口と湘木を乗せて飛んで行った。
「それじゃ、私達は杯を取り返しにいくわよ」
剣奪還班は杯の奪還、杯の所有者の救出、剣の本部輸送、それぞれの目的の達成を目指す。
後書き
次回は・・・
「氷雪の楽園」
かよ子達藤木救出班は爆発と大量の矢に襲われる。そしてその襲撃者の正体が解った時、杖の所有者達の戦いが始まる。その一方、とある雪山では一人の少年が多くの女にスケートの姿で魅了させていた・・・!!
208 氷雪の楽園
前書き
《前回》
戦争主義の世界の本部から異世界最上位の道具の一つ・剣を取り返す事に成功したゆりや三河口達剣奪還班は杯の所有者が何者かに連れ去られたという情報を聞いて同行していたあり達の元へ向かう。そして剣奪還班は班を分割させて動かす方針に切り替え、ゆりは自らは光江・鯉沢・政美・マリエルを率いて杯の奪還へ、濃藤・北勢田・奏子にはあり達と同行させてりえの救出を、三河口と湘木には冬田の誘導で剣の本部への輸送を指示するのだった!!
ゆりは光江、鯉沢、政美、マリエルを率いて杯の奪還に向かう準備をする。
「じゃ、私は杯を探しにいくわよ。集団で移動できるものあるかしら?」
「俺が出します!」
北勢田が矛を振るった。国鉄の特急列車に酷似した鉄道の車両が2両1編成現れた。
「おお、すげえ!」
鯉沢が列車に目を光らせた。
「でも、線路も架線もなしで動くの?」
政美が気になった。
「大丈夫な筈だぜ」
「ありがとう、北勢田君。乗るわよ」
ゆりは列車の出入り口に立つとドアが自動で開いた。ただし、車内はロングシートだった。
「ちぇ、こんなベンチ席じゃ通勤電車じゃねえけえ」
「まあ、いいじゃない。この方が話がしやすいと思うわ」
不満を漏らす鯉沢に対してマリエルは肯定的な意見を述べる。列車は架線も線路もなしで出発した。
(目的は東側か・・・。杯が敵の本部にないって事は隣の山田さんの娘と会う可能性もあるわね・・・)
ゆりはそう思いながら次の作戦を練る。
北勢田が出した列車を見送り、杯の所有者を救出する部隊も奏子の羽衣で出発する。
「それじゃ、行こうか」
あり達も出発した。
かよ子達も藤木を探す為に先へ進む。
(そういえば・・・)
かよ子はある事を思い出す。
(杉山君に会った時、りえちゃんの所に向かってた・・・。そのりえちゃんをあの女の人が連れていたって事は・・・!!)
かよ子は邪推する。
(杉山君はりえちゃんを自分の物にしようって考えてる事・・・)
かよ子は嫉妬する。
(そんな、杉山君・・・!!)
「ねえねえ、かよちゃん、何で泣いてるのお〜?」
「あ、まるちゃん!う、ううん、何でもない!!」
かよ子は誤魔化した。
「もしかして杉山さとしの事であろうな」
石松に心の中を読まれた。
「あ・・・、う・・・」
「答え辛いなら別に無理して言わなくて良い。だが、あの杯の所有者の小娘を生け捕りにした女が向かう方向からしてどう利用するのかが気がかりではあるがな」
「うん、あの人がりえちゃんを何に使うのか、向こうに行けば解るのかもしれないね」
かよ子は杉山への嫉妬は心の奥底にしまう事にした。しかし、敵に寝返る上にりえを生け捕りにして杯を奪い、一体何をしたいのかわからない。
(杉山君、一体何がしたいの・・・!?)
その時、目前で何かが爆発した。
「きゃあ!」
「ひええ~!!」
「な、何!?」
かよ子は見回した。しかし、煙に包まれて何も見えない。その時、大量の矢が周りに飛んできた。
「な、矢じゃ、死ぬ~!!」
友蔵は蹲った。しかし、何とか羽根の結界が働いたため、羽根に乗っているかよ子達は無傷だった。
「ほう、レーニン様の言う通り、そこに杖を持つ小娘がいたか」
煙が消えたものの、矢がまだ飛んできた。かよ子は花火をリュックから出して火薬を操る能力を得た。そして杖から弾丸を飛ばして矢を爆破した。
「うおお!」
「へん!小娘め、やりおって!このシャルル・リゴー様が何としてもやってやるぞ!」
(シャルル・リゴー・・・!?)
杖の所有者の戦がまた始まる。
とある雪山。そこの山は常に雪が積もっており、溶ける事はない。無論、そこには広大な氷の湖が存在し、スケートができるようになっている。今、その場にて氷の遊戯をする物達がいた。
「フーン、フ、フーン♪」
「わあ、凄いお上手ですわ!」
一人の少年が女性達から拍手が送られる。スケートが得意なこの少年にとって一番の見せ場だった。まるでオリンピックの選手の如くジャンプやスピンを容易くこなす。
「茂様ってその『すけーと』ってのが凄いお得意なんですね」
「まあね、僕には他に取り柄がないからね」
しかし、少年は謙虚に返しながらも内心は尊敬の眼差しを受けてとても嬉しかったのだった。
(へへへ、卑怯者と言われる僕でもスケートでは一味違うんだ・・・)
少年はこんなに尊敬の目で見られる事が夢にも思われなかった。「前の世界」でも皆から注目を浴びる事があったが、それは卑怯な事をしたと言う事で、非難に満ちた白い目で見られる事くらいしかなかったのだ。
「茂様、顔がニヤニヤしてますよ。皆から褒められてとても嬉しそうなのですね」
落ち着いた性格の女性が少年に近づいた。
「いやあ、それ程でも・・・」
「キャアッ!」
その時、別の遊女が悲鳴を挙げた。滑って尻餅をついてしまったのだ。
「大丈夫かい?」
少年はその転んだ遊女に手を貸して立たせた。
「あ、ありがとう、ございます・・・!」
その遊女は顔を赤くした。
「皆様、そろそろ昼食の時間に致しましょう」
別の遊女が呼んだ。
「はい、行きましょう!また転んでしまうかもしれないので一緒に手を繋いでくれますかしら?」
「あ、うん、いいよ」
少年はその遊女の手を繋いで湖から出る。少年は頭の中である事を思い浮かぶ。
(この子も本当に可愛いなあ・・・。でも、これが笹や・・・、違う、『あの子』でもきっと凄いって言ってくれるかもしれない・・・!!もうすぐ会えるんだから・・・!!)
少年は期待を膨らませた。雪山を降り、食事係が料理を既に用意していた。
「こちらが豚肉を利用して暖めたものです。『豚汁』といいましたね」
「おお、ありがとう!」
少年は豚汁を貰う。
「とても美味しいよ!」
「そうですか、そう言って貰えるととても嬉しいです!」
得意のスケートを楽しんで皆から尊敬されるなど少年にとってこの雪山はもはや楽園のような所だった。
(またいつでもここに行きたいな・・・。いや、ここに住みたいくらいだ・・・!!)
少年は願っていた。
ヴィクトリア女帝の館。通信機でレーニンから伝達が来る。
「こちらヴィクトリア。どうしたのかしら?」
『こちらレーニン。大変だ、貴様が仕向けている西側の海域を死守している艦隊が殲滅した!』
「何だと!?クイーン・ベスが急に勢いを強めたのか!?」
『左様。剣を奪いに来た者達が奴に加勢し、全滅だ!』
「そんな!剣は!?」
『取られた!』
「長であろうお前が何をしくじっている!?」
『剣に関しては今、赤軍および反日武装戦線に剣を奪いに行かせている』
「私の軍も行かせる!全く!」
ヴィクトリアは強引に通信を切る。側近も女帝の部屋に入室した。
「女王様!西の海へ派遣した兵達が全滅しました!」
「今それはレーニンから聞いたばかりだ!剣を取り返す為に西側全域を集中攻撃させる!」
「了解!」
とある西側の山。その山の頂上には雷雲が常に帯びている。山口芳弘、川村承太、安田太郎、そして濃藤すみ子達組織「義元」はその山の麓にいた。
「すみ子、お前の兄ちゃん達すげえな」
「あの剣を敵の本部まで行って取り返すなんて凄いでやんす!」
「ありがとう、でも、杯を持ってる子が・・・」
「ああ、大野や杉山とも関りがあったみてえだし、心配だな・・・」
山口が山を見る。
「ここが雷の山だな」
「はい、こちらを奪還すれば形勢逆転も可能と思われます」
エレーヌが答えた。
「よし、行こうぜ」
川村が案じた。エレーヌの浮遊術によって皆はエレベーターを上がるかのように上昇していく。
「・・・、来るわ・・・!!」
すみ子が叫んだ。
「何だって!?もう敵が来ているのか?」
「先手必勝でやんす!」
ヤス太郎がパチンコを飛ばす。
「やはり来たな、侵入者」
「お前は何者だ!?」
「我が名はアルバート!消えてもらおうか!」
アルバートと名乗る男は剣を出した。一振りしたが、電撃が来る。すみ子が銃で壁を作って防御した。
「あの雷の山の力を取り込んでいますね・・・。厄介な戦いになりそうです・・・!!」
エレーヌはそう予感した。
後書き
次回は・・・
「雷の山の争奪戦」
シャルル・リゴーという男と遭遇したかよ子達は彼の容赦ない槍の攻撃に四苦八苦する。そして雷の山ではすみ子達組織「義元」がアルバートという男と交戦する。一時は有利に戦いを進めた「義元」の面々だだったが・・・!?
209 雷の山の争奪戦
前書き
《前回》
かよ子達の前に大量の矢と爆発が襲う。かよ子達はそれを仕掛けた男、シャルル・リゴーと対決する事になる。そしてある少年は雪山で遊女達と共にスケートを満喫する。そして西にある雷の山を奪還しに動くすみ子達組織「義元」はアルバートという男と対峙する!!
様々な情景のある山脈に一人の法師が到着していた。彼の名は玄奘という。
「ここがかの様々な気候が交差する山脈・・・」
玄奘は数珠を出し、手を合わせた。そして唱え始める。
「我らはここに願わん。平和を願う為に。その為の地・水・炎・風の力をこの世の平和に与え給えよ」
その時、火山、土山、水が潤う山、そして風を自然と生み出す山の四つから何かが玄奘の元に飛んできた。それは四つの宝石だった。
「これを本部に持って行けばよいのか・・・」
そして彼の頭の中にテレパシーのように声が聞こえて来た。
『玄奘、私です。フローレンスです。剣の奪還には成功されましたが今度は杯の所有者の杯が奪われました』
「なぬ!?」
『はい、そちらの宝玉を手にしましたら先に我々の方へと戻りましたのち、杯の奪還に手をお貸し頂けませんでしょうか』
「了解。赴こう」
玄奘は連絡を終了し、本部のある南部へと向かうのだった。
三河口、湘木、そして冬田の三人は本部へと剣を輸送する。
「ここまで来ると胸騒ぎってのは少なくなって来たが、領土攻撃班がここでも領土奪還して本部守備班が進んで来ているのかもしれんな」
「ああ」
冬田はしんみりしていた。
(大野くうん・・・)
冬田はできればりえの救出に行きたかったのだが、その目的は大野と再会したいが為だったので三河口の従姉のゆりに止められたのだった。
「冬田さん、そんなに大野君に会いたかったか?」
三河口が質問する。
「え?ええ・・・」
「やっぱりそれか。君がここに来たのは元の日常を取り戻しに戦う為じゃなくて大野君とデート気分を楽しみたい為なのか?」
「そ、そうじゃないけどお・・・」
「なら、ゴネるな。それから追っ手が来たら君も戦えよ」
「ええ!?」
「『ええ』ってフローレンスに羽根を強化してもらったんだろ?俺は剣を預かっている為にできねえんだ」
「お兄さんもその剣を使って戦えばいいじゃなあい」
「馬鹿か。道具というのは選ばれた者しか使えん。俺は剣を運ぶ為に持っている。使っていいとはフローレンスもイマヌエルも言っていない。俺にこの剣は使いこなせんという事だ。下手に無理して使おうとするとどうなるか・・・」
三河口が剣を構えて冬田に襲いかかろうとする。
「や、やめてえ!」
しかし、三河口は剣を振らなかった。それどころか「あちい!」と悲鳴を挙げて剣を置いた。
「ど、どうしたのお?」
「これを見ろ」
三河口は冬田と湘木に自分の手を見せた。三河口の手は焼けただれていた。
「三河口、大丈夫か?」
「いや、大丈夫じゃない。使おうとして手が火傷するって事は俺には使えないって事だ」
冬田は自分の浅はかな考えに反省した。
「それから追っ手が来てるぜ」
「何だと!?」
かよ子はシャルル・リゴーと交戦する。かよ子は火薬を操る能力を得た杖で迎撃する。
「俺も手助けするよ!」
関根が忠治の刀を振るう。シャルル・リゴーの兵が薙払われる。椎名も水の玉を使い、大波を出して攻撃した。
「やるな、だが、これでは私は倒せんぞ」
シャルル・リゴーはかよ子の爆撃も、関根の刀も、椎名の水責めも防御した。
「な・・・!!」
「でも、機械は無効化されてる筈だブー!どうして防がれるブー!?」
「結構手強い奴なんだろ!」
大野が草の石を力を使い、この葉や巨大な枝を大量に飛ばす。一部の兵を倒せたが、シャルル・リゴー本人には回避された。
「ちい、素早い奴だ!」
「フハハハハ、死ねい!」
シャルル・リゴーが槍を飛ばす。
「槍なら俺が相手になってやる!」
大政が槍を出現させて対抗した。鋼鉄の楯が現れてシャルル・リゴーが放った槍を防御した。
「フハハハハ、貫通させてやるぞ!」
「キャロライン、念力よ!」
「うん!」
のり子の人形が大政の楯に念力を掛けた。シャルル・リゴーの槍が粉砕される。
「やった!」
「ちい。だが、別の攻撃を忘れるなよ・・・」
雷の山。すみ子達はアルバートという一人の男と相対していた。すみ子の銃で防御をしたものの、何とかなったという形である。
「この野郎!」
山口は矢を放つ。その矢は高速でアルバートの脳天へと向かう。しかし、アルバートは電気を体中に纏い、山口の矢を無力化した。
「ちい、駄目かよ!」
「これはこの山の雷の力があのアルバートという男に支配されているからであろう」
ジャンヌが説明した。
「雷に弱点は何かあるのか?」
川村が問いた。
「それはこの土を更に絶縁状態としたいのだが、この山の性質上、それは無理だ」
「それなら?」
「木々や植物をこの地に植えれば防げる筈。例え雷に砕かれても直ぐに再生が可能だ」
「よっしゃ!ならオイラの『草玉』で増やすでやんす!」
ヤス太郎はパチンコで草玉を地面に発射した。草が茂りだす。アルバートが再び剣で電撃を放つ。だが、伸びた草で防がれてしまい、さらにすみ子がまた銃で結界を張って防御したので今度は何もできなかった。
「何!?ならもう一度成敗してくれる!」
アルバートはまた電撃を放つ。だが、それでも糠に釘であった。もう一度、振るが、今度は電撃が出なくなってしまった。
「な、これはどういう事だ!?」
「雷の山の操作を私の舞で解除させて頂きました。これで貴方はこの雷の力を使う事はできません」
エレーヌが断言した。
「今だ!」
「おうよ!」
山口が矢を放ち、川村はバズーカを発砲した。山口の矢はアルバートの周囲の地を粉砕し、川村の出したバズーカからは爆発の煙が上がった。同時に雷鳴が鳴り響いて皆は驚いた。
「・・・やったか?」
山口は勝利を確信したかった。
「私の秤で公平なように調整したのだが・・・」
ジャンヌは秤で双方の戦力が水平になるように調整していた。その場にアルバートの姿はなかった。
「姿が見えねえ・・・」
その時、ジャンヌの秤が左に傾いた。
「な、我々が不利な状況に陥っているだと!?これはどういう事だ!?」
ジャンヌは周囲を見回す。だが、アルバートの姿はない。その時、ヤス太郎が出した草玉が消え、皆の周りを何かの光線が襲った。すみ子が咄嗟に銃で弾き返した。
「・・・ったく、何て酷い方々なのかしら」
「父上をこんな目に遭わせて!」
二人の女性がその場にいた。
「だ、誰だ!?」
さらにその後ろには姿を消していたアルバートが背後にいた。
「ふふ、助かったよ。我が娘、アリスとヘレナだ」
「何、娘だと!?」
「向こうに援軍が来てしまえばもっと厄介・・・。私も本領発揮させていただく!」
ジャンヌが神の声を聞こうとする。
「ジャンヌよ・・・」
「その声は・・・聖マルグリット・・・!!」
「あの者は、神の声を聞く事ができるという女ね!」
「ヘレナ、やっつけるわよ!」
「この十字架を使え・・・!!」
ジャンヌの手にいつの間にか十字架が持たされていた。アリスとヘレナ、さらに二人の父・アルバートが纏まって襲ってくる。すみ子がまた銃で迎撃した。
「同じ手が二度通用するか、バカ娘が!」
アリスがティアラのダイアモンドを触る。すみ子が銃で出した壁が粉々にされた。
「もう駄目・・・!?」
「これでも喰らえやんす!」
ヤス太郎が火薬玉を飛ばした。しかし、簡単に防御された。
「ヘレナ、やったわね」
「えへへ」
ヘレナは十字架を持っていたのだった。
「よし、こっちからの攻撃だ!」
アルバートが剣を突出す。雷の山の力を借りた力ではない、別の力が来る。強風がすみ子達を襲う。
(や、やられる・・・!!)
「この剣の風を喰らったら異能の能力を持っていてもひとたまりもないぞ!」
「な・・・!」
エレーヌの能力静止も解除の舞いも通用しなかった。これでは纏めてやられてしまう。
後書き
次回は・・・
「結界に刺さる槍」
アルバート、アリス、ヘレナの巻き返しで不利になってしまっていくすみ子達組織「義元」。彼女達はここで殺されてしまうのか。そしてかよ子達はシャルル・リゴーと戦うのだが、シャルル・リゴーはかよ子の杖を奪う為にある攻撃を仕掛ける・・・!!
210 結界に刺さる槍
前書き
《前回》
杖を奪いに来たシャルル・リゴーと交戦するかよ子達はリゴーの槍の攻撃を何とか防御する。そして雷の山ではすみ子達「義元」がアルバートという男と交戦する。山口や川村などの攻撃はアルバートが山の電力を利用して防御されてしまう。だが、エレーヌの術で山の力を使う能力が使えなくなり、事態は好転したかと思われた。だが、アリスにヘレナという女がアルバートに加勢し、すみ子達は劣勢に立たされてしまった!!
アルバートの攻撃、更にはアリスにヘレナの攻撃も来る。エレーヌの能力を止める舞が無効化されてしまい、すみ子の防御も山口達の迎撃も通用しない。これでは何もできずにやられ、殺されてしまう。
「形勢逆転だね!」
アルバートの剣の強風、アリスのティアラから白銀色の光線が、そしてヘレナの十字架によって皆が金縛りになる。
「う、うご、け、ねえ・・・!!」
アルバート達の総攻撃で全てが終わった。
「勝ったわ!」
アリスとヘレナが歓喜した。
「喜ぶのは早い!」
「・・・え?」
山口も、川村も、ヤス太郎も、すみ子も、エレーヌも、ジャンヌやその兵達も誰も倒されていなかった。
「これは、どういう事だ!」
アルバートは勝利を確信したのに気に食わない顔になった。ジャンヌが十字架を見せる。
「この聖マルグリットが私に授けた十字架で全てを防御した。この十字架の意味がお前らに解るか?」
「聖マルグリットの十字架・・・。そうか、苦難を乗り越える、という意味ね!そのマルグリットが龍に呑み込まれても腹の中から突き破って出られたように・・・!!」
ヘレナは思い出した。
「そうだ、貴様らの攻撃で誰も死する事なく耐える事ができた。今度は貴様らが我々に攻められる番だ!!」
ジャンヌの兵が牙を向く。
「俺達も行くぜ!」
山口がまた矢を放つ。川村も、ヤス太郎も、すみ子も攻撃に入った。
「な・・・!!」
「やられてたまるか!」
アルバート達も同じ攻撃をする。しかし、その時ジャンヌが秤をまた動かした。
「貴方達の勢力を極端に弱体化させた。もう効かん!」
「くう、反則級の技を使いやがって!アリス、ヘレナ!」
「はい!」
アルバートは娘二名に命じた。
かよ子達藤木救出班はシャルル・リゴーとの戦いを続けていた。のり子の人形・キャロラインがシャルル・リゴーの楯を念力で砕いた。
「のりちゃん、凄いよ~」
「天晴じゃ!」
まる子と友蔵が褒めた。しかし、のり子もキャロラインも気を緩めていなかった。
「褒めるのは後でいいからももこちゃんも攻撃して!」
「あ・・・、はいはい・・・」
まる子は炎の石で火炎放射を出してシャルル・リゴーに攻撃する。かよ子もまる子の炎を杖で複写し、炎を操る能力を得てシャルル・リゴーに火炎を浴びせる。
「やった・・・!?」
しかし、シャルル・リゴーはその場にはいなかった。
「え!?」
「全く、火傷させてくれたものだ」
シャルル・リゴーは後ろにいた。
「な、瞬間移動!?」
さらにその後ろには結界に金属の槍が刺さっている。
「その槍が結界を破るのは時間の問題だぞ!」
「・・・この野郎!」
大野が草の石を使う。草や蔓を出して槍に巻き付け、外そうとする。
「だが、この結界も脆くはない。大五郎、お前の法力を使え!」
「了解!」
次郎長の子分の一人、法印大五郎が数珠を出した。
「喰らえ!」
「そんな東洋の魔術など敵ではないわ!ぶははは!!」
シャルル・リゴーはまた別方向へ移動し、今度は銃を出して発砲した。
「全員突撃!」
リゴーの従兵も銃撃する。
「まずい、結界が脆くなってきておる!鳥橋のり子、某を瞬間移動させよ!そしてお主ら総攻撃するのだ」
「了解!」
次郎長がのり子の人形で瞬間移動された。次郎長は討伐に来た兵士の銃弾を刀で旋風を起こして薙ぎ払った。
「この清水次郎長、纏めてやられるほどの弱者ではないわ!」
友蔵は祈っていた。というか、今の彼にはそれしかできなかった。
「次郎長様、どうか、無事でいてください・・・!!」
「俺達はあの槍を何とかしねえと!」
「うん!」
かよ子はどうしようか考えた。
「・・・石松、刀の力を貸して!」
「おうよ!」
かよ子は石松の刀に杖を向けて杖を剣に変化させた。
「いけえ!」
かよ子は結界に近づき、そこに刺さる槍を斬ろうとした。
「ええい!」
しかし、かよ子だけの力では槍が外れも斬れもしない。大野の草の石の能力、椎名やブー太郎も水を出して槍を押し流そうと試みる。大五郎の法力で槍に念力を掛けるがそれでも槍は抜けない。石松や綱五郎も刀で加勢する。
「仁吉、お主の力も貸してくれ!」
「あいよ!」
吉良の仁吉が結界の反対側に回り、槍を素手で引き抜こうとする。
「す、素手で大丈夫なの!?」
かよ子は驚いた。
「ああ、これでも腕と相撲は強えんでな!」
仁吉の助力に皆で一斉に槍を引き抜こうとする。そして槍が結界から外れた。
「やった!」
「おお、凄いぞ、感動じゃあ~!」
友蔵が喜んだ。その一方、次郎長は銃弾をあっけなく撥ね返し、さらに刀で大地を爆発させて兵を吹き飛ばす。
「この下衆共が!」
次郎長は刀で瞬時に兵を切り捨てていった。
「ほう、なかなかだな。こっちはどうかな?」
シャルル・リゴーは余裕のありそうな表情だった。
「どういう事だ?」
次郎長は振り向いた。かよ子達槍を結界から引き抜いた所だったが、何か違和感を感じていた。
「槍は抜いたんだよね?」
「ああ、だが、何だこれは?」
羽根の結界が消えた。
「その槍を抜けば結界が一時的に消えるのだ!」
「ええ!?」
シャルル・リゴーが飛び込んでくる。かよ子が襲われると感じた。だが杖はまだ剣の能力が解除されていない。シャルル・リゴーの剣がかよ子を刺そうとする。かよ子は何とか剣で弾き返した。
「かよちゃん!」
「山田!」
「山田かよ子!」
皆が加勢に入ろうとする。
(やられたくない・・・、こんな所で、おっちょこちょいしたくない・・・!!)
本部の一室。杯が奪われた事、そして娘が囚われたという報告を聞いたりえの母は涙していた。
「りえ、りえ・・・!!」
「申し訳ございません。私がいながら・・・」
フローレンスは謝罪してもしきれなかった。
「安藤さん、きっと無事ですよ。ウチの娘達が取り返して来てくれますよ」
先代の護符の持ち主が先代の杯の持ち主を慰めようとする。そして通信が来る。
『こちら祝津ゆり。剣奪還班を分割させました。私達で杯を取り返しに行きます。そして一部は私の妹について行って杯の持ち主の子を救出に、そしてまた一部は剣をそちらに運びに向かわせています』
「ありがとうございます。お気を付けください」
「ゆり!気を付けるんよ」
『お母さん。うん・・・!!』
ゆりからの連絡が終わった。
「ゆりちゃん、頑張って・・・!!」
先代の杖の所有者も友人の娘を応援するのだった。
雷の山。アルバート達の姿が見えなくなる。
「あの者共、ここから立ち退くぞ!」
ジャンヌが伝えた。
「待て、逃げるな!卑怯者!」
山口が吐いた。そして矢を放つが、彼らの姿は消えてしまい、当てる事ができなかった。
「逃がしちまったか・・・」
「ここは、どうなるの・・・?私達は、この山を取り返せたって、事・・・?」
「しかし、あの者達が撤退したという事は正式とは言い切れませんがそうと言っても過言ではないと思います。本部守備班にここまで来て貰いましょう」
エレーヌが進言した。
「そうだな」
川村が通信機を取り出し、本部守備班に連絡を入れる。
「こちら川村承太!本部守備班に連絡する!今西側にある『雷の山』で何とか戦った所だ!近くにいる人に誰かここまで来て貰いたい!」
そして連絡が来た。
『こちら羽井玲衣子!私達が向かうばい!』
博多弁で喋る女子が応答した。
「ありがとう。合流するまで俺達はここに待機している!」
『了解!』
連絡を終了させた。
「では、合流するまでここで休憩しましょう」
「ああ」
すみ子達は待機する事になった。
かよ子はシャルル・リゴーとしのぎを削り合う。しかし、子供の腕力であるかよ子では彼の剣圧への耐久は脆かった。
「はは、子供にそんな玩具は扱えん!」
あっけなくかよ子の剣が弾かれてしまった。剣が杖に戻り、下に落ちる。
「ああ!」
「これで私の物だ!」
シャルル・リゴーが降下した。このままでは杖が奪われる。
(杖が取られちゃう・・・!!)
後書き
次回は・・・
「杖と剣の争奪戦」
杖を弾かれ落としてしまったかよ子はシャルル・リゴーに杖を取られそうになる。取られまいとかよ子は慌てて無茶な行動に出てしまう。そして剣を本部へ運び続ける三河口、冬田、湘木はある人物の襲撃を受ける・・・!!
211 杖と剣の争奪戦
前書き
《前回》
雷の山でアルバート、アリス、ヘレナと交戦するすみ子達は彼らに苦戦するが、ジャンヌの機転によって形勢逆転する。しかし、あと一歩の所で逃げられ、仕留め損ねてしまう。そしてシャルル・リゴーと交戦するかよ子達はかよ子の羽根の結界でリゴーの侵入を防いではいるものの、リゴーの槍が結界を焼失させてしまう。かよ子は杖を剣に変化させて応戦するが、あっけなく弾かれて杖を落としてしまう!!
レーニンは剣奪還部隊によって襲撃を受けた本部にて休んでいた。そして傍には赤軍の一人・和光晴生がいた。
「和光晴生、貴様の能力を利用する。私と同化しているこの小僧の記憶を探るのだ」
「はあ、そんな事して何になるんですか?あんたにとってあまり気持ちのいい思い出はないと思うんですが」
「その憎しみこそを力の源にするのだ。始めてくれ」
「はいはい」
和光は紂王の屋敷に住む少年に対して使用した記憶を映像化させる道具を出して帽子の部分をレーニンに付けた。レーニンが杉山さとしに変化した。
「俺の記憶なんか探ってどうすんだよ。なんかいい記憶があったらそれを自分の力にするつもりか?」
杉山が聞く。
「映像の物を我が力として吸収する事はできんだが、その記憶こそを共有してこそ強化の素にするのだ」
そして映像が映し出されていく。杉山の過去の出来事が次々と浮かび上がって来た。そして杉山が杖の所有者と夜に闘った二人組の男女を見た。
「・・・あれは!!」
かよ子はシャルル・リゴーとの戦いで杖を弾かれ、下方に落とされてしまった。
「杖が・・・!!」
「貰った!!」
シャルル・リゴーが杖を取りに下へ向かう。
「こ、このままじゃ、杖が取られる・・・!!」
かよ子は羽根から飛び降りてシャルル・リゴーより先に向かおうとした。
「あ、かよちゃん!」
「あんな所から飛び降りたら死ぬブー!」
皆がかよ子の向こう見ずな行動に驚いた。
「ちい!」
大野が草の石の能力を行使する。花粉が巻き散る。シャルル・リゴーはその花粉の毒で身体が痺れた。かよ子の方は武装の能力が自然と発動していた為に花粉の毒を浴びる事はなかった。
(あと、もう少し・・・!!)
かよ子は杖に手を伸ばそうとする。しかし、取れずにそのまま落下していく。だが、途中、杖もかよ子もそのまま空中で静止した。
「・・・え?」
のり子の人形の念力、そして法印大五郎の法力が働いていたのだった。そしてかよ子は空中で杖を何とか手にした。
「山田かよ子!」
次郎長がかよ子の元へと急ぐ。そしてかよ子をお姫様だっこのように受け止めた。
「全く、おっちょこちょいしおって!」
「ご、ごめんなさい・・・!!」
かよ子は謝った。羽根が下に降下して来た。
「かよちゃん!」
「山田かよ子!」
「皆・・・」
「あんた、凄い勇気だよ。自分の命を顧みずに杖を取ろうと飛び込むなんてさ」
お蝶がかよ子の勇気を賞賛した。
「だが、無謀な行為にも気をつけよ」
次郎長が窘めた。
「う、うん・・・」
「そうだ、シャルル・リゴーはどうしたブー?」
「伸びておる。大野けんいちの出した毒で動けなくなっておるぞ」
「よし!今だ!」
かよ子は杖を倒れているシャルル・リゴーの剣に向け、杖を刀に変えた。
「ええい!」
シャルル・リゴーを斬撃し、彼を光へと変えた。
「はあ、はあ、終わった・・・」
かよ子は疲労が祟ってその場で倒れてしまった。
「山田かよ子!」
皆がかよ子の元へ集まった。
三河口は見聞の能力で追っ手が近づいて来ていると解った。
「赤軍か?ここの世界の奴か?」
湘木が質問した。
「少なくとも赤軍や反日武装戦線の連中ではない」
「よし、俺が迎撃する」
「すまん、冬田さん、お前も湘木に手を貸してやれ」
「はあい」
冬田はできれば心の中で大野と共に戦いたかった。それで「冬田、おめえすげえかっこよかったぜ。お前に惚れちまったよ」といわれる所を妄想していた。大量の矢が飛んできた。
「俺も武装の能力を発動させる!」
三河口の武装の能力で矢を弾いた。しかし、周りが焼ける。
「火矢か!」
「水の力を出すぜ!」
湘木は斧を振るい、水で消火を試みる。
「おい、冬田さん!ボケーっとするな。次の火矢が飛んできたぞ!」
「は、はあい!」
冬田は羽根から水を放水して火矢の炎を消す。しかし、今度は槍を持った兵が数十人突進してきた。湘木は水で押し流そうとするもあまり効果がない。
「なら、これだ!」
湘木は木を操る能力に切り替えた。巨木が現れ、その木の根が足軽に巻き付いた。すると根が兵達の生命を吸収し、光へと変えた。
「それだけじゃねえぞ!」
巨木は更に枝を振り回し、別の兵や飛んでくる矢を薙ぎ払った。
「そこに剣があるのは解っている。我が兵を無惨に殺しおって」
「誰だ!?」
侍大将のような男がいた。
「我が名は義教。貴様らのそれは盗まれたという剣だな?」
「盗んだんじゃねえよ。返して貰ったんだよ!」
湘木が反論した。
「口の聞き方に気をつけろ、小僧ども!かかれい!」
足軽達が襲ってくる。三河口が武装と威圧、二つの能力で返り討ちにし、湘木と冬田が各々の道具で葬ろうとする。しかし、キリがない。
「ええ〜ん、もう駄目え!」
冬田が弱音を吐いた。
「大野くう〜ん、助けてえ〜!」
「泣いたって大野君は来ねえよ!それにしてもヴィクトリアの艦隊よりも人数が多い!」
「ああ、いくら俺達でも持たねえ!」
「援護を求めるよ!」
三河口が通信機を出した。本部守備班、領土攻撃班、そして本部にも連絡を繋げた。
「こちら三河口健!只今義教とかいう奴が率いる軍団と戦闘中!こちらがやや不利だ!支援頼む!」
『こちらイマヌエル。了解した!直ちに急がせる』
「機械とやらは使えなくなったようだが、今度はそう簡単に退散はせぬぞ」
義教は以前領土を襲撃する少年少女達と交戦して不利になり撤退を余儀なくされた事がある。その時は西洋の人物が神の力を利用した為に不利にされた。
「わしこそ元は仏に仕えた身だ。やってやるぞ!」
義教は数珠を取り出した。
「成敗!」
三河口は武装の能力で防御する。しかし、耐えきれない。
(まずい、やられる・・・)
これは能力が無効化されると感じた。その時・・・。
「聖戦だ!」
何者かが声を挙げた。
(だ、誰だ・・・!?)
その時、三河口への身体の負荷が軽くなった。
(もしかして大野君!?)
冬田はそんな期待をした。
「な・・・、何者だ!?『じはーど』だと!?」
義教は困惑した。その隙に湘木か斧で炎を出し、義教を攻撃する。義教も同じく数珠で炎を出して防御した。そしてまた昔の中東の兵士のような人物達が義教の兵に襲いかかる。
「そこの者、無事か!?」
先程声を挙げた人物が現れた。
「あ、ああ・・・」
「私はアラーに仕える者、サラディンだ。お主らの助太刀に参った!」
「サラディン・・・!?」
後書き
次回は・・・
「イスラムの戦士、サラディン」
義教に苦戦する三河口、湘木、冬田の元にサラディンという男が現れ、援護する。彼のイスラムの能力、義教の仏の能力が激しくぶつかり合う。そして本部ではフローレンスにある用件ができたようだが・・・!?
212 イスラムの戦士、サラディン
前書き
《前回》
シャルル・リゴーと交戦するかよ子達はリゴーの槍による結界消失、さらに杖を落としてしまって奪われかけるも何とか杖を死守し、リゴーを撃破した。そして剣を本部へ運ぼうとする三河口、湘木、冬田は義教という男の軍勢から襲撃される。迎撃を試みる一同だが、数が多すぎて苦戦を強いられる。そんな時、彼らを救いに訪れたのはサラディンという男だった!!
仏教では仏法の不思議な力(特に「犬夜叉」などの作品)を「法力」と称されるのですが、イスラム教ではそれに対応する特殊な力は何か調べても解らなかったので、ここでは「聖力」という私の完全な造語を使用させていただきました。イスラームの読者がいましたら勝手な事をして申し訳ございません。
本部の管制室。イマヌエルが三河口のいる地点を確認する。
「剣を狙う追っ手か・・・」
「健ちゃん、大丈夫かね?」
奈美子が甥を心配した。
「いや、機械が無力化されているとはいえ義教は以前、濃藤すみ子君達と交戦してやられている。その恨みも募っているから彼の部隊も編成を強化している筈だ」
まき子は別の点が近づいて来ているのを確認する。
「そういえば別の部隊が来ているわね。これはここの世界の人達ね」
「ああ、それはサラディンという戦士だ」
「サラディン・・・?」
「剣を取り返して本部に運んでいる者だな?」
サラディンと名乗った男は確認する。
「ああ、そうだ」
「ここまでよく耐えて来られた。アラーの力で撃退する!」
「何が『あらー』だ!馬鹿馬鹿しい!」
「馬鹿馬鹿しいと思うならば裁きを受けてみるがよい!」
サラディンの剣の聖力と義教の数珠の法力がぶつかり合う。
「南無阿弥陀仏!」
「神は偉大なり!」
三河口達は仏教の力とイスラム教の力が攻め合う姿を見て思わず息を呑んで見ていた。その時、三河口が我に返る。
「いかん、見てる場合じゃなかった!」
「ああ、そうだったな!俺達も戦わねえと!」
三河口は威圧の能力を出して義教の兵達に圧力をかけて湘木やサラディンの兵達に有利なように傾くようにした。義教の兵が次々と倒され、戦力を削がれていく。
「よし!」
湘木も斧で水の能力を駆使して激流を出し、水の槍となって兵を串刺しにしていく。冬田も怠ける訳にいかず、金属の能力を使って鋼の槍を無数に出して攻撃した。
「うおおおお!!」
「ぬおおおお!!」
義教とサラディンはぶつかり合い続けている。
「これで死ねい!」
「貴様ごときにあっけなく倒される私ではないぞ!」
「・・・、湘木、そっちの義教の兵は殆ど倒したか?」
「ああ!!」
「なら俺達もサラディンに加勢するぞ!」
「おうよ!」
三河口が威圧の能力を出した。湘木も斧を振る。
「・・・な!?」
義教の法力が弱まる。
「助太刀感謝する!」
サラディンの剣から雷が出る。
「うおおおお!!」
義教が黒焦げにされる。
「ムハンマドの力よ、この者を火獄の刑に処す事を願わん」
サラディンが唱えた。義教は更に燃えていく。
「まだ、まだ・・・!」
「悪あがきもいい加減にしろ!」
湘木が斧を振るった。炎の能力でサラディンの炎と混ざり合わせ、強力な炎を形成させた。そして・・・。
「私も手伝いましょう」
平安時代の歌人のような人物が現れた。
「何だ、貴様は・・・?」
その人物は雷雲を呼ぶ。そして落雷の攻撃が義教を襲った。
「があっ・・・!!」
義教は数秒後に光と化していった。
「やったか・・・」
「よくやった!そしてそこの者、礼を言っておく」
「いえ、私達ももう少し早く来ていれば・・・」
その歌人のような人物に連れられていたかのように四人の少年少女が雲に乗って現れる。
「遅くなってごめんたい!」
博多弁で一人の少女が謝った。
(福岡から来た子か・・・)
三河口はすぐに察した。
「いや、気にしないでいいよ。この人達に助けられたからね」
「そこの少年少女よ。貴様らは確か『雷の山』の守護に赴く者達だな?」
サラディンが確認する。
「あ、はい!」
「あそこはこの世界でも重要な場所と聞く。急いで合流したまえ」
「はい!」
「では、私も失礼」
「道真さん、行こう!」
道真と呼ばれた人物と四人組の小学生は雲に乗って移動した。
「ところでサラディンとか言ったな?」
「何だ?」
「聞いた話ではイスラムの為に戦い、エジプトやシリアを征服し、十字軍と激しい戦いを行ったそうだが、俺達はあんたが信仰しているイスラム教の人間でも敵対していたキリスト教徒でもない。そんな人間にも味方になってくれるのか?イスラム教は異教徒には厳しいというイメージがあるんだ」
三河口は質問した。
「確かに貴様の言う通り、私はアラーの為に戦って来た。だが、他の宗教が悪いという考えではない。私は戦士であっても無駄な殺戮は避けたい身であり、武器を持たぬものを殺すなどといった事は野蛮な事。戦士のやる事ではないのだ。私は誰がどの宗教を信仰するのは自由だと考えている。だからこそ、私は貴様らに助太刀したのだ」
「そうか、ありがとう。また会ったら一緒に戦おう」
「そうだね、剣を奪還した勇士どもよ。本部の者も待っているぞ」
「ああ、失礼する」
三河口達は冬田の羽根でまた移動するのだった。
「よし、東へ向かうぞ!」
サラディンは兵を率いて東へと進むのであった。
羽井玲衣子。本部近辺の守備を担う福岡の小学生であり、学校の友達三名と共に雷の山へと急ぐ。
「道真さん、あの雷の山ってのはどげんとこなん?」
玲衣子の友人の一人・吉原千鶴は道真に聞く。
「雷の力の源となる山ですよ。私は嘗てそこに住んでいたのです」
「よし、うちらで取り戻したるばい!」
本部の一室では剣を輸送する三河口から連絡が来ていた。
『こちら三河口健!義教とかいう奴の襲撃をサラディンや本部守備班の小学生達の援護で何とか切り抜けた!今そちらへ向かう!』
「了解。気を付けて行って来てくれ」
イマヌエルが応答した。
「健ちゃん、あともう少しだから頑張るんよ!」
『おばさん・・・。はい!』
連絡が終了した。
「あのサラディンって人は凄い人なのね」
まき子は感心した。
「ああ、イスラムの世界でも英雄とされているからね」
「それでは私は別の用件ができましたので少し失礼致します」
フローレンスが管制室から出て行った。
「フローレンス、どこへ行くのかしら?」
「おそらくだが、君らの世界にいる政府の所じゃないかな?」
イマヌエルは推測した。
フローレンスは本部のある出入り口を通り、生前の世界と死後の平和を正義とする世界を繋ぐ道を通る。その先は日本のとある場所。それは松の茂る場所だった。
「答えが出ましたか・・・」
ここは静岡県にある三保の松原。そしてフローレンスはさらにある場所へと向かう。目的は一人の少女の家だった。
後書き
次回は・・・
「戻ってきて欲しい」
杉山はレーニンにある事を希望する。そしてかよ子達が元いた世界、3年4組の教室は寂しさが漂う中、山根と永沢は藤木の話をしていた。永沢の心無い発言にたまえ、とし子が反発する。そして笹山も我慢できなくなり、とうとうある決断を下す・・・!!
213 戻ってきて欲しい
前書き
《前回》
義教の襲撃を受ける冬田、三河口、湘木の三人は応戦するが、敵の兵士の数が多く、片付けきれずにいた。その時、イスラムの能力を行使するサラディンという男に救われ、彼の救援によって形勢逆転に成功する。そしてフローレンスはふと「ある用事」ができ、生前の世界へ赴く。向かった場所は静岡県の清水だった!!
レーニンは和光によって杉山の過去を映像化された物を視聴した後、別の地へと向かっていた。
「何だここは?」
「ここには私が『貴様がいる生前の世界』での家族の祀っている。貴様が杖の持ち主の小娘と共に倒した兄さん、姉さんもいるのだ」
そこには墓石のような物がいくつかあり、ロシア語アルファベットが刻まれている。
「何だその文字は?」
「我が家族の名前だ」
レーニンは墓石のうち二つに手を置いた。
「この仮を必ず返す、兄さん、姉さん・・・」
その時、レーニンの手に黒い光が放った。
「これで杖の所有者への怨念がまた蓄積した。殺しがいが出てきたという事だ」
(こいつ、山田を殺す気か・・・?)
「そうだ、まず杯を持ってるりえの所に行かせてくれよ」
「妲己の屋敷に?あの小娘に会って何をすると言う?」
「ああ、殺すのは勿体無かったみたいだからな。会っておきてえんだ」
「貴様、もしかしてあの杯の所有者の小娘に恋でもしているのか?」
「ち、ちげえよ!兎に角会わせてくれ!山田達に先越される前に確かめておく必要があるんだ!」
杉山は反論した。
「そうか、こちらもあまり暇はないぞ。何しろ剣を取られた上に領土を分捕られ続けているのだ」
「解ったよ」
入江小学校の3年4組の教室。たまえととし子は寂しくなった教室で二人は休み時間に雑談する。
「はあ―、まるちゃん達、大丈夫かな・・・?」
たまえは数日も親友に会えなくなると心配で仕方なかった。
「うん、私達も今どうなってるか知りたいんだけどね・・・」
とし子も落ち着かない様子だった。
(まるちゃん、お願い、早く帰ってきて・・・!!そうじゃないと、私どうすればいいの・・・!?)
たまえは現実逃避したい気分になった。
「たまちゃん、大丈夫?ボーっとしてるけど」
「あ、うん、大丈夫・・・!!」
とし子に呼ばれてたまえは我に返った。
「そうだ、たまちゃん、今日うちで遊ばない?お母さんがクッキー作ってるんだ」
「いいね」
その一方、かよ子達とは異なり、年明け最初の登校日以来、全く学校に姿を現さない藤木に関して山根強と永沢君男が喋っていた。
「藤木君、もう何日もいないと心配になっちゃうよな」
「ふん、別にいいのさ。僕は別に藤木君なんていなくても平気だよ」
笹山が永沢の言葉に反応した。
「永沢君、それはどういう事だい!?」
「藤木君のような卑怯者なんかいてもいなくてもどうって事ないだろ?それに僕にはもう藤木君に会う事がないって思うと心底嬉しいのさ」
(永沢君・・・!!)
笹山は永沢の心無い言葉に体が震えた。たまえととし子も永沢の発言が許せなかったらしく、永沢に詰め寄った。
「ちょっと、永沢!いくら何でもそんな言い方ないよ!」
「そうだよ、そこまで言う事ないよ!」
「何言ってるんだい?君達は卑怯な藤木君なんて別にいても迷惑かけられるだけだろ?前にもクリスマスの合唱コンクールで歌い遅れて皆に迷惑かけたし、山田かよ子が野良犬に襲われてる所を自分だけ逃げたじゃないか」
「でもだからって、何日もいないと心配じゃないの?」
「別に。藤木君なんて友達でもなんでもないさ。だからどうなっても僕には別に良い事なのさ」
「永沢君、それは少し言い過ぎじゃないのかい!?」
山根も反論した。
「どこがだい?君達も藤木君が卑怯な事をして散々迷惑を掛けられてきたじゃないか」
「それはそうだけど・・・」
「ならむしろいなくていいじゃないか。君達はせいぜいさくら達の心配でもするんだね」
笹山は聞いてるだけで我慢が出来なくなった。
「永沢君、もう藤木君の悪口言わないで!」
笹山は永沢を非難した。
「藤木君の事で一々卑怯とかいなくなってもいいとか、どうしてそんな事しか言えないの?永沢君はいつも藤木君と一緒にいるじゃない!」
「何だよ、笹山まで・・・」
「笹山さん、落ち着いて!」
たまえが笹山を宥めた。
「ええ、ごめんなさい・・・」
笹山は自分の席に戻った。
下校中、たまえととし子は藤木の話をする。
「まるちゃんやかよちゃん達も心配だけど、まず藤木がいなくなったのが心配だよね・・・」
「うん・・・」
その時、反対から見慣れた女性とすれ違う。まる子の母だった。
「あら、たまちゃん、とし子ちゃん、こんにちは」
「こんにちは」
たまえはある事を聞こうとした。
「あの、おばさん、まるちゃん、心配ですね・・・」
「あら、まる子の事心配してくれてるの?ごめんね。あの子ったら本当に面倒臭いとか呑気に言ってたんだからしょうがないわね。お姉ちゃんは行かなきゃいけないって緊張してたのに」
「そうなんですか・・・」
(まるちゃん、大丈夫かな・・・?)
たまえはそう言われて心配になった。
「あ、そうそう、それからおじいちゃんがいなくなっちゃったのよ。警察には届け出はしたけど、もしかしたらまる子とお姉ちゃんが心配になってその異世界とかに行っちゃったんじゃないかって思ってね」
「はあ、そうですか・・・」
たまえもとし子もおそらくその予想は当たっていると察した。
「私達、まるちゃんはきっと戻ってくるって信じてます!」
とし子は答えた。
「ありがとう。まる子が帰ってきたらまた宜しくね」
「はい!」
たまえととし子はまる子の母と別れた。
笹山は下校しながら永沢の藤木を批判する言葉が頭に何度も蘇って来た。
《藤木君のような卑怯者なんかいてもいなくてもどうって事ないだろ?それに僕にはもう藤木君に会う事がないって思うと心底嬉しいのさ》
《卑怯な藤木君なんて別にいても迷惑かけられるだけだろ?》
(それでも藤木君がいなくなって皆は嬉しがっているの?)
そしてあの手紙の文章を思い出した。「僕にとって君は過去の人なんだ。もう君の前には顔を出さないので許してください。僕も君の事は忘れるよう努力するよ」という文言である。その時、二人組の女子中学生がすれ違い、その会話を耳に挟む。
「ねえ、詩織、元気出してよ。もっとマシな男子見つかるよ」
「うん、ごめん・・・。でも山中君、いくら私とちょっと喧嘩したからって後輩の女子と付き合い出すなんて・・・」
「そうよね、仲良しになれば喧嘩もあるのに」
「一緒の高校行くって約束したのに・・・」
「女子校行きましょうよ。そうすればもう会う事ないし忘れられるわよ」
「うん、そうするわ」
二人の中学生が遠ざかっていく。
(もう会わないようにすれば忘れられる・・・。私は藤木君に忘れられて欲しいのかな・・・?)
笹山は自問自答を続ける。
(野良犬から逃げる藤木君は私だけ連れて逃げて山田さんを置いて行った時、最初は藤木君を責めたけど、それで藤木君を傷つけたのかしら・・・?合唱コンクールの後の藤木君は何て言おうとしてたのかしら・・・?)
合唱コンクールの後、自分が独唱のパートを皆から褒められた時、藤木は自分に話しかけた。しかし、永沢が藤木のミスを指摘した事で皆から責められる事になり、結局藤木は自分に何て言いたかったのか聞く事はなかった。
(やっぱり私は、藤木君に戻って来て欲しい・・・。卑怯な事をしたからっていなくなれば永沢くんはそうでも皆が嬉しい訳がない・・・!!)
笹山は家に帰り、机の引き出しにしまっていたボールペンのような道具を出した。異世界から来たという女性・フローレンスによって貰った物だった。
(決めたわ・・・!!)
笹山は道具のスイッチを押した。そしてその道具から光が出る。
「ご決断されましたみたいですね」
フローレンスがその場に現れた。
「フローレンスさん・・・」
「で、答えは?」
「私・・・。異世界に行きます!藤木君を取り戻しに、そしてもう一度会いたいです!」
「解りました。準備ができましたらまたお呼びください。共に三保神社に行きましょう。その道具も忘れませんでくださいね」
「はい!」
笹山は準備を始めた。そしてフローレンスをもう一度呼ぶ。
「準備できました」
「では、お連れ致します。私にお掴まりください」
笹山はフローレンスに掴まった。フローレンスは飛び立ち、三保神社に向かった。
「御穂津姫、お願い致します」
「はい、お通り下さい」
御穂津姫は蒼い穴を出した。
「この先に私達の住みます世界があります。行きましょう」
「はい」
二人は穴の中へと入った。
(藤木君・・・、待っていて・・・!!)
後書き
次回は・・・
「仲間がいなくなれば」
異世界へ行く事を志願した笹山はフローレンスによって異世界へ連行された。そしてシャルル・リゴーとの戦いで意識を失っていたかよ子はある人物の声が聞こえてくる。その声が放った言葉とは・・・!?
214 仲間がいなくなれば
前書き
《前回》
杉山はレーニンがかよ子を殺害する計画を杖を奪うと共に立てているのではと疑う。そして入江小学校3年4組の教室では異世界に行ったクラスメイト達がどうしているかたまえととし子が心配していた。そして永沢は藤木がいなくなる事に肯定的な意見を述べた事でたまえととし子は批判する。そして永沢の言葉から笹山は遂に決断する。そして以前フローレンスから貰ったボールペンのような道具を使用し、フローレンスを呼び、自身も異世界に行って藤木を探すと伝えるのだった!!
笹山とフローレンスは三保神社から異世界へ通じる穴を通り抜け、その穴の出口に到着した。
「ここがフローレンスさんの住む世界・・・?」
「はい。あの建物が私達の世界の本部となります」
フローレンスは巨大な城のような建物を指差した。そしてフローレンスは笹山を本部のある部屋へと連れて行った。
「笹山かず子ちゃん、この度はご決断と藤木茂君の救出にお手伝いして頂きましてありがとうございます。その道具は笹山かず子ちゃんの藤木茂君に戻ってきて欲しいという願いを込めました道具となります。その道具の尖っています所に指をつけまして頭の中で貴女の願いを思い浮かべてください」
「はい」
笹山は自分の願いを思い浮かべ、ボールペンのような道具の尖った部分に自分の指をつけ、今の願い・藤木に戻ってきて欲しいという願いだけを考えた。ボールペンは元々白色だったがそれが緑色に変わった。
「ありがとうございます。色が変わりました。これを藤木茂君にお会いしました時にお使いください。貴女にはこれをして欲しかったのです。仮に貴女がここに来ないという決断をしましてもこれをやっていただきましてその道具を山田かよ子ちゃん達にお渡ししましょうと考えていました」
「そうだったんですか・・・」
そしてフローレンスの話は続く。
「藤木茂君はこの地の東側の方角にいますと思われます。お一人では心細いかつ危険ですと思いますのでここの世界の人に付き添いをお願いしたいと思います。ですが今はまだここに来たばかりですので心も落ち着いていませんでしょう。少しお休みになって下さい」
フローレンスは指を鳴らした。笹山とフローレンスがいる部屋のテーブルにクッキーやチョコレート、煎餅や団子などの菓子とジュースや緑茶などの飲み物がその場に現れた。
「ありがとうございます・・・」
笹山は休息する事にした。
レーニンはトランシーバーを出した。
「こちらレーニンだ」
『こちらトロツキー。リョードを狙う者が我々の所まで来ていると聞きました』
「そうだな。貴様の所まで来る可能性もゼロでは無くなってきた。返り討ちにせよ」
『リョーカイ!』
通信を終了させた。
「今、杖の所有者達は赤軍の者達が出向いて足止めさせているであろう。先を越されぬようにせねばな」
「だがよ、赤軍や反日戦線の奴等だけで、何度も返り討ちにされているじゃねえかよ。実際そいつらだけに任せた結果、剣を取られたじゃねえか。壁にするにはまた誰か近くにいる奴と合流させてやればいい話だ。何度か立ち塞がって疲労している所を狙えばこっちが有利な筈だぜ」
「解った。援軍も回そう」
レーニンはトランシーバーを出し、赤軍や東アジア反日武装戦線との合流を命じた。
かよ子のすぐ傍に一人の男がいた。
「た、確か・・・」
「杯は貰ったが、次は貴様の杖、そしてネロやアンヌ王妃などを倒したという女の護符だ。貴様が目的地に着くには私も貴様を奪いやすくなるという事だ。それから最後はあの少年が奪っていった剣も直ぐに取り返す」
「わ、私は負けないし、絶対に渡しもしないよ!それから杉山君やりえちゃんも取り返すよ!!」
「やれるものならやってみるがよい。貴様の仲間がいなくなったら一人でも私を倒せるかな?貴様自身の杖を守り抜けるかな?」
「え?」
「そのおっちょこちょいで一度貴様は杖を奪われているであろう?」
かよ子は思い出した。杖を奪われた時、それは以前、異世界から善人を装った入鹿という人物に騙されて杖を奪われた時である。
「知ってるの?」
「この事は赤軍の長・重信房子を通して私の耳に届いているのだ。あの時は貴様一人では出し抜かれている。仲間の加勢で何とか取り返せたのだ。だが、今いる貴様の仲間がいなくなり、倒されたら、一人でおっちょこちょいをするだろうな」
「お、おっちょこちょいなんかしないよ!!」
「威勢のいい小娘だ・・・」
男が遠ざかっていく。同時にかよ子も意識を失っていく。
「はあ、はあ・・・、はっ!」
かよ子は起きた。空は既に暗くなっていた。
「山田、大丈夫だったか?」
大野がいた。
「私は・・・?」
かよ子は状況が整理できずにいた。
「お主はシャルル・リゴーとの戦いで杖を盗られまいと羽根から飛び降りたのだ。それを親分や鳥橋のり子の人形で救われたのだが、同時に意識を失っていたのだ」
石松が説明した。
「わ、私、そんなことを・・・」
かよ子は杖を奪われたくないが為に無茶な事をしていた事を思い出した。
「ご、ごめん、皆に迷惑かけて・・・」
かよ子は謝罪した。
「気にするでない。もう夕食時であろう今日はここで休むがよい」
「う、うん・・・」
かよ子は夢の中に出てきた男を思い出す。あの男は確か・・・。
(そうだ、あの時、赤軍の人と一緒にいて、杉山君を取り込んだって言う・・・!!)
かよ子は杉山を取り込んだ男と聞いてピンと来た。
(じゃあ、あれが戦争を正義としている世界の支配者・・・!!じゃあ、今度杉山君と会うなら危険な事になるの・・・!?)
かよ子は落ち着かなくなるのであった。
雪山から移動型民族のように集団が降りて来る。
「茂様の『スケート』、凄くお上手でしたわね!」
元気いっぱいの性格の遊女が少年に話しかける。
「いやあ、それ程でも〜」
少年は非常に照れていた。
「その茂様のお嫁になる人もきっとその格好いい姿を見られましたらきっと一目惚れ間違いありませんよ」
落ち着いた性格の遊女も言う。
(『あの子』か・・・。来てくれるかな?)
少年はそう信じていた。
「そうだ、身体も冷えましたでしょう。帰ったら温かい料理をお作りしますね。『スキヤキ』とかは如何でしょうか?」
「あ、うん、いいね!」
集団は彼女らの屋敷へと帰って行く。
笹山は休憩後、フローレンスと共にある場所へと行っていた。
「この場所から藤木茂君のいます所へは徒歩では大変ですと思います。その為、ある方に移動が楽になりますよう『自動車』といいます乗り物を用意させていただいております」
「自動車・・・?」
二人が着いた場所はとある工場だった。
「ヘンリー、おりますか?」
一人の男性が現れた。
「ああ、フローレンス。そのお嬢さんは?」
「貴方に頼みました自動車に乗せます女の子です。名前は笹山かず子ちゃんといいます。この子が敵の世界にいます少年を探しにいきます予定でいます。発注しました自動車は完成していますか?」
「ああ、勿論。今までよりも更に高性能な物ができたよ」
フローレンスと笹山はヘンリーに連れられて工場の中へ入った。そこには銀色の自動車があった。
すみ子達は本部守備班の到着を待っていた。
「暗くなっちまったな」
山口が空を見上げた。
「ここに来るまで時間が掛かる筈ですからここで休息致しましょう」
エレーヌは提案した。
「うん・・・」
『皆様、お疲れ様です。夕食の準備ができました。お召し上がりください』
イマヌエルから声が聞こえた。皆の前で食事が提供された。
(何か、落ち着かない・・・)
すみ子はそう思いながらも食事する。
(やっぱり、近くにまた誰か来ているの・・・?)
後書き
次回は・・・
「追跡の続き」
夜中、さりは謎の夢を見る。そして朝、かよ子は気を失っていた時に見た夢を石松達に説明する。そしてそのかよ子達の元に次なる刺客が訪れる。かよ子は羽根の結界で防御を試みるのだが・・・!?
215 追跡の続き
前書き
《前回》
自分も藤木を取り戻す為に動き出すと決意した笹山はフローレンスによって平和主義の世界の本部へと連れて来られる。かよ子はシャルル・リゴーとの戦いで気を失っている中、戦争主義の世界の長と会う夢を見る。かよ子は杉山と次に会う時は危険な予感を覚えるのだった・・・!!
オリジナルキャラ紹介・その19
湘木克也(しょうぎ かつや)
横浜に住む高校生で三河口の小学生の頃の友人。初登場137話。兄がおり、その兄も三河口の兄・三河口響の友人である。兄弟仲は良好かどうかはいささか微妙である模様。武装の能力を所有する。木・水・火の三つの属性の能力を発動させる斧を使用して戦う。好きな食べ物は豚カツ、ひじき煮。
異世界での「夜」が訪れた。さりは待機した場所で尾藤、もと子、さきこ、長山に清正と共に奪還した町で一夜を過ごす事になった。さりは護符で布団を出して皆に配った。
「それじゃ、お休み〜」
皆は眠った。さりは夢を見た。周囲は暗闇だった。
「何なの、ここ・・・?」
そしてどこからか声が聞こえた。
[貴様がその安全地帯でいつまでも呑気にしていられると思うな]
「はあ、別に呑気にしてる訳ないわよ!?これでも何度か敵を追っ払ってんのよ!」
「ふっ、強気な女だな」
「大体アンタはどこの誰なのよ!?顔出しなさい!!」
[俺だったら、どうする?]
声が変わった。そしてさりの傍に一人の男が現れた。
「よう、久しぶりだな」
「き、君はかよちゃんの・・・!!」
さりはそこで意識が遠のいた。
さりは起きた。まだ夜中だった。
(あの夢は・・・!?それからあの子は確かかよちゃんの友達で、杉山君って子・・・!!)
さりは見回した。しかし、誰も攻めて来る様子はなかった。自分には従弟のように見聞の能力は備わっていない為、感知はできないのだが。さりはまた寝るのだった。
朝になった。かよ子は直ぐに起きた。
「もう朝か・・・」
かよ子は見回した。
(誰も来ていない・・・)
「起きたのか」
石松も起きていた。
「うん・・・」
「昨日のシャルル・リゴーとの戦いの後、お主は意識を失っていたみたいであったが、その時夢を見ていなかったか?」
「え?あ、う、うん・・・」
かよ子は答えようとした。
「男の人の声がしたんだ。『杖を守り抜けるか』って・・・。覚えてるのは、それだけ、ごめん・・・」
「別に謝る事ではない。お主は前にも幾度か悪夢を見ているようだったからな」
「うん・・・」
「おそらくだが、もしかしたら戦争主義の世界の人間の長かもしれぬな・・・」
「そうかもね・・・」
そして皆も起きてきた。
「おっ、山田、早いなブー」
「ブー太郎、うん、私、落ち着かなくて・・・」
「藤木ならきっと取り返せるブー!それから杉山君やあの杯の持ち主の子もきっとオイラ達で取り返せるブー!」
「うん、そうだよね!」
ブー太郎の励ましでかよ子は元気が出た。そしてまる子と友蔵は未だに眠っていた。
「ももこちゃん、起きてよ、朝だよ!」
のり子が起こした。
「あへ、おはよう・・・。おやすみ〜」
まる子はまた寝てしまった。
「全く、困った女子だ・・・」
次郎長が呟いた。
『皆様、朝食の準備ができました。今お持ちしますのでお召し上がりください』
イマヌエルの声だった。オムレツに野菜スープ、そしてブルーベリージャムにパンにヨーグルトという献立だった。
「ももこちゃん、朝ご飯だよ!」
「えっ、ご飯!?」
まる子は喜んで飛び上がった。そして出された食事にがっつくのだった。
「全く、ゴクツブシめ・・・」
「食う為にここに来たみたいだな・・・」
石松と綱五郎はそう会話した。
(まるちゃん、なんか小杉みたい・・・)
かよ子も心の中で呆れるのだった。
笹山はヘンリーが提供した自動車に乗って走り出す。
(藤木君、どこにいるのかしら・・・?)
笹山の目的は一つ。「この世界」にいると思われる少年・藤木茂を探し出す事である。
こちら剣奪還班のうち、杯を取り返しに向かう部隊。剣を取り返す役目を終えたゆり達は朝食を終えていた。そんな中、マリエルは車両の外(これは北勢田の矛の力で出した物である)で歯磨きをしていた。なお歯ブラシなどは本部に頼んで出して貰った物である。
「あんた、きれい好きだね」
政美が車両から出てきた。
「うん、虫歯になった事あるし・・・」
そしてマリエルは歯磨きを終える。一人の20代半ばの女性に四人の女子高校生は先へ進む。
「・・・なあ」
鯉沢が窓から遠くを睨む。
「どうしたの?」
「近づいて来とるわな。『奴ら』が・・・」
「どれ」
政美が探知能力を使用する。
「来てるね。それも来てるのは女か・・・」
(女?追跡の邪魔をしてくれるわね・・・)
ゆりは戦闘態勢に入る準備をする。
「近づいたら迎撃するわよ」
丸岡修と西川純。赤軍メンバーである二人は東の方角へと進んでいた。
「はて、レーニンの旧知の仲という人物と一緒に戦うとはな」
「ああ、それにしても相手からしたら相当厄介な相手らしいですね」
そしてある街の建物に入る。そこに一人の男がいた。
「貴様らか。杖を取りに行くと言う者は」
「そうだ。赤軍の丸岡修。そしてこちらは同じく西川純だ。レーニンの友人というスターリンで間違いないな?」
「その通り。聞いた話では杖の所有者は頼りない小娘と聞くが?」
「ああ、おっちょこちょいをやらかすと聞いた。それからそいつは今、人質として預かっている少年を取り返しに向かっている所だ」
「そうか」
「だが、そのガキも幾らか強くなっている筈だ。何人か杖を狙ったものの、何かとそのガキやその仲間から返り討ちを喰らっている」
「全くみっともない連中だ。私が多くの害虫なる敵どもを折角粛清したというのにこの様では振り出しに戻るだけだ。しかも、剣まで奪われたと聞く」
「それについては申し訳ない。そいつらも今追っている所だ」
「そうか、剣を奪った者については今私の妻にも向かわせて殺す予定でいる。共にその杖の小娘を殺しに行くぞ」
「はい」
丸岡と西川はスターリンと共に杖を分捕りに向かう。
かよ子達は朝食後にまた羽根を飛ばす。
「おい、また来てるぜ」
大野が警戒した。
「そうみたいだな。俺もそんな気がするよ」
関根は刀を構える。そして振り下ろした。
「・・・やってくれたわね」
「だ、誰なの!?」
かよ子は問答した。
「私はラ・ヴォワザン。貴女ね。杖を持つ小娘は」
ラ・ヴォワザンはかよ子を見る。
「貰うわよ。その杖。そして貴女も消えて貰うわ。この私の黒魔術でね!」
ラ・ヴォワザンは攻撃を始める。
「姿を消したまま殺そうと思ったけど仕方ないわね。杖を取るついでに貴様も黒ミサの祭壇に掲げさせて貰う!」
「くろみさ!?何、それ?」
かよ子は聞くが、ラ・ヴォワザンは杖を出した。
「聞く前にやられて知りな!」
ラ・ヴォワザンの杖から黒い光線が放たれる。かよ子は羽根の結界で防いだ。
「なかなかの結界だね。それは異教の結界だな?」
「イキョー?これは仏教じゃ!ゲンジョーという人が作った結界じゃ!」
友蔵が訴えた。
「私が信仰する宗教ではない。それが異教よ!」
ラ・ヴォワザンは瓶を出した。
「やられる前にやっちまえ!」
「はい、ブー!」
大野は草の石を、ブー太郎は水の石を利用して先手を狙った。大野の草の石で出した巨大な木の枝でラ・ヴォワザンの瓶を弾いた。瓶が地面に叩きつけられて割れる。だが、瓶の中の液体が湯気のように空気中に上がった。
「ふ・・・、裏目に出たようだな」
ラ・ヴォワザンは瓶の中身が破壊された事は気にしていなかった。そしてまた杖を振るう。
(また結界で何とか・・・)
かよ子は羽根の結界が発動して防げると思っていた。しかし、今度は結界が効かなかった。
「え・・・?結界が効いてない!?」
そして黒い光が一行を襲う。
「は・・・!!」
かよ子は目を瞑った。幸い、彼女の武装の能力が発動した為、その攻撃をまともに受ける事はなかった。
「今破壊した瓶の中身は結界などの防御の効果を消す毒だったのさ!まあ、今度はその異能の能力とやらを消させて貰うよ」
ラ・ヴォワザンはまた別の瓶を出した。
後書き
次回は・・・
「黒魔術の魔女、ラ・ヴォワザン」
ラ・ヴォワザンの毒の煙がかよ子達を襲う。羽根の結界も、異能の能力もことごとくラ・ヴォワザンの黒魔術の毒で無効化されてしまった。そして杯の奪還に向かうゆり達の元にも刺客が送られる・・・!!
216 黒魔術の魔女、ラ・ヴォワザン
前書き
《前回》
さりは夜中に謎の夢を見る。そしてその夢の中に現れた男子を見て驚いていた。そして夜が明け、かよ子達藤木救出班は黒魔術を操る女・ラ・ヴォワザンと交戦する。大野やブー太郎はラ・ヴォワザンが持つ瓶を破壊したが、その破壊された瓶の毒でかよ子の羽根の結界が無効化されてしまう。黒魔術による毒の攻撃はまだ続く!!
丸岡と西川はスターリンと共に東部へ進む。
「聞いた情報では黒魔術で有名なラ・ヴォワザンという女が杖の所有者達を襲撃しているようだな」
「またやられる可能性があるんじゃないのか?ガキは次郎長軍団と行動を共にしていると聞くからな」
「確かにあの女も私は信用しておらん。まあ、せいぜい持久戦で何とか切り抜けて欲しいものだ。あの女の所に間に合えば我々で狙える」
「そうだな・・・」
かよ子はラ・ヴォワザンと交戦を続ける。ラ・ヴォワザンは別の瓶を出した。
「これで貴様らはただの人間になるのだよ!」
瓶の蓋が開けられる。煙が舞い上がった。
「大五郎!あの毒から法力で皆を守るのだ!椎名歌巌、富田太郎、お主らの能力であの毒を水で浄化せよ!」
「了解だブー!」
法印大五郎が錫杖で結界を張り、ブー太郎と椎名が水を放出して毒を薄め、浄化を試みた。
「・・・ん!?」
「関根、どうした!?」
「あの女が消えている!」
「何!?」
椎名とブー太郎が攻撃している場所とは反対の場所から毒の煙が立ち上がった。
「・・・あ!」
かよ子はうっかりその煙を吸ってしまう。ラ・ヴォワザンは近づいて来た。
「しゅ、瞬間移動・・・!?」
「これで杖は貰ったよ!あんたらも死にな!」
ラ・ヴォワザンは即死の毒を空中に舞う。ブー太郎が何とか水の石で毒を溶かした。
「ちい、山田かよ子、意識はあるか!?」
石松が促す。
「う、うん・・・」
「あの女から離れる!羽根を飛ばすのだ!」
「解った!」
今かよ子が持つ武装の能力はラ・ヴォワザンの毒で無力化されてしまっている。これでは人数は有利でもかよ子や杖を守りきれるか微妙なところだった。
「あの女・・・!」
大野のポケットから雷の石が光り出す。電撃がラ・ヴォワザンを襲撃した。
「へん、そんな攻撃、あっけなく防御できるのよ」
ラ・ヴォワザンは左手に黒い穴を作った。その手の穴に電撃が吸い込まれていく。
「駄目か!」
かよ子は怠けている場合ではないと思った。杖を出す。
「大野君、その電撃、利用させて!」
「え?お、おう!」
かよ子は雷に杖を向けて電撃を操る能力を得た。更に強力な電撃を放つ。
「いけえ!」
その電撃がラ・ヴォワザンを狙う。
(お願い、上手く行って!!)
「ふん、威力を増やしたって無駄よ」
ラ・ヴォワザンはそれでも余裕の表情をしていた・・・、が、痺れを感じていた。
「う!?」
「これだけの電撃を吸い込めるかな!?できるんならもっとやるよ!」
かよ子は敢えて挑発する。ラ・ヴォワザンは黒い穴を消した。
「くう!なら、これでどうかな?」
ラ・ヴォワザンは泥をかよ子達に投げつけた。かよ子と大野は電撃で対抗するも、泥に吸収されてしまう。だが、のり子の人形、キャロラインの念力にブー太郎の水の石で粉砕させた。
「ブー太郎、のりちゃん、ありがとう!」
かよ子は二人に例をする。
(こうなったら・・・!)
かよ子はリュックから花火を出した。
「おおっと!」
ラ・ヴォワザンは慌ててかよ子から離れる。
「逃げても無駄だよ!」
かよ子は花火に杖を向け、火薬を操る能力を得る。爆弾を後退したラ・ヴォワザンに向けて投げつけた。ラ・ヴォワザンが爆発に巻き込まれる。
「やった・・・?」
ラ・ヴォワザンはその場にはいなかった。しかし、そこにあったのは木でできた人形だった。
「人形・・・?もしかして、今の偽物!?」
かよ子は自分が今倒したのは本物の魔女でないと気づいた。その時、のり子の人形が喚起する。
「皆、ラ・ヴォワザンは自分の分身を作り出して襲うつもりよ!」
「何!?この!」
関根は刀を振るう。その剣圧で周囲の地面を粉砕させた。
「空中か!」
関根は見上げる。ラ・ヴォワザンが複数人、上空から襲う。
「く!」
次郎長も刀を振るう。全員を瞬間移動させた。
「皆の者!どれか本物か偽物か分からん。別れて戦うぞ!」
「うん!」
皆はそれぞれのラ・ヴォワザンと個別に戦闘を行う。
「奴は合計11体おる・・・。1体が本物で残りは身代わりか!」
かよ子は石松と組んで戦う。
こちら杯の奪還に向かうゆりと四人の女子高生達の部隊。鯉沢や政美などの探知より敵との交戦の準備を万全にしていた。皆は列車から降りて敵の来る方向を確認する。
「準備はいいかしら?」
「おうよ、んじゃ、うちから行くけえ!」
鯉沢は銃から光線を放つ。地面が砕かれる。光江の御守も光る。
「動けなくしたわ!」
「私が行くわ」
ゆりが突進する。ゆりはアンクレットで体内に毒を精製させた。標的は女だった。ゆりは拳を女に突刺そうとしたが、寸前のところで避けられた。
「おおっと、危ないわね・・・」
「貴女、誰なのよ?」
ゆりは問答した。
「私・・・?ボリシェヴィキを支持するエカチェリーナっていうのよ」
女は自己紹介した。
「レーニンから聞いたわ。貴女達が剣を奪った集団ね」
「だとしたら?」
「ここで纏めて消すわよ」
エカチェリーナは今度は自らゆりに突進する。ゆりは武装の能力で防ぐと共に彼女を殴る準備をする。だが、先程の彼女の行動が頭によぎった。
(そういえばさっき光江ちゃんの御守で動けなかったはず・・・。どうして私の攻撃をかわせたの?)
ゆりは光江に向かって叫ぶ。
「光江ちゃん、御守で動けなくしたわよね?」
「はい!」
「エカチェリーナは動けてるわよ!」
「え、ええ!?」
「私はキリスト教を支持するけど、夫は神を信じないのでね、その意志も一部受け継いでるのよ!私に神の攻撃をしたって無駄ね」
(な・・・!!だから光江ちゃんの御守が完全に効かなかったのね!)
光江の御守は神戸にある神社の能力が入っていた。神の能力を利用して彼女は戦っているのだった。
「命が惜しかったら剣を渡しなさい!どっちにしても抹殺するけどね」
かよ子達藤木救出班はラ・ヴォワザンとその分身と戦い続けていた。
「ま、まる子〜!!」
友蔵はまる子の元へ急ぐ。まる子は小政と共に一人のラ・ヴォワザンと相対していた。
「まる子、大丈夫か?」
「おじいちゃん!」
「何、余所見してるのかしら!」
ラ・ヴォワザンが毒入りの瓶の蓋を開ける。
「危ない!」
友蔵がまる子を抱えた。
「お、おじいちゃん・・・」
「ええい!」
小政が居合斬りで、ラ・ヴォワザンを両断する。
「やったか!?」
しかし、その魔女は分身だった。人形が真っ二つにされていた。まる子と友蔵は毒を浴びる。
「う、うう・・・」
「二人共、しっかりせい!」
小政が駆け寄った。
「この毒を何とかせねば・・・!!」
かよ子は石松と共にラ・ヴォワザンを狙う。
「山田かよ子!某の刀を写しとれ!」
「うん!」
かよ子は石松の刀に杖を向け、剣に変化させた。
「いけえ!」
「ふん、まずはその能力を消してやるわよ!」
ラ・ヴォワザンは毒の瓶を出す。
「させるか!」
石松が刀を振るう。剣圧で瓶を持った彼女の腕が斬られた。石松はその瓶を腕ごと手にする。
「形成逆転だ!」
石松は瓶の蓋を開けてラ・ヴォワザンに浴びせた。
「それで終わりと思ったら間違いだよ」
ラ・ヴォワザンはもう片方の手で黒い穴を出し、毒を吸収しようとした。
「させないよ!」
かよ子は剣を振るう。
(これで決まれば・・・!)
「おおっと、近づいたらあんたごと吸うわよ!」
かよ子は吸い込まれそうになる。
「くう・・・!!」
「や、山田かよ子ー!!」
後書き
次回は・・・
「本物はどれだ」
ラ・ヴォワザンの穴に吸収されそうになるかよ子。この危機を回避する事はできるのか。そして今戦っているラ・ヴォワザンは本物か、それとも傀儡か。そして誰と戦っているラ・ヴォワザンが本物か。藤木救出班は苦戦する・・・!!
217 本物はどれだ
前書き
《前回》
杯の奪還に向かうゆり達はエカチェリーナという女と対峙する。一方、かよ子達の元には黒魔術を操る女、ラ・ヴォワザンと交戦する。ラ・ヴォワザンは自身の黒魔術で自分の偽物を10体出して攪乱させ、かよ子達を翻弄する。かよ子達は別れて戦うことになる。そしてかよ子と石松が戦っているラ・ヴォワザンはかよ子を手から出現させた黒い穴で杖ごと吸い込もうとする!!
かよ子はラ・ヴォワザンが出した黒い穴に吸い込まれそうになる。
「山田かよ子ー!!」
石松はかよ子を掴もうとするが間に合わない。
「くう!」
石松は刀を振って風を起こす。風の刃でラ・ヴォワザンが穴を出した腕を斬り落とした。
「な!」
黒い穴が消えた。
「わ、私の腕を・・・!!」
ラ・ヴォワザンは怒り狂う。
「死ねえ!」
彼女の斬られた腕が勝手に動き出した。石松とかよ子に飛びかかる。
「おわっ!」
かよ子は剣で、石松は刀で腕を両断した。
「無駄だね、どんなに斬られてもあんたらを襲い続けるのさ!」
切り刻まれた腕がまたかよ子と石松に近づいてくる。
(ど、どうすればいいの・・・!?)
「なら、お前の毒はどうだ!?」
「何!?」
石松は先程彼女の腕を斬り落とした時、奪った毒を彼女に浴びせていた。
「平気なら話は別だがな!」
その時、ラ・ヴォワザンの体が溶け始めた。
「うおお!!」
ラ・ヴォワザンは消滅した。しかし、そこにぐちゃぐちゃになったバナナのような物があった。
「人形か!山田かよ子、他の者の援護に行くぞ!」
「うん!」
かよ子と石松は他の皆の元へ行く。
ブー太郎と増川の千右衛門がまた別のラ・ヴォワザンと相対する。
「お前の毒はこの水で消してやるブー!」
「ふ、同じ手が何度も通じると思っているのかしらね?」
ラ・ヴォワザンは両手を上に掲げた。
「サタン、召喚!」
黒い人間のようなそうでないような人物が現れた。
「な、なんだあれはブー!?」
「ま、禍々しい奴だ!」
「このサタンに呑み込まれな、フフフ・・・」
大野は大政や綱五郎と共にラ・ヴォワザンと戦う。大政が巨大な槍を発動させ、投げる。
「これを喰らうがいい!」
大政の槍がラ・ヴォワザンの足元の地面に突き刺さる。
「ふっ、そんな物、吸い込んでくれる!」
その時、槍が巨大化した。ラ・ヴォワザンは手から黒い穴を出して槍を吸込もうとする。しかし、その槍はあまりにも重量がある為に吸い込みきれない。
「な、何て重さだ!」
「大野けんいち、攻撃の時だ!」
「おうよ!」
大野と綱五郎がラ・ヴォワザンに近づく。大野が草の石で草の手裏剣を大量に出してラ・ヴォワザンを襲う。綱五郎は拳銃を発砲して爆発を起こした。
「お、おおーっ!!」
「やったか!?」
爆発の煙が消える。だがそこには砕かれた木の人形があった。
「偽物か!」
「他の者の援護だ!」
大野達は他の者の戦闘場所へ移る。
椎名と法印大五郎が共闘する。ラ・ヴォワザンは手を上に挙げた。そして禍々しい人間を襲う。
「サタンよ、こいつらを地獄送りにするがよい!」
サタンが椎名と大五郎を襲撃する。
「なんだ、こいつは・・・!?」
椎名と大五郎がサタンを見ただけで苦しんだ。
「負けるな、椎名歌巌!」
大五郎は自身の法力を発動した。結界を張ってサタンを弾いた。そして自身の杖を地面に突き刺す。サタンの周りに輪が形成される。サタンが動かなくなった。
「そんなもの、毒で消させて貰うよ!」
ラ・ヴォワザンが毒の瓶を出す。
「おおっと、させるか!」
椎名が玉を使用する。水で毒の瓶を流した。
「まだ、毒はこれだけじゃないよ!」
ラ・ヴォワザンはまた別の毒の瓶を出し、ふたを開けた。それを椎名が出した水で煙を溶かす。
「バカね、その毒を溶かすと、アンタの所に水が跳ね返ってお前は死ぬ運命にあるのだ!」
「何!?それならこれはどうだ!」
椎名は自分で出した水を干上がらせた。
「何!?」
水諸共毒が消えた。椎名は再び水を発射する。ラ・ヴォワザンのどてっ腹に穴を開けた。
「おおお!!」
ラ・ヴォワザンは砕かれた木の人形となった。これも偽物のラ・ヴォワザンだったのだ。そして大五郎の法力で封じていたサタンも姿を消した。
「偽物か!」
「本物はどれなんだ!?」
その時、大五郎は二人の人間が倒れているのを見る。小政が二人を起こそうとする。
「椎名歌巌、お主は他の皆の加勢に行け!私は小政の元へ行く!」
「おう!」
大五郎は小政の元へ行く。
「大丈夫か、小政!?」
「大五郎!さくらももことその祖父殿が毒を吸ってしまった!」
「なぬ!?私の法力で何とかする!」
大五郎はまる子と友蔵の胸にに札を置く。
「消毒!」
二人は毒の苦しみから消えた。
「何とか消えたか・・・」
「わ、儂はどうなってたんじゃ!?」
「ラ・ヴォワザンの毒を浴びてたのだ。もう治したよ」
大五郎が説明した。
「よ、良かった、まる子~!」
「おじいちゃ~ん、まだ、死なないで!」
「感動の涙はまだ早い!他の皆の援護に行くぞ!ジジイは危ないから下がっとれ!」
「い、嫌じゃ、今まる子が毒にやられたというのに~!」
友蔵は喚いた。
「小政、相手にしとる暇はない。さくらももこ、行くぞ!」
「おう!」
「ええ!?」
小政、大五郎は加勢に向かう。まる子は半分嫌々だった。そして友蔵は泣きながら追いかける。
「ま、待っとくれ~、まる子が行くなら儂も!」
かよ子達と石松はブー太郎と千右衛門の援護に向かった。
「ブー太郎!」
「千右衛門!」
かよ子は悍しい物を見た。ブー太郎も千右衛門も攻撃も防御もできず、何とか立てている状態だった。
「な、何、あれ・・・!?」
「来たね、杖の所有者・・・!!あんたもこのサタンにひれ伏すがいい・・・!!」
かよ子が怖じ気づく。だが、堪えようとした。再び石松の刀に杖を向け、剣に変化させた。ただ、今のかよ子は武装の能力はラ・ヴォワザンの毒で無効化されてしまっている状態である。
「ええい!」
かよ子はサタンの姿に怯え、目を瞑って闇雲に剣に変化した杖を振り回した。
「ふ、悪あがきを!」
ラ・ヴォワザンは無意味と思った。
「サタンよ、そいつのやる気をなくすのだ!」
サタンから謎の威圧感を感じる。
(駄目・・・。意識が持たない・・・!!周りが・・・、見えなく・・・、なる・・・)
かよ子の杖の変化が解除され、杖が手から離れ、倒れ込む。石松も、ブー太郎も、千右衛門も何もできずに倒れた。
「さあ、纏まって死にな!」
ラ・ヴォワザンは勝利を確信した。彼女はかよ子達に即死の毒を浴びせた。
「私が本物だったのだよ。だが、死んでしまっては気づくのが遅いね」
関根は吉良の仁吉と共にラ・ヴォワザンと戦う。ラ・ヴォワザンはサタンを召喚する。
「くう〜、厄介な奴だね!」
吉良の仁吉はサタンをねじ伏せようとする。だが、仁吉はサタンに跳ね返されてしまった。サタンが仁吉を殺そうとする。
「仁吉!くそっ!」
関根は刀を振るう。黒い三日月型の物体が現れ、サタンに直撃させる。サタンはその黒い三日月に吸収され、姿を消した。
「な、我がサタンが!」
「次はお前の番だ!」
関根はもう一度、刀を振る。黒い三日月が再び現れ、ラ・ヴォワザンを狙った。
「さ、させるか!」
ラ・ヴォワザンは毒の瓶を出し、三日月を無力化した。しかし、関根はそれで攻撃手段がなくなった訳ではない。刀から無数の糸を出してラ・ヴォワザンを拘束した。
「搾り取らせて貰うよ!」
糸がラ・ヴォワザンの魂を吸収する。ラ・ヴォワザンはそのまま意識を失い、消滅した。関根が糸を消してラ・ヴォワザンを確認する。そこには木の人形があった。
「偽物か!」
「関根金雄!他の者の援護だ!」
「おうよ!」
関根と仁吉は他の場所へと援護に向かう。
杖の所有者は死ぬ。
「さあ、貰おうか」
ラ・ヴォワザンが杖を取ろうとしたその時、横から何かが襲う。
「させるか!」
巨大な木の枝が彼女を跳ね飛ばした。大野が草の石の能力で防いだのだった。
「まだ勝負は終わっちゃいねえ!」
「ふ、遅いわよ。杖の所有者はもう死んだわ。意味がないね!」
「遅かったのはそっちの方みたいだったね」
「え?」
ラ・ヴォワザンは振り向いた。杖の所有者は五体満足で立ち上がっていたのだった。
後書き
次回は・・・
「能力の復活」
黒魔術の毒が解除され、異能の能力が再び使用できるようになったかよ子達。傀儡をすべて倒し、残るは本物一名のラ・ヴォワザンと対峙する事になったその時、かよ子が遂にラ・ヴォワザンに留めを刺そうとするのだが・・・!?
218 能力の復活
前書き
《前回》
ラ・ヴォワザンの黒魔術によって生み出された偽物のラ・ヴォワザンと戦うかよ子達。次々と撃破していくのだったが、本物のラ・ヴォワザンと交戦する事になったその時、かよ子、石松、ブー太郎、千右衛門がラ・ヴォワザンが召喚したサタンによって意識が失われてしまい、その上即死の毒を受けてしまう。勝利を確信したラ・ヴォワザンは杖を取ろうとするのだが、大野が草の石を使って妨害。そして毒を受けた筈のかよ子は立ち上がっていた!!
かよ子は先程即死の毒を受けたにも関わらず立ち上がれていた。
「な、まさか・・・!!」
「立ち上がれたのはたまたまだけど、あの能力を使えなくする毒は時間制限があったみたいだね。私の武装の能力が使えるようになってたよ」
(しまった、時間切れを起こしていたか・・・!)
ラ・ヴォワザンは失態をやったと焦った。
「そして杖の所有者達が起きれたのは我が法力の能力だ!」
法印大五郎が数珠を出していた。彼の法力がラ・ヴォワザンの毒からかよ子達を立ち上がらせたのであった。
「・・・な!」
のり子は辻の勝五郎やお蝶と共にラ・ヴォワザンと対抗する。ラ・ヴォワザンが毒でのり子たちを苦しめようとするも、のり子念力や勝五郎の刀の剣圧から出された地面の粉砕による迎撃で空回りにされる。さらにはお蝶がラ・ヴォワザンの懐に飛び込む。
「お前、私に飛び込んで自滅する気か?」
「だったらどうする?」
「死んでもらうよ!」
「奥方!」
しかし、お蝶は飛び込むことに恐怖を感じる事はなかった。
「大丈夫だよ。アタシの能力を見せてやるさ!」
お蝶はラ・ヴォワザンに小刀を突き刺す。彼女が懐に隠し持っていた毒の瓶が勝手に動き、開いた。
「あ、ああ」
ラ・ヴォワザンは自分の毒で苦しむ。
「今だよ!そこのお嬢!」
「う、うん!」
のり子はキャロラインと融合する。キャロラインが実物の人形となり、更に強大な念力と音波を発射した。ラ・ヴォワザンの身体が崩れて行く。そして崩れた体は木の人形となり、粉々になった。
「偽物だね!」
「お蝶、勝五郎、鳥橋のり子!」
「親分!」
「次郎長!」
「今、此方もラ・ヴォワザンを倒したが人形だった!」
「こっちも人形だったよ」
お蝶が答えた。
「他の偽物も皆倒したと聞くが、本物は・・・。あれか!」
次郎長はかよ子がラ・ヴォワザンの前で立ち上がる所を見た。
「よし、援護だ!」
「おう!」
次郎長達はかよ子の援護に向かう。
かよ子達が浴びた異能の能力を無力化する毒には時間制限があり、再び能力が使用できる状態となっていた。
「おのれ・・・!!だが、一回時間が過ぎたからっていい気になるんじゃないわよ!もう一回やればいいんだからね!」
ラ・ヴォワザンはまた新しい毒の瓶を出した。
「おおっと!」
大野が草の石を出して巨木を出した。ラ・ヴォワザンの持っている毒の瓶が枝で叩かれた上に予備の瓶もまた別で出した蔓によって全て奪われた。
「二度と同じ手食うかよ!」
「そうじゃ、そうじゃ、まる子達を殺そうとしおって!許さんぞ!」
友蔵も吠える(戦えないが)。
「ええい!」
まる子が炎の石の能力で火炎放射した。かよ子もまる子の炎に杖を向け、炎を強化させた。
「終わりだよ、ラ・ヴォワザン!」
「な・・・!!」
追い詰めたかよ子達は炎撃で止めを狙う。だが、その時、ラ・ヴォワザンへの炎が直前で弾かれた。
「・・・え?」
「おい、別の奴が来てるぜ!」
「ええ!?」
かよ子達は見上げた。
「ラ・ヴォワザン。よくここまで堪えた」
二人の人物が現れていた。
「あれは・・・!!」
かよ子は片方は見覚えがあった。嘗て清水の地で長山を連れ去ろうとした赤軍の男だった。もう片方は・・・。
「あやつはスターリン!!」
次郎長はその男を知っているようだった。
「貴様は下がっていろ、ラ・ヴォワザン。杖の所有者は私がやる」
「山田かよ子、あやつはあっちの世界でもかなりの強者で主戦力であるぞ!全力を出すのだ!」
次郎長が警告した。
「うん!私だって負けられないよ。それにあの人とも会った事があるんだ!」
かよ子はもう一人の男にも警戒する。
「ああ、久しぶりだな」
赤軍の一人・丸岡修。杖や杯の奪取には失敗しているもの、広島で剣を奪ったり、この世界でも護符の所有者を殆ど追い詰めてもいる危険な男である。
「絶対に追い払う!」
エカチェリーナがゆりを殺そうとする。
「まずそこの貴女から真っ二つね!」
ゆりは爪に毒を作り出し、彼女の攻撃を止めようとする。
「無駄よ、私の攻撃にかなうわけないわ」
ゆりは武装の能力で受け止めようとする。だが、素早い物体がエカチェリーナの首を撥ねようとしてエカチェリーナは避けようとした。だが、首を掠られた。政美が加速能力を使い、左手を剣に変化させて高速で接近していたのだった。
「お前・・・!」
「皆、この女に攻撃する隙与えちゃ駄目よ!」
「あいよ!」
鯉沢が光線を放つ。そしてマリエルが本からライオンとユニコーンを出してエカチェリーナに突進させた。
「きゃあっ!」
エカチェリーナは鯉沢とマリエルの攻撃を回避するが今度はゆりの毒の爪が襲う。だが、ゆりの攻撃はエカチェリーナの黒いドレスの脇腹部分を引き裂いただけで仕留めそこねた。
「皆纏めて消すわよ!」
マリエルはエカチェリーナの行動を先読みする。
「気をつけて!この女、念力で私達の身体を真っ二つにする気よ!」
「させるかってんだよ!」
政美が怪力能力を使用してエカチェリーナを持ち上げて頭を強打させる。
「う、ぐ・・・」
エカチェリーナは頭を打った痛みで立ち上がれなかった。
「終わりよ!」
ゆりがエカチェリーナに拳を突き刺そうとする。
かよ子は赤軍の男とスターリンという男に恐怖心を感じていた。それでも負ける訳にはいかないと思う。
「死ねえ、貴様ら!」
スターリンは指先から巨大な鉄の槍を大量に出してかよ子達を狙った。かよ子は武装の能力を発動させる。かよ子は鉄の槍に杖を向ける。そして杖は鋼鉄を操れるようになり、巨大な鉄の盾を出して皆を守る。
「俺も迎撃するぜ!」
大政も槍を出してスターリンを狙う。槍が豪快に爆発した。
「やったか!?」
「ふ・・・、俺もいる事を忘れるなよ」
「・・・な!」
大政の槍攻撃はあまり意味がなく、かよ子の鉄の盾も消えてしまっていた。丸岡が矛盾術で防御し、盾を消したのだった。
「お前も終わりだよ」
「ではくたばってもらおうか!」
スターリンは巨大な鉄の斧を出した。かよ子の杖を腕ごと斬り落として奪おうとする。
「さ、させないわ!」
のり子が人形と合体した状態でスターリンの斧を止めようとする。
「無駄だ!」
のり子の人形の念力も丸岡の矛盾術で突破されてしまった。
「こうなったら・・・!」
かよ子は自分の羽根を出し、周りに結界を張る。結界がスターリンの斧を防ぐ。
「これなら大丈夫だよ・・・!」
「馬鹿が!そんなものが通じるか!」
かよ子の結界があっけなく破られた。
「ど、どうして!?」
「我が鉄にそんな結界など紙切れに過ぎぬわ!」
そして斧はかよ子の腕を狙う。
「も。もう駄目・・・!?」
その時、関根が刀を振って風を起こし、斧の軌道を逸らせた。綱五郎や仙右衛門、石松も加勢した。
「このサルども、よくも!」
スターリンは石松達を睨み、殺害を試みた。斧が石松達を襲う。
「やらせるか!」
大五郎は法力でスターリンを封じようとした。しかし、何も効果がなかった。
「愚か者!無神論者の私にそんな宗教の小細工など聞くか!」
かよ子はそこではっとした。
「だから、私の羽根の結界が効かなかったんだね!」
かよ子は先程の羽根の結界で防御できなかった理由が分かった。羽根の結界は仏教の力が入っている。スターリンには通用しないのだ。だが、それ以外でどうやって彼らを守るか。
「え、ええい!」
かよ子はもう一度杖から巨大な鉄の楯を出してスターリンの斧を防ごうとした。
「同じ手が通じるか!」
丸岡の矛盾術で再び楯を消されてしまった。
「ガキ、お前は俺達に杖を渡してもらおうか」
丸岡はかよ子に認識術を浴びせた。かよ子は催眠のようなものをかけられる。
「う・・・」
だが、かよ子は武装の能力を持っているためにその術は弾かれる。機械があればその心配もなかったがそれを剣奪還班の人間に無効化された今、機械は意味を失くしている。
「なら、こいつはどうだ!?」
丸岡は別の手を使った。しかし、何も起きない。その間に次郎長や大政、小政、ブー太郎に大野が斧を止めようと試みる。
「またその術は意味なかったみたいだね?」
かよ子は挑発した。
「そうかな?認識術をかけたのはお前じゃねえよ」
「え?」
その時、後ろから腕を掴まれた。
「だ、誰!?」
杖が無理やり手から放される。いつの間にかまた別の男がいた。
「やったな、西川!」
かよ子の杖が奪われた。
「私の杖が!」
後書き
次回は・・・
「鋼鉄の男、スターリン」
赤軍の丸岡の認識術、そして西川の奇襲で杖を奪われてしまったかよ子。そしてスターリンが出したギロチンがかよ子達の首を斬ろうとする。そんな彼女達に救援するべく、イマヌエルがその場へと援護する。そしてさらなる援軍としてある人物達も遠隔でかよ子達の支援を行う事に・・・!!
219 鋼鉄の男、スターリン
前書き
《前回》
ラ・ヴォワザンから即死の毒を喰らったかよ子は死亡したと思われた。しかし、能力無効化の毒が時間切れを起こしていた為、かよ子の武装の能力が復活していたのだった。死を免れたかよ子達は一斉に反撃するが、その時、別の敵が現れる。それは赤軍の丸岡修に異世界でもかなりの強敵とされているスターリンが加勢に来た。二人と対峙する事になるのだったが、実は更にもう一人来ており、かよ子は赤軍の西川純に杖を取られてしまった!!
本部の管制室。先代の杖の所有者は娘が交戦している様子を確認する。
「山田かよ子ちゃんの所にまた別の敵とさらに赤軍が一緒に来ていますわね」
「かよ子・・・」
まき子はまた心配になる。
「それにしても領土攻撃班はまだ誰も彼女達の所までは追い付けていないな」
「ここは粘るか、それとも・・・」
「何かまだあるの?」
「いえ、私達が下手に出向くのは危険過ぎますね」
イマヌエルが通信する。
「こちら本部のイマヌエル。東部を進行している領土攻撃班、杖の所有者の山田かよ子君が戦争主義の敵に赤軍とぶつかった。早急に彼女達の所へ急ぎ、支援を頼む!」
『了解!』
多くの領土攻撃班の返信が来た。そしてフローレンスはまた別の場所へと連絡する。
「こちらフローレンス。長山治君、聞こえますか?」
『はい!』
「藤木茂君を救出しに行っています貴方のお友達が赤軍に異世界の敵とぶつかっていますが、今どういう状況になっていますか確認をお願い致します」
『あ、はい!』
長山が応答し、少しして返答が来た。
『フローレンスさん、今山田達は赤軍に敵の世界の人間と戦っています!今山田が杖を取られた所です!』
「何ですって?!了解しました。貴方の眼鏡で遠隔で攻撃できますようにしてください!そして長山治君と一緒にいます皆様も遠隔で加勢しますのです!」
『あ、はい、分かりました!』
通信が切れた。
「フローレンス、杖が取られたのか!?」
イマヌエルが確認した。
「は、はい。長山治君がその様子を見ましたと・・・」
「フローレンス、君は昨日の杯の一件で疲れているだろ、私が行こう」
イマヌエルが姿を消した。
「緊急行動を再び起こしてしまいましたか・・・」
「フローレンス、かよ子の杖が取られたって!?」
「はい・・・」
「かよ子、大丈夫かしら・・・?」
まき子もまた娘がおっちょこちょいしてしまったのかと不安になった。
長山は神通力の眼鏡を使用する。
「長山君、かよちゃんの杖が取られたの!?」
長山と行動を共にするさりが驚いて聞いた。
「実はそうなんだ!」
「援護に行きたいけど、ここからじゃ遠すぎるわね」
「大丈夫だよ、この眼鏡で遠隔で攻撃できるってフローレンスが言ってたんだ」
長山は神通力の眼鏡の能力を行使する。長山達が立っている場所が空間移動したかのように変わった。杖の所有者が戦っている現場だった。
「あれは・・・!!」
長山は一人の男を覚えていた。自分をさらおうとしていた男だった。そして長山はこの男達の心理を読み取る。
「そうか、目的は杖を奪って戦争主義の世界の本部に持ち帰るつもりだ!それからここにいる人皆殺しにするつもりだよ!!」
「何だって!やるか!」
尾藤は加勢満々だった。
かよ子は赤軍の西川に杖を奪われた。しかし、取り返そうにも今何もできない状態にあった。
「私の杖を、返して!」
「返すか、バーカ!」
「スターリン、こいつらはもう殺していいぜ!」
「分かった」
スターリンはかよ子達を皆殺しにしようとする。幾つものギロチンがかよ子達の首を斬ろうとする。
「終わりだ!」
だが、ギロチンが途中で止まった。
「な、貴様らの能力は丸岡修の術で効かない筈だ!」
「その術を効かなくさせたんだよ」
いつの間にかイマヌエルが現れた。
「貴様・・・、『敵の世界』の奴か!」
「いかにも。スターリンか、久しぶりだな」
「こいつ!西川、今のうちに逃げるぞ!」
「おう!」
その時、西川が急に倒れた。
「てめえ、やりやがったな!」
丸岡が問答する。
「生憎だが、私は何もしていない」
「じゃあ、今の誰が!」
『俺だよ!』
「ど、どこにいやがる!?」
丸岡は見回すも、声の主はいなかった。
『見えない所から援護させて貰うわよ!』
「この声は・・・!!」
その時、西川の手にあった杖が黒い影に弾かれた。
『かよちゃん、取り返したわよ!』
杉山の姉の声だった。
「あ、ありがとう!」
かよ子は急いで杖を取り返した。そしてスターリンに杖を向ける。
「馬鹿め、何度やっても同じだぞ!」
「させるかよ!」
大野が草の石の能力を行使し、巨大な花を出してスターリンを花粉で眠らせようとする。だが、丸岡の矛盾術で弾かれてしまった。ブー太郎も、まる子もそれぞれの石を使う。しかし、それでも丸岡の矛盾術が妨害した。
「あの人の術が厄介・・・!!」
「山田かよ子君、あの男は攻撃をすればできないようにする術だ。あえて攻撃を止めてみたらどうだ?」
イマヌエルが進言した。
「え?う、うん!」
かよ子はまる子が出した炎にもう一度杖を向け、炎を操る能力を得た。そして丸岡を狙う。しかし、かよ子は途中で炎を出すのを止めた。途端に止めた筈の炎が一気に丸岡を襲った。
「な、俺の矛盾術が破られただと!?」
丸岡は矛盾術を途中で止めた。
「今だ!」
次郎長は刀を振るって大地を爆破させる。
「この鋼鉄のスターリン様にそんなものが通じるか!」
スターリンは再び巨大な鋼鉄の壁を出した。
「同じ事を・・・」
イマヌエルがスターリンの行為を無効化させる。しかし、地面の爆発がイマヌエルを襲う。イマヌエルは咄嗟に回避した。
「スターリンの攻撃は全てお前に当たるように認識させた!奴らが攻撃すればお前が危なくなるぞ!」
「何!?」
イマヌエルは自身が窮地に陥る形になってしまった。
「イマヌエルさん・・・!!」
かよ子は火炎放射でスターリンを襲いたいと思ったが、これではイマヌエルに当たってしまうと思い、迂闊に攻撃できなかった。
「こっちが反撃だ!」
スターリンが巨大な鋼鉄の矛を出してかよ子を両断しようとする。
長山達はかよ子達の戦闘状態を確認する。
「まずい、このままだとイマヌエルがやられるだけだ!」
「くう、これじゃあ、俺もボール蹴れねえと!」
さりはまる子の姉に聞く。
「さきこちゃん、宝石で何かできない?」
「ええと・・・」
その時、さきこの琥珀が光り出す。トパーズも光り出した。
かよ子を襲う鋼鉄の矛が急に軌道が逸れた。
「な、何が起きた!?」
「え・・・?」
その時、通信機が鳴る。
『こちらさきらさきこ、私の宝石でかよちゃんに向けた大きい剣は私達の方へ狙いを変えたわよ!それからイマヌエルへの攻撃も私達が受ける。かよちゃん、やってみて!』
「う、うん!」
かよ子は火炎放射を行った。スターリンへの攻撃は丸岡の認識術によってイマヌエルが受ける。しかし、さきこの宝石の能力によってイマヌエルは襲ってこなかった。
「でも、さくらさきこ達は大丈夫なのか?」
石松は気になった。
『大丈夫よ!私達はその場にはいないから攻撃は来ないように設定したわ!』
「な・・・!!」
丸岡は認識術まで破られてしまい、動揺した。
『私達が攻撃させて貰うわ!』
さりの声が聞こえる。鋼鉄の矛が砕かれる。そして周りにあった木々が動き出し、スターリンを襲う。
「な・・・!!」
スターリンは鉄の壁を作り出した。しかし、大政の槍や次郎長達の刀、更には勝手に動いた木々が壁を大きく揺さぶり、更にはかよ子が杖で出した火炎放射によって壁が溶かされてしまう。
「終わりだよ・・・!」
鉄の壁が完全に溶かされた時、かよ子は更に炎の渦を出してスターリンの周りを取り囲んだ。
「お、終わって、たまるか・・・!!」
その時、ビー、ビー、とブザーのような音が聞こえた。
「え・・・、何!?」
かよ子は慌てて炎を消してしまった。
「ああ、エカチェリーナ・・・!!今、そっちに行くぞ!!」
ゆりはエカチェリーナに留めを刺そうとしていた。
「ああ、愛しき貴方・・・!!」
「は・・・!?」
ゆりは構わず爪でエカチェリーナを刺そうとする。しかし、急に弾かれた。
「ああっ!」
「貴方・・・!!」
[愛しきエカチェリーナよ・・・。今、助ける。そっちに行くぞ]
別の声が聞こえた。そしてエカチェリーナが光に包まれる。
「あの女が消える!?」
「逃げる気か!」
鯉沢が発砲した。しかし、効かずにエカチェリーナの姿が消えた。
「一体・・・、何だったの・・・?」
ブザーが鳴った途端、スターリンの姿が消えて行く。
「私は愛しき妻の元へ行く。貴様らも劣勢にある。撤退せよ!」
「は、はい!」
スターリンが急に瞬間移動したように姿を消した。丸岡も西川を連れて姿を消す。ラ・ヴォワザンも姿を消した。
「ど、どこに行くの!?」
かよ子は追いかけようとするが、取り逃がしてしまった。
「どうやらあの男は愛しき妻の所へ行ったみたいだね。護符の所有者達、支援ありがとう。私も本部へ戻るよ」
イマヌエルが消えて行った。
『了解。私達も自分の仕事に戻るわ』
さり達の声も消えた。
「あのスターリンって人、とても強かった・・・」
かよ子はスターリンについてかなりの強敵と感じていたのだった。だが、それでも羽根を出して次へ進む。
後書き
次回は・・・
「愛しき妻、エカチェリーナ」
スターリン達を相手に苦戦していたかよ子達はスターリンの急な撤退でその場を何とか乗り切り、次へと進む。スターリンは妻というエカチェリーナの元に会いに行った。かよ子達を襲ったスターリンとゆり達と交戦していたエカチェリーナ、二人はどのような関係なのか・・・!?
220 愛しき妻、エカチェリーナ
前書き
《前回》
赤軍・西川純の奇襲で杖を奪われたかよ子。だがイマヌエルの介入と護符の所有者やまる子の姉が遠隔攻撃できるように設定されたおかげですぐさま杖を取り返す事に成功した。そして赤軍とスターリンをあと一歩のところまで追い詰めたのだが、急にスターリンが離脱する。スターリンはゆり達と交戦するエカチェリーナが劣勢に立たされたと知り、離脱したのだった!!
かよ子はスターリン達との戦いで疲弊していた。
「またおっちょこちょいやっちゃったよ・・・」
かよ子はスターリンのブザーの音でふと彼を包んでいた炎を消してしまったのだった。
「あの時びっくりして火を消していなかったらスターリンを倒せたのに・・・」
「山田かよ子、だが、とにかく奴は撤退した。次へ向かおう」
次郎長は慰める。
「うん・・・!!」
「でもあいつ、どうして逃げたんだブー?そんな腰抜けなのかブー?」
「確かに逃げる時おかしかったよな」
大野とブー太郎はスターリンの最後の行動が気になっていた。
「奴は『愛しき妻の所に行く』と言っておった。おそらく奴は彼の奥方の元へ赴いたのであろうな」
石松が解説した。
「そんなに自分の奥が気に何なら一緒についてやったほうがいいのに、バカだね」
「拙者とお蝶はいつも一緒だからな」
「いよっ、仲良し!」
友蔵とまる子はからかった。
「全く、こやつらは・・・」
一方、かよ子は体が疲れて横になりたくなってしまっていた。
(ダメだ、さっきの戦いで眠くなっちゃった・・・)
「山田かよ子、少し休め」
「で、でも、先に進まないと・・・。今日はあんまり進んでないし・・・」
「無理をするな。焦ると余計に己を滅ぼすことになる」
「うん・・・」
石松に言われてかよ子は休む事にした。
スターリンは自分の屋敷に戻っていた。
「緊急で離脱させる術を掛ける事ができてよかった・・・」
その場にエカチェリーナが横たわっていた。
「ああ、わが愛しきエカチェリーナよ、無事であったか?」
しかしエカチェリーナは答えない。頭から出血の様子があった。
「な・・・!!すまなかった、一人にさせてしまって」
スターリンは妻に泣きながら謝り、手当てを始めるのであった。
ゆり達は先程戦った女について気になっていた。
「勝手に消えた・・・」
「もしかしてpinchiになったら自動で逃げられるような能力持ってたのかしら?」
「そうかもしれないわね・・・」
「あの、ゆりさん・・・、役に立てへんですみません・・・」
光江がゆりに謝った。
「ああ、相手が悪かったから仕方ないわよ。先に行くわよ」
ゆり達は列車へ戻り、杯を取り返しに向かう。
長山は眼鏡の能力を解除させ、元の場所へ景色を戻した。
「それにしてもあの人に赤軍・・・。かよちゃん達も危ないわね・・・」
だが、さりも本部守備の仕事であっても自分の護符が取られる可能性がある事は意識していた。現に赤軍の丸岡修という人間やアンヌ王妃が攻めてきた時、テレーズの助力がなければ確実に護符を奪われ、自身も殺されていたであろう。そしてあの夢が思い出される。
(あの夢・・・、確かかよちゃんの友達・・・。あの男とどういう関係・・・?)
さりは気になり続ける。
「羽柴さりさん、如何なされましたか?」
テレーズが聞いた。
「あ、実は夜中に夢を見てね・・・」
「夢ですか?」
「ええ、夢の中に一人の男が出て来て、『安全地帯にいつまでもいられると思うな』って言って来たの。私は『顔を出せ』って言ってきたらその顔が・・・」
「顔?」
「はい、その顔が、杖の持ち主の子の友達にそっくりで・・・」
「もしかしてそれって杉山君かい?」
長山が確認する。
「そう、そう・・・!!」
「まさか、杉山君は敵の方に寝返ったのか・・・?」
長山は眼鏡を通して杉山の近況を探る。
(杉山君・・・)
しかし、杉山の姿が見えない。何かが妨害しているのか。
レーニンは通信を受ける。
『こちら丸岡修。杖の奪取は失敗した!態勢を立て直す!』
「失敗だと?スターリンも一緒ではなかったか?」
「それがスターリンは途中で妻の所に行くと言ってその場を去りました」
『全く、妻の事となるとどうしようもない輩だな・・・』
レーニンは呆れた。そして杯の所有者を捕えているある屋敷へと向かう。
エカチェリーナは起き上がれるようになった。
「私は・・・」
「ああ、エカチェリーナよ。お前は頭に怪我をしていたのだ」
「そうだったのね・・・。それにしても恐ろしい女性達だったわ」
「女どもと戦ったのか?」
「ええ、剣を奪い去ったって者達とね。とても強かったわ・・・」
「そうか、今度はそいつらを倒しに行かないとな・・・」
スターリンはエカチェリーナの為に何でもしなければと思う気持ちが強まった。
本部にイマヌエルが戻って来た。
「只今帰って来た」
「お帰りなさいませ」
「何とか杖は守り抜けた。だが、山田かよ子君は戦いで疲れ切ってしまったよ」
「そうですか・・・。現れた敵は確かスターリンといいます人物でしたわね?」
「ああ、そうだよ」
「かなり厄介な敵に会いましたわね。切り抜けられましたのが本当に奇跡ですわね」
「ああ、彼は途中で妻が気になったらしく、引き上げて行ったよ」
「『妻が気になった』ってどういう事?」
まき子が質問した。
「あのスターリンと言います男は、生前、最初に妻でありますエカチェリーナ・スワニーゼを溺愛していましたのです。ですが、エカチェリーナは早死にしまして、2番目に結婚しましたナジェーダ・アリルーエワとの仲は険悪でした。それだけスターリンとエカチェリーナは馬が合いましたのでしょう」
「そうだったのね・・・」
「エカチェリーナは戦争主義の世界の人間となりました反面、ナジェーダの方は私達の世界の人間として受け入れています」
「そうなのね・・・」
こちら雷の山。すみ子の元に自分達と同い年の小学生の四人組に一人の平安時代の貴族のような人物と合流していた。羽井玲衣子に鶴井ひろみ、星川辰夫、山元たかし。その四人組は本部守備を担う者達で福岡の小学校に通う同級生同士だった。そして同行している貴族のような人物は道真といい、嘗て清涼殿の落雷の事件など、怨霊として有名な人物であった。
「おうい、来たたい!」
「お前らが本部守備班か?」
「うん、そうなんよ」
「よし、ここが『雷の山』だ。雷の力が周囲にあってこの世界の電気の源にもなっているんだ」
川村が説明した。
「そうか。よし、死守するたい!」
「うん!」
だが、すみ子など見物の能力を持つ者は胸騒ぎが収まらなかった。
「気をつけて・・・!別の敵が来てるわ・・・!!」
「何!?」
その通り、敵は現れた。
「ふ、雷の山を返して貰おうか!」
「何だ、テメエは!?」
「我が名はトロツキー。ボリシェヴィキのサイキョーの男の一人だ!」
「皆の者、戦闘態勢だ!」
ジャンヌが一声呼びかけた。
「この私を倒せるものならやってみるが良い!」
雷の山で二度目の激戦が始まる。
後書き
次回は・・・
「ボリシェヴィキの使徒、トロツキー」
雷の山を襲撃しに来たトロツキーと交戦するすみ子達。トロツキーの攻撃を何とか銃で防御したすみ子だったが、トロツキーが変な術を福岡の小学生達やすみ子に掛ける。それですみ子達が急にトロツキーにしたがってしまい・・・!?
221 ボリシェヴィキの使徒、トロツキー
前書き
《前回》
杖を奪われる危機を乗り越え、スターリンやラ・ヴォワザン、そして赤軍の西川と丸岡を追い詰めるも取り逃がしてしまったかよ子は疲弊し、休息を取る。一方、雷の山で本部守備班の到着を待つ領土攻撃班を担うすみ子達は福岡の四人の小学生、羽井玲衣子、鶴井ひろみ、 星川辰夫、そして山元たかしの四人と合流する。だがその場には戦争主義の世界の人間・トロツキーもその場に現れたのだった!!
すみ子達はトロツキーという男と相対する。
「さあ、サッサと消えるがよい!」
トロツキーは指を鳴らした。
「させないわ・・・!!」
すみ子は銃で迎撃した。
「ちっ、一撃必然の技が!」
トロツキーは悔しがった。だが、それでもトロツキーはまた攻撃する。
「いともたやすく殺害できると思わない事です!」
エレーヌが両腕をトロツキーに向けた。トロツキーは硬直し、その場で動けなくなった。
「この女・・・」
「ボリシェビキの人間でしたわね。ですが、暴力主義など古臭い考え方なのです!」
「だから何だ!?」
「我々が貴方の腐った考え方を変えさせて頂く・・・。皆の者、かかるのです!」
「はい!」
福岡の小学生達も戦闘態勢に入る。星川は乾電池のような物を出してトロツキーに向けた。その電池から放電がされてトロツキーを電撃で襲う。
「ぐあああ!」
羽井も持っているペンで大きい穴を描き、トロツキーを吸い込ませようとした。
「そ、そんな手を・・・」
トロツキーは急に喋り出す。
「私は、貴様らの味方になり、貴様らも私に従う。私と共にボリシェビキで新たな世界を築こうではないか?」
「はあ、何言ってんだ、テメエ!?」
山口は矢をトロツキーに向ける。しかし、その時、山元や玲衣子がその場に立った。
「ハイ、私達ハ貴方ト共に、コノ世界ヲ変エル事ニ協力サセテ頂キマス!」
「おい、羽井、山元、どげんしたんだよ!?」
そしてすみ子もトロツキーに従うようになる。
「私モトロツキー様ニ忠誠ヲ誓イマス!」
「すみ子、何言ってんだ!?目を覚ませ!」
山口がすみ子に叫ぶ。
「山口、どうやら皆はトロツキーの催眠にかかったようだ」
ジャンヌが解説した。
「え、じゃあ、なんで俺や川村やヤス太郎は平気なんだ!?」
「それは貴方達は武装の能力を持っているからだよ。君らの武装の能力で皆の洗脳を解くんだ」
「おう!川村、ヤス太郎、やるぞ!」
「おう!」
「OKやんす!」
「俺達もやるぜ!」
鶴井と星川も武装の能力を所持している為かトロツキーの催眠の影響を受けていなかった。皆が武装の能力を発動させる。
「あれ・・・?私は一体・・・?」
すみ子は我に帰った。他の洗脳された小学生二名も我に返る。
「よし、今です!トロツキーに反撃を!」
エレーヌが一声掛ける。
「よっしゃ!」
川村がバズーカでトロツキーに砲撃する。ヤス太郎や山口、すみ子、そして福岡の四人組の小学生達もトロツキーを集中攻撃していく。
かよ子は休息していた。スターリンとの戦いで大いに体力的にも精神的にも気力が大いに削がれてしまったからである。その時、通信が鳴った。
『こちら杖の元所有者の山田まき子です。藤木君の救出班の皆様、大丈夫ですか?』
「お、お母さん・・・!?」
かよ子は母からの連絡に少し驚いた。
『かよ子、イマヌエルから聞いたけど、だいぶ疲れてるみたいね』
「うん、皆の迷惑になってるんじゃないかって心配だよ・・・」
『焦る気持ちも分かるけど、あまり無理しちゃだめよ』
「はい・・・」
かよ子は母のいう事には従うしかないと思った。
「なかなか思いやりのある母上ではないか」
大政がかよ子の母をそう評価した。
「う、うん・・・」
『そうだ、イマヌエルが休憩の為に皆に水を支給するって言ったわ。待ってて』
するとかよ子達の元に瓶入りのミネラルウォーターが一人1瓶ずつ現れた。
「あ、ありがとう。お母さん・・・」
『ゆっくり休んで、動けるようになったらまた動くのよ』
通信は終了した。
「この水、凄い美味いブー」
「ああ、天然水がこんなに美味とは改めて思い知らされる」
藤木救出班は天然水による喉の潤いで疲労感を少し回復させるのだった。
すみ子達組織「義元」と福岡の四人組の小学生達はトロツキーに攻撃を行う。
「喰らえ!」
山口は矢を放射し、川村はバズーカを発砲し、ヤス太郎はパチンコ玉を飛ばす。すみ子は銃で周りを守る。玲衣子はペンから光で黒い三日月を出し。鶴井は扇子のような物で風を起こし、星川は先程も使用した乾電池のようなものから電撃を、そして山元は水鉄砲のような物を出して水を噴射すると共にその水は渦を起こすと共に広大化させた。総攻撃でトロツキーを襲う。
「うおおお!!」
トロツキーは全てを避けきれなかった。鶴井の風の刃や川村のバズーカによる攻撃はまともに受けてしまったのだった。
「終わりか?」
「これで・・・、やられてたまるか!!」
トロツキーは完全にやられなかった。
「しぶてえ奴だな!」
「私のボリシェヴィキの力をもう一度見せてやる!子供でも容赦はせぬぞ!」
トロツキーは腕を強引に動かそうとする。しかし、エレーヌの能力の影響で動かす事ができない。
「この・・・!私は一人ではないのだ!」
「悪あがきを!これでも喰らえ!」
ジャンヌは神を利用した。しかし、トロツキーはその神から己を防ぐ。
「復讐の時だ・・・。現れよ・・・。そして本当の理想を手にするのだ・・・」
トロツキーが唱えると、その場に昨日すみ子達に追い詰められた挙げ句、撤退したアルバートにアリス、ヘレナの三人だった。
「て、てめえら、また来やがったか!」
「アルバートか。この山を取り返す時が来たぞ!」
「ほう。それは有り難い!」
山口達は劣勢と感じていた。アルバートが剣を取り出す。風が巻き起こされる。
「あの風は非常に厄介です!私の静止の舞いも聞きませんでした!」
エレーヌが警告する。
「なら私のペンで!」
玲衣子がペンを出して円を描いた。円は黒い穴となり、アルバートの剣の風を黒い穴に集中させ、吸い込んでしまった。
「私も裁きを下しましょう」
道真は一枚の札を出す。札から電気が溜め込まれ、放電された。
「どうかしらね!」
アリスが、そしてヘレナが迎撃する。
「ここは雷の山であると解っているのかね?」
道真は余裕の表情だった。
「俺も行くぜ!」
星川も乾電池のような道具を使用する。強力な雷撃がアリスとヘレナを襲った。二人は迎撃しきれなかった。
「キャアア!」
「よし、我々でトロツキーを葬るぞ!」
「おう!」
山口は矢を放ち、川村はバズーカを発砲、ヤス太郎はパチンコを飛ばす。三人でトロツキーを集中攻撃した。
(上手く行って・・・!!)
すみ子も怠けず、必死で破られる覚悟で銃で防御に徹した。トロツキーはアルバート、アリス、ヘレナと共にやられていく。
後書き
次回は・・・
「休息中の襲撃」
すみ子達領土攻撃班と本部守備班の福岡の小学生達、そしてジャンヌやエレーヌ、道真達はトロツキーを撃破する事ができるのか。そして休息するかよ子達の元にまた次の敵が現れる。その敵はまた手強くて・・・!?
222 休息中の襲撃
前書き
《前回》
スターリンとの戦いで疲弊したかよ子達は本部より支給された水を飲みながら休息を取る。その一方ですみ子達組織「義元」は福岡の小学生達と雷の山の守護を頼むために合流する。だがその場に戦争主義の世界の人間・トロツキーが現れ、交戦する事に。さらにすみ子達に撃退されたはずのアルバート、アリス、ヘレナの三人が再び現れ、戦いは激しくなる!!
玲衣子達福岡の四人組の小学生達はアルバート達を、すみ子達組織「義元」はトロツキーを狙い定めた。山口、川村、ヤス太郎の攻撃がトロツキーを窮地へと引きずり込む。
(ぐっ、こうなったらもう勝ち目がない・・・!!)
やがてトロツキーの姿が消えた。アルバート、アリス、ヘレナも消えている。
「やったか!?」
「・・・く、駄目だ。逃げられてしまった」
「何だって!?」
「トロツキーにはこう言う窮地に陥った時に限って瞬間移動で避難する能力を使用するのだ。多くの者が幾度か追い詰めておきながらこれで逃してしまっている」
「私の能力封印も間に合いませんでした。申し訳ない・・・」
「取り逃がしちまったならしょうがねえな・・・」
「でもここの守備は我々が行おう」
「ああ、頼んだぞ、道真。我々は先へ進むぞ!」
「うん・・・!」
すみ子達は四人の小学生と道真に雷の山を託して次なる領土の攻め込みを続行した。
トロツキーは最後の手段として窮地に陥った時に緊急で瞬間移動する能力でアルバート、アリス、ヘレナと共に別の場所に移動した(なお瞬間移動は完全に窮地に陥った時の切り札としてしか発動できず、通常は使用できない)。
「くそ、復讐に成功できるかと思っていたのだが・・・」
アルバートは悔しがった。
「仕方あるまい。ムコーも援軍が来ていたのだから。上の命令が下るまで貴様らもヴィクトリアの所へ戻って待機しているとよい。私はレーニン様に連絡をしにひとまず休憩する」
「了解。アリス、ヘレナ、戻ろう」
「はい、父上」
トロツキーはアルバート達と別れて自分の屋敷に戻って行くのであった。
「あのレンチュー、聞いた話では我が妹を葬った者共だな・・・。必ず倒す・・・」
かよ子達藤木救出班は休憩を続けていた。
「そろそろ、行かないとね」
「そうだな、だが、某から見てお主はまだ万全な状態ではなさそうだな。我々も援護しよう。あまり一人で解決しようとはせず、少しは頼るとよい」
「次郎長さん、うん、ありがとう・・・」
かよ子はそう言われて少し心を落ち着かせる事ができた。その時、大野や関根などがそわそわしていた。
「おい、また来てやがるぜ」
「え?」
「杖を奪いに来おったか!皆の衆、山田かよ子を全力で守護して戦うぞ!」
「おう!」
「わ、私も足を引っ張らないようにするよ!」
「ああ、だが、お主もあまり無理するでない」
「う、うん・・・。のりちゃん、のりちゃんのキャロラインで見つけられる?」
「やってみるわ!」
のり子は自身の人形で索敵を試みた。
「いたわ!あそこよ!」
「よし!ボクちゃんが行くよ!」
関根は刀を振るう。風邪の刃を作り出し、遠くへ飛ばす。その遠くへ飛ばした刃が砕かれた。
「あそこだなブー!」
ブー太郎は水の石を利用して大波を出した。だがその時、急にブー太郎の両手が上がった。
「ブー太郎、どうしちゃったのお?バンザイなんかしてえ?」
まる子がからかった。
「違うブー!両手が勝手に上がったんだブー!」
そしてブー太郎の手から石が離れた。関根もいつの間にか刀を話して両手を挙げている。
「こ、これは敵の能力なの!?」
かよ子は驚いた。
「ここにいたか。杖の所有者が!」
遠くから男の声がした。
「だ、誰!?私の杖を取りに来たの!?」
かよ子は問答する。男は近づいて来た。
「そうさ。我が名はムラト1世。オスマン帝国の皇帝の一人だ!」
「お、おすまん・・・?なんじゃ、そりゃ?」
友蔵は言葉が聞き取れなかった。
「オスマン帝国!嘗て中東にあった帝国だ!」
石松は単刀直入に説明した。
「さあ、杖を貰う為の聖戦を始めよう」
「この野郎、一撃で片付けてやる!」
大政は怒って槍を出現させ、数本ムラト1世の元に飛ばした。
「簡単に聞くか!」
槍が消滅した。同時に大政も両手を挙げられ行動を封じられてしまう。
「くう!」
「武器を使用して攻めても倒しきらねば何にもなるまい・・・!!」
次郎長はどう打破すべきか悩む。
「う・・・!!」
かよ子は杖を向けようとした。
「待て、山田かよ子、無闇に杖を向けてもお主まで動けなくなるうえに簡単に杖を取られてしまうぞ!」
「あ、ごめん・・・」
かよ子は杖を使うのを止めた。
(またおっちょこちょいやっちゃったよ・・・)
「ははは、もう為す術がないか!纏めてくたばりやがれ!」
ムラト1世が剣でかよ子に攻めにかかる。
(どうしよう、羽根の結界で守る?いや、それでも動けなくなって杖が取られちゃう・・・)
「く、くう・・・!」
「かよちゃん!」
「山田!」
「山田かよ子!」
皆はかよ子を心配して呼ぶも、かよ子はどうするか考えてしまった。ムラト1世から防御をしても動けなくなってしまう。仮に成功したとしても一人一人戦える者が減っていくのみである。
「こ、来ないでーーー!!」
その時、ムラト1世が吹き飛ばされた。
「うご・・・、な、なぜだ!?」
「・・・え、な、何が・・・!?」
「そうか、武装の能力だ!!皆の者、武器を使えなければ能力だけで戦えばよい!」
「そうか!」
「よし、俺がやってやる!」
大野が石を使わずにムラト1世に飛び込み、殴り込んだ。ムラト1世は吹き飛ばされる。
「俺も行こう」
続いて椎名もムラト1世に殴り込む。ムラト1世は剣で応戦するが、その剣も弾き飛ばされた。
「な、こんな事が・・・。我が能力はこれだけではないぞ・・・!」
ムラト1世は立ち上がる。
「ああ、アラーよ、この者達に裁きを・・・!」
「まずいぞ!能力を使う気だ!」
「親分!某が囮になります!」
「石松!」
石松は左目の眼帯を外した。大物主神の能力を利用する。ムラト1世のアラーの能力である白い光と石松の大物主神の能力がぶつかり合う。
「突破するのはこの私だ!」
「某の能力をなめるな!」
アラーの裁きの光が石松を襲う。だが、大物主神の蛇も応戦し、裁きの光を噛み消した。
「今だ!留めを刺せ!」
「うん!」
「おう!」
吉良の仁吉がムラト1世を持ち上げて投げた。ムラト1世は投げられた事で神を操る能力への集中力が途切れてしまった。
「武器を使わぬ肉弾戦なら平気だな!」
そしてかよ子が次郎長の刀に杖を向け、杖を剣に変化させた。ムラト1世の胸を突き刺し、斬る。
「これで終わりだよ!」
ムラト1世は光となって消えた。
「・・・杖を使ったけど、体が動く・・・?」
「ああ、ムラト1世を倒したからであろう。呪いが働かなくなった」
そして動きを封じられていた大政やブー太郎、関根も動けるようになった。
「山田、ありがとうブー」
「お前のお陰だ。礼をする」
「あ、いや、私は・・・」
「でも、お主の武装の能力や石松の能力で倒せたのだ。謙虚になる必要はない」
「う、うん・・・」
その時、かよ子は石松が体力を消耗している様子を見た。
「石松、大丈夫!?」
「あ、ああ・・・」
以前、石松はカール5世との戦いでも神を操る能力を使用した結果、かなり疲弊した事があった。
「私の羽根に乗って!歩ける?」
「ああ、申し訳ない」
皆もまた羽根に乗り、石松を心配しながら進む。
妲己は杯の持ち主の少女を連れて紂王の屋敷へと戻って来た。守衛が出迎える。
「妲己様、お帰りなさいませ。その小娘は一体・・・?」
「ああ、あの坊やの嫁として連れて来た。そしてこの小娘が持っているのが世界で四つしかない最大の能力を持つ道具の一つ・杯だ」
妲己は杯を見せた。
「これが・・・」
「ああ、まあ、この小娘に部屋を一つ貸してやらないと・・・。そして逃げられないように」
妲己は屋敷の中へと入るのであった。
後書き
次回は・・・
「囚われた場所には」
妲己やレーニンに敗れ、拉致されたりえが目を覚ますと、その場所は見知らぬ部屋だった。杯は奪われてしまい、脱出はほぼ不可能な閉鎖的な空間の部屋だった。その部屋でりえはある一人の少年と再会する・・・!!
223 囚われた場所には
前書き
《前回》
雷の山にて福岡の小学生達と共にトロツキー、さらに再び現れたアルバート、アリス、ヘレナと交戦するすみ子達。完全に追い詰めたと思われたが、トロツキーは緊急時に発動する能力を使用して別の場所へアルバート達と共に瞬間移動してしまった。そして一時休憩中かよ子達はムラト1世という人物に襲われる。攻撃しようとすると強制的に手を挙げられ動けなくなるという能力に苦悩する。そして敢えて武器を使用しないとその能力は発動しないという弱点を突いた事、ムラト1世の最後の能力と石松の神の能力のぶつかり合いの結果、何とかムラト1世を撃破した!!
レーニンは中央の屋敷へと向かう。そんな時、通信が来た。
「レーニンだ」
『こちらトロツキー。雷の山奪還失敗です』
「そうか、了解した。戦力も削がれてしまったからな」
そしてレーニンの中にあるもう一人の少年の心・杉山さとしは考える。
(そうか、皆は次々と作戦を進めているのか・・・)
かよ子達は藤木の行方を追う為に先へ急ぐ。これまでシャルル・リゴーにラ・ヴォワザン、スターリン、ムラト1世と次々と敵が自分の杖を襲撃してきており、その1日だけでも攻めてくる敵が多かった。
「はあ、こんなにお腹空くなんて・・・」
「もうすぐ飯時だ。子供のお前にとってもこの連戦はかなり酷だったからな」
「うん・・・」
その時、イマヌエルの声が聞こえる。
『皆の者、昼食時となりました。只今昼食を供給します』
「おお〜、やっと食べられるう〜」
「儂も腹ペコじゃ〜!」
まる子と友蔵は歓喜した。皆の前にはスパゲッティと生野菜のサラダが送られた。
「おお、美味いのお~!」
「ああ、おかわり欲し~い」
その一方、かよ子もまた空腹には耐えられず、がっついた。
「ふう、食べたら少し元気出たかな・・・?」
「それにしてもこのすぱげってぃとやらも美味いものだ」
次郎長や石松もスパゲッティの旨さに感心していた。
「よし、午後も頑張るよ・・・!」
かよ子は意気込んだ。
とある少年は二人の遊女と部屋の中で寛いでいた。
「茂様と一緒にいると楽しいわね〜」
「ええ、私も茂様といると落ち着きます」
「うん、僕も君達と一緒で楽しいよ」
少年はデレデレしながら言った。
「あ〜あ、私が茂様のお嫁になりたかったなあ〜」
「私も・・・です」
そんな時、部屋の扉が叩かれた。
「坊や、帰ったぞ」
「だ、妲己さん・・・」
「いい土産を持って来たぞ」
「土産?」
「ああ、坊やの嫁だ」
「・・・!」
「一緒に行ってみるかね?だが、まだその少女は眠っているがな」
「う、うん・・・」
少年はなぜか緊張するのであった。
りえは目を覚ました。コートは脱がされており、自身はいつの間にか寝台に横になっていた。
(ここは、どこなのっ・・・?何で私、こんな所で寝てるのっ・・・?)
りえは記憶を辿る。確か戦争主義の世界の人間が狐となって襲撃し、その時、同じくその仲間が訪れ、更にはその仲間は杉山の姿になって・・・。あまりにも話がややこしい状態だった為、りえは状況が整理できなかった。
(そうだっ、杯はっ・・・!?)
りえはハンガーのような物干しに自分のコートが掛けられていた。急いでコートのポケットを確認する。しかし、杯は入っていなかった。
(杯を盗られたっ・・・!!)
その上、助けを求めようにも通信機さえも没収されていた。りえは焦る。そして部屋の周りを確認する。引き出しにクローゼットのような空間、自身が今横たわっていた寝台、便所に洗面所、スタンドの形をした明かり、そして窓が一つ、扉もあった。そして正方形の食卓がその場にあり、座敷となっていた。
「ここは、どこ?」
部屋には自分以外は誰にもいなかった。
「鈴音ちゃんっ、みゆきちゃんっ、ありさんっ、悠一さんっ、冬田さんっ!!」
りえは同行していた人物達を呼ぶ。
「シャクシャインさんっ、阿弖流為さんっ、母禮さんっ!!」
しかし、返事は一切なかった。
(まさか、皆やられたっ・・・!?)
りえは己が最大の失態を行ったと共に、最悪の状況が思い浮かんだ。
(に、逃げられるかしらっ・・・?)
りえは窓を確認する。その部屋は4階にある。飛び降りられそうにもない。今度は扉を確認する。扉は自力で開かなかった。
(鍵が掛けられてるっ・・・!!)
扉からも外には出られない。りえは絶望した。仮にこの屋敷から逃走できたとしても杯もなしの自分では何もできず、敵の世界の陣地から平和主義の世界の人間や他の仲間と運良く合流できる可能性も低く、逃げ切る事はできないのだが。諦めてりえは寝台に腰掛けた。
(ずっと、ここにいなきゃいけないのっ・・・!?)
りえはそう思いながら数分動かなかった。その時、扉が叩かれた。りえは戸が叩かれる音で驚いた。そして一人の女性が入る。
「寛いでいるかね?お嬢」
「だ、誰っ!?私をどうするつもりよっ!?杯を返してっ!!」
りえはその女性に吠え掛かる。
「おっと、落ち着くがいい」
「こんな所にいて落ち着ける訳ないでしょっ!!」
「やれやれ、殺したりはしない。生け捕りにしてくれとの命令でね。私は妲己。この屋敷の女だ。それから杯は我々の世界に必要な代物。だが、本部に置いたのでは剣の二の舞となってしまうので別の場所にしまってある」
「どこなのよっ!?」
「それは言えない。それからお嬢、お前はある『坊や』に相応しい人物という事が解った。その『坊や』の嫁になって貰う」
「嫁っ!?」
「入るがいい」
部屋に一人の少年が入って来た。その少年はどこかで会った顔だった。夏休みに静岡県の清水市を訪れた時にかよ子や杉山達と共におり、クリスマス・イブの夕方から行方不明となったというあの少年だった。
「えっ・・・?ふ、藤木君っ・・・!?」
「ええと、りえ、ちゃん・・・?」
お互いは再会に驚いた。
「どうしてここにっ!?」
「いや、その・・・」
藤木はなんと言えばいいか解らず困惑する。
(あの人、本当に連れてきてくれたのか・・・)
藤木は心の中では夏休みに一目惚れした少女に会えて嬉しく思っていた。
「ふふ、坊やも本当の事が言い辛いらしいようね。私が代弁しよう。この坊やは友から卑怯と呼ばれて嫌われてしまった為に絶望していたのだ。それを偶私と出会い、その苦しみを打ち明けてくれた。それで私はこの坊やをここに連れて行き、苦しみのない生活を提供しているのだよ」
妲己が説明した。
「苦しみのない生活・・・。藤木君、それで本当にいいのっ!?」
りえは藤木に問う。
「・・・、いいんだ、僕は『あの世界』じゃ皆から卑怯って言われるだけなんだ。ここの生活がいいんだ・・・!!」
「まあ、お互い知り合いなら話も早いか。じきに祝言を取り繕う予定だ。私はこれで失礼しよう。杯の所有者、いや、今はただの『安藤りえ』か。お前の婿はこの藤木茂という坊やだ。お互い幸せになるのだ」
妲己は部屋から出ていった。
「・・・りえちゃん、僕はまた会えてよかったよ」
りえは藤木が少し泣いているのを確認した。そして藤木も部屋を出ていった。りえは藤木を追う。しかし、扉が開いていても外へは出られず弾き返された。
「この部屋からは私やこの屋敷の主人の許可がない限り外へは出られないようにしてある。お前が宿す異能の能力を持ってしてもだ」
「そんな・・・」
りえは完全に軟禁の身である事に改めて気づいた。
(杉山君っ、藤木君っ、どうして私の知っている『友達』が寝返っちゃうの・・・!?)
藤木は己の部屋へ戻る。一人の遊女が待ち構えていた。
「茂様、お嫁さんと会えました?とても綺麗な人に違いありませんよね?」
「う、うん・・・」
「いいな、私がお嫁になれたら嬉しかったのに・・・」
「だ、大丈夫だよ。いつでも皆といられるだけでも嬉しいよ」
「ありがとうございます〜」
だが、藤木はりえの言葉が気になる。
《苦しみのない生活・・・。藤木君、それで本当にいいのっ!?》
(でも僕は、もう戻れないし、戻りたくないんだ・・・!!りえちゃんにも解って貰わないと・・・!!)
藤木は再会ともう離れる事はないという喜びで満ちていると共にりえが反発しているように見えていた。
後書き
次回は・・・
「串刺しの吸血鬼・ヴラド3世」
多くの敵が杖を狙いに襲う中、かよ子達藤木救出班は次へと進んでいく。だが、かよ子達の前に手榴弾や槍が襲い掛かる。そして現れた敵は七夕の豪雨の時に現れた赤軍の人間で、またもう一人の敵の槍がかよ子を襲う・・・!!
224 串刺しの吸血鬼、ヴラド3世
前書き
《前回》
多数の敵が襲撃してくるものの、かよ子は藤木を見つけ出す為に羽根を進める。そして九尾の狐に変化する女・妲己に連行されたりえは紂王の屋敷の一室で軟禁される事になる。りえは目覚めると杯を奪われた事に気付き、脱出もほぼ不可能な状態だった。そしてその場で妲己がある少年を連れて来る。その少年はクリスマス・イブの日以来、行方不明となっていた藤木だった。藤木の嫁になる事を妲己から通告されるりえだったが、藤木は元の世界に戻りたくないようで・・・!?
紂王の屋敷。りえは用意されていた部屋でおとなしくしていた。何しろ杯は奪われており、今いる自分専用の部屋からは自力で出る事はできず、何もできない。りえはそこで藤木の嫁になるしか選択肢がない状態なのだ。
(でも、藤木君はここに連れ去られたはずなのに戻りたがっていないのは・・・?)
りえは思い出す。冬に清水を訪れ、かよ子達と再会した時を。その時かよ子からは藤木はふとした行動から皆から嫌われてしまったと聞いた。それが理由となると辻褄が合うかもしれない。
(藤木君に会ったら聞いてみようっ・・・!)
りえはそう思い、藤木と再び接触できる機会を渇望するのであった。
目的地へと向かうレーニン、そして杉山はトランシーバーで報告を受ける。
「こちらレーニン」
『こちら奥平純三。今杖の所有者の付近に近づいています。ヴラド3世と同行で狙います』
「そうか。あの小娘も連戦で疲労している筈だ。疲れた所を狙え」
『はい』
通信が切れた。
「しつこく山田達を狙ってんのか」
杉山が聞く。
「そうだ。杖の所有者も疲弊すればおっちょこちょいしやすくなるであろう」
レーニンは杉山と会話しながら進む。
午後の休みから1時間程してかよ子達は羽根で次の場所へと向かう。
(敵の所にいるからかな、容赦なく人が襲ってくるよ・・・)
かよ子はこの日だけでも多くの敵が襲って来ている為、疲れが蓄積していた。その為、時折休みをとったりしているのだが、その度にすぐに襲撃しているので休んでは戦う、の繰り返しだった。
「なんか、すぐに来そうで落ち着かないな・・・」
「かよちゃん、大丈夫だ。おじさん達も頑張って守るよ」
椎名がおっちょこちょいの少女を励ます。
「はい、ありがとうございます!」
「皆、次の敵来てるよ!」
関根が警戒した。
「よし、戦闘態勢だ!」
大野が待ち構える。かよ子達も迎撃の姿勢に入った。関根が刀を振るう。直線状に地面に爆発を起こした。
「危ねえ事しやがってよお・・・」
遠くにいる男はそう言って手榴弾を投げた。
「手榴弾だ!羽根の中に入れ!!」
皆は羽根の中に戻った。結界で手榴弾を防御した。
「やるじゃねえか」
「それならこれはどうかな?」
もう一人の男が長い槍を飛ばす。その長い槍も結界で防いだ。
「何度やっても無駄じゃ、ハハハハハ!!」
友蔵は大笑いした。
「そうだね。バカだね~」
まる子も嘲笑する。
「なら、これはどうだ?」
男が近づいて来た。
「あれは・・・、赤軍の奥平純三!!」
「わ、私もあの人知ってる・・・!!」
かよ子も奥平の顔は知っていた。七夕の日の夜、杖を狙う為に清水の街を大雨にして襲撃しに来た男だった。
「久しぶりだな。杖の持ち主・・・!!」
奥平は銃を幾度も発砲した。だが、結界で弾かれる。
「何度やっても無理なものは無理なんだよお~」
まる子は呑気だった。その時、別の男が近づいていた。
「その結界の能力、吸わせて貰う」
男は結界に手を触れた。結界が消滅した。
「え、結界が・・・!」
「この『吸血鬼』ヴラド3世にそんな物は無力だ」
ヴラド3世はすぐかよ子の杖を取ろうとする。その時、かよ子の武装の能力が発動される。ヴラド3世は遠くへ弾き飛ばされた。
「な、異能の能力の能力とやらか・・・!!」
ヴラド3世はそれでもめげず、槍を無数に出して串刺しをする。
「ギャアアー、死ぬーーーーー!!!」
「薙ぎ払うぞ!」
絶叫する友蔵をよそに次郎長は石松、小政、綱五郎と共に槍を刀で薙ぎ払って防御した。だが、別方向から奥平が手榴弾を投げていた。
「俺達も怠けてられねえな!」
大野が草の石を使い、巨木で手榴弾を破壊する。だが、破壊の衝撃で木も燃やされる。ブー太郎が水の石で放水し、消火した。
「よし、私も!」
かよ子はリュックから花火を出そうとした。だが、誰かに蹴落とされる。
「え?」
かよ子が羽根から落下する。
「や、山田!」
「かよちゃん!」
「どういう事!?」
のり子は人形に透視能力を行使させる。その場には何も見えなかったが、透視させると、そこにいつの間にかブラド3世がいた。
「鳥橋のり子、落ちた山田かよ子を救え!」
「うん!」
のり子はキャロラインと同体化し、念力でかよ子を救う。落下したかよ子を持ち上げた。だが、その隙にヴラド3世がその場に落ちた杖を拾う。
「させぬ!」
法印大五郎が杖の周りに結界を張り、小政が居合いでヴラド3世を斬ろうとした。だが、ブラド3世は煙のように姿を消してしまい、小政の攻撃はかわされ、結界が消失してしまった。
「貰った!」
「やめて!」
ヴラド3世が姿を消して杖を取ろうとしたが、弾かれた。かよ子が羽根の上に戻っていたのだった。
「私の杖は渡さないよ!」
かよ子は武装の能力のみで何とか杖を守ろうとする。
「こっちこそ簡単に諦めるかよ!」
(ここで杖を手にしないと!)
かよ子は羽根を降下させ、落ちた杖に手を伸ばした。だが、何処からか槍がかよ子を串刺しにしようとする。
「わ、わあ!」
かよ子は武装の能力で槍に対して防御した。しかし、能力をそちらに使用したところで杖が勝手に動いた。
「杖は頂いた!」
「おい、待て!」
吉良の仁吉がヴラド3世を捕まえようとするが、ヴラド3世は煙となって消える為に捕まえる事ができない。お蝶も脇差しで仕留めようとした。
「やったか!?」
しかし、ヴラド3世はお蝶の脇差しの能力を吸い取り、お蝶を迎撃する。
「ああっ!」
「奥方!」
お蝶が首を斬られそうになる。関根の刀や大五郎の結界で何とか防ぐ事はできた。
「揃って死ね!」
槍が全員を襲う。
「させるか!」
大政が自身の槍で楯を造り、ヴラド3世の槍を防御した。だが、ヴラド3世を見失ってしまった。
「ヴラド3世はどこだ!?」
皆は周囲を確認する。
「おい、奥平純三。杖を取ってきたぞ」
「やるな。後は纏めて俺が消しとくよ!」
ヴラド3世は大野やブー太郎と交戦していた奥平の所に向かっていた。
「な・・・!」
「よし、レーニン様や総長に連絡だ!」
奥平は手榴弾を投げた。
「幾つ持ってんだブー!?」
ブー太郎は驚くも、水の石の能力で手榴弾を水で濡らして何とか無力化した。
「私の杖が、取られた・・・!」
かよ子は杖を取り返したいという一心で羽根でヴラド3世を追走する。いきなり羽根を飛ばすので次郎長は驚いた。
「山田かよ子!」
「杖をなんとしても取り返さなきゃ!!」
後書き
次回は・・・
「杖を奪われた怒り」
ヴラド3世によって杖を奪われてしまったかよ子は本部に連絡を入れ、イマヌエルは協力者を求めて各方面に呼び掛ける。そしてヴラド3世を追走するかよ子は今までにない怒りによって武装の能力を発動させる・・・!!
225 杖を奪われた怒り
前書き
《前回》
かよ子達の元に赤軍の奥平純三、そして戦争主義の世界の人間・ヴラド3世がかよ子達を襲撃して来た。ヴラド3世の槍攻撃に姿を消しての奇襲、そして奥平の手榴弾攻撃にかよ子達は苦戦する。そしてヴラド3世の襲撃にかよ子は羽根を落としてしまい、その末にヴラド3世に杖を奪われてしまう!!
かよ子は焦っていた。
「待てーーー!!」
「山田、本部に連絡しとけ!」
「う、うん・・・!こちら山田かよ子!ヴラド3世とか言う人に杖を取られちゃった!」
かよ子は本部に連絡した。
『こちらイマヌエル。杖を取られただと!?解った、他の近くにいる者にも連絡してみよう!』
「はい、お願いします!」
かよ子は礼をした。
(お母さん、ごめんね・・・。すぐに取り返すよ・・・!!)
かよ子は焦った事や母から受け継いだ杖を取られてしまった事で少しベソをかいていた。
本部で同じくかよ子から報告を聞いていたまき子は頭の中が空白となってしまっていた。
(杖が、取られたなんて・・・、なんておっちょこちょいしてるのよ・・・!!)
先代の杖の所有者にとっても一大事であった。
「山田まき子さん、絶望なさらないでください。取り返します術はあります筈です」
「そうよね・・・」
「それから護符の所有者の方にも攻めてきていますわね。領土攻撃班と手を合わせます事なく通過していますから、飛行します機械などでも使用していますのでしょう」
「護符も・・・」
先代の護符の所有者も気になっていた。杯に続いて杖も奪われ、更に護符まで奪われるとなると完全に劣勢である。護符も守り抜けなければ、今度は甥が輸送中の剣が集中的に狙われる事になる。奈美子はそう予測するしかなかった。
「だが、今、こちらに我々の味方が三人ほど本部へと向かってきている。おそらく剣を運んでいる者達だな」
「ええ・・・」
奈美子は甥が無事である事に安堵した。
(健ちゃん、頑張るんよ・・・)
剣を輸送する三河口、湘木、そして冬田は平和を正義とする世界の領土の上空を飛んでいた。
「だ、大丈夫かしらあ、大野くうん、助けに行かなきゃあ!!」
「ダメだ。俺達が行くにしても遠すぎるし、このまま方向を変えると剣まで奪われるぞ」
冬田の訴えを三河口は取り下げた。
「で、でもお・・・!!」
「それに大野君よりもかよちゃんが問題だろ?」
「そうかもしれないけどお・・・」
冬田は何もできない事に体が震えた。
(ったく、とんでもないおっちょこちょいしてくれたもんだな・・)
三河口は心の中でかよ子に怒っていた。
かよ子達は奥平とヴラド3世を追っていた。その時、大野の通信機が鳴る。
「はい、こちら大野・・・」
『大野くうん、杖大丈夫う!?』
冬田の声だった。
「な、何だよ!?」
大野は余りにも大きい声だったので耳を塞いだ。
『私、今の山田さんの話聞いて心配になっちゃったのお!!私も行きたいんだけどお・・・』
『こちら三河口。大野君、冬田さんが迷惑かけてすまん。失礼する』
急に三河口の声に変わった。
「あ、ああ・・・」
「冬田さん、かよちゃんの知り合いといたのお?」
まる子は呆気にとられた。
(ったく、何だったんだ?)
大野は冬田からの連絡に変に思った。
冬田は大野への寂しさで通信機で連絡を取ろうとしていたのだが、三河口に通信機を取り上げられていた。
「どこの映画かドラマの真似してんだ?!そんな私情の為に通信機を使うな!頭の中が大野君でいっぱいなら元の世界に帰れ!あるいはここで蹴落とすぞ!」
「ご、ごめんなさあい、もうしないわよお・・・!!」
冬田は泣きながら謝った。
「もうよせよ、三河口。冬田だってもう反省してるぜ」
湘木がその場を収めようとした。
「ああ、だが、どうだか。出発の時からずっと大野君の事ばかり考えてるみたいだったからな・・・。兎に角俺達は本部へ急ぐぞ。折角剣をここまで持って来れたんだからな」
かよ子達は追走劇を続ける。今までにないほど羽根を高速に飛ばした。
「ヴラド3世!」
「追いついて来たか!」
ヴラド3世は槍をかよ子達に向けた。
「同じ手が通用するか!」
椎名が波を出して串刺しの槍を押し流した。
「杖を・・・、返して!!」
かよ子は何か怒りが込みあがる。今まで以上にない怒りを感じていた。以前にも入鹿という人間に杖を奪われた事があったが、その時は怒りよりも焦りが募っていた。その時、先程椎名が押し流した槍がヴラド3世を攻撃していた。
「何だ、山田かよ子のあの凄まじい怒りは・・・。もしかして杖を奪われて取り返したいという気持ちから異能の能力が爆発しているのか!?」
次郎長はかよ子の状態を推察した。ヴラド3世は自身の吸血能力で槍を吸収して無力化させた。
「無駄な事を・・・!!」
しかし、ヴラド3世はその場で動かなくなった。かよ子の羽根がヴラド3世に追いついた。
(な、なんだ、この身体の硬直は・・・!?)
「杖はどこ・・・!?」
「う・・・」
ヴラド3世は自身の身体を空気に溶け込ませようとしたが、効かなかった。かよ子はヴラド3世に掴みかかる。
「どこなの!?言わないと、承知しないよ!!」
「つ、杖は・・・、赤軍のあいつが、持って行った・・・」
「・・・え!?」
「あやつがか!貴様、たたっ斬る!」
「効くかよ・・・」
ヴラド3世は自身の吸収能力で次郎長や石松の刀、大政の槍やその他の皆の能力を吸収しようとする。しかし、なぜかできない。
「な、なぜだ、なぜできん!?」
ヴラド3世はその近くにいる杖の所有者がいた。
(この小娘が封じているのか・・・!?ならこの小娘の能力を吸収し・・・)
その時、次郎長がヴラド3世の首を撥ねた。
「終わりだ!」
「な・・・」
「私が杖を取られてどれだけ怒ってるか、解る・・・!?」
かよ子の武装の能力でヴラド3世の能力は全て防がれていたのだった。
(んな、まさか・・・)
ヴラド3世は光となって消えた。
「かよちゃん、凄いよお~」
まる子はかよ子を褒めようとした。
「まるちゃん、これだ済んだわけじゃないよ!」
「え!?」
「杖を取られちゃったんだよ!取り返しに行かなくちゃ!!」
「あ、ごめん・・・」
「ごめん、私、あの人の所へ追いついて杖を取り返しに行ってくる!皆は先に藤木君を探しに行ってて!!」
「ええ!?」
「正気か!?お主一人で行く気か!?」
「だって私おっちょこちょいで取られちゃったんだもん、これ以上迷惑かけられないよ」
「でもお前一人で大丈夫なのかブー?」
「確かに心配だけど・・・!!」
「独りよがりな行動をするな!!」
次郎長が怒鳴った。
「・・・え!?」
「我々はお主らが藤木茂とやらの少年を奪還する為の援護をしに来てはいる。何か会った時に我々は常に貴様らの支援をせよとフローレンスとイマヌエルから指示を受けているのだ!!貴様がどれだけ反対しようと我々も貴様の為に動く!だから必ず杖を取り返す手助けも必ずする!これは我々にとっては迷惑ではないのだ!!」
「う、うん・・・。ごめんなさい・・・」
かよ子は叱責で泣いた。
「皆の者、藤木茂への救出は一度中断して山田かよ子の杖を取り返しに行くぞ!」
「おう!」
皆はかよ子の杖を取り返しに奥平を追いかける。
「そうだ、本部守備を担う長山治にも連絡して、赤軍の奴の行方を探って貰うのだ!」
「うん!」
杖の奪取に成功した奥平は戦争主義の世界の本部へと動いていた。奥平はトランシーバーを出す。
「こちら奥平純三。総長、杖を奪いました!」
『あら、お疲れ様。そのまま本部に戻るのよ。杖の所有者は殺害したのかしら?』
「そこまでは確認していませんが、もしヴラド3世が失敗していたら、ついでにやった方がよろしいでしょか?」
『いや、純三はそのまま本部へ向かいなさい。杖の持ち主の方は別の人に片付けさせるわ』
「了解」
奥平は杖を奪えた喜びでいっぱいだった。
「これで杖に杯、か・・・。あとは護符と剣・・・。まあ、西川が護符の所有者の方に向かっているからそっちはあいつに任せるか」
大野は通信機で長山に連絡した。
「こちら大野、長山、聞こえるか?」
『こちら長山!大野君、山田の杖が取られたって!?』
「そうなんだ、杖を取った奴が今どこにいるか探してくれるか?」
『解った、ちょっと待っててくれ!』
一旦通信が中断される。そして30秒ほどして長山から返信が来た。
『こちら長山!杖は赤軍の人が持ってる!本部のある方向へ向かってヘリコプターに乗ってるよ!本部は今君達がいるところから北西の方角だ!』
「ありがとう!ごめんね、長山君にまで迷惑かけて・・・」
『大丈夫だよ、山田達が杖を取り返せるよう祈ってるよ』
「うん!」
そしてかよ子達は杖を取り返しに奥平を追い掛ける。
後書き
次回は・・・
「作戦の中断、そして移行」
異世界最上位のアイテムの一つ・杖を奪われたという報告を聞いた者達がかよ子達に協力しようと動き出す。その一方、剣を運ぶ三河口、湘木、そして冬田が平和主義の世界の本部へと近づいていた。そして護符を狙うべく赤軍の男も平和主義の世界の領土へと踏み込もうとする・・・!!
226 作戦の中断、そして移行
前書き
《前回》
ヴラド3世の攻撃でかよ子は杖を落とし、ヴラド3世に杖を奪われてしまった。本部のイマヌエルに奪還の協力者の手配を頼み、かよ子達はヴラド3世を追走する。そして追いついた時、かよ子はヴラド3世への激しい怒りの影響か武装の能力がかなり強くなっており、ヴラド3世は何もできず次郎長に首を撥ねられた。だが杖は赤軍の奥平に渡っていた。かよ子達は杖を取り返す為に奥平を追う!!
すみ子達は異世界最上位の道具の一つ・杖が奪われた報告を聞いて呆気に取られていた。
「かよちゃんの杖が、取られた・・・?」
「何だと!?杯に続いて杖が取られたとはとんでもない事だ!」
「ジャンヌ・・・、もしかして杖の奪還に協力すると?」
「ああ、そのつもりだ。雷の山を抜けた所だ。敵の本部も近づいている所でもある。ここから少し北東へ向かえば杖を取った者や杖の所有者と合流できるかもしれん」
「よし、そのかよ子って子達の為にもオイラ達も杖を取り返しに行くでやんす!」
「おう!」
すみ子達は北東の方へ向かった。そして丁度通信が鳴る。
『こちら本部・イマヌエル。先程の報告通り異世界の最上位の道具の一つの杖が奪われた。今藤木茂救出班は本来の目的を中断させて杖の奪還に向かっている。彼女らに協力できる者、できれば杖の奪還に協力して貰いたい』
「は・・・」
「こちら領土攻撃班、山口!俺達が協力する!」
『ありがとう、感謝する!』
「では、先へ進みましょう!」
エレーヌは浮遊の術ですみ子達を浮かし、移動させた。
とある少女も杖が奪われたという報告を受けていた。
「杖が奪われたとな!?」
「まずいでごわすな。杯に続いて杖とは・・・」
「私も、行く。ここまで来ているなら」
「行くのか?」
「うん、行くよ」
少女はこの世界の人物二名と共に杖を取りに動く。そしてスケッチブックのような物から巨大な翼竜を出してそれに乗った。
かよ子達は長山の言われた通りに杖を取り返す為に北西へと進む。
(お母さん、フローレンスさん、イマヌエルさん、ごめんね・・・、とんでもないおっちょこちょいやって・・・!!必ず杖を取り返すからね・・・)
その時、通信機が鳴る。
『こちら濃藤すみ子。私達も杖を取り返しに手伝うよ・・・!!』
「すみ子ちゃん、うん、ありがとう!」
かよ子は協力者が増えてくれた事にありがたく思った。
(よし、杖を取り返すよ!)
本部付近の上空。剣を運ぶ冬田、湘木、そして三河口は羽根に乗って本部へと向かっていた。
「この本部、出かける前よりも済んだ感触になってきたな」
「そうなのお?」
「それだけ領土攻撃班が次々と地を平和主義の世界に戻し、本部守備班はそれらを死守しているからだろうな」
「もう本部の建物が見えて来たぜ」
西洋の巨大な城のような建物をした平和を正義とする世界の本部が三人の前に小さく見えた。そして門の前で羽根を降ろし、三人は玄関前に広がる庭園を歩き、建物内に入った。
「お疲れ様です」
この世界に初めて足を踏み入れた時に通行手形としてフローレンスとイマヌエルからの手紙を確認していた二人の少女がその場にいた。
「『この世界の剣』を今持って帰って来た」
「これが・・・、ありがとうございます。それでは剣を置く部屋に案内いたします」
「ありがとう」
三人は二人の少女に連れて行かれた部屋に入る。
「ここは・・・?」
そこには戦争主義の世界の本部とは異なる四つの道具の置き場のような装置があった。その装置はテーブルのようなもので、剣、護符、杯、そして杖の四つがピッタリ収まるような枠があり、四つの引き出しがあった。
「剣の置き場はこちらです」
「ああ」
三河口は持っていた剣を置いた。装置は特に何も起きなかった。
「三河口健様でしたか。そういえば貴方はフローレンス様とイマヌエル様からある手紙を受け取っていましたよね?」
「ああ、これの事か」
三河口は出発前にフローレンスから貰った手紙を出した。
「もしかして俺だけの『道具』を作り出す為の装置なのか」
「左様でございます。本来ならば杖の所有者と杯の所有者、そして護符の所有者を一旦こちらに呼び戻してその道具を作り出す予定だったのですが・・・」
「杖の所有者・山田かよ子様は杖を奪われたという報告を受けたほか、杯の所有者・安藤りえ様も敵の人間に囚われている状態となっています。道具の作成が先送りになってしまった事をお詫び申し上げます」
「君達が謝る事はないよ。おかげで次の目的ができたからね」
「ところでフローレンスとイマヌエルはどうしたんだ?」
湘木が質問した。
「今、手が離せない状態となっています。その為私ハンナとこのアンネが代理で応対させていただきました」
「そうか、ありがとう」
「これから貴方方はどうされる予定ですか?」
「そうだな・・・」
(もしかしたら杖を取り返しに行くかも?そうしたら大野君に会えるかもしれないわあ・・・)
冬田はときめかせた。
「三河口、お前の従姉と相談した方がいいんじゃねえのか?」
「そうしよう」
三河口は通信機を取り出した。ゆりに繋ぐ。
「こちら三河口健。ゆりちゃん、剣を本部に届け終わりました」
『お疲れ様』
「ところで俺や湘木に次にやって欲しい事がありましたらお願い致します」
『そうね、杖が取られたって情報聞いたけど、杖を取りに行ってもいいし、私達と一緒に来ても、あり達の所行ってもいいわ』
「解りました。湘木とも相談して決めます」
『じゃあね、健ちゃん、応援してるよ』
従弟思いのゆりの言葉で通話は締め括られた。
「さて、湘木、お前はやりたい事はあるか?」
「全部やりてえところだが、杖を取りに行った方がいいんじゃねえか?」
(やったあ!!)
冬田は目を光らせた。
「そうだな。おい」
三河口は冬田の方に向く。
「大野君に会えると思って舞い上がるなよ」
「わ、解ったわよお・・・」
冬田は圧を掛けられた。
「よし、行くか」
三人は休息する事なく部屋を出た。
「行ってらっしゃいませ。お気を付けください」
アンネとハンナは三人を見送り、三河口達は次の作戦に移行する為冬田の羽根に乗って本部を出発した。
本部の管制室。イマヌエルは杖所有者の動向を気にしており、フローレンスは本部の区域に敵が侵攻している様子を確認していた。
「また赤軍ですか!」
「もしかして、今度は娘の護符!?」
「赤軍が来ていますと言います事はそうかもしれませんわ。それに敵の世界の人間と二名!警告いたします!」
フローレンスは本部守備班全体に通信を繋げる。
西川純。赤軍の一人であり、小型飛行機を使用して平和主義の世界の上空へと動いていた。
「奥平が無事杖を手にしたか。今度は俺が護符を手にする番だな」
「折角私が助力してやる事に感謝するんだな」
「あいよ、こりゃありがとうございますってよ」
「ところで護符の所有者は女だったか?」
「ああ、杖や杯の持ち主と違って成人の女だ」
「忌々しい・・・。後継ぎを作られては大変だな。さっさと始末せねば。このアンドリューがくたばらせてくれる」
西川はアンドリューという戦争主義の正義の人間と共に平和主義の世界の上空を飛び、護符を狙う事を目当てとする。
(首を洗って待っていろ・・・!)
後書き
次回は・・・
「病殺の殺戮者、アンドリュー」
赤軍の西川は護符を狙いに平和主義の世界の領土へと侵攻する。本部守備班の三人の男性は西川ともう一名の戦争主義の世界の人間と対峙する事になる。そしてさりや長山達も西川達を迎撃すべくその現場へと急ぐのだが・・・!?
227 病殺の殺戮者、アンドリュー
前書き
《前回》
かよ子の杖を奪ったヴラド3世を撃破した藤木救出班だったが、杖は既に赤軍の奥平が手にして持ち去っていた。組織「義元」の面々を始めとした者達が杖の奪還に協力してくれる中、藤木救出の目的を一時中断して杖の奪還の為にかよ子達は北西へと向かう。一方、異世界の剣を運送中の冬田、三河口、湘木の三人は無事本部に戻り、剣を届けた。彼らも次の目的として杖の奪還に動き出す!!
かよ子との通信を終えた長山にさりが問答する。
「長山君、かよちゃんの杖が取られたって!?」
「うん・・・」
(そんな、杯も杖も取られた・・・。つ、次は、私の番・・・!?)
さりは四つの異世界の最上位の道具のうち、戦争主義の世界にある一つ・剣は取り返す事はできたものの、安藤りえが持つ杯が奪われその所有者も行方不明、そして実家の隣に住む山田かよ子の杖も奪われてしまったとなると残るは取り返したばかりの剣か自分の持つ護符。まず自身が集中的に狙われるのではないかと懸念していた。
「羽柴さり、もしかして次はお主の番と恐れを感じているのか?」
同行している清正がさりの顔色を窺った。
「うん・・・」
「確かに気がかりでしょうね・・・。私も必死で援護致します!」
テレーズは祖母から受け継いだ宝剣を見せながら言った。
「ありがとう」
「俺達も全力で守るたい!」
「私も!」
尾藤も、もと子も、さき子も同調した。
「うん、ありがとう!」
その時、皆の通信機が鳴る。
『こちらフローレンス。本部守備班の皆様、大変です!赤軍および敵の世界の人間が護符を狙いに本部へ侵攻しています!中央から東への経路を通っています。迎撃の準備をお願い致します!!』
さりはその報告を受けて顔が青ざめた。
「りょ、了解!!長山君、眼鏡でその敵の場所を見れる?」
「は、はい、やってみるよ!」
長山は遠くを索敵する。さきこのルビーも光る。敵はすぐに見つかった。
「いた!向こうの方にいるよ!それに向こうで守備している人達が襲われそうになっている!」
「ええ!?行きましょう!!」
さりは護符の能力で飛行機を出し、皆を乗せて離陸した。
(私の護符まで取られてたまるかっての!!)
さりは自ら援護に行くのは捨て身であると解っていたが、それでも自分の世界から来た人をこの地で見殺しにしたくないという気持ちもあって出向く事に戸惑いはなかった。
平和主義の世界で東側よりも中央寄りの領土にて三人の男性がその区画の守護に当たっていた。一人はトランペットを持つ男、本山こういち。もう一人はギターを持つ長岡ゆきひろ、そして太鼓を持つ吹山たつお。まるで音楽バンドのような集団だった。彼らは以前、アンヌとか言う王妃と赤軍の丸岡修が異世界の最上位の道具である護符を奪おうとした時に援護に行った事があり、フローレンスからの連絡を受けてまた護符の所有者が襲撃される可能性がある事に懸念を示していた。
「おい、また護符が狙われるってよ!?」
「またあの人助けにいかないとヤバいんじゃね?」
その時、上空から何かが飛んできた。
「何だあれ!?」
「飛行機だ!!」
その時、飛行機から何かが噴射された。ミサイルだった。
「げ!俺達を殺す気かよ!?」
「返り討ちにするぞ!!」
三人は迎撃態勢に入る。本山がトランペットを吹き鳴らす。ミサイルが無力化されてその場で空き缶のように爆発せずに落下した。そして吹山の太鼓の叩く音で敵の飛行機に強い振動を起こさせた。飛行機は不時着するように降りた。
「バカめ、さっさとやられればいい物を」
二人の男が降りてきた。
「今はお前らの相手してる暇はねえんだ!消えろ!!」
「赤軍だな!?」
長岡が問う。
「それがどうした!?」
「私は協力者だ。黄色いゴミムシども。天然痘にでも掛かって死にな!」
男が毛布を何処からか出して三人に投げつける。
「あの毛布で俺達を苦しめる気か!」
長岡はそう読んでギターを鳴らし、電撃を飛ばす。毛布は黒焦げになってその場に落ちた。
「それならこれは、どうだ!?」
男は急に呪文のように唱え始める。
[我こそは開拓と発展に尽くす者。汚らわしき無知な人種は滅す]
「なんだこいつ、何を言ってんだ!?」
「のんびり聞いてる暇があるかな?」
赤軍の男は銃撃する。だが、本山のトランペットで無力化した。しかし、赤軍もまた攻撃をやめない。途中、トランペットの能力が弱まった。
「な、効かなくなっている!?」
「我が呪文には貴様らの能力など無効化できるのだ!この汚らわしい原住民を始末したアンドリュー様の功績を知れ!」
「ちい!」
アンドリューと名乗った男は毛布を三人にまた包ませようとする。
「長岡、武装の能力で守れるか!?」
「あ、ああ!」
長岡は防御に特化した武装の能力を所有していた。しかし、それでも毛布を弾き返す事はできなかった。
「くそ、逃げるしかねえ!」
三人は走って毛布を回避しようとする。本山は連絡を試みる。
「こちら本部守備班、本山こういち!今敵と交戦中!道具の異能の能力も無効化された!救援頼む!」
直ぐに返信は来た。
『こちら羽柴さり!今そっちに向かうわ!』
「馬鹿が!」
赤軍の男が発砲する。吹山の右肩に銃弾が当たった。吹山が倒れる。同時に毛布が彼の上に覆いかぶさった。
「ああ!!」
「吹山!!」
本山と長岡が毛布を剥がす。だが吹山は天然痘に侵されてしまった。
「俺の事は、いい・・・。に、げ、ろ・・・!!」
「そんな事できるか!」
だが二人もその毛布を触ってしまった為に天然痘に苦しみ始めた。
「う・・・」
「終わったな」
アンドリューと同行する赤軍の男は始末が完了したと見て去ろうとする。その時、三人の元に別の飛行機が飛んで来た。その飛行機がアンドリューと赤軍の男に向けてミサイルを飛ばす。二人は何とか回避した。飛行機が着陸し、人が降りてきた。
「大丈夫!?」
護符の所有者・羽柴さりが降りてきた。
「あ、いや、駄目だ・・・」
「天然痘に侵されています。今すぐ処置を!」
「う、うん!」
「護符の所有者とテレーズはそこで看病だ!こやつらは我々が片付ける!!」
「うん!」
さりはテレーズと共に本山達の処置に当たる。長山、さきこにもと子、尾藤と清正がアンドリュー達と相対する。
「あの人は・・・!!」
長山はその赤軍の人間を見て思い出した。近所に住む知り合いの高校生・北勢田竜汰の通う高校の文化祭を襲撃しに来た西川純だった。
「おめえの相手は俺達や!」
「ふ・・・纏めて死ね!」
アンドリューが毛布を投げる。しかし、さきこの琥珀が光る。彼女の元に毛布が引き寄せられたが、その毛布が跳ね返される。アンドリューが毛布に覆いかぶさられる形になった。
「な、しまった!」
アンドリュー自身が天然痘となる結果になってしまった。
「おい、アンドリュー!!」
「よくも!!」
アンドリューは天然痘に苦しみながらも呪文を唱えようとする。
[我こそは開拓と発展に尽くす者。汚らわしき・・・]
だが途中で尾藤のボールがアンドリューの顔面に直撃した。
「この野郎!」
西川がまた発砲するも、もと子の玉で弾かれる。
「ちい、まだくたばらんかったか!」
尾藤は戻ってきたボールをもう一度蹴飛ばす。尾藤のシュートがアンドリューをもう一度襲う。しかし、今度は避けられた。
「何がなんでも護符だけは貰ってやる・・・!」
西川は飛行機に飛び乗り、低空飛行でミサイルを飛ばした。長山が念力で無効化させ、清正が槍で攻撃する。
「この飛行機はミサイル飛ばすだけじゃねえぞ!」
西川が乗った飛行機の底面から円形の光が現れた。
さりは天然痘に苦しむ吹山達をテレーズと共に治療に当たっていた。二人は医者ではないものの、護符や宝剣で治癒させる能力を駆使していた。さりは護符の能力でワクチンのような物が入った瓶を出現させた。注射器状ではないためどう使えばいいか一瞬迷ったが、三人に兎に角その薬を塗る事で対処させた。痘痕がみるみる消えていった。
「ありがとう。だが、こいつが撃たれてもっと重症なんだ・・・」
「私が処置しましょう」
テレーズは宝剣を吹山の近くの地面に突き刺す。
「ラファエルよ。どうかこの者の傷病を癒やしてください」
剣が黄金色に光り、吹山の傷が治っていく。だが途中でその効果が中断された。
「え?」
テレーズも訳が分からなかった。
「ははは!お前らの能力全てを封じた!もう何もできん!」
西川が乗った飛行機から円形の光が現れた。その光の円の中では一切の能力の使用が封じられるものであった。
「な・・・!!」
円の範囲が拡大していく。誰も何もできなくなった。
「さて、そろそろ護符とそのガキを貰う時だ!」
長山は赤軍が自分も狙っている事に気づいた。このままでは何もかもが終わる。杯も杖も取られ、今度は護符が敵に渡る時かと長山は絶望した。
(終わりなのか・・・!?)
だがその時、能力封じの光が消えた。
「え!?」
「そう簡単に護符を渡すかよ」
護符の所有者の従弟に斧を持つ高校生、天然パーマの少女がその場にいた。
後書き
次回は・・・
「棘付きの鎖鉄球」
さり達の戦闘現場に三河口、冬田、湘木が到着する。彼らも加勢して西川とアンドリューを対峙しようとするが、彼らも追いつめられる。道具を持たない従弟の為にさりの護符が光り出し、三河口にある物が授けられる・・・!!
228 棘付きの鎖鉄球
前書き
《前回》
平和主義の世界の中央部の境界にて本部守備班を担う三人の男性、本山こういち、長岡ゆきひろ、吹山たつおは赤軍の西川純、そして戦争主義の世界の人間・アンドリューの襲撃を受ける。迎撃を試みるが、アンドリューの天然痘を媒介する毛布の攻撃を受けて窮地に陥る。だがそこにさり達が救援に到着する。さりとテレーズが治療すると共に長山達が西川が乗った飛行機から円形の光が全ての能力を無効化してしまう。だがそこに剣を本部に届け終わり、次の目的へと進む冬田、湘木、三河口の三人が現れた!!
「健ちゃん!」
さりは従弟の出現に喜んだ。
「なんだ貴様は!?」
アンドリューは三河口に問答する。
「通りすがりの者だよ」
「ふざけやがって!」
アンドリューは毛布を投げようとする。だが三河口の威圧の能力が働いた。
「なに、投げられない!・・・」
「二人はその人達の手当てを!」
「え、ええ!!」
さりとテレーズは再び吹山の治療に当たる。
「また無効化させてやる!」
西川は能力封じの光を再発動させようとした。
「湘木!」
「おうよ!」
湘木が羽根から降りて斧を振るう。大波が現れ飛行機を襲う。
「捕まるかよ!」
西川は飛行機を高く飛行させて回避を試みる。しかし、更に巨大な波が襲撃した。飛行機が波で落とされた。
「くう!」
西川は墜落に巻き込まれまいとパラシュートで飛行機から飛び降りた。
「冬田さん、向こうへ羽根を飛ばせ!」
「は、はあい!」
三河口と冬田は西川の元へ急ぐ。
「久しぶりだな、西川」
「お前!!」
西川は嘗て清水市内の高校へ潜入した時、その男子高校生と会っていた。その時はやられてしまったが彼の能力を写し取り、異能の能力を出す機械の生産に成功させた。
「さて、『あの時』のお返しといくか」
(覚えていたのか!!)
「ア、アンドリュー!早くしろ!」
「ああ!」
西川が三河口の威圧の能力を受ける。アンドリューは呪文を唱えようとした。
[我こそは開拓と発展に尽くすも・・・]
だが、湘木の斧で出現させた大木の枝がアンドリューを殴り飛ばし、妨害された。
「こいつ!」
アンドリューは仕込んでいた銃を出し、湘木を攻撃する。
「湘木!」
「なに余所見してやがる!」
西川が三河口の隙を突く。だが、見えない何かが攻撃してきた。もと子の玉が影となって西川を弾き飛ばしたのだった。
「こいつは私達が相手しとくわ!」
「ああ、ありがとう!」
三河口は湘木の元へ行く。湘木の方には武装の能力の影響で銃弾は全く当たらなかった。そしてもう一度斧を振るい、アンドリューを攻撃する。しかし、何も起きなかった。
「な、何だ!?」
「この銃で貴様のその斧は使えなくさせた!もうその斧はガラクタ同然だ」
「な・・・!?」
「貴様のその能力もすぐに無効化させてやるぞ!」
だが横やりが入る。
「冬田さん!やれえ!」
「は、はあい!」
冬田の炎の攻撃がアンドリューを襲う。
「貴様らにはこの毛布を喰らいな!」
アンドリューが毛布を冬田と三河口が乗る羽根に向けて投げた。しかし、避けられる。
「これはどうだ!?」
アンドリューが発砲する。冬田の羽根に当たる。羽根が縮んでしまい、二人は落下する。
「・・・な!?」
「キャアア!」
二人は纏めて地面に落とされた。
「健ちゃああん!!」
さりが絶叫する。
「羽柴さりさん、こちらの手当てが私がやりますので向こうへ!」
「うん!」
さりは向かう。
(健ちゃんは他の皆と違って道具がない・・・!!あのアンドリューが異能の能力を封じさせたら何もできなくなる!健ちゃんに、戦える道具があれば・・・!!」
さりはそう願っていた。その時、護符が光り出す。
「これで天然痘にかかれ!」
アンドリューが三河口と冬田、そして湘木に向かって天然痘を媒介する毛布を投げた。
(何もかも終わりか・・・!?)
三河口は絶望した。しかし、三河口の腕に何かが落ちる。棘が付いた鉄球で鎖がついている。
「健ちゃん、それ使って!!」
さりの声がした。
「は、はい!」
三河口は兎に角その鎖鉄球を地面に投げつけた。地面が爆発し、毛布を吹き飛ばす。
「何!?」
アンドリューは予想外の事態に驚いた。そして何があったのか考える暇もなく鎖が巻き付かれる。
(く、鎖だと!?)
アンドリューが三河口の近くに引き寄せられる。そして威圧の能力が混じった睨みがアンドリューを襲う。そして三河口はさらにアンドリューを強く締め付ける。アンドリューは気絶した。
「が、がああ・・・」
「よし、俺が決めてやる!」
湘木が能力が使えなくなった斧でアンドリューを力任せに斬首した。アンドリューは光となって消えた。
一方、もと子やさきこ、長山に尾藤、清正と交戦している西川はアンドリューが倒される様を確認した。
「アンドリュー!」
西川は銃や手榴弾などで長山達と応戦していたが、そこに先程戦闘不能にされた本山がトランペットの音波とさきこのサファイアの力が強まって西川を気絶させた。
「やったか・・・」
「君達、助けてくれてありがとう」
本山は礼をした。
「いや、それほどでも・・・」
長山は謙遜した。
「あの時助けてくれたお返しをする事になったわね」
「はい、確かに」
「私の方もこちらの方の怪我を完全に治す事ができました」
テレーズによる吹山への応急処置は完了していた。
「ありがとう!動けるようになったよ」
「良かったな!お前が死んだら俺達も生きていけなくなるとこだったよ!」
長岡が喜んだ。
「おいおい、こんなところで・・・」
「そうだ、本部に連絡した方が良いのでは?」
清正が促す。
「そうだったわね」
さりは通信機を出した。
「こちら羽柴さり。護符を狙う者達を返り討ちにしたわ。それから赤軍が一人のびてるけどどうする?」
『こちらフローレンス。了解しました。私が回収致します。少々お待ちください』
フローレンスからの返答が出た。
「こやつが起きんようにしとく必要があるな」
清正は時の槍を西川の近くに突き刺した。
「こやつが感じる時は止まったままだ。暫くは起きん」
「ありがとな、清正」
尾藤は礼をした。さりは従弟の方を向く。
「健ちゃん、剣を本部に持ってったの?」
「はい、今本部の一室に保管してあります。これから杖か杯を取り返しに行こうかと思い、まずかよちゃんの杖を取りに行くつもりです」
「そっか、大変よね。杖も杯も取られて。ゆり姉もあり姉も行ってんでしょ?」
「はい、ゆりちゃんは杯を取りに、ありちゃんは俺の友達と一緒に杯の持ち主の子を探しに行っております。はて、この鎖鉄球、ありがとうございました」
三河口はさりに鎖鉄球を返そうとした。
「ううん、健ちゃんが持ってて」
「え?」
「健ちゃんは武器持ってないし、私は健ちゃんの武器をあげたいって気持ちがあってそれを出したんだから、それ使って」
「はい・・・」
(仮の武器には丁度いいか・・・)
「それでは俺達は先へ向かいます」
「頑張ってね」
「その杖を必ず取って来いよ〜!」
「吹山、プレッシャーかけんなよ」
「ワリイ、ワリイ」
本部守備班達に見送られて三河口、湘木、冬田は羽根でその場を飛び去った。
(自分の道具を手にするのはまたずっと後になっちまったか・・・)
そして三河口は自分の武器となった鎖鉄球を見る。
(さりちゃん、それまでこれを自分の得物として振るいます。それから・・・)
三河口は敵の世界の本部で相対した戦争主義の世界の長と一体化したあの少年を思い出す。
(レーニン、いや、杉山君か・・・。俺のもう一つの目的は杉山君を連れ返し、レーニンを倒して彼が大将になれたか改めて判断する事だな・・・。ありちゃんやりえちゃんが果たせなかった杉山君を連れ返すという役割を引き継ごう・・・!!)
三河口は己の目的を顧みながら湘木に冬田と共に先に進む。
レーニンはトランシーバーで報告を受ける。
『こちら東アジア反日武装戦線、佐々木規夫。奥平純三と合流しました。そしてロベスピエール、ダントン、マラーといったジャコバン派の主力達と同行します』
「解った。奴等は杖を取り返す為に奥平純三を追うつもりだ。足止めしておけ」
『はい』
通信が終了した。そして一軒の屋敷が見える。レーニンは杉山の姿に変わった。
「着いたか。ここに『アイツ』がいるんだな?」
『ああ、早めに済ませ』
杉山はその屋敷の門を通った。そしてレーニンの姿に戻る。
「私だ。レーニンだ」
「はっ、お通し致します!」
守衛に通されてレーニンは中に入る。一人の男が出迎えた。
「これはレーニン様」
「紂王。例の小童と杯の持ち主の小娘に会いに来たいと私の身体の核が言うので来たのだ」
「はい、ご案内致します」
レーニンは目的の少年少女の所へ向かう。
後書き
次回は・・・
「立ちはだかる妨害者」
りえの救出に向かうあり達は馬車に乗る者達を発見する。乗っていたのは戦争主義の世界の人間でさらには東アジア反日武装戦線の人間も乗っていた。そしてその手は杖を取り返そうとするかよ子達の元にも及ぶ・・・!!
229 立ちはだかる妨害者
前書き
《前回》
さりの護符を狙う赤軍の西川と戦争主義の世界の人間・アンドリューと交戦するさり達の元に冬田、湘木、そして三河口が加勢した。だが三人の加勢をもってしても西川の飛行機やアンドリューの天然痘を媒介する毛布に翻弄される。その時、さりの護符が道具を持たぬ三河口に道具があればという願いより光だし、三河口の元に棘付きの鎖鉄球が現れる。三河口はその鎖鉄球を使用する事で湘木と共にアンドリューを討滅し、西川をまる子の姉の宝石と本山こういちのトランペットの能力で戦闘不能にした。そしてフローレンスによる西川の回収をさり達は待ち、三河口は杖の奪還の為に鎖鉄球を仮の得物として湘木、冬田と共に先へ進むのだった!!
かよ子は自分の奪われた杖を取り返す為に羽根を急がせていた。そんな時通信機が鳴る。
『こちら三河口。俺達も杖の取り返しに協力するよ。追い付くか解らんけどね』
「う、うん、ありがとう・・・」
『全く、とんだおっちょこちょいをやってくれたな』
「ご、ごめんなさい・・・」
かよ子は以前、蘇我氏の人間に杖を騙し取られて三河口に叱責を喰らった事があったので彼にも申し訳なく思っていた。
(お兄ちゃんにまで迷惑かけちゃった・・・)
「山田かよ子、落ち込むな。手を差し伸べてくれる者が増えたという事だ」
「う、うん、そうだよね・・・」
かよ子は気を取り直した。兎に角今は奥平を追うしかない。
「それでりえちゃんはピアノが得意なんです。今度の春は全国ピアノコンクールに出る予定なんです」
「ピアノが得意なのね・・・」
奏子は今自分が助けに行こうとしている安藤りえという少女の事を彼女の友達というみゆきと鈴音から聞いていた。
(ピアノ・・・。かず子ちゃん、どうしているのかしら?)
奏子はその安藤りえという少女と近所に住む知り合いの笹山かず子という少女との共通点からその知り合いの少女の事が頭に浮かんだ。
「かよちゃんの杖が取られたってまたとんでもない事になったわね」
ありや悠一はかよ子の杖が取られたと言う報告を受けていた。彼女達も手助けしたい気持ちはあったが杯の所有者の安否も心配であり、自分達の行動も中断する訳にもいかなかったのである。
「ああ、だが他の奴に頼むしかないな。こっちも先を急いでいるし」
「うん」
その時、濃藤と北勢田が敵襲の予感を感じ取っていた。
「敵が来てるぞ。しかも複数だ」
「何だと!?皆の者、用意するのだ!」
同行していた項羽も戦闘態勢に入る。
「あっちやな!」
鎌山が鎌を振るう。風の刃を飛ばした。地面で爆発し、馬車が数台あった。
「貴様ら、何だ!?」
馬車から人が降りてきた。三人、フランスの革命家のような人間が現れた。そしてもう一人、別の男もいた。
(あの男は・・・!!)
「お前、東アジア反日武装戦線だろ!?」
「お前らはいつか杯を奪うのに邪魔した奴らか。よく分かったな」
ありは神を呼び起こす。そして風の神、レラカムイが現れた。
「今はお前らの相手をしている場合ではないのだ!!」
革命家のような男がギロチンの刃を出現させた。あり達の首を襲うが武装の能力で何とか防ぐ。レラカムイも他の皆を襲う刃を何とか破壊した。
「しぶといな!だが、ギロチンはこれだけではないぞ!八つ裂きにしてくれる!!」
男は更にギロチンの刃を出して一行を襲った。
「させませんわ!」
「くたばってたまるか!!」
濃藤が運命の剣を突き刺してギロチンの刃を止める。そして虞美人が花を出現させて皆を花の光を浴びせて瞬間移動した。
「行っちまったか」
「まあ、俺達の相手はあいつらじゃねえ。先へ行くぞ」
四人は留めを刺さずに何処かへ行ってしまった。
あり達が移動した場所は戦闘現場からそう遠くはなかった。
「逃げられた・・・?」
「本来ならば容赦なく我々を殺める筈だ。それをしないというのは他の用件があるのだろう」
「それなら奴等を捜索するか!?あり、神には鳥の神もいた筈だ」
「ええ、今出すわ」
ありは別の神を召喚する。鷲の神、カパッチリカムイと鳶の神、ヤトッタカムイが現れた。
「2匹共、反日武装戦線の男と連れの三人を追って!」
「了解」
2匹は敵を捜索しに向かった。
反日武装戦線の一人・佐々木規夫はカムイを使う女達から逃れてロベスピエール達と共に杖の所有者の始末の為の同行を続けた。
「全く、邪魔が入りやがって」
「気にするでない。あの反逆者達は我が妹に出向かわせておく」
ロベスピエールはベルを鳴らした。
『お兄様、お呼びですか?』
ベルから声が聞こえた。
「中央当たりのカムイとか叫ぶ女がいた。そいつらを同志達と共に片付けて来い」
『はい、オーギュスタンも連れて行きます』
「よし、頼んだ」
通信が終了した。
「我が妹のシャルロットや弟のオーギュスタンに倒させる」
「それなら追われる心配ないな」
佐々木は安堵した。
本部の管制室。かよ子達の同行を先代の杖の所有者・山田まき子は確認しながら娘を心配する。
「かよ子は敵の本部に近づいてるけど、杖を持って行った人はそこに運んでるって事?」
「そうなるね。おそらく本部に持ち込んで保管するか、あるいは剣を取り返された後だからその先を考えて別の場所に運ぶかもしれない」
イマヌエルが説明した。
「それに安藤りえ君の杯も戦争主義の世界の本部に置いているような形跡が確認できないから他の場所に保管して眩ませるかもしれない」
「杯は今、何処にあるのか分からないの!?」
りえの母は尋ねた。
「ああ、安藤りえ君は今通信機を没収されたらしく、途中で彼女を位置を示す点が消えてしまっているんだ。杯は今彼女と同じ場所にあるのか、それとも本部か、それとも誰かが持っているのか・・・」
「この地図には載らないの?」
「残念ながらこの地図にはその道具の行方は反映されないんだ。神通力などの能力を持つ道具の所有者に頼らざるを得ない」
「そうなの・・・」
「それにしても山田かよ子君達の所に東アジア反日武装戦線か日本赤軍、そして戦争主義の世界の人間が近づいている!」
「ええ!?」
「それからこの者達はフランスで革命を起こしたにも関わらず恐怖政治を行ったロベスピエールの連中だ!!」
「ロベスピエール・・・!?」
「羽柴奈美子さんの娘の煮雪あり君達と先程戦っていた相手だ!」
「ありが!?」
先代の護符の所有者は地図を確認する。安藤りえを取り返しに行かんと動く次女の点があった。更に夫の悠一やりえの友達、彼女らの協力者もいる。
「ありも追い掛けてるみたいなんね」
「もしかしたらかよ子達と合流するかも」
「兎に角、連絡しておこう」
「私がやるわ」
まき子は通信機を取り出した。
かよ子達の元に通信機が鳴る。
「こちら山田かよ子」
『かよ子、お母さんよ』
「お母さん!?」
『今かよ子達の所に敵が来てるわ!準備するのよ!』
「で、でも、杖がないと・・・」
『その羽根で守ったりするのよ!後は他の皆に任せるなりすればいいわ』
「あ、うん!」
(そうだった・・・。またおっちょこちょいしちゃったよ)
「よし、山田かよ子!我々を羽根から降ろして戦闘態勢に入らせるのだ!お主は羽根で我々を結界で守るなどをせよ!」
「うん・・・!」
次郎長の命令でかよ子は羽根を降ろし、皆はそこから降りた。
「何奴、出会え!」
友蔵は歌舞伎の真似をしながら吠えた。
「爺、お主は羽根から降りんでも良かったんじゃねえか?」
仁吉は言った。
「じゃが、儂はまる子を守る為に・・・」
「死んでもしらねえよ!」
その時、爆発音が遠くから聞こえた。
「来たか!?」
次郎長は刀を降るう。爆風がかよ子達の元へと襲って来た。それを次郎長の刀によって地面の壁が作られ防がれた。
「来たか、奴等が!!」
その時、次郎長が作り出した土の壁が粉々に八つ裂きにされた。
「何!?」
かよ子達に無数のギロチンの刃が飛ぶ。
「い、嫌ーー!!」
かよ子の防御の武装の能力が発動された。ギロチンの刃は弾かれ、消滅した。
「はあ〜、ワシゃ死ぬかと思ったよ」
友蔵が安堵した。
「我らのギロチンを異能の能力だけで回避するとは相当面倒臭い奴等だな」
四人の男が現れた。
「貴様らが我々の妨害者だな!?」
「ああ、取った杖を奪い返されんようにせよと房子様から言われているんでな!」
「ダントン、マラー、戦闘開始だ!」
「よし!」
「くたばって貰うぞ!」
杖を取り返すにはこの集団を突破しなければならない。
「マラー、あの小娘を殺しに行けるか!?」
「あいよ!」
マラーと呼ばれた男は動き出す。
「なぬ!?させるか!」
石松や小政、綱五郎の迎撃をかわしてマラーはかよ子へと近づく。
「な・・・!」
「さて、お嬢ちゃん、手術の時間だ」
かよ子は目を瞑る。マラーは跳ね飛ばされた。
「流石、異能の能力だな。先ずはそれを消させて貰うように施すか!」
「かよちゃん!」
「山田!」
まる子や大野、ブー太郎がかよ子の防御に動く。
「おおっと、お前らは俺が始末してやる。この佐々木規夫がな!」
大野達の前に東アジア反日武装戦線の佐々木が立ちはだかる。そして大地に地割れを起こし、三人の小学三年生は地割れの裂け目に落ちる。
「ま、まるちゃん、大野君、ブー太郎!!」
かよ子は絶叫した。
後書き
次回は・・・
「ジャコバン派の三巨頭」
東アジア反日武装戦線の佐々木、そして戦争主義の世界の人間・ダントン、マラー、そしてロベスピエールと交戦するかよ子達。マラーの術によって異能の能力が使えなくなってしまったかよ子、そして地面の裂け目に落ちた大野、ブー太郎、まる子は無事なのか・・・!?
230 ジャコバン派の三巨頭
前書き
《前回》
杯の所有者・安藤りえの奪還に動くあり達は馬車の部隊を発見する。馬車から出て来た者達はギロチンの刃を出して攻撃してきたが、虞美人の瞬間移動の能力で瞬間移動した事でその場を何とか切り抜けた。そして杖を奪われ、奪還しに行くかよ子達の元にギロチンの刃を飛ばす者達が現れる。そして東アジア反日武装戦線の佐々木則夫も現れ、地割れでまる子、大野、ブー太郎が地中へと落ちてしまう!!
あり達は先程交戦した東アジア反日武装戦線の一人と革命家のような男三名を追っていた。
「奴等はあっちの方角です!」
北勢田が指を差した。
「よし!」
その時、通信機が鳴る。
『こちらイマヌエル。先程君達が戦った相手だが、彼等は嘗てフランス革命を指導したが後に恐怖政治を行って民衆に圧力を掛けた男達だ!』
「こちら煮雪悠一。了解した!」
『それから君達の所にまた敵が攻めて来ている!気をつけよ!』
「はい!」
通信が終了した。
「何処だ、一体!?」
濃藤は運命の剣を差し出す。剣を差した方角の更に先を見透かした。そしてまた別の敵が来ているのを確認した。
「あいつらか!」
(この遠距離で奇襲できるか!?)
濃藤は自分の通信機で本部にまた連絡する。
「こちら濃藤徳嵩!俺の運命の剣で遠方の敵を確認した!俺の剣で相手に近づかずに攻撃できるか!?」
『こちらイマヌエル。大丈夫だ。普通にやるとよい』
「了解!皆、俺の剣で敵の正体が見えたぞ!」
皆は濃藤の剣の先を見た。丸く映像のように敵が映し出されている。
「よし、俺が蹴散らしてやる!」
立家の手甲爪から電撃が放たれる。
「俺も手伝うぜ!」
北勢田も電気の矛で放電する。丸く映った映像を通して敵にダメージを与える事に成功した。
「でもなんとかしてぶつからないようにしたいわね・・・」
ありは懸念していた。かなり多くの人間がいるので、全員倒す前に直面してしまう可能性もあるのだ。
(当たらないようにする・・・。そうだ!!)
奏子はある事を思い出した。剣の奪還に成功し、戦争主義の世界の本部から遠ざかる際に剣を持っている事がバレないよう、自分の羽衣に三河口と濃藤を乗せた時、濃藤の剣を自分の羽衣に刺して姿が見えないように飛んでいた事があった。ここで同じ手が使えるか。
「私、バレないように移動できるやり方があります!」
「奏子ちゃん!?」
「濃藤君、剣を私の羽衣に刺せる?」
「え?どうすんだ!?」
「三河口が取って来た異世界の剣を運ぶ時と同じように羽衣に乗ってる私達の姿を消すの!」
「そうか、それなら何とかなるか!」
「よし、攻撃は中断だ!先を急ごう!」
悠一が北勢田と立家に呼び掛けた。
「了解!」
濃藤は剣で遠方透視をやめて奏子の羽衣に刺した。そして羽衣の速度を上げて先を急ぐ。
佐々木規夫の地割れ攻撃でまる子、大野、ブー太郎が地面の裂け目に落ちる。
「ま、まるちゃん、大野君、ブー太郎!!」
「まる子お〜!!」
友蔵が絶叫し、その場で泣き崩れた。
「おっと、爺さん、泣き喚くな」
佐々木が友蔵を射殺しようとする。だが、大政の槍がそれを防ぎ、大政は友蔵を羽根の上に乗せた。
「待ってくれ、まる子が、まる子があ〜!!」
「アンタはここにいろ!」
大政はその場で友蔵を監視し、止めた。
「おっと、嬢ちゃんの手術を施そう」
マラーが近づいている。
(先程の能力では跳ね返されるな・・・)
マラーは1メートルの所で接近するのをやめ、ナイフのような物を取り出した。
「な、何するの・・・!?」
かよ子は慌てて武装の能力を発動させる。しかし、マラーは跳ね返りも倒されたりもしなかった。
「貴様の異能の能力は解除させた。さて、これで死んで貰う!」
だが、マラーは全く動けなくなった。
「な、う、動けん!?」
「させるかよ!」
「お前は周りが見えとらんな」
関根が忠治の刀で金縛りにさせ、綱五郎がマラーのナイフを刀で弾き飛ばした。
「ふ、それで私を倒せるとでも?」
マラーは余裕だった。ギロチンの刃を発動させる。関根も綱五郎も何とかギロチンを刀で弾きかわすのが精一杯だった。
「山田かよ子、羽根に乗れ!」
「う、うん!!」
かよ子は慌てて羽根に戻る。
(まるちゃん達は・・・!?)
かよ子は羽根の上から地面を見下ろす。まる子達が落ちた地面の裂け目を確認した。
(どうしよう、まるちゃん達が襲われたら私のおっちょこちょいのせいだ・・・!!)
かよ子はオロオロした。その時、脳内で声が聞こえる。
[かよちゃん、私よ、のりちゃんの人形、キャロラインよ]
「キャロライン!?」
[今まるちゃんと大野君とブー太郎君は私の瞬間移動能力で別の場所に移したから心配しないで!]
「あ、ありがとう!」
かよ子はのり子の方を見る。のり子はキャロラインと合体しており、ギロチンの刃を粉々にしていたのだった。
(のり子ちゃんに助けられた・・・か)
のり子は石松、お蝶、大五郎と共にまた別の革命家と対峙していた。
「このダントン様に楯突くとはいい度胸だ!」
四人にギロチンの刃、そして指から光線を放つ。ギロチンをかわしても光線が更に襲って来る。お蝶がまともに光線に当たってしまった。
「奥方!!」
「う、動けぬ・・・!?」
「その光線に当たったら動けなくなるぞ!ハハハ!!」
ダントンは動けなくなったお蝶にギロチンを向けた。だが、激流で流された。
「汚い手を使うな」
椎名の玉の能力だった。
「貴様か!大人しくやられて貰おうか!」
ダントンがギロチンの刃と光線を椎名にも向ける。椎名の武装の能力も相まって中々効かなかった。
(わ、私はどうしよう!?)
かよ子は高見の見物状態で何もできない自分が歯痒く思った。その時、銃撃と爆発がかよ子の羽根を襲う。
「うわあ!!」
結界が発動した為まともなダメージは受けなかったが、かよ子は驚いて羽根から落ちそうになってしまった。
「能力が使えなくなっても羽根は使えるのか!マラー、あの羽根も何とかできるか?」
「やってみよう」
マラーがメスのようなナイフをかよ子の羽根に向ける。大政も迎撃態勢に入る。
「させるか!」
マラーの手を炎が襲った。
「あちちち!!何だ!?」
マラーは火傷で手からメスを放してしまった。
「まるちゃん!ブー太郎!大野君!!」
地割れで埋められたと思われたまる子、大野、ブー太郎が現れた。
「おお、まる子!良かった!!」
友蔵は孫が生存していた事での感動の涙を流した。
「生きてたのか!」
「私のキャロラインの能力よ!」
のり子が名乗った。
「チッ!」
その一方、次郎長はギロチンの刃を投げる男の一人と刀とギロチンを交えながら問答する。
「一体貴様らは何者なのだ!?」
「私はロベスピエール。マラー、ダントンと共に革命を指揮したジャコバン派の三巨頭だ!」
「ジャコバン派・・・。恐怖の独裁とやらをやった連中か!」
次郎長達はロベスピエール達のギロチンを防御し続け、持久戦を強いられる。
シャルロットにオーギュスタン。彼等は革命の同士達を連れて先程兄が戦ったという人間を始末しに出向いていたが見えない奇襲を受けた事で事態が混乱していた。
「な、何だったのかしら・・・!?」
「姉貴、我々の見えん所から攻撃して来たんだ!遠隔攻撃だ!」
「もしかして、この周囲の何処かにいるのかしら?」
シャルロットは周囲を確認する。しかし、何も見えなかった。
「何処だ、姿を現しなさい!!」
しかし、返事は聞こえず、姿も何も見えなかった。
「何も見えないんじゃしょうがない。もしかしたら我々の目に見えない所を通り過ぎたかもしれないよ!」
「何ですって!?」
シャルロットは策の立て直しをするしかないと思った。
「よし、四方に分かれましょう!オーギュスタン達、先へ行きなさい。私は一度引き返すわ!他の物は本部側、敵の領土側に行きなさい!」
軍団は分割した。
羽根に乗ったかよ子と友蔵を守るべく組織「次郎長」の三人組、大野、ブー太郎、まる子は各々の石を使ってマラーに佐々木と交戦する。
「てめえら!今度こそ死にな!」
佐々木が銃を地面に撃ち、別の地割れを発生させる。
「二度と同じ手を食うか!」
大野の草の石が発動される。茎や蔓が地面の裂け目を繋ぎ、ハンモックのようになった。
「ふふ、そんな脆いもん、切り刻んでやる!」
マラーがギロチンを飛ばす。
「ま、まる子ーー!!頼む、孫だけは〜!!」
友蔵は孫の命乞いをしたが、羽根から落ちそうになり、かよ子と大政に静止された。だが、ギロチンの動きが止まる。大野の草の石で出した太い蔓がギロチンを全て掴んで止めていたのだった。
「大野君、凄いブー!」
「ああ、ブー太郎、さくら、今だ!」
「うん!」
ブー太郎は水の石を、まる子は炎の石でマラーと佐々木に攻撃する。
後書き
次回は・・・
「共闘戦線を張る」
ジャコバン派のロベスピエール、ダントン、マラー、そして東アジア反日武装戦線の佐々木則夫と抗戦する藤木救出班だったが、なかなか倒せず一進一退の攻防が続く。杖がないかよ子は羽根の結界で防御するしかできなかった。そんな時、その戦闘現場にあり達が現れる・・・!!
231 共闘戦線を張る
前書き
《前回》
東アジア反日武装戦線の佐々木則夫の地割れ攻撃でまる子、大野、ブー太郎が地面の裂け目に落ちそうになるが、のり子の人形・キャロラインの能力で三人は別の場所に移動された事で事なきを得る。だがかよ子の武装の能力がマラーの術で使用不能にされてしまい、羽根の結界に頼るのみとなってしまった。だがのり子の人形で瞬間移動されたまる子、大野、ブー太郎の三人が反撃に出る!!
ロベスピエール達を追うあり達は濃藤と奏子の道具で人目に見られずに移動していた。そして通り過ぎる集団を見下ろす。
「あいつらだよ。さっき近づいていた奴等は」
濃藤は確認した。
「ならほっといて先に行こう」
その時、通信機が鳴る。
「こちら煮雪あり」
『あり、私よ、母さんよ』
「母さん!?」
『さっき、あり達が戦った人達いたでしょ?そいつら、今かよちゃん達と戦ってるんよ!』
「かよちゃんと?」
『うん、あり達が向かう道とはそんなに外れてないから援護してあげんさい!』
「は、はい!」
ありは母の命令に畏まった。
「あり、かよちゃん達と共闘する事になるのか?」
「うん、そうね。さっさと片付けた方がかよちゃんも杖を取り返すのに専念できるかしらね」
あり達は急いでかよ子の救援に向かう。
かよ子達は東アジア反日武装戦線の佐々木規夫にジャコバン派の三巨頭・ロベスピエール、マラー、ダントンと交戦中だった。大野、ブー太郎、まる子の三人が佐々木とマラーを力の石で攻撃する。
「やったかブー!?」
しかし、マラーのギロチンの刃が全てを相殺させていた。
「ダメだったか!!」
「この革命の証であるギロチンを甘く見るな!」
マラーのギロチンが三人を襲う。
「ももこちゃーーん!!」
キャロラインと合体したのり子はまる子達の方へ目を逸らしてギロチンの刃を止めた。
「この野郎!だがそれだけで済むと思うな!」
マラーはメスを出した。のり子とキャロラインの合体が強制的に解除されてしまう。
「な・・・!」
「小娘、お前をまず殺す!」
「の、のりちゃん!」
まる子は慌てて先に進もうとするが、佐々木が立ちはだかる。
「あのガキを助けたかったら俺を倒してからにしな!」
「くう!」
まる子は炎の石で火炎放射した。佐々木も銃で迎え撃つ。まる子は何とか炎の壁で守ろうとするもその場で爆発が起き、向かい火をつけられた。
「さ、さくらが焼き殺されるブー!」
ブー太郎は慌てて水の石で消火した。しかし、その間に佐々木は先に進んでかよ子の乗る羽根に近づいていた。
「次はお前だぜ」
「い、いやじゃ〜!命だけは、この老いぼれジジイの頼みを聞いてくれ〜!」
友蔵の無駄な命乞いをよそにかよ子は羽根の結界を発動させ、大政も槍で対抗する姿勢を見せた。
(私の所に来る!)
かよ子は先程のマラーの術で異能の能力は使用不可となっている。自分が戦うには羽根の結界に頼るしかない。
「ここで死ぬ訳にいかないよ!」
一方、ダントンを相手にする関根や椎名、石松らはギロチンと光線の併用で防戦一辺倒になっていた。
「あの光線に当たっても、ギロチンに当たっても致命的だ。分担だ!」
「おう!」
椎名と関根は光線の防御を、石松や綱五郎、小政や大五郎も加わった面々がギロチンの防御に出る。小政が身体の小ささを活かしてダントンの背中に回り込んだ。
「喰らえ!」
「近づけても無駄だぞ!」
ダントンの背中からギロチンの刃が飛び出した。小政は慌てて刀で回避した。
(ちい、近くからでも遠くからでもやられねえなんてよ、面倒臭え野郎だぜ・・・!)
小政は幾度も近接攻撃を仕掛けようにも悉くギロチンで防御されてしまう。
ロベスピエールを相手に戦う次郎長や大五郎、綱五郎、仁吉などは速攻かつ自在にギロチンで攻撃・防御を繰り返す相手に打開策が見つからず、持久戦を強いられていた。
「こうしてい続けられるのも時間の問題だぞ!」
「くう・・・!」
親分の次郎長ですら体力が消耗し果てていた。
(くう、この状況を打破できる手を見出す事ができれば・・・!!)
かよ子の羽根の元へ佐々木の銃撃が襲う。だが結界で何とか防御を続ける。
「お前のその羽根の結界は中々の硬さだな!」
「そ、そんな銃で穴開けられるほど脆くないよ!」
かよ子は言葉で対抗する。
「そうじゃ、そうじゃ、無駄な事を何度やっても無駄じゃぞ〜。ははは!」
友蔵は勝ち誇ったかのような言い方をした。対して佐々木は別の銃を取り出した。
「ならこの銃が赤軍の岡本公三の神の能力が流し込まれれていたらどうなるかな?」
「神の能力・・・?まさか!」
かよ子は気づいた。この男がこの羽根に宿る仏法の結界を破る術を持っているという事に。
次郎長は何とか考えながらも刀を振り続ける。その時だった。ギロチンの刃が一瞬、消滅した。
「何、消えた!?」
そして、次郎長の刀がロベスピエールの首を撥ねようとする。しかし、ロベスピエールは何とか回避した。
「遅くなってすまん。大丈夫か!?」
「お、お主は!?」
次郎長達、ダントンと交戦する石松達、そしてマラーや佐々木と交戦するかよ子達も確認する。佐々木はかよ子の羽根に銃を向けたが二匹の鳥が現れて佐々木の弾丸を防御した。
「あれ、隣のおばさんの所のお姉さん!!」
かよ子は一集団の到着を確認した。護符の所有者の姉・煮雪ありとその夫・悠一、杯の所有者の友達の藤沢鈴音と溝口みゆき、そして見知らぬ男子高校生二名、三河口の友人である濃藤徳嵩、北勢田竜汰、徳林奏子、そしてこの世界の人間と思われる人々がいた。
「追いついたわね」
「貴様ら!?な、シャルロットやオーギュスタンはどうしたんだ!?」
ロベスピエールは先程戦った相手を見て驚愕する。
「上手く会わずにすり抜けてやったんだよ!」
「やっつけさせてもらうよ!」
援軍が現れた中、戦いが再開される。
本部の管制室。まき子達は杖の所有者の元に援軍が駆け付けた様子を確認した。
「どうやら煮雪あり君達の到着が間に合ったみたいだ」
「よかった、かよ子・・・」
「あり、何とかするんよ」
まき子と奈美子は娘達の健闘を祈る。
かよ子達藤木救出班は杖の所有者の救出に向かう者達と合流した事でその面々と共に共闘する事になった。濃藤や立家、鎌山、項羽に虞美人はロベスピエールの方を、北勢田、悠一、シャクシャインや阿弖流為、母禮はダントンを相手に、そしてありや奏子、鈴音やみゆきはマラーや佐々木との戦いに加勢する。奏子はそれぞれを羽衣から降ろし、あり達と共にかよ子の元へ急いだ。
「幾人来たって無駄だ!」
「どうかしら?」
鈴音が錫杖を振る。冷凍攻撃でマラーを凍らせる。
「くそ、寒い・・・、動けん!!」
「マラー!くそ、神よ!」
佐々木は上空に銃を打ち上げた。巨大なマリアが出現する。
「あれは・・・、クリスマス・イブに見た!」
かよ子はあの聖母マリアを思い出した。クリスマス・イブの日にさりの護符を守る為に名古屋で赤軍と激しい戦いをした時に岡本公三という男が出した聖母マリアだった。
「エク・カムイ!!」
ありが唱える。アイヌの神のうち、風を司るレラカムイ、雷を司るカンナカムイ、そして大地を司るシラムパカムイが現れた。
「神を使うなら私が行くわよ」
神同士の戦いが始まる。
後書き
次回は・・・
「独裁者達の玉砕」
かよ子達藤木救出班にあり達の加勢でジャコバン派の人間達、そして佐々木が召喚した岡本公三の聖母マリアに共同で対抗する。果たしてかよ子達はこの戦いを乗り切る事はできるのか。そしてレーニンと杉山はある場所へと向かっていた・・・!!
232 独裁者達の玉砕
前書き
《前回》
ダントン、マラー、そしてロベスピエールのジャコバン派の人間、そして東アジア反日武装戦線の佐々木則夫と交戦するかよ子達の元にりえの救出を目的とするあり達も援軍として現れ、共闘する事になる。そして佐々木は赤軍の岡本公三の能力をそのまま再生できる銃を使用して聖母マリアを召喚する。そしてありも3体のカムイを召喚する。神と神の戦いが始まった!!
ありは羽衣から降り、奏子に命じる。
「奏子ちゃん、かよちゃんの所に行ってあげて、何かあったら羽衣で守るのよ」
「はい!」
奏子は他の皆を降ろしてかよ子の所へ行く。
「かよちゃん、私が守るわ!」
「あ、ありがとう・・・!!」
ありは三人と二羽の神でマラーを襲う。
「私も行くよ!」
みゆきがブーメランを投げた。ブーメランがマリアを襲う。しかし、マリアは神という存在である為か、効果が薄い。
「だめ・・・!?」
「みゆきちゃん、鈴音ちゃん、こいつらを狙って!」
「うん!」
鈴音が錫杖でマラーを引き続き凍らす。
「たかが私を凍らせただけでいい気になるな!」
マラーの身体からギロチンが飛び出し、氷を粉砕する。そして鈴音とみゆきを襲う。
「おっと!」
みゆきがブーメランを投げる。ブーメランから光線が乱射され、ギロチンを粉々に砕いた。
「それならこれだ!」
マラーがメスをみゆきに向けた。
「させるか!」
大野が草の石でマラーの襲撃を試みる。しかし、巨大な木の枝がギロチンで破壊された。
「これならどうだ!?」
大野は別の石を出す。親友だった杉山の石だった雷の石を出す。ギロチンが電撃で破壊された。
「くおお!!」
マラーがまともに電撃を喰らう。鈴音も錫杖で炎を出現させ、マラーを焼殺する。まる子の炎の石で更に強力な炎となる。マラーは雷と炎の攻撃によって黒焦げにされて消滅した。
「あとはあいつだ!」
皆は佐々木を相手に向ける。
ダントンと交戦する事になった北勢田は悠一やシャクシャイン達と共に纏めて襲い掛かる。北勢田は矛で電気の龍を作り出し、龍がダントンを噛み砕こうとする。
「ふん、そんなもの、壊してくれる!」
ダントンのギロチンが機械の龍を破壊しようとする。だが、同時に北勢田の矛から電撃が放たれ、ギロチンをあっけなく黒焦げにしてその場に落下させた。
「な、我がギロチンがそんな電撃ごときに・・・!?」
「貴様は私らが成敗させて貰う!」
シャクシャインや阿弖流為、母禮が攻め込む。悠一のテクンカネの能力が発動される。シャクシャインが地面の爆発を起こし、阿弖流為の水流攻撃、そして母禮の砂を利用した槍がダントンを狙った。
「我が攻撃はギロチンだけではないぞ!」
ダントンは光線を放つ。各々の攻撃を防御し、そして光線は母禮に当たった。母禮は身体が硬直したように動けなくなる。
「母禮!」
「気を付けよ!奴の光線に当たったら動けん!」
石松達が警告した。
「出向いただけ無駄になったな!」
「この野郎!」
シャクシャインが引き続き地面の爆発で攻撃する。ダントンは吹き飛ばされるが、同時にギロチンがシャクシャインや石松達の方向へ向かって来た。
「な!」
慌てて石松は刀で回避、大五郎は法力で無効化した。
(あいつの光線とギロチンを何とかしないとな・・・!!)
悠一のテクンカネが光る。同時にダントンが戻って来た。
「纏めて静粛してくれる!」
だが、母禮が再び動けるようになり、刀の風圧でダントンを斬りつけた。
「何、貴様は動けないはずじゃ・・・!?」
「俺のテクンカネで動けるようにしたんだよ!」
更に悠一のテクンカネが光る。シャクシャインや石松達の攻撃・防御が更に強化された。ダントンの光線やギロチンが撥ね返される。そして石松の刀が一振りしただけでダントンを八つ裂きにした。ダントンは消滅した。
濃藤達は次郎長達に加勢し、ロベスピエールと交戦する。
「ぶっ倒す!」
鎌山の鎌が鎌鼬を無数に起こし、ロベスピエールが出したギロチンを次々と破壊する。しかし、ロベスピエールも負けじとギロチンの数を増やす為、その先へ進めない。立家の爪が電撃を放つ。だが、これもロベスピエールに届かず、ギロチンを破壊するのに精いっぱいとなった。だが、次郎長がようやくロベスピエールの懐に飛び込めるようになった。
「近くに飛び込めたっていい事ないぞ!」
「某は貴様を倒すまで諦めんぞ!」
「ほう!」
「私も協力する!かかれ!」
項羽の軍が大群で突進する。ロベスピエールのギロチンが次々と撃破されていく、次第にロベスピエールは追い詰められていく。
(あとは俺がなんとかしないと・・・)
濃藤は剣を差し出す。
「鎌山、立家、君達の能力、借りるぞ!」
「お、おう!」
濃藤の剣に鎌山の鎌鼬と立家の電撃が取り込まれる。強力な雷を纏った鎌鼬で遠距離攻撃を無数に発動させる。それまでの鎌鼬はギロチンの刃に当たっただけで相撃ちのように消えてしまったが、今度のギロチンに当たった鎌鼬は消滅する事なくロベスピエール本人を襲う。
「ぐあああ!!」
ロベスピエールの身体に鎌鼬がまともに当たる。更に電撃でロベスピエールは苦しんだ。別の鎌鼬がロベスピエールを更に斬りつけ、さらに次郎長の斬りかかりもあってロベスピエールは消滅した。
「やったか・・・」
そして残りは東アジア反日武装戦線の佐々木のみとなる。
ありは単身で佐々木と対峙する。
「お姉さん、大丈夫かな・・・?」
「ま、負けるんじゃないぞ~!」
友蔵は必死で応援した。
「レーニンにやられたマヌケが!」
「そっちこそ東京で私にやられたの忘れたのかしら?」
ありが召喚した神が佐々木が出したマリアに襲い掛かる。だが、聖母マリアもなかなか引き下がらない状況である。鷲と鳶の神、カパッチリカムイとヤトッタカムイが対抗する。そして風を司るレラカムイが突風を引き起こす。聖母マリアは3対1で襲われたのか蹴散らす事はできず、やられて消滅した。
「後はこの二体のカムイがアンタを相手するわよ」
「某も付き合うぞ!」
石松が左目の眼帯を外した。大物主神が現れ、金の糸で佐々木を拘束する。
「この糸はどうあっても切る事はできん」
そしてカンナカムイが雷撃を加え、カムイが地面に佐々木を捩じ込ませた。
「うおおお!!」
佐々木は戦闘不能にされ、地面に埋め込まれた状態となった。
「・・・やったわね」
「ああ、ジャコバン派の独裁者共も皆死んだ」
そしてお蝶がようやく動けるようになった。
「お蝶、無事で良かった!」
「ああ、あんた達、助太刀ありがとね!」
お蝶はあり達に礼を言った。だが、項羽は次の事を考える。
「さて、ここからどうするかだな。この男を本部に引き渡したいのだが、我々も待てん」
「ああ、そうだな、本部に連絡しとくよ」
悠一が通信機を取り出した。
「こちら煮雪悠一、ジャコバン派の人間を始末し、東アジア反日武装戦線の佐々木規夫を片付けた。この男はどうしようか?」
『こちらイマヌエル。了解した。そちらにはフローレンスに序としてで向かわせておく。先へ進んでいい』
「了解」
通信は終了した。
「よし、だが、捕虜にしたいが待ち合わせがいないのであると、フローレンスが来る前に取り返されるかもしれん。一旦この地は我々が見張っておく。お主らは先に杯の所有者を探しに進め!」
「え?うん、解った!」
「項羽様、私も残ります」
虞美人が頼んだ。
「いや、虞よ、その気持ちは嬉しいが、お前も共にこの者達の支援をして欲しい」
「は、はい・・・」
そしてかよ子達はそれぞれの目的の為に別れる事になった。
「それじゃ、かよちゃん、杖、取り返すんだよ」
「はい、お姉さん達もりえちゃん取り返して!」
「うん、約束するわ」
かよ子とありはお互い約束し合った。かよ子は杖を取り返す為に向かう。
「そういえば、私の能力、元に戻ったのかな?」
かよ子は先程マラーの能力で自身の武装の能力を無効化されていた。
「あの男を葬ったならば大丈夫であろう」
「うん、そうだよね!」
かよ子は杖を取り返す為に奥平を再び追う。
レーニンは紂王の屋敷に辿り着いた。そして杉山の姿に変わる。
「まずはりえに会わせてくれ」
「おうよ」
そして紂王によってある部屋へと通される。そこに一人の少女がいる。
「よう、ここに来てどんな気分だ?」
「杉山君っ・・・!!」
目的の杯の所有者はその部屋に監禁状態となっていた。
後書き
次回は・・・
「屋敷の少年と少女」
かよ子は杖の手がかりを掴む為、長山に捜索を依頼するが、とんでもない情報が入って来る。そして紂王の屋敷に到着した杉山はりえに藤木と面会する。そして藤木がこの屋敷にいる事が確認できた杉山は藤木について何を思うのか・・・!?
233 屋敷の少年と少女
前書き
《前回》
ジャコバン派の人間・ダントン、マラー、ロベスピエール、そして東アジア反日武装戦線の佐々木と対抗するかよ子達。りえを救出するあり達との連携もあり、ジャコバン派の人間を次々と撃破していき、残るは佐々木のみとなる。赤軍の岡本の能力を借りた銃で聖母マリアを召喚する佐々木と神を召喚するありのぶつかり合いの結果、石松も大物主神を召喚して加勢した事でありに軍配が上がったのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その20
上市明日香(かみいち あすか)
大阪の大学生。初登場154話。はめるといかなる攻撃も防御し、効果を打ち消す事ができる手袋を使用して戦う。攻撃に特化された武装の能力を所有する。好きな食べ物はうどん、パフェ。
かよ子は杖を奪った奥平を追う為に羽根を飛ばし続ける。
(私の杖を返して・・・!!)
かよ子はそう願いながら先へ進む。
「山田かよ子、本部守備班を担う長山治にもう一度杖の行方を探ってみたらどうだ?もしかしたら別の人間の手に渡っている可能性もあるかもしれん」
「う、うん・・・」
かよ子は通信機を取り出す。
「こ、こちら山田かよ子。長山君、聞こえる?」
『や、山田?どうしたんだい?』
「取られた私の杖なんだけど、まだ赤軍の人が持ってるの?それとも違う人が持ってるの?」
『今、探してみるよ!』
長山は捜索の為、一旦通信を中断した。
(どうか、場所が解れば・・・!!)
かよ子は杖が他の手に渡らない事を祈っていた。何しろ先程ジャコバン派の人間や佐々木規夫と戦っている間に杖が他の人間の手に渡っていたら方向転換を余儀なくされてしまうからである。そして、長山からの返答が戻ってきた。
『こちら長山治、山田、今杖は引き続きさっきの赤軍の人が持ってるよ。でも・・・』
「でも・・・!?」
『その赤軍の人は大きい城のような家に入っていった!』
「ええ!?その家にはどんな人が住んでるの!?」
『待って、よく確かめさせてくれ。ええと、赤軍は杖を誰かに渡している!相手は女王のような人だ!』
「女王のような人・・・!?」
かよ子は「女王」という言葉で何かしらの緊張感を覚えた。その杖を渡された人物はかなり手強いのではないかと・・・。
紂王の屋敷。戦争主義の世界の長は今「杉山さとし」として杯の持ち主と対面していた。
「杉山君っ・・・!?」
りえは自身が追いかけていた男子ととんでもない会い方をして言葉が何も出なかった。
「りえ、ここに来て気分はどうだ?」
「こんな所不気味で嫌よっ!早く出ていきたいわっ!!」
「だがよ、確かめてえ事があんだよ。お前が会ったっていう男子は藤木か?」
「藤木君っ・・・!?え、ええ、会ったわよっ・・・」
「そうか、藤木はここにいるって解った訳だ」
「それで私はいつになったらここから出られるのよっ!?」
「それは俺も決めてねえし、山田達がここに来次第だな」
「決めてないってっ!?」
りえは憤怒とも悲痛ともいえる反応を示した。
「兎に角、一つ言える事はお前を生け捕りだ。暫くここにいて貰う。殺す気はねえから安心しろ」
「安心できるわけないでしょっ!!杯はどこにあるのっ!?私の友達はっ!?」
「それは言えねえよ。実は俺も『こいつ』もまだ確認してねえからな」
「『こいつ』っ・・・?」
杉山の姿が変わった。
「私の事だ」
別の男性の姿に変化した。
「あ、あなたはっ・・・?」
「私はこの世界を統治する者・レーニン。偽物の杯に杖、護符のせいで身動きが取れずにいたが、この杉山さとしが身体を提供してくれたのだ。だが、この少年もまだ我々に味方しているとは思い難い時も感じるがな」
りえはレーニンに何らかの強い威圧感を感じた。戦争主義の世界の長であるからだろうか。レーニンの姿が杉山の姿に戻る。
「ところで紂王とか言ったな。こいつはこれからどうするつもりなんだ?」
「ああ、あの少年が恋に落ちた小娘と聞くからな。近いうちに祝言を挙げるつもりだ」
(シュウゲン・・・?)
「そうか、お前も乙女だったんだな。じゃあな」
「あ、ちょっとっ!!」
りえは呼び止めようとするも、杉山は行ってしまった。
(乙女・・・)
りえは夏休みに会った時、自分が教会のピアノで「亜麻色の髪の乙女」を弾いていた事で他の清水の友達からは自分にぴったりと言われたが、杉山から否定された。しかし、今、杉山から肯定されてりえは杉山に対して憤りや心の痛みとは違うものを感じていた。
杉山は紂王に頼む。
「次は藤木の部屋に連れてってくれ」
「ああ」
杉山は紂王によって別の部屋に連れて行かれた。
「少年よ、客人だ。お前の知り合いらしいぞ」
「知り合い?」
部屋の奥から聞いた事のある声が聞こえた。
「それじゃ、後は二人で話をしてくれ」
紂王は部屋から出た。杉山は部屋に入る。
「す、杉山君!?」
その場にいたのはクリスマス・イブの日から行方不明になっていた少年・藤木茂だった。
「やっぱりお前はここにいたんだな」
「杉山君こそどうしてここにいるんだい!?」
藤木からしたらこの地で学校の友達に会うとは驚きで連れ戻されるとか、逃げた卑怯者とか非難される運命にあると思い、恐怖心しかない。
「安心しろ。手出しはしねえ。お前が無事かどうか確かめに来たんだ」
「この通り、全然平気さ・・・」
(そりゃ、妲己さんや紂王さんにはお世話になってるし、可愛い女の子達とも色々遊ばせて貰ってるんだ。元の世界に帰っても卑怯呼ばわりされて嫌な目で見られるだけだし、笹山さんにも嫌われたんだ。絶対に戻らないぞ・・・!!)
「まあ、お前が無事ならそれでいいさ。それじゃ、楽しくやってくれ。じゃあな」
杉山はそう言って部屋を出ようとした。
「あ、待ってくれよ!」
「ん?」
「杉山君は僕を連れ戻しに来たんじゃないのかい?」
「いいや、それは俺の役目じゃねえよ。あいつと会えて良かったか?」
「りえちゃんの事かい?うん、でもりえちゃんは何か嬉しそうじゃなかったよ」
「・・・そうか。でもお前、あいつ好きだったんじゃなかったか?それでも自分で幸せにさせてみろよ」
杉山はそう言って部屋を出ていった。
(お前も『あいつ』が好きなんだよな・・・)
杉山は何かを思いながら部屋を出た。
杉山が部屋から出た後、藤木は考える。
(そういえば、僕は夏休みにりえちゃんに会った時、僕は何もできなかった・・・。そうだった・・・)
夏休みのあの日、あの少女が東京へ帰る時、色紙に寄せ書きした。あの藤木が書いた内容は・・・。
(そうだ、『この次はボクが守ります』って書いたんだ・・・!!)
その時、一人の遊女が入った。
「茂様、明後日に『あの人』と祝言を挙げるつもりと紂王様や妲己様からの伝言ですが、宜しいでしょうか?」
「え?あ、うん・・・、あ、そうだ」
「はい?」
「りえちゃんに会わせてくれるかい?」
「あ、はい、それでしたら紂王様と妲己様に確認してきます」
遊女は一旦退室した。
(りえちゃんを守らないと・・・!!)
藤木は約束を思い出す。
『それでその人の館は今山田達がいる所から西よりだよ』
「うん、ありがとう、長山君!」
かよ子は長山との通信を終了させた。かよ子は進む。
「ここより西側か・・・」
「山田かよ子、協力に応じてくれた者共にも呼び掛けよ」
次郎長が提案した。
「うん」
かよ子は通信機をもう一度起動させる。
「こちら山田かよ子。い、今杖は少し西側寄りに住んでる女王のような一人の館にあるみたい!」
『こちら濃藤すみ子・・・。了解、今私達もそっちに行くわ・・・』
『こちら冬田美鈴。大野くうん、待っててねえ〜』
協力者達からの返事を受けてかよ子達は進む。
後書き
次回は・・・
「会食の機会を」
かよ子達は西側へと進む。そして笹山はとある女性と対面する。その夜、藤木とりえは会食することになる。緊張しながらしゃべろうとする藤木だったが、対するりえは藤木達との思い出を共に回想しながら藤木が戦争主義の世界に訪れたきっかけを知り・・・!!
234 会食の機会を
前書き
《前回》
杖が何処にあるか、かよ子は長山に連絡し、探索を依頼する。そして今その杖は女王のような人物が手にしているという情報が入る。そしてりえは軟禁されている紂王の屋敷にて杉山と対面し、彼と同化した戦争主義の世界長・レーニンより自身が藤木と祝言を挙げる予定だと聞かされる。そして杉山は藤木と再会。りえを幸せにさせて見ろと藤木に告げて去り、藤木は夏休みの時にりえの為に書いた寄書の内容を思い出すのだった!!
すみ子達はエレーヌやジャンヌと共にかよ子の杖を奪還の協力として東の方向へ進む。
「杖が取られたとは厄介ですね」
「ああ、我々の勢力だけでは足りるだろうか。相手はイングランドの強大な女王だとな」
「どれだけの強さでやんすか?」
ヤス太郎は質問する。
「そうですね・・・。前に私達が戦ったコノート公という人の集団をご存知ですか?」
「コノート公?最初に俺達が戦った奴等か」
「はい、彼はその女王の手先です。そして戦争主義の世界の本部に繋がる海域の護衛もその女王の兵が行っていたのです。今は剣奪還班がクイーン・ベスという人の艦隊と協力して殆ど撃破されたようですが」
「如何せん強敵だ。本部の方も多くの者に指示を仰ぐだろう」
「そうなんだ・・・」
こちら清水市内のある小学校。たまえやとし子は寒い中下校する。
「それにしても笹山さんが休みなんてね・・・」
「もしかしてまるちゃんやかよちゃん達とその異世界って所に行ったのかも」
たまえは友人達が消えていくので帰りを切実に願うのみだった。
(ああ、まるちゃん、早く帰って来て!こんな寂しい学校なんて私、耐えられない!!)
たまえは少し泣きそうになっていた。
「たまちゃん、皆帰ってくるよ」
とし子が慰めた。
「うん、そうだよね・・・」
吉良の仁吉は女王と聞いてある事を思い出す。
「そういや、前に女王の軍隊が攻めて来たって事あったな」
「え、それっていつなの?」
かよ子は質問した。
「ああ、お前らがまだここに来る前の事だ。その女王って奴の手先の軍隊が攻め込んで来た事があったんだ。何とか食い止めようとクイーン・ベスって言ったかな、その下の兵達が対抗したんだが、どうしても敵わずにやられちまったんだ。そこには甲斐の名将として活躍した晴信って奴も加勢したんだがなあ、あやつの兵も惨敗、晴信も殺されちまったよ」
「そういや、晴信って親分の嘗ての敵の生まれた地を治めてたんだってな。ああ、凄い強くてフローレンスやイマヌエルからも頼りにされてたのになあ、聞いた時はすげえ泣いたよ」
「俺も、俺も」
大政や小政も思い出しては感傷に浸る。
「晴信、そんな強い人がここにもいたんだね・・・。どんな人だったんだろう?」
「もしかしたら武田信玄の事じゃないか?確か本名は晴信と言った筈だよ」
椎名が解説する。
「武田信玄!?おお、あのカッコいい武将がか!」
友蔵は思い出すように信玄を尊ぶ。
「彼は凄い男じゃったのう。川中島で何度も上杉謙信と戦い続けたのだから・・・。でも待てよ」
「ん?」
「そんな戦国大名が戦が好きならどうして平和な世界にいるんじゃ?大名といえば戦じゃ、戦争主義の世界の人間になるのが当たり前ではないのか?」
「あ、そう言えば・・・」
かよ子も謎に思った。幾度も戦で決着をつけようとした大名達なら戦争をするのが正義だと思うはずである。
「戦国の大名とて皆殺し合いが好きという訳ではない。領土を広げて民衆が暮らしやすい町づくりにしようと図っていたのだ。天下統一を目指す戦いが行われたのはその為なのだ。北条早雲や毛利元就とてそうだ」
「そっか・・・」
戦国大名は平和を欲する為に戦いに挑んだ。必ずしも殺し合いが好きでやっている訳ではないとかよ子は考え直すのだった。
本部の管制室。まき子はかよ子達が西側に進んでいくのを確認した。
「かよ子達は西側に向かっている・・・。そこに杖があるのかしら?」
「そうだね、杖の奪還に協力すると言ってくれた者も殆ど山田かよ子君達と合流を目指すかのように進んでいるからね」
「つまり、その地に杖があるって事ね」
「だが、そこにいるのがとても強敵な女王だ」
「女王?」
「ああ、嘗てイギリスの女王として生きてきたが、かなり強大だ。あの領土を奪われて多くの人々が葬られた。その領土に攻め込んでいる者も今難儀しているよ。名前はヴィクトリア。インドやアフリカなどを植民地として支配した者だ。剣奪還班が敵の本部に侵入するルートとして北西の海域の守護をしてクイーン・ベスの艦隊と争っていたのも彼女の手下の者達だよ」
「支配力強いんね、そのヴィクトリアってのは」
「そんな所に杖が・・・!!」
笹山はある所に到着した。そこは古い中国王朝風の町だった。
「お前が笹山かず子という者だね」
一人の女性が呼び止めた。
「あ、はい・・・」
「私は武則天。お前の話はフローレンスから聞いている」
「フローレンスさんから・・・?」
「ああ、藤木茂という行方不明の少年を探しに向かうのだな?フローレンスに協力してくれと頼まれている。私の従兵も数人つけておこう。それなら少しは心細さも消えるのではないかと思ってな」
武則天の後ろから二人の男が現れた。
「私の部下、姚崇と張設だ。二人とも、こちらがフローレンスが招聘したという笹山かず子という少女だ。彼女が杖の所有者達の作戦を成功させる為の大いなる鍵になりうるという。彼女と同行してやるのだ」
「了解しました」
「よ、宜しくお願い致します」
「宜しゅう頼む」
笹山は姚崇に張設、さらにその従兵数人を味方に付けて動き出す。
(山田さん達はこっちの方向に向かってる・・・。藤木君、待ってて・・・!!)
紂王の屋敷。藤木の部屋に先程現れた遊女が戻ってきた。
「茂様、安藤りえ嬢との面会ですが、夕食の席を通して会食という形で面会を許されました」
「あ、うん、ありがとう」
「では、失礼致します」
遊女が去り、藤木はりえと会うのを少し楽しみにした。
「りえちゃん・・・。また話ができるね・・・♡」
藤木はりえとまた会える嬉しさで顔が少しニヤけた。
夕食時、りえが軟禁されている部屋に二人の給仕係の遊女が現れた。
「お食事のお時間です。本日は貴女の婿の希望で会食という形となります」
「会食っ?いつから私のお婿さんができたのよっ!?」
りえは怒りを前面に出した。
「貴女があの方のお嫁に相応しいと言う事が分かったからです」
(藤木君と結婚させるって事ねっ・・・!)
りえは推測がすぐにできた。
「食堂へとお通し致しますので付いてきてください」
りえは黙って付いて行く。今なら武装の能力でこの遊女達を吹き飛ばして出口を探してここから抜け出す事も可能かもしれないが、逆に暴れて始末されてしまうのではないかと思うと怖くて何もできなかった。
(杉山君があの世界の人と一体化してたなんて・・・)
りえはそのまま食堂へと入った。
「りえちゃん・・・」
「藤木君・・・」
りえと藤木は向かい合って食事する事になる。
「では食事の時としよう。坊や、嫁との晩餐、楽しむがよい」
「は、はい・・・」
(こっちは楽しめる訳ないわよっ!!)
食卓には和洋問わず様々な料理が置いてあった。りえは黙って食べ始めたが、藤木はりえの方ばかり見て進んでいなかった。藤木は思い切って口を開ける。
「り、りえちゃん・・・!!」
「え?」
「あ、いや、その・・・」
藤木は緊張しながら喋り出した。
「さっき、杉山君に会ったんだ。僕を元の世界に連れ戻しに来たんじゃないかと思ったんだけど、そうじゃなかったんだ。そしたら僕が無事かどうか確かめに来たんだってさ」
「ふうん・・・」
「それで、りえちゃんは、その、そうだ、ピアノ、頑張ってるのかい?」
「うん・・・。でも、こっちに来てからは弾いてないわ」
「そっか、そういえば初めて会ったきっかけってりえちゃんが教会のピアノを弾いていて僕が幽霊が弾いてるって勘違いした事から始まったんだよね」
藤木は夏休みの出来事を回想する。
「えっ?うん、そうだったわね・・・」
「それで杉山君が幽霊だったらいいって喧嘩になっちゃって・・・」
「ああ、杉山君、か・・・」
りえはその時から杉山と喧嘩していた事を回想する。
(私も臆病者呼ばわりしたわね、あの時・・・)
「・・・ピアノ」
「えっ?」
「りえちゃんのピアノ、また聴けたらいいな・・・」
「藤木君・・・」
「妲己さん、ここにピアノを持ってくる事ってできますか?」
「『ぴあの』?」
「楽器のことです。白と黒の鍵盤がある」
「そうか、近いうちに調達してみよう」
「ありがとうございます」
そして二人は食事を進める。
「そういえば藤木君は皆から嫌われてここに来たみたいだったけど?」
「あ、その・・・。学校から帰る時に野良犬と出くわしてその時たまたま一緒にいた山田を置いて一人で逃げちゃったんだ。それで卑怯呼ばわりされて嫌われて・・・」
藤木は苦しく思いながら振り返る。
「それで、自分が卑怯呼ばわりされるのが嫌になって、そしたら妲己さんに会ってここで楽しく住まわせて貰ってるんだ」
「そっか・・・」
りえは藤木の行動は許されないと思いつつも、その卑怯呼ばわりされる辛さが少し解ってきた。
「でも、私でも怒ってたかもしれないわ。でも、反省してるならもう許してくれるわよ。藤木君のその辛さは解るけど、だからって逃げたままでいいのっ?お父さんやお母さんも心配してるんじゃないのっ?戻った方がいいんじゃ・・・?」
「い、嫌だ!」
藤木は否定した。
「どうせ、僕なんか帰ったってどんな事でも卑怯、卑怯って言われるんだ!もうそんなの沢山だよ!ここにいた方がずっとましだよ!」
「でも、皆心配してるってかよちゃんもっ・・・!」
「おっと。自分の婿を苦しませる事をするんじゃないよ」
妲己が仲裁に入る。
「うう・・・」
いくらりえでも今の状態ではこの女に歯向かえなかった。藤木は泣いている。
「坊や、苦しかったか?食べたらまた休むといい」
「は、はい・・・」
食事は終わり、りえは自分の部屋に通された。
(だめ、かよちゃん達がここに来ても藤木君は戻るのを絶対嫌がるっ・・・!!)
りえはかよ子達が来るまで藤木の今の気持ちを変えなければと思った。
後書き
次回は・・・
「杉山の動向と敵の姿」
杖を奪還すべく急ぐかよ子は食事をする事も忘れてしまっている状態だった。さりや長山達の元には赤軍の西川を回収しにフローレンスが現れる。そしてフローレンスに頼まれて長山は神通力の眼鏡で杉山の近況を探ろうとするのだが・・・!?
235 杉山の動向と敵の姿
前書き
《前回》
かよ子達は長山によるの捜索の結果、ヴィクトリア女王いる方角へと進む。笹山は武則天という女性に出会い、藤木を見つけ出す為に彼女の二人の部下姚崇と張設と共に行動する。そして藤木の希望で夕食を彼と会食する事になったりえは藤木と夏休みの思い出を語り合うと共に藤木が異世界に来る事になった経緯を知る。りえは元の世界に戻った方がいいのではないかと提案するが藤木に拒否される。りえは今のままではかよ子達が藤木の元に辿り着いたとしても作戦が上手く行かない恐れを懸念するのだった!!
こちらは藤木救出班。かよ子達は夕食の時間として食事が提供されていたのだが、かよ子は食べずにただ羽根を急いで飛ばしていた。
「山田、食べろよブー」
「あ、うん、ごめん・・・」
(杖を取り返したいという焦りがとれないのか・・・。そうであろうな。己の得物を奪われてしまったのでは落ち着く事ができぬのも解らなくはない)
次郎長はかよ子の心情を考察した。
「山田かよ子、飯を食わぬと杖も取り返せぬぞ」
「あ、ごめん、また私おっちょこちょいしちゃって・・・。杖がないと落ち着けないんだ。それに早く終わらせてまた藤木君を捜すのに戻りたいし・・・」
「確かにそうだろうね」
関根も共感した。
「でも、食べた方がいいよお〜。今日は何と言っても餃子だよ〜」
「うん、餃子は最高じゃ!」
まる子と友蔵は幸せそうに食べていた。
「お主らは少し緊張感を持て!」
石松は窘めた。
「そうだよ、ももこちゃん!食べる為にここに来たんじゃないよ!」
のり子も怒る。
「ご、ごめん・・・」
食事を終えた藤木は遊女達と風呂に入る。藤木は遊女から背中を洗われていた。
「あ、茂様、私よりもあの安藤りえ嬢の方が良かったでしょうか?」
「あ、いや、そんな事ないさ!」
「そうですか、妲己様が祝言の日は本日の晩餐以上にもっと楽しませてあげようってお考えになられています。最高の祝言になるといいですね」
「うん、そうだね」
フローレンスが赤軍の西川の回収に現れた時には夕食時となっていた。その場にはさり達護符の所有者達もいた。
「遅くなりました」
「いや、気にしないで。こいつはまだ起きてないわ」
「そうでしたか。ごゆっくり食事なさってくださいませ」
「あ、そうだ」
「はい?」
さりはフローレンスを呼び止めた。フローレンスが振り返り、さりは話を続ける。
「私の従弟なんだけど、私の護符で出した鎖つきの鉄球を渡したの。健ちゃんが道具を持ってないのは辛いんじゃないかしら?」
「従弟思いですわね。理由はあります。三河口健さんには三種の異能の能力が全て備わっています。彼はそれだけでさえ強者です。三河口健さんに相応しき道具は他の皆様や羽柴さりさんのその護符を含みます四つの聖なる道具以上に強力な物が必要になりますのです。それ故に彼を剣奪還班に選抜させまして本部に剣を持ち帰らせましたのです。本来ならばそこで貴女や山田かよ子ちゃん、安藤りえちゃんを本部に呼び出しましてその護符、杖、杯を借りまして作りましょうと思いましたのですが、山田かよ子ちゃんの杖は奪われ、安藤りえちゃんも杯を取られまして彼女も消息不明となってしまいました為に結局できなかったのですが・・・」
「ふうん、私が出した武器、上手く使ってくれたらいいわね・・・」
「ええ、きっと使いこなせますよ。では私は次の場所へ東アジア反日武装戦線の佐々木規夫を回収していきます」
「その佐々木って人はやっつけたの?」
「はい、山田かよ子ちゃんや貴女のお姉さん・煮雪ありさん達によって仕留められました。あ、そうそう、長山治君」
「え?」
「杉山さとし君についてですが、今戦争を正義とします世界の長と契約しましたようでその人物に身体を貸しています。要は一心同体となりましたといいます事です。時折その眼鏡で杉山さとし君の同行を確認して頂けますか?」
「え!?あ、うん、解った!」
「それでは」
フローレンスは立ち去った。長山は神通力の眼鏡で杉山を確かめる。
(杉山君・・・)
眼鏡から見えたのは杉山ではなく、一人の男性の姿だった。
「あれが戦争主義の世界の長・・・」
「長山君、私達にも見せられる?」
「あ、うん」
長山の眼鏡が自動車のヘッドライトのように前方に光り出す。そこに映像のように映し出される。
「こ、これは・・・!!」
さりはその男の姿を見て思い出した。以前、夢の中に出て来た事があった男だった。
「私、この人、夢の中で出て来た事があるわ!」
「なんやて!?」
「それからこの人は姿が変わったわ。杉山君に・・・」
「って事は、さとしはこの男に体を売って寝返ったって事!?」
杉山の姉も弟への驚きと怒りが込み上がって来た。
「あのバカ・・・!!」
「そやつはお主の護符を狙う為に様々な刺客を送り込むに違いない。何しろ現に赤軍の西川純がここまで出向いておるのだ」
「う、うん・・・」
清正の警告でさりは対抗姿勢を崩してはならぬと警戒した。
杉山はもう一人の心を宿す男・レーニンと共に本部へと戻る。
「杯は紂王の屋敷に預けたままではあるが、本当にそれでよいのか?」
「だって、剣を本部に置きっぱなしにしてたら取られたんだろ?また杯を本部に持ってったら二の舞でだぜ」
「う・・・、流石にその通りか。この私も民主主義を目指して生きて来た者。貴様の意見も受け入れておこう」
「明後日、またあの紂王の屋敷に行こうぜ。祝言ってやつが楽しみだ」
「しかし、そのような余興など楽しんでいてよいのか?」
「まあ、赤軍達も動いてくれてんだろ?少しは羽根を休めようぜ」
「まったく、呑気なのか、冷静なのか解らん小僧だ」
そしてとある館。一人の女帝が赤軍の男によって渡された杖を確認する。
「これがかの杖か・・・。我が宝にしたいところだな」
「じきにそうなると思いますよ。何しろこの世界の最上位の宝具とされるものの一つですから。そして同じく杯も紂王という男の屋敷に匿われており、四つの聖なる道具の内、二つは我々の世界のもの。あとは護符が我々の世界に渡り、剣も取り返せれば我々の理想の世界が出来上がるでしょう」
「楽しみだ。レーニンもさぞお喜びになるだろうな。ところで杖の所有者という小娘達が奪い返しに来るという話だが、迎撃をしておかないとな」
「それについてはアルフレートお兄様が向かっておりますわ」
「そうか、アルフレートはいい戦果を出しているからな。アドルフとかいう男と共に東部の龍の湖の制圧をし、この地を広げる為にも邪魔をしようとする信玄とかいう人間を葬っているからな。ルイーズ、お前も自分の姉上達とこの館の周囲を保護するのだぞ」
「はい、お母様」
その時、一人の男性が入って来た。
「ヴィクトリア」
「貴方・・・。雷の山が奪われてしまったとな」
「ああ、アリスもヘレナもコテンパンにされてしまった」
「まだ機会はあるわよ。杖を奪い返そうとする連中をまずぶちのめしましょう」
「ああ、そうだな」
その女帝は杖を見る。
(はて、聞いた話ではこの持ち主はおっちょこちょいだとか・・・。簡単に取り返せるのかしらね?)
かよ子は食事を終えると寝る暇もなく羽根を飛ばした。
(この西の方に私の杖があるんだね・・・!)
かよ子は長山にまた連絡を試みる。
「長山君、私だよ、山田かよ子だよ」
『山田、どうしたんだい?』
「今、杖のある場所と私のいる所、どのくらい離れているか確認できる?」
『あ、ああ、やってみるよ』
長山は眼鏡で探知しているためか少し沈黙が流れた。
『山田、杖のある場所場で40キロ程は離れているよ』
「ありがとう。それなら羽根を飛ばせば2,3時間で着けるね」
『ああ、そのくらいかな』
「うん、それじゃ!」
通信を終了させた。かよ子は皆が眠ろうとする中、高速で羽根を飛ばす。
後書き
次回は・・・
「不眠で突き進む」
かよ子の父は一人寂しく夜を過ごす中、隣の羽柴家の主人と酒を飲み交わす事にする。かよ子は一日でも早く羽根を取り返すべく、眠らずに羽根をそのまま飛ばす。そして辿り着いた先は・・・!?
236 不眠で突き進む
前書き
《前回》
かよ子は杖を取り返すのに必死で食事も忘れていた。そしてフローレンスが赤軍の西川を回収にさり達の元を訪れた時、長山は眼鏡で杉山の動向を探るようにフローレンスから指示を受ける。長山は杉山が今どうしているのか確認してみると、彼の姿が戦争主義の世界の長と同体化している事を知る。そしてさりは彼が自分の護符を何れ狙いに来ると危惧するのだった!!
東部の領土を取り返しに動く大阪の大学生、上市と高田はやや西へと進路を変更していた。
「はて」
同行するラクシュミーは考え事をしていた。
「ところで奪われた杖はもう少し西の方にあると言う事か」
「そ、それがどないしたんねん?」
「我々も行くぞ。私はそこに住む女と因縁が深いからな」
「杖・・・」
二人の女子大生は思い出す。杖の所有者の少女と戦った時を。
「うちらも手伝うたるか!」
「せやな」
かよ子の父はこの日も寂しい夕食を過ごしていた。その時、外から誰かが呼んだ。
「おうい、山田さん」
「羽柴さん」
「今日はウチでやりませんか?」
「ああ、いいですね。丁度寂しいところだったんですよ」
かよ子の父は羽柴家に入った。
「それにしても異世界での戦いは何か長引きそうですね」
「はい、特に連絡は来ていないので何とも言えませんが・・・」
かよ子の父は少し曇った顔をしていた。
「何かあったんですか?」
「娘の学校の友達がまた一人いなくなったって連絡が来たんですよ。名前は笹山かず子って言いましてかよ子から聞いた話では行方不明の藤木茂って子から好かれていたとの事です」
「そうですか、もしかしたらその藤木って子を探しに行ったのかもしれませんね」
「ええ、でもどうやって異世界に行ったのか・・・」
二人はその話をしながら酒を飲んだ。
かよ子は皆が寝ている中、眠らずに羽根を進めていた。
「お、かよちゃん、まだ起きてたのかい?」
関根が起きていた。
「う、うん・・・」
「あまり寝ないと動けなくなるよ」
「あ、はい、ごめんなさい。私、またおっちょこちょいしちゃって・・・」
「いや、いや、謝らなくていいよ」
しかし、関根は見抜いていた。
(おっちょこちょいが理由じゃないな。どうしても杖を取り返したくて急いでいるんだ・・・)
かよ子は兎に角寝る事にした。しかし、なかなか眠りにつく事ができなかった。
(早く杖を・・・。そして藤木君を連れ返して、杉山君を元の杉山君に戻すんだ・・・!)
かよ子は早く杖を取り戻して本来の目的に戻りたいと思っていた。
冬田は大野の元へ辿り着いた。
「大野くう〜ん!!」
「冬田!?」
大野は嬉しそうな顔をしていた。
「冬田、お前が来てくれて嬉しいぜ。俺もやっぱりお前が好きだ!」
「え、そおう?あ、ありがとう」
「ああ、俺と一緒に行こうぜ。転校前の最後のデートを楽しみてえ!」
「うん!」
「おい、いつまで寝てんだ!飯だぞ!」
冬田は三河口に起こされた。今までの事は全て夢だったのだ。既に羽根の上には朝食が配膳されていた。
「何が『大野くう~ん』だ。夢の中まで大野君でいっぱいになりやがって」
「え、あ、う・・・」
冬田は恥ずかしくて何も言う事ができなかった。
「好きだらけなんだな」
三河口と湘木はそのまま朝食を食べ始めた。
「い、いただきまあす・・・」
かよ子はこの日の朝が来るまで殆ど眠る事ができなかった。
「お、おはよう・・・」
「山田かよ子、あまり眠れていないようだな」
「あ、うん・・・」
かよ子の顔に隈がついていた。石松はそこから見抜いていた。
「やっぱり杖が気になって眠れなかったんじゃないかブー?」
「あ、いや・・・」
かよ子は否定か肯定、どうすればいいのか声が出なかった。
「まあ、まずは飯を食うとよい」
「う、うん・・・」
この日の朝食の献立は玉子焼きに沢庵、御飯に澄まし汁、お浸しに焼魚と和風だった。
「ちぇ、もっと美味しいのが食べたかったなあ」
まる子はメニューの当たりはずれの勘定をしていた。かよ子はそのまる子をよそに黙って食べる。
(兎に角今日中に杖のある所に追いつかないと・・・!!)
かよ子はこの日の自分自身の目標を決めた。
こちら戦争主義の世界の本部。房子はトランシーバーで各々に連絡を取る。
「晴生、公三、利明、あや子、ヴィクトリアの援護しっかりやるのよ」
『こちら和光晴生。了解』
通信を終えると房子はその場にいる山田義昭を見る。
「義昭。工房ならまた造り直せるわよ」
「ああ。だが、あいつらに工房を破壊された事がどうしても悔しい・・・!!」
山田はレバノンにある赤軍の本部に隣接している自身の工房を剣の奪還に訪れた高校生達に破壊されていた。
「そういえば剣を持っていった連中がまたこの世界に飛び込んでるわ。リベンジのチャンスがあるわね。それに今スターリンがそちらに向かっているからそこを狙うといいわ」
「ああ」
山田は復讐に燃える。
(はて、おっちょこちょいの杖の所有者。杖を取り返しに来てもすぐ死ぬ運命よ・・・)
かよ子達は火山の多い山脈を通過していた。気温が高くなり、かよ子達は暑さで来ているコートを脱いだ。寝不足のかよ子もその暑さで眠気が吹き飛んでいた。
「なんか暑いのお〜」
「ああ〜、暑くて何にもする気がないよお〜」
まる子とその祖父は暑さで倒れていた。
「なんとしてもここを抜ければ杖の在処に近づくはずだ」
次郎長も暑さに耐えていた。
「うん・・・」
かよ子は杖を取り返す事に集中しており、暑ささえも忘れていた。その時、下方から炎がかよ子達を襲撃した。ただかよ子の羽根から結界が出現した為、防御できたが。
「ちいっ!」
椎名の玉とブー太郎の水の石で水を出して迎撃する。
「何者だ?!出てこい!」
だが、同時に大波がかよ子達を襲う。これも結界で防御する。
「ええ!?」
「これはオイラ達の能力によるものじゃないブー!」
「俺がやる!」
大野が草の石を出して巨大な木の根を出して大水を吸収した。そして雷の石の能力が発動された。放電されさらに水がある影響で電撃が強くなる。下から焦げに対する悲鳴が聞こえた。
「あいつらか!」
石松、綱五郎は刀を振るい、大政は槍を発した。巨大な風の刃が放たれる。そして山脈の谷に一群の集団を確認する。
「攻めて来たのはあいつらだ!」
大野は確信した。
「それじゃ、降りるよ!」
かよ子は羽根を降下させ、接近戦で望む。
「やい、お前らだな!さっき俺達を襲ったのは!」
「ほう、こっちから来てくれるとはな。貴様ら、杖を取り返しに行くのか。だが、この私、アルフレートがここで片付けさせて頂く!」
「アルフレート・・・!?」
「その小娘が杖の所有者か。生憎だが、杖は取り返せぬ。ここで領域を侵した罰を受けて貰うぞ!皆の者、地を爆破せよ!」
アルフレートの兵達が地面を爆破させる。土埃のみではない、別の物質がかよ子達を襲う。
「な、岩漿だ!羽根から降りてはならぬ!」
「無理矢理降ろしてやるさ!かかれ!」
アルフレートは兵に槍を投げるように命じた。槍は金剛石のように無数にかよ子の羽根の結界を襲う。だが、それでも結界は金剛石の槍を弾き、岩漿もかよ子達に浴びせる事はなかった。
「馬鹿じゃのお〜。この結界は何も通さないのじゃ!ハハハハハ!!」
友蔵は呑気に笑っていた。しかし、一本の槍が結界を貫通した。
「え?な、何い〜!!」
友蔵は顔が真っ青になった。
「この結界が破られるのも時間の問題だ。結界の中から総攻撃するぞ!」
「う、うん!」
かよ子も杖がないのを理由に怠けられなかった。己の武装の能力を可能な限り出し尽くし、結界を強化させた。金剛石の槍を弾く。
「よし、皆の衆、行くぞ!」
次郎長が刀を振るう。岩漿を吹き飛ばしてアルフレートの兵に当たらせた。しかし、敵の兵も対抗策を施していた。盾を装備して防御される。さらにかよ子達の方へまた撥ね返した。
「くそう!」
ブー太郎は水の石で波を出して何とか岩漿を消した。しかし、アルフレートの軍が次の攻撃を始めていた。電撃を放っていたのだった。
「ブ、ブヒョー!」
「ブー太郎!!」
ブー太郎は感電しそうになったが、かよ子の武装の能力が働いた。ブー太郎へのダメージは回避されたのだった。
「あの小娘か。杖がなければ異能の能力しか使えん・・・。一部の者、あの小娘を狙え!!」
「了解!」
一部の兵が何処からか大砲を用意してかよ子のいる方向へ向けて砲撃した。
「わ、私の所に!?」
かよ子は回避を試みる。羽根の結界とかよ子の武装の能力で何とか防御した。しかし、爆発の振動で羽根が大きく揺れる。
「わ、わあ!!」
かよ子は羽根から落ちないようにした。
「ひ、ひええ〜!!助けてくれ〜!!」
友蔵も悲鳴を挙げる。
「山田かよ子、ただ結界で防御するのみではなく、羽根を動かして回避するのだ!」
「う、うん!!」
かよ子は羽根を動かして砲撃を回避する。だが、アルフレートの軍も電撃や火炎放射、地面の爆発、岩漿など様々な技を駆使してかよ子達を攻め込み続ける。
「こ、これじゃあ、埒が明かないよ・・・!!」
かよ子はここで逃げても相手は追い続けると考える。そうなるとここで倒さないと後が楽にならない。その時・・・。
「ぐあっ!」
「な、何だ!?」
「皆の者、かかれ!」
別の軍勢がアルフレートの軍を襲撃した。
「あ、あれは・・・!!」
かよ子はその軍を指揮する女に見覚えがあった。クローマー伯爵との戦いで共闘した嘗ての女王だった。
「ラ、ラクシュミーさん!!」
後書き
次回は・・・
「杖と似た短刀」
杖の奪還に進む冬田達はある人物と遭遇する。そしてラクシュミー達が加わった中でアルフレートと交戦するかよ子達はアルフレートが短刀を使用して竜巻を作り出す。それはあまりにも強力で大野はかよ子の杖の能力と似ていると考えだすが・・・!?
237 杖と似た短刀
前書き
《前回》
かよ子は杖を取り返すべく西の方角へと進んでいた。一方、赤軍や東アジア反日武装戦線の者達も杖を取られまいと迎撃に動き出す。かよ子は火山の多い場所に辿り着いた時、アルフレートという者の軍が襲い掛かる。苦戦するかよ子だったが、援軍としてラクシュミーと大阪の女子大生達が駆け付けた!!
三河口は湘木や冬田と共に杖の所有者の加勢の為に突き進む。
「あ、そういえばあ」
「ん?」
「あの剣なんだけど、なんでクリスマス・イブの日に赤軍の女の人は使えたのお?」
「これはおそらくだが、戦争主義の世界の支配者が剣を赤軍にも使えるように細工したんだろ。だからって誰もが使える訳ではないが」
以前三河口は異世界の剣の奪還に成功し、本部へ輸送している時、冬田に剣を使用して戦えばいいのではと指摘された事があった。だが、彼が剣を振ろうとしても手を火傷させただけだったので彼には使いこなせないと言う事も証明させていた。今はさりの護符で出して貰った鎖鉄球を借りの武器として所持している。その鉄球も万能で大きさを一気に縮めてポケットにしまう事が可能だった。
「・・・ん?」
三河口は見聞の能力で不穏な気配を感じていた。
「俺達の所にまた新たな敵が来ている」
「何!?」
三河口は武装の能力で防御した。
「俺達の首を取りに来たのか?」
「ほう、すぐ気付いたか」
そこに敵はいた。
「貴様だな。剣を持っていった泥棒は」
「泥棒は赤軍の連中だろ。あの剣は元々平和主義の世界の物だ。剣だけじゃない。杯も、護符も、杖もだ」
「ふ、それは昔の話だ。今すぐ剣を持って来い。それかここでこのスターリンの裁きで死ね!」
スターリンは鋼鉄のギロチンを出して三人を襲う。
「きゃ、きゃああ!来ないでええ!!」
冬田は喚きながら羽根から金属の槍で迎撃する。だが、ギロチンは呆気なく弾き返す。だが、三河口や湘木の武装の能力でそのギロチンを防御した。
(厄介な相手だな)
「三河口、こいつ厄介かもな」
「ああ、長期戦になるかもしれん」
三河口と湘木は杖の奪還に出遅れる事を懸念していた。
フローレンスは項羽の軍と合流し、東アジア反日武装戦線の佐々木を引き渡された。
「この者が東アジア反日武装戦線の佐々木規夫ですわね」
「如何にも。それでは我々はあの者達の後を追う」
「ええ、お気をつけまして」
項羽の軍は安藤りえの救出に動く者達を追ってその場を去った。フローレンスも本部へと戻る。
「やれ、関係者二人を新たに捕虜にしましたが、交換条件など向こうは認めません筈ですね・・・」
そしてフローレンスはある人物に連絡を入れる。
「武則天。こちらフローレンスです」
『ああ、フローレンス。あの笹山かず子という娘とはついこの前合流したよ。私の部下を帯同させた』
「ありがとうございます。上手く行きます事を祈りますそれでは」
フローレンスは通信を終了させ、本部へと戻る。
かよ子達の援護に現れたのは嘗て共闘したラクシュミーの軍勢、大阪の大学生の上市明日香と高田あやだった。
「皆、大丈夫なん?」
「は、はい!」
「皆、かかるぞ!」
ラクシュミーの兵達がライフルを持ってアルフレートの軍を襲撃する。
「な、う、動けん!」
「貴様らの動きは一時的に拘束させて貰った!お前らもやれ!」
「おう!」
石松達が羽根から降りて攻撃にかかる。大政が槍を投げ、兵達の身体を次々と貫通させた。そして次郎長や小政、関根などが次々となぎ倒す。
「私も行くで!」
高田が刀を振るい、光の龍を出現させた。
「この、これでやられてたまるか!」
アルフレートは強引にラクシュミーのライフルの呪いを打ち破る。
「切り札を使わせて貰うぞ」
アルフレートは短刀を取り出した。
「喰らうが良い!」
短刀から竜巻が巻き起こされる。
「な、あれは・・・!」
ラクシュミーがライフルで、関根が刀で、更に他の者も迎撃態勢を取るが、強力すぎて皆纏めて吹き飛ばされる。
「いかん、纏めて抹殺されるぞ!」
「私が!」
のり子が人形を利用して全員を羽根の上に瞬間移動させた。
「あの竜巻・・・。まるで山田の杖みてえだな!」
大野はそう感じていた。
「杖・・・」
かよ子はふと思った。確かに自分の杖でもあのような竜巻を起こす事は可能だ。あのアルフレートの短刀にも似た能力があるのか。だが、風が吹いていた訳では無い。
「でも、あの人の短刀は私の杖と違って風がなくても竜巻を起こしてた。何かの物質に向けなくても能力を使う事ができるんだよ!」
竜巻がまた襲う。
「こ、この結界がある限り安全じゃ!」
「いいや、この羽根ごと吹き飛ばす気だぞ!」
竜巻は羽根ごと巻き込んだ。羽根ごと巻き込んでしまえば結界など無駄になる。
「後はあの結界を破壊すればいいのだな」
アルフレートは自ら竜巻の中に入り、短刀を向ける。短刀から電撃が放たれる。
「これで羽根も黒焦げになれば結界も意味がなくなる筈だ!」
アルフレートは羽根を発見した。電撃で羽根がやられる様を確認する。
「ふふ、皆、死んだか・・・」
アルフレートこれで杖の所有者含めて全員始末は完了したと思い、竜巻も消してその場を去ろうとした。しかし、急に自身の身体が電撃でやられた。残った兵達も動けなくなっている。
「な、何だ!?」
始末したはずの杖の所有者達は生きていた。かよ子の顔は今までにない恐ろしい表情でアルフレートを睨みつけている。
「その短刀、私の杖と似てるけど、何か関係あるの・・・!?」
「さあ、知りたきゃ、先に進めばよかろう。私を倒せたらの話だがな!」
アルフレートは短刀でもう一度始末を試みる。だが、今度は短刀を弾かれてしまった。
「な・・・!?」
アルフレートはなぜ短刀が弾かれたか確認する。かよ子から何らかの闘志が感じた。
「そうか、この小娘の能力か・・・!!」
ラクシュミーがライフルを発砲する。光線が放たれ、アルフレートの胸が貫通された。そして高田の刀から七色の光が放たれ、アルフレートの兵達が倒されていった。かよ子は羽根を地上に降ろし、アルフレートへと向かう。
「杖はどうしたの!?」
「だ、誰が、言うか・・・」
「言わないと怒るよ!!」
「勝手に怒る、が、よい・・・」
アルフレートはラクシュミーのライフルの光線が致命傷となったようで光と化した。
「そ、そんな!!」
かよ子は情報が得られなかった怒りで地面を叩く。
「杖がどうしてるのか、もっと知りたかったのに!!この、馬鹿!!」
次郎長が慰める。
「山田かよ子、この男は確かに死んだ。だが、手がかりは残っている」
「手がかり・・・?」
「あれだ」
次郎長が指を差した先にはは先程かよ子の武装の能力で弾いたアルフレートの短刀があった。
「この短刀が杖と似たような能力を発していたようだ」
「ああ、関係があるかもしれんな。それにこの者はアルフレートといってヴィクトリア女帝の息子だ。この母君がそなたの杖を所有しているのかもしれぬ。奴の館に杖があるようだな」
「ヴィクトリア女帝・・・?」
「ああ、私にとっても憎き女王だ」
「・・・、そこに杖があるんだね」
かよ子はラクシュミーの発言や長山が眼鏡で見た証言よりそのヴィクトリア女帝が杖を所持しているという答えが頭の中に浮かんだ。
「私、そのヴィクトリアって人の所に行くよ!そこで杖を取り返しに行くよ!」
「俺達も行くぜ!」
「うちらも手伝うで!」
「うん!」
かよ子達は杖を奪還する為に目的地をヴィクトリア女帝の館へと定め、進む。
三河口、湘木、冬田はスターリンとの戦闘を続けている。スターリンはギロチン飛ばしの他、巨大な丸鋸を飛ばして三人の首を撥ねようとして来る。
「武装の能力だけじゃキリねえな!」
湘木は斧に炎を纏わせた。そして自身らの周囲を炎で包み、炎の壁を作った。
「そんな物で守れると思うか!」
「冬田さん、お前も炎を出してくれ!」
湘木は冬田に命じる。
「う、うん!」
冬田は羽根から炎を出して炎の壁を更に厚くさせた。スターリンのギロチンや丸鋸を炎で防ぐ。そしてギロチンや丸鋸が溶け出した。
「鉄は焼かれると柔らかくなって強度が下がるんだよ」
「くう、耐熱性のある筈の我が攻撃が・・・!?」
スターリンは自身の攻撃を防御されて愕然とした。
「だが、上は穴だな。そこを狙わせて貰う!」
「何!?」
その時、三河口は閃く。
(『こいつ』を使う出番か・・・!!)
三河口は鎖鉄球を取り出した。
後書き
次回は・・・
「鎖鉄球の実力」
ギロチンで猛攻撃して来るスターリンの前に苦戦する三河口、湘木、そして冬田。三河口はこれでは回避すらできないと思い、さりから貰った鎖鉄球を出して反撃を試みる。そしてかよ子達はヴィクトリア女帝の屋敷のある区域へと侵入する・・・!!
238 鎖鉄球の威力
前書き
《前回》
アルフレートと交戦するかよ子達はラクシュミー、上市、髙田の介入で巻き返しを図る。アルフレートが持つ短刀から出された竜巻はかよ子の杖が出した竜巻と酷似していた。かよ子の決死の武装の能力で短刀から出される竜巻や電撃を弾き返し、かよ子は己の杖が今どうなっているのか問答する。アルフレートはラクシュミーらの攻撃で死亡するが、遺された短刀を手掛かりに先へ進む。その一方、冬田、三河口、湘木はスターリンという男の襲撃を受けて苦戦していた!!
本部の管制室。まき子は娘が西側へと向かっている様子を確認した。
「かよ子達が西側へ向かってるわ」
「ああ、だが、そこはかなりの強敵がいる。ヴィクトリアという嘗ての女王が統治している区域だ」
イマヌエルが解説した。
「ヴィクトリア女王の事?」
「ああ、嘗てイギリスの女王だった」
「でもその女王がどうして戦争主義の世界の人間になってるの?」
「それは嘗て大英帝国を形成し、かつ拡大させていくのだが、それは積極的に戦争を行う事だったのだ。それだけではない。彼女は短気で直情径行な性格で無理矢理周囲に自分を信頼させようとする癖がある。さらにはインドやエジプト、スーダンに中国など植民地支配をした結果、現地の民はそれを受け入れず反乱を起こす原因も作ったのだよ」
「偉人とは思ったけど、色々トラブルも起こしてるのね」
「ああ」
その時、通信が聞こえる。
『こちらフローレンス。赤軍の西川純と東アジア反日武装戦線の佐々木規夫を回収しました。捕虜としてそちらに連行致します』
「こちらイマヌエル。了解。気を付けて戻って来てくれ」
(かよ子・・・)_
「まきちゃん、大丈夫よ。それに他にもかよちゃんの友達とか他の領土攻撃班も次々とこちらに向かってるから味方は増えるよ」
奈美子が励ました。
「そうよね・・・」
管制室の地図を見る。多くの人間がヴィクトリア女帝が統治する区域に向かっていたのだった。
三河口は鎖鉄球を取り出して振り回した。風を巻き起こして真上から落ちてくるギロチンや槍、丸鋸などを全て吹き飛ばして回避させた。
「お、お兄さん、すごおい!」
冬田は感心していた。そして三河口は鎖鉄球を振り回しながら跳ぶ。跳ぶと共に飛翔した。炎の壁から上空に飛んで現れた。
「な、飛び上がって来ただと!?」
スターリンは驚いた。だが、構わず三河口に向けて巨大な刃を飛ばす。三河口が鉄球をスターリンの刃に飛ばす。鉄球と刃がぶつかり合う。そして刃が破壊された。
「何!?」
三河口が炎の壁の外に着地した。
「聞いた話では貴様は武器を持っていないはずだ!」
「そうだったっけな」
(あまりベラベラ喋ると攻略されやすいな・・・)
三河口は詳細は隠す事にしてスターリンに威圧の能力を放つ。さらにそれを鎖鉄球に流し込んで飛ばす。スターリンは鉄の壁で防御する。しかし、鉄球で破壊された。
(なんだ、此奴の鎖鉄球、あまりにも物凄い威力だ!!)
そして三河口は鎖鉄球でスターリンを襲撃する。
「くう、退散だ!」
スターリンは無数の壁を出して後退りする。それでも壁は鎖鉄球によって次々と破壊された。
「湘木、冬田さん!奴が逃げるぞ!!」
「何!?」
湘木は斧を水の能力に切り替え、作った炎の壁を消火させる。そして壁を出て大水を出し、波で鉄の壁を薙ぎ払う。しかし、スターリンの姿は何処にも見えなかった。
「逃したか・・・」
「そんなあ・・・」
「逃げても追ってる時間はない。先に進むぞ」
「は、はあい・・・」
三人は羽根に再び乗って進む。
スターリンは何とか命からがら逃げ出した。
「全く、何だあの男?鎖鉄球などいつ使い始めたんだ?」
スターリンは息を切らしていた。
「兎に角レーニン様に連絡だ!」
スターリンはトランシーバーを取り出す。
「こちらスターリン!」
『こちらレーニンだ。どうかしたのか?』
「今剣を奪って行った連中と遭遇した!一人は能力だけで道具を持っていないと聞いたが違った。鎖鉄球を使っていやがる!」
『鎖鉄球だと?』
「ああ、それで命からがら逃げるのがやっとだった!」
『そうか、一旦休むが良い』
「ああ、それで作戦を立て直させてもらう」
通信を終了させた。スターリンは戻る。
「あなた!」
「ああ、わが愛しきエカチェリーナよ。今戻ったぞ」
エカチェリーナが迎えに来ていた。
「良かったわ。もう会えないかと思うと心配で慌てて援護に行こうと思っていたの」
「そうか、ありがとう。だが、私と戦った男は非常に厄介な奴になっていた」
「何ですって!?私、その者が憎いわ。殺してしまいたいほど・・・」
「ああ、今度は一緒に行こう。その小僧を殺しにな。兎に角今は休ませてくれ」
「ええ、疲れていらしてますからね」
スターリンとエカチェリーナはお互いキスしながら自身の住処へと戻った。
赤軍の和光晴生、岡本公三、片岡利明、大道寺あや子はある館に到着していた。
「ヴィクトリア女王様。只今和光晴生、岡本公三、片岡利明、大道寺あや子、護衛の為に到着致しました」
「宜しい。杖の所有者達よりも先に来てくれて嬉しい限りだ。そろそろ昼食時に入るだろう。我が息子が足止めをしているが突破には時間がかかるし、もしかしたら全滅させているかもしれない。少しの間だが寛ぐが良い」
「はっ、ありがたきお言葉」
四人はテーブルのある部屋に入り、食事のもてなしを受ける。
「はて、俺の能力を複製して使った佐々木が捕まったそうだな。それも一緒に行動してたジャコバン派の独裁者もやられたとか」
「ああ、それに西川もやられちまったのか」
「つまり敵の本部にまた行って助けに行かなきゃいけないのかしらね」
「チッ、面倒くさいこと位になっちまったな」
「佐々木は東アジア反日武装戦線の仲間だ。どうしても奪い返したい」
「だが、奴らは交渉として交換を突き付けるはずだ。強行で入って突破するしかないはずだ」
「そうだな。まあ、今はここに攻め込む連中を返り討ちにしてそれはこれから考えよう」
かよ子達は羽根で上空を進む。
「はあ、すげえ恐ろしい感触がしてきたぜ」
「ああ、俺もだ」
見聞の能力を持つ大野や関根は胸騒ぎと共に恐ろしい気配を感じるのだった。
「つまり、ヴィクトリア女帝が占領し、統治している区域に突入したという事であろう」
「ここが・・・!!」
かよ子は目的地に辿り着いたと察した。
(私の杖はこの町にある・・・。何が何でも取り返す!!)
かよ子はアルフレートが持っていた短刀を見る。その短刀は杖を取り返す為の手がかりになるかもしれないと思い持ち続けていた。
「山田かよ子」
かよ子は石松に呼ばれた。
「え?」
「前に名古屋の地で重信房子が最上位の道具・剣を使用できていたのを覚えておるか?」
「あ、うん・・・」
赤軍の長と遭遇した日。それはクリスマス・イブであり、合唱コンクールに臨んだ日でもあり、名古屋でさりの護符が狙われた日でもあった。
「奴等はその杖の能力をその短刀に分け与えた可能性があるかもしれん。他にも似たような道具があるかもしれぬ事を頭に入れておけ」
「そうだね・・・。これ、私に使えるかな?」
「解らぬ。だが、試してみても良いかもしれぬな。それが戦いに役立てるならば杖を取り返すまで使えばよい」
「うん!」
「あ、皆見て!」
のり子の人形が指を差す。
「あの巨大な建物。きっとあれがヴィクトリア女帝の家よ!」
かよ子はその場に巨大な城があるのを確認した。
「あれがヴィクトリア女帝の屋敷!」
かよ子はそこに杖があると確信した。
後書き
次回は・・・
「女帝の要塞へ」
遂にかよ子達藤木救出班はヴィクトリア女帝のいる屋敷の区域に到着した。そしてすみ子達組織「義元」、そしてその他の領土攻撃班の者達もその付近に集まって行く。杖を奪還する為の本当の熾烈な戦いが始まる・・・!!
239 女帝の要塞へ
前書き
《前回》
杖の奪還に向かう途中、スターリンと交戦する事になった冬田、湘木、そして三河口。スターリンは三人を切り刻もうとギロチン、丸鋸、槍などを飛ばすが、三河口はそれに対抗すべくさりから貰った鎖鉄球で全てを薙ぎ払う。そしてスターリンを追い詰めるのだが、取り逃がしてしまった。そしてかよ子達はヴィクトリア女帝の屋敷に到着し、ヴィクトリアもまた赤軍や東アジア反日武装戦線に協力してかよ子を返り討ちにする準備をしていたのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その21
鎌山健次郎(かまやま けんじろう)
大阪の高校二年生。初登場168話。友人の立家隆太と共に異世界の戦いに参戦する。項羽、虞美人の軍と行動を共にし、現在はありや濃藤などと共に安藤りえの救出に向かっている。風を操り、鎌鼬を起こす鎌を使って戦う。防御特化の武装の能力を所有する。好きな食べ物は串カツ、うどん。
平和主義の世界の本部の管制室。かよ子の母は娘がある区域に到達した事を確認した。
「山田かよ子君達はヴィクトリア女帝が統治する区域に入ったか」
「ええ、そうみたいね」
「でも、かなり激しい戦いになりそうね」
奈美子も懸念する。
「確かに苦戦は免れないだろう。だが、他の領土攻撃班も次々と別方向からその区域に集まってくれているから援護も多い。私も祈るよ」
「ええ」
先代の杖、護符、杯の所有者はただ杖の奪還が上手く行く事を祈る。
フローレンスは捕虜とした西川純と佐々木規夫を連れて本部へと戻る。途中で通信機より連絡が入った。
「はい、こちらフローレンスです」
『こちらイマヌエルだ。山田かよ子君達は杖を持っていると思われるヴィクトリア女帝が占領する区域に入った。他の協力者となる領土攻撃班や多くの仲間もそちらに集まっているよ』
「そうですか。上手く行きます事を祈ります」
『ああ』
(山田かよ子ちゃん達にも応援の為に連絡を入れますか・・・。本来は私も行きたいのですがこの者達を放ったらかしにします訳にもいきませんので・・・)
フローレンスは別の人物達に連絡する。
山口、川村、ヤス太郎、すみ子達組織「義元」はエレーヌやジャンヌの軍と共にある区域に到達していた。
「ここが例の『女王』が統治する区域だ」
「女王・・・」
「ヴィクトリア女帝の事ですよ。ですからかなりの強敵です」
「よし、あの山田かよ子って奴の杖がここにある訳だな」
「すごい、とても苦しくなるくらいの恐ろしさ、ね・・・」
すみ子は見聞の能力によってかなりの胸騒ぎを感じていた。
「よし、行くぞ」
その時、皆の通信機が鳴る。
一人の少女がチーターに乗りながらこの世界の男性二名と共にある地域へと辿り着いていた。
「ここね」
「ああ、そのようだ」
「そこにこの世界の最強の杖があるってわけね」
そして通信機が鳴る。
かよ子達は羽根を飛ばしてヴィクトリア女帝の館の方角へと進む。その時、通信機が鳴った。
「え?」
かよ子は通信機を取り出そうとして落としてしまった。羽根の上に落ちたので問題なかったがまたおっちょこちょいをやってしまったなと思った。
『こちらフローレンスです。この世界の最上位の杖を奪還します皆様、杖の所有者はヴィクトリア女帝の館に突入されました。かなりの激戦になりますと思われますので他の領土攻撃班の皆様、援護および共闘をよろしくお願い致します。私もそちらに向かいたかったのですが、言い訳がましいですが他の用事もありまして向かいます事はできません。しかし、皆さんのご活躍できっと取り返せますと信じております。それでは頑張ってくださいね。失礼致します』
「フローレンスさん・・・」
かよ子はフローレンスの励ましの言葉で少し気持ちを軽くする事ができたのであった。
ヴィクトリア女帝の館。側近が女王に報告する。
「女王様、大変です!杖の所有者達がアルフレートを突破し、此方に近づいてきております!それだけではなく周囲からその協力者とも思われる人物が攻め込んできている模様です!」
「何だと!?よし、決戦だ!赤軍の者も呼び警護させる。返り討ちになさい!」
「はっ!」
「あなた!」
「どうした?」
「杖の所有者や彼女らに協力する者達が我が区域に侵入してきているのよ!返り討ちにしないと」
「解った。息子や娘達も動員させよう!」
アルバートは息子や娘を呼び出し、警護および迎撃の準備を行わせた。
和光達もヴィクトリアの従者の呼び出しによって戦線に立つ。
「来たか、連中が」
「それに別の敵も攻め込んで来ているみたいね」
「追い払ってやるさ」
レーニンはスターリンと会っていた。
「それでその少年は鎖鉄球を使っていただと?」
「ああ、追い詰めるようにもそれで反撃されてしまってな、逃げるしかできなかった」
「そうか、だが、その鎖鉄球とやらをどこで手にしたというのだろうか?」
「さあ、解らん。向こうの世界の長が用意したわけでもあるまい」
「赤軍の西川純も囚われてしまっているからな。事情を聴きたいのだが、奴とアンドリューがやられた時にその者は立ち会っていたな。そこには護符の所有者もいた。護符の能力か何かであろう。確かそのものと同行しているのは・・・?」
「斧を持った少年とまだ小さい少女だ。確か羽根を持っており、以前は杯の所有者と共に行動していた」
「そうか」
今はレーニンの心の中にいる杉山は二人の会話を聞いて考察する。
(つまり三河口は武器を手に入れたって事なのか?あいつが一緒にいるのはおそらく冬田、だな・・・。あいつはりえ達を羽根に乗せてたからな)
杉山は杯の所有者を襲撃し、妲己に連れて行かせた事を思い出した。
「ところでレーニン。今杖の所有者が杖を奪い返すべくヴィクトリア女帝の本拠地に乗りこんでいるらしいが?」
「ああ、抹殺したいところではあるが、体の核として動いているこの少年が杯の所有者だった少女の祝言を来賓したいと言うのでな。そちらの方は赤軍や東アジア反日武装戦線に援護を委託している」
「ほう」
杉山は同級生でもある杖の所有者が気になった。
(あいつら、頑張っているのか・・・。だが、その杖は強くなるかもしれねえな・・・。俺がこいつが道具を全て欲しがっていたようにその能力を貰おうじゃねえか・・・)
かよ子達は遠くに巨大な西洋の城のような建物が見えた。
「あれがもしかして・・・!!」
「間違いない、ヴィクトリア女帝の館だ!」
同行しているラクシュミーが確認した。だが、その時、前方から光が見えた。そして光線が飛んできた。
「・・・な!!」
かよ子の武装の能力が無意識に発動された。
「うおっと!」
地面が燃えた。
「杖がない癖にやるな!」
「貴様、ヴィクトリア女帝からの使いだな!」
「如何にも。このパーマストン子爵が返り討ちにさせてもらう!」
パーマストン子爵の剣から光線が放たれる。かよ子はもう一度、武装の能力で跳ね返した。
「あの剣はもしかして・・・!!」
かよ子はアルフレートが持っていた短刀と似たような感じがしていた。
「あれもその短刀と似たような気配がするな・・・!」
大野が見聞の能力で感じ取っていた。
「・・・って事は私の杖の能力に似せたもの・・・!?」
かよ子は今持っているアルフレートの短刀を見る。
(・・・使ってみる?)
ラクシュミーがライフルをパーマストン子爵に発射する。だが、パーマストン子爵も剣でライフルの光線を振って消した。
「そんなものが通用するかっ!」
パーマストン子爵は更に剣から光線を発した。ラクシュミーのライフルよりも更に強力な光線だった。
「ラクシュミーはん、危ない!」
上市の手袋が光線を消した。
「ふ、その手袋をはめている時しか守れん。貴様の他の部位を狙えば死ぬという訳だな!やれ!」
「はい!」
パーマストン子爵の兵が突進する。
「と、止めないと!!」
かよ子の武装の能力が発動された。兵があっけなく吹き飛ばされる。
「邪魔だよ・・・!!」
かよ子の武装の能力が更に強く発揮される。
「・・・これが奴の武装の能力・・・!!そうか、杖を奪われた怒りが重なって危険な程強力になっているという事か!」
パーマストンは剣を振るう。大きな炎が放射される。
「お、大きい炎が来るブー!!」
「よし!」
ブー太郎は水の石の能力を使用し、椎名は水の玉で波を作って消火した。
「そう来たか!」
パーマストン子爵は鏡を出現させた。水の攻撃が反射された。
「な、こっちに跳ね返ってくるブー!!」
「う、うわあ!!」
かよ子の羽根の結界が発動した。何とか防御する。
「あの鏡が邪魔・・・!!」
かよ子は短刀を見て考える。
(この短刀、使えるかな・・・?)
後書き
次回は・・・
「ヴィクトリア軍との戦い」
パーマストン子爵と交戦するかよ子はアルフレートから奪った短刀が使用可能か試してみる事に。その短刀は果たしてかよ子に使いこなせる事はできるのか。そして杖の奪還を手助けしようとするすみ子達にも別の敵が立ちはだかる・・・!!
240 ヴィクトリア軍との戦い
前書き
《前回》
かよ子達は杖を持っているとされているヴィクトリア女帝の屋敷の付近へと来ていた。そんな彼女達の所にヴィクトリア女帝の側近の一人・パーマストン子爵と交戦する。杖を奪われた怒りで武装の能力により防御が更に強まっているが、パーマストン子爵は剣の他、鏡も使用して攻撃を反射させる。かよ子はアルフレートから奪った短刀を使用を試みようとしていた!!
冬田は杖の所有者の加勢に向かっていた。
「・・・また来るぞ!」
三河口は鎖鉄球を取り出した。湘木も斧を出して迎撃準備を整えた。
「向こうか!」
三河口は鎖鉄球を飛ばした。鉄球が地面にぶつかり、地震のような振動が起きた。一人の男が振動で尻餅を突いていた。
「貴様ダーナ、折角私が手にした剣を持って行ったノーは!」
「剣・・・?そうか、お前か、広島から剣を取ってその所有者も殺害したってのは!!」
「ソノトーリ!我が名はベニート!」
「ならここで片付けさせて貰う」
三河口は鎖鉄球を振り回した。そして己の威圧の能力も発動させる。
かよ子はパーマストン子爵と交戦する。
(この短刀、使ってみる・・・?)
かよ子は短刀を取り出した。
「えい!」
アルフレートの短刀を鏡に向けた。その時、かよ子の元にもう一つ、鏡が現れた。
「な、鏡だと!?」
パーマストン子爵は驚いた。そして杖の所有者の方を向く。彼女が短刀を持っているのを確認した。
「そうか、小娘、アルフレートの短刀を使用しているのか!」
「そうだよ、おじさんのその剣も私の杖の能力を使ってるの?」
「ほう、勘付かれたなら仕方あるまい。さっさと片付けさせてもらう!」
パーマストン子爵が剣を振るう。火薬のような物が飛散され、周囲が爆発される。
「あ、危ない!!」
かよ子の武装の能力が発動された。その影響で皆無傷だった。
「はあ、はあ・・・!!」
かよ子にはこれ以上皆に危害を与えたくないという気持ちが強かった。そしてかよ子が出した鏡から大量の火薬が出される。その数はパーマストン子爵が出した火薬の数の倍ほどもあった。
「な、何!?」
パーマストン子爵が率いる兵が爆発で次々と倒され、消失する。そして子爵にも火薬が跳ぶ。
(な、何としても回避せねば・・・!!)
子爵は剣で火薬を払い、それで倍返しを狙おうとした。だがその時、剣が弾かれる。
(ま、またあの小娘の能力か!!強力すぎる・・・・!!)
さらにかよ子が出した鏡が光り出し、その火薬を三倍にも四倍にも分身させる。
「う、うおおおお!!!」
パーマストン子爵に無数の火薬がまともに当たる。避ける事もできず、パーマストン子爵はそのまま倒されて光と化した。
「や、やっつけた・・・」
「山田、おめえやるじゃねえか!」
「カッコよかったブー!」
「ありがとう、でもこの短刀は借の物・・・。本物の杖を取り返さないと!」
「確かにその通りであるな」
かよ子達はその先へと進む。
ヴィクトリア女帝の娘・ベアトリスは先へと急ぐ。
「他の者の排除もしなければならないなんてやんなっちゃうわね」
その時、兵から連絡がくる。
「ベアトリス様、アルバート様達が雷の山で戦った者達がそちらの方向より近づいているという情報を耳にしました!」
「何?確か姉上達が苦戦させられたって聞く者共か。ジャンヌという女もいたわね?」
「左様でございます!」
「よし、片付けるわよ」
組織「義元」はヴィクトリア女帝が支配する区域を進んでいた。
「凄い・・・、恐ろしい気配がするわ・・・!!」
すみ子は恐怖を感じていた。
「そのようですね。多くの敵が籠もっているはずですから」
エレーヌはすみ子を心配しながらも先へと進み、杖の所有者との合流を試みようと考えていた。
「む、来るぞ!濃藤すみ子、守備せよ!」
ジャンヌが警告する。
「え!?う、うん!」
すみ子が銃で周囲に壁を作る。スズメバチのような虫が襲ってきていた。
「な、蜂!?」
「跳ね返すでやんす!」
ヤス太郎はパチンコで風玉を出す。虫は強風で吹き飛ばされた。
「何者だ!?」
山口は矢を放った。矢から爆発を起こした。
「・・・全く、危ないわね」
一人の女性の姿が見える。
「先程の虫はお前が操ってたのか?」
「そうさ、血を抜きとられてくれればいいものを。私はベアトリス。ここから先へは行かさん!」
ベアトリスは杖を出した。巨大な竜巻で攻撃する。
「わ、来る!」
すみ子が銃で結界を出す。しかし、結界も竜巻が耐え切れるか微妙なところである。
(た、耐えて・・・!!)
しかし、結界ごと吹き飛ばされた。
「危ない!!」
エレーヌが腕を振り上げる。竜巻を消滅させた。
「それでこの能力を守れると思うか!」
ベアトリスは杖をまた振るう。火炎放射してきた。
「あ、危ないでやんす!」
ヤス太郎は水玉を出して消火を試みる。川村もバズーカを発砲させて炎を吹き消した。
「それでも聞くか!」
今度は火薬を投げて攻撃する。
「あ・・・!!」
すみ子はもう一度銃で結界を張った。しかし、連続で火薬を投げ込まれるうちに消失してしまう。
「こ、これでは防御ができん!」
ジャンヌは聖カタリナを呼び出した。
「カタリナ、あの者を浄化できるか?」
「やってみましょう」
カタリナはベアトリスに目をつける。
「皆の者、あの女はこの世界の最上位の杖の能力を模している!」
「この世界の最上位の杖だと!?」
「・・・って事は・・・。かよちゃんの杖の能力をそのまま乗っ取ったの・・・!?」
かよ子達はヴィクトリア女帝の館を目指して突入を試みる。その時、館の更にその向こうで爆発音が響いた。
「な、何・・・!?」
かよ子はさらに煙が上がっているのを確認した。
「どうやら向こうでもお主に協力しようと駆け付けた者どもかもしれぬ」
「私の杖の為に・・・!!」
その時、かよ子達の上空が黒くなった。
「な、何じゃ!?」
「これは雷雲!」
仁吉の予想通り、落雷が呼び起こされた。
(何としても守らないと・・・!!)
かよ子の武装の能力、羽根の結界が働く。それらが落雷で皆が黒焦げになるのを防いだ。
「山田かよ子、またお主の命を狙う者が来とるぞ!」
次郎長が警告する。
「ど、何処にいるの・・・!?」
「おい、お前の人形で見てくれブー」
ブー太郎はのり子に頼んだ。
「あ、うん・・・」
のり子の人形で周囲を探知する。そして見つけた。
「向こうにいるわ!」
「よし!」
大野が雷の石を出す。
(杉山・・・、お前の石、使わせてもらうぜ)
大野が石で放電する。だが、跳ね返され、更に強力な電撃がかよ子達を襲う。
「な・・・!!」
かよ子の武装の能力、羽根の結界が働く。上市の手袋で全て打ち消す。
「全く、愚かな国民共め、今の一撃で死んでもらいたかったものだが」
髭を伸ばした男がその場にいた。
「貴様、杖の所有者だな。貴様ら皆愚かしい顔をしておる」
「な、何じゃと!?まる子は愚かしくないぞ!賢い顔じゃ!」
友蔵が祖父バカ全開で男に反論した。
「お前もヴィクトリアの手の者だな?」
「左様。我が名はソールズベリー侯爵。貴様らはここで終わりだ!」
ソールズベリー侯爵が何処からか光線を幾つも発射した。
「危ないわ!」
のり子の人形も念力で加勢し、光線を防御した。そしてラクシュミーがライフルを発射する。高田も刀で龍を召喚する。
「ふっ、そんな攻撃が効くか!」
ソールズベリー侯爵は結界を張って防御した。
「あの男、自分で結界を張るんか!」
「貴様、我が女王に逆らい続けたラクシュミーだな」
「その通りだ。私は祖国の民の為に尽くしたまで。逆らって当然だ!」
「なら貴様もここでもう一度粛清する!」
「今度はやられるか!」
「ラクシュミーはん・・・!はっ、あや、うちらも手伝うんや!」
「うん!」
上市も高田も動き出す。
「わ、私も行かなきゃ!」
「杖の所有者!こいつは私が相手する。お前達はヴィクトリア女帝の所へ杖を取り返しに行くのだ!」
「えっ、ええ!?」
「山田かよ子、ここでもたもたできぬ!」
「う、うん・・・。ラクシュミーさん達、負けないで・・・!!」
かよ子はその場をラクシュミー達に任せて先へ向かう。
後書き
次回は・・・
「十字架の強さ」
ヴィクトリア女帝の屋敷の周囲で杖の争奪を掛けた激戦が続く。かよ子達の前にはまた別の敵が立ちはだかり、苦戦を強いる。そしてベアトリスと交戦するすみ子達組織「義元」は彼女の杖がかよ子の杖の能力を模したものと解ると、怒りが込み上がり・・・!!
241 十字架の強さ
前書き
《前回》
かよ子はアルフレートの短刀が己に使いこなせるか試みた。その結果、自分でも使用可能である事が解り、その短刀でパーマストン子爵を撃破した。そしてすみ子達「義元」はベアトリスという女と交戦する。ジャンヌが召喚した聖カタリナの能力ですみ子達は彼女が使用する杖がかよ子の杖の能力に似せたものだと知る。そしてかよ子達の前には次の刺客・ソールズベリー侯爵が現れる。かよ子達はラクシュミー達にその戦いを託して先へ進む!!
冬田達はベニートという男と戦い続けていた。三河口は鎖鉄球を振り回す共に己の威圧の能力を発動させる。
「く、何だこの少年から感じる威圧感は・・・!!」
ベニートは何とか威圧の能力に耐えようとする。三河口が鎖鉄球を飛ばす。そして湘木も斧で炎を、冬田も羽根から火炎放射で攻撃する。
「く、うう・・・!!」
ベニートは苦心しながらも炎を受け止めた。だが、鎖鉄球が飛んで来た。ベニートは鎖鉄球を受け止めた。
「黄人よ、消えろ!」
ベニートは対象の人物も家系ごと消滅させる能力を発動させた。しかし、三河口や湘木の武装の能力で防がれた。
「その術で剣の所有者を消したのか」
三河口は構わず攻撃を続ける。そしてもう一度威圧の能力でベニートを金縛りかつ失神させようとする。
かよ子達はソールズベリー侯爵との戦いをラクシュミー達に任せて次へ進んだ。
「私の杖はあそこに・・・」
かよ子はヴィクトリア女帝の館に近づく。しかし、また別の人物が現れる。
「ここから先は通さないわよ」
「だ、誰!?」
「私はヘレナ。お母様に会いに来たのね」
「だから何?」
かよ子は問答する。だが、は直ぐに攻撃体制に入る。
「お母様には会わせない。杖も取らせない。ここで始末するわ!」
ヘレナが十字架を取り出した。皆が金縛りに遭うように動かなくなる。
「う、動けない・・・!!」
「この神の力を使った十字架で何もかも護られるし、貴方達も裁きで動けなくなるわよ!それだけじゃないわ!」
ヘレナの十字架が光り出す。幾つもの針が飛んできた。
(この針って、私の杖で出せる・・・!!)
かよ子はそう思いながら、羽根の結界で何とか防御した。
(やっぱり、私の杖を利用したんだ・・・!!)
かよ子は怒りを込み上げる。
「うう・・・!!」
かよ子の武装の能力が発動する。ヘレナの針の攻撃を容易く跳ね返した上にそれまで金縛り状態となってい自分が動けるようになった。
「な、私の神の金縛りが解かれた!?」
ヘレナは予想外の出来事に驚かされた。更に噴出した針がヘレナの方向に向かって襲いかかる。
「あ、ああー!!」
すみ子達はベアトリスという女と交戦する。その時、ジャンヌが出した聖カタリナがベアトリスの杖の能力がかよ子の杖の能力を写し取った物と見抜いた。
「かよちゃんの杖を使うなんて・・・!!」
「許せねえ奴等だな!」
「義元」の面々は友人である杖の所有者の杖を利用した事に憤怒の気持ちがこもる。
「貴様、その最強の杖はどこにある?」
「さあ、それは母上に聞いてみたらどうだ?辿り着ければの話だがな!」
ベアトリスは杖を振るう。光線が乱射され、すみ子達を狙う。すみ子は銃で結界を張ったが、幾度も光線を浴び続けた結果、結界が破壊されてしまった。
「危ない!」
エレーヌが右腕を出す。別の巨大な壁が現れた。
「あの女の攻撃を全てこの壁に吸収させます。今のうちに攻撃を!」
「おう!」
川村がバズーカを飛ばす。ベアトリスの前で大きな爆発が幾度も起きる。
「な、こんなもの、爆破には爆破で返してくれる!」
「さ、させない・・・!!」
すみ子が銃を発砲する。ベアトリスの周囲に膜が張られる。
「そんなものを私の周りに出してどうしろと・・・?」
ベアトリスは杖で爆薬を出現させて投げようとした。しかし、爆薬はそのまま膜の中で爆発し、すみ子達には何も危害はなかった。「あ、あああ!!」とベアトリスの悲鳴が聞こえた。そして少しして光が現れた。ベアトリスは自滅の如く死亡したのだった。
「や、やっつけた・・・?」
「ああ、濃藤すみ子、お前の活躍だ。先に行くぞ。ヴィクトリア女帝の館は近づいている!」
「おう!」
組織「義元」は杖の奪還に協力する為に先を急ぐ。
ヴィクトリア女帝の館ではベアトリスが死亡した連絡が直ぐに届いていた。
「何、ベービィが殺られただと!?」
女帝は驚愕の態度となった。
「許さぬぞ、私の娘達の命を奪うとは・・・!!私も前線に立ってくれるわ!決してこの館には近づけさせん!!」
ヴィクトリア女帝は娘を殺された悲しみと怒りが抑えきれなくなっていた。
かよ子の武装の能力でヘレナの十字架による金縛りを解除させ、更に彼女が出した針攻撃も跳ね返した。
「な、ああっ!?」
「やったのか!?」
大野が様子を確認する。しかし、針がヘレナに数本刺さってはいたが、ヘレナはまだ生きていた。
「こんなんでくたばるわけにはいかないわよ!!」
ヘレナはまた十字架を差し出す。
「神よ、この小娘に裁きを!」
十字架から電撃が放たれる。
「かよちゃん!」
「山田!」
「山田かよ子!!」
皆がかよ子を守ろうと動き出す。しかし、かよ子は動かなかった。かよ子の武装の能力は異常な程強力になっており電撃さえも通用しなかった。
「な、折角あの杖を使って私の十字架を強くしたというのに・・・!?」
「あの杖・・・、って事は私の杖がどこにあるか知ってるんだね!?」
かよ子はヘレナに詰め寄った。
「う、うるさい!来るな!!」
「皆の者、今だ!」
後ろから巨大な茨の槍が、炎が、大波がヘレナに襲いかかる。ヘレナは十字架で己を防御した。しかし、十字架が急に破壊された。
「その十字架、破壊させて貰ったよ」
関根が忠治の刀を振って十字架を遠くから破壊したのだった。
「覚悟!」
次郎長が飛びかかっていた。そしてヘレナの腹部を斬る。ヘレナは血を吐きながら息絶え、光と化した。
「あ、ありがとう、次郎長!」
かよ子は次郎長に礼をした。
「何、当然の事。それからこのヘレナとやら、十字架を杖によって強化したような事を言っておったな」
「うん、きっと杖はこの近くにあるよ!」
「よし、向かうぞ!」
皆は羽根に乗って先へと進む。
(あの人は十字架を私の杖で強くした・・・。となるとこの短刀も同じように私の杖を使ってその能力を写し取ったんただ・・・!!)
かよ子は短刀を確認した。だが、また次の敵が現れる。
「あの者達だ!ヘレナ様を殺した者達がいるぞ!!」
「え!?」
「全員殺せ!あそこには杖の持ち主もいるぞ!!」
兵達が砲撃を行う。だが、羽根の結界が発動し、かよ子の武装の能力も相まって砲弾を跳ね返した。
「こいつら、しつこいブー!!」
ブー太郎は水の石を利用する。波で兵達が流されていく。
「凄いよ、ブー太郎!」
「ブー!」
「ああ、ブー太郎君は凄い子じゃ!」
友蔵は感心した。
「呑気にしている場合ではないぞ!!」
石松が警告する。勿論、波が収まった後、また別の男が攻めに来た。
「誰だ!?」
大野は問答した。
「我が名はディズレーリ。ビーコンズフィード伯爵とでも呼び給え。ヴィクトリア女帝の名に掛けて生きる者。ヘレナ様を倒したのは貴様らだな?」
「だとしたら何だ?」
「ここで制裁する!」
ディズレーリは持っていた本を開いた。電撃がかよ子達を襲う。
「ひ、ひえええ〜!!」
友蔵が悲鳴を挙げて伏せる。かよ子の武装の能力、そしてかよ子の羽根の結界が働く。
「同じ事が幾度も通用すると思うなよ」
ディズレーリの電撃はかよ子の羽根の結界でも防御しきれない。
「それなら、これはどう?」
かよ子は短刀を稲妻に向ける。電撃に電撃で返した。鍔迫り合いのような状態が続き、どちらもひけをとらない。
「う・・・」
(この状態を途切れさせたら、私は負ける・・・!!)
かよ子はそう思い、今の状態を変える事はできなかった。
「山田、俺達も行くぜ!」
「オイラもだブー!」
「私も行くよ!」
「我々も動くぞ!」
大野も、ブー太郎も、まる子も、のり子も、椎名も、関根も、次郎長達とその子分達も動き出す。大野の巨大な木の枝がディズレーリを殴り飛ばす。
「うおおお!」
ディズレーリが本ごと殴り飛ばされた。そしてブー太郎の水撃、まる子の火炎砲撃、のり子の人形による念力がディズレーリを襲う。
「よし、留めだよ!」
かよ子は短刀で電撃を出す。ディズレーリは全ての攻撃を受ける。
後書き
次回は・・・
「助太刀に来る者達」
かよ子達はディズレーリ伯爵と交戦する。かよ子の短刀の電撃でディズレーリを撃破できるのか。そしてソールズベリー侯爵と交戦する上市、髙田、ラクシュミーの三人は彼に苦戦してしまう。そこにある人物が加勢に訪れる・・・!!
242 助太刀に来る者達
前書き
《前回》
冬田達はベニートという男と交戦し、彼の能力がどうやって剣の所有者を殺めたかを確認する。かよ子は十字架を操るヘレナという女と戦うことになるが、彼女の十字架のよって出された針攻撃や電撃をかよ子は武装の能力で跳ね返す。そして次郎長がヘレナを斬って葬るが、次にディズレーリという男が立ちはだかる!!
オリジナルキャラ紹介・その22
立家隆太(たちいえ りゅうた)
大阪の高校二年生で鎌山健次郎の友人。初登場168話。攻撃特化の武装の能力を所有する。電撃を放つ駒爪で遠距離攻撃をしながら敵を葬る。項羽・虞美人の軍と行動し、杯の所有者・安藤りえの救出に動く。好きな食べ物はお好み焼き、押し寿司。
かよ子達は総攻撃でディズレーリの撃破を試みる。
「やった・・・?」
これだけの攻撃をまともに喰らえば再起不能になるはず。そうかよ子は思っていた。
「・・・やった〜、凄いぞ!皆、儂らは勝ったのじゃ〜!!」
友蔵は大喜びした。と、その時、大きな炎が襲ってきた。
「な、なんと!」
友蔵は早すぎる喜びから一転、絶望を味わったような顔に変わった。何とか羽根の結界で防ぐ。
「この程度では私は死なん!」
ディズレーリは生きていた。
「え・・・!?」
「し、しぶとい奴だブー!」
「我がこの本は攻撃のみならず防御もできるのだよ!」
ディズレーリは自身の本から結界を出して防御していたのだった。
「ここから反撃させて貰うぞ!」
「ギエエエ!!ゆ、許してくれええ!!」
友蔵は絶叫しながら意味のない命乞いをする。
「キャロライン!」
のり子は己の人形と合体する。
「あいつの本も使えなくさせればいい訳か!」
関根は刀を振るう。
「関根尚雄!某も向かうぞ!」
石松と小政も向かう。
「よし、俺の法力で移動させてやるぞ!」
大五郎の法力で関根、石松、小政は移動する。のり子も浮遊すると直ぐにディズレーリの元へ突進した。
「ええい!」
のり子が念力でディズレーリの攻撃封じを試みる。彼の頭に暗示を掛けて混乱させる手法を用いた。
[ベンジャミン、今すぐ戻るのだ!]
「じょ、女王様!?」
ディズレーリの脳内に急に女王の声が聞こえてくる。ディズレーリはそののり子の能力で戦闘どころではなくなった。
「今だね!」
関根、石松、小政がディズレーリに襲いかかる。関根は本を、石松、小政はディズレーリ本人を狙った。
「・・・ん、何だ、あれは!?」
大野は違和感を覚えた。上空を見ると何かが飛んている。巨大な蛾のような物体が飛んでいた。
「あれは、映画の怪獣・モスラ!」
「モスラ!?」
「ああ、あれもゴジラと同様に映画に出てくる怪獣だ!」
椎名が解説した。
「この世界には怪獣がいるのか?ひええ〜、まる子お〜、もう嫌じゃ、儂とおうちに帰ろう〜!」
友蔵は泣きじゃくった。
「初めてじゃないでしょう。前にもゴジラと戦った事があるんだから」
椎名が叱った。
「ゴジラ・・・?そうだ!」
かよ子は思い出した。以前ゴジラと戦った時を。怪獣と言う事はあれは術で出されたものに違いない。ただゴジラを倒した後、戦争主義の世界の長の声が聞こえた。あれは赤軍の和光晴生と言う者が出したという。
「・・・つまり、あのモスラも赤軍が出したのか!」
椎名はそう考えた。
「もしかして、この近くに赤軍もいるの!?」
そう喋っているうちにモスラが衝撃波攻撃を仕掛けて来る。
「ぎ、ぎえええ、耳が〜!!」
友蔵は耳の鼓膜が壊れそうになり、耳を塞ぐ。
(あの衝撃波を何とかしないと・・・!!)
かよ子は短刀をモスラに向けた。モスラよりも更に強力な衝撃波を出してモスラに対抗した。モスラは耐えきれず、羽で風を起こした。かなりの強風が来る。
「風なら風で!」
かよ子は今度は短刀から竜巻を出した。巨大な竜巻でモスラを襲う。
「ギイイイイ!!」
モスラが悲鳴を挙げる。
「や、やった・・・!?」
一方、ディズレーリに接近していた関根達の元にある人物が来ていた。
「俺が出したモスラをここまでやるとはな」
「お前は・・・、赤軍の和光晴生だな!!」
ソールズベリー侯爵と交戦するラクシュミーの一行は苦戦していた。ラクシュミーはライフルで攻撃し続ける。しかし、彼女の攻撃もソールズベリーの結界が撥ね返してしまう。
「まあ、あの結界を破壊すりゃええんやな!」
上市は自身の手袋の能力を利用して結界の破壊を試みる。
「私がそこまで抜けていると思うか!」
ソールズベリー侯爵が上市に向けて電撃を放つ。その電撃は槍のように一直線に来た。上市はそれを受け止めるのに精一杯で結界に近づけない。高田が刀の龍でソールズベリーを襲撃する。
「それで私を食おうというのか?愚かな!」
ソールズベリーが拳を突き出した。それだけで直接殴られた訳でもないが龍が消滅してしまった。
「あとは貴様ら纏めて消える時だ!」
ソールズベリーが更に強力な電撃を、そして爆薬を出現させる。
「な、これじゃ受け止められん!」
ラクシュミー達は絶望かと思った。ところが・・・。
「毘沙門天の力を思い知れ!」
「何!?」
巨大な男のような物体が現れた。三叉又でソールズベリーの全ての攻撃を無効化する。さらに戦国武将のような男が現れる
「お、お主は・・・?」
「我が名は毘沙門天の化身・輝虎!我が好敵の仇を今こそ取りに来た。お主らに助太刀しよう!」
「あ、ありがとう!」
「ふ、無礼な奴め!それで勝ったと思うな!」
「貴様こそ毘沙門天の能力を舐めていると痛い目に遭うぞ!」
「何がビシャモンテンだ!馬鹿馬鹿しい、神は主・イエス・キリストのみだ!」
輝虎が毘沙門天を使役する。ソールズベリーも迎撃するが防御も攻撃もできなかった。
「な、くう・・・!」
「今だ、我も身体が持たぬ。トドメを刺せ!」
「う、うん!」
上市の手袋でソールズベリーを殴る。そしてソールズベリーはそれで致命傷となって死に果てた。
「はあ、はあ、良かった・・・」
「輝虎!感謝致す」
ラクシュミーは礼を行った。
「ああ、お主らは先に進んで杖の奪還を手伝い続けてくれ。我は毘沙門天の能力を行使した反動で動けぬ」
「解った。気いつけて!」
上市、高田、ラクシュミーは先に進む。
赤軍の和光晴生がディズレーリの援護に現れた。
「和光晴生か。感謝する」
「おうよ、味方増やしてやるぜ」
和光は携帯型ビデオカメラのようなものを取り出した。そこからモスラとは異なる別の怪獣を二体召喚した。片方はかよ子達が以前戦った事のあるゴジラだった。もう片方は翼竜のようは怪獣だった。
「あ、あれは何?」
「あれはゴジラにラドン!」
「らどんとな?」
「あの翼竜の怪獣ですよ。あれも映画の怪獣の一体だ!」
「そうか、あの人、映画の物をそのまま出す事ができるんだ!」
ゴジラが火炎放射を繰り出してかよ子達を種撃する。
「ギ、ギエエエ!!」
友蔵が絶叫した。
「くそうブー!」
ブー太郎が水の石を出して迎撃する。椎名も水の玉で大きい渦潮を出してゴジラの炎を消火しようとした。
「やったか!?」
水の攻撃を止めたが、その場にゴジラがいなかった。横の方向へ移動しており、かよ子の羽根を握りつぶしに来た。さらにモスラの衝撃波も飛んで来る。
「ちい!」
綱五郎がピストルで迎撃する。モスラの羽根に当たった。
「ギーーーー!!」
モスラが悲鳴を挙げる。
「効いてるか!」
さらに綱五郎はもう五発、発砲した。モスラの羽ばたきが弱まる。だが、ゴジラも接近していた。
「ゴジラ!全員羽根ごと握りつぶせ!」
「こいつ!」
関根が和光に向けて刀を振るう。
「おおっと、そっちにも来ている事を忘れんなよ!」
そしてディズレーリもすぐに起き上がり、本を出した。
「裁きを下してくれる!」
ディズレーリの本か剣が取り出される。石松やのり子も対抗するが、彼の剣からは激しい剣圧が来る。
「のり子ちゃん、石松!」
「関根尚雄、お主はその和光晴生をやれ!」
「お、おう!」
関根は和光の方へ向くが、ラドンが関根を襲う。
「ラドン!こいつを食っちまえ!」
「な!」
ラドンが関根目がけて突進してきていた。関根はラドンの方を向き、刀でラドンの左の翼を斬りつけた。
(こいつを一人で片付けられるか微妙な所だな・・・!!)
そしてゴジラはかよ子の羽根を掴んだ。しかし、結界が働き、なかなか握り潰せない。
「くそう!」
次郎長は刀でゴジラの指を斬り付けた。ゴジラが指を斬られた痛みで悲鳴を挙げた。かよ子の羽根も離してしまう。
「うわあ、うわあ!」
かよ子は羽根がゴジラの指から離れた反動で宙返りを繰り返した。だが結界のお陰か乗っている皆が落下する事はなかった。
「こうなったら私も・・・!!」
かよ子はアルフレートの短刀を取り出した。だが、綱五郎にピストルで撃たれたモスラが再起して、またかよ子を襲う。そして鱗粉を舞わす。かよ子達のみならず、ディズレーリと交戦するのり子と石松、ラドンと交戦する関根にも鱗粉が散った。
「な!」
椎名は説明する。
「あの鱗粉が毒があるぞ!」
「え!?」
その時、かよ子の武装の能力が発動した。モスラの鱗粉が消失し、ゴジラも吹き飛ばされて遠ざかった。
「はあ、はあ・・・。なんとか追い払った・・・」
その時、龍、虎、雀、亀の四体が何処からか現れた。ゴジラやモスラ、そしてラドンを攻撃する。
「あ、あれは・・・!?」
「お前ら、大丈夫か!?」
二人組の男が現れた。さらに一人の少女がいた。
「手伝いに来たわよ」
後書き
次回は・・・
「四聖獣の加勢」
かよ子達の元に二人の異世界の人間、そして一人の少女が援軍に現れる。少女が出した四体の聖獣が和光が出した映画の怪獣と対抗する。そしてディズレーリと和光を倒せるのか・・・!?
243 四聖獣の加勢
前書き
《前回》
ソールズベリー侯爵と戦うラクシュミー、上市、髙田は彼の結界に手こずるが、毘沙門天を召喚する輝虎の加勢で形勢を逆転させ、ソールズベリーを撃破する。一方、ディズレーリと交戦するかよ子達は彼の本からあらゆるものが出現される事で苦戦する。そしてのり子や関根などが別の方向へ移動して追い詰めるが、その場にモスラという映画の怪獣が現れ、それを召喚した赤軍の和光晴生が現れて苦戦する。ゴジラとラドンまで現れて窮地に陥ったがそこに四体の動物が現れ・・・!?
かよ子達の前に男性二名と少女一名が現れた。
「おいどんは隆盛、そしてこちらは利通。お前らの加勢に来たでごわすぞ!」
「あ、ありがとう!」
かよ子は礼を言う。そして短刀を取り出した。爆発がゴジラやモスラを襲う。
「これは青龍、白虎、朱雀、玄武。中国に伝わる四つの神。これで出したの」
少女が説明する。そしてスケッチブックのような物を取り出した。
「す、凄い・・・」
「攻撃を中断しないで」
少女は素っ気なく言った。
「あ、ごめん・・・」
(そっちが説明してきたのに・・・)
かよは短刀を更に剣に変化させる。
「おいどんも行くでごわすよ!」
隆盛は狛犬を召喚した。狛犬が和光が出したゴジラ達を襲う。
「私もだ」
利通は碁石を取り出す。そして黒石と白石をぶつける。
「星」
利通が唱える。
「そこのおなごよ、剣を勢いよく振るえ!」
「うん!」
かよ子は利通の言われた通り、剣を振るった。接近してくるゴジラとモスラに更に強力な切り傷を負わせた。そして隆盛が出した狛犬もゴジラとモスラに襲いかかる。青龍もゴジラを、白虎はモスラへ攻撃する。
「よし、拙者達も怠けられん!」
次郎長や小政、お蝶も反撃に乗り出した。まる子、ブー太郎、大野も各々の力の石を出す。
「が、頑張れ、まる子ーー!!」
友蔵は応援した。
「ええい!」
かよ子はもう一度刀を振るう。ゴジラを両断した。そして青龍も長い尾で弾き飛ばし、ゴジラは消滅する。一方、モスラは白虎の爪と牙で引っ掻かれたり噛みつかれたりで衝撃波も毒の鱗粉も出せずにいた。さらに大野、ブー太郎、まる子は全ての力の石を使用してモスラに攻撃した。モスラが何もできずに虫の息(実際虫だが)となる。そこで次郎長達が切り込みにかかり、モスラも消滅した。
「おお、凄いぞ、凄いぞ〜!!」
友蔵は涙を流しながら喜んだ。
「あとは向こうの援護。山田かよ子、羽根を移動させよ!」
「うん!」
皆はディズレーリと和光本人、そしてラドンと交戦するのり子や石松達の所へ急ぐ。
石松やのり子はディズレーリと交戦する。ディズレーリの剣圧で吹き飛ばされたが、二人とも大怪我をする事はなかった。
「はあ、はあ・・・」
「次こそ死んで貰うぞ!」
だがそこに朱色の鳥がディズレーリの真上に現れた。ディズレーリは本から結界を出して防御する。
「バカめ、そんなもの・・・」
だが鳥の嘴が結界を突き破る。
「何!?」
鳥がディズレーリを襲う。ディズレーリは本から岩石を出現させて鳥を襲う。
「くらえ!」
「させないわ!」
のり子が人形の念力を使う。岩石が途中で止まった。
「な、何!?」
「よし、今だ!」
石松がディズレーリに斬り込みにかかる。そして巨大鳥もディズレーリを襲う。
「直ぐにくたばってたまるか!」
ディズレーリは再び本から結界を発動させる。
「この忌々しい鳥め!焼き鳥にしてやる!」
ディズレーリは炎を出して鳥に向けて焼殺しようとした。しかし、その炎撃はその鳥には効かなかった。
「な、なぜだ、なぜ効かない!?」
「その鳥は朱雀。四つの神の一つ。炎の攻撃は効かないわ」
「何!?」
その時、ディズレーリの手から本が離れた。のり子の人形の念力で本を操作したのだった。
「留めだ!」
石松が飛びかかる。ディズレーリを両断した。
「な・・・!!」
ディズレーリは消滅した。
「あとはあれね」
かよ子はゴジラとモスラを葬った後、ラドンと交戦する関根の元へ急いだ。関根はラドンに対して対処しきれずにいた。
(くう、斬りつけても意味がねえか・・・!!)
その時、隆盛が出した狛犬が襲う。そして関根の前に黒い亀のような物体が現れた。
「これは一体・・・!?」
「それは玄武。四つの聖獣の一つよ。守りが得意なの」
加勢に訪れた少女が説明した。 玄武はラドンに対抗する。ラドンが羽ばたき、ソニックブームをかます。だが、玄武がそれも全て防御する。そして横から岩が飛んできた。
「ギエエエ!」
ラドンの右の翼に当たる。
「関根さん!」
かよ子がアルフレートの短刀で岩を操る能力を行使していたのだった。
「よし、終わらせてもらうよ!」
関根は刀をもう一度一振りする。そして利通が碁石をだして白石2個を黒石で挟んだ。ラドンは地面に叩きつけられる。そして関根の刀から衝撃波が現れ、ラドンを戦闘不能にした。そして大野の草の石によって出現した太枝がラドンを叩き、雷の石で更に電撃を喰らわす。ラドンは消滅した。
「お、お前ら・・・!!」
「和光晴生!後はお前だけだ!!」
椎名が羽根から降りて関根と共に警察コンビで攻め寄る。
「か、簡単に捕まってたまるか!!」
和光は携帯型ビデオカメラから何かを出現させた。三つの首、二本の尻尾、黄金色の鱗、そして羽を持つ怪獣だった。
「また怪獣かよ!」
「あばよ!」
和光はその怪獣によって逃げようとする。
「待て!」
皆は追おうとした。
「杖はどこにあるの!?」
かよ子は追いながら和光に問答した。
「さあ、知っていてもお前達に言うかよ!キングギドラ、やれ!」
キングギドラは稲妻型の引力光線を放つ。
「な・・・!!」
かよ子は意識もせず自然と武装の能力を発動させた。引力光線を跳ね返す。しかし、その光線の光があちこちに放たれ周囲が見えなくなってしまった。
「あの人はどこ・・・!?」
かよ子は和光を見失ってしまった。
「山田かよ子、見失った者は追っても時間の無駄となってしまう。我々の力で杖を探すのだ」
次郎長が口説く。
「うん!」
和光はキングギドラに乗って撤退しながらトランシーバーを取り出す。
「こちら和光晴生。杖の所有者達が攻めてきている!今ディズレーリが撃破された!!」
『何だと!?』
応答したのは女王だった。
『こちら片岡利明!今すぐ迎撃に向かう!!』
『こちらアサカワ。同じく!!』
和光はヴィクトリア女帝の館へと戻った。岡本が出迎える。
「和光。杖のガキが次々と敵を撃破しているとな?!」
「ああ、ディズレーリが撃破された」
「マジか、今反日武装戦線の片岡とアサカワがそいつらの所に行ったが、俺はヴィクトリアが戦っている最中を狙って弱めてやるよ」
「そうか、ま、あの女王の気に障んねえよう気をつけろよ。それから俺は一先ず別の相手をさせて貰うぜ」
かよ子達が先へ進むと、大野や関根など見聞の能力を持つ者がまた敵が来た事を悟るように周囲を見回していた。
「大野君、関根さん、また来てるの?」
かよ子は質問する。
「ああ。あっちの方が怪しい!」
大野は東側の方角を差した。大量の馬が突進してくる。
「あ、あれは馬!?」
かよ子は相手は人間ではないのかと驚いた。
「もしかしてあの人みたいに映画に出てくる馬なの!?」
だが、考える間もなく馬達が炎や雷などを纏ってかよ子達に飛びかかって来た。
「ひええ〜!許しとくれ〜!!」
友蔵は泣き喚いた。
「しょうがないわね」
先程共闘した少女がスケッチブックから馬や牛を出して敵の馬に体当たりした。
「皆、俺達もやるぞ!」
大野が促した。だが、多くの馬が勢いよく跳ね飛ばされる。かよ子の武装の能力が動いていた。
「邪魔だよ!!」
かよ子は更に短刀を向ける。冷気が跳ねられた馬を襲い、馬は凍死していく。
「邪魔するなら返り討ちにするよ!」
かよ子は一人で馬をなぎ倒していくのだった。
かよ子が馬を倒す現場の遠くである男が馬の死の方角を確認していた。命からがら逃げてきたような馬がその男に「ヒヒヒーーーン!!」と嘆くように鳴いた。
「そうか、そっちに杖の所有者が来ているのか」
男は動き出す。そしてとある雌の馬に乗る。
「アイリス!その少女を亡き者にするぞ!!」
杖の奪還を目指す所有者の少女を排除すべくまた次の敵が牙を向く。
後書き
次回は・・・
「飛びかかる馬の大群」
かよ子達の前に今度は無数の馬が襲いかかる。かよ子達は馬達を次々と迎え撃つのだが、その馬達を操る者が姿を現す。その馬の操り主と交戦するがその先に現れたのは東アジア反日武装戦線のメンバーで・・・!?
244 飛び掛かる馬の大群
前書き
《前回》
赤軍の和光が召喚したゴジラとモスラに苦戦するかよ子達の元に、利通と隆盛という男、そしてスケッチブックを持った女の子が現れた。少女たちの加勢によりゴジラとモスラを撃破する。そしてのり子は苦戦の末、ディズレーリを撃破。関根や椎名は和光と交戦の末、彼が操るラドンを倒す。だが和光はキングギドラという怪獣を召喚して逃げられてしまった。更に先へと進もうとするかよ子達の前には今度は沢山の馬が襲い掛かる!!
三河口の威圧の能力でベニートを失神させた。
「消えるのはお前だ」
だが、三河口はまた別の気配を察した。
「冬田さん、向こうから別の敵が来ている。追い払え!」
「ええ!?」
冬田は三河口が指を差した方向を向いた。冬田の羽根から炎が噴き出された。その隙に三河口と湘木はベニートの首を取ろうとする。しかし、何処からか砲撃が二人を襲う。武装の能力が働いていた事もあってか全員無傷で済んだものの二人は吹き飛ばされた。
「おい、迎撃しろ!」
三河口は冬田に何かあったのかと思い、促す。
「あれ、私の攻撃が効かなかったのよお!!」
「何!?」
戦車が三人の元に近づいて来ていた。戦車から一人の男が出現した。
「お前達、あの時はよくもやってくれたな!!」
赤軍の男だった。
「お前は赤軍の山田義昭だったな!」
「剣を取られた事で恨みを晴らしに来たのか!?」
「当たり前だ!それから貴様らの仲間に俺の工房が破壊されやがったんだ!!大人しく消えて貰おうか!」
山田は戦車に潜り三河口達に向けて砲撃する。湘木が斧を振り、渦潮を作り出した。戦車の砲弾は防御で来たが、渦を消されてしまった。そして戦車は近づいていく。戦車の前面の下部に鉄の腕が現れてベニートを回収する。
「しまった、ベニートを回収された!!」
「こいつ!!」
湘木は今度は太い枝を出現させて戦車を襲う。しかし、戦車は簡単には傷つかなかった。
「この戦車はその攻撃では簡単に壊れんぞ!」
山田はもう一度砲弾で攻撃した。
「きゃああああ!!やめてえ!!」
冬田は絶叫するり羽根から炎も水も金属も木も土も全て出した。しかし、山田の戦車は頑丈である。
(使うか・・・!!)
三河口は己の仮の武器を確認する。
かよ子は武装の能力で襲いかかる大量の馬を跳ね飛ばした。そして短刀を出して馬を凍殺していく。そして援軍と思われる馬の群れが飛び込んできた。炎や雷を吐いてくる。
「ええい!」
かよ子は羽根の結界や武装の能力で防御を続ける。
「我々も山田かよ子を援護するぞ!」
「おうよ!」
吉良の仁吉が羽根から降りる。そして鉄拳で馬を遠くへ殴り飛ばした。
「次いくらでも来い!」
大五郎も法力で羽根の結界を強めた。お蝶が脇差を抜き、馬を風圧で身体に穴を開けた。
「良くも私が育てた馬を!」
「操り手が来たようだ」
一人の男が馬に乗って現れた。
「お前が杖を取りに来た小娘だな!?」
「あ、あんたもヴィクトリアって人の手先?」
「それはそうだ。このダービー伯爵様の馬を呆気なく倒すとは別の能力か何かを持っているな!?」
ダービー伯爵が飛びかかる。
「じゃ、邪魔だよ!!」
かよ子が武装の能力でダービー伯爵を馬ごと退けた。ダービーは後退する。
「武装の能力か・・・」
「馬を使ってるのね。なら馬なら馬で」
スケッチブックを持った少女は馬を召喚した。少女は馬に乗りダービー伯爵の馬に体当たりを試みた。
「ふ・・・。この我が愛馬アイリスはそこらの馬とは違うぞ!」
ダービー伯爵はアイリスと呼んだ自身の馬に突進させる。少女の出した馬が弾かれた。少女も地面に叩きつけられる。
「あ!!」
「アイリス、この小娘を踏み殺せ!」
アイリスが少女に飛びかかる。更にアイリスの蹄から針が出現した。
「ハネ!!」
利通が碁石を出した。ダービー伯爵の馬が吹き飛ばされる。
「まだまだだ!!」
アイリスが火炎放射をする。
「そんなもの消してやるブー!」
ブー太郎が水の石を、椎名が水の玉で放水して迎撃する。炎は消えた。だが、馬はその場からジャンプで回避していた。 ダービー伯爵を乗せたアイリスは羽根の上から結界ごと踏みつける。大五郎が法力を強めた。
「そんな物が効くか!!」
結界が破壊されそうになる。石松や小政が刀、大政が槍、綱五郎がピストルで応戦する。だが、馬は呆気なく足で跳ね返す。かよ子はダービー伯爵に短刀を向けた。
「貴様、その短刀はアルフレート様のだな・・・!!」
「知ってるの、これを!?」
「貴様がそれを奪って使っているのか!?だからここまで来たんだな!?」
「知ってるのかどうか聞いてるんだよ!やっぱりこれは私の杖と何か関係あるの!?」
「聞いてどうする!?」
ダービー伯爵は構わず馬で結界を押し潰そうとした。しかし、馬が「ヒヒン!」と悲鳴を挙げた。そして地面に落ちる。
「アイリス、一体どうし・・・!?」
ダービー伯爵は確認した。アイリスの足の先が四本とも切られていた。
「この短刀で丸鋸を出させて貰ったよ!」
「な・・・、アルフレート様の短刀がなぜあの小娘に・・・!?やはり杖の能力を複製したからか・・・!?」
「やっぱり私の杖を元に作ったんだね!?」
「あ・・・」
ダービー伯爵は口を滑らせてしまった。
「私の杖はヴィクトリアって人が持ってるんだね!?」
「誰が言うか!」
かよ子は短刀を向ける。丸鋸がダービー伯爵を襲う。ダービー伯爵が胴を両断される。足を切られて動けないアイリスも八つ裂きにされた。ダービー伯爵は死亡した。
「行こう!皆!!」
「あ、ああ」
かよ子は羽根を進めようとした。だがそこにある物が投げ込まれる。羽根の結界が発動して被害はなかったが、恐ろしい胸騒ぎを大野や関根など見聞の能力を有する者は感じていた。
「別の敵が来ている!!」
「ええ!?」
かよ子はもう次が来たかと半分嫌になって来ていた。
「ダービー伯爵が足止めしておいてよかったわね」
「ああ、これで始末ができる」
「こいつらは・・・!!」
関根と椎名は近づいて来た者に驚きを感じる。
「極左暴力集団の連中か!!」
極左暴力集団、別名「東アジア反日武装戦線」のメンバーである片岡利明と大道寺あや子(コードネームは「アサカワ」)だった。
二人の女性が高速で走る馬車に乗ってある現場へと進む。
「剣の次は杖の奪還か」
「ああ、大事な物が取ったり取られたり、私達も大忙しなこと」
「それにしてもその目的地が我々にとって憎きヴィクトリアとは」
「ところでクイーン・ベス。杖のみならず杯も取られてしまっているな。あの剣奪還班も杯を取り返しに行っているようだが」
「それについては杖が元の所有者の所へ戻ってから考えたいが杯の方は妲己とその王・紂王が持っている筈。・・・と思いたいのだがフローレンスやイマヌエルも正確な情報は掴めていない。奴らの世界の本部は襲撃を受けたから同じ場所に置く可能性が低い事は確かだ」
この二名はクイーン・ベスとブランデー・ナン。嘗て戦争主義の世界にあった異世界の最上位の道具・剣の奪還に活躍した女王である。フローレンスやイマヌエルからも最上位のアイテムの取り返せる最強の人物として重用された。彼女らは今、杖の奪還に協力する為に動いていたのだった・・・。
ダービー伯爵を倒したかよ子達の前に東アジア反日武装戦線の片岡利明と大道寺あや子が現れる。
「あの連続企業爆破事件の犯人どもか!」
「それがどうした?」
「私は警察だ!大人しく観念しろ!!」
椎名と関根は警察手帳を出して二人のテロリストに警告する。
「やれるものならやりな!」
二人はお構いなしに火薬を投げつける。かよ子は条件反射で短刀を向けた。短刀の先端に火薬が精製される。その火薬を片岡とアサカワが投げた火薬に向けて投げて火薬同士を打ち消した。
「私の杖はどこにあるの!?」
「さあね。知りたかったらここを抜け出す事ね!」
アサカワがもう一度火薬を投げる。
「何度同じ手を使っても無駄じゃぞ!!」
友蔵は叫んだ。しかし、火薬の煙が消えると武装戦線の二名は先程の場所にいなかった。
「い、移動したぞ!!」
皆は彼らが何処へ移動したのか見回す。その時、小さい火薬が羽根の周りでバチバチと音を鳴らしていた。
「この!!」
椎名が水の玉で火薬の火花を消す。そして羽根の下にいつの間にか片岡とアサカワがおり、登って来た。
「え・・・!?」
かよ子はまさかの奇襲に驚いた。
「結界は!?どうして二人に効いてないの!?」
後書き
次回は・・・
「炎と炎の攻め合い」
かよ子達は東アジア反日武装戦線と対峙する。そしてすみ子達「義元」もかよ子の杖の奪還に協力する為にヴィクトリア女帝の屋敷へと向かうのだが、雷の山で戦ったアリスと再戦する。だが、彼女の後ろには赤軍が支援に来ており・・・!?
245 炎と炎の攻め合い
前書き
《前回》
杖の奪還に向かう途中、ベニートという男と遭遇した冬田達は彼を追い詰めるまではいったが、赤軍の山田義昭が加勢に現れ、戦局は振り出しに戻される。一方、ダービー伯爵が召喚した馬を退治すべく、かよ子達はスケッチブックを持った少女に隆盛、利通という男と馬をなぎ倒す。そしてかよ子はアルフレートの短刀から丸鋸を出してダービー伯爵を八つ裂きにして撃破した。だがその直後、東アジア反日武装戦線の片岡利明と大道寺あや子が現れた!!
かよ子の羽根の上に東アジア反日武装戦線の片岡利明とアサカワこと大道寺あや子が結界を無視して近づいていた。
「なんで!?結界があるのに!!」
「今の火薬は結界を消す為のものだ。人間には効かねえがな」
片岡が種明かしをした。
「それじゃ、今度はあんたらの道具を、使えなくさせてもらうわよ!!」
「や、やだ、やめて!!」
かよ子は叫ぶと共に片岡とアサカワを羽根から武装の能力で跳ね落とした。
「うおお!!」
「キャー!!」
二名のテロリストは地面に落ちる。
「異能の能力か。まずはそれを何とかしないとね!!」
「ちっ、赤軍の機械はもう使えねえのが辛いな」
「私の杖を返さないとこっちは落ち着かないよ!!」
かよ子は短刀を出して猛攻を試みる。
組織「義元」はヴィクトリア女帝の館へと向かう。
「あそこか!」
「・・・ん、待って・・・!!」
すみ子が皆を止めた。
「また、来る・・・!!」
「何!?」
一人の女性が現れていた。
「お前は雷の山で会ったいつかの・・・!!」
彼女はすみ子達が雷の山で交戦した者の一人、アリスだった。
「ええ、そうよ。あの時はコテンパンにされたけどね。今度はこっちが貴方達をコテンパンにする番よ!!貴方達は杖を取りに来たのかしら?」
「ああ、そうだ、そこをどけ!!」
「言われてそうすると思うのかしら?」
アリスはティアラを触る。炎がすみ子達を襲う。
「な、消してやるでやんす!!」
ヤス太郎がパチンコを飛ばして迎撃する。飛ばした弾は水玉だった。大きい波と化して消火する。
「そんなもので消えると思ってるのかしら!?」
アリスが出した炎は消えなかった。周囲は火の海に包まれた。
「な、やべえぜ!!」
すみ子が銃で周囲に壁を張り、エレーヌが腕を振るって炎を遠ざけた。しかし、炎が消化されない。
「おのれ、いくら女王の王女とはいえ許さぬ!!皆の者!」
「はっ、ジャンヌ様!!」
ジャンヌは剣を天に向ける。
「大天使ミシェルよ、我々に力を!!」
一人の天使が降りて来た。
「我が名はミシェル」
「大天使ミシェル、我々の軍に勝機をもたらしたまえ!!」
「よかろう。この炎、我が神の炎で迎撃してくれる!!」
ミシェルは自身の身体の周囲から炎を出現させた。アリスが出した炎の向い火となってすみ子達を防御する。
「あの女に裁きの炎を!」
ミシェルの炎が大きくなり、アリスへと襲う。
「あれが大天使の力・・・!?」
アリスが焼かれる。
「やった・・・!?」
しかし、アリスは生きていた。
「え、駄目・・・!?」
「私のティアラは攻撃するだけだと思ってるのかしら?」
アリスは火傷を負っている様子はなかった。
「そうですか、あのティアラで負傷してもすぐに治癒できるわけですね!!」
エレーヌが論破した。
「正解よ!そっちの世界にフローレンスとかいたわね!?前に生きてた頃はあの人の弟子だったのよ!!」
アリスは話を終わらせ次は電撃を放つ。
「どのような攻撃も通さん!!」
大天使ミシェルが炎で迎撃する。互角といったところである。
「私自身も動くまで!!」
ジャンヌは秤を取り出す。秤はアリスが優勢になるように傾いていた。
「まさか、ミシェルの炎を持ってしてもあの女が優勢・・・!?」
ジャンヌは意地でも秤の傾きを正反対にしようとした。
「ようはあいつが頭につけているあのティアラを壊せばいいんだな!!」
山口は矢で、川村はバズーカでアリスのティアラを狙う。しかし、ティアラは呆気なく矢もバズーカの砲撃も防御した。
「簡単に防がれちまえばどうすればいいんだ・・・!?」
為す術がなく、困る一同。そうしているうちにアリスが次の攻撃をする。また炎の攻撃だった。
「何度やっても同じだ!!」
ミシェルは炎で迎撃する。だが、これでは打開できない。
「・・・、そうだ、皆様!!」
エレーヌが呼びかける。
「あの人を狙っても駄目でしたら、このミシェルに加勢しましょう!!」
「そうか・・・。よし、川村、ヤス太郎!!ミシェルの炎を強めるぞ!!」
「おう!」
「了解でやんす!!」
山口、川村、ヤス太郎はミシェルに加勢する。山口の矢はミシェルの炎を取り込み、炎に包まれた状態でアリスを襲う。そして川村のバズーカがミシェルの炎を強める。ヤス太郎も火薬玉でサポートした。ミシェルの炎が更に強くなる。ジャンヌは秤を確認する。
「よし、こちらが優勢になったぞ!!」
アリスのティアラから出した炎よりも更に強力になった炎で彼女を襲う。
「な・・・!!」
アリスが炎に包まれる。
「よし、やったか!?」
だが、炎が消えた。
「何!?」
アリスは炎から水を操る能力に移行させたのだった。
「ちい、これでも駄目だったか!!」
「焼いても駄目なら溺れて終わりなさい!!」
アリスは大波を出す。だが、波が途切れた。すみ子が銃出した結界でも簡単に防御できた。
「な、何が起きたの!?」
アリスは我に帰ると頭のティアラがなくなっていた。
「私ですよ」
エレーヌが後ろから回り込んでアリスのティアラを奪っていたのだった。
「皆さん、今です!!」
「おうよ!」
ミシェルの炎がアリスを焼き尽くす。さらに山口が矢が刺さり、川村のバズーカで腹部に穴を空けられ、ヤス太郎の火薬玉で更に身体を焼かれた。
「よし!!」
「ん・・・、待って・・・!!」
「どうした、すみ子?」
「また誰か、来てる・・・!!」
すみ子の見聞の能力は嘘をつかなかった。
「お前は・・・、赤軍だな!!」
「ああ。アリスを殺ったが、お前らはここで終わりだ!!」
岡本は聖母マリアを出現させる。
「あれは聖母マリア・・・!!」
ジャンヌは対策を練る。
(やるか、私もありったけの能力を出して・・・!!)
かよ子は武装の能力(ちから)で地面に弾き落とした片岡とアサカワに対して短刀を向ける。
「えい!!」
かよ子は短刀から炎を出現させた。二人に向けて放火する。片岡とアサカワは取り囲まれた。
「な、こんな炎・・・!!」
アサカワは火薬を投げた。炎が呆気なく消滅する。
「某が行くぞ!!」
次郎長が羽根から飛び降りて刀を振るう。風が竜巻の如く吹き始めた。
「山田かよ子、その短刀で風を起こせ!!」
「う、うん・・・!!」
かよ子は短刀を次郎長が作り出した竜巻に向けた。更に強力な竜巻が形成される。
「す、凄い・・・!!」
かよ子は自分の杖でも竜巻を作り出した事はあったが、今の竜巻はその時以上に強力なものだった。
「これならあの人達を遠ざけられる!!」
かよ子は竜巻を片岡とアサカワに向けた。
「かよちゃん、アタシも行くよ!」
まる子が炎の石を使用する。炎が竜巻に組み入り、炎の渦と化した。
「ま、まるちゃん、凄い!これならいけるかも!!」
かよ子は強力となった竜巻で攻撃する。
「ふ、これで追い詰めたと思うな・・・!!」
片岡がまた別の爆薬を投げる。白い粉のような物が現れた。そして炎の渦が消えて行く。
「え・・・!?これは一体!?」
「ハハハ、この火薬は消火器に含まれる成分が入っていたのだ!!そんな合体攻撃など怖くはない!!」
だがその時、巨大な狛犬が現れ二人を襲う。
「な、なんだ、この犬!?」
「おいどんが出したでごわす」
隆盛が狛犬を出現させていたのだった。
「た、隆盛さん、ありがとう!!」
かよ子は隆盛に礼をした。
「まだ戦いは終わっとらんたい!」
「あ、そうだった!!」
かよ子は短刀を向ける。狛犬は二人の服を噛みちぎり、火薬を全て奪っていた。
「よし、お前ら逮捕だ!!」
椎名と関根が攻撃に入る。
後書き
次回は・・・
「神と神の激突」
東アジア反日武装戦線の片岡とアサカワの戦い、椎名と関根は二人を確保できるのか。そしてすみ子達の元には赤軍の岡本が聖母マリアを召喚してすみ子達を始末しようとする。それに対し、ジャンヌが召喚した大天使ミシェルがぶつかり合う・・・!!
246 神と神の激突
前書き
《前回》
東アジア反日武装戦線の片岡とアサカワはかよ子の羽根の結界を火薬で消滅させてかよ子達に接近してきた。だが、かよ子の武装の能力で二人を何とか遠ざけた。そして雷の山で戦ったアリスと再戦するすみ子達は彼女のティアラの以前とは非なる程の強力な攻防に手こずる。だが、大天使ミシェルの炎の支援に回る事で何とかアリスを撃破するのだったが、彼女達の元には赤軍の岡本公三が!!
椎名と関根は火薬を隆盛が召喚した狛犬に奪われた状態の片岡とアサカワを取り押さえようとした。その時だった。七人の男が現れた。狛犬を斬り刻み、椎名と関根を襲う。
「な、何だ、お前らは!?」
関根が忠治の刀を振って追い払う。だが、その隙に片岡とアサカワが狛犬を追い払った男に連れて行かれてしまう。のり子の人形が念力を、少女がスケッチブックを使って鳥を出して足止めしようとした。しかし、別の侍が鳥を返り討ちにした。のり子の人形も動きを止めようと金縛りを試みた。
「に、逃げるなんて、許さないよ!!」
かよ子も短刀と武装の能力を発動させる。だが、その中の一人が火縄銃を発砲し、かよ子の羽根の近くで爆発を起こした。
「キャアアア!!」
「うおおお!!」
幸い結界が働いて無事だったが、かよ子の羽根が吹き飛ばされ、爆発の煙で周囲が見えなくなってしまった。
「し、椎名さん・・・、せ、関根さん・・・!!」
かよ子は二人の警官の安否を確認すべく、名前を呼ぶ。
「お、俺達は大丈夫だ・・・!!」
椎名も関根も無事だった。しかし、七人の男と片岡、アサカワの姿はなかった。
「くそ、逃げられたか・・・!!」
椎名と関根は悔しがった。
「皆の衆、行ってしまった者共に構う暇はない。山田かよ子の杖を取り返す地にもう近づいているのだからな」
次郎長が呼び掛けた。
「う、うん!!」
かよ子は羽根を飛ばす。
片岡とアサカワは七人の侍の援護によって戦闘から離脱する事ができた。
「全く、サツにやられるところだったな」
「でも、あの犬、よくも私の服を・・・!!新しいのに着替えなきゃ!」
アサカワは隆盛が召喚した狛犬に恥辱感を持っていた。
「よう、無事だったか」
赤軍の和光晴生と合流する。
「和光・・・、この人達は貴方が出したのね」
「ああ、『七人の侍』って映画から出てきた連中だ。いいお助けになったろ」
「ところで岡本はどうした?」
「あいつはまだヴィクトリアの戦線に立ってるぜ。俺はちと別の用件に回ろうかな。兎に角、大事な服がそんなんじゃ歩けんだろ。本部へ戻るぞ」
和光はラドンを呼び寄せる。二人と共にその背中に乗って本部へ向かった。
(岡本・・・、お前は保ってくれよ・・・!!)
和光は仲間の健闘を祈った。
アリスを撃破したすみ子達は今度は赤軍の岡本公三と交戦する。岡本は聖母マリアを召喚した。
「マリア様よ、この者共に裁きを!」
「宜しいでしょう」
マリアがすみ子達を攻撃する。すみ子は銃で結界を張るも全くの無効だった。山口や川村などは武装の能力で防御するが、守りきれない。
「こちらも神の力をとことん使わせて貰う!!ミシェル、この者を迎撃してくれ!!私は他の神を呼ぶ!!」
「よかろう」
大天使ミシェルはマリアの裁きの光を炎で防御した。ジャンヌは迎撃の支度を急ぐ。
「聖マルグリット、聖カトリーヌ!!」
ジャンヌは自身が召喚可能な二体の神を召喚した。聖マルグリットと聖カトリーヌ。大天使ミシェルと合わせて彼女が召喚可能な神だった。
「なんと、悍しきマリア様!!こんなものは本物のマリア様ではない・・・!!」
「これは邪神でありましょう」
「マルグリット、カトリーヌ!!あの邪なるマリアを共に倒そう!!」
「了解!!」
マルグリットが剣を出し、車輪をマリアに向けて放つ。マリアは裁きの光で車輪を破壊する。しかし、その裁きの光はすみ子達には効かなかった。カトリーヌが守護の術を発動して防御していた為だった。
「大天使ミシェル!!そなたの炎と私の剣で!!」
「よし!」
ミシェルの炎とマルグリットの剣が合わさり、炎のの剣と化す。
「うおおお!!」
マルグリットが聖母マリアに突撃した。マリアが結界を張る。両者とも動かない。
「お、俺達も見てる場合じゃねえぞ!」
「了解でやんす!」
ヤス太郎が眠り玉で岡本を襲う。川村もバズーカで、山口も矢を放つ。だが岡本への攻撃も結界で弾かれた。
「私も!」
エレーヌが飛行し、結界に体当たりする。
「この女!!」
聖母マリアがエレーヌに気を取られそうになる。だが、マルグリットの結界が弱まった。
「今です!!」
山口がもう一度矢を放つ。結界に刺さり、消滅させた。
「喰らえ!!」
マルグリットの炎の剣がマリアを両断する。マリアが消滅した。
「何、こんな事が!!」
岡本は驚く。
「ここでくたばってたまるか!!」
岡本は手榴弾を投げた。爆発が起きる。
「なっ・・・!!」
すみ子は咄嗟に銃を出して爆発が自分達に降りかかるのを防いだ。爆発の煙が消えると岡本はその場にいなかった。
「なんて忍者見てえな奴だ・・・!!」
川村は取り逃がした事を悔しがった。
「しかし、追っている暇はありません。杖の奪還の為にもヴィクトリア女帝の所へ急ぎましょう」
「うん・・・!!」
一行はヴィクトリアの館へと向かった。
岡本は手榴弾で行方を晦ました後、和光が出迎えるように現れた。
「よう岡本。無事だったか」
「ああ、杖を取り返しに援護する奴等と戦ったが、俺みてえに神を使う奴がいるからやられちまうところだったぜ。んで片岡とアサカワは?」
「ああ、杖の持ち主達にコテンパンにされちまったみたいでな。本部に引き返させたよ」
「で、俺達はどうするよ。このままヴィクトリアの所へ先回りにするか、見捨てるか」
「まあ、最後の最後まで援護してやろうぜ。ラドンを出してやるからヴィクトリアの館へ行くぞ」
和光は携帯型ビデオカメラからラドンを召喚し、岡本と共にその背中に乗った。
ヴィクトリア女帝はある物を握り締める。
「私の娘や側近を次々と葬って・・・。許さぬ!!」
彼女が持っているものは最上位の道具・杖だった。
後書き
次回は・・・
「頑丈な戦車の宿命」
ベニートに赤軍の山田義昭と交戦する冬田達は山田が乗る戦車の破壊を試みるが、以上に硬く、更に砲撃以外にも様々な攻撃を繰り出す為に檄はできずにいた。そんな彼らに攻略する術はあるのか。そしてかよ子達は遂にヴィクトリア女帝の館へと辿り着く・・・!!
247 頑丈な戦車の宿命
前書き
《前回》
東アジア反日武装戦線の片岡とアサカワ(本名・大道寺あや子)を追い詰めたかよ子達だったが、急に七人の侍が現れた事で二人を取り逃がしてしまった。一方、アリスという女と交戦し、撃破したすみ子達は今度は赤軍の岡本公三と交戦する事に。岡本が召喚した聖母マリアに苦戦するすみ子達だったが、ジャンヌが召喚した三人の大天使・ミシェル、カトリーヌ、マルグリットが奮戦し、岡本のマリアに打ち勝つ事ができた。しかし、岡本はその場より撤退し、次の戦いに向けて動き出す!!
冬田、三河口、湘木はベニートを回収しに現れた赤軍の山田義昭との戦いを続けていた。山田が開発した戦車は頑丈で冬田の羽根や湘木の斧の攻撃をしても平然としていた。
「こうなったら三人で纏めてかかるか・・・!!」
三河口は鎖鉄球を取り出した。
「湘木、冬田さん!!三人で纏めて攻撃するぞ!!」
「お、おう!!」
三河口が羽根から飛び降り、鎖鉄球を振り回して飛行した。
「あいつ、武器を手にしたのか・・・!!」
山田は戦車より三河口に向けて砲撃した。だが、振り回した鉄球で防御される。しかし、三河口を吹き飛ばす事に成功した。
「三河口!」
湘木が斧から蔓を出現させて三河口を巻き付け、彼の落下を防ぐ。そして羽根へと引き上げさせた。
「はあ、はあ、あの戦車は攻撃も防御も半端ない。冬田さん、もう一回羽根で攻撃だ!!俺や湘木も一緒に攻撃する!!」
「は、はあい!!」
冬田は水も、炎も、木も、金も、土も全ての属性の攻撃を行った。湘木も可能な限り斧を振るい、炎、水、木全ての攻撃を行う。三河口はもう一度鎖鉄球を振り回して飛行した。そして鉄球を戦車に向けて飛ばす。鉄球が冬田と湘木の攻撃を包み込む。山田も砲弾で迎撃する。しかし、砲弾を鉄球で防がれた上に、鉄球が戦車に「ゴーン!」と勢いをつけて当たった。
「やったか!?」
戦車は砲身が砕かれていた。
「よし、その調子で攻撃を続けよう」
三河口が鉄球を戻し、また振り回して別の方向へと飛行する。
「お、俺の力作が・・・!!」
山田は悔しがる。
「そう簡単に終わってたまるか!!喰らえ!」
山田は戦車の横から翼のような物を取り出した。そして飛行した。
「何、あの戦車空も飛べるのか!!」
湘木は予想外の機能に驚いた。
「そこのガキ!まずはお前から消える番だ!」
山田が今度はレーザー光線を戦車下側から小さい砲身を出現させて三河口に発射した。三河口は武装の能力を発動させる。それを鎖鉄球にも流し込み振り回して旋風を引き起こして防御した。だが、防御に精一杯となる。
「このままじゃ三河口がやられるぞ!援護だ!!」
「う、うん!!」
湘木は斧から水を出現させた。冬田も巨大な鋼鉄の壁を山田の戦車に幾つも出して山田のレーザーを妨害した。その上から湘木が出した水が滝のように落ち、山田の戦車を押さえつけるように流れる。
「よし、上から俺も入る!!」
三河口が金属の壁の上へ鎖鉄球で飛行し、そこから湘木の水勢に合わせて鉄球を流し込み戦車に当てる。
「そう上手く行くかよ!」
山田の戦車は鉄球に叩かれる音を響かせながらも耐えた。そして巨大なアームを出して鋼鉄の壁を破壊し始めた。破壊した場所から戦車が脱出した。そしてもう一度戦車が飛行しようとする。
(動かれると面倒な事になる!!)
三河口は戦車の翼に鎖を巻き付けた。凧揚げをしているような構図となったが山田の戦車も強引に遠ざかったり近づいたりしようと試みているのも確かである。三河口は足が地から離される。
「お、お兄さあん!!」
冬田は絶叫する。湘木もまた木の能力を使用して太枝で戦車を叩き落とそうとした。しかし、それもまたかわされる。三河口には幸い彼の武装の能力が働いていた為当たる事はなかったが。そして三河口の元にレーザーの砲身が向けられる。
「今度こそお陀仏だ!!」
三河口は武装の能力で自身および周囲の防御を全開に行う。しかし、レーザーは三河口の顔すれすれに放たれた。
(武装の能力が効いてないだと!?)
三河口は武装の能力が効いていないと確信した。このレーザー光線は武装の能力の影響を受けない物であると理解した。
「このままじゃ三河口がやられる!!」
湘木が斧を振って戦車を大木で叩こうとするが頑丈でなかなか地に落ちない。山田はレーザー光線をもう一度発射する。
(このレーザー光線は武装の能力などの効果を受けないようにできているのだ・・・!!)
次でレーザー光線を当てれば下に吊り下がっているようにしがみつく高校生を焼き殺せる。そう山田は思った。しかし、発射できなかった。
「なぜだ。なぜ発射しない!?」
山田には理解不能な事だった。
「赤軍め、そんな外道な事をするなど許しませんよ!」
一人の男性が訪れていた。
「宿命を変えましょう!」
男性は持っている杖を地面に向けて叩く。戦車が飛行機能も失って地に落ちた。三河口は戦車に巻き付けた鎖鉄球を独楽回しのように戦車を回して解いた。
「今です!」
「よし!」
湘木が水を出し、冬田が羽根から金の砲弾を出して戦車を攻撃した。
(お、覚えてろ・・・!!)
先程の三河口の攻撃で目を回し、介入してきた男の加勢もあり、形勢を逆転された山田は戦車を高速で走らせて撤退した。
「無事でしたか?」
「ああ、ところでアンタは?」
「私はエイブラハム。嘗てアメリカの大統領として生きた者です」
(エイブラハム・・・。あのリンカーンの事だな)
三河口はそのエイブラハムには落ち着きのある気配が漂っており、信用していいと思った。
「三河口健に湘木克也。剣の奪還の活躍は聞いております。貴方達は確か杖の奪還に協力しようとする者達ですね?」
「ああ」
「その杖を奪った者は今元の所有者と交戦しているでしょう。急いだ方がいい」
「解った。そうだ、アンタにもこの御恩はきっと返す。また一緒に戦ってくれるか?」
「ええ、いつでも」
「それでは失礼」
三河口は冬田の羽根に乗って行った。
「きっと杖は取り返せる宿命にある、そう私は信じたい・・・」
エイブラハムは領土を取り返す為にまた歩き出す。
杉山は明日の支度を済ませていた。そして本部付近のとある工房による。
「こいつを、明日の結婚式に持っていく事になるんだな」
『全く、そんな余興など楽しんでいる場合なのか?』
レーニンは文句を言う。
「うるせえな、それに、杯はまだあいつらの所だろ、その時に別の場所に移せばいいんだ」
そして杉山は工房にあったグランドピアノを見る。
「まあ、あいつも暫く練習しなくてウズウズしてる筈だぜ・・・」
杉山は夏休みに会ってから幾度も喧嘩をして来た少女の事を考える。
(俺はお前が気になってた・・・、だが、あいつは藤木と一緒にさせる事を選んだ・・・。俺は一体何を考えてるか解らねえだろうな・・・)
かよ子達は女帝の館へと向かう。だが、炎が彼女らを襲う。
「え!?」
かよ子は羽根の結界で防御した。
「この館からだ!!」
次郎長が察した。かよ子はヴィクトリア女帝の館に突入した。だが不意に扉が閉じられた。
「ここまで来たか」
一人の男性が待ち構えていた。
「え?女王様じゃないの・・・!?」
かよ子ヴィクトリア本人が待ち構えるかと思っていた。
「我が名はアルバート。生憎だがここで貴様らは裁かれて頂こう」
「じょ、女王はどこ!?私の杖は!!?」
その時、戸が開いた。
「お前か。所有者とやらは」
後ろから別の女性が現れた。
「ま、禍々しい気配を感じるな!」
関根は見聞の能力で感じ取った。
「私こそがヴィクトリア。私の子供達や側近をよくも葬ってくれたわね。この杖を返して欲しいと?」
ヴィクトリア女帝がかよ子に見せびらかす。
「あ、それは・・・、私の杖・・・!!」
かよ子は見間違いをする事はなかった。それはこの世界の最強の道具の一つとされる杖そのものだった。
後書き
次回は・・・
「敵は自分の杖」
ついにかよ子はヴィクトリア女帝と対立する。アルバートと組んで攻撃する女王に対して苦戦するかよ子達。そしてかよ子は己の羽根、武装の能力、そしてアルフレートの短刀を最大限に活かして戦おうとする・・・!!
248 敵は自分の杖
前書き
《前回》
ベニートを追い詰めた事で赤軍の山田義昭の加勢を受けた冬田達は彼が操縦する戦車に苦戦する。その戦車は砲撃するだけでなく、飛行能力やアームを出す事までできた。そんな時、エイブラハムという男が現れ、その窮地を救う。礼を述べた三河口、湘木、そして冬田は杖の奪還に向かう。そしてかよ子達は遂にヴィクトリア女帝の館に辿り着き、遂にヴィクトリア本人と遭遇する!!
本部の管制室。まき子達はかよ子達が杖を持つ敵達と相対しているのを確認した。
「かよ子、来たのね」
「どうやらそこにいるヴィクトリア女帝が杖を持っていると言う事だ」
「そのヴィクトリアってのを倒せば杖を取り返せるのね」
「ああ、それに増援も次々と来ている。剣の奪還に協力してくれたクイーン・ベスとブランデー・ナンもいる。それに一部の領土攻撃班も来ているからきっと取り返せるよ」
そしてイマヌエルはある事を思い出す。
「あのヴィクトリア女帝の一派に占領されたあそこは確か・・・」
「どうしたん?」
奈美子が聞く。
「ああ、嘗ては美しい泉があったんだ。それを彼女らはそこを自分の支配地と化してその泉を消滅させてしまった。もし山田かよ子君達が女帝を撃破できたらその泉を復活させられるかもしれない・・・」
かよ子はヴィクトリア女帝が手に持っている物を確認する。
「その杖は私のだよ!」
「それがどうした?私の娘や息子を次々と殺して!ここで死んでもらう!!」
ヴィクトリアは杖を振るう。炎がかよ子達に向けて放射される。かよ子は短刀は取り出す。かよ子はその杖の炎を写し取り、炎で防御した。ブー太郎が水の石を、椎名が水の玉を出して炎を消火した。
「それはアルフレートの短刀・・・」
ヴィクトリアはかよ子が持っている短刀を見る。
「それはこの杖を利用して強化してあの子に渡した物よ!なぜお前が使う!」
「や、やっぱり私の杖の能力を写した物だったんだね!!」
かよ子はなぜ今まで戦ってきたヴィクトリアの一派達が杖と似たような能力を持つ道具を使用してきたのか説明がついた。全ては自分の杖を利用して各々の道具や人物にその能力を複製させていたからである。
「そ、その杖を山田に返すブー!」
「うるさい!お前ら纏めて死ね!!」
ヴィクトリアは杖を振る。雷が放たれる。
「この短刀で返り討ちにさせてもらうよ!!」
かよ子は短刀でその雷を受け止め、跳ね返そうとした。雷と雷がぶつかり合う。
「そんな短刀でこの杖を打ち負かせると思っているのかな!?」
「だからってここでおっちょこちょいを・・・!!」
その時アルバートが剣を出してかよ子に突風を浴びせようとした。
「かよちゃん、危ない!!」
関根が刀でアルバートの風を薙ぎ払った。
「纏めて女の子一人に掛かるなんて汚いぞ!」
「ほう、じゃその小娘の代わりに死んでもらおう!」
アルバートが剣を振るう。床が激しく揺れる。そして地面から巨大な手が現れた。
「俺達を握りつぶす気だ!!」
大野は草の石の能力を発動する。茨が現れ土でできた手を粉砕させた。
「山田かよ子!あの男は他の者に任せよ!お主はヴィクトリアから杖を奪い返す事に集中するのだ!!」
次郎長が指示した。
「うん!」
かよ子はヴィクトリアに集中する。
「面白い!この女王に歯向かうとは偉そうな者共!!」
ヴィクトリアは杖を振るう。かよ子は短刀を向ける。だがヴィクトリアはかよ子の短刀を写し取り、杖を剣に変化させた。
「首を貰うわ!」
「させるか!」
小政がかよ子の盾となる。接近してきたヴィクトリアと鍔迫り合いとなった。
(これを山田かよ子の元に戻せば・・・!!)
小政はそう思った。
「こ、小政!!」
かよ子は小政に加勢しようとした。次郎長や石松、大政も援護にかかる。だが、ヴィクトリアは小政を弾き飛ばし、剣を元の杖に戻して周囲を冷凍攻撃した。
「さ、寒い・・・!!」
これでは身体が凍りついてしまう。その時、かよ子は武装の能力を発動させた。かよ子は突進する。
(力ずくでもこっちから近づけば・・・!!)
かよ子はヴィクトリアの攻撃を武装の能力で防御しながら近づいて杖を取ろうとした。
「ふ、馬鹿め、近づいたところで私から杖を奪えると!?」
ヴィクトリアが杖を光らせて自分自身に向けた。そしてかよ子が近づく五歩手前で拳を振り上げた。するとかよ子が触れられてもいないのに顎を殴り上げられた。
「な、何で・・・!?」
かよ子は下顎の歯が砕けたかのような痛みを感じる。
「小娘、お前は杖の能力を博しきれてないようだな。杖には先からただ炎や氷をだして攻撃するのみではない。このように自分自身を強化して格闘戦を可能にもできるのだ。そんな奴が何故今まで来れたのか不思議でならぬ」
「あの杖、そんな使い方あったの・・・!?」
かよ子は母親から杖を引き継がれた時、杖の使用法を著した説明書を幾度も読んだが、そのやり方は一度も使用しなかった。そもそもそのような記述があったのだろうか?
(でも遠くからでも近くからでもこの人を突破できない・・・)
かよ子は攻略法に苦心する。大政の槍も綱五郎のピストルも杖による肉体強化で防がれた。
「私は、あれでもまだ使いこなせなかった。だからあの時も杖を簡単に盗られたの・・・!?」
「あの時」とはかよ子は杖を奪われた二回である。一回目はクリスマスの合唱コンクールの帰りにあった入鹿という男から善人のフリをされて騙し盗られた時、二回目は「この世界」でヴラド三世にうっかり奪取を許してしまった時である。
(ならどうすれば、もっと使いこなせるの・・・!?)
「山田かよ子、どう使いこなせるかは後で考えよ!」
「う、うん!!」
(いけない、おっちょこちょいしちゃった・・・!!)
かよ子は気を取り直し、短刀で迎撃する。しかし、手になかった。
「あ・・・!!」
かよ子は先程殴られた時に短刀が手から離れていた事に気付いた。
「しまった!!短刀が!」
ヴィクトリアが次郎長達の攻撃を杖で自身に施した肉体強化で防御しながらその短刀を拾う。
「これはアルフレートの短刀か。我が息子を殺した上にこんな小娘に使われるとはな。忌々しい・・・!!」
ヴィクトリアは短刀に杖を向けた。
「あ・・・!!」
かよ子はアルフレートの短刀でこれまでの戦いを繋いで来た。しかし、ここで短刀がない状況で武装の能力のみで戦えるのか。ヴィクトリアはその短刀から光が放たれ杖が吸収された。そして不要となった短刀を投げ捨てた。
「これで私の杖は強くなる・・・!!」
「それはおばさんのじゃないよ!私の杖だよ!!何度も言わせないでよ!!」
ヴィクトリアは睨んだ。
「黙れ、小娘!誰がおばさんだ!?私は女王だぞ!!」
ヴィクトリアは杖を向ける。炎が放たれた。
「うわ・・・!!」
かよ子は慌てて武装の能力で防御した。そして炎が弾かれる。
「山田かよ子、無事か!?」
「だ、大五郎・・・!!」
大五郎の法力が炎を消したのだった。
「お主の杖は心強いが敵になると非常に厄介であるな」
「と、取り返せるかな・・・?」
「できるできないではない。取り返さんと駄目だ!!」
「う、うん、そうだよね・・・!!」
かよ子は立ち上がる。
「喰らえ!」
大政が槍を飛ばした。
「ふん!」
ヴィクトリアは呆気なく弾く。その隙に石松がヴィクトリアに斬り込みにかかった。しかし、ヴィクトリアが杖を石松の刀に向けて剣に変化させ、すぐ様石松を遠ざけた。
「先ずはお前から斬り捨ててやろうか」
「い、石松!!」
かよ子は石松の所へ向かう。
「山田かよ子!お主も纏めて斬られてしまうぞ!」
しかしかよ子の能力が発動された。ヴィクトリアが剣を振り降ろせなくなる。
「な・・・。く、上手く、振り下ろせん!!これが異能の能力の恐ろしさ、なのか・・・!?」
(あの杖を取り返したい・・・!!もっと杖を使いこなしたい!!)
かよ子は石松を防御しながらヴィクトリアへと向き直す。
後書き
次回は・・・
「攻防敵わぬ劣勢」
大野達はアルバートと交戦し、かよ子は次郎長一派と共にヴィクトリア女帝と交戦する。だが、アルフレートの短刀の能力をヴィクトリア女帝の杖に吸収され、かよ子自身は為す術がなかった。そんな中、赤軍まで加勢してきて・・・!?
249 攻防敵わぬ劣勢
前書き
《前回》
かよ子達は遂に杖を持っているとされるヴィクトリア女帝の元に辿り着き、本人と相対した。彼女が持っていたのは紛れもなくかよ子の杖だった。そしてヴィクトリアにアルバートと杖の争奪戦が始まる。ヴィクトリアはかよ子の杖を巧みに操り、アルバートと共にかよ子達を苦しめて行く。だがかよ子の武装の能力がヴィクトリアを怯ませ・・・!?
大野達はアルバートに対抗する。
「お前は俺達が相手してやる!!」
「ふ、小僧どもが、このアルバート様を舐めてもらっちゃ困るぞ」
アルバートは剣を振るう。のり子の人形がアルバート大公を金縛りにした。
「ふ・・・、そんなもの通じるか!」
アルバートが剣を振るう。金縛りがあっさり破られた。
「この剣もあの小娘の杖の能力を加えているのだ」
アルバートは剣を振る。振っただけで巨大な渦潮が幾つも現れた。
「ひええ〜、溺れ死ぬ〜!!」
友蔵が悲鳴を挙げる。
「潮ならアタシが消してやるよ!」
椎名が水の玉を出した。渦潮が小さくなって玉に吸収されていく。
「水の攻撃ならオイラも負けないブー!」
ブー太郎は水の石の能力を行使した。水で小さくなった渦が押し返され、アルバートを襲う。
(杉山、お前の力借りるぜ・・・!!)
大野は雷の石を出す。雷がブー太郎が出した水に流れ入る。水と雷・二つの攻撃でアルバートを襲う。
「うおお!!」
「効いたか・・・!?」
かよ子は次郎長一派と共にヴィクトリアと戦い続けていた。
「この!」
お蝶が脇差を出す。鎌鼬のような攻撃をヴィクトリアに喰らわす。
「ふ・・・!」
だがヴィクトリアは己の肉体を杖で強化し、鎌鼬を拳で薙ぎ払った。
「そこだ!」
吉良の仁吉が突進する。だがヴィクトリアが蹴りで弾き飛ばそうとした。
「力なら俺も負けん!!」
仁吉は怯まなかった。ヴィクトリアの蹴りを己の手で受け止めたのだった。
「今だ、皆の者!」
「おし!」
綱五郎がピストルを乱射する。
「な、ど、どけ!」
ヴィクトリアは足を押さえられながも攻撃で銃弾を防御した。そして跳ね返した。その時、かよ子の武装の能力が発動する。銃弾は誰にも当たらなかった。そして仁吉がヴィクトリアの足を掴んでいる間、大政が槍を、次郎長、石松、小政が切り込みに、かよ子が杖を取ろうと飛びかかる。
「纏めて焼き殺させてもらう!」
ヴィクトリアは杖から炎を噴射させた。
「やられてなるか!」
仁吉はヴィクトリアを投げた。しかし、ヴィクトリアは何とか地に足を付けた。
「肉弾戦ならまずお前とやってやろう!」
しかし、何かがヴィクトリアの首を掠める。
「うおっ!!な、何だ!?」
「長吉!!」
神戸の長吉がヴィクトリアに奇襲していたのだった。
「見えぬところから攻撃するのが俺のやり方よ!」
だが、次郎長達が飛び掛かる。ヴィクトリアはすぐ様再び己に杖を向け、肉体強化を施し、侠客達の攻撃を撥ね退けた。
「隙をみせたね!」
かよ子がヴィクトリアの背中に飛びついた。ヴィクトリアは肉体強化の術でかよ子を遠ざけようとする。だがかよ子もまた今度は己の武装の能力を発動させた自分自身を防御した。
「放せ、小娘!!」
「絶対に離さない・・・!!私の、杖を、取るまで・・・!!」
かよ子はいつも以上の執念を見せた。
「ええい、しつこい!!」
だが、ヴィクトリアの格闘能力の方が一枚上手だった。かよ子はまた弾き飛ばされる。ヴィクトリアは丸鋸を杖から出現させる。
「いい加減にお前ら纏めて死ね!!」
丸鋸が周囲にいくつも発射された。
大野やブー太郎、まる子、のり子、スケッチブックの少女や隆盛、利通、そして椎名や関根はアルバートとの交戦を続ける。水と雷の攻撃でアルバートにダメージを与えたところだった。
「やったのか!?」
皆が倒せたかどうか気になった。しかし、アルバートは五体満足でその場に立っていた。
「だ、駄目だブー!!」
アルバートは皆の攻撃を全て剣で薙ぎ払っていたのだった。
「そんなんで私が倒せるのと思ったか、愚か者!!」
少女は直ぐ様スケッチブックを開いた。
「全ての動物、出てきて!!」
スケッチブックからライオン、トラ、鷹、鷲、ヒョウなど様々な動物が出てきてアルバートを狙う。しかし、アルバートは尽く剣で斬ったり、剣から鎌鼬を起こして斬り付けたりするので歯が立たない。
「ならこれならどうだ!?」
利通が碁石を出す。
「鬼手!」
利通の攻撃が襲う。しかし、攻撃が通る様子がない。
「ただのハズレか!」
「ハズレがどうか、よーく待つんだな!」
その時、アルバートの足元から爆発が起きた。アルバートの脇腹に光線が襲う。
「鬼手とは、相手の意表を衝く事!足元を下から襲う攻撃など予想だにしなかったであろう」
「おお、凄いぞ!こんな攻撃もあるんじゃな!」
友蔵が感心した。
「この野郎!!」
アルバートは剣をもう一度振るう。剣から大量の落石が大野達を襲う。
「ギャアア、ま、まる子、逃げるんじゃ〜!!」
「え、お、おじいちゃん!?」
友蔵がまる子の手を引っ張っ手その場を去ろうとする。しかし落石は容赦なく、逃げようとする友蔵とまる子の頭上にも落ちて来る。
「危ない!」
のり子が人形の念力で落石の落下を制止させた。
「のりちゃん、ありがとう!」
「ももこちゃん、逃げちゃ駄目だよ!!」
「でも、私達の能力じゃこれもいつまでも保てないわ!」
キャロラインが警告する。関根が忠治の刀で数々の石を粉砕する。椎名も水の玉で落石を押し流した。ブー太郎も水の石で石を押し流し、大野も草の石の能力で木の葉の嵐を出して石を粉砕した。
「ふ、そんなんでも石は無限に出るぞ!」
アルバートは剣で石を出す攻撃を続行した。
「ならばこれはどうだ。マガリツケ!」
利通は碁石を掌に並べた。石が一部アルバートの方へと襲う。
「意味はないわ!」
アルバートは剣を振り、自分に来る石を粉砕した。
「これでも駄目か・・・!!」
利通は苦悩する。他の皆も石から己を防御するのに精一杯だった。
かよ子達に向かってヴィクトリアが出した無数の丸鋸が襲う。
(あんなに鋸が・・・!?私はそんなに出せなかったのに・・・!?)
だがそう考えている暇はない。かよ子の武装の能力が直ぐに発動された。かよ子は自分に来る鋸を跳ね返し、次郎長や石松もまた刀などで丸鋸を払った。
「このやろ!」
お蝶が脇差を振る。丸鋸が全て粉砕され、ヴィクトリアを遠距離で狙う。
「無駄だ!」
ヴィクトリアがお蝶の攻撃を自身の肉体強化で全て払い除けた。
「こうなったら、最後の手段になるが・・・!!」
石松は眼帯を外した。
「石松、あれを使うというのか!?」
石松の目から神が現れた。金比羅宮の祭神を召喚する。だが、カール5世と戦った時とは異なり、全く別の神だった。
「あれは・・・!?」
「あれは崇徳院!嘗て父・鳥羽法皇に冷遇された挙げ句、保元の乱で讃岐に配流された皇族だ!その怨念を使うつもりなのだ!」
「ホトケなどくだらん!我がキリストの力に勝るものはないぞ!」
ヴィクトリアは十字架を取り出した。崇徳院は怨念をヴィクトリアに向けるのに対して、ヴィクトリアは十字架で主・イエス・キリストの力を使って返り討ちを試みているのだった。
「石松、頑張れーー!!」
かよ子は応援する。
「よし、他の者、今のうちにヴィクトリアを狙うのだ!」
「了解!」
大政が槍から鉄の矢を何本も飛ばす、小政が高速でヴィクトリアを斬りに掛かり、お蝶も遠距離攻撃で脇差を振る。次郎長も刀を床に付けて床を爆発させた。
「これでも喰らえ!!」
だがその時、何かが押し寄せる。かよ子も、次郎長一派も、アルバートと交戦している大野達も驚くものだった。
「え・・・、ゴジラ!?」
ゴジラがその場にいた。さらに巨大な別の女性もいた。
「手伝いに来てやりましたぜ、女王さん」
赤軍の和光晴生と岡本公三だった。
「ここで、赤軍・・・!?」
かよ子は更に劣勢と化する事に心の中で絶望した。この女王とその大公だけでも厄介なのに赤軍の人間が介入されると勝ち目が更に薄くなってしまう。
「岡本、俺はアルバートと対峙してる奴を片付ける」
「よし、俺は女王を助けてやるぜ!マリア様!」
マリアがヴィクトリアの十字架に呼応するように更に強化された。裁きの光が崇徳院を鎮めさせてしまった。
「何、う・・・!?」
「石松!」
石松が神を行使した反動で倒れてしまった。
「次は嬢ちゃんの番だぜ!」
(こ、ここで、殺される・・・)
かよ子はそう思った。だが、建物の壁が破壊された。
「な、何だ!?」
龍が聖母マリアに噛み付いた。
「な、何だ、こいつは!?」
龍に気を取られているうちにヴィクトリアが吹き飛ばされる。そして一人の女性が高速で飛び込み、ヴィクトリアの十字架をひったくって破壊した。
「は、離れろ!無礼者!」
ヴィクトリアは飛びかかった者を蹴り飛ばした。
「あ、お姉さん達!!」
上市、高田、ラクシュミーの軍が援軍としてヴィクトリアの館に辿り着いたのだった。
「貴女達、遅くなってすまない。援護に来たぞ!」
「お前は・・・、ラクシュミー!」
「憎きヴィクトリア女帝!今度こそは私が勝つ!!」
イギリスの女王とインドの王妃が火花を散らす。
後書き
次回は・・・
「神と神、女王と女王」
杖の争奪戦にてかよ子達に援軍が訪れる中、ヴィクトリアのかよ子の杖による攻撃、そしてアルバートの剣、更には赤軍の和光が召喚する映画の怪獣達や岡本が召喚したマリアに苦戦してしまう。ヴィクトリアとラクシュミーとがぶつかり合い、そして岡本の聖母マリアに対抗できるものは・・・!?
250 神と神、女王と女王
前書き
《前回》
ヴィクトリアの攻撃に対してかよ子や次郎長一派が一進一退の攻撃を続けるが、なかなか杖を取り返せずにいた。アルバートに対しては大野、ブー太郎、まる子、のり子、椎名、関根、スケッチブックを持った少女、利通、隆盛が相対するが、アルバートの剣もまたかよ子の杖の能力が複製されている為撃破が難しくなっていた。ヴィクトリアに対して石松が左目の能力を開示し、崇徳院を召喚するが、最悪な事に赤軍の和光と岡本がヴィクトリアの支援に現れてしまう。だが、上市、髙田、ラクシュミーの一隊が追いつき、かよ子達の方にも援軍が訪れた!!
かよ子達の元に上市、高田、ラクシュミーの軍が援護に入った。
「お主ら、援護に感謝する!」
次郎長も礼を言った。そしてラクシュミーはヴィクトリアと睨み合う。
「さて、あの時私は負けたが、今度はお前が葬られる時だ!」
「ふ、生意気な女め、私の言いなりになっていればいいものを!」
「もう一度マリアを出してやるぜ!」
岡本がもう一度、聖母マリアを召喚する。
「しまった、もう一度出されてはラクシュミーとて一溜りもないぞ!」
次郎長は危惧する。石松は怨霊・崇徳院を召喚したものの、先程上市に破壊されたヴィクトリアの十字架と岡本が召喚したマリアによって怨霊を倒された上に神を行使した副作用で動けなくなってしまっている。しかも、相手は更に和光が出した怪獣と数が多い。
「余所見してるとお前らも死ぬぞ!」
岡本は警告した。和光が出した怪獣が襲う。
「や、止めて!!」
かよ子は武装の能力を発動させる。かよ子達にゴジラは手を出せなかった。
「小娘、お前の能力も意味がねえぞ!聖母マリアよ!」
マリアがかよ子を睨みつける。
「マリアの睨みつけは裁きそのもの!お前ももうすぐ死ぬ!」
「な・・・!!」
かよ子は耐えようとしたが耐えられない。武装の能力も弱くなってしまっている。
大野達はアルバートに苦戦していた。
「もう何やっても倒せないのかブー!?」
「弱気になるんじゃねえ!俺達は最強なんだ!!」
「そ、そうだなブー!」
アルバートは剣で竜巻を起こした。椎名が水の玉、ブー太郎も水の石で竜巻を防ごうとする。大野の草の石と雷の石(これは元々杉山の物だが)が発動される。電撃が放たれ大木が壁となる。まる子も炎の石で火炎放射で竜巻を消そうとする。関根が刀を振るい皆の攻撃を更に強め、のり子も人形と合体して強力にアルバートの能力の操作して竜巻をアルバートへ返そうとした。
「まる子、頑張れ〜!皆、頑張れ〜!!」
友蔵は叫んで応援した。
「纏めて掛かりたければそうしたまえ!だが無意味な事よ!」
アルバートは更に剣を振る。雷、炎、氷など様々な攻撃を竜巻に加えた。
「な、巻き返して来やがった!」
その上、怪獣ラドンやキングギドラなどが襲う。スケッチブックの少女がスケッチブックを開いて四聖獣を召喚して応戦する。更に恐竜なども出して対抗した。隆盛も巨大な狛犬を何頭も出して和光が出した映画の怪獣達を迎撃する。利通は碁石で敵の攻撃の操作を試みた。だが、どうしても数が多すぎてキリがない。そして・・・。
「ギエエエ!やめてくれえ!!」
友蔵が襲われそうになる。
「そのジジイ、食っちまえ!!」
「お、おじいちゃん!!」
まる子は祖父の危機で余所見してしまった。その時、また館の壁が破壊された。パチンコの玉が飛び、怪獣達が眠らされる。
「誰だ!?」
「遅くなっちまったぜ!」
隣町の四人組の集団、組織「義元」がエレーヌ、そして女戦士ジャンヌと共にその場に到着した。
「お前ら、来てくれたのか!」
「助太刀するぞ!」
かよ子の武装の能力が岡本が召喚した聖母マリアによって弱体化されていく。
(私、死んじゃうの・・・!!嫌だ、杖をやっと取り返せる所にあるのに・・・!!こんなところでおっちょこちょいしたくない・・・!!)
その時、誰かの声がした。
「皆の者、聖戦だ!!」
多くの兵が現れた。
「ムハンマド様の力を受けよ!」
矢が大量に飛んできた。マリアがその矢を受け身体が縮まっていく。
「あ、あれは・・・!?」
「真の杖の所有者よ、我が名はサラディン。私も杖の奪還に協力する!!」
「ち、邪魔の邪魔が!!」
岡本は巻き返そうと聖母マリアの力をより強めた。
「イスラム教なども我がマリアに勝らん!」
聖母マリアとイスラムの聖力が込められた矢がぶつかる。どちらも取っ組み合った状態で動かない。かよ子の武装の能力が復活する。サラディンの兵はマリアに対してのみならず、和光が召喚した怪獣にも攻撃した。怪獣が矢を大量に受けて消滅していく。
「サラディンさん、頑張って・・・!」
かよ子は武装の能力で援護するしか今はできなかったが、それでもヴィクトリアに近づこうとする。
「ヴィクトリア女王!形勢は逆転だよ!」
「ほう、助けが来たからっていい気になるんじゃないわよ・・・・!!」
ヴィクトリアは杖をおっちょこちょいの少女に向けた。
組織「義元」とエレーヌ、ジャンヌの軍勢はアルバートと交戦する。
「お前がアルバート公か!我が力でその勢いを調整してやろう」
ジャンヌは秤を取り出す。左の皿を持ち上げた。
「何、我が勢いが弱まって来ている!?」
アルバートは己の剣から出した竜巻や炎、雷、氷、全ての能力が弱体化していく事に驚いた。
「ヤス太郎、あいつの動きを封じられるか!?」
「やってみるでやんす!」
ヤス太郎は眠り玉を出してアルバートに向けてパチンコで飛ばす。アルバートに眠り玉が命中する。
「よし、サンキューお前ら、これで留めが刺せる!!」
大野達は山口達の攻撃も合わせて総攻撃でアルバートを狙う。
「まる子ー!皆の衆!頑張れ〜!!」
友蔵は応援した(それくらいしか彼にはできないが)。
ヴィクトリアはこの世界最上位の能力を持つ杖をかよ子に向けた。竜巻が彼女を襲う。だがかよ子は武装の能力で防御した。
「しぶといね、もうそんなんでやられないよ!」
「な・・・!だが、これを突破できるかな!?」
ヴィクトリアは己に杖を向け、格闘能力を高めた。
(また格闘能力・・・!?)
かよ子は突破を試みた。しかし、ヴィクトリアの拳や蹴りが飛び、それを防ぐのみで精一杯となってしまう。
「はは、これは無理か!」
だが、ラクシュミーがライフルをヴィクトリアに向けて発射した。ヴィクトリアがそれを何とか避ける。
「む・・・、ラクシュミー・・・!!」
「ヴィクトリア!相手は杖の持ち主の小娘だけでない事を忘れるな!!」
そしてラクシュミーがライフルをヴィクトリアに向けて乱射する。ヴィクトリアは何とかそれを跳ね返すがサラディンの兵の矢、上市ら高田の攻撃、次郎長一派の盛り返しと色々対処しなければならない。岡本もサラディンの聖力によって弱体化されそうなマリアを守ろうと彼らと取っ組み合っているので動けない。
「この野郎!!」
ヴィクトリアは血迷ったのか地面に拳を突きつけた。
「あ、う、うわあ・・・!!」
かよ子達は武装の能力で守りきれず、吹き飛ばされた。
「ええい!」
ヴィクトリアは杖を剣に変化させた。そして鎌鼬を出して遠距離でかよ子達を攻撃する。
「次郎長、石松、ラクシュミーさん、お姉さん達!!」
かよ子の武装の能力が更に強まっていく。鎌鼬が次郎長達の所へ降りかかるのを防ぐ事はできた。
「ああ、しつこい、お前らはしつこい!何でさっさとくたばってくれないのか!!」
ヴィクトリアは恐らく長期戦になった為かかなりイライラしていた。
「岡本公三!そんな奴に構うな!私を守れ!役立たず!!」
ヴィクトリアは岡本に八つ当たりした。
「へいへい、解りましたよ!」
岡本は攻めてくる聖力の矢を無視してヴィクトリアの直接援護に当たる。
(聖力の矢が来てんのにこれで守りきれんのか・・・?)
岡本はそう懸念しながらもかよ子達を聖母マリアの能力で異能の能力、道具の能力、全てを弱体化させようとした。
「聖母マリアよ、奴等を無力に!」
「了解しました」
(また振り出しに戻される・・・!?)
だが三叉戟を持った武将のような人間がマリアに向けて突進してきた。
「あれは・・・!?」
マリアに直接対抗してきた当たり、神の一種とかよ子は感づいた。
「我が名は毘沙門天の化身、輝虎!我も戦いに加わる!」
ディズレーリとの戦いでラクシュミー達を援護していた輝虎が回復してヴィクトリアの館に追いついたのであった。
後書き
次回は・・・
「英国の女王達」
かよ子達の元に輝虎が加勢した。アルバートに対してもすみ子達組織「義元」が加勢し、心強い味方が増える中、とある女王達も現れ、和光や岡本を苦戦させる。そして形勢はかよ子達の方に傾くのか。そしてかよ子の杖を取り返す切り札としてある人物が・・・!?
251 英国の女王達
前書き
《前回》
ヴィクトリアおよびアルバートに苦戦するかよ子達の元に上市、髙田、ラクシュミー、サラディンやすみ子達組織「義元」が援軍に現れた。ラクシュミーの抗戦にかよ子の劣勢は塗り替えられ、ジャンヌや組織「義元」がアルバートを狙い、サラディンが和光の怪獣達を戦闘不能に陥らせていく。ラクシュミーとヴィクトリアの睨みあいの中、岡本が聖母マリアでヴィクトリアに加勢しようとしてまたも不利になりかけた時、毘沙門天の化身と名乗る輝虎が応援に駆け付けた!!
二人の女王がある地点へと向かう。彼女らもまた嘗て英国の女王として生きていた者だった。名はクイーン・ベスとブランデー・ナン。
「ブランデー・ナン。急ごう。杖の所有者達が苦戦しているはずだ」
「ああ、そうだね。私も勢いをつける為に一杯・・・」
ブランデー・ナンはブランデーを一瓶飲む。
「酔っ払わないでよ」
「はは、他の酒で酔ってもこれだけは酔わないよ」
そんな雑談をしながらも二人は真剣な思いで杖の奪還に手を貸そうとしていた。そして一人の男が合流してきた。
「貴方方、私も援護の手伝いをさせてもよいだろうか」
「お、お前はプロイセンの宰相ではないか・・・!!」
かよ子達の元に輝虎が加勢する。
「これは我々に勝利をもたらす神、毘沙門天。この神がお前らに勝利をもたらす」
「よし!」
毘沙門天が岡本のマリアと対峙した。
「な・・・、また余計な奴が・・・!!」
ヴィクトリアは杖を今度は毘沙門天に向けた。杖が光り出す。
「な、何をする気なの・・・!?」
「神の力を使ってお前らを倒してやる!!」
かよ子は驚かされる。
「杖って、神の力を写し取る事ができるの・・・!?」
大野達は組織「義元」達と協力してアルバート公を攻撃した。
「・・・やったのかブー!?」
「だが気配が消えてねえ!!」
大野は倒せたのか不審に思った。しかし、アルバートは身体が横たわっていたが、直ぐに立ち上がった。
「ジャンヌが神の声を聞く故に神を操る者・・・。だが、私も神を操れる事を覚えておくがよい!!」
アルバートの前に二体の神が現れた。それらはライオンとユニコーンの姿を模ったものだった。
「これが神だと!?」
「そうだ、私が生前紋章としてこのライオンとユニコーンを使用していた。ライオンはイングランドを、ユニコーンはスコットランドを象徴する聖獣。これを私が崇拝するカトリックと合わせて神として生成したのだ。掛かれ!」
ライオンとユニコーンが大野達の元へ猛進する。更には和光が出した映画の怪獣達が襲いかかる。
「ギエエエ〜、食べられる〜!!」
友蔵が泣き喚いた。すみ子は銃で結界をライオンとユニコーンを囲むように結界を張った。聖獣達の動きが封じられた。
「神をそんな風に具現させるとは・・・!!」
ジャンヌは秤を確認する。今の所双方の皿は水平となっていた。
「今は互角の状態だ!手を緩めるな!!」
「よし、反撃だ!」
「俺達があのライオンとユニコーンを片付けるぜ!」
「ああ、任せる!!」
山口達に聖獣達の始末を任せ、大野達はアルバートに再び攻めかかる。
「喰らえ!!」
エレーヌも念力でアルバートを金縛りにして援護した。
「な・・・、イングランド、そしてスコットランドの聖獣達よ!再起してくれ給え!」
ライオンとユニコーンはすみ子が出した結界の中で暴れ続ける。体当たりをした後、結界が破られた。
「あ・・・」
すみ子は絶望に陥りながらももう一度、銃で二体の動きを制しようとした。川村のバズーカ、山口の矢、そしてヤス太郎のパチンコで攻撃する。そしてアルバートの方は大野達が攻めにかかる。だが、剣を振られた上にライオンとユニコーンの守護の力が働いている為かダメージを与えられない。
「大天使カタリナ!」
ジャンヌはカタリナを召喚した。
「カタリナ、この者達の守護を頼む!」
「はい、車輪よ、この悪しき化身を轢き給え」
車輪がライオンとユニコーンの真上に現れ、潰そうとした。だが、車輪を避けられる。車輪は執拗に二匹を追うも意味なく、山口達へ向けて突進した。
「小僧達を噛み殺せ!!」
「く、来るでやんす!!」
ヤス太郎はパチンコで眠り玉を出して防御する。しかし、全く効かなかった。
「俺がやってやる!!」
川村がバズーカで穴を開けようと4連射で迎撃する。だが、素早くかわされた。
「俺が守りに入るよ!」
関根が山口達の前へ飛び出し、忠治の刀を振るった。黒い三日月形の刃が飛び、二匹の動きを止めた。だが今度は和光の怪獣達が来る。
「アルバートの聖獣を封じてもこれでは無駄だな!」
「そうはさせぬ!」
利通が碁石を出して手の端に置く。
「スベリ!」
和光の怪獣達が大野達から遠ざかった。
「俺の怪獣達が纏めて・・・!!」
だが怪獣達も怯まない。その中の一体・モスラが羽をバタつかせた。
「あ、あれは確か俺達を毒で苦しめる攻撃だ!」
「なら!」
すみ子が真上に銃を放つ。鋼鉄の壁が幾つも出現し、皆を毒から防ぐ。
(でもここからどう攻める・・・!?)
「それでは周りが見えんだろ!神よ、この壁を払い除けよ!!」
「させません!!」
エレーヌが金縛りを強めた。だが、ライオンが吠えると彼女の術も強制解除された。
「な・・・」
(まずい、止められない・・・!!)
エレーヌも絶望した。だが、急にライオンもユニコーンも動きが止まった。そしてすみ子達を襲おうとするも跳ね返される。
「これは一体・・・!?」
「む・・・、秤が我々の方に優勢と示している!!」
ジャンヌは秤を確認した。自分達の皿が重く傾いていた。
「遅くなって申し訳ない!」
「我々も手伝おう!」
二人の女性がいた。
「アルバート公、お前らの攻撃はこのクイーン・ベスが止めさせた。イングランド正教会の力でこの者達の力で苦しみから解放させる!!」
ライオンとユニコーンは消滅した。だが和光の怪獣が残っている。
「こいつらは私が片付けよう!」
もう一人の女性が動き出した。瓶を出す。
「この悪しき者を浄化するブランデーを喰らうがよい!」
女性は瓶の蓋を取り、ばら撒いた。中身はブランデーだったが、煙と化する。和光が出した怪獣も消滅した。
「ま、まだだ!」
和光は再び小型ビデオカメラで怪獣達の召喚を試みた。しかし、何も出てこなかった。
「な、何故だ、何故出てこない!?」
「このブランデー・ナンのブランデーに掛かった幻獣は全て消滅される。お前の能力も暫くは使えんぞ!」
和光はもう一度怪獣達を出そうと試みる。しかし、何も出す事が出来なかった。
「ちい、クイーン・ベスにブランデー・ナン!剣の奪還に手を貸した者共め・・・!」
「アルバート、同じ女王でもお前の所の女王などに負けぬぞ!」
「皆、反撃のチャンスだよ!」
「よし、総攻撃だ!」
大野達はアルバートに迫る。
ヴィクトリアは杖を輝虎が召喚した毘沙門天に向けた。杖が光に包まれる。
「その神を使って杖の能力として加える!そして岡本公三が出したマリアの一部としよう!」
そしてマリアはアルバートの方を見た。
(クイーン・ベスにブランデー・ナン!!あの者達も来てたのね・・・!!)
杖からもう一人の毘沙門天が現れた。
「な、我が毘沙門天がこんな女に複製されると・・・!?」
輝虎は驚かされる。そしてサラディンがヴィクトリアへ攻撃を始める。
「今度はヴィクトリアへ聖戦だ!!」
サラディンがイスラムの聖力を利用して剣を振るう。光が杖で出された毘沙門天を襲った。
「無駄よ!神の力が加わればもはや無敵・・・」
「そうかな?」
別の男がまた一人、その場に来たる。
「鉄血の宰相か、今更来てもお前に出番はないわ!」
「そうかもしれん。だが、その杖がお前の言う事を聞き続けるかな?」
「何を吐かす!」
その男はかよ子に目を向けた。
「お嬢さんが杖の所有者か。私はオットー。君達の味方をしに来た。杖を持つ者がどちらに相応しいか共同体の術を掛けよう」
「共同体の術・・・?」
かよ子はオットーの言っている事が理解できなかった。
「その最強の杖よ、どちら者につくか相応しいか、審判せよ!」
オットーが叫んだ。
「もしあの杖がヴィクトリアに相応しければあの神を力を写し取る能力が持続される。そうでなければ杖はヴィクトリアの言う事を聞かなくなる筈だ!」
「それがオットーさんの術・・・!?」
かよ子はそれで杖が戻るか、オットーを信頼しようと思った。
後書き
次回は・・・
「杖が選ぶ者」
オットーの術が発動された。その術でヴィクトリア女帝の手から異世界最上位の杖が離れて宙に浮かぶ。杖は正しき所有者として選ぶのは山田かよ子か、それともヴィクトリア女帝か?そしてアルバートと大野達の戦いも大詰めへ・・・!!
252 杖が選ぶ者
前書き
《前回》
組織「次郎長」と「義元」の連合がアルバートを攻撃するが、アルバート自身もまた神を操る事ができていた為倒せなかった。アルバートはカトリックの能力で形成したライオンとユニコーンで対抗する。神で対抗するジャンヌでも完全に対処しきれなかったものの、剣の奪還に貢献したクイーン・ベスとブランデー・ナンが大野達の味方となる。ヴィクトリアとかよ子達の側には輝虎やサラディンがかよ子の味方となり共闘する。そして更にかよ子の味方として現れたオットーがかよ子とヴィクトリア、どちらが杖に相応しいかを裁定する術を掛ける!!
前回から登場したオットーの元ネタは言うまでもなく、ドイツを樹立させたオットー・フォン・ビスマルクです。彼は逆にアドルフ・ヒトラーに繋がる存在という評価をされる事もありますが、彼の行った体制でヨーロッパに戦火が殆ど存在しなかった事、彼がアフリカなどへの植民地化を好まなかった事から平和を正義とする世界の人間として登場させました。
本部の管制室。まき子やイマヌエル達は中西部でかよ子達がその場で動かない様子を確認していた。
「クイーン・ベスやブランデー・ナン、更にはサラディンやラクシュミー達も応援に来る程の激しい戦いとなっているな」
「かよ子達は杖を取り返すすぐそこまで来てるのね」
まき子はかよ子を必死で応援する。
「かよ子、負けちゃだめよ!!頑張って!!」
まき子は娘に届かないと解っていながらもあえて通信機は使わずに発声して応援した。
「きっと取り返せるよ、まきちゃん」
奈美子はそう信じていた。
アルバートと交戦する大野達はクイーン・ベスとブランデー・ナンの援護で自身の方に有利に傾いていた。
「和光晴生、何とかせんか!?」
アルバートは和光に迫る。
「だが、俺のビデオカメラも使えなくなっちまってんだ!!」
「くそ!」
アルバートは剣で熱風を出して大野達を焼き払おうとした。
「大天使ミシェル!!」
だがジャンヌが大天使ミシェルを召喚した。ミシェルの炎がアルバートの熱風に対抗する。
「私もボーッとできんな!」
椎名が玉から大波を出して熱風を消した。大野の草の石から大木の枝が、雷の石から電撃が、ブー太郎の水の石から激流が、まる子の炎の石から火炎放射が放たれる。そしてエレーヌが舞い、それらを更に強化させた。アルバートはまた剣を振って薙ぎ払おうとした。しかし、腕が動かない。
「念力を発動させたわよ!」
のり子がキャロラインと同化して念力でアルバートの腕を封じたのだった。そして剣はアルバートの手から離れた。
「これで終わりにさせて貰うぜ!!」
山口の矢に川村のバズーカ、そしてヤス太郎のパチンコが勢いよく発射される。アルバートは吹き飛ばされた。そしてアルバートは倒され、光となる。
「おお、凄いぞ、皆〜!!」
友蔵は喜んだ。
「な・・・!!」
和光は慌ててトランシーバーを取り出した。
「こちら和光!劣勢になった!」
『解ったわ、レーニン、離脱をお願いします』
「待て、和光晴生!!」
関根が国定忠治の刀を持って和光に掛かる。しかし、あと一歩の所で瞬間移動を許してしまった。
「取り逃がしたか・・・」
「だが、アルバートは倒せた。あとはあの女王のみ。杖の奪還に加勢しよう!!」
「ああ!!」
この世界で最上位の能力を持つ杖がオットーの術に掛けられる。杖はかよ子の手に戻るのか、それともヴィクトリアの物となるのか・・・。だがその時、杖がガタガタと震え出した。
「ど、どうした・・・!?杖よ!!」
ヴィクトリアは違和感を覚えると共に驚く。そしてヴィクトリアが毘沙門天から写し取っていた神の力が消えた。杖によって召喚された毘沙門天が姿を消す。
「な・・・!?」
ヴィクトリアは更に杖を持っている自分の手が熱くなっているのに気づいた。
「どういう事、なの・・・!?ああ・・・!!」
ヴィクトリアは熱さで杖を手から離してしまった。
「その杖は我が術によって真の所有者を選ぶという自我を芽生えさせたのだ。更に神の力を写し取るなどお主にとってはまだ無理のありすぎる行為だ。杖にも限界が来たのだ!!」
「そんな・・・!!」
そして杖は宙に浮いた。
「さあ、杖が正しき所有者として選ぶのはどちらか!ヴィクトリア、貴様か、それともこの山田かよ子か!?」
かよ子は杖を見る。そして心の中で思う。
(私の杖・・・、お願い、戻って来て・・・!!今度はもう盗られるなんておっちょこちょいはしないから・・・、もっと、もっと強くなって上手く使いこなせるようになるよう努力するから・・・!!そして杉山君が大野君と仲直りできるように、そして元の日常に戻す為にもその杖が必要なんだ・・・!!)
かよ子は杖に己の望みを全て願った。杖が空中で回転を始めた。その場に先程アルバートとの戦いを終えたまる子達が駆けつけた。
「かよちゃん!」
「山田!」
「ブヒョー!!こ、これは一体、何だブー!?」
ブー太郎が杖が空中に浮いているのを見て驚いた。
「このオットーの術だ。あの杖がヴィクトリアか山田かよ子か、どちらを正しい所有者として選ぶかを裁定しているのだ」
次郎長が解説した。
「お前ら・・・!!」
ヴィクトリアは光線を終えた大野達を見た。そして向かい側を確認する。
「アルバート、アルバート・・・!!」
ヴィクトリアは自身の愛する夫・アルバートが二人の女王にこの子供達に殺された事で悲嘆したのだった。
「こ、これでも杖を渡す訳には・・・!!」
そして杖が回転しながら落ちて来た。
「杖!お願い!!私の所へ・・・!!」
杖はかよ子の元へ向かった。かよ子は手を差し出す。そして右手でキャッチした。
「残念だね、杖が選んだのは私だったね」
「そんな、私の杖が・・・」
「この最上位の強さを誇る杖を持つのに相応しいのはお前ではない、ヴィクトリア。この娘よ!!」
クイーン・ベスが断言させた。
「うるさい、お前達・・・!!」
ヴィクトリアはアルバートが使用していた剣を拾った。
「なら見せてやるわよ!!岡本公三!!」
「は、はい!」
岡本は聖母マリアの力を強めた。
「もうこれ以上好きにはさせん!!」
しかし、サラディンがイスラムの能力で、輝虎が毘沙門天の能力を出してマリアに対抗した。
「あ、あああ・・・!!」
聖母マリアが消滅する。
「女王、駄目だ、俺も窮地だ・・・!!」
その時、トランシーバーが鳴る。
『岡本!和光だ!!お前もレーニンの緊急脱出で移動させる!』
「あ、ああ!!」
岡本がその場から消える。
「ま、待て!!」
かよ子は叫ぶ。大野が草の石で拘束しようと蔓をだしたが、弾かれた。そして声が聞こえる。
「ふ、西川純と同じような目に遭わせん」
「この声は・・・、レーニン!!」
かよ子は思い出した。
「な、私を置いて・・・。もう分かったわよ、こいつら纏めて私一人でやっつけてやるわよ!!」
ヴィクトリアは叫びながら急に剣を振り回した。冷風が皆を襲う。
「さ、寒い~、こ、凍え死ぬ~」
「さくらももこ、お主の炎の石を使え!」
「う、うん!!」
まる子は炎の石を能力を行使した。
「まるちゃん、私も手伝うよ!」
かよ子は杖をまる子が出した炎に向ける。かよ子は自分の杖をまた使用する事で久々な感触がした。
(私にまた、使えるようになるかな・・・!?)
かよ子の杖から炎が飛び出した。それもさらに強力な炎である。
「いけえ!!」
かよ子の炎とまる子の炎が合わさり、冷風を完全に消した。
「お、終わらん、終わってたまるか!!」
ヴィクトリアは血迷う。そして幾度も剣を振るった。
「いけえーーー!!」
かよ子は炎攻撃を緩めなかった。
後書き
次回は・・・
「格闘能力の強化」
オットーの術でかよ子の元に杖が戻る。かよ子とまる子の炎の攻撃でヴィクトリアを苦しめるが、ヴィクトリアはやられまいとアルバートの剣で悪足掻きをして抵抗する。そしてかよ子の杖が青く光り出す。その青い光はかよ子に何をもたらすのか・・・!?
253 格闘能力の強化
前書き
《前回》
杖を取り返す最終決戦、大野やのり子達の共闘でアルバートを苦戦の末、撃破する。ただ和光には逃げられてしまった。そしてかよ子達とヴィクトリア女帝の戦いはかよ子の加勢に現れたオットーの術で異世界最上位の能力を持つ杖がヴィクトリアの手から離れて宙に浮かぶ。その結果、杖はかよ子を選びかよ子の元に杖が戻って来た。そしてまる子の炎の石の炎、かよ子はその炎を写し取り、更に強力な炎の攻撃でヴィクトリアを攻撃する!!
レーニンは戦争主義の世界の本部には戻らず、別の地で待機していた。理由は明日催される杯の持ち主の少女と行方不明だった卑怯者の少年の祝言に参加する為である。レーニンはトランシーバーで通信する。
「重信房子、和光晴生と岡本公三をそちらへ離脱させた。だが、ヴィクトリアを見捨ててどうするつもりだ?」
『しかし、私の戦力がこれ以上『向こうの世界』に人質に取られても困ります』
赤軍の長が応答した。
「まあ、あの女はアルバートって奴がいないと結構短気だったそうじゃねえか。俺達にはまだトロツキーやスターリンもいるさ。そいつらもまた使えばいい」
杉山がレーニンにそう呼び掛けた。
「全く、貴様も呑気な奴だ」
レーニンは同化した少年に不服に思いながらも落ち着かせた。
(杖は仮に取られても、兎に角杯のある場所はまだ『奴等』にも突き止められておらん筈だ・・・。だが、場合によっては杖のように見つかるのも時間の問題・・・)
かよ子とまる子の炎の攻撃がヴィクトリア女王を襲う。
「いけえ!!」
「小癪な!!」
ヴィクトリアはまた剣を振るった。光が拡散して爆発が起きる。
「あの者、悪あがきを!!ええい、毘沙門天の能力よ!!」
輝虎が毘沙門天の能力をまた行使させる。
「皆の者、最後の聖戦だ!!」
サラディンも兵達に最後の力を振り絞らせる。爆破攻撃はすみ子の銃が守り抜いた。
「俺達も行くぞ!」
大野達組織「次郎長」、山口達組織「義元」、次郎長一派、そしてジャンヌやエレーヌ、上市や高田、ラクシュミーも動き出す。だが、剣をまた振るうと今度は固い結界がヴィクトリアの膜のように囲み、全てを守る。
「私は、まだ、負けん・・・!!いや、勝つのは私よ!!うおお!!」
ヴィクトリアが最後の力を振り絞った。かよ子とまる子が出した炎の攻撃も全て消してしまう。
「そんな・・・!!」
(折角、杖を取り返せたってのにこのヴィクトリアを倒せないで終わるの・・・。嫌だ、嫌だ・・・!!)
その時、かよ子の杖が震えた。
「ど、どうしたの・・・?!」
杖が青い光を放ってかよ子自身に当たった。
「これは・・・!?」
「山田かよ子、これはヴィクトリアが使用していたように肉体強化の能力かもしれぬ!試してみよ!!」
「う、うん・・・!!」
かよ子はヴィクトリアに接近した。
「愚かな娘め、私に近づこうとは杖を寄こすつもりかしら?」
だが、かよ子はヴィクトリアの結界を拳で叩く。
「えい!」
ヴィクトリアが出した結界にヒビが入った。そのヒビはあっという間に広がり、破壊された。
「何!?この小娘!!」
「今だ!」
ラクシュミーがライフルを発砲した。ヴィクトリアの手首に命中し、剣が手から離れた。
「えい!」
かよ子はヴィクトリアに拳を向けた。衝撃波がいくつも発生し、ヴィクトリアを跳ね飛ばした。
「いけえ!」
かよ子はとどめのアッパーをかました。
「ぐあああ!!」
ヴィクトリアはかよ子のアッパーから青い閃光が放たれるのを感じた。電撃のような強い痺れを感じる。壁の奥にヴィクトリアは激突した。
「これでやったの・・・!?」
ヴィクトリアはそのまま動かない。だが、彼女の身体に変化が起きた。
「私は・・・、これで、死ぬのか・・・?嫌、よ・・・。完全な、女帝に、なるのに・・・!!」
ヴィクトリアは儚く光となって消滅したのだった。
「はあ、はあ・・・」
かよ子は戻って来た自分の杖を見る。だが、それと同時に立ち眩みが生じた。
「私、勝ったんだね・・・、杖を・・・、取り返せた、ん、だね・・・」
かよ子もその場で倒れた。
「か、かよちゃん、かよちゃ~ん!!」
「山田!」
皆がかよ子を心配して駆け付けた。
「きっと連戦の影響とこの娘も杖を取り返したいという気持ちが続いていたのよ。少し休ませてあげなさい」
「あ、はい・・・」
石松は立ち上がれるようになった時、ヴィクトリアは瀕死とされる所だった。
(これは・・・!?山田かよ子は、杖を取り返せているのか・・・!?)
そして石松は確認した。女帝が死亡する瞬間を。そして杖の所有者が倒れる瞬間を見た。
(山田かよ子が、倒れる・・・!?某は崇徳院の能力を行使した反動で動けなくなっていた・・・。ここまでやって来れていた、とは・・・!!)
皆がかよ子を見守る中、石松は叫ぶ。
「じ、次郎長親分、杖は、山田かよ子の元に戻って来たのでありますか!?」
「石松!起きたか!!ああ、そうだ、山田かよ子は無事に杖を取り返す事に成功した!」
「そうか、戦闘を離脱して申し訳なかった!」
「いや、石松、お前もよくやってくれた!」
「だが、この地に何か嫌な予感がするのだが・・・!?」
周囲に地震のような現象が起きる。
「や、館が崩れ落ち始めておる!」
「のり子ちゃん、皆を館の外に!瞬間移動させるわよ!!」
のり子の人形・キャロラインはのり子に命令を急いだ。
「う、うん!!」
のり子の人形による瞬間移動能力で皆は館の外へ出た。皆は館より数メートル離れた所に移動した。そして皆はヴィクトリアやアルバートとの戦闘現場を見る。ヴィクトリア女帝の館は崩落したのだった。
「あなた達の活躍のお陰でこの世界は平和を正義とする世界に戻ったのだよ。だからあのヴィクトリア女帝の館は消えたわけ」
クイーン・ベスが解説した。
「そうだったのか」
「オイラ達はあのヴィクトリアって女王を倒したんだなブー」
ブー太郎は激しい戦闘をやって来たんだと痛感していたのだった。
本部の管制室。フローレンスがその場に戻って来た。
「ただいま戻りました」
「フローレンス・・・。お帰り」
まき子はフローレンスに気付いた。
「今、東アジア反日武装戦線のと西川純は部屋に監禁させております。ところで山田かよ子ちゃん達の方はどうなっていますか?」
「ああ、その事だが、今、ヴィクトリア女帝を示す点が消えている。しかし、連絡がまだ来ていないんだ」
イマヌエルが状況を説明した。
「といいますと・・・ヴィクトリアを倒しまして、杖を取り返せましたのでしょうね・・・」
フローレンスはそう信じていた。
かよ子は連戦の疲れで意識を失っていた。そんな彼女にまたあの男が現れる。
「レ、レーニン!!」
[よくも杖を取り返したな!だがこちらも貴様らに負けじと必ず取り返す。今回は赤軍の愚か者共が見捨てた故に僅かなうちに奪われたがな。だが、貴様らが捜す小僧は絶対に渡さぬ・・・。そして貴様の想い人だ]
「何取られた言い訳してるの!?元々この杖は私の・・・、いや、平和を正義とする世界の物だよ!!」
[だがそれらは戦争を正義とする世界の物になる筈なのだ。そして貴様の想い人は私に逆らう時がありながらも協力してくれるのだ]
「杉山君が・・・!?」
[貴様が強くなるなら我々も強くなろう・・・]
レーニンは姿を消した。
(杉山君はレーニンに力を貸してる・・・!!手強くなるんだ・・・!!)
かよ子は危惧した。だがその前に本来の目的である藤木の奪還をしなければならない。そして必ずレーニンを倒して杉山と元の日常を取り返さなければならない。
(でも・・・、やっと杖が帰って来た・・・。もっと私は強くなって杖をもっと使いこなせるようにするよ!!)
そして杖の所有者は夢の中の世界の周りが闇に包まれ、また意識が消えるのだった。
後書き
次回は・・・
「七色の泉と杖の新生」
かよ子の意識が戻った時にはヴィクトリアの館は消滅していた。その場に現れたのは七つの異なる色の水を持つ七つの泉だった。かよ子はクイーン・ベスの提案で杖を七つの泉に浸す。そして杖に変化が起きる・・・!!
254 七色の泉と杖の新生
前書き
《前回》
オットーの術でヴィクトリアから杖を取り戻したかよ子は反撃に出る。ヴィクトリアはアルバートが使用していた剣を振るって対抗する。そんな時、杖から青い光が現れてかよ子に降りかかる。かよ子はそれによって自身の格闘能力を強化させる事ができ、その能力を駆使してヴィクトリアの撃破に成功させるのだった!!
かよ子はヴィクトリア女王との戦いの後、連戦の疲労が溢れ出した影響で意識を失っていた。
「・・・」
そして意識が戻る。
「・・・はっ」
「お、起きたか!」
「かよちゃん、大丈夫〜!?」
「う、うん・・・。ヴィクトリアは、倒したの・・・?私の杖は・・・?」
「ヴィクトリアはかよちゃんの手で倒せたんよ。それでヴィクトリアの建物は崩れて元の平和主義の世界に戻ったんよ」
上市が説明した。
「そっか、私の手で・・・」
かよ子は自分の戦いを顧みた。ヴィクトリアがやったように自分の肉体強化の能力を行使して打ち破った。
(私もあのような能力を使えれば・・・)
そしてかよ子はふと周りを見渡した。ここはヴィクトリアが占領して杖を取り返す為の戦闘現場となっていた筈だった。だが、今は沼か泉のような物が周囲に七つあった。水の色も異なり、緑、水色、薄橙、紫、白、橙、そして黒だった。
「ここは・・・どこ?」
「ここは先程ヴィクトリアと戦った場所だよ。元の平和主義の世界の領土として戻ったのよ。ここは嘗て七つの色の泉があったのよ」
「嬢ちゃんは戦った疲れと格闘能力を行使した反動もあるのだろう」
クイーン・ベスとブランデー・ナンが解説した。
「そっか・・・」
「あの七つの泉・・・、晴信殿もあの美しさにいつも見惚れていたとの事だ」
輝虎は独り言のように呟いた。
「そうだ、杖の所有者。あの七つの泉に杖を浸してみるとよい。君は杖を盗られていた間、何を願っていたのかしら?」
クイーン・ベスが質問した。
「つ、杖を取り返したい。もう杖を盗られるおっちょこちょいなんてしたくない・・・。それから、もっと、杖を使いこなせるようになりたい・・・!」
かよ子は思わず本心を言った。
「あ・・・」
かよ子は少し恥ずかしくなった。
「いいのだよ。貴女がそう願うのならばその杖も応えてくれるであろう。さあ、杖を浸しておいで」
「うん・・・」
かよ子は杖を泉に浸していった。一つずつ、七つ全てに水を浸した。その時だった。かよ子の杖から炎が出てくる。
「え?」
周囲に炎があった訳でもなかった。
「もしかして、炎が周りになくても出せるの・・・?」
かよ子は試したくなってきた。
「よし、それなら・・・!」
かよ子は氷の能力を使いたいと思う。周囲に氷雪が現れた。そして出せるものは何か、すると電撃、石を出現させ、棘や丸鋸の発射、更には刀や刃物がなくても杖が剣に変化させる事ができるようになっていたのだった。
「す、凄いよ、かよちゃん・・・」
すみ子が褒めた。
「うん、ありがとう・・・」
「クイーン・ベス、ブランデー・ナン、彼女も一つの成長をしたと言う事だな」
オットーは呟いた。
「ああ、そうね。ヴィクトリア女帝を格闘能力の強化で打ち破った。もしかしたらやってくれるかもしれないわね・・・」
「そうだ、折角杖を取り返せたんだから祝のブランデーでも飲みたいね」
「全く、貴女はブランデーが好きね。『ブランデー・ナン』って名前の通りに・・・。しかし、杖の所有者よ」
「あ、はい!」
「皆に通信機で杖を取り返せたと連絡をしておきなさい。それに疲れているだろう。今日はこの地で休むとよい」
「は、はい!!」
かよ子は通信機を取り出した。
「こちら杖の所有者、山田かよ子。杖を取り返しました!皆、協力ありがとうございます・・・!!」
かよ子は連絡した。
本部の管制室。杖の所有者達が杖を奪還したという報告が届いた。
「よかった、かよ子、よかったわね・・・」
まき子は娘の勝利に涙した。
「うん、これで後は杯を取り返すだけね」
「杯・・・」
先代の杯の所有者が顔を曇らせた。
「安藤さん、落ち込まないでください。きっと取り返せますよ。ウチの娘達が動いてくれてますから」
奈美子が慰めた。
「そうですね・・・」
「兎に角連戦で山田かよ子君も疲れている筈だ」
イマヌエルが通信機で応答する。
「こちらイマヌエル。杖の奪還お疲れ様。かなり疲れただろう。今日はその地で休むといい。食事も用意するよ」
『あ、ありがとうございます・・・』
照れそうに答える杖の所有者の声が聞こえた。
山田かよ子が杖を奪還したという報告は各々にも届いた。
杯の所有者の救出に向かうありやりえの友達の一行はかよ子の連絡を聞いた。
「かよちゃん、杖を取り返したのね」
「かよちゃんってあのりえちゃんが静岡で会ったって子だね」
みゆきが確認した。
「そうみたいね。私はよく知らないけど」
ありは夏に従弟を札幌に呼び出した事を思い出した。
(その時りえちゃんは清水に行ってんだっけ・・・?)
杯の奪還へ向かうゆりは四人の女子高生と共にかよ子の連絡を聞いていた。
「かよちゃん、杖を取り返したのね」
「あのガキか・・・」
鯉沢は本部で会った少女を思い出した。
「あとは私達が杯を取り返す番ね」
ゆり達は杯の在処の捜索を続ける。
平和主義の世界の境界線に守備戦線に立っていたさりや長山達もその連絡を聞いてホッとしていた。
「かよちゃん、良かったね・・・」
「はい、これで藤木君の救出に戻れますね」
そして長山は眼鏡でそのかよ子達を見ていた。
(山田達、喜んでるな・・・。ここで激しく戦ったんだな・・・)
しかし、彼女がいる所から藤木がいると思われる場所から遠ざかっていた。
(山田、これからまた戻るんだね・・・。今度は杖を盗られないでくれよ・・・)
長山はそう願った。
冬田、湘木と共に杖の奪還に協力しようと動いていた三河口はかよ子の報告を受けた。
「・・・冬田さん、反対の方向へ羽根を飛ばせ」
「え、ええ!?」
「かよちゃんは杖を取り返した。もうこっちへ行く必要はない。杯を取り返しに行く」
「で、でもお・・・」
(大野君に、一目でも会いたかったのにい・・・)
「また大野君か?」
「あ、う・・・」
冬田は心の中を見抜かれた。
「は、はあい・・・」
三河口に睨まれて冬田は羽根を方向転換させた。
(全く世話の焼けるおっちょこちょいだ・・・)
かよ子達は七つの泉の地で夕食としていた。昼を抜いて戦っていた為か食欲が溢れていた。
「はは、大勝利の後の食事はさぞ美味しいようね」
クイーン・ベスはかよ子の食べっぷりに感心していた。
「でもハンバーグとプリンだったら良かったなあ・・・」
まる子は文句をこぼした。この日は酢豚と卵スープ、そして温野菜サラダに杏仁豆腐といった献立だった。
「嫌なら食わねばよかろう」
石松が窘めた。
「は、はあい・・・」
その一方、かよ子はご飯のお代わりを三杯していた。が、食べ終わるとかよ子は恥ずかしく思った。
(もしここに杉山君がいたら食いしん坊な子だって思われたかな・・・?)
かよ子はふと好きな男子の事が頭に浮かぶのだった。
その一方、レーニンはヴィクトリアの死亡の報告を受けていた。
「ヴィクトリアが倒され、杖を奪い返されたか・・・」
「杖を俺の時のように吸収しようと思ってたのか?」
杉山が聞く。
「そうだ、貴様が祝言に現を抜かそうとするから機会を逃したではないか」
レーニンは同化した少年を叱責した。
「ああ、ワリイな。だが、あいつらを見届けてえし、紂王か妲己とかが杯を持っている筈だぜ。まずは杯の吸収だ。杖と護符はそれからでもいいぜ」
「全く・・・」
そしてレーニンと杉山は翌日、紂王の屋敷へと向かうのだった。
後書き
次回は・・・
「戦の中の祝言」
七つの泉に杖を浸した事によってかよ子の杖は七つの能力を対象物に向けなくても常時発動できるように強化された。かよ子は本来の目的・藤木の奪還に軌道修正して再出発する。同じ頃、紂王の屋敷ではある二人の少年少女の祝言が準備されていた・・・!!
255 戦の中の祝言
前書き
《前回》
ヴィクトリア女帝との激闘と死闘の末、かよ子は杖の奪還に成功した。激戦の反動で意識を失い、戻った時には既にヴィクトリアの館はなく、七つの泉がその場にあった。かよ子はクイーン・ベスの提案で杖を七つの異なる色の泉に浸す。その時、杖はいつでも炎、氷、雷、石、棘、丸鋸、剣の七つの能力が使用可能になった!!その裏で、杉山はとある目的で紂王の屋敷へと向かっていた!!
かよ子は本部からの手厚めの用意を受けて(風呂や簡易ベッドなどを用意された)、七つの泉で休んでいた。そして朝食を終え、それぞれ出発の時となる。
「それじゃ、ウチらは別の方向へ向かうさかい、またお別れやな」
「はい、お元気で!」
「杖の所有者よ、またいつでも力を貸そう!それでは失礼する」
ラクシュミーは上市、高田の兵と共にその場を去って行った。
「それでは私とクイーン・ベスも次の仕事に行くとしよう。次は杯の奪還に手を貸しに行く」
「では私は戦う者達の手助けに行くとする」
オットーはまた別の方向へ向かった。
「杖の所有者・山田かよ子さん。あの学舎のお祭り以来の共闘、光栄でした。ではまた別々になりますが、お探しの少年の奪還をお祈り致します」
「かよちゃん、頑張ってね・・・!!」
すみ子達は山口、川村、ヤス太郎、エレーヌにジャンヌと領土の奪還に進んだ。
「杖の所有者よ、またいつか戦おう。あの忌々しい女王がやられて倒された我が好敵もきっと喜んでいる筈だ」
輝虎はそう告げた。
「私は他の者の助太刀に走る。さらばじゃ!」
「私もこの平和の世界を取り返す為に動き続ける。お前らの任務の成功はムハンマドも願っているだろう」
輝虎、サラディンとも別れた。
「じゃ、私達も行くね」
スケッチブックの少女は隆盛、利通と共にかよ子達と別れる。
「・・・私達も行こう!」
かよ子達藤木救出班は本来の目的の為に東の方角へと進んでいくのだった。
(もう杖を盗られるおっちょこちょいなんてしないよ・・・。強くなった杖と一緒にもっと使い熟して藤木君と杉山君を取り返す・・・!!)
本部の管制室。まき子達は朝食を終えて入って来た。
「さて、かよ子達は東の方に向かい直したわね」
「それにしても七つの泉が元に戻ったか」
「七つの泉?」
「この泉は相手の力を貸す夢の泉なのだよ。ただ私利私欲すぎる夢には応えられないのだが」
イマヌエルが説明した。
「おそらくクイーン・ベスやブランデー・ナンは山田かよ子君に杖を泉に浸すように助言をした筈だ。杖は山田かよ子君の望みに応えて強くなっている筈だよ」
「どんなふうに?」
「まあ、連絡を取ってみよう」
イマヌエルがテレパシー能力を使う。
「クイーン・ベス、こちらイマヌエルだ」
『おお、イマヌエル』
「剣や杖の奪還に色々と協力してくれて色々感謝しているよ」
『いえいえ、こちらこそ。今度は杯を取りに行くよ』
「ところで山田かよ子君は七つの泉に杖を浸したのかい?」
『ああ、勿論だ。炎や氷、雷などを出す能力など七つの能力を自在にあつかえるようになったのだ』
「そうか、ありがとう」
そして先代の杖の所有者は娘に無言のエールを送る。
(かよ子、頑張るのよ・・・。杖が強くなったなら私よりも上手く使いこなせるはずだわ・・・!!)
こちら紂王の屋敷。藤木は緊張していた。婚礼衣装の着付けを奉仕係の遊女に手伝って貰っていた。
(僕はりえちゃんと一緒なんだ・・・)
「茂様、顔がにやけていますね」
「え、あ、その・・・」
藤木は言い訳が浮かばなかった。
「解りますよ。今日は大事な日ですからね。最高の祝言にしましょうね」
遊女はそのまま笑っていた。
「う、うん、そうだね!」
そして婚礼衣装の着衣が完了した。深紅の礼服だった。自分がよく知る西洋式のタキシードとか和式の袴姿とはまた違うので新しさや違和感をも藤木はまた感じていた。
一方、同じく別室で婚礼衣装の着付けを遊女に手伝って貰っていたりえはこの日も落ち着きがなかった。祝言とはまた異なる胸騒ぎだった。何しろ自分は藤木との祝言を挙げる気は微塵にもない。
(藤木君と結婚なんて・・・。そんな・・・!!)
りえは藤木の事も「(一応ではあるが)友達の一人」ではあった。だが恋愛だのそこまでの好意とまではいってはいない。
「茂様は大層お楽しみにしておりますよ」
それまで無言だった遊女が話しかけた。
「貴女は茂様とは以前にもお会いしているとお聞きしていますが、あまり好みではないのですか?」
「そうとも言い切れないけど・・・」
「まあ、結ばれてみればあの方のいい所も見えてきますよ」
「・・・」
りえは無言だった。
(いい所・・・でも、私が何とかさせないと、藤木君は戻りたがらないはず・・・)
りえは不毛な対立は避けたいと思うものの、どうすれば藤木を自分達の方へ引き入れるか悩み続けていた。また、それ以上に大事な杯が一体どこにあるのかでそわそわしていたのだった。
一人の男が紂王の屋敷へと入っていた。
「レーニンだ。紂王はいるか」
「はい、暫しお待ちを」
番兵が紂王を呼びに向かう。
「おお、レーニンか」
「この日は私と同化する少年の意向もあり、祝言に参加させて頂く。ところで例の杯は貴様の方で保管しているのか?」
「はい」
紂王はレーニンを案内した。そこは地下室だった。レーニンの中に宿る杉山は確認した。
(ここにりえの杯があるのか・・・)
「どうなされる、つもりかね?」
「今は貴様らに任せておこう。だが一つ、やっておきたい事がある」
レーニンは杯に手をかざす。
「これで杯の能力は吸収させて貰った」
戦争を正義とする世界の長は剣に続いて杯の能力を吸収した。これにより世界最上位のアイテム二つの能力を手にした事になる。
「では、会場に案内してくれ」
「了解」
祝言の会場へ二人は進む。
来賓が次々と訪れていた。遊女が受付係を行う。
「ようこそお越しくださいました」
「ここか」
「これはレーニン様」
遊女はお辞儀をした。別の男が入ってきた。
「ほう、レーニン、お主も参加して悠長だな」
「煬帝か。貴様も呼ばれていたのか」
「ああ」
そして会場に入った。
「では私はあの少年の所へ向かわせていただこう」
紂王はその場を離れた。
そして紂王の屋敷の大広間。進行の遊女が壇上に立つ。
「皆様、お越し頂きありがとうございます。それでは新郎新婦の結びをお楽しみください。新たなお嫁さんとお婿さんのご入場です!」
花婿と花嫁が入る。花婿は藤木、花嫁はりえだった。藤木は紂王に、りえは妲己に連れられて入場した。藤木はいろいろな人物の見世物になる事に緊張が解けなかったが、りえと一緒になれる事にニヤけてもいた。一方のりえは全く落ち着かなかった。りえは周囲を見る。結婚式というのはこんなにも来賓が来るものとは解ってはいた。だがその場にいる来賓は屋敷の遊女や衛兵だけではない。戦争を正義とする世界の人間がこんなにもいる。そしてこんなに敵はいるのだとりえは改めて思った。
(あれはっ・・・!!)
りえは一人の男に目を付けた。そこには嘗て自分の杯を狙って現れた事のあるエルデナンドだった。
(あいつが来てるって事は、私の杯が取られた事を知ってるのっ・・・!?)
他にもりえは恐ろしそうな人間を見回す。そしてその場にはあのレーニンもいた。
(す、杉山君っ・・・!アンタはっ、本っ当にっ・・・!!最低っ・・・!!何なのよっ、こんな事させて・・・!!)
「お似合いなお二人ですね。それでは結びの誓いとして祝いの酒をお飲みください!」
二人の元に枡入りの酒が運ばれた。
「ええ!?ぼ、僕、お酒、飲めないよ!!」
藤木は戸惑った。
「大丈夫だ、これは偽物だ。少年のような童でも飲めるものだ」
「う、うん・・・」
藤木は枡を手に取り、飲む。桃の味がした。おそらく桃のジュースだったと藤木は思った。しかし、りえは全く手を出していなかった。
「りえちゃん、飲まないのかい?」
「・・・」
りえは黙って枡の酒を飲んだ。
「では、この結びの暁として婿から嫁への素敵な贈り物を用意された。持ってきておくれ」
妲己は手を叩いて四人の兵に用意させた。
「え、贈り物?僕は何も用意してないよ・・・」
藤木は戸惑った。
「何を言っている。前に会食した時にお嬢に楽器を弾いてほしいと申していたではないか?坊やの願いを叶える為にもこちらで用意しておいたわよ」
「え・・・!?」
そして戸が開いた。それはアップライトピアノだった。
「これは新郎から新婦への贈り物だ」
「こ、これをっ・・・!?」
りえはその場にピアノが用意された事に驚いた。
「りえちゃん、これでいつでもピアノが弾けるよ」
「う、うん・・・」
りえは複雑だった。久々にピアノが弾けるようになるのは嬉しい。しかし、それならば元の世界に帰れたらいいのにと思った。
後書き
次回は・・・
「その結びは仮初か」
かよ子は本来の目的の藤木の奪還に路線を修正し、東進する。たまえは友人達と暫く会えずに寂しく今日も学校で過ごす。紂王の屋敷では藤木とりえの祝言が催されていた。現代風の式の行い方を行い、式は新郎新婦からの一言に入る・・・!!
256 その結びは仮初か
前書き
《前回》
戦争を正義とする世界の強敵・ヴィクトリア女帝を葬り七つの泉によって杖を進化させたかよ子は翌日、本来の目的である藤木の奪還に向けて出発する。そしてそれぞれの者も各々の目的の為に出発した。その一方、杉山はレーニンと共に紂王の屋敷に訪れ、そこに保管されている杯の能力を吸い取った。そして藤木とりえの結婚式に出席した。祝言では藤木とりえは中国式の礼服を着せられており、祝いの酒を飲み交わし、その場には藤木からりえへの贈り物としてピアノが現れた!!
藤木とりえの結婚式は続く。
「それでは来賓達に賛辞の言葉を頂こう」
紂王が進行を担う。まず一人の男が立ち上がる。
「それでは私から行こう」
一人の男が立ち上がった。
「私はチンギス。私も愛する妻・ボルテとは『向こうの世界』から愛を誓い合ってきた。その二人の者も私と妻のように愛し合って欲しいものである」
(愛し合えるなんてバカバカしいっ・・・。私は本当はっ・・・!!)
りえはふとレーニンの方を見る。
(す、杉山君っ・・・!!)
しかし、敵側に寝返った男子の事を今は本気で好きになれるのかとりえは思った。また別の人間が立ち上がる。
「我が名は政。まさか杯の所有者がこの小童と結ばれるとはな。これで杯は此方の世界の物となる上に新たな戦力になる事を祈ろう」
また別の男が立ち上がる。
「私は煬帝。貴様らの結びはこの世界の繁栄の一種になる事を願おう。永久の愛を誓うが良い」
(馬鹿馬鹿しいっ・・・!!)
りえは聞いているだけで反吐が出そうな気分だった。
「私はエルデナンド。この度は結婚をおめでたく申し上げよう。剣は取られたにしても折角杯がこちらの物になったのだ。そしてこの世界で祝言が見られるとは気持ちがいい」
エルデナンドは座る。次々と来賓の挨拶が来る。そして最後に・・・。
「私はこの世界の長・レーニンだ。この度は私も招待し、そしてこのような最高の祝言になった事を感謝致す。そして今私に力を貸しているこの少年も挨拶がしたいという」
そしてレーニンの姿が変わる。
「す、杉山君っ・・・!!」
「杉山君・・・?」
りえも藤木も戦争を正義とする世界の長の変化に改めて驚く。
「お前ら、また会えて良かったな。ここでの生活を楽しむんだな。藤木、俺はお前が無事でよかったぜ。りえ、お前も乙女らしい服で似合ってるじゃねえか」
「杉山君っ・・・」
りえは一瞬、杉山の誉め言葉に照れた。しかし、どうしても心の底から嬉しいとは思えない。
「あ、ありがとう・・・!!」
一方、藤木は何の疑いもなく杉山に礼をした。
「それでは来賓の皆様、ご賛辞の言葉ありがとうございます。それでは食事とい致しましょう。食堂の方へ宜しくお願い致します」
皆は進行係の遊女の言葉で食事の場所へと移る。
かよ子達は本来の目的に戻る為に羽根を東の方へ飛ばす。
「はて、儂らはこれからどうするんじゃっけ?」
友蔵はもう本来の目的をすっかり忘れていた。
「おじいちゃん、アタシ達は藤木を取り返しに行くんだよ・・・」
「おお、そうじゃった、レッツゴーじゃ!」
「もう進めてるよ・・・」
かよ子は力なくツッコミを入れた。
(兎に角、この杖は強くなれたんだ・・・!!)
かよ子は思う。藤木を連れ帰し、レーニンに手を貸した杉山を取り返そうと。
「はあ~、あの泉、綺麗だったなあ~、たまちゃんにも見せてあげたかったよお~」
かよ子はふとたまえやとし子など学校の友達を思い出した。
「うん、たまちゃん達、今どうしてるだろうね・・・?」
こちらはかよ子達が元々いた生前の世界。たまえはこの日も親友のまる子の他、大野や杉山、かよ子などがいなくてがらんとした3年4組の教室にいた。
(はあ、寂しいな・・・)
たまえはため息をした。と、同時にため息をした者がいた。
「え?」
はまじもまたため息をついていたのだった。
「はまじも元気ないね」
「ああ、穂波もか?」
「うん、まるちゃんやかよちゃん、大野君や杉山君達がいない日が続いて寂しくて・・・。はまじも?」
「ああ、いつも隣にブー太郎がいたからな・・・。あいつもその異世界で頑張ってるのかなって思ってよ」
「そうだよね・・・」
「それにマラソン大会も近えしよ。あいつら休めて羨ましいよな」
(え、そこ・・・?)
たまえは心の中ではまじにツッコミを入れた。
結婚式は続く。そして次は食堂に移り、食事の時間としていた。藤木やりえは遊女達や来賓達と共に様々な料理を食べていた。りえは周囲の人物が皆敵と思うと全く落ち着かない。かといって今この場で異能の能力を出しても返り討ちにされるだけと解っているのでただ紂王や妲己の命に従うしかなかった。
「りえちゃん、これ美味しいよ」
藤木は寿司を皿に取って食べる。
「お寿司って僕んちじゃあまり食べなかったからなあ・・・。あ、これ豚の角煮だ。ここに来てから前にも食べた事があるぞ」
「へえ・・・」
りえは黙ってそのまま食べ続ける。藤木は食事を楽しんでいる様子だった。だが、りえは杉山の方を見る。
(杉山君・・・、アンタはここで本当に私と藤木君を結婚させるつもりなのっ・・・!?でも私はアンタ達と違って『そっち側』に寝返る気はないからねっ・・・!!)
そして食事が終わり、デザートが運ばれる。ゼリーやケーキが運ばれた。
「うわあ!」
特にケーキは上品にも二段重ねとなっている白い生クリームのショートケーキだった。
「それでは今の世の祝言で大事な儀式とされるものを行います。新郎新婦はこの『けーき』というお菓子に『ないふ』という短刀で入刀を行うと聞きます。それではお二方、こちらをどうぞ」
藤木とりえは一本のナイフを遊女から渡された。
「りえちゃん、一緒に持って切ろうよ」
「え、ええ・・・」
そして二人はケーキを入刀した。
「お二人が永遠に結ばれる事を祈りましょう」
杉山は思う。
(あいつ、やっぱり乙女だな・・・)
そして暫くの休憩が入り、式を行った会場へと戻った。
「それでは新郎新婦からのお言葉をお願い致します」
「え!?」
藤木は急に言われて緊張した。
「な、何の言葉も用意してないよ・・・!!」
「そんな焦る事でもない。今の気持ちを伝えれば良いのだ。一言だけでもよいぞ」
「は、はい・・・」
藤木は何て言えばいいのか解らないまま立ち上がった。
「あ、あの、僕は・・・、前の世界にいた時は、ひ・・・、卑怯だの、卑怯者とばっかり言われて辛かったです・・・」
藤木は言葉がつっかえながらも喋り続ける。
(藤木君・・・、そんな暗い事を・・・)
りえは藤木が暗い話を始めたので場違いではとも思った。
「でも、ここに来て、紂王さんや妲己さんに救われて、可愛い女の子達と遊べて、そして・・・」
藤木はまた数秒ほど黙った。
「夏休みに会ったこのりえちゃんとまた会えるなんて嬉しい・・・です!!だって、とっても可愛いし・・・、ピアノ、上手だし・・・!!」
そして藤木は赤面していた。
「何しろ、その、りえちゃんは乙女で、天使です・・・!!」
(天使・・・!?)
りえは夏休みに会った時も最初は幽霊と間違えられ、実際に姿を見られると藤木には天から舞い降りた天使と言われたものである。
「それでは安藤りえ嬢の番だよ」
妲己は告げた。りえは黙って立ち上がった。
「・・・」
りえは言葉が浮かばず、数秒黙ったままだった。
「何も言葉が浮かばないのかしら?」
妲己は尋ねた。
「・・・私は、まさか藤木君とこんな所で会うとは、意外です。ええと、藤木君と喜ばせるようにできたらと思います・・・」
りえはそう言って座った。だが、その言葉は勿論本心ではない。
(私は本当は杉山君がっ・・・!!でも、藤木君を何とか私達の方に引き戻さないとっ・・・!!)
「それでは本日はお越しいただきましてありがとうございました。今、敵の世界との戦いは続いてはいますが、この世界の勝利を祈りつつ、お二人の幸せがいつまでも続くように願います」
こうして式は終了した。
式が終わり、元の服に着替えた二人は紂王に告げられる。
「さて、婿殿に嫁殿、これからは夫婦なのだからこれからは一緒の部屋だ」
「ええっ!?」
りえは声が出てしまう。
「不服かね?」
「嫌なら別の部屋にしても良いぞ。その代わり、お嬢には地下の蔵で住んで貰って水も食べ物も与えずに飢え死にしてもらおう」
「うっ・・・!!」
「りえちゃん、僕は君とがいい!僕は今度こそ君を守りたいんだ!!」
「・・・分かったわよ」
りえは渋々従う事にした。二人が通された部屋は最上階に当たる五階の部屋だった。りえが監禁されていた部屋よりも広く二人部屋で、二人で寝れるような寝台、応接用の椅子と机、テレビにラジオといった今時の家具まで完備されていた。そして藤木からのプレゼントとされたピアノも既にその場に置いてあった。
「それでは仲良くな」
紂王と妲己は退出した。りえは黙って窓の方を見る。誰か助けに来てくれないかと思ったがそうもいかない。
「・・・りえちゃん」
「え?」
「さっきはありがとう。僕もりえちゃんを幸せにしてみせるよ!」
「え?うん・・・」
(あの言葉は本気じゃないわ・・・)
「僕は本気だよ。りえちゃんを幸せにしたいって。だからりえちゃんの好きなピアノを弾かせてあげたいと思ったんだ」
「藤木君・・・」
りえは仮初の結びと思っていても藤木はそう思っていなかった。
「また弾いてくれるかな?夏休みに弾いていた曲を」
「う、うん・・・」
りえはピアノに向かい、『亜麻色の髪の乙女』の演奏を始めた。
時は進む。それぞれが目的達成の為に動き続けて行く。
後書き
次回は・・・
「武則天の側近」
りえのピアノの伴奏を聴いていた藤木は上手だと感激していた。その頃、かよ子達とは別で藤木の捜索に当たる笹山は武則天の側近である姚崇と張説と共に進んでいた。そんな彼女の元にも敵の人間が襲撃して来た・・・!!
257 武則天の側近
前書き
《前回》
紂王の屋敷で行われる藤木とりえの祝言、様々な人間が祝いの言葉を贈り、食事をし、ウエディングケーキの入刀まで行い、最後は新郎新婦の言葉が始まる。藤木は過去の辛さをさらけ出すと共に、りえを天使と称える。一方、りえは適当な言葉で済ます。式を終え、二人は共に同じ部屋で過ごすことになる。そこには藤木からの贈り物とされたピアノがあり、りえは藤木の要望で「亜麻色の髪の乙女」を演奏するのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その23
羽井玲衣子(はねい れいこ)
福岡県に住む小学三年生の女の子。初登場174話。見聞の能力を所有する。学校の友達三人と共に異世界の戦いに参戦しに来た。書いたものを実体化させるペンを使用する。好きな食べ物はラーメン、ゼリー。
クイーン・ベスとブランデー・ナン。嘗て英国の女王として生きていた人物である。この世界では平和を正義とする世界の人間として生きており、敵の世界、すなわち戦争を正義とする世界にとっては脅威の存在となっていた。彼女らは世界最上位の能力を持つ剣の奪還に貢献し、杖の所有者の奪われた杖を取り返す際にも手を差し伸べてヴィクトリア女帝を撃破すると共に杖の強化にも一役買った。次の彼女らの目的は同じく奪われた杯の奪還である。だが、杯の行方はどうしても掴めていない。剣の時は戦争主義の世界の本部にある事が解っていた。杖の件でも長山治という少年に赤軍の人間などを索敵していた為に居場所を掴み取る事はできたのである。だが、杯については情報が少ない。妲己とかいう九尾の狐に変化する女が奪ったというが彼女の元にあるのか、それとも他所に移されたのか謎である。
「果たして杯はどこにあるのか」
「クイーン・ベス。東側にも軍を派遣してみては如何かな?」
「そうだな、連絡を取る」
その時、一軍の軍勢が現れた。大将と思われる人物が跪いた。
「クイーン・ベスにブランデー・ナンとやら、剣および杖の奪還之活躍見事であった!我々も杯の奪還に協力させてくれまいか」
「おお、お前はかのジパングの独眼竜だな」
「左様。政宗と申す」
長山は神通力の眼鏡で藤木の動向を確認していた。
(藤木君・・・。一緒にいるのは・・・?)
藤木と共にいるのは・・・。
(あれは、確か安藤りえちゃんだ!藤木君といるのか!?)
かよ子達藤木救出班は藤木がいると思われる方角に進んでいた。その時、通信機が鳴った。
「もしもし、こちら山田かよ子」
『こちら長山治。藤木君についてなんだが、今あの杯を持っている安藤りえちゃんって子と一緒だよ!』
「え、りえちゃんと!?」
『何だか多くの人を呼び集めて結婚式みたいなのを開いていたんだ!』
「け、結婚式・・・?」
かよ子には頭の整理が追いつかなかった。
「でも、藤木君はそのりえちゃんと一緒なんだね・・・?」
『少なくとも間違いない!』
「ありがとう!」
通信を終了した。
「藤木がりえちゃんと?どういう事なの?何か心当たりは・・・?」
かよ子は考えた。その時、まる子が思い出す。
「あ、そういえばさあ」
「え?」
「りえちゃんと夏休みに会った時、藤木、りえちゃんに鼻の下を伸ばしてたんだあ・・・」
「それで藤木君は笹山さんに嫌われた事でりえちゃんに乗り換えようとしたの!?だからあの女の人はりえちゃんを殺さずに生け捕りにしたんだ・・・!!」
かよ子は以前、九尾の狐に変化する妲己という女に会った事がある。その時、りえと杯を持っていたが、殺す事なくりえを連れて行っていた。つまり彼女は藤木とりえを引き合わす為に杯の所有者を生け捕りにしたのだとかよ子は仮説を立てた。さらに出発前に長山の眼鏡で確認してもらった所、藤木は温泉で女の子と戯れていたという。
(藤木君、あの時笹山さんに嫌われたから他の女の子を好きになろうと乗り換えて、それでりえちゃんを・・・!!)
笹山かず子。彼女は異世界に飛び込み、藤木を探しに向かっていた。彼女は異能の能力の持ち主ではない為本来ならば「この世界」での戦いでは非戦闘員である。だが行方不明になった藤木茂が嘗て好きになってい人という事で彼を奪還する為の重要な鍵としてフローレンスから特例を受けて今この場にいる。そして武則天という人物と出会い一人では心細いであろうという事から彼女の側近である姚崇と張説という人物を付き添わせ、移動にはヘンリーという人物から貰った自動運転の自動車を使用していた。
(藤木君・・・)
笹山はフローレンスから渡されたボールペンのような道具を見る。この道具こそ藤木の奪還に貢献できるとされる物だった。仮に彼女が元の世界に留まる事を選んでいたとしてもこの道具が重要なアイテムとして使用されるとフローレンスは言っていた。
「はあ・・・」
笹山は長時間の移動で眠くなってしまっていた。
「疲れたろう。少し眠ってもよいぞ」
姚崇は声を掛けた。
「は、はい・・・」
「何、敵が来たら我々で返り討ちにするさ」
張説も笹山を安心させようとして言った。
「そ、それでは・・・」
笹山は眠りについた。
紂王の屋敷。結婚式を終え、二人の部屋を用意された藤木とりえはその場にいた。そこには藤木が彼女のピアノをまた聴きたいという要望からりえ専用とされたピアノが置かれていた。りえはそこで藤木の要望でピアノを弾く。久々に鍵盤をいじるからか、コンクールの練習をしていた時や夏休みに清水の教会でピアノを弾いた時を思い出した。弾いている曲は得意とする「亜麻色の髪の乙女」だった。
「やっぱり、りえちゃんはピアノ、凄いよ!」
藤木は思わず感激の拍手をした。
「あ、ありがとう」
「やっぱりりえちゃんは乙女だね!他の曲って弾けるかい?」
「うん・・・」
りえは別の曲を弾いた。バイエルの曲や誰もがよくしっているような童謡などを弾いた。
「やっぱりピアノを弾ける女の子は最高だな〜♡笹山さんもピアノ上手だったし・・・」
「ササヤマさん?」
「え?あ、何でもないんだ。ごめん、ごめん!」
藤木はなぜ昔の事を思い出してしまったとばつが悪そうになった。
(もう笹山さんの事は忘れたんだ。今はりえちゃんを好きにならないと!!)
「そうだ、僕はピアノどころか楽器は何もできないけどスケートは得意なんだ!雪が溶けないっていう山に氷の泉があるから今度そこ行って見せてあげるよ」
「う、うん・・・」
何も夢を見る事なく笹山は起きた。外は既に夕方となっていた。
「はは、随分と眠っていたようであるな」
「は、はい。ごめんなさい」
「何、謝る事はない。ここに来て気分もソワソワしていたのだろう」
姚崇はそう考えていた。
「・・・む」
「どうした、張説?」
「向こうから敵が来ている!」
「よし、迎撃だ。笹山かず子、お前は危険だから車から降りてはならん!」
「は、はい!!」
姚崇と張説は車から降りた。笹山は車窓から外を確認した。その場には一つの兵団が確認された。
(姚崇さん、張説さん・・・!!)
「準備はよいか?」
「おうよ!」
二人は戦闘体制に入った。
「行け!」
二人は刀を振り回す。二体の巨大な怪物が現れた。片方は牛の頭をしており、もう片方は馬の頭をした人型の妖怪だった。
「馬頭牛頭の力を受けてみよ!」
二人が召喚した馬頭牛頭が兵達を蹴散らしていった。
(す、凄い・・・!!)
笹山は異世界での戦いを観戦してこのような恐ろしい戦が行われていると改めて思い知った。以前にも知り合いの高校生の通う学校の文化祭で赤軍が襲撃して来た際にも恐ろしさを体感した事がある。それ以上の恐ろしさだった。
「うわああ!」
「おお!!」
兵は姚崇と張説の活躍によって全滅した。
「よし、片付いたな」
二人は車に戻って来た。
「あ、ありがとうございます。す、凄かったです。私には無理ですね・・・」
「何、そなたを護るのが我々の役目よ。それでは先に参ろう」
「うん」
三人は先へと進んだ。
(こんな戦いが待ってるなんて・・・。山田さん達、無事かしら・・・?)
笹山は今この世界にいると思われる欠席中のクラスメイト達が気になった。
後書き
次回は・・・
「豪華なる晩餐」
かよ子達は本部から支給された夕食として寿司を口にする。藤木とりえは夫婦となった初日の夜の晩餐として豪華な料理を共にする。そして祝言を終えて紂王の屋敷を出た杉山は嘗てかよ子に苦戦を強いたナポレオンという男の屋敷を訪れていた・・・!!
258 豪華なる晩餐
前書き
《前回》
長山は眼鏡で藤木の動向を探っていた所、彼がりえと共に祝言を挙げているのを発見し、かよ子に報告する。それでかよ子は藤木が夏休みにりえに鼻の下を長くしていたのを思い出す。一方、フローレンスによって異世界へと飛び込んだ笹山は武則天の側近・姚崇と張説と共に行動して藤木を探っていた!!
オリジナルキャラ紹介・その24
星川辰夫(ほしかわ たつお)
福岡の小学生男子で羽井玲衣子の同級生。初登場175話。防御特化の武装の能力を所有する。電撃を放つ事ができる乾電池で攻撃・防御を行う戦闘スタイルを取る。好きな食べ物は焼きそば・チャーハン。
長山がかよ子達に藤木の近況を報告した後、さりが長山の報告した内容が気になっていた。
「長山君、その藤木君ってのがどうかしたの?」
「実は杯の持ち主のりえちゃんって子と一緒にいたんだ」
「え?」
さりは頭の中を整理させる。杖の持ち主が探している男子は杯の持ち主と共にいる。つまり自分の姉達が向かう場所が一緒になるという事である。
(あり姉・・・、かよちゃん・・・!!)
さりは本部守備を担うが為に同行できない事で歯痒く思った。しかし今はただ祈るしかない。
かよ子達はこの日は敵とぶつかる事はなく進む事ができた。そして空が暗くなった為、とある草原に羽根を着陸させた。
「今日はここで休むとしよう」
次郎長が提案した。
「うん」
そしてかよ子達は休息に入る。
「強くなったこの杖を試してみたかったけど今日はお預けかな・・・」
「確かに、某もお主の戦う姿が見たいな」
石松も少しかよ子に期待していた。ヴィクトリア女帝を撃破し、七つの泉を取り返した時、クイーン・ベスの提案で泉に杖を浸した結果、炎、氷、雷、石、棘、鋸、剣と七つの能力を対象物に向けなくてもいつでも使用する事が可能になった。これで少しは戦力になれたのではないかと思った。
『皆様、お疲れ様です。夕食の準備ができました。そちらにお出ししますのでお召し上がりください』
皆の元に食事が提供された。この日の夕食は少し豪華に思えた。何しろ寿司だったのだ。それに味噌汁とおしんこという組み合わせである。
「おお~、今日はご馳走だねえ」
「ああ、今日は最高の日じゃ!」
まる子と友蔵は喜び合った。
(お寿司か・・・)
かよ子にとっても寿司を口にするのはかなり久々だった。元の世界でも頻繁に食べるものではなく、何かの特別な祝い事くらいで食べた程度だった。
「お、美味しい・・・!!」
改めてかよ子はその寿司を美味と思う。
「山田かよ子。寿司は美味いか?」
次郎長が質問した。
「うん、凄い美味しいよ!久しぶりに食べるから、かな・・・?」
「そうだな、杖を強化させた祝いとでも思って食うがよい」
「うん!」
かよ子は豪華な食事を楽しんだ。
紂王の屋敷。とある屋敷にりえは藤木と共にいた。食事の時間となった為食堂へと向かっていたのだった。結婚式後の晩餐という事もあり、豪華な感じを二人は感じていた。
「何しろ夫婦として初の夕食だからな。食事係の者に頼んで少し豪華なものを作らせてもらった」
紂王が解説した。
「おお、いただきます!」
藤木は喜んで食べ始めた。一方のりえは黙って食べる。そして妲己の顔を見ると杯を奪われた事への恨みが込み上がるばかりだった。
「そうだ」
妲己が思い出したように言い始める。
「祝言に来賓として訪れたナポレオンという者から薔薇が届けられていたのだ。そなた達の部屋に是非飾っておこう」
「薔薇?あ、ありがとうございます!」
藤木は妲己に礼をした。その一方のりえの方は素っ気ない態度だった。
「あ、ありがとう・・・」
(薔薇か・・・。何か女の子へのプレゼントらしくていいな・・・。そのナポレオンって人に感謝しないと!)
藤木は活き活きしながら食事の手を進めるのだった。
レーニンは祝言に参加した後、本部へと戻って行く途中だった。そこでとある屋敷へと出向いていた。
「これはレーニン様」
一人の女性が出迎えた。
「ジョゼフィーヌか。そういえば貴様が育てた薔薇を祝言の際にナポレオンが献上したそうだな」
「はい。赤いバラは恋を意味します」
「そうか、それなら・・・」
レーニンの姿が杉山に変化した。
「あいつも藤木の虜になっちまうわけだな」
「レーニン様?」
「ああ、同体化しているこの少年が出てきているのだ。どれ、私も貴様の花の力を分けて貰おうではないか」
「はい、どうぞ」
レーニンはジョゼフィーヌの花畑へと連れて行かれた。様々な色の薔薇とダリアが栽培されていた。
(薔薇には色によって花言葉が異なると聞く・・・。白は『純潔』、赤は『愛情』、黄は『献身』、などと言った所か・・・。そしてダリアの花言葉は・・・)
レーニンは花の能力を吸収しながら考えた。
(裏切り、か・・・)
その時、杉山が質問する。
「花を吸収してどんな風になるんだ?」
「その花言葉に合った能力を得る事ができるのだ。例えばこの青い薔薇は『奇跡』『不可能』、橙色のものは『絆』、赤は『情熱』、黒は『不滅の愛』、そしてこのダリアは『裏切り』を意味する」
「そうか」
(ダリアは裏切りか・・・。俺も裏切ったんだよな。皆を・・・。その分あいつらにも何とかしてやらねえと・・・。この戦いを片付ける為にな・・・)
杉山のその考えは赤軍と戦争を正義とする世界の為なのか、それとも異能の能力の持ち主および平和を指示する者と平和を正義とする世界の為なのか、本人にしか解らない。
「そうだ、折角お越しいただけたのですから夕食を一緒にどうぞ」
「ああ、頂こう」
レーニンはジョゼフィーヌやナポレオンと共に食事を共にする事にした。
かよ子達は夕食を食べ終えた。
「ごちそうさま・・・」
「美味しかったねえ~、かよちゃん!」
「ま、まるちゃん・・・。うん、そうだね、これからまた頑張れる気がするよ!できればおっちょこちょいしないで・・・!!」
「おお、かよちゃん、その意気じゃ!」
友蔵も応援した。まあ彼にはそれしかできないのだが・・・。
「でも、なんかよお」
大野が口を開く。
「え?」
「りえが藤木といるって事はあいつを助けに行ってるりえの友達と同じ方向になるって事だろ?もしかしたらあいつらとも一緒に行動するべきなのかもしれねえな」
「う、うん。りえちゃんの友達にも追いつけるようにするよ!」
かよ子は杯の所有者の友達との再合流の可能性を考えて目標達成をしようとした。
レーニンと杉山さとし、二人で一体の戦争主義の世界の長はナポレオンとその妻・ジョゼフィーヌと会食していた。こちらの夕食もまた豪華でステーキや魚など様々な料理があった。
「ところでその少女と少年は結ばれたものの、杖の所有者達がそちらの方角に向かっている筈ですが?」
「ああ、そうだな。だが赤軍の方も捕虜を取られてしまっているからな。簡単には動けん筈だ。それにヴィクトリアの所に支援した者達も撤退するしかできなかったしな」
「あの丸岡修という男の術で取り返せないのですか?」
「一度足立正生と吉村和江という者を取り返した時にはそうしたが、同じ手が二度通用するとは思えん。そこで私はこの少年を取り込んだ時と同じように敵味方問わず様々な能力を吸収して強化を図っているのだ」
「そうですか。ジョゼフィーヌの花の力がお役に立てるとよいのですが」
「ああ、役に立つであろう」
「それなら光栄ですわ」
ジョゼフィーヌが嬉しく返答した。
「それでは楽しく美味な食事を楽しませて貰った。それでは失礼しよう」
レーニンはナポレオンの屋敷を出発した。そして杉山は考える。
(西川って奴と佐々木を取り返す必要があるんだったな・・・。さて、どう取引をするのか。それとも別の方法で奪還するというのか・・・?)
「なあ、捕虜になった奴を取り返してえんだろ?」
「そうだ。だが、どうすればよいか検討中なのだ」
「・・・複数で護符を狙えばいいんじゃねえのか?」
「何?」
レーニンはその同体化している少年の発言に気になった。
「護符の所有者を狙えば取り返せるのか?」
「できるさ。それに確かお前が欲しがっている頭脳を持つ長山って奴もいるぜ」
後書き
次回は・・・
「杯の捜索者達」
藤木とりえの部屋の元に薔薇が届けられる。そしてレーニンは捕虜となった赤軍の西川、東アジア反日武装戦線の佐々木を奪還する為に戦争主義の人間達に動員を命じる。そして杯を取り返す為に動くゆり達の元には戦争主義の世界の強者・トロツキーが近づいていた・・・!!
259 杯の捜索者達
前書き
《前回》
夜になり、休息する事にしたかよ子達に支給された夕食は寿司だった。ヴィクトリア女帝を撃破し、杖を奪還・強化に成功させた祝いと思ってかよ子は食べる。そして藤木とりえの結婚後最初の夕食も豪華だった。藤木の元にはナポレオンから届いたという薔薇が贈られる。そしてナポレオンの屋敷を訪れた杉山はナポレオンとジョゼフィーヌと面会し、そこの花畑にある薔薇やダリアを見て杉山は己の行動を顧みていた・・・!!
オリジナルキャラ紹介・その25
鶴井ひろみ(つるい ひろみ)
福岡の小学生で羽井玲衣子のクラスメイト。初登場175話。見聞の能力を所有する。風を自在に操る事ができる扇子を使用して戦う。家は扇子屋らしい。好きな食べ物はいちご、ヨーグルト。
藤木とりえは食後は部屋に戻った。
「私はお風呂入るわ」
「う、うん・・・」
二人がいる部屋には浴場がない。その為、1階の浴場に行かなければならなかった。藤木は出入り口前にある鐘を鳴らして遊女を呼んだ。
「りえちゃんがお風呂に入りたいって言ってるんだ。お風呂へ連れて行ってくれるかな?」
「畏まりました」
遊女はりえを連れて浴場へ向かった。その入れ替わりで別の遊女が入ってくる。
「茂様。ナポレオンという方から頂いた薔薇をお持ちしました」
赤い薔薇が12本花束とされていた。
「あ、ありがとう」
(りえちゃんが戻って来たら早速見せよう・・・!!)
藤木はりえが戻るのを待つのであった。
「それにしても夜になるとどうしてこんなに不気味に感じるんだブー?」
ブー太郎は落ち着けなかった。
「だがどこにも敵が来るような違和感はねえぜ」
大野は見聞の能力も持っている為、落ち着きを保っていた。
「ブー太郎君、大丈夫よ。何かあったら私が教えるわ。ゆっくり休んでてね」
のり子の人形・キャロラインがブー太郎を安心させようとした。
「キャロライン・・・!」
「何?」
「どうしてももこちゃん以外の子と・・・?」
「のりちゃん、皆仲間なんだから助け合わないと!」
「の、のりちゃん・・・!!」
かよ子はのり子に思い切って伝えようとする。
「私、杖が強くなったけど、やっぱりおっちょこちょいするんじゃないかって不安なんだ・・・!!それに私達だってのりちゃんと友達になりたいんだよ」
「う、うん・・・」
のり子は考え直すのであった。
「そうだったね。ごめんね、皆・・・」
「気にするなブー。オイラ、お前も、お前の人形も、頼りにしているブー」
「皆の者、もう寝るとよい。一日でも早く本来の目的に達したいからな」
次郎長が呼び掛ける。
「うん!」
かよ子達は就寝するのであった。そんな中、かよ子はブー太郎の方を見る。
(ブー太郎ってもしかして・・・?)
杉山はレーニンにあるアドバイスをした。
「長山治、か・・・。以前、オリガと言う者が赤軍の丸岡修と共に奴を狙おうとしていたのだが、失敗した」
「ああ、捕虜になった赤軍や反日の奴らを取り返してえなら、まずそいつらのいる所を狙えばいいと思うぜ。その隙に別の奴等を平和主義の世界の本部へ潜り込ませればいい」
「そうか・・・。長山治程ではなさそうだが、貴様も頭の回転は速いという事か」
その時、トランシーバーが鳴る。
「こちらレーニン」
『お疲れ様です。こちらトロツキー。只今杯を取り返そうとしている者達に接近しました』
「そうか、ぶつかると厄介なことになるからな。現に本部に安置してあった剣を奴等に奪われているからな。窮地に陥ったら離脱するのだ。貴様のような優秀な逸材は失われるとたまらんからな」
『リョーカイしました』
通信を終了させた。
「トロツキーが南進しているか。それでは別の援軍も使いに回したい」
「そうか、ならまた赤軍の奴らも行かせてやれよ。今こっちが劣勢なんだろ?人数が多ければ取り返せるはずだぜ」
「そうか・・・」
レーニンはトランシーバーを再び出し、多くの同志や赤軍に伝令する。
「これより一部の者はトロツキーに続いて本部に進攻せよ!赤軍の西川純と東アジア反日武装戦線の佐々木規夫を奪還しに向かう!!」
杯を奪還する者達は線路無しで進む列車(これは剣奪還班として共闘した北勢田竜汰の道具で出されたものである)の中で一夜を過ごしていた。鷺森光江は座席に座りながらこっくりこっくりとうたた寝している状態だった。
(・・・・・・)
その時、はっと思い出したかのように起きた。
(・・・私、また昔の事を・・・。いや、『ここ』におるはずないか・・・)
「もう起きたんか?」
鯉沢の方は起きていた。
「鯉沢さん、起きとうたんか?」
「ああ、嫌な予感がして寝れんじゃけん」
「私もよ」
ゆりや政美、マリエルも起きていた。
「どうやら輝愛ちゃんが感じるって事は準備した方がいいかもね」
ゆり達は列車から降りた。全員戦闘体制に着く。マリエルが本から妖精を出す。剣奪還の際に戦争主義の世界の本部に乗り込んだ時に活躍したシルヴィーとブルーノだった。
「シルヴィー、ブルーノ。私達に敵が近づく前に奇襲を仕掛けるのよ」
「うん!」
二人の妖精は先に消えた。
「・・・私も見てみるか」
政美はマフラーに宿る能力の一つ、索敵能力を使用して察知する。
「ああ、敵は眼鏡に髭のおっさんだ!マリエルが出した妖精達が殺されたぞ!」
「おし!うちが殺ったる!!」
鯉沢は先陣を取り先に走り、敵の姿が見えた所で原子光線を放った。
「参ったか!」
「・・・ふ、遠くからヨクも私を殺ろうとしたな」
「貴方は誰なのよ!?」
ゆりは問答した。
「私は革命のシシャ、トロツキー。貴様ら死んで貰う!!」
トロツキーは指を鳴らした。
「あの人、一撃で私達の身体をバラバラにする気よ!」
マリエルが見聞の能力による先読みした。ゆりが武装の能力で皆を防御した。
「ち、守りおって!ならこれなら!」
「武装の能力を無効化してくるわ!」
「ち!」
政美が高速で走り左腕を剣に変えてトロツキーの首を斬ろうとする。だが、トロツキーは武装解除の術で政美のマフラーを念力のように触らずに外した。加速能力がなくなり、剣も元の腕に戻ってしまった。
「纏めてブソーカイジョさせてもらう!」
だが、光江が御守の能力で神を降臨させた。
「楠公さん、召喚!」
楠木正成公がその場に現れた。
「そんな物もカイジョだ!!」
「やれるものならやってみたまえ。愚かなる惨殺者!」
正成とトロツキーがぶつかり合う。トロツキーの武装解除の術は正成に上手く通用していない。
(このまま持てば・・・!!)
光江は御守に威圧の能力を通す。正成の能力が更に強力になる。
「何、我がチカラがツーヨーしないだと!?」
「鷺森光江、援護に感謝だ!智・仁・勇の能力を受けて見よ!!」
「う、うごおお・・・!!」
トロツキーは気を失いそうになった。
「や、られて、たまる、か・・・!!」
「光江ちゃん、後は私がやるわ!!」
ゆりが毒の拳をトロツキーに突き刺すべく突進した。
「く・・・!!」
だが、トロツキーは決死の術を使う。ゆりの毒の術の源であるアンクレットが外れた。トロツキーは離脱した。
「逃げんな、卑怯者!!」
鯉沢はやけくそで銃を放ち、政美も再びマフラーを巻いて右手をリボルバーに変化させて襲撃する。だが、どちらの攻撃もトロツキーに当てる事はできなかった。
「逃がした、か・・・」
[ほう、我が最強の一人であるトロツキーをここまで追い詰めるとはな]
「だ、誰、何処にいるのよ!?」
ゆり達は周りを見回した。しかし、声の主は見当たらない。
「この声は・・・!!」
マリエルは思い出した。この声は以前、三河口と剣の奪還の為に戦争主義の世界の本部の建物に乗り込んだ際に会ったレーニンの声だった。
「戦争主義の世界の人の声よ!名前は・・・」
[その通りだ。我が名はレーニン。そういえばあの剣を奪った小僧と共に貴様はいたな]
「レーニンだったわね。杯を取ったらしいけどどこにあるのかしら?」
ゆりは天に顔を向けて質問した。
[さて、私が言う事ではない。だが、杯の行方を当てる方法は貴様らには無理だ]
「え?」
[杯は少なくとも我が本部にはない。更に厳重に保管されているのだ。どのような能力を使ってでもな]
レーニンの声はそれ以降聞こえなくなった。
「おい、レーニン、出て来やがれ!!ぶっ殺したる!!」
鯉沢は銃を乱射しようとする。
「無駄よ、輝愛ちゃん。奴はここにはいないわ」
ゆりは鯉沢を制した。
「兎に角、こんな夜に起こされたし、また寝るわよ」
皆は列車に戻った。
赤軍の長・重信房子は南方へ他の赤軍メンバーと共に飛行機で進んでいた。
(純と規夫を取り戻す・・・!!まずはそこからね)
後書き
次回は・・・
「薔薇の花束」
りえが入浴から戻って来た時、藤木はナポレオンが持って来た薔薇を彼女に見せびらかす。りえはそれを見て自身に違和感を感じていく。そして杖を取り返し、藤木の奪還にまた動くかよ子達の前にまた次の敵が立ちはだかる・・・!!
260 薔薇の花束
前書き
《前回》
レーニンは赤軍の西川と東アジア反日武装戦線の佐々木の奪還を多くの者に指令する。その頃、杯の奪還に向かうゆり達はトロツキーとぶつかり、交戦する。苦戦の末に追い詰めるもトロツキーを取り逃がし、その上、何処からか声が聞こえる。それが戦争主義の世界の長の声であり、杯の場所を突き止めるのは無理だと告げて声は消えるのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その26
山元たかし(やまもと たかし)
福岡の小学生で羽井玲衣子の友達。初登場175話。見聞の能力を所有する。水を自在に操って攻撃・防御を行う水鉄砲を所有する。野球が好きらしい。好きな食べ物は焼きそば、豚カツ。
トロツキーは杯を奪還しに向かう者達の猛攻で何とか緊急離脱する事に成功した。
「はあ、手強い奴等だ・・・。レーニン様に連絡しないとな」
トロツキーはトランシーバーを取り出した。
「こちらトロツキー。レーニン様。杯を奪還する女どもとソーグーし、やられそうになった為、何とか逃げ延びました」
『そうか、それだけ大変だったわけか。だが、その移動で貴様は更に平和主義の世界の方角へ進めている筈だ』
「はい、いかにも」
『それなら、そのまま進むが良い。以前、貴様の妹が手にしようとしていた長山治という者がいる。妹の怨みを晴らす好機ともとらえればよい』
「はい、ありがとうございます」
トロツキーは南進した。捕虜となった赤軍の西川、東アジア反日武装戦線の佐々木を奪還するという赤軍の目的に協力しつつ、秀才と言える少年を奪う事を目的に進む。
りえが入浴を終え、部屋に戻って来た。
「りえちゃん、お帰り!」
「只今・・・」
「そうだ、これ見てくれよ!」
「え?」
棚には薔薇が花瓶に生けられていた。
「今日の結婚式に来てくれた人が持ってきてくれたんだ。凄い綺麗だよね」
「え、ええ、そう、ね・・・」
りえはその薔薇に違和感を感じる。そして脳内の記憶がなくなっていく感触を覚えた。
「今度は僕がお風呂入ってくるよ」
「うん、行ってらっしゃい・・・」
(な、何が起きてるのっ・・・?)
藤木が風呂から戻って来た。
「只今」
りえは寝台で寝ていた。
「りえちゃん・・・?」
(そうか、疲れたんだもんな・・・。今日の結婚式、楽しかったよ。ありがとう・・・)
藤木はりえに添い寝した。そして藤木はりえに手を握られていた。
(りえちゃん・・・)
藤木はこの地で再会してからりえに己の行動を不可解に思われていた事はあってもようやく自分に好意を持ってくれたのだと思い少し嬉しくなった。
まだ夜が明けておらず、寒い。煮雪ありは沢に近い所で夫の悠一や杯の所有者の友達、協力者となった高校生達に異世界の人間達と共にその場で休んでいた。
(ここの夜ってこんなに冷えるのね・・・)
ありは温暖な清水に生まれた為、興味を持って移住したとはいえ、北海道の冬を越すのは寒さでとても辛かった。だが、この異世界でも寒い時はあるのだと思うと、やはり寒くて大変である。
(りえちゃん、どうしてるのかしら・・・?)
ありは杯の所有者を早くでも助けないとと思った。そのまま寒さに耐えながらも眠り続けた。
(そう言えば前にも健ちゃんが同じように心配になった事あったっけ・・・?)
ありは自身が北海道の大学へ行く事を目指そうとした時、従弟が家でも学校でも暴れて親によって少年院に送られる話を聞いた事がある。その時は自分の可愛い従弟が犯罪をやったわけでもないのに親によってそのような仕打ちを受ける事があまりにも気の毒すぎて妹と共に泣きたくなってしまった。その時は出所する日が来るまで時折祈っていたものである。
夜が少しずつ開けて行く。かよ子は早めに目が開いた。
「ふあ・・・」
これからまた次へ進まなければならない。自分が杖を奪われてしまって取り返す行為に手間取った為に本来の目的が大幅に遅くなってしまった。
「よし、これからまた行かなくちゃ!!」
かよ子は少しずつ羽根を動かして先へ進むことにした。
「お、かよちゃん、もう起きたんだね」
「あ、関根さん・・・」
「はは、警察の仕事には夜勤もあるから時々早く起きたり、あまり寝れなかったりするものなんだ」
「そうですか・・・」
「まあ、羽根を少し進めてもいいよ。少しでも早くやる事を済ませたいだろうし」
「は、はい・・・」
かよ子は構わず羽根を進めた。
「少しくらいなら、大丈夫だよね・・・?」
かよ子は皆が起きる前に羽根を動かしたが気にしなかった。
「・・・はっ!」
関根が嫌な気配を見聞の能力で感じていた。その時、大野も起きた。
「お、大野君、起きたの・・・!?」
「ああ、嫌な気配を感じちまって起きたんだ」
「ど、どこなんだろ・・・!?」
その時、銃が発砲するような音が聞こえた。
「え!?ど、どこ!?」
そしてかよ子達の羽根に鉱物が飛んできた。幸い、羽根の結界やかよ子の武装の能力が働いた為に無傷ではあったが、このまま逃げても巻けないと思い、杖を取り出して戦闘準備に入った。
「誰なの、どこにいるの・・・!?」
「やれやれ、折角杖をこちらの物にしたのにまた取られるとはな・・・。ヴィクトリアも女王のくせにへまをやってくれたものだ」
髭を生やした男性が近づいて来た。
「私の杖を取りに来たんだね!?」
「その通りだ。杖の所有者・山田かよ子。このゲオルギーがもう一度、その杖を我々の世界の物とさせて貰うのだ」
「な、新しい敵か、ブー!?」
他の皆も次々と起き上がる。
「何奴、杖は渡さんぞ!」
次郎長達も直ぐ様戦闘体制に入った。
「私はもうそんなおっちょこちょいしないよ!」
(私の杖は前よりも強くなったんだから!!)
新生・杖を使用するかよ子の最初の戦いが始まる。
藤木は朝となり、起きた。この日は少し寝坊してしまっていた。隣にりえが眠っていた。
「りえちゃん、おはよう」
丁度りえも起きた。
「あ、藤木君、おはよう」
りえの方は昨日までの表情とは打って変わっていた。藤木を見つめて笑顔だったのだ。
「そうだ、この薔薇、枯れないように毎日水を変えないとね」
「ええ、あの、藤木君」
「え?」
藤木は驚いた。りえが自分の頬にキスしたのだった。
「藤木君と一緒で嬉しいわ。私もそうした方がいいと思うわっ!」
「うん、そうだね!」
藤木は早速遊女の一人を呼出した。
「おはようございます。茂様。そしてりえお嬢様」
「おはよう。早速なんだけど、薔薇の水を変えたいと思うんだ。いいかな?」
「ええ、勿論です。萎れては困りますからね。一日二回、水を変えておきますね」
遊女は花瓶に入った12本の薔薇を持って行った。
「それじゃ、食堂に降りて朝ごはん食べに行こうよ」
「うんっ!」
藤木とりえは身支度を整える。
「そうだ、りえちゃん・・・」
「え?」
「ここであった時、最初は僕に『この世界にいちゃダメだ』って言ってたけど、今日はなんか僕と一緒でなんか嬉しいみたいだね」
「だって折角会えたんだもん。好きになっちゃって・・・」
「そっか、僕、ずっとりえちゃんの事、好きでいるよ!」
「うん!」
二人は朝食を食べに食堂へと降りるのだった。そこには紂王や妲己、他の遊女や衛兵達もいた。
「おはようございます、茂様、りえ様!」
「おはよう!」
「おはよう、それでは食事と行こうか」
皆は食事の席に着く。ここでの食事は朝でも豪華だった。和のものも洋のものも置いてある。
「ところで坊や、お嬢。あの薔薇の花束は如何かね?」
妲己が質問した。
「はい、とても嬉しいです!りえちゃんに相応しいプレゼントだと思いました!」
「そうか、良かった。あの薔薇の意味を送り主のナポレオンから聞いてみたのだが、薔薇は12本あると『私と付き合ってくれ』という意味があるそうだ。そして赤や深紅の類の色は『愛』『恋』という意味も含まれているという」
紂王が説明した。
「そうなんですか!?ありがとうございます!僕、なんかここに来た時のりえちゃんの様子がとても心配だったんです。あの薔薇があって本当によかった!」
藤木は感謝した。
「ホホホ、それはよかった。仲良く楽しく暮らせそうね」
フローレンスは通信機で杯の奪還へ進むゆりと連絡を取っていた。
「そうですか。夜中にトロツキーと戦いましたのですか。お疲れ様でした」
『それでレーニンとかいう人の声が聞こえてね。杯は少なくとも本部にないけど私達が探し当てるのは無理だって言うのよ』
「そうですか。こちらでは安藤りえちゃんを攫いました妲己といいます女が怪しいのですが他の者に譲渡しました可能性もありますからね。こちらでも可能な限り捜索します」
『ありがとう。こっちもくまなく探すわ』
連絡を終了した。フローレンスは考え続ける。
(剣や杖の時はすぐに検討がつきましたのにどうして杯だけは見つかりにくいのでしょうか・・・?)
杉山はレーニンと本部へと進み続ける。
「はて、ゲオルギーが杖の所有者に接近したようだが・・・」
「ああ、そうだな。あいつらにももう一度会ってみてえところだぜ」
杉山は心の中で思う。親友の事、そして、おっちょこちょいの少女の事も。
(大野、見てろよ、俺は大将になってやるからな・・・)
「そこでだ」
「ん?」
「『貴様自身』も利用させて貰いたい」
「俺を?」
杉山はレーニンの言葉に不可解さを感じた。
後書き
次回は・・・
「進化した杖の実力」
かよ子達藤木救出班とゲオルギーの戦いが始まった。かよ子は新たに生まれ変わった杖の実力を試す時だと見たかよ子は杖を早速使用してゲオルギーの撃退を試みる。一方、杉山はレーニンからかよ子や大野の事を聞かれる。そして二人の元にはある人物が呼び出されていた・・・!!
261 進化した杖の実力
前書き
《前回》
藤木にナポレオンから貰ったという薔薇の花を見てりえは己がおかしくなっていく感じを覚える。その後、りえは藤木にすっかり好意を持った態度に変わり、藤木は嬉しく思う。そしてかよ子の前にゲオルギーという男が立ちはだかる。一方、杉山はレーニンに杉山自身を利用させて貰いたいという意味不明な要望を受けていた!!
本部の料理準備室。フローレンスとイマヌエルは朝食の準備をしていた。
「それではそろそろ皆様に配膳致しましょう」
「ああ、そうだな」
「私は捕虜としました西川純と佐々木規夫に供食して参ります」
「了解」
その時、二人の通信機に連絡が来た。
『こちら山田まき子。ウチの娘達が別の敵と戦ってるみたいよ!』
「こちらイマヌエル。了解した!様子を確認する」
イマヌエルは通信を終了させた。
「どうやら山田かよ子君達の所は戦いが終わってから提供した方が良さそうだな」
「ええ、でも杖が強化されましたならばきっと勝てますと思いますわ」
「ああ、そうだろうね。私もそう祈るよ」
かよ子はゲオルギーという男と相対していた。皆は慌てて起き上がる。だが、まる子と友蔵は気付かずに爆睡していた。
「ももこちゃん、起きてよお!!」
のり子はまる子を必死で起こす。
「さくらももこの事は放っておけ!」
次郎長はのり子に促した。
(私の新しくなった杖を試す時だ・・・!!)
かよ子は杖をゲオルギーに向けた。
「地面の槍を喰らえ!!」
地面から土の槍が無数に生えてかよ子達が乗る羽根を襲う。かよ子は土の槍に杖を向けた。丸鋸を出現させて鎌鼬の如く飛ばした。土の槍は次々と粉砕された。
「小賢しい・・・。それにしても・・・」
ゲオルギーはかよ子の杖に着眼した。
(以前の杖では対象物に向けて複製しないと発揮できないのではなかったのか!?)
ゲオルギーは驚く暇もなく、次郎長の刀や大野の草と雷の石、ブー太郎の水の石の攻撃に気づく。
「おおっと、無防備と思うな!」
ゲオルギーは巨大な鉱物を出現させてバリケードを張った。それはどの攻撃も通さなかった。
「私がどかす!」
「俺も降りるぜ!」
のり子の人形が念力を使用して、鉱物をどかす。吉良の仁吉が得意の怪力で鉱物を投げ飛ばし、大政の槍も次々と鉱物を打ち砕いた。
「覚悟!」
仁吉と大政は鉱物に隠れたゲオルギーを狙う。しかし、そこにゲオルギーはいなかった。
「な、どういう事だ!?」
そこには穴があった。
「地面に潜って逃げたのか!」
「よし、私の出番だな!」
椎名は水の玉から大量の水を穴に通した。穴に逃げたゲオルギーを溺れさせるという計算だったが、既に地上に立っていた。
「遅かったか!」
「形成逆転だね!」
ゲオルギーは鉱物の砲撃を喰らわす。そしてかよ子は鉱物の方に杖を向ける。巨大な鉄の壁を作り出した。だが、かよ子の杖の能力は単に能力を複製して防御したのみではない。ゲオルギーの出した鉱物の砲丸を跳ね返したのだった。勢いをつけて跳ね返る。
「な、お、おおーー!!」
(これが杖の持ち主の実力・・・!?)
ゲオルギーは避ける事も守る事もできず、瞬殺された。光と化して消滅していく。
「凄い、山田、凄いブー!!」
「やるな、山田!!」
「え?うん、ありがとう・・・!!」
かよ子は褒められて照れた。だが、また別の敵の気配を関根や大野は感じた。
「また別の奴等が来ているのか!?」
一機の飛行機が付近に着陸した。一人の女性が降りてくる。
「どうも凄そうね。杖というのは」
「お、お前は・・・!!」
椎名も関根も目を丸くした。
レーニンは本部へと戻っていく。
「杉山さとし、貴様は確か杖の所有者から好かれていたそうだが?」
「山田かよ子の事か?」
「その通りだ。そして貴様には親友がいて喧嘩別れしたと聞く」
(大野の事か・・・)
「それがどうした?」
「杖を我々の元に戻す為の作戦に利用したいのだ。貴様を切り離したいところだが、そうなると私が上手くうごけなくなってしまうからな。そこでだ」
レーニンの元に一人の女が入ってきた。
「お呼びでしょうか?レーニン様」
「おお、来たか、ラ・ヴォワザン」
「また杖の奪取に動いてみるか?」
「私めに!?なんと光栄な!」
「それでは、貴様にはやって貰いたい事がある」
「はい?」
レーニンの姿が杉山に変わる。
「レーニン様?」
またレーニンの姿に戻った。
「今のは杉山さとし。私が偽物の杖、護符、杯の影響で動けなくなった際にこの少年が私に身体を提供してくれたのだ。時に逆らう事があるが切り離す訳にもいかぬ。そこでだ、貴様の黒魔術でこの杉山さとしの幻を作って貰いたい」
トロツキーは先へと進んでゆく。目指すは平和を正義とする世界との境界線である。
(奴等はいる・・・!!)
トロツキーは標的をとある少年と定めていた。
「お前は赤軍・政治委員の吉村和江だな!!」
「その通りよ。一度『そっちの世界』に捕まった事はあるけど何とか逃げ出せたわ。貴女の杖、変わったみたいね」
「え・・・?」
かよ子は自分の杖の事について言及していると直ぐに察した。
「だからって渡さないよ・・・!!」
「どうかしら?」
吉村は銃を出していた。かよ子は杖を構えた。杖から電撃を放つ。吉村も同様に発砲した。電撃を銃弾で相殺して防御したのだった。
「この銃は防御にも役に立つわね」
「な・・・!!」
かよ子はもう杖が攻略されたと焦った。
「ついでに皆纏めて死にな!」
吉村は銃を何発も発砲した。外に出ていた仁吉や大政もなんとかそれぞれの槍や刀で回避できたが、守るだけで精一杯だった。
「銃なら某も得意だぜ!」
綱五郎が発砲した。吉村の前で大きな爆発を起こした。
「やったか!?」
だが、吉村はその綱五郎の銃撃にも耐えた。
「ふふ・・・」
「き、効いてねえだと!?」
「なら、俺の出番だな!」
関根が忠治の刀を吉村の銃に向けた。
「何やっても無駄な事よ!」
吉村はまた自身の銃で今度は羽根の結界および能力そのものを無効化しようとした。だが、何も起きなかった。
「・・・え!?」
フローレンスは赤軍一名、東アジア反日武装戦線一名をある部屋に監禁している部屋に入った。
「おはようございます。西川純さんに佐々木規夫さん」
「テメエが平和主義の世界の長だな?」
西川が質問した。
「御名答です。ところで、以前にも政治委員の足立正生と吉村和江を捕虜にしました時もこの部屋に住まわせました。レーニンや貴方方の長であります重信房子にも今貴方達がここにいます事は筒抜けでしょう。恐らくこちらにまた攻めてきますと読んでおります」
「それがどうした?」
「私達の世界の人もも私達に協力していただいています皆様にも苦労しまして戦闘に参加していますが本来でしたら私達の考えではこのような殺し合いはしたくありません。いっそ交換条件を飲みませんか?」
「交換条件だと・・・?」
「まあ、後で参ります。朝食をお召し上がりになられてください」
本部の管制室。まき子は娘の動向を確認した。
「やっと一人倒したと思ったらまた次の人が・・・!!」
「点の色からして赤軍みたいだね」
イマヌエルは更に他所も確認する。
(気になるな・・・。赤軍や反日武装戦線の人間がこんなに近づいているとは・・・。やはり西川純と佐々木の奪還に動いているのか・・・?)
後書き
次回は・・・
「二度目の取引」
赤軍の吉村和江と交戦するかよ子達は己の杖を取られまいと迎撃を続け、いよいよ吉村を追い詰める。一方、本部ではフローレンスが捕虜とした赤軍の西川と反日武装戦線の佐々木と接触し、二人にレーニンと房子に連絡させ、ある取引を持ち掛ける・・・!!
262 二度目の取引
前書き
《前回》
かよ子達は杖を狙いに来たゲオルギーという男を新たに強化した杖で撃破する。だが直後に赤軍の政治委員・吉村和江が現れ、かよ子達はまたすぐに戦う羽目になる。その頃、レーニンは黒魔術を操るラ・ヴォワザンを呼び出し、杉山の幻を作るように依頼する。そして平和主義の世界の本部ではフローレンスは捕虜として監禁している赤軍の西川と東アジア反日武装戦線の佐々木と面会していた!!
吉村の敵の能力を無効化させる銃は関根の刀によって防がれた。
「お前の銃の能力はこの刀に吸い取らせて貰った!」
「な・・・!!」
「跳ね返りを喰らえ!」
関根は刀を振るった。吉村はまた銃で迎撃する。だが、弾切れを起こしてしまい、慌てて避けた。吉村は飛行機へ撤退する。
「飛行機へ逃げるつもりだ!」
「逃さぬ!!」
大政は槍を投げた。飛行機の胴体が一部欠けた。
「ふ、この飛行機は普通の飛行機と違って頑丈にできてるのよ!」
かよ子達は先回りを図った。
「なら眠らせてやるぜ!」
大野が草の石の能力を行使した。地面から巨大な花が咲き、花粉を撒き散らす。吉村が眠りについた。
「大野君、ありがとう!」
「はて、捕まえるとするか」
だがその時、飛行機から耳が痛くなるような音波が聞こえた。皆慌てて耳を塞いだ。
「な、何、これ・・・!?」
その隙に吉村の姿が消えた。飛行機のドアが自動で閉まり、急に離陸していく。
(に、逃げられ、た・・・!!)
かよ子達は飛行機の姿が見えなくなるまで音波に苦しめられるのだった。
まき子は朝食を忘れて管制室で娘の様子を見ていた。
(赤軍の人間が敵の本部に戻ってく・・・)
「敵の方が撤退したようだ。どういう状況か連絡してみよう」
イマヌエルは通信機で連絡を試みた。
「こちらイマヌエル。藤木茂救出班の皆、状況はどうなっている?」
しかし、応答がない。
「何かあったのかな?」
「まさか・・・!?」
「いや、そんな事はない」
だが、少しして返答が来る。
『こちら椎名歌巌!応答遅くなり申し訳ない!只今赤軍の吉村和江と交戦したが、取り逃がした!奴が乗っていた飛行機の変な音波で耳が痛く追い討ちにも失敗した!』
「了解した。大変だったろう。朝食を用意するので休んでくれたまえ」
かよ子達は飛行機が過ぎるまで起き上がる事ができなかった。なぜか武装の能力をもってしても防ぐ事ができなかった。
(あの嫌な音に杖を向けて音波を出して返り討ちにできればよかったのに・・・。どうしておっちょこちょいしちゃったんだろう・・・?)
「ああん、もううるさいなあ~。折角人が寝てるのに~、やんなっちゃうねえ~」
「儂は耳が痛くて大変じゃった。まる子の耳は大丈夫か!?」
まる子と友蔵がようやく起きた。
「あんたらやっと起きたのかい」
「さっきまでオイラ達は赤軍の女と戦っていたんだブー!」
「お主ら、不謹慎過ぎるぞ!戦っている事に気付かずに爆睡するとは!!」
関根やブー太郎、次郎長は呆れていた。他の皆も冷ややかな目でまる子と友蔵を見ていた。
「う、ご、ごめん・・・」
二人は身体が凍り付くほど肩身の狭さを感じたのであった。
朝食を終えた頃であろうとされる時にフローレンスは再び佐々木と西川のいる部屋に入った。
「朝食は如何でしたか?」
二人共無言だった。
「まあ、私が来ましたのは食事の感想を聞きます為ではありませんからね。それでは本題に入りましょうか」
フローレンスは一呼吸してから話を続けた。
「それでは以前赤軍の皆様が日本政府と取引を行いました時のようにまた私達と取引を行わせて頂きます」
フローレンスは二人のトランシーバーを用意した。
「貴方達のリーダーであります重信房子や戦争主義の世界の長でありますレーニンに連絡をお願い致します」
西川も佐々木も要求に応じるしか選択肢がないと思い、フローレンスから返されたトランシーバーで赤軍や東アジア反日武装戦線の面々、そしてレーニンにも通信を繋げた。西川が話を始める。
「こちら赤軍西川純。今平和主義の世界の長の前で通信を繋げている・・・」
「取引をお願い致しますと言ってください」
フローレンスの言われた事を繰り返すように西川は言い続けた。
「その長から取引を頼まれた」
「内容は西川純と佐々木規夫さんをそちらにお返しします条件として・・・」
「私と佐々木を返す条件として・・・」
「我々の世界との戦いを終戦とさせて頂きます為に戦争主義の世界の方々も含めまして撤退をお願い致します」
「この世界の戦争を終わらせる為に撤退をお願いするとの事だ・・・!!」
『何ですって!?』
この言葉に叫んだのは重信房子だった。
『貴女達にとって都合が良すぎるわ!!』
「そちらこそ日本政府に対しまして都合の良すぎる条件を出しましたではありませんか?」
『うるさい!』
「それでは要求に応じませんという事で宜しいですわね?」
『・・・!!』
房子は何も返答せず通信を切断した。
(どうやら本部守備班にもこの危機を呼びかけました方が宜しいですわね・・・)
だが、再び房子が通信を再接続し、応答させる。
『こちら重信房子。了解、要求に応じるわ』
「そうですか。それでは西川純と佐々木規夫をそちらの方まで連れていきます」
だが、フローレンスは赤軍の長が要求を完全に呑んだ訳ではないと読んでいた。
(どちらにしましても本部守備班に連絡しませんと・・・)
レーニンと杉山はフローレンスと赤軍達の会話をトランシーバーを通して一部始終を聞いていた。
「フローレンスが交換条件を出してきたぜ。要求をそのまま呑むか?」
「馬鹿馬鹿しい。一度赤軍が政府と取引を行った際にも裏で工作をしていたではないか。容易く要求を呑むわけにもいかぬ」
「だが、捕虜になった奴をそのまま見捨てる気でいいのかよ?」
「貴様、また奴等の元へ寝返ろうというのか?とんだコウモリ野郎が」
「ちげえよ。こっちも騙し討ちで返せばいいんだ。何しろあいつらも捕虜を返しに来る筈だ。そこで抹殺しちまえばいい。だからこそ赤軍や反日武装戦線が集団で行ってんだろ?」
「そうか、それではそうしよう」
レーニンは赤軍に連絡を行う。
「こちらレーニンだ。平和を正義とする世界の長は西川純と佐々木を返しに動くはずだ。だが、こちらもまんまと要求を呑む気でいるな。撤退と共に守備についている馬鹿共やその長を抹殺するのだ。そうだ、それから今トロツキーが秀才の少年を奪いに行こうとしている。そちらもまた援護するのだ」
『了解しました!』
(上手く行くかな・・・?)
杉山はふと喧嘩した親友と二人のある女子が気になった。
(大野・・・、お前は頑張ってるか・・・?俺はお前がいなくても寂しくないように大将になれるよう頑張ってるぜ・・・。それから山田、りえ・・・。お前らはどうだ?今の俺が許せねえよな・・・。だが、今はそれでもいい・・・!!)
長山達は敵襲に備えて常に護符の所有者のさりや杉山の姉、まる子の姉に九州の中学生・尾藤海斗に異世界の人間・清正とテレーズと同行していた。皆は朝食を食べ終えていた。長山は杖の所有者の活躍を眼鏡を通して確認していた。
(山田、上手く活躍してたみたいじゃないか・・・)
「さてさて、私達は先に進んで取り返した場所の境界へ移動とするか」
さりはそう思った途端、通信機が鳴った。皆通信機を取り出した。
『こちらフローレンス。皆様、只今こちらで確認しました結果、赤軍および東アジア反日武装戦線の人間が集団でこちらに侵攻しています!いつも以上の警戒をお願い致します!!』
「りょ、了解!!」
通信を終了させた。
「赤軍や反日武装戦線が纏めて攻めてくるって事は・・・?」
さりは懸念した。
「もしかしたら羽柴さりさんの護符や長山治さんを標的とする者も出てくると思います!」
テレーズも警告した。
(また僕が狙われる、のか・・・!!)
長山は嘗て自分がオリガという女や丸岡修という赤軍の人間に目をつけられていた事を思い出す。そして眼鏡で遠くの動向を確認した。
(あ、あれは・・・!!)
長山は自分達の方に一人の人間が接近して来るのを確認した。
「こ、こっちに敵が一人来ている・・・!!」
「何!?赤軍か!?反日武装戦線か!?」
尾藤が聞いた。
「いや、戦争を正義とする世界の人だよ!」
「何!?」
「追い返すわ!」
さりは護符の能力を行使した。移動に使用する飛行機を出現させた。皆はその飛行機に搭乗し、前進した。そしてさりは通信機を取り出した。
「こちら羽柴さり!赤軍とかはまた別の敵も接近!今返り討ちにするわ!」
『さり!気を付けるんよ!』
母の声が聞こえた。
「うん!」
そして20秒ほど過ぎて敵の姿が見えた。
「あいつやな!」
尾藤がボールを蹴る。そしてさきこも宝石の能力を行使した。打ち勝つ可能性を高める能力を持つルビーが光り出す。ボールは相手に直撃した。
「うおおお!!」
男が痛みを抑えながら近づいた。
「よく来たな・・・。護符の所有者、そしてシューサイなる少年・長山治!!」
「あんたは誰なのよ?」
「私はトロツキー。レーニン様の下で動く者だ!」
さり達は強敵に会ったと思い、緊張が高鳴った。
後書き
次回は・・・
「本部境界の激突」
さり達の元にトロツキーが襲来した。トロツキーは長山とさりの護符を狙う為に執念を見せる。だが、その場には赤軍の救援も訪れていた。そしてりえを探し続けるあり達の元にはさらに別の戦争主義の世界の人間が訪れており・・・!?
263 本部境界の激突
前書き
《前回》
赤軍と交戦するかよ子だったが、一時は追い詰める者の、飛行機から出された音波による妨害で動く事ができず、取り逃がしてしまった。その頃、本部ではフローレンスが監禁中の赤軍の西川と東アジア反日武装戦線の佐々木と面会し、二人の解放と引き換えに平和主義の世界の領土全てから戦争主義の世界の人間が撤退する事を要求するとレーニンおよび房子に連絡させる。房子は口では応じたものの、フローレンスは要求に応じないと読み、本部守備班に本部守備班に守備の警戒を強めるよう呼びかける。そしてその本部守備班であるさりの元にトロツキーが襲来する!!
レーニンの右腕の一人・スターリンはレーニンの元へと向かっていた。
「レーニン様!」
「スターリンか。一体何の用だ?」
「何故に私ではなくトロツキーに護符と長山治の回収をやらせるのですか!?私が行きたかったのに!」
「やれやれ、生前の対立を引きずっているのか。ここは貴様も理解して貰いたいものだがな」
「お前にもいい仕事があるぜ」
姿が杉山に変化した。
「あの少年か。何の用だ?」
「杯を持ってた女を取り返そうとしている連中がいる筈だぜ。確か護符の所有者の姉貴も混じっていた。そいつの友達も一緒に行動しているからそいつらをやっつけてからだな。トロツキーが失敗したらお前が行けばいいさ」
「くっ・・・」
スターリンはレーニンに身を貸している少年の指図に気に食わないと思いながらも仕事の為にその場を離れた。
トロツキーは護符の所有者に秀才の少年・長山治と相対した事で一石二鳥の気分を感じていた。
「ほう、貴様が護符の所有者か。貴様の姉貴に本当にそっくりだな」
さりはトロツキーの発言からこの男は既に自分の姉と交戦済みも察した。
「そして小僧が長山治だな。貴様のその類稀なる頭脳を我が物にさせて貰う!」
トロツキーが全員抹殺すべく指を鳴らした。だが、さきこのエメラルドが光り、全員防御された。もと子が玉の能力を利用してトロツキーを弾き飛ばした。
「うごお!!」
トロツキーはすぐさま立ち上がった。
「そうか、貴様はあのレーニン様に身体を貸し与えた小僧の姉貴か。弟と同じように気の強そうな顔をしている」
「弟・・・?」
もと子は自分の弟・杉山さとしが敵に協力している事に恥じた。
「それで弟は私達を襲えって?」
もと子は聞いた。
「さあてな、貴様の事は何も言ってない。私が求めるのはその護符とこのショーネンだ!」
トロツキーはその場で武装解除の術を使用した。さりが護符の能力を行使した。トロツキーの武装解除の術が無効化された。そして長山は眼鏡を利用してトロツキーの行動を読み取った。
「君は僕とその護符を取る為に異能の能力や道具を使えなくさせようとしたんだね?悪いけど今のはさりさんの護符で防がせて貰ったよ!」
「何だと!?このアバズレめが!」
トロツキーは護符をさりの手から外そうとした。しかし、さりの武装の能力が働く。
「異能の能力とやらだな!」
トロツキーは地面を足踏みさせた。さり達はまた武装の能力で防御を試みた。しかし、今度は防げない。長山は神通力の眼鏡で確認した。さりの武装の能力がトロツキーの術で使用不可になってしまっていた。
「これで貴様らは皆異能の能力を使えん!大人しく護符と長山治を渡すのだ!!」
そしてトロツキーはある言葉を使う。
「従え、従え、従え・・・」
長山は眼鏡でトロツキーの行動を読み取った。
「この人、僕達を洗脳させる気だ!」
「何やて、この野郎!!」
尾藤はボールを素早く蹴る。トロツキーの顔面を狙った。トロツキーの顔がボールに当たる。そしてさきこのルビーが光り出した。ボールの威力が上がる。トロツキーに当たったボールは顔にくっついたまま離れない。そのまま炎を吹き出した。
「お、おおお!!」
トロツキーは顔の火傷で苦しんだ。そして武装解除の術で強引にボールを離した。
「この小僧・・・!!」
トロツキーの顔の右半分が焼け、眼鏡も壊れた。
「よし、某もやるぞ!」
「私も行きます!」
清正とテレーズも動き出す。清正が時の槍を刺し、トロツキーの動きを一時的に封じた。そしてテレーズが宝剣で完全に封じ込めようとした。
「大天使ガブリエルよ!」
大天使ガブリエルが召喚され、トロツキーを粛清させる言葉を告げる。
「外道め・・・!!」
だがガブリエルが動かなくなる。
「ど、どうしたの?」
その場に聖母マリアが現れた。
(このマリアは確か・・・!!)
長山はこのマリアに見覚えがあった。このマリアを召喚できるのは・・・。
「全く、かのトロツキーでも苦戦すると思ったぜ」
別の人間が現れた。
「あ、貴方は、赤軍の岡本公三!!」
「覚えていたか!」
そしてまた別の人間もいる。その男が何か投げた。長山は素早く何を投げたのかを察知した。
「あれは・・・!!火炎瓶だ!!」
「火炎瓶!?」
さきこはエメラルドを出して防御を高めた。そしてもと子の玉が黒く光る。火炎瓶を撥ね返し、破壊された。
「あれも赤軍か・・・?」
「岡本、トロツキーの手助けにお前が出向いた事は正解だったな」
「貴方も赤軍ね?」
「そうだ。俺は日高敏彦。ゾウリムシとワラジムシの話が好きな男だ!これでも喰らえ!」
日高はある物を出現させた。それは巨大なワラジムシだった。
「な、何なの、これ・・・!?」
さりは若干、その巨大なワラジムシに気味悪さを感じた。
「このワラジムシは貴様らの異能の能力を食い物とする!もう何もできんぞ!」
さり達はアンヌ王妃に敗れた時かそれ以上の絶望を感じるのであった。
あり達は杯の所有者を奪還する為に移動を続ける。方角は妲己が去って行ったとされる場所だった。濃藤は運命の剣を周囲に向けていた。その時、東北東の方角に向けると刀身が白く光った。
「もしかしたら向こうの方角にりえちゃんがいるかもしれないな」
濃藤はりえがいると思われる方角を探知しているところだった。
「うん、そっちの方へ向けるわ」
奏子は羽衣を絨毯のように広げて皆を乗せていたのだった。羽衣を東北東の方へと向ける。一行は谷の中に入った。その谷には大きな川が流れている。
「なんか、喉乾いたわ」
鈴音が呟く。
「それじゃああの川の水を飲んで休憩しましょうか」
ありは鈴音の意見を受け入れ、奏子は川のそばで羽衣を着陸させ、皆を下ろした。少し休憩する。
「それにしても・・・」
北勢田は見回した。
「北勢田君、どうかしたの?」
ありが質問した。
「いえ、その、奴等が来てる気がして・・・」
「そうね・・・、それじゃあ・・・」
ありは神を召喚した。アイヌラックルが召喚された。
「アイヌラックル、付近に怪しい人がいないか見回してくれるかしら?」
「了解した」
アイヌラックルはその場を離れて周囲の巡回に当たった。
(一体どこに・・・!?)
すぐして、アイヌラックルが戻って来た。
「皆の者、来ておるぞ!北の方角だ!」
「来たか!」
濃藤は剣を突き刺した。結界を発動させる。北勢田も電脳の矛で巨大人造人間を作り上げた。
「この人造人間で返り討ちにしてやるぜ!」
人造人間は北の方角へと進む。そしてレーザービームを発射させた。だがそのビームが防がれた。巨大な鋼鉄の槍がビームを防いで突入してきた。
「な、鉄の槍だと!?」
「こうなったら・・・」
悠一がテクンカネを発動させた。武装したアイヌの兵団が現れた。
「おお、我が仲間ではないか!皆の者、迎撃だ!!」
「おう!」
シャクシャインは悠一が召喚したアイヌの兵団と共に鋼鉄の槍を破壊しようと試みた。アイヌの兵団の放った矢が次々と槍を破壊していく。人造人間も必死でビームを保った。そして完全に槍が粉砕された。
「やった!」
「それにしてもあの槍を放ったのは・・・?」
ありは周囲を見回した。その時、上空から金属の巨大な塊が降ってきた。何とか濃藤が産み出した結界で防御はできたものの、それも少しして破られそうになってしまう。
「私が守ろう!」
アイヌラックルが巨大な塊を落ちないように下から押さえた。
「溝口みゆき!お主の武器でこの塊を破壊せよ!」
「うん!」
みゆきがブーメランを投げて塊を破壊する。粉々に砕け散ったが、その破片があり達を狙うように襲う。奏子が羽衣を投げて巨大化させ、皆を守った。
「貴様らか、杯の所有者の少女を取り替えさんとする輩は」
一人の男が現れた。
「誰だ!?」
悠一が尋ねた。
「私はスターリン。鋼鉄の男だ。纏めて静粛させてもらおう!」
ありはかなりの強敵と感じた。
後書き
次回は・・・
「護符を進化させる」
トロツキーのみならず、赤軍の岡本と日高まで現れて苦戦するさりや長山達。そんな時、テレーズは祖母・テレーズの声を聞く。果たしてトロツキーから護符や長山を守れるのか。そしてあり達はスターリンを追い詰めようとするのだが・・・!?
264 護符を進化させる
前書き
《前回》
さりの護符と長山を奪いにトロツキーが襲来した。全員で懸命に迎撃して優勢になっていくと思いきや、赤軍の岡本と日高がトロツキーの援軍に来ていた。そして岡本が召喚した聖母マリア、そして日高が召喚したワラジムシにさり達は追いつめられる。そしてりえを探すあり達の元には鋼鉄の男・スターリンが襲来する!!
さりは今度こそは死ぬのかと絶望した。日高が召喚したワラジムシが異能の能力を全て喰らいつくし、無力化させてしまう。そしてワラジムシはさらに身体を巨大化させていく。
(もう駄目なの・・・!?)
戦争を正義を主義とする人間に赤軍の男二名。確かに手強い。だがこの護符はこの世界でも最上位に属する強さを持つ道具である。にも関わらずこれだけの強敵相手でも護符の能力では勝てないというのか。以前アンヌ王妃や赤軍の丸岡修という男と戦った時もテレーズが宝剣で防御していなかったら完全に死んでいた。また自分の力ではどうにもならないのか・・・。
(い、嫌よ、嫌よ!!ここで詰むなんて・・・!!勝ちたい・・・。もっと打ち勝てるようにしたい!自分の為にも、この世界の為にも、元の日常を取り返す為にも・・・!!)
さりはそう渇望した。テレーズと清正は護符の所有者の表情を見る。
(羽柴さりさん・・・。私達も護符の所有者のお力にならなければ・・・!!)
テレーズは宝剣をさりの護符に向ける。そして護符が光り出した。
「こ、これは・・・!?」
だがワラジムシに岡本が召喚した聖母マリアもさり達を抹殺しに掛かる。
「裁きを受けよ!」
マリアの裁きの光が襲う。そしてワラジムシもさりや長山達を踏み潰そうとした。
(私の宝剣よ、護符に力を与えてくだされ・・・!!)
その時、声が聞こえた。
《テレーズ、護符を強化させる為にはこの宝剣を使うのだ!》
(テレジアおばあさま・・・?)
あり達はスターリンと相対する。
「アイヌラックル、返り討ちよ!」
「良かろう」
アイヌラックルは雷撃を放つ。だがスターリンは鋼鉄の壁を出現させて防御した。
(くっ、俺の剣で奴の能力を無効化か弱体化させる事ならできるかもしれんが、それだとこの結界を解く事になる・・・。それでも加勢するか・・・?)
濃藤は葛藤する。
「濃藤君、守る方は私がやるわ。あの人の能力を無効化できる?」
「ああ、ありがとう、できるよ!」
濃藤は守備を奏子に任せて自身も攻撃に行く。
(あいつの鉄を使う能力をなんとかさせたい・・・!!)
濃藤はその願いを運命の剣に込めた。剣の先から炎が放たれる。鋼鉄の壁の強度が低下したのか、アイヌラックルの雷撃が強くなる。
「私も行くわ・・・!!」
鈴音が錫杖から火炎放射で鋼鉄を溶かす。スターリンは驚かされる。
「な、私の鉄が・・・。耐熱性を施してあったというのに・・・!!」
「よし、今だ!!」
阿弖流為と母禮が突進する。
「くう!!」
スターリンは巨大な槍で二人を突き刺そうと迎撃した。
「させんぞ!皆の衆、打ち消せ!」
「了解!」
アイヌの兵達が、スターリンが出した槍を止め、破壊する。みゆきがその隙にブーメランを投げた。投げたブーメランから光線が放たれスターリンの周囲で爆発を起こした。その威力は増していく。スターリンはまた新しい鉄の壁を出現させた。
「新しい壁を作ったか!」
濃藤は北勢田が作った人造人間に剣を向けた。人造人間のレーザー光線が強化される。スターリンが作った新たな壁を次々と破壊していった。そしてアイヌラックルがスターリンの真上から雷撃をお見舞いさせた。
日高、岡本、そしてトロツキーは留めを刺し、護符の所有者達は皆殺しで勝負はついたと思った。しかし、ワラジムシやマリアの所より光が見えた。
「何だ、あの光は!?」
そこに一人の巨大な天使が現れていた。
「我が名は大天使カマエル。この護符の所有者に力を貸す」
聖母マリアもワラジムシも全てが押されていく。そして青と橙の光も見えた。さきこの琥珀とサファイアが光っていたのだった。ワラジムシが小さくなっていく。そしてマリアもカマエルと交戦する形となっていく。そこには護符の所有者達も加勢していた。
「羽柴さりさん、貴女の護符に私の宝剣に宿る七つの天使の能力を分け与えました!これで打ち勝てば貴女の護符はもっも強くなれる筈です・・・!!」
「テレーズ・・・。うん!」
「くたばれ!!」
尾藤もボールをシュートさせた。炎を吹き出してマリアを襲う。その際、さきこのサファイアが光り出し、良好な機会を尾藤のボールに授けた。ボールがマリアの腹部に当たる。そしてボールの炎でマリアは燃えていく。
「ま、また我がマリア様が・・・!!」
「トロツキー、あいつらを早く始末しろ!!」
「あ、ああ!!」
トロツキーは早く護符の所有者達の身体をバラバラにすべく抹殺の術を行使した。しかし、何も起きない。
「な、何故だ!?」
「この琥珀でアンタの能力は吸い込ませて貰ったわよ!」
さきこの琥珀の能力がトロツキーの能力を吸収していたのだった。
「こっちからアンタの能力をそっくりそのまま使わせて貰うわ!」
さきこの抹殺の術が行使される。
(な、抹殺される!!)
トロツキーは危機を感じた。そして武装解除の術を使う。さきこの宝石達は無力化された。しかし、テレーズが出した神・カマエルとさりの護符の能力がトロツキーを、岡本を、日高を襲う。
「ちい、こいつら!!」
日高は火炎瓶を投げた。
「やられる訳にいかないわ!」
さりの護符がまた光る。大地が爆発した。そして水が湧き出て火炎瓶を大水で濡らす。この迎撃には日高も仰天した。
「こうなったら、貴様ら、なんとでもこっちの側につかせてやる・・・!!」
トロツキーは催眠攻撃を試みた。だが、効かない。護符の光が長山の眼鏡にも充てられていた。長山の神通力の眼鏡から金縛りの術が掛けられていた。
「その術はもう使わせないよ!!」
長山は金縛りと共に恐ろしさをトロツキーに根付けた。
(こ、この小僧・・・!!威圧の能力を持っているのか・・・!!)
「く、くそっ!皆の者、一先ず退散だ・・・!!」
トロツキーは退散の術を掛けた。岡本、日高も消えて行く。
「に、逃げるんじゃないわよ!」
さりは護符で拘束させる錠を出したが、既に遅く、三人ともその場から姿を消してしまった。清正の空間の槍を刺してもその場に引き寄せる事もできなかった。
「逃げるな、逃げるなあああ!!」
さりは無駄だと解っていながらも遠吠えした。
「逃げてしまったのは仕方ありません。しかし・・・」
テレーズの宝剣が光る。七色の光がさりの護符に移った。
「これは・・・!?」
「羽柴さりさんの強くなりたいという気持ちが護符に伝わったのです。トロツキーのような強敵にも屈しないほどの強さになりました」
「うん・・・」
さりは護符を見る。今まで白かった護符が七色になっていた。
「これは・・・?」
「この宝剣には七大天使が宿っています。その力を護符に分けて強化させたのです」
「そっか・・・。うん、ありがとう・・・!」
さりは倒し損ねた男を思い出す。
(トロツキー・・・、次会ったら絶対に倒すわよ・・・!!)
そして長山もトロツキーの事を思い出す。
(あの男・・・。一瞬で人を殺すなんて・・・)
長山もトロツキーの恐ろしさを改めて思い知るのだった。さり達はまた守備に付く。
ありが召喚したアイヌラックルの雷撃がスターリンを襲う。
「やった・・・!?」
しかし、スターリンは無傷だった。
「え・・・!?」
「バカすぎるな・・・。この私は無神主義なのだ!神の攻撃など通用するか!!」
「ふ、ふざけた奴が!」
悠一がテクンカネを発動させた。アイヌの兵団が強化される。対してスターリンは鉄の壁で防御し、また巨大な矛を飛ばしてあり達を襲った。
「わ、私が!!」
鈴音が錫杖で炎を出して迎撃した。濃藤の運命の剣の影響で炎が強化され、矛を破壊していく。
「俺達も行くで!」
鎌山、立家も攻撃するり鎌山の鎌によって巨大な鎌鼬を、立家の爪で巨大な雷撃を起こした。
「終わりや、スターリン!!」
「貴方!死なないで!」
スターリンとは異なるまた別の女性の声が聞こえた。
「おお、来たか、エカチェリーナ!!」
(エカチェリーナ・・・?)
ありは援軍が来たかと思い煩わしく思った。
後書き
次回は・・・
「鉄と羽衣の攻防」
スターリンと交戦するあり達の元にエカチェリーナという女が現れる。だが、無神論者であるというスターリンにはありのカムイの攻撃は通用しない。そのような状況で、エカチェリーナがその場にいる皆を抹殺しようと攻撃する。そんな状況で、奏子の羽衣が戦いを左右させる・・・!!
265 鉄と羽衣の攻防
前書き
《前回》
赤軍の日高が出したワラジムシによって絶望に陥ったさりや長山達。だがその時、テレーズの宝剣から祖母・テレジアの声が聞こえ、テレーズはその剣を護符に力を与えて撃退する。赤軍やトロツキーは形勢逆転によって逃げてしまったが、さりの護符は七色に光り、七大天使を召喚できるように強化された。そしてスターリンと交戦しているありは、カムイでスターリンを責めるが、スターリンは無神論者ゆえに神の攻撃が通用しない!!エカチェリーナという女まで現れて窮地か!?
かよ子はブー太郎が何故か気になっていた。
(ブー太郎ってもしかして・・・、のり子ちゃんの事が好きなんじゃないのかな・・・?)
かよ子はブー太郎がのり子がやや気になっているのではないかと懷った。よく見るとブー太郎はのり子の方を彼女に気付かれぬように見ては顔を少し赤らめている。
「ぶ、ブー太郎・・・」
「え、な、なんだブー?」
ブー太郎は慌てた。
「ブー太郎ってその・・・?」
のり子が好きかとストレートに聞くのは流石にブー太郎も慌てて全力否定してしまうだろう。そんなおっちょこちょいしてはならぬと思い、遠回しな質問をする事にした。
「のり子ちゃんの事、どう思ってる・・・?」
「あいつの事かブー?」
ブー太郎は少し黙ってしまった。だが少しして口を開く。
「その、さくらの事ばかり気にして可愛げがないブー!」
のり子もムッとしてしまった。
「ふん、ももこちゃんは本当は私だけのものだもん!他の友達がいるなんて嫌だよ!」
「な、なんだよ、じゃあ、一人でどっかいけばいいブー!」
「おいおい、やめろよ!喧嘩は」
大野が二人を諌めた。
「う・・・」
こう喧嘩してもブー太郎はのり子が嫌いになりきれないような感がしたのであった。
スターリンと交戦するあり達の所に一人の女性が現れた。
「貴方!」
「愛しきエカチェリーナよ!来てくれたか!」
スターリンはエカチェリーナと呼ばれた女と抱き合った。
「な、愛しきエカチェリーナ・・・だと!?」
悠一は気味悪く思う。
「私の旦那をこんな目に・・・。許さないわよ!」
エカチェリーナの目が黒く光る。
「まずいぞ!殺める気だ!」
(う・・・!!)
ありは何もできない。スターリンは無神主義者であるが故に神を利用した攻撃が通用しないからである。
「させないわ!」
奏子が羽衣を投げた。エカチェリーナが羽衣に巻き付かれる。
「な、何よ、これ・・・!?」
エカチェリーナは念力を利用して羽衣を外そうとした。しかし、どうしても外れない。
「よし、このまま・・・」
立家と鎌山の攻撃がエカチェリーナとスターリンを襲う。
「このまま倒されてなるものか・・・!!」
スターリンは鉄の壁を幾つも出した。全ての攻撃を防御した。
(このままだと逃げられる・・・!!)
奏子は羽衣を自分の意志で戻そうとした。そして今度はスターリンとエカチェリーナを纏めて巻き付けようとした。
「な、この布、外れたと思ったら・・・」
「一緒に巻き付けられた・・・?」
「これで二人は動けない筈だわ!!」
「よし、留めだ!」
だが、ビリって音が聞こえた。
「な、なんだ!?」
(もしかして・・・!?)
奏子は嫌な予感がした。
「あの鉄の壁を全部どける!」
濃藤は剣を向けて鉄の壁を念力でどかした。しかし、その場にスターリンもエカチェリーナもいなかった。そこに破れた羽衣と一丁の短刀があった。
「この短刀を使って羽衣を無理矢理破って逃げたのか・・・」
奏子は羽衣を見て絶句した。
(エレーヌさんから貰った羽衣がこんな・・・)
奏子は自分の得物として使い続けてきたこの羽衣がこんな事されるとは思いもしなかった。その時、羽衣が光り出した。
「・・・え?」
羽衣が治ったのだった。
「羽衣が治った・・・」
「徳林さん、よかったじゃねえか。先行こうぜ」
「うん」
奏子は皆を乗せて杯の所有者の捜索へ進んだ。
藤木とりえは遊女達と庭で綱引きして遊んでいた。
「ああっ!」
藤木やりえと対抗していた遊女達が尻餅をついた。
「負けちゃいました・・・。茂様は力がお強いですね〜」
「いやあ、そんな事ないよ・・・」
「・・・う、ごほっ、ごほっ・・・」
りえが咳き込んでいた。
「りえちゃん、大丈夫かい?」
「え?あ、うん・・・」
「ちょっと休憩にしようよ。りえちゃんが辛そうなんだ」
「はい、それでは」
皆は屋敷の中に入った。りえは部屋に戻り寝台に寝かされる事になった。
「りえちゃん、ゆっくり休んでてね」
「うん、ありがとう」
藤木は一人にしてあげたほうがいいかと思って部屋を出ようと思った。
「あ、その・・・」
「え?」
「この世界には雪が積もっている山があるんだ。そこには氷が張ってる所もあってスケートができるんだ!今度そこに行って僕のスケートのジャンプやスピンを見せてあげるよ!」
「うん、楽しみねっ!」
藤木はりえが喜んでいる様子を見て今すぐにでも見せたい気分だった。藤木は部屋を出た。その時、妲己がその場にいた。
「坊や、どうやら新婚生活ほやほやなそうだね」
「は、はい!それで・・・」
「ん?」
「ま、またあの雪山でスケートしに行きたいんです。りえちゃんにも僕のスケート姿を見せたいなって思って・・・」
「そうか、いいとも。明日行ってみようではないか。ここの娘達も坊やのその滑る姿に虜になっていたようだからな。きっと安藤りえ嬢も見惚れるかもしれないわね」
「はい!」
藤木は明日を楽しみにするのであった。
フローレンスは捕虜とした西川と佐々木を連れて平和を正義とする世界と戦争を正義とする世界の中央部の境界へと向かう。
(こちらも一度敵を欺いています身ですからあっさり要求を呑みますとは思っていませんが・・・。向こうも私達の要求に応じますフリをしますに違いありません・・・)
戦争を正義とする世界の長・レーニンは次の作戦への遂行を進める。
(杖の所有者・山田かよ子よ・・・。貴様は今の杉山さとしに会ったらなんて思うか・・・?)
後書き
次回は・・・
「戻って来たのは」
昼になり、かよ子は気を抜かそうとしていない中、大野が見聞の能力である気配を察知した。それは自分達の味方する者の気配とされるのだが、その場に現れたのは敵に寝返ったはずの杉山だった。あっさり戻って来た杉山に対してかよ子達は彼が本物の杉山なのか信じられず・・・!?
266 戻って来たのは
前書き
《前回》
りえを探し続けるあり達はスターリンと交戦する。その場にスターリンの妻・エカチェリーナが現れ、ありの攻撃はますます通じない状態と化していくが、奏子の羽衣、鎌山・立家の攻撃で二人の攻撃を封じ、形勢を逆転させる。逆に追い詰めたのだが、スターリンは短刀で自分とエカチェリーナに巻き付いている奏子の羽衣を無理矢理破って脱出してしまい、行方をくらませてしまった。そしてフローレンスとレーニン、対立する二つの世界の長はそれぞれの作戦を進めていた!!
平和を正義とする世界へと進む房子達日本赤軍と東アジア反日武装戦線の連合軍は仲間である西川純と佐々木則夫の奪還を目的としていた。
「房子総長」
東アジア反日武装戦線を取り締まる大道寺将司が赤軍の長を尋ねた。
「何かしら?」
「敵共はこの取引について裏をかこうとする可能性はある、いや絶対そうするのではないですか?」
「私もそう思ってるわ。でもその前に二人を返してくれるのかしらってところよ。あとはこの取引が終わったら私達を纏めて拘束して警察に引き渡すかもしれないわね」
「かなり危険な賭けですね」
「こっちも欺くのよ。そうでないとレーニン様達の世界の人だって満足しないわ」
昼に近づいて来た。本部の管制室ではイマヌエルと先代の杖、護符、杯の所有者達がいた。
「今フローレンスが赤軍や東アジア反日武装戦線との取引に向かっているのだが、奴等が要求に応じるわけがない。しかし、それを見越してこっちも策を講じているんだ」
「それってどんな策なの?」
「こちら側で守備に付いている本部守備班だけでなく、此方側にいる私達の世界の人々も協力して貰いに来ているのだよ」
「それで追い払えるのかしら・・・?」
「だが、赤軍達の方も大量の人間を出向かわせている。激しい戦いになる事は免れんだろう」
(それにしてもトロツキーは羽柴さり君の護符を取ろうとして失敗した後、別の場所へ瞬間移動したようだが、一体何をしているのか・・・?)
イマヌエルは地図を確認した。トロツキーは赤軍の集団へと向かっていた。
(赤軍の人間とこれからの行動を打ち合わせる予定か・・・?)
時間は昼に近くなっている。かよ子達は今の所赤軍や戦争主義の世界の人間とはぶつかってはいないが、気を抜けなかった。
「・・・ん?」
大野は何かの違和感を感じている。
「大野君、どうかしたのかブー?」
「ああ、向こうから誰かが来る気配がするんだ」
「まさか、赤軍?それともこの世界の人?」
かよ子は既に武装体制の支度済みであった。
「いや、それとはまた違うんだ」
「え?もしかして・・・、私達に協力してくれる人、なの・・・?」
「味方が増えてくれるなら嬉しいのう・・・」
友蔵はホッとした。
「お〜い、お前ら〜!!」
この声は聞き慣れていた。かよ子も、まる子も、大野も、ブー太郎も。
「この声って・・・!!」
かよ子は声の方向を向いた。姿が近くなると、驚いた。
「え、す、杉山、君・・・!?」
戦争主義の世界に寝返った筈の杉山だった。
護符の所有者との戦いで劣勢に追い込まれたトロツキーは別の場所へ緊急脱出した。
「まさか、護符の所有者如きに打ちのめされるとは・・・!!」
「兎に角、別の作戦に動こう」
同行していた岡本と日高は房子達への合流を試みた。
「杉山君、どうしてここに!?」
かよ子は疑った。何しろ寝返った杉山がのこのこと、この場に現れるとは・・・。
「杉山・・・!!」
大野は杉山を睨んだ。
「お前、山田の杖を取りに来たんだろ?」
「ちげえよ、もうあいつらに用はねえ。お前らに協力してやるよ」
(本当に?)
かよ子は前に杉山と会った時を思い出す。杉山は戦争主義の世界の長に身体を貸し与え、一心同体となったのではないか?
「本当にそうなの?レーニンに変化しないだけじゃないの?」
(怪しい。杉山君、本当に赤軍や向こうの世界の人を簡単に捨てられる筈がない・・・!!)
「おい、大野」
「何だよ?」
(喧嘩した身とはいえ)親友である大野でも警戒心は崩していない。
「お前、俺の石持ってんだろ?」
「これか?」
大野は雷の石を出した。
「ああ、これで組織『次郎長』復活だな」
だが、まる子もブー太郎も組織再結成の嬉しさは皆無だった。
「杉山君・・・」
かよ子は尋ねた。
「一つ聞いていいかな?」
「おう」
「りえちゃんや藤木君は今どうしてるの?」
「え?な、何であいつの事なんか」
「杉山君なら解ってる筈だよ!二人のいる場所!あの人達と手を切ったならすぐに教えられる筈!」
「そ、それはなあ・・・」
「杉山さとし、お主は杯の所有者・安藤りえを拉致した所を見ているのだ。恍けているとなればお主は本物の杉山さとしではないな?」
次郎長が推察した。石松や綱五郎達も刀や拳銃の準備を既にしている。
「俺の刀で試させて貰うよ」
関根は国定忠治の刀を杉山に向けた。
「お、おいおい、待てよお。俺を殺そうとしねえでくれよなあ」
「いいや、刺したり斬ったりしないよ。本物の杉山さとし君ならこの刀が光るようにさせるよ。光らなかったら偽物だ」
関根は刀の刀身を確認した。
本部の管制室。イマヌエルと先代の護符、杯、そして杖の所有者達により戦争主義の世界、平和主義の世界の境界線での取引に緊迫感を覚えていた。イマヌエルはフローレンおよび本部守備班が無事である事を常に祈っているが、まき子は娘の方をふと気にした。赤軍とも戦争主義の世界の人間とも異なる灰色の点がかよ子達の所に来ているのだった。
「イマヌエル、かよ子達の所に何か来ているわ。これは何なの?」
「え・・・?」
イマヌエルはその灰色の点を確認する。
「私にもよくわからない。もしかして別の勢力か?確認してみよう!」
イマヌエルは藤木救出班への連絡を試みた。
「こちらイマヌエル。藤木救出班の皆、今誰かと戦ってるのかい?」
『こちら椎名歌巌!今敵に寝返った筈の杉山さとし君がいる!敵とは手を切ったという事で!』
「え?杉山さとし君がだと・・・!?」
イマヌエルは状況が掴み切れなかった。
『だが、本物がどうか不信感が強い。今関根の刀で確認中だ!』
「解った!くれぐれも用心してくれ!」
「え?杉山君が戻って来たの?」
まき子が驚いた。
「ああ、だが本物かどうかは皆も解っていないようだ」
(レーニンは杉山さとし君を切り離したのか・・・?)
紂王の屋敷。りえは喘息で咳き込んでしまった事で遊女から貰った薬を服用して眠っていた。気がついたら寝付いていた。
(・・・)
りえも昼になるまで寝ていたとは思わなかった。起きるとその部屋には誰もいなかった。
(藤木君はまだ帰ってきてないのね・・・)
りえは寝台から出た。気が付けば喉が渇いていた。りえは呼出のボタンを押した。
『はい、如何なされましたか?』
「喉が渇いたわ。お水を頂戴」
『畏まりました』
そして少しして遊女が水を持って来た。藤木と妲己も現れた。
「りえちゃん、起きたんだね」
「うん、ごめんね、迷惑かけて」
「いいんだ、気にしなくていいよ。りえちゃんの身体が大事だし」
「うん、ありがとう」
「そうだ、お嬢、藤木茂坊からいい提案があるのだが」
「提案・・・?」
「婿殿の特技を覚えているかね」
「え、ええと・・・?」
「スケートだよ」
「あ、そうだったわね」
「婿殿がそなたにその『すけーと』とやらをする姿が見たいというのだ。明日、雪の降る山に氷の泉がある。皆で行こうではないか」
「ええ、是非見て見たいわ」
「りえちゃん・・・、ありがとう」
「それではそろそろ昼食の時間となる。食事係が『かれー』という天竺の料理を作ってくれているぞ」
「はい、行こうよ」
「ええ」
りえは水を飲んだ後、藤木と手を繋いで部屋を出た。本当のカップルか夫婦のように。
杉山が本物か偽物か、関根の国定忠治の刀が確認する。かよ子はできれば偽物でないと祈った。
「光らない・・・」
かよ子の僅かな祈りは叶わなかった。
「じゃあ、お前は偽物だな!これは渡せねえ!」
大野は雷の石をポケットにしまった。
「おいおい、その刀がおかしいんはねえのか?」
「杉山君・・・、悪いけど・・・」
かよ子は偽物とはいえ、杉山を攻撃するなどできなかった。だが、好きな男子だからという事で攻撃を躊躇うなどここではやってはいけないと思い、杖で丸鋸を出して杉山を両断しようとした。
「おいおい、俺を殺しちゃまずいぜ!」
「・・・え?」
かよ子は慌てて丸鋸を杖の先に戻した。
後書き
次回は・・
「偽物に惑わされるな」
ふと戻って来た杉山が偽物だと解り攻撃しようとしたかよ子だったが、「自分を殺してはまずい」という彼の言葉に攻撃を躊躇ってしまう。更に杉山は杖を自分に渡すように迫る。自分の杖が狙われている事も承知しているかよ子はそのような要求を受け入れられるわけがなく・・・!?
267 偽物に惑わされるな
前書き
《前回》
かよ子達は急に杉山と再会する。戦争主義の世界の側に寝返った筈なのにもう用はないと言ってかよ子立の中に加わろうとする杉山にかよ子達は信用ができない。関根の刀で彼が本物の杉山なのかを確認した結果、それは偽物と判明。さっさと始末しようとするかよ子達だったが、杉山は自分を殺してはまずいと言って・・・!?
レーニンは本部で休息を取る事にした。
「はて、貴様の偽物について杖の所有者達はどのような反応をするのだろうな。また還ってきてくれたと受け入れるのか、それとと不審に思って平和を主義とする世界の本部へと送るか・・・」
「そもそも偽物だってすぐバレんじゃねえか?」
「まあそうかもしれんな。あの女とも一度はぶつかっている。だが、もしかしたらと思うがおっちょこちょいとやらをやらかしてくれるかもしれんな・・・」
「だが杖は一度取ったとしてもヴィクトリアとかいう女王に預けたら取り返されちまったじゃねえか。山田も同じ馬鹿は二回もしねえと思うな」
杉山はあまり得策とは思えなかった。その時、電話が鳴った。
「こちらレーニンだ」
『こちらベニート。本部に乗りコーンで剣を盗ったコゾーは鎖鉄球を使っていたゾー!』
「ほう、鎖鉄球とな」
(鎖鉄球?あいつ、新しい武器を手に入れたのか?)
杉山は杖の所有者の隣に住むという男子高校生を思い出した。異能の能力を三種類全てを備えているものの、異世界より与えられた道具を持っていなかったはずである。
(あいつもまた強くなったって事か・・・!だが、俺もまた強くなってやるんだ・・・。大将になる為にな・・・)
「杉山さとし」
「ん?」
「一休みしたらあの小僧の元へ向かってみるか?」
「ああ、それがいいな」
かよ子は杉山に言われて丸鋸を杖に収めた。
「俺を殺したら本物の俺まで死んじまうじゃねえか」
「え?それって・・・」
「怪しいぜ。ハッタリじゃねえのか?」
「ああ、ここで俺を倒してもなにもいい事はねえんだ。悪い事は言わねえ。その杖を俺に寄こせよ」
「え・・・?」
かよ子はふと思った。好きな男子とはいえ、この大事な杖を預けられるのか。
「かよちゃん、ダメだよ、渡しちゃ!」
「その杉山君は偽物だブー!」
「偽物なのだ。渡してはならぬ!」
皆がかよ子を引き留める声を送った。
(私は・・・)
「ごめん、渡せない・・・!!」
「え・・・?」
「私も何度か杖を盗られたけど、いくら杉山君でも渡せと言われて渡せないよ!いくら私もがおっちょこちょいだからってそんな事できないよ!」
かよ子はもう一度杖から丸鋸を発射させた。今度は高速で鎌鼬のように偽の杉山を切り刻もうとした。
「う、うおおお!!」
杉山は慌ててその場から遠ざかった。
「おい、本当にいいのか?俺を殺したらお前らも捕まっちまうぞ!」
「それはないわ!」
のり子が断言した。
「どうしてだよ!」
「今私のキャロラインに本当にそうなるか調べさせて貰ったのよ!」
「この杉山さとしって人は操り人形よ!木を媒体にしているわ!」
「木を媒体・・・?」
「それにこの術は前にも見た事があるわ・・・!確か黒魔術を使う女と一緒よ!」
「黒魔術・・・」
大五郎は思い出した。
「そうか、ラ・ヴォワザンだな!」
「そうよ、あの偽物がやられても本物の杉山さとし君は平気よ!」
「あの女ならこいつをやっても杉山本人には関係ねえな!」
大野は草の石、そして元々親友の得物である雷の石を出して攻撃した。放電され、木の枝が無数の矢となって杉山を攻撃した。偽杉山は何とか避けた。だが周囲に石が置かれ、閉じ込められた。
「・・・、もう終わりにさせて貰うよ・・・!!」
かよ子が杖から石を出現させて偽杉山の動きを封じたのだった。
「よし、終わりだブー!」
「俺も行かせて貰おう!」
ブー太郎と椎名が水攻めにする。
「ふ、何のこれしきここから・・・」
偽杉山はここから撤退しようと試みた。しかし、身体が動かない。
「な、なんだ・・・!?」
「あんな胸糞悪い魔術、俺の法力で消してやる!」
そして水圧で偽杉山は苦しみ、息絶えた。そしてかよ子の杖で出して作られた石垣に水が溢れ出して破壊された。
「・・・、終わったか」
皆は偽物を始末してホッとした。しかし、かよ子はなぜか落ち着けない。
「す、杉山君!!」
「あ、かよちゃん!」
「山田かよ子!」
かよ子はあの杉山は偽物だと解ってはいた。それでも杉山がやられる所を見るとどうしても心配で近寄ってしまう。大野の転校が決まった時も体育館裏で大野と喧嘩する杉山が放っておけず止めようとした。
「杉山、君・・・!!」
かよ子は水で散らばった石に躓いたり、踏んで滑ってしまいながらも偽杉山がいた所を探した。そして一つの木の人形を見た。水で濡れていた。
「これが杉山君の元となった人形・・・」
[杖の所有者よ]
「この声は・・・!!」
かよ子は幾度も聞いている声である。
「レーニンだね?!」
[その通りだ。貴様は我々の所に寝返った杉山さとしがそれでも心配で仕方あるまいって事か]
「確かに杉山君は裏切ったけど・・・。本当は私も心配だよ!大野君と仲直りできないままこのまま終わっちゃうなんて・・・」
「で、でものり子の人形でそれはないって解ったんじゃないかブー?」
「あ・・・」
かよ子はのり子の人形が言っていた偽の杉山が倒されると杉山本人も死ぬという事は嘘だという事をすっかり忘れていた。
(またおっちょこちょいしちゃったよ・・・)
[しかし、このようにいとも容易く欺かれる貴様らではないな。だが、ラ・ヴォワザンにももう少し惑わせるように制度を上げて貰いたかったものよ。まあ、本物の杉山さとしは全く平気だ。これは嘘ではない。次私が貴様らと当たる時はこの小僧も相当な強者となっているかもしれんな]
レーニンの声はそれ以降聞こえなくなった。
「ラ・ヴォワザン・・・!!」
かよ子はその名を聞いて思い出した。以前幾つもの傀儡を出してかいくぐったり、毒で戦闘不能とっせた厄介な黒魔術の使い手である。どちらの側に杉山がついていようが、杉山を偽物として作り、このような操り人形として利用したあの魔女への憎悪が込み上がるのだった。
「山田かよ子、行こうか。ラ・ヴォワザンともまた会ったら次こそ葬ればよい」
「うん、そうだね・・・」
藤木救出班は先へ進んだ。かよ子は偽杉山を作り出した人形をその場に捨てて羽根を飛ばしたのだった。
本部の管制室。まき子達の所に連絡が来た。
『こちら藤木君救出班の大野けんいち。今戦っていたのは杉山の偽物だった』
「偽物・・・?」
イマヌエル達は驚かされた。
「つまり、誰かの術って事か?」
『ああ、前に戦ったラ・ヴォワザンって女の黒魔術で作られたものだって鳥橋のり子の人形で解ったんだ』
「そうだったのか・・・。お疲れ様、大変な戦いだったね。今昼食の準備を送るので食事にしてくれたまえ」
イマヌエルは連絡を終了させた。
「それでは私達も食事としよう」
「ええ」
皆は管制室を一旦退室した。
「かよ子達が戦ってたのは杉山君じゃなかったのね」
「ああ、偽物との事だ」
「そうだったの。でも・・・」
「なんだい?」
「もし私達が勝つって事はその戦争主義の世界の長も倒すって事よね?杉山君はレーニンと身体が一つになったらしいけど、杉山君も一緒に殺すって事なの?」
イマヌエルはその質問に即答できなかった。
「・・・、そうだね、でもだからといって彼まで殺す事はできないよ。レーニンから切り離しさえすればいいのだが・・・」
イマヌエルでも最善の策が見出せていなかった。
後書き
次回は・・・
「人質解放の駆け引き」
フローレンスと房子の間で取引が行われる。フローレンスは赤軍の西川と東アジア反日武装戦線の佐々木を送り返し、房子は全ての領土を平和を正義とする世界に返還するという約束だったが、房子はすぐ様フローレンスの殺害を試みる。だが、フローレンスもまた房子がすぐに要求を呑むわけないと読んでおり・・・!?
268 人質解放の駆け引き
前書き
《前回》
杉山はレーニンを通してベニートから剣を奪還した高校生男子が新たな武器を手にしたと聞いてその高校生の元へ向かおうかと検討する。その一方、かよ子達の前に現れた偽の杉山は杖を渡すようにかよ子に求めるが、かよ子には流石にそれはできない。のり子の人形・キャロラインで正体を見破るが、それは木の操り人形だった。それが黒魔術の使い手によるものと解るとかよ子は黒魔術の使い手に対して怒りが込み上がるのだった!!
杉山はレーニンと共に次の目的の為に南東部へと進んでいく。
「んでよお」
「何だ?」
「結局俺の偽物を使うっていう作戦あんま意味なかったんじゃねえのか?」
「確かにそうかもしれぬ。あの杖の所有者もやはりそこまでおっちょこちょいはしないと言う事か。甘く見すぎていたかもな。だが、ラ・ヴォワザンもあの偽物が杖の所有者に当たった事は幸運に思うであろうな」
「どういう事だよ?」
「ラ・ヴォワザンが作った人形には奴等を索敵する術も掛かっているのだ。仮に倒されても人形は杖の所有者達に付き纏う事になるのだ」
かよ子達は昼食の炒飯を口にしていたが、先程の偽の杉山との戦いを引きずっていた。
「黒魔術か・・・。面倒だな・・・」
「オイラもアイツとは当たりたくないブー」
「確かにラ・ヴォワザンは面倒だな・・・。俺の法力でも攻略しきれねえし・・・」
「なんじゃ、その『らぼーさん』とは?」
友蔵は質問したが、皆が「は?」と呆気に取られた。
「アンタもう忘れたんですか?黒魔術を使う女ですよ!アンタも毒で殺されそうになったじゃないですか!」
関根は呆れた。
「ああ、そうじゃった、あの魔女か!」
友蔵はラ・ヴォワザンとの交戦をすっかり忘れていたのだった。
「兎に角、またあいつとはぶつかりそうだぜ。できればアイツと会う前に藤木を連れ返さねえとな」
「うん・・・!!」
一方、かよ子はあの黒魔術の事が気になった。
(この杖にも黒魔術を打ち破れる力があるといいんだけどな・・・)
フローレンスは境界線にて赤軍の軍勢を待ち伏せしていた。そして飛行機が訪れた。
(来ましたわね・・・)
次々と飛行機が着陸した。赤軍及び東アジア反日武装戦線の人間が次々と降りて来た。
「来ましたわね」
「貴女が平和主義の世界の長ね」
赤軍の長・重信房子が睨みつけた。
「はい、フローレンスと申します」
「西川純と佐々木則夫はいるのかしら?」
「ええ、こちらに。それではそれぞれの要求に応じますとしましょう」
フローレンスは西川と佐々木を房子の方に戻した。
「それでは・・・、こちらからの要求といたしましてそちらの戦争主義の世界の方々共々そちらの領土から引き上げまして我々平和を正義とします世界に返還を求めます」
「解ったわよ・・・。トロツキー!」
「はっ!」
(来ましたか!)
フローレンスはすぐさま結界を張った。トロツキーの瞬殺の術が防御された
「皆!この女を殺害するのよ!」
「了解!」
赤軍や東アジア反日武装戦線が総力戦に掛かる。しかし、平和を正義とする世界の長であるフローレンスでも纏めてかかられて倒れる者ではない。フローレンスは飛行した。
「逃げる気だな!」
日高はどこからか大量の火炎瓶を投げた。そして丸岡が矛盾術を行使した。
(あいつの防御は全て意味がなくなる・・・!!)
だが丸岡のその矛盾術は通用しなかった。火炎瓶が全てその場で爆発したが、フローレンスには効いていなかった。
「この女、まさかその対策を・・・!?」
「そうです。ですが、私の力ではありませんわ」
「・・・って事は他に誰か来てるのかしら?」
房子は見回した。周囲に人が次々と現れていた。
「我々の世界を守護しています者達に集まって頂きましたのです!」
一人の女性が何らかの動物を召喚した。麒麟だった。麒麟が威嚇した。
「そんな物が怖いと思うか。トロツキー、やっておしまい!」
「はいはい」
トロツキーは麒麟を召喚した本部守備班の女性を抹殺しようとした。しかし、麒麟の能力なのか、全く効かなかった。
「何!?」
「我々がやってやる!」
東アジア反日武装戦線の組織「さそり」が拳銃を乱射した。麒麟が喘ぎ声を出す。
「毒入りの銃だ。これで何もできん」
「よし、続けてここの者共纏めてやるのよ!」
房子は命令した。しかし、誰も動かない。
「・・・な、何をグズグズしてるの?!」
「総長、なぜか体が動きません!」
「な、バカな!なら私が」
房子は拳銃を取り出そうとした。だが、途中で身体が止まる。
「な、何なの、これは・・・!?」
「貴方達、麒麟という物を傷つけますとどうなりますかご存知ですか?」
フローレンスは問うたが、返答を待たずに言葉を続けた。
「麒麟はですね、傷つけると不吉な事が起きますと言われていますのです。そしてさらに貴方達が獲物としています物を持ちます方もおいでですわね」
その場には護符の所有者やあの秀才の少年もいた。その護符からは天使が現れた。
「これは天使ガブリエルよ」
「な、あの護符、天使などを使えるようになったのか!?」
「この地で取引があるって聞いたからここまで飛んでこれたのよ」
そして長山は神通力の眼鏡で取引の内容を天耳通で確認した。
「どうやら赤軍は人質を返して貰ったらここから引き上げるって約束をしているらしい」
「それじゃあ、帰って貰おうかしら!」
さりは別の天使を召喚した。天使ラファエルだった。ラファエルが傷ついた麒麟を癒やした。そして麒麟は赤軍を睨みつけた。
「な・・・」
麒麟の能力なのか房子達は何もできずその場から消えていく。
「じょ、冗談じゃないわよ!折角ここまできて敵の長と相対したのに殺せないなんて・・・!!」
赤軍達は完全に姿を消した。
「皆様。どうも力をお貸しくださいましてありがとうございました。赤軍は何とか撤退させます事ができました。皆様、持ち場へお戻りになられまして結構です」
フローレンスは皆に感謝した。
「フローレンス、でもまた奴等は攻めて来るんじゃないかしら?」
さりは尋ねた。
「そうですね。しかし、こちらも少しずつ領土を取り戻しつつあります。引き続き気を緩めません方がいいですわね」
房子達は強制的に戦争主義の世界の本部に戻された。
「くう、あと少しで平和主義の正義の長を討ち取れると思ったのに・・・」
「しかし、総長、西川と佐々木は取り返せたのでそこはよしとしますか・・・」
「そうね、また皆で戦えるわ。次こそは捕虜にされないようにするのよ!」
「ところでレーニン様はどちらへ行かれたのか?」
トロツキーは周囲を見回した。
「まあ、トランシーバーで聞いてみましょう」
房子はレーニンと通信した。
「こちら重信房子。レーニン様、平和を正義とする世界の長は倒せませんでしたが佐々木規夫と西川純の奪還に成功しました」
『そうか、こちらは東部の方へと向かっている。ご苦労だったな』
「レーニン様、そちら援軍はいりませんか?」
『ああ、付近にも味方はいるからな』
「そうですか。失礼致します」
連絡は終了した。
「兎に角、次の手に移ってやり直すのよ。杯を取り返そうとしている馬鹿達や杖の持ち主達も近くまでうようよしてきているから」
レーニンと杉山は東側へと進む。
「そうか、西川純と佐々木規夫を取り返したか。もう人質を取られるような事はされてたまるか」
(人質解放したか・・・。フローレンス達も情けを見せたって事か・・・。さすが『あの世界』らしいやり方だぜ)
杉山も心の中では平和主義の世界の人間を称賛していた。しかし、完全に寝返ったのか、まだかよ子達の味方である自覚は残っているのか、それは本人にしか分からない。
後書き
次回は・・・
「魔女と公爵夫人」
藤木はりえが体調を崩して眠っているのを待っていた。彼女が起きた時、藤木はまたりえにピアノが聴きたいと言って、りえはその要望に応える。そしてかよ子達はある古城の近くに辿り着く。その杖の所有者を狙いにあの黒魔術の使い手が迫っていた・・・!!
269 魔女と公爵夫人
前書き
《前回》
黒魔術で精製された偽の杉山を撃破したかよ子達はラ・ヴォワザンという女が使用した黒魔術の脅威を思い出す。そしてフローレンスは現時点での戦争主義の世界と平和主義の世界の境界地点にて赤軍の到着を待ち、西川と佐々木を解放する代わりに全ての領土から撤退し、平和主義の世界の領土として返還するという条件だったが、赤軍の長・重信房子はその条件を反故にし、トロツキーを召喚してフローレンスの抹殺を図る。だが、フローレンスも赤軍が約束を守らないと既に読んでおり、本部守備班を集結させて赤軍やトロツキーを強制的にその場から撤退させる事に成功させた!!
一人の女性が針金を持って進んでいた。
(ふ、あの小娘・・・。強くなったようだが、杖はその分取りがいがある・・・。今度こそ杖は私の物にさせてもらうわよ・・・!!)
彼女の名はラ・ヴォワザン。持っている針金である人物達を探知していたのだった。
藤木は昼食後はりえと遊びたかったのだが、りえの体調も考慮したのと、明日のスケートで風邪を引かせてはならないと見て、引き続き彼女を寝台に休ませていた。藤木はその後は遊女と遊んだが、それからはりえが部屋で寝ている中、一人で部屋にいた。
(りえちゃん、か・・・。またピアノ弾いてくれるかな・・・?)
そしてりえが起きた。
「・・・、藤木君、そこにいたの?」
「あ、うん、りえちゃんが心配でね。明日スケートする姿を見せられるかなって思って。折角僕の唯一の取り柄を見せたくって・・・」
「ありがとう。もう大丈夫よ」
「あ、そうだ・・・。またピアノ弾いてくれたらって思って」
「うん、いいわよっ!私のピアノ応援してくれて嬉しいわっ!」
りえはピアノを弾き始めた。藤木はりえが弾くピアノの音色の虜となっていた。
(ピアノ、か・・・。やっぱり、ピアノが上手な子って可愛いな・・・)
藤木は嘗て好きだった女子とりえの姿が重なる。だが、昔の事を思い出すんじゃないと己を叱った。
(なんで笹山さんの事を・・・!!)
藤木はりえのピアノに集中した。
「りえちゃん、やっぱりピアノのお姫様だよ!」
「ピアノのお姫様?藤木君ったら面白い事言ってっ・・・!」
りえはピアノの椅子から離れると藤木に抱き着いた。
(りえちゃん・・・!!)
藤木は更にりえに照れるのだった。
夕方となった。かよ子達藤木救出班はある古城がある近くに来ていた。
「おお、凄い城じゃのお〜」
友蔵は呑気に城に感心していた。
「でも、あのお城って誰かがいるんじゃないかな?」
「でも誰かいる様子はねえぜ」
大野の見聞の能力を以ってしても敵の気配を感じ取る事はできなかった。
「なら〜、アタシゃこのお城で過ごしたいよお〜。なんだかお姫様になった気分でさあ〜」
「生憎だが、辞めておけ。罠を感じる」
石松が諫めた。
「ぶー・・・」
まる子は不貞腐れた。かよ子は偽の杉山との戦いを思い出していた。
(杉山君・・・)
今本物の杉山の近況が気になる。もし今無事であるならばできれば赤軍や戦争主義の世界の人間達から手を切って戻ってきて欲しいとばかり願うのだった。
紂王の屋敷での夜。りえの咳は既に収まっていた。藤木は彼女を明日のスケートに連れて行けると思えるとホッとした。
「りえちゃん、咳が止まって良かったね」
「うん、私喘息気味なんだ・・・」
「そっか、風邪ひかないようにしないとね」
「そうだ。藤木君って唇紫だけど、大丈夫なの?」
「え?ああ、これは生まれつきなんだ」
「そっか、顔色いつも悪いのかなと思ったけど、そうじゃないのね」
「いやあ・・・」
そして二人は一緒に眠るのだった。
そして翌朝。一人の僧と三人の高校生が進んでいた。高校生の名は島あけみ、高崎ゆり子、中本遥人。彼らは岡山県から来た高校生で領土攻撃班に割り当てられていた。高崎には杖を持っているのだが、それには様々な雲を精製する能力があり、飛行可能な雲を出して皆を乗せて飛行していた。
「法然さん、ここに敵が来とるノ?」
島が聞いた。
「ええ、その通りです。皆さん、心の準備をよろしくお願いいたします」
法然。嘗て平安後期から鎌倉時代までの上人として生きていた僧は敵を察知していた。
「おうよ」
中本はポケットから勾玉を取り出した。この勾玉は遠距離攻撃および特殊な防御を行う事が可能である。また彼は見聞の能力を有している為、敵の気配も察知可能だった。
「向こうの方角だな!」
四人はやや東寄りの方角へと向かう。
ラ・ヴォワザンは針金が示す方角と共に進む。
「おお、こちらにも近づいているのか・・・。嬉しい話だな」
そして別の女性と遭遇する。
「やあ、おはよう、ラ・ヴォワザン」
「ああ、これはモンテスパン公爵夫人。おはようございます」
「レーニンの命を受けてまた杖の所有者を捜索しているようだが」
「ああ、今その所ですが、順調ですよ。何しろ私が用意した人形を戦わせてその人形に探知能力をつけておいたのです」
「そうか、なら易々と探し出せるわね。私にも手伝わせておくれよ」
「ええ、勿論」
二人は杖の所有者を討伐すべく進みだす。しかし、途中でラ・ヴォワザンが怪しげな気配を感じ取った。
「どうしたのか?」
「向こうの方から邪魔が入ったようです。返り討ちにしましょう」
そこに僧が一名、そして少年少女三名が雲の上に乗って近づいて来ていた。
「おい、そこのあんたら!」
「何よ、邪魔ね。消えて貰おうかしら」
モンテスパン公爵夫人は攻撃した。しかし、結果が発動されて防御された。
「ふ、極東の宗教の力ね」
モンテスパン公爵夫人はそう呼んだ。
「左様。この浄土の力で防がせて貰った」
僧は答えた。
「我が名は法然。貴方方を成敗させていただく!」
「ふ、やれるものならやってみな!」
一人の男子が光線の遠距離攻撃を仕掛けた。
「甘い!」
モンテスパン公爵夫人はその光線を防御した。それを歪曲させて跳ね返す。
「南無阿弥陀仏!」
僧が念仏を唱えて光線を消滅させた。
「次は貴方方の番ですぞ」
「やれるものならやってみな!」
ラ・ヴォワザンは毒入の瓶を大量に投げた。
「危ない!」
一人の女子がブレスレットを外し、盾に変化させた。毒瓶を防ぐ事に成功した。
「やるね!ならこれはどうかな?」
ラ・ヴォワザンはもう一個、瓶を投げた。盾に命中した。そして盾は元のブレスレットに戻ってしまう。
「なぬ!?」
「ホラホラ、それだけじゃ突破できないわよ!」
モンテスパン公爵夫人が熱の衝撃波を放った。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
法然と名乗った僧は必死で唱えて結界を張った。衝撃波の防御には成功したが、モンテスパン公爵夫人の衝撃波が止まる様子もない。
「その結界、消させて貰うよ!」
ラ・ヴォワザンが毒瓶を投げた。だが、どこからか雷雲が現れた。雲が落雷させ、毒瓶を破壊したのだった。
「ふ、毒瓶は無限にあるのさ!」
ラ・ヴォワザンは毒瓶を投げた。
「そしていつまでも結界で守れるとは思わない事よ!」
モンテスパン公爵夫人は急に衝撃波を放つのをやめたと思うと、今度は念動力を発した。結界が強引に公爵夫人の元に持っていかれる。
「終わりだね!」
ラ・ヴォワザンは大量の毒瓶を投げた。雷雲が溶かされ、一人の僧と三人組の高校生に毒を浴びせる。だが、何とか彼等には武装の能力を持つ者がおり、防がれた。
「異能の能力か!」
ラ・ヴォワザンは別の毒を振り撒いた。煙が舞い、異能の能力が無効化された。
「もう何もできんよ!」
「な、南無阿弥陀仏・・・!!」
法然はもう一度結界を発動させるが、公爵夫人がそれを念動力で奪ってしまう。
「纏めて吸い込まれるかいい!!」
ラ・ヴォワザンは手から黒い穴を出して纏めて吸い込もうとした。だが、その時、何らかの刃が飛んできてラ・ヴォワザンの腕を切り落とした。
「あああ!!」
ラ・ヴォワザンは痛みに呻いた。そして周りを確認した。そこには別の集団がいた。
「あ、貴女は・・・!!」
お待ちかねの杖の所有者が駆け付けていた。
後書き
次回は・・・
「黒魔術と法力」
藤木は己の唯一の取り柄であるスケートをする姿をりえに見せようとするべく、雪山へと出発する。一方、ラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人の前にかよ子達が到着した。法然と岡山の三人の高校生と協力してかよ子達はラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人の討伐を図る・・・!!
270 黒魔術と法力
前書き
《前回》
岡山から来た高校生・島あけみ、高崎ゆり子、中本遥人の三人は法然という人物と共に領土攻撃班として戦争主義の世界の領土を平和主義の世界の元に戻していた。そんな中、彼女らはラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人と遭遇する。苦戦するが、その場にかよ子達も到着した!!
かよ子達は朝食後、イマヌエルからいきなり連絡が入った。
『こちらイマヌエル。付近にまた敵が来ている。おそらく君達も以前戦った事のある人物だ。名前はラ・ヴォワザンという』
「ラ・ヴォワザン・・・!!」
かよ子はその名を聞いて気にしない訳には行かなかった。
(あの黒魔術・・・!!)
ラ・ヴォワザンには苦しめられた。毒や傀儡などで攪乱されたり苦しめられた上にスターリンや赤軍の西川が車での時間稼ぎにさせられた上に杖を奪いかけられた。また杉山の偽物を召喚して戦わせられた。このような辛酸を舐めさせられた事でかよ子は怒りに満ちていたのだ。
「私、行く。ラ・ヴォワザンをやっつける!!」
その時、杖が黒く光った。
「杖が・・・?」
「山田かよ子、恐らくお主の杖もラ・ヴォワザンの使う黒魔術とやらに打ち勝ちたいと渇望しているのかもしれぬ。我々で討ち果たす義務があるようだ」
次郎長はそう解説した。
「うん・・・!!」
かよ子達藤木救出班は黒魔術の魔女を片付けに赴き出した。
紂王の屋敷。藤木とりえは防寒の装備をしていた。理由はこれから藤木の特技であるというアイススケートをしに雪山の氷河へと向かう為である。藤木は顔を赤くしていた。
(りえちゃんに僕の見せる時が来たなんて・・・。楽しみだなあ・・・)
「藤木君、どうしたの、ニヤニヤして?」
「あ、いや、何でもないさ・・・」
藤木は慌てて誤魔化した。そして部屋を出て屋敷の門の前に出ると幾台もの馬車が止まっていた。
「この馬車で行くんだ。これで雪山の中へ行くんだよ」
「凄い・・・」
「おや、お二人、準備が早いわね」
妲己がその場に現れた。
「はい。楽しみで・・・」
「そうか、安藤りえ嬢、風邪は治ったようだね?」
「はい。藤木君の看病のお陰ですよ」
「そうか、流石婿だな」
「いやあ・・・」
藤木はますます照れた。
「そうだ、りえちゃんの靴って用意されてますか?」
「ああ、ここにあるよ」
りえの分のスケート靴が用意された。
「ありがとうございますっ!」
りえは妲己から靴を受け取り、藤木と共に馬車に乗りこむのだった。
高僧・法然上人と岡山の高校生三人組とラ・ヴォワザンにモンテスパン公爵夫人との交戦にかよ子達藤木救出班は介入した。
「おお、杖の所有者!来てくれたわね!」
ラ・ヴォワザンは腕を斬り落とされたが、その痛みを忘れて杖の所有者が来た事に喜んだ。
「公爵夫人!あれが私が求めていた杖の所有者ですよ!」
「あれが?なんか張り合いなさそうな小娘ね」
モンテスパン公爵夫人はかよ子の容貌からあまり強敵感が沸かなかった。
「いえ、あの少女こそ危険な女なのです。それにこれらの集団もいるので纏めて片付けようにも面倒臭い・・・」
「そうなの?なら私も纏めて消し去って貰うわ!」
「ラ・ヴォワザン・・・!!そしてこの人は・・・?」
かよ子は黒魔術の魔女と共にいる婦人が何者か知らなかったが、兎に角気にしていると先に攻められてしまう為に杖から火炎放射をして攻撃を始めた。しかし、モンテスパン公爵夫人は呆気なくそれを結界などで防御してしまう。
「おい、あれはこの坊さんの結界を奪ったんや!」
高校生の男子・中本遥人が説明した。
「え!?」
「つまり念力で強奪したという事だ!」
石松が解説した。
「大五郎、お主の法力が必要だ!」
「へい、了解!!」
大五郎は数珠を取り出した。
(あれは平安から鎌倉幕府の頃に仏法を広めた法然上人・・・。俺の法力は本物の坊主には程遠いが、黒魔術に打ち破られる訳にゃいかねえ・・・!!)
大五郎の法力がラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人の黒魔術による防御を弱めた。
「あの僧侶をまず葬るべきね」
公爵夫人は法印の大五郎を対象に殺害を試みようとした。
「大五郎を殺す気よ!」
のり子の人形が警告した。
「何!?大五郎、お主は羽根から出てはならぬぞ!」
「へい!」
大五郎は羽根から出る事はしなかった。
「ほう、あの者も仏の世に入った身か・・・」
法然は大五郎を見た。法然は己の法力を発動させた。
「まずあの羽根の結界を貰うわよ!」
公爵夫人は念動力を発動させた。
「させんぜ!」
中本は勾玉で周囲の防御を強めた。更には法然の法力の補助もあって結界を奪えない。
「なら、もう一度!」
ラ・ヴォワザンが能力を無効化させる毒を投げた。
「同じ手を食うか!」
大政が槍を投げた。巨大な鉄の壁が出現される。ラ・ヴォワザンが投げた毒を全て受け止め無効化させた。
「この壁が!」
ラ・ヴォワザンは斬られていない右手で黒い穴を出して大政が出した鉄の壁を吸い込んだ。だが、同時に巨大な石が次々とラ・ヴォワザンに向かって来た。
「な!?」
ラ・ヴォワザンには重すぎてとても一片には吸い込めなかった。
「一気に吸い込めないみたいだね!」
これらの石はかよ子の杖で出されたものだった。
「ナイスだ、山田!俺達もやるぜ!」
大野が草の石を使用した。太い枝がラ・ヴォワザンを串刺しにしようとした。更にブー太郎も水の石で大波を、次郎長や石松も刀でかよ子が出した石を砕いて突進すると共にラ・ヴォワザンを斬ろうとした。
「終わらせていただく!」
今のラ・ヴォワザンは己の分身を作り出す暇がない。かよ子もまた針を無数に出し、お蝶も脇差で鎌鼬を出して攻撃した。
「ラ・ヴォワザン!!」
モンテスパン公爵夫人が助けに動いた。ラ・ヴォワザンがかよ子達に串刺しかつ八つ裂きにされそうになった所で姿を消した。
「ラ・ヴォワザンが消えた・・・!?」
かよ子は瞬間移動を使われたのかと思った。ラ・ヴォワザンはモンテスパン公爵夫人の元へ移動していた。
「危なかったわね、ラ・ヴォワザン」
「はい、お礼を申し上げます」
「あそこに・・・!!」
(あの人がやったの・・・!?)
「さあ、お前ら!観念してその杖を私達に渡すのよ!」
モンテスパン公爵夫人がかよ子達に反撃を始める。公爵夫人は炎の球体を飛ばした。
「そ、そんなもの、杖でもっと強くさせて貰うよ!」
かよ子は己の杖を炎の球に向けて更に強力な炎を操る能力を得た。だが、火炎放射で返しても球体はかよ子の炎を吸収するだけだった。
「ひ、ひい・・・!!」
かよ子の所に熱の攻撃が襲う。
「山田かよ子!向い火では勝てぬ!」
次郎長が刀を振り払う。何とか炎の巨大化は何とか抑えた。
「富田太郎、椎名歌巌!水の能力を使ってくれ!」
「あいよ!」
「了解だブー!」
ブー太郎の水の石、椎名の水の球が水を発する。炎の球体は次第に小さくなっていく。そして一つの雨雲が球体の上に被さり、雨を降らせて小さくしていく。
「私達も手伝うよ!」
「あ、ありがとう!!」
「こいつら!」
だがモンテスパン公爵夫人とラ・ヴォワザンの所に別の攻撃が襲う。岡山の高校生の遠距離攻撃が来た。
「うおっと!」
モンテスパン公爵夫人の空間歪曲で何とか防御できたが、まだ戦う者が襲って来る。ものすごい速さで二人に接近してきた者がいた。小政だった。
「覚悟!」
小政が斬りに掛かる。
「何を!!」
ラ・ヴォワザンが毒を当てて即死させようとした。しかし、また別の男が二名介入してきた。そしてラ・ヴォワザンが投げた毒も防がれた。
「俺の刀で防がせて貰ったよ!」
「おうよ!遠距離攻撃できるのは他にもいんだ!」
関根と綱五郎だった。綱五郎がピストルより発砲した。だが、モンテスパン公爵夫人の空間歪曲の防御で阻まれてしまった。綱五郎に弾が跳ね返る。
「危ねえ!」
関根は刀を振るい、弾をその場で爆発させた。幸い綱五郎にも関根にも何のダメージはなかった。
「全く嫌な連中ね!」
モンテスパン公爵夫人は即死の術を掛ける。
「即死の術よ!」
のり子の人形・キャロラインが警告した。
「な!?」
かよ子達は武装の能力での防御体制に入る。
「異能の能力など無駄だよ!」
ラ・ヴォワザンが異能の能力を無効化させる毒をばらまいた。何もかもが無力化される。
(し、死んじゃう・・・!?)
「そこのお主!法力の防御を強めるのです!」
「お、おう!」
法然と大五郎が法力を強めた。
「黒魔術にそんなものが通用するとでも?」
モンテスパン公爵夫人も黒魔術を強める。黒魔術と法力のどちらが制すか。両側は引けを取らない。
後書き
次回は・・・
「黒魔術に対抗できるもの」
ラ・ヴォワザンおよびモンテスパン公爵夫人との交戦を続けるかよ子達。次郎長の子分の一人・法印大五郎と法然が法力で黒魔術に拮抗しているが、そんな時、かよ子は黒魔術を杖で対抗できるか気になった。そして杖にある変化が訪れる・・・!!
271 黒魔術に対抗できるもの
前書き
《前回》
藤木はりえにスケートをする姿を見せたくてスケートをしに雪山の氷河へと出発する。かよ子達はラ・ヴォワザンやモンテスパン公爵夫人と戦う。二人の黒魔術使いに対して法印大五郎は法然と共に法力で対抗する。だが、黒魔術で他の者に対しても融通を効かせて攻防を行う為、容易く攻略できないでいた!!
本部の管制室。まき子達は娘達が次の敵とぶつかっている所を確認した。
「かよ子達と次に戦っているのは誰なのかしら?」
「これは・・・」
イマヌエルは確認した。そこには赤い点が二つある。
「これは、黒魔術の使い手だ」
「黒魔術?」
「ああ、昔フランスで黒ミサなるものをやって毒殺などをおこなった者だ。その一人がラ・ヴォワザン。彼女はそれで火刑に処されたんだ。そして協力者のモンテスパン公爵夫人もそうだ。きっと山田かよ子君達もその二人と戦っているに違いない」
「ええ!?」
「そういえば以前にも山田かよ子君はラ・ヴォワザンと交戦している。黒魔術は危険すぎてとても厄介な魔術の一種だ。向こうには岡山という所から来たという高校生の島あけみ君、高崎ゆり子君、中本遥人君の三人、そして法然という僧がついている。法然と次郎長一派の一人、法印大五郎の法力が合わさって打ち破れるといいんだが・・・」
「そうよね。また杖を奪われるなんて事はないわよね・・・」
まき子は黒魔術についてふと気になる。
(黒魔術、まさか本当にあるなんて・・・。かよ子、打ち破れる方法はきっとあるわ・・・!!)
「イマヌエル。黒魔術に対抗できる最善の手段ってあるの?」
先代の杖の所有者は改めて平和を正義とする世界の長に質問した。
「そうだね・・・。白魔術というのがあるけど。それをあの杖で使えるようになるかまでは分からない。山田かよ子君の技量次第だが・・・」
イマヌエルは白魔術およびそれを元にした、または派生させた分野の使い手が平和を主義とする世界にはあまりいない事を把握していた。
(やはり既存の宗教の能力で撃退すべき、か・・・)
だからといって自分が前線に出るのは早計であると思い、イマヌエルはその場に留まり続けた。
かよ子達藤木救出班は岡山の高校生三人組と法然という僧と共闘でラ・ヴォワザンおよびモンテスパン公爵夫人と交戦を続けている。今、次郎長の子分の一人・法印大五郎と法然が共同で法力を発動し、ラ・ヴォワザンと公爵夫人の黒魔術に対抗していた。
「くう、我が黒魔術にここまで刃向かうとはよくも・・・!!」
モンテスパン公爵夫人は即死の術をなんとしても貫こうとする。
(どうすれば、いいんだろ・・・!?)
かよ子は困る。だが、指をくわえて見ている訳にもいかない。かよ子はモンテスパン公爵夫人に杖を向けた。しかし、杖の使用法が書かれていた書にも黒魔術に対抗して何の能力が得られるのか記されてもいない。その時、杖が白く光り出した。
「え、これは一体・・・!?」
「な、あれは・・・!?」
ラ・ヴォワザンもモンテスパン公爵夫人も驚く。そしてモンテスパンの術が次第に効かなくなっていった。
「何だあれは・・・!?」
その場にいた大野達も目を丸くして見ており、戦闘中である事を忘れてしまう程だった。
本部の管制室にフローレンスが戻って来た。
「はあ、はあ・・・。高速で戻ってきてまいりました」
「フローレンス!」
「捕虜を解放させましたのは痛手ではありましたが、赤軍達は何とか遠ざけさせました。しかし、それはただの方便でしてまた別の作戦を立てますと思います。気を抜けませんね」
「そうか、また領土を取り返そうとするかもしれないね」
「ところで、今、気がかりな所はございますか?」
「ああ、実は山田かよ子君達藤木茂君救出班がラ・ヴォワザンという黒魔術を使う女と交戦しているんだ。そこには更にモンテスパン公爵夫人という女とも交えている」
「黒魔術ですと!?」
フローレンスも黒魔術の脅威をある程度認知していた。杖の所有者達も一度は交戦しているとはいえ手強い事に変わりはない。
(山田かよ子ちゃん、乗り越えてください・・・!!)
雪山のある方角へ一行が進んでゆく。その中に夫婦となった藤木とりえがいた。二人は馬車の中で談笑しながら進む。
「あそこに氷河があるんだ。スケートリンクみたいに氷が張っててあそこの雪や氷は溶けないんだ。だならいつでもスケートが楽しめるよ」
「凄いわね。溶けない雪って」
藤木は到着が待ち遠しかった。
(さあ、りえちゃん、僕のジャンプやスピンを見たらなんて言うかな?)
藤木は自分のスケート技術でりえを見惚れさせたり、りえと一緒に滑って楽しい一時を過ごす所を妄想した。
かよ子の杖が白く光る。
「こ、これは・・・!?」
かよ子自身でも何かが理解不能だった。
「これは・・・。そうか。黒魔術の反対・・・。いわば白魔術でしょう」
法然が解説した。
「シロマジュツ?」
高崎が聞いた。
「黒魔術が人を害するものであれば、白魔術は人に益をもたらすもの。ここから医学および化学的な物質の製造に繋がったのです」
「そんな事して!?何になるのかな?」
ラ・ヴォワザンが能力を無効化させる毒を大量に散布した。ところが一切の能力が無効化されなかった。寧ろかよ子達の異能の能力が強まっているとさえ思われた。その時、賛美歌を演奏しているかのようなオルガンの音色が聞こえてきた。
「な、あああ!!」
ラ・ヴォワザンもモンテスパン公爵夫人も気が動転し始めた。
「す、凄い!」
かよ子は白魔術の凄さに自分でも驚かされた。だが、途中で白魔術を不意に解除させてしまった。
「あ・・・!!おっちょこちょいしちゃった・・・!!」
かよ子はおっちょこちょいをやってしまったと己を叱った。
「よし、皆の者、反撃の好機だ!!」
次郎長が呼びかけた。
「よし、皆、全ての石を纏めて使うぞ!」
大野はブー太郎、まる子に呼びかけた。
「うん!」
四つの石、それぞれの能力が行使され、ラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人を狙う。
「くう!」
モンテスパン公爵夫人が結界を発動させた。全てが防がれた。
「駄目だ、これじゃあ、倒せねえ!」
「どうやら、防御の術は無事なようね!」
だが、鎌鼬のような遠距離攻撃が無数に襲ってきた。結界が破壊されていく。
「な、これは!?」
「俺の攻撃だよ」
岡山の高校生・中本の勾玉による遠距離攻撃だった。更には関根の刀や法然・大五郎の法力で術が更に弱体化され、再び結界を出す事ができなくなった。かよ子は更に杖を持つ指先に神経を集中させた。
(白魔術、この杖で使えるならもう一度!!)
かよ子は白魔術をもう一度繰り出そうと試みた。
「今度はおっちょこちょいしないよ!!」
そしてもう一度杖が白く光る。そしてまたオルガンのような音色が聞こえてきた。
後書き
次回は・・・
「白魔術の凌駕」
かよ子の杖から白魔術が発動され、ラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人の黒魔術を無効化していく。劣勢と化してしまった黒魔術使いの二人は最後の足掻きを試みる。かよ子達はラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人を撃破する事ができるのか・・・!?
272 白魔術の凌駕
前書き
《前回》
かよ子はモンテスパン公爵夫人に杖を向けた。その時、杖は白く光り讃美歌のようなオルガンの音色が聞こえてきた。法然によるとそれは白魔術だという。その白魔術を使用してかよ子はラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人の黒魔術を弱体化させる。己でも驚くほどの凄さでかよ子は途中で思わず白魔術を解除してしまう。だが、徐々に二人を追い詰めて行き、かよ子は気を取り直してもう一度白魔術を発動させる!!
かよ子の杖から白魔術が発動された。賛美歌を奏でる時のオルガンのような音色が流れた。
「いけえ!」
モンテスパン公爵夫人とラ・ヴォワザンの黒魔術が無効化されていく。そして周りの異能の能力が更に強まっていった。
「こ、このお・・・、杖を取るどころか強くさせるなど・・・」
「ラ・ヴォワザン。撤退するわよ!」
モンテスパン公爵夫人は逃走を試みた。周囲に煙を出現させる。そして相手から姿を見えなくさせる事で自分達を瞬間移動させようとするつもりであった。
「・・・、何!?」
モンテスパン公爵夫人は己の能力を疑った。煙が消えたその場所は今迄と異なる場所に移動される。そのはずだった。しかし、先程と変わらぬ場所だった。
「私の魔術があの小娘の杖に負けただと!?」
「この竜巻雲を受けな!」
高崎が竜巻雲を放っていた。竜巻で二人共目を回され、身体を振り回されていった。
「あ、おお・・・!!」
かよ子はあの竜巻を見た。
(あの竜巻を利用できれば・・・!!)
かよ子は好機と思い、高崎が出した竜巻に杖を向けた。更に強力か竜巻で魔女と公爵夫人を苦しめた。
(なんの・・・。我々の・・・、魔術を・・・!!)
このまま死ぬわけにいかないと思い、ラ・ヴォワザンは身代わりの人形を出した。そしてモンテスパン公爵夫人は竜巻から脱出すべく、竜巻を破壊しようと試みた。
「雷・・・よ・・・!!」
竜巻に雷撃を流し込んで消滅させようとする。だが、竜巻は弱化せず電撃も次第に消えていった。
「悪あがきなど通じますか!」
法然と大五郎もこれ以上の黒魔術を封じるべく法力を強めていたのだった。
(終わるのか・・・!?)
ラ・ヴォワザンが出した人形も呆気なく竜巻に破壊されてしまった。両者とも呼吸ができなくなった。そして風圧では普通にありえない事に驚いた。胴体が両断されたのだった。
(あ、そんな、信じられない・・・!!もう一度杖を奪える好機だったのに・・・!!やられるなんて・・・。あの杖に白魔術が使えたのかしら・・・!?あの小娘がそんなに成長したって事なの・・・!?納得できない・・・!)
ラ・ヴォワザンは死に絶えるまでの間、気に食わない文句を心のなかで言い続けた。そして消えた。一方のモンテスパン公爵夫人も悔しがった。
(くう、ここで杖を取り返してレーニン様を喜ばせて差し上げようと思ったのに・・・!!そうすれば貢献できた・・・。なのにこのザマなんて・・・!!)
モンテスパン公爵夫人も光と化したのだった。白魔術を扱えるようになった杖の所有者達が勝利したのだった。
本部の管制室。まき子は娘達の戦闘現場にて敵の点が消失した事を確認した。
「かよ子達、勝ったのかしら・・・?」
「きっと勝てましたと思います。連絡してみましょうか」
フローレンスは通信機を取り出し、かよ子達藤木救出班日連絡した。
「こちらフローレンス。皆様、勝利を飾りましたのですか?」
『こ、こちら山田かよ子。ラ・ヴォワザンにモンテスパン公爵夫人ってのを、た、倒しました!』
杖の所有者が噛みながら返答した。
「そうでしたか。黒魔術の使い手達を打ち破りますとお見事です。大変でしたでしょう。ご休憩なさってください」
『は、はい。ありがとうございます・・・!!』
「ところで山田かよ子ちゃん」
『は、はい?』
「杖が黒魔術に勝てましたといいます事は杖に何か変化がありましたのではありませんでしょうか?」
『は、はい、杖が白くなりました・・・!!今迄になかった事です』
「そうですか。貴女の杖には白魔術を操る能力が宿りましたのです」
『そうなんですか・・・!!凄い!』
「きっと役に立てますと思いますわ。白魔術は医学や錬金術の礎ともなっていますので。応援していますよ」
かよ子の母も連絡を繋いだ。
「かよ子、凄いわ。お母さんにできなかった事ができたんだから凄いわよ。頑張ってね」
『お、お母さん・・・。ありがとう!!』
娘は母に礼をした後、連絡を終了させた。
「まきちゃん、よかったね〜。また杖が強くなって」
奈美子が褒めた。
「うん。あの子もきっと一回杖が取られたから強くなりたいって思ったんじゃないかしら・・・」
先代の杖の所有者は信じ続ける。娘達こそが元の日常を取り戻し、また日本を戦争への道に進まないように赤軍達の脅威から止めてくれると。
かよ子達は共闘した法然に岡山県の高校生三人組とその場で休息を取っていた。
「それが君の杖なんネ」
島がかよ子の杖を見た。
「はい、この世界で一番強いっていう道具の一つに入ってるんです。私のお母さんも戦後、この杖で食料不足とかを乗り越えたんです。
「そうですか、それで我々もその聖なる四つの道具が私でも秘密にされていたのですか」
法然もその杖を見た。
「法然さんでも知らなかったの?」
高崎が法然に聞いた。
「はい、それだけこの世界における重要な道具でしょうから。私もフローレンスとイマヌエルから聞いたのですが、この杖は剣、護符、杯と共にこの世界を創り出した根源とされる道具だとの事です。西洋には炎、水、地、風の四つの元素がもとで世が創られるとされており、杯は水、護符は地、剣は風、そして杖は炎を司るものなのです」
「そうなんだ・・・」
「そんな杖と戦えるなんてこっちにゃ凄い事だぜ」
中本はそう思っていた。
「あ、ありがとうございます・・・」
かよ子は杖を試す。
「白魔術の杖って、どんなんだろう・・・?」
かよ子は立ち上がって杖を試してみた。杖が白く光った。そしてまた賛美歌を奏でるオルガンの音色が聴こえる。
「なんか教会に来たみたいやな」
「ああ、これが白魔術の音楽か」
「そうみたいですね。ラ・ヴォワザン達に対してもこの音楽が聴こえると白魔術が発動されるんだ・・・」
かよ子はそして島の言葉「教会に来たみたい」という台詞であの事も思い出した。
(そういえばりえちゃんも夏休みに清水に来た時は教会でピアノ弾いてたんだっけ・・・?)
かよ子は今、杯の所有者がどうなっているのかが気になるのだった。
レーニンと杉山は目的地へと進む途中、トランシーバーを通して房子から連絡を受けた。
「レーニン様。ラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人が杖の所有者に倒されたとの事です」
「何だと?ラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人がか?」
『どうしますか。我々もそろそろ反撃に動きましょうか?』
「いや、待て。東側はまだ残っている。兎に角杖の所有者の小娘は妲己や紂王が追い払えるかという所だ。念を入れてトロツキーやスターリンと共にまだ制圧されていない地を向かい、守護・迎撃するのだ」
『了解しました』
トランシーバーの通信を終える。そして杉山は考える。
「・・・なあ、そのラ・ヴォワザンとかモンテスパン公爵夫人ってのは一体どんな使い手だったんだ?」
「何れも黒魔術を武器とする者共だ。黒魔術という強力なものを打ち破れるとはおっちょこちょいの小娘にしては驚きだが・・・。まあ、他の者の協力があってこそかもしれんがな」
「そうか・・・」
(つまりだ、山田の杖はもっと強くなっている・・・。俺も大将に相応しい程に強くなんねえとな・・・!!)
そして杉山は親友の事を考える。
(大野・・・。お前が転校する前に終わらせてやるから待ってろ・・・!!)
後書き
次回は・・・
「唯一の取り柄」
藤木とりえは雪山の中の氷河に到着した。藤木は己の唯一の特技を披露すべく、スケートの技を披露していく。りえにその姿を虜にさせることはできるのか。そして藤木は「前の世界」でできなかった「ある事」を実行する事に・・・!!
273 唯一の取り柄
前書き
《前回》
かよ子の杖から白魔術が発動される。それはラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人の黒魔術に勝る強さだった。その白魔術で二人の黒魔術使いを撃破する。そしてかよ子の杖は白魔術を操る事ができるように進化されたのだった!!
レーニンと杉山は目的地へと向かう。
(あの時以来になるの、か・・・)
杉山は剣を奪い返しに来たあの高校生男子との対面を思い出す。そして彼の問いが頭に浮かぶ。
《杉山君、お前がレーニンの側についたのは赤軍の目的を達成させる為か?それとも、これが元の日常を取り戻す為に自分にしかできない事だと考えたからか?どっちだ?》
(そうだな・・・。だが、そうしねえと俺は大将になれねえし、大野を送り出す事はできねえんだ!!)
そして杉山は親友の事も思い出す。
(大野、俺は本当は寂しいんだ・・・。だから転校の日までに何度でもお前と戦ってやる!!)
藤木達の一行は雪山に辿り着いた。りえにとっては寒くて凍えそうな所ではある。藤木にとってはこの地は二回目だった。そしてこの地には藤木にとって唯一の取り柄であるスケートができる氷の泉があるのだ。
「ここではいつでもスケートができるんだ」
「うわあ、凄いっ!」
りえはここまで雪が積もり、広い氷河を見た事がなかった。一人の遊女が馬車の扉を開け、二人を降ろした。
「安藤りえ嬢、茂様の『すけーと』はとても素晴らしいのです。虜になることまちがいなしですよ」
「へえ、そうなのっ!?」
「では、皆の者」
皆の準備が整ったところで、紂王と妲己が呼び掛けた。
「それでは皆でその氷の上で存分に滑って楽しむと良い」
「はい!」
「りえちゃん」
「え?」
「僕の滑り、まずは見ててくれよ!」
「う、うん・・・」
藤木は氷河に入り、滑り出した。藤木は颯爽と滑走していく。
(りえちゃんもきっと僕の虜になってくれるはずさ!!)
この時の藤木の表情はいつも以上に活き活きとしていた。
(どうだ、この滑りは!?凄いのはまだこれからだぞ!)
藤木は軽快にステップをしていく。そしてジャンプを見せる。3回転も容易く行った。そしてスピン。12回転のスピンだった。
「うわあ、茂様はいつでも凄い!」
「お嬢様はこんな人をお婿さんに持って本当に羨ましい・・・」
「お、お婿さんだなんて・・・」
(ほ、本当に凄い・・・。こんな凄い藤木君見るの初めてっ・・・!!)
りえも見惚れていた。
(ふふ、上手くいってよかった・・・。これがないとおそらく『あの洗脳』が解けてしまうところだった・・・)
妲己はあるものを持っていた。それは祝言の時にナポレオンとかいう男から渡された薔薇だった。氷河から藤木は出てきた。
「りえちゃん、どうだったかい?僕の唯一の取り柄は」
「す、凄かったわっ!!」
「今度は、その、僕と、滑ってくれるかい!?」
藤木は顔を赤くしながら懇願した。
「うんっ、いいわよっ」
りえは藤木に手を差し出した。藤木はりえと共に氷河を滑り出す。藤木は嬉しかった。好きな女子と手を繋いでスケートするのは初めてだったのだ。「前の世界」にいた時は「前に好きだった女子」とはそのような事はできなかった。いや、一緒に手を繋いで滑る事をする勇気すらなかった。断られるかもしれないという不安もあり、積極的になれなかった。しかし、その「前に好きだった女子」に対してできなかった事が今こうしてできている。藤木にとってこれ以上にない嬉しい事だった。
「りえちゃん、どうだい?凄く速く滑ってるだろ?」
「ええ、でも、ちょっと怖いかな?」
「そっか、それじゃあ、少しゆっくり滑るよ・・・」
藤木はスピードを遅くして滑った。
(りえちゃん・・・。ここで会った時はあまり嬉しそうじゃなかったけど、今は何かとても僕に興味を持ってくれてる・・・。祝言で一緒になってくれたからかな、それとも、僕の気持ちが伝わったからかな?)
藤木はそんな事を考えながらりえと滑った。
「茂様、りえ様、お似合いですよ~!!」
遊女達が声援を送った。
「あ、いやあ・・・」
りえも照れながら笑っていた。そして藤木はりえと暫く滑り続けた。そしてりえはまだ上手く滑れない事もあってか、藤木に少しずつ滑り方を教わっていた。
「茂様、りえ様!」
一人の遊女が呼んだ。
「そろそろお昼ご飯の時間ですよ~。体も冷えてると思うので温かく鍋料理を用意させていただきました~」
「あ、ありがとう。りえちゃん、行こう!」
「ええっ!」
ふじきとりえは氷河を出て炊事がされた場所へと移動した。鍋料理には葱に人参、白菜と色々は要っていた。そして肉のような物が入っている。
「いただきます!」
藤木は肉のような物を食べる。だが、今までに食べた事のない感触だった。
「こ、これは何だい?」
「これはもつ肉といいます。けっこう美味しいと聞きました。如何でしょうか?」
「す、すごい美味しいよ」
「美味しいっ?それじゃあ、私も貰おうっ!」
りえももつを楽しむ。二人はもつをたくさん食べると共に身体を温めたのであった。
「茂様。午後も滑ってください!私ももう一回見たいです」
「私も、私も!!」
「うん、皆に見せてあげるよ」
そして藤木は休憩後、もう一度滑り出す。またもやりえや多くの遊女から拍手が送られた。
(やっぱり僕はスケートが一番の男なんだ!)
「ふ、藤木君・・・」
りえが呼んだ。
「何だい?」
「もう一度、一緒に滑ってくれるかしら?」
「うん!」
藤木はりえと共に滑った。二人共楽しそうにスケートを楽しむのだった。
「りえちゃん」
「ん?」
「僕は他に出来る事が何もなくてさ。夏休みに会った時、スケート見せたいって言ったからそれを見せられてよかったって思うよ・・・」
「うん、私も藤木君かっこよく見えたわっ!」
りえは共に滑りながらも藤木の前に立った。そしてキスをした。
(りえちゃん・・・)
藤木は照れながらもその接吻を拒まなかった。
「うわ〜ん、お似合いです!!」
「茂様、羨ましい・・・!!」
遊女達に騒がれ少し恥ずかしくなった。しかし、唯一の取り柄を披露する事ができて嬉しく思うのだった。
かよ子達は昼食として支給された焼きそばを食べていた。
「さて、昼飯を食ったら出かけるぞ」
次郎長はかよ子達に促した。
「法然さん達はこれからはどこへ行くんですか?」
「そうですね、私達は敵の世界の本部とやらに向かうとしましょう。あそこを落とさなければこの世界の平和はないでしょうから」
「うん、気をつけてね!さようなら!」
かよ子達は法然に島、高崎、中本と別れた。そして自分達の目的地へと向かう。目指すは藤木の住む居場所。その方向は東側。かよ子はまた強くなった杖を利用して藤木を攫っていった者を倒し、藤木を奪還する。そしてそれが済んだら杉山をレーニンの元から取り返すのだ。
杖はまた進化を遂げた。そしてかよ子達は藤木のいる場所へと近づいて行く。
後書き
次回は・・・
「杯は探知できず」
三河口、湘木、冬田は引き続き杯を捜索するのだが、手掛かりは全く掴めないでいた。長山は本部守備班としての仕事を全うすると共に藤木やりえの捜索を神通力の眼鏡を通して察知し続ける。そしてかよ子達は着々と藤木のいる場所へと近づいていた・・・!!
274 杯は探知できず
前書き
《前回》
杉山は己が戦争主義の世界の人間達の側に付く事に決めた動機を改めて考え直し、親友の大野の事も思い出す。藤木は己の唯一の取り柄であるアイススケートをりえに見せるべく、雪山の中にある氷河にてその技術を披露する。りえを虜にさせる事に成功した藤木はりえと手を繋いで共に滑るという最高の事ができて嬉しく思うのだった。そして昼食を終えたかよ子達は藤木を探すべく再び出発する!!
戦争主義の世界の領土にて東部を徘徊する三人組がいた。一人は小学三年生の女子・冬田美鈴。もう一人は神奈川県の高校生・湘木克也。そしてあと一人は静岡県の高校生(生まれは神奈川県だが)、三河口健。
(はて、杯はりえちゃんが囚われた場所にあるのか・・・?それとも、誰かに狙われるとまずいと見て別の場所に・・・)
三河口は己の見聞の能力をもってしてもどうしても杯の場所を特定できなかった。
「大野君達、どうしてるかしらあ・・・?」
冬田はまた好きな男子の事を考えていた。
「知るかよ。なあ、冬田」
「え?」
「君はたしかりえちゃんが攫われた時に戦った相手を見ている筈だ。どんな奴だった?」
「え、ええと・・・」
冬田は記憶を辿る。
「たしか、杉山君と・・・」
(杉山君?つまり、レーニンと身体を同体化した後か)
「それから狐に変化する女の人もいたわ」
「狐・・・?」
(玉藻前みたいな九尾の狐か・・・?)
三河口はそう予想した。狐と聞くと狸のように人を惑わすか、妖怪の九尾の狐しか推測の域を出ない。
(そういや、その狐は東の方角へ向かった・・・。つまり、杯を探すにしてもりえちゃんを取り返すにしてもその女を捕まえて吐かせるにしてもかよちゃん達が進む方向と同じだと思われる・・・、か)
三河口は通信機を取り出して連絡を取り始めた。
「こちら三河口健。フローレンス、イマヌエル、聞こえるか?」
『はい、こちらフローレンスです。如何なされましたか?』
「こちらは湘木克也に冬田美鈴と共に杯の捜索に当たっているが、本部では察知できませんか?」
『はい、それが杯の場所を特定できませんのです。おそらく敵によって攪乱の術を使用されていますと思われます』
「悟られないように気配を消しているって事か・・・。分かった。他に察知できるような道具を持っている人は?俺の見聞の能力でも全く役に立たずで」
『こちらイマヌエル。それなら君の友人である北勢田竜汰君の知り合いで長山治君に頼んでみるといい。彼は今本部守備班で君の従姉である羽柴さり君と行動を共にしているよ。彼は神通力の眼鏡を所持しており、遠くの物を見る事ができる筈だ』
「ああ、確認してみる。ありがとう」
『あ、三河口健君、お待ちになってください。貴方の叔母上が話したがっていますよ』
「叔母さんが?」
三河口は自分の叔母と連絡を試みる。
『もしもし、健ちゃん』
「はい、何でしょう?」
『その杯っての探してるんね?』
「はい、まだゆりちゃん達とは合流できていませんが・・・」
『そうなんね。でも焦っちゃいかんよ。健ちゃんなら取り返せるはずよ。剣だってそうだったでしょ?』
「はい・・・」
『だからきっと大丈夫よ。頑張るんよ』
叔母は通信を終了させた。
(長山君、か・・・。確か北勢田の知り合いの少年だったな・・・)
三河口は別の人物に通信を試みた。
『はい、こちら長山治』
「こちら杯の奪還に動いている三河口だ。長山治君・・・、だったね」
『はい』
「確か君は神通力の眼鏡で遠くの物を見通す事ができるはずだったね」
『あ、はい』
「安藤りえちゃんが持っていた杯を知っているかい?どこにあるのか情報が掴めないんだ。それで君に探知を頼みたいのだが・・・」
『あ、うん、やってみるよ』
「ごめんね、藤木君の捜索も頼まれているというのに」
『いや、気にしないでください』
通信を終了させた。
「三河口、杯の捜索を頼んだのか?」
湘木が聞いた。
「ああ、俺の見聞の能力だけでは無理だ。そこで北勢田の知り合いの小学生に援護を頼んだんだ」
「見つかるといいんだがな・・・」
「それでも見つけられなかったら途方に暮れるだけだが、もし吉報があればゆりちゃん達にも連絡するよ」
「ああ」
東部の平和主義の世界と戦争主義の世界の境界近く。長山は藤木の捜索と合わせて奪われた異世界の杯の捜索に当たっていた。
「杯か・・・」
「長山君、私の従弟からの頼まれごとね」
護符の所有者・羽柴さりが聞いた。彼女も従弟と長山の連絡内容を聞いていたのだった。
「はい、その人の見聞の能力でも見つからないっていうので」
「そうね・・・」
さりは自分の持つ護符で杯を吸い寄せられたらと思っていた。しかし、杯を上手く取り返せるような道具や能力をその場に出したり発動させる事はできなかった。
(この護符もできる事には限界があるのね・・・)
以前、最上位の強さを持つ道具の一つである護符はテレーズの能力で七つの神を操る能力を得て進化させる事に成功させたものの、神を扱う物は身体に相当な負担をかけてしまう弊害もある事もさりは知っていた。
(どうか、従弟かゆり姉達の力になれれば・・・)
さりは姉や従弟の為に何かしてやりたいとも思ったが、己の本分は平和主義の世界を守護し、侵入者の迎撃である為、本来の目的から外れた行動をする訳にもいかなかった。せいぜい道具を持っていない従弟に鎖鉄球を護符で出して与えた事はしたのだが・・・。その時、通信が鳴った。
『こちら領土攻撃班、東部の一部の区域を奪還した!』
東部の攻撃に当たっている領土攻撃班から連絡があった。
「よし、先に進むぞ」
清正が促した。
「うん!」
護符の所有者達は奪還された地域へ進んだ。
氷雪の一帯から大勢の一行が出てきていた。
「藤木君のスケート姿、格好良かったわっ!」
りえは先程藤木達と共に雪山の中にある氷河にてスケートをしており、藤木から滑り方を教わったり彼のオリンピック選手並みの技術に魅了されていたりしていた。スケートを満喫した二人は帰る事にしていた。
「ありがとう。えへへへ・・・」
藤木は己の唯一の取り柄を見せる事ができて嬉しく更に照れていた。
「それにしてもとても寒かったから今日は鍋料理にしてもらおうかな」
「うんっ!」
藤木の一行は紂王の屋敷へと戻っていく。
ラ・ヴォワザンとモンテスパン公爵夫人を撃破し、法然に岡山の高校生三人組と別れた山田かよ子達藤木救出班は東側をひたすら進んでいた。夕方になり、かよ子は草原となっている地で羽根を降ろした。
「それにしても藤木のいる所はまだかなあ〜」
まる子はやや退屈していた。
「そうじゃのう。儂も藤木君とまた会いたいのう」
友蔵は藤木とそんなに親しい訳でもないのにそうぼやいた。
「そんなに不安なら本部に聞いてみるべきではないか?」
石松は案じた。
「うん、聞いてみるよ」
かよ子は通信機を出して本部へと繋いだ。
「こちら山田かよ子。今、私達は藤木君の所に近づいてるのかな?」
『はい、こちらフローレンス。かなり近づいていますよ。それにしましても長山治君などの情報によりますと確か攫われました安藤りえちゃんと一緒にいますと聞いていますが』
「あ、うん、そうみたい、ですね」
『でしたらもうすぐ近くです。但し相手も強敵ですので注意してくださいね。取り返しましたらご一報お願い致します。こちらで他の領土攻撃班や本部守備班にも援護を求めておきます』
「は、はい、ありがとうございます・・・」
『そういえば付近にも三河口健さんや冬田美鈴ちゃん、湘木克也さんもいますわね。ん・・・?』
「どうしたんですか?」
『戦争を正義とします世界の長も付近におります・・・!!』
笹山かず子は昼夜自動運転の自動車を飛ばして東部を進んでいた。
(藤木君、ここにいるのかしら・・・?)
「大分進んでいるがきっと大丈夫だろう」
「しかし、禍々しさも感じるな」
付き添いで訪れた武則天の側近が不安さも持ちながら目的地に近づいていると確信を持とうとした。
「ん、あれは・・・?」
笹山はとある行列を確認した。馬車が続いて通ってゆく。笹山は自動車をその行列に近づけた。笹山はもしかしてと思いながら確認する。そして屋形の中にある姿が見えた。
「ふ、藤木君!!」
笹山は車から叫んだ。
後書き
次回は・・・
「やっと会えたのに」
三河口の依頼で長山は神通力の眼鏡を使用して杯の在処の探知を試みているものの、成果が全く上げられないでいた。かよ子はフローレンスから戦争主義の世界の長と杉山が三河口の所に来ていると知り、驚かされる。そして笹山は遂に藤木と再会を果たすが、藤木の反応は・・・!?
275 やっと会えたのに
前書き
《前回》
杯を捜索する三河口は本部のフローレンスとイマヌエルに相談するが、さりと同行する長山に協力を進められ、彼に杯の探知を依頼する。かよ子は自分達が藤木のいる所に着実に近づいてきているのかどうか不安で本部に連絡するが、接近には成功しているのは確かだが、三河口の所にレーニンおよび杉山が近づいてきているという事実も知る。そしてかよ子達とは別で藤木を探す笹山は遂に藤木を発見した!!
本部の管制室。まき子達は杖の所有者の動向を確認した。
「かよ子達、近づいてきてるわね」
「でも、その健ちゃん達の方に戦争主義の世界の人が来てるってのが気になるね」
「はい、もしかしたら三河口健さん達がレーニンかつ杉山さとし君とぶつかりました時、その場に山田かよ子ちゃん達が居合わせます可能性はゼロではありませんわね。それから藤木茂君の奪還にも影響しますかもしれません」
フローレンスは更にもう一つ懸念していた。
(『あの子』もそろそろ山田かよ子ちゃん達と同じ目的地に着きますはずでしょう・・・)
彼女は特別に藤木奪還に貢献できると見ている少女をこの世界に派遣させている。異能の能力こそ持たないものの彼女こそが鍵になるとフローレンスは信じていた。
長山は神通力の眼鏡で見続けた。しかし、杯がどこにあるのかどうしても眼鏡の透視能力をもってしても在処を確認する事はできなかった。今、長山達はさりが護符で出した飛行機で移動していた。
「長山君、杯がなかなか見つからないみたいね」
「は、はい・・・」
「従弟の方には私から言っとくわ」
さりは通信機を出す。接続先は三河口だった。
「もしもし。こちら羽柴さり」
『はい、もしもし』
「今長山君の眼鏡で杯が何処にあるか確かめて貰ったけど、どうしても行方が掴めないみたいなの。ごめんね、役に立てなくて」
『いえ、大丈夫です。もしかしたら場所を悟られないように細工をされているんでしょう。なんならりえちゃんを攫った奴等を狙って拷問でも尋問でもしてやりますよ』
「もう、怖い事言っちゃって。頑張ってね」
『はい、失礼します』
通信を終了させた。
「従弟さん、すげえ強気だな」
尾藤はその強気に感心した。
「そうね、剣を取り返した程だからかしらね」
「え、お兄ちゃん達の所に杉山君達が!?」
かよ子は驚かされた。戦争主義の世界の長が三河口の所に来ているとなると杉山も彼の元に接近している事になると直ぐに分かった。
『はい、おそらく杯を探しています彼らの行動を食い止めますか抹殺しますかもしれません』
「あいつ・・・!!」
大野は親友に怒りが込み上がった。
「大野君・・・」
ブー太郎は大野の気持ちがよく分かった。
(そうだよね、大野君。そりゃ、杉山君と喧嘩した上に戦争主義の世界の方に裏切ったから怒りたくなるよなブー・・・)
ブー太郎は立ち上がった。
「オイラ、杉山君やそのレーニンって奴止めたいブー!」
「ブー太郎・・・」
かよ子はブー太郎の勢いに圧倒された。
「そ、そうじゃ、止めなきゃその人が死んでしまうぞい!」
友蔵も立ち上がった。
「まるちゃんのおじいさん・・・」
かよ子は心を整理した。
「・・・、フローレンスさん、私、三河口のお兄ちゃんを助けに行くよ!」
『山田かよ子ちゃん・・・、分かりました。では、三河口健さん達への救援、お願い致します。しかし、寄り道であります事に留意してください』
「はい・・・」
『ただ三河口健さんのいます所とは目的地からそこまで逸れていませんので支障はあまりありませんと思いますが』
「はい、急ぎます!」
かよ子はフローレンスから方角を教えて貰い、羽根を再び動かす。
笹山は藤木の姿を見て叫んだ。
「藤木君、ここにいたのね!」
藤木は笹山の顔を見て驚いた。その前方で妲己と紂王が屋形の窓より顔を出した。
「何だ、あの小娘は?」
「どうやら茂坊やの事をご存知のようですね」
紂王は馬車の一行を停止させるよう指示した。妲己は馬車から降りた。
「さ、笹山さん・・・」
「藤木君、あの子知ってる?」
りえは呼んだ。
「あ、いや、その・・・」
(まずいな、りえちゃんに笹山さんの事知られたら怒られるかも・・・。そうなると僕から離れるんじゃないか・・・?)
藤木は不安がよぎった。
「あの時、ごめんね、冷たくして!私、やっぱり藤木君がいなくて寂しかったの!皆も心配してるわよ!私がいるから元の世界に戻ろう!」
笹山は藤木に訴えた。藤木は馬車から降りて笹山の前に立った。
「藤木、君・・・?」
藤木は黙ったまま動かなかった。そして10秒ほど経つと・・・。
「帰ってくれ」
「・・・え?」
「僕はもう君を忘れるって決めたんだ。手紙にもそうあったろ?僕は『前の世界』になんて戻りたくいないんだ。戻ったってまた皆から卑怯者って呼ばれるだけだよ。それにこの世界はとても楽しいんだ。いつでもスケートができるし、笹山さんみたいに可愛い女の子もいっぱいいて僕を卑怯って言わないし、もう他に好きな子だってできたんだ!今更戻って来てなんて言われても嫌だよ・・・!!」
「そ、そんな・・・」
「僕はこの世界にいたいんだ!絶対に帰りたくないよ!」
「大丈夫よ!私がいるから・・・!」
「笹山さんがいて何をしてくれるってんだい?」
「う・・・?」
その時、妲己が近づいて来た。
「そこの小娘、一体何の用だね?」
「あ、その・・・」
「坊や、この子を知っているのかね?」
「あ、いや、知りません・・・」
「え?そんな・・・、私は藤木君の友達です!」
「ほう、それで何しに?」
「藤木君を、連れ帰しに来たんです。フローレンスさんって人によってここに連れて来て貰いました。それからこちらの姚崇さんと張説さんに一緒に来て貰いました」
「・・・、この二名が?そうか。でも、この藤木茂様は帰りたがっていないようだが?」
「そうかもしれませんが・・・」
「僕は帰りたくありません!それに僕はこの子の事は忘れるようにしてるんです!」
「そうか、なら邪魔しない方がいいわね。お帰りになるか、それとも・・・」
妲己は笹山を睨みつけた。
「ここで死ぬか、どっちがいいかしら?」
妲己の姿が変化し始めた。
「危ない、笹山かず子、車に戻るのだ!」
姚崇が促した。
「あ、うん・・・!!」
笹山は車に戻った。代わりに姚崇と張説が前に出て妲己に応戦しようとした。妲己の九尾の狐の姿となった。
「だ、妲己さん・・・!?」
「坊や、そなたを守るぞ。皆の者!」
「はい!」
多くの遊女が馬車から降りて来た。衛兵達も集結する。
「ええい!」
姚崇と張説が牛頭馬頭を召喚させた。しかし、九尾の狐は火炎放射を浴びせる。
「姚崇さん、張説さん!!」
しかし、牛頭馬頭は何とか防御に成功させた。藤木は馬車に戻る。
(笹山さん、ごめんよ、もう君とは会う訳にはいかないんだ・・・)
遊女や衛兵も二人を纏めて葬ろうとした。
「お、お願い、やめて!」
笹山はもう一度車から降りた。
「藤木君、お願い、攻撃を止めて!!」
笹山の声は今の藤木には届かなかった。遊女達は光線を出したり、地面を爆発させる術を出して攻撃した。
「そんな防御、いつまで持つかしらね?」
妲己達の攻撃は止まない。
「う、うおお・・・!!」
「さ、笹山かず子、そなたは逃げるのだ・・・!!」
「そ、そんな・・・!!」
笹山は全力で訴えた。
「お願いですからやめてください!」
「無理だ。我々は争いを正義とする世界の者。敵対者は容赦なく叩き潰す。この二人は則天武后の側近であろう。ならば我々の世界の敵だ。この二人を静粛させたら次は小娘、お前を消す」
妲己は笹山を睨みつけた。
「それとも今すぐ死ぬか?」
遊女の一部が笹山の方向へ攻撃の支度をする。
「い、嫌、お願いです!やめてください!私達、帰りますから!」
笹山は泣きながら命乞いした。
「敵対者とはどちらかが死ぬまで終わらん。帰りたければ私達を倒すのだな。皆の者、まずこの二人を殺れ!」
遊女や衛兵が姚崇と張説を襲う。
「うが・・・、すま、ぬ、武則天様・・・!!」
姚崇と張説は応戦するが、対処しきれない。
その一方、馬車から藤木とりえはその様子を傍観していた。
「藤木君、あの子は誰?」
「前に好きだった子だよ。でも僕はもう忘れたんだ。今はもう知らない人だよ。僕はりえちゃんだけが好きなんだ。だからあの子を好きになる事はないよ」
「ええ、私も藤木君がいればいいわ」
その一方、笹山は絶望に追いやられた。
(そ、そんな・・・。ここで死ぬなんて・・・、やっと藤木君と会えたのに・・・!!)
しかし、笹山にはある物があった。フローレンスから託された藤木を救出させる為の鍵となる道具が。それはボールペンのような道具で藤木に戻って来て欲しいという願いを入れた物だった。
(そうだ、フローレンスさんから預かったこれを・・・!!)
笹山はボールペンを出した。
(お願い、藤木君・・・!!)
道具の効果が発動された。緑色の光がその場で放たれた。
「これは・・・!?」
笹山が、妲己が、紂王が、姚崇が、張説が、その場の衛兵や遊女達、そして藤木やりえがその光に気を取られた。
後書き
次回は・・・
「解き放たれた効力」
笹山が使用したボールペンのような道具から放たれた緑色の光は一体何を示すのか。そしてその際りえは眠ってしまい、ある夢を見る。そして藤木達が紂王の屋敷に着いた時、りえが起きるのだが・・・・!?
276 解き放たれた効力
前書き
《前回》
三河口達の所に杉山が接近しているとの情報を知ったかよ子は三河口を助けに行くと決めて進路変更する。一方、かよ子達に先んじて藤木との再会に成功した笹山は藤木に元の世界に戻ろうと促すも拒否されてしまう。そして妲己が九尾の狐に変化し、遊女と衛兵達が攻撃する。姚崇と張説が応戦する。だが、劣勢となった所で笹山はフローレンスから貰ったボールペンのような道具の使用に踏み切った!!
笹山はフローレンスから託されたボールペンを使用した。緑色の光が塔のように放たれた。
「こ、これは一体・・・!?」
その時、妲己の姿が元の人間形態に戻った。遊女や衛兵たちも能力を出せなくなる。
「妲己、戻るのだ!おそらくこれはまずい事になるぞ!!」
「は、はい!!」
紂王や妲己の一行は慌てて馬車に戻った。
「う、あああ!!」
「笹山かず子、皆が逃げる!食い止めよ!」
「う、うん!!」
笹山は捨て身で藤木のいる馬車へと走った。しかし、馬車は笹山にとってありえないほどの高速で進んでいき、直ぐに遠ざかって行ってしまった。
「藤木君、藤木君・・・!!」
笹山は追いつけなかった。
(そんな、連れ帰せなかった・・・。藤木君、むしろ嫌がってた・・・)
笹山は泣き崩れた。そんなに自分が嫌になってしまったのか。確かに自分も山田かよ子を野良犬かあ見捨てた事を咎めた一件で嫌った事を考えるとそうなるのも無理はないのかと思ってしまうのだった。
「待て、笹山かず子。まだ絶望するには早い」
「え?」
「お主のその道具を見よ」
笹山はようすうに言われて見た。フローレンスから託され、先程使用したボールペンのような道具は一時的に変色した緑色から元の白に戻っていた。
「元の色に戻ってる・・・?」
「ああ、もしかしたらそなたと同じくあの少年を探している者達にもその道具の力を分け与えたのかもしれんぞ」
「ええ、そうだと、いいですね・・・」
しかし、笹山はその気持ちが藤木、そして彼を捜索しているかよ子達に届くか、まだ不安だった。
妲己の一行は慌てて屋敷へと戻る。
「くう、何なんだったのだ、あの小娘は?」
「どうやら少年の古い知り合いかもしれんな」
「杖の所有者達とは何らかの関係があるのかもしれんな」
「ああ・・・、はっ!」
妲己は運んでいて置いていた薔薇を見た。全てが枯れてしまっていた。
(まさか、あの小娘の道具か・・!?)
そしてもう一つ、懸念事項ができてしまった。
(この薔薇が枯れたって事は・・・!!)
「妲己、レーニンに報告すべきだ!」
「ええ!」
藤木はりえと共に帰るが、りえは眠り出した。
(りえちゃん、ごめんよ、面倒くさい事に関わらせて。帰ったらゆっくり休もう・・・)
りえは眠っている間の事である。
(藤木君、スケート、カッコよかったわ。また私と一緒に滑ってくれるかしら・・・。それからまたピアノを聴かせてあげよう・・・)
そう思ったりえにどこからか声が聞こえた。
[いつまで寝てるのっ!?]
(え?)
[あれは催眠術よ!私が本当に好きなのはっ・・・!!]
(私が好きな人・・・。藤木君じゃなくてっ・・・!!)
そして鏡に映ったかのようにもう一人の自分自身が現れた。
(杉山君・・・)
[そうっ、杉山君よっ、さっきまで藤木君のお嫁さんごっこに付き合わされてたのっ!]
(はっ・・・!!)
そして周りが真っ黒になった。
その一方、三河口のいる所への合流を急いでいるかよ子達は間もなく夕食どきという事も忘れていた。その時、かよ子達の所に緑色の光が見えた。
「こ、これは・・・?」
かよ子はその時、その光が自分達のいる所とまた別の場所を結んでいる線のように見えた。
「こ、これは何だ?」
石松はその光が気になった。
「また敵の攻撃か?」
「いや、敵の気配はしねえ。別の何かだ」
大野は見聞の能力を通して察した。
「山田かよ子、本部に連絡するのだ!」
「う、うん!!」
かよ子は通信機を出した。慌てて落とすというおっちょこちょいをやってしまうも、本部に連絡を繋げた。
本部では間もなく夕食時の為フローレンスとイマヌエルは管制室より離れていた。その時、通信機が鳴る。
「こちらフローレンス。どうしました?」
『こちら山田かよ子!フ、フローレンスさん!?今、私達の所に緑色の光が出てるんだけど、一体何が起きてるのか気になって!!』
「ああ、それはですね、その場所に藤木茂君がいます事を伝えます印なのです。その光が示します方角に藤木茂君がいますといいます事なのです」
『そ、そうなんですか。でも、私は、三河口のお兄ちゃん達が気になって・・・』
「そうでしたわね。しかし、どちらを優先しますかは貴女方次第ですよ。皆さんとよく話し合いまして決めてくださいね」
『は、はい・・・』
「後は大丈夫ですか?」
『はい、ありがとうございました!』
通信が終了した。
「フローレンス」
「はい?」
「その緑色の光が山田かよ子君達に藤木茂君の居場所を教える事になるって事は、もしかして君が派遣させた女の子によるものじゃないのかい?それもその藤木茂君に会えたって事だろうな」
「そうですわね・・・」
フローレンスは気になった。
(笹山かず子ちゃん、無事でいてください・・・)
フローレンスは気になった。笹山が藤木との遭遇に成功したならば彼女も抹殺対象になる可能性は十分にあるという事を。
紂王の屋敷に戻って来た。
「茂様、到着しました」
遊女が馬車の屋形の扉を開けた。
「あ、うん・・・」
藤木も気付いたらいつの間にか自分も眠ってしまっていたことに気付いた。
「坊や、無事かね?」
「あ、はい」
妲己と紂王が既に出迎えていた。
「りえちゃん、着いたよ」
「・・・」
りえは無言で起きた。
(私は今までっ・・・)
そして隣に藤木がいた。
(藤木君っ・・・。そうだったっ、私、藤木君のお嫁さんにさせられてたんだったわっ・・・!!)
りえはそしてその場にいた紂王と妲己を睨む。
(確かに洗脳が解かれてしまっていたか・・・)
妲己にはりえの表情を見るだけですぐに察する事ができた。
「身体が冷えてしまっただろう。今夜は温かい料理の予定だ。楽しみにするがよい」
「はい」
「・・・」
藤木は朗らかに返事をしたが、りえは無言でしかめっ面だった。二人は部屋に戻る。洗脳を解かれたりえにとって藤木と共に部屋にいる時ははまた落ち着かない状態に戻った。
「りえちゃん、どうしたんだい?」
「あっ、いやっ・・・」
りえは誤魔化そうとしたが、藤木には馬車に乗る前の時のりえと感じが異なっている事に気付いた。
(やっぱり、りえちゃん、寒いのが嫌だったのかな?)
しかし、藤木はりえの本当の真意を見抜いていなかった。
杉山はレーニンと共に進む。その時、トランシーバーが鳴る。
「こちらレーニンだ。どうした?」
『こちら妲己。先程見知らぬ小娘と遭遇しまして祝言の際にナポレオンから貰った薔薇がその小娘によって破壊されてしまいまして、そのせいで安藤りえが元に戻ってしまったようです』
「ナポレオンから貰った薔薇がだと?その小娘はどんな者だった?」
『あの藤木茂とは知り合いの者のようでしたが、則天武后の側近と行動を共にしていました』
「ところでその女子ってのは杖の所有者じゃねえのか?」
杉山がレーニンに代わって出てきた。
『いいや、全く別の小娘でした。おそらく藤木茂坊との会話から以前想っていた女子だったと思われます。しかし、その者が杖の所有者とも繋がりを持っているとなると厄介な事になります』
「そうか」
レーニンの姿に戻った。
「構わん。見つけ次第、その小娘も危険分子として扱う。発見次第、排除するのだ」
『了解しました』
通信が切れた。
(前に藤木が好きなってた女子って事か?となると・・・)
杉山は記憶を探る。
(まさか、笹山も来てんのか・・・!?)
杉山にとっても予想外の答えだった。
(だが、今は向こうの方に行かねえとな・・・)
藤木達は夕食会とした。
「うわあ、すき焼きだ!それにおでんや魚の鍋まで!!」
すき焼きにおでん、寄せ鍋と鍋ものでいっぱいだった。
「りえちゃんも食べようよ!」
「・・・」
りえは無言で椅子に座った。藤木はいただきますを言った後、早速料理に手を付ける。
「うわあ、茂様、とても進んでいますね!」
「いやあ、美味しくて・・・」
「ありがとうございます」
料理を担当した遊女が照れた。
「りえ様はお召しにならないのですか?」
「あ・・・」
りえは箸を持った。夕食の時は進んでいった。
後書き
次回は・・・
「吐き出された本音、そして絶望」
かよ子の連絡を聞いた三河口は冬田に羽根を東の方向へと進めさせる。食事を終えた藤木は先程までとは異なりぎこちない態度のりえに変に思う。単に疲れているのかと思っていたのだが、りえの洗脳は既に解かれており・・・!?
277 吐き出された本音、そして絶望
前書き
《前回》
笹山は藤木と再会するも連れ帰すのに失敗してしまった。しかし彼女が使用した道具から緑色の光が塔のように出現し、かよ子達はその光が藤木の居場所を示す光だとフローレンスから知らされる。また、その道具の能力によって今まで藤木に好意を見せるように洗脳されていたりえが元の状態に戻る。そしてりえはまた今の状態から脱出したいという気持ちになり・・・!?
かよ子達は三河口達の元へ合流を急ぐ。その時、通信機が鳴った。
『藤木救出班の皆、こちらイマヌエルだ。レーニンや藤木茂君の行方も気になるとは思うが、夕食時だ。食事してから向かうといいよ』
「あ、はい、ありがとうございます・・・」
イマヌエルによってその場に食事が瞬間移動で提供された。エビフライに白身魚、カキフライのミックスフライだった。
「おお~、今日はご馳走だねえ~、イマヌエルさんもたまには気が利くじゃん」
「おお、これからの戦いにはもってこいの御馳走じゃな」
まる子と友蔵は早速よだれを垂らしそうになった。
(『たまには気が利く』ってちょっと失礼じゃないの・・・?)
かよ子は心の中でまる子にツッコミを入れた。
「それにしてもお兄ちゃん達無事かな・・・?」
「そういえばあの三河口健はこの世界最上位の能力を持つ剣を奪還した後は何をしているのか・・・」
「そういえばこちらは何も聞いとらん」
「そっか・・・。もしかしたらりえちゃんやりえちゃんの杯を探してるかもしれないね・・・」
かよ子は知り合いの高校生がなぜか気になるのだった。思い切って通信機を出して連絡してみようと思った。
「もしもし。こちら山田かよ子」
『こちら三河口健。かよちゃんか、どうかしたのか?』
「お兄ちゃん、そっちに杉山君達が近づいてるってフローレンスさんが言ってたんだ!」
『杉山君が?解った、準備しておく』
「それでなんだけど、私達も近くにいるから応援しにいくよ」
『ありがたいが、藤木君の方はどうするんだ?折角杖を取り返したというのに寄り道してる余裕があるのか?』
「解ってるけど、お兄ちゃんの事も心配なんだよ・・・!」
『それでおっちょこちょいしても知らんよ』
「あ、うん・・・」
通信を終了させた。
三河口は食事を終えた後にかよ子と連絡していた。その連絡が終了すると、冬田が聞いてきた。
「ねえねえ、お兄さあん、山田さん達がこっちに来るって事は大野君達もこっちに来るって事お?」
「そうなるだろう。しかし、かよちゃん達に本来の使命を蔑ろにして貰っても困るんだがな・・・。だがかよちゃん達が近くにいるって事は藤木って少年も近くにいるって事か・・・。俺達がかよちゃん達の目的地に寄ってもいいかもしれんな」
「それで杯が見つかるのか?」
「それとも大野君達のお手伝いするのお?」
「いや、杯を奪った奴が藤木のいる所にあってりえちゃんもそこに囚われているとなると、そいつに杯の在処を吐かせてりえちゃんや藤木を見つけ次第かよちゃんやありちゃん達に報告するつもりだ」
三河口が急に警戒を強めた顔に変わった。
「どうした?」
湘木が聞いた。
「来ているようだな。その戦争主義の世界の長がな・・・!!冬田、羽根を東の方角へ動かせ」
「え?大野君達を待たなくていいのお?」
「逃げながら戦う。つっても俺達がそのりえちゃんを連れ去った奴の所へ行った方が向こうの思う壺かもしれんがな」
三人は藤木救出班の目的地へ移動し始めた。
食後、藤木は部屋に戻ろうとしたが、りえはそのまま椅子から立ち上がらなかった。
「りえちゃん、どうしたんだい?」
「あ、ううん・・・」
(今まで私は藤木君が好きになるように操られてたって言うのっ・・・!?)
りえは黙って部屋に戻った。
「りえちゃん、明日は何して遊ぼうか」
「う、その・・・」
「どうしたんだい?もしかして疲れたのかい?」
「いや・・・。私、その・・・」
りえは本音を言おうか迷った。そして部屋に戻る。
「僕はお風呂入って来るよ」
「行ってらっしゃい・・・」
藤木は部屋から出た。そしてりえは考える。
(私はあの時・・・。眠くなって・・・。これも妲己って人の術っ!?)
りえはそう思うと憎悪が心に籠る。
(早く、ここから出たいっ!それから私の杯は一体どこにあるのっ!?)
暫くして藤木が入浴を済ませて戻って来た。
「只今、りえちゃん・・・」
りえは窓際に離れていた。
「藤木君・・・。私・・・」
(ど、どうしたんだろう・・・?)
「私、本当はここにいたくないっ!」
「え?」
「私はここにいたくないのっ!私達がいるこの世界は戦争を正義としてるこの世界なのっ!この世界は今世界でテロ活動してる赤軍って人と組んで日本をまた戦争を起こす国にしようとしてるのよっ!私達はかよちゃんとか杉山君とかと一緒に平和を正義としてる世界の人と協力してそれを止めようとしてるのよっ!その為にこの世界に来てるのっ!確かに藤木君からしたら元の世界にいるよりもこの世界にいた方が楽かもしれないけど、私は嫌っ!」
「ど、どうしたんだい!?さっきまでは僕と一緒にいるの楽しんでたのに・・・」
「私、藤木君は友達だと思ってるけど、私は本当はっ、本当はっ・・・!!」
「え・・・?」
「私は夏休みの時に喧嘩してたけど、杉山君の事がなんか気になってっ、だから私、藤木君の事は友達とは思っても好きとまでは思ってないのよっ!!」
りえは感情一杯にぶちまけた。
「そ、そんな・・・!!」
藤木はりえの言葉で呆然としてしまった。
(そ、そんな・・・、りえちゃんは・・・)
藤木は思い出した。思い出せば夏休みにりえと遊んだ時、杉山はりえと喧嘩してばかりいた。だから仲良くはないと思っていた。にも関わらずりえは杉山に好意を寄せている?藤木は信じられなかった。
「じゃあ、さっきまで僕に対して好きそうにしてたのは何だったんだい?あれは演技だったのかい?」
「さっきまで?」
「僕のスケートを見てカッコいいって、見惚れてたじゃないか。あれは一体なんだったんだい?」
「あ、あれは、本当の私じゃないわっ!何かの催眠術に掛かってたのよっ!」
「そ、そんな・・・」
藤木は傷ついた。祝言が終わった後からりえが自分に好意的になったのはあれは彼女の本心ではなかったのだ。自分は儚い楽しい夢を見せられていただけだったのか。
(そんな・・・、そうなんだ。りえちゃんは僕にはちっとも気がないんだ・・・。僕は笹山さんの事も忘れたし、もうそうなると、僕は誰を、好きになれるんだ・・・。誰が僕と一緒にいてくれるんだ・・・?)
藤木は今ここに好きなはずの女子といるのが急に辛くなった。
「そっか・・・。ごめんよ、りえちゃん・・・。僕は君が好きになったのに、君は好きじゃなかったんだね・・・。無理に連れて来てごめんよ・・・」
藤木は二度目の好きな人から嫌われた絶望を味わった。前の世界で野良犬に遭遇した時、山田かよ子を見捨てて逃げた時も笹山から失望された。そして今はりえから拒絶されている。りえがこの屋敷に来たばかりの時もりえから驚かれて受け容れられなかった。祝言の後は自分に好意を持ってくれたのかと思ったが、そうでもなかったのかと思うとますます心が痛む。
(・・・、僕は、僕は・・・!!)
だがりえから嫌われても笹山とよりを戻そうとは思わない。現に笹山が迎えに来た時と拒絶した。藤木はボロボロ涙が溢れ始めた。藤木は泣くのを我慢できず、部屋を出た。
三河口、湘木、そして冬田の三人はは東の方角へと急ぐ。目的地は藤木救出班と同じ場所だった。三河口は見聞の能力よりある事を察した。
「敵とは別の感触がする・・・。かよちゃん達が来たのか、それともありちゃん達が目的地に着いたのか、それともまた別の誰かがいる・・・」
「もしかして大野くうん?」
「そこまで解らん。だがレーニンも接近している」
そして三河口は北の方角を振り向いた。
「・・・追いつかれたか」
「久しぶりだな、小僧」
「レーニン!!」
三人は戦争主義の世界の長と遭遇した。
後書き
次回は・・・
「敵の世界の長との再戦」
レーニン・杉山と相対した冬田、湘木、そして三河口は戦いを開始させる。今のレーニンは三河口の異能の能力を写し取っている為、苦戦を強いられる。そして藤木を拒絶したりえは彼を傷つけたという事で妲己に粛清される事に・・・!?
278 敵の世界の長との再戦
前書き
《前回》
三河口の所に急ぐかよ子達藤木救出班は本部から夕食の支給があった為に休憩する。そして食事と入浴を終えた藤木に対して「藤木に好意を寄せる」という洗脳から既に解放されたりえは藤木とは友達と思ってはいるものの、本当は杉山が好きだと告白する。それを聞いた藤木は絶望し、りえといるのが辛くなってしまう。そして三河口、湘木、そして冬田の元にレーニンが!!
古代中国のような御殿の付近にてにある集団が集まっていた。
「あそこかしらね」
「はい、間違いないですよ」
一人の男子高校生が剣を向けて確認していた。
「そっちにりえちゃんがいるって事だね?」
「行くわよ」
彼女らは囚われて行方不明となった杯の所有者の少女を奪還しに動く者だった。その杯の所有者の友人に護符の所有者の姉、そして異世界の剣の奪還に貢献した高校生達などで構成された者だった。
藤木は部屋を出て屋敷内を彷徨っていた。
(僕はもう、誰かを好きになっても嫌われるだけなんだ・・・。やっぱり卑怯者って言われるからそんな奴、好きになれるはずないんだ・・・)
藤木はふととある広間に来ていた。ここはりえと祝言を挙げた会場でもあった。
「う・・・」
藤木は泣き始めた。
「茂様、どうかなされたのですか?」
一人の遊女が入って来た。
「あ・・・」
「茂様、何かあったのですか!?」
「その・・・、僕、りえちゃんに急に嫌われちゃって・・・」
「え?そんな、茂様、お可哀想に・・・!!今、妲己様と紂王様を呼んで参ります!」
遊女がその場を離れた。だが、別の遊女を呼んで藤木を宥めた。
「婿である茂様を冷遇されるなんて嫁のやる事かしら?」
「今からでも私が代わりのお嫁に!」
「う、ごめん、皆に迷惑かけて・・・」
「気になさらないで下さい!妲己様が何とかしてくださいますよ」
その広間に妲己と紂王が入って来た。
「少年よ、安藤りえ嬢に嫌われたとな?」
「はい・・・、本当は僕の事が好きじゃないって・・・」
(そうか、やはりあの薔薇が枯れてしまったからか・・・。しかし、替えの物を調達するには遅い、か・・・)
「解った。安藤りえ嬢は私が始末しておく。嫁を変えてもよいぞ」
「え?できるんですか?」
「ああ、ここにいる遊女をいくらでもやるとも」
「・・・、はい」
妲己は広間を出た。
「茂様、今夜は私の部屋に・・・」
「いえ、私の所の!」
「お前ら、順番に泊めてやればよかろう」
「はい、そうでした」
藤木は遊女の部屋に連れて行かれた。
(あの少年も絶望か・・・。まさかこれを機に元の世界に戻ろうとすると思われるとこちらに不利なのだが・・・)
紂王はある懸念をしていた。
三河口、湘木、冬田の三人はある人物と相対していた。
「また会ったか、レーニン、・・・いや、杉山君」
「す、杉山くうん?!」
「よお、また会ったな」
「どうやら少しは強くなったみたいだな。本来ならば今お手合わせしたくはなかったが・・・」
三河口は威圧の能力を発した。
「ふ、俺があっけなくやられるとでも思ってるのか?」
杉山が対処した。
(そうか、あの時、俺の能力全てを写し取ったのか・・・)
「湘木、冬田さん、奴は俺達の道具を写し取って自分の技として使う能力を得ている。写されないようなに気を付けろ」
「おお」
三河口の威圧の能力を出し続ける。だが杉山もまた威圧の能力で引き続き迎撃する。
(そういえば・・・、前に黒手組と戦った時、俺や光江ちゃんの威圧の能力と奴等の機械の威圧の能力がぶつかり合った時、お互いの能力は正常に動作しなくなるようだったな・・・。だが・・・)
三河口は別の事を気にする。
(レーニンもまた別の能力を吸収してるだろ、例えば俺達が奪いに来るまで保管していた剣とかを・・・!!)
冬田が羽根で放水し、レーニンを押し流す。湘木も斧で水圧を放ち、加勢した。
(様子見・・・?しかし、杉山君の命を取るまでいくとこっちがまずくなる。だから戦闘不能にしても殺害はできん・・・!!)
「ふ・・・、この小僧といると能力が上手く作動せん・・・!!)
レーニンは急に衝撃波を放った。湘木と冬田の合体した水の攻撃が急に巻き返された。
「な・・・!!」
(やはり剣か、それとも別の能力を写し取っていたか!!)
三河口はそう察した。
「貴様らは反逆罪で死んでもらう!」
レーニンが無数の槍を四方八方に飛ばす。
「な!」
湘木が大木を出して楯とし、その動く枝で槍を弾き返した。しかし、数が多すぎてきりがない。
「く!」
三河口は武装の能力で返すが、これでは防御に精一杯である。
「ははは、それで守っても戦いは長引くだけだ」
「どうだ、前の俺より増しになったか?」
レーニンが杉山の姿に変わった。
「ああ、そうだな。だが、大将に近づけてもまだ認められる程ではない!」
「何!?」
杉山は衝撃波を三河口に向けて放つ。だが、三河口はそれらも武装の能力で防いでしまう。
「冬田、攻撃しろ!」
「あ、はい!」
水の攻撃を防がれて動けなくなっていた冬田に指示した。だが、レーニンおよび杉山は同時に武装の能力で防御した。
「防がれたか!」
「そういえば貴様、新たな武器を手にしたと聞くが、使用しないのか?」
「何の事だ?」
三河口はとぼけたが、バレていると解っていた。自身の従姉である護符の所有者ら本部守備班達と共闘した時に護符の能力で出された鎖鉄球の事である。アンドリューに西川純との戦いを突破するのに貢献し、ベニートという男ともその鎖鉄球で奮闘した。おそらくベニートを介してその事を知ったのではないかと三河口は推察した。
(だが、あれは『仮の武器』・・・。無闇には出したくない・・・)
三河口はできれば最後の切り札としてその武器は温存しておきたかったのである。
「なら私が否応なく使わせるほど貴様らを痛めつけてやろう」
レーニンの攻撃が激しくなった。
(だめだ、前に進めん・・・!!)
「ほう、どうやらもっといい餌が来てくれたようだ」
「は?」
その時、岩石が飛んできた。レーニンは武装の能力で弾こうとするが防ぎきれず、右肩に当てられた。
「もしかして・・・」
「大野くうん!?」
冬田は嬉々として西側を向いた。そこには杖の所有者・山田かよ子や大野けんいち、まる子ことさくらももこ、ブー太郎こと富田太郎などで構成された藤木救出班が駆けつけていた。
「よう、お前ら」
「杉山!」
「す、杉山君・・・!!」
杖の所有者は好きな男子に再会できたが共に知り合いの高校生と戦う事で食い止めねばという複雑な気持ちだった。
「やっと会えたね、杉山君・・・!!」
かよ子は杉山とは遠隔で幾度か会話しているが、本人と直接会うのは初めてだった。だが、見聞の能力を持っていないかよ子でも戦争主義の世界の長と合体した杉山には少し怯えそうになった。
藤木が去った後の部屋。りえは一人だけになった部屋にただ佇んでいた。
(藤木君を傷つけちゃったかしら・・・?でもっ、私は本当の事を言ったわっ、それでも藤木君が元の世界に戻りたいって思わせなきゃっ・・・!!)
その時、戸が開いた。
「藤木君っ・・・?」
しかし、入って来たのは藤木ではなく、妲己だった。
「安藤りえ嬢、お前は婿である藤木茂を泣かせたそうね」
「う・・・」
「お前はあの婿が気に入らないのか?祝言を挙げたというのに」
「そ、それは・・・」
(まずいわっ、既にバレたのねっ・・・!!)
りえは焦る。このままでは自分の命が消されてしまうと。
「それなら嫁は他の者に変えよう。もうお前は用済みだ」
その時、爆発音が響いた。
「な、何だ!?」
妲己もりえも何事かと思う。りえは窓を見た。
「あれはっ・・・!!」
りえはあるものを確認した。それには見覚えがあった。あれはアイヌの神、カムイである。
(ありさん達が来てくれたのねっ!)
りえは救援で希望が見えると思うのだった。
後書き
次回は・・・
「杖の通用具合」
羽柴家の次女・あり達はりえを奪還すべく紂王の屋敷を襲撃していく。そしてレーニンおよび杉山と交戦する三河口の所に辿り着いたかよ子は自分の進化した杖でレーニンとどれだけ対抗できるか試みる。レーニンはその杖の能力を吸収しようとする・・・!!
279 杖の通用具合
前書き
《前回》
りえに拒絶され、二度目の失恋を経験した藤木は遊女達に慰められる。三河口、湘木、そして冬田は戦争主義の世界の長・レーニンおよび杉山と顔を合わせる。ベニートから三河口は武器として鎖鉄球を使用していると連絡を受けているが、三河口は温存の為に使用してこない。そして冬田にとって嬉しい援軍・山田かよ子ら藤木救出班が現れる。そして藤木を拒絶したりえは妲己により処刑されそうになるが、その場で助けが遂に訪れる・・・!?
杯の所有者を奪還する為に動いている者達は彼女が囚われていると思われる屋敷に辿り着いた。
「エク・カムイ!」
その一人の女性・煮雪ありは己の道具を使用する。彼女はタマサイでアイヌの神・カムイを呼び起こす事ができるのである。
「よし、ワイらも行くで!」
鎌山健次郎が鎌を振り回して鎌鼬を起こした。屋敷の屋根の一部が破壊された。
「よし、このまま追撃だ!俺は救援を召喚する!」
ありの夫・煮雪悠一はテクンカネを利用する。協力者を増やそうと試みた。二人の武将が現れた。
「私を呼んだのはお前かね」
「はっ。あそこに杯の所有者の女の子がいるので助けて欲しいのだが」
「よかろう。この景勝と我が家臣・兼続も協力しよう。行くぞ、兼続」
「はっ、しかと心得ました」
二人の新たな味方を付けた一行はその屋敷へ侵攻するのだった。
三河口、湘木、冬田に対して戦争主義の世界の長・レーニンと彼と同体化している杉山との戦闘は激しくなる。その時、藤木救出班が現れたのだった。
「お兄ちゃん!」
かよ子は知り合いの高校生を呼ぶ。
「かよちゃんか・・・。藤木君の方はいいのか?」
「確かにそっちも心配だけど、お兄ちゃん達の方は大丈夫なの?」
「確かに言われるとそうではないが・・・。まあいい、手伝って貰おうか」
「来てくれたのか、杖の所有者よ、素晴らしい。ブラド三世が奪ったにも拘らず、ヴィクトリア女帝が守り抜けなかったその杖をもう一度貰おう!」
「山田、お前がどれだけ強くなったか見てえな」
レーニンと杉山が交互に顔を変えた。
「行くよ!」
かよ子は杖を向けた。火炎放射をかます。だが、レーニンは既に異能の能力で防御してしまった。
「皆、こいつは俺の異能の能力を吸い取って自分の物としている!」
「え!?」
「こいつは俺達も加勢だな!」
藤木救出班の他の面々も参戦していく。
「杉山、お前、これ覚えてるか?」
大野はある物を見せた。それは嘗て杉山の物だったが、大野の転校の件で喧嘩した時、杉山が一度放棄した雷の石だった。
「俺の石・・・、か。届けに来てくれたのか?」
「ちげえよ。俺は親友の義理で山田に頼まれて預かってるだけだ。だが、なんだかんだでお前の石も役に立ってるぜ」
「そうか・・・」
杉山はどこか嬉しくも感じていた。これは喧嘩したものの親友としての証になっているのか、それともまた別の理由か・・・。
「くだらん思い出話はいい!」
レーニンの姿に戻り、レーニンは衝撃波を放つ。だがかよ子の羽根の結界で防御した。
「その杖の能力、寄越す気がなければそれを吸収させて貰うまでだ」
「吸収!?」
「なんじゃ、吸い取るのか?」
友蔵には言葉の意味が解らなかった。
「山田かよ子の杖の能力を吸収するという意味だ」
「何と!」
レーニンの能力吸収の術が始まった。三河口やかよ子が武装の能力を発動させるが、レーニンには武装の能力が通用しなかった。
(この男の吸収術に武装の能力による防御は効かなかったっけか・・・)
三河口は戦争主義の世界の本部で剣を取り返した時にレーニンと対面した事を思い出した。その時は武装の能力が通用せずにあっけなく己の能力を吸収されてしまったのである。
「終わりだ、杖の能力を・・・」
だが、レーニンの吸収能力が効かなかった。
「ええい!」
かよ子の杖から白い光が放たれた。そして讃美歌を奏でるようなオルガンの音色が聞こえて来たのだった。
「こ、これは・・・」
「白魔術の能力だよ」
「白魔術、だと・・・!?」
白魔術を行使する能力。それはかよ子がラ・ヴォワザンにモンテスパン公爵夫人と戦った時に彼女らが使用する黒魔術に対抗したいという気持ちから杖が強化されて得た能力である。
(あいつ、杖にそんな能力を身に付けたのか・・・!!)
この杖の進化には杉山でも驚かされた。そしてその白魔術による音楽はレーニンの吸収能力を通さなかった。
「な・・・!!」
そして杖から電撃が放たれる。
「山田かよ子、杉山さとしを巻き添えにしてはならぬぞ!」
石松が注意した。
「うん!」
かよ子はやや手加減して電撃を浴びせた。
「俺達も行くぞ」
三河口も接近した。
「ほう、貴様からやるか」
レーニンが三河口を攻撃対象に変えた。衝撃波が放たれる。だが三河口はそれを武装の能力で全て防御する。レーニンはその衝撃波を武装の能力で強めてさらに強化させる。だが、強化が途中で止まった。
「何?」
「俺が止めてやったよ!」
関根の刀がレーニンの武装の能力で一時的に吸収したのだった。
「感謝します!」
三河口は手短に礼をしたが、余所見をせず武装の能力と合わせて突進した。だがレーニンは衝撃波でそれを止めようとする。だが三河口の武装の能力も負けていなかった。お互いが睨み合ったまま動かない。
(す、凄い・・・!!)
かよ子は白魔術で電撃を強めた。
(む、白魔術で強化しおって・・・!!)
「こっちは俺が防いでやるよ」
杉山が武装の能力でかよ子の電撃を防御した。
(レーニンはお兄ちゃんが戦ってるけど私の方は杉山君が相手してるんだ・・・!!)
かよ子は構わず白魔術を含めた電撃で引き続き攻撃する。三河口が武装の能力でレーニンを吹き飛ばそうとした。
「このお、ブー!」
ブー太郎や大野なども石で攻撃した。
(ち、俺もあの石を持ってたらな・・・)
杉山は大野と体育館裏で喧嘩した時、雷の石を捨ててしまった事を悔やむ。だが、後悔しても遅い。一方、レーニンの衝撃波は次々と三河口に弾かれる。そして、三河口は遂にあれを出した。さりの護符で出した鎖鉄球だった。三河口は切り札として今迄温存していたものである。
「ええ、お兄ちゃん、道具を貰っていたの!?」
「ああ、『仮の武器』だが」
(仮の武器?どういう事・・・)
だが気にしている場合ではない。三河口は鎖鉄球を振り回して飛行した。
「す、凄い・・・!あんな事できるの!?」
レーニンは飛行した三河口に無数の槍を飛ばした。だが、振り回した鎖の風圧が全てを弾く。そして鎖鉄球をレーニンにぶつける。レーニンは何とか武装の能力で防ごうとしたが、吹き飛ばされた。
「あれが、ベニートが言っていた鎖鉄球だな・・・!!」
同時に吹き飛ばされた杉山もまた驚かされた。
(あいつもまた強くなったのか・・・)
「杉山!自分の能力を受けてみろ!」
大野が叫んだ。杉山は大野が嘗て自分のものだった雷の石を使用してきたのだ。
(俺の石の能力・・・!!)
「よし、俺の法力を加えてやるぞ!」
法印大五郎の法力が発動された。杉山は武装の能力で防ごうとするが防ぎきれない。かよ子も再び電撃で己の電撃を強めようとする。
「レーニン、いや、杉山君、終わりにするよ・・・!!」
紂王の屋敷。藤木は遊女の個室で宥められていた。
「私が茂様のお嫁になれたらいいのに。安藤りえ嬢の代わりにはならないとは思いますが・・・」
「う、そんな事、ないよ・・・。君だって可愛いし・・・」
「兎に角、安藤りえ嬢は妲己様が処分すると思うので嫌な女はいなくなって安心しますね」
「いなくなるって、りえちゃんはどうなるのかい?」
「そうですね、本来ならばここに来てはいけないはずの人なので、殺害されると思いますが」
「え、ちょ、それだけは、それだけはやめてくれよ!」
「え、どうしてですか?」
「その、それでも僕はりえちゃんを守るって決めたんだ・・・。妲己さんにお願いしてくるよ。りえちゃんを殺すなんてそんな酷い事はできないよ!!」
藤木は部屋を飛び出し、りえとの部屋に戻ろうと走った。
「し、茂様!!」
遊女は追いかけた。その時、「ドーン!」「ガラガラ」と爆発音や物が崩壊するような音がやかましく建物内に響いた。
「な、何だ!?」
藤木も、その場にいる遊女も何事かと驚いた。その場に紂王が走って現れた。
「おい、大変だ!敵襲だ!!」
「テキシュー?」
藤木は一瞬何を言っているのか理解できなかった。
「茂様や私達を襲いに来た人がいるんです!今すぐ逃げないと!」
「え?う、うん!!」
藤木遊女や紂王と共に逃走の準備を始めるのだった。
後書き
次回は・・・
「屋敷の襲撃」
レーニンおよび杉山と交戦するかよ子達だが、藤木のいる方角にて喧騒が発生する。三河口にいわれて急ぐかよ子だが、杉山、そして冬田達もも藤木のいる方向へと向かう。紂王の屋敷ではあり達がりえの奪還の為に侵攻していた。藤木は逃げようとするりえを忘れて避難しようとするもある約束を思い出し・・・!?
280 屋敷の襲撃
前書き
《前回》
あり達は紂王の屋敷に辿り着き、りえの奪還として侵攻を開始した。レーニンおよび杉山と交戦する現場に到着したかよ子は早速杖を使用する。白魔術の能力を得た攻撃はレーニンや杉山でも驚かされる。そして大野は嘗て杉山の物だった雷の石を見せる。杉山は大野に対して喧嘩しながらも親友としての何かを感じる・・・!!
りえは藤木に本音をぶちまけて泣かせた事で妲己の怒りを買う事になっていた。しかし、何かが騒がしい音が聞こえて二人共錯乱した。窓から確認してみると、アイヌの神、カムイがいた。
(ありさんが来てるんだっ・・・!!)
りえは思い切り手を振った。
「私、ここよっ!!」
「この女!」
妲己は九尾の狐に変化する。
(はっ・・・)
りえはやられると思った。だが、この状況なら異能の能力を発揮できるチャンスだと思った。
「うぐっ!」
妲己が跳ね飛ばされた。これはりえの武装の能力だと察した。
「この小娘が!」
妲己は怒り、炎を吹いた。りえを焼くつもりだった。
かよ子の杖から白魔術の能力で強化された電撃がレーニンを襲う。但し杉山を犠牲にする事からか致死レベルまでは与えずに手加減はしていた。
「頑張れ、かよちゃん!」
「おお、凄いぞ~」
まる子と友蔵がかよ子を応援した。だがその時、遠くからざわめきが聞こえた。
「え、何!?」
皆は慌てた。よく見たら遠くから煙が立ち上がっている。その方角は奇しくも緑色の光が示す方角だった。
「あれって・・・!?」
「藤木がいる所の屋敷だぞ」
「ええ!?」
かよ子は驚いて光の方角を向いた。そのせいで集中力が途切れて電撃が消えてしまった。
「あ、私の攻撃が!」
その時、レーニンが杉山の姿に変わった。
「ワリいな、生憎だが俺もそこへ行かせてくれよ」
杉山は立ち去ろうとした。だが、足に何かが巻き付いた。
「行かすか。お前は俺が相手してやる。それにそのまま立ち去って大将になったつもりか?」
三河口が鎖鉄球で足止めした。
「かよちゃん、皆でその藤木君ってとこに行け!」
「え?」
「こいつは俺が相手する。それとも獲物を逃がすなんておっちょこちょいする気か?」
「山田かよ子、三河口健の言う通りだ!急ぐぞ!」
石松が促した。
「うん!」
かよ子は藤木救出班に次郎長一派の皆と共に藤木がいる場所へと急いだ。
「大野くうん・・・。私もお!」
「君はこっちにいろ!」
冬田も大野について行こうとしたが、三河口に制止された。
「おい、俺も行かせてくれよ」
「なら俺を倒してからにしろよ、臆病者」
「な・・・!!」
杉山は胸糞悪く思う。臆病者。これは嘗て夏休みに杯の所有者の女子から言われた言葉であり、秘密基地の前の丘の上での決闘でも三河口から言われた言葉でもある。
「俺は、臆病者じゃねえええ!!!」
杉山の武装の能力が発動した。鎖が彼の足から外れた。三河口がもう一度鎖鉄球を投げ、湘木が斧で蔓を出して杉山を足止めしようとする。しかし、杉山の武装の能力が発動される。
「あっちの方向だな!」
杉山は高速でかよ子達と同じ方角へと向かった。
「行っちまったか・・・」
「いや、向こうで戦いが始まったってんならこっちにも都合がいいかもしれん。俺達も行こう」
三河口は湘木、冬田と共にレーニンと杉山を追い始めた。
(向こうにも何かよく知る気配がするんだ・・・)
三河口はそのような気配を見聞の能力で感じ取っていた。
(藤木ってのが向こうにいるって事はおそらく・・・!!)
藤木は屋敷の異変により遊女や中央と共に逃げる準備をする。
「茂様、早く、馬車にお乗りになって下さい!」
「あ、うん・・・」
藤木はふと先ほどりえから色々と冷たい態度を取られて部屋を出て行ってしまった事を思い出す。
(りえちゃん・・・)
藤木は気になった。これでいいのか。
(そうだ、それでも僕は、りえちゃんを守るんじゃなかったのか・・・。これで見捨てるなんて、僕は本当の卑怯者だ・・・)
藤木は屋敷の内部へと引き返す。
「茂様、どちらへ行かれるのですか!?」
「僕、ちょっとトイレ!」
藤木は猛ダッシュした。
りえは九尾の狐に変化した妲己の炎撃で焼かれそうになった。りえの武装の能力は攻撃寄りの為、防御する才覚はない。
(う、杯があればっ・・・!!)
その時、窓や壁が鎌鼬で破壊された。
「な・・・!?」
妲己はその破壊された壁から二人の男が現れた。いかにも戦国武将のような姿をしている。
「お主、杯の所有者か?」
「は、はいっ!」
「お前らは何だ!?」
「杯の所有者の奪還に協力する者」
(あの者達来てたのか・・・!!)
その時、その武将の片方がりえを連れて行こうとした。
「さあ、この兼続があなたの仲間の所へ・・・」
「行かせるか!」
妲己は妖術を掛ける。兼続からりえがみえなくなった。
「あれ、所有者!?どこだ!?」
兼続は見回す。
「えっ、どうしてっ!?ここにいるじゃないっ!!」
りえは大声で叫んだ。だが妲己が掛けた妖術はこの二人の武将からは全く見えず、声も聞こえないようにさせる術だった。
「貴様、一体何をした!?」
「さて、さっさと・・・」
その時、乱暴に扉が開けられた。
「りえちゃん!!」
「ふ、藤木君っ!?」
「今のうちに逃げよう!変な奴等に襲われ・・・」
藤木は言う途中で正面を見た。その場に見慣れぬ者が二名いた。
「だ、誰だ!?」
「和が名は景勝。貴様は行方不明の者か!」
「な、何の事ですか?」
「坊や、逃げるのだ!」
「あ、はい、行こう、りえちゃん!」
「や、やめてっ!」
りえは嫌がった。
「僕は、君に嫌われたっていい・・・。でも、僕は君を守るって決めたんだ!!」
りえはその言葉に動揺した。妲己は妖術で大量の岩を出した。
「な・・・!!兼続、この部屋から退却だ!他の方向から当たるぞ!」
「おう!」
景勝、兼続は一先ず撤退した。
かよ子達は藤木がいると思われる屋敷に突入した。
「ふ、藤木くーん!!」
かよ子は兎に角叫んだ。しかし、爆音などで掻き消されてなかなか届かない。
「ん、あそこにいるのは俺達の仲間の気配がするぞ・・・」
関根は見聞の能力で読み取った。
「行ってみよう・・・!!」
かよ子達は羽根を飛ばした。
「あ、お姉さん達・・・!!」
彼女らは隣の家のおばさんの次女とその旦那、そして三河口の友人や大阪の高校生達だった。
「あれ、かよちゃん!」
あり達も藤木救出班の姿に気付いた。
「君達と同じ方向だったか」
「うん・・・、りえちゃんもここにいるの!?」
「そう思うんだ。俺の剣が光っているんだ」
濃藤が剣を見せた。
「兎に角、ここらの屋敷の奴らを倒さへんと話にならんで!」
大阪の高校生、立家隆太が告げた。
「よし、共同でそれぞれの探し人を見つけるのだ」
シャクシャインが案じた。
「うん!」
かよ子達は本来の作業を開始した。
妲己は藤木、りえと急いで撤退する。
(くう、この小娘をさっさと始末したかったのに・・・)
妲己はまさか途中で侵入者および藤木が介入して来た事が気に食わなかった。その時、通信用のトランシーバーが鳴る。
「はい、こちら妲己」
『こちらレーニンだ。紂王の屋敷が襲われているそうだが、無事なのか!?』
「はい、しかし、今杯の所有者と藤木茂少年を連れています」
『そうか』
レーニンの声が杉山に変わった。
「はい?」
『どっちも必ず生かしておけ。殺したら許さねえからな』
「え?あ、はい・・・!!」
『全く、まあよい。兎に角、何とか脱出して別の場所へ避難するのだ』
「はい、畏まりました」
通信を終了させた。
「坊や、安藤りえ嬢に嫌われたのにいいのか?」
「はい、それでも僕はりえちゃんを守るって決めましたから・・・」
「そうか・・・」
その時、巨大な大波が襲って来た。
「な!」
「り、りえちゃん!急ごう!」
「えっ!?」
「あ、あれは藤木かブー!?」
聞き覚えのある声だった。
(この声は、富田君!?)
「りえちゃんも一緒だよ!」
「よし、仕留めるぞ!」
りえは徹底的に藤木を振り切ろうとした。
「りえちゃん・・・」
「私、ここよっ!!藤木君もいるわっ!!」
りえは逃げた。
(りえちゃん、そんな・・・)
藤木はやはり自分の約束を守り抜こうとしてもりえから愛想を尽かされたままである事は解っていた。だがここまで拒絶するのか。
「茂様!!」
「早く逃げてください!」
遊女が走り寄って来た。
「あ、う、うん!!」
「妲己様、私達も加勢します!」
「ありがとう、この者を連れて行け!」
「はい!」
遊女の一人がりえを捕まえようとする。しかし、りえの武装の能力で遊女が弾き飛ばされた。べつの遊女がどこからか鞭を出してりえを拘束した。
「させねえよ!」
大きな蔓が鞭に巻き付いた。
「おい、大丈夫か!?」
「大野君っ!まるちゃんにブー太郎君もっ!!」
「今助けてやる!」
「そうはいかないよ!」
妲己が九尾の狐の姿で迎撃する。火炎放射だった。
「うわあ!」
「オイラがやるブー!」
ブー太郎の水の石で炎を消火する。
「某もいるぞ!」
大政が槍を投げた。槍が巨大化し、妲己の腹部を貫通しようとした。
「妲己様!」
遊女が楯になって妲己の守備に付いた。しかし、反撃の余地を与えらえず、遊女に槍が刺さって消えた。しかし、今までの人間が光と化したのと異なり、煙が上がって消えた。
「ふ、ここの遊女は我が妖術で出したものさ」
りえがまる子達の元へ向かおうとする。しかし、妲己が火炎放射を仕掛けた。
「りえちゃん!!」
「まずいぞ、燃えてしまうぞ!!」
友蔵は大慌てした。
後書き
次回は・・・
「妖術を打ち破れ」
藤木を探すかよ子とりえを探すありと悠一は紂王の屋敷を回り続ける。藤木とりえの姿を見たまる子や大野、ブー太郎達は妲己の妖術によって妨害され、上手く奪還できない。藤木は嫌われてでも守ると決心した為、りえを連れて逃げようとするのだが、りえにある事を言われて悩み・・・!?
281 妖術を打ち破れ
前書き
《前回》
レーニンおよび杉山と対峙するかよ子だったが、藤木がいるとされる方角が緑色に光った為、かよ子は戦いを中断してその光の方向へと急ぐ。杉山も向かおうとするが、三河口の鎖鉄球で足止めされ、更に臆病者呼ばわりされて激怒し、鎖鉄球を振り払い、藤木のいる場所へと急ぐ。藤木は遊女達と逃げようするも、自分の約束を思い出して嫌われたばかりと解っていながらもりえも連れて行こうとする。かよ子はあり達と合流し、藤木やりえを捜索する。そしてかよ子達と別行動していた大野達が藤木達を発見し、獲補に乗り出した!!
かよ子はあり・悠一、シャクシャインに次郎長と共に襲撃で混乱した屋敷を巡っていた。
(藤木君やりえちゃんはここにいる・・・!!)
かよ子は緑色の光が導くものは藤木の居場所だとイマヌエルから連絡を受けている。更に長山の報告によると藤木は攫われたりえと共にいるとまで聞いていたのだった。
「あ、あちらに侵入者だ!」
「追い払いましょう!」
数名の女性がかよ子達の前に立ちはだかった。だが、ありがカムイを召喚する。女性達をあっけなく返り討ちにした。
「キャアア!」
悠一もテクンカネでシャクシャインの能力を強化させた。
「そりゃ!!」
シャクシャインも女性達を襲撃する。遊女達は龍や虎などを召喚して対抗した。
「よし、私も!」
かよ子も怠ける訳にはいかなかった。杖を剣に変化させた。かよ子は龍の喉を掻き切る。そして襲ってくる虎も剣を振り回して対抗した。
「山田かよ子、某も助太刀するぞ!」
次郎長も斬りにかかった。虎の胴体が切断されて消滅する。
「もう一度!」
女性達が虎や龍をもう一度召喚する。
「キリがないよ・・・!!」
「私が!」
ありがパヨカカムイを召喚した。パヨカカムイが虎や龍に突撃する。虎や龍が病を与えられて苦しんだ。
「次で終わりだよ!」
かよ子は電撃を女性達に浴びせる。
「あああ!!」
その女性達は電撃で焦がされてそのまま消滅した。だが、消え方に違和感があった。今までの異世界の人間ならば光と化すのにこの女性達は煙になって消えたのだ。
「この消え方は・・・!?」
「恐らくこれはこの世界で作り出されたものではなく、この屋敷の人間が作り出した人間だったのであろう」
次郎長が説明した。
「って事は藤木君はこの女の人達と今まで遊んでたの・・・!?」
「侵入者だ!排除せよ!!」
近衛兵や女性達がまたかよ子達を包囲した。
「また来た・・・!!」
かよ子は藤木を捜索する余裕を持たされず苦労した。
「あれは!」
「噂に聞く聖なる杖だ!奪え!!」
かよ子達は迎撃を始めた。ありがカムイを一体召喚する。ホヤウカムイという翼の生えた蛇が現れた。ホヤウカムイは突進し、悪臭を放つ。対して敵達は槍から衝撃波を放ったり、電撃などで対抗したりした。
「電撃・・・!!」
かよ子は電撃に杖を向け、更に強力な電撃を放ち、女性や兵達をなぎ倒す。そしてホヤウカムイの悪臭で多くの兵達が溶かされた。
「うご・・・」
「何よ、この臭い息・・・!!」
「ホヤウカムイの毒は近づいただけで皮膚が焼け爛れて死に至るのだ!!」
シャクシャインが解説した。
「よおし!!」
かよ子は杖から丸鋸を出してフリスビーのように発射した。ホヤウカムイの毒を避けようとしている者達を丸鋸が切り刻んだ。
「かよちゃん、凄いわね」
「うん、七つの泉で強くさせたんだ・・・!!」
敵がいなくなったところでかよ子達は別の場所へ移動した。
(あの人の妖術を何としても破らないと・・・!!)
しかし、かよ子には一つ気になった。どうすれば妲己の妖術を封じればいいのかという事である。
りえがまる子達の元へ走ろうとした時、妲己がりえに炎を吹きかけた。
「な!」
「りえちゃん!」
「大変じゃ、燃えてしまうぞ~!!」
友蔵は喚いている中、ブー太郎が水の石で消火を試みた。しかし、炎は消えない。
「これは燃やす為の炎じゃないぞ」
「何!?」
「さあ、坊や、逃げるのだ!この小娘と共にな」
「うん!」
鳳凰が現れてりえと藤木を乗せて逃げてしまった。
「逃がさないよ!」
お蝶が脇差を振る。遠距離で鳳凰を斬りつけようとしたが、失敗した。
「手分けせよ!」
石松が促した。
「うん!」
皆は撤退した。
「させないよ!」
妲己は妖術を使用し、巨大な石の壁を出して藤木救出班の一部を包囲した。
「取り返してやらないよ。そもそも、あの坊やはそちらの世界に帰りたがっていない。坊やの幸せを奪う気かい?」
「だ、だからってそんな卑怯な事はさせないブー!!」
ブー太郎が反論した。
「ほう、本気でそう思っているのかい?あの杯の所有者を嫁にしてやろうかと思って祝言を挙げてやったのにどうやら嫁の方は藤木茂坊が好みではないようだ」
「貴様の話など聞いている暇はない!!」
石松は石壁を破壊する。しかし、上から妲己が攻めて来る。
「まずい!攻撃して来るぞ!」
「くそお!」
大野は草の石を使う。大木が生えてその枝が妲己を串刺しにしようとする。
「おおっと!」
妲己は火を吹いて大野の攻撃を避けた。そして木に炎が付いて燃える。
「うわあ、枝が落ちてくるう!!」
「ま、まる子お〜!!」
まる子と友蔵が抱き合って泣き出した。
「もう一度消してやるブー!」
ブー太郎の水の石で炎を消した。そして焦げた枝を押し上げて飛ばした。
「富田太郎!お主の水の石でこの壁を砕けるかもしれぬ!」
「う、うん!やってみるブー!!」
ブー太郎は水の激流で石の壁の突破を試みた。
「ブー太郎、俺も手伝ってやる!」
大野の草の石で出した木が石の壁を殴りつけた。そして少しずつ壁にひびが入った。
「よし、某も行くぞ!」
その場にいた石松やお蝶、小政なども石の破壊を試みた。
「おお、頑張れ〜!」
友蔵は応援した。最もそれしかできないのだが。
「よおし、アタシも行くよ!」
まる子は炎の石で炎を出して壁の破壊を試みた。
「あれ!?」
「さくらももこ、炎では石の壁は効かぬ!」
「ええ!?」
だが少しずつ壁を破壊されてく。ブー太郎の水の勢いでようやく壁を全て打ち破った。
「やったブー!!」
「あの女はどこだ!?」
しかし、皆は妲己を逃してしまった。大野は通信機を取り出す。
「こちら大野けんいち!狐に変化する奴と藤木達を取り逃がしちまった!」
『解った!こっちも探すよ!!』
おっちょこちょいの杖の所有者が応答した。
藤木はりえと共に鳳凰に乗っていた。
「ちょっとっ、降ろしてよっ!」
「ごめんよ!僕は君を守りたいんだ・・・!!」
「私を守りたいんなら今私を降ろしてっ!!」
「う・・・」
藤木は迷った。ここでりえを降ろしたら自分には何が残るのか。
「どうしたのっ!?できないのっ!?藤木君はやっぱ・・・」
「わ、解ったよ、降ろすよ!!」
藤木は鳳凰に下降するように命じた。しかし鳳凰はなかなか降りようとはしなかった。
「な、降りてくれ!」
「茂様!!」
藤木は下から遊女の声が聞こえるのを確認した。
「う・・・!!」
藤木はここで降りるとりえは解放されない。しかし、自身の安全ならここで降りたい。ジレンマに悩まされる。
「くう・・・」
「あ、そこにいるの、藤木君じゃない・・・!?」
「え・・・?」
藤木は振り向いた。その場には高校生の女子一名、男子二名の合計三名がいた。
「藤木君、覚えてる?笹山かず子ちゃんの知り合いよ」
「あ、あの・・・」
藤木は思い出した。嘗て笹山の知り合いが通うという高校の文化祭で会った人・徳林奏子だった。
「藤木君、いなくなってかず子ちゃんが心配してたわよ。藤木君の友達もいるから戻ろう」
(ここで、戻る・・・?もしかして、僕はまた・・・)
藤木は元の世界に戻ってもただ皆から卑怯者と軽蔑・非難される毎日が来ると思っていた。そうなると・・・。
「り、りえちゃんなら返すよ・・・。僕は、戻りたくない!!」
「え?」
「帰ってください!僕はもう笹山さんの事は忘れたし、もう卑怯呼ばわりされたくないんだ!!」
「藤木君・・・」
奏子は藤木の意見に呆然とした。
「徳林さん!」
「え?」
北勢田に呼ばれて奏子は我に返った。下の方から遊女が攻撃を仕掛けている。奏子は乗っている羽衣で防御した。
「こいつら!」
北勢田は矛で強力な電撃を放電した。多くの遊女が攻撃される。
「や、やめてくれ!!」
「あ!?」
「その人達は僕の大事な人なんだ!」
「馬鹿言え、お前は敵に自分を売ったのか!?」
北勢田は怒鳴り返した。
「う・・・」
「こいつらは赤軍って奴等と手え組んで日本を戦争の道に進めようとしてんだよ!」
「そ、そんな・・・」
その時、りえは羽衣に飛んで乗り換えようとした。
「り、りえちゃん!!」
だがその時だった。
「な、何だ!?俺の矛が・・・」
「俺の剣も効かないだと!?」
「何、この、威圧感・・・」
「貴様らは剣を奪い返した連中だな」
その場には戦争主義の世界の長が追いついていた。
後書き
次回は・・・
「失われていく物」
藤木やりえを探すかよ子とありは景勝と兼続から藤木が逃走しようとしていると知る。そして彼女らのもとに紂王が立ちはだかる。濃藤、北勢田、奏子を気絶させたレーニンは杉山と身体を入れ替え、藤木にりえを連れてその後はどうするのか藤木に問いかける。投降して元の世界にもどるか、それともこのまま逃げるのか、藤木が選んだ選択肢は・・・!?
282 失われていく物
前書き
《前回》
かよ子やありは紂王の遊女および近衛兵の対処に苦心しながらも藤木を探し続ける。大野達は藤木とりえをあと一歩の所で取り戻せると思ったところで妲己に妨害されてしまった。りえと共に逃げようとする藤木は濃藤、北勢田、奏子に追いつかれてしまう。そしてりえに「私を守りたいなら今ここで降ろせ」と言われて藤木はりえを守る為ならここで彼女を鳳凰から降ろし、奏子達に渡す事を決める。そして自分はそのまま逃げようとするが、その場にはレーニンが!!
警官である椎名と関根、大阪の高校生・鎌山と立家、そして項羽に虞美人の軍がかよ子達とは別行動でりえや藤木を捜索していた。
「どうやら大野君達が藤木君を見たようだが、取り逃がしてしまったようだな」
「よし、ワイらも探すで!」
全員捜索に動く。ところがその時、屋敷の兵士達とばったり会った。
「侵入者か!排除させて貰う!」
「何!?」
関根は速攻で薙ぎ払うべく、忠治の刀を振るう。多くの兵士が金縛りにあったように動かなくなった。
「今だよ、皆!」
「はい!」
立家が駒爪で電撃を放つ。兵士が次々と倒された。但し、今まで光と化して消えるのではなく、煙のように溶けて消えていった。
「こいつら!」
残った兵士が槍で衝撃波を放つ。
「おっと、させんぞ!」
項羽が地面を爆破させて防御した。その余波が兵士達にも及ぶ。だが、援軍がまた椎名達を包囲した。
「キリがねえな!」
椎名は水の玉で大波を出して兵達を溺れさせた。兵を追い払った所で皆は移動した。
「他の所へ移動するぞ!」
「おう!」
かよ子は藤木の捜索を続ける。
「藤木君とりえちゃん、多分一緒にいるはずだよね・・・?」
「そこまで分からないけど、もしかしたら私達を撒く為に別々に行動させてるかもしれないわ」
ありは推察した。と、その時、皆の所に悠一のテクンカネで召喚した景勝と兼続が戻って来た。
「申し上げる!只今杯の所有者、藤木茂と共に妲己の手引で逃走中!新たな情報は!?」
「い、いま、まるちゃん達が見たけど逃げられたって!」
「解った!こちらもまた周囲を・・・」
と、その時、また別の兵士や女性が包囲した。そして一人の男が現れた。
「ほう、小娘、貴様が杖の所有者だな」
「だ、誰!?」
「我が名は紂王。この屋敷の主で殷の帝王として生きた者だ」
「山田かよ子!この者は危険だ!用心せよ!!」
「う、うん!!」
紂王が剣を出した。かよ子やあり、悠一の武装の能力で防御したが、恐らく自分達の胴を切断するつもりだと思った。
「その能力、厄介な物だな!」
「山田かよ子、奴は能力を無効化する気だ!」
「解った!なら!!」
かよ子は杖を構えた。白魔術の能力を作動させる。
「私の白魔術で何もできなくさせるよ!」
かよ子は白魔術が紂王に通用する事を願った。
濃藤、北勢田、奏子が威圧の能力で気絶しかける。それは戦争を正義とする世界の長・レーニンだった。
「あ、貴方はっ・・・!!杉山君っ!!」
「同体化している小僧の名で呼んでいるのか」
「アンタっ、私やこのお兄さんやお姉さんを殺す気っ!?」
「その通りだ。何しろ私にとってこの者達は邪魔者だからな」
そしてレーニンの姿が変わる。
「さあ、藤木、お前はどうすんだ!?このままこいつを連れて山田かよ子達のとこに戻って元の世界に帰るか、それともそのまま逃げるのか?」
「う・・・、僕は・・・」
藤木はまた迷う。
(本当に僕がりえちゃんを守りたいなら、りえちゃんの為に何ができるのか・・・)
藤木はりえが嫌がる様を思い出した。スケートをしに行った時まではあんなに自分を好いていたのに急に愛想を尽かされたのは理解できなかったが、そんなにりえが嫌がっているのなら・・・。
(僕はどれだけ人を好きになっても嫌われるんだ、卑怯者だって・・・。りえちゃんも、笹山さんも、僕から・・・)
ふと藤木は笹山の事を思い出した。一度自分の事を許して迎えに来たそうだが、自分は拒絶した。今からでもやり直せる事はできるのか。
「おい、さっさと決めろよ。どっちの側に付くんだよ?」
「僕は・・・」
(もういいんだ、笹山さんも、りえちゃんも、皆僕から離れていくんだ・・・)
藤木は失恋の連続なら仕方ないと思う。
「・・・りえちゃんはこの人達に渡すよ」
「えっ!?」
りえは藤木が潔く自分の頼みを聞いた事に少し驚いた。
(もしかして藤木君、解ってくれたのっ!?)
りえはそう思った。それなら自分や彼を捜している山田かよ子達にも都合がよいと思っていた。
「その代わり、僕はこのまま逃げさせて貰うよ!」
「・・・えっ!?」
「僕は誰が連れ返しに来たって帰らないぞ!」
「・・・そうか」
杉山は藤木の決意の固さを知った。その時、妲己が近づいた。
「ん?これは、レーニン様!」
レーニンの姿に戻る。
「妲己か。この小僧を連れて逃げよ。そしてこの小娘は私が引き取ろう」
「はい。坊や、おいで」
「はい」
藤木は妲己と共に行く。
「それでは、消えよ!」
レーニンは高校生三人の抹殺および彼等の道具の能力の吸い取りを行おうとした。
「よし、この者らの能力を取ったぞ・・・」
そして殺害しようとしたその時・・・。
「やめてえ!!」
何処からか火炎放射が放たれた。武装の能力と奏子の羽衣から吸い取った防御能力で跳ね返した。
「力を蓄えたな、レーニン」
「貴様ら、追いついたのか!!」
そこには三河口、湘木、冬田が現れた。
「あ、りえちゃあん!!」
「冬田さんっ!」
「その子を離してもらおうか」
「できるものならやってみるがいい!」
三河口は鎖鉄球を振り回して飛行した。
「もうその術は見破り済だぞ!」
レーニンは放電した。
(北勢田の矛の能力だな!!)
「湘木!」
三河口は先の行動を読んだ。恐らく自分達を電撃で戦闘不能にすると。
「おう!」
呼ばれた湘木は斧を振り回し、木の枝を出現させた。
「ふ、そんなもの!」
だが、電撃が効かない。
「これはゴムの木だ!電気は通さねえぞ」
湘木が説明した。
「くう!」
「仕方ねえ、りえを連れて撤退するぞ!」
「何!?」
レーニン及び杉山は杉山の声でそう告げるとりえを連れて逃げようとする。だが、三河口は鎖鉄球をレーニンに巻き付けた。そして威圧の能力と武装の能力を鎖鉄球に流し込んだ。
「小僧!」
レーニンは怒りに任せて武装の能力で鎖鉄球を外そうとする。
「冬田さん!」
「は、はあい!」
冬田は蔓を出して更にレーニンを拘束しようとた。
「させるか!」
レーニンは武装の能力で蔓を弾いた。更には瞬間移動して鎖鉄球の巻付きから自身を解放させた。
「な!」
「貴様らに構っている暇はない!」
「ちょっとっ!放しなさいよっ!」
りえは武装の能力でレーニンを落とそうとするが、意味はなく、そのまま連れて行かれた。
「追うぞ!」
「ああ!」
三人は戦争主義の世界の長であり、大将を目指す少年を追った。
「ちょっと待ってえ!」
冬田が止めた。
「このお兄さんとお姉さん達はどうするのお!?」
三河口はレーニンによって気絶させられた同級生達を見る。
「ああ、そうだったな」
三河口はレーニンとの戦いに夢中になっている己を反省した。
「濃藤、北勢田、奏子ちゃん!!」
三河口は三人を起こした。
「・・・、はっ、ミカワ!湘木!」
「三河口君!」
「お前も来てくれたのか!」
「ああ、今レーニンが来てお前らを気絶させた。だが、お前達の道具の能力を吸い取って強化されてしまったんだ。それからりえちゃんもその場から連れ去っちまったよ」
「ちっ、俺達とした事が・・・」
北勢田は悔しがった。
「いや、俺のしくじりでもある。少なくとも、かよちゃん達が探している藤木ってガキも一緒だった事は間違いない。北勢田の知り合いの長山治君だっけ?彼にレーニン、いや、杉山君の動向を探って行方を追った方がいいと思う」
「ああ、そうしてみるよ」
「三河口君はどうするの?」
「そうだな、藤木を連れて逃げた狐もレーニンも追いかけたいが、杯の行方を知っているのは狐の方だろう、そっちを狙うよ。りえちゃんの方は君達の役目だからありちゃん達と合流したらまた追ってくれるか?」
「ああ」
「それじゃ、俺達は失礼するよ」
三河口は湘木。冬田と共に去った。
かよ子の白魔術が紂王を攻撃する。
「これは、強力な・・・!!」
紂王は白魔術に苦しんだ。
「行くよ!」
かよ子は杖を剣に変化させ、紂王を斬り込みにかかった。
「某も行くぞ!」
次郎長もまた飛び掛かる。
「終わりだよ!」
「くう・・・!!」
だが、その時、何かがかよ子達の攻撃を阻んだ。
「え、何、これ!?」
見えない壁だった。
「紂王様、お怪我は!?」
「妲己か、私は無事だ。しかし、杖の所有者は手強い」
「ほう、お前が、また会ったな・・・」
「あ、この人は・・・!!」
かよ子はこの女を見た事があった。嘗てりえを連れ去った女である。そして一緒にいるのは・・・。
「藤木君!?」
「山田かよ子・・・?」
藤木は自分のクラスメイトとまた再開する事に不穏さを感じた。
「ここにいたんだね。一緒に帰ろうよ。笹山さんだって心配してるよ!」
(笹山さん・・・)
藤木は嘗て好きな女子には夕方会ったばかりだった。その為、次々とクラスメイトが現れては自分を元の世界に引きずり戻そうとする事の連続になるばかりとなっていた。
(なんで僕にそんな事ばっかりさせるんだ・・・!!)
藤木は歯を噛み締める。
「僕は、帰らないぞ!」
「・・・え?」
後書き
次回は・・・
「羨望心の芽生え」
藤木を追う大野達だったが、まる子と友蔵が疲れたと呆れて二人を置いて行く。藤木と相対したかよ子だったが、藤木の戻りたくないという意志は強く、妲己や紂王、更には遊女達の妨害で藤木はまた逃げる事に。だが、野良犬と遭遇した時を思い出して藤木は自分を逃がして犠牲になる遊女達を見て何かを思う・・・・!!
283 羨望心の芽生え
前書き
《前回》
藤木は奏子、北勢田、濃藤に追いつかれ、りえを渡して自分は逃げようとするが、レーニンおよび杉山が現れてレーニンが高校生三人を殺害しようとする。その場に三河口、湘木、そして冬田が駆け付け、レーニンの殺害を防ぐ。その一方、かよ子は紂王と交戦し、白魔術で彼の攻撃を妨害するがその場に妲己と藤木が現れた!!
藤木と妲己を取り逃がしてしまった大野、ブー太郎、まる子、友蔵、石松、お蝶は走って藤木を追う。
「はあ、はあ、もう走りたくないよお・・・」
「儂も、疲れた・・・」
まる子と友蔵は疲れてしまった。
「何言ってるブー、そんなことしてる間に藤木が逃げちまうブー!」
ブー太郎が反論した。
「その通りだ、休憩する余裕などない、それにこの屋敷の人間もまだ全滅した訳ではないぞ!」
「だってえ・・・」
「頼む、まる子が辛そうなんじゃ、少し休ませておくれ~!!」
友蔵が土下座で懇願した。
「もう仕方ねえ、放っておけ!」
大野は呆れた。他の者も皆まる子と友蔵を見捨てて行ってしまった。
「まる子や、大丈夫か?」
「うん・・・」
だが暫くして、紂王の屋敷の遊女が走って来た。
「この者は・・・、侵入者よ!」
「全く、葬ってくれる!!」
「お、おお、別嬪さん達じゃ~」
友蔵は楽園に浸った。だが、呑気に言っている場合ではなかった。遊女が短刀を出して友蔵とまる子に襲い掛かる。
「ぎえええ、許してくれえ~!!」
友蔵は命乞いした。まる子は炎の石で遊女を焼き尽くした。
「ああ!!」
遊女二名は消失した。
「おお、凄いぞ、まる子お~!」
「いやあ・・・」
二人は勝手にその場で休憩するのだった。
「僕は、帰らないぞ!」
「・・・え?」
「僕はどうせ帰ったって皆から遠いところへ逃げた卑怯者だって言われるだけなんだ!それに僕なんか帰ったって誰が喜ぶんだい!?」
「う・・・」
かよ子は藤木の言っている事がその通りになっていると思うと何も言い返せなかった。
「それに・・・」
藤木は言葉が詰まる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「え?何て言ったの?」
かよ子は藤木の言葉が小声すぎて聞こえなかった。
「・・・、さ」
藤木は深呼吸してもう一度言った。
「笹山さんの事は忘れるってもう決めたし、この世界の方が僕は楽なんだよ!誰も卑怯者って言わないし・・・!!」
「藤木君・・・」
かよ子には藤木が余りにも拒む理由が解らない訳では無い。確かに野良犬に襲われる所を自分を見捨てて笹山だけ連れて逃げて一度愛想を尽かされた事、クリスマスの合唱コンクールで自分だけ歌い出しが遅れて独唱を頑張った自分や笹山、声が出なくなった大野の代わりに歌った杉山とは対照的に冷ややかな目線を取られた事、これらの事から考えると元の世界など苦痛であろう。
「・・・、そんな事ないよ!」
かよ子はそれでも反論した。
「笹山さんはあの手紙を貰った時、凄く悲しんでたよ!それにクラスの皆だって藤木君がいなくて心配そうにしてたよ!皆もう気にしないと思うよ!」
「保証できるのかい?」
その時、妲己がまた九尾の狐に変化して杖の所有者を襲撃し始めた。
「無駄話はおしまいだよ!」
だがかよ子は妲己に杖を向けた。白魔術が発動された。妲己も紂王も攻撃が不能とされた。
「まだ話は終わってないよ!」
「かよちゃん、こいつらは私がやっとくわ!」
「うん、次郎長さん、藤木君を捕まえよう!」
「ああ!」
次郎長が動き出す。ありと悠一、シャクシャイン達は羽根から降りて妲己や紂王と対峙した。
「藤木茂、おとなしくこちら側へ来るのだ!」
「う、やめてくれ!嫌だ!僕は帰らないぞ!」
藤木は妲己が出した鳳凰に乗ったままその場から逃げようとする。
「藤木君!待って!」
かよ子は羽根で藤木を追走した。だがそこに、大きな爆発が起きた。炎がかよ子達を襲う。
「え、何!?」
かよ子の羽根の結界が炎を防ぐ。かよ子は視界が遮られて落ち着かなくなる。
「茂様の邪魔をする方があちらにもいるわ!」
「やっておしまいましょう!!」
藤木と共に遊んだりお世話した遊女達がかよ子達の進む先を阻んだのだった。
「ちょっと、通してよ!えい!」
かよ子は杖を煙に向けた。かよ子の杖から炎が出され、敵の炎を飲み込んだ。更にその炎が遊女達を襲う。
「きゃあ!」
「あ、皆!!」
藤木は遊女が炎にやられていく様を目撃し、慌てて引き返そうとする。
「私達の事はいいから、茂様は早く逃げてください!!」
「そ、そんな・・・!!」
藤木は躊躇った。遊女が煙になって死滅していく。
「や、やめてくれ!!僕の大事な人たちなんだ!!」
「山田かよ子、鵜呑みにしてはならぬ!今すぐ藤木茂を捕えるのだ!」
「うん!」
かよ子は羽根を藤木が乗っている鳳凰の元へと近づける。
「わ、く、来るな!あっち行け!」
藤木は悪足掻きの如く叫んだ。だがその時、かよ子の方へ青い龍が襲い掛かって来た。
「茂様を襲う人は私が許さない・・・!!」
倒されていない遊女が青龍を召喚したのだった。そして藤木が乗っていた鳳凰が返り討ちにしようと嘴から炎を吹いて来たのだった。
「ああ!!」
「山田かよ子!」
次郎長が刀を振った。風を起こして炎を別の方向へ移動させた。だが、竜もまた襲って来る。竜の腕がかよ子の頭上を襲う。
「えい!」
かよ子は氷の能力を行使し、竜の腕を凍らせた。竜はその冷たさに苦しむ。そして冷凍光線を更に浴びせた。一方の次郎長も刀で鳳凰の炎をかわしながら突進していた。
「わあ、来るなあ!!」
藤木は叫んだ。
「茂様!」
別の遊女が藤木の前に立ち塞がった。
「邪魔だ!」
次郎長は女を斬ろうとした。だが遊女も短刀で応戦した。
「茂様、逃げてください!でないと捕まります。早く!」
「う、うん・・・!!」
藤木は鳳凰と共に飛び立った。丁度かよ子も竜の全身を凍らせて撃退させた。
「私の竜が・・・!!」
竜を召喚した遊女が嘆いた。もう一度竜を召喚しようとした。しかし、かよ子は遊女本人を凍らせて凍え死にさせた。
「はっ、はっ・・・」
遊女の一人が消失した。一方の短刀を持った次郎長と交戦している遊女の短刀は次郎長の刀と匹敵する程の威力だった。次郎長は地面に刀を振るう地砕きで遊女を吹き飛ばされた。
「次郎長!!」
別の遊女を倒し終えたばかりのかよ子が加勢にかかる。かよ子の白魔術が発動される。オルガンの音色が響くと共に爆発が起きた。
「きゃあああ!!」
もう一人の遊女も爆発に巻き込まれて消失した。
「山田かよ子、藤木茂を追うぞ!」
「うん!」
かよ子と次郎長は羽根に乗って藤木を追い続けた。
法印大五郎、吉良の仁吉などその他の次郎長の子分達、のり子や椎名、関根などは紂王の屋敷の兵士や遊女達と交戦していた。その上空に何かが飛行しているのを確認した。
「あれは何だ!?」
「鳥!?」
それは鳳凰に乗って逃げる藤木だった。藤木は下を見下ろす。目が眩み怖かったが、多くの兵士や遊女が戦い、倒されていく様を見た。
(み、皆戦ってるのに僕だけこのまま逃げるなんて・・・)
あの時もまた自分は逃げただけだった。野良犬に襲われた時も自分の好きな女子だけを連れておっちょこちょいの女子を置いてきぼりにして逃げて卑怯者と呼ばれた。もっと自分に戦える力があればいいのにと思った。先程そのおっちょこちょいの女子が魔法の杖を駆使して遊女達を倒していくのを見た。自分だってあれだけ特別な力があれば、野良犬から逃げる事も今この場で多くの仲間を失う事もなかったのではなかったか。
(僕だって何か強くなれば、山田の杖みたいな道具があれば、妲己さんみたいになんか能力があれば・・・!!)
藤木は羨望心が強まっていった。その時、何かが飛んできた。その物体は爆発を起こした。
「う、うわああ!!」
藤木は乗っている鳳凰ごと爆発で吹き飛ばされた。
「な、何だ・・・!?」
「あれってもしかしてりえちゃんの友達が探してるって子?」
「そうかもね」
二人の女子がその場にいた。
「な、何だ君達は!?」
「りえちゃんはどこなの?」
「し、知らないよ!!」
藤木は鳳凰に乗ってまたその場を遠ざかろうとする。しかし、一人の女子がブーメランを投げた。そのブーメランが鳳凰に当たる。鳳凰が真っ二つにされた。
「う、うわああ!!」
藤木は鳳凰ごと落ちた。藤木は恐怖で走って逃げ出した。
ありと悠一、シャクシャインに景勝、兼続は妲己、紂王と対峙していた。杖の所有者による白魔術で攻撃不能とされていた為、あり達にとって絶好の機会だった。
「あの時、りえちゃんを取られたけど、今度は取り返させてもらうわよ!」
ありはカムイを召喚した。アイヌラックルである。そして悠一のテクンカネで景勝、兼続が強化された。アイヌラックルが、シャクシャインに、景勝、景勝が纏めて紂王と妲己を殺めようとした。ところが、その場にある人物が現れた。
「紂王、妲己、全く何を手こずっている?」
その場にレーニンが現れた。あり達は戦争主義の世界の長との再会でぞっとするのだった。
後書き
次回は・・・
「吸収による強化」
あり達の前にレーニンが現れ、あまりの威圧感によってありは急に攻撃ができなくなってしまう。それはレーニンが様々な能力を己のものへと吸収しているからだった。かよ子達は引き続き藤木を探し続けるが、その頃まる子と友蔵は疲れたからと休憩していたが・・・!?
284 吸収による強化
前書き
《前回》
藤木を追い続ける大野達だが、まる子と友蔵が疲れたと言ってへたり込んでしまい、大野達は呆れて二人を置いていく。かよ子は藤木を目前にして妲己と紂王の妨害を受けるが、あり達にその場を任せてかよ子は次郎長と共に追走するが、多く遊女達が藤木を守ろうとする為、なかなか追いつけない。そして妲己と紂王はかよ子の杖の白魔術によって能力が行使できない状態の為、ありや悠一には好機だったが、その場にレーニンが現れ!?
あり達はレーニンがその場に現れて怖気づいてしまった。
(このレーニン、前に会った時も恐ろしさを感じるようになったのは何で・・・?)
ありには見聞の能力は所持していない。なのに、なぜか威圧感や悍ましさを覚える。
「護符の所有者の姉貴か。この私が恐ろしいか?」
「そ、そりゃそうよ」
「レーニン、お前は一体何をしたんだ!?」
「俺が説明してやるよ」
レーニンが杉山の姿に変わった。
「さっき会った三人の高校生達の道具の能力を吸い取らせて貰ったんだよ」
「奏子ちゃん達の・・・!!」
「それだけじゃねえ。その前にも戦争主義の世界の本部にアンタの従弟が剣を取り返しに来た時もそいつの能力全部吸収して俺の能力とさせて貰ったんだよ」
「健ちゃんの能力まで・・・!!」
ありは恐ろしくなった。以前異能の能力を複製した機械で苦戦した事は幾度もあるが、吸収したとなるとどうあっても無力化はできないだろう。
「それからこいつを取り返してえんだろ?」
杉山は一人の少女をあり達に見せた。自分達が探している安藤りえだった。
「りえちゃん・・・!!」
「おい、りえちゃんを返してくれ!」
悠一はりえの返還を要求した。
「そうしたいところだが・・・」
「もう話はよいだろう。さっさと行く。この杯の所有者は連れて行く」
「連れて行って何するつもりなのよ!?殺す気?」
「本来ならそうするつもりだったが、この少年が殺すのはまずいとの事だからな。あえてそのままにしておく」
レーニンはあり達に攻撃を仕掛けて来た。電撃が放たれる。ありもアイヌラックルで応戦した。アイヌラックルが電撃をすべて鎮める。
「神の力だから簡単には倒せないはずよ!」
「そうか、是非神の力も吸収したいところではあるがな・・・」
レーニンは吸収の術を発動させた。
「う、うおおお・・・!!」
アイヌラックルが吸い取られそうになる。
「わ、私はこれでは簡単にやられん・・・!!」
アイヌラックルが弓矢を出現させた。そしてレーニンを射抜いた。
「ああ!!」
レーニンは苦しがった。これは流石に武装の能力でもってしても防ぎきれなかったようである。
「お、おのれ、覚えていろ・・・!!」
レーニンは苦しみながらその場を撤退した。
「待て!」
悠一のテクンカネが発動され、シャクシャイン、景勝、兼続がレーニンに纏めてかかろうとした。
「レーニン、覚悟!」
「う・・・!!」
だがレーニンも別の能力で追撃を振り切った。そして妲己と紂王も連れて行った。
「今回は貴様らの勝ちという事にしておこう。だが、貴様のように神を操る能力、何としても我が物にさせて貰うからな・・・」
「レ、レーニン様・・・!!」
「く、りえちゃんを取り返し損ねたか・・・。景勝、兼続、ありがとう、協力してくれて」
「ああ、だが、これから先は大丈夫なのか?」
「ああ、また何かあったらこいつで呼ぶよ」
「では、また会おう」
景勝、兼続はその場から去った。
「あり、もしかしたら次レーニンに会った時は神の力を使えるようになっているかもしれないな・・・」
「うん、それまでに何とかしないと・・・」
あり達はかよ子の元へ合流を急いだ。
レーニンは妲己、紂王と共に撤退していく。
「あ、レーニン様、その前に私は藤木茂坊の回収をさせてください」
「解った、気を付けて行くが良い」
「妲己よ、私も行こう」
妲己、紂王がレーニンから離脱した。
かよ子は次郎長と共に鳳凰で飛び去った藤木を追う。
「藤木くーん!!」
「山田かよ子、白魔術を駆使して藤木茂を捜索するのだ!!」
「うん!」
かよ子は杖の白魔術の能力を行使した。その時、先程藤木の場所を示していた緑色の光がかよ子の杖に取り込まれたようにその光が糸のように伸びて行くのだった。
「向こうに藤木君がいるって事なの?」
「ああ、そのようだ」
かよ子は光を頼りに目的地へと急いだ。
「次郎長、また私、藤木君を捕まえられなくておっちょこちょいかな・・・?」
「そんな事はない。あれだけ逃げてばかりいて匿われていたのだ。それに妲己や紂王の妨害もあった。お主だけのせいではない」
「うん・・・!!」
まる子と友蔵は場違いな休憩をしていたが、また別の兵士達が襲って来た。
「なんと!?」
「もう勘弁してよ~」
まる子は炎の石で奮戦した。だが兵士達は耐火金属でできた楯を使用している為、炎の攻撃が全く効かない。
「ひええ、終わりじゃあ~!!」
「おじいじちゃ~ん!!」
友蔵とまる子は抱き合って泣いた。もうここで二人は死ぬ運命と覚悟した。
(まる子と死ぬなら儂は一緒に天国へ行く!まる子、ずっと一緒じゃぞ・・)
(おじいちゃん、アタシは9年しか生きてないけど、おじいちゃんと一緒だった事、嬉しく思うよ・・・)
と、その時、兵士が薙ぎ払われた。その場に別の人物が着地した。杖の所有者の知り合いの高校生男子だった。払われた兵士達を鎖鉄球で倒していく。だが、別の兵士が襲い掛かるが、上空から木の枝が槍のように兵士に突き刺さった。
「おお、凄いぞお~!」
「ありがとう~」
「さくらさあん、大丈夫う?」
上空から冬田と湘木が飛来した。
「あ、冬田さん・・・」
「おお、皆の者、ありがとう!ありがとう~」
友蔵は感謝の土下座をした。
「ところでさくらさあん、大野君達はあ?」
「ああ、先行ったよ、アタシ達は疲れたから休憩~」
「そんな危ない所で休憩してたのか、この馬鹿垂れが」
三河口は睨んでいた。
(こ、この少年、怖いぞ・・・!)
友蔵はこの高校生に自分の孫が制裁を喰らうのではないかと恐れた。現に彼は全員が出発する日にフローレンスに我儘を言っていた冬田に激しく叱責している。
「た、頼む、儂が命を張ってまる子を守る!どうか、まる子を許してやってくれ~!」
友蔵は土下座のまま許しを求めた。三河口は友蔵の方を見る。
「・・・、自分の立場を考えろ、アホジジイ」
「・・・な!?」
「アンタは選ばれて来たわけじゃない。フローレンスとイマヌエルの恩情でこの世界に入れて貰えただけだ。自分は引率の役目すらなっていないし、何もできていないだろうが」
「儂は、その、まる子を守る為にいるんじゃ!!」
三河口は友蔵と話が全く噛み合っておらずこれ以上話しても無駄だと思った。
「ちょっと、さくらさん達を大野君達の所へ連れて行きましょうよお」
「そんな暇はない。じいさん」
三河口は友蔵の胸ぐらを掴んだ。
「アンタは自分がこの世界での戦いを終わらせるために、それから日本が戦争への道に行かせない為に何ができるのかを全くわかっていない。そんな奴はこの戦いに関わるな。孫と一緒に元の世界に帰った方が身の為だぜ」
三河口は友蔵を離した。
「冬田さん、藤木を連れてった女を探して追うぞ」
「え?あ、うん・・・」
冬田は命令されるがまま三河口と湘木を乗せて羽根に飛び立った。
「あ、待って、連れてってよお~」
まる子は止める間もなく、冬田達は行ってしまった。
藤木は必死で走った。
(誰も来ないでくれ・・・!!)
そう思いながら逃げた。何しろ今の自分にはこれしかできなかった。だがもうこれ以上走れなかった。
「もう、ダメだ・・・」
藤木はその場で疲れて座り込んでしまった。そして今までの事を振り返る。一緒に遊んでいた遊女や兵士達は殺され、自分を連れて返そうとする輩が乗り込んできた。そしてりえからは急に嫌われた。楽園は一気に地獄と化した。
(う・・・、何だよ、笹山さん達まで帰ろう、帰ろうだなんて・・・!!いなくなってせいぜいしてるんじゃないのか・・・!?)
その時、何かが飛来した。
「ひっ・・・!」
藤木は慌てて逃げようとしたが、逃げ切れなかった。その場に着地したのは一人の高校生の男子だった。
後書き
次回は・・・
「ならば強くなれ」
遊女や兵士達の妨害を受けながらも藤木を追い続けるかよ子達。藤木の目の前には三河口が現れ、三河口は藤木を捕まえに来たのではないと言いつつ、藤木が戦争主義の世界にいる事で日本が大変な状況に陥っていると説明する。そして今の藤木が無力である事を伝え・・・!?
285 ならば強くなれ
前書き
《前回》
あり達の前にレーニンと杉山が立ちはだかる。レーニンは濃藤、北勢田、奏子の道具の能力を吸収して己が能力としていた為にそれで威圧感を覚えて手が出せない。だがアイヌラックルの決死の攻撃で撤退を強いらせたものの、りえを取られてしまう。そしてまる子と友蔵は勝手な休息をして兵士達に取り囲まれてしまう。その時、三河口、湘木、そして冬田に救われるが、叱責を喰らう。そしてかよ子達から必死で逃げようとする藤木の前に現れたのは!?
かよ子は藤木を追い続けていた。その時、二人の人間が手を振っていた。
「おーい、かよちゃん!」
りえの友達の鈴音とみゆきだった。
「す、鈴音ちゃん、みゆきちゃん・・・!!」
「さっき大きい鳥に男子が一人乗ってたけどあれってかよちゃんが探してる男子だったかな?」
「鳥に乗った男子・・・!!」
かよ子は先程藤木が大きい鳥に乗って逃げていった事を思い出した。
「やっぱり藤木君だよ!ありがとう!」
かよ子は再び羽根に乗って飛ばした。一方鈴音やみゆきは次郎長の子分やのり子、阿弖流為や母禮などと共に殆ど敵を殲滅していた所だった。
「あ、りえちゃんが何処にいるのか聞くの忘れちゃった・・・」
鈴音はすっかり忘れてしまった。
「私が確認しようか?」
のり子がその場に現れた。
「できるの?」
「ええ、私のキャロラインが探してくれるわ」
のり子が抱えていた人形が宙に浮いて探知した。
「・・・、安藤りえちゃんは・・・」
人形の目が開いた。
「戦争主義の世界の長と一緒だわ!」
藤木の目の前に高校生男子が飛来した。その男子は鎖鉄球を持っていた。
「久しぶりだな、藤木君」
「まさか、僕を元の世界に連れ返そうと・・・!?」
「安心しろ、俺の獲物は君じゃない。俺は君のクラスメイト・山田かよ子ちゃんの知り合いだ」
三河口はそのまま話を続ける。
「九月の高校の文化祭は来てくれてどうもありがとう。まだお礼をしてなかったね」
(こ、この人は何を言いたいんだ・・・?)
「君がこの世界に来た理由はかよちゃんとか君の好きだった女子の知り合いとかからの話で大体わかる。だが、君がこっちの世界に来た事で日本がとんでもない状況に陥っているんだよ」
「せ、戦争に進むって事、ですか・・・?」
「その通りだ。本当に君はそれでも帰るつもりはないと言う事か?」
「そ、そうです・・・」
「悪いが俺は君には不都合でも元の世界に戻る事を勧める。それでも嫌だっていうなら勝手にどこまでも逃げるがいい。但し、君は何も力がないだろ。ここの世界の人間に闘ってもらって自分は逃げるだけの卑怯者だ」
「う・・・」
藤木の心は揺れ動いた。
「そんなにかよちゃん達に来ないで欲しいって頼むのか。口で言っても誰も引き下がらん。自分がもっと強くなれるように自分の力で全力で戦うんだな。そうすれば卑怯者じゃなくなる」
(でも、山田の杖とかこの人が持ってる鎖鉄球とかの道具があれば・・・)
藤木は思い悩む。
「なら、強くなるにはどうすればいいですか?」
「そんなの俺は知らん。自分でその方法を探れ」
三河口は鎖鉄球を回して飛行した。そして羽根に戻ると通信機を取り出した。
「こちら三河口健。かよちゃん、藤木君は北側の林の入口にいるぞ。分捕るなら今だ」
『え?あ、うん!!ありがとう!』
連絡を終了させると三河口は通信機をしまった。
「冬田さん、羽根を進めてくれ」
「え?大野君達を待たなくていいのお?」
「俺達は他人のやる事まで手を回せん」
「は、はあい・・・」
冬田は残念がりながら羽根を移動させた。
「・・・ん?」
「どうしたんだよ?」
「来てやがる」
三河口は見聞の能力で敵の気配を確認したのだった。
かよ子は三河口の連絡を受けて藤木のいる場所へと急ぐ。
「お兄ちゃんが待っててくれるかな・・・?」
「解らぬ。止めてくれるならありがたいが・・・」
そして急ぐが紂王の兵士や遊女の残党がその場にまだいた。
「あ、あそこにいるわ!茂様をお守りしてあの杖を奪い取るのよ!!」
兵士達が槍から衝撃波を放ち、かよ子の羽根を撃ち落とそうとした。
「な、もう、邪魔だよ!!」
かよ子の武装の能力が発動された。衝撃波を跳ね返し、兵士達が喰らう。遊女の一人が跳躍し、縄を出してかよ子の羽根を結界ごと縛り付けた。
「行かせないわよ!」
「邪魔をするな!」
次郎長が刀で縄を切ろうとした。しかし、なかなか切れない。
「く、何て頑丈な縄だ!」
「次郎長、大丈夫?!」
「山田かよ子!某を助けたい気持ちも解るが他の者の襲撃にも頭を入れよ!」
次郎長は警告した。
「え?う、うん!」
かよ子は他の周囲をよく見てみると、他の者も自分を狙っているのが解った。かよ子は杖を相手に向けた。そして丸鋸を複数個出して敵を両断していった。しかし、兵士達は槍などでそれを薙ぎ払ってしまうのでかよ子にはそれが少し痛手となった。
「おのれ!兵を減らしおって!」
怒った兵が槍より旋風を発生させた。
(あの風を使って返さないと・・・!!)
かよ子は風に杖を向け、竜巻を起こした。強力な竜巻が兵の旋風を包み込み、兵や遊女達を撒き散らして攻撃した。多くの人間を倒していった時、かよ子は硬い縄で苦戦している次郎長の方に回る。
「次郎長、あっちは倒したよ!」
「すまぬ、この縄はかなり硬い!」
「私の縄は刀などで切れぬし燃えもせぬぞ!」
遊女はその縄を伝ってかよ子達の羽根へと接近した。
(ど、どうすれば・・・!?)
かよ子は短時間で考えようとした。
「こうなったら!」
かよ子は杖を遊女に向けた。白魔術の能力を発動させた。その白魔術の能力なのか、水が遊女の方向に噴射される。
「う、うわ、何だこの水は!?」
遊女は身体が解け、煙のように一瞬で消失した。
「こ、これは・・・!?」
「聞いた事があるが、恐らく硫酸だ。人体に浴びるとひとたまりもないと聞く」
遊女が溶けると共に硬い縄も同時に消失した。
「よし、藤木君の所へ急がないと!」
かよ子は羽根を進めた。
三河口は鎖鉄球をまた振り回す。そして見聞の能力で感じる方向に飛ばした。案の定、鉄球が飛んだ方向に敵はいた。
「おおっと、危ないね!」
三河口、湘木、冬田の三人は敵の近くへと接近した。
「お前か、藤木って奴をこの世界に連れて来たのは」
「ならばどうするという?」
「殺すのは惜しい。杯は何処にあるの答えて貰おう」
三河口は鎖鉄球を女に巻き付けた。
「ふ、そんな事をして私が言うと思うか?」
「おい、お前、妲己を離せ!」
もう一人の男性が鎖鉄球の鎖を刀で切ろうとした。しかし、三河口は鎖鉄球を自分の方に寄せて妲己を近づけた。
「離して欲しくば杯の行方について知ってる限りの事を話せ」
「紂王様!」
「妲己・・・!」
紂王は迷った。杯の場所を言わないと自分にとってお気に入りの妲己が殺される。
「ちゅ、紂王様・・・」
妲己は威圧の能力を喰らう。妲己の勢いは失われ、九尾の狐に変化できない程に弱まった。
「安心しろ。手加減はしてやる。寧ろ気絶させるとネタが取れないからな」
「な、誰か話すか!」
紂王は三河口に攻撃する。だが、湘木が斧から蔓を出して紂王を拘束した。
「俺もいる事を忘れるなよ」
紂王と妲己、身動きをどちらも封じられた。
「早く言わんとおたくのオキニの女はこのままいたぶられるだけだ。杯は今誰が持ってる?何処へ持っていった!?」
「・・・!」
紂王も妲己も本来は抵抗したかった。だがこの高校生男子の威圧の能力がそうはさせないのだ。
「わ、解った、言う・・・!!」
紂王は苦し紛れに答えた。
「前に杯の所有者とあの少年の祝言を挙げた時、あの小娘のいる所と同じ所にあると危険と思い、ある人物に渡した・・・」
「『ある人物』だと?何て名前だ?」
湘木は紂王に尋問した。
「よ・・・、煬帝・・・」
(ヨーダイ・・・?)
「そうか」
三河口は妲己を解放させた。
「湘木、冬田さん、撤退するぞ」
「え?倒さないのお?」
「それだけ分かればいい。こいつらが嘘ついてる可能性もゼロとは言い切れんがな。それにもっと面倒臭い奴が来ているからまともに戦っても勝てん」
(大野君にもう一度会いたかったのにい・・・)
冬田は大野に会いたいという気持ちを押し殺して三河口と湘木をまた羽根に乗せてその場から退いた。そしてすぐ紂王と妲己の所にレーニンが到着した。
「貴様ら、無事かね?」
「レーニン様・・・」
「では、杖の所有者よりも先に小僧を回収するぞ」
「はい!」
三人にして四人は藤木を探しに急いだ。
かよ子と次郎長は藤木の回収に急ぐ。そして屋敷の敷地外の林に辿り着いた。
「やっと着いた!」
そしてかよ子は一人の少年がしゃがみ込んでいるのが見えた。間違いなく藤木だった。
「藤木君!」
「や、山田・・・!!」
藤木はようやく立てるようになった。そして迎撃態勢に入る。
「う・・・」
(どうすれば追い払えるんだ・・・!?誰か・・・)
だが藤木は先程の高校生の言葉で誰かが来るのを待つのではだめだと思う。そして拾った石で反撃する。
「く、来るな、来るな!」
かよ子は羽根の結界で防いだが、藤木が徹底的に抵抗した事に驚いた。かよ子は仕方なく投げてくる石に杖を向け、石を操る能力を得た。更に大きい石を放った。
「山田かよ子、石の攻撃はいいが藤木茂に怪我をさせてはならぬぞ!」
「う、うん!!」
(いけない、おっちょこちょいする所だった!)
かよ子は石を藤木の近くにある木にぶつけた。木は倒れはしなかったが大きく揺れ、木の葉と枝が大量に落ちた。
「藤木君、いい加減にしないと今度は当てるよ!」
(あの杖みたいになんか武器があれば、欲しいな・・・)
藤木はかよ子が羨ましがった。
「藤木茂!」
「坊や!」
「妲己さん!紂王さん・・・!!」
藤木は援軍が来てホッとした。そこにはレーニンもいた。
「レーニン、いや、杉山君・・・!!」
後書き
次回は・・・
「奪取は失敗す」
かよ子の前にレーニンおよび杉山が現れ、かよ子にとっては杖を奪われる絶体絶命の危機に陥った。かよ子は杖を取られまいとレーニンに向ける。その杖のとっておきの能力が発動された時、杉山は何を思うのか・・・!?
286 奪取は失敗す
前書き
《前回》
逃げ疲れた藤木の前に三河口が現れる。三河口は捕まえに来たのではなく、今の自分は逃げるままでいいのかと藤木に問い、かよ子に藤木の居場所を教えてそのまま去る。三河口、湘木、冬田は紂王と妲己を捕獲し、杯の行方を尋問し、煬帝という言葉を手掛かりとする。そしてかよ子は藤木に追いつくが、藤木の必死の抵抗を受ける。さらにその場にレーニンおよび杉山も!!
藤木をあと一歩のところで取り返そうとしたかよ子と次郎長の元に妲己、紂王、そしてレーニンが近づいた。
「杖の所有者にどこぞの侠客か。防御は手薄だな」
「う・・・」
かよ子はそのレーニンに威圧感を感じる。レーニンはかよ子と次郎長に対して威圧の能力を放っていたからである。そしてレーニンが片手に掴んでいるのは杯の所有者だった。
「り、りえちゃん!!」
(何とかこの状況を何とかしないと・・・!!)
かよ子は杖をレーニンに向けた。
「白魔術、出てきて・・・!!」
杖が白く光る。オルガンの音色が奏でられた。
「白魔術か!」
しかし、戦争を正義とする世界の長でも白魔術には対抗しきれない。異能の能力も白魔術によって弱められてしまった。
「く、杖の能力を吸収できん・・・!」
途中、レーニンの姿が杉山に変わった。
「山田、お前の杖、また強くなったんだな。俺も負けてられねえぜ」
「杉山君!?それなら私達の所に戻って来てよ!」
「だが、そうはいかねえ。こいつらの側についてやるのが俺の考えだからよ。そうでなけりゃ大将にもなれねえからよ。まだおめえの知り合いの高校生にも臆病者扱いだったしな」
「そんな・・・、でも、杉山君」
かよ子は思い出す。以前ラ・ヴォワザンの黒魔術で偽物の杉山が出された時、嘘とはいえそれを倒すと本物の杉山も死ぬとハッタリを掛けれらた事があった。かよ子だって本当はレーニンとは戦って倒そうと思っても杉山とは戦いたくはない。
「杉山君はそっちの方に味方に付いても利用されてるだけかもしれないんだよ!もし赤軍や戦争主義の世界の思い通りになったとしても、杉山君は用済みで殺されちゃうかもしれないんだよ!それでもいいの・・・!?」
「そうかもしれねえな」
杉山ははっきりとした答えを言おうとはしなかった。
「それなら・・・」
「レーニン様、今なら私達も加勢します!」
妲己が九尾の狐に変身して飛び掛かる。紂王もまた刀を出してかよ子が出した白魔術を消そうとした。
「白魔術など、ふざけた真似を!」
紂王が振るった刀で白魔術を奏でる音楽が消えて行った。
「よくやった、紂王」
杉山の姿がレーニンに戻った。
「さあ、杖の能力を貰うと共に貴様を抹殺させて貰う!」
「あ・・・!!」
「させぬぞ!」
次郎長が刀を振るって迎撃した。紂王と鍔迫り合いになった。
「ど、どうしよう・・・!?」
かよ子は白魔術以外でどう対処すべきか迷う。その時だった。
(そうだ・・・!!)
前にかよ子は取られた杖を取り返そうとヴィクトリア女帝と戦っていた時、彼女は己に杖を向けて肉体的な能力を高めていた。
(そうだ、それを使おう・・・!!)
かよ子は己の身体に杖を向けた。肉体能力を強化させた。レーニンの威圧の能力とかよ子の武装の能力がぶつかり合った。レーニンからしたらこれまで能力吸収は武装の能力で無効化される事はなかった。
「先ずは貴様の杖の能力を吸収だ」
レーニンは杖の能力を吸収していく。だが、上手くいかない。
「な、上手くいかん!?」
レーニンは驚いた。
「貴様、杖で何をした!?」
「ただ身体を強くしただけだよ!」
かよ子はそう言って拳を出す。触れてもいないのにレーニンを吹き飛ばした。
「うおっ!」
そしてかよ子はパンチを連打する。遠隔で攻撃し、レーニンを苦しめた。
「吸収能力を妨害されるとは・・・!!」
「さあ、りえちゃんを返して!藤木君も!」
そして、レーニンは杉山の姿に変わった。
「確かに藤木もりえの解放を許可したが、そうはいかねえな。こいつが許さねえぜ」
そして杉山は見聞の能力である気配を感じた。
「紂王、妲己、山田の仲間が来るぜ。藤木を連れて逃げるぞ」
「はい!」
杉山かつレーニンはりえを連れて、妲己は藤木を連れて、次郎長と競り合っている紂王は戦いを中断して撤退した。
「ま、待ってー!」
「山田かよ子!このまま追うと他の仲間が移動できぬ!通信で他の者も呼び集めるのだ!」
「あ、うん!」
かよ子は通信機で連絡をし始めた。
「こちら山田かよ子!ごめん、藤木君もりえちゃんも逃しちゃって!今敷地の所の林にいる!」
『こちら大野、解った、そっちに行くぜ!』
やがてりえの友達やのり子、次郎長の子分の一部が来た。
「かよちゃん!」
「あ、鈴音ちゃん、みゆきちゃん、のり子ちゃん・・・!!ごめん、りえちゃんは杉山君が連れてっちゃった・・・」
かよ子はまたおっちょこちょいしてしまったと後悔した。
「いや、そんな、また何処までも追うよ!」
そしてありや大野達、他の面々もその場に集合した。
レーニンは紂王の屋敷より撤退した後、トランシーバーで救援を要請した。
「赤軍の者共、これより私は北上する。一部の者、杖の所有者や護符の所有者を狙う支度をせよ」
『了解しました』
そしてレーニンは別の方へも連絡する。
「トロツキー、スターリン、ベニート、アドルフ。北の方へ例の奴等をおびき寄せる。貴様らもその周囲へ向かい、杖と護符の争奪戦に参加せよ」
『了解!』
「紂王、妲己、私は一旦失礼する。そしてこの小娘は私の方で保管しておくぞ」
「はっ、かしこまりました」
レーニンと杉山は妲己、紂王と別れた。
「はて、小僧。この小娘はどこにやるつもりだ?」
「本部は剣奪還班に襲われてるからそこには置けねえな。別の所に置いておこう」
りえはどこに連れて行かれるのか。今、意識を失っている彼女には知る由もなかった。
かよ子達藤木救出班、そしてありやみゆき、鈴音、奏子などりえを探す者達は林の所にて集合していた。
「それで藤木君は戻るの嫌がってたのね」
ありは状況を整理していた。
「はい、ごめんなさい、あと一歩でりえちゃんも取り返せると思ったのに・・・」
かよ子は謝罪した。
「ううん、私達の方ももっと早く来るべきだったわ。ごめんね、負担かけさせて」
ありの方も謝罪した。
「でも、かよちゃんの杖、前より強くなったのね。白魔術使えるなんて」
奏子はかよ子の杖が強化されたという報告を聞いたので凄いと思っていた。
「あ、そうだ、かよちゃん。俺の知り合いの長山治君にりえちゃんって子がどうしているのか解るかもしれないってミカワが言ってたが、俺達も治君を頼っていいのか?」
「長山君を・・・?うん、いいと思うよ。長山君にも頼んでみるよ!」
「ああ、ありがとう」
「ここにはもう残党はいないようだし、夜中になったから皆休みましょ」
ありは提案した。皆は廃墟と化した紂王の屋敷で休むのだった。
藤木は妲己と紂王、そして命からがら逃げてきた遊女や兵士の残兵と共に北へと逃走していた。
「妲己さん、紂王さん・・・」
藤木はぼそっと二人の名を呼んだ。
「どうしたのかね?」
「もう、りえちゃんは諦めます。『向こうの世界』の子からは好きになってもあっちから嫌われるだけですから・・・」
「そうか、残念だったわね。済まないね、私達の方が辛い思いをさせて・・・」
「それから、僕・・・」
「何かね?」
「もっと強くなりたい、です・・・。あの山田の杖とかみたいな何か便利な武器とか道具が欲しい・・・。皆に戦わせてばかりでいつも自分は逃げてばかりですから、卑怯なんて、言われたくないんです!」
「そうか、卑怯と呼ばれたくないとな・・・。その気持ちはよく解る。坊やの専用の武器を造ってあげようではないか。如何ですか、紂王様?」
「そうだな、少年も我々の戦力になれると頼もしいし、新たな嫁ができる時は別れる事なく、少年を本気で虜にするだろうな」
「そうだ、坊やの新しい嫁も用意しなければ・・・。まあ、また選べないであろうから、私が新たに候補を作ってそこで競い合いをさせて一番になった者を嫁とさせてあげよう。そうすれば坊やも迷う事はないかな?」
「は、はい・・・」
「今迄の遊女よりも更に強い我が手下が北の方にいる。そちらの者に頼ろう」
(もっと強い女の子、か・・・。僕も強くなれるかな・・・?)
ある場所で、一人の少女が絶望しながら泣いていた。
(藤木君・・・)
笹山かず子は嘗ての罪を許そうとして会いに行った少年から戻る事を拒否された。これから先、どうすればいいのか。
(フローレンスさん、私、藤木君に嫌われました・・・。先に嫌ったのは私だけど・・・。どうすればいいんでしょうか・・・?)
笹山はその場で 姚崇、張説と共に寂しい夜を過ごすのだった。
後書き
次回は・・・
「廃墟化した屋敷」
藤木の奪還に失敗し、りえも他の場所へと持って行かれ、作戦は振り出しに戻された。かよ子やあり達は再びそれぞれの目標の為に紂王の屋敷を後にする。三河口は紂王を尋問した時に得た「煬帝」という人物を鍵として杯の奪還を目指し続ける。そしてその紂王の廃墟にさり達が到着するのだが・・・!?
287 廃墟化した屋敷
前書き
《前回》
レーニンおよび杉山と相対したかよ子は白魔術や身体能力強化の術で攻撃する。善戦するが、杉山はかよ子の杖が、そしてかよ子もまた強くなっていると認め、紂王や妲己、そしてりえを連れてその場を離れてしまう。りえや藤木の奪還に失敗してしまい、また一から出直しに!!
夜が明けた。かよ子達は朝食を済ませた後、あり達と別れて再び藤木の救出へと向かおうとした。その前にフローレンスから連絡が来て、藤木とりえの奪還に失敗し、取り逃がしてしまった事を伝えた。
『そうでしたか・・・。しかし、諦めてはいけませんよ。領土攻撃班も多くの領土を着々と我々の世界の領土へと戻していますのでいずれは追い詰めます事になりますからね』
「はい・・・!!」
『では、ご武運をお祈りしています』
「は、はい、ありがとうございます・・・」
通信を終了した。
「山田かよ子、長山治にも連絡したほうがよいぞ」
「うん、そうだね・・・」
かよ子は通信機を長山に繋げた。
「こちら山田かよ子。長山君、聞こえる?」
『あー、山田、どうしたんだい?』
「夜中まで藤木君とりえちゃんを連れ去ったって思われる人と戦ってたんだ。それで逃しちゃったんだけど、今藤木君やりえちゃんがどこにいるか探知してくれるかな?」
『ああ、それなら今知り合いのお兄さんからも頼まれて探してるところだよ。ちょっと待っててくれよ』
かよ子は知り合いのお兄さんと聞いてりえの救出に当たっている北勢田の事だと解った。長山と北勢田は近所付き合いで仲が良いのだった。
「うん、待ってるよ」
かよ子は情報を待ちながら北へと羽根を進めた。
三河口はありと通信機で連絡を取っていた。
「そうですか、かよちゃん達は藤木君を奪い損ねた訳ですか・・・」
『うん、もっと北の方に逃げたらしいの』
「そうですか、それならさりちゃんと行動を一緒にしている長山治君と連絡を取り、りえちゃんや杉山君、藤木君の行動を探ってくれと頼むといいですよ。北勢田にも伝えましたが」
『うん、ありがとう』
連絡を終えた。
「ねえ、やっぱりあの時、大野君達を待ってた方が良かったんじゃないかしらあ?」
冬田は聞いた。
「それは大野君達の仕事だろ。俺達の目的は杯を奪い返す事だ。他人の手柄を横取りする気はない」
「それより三河口、あの狐に変身する女が言ってた言葉覚えてるか?」
「ああ、ヨウダイとか何とか言ってたな・・・。その場を凌ぐために嘘ついてた可能性もあるが、本部に詳細を聞いてみよう」
(ヨーダイ・・・、どうも昔の皇帝が頭に浮かぶんだが・・・)
三河口は本部に連絡を取り始める。
「こちら三河口健。フローレンス、イマヌエル。夜中までかよちゃんやうちの従姉達と藤木茂がいるって屋敷での戦いに参加していたんだが、藤木やりえちゃんを攫ったとされる女から杯の在処について尋問した所、『ヨーダイ』様に預けたとか聞いた。ヨーダイについて何か情報知っているか?」
『こちらイマヌエル。煬帝か、勿論それは昔、中国にあった隋という王朝の皇帝だよ』
「そうか、その煬帝がどこに居座っているか解るか?」
『ああ、北の方角だ。丁度君達が進んでいるその直線状に彼の根城があるよ』
「そうか、ありがとう。偽情報かもしれないが、そちらを当たってみるよ」
通信を終了した。
「冬田、北の方に進ませろ」
「は、はあい・・・」
三人は北へと向かう。
(杉山君、果たしてお前は大将に一歩前進したのか・・・。だが、俺はまだ認めるつもりはないぞ・・・)
三河口は戦争主義の世界の長と合体した少年の事も考えていた。
夜中に藤木救出班と杯の所有者を取り返す者、そして杯の在処を探す者らが激しい戦闘を繰り広げた紂王の屋敷は今は廃墟と化していた。建物の一部は壁や屋根が破壊されており、そこに住んでいた者は皆殺されたか別の場所へと逃走し、誰一人いなかった。そこに一機の飛行機が飛来する。
「ここね、例の戦闘場所は」
その飛行機は護符の所有者・羽柴さりの護符の能力で出された物だった。さりは飛行機を着陸させ、同行している者と共に降りた。
(ここで山田達は藤木君を取り返す戦いをしてたんだな・・・)
長山はこの地に行方不明となっていたクラスメイトがいたと思うともう少し自分が支援してやればよかったと悔しく思った。
(ごめんな、皆・・・)
と、その時、長山の通信機が鳴った。
「はい、こちら長山治」
『こちら北勢田竜汰だ』
「あ、お兄さん!」
長山にとって北勢田は知り合いの高校生でもある。
『今、そっちはどの辺にいるんだ?』
「ああ、うちのクラスメイトの山田かよ子達が戦ってた所にいるよ」
『紂王の屋敷だな?それなら話は早いかもしれん。その場に杯の持ち主の女の子もいたんだ。逃げられちまったがその行方を探れるか、君の眼鏡を使ってみて欲しい』
「はい、やってみるよ!」
長山は神通力の眼鏡の能力を行使した。杯の持ち主の所有者の行方を探知する。そしてその少女の姿が眼鏡に現れた。
(りえちゃんは・・・)
長山は確認した。杯の所有者は戦争主義の世界の長に連れて行かれていた。
(あれは杉山君じゃないか!!どこへ連れて行こうってんだ・・・!?)
そして方角も確認する。北の方角だった。長山は通信機を取り出して北勢田に繋げた。
「こちら長山治!確認したらりえちゃんは北の方角へ杉山君に連れて行かれているよ!」
『北の方角!?その杉山君ってのは治君の友達だろ?あの戦争主義の世界の長に寝返ったって奴か!」
「うん、そうなんだ!」
『チッ、面倒な事になっちまったな。ありがとう、気を付けるよ!』
通信は終了した。
「長山君、そのりえちゃんが杉山君と一緒にいるの?」
さりは長山と北勢田の会話を聞いていたのだった。
「うん、そうなんだ!」
「はあ、ウチの弟が・・・、いい加減にしなさいよ!」
杉山の姉・杉山もと子は弟の不可解な行動続きに怒った。
「そっか、その寝返ったの、君の弟か。どげん奴かい?」
尾藤が聞いた。
「まあ、サッカーとか好きだし、クラスでは頼られてる男子よ」
「そげんこったか。強敵になりそうやな」
テレーズは屋敷の周囲を徘徊した。何もない状態となってはいるが、なかなかの豪華な造りになっている事に驚かされた。藤木救出班の目的の少年がこの建物内にいたとなると少年にとってはこの屋敷はかなりの楽園であったに違いないだろうと。
「テレーズ、珍しいかね?」
清正が話しかけた。
「ああ、はい。古代の中国の王朝の建物の造りが私がいた国とは全く異なるものですから、とても珍しゅうものでして・・・」
「まあ、西洋人からしたらそう思うのも無理はないであろうな」
「はい、そういえばお母様も東洋の木でできた家具を好んでいましたわ・・・」
テレーズは敵対した母を思い出すのだった。長山は神通力の眼鏡でこの建物内の過去の出来事を映し出そうとしていた。
(ここに藤木君とりえちゃんがいたんだ・・・。山田達、悔しかっただろうな、もう少しで目的達成だったのに逃げられるなんて・・・)
そして屋敷での戦いを映し出す。自身の知り合いの高校生と戦闘に関わり、更には戦争主義の世界の長と彼と同体化した杉山の姿も見えた。
(杉山君、君は何を考えているんだい・・・?)
その時、長山は異変を感じた。
(何かが来ているのか・・・?)
そして何かが飛来してくるのが見えた。
「あれは・・・!?」
それは映画に出てくるようなプテラノドン型の怪獣だった。
「怪獣!?この世界にいたの!?」
怪獣が攻撃して来る。さきこのエメラルドが光った。全員を防御させる結界を出した為、皆無傷で済ます事ができた。
「この女か、護符の所有者は」
西部劇のガンマンのような人間が降りてきた。
(な、何だ、今迄の敵とは違う!)
長山やさきこなど見聞の能力の持ち主からしたら赤軍や戦争主義の世界の人間とは異なる感触だった。
「決闘だ!」
ガンマン達は発砲してさり達を狙う。さりは護符で巨大な防弾ガラスを出して対処した。
(この人達は・・・)
長山は眼鏡で確認した。この男と怪獣はどこから来たか。そして解った。別の男がカメラから出して彼等を出現させた所を。
「こいつらは、赤軍の人が出したものだ!」
(赤軍・・・!?)
さり達はすぐに警戒した。だが、プテラノドンの怪獣が挟み撃ちにして来る。
後書き
次回は・・・
「ガンマンと怪獣」
廃墟化された紂王の屋敷にてガンマンとプテラノドンの怪獣に襲われるさり達。徹底抗戦する一同だが、果たして戦いの行方は如何なるものか。そして藤木に拒絶され絶望していた笹山は・・・!?
288 ガンマンと怪獣
前書き
《前回》
かよ子達と杉山達の戦闘現場となった紂王の屋敷は激しい戦いと紂王達の逃亡によって廃墟と化していた。その場を訪れた長山やさり達はある者達と交戦する。それはプテラノドンのような怪獣とガンマンの集団だった!!
本部の管制室。フローレンスにイマヌエル、先代の杖、護符、杯の所有者達はある地点を確認していた。
「紂王の東の屋敷の周辺が陥落したが、安藤りえ君も藤木茂君の奪還には失敗してしまった訳か」
「はい、あのレーニンと同化しました杉山さとし君の邪魔さえありませんでしたらできましたはずです・・・」
(かよ子・・・!)
まき子は娘のおっちょこちょいではないかと僅かに娘を疑った。だが奈美子の方も彼女の次女と戦いに関わったと思うも何とも言えなくなった。
「だが、領土の奪還という点では良かったかもしれない。現に護符の所有者の羽柴さり君達がその場所に進んでいるからね」
「ええ・・・」
フローレンスは別のある人物が気になった。
「私、少し外させて頂きます」
フローレンスは退室した。
ガンマンの銃撃を防弾ガラスで防いださりだったが、反対側から怪獣が襲ってきた。
「私が!」
さきこのエメラルドとアメジストが光った。そしてもと子の玉も黒く光り、見えない所から怪獣を襲った。怪獣が苦しみだす。
「怪獣に気を取られてる場合か!」
「勿論忘れとらんたい!」
尾藤がボールを蹴った。炎のシュートが放たれた。そしてボールは軌道を曲げてガンマン達を襲う。ガンマンは銃撃で応戦したが、尾藤のボールはそれ以上に威力があったようで、銃弾を跳ね返した。
「おおっ!」
ボールは三人に順番に命中した。炎のボールのダメージは強烈だったようで、三人は当たった所が火傷していた。
「私とさきちゃんでこっちの怪獣は何とかします!」
「ええ、お願い!」
さきこともと子で怪獣を相手した。
「私も行きましょう!」
テレーズは宝剣を怪獣に向けた。
「大天使カマエルよ、どうか我々に勝機を与え給え!」
テレーズの宝剣が光った。だが、その怪獣も負けじと衝撃波で攻撃した。
「テレーズさん!」
さきこのエメラルドがもう一度光った。そしてもと子も己に気合を入れて怪獣に攻撃した。しかし、怪獣が放った衝撃波とぶつかった後、双方とも打ち消された。
「あの怪獣、面倒臭いわね!」
「一体何なのかしら?」
その時、さきこの琥珀が光る。
(そうだ、確か琥珀ってのは・・・!!)
そしてさきこの身体から怪獣と同じ衝撃波が放たれた。怪獣も同じ衝撃波を出して対処する。二つの衝撃波がぶつかり合ってお互いは一歩も引けを取らない。
「さきちゃん、私も行くわよ!」
もと子は玉の別の能力を行使させた。風が吹き荒れ、更には大地が動く。突風が怪獣を襲った。
「ギエエエ!!」
怪獣が劣勢となったのか、悲鳴を挙げる。そして地面が爆発し、飛散した土の欠片が怪獣を襲った。
「す、凄いわ、もと子さん!」
そしてさきこのルビーとサファイアが光り出した。二つの宝石の能力がさらに風と地の力を強めて行く。そして怪獣に大量のダメージを与えた。そして怪獣は力が尽きたのか、倒れ、消滅した。
笹山はその場で途方に暮れていた。藤木に戻るのを拒絶させられた事で己がこの世界にいる理由を見失ってしまったのだった。
《僕はもう君を忘れるって決めたんだ。手紙にもそうあったろ?僕は『前の世界』になんて戻りたくいないんだ。戻ったってまた皆から卑怯者って呼ばれるだけだよ。それにこの世界はとても楽しいんだ。いつでもスケートができるし、笹山さんみたいに可愛い女の子もいっぱいいて僕を卑怯って言わないし、もう他に好きな子だってできたんだ!今更戻って来てなんて言われても嫌だよ・・・!!》
藤木の言葉を思い出す。藤木は元の世界に戻るのを嫌がっていた。
《僕はこの世界にいたいんだ!絶対に帰りたくないよ!》
(藤木君の決意は硬かった・・・。もう私には無理なのかな・・・?あとは山田さん達に任せて・・・。いや、山田さん達とあっても藤木君は戻って来てくれないの・・・?)
その時、持っていたボールペンのような道具から音が聞こえた。笹山は何だと思ってボールペンを手にとって近づけた。
『こちらフローレンスです。笹山かず子ちゃん、聞こえますか?』
「フローレンスさん・・・!?」
『藤木茂君とはお会いできましたようですが、拒絶されましたのですか?』
「はい、帰ってくれって頼まれました・・・」
「そうでしたか・・・。しかし、笹山かず子ちゃん、ですからと言いましてそこで諦めましてはいけませんよ。藤木茂君がどんなに拒否し続けましょうとも取り返さなくてはいけません。そしてその道具を使用しました事で山田かよ子ちゃんに藤木茂君が何処にいるのかを教える道標を作ります事ができましたのです」
「え?そうなんですか?」
「はい、山田かよ子ちゃん達はそれで先程藤木茂君を追い詰めましたのです。残念ながら逃してしまいましたがね。何処までも藤木茂君を追い続けますのです。私達もできますだけの支援をして差し上げますので頑張ってくださいね」
「フローレンスさん・・・」
フローレンスはそれ以上何も言ってこなかった。
(そう、だよね・・・)
「姚崇さん、 張説さん、私、この先も行くわ!」
「笹山かず子殿・・・」
「ああ、その通りだ!ここで諦めては何もならぬからな!」
笹山達は気を取り直し、藤木を探しに出発した。
その一方、さり、清正、長山、尾藤は三人のガンマンと交戦を続ける。
「相手がガンマンならこっちもピストルがいいかしらね!」
さりは護符でピストルを出現させた。火傷で藻掻いているガンマン三人組に発砲した。しかし、転がりながら避けられた。
「はは、お嬢ちゃん。舐めてもらっちゃ困るぜ。銃ならこっちの方が扱いがうめえんだ!」
ガンマンが反撃の銃撃を行った。さりは瞬時に防弾ガラスを出現させた。だがこれでは防御するのに精一杯となってしまう。
「もう一回やったるばい!」
尾藤がボールをもう一回蹴った。だが、ガンマン達も尾藤のシュート攻撃には攻略できるようになったのか、ボールを狙い撃ちし、パンクこそしなかったものの、ボールを撥ね返されてしまった。さり達の所に尾藤のボールが帰って来る。そのボールは防弾ガラスを破壊してしまった。
「今だ!」
ガンマンがさりに向けて発砲した。
(お、終わり・・・!?)
さりは護符でまた防弾ガラスを出そうにも間に合わない。
「さりさん!!」
長山が神通力の眼鏡の効果を発動させた。更に清正が空間の槍を地面に突き刺した。弾丸は長山の念力によって肉眼で確認できるようになる程遅くなり、清正の空間の槍の効果で軌道が逸れて別の方向へと飛んで行った。
「かわしやがったな!」
ガンマンは幾つも発砲してきた。だが、それ以上弾が来ない。
「ちい、弾切れだ!」
「よし、今ね!」
さりは自分が持っているピストルで応戦した。だが、瞬時に避けられた。
「へ、なんてな・・・」
ガンマンが別の銃を出してさりを狙って早撃ちした。
「さりさん!」
その時、怪獣との交戦を終えたさきこともと子が戻って来た。さりへの銃撃がさきこのエメラルドの能力とさり自身の武装の能力が合わさって防御された。
「な・・・!!」
「ちい、もう一度だ!」
ガンマンのもう一人が発砲しようとした。だが、長山の眼鏡の神通力で引き金が弾けない。そしてさきこのルビーが光り出す。
「さりさん、今よ!」
「うん!」
さりがガンマンをめがけて三発、発砲した。ガンマン達は余裕の回避を試みた。だがさきこのサファイアも光り、ガンマン達は身体の動きも封じられてしまった。もと子の玉が黒く光り、見えないところでガンマンを攻撃する。さりともと子の攻撃が命中した。
(やった・・・?)
さりはこれで敵を倒せたのか疑わしかった。
後書き
次回は・・・
「屋敷での手がかり」
さり達は果たしてガンマン達を打ち破る事ができたのか。その後、長山はその廃墟で何があったのかを確認する。そしてそこで紂王がある行動をしていた事が明らかになる。それは護符の所有者の従弟にとって都合よい情報で・・・!?
289 屋敷での手がかり
前書き
《前回》
紂王の屋敷にてさりや長山達はガンマンに怪獣達と交戦する。各々の道具および能力を上手く使いこなして徐々にガンマンと怪獣を追い詰めていく。一方、藤木との再会を果たしながらも拒絶されてしまった笹山はフローレンスからの声援を受けて絶望から立ち直り、再び藤木を探しに向かう!!
さりの護符で出した銃の攻撃、さきこのサファイアの能力で得られた絶好の勝機、もと子の影の攻撃、そして長山の念力とさきこのルビーの能力によるガンマンの硬直、全ての条件が合わさり、ガンマンが倒す機会は整った。さりの銃撃ともと子の攻撃がガンマンを襲った。
(やった・・・?)
さりはこれで止めを刺せたのか疑わしかった。だが、ガンマン達は虫の息だった。
「お、前、ら、の・・・、か、ち、だ・・・」
ガンマン達は息絶えて消滅した。
「・・・倒したのね」
「何とかやりましたね、羽柴さりさん」
「ええ・・・」
だが、その時、長山は不穏な空気を感じた。
「何か、様子が変な気がするよ」
「え?」
さり達は見回した。しかし、次の敵が攻めてくるような気配はない。
[和光晴生が出したラドンとやらの怪獣と西部劇のガンマンを倒すとは護符の所有者達もなかなかのものだな]
どこからか声が聞こえた。
「この声は・・・!!」
さりはこの声は以前にも聞いた事があった。
[まあ、護符も杖と同じ方角上にあるというのならば東側を一気に追撃できるであろう]
「あんた、戦争主義の世界の長でしょ!?」
さりは天に向かって問答した。
[その通りだ。今貴様らがいる地は杯の所有者を監禁し、その後、杖の所有者が藤木茂という小僧を争奪する為の戦闘が行われた場所でもある]
「ここが・・・!?」
[我々の世界の領土が消えるのは悔しいものだが、貴様ら平和を正義とする世界の守護としてその境界が我々の真の世界に近づいた時、護符も頂こうではないか。おお、そうだ。博識なる少年よ、貴様も共にいたのだったな。名は確か長山治と・・・]
「ぼ、僕の事かい!?」
長山は自身の名を呼ばれて悪寒がした。
[我が強化、そして我らの世界のさらなる強化と共に貴様の能力も最上位の道具と共に頂戴する事になる。せいぜい負け戦を楽しみにするがよい]
そして声はそれ以上言ってこなかった。
「・・・、何が言いたかったのかしら?」
さきこは沈黙の数秒後、我に返った。
「そうだ、長山治、お主の神通力の眼鏡を使用してこの屋敷の廃墟にて過去に何が起きたのかを確かめよ」
清正が提案した。
「え?うん」
「それでお主らの友である杖の所有者によって何かよい手がかりを与える事ができるかもしれぬ」
「よし、やってみるよ!」
長山は神通力の眼鏡の能力を行使した。天耳通を作動させた。その場で起きた過去の声が長山に聞こえて来た。
[だ、誰っ!?私をどうするつもりよっ!?杯を返してっ!!]
(この声はおそらくりえちゃんがここに連れて来れられたばかりの時だな・・・)
[それで、りえちゃんは、その、そうだ、ピアノ、頑張ってるのかい?]
[うん・・・。でも、こっちに来てからは弾いてないわ]
(りえちゃんと藤木君の会話か・・・)
まだ長山は能力を使用し続ける。
[皆様、お越し頂きありがとうございます。それでは新郎新婦の結びをお楽しみください。新たなお嫁さんとお婿さんのご入場です!]
聞き慣れぬ声だったがこの屋敷の人間の声だと長山は察した。おそらくりえはここで藤木と無理矢理結婚ごっこをさせられていたのかと長山は推測した。そして別の声が聞こえた。
[ところで例の杯はそっちで保管しているのか?]
[はい]
(杯?ここに杯はあったのか!?)
長山は杯という言葉を聞いて驚いた。そしてよく耳を澄ます。
[煬帝殿、これを一旦貴様に預けておこう。もし危機を感じたら別の物に譲渡するのだ]
[ああ、解った]
長山は決定的な会話を聞きつける事ができたと確信した。
「・・・、何が解ったんだ?」
尾藤が聞いた。
「杯が何処に行ったかだよ」
「え!?」
「それで何て聞こえたの?!」
さりが落ち着きを失い、質問した。
「煬帝って人に渡されたみたいなんだ!」
「そっか、私、従弟や姉貴に連絡するわ!」
さりは通信機を取り出した。
「こちら羽柴さり!健ちゃん、湘木君、冬田さん、聞こえる?」
『はい、どうしました?』
三河口が応答した。
「今かよちゃんが戦ってたっていう場所にいるんだけど長山君の眼鏡で調べて貰ったらね、ここの屋敷の人は杯を煬帝って人に渡したらしいわ!」
『煬帝に!?ありがとうございます!俺達も丁度その煬帝ってのを手掛かりに動いていた所でしたからありがたい情報です!ゆりちゃん達にもお教えしておきます!』
「いいの、うん、ありがとう」
連絡が終了した。
(健ちゃん、頑張って・・・!!)
護符の所有者は従弟を応援するのだった。
かよ子達は北の方角へと進む。
(折角藤木君を取り返すチャンスだったのに失敗しちゃった・・・。また振り出しか・・・)
「それにしても長山からの連絡遅いブー」
「もしかしたら長山の方も敵と戦ってる所でそれどころじゃないのかもしれねえぜ」
大野が推察した。
「うん、そうかもしれないね・・・。そういえば長山君もなんだかんだで向こうにも狙われてたんだっけ・・・?」
かよ子は思い出した。長山がオリガという女性に連れて行かれそうになった日を。
「そうだったなブー・・・」
「私も探してみるわよ」
のり子は人形を利用した。
「本当にできるのかブー?」
ブー太郎は聞いた。
「探知ぐらいできるわよ!」
キャロラインは不機嫌に答えた。人形が探知作業を始める。
「・・・方角は変わってないわ。そのまま安心して進んで」
「うん、ありがとう」
藤木救出班はそのまま北へ進む。
りえは夢を見ていた。その場には藤木がいた。
「藤木君っ!?」
りえは藤木が泣いているのが解った。
「来ないでくれよ」
「えっ?」
「君は僕が嫌いだったんだろ?もういいよ、どこにでも行ってくれ!」
「そんな、私、藤木君が嫌いなわけじゃっ・・・」
「何言ってんだい!?最初紂王さんの屋敷に来て貰った時も嫌がってたみたいだし、それに折角結婚式を挙げてからやっと僕を好きになってくれたと思ったのに・・・!?何で僕が嫌になったんだよ!折角僕の唯一の取り柄のスケートを見せる事ができたってのに!あれは演技だってのかい!?」
「演技・・・!?」
「もういいんだ、恋なんてしないよ・・・!!僕は誰が好きになっても皆嫌われるんだ!!」
「そんな、私は嫌ってるわけじゃっ・・・」
藤木の姿が見えなくなる。りえも頭の中が真っ黒になった。
りえは目を開けた。レーニンの威圧の能力で気絶させられて暫く意識を失っていたのだった。ここは自身が軟禁された部屋や藤木と二人で過ごしていた部屋とも異なる個室だった。
(私はあの屋敷から杉山君によって連れ出されて・・・)
「よう、りえ、気が付いたか」
その場には杉山がいた。
「杉山君っ・・・!!」
レーニンの姿ではなかった。
「ここはどこなのっ!?」
「さっきの紂王の屋敷よりも北の方さ。藤木はお前を取り返そうとしている奴に引き渡そうとしてたが、俺はお前にやって欲しい事があるんだ。それに付き合ってもらうぜ」
「やって欲しい事っ・・・!?」
りえにとって杉山が何を要求するのか、解ったものではなかった。
後書き
次回は・・・
「掃除の多忙化」
杉山はりえにある事をやらせようとするが、それはモニターのある部屋にて行う事だった。かよ子は藤木を取り戻せなかった事を反省しつつ、昼食にする。一方、かよ子達がいない学校では男子達が給食のお代わりをし放題だが、人手が足りないという事で掃除係の一方的な提案に皆が反発し・・・!?
290 掃除の多忙化
前書き
《前回》
紂王の屋敷で七人のガンマンと怪獣を倒したさり達は戦争主義の世界の長の声を聞く。その声はさりの護符のみならず長山も奪取する事を仄めかすような発言をする。そして長山はその屋敷にてりえと藤木の結婚式が行われた事を神通力の眼鏡を通して察知する。そしてその結婚式の時、紂王が煬帝という人物に異世界の杯を渡していたことが明らかになる!!
りえは杉山と共に部屋を出て廊下を歩いていた。
「杉山君、どうして私と藤木君を引き合わせようとしたのっ?」
「赤軍の奴に聞いてみたらお前が藤木の嫁に相応しいような事言ってたぜ」
「でも、その間、祝言を挙げてから私がおかしかった気がしたのは何だったのかしら?私が藤木君を好きになっているような態度だったみたいだけど・・・」
「そんな事があったのか?誰かに藤木を好きになるようにしろって暗示か洗脳でもしてたんじゃねえのか?」
「とぼけないで頂戴っ!アンタなんか知ってるでしょっ!?」
「・・・、それ以上は知られるとこちらも困るのでいう事はできん」
急にレーニンの姿に変わった。
「言ってもいいがその場合、口封じとして貴様を殺す。それでもいいのか?」
「う・・・、解ったわよっ・・・」
りえはそれ以上問答しなかった。そしてある部屋に入室した。モニターがあった。
「映像を見て貰うぜ」
杉山は姿をレーニンに変え、機械を操作する。
「これから観て貰うのは俺達の一種の思い出の一つだ」
「思い出の一つ・・・?」
りえは杉山の言う事が理解できぬまま映像を視聴し始めた。
かよ子達は昼になり、少し空腹になった。
「はあ、お腹すいた~。お昼ご飯まだ~?」
「儂ももう腹ペコじゃ~・・・」
まる子と友蔵は昼食が我慢できなくなっていた。
「全く、しょうがねえな」
毎度の事でありながらと思いながらも大野は呆れる。そんな中、かよ子は藤木を取り逃がしてしまった事で反省する事ばかりだった。
(あの時に妲己とか紂王って人達を倒せて藤木君を取り返せたらこんな苦労しなかったのに・・・)
「藤木君はりえちゃんと一緒にいたけど、今はどうしてるのかな・・・?」
かよ子には今も藤木とりえが共にしているのか、それとも別にいるのか、考えても解らない。
「長山治の情報では藤木茂と安藤りえは祝言を挙げておったようだが、おそらく安藤りえは拒絶したのではなかろうか?」
石松はそう推察した。
「それにこれ以上一緒にさせていても煮雪あり達の一行と我々の一団が纏めて襲い掛かって来る恐れを懸念しているであろう。それにあの時の襲撃には杯を探す三河口健に冬田美鈴、湘木克也の者も混ざっておったからな」
かよ子は状況を整理する。思い出せば紂王の屋敷での戦いでりえは杉山(レーニン)に連れられて行った。今は彼女は杉山と共にいるかもしれない。そう考えて羽根を進めているうちに本部から昼食が支給された。
入江小学校の3年4組の教室。欠席者が多い為に給食はかなり余っていた。この日は鶏の唐揚げに塩もみ野菜、野菜スープにプリンだった。
「うおお、今日も唐揚げに野菜スープが食い放題だぜ!!」
食い意地の張った男子・小杉太にとっては給食の時間は極楽だった。
「小杉、今日も凄い食べっぷりだね・・・」
「うん、大盛りにしてくれって頼んだのにお代わりするなんてね・・・」
たまえととし子は小杉の恐ろしい食欲に今日も驚くのだった。
「おい、小杉、自分だけお代わりするなんてずりーぞ!」
「俺も唐揚げ貰うぜ!」
他の男子達も食い下がらない。お代わり合戦となった。
午後の授業も終了し、帰りの学級会が始まった。その時、掃除係の前田ひろみが立ち上がり、前に出た。
「掃除係からのお願いです!最近掃除をサボる人が多いです!ただでさえ今人がいないので掃除の時間を増やします!」
「はあ!?」
「冗談じゃねえぜ!」
「私、ピアノのお稽古あるのに増やされたら遅刻しちゃうわ!」
多くの生徒達が文句を言った。まるでデモのようだった。
「仕方ないでしょ!!ただでさえ休んでる人が多いんだから!!掃除当番が人手不足で片付かないんだよ!!」
前田も逆切れした。
「だからってアンタ達掃除をしなきゃいいって思ってるんじゃないでしょうね!?何が何でもやってもらうよ!!」
「勝手に決めるなよ!」
この論争は終息しそうにない。
(ど、どうしよう・・・!?)
たまえはこの場をどう治めるか自分には考えが出てこなかった。
「ちょっと、丸尾君、アンタ学級委員なんだからどうにかしてよ!!」
「え!?わ、ワタクシがですか!?」
丸尾は急に自分に振られて気を取り乱した。
「あ、いや、その・・・!?」
頼みの綱であるはずの学級委員でさえも最善の策が思いつかなかった。
「まあ、まあ、皆さん、落ち着いてください」
戸川先生が立ち上がった。
「確かに今は欠席者が多いので掃除の人手不足に困る前田さんの気持ちも解らなくはないですが、前田さんも自分の決めた事を皆に決めて押し付けるのもいけませんよ」
「う・・・」
「掃除当番を決めるよりも皆でやった方が早く終わるでしょう。ただし、さぼってはいけませんよ」
「は、はい・・・」
「ちっ、しょうがねえなあ」
男子の一人が文句を呟きながらも掃除は全員で行うという事で決定となった。そして皆で掃除が始まる。
「それじゃあ、箒と塵取り持ってって!足りなくなったら後は皆雑巾がけと窓拭きだよ!」
前田のてきぱきな指示(ただし、端から見ると怒鳴り散らしているだけにしか聞こえなくもないが)で掃除はいつもよりは早く終わった。
「よし、皆、やればできるじゃない!!明日からもこの調子で皆で掃除やるよ!」
前田は掃除が捗ったからか気分が良かった。
「たまちゃん、帰ろうか・・・」
「うん・・・」
たまえととし子は共に下校した。
「これじゃあ、暫く毎日掃除になりそうだね」
「うん、前田さん、掃除に関しては凄く厳しいからね・・・」
「でもまるちゃん達、ある意味楽かもしれないよね」
「確かに掃除しなくていいけど、異世界の方がもっと大変なんだよね・・・」
たまえやとし子は親友や他に出動している者達が気になった。
「そういえば笹山さんもあれから一週間休んでるよね」
「うん、もしかしたらまるちゃんやかよちゃん達と会ってるかも・・・」
夕方。かよ子の父はこの日も寂しい帰宅となった。
(はて、この日はどうしようか・・・?)
家に帰っても食事は自分で用意しなければならない。その上妻がやっていた家事を自分が引き受けなければならないので大変だった。
(母さん、かよ子、何としても勝つんだぞ・・・!!)
そして自分ができる事は何なのか。ある事を思いつくのだった。
こちら杯の奪還に向かう祝津ゆりの一行。ゆりは通信機で従弟と連絡を取っていた。
「え、杯の手掛かりが解ったの?」
『はい、奪い取った本人と思われる妲己と紂王に問い詰めてみたたところ、奴らは「煬帝」という奴に渡したとの事です。最初は本当か嘘か解らなかったのですが、その藤木君やりえちゃんがいた屋敷からさりちゃんと一緒にいる小学生に調べて貰った所で確信しました』
「その煬帝ってのはどこの方角だって?」
『北の方角です』
「ありがとう。そうだ、結局・・・」
『はい?』
「かよちゃん達もあり達も結局は藤木って子や杯の持ち主の子を取り返せなかった訳ね」
『はい・・・』
「まあいいわ。領土攻撃班の侵攻で着々と領土は平和主義の世界に戻って来ているから探せる範囲も狭まるでしょう。頑張って追いついてきてね」
ゆりは通信を終えた。
「ゆりさん、杯の場所、解ったんですか?」
光江が聞いた。
「ええ、北の方の煬帝って所を目指すわよ」
ゆり達も進路を定めるのだった。
後書き
次回は・・・
「西部の領土では」
りえは杉山によって藤木の過去の映像を視聴させられ、りえは藤木の辛い過去を知る事になる。一方、戦争主義の世界の領土を西側へ侵攻して領土の奪還に進むすみ子達組織「義元」は夕刻の休息中、敵の襲撃を受ける。その敵は嘗て倒した人物と関連深く・・・!?
291 西部の領土では
前書き
《前回》
かよ子達が藤木を取り返す戦いを続けている最中、3年4組の教室では余る給食に多くの者がお代わりをする争奪戦となっていた。更に掃除の人手が足りないという事で掃除係の前田が皆と揉めながらも掃除の時間を増やそうとしていた。結果、当番関係なく全員で掃除する事で決着する。その一方、三河口から杯奪還の手掛かりを聞いたゆり達も北の方角を目指す!!
りえは杉山より映像の鑑賞をさせられていた。映像の内容は藤木の過去の記憶が中心だった。りえは夏休みに皆と初めて会った時の事だった。
(あの時教会で私がピアノ弾いてる所を藤木君が幽霊だと思ったのね。そこでかよちゃんとも会ったし・・・)
そしてりえは杉山と早速喧嘩し、ある夕方、杯を能力を試してみろと挑発され、杉山と戦ったがかよ子の仲裁でその場は収まった。そして皆と花火を楽しんで寄せ書きを書いて貰った。
「そう言えばアンタの寄せ書き、最初は書こうとしなかったのに、結局私の夢応援してたのね」
「いや、それは・・・」
杉山が俯いていた。
「何で顔見せないのよ」
「う、うるせえ、ほっとけ!次見るぞ!」
りえはその寄せ書きの内容は「絶対に夢、叶えろよ!」と書いてあった。そして次の映像に移る。秋にかよ子の知り合いの高校生の文化祭に行った時の記憶だった。
「・・・、これってっ?」
「ああ、山田の知り合いの高校生の文化祭に行った時のだな。思えば藤木の『好きだった女子』もその文化祭に行くからあいつも行きたいって我儘言ってたぜ。ところがあいつはゲームでもなかなかいい所見せられなくってよ」
そして文化祭の時の映像を進める(ただし、三河口が兄から暴行される所はカットされた)。
「あの三河口って高校生の提案で藤木は好きな女子と一緒に周る事ができたんだ」
「へえ」
りえは藤木が照れながら同行する小学生の女子を見る。カチューシャをしている少女だった。
(あれが藤木君が好きだった女の子ね・・・)
そしてその場に赤軍が侵入して藤木がその女子と一緒に逃げる。
「あの子、藤木君と楽しんでたみたいね・・・」
そして時は過ぎ、合唱コンクールの練習の時の映像だった。藤木が笹山にかよ子と練習の約束をした時の記憶だった。だが、藤木はその時、風邪をひいてしまい、笹山の家に練習しに行けなかった。
(これは流石に藤木君もショックだったわよね・・・)
そしてある時、かよ子に笹山と下校していた時、野良犬と遭遇し、藤木は笹山の手を引っ張って二人で逃げ、かよ子を置き去りにした。そして翌日、藤木はクラスの皆から卑怯者呼ばわりされ、非難されるのだった。
(藤木君、あんな事をっ・・・!!)
さらにクリスマス・イブの合唱コンクールでは、歌い出しが遅れたという理由でまたもや皆から卑怯者と非難を喰らってしまう。
(藤木君、それで皆から、確かに辛そうわよね・・・)
りえは流石に合唱コンクールで批判を受けた藤木に同情した。そしてその夕方、藤木は家から出て行き、ただ街中を徘徊しているだけだった。そんな時、ある人物が声を掛ける。
「ここの所は俺もよく知らねえ。何しろ名古屋で護符の持ち主と戦ってたからよ」
「うん・・・、ってあの人っ・・・!!」
りえは確信した。間違いなく藤木に話しかけた女は妲己だった。そして異世界に連れて行く。
(皆から卑怯、卑怯と言われたら藤木君も別の世界に逃げたくなるかもしれないわよね・・・)
そしてその後も藤木の記憶を垣間見させて貰うのだった。
「映像は以上だ。藤木がどうやってここの世界に来たのかは俺でも初めて知ったんだがな」
(・・・)
りえは藤木の過去に複雑な経緯を感じていた。
夕方となり、かよ子達は北へと進んでいた。
「はあ〜、お腹空いたなあ〜。お昼ごはんは炒飯にスープだったからとっても美味しかったなあ〜」
「そうじゃのう。夜もご馳走だとええのう」
案の定友蔵とまる子は食べる事で頭がいっぱいだった。
(・・・もうほっとくか)
大野はこれ以上関わるのは辞めた。他の皆と無言で同意だった。
『皆様、お疲れ様です。食事を支給します』
皆の上に食事が提供された。この日は豚カツだった。
「お、豚カツじゃねえか!」
大野は豚カツが好きだからか喜んだ。
「はは、この豚カツは栄養がよく付きそうだな。大野けんいち、お主は豚カツが好きか?」
大政は聞いた。
「ああ、もちろんだぜ」
「大野君、アンタも結構食い意地あるねえ」
まる子がからかった。
「うるせえ・・・!」
(豚カツか・・・。これなら元気いっぱいになれそうかも!)
かよ子は藤木を取り逃がした失態を忘れられると思い、食につくのだった。
すみ子、山口、川村、ヤス太郎達組織「義元」、そしてジャンヌやエレーヌの部隊は西側の領土を侵攻し、次々と奪還に成功していた。そして夕刻の食事となり、休んでいた。
「ここも落ち着いた所でやんすな」
「うん、でもまだ落ち着かない・・・」
「そういえば向こうの岸は戦争主義の世界の本部へと繋がる海への岸。ここまで来たとなると西側は殆ど奪還できたようなものです。ですがまだ落ち着けません」
エレーヌが説明した。
「そうか、すみ子の兄ちゃん達はここを通って剣を取り返したんだな」
「そうだね・・・」
(お兄ちゃん、どうしてるかな・・・?)
すみ子は兄が気になった。そして皆は談笑しながら夜を過ごそうとしていた。だが、すみ子は急に吐き気がするような胸騒ぎを覚えた。
「すみ子、まさか来てるのか!?」
山口が心配した。
「うん・・・!!」
「なら危険だ。こちらも体制を整えよ!」
「おう!」
皆は迎撃態勢をとなる。すみ子は銃で周囲に結界を張った。
(どうか、守れますように・・・!!)
「・・・く、結界か!!」
「何としても破るぞ!」
敵の声が聞こえた。
「あいつらか!」
山口が矢を放った。毒の煙を発生させる矢だった。
「うわ!」
「何としても防げ!」
「毒なら毒で返すんだ!」
その時、結界が消滅した。
「え!?」
「結界が破られた!」
「私が防ぎます!」
エレーヌが腕を出して防いだ。だが、敵の矢が放たれた。すみ子は銃で壁を作って防御した。
「お前ら、やってやる!」
川村がバズーカを、ヤス太郎がパチンコを発射した。前方で爆発が起きた。
「かわして貰ったぞ!」
敵将が三人現れた。
「何だ、お前らは?」
「我が名は燕王・チンキム」
「我が名は安西王・マンガラ」
「我が名は北平王・ノムガン。お前らは我が父を討った仇か!」
「何の事だ?」
山口が聞いた。だが、質問に答えず、チンキムとマンガラが矢を放った。エレーヌがもう一度、腕を出して矢が皆に当たらないよう防御した。
「皆様、あの学舎での祭りの後でウビライという者と戦ったでしょう?その人の息子達です!」
「フビライ・・・!!」
すみ子は思い出した。以前、兄の通う高校の文化祭にて赤軍はがテロを起こした後、現れた戦争主義の世界の人間だった。あの時は何とか石松やエレーヌの助力でフビライを倒したのだったが逮捕した赤軍の西川と山田を取り逃がされていた。
「敵討ちか、面白え!かかってこいってんだ!」
川村はバズーカでフビライの息子に攻撃した。
「やったか・・・!?」
だが、誰もその場にはいなかった。
「何!?」
「ふ、我々は今チンキムの術で霊となったのだ。これでは攻撃は当たらん!」
山口達は攻撃のしようがないと思った。
後書き
次回は・・・
「皇帝の息子達」
フビライの三人の息子達と交戦するすみ子達だったが、霊体として動く彼らになかなか攻撃を与える事ができずにいた。エレーヌの能力封じやジャンヌの天使の攻撃をフル活用しながらもお互い翻弄し合う状態となり・・・!?
292 皇帝(ハン)の息子達
前書き
《前回》
りえは杉山によって藤木が戦争主義の世界に来た経緯および過去の記憶を視聴し、藤木のクラスメイトから卑怯呼ばわりされた過去を知る。その頃、西部の領土の奪還を目指しているすみ子達組織「義元」は夜に敵の世界の人間の襲撃を受ける。その敵は燕王・チンキム、安西王・マンガラ、北平王・ノムガン。彼らは高校の文化祭の時に交戦したフビライの息子達だった!!
とある場所で赤軍達は移動後の疲れを休めていた。
「総長、随分と劣勢になってますけど逆転のチャンスなんてあるんですか?」
丸岡が房子に聞いた。
「ここでおびき寄せれば杖も護符も私達の物になれるのよ。そうすればレーニン様も喜ぶはず」
「しかし、剣をどう取りますか?平和主義の世界にありますし、俺が足立と吉村を取り返した時のように同じ手は使えないはずですが」
「それはその後考えるしかないわ」
かよ子はまる子と友蔵が食べた後すぐに眠くなって寝てしまっていたのを見て相変わらず呑気だと思った。同じおっちょこちょいでも自分はいつ襲われるかわからないと見てなかなか寝付けない。
「そういえば・・・」
「どうした?」
次郎長が聞いた。
「藤木君達は北の方へ行ったって事はあそこにはもっと手強い人がいるのかな?」
「おそらくそうであろう。赤軍の連中もその方に集約しておるだろうしな」
「うん・・・」
かよ子は懸念した。敵が集まっているという事は自分も杖が狙われやすくなると。
(杖が取られないように何としても藤木君を取り返さないと・・・!!)
すみ子達はフビライの三人の息子・チンキム、マンガラ、ノムガンに翻弄されていた。
「ど、どこなの・・・!?」
その時、何かの衝撃波がすみ子達を襲う。
「させるか!」
ジャンヌが聖マルグリットの能力を借りて防御した。
「濃藤すみ子、お前の銃で全てを守るのだ!」
「うん・・・!!」
すみ子は銃を周囲に幾度も乱射した。
「このマンガラの衝撃波を舐めてもらっちゃ困る!」
マンガラの衝撃波がすみ子が何重も出した結界を破ろうとした。だが、衝撃波で破られてもすみ子は銃の使用をやめなかった。
「ノムガン、お前の番だ!」
「おう!」
すみ子が出した結界が消えた。すみ子はもう一度銃で結界を出そうした。しかし、出てこない。
「・・・え?」
「このノムガンは地界に対応する戦い方をする。お前らの道具の使用で苦しみの罰を与えるのだ!」
「そんな・・・!!」
「纏めて攻撃だ!」
チンキム、マンガラ、ノムガンが纏めて攻撃してきた。
「聖マルグリットよ!」
ジャンヌが聖マルグリットの能力を借りて皆を防御した。
「聖カトリーヌ!鳩を利用して奴等の場所を定めよ!」
多くの鳩が出現した。鳩が飛び回り、やがて三方へと向かって行った。
「この鳩がどうしたという!?」
マンガラは鳩を倒そうとした。
「あの方向だ!」
「おうでやんす!」
ヤス太郎がパチンコを鳩が向かう三方に飛ばした。その時、三人の姿が現れ、眠ってしまった。
「よし、サンキュー、ヤス太郎!」
「へへへでやんす!」
山口が矢を放った。
「これでとどめにしてやる!!」
山口が放った矢で毒を浴びせ、三人をいちころで終わらせる。それが山口の考えていた事だった。放たれた矢から毒の煙が出て、フビライの息子達を襲う。
「やったか・・・!?」
これで終りかと皆が思っていた。しかし、三人とも消えていなかった。
「な・・・!?これはどういう事だ!?」
「・・・そうか、チンキムの能力だな!」
ジャンヌは推測した。
「え、でもさっきエレーヌさんの能力で使えなくなったんじゃ・・・!?」
「そうだと思ったのだが、彼の天界に対応する術は瀕死になりそうな時にはいかなる状況でも発動できるのであろう」
「なんでやんすか、その反則級の術は!?」
「どうしても倒せねえってんじゃ面倒臭いぜ!」
「私の秤で何とかできれば・・・!」
ジャンヌは秤を出した。今現在秤は水平だった。つまり現状では互角であるという事だ。
(このハンの子らの能力を以下にして打ち破れるか・・・!?)
そしてジャンヌは剣を持った。
「試しに斬ってみる!兵達よ、私に続け!」
ジャンヌは兵と共にチンキム達を襲撃した。しかし、それでも三人に近づく事はできなかった。
「エレーヌ、支援を!」
「あい!」
だが、直ぐに三人の敵は起きた。
「もう起きやがったか!」
川村がバズーカを発砲した。だが、マンガラに防御された。
「お前らを先ずは静粛してやろう」
マンガラがジャンヌやエレーヌに狙い定めた。
「させるか!」
「地獄を味わせてやる!」
ノムガンは地界の攻撃を仕掛けた。ジャンヌの能力を無効化させ、速攻で殺すつもりだった。
「や、やめて・・・!!」
すみ子は思わず銃を放った。フビライの息子達に結界を張った。
「我々に結界を張るとは血迷ったのか?それとも寝返ったのか?」
ノムガンはそう思った。しかし、攻撃がジャンヌに当たらない。自分に帰って来た。
「な・・・!!」
ノムガンが苦しみだした。
「ノムガン!」
「待ってろ、俺が助けてやる!」
チンキムが天界の能力でノムガンを楽にさせようとした。
「おお、すみ子、すげえぜ!」
山口が賞賛した。
「俺達も怠けてられねえぜ!」
「はいでやんす!」
山口が矢を放って爆発を起こした。ヤス太郎もパチンコで火薬玉を飛ばした。チンキムとマンガラに当たった。だが、チンキムは天界の能力で無効化させていた。
「神を操る能力は本当に手強いですね・・・」
エレーヌは改めてそう実感した。
「大天使ミシェルよ!」
ジャンヌが秤と剣を出してミシェルの能力を借りようとした。
「何が『だいてんしみしぇる』だ。その前に我々が貴様をコテンパンにさせて・・・」
チンキムが対抗しようとした。だが、ジャンヌが持つ持つ剣から炎が現れた。秤も大きく振動する。
「優劣がどうなっているのか解らなくなってきたな」
そして確認した。右の秤が傾いている。
「よし、今、我々が優勢に傾いた!!皆の者、今だ!」
「はいでやんす!」
「おう!」
山口、川村、ヤス太郎が纏めて攻撃した。ノムガンはすみ子の銃で攻撃できずにおり、最初はノムガンを助けようとしていたチンキムもそれどころではなくなっていた。
「俺が対抗してやる!」
マンガラが迎撃態勢を整えた。衝撃波で矢、バズーカ、パチンコの攻撃を打ち消そうとした。だが、そこにエレーヌの舞いで強化され、ジャンヌが召喚した大天使ミシェルの炎の能力、ジャンヌの兵の突進も合わさる。
「喰らえ!」
「これで終わりにする!」
「決まってくれでやんす!」
マンガラが劣勢になった。衝撃波が弱まる。チンキムの天界の能力もミシェルの炎とのぶつかり合いで打ち消されつつあった。
(お願い、皆、頑張って・・・!!)
すみ子はそう願った。
後書き
次回は・・・
「更に北方へ」
すみ子達はチンキム、マンガラ、ノムガンの戦いに終止符は打てるか。杉山はレーニンと共に北東へと向かうが、妲己との連絡に想定外の事に気づき始める。かよ子の父は娘の無事を祈願する為に三保神社に向かう。そしてかよ子は藤木の元の世界への帰還を嫌っていた事を思い出しながらも藤木を取り返す為に進み・・・!?
293 更に北方へ
前書き
《前回》
すみ子達は嘗て文化祭の時に倒したフビライの三人の息子・チンキム、マンガラ、ノムガンの襲撃を受け、迎撃に苦労する。天界や地界の能力を駆使し、己を霊体に変えて攻撃を交わす彼らに対し、ジャンヌの剣と秤で対応し、エレーヌが舞で山口達の道具を強化させる。形勢逆転なるか!?
山口、川村、ヤス太郎、ジャンヌやその衛兵、そしてエレーヌの総攻撃でフビライの息子達への留めが刺される。
(頑張って、通じて・・・!!)
すみ子は切実に願った。
「おおおお!!」
「ああああ!!」
「す、すみませぬ、父上・・・」
(こ、この声・・・、もしかして、やったの・・・?)
その時、すみ子の激しい胸騒ぎが弱まって行くのも見えた。
「あ・・・!!」
そしてその場にはチンキム、マンガラ、ノムガンはいなくなっていた。
「み、皆、やったんだね・・・!!よかった・・・!!」
すみ子はふと泣きたくなってしまうくらいの嬉しさだった。
「すみ子、お前も頑張ってたな!」
山口が労った。
「いや、私は何もしてないよ・・・」
「そんな事ねえよ。お前も結界を張ってあいつらの動きを止めてたじゃねえか」
「う、うん、ありがとう・・・」
「皆様、遅い夜に戦ってかなり疲れているでしょう。お休みになさってください」
「ああ」
皆は疲れた。そしてその場で休息するのだった。
朝になった。かよ子はこの日はかなり早く目覚めた。
「・・・、結構早く起きたんだ・・・」
かよ子は藤木を取り返そうとしてようやく彼がいるとされた紂王の屋敷での事を思い出す。
《僕はどうせ帰ったって皆から遠いところへ逃げた卑怯者だって言われるだけなんだ!それに僕なんか帰ったって誰が喜ぶんだい!?》
(藤木君は何としても帰りたくないって覚悟だった・・・)
そして前に聞こえたレーニンの声が思い出された。
《貴様ら藤木茂とかいう少年を奪還を目的としているようだが、仮に成功したとしても少年は喜ぶかな?》
《ああ、我が世界の人間が連れて行った。だが、連れた者の話によるとここの世界の生活を満喫しているとの事だ。果たして連れ帰っても逆に追い返されるだけだろう》
認めたくないがレーニンの言った事は本当だった。
(確かに藤木君は嫌がった・・・。でも・・・)
かよ子は簡単に納得するわけにはいかない。
(ここまで来て藤木君の言う通りにして帰るなんてできないよ・・・!!)
レーニンかつ杉山は杖および護符を奪取し、それらの能力を自身の能力として吸収する計画に入ろうとしていた。
「よいか、小僧」
レーニンが呼びかける。
「何だ?」
「今私の身体には杯と剣の能力が吸収されている。赤軍の理想では全ての道具を此方のものにするのが好ましい。だが、仮に今は奪取に手こずっているとしても私の所にあと杖と護符の能力を吸い取る事ができれば全ての人間を蹴散らし、『平和を正義とする世界』を排除する事ができるのだ」
「なら、杖と護符の持ち主を俺達の所に呼び寄せるかこっちから対面するって考えがいいんじゃねえか?」
「ああ、そして私の恨みも増した。私が前線に出て懲らしめたい所だ」
その時、トランシーバーが鳴った。
「此方レーニン」
『此方妲己でございます。今私達は煬帝様の屋敷に避難させて貰って体制を立て直しています』
「そうか、貴様にまた頼みたい事があってな、スターリンやトロツキー、赤軍の連中もそちらに向かって戦力を整えているとは思うが、そこで杖と護符の所有者を襲撃し、私に献上させるのだ。できなければ私も赴く」
『はい、仰る通りに致します。私の配下の者も使わしましょう、それからですが・・・』
「何だ?」
『実は前に紂王様の屋敷の付近で藤木茂坊のかつての恋人だったというおなごが坊やを連れ返そうと来ておりまして。その時は追い返しましたが、まだ殺しきれていない状態です。その小娘の討伐の許可を求めたいのですが・・・』
「何だ、その藤木茂の元恋人だと?まあよい、貴様に任せよう。但し邪魔が入る可能性に気をつけよ」
『了解』
通信は終了した。杉山は後半の通話内容が気になった。
(藤木の元恋人・・・?って事はまさか笹山がこの世界に来てんのか?)
朝食どきとなり、かよ子達はいつもの如く寝坊しているまる子を起こし、食事をするのだった。
「そういえば前にレーニンの声が聞こえた時に藤木君は連れ帰せたとしても喜ぶかって言われた事があったよね・・・」
「え?ああ、そうだったな」
大野も思い出した。
「あの屋敷で会った時藤木君は帰るのをとても嫌がってたんだ・・・。本当にそうだったよ」
「そうか、それじゃあ、あの世界は楽しそうなんじゃな。温泉もあるし、御馳走も食べられるし・・・」
友蔵はあまりにも外れた方向で考えていた。
「爺さん、そういう問題じゃありませんよ」
関根は呆れた。
「ああ、そうじゃった・・・。やっぱり藤木君はそのままにしておいた方がいいのかのう?」
「そう言うわけにはいかないよ!」
かよ子が反論した。
「そうだったなブー!」
「ああ、そうだ、かよちゃん。確か藤木君はあの屋敷で戦った人と一緒に行ったんだよね?」
椎名が聞いた。
「はい」
「確か本部守備班の友達。何て名前だったっけ?」
「な、長山君です・・・!!」
「そうか、後で長山君に聞いてみるといいよ。その人達が今どこで何をしているのか解るかもしれないからね」
「はい!」
かよ子は食後、長山に連絡をするのだった。
かよ子の父は妻や娘の無事および勝利を祈るべく御穂神社にて参拝していた。
(どうか妻と娘が向こうの世界で負ける事なく戻って来れますように・・・。そしてまた戦争への道など嫌です・・・!!)
かよ子の父はそう祈願した。
「貴方が杖の所有者の御父上でございますか」
声が聞こえた。
「だ、誰だ!?」
その場に神のような人物がいた。
「私はこの神社に祀られている三穂津姫です。今の『向こうの世界』での戦局が気になるのですか?」
「はい、それで妻や娘が無事にやっていけているのかと思うと心配でして・・・」
「それでしたら今の状況をお教えしておきましょう。今貴方の娘さん・山田かよ子さんは行方不明となっている友達の藤木茂という少年の捜索を続けている模様です。そして先代の杖の所有者・山田まき子さんは今平和を正義とする世界の本部にてそれぞれの皆さんの動向を確認されており、必要とあらば先代の護符の所有者や杯の所有者と共に指示を出されております。今、戦局ではこちらが有利となっていますが、山田かよ子さんは藤木茂少年の奪還に多少手こずっているようです」
「そうか」
「ですが、杖の所有者の御父上ならこの世界からでも存分に貢献できる方法をお教えいたしましょう。久能山東照宮に行き、徳川家康公に祈願するのです。その力が娘さんに伝わるでしょう」
「よし、行ってみよう」
かよ子の父は三穂津姫に礼をし、静岡の久能山東照宮へと向かった。
久能山東照宮。徳川家康を祀る神社である。かよ子の父は長い石段を登り、息を切らしながらも本殿に辿り着いた。そこで祈願する。
(どうか、母さんやかよ子が無事で勝ってきますように・・・)
そして天から光が見えた気がした。
[そなたの願い、叶えようぞ。ただし、時間がかかるのですぐには無理だが、きっと勝利に導くようにしよう]
声が聞こえた。かよ子の父は我に返ったが、光は太陽の日差し以外になく、謎の声もそれ以上は聞こえなかった。
(今のは・・・、もしかしてあの徳川家康の声、なのか・・・?)
かよ子の父はそう思いながらも東照宮を去った。
(祈るだけでもかよ子達の為になるといいが・・・)
かよ子達は長山と通信機で連絡を取り、藤木を攫った人間が今どこで何をしているのか探知して貰うことにした。
(北の方は間違いないけど・・・)
藤木救出班は長山の連絡を待つ。そして返答が来た。
『皆、藤木君は北の方にいるのは間違いないよ。それからその藤木君と一緒にいた人達はまた別の人と一緒にいるよ!』
「別の人?!」
『うん、その人もまた中国の皇帝のような人だったよ』
かよ子は以前戦った時、紂王という人間とも対面したのだが、他の敵に身を寄せているとなると厄介な感じがしてならなかった。
「ありがとう、長山君、気を付けて行ってくるよ」
かよ子は若干恐怖がでておっちょこちょいしてしまうのではないかといつもの不安に駆られた。だが、どうであれ藤木を取り返す為には行く以外に選択肢はない。
「山田かよ子、覚悟を決めようとしているのか?」
次郎長が尋ねた。
「・・・うん、おっちょこちょいしちゃうかもしれないけど、何としても勝たなきゃって思ってるよ!」
かよ子は羽根を北の方へと飛ばした。目的は無論、藤木の奪還の為である事は言うまでもない。
多くの者が北東へと集う中、次の激戦が始まろうとしている。
後書き
次回は・・・
「ここに来るまでの事」
少年は考える。全ては何が始まりだったのか。なぜ皆から褒められようとして空回りし、全てが予想と真逆の結果で終わってしまうのか。そして卑怯じゃなくなる方法はあるのか。藤木の元に妲己やある事を伝える。そしてかよ子は藤木を追う為に北へと進み見続けていた・・・!!