りゅうおうのおしごと(ピンク&スチール)


 

一話~ヤンデレホルダー八一~

 
前書き
○学生が突入する前のお話~ 

 
棋界の誰もが目指す頂点の一つ、竜王。

そのタイトルをかけた勝負に勝った一月後、八一は竜王となって、初めて『神』に挑んでいた。

『おい!すげえぞ竜王、この盤面で名人にくらいついてやがる!』

『劣勢からギリギリ持ち直しての詰めろ、詰めろのカウンター、お互いに持ち時間も無いのによくやるよ』

とあるテレビ局が開催した将棋トーナメント、その三回戦で八一は、初めて『神』に挑んだ。

若輩のためタイトル戦等で戦う事が難しい相手であるため、プロ棋士になって初の対戦。

『神』と呼ばれる名人、その圧を総身で受けながら、打つ、打つ、打つ。

頭は沸騰寸前、体は疲労困憊。

そんな中、八一は気力だけで指し続けていく。

そして……

「八一!」

「…………はっ!」

その声に目が覚める。

そうだ、俺はあの日食らいついて、食らいついて…………最後過労で自分が気を失って倒れ決着がついた。

別に自分が他人と比べ特別虚弱体質だと言うわけではない。

言い訳になるかもしれないが、将棋を、しかも格上と指すというのは、凄まじい負担を脳にかける。

更に、自分はまだ若干16歳で経験も浅く、勝つためには先人の何倍も打ち筋を研究しなければならない。

そういったものの積み重ねが、体調管理には気を付けた自身の体を知らず知らずの内に蝕んでいたらしく、結果、倒れた。

正直、倒れる数分前までは終着までは打てるつもりだったんだが…………

竜王戦、テレビ局トーナメントの名人戦と立て続けに行った試合とそれに伴う研究に体がついていかなかったらしく、恥ずかしい限りだ。

竜王戦から3ヶ月、あの試合から2ヶ月もたっているのに、未だ公式戦で負け越していたり、こんな夢を見るのは未熟な証。

竜王として、恥じない打ち手とならなければ、打った相手に申し訳がない。

そう思ってふと手を見ると、横からほっそりとした白い手が、自分の手を握っているのが見える。

ゆっくりと横をみると、其処には見慣れた顔が。

「姉弟子、今日は学校では?」

空 銀子。

『浪速の白雪姫』という渾名がつけられた、俺の姉弟子。

その渾名の由来となった、白い艶やかな髪をショートカットにした、透き通るほど白い肌の美少女。

彼女のために雑誌で特番が組まれるなど、正直、ぽっと出の竜王の俺なんかより、よっぽど有名人だ。

ただ、彼女は中学卒業と同時に棋界に入った俺と違い、まだ中学生。

平日は学校のはずだが…………?

「八一、今日は終業式」

ああ、だからか。

納得をすると、礼を言ってそっとその手を離そうとした。

だが、その手は離れない。

何故か、最近の姉弟子はこういうことをする。

「姉弟子?もう大丈夫ですから離して頂いても…………」

「駄目。」

「いや、本当に大丈夫ですから…………」

「駄目。八一は何時も目を離すと変な所に行くから」

変な所?

はて?変な所なんて言ったっけ?

「特に行った覚えが無いんだけど」

そう、そんな心当たりはないし、した覚えもない。

友人と遊ぶくらいはするが、それ以外の時間は徹頭徹尾、『将棋』が占めているので、他のものが入る余地がないのである。

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【西の竜王は】八一先生がやらかしたら上げる裏スレPart208【ヤンデレホルダー】

1 名前:名無しの将棋好き氏

・前スレより続けて

①このスレの話題を通常スレに持ち出してはいけません。

②パスワードは将棋会館でお伝えします。入りたい人はツイート下さい。

③表スレに突撃したら予告無く垢バンします。


27 名前:名無しの将棋好き氏
八一先生は何人無意識に何人口説けば良いの?

28 名前:名無しの将棋好き氏
何故口説くか?じゃない
無意識に口説くから先生なんだ

29 名前:名無しの将棋好き氏
>>27 全く口説いて無いのに惚れたやつもいるからなあ(ガチ)
【捌きのイカヅチ調教事件】とかマジそれ
    
31 名前:名無しの将棋好き氏
>>29 何それ初耳

32 名前:名無しの将棋好き氏
>>29 詳しく頼むわ

33 名前:名無しの将棋好き氏
>>31.32 詳しくも何も、祭神 雷(さいのかみ いか)が女流戦で何時ものように煽る⇒その場に居合わせた八一切れてエキビジョン戦で全駒取って倒す⇒八一が反省するまで二度と指さないと言う⇒調教完了やで

34 名前:名無しの将棋好き氏
>>33 最後の矢印がおかしいんだよなあ……

35 名前:名無しの将棋好き氏
>>34 ネタじゃないんだよなぁ……

36 名前:名無しの将棋好き氏
>>33 これ普通、竜王が品位問われるんじゃないんか?

37 名前:名無しの将棋好き氏
>>36 普通はな。でも、彼女いつも問題行動起こしてたし、改めるそぶりも無いから正直女流棋士界でも持て余してたんだよ。
で、今回八一が怒って少しはマシになったから、むしろ歓迎されてる。

38 名前:名無しの将棋好き氏
>>37 どうマシになったん?

39 名前:名無しの将棋好き氏
>>38 
やったあ、祭神雷はバーサーカー問題児から、八一専用ヤンデレストーカーに進化したよ!やぞ(白目)

40 名前:名無しの将棋好き氏
八一、刺されんなよ(懇願)

41 名前:名無しの将棋好き氏
もはや黒ひげ危機一髪並みに狙われてるから大丈夫やぞ。

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「じゃあ八一、あのクッキー缶はなに?」

「……?雷がお見舞いに持ってきた物だけど?」

最近、叱り付けてからちゃんと礼儀正しくなったんですよ。と笑顔で答える八一に、銀子は苛立つ。

やはり、何も分かっていない。

「……じゃあ、これは?」

「供御飯と月夜見坂からのお見舞い。なんか近いからってよく持ってきてくれるんだ」

明らかに手の込んだアップルパイやケーキを見て銀子は更に苛立つ。

月夜見坂 燎(つきよみざか りょう)に供御飯 万智(くぐい まち)、私の(ここ重要)八一に幼いころからチョッカイをかける泥棒猫ども。

あいつ等が私の居ない間に八一と楽しく喋っている事を想像するだけで怒りに震える。

ずっと昔から八一は私の…私の…私の八一なのに……

いけない、いけない。こんな事を考える暇があるなら、大事な八一との時間を大切にしないと……

「今日の夕飯、私が作るから。八一は詰め将棋でも解いてて」

そう言うと、銀子はキッチンへその足を向けた。








 
 

 
後書き
友人に原作を紹介してもらい、気に入って書いてみました。暇つぶしにどうぞ 

 

二話~竜王VS聖騎士+幼女~

 
前書き
一部設定が、原作と異なる部分は、小説内で表現させて頂きます。 

 
棋士と言うのは実力社会であり、究極的に言うならば、人格や経験、それら社会人として必要なファクターより何よりも、『実力』が重視される。

だからなのか、このような十代同士の戦いも、実力が伴うならば大きく取り上げられる。

「さあ、戦い(デュエル)も終局に近い。我が桂馬(ペガサス)の嘶きに頭を垂れるが良い」

神鍋 歩夢(かんなべ あゆむ)、自身と同様、十代でプロ棋士になり、関西と関東という違いはあれど、互いに切磋琢磨する仲の男である。

正直、自分と同年齢なので話しやすく、盤面を離れれば、気安い仲ではある。

離れれば、ではあるが。

「面白い!」

盤面を眺める目に、熱が籠る。

真剣勝負のみ身につける眼鏡を弄りながら、その目は盤面から一時も離さない。

魂に宿る熱気を、冷徹な頭で捌きながら、目の前の盤面と同時に、脳内に互いの指し手を予測して作る、未来の盤面を呼び出す。

4手先…………12手先……………………36手先!

現実の盤面の駒を進めながら、駒を指し、指され、取り、取られ、その互いの命(王将)を取るためにしのぎを削る。

そのギリギリの感覚が、八一は何より好きだった。

「持ち時間を全て使われましたので、今から一分将棋でお願い致します」

審判の声を耳だけで受け止めながら、しかし、目と頭は、盤面に集中する。

打って、打たれて、取って、取られて、目まぐるしく変わる戦局は最後に…………。

「…………ふう」

もう、すっかり暗くなった夜の町を歩きながら家に向かう。

あまりに白熱した勝負を勝った代償か、体の火照りが取れず、つい一駅分歩いて帰ってしまった。

まぁいいか、将棋のため進学を止めた身である、明日も用事がある訳ではない。

欲を言うならば、明日も誰かと打ちたいので将棋会館で約束したかったが、流石に仲が良くても、今日負かした歩夢にそれを要求するほど考え無しでは無かったし、今日の試合の記事を書いてくれた女流棋士の鵠さんは、何故か友人の月夜見坂さんと銀子と一緒に何処かに行ってしまった。

かと言って師匠や桂香さんにそういう連絡するのも気が引けるしなあ…………

そう呟きながら坂を上がると、足を止める。

1ヶ月前に引っ越した、新居である3LDKマンションである。

正直、独り者の自分には広いなんて話ではないのだが、これには事情があった。

将棋指しとして、多くの人間と指したい俺は、将棋会館で知り合った同じ指し手を、奨励会もプロも、男女の区別なく、うちで指せるように当初2DKの部屋を借りていた。

だが、何故か2ヶ月前に名人に挑んだ俺が倒れてしまった後、事情がかわってしまう。

試合を終えてから、マスコミ関係が異常なまでに俺の家まで押し寄せてしまったのだ。

これでは集中して、将棋が指せないと落ち込む俺。

だが救いの手は、幸運にも同じマスコミ関係から出された。

今回の騒動で有名になった俺は、棋界を通してテレビ関係のCMやドキュメンタリーの仕事を依頼されるようになった。

当然の如く、若輩の俺の手に分不相応とも言える金額がもたらされる。

結果、俺はセキュリティの硬いマンションを買い上げるほどの金を手にし、今に至る。

まあ、守衛さんには知り合いは将棋会館発行の身分証提示したら通すように言ってあるし、家の鍵も俺はかけてないから言うほどガードが硬い訳じゃないが…………

とりあえず、ゴシップ紙に好き勝手張り込みされるようにならなくなったのは素直に喜ばしいことであった。

そう考え何時も通り守衛の前を通ると、何故か手招きされた。

「どうしました?」

「あんなあ、実はボンが来る前にな…………」

守衛さんの話によると、自分が来る前に、自分の手紙を持った小学生の女の子が訪ねて来たらしい。

「どっちの子かな?」

自分が竜王を取り、また名人との死闘を演じたこの3ヶ月で手紙を送った相手で、小学生の女の子となると相手は二人。

夜叉神天衣(あい)と雛鶴あいである。

二人は3ヶ月前の竜王戦から自分に師事を乞いたいと熱心に手紙を送ってくれており、自分は名人戦の研究の合間に、彼女達に昔使っていた詰将棋の本を送ったり、彼女達の将棋の相談に乗っていた。

たかが小学生と侮るなかれ。

彼女達の質問は鋭く、その着眼点は自分もはっとさせられた。

ただ、そりゃあ、住所を書いてるのだから来ることは出来るだろうが…………

自分もまだ若輩の身、弟子を取るのはまだ早いし、難しいと手紙でも送った筈なんだが。

「なんで直接来たのだろうか?」

前に倒れてしまったのは確かだが、その後に無事を知らせる手紙も送ったのに。

「なんや、ボンを悪い女から守る言うてたで。ワイも娘がいるさかい、つい甘くなってしもうてな。それにまだ肌寒い中、小さい子立たせたままっちゅうのは酷やろ?」

「確かに、ですね」

別に取られるモノもないし、小学生の女の子の泥棒というのは考えにくい。

その守衛さんの判断は、全く間違ってなかった。

礼をのべて、オートロックのホールを抜けると、階段を上がって二階へ。

上がってすぐの扉を開けると…………

「お帰りなさいませ、お師匠様!」

三つ指をついた、小学生が、出迎えてくれた。

「…………ん?」

それが、自分、九頭竜八一と、雛鶴あいの、最初の出会い。 
 

 
後書き
原作でもヤンデレベル高い幼女、イン。 

 

三話~盤外戦あいVS銀子①始まり~

 
前書き
ボマー「ヤンデレに気を付けろ!」 

 
「君があい…………ちゃん?」

「はい!」

元気良く挨拶をする少女に、何かが脳裏をよぎる。

彼女の事は覚えている。

そりゃあ、竜王戦で戦った最終戦の会場の女将の一人娘だ。目にするチャンスはいくらでもあっただろう。

だが、脳裏によぎる記憶は…………

「んっ…………あいちゃん、もしかして俺達、何処かで会ってない?」

「はい!」

顔に手を当てながら、思い出そうとする八一に、あいは笑顔で同意した。

その笑顔に俺の脳裏で、あのときの記憶がフラッシュバックする。

ーーーーーーーーー

竜王戦、終盤。

十八手後の詰みを読みきった俺は、その手を指す前に、手洗いで息を整えていた。

洗面所前の大きな鏡の前で、その手に間違いはないのか、自分の手に希望的観測はないかをギリギリまで脳裏で繰り返す。

よし!間違いはない!

そう結論付けた俺は、盤上の戦いに戻るため、疲れた体を引摺りながら、体を会場に向ける。

やべえ…………頭が熱い。

予想以上に、脳を酷使した影響か、会場までの短い距離が無限に感じる。

その最中、見えたのは、自分に笑顔でコップを差し出す小さな影。

そうだ、俺はあの時君に…………

ーーーーーーーーー

「救われたんだ」

くれた冷たい水もそうだが、それ以上に、君の笑顔の『応援してます』という言葉に救われた。

あの日、自信を持って終局まで持っていけたのは、間違いなく、あの言葉も助けになった。

だから、八一は改めてあいにお礼を言う。

「ありがとう、君のおかげだ」

「っいえいえ、お師匠様は一人でも大丈夫でしたよ」

「いや、君の優しさは、確かに俺の助けになったよ。ありがとう」

顔を赤くして謙遜する彼女に、重ねて八一は言う。

無論、彼一人でも、なんとかあの竜王戦に勝てたかもしれない。

だが、その勝敗とは別に、あの日、あの時に、雛鶴あいという一人の少女に八一が救われた事は、間違いなく事実であった。

思い出したあの時の礼をのべると、尚更疑問が浮かぶ。

「えーと、あいちゃん、確か実家の旅館は、凄く遠く無かった?」

確か記憶通りなら、石川県辺りにある旅館だったはずなんだけど…………

「はい、でも一本で大阪に行ける電車ができたので、意外と早く着けました!」

「へぇ、そうなんだ…………じゃなくて!」

納得しそうになり、慌てて突っ込む。

いや、駄目でしょ。

「親御さんの許可は取ったの?ランドセルを持って来てるってことは、学校から直接来たんでしょ?」

そう伝えると、分かりやすくあいの目が動く。

はぁ、訳有りか。

心の中でため息をつくも、自分は歳上。

ここで、鋭く突っ込んでも、あいちゃんが頑なになるだけなのは、わかった。

俯く彼女の頭に、そっと手を置くと、サラサラの髪の上から頭を撫でて、優しく問いかける。

「事情、ゆっくりで良いから聞いても良い?」

「んー、んー…………はい」

暫く顔を赤くして口を開くのを我慢していたが、五分ほど撫でて返事を待つと、彼女は口を開いてくれた。

つまりは、こういう事らしい。

最近の俺の活躍?を見たあいちゃんが、最近の自分の仕事を見て心配になり(倒れた事かな)両親に弟子になりに行きたいと言った所、祖父が道楽で将棋をしていて苦労してきた母親が猛反対。

俺の事を今まで書いた手紙と共に説明しても駄目だの一点張りなので、喧嘩別れして、自分に甘い父親からお金を貰い、来たと。

一応、自分がこのマンションに着いたと同時に父親には連絡したらしい。

なんというか…………判断に困る。

ここまで一人で来る行動力は立派だが、明らかに弟子にする、しない以前の話である。

というか、これ現状ただの
家出じゃない?

まあ、常識的な大人なら、すぐに親に連絡して終わりである。

ただ、八一は残念ながら、まともな大人では無かった。

正直言って、嬉しかった。

話を聞けば、俺が旅館で指した日から俺を目標に詰将棋やネット将棋で腕を磨いてくれていたらしい。

そんなに慕ってくれているのに、ここで返すのは、正直、もったいなかった。

手招きして、荷物を置いて貰うと、長旅で疲れているあいちゃんのために風呂にお湯を入れる。

また、父親から説明はいっていると思うが、念を入れて一応師匠にはメールをいれた後、奥の和室に将棋盤と座布団を用意した。

さて、では折角来てくれた弟子を見てあげるとするか。

「あいちゃん、好きに打ちなさい」

そう言って先手を譲る。

二手、三手。

盤面に現れたのは…………

「あい掛かりか…………」

俺の十八番、得意とする戦術が現れていた。

まあ、良い。俺相手にその戦術を出す度胸は買おう。

だが、大切なのは、その中身だ。

互いに駒を動かす音が響く。

小一時間立つと、盤面は圧倒的に八一に有利な形で動いていた。

当然だ。タイトルにすら手が届いた自身の得意陣形である。指導のため、分かりやすい盤面を見せるために遠回しな打ち方をしたが、この状況にするのは容易であった。

(さて…………問題はここからだ)

将棋では、優勢な時よりも、むしろ劣勢の時にその打ち手の本質が出る。

詰将棋や手紙のやりとりでは見えないものを真剣勝負の中で見出だす。

彼女が俺の只のファンか、それとも弟子になるだけの才を持つものか。

(この一手で、見極めよう)

ある程度無理をしているが、捌けなければ詰みが見える一手。

それに対しあいは…………

「こう、こう、こう、こう、こう!こう!」

体を揺らして、一生懸命に盤面だけを見つめる。

その後、彼女が打った一手を見る。

一見、破れかぶれの逆王手。

しかし、八一には見えていた。

そこから繋がる、細い勝利の道が。

「面白い!」

気づけば、真剣勝負の時にかける眼鏡を無意識にかけていた。

「あいちゃん!」

「はい!」

「君の(将棋の)魅力にやられた。今夜は満足するまで、指し会おう」

「ふぁぁ、は、はい」

俺のあいちゃんの将棋を絶賛する言葉に、何故か真っ赤になって答えるあい。

んー、なんか間違ったかな。

まあ良い。別にやることは変わらない。

その日、言葉通り、八一はあいと、真夜中まで、将棋を指し続けた。

次の日、昼。

「ふぁあ、良く寝た」

張っていた気が緩み、『鋼』と呼ばれる強い八一ではなく、普通の八一が顔を出す。

まあ、自宅で固くなってもしょうがない。

そう思い、とりあえず顔を洗うため、洗面所まで向かっていると…………

「良い匂いだな…………」

別に妄想の類いではなく、キッチンから良い匂いが漂っていた。

手早く洗顔などをすませ、キッチンへ。

手慣れた様子で料理をよそうあいに声をかけた

「ご飯作ってくれたんだ、ありがとう」

「あ、お早うございます師匠」

割烹服を着たあいが、料理を運びながら返事をする。

そこからは穏やかな食事タイムだ。

おっと、そうだ、忘れてた。

「昨日お湯張った湯船、さっき追い焚きしておいたから入ってきなよ」

昨日、二人とも夢中になって指していたため、結局風呂に二人とも入っていない。

自分も途中で気づけばよかったんだが、小さいながらも女の子にそれは酷だろう。

そう提案すると、何故か強硬に俺が先に入るよう進めてきた。

?俺も詳しくは知らないが、普通、女の子が前に入るものではないのかと思ったが、薦められたならしょうがない。

とりあえず、朝風呂と洒落混むことにした。

彼は気づかなかった。

彼の見えない所で、師匠の香りがするお風呂とか最高じゃないですか…………と呟く幼女を。

少し時間が飛ぶ。

風呂に入り終わった八一は、嬉々として後の風呂に入ったあいと入れ替わりに、リビングで髪を乾かしていた。

ドライヤーをつけながら、片手で昨日棋戦前に充電していたスマホをいじる。

ん?着信20件?

確認すると、いくつかは違う番号が挟まっているものの、ほとんどは姉弟子の銀子のもの。

内容を確認すると、1コールで繋がった。

「姉弟子、どうしま……?」

「八一、今下にいるから、すぐいく」

???何故、急に?

「姉弟子、今日は何か用事ありましたっけ?」

「ついさっき出来た。直ぐに行く」

短く答えると、切られる電話。

それに不思議そうにする八一とは裏腹に、銀子の目は血走っていた。

「旅館の一人娘ぇ…………八一を慕ってアポなしで突撃ぃ…………ポッと出の女が忌ま忌ましぃ!」

激突はすぐそこに迫っていた。


 
 

 
後書き
あい・銀子「お師匠様(八一)捕まえた……」 

 

閑話①夜叉姫あいの覚醒

 
前書き
「何時からヤンデレの『アイ』が一人だと錯覚していた」 

 
「八一君は凄いんだよ」

父が将棋を語るとき、必ず口にする言葉。

その言葉は、幸せだった家族の記憶と共に、今も心の大事な場所に仕舞ってある。

だから、九頭竜八一という名前がプロ棋士の名簿に載ったときは、自分の事みたいに喜んだ。

八一が公式で試合をしたときの棋譜は、ずるいけど、お祖父様に頼んで手に入れたし、新聞や雑誌に載った時はお願いして、買って切り抜いてもらっていた。

竜王に挑戦して、そして勝った時には小躍りして、喜んだわ。

迷惑かなあ、と思いながらも、お祝いと一生懸命書いた弟子入りの手紙を『ゲッコウ』さんというお父様の友人の方を通して渡したのもその時かしら。

残念ながら、直ぐに弟子入りの了解はもらえなかったけど、直接八一…………先生(恥ずかしいわね)からもお手紙をもらえて、私は満たされていた。

『あの日』の八一先生を見るまでは。

後でお祖父様に聞いた話だけど、本来、八一先生と名人と呼ばれるタイトルホルダーとの戦いは、起こらなかったはずだった…………らしい。

八一先生は当時竜王になりたて。

通常業務に加えて、竜王として取材等もあり、忙しいなら出なくても良かった。

だけど、八一先生は出た。

竜王、その名を冠する人間が、負けを恐れて試合を行わない、それが嫌だったらしい。

テレビ局が開催するトーナメントは、大々的に行われスポンサーも多く付くので、一勝ごとに賞金が貰え、上にいくほど賞金が増えるスタイル。

そのため、当然のことながら、ついてくれたスポンサーのために、視聴率の向上のためのタイトルホルダーの出場は関東、関西の区別なく将棋協会より熱望され、結果として多くのタイトル保持者が参加していた。

準決勝、勝ち進んだ八一先生と名人が戦う事になったのは、ある意味必然だったかもしれない。

天上の戦い。

八一先生と名人の戦いを一言で表すなら、正にそれだった。

途中まで大盤解説をしていた人間がついていけない。

目まぐるしく攻め手と受け手が代わり、詰んでいたはずの盤面が、二人の針の穴を通す打ち方で元に戻される。

テレビ放映のため、長引いた試合は一時中断され、二人の戦いのみ、二日に渡った。

終局は唐突に訪れた。

二日目、330手目。

滅多に声を出さない名人が、声をあげた。

「竜王?」

そう口に出して肩を揺するように触れた瞬間、触られた八一先生は倒れた。

私は大声で悲鳴を上げてから倒れた、らしい。

らしいと言うのは、後からお祖父様からその時の事を聞いたから。

でも、私にとって、自分自身が倒れたことなんて大したことがなかった。

また、私の大切な人は遠くに行くの?

いや、イヤだ。イヤだイヤだイヤだイヤだ。

お祖父様の心配する声も遠くに聞こえる。

駄目だ。八一先生、いや、八一は私が守るんだ。

…………だから、私、早く八一に逢いに行かなくちゃ。

「…………お祖父様、私、お祖父様にお願いしたいことがあるの?」

本音を笑顔で隠し、私に甘いお祖父様に淑女らしくお願いする。

「なんだい、天衣のお願いなら何でも叶えてあげよう?」

予想通りの答えに笑顔で返しながら、いつも持ち歩いている手紙を見せる。

ヤイチ…………

「私、将棋の先生に為っていただきたい方がいるの」

「お祖父様からお願いできないかしら?」

モウ…………ハナサナイ。

それは、もう一つの『アイ』のお話。 
 

 
後書き
「なん…………だと…………」 

 

四話~盤外戦あいVS銀子②中盤戦~

 
前書き
○ジータ『ヤンデレ力、5000、6000…………(ピピピピーッ)8000以上だ』

○ッパ『嘘だろ○ジータ、八一の奴死んじまうよ……』 

 
玄関の鍵が慌ただしく回され、開けられる。

ああ、そういや昨日はあいちゃんが居たから、一応鍵掛けてたか。

パジャマ姿のまま、開く玄関を眺めていると、そこには汗だくな姉弟子が。

『浪速の白雪姫』の美貌は変わってないが、普段と違い感情が表に出てるな。

何か焦ってる。

なんでだろうナー、と考えながら、風呂に入る前に入れて貰った暖かいお茶を湯飲みですすっていると、いきなり姉弟子は、襟の辺りに顔を近づけた。

くんくん、すんすん。

そう聞こえるほど顔を胸に埋めて香りをかがれると、いきなり姉弟子は顔を八一の顔に向けた。

疑問を浮かべる八一に対し、やけに暗い瞳で問いかける。

「シャンプーの香りがする。お風呂入ったの?」

「ああ、昨日は忙しくてね。ついさっき入ったけど?それが何か?」

「女と入ったの?」

「何でだよ、小さいとはいえ初めて会った女の子とは入らないだろ?」

「…………?小さい…………女の子?」

えっ、そこから?と思いながらも、八一は説明した。

前に話した、前回の竜王戦から将棋を指南した、小さな弟子候補の事を。

姉弟子は目の前でぶつぶつアウト…………いやセーフ?と呟いている。

後、なんか師匠の名前を出して悪いことしたわね…………とか言ってるが、スルーしよう。

無駄に藪をつついて蛇を出すのは、趣味じゃない。

すると、浴室の方向から、何か声が。

『師匠…………師匠の胸に顔を埋めている、その不埒な女、誰ですか…………』

あれ?可笑しいな?お風呂に入っているのは笑顔が可愛い女の子で、こんな声を聞くだけで常人が震え上がる声を出すわけないんだが。

確認の為に顔を向けると、何故か全裸で目が暗いあいちゃんが近づいてくる。

はぁ。

ため息一つつくと、肩にかけていたタオルを外し、ふわりと頭にかける。

そして、優しく髪を拭きながら、あいちゃんに滔々と諭した。

「あいちゃん、いくら室内が暖かいとはいえ、濡れたままだと風邪引いちゃうよ。バスタオル置いておいたでしょ」

姉弟子を胸に押し付け、少々無理な体制で横に上半身をひねり、あいちゃんの頭を拭いてあげる。

流石に小学生の裸体を見て興奮するほど飢えてはいないが、はしたないとは感じる。

それが師匠となる自分への信頼が理由だとしても、いや、だからこそ指導しなければ。

あいちゃんも解ってくれたのか自分が頭を拭き始めたら、静かにされるがままになっている。

時折聴こえる『んっ!…………んぅぅ…………』という声は、他人に頭や首元を拭かれるくすぐったさからくるものだろう。

何か胸近くにいる姉弟子は、何が苛立つのか、『やはり…………敵!』とか○ンダムのようなこと呟いてるし。

やれやれ、朝っぱらから慌ただしいな。今日は。

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【鋼の竜王】八一先生がやらかしたら上げる裏スレPart209【勝利オメ】

1 名前:名無しの将棋好き氏

・前スレより続けて

①このスレの話題を通常スレに持ち出してはいけません。

②パスワードは将棋会館でお伝えします。入りたい人はツイート下さい。

③表スレに突撃したら予告無く垢バンします。


14 名前:名無しの将棋好き氏
そう言えば疑問なんだが。八一先生の最新の二つ名の『鋼の竜王』由来は、何度負けても諦めないバイタリティーの高さが理由でおk?

16 名前:名無しの将棋好き氏
>>14 半分正解やな、その意味で使われる事がメディアでは多いのは確か。だが俺たちが使うのは違う

17 名前:名無しの将棋好き氏
>>14 メディアに煽られようが、本人に積極的なアプローチかけられようが、さらりと流す『鋼』の鈍感力、それが鋼の由来やで。
    
18 名前:名無しの将棋好き氏
>>16・17 仲良しか!

19 名前:名無しの将棋好き氏
でもあれやな、普通そんな事をしたらひんしゅく買いそうだけど、良くもってるね。

20 名前:名無しの将棋好き氏
>>19 ウン、ソウダネ。

21 名前:名無しの将棋好き氏
>>19 ウン、ソウダネ。

22 名前:名無しの将棋好き氏
>>19 ウン、ソウダネ。

23 名前:名無しの将棋好き氏
>>19 ウン、ソウダネ。

24 名前:名無しの将棋好き氏
>>19 いたいけな中学生の女性への距離感を壊す……嫌な、事件だったね…………。

25 名前:名無しの将棋好き氏
>>24 何、その古参だけ知ってるノリは?教えてよ。

26 名前:名無しの将棋好き氏
>>25 『八一』『シューマイ先生』『デビュー戦』『ショタコン』、このワードで察しろ。

27 名前:名無しの将棋好き氏
>>26 通報しなきゃ(使命感)

28 名前:名無しの将棋好き氏
>>27 八一先生はコメント出していない&次戦から抜群の成績出してるから被害者ではない→セーフ理論やぞ。
藻女板はパンクしたが。

29 名前:名無しの将棋好き氏
>>28 前スレと同じく最後の矢印がおかしいんだよなあ……当時中学生の男子を二十歳半ばの女が食うとか、逆ならギガドリルブレイク並みに掘り下げられるだろ

32 名前:名無しの将棋好き氏
>>29 皆、言いたいことは分かるが、今のところ、この件は限りなく黒に近いブラックだから…………

33 名前:名無しの将棋好き氏
>>32氏 本音出てる。グレーじゃなくてブラックになってる(棒)

35 名前:名無しの将棋好き氏
>>33 草www

36 名前:名無しの将棋好き氏
>>33 草www

37 名前:名無しの将棋好き氏
>>33 草www

40 名前:名無しの将棋好き氏
あかんやんけ(白目)

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後書き
シューマイ先生『○貞と○女で、等価交換だから(震え声)』 

 

五話~盤外戦後編と新たな戦い

 
前書き
桂香『お父さん、八一君の予備の靴紐が全部切れてます』

鋼介『なん…………やと…………』 

 


その後、八一を挟んで尚も喧嘩をしようとした二人に、流石に八一は突っ込んだ。

『二人とも、少し静かに』

声を荒らげたわけでも、怒鳴ったわけでもない。

だが、八一の声に込められた、『圧』のようなものに、二人は一瞬で、『気を付け』の姿勢をとる。

はぁ、と溜息一つついて、八一は続ける。

「まず、あいちゃん、着替えなきゃ風邪引いちゃうよ。後でこのお姉さんとの関係は話すから、直ぐに更衣室戻りなさい」

「…………師匠…………はい…………」

何か言いたかったようだが、師匠と呼ぶ自分の面目を考えて、すぐにあいちゃんは更衣室に戻ってくれた。

そして、姉弟子…………つまり銀子にも、先程の強い言葉とうってかわって、優しい言葉を紡ぐ。

「話は聞きますから…………机で話しましょう?」

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事情を聞いた八一は、頭を抱えた。

「どんな事故が起これば、そんな捻れた伝言ゲームを起こすんですか…………姉弟子」

その八一の言葉に、流石にばつが悪そうな顔をして銀子は返す。

「だって…………八一が心配で…………」

その言葉に、八一は苦笑する。

八一が銀子を『姉弟子』というのは、恩師に先に弟子入りしていた事もあるが、根本には、銀子の世話焼き癖がある。

八一が今の立場につく前、もっと心身共に弱く、情けない男であった時。

その時も、銀子は八一を心配して、様子を見に来たり、活を入れてくれた。

だから、彼にとっては、例え年下でも、銀子は『姉弟子』なのだ。

「という訳で、姉弟子に話した通り、疚しいことはございません」

きっぱりと話す八一に、銀子は小さく、コクコクと頷く。

「分かった。『八一は』信じる」

言外に弟子入り志願のあいを信じないというスタンスに、八一は正直、戸惑った。

おかしい?そんなに頑なだったかな?

「姉弟子?いくらなんでも八歳の女の子に対してその態度は…………」

そう困って口にする八一の肩を、ガッと掴んで銀子は言う。

そう、わざわざ顔を近づけて、八一に教え諭すように。

「八一…………幾つでも、女は女だから」

その言葉の返事は、自分の後ろから来た。

「そうですね…………女は幾つでも女。母も言ってました」

底冷えする、あいの声が、背中側から響く。

あれ?これ近くない?密着してない?

前方の虎(銀子)、後門の狼(あい)

期せずして、その間に挟まれた、八一の運命はいかに!

そう、テレビならテロップが付くような状況を変えたのは。

八一の携帯の、着信音だった。 
 

 
後書き
加筆しますが、とりあえずここまで