『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』


 

一話目

「なんと言うか、不思議な感覚だよな」

己が転生者と言う存在であると自覚はしているが、実感は湧かない。そんな事を考えてしまう。

彼、『天地 四季』は転生者であると言う自覚は有っても、前世のことが殆ど思い出せないために実感が湧いていないのだ。

「しかし」

転生特典は拠点となる家の地下に置かれたガチャと呼んで居る機械によって武器や仲間を召喚できる事で、四季の手にはそのために必要な三枚のチケット、『武器ガチャ二連確定チケット』、『キャラクターガチャ確定チケット』、『能力ガチャ二連確定チケット』の三枚がある。

能力ガチャは技術や知識の他に戦闘技術等の能力にあたるものが得られる。
武器ガチャはその名の通り武器、または武器に分類されるものが出てくる。
最後にキャラクターガチャは漫画やアニメなどの登場人物(主人公以外)をこの世界に存在する者として召喚できるガチャだ。
本来ならば三種類の内容からランダムで選ばれたものが出てくるのが本来の特典にあたる。

彼の手の中にある三枚は転生前のチュートリアルを終えた記念の品らしく、予め記憶を消される前の自分が選んだモノが出てくるそうだ。
武器や能力はこれからの運命を決定づける。少なくとも、カードゲームで運命が決まる世界ならば最高のドロー運もそれ以外の世界では大して役に立たない。
キャラクターガチャの方は下手したら命に関わる。敵役や味方になったとしても最初は主人公を殺そうとする者もいる。
最初に出てくるのが自分が選んだ物や相手と言うのは都合がいい事この上ない。

「取り敢えず、マトモなものを選んでてくれよ、オレ」

真っ先に回すのは二連の能力ガチャ、目の前の機械の中にチケットを入れると機械が起動して動き出し、能力の書かれた球が二つ出てくる。強制的に付与されるのではないことに安堵しつつ、キャラクターガチャの方で呼び出された者にも付与可能らしいことが理解できた。
下手に身につけたら危険な能力は厳重に封印しようと心に誓いつつ手に入れた能力を確認する。



『仮面ライダービルドの桐生戦兎の開発能力』
『東京魔人学園の主人公(デフォルト名:緋勇龍麻)の戦闘能力』



技術と身体能力関連を選んだ事に何となく武器ガチャの内容も理解できた。早速、手に入れた二つの能力を自分に付与させ、次の二連の武器ガチャを回す。

出てきたのはお約束のガチャのカプセルで、カプセルのまま中身の確認もできる。



『ビルドドライバーと各種フルボトル』
『VSチェンジャーとルパンレンジャーのVSビークル』



ビルドドライバーの方は予想していたが、両方共特撮ヒーロー関連だった。カプセルの中にはそれぞれビルドドライバーとVSチェンジャーが入っているのが見て取れる。能力と同様に呼び出されたキャラクターにも使用可能なものだが、ノーリスクで使えるのは四季だけで他の人間が使用するには原作通りの条件がいるらしい(単純に選ばれると言うのが条件の場合は無条件で使用可能)。要するに、他の誰かに使わせるには能力のガチャの方で能力を入手する必要がある。
その手の条件が薄い傾向にある戦隊ヒーローの物は仲間用、仮面ライダービルドのドライバーは自分用という事だろう。
なお、ドライバーとフルボトルだけで封入されてないビルドの武器は最悪能力で自分で作れるように、と言う事なのだろう。

装備の方もカプセルのままなら安全な様子だ。最悪危険な武器はカプセルのままなら厳重に保管しておける。

「最後はこれか」

キャラクターの確定ガチャ。キャラクターの初期好感度はそのキャラクターが登場する作品で初登場した時に主人公向けている感情となり、このチケットで初期好感度は通常よりも高く設定されて呼び出されるようであり、一番信頼できる仲間になる様子だ。
なお、同一人物が被ることはなく、その人物の別の可能性、または別の武器を使っている状態を呼び出すと元からいる者の強化に繋がるらしい。

(大丈夫なんだろうか?)

そう思わずにはいられない。好感度が通常よりも高いとは言っても、その感情が好意的とは言えない場合もある。
記憶には無いが、流石に自分が選んだのだから問題のある相手は選ばないだろう。

一抹の不安を覚えつつ、最後のチケットを使い出てきたのはガチャを開けると目を閉じた青い髪の少女が映る宝石だった。



『シノン(GGO)』



それが彼女の名前だ。少なくとも呼び出して早々に敵対される相手では無い事に安堵しつつ、早速彼女を呼び出す事に決める。
呼び出す方法は特別なことはなく少しだけ石に呼び出すと言う意思を持って力を加えるだけで済む。

手の中から宝石が消えていく感覚を感じながら、ふとした疑問を思い浮かべる。

(待て、なんで二連なんて中途半端なんだ?)

十連や五連なら兎も角二連とは結構中途半端な数だ。下手したら単純に二枚同じチケットがあれば良いだろう。
そして、キャラクターだけ一回のみと言う点。何かの為に回数を犠牲にした可能性もある。



《ピンポン! ピンポン!》



なんか妙な音が頭の中に響いた。その瞬間、ガチャの回数が変化した理由を理解する。

予め10段階で表されたキャラクターの感情を5まで上げていたらしい。その結果、本来五連のキャラクターのガチャが4回分が犠牲になったらしい。同じく本来は東都、北都、西都と別になっている六十のフルボトルをドライバーとセットにしたりした結果武器の方も二回に減ったらしい。(その為に武器は最悪自分で開発するように、と言う事らしい)
ついでに言うとVSチェンジャーとビークルの方は普通にワンセットだった。まあ、当然と言えば当然だが。

なお、同時に理解したことだが、召喚されたキャラは地上部分の居住エリアに当人の部屋ごと追加されるので、例外を除いてこの場に召喚されるとかは無いそうである。

「次は、と」

チュートリアル(自覚はないが転生前の説明とかと推測している)突破記念でもらえたガチャのポイントは合計11回分とガチャには表示されているので、早速記念に一度回してみる。

出てきたカプセルの中には有るのは変わった形の戦艦の様な物体。



『ナデシコC』



それがその戦艦の名前だ。機動戦艦ナデシコの劇場版に出てくる三番目のナデシコ。運用するのに必要なマシンチャイルドとかナノマシンとかどうすべきかと迷い暫くお蔵入りかと思ったが、AIでの単独運用もフルスペックは無理だが可能らしい。
それならば問題はないかとカプセルを開けると今いる部屋の壁が開き地下につながる階段が出てきた。地下格納庫という事だろう。

(自分の家ながら、この家ってどうなってるんだ?)

何人いるか分からない同居人達を収容する部屋に地下の格納庫には宇宙戦艦まで入っている。下手しなくても怪しげな家で有る。

「考えるだけ無駄か」

そう思って考えを切り替える。少なくとも、自動で動いてくれる戦艦が有れば行動の幅も増えると言うものだ。



『ガチャ初回記念プレゼント『アイテムストレージ』』



新たに表示された文字に驚いていると腕時計の様な物が現れ、同時に真後ろの壁が開く。

『アイテムストレージ』、腕時計型の端末を通してガチャ室の奥に設置された武器庫から繋がる武器庫の中の装備を取り出せるそうだ。また、バイクや戦艦の様な大型の物は武器庫ではなく地下格納庫という別の場所に置かれているので取り出せない。

「まあ、やっぱり何も入ってないか」

武器庫という言葉に不安を覚えながら入ってみたが、何も入っていなかった。折角なのでフルボトルとビルドドライバー、VSチェンジャーとビークルを置いて置く。

「それにしても」

通常のフルボトルだけでなく、レジェンドライダーの力を借りる為のフルボトル、エグゼイドならばドクターとゲームのフルボトルが必要になるそれまで存在している。
だが、スパークリングになる為に必要なスパークリングフルボトルやハザードトリガーの様な強化変身用のアイテムに、仮面ライダークローズに変身する為のパーツであるクローズドラゴンは当然ながらフルボトルと認定されなかったらしくここには無い。

(まあ、良いか。それと、お蔵入りの決まったものもここに隠して置くか)

安全そうだからと考え、あとで三つほど金庫でも用意するかと考えつつ、最後に残りの10回分のガチャポイントで十連の方を回してみることにした。

「来てくれよ、当たり!」

少なくとも狙っているものが二つ。通信用の道具と移動用の道具だ。ナデシコCは移動用に使うには大き過ぎ、あれははっきり言って、仮の拠点とでも言うべきレベルの代物だ。

「良し!」

出て来た十個のカプセルを確認しながら、その中に目的の物がある事に気付く。



『ビルドフォン』×2



ダブってしまったが、ビルドファンはスマホの機能だけでなく、ライオンフルボトルを差し込んでマシンビルダーと言うビルドの専用マシンに変形する機能がある。それが二つ出て来てくれた事は幸運と言って良い。

「っと、他にビルドの強化アイテムは無いか」

残りの八個のカプセルをどうするべきか、そんなことを考えながら一つ一つ確認していくと、その中の一つが目にとまる。



『パトレンジャーのVSビークル三種類』



初期の二つの戦隊の変身アイテムが揃った事は幸運と考えるべきだろう。他は“一応”危険な物は無いが、アイテムと能力のみで幸か不幸か仲間は増えなかった様子だ。そんな事を考えて居ると新たに表示される文字が視界に入る。



『ガチャ10回突破記念『保管用金庫』』



武器庫の奥に何かが設置される音が聞こえる。表記を信じるならば、保管用の金庫が設置されたのだろう。買いに行く必要がないのは助かるが、それでも初回記念に比べると、かなり道具としての格が下がる。

武器庫の奥に扉の所に液晶画面が付いた金庫が三つ設置されて居るが、一般的な大きさの金庫だった。武器庫に残りのVSビークルを置いて、金庫の中にカプセルを入れようとすると、勝手に吸い込まれていった。

「見たとおりの容量じゃなさそうだな」

扉の所にある液晶画面を操作すると中にある物の名前と数が表示されて居る。容量は不明だが、中に入って居るものが一目で分かるのは助かる。

「しかし、勢いで戦艦呼び出しちゃったけど、そっちは本気でどうするかな?」

地下の格納庫の様子も見に行くべきかと思いながら、残りのカプセルの中の一つに視線を送る。



『アメイジングストライクフリーダム』



これ、ガンプラだろ? と心の中でツッコミを入れる。確かにプラモを使って戦うビルドファイターズの漫画版のメイジンカワグチの愛機だが。そんな事を考えながら呼び出してみると格納庫に何かが追加された音が聞こえた。
間違いなく、本物のMSになったアメイジングストライクフリーダムが追加された様子だ。

戦艦に続いてMSまで置かれた地下の格納庫を一度見に行くべきか、そんな事を考えて居ると、上の方から足音が聞こえてくる。

「ねえ、いつまで待たせる気なの?」

地上部分に繋がる階段から出てきたのは『朝田 詩乃』という少女。先程呼び出したシノンの現実での姿だ。
しかも、呼び出されてから結構待たされた為にかなりお怒りのご様子だった。

(しまった)

まさか待っているとは思って居なかったとは言え、呼び出してそのままと言うのは本当にまずい事をしてしまったと思う。

性格も良く、GGO(ガンゲイルオンライン)のゲームの中のスキルが現実で使えるならば十分に頼りになる相手。寧ろ、友好的な関係を築くためにも、さっさと挨拶くらいしておくべきだったと思う。

「えーと、ごめん」

「反省してるなら、良いわよ」

謝る四季に対して何処か拗ねたようにそう答える詩乃。

「改めて、天地四季だ。これから宜しく」

「え!? ええ、『朝田 詩乃』よ。これから宜しくお願いするわ」

「オレのことは好きに呼んでくれて良い」

「じゃあ、四季って呼ばせてもらうわ。私のことはシノンで良いわ」

互いに挨拶して握手をする。

「ところで、四季は私達が居るのが如何いう場所か知ってる?」

「いや、その辺は全然」

転生前の記憶は殆どないためにどんな世界に転生したのかは分かってないが、最低限仮面ライダーの力が身を守る為に必要な危険はあると言うのは大体理解して居る。

「私も、この世界に召喚された時に貰った簡単な知識くらいしか」

続けて告げられた『天使と悪魔と堕天使とか、その他の神様とかがいる』と言う言葉で候補が絞られた上に、ある種の核心が得られる。


ハイスクールD×Dの世界だろう、と。


ぶっちゃけ、他に思い付いた世界だと生き残れる気がしないので、これであってくれと心から願う。主にメガテンとかだと。

「そう言えば、ここで何をすればいいのかって聞いてる?」

「何も」

首を振りながらそう答える詩乃。転生したのはいいが何をすれば良いのか分かっていない現状だ。
仮面ライダーやスーパー戦隊の力があるとは言え目的もなく無闇に行動するのは危険極まりない。
ぶっちゃけてしまえば、原作介入など、しなくていいならば関わらない方が良いだろう。

そんな会話を交わしていると式の持っているビルドファンに振動する。

「メール?」

詩乃に対して見ても良いかと問い掛けると、見ても良いという返事が返ってくる。
先ほど届いたメールを開くと、


『賞金リスト』


と言うタイトルのメールが届いていた。怪しいとは思いながらメールを開くと、はぐれ悪魔の等級とそれに対する報奨金の幅、そしてガチャをするためのポイントなどが書かれていた。

更に注意書きのように、『リストに無い相手などと戦い、勝利した際にもガチャポイントは発生します。また、不定期に発生するイベントを攻略することでガチャポイントや賞金を大きく入手することが可能です』と書かれている。

「なるほど、オレ達は賞金稼ぎ兼傭兵みたいだな」

時にはぐれ悪魔を倒して、時にどこかの勢力に味方して賞金やガチャポイントを稼いで行く。確かに、賞金稼ぎであり傭兵でもある。

「そこはせめて、バウンティハンターにしない?」

「そっちの方が聞こえが良いか」

詩乃の言葉にそう返しながら自分の手に入れた能力を思い出しつつ二つ目のビルドファンを詩乃へと差し出す。

「渡すのが遅れたけど、これはシノンの分のビルドファン」

渡されたビルドファンを見ると、どこか嬉しそうな微笑みを浮かべながら、

「ありがとう、四季」

渡されたビルドファンを抱きしめながら嬉しそうに告げる詩乃。まあ、その後でフルボトル差し込めばバイクになる事を教えた時には通常のスマホよりも高性能な機能に流石に絶句していたが。

互いに番号とメールアドレスを交換した後、先ほどのメールに続けて届いていた二通目のメールを開くと、そこには。

「明日から駒王学園に入学、か」

「四季が新しい子を召喚しても其処に通う事になるらしいわよ」

どこか『新しい子』と言う部分の、言葉に棘がある気がするがそこはスルーしておく事にした四季だった。
まあ、先ほどの十連の中にも無かったので暫く新しい仲間の召喚はできないだろうし。

仮面ライダービルド兼徒手空拳技《陽》の使い手として前衛を自分が、スナイパーとして詩乃が後衛を担当して暫くは二人でやっていく事になるだろう。

そんなことを考えていると、詩乃は思い出したように告げる。

「ところで、冷蔵庫の中に何も無かったんだけど」

「寧ろ、今のオレ達にはそっちの方が重要だよな」

ここに来る前にキッチンによってらしい詩乃は冷蔵庫の中を確認していた。その結果、分かったのは何一つ食材の入っていない冷蔵庫。寧ろ、空っぽのため、今は電気代の無駄と言ったところだろう。
まあ、昨日まで無人だった家に食料がある方が変なのだろうが、早めに買い物に行かなくては店が閉まってしまう。
今日の夕飯と明日の朝食はまだ何とかなるが、明日は学校なので昼食が拙い。

「取り敢えず、通帳とカード探して買い物に行こうか」

「あ、私も行くわよ」

「いや、ビルドファンが有るから一人でも大丈夫だけど」

「四季、この辺のお店の値段は知ってるの?」

「え? い、いや、全然」

必要な物以外は行ってみて安い物を買えば良いかと思っていたのだが、詩乃からはジト目で睨まれてしまう。

「幾ら入ってるか知らないけど、少しでも節約しないとダメよ」

「ごもっともです」

賞金首のはぐれ悪魔を狩れる機会はそうないと思うのだから、今は少しでも節約するべきであろう。
そもそも、ゲームではないのだから、相手も隠れ潜んでいるだろうし、そんな相手に簡単にエンカウントは出来ない。どう考えも節約は大切である。

冷蔵庫の中が空であった時に近所の店の情報を確認してくれていたのだろう。
なお、交通費についてはビルドファンという強い味方がある。フルボトルのエネルギーで走ってくれるようだ。
序でに地下にあるAストライクフリーダムとナデシコCに付いては完全に放置の構えだ。一応、彼女を艦長と登録しておいたが、完全に人員不足なのだ。




ナデシコC
艦長:朝田詩乃
パイロット:天地四季
艦載機
アメイジングストライクフリーダムガンダム




コレが現在のナデシコCの状況である。
すぐに運用する気はないが、人員不足だといざという時に使えない。艦長とオペレーターの兼任については、流石に無理と言われた。一応パイロットなしも問題なので、現状では四季がアメイジングストライクフリーダムガンダムのパイロットになっている。
いくら高性能な戦艦と言えど、運用出来なければ単なるホテルだ。

「買い物が終わったらナデシコの中を確認して見るか」

「私もそれが良いと思うわ。使う必要がある時に慌てるのは良くないと思うから」

まあ、改めてナデシコCの中を確認して広さは兎も角、ホテルにも負けてない設備に驚いたのは二人だけの秘密だ。まあ、何ヶ月もの間船員が生活するのだから、ある程度ストレスの無い設備も当然だろう。

通帳を探してる間に詩乃が銀行と買い物に行く店の道筋を確認、家の敷地内の外から見えない位置でビルドファンにライオンフルボトルを装填すると、手のひらサイズのスマホから人が乗れるサイズのバイク『マシンビルダー』へと変形して行った。

「改めて見るとすごいな」

「どうなってるのよ、これ?」

恐るべし天才物理学者と心の中で呟きつつマシンビルダーに乗り、詩乃も後部座席に座る。

「じゃあ、しっかり掴まってろよ」

「うん」

幸か不幸か何事もなく買い物は終えたのだが、通帳の中には百万ほどの金額があった事を追記しておく。

さて、問題なく買い物は終わったのだが、荷物を置いた時に改めてビルドフォンにメールが届いた。


『賞金首情報』


そう表されたメールを見て四季は夕飯の支度を任せた詩乃を残してはぐれ悪魔の出現地点へと向かった。

(これが初めての戦闘。一人でどこまでやれるかも今のうちに確かめておきたいからな)

廃墟を一瞥し、ビルドドライバーを装着し、取り出すのはラビットフルボトルとタンクフルボトル。

「……早速この力を試してみるか」

赤いラビットフルボトルと、青いタンクフルボトルを振りながらビルドドライバーへと装填する。


『ラビット! タンク!』
『ベストマッチ!』
『Are you ready?』


(この場合、ビルドアップと言うべきか、変身って言うべきかは分からないけど、やっぱり)

そう考えながらベルトの右側のレバーに触れ、

「ビルドアップ!」

そう叫びながらそれを回転させる。


『鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イェーイ!』


兎の赤の半身、戦車の青の半身を持った仮面ライダー、『仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム』へと変身する。

「さてと、それじゃあ早速……お邪魔します!」

そう叫びながらビルドに変身した四季は回し蹴りを廃墟の扉の部分に叩き込み。

廃墟となった工場の跡地、あのメールの内容が事実ならばここにはぐれ悪魔がいる様子だが。

フルボトルは全種類使えるが武器は無い。いっそ、武器がなくても戦えるボトルを選ぼうかとも思ったが、何があるかわからない為、最初は安定性の高いラビットタンクを選んだ訳だ。

そうして廃工場の中に踏み込んだビルドの前に異形の影が現れる。下半身は蜘蛛の様に成っており、人間の上半身だが眼球が昆虫の複眼の様になっている異形の怪物。

「なんだお前は~人間か~」

相手の言葉を聞き流しながら足に力を込める。緋勇龍麻のそれは彼の操る異形を討つための古武術であり、その身に纏う力もまた異形を討つための力である仮面ライダーの力。

片や呪術などの超常的な力で生まれたもの、片や火災で発見された地球外生物由来の超常的な科学で生まれたもの乃違いは有れど、この二つの力を同時に扱って、

「負ける気はしない!」

目の前の相手に負ける理由などないのだから。

床が割れるほどと言う比喩をでは無く、本当に床を踏み砕くほどの踏み込みで床を蹴り、はぐれ悪魔とか距離を詰め掌打を打ち込む。

「破ぁ!」

続け様に放つのは上段蹴り、徒手空拳拳技の技の一つである《龍星脚》。
ウサギと戦車の力を借りた姿で龍の星を名に持つ技を放つのも洒落が効いてるかと思いながら蹴り飛ばされたはぐれ悪魔に視線を向ける。

「ガァ、ガガ」

「早速で悪いが、はぐれ悪魔」

ラビットハーフボディの脚力を活かして蹴り飛ばしたはぐれ悪魔へと肉薄し、

「オレとビルドの、実戦テストの相手になってもらう!」

そう宣言しながら上空で一回転しながらタンクハーフボディの踵部分を頭へと叩きつけ、動きが止まったところに掌打を叩きつけ、

「破ぁ!」

徒手空拳技《陽》の基本技の一つである発勁を撃ち込む。
気を使った技は生身でも仮面ライダーの姿でも大して変わりはないだろう、そう考えて居たが、

「グギャァ!」

「あれ?」

必殺技を使うまでもなく体に大穴を開けて絶命したはぐら悪魔を見て、

「……加減間違えて中位技使っちゃったけど、これは威力あり過ぎじゃないか?」

その理由も先ほどの感覚で何となくだが、理解した。タンクハーフボディが原因だろう。

変身後のボトルの影響か、何故かは分からないが、遠距離技、主に発勁の系統の技が砲弾の様な破壊力が与えられている。

「うわぁー」

この上の上位の技に位置する奥義級の技になると、人に向ける事自体が間違ってくる、確実に相手を葬るための技、文字通り必殺技になってしまう為に使えないが、ライダーに変身した後は遠距離技は人には使うまいと心に決めたのだった。 
 

 
後書き
四季は気づいてませんが

フルボトルの力+緋勇龍麻の力(黄竜の器)

で、変身状態の四季の気の力は、言わば《地球の力》と言うものに変化します。
攻撃オンリーですが、エボルトの攻撃だけなら火星の力といい勝負できると言う裏設定も。 

 

閑話 1.5話目

「さて!」

手の中に有るのは先ほどのはぐれ悪魔との戦闘の報酬の三枚のガチャチケット。
ハーレム等と考えているわけでは無いので別に女の子を狙ってるわけでは無い。寧ろ今はビルドの強化アイテムが欲しい。

「来てくれ! ビルドの強化アイテム!」

1枚目のチケットを使い、そんな願いを込めてガチャを回した結果、

「こ、これは!?」

“ある意味で”彼の願いは叶った。カプセルの中に入っているのはビルドドライバーの拡張アイテム。


ドラゴン型の機械。



『クローズドラゴン』




だった。

「た、確かにビルドドライバーの拡張アイテムだけど、さぁ!?」

クローズドラゴン、ビルドドライバーとドラゴンフルボトルと共に使用する事でビルド系二号ライダーである『仮面ライダークローズ』に変身する事の出来る拡張アイテムである。
戦力強化としては強化にはなったが、大きな戦力の増強にはならなかった。
まあ、ドラゴンフルボトルさえ有れば変身できるというのは強みにはなるだろうが。

討伐ミッションの初回特典の結果などそんな物だろうと割り切ってしまえば良いのだろうが、それはそれ。

「何やってるのよ?」

頭を抱えている四季をジト目で見ながら響くのは詩乃さんの一言だった。

「気にしないでくれ」

「気持ちは分かるし、何があったかは分かるけど、あと二回はどうするのよ?」

「一度、やってみるか?」

「……うん」

そう言って渡されたチケットを受け取る詩乃。心なしか嬉しそうなのは、彼女もちょっとだけ興味があったからなのかも知れない。

先ほどの四季と同じ様にチケットを使い装置を起動させると、出て来たのは



『シノン(SAO)』



本人だった。

「え? わ、私?」

「可能性はあると思ってたけど、本当に有るとは」

出て来たものに戸惑いを浮かべる詩乃と、何となくだがその可能性も考えていた四季の図。
ガチャで有る以上はこういう可能性も想像していたが、目の当たりにすると戸惑いを覚える。

目を閉じた詩乃の姿が映る宝石を彼女が手に取るとゆっくりとそれは彼女の中に消えて行く。

「これって?」

彼女の手の中に現れる弓。元々GGOのゲーム内での能力を持っていた彼女の中にSAOでのゲーム内での彼女の能力が上乗せされたのを理解した。

まあ、他にも上乗せされたものも有るのだが、それはそれ、今はまだ深く触れないでおこう。

四季も四季で二人に増えたら姉妹みたいでそれはそれで良いかも、なんて思ってもいたが、そんな内心を気付かれない様に三枚目、最後のチケットを使う。

最後に出て来たカプセル、今度こそビルドの強化変身のアイテムを、と思っていたが、予想を大きく外れていた。




『北山 雫(魔法科LZ)』



カプセルの中に有ったのは目を閉じたショートカットの少女の映った宝石。
北山雫、魔法科高校の劣等生のヒロインで魔法師。実は外見に似合わないパワーファイターだが、魔法の概念が違うこの世界でどこまで通用するかは不明、だ。

「こ、これは、当たりなんだろうけど」

確率がどれほどの物かは分からないが、これまでで確定たった詩乃を除けば僅か2回しか出なかったことを考えるとかなり低い確率である事は間違いないだろう。まあ、

「ど、どうしたんだ?」

「別に。何でもないわ」

妙に彼女からの視線が痛い気がするのは決して気のせいでは無いだろう。
四季は知らない事だが、同キャラ同士が統合された場合、好感度も上がる。当人同士は全く気付いてないが、彼女の中に好感度の急な上昇により四季への独占欲が芽生えたことによる物だ。

暫く詩乃からの視線に痛かったが、こうして、四季達に新たな仲間が加わったのだった。 

 

二話目

初戦闘を終えた翌日、駒王学園に転校してから数日が過ぎていった。なお、新しく呼び出した雫も無事転校することが出来た。
文字にして仕舞えばその程度で片付けられる事だが、学年が一つ下の詩乃と雫とは違うクラスになったり、ビルドフォンに来るメールの賞金首情報からはぐれ悪魔を狩って過ごす数日だった。

一番の問題は一つ。

「十連一回引くまで約30体のはぐれ悪魔討伐、か」

「先は長いわね」

そう、初回特典がない通常エンカウントするはぐれ悪魔では約三体倒す事で一回ガチャが引ける訳である。
流石にそこまでガチャを引きたいと思ってるわけでは無いので必死に集めているわけでは無いが、戦力強化の面から考えるとビルドの強化アイテムを早めに入手しておきたい。科学的な技術で作られたビルドドライバーの事を考えると、ネビュラガスなどの成分が関係している部分はこの世界では作れないのだ。

(スクラッシュドライバーは出来たけどさ!)

桐生戦兎の技能は伊達ではなかった様子だ。
まあ、使う予定の者もいない為、完成してから即刻お蔵入りが決定したのでスクラッシュゼリーは作っていないが。ドラゴンもロボットも所持しているフルボトルから摘出した成分からスクラッシュゼリーを作れば良いのだが、飽くまで優先順位はビルドの強化と割り切り今のところ本体のみの製作に留めて放置している。

ぶっちゃけ、現状では後衛二人と前衛一人なので結局のところ、スクラッシュドライバーも四季が使うしかないのだ。





ないのだが、





当の四季には既にビルドドライバーが有り、性能はビルドドライバーより高いとは言えスクラッシュドライバーは使う必要も無く、ハザードトリガーなどの強化アイテムが手に入れば有用性は更に下がってくる。

それでも、ベルト自体はいざという時の為の備えの一環として作っておいたが。他のボトルからスクラッシュゼリーを作ってオリジナルのライダーを作るのも悪くは無いし。

そんな事をオレンジフルボトルを眺めながら考えて居たこともあった。
レジェンドライダーの成分から生まれたフルボトルから更にスクラッシュゼリーを作ればどうなるのか? 非常に興味ある問いだったが、自身や詩乃、雫の装備の作成に追われた結果研究には入れていない。

まあ、

「「「リア充は死ねぇえええ!」」」

毎朝襲いかかってくる三人組の撃退が今は最優先であろう。

坊主頭を踏み台にしてメガネの頭を軸に平均台の要領で一回転しながら『兵藤一誠』を蹴り飛ばし、メガネを蹴り飛ばした一誠へと投げつける。
流れるような動作で撃退を終えると、四季は坊主頭を踏み台にした際に真上に投げた鞄を受け止める。

この学校には有名な者が数人ほどいる。高が学園という程度の小さな村社会の有名人など大したことないと言う無かれ、学園中の生徒から名前を知られている有名な者がいる。

先程四季に鎮圧された三人組、兵藤一誠、松田、元浜の三人もその有名な部類に入る三人組だ。通称『変態三人組』。学校中の女子から蛇蝎の如く嫌われている変態行為の常習犯である。一説にはこの三人の変態行為が全て表沙汰になれば年間の犯罪件数が一気に1000ほど増えるとも噂されている。

「懲りないわね」

「何時もの光景」

「こいつらに付き合ってたら遅刻するから早く行こうぜ」

地面に倒れふす三人を一瞥してさっさと校舎へと向かう三人だった。

「ちくしょ~、イケメンは敵だ~」

「リア充爆発しろ!」

「毎朝美少女二人侍らせて登校しやがって!」

変態三人からの憎しみというよりも嫉妬のこもった声を聞き流しながら。
まあ、片手で詩乃と腕を組んで、片手で雫と手を繋いでの登校なのだから普通に恨みを買っても不思議ではないだろう。










時は流れ放課後

ラビットフルボトルを手の中で弄びながら、変態三人が剣道着の集団に追いかけられていた。何があったかは大体想像はできる。また覗きが見つかったのだろう。

(帰ったら次の武器の開発に入るか)

そんな彼らの事を放置して次の研究へと意識を向ける。
スクラッシュドライバーの時も思ったが材料の入手やそれを加工する機材の揃った施設についてはナデシコCが有って良かったと思う。
幸いにもナデシコCの中にはある程度の機材や材料は揃っていて場合によっては知識の中にある物よりも優れた物も使用できる。例外となるのはビルドの世界特有の品であるフルボトルとその中の成分、ネビュラガスだろう。

オレンジなどの原作では登場しなかったり、スクラッシュドライバー開発時に手元に無かったフルボトルから生み出す新たな仮面ライダーと言うのは結構魅力的に感じてしまう。
だが、応用を試す前に先ずは確実に作れるドラゴンとロボットのスクラッシュゼリーを作るべきかと考えを改める。

「さて。そろそろ、二人が待ってる頃か」

一緒に帰る約束をして居た詩乃と雫との待ち合わせの時間もそろそろなので校門の方へ行こうとした時、何故か変態三人が居て何が話していた。

「ホント、懲りないな、お前ら」

「「「天地!?」」」

「邪魔すんじゃねえ!」

「そうだそうだ!」

「帰れ帰れ!」

「ああ、そうさせて貰う」

呆れた様にそう呟く四季の言葉に噛み付いてくる三人組。そんな三人に付き合ってられない、と言うよりも巻き込まれたく無いとばかりに立ち去って行こうとした時、何処からか視線を感じる。

「いいな~、あの赤い髪」

「『リアス・グレモリー』。オカルト研究部の部長。出身は北欧って噂だ!」

(グレモリーのお姫様、か)

あれだけ騒いでいれば当然だろうが、上から感じた視線の主はリアスだった。
自分達の力のことを考えるとあまり関わらない方が良いだろう相手。この学園に通う現魔王の一人の妹であり、二大お姉様と呼ばれるこの学園の有名人一人だ。

なお、詩乃と雫の二人も学園一年の二大美少女として有名になっていたりする。

そして、彼女が部長を務めるオカルト研究部の副部長である『姫島 朱乃』が件の二大お姉様の片割れである。

急がないと二人を待たせると思い、四季は三人組を残して足早にその場を後にする。 

 

三話目

ナデシコCの格納庫の中に作ったビルドの関連の技術を研究するための簡易ラボ。現在格納庫に置かれているのがパワードスーツ大のアメイジングストライクフリーダムだけなのでかなりスペースには余裕がある。

「完ッ成!」

四季が高々と掲げているのは剣型の武器『ビートクローザー』。
仮面ライダークローズの専用武器だがビルドのキードラゴンの姿でも使用できる武器でもある。
最初に作ったのがドリル型のビルド専用の武装のドリルスマッシャーなので、それに続く第2弾と言うところだろう。

キードラゴンとクローズ、クローズドラゴンを入手した事もあり、二人のライダーの専用武装という事で二つ目の武器として制作してみたのだが、問題なく完成に至ったというわけだ。

「でも、作れるって分かっていてもこうして完成させられるのは嬉しいものがあるよな」

出来たばかりのビートクローザーを眺めながら感慨深げに頷く四季。伸びをしながら、ビートクローザーを持ってナデシコCの格納庫から出ると武器庫の中の、先に完成させたドリルスマッシャーの隣に置く。他にもそこには詩乃に頼まれたヘカートや雫に頼まれたCAD等の装備品も置かれている。

何時の間にか一般家庭の家の地下には似つかわしくない物騒な施設が出来上がっているが、その辺は深くは考えないことにした。……戦艦の格納庫と武器庫の時点で今更だが。

「そう言えば、最近街に堕天使が出入りしてる様子だな」

今のところ堕天使を倒したところで利益はないので、一般市民に被害が無いなら、と放置して居たが。今更ながら、この世界の中心人物である兵藤一誠が悪魔へ転生する切っ掛けは堕天使に殺されたことではなかったかと思い返す。

「まあ良いか」

自分たちと言うイレギュラーを内包している以上、世界が知識通りに進むわけもないだろうし、倒した後に間違いでした、では済まないのだから。

そんな訳で堕天使達に対しては完全に自分たちに対して火の粉が降りかかるまでは無視を決め込む事にした四季だった。









「理由はわからないけど、どうもこの街に堕天使が数人入り込んでる様子だから、二人も気をつけてくれ」

夕食後の席で堕天使側の勢力が街に入り込んでいる事と、暫く様子見することを告げる。

「放っておいても良いの?」

「相手の目的が分からないからな」

詩乃の言葉に、だから相手の目的が分からない現状では様子見だと告げる。
この街の裏側が悪魔勢力の傘下ということは知っているが、少なくとも堕天使も表向きは悪魔と敵対関係だが共に冥界に居点を置く聖書勢力の一部である以上、裏で繋がっていても不思議はない。

「多少後手に回るかもしれないけど、相手が動いたら堕天使の監視をするって事で」

そう言って四季が取り出したのはVSチェンジャーと三つのダイヤルファイター。
巨大化する相手もいないので、その面ではグッドストライカーは必要ないだろうが、必殺技が使えないのはちょっとマイナスだろう。

「ライダーじゃ無くて、怪盗で、な」

既に三人分の正体を隠す為の赤、青、黄の三着の礼服とシルクハット、アイマスクも用意している。

「この服って、前から用意してたけど」

「ルパンレンジャーに変身するときの変装用だ」

詩乃の言葉にそう返す四季。礼服とシルクハットにアイマスクは変装用兼ルパンレンジャー時の正装として用意している。

「でも、なんだか格好いい」

「そうだろ」

「私も悪くないとは思うけど」

好意的な意見の雫にちょっとだけ気分の良さそうな四季。詩乃も詩乃で満更でもない様子だった。

「それじゃ、怪盗として鮮やかに、な」

楽しそうな笑みを浮かべながら告げる四季の言葉に頷く二人。そしてハイタッチを交わす。










夕方、丁度三人が今後の行動を決めていた頃、一誠は項垂れていた。

「暗い青春だ~。オレの学園生活は花も実も無く終わっちまうのか~」

そして、忌々しげに思い浮かべるのは美少女二人を連れた四季の姿。

「チクショー! オレも四季の野郎みたいに両手に花が当たり前の薔薇色の学園生活を楽しみたいぜ!」

「あの……駒王学園の兵藤一誠くん……ですよね」

他の学園の制服を着た黒髪の女子高生が一誠に声を掛ける。
その場で告白された一誠は歓喜とともにそれを了承。翌日には変態仲間の松田と元浜にも彼女として紹介して、次の日曜日にデートをする約束をした。

「あの子、堕天使だな」

「堕天使よね」

「うん、堕天使で間違いない」

四季、詩乃、雫の三人が一誠の彼女になったと言う少女『天野 夕麻』を見ながらそう呟く。
ルパンレンジャーへの変身の訓練も兼ねて堕天使の拠点を調べた時に堕天使達の顔は確認しているし、何より一誠達の変態行動は学園の中のみならず町全体に轟いているのだ。彼女ができるとしたら町から離れて行動を自重するしかないだろう。そう確信しているし。(詩乃と雫の女子視点からの意見)

そして日曜日、デート当日、ショッピングに食事、水族館デートと定番的なデートをした後、公園を歩いていた。

「今日の初デート記念に一つお願いがあるの。いい?」

「な、何かな?」

内心『初デート記念のお願い!?』と興奮している姿を表に出さず微笑みを浮かべる夕麻に聞き返す。

「死んでくれないかな?」

彼女からの突然の言葉に戸惑いを隠せない一誠に光の槍を突き刺そうとした瞬間、



『そこまでだ、堕天使!』



夕麻の腕に一枚のカードが突き刺さる。

「ぐっ!? だ、誰だ!?」

夕麻の叫びに答えるように現れる三つの人影。それぞれが赤、青、黄の礼服を身に纏い、シルクハットを被り、顔をアイマスクで隠した三人組。

「貴様ら、人間風情が邪魔をするな!」

「おっと、残念ながら邪魔をさせて貰うぜ」

そう言って取り出すのはVSチェンジャーとレッド、ブルー、イエローの各々のダイヤルファイター。

「「「快盗チェンジ!」」」

『レッド』『ブルー』『イエロー』

『0・1・0』『マスカレイズ!』『快盗チェンジ!』

その言葉と共に三人がVSチェンジャーを上空に向けて引き金を引き、溢れた光に包まれた三人が姿を変えるのは、シルクハット型のゴーグルをしたそれぞれのパーソナルカラーのスーツ。

「ルパンレッド」

「ルパンブルー」

「ルパンイエロー」

『快盗戦隊! ルパンレンジャー!』

そして、ルパンレッドは夕麻と名乗っていた堕天使へと指差し、

「予告する。お前のお宝、頂くぜ!」

そう宣言するのだった。 

 

四話目

「っ!? に、人間風情が、生意気な!」

改めて光の槍を出して投げつけてくるが、その直後にルパンブルーがVSチェンジャーで撃ち落としていた。

「ナイス、ブルー」

「ええ」

続いてレッドがベルトのバックル部分を外してそこからワイヤーを伸ばし槍を投げた直後の堕天使の腕を絡みとる。

「なっ!? こんな物!」

「私もいる」

小型の光の槍を作り出して片腕に巻きついたワイヤーを切ろうとするがそれよりも先にルパンイエローのワイヤーが自由に動かせていた腕を拘束、続けざまにブルーもイエローと共に腕を拘束する。

「じゃ、落ちて貰おうか、堕天使らしく、地面に、な!」

「ひっ!」

レッドの言葉と共に三人が同時にワイヤーを振り回す。なんとか抵抗しようとするが、それも虚しくそのまま地面に叩きつけられる堕天使。

「ぐべっ!」

女として出してはいけないカエルの潰れたような声を上げて地面に落ちた堕天使の女。強く打ち付けた顔には血と土に汚れて屈辱からか鬼のような形相を浮かべていた。

「よくも、至高の堕天使である私を!」

「おいおい、堕天使って天使からの落後者の集まりだろ? それが至高って」

堕天使の女の言葉に笑いながら言葉を返すレッド。

「至高の落後者? つまり、万年留年生?」

レッドの言葉にそう呟いたイエローの言葉に他の2人は思わず吹き出してしまう。

「ぷっ! ハハハハハ! イエロー、ナイス!」

「し……っ、レッド、笑っちゃダメよ」

爆笑してるレッドと笑いを堪えてるブルーの姿に百年の恋も冷めるほどの鬼の形相を浮かべている女堕天使だが、何かに気が付いたのか翼を広げ、

「ここは一旦引くしかないけど、そこの人間ども! この思考の堕天使レイナーレをコケにした事を必ず後悔させてやる!」

そんな捨て台詞を残して飛び去っていく。

「おっと、オレ達も長居は無用か」

レイナーレと名乗った堕天使が逃げた理由、赤い魔法陣の出現に気が付いて、レッド達も真上へとワイヤーを投げ、

「それじゃあ、オ・ルボワール(ごきげんよう)」

低空を飛んでいた三機の飛行機にワイヤーを巻きつけそう言い残して飛び去って行く。
後に残された目の前に巻き起こった光景に唖然としていた一誠の前に赤い魔法陣から現れる赤髪の女の子。
こうして、赤の悪魔と赤き龍の物語は本来の運命とは少しだけ違う流れで始まったのだった。












「ふーん、三人組の怪盗、ね」

彼女、リアス・グレモリーは新たに眷属となった一誠からの話を聞いてそんな言葉をつぶやく。
赤、青、黄の三人組の快盗戦隊ルパンレンジャーを名乗る怪盗達に彼が助けられた事を聞いた彼女は、彼らが最近この街ではぐれ悪魔を狩っている存在と関係あるのでは、と考えていた。

堕天使と戦える力を持って、互いをレッド、ブルー、イエローとコードネームで呼び合い、そのコードネームに合わせた色の礼服とシルクハット、目元をアイマスクで隠して居ただけなのに不思議と服装以外が思い出せない謎の男女の三人組。
これを怪しむなと言う方が無理があるだろう。

「中々興味深いわね」

面白そうな笑みを浮かべて彼女はそう呟く。彼女の手元には未使用の騎士、僧侶、戦車の悪魔の駒が三つ残されている。手持ちの駒には先程まで兵士の駒が八個残っていたが、予想を超える数を一誠を転生させるのに使ってしまった為に残るは三種一つずつだけになってしまったそれを一瞥しながら。

丁度怪盗の三人組と同じ数だ。自分の領地で断りもなく好き放題してくれているのだ。それを抜きにしてでもこの地の管理を任されてる者として怪盗達に落とし前は着けさせる。
だが、ちょうど三つ駒が空いているのだ、落とし前をつけた後は見所が有れば三人とも眷属に勧誘してみようとも考えている。








一方、件の怪盗三人組こと四季達三人はと言うと、

「さっき言ってたお宝って何のことなの?」

「なんとなく、その場のノリで言ってみた」

自宅に戻った後、怪盗用のコスチュームから私服に着替えてからそんな会話を交わす四季と詩乃。序でにオ・ルボワール(ごきげんよう)と言ったのも殆どその場のノリである。

「残念ながら監視に向いたガジェットは手元に無いから、オレ達の正体隠蔽がうまく行ったかは分からないけど、バレてたら監視なり接触なりして来るだろう」

受身にはなるが相手の動きでそれは推測するしかない。正体がバレた場合の対応とバレていない場合の対応もそれぞれ考えているので、状況を見て計画の修正が当面の予定だ。

「私達に先に接触して来たらどうするの?」

まあ、それが一番な問題点である。四季がビルドに変身して派手に活動して来たから、接触するのなら四季だけにだろうと考えて計画を立てていたが、今回の事で三人組と相手に認識されてしまっているのだ、正体がバレたとしたら二人のところにも接触があっても不思議は無い。

「一応、その時の対応も考えて居るけど、これの認識阻害機能が効果発揮してくれていれば、考えすぎで済むんだよな」

アイマスクを手に取りながらそう答える。ぶっちゃけ、アイマスクの認識阻害の機能が効いているのならば、それが一番である。

そんな訳で認識阻害効果が効いた場合と効かなかった場合の2パターンでの対応を決めたのだった。










翌日、

その日は何時もの様に四季のベッドに潜り込んで寝ていた二人を起こし、二人と一緒に通学していると学園の前に人集りが見える。
何事かと思って人集りに近づくが、残念ながら何を見ているのかは其処からでは分からなかった。

「嘘だろう、あの変態の兵藤がグレモリー先輩と」

そんな時、偶然聞こえた信じられない物を見たとでも言う様な誰かの呟きが状況を物語ってくれていた。

「朝田さんや、北山さんが、天地の野郎と一緒に登校しているのも、心底難いのに!」

一部四季への恨み節が混ざっているが、それは完全にスルーしておく事にした。

先日の女堕天使の一件の後、この世界の本来の流れ通りに一誠は悪魔へと転生したのだろう。
あの時に女堕天使の手で死ななかった分、イッセーが最悪の初恋と言うトラウマを背負わない事が良かったのか悪かったのか定かではないが、提示されたメリットに自分から食いついたのだろう。
その辺については自分達に迷惑さえ掛からなければ、頑張れ、と気の無い応援でもしておこうと思う四季だった。

リアスと一緒に登校するイッセーの姿を遠巻きに眺めている生徒を放置してさっさと学園に向かう四季達3人。
男女問わず向けられている殺意の渦の中にいるとも知らない一誠を無視して。普段は美少女二人を連れて通学しているのだから、四季の方に殺意が向けられているがこの日は静かに通学できることに内心良かったと思う四季だった。










一誠が松田と元浜にリアスと一緒に登校してきたことを問い詰められてた事を除けば、特に特筆する事なく普段の授業が終わった放課後。部活に行く者、帰り支度をする者といつもと変わらない放課後の光景。

「やあ、兵藤くんは居るかな?」

そんな言葉と共に教室に入って来たのは別のクラスの生徒である『木場 裕斗』。リアス・グレモリーの眷属の騎士の一人である。

荷物を纏めながら多少の警戒を込めて其方へと視線を向けると、木場がイッセーを呼びに来た姿が見える。

「グレモリー先輩の使いなんだ、一緒に来てもらえるかな?」

「あ、ああ」

周囲の女子から上がる意味不明な悲鳴と絶叫を聞き流しているのか、気にしていないのか分からない態度でイッセーを連れて教室を出て行く木場。

そんな二人を見ながら監視に使えるガジェットが無いことを惜しむ。

(まっ、ここで態々オカ研の部室のある旧校舎に忍び込んで会話を盗み聞きするなんて真似をしなくても良いだろう)

ルパンレンジャーの変装用の礼服とアイマスクもVSチェンジャーはいつでも取り出せるが、此処で相手の拠点に飛び込むのも正体を自分から教える愚行だと考える。

「なんで、あいつがグレモリー先輩に!?」などと絶叫している変態三男組の残り二人を一瞥しつつ、さっさと荷物を纏めて教室を後にする。詩乃と雫の二人と見た合わせているのだ。

桐生戦兎の能力があれば科学よりの他の仮面ライダーのガジェットも作れるだろうかと考える。

(セルメダルとライドベンダーが当たれば手っ取り早いんだけどな)

そんなことを思いつつ。 

 

五話目

イッセーがオカ研に呼ばれてから数日。イッセーがオカ研に入部して契約のチラシ配りなどの眷属悪魔の下積みを始めた。

残念ながら会話の内容は知らないが、此処数日のイッセーの行動から考えても、彼が悪魔に転生して正式にリアスの眷属になったのは間違いはないだろう。

そんな中、四季は一人ではぐれ悪魔の退治にやってきていた。何時もの様に怪盗の変装セット一式を身につけ、今回はビルドドライバーを装着していた。

「さあ、実験を始めようか」

両手に取り出したラビットフルボトルとタンクフルボトルを振りながらビルドドライバーに装填、



『ラビット! タンク!』
『ベストマッチ!』
『Are you ready?』



「OK、ビルドアップ!」



『鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イェーイ!』



その姿を変えるのは仮面ライダービルド・ラビットタンクフォーム。

「オリャ!」

バイザーと言う名のはぐれ悪魔が潜んでいるらしき廃墟の入り口をけやぶり、ビルドへと変身した四季はそこへ飛び込む。


『ケタケタケタケタ』


廃墟の中に入った瞬間、何処からか狂った様な笑い声が聞こえて来る。

『うまそうな匂いがするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?』

暗闇の中から聞こえて来る声、探そうと思えば探せるのだがそれでも、

(あんまり時間はかけたく無いし、さっさと終わらせるか)

そう思って新たに二つのフルボトルを取り出す。黄色のライオンフルボトル、青緑色の掃除機フルボトル。
新たに取り出した二つのフルボトルを振り、ビルドドライバーに装填していたものと入れ替える。

『ライオン!』

ラビットからライオンへ、

『掃除機!』

タンクから掃除機へ、

『ベストマッチ!』
『Are you ready?』

「ビルドアップ!」

『たてがみサイクロン! ライオンクリーナー! イェーイ!』


ライオンクリーナーへと変身すると、声の聞こえた大まかな方向へと左腕のロングレンジクリーナーを向けて、

「さあ、掃除を始めようか」

その吸引力を全開にして無理矢理引き寄せる。

『う、うがぁ!』

突然物凄い吸引力で引き寄せられた事に驚愕しているはぐれ悪魔のバイザーを他所に、ライオンクリーナーは右腕のライオンの頭部を模した、ゴルドライオンガントレットを構え、

「せいっ!」

射程距離に無理矢理引き寄せられたバイザーに放ったライオンアームの一撃によって地面に叩きつける。

「さあ、出てきて貰ったところで改めて、実験を始めようか」

「に、人間風情がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

強烈な一撃によって地面を転がり激昂したバイザーはライオンクリーナーを踏みつぶそうとして襲い掛かる。
見上げるほどの巨体、四作の獣を思わせる下半身の頭の部分に人間の女性の上半身が生えたと言う異形の姿の怪物だが、

(発勁の要領と、ライオンフルボトルのボディのエネルギー弾を撃ち出せる能力)

ライオンレフトボディの能力を思い出しつつ、先日のことを再現する方法をイメージして、

「破っ!」

ゴルドライオンガントレットから撃ち出されたエネルギー弾が踏みつぶそうと向かってきていたバイザーを吹き飛ばす。

「がっ、がぁっ……」

(加減がわからないから手加減して撃ったけど、貫通力よりも吹き飛ばすって言う面に特化してるな、これは。これはこれで役に立ちそうだな)

そんな事を考えながら吸引からの殴り飛ばしのコンボを何度もバイザーへと叩き込む。

ライオンボディは協力だとは思うが、ライオンフルボトルはマシンビルダーを使うためにも使用するので、あまり変身には使えないだろう。
だが、それでも手札として使える以上は使い勝手の確認をしておいた方が良いだろうと考えてのライオンクリーナーの選択だったが、思いの外使い勝手が良い。

(ライオンフルボトル、フォームとしても使えるし、バイクの軌道にも必要。結構重要度が高いボトルだな、これは)

「貴様ぁ!」

高が人間だと言う侮りはバイザーの中から消えていた。目の前の相手は確実に始末しなければ自分の命が危ない相手。
かつての主人を殺して逃げ出して、やっと自由になれたと言うのに、目の前の訳の分からない人間に殺されたくは無い。
だが、その判断はすでに遅かった。

「これで終わりだ!」

『ボルテックフィニッシュ!』

ビルドドライバーから響き渡る電子音声。クリーナーの吸引力でバイザーを拘束し、ゴルドライオンガントレットからライオン型のエネルギー弾を放つ。

「はぐれ悪魔のバイ「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」」



叫び声をあげながら、ライオン型のエネルギー弾に飲み込まれ、そのままバイザーは跡形も爆散する。
序でに爆発音とバイザーの断末魔の叫びで誰かの声がかき消された。

(分身とかじゃ無く、間違いなく奴の本体だな)

周囲にバイザーらしき気配は無い、そうバイザーらしき気配は、だ。間違い無く先ほどバイザーを倒した事を確信すると廃屋の出入り口へと向き直る。
 
「貴方は何者なのかしら?」

そんな声と共にライオンクリーナーが確認出来たのは数人の男女の姿。
それを確認すると、ビルドドライバーを外し、元の怪盗姿に戻る。

「そうだな、最近売り出し中の怪盗って所だな」
 
振り返りながらそう名乗った四季の前にいるのは、上級悪魔で有る赤い髪の女リアス・グレモリーを王とした彼女の眷属達。金髪のイケメンが騎士の『木場 祐斗』、黒いポニーテールの女性が女王の『姫島 朱乃』、白い髪の小柄な少女が戦車の『搭城 小猫』。最後に堕天使に襲われた事をキッカケに眷属になったであろう、イッセーの計五人だ。恐らく、彼女達もはぐれ悪魔のバイザーの討伐に来たのだろう。

「怪盗。随分とふざけた答えね」

「さあてね、怪盗なんだから仕方ないだろ」

怒気を孕んだリアスの言葉を受け流す様に四季は飄々とした言葉で返す。

「他にも二人、青と黄色の怪盗がいるってこの子から聞いたんだけど、お仲間は何処にいるの?」

「三人揃ったオレ達に会いたかったなら残念だけど、今回はオレ一人しかいないぜ」

「まあ良いわ。貴方は何者? 何が目的で私の領地で好き勝手しているのかしら? 先ずは、そうね。その仮面を外して、腹を割って話してもらおうかしら」

リアスの言葉に臨戦態勢に入るイッセーを除いた彼女の眷属達。リアスからの命が有れば直ぐにでも動ける態勢だろう。
実戦経験のないイッセーだけは戸惑っている様子だが。

「腹を割って、ね」

彼女の言葉に不敵に笑いながら四季は、

「悪いがそれは……お断りだ!」

『ライオン! 掃除機! ベストマッチ!』
『Are you ready?』
『たてがみサイクロン! ライオンクリーナー! イェーイ!』

再びライオンと掃除機フルボトル装填済みのビルドドライバーを装着し、ビルド・ライオンクリーナーへと変身する。

「さあ、実験を始めようか」

変身を完了した後に発したその言葉が第二ラウンドの開始のゴングとなった。 

 

六話目

「裕斗!」

「はい!」

リアスの言葉に従い、彼女の眷属の騎士である木場が自身の神器(セイクリッド・ギア)の力で作り出した剣を構え、視認できない速さでかける。

「祐斗の役割は『騎士ナイト』。特性はスピード。『騎士』となった者は速さが増すの。そして、祐斗の最大の武器は剣。それが祐斗の力。目では捉えられない速力と、達人級の剣捌き。二つが合わさる事で、祐斗は最速の騎士となる」

リアスの言葉に『おぉー』とでも言うような表情を浮かべているイッセー。
確かにビルドでもフォームによれば木場の速さを視認するのは難しいだろう。だが、

「今のオレとの相性は悪すぎたな」

「っ!?」

左腕のクリーナーを上げて無理矢理引き寄せる。元々パワータイプではない木場がそれに抗う事などできる訳は無い。
どんなに素早く動こうとも動けなくして仕舞えば意味は無く、体制が崩れていれば達人級の剣の腕前も発揮出来ない。クリーナーボディと木場の相性は最悪と言って良いだろう。

「……吹っ飛べ」

だが、別の声が響く。リアスの眷属の戦車である小猫。彼女は小柄ながら木場とは正反対の純然なパワータイプ。クリーナーの吸引力の影響の少ない側からなら十分に接近できる。
木場へと意識が向いていた隙にライオンクリーナーの懐へと飛び込み、

「ま、待った!」

慌てて彼女を止めようとするライオンクリーナー。だが、彼女の拳はライオンボディの胸部分に直撃する。






「次は小猫ね。あの子の駒は『戦車』。『戦車』の特性は到ってシンプル。バカげた力と、屈強なまでの防御。あの慌てようなら……」

リアスの説明とビルドの慌て様から、これならと言う表情を浮かべるイッセーとリアス。だが、彼が心配していたのは、







「……くっ! な、なんで……」

「いや、このボディってかなりの強度だから素手で殴ったら危ないって言おうとしたんだけど」

ビルド・ライオンクリーナーを殴った小猫は拳を押さえながらしゃがみ込む。彼女の拳の骨にはヒビが入り血が吹き出ていた。一方、拳を受けた側のライオンクリーナーは仮面で表情こそ分からないが、寧ろ殴った側を心配してさえいる。

ライオンクリーナーのライアチェストアーマーは武器を使った物理攻撃をほぼ通さない、ダメージを与えられるのは自身の爪ライアメタルクローのみと言うトンデモ性能なのだ。生身の相手が素手で殴れば怪我をするのは相手の方だろう。
ライオンクリーナーとしては全力で、しかも素手で、そんな自分のボディを殴ろうとしたから慌てたのだ。

「小猫ちゃん!」

「っ!」

木場の言葉に反応して拳の痛みをこらえながらライオンクリーナーから離れる小猫。
新たに作り出した2本目の魔剣と合わせて両手に持った魔剣を地面に突き刺して吸引力に耐えていた木場だが。

魔剣創造(ソードバース)ゥ!!!」

意を決して両手の剣を手放して地面に手を触れてライオンクリーナーへと向けて大量の魔剣を作り出す。
剣と言うよりも刃の草原とでも表すべき物が作り出されたライオンクリーナーを飲み込んでいく。

(そもそも、連中と戦う理由ってのも無いんだよな。丁度いい、向こうが目眩ししてくれたんだ、これを利用して……退かせてもらうか)

自身の周囲に現れた魔剣をライオガントレットを振るって安全地帯を作ると素早く新しいフルボトルを二つ取り出す。

『オクトパス!』

最初はライオンから桃色をしたタコのオクトパスフルボトルへ、

『ライト!』

掃除機から薄黄色のライトフルボトルへと変え、

『ベストマッチ!』
『Are you ready?』

「変身!」

『稲妻テクニシャン! オクトパスライト! イェーイ!』

新たに変身するのはタコとライト、墨を吐く生物と発光するツールの、一見ミスマッチなベストマッチの組み合わせによるフォーム、『仮面ライダービルド・オクトパスライト』。

「それでは皆さん」

左肩の発光装置「BLDライトバルブショルダー」から光を放ち視界を奪うと、墨でリアス達を包み完全に視界を閉ざす。

「オ・ルボワール」

視界を奪ってそのままさっさと廃墟から逃げ去っていくオクトパスライト。ご丁寧に入り口から、だ。

そして、廃墟から出るとマシンビルダーを使って走り去る。















暫く走らせた所でビルドドライバーを外して変身を解除して礼服とシルクハットから私服に着替え、アイマスクを外す。派手な変装を解けば目立つ事もないだろう。

(手札の幾つかは見られたけど、フォームの多さには平成ライダートップ級のビルドだから、それは問題ないか)

ライオンクリーナーとオクトパスライトの力を知られたとしても今更二つ程度知られた所で問題はない。

(それよりも)

マシンビルダーのスマホの画面(巨大)に映し出された『原作イベント遭遇特典、ガチャ十一連(10回+オマケの一回)チケット』の文字。

(関わり合いになるメリットはあるって事か)

深く関わるのにははぐれ悪魔の30体分の価値はあるというのは分かるが、正体を知られると言うデメリットはある。

(まあ、上手くそこは調整してみるか)

面白い考えが浮かんだと言う笑みを浮かべる四季。

思い浮かべるのは以前作って見たスクラッシュドライバーの事だ。それの使い道が出来た。

帰宅後、既に寝ているであろう二人を起こさない様に地下格納庫の中のナデシコCの中にあるラボに行くと、新しいスクラッシュドライバーの設計図を引き最後に『(弱)』の文字を綴る。
意図的にスペックを大きく引き下げ、更に一度変身解除すれば再生不可能なレベルで内部がスクラッシュゼリーを巻き込んで自壊する様に調整した代物だ。

正規の開発者の桐生戦兎の能力のおかげで性能の改悪は簡単に出来た。自壊機能は苦労したが、其方も比較的早く終わる。

「良し」

次にドラゴンフルボトルの成分をゼリー状にする準備をする。意図的な劣化を加えて通常は青のドラゴンスクラッシュゼリーが、劣化版では赤くなるだろう。
正規版を作った場合取り違えたくないので色などのすぐに分かる違いを持たせておきたいのだ。

「劣化型スクラッシュゼリーの設計完成」

通常のフルボトルよりも強力な筈のスクラッシュゼリーでありながら、これなら通常のフルボトルでも対応できる程度のスペックに抑えられる。

「これをイッセーに渡して、その程度の干渉で原作への介入ってことになるか試すのも良いだろう」

フルスペックのスクラッシュドライバーとスクラッシュゼリーをイッセーに渡して後々面倒になっても困るので、一度だけの使用が終われば勝手にスクラッシュゼリーを巻き込んで自壊してくれる様にしておいたので、万が一の事は少ないだろう。

悪魔側に自分の技術が渡る、と言う点が問題だが、この世界ではフルボトルの成分を入手できるのは自分だけなのでそれも問題はない。
スクラッシュドライバーだけでは駄目なのだ、スクラッシュゼリーと両方があってこそ初めて仮面ライダーには変身できる。

一通り作業を終えると今更になるが眠気を思い出し、自室に戻るのも面倒になったのでそのままナデシコCの居住エリアの一つを利用して就寝した。














翌朝、朝食を取った後、休日を利用して詩乃と雫の二人とともにガチャ部屋に佇む四季の姿があった。

「それで戦力の底上げになるから、早速貰ったチケットを使う訳ね」

「ああ、せっかくのチケットだからな」

「ちょっと楽しみ」

初めての光景にワクワクとした様子の雫と、楽しみと言う様子の詩乃。希望があれば自分の代わりに回しても良いと言ったが、今回は四季に譲るそうだ。

「じゃあ」

十一連ガチャを回して機械から排出される11個のカプセル。手に手に入ったのは、



『ビルドのハザードレベル1』×5



先ず、その内五つは見事にダブった。しかし、一つ使用する事にハザードレベルの取得と一上昇する便利なアイテム。しかも、ノーリスクでだ。
この場にブラッドスタークが居るなら絶対に欲しがるだろう。これだけでハザードレベル5は確定する。
そして、次の二つは、


『桜井小蒔の技』
『美里葵の術』


これだった。共に今四季がお世話になっている龍麻の力と同じ魔人学園シリーズのヒロインの二人の力だ。弓術の技と回復の術の二つ。

「じゃあ、こっちは詩乃に」

「ええ。でも、こんなに簡単に貰うのはちょっと気が引けるわね」

詩乃が手に入れたのは純粋な技だけで無く桜井小蒔自身がそれまで磨いて来た技術も含まれている。そんな技術までも簡単に貰ってしまうのには思う所が有るのだろう。

「なら、私はこっち。良い?」

「ああ」

雫が希望したのは残された術の方。科学が関係していない純粋な魔法と言っても良い力に微笑みを浮かべる。

そして残りの三つは、



『ハザードトリガー』



「ヤッベーイのが来た!?」

当然ビルドに変身できる四季の物だが、ラビラビタンタンになれない限りは、ビルドの戦力強化ではあるが使うに使えないのが出てしまった。暴走スイッチである。

そして、残念ながら残りの二つはラビラビタンタンのフルボトルでは無かった。

「えっと、これって」

「悪い、オレもなんって言って良いか分からない」

「ドンマイ」

カプセルの中身に対してなんと言って良いか分からないと言う表情の詩乃と、納得したと言う様子の四季、そんな四季を励ましている雫。
カプセルの中身は、



『天之麻迦古の弓(東京魔人学園)』



ガチでヤバイのがまた来た。日本神話に登場する弓である。こんな物持ってて日本神話にケンカを売ってしまわないかと不安になるし、神話に出て来るような武器が二つある事になるが、一応は魔人学園に登場する武器になるので、この世界のものとは違うが。

「一応、詩乃に使って貰うしかないけど」

この中で弓が使えるのは詩乃だけだが、

「あ、ありがとう。でも、こんな貴重な物簡単には使えないんだけど」

女の子に送るには色気のないプレゼントになってしまった。取り敢えず、お蔵入りが決まった瞬間だった。

そして最後は、



『天叢雲(魔人学園)』



「「「………………」」」

またまたヤッベーイのが来た。この世界にも存在している武器で誰も剣、それも日本刀は使えない。
即座に使用者が決まらない内にお蔵入りが決まった瞬間だった。

そして、最後の一個に四季は視線を向ける。
ある意味危険物との連続エンカウントのトドメとしては妥当なものだろう。
その中に有るのは微妙に形の違うビルドドライバーとハザードトリガーの色違い。


『エボルドライバー+エボルトリガーセット』


セット販売されたエボルドライバーとエボルトリガーだった。エボルボトルはないが、十分に危険な品物だった。

「エボルトでも現れる予兆なのか、これ?」

思わずそう呟いてしまう。 

 

七話目

武器は兎も角、ビルドの強化アイテムであるスパークリングとフルフルラビットタンクフルボトルは必要な成分を入手する方法がないため、事実上四季には作り出せない代物で有る。
パンドラパネルが必須なジーニアスボトルなどその最たるものだ。
つまり、

「制御出来ない強力な力は危険でしか無いからな」

ハザードトリガーは現状制御する方法が無いと言うわけで使わない事を決めた。
だが、せっかく手に入れたのだからと、ハザードトリガーを倉庫の一角に置き、念の為にいつでも扱えるようになってしておく。
次に最大の問題のエボルドライバーとエボルトリガーだが……

「このまま二度と見ないことを祈ろう」

変身用のボトルは通常のフルボトルで代用できるが、そう言って問答無用で金庫の中に押し込む。
変な物、主にエボルトとかその他のブラッド族の意思が宿ってても困るので問答無用での封印処置だ。

見つかったら問題はあるが、剣と弓に関してはいつでも使えるように倉庫内に置かれているのでそれは良いとして、

自分のビルドドライバーの隣に置かれたハザードトリガーについてはお蔵入りにするには強力なカードなのでいつでも使えるようにしておいた。

当面はチームではVSチェンジャーを、個人ではビルドドライバーで戦うつもりだが、使える手札はあって困る事は無い。
……流石に使えても宇宙戦艦は使う気は無いが。宇宙戦艦持ち出すのは普通にオーバーキル過ぎる。パワードスーツ状態のアメイジングストフリの方は使えるかもしれないが。

目出度いかどうかは疑問だが原作通り悪魔に転生したので、多少前倒しに物語が進んでいく程度で世界の流れは安全に進んでいくことだろう。
……超常的な力を扱うテロ組織なんて物が存在している事が安全かは別として。

(エクスカリバーの一件まではイッセー達オカ研に丸投げで良いか)

レイナーレの一件はアーシア・アルジェントという少女の今後に関わる為あまり干渉する気は無く、フェニックス家との婚約については完全に無関係なのだから、巻き込まれる事は無いだろう。
精々することと言えば、後者の時に使い捨てのスクラッシュドライバーを貸す程度。飽くまで予定ではあるが、当面はその程度の動きだけの予定だ。
万が一の場合、街全体が危険に晒されるエクスカリバーの一件には関わらないと言う選択肢はない。

「まあ、オレ達と言う異物がある以上は本来の流れ通りには行かない、か」

四季達がルパンレンジャーとしてレイナーレの行動の邪魔をしたことでイッセーが殺されず、その場で事情を聞いて本人の合意の上で悪魔に転生した事は良い例だ。
初恋の相手が碌でもない悪女で、その初めての彼女に殺されると言う最悪の初恋をしなかった事で物語が原作と言う流れよりも良い流れに乗れれば、この世界に紛れ込んだ異物である自分の価値も有るのではと思いたい。

「ん? よく考えたら、あの変態が女関係にトラウマ抱かないことで……。早まったか、オレ?」

一瞬変な方向に思考が向かってしまう。女関係にトラウマと言うほどではないにせよ、最悪の初恋がある程度今後イッセーの犯す性犯罪の抑止になっていたのではと思ってしまう。

「ひ、否定できないのが辛い」

実はイッセーの成長、と言うほどではないにしろ大事なフラグを善意でへし折ってしまったような不安が集ってしまうのだった。

「ま、まあ、それはそれとして……」

詩乃と雫の二人と別行動して倉庫に一人で居るのには訳もある。
思考の中に浮かんだ不安を振り払うように、その訳とも言うべきそれへと視線を向ける。

いつの間にか倉庫の片隅に出来た小部屋に存在していた小型の装置だが、起動していないそれの機能はシンフォギアXDに出て来る完全聖遺物ギャラルフォルンと近い性質、機能を持って居るのが分かった。

(異世界への移動装置は良いとして、行ける世界が)


・ソードアートオンライン
・魔法科高校の劣等生


自分と関わった二人の存在しているであろう世界の名前だけがリストに浮かんでいる。
そして、それを送った張本人であろうものからのメッセージ。

(それぞれの世界でBADENDを迎えた選定事象で命を落とした彼女達本人の転生したのが今の二人、か)

詩乃の方はすぐに見当がつくが、雫の方は中々想像が出来ない。
ガチャから出て来るのは本来の世界での選定事象となる終わりを迎えた世界で死んだ者達の転生した者。だが同時にそこには元の世界に幾つかの未練を残している。
この装置は未練を残した世界に於いて残された未練を解決するための品物らしい。

(彼女たちの生きた世界を救う為の、ヒーローの出張サービスって所か?)

BADENDを迎えた世界を少しは良い方向に持って行くためのヒーローの出張サービス。ヒーロー……仮面ライダーとスーパー戦隊に変身できるのだからそれでも間違いはないだろうが。
持って行けるかは別として、向こうでの拠点と考えるとナデシコCの存在はありがたいのかもしれない。

「まあ、直ぐに何か起こるって訳でも無さそうだし、暫くは保留か」

関係者がいないと起動できないかもしれないが、それはそれ。正式にそれが起動しない以上は考えても仕方ないだろう。

ハザードレベル上昇のスキルについては完全に放置だ。自分のハザードレベルがいくつかは分からないが、ビルドドライバーは問題なく使えるのだから、今の所は問題無いだろう。……ハザードトリガーを使う時には不安だが、フルフルラビットタンクフルボトルが無いのなら大して変わらないだろう。

当面の目的であるレイナーレ一味への対処として影で動くとしても、イッセーの成長フラグを潰すのは今後のことを考えるとどうかと思い、暫くは裏方として動こうと考える。

そう考えをまとめ、この時点で町一つなら制圧できそうな代物が有る武器庫を閉めて部屋の中から立ち去っていく。




四季がエボルドライバーの扱いに頭を悩ませていた頃、イッセーが契約で向かった先の家ではぐれエクソシストと遭遇したと言う事件が起こっていた事を追記しておく。





「えーと、これは?」

イッセーがはぐれエクソシストと遭遇していた夜、四季は詩乃がテーブルの上に置いた3枚のチケットに視線を落としていた。

「ええ、買い物に行ったら貰ったんだけど」

詩乃曰く、買い物に行ったら福引をやっていて、その景品として貰ったそうだ。

ちょうど三人分の食事券、かなり高級なレストランの物だ。だが、問題はその店が有る地名で有る。


『米花町』


とあった。一年の間に何度も殺人事件が起こるとネタにされている名探偵コナンの舞台で有る。
考えてみれば自分たちがいる世界はハイスクールD×Dの世界とは思っていたし、実際にその通りに起こっているが、他の世界の要素が混ざっていないとは限らない。

「まあ良いか」

人間相手なら問題無いだろうと考えてスルーする。やろうと思えば銃弾を素手で掴むことも出来るのだし。
ビルの爆破は春の風物詩、犯罪が横行し人が死に、ほぼ数日で殺人事件の犯人を逮捕できる警察の最精鋭部隊がいる日本の犯罪都市(ギャグ的なイメージで)、米花町。

怪物がいないだけで仮面ライダーの舞台並みの危険地帯である。

そこにある高級レストランの食事券、どう見ても殺人事件の招待状にしか見えない。まあ食事券に期限は書いてないので、すぐに行かなければ安全だろう。

「今回の事件が終わったら三人で行こうか」

「ええ」

「うん」

まあ、それはそれで嫌な予感もするが、事件に巻き込まれたらルパンレンジャーなり仮面ライダービルドなりに変身して問答無用で犯人を捕まえれば良い。
そんな事を考えていた。そう、全力の力技である。



まあ、この判断が後に一騒動の原因となるのだが、この時の三人には知る由もなかった。 

 

八話目

入手したアイテムとスキルの分配が行われた後、四季たちにとっては何事も無く数日が過ぎた。

その間にイッセー達にはイッセーが契約者の所に向かった際にはぐれエクソシストに遭遇したり、アーシアと再会したり、アーシアが悪魔に転生したりとそれなりに濃厚な日々を過ごしていた様子だった。

なお、自分の邪魔をして散々コケにしてくれた三人組、四季達の変身したルパンレンジャーに一矢報いる事なく、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が覚醒したイッセーに吹き飛ばされ、リアスの滅びの魔力によって消滅させられた最後は無念であった様子だ。

そんな平和な日々が続く中、四季は妙な噂が気になっていた。


『正体不明のコウモリ男』


と言う噂だ。
夜な夜な町を飛び回るコウモリのような翼を着けた男がいる。近くてその顔を見た時、暗くてよく見えなかったが顔が羽根を広げた蝙蝠の様に黄色く輝いていたと言う噂だ。
最近流れ始めた噂だが、妙にその特徴が一つの、自分の持つ力と関わりのあるヴィランをイメージさせる。それは、


『ナイトローグ』


だ。トランスチームガンもバットロストボトルも無いので、ナイトローグだったとしても自分のところからの流出ではない事は確かだったが、妙に引っかかるものを覚えた。

(仮面ライダービルドはこの世界には本物も特撮も存在していないはずなのに)

と言う疑問だった。そんな疑問も抱くのも当然だろう。
バットフルボトルは手持ちにも存在しているが、飽くまでそれはベストマッチ用のフルボトルで、成分は同じなのでトランスチームガンで使えば変身することも可能だろう。
だが、それだけだ。手元にあるフルボトルの有無は確認済みであるし、肝心の変身アイテムであるトランスチームガンは存在していない。
故に、この世界にはナイトローグが四季と関係なく誕生する事などあり得ない筈なのだ。

そんな訳で、今の段階では単にナイトローグに似ているだけのコスプレした悪魔という可能性もあるので今は放置しておく事を決めた。

もうすぐ調べるには丁度良い、グレモリー眷属が町を離れる時期が来てくれているのだから。
ナイトローグ(仮)の調査はその時期に合わせて行おうと考える。最悪の場合には危険な賭けだが、非常手段のハザードトリガーもある。









それから数日後、イッセー達オカ感メンバーが学園を休み始めた。
こっそりとイッセーにつけておいた蜘蛛型の監視メカでオカ研の情報は仕入れていたので四季の予想通り自体は動いてくれていると言って良いだろう。

実は蜘蛛型監視メカに着いては意外と簡単に作ることが出来た。流石は天才物理学者の能力、と言ったところだろう。武器製造だけでなく自力でガジェットを作れると言うのは有り難かった。一定時間の録画、録音を行なった後に帰ってくる簡単なものだが、逆に気付かれ難いだろう。

会話の内容によれば、オカ研の部室にリアスの婚約者の『ライザー・フェニックス』が現れ、リアスの兄の女王が持ってきた両家からの提案により、リアスの婚約解消を賭けたレーディングゲームの開催が10日後決まったのだが、

「ねえ、悪魔の流行って何年も続くの?」

「普通に人間並みとは思うけど、怠惰も悪魔の性質らしいからな」

「じゃあ、その分流行も長続きするのかも」

リアスの大学卒業まで結婚しないと言うのに何年も前から式場やドレスを選んでどうするのかと思う三人であった。

特に結婚式に於いて主役となる女性である詩乃と雫にしてみれば、そんなに早くドレスを決めても結婚をあげる頃には既に時代遅れになっていると言う意見だ。

「まあ、今も貴族制が続いていて、悪魔の駒の問題点の改善や、それに対する最低限の法改正もしない連中だ、人間の1日が連中の一年なんだろ」

四季のその一言で納得する二人だった。









リアス婚約解消を賭けたレーディングゲームの開催が決まった翌日。猶予期間の十日間の間、グレモリー家所有の人間界の山の中で特訓が行なわれる事となった。

非公式とは言え多くの魔王を始め貴族が観戦する中でのデビュー戦。しかも、相手は高い勝率を持ち間違い無く未経験者のデビュー戦には相応しくないカードだ。
練習試合でも無くリアスの結婚を賭けた試合だが、同時に勝利した場合に得る物は大きい。
格上の相手に対して騎士と戦車の二つも無く、僧侶の眷属も新たに入ったアーシア以外のもう一人は封印されていると言うハンデ戦。不利に不利を重ねた悪条件による試合だが、勝利できたのならリアスの夢への大きな第一歩となる。

それだけではない。魔王や貴族達からの賞賛と大きな評価と期待。まだ下級の彼女の眷属達の昇級の機会に、それに伴うそれぞれの望みを叶える機会を掴む可能性を得られる。

己のためだけで無く、眷属達の願いや望みのためにも負けられないと告げるリアス。特に、上級悪魔になり、自分の眷属を持つ事でハーレム王になると言う夢を持つイッセーは、

「って事は、このゲームに勝てば部長の結婚が無くなるだけじゃ無くて、オレが長年夢見た『ハーレム王』になるって言う願いにも近づけるんですね!?」

「ええ、その通りよイッセー。眷属の願いが叶うのは主人である私も望んでる事なの」

神を殺す可能性を秘めた力を持つイッセー。彼が今回のゲームにおける切り札となり得る存在だ。
神器は持つ者の想いによって力を発揮する。イッセーが勝利を望むのならば、レイナーレの時のように大きな力を発揮する事が出来るかもしれない。
神を殺す滅神具(ロンギヌス)の一角は最強の切り札となる。だからこそ、より強く勝利を望むであろう言葉を告げる。

「もし、貴方が今回のゲームで功績を残せたら……貴方のお願いを何でも叶えてあげるわ」

「な、なんでも? なんでもすっか!? い、よっしゃぁあっ! だったら尚のこと、あんなイケすかねえ金髪ホスト野郎に、部長を渡すわけにはいかねぇ!!! リアス部長、オレ、やって見せます! 今回のレーディングゲーム、部長の為に必ず勝って見せます!!!」

隣で可愛く膨れてるアーシアを他所にリアスからの発破に一人やる気を燃え上がらせていた。
リアス自身も勝てたとしたら一番活躍するのはイッセーだと思っているので彼の活躍を心から期待している。

(オレが勝ったら詩乃ちゃんや雫ちゃんも眷属に加えて貰ってオレが眷属を持てるようになったら、アーシアと一緒に交換して貰えば……)

自分が眷属を持てるようになればハーレムに加わって貰いたいと思ってた二人が同僚になった時の事を妄想している様子のイッセー。

(先輩悪魔として、手取り足取り、あんな事とかそんな事とかも出来るかも……。よっしゃ! あのホスト野郎だけじゃねえ! 四季の野郎にも絶対に負けられねえぜ!!)











さて、グレモリー眷属の居ない駒王町ではもう一つの時間が起こって居た。

「がっ!」

「君の百害しかない夢では無く、僕等の為にその命を使ってもらいましょうか」

廃墟に倒れる、この町にいるもう一人の魔王の妹であるソーナ・シトリーの兵士『匙 元士郎』の胸を踏みつける蝙蝠の怪人ナイトローグ。
蝙蝠の仮面の奥で怒りとも憎悪とも取れる感情を抱きながら冷酷に言葉を告げる。

「精々僕等の手駒として僕等の望む未来の為に活躍してください」


『リュウガ』


禍々しい声がナイトローグの取り出した時計のようなものが響くと、ナイトローグはそれを匙へと向けて落とす。

彼の中に消えて行ったそれはゆっくりと彼を変える。

「君は今日から、紛い物の仮面ライダー……リュウガです」

『あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』

アナザーライダーリュウガへと。 

 

九話目

イッセー達の特訓については放置する一方で四季はナイトローグ(仮)に対する調査で動き回って居た。

現在は町の管理はソーナ・シトリーが行なっているそうなので気をつける事には変わりないが、それでも以前よりは動きやすくなっている。

(それにしても、何でナイトローグなんだ?)

そんな疑問が沸く。トランスチームガンの他にもネビュラスチームガンが存在し、二つのスチームガンにはナイトローグの他にもブラッドスタークにブロスシリーズとカイザーシリーズが存在している。
元々トランスチームガンがネビュラスチームガンを元に開発されたものと考えれば、パワーアップの余地のあるカイザーやその発展系のブロスの方を選択することも出来たはずだ。

(まあ、コウモリ男を捕まえてから聞けば良いか)













「ちわー、契約に参りましたー」

とある廃墟に契約のチラシから呼び出されたのはソーナの眷属である匙。呼び出された場所の不気味さに身震いするも、自分を読んだであろう契約者に声を掛ける。

「た、助けて!」

そんな彼の言葉に答えるように一人の青年が助けを求めながら廃墟の中から飛び出してくる。

「ちょっ、一体何があったんですか!?」

「わ、分からない、友達と一緒に肝試しに来て……」

青年が言うには友人達と一緒に肝試しに廃墟に来て、その余興に契約のチラシを使って悪魔を呼び出そうとしたらしい。だが、その最中に怪人が現れて彼らを襲ったそうだ。

「分かりました、あなたはここに居てください」

そう言って青年をその場に残してカメレオンのオモチャを思わせる自身の神器を出現させ廃墟の中に入り込む。

町に入り込んだはぐれ悪魔かと考え、自分一人では拙いかと主人であるソーナにも連絡を入れ、応援を頼んだ時、ゆっくりと廃墟の中の光景を視界に入れる。

「あれ?」

廃墟の中には誰も居なかった。襲われたと言う人達も、現れたと言う怪物も、だ。

思わず惚けてしまいそうになりながらも周囲を注意しながら廃墟の中に入るが、拍子抜けするほど何も無い。思わず先ほど自分に助けを求めた青年の方を向いてすっかり警戒を解いた様子で問いかける。

「あの、だれも居ませんけど」

「そんな事はない」

匙の問いに青年はボトルの様なものを振りながら取り出した銃にそれを装填する。

『バット!』

「その怪物なら、ここに居るのだからね」

青年は眼鏡を上げながら引き金を引く。

「蒸血」

『ミストマッチ!』
『バット・バッ・バット… ファイヤー!』

青年は、その姿を異形のダークヒーローへと変える。

「な、何なんだよ、あんたは!?」

「ぼくは、ナイトローグ。そう名乗っておきましょう。今は、ね」

青年……否、ナイトローグの言葉に疑問を抱く事なく目の前の相手の放つ威圧感に声も出なくなってしまう。

「ふっ!」

「がっ!」

一瞬で距離を詰めたナイトローグの拳が匙の下腹部に突き刺さり、焼けた鉄を飲まされた様な痛みと嘔吐感に言葉を失う。

「この程度ですか」

黄色く輝くバイザーを通して膝をつく匙を見下ろしながら、ナイトローグは呆れた様に呟く。
先ほどまでは明らかに荒事、喧嘩とさえ無縁そうな青年だったとは思えないほどの拳。

(こ、この、野郎……。見てろ……)

油断して居るであろうナイトローグの死角から自身の神器である『黒い龍脈(アブソーション・ライン)』を伸ばす。相手に巻きつけ力を奪う己の神器の力なら油断して居る相手になら通用するはずと、反撃の機会を伺う匙だが。

「がぁ!」

それよりも先に、ナイトローグは彼の神器ごと手を踏み砕く様に匙の手に足を踏み下ろし踏み躙る。

「油断して居ると思いましたか? 君の神器(セイクリッド・ギア)黒い龍脈(アブソーション・ライン)。通常のロープとしても扱え、最大の特徴は相手を拘束し力を奪うテクニックタイプの神器。現状では、ぼくに突き刺して血液でも奪えば貧血で戦闘不能にする事も出来る、格上相手にも通用する危険な武器」

神器ごと踏みにじる足に力を込めて更に言葉を続けていく。

「ある意味においては、バカ正直に正面からしか戦えない脳筋な二天龍の神器よりも強力と言えるでしょうね」

スラスラと自分の持って居る神器の事を、自分には思いつかなかった応用的な使い方も交えて話して行くナイトローグに、匙は得体の知れない不気味さを覚える。

「成長すれば赤龍帝と白龍皇の能力の一部の合わせ技の様な使い方も出来るでしょうね。今の時点ではできない事ですが」

そこまで話すと思い切り匙の腹を蹴り上げて地面に倒すと、そのまま動かない様に胸の部分を踏みつけて動きを止める。

手際の良い痛めつけ方に咳込む匙を一瞥すると、

「な、何なんだよ、お前は?」

「聞けば何でも答えてくれるとでも? ぼくは君の母親では有りませんよ。まあ、特別に答えて上げましょう」

彼の言葉にそう答えた後、『知られた所で困る事は有りませんし』と呟き、一呼吸起き、

禍の団(カオス・ブリゲート)、改変派の一人、ナイトローグ。それ以上でも以下でも有りませんよ。今は、ね」

そう言うと何処からか時計の様なものを取り出し、それを匙へと向ける。

「本当に、君と君の主人の夢は害しかない」

「て、テメェ!」

突然のナイトローグの呟きに匙が激昂するが当のナイトローグは言葉を続けていく。

「だから、そんな百害しかない夢では無く、この先君が無駄に削る事になる命を、ぼく達のために使ってもらいましょう」

そう呟いたナイトローグは手の中にある時計の様なもののスイッチを押す。



『リュウガ』



禍々しい声が時計から響くとナイトローグはそれを匙へと向かって落とす。
匙へと向かって落とされたそれは彼の中へと消えて行く。

「がぁ! ああああああああああああああああああああああああああああぁ!」

全身が何かに作り変えられる不快感に絶叫を上げる匙。

「オ、オレに何をした!?」

「喜びなさい。今日から君は紛い物の、仮面ライダーリュウガです」

匙の言葉を無視して嘲笑する様な口調でそう告げると、蹴り飛ばす様に匙の体を遠ざける。

「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

絶叫と共に立ち上がった匙はその姿を黒い龍の意匠を持った怪人《アナザーライダーリュウガ》へとその姿を変えていた。

「まあ、所詮は紛い物、本物はおろか原典(オリジナル)のアナザーリュウガ以下の性能しかないでしょうが、仮面ライダーリュウガも仮面ライダー龍騎もいないこの世界なら、その程度でも十分でしょうね」

(オ、オレに何をしやがった!?)

自由に動かせない怪物へと変わった体、その中で唯一自由になる意識の中でナイトローグへと絶叫する。

「さて、アナザーリュウガ、君にはぼくの手駒として動いてもらいます。彼らでも君は止められないと思いますが」

ナイトローグが言葉を続けようとした瞬間、シルクハットの様なマークが描かれた一枚の真っ赤なカードが投げつけられる。

「っ!?」

「そこまでだ!」

次の瞬間、ナイトローグの目の前でカードが爆発し赤い煙幕がナイトローグの視界を奪う。次の瞬間、赤い怪盗衣装に身を包んだ四季がナイトローグの前に現れる。

「まさか、本当にナイトローグがいるなんてな。しかも、ナイトローグがアナザーライダーまで作るなんて、予想外すぎるだろう」

内心で、そこはスマッシュにしとけと言うツッコミを入れながら正体隠蔽用の仮面の奥からナイトローグとアナザーリュウガ を睨みつける。

「此れは此れは、中々に奇術めいたアイテムを開発した様子ですね。それにしても、お早いお着きですね、快盗さん。それとも、仮面ライダーとお呼びした方が宜しいですか?」

「好きに呼べ。そんな事より、なんでお前はナイトローグの力を使って、アナザーライダーを作れる?」

目の前にいる相手は自分の同類なのかと言う疑問が沸く。だが、

「いえ、ぼくは貴方の同類では有りませんよ」

そんな四季の考えを読んだ様に、ナイトローグは四季の問いに返答してみせる。
だとしたら、余計に疑問は深まる。何故ナイトローグの力を使えるのか? 何故アナザーライダーを作り出せるのか? と。

「さて、ビルドのシステムを考えると万が一のことが有りますからね。アナザーリュウガ !」

ナイトローグが指示を出すとアナザーリュウガは廃工場の中の鏡へと走り出す。

「っ!? 待て!」

「そうはさせませんよ」

その行動の意味を理解していた四季はビルドドライバーを装着して、アナザーリュウガを止めようとするが、それを妨害するためにナイトローグは四季の足元へとトランスチームガンを撃つ。

「っ!?」

ナイトローグの思惑通り、足元への銃撃に四季は思わず足を止めてしまう。

「まずい!」

その一瞬の隙にナイトローグの指示に従ったアナザーリュウガは鏡へと飛び込む。いや、鏡を介して己のホームグラウンドであるミラーワールドへと姿を消していった。

「安心してください、彼もアナザーリュウガである内はミラーモンスターと同様にミラーワールドで無制限での活動は可能です」

匙が変身したアナザーリュウガもミラーワールドの性質で消滅することはないと告げるナイトローグ。

「さて、ぼくも貴方と敵対する理由はないので、この辺で退かせて貰いたいのですが」

「させると思うか?」

両手にラビットとタンクのフルボトルを持ってビルドに変身しようとする四季だが、ナイトローグはそんな彼に構わず言葉を続ける。

「ああ、実は彼は先ほどぼくが彼を誘き寄せる為の嘘で、はぐれ悪魔がいると推測して主人達に応援を頼んだ様子ですよ」

そう告げながら『くっくく』と笑いながら、

「中々自分の実力や能力を冷静に判断できているとは思いませんか? 先ずは味方からの応援を要請すると言う判断は」

「それで、ソーナ・シトリーとその眷属が来るから、悪魔側に接触したくないオレにとって、お前と戦ったら損だとでも言いたいのか?」

「そう言うことです。それに長々と話していたおかげで、既に時間切れの様子です」

ナイトローグと四季が言葉を交わしている間にシトリーの魔法陣が現れる。

「どうしますか?」

「良いだろう。次に会った時は容赦しない」

「賢明な判断に感謝します、天地四季さん」

名前まで知っている時点で本当に、ナイトローグは何者なのかと疑問に思う。間違いなく原典のナイトローグとは別の何者か。それだけは先ほどの接触で分かったが、情報はそれだけだ。

四季に背を向けて無防備に立ち去っていくナイトローグを一瞥すると、蜘蛛型監視メカを一つ魔法陣の近くに投げて四季もまた廃工場を後にする。

「匙!」

ソーナの声と共に、ナイトローグと四季の二人が去った後の廃工場にソーナとその眷属達が現れるが、そこには争った形跡は有ったものの誰の姿も無かった。
匙の無事は確認されないもののはぐれ悪魔が存在した形跡もない為、しばらくの間匙は行方不明とされる事になる。

これが四季とナイトローグ達との初会合だった。 

 

十話目

グレモリーの婚約騒動に合わせて起こったナイトローグとナイトローグの生み出したアナザーリュウガと言う、本来ならば存在しない上にあり得ない組み合わせと出会った夜が終わった。

「厄介だな」

現状を考え、手持ちのフルボトルを一つ一つ手に取りながらそう呟いてしまう四季。

残念ながら龍騎フォームになれるフルボトルは手元には無い。オレンジやライダーカード、モモタロスのフルボトルは有ってもだ。
ナイトローグは特殊なベストマッチ、レジェンドミックスと呼ばれるベストマッチを警戒していたが、事実上四季にはアナザーリュウガ を倒す術は無い。

「あとは、これか?」

次に考えた方法はダイヤルファイターだ。
原典のダイヤルファイターはギャングラーからルパンコレクションを盗む為に使っていたことから、その力の応用でアナザーリュウガのウォッチを取り出せないかと考えた。
全く異質な力なので不可能と断じる事が出来ないだけで可能性があるかは分からない。

「つまり、完全にお手上げってわけね?」

「そうなる」

ナデシコC内の会議室のテーブルの上に広げられたフルボトルを眺めながら詩乃の言葉にそう返す。

そもそも、アナザーライダーを倒せるのは同じ力を持った仮面ライダーだけ。
例外なのがジオウⅡやゲイツリバイブ、ジオウトリニティなどの一部のライダーだけだ。それに、ジオウやゲイツはライドウォッチの力を借りれば倒せるのだから、ライドウォッチを手に入れさえすれば良いと言える。

だが、四季が変身できるライダーはビルドのみ。レジェンドミックスが出来ない以上対抗手段など無いに等しい。

だが、何も収穫がなかった訳ではない。

「ナイトローグもオレの手の内を完全に把握している訳じゃないという事か」

奴は四季にアナザーリュウガに対する対抗策が完全にない事を知らず、ビルドのレジェンドのミックスの事を把握して居た。
そもそも、レジェンドミックスはまだ一度も使って居なかった筈なのに、だ。
其れだけならば完全に手の内を把握されていることになるが、同時に手札には存在しないレジェンドミックスを警戒して居たと言う事実。

「どっちにしても、アナザーリュウガを倒すための手札がないのが厄介だな」

考えるまでもなく、ビルドでアナザーライダーを倒す為の唯一の可能性はレジェンドミックスだけで、其れがない以上は完全に倒すことは出来ない。

ならば、後はダメージを与えて強制的に変身解除させてアナザーライドウォッチを排出させるしか手はない。
そして、再起動される前に回収してしまうだけだ。

「と言うわけで、アナザーリュウガの対処は基本、叩きのめしてライドウォッチの回収で」

「ええ」

「うん」

四季の言葉に賛同する詩乃と雫の2人。2人にはアナザーライダーに対する知識が無いので四季の判断に対する意見はない。

「っと、念の為にあいつの主人に会ったらこれを渡しておいてやるか」

匙がアナザーリュウガに変えられる瞬間の映像を見せれば有る程度納得してくれるだろうと考える。
まあ、敵の狙いは分からないので飽くまで、会ったら、だ。態々自分達から会いに行く理由はない。

「それじゃあ、今回は手分けしてアナザーリュウガ、若しくはナイトローグ探しだ。どちらかを見つけたらオレに連絡をくれ」

メインの戦力はビルドで有る自分と割り切って詩乃と雫の2人と、自分1人という組み合わせになる。
流石に昼間から怪盗服では目立つので私服での行動だが。

「お兄さんと2人きりでも良かったのに、残念」

「いや、遊びに行くんじゃないから」

雫の言葉にそう返す四季。

「デートという雰囲気じゃないけど、2人きりが良かったって言うのは私も同意見よ」

「一応、戦力的に考えた訳だから」

単独で戦えるビルドで有る自分が1人での行動を選んだのだ、他意はない。














詩乃と雫の2人と別れて家を出ると最初に学園へと足を向ける。
相手は態々匙を狙ったのだ。単にドラグブラッカーとヴリトラ、黒いドラゴン繋がりで選んだのでなければ、生徒会に属するソーナ達が狙いと考えるのが合理的だと判断したのだ。

ナイトローグはシトリー眷属が狙いだから匙を狙い、彼を彼に見合ったアナザーライダーであるアナザーリュウガに変えた。
そう推理していた。

そんな訳で先ずは生徒会の様子を見に行こうと誰かが居るであろう可能性の高い学園に足を運んだのだが、全員が出払っている様子で見事に無駄足を踏んでしまった。

「こっちは無駄足だったみたいだな」

恐らく行方不明になった匙や、彼から連絡のあったはぐれ悪魔探し(実際はいないが)に出ているのだろう。

(アナザーリュウガの能力を考えると各個撃破のチャンスだな)

ミラーワールドの移動を自在に行えるアナザーリュウガはアナザーライダーであると同時に新種のミラーモンスターと言ったところだろう。
自我の有無は分からないが、ナイトローグのコントロール下に有ると考えれば、鏡面から自在に襲撃可能の能力と相まって、現状ではバラバラに動いているであろうシトリー眷属を各個撃破するのには最適なアナザーライダーだ。

逆に考えれば生徒会のメンバーを探せばアナザーリュウガもそこに現れるだろうが、別行動中の自分達よりも多いのだから、全員はフォローしきれない。


『ここに現れたと言うことは、流石に私達の狙いの推測は出来ていたと言う事ですか?』


「っ!?」

「先日振りですね、天地四季さん」

何処からか聞こえる声。その声に反応して其方を振り向くと、そこにはナイトローグの姿があった。

「ナイトローグ!?」

素早く引き抜いたVSチェンジャーをナイトローグへと向ける。

「残念ながら、私には君と戦う意思は有りませんよ」

「どう言う意味だ?」

「言葉どおりですよ」

戦う意思が無いと言われて『はい、そうですか』などと納得出来る相手では無い。

「今回の狙いは消し易いソーナ・シトリーとその眷属達とでも言っておけば安心していただけますか?」

何一つ安心できない。そんな言葉を呑み込んで四季はVSチェンジャーを突き付けながらナイトローグを無言で睨みつける。

「下手に赤龍帝を覚醒させても面倒ですからね。迂闊に刺激して亜種になられるよりも正当に禁手(バランス・ブレイク)してくれた直後に手を出した方が始末した方が、寧ろ始末し易いんですよ」

「何で態々そんな事を教えてくれるんだ?」

「君に信用してもらうためですね。私の目的は悪魔でリアス・グレモリーと赤龍帝とソーナ・シトリー、及びその眷属達。人間側で有る君達と敵対する意思は無いと」

そう言って優雅とも言える仕草で一礼してみせるナイトローグ。

「ですが、君達が今回の様に私達の手駒と戦って怪我をするのは、其方の責任ですよ」

「そうかよ」

引き金から手を離してVSチェンジャーを下ろすとナイトローグの姿が消える。
敵対の意思は無いと言う為だけに現れたのかは疑問だが、今学園にはリアス・グレモリーのもう1人の僧侶がいたはずだ。
狙いは其方かとも思ったが学園に戦闘があった様子はない。……時間停止能力があるとは言え、ナイトローグなら簡単に始末できるだろうが、流石に旧校舎にくらい戦闘痕が残っていても良いだろう。

其方の様子も確認するべきかと考えていると、ビルドフォンの着信音が鳴る。

「詩乃か?」

『ううん、私』

ディスプレイの番号から詩乃かと思ったが、聞こえてきたのは雫の声。

『そんな事より、今こっちに』

「アナザーライダーか?」

『うん。生徒会の人達が襲われてたから助けたんだけど……』

「意識は?」

『ある』

その言葉で察した。アナザーリュウガに襲われているところを見つけて、とっさに助けに入ったが、意識があるので変身できないのだと。目の前で変身したら認識阻害効果も意味はない。

「場所は?」

雫から場所を聞くとそのまま全身を強化。ライオンフルボトルを取り出そうとするが、バイクを使うよりも気によって強化した上で最短ルートを言った方が早いと判断する。
塀から屋根、屋根から電柱へと飛び移ると電柱の上を飛び移って一直線に伝えられた場所へと急ぐ。















(どうしろってのよ!?)

思わずそう思ってしまう詩乃。はっきり言って、アナザーリュウガの能力は相打ち覚悟の上で戦うしかない厄介なものがある。
仮面ライダー龍騎、仮面ライダーリュウガ共有のドラグクローを模したであろうドラゴン状の腕とドラグセイバーを模したであろう剣状の腕による攻撃はまだ良い。
元々の変身者が変身して己の意思で扱っていたアナザーライダーという、龍騎系ライダー三強の一角という実力は変身者が違うために考慮する必要はない。

だが、アナザーリュウガとしての能力である攻撃の反射だけは厄介なのだ。
劇中でも圧倒的なスペックの高さによる理由でジオウⅡの攻撃は跳ね返せなかったが、それ以外の攻撃は全て反射していた。ゲイツが相打ちを覚悟して倒すと言う選択を選ぶほどに危険な相手だ。
そのために2人は四季から見つけたら牽制に留めて絶対に攻撃を当てるなとも言われていた。

少なくとも生身で反射を受けるのは当たりどころが悪ければ命に関わる。

ルパンレンジャーへの変身は雫が治療している生徒会メンバーでソーナの眷属の2人、戦車である『由良翼紗』と騎士の『巡巴柄』の二人が大怪我を負ったものの意識がある為に出来ない。
その為、攻撃能力のある詩乃は攻撃を当てる訳には行かないのだ。

「このっ」

牽制のためとはいえ当てられない攻撃で確実にアナザーリュウガの動きを止めているのは与えられた技だけでなく、彼女自身の射撃の技術によるものだろう。

だが、攻撃を当てずに相手の動きを止めるなどと言う芸当を長時間繰り返しているのだ、何れ綻びは出る。


だが、


「詩乃っ! 雫っ!」


真上から四季の声が響くと、アナザーリュウガの頭に四季の掌打が叩きつけられる。
それによって一瞬頭部への打撃によるダメージからアナザーリュウガの動きが止まり、その隙に四季は詩乃とアナザーリュウガの間に立つ。

次の瞬間、龍の顔を象った紋章らしきものが現れ、そこに映った四季の鏡像が先ほどの本人と同じ動きで四季へと襲い掛かる。

「ぐっ!」

能力を知っている以上予想はしていたので、それを防御する事には成功した。
鏡像での反射が避けれないのなら身体能力の強化による防御、それならばうまく防げるかと考え攻撃が直撃した後から行なっていたのだ。

「うまく行ったな」

「風よ、お願い」

同時に雫の声が響くと痛みが消えていく。回復能力のある雫の存在を考えれば反射能力も回復でダメージをゼロにすれば良いと考えたのだが、うまく行った様子だ。

(そう何度も試したく無い手だけどな)

流石にアナザーリュウガの防御力を上回るダメージを与えられ無い代わりに選んだ苦肉の策だが対処療法的な手段で、ライダーキックも跳ね返してくる原典の基礎スペックを考えると根本的な解決にすらなっていない。

「四季、大丈夫なの?」

「取り敢えず、何度も試したく無いけど、一応は大丈夫」

下手したら自分の攻撃が雫の回復力を上回ってもアウトな上に、そんな攻撃では絶対にアナザーリュウガの防御力は上回れ無い。

「詩乃、お前はそのまま倒れてる二人と雫を守っててくれ」

「それは良いけど、何をする気なの?」

「かなり危険な賭け(ギャンブル)

そう伝えると地面を踏み砕くほどの震脚でアナザーリュウガに接近し、

「破ぁ!」

掌打の乱撃をアナザーリュウガへと浴びせる。少なくとも、それが変身でき無いのだと現状では四季の使える最強の徒手空拳技《陽》の技。
アナザーリュウガの体勢が崩れた瞬間、気を最大限まで高めた一撃を放つ、

「八雲っ!」

八重の雲のごとく神速の乱撃を浴びせ最大の一撃でトドメを刺す技、八雲。

だが、直ぐにアナザーリュウガの真横に鏡像が現れ四季へと襲いかかる。

「っ!」

技の直後で無防備なところに鏡像の己が襲いかかる。先程のアナザーリュウガと同様に神速の掌打の嵐が四季へと襲いかかる。

「お兄さんっ! 守護を!」

敢えて自分の技に吹き飛ばされ様とするが鏡像も同じように付いてくる。だが、最後の一撃が当たる前に雫の防御技が間に合った。

「がはぁっ!」

だが、それでもダメージは大きい。吹き飛ばされて近くにあった木に叩き付けられる。
意識が飛びそうな痛みに、流石は自分の現時点の最高の技だと思ってしまう。

「がぁ、がぁ……か、会長……」

相手の動きを警戒していると、一瞬だけアナザーリュウガの姿が匙の物に変わり、そのまま近くにあった鏡面からミラーワールドへと退散していく。

「なんとか、助かった、な」

そのアナザーリュウガの姿を見て気が緩んだのがいけなかったのか、そのまま意識を失ってしまう。 

 

十一話目

(っ……くっ、自分の技で気絶するなんて、我ながら情け無い)

それでも考えてみれば技を放った直後に同じ技を打ち込まれるのだから、技を放った直後の隙が大きい大技であればあるほど自分の受けるダメージは大きいのも当然だ。

(ホント、あれを倒したって、どれだけチートなんだよ、ジオウⅡって?)

ジオウⅡ、アナザーリュウガを圧倒できる基礎能力に未来予知に時間操作に未来創造、しかも、これでまだ上のフォームのある中間フォームと言うチート振りである。

まあ、原典のアナザーリュウガはアナザーライダーでありながら、本物の仮面ライダーリュウガとの相違点は一つ、本物ではない事だけだ。素のスペックもあの時点のアナザーライダー達の中では最強と言って良いだろう(アナザーオーズも変身者は仮面ライダーだった者だが、そちらは歴史が失われて経験を失っている上にオーズではなくゲンムの変身者である)

ジクウドライバー等のジオウの装備がガチャの中に入ってないかなと思いつつも、現在の手札でのアナザーリュウガ撃退の手段へと思考を向ける。

(下手な大技じゃ回復が間に合わないだけか。やっぱり、一番必要なのは……奴の、アナザーリュウガの防御を超える攻撃力)

最後の手段としてハザードトリガーの方が浮かぶ。
暴走の危険があるとはいえハザードはビルドの中間フォームの中ではスパークリングよりも強力な力を持ったフォームだ。それを使えばアナザーリュウガの防御力を上回れるかもしれない。
飽く迄仮定の域を出て居ない話だが、手持ちの札でアナザーリュウガに対抗できるのは此れだけだろう。

理想を言えば、龍騎系ライダーのカードデッキを入手して確実にアナザーリュウガを倒せる力が欲しいが、それは現時点では無理だろう。

「(それよりも今は)ここは?」

ベッドの上で体を起こし周囲を見回す。明らかに駒王学園の保健室だ。
痛みはない為に雫が治癒してくれたのだろうという事がわかる。
最初の不意打ちから終始自分からしか攻撃してない為に自分の攻撃を跳ね返されただけで済んでいるが、はっきり言って生身でアナザーライダーの攻撃など受けたくない。

(そう言えば、二人は?)

詩乃と雫の姿が見えない事を疑問に思いながらベッドから出ようとした時、保健室のドアが開くと、

「四季!」
「お兄さん!」

詩乃と雫の二人が保健室の中に飛び込んでくる。

「詩乃、雫。二人とも怪我は」

「私達なら大丈夫よ。それより、私達のことより今は自分の心配をしなさいよ!」

「オレも大丈夫。反射される事が分かってたから、無意識に加減していたんだと思う」

そう、反射される事が分かっていたから、生身では変身解除に繋がらないと分かっていたからこそ、無意識のうちに加減してしまっていた。
だからこうして雫の回復の術の効果範囲のダメージで留められたのだろう。
それでも、心配したのだと言う表情で詩乃からは睨まれている。

「天地さん、気が付いたようで何よりです」

二人に続いて新しい人物が入ってくる。この学園の生徒会長の『支取 蒼那(しとり そうな)』、本名はソーナ・シトリー。
現魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタンの妹である駒王学園のもう一人の上級悪魔だ。

「この度は貴方達には私の眷属の二人を助けていただいた上に、匙の事も……」

彼女はそう言って頭を下げる。ふと詩乃と雫の方に視線を向けるとどこか申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

「あの、あの映像はどちらで?」

「ルパンレッドと名乗ってた自称怪盗から渡されたんだ。オレも映像を見せてもらったけど、匙だっけ? 生徒会役員で、コウモリ男に変な時計みたいなものを埋め込まれて、あの黒い怪物に変えられたのは」

ナイトローグやアナザーリュウガの名前を出さずにそう問いかける。

「ええ、先日から行方不明になって居ます。これであの子の無事は確認できましたが」

「このままだと、はぐれ悪魔にされてしまう。ですか?」

「はい」

仮面ライダーを歪めた怪人の姿。しかも、黒いドラゴンなどはぐれ悪魔になった匙と言われても納得できるだろう。

「えーと、ルパンレッドから強いダメージを受ければ体内の時計のような物を排除されて元に戻るとか言っていたから」

「ですが、そこの二人から、今の匙には匙の神器(セイクリッド・ギア)にも無かった能力があると」

アナザーリュウガの反射能力がある為に迂闊に攻撃できないと言いたいことはよく分かる。
反射能力と鏡面を介しての神出鬼没な移動能力と、下手したら魔王の眷属を動かしても被害は出るような能力だ。

火力に劣るソーナの眷属たちには打つ手がないのが現状だろう。まあ、リアスの眷属も含めて当たったとしても勝ち目はないだろうが。

「だから、それを知っても何もできない。そう言うことか?」

「はい。ですが、このまま匙の事を放ってはおけません。早急にあの子を助けないといけませんから」

そう言った後、ソーナは四季達へと一礼し、

「後日、貴方達の力の事も詳しく聞きに行くと思いますが」

「オッケー、話せる事なら話そう」

そんな会話を交わすとソーナは保健室を出て行く。後に残された四季達は、

「いいの?」

詩乃が四季へと問いかけてくる。色々な意味の篭った『いいの?』と言う問いだろう。

「オレ達の力についてなら、な」

彼女の問いに言外にそれ以外の事は黙っていると告げる。飽く迄今回見せた力についてなら、見せてしまった以上は話したところで問題はない。
まあ、四季の力については伏せておく部分は多いが。

「とは言え、現状だとオレ達にもアナザーリュウガに対抗する手段は無いんだよな」

「もう絶対にあんな無茶はやらないでよ」

「うん、あれはもうダメ」

「分かってる。流石に相打ち前提での作戦はもうやらない」

二人に泣きそうな目で睨まれればもう無茶は出来ない。そんな事を考えていると四季のビルドフォンにメールの着信がなる。

「っ!? これは……」



『ドラゴンナイト系ライダー確定チケット一枚配布』



そんなタイトルのメールに思わず黙り込み四季。そんな四季の様子を不思議に思ったのか、詩乃と雫もビルドフォンの画面を覗き込む。

「「ドラゴンナイト?」」

「設定を変えてリメイクされた海外版の仮面ライダー龍騎のタイトルだけど……」

変身システムは変わらない。いや、龍騎の並行世界の存在こそがドラゴンナイトだとすれば、それでアナザーリュウガに対抗できるのかと言う疑問はあるが、一応の希望は出来た。

「賭ける価値はあるな」

外れたところで可哀想だが、匙がはぐれ悪魔になるだけである。非常な選択だがこのチケットから出てきたものを見なかったことにして対抗手段なしとして。
主にインサイザー(シザース)とかセイレーン(ファム)とか。
最弱の蟹ではリュウガには勝てず、女装する羽目になるセイレーンは精神的に耐えられない上に詩乃や雫に正面からの戦闘を任せるには気がひけるし、ファムの死因はそもそもリュウガなので相手が悪すぎる。

「しかも、この場で引けるか」

態々家に帰らずにメールに添付された画像に触れるだけで引くことが出来る様子だ。
内心外れたら精神的に耐えられそうもないので、このまま見なかったことにしたい。

「引かないの、それ?」

「13分の1で最弱を引いた場合の絶望感と、オリジナルのリュウガが直接の死因になったライダーを引く可能性を考えると、ちょっと悩む」

「それは、確かに悩むわね」

使っても負ける可能性が高すぎるものがあると言われると流石に四季の態度も納得してしまう詩乃さんでした。

ラスやウイングナイト、ドラゴンナイトなら対抗も容易いだろうが、逆に弱い部類のライダーを引き当てたら勝ち目など無い。アナザーだがリュウガはリュウガなのだ。

「じゃあ、3人でやる?」

不安を感じていると、そんな意見を上げるのは雫だった。引かないで放置もあれなので彼女の意見を採用。メールに添付されているチケットを使うと書かれた画像に三人で触れる。





ビルドフォンから光の球体が現れメールに添付されていた画像が消える。ゆっくりとその光に触れると、四季の手の中にカードデッキが現れる。

その表面に書かれていたライダークラスタに思わず笑みを浮かべる。間違いなくアタリを引き当てることができた。

「オレ達が幸運なのか、それとも匙が幸運なのかは分からないけど、これなら行ける」

手にした力に笑みを浮かべる。対抗できるだけのカードを手にしたのなら勝ち目はある。
一人でわずかに及ばないのなら、三人でなら超えられる。

「リスクは悪魔側に目を付けられる。態々怪盗姿で正体を隠してた意味はなくなる」

「でも、それは今更じゃ無い?」

四季の言葉に既にソーナの眷属の二人を助けた時点で力の事は知られている。見捨てなかった時点で今更だ。

「正体を隠すのにも意味はあると思う」

「なら、怪盗と素顔。バトルスタイルは変えるのは丁度良いか」

続いて雫の言葉に四季は答える。





三人の考えは最初から決まっている。
ここまで関わった以上は、助けないなどという選択肢など、有り得ない!









頷きあうと三人でハイタッチを決める。

「行こう」

「ええ」

「うん」


















「ああああああああああぁ!!!」

絶叫を上げて暴れ回るアナザーリュウガ。アナザーリュウガに変えた匙へとナイトローグが下した最優先の命令は一つ。眷属の仲間と主人を始末しろと言うもの。
最初は自分の意思に反して命令を実行しようとする体に抵抗していたものの、アナザーリュウガと言う力の濁流に匙と言う意識は時間と共に飲み込まれていく。

「さ、匙……」

「ガアァ!」

ソーナ達の警戒を嘲笑うようにミラーワールドの中を悠々と移動しながら再度襲撃してきたアナザーリュウガ。
今度は四季が気絶している内に詩乃からアナザーリュウガに変えられた匙が襲撃してくる危険性を伝えられていた事で動ける生徒会役員の眷属全員で揃っていたと言うのに成すすべなく全員が地に伏していた。

反射能力で自分達の攻撃は撃ち返される上に相手の戦闘力は高い。しかも、何者かに操られている自分達の仲間と言う悪条件が重なっているのだ。

全員がアナザーリュウガの攻撃で一方的にボロボロにされたわけでは無い、自分達の攻撃を撃ち返されて負った傷もある。
アナザーリュウガの能力に似た能力を持った神器(セイクリッド・ギア)を宿した眷属の女王で生徒会副会長の椿姫、彼女が一番傷が酷い。

「匙、目を覚まして下さい!」

「ガァア!」

ソーナからの説得の言葉も匙を支配しているアナザーリュウガの力には届かない。右腕のドラゴンを模した手甲から青い炎を撃ち出す。
心の中で匙の意思はやめろと絶叫するが、アナザーリュウガは止まらない。ドラグクローを模した手甲から撃ち出された青い炎がソーナと倒れた彼女の眷属を飲み込もうとするが、



「精霊の燃える盾よ、守護を!」



雫の声と共に現れた守護の壁が青い炎の余波を防ぐ。爆発音と共に上空を泳ぐ一匹の東洋龍の放つ炎がアナザーリュウガの炎を相殺させたのだ。

「間に合ったか」

ソーナ達に駆け寄る四季と詩乃と雫の三人。

「天地くん、朝田さん、北山さん、貴方達どうしてここに?」

「話は後。今は匙を止める事が先決だ」

そう言って取り出したのは先ほど手に入れたカードデッキ。それを翳すと腰にベルトが出現する。

「詩乃、雫。会長達のことは任せた」

「うん、任せて」

「そっちは任せたわよ」

「ああ」

雫がソーナ達の治癒をしているのでもう大丈夫だろう。後はするべきことは一つ。

「KAMEN RIDER!」

そう叫んでベルトへと黒いドラゴンのエンブレムの刻まれた黒いカードデッキを装填すると、四季の姿がアナザーリュウガと似た姿に変わる。





『仮面ライダーオニキス』





ドラゴンナイトに登場するリュウガを元にして誕生した十三人目の仮面ライダーであり、原典の龍騎では主人公の影として登場したリュウガとは対照的に、主人公が変身したドラゴンナイトの後継機とも言える存在だ。

方やダークライダーのリュウガを歪めた存在であるアナザーリュウガ。
方や別の世界でリュウガを元に誕生した本物の仮面ライダーとして生まれて仮面ライダーとして戦ったオニキス。

奇しくも仮面ライダーリュウガから派生して誕生したアナザーライダーと仮面ライダーが対峙した瞬間である。 

 

十二話目

『SWORD VENT』

カードデッキからカードを抜き出しブラックドラグバイザーへとカードを装填、ドラグセイバーを召喚する。

「はぁ!」

「ガァ!」

互いにドラグセイバーとドラグセイバーを模した剣を切り結ぶ。だが、力任せに振るうだけのアナザーリュウガの剣をオニキスは斬りはらい、そのまま斬撃を浴びせ、蹴り飛ばすことで距離を取る。

地面を転がり立ち上がるアナザーリュウガの横にリュウガのエンブレムの形をしたオニキスを写した鏡面が現れるが、反射する事なく砕け散る。

「反射されない?」

「今の四季の攻撃が強過ぎて反射できないのね」

反射能力が不発に終わった事に驚くソーナを他所に、詩乃は四季の狙いが当たっていたことに納得する。

これで能力による不利は無くなった。

「グゥ……」

不利を感じて逃げようと鏡面にむかって走るアナザーリュウガだが、逆に鏡面からはじき出される。

「グガァ!」

オニキスのアドベントビースト『ドラグブラッカー』が鏡面に陣取っている。
龍騎はミラーワールドで、ドラゴンナイトは異世界ベンタラで戦うのだが、そのどちらも鏡面を移動に利用している。
その二種のライダーの特性を利用し、ベンタラへのゲートに変えた鏡面からアナザーリュウガを逃さない為にドラグブラッカーを配置していた。

「逃走経路は潰した。後はお前を倒すだけだ」

「ガァア!」

その存在を歪められたアナザーリュウガを仮面ライダーとして人々をオニキスの力を持って倒す。元がダークライダーなだけに在り方はアナザーリュウガの方がリュウガに近いのだろうと思うと内心苦笑してしまう。


『STRIKE VENT』


オニキスの腕にブラックドラグクローが装着されるとアナザーリュウガもドラグブラッカーを模した片腕を向けてパンチモーションを取る。

「はぁ!」

「ガァ!」

ドラゴンの咆哮の様な音が二つ同時に重なり、同時に打ち出された炎が両者の中央でぶつかり合う。

「っ!?」

押し返されては居ないが、二つの炎が拮抗している為にオニキスもまた動けない。

「詩乃っ、頼んだ!」

「ええ」

オニキスの言葉に応えるのは詩乃。弓に矢を番えアナザーリュウガを狙う。
技の記憶の中から使うべき技を選択する。

「任せて、絶対に外さないから」

体内の気を鏃へと集め、矢を放つ。長距離を射抜く『通し矢』。

「ガァッ!?」

アナザーリュウガに直撃した矢によって一瞬だけ拮抗が崩れる。
アナザーリュウガの能力で鏡が出現し、詩乃の矢が反射される前に直撃するオニキスの炎によって砕け散る。

「オラっ!」

その隙を逃さずアナザーリュウガに肉薄するとブラックドラグクローを装着した腕でパンチを叩きつける。

「ガァッ!」

その攻撃でヨロヨロと後退させられたアナザーリュウガはオニキスを近付けさせまいと滅茶苦茶に剣を振りながらオニキスから離れようとする。

一瞬動きを止めて後退させられたらオニキスを他所にドラグブラッカーの頭を模した腕から何かが伸びる。
アナザーライダーに変えられた匙の持って居た神器(セイクリッド・ギア)黒い龍脈(アブソーション・ライン)がアナザーリュウガに変えられた事で変化したのだろう。
力に支配されて暴れている状況では細かい使い方はできなかったのだろうが、それでも大味な応用は出来る。
単純に遠くに巻きつけての逃走などの応用技は可能だという事だろう。

「悪いけど、逃さないわよ」

その狙いに気付いた詩乃が巻き付けた先にある枝を狙い撃つ。神器の側は壊さなくても、それ以外の物ならば壊す事は簡単に出来る。

黒い龍脈(アブソーション・ライン)が巻き付いて居た先が無くなりそのまま地面に落ちるアナザーリュウガ。
立ち上がった瞬間に接近したオニキスの掌打が叩き付けられる。

「一人で互角でも、三人なら余裕で超えられる」

僅かにアナザーリュウガの動きが鈍った隙に上段蹴り、そのままブラックドラグクローを装着した腕でのパンチを叩き込む。
オニキスの連続攻撃で動きが鈍っていくアナザーリュウガは殴り飛ばされた衝撃で距離を取ると、ヨロヨロとした様子で立ち上がるとドラグブラッカーを模した腕を振り上げ、振り上げた腕から吐き出した黒炎を全身に纏う。

「っ!? まさか其れ迄使えるのか」

だが考えてみれば、原典のアナザーゴーストはディケイドゴーストと共にゲイツゴーストアーマーに対してダブルライダーキックを使っているのだから、他のアナザーライダーがオリジナルの仮面ライダーの必殺技に対応する技を持って居ないわけがない。

「だったら、迎え撃つまでだ!」


『FINAL VENT』


アナザーリュウガに応じるようにブラックドラグバイザーに新たにカードを装填する。

オニキスの背後に現れるドラグブラッカーを背に中国拳法のようなポーズをとり、そのままドラグブラッカーと共に上空に舞い上がり、一回転しながら飛び蹴りの体制を取る。
同時に黒煙に包まれたアナザーリュウガの体がゆっくりと浮かび上がり上空で飛び蹴りの体制を取る。

「ドラゴン、ライダーキック!」

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」

オニキスはドラグブラッガーが吐き出した黒炎を纏いながら、アナザーリュウガは己の吐き出した黒炎を纏いながら二人のキックがぶつかり合う。

「ガッ! ガァア!」

黒炎を纏いながら二つの必殺技を撃ち合った結果、拮抗する事もなく押し勝ったのはオニキスの方だった。

ドラゴンライダーキックがアナザーリュウガを打ち抜き爆散する中オニキスは地面へと着地する。
それに遅れて気絶した匙とアナザーリュウガウォッチが地面に落ちる。

「匙!」

慌てて匙に駆け寄るソーナ。アナザーリュウガに変えられる前にナイトローグに暴行を受けた傷や先ほどのオニキスとの戦いでボロボロになっているが命に別状はない。

「雫、匙の治療を」

「うん、分かった」

ベルトからカードデッキを外しながら雫に匙の治療を頼むと、それに答えて匙に駆け寄って治療の術をかける。

「ありがとうございます!」

ボロボロになって居た匙の体は治療の術を受けた影響で表面的な傷は無くなっていく。

「うん、骨折とかが無くて良かった」

骨折した状態では今彼女の使える術では正しく嵌めた後ではないと歪な形に固定されてしまう恐れがある為だ。
また使えない最上位の術ならば文字通りの完全回復をさせることの出来る奇跡に近い物であるのでその心配もないのだが。

匙だけで無く他の眷属も治癒してくれた雫に何度も感謝しているソーナを他所に四季はアナザーリュウガのライドウォッチへと視線を向ける。

「どうしたの?」

そんな四季の姿を怪訝に思った詩乃が問いかけてくる。

「いや、アナザーリュウガのウォッチが」

『完全に破壊されて居ない』と言葉を続ける四季の視線の先には、罅こそ入っているが砕ける様子もなく転がっているアナザーリュウガのウォッチが有った。

「っ!?」

念の為に回収しようとそれに触れた瞬間、アナザーリュウガのウォッチは輝きと共に砕け散る。


『龍騎!』
『リュウガ!』


アナザーライドウォッチが砕けた後には先ほどまでの怪物然とした姿では無く、騎士甲冑を思わせる赤い仮面ライダーの顔の描かれたライドウォッチとオニキスによく似た仮面ライダーの顔の描かれた二つのウォッチが落ちて居た。

その二つのウォッチは龍騎ウォッチとリュウガウォッチだ。
アナザーライダーの物では無く、正式なライドウォッチの方である。

その二つを手に取った瞬間、黒い影が四季を襲う。

「っ!?」

「四季!」

突き飛ばされた自分を支えてくれた詩乃に感謝しつつ襲いかかって来た影へと視線を向ける。

「ナイトローグ!」

「ふう、奪えたのはリュウガウォッチの方だけでしたか」

影の正体ナイトローグを睨みつけながらその名を叫ぶ四季を他所にナイトローグは手にしたリュウガウォッチを眺めながらそう呟く。

「まあ良いでしょう。暫く龍騎ウォッチは貴方に預けておきましょう」

手の中にあるリュウガウォッチに触れるとウォッチの形が変形して『2002』の数字とリュウガのクラストが現れる。

それを確認すると四季へとその言葉を残して背中から羽を広げ、ナイトローグは飛び去っていく。

「あいつ、ライドウォッチが目的だったのか?」

四季の手の中にあるのは龍騎のライドウォッチとオニキスのカードデッキの二つ。
敵の狙いは二つのライドウォッチだった、そう考えるとそれ以外に選択肢はなかったとはいえ敵の思惑通りに動いてしまった感がある。

例えようのない不安を感じてしまうが、それでも何とかなったことは素直に喜ぶべきだろう。



















「この度は本当にありがとうございました」

念の為にと匙を含めた眷属が病院に運ばれた後、ソーナは改めて四季たちへと感謝の言葉を述べる。

「別に気にしなくても良い。今回は偶々オレの手元に解決させる手段があっただけだ」

「いえ、それでも私たちが助けられたのは事実です。それと、申し訳ないのですが」

ナイトローグやアナザーリュウガの危険性を考えて姉に報告する為、後日四季たちの持っているナイトローグの事について教えてもらいたいと言ってソーナは立ち去っていった。

生徒会役員の眷属全員が入院する羽目になったのだから暫くは大変だろう。

こうして、多くの謎を残しながらも、ナイトローグとの初遭遇になった一件は、新たにオニキスの力を手に入れ、敵が残した龍騎ウォッチを入手した結果でアナザーリュウガの事件は解決したのだった。 

 

十三話目

四季SIDE

さて、アナザーリュウガの一件が終わっても日々は続く。と言うよりも今回の一件は終わって居ない。

先ず、生徒会のメンバーは大きな怪我を負ったものの雫の術の力で早めに完治した為、1日で全員が無事に復帰。

早めにナイトローグについての質問でもされるかと思ったが、魔王……外交担当の会長の姉ではなく、内政担当のサーゼクス・ルシファーが妹の結婚を賭けたレーディングゲームとその後の婚約披露パーティと忙しいらしい。

身内関連だが一応は内政に関わる事なのでそう疎かにも出来ないのだろう。


で、そのレーディングゲームの開催が明日の夜に迫っているらしいのだが、その辺は興味ないので完全に放置していた。


現在は劣化版自壊機能付きスクラッシュドライバーの制作とドラゴンスクラッシュゼリーの生成に勤しんでいる訳である。

一度は制作するのは劣化版と銘打ったが、通常のドラゴンスクラッシュゼリーにスクラッシュドライバーの破壊時のエネルギーが加わればクローズマグマ用のフルボトルのベースが手に入るかもしれないから、こうして通常版を生成していた。



SIDE OUT










アナザーリュウガの一件が終わった後、蜘蛛型の監視メカをオカ研の部室のある旧校舎に放って確認していたが、レーディングゲーム開催の時が来た様子だった。

内容には興味も湧かないと割り切って結果だけ確認したところ、健闘虚しく見事に負けたらしい。

この世界についての原作知識と言う名の一種の未来予知が正しければリアス・グレモリーの投了によって勝負がついたはずだが、結果として負けたのならば細部が変わっていても問題はないだろう。

現在、イッセーは自宅でゲームのダメージのための療養中でアーシアはその治療。他の眷属達は式の為に冥界に帰ったリアスに付き添って冥界に向かったらしい。

「実行するなら今だけど、治療とかはどうする?」

「あれを治療するのは嫌」

即座にイッセーの治療は雫から拒絶された。

「そ、そうか。まあ、予定は決まっているけど、オレはイッセーの様子見も兼ねて、その下準備に行ってくる」

目撃された時の事を考えて、怪盗用のシルクハットとアイマスクを身に付け手にはガチャで手に入れた、エボルト垂涎の五つのハザードレベル上昇アイテム。

「それじゃ、ちょっと行ってくる」

二人に見送られて怪盗姿で家を出る四季。目指すは兵藤家のイッセーの部屋だ。

屋根の上を走りながら人目を避けて目的の場所に着くと、イッセーの部屋が有るであろう位置へと視線を向ける。

アーシアの姿がなく意識の無いイッセー一人である事を確認すると物音を立てずに鍵のかかった窓を開け、部屋の中に忍び込むと簡単にイッセーの容体を確認する。

(こいつの乱入がいつかは知らないが、間に合いそうだな)

間に合ってくれなかったらせっかく設計して開発した劣化版スクラッシュドライバーが無駄になる。そんな事を考えながら、四季はハザードレベル上昇アイテムをイッセーに使う。

ハザードレベルを持っていなかったイッセーがハザードレベルを会得して一気にレベル5まで上昇してくれた事だろう。

上手くガチャ産アイテムの機能は自分達以外にも働く事は知っているが、使うのはこれが初めてなのでどうなるかは分からないが、

(これで良し)

あとは目を覚ました頃合いに接触してスクラッシュドライバーを渡すだけだ。

(そうだ、試してみるか)

ふと、思い付いた事があるのでイッセーの胸にレッドダイヤルファイターを乗せる。


『1・2・1』


イッセーに乗せたレッドダイヤルファイターを中心に金庫のようなものが出現すると、その中には赤い籠手の様なものと、赤いチェスの兵士の駒が八つと、先ほど使ったハザードレベル上昇の特典が一つに統合されていた。
他の二つはイッセーの宿した神器(セイクリッド・ギア)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)、彼を転生させるために使った悪魔の駒(イーヴィルピース)なのだろう。

神器(セイクリッド・ギア)まで抜き取れたか。下手したら特殊能力も奪えるんじゃ無いのか?)

意外と便利である事に驚きながらも、回収の方法の目処がたった事には安堵する。
流石にどちらも抜いてしまったら命に関わりそうなので触れずに金庫を閉めてダイヤルファイターを外す。

流石にハザードレベル5のまま放置するのは危険であったし、ハザードレベルを下げればビルドドライバーが奪われても使われる事はないだろう。

(これで破壊したスクラッシュドライバーを再生されても使える奴は居なくなる)

あとはイッセーが目を覚ますのを待つだけと誰かが来る前に窓から出て行く。
………………出入りに使った窓を開けっ放しで。

数分後、窓が開けっ放しになって居たせいで体が冷えたのか、盛大なクシャミと共にイッセーが目を覚ますのだが、それは四季の知らない事で有った。














リアスの結婚式当日、イッセーの元に来たサーゼクスの女王(クイーン)のグレイフィアから伝えられたサーゼクスからの言伝。
『妹を助けたいなら会場に乗り込んで来なさい』
の言葉。力及ばずライザーに嬲り殺しにされるイッセーの姿にリアスは耐え切れず投了を宣言した。

(あんな野郎に部長を渡したく無い!)

その一心でライザーとの再戦に挑む事を決める。奪還後に使うための魔法陣も渡され、イッセーは決意を決める。



『おいおい、一度負けた相手に直ぐに再戦して勝てる訳ないだろ』



そんなイッセーの決意に水を差す様に第三者の声が響く。先ほどグレイフィアは帰ったので明らかに違うだろう。
誰かと思って声なき声多方向を振り向くと窓の縁に腰掛けている赤い怪盗の姿があった。

「お前は!?」

「よう。ゲームで大怪我したって聞いたけど、元気そうだな」

以前出会ったときのことを思い出して睨みつけてくるイッセーだが、そんな彼に気を悪くした様子も見せずにヒラヒラと手を振っている。

「何の用だ!? オレはこれから……」

「結婚式に乱入、だろ? オレには興味はないけど、お前にはもっと力が必要なんじゃないのか?」

そう言ってビルドドライバーを取り出してイッセーに見せつける。

「例えば、これとかな」

「っ!?」

『欲しい!』自分よりも強い木場や小猫を圧倒した目の前の相手の変身した姿、それがあればあんな鳥野郎には負けなかった。そんな考えが浮かんでくる。

「そんなお前にオレ達のスポンサーから贈り物だ」

そう言って何処からか取り出したスクラッシュドライバーを投げ渡す。

「な、なんだよ、これ?」

「オレのドライバーの後継機の試作品、名称は劣化版(プロトタイプ)スクラッシュドライバーだ」

何処かの嘘つき焼き殺すガールがいたら焼かれる程の大嘘である。
実際には試作品ではなく完成品をデチューンした使い捨て版のスクラッシュドライバーだ。

「こ、これが有れば……」

「それと、これが変身用のアイテムのスクラッシュゼリーだ」

新たに投げ渡すのはゼリー飲料を思わせる外見にドラゴンのマークの書かれたドラゴンスクラッシュゼリー。こちらはデチューンしておらずちゃんとした物だ。

「使い方は簡単。オレのビルドドライバーと違って一つで変身可能。中央部にそれ差し込んでドライバーのレバーを捻るだけ、だ」

早速試そうとするイッセーだが、

「おっと、それは試作品なんでそう何回も、それも長時間は戦えないから、本番まで使わない方がいい」

そう言って変身してみようとするイッセーを止める。

「おい、それって欠陥品じゃ無いのかよ!?」

「試作品に夢見すぎだって。普通は試作品なんて完成品より劣ってる物だろ?」

四季の注意に噛み付いてくるイッセーに飄々とした態度で返す四季。

「どっちにしても、一回は確実に使えるのは保証するし、それの性能だけは保証する」

心の中で通常のクローズ以上、クローズチャージ以下だが。と付け足しておく。
流石に通常のクローズ並みに性能は抑えられなかったのだ。

「それに、完成品を渡してもらえるほど親しい関係でも無いだろ? オレ達と」

だったらちゃんとした方を寄越せと色々と言いたくなるイッセーの心を読んだ様にそんな言葉を告げられる。
でも、と思うイッセーだったがそれでも手の中にある二つのアイテムは大事な勝利のカギの一つだ。余計なことを言って取り上げられたく無い。

「分かったよ、これは有難く使わせてもらう」

「オッケー。それじゃ、オ・ルボワール」

こんな奴の思い通りにするのは気に入らないと思いながらも素直に受け取っておくことにしたイッセーだった。

変身できる確信は持っているし、ハザードレベルも強制的にあげたから問題ないだろうし、性能も劣化させたとはいえビルドライバーレベルの性能は保証済みだ。

ライザーとの再戦にてその力はイッセーも実感を持って知る事になるだろう。









『スクラッシュドライバー!』
『ドラゴンゼリー!』
『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』
『ドラゴンインクローズドライグ!』
『ブラァ!』



赤いクローズチャージへの変身を持って。 

 

十四話目

「必ず、部長さんと一緒に帰って来て下さい」

「ああ、もちろんだ」

イッセーは笑顔でそう言うアーシアに見送られて冥界へと向かう。
手の中に握るのは先程四季から渡されたスクラッシュドライバー。それ以外にもライザーと戦うための切り札は用意した。

何処か不安を感じながらスクラッシュドライバーとスクラッシュゼリーの二つへと視線を向ける。
あの時にビルドに変身した四季が使った物とは違うだけに、本当に大丈夫かと言う不安が湧いてくる。

(これだけじゃ無いんだ、だから大丈夫だ!)

何も出来なかった相手に一人で勝てるのかと言う不安が浮かぶ己を安心させるように心の中でそう叫ぶ。














「上手くいったみたいだな」

機能を下げるついでにスクラッシュドライバーに取り付けておいた盗聴器から聞こえて来た会話を聞いていた四季、詩乃、雫の三人。
場所はナデシコCの会議室、三人とも怪盗コスチュームで、だ。

盗聴器から聞こえる音が消えたことからイッセーは冥界へと転移したのだろう。流石に冥界と人間界を繋いでくれる程高性能な物は桐生戦兎の頭脳でも作れない。

「まあ、今回は結果待ちって所だな」

「大丈夫なの、四季の作ったスクラッシュドライバーを渡しちゃって」

「性能を抑えた劣化版だし、スクラッシュゼリーも破壊される時に使い物にならなくなる……計算上は」

「最後の一言がちょっと余計」

「妙に最後の一言が不安になるんだけど」

「流石にこればっかりは試すわけにはいかないからな」

そもそも、試すのに使うドライバーとスクラッシュゼリーを作る時間はなかったのだ。

「だったら、念の為にスクラッシュゼリーの回収のためにオレ達も冥界に行くか?」

「行くって、見つからないで行く方法はあるの?」

詩乃の疑問はもっともだ。分かりやすく言えば完璧な密入国をするといっているのだから、正面から堂々と移動するのは論外として、見つからない移動手段が理想的なのだが……

「一応、ダイヤルファイターとナデシコには冥界に移動する機能がついてるらしい」

思いっきりその手段はあった。
まあ、冥界を舞台に大きな戦いがある事もあるのだから、そんな時に加勢したくても移動手段がありませんでした、では話にならないからなのだろう。序でにナイトローグの時のように余計な敵まで参戦して居たら四季たちの加勢がなかったら危険過ぎるだろう。

そんな訳で今回はナデシコCの試運転、処女航海を兼ねての行動となった。そもそも、この馬鹿でかい宇宙戦艦がどこから発進するのかも確かめておきたいし。

現在はオペレーターもいないので十全に機能を発揮できないが、艦長として登録されている詩乃が艦長席に立ち、空いた席に四季と雫が座って運航する事になった。

格納庫の前方が開くと何処かにそのまま格納庫から上昇して行く。

「「「ええっ!?」」」

外の光景が見えた瞬間三人から驚愕の声が溢れる。
それも無理はないだろう街中の自宅の地下に有った地下格納庫だった筈が、何故か何処かの無人島から出撃していたのだから。

「いや、確かに街中、それも自分家の地下から発進させたら目立つだろうけど」

「あの格納庫はどこでもドアにでもなってるの?」

「でも、見つからないのは良い事だと思う」

既に何処ぞの猫型ロボットのひみつ道具レベルの施設だと改めて認識する三人で有った。

「兎も角、気を取り直して」

「ええ、目的地は冥界。ナデシコC。出撃」

こうして、前方に現れた魔法陣を潜りながらナデシコCは処女航海として冥界へと飛び立っていったのだった。


















さて、冥界へと辿り着いて四季が貴族風の礼服に着替え、手持ちの隠しカメラを通じてナデシコCのモニターに映像を送りながら貴族の中に紛れ込むと丁度イッセーとライザーのゲームが始まろうとしていた。

イッセーの行動を警備の悪魔達が止めようとするのを他のリアスの眷属の木場、朱乃、小猫の三人が阻み、イッセーはリアス、ライザーとサーゼクスの三人がいる主賓席の前までたどり着く。

周囲の貴族がイッセーへと罵声を浴びせるのをサーゼクスが静まらせると、パーティーの余興としてドラゴンとフェニックスの一騎討ち、つまりイッセーとライザーの試合を提案する。

サーゼクスからは既に最後のチャンスは逃してしまったと告げられるが、イッセーはそれを分かった上で強引に覆す為に来たと答える。

あの時、勝てなかった相手と今更再戦して勝てると思っているのかと問われると、

「ええ、あの時のオレじゃないって事を見せてやりますよ!」

普通は誰もがたった数日で何が変わったのだと思うだろう。まあ、神器(セイクリッド・ギア)の事を考えればそれの覚醒によっては大きなパワーアップは測れるだろうが。
そんな周囲からの呆れとも嘲笑とも言える視線を受けながらスクラッシュドライバーを取り出す。


『スクラッシュドライバー!』


四季から渡されたドライバーを装着し、新たにドラゴンスクラッシュゼリーを取り出し、

「当てにしてるんだから、力を貸してくれよ……」

そんな事を呟きながらスクラッシュドライバーの装填スロットにスクラッシュゼリーを装填する。


『ドラゴンゼリー!』


「うおぉー! 変、身っ!」


『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』
『ドラゴンインクローズドライグ!』
『ブラァ!』


気合の入った叫び声とともにイッセーは巨大なビーカーに包まれ、液体化した成分が全身を覆いスーツを形成し、最後に頭部から吹き出す液体が頭と腕の装甲を作り出し、その姿を多くの者の前で赤いクローズチャージ、否、『仮面ライダークローズD(ドライグ)』へと変身してみせたのだった。

吹き出した液体が本来の青と違うのはスクラッシュドライバー自体が劣化版であるが故かは分からないが、本来青くなる部分が赤龍帝の名に相応しい赤に染まっている。

(クローズドライグって適当に名付けたけど、やっぱりクローズヴェルシュの方が良かったかな~?)

イッセーの変身シーンを眺めながらそんな事を一人考えていた。なお、音声はイッセー用の為に特別に用意したものである。

「ハハハっ! おいおい、そんな玩具がなんの意味があるって言うんだ?」

変身という派手な真似をしたイッセーに静まり返る中ライザーの嘲笑が沈黙を破る。

「なるほど、これはなかなか面白くなりそうだ」

そんな嘲笑を遮りサーゼクスの言葉が響く。

「兵藤一誠君。君がライザー君に勝った時には相応の対価を支払うとしよう」

「サーゼクス様!? 下級悪魔に魔王様が対価などと!」

「例え下級であろうとも彼も悪魔だ。それに、こちらからの頼みなのに対価を支払わないとは悪魔としての理に敵わない。……さあ、君は何を望むのかな?」

イッセーの使ったスクラッシュドライバーとスクラッシュゼリーに興味を持ちながらも、今は妹の為と自身の予定通りに自体を進めて行く。
流石にイッセーもグレイフィアからの伝言やこの言葉からサーゼクスの意図ができないわけがない。
金でも、絶対的な地位でも無い。

「それなら……」

リアスの方を指差すとイッセーは、

「リアス・グレモリー様を返して下さい!」

「良いだろう、それでは早速ゲームを始めよう!」

事前準備はできていると言った様子で試合会場に転移させられる。イッセーとライザーの二人。
急に試合を決められたライザーも相手が一度勝った相手なのだから、文句もないようだ。

先ほど使ったスクラッシュドライバーの事も甘く見ている様子で余裕そのものと言った態度だ。

「部長! オレには木場の様な剣技も無くて、小猫ちゃんの様な馬鹿力もないし、朱乃さんの様な魔力の才能もアーシアの様な治癒の力も」

そこで一度言葉を切って赤い怪盗の事を思い出す。

「あの赤いコソ泥野郎の様に強くも無い!」







(コソ泥じゃ無くて、オレ達は怪盗だ、怪盗!)

思わず叫んでイッセーの言葉を訂正したくなったが、此処は敵地と言葉を飲み込む四季であった。

(スクラッシュゼリー回収して帰るつもりだったけど、あの野郎、一発殴る)








「だけど、オレは貴女の最強の兵士(ポーン)になってみせます!」

本来ならば専用武器のツインブレイカーが現れるはずだが実は劣化版にはその機能は付けていない。その為に彼の神器であるブーステッド・ギアが現れる。

「力を貸しやがれ! ドライグ!」



『Welsh Dragon over boostr!』



試合開始と同時に己の片手を対価にして可能にさせた禁手(バランス・ブレイク)を発動させた事で、クローズDのアンダースーツの一部、頭部と両腕が赤龍帝の鎧に変化する。

『凄いぞ! 10秒も持たないはずだったが、この鎧の力が有れば1分は持つ』

「1分か!? それだけあれば奴を殴り飛ばして、お釣りが出るぜ!」

『この鎧は持ってもそれ以上はお前の体持たない』

そう伝えながらも神器の中に宿る龍帝は理解していた。この鎧の力はドラゴンであっても、この世界のドラゴンのものでは無いと。

自分よりも強大な怪物の力の一部であると。

『(しかし、なんだこの力は? 初めてだぞ、鱗片だけで此処まで恐ろしいと感じた存在に触れるのは)』

この世界にはエボルトは居ませんが、フルボトルの成分を液化させた事による長時間の接触が原因なのかは定かでは無いが、ドライグはその力の持ち主の恐ろしさを正確に気がついて居た。

星を狩るエイリアン、ブラッド族のエボルト。宇宙レベルの消滅の力たるブラックホールを自在に操る怪物など、夢幻と夢幻ならば兎も角、それ以外の存在には太刀打ち出来る存在では無いだろう。
サーゼクス達魔王? 最悪、眷属諸共纏めて消されて終わりである。

何気にドライグの中での世界の強者ランキングに夢幻と無限の下にエボルト(想像態)がランクインした瞬間だった。









(さて、フェニックス対ドラゴン、フルボトルとしたらドラゴンの方が上だけど、どんな対決になるかな?)

後でイッセーを殴ることを心に決めながら逃走用に用意したフルボトルの一部、フェニックスボトルとドラゴンボトルを手の中に握りしめながら、四季はそう心の中で呟くのだった。

(まあ、劣化品とは言えスクラッシュドライバーを使わせてやったんだから勝ってくれよ)
 

 

十五話目

(出来栄えはまあまあって所か)

クローズドライグに変身したイッセーとライザーのゲームを眺めながら心の中でそう呟く。
作った本人だからこそ分かる。禁手との上乗せにより今のクローズドライグのスペックはクローズチャージのスペックに大幅に近づいている、と。

(流石にこれは想像以上だな。ハザードレベル5ってのも有るだろうが……)

思えば正規の変身者で有る万丈龍我と近い面もある分クローズとの相性も悪く無いのだろう。ハザードレベルを高めたと言う点での強化も生きている。

元が一般人の為にオリジナルのクローズチャージに変身させたところで本来の変身者には遠く及ばないが、それは自分も同じだと自覚している。

(ラブ&ピースの為に戦う天才物理学者にはオレはなれないからな)

悪魔に成り上がったところで、女王にプロモーションしたところで、本当のクローズには届かないだろうが、今はそれで十分だ。

なお、今は関係ないことだが渡す気が無かったので通常のフルボトルを使っての特殊能力は劣化版も使えたりする。

四季が観察する中、映像の中のクローズドライグは目にも留まらぬ速さでライザーに突っ込んでいくが、ライザーはそれを間一髪で回避する。

ライザーに回避されたクローズドライグはそのままの勢いのままに壁に激突する。

衝突のダメージもなく壁に激突した際に発生した土煙の中からゆっくりとクローズドライグが振り返る。

『……まだ力を制御できてないようだな』

その力に脅威を感じたのだろう、ライザーから余裕が消えたように見える。

『認めたくは無いが、今のお前は化け物だ! 赤龍帝の餓鬼! 悪いがもう手加減しないぜ! リアスの前で散れ!』

『テメエェのチンケな炎で俺が消えるわけねぇだろぉ!』

互いに顔面へと拳を叩きつけるが、クローズドライグにはダメージがある様子はない。

『へへへっ、凄いな、全然効かねえよ。今のオレは、お前なんかに……負ける気がしねぇ!』

そう叫びながらクローズドライグはお返しとばかりにライザーの顔を殴り返す。

(防御面は……上級悪魔レベルなら問題なし、とは言い切れないな。あいつは今禁手(バランス・ブレイク)との同時使用している訳だし)

そう思った後、再び映像へと視線を向ける前に、

(そう言えば、大半の神器(セイクリッド・ギア)、いや全部が本来は禁手(バランス・ブレイク)状態が本来の運用形態と言う可能性もあるよな)

目の前の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)のそれが良い例だ。能力は変わらず全身に鎧を纏うライダーの変身システムに近い。
故に、少なくとも赤と白の一対のそれはあの状態が基本形態、言わば籠手は能力が使える程度の変身アイテムと言うのが分かりやすいだろうか。

(亜種の形態は通常形態で所持者のデータを収集して最適化した形と捉えれば、所有者のデータを収集する機能もあるのかもな)

ライダーシステムの開発能力を有している四季の視点での神器についての考察だが、興味も無いのでその辺で辞めておく。
桐生戦兎のそれのお陰かエボルト由来のフルボトルの技術の方が神器よりも強力で使いやすいのだ。
















『フェニックスの炎は本来ならばドラゴンにも傷を残す。まともにくらうのは危険だったはずだ』

驚愕の感情とともにドライグはイッセーへとアドバイスを告げる。

『お前の体を包んでいる鎧がフェニックスの炎を防いでいるのか?』

「へっ、だったらこいつが有れば無敵って事だな」

「巫山戯るな! そのオモチャがなければオレが触れるまでも無く、お前は消失している! お前など、そのオモチャと神器(セイクリッド・ギア)が無ければただのクズだ!」

「その通りだ! だけどっ!」

再度互いの攻撃が相手に直撃するが、今度は一方的にクローズドライグが殴り飛ばす。

「ぐあぁっ!」

今まで目立ったダメージの無かったライザーが先ほどのクローズドライグの一撃で苦しみ始める。

「この痛みは……っ!? 貴様ぁ!?」

「アーシアから借りておいたんだ」

そう言ってクローズドライグが開いた手の中に有ったのは十字架。
悪魔に対して激しい痛みを与えるそれを握りしめての一撃なのだ、不死身のフェニックスとは言え、元の聖獣としての鳳凰、フェニックスならば無害であろうそれも、悪魔のフェニックスならば不死身の特性と関係のない痛みとなる。

「聖なる力をギフトで高めた一撃は、いくら不死身のあんたでも効くだろう?」

「バカな!? 十字架は悪魔の身を激しく痛め付ける! 如何にドラゴンの鎧を身につけようが……っ!?」

そこまで言った後に、十字架の影響を受けない理由と、イッセーが僅かな時間で禁手に至った理由に行き着いた。

「……ドラゴンに腕を支払ったのか……? それがその馬鹿げた力の理由か!?」

「それだけじゃないぜ」

そう言って対価として支払っていない筈の腕に十字架を身につけてみせる。

「さっきからアンタがオモチャ扱いしてたこのスーツを着てから、十字架を握っても平気なんだよ!」

『おい、このままではラチが開かん。この鎧のコア、そこに譲渡しろ』

「ああ! 行くぜ、赤龍帝の贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!!!」












「っ!?」

映像だけでもわかる。開発者と言うよりも製作者だからこそ分かる。
今、イッセーはドライバーではなくスクラッシュゼリーの方に譲渡を行った。
……行ってしまった。

(幾ら何でも、それだけは想定していない、いや、想定出来なかったぞ!)

映像の中でクローズドライグの全身から吹き出す液化した成分が全身を包むと同時に、倍加させられた膨大なエネルギーによりドライバーとスーツが火花を散らして行る。
元々組み込んでおいた自壊装置と合わせてドライバーの限界へのカウントダウンが始まってしまったのだろう。

(嘘だろ?)

全身から溢れ出した液化成分が限界を迎えつつあるスーツに焼かれて急激に硬化していく。そこまでは良い。だが、問題はその形だ。

(クローズ……マグマ?)

単なる偶然か、必然か、高温に焼かれたスクラッシュゼリーのエネルギーは硬化しその姿をクローズマグマの形へと変化して行った。

いや、焼け爛れた様な姿は何処かアナザーライダーを思わせるが、それでもアナザーライダーの特徴など有して居ない姿は間違いなく仮面ライダーの物だと認識できる。

(急激にエネルギーが倍加された事による暴走、それに出口であるスクラッシュドライバーが耐えられなくなって決壊に近い形で全身から噴き出した上で、スクラッシュゼリーが突然変異を起こし始めている?)

一瞬だけ映ったスクラッシュゼリーに罅が入った所から推測してみたが真実は明らかではない。

(ってか、半ばハザードトリガー使ってる様なモンだよな、あれは。しかも、成分自体を強化した)














『チャージクラッシュ!』

「「オオオオオオオオッ!」」

クローズドライグが必殺技を発動させると同時にクローズドライグとライザーの拳がぶつかり合い、その衝撃が試合会場を吹き飛ばす。

「イッセー!」

「お兄様!」

リアスとライザーの妹のレイヴェルの叫びが響く中、拳を振り切った状態で立って居たのはクローズドライグだった。

「があぁ!」

ドライバーを中心に全身に走る火花と同時にイッセーの全身に激痛が走る。ドライバーに起こった小規模な爆発と共にイッセーのクローズドライグへの変身が解除される。

「はぁ……はぁ……どう言う事だよ?」

『あの鎧の中心を勘違いして強化してしまった様だな。力の核そのものを強化してしまったせいで限界が来たんだろう』

「くそ、それじゃあ」

スクラッシュドライバーのパーツが小規模な爆発と共に砕け散っていく。そしてイッセーから離れると同時に地面に落ち、最後の爆発共に完全に破壊されてしまった。

そして、最後に残ったスクラッシュゼリーも完全に砕け散った。
後に残ったのは一つのボトルだけ。

もう一度と思ってスクラッシュゼリーの跡に残ったボトルを握り締めた瞬間、ボロボロになったライザーがイッセーの首を締め上げる。

「『兵士(ポーン)』の力で良くやったと褒めてやろう」

イッセーの首を締め上げる中、

「正直ここまでやれるとは思わなかった。強い悪魔になれると思うぜ、お前」

そう言って締め上げて居た力が抜けてライザーは崩れ落ちる。
既に限界だったのだろう。最後の行動は最後の意地だったと言うことか。寧ろ、フェニックスの生命力が有ればこそ命の方が助かったと言える。

















(……あれ? もう出来てないか、マグマボトル)

四季は試合結果を見ながらそう思ってしまう。

(まあ良いか。これでクローズマグマナックルが作れそうだし)

認識阻害用のアイマスクを取り出してナデシコCの詩乃と雫の2人に撤収の合図を送る。

「この様な勝手な行いをお許しください。でも、部長を、オレの主人であるリアス・グレモリー様を返してもらいます」

リアスの両親も仕方ないと言う様子でそれを認める。リアスの手を取る。

「おめでとう、イッセー君。所で、君の使って居た道具だが」

そんなイッセーの勝利を祝福するサーゼクスの言葉にイッセーは最後に残ったボトルを見せて。

「それが壊れてしまって、これだけしか……」

「フム。では、それを預からせて貰えないかな? もしかしたら修復できるかもしれない」

「っ!? 本当ですか!? 是非お願いします」

そう言ってイッセーがサーゼクスに渡そうとした瞬間、



『おっと、そうは行かないぜ』

『0・1・0』『マスカレイズ!』『快盗チェンジ!』




そんな音が響きボトルにワイヤーが巻き付く。

「何者だ!?」

周囲の貴族たちから騒めきが広がる中、バルコニーのある窓の元まで赤い影が飛び出す。

「お前は赤いコソ泥野郎!」

「ルパンレッドだ!」

そこに立ったルパンレッドを指差してイッセーが叫び声を上げるが、呼び名を訂正する。
そして、気を取り直して巻き付けたワイヤーを引いてボトルを回収しようとするが、

「すまないが、これは君には渡さないよ、ルパンレッド君」

ワイヤーの一部が消失し、ボトルはサーゼクスの手の中に納まってしまう。

「おいおい、魔王様。オレは奪いに来たわけじゃなくて、赤龍帝に渡した物を返して貰いに来ただけだぜ」

「ふざけんな、あの時お前、くれるって言ただろう」

「彼の言う通りだよ。贈り物の返品は良いことじゃないと思うね」

そんなやり取りをしている間に警備の兵士たちがルパンレッドの元に殺到しようとして居た。
自分の不利を悟ったルパンレッドはビルドドライバーを取り出し、

「仕方ない、それはあんた達に預けとくぜ」

それを装着して取り出した二つのボトルを装填、





『フェニックス! ロボット!』
『ベストマッチ!』
『Are you ready?』




「ビルドアップ!」




『不死身の兵器! フェニックスロボ! イェーイ!』




仮面ライダービルド・フェニックスロボに変身して取り囲み兵士達の前で背中の翼を広げ、

「御来賓の方々、お騒がせして申し訳有りませんですた。では、皆さま……オ・ルボワール」

背後に出現したナデシコCへと飛び去っていく。
そして、フェニックスロボを回収したナデシコCは反転し、飛び去っていく。

「「「宇宙戦艦!?」」」

駆けつけた一部の人間界について知っている貴族とイッセー達リアスの眷属達から驚愕の声が上がる中、宇宙戦艦の飛行高度に近づけない悪魔達はただ見送るしかなかった。

「せ、戦艦持ってる泥棒ってなんだよ……」

呆れを含むイッセーからのもっともな呟きが響くのだった。













???

「回収に失敗した様子ですね、彼は」

飛び去っていくナデシコを見送りながらナイトローグはそう呟く。

「これは少しまずい事になりそうだな」

新たな声に気がついてそちらの方へと視線を向けると、そこには盾のようなものを持った金色の騎士の姿があった。

「貴方ですか、『マルス』」

「ああ、お前を迎えにな。ソーサラーも迎えに来ているぞ」

「彼女も来て居たんですか。それは助かります。冥界からの転移は面倒なので」

金色の騎士『仮面ライダーマルス』の指差す先には2人へと手を振っている金色の魔法使い『仮面ライダーソーサラー』の姿が有った。
ナイトローグの口ぶりからしてソーサラーの変身者は女なのだろう。そんなソーサラーの転移によってナイトローグ達三人姿は冥界からの消えたのだった。 

 

閑話15.5話目

クローズドライグの、赤龍帝のスクラッシュドライバーの使用しての戦闘データと言う収穫はあったが、本命であったスクラッシュゼリーの回収に失敗したイッセー対ライザー戦は終わった。


原作とは違いライザーはドラゴン恐怖症にはならず、負けた悔しさをバネに一から鍛えなおしてるらしい。


そんな良いのか悪いのか分からない変化を持ってリアスの結婚騒動は終わった。

無事に帰って来たリアスもイッセー宅に同棲する事になり、増改築され豪邸となったと言う話だ。

「問題はあのボトルが悪魔側の手に渡った事だな……」

今回の成果に於ける大失敗を思い出しながら思わず頭を抱えてしまう。
後日豪邸となった兵藤宅に忍び込んでイッセーから『ハザードレベル5』を回収したので、今後彼が仮面ライダーに変身することはできないだろうが、それでも自分たちのアドバンテージであったフルボトルの技術が奪われてしまったと言うのは厄介だった。

現在はあのボトルはサーゼクスの元から四大魔王の1人のアジュカと言う技術担当の手元へ渡されたらしい。

「問題だよな」

悪魔の駒の開発者である以上、フルボトルの技術にも何か気がつくところがあるかもしれないと警戒している。

「そうよね」

「うん」

ネビュラガスやパンドラパネル、パンドラボックスが無い以上はハザードレベルと言う概念が無い。研究は難航してくれる事だろうが、早めに取り戻した方が良いだろう。

「まあ、今回の一件で多少なりとも協力してもガチャは出来ると言うことが分かったのだけは収穫だけどな」

今回の最大の収穫である新たに入手した十連ガチャのチケットを手に取りながら、今後の行動の方針を決める材料となる情報を挙げていく。

「でも、正体を明かして仲間になる気は無いんでしょう?」

「当然だろ」

少なくとも、アナザーリュウガの一件では自分達がルパンレンジャーや仮面ライダービルドとは明かして居ない。使ったのは魔人学園関連の力と仮面ライダーオニキスの力だけだ。

「当面は向こうの動きに注意した方が良いな」

序でに、手元にある十連ガチャ券は戦力増強のために使うと言うことに決まった。




















冥界某所…

「それで、何か分かったかな?」

「研究対象としては中々に興味深いが、まだ何もわからないと言うのが現状だよ」

赤髪の男、サーゼクスが問いかけるのはアジュカ。彼の研究室にあるのはイッセーが使って完全に内部が破壊されたスクラッシュドライバーとスクラッシュゼリーが変異したボトルだ。

分解されたスクラッシュドライバーは内部構造が完全に焼けただれ、崩壊している。

「分かったのは二つ。一つはコチラのボトルの様なものの中の物を摘出してスーツに変える機能があると言う事だ」

「もう一つは?」

「開発者の名前らしきものが刻んで有った」

『SENNTO.K』と刻まれて居た部分を見せる。

「SENNTO? セントと読めば良いのかな、これは?」

「単なるイニシャルだが、恐らくこれがお前の妹の眷属の言っていた」

「三人組の怪盗のスポンサーと言うことかい?」

実際には四季が本家……と言うよりも本当の製作者に敬意を評して『桐生戦兎』の名前を刻んでいただけなのだが、思わぬところで魔王二人に変な勘違いを生みつつあった。



















さて、冥界で2人の魔王の間で謎の人物『SENNTO.K』が話題になっている頃四季達は、ガチャの装置の前に立っていた。

「取り敢えず、狙いとしてはスパークリング、フルフル、ジーニアスの三種だな」

「それって、もしかして」

「ビルドの強化アイテム」

「前にハザードトリガーって言うの手に入れてなかった?」

「……あれ、使うと暴走するんだよ。…………必ず」

「そ、それじゃあ仕方ないわね」

詩乃の問いに遠い目をしながら答えると納得してくれた様子だ。長時間使えないからこそ安定して使える強化フォームへの変身のためのアイテムが欲しいのだが、

「それじゃあ、十連やってみるか」

そんな願いを込めて十連ガチャチケットを使う。

目の前の装置の中から10個のカプセルが飛び出してくる。最初のカプセルには、


『蓬莱寺京一の力』


だった。

「便利と言えば便利だけど……」

神速の剣士。前衛が自分だけの現状では使えても意味はないかとも思うものが出た。緋勇龍麻の力を持ってるし。続いて、


『如月翡翠の力』


魔人学園シリーズ二連続。水の力を操る玄武の忍者である。ルパンレンジャー時に使えば便利かもしれないが、しばらくは保留だ。


『比良坂沙夜の力』


二連ではなく三連だった。三人目の魔人キャラの能力。『伊邪那美命』の宿星を宿す唄姫。
しかも、この三つのそれは四季のそれと同じく宿星さえも含めている。

「今度こそ……」



『仮面ライダーウィザードのウィザードライバー』
『ウィザードリング各種(インフィニティ除く)』
『ドラゴタイマー』



次の三つは最強フォーム除いて仮面ライダーウィザードコンプリートである。

「暫くオニキスとウィザードメインにしようかな、オレ」

「便利そうよね、物凄く」

「私もこの魔法、見てみたい」

いきなりウィザード関連が最強フォームのぞいて揃った。しかも、インフィニティが最強とあるが、時折さらにインフィニティは強化される。
手数の多さもでのチートさは平成ライダー達の中でも基本フォームからチートに入るライダーである。
……はっきり言おう平成ジェネレーションでウィザードと戦った男は相手が悪かった。(鎧武とドライブと戦った2人にも言えるが)

続いて手に取ったカプセルの中には、


『グッドストライカー』
『シザー&ブレードダイヤルファイター』


「巨大戦も出来るようになったな、オレ達」

「巨大化する敵っているの?」

「居ないんじゃないかな~」

「あっ、こっちは綺麗」

過剰戦力なルパンカイザーは兎も角、シザーとブレードのダイヤルファイターはなぜか宝石の形をして居た。
劇中でもこの二つのダイヤルファイターは一対で宝石の姿になっていたのでガチャ産でも宝石として存在しているのだろう。

「VSチェンジャーに使えばダイヤルファイターになると思うから必要になれば使えば良いか」

最後の二つのうちの一つへと視線を向ける。


『風火輪(東京魔人学園)』


封神演義に出て来る宝貝の一つで東京魔人学園では便利な移動力上昇アイテムの一つである。
やはり、身に付ければゲームの効果と違って空を飛べる、飛ぶ様に走れるのだろう。


『オリハルコン(東京魔人学園)』


最後に出てきたカプセルの中には一対の手甲。魔人学園シリーズに於ける主人公の武器の一つで、かの伝説の金属オリハルコンで出来ている。
今までは未変身の状態では素手で戦っていたが便利になる事だろう。

「使えるのはオレだよな」

「ええ、私の場合、それを貰っても銃も弓も扱い難くなるし」

「私もそれはお兄さんが使うべきだと思う」

詩乃と雫の二人からも四季が使うべきと言う意見が出た為、自然とオリハルコンは四季の装備となった訳だが。

「所で、私はこれを貰っても良いかしら?」

そう言って詩乃が選んだのは比良坂の力だ。弓使いの彼女には余り相性が良いとは思えないが……

「元々私達は技だけだったし、強力なのは使えなかったのよね」

元々気や魔力の概念など無い世界の出身である詩乃にとって力を扱う感覚がうまく掴めなかったのだろう。
魔法と言う概念が、少し違う形とは言え存在していた上に魔法師だった雫には感覚も掴みやすかったが、詩乃にとっては難しかったのだろう。

そんな訳で四季としても、雫としても反対意見は無くその力は詩乃の物になったのだった。