銀河酔人伝説


 

酔っ払い、エル・ファシルの英雄に突撃する

 
前書き
兵部省の小役人の影響を受けて初めて投稿します。
勢いだけで書くので続くかはわかりません。 

 
ヤン・ウェンリーは疲れていた。連日のように「エル・ファシル英雄」を称える為の催しに連れまわされていたからである。その日も「エル・ファシルの英雄を囲む官民交流会」なるパーティーに出席させられ聞きたくもないお世辞を何百回も聞かされたところだ。

「早く帰って寝よう」

ヤンはそう呟くと、少佐に昇進して新しく支給された宿舎に入ろうとした。

「すみませんが、ヤン・ウェンリー少佐で間違いないでしょうか?」

不意に声が聞こえたので振り向くと後ろに何やら瓶を持った大男が立っていた。

「どちら様ですか?」

ヤンが不機嫌な声を隠さずにそう言うと大男がいきなり土下座してきた。
唐突な行動にヤンが呆気にとられていると、

「弟を救ってくれてありがとうございました!!!」

大男が深夜にも関わらず近所迷惑な大声でそう言ってきた。
ヤンは訳も分からず慌てるしかなかった。


これが後に自由惑星同盟の英雄である「魔術師ヤン」と、「民主主義の奇跡」「ワイドショー政治の英雄」「最も大衆に近い男」と数々の称号で評される自由惑星同盟議会代議員、グレゴリー・カーメネフのファーストコンタクトであった。



 
 

 
後書き
プロローグとしてヤンとオリ主であるグレゴリー・カーメネフの出会い書きました。
次回は主人公設定を投稿します。 

 

主人公とその周辺の設定

 
前書き
今回は主人公と所属組織の設定を書きます。 

 
主人公紹介
名前:グレゴリー・カーメネフ
生年月日:宇宙暦760年4月22日生まれ(アスターテ会戦時で36歳)
身長:198㎝
体重:99㎏
趣味:酒
特技:声が大きい、宴会芸
所属:自由惑星同盟議会代議員・国防委員会委員
この作品の主人公。エル・ファシル出身。幼い頃に両親を失い生きていく為に軍へ入隊。一兵卒として数年働くもとある戦いにて負傷、それが切っ掛けで軍を除隊する。その後は軍の紹介で故郷エル・ファシル宇宙港で労働者として過ごす。その際加入した港湾労働組合の青年部で頭角を現し若くして組合幹部に抜擢される。数年後、エル・ファシルに来たホアン・ルイに論戦(口喧嘩)を吹っ掛けた事が切っ掛けで彼に見出され、翌年行われた同盟議会代議員選挙にエル・ファシル選挙区から立候補し当選。社会改革党議員として国防委員会に所属し現在に至る。
性格はかなり大雑把で、法律や政策にも通じておらず、政治家としては落第点と評されている。しかし、良い意味で裏表がなくて人懐っこく、またタフで雄弁家の為、人気は高い。
元軍人という経歴から軍に好意的だが、最前線末端の地獄を見ている為、戦争継続には消極的である。
ホアン・ルイを親父と呼んで慕っており、ホアン・ルイの懐刀を自称しているが、周りからはホアン・ルイの鉄砲玉扱いされている。
良くも悪くも素直なので敵が少なく、党派を超えた親交を持っている。
酒好きで有名で誰に対しても「とりあえず酒飲んでから話し合おう!」と暇さえあれば飲み会を企画し誘うため、宴会芸はプロ級の持ち主。その為「宴会芸で地位を掴んだ男」と批判を受けることもある。
唯一の肉親として15歳年下の弟がおり兄弟間の仲は良い。


自由惑星同盟議会
自由惑星同盟における立法機関で最高評議会を内閣とするなら同盟議会は国会の役割を担っている。最高評議会の評議員は同盟議会代議員から選出される。最高評議会の決定を改めて審議するとしているが、殆どは最高評議会評議員達の意向を反映して行動しているだけにすぎず、「同盟市民を納得させる為のプロレス劇場」と呼ばれている。

自由共和党
アスターテ会戦時における第一党。中道右派の国民政党を標榜しているが、良い意味でも悪い意味でも多様な包括政党である。ヨブ・トリューニヒトや最高評議会の大部分が所属している。

同盟民主党
ジョアン・レベロ等が所属している。「自由、自主、自尊、自律」を掲げるハイネセン主義を標榜するハト派自由主義政党。

社会改革党
主人公やホアン・ルイが所属している。外交的にはタカ派とハト派が混在しているが、内政においては民力回復と社会保障充実を唱える左派政党。

反戦市民連合
後にジェシカ・エドワーズ等が中心となって設立される新政党。帝国との和平推進と民力回復唱えるハト派政党。

 
 

 
後書き
まさか本編より長くなるとは思わなかった・・・ 

 

酔っ払い、エル・ファシルの英雄に突撃する2

 
前書き
モチベーションが高いうちに書けるだけ書こうと思ったんですがやっぱ難しい・・・今回は主人公側からの視点です。まだ原作本編前の話です。 

 
俺の名前はグレゴリー・カーメネフ。エル・ファシル港湾労働組合青年部局長を務めている。一応偉い人と分類される男だ。
そんな俺だが、今あの「エル・ファシルの英雄」ヤン・ウェンリー少佐に対して土下座を敢行している。我ながら美しい土下座だと思う。
え?何で土下座なんかしているんだって?そりゃあ俺の大切な同僚達や可愛い弟を救ってくれたんだからその感謝の気持ちを最大限に表現したわけだよ。
そうして土下座を敢行して少し経った後、

「参ったなあ・・・頭を上げてもらえませんかね?」

そう声が聞こえたので頭を上げた。
ヤン少佐は明らかに面倒くさそうな顔をしながら頭をかいた後、

「えっと・・・とりあえずどちら様ですか?」

そう言ってきた。
いかんいかん、自己紹介すらしてなかったか。お礼を言う事しか頭になかったわ。

「私の名前はグレゴリー・カーメネフ。貴方のおかげで弟と同僚達が助かりました。今回はそのお礼を言うためにずっとあなたを探していたんです。本当にありがとうございました!!」

俺がそう言いながらまた地面に頭をこすりつけると、

「頭を上げてください!」

そう慌てた声が聞こえたので頭を上げた。

「私は軍人としての責務を果たしたにすぎません。なので貴方からお礼を言われる筋もありません。お引き取りください。」

ヤン少佐がそのように答え宿舎に入ろうとした。
俺は咄嗟に彼の足を掴み、

「待ってくれ!ならせめてこれを受けっとってくれ!でないと俺の気が済まねえ!」

そう言って瓶を差し出した。

ヤン少佐は鬱陶しそうに俺を見た後に瓶を見ると目の色が変わった。

「失礼ですがこれは?」

「これは俺が一番気に入ってる最高級ブランデーでコニャックって言われる酒だ。あんた、酒好きか?」

俺がそう聞くと、

「これ同盟内じゃ殆ど出回ってない最高級品じゃないですか。本当に頂けるんですか?」

彼がそう言ってきたので、私は立ち上がり、

「勿論だ!本当は感謝してもしきれねえが、俺が考える一番美味い物を持ってきたんだ!さあ、受け取ってくれ!」

と答え、彼に酒瓶を渡した。

「ありがとうございます。」

ヤン少佐はそう俺に言うと宿舎に入っていった・・・


なので俺もそれについて行った。

「いや、なんで貴方が入ってくるんですか。」

「いいじゃねえか。俺もそれ飲みたいんだよ。一人で飲むより二人で飲んだ方がハッピーだろ?」

「はあ・・・図々しい人だな・・・まあいいですよ。どうぞ。」

そう言ったので俺は宿舎に足を踏み入れた。

「うっわ何だこれ!完全に汚部屋じゃねえか!」

「初対面の人間の部屋に図々しく入って第一声がそれって酷くありません?」

いやこれは誰だって汚いっていうだろ。完全に汚部屋だよ・・・

「まあいいや。勝手に座らせてもらうぞ。」

そう言って俺はごみをかき分けて足場を確保し座った。
ヤン少佐が奥からグラスを用意してきて、

「じゃあ早速飲みましょうか。」

そう言って瓶を開封し、ブランデーをグラスに注いだ。

「いい香りですね。」

「だろ?」

そう言い合い、私達はグラスを持ち乾杯した・・・


「わたしはねえ~ほんとうは~軍なんかに入りたくなかったんですよ!歴史家になりたかったんです!!」

「だよな~俺も一兵卒だったけど負傷して辞めちまった口だからわかるぞお~!戦争なんてない方が良いに決まってるよなあ!!」

「そうだったんですか~!私も早いとこ退役して年金貰って暮らしたいですよ!」

「はっはっはっは!若いうちからそんな枯れたこと言ってると禿げるぞ!」

「いいんですよ!私は髪は多い方ですし!!」

「はっはっは!!そうかそうか!まあどんどん飲め!!」

そう彼等は盛り上がり夜は更けていった・・・


ヤン・ウェンリーは頭痛に悩まされながら困惑していた。

「何故私は初対面の人と半裸になって寝ていたんだ・・・」



この出会いを通じて彼らは次第に友情を育んでいくのである。
 
 

 
後書き
ヤン・ウェンリーのキャラを原作から逸脱しないように書きたいのですが、だんだんわかんなくなってきました・・・創作って難しい・・・ 

 

酔っ払い、選挙に出馬する

 
前書き
ネタが早々に尽きて悩んだのですが、急に天啓が下りて、何とか書けました。 

 
惑星エル・ファシル・・・銀河帝国との前線の近くにあるこの惑星は軍人とその関係者が多く在住していおり、その玄関口であるエル・ファシル宇宙港には現在、大勢の人だかりができていた。人だかりの前には仮設のステージが建てられており、大きな横断幕が掲げられていた。
しばらくするとステージに2メートル近くはあろうかという大男が現れた。我らが主人公グレゴリー・カーメネフだ。グレゴリーはマイクを持ち、聴衆に話しかけた。

「エル・ファシル宇宙港にお集まりの皆さん、おはようございます!!私が、今回実施される、自由惑星同盟議会代議員選挙に、このエル・ファシル大選挙区から出馬することになりました、グレゴリー・カーメネフでございます!!この場にいる幾人かはご存知かもしれませんが、私には国立中央自治大学の先生方のような学はございません!ハイネセンの大金持ち達のような財産もありません!お茶の間の御婦人達を魅了できるルックスも持ち合わせておりません!私にあるのはこの腕っ節と、エル・ファシルを!同盟を!市民を!支えたい!!この熱き想いだけであります!!エル・ファシルの市民の皆さん!!私は帝国との戦争を勝利に導こうとか、暮らしを今すぐに改善させるとか、そのような大それた約束をする事はできません!!しかし!これだけは約束させていただきます!!エル・ファシルの同盟市民の皆さんの生の声を必ず、ハイネセンの中央に届けると!!そして私は!皆さんと共に考え、歩むことを!ここに誓わせていただきます!!どうか皆さん!!このグレゴリー・カーメネフを!!同盟議会に送ってやってください!!私に!!仕事をさせてください!!よろしくお願いします!!ありがとうございました!!!」

グレゴリーがそう演説を締めくくると拍手が沸き上がった。彼がステージから降りて大衆に握手を求めに行くと、大勢が彼を囲んで、握手を求めていった。
この光景を遠くから優しく見守っている中年の男性がいた。

「やれやれ、何を喋って良いか分かんないから原稿を作ってほしいと泣きついてきたのに、全然見てないじゃないか。しかし完全にアドリブであそこまで喋れるとは・・・奴さん、政治家なんて頭が良くないと出来なさそうな職業なんて柄じゃないし出来ないとか言ってたが、あの喋り方は間違いなく政治家向きだよ。」

そう男性は呟いた。
すると隣にいた秘書らしき青年が、

「書記長、そろそろお時間です。次のシャンプール選挙区へ行きませんと間に合わなくなります。」

と忠告すると、

「そうだな、ここは大丈夫だろう。次へ行こうか。」

と答え、その場を後にした・・・

この中年の男性こそ、グレゴリー・カーメネフを政治家の道へと導いた師である、社会改革党書記長であり、最高評議会人的資源委員会委員を務める、ホアン・ルイその人である。
 
 

 
後書き
次は早めに更新できそうです。 

 

酔っ払い、政治の師と出会う

 
前書き
今回は前回の話の過去編になります。
思った以上に酔っ払い描写が描けなくてタイトル詐欺になりかけてますがご了承ください。 

 
宇宙歴788年12月、エル・ファシルを巡る戦いから3か月が経とうとしていた。帝国軍はエル・ファシルを一時的には占領したものの、同盟軍の反撃を恐れたのか、惑星を放棄し、退却していったのである。同盟軍はエル・ファシルを奪還し現地の治安を回復させ、避難民の帰還も順調に進んでいった。
しかし現在、エル・ファシルでは大きく揺れていた。自由惑星同盟の今後を占うと言っても過言ではない一大イベント、自由惑星同盟議会代議員総選挙が、来年1月10日に告示を迎えるのだが、先日のエル・ファシルを巡る戦いの影響で、候補者の立候補がまだ進んでいないのである。
何故かというと、選挙区から出馬するためには、最低3ヶ月の居住実績がなければ、選挙区からの出馬が出来ないようになっているため、同盟の有力政党は安易に落下傘候補を擁立出来ず、また前回選出された現職議員がエル・ファシル失陥の際、何も行動を起こさなかったことを、世論から咎められ失脚、引退を表明し、事実上エル・ファシルの政界から追放されたため、後継者もおらず、有力な候補者が不在という異常事態に陥ってしまったのだ。

そんな混乱の中、一人の中年男性が、エル・ファシル宇宙港に降り立った。
彼の名はホアン・ルイ、自由惑星同盟議会の国政政党、社会改革党の書記長であり、最高評議会人的資源委員を務める政治家である。

「さて、それじゃあ組合事務所にお邪魔しようかね。」

と、秘書に話し、港湾労働組合事務所に向かった。彼の目的は、社会改革党の支持団体からエル・ファシル選挙区から立候補してくれる有力な人材を見つけることである。

「しかし書記長、本当にうまく人材は見つかるのでしょうか?」

秘書がそう尋ねると、

「それは私にもわからんよ。ただこの難局において重要な選挙区で不戦敗なんて話になったら我々社会改革党もその程度の政党だという事だろうな。まあ良い人が見つかることを願おうじゃないかね。」

そうホアン・ルイは答えた。

車が港湾労働組合事務所に到着し、中へ入ると、エル・ファシル港湾労働組合のトップである委員長が彼を出迎えた。

「ホアンさん、お久しぶりです。」

「ああ、久しぶりだね委員長。少し痩せたかね?」

等と、他愛のない会話をした後、エル・ファシルの状況について話し合った。

「そうか・・・ハイネセンではエル・ファシルの英雄殿のおかげで被害は殆どないというニュースばかりだったがやはり物的被害はそれなりに大きいようだね。」

「そうなんですよ!確かに民間人の被害はゼロでしたが、帝国軍の奴等は戦利品とばかりに持っていける物は片っ端から奪っていってしまったんですよ!おかげで私達はあれもないこれもないと四苦八苦しとるのです。」

「わかった。今度の人的資源委員会でこの事を取り上げるよ。それで委員長、以前話した候補者の件なんだが・・・良い人はいないかね?」

「それなんですがねホアンさん。私達は確かに組合として活動していますしお宅の党を支援しております。ですが元は労働者の寄合みたいなものですから、とても選挙を戦える人間はおりませんよ。まあ若い衆に一人面白い奴がいますが・・・」

委員長がそう話しているといきなり事務所の扉が勢いよく開け放たれ、

「お疲れ様でーす!只今戻りました!」

そう、バカでかい声が響き渡った。

「おいグレッグ!あんまりデカい声出すなといってるだろう!」

「すいません旦那!あれ?もしかして来客対応中でしたか?どうも!グレゴリー・カーメネフです!」

唖然としたホアン・ルイに対してグレゴリーは笑顔でそう挨拶した。

この出会いがグレゴリー・カーメネフを自由惑星同盟政界へ誘うことになるのである。

 
 

 
後書き
グレッグはグレゴリー・カーメネフの愛称になります。Googleで調べたら出てきました。
次回も過去編となります。思った以上に伸びたな・・・ 

 

酔っ払い、啖呵を切る

 
前書き
難産を末、やっと完成しました。 

 
俺は今目の前のおっさんと対峙している。おっさんの名前はホアン・ルイ。自由惑星同盟議会の有力政党、社会改革党の書記長を務めている男だ。なんでそんな大物政治家がこんなしがない組合幹部の俺と対峙しているのかというと・・・、

今から一時間ほど前、

「初めまして!グレゴリー・カーメネフです!ここの組合の青年部局長を務めさせてもらっています!」

「おお元気な声だねえ・・・私はホアン・ルイ。よろしく頼むよ。」

「ホアン・ルイ?失礼ですが、社会改革党書記長のホアン・ルイ先生でいらっしゃいますか?」

「そのホアン・ルイだが・・・どうしたのかね?」

「なんだって!?旦那!なんでこんなハイネセンの分からず屋がここにきてるんですか!」

「おいグレッグ!なんてこと言うんだ!」

「だってそうでしょ?社会改革党は労働者の味方を謳っておきながら軍備予算の削減を訴えてるんですよ!ハイネセンの奴らは軍備を削減して民間に回せばそれで全てうまくいくと思ってる!でも国境に住んでる我々は逆なんですよ!軍のおかげで食べてるんです!旦那だってそれはわかってるでしょう!」

「グレッグそれは・・・」

「中々興味深いこと言うねえ・・・組合長。ちょっと彼を借りていいかな?」

という感じで俺はホアンのおっさんの目の前で啖呵を切って不満をぶちまけたらそのまま社会改革党の事務所まで連れてこられたのだ。

そして現在へ至る・・・

「さて、カーメネフ君。ここなら大声を出しても大丈夫だ。話の続きが聞きたい。」

話の続きが聞きたい?このおっさんは何を言ってるんだ?まあいい・・・それなら言いたいことは言わせてもらおう。

「私はねホアンさん。以前は軍にいたんですよ。ハイスクール時代に両親が死んで、食べるために入ったんです。仕事は大変でしたが、私のような学のない人間でも暮らしていける給料は貰えました。おかげで路頭に迷わずに済みましたよ。でもあの第4次イゼルローン攻防戦で負傷しましてね・・・脇腹を思いっきりやられました。今でも傷跡が残ってるんですよ。それで怖くなりましてね・・・軍を辞めたんです。それで軍の紹介を受けてこの港で働きだしたんです。幸い私は負傷したといっても働くことに支障はないので必死に働きましたよ。おかげで周りにも認められて今では組合の部門を任せてもらえるまでになりました。今の生活があるのは軍のおかげなんですよ。
ホアンさん。私は戦争が大嫌いです。戦争の怖さ身近で感じたから断言できます。そしてここに住んでる皆同じことを思っています。でもね、戦争が嫌いだと言っても帝国の連中は容赦なく攻めてくるんですよ。そしてそれから私達を守ってくれるのは軍なんです。民力回復と財政再建が必要なのはわかっています。でも私達には艦隊が、そして兵隊さん達がいてくれないと普通に暮らすこともできないんですよ・・・!」

俺が声を振り絞りながらそう主張すると、ホアンは反論することもなく、しきりに頷いていた。
するとホアンが口を開いた。

「なあ、お前さん・・・うちから立候補して見ないか?」

「はい?」

このおっさんはいきなり何を言ってるんだ?

「正直な話今回の同盟民主党との政策の擦り合わせには党内からの反発が強くてね。これも必要なことだからと押し切るつもりでいたんだが・・・エル・ファシルの現状とお前さんの話を聞いて考えを改めようと思う。」

「いやいやいやそんな重要なこと簡単に決めちゃダメでしょ!それに立候補なんて・・・ハイスクール中退の人間が立候補しちゃダメだろ。」

「同盟憲章にはあらゆる出自・学歴問わず被選挙権が認められている。」

「お金もないし・・・」

「党から助成金が出るし、私も出してやる。」

「法律も政策も詳しくないし・・・」

「そんなものは後から学べば良い。」

「・・・なんで俺なんだ?」

俺がそう聞くと彼は俺の目をしっかりと見据えながら、

「私も今でこそハイネセンのお偉方の一人だが若い頃はそれなりに苦労しててね。君の話を聞いてたら思い出したんだよ。何で政治家になろうと思ったかをね。それにうちには老人が多い。是非とも若い人材が欲しんだよ。グレゴリー・カーメネフ、私と一緒に同盟の未来を作ってほしい。頼む!」

そういうと彼は俺に向かって頭を下げた。
やめてくれ。俺はそんな立派な人間じゃない。今まで生きるのに必死で気づいたらこの地位にいただけなんだ。
俺が困惑していると彼は頭を上げ、俺の顔をじっと見つめてきた。
俺は彼の目を見た。何という目だろう。とても老人とは思えない力のある漢の目だ。それでいてどこか優しさを感じる。何というか・・・親父を思い出す・・・そうだな。やるだけの価値はあるか。

「分かりました。立候補の話、受けさせていただきます。」

そう言って俺は彼に頭を下げた。

「おおっ!ありがとう!これで君も私たちの同志だ!」

「よろしくお願いします。ですが私は無知な人間なのでこれからどうすればよいか見当もつきません。なのでこれからホアンさんを父と思い、ついて行きます!」

「へ・・・?父・・・?」

「はい!親父!これから世話になります!」

そういうと俺は親父の手を掴み思いっきり握手した。親父は困惑しているようだが、優しい目をしていた。


 
 

 
後書き
次は早めに更新したいです。 

 

酔っ払い、当選する

 
前書き
今回は私の友人である兵部省の小役人が架空新聞記事を書いてくれました! 

 
・政界動揺、思わぬ焦点浮上か
同盟民主党と社会改革党はこれまでも財政出動の調整で衝突を繰り返しながら与党自由共和党に対抗するため選挙協力を行ってきたが今回はついに破綻をきたしたようだ。この四半世紀以上に渡る、イゼルローン・キャンペーンとセットで行われてきた選挙ではおおむね軍事費削減、社会保障の微増と減税で妥協を重ねてきたが、今回は“国境”と称される星域の防衛体制の整備が問題となったのである。ホアン・ルイ書記長は『こうした地域ではエル・ファシルのような悲劇が繰り返されてきました。そして被害を最も受けてきたのはここでしか暮らせない労働者の方々です。我々はその現実と対峙しなければなりません』と正式に党の公式見解として意見を表明したが、選挙における盟友である同盟民主党筋からは『エル・ファシルの惨状から学ぶべきなのは半端な戦力を疎らに配置しても帝国軍ではなく我々の国庫に痛打を与えるだけだという事だ。補助金で票を買っても後が続かないだろう』と冷ややかな声があがっている。一方、これを歓迎する声も上がっている。自由共和党青年局長のヨブ・トリューニヒト氏は「共和党は国民の生活と自由を守る為なら実務を優先する政党であるべきです。痛ましい専制政治による戦災から復興する為なら政策の為の協力も視野に入れるべきでしょう」とコメントしている。イゼルローン要塞によって生まれた政局体制はイゼルローンよりも早く陥落するかもしれない。
――フリーダム・ミラー紙より

社会改革党の方針転換は同盟議会の政局に大きな波紋を呼ぶことになった。これまで同盟民主党との共通政策であった軍事費削減による社会保障充実を取り下げ、選挙協力の解消を発表したのである。これにより同盟民主党はエル・ファシル選挙区に独自候補の擁立を決定、野党第一党と第二党の対決が決定的となった。また自由共和党は現職追放の禊が済んでいないと主張していたヨブ・トリューニヒト青年局長の言を受け、後継者擁立を断念する事になった。これによりエルファシル選挙区は同盟選挙史上初の野党同士の一騎打ちが行われることになったである。

「エル・ファシルには、軍備充実も社会保障充実も財政再建も全て必要なんです!削って良い所なんかない!ハイネセンの先生方はそこが分かってないんです!財源が有限なのはハイスクール中退である私ですら理解しています!ですが!ここエルファシルでは何もかもが足りていません!帝国軍が持って行ってしまったからです!この状況をハイネセンは本当に理解しているのでしょうか!皆さん!私と共に起ち上がりましょう!今こそ声を上げましょう!」

グレゴリー・カーメネフか主張しているように、エル・ファシルは先の帝国軍の略奪によってあらゆる物資が不足しており、彼の主張は瞬く間に支持を広げた。だが彼の主張は非現実的で夢想主義であると反発する勢力も多数おり、情勢は拮抗していた。
しかしここへきて衝撃的なニュースが流れる。

「グレゴリー・カーメネフ君の主張は我々自由共和党と通ずるものがあり、彼は同盟にとって非常に有益な人材であります。我々国家革新同友会はグレゴリー・カーメネフ君を応援しています。」

自由共和党青年局長ヨブ・トリューニヒト氏を中心とする若手議員グループ「国家革新同友会」がグレゴリー・カーメネフの事実上の支援を表明したのである。更にこれに反発した自由共和党主流派が同盟民主党候補の消極的支持を表明するなど、野党の一騎打ちだけでなく、与党自由共和党内の派閥争いにまで発展したのである。

そして選挙は混戦のまま投開票日を迎えた。

総選挙の開票速報は自由惑星同盟中央テレビ放送にて放送された。

「さあ、総数2250議席を巡り激しい選挙戦が行われた今回の代議員総選挙、未確定選挙区もあと1議席となりました!これまでの確定議席数は与党の自由共和党が1150議席、野党の同盟民主党が575議席、社会改革党が424議席、その他諸派・無所属が100議席となっております。与党である自由共和党の単独過半数の確保が決定的となりましたが、今後の政局に・・・おっとここで最後の選挙区の当選者が決まったようですね!」



自由惑星同盟議会代議員総選挙エル・ファシル選挙区得票率発表

グレゴリー・カーメネフ 社会改革党 → 51%
レフ・ジノヴィエフ   同盟民主党 → 46%
ケン・スター      憂国地球党 → 3%



「グレゴリー・カーメネフ候補の当選確実となりました。おめでとうございます!開票開始から長時間の放送となりましたが選挙速報は以上となります。ありがとうございました。」



開票速報終了後、グレゴリー・カーメネフ選挙事務所では万歳三唱が行われていた。

「それでは、グレゴリー・カーメネフ君の当選を祝って、バンザーイ!(バンザーイ!)バンザーイ!(バンザーイ!)バンザーイ!(バンザーイ!)ありがとうございました!(パチパチパチパチ)」

拍手のなか、支援者達と抱き合うグレゴリー・カーメネフ。彼の政治家人生の第一歩が踏む出されたのである。







 
 

 
後書き
ようやく政治家となったグレゴリー・カーメネフ。酔っ払い要素が全くなく、タイトル詐欺になっていますが、次回あたりからようやく酔っ払い要素を出せそうです。 

 

酔っ払い、エゴイズムの怪物と出会う

 
前書き
遅くなりました。本当はちゃんとした話にしようとしたのですが、天啓が下りてきたので・・・こうなってしまいました。
 

 
総選挙から10日後、まだ日が出ていないにも関わらず自由惑星同盟議会議事堂前には大勢の報道陣とスーツ姿の集団が集まっていた。自由惑星同盟議会恒例の議会人選びである。これは旧世紀の地球で行われたイベント福男選びを模倣したもので、総選挙後の初登院日に一番乗りを決めるという何ともくだらないイベントである。しかし娯楽に飢えた有権者の評判は上々でトトカルチョも開催されるくらい人気なのだ。
さて、初当選を果たしたグレゴリー・カーメネフは初登院一番乗りを果たす為、前日の夜から待ち続けていたのだが、彼と同じように前日から待ち続けていた男がいた。自由共和党青年局長のヨブ・トリューニヒトである。彼はこの議会人選びで3回連続優勝という経歴を持っており、今回の議会人選びトトカルチョでも1番人気になっている。

「やあ、君がグレゴリー・カーメネフ君だね?」

「貴方はヨブ・トリューニヒト先生!お疲れ様です!先日の選挙ではお世話になりました!」

「何畏まる必要はないよ。それに選挙の件だって私達の派閥争いの延長線で行われただけだからね。気にしなくていい。それよりカーメネフ君、随分と早い時間から待ってるんだね。」

「どうせやるなら一番乗りを果たしたいですからね。気合を入れるためにも早く来ましたよ!」

「はっはっは、いや~元気で良いことだ。まあ一番乗りを譲る気はないがね。私も4連覇が掛かっているんだ。勝たせてもらうよ。」

2人が話しているうちに続々と当選を果たした議員達とマスコミが集まっていき、遂にその時が訪れた。

「さあいよいよ自由惑星同盟議会恒例行事、議会人選びを開催します!それではスタート!」

係員の合図で正門が開かれた。それと同時に議員達が一斉に議事堂内へと駆け抜ける。

「うおおおおお!!!一番乗りは貰ったあああああ!!!」

前日からスタンバっていたおかげで最前列からスタートできたグレゴリーは先頭を走っていた。スタート地点である正門前からゴール地点である本会議場まで約460メートル。このまま決まるかと思われたが、後ろから猛烈な速さで追いかける者がいた。前回王者のヨブ・トリューニヒトである。トリューニヒトはグレゴリーの突破力を見るや否や、瞬時に彼の後方を確保し、機会を窺っていたのである。一番乗りは2人絞られた。

「あああああ!!!負けるかあああ!!!」

ゴール地点である本会議場が見えるとグレゴリーは最後の力を振り絞りトリューニヒトの追撃を振り払った。

「馬鹿な・・・!?この私が追い付けないだと・・・!?」

トリューニヒトはそう呟くしかなかった。

「取ったどおおおおお!!!」

そう叫びながらグレゴリーは本会議場へダイブを敢行した。

「決まったあああ!今回の議会人選び!一番乗りを果たしたのは!社会改革党のグレゴリー・カーメネフ議員だあ!ヨブ・トリューニヒト議員4連覇ならず!これはトトカルチョも大荒れでしょう!」

「いや~私が負けるとはね。中々やるじゃないかカーメネフ君。」

トリューニヒトは倒れているグレゴリーに声をかけながら彼を起ち上がらせた。

「いててて・・・トリューニヒト先生ありがとうございます!でも先生も凄かったですね。」

「まあね。さあ皆さん!今回の主役であるグレゴリー・カーメネフ議員に称賛を送ろうではないか!」

そう叫ぶとトリューニヒトはグレゴリーの手を取り報道陣にアピールした。たくさんのフラッシュが焚かれる中、グレゴリーは照れくさそうな顔をしながら報道陣のインタビューに答えた。

そして議会人選びが終わり本会議も何事もなく閉会した後、グレゴリーは議事堂内をうろうろしていた。

「やあカーメネフ君。こんなところでどうしたんだね?」

「あっトリューニヒト先生ちょうどよかった。トイレってどこですか?」

「トイレ?私も行こうと思ってたし一緒に行こうか。」

そう言ってトリューニヒトとグレゴリーはトイレで用を足した。

「ところでカーメネフ君。君は酒が好きだと聞いたんだが、結構イケる口なのかね?」

「よくご存じですね。まあ酒はよく飲みますよ。」

「それは良かった。実は駅前近くに美味い焼き鳥屋があってね。この後一杯どうだい?」

「いいですね!行きましょう!あのトリューニヒト先生と飲めるとは・・・自慢できますよ!」

「ははははは!私と君はもう同僚だろう。では行こうか。」

「はい!」

2人は街へ向かって行った。

その後2人は同じ酒が好きという事もあってか意気投合しグレゴリーはトリューニヒトの事を「ヨブの兄貴」と呼ぶようになり、党派を超えた友情を育むこととなる。

 
 

 
後書き
次こそは早めに投稿したいです。 

 

酔っ払いの役割

 
前書き
連続投稿となります。採決だけで1話が終わるとは・・・ 

 
自由惑星同盟議会代議員に初当選してから俺は必死に勉強した。なんたってハイスクール中退からまさかの政治家転身だからな。今までのように何もわかりませんでは有権者に申し訳がたたん。幸いホアンの親父は同盟政界きっての政策通だし親父の紹介で知り合ったレベロの叔父貴も頭が良い。まあ叔父貴とは思想柄対立関係にあるけど違う考えを知るという事は大切なことだって親父も言ってたしな。それに話してみると本当に紳士的で良い人だ。バカな俺でもわかりやすく話をしてくれる。ヨブの兄貴も俺に政治のイロハを教えてくれた。それだけでなくネグロポンディの旦那とアイランズの旦那まで紹介してくれた。2人共若造の俺にも優しくしてくれるしヨブの兄貴には本当に感謝している。
さて現在、同盟議会では第5次イゼルローン出兵案に対する決議を行おうとしている。これはイゼルローン要塞に対して5万隻以上の艦隊を動員するというものだが、この案には自由共和党だけでなく、我々社会改革党と同盟民主党も賛成している。まあそのバーターとして色々見返りがあるのだが、そこは妥協の産物という事で説明はしない。
しかしなんで単独過半数を持つ自由共和党が我々野党に譲歩をしてまで協力を仰いでるのか。それは同盟特有の政治事情がある。同盟の政党には所謂党議拘束というものが存在しないため、例え政党が賛成としても所属議員が造反する事態が良く発生するのだ。まあそれでも最高評議会議員の影響をかなり受けるので過半数が造反するという事はないのだが、今回の案件のような軍事作戦に関しては与野党問わず議員たちが独自の行動をとる。案の定今回の案件に関してはそれなり数の議員が反対しており、反対派は決議を取らせないため、本会議場を封鎖する所謂ピケ戦術をやってきた。俺の今回の役目はこのバリケードを排除し議長を議長席まで担いでいく事だ。

「オラァ!本会議の時間だオラァ!」

俺が叫びながら本会議場前のバリケードを排除していく。元々力仕事が得意だったこともあってあっという間にバリケードを排除し議長を担いで仲間と共に本会議場へ突入していく。

「どけどけぇ!議長が通るぞどけぇ!」

叫びながら邪魔をしようとする議員達を蹴飛ばして排除していく。もうすぐ議長席に着けることが出来る。そう確信した時、俺の顔面にいきなり飛び膝蹴りが飛んできた。

「うっ!誰だ!」

「ここから先は通しやしないよ!」

「お前はウィンザー婦人!」

奴はコーネリア・ウィンザー。ヨブの兄貴と同じ自由共和党の議員のくせに我々野党に妥協しているのが気に食わないとかいう頭のイカれた理由で出兵案に反対しているとんでもない婆だ。

「邪魔だぁ!」

「あんたがね!」

俺の拳と婆の右足が重なる。互角だった。その隙に俺は議長を議長席に投げる。そして議長席に待機していたネグロポンディの旦那とアイランズの旦那が議長を受け止め席に座らせる。

「ではこれより、自由惑星同盟議会本会議を開会する議員諸君は直ちに着席するように。」

採決は反対派が牛歩戦術などを駆使して妨害してきたが賛成多数で可決された。俺も職務を遂行できた。良かった良かった。

とまあこんな感じで政治家として必死に仕事をしているのだ。
 
 

 
後書き
次回も早めに投稿します。 

 

酔っ払い、非常勤参謀と飲む

 
前書き
もうすぐ原作に突入できると思いましたがそんなことありませんでした。
 

 
第5次イゼルローン出兵案が同盟議会本会議で可決された数日後のある日の深夜、グレゴリーは行きつけのバー「レゴリス」にてある人物と酒を楽しんでいた。かつてエル・ファシルの英雄と呼ばれていたヤン・ウェンリーその人である。彼は以前グレゴリーがヤン邸宅に突撃を敢行して以降、酒好き歴史好きという共通の趣味を持つ友人となっていたのだ。

「どうだヤン。結構いけるだろ?」

「はい。ウォッカって割り材として使う物であってストレートで飲むものではないと思ってましたけど・・・凍らせるとまろやかになって飲みやすくなるんですね。」

「旧世紀の地球から伝わる伝統でな。寒い地域の人間はそれを常飲して体を温めてたそうだ。」

「先人達の知恵というやつですね。」

「そうだ。お前さんは酒というとブランデーばっか飲んでいるからな。ヤン、酒というのは人類の知恵と勇気が積み重なって出来た物だ。酒の数だけ人間の歴史がある。視野を広げる為にもっといろんな酒を嗜むべきだ。」

「非常に興味深い意見ですが、あまりそういうことばかり言ってるとまたアンドレイ君に怒られますよ。」

「言うなよヤン・・・アンドレイのやつ、兄さんに任せると生活習慣病まっしぐらになるから俺の健康を管理するとか言って家の酒をどっかに隠しやがったんだよ・・・おかげでこっちは晩酌も楽しめやしない。」

「それだけグレゴリーさんの事を心配してるんですよ。兄思いで良い子じゃないですか。」

「そりゃあ気持ちは嬉しいがな・・・まだ16歳なんだからもっと年相応に楽しんでもいいだろうよ。」

「今の同盟では16歳は立派な社会人だそうですよ。」

「そんなのはただの方便なのはお前さんも分かってるだろう。実際は大人が皆前線に行ってるからその代替として動員されてるに過ぎんよ。」

「まあその通りですね。」

「だからこそ今回のイゼルローン要塞攻略作戦は何とか成功してもらいたいのだがな。そのために財務委員会を説得をして5万隻を動員出来るように場を整えたんだからな。」

「グレゴリーさんは今回の出兵でイゼルローン要塞を攻め落とせると本気で思っているんですか?」

「思っているというよりはそうなってほしいという願望が殆どだがね。なんだヤン、お前さんは今回の出兵はやっぱり反対だったのか?」

「うーん、というよりそもそも正攻法であの要塞を落とせるかどうか疑問ですね。」

「正攻法で落とせないって・・・お前さんがそう言うってことは今回の作戦は厳しいものになるのか?」

「いえあくまで疑問に思っているだけなので・・・こういう予感はあまり当たってほしくないんですがね。」

「そうか・・・ならヤン、いやヤン・ウェンリー少佐。出兵案に賛成した私が言うのは筋違いなのはわかってる。だが言わせてくれ。君の力で一人でも多くの味方を助けてほしい。この通りだ。」

グレゴリーはヤンに向かって頭を下げた。

「止めてくださいよ。私はそんな優秀ではありませんし一介の少佐に過ぎません。」

「君が国家や軍隊に良い印象を抱いていない事はよくわかってるし君と私が思想的に対立関係にあることも承知している。だが私は君の事を誰よりも評価してるつもりだ。」

「貴方に真面目に言われるとどうもこそばゆいですね・・・まあ給料分はきっちり働かせてもらいますよ。私もこの社会にそれなりに愛着があるんでね。」

ヤンは頬をかきながらそう言った。

「ありがとうヤン!作戦が完了したらここでまた奢ろう。」

「まあ、期待してますよ。」

2人は勘定をして別れた。

それから1か月後の宇宙歴792年5月6日、シドニー・シトレ大将率いる同盟軍と帝国軍による戦いが始まった。後に言う第5次イゼルローン要塞攻防戦である。戦いはシトレ大将発案の平行追撃作戦と無人艦突入作戦によって、イゼルローン要塞陥落一歩手前まで迫るも、帝国軍が味方を巻き込んでトゥールハンマーを発射したため同盟軍は恐慌状態に陥り、撤退に追い込まれることになった。
しかし史上初めてあのイゼルローン要塞に大打撃を与えることに成功したため、シトレ大将の昇進が決まり、結果的に出兵案に賛成した議員達の支持率向上に繋がる事になったのである。

 
 

 
後書き
やっと設定だけ決めてた弟を作中に登場させれられました。(尚本人は登場してない模様)
ぶっちゃけ弟本人が登場できるかはまだ未定です。 

 

酔っ払い、宴会を企画する

 
前書き
本当は1話でまとめようと思ったのですが、長くなりそうだったので分割することにしました。
 

 
同盟軍屈指の大作戦、第5次イゼルローン要塞攻防戦が失敗に終わった後も、泥沼の戦いは続けれらていた。ヴァンフリート星域会戦、第6次イゼルローン要塞攻防戦、第3次ティアマト星域会戦、第4次ティアマト星域会戦など、度重なる大規模な会戦が行われてたが、その何れも帝国軍を追い返したという事実だけでは済まされない損害を同盟軍は負うことになった。政治ではその場凌ぎの決定が乱発され、経済ではギリギリの崩壊は回避されながら衰退していた。長き戦争の影響は同盟社会そのものに及び、確実に蝕んでいったのである。

第4次ティアマト星域会戦後の宇宙歴795年10月、ハイネセンのとあるホテルの一室でパーティーが行われていた。
参加者には自由共和党のヨブ・トリューニヒト国防委員長、ネグロポンディ議員、ウォルター・アイランズ議員、同盟民主党のジョアン・レベロ財務委員長、社会改革党のホアン・ルイ人的資源委員長、そして新たに国防委員会委員に任命されたグレゴリー・カーメネフの他各党の議員達がいた。

「今日はアルコール類との健全な付き合いを推進する議員連盟の記念パーティーに参加していただきありがとうございます。私が会長を務めさせていただいているグレゴリー・カーメネフであります。今回のパーティーは、昨今問題となっている同盟社会の風紀の乱れの原因と叩かれていた、アルコール類に対する誤解の払拭と、健全な付き合いに対する認知度を高めること目的として企画しました。アルコールとは人間の堕落の象徴ではなく、人間が人間らしく生きるために不可欠な清涼剤であるという事、そして健全な付き合い方を広めることで風紀の乱れを正し、社会の活性化が成されると私は信じております。それでは同盟の更なる発展を願って乾杯!」

グレゴリーの乾杯の音頭と同時にパーティーは始まった。

「しかし、お前さんがトリューニヒト達が参加するパーティーに来るとは思わなかったよ。」

「私は政治家だ。個人の感情で物事を判断はしないようにしている。それにカーメネフ君から参加してほしいと請われたし、私も酒は好きだしな。」

「まあこの集まりは政策云々で集まったというよりは、グレッグの個人的人間関係から出来た超党派議連だからねぇ。彼奴らしい試みだよ。」

レベロとホアンが談笑しているとグレゴリーがやってきた。

「親父にレベロの叔父貴!こんな端っこにいたんですか。探しましたよ!」

「やあグレッグ、楽しませてもらってるよ。料理と酒もお前さんがチョイスしたんだろう?」

「いやぁ、この人数でしたからね。張り切らせてもらいましたよ!」

「その酒と飯に対する情熱をもっと政策に反映させてほしいのだがね。」

「叔父貴!そりゃあ言わないお約束ですよ!」

「まったく・・・」

そうグレゴリーを咎めているレベロも顔は笑っていた。
しばらく談笑しているとグレゴリーがレベロとホアンに顔近づけた。

「実は親父達に相談したいことがあるんです。ただここではあれ何で別室に来てもらえませんかね?」

「何か良からぬことでも企んでるのかい?」

「そんな事を考えられるほど頭がよくないことは親父も知ってるでしょう。こちらへどうぞ。」

グレゴリーがホアン達を部屋へ案内すると、

「やあ、グレゴリー君。先に飲ませてもらってるよ。」

「ヨブの兄貴、お待たせしました。」

ヨブ・トリューニヒトがビールを片手にフライドチキンを頬張っていたのである。


 
 

 
後書き
次回でやっと一区切りつきそうです。 

 

酔っ払いと親父達の宴会

 
前書き
更新遅くなって申し訳ありません。
今話で区切りが出来ると言いましたがまだ続きますので分割することにしました。
今話から原作改変が入ってきますのでご了承ください。 

 
グレゴリー主催のパーティーが賑やかに行われている中、VIPルームでは同盟内の政治通にとっては驚くべき光景が広がっていた。
与党自由共和党のホープであり国防右派の筆頭と目されているヨブ・トリューニヒト、野党同盟民主党代表であり非戦派の代表格ジョアン・レベロ、同じく野党社会改革党書記長でありバルカン政治家の異名を持つホアン・ルイ、現最高評議会の委員長達であり政界きっての大物政治家達がフライドチキンを頬張りながら酒を酌み交わしているのである。
彼等は立場的にもイデオロギー的にも対立関係にあり、本来であればあり得ないのだが、三人とも繋がりを持っているグレゴリー・カーメネフというイレギュラーな存在が、今回の酒盛りを実現を可能にしたのであった。

「流石はカーメネフ君だ。フライドチキンにビールとは最高に分かっているチョイスだね。」

「私はビールにはフィッシュアンドチップスの方が良いと思うがね。まあこれも美味いからいいけどね。しかしレベロ、お前さん揚げ物は大丈夫なのか。以前コレステロールがどうとか言ってた気がしたが・・・」

「いくら私が年とはいえそこまで老いたつもりはない。それに彼がせっかく用意してくれたものだ。味も一級品みたいだし無礼講といかせてもらおう。」

「それは良かった。しかしグレッグの奴、私達を案内だけしてどこに行ったんだか・・・」

「まあ彼ならそのうち来るでしょう。それよりどうですかホアン委員長、ビール注ぎますよ。」

「ありがとうトリューニヒト委員長。しかし君の所は相変わらず物騒な噂話ばかり聞くが本当の所はどうなのかね。」

「そうだぞトリューニヒト委員長。最近騒がれている憂国騎士団とかいう団体は君の所が援助してるという話を聞いたぞ。」

ホアンとレベロは最近巷を騒がせている憂国騎士団なる極右集団について聞いてみた。世間では裏でトリューニヒトが糸引いているという噂が囁かれていたが、彼らはトリューニヒトが国家革新同友会というタカ派系派閥の長ではあるが、極右ではないことは分かっており、何よりトリューニヒト自身はそこまで強硬派ではないことを、グレゴリーを通じて知っていたので純粋な疑問をぶつけたのだ。

「確かに私や同友会に憂国騎士団から接触があったことは認めますが、彼らを支援するだなんてとんでもないですよ。そもそも彼らの主張と私達同友会の主張は似ているようで全く違いますからね。私達は軍事と社会保障の充実を掲げていますが奴等は社会保障を削ってそれを軍事に充てろと主張してるんです。私はルドルフ亡霊達と妥協する気はありませんよ。」

そうなのだ。現にトリューニヒトが憂国騎士団との連携を拒んだ報復として国家革新同友会を支援している企業が憂国騎士団の襲撃に遭っており、彼らとは事実上の敵対関係となっている。

そんなこんなで彼らが話しているとようやくグレゴリーが大量のフィッシュアンドチップスとピクルスとビールをワゴンに乗せてやってきた。

「お待たせしました!親父!フィッシュアンドチップス持ってきましたよ!」

「遅かったじゃないかグレッグ。パーティーは終わったのか?」

「はい!片付けも終了したのでスタッフに新しいつまみを作らせて持ってきましたよ!さあ二次会といきましょう!」

「やれやれカーメネフ君は元気だなねえ・・・それでは改めて乾杯といきましょうか。」

「それでは自由惑星同盟の繁栄を願って・・・乾杯!」

4人の宴会が始まった。 
 

 
後書き
まだまだ話は続きます。
もう少しお付き合いください 

 

酔っ払いと親父達の誓い

 
前書き
ようやく一区切りが着きました。
トリューニヒトとレベロの人物像が原作とかなり乖離してるように思いますが、そこは主人公の影響と二次創作という事でご容赦ください。 

 
グレゴリーを含めた二次会が始まった。酒を飲んでおり、グレゴリーが得意の手品や宴会芸を披露した事もあって、賑やかに過ぎていった。皆日頃の対立関係を忘れて飲みあい、互いに笑いあった。

宴会が始まりそれなりに時間が過ぎたころ、いきなりグレゴリーが大声を上げた。

「ホアンの親父!レベロの叔父貴!ヨブの兄貴!今日は相談とお願いをする為に集まってもらったんです!」

グレゴリーは起ち上がると3人に対して頭を下げた。

「私は君の親父だ。話してみなさい。」

ホアンが促すとグレゴリーは話を続けた。

「親父も叔父貴も兄貴も第5次イゼルローン要塞攻防戦以降、同盟が大損害負い敗退を重ねていく現状をどう思っていますか?ヴァンフリートでは勝てましたが第6次イゼルローン要塞攻防戦で敗退しました。第3次・第4次ティアマト星域会戦では追い返したという事実だけで帝国軍以上の損害を同盟軍は負っています。その結果国境は荒廃し、軍備を立て直すために公債の増発と臨時増税と社会保障削減が乱発されています。私の選挙区では毎日陳情が来ます。何とかしてくれって。エル・ファシルだけじゃないんです。シャンプール、ネプティス、パルメレンド・・・私の選挙区じゃないところからも陳情が来るんですよ。何とかしてほしいって言ってきてるんです。こんな私や有権者でも危機感は持ってるんです。このままでは同盟そのものが崩壊してしまいます。」

三人は俯いた。それはそうだ。三人とも思想の違いや理想の差異はあれど同じく危機感は持っていたからである。しかし政局情勢と三人の身動きを取れなくしていた。トリューニヒトは与党自由共和党の所属であり自身の派閥を持っているとはいえ非主流派に甘んじている(最も彼の場合今後の政局の為に敢えてその立場に甘んじているという事情があるが)。レベロは野党同盟民主党のトップであり、ホアンは野党社会改革党の事実上のトップである書記長を長年務めている。更に党派は違えど彼らは現最高評議会の一員を務めているのだ。おいそれと動くことはできない。

「軍は新兵ばかり多くなり、社会は人員不足で混乱が生じてまいます。数少ない資産はフェザーン資本に取られ、治安は乱れるばかりです。地方では宇宙海賊なんて時代錯誤な輩まで跋扈してるんですよ。これをどうにかしなくちゃいけない。そのためには御三方の協力が必要なんです。お願いします!」

そう言うとグレゴリーは土下座をした。三人は困惑した。グレゴリーは確かに頭の出来は良くないが、三人が公的には対立関係にある事を理解できない男ではなかった。だからこそ政策論議を行わず私的関係だけで人脈を広げていくグレゴリーを可愛がったのだ。

少し時が流れると、意外な人物が声を発した。グレゴリーが叔父貴と呼んでいるジョアン・レベロである。

「私はハイネセン主義者だ。だから労働組合出身者の君とは対立関係にある。だが君は私の政界の教え子であり、君のその素直な所を気に入っている。なにより同盟を救いたいという気持ちは私も同じだ。君に協力しよう。」

レベロがそう言うとトリューニヒトが続いた。

「親友であり弟分の君からそこまで頼まれて動かないようなら兄貴分の名が廃るだろう。今は出来ないことの方が多いが、協力は出来る。」

ホアンが口を開いた。

「君をこの世界に連れてきたのは私だ。君に未来を作ってほしいと言ったのも私だ。私には君に手を貸す道理がある。それに・・・この願いを叶えてやりたいと思うのが親というものだ。」

ホアンがグレゴリーの肩を叩く。

「親父・・・兄貴・・・叔父貴・・・!ありがとうございますうぅぅぅ!!!」

グレゴリーは涙と鼻水でぐしょぐしょになりながらホアンに抱き着いた。

「おいおいカーメネフ君、大の男が泣くんじゃないよ。」

「まあ彼らしくていいじゃないかレベロさん。それよりせっかくの酒の席なんだ誓いの盃といこうじゃないか。」

「君にしては中々の提案じゃないかトリューニヒト、ほらグレッグもいい加減離れろ。」

ホアンがグレゴリーを離し盃を持たせると4人は盃を掲げた。

「「「「我等4人、同盟救済をここに誓う!乾杯!」」」」

この誓いが自由惑星同盟にどのような影響を与えるか、今はまだ謎である・・・
 
 

 
後書き
一区切りついたので次回は設定と流れの説明をしようと思います。
 

 

設定紹介2

 
前書き
ようやく一区切り着いたので改めて設定を紹介します。
書いていくうちに勝手に生えてきた設定がたくさん出てきたので・・・ 

 
人物紹介
主人公:グレゴリーカーメネフ
同盟議会代議員議員であり国防委員を務める現在三期目の若手成長株。政策立案力は当選一年目に比べればかなりマシになったがそれでも落第生の扱いを受けるも、素直さと人懐っこさで党派思想を超えた人脈を築くコミュ力お化けのアル中。自覚はないが観察眼は鋭く、今後の同盟政界のカギを握る。

ヤン・ウェンリー
エル・ファシルの英雄と呼ばれる同盟軍人。元々コミュ障の権化のような人間だったが、コミュ力お化けのグレゴリーとの思想を超えた付き合いのおかげで最低限のコミュニケーション力は着いた模様。なので原作よりは多少の礼節は持っている。

ホアン・ルイ
最高評議会人的資源委員長と社会改革党書記長を務める政治家。グレゴリーを見出し、様々な教育を施すも政策立案力はあまり上がらず呆れている。しかし彼のコミュ力と行動力と実直さは高く買っており、なんだかんだで可愛がっている。

ジョアン・レベロ
最高評議会財務委員長と同盟民主党代表を務める政治家。「自主自立」を掲げるハイネセン主義の非戦派の代表格でグレゴリーとは対立関係にあった。しかし旧知のホアン・ルイの仲介で彼の教育の世話をする事になり、付き合っていくうちに蟠りはなくなっていった。彼の実直さを気に入っており思想を超えた関係を築く。

ヨブ・トリューニヒト
最高評議会国務委員長を務める自由共和党所属の政治家。国家革新同友会という右派系派閥を率いており、世間からの人気も高い。しかし敵対者達からは「タカ派のドン」と見られており、反発も強い。本人はその立場を活用して権力を握ろうと画策していたようだったが、グレゴリーと付き合っていくうちに手段を切り替えた模様。現在は極右勢力との差別化を図っている。ある意味主人公の影響を最も強く受けた存在。

ネグロポンディ、ウォルター・アイランズ
自由共和党所属の政治家。国家革新同友会に所属しておりトリューニヒトからの信頼も厚い。グレゴリーとは選挙区も近いこともあって共同歩調をとることが多く、党派を超えた同志ともいえる。

コーネリア・ウィンザー
最高評議会情報交通委員長を務める自由共和党所属の政治家。自由共和党主流派でありながらスタンドプレーが多く批判は多い。しかし弁舌が上手く、サンフォード政権の後継者とみられているため味方も多い。グレゴリーとは同盟議会で幾度も激論(物理)を交わした宿敵ともいえる存在。

政党紹介
自由共和党
長年にわたり与党に君臨する中道右派政党。数は多いが派閥も多いため統制は取れていない。しかし個々の議員が選挙に強いため第一党を維持し続けている。現在は主流派とトリューニヒト派による対立が起きている。

同盟民主党
野党第一党。過去には与党経験もあるが、ハイネセン主義的政策に拘るあまり地方からの反感に遭い、長期低迷に陥っている。同盟内の政党の中では比較的統制は取れているが現体制に不満を持つ層が一定数存在する。

社会改革党
野党第二党。同盟民主党とは対自由共和党で共同歩調を取っているが社会保障や国防で対立することもあり現在は亀裂が生じている。しかしレベロとホアンが旧知の仲であるため最小限で済んでいる。左翼政党を標榜しているが対帝国戦略を巡り統一した行動はとれていない。

憂国地球党
新興宗教である地球教と憂国騎士団が共同で設立した新興政党。地方ではそれなりの勢力を持っているが、あまり過激なため人気はない。

制度紹介
最高評議会
同盟内における最高機関。メンバーは同盟議会代議員から選出され、委員長ポストには野党枠(現政権ではレベロとホアンが該当)が存在する。そのため評決は多数決で決められ、結果は公表される。

同盟議会
同盟内における立法機関。任期は4年だが解散総選挙が頻繁になされる。最高評議会の決定・法案を改めて協議するとしているが実体は評議会のカーボンコピーであり「同盟市民を納得させるプロレス劇場」と揶揄される。一応議員立法な提案できるが殆どなされない。

 
 

 
後書き
本編を書いていてかなり説明不足な所もありますが、その辺はそういうもんだとご了承ください。
次回から原作本編に突入します。