英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇


 

プロローグ~放蕩皇子の最後の悪あがき~

七耀歴1206年、1月20日――――





エレボニア内戦終結から約1年半。



大陸最大の貿易都市クロスベル自治州を東の大国にして宿敵カルバード共和国と領有権争いをしていたエレボニア帝国であったが、約1年半前に起こった内戦にて戦力、国力共に大きく落とす事になった。



それは――――内戦の最中、四大名門の一角、”アルバレア公爵家”の当主が手柄欲しさに唯一貴族連合軍の魔の手から逃れていたエレボニア帝国の皇女――――アルフィン・ライゼ・アルノール皇女を拉致する為にアルフィン皇女が藁にも縋る思いで頼った14年前の”百日戦役”にて突如現れた異世界の大国―――メンフィル帝国によって占領、そしてメンフィル帝国領化した事でメンフィル帝国に帰属した元エレボニア貴族にして、エレボニア皇家とも縁があるユミルの領主――――”シュバルツァー男爵家”に匿われていたアルフィン皇女が匿われている”温泉郷ユミル”を猟兵達に襲撃させた。



この襲撃によってアルフィン皇女は貴族連合軍の関係者によって、貴族連合の”主宰”である”四大名門”の一つ―――”カイエン公爵家”の当主であるカイエン公爵の元へと連れていかれ、更に領民達を守る為に自ら剣を取って猟兵達を撃退しようとしていたシュバルツァー男爵は逃げ遅れた領民達を人質に取られて戦えなくなり、そして猟兵達の発砲を受けて重傷を負った。



重傷を負ったシュバルツァー男爵であったが、幸いにも応急手当が早かった事や急所を外れていた事、また翌日にユミル襲撃の報を知って事情を聞く為にシュバルツァー男爵の跡継ぎであり、メンフィルの次代の女帝、リフィア・イリーナ・マーシルン皇女の親衛隊に所属しているリィン・シュバルツァーやリィンの婚約者達、そして前メンフィル皇帝にして現メンフィル大使であるリウイ・マーシルンと共にユミルを訪問したリウイの側室の一人であり、異世界の宗教の一つ―――アーライナ教の”神格者”であるペテレーネ・セラとリィンの婚約者の一人にしてリィンに力を貸している古神―――”慈悲の大女神”アイドスの治療によって、事なきを得た。



そしてユミルが襲撃された理由を知ったメンフィル帝国はリベール王国の王都、グランセルに存在するエレボニア帝国の大使館を通してエレボニア帝国にユミル襲撃に対する謝罪や賠償を求めたが、貴族連合側はメンフィル帝国の要求に対して一切応えず、その結果メンフィル帝国はエレボニア帝国に宣戦布告し、内戦で混乱しているエレボニア帝国侵略を開始した。



新兵器、”機甲兵”によって正規軍を圧倒していた貴族連合軍であったが”ゼムリア大陸真の覇者”の異名を持つメンフィル帝国軍の前には為す術もなく殲滅され続け、僅か1週間でエレボニアの”五大都市”である”バリアハート”と”オルディス”に加えて貴族連合軍の旗艦であった”パンダグリュエル”が占領され、更に戦争勃発の元凶である現アルバレア公爵―――ヘルムート・アルバレア公爵夫妻、貴族連合軍の総参謀であり、アルバレア公爵家の跡継ぎでもあったルーファス・アルバレア、”領邦軍の英雄”の一人として称えられていた武人―――”黄金の羅刹”オーレリア・ルグィン将軍、カイエン公爵家の跡継ぎであったナーシェン・カイエンと結社”身喰らう(ウロボロス)”を始めとした貴族連合軍の”裏の協力者”の約半数が討ち取られるという大損害を受けた。



貴族連合軍が殲滅され、エレボニア帝国がメンフィル帝国に占領されるのも時間の問題かと思われていたが、エレボニア皇家である”アルノール皇家”に対して罪悪感を感じ続けているシュバルツァー男爵夫妻の為に両帝国の戦争を”和解”という形で終結させることを決意したリィンの戦争での活躍によって、エレボニア帝国は多くの領土をメンフィルに贈与する事や”帝国の至宝”と称えられていたアルフィン皇女をメンフィル帝国の関係者に嫁がせる等数々のメンフィル帝国が要求した条件を呑み、”和解”という形で終結した。



メンフィル・エレボニア戦争終結後、メンフィルが要求した和解条約によってリィンを始めとしたメンフィルが結成した少数精鋭部隊―――”特務部隊”がエレボニアの内戦に介入し、特務部隊と特務部隊の指揮下に入ったトールズ士官学院の学生達や正規軍、そして貴族連合軍から脱退した領邦軍がメンフィル・エレボニア戦争の最中にメンフィルが貴族連合軍から拉致したアルフィン皇女を旗印にした連合軍を結成し、貴族連合軍によって占領されている帝都ヘイムダルを奪還、更に幽閉されていたユーゲント皇帝達を救出、そして貴族連合軍の”主宰”であるカイエン公爵を討ち取った事でエレボニアの内戦は終結した。



内戦終結後、エレボニアにとって青天の霹靂の出来事が起こる。それは――――”クロスベル独立国”を建国したクロスベルの大統領、ディーター・クロイス政権に対して反旗を翻した”六銃士”達によってディーター・クロイス政権は瞬く間に倒れて”クロスベル帝国”が建国され、クロスベル帝国はメンフィル帝国と同盟を組んで東の大国、カルバード共和国を占領し、占領した領地をメンフィル帝国と分けて自国の領土と化し、更にメンフィル帝国との和解条約で贈与した元エレボニア帝国の領地の一部をメンフィル帝国が贈与された事だった。これらの出来事によってかつて領有権争いをしていたクロスベルに”下克上”をされてしまい、クロスベルはメンフィルに次ぐ名実ともに大陸最大の国家へと成長した。



内戦の最中に起こったメンフィル帝国との戦争による事実上の”大敗北”、クロスベルによる下克上、そしてメンフィル帝国に要求された和解条約の実行等によってエレボニア帝国は内戦以上の混乱の極みに陥りかけたが、内戦勃発直前に射殺されたと思われていたギリアス・オズボーン宰相がエレボニア帝国政府に復帰して指揮を取り、最小限の被害で混乱を治めた。



数ヵ月後、エレボニア帝国は大きく落とした国力を少しでも回復させる為に、ユミルを襲撃した張本人である”北の猟兵”達が所属している北方のノーザンブリア自治州に”北の猟兵”がエレボニア帝国が衰退する事になってしまったメンフィル帝国との戦争勃発の原因の一端を担っている事を理由に侵攻し、新たなエレボニア帝国領として併合した。



そして貴族連合軍の敗北とオズボーン宰相の復帰により、帝国政府による中央集権化が加速し、税制も統一されることで、貴族に統治されていた地方は混乱・弱体化し、またノーザンブリア自治州に侵攻、併合化した事でアルフィン皇女が当時ゼムリア大陸に一時的に降臨した”空の女神”エイドスの前で誓った条件を反故に近い行動を取った事からエレボニア帝国と七耀教会との関係が険悪化した事によって新たな問題も生まれつつあった。



そんな中―――かつて内戦で暗躍し、退けられ、リウイを始めとしたメンフィル帝国の精鋭部隊や諜報部隊によってトップである”盟主”や多くの”蛇の使徒”が暗殺され、更に”蛇の使徒”の一人にして”結社最強”の武人―――”鋼の聖女”アリアンロードの結社からの脱退、並びにメンフィルへの寝返りによってもはや崩壊したと思われていた結社”身喰らう(ウロボロス)”の残党や亡霊が、数多の猟兵団の動きに紛れるように、エレボニア帝国で密かに動き出そうとしていた。



エレボニア帝国に新たな動乱が起ころうとしている中、内戦終結後オズボーン宰相がエレボニア帝国全土を掌握し、大きく落とした国力を回復させる為の周辺地域への侵攻・領土拡大が推し進められる中、オズボーン宰相の政略によってヴァンダール家がアルノール皇家の守護職を解かれた事によって己の権限が弱体化されてしまった事を悟り、またトールズ士官学院の完全な軍事学校化を知ったオリヴァルト皇子は”最後の悪あがき”として”第Ⅱ分校”の設立を提唱し、更にオズボーン宰相に対抗すべく、エレボニア帝国内だけでなく、リベール、クロスベルとかつて自身が関わった”リベールの異変”や”影の国”事件時で培った人脈に自身への協力を働きかけ続け、最後に自身への協力者として必須である人物に協力してもらう為にその人物が所属しているメンフィル帝国の大使を務めているリウイを訪ねていた。



~リベール王国・ロレント市郊外・メンフィル大使館~



「―――お久りぶりです、リウイ陛下。メンフィル・エレボニア戦争が終結してからまだ2年も経っていないにも関わらず、元”敵国”であったエレボニア皇族の一員である私の訪問に応えて頂き、誠にありがとうございます。」

「……エレボニアが和解調印式で調印した”和解条約”を全て実行したのだから”俺自身”は今更ユミルの件を蒸し返すつもりはない。一体何の用でここに来た。」

会釈をしたオリヴァルト皇子の言葉に対して静かな表情で答えたリウイは真剣な表情になって問いかけた。

「……実は今日こちらを訪ねさせて頂いたのはリウイ陛下―――いえ、メンフィル帝国に協力して頂きたい事がありまして。」

「メンフィルに協力だと?その協力する相手はエレボニアか?それともお前自身か?」

オリヴァルト皇子の答えを聞いて眉を顰めたリウイは再度問いかけた。

「勿論私自身への協力です。実は―――――」

そしてオリヴァルト皇子はリウイにトールズ士官学院の分校である”第Ⅱ分校”を設立した事やその理由を説明した。



「―――なるほどな。それがお前の”最後の悪あがき”……か。しかしそうなる前に何故”鉄血宰相”を排除しなかった?”特務部隊”による活躍で”貴族派”に加えて”革新派”も一時的に衰退し、更に”鉄血宰相”自身内戦終結に何の貢献もしていない所か正規軍の指揮権を持っている”宰相”としての働きすらもしなかったのだから、それを理由に奴を帝国政府から完全に追放できる絶好の機会だったはずだ。」

「ハハ………やはりその件について聞かれると思いました。宰相殿を追放しなかった理由は二つあります。一つは私自身、内戦終結後に起こるエレボニアの混乱を鎮める為には宰相殿の協力も必要と思った私の甘さです………」

リウイの指摘に対してオリヴァルト皇子は疲れた表情で答えた。

「……その結果国内の混乱を最小限の被害で治める事はできたようだが、”北方戦役”やエレボニア内戦勃発、そしてメンフィル・エレボニア戦争勃発の原因の一端を”零の至宝”が担っている事を理由に、クロイス家が”零の至宝”を創る原因となった至宝を”空の女神”がクロイス家の先祖に授けた事を理由に、リベールのようにエレボニア帝国政府や皇家を庇う宣言を”空の女神”がする事を要請した事で”空の女神”の逆鱗に触れた挙句七耀教会との関係は険悪化したのだから、お前の言う通り、奴に頼る事は浅はかな考えだったようだな。」

「返す言葉もありません………まさか宰相殿がわざわざ私やミュラー君を訊ねて来てくれた”空の女神”達と面会した挙句、内戦やメンフィルとの戦争勃発の責任を”空の女神”にまで押し付けて、”空の女神”に帝国内で起こった混乱を鎮める為の宣言をするように要請―――いや、強要するというまさに言葉通り”神をも恐れぬ”行動をするとは、完全に想定外でした………」

「フッ、だがそんな”鉄血宰相”の”強要”もあのエステルの先祖である”空の女神”相手では何の意味もない―――いや、むしろ”逆効果”だったようだがな。」

「ハハ、それに関しては同感です。”空の女神”が宰相殿の自身に対する主張を否定した上、宰相殿自身がエレボニアが衰退する原因の一端を担っている事を真っ向から指摘し、更に”空の女神”である自身に協力を強要した事を理由に、自身に協力を強要した事を土下座で謝罪し、再び協力の強要や自身や周りの者達に対する暗躍をしない事を約束しなければ宰相殿―――いえ、”革新派”に所属している人達全員を”外法認定”かつゼムリア大陸歴史上初の”神敵認定”すると宰相殿を”脅迫”した上宰相殿に命中しないギリギリの距離で大技を放って部屋の大部分を破壊して、宰相殿をその場で土下座させて謝罪させ、約束させた事を聞いた時はさすがはあのエステル君の先祖だと思いましたし、胸がスッとしましたよ。」

不敵な笑みを浮かべたリウイの話を聞いてかつての出来事を思い出したオリヴァルト皇子は苦笑していた。

「……それで?もう一つの理由は……――――ユーゲント皇帝か。」

「ハハ、さすがリウイ陛下ですね。父上は私以上に宰相殿の協力が必要と判断し、宰相殿を復帰させたのです………――――最も”空の女神”の件も含めて、今では宰相殿を復帰させた事を後悔しているような節は見られますがね………」

リウイの問いかけに対して答えたオリヴァルト皇子は疲れた表情で溜息を吐いた。



「話を戻すが……メンフィルに協力して欲しい事とは一体なんだ?今まで聞いた話から推測すると”第Ⅱ分校”が関わっているようだが……」

「……遠回しな言い方はせず、直截に答えさせて頂きます。メンフィル・エレボニア戦争で生まれた英雄にしてエレボニアの内戦終結に大きく貢献したメンフィルとエレボニア、両帝国の英雄――――リィン・シュバルツァーを始めとしたメンフィル帝国に所属している方達に一時的で構いませんので”第Ⅱ分校”の”教官”を務めて欲しいのです。」

リウイに話の続きを促されたオリヴァルト皇子は決意の表情になって答えた。

「何?リィン・シュバルツァー達を”第Ⅱ分校”の”教官”にだと?理由はなんだ。」

「理由は……宰相殿に対抗する為にはかつての”Ⅶ組”―――いや、あの時以上のように”第三勢力”による”風”を吹かせる必要があるからです。ちなみにこちらを訊ねる前にリベールやクロスベルにいる私の知人達にも訊ねて理由を説明して協力を嘆願し、その嘆願に応えて頂きました。」

「リベールだけでなく、エレボニアにとっては新たなる”宿敵”となったクロスベルにまで協力の嘆願をするとはな……よく”鉄血宰相”による横槍が入らなかったな?」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたリウイは興味ありげな表情で訊ねた。

「ミュラー君達――――”ヴァンダール家”がアルノール皇家の守護職を解かれた事で、もはや私は取るに足らない相手か、もしくは”放蕩皇子”の”最後の悪あがき”と判断して私を泳がせる為に敢えて横槍を入れなかったかもしれません。」

「…………ちなみにリベールとクロスベルの関係者は誰が”第Ⅱ分校”に関わる事になっている?」

「リベールからはティータ君が”第Ⅱ分校”の留学生として留学し、アガット君はティータ君を守る為かつ”ハーメルの惨劇”の真相を探る為にまだ残存している帝国の唯一のギルドの助っ人としてとして帝国入りする事になりましたし、クロスベルはギュランドロス皇帝が”戦術科Ⅷ組”の担当教官に、リィン君と同僚であった”あの”特務支援課のランディく―――いや、ランドルフ君がギュランドロス皇帝を補佐する”Ⅷ組”の副担当教官として一時的に就いてくれることになりました。」

「……おい。何故一国の皇帝が―――それもエレボニアに憎悪を抱かれている皇帝の一人が”第Ⅱ分校”の教官を務める事になったのだ?」

オリヴァルト皇子の話を聞いてあるとんでもない事実に気づいたリウイは表情を引き攣らせて指摘した。



「いや~、ヴァイス―――ヴァイスハイト皇帝にランドルフ君を”第Ⅱ分校”の教官として派遣する依頼の話をした際に同席していたギュランドロス皇帝が『”仮面の紳士ランドロス・サーキュリー”再臨の時が来たぜ!』と突然言い出して、担当教官を申し出てくれたんですよ。ちなみにランドルフ君は副担当教官です。」

「………意味がわからん………というかよくヴァイス達はそんな理由で皇帝自らが他国の士官学院の教官になるという前代未聞の出来事を許したな……」

苦笑しながら答えたオリヴァルト皇子の説明を聞いたリウイは頭を抱えて呟いた後疲れた表情で溜息を吐いて自身の疑問を口にした。

「ハハ、ヴァイス曰く『ギュランドロスの型破り過ぎる行動にまともに付き合う必要はないし、ギュランドロスのバカな行動は止めようとする方が時間の無駄だ』と言って投げやりな様子で賛成しましたし、ギュランドロス皇帝に元々仕えていた”三銃士”の人達も『またギュランドロス様の悪い癖が始まった』と苦笑いしていました……まあ、エルミナ皇妃だけは猛反対していましたけど、最後は折れてギュランドロス皇帝の説得を諦めました。」

「…………………それで?先程リィン・シュバルツァーを始めとしたメンフィル所属の者達を派遣して欲しいと言っていたが、後は誰を何の役割として派遣して欲しいのだ?」

オリヴァルト皇子の話を聞いて当時の光景を想像したリウイは表情を引き攣らせたがすぐに頭の片隅に追いやって話を戻した。

「―――こちらのリストに乗っている人物達にそれぞれの役割に就いて欲しいのです。」

そしてオリヴァルト皇子は一枚の紙をリウイに渡した。





”第Ⅱ分校特務科Ⅶ組”担当教官 リィン・シュバルツァー 





”第Ⅱ分校主計科Ⅸ組”担当教官 レン・ヘイワーズ・マーシルン





”第Ⅱ分校宿舎”管理人 アルフィン・シュバルツァー





”第Ⅱ分校校長” リアンヌ・ルーハンス・サンドロッド





「……………おい。リィン・シュバルツァーの件は一端置いておくとしても何だ、この人選は?お前はエレボニアに新たな混乱を巻き起こすつもりか?」

紙に書かれてある人物の名前や役職に目を通したリウイは頭痛を抑えるかのように片手で頭を抱えてオリヴァルト皇子に問いかけた。

「ハハ、今の宰相殿を相手にするには。常識では考えられない人達の協力が必要だと判断した事もそうですがギュランドロス皇帝が”第Ⅱ分校”に来る時点でリウイ陛下の指摘は”今更”だと思いましたので、開き直ってその人選にしました♪」

「ハア……………それにしても和解条約でリィンに降嫁した事でエレボニアから完全に退場したアルフィン皇女―――いや、アルフィン夫人まで関わらせようとするとは……まさか”鉄血宰相”を排除した後のエレボニアの政治にアルフィン夫人を関わらせる為の足掛かりにするつもりか?」

オリヴァルト皇子の答えを聞いて疲れた表情で溜息を吐いたリウイだったが、すぐに気を取り直して目を細めてオリヴァルト皇子に問いかけた。

「いやいや、家族を―――妹を政治利用すると言った愚かな事は一切考えていません。もし、そんな事をすれば私はアルフィンに嫌われる上、メンフィルに加えてリィン君達にも完全に敵対視されますしね。………”第Ⅱ分校”の件にアルフィンまで関わらせる理由は色々とありますが……一番の理由はセドリックを思いとどまらせる為です。」

「セドリック皇太子だと?…………そう言えば、退院後のセドリック皇太子はまるで別人のように随分と様変わりしたそうだな。」

オリヴァルト皇子の話を聞いて眉を顰めたリウイだったが、ある事を思い出して真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめた。

「…………はい。今のセドリック皇太子は昔の面影が全く見えない程逞しくなり、自信をみなぎらせているのです。」

「衰退したエレボニアの次代の皇帝として期待できる器へと成長した事はエレボニアとしても、心強いのではないか?―――いや、お前はセドリック皇太子の急変に危機感を抱いているのか。」

「ええ…………セドリックに一体何があって、あのように変貌したか未だにわかりませんが………今のセドリックは時折宰相殿と重なるように見える事があるんです。それにヴァイス達――――”クロスベル帝国”を敵対視しているような様子を見せる所か、1年半前の”和解条約”や内戦の件でアルフィンに対する皮肉な発言をした事もあるのです………」

リウイの推測にオリヴァルト皇子は辛そうな表情で頷いて答えた。



「…………………アルフィン夫人を再びエレボニアに関わらせようとするのは、セドリック皇太子にアルフィン夫人が自身と帝位継承争いする為に再びエレボニアに姿を現したと錯覚させてセドリック皇太子の野心や暴走を思いとどまらせる為か。」

オリヴァルト皇子の話を聞いて厳しい表情で考え込んでいたリウイはオリヴァルト皇子に問いかけた。

「はい。」

「………俺はセドリック皇太子を思いとどまらせる所か、むしろ逆にその事でセドリック皇太子が焦り、己の心に秘めていた野心をさらけ出して暴走する後押しになると思うがな。」

「それならそれでいいんです。後になればなるほど、”後戻りができない事”へと発展する可能性が高いでしょうから、そうなる前に対処すれば、セドリックがやり直せる機会が訪れる可能性を残せます。」

リウイの指摘に対してオリヴァルト皇子は決意の表情で答えた。

「……ほう?まさかセドリック皇太子を千尋の谷へと突き落とす事を考えているとは……正直驚いたぞ。」

オリヴァルト皇子の答えを聞いたリウイは興味ありげな表情でオリヴァルト皇子を見つめた。

「……正直な所、今でも迷っています。ですが、”その程度の覚悟”を持たないとエレボニアは滅びの道を歩んでしまう……私はそう思っているんです。」

「………………仮にセドリック皇太子の野心が暴走し、その暴走を未然に食い止めたとしても、セドリック皇太子は責任を取る為によくて帝位継承権剥奪。最悪は廃嫡や自害もありえる事はわかっているのか?」

「勿論わかっています。もしそうなった時でも最悪セドリックの命が失われる事は絶対に阻止するつもりです。」

「ユーゲント皇帝の跡継ぎはどうするつもりだ。もし唯一の帝位継承権を所有しているセドリック皇太子の帝位継承権が剥奪されるような事があれば、ユーゲント皇帝―――次代のエレボニア皇帝に即位できる者がいなくなる事態に陥る事はお前もわかっているはずだが?」

「その時は…………――――リィン君とアルフィンの間に産まれてきた子供を次代のエレボニアの皇帝にする事を父上や帝国政府に提案するつもりです。アルフィンは元々帝位継承権を所有していたのですから、アルフィンの子供ならば帝位継承権を所有する”資格”はあります。」

「…………二人の子供を次代のエレボニア皇帝に即位させる………それはどういう意味を示しているのか、理解して言っているのか?」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたリウイは目を細めてオリヴァルト皇子に問いかけた。



「はい。リィン君とアルフィンの子供がエレボニア皇帝として即位した場合、エレボニアの民達がその事実を受け入れやすくする為の下準備……それがリィン君達を”第Ⅱ分校”に派遣してもらう為の私がメンフィルに提示する”対価”です。」

「……………………………確かトールズ士官学院の”本校”は2年で卒業だったな。分校も同じなのか?」

オリヴァルト皇子の答えを聞き、少しの間目を伏せて考え込んでいたリウイは目を見開いてオリヴァルト皇子に訊ねた。

「ええ、”第Ⅱ分校”も単位を落とさなければ2年で卒業する事になっています。」

「そうか……………――――2年だ。」

「え………」

突然答えたリウイの言葉の意味がわからなかったオリヴァルト皇子は呆けた声を出したが

「2年間だけ、皇子の望み通りリィン達を派遣してやる。その間に”鉄血宰相”やセドリック皇太子との決着をつけろ。」

「!!寛大なお心遣い、心より感謝致します……!必ずや陛下のご期待に応えますので、どうかリィン君達の派遣の件、よろしくお願いします……!」

やがてリウイが自分の要望に応える事に気づくと頭を下げて感謝の言葉を述べた。

「―――ただし、条件が二つある。その条件を呑めるなら、俺がリィン達の説得を必ずする事を確約してやる。」

「……ちなみにその条件とは?」

しかしリウイの口から出た答えを聞いたオリヴァルト皇子はすぐに真剣な表情になってリウイを見つめて続きを促した。



「一つ目の条件はリィン達の”補佐役”として、こちらが選定した人物達にも”第Ⅱ分校”に何らかの形で関われるように手配する事だ。なお、その人物達の”第Ⅱ分校”での役割はこちらが指定する。」

「そのくらいでしたら構わ―――いえ、むしろ私としてもありがたいので、是非お願いします。もう一つの条件とは何でしょうか?」

「もう一つの条件はエレボニア帝国の政府、軍関係者による”命令”に対して補佐役を含めたメンフィルから派遣された者達が拒否権を発動できる特権をユーゲント皇帝に認めさせておく事だ。」

「フッ、その点はご安心下さい。既にヴァイス達からもその条件が出され、父上を説得して認めさせましたし、その際にメンフィルも認めるように説得致しました―――――」

リウイが口にした条件の内容を知ったオリヴァルト皇子は安堵し、静かな笑みを浮かべて答えた。





3月31日――――





~メンフィル帝国領バリアハート市・バリアハート駅~



お待たせしました。ヘイムダル行き旅客列車が参ります。白線の内側までお下がり下さい。



「………来たか。」

数ヵ月後、バリアハートの駅構内で列車を待っていた真新しい教官の服装を纏ったリィンは放送を聞くと静かな表情で呟き

「確かレン皇女殿下達は先にリーヴス入りしているのでしたわね?」

「ええ。それよりもセレーネ、学院にいる間はレン皇女殿下達の事は”教官”や”分校長”と呼ぶように心がけた方がいいと思うわよ。」

「あ……そうでした。ご指摘、ありがとうございます、エリゼお姉様。」

女性用の真新しい教官服を身に纏ったセレーネはエリゼに指摘されるとエリゼに感謝の言葉を述べ

「ふふっ、”第Ⅱ分校”に入学した学院生達は”分校長”を含めたお兄様が集めた分校の関係者の面々を知れば、きっと驚くでしょうね♪」

「むしろ驚かない方がありえないかと。」

真新しいメイド服を身に纏っているアルフィンの言葉を聞いた真新しい学生服を身に纏っているアルティナはジト目で指摘し

「あの……アルフィンさん自身も驚かれる存在だと思われるのですが……」

「祖国の皇女が宿舎の管理人をするなんて、絶対に誰も信じられない出来事だものね……」

苦笑しながら指摘したセレーネの言葉に同意するかのようにエリゼは呆れた表情で呟いた。

「フフッ、今のわたくしは旦那様―――エレボニアとメンフィル、両帝国の英雄にして未来のクロイツェン統括領主であるリィンさ―――いえ、ロード=リィンの妻の一人ですわ♪」

「う”っ……頼むから俺を”英雄”とか”ロード”とか呼ぶのは勘弁してくれ、アルフィン……」

微笑みながら答えたアルフィンの言葉を聞いたリィンは唸り声を上げた後疲れた表情でアルフィンに指摘した。

「ふふっ、わたくしは事実を言っただけですわよ?――――これからの宿舎生活によるリィンさんを含めた皆さんへのお世話で迷惑をかけるかもしれないけど、よろしくね、エリゼ。」

「ええ、こちらこそよろしくね、アルフィン。」

「ハハ……さてと、行こう、みんな。”リーヴス”へ――――」

アルフィンとエリゼのやり取りを微笑ましく見守っていたリィンは到着した列車にエリゼ達に乗るように促し

「「「「はい!」」」」

リィンの言葉にエリゼ達は頷いた後列車に乗りこんだ。





こうして再びエレボニアの運命に関わる事になったリィン達を乗せた列車はエレボニアで新たなる”軌跡”を描く者達にとっての始まりとなる地に向かい、走り出した――――――
 

 

第1話

~近郊都市リーヴス~



「ここがリーヴスですか………」

「どことなくトリスタと似ている町だな……っと。あれがそうか。話に聞いていた通り、確かにまだ完成したばかりの施設みたいだな。」

駅から降りたセレーネは初めて見る光景を興味ありげな様子で見回し、リィンはかつて関わったある町を思い出した後町の奥に見える建物に気づいた。

「えっと……ヴァリマールさんは敷地の格納庫に運んでくれるとの事ですわよね?」

「ああ。」

「マスター。」

「ん?どうしたんだ、アルティナ。」

セレーネの言葉にリィンが頷いたその時アルティナがリィンに声をかけ、声をかけられたリィンはアルティナに視線を向けた。

「わたしは先に学院に向かいます。入学案内に書いてあった”生徒”の分校の入学式の集合時間が迫っておりますので。」

「兄様、私達も宿舎の方に向かいますのでお先に失礼します。」

「ああ、わかった。みんな、また後でな。」

アルティナとアルティナに続くように答えたエリゼの言葉にリィンは頷いた。

「ふふっ、今日から2年間、お互いに頑張りましょうね、旦那様♪」

「ムッ………」

「ア、アハハ………」

「えっと……せめて生徒達の前でその呼び方で俺を呼ぶのは止めてくれないか、アルフィン。何て言うか……公私混同しているように見えて生徒達に教官としての示しがつかないし。」

アルフィンのリィンに対する呼び方を聞いたエリゼがジト目になり、エリゼの様子を見たセレーネが苦笑している中リィンは困った表情でアルフィンに指摘した。

「ふふっ、そうですか?わたくしと旦那様の関係が”夫婦”である事は周知の事実なのですから、わたくしは別にわざわざ呼び方を変える必要はないと思っていますわ。」

「……まあ、確かに少なくてもエレボニアの人々にとってマスターはアルフィン様との関係の件も含めて”あらゆる意味で有名”ですから、マスター達の”夫婦”としての関係を生徒達が見てもあまり驚かないと。」

「ア、アルティナさん。」

「それでもエレボニアの人々は確実に驚くわよ……アルフィンは”元”エレボニアの皇女で、”帝国の至宝”の名で有名な事もあるけど、アルフィンはエレボニアがメンフィルと和解する為―――つまり政略結婚で”仕方なく”兄様に嫁いだ事になっているのだから……」

アルフィンの言葉に同意しているアルティナの様子にセレーネが冷や汗をかいている中、エリゼは疲れた表情で呟いた。

「うふふ、だったらいっそ”仕方なく”旦那様に嫁いだはずのわたくしが旦那様との仲がとても良好である事を見せる事で、わたくしの事を心配してくださったエレボニアの人々を安心させるべきかもしれませんわね♪」

「頼むから、プライベートはともかく俺との関係は生徒達の前や公の場では宿舎の管理人として振る舞ってくれ………」

からかいの表情で答えて腕を組んで豊満な胸を押し付けてきたアルフィンの言葉と行動にエリゼ達が冷や汗をかいて脱力している中リィンは疲れた表情で指摘した。



「ふふっ、愛する旦那様の頼みなのですから、仕方ありませんわね。―――それでは”リィンさん”、わたくし達は一端失礼いたしますわ。」

「ああ。――――ベルフェゴール、リザイラ。以前に打ち合わせた通りアルフィンとエリゼの護衛、よろしく頼む。」

「ええ、大船で乗った気でいていいわよ♪」

「ふふふ、まあ私達の出番がない事が一番いい事なのですけどね。」

アルフィンの言葉にリィンは頷いた後ベルフェゴールとリザイラを呼び、呼ばれた二人はそれぞれリィンの身体の中から出て来た後リィンの指示に頷いた後それぞれ魔術で自身の姿を消してアルティナとは別の方向へと向かって行くエリゼとアルフィンの後を追って行った。

「リィン君にセレーネちゃん……?」

「え………」

「まあ……!トワさん、お久しぶりですわね……!」

突然聞こえた聞き覚えのある声にリィンが呆けている中、自分達に声をかけた人物―――トワに気づいたセレーネは目を丸くした後女性に微笑んだ。

「あははっ!うん、二人とも本当に久しぶりだね……!はあ~っ………リィン君は雑誌とかで見てはいたけど大人っぽくなったねぇ!セレーネちゃんも、以前の時より更に大人っぽくなったように見えるよ!」

「フフッ、そうですか?お兄様と違って、わたくし自身は身体の成長はしていないのですが……」

「ハハ、セレーネの場合は精神的に成長しているって意味だと思うぞ。―――って、ちょっと待ってください!どうしてトワさんがそんな恰好で俺達の就職先の街にいるんですか!?」

トワの言葉に苦笑しているセレーネを微笑ましそうに見守りながら指摘したリィンだったがある事に気づくと困惑の表情でトワを見つめた。その後リィンとセレーネはトワと共に学院に向かいながら、トワからトワがリーヴスにいる事情等を説明してもらった。



「はあ……まさかトワさんが分校の教官に就職していたなんて……」

「本当に驚きましたわね……」

「ふふっ、ごめんね。わたしの方は知ってたけど。でも、二人の方だってある程度は聞いてると思ってたよ。」

それぞれ驚いている様子のリィンとセレーネに苦笑したトワは話を続けた。

「いえ、2ヵ月前に突然”分校”の臨時教官に就くようにプリネ皇女殿下達を通してリウイ陛下から指示が来まして……この2ヵ月間、プリネ皇女殿下達の補佐に教官としての心構え等を学ぶ事も加わりましたから、俺とセレーネは色々と忙しかったので……」

「一応レン皇女殿下―――いえ、レン教官もわたくし達のように分校の臨時教官として赴任する事だけは説明されていますわ。」

「そうだったんだ……ふふっ、2年間だけとはいえ、リィン君達とまた一緒に協力し合う事になるなんて、わたしにとっては嬉しいサプライズだったよ。」

「トワさん……――――遅くなりましたが、改めましてご卒業おめでとうございます。」

「ご卒業おめでとうございます、トワさん。」

「……二人ともありがとう。ふふっ、ちょっと嬉しいな。わたしも二人にとっての『先輩』になったのだから。」

一端立ち止まってリィンとセレーネの祝福の言葉に微笑んだトワは嬉しそうな表情で二人を見つめた。

「ハハ、そうですね。―――改めてよろしくお願いします、トワ先輩。」

「お兄様共々、頑張りましょうね、トワ先輩。」

「えへへ……うん!」

リィンとセレーネの言葉に嬉しそうな様子で頷いたトワはリィン達と共に再び歩き始めた。



「それで……先輩は一足先に赴任したんですよね?トールズ士官学院の”分校”………実際どういう状況なんですか?」

「うん………二人ともここの臨時教官を務める話が出た時に色々な事を言われたと思うんだけど。多分、思っている以上に難しくて大変な”職場”だと思う。」

「それは………」

「そうですか……話を聞いて覚悟はしていましたが。”同僚”の方々とは一通り?」

リィンの質問に答えたトワの答えを聞いたセレーネは不安そうな表情をし、リィンは静かな表情で呟いた後質問を続けた。

「うん、もう挨拶して二人が最後になるかな。これから紹介するけど……その、心を強く持っててね?」

「え、えっと……それはどういう意味でしょうか?」

「………なんだか胃がキリキリしてきそうなんですが。」

トワの忠告にセレーネは表情を引き攣らせ、リィンは疲れた表情で呟いた。

「だ、大丈夫、大丈夫!わたしだって同じ立場なんだから!それに”同僚”の中には二人の”知り合い”もいるから、大丈夫だよ!」

「へ……俺達の”知り合い”、ですか?」

「それはレン教官以外の方を示しているのでしょうか?」

トワの言葉にリィンが呆けている中セレーネは不思議そうな表情でトワに訊ねた。

「うん、会えばわかるよ。同じトールズの教官として……かつて一緒に戦った”特務部隊”の仲間として力を合わせて乗り越えて行こうね!」

「ふう………了解です。―――っと、あれが………」

学院の正門に到着したリィンはセレーネと共に学院を見上げた。



「……デザインは違っても同じ”有角の獅子紋”なんですね。」

「うん、わたしたちの新たな”職場”の正門………――――ようこそ、リィン君、セレーネちゃん。ここリーヴスに新たに発足する”トールズ士官学院・第Ⅱ分校”へ――――!」

セレーネの言葉に頷いたトワは振り返って笑顔でリィンとセレーネに歓迎の言葉をかけた。



~トールズ第Ⅱ分校・本校舎・軍略会議室~



「――――よく来たな。リィン・シュバルツァー君にセレーネ・L・アルフヘイム君。鉄道憲兵隊所属、ミハイル・アーヴィングだ。出向という形ではあるが、本分校の主任教官を務める予定だ。」

トワの案内によって会議室に通された二人を迎えた金髪の青年――――ミハイル・アーヴィング少佐は自己紹介をした。

「ハハッ、まさかこんな形で再会する事になるとはな。―――久しぶりだな、リィン、姫。」

「ランディ!?ああ、久しぶりだな……!」

「フフッ、トワさんが言っていたわたくし達の”知り合い”とはランディさんの事だったんですね。」

「うん。確かランドルフ教官はディーター元大統領の”資産凍結宣言”がされるまでいた二人の”職場”の同僚なんだよね?」

赤毛の青年――――ランディは苦笑しながらリィン達に声をかけ、声をかけられたリィンは驚き、セレーネは微笑み、セレーネの言葉に頷いたトワはリィンとセレーネに訊ねた。

「はい。だけどどうしてクロスベル帝国軍に所属しているランディがエレボニアの士官学院の教官に?」

「それに関してはお前達と同じ理由による”出向”だよ。……ま、最初そこのお嬢ちゃんまで、俺達の”同僚”である事を知った時はマジで驚いたがな。」

リィンの疑問に苦笑しながら答えたランディはセレーネやトワのように女性用の教官服を身に纏っている菫色の髪の娘―――レンに視線を向け

「うふふ、その言葉、そのままそっくりお返しするわ♪レンもランディお兄さんを見た時は驚いたわよ♪」

「よく言うぜ……俺と会った時も『久しぶりね、ランディお兄さん。これから2年間、”同僚”としてお互いによろしくね♪』って言って、全然驚いていなかったじゃねぇか………どうせ俺達の事も予め”英雄王”達から聞かされていたか、クロスベルの時みたいにハッキングで分校の情報を手に入れたんだろう?」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの言葉に呆れた表情で呟いたランディは疲れた表情になってレンに訊ねた。

「クスクス、さすがランディお兄さん。ランディお兄さんの推測の”どちらか”は正解しているわよ♪」

(”どちらか”というか”どちらとも”と思うのですが………)

レンの答えにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中セレーネは心の中で苦笑していた。



「ハハ………え、えっと……それよりもランディに聞きたい事があるんだが……」

「ん?何を聞きたいんだ?」

「その………何で”その人”まで、この場に――いや、俺達の”同僚”なんだ?……というか、”色々な意味”で”その人”がこの場にいて大丈夫なのか?」

リィンは困った表情でランディの隣にいる仮面を付け、赤い鎧を身に纏っている大柄な男性に視線を向け

「んー?まさか俺の事で訊ねているのか?俺とお前達とは”初対面”だぞ?」

「いや、会った回数はそれ程ありませんでしたけど、実際に会って話もしましたし、オルキスタワーの奪還の時は俺やロイド達と共に協力してオルキスタワーを奪還しましたよね!?」

「ギュランドロス司令―――いえ、ギュランドロス皇帝陛下ですわよね?」

男性の答えにリィンは疲れた表情で指摘し、セレーネは冷や汗をかいて苦笑しながら男性に問いかけた。

「惜しいッ!我が名はランドロス・サーキュリーだ!二つ名は”仮面の紳士”!よろしくな、”灰色の騎士”!」

「え、え~と………ギュランドロス皇帝へ、いえ、ランドロス教官、でしたか?二つ程伺いたい事があるのですが……」

男性――――ランドロスの答えにその場にいる多くの者達同様冷や汗をかいて表情を引き攣らせたリィンは困った表情でランドロスに問いかけた。

「おう、何でも聞いてくれ!」

「その………ランドロス教官の二つ名は本当にそれでいいんですか?」

「”仮面の紳士”か?ハハァッ、いいに決まってんだろ。」

「完全に貴方の本来の二つ名ではありませんけど、それでいいんですか?」

「かっこいいだろ!」

リィンの質問に対してランドロスは胸を張って自慢げに答え、ランドロスの答えを聞いたリィン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「そ、そうですか。では最後に………その、あえて分校に来た理由は聞きませんけど、顔は仮面で隠したからいいとして、服装くらいは変えようと思わなかったのですか?」

「何が言いたいのか良くわからんが、赤とこの鎧には深~いこだわりがあってだなぁ………」

「…………(メサイア、ギュランドロス皇帝陛下が何を考えているか、わかるか?)」

(も、申し訳ございません。私もギュランドロス陛下のお考えは全く理解できません―――というか、そもそも私自身、ギュランドロス陛下と会話をした事があるのはこの世界に来てからですので………ギュランドロス陛下のお考えを理解できるとすればそれこそユン・ガソルの”三銃士”であったルイーネ様達くらいかと。)

自分の質問に対して答えたランドロスの答えに冷や汗をかいたリィンはメサイアに念話で訊ね、訊ねられたメサイアは疲れた表情で答えた。

「その……ランドロス教官の服装だけ、わたくし達と違いますけど、よろしいのでしょうか?」

「……正直な所全くよろしくない事だが、分校の長である”分校長”も認めている以上、”仕方なく”認めている。」

「うふふ、だったらレンも分校長に他の服装にしてもいいか、お願いしようかしら♪この教官服のデザインも悪くはないけど、毎日同じ服っていうのはレディとしてどうかと思うし。トワお姉さんもそう思わない?」

「え、えっと…………」

セレーネの質問に答えたミハイル少佐の答えを聞いたレンに話を振られたトワはどういう答えを返せばいいかわからず、困った表情で言葉を濁していた。

「先輩を困らせるのは止めてください、レン皇女殿―――いえ、レン教官。………ランディ。俺がおかしいのか、ランドロス教官がおかしいのか、どっちなのかわからないから、何とかしてくれ。」

「無茶言うなよな………お前達より付き合いが長い俺だって、未だにこのオッサンの事は全くわかんねぇんだぞ………というかリア充皇帝やルイーネ姐さんどころか、”あの”エルミナ皇妃すらもこのオッサンの今回の無茶苦茶な行動を止める事を匙を投げたんだぞ!?あの連中ですら匙を投げたのに、俺が何とかできる訳がないだろうが!?」

疲れた表情をしたリィンに視線を向けたランディも疲れた表情で答えた後心の奥底から思っていた本音を口にした。

「え、えっと………ランディさんが出向してきた理由の一つはもしかして、ギュランドロス皇帝―――いえ、ランドロス教官の”お目付け役”ですか……?」

「ああ…………不本意ながら”一応”それも出向の理由の一つだ。ったく、こんな無茶苦茶の塊のオッサンを俺が制御できる訳がないっつーのに、エルミナ皇妃達も無茶言うぜ………」

苦笑しているセレーネの推測に頷いたランディは疲れた表情で溜息を吐いた。

「おいおいおいおい、何を暗くなっていやがる。何を勘ぐっているのか知らねぇが、俺は以前俺が惚れて力を貸した男の親友が色々と”訳あり”な学校を務めてガキ共を導く教師を探しているって聞いて興味を持ったから、山から下りてきたんだぜ。これからはあんた達の同僚として、全力で働くからよろしく頼む、なっ♪」

「ハ、ハア………?――――改めてよろしくお願いします、ミハイル少佐、レン教官、ランディ、ランドロス教官。」

「お兄様共々よろしくお願いします。」

ポンポンと馴れ馴れしく肩を叩いてきたランドロスの言葉に戸惑いながら答えたリィンは気を取り直してミハイル少佐達に言葉をかけ、セレーネもリィンに続くようにミハイル少佐達に言葉をかけた。

「ああ、こちらこそだ。内戦を終結させたあの”特務部隊”の総大将にして”灰色の騎士”の勇名――――共に働ける事を光栄に思う。だが、ここで求められるのは”騎神”を含めた英雄的行為ではない。教官としての適性と将来性、遠慮なく見極めさせてもらおう。」

「………肝に銘じます。(鉄道憲兵隊(T・M・P)………正規軍きってのエリート部隊。まさかその佐官クラスまで派遣されているとは思わなかったが………まあ、ランドロス教官の事と比べれば”今更”かもしれないな……)」

ミハイル少佐の言葉に頷いたリィンは心の中で苦笑していた。



「えっと……これで”教官”は全員揃いましたね。少佐、ランドルフ教官とレン教官、それにランドロス教官も改めてよろしくお願いします!」

「おう!」

「うふふ、よろしくね♪」

「ああ、君には遠慮なく期待させてもらうつもりだ。卒業時の鉄道憲兵隊の勧誘――――蹴ってくれた埋め合わせの意味でもな。」

「あ、あはは………ご存知だったんですか。」

「へえ、見た目と違ってずいぶんと優秀みたいだな。飛び級してるみたいだが17くらいは行ってるのかい?」

ミハイル少佐とトワのやり取りを見守っていたランディは興味ありげな様子でトワに訊ね

「……その……21歳になるんですけど。」

「え、マジで?てことは俺の3つ下か………」

トワの年齢を知ったランディは驚きの表情でトワを見つめた。



「教官が7名………学生数に対してちょうどいいくらいでしょうか。このメンバーで一通りのカリキュラムを?」

「ああ。学生数を考えればちょうどいいくらいだ。平時の座学に訓練、それ以外の細々とした業務も行ってもらう。………まあ、特別顧問や分校長にも一部手伝って頂くつもりだが。」

「特別顧問……?そんな人がいるんですか。」

「それに分校長も……どういった方々なんですか?」

「それは………」

「いや、なんつーか………分校長は俺やリィン、姫も会った事がある人物なんだけどな……まさかあんなとんでもない存在が俺達の”上司”になるなんて、世の中わからないもんだな。」

リィンとセレーネの疑問にミハイル少佐が答えを濁しているとランディが苦笑しながら答えた。

「へ………」

「わ、わたくし達やランディさんが会った事がある方……ですか?」

「あ、あはは……その、驚かないでね?実は分校長もリィン君達やランドルフ教官達と同じで”出向”という形で分校長に着任しているんだけど………その人はランドルフ教官も言っていたように、リィン君達とも面識のある方なんだけど―――――」

そしてそれぞれ困惑しているリィンとセレーネの様子を見たトワが苦笑しながら答えかけたその時扉が開いた。

「―――フフ、どうやら全員揃ったようですね。」

「………ッ………」

「っと、噂をすれば。」

「クスクス、分校長―――いえ、”聖女”の登場ね。」

「クク………」

扉が開かれた事によって姿を現したある人物を見たミハイル少佐は表情を引き締め、ランディは苦笑し、レンは意味ありげな笑みを浮かべ、ランドロスは不敵な笑みを浮かべて白衣の老人と共に部屋に入って来た分校長である金髪の女性を見つめた。



「…………………へ。」

「ええっ!?あ、あの方は………!」

「え、えっと……お待ちしていました。」

(これはまた………”エレボニアにとっては”リィンに負けず劣らず有名な存在が来たわね………)

(え、ええ………リウイ陛下達は一体何をお考えになって、あの方を派遣されたのでしょうね?)

金髪の女性を見たリィンは一瞬石化したかのように固まった後呆けた声を出し、セレーネが驚いている中トワは姿勢を正して答え、その様子を剣やリィンの身体の中から見守っていたアイドスとメサイアは苦笑していた。

「フン………何を呆けた面をしている。―――――こうして顔を合わせて話すのは初めてか、リィン・シュバルツァー。私の自己紹介は必要か?」

「い、いえ………俺達も一応貴方の事は知っています。―――初めまして、シュミット博士。これからよろしくお願いします。」

「わたくしの方もよろしくお願いします、シュミット博士。」

白衣の老人――――シュミット博士の言葉にリィンは戸惑いながら答えた後会釈をし、セレーネも続くように会釈をした。

「――――特別顧問という肩書きだが私は自分の研究にしか興味はない。せいぜい役に立ってもらうぞ、シュバルツァー―――いや、”灰の起動者”。」

「え、え~と………」

「………ふう…………」

シュミット博士の言葉にリィンが困惑の表情をしている中ミハイル少佐は疲れた表情で溜息を吐き

(………50年前に導力器(オーブメント)を発明したエプスタイン博士の三高弟の一人………贋物って訳じゃないんだよな……?)

(あ、あはは……間違いないと思いますけど。)

「………なるほど、俺の分校への赴任にも貴方の件も含めて色々な思惑が絡んでいそうですね。まさか………貴女までいらっしゃるとは夢にも思いませんでしたが。」

「その………お久しぶりです、サンドロッド卿。」

ランディに小声で訊ねられたトワが苦笑している中リィンは疲れた表情で呟いた後表情を引き締めて金髪の女性を見つめ、セレーネは苦笑しながら女性に会釈をした。

「フフ………最後に会ったのはリウイ陛下達の視察の際ですから、半年ぶりになりますね、”灰色の騎士”に”聖竜の姫君”よ。改めてになりますが、晴れて教官となる貴方方全員に名乗らせて頂きます。かつて結社”身喰らう蛇”の”蛇の使徒”の第七柱―――”鋼”のアリアンロードであった者にして、今は”英雄王”と”聖皇妃”の守護者たる者。リアンヌ・ルーハンス・サンドロッド――――これより”トールズ第Ⅱ分校”の分校長を務めさせて頂きます。」

金髪の女性――――リアンヌ分校長はリィンとセレーネに微笑んだ後名乗り上げて宣言した。



「ハハ、最初俺が知った時も度肝を抜かれたぜ。鉄道憲兵隊の少佐殿も大変だなぁ?そこの無茶苦茶過ぎるオッサンに加えてあんなとんでもない存在まで見張らなくちゃならないんだからな。」

「フン…………―――分校長。そろそろ定刻ですがいかが致しますか?」

ランディの軽口に鼻を鳴らして流したミハイル少佐はリアンヌ分校長に訊ねた。

「ええ、始めるとしましょう。ハーシェル教官、雛鳥達をグラウンドへ。」

「は、はい。―――リィン君、セレーネちゃん、後でね。」

リアンヌ分校長の指示に頷いたトワは部屋から退出した。



「さーてと、どんなメンツが揃っていることやら。」

「クク、そしてどんな”才”を持っているのだろうなぁ?」

「クスクス、今から楽しみね♪」

「シュバルツァー、アルフヘイム。君達も遅れないように。」

ランディの軽口に続くようにランドロス教官は獰猛な笑みを浮かべ、レンは小悪魔な笑みを浮かべ、ミハイル少佐はリィンとセレーネに忠告をした後それぞれ部屋から退出した。

「えっと………?」

「皆さん、どちらに向かったのでしょうか……?」

「フフ……これより第Ⅱの新入生全員の入学式を兼ねた挨拶があります。」

ランディ達の行動にリィンとセレーネが戸惑っているとリアンヌ分校長がランディ達の行動の意図を説明をした。

「そ、そうだったんですか!?俺達は何も――――」

「フフ、貴方達には何も伝えず、日時だけを指定しましたので。他には、クラス分けと担当生徒との顔合わせもあります。”特務部隊”の”総大将”にして”灰色の騎士”の気骨、雛鳥達に示して差し上げなさい。」

リィンに自身の意見を伝えたリアンヌ分校長は部屋から退出した。

「そ、その………トワ先輩が仰っていたように、色々な意味で大変で難しい”職場”のようですわね?」

「ああ…………まあいい。一応、”これ”を付けておくか。行こう、セレーネ。」

「はい、お兄様。」

そして懐から眼鏡を取り出したリィンはセレーネと共にグラウンドへと向かった――――――


 

 

第2話

リィン達”教官”がグラウンドに姿を現す少し前、グラウンドに集合した生徒達はそれぞれ雑談や考え事等で時間を過ごしていたが姿を現したリィン達に気づくとリィン達に視線を向けた。



~トールズ第Ⅱ分校・グラウンド~



「あ、あの女性は………!?」

「……まさか………”槍の聖女”……………!?」

「さ、さすがにそれはありえないんじゃないかな?”槍の聖女”は遥か昔の人物だから、ただ似ているだけだと思うよ?そ、それよりもあの黒髪の人って確か………」

「ええっ……あの有名な……!?」

「ククッ………マジかよ。」

「ふふっ………予想外、ですね。」

「ふえええええっ!?ど、どうしてレンちゃんが………」

リィン達の登場に生徒達がそれぞれ驚いている中金茶髪の男子は不敵な笑みを浮かべ、ミント髪の女子は微笑み、金髪の娘は信じられない表情でリィン同様眼鏡をかけたレンを見つめ

「”灰色の騎士”………」

「えええええええええええっ!?な、何で”あの人”までここに……ていうか何でここにいるのよ~!?」

「………………理解不能です。」

蒼灰色の髪の男子は真剣な表情でリィンを見つめて呟き、ピンク髪の女子は驚きの声を上げてランドロスを見つめ、アルティナはジト目でランドロスを見つめながら呟いた。

(あれ、あの子って………)

(ハハッ、ま、リィンがいる時点でリィンの近くにいるような気はしていたけどな。)

生徒達の中にいるアルティナを見つけたトワは目を丸くし、ランディは苦笑していた。



「静粛に!許可なく囀るな!―――これよりトールズ士官学院、”第Ⅱ分校”の入学式を執り行う!略式の為式辞・答辞は省略!クラス分けを発表する!」

リィン達の登場で騒いでいる生徒達に注意して黙らせたミハイル少佐は宣言をした後、話を続けた。

「まずは”Ⅷ組・戦術科”!担当教官はランドロス・サーキュリー!副担当教官はランドルフ・オルランド!」

「ウッス。呼ばれたヤツは前に来てくれ。ゼシカ、ウェイン、シドニー、マヤ。それにアッシュ、フレディ、グスタフ、レオノーラの8名だ。」

(クク、俺達が担当になるとはお前達も運が良い連中だなあ?)

「……ハッ……」

ミハイル少佐の言葉に続くようにランディは一枚の紙が挟んであるバインダーを取り出して名前を読み上げ、読み上げられた生徒達がそれぞれ自分達の所に来ている中ランドロスは獰猛な笑みを浮かべて生徒達を見つめ、金茶髪の男子は鼻を鳴らした後ランディとランドロスの下へと向かった。



「次、”Ⅸ組・主計科”!担当教官はレン・H・マーシルン!副担当教官はトワ・ハーシェル!」

「えっと、名前だけ呼ぶね?サンディちゃん、カイリ君、ティータちゃん。ルイゼちゃん、タチアナちゃん、ヴァレリーちゃん、ミュゼちゃん、パブロ君、スターク君の9名かな。」

(クスクス、レンがティータの先生になるなんて、これも空の女神―――いえ、”ブライト家”の導きかしらね♪)

「……ふふっ………」

ランディに続くように自分達が担当する生徒の名前をトワが読み上げると名前を呼ばれた生徒達が自分達の所に向かっている中レンは小悪魔な笑みを浮かべてティータを見つめ、ミント髪の女子は意味ありげな笑みを浮かべた後トワ達の所へと向かった。

(Ⅷ組にⅨ組……”戦術科”に”主計科”か。すると残りは……)

(アルティナさんを含めた残りの3人の方達がわたくし達が担当する生徒ですわよね……)

それぞれの担当教官達の下へと生徒達が集合している中、リィンとセレーネはまだ呼ばれていない生徒達を見つめた。



「静粛に!これより本分校を預かる分校長からのお言葉がある!――――分校長、お願いします。」

「ええ。」

ミハイル少佐に視線を向けられたリアンヌ分校長は頷いた後一歩前に出た。

「―――我が名はリアンヌ・ルーハンス・サンドロッド。”第Ⅱ”の分校長となった者です。外国人もいるゆえ、我が名を知る者、知らぬ者はそれぞれでしょうが、一つだけ(しか)と言える事があります。――――貴方達も薄々気づいている通り、この第Ⅱ分校は”捨石”です。」

「ふえっ……?」

「フン………?」

リアンヌ分校長の言葉にトワは驚き、シュミット博士は僅かに眉を顰めた。

「本年度から皇太子を迎え、徹底改革される”トールズ本校”。そこで受け入れられない厄介者や曰く付きをまとめて使い潰す為の”捨石”――――それが貴方達であり、そして私を含めた教官陣も同じです。」

「………………」

「え、えっと…………?」

「おいおい……………」

「へえ?」

「クク…………」

リアンヌ分校長の断言を聞いたリィンは絶句し、セレーネは戸惑い、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、レンは興味ありげな表情をし、ランドロスは不敵な笑みを浮かべた。

「ぶ、分校長!それはあまりに――――」

そして生徒達がザワザワとし始めたその時、ミハイル少佐はリアンヌ分校長を諫めようとした。

「―――ですが、常在戦場という言葉があります。平時で得難きその気風を学ぶには絶好の場所であるとも言えるでしょう。自らを高める覚悟なき者は今、この場で去りなさい。―――教練中に気を緩ませ、冥府へと旅立ちたくなければ、今すぐこの場から去るのが貴方達の為です。」

リアンヌ分校長の厳しい宣言に対して生徒達はそれぞれ誰一人動く事なく決意の表情でリアンヌ分校長を見つめた。

「その意気やよし。―――ようこそ”トールズ士官学院・第Ⅱ分校”へ。『若者よ、世の礎たれ――――』かのドライケルスの言葉をもって、貴方達を歓迎させて頂きます。」

その後入学式が終わり、それぞれのクラスが行動を始める為にグラウンドから離れている中リィン達とまだ呼ばれていない生徒達だけがその場に残った。



「………って、なんか気迫に呑みこまれちゃったけど………」

「ああ……結局のところ、僕達はどうすれば――――」

「………………」

ピンク髪の女子の言葉に蒼灰髪の男子は頷いた後戸惑いの表情をし、アルティナは落ち着いた様子でその場で待機し続けていた。

「………サンドロッド卿、いえ分校長。そろそろ”クラス分け”の続きを発表していただけませんか?」

「………!」

「へ………」

「フフ、いいでしょう。――――本分校の編成は、本校のⅠ~Ⅵ組に続く、Ⅶ~Ⅸ組の3クラスとなります。貴方達3名の所属は”Ⅶ組・特務科”――――担当教官はその者、リィン・シュバルツァーで副担当教官はその隣にいるセレーネ・L・アルフヘイムとなります。」

リィンの言葉にアルティナ以外の生徒達が顔色を変えたり呆けている中リアンヌ分校長はアルティナ達に説明をした。



その後リィン達はある施設へと向かった。



~アインヘル小要塞~



「わああっ……!送られた図面で見ましたけどこんなに大きいなんて……!」

「フンこの程度ではしゃぐな。伝えていた通り、お前には各種オペレーションをやらせる。ラッセルの名と技術、せいぜい示してみるがいい。」

「は、はい……っ!」

リィン達と共にある施設に到着した金髪の娘は興味ありげな様子で施設を見つめていたがシュミット博士の言葉を聞くと表情を引き締めて頷いた。

(”ラッセル”………?もしかしてあの方がツーヤお姉様のお話にあった……)

(列車で会った子……やっぱり第Ⅱの生徒だったか。ラッセル………どこかで聞いた事がある気もするが。それにしても――――)

セレーネと共に金髪の娘を見つめて心の中で考えていたリィンは自分達の生徒達となるアルティナ達を見回した。

((Ⅶ組・特務科)……偶然じゃないんだろうな。生徒数はたったの3名。しかもアルティナまでいるとは…………まあ、アルティナに関しては多分リウイ陛下達が俺達のサポートとして根回ししたんだろうな……)

「現在、戦術科と主計科はそれぞれ入学オリエンテーションを行っているが……Ⅶ組・特務科には入学時の実力テストとしてこの小要塞を攻略してもらう。」

リィンが考え込んでいるとミハイル少佐が今後の事をリィン達に伝えた。



「……………」

「こ、攻略………?」

「それに”実力テスト”、ですか……?」

「そもそもこの建物は一体………」

ミハイル少佐の言葉を聞いたリィンが真剣な表情でミハイル少佐を見つめている中ピンク髪の女子とセレーネは戸惑い、蒼灰髪の男子は困惑の表情でミハイル少佐に自身の疑問を訊ねた。

「アインヘル小要塞――――第Ⅱと合わせて建造させた実験用の特殊訓練施設だ。内部は導力機構による可変式で難易度設定も思いのまま―――敵性対象として、”魔獣など”も多数放たれている。」

「な……!?」

「ま、魔獣―――冗談でしょ!?」

シュミット博士の説明を聞いた蒼灰髪の男子は驚き、ピンク髪の女子は信じられない表情で声を上げた。

「………なるほど。”Ⅶ組”、そして”特務科”………思わせぶりなその名を実感させる入学オリエンテーションですか。新米教官達への実力テストを兼ねた。」

「という事はこのオリエンテーションは生徒達だけでなく教官であるわたくし達の”実力テスト”でもあるのですか。」

「フッ、話が早くて助かる。と言っても、かつて君達がいた”特務支援課”や”特務部隊”、そして君達にとっても縁深い旧Ⅶ組とは別物と思う事だ。教官である君達自身が率いることで目的を達成する特務小隊―――そう言った表現が妥当だろう。」

「なるほど……それで。」

ミハイル少佐の説明を聞いたリィンは納得した様子で呟いた。

「ちょ、ちょっと待ってください!黙ってついてきたら勝手なことをペラペラと……そんな事を……ううん、そんなクラスに所属するなんて一言も聞いていませんよ!?」

「適正と選抜の結果だ、クロフォード候補生。不満ならば荷物をまとめてクロスベルに帰国しても構わんが?」

「くっ……」

(クロスベルに帰国……という事は彼女はクロスベル帝国からの留学生か。)

ピンク髪の女子は不満を口にしたが淡々としたミハイル少佐の正論に反論が浮かばなく、唇を噛みしめ、その様子を見たリィンはピンク髪の女子の出身を察した。

「……納得はしていませんが状況は理解しました。それで、自分達はどうすれば?」

「ああ―――シュバルツァー教官以下5名は小要塞内部に入りしばし待機。」

そして蒼灰髪の男子の質問に答えたミハイル少佐は5種類のマスタークオーツをリィンに手渡し、説明を続けた。

「その間、各自情報交換と、シュバルツァー教官とアルフヘイム教官には候補生にARCUSⅡの指南をしてもらいたい。」

「―――了解しました。」

「わかりましたわ。」

ミハイル少佐の言葉にリィンとセレーネはそれぞれ頷いた。

「フン、これでようやく稼働テストができるか。グズグズするな、弟子候補!10分で準備してもらうぞ!

「は、はいっ!」

金髪の娘はシュミット博士の言葉に緊張した様子で頷いた後リィン達と共に小要塞の中へと入って行った。



「ったく、聞いてた以上にフザけた学校みたいだな。」

小要塞に入っていくリィン達の様子をミハイル少佐が見守っていると赤髪の男がミハイル少佐に近づいてきた。

「……本来ならば部外者には立ち入ってほしくないのだが。」

「ハッ、言われなくても余計なことをするつもりはねぇよ。あいつの入学を見届けたらとっとと行かせてもらうぜ。」

「結構――――皇族の紹介があるとはいえ勘違いはしないことだ。この後、”お仲間達”とエレボニア帝国内でどう動くかも含めてな。」

「ハッ……そいつはお前さんたち次第じゃねえのか?色んな思惑が絡み合っているとはいえこんな分校がポンとできちまう―――そんな状況を生み出してるのはどこのどいつだって話だろうが。」

ミハイル少佐の忠告に対して鼻を鳴らして流した赤毛の男は目を細めてミハイル少佐を睨み

「……フン、さすがは”A級”といったところか。」

対するミハイル少佐も鼻を鳴らして赤毛の男に睨み返した。



「機械仕掛けの訓練施設……博士ならではといった感じだな。―――で、まさかとは思うけど概要についても知らされているのか?」

小要塞の内部へと入って待機していたリィンは周囲を見回した後アルティナに訊ねた。

「―――詳しくは何も。地上は一辺50アージュの立方体、地下は拡張中という事くらいです。」

「あの……その事を知っている時点で、既に”知らされている”と言ってもおかしくないのですが……」

「へ………」

「………知り合いですか?」

アルティナの答えを聞いたセレーネが苦笑している中ピンク髪の女子は呆け、蒼灰髪の男子はリィンとセレーネに訊ねた。

「まあ、そうだな。まさか俺達が彼女が所属するクラスの担当教官になるとはさすがに想定外だったが。―――それはともかく。”準備”が整うまでの間、互いに自己紹介をしておこう。申し訳ないが、到着したしたばかりで君達二人の事は知らなくてね。俺は――――」

「………別にわざわざ名乗らなくても知っていますよ。”灰色の騎士”リィン・シュバルツァー。メンフィル帝国の軍人でありながらメンフィル・エレボニア戦争――――通称”七日戦役”の勃発に対して元祖国の皇族であったエレボニア皇家に罪悪感を抱いていた両親の為に戦争で大活躍をした事によって戦争勃発から僅か1週間で両帝国間の戦争を”和解”という形で終結させ、更には”七日戦役”後メンフィルが選抜した少数精鋭部隊とエレボニア皇家に協力していた学生達を率い、そして正規軍とエレボニア皇家側へと寝返らせた貴族連合軍の一部を纏め上げて”七日戦役”勃発の原因の一つでもあるエレボニア帝国の内戦を終結させた両帝国の若き英雄。そして”聖竜の姫君”セレーネ・L・アルフヘイム。あの”蒼黒の薔薇”の双子の妹にして、”七日戦役”、そしてエレボニアの内戦で”灰色の騎士”を支え、自身もそれぞれの戦争で活躍した竜族の姫君。どちらもエレボニアどころかクロスベル―――いえ、ゼムリア大陸全土でも知らない人はいないくらいの有名人じゃないですか。」

「え、え~と………」

「ア、アハハ…………」

自己紹介をしようとしたリィンだったが呆れた表情をしたピンク髪の女子に先に自分とセレーネの事を言われると困った表情をし、セレーネは苦笑していた。

「補足すると、”七日戦役”の和解条約によって”帝国の至宝”の片翼であるエレボニア帝国の皇女――――アルフィン・ライゼ・アルノール皇女殿下が内戦終結後”灰色の騎士”に嫁ぎ…………更には皇女殿下以外にも婚約者が8人存在して、その内の一人が”聖竜の姫君”だそうだ。」

「ええっ!?じゃあ、”灰色の騎士”って既婚者だったの!?ていうかエレボニアのお姫様と結婚していながら更に8人の婚約者がいるって………局長―――いえ、ヴァイスハイト皇帝陛下みたいなとんでもない”好色家”ですね………そう言えばロイド先輩もエリィ先輩を含めた”特務支援課”に所属していた女性達のほぼ全員どころか、”アルカンシェル”のリーシャ・マオとも付き合っていましたね……もしかして、ヴァイスハイト皇帝陛下の影響を受けたんですか?確かリィン教官も一時期ヴァイスハイト皇帝陛下も所属していた”特務支援課”に所属していましたよね?」

「その推測は少々間違っているかと。もしその推測が当たっているのならば、”特務支援課”に所属していた残りの男性―――ランドルフ教官とワジさんもリィン教官やロイドさんのように複数の女性を侍らせているかと。」

「アルティナさん………その言葉、ワジさんはともかく絶対にランディさんがいる前では言わないでくださいね………?」

蒼灰髪の男子の情報を聞いて驚いたピンク髪の女子はジト目でリィンを見つめ、ピンク髪の女子の意見に指摘したアルティナの言葉を聞いたセレーネは疲れた表情で指摘した。

「ハ、ハハ………(俺とロイドって、一体どういう風に見られているんだ……?)………いや、それにしても驚いた。英雄なんて過ぎた呼び名だが。それでも改めて名乗らせてくれ。リィン・シュバルツァー。シュバルツァー男―――いや、シュバルツァー公爵家の跡継ぎにしてメンフィル帝国領クロイツェン州統括領主補佐だ。様々な事情により、2年間ここ第Ⅱ分校の臨時教官として本日赴任した。武術・機甲兵教練などを担当、座学は歴史学を教える事になる。”Ⅶ組・特務科”の担当教官を務める事になるらしいからよろしく頼む。」

「ではわたくしも………―――”アルフヘイム子爵家”の当主にして、リィン・シュバルツァーの婚約者の一人のセレーネ・L・アルフヘイムと申します。メンフィル帝国領クロイツェン州統括領主秘書見習いです。お兄様と同じく本日より2年間ここ第Ⅱ分校の臨時教官として赴任しました。座学は音楽・芸術・調理技術を担当し、また保険医も兼ねていますわ。”Ⅶ組・特務科”の副担当教官を務める事になるとの事ですので、リィン教官―――お兄様共々よろしくお願いしますね。」

ピンク髪の女子達の言葉に冷や汗をかいて乾いた声で苦笑したリィンは気を取り直して自己紹介をし、セレーネもリィンに続くように自己紹介をした。



「―――次は、自分ですね。クルト・ヴァンダール。帝都ヘイムダルの出身です。シュバルツァー教官とアルフヘイム教官の事は一応、噂以外にも耳にしています。」

リィンとセレーネが自己紹介を終えると蒼灰髪の男子―――クルトが自己紹介をした。

「ヴァンダール………そうだったのか。すると、ゼクス将軍やミュラー中佐の……?」

クルトがある人物達の親類である事を察したリィンは目を丸くしてクルトを見つめた。

「ミュラーは自分の兄、ゼクスは叔父にあたります。まあ、髪の色も含めて全然似ていないでしょうが。」

「それは…………」

(そう言えばお二人とも黒髪でしたけど、クルトさんの髪の色は黒髪ではありませんわよね……?)

(ああ……それに容姿も全然似ていないような……)

クルトの言葉を聞いたリィンは答えを濁したがセレーネの小声の言葉に頷いてクルトを見つめた。

「――それはともかく、リィン教官のその眼鏡は伊達ですか?あまり似合っていないので外した方がいいと思いますよ。」

「うっ……」

「ア、アハハ………」

「ぷっ………あはは………!」

「まあ、それなりに需要はありそうですが。」

若干呆れた表情をしたクルトの指摘にリィンは唸り声を上げ、セレーネは苦笑し、ピンク髪の女子は思わず笑い声を上げ、アルティナは淡々とした様子で推測を口にした。



「………はあ、似合っていないのは自覚してるから勘弁してくれ。よろしく、クルト。―――それじゃあ続けて頼む。」

一方リィンは疲れた表情で溜息を吐いた後ピンク髪の女子に自己紹介を促した。

「あ……はい、わかりました。ユウナ・クロフォード。クロスベル帝国・クロスベル警察学校の出身です。……よろしくお願いします。」

「クロスベル出身……だからわたくし達やロイドさん達の事をご存知だったのですね。」

「まあ、”特務支援課”は俺達が来る前も元々有名だったそうだけど、局長―――いや、ヴァイスハイト皇帝陛下も所属した事によって更に知名度が上がっていたそうだからな。ちなみに警察学校というのは、”クロスベル軍警察学校”の事だよな?」

ピンク髪の女子―――ユウナの自己紹介を聞いたセレーネは目を丸くし、リィンは苦笑しながら答えた後ユウナに確認した。

「…………ええ。ヴァイスハイト皇帝陛下達――――”六銃士”や”六銃士派”の人達の活躍によって”自治州”だったクロスベルが”帝国”へと成りあがった影響で、名称等も変えられました。正式名称以外は使わない方がよかったですか?」

リィンの指摘に対して複雑そうな表情で答えたユウナはリィンに問い返した。

「いや……他意はない。悪い、無神経だったようだ。」

「……別に。あたしも言い過ぎました。」

「………?」

リィンに謝罪されたユウナもリィンに謝罪し、その様子をクルトは不思議そうに見守っていた。

「最後は私ですね。アルティナ・オライオン。1年半前の内戦時は貴族連合軍の所属でした。」

「な………」

「へ………」

「ア、アルティナさん!?」

(あっさり明かすのか……)

そしてアルティナが自己紹介を始めるとクルトは絶句し、ユウナは呆け、セレーネは驚き、リィンは呆れた表情をしていた。

「内戦の際に命じられたある任務の実行時、メンフィル帝国所属の人物達に妨害、並びに捕縛された事によって任務失敗。その後メンフィル帝国の捕虜の身でしたが、”七日戦役”で大活躍をしたリィン教官のご厚意によってメンフィル帝国から解放され、並びに私の身元引受人はリィン教官を含めた”シュバルツァー家”になり、メンフィル帝国から解放された後は”シュバルツァー家”の使用人として”シュバルツァー家”の方々をサポートし続けていました。今回の分校への入学はメンフィル帝国からの指示もありますが、私に”普通の子供として”学院生活を経験して欲しいというリィン教官達―――”シュバルツァー家”の心遣いも含まれています。どうかお気になさらず。」

アルティナの説明を聞いたリィン達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「………聞き捨てならない事を聞いた気がするんだが。」

「貴族連合軍って、確か1年半前の内戦を起こした……って、それよりメンフィル帝国からの指示とかって、どういう事よ!?」

「失礼、秘匿情報でした。」

「ア、アルティナさん……」

(ハハ……相変わらずだな。)

我に返ったクルトは呆れた表情で呟き、信じられない表情をしたユウナの指摘に対してマイペースに答えたアルティナの様子にセレーネは冷や汗をかき、リィンは苦笑していた。



「お、お待たせしました!」

するとその時金髪の娘の声が要塞内に聞こえてきた。

「アインヘル訓練要塞、LV0セッティング完了です!”ARCUSⅡ”の準備がまだならお願いします!」

「これって、さっきの金髪の……」

「僕達と同じ新入生だったはずだが……」

「了解だ、少し待ってくれ!さて―――いきなりになるが、3人とも、これを持っているか?」

娘の声を聞いたユウナとクルトが戸惑っているとリィンが返事をし、そしてユウナ達を見回して自身が持っている戦術オーブメントを見せて訊ねた。

「ええ、それなら―――」

「送られてきたヤツね。まだ起動はしていないけど……」

リィンが見せた戦術オーブメントを見たユウナ達も戦術オーブメントを取り出した。

「戦術オーブメント―――皆さんもご存知のように、所持者と連動する事によって様々な機能を発揮する個人端末です。導力魔法(オーバルアーツ)が使えたり、身体能力が向上したりしますが……この最新端末”ARCUSⅡ”では更なる新機能が実装されています。」

「ARCUS(アークス)Ⅱ―――ENIGNA(エニグマ)とは違う、エレボニア帝国製の戦術オーブメントか……」

「正確には、クロスベル帝国ラインフォルト社とエプスタイン財団の共同開発ですね。いよいよ実戦配備ですか。」

「そ、そうなの?そう言えばラインフォルト製の新型戦術オーブメントがクロスベル軍や警察に配備される話を聞いた事があるけど……あの話ってこれの事だったんだ。」

「ああ、新機能についてはおいおい説明するとして――――3人とも、これを受け取ってくれ。それとこれはセレーネの分だ。」

「ありがとうございます、お兄様。」

リィンはセレーネ達にそれぞれ異なるマスタークオーツを渡した。



「これは……」

「エニグマにもあった……確か”マスタークオーツ”でしたっけ。」

「ああ、基本概念は同じはずだ。開いたスロット盤の中央に嵌められるからセットしてくれ。」

「……了解。」

「えっと、ここかな……?」

(さて、俺もつけておくか。)

その後リィン達はそれぞれのARCUSⅡにマスタークオーツをセットした。



「わわっ……」

「これが……」

「マスタークオーツが装着されることでARCUSⅡが所持者と同期した。これで身体能力も強化され、アーツも使えるようになった筈だ。」

マスタークオーツをセットした事によってARCUSⅡと同期した事で驚いているユウナとクルトにリィンが説明した。

「なるほど……」

「な、なんかエニグマとはけっこう仕様が違うような……」

「フン、準備はすんだか。」

リィンの説明を聞いた二人がそれぞれ納得したり、戸惑ったりしているとシュミット博士の声が要塞内に聞こえてきた。

「シュミット博士。ええ、いつでも行けます。」

「ならばとっとと始めるぞ。LV0のスタート地点はB1、地上に辿り着けばクリアとする。」

「は、博士……?その赤いレバーって……ダ、ダメですよ~!そんなのいきなり使ったら!」

「ええい、ラッセルの孫のくせに常識人ぶるんじゃない……!―――それでは見せてもらうぞ。”Ⅶ組・特務科”とやら。この試験区画を、基準点以上でクリアできるかどうかを――――!」

「みんな、足元に気を付けろ!」

要塞内に聞こえてくるシュミット博士と娘の会話を聞いてある事を察したリィンがユウナ達に警告をしたその時、リィン達が待機していた場所が突如傾いた!



「え―――」

「なっ……!?」

「バランスを取り戻して落下後の受け身を取れ!セレーネとアルティナは――――」

突然の出来事に驚いた二人が先に傾いた床によって下へと滑り落ちる中姿勢を低くして傾いた床に踏みとどまったリィンが下へと滑り落ちていく二人に指示をした後セレーネとアルティナにも指示をしようとしたが

「――――やあっ!」

「クラウ=ソラス。」

セレーネは一瞬で背中に魔力によって形成した光の翼を背中に生やして滞空し、アルティナは漆黒の傀儡―――クラウ=ソラスを呼び出し

「……心配無用か。」

二人の様子を見たリィンは苦笑しながら両腕で身体を支えながら下へと滑り、セレーネは光の翼を羽ばたかせ、アルティナはクラウ=ソラスの片腕に乗った状態で下へと向かった。



~B1~



「う、うーん……も、もう何なのよ一体……あの博士って人が話したらガコンて床が傾いて―――」

「……その……たしかユウナだったか。」

「え。」

目を覚ましたユウナが戸惑いながら今までの状況を思い返していたが下から聞こえてきた聞き覚えのある声に呆けた後下へと視線に向けた。

「……………」

「悪いけど、動けるなら自分でどいてもらえないか……?重さは大したことはないけど呼吸がしにくくてかなわない。」

「な、な、な、な………」

自分の状態――――自分の下にいるクルトの顔に胸を押し付けている状態に呆けたユウナだったが、我に変えるとすぐに顔を真っ赤にして口をパクパクさせた。するとその時リィン達も到着し、二人の状態を目にした。

「こ、これは――――」

「え、えっと………」

「弾力性のある床……打撲の心配はなさそうです。しかしまた、リィン教官のような不埒な状況になっていますね。」

二人の状態を見たリィンが驚き、セレーネが困った表情をしている中クラウ=ソラスを消して着地したアルティナは淡々と答えた後二人へと視線を向けて呟き

「だから誤解を招くような事を言わないでくれ。」

アルティナの言葉を聞いたリィンは疲れた表情で指摘した。するとその時ユウナが起き上がり、ユウナが起き上がるとクルトも続くように起き上がってユウナと向かい合った。

「~~~~~~っ~~~~~~………」

「……事故というのはこの際、関係なさそうだ。弁解はしない。一発、張り飛ばしてくれ。」

顔を真っ赤にして身体を震わせているユウナに対して静かな表情で答えたクルトは覚悟を決めた表情になってユウナを見つめた。

「ふ、ふふ……殊勝な心がけじゃない……そんな風に冷静に言われるのもそれはそれで腹が立つけど……遠慮なく行かせてもらうわっ!」

クルトの言葉に対して口元をピクピクさせながら答えたユウナは片腕を思いっきり振り上げてクルトに平手打ちをした!



「……フンッ、これだからエレボニア帝国の男子っていうのは……!」

「別にエレボニア帝国どうこうは関係ない気もしますが。」

クルトに平手打ちをした後クルトに背中を向けて怒りの表情で呟いたユウナにアルティナはジト目で指摘し

「その……災難だったな?」

「えっと……治癒魔法は必要ですか?」

リィンとセレーネは苦笑しながら平手打ちをされた部分を片手で抑えているクルトに話しかけた。

「別に……無様な体勢で滑落したのも修行不足です。それに偶然とはいえ女子に無用な恥をかかせてしまった―――己の未熟さを痛感します。」

「そ、そうか……(随分しっかりしてるな。)―――4人とも、大きなダメージはないな?それではこれより、この小要塞の攻略を開始する。各自、武装を見せてくれ。」

クルトの答えを聞いたリィンはクルトに感心した後ユウナ達に確認し、そして宣言をした。



「って、こんな茶番に本気で付き合うんですか!?」

リィンの宣言を聞いて驚いたユウナはリィンに訊ねた。

「博士の事は人づてで聞いた事はあるが、茶番を仕掛ける性格じゃないと思う。あくまで本気で、俺達5名の実力を測ろうとしているんだろう。無事ここを抜けるためにも全員のスタイルを知っておきたい。」

「うぐっ……」

「わかりました。―――自分はこれです。」

リィンの正論にユウナが反論できず唸り声を上げるとクルトは納得した様子で頷き、そして自身の得物である双剣を取り出して軽く振るって構えた。

「……二刀流……?」

「淀みない剣捌きですね。」

「あら……?ミュラー中佐は大剣を扱っていましたが……」

「ヴァンダール流の双剣術……存在するのは知っていたが。」

クルトの戦闘スタイルにユウナが戸惑い、アルティナが静かな表情で評価している中セレーネはある人物を思い返して不思議そうな表情で首を傾げ、リィンは目を丸くしてクルトを見つめた。



「セレーネ教官が仰ったようにヴァンダール流は剛剣術の方が有名ですからね。ですが、あちらは持って生まれた体格と筋力を必要とする……こちらの方が自分は得意です。」

「……なるほど。ユウナ、君の方はどうだ?」

「っ………勝手に話を進められているみたいで面白くありませんけど……士官学校の新入生として一応、弁えているつもりです。」

リィンに話をふられたユウナは機械仕掛けのトンファーを取り出して構えた。

「それは……」

「あら?あの武装は確かロイドさんが扱っている……」

「トンファー型の警棒?」

「いや、それにしては複雑な機構をしているな……どういった武装なんだ?」

ユウナが見せた武装にそれぞれ興味ありげな表情をしている中リィンがユウナに詳細を訊ねた。

「ガンブレイカー――――クロスベル警備隊で開発された銃機構(ガンユニット)付きの特殊警棒です。モードを切り替えることで、中距離の範囲射撃になります。」

「そんな新武装が……」

「まさかクロスベル帝国軍がそのような武装が開発していたなんて……」

「もしかしてその武装の開発にはエルミナ大尉―――いや、エルミナ皇妃も関わっているのか?確かあの人は”軍師”―――”戦術家”であると同時に兵器や武装の開発にも携わっていると耳にした事があるが。」

「ええ、このガンブレイカーの開発にもエルミナ皇妃殿下が関わっていて、エルミナ皇妃殿下の考案のお陰で更なる機能―――導力の集束による導力エネルギー砲も追加されたと聞いています。」

ユウナの説明を聞いたアルティナとセレーネが驚いている中ある事に気づいたリィンはユウナに訊ね、リィンの質問にユウナは頷いて答えた。



「―――わかった、その武装の性能は実戦で確かめさせてもらおう。見たところ扱いにも慣れているみたいだからな。」

「と、当然です!警察学校で訓練しましたから!エレボニア帝国人が使う、昔ながらの剣なんかよりは役に立つはずです!」

リィンの言葉に肯定したユウナはクルトを睨み

(むっ……)

「フ、フン……」

ユウナの言葉に一瞬ムッとしたクルトは表情を顰め、ユウナはクルトから視線を逸らした。

「まあ、そのあたりもお互い実戦で確認するといいだろう。次は―――アルティナ。」

「はい。」

二人の様子に苦笑しながら指摘したリィンはアルティナに視線を向け、視線を向けられたアルティナは頷いた後一歩前に出た。



「って、何気にさっきから突っ込みたかったんですけど……こんな小さい子がどうして士官学校に入ってるんですか?」

「……僕も気になっていた。貴族連合軍に所属していたという話ですが、さすがに戦闘には参加させられなかったのでは?」

ユウナの疑問に同意したクルトは不思議そうな表情でアルティナを見つめた。

「……まあ、個人的には同感だよ。」

「懸念は無用です。私の身体年齢は14歳相当。小さい子というほどではないかと。」

クルトの言葉にリィンが苦笑している中アルティナは淡々とした様子で答えた。

「し、身体年齢……?って、十分小さいんじゃ―――」

「そして貴族連合軍に所属していた根拠たる”武装”もあります。」

ユウナが指摘しようとしたその時アルティナが先に答えて背後にクラウ=ソラスを現させた。

「――――――」

「な、な、な……」

「そ、そう言えばさっき、黒い影が一瞬見えたような……」

「クラウ=ソラス―――”戦術殻”という特殊兵装の最新鋭バージョンとなります。秘匿事項となるため詳細は説明できませんがそれなりの戦闘力はあるかと。」

クラウ=ソラスの登場に二人が驚いている中アルティナはクラウ=ソラスについて軽く説明した後クラウ=ソラスを消した。

「……えっと、貴族連合軍って事は元々エレボニア帝国に所属していたって事よね?エレボニア帝国ってあんなのが普通にあるわけ?」

「そんな訳ないだろう……僕だって初めて見た。(”槍の聖女”と非常に似た人物に”殲滅天使”、”紅き暴君”、”灰色の騎士”と”聖竜の姫君”、それにこんな少女まで……第Ⅱ分校―――どういった場所なんだ?」

苦笑しているユウナに訊ねられたクルトは静かな表情でユウナの推測を否定する答えを口にした後リィンとセレーネ、アルティナを順番に見回して真剣な表情で考え込んだ。



「疑問は御尤もだがさっそく行動を開始しよう。―――ああ、ちなみに俺の武装はこれだ。」

「わたくしはこれです。」

「”八葉一刀流”の”太刀”に主に王宮剣術に使われる”細剣(レイピア)”………」

「……リィン教官のはアリオスさんが使っていたのと同じ武器ね。」

「ああ、騎士等が扱う通常の”剣”とは違う東方風の”剣”―――”刀”だ。はは、さすがに”風の剣聖”はクロスベルじゃとても有名な存在だから、”刀”も知っていたのか。」

「………色々ありましたけど、今でもファンは多いですし、慕っている人も多いですから。ヴァイスハイト皇帝陛下達―――”六銃士”によって世紀の大悪党扱いされて、今は拘置所にいるみたいですけど。」

リィンに話をふられたユウナは複雑そうな表情で答えた。

「あ………」

「ああ………そうみたいだな。―――よし、それじゃあ攻略を始めよう。」

ユウナの言葉を聞いてかつての出来事を思い出したセレーネは不安そうな表情をし、リィンは静かな表情で呟いて先へと進む扉に視線を向けた。

「現在B1、地上に出ればこの”実力テスト”も終了だ。実戦のコツ、アーツの使い方、ARCUSⅡの機能なども一通り説明していく。迅速に、確実に―――ただし無理はしないようにしっかりついてきてくれ。」

「怪我をすればすぐに治療しますので、遠慮なくいつでも申し出てください。」

「……わかりました。」

「……やるからには全力を尽くします。」

「それでは状況開始、ですね。」

そしてリィンの号令とセレーネの申し出を合図にユウナ達はそれぞれ決意の表情になって小要塞の攻略を開始した――――




 

 

第3話

~アインヘル小要塞~



「……みんな、止まれ。」

セレーネ達と共に先を進んでいたリィンは魔獣を見つけるとセレーネ達を制止した。

「ま、魔獣……!」

「……さっそく現れたか。」

リィンの警告を聞いて魔獣を確認したユウナは驚き、クルトは表情を引き締めた。

「ああもう、ホントに魔獣を放ってるなんて……!」

「というかそれ以前にシュミット博士はどのような手段で魔獣を捕縛してこの小要塞に放ったのでしょうね……」

「リィン教官、指示をお願いします。」

魔獣を確認したユウナが呆れ、セレーネが苦笑している中アルティナはリィンに指示を仰ぎ

「そうだな……まずは現時点での戦力を確かめておきたい。―――各自、戦闘準備を!」

アルティナの言葉に頷いたリィンは眼鏡を外して懐にしまった後号令をかけ、リィンの号令を合図にその場にいる全員はそれぞれの武装を構えた。

「ちょっ、ほんとにこの子も戦わせていいんですか!?」

「……?特に問題は感じませんが。」

「アハハ……まあ、普通に考えたらユウナさんの反応が当然なんですけどね……」

「大丈夫だ、俺とセレーネもサポートする。このまま仕掛ける……君達も気を引き締めてくれ!」

「っ……わかりました!」

「お手並み、拝見させてもらいます。」

そしてリィン達は魔獣との戦闘を開始した。



「ハァァァァ……クロスブレイク!!」

リィン達と共に戦闘を開始したユウナは電撃を流したトンファーによる一撃―――クロスブレイクで魔獣達を攻撃した。すると電撃が流れるトンファーの一撃を受けた事によって魔獣達は気絶し

「緋空斬!!」

「ブリューナク起動、照射。」

「――――!」

リィンは炎の斬撃波を、アルティナはクラウ=ソラスにレーザーを放つ指示をしてそれぞれ遠距離から追撃を叩き込み

「ヤアッ!」

「ハアッ!」

セレーネとクルトが止めの一撃を叩き込んで魔獣達を撃破した。



「敵性魔獣、撃破しました。」

「ふう……初戦としてはまずまずだな。」

「皆さん、怪我はありませんか?」

魔獣の撃破を確認したアルティナは静かな表情で呟き、リィンは安堵の溜息を吐き、セレーネはユウナ達に怪我の有無を訊ねた。

「……ええ、問題ありません。」

「って、あたしたちはともかく………えっと……アルティナ、だったわね。その、大丈夫……みたいね?」

「?何がでしょうか?」

ユウナの確認の言葉の意味がわからないアルティナは不思議そうな表情でユウナを見つめた後クラウ=ソラスをその場で消した。

「っ……はあ、滅茶苦茶ね。」

「”戦術殻”……こんなものが存在するとは。それに、彼女自身かなりの場数を踏んでいるみたいですね?」

「ああ、否定はしない。だがまあ、それでも君達より年下の女の子なのは確かだ。2人とも実戦は問題なさそうだし、上手くフォローしてやってくれ。」

クルトの推測にリィンは苦笑しながら答えた後アルティナのフォローを二人に頼んだ。

「い、言われなくても最初からそのつもりです。」

「……まあ、魔獣の手応えもそこまえは無そうだし大丈夫だろう。君のクロスベルの最新武装とやらもそのうち実力を見せてくれるだろうしね。」

(むっ……)

お互いに睨んでそっぽを向いたユウナとクルトの様子にリィン達は冷や汗をかき

「前途多難ですね。」

「あの………お二人のクラスメイトであるアルティナさんも他人事ではない事はわかっていますわよね?」

「ハア……とにかく先に進むとしよう。」

ジト目で呟いたアルティナにセレーネは表情を引き攣らせて指摘し、リィンは溜息を吐いた後気を取り直して先に進むように促した。その後先へと進んでいたリィン達は新たな魔獣を見つけた。



「昆虫系の魔獣か……固くて厄介そうね。」

「ええ、それになかなかすばしっこそうです。」

「―――ああいった魔獣はアーツか魔術で対処するのが無難だろうな。」

「はは、よくわかっているじゃないか。」

「それでは戦闘準備をした後、気を引き締めて挑みましょう。」

新たな魔獣を見て分析しているユウナとアルティナの話を聞いたクルトが対策を答え、クルトの答えにリィンは感心し、セレーネはユウナ達に声をかけ、そして戦闘準備を終えたリィン達は魔獣達に戦闘を仕掛けた。



「「アークス駆動――――」」

「「……………」」

「(へえ……?まさかユウナまで魔術を扱えるなんて、驚いたな。)――――下がれ!!」

戦闘開始時クルトとセレーネはアーツを発動させる為に戦術オーブメントを駆動させ、アルティナとユウナは魔術を放つ為にそれぞれ詠唱を開始し、アルティナ同様魔術の詠唱をしている様子のユウナを見て内心驚いていたリィンは仲間達の詠唱時間を稼ぐために魔獣達に太刀で孤を描く八葉一刀流の剣技の一つ―――弧月一閃でダメージを与えて魔獣の注意を自分へと惹きつけた。

「えいっ!アクアブリード!!」

「ハッ!エアストライク!!」

そしてオーブメントの駆動を終えたセレーネは水のエネルギーをぶつけるアーツを、クルトは風の刃を解き放つアーツを放ってそれぞれ魔獣達に攻撃を叩き込み

「漆黒の魔槍よ――――封印王の槍!!」

「大地の槍よ―――岩槍撃!!」

アルティナは魔術によって自身の頭上に発生した暗黒の槍を解き放ち、ユウナは魔術で魔獣の足元から岩の槍を発生させてそれぞれ追撃を叩き込んで止めを刺した。



「……2戦目も問題なく終わったな。それにしてもユウナまで魔術を扱えた事には驚いたよ。」

「一体どなたに魔術を教わったのですか?わたくし達―――メンフィル帝国の本国があるディル=リフィーナはともかく、元々魔術の存在があまり知られていなかったゼムリア大陸の方が魔術を習得する為にはわたくし達のような魔術の使い手に教わるしかないと思うのですが……」

魔獣の撃破を確認したリィンは感心した様子でユウナに声をかけ、セレーネは自身の疑問をユウナに訊ねた。

「警察学校のカリキュラムであたしを含めた警察学校に通っている人達はみんな、魔術習得のカリキュラムを受けさせられましたから、その時にエルファティシア先ぱ―――いえ、エルファティシア教官に教えて貰って、魔術を習得しました。」

「クロスベルの警察学校は異世界の魔術まで教えているのか………」

「まあ……エルファティシアさんが。」

「ハハ、元エルフ族の女王で、しかもエルフ族の中でも相当な魔術の使い手の彼女に魔術の指南をしてもらえるなんて、今のクロスベルの警察学校は凄く恵まれた環境なんだろうな。」

ユウナの説明を聞いたクルトが驚いている中セレーネは目を丸くし、リィンは苦笑していた。

「ユウナさんが先程放った魔術は岩の槍を発生させる魔術である事を考えるとユウナさんは地脈属性―――地属性の魔術に適性があるのでしょうか?」

「うん。エルファティシア教官の話によるとその人が扱える魔術の適性属性と戦術オーブメントの個体属性と関係しているらしいから、アークスの個体属性で”空属性”もあるあたしは空―――光の魔術である神聖魔術や治癒魔術にも適性があると思うよ?実際、エルファティシア教官からもエルファティシア教官の適性魔術でもある神聖魔術と治癒魔術、どちらの魔術もあたしなら習得できるって言われた事があるし。」

「まあ……という事はユウナさんは地属性に加えて、空属性の魔術や治癒の魔術まで扱えるのですか。」

アルティナの質問に答えたユウナの答えを聞いてある事に気づいたセレーネは目を丸くしてユウナが扱える魔術を推測を口にしたが

「いえ……お恥ずかしながら確かに神聖魔術や治癒魔術の適性はあるそうですけど、魔術師としての腕前はクロスベル帝国で5本の指に入ると言われているエルファティシア教官みたいにあたしには魔力はそんなにたくさんありませんし、魔術一つを完璧に扱いこなす事にも凄く手こずりましたから一番適性がある地脈属性の魔術をいくつか扱えるだけです。」

「ハハ、それでも十分凄いじゃないか。地脈属性魔術は攻撃だけでなく、支援や回復もあるから、あらゆる場面で役に立つぞ。」

謙遜している様子のユウナにリィンは高評価の指摘をし

「?その口ぶりですと、異世界の魔術もアーツのように属性によって、扱える種類も異なるのですか?」

リィンの話を聞いてある事が気になったクルトは不思議そうな表情でリィンに訊ねた。



「ああ。例えば俺は火炎属性―――火属性の魔術を扱えるけど、火属性の魔術の種類は攻撃しかないから、俺は攻撃魔術しか扱えないんだ。」

「ちなみにわたくしは魔術の種類で”攻撃”と”治癒”がある水と空属性の魔術を扱えますから、攻撃だけでなく、治癒の魔術も扱えますわ。」

「そうなんですか………そう言えば魔術で思い出したけど……アルティナも魔術を扱っていたけど、アルティナは誰に魔術を教えて貰ったの?」

「リィン教官―――次期”シュバルツァー公爵”の使用人を務める上でわたし自身の戦力の増強も必要と判断した所、私の判断を察していたリィン教官の婚約者の方々にして使い魔――――ベルフェゴール様達に指南してもらい、魔術を習得しました。」

(というか私はともかく、”魔神”のベルフェゴール様や”精霊女王”のリザイラ様、それに”古神”のアイドス様に魔術の指南をして貰えたアルティナさんの方が常識で考えれば凄く恵まれた環境で指南してもらった事は自覚しているのでしょうか……?)

(ふふっ、多分自分が凄く運が良くて恵まれている事はリィンが自分を引き取った件で自覚はしていると思うわよ。)

リィンとセレーネの話を聞いた後あるを思い出したユウナの質問に答えたアルティナの答えにユウナを含めたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中リィンの身体の中や太刀から状況を見守っていたメサイアとアイドスは苦笑していた。

「こ、”婚約者にして使い魔”って、もしかしてルファディエル警視長やメヒーシャさん達みたいにリィン教官には契約している”異種族”がいて、しかもその人達まで婚約者なんですか!?」

「ハハ……まあ、そうなるな。今はオリエンテーションの最中だから紹介する時間はないが、いつか機会があったら紹介するよ。―――それよりも今は先に進もう。」

驚きの表情をしているユウナの問いかけにリィンは苦笑しながら答えた後先に進むように促した。その後先へと進みながら道の途中にいる魔獣達を撃破し続けたリィン達は一際大きい魔獣を見つけた。



「あれは………」

「あの魔獣……他のより一回り大きいけど。」

「大きさからして、手配魔獣クラスでしょうね。」

「現有戦力では若干手こずりそうですね。」

「ふう、まさかあんなものまで徘徊しているとはな……」

「……迂回して別ルートを探しますか?」

それぞれが新たな魔獣を警戒している中クルトはリィンに提案をした。

「いや―――ここは正面から仕掛けよう。」

「正面からって……ちょっと無謀すぎません?」

リィンの意外な答えにユウナは目を丸くしてリィンに問いかけた。

「そうとも限らないさ。こちらは5人―――今なら戦術リンクの連携も可能だ。ここまでの基本を押さえていれば必ずや撃破できるはずだ。」

「あ……」

「お兄様……」

「……いいでしょう。自分も異論はありません。」

「了解―――戦闘態勢に移行します。」

そして準備を整えたリィン達は魔獣に戦闘を仕掛けた。



「ハァァァァ……!斬ッ!!―――崩したぞ!」

「!?」

魔獣との戦闘を開始したクルトは先制攻撃代わりに双剣による乱舞攻撃―――レインスラッシュを魔獣に叩き込んだ。すると魔獣の態勢は崩れ

「頂き!」

態勢が崩れた事によってできた隙を逃さないかのようにクルトと戦術リンクを結んでいるユウナが自身の得物であるガンブレイカーの銃の部分を使って銃弾を連射して追撃を叩き込んだ。

「四の型――――紅葉切り!―――崩れた!」

「追撃します!」

二人の攻撃が終わるとリィンが刀を鞘に収めて疾走し、抜刀して魔獣に更なるダメージを与えると共に再び魔獣の態勢を崩し、魔獣の態勢が崩れるとリィンと戦術リンクを結んでいるアルティナがクラウ=ソラスに追撃を叩き込ませた。

「…………!」

「クッ……!」

「!」

魔獣は反撃に触手を周囲に振り回し、魔獣の近くにいたクルトは咄嗟に武器で防御して自分へのダメージを軽減し、リィンは後ろに跳躍して回避した。

「七色の光の矢よ――――プリズミックミサイル!!」

「!?」

魔獣の攻撃が終わると魔術の詠唱を終えたセレーネが両手から七色の光の矢を放ってダメージを与えた。すると魔獣はダメージの蓄積によって一時的に動けなくなる”ブレイク”状態になり

「やあっ!」

「えいっ!」

一時的に魔獣が動けなくなる様子を見たユウナとアルティナはそれぞれ左右から攻撃を仕掛けて魔獣に更なるダメージを与え

「遅い!」

「そこだっ!」

それぞれと戦術リンクを結んでいるクルトとリィンは二人の攻撃が終わると続くように追撃を叩き込み

「―――止めです!光よ、我が刃に力を―――――ホーリーインパクト!!」

そしてセレーネが力と魔力を細剣に溜め込んだ事によって光の魔力刃で伸長した細剣で薙ぎ払い攻撃を放つと、それが止めとなり、魔獣は動かなくなった。



「敵性魔獣の沈黙を確認。」

「はああ~……けっこう手こずったけど………」

(……思っていたほど大した相手じゃなかったか。)

魔獣の沈黙を確認したアルティナ達生徒3人はそれぞれ武装を収め、ユウナとクルトが魔獣に背を向けたその時何と魔獣の目に光が戻った。

「いけない―――!」

「―――まだだ、二人とも!」

魔獣の様子に逸早く気づいたセレーネとリィンが警告をしたその時、二人の警告を聞いたユウナとクルトが振り返ると魔獣は起き上がった。

「………え。」

「しまっ――――」

咄嗟の出来事にユウナとクルトは反応が遅れ

「クラウ=ソラス!!」

「光の盾よ――――!」

「ッ――――――うおおおっ!」

反応が遅れた二人をフォローする為にアルティナはクラウ=ソラスに指示を、セレーネはユウナとクルトの前に光の魔力によってできた簡易障壁を展開し、リィンは自身に眠る”鬼”の力を僅かに解放して魔獣に向かって突撃した。するとユウナとクルトの前にクラウ=ソラスが現れた後転移で自分ごと二人を移動させて魔獣から距離を取り、突撃したリィンは魔獣にダメージを与えて自分へと注意を惹きつけた後止めに大技を放った!

「明鏡止水――――我が太刀は生。見えた!――――うおおおおおっ!斬!!」

リィンは縦横無尽にかけながら魔獣に何度も斬撃を叩き込んだ後強烈な威力の回転斬りを放った。

「七ノ太刀――――落葉!!」

そしてリィンが太刀を鞘に収めた瞬間、鎌鼬が発生して魔獣に襲い掛かり、魔獣に止めを刺した!



「ぁ…………」

(今のは……?)

リィンが魔獣に止めを刺した様子を見守っていたユウナは呆け、クルトはリィンが見せた”力”の一端に不思議そうな表情をしていた。

「ふう………ユウナ、クルト……アルティナも大丈夫か?」

「皆さん、怪我はありませんか?」

「は、はい……」

「……なんとか。」

「こちらも損傷無し―――問題ありません。」

「そうか……アルティナとセレーネ、咄嗟によく動いてくれた。ユウナとクルトは、敵の目の前で武装を解いたのはまずかったな?敵の沈黙が完全に確認できるまで気を抜かない―――実戦での基本だ。」

「それと魔獣や人形兵器等は種類によっては沈黙と同時に自爆をするタイプもいますから、接近戦で止めを刺す時は気を付けてくださいね。」

生徒達に怪我がない事に安堵の溜息を吐いたリィンとセレーネはユウナとクルトに指摘をした。

「………はい。」

「……すみません、完全に油断していました。」

リィンとセレーネの指摘をユウナとクルトは素直に受け取り

「いや……偉そうには言ったが今のはどちらかといえば指導者である俺とセレーネのミスだな。やっぱり俺達も、教官としてはまだまだ未熟ってことだろう。」

「そうですわね………”教官”としてはわたくしとお兄様の二人がかりでも、”一人前”に届くかどうかですものね。」

注意をした二人はそれぞれ自分に対する反省の言葉を口にした。

「だが、それでも今は”俺達”が君達の教官だ。この実戦テストで、君達と同じく試される立場にある、な。だから君達も、君達自身の目で、俺達を見極めてくれ。本当に俺達が―――――”Ⅶ(きみたち)”の教官に相応しいのかどうかを。」

「わたくし達に対する意見や注意して欲しい事があれば、遠慮なく言ってくださいね。」

「…………あ………」

「それは………」

「………判断………?」

「このテストの終了後、君達が望むなら”転科”という選択肢も無い訳じゃない。その時は、俺とセレーネから直接分校長に掛け合うと約束する。――――そんなところでどうだ?」

「「「………………」」」

リィンの問いかけに生徒達3人はそれぞれ黙り込んだ。

「―――何を立ち止まっている?時間を無駄にするんじゃない。とっととテストを再開するがいい。」

「終点も近づいています―――気を付けて進んでくださいっ。」

するとその時シュミット博士の先を急かす声と娘の助言の声が聞こえてきた。

「ふふっ、少し長話をし過ぎたみたいですわね。」

「ああ。――探索を再開する。最後まで気を抜かずに行くとしよう。」

「了解しました。」

そしてリィンの号令を合図にアルティナはクルトとユウナと共に頷いた後リィンとセレーネと共に先へと進み

「………な、何よっ。わかったような事を言ってくれちゃって。それに……………”また”…………」

「また?」

リィン達の後ろ姿を見つめながら呟いたユウナの独り言の内容が気になったクルトは不思議そうな表情をしてユウナを見つめた。

「………なんでもない。でも……見極める、か。」

「ああ………どうやら少し思いあがっていたらしい。……こんなことじゃ、父や兄に顔向けできないな。」

「うん、あたしも………これじゃ何の為に一念発起してエレボニア帝国に来たんだか。―――とにかく行きましょ、クルト君!これ以上、あの人達にばかりいい格好はさせないんだから!」

「フッ、そうだね。彼女(アルティナ)にも後れをとれない。もう終点は近いみたいだが……行くとしよう!」

そしてそれぞれ自分に対する反省をしたユウナとクルトはリィン達の後を追って行った――――


 
 

 
後書き
今回の話で気づいたと思いますが、ユウナとアルティナはメンフィルorクロスベル……じゃなくてエウシュリーキャラ達によってブーストされているので魔術を習得済みです。ところで書いていて気づきましたがエウシュリーの地脈属性、しかも魔術の出番ってあんまりないですよね(汗)軌跡シリーズ同様エウシュリーシリーズもなぜか地属性は不遇の立場の気が(酷っ!) 

 

第4話

その後探索を続けたリィン達はようやく終点に到着した。



~アインヘル小要塞・終点~



「あ………」

リィン達と共に終点に到着したクルトは階段の先にある外の光が見える出入り口に気づき

「はあはあ……そ、外の光……?」

「地上階――――指定にあったテスト区画の終点なのでは?」

クルトに続くようにユウナとアルティナも出入り口に視線を向けた。

「ああ……そうみたいだな。」

「問題はこのまま、終点に迎えるかどうかですね。」

アルティナの問いかけにリィンは頷き、セレーネは苦笑していた。

「ああもう、ホントエレボニア人って……!学校にこんな訓練施設を作るなんてあり得なさすぎでしょう!?」

「ふう、エレボニア人で一括りにしないで欲しいんだが……――――G・シュミット。本当にあの高名な博士本人なんですよね?」

ユウナの文句に呆れた表情で溜息を吐いたクルトはある事を思い出してリィンに訊ね

「ああ………俺も話には聞いていたが。ただどうして第Ⅱ分校の顧問として来ているかは知らないが――――」

そしてクルトの質問にリィンが答えかけたその時、何かの気配をリィンは感じ取った。

「これは――――」

「センサーに警告。霊子反応を検出しました。」

「”やっぱり”、このまま終点には迎えませんか……」

「へ……」

「霊子反応……?」

リィンは真剣な表情で正面を見つめ、アルティナは報告し、セレーネは疲れた表情で溜息を吐き、ユウナとクルトはそれぞれ不思議そうな表情をした。

「み、皆さん、逃げてくださいっ!」

するとその時少女の警告が聞こえ、警告が聞こえると同時にリィン達の目の前に大型の甲冑の人形が現れた!



「…………!?」

「こ、これって………”機甲兵”!?」

巨大な甲冑の人形の登場にクルトとユウナは驚き

「いえ、これは――――」

「確かユミルの山道にも現れ、”煌魔城”でも徘徊していた……!」

「”魔煌兵”―――暗黒時代の魔導ゴーレムだ!シュミット博士!まさか、これも貴方が!?」

一方甲冑の人形に見覚えがあるアルティナはユウナの推測を否定し、セレーネは目を見開き、リィンは信じられない表情で声を上げた後自分達の様子を見守っているシュミット博士に問いかけた。

「―――内戦時に出現していた旧時代マシナリィを捕獲した。機甲兵よりも出力は劣るが自律行動できるのは悪くない。それの撃破をもって、今回のテストを終了とする。」

「くっ、本気か……!?」

「ちょっとマッド博士!いい加減にしなさいよね!?」

シュミット博士の説明を聞いたクルトは唇を噛みしめ、ユウナは文句を言った。

「(このメンバーじゃ分が悪いな。こうなったら――――)――――セレーネは”竜化”を!来い、”灰の騎神”―――――」

「わかりましたわ!ハァァァァァ………」

一方自分達と相手の戦力を即座に分析したリィンはセレーネに指示をした後2年前の内戦で手に入れた”騎神”――――”灰の騎神ヴァリマール”を呼ぼうとし、リィンの指示に頷いたセレーネが竜化をしようと力を溜め始めたが

「騎神の使用並びに竜化、そしてセレーネ・L・アルフヘイムを除いたお前に力を貸している異種族達の助力は禁止だ。LV0の難易度は騎神を含めた”人”とは比べものにならない”強力な存在”の介入を想定していない。その程度の相手に使ったら正確なテストにはならぬだろう。」

シュミット博士の指摘を聞いてリィンとセレーネはそれぞれの行動を中断した。

「シュバルツァー、せいぜいお前が”奥の手”を使うか――――」

「……………」

(奥の手……?)

シュミット博士の話を聞いたリィンが静かな表情で黙り込んでいる中シュミット博士の話が気になったクルトは不思議そうな表情でリィンを見つめた。

「―――まだ使っていない”ARCUSⅡ”の新機能を引き出してみせるがいい。」

「”ブレイブオーダー”モードを起動してください……!オリビエさん――――オリヴァルト皇子がリィン教官とセレーネ教官ならきっと使いこなせるって言ってました!」

シュミット博士と少女の話を聞いたリィンとセレーネは第Ⅱ分校に来る少し前に、バリアハートを訊ねてきたオリヴァルト皇子の話を思い出した。



――――私の頼みに応じてくれたことに改めて心からの感謝を、リィン君、セレーネ君。



お礼と言ってはなんだが、完成したばかりの”ARCUSⅡ”を”君達全員”に贈らせてもらうよ。



実は通信面でちょっとしたカスタムがされているんだが………他にも”ENIGMA・R(リメイク)”には搭載していない画期的な新機能があるから実戦で役立ててくれたまえ。



「あ………」

「そうか―――了解だ!防御陣――――”鉄心”!!」

オリヴァルト皇子の話を思い出したセレーネは呆けた声を出し、リィンは頷いた後戦術オーブメントを取り出してある機能を起動させた。するとオーブメントから光が放たれ、リィン達全員を包み込んだ。

「これは――――!?」

「な、何かがあの人から伝わってくる……!?」

「戦術リンク―――いえ、それとは別の………」

「これが新たな機能―――”ブレイブオーダー”ですか……!」

リィンが起動させた戦術オーブメントの新たな機能に生徒達がそれぞれ戸惑っている中予め説明を受けて知っていたセレーネは驚きの表情で呟いた。

「――――Ⅶ組総員、戦闘準備!”ブレイブオーダー”起動――――トールズ第Ⅱ分校、Ⅶ組特務科、全力で目標を撃破する!」

「おおっ!」

そしてリィンの号令を合図にユウナ達は巨大な甲冑の人形―――――”魔煌兵”ダイアウルフとの戦闘を開始した!



「……………」

「「!!」」

「くっ!?」

「キャッ!?」

「あうっ!?」

戦闘開始時敵は先制攻撃代わりにリィン達目がけて巨大な拳を振り下ろし、敵の行動に真っ先に気づいたリィンとセレーネは左右に跳躍して距離を取った。すると敵の拳が地面にぶつかった瞬間衝撃波が発生して、リィンとセレーネと違い、回避や防御行動に遅れたユウナ達にダメージを与えた。

「回復します――――アルジェムヒール!!」

「――――――!」

「二の型―――洸破斬!!」

「落ちよ、聖なる雷――――ライトニングプラズマ!!」

敵は巨体の為攻撃の威力も凄まじかったが、ユウナ達はリィンの”オーダー”によって防御能力が高められていた事で受けるダメージも軽減されていた為、耐える事ができ、敵の攻撃が終わるとアルティナは受けたダメージを回復する為にクラウ=ソラスに回復エネルギーを解き放させて自分達の傷を回復し、リィンとセレーネはそれぞれ発動が早い遠距離攻撃を敵に叩き込んで敵の注意を自分達へと惹きつけていた。

「ありがとう、アルティナ!えいっ!」

「ハアッ!」

アルティナとクラウ=ソラスのクラフトによって傷が回復したユウナとクルトはそれぞれ左右の足に武器を叩き込んでダメージを与えた。

「秘技―――裏疾風!斬!!崩したぞ!」

続けてリィンが鎌鼬を纏った電光石火の2連続攻撃で追撃して敵の態勢を崩し

「ブリューナク起動、照射。」

「―――――!」

リィンが作った隙を逃さないかのようにリィンと戦術リンクを結んでいたアルティナがクラウ=ソラスにレーザーを発射させて更なる追撃を叩き込んで敵のダメージを重ねた。一方次々とダメージを受けた敵は反撃をしようとしたが

「光の加護を―――――ホーリーミスト!!」

セレーネが発動した仲間全員を光を纏わせて一定時間戦場から姿を消す”ブレイブオーダー”――――ホーリーミストによってリィン達全員が戦場から姿を消した事によって攻撃対象がわからなくなった為、何もできなくなった。



「ハァァァァァ………受けろ、大地の一撃!!崩したわ!」

「!?」

セレーネのブレイブオーダーによって敵が自分達を認識していない事を利用したユウナはトンファーに地属性の魔力を溜め込んで強烈な一撃――――アースブレイクを敵に叩き込んだ。するとトンファーの打撃力に7属性の中で最も打撃力や衝撃力が強い大地の魔力が重ねられた事による一撃に加えて後方からの奇襲攻撃を受けた敵は怯むと共に態勢を崩し

「双波斬!!」

ユウナと戦術リンクを結んでいるクルトが双剣の片方の剣で斬り上げた後続けてもう片方の剣で斬り下ろしによる2連続攻撃を叩き込んで敵に対するダメージを重ねた。

「―――――――!!」

ダメージを重ねた事によって敵は咆哮を上げて”高揚”状態になって、反撃をしようとしたが姿を消すセレーネのブレイブオーダーがまだ続いていた事によって、反撃はできなかった。

「炎よ、焼き飛ばせ――――灼熱の大熱風!!」

「聖なる光よ、今ここに集いて炸裂せよ―――ホーリーバースト!!」

そこにリィンが発動した魔術による炎の竜巻とセレーネが発動した魔術による集束した光の爆裂が敵に襲い掛かり、”高揚”状態になっている事によって防御が無防備だった敵は大ダメージを受けた。

「―――行きます!トランスフォーム!!――――シンクロ完了。ゴー―――アルカディス・ギア!!よーい――――どん!」

するとその時アルティナは一瞬でクラウ=ソラスと一体化し、敵に突撃した!

「ブリューナク展開、照射。――――止めです。」

クラウ=ソラスと一体化したアルティナは敵に突撃しながら両肩についている砲口から集束エネルギーを敵に向けて放った後敵の頭上へと移動し

「ハァァァァァ………斬!!」

止めにブレードの部分である両腕を縦に回転させて敵に止めの一撃を叩き込んだ!

「――――――――!!??」

クラウ=ソラスと一体化し、強烈な連携攻撃を放つアルティナのSクラフト―――アルカディス・ギアによるダメージに耐えきれなくなった敵は咆哮を上げながら消滅した!



「はあはあ……た、倒せた………」

「………っ………はあはあ………」

「………体力低下。小休止します。」

敵の消滅を確認したユウナ達生徒3人は安堵や疲労によって地面に跪いたりを息を切らせたりし

「何とか全員無事で終えましたわね。」

「…………………」

まだまだ余力があるセレーネとリィンはそれぞれ武器を収めて生徒達に視線を向けた。

「お、お疲れ様でした!テストは全て終了です!―――博士、いくらなんでも無茶苦茶ですよ~!」

「フン、想定よりもかなり早いか。次は難度を2~3段階上げるとして………」

「ぁうぅっ……聞いてくださいよ~っ!?」

小要塞内に聞こえてきた少女とシュミット博士の会話を聞いていたリィン達はそれぞれ冷や汗をかいて呆れた表情をしていた。



「………滅茶苦茶すぎだろう。」

「次って、また同じことをやらせようってわけ……?」

「可能性は高そうですね。しかも会話の内容からして、今回のテストの難易度より更に難易度が上がっている可能性大です。」

「――――いずれにせよ、”実力テスト”は終了だ。」

「皆さん、お疲れ様でした。」

「………ぁ…………」

「………すみません。」

「………ありがとうございます。」

それぞれ疲労している様子のユウナ達にセレーネと共に労いの言葉をかけたリィンはユウナとクルトに、セレーネはアルティナに手を差し出して立ち上がらせた。

「3人とも、よく頑張った。ARCUSⅡの新モード、”ブレイブオーダー”も成功―――上出来といっていいだろう。それぞれ課題はあるだろうが一つ一つクリアしていけばいい。”Ⅶ組・特務科”――――人数の少なさといい、今回のテストといい、不審に思うのも当然かもしれない。教官として所か一人の大人としてまだまだ未熟でロクに概要を知らない俺達が教官を務めるのも不安だろう。先程言ったように、希望があれば他のクラスへの転科を掛け合う事も約束する。だから―――最後は君達自身に決めて欲しい。自分の考え、やりたい事、なりたい将来、今考えられる限りの”自分自身”の全てと向き合った上で今回のテストという手応えを通じて”Ⅶ組”に所属するかどうかを。多分それが、”Ⅶ組”に所属する最大の”決め手”となるだろうから。」

「どうかわたくし達に遠慮せず、ハッキリと自分の”意志”を口にしてください。」

「「「……………」」」

リィンとセレーネの説明を聞いたユウナ達生徒達はそれぞれ黙って考え込み、やがて最初にユウナが口を開いた。



「――――ユウナ・クロフォード。”Ⅶ組・特務科”に参加します。」

「え――――」

「………ぁ…………」

ユウナの答えを聞いたクルトとアルティナはそれぞれ呆けた様子でユウナを見つめた。

「勘違いしないでください。入りたいからじゃありません。あたしはクロスベルから様々な複雑な経緯でこの学校に来ました。エレボニアの事は、あまり好きじゃありません。」

「みたいだな。」

「……だけど、今回のテストで貴方達の指示やアドバイスは適切でした。さっきの化物だって、お二人がいなければ撃破できなかったでしょう。はっきり言って悔しいですし、警察学校で学んだ事を活かせなかったのも不本意です。―――だから結果を出すまでは、実力を示せるまでは”Ⅶ組”にいます。”灰色の騎士”に”聖竜の姫君”――――メンフィル、エレボニアの両帝国の英雄にしてあの”特務支援課”の一員でもあり、クロスベルの英雄でもあった貴方達に一人前として認められるくらいになるまでは。」

「ユウナさん……」

(……滅茶苦茶だろう……)

(……論理的整合性はありそうですが。)

ユウナの決意を知ったセレーネは目を丸くし、クルトは呆れ、アルティナは納得した様子でユウナを見つめていた。



「ふう……その英雄というのは正直止めて貰いたいんだが。わかった、君の意志を尊重する。”Ⅶ組”へようこそ―――ユウナ。」

「――――はい!」

「クルト・ヴァンダール・自分も”Ⅶ組”に参加します。ただし―――積極的な理由はありません。」

そしてリィンの言葉にユウナが力強く頷くとクルトも続くように”Ⅶ組”への参加の申し出を口にした。

「え……」

「それは……」

「この第Ⅱ分校が、自分のクラスをここに定めたのなら異存はありません。強いて言うなら、今回のように実戦の機会が多いのは助かります。受け継いだ剣を錆び付かせてしまったら家族への面目も立ちませんから。」

「受け継いだ剣……」

「ヴァンダール流ですか。」

クルトの説明を聞いたユウナは呆けた表情をし、アルティナは静かな表情で呟いた。

「それと、折角なので”八葉”とあの兄が”剣士として間違いなく双界最強”と称した人物が修めている剣技―――”飛燕”の一端には触れさせてもらおうかと。――――”飛燕”の使い手の方はまだ実際にこの目にしていないので何とも言えませんが、”八葉”の方は正直聞いていたほどでは無かったというのが本音ですが。」

「え、え~と……」

(って、生意気すぎでしょ……!?)

(人のことは全く言えないと思いますが。)

(というか”飛燕剣”の一端に触れたいという事は、クルトさんはアイドス様の事もご存知なのでしょうね……)

(まあ、彼はお姉様やセリカとも親交があるミュラーの弟なのだから、私の存在や”飛燕剣”の事を知っていてもおかしくないわよ。)

クルトのリィンへの評価にセレーネは困った表情をし、呆れているユウナにアルティナはジト目で指摘し、冷や汗をかいて呟いたメサイアの念話にアイドスは苦笑しながら答えた。



「はは……君達と同じくいまだ修行中の身というだけさ。―――了解した、クルト。”Ⅶ組”への参加を歓迎する。」

「………はい。」

「……後はアルティナさん、貴女だけですよ。」

リィンの言葉にクルトが頷いた後リィン達はアルティナに注目し、セレーネがアルティナに答えを促した。

「………?何故わたしにも確認を?その必要はありません。任務内容には準じて――――」

セレーネの問いかけに不思議そうな表情で首を傾げたアルティナは答えを口にしようとしたが

「そうじゃない、アルティナ。君自身の意志でどうしたいか決めるんだ。」

「???」

「………………」

(……意味がわからないのか?)

リィンの答えを制されて指摘され、リィンの指摘に不思議そうな表情で首を傾げている様子のアルティナをユウナは目を丸くして見守り、クルトは戸惑いの表情で見守っていた。



「―――さっきも言った通り、自分自身の意志を示さない限り参加を認めるつもりはない。決めたのが分校長だろうと、たとえリウイ陛下やメンフィル帝国政府だろうとその一線だけは譲らないつもりだ。」

「それにアルティナさんもご自身で仰ったでしょう?分校への入学はお兄様達―――シュバルツァー家がアルティナさんに”普通の子供として”学院生活を経験して欲しいという心遣いも含まれている事を。それなのに、誰かの意図に従ってこのクラスに参加する事はお兄様達は望んでいないと思いますわよ?」

「そうだな……誰かに決められてこのクラスに参加する事は俺達もそうだが、父さん達もきっと望んでいない。……何でもいい。君自身の”根拠”を示してくれ。」

「私自身の”根拠”………」

リィンとセレーネに指摘されたアルティナは考え込んだ。

「ちょ、ちょっと……!何を意地悪しているんですか!?事情は知らないけどよくわかってない子に―――」

アルティナの様子を見たユウナはアルティナを庇う為にリィンとセレーネに文句を言いかけたその時

「……”根拠””は思いつきません。ですが――――メンフィルの捕虜の身であった私を教官のご厚意によって教官達―――シュバルツァー家に引き取られてからこの1年半、内戦を含めて貴方達の事をサポートさせてもらいました。この分校で所属するのなら『リィン教官のクラス』であるのが”適切”であると考えます。それと1年半前内戦終結の為に、”特務部隊”であった私達と協力関係であったトールズ士官学院”Ⅶ組”――――その名前の響きに少しばかり興味もあります。……それでは不十分でしょうか?」

アルティナも自身の答えを出して、リィンとセレーネに確認した。

「あ………」

「……………」

「―――今はそれで十分だ。よろしく頼む、アルティナ。」

「改めてよろしくお願いしますわね、アルティナさん。」

「はい。」

そしてユウナとクルトが見守っている中リィンとセレーネはそれぞれアルティナをⅦ組の一員と受け入れる事を決め、二人の言葉にアルティナは頷いた。

「ふ、ふん……勿体ぶっちゃって。」

「ふう………波乱含みだな。」

「――――それでは、この場をもって”Ⅶ組・特務科”の発足を宣言する。お互い”新米”同士、教官と生徒というだけでなく―――”仲間”として共に汗をかき、切磋琢磨していこう!」

そしてリィンは力強い宣言をその場で口にしてユウナ達を見回した。



「リィン君………」

「うふふ、まさに”青春”をしているわね、リィンお兄さんったら♪」

一方リィン達の様子を地上へと続く出入り口から見守っていたトワは微笑み、レンは小悪魔な笑みを浮かべ

「へえ……どうなってるか気になって来てみりゃあ。」

「クク……さすがは”特務支援課”と”旧Ⅶ組”に深く関わっていただけはあるな。」

ランディとランドロスは興味ありげな様子でリィンを見つめていた。

「……勝手なことを。一教官に生徒の所属を決定できる権限などないというのに。」

「フフ、転科の願いがあれば私は認めるつもりではありましたが。」

一方リィンの行動にミハイル少佐が呆れている一方リアンヌ分校長は意外な答えを口にした。

「分校長、お言葉ですが――――」

「つり合いが取れれば問題はないでしょう。彼らは己で”決めた”のですから。Ⅷ組、Ⅸ組共に出だしは順調、”捨石”にしては上出来の船出です。―――――近日中に動きがあります。激動の時代に翻弄され、儚く散らせたくなければその”時”が来るまでに雛鳥たちを鍛え続けなさい。」

そしてミハイル少佐の注意を制したリアンヌ分校長はその場にいる教官達に忠告し

「も、勿論です……!」

「―――ま、生徒が死なないようにするのも”教官”の務めだものね。」

「おうよ!クク、どんな風に雛鳥達を成長させるか、今から楽しみだぜ!」

「……イエス、マム。」

「やれやれ―――大変な所に来ちまったなぁ。」

リアンヌ分校長の忠告にその場にいる教官達はそれぞれの答えを口にした。



~アインヘル小要塞・外~



「ったく、ラッセルの爺さん以上にマッドすぎるだろうが……留学についてもそうだが、あんなジジイに弟子入りしちまって本当に良かったのか?」

その後小要塞から去っていくシュミット博士を金髪の少女と共に見守っていた赤毛の男は呆れた表情で溜息を吐いた後金髪の少女に訊ねた。

「あはは……でもでも、やっぱり凄いヒトです……!同じ新入生の子達とも仲良くやっていけそうですし……レンちゃんもいますし……―――それに、エレボニアに入れないお姉ちゃんたちの”代理”もちゃんと務めたいですから……!」

「やれやれ、いつの間にかデカくなったっつーか……もう”チビスケ”とは呼べねぇな。」

金髪の少女の話を聞いた赤毛の男は苦笑した後少女の頭を優しくなでた。

「あ………えへへ……」

「”連中”は確実に動き始めてる。帝国政府も、それ以外の勢力もな。スチャラカ皇子のツテで遠距離通信のラインは確保できた。何かあったら駆けつける。遠慮なく連絡しろ―――ティータ。」

「はいっ……!アガットさんも気を付けてあんまり無茶しないでください!」

そして赤毛の男―――アガットの言葉に金髪の少女―――ティータは力強い頷いた。

「――――うふふ、なるほどね。貴方がエレボニア入りした”一番の理由”は”やっぱり”ティータを守る為だったのね。」

「レ、レンちゃん……!」

「なっ、テメェ、何でここにいやがる……!?」

するとその時レンが眼鏡を外して二人に近づき、近づいてきたレンに気づいたティータは驚き、アガットは信じられない表情でレンに訊ねた。



「”何でここにいやがる”とはご挨拶ね~。レンは第Ⅱ分校の”教官”―――”先生”の一人なんだから、この分校のどこにいても当然でしょう?」

「フン…………おい、一つ聞きたい事がある。何でテメェ―――いや、メンフィルやクロスベルの連中はあのスチャラカ皇子の頼みに応じてこの学校の教師として派遣されてきた?幾ら知り合いの頼みだからと言って、皇族の連中どころか1年半前の戦争で生まれた”英雄”まで引っ張り出して1年半前の戦争や内戦の件でそれぞれ国家間の関係が微妙な状態になっているエレボニアにわざわざ入り込むなんて、どう考えてもありえねぇだろう。まさかとは思うが、1年半前テメェの国の”灰色の騎士”の活躍で中途半端になったエレボニアとの因縁の”ケリ”をつける為か……?」

からかいの表情で答えたレンの様子にアガットは鼻を鳴らした後目を細めてレンに問いかけ

「へえ?」

「ア、アガットさん……レンちゃん………」

アガットの問いかけにレンが興味ありげな表情をしている中ティータは心配そうな表情で二人を見比べていた。

「………うふふ、”A級”への昇格祝いに良い事を教えてあげる。1年半前の件で大きく衰退したエレボニアが”衰退した原因”に対する復讐とかを考えていなかったら、レン達は”何もするつもりはない”わよ。――――最も逆に言えば、”何かするつもりなら”、レン達も”相応の対応をする”という意味にもなるけどねぇ?―――――”主計科”のみんなも既にオリエンテーションが終わっているから、ティータも早く戻って合流してね。」

「………チッ………”やっぱり”か。」

「レンちゃん…………」

そしてレンは意味ありげな笑みを浮かべて答えた後その場から去り、その様子を見守っていたアガットは舌打ちをした後厳しい表情をし、ティータは複雑そうな表情でレンの後ろ姿を見守っていた―――――




 
 

 
後書き
閃Ⅲ篇は次の話と序章終了時のリィン達のステータスを更新した後閃Ⅲ篇は一旦ストップして焔の軌跡の続きの更新に戻ろうと思っていますので焔の軌跡の続きをお待ちしている人達はもう少々お待ちください 

 

外伝~改変された最後の運命の始まり~

~リーヴス~



「は~……疲れたぁ~。入学早々からこんなに疲れるなんて思わなかったわ……」

オリエンテーション後に行われたHR(ホームルーム)が終わり、新入生達がそれぞれ下校していく中、クルトやアルティナと共に校門を出て下校を始めたユウナは疲れた表情で溜息を吐き

「………あのような”オリエンテーション”があったのですから、誰でも疲れて当然かと。」

「……宿舎に戻った後は宿舎に届いている僕達の荷物をそれぞれの部屋に自分で運んで整理し、更に夕食も自分でとらなければならない事を考えると少し憂鬱になるな。」

ユウナの言葉にアルティナは頷き、クルトは困った表情で呟いた。

「う”っ………それを考えたら更に疲れるから考えないようにしていたのに、言わないでよ~。」

「………まあ、少なくても荷物を部屋に運ぶ事と今日の夕食の準備の心配は必要ありませんから、ユウナさんが想像しているような体力の低下はないかと。」

クルトの言葉を聞いて肩を落とした様子のユウナにアルティナは指摘し

「へ……それって、どういう事??」

「それについては宿舎に行けばすぐにわかるかと。」

自分の言葉に不思議そうな表情で首を傾げているユウナにアルティナは静かな表情で答えた。そして宿舎に辿り着いたユウナ達新入生達は宿舎に入ると、驚愕の人物達がユウナ達を迎えた。



~宿舎~



「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます♪そして、お帰りなさい♪」

「―――ご入学おめでとうございます、そしてお疲れ様です、トールズ第Ⅱ分校の新入生の皆様。」

「へ…………」

「な――――――」

ユウナ達が宿舎に入るとそれぞれメイド服を身に纏ったアルフィンとエリゼがユウナ達に労いやお祝いの言葉を述べた後恭しく頭を下げ、アルフィンとエリゼを見たユウナは呆けた声を出し、クルトは絶句してアルフィンを見つめた。

「ええっ!?あの方って確か……!」

「ア、アルフィン皇女殿下……!?」

「ど、どうして皇女殿下が宿舎に……―――い、いえ、その格好は一体……?」

「あれ?確か皇女殿下って、1年半前のメンフィル帝国との戦争の”和解条約”で”灰色の騎士”に嫁いだんじゃ……?」

「ククッ……最後の最後で、こんなサプライズがあるとはな。」

「ふふっ……まさか1日で2回も想定外の出来事が起こるなんて。」

「ふえ~……それじゃあ、あの人がオリビエさんの妹さんなんだ………」

アルフィンの正体を知っている生徒達がそれぞれ驚いたり混乱している中金茶髪の男子は不敵な笑みを浮かべ、ミント髪の女子は微笑み、興味ありげな表情で、ティータは呆けた表情でアルフィンとエリゼを見つめていた。

「ふふっ……―――初めまして。元エレボニア帝国の皇女にして1年半前の内戦を終結へと導き、そして内戦の間に起こった異世界の大国メンフィル帝国との戦争を”和解”へと導いて頂いたエレボニアとメンフィル、両帝国の英雄――――”灰色の騎士”リィン・シュバルツァーの伴侶の一人として嫁いだアルフィン・シュバルツァーと申します。此の度様々な事情によりこの第Ⅱ分校専用の宿舎の”管理人”を務める事になりました。以後お見知りおきお願い致しますわ。」

「―――同じく此の度トールズ第Ⅱ分校専用宿舎の”管理人補佐”を務める事になったリィン・シュバルツァーの妹、エリゼ・シュバルツァーと申します。以後お見知りおきを。」

アルフィンとエリゼはそれぞれ上品な仕草で自己紹介をし

「あ、ちなみにエリゼは旦那様――――リィンさんの婚約者の一人ですから、幾らエリゼが魅力的な女性だからと言って、エリゼに想いを寄せてしまったら妹と結婚する程とても妹を大切にしておられるエレボニアの英雄でもある”灰色の騎士”の逆鱗に触れる事になりますから、男性生徒の方々はエリゼに想いを寄せる事は絶対に止めた方がいいですわよ♪」

「アルフィン、貴女ね………」

アルフィンはからかいの表情で忠告し、アルフィンの忠告にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エリゼはジト目でアルフィンを見つめた。



「ア、アルフィン皇女殿下と”灰色の騎士”の妹が宿舎の管理人……!?」

「一体どういう経緯があって、こんなとんでもない事に………」

「そ、それに”灰色の騎士”―――リィン教官に皇女殿下以外にも多くの婚約者が存在している話は耳にした事がありますが………」

「妹とまで婚約って、”灰色の騎士”って筋金入りのシスコンやったんや!?」

「というかそれ以前に”近親婚”って、できないんじゃなかったのか……?」

「ハハッ!教官のメンツといい、宿舎の管理人のメンツといい、中々面白い学生生活になりそうだね!」

「な、な、な……っ!アルティナ、今の二人の話って、本当なの!?」

我に返った生徒達が驚いたり混乱している中緑の髪をポニーテールにしている女子生徒は豪快に笑い、ユウナは口をパクパクさせた後、事情を一番知っていると思われるアルティナに訊ねた。

「……?どの事を訊ねているのでしょうか?」

「全部よ!あの二人のメイドさん?がリィン教官の奥さんでしかも元エレボニアのお姫様だとか、教官の妹で婚約者だとか、しかもその二人が宿舎の管理人を務める事とかも!」

「はい。全てお二人が仰っている通りです。」

「なるほど………だから先程僕達が夕食の準備や荷物を部屋に運ぶ必要がないような事を言っていたのか…………待てよ?という事は僕達は皇女殿下に夕食の準備をさせてしまった挙句、僕達の代わりに荷物を部屋に運ばせてしまったというとんでもない不敬を犯してしまったんじゃ………!?」

ユウナの質問にアルティナが肯定するとクルトは納得した様子で呟いたがすぐにある事に気づくと表情を青褪めさせて声を上げ

「あら?ふふっ、お久しぶりですわね、クルトさん。」

「………お久しぶりです。皇女殿下も変わらずご健勝そうで何よりです。1年半前メンフィル帝国との和解条約によってエレボニア帝国から去っても、更に麗しくなられましたね。」

するとその時クルトの声に気づいたアルフィンはクルトに近づいて声をかけ、声をかけられたクルトは恭しく会釈をして答えた。



「ふふっ、ありがとうございます。それにしてもクルトさんが第Ⅱ分校に入学していらしていたなんて………分校に来た理由はやはり、ご実家の件も関係しているのでしょうね。」

「………………」

(…………?)

複雑そうな表情で呟いたアルフィンの言葉に対して何も返さず複雑そうな表情で黙り込んでいるクルトの様子に気づいたユウナは不思議そうな表情で首を傾げ

「……アルフィン。」

「あっと……―――失礼しました。………リィンさんに降嫁した事でエレボニア皇族の地位を放棄してメンフィル帝国の貴族であるシュバルツァー家の一員となったわたくしに今の帝国政府やアルノール皇家の決定に意見をする”権利”はございませんが………それでもアルノール皇家を代表して、謝罪させて下さい。ヴァンダール家の方々にまでかつてのシュバルツァー家にした仕打ちのように今まで受けた恩を仇で返してしまい、本当に申し訳ございませんでした。」

複雑そうな表情をしたエリゼに声をかけられたアルフィンはクルトに謝罪し

「そんな……どうか、頭をお上げ下さい!父上達も既に納得している話ですし、ましてや滅亡の危機に陥っていたエレボニアを救うためにエレボニアの命運を握っていたメンフィル帝国の要求に従い、シュバルツァー家に自ら降嫁なされた皇女殿下が僕達に謝罪する必要はございません!むしろ、肝心な時に皇女殿下をお守りする事ができず、”七日戦役”終結後もお傍でお守りする事ができず皇女殿下にお辛い立場を取らせ続けさせてしまった僕達が皇女殿下に謝罪するべき立場です!」

アルフィンに謝罪されたクルトは慌ててアルフィンに自分に謝罪する必要はない事を伝えた。

「……寛大なお心遣い、ありがとうございます。―――――皆さんもわたくしの事はどうか、皇女ではなく宿舎の管理人として接してくださいね。今のわたくしはエレボニア皇女ではなく、皆さんが通っている分校の教官を務めているリィンさんの新妻ですので♪」

「…………………」

「リィン教官と結婚してから既に1年半も経過しているのですから、ご自分の事を”新妻”と言うのは違うような気がするのですが。」

アルフィンは周囲を見回して自分を皇女扱いする必要はない事を伝えた後ウインクをし、アルフィンの発言にその場にいる全員が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エリゼと共にジト目でアルフィンを見つめているアルティナがアルフィンに指摘した。

「リィン教官と結婚して既に1年半も経っているって………失礼を承知で訊ねるけどアルフィン皇女って、今何歳なの?見た感じあたし達と同い年くらいに見えるけど………」

アルティナの話を聞いてある疑問が出て来たユウナは困惑の表情でアルフィンに訊ね

「フフッ、今年で17歳になりますわ。」

「17って事はあたしと同い年じゃない!しかも1年半前に結婚したって事は………15歳か16歳で結婚した事になるわよ!?」

「正確に言えば15歳です。アルフィン様がリィン教官に降嫁した時期はエレボニアの内戦終結から1ヵ月後ですので。」

「あれ~?でも、七耀教会が定めている結婚の最低年齢は16歳からだったと記憶していますけど、どうしてアルフィン皇女殿下は15歳で結婚できたのか不思議ですね~?」

「ル、ルイゼちゃん……気にする所がズレていない?」

アルフィンの年齢を知って驚いているユウナにアルティナは冷静な様子で指摘し、首を傾げて呟いた眼鏡の女子生徒に赤茶色の髪の女子生徒が冷や汗をかいて指摘した。

「まあまあ♪という事は皇女殿下は15歳でリィン教官によって”大人の女性”にして頂けたのですわね♪」

「ちょ、ちょっと、ミュゼ!?」

「お、”大人の女性”って、もしかして……」

「もしかしなくてもそういう事やろ!?”夫婦”になったら”そういう事”は当然するんやろうからな。しかもリィン教官には皇女殿下や皇女殿下とも互角のスタイル抜群で美人の妹さんも含めて他にも婚約者がいるって話やろ!?く~、羨ましすぎやろ!」

「ブッ!?君!幾ら降嫁されたとはいえ皇女殿下に対してそんな事を口にするなんて、さすがに不敬じゃないか!?」

「……まさに、”英雄色を好む”、ね。」

ミント髪の女子生徒の言葉を聞いた黒髪の女子生徒が顔を赤らめて慌ててている中男子生徒達は騒ぎ出し、生徒達の会話を聞いていた銀髪の女子生徒は呆れた表情で呟いた。



「え………どうして貴女が…………」

一方自分にとって聞き覚えがあるミント髪の女子の声を聞いてミント髪の女子を見たアルフィンは呆けた表情でミント髪の女子の見つめ

「ふふっ、お久しぶりですわね、皇女殿下。皇女殿下がまだ女学院に通っていた頃に可愛がって頂いた後輩の一人―――――”ミュゼ・イーグレット”を憶えて頂けているでしょうか?」

「”ミュゼ・イーグレット”…………?」

「あら……という事は貴女は以前”アストライア女学院”に通っていたのね。」

ミント髪の女子―――――ミュゼの自己紹介を聞いたアルフィンが不思議そうな表情でミュゼを見つめている中蒼髪の女子生徒は目を丸くしてミュゼに声をかけ

「?どうしたの、アルフィン。」

「いえ…………(彼女については後で説明しますわ。)………ええ、勿論貴女の事も憶えているわ、”ミュゼ”。改めてよろしくね。」

エリゼに声をかけられて我に返ったアルフィンは小声でエリゼにある事を伝えた後静かな表情でミュゼを見つめた。

「あ、あの、皇女殿下が宿舎の管理人という事はもしかして、今後の食事は皇女殿下自らが作ってくださるのですか……!?」

「ええ、これでもリィンさんの”妻”としての経験もありますから、当然料理も嗜んでいますわ。ただ、皆さんのお口にあうかどうかわかりませんが………」

「そ、そんな……!皇女殿下自らの手で御作りになった料理を口にできるなんて、夢のような出来事ですよ……!」

「………ハッ。」

「ふふっ………初めまして。アリア先輩よりアリア先輩愛しの従兄であられるリィン教官のお話と共にアリア先輩にとって姉君同然の存在であられる貴女の事も伺っております、エリゼ・シュバルツァーさ―――いえ、エリゼ卿♪アリア先輩噂の兄妹であられるお二人と同じ日に出会えるなんて、これも女神(エイドス)のお導きかもしれませんわね♪」

「!そう………”あの娘”も”アストライア女学院”に通っていたのですか。(兄様の件で自分達から私達との縁を切っておきながら、そんな事を口にしていたなんて、まさかあの”縁談”は実家だけでなく、あの娘の”意志”も含まれていてあの娘はまず外堀を埋めて”実家が貴族として存続する為に組まれた兄様との縁談”を成功させる為にそのような噂を広めているのかしら?)」

そして生徒達がアルフィンに声をかけたりそれぞれ騒いでいる中金茶髪の男子は鼻を鳴らしてその場から離れ、ミュゼはエリゼに近づいて上品な仕草で会釈をした後意味ありげな笑みを浮かべ、ミュゼの話を聞いたエリゼは一瞬表情を硬くした後すぐに静かな表情でなって答え、心の中である人物の行動の真意について考え込んでいた。



その後ベルフェゴールとリザイラが現れて更に生徒達を驚かせたり、混乱させたりし……そこにタイミング悪く仕事を終えてセレーネ達と一緒に宿舎に戻って来たリィンは生徒達に質問攻めにされたり、一部の男子生徒達に嫉妬の目で睨まれたりと就任早々散々な目に遭った。



~同時刻・”緋の帝都”ヘイムダル・バルヘイム宮・宰相専用執務室~



「―――なるほど。本校に続いて第Ⅱもか。」

一方その頃エレボニア帝国の宰相――――”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンは”鉄血の子供達(アイアンブリード)”から報告を受けていた。

「………はい。初日は滞りなく終了したそうです。”Ⅷ組戦術科”、”Ⅸ組主計科”に加え、”Ⅶ組特務科”も無事発足しました。」

オズボーン宰相の言葉に端末の画面に写っている水色髪の女性将校――――”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の一人にして”鉄道憲兵隊”に所属している”氷の乙女(アイスメイデン)”クレア・リーヴェルト少佐は報告を続けた。

「やれやれ、聖女が分校長になった事もそうだが天使と暴君が教官に加わった事自体も頭の痛い話だってのに、まさか内戦が終結してからメンフィルの加護の下一度もこっちの”要請(オーダー)”に応えず平和を満喫し続けていた”奴さん”まで教官に加わっちまうなんてなぁ。しかも、”ラッセル家”の才女も入るとか、”捨石”とは思えない充実過ぎるメンツだろ。ま、戦力が充実するんならそれはそれで使いようがあるけどな。」

クレア少佐の話に続くように端末の画面に写っている赤毛の青年―――――”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の一人にして”情報局”に所属し、外交書記官も兼ねている”かかし(スケアクロウ)”レクター・アランドール少佐は苦笑していたがすぐに気を取り直して静かな表情で呟いた。

「レクターさん……」

レクター少佐の発言にクレア少佐は複雑そうな表情を浮かべた。

「―――いずれにせよ、この春を持って全てが動き始めることとなる。ノーザンブリアを陥とした事で蛇の残党どもの潜む茂みは全て焼き払った。亡き主の”計画”を奪い返すためいよいよ直接動き始めるはずだ。ならば、翼と剣をもがれた皇子の最後の悪あがきたる”第Ⅱ分校”―――ルーファスを殺した事を始めとした我が計画の想定外な事ばかりを犯し続けた”我が愚かな息子”共々、せいぜい踊ってもらうとしよう。」

「閣下……」

「ったく……ホント、いい性格してるぜ。」

そして不敵な笑みを浮かべて呟いたオズボーン宰相の発言を聞いたクレア少佐は複雑そうな表情をし、レクター少佐は呆れた表情で呟いた。



~宿舎・リィンの部屋~



リィンに割り当てられた宿舎の部屋で、リィンがどこかに出かけている事で部屋に誰もいない中机に置かれてある”ARCUSⅡ”が人の手を借りずに自ら起動した。

「よし――――繋がったか。」

「わあっ……やったね!」

「ふふ、まさかこんな形で皆さんと話せるなんて。」

「うん、皇子殿下には感謝してもしきれないな。」

「フフ、本当に私達まで皆さんの”輪”に入れてもらってよかったのでしょうか?私達は”Ⅶ組”ではないのですが………」

「アハハ、そんな細かいことは誰も気にしていないよ。あの内戦は僕達と君達は”一蓮托生”の関係だったんだから、僕達にとっては君達も大切な”仲間”だよ。」

「ま、そう言う事だ。第一、俺達を”輪”に外したら仕事の関係で頻繁に会っているお前はともかく、中々愛しの婚約者であるリィンに会えないアリサあたりが絶対”リィン達を外すなんて、不公平です!”とか文句を言うと思っていたから、あの皇子も俺達を”輪”に入れたんじゃねぇのか?」

「うふふ、私もフォルデ様の推測が当たっている事に一票入れますわ♪」

「ちょっ、フォルデさん!こんな時にシャロンもからかわないでよ!?」

勝手に起動した”ARCUSⅡ”からはリィンにとって聞き覚えのある人物達の声が次々と聞こえてきた。

「アハハ………リィンとエリゼちゃん、セレーネとレン皇女殿下、エヴリーヌとアルティナにセシリア将軍閣下と……ガイウスは繋がらないか。」

「んー、距離的な問題か繋がりにくい場所にいるのかな?けど、確かアーちゃんやリィン達って、今日から”リーヴス”にいると思うから繋がると思うんだけど。」

「セシリア将軍とエヴリーヌは今は”本国”にいますから、その関係で繋がらないと思いますよ。」

「まあ、”世界”自体が異なりますから、それで繋がった方が凄いですものね……」

「ふふっ、そうね。レンやリィンさん達は多分”仕事”が終わって自室に一端戻った後お風呂か食事をしているのではないでしょうか?」

「時間帯を考えれば、その可能性の方が高いだろうな。少なくても繋がりにくい場所にいるという可能性はありえないしな。」

「フッ、まあ今後はいくらでも機会があるだろう。」

「そうね………これでやっと”約束”も果たせるわけだし。」

「まったくもう……嬉しそうにしちゃって。」

それぞれの人物の声を聞いていた他の声は苦笑していた。

「ふふ、仕方ありませんわ。再会の季節でしょうから。」

「ええ―――春、ふたたびね。」

そしてある人物の声の言葉に他の人物の声が同意した。



こうして…………”零の至宝”によって改変された周辺諸国を巻き込んだエレボニアの”最後の運命”が始まりを告げた―――――――






 
 

 
後書き
今回の話を読んでお気づきと思いますが、閃Ⅲでの本来のエリゼの代役?になるキャラとして新たなるオリジナルキャラが閃Ⅲ篇で登場します。エリゼの代役も用意されているので、当然アルフィンの代役も用意されています。オリジナルキャラであるその二人は一体誰に攻略されてしまうんでしょうね~(遠い目)そして今回の話で閃Ⅱ篇で増える事になるリィンのハーレムメンバーもわかったかとw(というか元々バレバレだったでしょうが)ちなみに現在の私の閃Ⅲの進行状況は4章のアルゼイドの師弟コンビを倒したところです!オーダーとブレイクがチート過ぎてアリアンロード達の時もそうだけど、アルゼイド師弟コンビもあんまり苦戦しませんでしたwwサラもそうですけど、ミリアムのオーダーがチート過ぎるwwダメージ90%カットってwwアリアンロード達のダメージを3桁で、しかも200にすら届いていないのを見てマジで噴きましたww碧でオーダーかブレイク、どちらかがあったら、アリアンロードやシグムントとかも絶対もう少し楽に倒せたでしょうね(遠い目) 

 

設定1

<灰色の騎士> リィン・シュバルツァー





原作(閃Ⅲ)と違い、最初から”神気合一”が使用可能並びに閃Ⅱのクラフトも使用可能





LV300

HP33000

CP3000

ATK4600(ラクスアイドス装備時44000)

DEF10700

ATS2850(ラクスアイドス装備時23400)

ADF12300

SPD180

DEX80

AGL75

MOV16









装備





武器 利剣『鳳凰』・真(ユイドラ工匠ディオン3姉妹の手によって創られた”鳳凰”の力が宿る名刀。使い手と共に鍛え上げられている。リィン専用。ATK2400、ATS250、AGL20%上昇、攻撃時30%で大火傷攻撃)

   ラクスアイドス(神剣アイドスの最終形態。その一振りはいかなる結界をも貫き、敵に”死”という名の”慈悲”を与え、平和を乱す邪悪なる存在を魂ごと消し飛ばす。リィン専用。ATK40000、ATS20000、クリティカル率50%、大火傷100%、即死30%攻撃。クラフト、”アイドス召喚”が使用できる。不死系、悪魔系、幽霊系、霧系、魔神系の敵に威力3倍、絶対防壁貫通。『アイドス召喚』以外の召喚時の消費CPを四分の一にし、召喚中の負担も四分の一にする)

防具 ラクスアイドスR(”慈悲の大女神”アイドスの結界。リィン専用。DEF8000、ADF10000、全属性攻撃を75%軽減、全能力減少&遅延無効化、25%で受けた攻撃を無効化する)

靴  ディバーゴルティア改(ユイドラ工匠ディオン3姉妹の手によって創られた金の光輪を生む奇跡の防護靴。DEF270、MOV+6、SPD+8、DEX30%上昇)

アクセサリー エリゼの絆(ユイドラ工匠ディオン3姉妹によって強化されたリィンの妹、エリゼの思いが込められたお守り。リィン専用。全パラメーター10%上昇、10%で受けた攻撃を無効化、全状態異常無効化)

       フォースリング(空の女神エイドスより結婚祝い品として送られた古の魔力が宿る指輪。ATK25%上昇。一人出番が廻るごとにCPが6%回復、敵撃破時にCP30%回復、戦闘中2度ピンチになればCPMAX回復。アーツ『メルティライズ(範囲、効果は零・碧版)』を駆動&EP無しで放てる。)







スキル





エリゼが大好き バトルメンバーに『エリゼ』がいると、全パラメーターが15%上昇

ベルフェゴールが大好き バトルメンバーに『ベルフェゴール』がいると、全パラメーターが15%上昇

メサイアが大好き バトルメンバーに『メサイア』がいると、全パラメーターが15%上昇

リザイラが大好き バトルメンバーに『リザイラ』がいると、全パラメーターが15%上昇

セレーネが大好き バトルメンバーに『セレーネ』がいると、全パラメーターが15%上昇

アイドスが大好き バトルメンバーに『アイドス』がいると、全パラメーターが15%上昇

兄妹の絆 バトルメンバーに『エリゼ』がいるとATK&SPDが8%上昇、エリゼとのコンビクラフトの威力が1,5倍になる

軍の絆 バトルメンバーに『ステラ、フォルデ、セシリア』の誰かがいると、ATK&SPD4%上昇、なお2人以上いると人数に応じて効果が倍増する

主従の絆 バトルメンバーにメンフィル皇家或いはメンフィル軍の将がいる場合、全パラメーターが3%上昇、なお2人以上いると人数に応じて効果が倍増する

支援課の絆Ω バトルメンバーに『特務支援課のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が3倍になるかつ全パラメーター5%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる

聖水竜女王の絆 バトルメンバーに『セレーネ』がいると、互いのATS&SPDが15%上昇、セレーネとのコンビクラフトの威力が1,5倍になる

努力家Ⅳ 取得経験値40%上昇

先手Ⅳ 戦闘開始時20%で先制攻撃

連続攻撃Ⅴ 発動すれば物理攻撃後CP消費せず、同じ物理攻撃手段を放つ。20%で発動

連携 味方のすぐ後に攻撃すれば、1,5倍

カウンターⅣ 発動したら敵の攻撃を完全回避、攻撃範囲内に攻撃した敵がいたら反撃する。20%で発動

見切りⅤ 発動すると敵の攻撃を完全(魔法攻撃やSクラフトを含める)回避。30%で発動

決死 HPが30%以降減るとATK、DEF20%上昇かつ5%ずつHPが減るごとにATK、DEF5%上昇

慈悲神の防壁 慈悲の大女神アイドスによる援護結界。5ターンずつにどんな攻撃でも1回だけ防げる絶対防壁と3ターンの間行動後HP30%自動回復する結界が自動的にリィンに付与される。条件、神剣アイドスを装備している事

慈悲神の防護 慈悲の大女神アイドスによる援護結界。リィンを含めたバトルメンバー全員、全状態異常&全パラメーター減少無効 条件、神剣アイドスを装備している事

慈悲神の愛 何度も愛し合った事によって強化された慈悲の大女神アイドスによる愛の加護。クラフト『神気合一』の持続ターンを30ターンに伸ばす。5ターンずつに1度だけ必中、クリティカル100%、ATK&ATS3倍、即死&バニッシュ50%&ブレイク確定の効果が付与される

達人の技力Ⅳ 物理系のクラフトを使った際、消費CPが40%減少。Sクラフトを使っても40%残る

猟兵殺し 敵が猟兵系の場合、威力30%上昇

Ⅶ組の絆Ω バトルメンバーに『”Ⅶ組”もしくは”特務部隊”のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が3倍になるかつ全パラメーター5%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる

アリサが大好き バトルメンバーに『アリサ』がいると、全パラメーターが15%上昇

ステラが大好き バトルメンバーに『ステラ』がいると、全パラメーターが15%上昇

アルフィンが大好き バトルメンバーに『アルフィン』がいると、全パラメーターが15%上昇

夫婦の絆 『リィン』、『アルフィン』の移動範囲内にお互いがいて、片方が攻撃した時、片方が自動的に連携して攻撃する。アルフィンとのコンビクラフトの威力が2倍になる

特務科の絆Ⅰ バトルメンバーに『特務科のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が1,1倍になるかつ全パラメーター1,1%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる





クラフト(原作以外)





連続火弾 50 単体 敵一人に炎の弾丸を連続で放つ。火属性威力Dの火傷15%の2回攻撃、崩し無効、ブレイクD(威力はATSに反映)

灼熱の大熱風 200 大円 炎の竜巻を発生させる火の魔術。火属性威力B+&火傷30%、崩し無効、ブレイクC(威力はATSに反映)

轟焔爆炎閃 180 中型直線(貫通) 集束した炎を閃光として解き放つ。火属性威力A+&火傷60%攻撃、崩し無効、ブレイクB(威力はATSに反映)

極・紅蓮切り 中円 40 炎を纏った紅葉切り。火属性威力B+&火傷50%攻撃、崩し発生率+15%、ブレイクC+(威力はATK、ATSの合計値に反映)

ベルフェゴール召喚 最大HP10%、最大CP30% 自分 パーティーキャラ、ベルフェゴールを召喚する。ただし召喚した主は召喚している間、最大HPが5%、最大CPが15%下がる、任意でベルフェゴールを自分の元に戻せる

麒麟功 80 自分 体内の気を瞬時に練り上げる東方の気功。5ターンの間、ATK&SPD60%上昇、”剣閃”状態(神気合一時に使うと効果は2倍)

真・裏紅蓮剣 110 大型直線(貫通) 炎を纏った裏疾風。火属性威力SS×2&火傷90%攻撃、崩し発生率+35%、ブレイクA(威力はATK、ATSの合計値に反映)

リザイラ召喚 最大CPの40% 自分 パーティーキャラ、リザイラを召喚する。ただし召喚した主は召喚している間、最大CPが20%下がる、任意でリザイラを自分の元に戻せる。

極・大雪斬 70 単体 静かなる気を纏わせた剣で斬りおとす剣技。威力S+&混乱、凍結90%攻撃、崩し発生率+50%、ブレイクA+

極・光輪斬 90 中円 遠くの敵集団を切り刻む刀気の輪を繰り出す剣技。威力A&アーツ、駆動妨害攻撃、崩し発生率+15%、ブレイクC+

極・洸破斬 140  中型直線(貫通) 神速の抜刀から放たれる鋭い衝撃波。威力S&即死75%攻撃、崩し発生率+20%、ブレイクB

メサイア召喚 最大CPの20% パーティーキャラ、メサイアを召喚する。ただし召喚した主は召喚している間、最大CPが10%下がる、任意でメサイアを自分の元に戻せる。

アイドス召喚 最大CPの80%  自分 パーティーキャラ、アイドスを召喚する。ただし、『神剣アイドス』が所持品にないと、召喚できない。ただし召喚した主は召喚している間はCPの最大値が30%下がる。任意でアイドスを戻せる。

真・蒼龍炎波 150 大型直線(貫通) 闘気で発生した蒼き炎を竜と化させて敵に解き放つ。威力SS&火傷100%攻撃、崩し発生率+20%、ブレイクA+





Sクラフト(原作以外)





真・桜花残月 単体 残像も残らぬ神速の剣技。跡には血飛沫が月華を描くのみ。空属性威力4S+&ブレイクS+

真・鳳凰烈波 大円 達人直伝の鳳凰の如き剣気を纏った圧倒的な突撃技。威力6S&火傷、気絶100%攻撃&ブレイクSS

真・風神烈波 特大円 数々の激戦を得て習得した風神の如き剣気を纏った、圧倒的な超高速居合い攻撃。威力5S+&ブレイクS

終ノ太刀・緋凰 全体 無明を切り裂く緋き鳳凰を戦場に解き放つ『終ノ太刀・暁』の上位奥義。威力8S+&劫炎100%攻撃&ブレイクSS







クラフト(神気合一状態時、原作以外)





滅・裏疾風 120 特大直線(貫通) 裏疾風を強化した剣技。威力SS×2&封技100%攻撃、崩し発生率+40%、ブレイクA+

滅・裏紅蓮剣 200 特大直線(貫通) 炎を纏った裏疾風。火属性威力SS+×2&火傷100%攻撃、崩し発生率+45%、ブレイクS(威力はATK、ATSの合計値に反映)

滅・大雪斬 90 中円 静かなる気を纏わせた剣で斬りおとし、周囲に鎌鼬を巻き起こす。威力SS&混乱、凍結100%攻撃、崩し発生率+100%、ブレイクS

滅・光輪斬 110 大円 遠くの敵集団を切り刻む刀気の輪を繰り出す。威力A+&アーツ、駆動妨害攻撃、崩し発生率+25%、ブレイクB

滅・洸破斬 140  中型直線(貫通) 神速の抜刀から放たれる鋭い衝撃波。威力S&即死60%攻撃、崩し発生率+20%、ブレイクB+

滅・蒼龍炎波 200 特大直線(貫通) 闘気で発生した蒼き炎を竜と化させて敵に解き放つ。威力SSS&劫炎100%攻撃、崩し発生率+30%、ブレイクS





Sクラフト(神気合一状態時、原作以外)





滅・桜花残月 中円 残像も残らぬ神速の剣技。跡には血飛沫が月華を描くのみ。空属性威力5S&ブレイクSS

滅・鳳凰烈波 特大円 達人直伝の鳳凰の如き剣気を纏った圧倒的な突撃技。威力6S+&劫炎、気絶100%攻撃&ブレイクSS+

滅・風神烈波 特大円 数々の激戦を得て習得した風神の如き剣気を纏った、圧倒的な超高速居合い攻撃。威力6S&ブレイクS+

劫ノ太刀・絶凰 全体 無明を切り裂く緋き鳳凰を戦場に解き放つ『終ノ太刀・暁』の上位奥義。威力9S&劫炎100%攻撃&ブレイクSS+









コンビクラフト





クルーアル・ブラストⅡ 最大CPの30% 特大円・地点指定 睡魔女王と共に連携攻撃を叩き込んだ後睡魔女王の愛がこもった魔力の太刀を共に振り下ろす協力奥義。威力8S+&ブレイクSS。条件、バトルメンバーにベルフェゴールがいるかつ、双方の最大CPが30%ある事(リィンのATK、ベルフェゴールのATSの合計値が反映される)

真・比翼鳳凰撃 500 大円 呼吸を合わせ、鳳凰の闘気を纏って同時に一点突破を仕掛ける連携突撃技。威力7S+&ブレイクS+。条件、バトルメンバーにエリゼがいるかつ、双方のCPが500以上ある事

イフリート・キャリバーⅡ 最大CPの30% 大円 聖魔の力をその身に宿し皇女と共に業火の剣と断罪の剣を叩き込み、最後は裁きの剣と共に叩き込む協力奥義。威力7S&大火傷200%攻撃、ブレイクA。条件、バトルメンバーにメサイアがいるかつ、双方の最大CPが30%ある事(リィンのATK、メサイアのATSの合計値が反映される)

ブレイブクロスⅡ 100 特大円 異なる立場の英雄達の技が交差する協力奥義。威力6S+&封技、火傷、気絶100%攻撃、ブレイク確定。条件、バトルメンバーにロイドがいるかつ双方のCPが100以上ある事

真・風塵封縛殺 100 大円 真空の結界に閉じ込めた後剣技とアーツによる真空の刃で切り刻む協力奥義。威力5S&バランスダウン100%&SPD、MOV50%減少、ブレイクA+。条件、バトルメンバーにエリィがいるかつ、双方の最大CPが30%ある事(リィンのATK、エリィのATSの合計値が反映される)

Ωソード 100 大円 結界で敵の動きを封じてから太刀による斬撃で一刀両断する。威力5S+&DEF50%減少攻撃、ブレイクS+。条件、バトルメンバーにティオがいるかつ、双方の最大CPが30%ある事(リィンのATK、ティオのATSの合計値が反映される)

真・龍凰絶炎衝 100 大円 炎竜と鳳凰による炎で敵陣を焼き尽くす協力奥義。威力6S+&100%攻撃、ブレイクSS。条件、バトルメンバーにランディがいるかつ双方のCPが100以上ある事

ストームインパクトⅡ 100 大円・地点指定 銃火器と剣技の連携攻撃の後に同時に放たれる大地をも揺るがす協力奥義。威力5S+&気絶、封技100%攻撃、ブレイクSS+。条件、バトルメンバーにノエルがいるかつ双方のCPが100以上ある事

ファイナリティ・ゼストⅡ 100 特大円 拳と剣の衝撃波乱れ撃ちをする協力奥義。威力5S&絶対遅延攻撃、ブレイクS+。条件、バトルメンバーにワジがいるかつ双方のCPが100以上ある事

真・龍虎滅牙斬 最大CPの30% 特大円 精霊王女の力で浄化の扉を開いて邪悪なる者達を切り裂く協力奥義。威力6S+&ブレイクA、幽霊系、悪魔系、不死者系、魔神系の敵には2倍ダメージ&3ターン全パラメーター50%減少攻撃。条件、バトルメンバーにリザイラがいるかつ、双方の最大CPが30%ある事(リィンのATK、リザイラのATSの合計値が反映される)

真・神葬星条破 最大CPの70% 全体 星女神の神力を溜め込んだ太刀を地面に叩きつけ、戦場全体に星女神の神力を解放する協力神技。威力10S&絶対防壁貫通攻撃、ブレイクSS+(リィンのATK、アイドスのATSの合計値に反映)条件、バトルメンバーにアイドスがいるかつリィンのCPが最大CPの70%以上、アイドスが6000以上ある事

真・天光神雷空裂衝 最大CPの50% 特大円 術者の魔力によって巨大化した雷光の太刀を広範囲に叩きつけ、大爆発を起こす協力技。威力5S+&封技、気絶200%攻撃、ブレイクS+(リィンのATK、セレーネのATSの合計値が反映)。条件、バトルメンバーにセレーネがいるかつ、双方のCPが最大の50%以上ある事 

フレイムブラストⅡ 100 特大円 全て焼き尽くす蒼き業火のエネルギーを叩きこむ協力奥義。威力5S&火傷100%攻撃、ブレイクB。条件、バトルメンバーにアリサがいるかつ、双方のCPが100以上ある事。(リィンのATK、アリサのATSの合計値が反映される)

ハリケーンブラストⅡ 150 特大円・地点指定 剣技と銃火器による嵐の協力奥義。威力5S+&DEF50%減少攻撃、ブレイクA。条件、バトルメンバーにステラがいるかつ、双方のCPが150以上ある事

インフェルノドライブⅡ 600 特大円 アルノール家の魔力によって発生した全てを焼き尽くす紅き炎を宿した太刀で斬る紅き奥義。威力5S+&3ターン劫炎100%攻撃、ブレイクA(リィンのATK、アルフィンのATSの合計値が反映される)。条件、バトルメンバーにアルフィンがいるかつ、双方のCPが600以上ある事





アルティメットクラフト





飛葉双覇剣 最大CPの80% 中円 アイドスと共に放つ八葉一刀流と飛燕剣による剣撃の嵐。威力9S&絶対防壁貫通&絶対ブレイク攻撃。条件、バトルメンバーにアイドスがいるかつリィンが”神気合一”状態になっている事かつ、双方のCPが80%以上ある事







<聖竜の姫君> セレーネ・アルフヘイム・ルクセンベール(属性・聖水竜……水・空属性の攻撃を無効化、火属性攻撃以外の属性攻撃を10%減少させる)





LV260

HP26700

CP6200

ATK3650

DEF2230

ATS4650

ADF3210

SPD160

DEX55

AGL42

MOV14











装備





武器 聖剣アーリアル・改(至高の工匠―――”匠神”ウィルによって創られた至誠の光を宿す聖剣。ユイドラ工匠ディオン3姉妹の手によって更なる強化が施されている。セレーネ専用。ATK&ATS2000、クリティカル率25%、悪魔系、幽霊系、霧系、不死系に2倍ダメージ)

防具 セイントドレス・改(至高の工匠―――”匠神”ウィルによって創られた聖なる力の加護が宿りしドレス。ユイドラ工匠ディオン3姉妹の手によって更なる強化が施されている。セレーネ専用。DEF1600、ADF1800、スキル『反射Ⅲ』が追加)

靴  アルジェムスター改(ユイドラ工匠セティ達の手によって創られた銀の閃光を放つ奇跡の防護靴。DEF260、MOV+6、SPD+8、AGL15%上昇)

アクセサリー アルフヘイムのティアラ+(至高の工匠―――”匠神”ウィルとその子供達であるディオン3姉妹によって強化されたアルフヘイム王女の証であるティアラ。災厄から所有者を守る護身の魔法がかけられてある。セレーネ、ツーヤ専用。全状態異常&能力減少無効、全パラメーター8%上昇、8ターンごとに絶対防壁が一枚付与される)

       ヲロチリング(空の女神エイドスより結婚祝い品として送られた古の魔力が宿る指輪。攻撃時50%の確率で全ての攻撃手段の威力が1,5倍になり、さらに猛毒50%の効果が付与される。アーツ『テンペストロア』を駆動&EP無しで放てる。)







ARCUS版オーブメント(水・空・空属性)並びはエマです





アタックランク 斬A突S射S







リンクアビリティのタイプはエマ





オーダー



ホーリーミスト BP3 特殊(8カウント/ステルス)HP30%回復





スキル





リィンが大好き バトルメンバーに『リィン』がいると、全パラメーターが15%上昇

血縁の絆 バトルメンバーに『ツーヤ』がいるとATK&DEFが9%上昇

支援課の絆Ω バトルメンバーに『特務支援課のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が3倍になるかつ全パラメーター5%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる

聖水竜女王の絆 バトルメンバーに『リィン』がいると、互いのATS&SPDが15%上昇、リィンとのコンビクラフトの威力が1,5倍になる

努力家Ⅳ 取得経験値40%増加

連携 味方のすぐ後に攻撃すれば、1,5倍

魔力再生Ⅴ 行動終了後にCPが1000回復する

見切りⅣ 発動すると敵の攻撃を完全回避。25%で発動

連続攻撃Ⅳ 発動すれば物理攻撃後CP消費せず、同じ物理攻撃手段を放つ。16%で発動

女王の器 スキルの効果が2倍になる

慈愛の心 治癒系の魔術、アーツを使うと効果が1,5倍になる

聖水竜女王の防護 全状態異常&能力減少、遅延、バニッシュ、ブレイク無効化

聖水竜女王の魔力 魔法系、ドラゴンブレス系のクラフトを使った際、消費CPが25%減少。Sクラフトを使ってもCPが25%残る。水、光系の魔法系、ドラゴンブレスの威力が1,5倍になる

達人の技力Ⅲ 物理系のクラフトを使った際、消費CPが30%減少。Sクラフトを使っても30%残る

Ⅶ組の絆Ω バトルメンバーに『”Ⅶ組”もしくは”特務部隊”のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が3倍になるかつ全パラメーター5%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる

特務科の絆Ⅰ バトルメンバーに『特務科のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が1,1倍になるかつ全パラメーター1,1%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる









クラフト







エンチャントライト 50 自分 5ターンの間、自分の物理攻撃を『空属性』にする。攻撃した際、20%で攻撃した相手の能力上昇効果を打ち消す。空属性物理攻撃クラフトの威力を2倍にする

ホーリーラッシュⅢ 40 単体 光の魔力を纏った剣で斬り上げから薙ぎ払いへと連携攻撃する剣技。威力Bの空属性2回攻撃、崩し発生率+15%、ブレイクC+(ATK、ATSの合計値に反映)

キュア・プラムスⅢ 80 大円 範囲内の味方の傷を癒しの光で治癒する聖水竜魔法。自分にかけることも可能。HP70%回復

ライトニングプラズマⅢ 100 大円 聖なる雷を複数敵に落とす聖水竜魔法。空属性威力B+&封技、気絶70%攻撃、崩し無効、ブレイクB(威力はATSに反映)

アイスアラウンドⅢ 80 中円 氷の魔力を纏った全身を回転させて足払いをして攻撃する。水属性威力A&遅延&凍結60%攻撃、崩し発生率+15%、ブレイクB+(ATK、ATSの合計値に反映)

ハリケーンブリザード 300 特殊 自らを中心とした特大円攻撃のラファガブリザードの最上位竜魔法。水属性威力S&凍結&混乱&封技50%、崩し無効、ブレイクA(威力はATSに反映)

オーディナリーシェイプⅢ 90 大円 浄化の光で状態異常を治療する聖水竜魔法。全状態異常&能力減少回復

スパイラルピアスⅢ 90 単体 敵に詰め寄って捻りを加えた突きを放って防御を崩す移動剣技。威力SS&アーツ、駆動妨害&即死50%&DEF50%減少攻撃、崩し発生率+50%、ブレイクS+

ホーリーインパクトⅢ 100 特大円 力を溜め込んで光の魔力と共に薙ぎ払う剣技。空属性威力S&気絶、封技60%攻撃、崩し発生率+20%、ブレイクS(ATK、ATSの合計値に反映)

エヴォークフェザーⅢ 180 単体 慈悲の光で倒れた仲間を復活させる聖水竜魔法。HP&CP75%回復、戦闘不能者も復活

プリズミックミサイルⅢ 600 大円・地点指定 七色の光の矢を敵に放つ聖水竜魔法。空属性威力A%&封技、封魔、毒、混乱、凍結、石化、即死30%攻撃、ブレイクA+(威力はATSに反映)

S(サーペント)リ・カルナシオンⅢ 700 大円・地点指定 凄まじい水流を吹きあげて範囲内の敵を攻撃する水竜の中でも限られた者しか使えない上位水竜魔法。水属性威力SSS+&絶対遅延、崩し無効、ブレイクS(威力はATSに反映)

サンダーストライクⅢ 700 大型直線(貫通) 右腕に溜め込んだ聖なる雷を解き放つ聖水竜魔法。空属性威力SS&封技100%攻撃、崩し無効、ブレイクA(威力はATSに反映)

真・氷金剛破砕撃 (ダイヤモンドアイスバースト)1500 特大直線(貫通) 一時的に竜化して、氷のドラゴンブレスで敵を攻撃する。水属性威力4S&凍結90%、崩し無効、ブレイクSS(威力はATKとATSの合計値に反映)

真・超電磁砲(レールガン) 1000 大型直線(貫通) 両手に圧縮して溜め込んだ極太の雷光を解き放つ上位竜魔法。空属性威力SSS&封技100%攻撃、崩し無効、ブレイクSS+(威力はATSに反映)

ミストスクリーンⅡ 300 中円 霧の力で味方を一時的に隠す水竜魔法。自分を含めた効果範囲の味方を2ターンステルス状態。

ホーリーバーストⅡ 1500 大円・地点指定 光の魔力を集束し、爆裂させる聖水竜魔法。空属性威力5S、崩し無効、ブレイクS(ATSに反映)





Sクラフト





ヴァーテクス・ローズⅢ 単体 鋭い剣撃によって敵をバラのように散らす。威力7S、ブレイクS

マジェスティ・ゲイトⅢ 特大円 異界の門から光の奔流を導き、敵をのみこむ最上位聖水竜魔法。威力5S、ブレイクA+(ATSに反映)

ライフディスチャージⅢ 全体 癒しの力を込めた水球を破裂させて味方には慈悲を、敵には制裁を与える最上位聖水竜魔法。水属性威力SSS+&自分を含めた味方全体のHP全回復、戦闘不能者も復活、5ターンの間ADF50%上昇、ブレイクB

真・女王惑星轟雷爆撃(クイーンプラネットサンダースパーク ) 特大直線(貫通) 一時的に竜化して、雷光のドラゴンブレスで敵を攻撃する聖水竜女王のドラゴンブレス。威力9S+&封技100%攻撃、ブレイクSS+。条件、CPが最大の75%以上ある事。(威力はATKとATSの合計値に反映)











コンビクラフト





真・天光神雷空裂衝 最大CPの50% 特大円 術者の魔力によって巨大化した雷光の太刀を広範囲に叩きつけ、大爆発を起こす協力技。威力5S+&封技、気絶200%攻撃、ブレイクS+(リィンのATK、セレーネのATSの合計値が反映)。条件、バトルメンバーにリィンがいるかつ、双方のCPが最大の50%以上ある事 

アクエリアススフィアⅡ 最大CPの50% 全体 異空間より清浄な水の津波を呼び寄せる協力魔術。威力7S+&DEF100%減少攻撃、ブレイクS(威力は双方のATSの合計値が反映される)。条件、バトルメンバーにツーヤがいるかつ双方のCPが最大CPの50%以上ある事







アルティメットクラフト





アルフクラスト MAX 全体 ツーヤと共に上空へと跳躍し、同時に竜化した後水と雷光を合体させた超越したエネルギーを上空から放つ竜姫の姉妹の最終奥義。威力50S+&絶対防壁貫通、ブレイクSSS+(ATK、ATSの合計値が反映される)使用条件、ツーヤがバトルメンバーにいるかつ双方のCPがMAX





”騎神戦”時EXアーツ





サンダーストライク EP200 雷撃を纏わせた強烈な突き。威力S+&1ターン封技100%、3ターン状態異常『バランスダウン』、属性有効率無視

アクアマター EP、威力は原作と同じ











<殲滅天使> レン・ヘイワーズ・マーシルン





LV350

HP24600

CP8600

ATK7740

DEF2820

ATS8650

ADF3920

SPD145

MOV12





装備





武器 暗黒太陽神の魔鎌(至高の工匠―――”匠神”ウィルとさまざまな分野での才がある者達によって創られた暗黒の太陽神ヴァスタールの加護が宿る大鎌。ATK&ATS4200。攻撃時、60%で攻撃した敵が即死する。ATK&ATS減少無効。暗黒魔術、時属性アーツの威力が3倍になる)

防具 闇王女の戦衣(至高の工匠―――”匠神”ウィルとさまざまな分野での才がある者達によって創られた魔界の王女の戦衣。レン専用。DEF1500、ADF2000。物理を含めた全属性攻撃30%軽減。)

靴  闇王女の戦靴(至高の工匠―――”匠神”ウィルとさまざまな分野での才がある者達によって創られた魔界の王女の戦衣。レン専用。DEF360、MOV+7、SPD&AGL7%上昇。封技、封魔防止、MOV&SPD減少無効)

アクセサリー ブラックリボンΩ(至高の工匠―――”匠神”ウィルとさまざまな分野での才がある者達によって強化されたリボン。レン専用。MOV以外の全パラメーター20%上昇、全状態異常無効。)

       魔力再生の指輪(一人廻るごとにCP、EPがMAXの5%回復)







スキル





家族の絆 バトルメンバーに『リウイorペテレーネ』がいれば、レンのATK&SPDが5%上昇。また、両方ともいると上昇も2倍になる。

姉妹の絆 バトルメンバーに『エヴリーヌorプリネorセオビット』がいればATK&DEFが7%上昇。また、2人以上いると、人数に比例して倍増する

殲滅の絆 バトルメンバーに『エヴリーヌ、セオビット』がいればレンの全パラメーター10%上昇。ただし、2人が揃っていないと上昇しない。

幼き絆  バトルメンバーに『ティータ』がいるとレンのATK&DEFが5%上昇。

人形兵器使い 『パテル=マテル』を召喚し、使役できる

戦闘の心構えⅤ 戦闘開始時、HP&CPが10%回復

即死攻撃Ⅶ 物理攻撃に常に即死35%攻撃の効果が付く。

即死反撃Ⅶ 発動したら敵の攻撃を完全回避、攻撃範囲内に攻撃した敵がいたら25%の即死反撃する。35%で発動。

急所狙いⅥ クリティカル率が常に30%上昇

天賦の才 全クラフト、Sクラフトの威力が1,5倍になるかつ消費CPが10%減少する

天使殺し 敵が天使系の場合、威力30%上昇

Gの共鳴 バトルメンバーに『ティオ』がいる場合、レンのアーツ、魔法系クラフトの威力が1,5倍になる。

覚醒せし碧の叡智 聖典に載りし悪魔達の一部の魔術や呪術を習得、さらに魔族、闇陣営の神官や司祭、魔導師が使う技、魔術を受けたり見た際、自分の技として習得できる

主計科の絆Ⅰ バトルメンバーに『主計科のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が1,1倍になるかつ全パラメーター1,1%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる











ARCUS版オーブメント(時・幻・時属性)並びはエマです





アタックランク 斬SS剛A







リンクアビリティのタイプはエマ







オーダー





クロノスガーデン BP2 魔法(12カウント/駆動時間0&消費EP50%減少)2ターン、ATS&ADF50%上昇、EP30%回復

アタナシアン・キティ BP3 スピード(8カウント/硬直時間0,2倍)2ターン、ダメージ&ブレイクダメージ300%







クラフト





ブラッドサークルⅣ 30 大円・地点指定 より広範囲の敵を巻き込み大鎌を振り回す。確率30%で即死、崩し発生率+15%、ブレイクC

カラミティスロウⅣ 25 中型直線(貫通) 遠心力を込め、攻撃力を増した大鎌の放擲。即死30%&DEF50%減少攻撃 、崩し発生率+20%、ブレイクB

炎叉龍の轟炎 1500 大円 溶岩の竜を形成し、敵を焼き尽くす。火属性威力A+%&火傷60%攻撃、崩し無効、ブレイクB(威力はATSに反映)

氷垢螺の氷針雨 1400 全体 氷垢螺の吹雪と共に針状の氷を戦場に降り注がせる。水属性威力A&凍結75%、崩し発生率+25%、ブレイクA(威力はATSに反映)

真・豪破岩槍撃 1200 中円 敵の真下から大量の岩の槍を出現させて貫く。地属性威力A+&DEF50%減少攻撃、崩し発生率+35%、ブレイクS(威力はATSに反映)

二つ回廊の轟雷 2000 大円  空間を歪ませて凄まじい電撃の爆発を起こす。風属性威力S&封技70%攻撃、崩し無効、ブレイクS+((威力はATSに反映)

加速・広範囲 100 全体 風の魔力で自分を含めた味方全員のSPDを30%上昇させ、更に自分以外の味方全体を加速させる

滅・聖の十字架 1500 特大円・地点指定 光の十字架で邪を焼き払う。空属性威力A+、崩し無効、ブレイクA+(威力はATSに反映)

防護の光盾 80 単体 味方一人のDEF&ADF25%を上昇させる神聖魔術

ティルワンの死磔 2000 全体 闇世界の中枢である死磔領域に閉じ込める。時属性威力SS&即死、混乱、暗闇25%攻撃、崩し無効、ブレイクSS(威力はATSに反映)

闇の息吹Ⅳ 300 単体 闇の治癒魔術。味方一人のHPを75%回復する。

滅・死線 1300 特殊 ”死線”の上位魔術。指定した横4列に指先から高熱度の光を放つ純粋魔術。無属性威力SSS、崩し発生率+30%、ブレイクS+(威力はATSに反映)

虚構の鎌撃 200 特殊 指定した横2列の敵のアーツ&駆動妨害するルクセンベールの血を引く者から受け継いだ技の一つ

玄武の鎌撃 300 特殊 指定した横5列の敵を攻撃するルクセンベールの血を引く者から受け継いだ技の一つ。威力S、崩し発生率+40%、ブレイクA

魔術・転移 150 自分 ユイドラに住む死神より教わり、習得した魔術。バトルフィールドで指定した所に転移する。

滅・断命の大鎌 900 中円 ユイドラに住む死神より教わった生物の命を刈り取り、刈り取った命を吸い取る処刑技。威力SS&即死100%&吸収100%攻撃、崩し発生率+45%、ブレイクC

パテル=マテル召喚 0 サポートキャラ、パテル=マテル(HP45000。気絶10%の物理攻撃、バスターキャノン(中型直線貫通130%攻撃)、ギガントプレス(300%攻撃&即死20%)、リバイバルビーム(味方単体のHPを50%回復&戦闘不能回復)、ダブルバスターキャノン(特大直線貫通800%攻撃&暗闇30%)、ダブルクラッシャーパンチ(中型直線貫通200%攻撃)、パトリオットフィールド(自分に物理攻撃の絶対防壁&魔法反射の結界×3)。Sクラフトはαライアットスター(大円1500%攻撃)とダブルオメガバスターキャノン(特大直線貫通6000%攻撃))を召喚して戦闘に参加させる。任意でパテル=マテルを撤退させられる。

真・羅刹刃 450 単体 大鎌を振り回して連続攻撃する。威力C+×5回、崩し有効、ブレイクC

真・旋風大魔刃 600 特殊 自分を中心とした中円に闘気を込めた大鎌を振り回し、衝撃波を発生させる。威力A&後退攻撃、崩し発生率+10%、ブレイクB

パワフルスイングⅡ 100 単体 力を溜めて解き放たれる大鎌の一撃。威力S+&バランスダウン、DEF50%減少攻撃、崩し発生率+25%、ブレイクA

グラビティスフィアⅡ 300 小円 魔力によって発生した重力で敵を引き寄せる。威力A&引き寄せ効果、崩し無効、ブレイクC+

極・魔眼 50 中円 威力、効果範囲はヨシュアの『極・魔眼』と同じ、崩し無効、ブレイクB

極・邪眼 200 中円 睨んだ相手を石化させる恐るべき睨み。威力B+&石化100%攻撃、崩し無効、ブレイクB

真・大海床 150 全体 異空間より無属性の津波を召喚する。無属性威力B+後退&DEF50%減少攻撃。使用時、1ターンの溜めが必要、崩し無効、ブレイクA

ダークミラージュ 40 自分 ”D∴G教団”司祭に伝わりし秘術の一つ。次に自分の出番が回るまで自らの姿を消し、次の攻撃を必ずクリティカルにする。ステルス1ターン

マインドクラッシュⅡ 80 小円 ”D∴G教団”司祭に伝わりし秘術の一つ。足元から冥界の叫びを召喚する。威力A&即死40%攻撃、崩し発生率+10%、ブレイクB+(威力はATSに反映)

冥界波Ⅱ 全体 300 冥界より衝撃波を召喚する聖典に載りし悪魔達が使う魔術。威力A+&睡眠、封魔100%攻撃。使用時、1ターンの溜めが必要、崩し無効、ブレイクC+(威力はATSに反映)

雷招メ・ベルデⅡ 200 直線(貫通) 大鎌に魔の雷を宿らし、敵に放つ魔術。時属性威力B&封技80%攻撃、崩し無効、ブレイクB(威力はATSに反映)

獄槍スンラスーアⅡ 500 大円 冥界より召喚せし槍で敵を貫く冥界の魔術。威力S+&バランスダウン60%攻撃、崩し発生率+20%、ブレイクA(威力はATSに反映)

吸聖クブリエⅡ 1800 単体 敵の体力を根こそぎ奪い、命をも奪う恐ろしき呪術。威力SS&HP吸収100%&即死100%攻撃、崩し無効、ブレイクC。使用時、1ターンの溜めが必要(威力はATSに反映)

神槍イナンナⅡ 1000 中円 敵の防御を貫く神槍を解き放つ”空の虚神”の秘術の一つ。空属性威力S+&DEF50%減少攻撃、崩し発生率+15%、ブレイクS。使用時、1ターンの溜めが必要(威力はATSに反映)

滅界ノウアバ 1400 小円 敵を現界から追放する”空の虚神”の秘術の一つ。10ターンの間バニッシュ100%。使用時、1ターンの溜めが必要

覚醒Ⅱ 0 自分 内に秘めたる”グノーシス”の力を解放し、15ターンの間魔人化(デモナイズ)状態になる。魔人化した際、髪は銀髪、瞳は紅になり、属性が”魔神”並びに”心眼”、”剣閃”状態も付与され、全パラメーター(HP、CPも含める)が2倍になり、駆動時間が必要な魔族特有のクラフトを駆動時間無しで放てる。更にアーツの駆動時間が半分になる。なお効果が切れると1ターンの間、HP、CPを除いた全パラメーター90%減少状態になる。重ねて使用する事は可能だが3回目で回復不可能な混乱状態になる







Sクラフト





レ・ラナンデスΩ 大円 敵陣を駆け抜け、すれ違う命を摘み取る殲滅天使の処刑技。威力4S+&即死100%、ブレイクA

虹の(ゲートオブレインボー)Ⅲ 特大円 レンが開発したレンだけができるオリジナル魔術。威力5S、ブレイクB(威力はATSに反映)

クリミナルシックルⅢ 単体 かつて戦った敵の技を見て、自分なりに改良して習得した技。威6S、ブレイクSS+

カラミティスフィアⅢ 全体 ”D∴G教団”司祭に伝わりし秘術の一つ。異空間より災厄の宝珠を召喚する。威力SSS+&封魔100%攻撃、ブレイクC(威力はATSに反映)

魔槍アシュターⅢ 全体 冥界より全てを破壊する魔槍を召喚する冥界の大魔術。威力4S、ブレイクS(威力はATSに反映)

爆輝アダンテⅢ 全体 空の裁きの光で敵対する者達全てを滅する”空の虚神”の大魔術。空属性威力7S、ブレイクB+(威力はATSに反映)

殲滅の鎌(ルイン・シックル)Ⅲ 大円 殲滅天使の力を最大限に発揮する究極奥義。威力10S+、ブレイクSSS(威力はATKとATSの合計値に反映)







コンビクラフト





デュアル・ザ・サンⅡ 最大CPの50% 全体 ティオと共に放つコンビクラフト。”魔”の力を手に入れた者達が協力して異空間より魔界を照らす暗黒の太陽を召喚する。威力8S+&大火傷100%攻撃、ブレイクA(威力は双方のATSの合計値が反映される)。条件、バトルメンバーにティオがいるかつ双方のCPが最大CPの50%以上ある事







ルインクラフト







ルイン・ハウリングΩ 4000 特大円 自分達に仇名す者達を殺す事だけに専念した技にして残酷、無邪気な性格にして、美しくそして可憐な容姿を持つ最凶の姉妹達の絆。威力12S+、ブレイク確定。条件、エヴリーヌ、セオビットがバトルメンバーにいるかつレンを含めた3人のCPが4000以上ある事。









アルティメットクラフト







ブルーアース 最大CPの99% 全体 ティオと共に放つコンビクラフト。”真なる叡智(グノーシス)”によって互いの感応力を共鳴させた者達が協力して双方に秘められる真の力を全て発揮させ共鳴し、次々と連携して放つ究極の真なる叡智の魔道。威力40S+%&自分達を含めた味方全員のHPMAX回復。戦闘不能者も復活、ブレイク4S+(威力は双方のATSの合計値が反映される)。条件、バトルメンバーにティオがいるかつ双方のCPが最大CPの99%以上あり、双方ともクラフト『覚醒』を使用状態











<赤き死神> ランドルフ・オルランド(ランディ)





LV330

HP53200

CP2800

ATK6540

DEF5670

ATS2340

ADF2210

SPD180

MOV14







装備







武器 バルディッシュ・A(アサルト)改(ユイドラ工匠ディオン3姉妹によって生み出された死神の斧槍。ランディ専用。使い手と共に鍛え上げられている。ATK2500、RNG+2、クリティカル率30%上昇、即死30%攻撃)

   メルカルトⅡ(ユイドラ工匠ディオン3姉妹によって強化、改造されて生まれ変わり”狂戦士”から”戦神”の異名へと変えたベルゼルガー。ランディ専用。使い手と共に鍛え上げられている。ATK2600、RNG+4、クリティカル率20%上昇、一人出番が廻るごとにHP5%回復、不死系、幽霊系、霧系、悪魔系の敵に命中100%&威力2倍) 

防具 ワイルドフルコートΩ(ユイドラ工匠ディオン3姉妹によって創られた野性の意思が宿るコート。ランディ専用。DEF1300、ADF150、ATK&SPD10%上昇、攻撃を受けた際、ダメージ値の10%CP回復)

靴  ディバーゴルティア改(ユイドラ工匠ディオン姉妹の手によって創られた金の光輪を生む奇跡の防護靴。DEF270、MOV+6、SPD+8、DEX30%上昇)

アクセサリー 戦神の腕輪(ユイドラ工匠ディオン3姉妹によって強化、改造された腕輪。ランディ専用。全パラメーター10%上昇、アーツ以外の全ての攻撃手段の威力が1,6倍になるかつ攻撃時即死15%の付与効果が付く)

       闘神の腕輪(カーリアンから貰った腕輪。カーリアンorランディ専用。全パラメーター15%上昇、全状態異常&全能力減少無効、物理攻撃のクラフト、Sクラフトの威力が全て2倍になる。一人廻るごとにCPが10%回復する。)







ARCUS版オーブメント(火・時・火属性)並びはラウラです





アタックランク スタンハルバード装備時 斬S剛SS

        ブレードライフル装備時 斬S突S射S剛S





リンクアビリティのタイプはラウラ









オーダー



ベルセルク BP3 必殺(10カウント/必殺率30%、ブレイクダメージ200%)2ターンの間ATK&SPD50%上昇、CP40%回復





スキル





支援課の絆Ω バトルメンバーに『特務支援課のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が3倍になるかつ全パラメーター5%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる

キーアが好き バトルメンバーに『キーア』がいると、全パラメーターが5%上昇

カウンターⅥ 発動したら敵の攻撃を完全回避、攻撃範囲内に攻撃した敵がいたら反撃する。30%で発動

貫通Ⅴ 25%でDEF無視攻撃

急所狙いⅤ クリティカル率が常に25%上昇

連携 味方のすぐ後に攻撃すれば、1,5倍

戦闘指揮 戦闘中、自分を含めた味方全員のDEX、AGLを10%上昇させる

人類殺し 敵が人間系の場合、威力30%上昇

即死攻撃Ⅳ 物理攻撃に常に即死20%攻撃の効果が付く

即死反撃Ⅳ 発動したら敵の攻撃を完全回避、攻撃範囲内に攻撃した敵がいたら25%の即死反撃する。20%で発動

決死 HPが30%以降減るとATK、DEF20%上昇かつ5%ずつHPが減るごとにATK、DEF5%上昇

達人の技力Ⅴ 物理攻撃系のクラフトを使った際、消費CPが50%減少、Sクラフトを使っても50%残る

赤き死神 戦闘開始時、常にATK&SPD25%、DEX&AGL30%上昇状態

戦術科の絆Ⅰ バトルメンバーに『戦術科のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が1,1倍になるかつ全パラメーター1,1%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる













クラフト(原作以外)





ブレードライフル装備 0 自分 武器をブレードライフルに持ち替える。ただし、スタンハルバードを使うクラフトは使用できない

エルンスト召喚 最大CPの12% 自分 パーティキャラ、エルンストを召喚する。ただし召喚した主は召喚している間、最大CPが12%下がる、任意でエルンストを自分の元に戻せる。

極・大切斬 60 中円 跳躍して強力な一撃を叩き込む。威力S&気絶70%&DEF50%減少攻撃、崩し発生率+25%、ブレイクB+

ヒートスマッシュⅢ 70 小円 炎の魔力を纏った渾身の一撃。火属性威力A+&火傷50%&遅延攻撃、崩し発生率+15%、ブレイクA+(威力はATK、ATSの合計値に反映)

デスクライ 130 自分 闘気と引き換えに爆発的に筋力と身体能力を一時的に上昇させる戦場の死神の咆哮。5ターンの間、ATK&SPD50%上昇、”剣閃”状態

パラライボム 35 大円・地点指定 ユイドラ工匠、ディオン3姉妹によって創られた強力な麻痺ガスが込められた閃光爆弾を放つ。威力C+&封技、暗闇100%攻撃、崩し無効、ブレイクD

パワーブレイクⅢ 100 小円 強烈な一撃で敵の装甲を貫くと同時に麻痺させる。威力S+&DEF50%減少&封技50%攻撃、崩し発生率+25%、ブレイクSS

テンペストレイジⅡ 70 特殊 全身に闘気を纏って自分を中心とした中円にスタンハルバードで薙ぎ払う。威力S&後退攻撃、崩し発生率+10%、ブレイクA+

クリムゾンクライ 0 自分 体力と引き換えに”闘神”の血を呼び起こす咆哮で一時的に身体能力を爆発的に上昇させる赤き咆哮。使用時最大HPの65%減少、5ターンの間、ATK&DEF&SPD100%上昇、”剣閃”&”心眼”状態全状態異常&全能力減少無効化、CP50%回復

ハーケンセイバーⅡ 450 中円 闘気と魔力による円輪状の衝撃波を解き放つ。威力SS&バランスダウン70%攻撃、崩し発生率+30%、ブレイクA+(威力はATK、ATSの合計値に反映)





Sクラフト(原作以外)





ダークゲイルⅢ 中円 暗黒の炎を纏った渾身の薙ぎ払い攻撃。威力は4S+&劫炎100%攻撃、ブレイクS(威力はATK、ATSの合計値に反映)

クリムゾンセイバーⅡ 大円 闘気と魔力によって発生させた灼熱の炎を纏わせた斬撃を解き放つ赤き死神の一振り。威力6S&大火傷100%攻撃(威力はATK、ATSの合計値に反映)









ブレードライフル装備時クラフト





スタンハルバード装備 0 自分 武器をスタンハルバードに持ち替える。ただし、ブレードライフルを使うクラフトは使用できない

スナイプラッシュⅢ 45 単体 狙いを定めた部分に銃弾を集中攻撃させる。威力S&SPD、MOV50%減少&アーツ、駆動妨害攻撃、崩し発生率+10%、ブレイクB

ファイアドレイクⅢ 75 特大円・地点指定 無数の弾丸を放って、広範囲を攻撃する。威力S&気絶40%攻撃、崩し発生率+15%、ブレイクA+

ブラッディクロスⅢ 120 中円 銃撃を放った後で刃の部分で敵に襲い掛かる赤き技。威力S+&HP100%吸収攻撃、崩し発生率+25%、ブレイクS

ゼロ・ラピッドⅢ 130 単体 零距離で弾丸を連射する。威力SS+&気絶100%&DEF50%減少&遅延攻撃、崩し発生率+30%、ブレイクSS

ブラッディストームⅢ 150 中型直線(貫通移動攻撃) デスストームの原型である蹂躙技。威力S&即死、混乱80%攻撃、崩し発生率+20%、ブレイクA

ブラッディパニッシャーⅢ 200 大円 強襲で体制を崩した敵を闘気の刃で突き上げる赤き技。威力SS+&DEF50%減少&バランスダウン75%攻撃、崩し発生率+50%、ブレイクS+





Sクラフト





メルカルト 特大円 大型ライフルで戦場を蹂躙する赤き極技。威力7S+、ブレイク確定







コンビクラフト(原作以外)





ブラッディカオスⅡ 300 中円 エルンストと共に放つ協力技。怒涛の連続攻撃を行い、戦場に死の咆哮を上げさせる紅き混沌技。威力4S+、ブレイクS+(ランディのATK、エルンストのATK、ATSの合計値が反映される)。条件、バトルメンバーにエルンストがいるかつランディがスタンハルバードを装備し、双方のCPが300ある事

クリムゾンパレードⅡ 700 大円 エルンストと共に放つ死神達の紅き狂宴。威力6S、ブレイクSS(ランディのATK、エルンストのATK、ATSの合計値が反映される)。条件、バトルメンバーにエルンストがいるかつランディがブレードライフルを装備し、双方のCPが700ある事

真・龍凰絶炎衝 100 大円 炎竜と鳳凰による炎で敵陣を焼き尽くす協力奥義。威力6S+&100%攻撃、ブレイクSS。条件、バトルメンバーにリィンがいるかつ双方のCPが100以上ある事









チームクラフト





ゼロ・ブレイカーⅡ 最大CPの80% 特大円 怒涛の勢いで連携攻撃を次々と放ち、それぞれの最大奥義を同時に放つ特務支援課の最大連携技。威力20S+、ブレイク確定。使用条件、バトルメンバーにトンファーを装備したロイド、銃を装備したエリィ、エレシュキガルを装備したティオがいるかつ、ランディの装備がブレードライフル&それぞれのCPが最大の80%ある事









<仮面の紳士> ランドロス・サーキュリー







LV550

HP125000

CP8000

ATK12400

DEF8200

ATS1700

ADF1640

SPD195

MOV14







装備







武器 真聖剣ザオラー・改(所有者の心に迷いが無ければ威力が増す聖剣。使い手と共に鍛え上げられている。ギュランドロス専用。ATK5250、RNG+2。クリティカル率40%。一人出番回るごとに所有者のHP&CPを10%回復させる。不死系、幽霊系、霧系、悪魔系の敵に命中100%&威力2倍。)

防具 暴王の戦鎧(ギュランドロス専用に創られた遥か昔メルキア帝国との戦いにより滅びた国ユン・ガソル王国の技術が集められた紅き鎧。DEF3000、ADF500。物理を除いた全属性攻撃を10%軽減、物理攻撃は30%軽減)

靴  暴王の戦靴(ギュランドロス専用に創られた遥か昔メルキア帝国との戦いにより滅びた国ユン・ガソル王国の技術が集められた鎧。DEF250、MOV+9、SPD8%上昇)

アクセサリー ユーロヴァスガン・改(ユイドラ工匠ディオン3姉妹によって強化、改造されたユン・ガソル国王専用の紋章。ユン・ガソル国王しか装備する事が許されない。全状態異常無効化、ATK&DEF50%上昇、全ての物理攻撃手段にブレイク200%付与、Sクラフトの威力を2倍にする) 

       ヴァルフケーニール(ヴァイスより功績を称えられて贈られた記念品。ギュランドロス専用。全パラメーター10%上昇、全ての物理攻撃手段に気絶10%の効果が付与される)





ARCUS版オーブメント(火・地・火属性)並びはミリアムです


アタックランク 斬SS剛SS



リンクアビリティのタイプはアンゼリカ





オーダー



暴王陣『劫火』 BP4 攻撃(12カウント/ダメージ&ブレイクダメージ500%)2ターンの間ATK&SPD50%上昇、CP80%回復

暴王陣『覇道』 BP5 必殺(12カウント/クリティカル確定)2ターンの間『剣閃』状態、加速





スキル





ルイーネが大好き バトルメンバーに『ルイーネ』がいると、全パラメーターが15%上昇

夫婦の絆 『ギュランドロスorランドロス』、『ルイーネ』の移動範囲内にお互いがいて、片方が攻撃した時、片方が自動的に連携して攻撃する。また、『ルイーネ』が物理攻撃を受けると20%で『ギュランドロス』がルイーネに『治癒の水』を使い、ダメージの半分を回復する。なお、この時に使う『治癒の水』は消費されない

主従の絆 バトルメンバーに『ルイーネ、エルミナ、パティルナ、』の誰かがいるとが全パラメーターが7%上昇、なお2人以上いると人数に応じて効果は倍増される

闘争心 バトルメンバーに『ヴァイス』がいるとギュランドロスのATK&SPDが20%上昇

戦友の絆 バトルメンバーに『ベル、ナフカ、リューン、リセル、リ・アネス、クライス、ラクリール、エア・シアル、アルフィミア、メイメイ』の誰かがいると全パラメーター2%上昇。2人以上いるときは人数に比例して効果も倍増する

暴王の器 スキルの効果が2倍になるかつバトルメンバー全員のATK&SPDを40%上昇させ、このスキルを持つ者がバトルに参加していると仲間全員の攻撃手段の威力を2倍になり、常にクリティカル率が20%上昇する

戦闘指揮 戦闘中、自分を含めた味方全員のDEX、AGLを10%上昇させる 

暴虐の布陣 ギュランドロスorランドロスがバトルメンバーにいると仲間全員のATK、ATSが30%増加する代わりにDEF、ADFが30%低下する。

貫通Ⅶ 35%でDEF無視攻撃

カウンターⅨ 発動したら敵の攻撃を完全回避、攻撃範囲内に攻撃した敵がいたら反撃する。45%で発動

急所狙いⅧ クリティカル率が常に40%上昇

悪魔殺し 敵が悪魔系の場合、威力30%上昇

決死 HPが30%以降減るとATK、DEF20%上昇かつ5%ずつHPが減るごとにATK、DEF5%上昇

達人の技力Ⅴ クラフトを使った際、消費CPが50%減少。Sクラフトを使っても、50%CPが残る

六銃士の絆 バトルメンバーに『ルイーネ、エルミナ、パティルナ、ヴァイス、アル』が揃っている場合、6人全員の全パラメーターが20%上昇、全ての攻撃手段の威力が1,5倍になり、さらに一人が攻撃すると残りの5人の移動、攻撃範囲内に攻撃した相手がいると移動、攻撃できる者達全員で追撃する。なお、6人全員揃っていないと発動しない

ゼムリアの三皇 バトルメンバーに『リウイ、ヴァイス』の双方がいれば、3人全員のATK、SPD、DEX、AGLが50%上昇、攻撃手段の威力が3倍になる。なお、3人全員揃っていないと発動しない

戦術科の絆Ⅰ バトルメンバーに『戦術科のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が1,1倍になるかつ全パラメーター1,1%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる







クラフト





絶招・気合い斬り 110 単体 気合いを込めた一撃で敵を怯ませる。威力SS&アーツ&駆動妨害&気絶100%攻撃、崩し発生率+40%、ブレイクB

覇王の号令 100 全体 自分を含めた味方を鼓舞する号令。STR、SPD、AGL、DEXが50%上昇

絶招・豪薙ぎ払い 300 特殊 自分を中心とした大円を攻撃する。威力S+&バランスダウン100%攻撃、崩し発生率+20%、ブレイクA

絶招・豪炎斬 300 中円 闘気によって発生した炎で豪快にぶった斬る。火属性威力S+&劫炎100%攻撃、崩し発生率+30%、ブレイクA+

絶招・延髄砕き 250 単体 装甲すらも破壊する素手の攻撃。威力S+&封技100%&DEF50%減少攻撃、崩し発生率+50%、ブレイクS

絶招・天震撃 400 中円 大剣を叩き付けて強烈な衝撃波を発生させ、敵を怯ませる。威力SSS&アーツ、駆動妨害&絶対遅延攻撃、崩し発生率+25%、ブレイクS+

絶招・玄武の滅燐撃 1200 大円 大地をも割るほどの闘気を纏った武器を叩き付けて衝撃波を発生させて広範囲の敵を攻撃する。威力4S+、崩し発生率+60%、ブレイクSSS+







Sクラフト





絶招・豪震撃 大円 膨大な闘気を纏った大剣を地面に叩きつけ、大地を砕き、天に届くほどの衝撃波を発生させる奥義。威力15S+、ブレイク確定









コンビクラフト





絶招・暴魔の協撃 2000 大円 ルイーネと共に放つ協力技。暴君と暴君の妻である謀略の魔女が共に放つ協力技。威力10S+、ブレイク4S+。条件、バトルメンバーにルイーネがいるかつ双方のCPが2000以上ある事

絶招・双覇の挟撃 4000 中円 ヴァイスと共に放つ協力技。覇王と暴王による猛攻。威力20S+、ブレイク確定。条件、バトルメンバーにヴァイスがいるかつ双方のCPが4000以上ある事





キングクラフト





覇王の剣嶺 最大CPの70% 特大円 リウイ、ヴァイスと共に放つ時代を変える者達が協力して放つ覇王達の協撃。威力50S+、ブレイク確定。条件、バトルメンバーにリウイとヴァイスがいるかつ、それぞれのCPが最大の70%以上ある事







<槍の聖女> リアンヌ・ルーハンス・サンドロット(属性・神格)





LV770

HP165000

CP18000

ATK21300

DEF18400

ATS17800

ADF12100

SPD400

DEX125

AGL80

MOV16













装備





武器 トゥルー・ロンギヌス(”槍の聖女”が長年使い続けている”黄昏の聖槍”の異名を持つ外の”理”によって創られたランス。リアンヌ専用。ATK13000、ATS2400、RNG+3。クリティカル率30%。不死系、悪魔系、幽霊系、霧系、魔神系の敵、”負”の気を纏った人間に威力3倍、全物理攻撃系のクラフト、Sクラフトの威力が1,3倍になる。)

   軍剣ルクノゥ・セウ(”影の国”の件が終了した直後、リアンヌの近くに落ちていた至高の工匠―――”匠神”ウィルとさまざまな分野での才がある者達によって創られた戦の神マーズテリアの総本山にあると言われる軍神の真なる神剣。リアンヌ専用。ATK14000、ATS7500。クリティカル率20%、”光剣”系の威力を2倍にする。一人出番が廻るごとにHP&CP10%回復、不死系、悪魔系、幽霊系、霧系、魔神系の敵、”負”の気を纏った人間に威力3倍。絶対防壁貫通効果)

防具 神鎧マーズテリア・改(”影の国”の件が終了した直後、リアンヌの近くに落ちていた至高の工匠―――”匠神”ウィルとさまざまな分野での才がある者達によって強化された鎧。リアンヌ専用。DEF&ADF8000。全状態異常無効。戦闘中常に全パラメーター20%上昇状態)

靴  神靴マーズテリア・改(”影の国”の件が終了した直後、リアンヌの近くに落ちていた至高の工匠―――”匠神”ウィルとさまざまな分野での才がある者達によって強化された靴。リアンヌ専用。DEF600、MOV+12。SPD&AGL20%上昇)

アクセサリー ユーロルーハンス(”影の国”の件が終了した直後、リアンヌの近くに落ちていたルーハンス家当主の証である首飾り。リアンヌ、ミント専用、全パラメーター15%上昇、能力減少無効化、取得経験値10%上昇)

       鋼の紋章(”鋼の聖女”が持っていた紋章。リアンヌ専用。全パラメーター20%上昇、一人廻るごとにCPが最大の20%回復)









ARCUS版オーブメント(幻・空・空属性)並びはユーシスです











アタックランク 槍装備時 突SS射SS剛SS フィールドでの攻撃モーションは目にも止まらぬ連続突き

        剣装備時 斬SS突SS剛SS フィールドでの攻撃モーションは突き→薙ぎ払い→斬りの連携







リンクアビリティのタイプはロイド







オーダー



武神陣 BP5 攻撃(12カウント/ダメージ&ブレイクダメージ250%、硬直時間0,3倍)2ターンの間ATK&SPD50%上昇、『剣閃』状態、CP100%回復、加速

軍神陣 BP5 特殊(8カウント/絶対防壁、クリティカル確定)2ターンの間、全パラメータ50%上昇、HP&CP40%回復















スキル





リウイが大好き バトルメンバーに『リウイ』がいると、全パラメーターが15%上昇

主従の絆 バトルメンバーに『リウイ、イリーナ』のどちらかいるとが全パラメーターが7%上昇。2人ともいる場合は効果は倍増される

戦友の絆 バトルメンバーに『カーリアン、ペテレーネ、ファーミシルス、セシル』の誰かがいると全パラメーター2%上昇。2人以上いるときは人数に比例して効果も倍増する

家族の絆 バトルメンバーに『リフィア』がいれば、ATK&ATS&SPDが5%上昇

師弟の絆 バトルメンバーに『レーヴェ、デュバリィ、エンネア、アイネス』の誰かがいると、リアンヌの全パラメーターが3%上昇。2人以上いるときは人数に比例して効果も倍増する

聖騎士の心 リアンヌの移動範囲内でパーティー内の誰かのHPが30%以下になり攻撃を受けそうになった場合、自動移動して庇って代わりにダメージを受ける。なお、味方HPが10%以下なら100%で発動

真なる守りの心 バトルメンバーに『リウイ、イリーナ』がいると、リアンヌの全パラメーターが8%上昇かつ、移動範囲内でリウイもしくはイリーナが攻撃されると70%で2人のどちらかの前に移動して、代わりにダメージを受ける。なお、2人同時の場合はランダムで庇う。さらに2人共いるとパラメーター上昇も2倍になる。

努力家Ⅴ 取得経験値が50%上昇

戦闘指揮 戦闘中、自分を含めた味方全員のDEX、AGLを10%上昇させる

カウンターⅩ 発動したら敵の攻撃を完全回避、攻撃範囲内に攻撃した敵がいたら反撃する。50%で発動

リベンジャー カウンター発動時の攻撃威力が1,5倍になる

連続攻撃Ⅹ 発動すれば物理攻撃後CP消費せず、同じ物理攻撃手段を放つ。40%で発動

悪魔殺し 敵が悪魔系の場合、威力30%上昇

霊体殺し 敵が幽霊、霧系の場合、威力30%上昇

不死殺し 敵がゾンビ系の場合、威力30%上昇

魔神殺し 敵が魔神系の場合、威力30%上昇

達人の技力Ⅴ 物理系のクラフトを使った際、消費CPが50%減少。Sクラフトを使っても、50%CPが残る

決死 HPが30%以降減るとATK、DEF20%上昇かつ5%ずつHPが減るごとにATK、DEF5%上昇

孤高    自分以外のバトルメンバーが戦闘不能状態の時のみAGLが70%上昇

第Ⅱ分校の絆Ⅰ バトルメンバーに『第Ⅱ分校のメンバー』の誰かがいると全ての攻撃手段の威力が1,1倍になるかつ全パラメーター1,1%上昇。なお、2人以上いるとパラメーター上昇は人数に比例して倍になる





クラフト(槍装備時)





剣装備 0 自分 武器を剣に持ち替える。なお、剣装備時は槍装備時のクラフトが使えない。なお、魔術は扱える

セイントアウラ 800 自分 聖気と闘志を爆発させ、一時的に全ての能力を大幅に上昇させる。5ターン、全パラメーター60%上昇、HP&CP50%回復

シュトルムランツァーⅡ 400 中型直線(貫通) 武器を構えて指定した場所まで突進する移動攻撃。威力SSS&封技100&&攻撃、崩し発生率+20%、ブレイクA

防護の光陣 500 全体 5ターンの間味方のDEF、ADFを30%上昇

アルティウムセイバーⅡ 1000 特殊 自分を中心とした大円にすざましい闘気を込めた一撃を放つ。威力4S&気絶100%攻撃、崩し発生率+35%、ブレイクS+

贖罪の聖炎 2000 全体 罪を贖う為に生命を奪い取る厳格な炎。空属性威力5S、崩し無効、ブレイクB(威力はATSに反映)

アングリアハンマーⅡ  800 全体 空より呼び寄せた神の雷を戦場に駆け巡らせる。威力SS&5ターンの間封技、封魔80%攻撃、ブレイクC+(威力はATSに反映)

ホーリーガード 1000 自分 膨大な”聖気”によってさまざまな加護を自分に付与する。絶対防壁×1&5ターンHP自動回復効果付与

アルティウムラッシュⅡ 3300 中円 一軍をも退かざるを得ない闘気を纏った怒涛の連続突きで敵を圧倒する。威力5S&5ターンの間バランスダウン100%攻撃、崩し発生率+90%、ブレイクSSS+

天界光 2500 単体 あらゆる穢れを消滅させる究極神聖魔術。空属性威力6S+&1ターンバニッシュ100%攻撃。幽霊系、不死系の敵に2倍ダメージ、崩し無効、ブレイクA+(威力はATSに反映)







Sクラフト





エクスピアシオンΩ 特大直線(貫通)”贖罪”の名を持つ究極神聖魔術 空属性威力20S+、ブレイクSSS(威力はATSに反映される)

聖技・グランドクロスΩ 全体 範囲内の敵達を闘気と聖気による竜巻で閉じ込めた後、聖なる十字架を刻み込む聖技。威力16S+&3ターンの間DEF、ADF100%減少&絶対防壁貫通、ブレイク確定







クラフト(剣装備時)





槍装備 0 自分 武器を槍に持ち替える。なお、槍装備時は剣装備のクラフトが使えない。なお、魔術は扱える

セイントアウラ 800 自分 聖気と闘志を爆発させ、一時的に全ての能力を大幅に上昇させる。5ターン、全パラメーター60%上昇、HP&CP50%回復

ギガブラッシュ 100 中型直線(貫通) 剣を震って衝撃波を発生させて、敵にぶつける。威力A+&DEF50%減少攻撃、崩し有効、ブレイクB

光剣 100 自分 剣に『聖光』を纏わせる。しばらくの間、自分の物理攻撃を『空属性』にする。攻撃した際、相手が悪魔、不死、霊体系なら2倍&命中100%

極・突光剣 500 大型直線(貫通) 空属性威力S+&アーツ、駆動妨害%ADF50%減少、崩し発生率+30%、ブレイクA。クラフト『光剣』を使っている場合、威力が2倍になる。

極・聖光円舞 450 特殊 自分を中心とした大円に聖光を纏った斬撃を放つ。空属性威力SS&ATS50%減少、崩し発生率+50%、ブレイクB。クラフト『光剣』を使っている場合、威力が2倍になる。

極・神極聖光剣 2000 単体 最上位の神聖魔法を武器に纏わせて繰り返して斬撃を放つ。空属性威力4S+×2&バランスダウン80%、ATK、DEF50%減少、崩し発生率+85%、ブレイクSSS+。クラフト『光剣』を使っている場合、威力が2倍になる

シュトルムランツァーⅡ 400 中型直線(貫通) 武器を構えて指定した場所まで突進する移動攻撃。威力SSS&封技100&&攻撃、崩し発生率+20%、ブレイクA

防護の光陣 500 全体 5ターンの間味方のDEF、ADFを30%上昇

アルティウムセイバーⅡ 1000 特殊 自分を中心とした大円にすざましい闘気を込めた一撃を放つ。威力4S&気絶100%攻撃、崩し発生率+35%、ブレイクS+

贖罪の聖炎 2000 全体 罪を贖う為に生命を奪い取る厳格な炎。空属性威力5S、崩し無効、ブレイクB(威力はATSに反映)

アングリアハンマーⅡ  800 全体 空より呼び寄せた神の雷を戦場に駆け巡らせる。威力SS&5ターンの間封技、封魔80%攻撃、ブレイクC+(威力はATSに反映)

ホーリーガード 1000 自分 膨大な”聖気”によってさまざまな加護を自分に付与する。絶対防壁×1&5ターンHP自動回復効果付与

アルティウムラッシュⅡ 3300 中円 一軍をも退かざるを得ない闘気を纏った怒涛の連続突きで敵を圧倒する。威力5S&5ターンの間バランスダウン100%攻撃、崩し発生率+90%、ブレイクSSS+

天界光 2500 単体 あらゆる穢れを消滅させる究極神聖魔術。空属性威力6S+&1ターンバニッシュ100%攻撃。幽霊系、不死系の敵に2倍ダメージ、崩し無効、ブレイクA+(威力はATSに反映)







Sクラフト





エクスピアシオンΩ 特大直線(貫通)”贖罪”の名を持つ究極神聖魔術 空属性威力20S+、ブレイクSSS(威力はATSに反映される)

絶招・神極聖乱舞 大円 最上位の神聖魔術を武器に纏わせて華麗に舞う。空属性威力13S+&3ターンの間ATK、ADF100%減少&絶対防壁貫通、ブレイク確定(ATK、ATSの合計値が反映される)。クラフト『光剣』を使っている場合、威力が2倍になる。


 
 

 
後書き
リィンを含めた教官陣が化物過ぎるww特にオーダーがチートな性能だらけですww書いていて気づきましたけど、原作のキャラ達のオーダーでもとんでもない性能なのに、エウシュリーキャラ達にオーダーが追加されたらどんな化物性能になるんでしょうね(汗)特にリウイやセリカ、アイドスやフェミリンスのオーダーとか今回のエウシュリーキャラ陣営の更に上を行くんでしょうねぇ(遠い目)なお、生徒達やエリゼ&アルフィン、ベルフェゴール達のステータスは1章、もしくは2章終了時にそれぞれ出す予定です。 

 

第5話

4月15日――――



~宿舎~



「―――うん、これでよしっと。」

第Ⅱ分校入学から2週間――――徐々に生活に慣れ始めていたユウナは登校前に鏡で髪の状態を自分が納得するまで直して頷いた。

「はあ………一緒に登校しようと思ったのに、起きたらいないし……」

同室のアルティナがいない事に溜息を吐いたユウナは気を取り直して自分が作っている机に飾っている家族全員が写った写真に近づいて写真を見つめた。

「お父さん、お母さん、ケンにナナも。行ってきます。―――今日も頑張ってくるね。………ああもう!エレボニア人には負けないんだから!」

日課である家族の写真に挨拶をしたユウナはふとかつての出来事――――クロスベル市内で窮地だった自分と妹達を助け、手を差し出したリィンとその後ろにいるセレーネ達を思い出した後すぐに我に返って自身に喝を入れた。



「ハアッ!セイッ!ハァァァァァッ――――斬!!ふう………」

一方その頃宿舎にある鍛錬場で日課である朝の鍛錬を終えたクルトはタオルで汗をふいた。

「―――キレは悪くない。あとは実戦あるのみか。……そう言えば呼吸がほとんど乱れていなかったな。」

自身の評価をしたクルトはオリエンテーションの時のリィンを思い出した。

「”八葉一刀流”―――流石だけど、父上達に比べたら聞いていた程じゃなさそうだ。……所詮は”騎神”と”異種族”頼みの英雄というだけか。後は”飛燕剣”の方だが……兄上達の話では”実戦”にならなければ、”主”達は呼ばないと聞くが……だったら、例え訓練とはいえ”実戦技術”の授業で鍛錬相手として呼んでくれないだろうか。」

リィンに対する評価や今後の事を考えたクルトは上着を着た後鍛錬場を出た。すると上から降りてきたユウナと鉢合わせをした。



「「あ…………」」

鉢合わせをした二人は一瞬呆けたがそれぞれ互いに近づいた。

「「おはよう、その――――」」

更に二人は同時に同じ事を言いかけたが、すぐに中断し、互いに気まずい表情をしていたがやがてクルトが先に口を開いた。

「――おはよう、ユウナ。君も登校か?」

「う、うん。クルト君も型稽古は終わり?毎日毎日、精が出るね。」

「まあ、幼い頃からの日課だから慣れっこではあるんだが……」

「「…………」」

二人の会話は続かず、お互い黙り込んだが今度はユウナが口を開いた。



「―――ああもう!あの時はゴメンなさい!」

「え………」

ユウナに突然謝罪されたクルトは何の事かわからず呆けた声を出した。

「その、平手打ちのこと!どう考えても不可抗力なのに、一方的にやっちゃって……!その後も態度悪かったし、大人気なさすぎっていうか……」

「君は………」

ユウナの話を聞いたクルトは目を丸くして黙り込んだがやがて口を開いた。

「それを言うならお互い様さ。―――しかし、あれから2週間、ずっとそれを言おうとしてたのか?エレボニア人嫌いの君にしては律儀というか、殊勝というか。」

「べ、別にエレボニア人の事は嫌いじゃないってば……!国は国、人は人だし、自分が間違っているんだったら、ちゃんと謝らなきゃって思って……毎日、熱心に稽古をしてるのにあんな言い方もしちゃったし。」

「ああ………」

気まずそうな様子で答えたユウナの話を聞いたクルトはオリエンテーションの時のユウナの発言を思い出した。



エレボニア人が使う、昔ながらの剣なんかよりは役に立つ筈です!



「別に気にしてないさ。稽古自体は単なる日課だしね。――――それいしてもクロスベル人っていうのはみんな君みたいな感じなのかい?」

「へ……あたしみたいって?」

クルトの問いかけの意味がわからないユウナは不思議そうな表情で問い返した。

「別に悪い意味じゃないけど。前向きで正義感が強くて人が良さそう(チョロそう)な感じってことさ。 」

「って、君ねぇ!?」

そしてクルトの自分に対する印象を知ったユウナはジト目でクルトを睨んだ。

「だから悪い意味じゃないって言ってるじゃないか。」

ユウナに睨まれたクルトは苦笑をした後手を差し出し

「同じクラスの仲間が信用できそうなのは助かるよ。信頼できるかは別にしてね。」

「む~っ……ホント可愛くないわねえ。ふふっ、でもまあ、改めてよろしくってことで。」

ユウナも手を差し出し、二人は仲直りの握手をした。



「―――お二人とも、おはようございます。」

するとその時タイミング良くアルティナが二人に近づいてきた。

「ア、アルティナ……!?どうして――――とっくに登校したんじゃ!?」

「早朝、定時連絡があってユウナさんを起こさないよう自習室を使用していました。もしかして、部屋を出る時、起こしてしまいましたか?」

「う、ううん。グッスリ寝てたけど……―――ってだから、定時連絡って何より、定時連絡って!」

アルティナの問いかけに戸惑いの表情で答えたユウナだったがすぐに我に返って声を上げて指摘した。

「失礼、秘匿事項でした。」

「……まあ、そろそろ時間だ。同じクラスだし、たまには一緒に登校するとしようか?」

アルティナのマイペースさに脱力したクルトは気を取り直して登校に誘った。

「構いませんが、わたしはお邪魔なのでは?先程の様子から察するに関係性が進展したようですし。」

「か、関係性って……別にしてないってば!」

(しかし独特な言い回しの多い子だな……)

その後3人は宿舎を出て第Ⅱ分校への登校を始めた。



~リーヴス~



「ふう、でもリーヴスって雰囲気もあって良い街よね~。のんびりとしながらセンスのいい店も多そうだし。」

「ああ……田舎過ぎず、都会過ぎない街というか。帝都からそう遠くないから程よい距離感なのかもしれない。」

「以前は、とある貴族の領地だったそうですね。その貴族が手放した後、別荘地が造成されたものの、諸般の事情で頓挫――――その跡地が第Ⅱ分校に利用されたとか。」

「さ、さすが詳しいわね。」

「なるほど、それで都合よくあの規模の分校を造れたのか……」

アルティナの情報にそれぞれ冷や汗をかいたユウナは若干感心している中クルトは納得した様子で呟いた。そして3人は再び歩き始めた。

「そう言えば……アルフィンさんとエリゼさんだっけ?二人は元お姫様と大貴族のお嬢様なのに、料理を始めとした家事全般を普通にできるなんて、正直意外で驚いたわよね~。あたし、てっきりお姫様や貴族のお嬢様は料理みたいな家事全般はみんなメイドさんとか執事さんとかに任せてできないって思っていたもの。」

「幾ら何でもそれは偏見じゃないか……?確かにそう言う貴族の家庭もあるが、貴族の家庭によっては平民の家庭のように令嬢や夫人がその家の家事をしている事もある。実際、僕の家も貴族だが、家事は母上が担当しているしな。」

ユウナの話を聞いたクルトは呆れた表情で指摘をした後説明をし

「そうなんだ……けど確かリィン教官やエリゼさんの実家―――”シュバルツァー家”って、貴族の中でも一番爵位が高い”公爵家”よね?それなのに、シュバルツァー家の令嬢のエリゼさんもそうだけど、元お姫様のアルフィンさんもリィン教官に嫁いで普通の一般家庭の奥さんみたいに家事全般をしている事自体も、結構驚きだと思うけど。」

「それは………」

「というかユウナさんが貴族の”爵位”の事を知っていたなんて、驚きました。」

ユウナの指摘を聞いたクルトが困った表情で答えを濁している中アルティナは目を丸くして指摘した。

「むっ、失礼ね………アルティナも知っての通り、クロスベルが”帝国”に成りあがる前に”六銃士”の人達がメンフィル帝国から1年半前の戦争でエレボニアから贈与してもらう取引をしていて、その取引によってエレボニアの領地の一部がクロスベル帝国に併合されたから、警察学校で貴族についてもある程度は教えられたわよ。それよりも話を戻すけど、どうして”シュバルツァー家”って”公爵家”なのに、家事全般をアルフィンさん達がしているの?」

「まずエリゼ様に関してですが、エリゼ様は元々リフィア皇女殿下の”専属侍女長”ですから、料理を始めとした家事全般は得意である事は当然かと。」

「へ……”リフィア皇女殿下”って、もしかしてメンフィル帝国の跡継ぎのリフィア皇女の事?」

「……そう言えば兄上から聞いた事がある。シュバルツァー家のご息女―――エリゼさんは若干15歳で、リフィア皇女殿下の”専属侍女長”という大任を任されている話を。それを考えるとアルティナの言う通りエリゼさんが家事全般が得意である事はむしろ当然だな………エリゼさんは皇族―――それも、大国の皇帝の跡継ぎの身の回りのお世話をする筆頭である”専属侍女長”なのだから、特に料理の腕前に関しては宮廷料理人もしくは最高級レストランのシェフクラスだと思うし。」

アルティナの説明を聞いたユウナが不思議そうな表情で首を傾げている中クルトは納得した様子で呟いた。



「15歳でそんなとんでもない存在になっていたって、エリゼさんって実は滅茶苦茶凄い人だったんだ………という事はアルフィンさんも料理を始めとした家事全般ができるのも、もしかしてエリゼさんから教えてもらったから?」

「それもありますがそもそも、”現時点のシュバルツァー家”は貴族の爵位の中でも最下位の”男爵家”ですから、使用人はわたし以外は存在せず、基本的に家事全般は教官達の母親であり、現シュバルツァー家当主であるテオ様の妻であられるルシア様が担当していて、ユミルの屋敷にいる時のエリゼ様やアルフィン様はわたし同様ルシア様の家事を手伝っているのです。」

「へ………”現時点のシュバルツァー家は男爵家”って、どういう事??確かリィン教官、自己紹介の時に”シュバルツァー公爵家”って言っていたわよね?」

自分の推測に対する答えを口にしたアルティナの答えを聞いて新たな疑問が出て来たユウナはアルティナに訊ねた。

「はい。そこに補足する形になりますが、テオ様はシュバルツァー家が”公爵家”になれた理由は教官達の功績なので、跡継ぎであるリィン教官がシュバルツァー家の当主になった時に昇進させて欲しいという希望があった為、”シュバルツァー家が公爵家に昇進する事が確定していますから”、テオ様を始めとしたシュバルツァー家の方々からシュバルツァー家の跡継ぎとして認められているリィン教官が”シュバルツァー公爵家の跡継ぎ”と名乗る事自体には特におかしな点はありません。」

「そんな事情があったのか……」

「何だか微妙にややこしい話ね………それで結局今のシュバルツァー家は”男爵家”だから、家事を担当するメイドさんや執事さんみたいな人はアルティナしかいないから、教官のお母さんや教官の奥さんになったアルフィンさんが家事を担当しているの?」

アルティナの話を聞いたクルトが驚いている中ジト目で呟いたユウナは気を取り直してアルティナに確認した。



「はい。わたしもルシア様達のサポートをさせてもらっています。……ただ、わたしは”シュバルツァー家”の方々をサポートする為に教官達に引き取られたのに一般的に言う”子供のお手伝い”のような簡単な事しかさせてもらえないのが、少々不満です。」

「いや、実際アルティナはその”子供”でしょ。………けど意外よね。確かアルフィンさんって、エレボニア帝国がメンフィル帝国に戦争を止めてもらう為に政略結婚として、リィン教官と無理矢理結婚させられたんでしょう?その割にはリィン教官の婚約者のエリゼさんやセレーネ教官、ベルフェゴールさんやリザイラさんとも凄い仲良しだし、リィン教官との関係に関しては初対面のあたし達ですらわかるくらい、その………リィン教官との夫婦関係が本望であるみたいにリィン教官に対してラブラブだし、リィン教官もアルフィンさんみたいに露骨じゃないけど、アルフィンさんがとても大切で大好きな事は伝わってくるし。」

ジト目になったアルティナの発言にクルトと共に冷や汗をかいて脱力したユウナは疲れた表情で指摘した後アルフィンがリィンやエリゼと接する時の様子を思い出しなが疑問を口にした。

「それに関しては僕も少し気になっている。メンフィル帝国との戦争が勃発した理由を考えれば、皇女殿下が教官に対して罪悪感を抱いても、それが恋愛に発展するなんて普通に考えたらありえないだろうし。」

「へ……エレボニア帝国とメンフィル帝国の戦争が勃発した理由でアルフィンさんがリィン教官に罪悪感があるってどういう事?」

「君も知っての通り、1年半前エレボニア帝国が内戦の最中メンフィル帝国に戦争を仕掛けられた理由はリィン教官とエリゼさんの故郷であり、メンフィル帝国領の一つ―――”ユミル”が貴族連合軍と深く関わり合いがあった”とある大貴族”が雇った猟兵達に襲撃された事だが………その”とある大貴族”が猟兵達にわざわざ他国であるユミルを襲撃させた理由は、当時貴族連合軍の魔の手を逃れてユミルに身を隠していた皇女殿下を捕える事だったんだ。そしてその襲撃の際にユミルにある建物等が一部放火されたり破壊され、領主である教官達の父君であられるシュバルツァー卿は領民達を守る為に猟兵達と戦って、重傷を負ったとの事だ。」

「そ、そうだったの!?じゃあクルト君がアルフィンさんがリィン教官に対して罪悪感を感じているような事を言っていたけど、もしかしてその件が理由で……?」

「―――はい。実際アルフィン様はユミルとテオ様の件でリィン教官に対して罪悪感を感じていたとの事です。……まあ、教官達はユミルやテオ様の件はアルフィン様のせいではないと仰って、アルフィン様が自分達に対して罪悪感を抱く必要はないという事をアルフィン様に伝えていたとの事ですが。」

クルトの話を聞いたユウナの言葉にアルティナは静かな表情で頷いて説明を補足した。

「へ……何でアルティナがそんな詳しい事を知っている――――って、アルティナはシュバルツァー家のメイドさん?のようなものだから、知っていて当然よね。」

「………まあ、”メイド”も”使用人”の一種ですから間違ってはいないかと。ちなみにユミルが襲撃された時、当時貴族連合軍に所属していたわたしがクルトさんが仰っていた”とある大貴族”とは”別の大貴族”の指示によって、ユミル襲撃の混乱に紛れてアルフィン様を誘拐してその人物の下へと送り届け、その後アルフィン様の誘拐を指示した人物とは別の貴族連合軍に所属していた人物の指示によって、故郷の襲撃を知って帰郷したエリゼ様を誘拐する為にユミル近郊に潜んでいましたが、イレギュラーな事態が起こり、急遽誘拐目標をエリゼ様からエリゼ様の母親であるルシア様に変更され、誘拐を実行しようとしましたが、わたしの存在に気づいていたメンフィル帝国大使――――”英雄王”リウイ・マーシルン前皇帝陛下が護衛兼伏兵を待機させていた為、誘拐を実行したわたしはその伏兵達に敗北し、捕縛された為メンフィル帝国の捕虜となりました。」

そしてユウナの疑問に淡々とした様子で答えたアルティナの答えを聞いた二人はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「……所々、聞き捨てならない事を聞いてしまったのだが。」

「っていうか、メンフィル帝国の大使―――”英雄王”って確かメンフィル帝国の前皇帝でしょう?何でそんなとんでもない人がエリゼさん達と一緒にユミルに行ったのか意味不明なんだけど……というか、よくそんな事があったのに、エリゼさんやアルフィンさんはアルティナと仲良くしているわよね?」

我に返ったクルトは疲れた表情で呟き、クルト同様疲れた表情で呟いたユウナはアルティナと親しく話している様子のエリゼやアルフィンの様子を思い出しながら不思議そうな表情で首を傾げた。



「………まあ、お二人の心が寛大である事やルシア様の件に関しては”未遂”ですんだ事も理由の一部と思われますが、”七日戦役”の和解条約締結後発足された”特務部隊”にリィン教官達に引き取られたわたしも所属して教官やエリゼ様達と一緒に行動をし続けた事によって親しい関係を築く事ができましたので。」

「そう言えば、君は1年半前の内戦終結に最も貢献したメンフィル帝国の精鋭部隊―――”特務部隊”にも所属していたとの事だったな。……という事は、皇女殿下と教官達の関係が良好になった理由は君と教官達のように内戦終結の為に教官達と皇女殿下が一緒に行動し続けた事によって、お互い親近感が出た事によるお陰なのか?」

「はい、恐らくそれが一番の理由かと。」

「へ~………まあ、理由はどうあれ、政略結婚がお互い両想いによる結婚になった事は結果的にはよかったんじゃないの?」

クルトの推測にアルティナは頷き、興味ありげな様子で聞いていたユウナは自身の意見を口にした。

「……そうだな。今の皇女殿下の状況を知れば、皇女殿下のその後を気にしていた父上達も安心するだろうな。」

「そうですね。リィン教官達の良好な関係を考えると教官達が避妊処置を行っていなければアルフィン様もそうですが、エリゼ様達もとっくにリィン教官の子供を妊娠、出産してもおかしくないかと。」

ユウナに続くようにクルトと共に頷いたアルティナだったが、その後に口にしたとんでもない発言に二人は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「に、にににに、”妊娠”に”出産”、それに”避妊処置”って事はやっぱりアルフィンさんとリィン教官――――ううん、アルフィンさん”達”ってリィン教官と”そういう事”も既にしていたの……!?」

我に返って顔を真っ赤にして混乱している様子のユウナはアルティナに訊ね

「”そういう事”………?ああ、一般的に見れば不埒過ぎる行為であり、夫婦もしくは恋人の関係になれば当然の行為――――”生殖行為”もしくは”性行為”と呼ばれる行為の事ですか。」

「わー!わー!お、女の子がこんな朝っぱらから、そんな事を口にしちゃダメよ!」

ユウナの遠回しな言い方の意味が一瞬理解できなかったアルティナだったがすぐに納得した表情になって呟き、アルティナの言葉にクルトと共に冷や汗をかいたユウナは顔を真っ赤にした状態で声を上げた後指摘した。

「ユウナさんから話を振ってきたのに、何故わたしにそんな事を指摘するのか、理解不能です。」

「というかそれ以前に、内心察してはいても知り合い―――それもこれから顔を合わせて授業をしてもらう教官達が既に”そんな関係”の間柄である事を知ってしまうなんて気まずくなるだけだから、正直口にはして欲しくなかったのだが……」

ユウナの指摘に理解できていない様子のアルティナにクルトは困った表情で指摘し

「はあ。ですが、お二人に限らず第Ⅱ分校の皆さんもリィン教官達が”そんな関係”である事は”察して”いたのでは?アルフィン様がリィン教官の妻で、エリゼ様達はリィン教官の婚約者である事は既に本人達も明言されていたのですし。」

「それは………」

「それはそれ!これはこれよ!というか何でアルティナは教官達が”そういう事”をしている事まで知っているのよ……まさかとは思うけど、教官達が”そういう事”をしている場面を見た事があるのじゃないでしょうね?」

アルティナの指摘に返す事ができないクルトが言葉を濁している中ユウナは反論した後、ジト目でアルティナに訊ねた。



「教官達が”そう言った行為”をしている時は大概ベルフェゴール様達が魔術による防音結界を展開していると、以前のアルフィン様達―――女性達だけの”がーるずとーく”という話し合いで教えて貰った事があり、その後教官もしくはアルフィン様達の私室に結界が展開されている様子を何度か見た事がありますから、その時に教官達が”そう言った行為”をしている事は察しました。それと極稀ですが、教官達が休暇等でユミル郊外である山中で行楽等をしている最中に、わたし達の隙をついてその場から離れたリィン教官とアルフィン様達の誰かが”そう言った行為”をしている所を実際に見た事がありますので。……勿論、その際はクラウ=ソラスのステルスモードを使って、即座にその場から離脱しましたが。」

ユウナの疑問に答えたアルティナはかつての事を思い出してジト目になり

「わー!わー!この話はもうおしまい!……魔術をそんな事に利用している所か、外で”する”なんて、やっぱりあの女好き局長の下にいたから影響を受けたのかしら?もしそうだったら、考えたくはないけどロイド先輩もリィン教官のように局長の女好きかつエッチな事が大好きな影響を受けているのかな……?ううん、さすがにあんなに真面目なロイド先輩が局長みたいになるなんて、それはありえないわ!」

「ふう………リィン教官に降嫁なされた皇女殿下のその後については父上達共々気にはなっていたが、知りたくもない皇女殿下達の家族内の事情まで知ってしまうなんて、皇女殿下に対して申し訳がないな……」

一方アルティナの話を聞いてクルトと共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたユウナは我に返った後顔を真っ赤にして声を上げて無理矢理話を終わらせてジト目になって小声でブツブツと呟き、クルトは疲れた表情で溜息を吐いた後困った表情で呟いた。

「そう言えばベルフェゴールさん達の件で思い出したけど、教官の他の”婚約者”の人達って、一体どういう人達なのでしょうね……?確かリィン教官にはエリゼさん達を含めて婚約者が8人いるって、話でしょう?今わかっている教官の婚約者はエリゼさんにセレーネ教官、ベルフェゴールさんにリザイラさんだから……後4人いる事になるし。」

「?後四人の内の一人に関してはユウナさんもご存知だと思うのですが。その人物は現クロスベル皇帝の一人―――ヴァイスハイト・ツェリンダー皇帝の養女にして、クロスベル皇女であるメサイア様なのですから。」

ユウナの疑問を聞いたアルティナは不思議そうな表情でユウナに指摘した。

「あ……そう言えば局長……じゃなくてヴァイスハイト皇帝陛下に即位前から養子がいて、その養子がメンフィル帝国との関係強化にメンフィル帝国の関係者と婚約している話は聞いた事があるけど、その相手ってリィン教官の事だったんだ。」

アルティナの指摘を聞いてある事を思い出したユウナは目を丸くして呟いた。

「はい。メサイア様はアルフィン様達の護衛を担当しているベルフェゴール様やリザイラ様と違い、今もリィン教官の”使い魔”の一人としてリィン教官の身体と同化して状況を見守っていますから、教官が必要と感じた時はメサイア様を召喚すると思います。」

「ええっ!?それじゃあ、メサイア王女はメヒーシャさん達みたいに”主”である教官と”契約”していて、今も教官と一緒にいるんだ……」

「(……そして”飛燕剣”の使い手であるという、兄上の話にあった人物の妹に当たる”女神”も教官の”太刀”と同化して常に共にいると兄上から聞いた事があるが………そう言えば教官は”太刀”を2本腰に刺していて、オリエンテーションの時は1本しか使っていなかったな……という事は使っていないもう1本の”太刀”に件の”女神”が……?)しかし……話を聞いていて気づいたがリィン教官の伴侶となる人物は、偶然とは思えないくらい高貴な方が多いな。」

アルティナの説明にユウナが驚いている中、クルトはある事を思い出して考え込んだ後気を取り直して自身の意見を口にした。



「た、確かに………エレボニアとクロスベルの皇女と結婚、もしくは婚約している上、将来”公爵家”になる事が決まっている教官の妹のエリゼさんやリィン教官と同じ貴族で、しかも当主のセレーネ教官とも婚約しているし……」

「そこに補足する形になりますが………エレボニア、レミフェリアのそれぞれの上流階級からリィン教官の縁談の話も相手方の方から提案されているとの事です。」

「ええっ!?ただでさえ、今でもリィン教官は結婚している上たくさんの婚約者がいるのに、まだ増えるかもしれないの………!?というか何で相手の家は教官は既に結婚している上、たくさんの婚約者がいるとわかっているのに、縁談を持ってくるのかしら……?」

クルトの推測に冷や汗をかいて同意していたユウナだったがアルティナから更なる話を聞くと再び驚き、そして困惑の表情を浮かべた。

「まあ、リィン教官はアルフィン皇女殿下を含めて、メンフィル、エレボニア、クロスベルの三帝国の皇族に連なる人物達と結婚、もしくは婚約している事で三帝国の皇族との縁戚関係になる事が確定しているからな。上流階級の者達からすれば、リィン教官と縁を結びたい相手だろう。しかも教官には多くの婚約者がいるから、その中に自分の娘も入れて貰える可能性もあると考えているのだろう。」

「そうですね。実際、教官は縁談を持ってくる相手方からはヴァイスハイト皇帝のように”好色家”として見られているようですし。……まあ、教官はその風聞を知った時頭を抱えて『何で、そんな風に見られてしまうんだ……誤解だ!』と叫んでいましたが。」

クルトの話に同意したアルティナは以前聞いた事があるリィンの心の叫びを口にし、それを聞いた二人は冷や汗をかいた。

「誤解もなにも、実際ヴァイスハイト皇帝陛下みたいにたくさんの女の人を侍らせてハーレムを築いているんだから、そんな風に見られて当たり前じゃない………そう言えば、さっきクルト君はリィン教官は”三帝国の皇族と連なる人物と結婚、もしくは婚約している”って、言っていたけどリィン教官が婚約者しているメンフィル帝国のお姫様って、どんな人なの?」

「何だ、知らなかったのか?メンフィル帝国の皇族に連なる人物はセレーネ教官だぞ。」

「ええっ!?セ、セレーネ教官が!?でも確かセレーネ教官って、自己紹介の時”アルフヘイム子爵家の当主”って言っていたわよね?しかも名前にもレン教官みたいにメンフィル皇家のファミリーネームである”マーシルン”もないし。」

クルトの口から語られた驚愕の事実に驚いたユウナは困惑の表情で指摘した。

「セレーネ教官の双子の姉である”蒼黒の薔薇”―――ツーヤ・A・ルクセンベール様はメンフィル皇家の分家の養子縁組を組んでいるのです。その為、ツーヤ様の妹であるセレーネ教官もツーヤ様と養子縁組を組んだメンフィル皇家の分家の養子にしてもらったとの事です。」

「そ、そうだったんだ………ねえねえ、アルティナ。上流階級の人達がリィン教官に縁談を提案しているって言っていたけど、もしかしてその中にはあたしでも知っているような凄い身分の人とかもいるの?」

セレーネの意外な出自を知って目を丸くしたユウナは興味本位でアルティナに訊ねた。

「そうですね…………”セイランド家”でしたら、ユウナさんも知っているのでは?」

「へ………”セイランド”って、もしかしてウルスラ病院に外科医の一人として務めているセイランド先生の事!?」

アルティナの問いかけを聞いてある人物に心当たりがあるユウナは驚きの表情でアルティナに確認した。



「はい。正確に言えば、ユウナさんが言っている人物の”姪”に当たる人物である”ルーシー・セイランド”という人物との縁談が提案されたとの事ですが。」

「驚いたな……”セイランド家”といえば、”レミフェリア公国”を代表する医療機器メーカーの一つ―――”セイランド社”の創始者の一族で、大公家とも連なる一族のはずだ。という事はひょっとしたらその縁談はレミフェリア公国の大公家の”意志”も関わっているかもしれないな………」

「大公家って、レミフェリア公国のトップの大公の一族の事でしょう?セイランド先生がそんな凄い家の出身だったなんて、知らなかったわ…………っていうか、何気にリィン教官との縁談相手になったその人も皇族の関係者って事じゃない。結婚しても、皇族関係者の女性との縁談の話が来るって、リィン教官の女性運って一体どうなっているのよ………」

アルティナの説明を聞いたクルトは目を丸くした後考え込み、ユウナは信じられない表情で呟いた後疲れた表情で溜息を吐いた。

「ユウナさんの意見には同意します。リィン教官に提案されている新たな縁談の中にはエレボニア帝国の皇女もいますし。」

「へ………”新たな縁談の中にはエレボニア帝国の皇女もいる”って事は、エレボニア帝国にはアルフィンさんの他にもお姫様がいるの?」

「ああ。リーゼロッテ皇女殿下という方で、元々ユーゲント皇帝陛下の正妃であられるプリシラ皇妃殿下の実家の子女として育った方なのだが、1年半前のメンフィル帝国との和解条約の件でアルフィン皇女殿下が降嫁された事で、エレボニアの民達からすれば”帝国の至宝”の片翼として民達にとても慕われていて、内戦終結に最も貢献したアルフィン皇女殿下がメンフィル帝国との和解の為に自ら責任を取ってエレボニア帝国から去った風に見られていて、それが理由で内戦やメンフィル帝国との戦争の件もあってエレボニア帝国全体が暗い雰囲気に陥りかけたんだが………その雰囲気をなくすために、明るい話題として、既に両親を亡くされていて皇妃殿下のご両親であられる祖父母の元で育っていたリーゼロッテ皇女殿下が選ばれて、アルノール皇家と養子縁組を組まれる事になったんだ。今では”新たな帝国の至宝”という呼び名で、民達の人気もアルフィン皇女殿下に劣らないと言われている程、民達に慕われている方だ。」

「そうなんだ………あれ?でも、エレボニア帝国の皇家って、既にアルフィンさんがリィン教官と結婚しているからリィン教官達との縁は十分あるわよね?なのに、何でリィン教官に新たな縁談を提案しているのよ?」

「………まあ、あくまで僕の推測だが教官との縁談はアルフィン皇女殿下の件同様”政略結婚”で、しかもエレボニア帝国政府の意向が関わっていると思う。エレボニア帝国は14年前の”百日戦役”、そして1年半前の”七日戦役”でメンフィル帝国との”力の差”を嫌という程、思い知らされたからな。しかも1年半前の戦争の件で国家間の関係は微妙な状況の上、メンフィル帝国はメンフィル帝国同様国家間の関係が微妙な状況になっているクロスベル帝国との関係は良好だから、1年半前連合を組んでカルバード共和国を滅ぼしたように、再び連合を組んでエレボニア帝国を滅ぼされない為に組まれた縁談かもしれないな。アルフィン皇女殿下とリィン教官の政略結婚はメンフィル帝国の要求で、あくまで1年半前の戦争の”和解条約”の一つとして組まれていただけだから、万が一メンフィル帝国との何らかの国際問題が発生して再びメンフィル帝国に戦争を仕掛けられた場合、アルフィン皇女殿下を理由に和解、もしくは戦争を止めてもらう事は恐らく不可能だと思われるしな。(しかし、リィン教官とリーゼロッテ皇女殿下の縁談の話があがっているなんて………まさかとは思うがその為に、陛下はリーゼロッテ皇女殿下を養子に取られたのか……?)」

ユウナの疑問に対する答えを推測で答えたクルトは真剣な表情で考え込み

「な、何それ………その為に養子にした人までリィン教官と政略結婚させようとするなんて、あたしには全然理解できない世界だわ。…………それにしても話は変わるけど、エレボニアの士官学校がこんなにハードとは思わなかったわ。訓練や実習は仕方ないけど、数学とか歴史とか芸術の授業まで……範囲とかレベルも普通の高等学校以上じゃない?」

一方ユウナはジト目で呟いた後話題の内容を変えた。

「文武両道はエレボニアの伝統だからね。……特にトールズは大帝ゆかりの伝統的な名門だ。たとえ分校であっても、その精神は変わらないんだろう。」

「むしろ今年からは本校の方が大きく変わっているようですが。」

「それは……」

「?よくわからないけど、気合を入れるしかないわね。他のクラスに後れを取らないようあたしたちも頑張りましょ!」

アルティナの言葉にクルトが言葉を濁している中、クルトの様子を不思議に思ったユウナは自分達への喝を入れた。

「……まあ、やるからにはね。といっても、授業の大半がⅧ組かⅨ組と合同ではあるけど。」

「別々なのはHRくらいですね。」

「うーん、そうなのよね。人数を考えると当然だろうけど、それじゃあⅦ組って――――」

「ハッーーーー選抜エリートが仲良く登校かよ。」

そしてユウナが疑問を口に仕掛けたその時、クルトとは別の男子の声が聞こえてきた。声に気づいたユウナ達が視線を向けると、そこには金茶髪の男子生徒がいた。



「あなたは―――」

「えっと、たしかⅧ組・戦術家の………」

「……おはよう。僕達に何か用件か?」

「クク……いや、別に?ただ、噂の英雄のクラスってのはどんなモンなのか興味があってなァ。Ⅶ組・特務科―――さぞ充実した毎日なんじゃねえか?」

クルトの問いかけに対して金茶髪の男子生徒――――アッシュ・カーバイドは不敵な笑みを浮かべて皮肉を交えた答えを口にした。

「………………」

「悪いが、入ったばかりで毎日大変なのはそちらと同じさ。」

「そうね、”あの人達”のクラスだからって今の所カリキュラムは同じなんだし。第一、それを言ったら貴方のクラスも、主計科のクラスもそうじゃない。Ⅸ組・主計科にはリィン教官達同様1年半前の内戦終結に大きく貢献した”特務部隊”の所属で、しかもリィン教官の次に有名でもある”参謀”だったレン教官がいるし、貴方のクラス―――Ⅷ組・戦術家に関してはクロスベル帝国にとっては英雄の”特務支援課”のランディ先輩と、え~と………名前は伏せておくけど、ランディ先輩よりも、もっと有名な”クロスベルの英雄”もいるじゃない。」

「だったらどうして、わざわざ別に少人数のクラスなんざ作ったんだ?明らかに歳がおかしい上噂の英雄と深く関わり合いがあるガキもいるし、毛並みの良すぎるお坊ちゃんもいる。曰く付きの場所から来たジャジャ馬の”留学生”もいるしなァ。おっと、この国からすればあの場所の出身者を”留学生”と呼ぶのは色々と思う所はあるかもしれないなァ。」

「………っ………」

「無用な挑発はやめて欲しいんだが。言いたい事があるならいつでも鍛錬場に付き合うが?」

アッシュの皮肉に対してユウナは唇を噛みしめてアッシュを睨み、クルトは呆れた表情で溜息を吐いた後表情を引き締めてアッシュを見つめた。



「クク、いいねぇ。思った以上にやりそうだ。だが生憎、用があるのは――――」

「うふふ、仲がよろしいですね♪」

そしてクルトの言葉に対してアッシュが不敵な笑みを浮かべて答えかけたその時、その場にはいない新たな女子生徒の声が聞こえてきた。

「あ……」

「たしかⅨ組・主計科の。」

「……ふん?」

声に気づいたユウナ達が振り向くとミュゼがユウナ達に近づいて立ち止まり、そして上品な仕草でスカートをつまみげて会釈をした。

「ふふ、おはようございます。気持ちのいい朝ですね。ですが、のんびりしていると予冷が鳴ってしまいますよ?」

「……確かに。」

「……そっちはまだ絡んでくるつもり?」

ミュゼの指摘にクルトが納得している中ユウナはジト目でアッシュを睨んで問いかけた。



「クク……別に絡んじゃいねぇって。そんじゃあな。2限と4限で会おうぜ。」

「ふふ、ごきげんよう。1限、3限、4限でよろしくお願いします。」

ユウナの問いかけに答えたアッシュはその場から去って分校へと向かい、ミュゼも続くように分校へと向かった。

「はあ……何なのよ、あの金髪男は!いかにも不良って感じだし、あんなのが士官候補生なわけ!?」

「露骨に僕達”Ⅶ組”に含みがありそうだったが……(いや……僕達というより―――)」

ユウナの疑問に答えたクルトが考え込んだその時、予冷が聞こえてきた。

「って、ヤバ……!」

「急がないとHRに遅れそうです。」

「ああ、行こう……!」

予冷を聞いたユウナ達は急いで分校へと向かった。



「ふう………ようやく2週間ですか。」

「ふふっ、どのクラスの子も頑張ってついてきてくれてるね。トールズ本校以上のスパルタだから大変だとは思うけど。」

一方ユウナ達の様子を見守りながら出勤していたリィンがふと呟いた言葉に対してトワは苦笑しながら答えた。

「ええ……加えて本校には無かった”教練”と”カリキュラム”もある。第Ⅱ分校――――プリネ皇女殿下達からある程度の予想は聞いていましたが、政府側の狙いが少しずつ見えてきましたよ。」

「うん……でも、この分校の意義はそれだけじゃないと思うんだ。トールズの伝統を受け継いだ”あの日”もあるんだしね。」

「”あの日”……ああ……アリサ達から聞いた事がある”あの日”ですか。”部活”の件も含めて放課後、伝えるつもりです。」

「うん、よろしくね。―――それじゃあ”リィン教官”、今日も頑張っていきましょう!」

「ええ――――”トワ教官”も!」

そして二人もユウナ達を追うように、分校へと向かった――――――






 
 

 
後書き
今回の話でアルティナがリィン達の家庭内事情まで暴露しちゃいましたwwしかも、新たなリィンのハーレムの一員になる可能性があるキャラ達のネタバレまで(ぇ) 

 

第一章 再会~第二の白亜~ 第6話

 
前書き
今年最後の更新です。  

 
~第Ⅱ分校~



1限目、数学―――



「―――これが公式となる。弾道計算などにも役立つので応用問題を通じて身につけるように。」

数学を担当しているミハイル少佐は難しい公式を黒板に書き、冷静な様子で説明をした。



2限目、政経倫理―――



「これがGDP―――国内総生産っていう概念だね。ちなみにエレボニア帝国の去年のGDPなんだけど、前年度と比較して0.4割減少に……」

政経倫理を担当しているトワは可能な限り生徒達にわかりやすく説明をしていた。



3限目、野外訓練――――



「今日のメニューは”歩く”だ。といっても甘くはないぜ?武装した状態での姿勢を保った一糸乱れぬ行軍………終わった後わざわざセレーネ教官を呼んで治癒術をかけてもらわないと、歩く事すらできないくらい戦術科の連中もヘバってたからな。」

「”歩く”だなんてチマチマとつまんないねぇ。どうせ限界までヘバらせる事は一緒なんだから、”走る”から入ればいいんじゃないかい?何だったら、体力がつきても”走れる”ようにあたいが手伝ってやるよ?」

野外訓練の授業ではランディが説明をしていたが、その様子をランディの身体の中からつまらなさそうに見守っていた歪魔―――エルンストがランディの傍に現れた後自身の周囲に無数の短剣を具現化させ、更に両手に膨大な魔力を集束し、エルンストの発言や行動を見た瞬間今までの授業で度々エルンストの乱入によって散々な目に遭ってきた事を思い出した生徒達全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせるか表情を青褪めさせ

「授業中は勝手に出てくんなって、いつも言っているだろ、エルンスト!つーか、戦術科の連中が歩く事もできないくらいヘバって、姫をわざわざ呼ぶ羽目になった一番の原因は本気で”殺る”つもりで連中を追い回したお前のせいだろうが!?」

「クク、その代わりあたいもちゃんと加減していたから、誰も傷一つついていなかっただろう?それに体力をつけるのは”命の危険”を感じるのが一番いいって、あんたもわかっているだろう?人に限らず生物ってのは”命の危険”を感じれば”本能”で限界を出して、そこから更に”覚醒”するんだからね。それに立ち上がる事もできないくらいぶっ倒れれば、男連中にとっては嬉しい展開になるんじゃないのかい?」

「ハア?何だそりゃ。意味がわかんないぜ……」

エルンストの話の最後の意味がわからなかったランディは疲れた表情で溜息を吐いたが

「戦術科の連中のようにぶっ倒れればどうせ、あの育ちのいい竜の女を呼ぶんだろう?あの女は見た目は女の中でも相当いい上巨乳だし、更に性格もあたいとは正反対だから、例え他人(リィン)の女とわかっていても、そんな女が自分の傍に来て心配そうな顔や優しそうな顔で手当てしてくれる事は男としては嬉しいんじゃないのかい?現に戦術科の男連中の一部もあの女に治療されている最中、鼻を伸ばしていたじゃないか。何だったら、あの女にセシルが着ているような看護師の服を着てもらって、手当てさせたらどうだい?間違いなくここにいる男連中の大半は喜ぶか、更にやる気を出すと思うよ。」

「言われてみればセレーネ教官って凄い美人の上、スタイルも抜群だし、性格も凄くいい人だものね。そんなセレーネ教官にナース服を着て看病してもらったら、少なくても男連中は嬉しいでしょうね。」

「……なるほど。要するに不埒な理由ですか。」

「いや、僕が男だからと言って、セレーネ教官の手当に喜ぶ男子達と一緒にしないで欲しいんだが……」

エルンストの推測や提案を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた後女子生徒達は冷たい視線で男子生徒達を見つめ、女子生徒達の視線に対して男子生徒達は慌てたり、否定したりし始めている中それぞれジト目で見つめてきたユウナとアルティナの言葉に対してクルトは疲れた表情で反論し

「あー、確かに姫だったら、ナース服も似合うだろうなぁ……しかもスタイルもあのセシルさんに迫る程だから、下手すりゃセシルさんと同格になるかも―――じゃなくって!姫にコスプレをさせて手当させた事をリア充シスコン剣士(リィン)の耳に入れば、俺が後でリア充シスコン剣士(リィン)に酷い目に遭わされるだろうが!?弟貴族(ロイド)と違って、兄貴族(リィン)(エリゼちゃん)やエリゼちゃんと同じ妹系キャラも兼ねている姫の事になると性格が豹変してマジで見境がなくなる事はお前も知っているだろうが!?」

一方ランディはエルンストの意見に一瞬同意しかけたがすぐに我に返って、疲れた表情で指摘した。

「クク………――――という訳で”大蛮族”の長であったこのあたいがあんた達みたいな生まれたばかりの雛鳥の為に直々に鍛えあげてやるんだから、ありがたく思いなよ?」

「ハア……ったく、何で俺の周りの女は”こんな連中”ばっかり集まるんだよ……どうせ集まるんだったら、ルファディエル姐さんやベルフェゴール姐さんみたいな美人かつスタイル抜群で、凶暴な性格じゃないお姉様が集まって欲しいぜ……(まさかとは思うが、これもキー坊の”因果操作”によるものじゃねぇよな……?)」

そして不敵な笑みを浮かべて自分達を見回したエルンストの笑みと言葉に生徒達全員は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせたり、表情を青褪めさせて身体を震わせ、その様子を見ていたランディは疲れた表情で肩を落とした。その後途中まではランディの授業通り順調に進んでいたが、授業の後半になるとエルンストが宣言通り乱入し、その様子を見ていたランディは諦めた表情で肩を落とした後ARCUSⅡを使ってセレーネを呼び出し、セレーネが来る頃にはエルンストによって、散々な目に遭わされた事でほとんどの生徒達が立ち上がる気力すらもなく、グラウンドに倒れていた。なお、訓練が終わっても立ち上がる気力はあった上、隙をついて反撃までして来た”一部の生徒達”―――ユウナ達”特務科”の生徒達全員とミュゼ、そしてティータはエルンストに目をつけられ、以後の授業でもエルンストが乱入した際、他の生徒達より酷い目に遭う事になるとは、その時のユウナ達は想像もしていなかった。



4限目、帝国史――――



「―――これが”獅子戦役”だ。帝国史における最大のターニングポイント……この後が”近代”とも言われている。この内戦がどんな背景で起きて激化したのかを紐解いていこう。」

「……………」

(結構わかりやすいわね……)

「ふむ……(そういう観点もあるのか。)」

帝国史を担当しているリィンの授業をアルティナは聞きながら、ひたすら黒板に書いてある事をノートに書き、リィンの授業のわかりやすさにユウナとクルトはそれぞれ感心したり、納得し

「………ふむふむ。(勉強になるなぁ……)」

「ハッ………」

「ふふっ……(やっぱり素敵、ですね。)」

ティータは黒板に書いてある事をノートに書きながらリィンの授業を聞くことに集中し、アッシュは興味なさげな様子で窓の外を見つめ、ミュゼは興味ありげな様子でリィンを見つめていた。



5限目、魔術――――



「今日は魔術の”威力”について教えるわ。最初の授業でも説明したように魔術は”アーツ”とも共通する点が多いわ。その共通点の一つとして魔術の”段階”もアーツと同じで、下位から最上位まであって、威力もそれぞれの段階に相応した威力よ。まあ、口で説明するより実際に見た方がわかりやすいでしょうから………―――ユウナとアルティナは前に出てちょうだい。」

「は、はい!」

「―――了解しました。」

魔術の使い手でもあるリィン達が教官として派遣された事で、分校のみに特別に組まれた授業―――”魔術”を担当しているレンはグラウンドで軽く説明をした後魔術の実演をする為に生徒達の中で既に魔術を使えるユウナとアルティナを呼び、呼ばれたユウナは緊張した様子で、アルティナは冷静な様子で前に出た。

「まずユウナは適当な場所に攻撃系の下位魔術を放ってね。」

「はい。大地の槍よ―――岩槍撃!!」

レンの指示に頷いたユウナは魔術を発動して誰もいない場所の地面から岩の槍を発生させ、それを見た生徒達は驚いた声をあげたり、興味ありげな様子で術者であるユウナを見つめたりしていた。

「今のが下位魔術よ。実際に見てわかったと思うけど見た目や派手さ、威力とかも下位アーツと大して変わらないわ。次にアルティナ、中位魔術―――それも超広範囲に効果がある攻撃魔術をお願い。ただし、魔術を放つ場所は効果範囲をちゃんと考えて放ってね。」

「了解しました。――――闇に包まれよ――――ティルワンの闇界!!」

ユウナに続くようにアルティナはグラウンドのほぼ全てを漆黒の闇で覆う魔術を発動し、その様子を見ていた生徒達は再び驚きの声をあげたり、興味ありげな様子で術者であるアルティナを見つめたりしていた。

「今のが中位魔術よ。魔術の場合、中位になると超広範囲―――”自身が認識している戦場全体”に効果がある魔術もあるわ。この点がアーツと異なる点だから、注意しておいてね。で、最後に上位魔術はレンが実演してあげるわ。―――――狭間の雷よ、炸裂し、我が仇名す敵を灰燼と化せ――――二つ回廊の轟雷!!」

そして最後にレンが魔術を発動すると雷撃が混じり、周囲が震える程の轟音を立て、更に地揺れを起こす程の爆発が何度も起こり、魔術が終わると生徒達の大半は口をパクパクさせたり、表情を引き攣らせたりしていた。

「今のが上位魔術よ。上位魔術―――特に攻撃系魔術の大半は見た目も派手で、広範囲かつ高威力よ。ただし、上位魔術になってくると”魔術の適性が高い事”――――みんなにわかりやすく説明すれば魔導杖(オーバルスタッフ)並びにその系統の武装に適性のある人達、もしくは戦術オーブメントの連結が最低でも5連結以上ある人達になる為習得できる人達も限られてくるから、覚えておいてね。で、最上位魔術だけど……最上位魔術の使い手は上位魔術の使い手よりも更に絞られる事になる上、どれも威力や範囲も余りにも凄まじいから実演は省かせてもらうわ。第一もし、最上位魔術をこんな所で放っちゃったら、できたばかりのグラウンドに大きな(クレーター)がいくつもできて、後片付けが大変になっちゃうしね♪」

「この状況で最上位魔術を発動した場合、下手をすればいくつかの(クレーター)ができるどころか、”このグラウンド自体が巨大な(クレーター)と化する”可能性もありえると思うのですが。」

「ア、アハハ………」

レンは上位魔術の実演と説明をした後に最上位魔術の事や実演を行わない理由等を説明した後小悪魔な笑みを浮かべ、レンの説明を聞いた生徒達全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中最上位魔術を実際に見た事があるアルティナはジト目で指摘し、アルティナ同様最上位魔術を実際に見た事が何度もあるティータはアルティナの言っている事も強ち間違っていない事に気づいていた為冷や汗をかいて苦笑し、他の生徒達はアルティナの指摘に再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「あの……ちなみにレン教官はその、”最上位魔術”を使う事ができるのですか……?」

「いえ、レンも”最上位魔術”はまだ習得できていないわ。でも、その代わり”大魔術”は習得しているわ。ちなみに”大魔術”というのは―――――」

我に返った後質問をして来た女子生徒―――タチアナの質問に対して苦笑しながら答えたレンは講義を続けた。



6限目、実戦技術――――



「今日のメニューは3人1組のチームでの”バトルロイヤル”だ。ルールは簡単、制限時間以内に”この場にいる全チーム”と戦って生き残ったチームが勝者だ。正面から戦ってもよし、戦っている最中に背後から襲うもよし等”戦い方は自由”だから、お前達の好きにしな。ちなみに最後まで生き残ったチームは纏めてこの俺が相手にしてやるから、光栄に思えよぉ?それと、この俺の目の前で手を抜くようなふざけた事をするバカ共はいないと思うが手を抜いて戦ったりしたバカ共はその時点でこの俺が直々に相手になるから、くれぐれも手を抜くんじゃねぇぞ?」

実戦技術を担当しているランドロスは授業内容を説明した後獰猛な笑みを浮かべて生徒達を見まわし、ランドロスの獰猛な笑みと発言に生徒達全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「せっかく生き残っても、最後はランドロス教官と戦わなきゃいけないなんて、理不尽過ぎよ……しかも、教官と戦う事を見越して、生き残りのチームを少しでも増やす為にお互いに手加減をする事もできないし。」

「いや………ランドロス教官は”戦い方は自由”と言っていたから、チーム同士組むことについては、大丈夫なんじゃないか?」

疲れた表情で肩を落としたユウナにクルトは自身の推測を口にし

「あ……っ!」

「確かにランドロス教官の口ぶりからすると、チーム同士組むことについては反則ではないように聞こえますね。」

クルトの指摘にユウナは声を上げ、アルティナは納得した様子で呟き

「ああ、ランドロス教官も”好きにしな”と言っていたから、恐らく大丈夫だろう。(かの”六銃士”の一人に挑めるなんて、滅多にない機会だ。絶対に生き残り、挑ませてもらう……!)」

アルティナに続くように答えたクルトは真剣な表情でランドロスを見つめた。



HR―――



「―――本日はここまで。けっこう疲れただろう?」

「………かなり。」

「大変なのは最初から覚悟はしていましたが………」

「……あたしたちが慣れて来た所ですかさずハードルを上げてません?特にランディ先輩とか、ランドロス教官とか。」

リィンの労いの言葉に対してアルティナとクルトは静かな表情で答え、ユウナはジト目でリィンとセレーネを見つめ

「ア、アハハ……ランディさんの場合は主に授業に乱入するエルンストさんが原因だと思いますけど、結局ランディさんも止めないでそのまま授業を続行させていますものね……」

「はは………ランディ達に限らず、俺達も結果的にそうなっているかもしれないな。ただ、この分校に課せられたカリキュラムは多岐に渡る。今後も、ハードな毎日が続くことは覚悟した方がいいだろうな。」

ユウナの指摘に対してセレーネと共に苦笑していたリィンは気を取り直して説明を続けた。



「ううっ、座学がこんなに多くなければ………」

「………体力消費が想定以上です。」

「やれやれ……―――ですが明日は『自由行動日』なんですよね?」

ユウナとアルティナの泣き言や文句に若干呆れていたクルトは気を取り直してリィンとセレーネに訊ねた。

「ああ、丁度これから説明しょうと思ってたが……」

「それって、入学案内にも書かれていた言葉よね?」

「いわゆる”休日”のようですが違いがあるのですか?」

「『自由行動日』というのはトールズ士官学院におえる”授業がない自由日”の事です。自由時間を利用して自習や訓練、趣味に当てても構いませんし、申請をすれば外出許可も出ますから帝都あたりに遊びに出ても構いません。」

「へえ……!思った以上に自由なんですね。エレボニアの士官学校なんてお堅そうだから制限付きの休養日かと思ったけど。」

「別にそれでも十分と思いますが……」

セレーネの説明を聞いて目を丸くしているユウナにアルティナは静かな表情で指摘した。



「まあ、それがトールズのトールズたる所以(ゆえん)だな。―――ただし、基本的に自由だが明日だけは1つ条件がある。『部活動』を決めてもらおう。」

「へ………」

「『部活動』……ですか?」

「……設立されたばかりですし部活はないと思っていましたが。」

リィンの説明を聞いたユウナとアルティナは目を丸くし、クルトは戸惑いの表情をした。

「分校長からのお達しでね。”トールズ”を名乗る以上、部活に所属するのは必須だそうだ。2名以上集めたら、どんな部活でも申請を許可して、道具や機材も揃えてくれるらしい。ちなみに参加しない生徒は強制的に”生徒会”を作らせて分校長を含めた教官達の補佐をさせると言ってたな。」

「ア、アハハ……特にレン教官は、もし本当に”生徒会”ができたら、『都合のいい使い走りができるわね』とも言っていましたよ。」

リィンとセレーネの話を聞いたユウナ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「……さすがにそれは抵抗がありますね。」

「ていうか、あの博士といい、ランドロス教官といい、この分校は無茶苦茶な教官が多すぎよ……!」

「実質、強制ですか……明日中に決めろという事ですね。」

我に返ったアルティナとユウナはそれぞれ反論し、クルトは疲れた表情で呟いた。



「ああ、今日の放課後からでもさっそく検討してみるといい。教官陣も相談に乗る。遠慮なく声をかけてくれ。」

「わたくし達に相談し辛かったらアルフィンさんに相談してもいいと思いますわよ。アルフィンさんも、1年半前までは皆さんと同じ”学生”の身でもあったのですから、学生である皆さんの視点で一緒に考えてくれると思いますわ。」

「ちなみにアルフィンとエリゼにも部活の件は前もって説明し、君達の相談に乗る許可も取れているから、二人にも遠慮なく相談してくれて構わない。」

「っ………」

「ふう、了解です……というか、僕からすれば皇女殿下達に相談する方が、教官達に相談するよりも遠慮してしまうのですが……」

「むしろ指定してくれると助かるのですが……」

リィンとセレーネの話に生徒達はそれぞれ困惑や疲れた表情を浮かべていた。



「―――それと最後に週明けの”カリキュラム”だが。」

「……!」

「……そう言えばそれがありましたね。」

「”機甲兵教練”ですか。」

そしてリィンが口にしたある言葉を聞いた生徒達はそれぞれ表情を引き締めた。

「ああ、既にハンガーに練習機も到着している。戦術科生徒と合同で基本操縦を学んでもらうからそのつもりでいてくれ。その後は、週末に実施される『特別カリキュラム』についても発表される見込みだ。」

「……………」

「特別カリキュラム……前から気になってたけど。」

「今、この場で内容を聞くだけ無駄なんでしょうね。」

「申し訳ありませんが教官陣もまだ詳細は知らされていません。」

「まあ、英気を養う意味でも明日は大いに羽を伸ばしてくれ。――――HRは以上だ。アルティナ、号令を頼む。」

「はい。起立――――礼。」

その後HRを終えたリィンとセレーネは教官室へと向かった。



~本校舎1F・教官室~



「さて―――明日は”自由行動日”だが。我々教官陣も、基本的には自由にせよと分校長のお達しだ。ただし、午後の3時からブリーフィングに参加して欲しい。」

「ブリーフィング、ですか?」

「また軍隊っぽい用語が飛び出してきたな。」

「うふふ、ここは”士官学院”なんだから、”士官学院の関係者も一応軍の関係者”にもなるのだから、別におかしな事ではないわよ。」

ミハイル少佐の説明にリィンは不思議そうな表情をし、疲れた表情で呟いたランディにレンは小悪魔な笑みを浮かべて指摘し

「それって、もしかして―――」

「俺達教官陣にも未だ秘匿している、『特別カリキュラム』についてだろう?」

ブリーフィングの内容を悟っていたトワとランドロスはミハイル少佐に視線を向けた。



「ああ、来週末に行われる『特別カリキュラム』についての概要と目的を説明する。」

「……なるほど。」

「勿体ぶるねぇ。どうやら機甲兵訓練以上に大掛かりな話っぽいが。」

「教官陣全員が参加という事は、もしかして全校生徒が参加するカリキュラムなのですか?」

ミハイル少佐の答えを聞いたリィンとランディは疲れた表情で呟き、ある事に気づいたセレーネはミハイル少佐に質問をした。

「ああ、Ⅶ組からⅨ組まで教官陣を含めて例外はない。明日午後3時、本校舎の軍略会議室に集合して欲しい。――――連絡事項は以上だ。」

そしてリィン達教官陣への連絡事項を終えたミハイル少佐は部屋から退出した。



「ったく、さすがは天下の鉄道憲兵隊っつーか。聞いてる限り、ロクでもない話しか思い浮かばないんだが。」

「う、うーん……」

「うふふ、何せこの分校が作られた”理由”を考えるとねぇ?」

「ま、何せ厄介者を纏めて『捨石』にする為に作られたからな。」

「レ、レン教官。それにランドロス教官も。」

ミハイル少佐が出て行った後呟いたランディの推測を聞いたトワは困った表情で答えを濁し、意味ありげな笑みを浮かべたレンとランドロスの言葉にセレーネは冷や汗をかいた。

「……同感です。あの小要塞といい、機甲兵といい、貨物路線の引き込みといい―――この分校の設備はただの『捨石』というには充実しすぎている気がします。」

「うん……そうだね。本校も大改修されたそうだけど、それと同じくらいのお(ミラ)が掛かっていそうっていうか……問題はどこからその予算が出てるかだよね。」

リィンの推測に同意したトワは自身の疑問を口にした。



「んで、それに見合う”何”を第Ⅱに求めてるかってことだな。あー、ヤダヤダ。キナ臭い事はルファディエル姐さんやリア充皇帝共のお陰で十分味わってお腹一杯だってのに、外国にまで来て関わる羽目になるなんて勘弁して欲しいぜ。しかも今回の職場仲間の中にもルファディエル姐さんと互角のキナ臭い事担当もいるし、巻き込まれる前にとっとと戦線を離脱したくなってくるぜ。」

「あら、そう言っている割には、”特務支援課”にいた頃はルファディエルお姉さんのお腹が真っ黒な事に巻き込まれても、ランディお兄さんは最後までついて行ったじゃない。」

ランディの発言を聞いたレンは小悪魔な笑みを浮かべて指摘し

「ルファディエル姐さんの場合はあくまで俺達の”敵”を嵌める為に暗躍していただけで、敵も味方も躊躇いなく利用する所か、自分の掌の上で踊るように仕向けるどこぞの”参謀のお姫様”とは違うっつーの。」

「クク、随分とおっかない”参謀”だな。その”どこぞの参謀のお姫様”とやらの顔を見てみたいぜ。」

「え、えっと………冗談で言っているんですよね?」

「ハア………」

レンの指摘に対して疲れた表情で反論したランディの言葉を聞いたリィンとセレーネ、トワは冷や汗をかいて表情を引き攣らせてレンに視線を向け、不敵な笑みを浮かべて呟いたランドロスの言葉を聞いたセレーネは冷や汗をかいて問いかけ、リィンは疲れた表情で溜息を吐いた。

「え、えっと……その、わたしたちにはお止めはできませんけど……」

一方ランディの言葉を真に受けていたトワは心配そうな表情でランディに視線を向け

「冗談だよ、冗談。いきなり放り出したりしないって。なんだかんだ言って、戦術科の連中もシゴき甲斐がある奴等ばっかりだしな。そんじゃ、お先に。せいぜいガキどもの相談にお互い乗ってやるとしようぜ。」

「俺も先に上がるぜ。ま、俺も戦術科のガキどもに関わらず他のクラスのガキどもの相談にも乗るから、ガキどもの事で何か聞きたい事があったら俺にも相談してくれ。その代わり、俺も相談させてもらうぜ?」

ランディは苦笑しながらトワの心配が無用である事を説明した後席から立ち上がり、ランドロスも続くように席から立ちあがった。

「ああ、了解だ。」

「ふふ、わかりましたわ。」

「お疲れ様でしたー。」

「うふふ、お疲れ様♪」

そしてランディとランドロスは先に部屋から退室した。



「……二人とも、話してみると気さくだし、生徒の面倒見もいいみたいだね。」

「ええ、ランディと長い事一緒に仕事をしていた俺もランディは教官としては打って付けの人材だと思います。」

「初対面で、様々な理由で支援課に所属する事になったわたくし達にも、早く支援課に馴染めるように、気さくな態度で面倒を見てくれましたものね。」

「うふふ、それにランドロスおじさんは何といっても、”とある大国”の軍の師団の中でも”最強”と謳われていた”某師団”をボロ負けさせた”とある自治州の警備隊”を育て上げた人物達の関係者だから、ランドロスおじさんも教官として打って付けの人材でしょうね♪」

二人が退出した後呟いたトワの意見にリィンとセレーネが頷いた後に答えたレンの答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「レン教官……さすがにその発言はエレボニア帝国の士官学院の教官として、危ない発言だと思いますわよ……?」

「ハハ………――――とりあえず今日は、生徒達の様子を見て帰ります。いきなり部活をやれっていうのもハードルが高いでしょうからね。」

「……うん、そうだね。繰り返しになるけど……お互い、力を合わせて頑張ろうね!」

その後教官室から退室したリィンは校舎の見回りをしながら生徒達の相談に乗り、そして下校時間になると宿舎に戻る為に校門へと向かった。


 
 

 
後書き
今回の話で気づいたと思いますが、原作と違い、強化されるのは特務科メンバーではなく分校生徒達全員です!え?何でⅦ組以外の生徒達も強化するかだって?だって、エルンスト乱入による地獄の特訓や実戦の系統の授業ではギュランドロスとレンがいる上、まだ本格的に参加はしていませんが、いずれ生徒達の特訓にリアンヌも指導する予定も入っているんですよ?なので、分校生徒達もギュランドロス達の指導によって強制的(汗)に強化される事になりますから下手したら原作より超強化されたクロスベル警備隊のように最終的に分校生徒達だけで本校生徒達全員相手(本校側に機甲兵あり、分校側には機甲兵なし)やハーキュリーズすらも蹂躙できる強さの化物軍団になるかもしれません(ぇ)しかもその中には既に3rd篇や閃Ⅱ篇で強化された事でレベルは軽く100は超えているティータやアルティナもいる訳ですから……ひょっとしたらティータもオーバルギアなしでアガットを超える強さになるかもしれませんし、アルティナは単独で鉄血の子供達(アイアンブリード)チームと互角かそれ以上の強さになるかもしれません(オイッ!)それとランディのルファディエルはレンと違うというランディの発言を聞いた人達の中にはこう思った人もいるかもしれません……ぶっちゃけ腹黒さで言えばルファディエルの方がレンより上の可能性が高い!……とww………それでは皆さん、よいお年を。 

 

第7話

 
前書き
あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!  

 
~第Ⅱ分校~



(そろそろ下校時間か………一通りの生徒とも話したし、そろそろ宿舎に戻るか。)

校門まで来たリィンが宿舎に向かおうと校門から出ようとしたその時

「あっれぇえ~~~っ!シュバルツァー教官じゃないッスかァ。」

わざとらしく声を上げてリィンを呼び止める男子の声が聞こえ、声に気づいたリィンが振り向くとアッシュがリィンに近づいてきた。

「君は―――(たしか戦術科の……)」

「お勤めゴクローさまーッス。――――アッシュ・カーバイド。Ⅷ組・戦術科のの生徒ッス。なんか、生徒達にマメに声をかけてましたけど、さすがに熱心ッスねぇ~?人気絶頂の若き英雄―――”灰色の騎士”サマは。」

リィンに近づいたアッシュは名乗った後不敵な笑みを浮かべてリィンに対する皮肉を交えた指摘をした。

「………あくまで就任したばかりの新米教官だからな。ランドロス教官とランディの報告で聞いたよ。なかなかの身体能力らしいな?授業や教練で教える事も多いだろうし、改めてよろしくだ、アッシュ。」

「ハッ……そりゃどうも。ところで、前々からアンタに聞きたかったことがあるんスけど。―――デカい灰色のオモチャ乗り回して、”異世界の皇族の犬”として働くっつーのはそんなに気持ちいいんスかね?」

「……これまでマーシルン皇家の”要請(オーダー)”に応じてヴァリマールを使っての活動をした事があるのは4、5回程度だったから、そんなに頻繁にヴァリマールを乗り回してはいないはずなんだがな………――――それと、アッシュも知っての通り俺はメンフィル帝国の”貴族”で、元”メンフィル帝国軍人”だ。”軍人”や”貴族”が”祖国の皇族”の命令に従うのは当然の事だ。メンフィル帝国軍からは既に退役した身だが……俺がメンフィル帝国の貴族である事は変わらない。”皇族の犬”はさすがに言い過ぎだと思うが貴族が仕え、支えるべき存在である祖国の皇族の為に働く事はそんなにおかしな事か?」

アッシュの毒舌や皮肉を交えた問いかけに対して静かな表情で答えたリィンは困った表情でアッシュに問い返した。

「へえ?いや~、さすが元祖国の皇族に対して罪悪感を持っていた両親の為だけに、元祖国の兵士を容赦なく殺しまくった上大貴族の当主達やその関係者達まで殺して、元祖国と今の祖国の間で起こった”戦争”どころか、元祖国の内戦まで短期間で終わらせて今の祖国どころか元祖国のお偉い連中にまで感謝された英雄サマの言うだけはあって説得力もあるッスねぇ~。まあ、実際そのお陰でその英雄サマは今の祖国からは”褒美”として、将来大貴族の当主になれる事にしてもらった上、1年半前の戦争で今の祖国が元の祖国から奪った”帝国の至宝”とか呼ばれて元祖国では大人気だった元祖国の皇女サマまで与えられた事によってその皇女サマを英雄サマのハーレムに加える事ができて、いつでも自分の好きな時にその皇女サマともヤレるッスもんねぇ~。しかもその皇女サマも、戦争や内戦の件で英雄サマに感謝していて、英雄サマにヤラレる事も本望のような態度を取っているッスもんねぇ~?」

「……っ……」

(この方は一体……?)

(どうやらリィンに対して、何か思う所があるように感じるけど……)

そしてアッシュの更なる毒舌や皮肉の指摘に対してリィンが息を呑んで気まずそうな表情をし、その様子を見守っていたメサイアは戸惑いの表情をし、アイドスは静かな表情でアッシュの事を推測した。



「ふふっ、失礼します。」

するとその時ミュゼが二人に声をかけて近づいてきた。

「あ……(確か彼女は主計科――――それもアルフィンの話にあったユーディット皇妃殿下の……)」

ミュゼの登場に一瞬呆けたリィンはすぐに我に返るとミュゼの事を知っていたアルフィンから教えられたミュゼの情報を思い出し

「チッ……朝に続いてかよ。」

一方アッシュは舌打ちをしてつまらなそうな表情をした。

「Ⅷ組のアッシュさんにリィン教官でしたか。ふふっ、楽しそうなお話で盛り上がっているみたいですね?」

「ハッ……そんじゃあ俺はここで。―――週明けの機甲兵教練、楽しみにさせてもらうぜ?」

ミュゼに問いかけられたアッシュは鼻を鳴らして不敵な笑みを浮かべてリィンを見つめた後下校し始めた。

(機甲兵教練……?)

「あら、ひょっとしてお邪魔たっだとか……?」

アッシュの言葉が気になり、下校していくアッシュの背中を見つめながら考え込んでいるリィンにミュゼには問いかけた。



「いや、そんな事はないさ。えっと、君は主計科の――――」

「Ⅸ組・主計科所属、ミュゼ・イーグレットと申します。すでに授業で何度かお世話になっていますが……ご存知でいらっしゃいますか?」

ミュゼは名乗った後微笑みを浮かべてリィンに訊ねた。

「ああ、ちゃんと覚えているよ。トワ教官やレン教官からも話を聞いている。なかなか―――いや、かなり成績優秀らしいな?何せあのレン教官が君の事を『育て上げれば、レンと同格になれる器がある』と言っていたくらいだからな。」

「ふふっ、私程度の成績で優秀だなんて恥ずかしいです。それにレン教官と同格になれるだなんて、恐れ多いですわ。多分レン教官のお世辞の意味も含めた過剰評価だと思いますわよ。実は私も、リィン教官の噂を色々と伺っていまして………お近づきになれたら嬉しいなってずっと思ってたんです。」

「そうか……そういう噂は話半分くらいに受け取って欲しいんだが。」

(ベルフェゴールやリザイラがいて彼女の反応を見たら、また面白がるでしょうね……)

(ア、アハハ………というか少なくても教官と生徒が結ばれるのは冗談抜きで色々と不味い気がするのですが……)

頬を僅かに赤らめたミュゼの言葉に対してリィンは苦笑しながら答え、その様子を見守っていたアイドスとメサイアは苦笑していた。

「……?ああ、”灰色の騎士”とかそういう噂ではなくって。”前の”Ⅶ組の皆さんの事や従妹さん、新皇女殿下方面の噂です♪」

「え……!?」

そしてミュゼのある言葉に驚いたリィンがミュゼを見つめたその時

「クスクス……ごきげんよう、リィン教官。若輩者ではありますがよろしくお願いしますね?」

ミュゼは意味ありげな笑みを浮かべて会釈をした後下校を始めた。

(………戦術科のアッシュ・カーバイドに主計科のミュゼ・イーグレットか。Ⅶ組や他の生徒達も含めてみんな一筋縄じゃ行かなさそうだな。)

ミュゼが下校して行く様子を見守りながらリィンはアッシュやミュゼを含めた生徒達を思い浮かべて苦笑した後下校を始めた。



その後宿舎に戻ったリィンは夕食を取って次の授業に向けての準備をした後宿舎を一通り回り、風呂に入浴した後明日に備えて休む為に自室に戻った。



~宿舎・リィンの自室~



リィンが部屋に入ると着信音が聞こえてきた。

「この着信音は……?(聞いた事のない音だな。)」

着信音に気づいたリィンはARCUSⅡを取り出して通信をしようとしたが、普段の画面とは異なる為首を傾げた。

「?(この色は……通信着信じゃないみたいだ。ということは、導力ネット経由でファイルでも送られてきたのか?)」

初めて見る画面の色に首を傾げながら操作をすると新たな画面へと変わった。

「……ん?なんだ、この画面は―――ROUND・OF・SEVEN(ラウンド・オブ・セブン)……”Ⅶ組の輪”……?」

「―――もしもし、リィン。ちゃんと繋がってるかな?」

新たな画面にリィンが首を傾げているとARCUSⅡから聞き覚えのある青年の声が聞こえてきた。

「そ、その声は……」

「あはは、よかった。ちゃんと繋がったみたいだ。ちょっと待ってて。今、画像を出すから。」

声にリィンが驚いていると画面には旧Ⅶ組の生徒の一人―――エリオット・クレイグが写った。



「エリオット―――!」

「リィン、久しぶり。先月通信で話して以来かな?顔を見るのは半年ぶりくらいだけど。」

「ああ、そのくらいか……―――じゃなくて!どうしたんだ、この映像は!?」

「ふふっ、タネを明かすとオリヴァルト殿下の計らいでね。リィンもARCUSⅡを殿下から贈られたでしょ?それに特別なアプリ?っていうのが入ってて、その機能を使ってるんだって。」

「そんな機能が……俺の顔もそっちに映ってるのか?」

エリオットの話を聞いた驚いたリィンはエリオットに確認した。

「うん、バッチリだよ。ひょっとしてまた背が伸びた?あ、そう言えば誕生日も近かったんじゃなかったっけ?」

「ああ、来月だが……ははっ……………」

「ふふっ…………」

その後リィンは久しぶりに話すかつての仲間との会話を懐かしみながら過ごした後、明日に備えて休み始めた。



4月16日、自由行動日――――



翌日、ブリーフィングの時間までリィンは町や分校を見回りながら生徒達の相談に乗ったり、町の人々に挨拶をしたりと、色々な事をして過ごしている内にブリーフィングの時間も近くなった為、分校の軍略会議室に向かい、ブリーフィングの時間が来るまで待ち始めているとミハイル、トワ、レン、ランディ、ランドロス、セレーネに加え、リアンヌ分校長も集まり―――定刻通り、午後3時にブリーフィングが始まるのだった。



PM3:10―――



~第Ⅱ分校・軍略会議室~



「………………」

「えっと………?」

「もう時間は過ぎてますけど始めないんスか?」

定刻が過ぎてもミハイル少佐はブリーフィングを始めず黙り込み、その様子にトワは戸惑い、ランディはリアンヌ分校長に視線を向けて訊ねた。

「うふふ、”始めたくても始められない”のじゃないかしら?―――特に”特別カリキュラム”関連で。」

「え……それはどういう事なのでしょうか?」

意味ありげな笑みを浮かべてランディの疑問に対して答えたレンの推測を聞いたセレーネは不思議そうな表情でレンに訊ね

「レン達教官陣も、”特別カリキュラム”の事について何も知らされていないのよ?普段の授業の為にレン達がそれぞれ準備をするように、”特別カリキュラム”の為にも当然”準備”が必要のはずよ。なのに、その”準備”すらもできないようにレン達にも”特別カリキュラム”について知らされていない事を考えると、その”理由”について大体予想できるでしょう?」

「何らかの理由があって俺達にも黙っているか、分校長自身も”特別カリキュラム”について知らされていないかのどちらかという事か。」

「それは………」

「!……………(さすがは1年半前の内戦で自身が描いた結果へと導き、通商会議でも宰相閣下と共和国の大統領相手に互角以上に渡り合った”殲滅天使”か……それに”紅き暴君”も、豪快な性格とは裏腹に鋭い部分もあるな………)」

レンの推測に続くように不敵な笑みを浮かべて呟いたランドロスの推測を聞いたリィンは真剣な表情をし、レンとランドロスの推測が当たっている事に驚いたミハイル少佐は真剣な表情でレンとランドロスを見つめた。



「―――フフ、さすがですね。お二人の推測通り、”特別カリキュラム”について私ですら詳細も知りません。――――そちらの主任教官殿とこれからくる連絡役以外、になりますが。」

「………お待たせして申し訳ありません。」

「連絡役……ですか?」

「という事は鉄道憲兵隊の方か――――」

リアンヌ分校長に視線を向けられたミハイル少佐は静かな表情で謝罪し、二人の会話を聞いて新たに疑問が出て来たセレーネは不思議そうな表情で首を傾げている中、察しがついていたトワが推測を答えかけたその時

「悪ぃ、待たせちまったか~?」

扉の外から青年の声が聞こえてきた。

「「え………」」

「この声――――」

「………まさか………!」

聞き覚えのある声にトワやセレーネは呆け、ランディは表情を引き締め、リィンは驚きの表情で声を上げて扉へと視線を向けると扉が開かれ、レクター少佐と1年半前の内戦で共に戦った旧Ⅶ組の一人にして”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の一人でもあるミリアム・オライオンが現れた。



「レクター少佐……!そ、それに――――」

「ニシシ………」

「ミリアムさん……!?」

「久しぶり―、リィン、セレーネ!」

自分達の登場にセレーネと共に驚いているリィンにミリアムは無邪気な笑顔を浮かべてリィンにタックルをした。

「うぐっ、いきなりタックルは…………って、はは………」

「ふふ………」

「えへへ……いやー、無理言ってレクターについてきてよかったよ!また来週から任務でさー。いつ会えるかわからなかったから。久しぶり、リィン、セレーネ。ていうかすっごく背が伸びたねー!?セレーネはおっぱいがまた、大きくなったんじゃないの?」

リィンにタックルをしたミリアムは無邪気な笑顔を浮かべてリィンを見つめた後セレーネに近づいてセレーネの豊満な胸をもんだ。

「キャッ……!?もう……1年半前の時点でわたくしは既に”成竜”なのですから、あれから身体的な成長がある訳ありませんわよ。わたくしやツーヤお姉様、それにミントさんは”成竜”になれば、後は老いる時が来るまでずっと”成竜”になった時の姿のままなのですから……」

「はは……俺は5リジュくらい伸びたよ。ミリアムは変わらないな。元気そうでなにより――――」

ミリアムに胸を揉まれたセレーネは声を上げた後両手で胸を隠して頬を赤らめて答え、その様子を苦笑しながら見守っていたリィンは懐かしそうな表情でミリアムに声をかけたがすぐに再会を喜んでいる場ではない事に気づいた。

「へえ……って事はそいつがお前達が1年半前の内戦で共に戦ったって言う士官学院の仲間の一人か。」

「あはは………ミリアムちゃん、久しぶりだね!」

リィン達の様子を見守っていたランディは興味ありげな様子でミリアムを見つめ、トワは懐かしそうな表情でミリアムに声をかけた。



「やれやれ。久しぶりだ、シュバルツァー―――いや、ロード=リィンと呼ぶべきか?ここで会うのは本来想定外だが。ったく、1年半前の内戦終結以来あれ程俺達どころか”エレボニアに関わる事自体”も徹底的に避けていた癖に、こんな形でエレボニアに再び深く関わるなんて、一体何を考えているんだ?」

一方レクター少佐は若干呆れた後苦笑しながらリィンに問いかけた。

「……何の事かサッパリですね。それと俺の事は以前通りの呼び方で構いません。――――ですが、お久しぶりです。ユーゲント皇帝陛下にアルフィンと一緒に招待された今年の年始のパーティー以来ですね。」

「ああ、そうなるな。ハーシェル女史も久しぶりだ。さぞ憲兵少佐さん相手に窮屈な思いをしてるんじゃねえか?」

「あはは……そ、それほどでも。」

「当てこすりは止めてもらおうか、アランドール少佐。」

レクター少佐に冗談交じりの言葉をかけられたトワが苦笑している中ミハイル少佐はレクター少佐を睨んで指摘した。

「アルフヘイム嬢も―――おっと、アルフヘイム子爵閣下と呼ぶべきでしたか?」

「ふふっ、わたくしの事もお兄様同様以前の呼び方や口調で構いませんわ。」

「そりゃどうも。―――レン皇女殿下もご機嫌麗しゅう。正直貴女がこの分校に来たのはシュバルツァー以上に想定外でした。シュバルツァー達の件も含めて貴国―――いや、”英雄王”は一体何を考えているのやら。」

「クスクス、レン達の派遣にパパが関わっている事は否定しないけど………誰かを驚かせるのはレンの”専売特許”でもあるから、レンがこの分校に来ることもそんなにおかしな事ではないわよ♪」

レクター少佐の指摘に対してレンは小悪魔な笑みを浮かべて答え、レンの答えにその場にいる多くの者達は冷や汗をかいた。



「やれやれ……”お茶会”の主催者の貴女が言うと冗談になっていませんね。それと――――アンタともお久しぶりか、オルランド。」

一方レンの答えに苦笑したレクター少佐はランディに視線を向けて声をかけた。

「ああ、1年半前のクロスベル帝国建国以来になるな、”かかし(スケアクロウ)”。」

「そうなるな。………それにしても、クロスベルにとっての念願の”自由”を手に入れる所かエレボニアを超える大国へと成りあがってその件でエレボニアとクロスベルは今も微妙な関係なのに、わざわざ自分からその微妙な関係になっているエレボニアに入り込むなんて、さすがは一課ですら手が出せなかった”競売会(オークション)”にも入り込んだ支援課の一員と言うべきか?」

「ま、否定はしねぇよ。だが、それに関してはお互い様なんじゃねぇのか?アンタはクロスベルがまだ自治州だった頃、アンタの親玉と一緒にマフィアやスパイ、テロリストの温床になっていたクロスベルに乗り込んでその”競売会(オークション)”の関係者と密会をしていたそうだからな。」

「言われてみればそうだから、反論できねぇな。――――それと”仮面の紳士”殿、だったか。何でそんなバレバレな格好をして、顔だけ仮面で隠しているのか訳がわからねぇが……まさかとは思うが本気でそれで、正体を隠せると思っていないよな?」

ランディの指摘に対して苦笑しながら同意したレクター少佐は真剣な表情でランドロスを見つめ、やがて呆れた表情でランドロスに問いかけた。

「何が言いたいのか良くわからないが、俺は”仮面の紳士”ランドロス・サーキュリー!以前俺が惚れて力を貸した男の親友が教師を探している話を聞いて、再び山から降りてきて、”捨石”扱いされているガキ共がこの先全員生き残れるように、しごいてやっているとても懐が広~い教師だぜ?」

そしてランドロスの答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「あ~……リア充皇帝達の話だと、どこかで士官学院の教官をしている”某元自治州の元警備隊司令”の型破り過ぎる行動にまともに付き合う必要はないし、バカな行動は止めようとする方が時間の無駄だとの事だぜ。ちなみにリア充皇帝達の話だとその男の二つ名の中には”バカ王”って二つ名もあって、リア充皇帝もそうだが仲間達の一部もその男の事を割と”バカ”呼ばわりしていたとの事だ。」

「なるほどな……狙ってやっているのか、無意識でやっているのかはわからねぇが、やっている事が規格外かつそのやっている事に対しての考えや行動の意味すらも全くわからねぇからある意味情報局(おれたち)にとって”天敵”になる一番性質の悪いタイプだな………………で………………」

疲れた表情を浮かべたランディの説明を聞いたレクター少佐は納得した様子で溜息を吐いた後真剣な表情でリアンヌ分校長を見つめた。



「フフ、どうしましたか?”鉄血”の懐刀殿。私の事は気にせず、幾らでも久闊を叙して構いません。」

「………いえ、お初にお目にかかります。エレボニア帝国軍情報局・特務少佐、レクター・アランドールであります。―――お見知りおきのほどを。」

リアンヌ分校長の言葉に対して静かな表情で答えたレクター少佐は恭しく一礼をした。

「噂の”子供達”に(まみ)えるのは1年半前かつての部下を見逃して貰う代わりに、マーシルン教官が要求した”代償”によって”煌魔城”での戦いで共闘したそちらの”白兎”を除けば、貴方が最初になりますね。フフ、私―――いえ、”私達”がここに赴任した”流れ”を考えるとその”流れ”には間接的に貴方も関わっていたでしょうから、それを考えると初めてにはならないかもしれませんね?」

「………っ………」

「うふふ、さすがは”聖女”ね。」

「ハハ、過大なお言葉、汗顔の至りであります。」

リアンヌ分校長の問いかけを聞いたミハイル少佐は息を呑み、レンは意味ありげな笑みを浮かべ、レクター少佐は口元に笑みを浮かべてはいたが目は笑っていない状態で謙遜した答えを返した。



(あ、相変わらずこわいな~、”鋼の聖女”は………というか前々から聞こうと思っていたけど、何で”結社”の”蛇の使徒”だった”鋼の聖女”がいきなりメンフィルに寝返って、”英雄王”と”聖皇妃”の専属護衛になったの?)

(ア、アハハ……その件には色々と複雑な事情がありまして、説明する機会ができた時に、説明致しますわ。)

(やりあってるレクター少佐もさすがの面の皮の厚さだが………)

(ううっ………心臓に悪いなぁ。)

(うふふ、多分”特別カリキュラム”の事でブリーフィングをする為にこういう事が頻繁にあると思うから、今の内に慣れておいた方がいいわよ♪)

(ほう?クク、同じ”鉄血”の”子供”の”乙女”と比べると随分と肝の据わった男だぜ。)

(あー……そう言えば以前の”合同演習”の件でアンタとルイーネ姐さんが”氷の乙女(アイスメイデン)”をビビらせて追い返した話があったな。まあ、あの面の皮が厚い男だったら、アンタやリア充皇帝もそうだが、ルファディエル姐さんやルイーネ姐さんともまともにやりあえるだろうな……)

一方レクター少佐とリアンヌ分校長のやり取りを見守っていたミリアムは冷や汗をかいてセレーネに小声で訊ね、訊ねられたセレーネは苦笑しながら答えを誤魔化し、リィンは苦笑しながらレクター少佐とリアンヌ分校長を見比べ、居心地の悪そうな様子を見せているトワにレンはからかいの表情で指摘し、興味ありげな様子でレクター少佐を見つめて呟いたランドロスの小声の言葉を聞いたランディは苦笑していた。

「―――まあいいでしょう。そろそろ本題に入って下さい。奇しくもここに、鉄道憲兵隊と情報局の少佐殿達がいる――――さて―――どのような興味深い話をしてくれるのですか?」

そしてリアンヌ分校長の言葉を合図に”特別カリキュラム”についてのブリーフィングが始まった――――




 
 

 
後書き
今回の話を読んでお気づきと思いますがアルフィンが閃Ⅲ篇開始の時点で既にリィンの妻の状態なので、当然ミュゼの正体とかもリィン達に教えていますのでリィンもミュゼの正体を知っています(汗)そして何気に今回のリアンヌの発言で灰の軌跡の閃Ⅱ篇のネタバレが(冷や汗)それとランディのレクターならヴァイス達とまともに渡り合えるという発言を聞いてこう思った人もいるかもしれません……ヴァイス達はレクターごときじゃはりあえる相手じゃない!クレアの二の舞いになるのがオチで、ルファ姉やルイーネに挑むのはもっと無謀だ!……と。まともにはりあえるとしたらルーファスやオズボーンでしょうね……とは言ってもルーファスは閃Ⅲ開始時点で既にこの世から退場させられていますし、オズボーンも通商会議でヴァイス達に思いっきり嵌められましたから、事実上ヴァイス達とまともに張り合う事すら厳しいでしょうねww 

 

第8話



~第Ⅱ分校・軍略会議室~



「………………」

「こ、これって…………」

「………なるほど………」

「ハッ………予想の斜め上かよ。―――いや斜め下か。」

「クク、中々”捨て駒”の使い方ってものをわかっているじゃねぇか?」

「あら、奇遇ね。レンも同感よ。―――まあ、レンならもっと効率のいい使い方をするけどね♪」

「レン教官が言うと冗談になりませんわよ……―――ではなくて、どうしてお二人ともそんな平気でいられるのですか……?」

「…………―――立案はどちらの組織ですか?ミハイル主任、アランドール少佐?」

リィン達教官陣やミリアムが”特別カリキュラム”の内容が書かれてある計画書を読んで様々な反応を見せている中目を伏せて黙り込んでいたリアンヌ分校長は目を見開いてレクター少佐とミハイル少佐に問いかけた。



「………情報局ですがTMPも協力しています。」

「まあ、はっきり言ってしまえばギリアス・オズボーン宰相閣下の意向を受けてのものですね。」

「で、ですがこの計画書は無茶苦茶すぎます!『帝国西側で、不穏な動きアリ。不審な抗争を行う複数の猟兵団、そして”結社・身喰らう蛇”の残党―――新設されしトールズ第Ⅱ分校をもって各地で対処に当たるべし』…………!入学したばかりの生徒達を場合によっては”実戦”に投入する―――こんなの完全に”生贄の(スケープゴート)”じゃないですか!?」

ミハイル少佐とレクター少佐の答えを聞いたトワは机を叩いて立ち上がって悲痛そうな表情で計画書のある部分を読んだ後反論した。

「……先輩………」

「まあ、そうだな。」

「内戦では”旧Ⅶ組”のアリサさん達を含めたトールズ士官学院―――”本校”の生徒達も”実戦”に投入しましたけど………」

「ま、あの時は”和解条約”の件もあって”実戦”に参加するのは”従軍義務”が発生した人達を除けば、生徒達の自由意志だったから、あの時と比べると状況は全然違うわよ。」

「第一ガキ共の訓練はまだ始めたばかりだ。―――正直、大半の今のガキ共の腕前じゃあ猟兵どころか人形兵器の撃退も厳しいだろうな。」

トワの反論を聞いたリィンが心配そうな表情でトワを見つめている中、ランディは頷き、複雑そうな表情をしたセレーネの言葉に続くようにレンとランドロスはそれぞれ静かな表情で答えた。



「――――だが、これも”第Ⅱ分校”の設立が認められた条件の一つだ。知っての通り、エレボニア帝国は現在、1年半前に建国された新興の大国”クロスベル帝国”と深刻寸前なレベルでの緊張関係にある。国境付近での小競り合いは絶えず、つい先日もノルド高原で大規模な軍勢が睨みあったばかりだ。」

「ノルドで……!?」

「そ、そうだったんですか………」

「ガイウスさんや”ノルドの民”の人達はご無事でしょうか……?」

ミハイル少佐の説明を聞いたリィンやトワは驚き、セレーネは心配そうな表情をし

「………………」

「……そもそも、その緊張関係が何で起きてんのかって話だけどな。エレボニアは”碧の大樹”の件から1ヵ月後にリベールが提唱した『西ゼムリア同盟』に調印したお陰でメンフィルから1年半前のメンフィルとの戦争で奪われた領地の一部を返還してもらった事もそうだが、クロスベルからもメンフィルから贈与されたエレボニアの領地の一部を返還してもらう代わりに、クロスベルの独立並びに建国を正式に認めたはずなんだけどな。」

「うふふ、それも調印した人物はこの計画書を考えた”鉄血宰相”よねぇ?」

ランドロスは何も語らず黙り込み、ランディとレンは意味ありげな笑みを浮かべてレクター少佐を見つめた。



「やれやれ、それを言われると弱いんだよな………ま、ぶっちゃけ現状、情報局もTMPも大忙しでね。ノーザンブリアに帝国の東側全域で諜報戦を繰り広げてる最中ってわけだ。」

「んー、そうなんだよね。ボクもこの後、エレボニア領のクロイツェン州でそっちの対処をするつもりだし。」

「そうだったのか……」

「って、喋っていいのかよ!?」

「まあ、ミリアムさんは元々こういう方ですので……」

「―――結果として起きているのが帝国西側での警戒レベルの低下だ。そこに”付け込まれる”可能性を我々は危惧している。」

ミハイル少佐の説明を聞いたリィン達はそれぞれ血相を変えた。

「あ………」

「……それが先程の計画書に繋がるわけですか。」

我に返ったトワは呆けた声を出し、リィンは真剣な表情で呟いた。



「1年半前の帝国の内戦と、ノーザンブリアでの北方戦役―――クロスベル動乱や、リベールの異変でも暗躍していたが同じく1年半前のメンフィル・クロスベル連合によるカルバード侵攻の混乱に紛れたメンフィルの精鋭部隊や暗殺部隊によって”盟主”を含めた大半の最高幹部クラスが暗殺された事で、事実上崩壊したと思われていた謎の結社”身喰らう蛇”の残党。時にそれと連動し、時に対立もする、戦争のプロたる10近い猟兵団……情報局の分析じゃ、既に帝国本土でそれぞれが動き始めてる可能性が高い。―――必要なんだよ。それなりの”抑止力ってのが。」

「……無論、我々とて戦闘が起きることが確実な地に生徒達を送り込むわけではない。あくまで体裁は”演習”――――万が一のため機甲兵などの最新装備なども用意した訳だ。更には―――第Ⅱ分校専用となる演習用の装甲列車も完成した。」

「ほう?」

「演習用の装甲列車……!?」

「そこまですんのかよ!?」

「さすがに太っ腹すぎない!?」

「そ、そうですわよね……?学生の為だけに列車―――それも普通の列車ではなく”装甲列車”まで用意したのですから。」

レクター少佐の後に説明したミハイル少佐の説明を聞いたランドロスは興味ありげな表情をし、リィンやランディ、ミリアムは驚きの声を上げ、セレーネは戸惑いの表情で呟いた。

「ま、そのあたりは別の意向と予算によるモンでな。更には1年半前の内戦と”七日戦役”で目覚ましい活躍をしたメンフィルの英雄―――”灰色の騎士”や”聖竜の姫君”に”殲滅天使”、クロスベルきっての戦術家や英雄、”紅い翼”を率いた才媛までもいるし、おまけに”灰色の騎士”には1年半前の内戦で単騎で貴族連合軍の部隊を殲滅した事がある”ブレイサーオブブレイサー”の”六異将”のような正真正銘”化物”レベルの異種族達もいる。生徒達が生き延びられるよう、せいぜい頑張ってくれってことだ。」

「っ………」

「つまりは最初からわたくし達の力もアテにされているのですか……」

「ロクでもねぇな……」

「うふふ、それに今挙げた目的以外にもあからさまな”狙い”も見え隠れしているわね。」

「クク、だがこの俺達をその”狙い”でどうにかできると本気で考えていたら、その考えた奴は随分とおめでたい頭をしているなぁ?」

「………………」

(まさかリィン様どころか私達までアテにしているなんて……)

(それ程までに今のエレボニアには戦力が足りないのか……もしくは、これを機会にエレボニアの一部の勢力にとってリィンを含めた目障りな私達もその”敵対勢力”との戦いによる戦力の減少も狙っているかもしれないわね。)

(あっははは!どうやらクロスベルにいた頃と比べるとより一層”戦争”が楽しめそうだね!ま、戦争を楽しむついでにガキ共は守ってやるから安心しな!)

教官陣がそれぞれの反応をしている中ブリーフィングを見守っていたメサイアは驚き、アイドスは静かな表情で推測し、エルンストは凶悪な笑みを浮かべていた。



「―――話はわかりました。見えざる脅威に備えた実戦をも想定する地方演習―――『常在戦場』『世の礎たれ』というドライケルスの二つの理念の体現とも言えます。」

「あ………」

「……それは………」

「ハハ、”生き証人”のアンタが言うと真実味があるねぇ。」

「うふふ、なんせその二つの理念を考えた人とも実際に接した事があるものねぇ?」

リアンヌ分校長の言葉を聞いたトワは呆け、リィンは複雑そうな表情をし、苦笑しているランディに続くようにレンは小悪魔な笑みを浮かべた。

「第Ⅱ分校、しかと了承しました。――――それでは話して頂きましょう、最初の演習地の場所と日程を。」

「………承知しました。」

リアンヌ分校長の言葉に頷いたミハイル少佐はリモコンを操作した。すると部屋に備え付けてあった大型のディスプレイが起動し、エレボニアの地図が映った。

「実習地は”南部サザ―ラント州、第二都アルトリザス”近辺となります。日程は4月21日、金曜の夜―――専用列車”デアフリンガー号”にて現地に向けて出発してもらいます――――」

そしてブリーフィングが終わり、教官陣やリアンヌ分校長がそれぞれの準備の為に行動を始めている中リィンとトワ、セレーネとミリアムは部屋を出た後廊下で立ち止まった。



~廊下~



「ふう………」

「……決まった事とはいえ、さすがに憂鬱だね。」

「ええ、難易度で言えば正直、1年半前の内戦よりも厳しいと思いますし。」

「んー、まさかここまで大掛かりな話だったなんて。せっかくついてきたのに合わせる顔が無いっていうか……」

リィン達がそれぞれ重苦しい空気を纏っている中ミリアムは溜息を吐いた後複雑そうな表情をした。

「あはは、ミリアムちゃんが気に病む必要はないってば。」

「ああ―――設立された時点で、この路線は決まってたんだろう。エレボニアの西側が手薄っていうのは何となく気づいていたしな。」

「そうですわね……エレボニアの東側と接しているメンフィル領で学んでいたわたくし達は直接関係していないといえ、メンフィル・クロイツェン統括領主関係者という事で、エレボニアに接しているメンフィル領近辺の情報も頂きましたものね。」

ミリアムの言葉を聞いたトワは苦笑しながら、リィンとセレーネはそれぞれ複雑そうな表情で指摘した。



「んー、でも情報局の人間としてさすがに申し訳ないっていうか。前もって知ってたらサラかフィーあたりに情報を流してリィン達にも伝えられたんだけど。」

「いや、それは不味いだろう。」

「守秘義務っていうのはどんな仕事にもあるからねぇ。」

「ええ……ましてや情報を取り扱っている情報局は特に守秘義務が厳しいでしょうしね。」

ミリアムが何気なく呟いた言葉に冷や汗をかいたリィンは呆れた表情で、トワとセレーネは苦笑しながら指摘した。するとその時ミハイル少佐とレクター少佐が部屋から出て来た。

「なんだ、まだいたのか。ああ、ハーシェル教官、移動計画は週明けに頼む。アルフヘイム教官も週明けに医療物資の確認の完了と演習で必要と思われる医療物資の推測の報告を頼む。」

「………了解しました。」

「……わかりましたわ。」

ミハイル少佐の指示にトワとセレーネはそれぞれ頷いた。

「レクター、もう帰るの?」

「いや、情報局のデータを渡しちまう必要があってな。しばらくかかるから適当にブラついててくれ。―――そうだシュバルツァー。できればお守を頼めないか?」

「ええ……それほ喜んで。」

「ぶーぶー、お守ってなにさー。えへへ、でもいっか。リィンが案内してくれるなら。」

レクター少佐のリィンへの頼みを聞いていたミリアムは頬を膨らませたが無邪気な笑顔を浮かべた。

「まったく緊張感のない……くれぐれも面倒を起こすなよ?」

「そんじゃ、また後でなー。」

「ふう………わたしもちょっと蔵書室で調べ物をしてくるね。演習のことを考えると調べておきたい資料があるから。」

「あ、わたくしも調べておきたい資料があるので蔵書室で調べてきますわ。その後医務室で確認したい事もありますので、アルフィンさん達に帰りが遅くなると伝えておいてください。」

「わかった、伝えておく。でも二人とも、無理はしないでください。」

「かいちょーは昔から頑張りすぎだから少し肩の力を抜いた方がいいと思うよー。それにセレーネも、マキアスみたいに真面目過ぎだから、かいちょーと一緒に少し肩の力を抜いた方がいいと思うよー。」

「あはは……うん、気を付けるね。」

「ふふ、助言ありがとうございます。―――それでは失礼しますわ。」

そして教官達はそれぞれの用事の為にその場から去っていき、その場はリィンとミリアムだけになった。



「あはは、でもよかったじゃん。かいちょーと一緒の職場で。相変わらず色々と頼まれて苦労してそうだけど。」

「はは、オレも色々助けられてるしその分返せればいいと思ってるけどな。―――それより、どうする?分校や街を一通り案内するか?」

「うんっ、よろしく!それじゃあレッツ・ゴー!」

その後リィンはミリアムに分校や街を案内しながら引き続き生徒達に相談に乗って、時間を過ごしている最中にベーカリーカフェでパンケーキを食べているアルティナを見かけ、声をかけた。



~リーヴス・ベーカリーカフェ”ルセット”~



「ここにいたのか、アルティナ。」

「……ええ、糖分摂取による体力回復を図っているところです。今日は少々疲れましたので。」

「そう言えば、ちゃんと部活が決まってよかったよ。レオノーラたちとの水泳部……楽しくやっていけるといいな。」

アルティナの話を聞き、アルティナの部活決めに付き合った時の事を思い出したリィンはアルティナを微笑ましそうに見つめた。

「……まあ、学院側の認可が下りてからの話かと。」

「はは……何はともあれ決まってよかったよ。」

「へー、部活をやるんだ?うんうん、ボクも応援するね!」

「………できる限り続けてはみるつもりです。そう言えば、そちらのブリーフィングは――――………?……今の声は。」

リィンと会話をしていたアルティナは自分達の会話にリィンの声ではない人物の声があった事に気づき、困惑の表情を浮かべた。

「やっほー、アーちゃん♪久しぶりー!元気にしてたー?」

するとその時リィンの背中に隠れていたミリアムが現れて無邪気な笑顔を浮かべてアルティナを見つめた。



「!!………どうして彼女がここに?」

ミリアムの登場に驚いたアルティナはジト目でリィンに訊ね

「はは、仕事の関係で来てくれてな。ちょうど街を案内しているところだったんだ。」

訊ねられたリィンは苦笑しながら答えた。

「ニシシ、アーちゃん。本当に久しぶりだねー!去年の3月に、リィン達と一緒にボク達の最後の自由行動日にトリスタを訪れた以来だっけ?クーちゃんは元気してるー?」

「………ええ、久しぶりですね。”アーちゃん”はいい加減止めて欲しいのですが。」

「えー、だってアルティナってなんか言いにくいんだモン。あ、なんだったらボクらもミーちゃんとかガーちゃんって―――」

「呼びません。そもそもクラウ=ソラスの呼び名も認めた覚えは……」

アルティナの反論に対して不満げな様子で答えたミリアムは新たな提案を思いついてアルティナに提案したが、アルティナは即座に断りの答えを口にした後呆れた表情でミリアムを見つめた。

「あはは、いいじゃん。覚えやすいしー。」

一方ミリアムはアルティナの反論に対してあまり効果はなく、無邪気な笑顔を浮かべ、ミリアムの態度にアルティナはやりにくそうな様子を見せながらミリアムと会話をしていた。



(はは……嬉しそうだな、ミリアム。)

アルティナとミリアムの様子を微笑ましく見守っていたリィンだったが着信音に気づき、二人から少し離れてARCUSⅡを取り出して通信を開始した。

「はい、こちらシュバルツァー………」

「そんなことはわかっている。いちいち名乗らなくていい。」

「えっと、もしかしてシュミット博士ですか?」

「ブリーフィングが終わって時間を持て余しているのだろう。今から準備を整えて”アインヘル小要塞”に来るがいい。」

「それってもしかして昼間に言っていた……?すみませんが、今は知人を案内している用事があって―――」

「ああ、情報局の娘が来ていたか。むしろ好都合というものだ。手が空き次第、こちらに来い。―――以上だ。」

通信相手――――シュミット博士は用件を伝えた後通信を切った。



「……き、切られた………相変わらず一方的というか。」

「リィン、どうかしたのー?」

「今の通信は……」

「その、よくわからないが……」

そしてリィンは二人にシュミット博士からの通信内容を伝えた。

「へー、そんな場所が……なんだか面白そうだねー!それじゃ、さっそく行ってみる?」

「いいのかミリアム?せっかく街の案内を……」

「あはは、充分アーちゃんにも会えたし。シュミット爺ちゃんにも久しぶりに会いたいしね!」

「ふう……まあ何だか大事な用みたいだしな。じゃあ準備ができたら――――」

ミリアムの意志を確認したリィンがミリアムと共にアインヘル小要塞に向かおうとしたその時

「―――私もお付き合いします。」

アルティナが意外な申し出をした。



「へっ………?」

「リィン教官もご存知のように私の入学の目的の一つはリィン教官のサポートをする事をリウイ陛下より命じられています。なので、シュバルツァー家の使用人であり、リウイ陛下からも指示を頂いている私も同行するのが筋かと。それに特に人数の指定もないようですし。」

「あははっ、いいんじゃない?一緒に行こ行こ!アー・ミー・クー・ガーのさいきょーカルテット結成だね♪」

「勝手に妙なものに所属させないでください。」

無邪気な笑顔を浮かべて答えたミリアムの言葉にアルティナはジト目で反論し

「ふう……わかった。小要塞に行く準備ができたらまた声をかける。パンケーキも残ってるみたいだし少しゆっくりしててくれ。」

「了解しました。では、待機に移行します。」

二人の会話を見守っていたリィンは冷や汗をかいて溜息を吐いた後気を取り直してアルティナに指示をした。その後準備を終えたリィンとミリアムは間食をちょうど終えたアルティナに声をかけ、3人で小要塞へと向かったのだった――――


 
 

 
後書き
閃Ⅲ篇は2章であるクロスベル篇が終わるまで更新は早いかもしれません。クロスベル編では個人的に出して結社のあるキャラと戦わせたいエウシュリーキャラや、原作と違い、終盤スポット参戦としてリィン達と共闘する零・碧陣営のキャラやエウシュリーキャラを考えていますので。(先に言っておきますが、共闘予定の零・碧陣営のキャラはロイドを含めた特務支援課の初期の4人ではありません。)ちなみにあるキャラと戦わせたいエウシュリーキャラは戦女神シリーズのキャラです(ぇ)このヒントだけで既にわかった人もいるかもしれませんが(汗)そしてそのキャラと戦えば、原作よりも早期の退場がほぼ確定である事も(冷や汗) 

 

第9話

~アインヘル小要塞~



「お疲れ様ですっ、リィン教官!」

リィン達がアインヘル小要塞に到着するとシュミット博士の傍にいたティータがリィン達に迎えの言葉をかけた。

「ああ、お疲れだ。すみません、ちょっと遅れてしまったみたいで。」

「やっほー、シュミット爺ちゃん!久しぶりだねー、元気だった?」

「相変わらずやかましい小娘だ……爺ちゃん呼ばわりは止めるがいい。………黒兎も一緒か。」

ミリアムに声をかけられたシュミット博士は呆れた表情で指摘した後アルティナに視線を向けた。

「はい。……何か問題が?」

「いや、テストに支障はない。……むしろレベルをもう1段階上げてもよかったか。」

アルティナの問いかけに対して答えたシュミット博士は不穏な言葉を口にした。



「早速ですが呼び出した理由を教えてもらえませんか?彼女(ティータ)もいる以上、何となく察してはいますが。」

「あ、あはは……多分想像通りだと思います。」

「わかっているながら話が早い。―――付いて来るがいい。」

そしてリィン達は小要塞の中へと入って行った。



「ほえ~、中はこうなってるんだ。」

「………入学時のテスト以来ですね。」

ミリアムが興味ありげな表情で小要塞内を見回している中アルティナは入学式の時の事を思い出していた。

「へえ、そんな事をやってたんだ?」

アルティナの言葉を聞いたミリアムは目を丸くしてアルティナを見つめた。

「―――要するに、仄めかしていた”続き”をやれという事ですか?」

一方シュミット博士の目的を既に悟っていたリィンはシュミット博士に問いかけた。



「その通り。半月前にお前達が挑んだのは小手調べの”LV0”……今回は実戦向きに構成した”LV1”になっている。前回と同程度と侮っていたら最悪、命にすら関わるだろう。」

「……”魔煌兵”すら使われたあの時よりも……?」

「へえ……なんか面白そう!」

「ま、待ってください!さすがにそこまでのものにいきなり挑戦しろというのは……!」

シュミット博士の説明を聞いて顔色を変えたアルティは僅かに驚きの表情をし、ミリアムは興味ありげな表情をし、リィンは信じられない表情で反論したが

「参加の拒否は自由だ。だが、この実戦テストに”灰色の騎士”が参加すること………それが私が分校へとの就任を引き受けた条件の一つでもある。反故にするというなら―――私が分校に留まる理由は無くなるな。」

「なっ………」

シュミット博士の答えを聞くと絶句した。

「あはは、超ワガママだねー。」

「こ、困りますよ博士~!機甲兵教練だって控えてますし………今、博士がいなくなったら……!」

シュミット博士の答えを聞いたミリアムが呑気な様子でいる中ティータは不安げな様子で声を上げた。



「フン、私の知った事ではない。―――”特別カリキュラム”については既にこちらの耳にも入っている。今の内に、ARCUSⅡの新機能に慣れておくのも無意味ではあるまい?」

「…………それは…………」

「………?」

「えっと………?」

シュミット博士の指摘を聞いて複雑そうな表情で黙り込んでいるリィンの様子を不思議に思ったアルティナとティータは首を傾げた。

「うーん、確かに現地で何があるかわからないし………慣れておいて損はないかもねー。大丈夫だよ、リィンにはボクたちがついてるし!ね、アーちゃん!」

「………よくわかりませんが同行しない理由はありません。そもそも教官のサポートは私の役目ですから。」

「ミリアム、アルティナ………わかりました。テストに参加させていただきます。二人とも、どうか力を貸してくれ。」

ミリアムとアルティナの意志を知ったリィンは少しの間考え込んだ後やがて決意の表情になって参加を申し出た。

「もっちろん!」

「了解しました。」

「フン、無駄話が過ぎたな。さっそくテストを開始するぞ。―――奥にエレベーターが用意してある。それを使って開始地点に向かうがいい。」

「ARCUSⅡの調整が必要なら今の内に言ってくださいね……!」

その後リィン達はエレベーターを使って、開始地点に到着した。



~LV1~



「ほえ~、これが要塞の中なんだ。」

「………”昇って”きましたね。」

開始地点に到着したミリアムが興味ありげな表情で周囲を見回している中アルティナはリィンに確認し

「ああ、前回は地下から開始していたはずだ。」

アルティナの言葉に頷いたリィンは周囲の地形を確認した。

「……どうやら内部構造が完全に変わっているみたいだな。自在に構成を変えられる仕組みとは聞いていたが、ここまでとは………」

「へえ、シュミット爺ちゃんもなかなかやるね!フフン、腕が鳴ってきたかも!」

リィンがアインヘル小要塞の設備に改めて驚いている中ミリアムは口元に笑みを浮かべた。

「―――前回のテストと同じく、最奥地点を目指してもらう。なお騎神の使用並びに異種族達の協力は引き続き禁止とする。せいぜい気を抜かずに進むことだ。」

「今度もわたしが精一杯ナビゲートします!皆さん、どうか頑張ってくださいっ!」

「ああ………!ミリアム、アルティナ、準備を!」

要塞内に聞こえてきたティータの声に頷いたリィンは二人に指示を出した。

「ガーちゃん!」

「クラウ=ソラス。」

「「―――――」」

リィンの指示に対して二人はそれぞれが操る傀儡を召喚し、リィンは普段使っている太刀を鞘から抜いた。

「アガートラム、久しぶりだな。クラウ=ソラスもよろしく頼む。行くぞ――――アインヘル小要塞・LV1の攻略を開始する!」

「OK、一気に行くよー!」

「可及的速やかに完了しましょう。」

そしてリィンの号令を合図にリィン達は小要塞の攻略を開始した。その後攻略を開始したリィン達は徘徊する魔獣達を撃破しながら進み続けていた。



「ふう、手強いな……大丈夫か、二人とも?」

「ええ、特に問題はありません。」

「うん、ボクもヘーキ!リィンもアーちゃんもいるしむしろちょー楽しいっていうか。」

「………楽しい………」

ミリアムの言葉の意味がわからないアルティナは困惑の表情でミリアムを見つめた。

「ニシシ、あるイミシュミット爺ちゃんのおかげかな?」

「はは、おかげっていうのはさすがにどうかと思うが………まあ、二人がいてくれて助かっているのは確かだ。正直、戦闘でもあそこまで息ピッタリだとは思わなかったよ。」

「えへへ、これでも姉妹みたいなものだしね~。」

「……まあ、仕様的には同期しやすいのは当然かと。”形式番号”も一つ違いですし。」

アルティナが呟いた言葉を聞いたリィンはかつての出来事を思い出した。



形式番号Oz74、”黒兎”アルティナ―――リィン様と”英雄王”との司法取引によってメンフィル帝国の捕虜の身であった私の身柄は貴方達―――シュバルツァー家に引き取られる事になり、今後は貴方達”シュバルツァー家”の”使用人”として貴方達をサポートさせて頂く事になりましたので、これからよろしくお願いします、リィン様―――いえ、マスター。



え、えっと……それよりもアルティナさんはミリアムちゃんと同じファミリーネームである”オライオン”を名乗っていましたが……



まさかアンタも”人造人間(ホムンクルス)”なのかしら?



はい。私の形式番号はOz74です



あ、ボクの方が1コ上だから、ボクは君のお姉さんだね~♪



「……ミリアム、アルティナ。君達との付き合いも長いし、ある程度はわかっているつもりだ。」

「へ………」

「リィン教官……?」

リィンの突然の言葉にミリアムは呆け、アルティナは不思議そうな表情をした。

「二人の出身が”黒の工房”という正体不明な所であるのも知っている。そこで過ごした時の記憶は消され、ミリアムは情報局に、アルティナはルーファス・アルバレアに引き渡されたことも……”戦術殻”という不可思議な武装と同期する能力を持っている事も。」

「あはは………ボク達が”厳密には人間じゃない”って事も1年半前”黒の工房”が所有している工房の一つを潰して情報を手に入れたメンフィルから、ボク達の情報も知らされていたもんね。」

「………ああ。」

苦笑しているミリアムの言葉にリィンは重々しい様子を纏って頷いた。



「1年半前私がメンフィル帝国の捕虜であった時ペテレーネ神官長が調合した自白剤によって、わたし達が”人造人間(ホムンクルス)”――――”人工的に生み出された存在”であるという情報も自白させられ、リィン教官の耳にも届いていましたね。」

「といっても遺伝子は人間と殆ど変わらないみたいなんだけど。むー、そのわりには背がゼンゼン伸びないのは納得できないけどさー。……っていうか何気にアーちゃんって、背が伸びているよね?それに胸も少し大きくなっているよね?」

「……不埒な事は止めてください。胸のサイズについてはわたしにとっての秘匿情報になるため答えられませんが、身長については1年半前と比べると3リジュ伸びている事を認めます。わたしが成長した理由は以前わたしの事を知ったリィン教官が”匠王”ウィルフレド・ディオンの娘であるセティさん達―――ディオン三姉妹に相談し、その時に”零の至宝”とは別の方法で造られた”人造人間(ホムンクルス)”であるわたしの成長等についても相談して頂いたお陰でディオン三姉妹は父親である”匠王”にも相談し、その結果”匠王”達は協力して”人造人間(ホムンクルス)”であるわたしでも普通の人間と同様人間の成人へと成長できる”成長促進剤”を完成させ、その”成長促進剤”を一定の間隔で投与し続けているお陰で、今でも成長し続けています。ちなみにわたしはその”成長促進剤”の完成の過程で”成長剤促進”の被験者になったという”対価”の代わりに今後も成人するまで”成長促進剤”を無料で頂ける事になっていますので、”成長促進剤”の消費に困る事はありません。」

学生服を着ていても僅かに膨らんでいる事がわかる自分の胸を揉もうとしたミリアムの行動をすぐに察知したアルティナはミリアムから距離を取ってジト目で答えた後、”人造人間(ホムンクルス)”である自分が成長した理由を僅かに得意げな表情になって説明した。

「な、何ソレー!そんなの反則じゃないか~!というか薬物の人体実験について、リィン達は反対とかしなかったの~?」

「勿論お互いに話し合ったし、最初は反対もしたさ。だけど、新薬の作成者にはアルティナも言っていたようにセティ達に加えてウィルフレド卿も関わっていた上、セティ達は万が一の状況に対しても備えていたから、最終的にアルティナの意志を確認した上で”成長促進剤”―――つまり新薬の人体実験の許可を出したんだ。」

「へ~、”グノーシス”の解毒薬を開発したディオン三姉妹どころか”匠王”まで関わっているなんて、滅茶苦茶豪華なメンツだね~。ねーねー、アーちゃん。ボクにもその”成長促進剤”って言う薬を頂戴♪」

リィンの説明を聞いたミリアムは興味ありげな表情をした後アルティナに要求し

「お断りします。わたしが持っている”成長促進剤”は正当な対価です………”成長促進剤”が欲しいのでしたら、クロスベル帝国にいるディオン三姉妹から直接購入してください。」

「ぶーぶー、アーちゃんのケチ~!」

アルティナはジト目でミリアムの要求を断り、要求を断られたミリアムは頬を膨らませて不満を口にした。



「ハハ……(”黒の工房”―――”結社”を裏切って内戦の最中にオズボーン宰相に取り込まれた組織。メンフィル帝国軍が”七日戦役”の際に制圧した工房は氷山の一角で、他の工房等の場所については今でも手掛かりを掴んでいないとの事だったな………記憶を消された彼女達は勿論、レクター少佐ですら何も知らないらしいしな。レン教官の話では工房の居場所がわかったのも、レン教官がアルティナの記憶を読み取った事によって、”黒の工房”が消したと思っていた記憶がアルティナの脳に残っていたお陰との事だからな……一体どういう……何の目的でミリアムやアルティナを?)」

「おーい、リィンってば!」

リィンが考え込んでいるとミリアムが声をかけた。

「もー、何をぼーっとしてんのさー?」

「……体調が優れませんか?なら、いったん小休止を―――」

「はは、大丈夫だ。気にしないでくれ。…………ミリアムはミリアムだし、アルティナがアルティナであるのはそもそも何も変わらないんだしな。」

「???」

「あはは、リィンってばなに当たり前のこと言ってるのさー。えへへ……うん、でもありがとね!」

リィンの言葉の意味を理解できていないアルティナが不思議そうな表情で首を傾げている一方リィンの言葉の意味を理解していたミリアムは嬉しそうな表情を浮かべた。



「はは……それこそ礼を言われる事じゃないだろう。」

「………テスト評価に影響します。問題なければ探索を続行しましょう。」

ミリアムと共に笑い合っている様子のリィンを見て”何か”を感じ、その”何か”に首を傾げたアルティナはリィンに声をかけ

「ああ、行こう。」

「改めてレッツ・ゴーだね!」

(アイドス様、アルティナさんはもしかして……)

(多分、ミリアムに”嫉妬”してリィンに自分にも目を向けてもらう為に無意識で声をかけたのでしょうね……まあ、アルティナ自身はミリアムに対して感じた”感情”には気づいていない様子だけど………)

アルティナの様子に気づいていないリィンはミリアムと共にアルティナの言葉に頷いている一方、アルティナの様子に気づき、アルティナが感じた”何か”を悟っていたメサイアと念話をしていたアイドスは微笑ましそうにアルティナを見つめていた。その後リィン達は探索を続けていると終点に到着した。



~最奥~



「行き止まり……?」

「どうやらここが最終地点みたいだな。」

「あはは、とうちゃーく!んー、面白かったけどシュミット爺ちゃんにしてはちょっと拍子抜けかな?」

「!!いや―――下がれ二人とも!」

終点に到着したミリアムが若干不満げな感想を口にしたその時、何かの気配を感じ取ったリィンは太刀を構えて二人に警告し、警告を聞いた二人がそれぞれ傀儡を召喚すると同時にリィン達の目の前に大型の魔獣―――”ズオウ”が現れた!

「わわっ、何アレ……!」

「やっぱりか……!」

「は、博士っ!?その魔獣はLV1用じゃないですよ~!?」

「フン、お望みどおり”面白く”してやったまでだ。仔兎どもがいるなら何とか対処できるだろう。

魔獣の登場にミリアムが驚き、リィンが表情を引き締めている中混乱している様子のティータの声と、ティータに対していつもの調子で答えたシュミット博士の声が聞こえてきた。



「くっ、勝手なことを……!」

「この前の”魔煌兵”に迫りそうですが………(セティさん達から送って頂いた追加武装を試すには絶好の相手ですね……)」

「トーゼン正面突破しかないでしょ!ねっ、リィン!」

「……ああ、そうだな!全力で行くぞ、ミリアム、アルティナ!」

そしてリィンの号令を合図にリィン達はズオウとの戦闘を開始した!



「いっくよー!ホワイトデコレーション!!」

「―――――」

戦闘開始時ミリアムはオーダーを発動し、ミリアムがオーダーを発動した直後に敵は巨体を利用した巨腕でリィン達を攻撃したが、リィン達はミリアムのオーダーによって巨体である敵による攻撃のダメージも最小限に抑えられた。

「二の型・改―――裏紅蓮剣!斬!!」

敵の攻撃が終わるとリィンは反撃に電光石火の速さで炎を宿した太刀を叩き込んだ後続けて炎の斬撃波を放って敵にダメージを与え

「―――クラウ=ソラス、シンクロ開始。――――追加武装、自動浮遊射撃機”クルージーン”発動。」

リィンが攻撃している間にアルティナはクラウ=ソラスと一体化し、更に自身の周囲に4つの自動浮遊射撃機”クルージーン”を召喚した。

「――――」

そして敵はリィン達にアーツを放つ為に霊力を溜め始めたが

「”クルージーン”、照射。」

「!?」

アルティナの指示によって”クルージーン”が一斉に特殊レーザーを放ち、レーザーに命中した敵は霊力の溜め込みを中断させられと共にアーツを一定時間使えなくなる状態異常”封魔”状態に陥った。



「あはは、ボクも負けないぞ~!ガーちゃん、ハンマー!!」

アルティナの攻撃を見て無邪気にはしゃいだミリアムはアガートラムをハンマーに変形させ、地面を叩きつけて広範囲の敵を攻撃するクラフト―――スレッジインパクトで追撃し

「!?」

「崩したよ!」

「そこだっ!」

ミリアムのクラフトによって敵の態勢が崩れるとミリアムと戦術リンクを結んでいたリィンが更なる追撃を叩き込んだ。

「”ベガルタ”起動―――斬!!」

そこにアルティナが両腕と一体化しているクラウ=ソラスの腕を導力エネルギーの刃と化し、敵に突撃して導力エネルギーの刃と化した両腕で攻撃した後そのまま突進の勢いを利用して敵から距離を取った。

「――――――」

アルティナの攻撃が終わると敵は反撃に毒のブレス―――ポイズンブレスをアルティナに放ったが

「”クルージーン”、シールド展開。」

アルティナは”クルージーン”を操って”クルージーン”によるエネルギー障壁を展開するクラフト――――イージスバリアで襲い掛かる毒のブレスを防いだ。

「ぶっ放せ~、ガーちゃん!」

「――――」

そこにミリアムの指示によってアガートラムが極太のレーザーを放つクラフト―――ヴァリアントカノンを放って敵の背後を攻撃し、背後からの奇襲攻撃を受けた態勢を崩した。

「崩したよ!」

「ああ!蒼き龍よ――――吼えろ!!」

「ブリューナク、照射。」

アガートラムの攻撃が終わるとミリアムと戦術リンクを結んでいたリィンが追撃代わりに太刀に宿した蒼き炎の竜を解き放つクラフト―――蒼龍炎波で、アルティナは正面から両肩の砲口から集束したエネルギーを解き放って追撃をした。



「――――――!」

立て続けにダメージを受けた敵は咆哮を上げて”高揚”状態になり

「―――――」

「!秘技―――裏疾風!斬!!」

「わわっ!?ガーちゃん、お願い!」

「―――――」

すぐに振り向いてリィンとアルティナに攻撃し、敵の攻撃に即座に反応したリィンは敵の懐に飛び込む電光石火の攻撃で回避すると共に反撃を叩き込み、ミリアムは慌ててアガートラムに絶対障壁―――アルティウムバリアを展開させて敵の攻撃を防いだ。

「――――」

二人に攻撃した敵は続けて背後にいるアルティナとリィンを纏めて攻撃する為に振り向くと同時に口から毒のブレスを放とうとしたが

「炸裂せよ、烈輝の陣―――イオ=ルーン!!」

「――――!?」

詠唱を終えたアルティナの魔術によって発生した魔力の爆発が顔面で発生した事により、ダメージを受けると共に怯み

「集いし炎よ、貫け―――轟焔爆炎閃!!」

「―――――!!??」

そこにアルティナに続くように魔術の詠唱を終えたリィンが集束した炎を閃光として解き放って再び敵の顔面を攻撃して敵に悲鳴を上げさせると共に怯ませた。

「ガーちゃん、分身!―――チェーンジッ!!ト―――スッ!」

するとその時ミリアムはアガートラムを分身させ、分身したアガートラムは巨大なハンマーと球体に変身した後球体は天井へと向かい

「やあああああああっ!テラ――――ブレイカー――――――ッ!!」

ミリアムはハンマーを持って跳躍し、球体をハンマーを振るって地面へと叩き落した。すると地面に叩き付けられた球体は戦場全体に凄まじい衝撃と大爆発を起こした!

「―――――――!!??」

ミリアムが放ったSクラフト―――テラブレイカーによる大ダメージに耐えきれなくなった敵は悲鳴を上げながら消滅した!



「……目標の沈黙を確認。シンクロを解除します。」

敵の消滅を確認したアルティナはクラウ=ソラスとの一体化状態を解除して元の姿に戻り

「イエーイ、完全勝利っ!!―――というかアーちゃんたち凄いじゃん!?」

ミリアムは無邪気に喜んだ後驚きの表情でリィンとアルティナに視線を向けた。

「ああ、1年半前使っていた戦技(クラフト)とは違うようだな?それに1年半前と比べると見た事のない武装も使っていたようだし。」

ミリアムの言葉に頷いたリィンは自分にとって見覚えがない戦技(クラフト)を使っていた事が気になっていた為ミリアム同様アルティナに視線を向けた。

「……リィン教官もご存知のようにリィン教官に引き取られてからのクラウ=ソラスの整備はセティさん達にしてもらっていますが、その際にセティさん達からクラウ=ソラスの強化や追加武装の提案がされ、その提案を受けた結果としてちょうど入学式の日に宿舎にセティさん達からクラウ=ソラスの追加武装が届き、それを搭載しました。……追加武装はクラウ=ソラスとシンクロしてからの物が主だった為、実戦レベルにするまで今日までかかってしまいましたが。」

「い、いつの間にそんな事を………」

「いーなー、いーなー!ボクもその内クロスベルにいるディオン三姉妹にガーちゃんを強くしてもらうように頼もうかな~。」

アルティナの説明を聞いたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ミリアムはアルティナを羨ましがった。

「はは………まあ、何とはともあれよく頑張ったな。ミリアムも、アガートラムもクラウ=ソラスもありがとうな。」

「ニシシ、どーいたしまして♪」

「「――――」」

リィンの感謝の言葉に対してミリアム達はそれぞれ答えた。



「はあ、よかったぁ……皆さん大丈夫みたいですね?」

「フン、まあまあのデータがとれたか。―――これで本日のテストを終了とする。エントランスで待っているからとっとと戻ってくるがいい。」

「は、博士っ?―――あのあの、帰りもお気をつけて!」

「ふう……まったくあの人は。」

「………少々疲れました。指示通り戻るとしましょう。」

「ああ、そうだな。」

「あはは、やっぱりお姉ちゃんがおんぶしたげよっか?」

「結構です。」

その後リィン達はエントランスに戻ってシュミット博士とティータと少しの間話をした後レクター少佐からミリアムと合流したいという通信が来た為、待ち合わせ場所である駅前に向かった―――――




 
 

 
後書き


今回の話を読んでお気づきと思いますがアルティナとクラウ=ソラスはウィルやセティ達によって、強化されていますwwしかもアルティナに関しては身体的成長までウィル達にww………え?さすがのウィル達でも人造人間(ホムンクルス)は作っていないから、無理じゃねだって?ハッハッハッ、『工匠に不可能はない!』……それが”工匠”なのだから可能なのです(理由になっていない)まあ、そもそもウィルにはたくさんの種族が協力していますから人造人間(ホムンクルス)についての知識を持っている種族も当然いるでしょうから例え作っていなくても成長促進剤の作成くらい余裕かとww
 

 

第10話

~リーヴス~



「よっ、お疲れさん。」

リィン達が駅前に到着すると既に駅前にいたレクター少佐がリィン達に声をかけて近づいてきた。

「やっほーレクター!おまたせー。」

「お疲れ様です、少佐。」

「そっちこそお守ゴクロー。」

「フン………」

リィン達の様子を見ていたアッシュは鼻を鳴らした後その場から去り

(………?)

「お久しぶりですね、かかし(スケアクロウ)。」

アッシュに気づいたリィンが不思議そうな表情をしている中、アルティナはレクター少佐に挨拶をした。

「なんだ、黒兎。お前さんも一緒だったか。――――そう言えばお前さんは”七日戦役”の件がなかったら、元々情報局(ウチ)に来る予定だったそうだが………どうだ、シュバルツァーの実家は?ユミル襲撃の件や”ルシア夫人誘拐未遂”の件で、さぞいじめられて、情報局(ウチ)に来たくなったんじゃねぇのか~?」

「少佐………父さん達はそんな器の小さい人達ではありませんよ。」

「リィン教官の言う通りですね。テオ様達も1年半前の件をリィン教官やエリゼ様同様、わたしの事をすぐに許した上とても大切にして頂いています。少なくても”七日戦役”と内戦の件で激務になっていると思われる”情報局”に所属するよりは、よほど良い労働環境かと。」

からかいの意味も込めたレクター少佐の問いかけに対してリィンは呆れた表情で反論し、リィンの意見に頷いたアルティナは静かな表情で答えた後ジト目になってレクター少佐を見つめた。



「やれやれ、それを言われると反論できねぇな………それにしても皇女殿下の件といい、シュバルツァー男爵夫妻はつくづく懐が深い貴族だな……まあ、黒兎の場合は息子の新たなハーレムの一員と見ているから、大切にしているかもしれないな♪」

「少佐は俺を何だと思っているんですか……?」

アルティナの指摘に対して苦笑したレクター少佐はからかいの表情で答え、レクター少佐の答えを聞いたリィンは疲れた表情で反論したが

「……まあ、わたし自身もリィン教官の側室もしくは愛人としてリィン教官に引き取られた可能性は未だ否定し切れていないので、その推測については否定しません。」

「あはは、もし本当にそうなったらアルティナがボクの妹だから、リィンはボクの義理の弟になるね~♪あれ?でも年齢はボクの方が下だから、兄になるのかな??」

「ちょっ、アルティナ!?そんな目的で君を引き取っていないと何度も言っただろう!?それとミリアムも、これ以上この場がややこしくなるような事を言わないでくれ!」

ジト目で答えたアルティナの答えを聞くと驚き、更にミリアムの推測を聞くと疲れた表情で指摘した。



「クックックッ………それじゃあそろそろ列車も出る頃だし、名残惜しいが俺達はそろそろ退散させてもらうぜ。」

リィン達の様子を面白そうに見ていたレクター少佐は気を取り直して自分とミリアムがリーヴスから去る事を伝えた。

「えー、もう?うーん、仕方ないか。もうちょっと遊びたかったけど。―――それじゃあまたねっ、二人とも!アーちゃん、ボクの代わりにしっかりリィンを見といてよね!リィンもアーちゃんの事ヨロシク!」

「何故貴女の代わりをしなければならないのかが理解不能ですが、リィン教官をサポートするのがわたしの任務ですから貴女に言われずとも教官はわたしが見ています。」

「はは………色々大変かもしれないがミリアムも頑張ってくれ。」

「ニシシッ、了解!」

「そんじゃーな。」

そしてリィンとアルティナはレクター少佐とミリアムが駅に入り、二人が乗った列車が去っていく様子を見守っていた。



「……行ってしまったか。ハハ、なんだか一気に静かになったな。」

「………………」

「アルティナ?」

自分の言葉に何も返さず黙り込んでいるアルティナが気になったリィンは不思議そうな表情でアルティナに視線を向けた。

「………わたしと彼女は、本当に”同じ”なのでしょうか?形式番号はわたしが最新……少なくとも基本的なスペックで劣る事はないと自負しています。ですが、どうしてあんな………………」

「アルティナ………ははミリアムはミリアム。アルティナはアルティナだ。君にも、いつかきっと見つかる。アルティナが、アルティナらしくあれる道が。」

(ま、”また”ですか、リィン様……)

(”そういう事”を今でも無意識でしているから、まだ増える可能性がある事をエリゼや私達は考えているものね………現にエリゼ達もアルティナもいずれ”自分達のようになる”と思っているもの。)

自分とミリアムを比べて複雑そうな表情で考え込んでいるアルティナの様子に若干驚いたリィンはアルティナの頭を優しく叩いた後優し気な微笑みを浮かべて答え、その様子を見守っていたメサイアは疲れた表情をし、アイドスは苦笑していた。

「わたし、らしく……?………難題続きです………本当に………」

一方リィンの言葉に対して呆けたアルティナは少しの間考え込んだ後疲れた表情で答えた。



~宿舎・リィンの自室~



その日の夜、リィンは宿舎の自室でいつものように今後の授業や演習に備えての準備をしていた。

「……ふう、こんな所か。明日の機甲兵教練と特別演習の為の準備………根を詰めても逆効果だし、このあたりにしておくか。」

準備を一区切りしたリィンはふと今日一日にあった出来事を思い返した。

「……ふう、なんて一日だ。支援課にいた頃より濃いっていうか。しかし、まさかロジーヌやムンクもこの街に来ていたなんてな。そういえば――――」

リィンはふと、今日再会する事ができたトールズ士官学院の卒業生の一人にしてラジオ局に務め、1年半前の内戦にも”カレイジャス”に乗り込みリィン達に協力した元トールズ士官学院の学生であるムンクのある言葉を思い出してラジオに近づいた。

「………ムンクが言ってたな。ビックリする番組が始まるって。そろそろ時間みたいだし、せっかくだから聞いてみるか。」

リィンがラジオの電源を付けると何かの音楽が流れ始めた。

「おっと……ちょうど始まるところかな?」

そしてラジオから離れたリィンがベッドに座ると番組が始まった。



「リスナーの皆さん、こんばんは。トリスタ放送が、4月16日、午後9時をお伝えします。1年半ぶりでしょうか?トーク番組”アーベントタイム(夕べの瞬間)”、本日から再開させて頂きます。」

「―――――!!?」

ラジオの番組の名を知ったリィンは信じられない表情をした。

「初めての方もいるでしょうから改めて自己紹介しちゃいますね。本番組の進行を務めさせていただく”ミスティ”といいます。1年半前、様々な事情があってきちんとしたご挨拶もなく、終了してしまった本番組………皆さんの熱いご要望もあってこうして再開できたこと本当に嬉しく、感謝しています。学生だったリスナーの皆さんは卒業して社会人になったのかな?新入生やそうでない皆さんも改めてお付き合い頂ければ幸いです。」

リィンは番組の進行を務める人物―――”ミスティ”や、”ミスティ”が以前務めていた番組の名からミスティの正体が”身喰らう蛇”の”蛇の使徒”の第二柱――――”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダである情報を思い出し、驚きの表情でラジオを見つめた。

(な、な、な………何をやってるんだ、この人(蒼の深淵)は………!?)

「―――さて、4月も中旬、ライノの花も真っ盛りですね――――――」

その後ラジオが終わるとリィンは急いでリーヴスにあるラジオ局―――”トリスタ放送”へと向かい、番組の事についてよく知っていると思われるムンクに事情を訊ねた。



~リーヴス・”トリスタ放送”~



「……収録場所がわからないだって!?」

「あはは………流石にボクも驚いたけどね。先月、ミスティさんからマイケルディレクターに連絡があったらしいんだ。それで、リスナーのお便りをミスティさんに送ってくれたら録音したトークを返送する――――そんな形でよければアーベントタイムを再開できるって話になったらしくてさ。かなり異例ではあったけど大勢のファンが待っていたから局も腹を括ったみたいだね。」

「無茶苦茶すぎるだろう………それじゃあ、そのミスティさんがどこにいるかもわからないのか?」

ムンクの説明を聞いたリィンは呆れた後気を取り直してムンクに訊ねた。

「うん、各地を転々としているからそういうやり方しか無理らしくて。でもでも、君も聞いたでしょ!?やっぱり最高だよね、ミスティさんのトークは!」

「あ、ああ………1年半前に一度終わったらしいのに、ブランクを全然感じなかったというか………ユーモアもウィットもあって全然押し付けがましくないからつい聞き惚れるというか……――――じゃなくて。どうして居場所がわからないのにデータのやり取りができるんだ?」

「帝都の総合郵便番号に私書箱を用意してるらしくてね。そこにお便りを送ったら5日後くらいにトークが入ったデータが届くらしいんだ。そう言えば、当局に番組を申請した時、少し難癖をつけられたそうだけど……こうして無事、初回が放送できたってことは何の問題もないってことだよね?」

その後ムンクから事情を聞き終えたリィンが外に出ると聞き覚えのある着信音が聞こえ、音に気づいたリィンはARCUSⅡを取り出した。



~リーヴス~



「この音は――――……タイミングから考えると、バリアハートにいるプリネ皇女殿下達の誰かからか?」

ARCUSⅡを取り出したリィンがARCUSⅡを操作して”Ⅶ組の輪”を起動するとツーヤの顔が映った。

「ツーヤさん……!」

「―――お久しぶりです、リィンさん。恐らくリィンさんもラジオを聞いたか誰かから教えて貰って驚いたと思いますが、先程のラジオ番組―――”アーベントタイム”についての情報をお伝えします。確かリーヴスの”トリスタ放送”には1年半前あたし達にも協力してくれたトールズ士官学院の卒業生の方が務めているとの事ですが……もしかして既にその方から事情を聞きましたか?」

「え、ええ、ある程度は。”アーベントタイム”………どうしてあの番組が―――”蒼の深淵”の手掛かりをツーヤさん達は掴んでいるんですか!?」

ツーヤの問いかけに頷いたリィンは信じられない表情でツーヤに訊ねた。

「………あたしやマスター、それにサフィナ義母さんやレーヴェさんですら、最初にその情報が諜報部隊よりもたらされた事を知った時本当に驚きました。あたし達の介入によって内戦での”結社”の”計画”を滅茶苦茶にされた挙句、”煌魔城”での決戦でもあたし達に敗北し、最後は撤退した”結社”の魔女―――まさか堂々とエレボニアに舞い戻ってラジオのトーク番組をしてるなんて、誰も予想できないと思います。―――それこそ様々な”流れ”を読んで1年半前の内戦をほぼ自分が描いたシナリオ通りに誘導したレンさんですらも。」

「同感です……当然、メンフィル帝国の諜報部隊―――いや、エレボニアの情報局の方でも……?」

「ええ、総合郵便局の私書箱に届けられた便りを監視したそうです。ですが―――取りに来る人物はおらず、いつの間にか私書箱から頼りの束が消えたとのことです。トークを録音した記憶結晶(メディア)も同じで、忽然と配送用の私書箱に現れ、料金はも支払われるというまさに文字通りの意味で、”魔法”を使っているのでしょうね。」

「………なるほど、そんな経緯だったんですか。」

「情報局は番組自体を潰す事も考えたそうですが、再開を待ってたファンも多く、ファンたちの反感を恐れた事もありますが、わざと泳がせて”蒼の深淵”の居場所を掴む為に番組の再開を許可したとの事です。―――以上です。また、何かあれば連絡します。」

「わざわざ連絡して頂き、ありがとうございます。”アーベントタイム”の件はセレーネやレン教官達にも……?」

「ええ、後で個別でそれぞれ連絡しておきます。―――ああ、一つ伝え忘れていました。ひょっとしたら来週の演習地でフォルデさんとステラさんと会えるかもしれません。お二人は来週、セントアークで領主見習いとしての実習で向かう予定があり、時間が空けばリィンさん達に会いに行くような事も言っていましたから。」

「え………それは本当ですか!?」

「はい。確か来週の”特別カリキュラム”の演習地はセントアーク地方と隣接していましたよね?」

「あ………え、ええ、言われてみれば演習地はセントアーク地方とも隣接していました。―――って、何で教官陣の俺達もようやく今日知った演習地の場所を………それもメンフィル帝国の諜報部隊経由ですか?」

ツーヤの問いかけに戸惑いの表情で頷いたリィンだったが、すぐにツーヤが自分達がようやく今日知ることができた情報を知っている事がおかしい事に気づき、苦笑しながらツーヤに自分達より早く知る事ができた理由を確認した。

「ふふっ、それについてはご想像にお任せします。――――夜分遅くに突然申し訳ありませんでした。お休みなさい、リィンさん。」

リィンの問いかけに対して微笑みながら答えたツーヤが通信を切ると、リィンのARCUSⅡからはツーヤの映像が消えた。

「…………エマとも手紙でやり取りをしてるけどそんな話は出て来なかったな……それを考えるとエマやセリーヌが知れば、間違いなく驚くだろうな。(………”蒼の深淵”か。敵だった上、エリゼや母さんを狙ったようだけど最後は特務部隊(俺達)に協力してくれた。”彼”の最期も心から哀しみ、怒っていたようだった……それを考えると彼女は根っからの”悪党”じゃなかったかもしれなかったな。ただ、何の為に”アーベントタイム”を再開したのかわからないが………)―――”アーベントタイム”。しばらく定期的に聞いていくか。」

ARCUSⅡをしまって少しの間考えていたリィンだったが、やがて宿舎へと戻っていった――――


 

 

第11話

4月17日、早朝――――



~第Ⅱ分校・教官室~



翌朝、機甲兵教練の直前の時間リィン達はミーティングをしていた。

「―――本日からの機甲兵教練は第Ⅱ分校にとって重要な意味を持つ。合同教練を行う戦術科と特務科、バックアップを担当する主計科共々、万全な状態に仕上げてもらいたい。週末の”特別演習”に向けてな。」

「………了解しました。」

「まあ正直、1日そこらでどこまで仕込めるかわからんが……」

「でも、生徒達が身につけられるよう可能なかぎりサポートします!」

「クク、ガキ共全員は厳しいかもしれねぇが最低でも分校にある機甲兵全てをいつでも実戦投入できる状態にまでは仕上げるつもりだから、大船に乗ったつもりでいていいぜ。」

「うふふ、生徒達の機甲兵の操縦の慣れ次第になるけど、もし一人でも実戦に投入できるレベルまで身につけたら”パテル=マテル”にも生徒達の練習相手をしてもらうつもりよ。」

「教練中に生徒達が怪我などをすれば、治癒術で完全に怪我を治しますので、そちらはお任せ下さい。」

ミーティングを進行しているミハイル少佐の言葉に対してリィン達教官陣はそれぞれの答えを口にした。

「よろしく頼む。さっそく準備に取り掛かってもらおう―――と言いたいところだが。その前にシュバルツァー、確認しておきたい事がある。」

「自分、ですか?」

「ああ、今朝ある運送会社から問い合わせがあってな。昨日、リーヴスに配達に行った折、とある黒髪の青年に業務を手伝って貰ったとか。かの有名な”灰色の騎士”にどことなく似ていたそうだが……?」

ミハイル少佐の問いかけを聞いたリィンは自由行動日に、届ける場所がわからなく困っていた運送業者の配達を手伝った事を思い出した。



「ああ、あの時の……どうにも放っておけなくて……その、何かまずかったですか?」

「……やはり君だったか。町の住民からも似たような連絡が入って来ていたが……」

「アハハ……お兄様らしいというか。」

「支援課にいた頃も率先して雑用を引き受けていたものなぁ。」

リィンの答えを聞いて若干呆れた表情で答えたミハイル少佐の話を聞いたセレーネとランディはそれぞれ苦笑し

「はは、懐かしいな。」

「ふふっ、そんな事があったんだ。………なんだか、わたしもちょっと懐かしくなってくるよ。」

リィンは懐かしそうに支援課にいた頃を思い出し、リィン達の会話を聞いていたトワもリィン同様過去を思い出していた。



「コホン、責めるつもりはないが少しは立場を考えたらどうかね?軍事学校たる士官学院の教官、それも”灰色の騎士”が下らん雑用を引き受けるなど―――」

「―――いえ、私はそうは思いません。それどころか、素晴らしい行いだと思います。」

そして咳ばらいをしたミハイル少佐が呆れた表情でリィンに指摘をしようとしたその時リアンヌ分校長が部屋に入って来た。

「分校長……?」

「ど、どういう事ですか?」

「フフ、要するにシュバルツァー教官は、自ら体現しているのです。”世の礎たれ”―――かのドライケルスの言葉を。」

リアンヌ分校長の言葉を聞いたその場にいる全員はリィンに注目した。

「い、いや、そんな大層な話では……」

「では栄えあるトールズ第Ⅱ分校としてはしかと支えるのが筋でしょう。ひとえに雛鳥たちの今後の成長のためにも―――リーヴスの市民達との”橋渡し”となってもらうためにも。」

「え”。」

「そ、それって……」

「まさか……」

「クスクス、要するに市民達の人気取りの為に設立された”特務支援課”の第Ⅱ分校版って所かしら♪」

「クク、言い得て妙だな。まあ、実際そのお陰で今や”特務支援課”はクロスベルの市民達にとっての”英雄”として有名で、解散した事が今でも惜しまれているぐらいだからなぁ。」

「ハア……俺やロイド達も最初から課長に説明してもらって理解していたが、もうちっと、遠回しな言い方をしてくれないかねぇ。」

リアンヌ分校長の提案を聞いてある事を察したリィンは表情を引き攣らせ、トワとセレーネは目を丸くし、小悪魔な笑みを浮かべて呟いたレンの推測を聞いたランドロスは口元に笑みを浮かべて同意している一方ランディは疲れた表情で溜息を吐いた。



「―――成程、第Ⅱ分校の設立はかなり唐突だったと聞いています。その意味で、住民との軋轢回避は今後の課題と思っていましたが……」

一方リアンヌ分校長の提案を聞いてリアンヌ分校長の意図を理解したミハイル少佐は納得した様子で考え込んでいた。

「ええ、分校長として”次”の段取りは引受させて頂きます。貴方達は今日の機甲兵教練と来たる特別演習に備えてください。」

そしてリィン達に説明を伝え終えたリアンヌ分校長は部屋から去っていった。

「ハハ、なんか余計な仕事を抱え込んじまった感じだな?」

「だ、大丈夫、リィン君?」

「うふふ、ご愁傷様、リィンお兄さん♪」

「ハハ………まあ、なるようになりますよ。とにかく今は分校長の言う通り機甲兵教練に集中すべきでしょう。」

「……道理だな。まあいい、この件については君と分校長の判断に任せる。それでは各自準備を進めてくれたまえ―――解散!」

そしてミハイル少佐のミーティングの解散の号令を合図にリィン達は大急ぎで準備を進め……いよいよ分校初となる機甲兵教練が始まるのだった。



~格納庫~



分校の生徒達全員がミハイル少佐とトワ、レンから機甲兵についての説明を受けている中リィンとランディ、ランドロスは格納庫にある機甲兵達の移動の作業を手伝っていた。

「フン、何とか間に合ったか。教練中は任せる。生徒どもを動かすなりして適宣対応するがいい。」

「は、はいっ……!」

作業の様子を見守っていたシュミット博士はティータに指示をし、指示をされたティータは緊張した様子で頷いた。

「相変わらず無茶苦茶な爺さんだな……それについていけるあの子も大したモンみたいだが。」

「ああ、リベールきっての技術者一家の出身だそうだからな。それにしても、あすがに人手不足だとは思うが……」

「しかも、ロクな訓練もなしに週末に現地に出発だからな。―――最低でも2,3人―――いや、4,5人は実戦でも操縦できるくらいにしてやる必要はあるだろうな。」

一方二人が会話している様子に気づき、作業を一旦中断したランディの言葉にリィンは頷いた後疲れた表情で呟き、リィンの言葉に続くようにランドロスは二人に提案をした。

「おいおい、さすがにそれは無理じゃねぇか?模擬戦ができるようになるのが精一杯だと思うぜ。―――そこん所、ヴァリマールの操縦者であるお前さんはどう思っているんだ?」

ランドロスの提案に呆れた表情で指摘したランディは機甲兵と似たような存在である”騎神”の操縦者であるリィンに意見を求めた。

「……そうだな。リスクはあるが、カンのいい子ならいけると思う。生徒の数は分担するとして……ランディとランドロス教官は交代で”ヘクトル”を使うんですよね?」

ランディの問いかけに対して自身の意見を答えたリィンはランディに確認した後重装機甲兵”ヘクトル弐型”に視線を向けた。



「ああ、若干扱いづらいがパワーがあって俺やそこの仮面のオッサン好みの機体だ。お前さんはヴァリマールじゃなくて”ドラッケン”で教えるんだな?しかも太刀じゃなくて機甲兵用の剣を使うんだって?」

リィンの問いかけに頷いたランディはリィン達と一緒に汎用機甲兵”ドラッケンⅡ”へと視線を向けた。

「ああ、さすがにヴァリマールはお手本にはならないだろうしな。騎士剣術なら父さんからも教わっているから何とかなると思う。」

「はは、そっちの方は頼むぜ。あとは生徒(あいつら)の準備が終わるのを待つだけだが……」

「ま、俺としてはこんな鉄屑に乗って戦うより、てめぇ自身を鍛え上げた方が結果的にはそっちの方がガキ共の為になると思うがな。こんな鉄屑、俺なら木刀でもかる~く真っ二つにできるぜ?」

ランドロスの発言を聞いたリィンとランディは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「例え生徒達を鍛え上げても、こんなとんでもない物を木刀で斬る事ができるアンタみたいな”化物”がそんな次々と生まれるかっつーの。」

「というか”機甲兵”を”鉄屑”呼ばわりするのは、さすがにこの分校の教官の発言として、かなり問題発言だと思うのですが……」

我に返ったランディとリィンはそれぞれ疲れた表情で指摘した。



「そういや、リィン。ラジオの”アーベントタイム”の件、もしかしてお前さん達もメンフィル帝国から既に聞いているか?」

「!あ、ああ。という事はランディとランドロス教官も……?」

ある事を思い出したランディの問いかけを聞き、ランディも”アーベントタイム”の事について知っている事に気づき、ランディとランドロスに訊ねた。

「おう。昨日の夜に、ルイーネから直通の連絡が来たぜ。クク、内戦の件で散々な目に遭ってエレボニアから逃げておきながら堂々とラジオ番組に舞い戻ってくるなんざ、中々肝の据わった女のようだな、”蒼の深淵”とやらは?」

「ったく、正体隠すつもりがあるんだったら”皇妃”のルイーネ姐さんを呼び捨てで呼ぶなっつーの。……それにしても容姿とかもデータで送られてきて確認したが、あんなスタイル抜群かつ美人なお姉さんが”蛇の使徒”とはねぇ。しかも昨日俺もたまたま”アーベントタイム”を聞いて声を知ったけど、メチャ好みの声で、俺のドストライクのお姉様じゃねーか!例え戦う相手が綺麗なお姉様や女の子でも分校長や”鉄機隊”みたいなおっかない連中よりも、ミステリアスかつ妖艶な雰囲気を纏っているっぽい”蒼の深淵”のような連中がよかったぜ……」

「ハハ………その言葉は絶対に分校長の前で言わない方がいいと思うぞ。(というか会った事もないのに、よく雰囲気とかわかるな……それにしても”鉄機隊”か。分校長が”碧の大樹”の件が終わった後、分校長は自分がリウイ皇帝陛下とイリーナ皇妃殿下に仕える事とその理由を説明して、”鉄機隊”の解散を宣言した後”神速”を含めた”鉄機隊”の隊士達は分校長について来なかったそうだけど………彼女達も”結社”の残党として活動しているんだろうか……?)」

ランドロスのある言葉を聞いて呆れた表情で指摘したランディは気を取り直した後真剣な表情で会った事もない人物の予想を口にした後疲れた表情で溜息を吐き、リィンは苦笑しながらランディに指摘した後かつて戦ったある人物を思い浮かべて、その人物のその後について考え込んでいた。



その後準備が終わり、”機甲兵教練”が始まった。



2~4限、機甲兵教練――――



~グラウンド~



「はあ、本当に機甲兵に乗るハメになったなんて……………」

教練がある程度終わり、休憩時間で生徒達がそれぞれ初めて乗る機甲兵について話し合っている中ユウナは疲れた表情で肩を落とした。

「その割にはノリノリで基本操縦はクリアしていたみたいですが。」

「ああ、僕よりも早く慣れていたくらいだったな。クロスベルの警察学校でも乗った事は無いんだったよな?」

「あ、当たり前よ。機甲兵は警備た―――ううん、クロスベル帝国軍に配備されていて、警察(あたしたち)に機甲兵が配備されるなんてありえないわよ。警察(あたしたち)の基本理念はクロスベルが”自治州”だった頃と一緒で、クロスベルの各市内の治安維持と自治しゅ―――いえ、帝国法の選守なんだから。まあ、警察学校で導力車の運転はしてたから、そのお陰かしら?一度掴んだらスムーズに動かせちゃったというか………」

ジト目のアルティナと困惑の表情をしているクルトの指摘に疲れた表情で答えたユウナは気を取り直して苦笑しながら答えた。

「運転間隔の延長か……天性のカンかもしれないな。」

「わたしは若干つまずいたので素直にうらやましいです。どうもクラウ=ソラスと比較してしまうみたいで…………」

「フフ、わたくしもアルティナさん同様ユウナさんが羨ましいですわ。わたくしなんて”教官”でありながら、”機甲兵”の操縦はそれ程上手くないのですから。”竜化”は例え姿が”竜”になっても自分自身の身体ですから、どんな風に動かせばいいのかわかりますから、アルティナさんのようにわたくしの”竜化”した際と機甲兵を比べてしまうんですもの……」

ユウナの説明を聞いたクルトが感心している中アルティナは複雑そうな表情で答え、アルティナに続くようにセレーネは苦笑しながら答えた。

「え、え~と……アルティナはともかく、セレーネ教官の悩みは何か色々と違うような気がするのですが……」

「というか何気にとんでもない事実を聞いてしまった気がするのですが。」

セレーネの発言に冷や汗をかいたユウナはジト目で、クルトは疲れた表情でセレーネに指摘した。するとその時生徒達の様子を見守っていたリィンが操縦するドラッケンとランディが操縦するヘクトルは互いの機体に視線を向けて頷いた後それぞれの操縦席からリィンとランディが生徒達にある提案をした。



「よし―――少し早いが簡単な模擬戦をやるぞ!」

「レン教官、”パテル=マテル”も呼んでもらって構いませんか?」

「うふふ、了解♪来て――――パテル=マテル!!」

ランディの声の後に聞こえたドラッケンから聞こえるリィンの問いかけに頷いたレンはかつて”リベールの異変”の際結社から奪い取ったゴルディアス級戦略人形―――パテル=マテルの名を呼んだ!すると格納庫からパテル=マテルが現れ、ドラッケンとヘクトルの横に並び、その様子を見守っていた生徒達は驚いたり口をパクパクさせていた。

「な、な、な、なんなのアレ~~~~~!?」

「――――ゴルディアス級戦略人形”パテル=マテル”。4年前の”リベールの異変”にてレン教官が結社との戦いの最中で、結社から奪い取った人形兵器です。」

「そう言えばその話は兄上から聞いた事があるな………まさか、あれ程巨大な人形兵器だったなんて想像もしていなかった。」

「ア、アハハ……まさか本当に朝のミーティングで言っていた事を本気で実行するなんて、何気にランディさんやお兄様もスパルタですわね……」

ユウナは他の生徒達同様口をパクパクさせた後驚きの声を上げ、ユウナの疑問にアルティナが冷静な様子で答えている一方、クルトはある事を思い出して呆けた表情でパテル=マテルを見つめ、セレーネは冷や汗をかいて苦笑していた。



「これから俺とランディ、パテル=マテルを操作するレン教官が交代で君達2名の相手をする。呼ばれた者は前に出てくれ。まずはユウナ、クルト!」

「って、いきなり!?」

「……折角の機会だ。見極めさせてもらおうか。」

リィンに名前を呼ばれたユウナは驚き、クルトは静かな闘気を纏いながらで呟き

「お二人とも、ファイトです。」

「フフ、頑張ってください。」

アルティナとセレーネは二人に応援の言葉をかけた。

「へぇ………?」

「ふふっ……」

一方その様子をそれぞれの場所からアッシュとミュゼは興味ありげな様子で見守っていた。



その後それぞれドラッケンに乗り込んだユウナとクルトのペアは協力してリィンが操縦するドラッケンを戦闘不能まで追いやった。



「や、やった……!」

「いや…………(ギリッ)」

リィンが操縦するドラッケンが戦闘不能になる様子を見たユウナが自分達の勝利に喜んでいる中、何かに気づいていたクルトは悔しそうな表情で唇を噛みしめた。

「……いい感じだな。今の感覚を覚えててくれ。」

するとその時リィンの称賛の声が聞こえた後リィンが操縦するドラッケンは立ち上がった。

「余裕か……」

「ふむ、流石ですね。」

リィンが手を抜いて二人と戦った事に気づいた生徒達は驚いたり感心したりしていた。

「よし、お次はウェインにレオノーラだ――――」

その後次の模擬戦が始まり、次の模擬戦が始まった頃、機甲兵から降りたユウナとクルトはアルティナがいる所に戻った。



「お二人とも、お疲れ様でした。」

戻って来た二人に対してアルティナは労いの言葉をかけ

「く、悔しい~っ……!途中から手を抜かれてるって気づいてたのに……!」

「こちらは初搭乗だ。気にする必要はないさ。(………手を抜かれてたとはいえ、やっぱり納得いかないな……どこか手ぬるいというか甘さがあるというか………)」

リィンに手を抜かれていた事にユウナは悔しそうな表情で声を上げ、ユウナに慰めの言葉をかけたクルトは複雑そうな表情で考え込んでいた。するとその時、大きな音が聞こえ、音に気づいたユウナ達が視線を向けるとパテル=マテルに敗北した2体のドラッケンの様子があった。



「ま、参りました……!」

「さすがだねぇ………!ランドロス教官達と違って、実際に乗って操縦もしていないのに、あれを躱せるなんて!」

眼鏡の男子生徒―――ウェインと緑色の髪をポニーテールにしている女子生徒―――レオノーラはそれぞれ自身の敗北を認め

「うふふ、レオノーラは初めてとはいえそこまで使いこなした時点で”上出来”よ。ウェインはまずは基本操縦を徹底的に練習して、基本操縦をマスターする事ね。」

パテル=マテルを操作していたレンは二人に対してそれぞれの評価をした。

「次はそうだな……アッシュにゼシカ、行けるか?」

「ええ………!望むところで―――」

「ハッ、お断りだな。」

そしてリィンに指名された蒼髪の女子生徒―――ゼシカが頷きかけたその時アッシュが予想外の答えを口にした。



「………………」

「ほう?」

「フゥン?」

「え、えっと……?」

「おい、アッシュ………」

「ちょっと貴方、どういうつもり……!?

アッシュの答えを聞いたリィンは真剣な表情で黙ってアッシュを見つめ、ランドロスとレンは興味ありげな表情をし、セレーネは戸惑い、ランディは目を細めてアッシュを睨み、ゼシカはアッシュを睨んで問いかけた。

「ああ、お前さんとの共闘に文句があるわけじゃねえよ。せっかく模擬戦をするんなら面白い趣向がいいと思ってなァ。――――ランドルフ教官、ヘクトルを貸してくれねえか?どうせだったら一対一でシュバルツァー教官の胸を貸してもらいたいと思ってね。」

「そいつは……」

「―――いいさ。その条件でやってみようか。」

ゼシカの問いかけに答えた後に提案したアッシュの言葉にランディが答えを濁しているとリィンが了承の答えを口にし

「ハッ………!」

リィンの答えを聞いたアッシュは不敵な笑みを浮かべた。一方その頃リィンとランディは機甲兵同士の内線でアッシュの提案について話し合っていた。

「……おい、いいのか?」

「ああ、差し支えがなかったら。折角やる気になっている事だし、水を差すのも勿体ないだろうしな。」

「やる気ねぇ……まあいい。せいぜい鼻っ柱を折ってやってくれよ?」

その後ランディはヘクトルから降り、ヘクトルに乗ったアッシュはドラッケンを操縦するリィンと対峙した。



「なんなのよ、アイツ………さすがに生意気すぎない!?」

リィンの操縦するドラッケンとアッシュの操縦するヘクトルが対峙している様子を見守っていたユウナはアッシュの態度に対して不満の声を上げたが

「ユウナさんは人のことを全く言えないと思いますが。」

「むぐっ………」

ジト目のアルティナに指摘されると気まずそうな表情で黙り込んだ。

「………………」

一方クルトは真剣な表情で黙って2体の機甲兵を見つめた。



「クク、礼を言うぜ。シュバルツァー教官どの。折角だから英雄サマの凄さを直接味わってみたくてねぇ。」

「別に構わないが……いきなりヘクトルで大丈夫か?パワーがある分、扱いは難しいから初心者にはハードルが高いぞ?」

「ああ、そうみたいだな。だが――――コイツを使うには少しパワーが必要なんでな……!」

そしてリィンの忠告に対してアッシュが不敵な笑みを浮かべて答えたその時ヘクトルは先端が赤く光り始めたヴァリアブルアクスを振り上げた!

「なっ……!?」

「その距離では―――」

「いや……!」

アッシュの行動にユウナやアルティナが驚いている中すぐに察したクルトが血相を変えたその時、ヘクトルがヴァリアブルアクスを振り下ろすと何と鎌の形態をしている刃が伸びてドラッケンに攻撃をした!

「ええっ!?お、斧が”伸びた”……!?」

「奇襲用のギミックだと……!?」

「あら、やるじゃない♪」

「だぁっはっはっはっはっ!”戦”ってモンをよく理解しているようだな、悪ガキよぉ?」

ヘクトルの奇襲攻撃にセレーネとランディが驚いている中、レンとランドロスはヘクトルを操縦するアッシュに対して感心していた。一方ドラッケンを操縦するリィンは間一髪でヘクトル奇襲攻撃を回避した。

「やりやがる……!だが先手はもらったぜ!」

その後ドラッケンはヘクトルの先制攻撃を連続で受けてしまったが、すぐに立ち直り、余裕な様子でヘクトルを戦闘不能に追いやった。



「はあ~………なんとか凌いだか。ていうか最初の”あれ”、さすがに汚すぎない!?」

模擬戦の様子を見守っていたユウナは安堵の溜息を吐いた後アッシュの奇襲攻撃を思い出し、不満を口にした。

「確かに、開始の合図の前でもありましたし。」

「ああ………武を尊ぶエレボニア人の風上にも置けないやり方だ。(だが、あの瞬発力と虚を突いた奇襲は……)」

ユウナの意見にアルティナと共に頷いたクルトはアッシュのヘクトルの操縦の腕前について考え込んでいた。



「チッ……しくじったか。」

「おい、アッシュ・カーバイド!開始前の奇襲はともかく、あのギミックはなんだっつーの!?昨日、追加で届いた装備だが……なんであんな仕掛けを知っている!?」

アッシュがヘクトルが飛び降りるとランディが血相を変えてアッシュに駆け寄ってアッシュに問いかけた。

「偶然ッスよ、偶然。振ったらたまたま飛び出ただけさ。シュバルツァー教官、胸をかしてくれて感謝ッス。また機会があったらよろしくお願いしたいもんだぜ。」

「ああ、いつでもいいぞ。ちなみに先手後のラッシュはちょっと大雑把過ぎたな?一撃一撃を的確に繰り出せば次にも繋げやすくなるだろう。」

「………ケッ………」

ランディの問いかけを軽く流したアッシュは不敵な笑みを浮かべてリィンに感謝の言葉を述べたが、リィンの指摘を聞くと舌打ちをしてその場から離れた。

「おいコラ、アッシュ……!……ったく、すまねぇな。どこか危なっかしいヤツだとは思っちゃいたんだが。」

「はは……結構な問題児みたいだな。だけどあの天性のバネ―――鍛えれば相当強くなりそうだ。」

「ああ、そいつは同感だぜ。」

その後、機甲兵教練は午前中のうちに一通り終了し……昼食後、興奮も覚めやらぬうちに週末の”特別カリキュラム”について生徒達全員に伝えられるのだった。



~軍略会議室~



「っひょおおおっ、マジか!?専用列車に乗って、サザ―ラント州へ遠征やて!?」

「うわ~、なんだかワクワクしてきましたねぇ♪」

「で、ですが入学したばかりでどうしていきなり………」

「……まあ、それが命令ならこっちは従うのみだけど。」

「金曜日ということはあまり準備期間もないな………」

「えっと、食料とか現地調達できるのかな……?」

「フフフ、豊かな山の幸がさぞや期待できそうだな……!」

「―――出発は金曜の夜、それまでに為すべき準備をクラスごとに決めてある!担当教官の指示に従って備え、英気を養うこと―――以上だ!

”特別カリキュラム”の説明を受けた生徒達が様々な反応を見せている中ミハイル少佐は冷静な様子で説明を続けた。



「うーん、入っていきなり地方での演習だなんてねぇ。サザ―ラント………エレボニアの南西の州だっけ?」

「ええ、ここからだと列車で数時間ほどですね。ちなみに”第二都アルトリザス”は14年前の”百日戦役”にてアルトリザスと隣接しているサザ―ラント州の中心部の都市である”白亜の都セントアーク”がメンフィル帝国軍に占領、そしてメンフィル帝国領となった為、新たなサザ―ラント州の中心部の都市となった場所です。」

「へ~、じゃあお隣はメンフィル帝国の領土なんだ………って、メンフィル帝国の領土になった経緯や今のエレボニアとメンフィルの関係を考えると色々な意味で大丈夫なの!?」

自分の質問に答えたアルティナの話を聞いたユウナは呆けたがすぐに我に返り、表情を引き攣らせて指摘した。

「サザ―ラントか………(………懐かしいな。)」

(えっと、たしかリベールで2番目に近いエレボニアの地方で、そのお隣はリベールのハーケン門に一番近いメンフィルのセントアーク地方だったっけ。あ、ということは………)

(ハッ………聞いてた通りの行き先か。行ったことはねぇハズだが………ひょっとしたら……)

「ふふっ………」

一方クルトは懐かしそうな表情をし、ある事に気づいたティータは目を丸くし、アッシュは考え込み、アッシュの様子に気づいたミュゼは微笑んだ後再びリィン達教官陣に注目した。



そして数日後”特別カリキュラム”の演習地に出発する日の夜が訪れた―――――


 

 

第12話

4月21日、演習地出発――――



午後6:30――――



~第Ⅱ分校・分校専用列車停車駅~



演習地出発の夕方、生徒達が分校専用の駅構内で出発の準備をしている中、ある程度準備を終えたリィン達教官陣は顔を合わせて今後の事について話し合っていた。

「そろそろ時間かな……?」

「ええ、第Ⅱ分校専用の特別装甲列車……機甲兵やヴァリマール、それにパテル=マテルも数機分運べるそうですね。」

「機体の搬入に物資や装備の積み込み……夜9時の出発らしいがなんとか間に合うのかね?」

「問題は肝心の装甲列車がいつ来るかですけど……」

ランディの疑問に続くようにセレーネが呟いたその時、列車のクラクションが駅構内に聞こえ

「クク、その噂の列車が来たようだな。」

「うふふ、どんな列車なのかしら♪」

クラクションを聞いたランドロスとレンはそれぞれ興味ありげな表情をした。

「おっしゃあ、来たでぇ~!」

「ぁ――――」

一方リィン達同様列車のクラクションに気づいた生徒達も列車が来る出入り口に視線を向けると先頭列車に第Ⅱ分校の紋章がある第Ⅱ分校専用、特別列車―――”デアフリンガー号”が姿を現し、駅に到着すると停車した。



「……キレイ……!」

「銀色の列車か……」

”デアフリンガー号”を初めて見たティータはデアフリンガー号に見とれ、クルトは目を丸くした。そして停車した列車から作業員が次々と出てくる中、クレア少佐も列車から姿を現した。

「え――――」

「あれっ………!」

「あの方は………」

「ほう?」

クレア少佐の登場にリィンとトワ、セレーネが目を丸くしている中ランドロスは興味ありげな表情をし

「―――フン、来たか。」

「おいおい、マジかよ。」

「うふふ、まあ”鉄道”―――それも”軍”が関わっているのだから、”彼女”の登場もそんなに驚く事はないわよ。」

ミハイル少佐は鼻を鳴らし、驚いているランディにレンは小悪魔な笑みを浮かべて指摘した。

「ふふっ………――――初めまして。第Ⅱ分校の生徒と教官の皆さん。鉄道憲兵隊少佐、クレア・リーヴェルトといいます。第Ⅱ分校専用、特別装甲列車、”デアフリンガー号”をお渡しします。」

そしてクレア少佐は第Ⅱ分校の面々を見回して微笑んだ後敬礼をして自己紹介と目的を説明した。



「―――よし、こちらは大丈夫だ。物資の搬入に回ってくれ。」

「了解だ。」

「はあはあ……がんばりますっ!」

数時間後生徒や教官達が協力して準備を続けている中、リィンは生徒達に新たな指示を出し、指示を受けた生徒達と入れ替わるようにクレア少佐がリィンに近づいてきた。

「あ………クレア大尉―――いえ少佐。お久しぶりですね。」

「ふふっ………ええ………3ヵ月前のバルヘイム宮での年始のパーティーの送迎以来でしょうか?第Ⅱ分校への就任、本当におめでとうございます。就任の経緯を考えると、私からの言葉ではご迷惑かもしれませんが……」

リィンに祝福の言葉を述べたクレア少佐は複雑そうな表情を浮かべ

「いえ、そんな事はないですよ。まさかクレア少佐が受け渡しに来てくれるなんて夢にも思いませんでしたが。」

クレア少佐の言葉に対して謙遜した様子で答えたリィンは苦笑しながらクレア少佐を見つめた。



「ふふっ………ミリアムちゃんとレクターさんに先を越されてしまいましたから。――――というのは冗談として今回の計画では、演習地の確保も含め鉄道憲兵隊がバックアップしています。現地までの連絡要員として同行しますので小姑と思って我慢していただけると。」

「小姑って……はは。」

クレア少佐の冗談を交えた説明にリィンが苦笑したその時

「やれやれ………”氷の乙女(アイスメイデン)”とも知り合いとか、マジでお前やロイドの綺麗なお姉様方と次々とお知り合いになれる強運を分けて欲しいぜ。」

ランディがランドロスと共に二人に近づいてきた。

「いや、意味がわからないんだが………」

「ふふっ……―――――オルランド准佐とこうして会うのは初めてになるでしょうか?レクターさんから、オルランド准佐の噂はかねがね伺っています。」

ランディの言葉に疲れた表情で答えたリィンの様子を微笑ましく見守っていたクレア少佐は気を取り直してランディに視線を向けた。

「あの”かかし(スケアクロウ)”からねぇ……大方”かかし(スケアクロウ)”の事だから俺の事もさぞ、面白おかしく伝えたんだろう?」

「フフ、多少脚色を加えた噂である事は否定しません。――――第Ⅱ分校への協力、本当にありがとうございました。」

「ま、半ばウチのリア充皇帝共のせいによる強制だったけどな。心配せずとも、振られた仕事はきっちりこなすつもりだし、アンタらが怪しむような”仕事”をするつもりはないぜ。――――アンタらがあんまり悪辣なことをしない限りはな。」

クレア少佐に感謝の言葉を述べられたランディは苦笑しながら答えたが、すぐに意味ありげな笑みを浮かべて辛辣な言葉を口にした。



「ええ………肝に銘じます。」

(まあ、エレボニアとクロスベルの状況を考えれば、ランディの態度も当然と言えば当然か……)

ランディの言葉をクレア少佐が素直に受け取っている様子をリィンは静かな表情で見守っていた。

「そして貴方が………」

「よー、あんたがあの名高い”氷の乙女(アイスメイデン)”か!俺は仮面の紳士ってもんだ、よろしくな。」

そしてクレア少佐がランドロスに視線を向けたその時、ランドロスが先にクレア少佐に声をかけた。

「え、ええ。……………えっと、リィンさん、ランドルフ准佐。分校の教官陣の件を知ってから聞く機会ができたら聞こうと思っていたのですが………こちらのランドロス教官もクロスベル出身の方……なのですよね?」

「へ………」

「おい……まさかとは思うが、気づいていないのか?」

困惑の表情をしているクレア少佐の質問にリィンが呆けている中、ランディは信じられない表情でクレア少佐に確認した。

「………?何にでしょうか。」

「えっと……”仮面の紳士”―――ランドロス教官の正体です。」

「勿論正体は知りたいですがその………こちらの変質者―――失礼。随分と変わった趣味の仮面を被った方が一体何者なのでしょうか?」

「変質者って、テメ――――」

「そこの仮面のオッサンはギュランドロス皇帝だぞ!?アンタがまだクロスベルが自治州だった時、”合同演習”の件で脅すつもりが逆に脅されて”鉄血宰相”に対する”宣戦布告”までした”六銃士”の”紅き暴君”ギュランドロス・ヴァスガンだ!」

リィンの指摘に対して戸惑いの表情で答えた後必死に遠回しな言葉を探しながら答えたクレア少佐の問いかけを聞いて驚いたランドロスが声を上げかけたその時、ランディが疲れた表情でランドロスの正体を答えた。



「ギュラン、ドロス皇帝………こちらの、変わった趣味の方が……?――――っぷ、クスクスクス、レクターさんから聞いていた通り、ランドルフ准佐はムードメーカーとしてその場の雰囲気を明るくする事にとても長けているのですね。そもそも、クロスベルの皇帝陛下の一人がこんな場所にいるなんてありえませんよ。」

「だったよなぁ……はっはっは………」

ランディの答えを聞いて呆けてランドロスを見つめたクレア少佐だったがすぐに可笑しそうに笑って答え、ランドロスもクレア少佐に続くように笑っていた。

(…………おい、マジで気づいていないみたいだぞ?)

(……そうみたいだな。正直、まさかあれで本当に騙せる人がいるなんて想像もしていなかったな……それも”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の一人を。)

(そ、そう言えば以前お父様の話でエルミナ様も今回の件同様”仮面の紳士”として正体を隠していたギュランドロス陛下の正体に気づかなかった話を聞いた事がありますわ……)

(エルミナ皇妃は、雰囲気や性格からして相当真面目な女性だったわよね?エルミナ皇妃という”前例”を考えると真面目過ぎる人程、真面目に考え過ぎてギュランドロス皇帝のような”あまりにもわかりやすすぎる変装”に騙されるかもしれないわね……)

(あっはははは!こりゃ、傑作だ!まさかあんなバレバレな変装に騙される大馬鹿がいて、それもクロスベルに戦争を仕掛けようと考える奴の下にいる幹部クラスの一人がその大馬鹿とはね。こんな大馬鹿は間違いなく、ルファディエルの”策”に利用されまくって、その”策”に対抗して自滅するタイプだね。)

一方クレア少佐の反応に冷や汗をかいてリィンと共に表情を引き攣らせたランディは信じられない表情でリィンに小声で囁き、リィンは戸惑いの表情でクレア少佐を見つめ、表情を引き攣らせて呟いたメサイアの念話を聞いたアイドスは苦笑しながら推測を口にし、エルンストは腹を抱えて笑った後口元に笑みを浮かべてクレア少佐を見つめていた。



「―――ここにいたか。リーヴェルト少佐。」

するとその時ミハイル少佐がリィン達に声をかけ、トワやレン、セレーネと共にリィン達に近づいてきた。

「……アーヴィング少佐。お役目、ご苦労様です。トワさんにセレーネさん、それにレン皇女殿下も本当にお久しぶりですね。」

「あはは………NGO絡みだったから、半年ぶりでしょうか?」

「ふふっ、わたくしとお兄様は年始のパーティー以来ですわね。」

「レンは去年の夏至祭にバルヘイム宮のパーティーに呼ばれて以来になるわね♪」

「再会の挨拶は後にしたまえ。そろそろ定刻だが………分校長や博士はどうした?見たところ報告にあった彼女の専用機も未だ分校にすら移送されていないようだが……」

「専用機……ですか?」

(サンドロッド卿専用の機甲兵……俺達も初耳だな。)

(え、ええ………レン教官でしたら、ご存知のような気もしますが……)

(うふふ、リアンヌお姉さんの”専用機”を知ったら、リィンお兄さん達も絶対驚くでしょうね♪)

クレア少佐とトワ達の再会の挨拶を中断させたミハイル少佐の疑問を聞いたトワは不思議そうな表情でミハイル少佐に視線を向け、セレーネはリィンと共に戸惑いの表情をした後レンに視線を向け、視線を向けられたレンが小悪魔な笑みを浮かべたその時

「――――それには及びません。」

リアンヌ分校長がシュミット博士と共にリィン達に近づいてきた。



「ご無沙汰しております。シュミット博士。そしてお初にお目にかかります、リアンヌ卿。」

「フン、TMPの小娘か。」

「ええ。これで”七日戦役”で戦死した貴族連合軍の”総参謀”を除けば”鉄血の子供達(アイアンブリード)”全員と(まみ)えたことになりますから、”子供達”の中で(まみ)えたのは貴女で最後になりますね、”氷の乙女(アイスメイデン)”殿。特別列車の引き渡しと現地までの同道、感謝致します。」

「もったいないお言葉。」

「そ、それよりも分校長、機体を運ばないというのは……」

「必要がないからです。――――今回の演習に私と博士は同行しませんから。」

ミハイル少佐の問いかけに対してリアンヌ分校長は驚愕の答えを口にした。

「………!?」

「ええっ!?そ、そうだったんですか!?」

「て、てっきり来られると思って計画書をまとめたんですけど……」

「ま、待ってください……それでは約束が違うでしょう!?現地での戦力計算は貴女の存在も見込んでいて――――」

リアンヌ分校長の答えにクレア少佐とセレーネは驚き、トワは戸惑いの表情でリアンヌ分校長を見つめ、ミハイル少佐が声を上げて反論をしかけたその時

「だからこそ、です。獅子は子を千尋の谷へという諺もあります。私が同行しては真の意味での成長も望めません。既に情報局にもメンフィル帝国政府を通して伝えてはいますが?」

「フン、地方での演習など私の研究に何の意味がある?各種運用と記録は弟子候補に任せた。微力を尽くしてくるがいい。」

「クク、なかなかガキ共の事をわかっているじゃねぇか。さすがは現代の”鉄騎隊”を育てた女の言う事だけはあるなぁ?」

「ったく、洒落になっていねぇぞ………ハア、あの正真正銘ドチートクラスの強さの”鋼の聖女”が味方だから、戦力面で言えば大分楽ができると思っていたんだがな……」

(くっ………)

(……そろそろ定刻です。後の対応は分隊に任せて出発するしかないかと。)

リアンヌ分校長の言葉にランドロスが感心している中、ランディは疲れた表情で肩を落とし、リアンヌ分校長とシュミット博士の正論に反論できないミハイル少佐が唇を噛みしめているとクレア少佐がミハイル少佐に助言をし

(……了解だ。ええい、なんと厄介な……!)

クレア少佐の助言に頷いたミハイル少佐は疲れた表情で呟いた。



午後8:55――――



そして出発の定刻が近づくと、集合した生徒達はリィン達教官陣とクレア少佐が見守っている中リアンヌ分校長と、見送りの為に現れたアルフィンとエリゼの激励の言葉を聞いていた。

「―――入学より3週間、いまだ浮き足立つ方もいるでしょう。ですが、先日の機甲兵教練も経て貴方達の扉は更に開かれました。そして古来より旅を人を成長させるともいいます。貴方達が一回り大きくなって還ることを期待しています――――以上です。」

「イエス・マム!!」

「皆さんが全員無事に帰って来る事を心より祈っております。皆さんに女神達の加護を……」

「―――いってらっしゃいませ。どうか、御武運を。」

「はいっ!!」

リアンヌ分校長とアルフィン、そしてエリゼの激励の言葉に生徒達は力強く答えた後次々と列車に乗り始め、リィン達教官陣も生徒達に続くように列車へと向かい始めた。

「ハーシェル教官、マーシルン教官、オルランド教官、ランドロス教官。雛鳥たちのことはよろしくお願いします。」

「……はい!お任せください!」

「うふふ、最低でも”特別カリキュラム”始まって早々”戦死者”を出すような無様な結果を持ち帰ったりはしないわよ♪」

「ま、大船に乗ったつもりでいな!」

「まあ、色々ありそうだが微力は尽くさせてもらうぜ。」

列車に乗る直前で呼び止めたリアンヌ分校長の言葉にトワ達はそれぞれ力強い答えを口にし

「そしてシュバルツァー教官とアルフヘイム教官。貴方達も既に気づいていると思いますが、エレボニアの”流れ”は北方戦役の終結を切っ掛けに変わりました。巨いなる力を持つ者達として流れを見極めてきなさい。己と向き合い―――時に周囲に頼りながら。」

「分校長………」

「…………」

リアンヌ分校長の言葉にリィンとセレーネは呆けていたが

「ええ―――承知しました!」

「はい!」

我に返るとすぐに力強く頷いた。

「兄様……どうか、お気をつけて。セレーネも無理せず、私達の代わりに兄様が無理をしないようにしっかり見ていてね。」

「はい、お任せください……!」

「ハハ………――――ベルフェゴール、リザイラ。俺達がいない間の二人の事は任せたぞ。」

エリゼの言葉とエリゼの言葉にセレーネが力強く頷いている様子を苦笑していたリィンはエリゼとアルフィンの背後を見つめて答え

「ふふふ、言われるまでもありませんよ。それが今の私達の”為すべき事”なのですからね。」

「うふふ、その代わり帰って来たらたっぷり可愛がってもらうわよ♪」

リィンの言葉を聞いて二人の背後の空間から姿を現したリザイラは微笑みながら答え、ベルフェゴールはウインクをし、ベルフェゴールの答えにリィン達は冷や汗をかいた。

「あの、リィンさん………本当にベルフェゴールさんとリザイラさんも連れて行かなくてよかったのですか……?演習は”何が起こるかわからない”との事なのですから、それを考えると生徒の方達の為にもお二人も連れて行くべきだと思うのですが……」

「心配しなくても大丈夫だ。いざとなったらメサイアやアイドスがいるし、俺達教官陣もついている。だから、安心してくれ。」

心配そうな表情で問いかけたアルフィンの言葉に対して優し気な微笑みを浮かべて答えたリィンはアルフィンの頭を優しくなでた。



「ぁ…………」

「……………」

「うふふ、久しぶりに出たわね、リィンお兄さんお得意の”無自覚笑顔での頭なでなで”が♪」

「さすがご主人様♪釣った魚にもちゃんと餌をあげ続けるというマメな事をしているからこそ、ハーレムの維持をできる上、更に増やす事ができるのよ♪」

「というか結婚をしていても未だに無自覚は治ってないんだね、リィン君……」

「だぁっはっはっはっはっ!さすがはあのヴァイスハイトに娘を”自分の女”にする事を認められた男だ!」

「ふふふ、相変わらず私達の期待を裏切りませんね。」

「ア、アハハ………」

「こっの、兄貴族が……ッ!これから”戦場”になるかもしれない場所に向かう俺達に見せつけやがって……!これだからリア充は……ッ!」

「フフ………」

リィンに頭を撫でられたアルフィンが呆けている中エリゼはジト目で二人を見つめ、レンとベルフェゴールはからかいの表情で、トワは疲れた表情で、ランドロスは豪快に笑い、リザイラは静かな笑みを浮かべてそれぞれ答えてリィンを見つめ、セレーネは苦笑し、ランディは悔しそうな表情でリィンを睨み、リィン達の様子をリアンヌ分校長は微笑ましそうに見守り

「―――はい!旦那様達の無事を信じて、旦那様達の帰りをお待ちしておりますわ!―――――ちゅ♪」

「ムッ………―――いってらっしゃいませ、兄様。――――ん……」

我に返ったアルフィンは誰もが見惚れるような笑顔を浮かべてリィンを見つめた後リィンの唇に軽い口づけをし、アルフィンの口づけを見たエリゼは頬を膨らませた後アルフィンのようにリィンに軽い口づけをし、アルフィンとエリゼの行動を見たランディやトワは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「は、はわわわっ!?え、えっと………1年半前よりも更に仲良くなったんだね、リィン君達……」

「畜生―――――ッ!ロイドといい、リィンといい、リア充局長やギュランドロスのオッサンといい、何で俺の周りの野郎に限ってリア充野郎が多いんだよっ!?頼むから、お前達のそのリア充力(パワー)を俺にも分けやがれ!」

「ア、アハハ………(未来のキーアさんの話だとランディさんの未来の伴侶の方はミレイユ大佐との事ですから、あの様子だとまだミレイユ大佐とはお付き合いをされていないようですわね…………というか、ワジさんも一部の層の女性達にとても人気のある方の上課長はソーニャ准将と夫婦だったとの事ですから、よく考えてみたらランディさんの仰る通り特務支援課の男性の方達はランディさんを除けば全員女性と縁がある方達ばかりでしたわね……)

我に返ったトワは頬を赤らめて慌て、ランディは悔しそうな表情で声を上げてリィンを睨み、その様子をセレーネは苦笑しながら見守っていた。

「機甲兵の運用と整備については一通り教えた通りだ。小破程度の通常整備なら何とか一人でやり切るがいい。Z・C・F(ツァイス中央工房)の誇りに賭けてな。」

同じ頃シュミット博士はティータに出発直前の指示を出した後激励の言葉をかけ

「はい………!お任せくださいっ!」

博士の言葉にティータは力強く頷いた。その後リィン達は列車に乗り込み、機甲兵やヴァリマール、そしてパテル=マテルを収納したデアフリンガー号は演習地に向けて出発した。



「フン………物は言いようだな、聖女?生徒、教官合わせて27名―――何人無事に戻ってくることやら。」

デアフリンガー号を見送っていたシュミット博士はリアンヌ分校長に視線を向けて指摘し

「フフ………―――激動の時代に”終焉”を告げる時は迫っています。彼我(ひが)も、(くに)も、老若男女の違いもなく……乗り越えられないのであればどのみち”明日”はないでしょう。」

シュミット博士の指摘に対して静かな笑みを浮かべたリアンヌ分校長は静かな口調で答えた後その場から去っていった―――――




 
 

 
後書き
え~……今回の話でおわかりかと思いますがまさかのクレアが仮面の紳士の正体が本気でわかりませんwwまあ、エルミナの例を考えたらクレアは予想している人もいたかもしれませんが(笑)それと今回エリゼとアルフィンはお留守番ですが、2章から参戦予定となっています。ちなみに二人の護衛を担当しているベルフェゴールとリザイラはアルフィンとエリゼと仮契約状態です。……え?どうやって契約したかって?それは勿論それぞれのキャラ同士とリィンを交えてエウシュリーシリーズ恒例の性魔術で……ゲフンゲフン! 

 

第13話

生徒達がデアフリンガー号で英気を養っている中、リィン達教官陣は演習地到着前のブリーフィングを行っていた。



~デアフリンガー号・2号車―――ブリーフィングルーム~



「―――今回の演習期間は3日間を想定しています。明朝、アルトリザス駅到着後、近郊の演習予定地へと移動―――各種設備を展開後、そのまま各クラスごとのカリキュラムを開始する運びです。」

「なるほど―――この列車がそのまま”拠点”になるわけですね。」

「そのための専用列車、ですか……」

「まあ、合理的っちゃ合理的だな。そのための設備も整ってるみたいだし。」

「ただなぁ、”装甲列車”って言う割には大砲の一つも搭載していないのが名前負けしているよなぁ。」

「あら、奇遇ね。レンも同意見よ。軍関係者の列車なんだから、列車に武装の一つや二つ、搭載してもおかしくないわよね♪」

「あの……レン教官。お願いしますから”カレイジャス”の時のように”持ち主”に無許可でデアフリンガー号に武装を搭載したり、何らかの機能を追加したりしないでくださいね?」

クレア少佐の説明にリィンやトワ、ランディが納得している中不満げな表情で呟いたランドロスの言葉に小悪魔な笑みを浮かべて同意したレンの発言を聞いたリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせたている中、セレーネは疲れた表情で指摘した。



「コホン。各クラスのカリキュラムについては別途、手元の書類を確認してほしい。」

ミハイル少佐の話を聞いたリィン達はそれぞれ書類を確認した。

「……あれ?すみません、Ⅶ組について言及がないみたいですが。」

「あ、本当だ……」

「もしかして、Ⅶ組は普段の授業のようにⅧ組かⅨ組と一緒に、どちらかのカリキュラムに取り組むのでしょうか?」

書類を確認してある事に気づいたリィンはミハイル少佐に指摘をし、リィンの指摘を聞いたトワは目を丸くして書類を再確認し、セレーネは自分の推測をミハイル少佐に問いかけた。

「いや、Ⅶ組については、少々特殊なカリキュラムが用意されている。他クラスとは独立した内容のため演習地到着後、別途ブリーフィングの時間を設けるつもりだ。その際、シュバルツァー教官とアルフヘイム教官に加え、Ⅶ組生徒3名にも同席してもらう。」

「生徒達と一緒にですか。」

「ふーん?思わせぶりじゃねえか?」

「ふふ……あまり構えないで頂ければ。あくまで”特務科”ならではの内容だからと思ってください。」

「特務科ならでは……」

「一体どのような内容なのでしょうね……?」

(うふふ、”あのⅦ組”と同じクラスの名を冠しているから、大体どんな内容なのかレンならわかるけどね♪)

(クク………”特務”科なぁ?あいつらが所属していた名前と似ている事からして、間違いなく関係はあるだろうなぁ。)

「……いずれにしても詳しい話は明日の朝、ですか。」

クレア少佐の言葉にリィンとセレーネが考え込んでいる中既に察しがついていたレンは小悪魔な笑みを浮かべ、ランドロスは口元に笑みを浮かべ、トワは静かな表情で呟いた。



「ああ、サザ―ラント州においても不穏な兆候が現れていると報告がある。分校長が同行しないのは誤算だが……現状の人員でなんとか回すしかあるまい。これは単なる訓練ではない―――あくまで実戦の心持で本演習に挑んでもらいたい。」

「―――了解しました。明日、改めて生徒達に召集をかけます。」

ミハイル少佐の言葉に頷いたリィンは答え

「よろしい、では本日のブリーフィングはこれまでとする。ハーシェル教官、マーシルン教官、ランドロス教官、オルランド教官は今夜中に生徒達への連絡を。各自休息を取り体を休めてくれたまえ―――以上、解散!」

ミハイル少佐の指示と解散を合図にブリーフィングは終了した。その後列車内を見回りながらⅦ組の生徒達に明日についての連絡をしたリィンは明日に備えて、自分に割り当てられている列車の部屋の寝台で休んだ。



4月22日、演習1日目―――



翌朝、デアフリンガー号は第二都アルトリザス駅に到着した。物資などの積み込みのため、30分ほど停車した後、再び発車し……都市の南西近郊にある演習予定地へと向かうのだった。



~アルトリザス駅近辺~



「……到着確認。はぁ……また厄介なタイミングで来たもんだね。」

出発していくデアフリンガー号の様子を見守っていた銀髪の娘は溜息を吐いた後ARCUSⅡを取り出して通信を開始した。

「―――こちら”妖精”。これより遊撃活動を開始する。協力者は既に確保。……もう少し増えるかも?そっちからの”助っ人”も期待できそうだし、心配は無用。じゃあね―――”サラ”。」

銀髪の娘――――旧Ⅶ組の生徒の一人であるフィー・クラウゼルは通信相手との通信を終えるとどこかへと去っていった。



~演習地~



午前6:30―――



演習地に到着後第Ⅱ分校の教官達と生徒達は協力して、演習地に”拠点”を築き、作業が終わるとⅧ組とⅨ組はそれぞれの担当教官達からカリキュラムについての説明を受け、Ⅶ組は担当教官であるリィンとセレーネと共に列車内でカリキュラムについての説明を受けていた。

「――――Ⅷ組戦術科は、戦闘訓練に機甲兵によるミッション演習……Ⅸ組主計科は、通信、補給、救護などの実戦演習を予定している。シュバルツァー教官以下5名、”Ⅶ組特務科”の主要活動は二つ。第一は『広域哨戒』―――現地周辺に敵性勢力がいないかなど、偵察を兼ねた”情報収集活動”だ。そして第二は『現地貢献』―――本演習を現地に肯定的に受け入れてもらうための”支援活動”となる。本分校では、この二つを合わせて『特務活動』と定義している。」

「…………………」

「その、何というか………」

「………軍として合理的なようでそうでないような印象ですね。」

(というか軍に関係するカリキュラムに見せかけていますけど………)

(要は”遊撃士”の真似事――――”特務支援課”や前の”Ⅶ組”とやっている事よね……)

ミハイル少佐の説明を聞いたユウナが呆けている中クルトは戸惑い、アルティナは静かな表情で呟き、ある事に気づいていたメサイアとアイドスは苦笑し

「ははっ……―――なるほど。ようやく理解できました。確かに”Ⅶ組”ですね。発案者もわかった気がします。」

「アハハ……わたくし達が分校に来た経緯や”前のⅦ組”の事を考えると、その方しか思い浮かびませんものね。」

「ふふ……その想像は間違っていないと思いますよ?」

リィンとセレーネの推測を聞いたクレア少佐は苦笑しながら肯定した。



「フン、人数が少ないとはいえ、”灰色の騎士”と”聖竜の姫君”が率いる小隊(クラス)だ。第Ⅱ分校としては確実に結果を出してもらいたいものだな?」

「ええ―――了解しました。察するに、まずは現地の責任者と面会するという段取りですか?」

「話が早くて助かります。アルトリザス市の城館でハイアームズ侯爵閣下がお待ちです。早朝ではありますが、いつ伺っても大丈夫だそうです。」

「まあ……”四大名門”の当主の一人であるハイアームズ候自らが……」

「それは有り難いですね。」

クレア少佐の話を聞いたセレーネは目を丸くし、リィンは静かな表情で呟いた。

「サザ―ラント州を統括する”四大名門”の一角……」

「穏健派とは言われますがエレボニア最大の貴族の一人ですね。」

「”四大名門”って確かあのユーディット皇妃の実家と同じくらいの凄い貴族でしたよね?そ、そんな人にこれから会いに行くんですか?」

「あら、クロスベル出身のユウナさんはエレボニアの”四大名門”についてもご存知なのですね。」

「まあ、クロスベルには”カイエン公爵家”の”当主代理”であるユーディット皇妃殿下がいるのだから、その関係で”四大名門”も知ったんだろうな。………一応、俺とセレーネは面識があるからあまり構える必要はないだろう。―――まずは侯爵閣下に挨拶して”特務活動”に関係する依頼などを伺えばいいんですね?」

クルトとアルティナの話を聞いて驚いている様子のユウナのある言葉を聞いたセレーネは目を丸くしている一方、リィンは納得した様子で呟いてユウナに安心する言葉をかけた後ミハイル少佐とクレア少佐に確認した。



「ああ、それと第Ⅱ分校の到着と演習開始の報告も併せて頼む。地方で演習を行う場合、現地の行政責任者の許可が形式上どうしても必要だからな。」

「了解です。」

「わかりましたわ。」

ミハイル少佐の言葉にリィンとセレーネはそれぞれ頷き

「な、なんかまだ頭がついていけないけど……”特務科”ならではの活動がようやう始められるわけね……!」

「ああ……望むところだ。―――準備は万端です。さっそく出発しましょう。」

「右に同じく、です。」

クルトの言葉を合図にⅦ組の生徒達は立ち上がった。

「気合は十分みたいだな。よし、準備を整えしだい、アルトリザスに向かうぞ。」

その後準備を整えたリィン達は列車から降りた。



「―――アルトリザスに向かうには徒歩で街道を行く必要があります。実はこの後、原隊に戻る前に侯爵閣下と打ち合わせする予定なのでよかったら同行させてください。」

「そういう事なら、是非ご一緒してください。」

「フフッ、短い間ですがよろしくお願いしますね。」

「よろしくお願いします。リーヴェルト少佐。」

「ええ、アルティナちゃんも。」

リィンとセレーネに続くように声をかけたアルティナの言葉に頷いたクレア少佐はユウナとクルトに視線を向けた。

「ユウナさんにクルトさんでしたか。お二人ともよろしくお願いします。」

「は、はい!」

「ええ……こちらこそ。(特務活動といい、気になる事は多いが……ヴァンダールの名に賭けて最善をつくすだけだ。)」

視線を向けられたユウナは緊張した様子で頷き、クルトは静かな表情で頷いた後考え込んでいた。



その後リィン達はクレア少佐と共に街道を歩いてアルトリザスに到着後、ハイアームズ侯爵家の城館へと向かい、ハイアームズ侯爵との面会を始めた。



午前7:00―――



~”第二の白亜”アルトリザス・貴族街・ハイアームズ侯爵城館・執務室~



「―――いや、本当によく来てくれた。サザ―ラント州の統括を任されているフェルナン・ハイアームズだ。リィン君とセレーネ嬢は久しぶりだな。今年の年始のパーティー以来になるね。」

「ええ、お久しぶりです。」

「侯爵閣下も変わらずご健勝そうで何よりですわ。」

年配の男性―――ハイアームズ侯爵は自己紹介をした後リィンとセレーネと再会の挨拶をした。

「セレスタンさんも本当にお久しぶりです。」

「ええ、リィン様。去年、パトリック様を残してアルトリザスに戻ってしまいましたが立派に成長されて卒業なさった様子。これも1年半前の内戦に関わった際リィン様達の影響を受けたお陰でしょう。リィン様やセレーネ様を始めとする”特務部隊”やご学友の方々には感謝してもしきれません。」

「フフ、大げさですわよ。パトリックさんと共にいた時間は本当に短いものだったのですから。」

リィンに視線を向けられたハイアームズ侯爵の傍にいる執事――――セレスタンは恭しく会釈をした後答え、セレスタンの言葉にセレーネは苦笑しながら答えた。



「―――こちらも紹介します。Ⅶ組”特務科”の生徒達です。」

「は、初めまして。ユウナ・クロフォードです。」

「クルト・ヴァンダールです。………お初にお目にかかります。」

「アルティナ・オライオン。よろしくお願いします。」

リィンに自己紹介を促されたユウナ達はそれぞれ自己紹介をした。

「ふふ、君達が新たな”Ⅶ組”というわけか。まさか、ヴァンダール家の御子息までいるとは思わなかった。お父上にはお前にお世話になったお目にかかれて嬉しいよ。」

「……過分なお言葉、恐縮です。」

ハイアームズ侯爵の言葉に対してクルトは謙遜した様子で答えた。



「さて、リーヴェルト少佐。例の話だが……先にリィン君達への話をすませても構わないかな?」

「ええ、勿論です。詳しい状況も知りたいので可能なら同席させて頂けると。」

「ああ、構わないだろう。」

「―――ハイアームズ侯爵閣下。トールズ士官学院・第Ⅱ分校、サザ―ラント州での演習を開始した事をご報告申し上げます。」

ハイアームズ侯爵とクレア少佐の会話が一区切りつくと、リィンが宣言をした。

「了解した。よき成果が得られることを願おう。それと”要請”だが……―――セレスタン。」

「は。どうぞ、お受け取り下さい。」

ハイアームズ侯爵に視線を向けられたセレスタンはリィンに要請書を手渡した。



『重要調査項目』



サザ―ラント州において複数確認された、”謎の魔獣”の目撃情報に関する調査。



「これは……」

「重要調査案件……」

「な、謎の魔獣……?」

(もしかして……)

要請書に書かれているある部分を読み上げたリィンは真剣な表情をし、クルトは静かな表情で呟き、ユウナは戸惑い、ある事に察しがついたセレーネは考え込み

「閣下、これは……」

セレーネ同様既に察しがついていたクレア少佐はハイアームズ侯爵に視線を向けた。

「ここ数日、サザ―ラント州で不審な魔獣の情報が寄せられてね。場所は、このアルトリザス近郊、そして南東のパルムの周辺になる。―――できれば君達に魔獣の正体を掴んでもらいたい。」

「正体、ですか。」

「……重要案件と書かれてあるのですから、やはり普通の魔獣でない可能性が?」

ハイアームズ侯爵の説明を聞いたアルティナは静かな表情で呟き、セレーネは真剣な表情でハイアームズ侯爵に確認した。



「ああ……寄せられた情報によると……”金属の部品で出来たような魔獣”だったらしい。」

「……!」

「それは……」

「やはりですか……」

「……確かなのですか?」

ハイアームズ侯爵の答えを聞いて確信に到ったリィンやアルティナ、セレーネが顔色を変えた中クレア少佐はハイアームズ侯爵に訊ねた。

「見間違いの可能性はあります。ですが、歯車の回るような音を聞いたという情報もありまして。」

「領邦軍にも調査をさせたがいまだ確認はできていなくてね。……もっとも内戦以降、州内の兵士も大幅に減っている。正直な所、十分な調査ができていないという状況なんだ。」

「………………」

「領邦軍の縮小ですか……」

領邦軍が縮小した事がハイアームズ侯爵の口から出ると縮小した原因を知っているクレア少佐や察しがついていたクルトはそれぞれ複雑そうな表情をした。

「よくわからないけど……変な魔獣がうろついているから調べるっていう話ですよね?気味悪がってる人もいそうだし、放ってはおけませんね!」

「ああ……当然だ。―――承知しました。他の要請と合わせて必ずや突き止めて見せます。」

「それと可能ならば、”謎の魔獣”が現れた”原因”についても突き止める所存ですわ。」

「ありがたい……どうかよろしく頼むよ。Ⅶ組・特務科諸君―――サザ―ラント州での特務活動、どうか頑張ってくれたまえ……!

そしてハイアームズ侯爵の激励の言葉を受けたリィン達は執務室から退室した。



~エントランス~



「……それでは私は侯爵閣下との話があるためここで失礼しますね。先程の件についてはTMPや情報局にも伝えるので何か判明したら連絡します。」

「ええ……助かります。」

「できたらより正確な情報が欲しい所ですね。」

「ア、アルティナさん。」

「……?」

(何かあるのか……?)

クレア少佐の言葉にリィンが頷いている中静かな表情で呟いたアルティナの発言を聞いたセレーネが冷や汗をかいている中、事情がわからないユウナとクルトは不思議そうな表情でアルティナに視線を向けていた。

「リィンさん、セレーネさん、アルティナちゃん。ユウナさんにクルトさんも。どうか気を付けて――――演習の成功をお祈りしています。」

「はい!」

「ありがとうございます。……機会があれば、また。」

そしてセレーネとリィンの答えを聞いたクレア少佐はリィン達に敬礼をした後再び執務室へと向かった。



「……なんか、思わせぶりな話が多かったですけど……」

「結局、その魔獣の調査と何をすればいいんですか?」

「他の案件というのもあるようですが?」

「ああ―――改めて説明するか。4人とも、これを見てくれ。」

そしてリィンはセレーネ達に要請書を見せた。



「これは………」

「……………」

「……軍務とは無関係のただの手伝い、ですか?」

要請書に書かれている”要請”を読み終えたクルトは戸惑い、ユウナは呆け、アルティナは困惑の表情でリィンとセレーネに訊ねた。

「ああ、市民からの要請や大聖堂からの要請みたいだな。”必須”と書かれたものはなるべくやった方がいいが……”任意”と書かれたものはやるもやらないも自由だ。ただし、広域哨戒の観点からアルトリザスの街区は一通り回っておくべきだろう。―――それから、こちらが先程の『重要調査項目』の詳細だな。」

アルティナの問いかけに頷いたリィンは重要調査項目についての詳細をユウナ達に見せた。



「この①の魔獣の調査も含めてやるべき”要請”をクリアしたら南にあるパルムへ移動し……そこでの要請も検討しつつ、②と③の魔獣調査を遂行する。―――1日目の特務活動はこんな流れになりそうだな。」

「そうですわね……パルムへの移動時間を考えると午前中に①の魔獣の調査も含めてやるべき”要請”をクリアすべきでしょうね。」

「そうだな……そのぐらいがちょうどいいだろうな。」

「さ、さすがにハードすぎるような……」

「……強行軍ですね。どこまでやり切る必要が?」

リィンとセレーネの説明を聞いたユウナ達は冷や汗をかいた後ユウナはジト目で呟き、クルトは困惑の表情で訊ねた。

「そうだな―――任意の要請については君達3人の判断に任せよう。俺とセレーネはあくまで教官として見守らせてもらうだけにするから話し合って決めるといい。」

「勿論、”必須”の要請と魔獣の調査の件を踏まえて、話し合って下さいね。」

リィンとセレーネの話を聞いたユウナ達はそれぞれ目を見開いた。



「……なるほど。そういう方針ですか。」

「そもそも必須でないなら対処する必要もないのでは?」

「い、いやいや!困ってる人がいるならそうも行かないでしょ。まだ8時だし――――」

そしてユウナ達が話し合いを始めるとその様子をリィンとセレーネはかつてクロスベルで”特務支援課”として活動していた自分達と思い出して、ユウナ達と重ね合わせていた。

(……懐かしい光景ですわね。)

「(ああ……内戦の時といい、俺達は”こういう事”に縁があるかもしれないな。)まあ、その調子で3人で考えておいてくれ。―――それではⅦ組特務科、最初の特務活動を開始する。演習地に残った他のクラスにいい報告ができるといいな?」

セレーネに囁かれたリィンは頷いた後ユウナ達に活動の開始を宣言し、そして若干挑発も交えた問いかけをユウナ達にした。

「っ……言われなくても!」

「無論、最善は尽くします。」

「行動開始、ですね。」

リィンの言葉にそれぞれ目を見開いたユウナ達はそれぞれ返事をした後、特務活動を開始した―――――






 

 

第14話



~アルトリザス・聖堂広場~



”要請”の一つの猫探しで町中を歩き回っていたリィン達は空港の近くまできた。

「聖堂広場の空港方面………この近辺でしょうか。」

「うーん、こっちの方に向かったって話だけど……」

リィン達はとりあえず、周囲を探したが目当ての猫は見つからなかった。

「……駄目だ、見当たらないな。」

「それらしい気配もなさそうだ。多分、移動したのかもしれない。」

「そうですわね……わたくしも猫のような小さな魔力の持ち主もある程度の距離にいたら感じられますが、今も感じませんから、この周辺にはいないでしょうね。」

「それがわかるのもどうかと思いますけど……でも、ひょっとして空港の敷地へと入っちゃったのかな?」

「だとすれば……かなり広大でしょうし、捜索は難航しそうですね。」

一通り探し終えたクルトは溜息を吐き、考え込みながら呟いたリィンとセレーネにジト目で指摘したユウナは推測を口にし、アルティナが今後の捜索状況の推測を口ににしたその時

「なに、ネコ探してるの?」

赤毛の娘が空港方面から歩いてリィン達に近づいてきた。



「ッ!」

「……………」

「あ、えっと……」

「貴女は……?」

赤毛の娘の顔を見たセレーネは息を呑み、リィンは真剣な表情で黙って娘を見つめ、二人の様子に気づいていないユウナは戸惑いの表情で娘を見つめ、クルトは娘に問いかけた。

「アハハ、ただの通りすがりだけどね。さっきそこにいたネコと遊んでたから気になってさ。」

「ホ、ホントですか?」

「ちなみにその猫の特徴は……」

娘の言葉を聞いたユウナは驚き、アルティナは娘に訊ねた。

「明るいクリーム色の子猫だったけど。ちょっと遊んであげたら満足して行っちゃったんで、空港(そっち)にはいないと思うよ。」

「そうですか……特徴もドンピシャだし。」

「……ちなみにどちらへ去っていったかはわかりますか?」

「うーん、南西の住宅街になるのかな?飼い猫みたいだし、ご主人のとこに戻ろうとしてるのかもね。でもあのくらいの子猫だとまた迷いっちゃいそうな気もするけど。」

リィンの質問に対して娘は少しの間考え込んだ後推測を答えた。



「ありがとうございます。……元の街区に戻ったみたいだな。」

「でも、まだ迷ってそうだし、こうなったら虱潰しに捜すしかないかも!」

「非効率的ですが、現状では仕方ありませんね。」

「フフ、ならお姉さんからの助言(アドバイス)。イヌと違ってネコは人見知りだし臆病だからね。また迷ったとしたら、人通りの少ない方に向かう可能性が高いよ。そういった場所を捜してみるといいんじゃない?」

猫をまだ探す様子のクルト達を見た娘はクルト達に助言をし

「そうか……はい、わかりました!」

「……色々ありがとうございます。」

「助言までして頂き、本当にありがとうございました。」

「ふふっ、それじゃあ早く見つけてあげるんだね。」

そして娘はその場から去っていった。



「うーん、このあたりじゃ珍しそうなお姉さんだったわね。格好もベルフェゴールさん程じゃないにしても、大胆で攻めてるっていうか。」

「まあ、間違いなく旅行者だろうな。帝都あたりか、もしくは外国人かもしれない。」

「「………………」」

「……教官?」

娘の事についてユウナとクルトが話し合っている中、真剣な表情で黙って去っていく娘の後ろ姿を見つめていたリィンとセレーネに気づいたアルティナは不思議そうな表情で声をかけた。

「いや、何でもない。―――それより南西の住宅街か。一度、戻ってみるか?」

「ええ、もちろん!」

「人通りの少ない場所……何とか探してみよう。」

その後リィン達は娘の助言通り人通りの少ない場所を探してみると猫が見つかり、猫は私有地内にいた為、依頼人を呼んで来て猫を呼んでもらうと猫は私有地から出てきて依頼人の元へと戻り、要請を完了したリィン達は特務活動を再開した。



~北アルトリザス街道~



その後街での要請を終えたリィン達は魔獣調査をする為に報告書にあった場所の内の一か所に向かい、到着した。

「えっと、このあたりが報告書にあった場所かな?」

「北アルトリザス街道の外れ、第二都から50セルジュの地点……距離的には間違いなさそうだ。」

「………………」

「”魔獣”の気配は無さそうだが……(セレーネ、何か聞こえるか?)」

(………!ええ、聞こえま――――)

「で、何なんです?さっきから3人して。」

「どうやら謎の魔獣について心当たりがありそうですが?」

生徒達が周囲を見回している中生徒達と共に周囲を見回していたリィンはセレーネに念話を送り、リィンの念話に対して目を閉じて集中していたセレーネが答えかけたその時、ユウナとクルトがリィン達に訊ねた。



「心当たりというか蓋然性の問題ですね。」

「”歯車の音”をきしませる”金属の部品でできた魔獣”……他の可能性もあるかもしれないが、十中八九―――」

「!皆さん、構えてください!――――来ます!」

「Ⅶ組総員、戦闘準備!」

そして二人の質問にアルティナとリィンが答えたその時何かに気づいたセレーネはリィン達に警告し、警告を聞いたリィンは号令をかけて太刀を構え、ユウナ達も続くように武装を構えた。

「……!?」

「こ、これって……」

「的中、ですか。」

武装を構えた瞬間何かの音が聞こえ、音を聞いたクルトとユウナが驚いている中アルティナが静かな表情で呟いたその時、人形兵器達がリィン達の前に現れた!

「機械の魔獣……!?」

「ち、違う……!もしかしてクロスベルにも持ち込まれたっていう……!?」

「ああ――――結社”身喰らう蛇”が秘密裏に開発している自律兵器……”人形兵器”の一種だ……!」

「『ファランクスJ9』―――中量級の量産攻撃機ですね。」

(もしかしてシャーリィさんがアルトリザスにいた事と関係しているのでしょうか……?)

そしてリィン達は人形兵器達との戦闘を開始し、協力して撃破した。



「っ……はあはあ……」

「くっ……兄上から話を聞いた事はあったが……」

「戦闘終了。残敵は見当たりません。」

戦闘が終了し、ユウナとクルトが息を切らせている中アルティナは淡々とした様子で報告をし

「みんな、よく凌いだな。」

「お疲れ様です、皆さん。」

リィンとセレーネはそれぞれの武器を収めて生徒達に労いの言葉をかけた。

「って、それよりも!どうして”結社”の兵器がこんな場所にいるんですか!?」

「エレボニアの内戦でも暗躍し、メンフィルに滅ぼされたという謎の犯罪結社……まさか、その残党がこの地で再び動き始めているという事ですか?」

「可能性はある―――だが、断言はできない。開発・量産した人形兵器を闇のマーケットに流しているとも噂されているからな。」

「現にユウナさんもご存知かもしれませんが、かの”ルバーチェ”も結社が量産した人形兵器を手に入れ、警備代わりに”ルバーチェ”の拠点に人形兵器を徘徊させていたとの事ですわ。」

「以前の内戦で放たれたものが今も稼働している報告もあります。現時点での確定は難しいかと。」

「……なるほど。」

「はあ、だからクレア少佐もシリアスな顔をしてたわけね……」

「―――へえ、大したモンだな。」

リィン達が人形兵器の事をユウナとクルトに説明していると飄々とした声が聞こえ、声に気づいたリィン達が視線を向けると中年の男性がリィン達に近づいてきた。



「………?」

「あなたは……」

「おーおー、あの化物どもが完全にバラバラじゃねえか。お前さん達がやったのかい?」

男性の登場にアルティナとリィンが戸惑っている中、男性はリィン達に問いかけた。

「えっと、そうですけど……」

「手こずりましたが、何とか。」

「どうやらお揃いの制服を着ているみたいだが……ひょっとしてトールズとかいう地方演習に来た学生さんたちかい?」

「知ってるんですか!?」

「どこかで情報を?」

初対面の男性が自分達の事を知っている事にユウナは驚き、アルティナは男性に自分達を知っている理由を訊ねた。



「ああ、仕事柄そういう噂は仕入れるようにしててなぁ。しかし大したモンだ。随分、優秀な学校みたいだな?」

「ま、まあ、それほどでも。」

「まだまだ修行不足です。」

男性の高評価にユウナは照れ、クルトは謙遜した様子で答えた。

「――――トールズ士官学院・第Ⅱ分校、”Ⅶ組・特務科”です。自分とこちらの女性は教官で、この子達は所属する生徒たちとなります。あなたは……?」

「ああ、俺は何て言うか”狩人”みたいなもんだ。さすがに魔獣は専門外だが手配されて、倒せそうだったら仲間を集めて退治することもある。この魔獣どもも、噂を聞いて調べに来たんだが、まさか機械仕掛けとはなぁ。確か”人形兵器”ってヤツだろう?」

「ご存知でしたか……」

「一体どちらでその情報を耳にされたのですか?」

一般人と思われる男性が人形兵器を知っている事にリィンは若干驚き、セレーネは知っている理由を訊ねた。

「いや、前の内戦の時に妙な連中が放ったそうじゃねえか。俺の仲間うちじゃずいぶんと噂になってたぜ?」

「やっぱりそうなんだ………」

「……以前から各地で徘徊していたという事か……」

「ま、この辺りにはもういないみてぇだし、他を当たってみるかね。って、ひょっとしたらお前さん達も捜してるのか?」

「ええ……演習の一環としてですが。人形兵器に限らず、何かあったら演習地に連絡をいただければ。各種情報に、戦力の提供―――お手伝いできるかもしれません。」

「ハハ、そいつはご丁寧に。―――そんじゃ、俺は行くぜ。お前さん達も頑張れよ。」

「あ、はいっ!」

「そちらもお気をつけて。」

そして男性はリィン達に応援の言葉をかけた後、軽く手を振りながらその場から去っていった。



「ふふっ……面白いオジサンだったね。大きいのに飄々としてたからかあんまり強そうじゃなかったけど。」

「……少なくとも武術の使い手じゃなさそうだ。”狩人”と言ってたけど罠の使い手なのかもしれない。」

「”罠”ですか。」

「…………………」

「お兄様、どうかされたのですか?」

生徒達が去っていった男性の事について話し合っている中黙って考え込んでいるリィンが気になったセレーネは不思議そうな表情でリィンに問いかけた。

「ああ……少し、な。……念のため、近くに”残存”がいないか確認しよう。周囲1セルジュ内でいい。」

「……?まあ、別にいいですけど。」

「索敵を再開します。」

その後念の為に周囲を確認していたリィン達は行き止まりに到着した。



「行き止まり……?」

「あれ、おかしくない?さっきのオジサン、こっちから歩いてきてたよね―――!?えっ……!?」

男性が歩いてきた方向が行き止まりであった事に首を傾げたユウナはふと崖下を見ると信じられない光景があり、驚きの声を上げた。

「ユウナさん?」

「一体どうした――――」

ユウナの様子を不思議に思ったクルトとアルティナもユウナに続くように崖下を見ると、そこには先程自分達が戦った人形兵器達の残骸がいくつもあった。

「さ、さっきの人形兵器……?」

「ああ……なんて数だ。」

「……まだ微かに煙を発していますね。」

「―――やっぱりか。」

人形兵器達の残骸にユウナ達が驚いている中、リィンはユウナ達に近づいて静かな表情で呟いた。



「や、やっぱりって……あのオジサン、何者なんですか!?」

「まさか”結社”の……いや―――」

「”結社”の人間なら人形兵器を破壊するのは不自然かもしれません。」

「ああ、予断は禁物だ。いずれにせよ、あの口ぶりだとパルム方面でも遭遇する可能性もあるかもしれない。」

「そうですわね……パルム方面には目撃情報が2件もありますもの……」

「……そちらも人形兵器である可能性は高そうですね。」

リィンの予想を聞いたセレーネは頷いて考え込み、クルトは推測を口にした。

「―――いずれにせよ、まだ”必須”の要請が残っている。そちらを達成したら頃合いを見てパルムに向かおう。」

「……了解しました。」

「くっ、まさかこんな場所で人形兵器に出くわすなんて……」

「警戒レベルを引き上げた方が良さそうですね。」

その後リィン達は特務活動を再開し、”必須”の要請である七耀教会からの依頼―――”薬草の採取”の実行の為に薬草がある”シュタット大森林”に訪れていた。



~シュタット大森林~



「あっ……もしかしてあれなんじゃない!?」

「青紫の花弁……ラベンダーの特徴ですね。要請にあった『エリンの花』で間違いないかと。」

森林の奥地に到着し、薬草らしき花を見つけたユウナは声を上げ、花の特徴をよく見たアルティナは静かな表情で答えた。

「はあ、いい香り……確かにラベンダーの一種みたい。」

「ああ……ずいぶん落ち着く香りだな。」

風に乗って来た花の香りをかいだユウナとクルトは静かな笑みを浮かべた。

「目的地に到着だ。あとはこの薬草カゴに―――いや、まだだ!」

「―――来ます!」

するとその時何かの気配や音に気づいたリィンとセレーネが警告の声を上げたその時、大型の蜘蛛の魔獣の群れがリィン達を包囲した!

「ク、クモの群れ……!?」

「囲まれたか……!―――どうします、教官!?」

「問題ない。―――このまま迎撃する!各員、背後に気を付けつつ各個撃破に務めてくれ!」

「それと要請にあった薬草も含めて周囲に可燃物がある状況ですので、火属性アーツや火炎魔術の使用はできる限り控えてください!」

「りょ、了解です……!」

「迎撃を開始します……!」

そしてリィンの号令とセレーネの助言を合図にリィン達は戦闘を開始した!



「「「…………」」」

蜘蛛の魔獣達はそれぞれリィン達に脚で攻撃したり、糸を吐いて攻撃したりした。

「!」

「この……っ!」

「クラウ=ソラス。」

「―――――」

魔獣が自分に向けて吐いた糸の攻撃はリィンは側面に跳躍して回避し、脚による攻撃はユウナは自身の武装で、アルティナはクラウ=ソラスに受け止めさせて防いだ。

「二の型―――疾風!!」

「―――失礼!えいっ!!」

「風よ……!ハァァァァァ……ッ!――――斬り刻め!!」

反撃にリィンは電光石火の攻撃で敵全員を攻撃し、セレーネは全身に氷の魔力を纏って全身を回転させて足払いをして攻撃するクラフト―――アイスアラウンドで、クルトは双剣に風の魔力を纏わせて無数の斬撃と共に鎌鼬を生み出すクラフト―――エアスラッシュでそれぞれの敵を攻撃した。

「崩した!」

「頂き!」

「崩しましたわ!」

「追撃します!」

セレーネとクルトとそれぞれ戦術リンクを結んでいたユウナとアルティナはセレーネとクルトの攻撃が終わるとそれぞれ追撃を敵に叩き込んだ。



「「「……………」」」

「逃がさないわよ……!――――ヤァァァァッ!!」

「ダークアーム―――斬!!」

「―――――」

敵達は反撃をしようとしたがユウナが放った広範囲を銃撃するクラフト――――ジェミニブラストとアルティナに指示をされて放ったクラウ=ソラスに闇の魔力刃で広範囲を攻撃させるクラフト―――ダークアームを受けて怯み

「二の型―――大雪斬!!」

「そこですっ!―――スパイラルピアス!!」

「ハァァァァ……これで、沈め――――黒鷹旋!!」

リィンのクラフトを受けた敵は一刀両断され、セレーネのクラフトを受けた敵は細剣で急所を貫かれ、クルトのクラフトを受けた敵は双剣か放たれた漆黒の闘気の刃を受けた事によって上下が真っ二つになってそれぞれ消滅して、セピスを落とした!



「―――戦闘終了。残敵も見当たりません。」

「よし―――お疲れだ、みんな。」

「見た所怪我は誰もされていないようですわね。」

「ふう、びっくりしたぁ~………あんな数で出てくるなんて。」

「魔獣の凶暴化……噂は確かみたいだな。この森に上位属性が働いているのと何か関係があるんでしょうか?」

戦闘が終了し、ユウナが安堵の溜息を吐いている中クルトは疑問をリィンとセレーネに訊ねた。

「いや、見たところ大昔から霊的な場所ではあるんだろう。何が原因かはわからないが……まずは用事を済ませるとするか。」

「ええ、『エリンの花』ですね!それじゃあ、手分けしてさっさと集めちゃうとしましょ!」

「了解です。」

「ふふっ、勿論周囲の警戒を怠らずに収集してくださいね。」

その後リィン達は薬草を手分けして収集した。



「―――これで目標達成だ。あまり待たせても悪いし、アルトリザスに戻るとしよう。」

「そうですわね。”任意”の要請にあった魚も手に入れましたから、この森林での用事はもうありませんね。」

「ふう……了解です。綺麗だし良い香りもするけどとっとと帰った方がいいかも……」

「ああ、さっきの魔獣もそうだが、何が起こるかわからないというか……」

「……特に何も感じませんがこれ以上の滞在は無意味かと。」

「よし、それじゃあ―――――っ……!?」

アルトリザスに戻る指示をリィンが出そうとしたその時、突如リィンの心臓がドクンと鼓動をし、リィンは思わず胸を抑えて地面に跪いた。

「……!?」

「お兄様……!?」

「え……」

「教官……!?」

リィンの突然の様子に生徒達が驚いている中セレーネとアルティナがリィンに駆け寄り

「だ、大丈夫だ―――」

自分を心配するセレーネ達にリィンが答えかけたその時、何とその場の空間が突如緋色に染まった!

「!?これは………!あ…………」

突然の出来事に驚いたリィンはセレーネ達がしゃべらない所か、全く動く事がない様子に気づき、更にいつの間にか自分の傍に現れた金髪の少女に気づいて呆けた声を出した。



「……どうやら”結界”に反応したようじゃの。」

「……君は………」

金髪の少女の言葉が静かな表情で呟いている中、リィンは戸惑いの表情で少女を見つめていた。

「フフ……聞いていた通りか。じゃが、物事には然るべき順序というものがある。見たところ、ヌシの因果はようやく再び回り始めた様子……」

リィンを見つめて妖しげな笑みを浮かべた少女がリィンに近づこうとしたその時

「―――止まりなさい!リィン様に何をするおつもりですか!?」

「―――まずは貴女が何者なのか、名乗ってもらうわよ。」

メサイアとアイドスがそれぞれ自分達から現れてそれぞれの武器を少女に向けた。



「メサイア……アイドス……二人はこの空間の影響を受けていないのか……?」

「ええ、私は自力で影響を受けないように防いだけどメサイアはリィンの身体や魔力と同化していたお陰でしょうね。」

「……まさかこのような芸当を”彼女”以外にできる人物がいるとは思いもしませんでしたわ。」

自分達の登場に驚いているリィンにアイドスは静かな表情で説明し、メサイアは警戒の表情で少女を見つめながら呟いた。

「ほう………ヌシ達が話に聞いていたクロスベルの覇王と聖女の娘とかの”オリンポス”の星女神の末妹神か。――――なるほど。慈悲の女神の持つその”真実”を見極める”十字架(けん)”はまさに”神剣”と呼ばれて当然の莫大な霊力(マナ)を宿しておるの。」

一方武器を突き付けられた少女は興味ありげな様子でメサイアとアイドスを見つめ

「え……っ!?」

「……どうやらその口ぶりだとリィンだけではなく、私達の事も”私達の事を知っている誰か”から聞いたようね。」

少女が自分達の事まで知っているような口ぶりにメサイアが驚いている中、アイドスは静かな表情で呟いて少女を見つめた。

「フフ……そう睨まなくてもヌシ達の愛する男に危害を加えるつもりはない。」

「……確かに敵意等は感じられないわね。――――メサイア。」

「……わかりましたわ。」

少女の言葉を聞き、少女から敵意等が一切感じられない事を悟ったアイドスはメサイアに視線を向けた後それぞれリィンの身体と神剣に戻り、アイドスとメサイアが戻ると少女はリィンに近づいてリィンの頬に口づけをした。



「…………ぁ………(何か流れ込んでくる……?)」

少女の口づけによって自身の身体に何かが流れ込んでくることを感じたリィンは呆け

「フフ、ほんの心付けじゃ。―――此れより先はまだ早い。いずれ(まみ)えようぞ―――”灰の起動者(ライザー)”よ。」

リィンから離れた少女が意味深な言葉を残して消えた瞬間、空間は元に戻った。



「っ……!?」

「ちょ、ちょっと………………リィン教官!?」

「っ………大丈夫ですか……!?」

「えっと……その……もしかして、”あの力”を抑える為の”行為”が必要なのですか………?」

突然の出来事にリィンが驚いている中ユウナとアルティナは心配そうな表情でリィンに声をかけ、セレーネは生徒達を見まわした後頬を僅かに赤らめて気まずそうな表情でリィンに訊ねた。

「ああ、いや―――すまない、少しつまずいただけさ。それより……今、”そこに誰かいたか?”」

ユウナ達の言葉に対して苦笑しながら答えて立ち上がったリィンは少女がいた場所に視線を向けてユウナ達に訊ねた。



「へ……!?」

「それはどういう――――」

「……僕達5人以外、誰もいなかったと思いますが?」

(まさかとは思いますがミントさんのように”この周囲の空間を停止”させた何者かがお兄様に接触を……?)

リィンの質問にユウナ達が戸惑っている中ある事を察したセレーネは心配そうな表情でリィンを見つめた。

「そうか……そうだよな。まあいい、とにかくアルトリザスに戻るとしよう。この深い闇……何が現れるかわからないからな。」

「だ、だからそういう事を言わないでくださいってば!」

「ふう、とにかく森から出ましょうか。」

そして森から出る為にユウナとクルトが先に歩き始めた中、アルティナとセレーネは二人の背中を見守っているリィンに声をかけた。

(……大丈夫ですか?幼い頃のマスターの”力の暴走”のことはエリゼ様達から伺っていましたが、もしかして先程の出来事が……?)

(その……本当に性魔術で、お兄様に秘められている”力”を発散させなくても大丈夫ですか?)

(いや、本当に問題ない。”力の暴走”に関してはリウイ陛下達による特訓やエリゼやセレーネ達との性魔術で”力”の制御や発散ができるようになって以降、一度も無かった。心配させて済まない。二人とも特務活動に専念してくれ。)

(……はい。)

(……わかりましたわ。ですがもし性魔術が必要でしたら、いつでも申し出てくださいね。)

心配する二人に答えたリィンはユウナとクルトの後を追って行く二人に続くように歩き始めたが立ち止まって少女がいた場所に視線を向けた。

(……人か、魔か。確かに”何か”がいた筈だ。”記憶がないのは”ゾッとしないが嫌な感じはしていない……今は気に留めておくだけにしておくか。)

(…………メサイアだけでなく、私の正体や神剣(スティルヴァーレ)の事を知っている事………対象以外の時空間を停止させる程の高度な結界魔術の使い手……まさか先程の”彼女”はエマ達の関係者なのかしら……?)

少しの間考え込んだリィンは再び歩き始めてユウナ達の後を追い、アイドスは真剣な表情で少女の正体について考え込んでいた――――――




 

 

第15話



その後アルトリザスに戻って来たリィン達は大聖堂から聞こえて来るバイオリンの演奏が気になり、報告するついでにバイオリンの演奏を観賞する為に大聖堂の中に入った。



~七耀教会・アルトリザス大聖堂~



「ぁ……………………」

「うわぁぁ~~っ………!」

リィン達が聖堂に入ると何と、エリオットがたった一人でバイオリンの演奏をし、多くの人々がエリオットの演奏を観賞していた。

「あの方は……」

「……やっぱりか。」

「フフ、話には聞いていましたが、まさかこれ程の腕前だったなんて。」

「え―――」

エリオットを知っているような口ぶりで呟いたアルティナやリィン、セレーネの言葉を聞いたユウナは呆けた表情でリィン達に視線を向けた。その後も演奏は続き、エリオットが演奏を終えると観賞していた人々は大喝采をし、大喝采を受けたエリオットは恭しく頭を下げた後リィン達に気づくとウインクをした。

「い、今のって……」

「聞いた事がある……帝都でデビューしたばかりの天才演奏家がいるって。―――察するに教官達のお知り合いですか?」

「ああ……―――エリオット・クレイグ。トールズ旧Ⅶ組に所属していた君達の先輩にあたる人物さ。」

その後リィン達は観賞していた人々がが帰路についている中、エリオットにユウナ達を紹介した。



「―――初めまして。新しいⅦ組のみんな。前のⅦ組に所属していたエリオット・クレイグだよ、よろしくね。」

「……お噂はかねがね。Ⅶ組出身とは知りませんでしたが。」

「よろしくお願いします……!演奏、とっても素敵でした!」

「あはは、ありがとう。君達のことは先週、リィン達から聞いたばかりでね。アルティナとは実際にこうして顔を合わせるのは久しぶりだけど……うーん、ずいぶん雰囲気が違うねぇ?」

興奮している様子のユウナの言葉に対して苦笑しながら答えたエリオットはアルティナに視線を向け

「まあ、1年半前と比べると身体的に成長していますし、服装も若干異なりますので。」

視線を向けられたアルティナは静かな表情で答えた。



「それにしても、まさかこんな場所で改めて再会できるなんて思いもしませんでしたわ。巡業旅行で回られているのでしょうか?」

「うん、さっきアルトリザス駅に到着したばかりでね。この大聖堂を拠点に数日ほど活動する予定にしているんだ。リィン達の演習に重なったのはちょっとラッキーだったかな?」

セレーネの問いかけに頷いたエリオットは笑顔を浮かべ

「ああ、そうだな。……ラッキーというにはタイミングが良すぎる気もするが。」

「た、確かにそうですわね……」

「ステラさんとフォルデさんがセントアークを訪れている事を考えると、あまりにもタイミングが良すぎますね。」

リィンも頷いた後苦笑し、リィンの言葉にセレーネとアルティナはそれぞれ同意した。

「ギクッ……あはは、何のこと?」

「???」

「………………」

リィン達の言葉に対して一瞬表情を引き攣らせた後苦笑で誤魔化したエリオットの様子をユウナは不思議そうな表情で見つめ、クルトは静かな表情で見つめていた。



「まあ、それはともかく今はちょうど忙しくてさ。改めて連絡するけど会う時間は作れそうか?」

「うん、大丈夫だと思う。夜になっちゃいそうだけど。実はこれからここで―――」

「すみません、エリオットさん。子供達がそろそろ……」

リィンの問いかけに頷いたエリオットが説明をしようとしたその時シスターが近づいてきてエリオットに話しかけた。

「あ、はい。こちらは大丈夫です。――実はアルトリザスの子供達に演奏のコツを教える事になってさ。」

「わぁ……演奏教室ですか!」

「そうか……子供達も喜ぶだろうな。」

「ええ……先程の演奏もきっと観賞していたでしょうから、皆さん、首を長くしてエリオットさんをお待ちしているでしょうね。」

「ふふっ、君達は特別演習――――じゃなくて”特務活動”だったっけ。初日みたいだし、無理しすぎないように頑張ってね?」

その後エリオットは聖堂にある日曜学校で使われる教室を借りて子供達に演奏について教え始めた。



「大盛況ですね。」

「デビューしたばかりなのにあんなに人気があるなんて……」

「レコードの売り上げもかなり良いとは聞いたけど……」

エリオットの演奏教室を見守っていた生徒達はエリオットの演奏教室に多くの子供達や保護者達が集まっている様子を見て驚き

「ああ、先月出たデビューアルバムのことだな。」

「わたくしやお兄様も購入して観賞しましたけど、とても癒される演奏でしたわ。」

リィンの言葉に続くようにセレーネは微笑みながら答えた。

「ふふ、まさか皆さんがお知り合いだったなんて。―――お願いしていた物も無事採取されたそうですね?部屋で大司教がお待ちですのでよろしくお願いしますね。」

「あ、はい!」

「それじゃあ届けるか。」

その後薬草を依頼人である大司教に届けたリィン達はパルムに向かう為に駅に向かったが、脱線事故が起こった為しばらく列車は動きそうになく徒歩でパルムに向かおうとしたが、そこにセレスタンが現れ、列車の代わりの移動手段としてリィン達の為にハイアームズ侯爵が馬を用意したとの事で、リィン達はハイアームズ侯爵の好意に甘えて馬に騎乗してパルムに向かい始めたが、途中経過を報告する為に演習地に寄った。



午後12:50――――



~演習地~



「チッ……まさか人形兵器が本当にうろついていたとはな。しかもその中年オヤジ、どう考えても只者じゃねえだろ。」

演習地に戻って来たリィン達の報告を聞いたランディは舌打ちをした後厳しい表情をした。

「ええ、飄々としてましたけどそれが逆に底知れないっていうか……人形兵器を倒したってことは結社関係じゃなさそうですけど。」

「そうか……―――1年半前の内戦で放たれた可能性もあるんだよな?」

「ええ……今までも何件か各地で報告されていますね。その意味で、結社の関与を決めつけるのも早計ですが………」

「―――それはどうかしらね?」

ランディの問いかけに頷いたトワが答えを濁したその時、レンは静かな表情で意外な事を口にした。



「え………」

「ほう?それは一体どういう意味だ?」

レンの指摘にトワが呆けている中ランドロスは興味ありげな様子でレンに訊ねた。

「うふふ、だってリィンお兄さん達は”アルトリザスで既に結社関係と思われる人物とも会っているもの。”」

「ええっ!?あ、あたし達がアルトリザスで……!?」

「一体誰の事―――いえ、それ以前に何故レン教官はアルトリザスで僕達が会った人物達を把握しているのですか?」

「レ、レン教官、まさか……」

「”例の能力”を使ったんですか……」

「幾ら教官とはいえ、わたし達に許可なくその能力を使うなんて、プライバシーの侵害だと思うのですが。」

レンの答えを聞いたユウナは驚き、クルトの質問を聞いてレンが自分達の記憶を読み取った能力を使った事を悟ったセレーネは表情を引き攣らせ、リィンは疲れた表情で溜息を吐き、アルティナはジト目で指摘した。



「レン教官の”例の能力”……ですか?」

「一体どんな能力なんですか?」

「うふふ、それはヒ・ミ・ツよ♪―――それよりもリィンお兄さんとセレーネは空港で出会った人物をみんなにも教えてあげたら?特にその人物がアルトリザスにいる事はランディお兄さんにとっても他人事じゃないし。」

クルトとユウナの疑問を小悪魔な笑みを浮かべて誤魔化したレンはランディに視線を向けて意味ありげな笑みを浮かべ

「へ……ランディ先輩にとって他人事じゃないって、どういう事なんですか??」

「おい、まさかとは思うが………」

レンの言葉にユウナが首を傾げている中既に察しがついていたランディは目を細めてリィンとセレーネを見つめた。

「はい………”任意”の要請の最中にアルトリザスの空港方面でシャーリィさんと会いましたわ。」

「クソッ………演習初日早々で奴かよ。」

「ほう?パティとルイーネにボロ負けしたというあの小娘か。」

そしてセレーネの答えを聞いたランディは厳しい表情である人物の顔を思い浮かべ、ランドロスは不敵な笑みを浮かべた。



「え、えっと……?」

「空港方面と言うと………仔猫の捜索の時に助言をしてくれた女性の事ですか。教官達はその女性の事を知っている様子ですが、一体何者なのでしょうか?」

ランディとランドロスの様子にユウナが戸惑っている中クルトは真剣な表情で訊ねた。

「”シャーリィ”という人物にオルランド教官が関係している………―――なるほど。という事はあの人物が”赤い星座”の”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”だった為、教官達は彼女を警戒していたのですか。」

するとその時アルティナは静かな表情で呟き

「あ、”赤い星座”ですって!?しかもあの人が”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”だったなんて……!」

「えっと……その様子だとユウナちゃんは”赤い星座”について知っていたの……?」

アルティナの話を聞いて血相を変えて立ち上がったユウナの反応を見て、ユウナが”赤い星座”を知っている事を意外に感じたトワは目を丸くしてユウナに訊ねた。

「あ、当たり前ですよ!”赤い星座”………”D∴G教団”事件後にクロスベルに居座り始めた猟兵団で、”西ゼムリア通商会議”の件でクロスベルから追い出された後黒月(ヘイユエ)や結社の猟兵達と一緒にクロスベルを襲撃したクロスベルにとって超極悪人の集団です!しかも”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”はその超極悪人の集団の中でもとんでもない極悪人で、クロスベルの鉱山町であるマインツ襲撃の際に多くの警備隊の人達の命を奪った挙句、クロスベル襲撃の際アルカンシェルにまで襲撃して”炎の舞姫”の二つ名で世界的に有名なアーティストでもあるイリアさんに重傷を負わせたんですよ!?」

「その話は聞いた事がある………ディーター・クロイス元大統領が雇った猟兵達によるクロスベル襲撃の件でアルカンシェルのイリア・プラティエも重傷を負った話は知っているが、まさか彼女が”炎の舞姫”に重傷を負わせた張本人だったとは……それにしても、何故教官達がその人物の事を?」

ユウナの答えを聞いたクルトは静かな表情で呟いた後リィンとセレーネに訊ねた。




「事情があって、俺とセレーネは短期間だったけどクロスベル警察のランディと同じ部署に所属していたんだが……俺とセレーネは直接戦った事はないが、ランディ達はディーター・クロイスからクロスベルを解放した直後に突如現れた”碧の大樹”の攻略の際、クロイス家に雇われていた彼女とも剣を交えた事があったんだ。」

「ちなみにシャーリィさんの本名は”シャーリィ・オルランド”で、ランディさんにとって従妹にあたる方ですわ………」

「あ…………」

「………なるほど。」

「ランドルフ教官……」

「―――ま、そう言う訳だ。まあ、”赤い星座”自体叔父貴を含めた多くの猟兵達がリア充皇帝達によるクーデターで”六銃士”や六銃士派”の連中に殺害されたんだが……あの虎娘は悪運だけは強いようで、そこの超物騒な”天使”の暗殺の刃から逃れた後、”六銃士”達との戦いで逃げ延びて僅かに生き残った猟兵達と共にクロスベルから撤退したのさ。その後壊滅的な被害を受けた事によって衰退した”赤い星座”の立て直しをしながら、最高幹部達の死で崩壊したはずの結社と手を組んだという情報を耳にしていたんだが………」

「超物騒とは失礼ね~………ホント、あの時”道化師”に邪魔をされて止めを刺せなかったのは残念だったわ。あんなことになるんだったら”煌魔城”で”道化師”の相手をオリビエお兄さん達に任せずに、レン達の手で”道化師”を殺しておくべきだったと何度か思った事があるわ。」

リィンとセレーネの説明を聞いたユウナは気まずそうな表情で、クルトは静かな表情で、トワは心配そうな表情でそれぞれランディを見つめ、ランディは静かな表情で説明し、レンの話を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「だから、そういう所が物騒だって言っているだろうが。それにしても、初日で俺達があの虎娘に関わる事になるかもしれない情報を知るなんて、先が思いやられるぜ……」

「あの小娘の動向も気になるが、問題は人形兵器共の出現とあの小娘が関係しているかだな、」

ランディは呆れた表情でレンに指摘した後疲れた表情で溜息を吐き、ランドロスは真剣な表情で呟き

「ええ。パルム方面にも人形兵器の件で2件、似たような報告が上がっています。警戒するに越した事はないでしょう。」

「だな……」

リィンの話にランディは静かな表情で頷いた。



「そういえば……ミハイル教官の姿がありませんね。」

「あ、ホントだ。いつもガミガミうるさいのに。」

「……ひょっとして先程起きた脱線事故の関係で?」

ミハイル少佐がいない事に気づいたアルティナの言葉を聞いたユウナが不思議そうな表情をしている中クルトはランディ達にミハイル少佐の状況を確認した。

「あはは……うん。現場に顔を出してくるって。落石が原因らしいけどケガ人も殆どいないみたい。」

「そうですか……良かった。」

「ええ……本当に良かったですわ。」

「……脱線事故と聞くと前にクロスベルでもありましたね。」

「そうだな……ありゃ、重傷者が何人も出たが。―――しかしまあ、特務科も頑張ってるみたいじゃねえか?」

「ふふっ、そうですね。教官に頼りきりにならずにみんな頑張ってるみたいだし。」

「うふふ、本当にどこかの警察の”某部署”みたいに見えてきたわね♪」

「クク、雛鳥でありながら初日で結社の人形兵器を撃破するなんざ、中々やるじゃねぇか。」

「えへへ……そうですか?」

「まあ、それほどでも。」

「まあ、まだ半分です。あまりほめると気が緩みそうですし程々にしておいてください。」

「ふふっ、そうですわね。気が緩む事もそうですが、調子に乗って分不相応な事までする可能性も考えられますものね。」

ランディ達教官陣に褒められたユウナとアルティナが得意げな様子でいる中リィンは謙遜した様子で指摘し、リィンの指摘に対してセレーネは苦笑しながら同意した。



「って、何ですかその子供扱いみたいなコメントは!」

「不本意ですね。油断などしませんし、緊急事態以外自分達では不可能と思われる事に挑むような事はしません。」

「―――教官達の評価はともかく。”Ⅶ組”に”特務活動”――――どういう背景で設立されたのか何となく見えてきた気がします。」

リィンとセレーネにユウナとアルティナが文句を言っている中、ある仮説が頭に浮かんだクルトは静かな表情で答えた。

「ええっ……!?」

「へえ……?」

「……………」

「演習地周辺での情報収集、そして民間の依頼への対応―――哨戒だの、現地貢献だのもっともらしい理由が最初に説明されていましたが………要は”遊撃士協会(ブレイサーギルド)”と同じことをさせているんでしょう?」

「ああっ!?い、言われてみれば……」

「”遊撃士協会(ブレイサーギルド)”――――大陸全土にある民間の治安維持・調査組織ですね。エレボニアにも存在しますが、現在、活動が制限されているという。」

クルトの推測を聞いたユウナは声を上げて目を丸くし、アルティナは静かな表情で答えた。



「あはは……鋭いねぇ、クルト君。」

「うーん、聞いた時から俺も既視感(デジャヴ)があったんだが。」

「はは……エリオット達――――旧Ⅶ組の面々も”特別実習”という名前だったそうだが、同じことに気づいたそうだ。」

「うふふ、だけど演習初日早々で気づくなんて、ずいぶん鋭いわね?」

「別に……心当たりがあっただけです。―――察するに、この”Ⅶ組”を提案したのはオリヴァルト・アルノール殿下……皇位継承権を放棄された第一皇子その人なんでしょう。」

「そこまで………」

「ほう?」

「そういや、ヴァンダールって確か皇子の護衛をしてた……」

クルトの推測が完全に当たっている事にトワは驚き、ランドロスは興味ありげな表情をし、ある事を思い出したランディは目を丸くした。



「ランドルフ教官もご存知でしたか。自分の兄、ミュラーの事でしょう。―――皇子殿下が以前より遊撃士協会と懇意にされているのは自分も聞き及んでいます。1年半前の”七日戦役”の件で遊撃士協会自らがエレボニアから完全に撤退しようとした件を知った時も、様々な”伝手”に頼って思いとどまらせた事も聞き及んでおります。」

「うふふ、ちなみにレンもオリビエお兄さん―――オリヴァルト皇子の頼みでエレボニア帝国との縁を切ろうとしていた遊撃士協会を仲裁してあげたのよ♪」

「ええっ!?レ、レン教官が!?」

「どうせ、その嬢ちゃんの事だから、絶対何か”見返り”を求めてから仲裁したんじゃねぇのか?」

「ア、アハハ………」

クルトの説明を補足したレンの答えにユウナが驚いている中呆れた表情でレンを見つめて呟いたランディの言葉を聞いたセレーネは苦笑していた。

「何らかの理由で、トールズ本校が”あのような形”に生まれ変わって……理事長を退かれた皇子殿下がせめてもの”想い”を託された。……違いますか?」

「うん……そうだね。」

「はっきり聞いたわけじゃないが多分、間違いないだろう。」

「そうですわね……旧Ⅶ組の設立理由も考えると、間違いないでしょうね。」

クルトの推測を聞いたトワやリィン、セレーネはそれぞれ静かな表情で肯定した。



「なるほど……そういう背景でしたか。」

「オリヴァルト皇子……そんな人がエレボニアにいるんだ。」

「ああ、とても尊敬できる方だ。―――もっとも、この件については”自己満足”にしか思えないが。」

「えっ………」

「ク、クルトさん……?」

「………………………」

「ほう~?”アルノール家の懐刀”と謳われた家の出身にしては、中々辛辣な指摘じゃねえか。」

「うふふ、”元”がつくけどね。―――ああ、もしかして”その件”も関係しているから、リィンお兄さんに嫁いだアルフィン夫人と違って今もアルノール皇家の人物であるオリビエお兄さんに対しても辛辣になったのかしら?」

クルトの意外な指摘にトワとセレーネが戸惑っている中リィンは真剣な表情で黙ってクルトを見つめ、口元に笑みを浮かべたランドロスに指摘したレンは小悪魔な笑みを浮かべてクルトに問いかけた。

「別に……あの件とは一切関係していません。”Ⅶ組”に”想い”を託したオリヴァルト皇子殿下に対しての指摘は僕個人が感じた事です。」

「ちょっ、それって遊撃士を見習うことがってこと?エレボニアじゃ知らないけどギルドは正義の味方として―――」

「当然、知ってるさ。……多分君と同じくらいは。だが、理想と現実は違う。現にエレボニアのギルド支部の殆どは閉鎖されたまま再開されていない。彼らに共感し、協力しようとしていたオリヴァルト殿下や”光の剣匠”、そして――――………志を共にした者達も今のエレボニアでは無力な存在だ。そんな流れにあるのが”特務活動”で”Ⅶ組”なのだとしたら……”自己満足”以外の何者でもないと思わないか?」

「………っ…………」

「………………」

「クルト君………」

「………ふむ………」

「――――ま、確かにそういう見方もあるわね。」

「……だな。」

クルトの指摘に反論できないユウナとアルティナが黙り込んでいる中トワは複雑そうな表情をし、ランディは真剣な表情でクルトを見つめ、静かな表情で肯定したレンの言葉にランドロスは頷いた。



「――なるほど、学院に入る前に色々思う所があったみたいだな。大した慧眼だが、クルト……一つ忘れていることはないか?」

一方リィンは動じることなく静かな表情でクルトに問いかけた。

「?……何です?」

「殿下の希望とは関係なく―――Ⅶ組の特務活動が第Ⅱの正式なカリキュラムとして各方面から認められていることだ。」

「ええ……今のエレボニアでのオリヴァルト殿下の立場はとても厳しいものなのですから、そんな立場のオリヴァルト殿下が分校とはいえ士官学院のカリキュラムに介入できないと思いますわ。」

「……!」

リィンとセレーネの指摘を聞いたクルトは目を見開き

「シュミット博士や帝国政府の思惑も確実に特務科設立と絡んでいるだろう。それぞれ、俺達を”駒”として見込んでいるのかもしれない。多分、殿下の希望は”きっかけ”に過ぎないはずだ。」

「そ、それは……―――もっとタチが悪いと言う事じゃないですか!?」

リィンの正論に一瞬反論できなかったクルトだったがすぐに気を取り直して反論した。

「物事には両面がある……決めつけるなということさ。君は随分頭が切れるがどうも考え過ぎるところがある。今日、半日かけてやったことをどうして否定的な側面だけで判断しようとするんだ?」

「………っ………」

しかし更なるリィンの正論に反論できなかったクルトは唇を噛みしめて顔を俯かせた。



「その、あたしも同感っていうか……やり甲斐はあったし、重要な情報もゲットできたから無駄なんかじゃないと思うよ?」

「まあ、総合的な結論を出すには早いのではないかと。」

「……納得はしていませんが詮無い愚痴はやめておきます。いずれにせよ、務めである以上、第Ⅱ分校の生徒として―――ヴァンダールに連なる者として全力で当たるだけです。」

ユウナとアルティナの指摘を聞いて少しの間考え込んだクルトは自身の結論を口にした。

「ああ、今はそれでいい。俺達に言われたくはないだろうがその先は自分で見つけてみてくれ。」

「……っ……了解です……!」

「うふふ、同じヴァンダールに連なる者でも、フォルデお兄さんとは大違いよねぇ?」

「レン教官……フォルデ先輩は色々な意味でヴァンダールに連なる方として変わっている人ですから、比較対象にする事自体が間違っていますよ……現にフォルデ先輩の弟であり、俺やステラの同期であったフランツもミュラー中佐やクルトのように、とても真面目な人物なのですから……」

「確かにフォルデさんを比較対象にするのは色々な意味で間違っていますね。」

「というかお二人は正確に言えば”先祖がヴァンダールの人物”なだけですけどね……」

クルトの様子を見て小悪魔な笑みを浮かべたレンの言葉にリィンは疲れた表情で指摘し、アルティナはジト目でリィンの指摘に同意し、セレーネは苦笑していた。

「………?」

(”フォルデ”……話に聞いていたかつてリィン教官達と同じ”特務部隊”の所属にして、1年半前の内戦を終結させた僕達の先祖―――ロラン・ヴァンダールの妹君の子孫であり、ロランの死によって失われた”ヴァンダールの槍”を受け継ぎ続けた”もう一つのヴァンダール”の家系の人物か……一体どのような使い手なのか、ヴァンダール家の者として気になるな……)

レン達の会話を聞いていたユウナは何の事かわからず不思議そうな表情で首を傾げ、クルトは真剣な表情でリィン達を見まわした後考え込んでいた。

(Ⅶ組か……ユウ坊が入るっていうのはちょっとばかり心配だったが。……やっぱり教官達も含めてなかなか面白そうじゃねえの。)

(クク、見ている方にとっても、当事者にとっても退屈はしないだろうな。)

(ふふっ、そうでしょう?)

一方リィン達の様子を興味ありげな様子で見守っていたランディとランドロスの小声の言葉を聞いたトワは微笑みながら答えた。



その後報告を終えたリィン達は馬でパルムへと向かい始めた――――




 

 

第16話

パルムへと向かい始めたリィン達はパルムに向かう途中で脱線事故の現場を見かけた為、状況を確認する為に事故現場に近づいて現場を指示しているミハイル少佐から情報を聞いた後再び、パルムへと向かい始めたがその様子をある人物達が遠くから見ていた。



~南アルトリザス街道~



「フフン……大事な時期に面倒な連中が来ましたわね。1年半ぶりですか―――黒兎もそうですが、随分と変わりましたわね。あの年齢の男子ならば珍しくはないのでしょうが……まあ、まだまだ未熟でしょう。」

パルムへと向かうリィン達の様子を見ていた騎士装束の娘は不敵な笑みを浮かべて呟き

「あはは、なんか嬉しそうじゃん。」

その様子を見ていたリィン達が空港付近で出会った赤毛の娘は面白そうに見ていた。

「う、嬉しそうになんてしていませんっ!」

「ふふっ、さっき話した時も思ったけど……噂で聞いていたよりも更に腕が立ちそうじゃん。ランディ兄とどっちが上かな?1年半前の内戦を終結させた後クロスベルの奪還の際にランディ兄達と合流してそのまま”碧の大樹”にもランディ兄達と一緒に来たそうだけど、”結界”の解除の為の同時攻略でランディ兄達はシャーリィの所に来て、向こうはヴァルドの方に行っちゃったから結局戦う機会は無かったんだよね~。ちょっと愉しみかも。」

「”赤い死神”ですか……なかなかの腕前でしたけど。いずれにせよ、”彼女”も含めてわたくし達の敵ではありませんわね。せいぜい今回の実験の”目くらまし”として役に立ってもらいましょう。」

赤毛の娘の言葉を聞いてある人物を思い出したデュバリィは静かな表情で推測をした。

「そうかな~?1年半前の内戦やメンフィルとの戦争でそっちは何度もボロ負けしたんじゃなかったっけ~?」

「ぐっ……あ、あれは”殲滅天使”を始めとしたメンフィルの卑劣な策や、容姿どころか強さまで”嵐の剣神”とそっくりな人物という予想外の戦力がいたせいですわ!」

赤毛の娘の指摘に対して騎士装束の娘は唸り声を上げた後必死に言い訳をした。



「ま、何でもいいけどさー。―――ちょっと、味見するくらいは構わないとか思わない……?」

「っ………まったく貴女たちナンバー持ちと来たら……――――いいですか!我らにとって待ち望んでいた”大いなる計画”の再開です!貴女も衰退したとはいえ、結社入りしたのならば少しは――――」

凄まじい殺気を纏って不敵な笑みを浮かべた赤毛の娘に視線を向けられた騎士装束の娘は一瞬怯んだ後気を取り直して赤毛の娘に注意をしようとしたが

「まーまー、折角だからお互い目いっぱい愉しもうよ♪」

赤毛の娘は笑って軽く流した後、何と一瞬で騎士装束の娘の背後を取った!

「な……!?きゃあっ!ちょっ、何を――――あうん!やあっ、アアアン……!」

「うーん、小ぶりに見せかけてベルお嬢さんくらいはあるよねー。お仲間の二人と比べたら控えめかもしれないけどこれはこれで好きだなぁ♪」

騎士装束の娘の背後を取った赤毛の娘は騎士装束の娘の胸をもむことを楽しみ

「ちょ、ちょっと……!シャレになってないですわよ!?いい加減に――――いやああっ!!?」

騎士装束の娘は離れようともがいたが、赤毛の娘を離す事はできず赤毛の娘が気が済むまで、胸を揉まれ続けた。



「はあはあ……この娘……あまりにフリーダム過ぎますわ……ううっ………お母様………マスターぁぁぁぁああっ………!」

「う~ん……さーてと……せっかくのエレボニア再デビュー、派手に飾らせてもらおっかな?相手にとって不足はなし―――”サプライズゲスト”も期待できそうだしね♪」

騎士装束の娘が嘆いている中、赤毛の娘はリィン達が去った方向を見つめて不敵な笑みを浮かべていた。







その後パルムに到着したリィン達は、街を見回りながらクルトが昔住んでいたヴァンダール流の道場に近づいた。



~”紡績町”パルム~



「そうか、ここが――――」

「ええ、ヴァンダール流の道場です。はは……でも懐かしいな。小さい頃はここに住んでいましたし。」

「ふふっ、そうなんだ。でも、ヴァンダール流ってエレボニアじゃすごい流派なのよね?お弟子さんとか多そうだし、どうして閉鎖しちゃったの?」

「それは………大した事情じゃないさ。これも時代ってところかな。」

「へ…………」

「……………」

(……そう言えばヴァンダール家と言えば………)

(恐らく”あの件”とも関係しているのでしょうね……)

ヴァンダール流の道場が閉鎖した理由を言葉を濁して誤魔化したクルトの答えにユウナが呆けている中、事情を知っているリィンは目を伏せて黙り込み、ある事を思い出したアルティナは静かな表情で、セレーネは複雑そうな表情でそれぞれ道場を見つめていた。



「とおっ、やあああっ!!」

するとその時道場から掛け声らしき声が聞こえてきた。

「はは、やっぱり誰かいるみたいだな?」

「ええ……知り合いかもしれません。でもこれは……」

「せい、はあっ!」

「ちぇえええい!」

「閉鎖されたにしては賑やかですね。」

「……というか、声の感じからして道場を再開したようにしか思えないのですが……」

道場から次々と聞こえてくる掛け声にクルトが眉を顰めている中アルティナは静かな表情で呟き、セレーネは苦笑していた。

「……すみません。少し覗いてもいいですか?」

「ああ、もちろん。折角だし挨拶していこう。」

そしてリィン達は道場の中へと入っていくと、道場内では門下生達が鍛錬をしていた。



~ヴァンダール流・練武場~



「ちぇえい、まだまだーっ!」

「ホラホラ、脇が甘いよっ!」

「わぁ……!ここが剣術の道場……!」

「門下生も少ないなりに熱心みたいですね。」

「ああ……やる気が漲ってる感じだな。」

「えっと……本当に道場は閉鎖したんですわよね?」

「え、ええ………どうなってるんだ?」

門下生達の鍛錬の様子をユウナは興味ありげな様子で見つめ、アルティナの分析にリィンは静かな表情で頷き、苦笑しているセレーネに話を振られたクルトは頷いた後困惑の表情を浮かべた。



「おおっ、誰かと思えば……!クルト坊ちゃんではないですか!?」

するとその時リィン達に気づいた門下生の一人がリィン達に近づいて声をかけた。

「あ……お久しぶりです。ウォルトンさん。って、”坊ちゃん”はやめていただけると。」

「ははっ、これは失礼!いやあ、去年の暮れに帝都でお会いして以来ですな!いつこちらへ?ご連絡いただければお迎えしたものを!」

「いえ……実は士官学校のカリキュラムで来ていまして。」

「ほほう、そういえばそちらの方々は……」

「申し遅れました、自分達は――――」

クルトの話を聞いた門下生に視線を向けられたリィン達はそれぞれ自己紹介をした。



「なるほど、地方演習で……遠路はるばるご苦労様です!まさか、噂の”灰色の騎士”殿と”聖竜の姫君”殿に教わっているとは知りませんでしたぞ!しかもこんな可憐なお嬢さんたちと同じクラスとは……坊ちゃんも隅に置けませんなぁ!」

「あはは、可憐だなんてそんな~。」

「お世辞だと思いますが。」

「ええい、茶々入れないのっ。」

門下生の賛辞に照れているユウナにアルティナはジト目で指摘し、指摘されたユウナはジト目で反論した。

「はは……こちらこそ名高きヴァンダールの道場を見学できて光栄です。」

「そ、それはともかくどうなってるんですか?こちらの道場は去年の末に閉鎖されたはずじゃ……?」

「ええ、そうなんですが……先週から期間限定で再開することになったのですよ。実は、マテウス様の紹介で臨時の師範代に来て頂きまして。」

「父上の……?もしかして、僕も知っている方ですか?」

「ええ、今は出かけられていますがきっとご存知かと思いますよ。いやはや、お若いのにかなりの凄腕でしてなあ。閉鎖以来、腐っていた我々も久々に奮い立っているところです!」

「へえ、そんな使い手が。」

「……いったい誰が―――」

門下生の話を聞いたリィンが興味ありげな表情をしている中クルトは考え込んだ。

「そうそう、その臨時の師範代の方関連で坊ちゃんに朗報があるんです!」

「”朗報”……ですか?それは一体どのような……?」

「何でもその方のお知り合いで、遥か昔に失われた”ヴァンダールの槍術”を受け継ぎ続けた家系の人物―――坊ちゃんにとっては遠い親戚に当たる方がいらっしゃいまして、本日より数日間、その方から手合わせや先祖代々受け継ぎ続けた”ヴァンダール流槍術”を指南して頂ける事になりましてな。失われしヴァンダールの”槍”を我々の手で復活させる切っ掛けになればと、我々もその方の到着をお待ちしている所です。……ちなみに臨時の師範代の方が出かけられておられる理由は件の方のお迎えに向かっているからです。」

「”獅子戦役”での先祖ロランの死によって失われたヴァンダールの”槍”を………?」

(お、お兄様。もしかしてその方って………)

(ハハ、どう考えてもフォルデ先輩だろうな………という事はもしかしてその”臨時の師範代”という人物は―――)

門下生の話を聞いて若干驚いたクルトはリィンとセレーネに視線を向け、視線を向けられたセレーネとリィンはそれぞれ苦笑しながらある人物を思い浮かべた。



「――――ウォルトンさん!手合わせの相手を頼めませんか……」

するとその時別の門下生がリィン達と会話をしている門下生に声をかけたが、リィン達の中にいるクルトに気づくと血相を変えた。

「クルト……!?お前、クルトか!?」

「あらま坊ちゃん!大きくなっちゃって!」

「はは……ラフィ、カティアさん。どうもお久しぶりです。」

その後、クルトは昔住んでいた時の顔馴染みと久闊を叙し……お茶などをご馳走になった後、また顔を出すことを約束してから稽古を再開する彼らに別れを告げた後特務活動を再開した。



特務活動を再開したリィン達はパルムにいる人形兵器らしき魔獣を見かけた人物――――トールズ士官学院の卒業生でああるミントに情報を聞いた後、街道へと向かい、ミントの話通り人形兵器達が現れた為、協力して撃破した。



~アグリア旧道~



「くっ……自爆までするなんて……」

「今のも”結社”の……とんでもない戦闘力だな。」

「ふう……内戦時、”執行者”達が使役したのと同じタイプみたいですね。」

戦闘が終了し、戦闘の疲労によってユウナとクルトが息を切らせている中アルティナは一息ついて静かな表情で呟いた。

「相変わらずサラッととんでもない事を言うな……」

「って、その口ぶりだとあんた、まさか”執行者”とまで戦ったの……?教官達も黙っていないで――――って、教官……?」

アルティナの発言に冷や汗をかいたクルトは疲れた表情で指摘し、クルトと共にジト目で指摘したユウナだったが未だ武器を収めていないリィンとセレーネの様子を見て首を傾げた。

「気を抜くな……聞いた情報を思い出すんだ。本校の卒業生は幾つの影を見たと言った?」

「3つの影……」

「まさかもう一体……!」

リィンの指摘を聞いたアルティナとクルトが呟いたその時、ユウナ達の背後に先程リィン達と共に倒した人形兵器が新たに一体現れた!



「ぁ………」

「くっ……」

「クラウ―――(間に合わない……?)」

疲労によってすぐに動けないユウナとクルトが人形兵器の奇襲攻撃を受けようとしたその時

「オオオオオオオッ……!」

「ハアアアアアアッ……!」

リィンは自身に秘められる”力”を解放し、セレーネは膨大な魔力を一瞬で解放して二人同時にユウナ達を電光石火の速さで横切って人形兵器へと向かった!

「!?」

「な――――」

二人の一瞬の動きを見たユウナが驚き、クルトが絶句したその時リィンとセレーネはそれぞれ左右から袈裟斬りを放って一撃で人形兵器を撃破した!



「ふう……」

「間一髪でしたが、間に合いましたわね……」

「す、凄い……」

「い、今のは……」

それぞれ解放した”力”を抑えたリィンとセレーネをユウナとクルトは呆けた表情で見つめ

「……撃破後の警戒を怠り、更にサポートが遅れてしまい、申し訳ありませんでした。」

アルティナは二人に近づいて申し訳なさそうな表情で謝罪をした。

「ふふっ、気にしないでください。わたくし達は”教官”として当然の事をしたまでだ。」

「ああ。それに遅れたと言っても、咄嗟にサポートしようとしていた――――って。」

セレーネと共にアルティナに慰めの言葉を言いかけたリィンだったが、自分をジッと見つめているユウナとクルトの視線に気づいた。

「リィン、教官…………」

「…………………」

「はは…………まあ、病気とは違うがちょっと特殊な”体質”でね。気味悪いかもしれないが……極力、見せるつもりはないからどうか我慢してもらえないか?」

「が、我慢って……!そんな話じゃないでしょう!?今のだって、あたしたちを助けるためじゃないですか……!」

「……危ない所をありがとうございました。その、もしかして――――………」

苦笑しているリィンの言葉に対してユウナは真剣な表情で反論し、クルトは感謝の言葉を述べた後リィンにある事を訊ねようとしたが、すぐに訊ねるのをやめて黙り込んだ。



「えっと……セレーネ教官もリィン教官みたいに凄い動きをしましたけど、もしかしてセレーネ教官もリィン教官と同じ……?」

「いえ、皆さんもご存知のようにわたくしは”竜”ですから、魔力を瞬時に身体能力に回したお陰であんな動きができたのです。」

「とは言っても、そのような芸当ができるのはセレーネ教官が”特殊な竜族”だからですが。」

「へ……それってどういう事なんですか?

自分の質問にセレーネと共に答えたアルティナの答えが気になったユウナは不思議そうな表情で訊ねた。

「わたくしは通常の竜族とは若干異なる竜族でして。その関係で、あのような魔力の使い方もできるのですわ。……とは言っても、魔術を使う事と比べると魔力の消費が激しいですから、普段は使いませんが……」

「そうなんですか………」

セレーネの答えを聞いたユウナは呆けた表情をした。



「まあ、それはともかく、3人とも対応が甘かったな。きちんと情報を聞いていれば残敵を見逃すことも無かったはずだ。初日だから仕方ないが、”次”には是非、活かしてもらおうか。」

「くっ、この人は~……!」

「……今回に関してはまったく言い返せないけどね。」

「まあ、次の課題としましょう。」

「フフ……」

リィンの評価を聞いて様々な反応を見せている生徒達をセレーネは微笑ましく見守っていた。その後、付近を捜索したが人形兵器はそれ以上に現れず―――怪しげな人物にも遭遇しなかったためリィン達はパルムに戻ることにした。



その後パルムに戻ったリィン達は残りの人形兵器らしき魔獣の目撃情報があった場所へと向かった――――


 
 

 
後書き
原作ではリィンの暴走しかけが何度かありましたが、この物語ではそんな事は全くない予定の上、神気合一は閃Ⅲ開始時から使用可能です。(そりゃそうだ)問題は原作と異なり、暴走しない事が今後どう影響するかなんですよねぇ……(閃Ⅲは未だに4章夏至祭の最中です(遅っ))ちなみにですが、まだ仮の段階ですが灰の軌跡の設定(つまり光と闇の軌跡、運命が改変された少年を混ぜた設定)で閃Ⅳ篇を書く設定を思いついちゃいました(ぇ)閃Ⅳ篇突入するかどうかは2章のクロスベル到着前後あたりの時期でわかると思います(その頃にはさすがに私も閃Ⅲをクリアしているはず……) 

 

第17話

~パルム間道~



「さっきの人の話だとこっちの高台みたいだけど……」

「これは、(ゲート)……?」

目撃情報があった場所に到着したユウナは周囲を見回し、クルトは目の前にある巨大な門を見つめて不思議そうな表情をした。

「……なにこれ。ずいぶん思わせぶりな感じだけど。」

「これは……山中に続いているのか?」

「……?地図に何もありませんね。この門も、その先の道も。」

「大昔に打ち棄てられた廃道かもしれないが……いや、そこまで古くもなさそうだ。」

地図を確認したアルティナが困惑の表情を浮かべている中推測を口に仕掛けたリィンだったが、門に据え付けられている警告に気づいて門に近づいて確認した。



”警告”



この先、崖崩れのため危険。関係者以外の立ち入りを禁ずる。



「な、なんか素っ気ないわねぇ。―――クルト君、こんな場所があるって知ってた?」

「いや……聞いた事もないな。手前のコンテナは昔からあったから気づかなかっただけだと思うけど。」

(お兄様……もしかしてと思うのですが……この先は”ハーメル村”なのでは……?)

(!……そう言えば、1年半前”特務部隊”結成時に”和解条約”の詳細について教えてもらった際、メンフィルから貰った情報に書いてあった”ハーメル村”の位置は…………)

ユウナとクルトが謎の門の先について話し合っている中、ある事に気づいたセレーネはリィンに念話を送り、セレーネの念話を受け取ったリィンは目を見開いて真剣な表情で門を見つめた。

「いずれにせよ、人形兵器が目撃された場所ではなさそうですね。」

「………ああ、見た所相当、頑丈に施錠されているようだ。地面が荒らされた跡もないし、別の場所を―――」

アルティナの言葉にリィンが頷いて指示をしかけたその時、何かの気配や音を感じ取ったリィンとセレーネは集中して周囲を警戒した。すると人形兵器が木々の中から現れてリィン達へと向かい

「―――戦闘準備。ちょうど向こうから来てくれたみたいだぞ?」

「しかもタイプは違いますが、先程戦った人形兵器と同格と思われますから、気を引き締めて下さい。」

「なっ……!?」

「木々の間から……!」

「クラウ=ソラス。」

リィンとセレーネの忠告に驚いたユウナ達がそれぞれ武装を構えると人形兵器が3体木々の間から現れてリィン達の退路を塞いだ!



「な、な、な……」

「これも……人形兵器なんですか!?」

「ああ……!かなり特殊なタイプだ!」

「奇襲・暗殺用の特殊機―――”パランシングクラウン”です!」

「あの人形兵器は先程戦った人形兵器とは真逆―――攻撃に特化しているタイプですから、気をつけてください!」

驚いているユウナとクルトにリィンとアルティナ、セレーネはそれぞれ説明をした。

「くっ……こいつら、本当に”人形”なの!?」

「いいだろう……返り討ちにしてくれる!」

「ギミック攻撃に気を付けろ!毒や麻痺が仕込んであるぞ!(3体か……俺とセレーネだけでは生徒達をサポートしきれないかもしれないな。だったら………)来てくれ――――メサイア!」

生徒達に助言をしたリィンはメサイアを召喚した!

「へ……っ!?お、女の人が教官の身体から……?しかも名前が”メサイア”って事はもしかしてあの人が局長の……」

「クロスベル帝国皇女にしてリィン教官の婚約者の一人――――メサイア・シリオス皇女殿下……!」

「―――今は私の事よりも、目の前に敵に集中してください!」

自分の登場に驚いているユウナとクルトに指摘したメサイアは”匠王”の娘達が作成し、今でも愛用し続けている”聖剣ガラティン”を構え

「――来ます!」

アルティナの言葉を合図にリィン達は人形兵器達との戦闘を開始した!



「「「……………」」」

人形兵器達は先制攻撃代わりに刃をリィン達に解き放ち

「甘い!」

解き放たれた刃に対してリィンが前に出てクラフト―――弧月一閃を放って襲い掛かる刃を全て弾いた。

「逃がさないわよ……!――――ヤァァァァッ!!」

「ブリューナク、照射。」

「―――――」

「ハァァァァ……セイッ!!」

反撃にユウナはクラフト――ジェミニブラストで、アルティナはクラフト――ブリューナクで、そしてクルトは双剣から光と闇の斬撃波を放つクラフト――双剋刃で遠距離からの攻撃を叩き込んだ。

「アークス駆動――――エクスクルセイド!!」

「浄化の炎よ、邪を焼き尽くせ――――贖罪の聖炎!!」

3人の攻撃が終わるとセレーネは地面から光の十字架による衝撃波を発生させるアーツを、メサイアは浄化の炎を発生させる魔術を発動して人形兵器達に追撃して怯ませた。



「オォォォォ……唸れ――――螺旋撃!!」

「えいっ!やあっ!」

「ハアッ!」

人形兵器達が怯んだ隙にそれぞれ人形兵器達に近づいたリィンは炎を宿した太刀で螺旋を描くような斬撃を叩き込み、ユウナとクルトはそれぞれ通常攻撃を叩き込んだ。

「「「…………」」」

リィン達の攻撃を受けた人形兵器達は反撃にそれぞれの両腕から鋼糸(ワイヤー)を放ち

「!」

「キャッ……!?か、身体が……!」

「ぐっ……ワイヤーに麻痺毒が仕込まれていたのか……!」

人形兵器達によるギミック攻撃をリィンは人間離れした動きで回避したが、ユウナとクルトは回避が間に合わず攻撃を受け、人形兵器達の鋼糸には麻痺毒も仕込まれていた為更に麻痺状態に陥った。そして麻痺状態に陥ったユウナとクルトに人形兵器達は追撃をしようとしたが

「二の型―――疾風!!」

「闘技―――月影剣舞!!」

リィンの鎌鼬を纏った電光石火の攻撃とそのすぐ後に放たれたメサイアの美しき剣舞を受けた事によって妨害され

「闇に呑まれよ―――ティルワンの闇界!!」

更にアルティナが発動した広範囲の魔術を受けて再び怯んだ。

「浄化の光よ――――オーディナリーシェイプ!!」

リィン達の攻撃の間に魔術の詠唱を終えたセレーネは浄化の光の魔術で二人の麻痺状態を治癒し

「ありがとうございます!お返しよ!ハァァァァ……クロスブレイク!!」

麻痺状態が回復したユウナはトンファーに電撃を流して人形兵器達に強烈な一撃を叩き込んでダメージを与えた。

「ヴァンダールが双剣――――とくと味わえ!行くぞ――――うおおおおぉぉぉぉぉ……っ!!」

するとその時止めを刺す為にクルトは双剣を凄まじい速さで振るって何度も斬撃を人形兵器達に叩き込んだ後跳躍し

「止めだ――――たあっ!ラグナ――――ストライク!!」

空中で双剣を振るって人形兵器達の周囲に雷撃を発生させた後最後に全身に雷撃を纏って人形兵器達に突撃し、クルトのSクラフト――ラグナストライクによるダメージに耐えきれなかった人形兵器達は爆発を起こしながら消滅した!



「はあはあ………た、倒せた……」

「……”邪道”を使う人形……どこまでだ、”結社”というのは……」

「……さすがに体力も限界近くかもしれません。」

戦闘が終了し、安堵や今までの特務活動や戦闘等による疲労によってユウナ達はそれぞれ息を切らせた後武器を収めた後周囲を警戒した。

「………ふふ………」

「先程の反省を早速生かしていますわね……」

ユウナ達の様子を微笑ましく見守っていたリィンとセレーネも周囲を探った後、何かに気づいてユウナ達に警告した。

「―――まずいな。少し読み違えたみたいだ。」

「ええ……しかも先程よりも数が多いですわ。」

「へ………」

「………!」

リィンとセレーネの言葉を聞いたユウナが呆け、クルトが目を見開いたその時反対側から先程戦った人形兵器達の倍の数がリィン達に近づき

「反対から―――」

「ああ……しかも数が多い!」

更にリィン達の退路を防ぐ位置に陣取った1



「っ、退路を……!」

「僕達を弄るつもりか………」

「ほ、ほんとに性格悪すぎない!?」

「―――すまない、3人とも無理をさせすぎたみたいだ。この場は俺達に任せてくれ。セレーネ、メサイア。」

「「はい。」」

疲労がピークの生徒達にこれ以上戦闘させない為にリィンはセレーネとメサイアと共にユウナ達の前に出た。

「え………」

リィン達の行動を見たユウナは呆けた声を出し

「コオオオオオオッ………!」

「「ハアアアアアアッ………!」」

「ま、まさか――――」

それぞれの”力”を解放しようとしている様子のリィン達を見たクルトは驚きの表情で呟いた。

「神気合――――」

「―――その必要はない。」

そしてリィンが鬼の力を解放した姿になろうとしたその時、娘の声が聞こえてきた!するといつの間にか人形兵器達の背後に大剣を構えた蒼髪の娘とライフルを構えた腰まで伸ばした漆黒の髪の娘、そしてそれぞれ槍を構えた金髪の青年と中性的な容姿を持つ金髪の青年がいた!



「あ………」

「貴女達は……」

「まさか―――!」

蒼髪の娘達の登場にユウナとアルティナが呆けている中、蒼髪の娘に見覚えがあるクルトは信じられない表情をした。するとその時人形兵器達はそれぞれ鋼糸の攻撃を娘達に放ったが娘達はそれぞれ回避し

「無駄です―――――」

漆黒の髪の娘が正確無比かつ凄まじい速さの射撃で人形兵器達を攻撃して怯ませ、その隙に蒼髪の娘達はそれぞれ凄まじい一撃を次々と人形兵器達に叩き込んだ!

「………ぁ………」

「ええ……っ!?」

娘達の圧倒的な強さにクルトが呆け、ユウナが驚きの声を上げたその時最後の一体となった人形兵器に漆黒の髪の娘がライフルによる狙撃で怯ませた後蒼髪の娘が一瞬で詰め寄って回転斬りを叩き込んだ跳躍し

「喰らうがよい――――!」

最後の一撃に人形兵器を豪快な一刀両断して滅した!



「…………」

「”アルゼイド”の絶技……それにヴァンダールの剛剣術や双剣術の面影があるあの槍術はまさか………」

「……皆さん、戦闘力が以前とまるで違うような。」

娘達の圧倒的な強さにユウナは口をパクパクさせ、クルトは驚き、アルティナはジト目で呟いた。

「はは………”遥か昔に失われたヴァンダールの槍術を受け継ぎ続けた家系の人物”を迎えに行った凄腕の臨時師範代”………まさかエリオットに続いて君ともここで再会できるなんて。」

「フフ……」

苦笑しながら近づいたリィンの言葉に対して微笑んだ蒼髪の娘は静かな笑みを浮かべた後何とリィンを抱きしめた。



「って――――」

「ラ、ラウラさん……!?」

「クク、何だ~?俺達の知らない所で”光の剣匠”の娘までハーレムに加えていたのか~?」

「フォルデ先輩……」

「こんな時に茶化さないでよ、兄さん……」

娘の行動にリィンとセレーネは驚きの声を上げ、その様子を見守っていた金髪の青年はからかいの表情で呟き、青年の言葉を聞いた漆黒の髪の娘ともう一人の青年は呆れた表情で溜息を吐いた。

「このくらいは我慢するがよい。文のやり取りがあったとはいえ、顔を合わせるのは久しいのだから。しかしそなた、背が伸びたな?正直見違えてしまったぞ。」

「はは……ラウラこそ。1年ちょっととは思えないほど凛として、眩しいほど綺麗になった。」

娘に抱きしめられたリィンも娘を抱き返して娘に微笑んだ。



「フフ、世辞はよせ。そちらの修行はまだまだだ。」

リィンの言葉に苦笑した娘はリィンから離れ、今度はセレーネを抱きしめた。

「ふふっ、そなたと顔を合わせるのも久しいが、あれからまた更に綺麗になって、見違えたのではないか?」

「フフ、わたくしは1年半前の時点で既に”成竜”でしたから身体的な成長は止まっていますから、皆さんのように背が伸びたり等はしていないはずなのですが……」

「フフ、どちらかというと雰囲気だから、身体的な成長は関係ないと思うぞ。こうして顔を合わせて感じたが、そなたと同じ性別の身として、ますます離されたような気分に陥ったぞ。」

「フフッ、お世辞でもそんな風に言ってもらえるなんて嬉しいですわ。」

そして蒼髪の娘に抱きしめられたセレーネもリィンのように娘を抱き返して微笑んだ後娘から離れた後、アルティナに近づいてアルティナを抱きしめた。

「お久しぶりです。」

「ふふ、そなたのそういう所は相変わらずだな。しかしそなた、1年半前と比べると随分と見違えたのではないか?背もそうだが、雰囲気も1年半前とは比べものにならないぞ。」

抱きしめられても特に何の反応も見せずに冷静な様子で答えたアルティナの様子に苦笑した娘はアルティナの成長を興味ありげな様子で見つめていた。

「雰囲気に関してはよくわかりませんが、身体的な成長をしている事は肯定します。………わたしが皆さんのように成長できたのも、リィン教官のお陰です。」

「そうか……”ミリアムと同じ存在”であるそなたが成長した話に興味はあるが、ゆっくりと話す機会ができた時に聞くとしよう。」

アルティナの答えを聞いた娘は静かな笑みを浮かべて頷いた後アルティナから離れた。

「え、えっと……」

「……お噂はかねがね。」

一方その様子を見守っていたユウナは気まずそうな表情をし、クルトは静かな表情で会釈をした。



「ふふ、見た顔もいるが改めて名乗らせてもらおう。レグラムの子爵家が息女、ラウラ・S・アルゼイドという者だ。トールズ”旧Ⅶ組”の出身でもある。見知りおき願おうか―――後輩殿たち。」

そして蒼髪の娘――――旧Ⅶ組の一人であるラウラ・S・アルゼイドはユウナとクルトに自己紹介をした。

「エリオットさんと同じ”旧Ⅶ組”の………という事はもしかしてそちらの人達も………?……ぁ…………(あの人達はリィン教官達と一緒にいた……)」

ラウラの事を知ったユウナは漆黒の髪の娘達へと視線を向けた後漆黒の髪の娘や金髪の軽そうな雰囲気を纏っている青年の容姿を見て何かに気づき、呆けた声を出した。

「フフ、残念ながら私達は”旧Ⅶ組”ではありません。――――初めまして。メンフィル帝国領ケルディック地方の領主予定の子爵家の当主、ステラ・ディアメルと申します。メンフィル帝国軍”特務部隊”の”副将”を務めていました。よろしくお願いします―――新Ⅶ組の方々。」

「”特務部隊”……それに”ディアメル”という事は、貴女が唯一生きている”ディアメル伯爵家”の血を引く人物にしてリィン教官の婚約者の一人でもある方ですか。」

漆黒の髪の娘―――かつて1年半前のエレボニアの内戦に介入し、内戦を終結させる為にメンフィルが結成し、リィンやセレーネ、アルティナが所属していた”特務部隊”の副将を務めていたステラ・ディアメルの自己紹介を聞いてある事を思い出したクルトは真剣な表情でステラを見つめた。

「ええっ!?それじゃあ、貴女がセレーネ教官やベルフェゴールさん達と同じ8人いるリィン教官の婚約者の一人でもあるんですか……!?」

「はい。リィンさんの妻の序列は最下位の9位になりますが、私もリィンさんの婚約者の一人です。」

「くくっ、ステラがエリゼちゃんみたいに積極的か、もしくはリィンが鈍感じゃなかったら、少なくても序列はエリゼちゃんの次だった可能性が非常に高かった程、リィンのハーレムメンバーの中でエリゼちゃんの次にリィンと付き合いが長い女なんだぜ~。」

「に、兄さん。」

クルトの説明を聞いて驚いている様子のユウナにステラは頷いて答え、からかいの表情で答えた軽そうな青年の言葉にもう一人の青年が冷や汗をかき

「えっと………リィン教官達の昔の事を知っているという事は貴方達もリィン教官と同じ”特務部隊”の……?」

「おう。――――俺の名はフォルデ・ヴィント。メンフィル帝国領オーロックス地方の領主予定のしがない男爵家の当主だ。そんでこっちは俺の弟のフランツだ。」

「―――フォルデの弟のフランツ・ヴィントです。僕は”特務部隊”の所属ではなく、メンフィル帝国軍の所属で、訓練兵時代のリィンやステラの同期だよ。よろしくね、リィンの教え子達。」

ユウナに視線を向けられた軽そうな青年――――リィン達と同じ”特務部隊”に所属し、ステラと共に”副将”を務めたフォルデ・ヴィントは自己紹介をした後もう一人の青年に視線を向け、もう一人の青年――――フォルデの弟にして訓練兵時代だったリィンとステラの同期生の一人でもあるフランツ・ヴィントは軽く自己紹介をした。



その後リィン達はラウラ達と共にパルムへと戻って行った。



~パルム・ヴァンダール流・練武場~



「そうか………子爵閣下から。」

「うん、免許皆伝に至った後、師範代の資格も与えられてな。こうして各地を回りながら備えて欲しいと頼まれていたのだ。」

「まあ………ふふっ、子爵閣下もラウラさんの力をとても頼りにしていらっしゃるのですね。」

ラウラの事情を知ったセレーネは目を丸くした後微笑んだ。

「フフ、期待に沿えるといいのだが。」

「”アルゼイド流”でしたっけ……物凄く有名な流派なんですよね?」

「エレボニアでは”ヴァンダール流”と双璧と言われているみたいです。」

「ああ、規模も格式も互角……どちらも軍の武術師範を正式に務めているくらいだ。」

「それは………」

ユウナの質問に答えたアルティナの答えに頷いたリィンはアルティナの説明を補足し、リィンの説明を聞いたクルトは複雑そうな表情をした。

「フフ、面映いがそう呼ばれることは多いな。マテウス・ヴァンダール閣下―――お父上からそなたの話も聞いている。ヴァンダールには類稀なる双剣術の使い手―――会えて光栄だ。」

「そんな―――滅相もありません!自分など、未熟の極みで……父や兄の足元すら見えぬくらいです。まして、その歳で”皆伝”に至った貴女と比べるなど―――」

ラウラに視線を向けられたクルトはラウラの高評価に対して謙遜した様子で答えた。

「ふむ……?剣の道は果てしない。皆伝など通過点に過ぎぬであろう。此の身は未だ修行中……精々リィンと同じくらいの立場だ。」

「いや、さすがにラウラと俺を一緒にするのは無理があるような……」

「フフ、謙遜は止めるがいい。それに世には真の天才もいる。そなたらの分校の責任者のように。」

謙遜している様子のリィンに苦笑しながら指摘した後に呟いたラウラの言葉を聞いてリアンヌ分校長を思い浮かべたリィン達は冷や汗をかいた。



「ああ、まあ……確かに。」

「天才というより化物ですね。」

「というか天才をも遥かに超える”至高の武”の存在ですものね……」

「えっと……あの人、そんなに凄いの?」

リィンやアルティナ、セレーネの話を聞いたユウナは不思議そうな表情でリアンヌ分校長の事について訊ねた。

「あの結社”身喰らう蛇”でも”結社最強”と呼ばれていた使い手にして、ヴァイスハイト皇帝陛下達――――クロスベルの”六銃士”が全員揃って互角の強さと言えばわかるだろう?」

「って、聞くだけで滅茶苦茶凄そうなんだけど……というか、分校長って”結社”の出身だったの!?」

「ええ……色々と事情があって、今は結社を抜けてメンフィル帝国に所属していますが。」

リィンの指摘を聞いたユウナは表情を引き攣らせた後驚きの声を上げ、ユウナの反応にセレーネは苦笑しながらリアンヌ分校長について軽く説明をした。

「ふふっ、天才といえばフォルデ先輩もそうですよね?」

「うむ。”アルゼイド流”と”ヴァンダール流”の皆伝に至った今は亡きオーレリア将軍閣下のように、フォルデ殿はヴァンダール流の剛槍術と連槍術の皆伝に至っているのだからな。」

「これで、普段の態度がカイル先輩みたいに真面目だったら、文句なしなんだけどね……」

「おいおい、俺があの”超”がつく程の堅物人間になって欲しいだなんて、冗談でも止めて欲しいぜ。あんな人間になったら、人生、楽しめないぜ?」

ステラの言葉にラウラは静かな笑みを浮かべて頷いてステラと共にフォルデに視線を向け、疲れた表情で呟いたフランツに呆れた表情で指摘したフォルデは軽そうな態度を見せて答え、フォルデの答えにリィン達は冷や汗をかいた。



「え、えっと……ラウラさんがフォルデさんが”ヴァンダール流”の使い手みたいな事を言っていたけど、もしかしてフォルデさんやフランツさんもクルト君と同じ流派の……?」

「ん?ああ、俺とフランツは単に先祖が”ヴァンダール”の家系の人物なだけで、何の因果か俺達の代まで”ヴァンダール流の槍術”が受け継がれてきただけで、”ヴァンダール流”とは関係ないぜ。」

ユウナの問いかけに軽い調子で答えたフォルデの答えにリィン達は冷や汗をかき

「いや、十分関係あるじゃないですか……って、先祖が”ヴァンダール”って事はもしかしてフォルデさんとフランツさんはクルト君にとって、遠い親戚になるんですか!?」

「アハハ……一応そうなるね。まあ、実際こうして僕達が”本家”の人物と会うのは初めてになるけど。」

「……初めまして。ヴァンダール家の次男、クルト・ヴァンダールと言います。お二人のお話は叔父ゼクスや兄ミュラーから伺っています。」

驚いている様子のユウナに苦笑しながら答えたフランツに視線を向けられたクルトは会釈をして答えた。

「俺達の話をね~?大方、1年半前の”七日戦役”の件で俺達の事を知って、先祖が自分達と同じ”アルノール家の懐刀”の血を引いていながらメンフィルに所属していたから”ヴァンダールの恥晒し”とでも伝えられていたんじゃないのか~?」

「に、兄さん。そんな事を言われても彼が困るだけだよ………」

「へ………ど、どうしてそこで”七日戦役”の話が出てくるんですか?」

からかいの表情で問いかけたフォルデの問いかけにリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中フランツは困った表情で指摘し、ユウナは困惑の表情でリィン達に訊ねた。

「その………”七日戦役”の際、貴族連合軍によって幽閉の身であったアルフィンさんがわたくし達―――メンフィル帝国に捕縛された後様々な事情によってリベール王国に保護され、その後”七日戦役”に調印した話は知っていますわよね?実はアルフィンさんを捕縛したのはフォルデさんなんです………」

「ちなみにクルト達の実家――――”ヴァンダール家”はフォルデ先輩も言っていたように”アルノール家の懐刀”という異名通り、エレボニア皇家の守護職に就いていたんだ。」

「ええっ!?フォルデさんがアルフィンさんを!?しかも、クルト君の実家がそんなとんでもない役職についていたなんて……」

「……守護職は既に解任されているから、”元”がつくけどね。――――それはともかく、叔父や兄も貴方達の事に対して悪感情を持っているような言い方はしていませんでした。むしろ、機会があれば先祖ロランの死によって失われた”ヴァンダールの槍”を教わり、以後門下生や子孫達に受け継がせたいと仰っていました。それに、ウォルトンさん達にお二人が先祖代々受け継いで来た”ヴァンダールの槍術”を教授して下さるとの事ですから、それを叔父たちも知ればきっと、今もお二人に感謝している僕のように喜び、お二人に感謝すると思います。お二人の貴重な時間を割いて頂き、お二人が先祖代々受け継ぎ続けてきた”ヴァンダールの槍”をウォルトンさん達に教授してくださること、ヴァンダール家を代表し、心より感謝を申し上げます。」

セレーネとリィンの説明を聞いて驚いているユウナに視線を向けられたクルトは静かな表情で答えた後フォルデとフランツに会釈をした。

「アハハ……”ヴァンダール流”の宗家を受け継ぎ続けてきた実家の人にそこまで言って貰えるなんて、光栄だね。」

「こりゃまたカイルとも良い勝負をする堅物男だね~。やれやれ、死んだ親父といい、フランツやクルトといい、”ヴァンダール”の血が混じっている家系は堅物になりやすい傾向でもあるのかね?」

「むしろ先輩は何で、クルトやフランツとは真逆のような人格なんですか………」

「今まで出会った”ヴァンダール家”の人物と比較するとまさに”ヴァンダールの突然変異”と言ってもおかしくない人格ですね、フォルデさんは。」

「ア、アルティナさん。」

クルトの言葉にフランツが苦笑している中呆れた表情で呟いたフォルデの発言にユウナ達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたリィンは疲れた表情で指摘し、ジト目で指摘したアルティナの言葉を聞いたセレーネは冷や汗をかいた。



「そう言えば……フォルデ先輩から聞いたよ、フランツ。エイリーク皇女殿下の親衛隊所属の騎士に昇進した上、アメリアとも婚約したんだって?遅くなったが祝福の言葉を言わせてくれ。―――おめでとう。二人の同期として2重の意味で祝福するよ。」

「ありがとう。でも、その言葉は僕のセリフでもあるよ。リィンの出世や婚約は色々な意味でも驚いたけど、一番驚いたのはリィンがステラの気持ちにようやく気づいた事かな?」

「え”。その口ぶりだとフランツ達もステラの気持ちについて気づいていたのか……?」

フランツを祝福したリィンだったが、フランツの口から出た予想外の話に表情を引き攣らせてフランツに訊ねた。

「クク、むしろ訓練兵時代お前の同期や俺やカイルのようにお前達を指導する騎士達、それにセシリア将軍も全員気づいていて、気づいていないのは当の本人のお前だけだぜ?ステラのお前に向ける気持ちはアメリアよりもわかりやすかったしな。」

「ええっ!?」

「……そんなにわかりやすかったなんて、初めて知りました。」

「ア、アハハ………」

からかいの表情をしているフォルデの指摘にリィンが驚いている中ステラは疲れた表情で溜息を吐き、セレーネは苦笑し、その様子を見守っていたユウナ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

(ねえねえ、アルティナ。もしかしてリィン教官って、恋愛に関してとんでもない鈍感なの……?)

(もしかしなくてもその通りです。しかも、とんでもないどころか”致命的”と言ってもおかしくないかと。実際そのお陰で、アルフィン様や1年半前の内戦でリィン教官との関係が親密になった事で婚約関係になった旧Ⅶ組の女性―――アリサさんも苦労し、エリゼ様のように”最終手段”を実行してようやく自分達の気持ちに気づいてもらえたとの事です。)

(さ、”最終手段”って一体どんな”手段”を実行したのよ……)

(というかよくそれで、教官は皇女殿下を含めた多くの女性達の気持ちに応えて、将来を共にする事を決められたな……)

(し、視線が痛い……)

それぞれジト目で話し合っているアルティナとユウナ、呆れた表情のクルトの視線に晒されたリィンは疲れた表情で溜息を吐いた。



「フフ………しかし此の地にサンドロッド卿が来ておらぬのはさぞ見込み違いであっただろうな。」

一方その様子を微笑ましく見守っていたラウラは気を取り直して話を変えた。

「……ああ。リウイ陛下やメンフィル帝国政府の意向ではないみたいだ。そして、3種類の人形兵器がこの地で確認されたことの意味――――」

「や、やっぱり”結社”の残党が何かしようとしてるんでしょうか?」

「現時点では断言できぬ。陽動の可能性も否定はできまい。この地に注目を集めながらまったく別の地で事を為す――――そのくらいの事は平気でやりそうな連中のようだからな。」

「確かに、謀略のレベルはレン皇女殿下やメンフィル帝国の諜報部隊並みかもしれませんね。」

「って、アンタねぇ……」

「ふう……君が言うか。」

「はは………」

(というかレン皇女殿下やメンフィルの諜報部隊はもっとえげつない事をしているから、比較対象にならないんじゃね?)

(に、兄さん。)

ラウラの推測に同意したアルティナの話を聞いたユウナとクルトは呆れた表情でアルティナを見つめ、その様子を見守っていたリィンは苦笑し、からかいの表情で呟いたフォルデの小声を聞いたフランツは冷や汗をかいた。



「―――お互い、何かわかったらすぐに連絡し合うことにしよう。エリオットもそうだが……ラウラ達がこの地にいてくれるのは何よりも心強いと思っている。まあ、女神達の導きとはちょっと違う気もするけど。」

「ふふっ、そうですわね。」

「フフ、何のことかな?こちらも同じだ――――頼みにさせてもらうとしよう。トールズ第Ⅱ、そして”Ⅶ組”の名を受け継ぎしそなたたち全員に。」

その後ラウラ達と別れたリィン達は練武場を出た。



~パルム~



「はぁ……なんていうかカッコよすぎるヒトだったなぁ。背が高くて凛としててそれでいて滅茶苦茶美人だし。ステラさんはステラさんで、まさに”深窓のお嬢様”のような女性でスタイルも抜群で、ラウラさんと比べても互角の美人だし。」

「ユウナさん。目がハートになってます。」

練武場を出て憧れの表情で感想を口にしたユウナにアルティナは静かな表情で指摘し

「……まさかあの方まで”Ⅶ組”とは思いませんでした。」

「はは、そうか。――――ラウラも、エリオットも、フォルデ先輩達も”Ⅶ組”や”特務部隊”は全員、俺の誇りだ。みんなそれぞれの事情でそれぞれの道を歩むことになったが……その誇りに支えられながら俺も、今までも、そして今もこうして自分の”道”に迷う事無く歩み続けていると思う。」

「お兄様………はい、それわたくしも同じ気持ちですし、勿論その誇りにはロイドさん達――――”特務支援課”の皆さんも入っていますわよね?」

「ああ、当たり前だ。」

「あ………」

「…………………」

「………ミリアムさんも、ですか?」

リィンとセレーネの話を聞いたユウナが呆けている中クルトは静かな表情で二人を見つめ、アルティナは二人に訊ねた。

「ああ、大切な仲間だ。そしてその仲間の中には当然アルティナも入っているぞ。」

「………ぁ…………」

(リ、リィン様、また”いつもの癖”が早速ですか……)

(まあ、リィンだものね……)

リィンに頭を撫でられたアルティナは呆けた声を出し、その様子を見守っていたメサイアは疲れた表情で呟き、アイドスは苦笑していた。

「勿論、かつての”Ⅶ組”と新しい”Ⅶ組”は同じじゃない。君達は君達の”Ⅶ組”がどういうものか見出していくといい。――――初めての特務活動も無事、完了したわけだしな。」

「ふふっ、しかも”任意”の要請の対応も全て終えましたから、まさに完璧の対応でしたわね。」

「そ、そういえば………」

「………今日中に3箇所の調査と必須の要請への対応でしたか。」

「正直、ギリギリでしたね。」

リィンとセレーネの指摘を聞いてそれぞれ我に返ったユウナは目を丸くし、クルトとアルティナは静かな表情で答えた。

「まあ、正確には演習地に帰るまでだが。―――それじゃあ、そろそろ町にでよう。何とか日没前に演習地に戻りたいからな。」

「はい!」

「了解です………と言いたい所ですが、教官。その前にメサイア皇女殿下にもご挨拶をしておきたいのですが………」

「ああ、そう言えばさっきは色々あって、お互い自己紹介はしていなかったな。――――メサイア。」

クルトの言葉を聞いてある事を思い出したリィンはメサイアを召喚した。

「あ…………さっきの時の…………」

「ふふっ、クロスベル皇女にしてヴァイスハイト・ツェリンダー皇帝と第4皇妃マルギレッタ・シリオスの養女、そしてリィン様の婚約者の一人のメサイア・シリオスと申します。先程は色々あってご挨拶もせずにリィン様の身体の中へと戻るという失礼をしてしまい、申し訳ありませんでした。」

「い、いえいえ……!むしろ、失礼をしたのは助けてもらったのに、お礼も言わなかったあたし達の方ですよ。えっと……ユウナ・クロフォードです。よろしくお願いします、メサイア皇女様。」

「お初にお目にかかります。ヴァンダール家が次男、クルト・ヴァンダールです。先程は助太刀をして頂き、本当にありがとうございました。」

メサイアに微笑まれたユウナは緊張した様子で答えた後自己紹介をし、クルトもユウナに続くように自己紹介をした後感謝の言葉を述べた。



「フフ、私は大した事はしていませんから、そんなに気になさらないでください。皆さんの”教官”であるリィン様の役目の一つは生徒である皆さんを守る事なのですから、リィン様の使い魔の一人として当然の事をしただけですわ。」

「えっと……メサイア皇女様の事を知ってから気になっていたんですけど、メサイア皇女様が教官の使い魔をしている事は色々と不味くありませんか?メサイア皇女様はクロスベルの皇女様なのに、いくらリィン教官と婚約関係とはいえ、”使い魔”―――主従関係を結んでいるんですから……」

メサイアの話を聞いたとユウナは気まずそうな様子でリィン達に訊ねた。

「フフ、お父様達からもリィン様の使い魔を続けて行く許可は貰っていますから、大丈夫ですわ。」

「そもそもメサイアさんはメンフィル帝国の”客将”でもありますから、メサイアさんがお兄様の使い魔である事を問題にしたら、そっちの方が問題にされますものね……」

ユウナの質問にメサイアとセレーネは苦笑しながら答え

「へ……じゃあ、メサイア皇女様もベルフェゴールさん達と同じメンフィル帝国の”客将”なんですか!?」

「ああ。元々メサイアと俺が出会った時期はヴァイスハイト皇帝達とメサイアが出会う前だったからな。その時点のメサイアもメルキア帝国の元皇女だったから、リウイ陛下達―――メンフィル帝国もメサイアを”客将”扱いしたんだ。幸い実力もあったしな。」

「”メルキア帝国”………聞いた事がない国ですが、もしかして異世界の……?」

ユウナの問いかけに答えたリィンの答えを聞いてある事が気になったクルトはリィン達に質問した。

「はい。そして私は今より遥か昔のメルキア皇帝だったヴァイスハイト・フィズ・メルキアーナとその妾である元アンナローツェ王国女王であったマルギレッタ・シリオスの娘だったのです。」

「へ………メサイア皇女様が、遥か昔のメルキア帝国っていう異世界の国の皇女様って…………」

「しかもご両親の名前がメサイア皇女殿下の養親である今のご両親の名前と非常に似ていますが……何か関係があるのですか?」

メサイアの説明を聞いたユウナは呆け、クルトは困惑の表情でメサイアを見つめた。そしてリィン達はメサイアが謎の転移門によって過去の並行世界から現代に迷い出た人物で、それを知ったヴァイスハイト皇帝達がメサイアを養子にした事を説明した。



「へ、並行世界で、しかもタイムスリップって………色々と非常識過ぎよ……」

「……まあ、教官の周りは”非常識”だらけなので、”今更”かと。」

「ア、アハハ………」

「別に意図してそうなった訳じゃないんだけどな……」

事情を聞き終えたユウナは疲れた表情で溜息を吐き、ジト目で呟いたアルティナの言葉を聞いたセレーネは苦笑し、リィンは疲れた表情で呟いた。

「……なるほど。だからヴァイスハイト皇帝陛下達は、自分達とそれほど年が離れて―――いえ、自分達よりも年上のメサイア皇女殿下を養子に迎えたのですか。」

「ちょっと、クルト君?女性に年齢の事を指摘するなんて、失礼なんじゃないの?」

「あ…………失礼しました。」

納得した様子で呟いたクルトの言葉を聞いたユウナはジト目で指摘し、指摘されたクルトは一瞬呆けた後メサイアに謝罪をした。

「ふふ、私は気にしていませんから、どうかお気になさらないでください。今後はリィン様に呼ばれれば、共に協力する事もありますでしょうから、よろしくお願いしますね。」

「はい!」

「こちらこそよろしくお願いします。」

「ハハ……―――さてと、今度こそ町を出て演習地に向かおうか。」

その後リィン達は町を出て演習地へと向かった―――――


 
 

 
後書き
今回出て来た新キャラフランツはフォルデやステラと違って、パーティーメンバー化する予定はないですから出番は今後あるかどうかわかりません(ぇ)それと暁の軌跡、まさかのアルティナ登場には驚きましたねwちなみに、私はアルティナゲットの為に回したアルティナの確率が高くなっているガチャでシャロンが来るという奇妙な出来事が起こりました(汗)マジでどうしよう……メインは月姫とフィー、紅騎士にマジレンだから、シャロンの入るスペースが(汗) 

 

第18話

午後8:00――――



~演習地・デアフリンガー号・2号車~



演習初日の夜、生徒達がそれぞれの夜を過ごしている中リィン達教官陣はミハイル少佐に演習の状況を報告していた。

「ふむ………演習一日目はそれなりに順調だったようだ。Ⅷ組、Ⅸ組共に予定していたカリキュラムは終了……Ⅶ組の特務活動にしても一定の成果を上げたと言えるだろう。」

「ふふっ、そうですね。」

「ま、ガキ共とっても、俺達教官達にとっても初めての演習初日としては上出来の類に入るだろうな。」

報告を聞き終えたミハイル少佐の感想にトワは微笑みながら同意し、ランドロスも静かな表情で同意した。

「は~、しかしマジでどこかで聞いた活動みたいだな。」

「うふふ、奇遇ね♪レンも聞いた事がある活動ね、”特務活動”は♪」

苦笑しているランディの言葉にレンは小悪魔な笑みを浮かべて同意し

「―――生徒達3人もよくやってくれたと思います。思いがけない手助けがあったというのもありますが。」

「フフ……ですが、そう言った手助けがあった”運”もまた実力の内だと思いますわよ。」

静かな表情で答えたリィンの話に続くようにセレーネは微笑みながら答えた。



「ふふっ、まさかラウラちゃんやフォルデさん達までアルトリザスに来ていたなんて。他にも関係者がいるみたいだし、ちょっと心強いね。」

「フン、あまり馴れ合わないようにはしてもらいたいものだがな。」

「はは、そのくらいは構わないんじゃないッスか?……ただでさえ、キナ臭い気配がしてるみたいだし。」

トワの言葉を聞いて呆れた表情で注意をしたミハイル少佐に対して苦笑しながら指摘したランディは表情を引き締めて話を続けた。

「ああ……3箇所での人形兵器の出現―――特殊なタイプまで含まれています。サザ―ラント州以外を狙った陽動の可能性もあるでしょうが……念のため、各方面に要請して危機に備えた方がいいのでは?」

「それにシャーリィさんもアルトリザスにいましたし……人形兵器の出現とシャーリィさんがアルトリザスにいた事は偶然とはとても思えませんわ。」

「ふむ……」

リィンとセレーネの話を聞いたミハイル少佐は考え込み

「通信網の構築も完了しました。今なら各方面にも要請できます。」

「TMP以外だと、現地の領邦軍にエレボニア正規軍の司令部あたりか。遊撃士協会(ブレイサーギルド)が機能してりゃあ連携のしようもあるんだけどな。」

「まあ、それは無理な相談よ。エレボニア―――いえ、”革新派”のギルド嫌いは筋金入りだからね♪」

「クク、1年半前の内戦終結後のエレボニア帝国内に起こった混乱も結局ギルドに頭を下げずにテメェ達だけの力で治める程の”意地”を張っていたものなぁ。」

ランディの話を聞いてそれぞれ指摘したレンとランドロスの微妙に危ない発言にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「フン……ギルドはともかく。放たれていた人形兵器も少数―――大規模に運用されている気配もない。”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”の目撃情報があったとはいえ、猟兵団”赤い星座”の猟兵達のサザ―ラント州入りは確認されていない。各方面への連絡はしているし、本格的な要請の必要はないだろう。」

「で、ですが……」

ミハイル少佐の話を聞いたトワは反論をしようとしたが

「そのための第Ⅱであるというのも弁えてもらいたい。あらゆる場所のカバーは不可能だ。それを補うという意味でもな。」

「………………………」

ミハイル少佐の正論に反論できず、黙り込んだ。

「ったく、御説ご尤もではあるが……」

「……現時点の状況なら第Ⅱが備えるだけでも十分だと?」

「専用の装甲列車と機甲兵を擁し、こうして演習地まで構築している。新兵ばかりとはいえ、中隊以上の戦力はあるだろう。国際的な規模とはいえ、相手は所詮、犯罪組織風情―――それもトップや最高幹部の大半を失った”残党”共だ。何とでも対処できるはずだ。」

そしてリィンの指摘にミハイル少佐が答えたその時!

「アハハ、それはどうかなぁ?」

突如娘の声が列車内に響いた!



「なに……!?」

「せ、生徒の声じゃないみたいですけど……」

「クク、どうやらお出ましのようだな。」

「うふふ、演習初日で”これ”なんだから、今後の演習も退屈せずにすみそうね♪」

「御二人はどうして、そんな呑気な様子でいられるのですか……」

声を聞いたミハイル少佐が驚き、トワが困惑している中不敵な笑みを浮かべたランドロスと小悪魔な笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたセレーネは疲れた表情で指摘し

「この声は―――!」

声に聞き覚えがあるランディが立ち上がって厳しい表情を浮かべたその時、何かがぶつかり、爆発する音が聞こえてきた!

「これは―――!」

対戦車砲(パンツァーファウスト)だ!」

音を聞いたリィンは目を見開き、ランディは音の正体を口にした。



~演習地~



リィン達が外に出る少し前、装甲列車や機甲兵は対戦車砲(パンツァーファウスト)によって攻撃され、煙をあげ、更に機甲兵は爆発の衝撃によって地面に倒れた!

「う、うわああああっ……!?」

「な、なんなの……!?」

「ああっ……!列車に機甲兵が……!」

突然の出来事に生徒達が混乱したり驚いたりしている中、列車から出て来たリィン達と共に出て来たトワは生徒達の元に向かって警告をした。

「危ないから離れて……!」

「くっ、どこだ……!?」

「―――あそこだ!」

「っ………!」

列車や機甲兵を襲撃した張本人―――空港付近で出会った赤毛の娘は高い丘で対戦車砲(パンツァーファウスト)を片手に持って騎士装束の娘と共にリィン達を見下ろしていた。



「シャーリィ、てめえっ!!」

「うふふ、まさかそっちから”殲滅”されにくるなんてね。」

ランディは赤毛の娘を睨んで声を上げ、レンは意味ありげな笑みを浮かべた。

「あはは……!ランディ兄、久しぶりだね♪」

「”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”……!それにあんたは――――」

「やはり結社に残っておられたのですか……」

厳しい表情で赤毛の娘に視線を向けたリィンはその隣にいる騎士装束の娘に視線を向けて厳しい表情をし、セレーネは真剣な表情で騎士装束の娘を見つめた。

「フフ、久しいですわね。灰の起動者(ライザー)に聖竜の姫君。”身喰らう蛇”の第七柱直属、”鉄機隊”筆頭隊士デュバリィです。短い付き合いとは思いますが第Ⅱとやらに挨拶に来ましたわ。」

「執行者No.ⅩⅦ――――”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランド。よろしくね、トールズ第Ⅱのみんな♪」

騎士装束の娘―――結社”身喰らう蛇”の第七柱直属にして内戦でも何度も剣を交えた”鉄機隊”の筆頭隊士―――”神速”のデュバリィと、同じく結社”身喰らう蛇”の”執行者”の一人にして、猟兵団”赤い星座”の”臨時”の団長を務めている”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランドはそれぞれ名乗り上げた!

「くっ、結社最強の戦闘部隊と”執行者”の一人とは……!」

「結社と手を組んだとは聞いたが”執行者”になってたとはな……まさかガレスや他の”赤い星座”の連中も来てんのか!?」

予想外の強敵の登場にミハイル少佐が唇を噛みしめている中、ランディは厳しい表情でシャーリィに問いかけた。



「ふふっ、こんな楽しい仕事、ガレス達に任せるわけないじゃん。あくまで個人的な暇つぶしかなぁ?」

「まったく貴女は……少しは使命感を見せなさい!」

「執行者に鉄機隊筆頭……予想以上の死地だったみたいだな。問答無用の奇襲――――一体どういうつもりだ!?」

シャーリィの発言に呆れたデュバリィがシャーリィに指摘している中厳しい表情で二人を睨んでいたリィンは二人に問いかけた。

「ふふっ、決まってるじゃん。」

リィンの問いかけに対して答えたシャーリィは対戦車砲(パンツァーファウスト)を地面に投げ捨てた後自身の得物であるチェーンソーが刃となっている特注のブレードライフルを構えた!

「………!」

「”テスタロッサ”………!」

「ほう~?まさかここで俺達とやりあうつもりかぁ?」

「うふふ、それならそれでレン達も構わないわよ?結社の残党の一部をわざわざ探さずに殲滅できるんだから♪」

「お二人とも、お願いしますからせめて状況を考えてから相手を挑発してくださいよ……」

シャーリィの行動を見たリィンとランディが表情を引き締めている中不敵な笑みを浮かべたランドロスとレンにセレーネは疲れた表情で指摘した。



「勘違いしないでください。わたくし達が出るまでもありませんわ。ここに来たのは挨拶と警告―――貴方がたに”身の程”というものを思い知らせるためですわ!」

そして剣と盾を構えたデュバリィが剣を掲げると大量の人形兵器がデュバリィとシャーリィの周囲に現れ、更に街道方面からも大量の人形兵器が現れた!

「きゃあっ……!?」

「クルトたちが言っていた……!」

人形兵器達の登場に生徒達は悲鳴を上げたり、表情を引き締めたりしていた。

「あはは、それじゃあ歓迎パーティを始めよっか!」

「我等からのもてなし、せいぜい楽しむといいですわ!」

シャーリィとデュバリィはそれぞれ第Ⅱ分校に宣戦布告をした!

「―――狼狽えんな!Ⅷ組戦術科、迎撃準備!機甲兵は狙われるから乗り込むな!―――お待ちかねの”戦場”だぜ、エルンスト!」

「”実戦”だからって、ビビる事はねぇ!相手は所詮犯罪組織の残党共だ!逆に相手に”身の程”を思い知らせてやる気概で戦え!」

「イ、イエス・サー!」

「Ⅸ組は後ろに下がって!戦術科が討ち漏らした敵に対処!医療班は待機、通信班は緊急連絡を!」

「単独行動は絶対に厳禁よ!戦うにせよ、報告するにせよ、必ず誰かと行動を共にしなさい!」

「イ、イエス・マム!」

エルンストを召喚したランディとランドロス、そしてトワとレンの指示にそれぞれ答えた戦術科と主計科の生徒達がそれぞれ人形兵器達に対する迎撃を始めている中ユウナ達特務科の生徒達も担当教官であるリィンとセレーネに仰ぐためにそれぞれ武器を構えた二人の元へと集まった。

「リィン教官……!セレーネ教官……!」

「僕達はどうすれば!?」

「Ⅶ組は遊撃だ!Ⅷ組・Ⅸ組をフォローする。来い――――メサイア!」

「連戦も予想されるので、体力の配分に気をつけてください!」

「了解です。」

生徒達にセレーネと共に指示をしたリィンはメサイアを召喚し

「チッ、どこからここまでの戦力を……Ⅷ組、スリーマンセルで対応!Ⅸ組は散開しすぎだ!Ⅶ組、遊撃を頼む!」

既に生徒達や教官達が人形兵器達と戦っている中敵の戦力の多さに舌打ちをしたミハイル少佐は気を取り直した後指示をした。

「了解―――みんな、行くぞ!」

「イエス・サー!」

そしてリィン達は遊撃を開始し、まず最初に街道方面から新たに現れた人形兵器達を撃破した。



「よし……!」

「こ、これで何とか……!」

「うわあっ、なんや……!?」

「くっ………」

「うわああ……っ!?」

「ぁうっ……!」

人形兵器達に勝利したユウナとクルトが一息ついたその時、Ⅷ組、Ⅸ組の生徒達がそれぞれ新たに現れた人形兵器達の戦闘によって苦戦したり、戦闘不能に陥ったりしていた。

「ああっ……!ゼシカ!?」

「シドニー、ウェインも!」

「両翼側面!」

「二手に分かれてカバーする!俺とメサイアは右翼!残りのメンバーは左翼のカバーに当たれ!セレーネ、ユウナ達の事は頼んだぞ!」

「わかりましたわ!」

「「はい!」」

「「了解しました!」」

そして生徒達に新たな指示を出したリィンはメサイアと共に窮地に陥っているⅨ組の生徒達のカバーへと向かい、セレーネはユウナ達と共にⅧ組の生徒達のカバーに向かった。

「リィン教官!」

「私達じゃ保たない!」

赤茶色の毛の少女―――サンディと銀髪の少女―――ヴァレリーは救援に来たリィンとメサイアに援護を頼み

「後は任せてください!」

「撃破するぞ!」

メサイアとリィンは人形兵器達に向かって行き、戦闘を開始した!



「「―――――――」」

新たに現れた敵であるリィンとメサイアに対して人形兵器達はそれぞれ回転するレーザー―――サイクロンレーザーを解き放った。

「「!」」

襲い掛かるレーザーに対して二人はそれぞれ側面に跳躍して回避し

「斬り裂け―――斬闇!!」

メサイアが暗黒の魔力を宿した剣による薙ぎ払い攻撃を放って反撃をした。

「「!?」」

「崩しましたわ!」

「隙あり!――――緋空斬!!」

メサイアの反撃によって敵の態勢が崩れるとメサイアと戦術リンクを結んでいたリィンが続くように炎の斬撃波を放って追撃をした。

「ブレイブオーダー起動―――聖魔陣”聖淵”!出でよ、断罪の光よ―――斎戒の洗礼!!」

リィンが追撃している間にあらゆる能力を一時的に上昇させるブレイブオーダーで自分達の能力を上昇させたメサイアは断罪の力を持った光柱を発生させる魔術を発動して人形兵器達に更なるダメージを与え

「二の型―――洸波斬!!」

リィンも続くように神速の抜刀による斬撃波を放って更なるダメージを与えた。

「「――――」」

リィンによる追撃が終わると人形兵器達は背中にある砲台からミサイルを次々と二人に放ち

「二の型・改――――裏紅蓮剣!斬!!」

「闘技―――虎口一閃!!」

襲い掛かるミサイルに対して二人はそれぞれ電光石火の速さで敵に詰め寄って攻撃をするクラフトを放って回避と共に反撃を叩き込み

「これで――――」

「終わりですわ!」

反撃を叩き込んだ後それぞれすぐに反転して強烈な一撃による袈裟斬りを放って止めを刺した!



「やったぁ!」

「すげぇ……!たった二人で俺達だとどうしようも無かったあんなとんでもない人形兵器達を撃破するなんて……!」

人形兵器達の撃破を見たサンディは喜び、赤茶髪の男子―――パブロは二人の強さに興奮した。

「ここはもう大丈夫のようですわね……」

「ああ。遊撃並びに援護を再開するぞ!」

「はい!」

そしてリィンとメサイアは他の遊撃や援護の為にその場から離れた。



リィンとメサイアがⅨ組の救援に駆けつけた同じ頃、セレーネ達もⅧ組の救援に駆けつけた。

「ク、クルト、セレーネ教官も!」

「き、気を付けなさい……!」

加勢に来たセレーネ達の登場に一人でライフルで牽制していた男子―――シドニーは僅かに安堵の表情をし、蒼髪の女子―――ゼシカはユウナ達に忠告した。

「敵多数、迎撃を開始します!」

「ここが正念場ですわ――――行きますわよ!」

そしてセレーネの号令を合図にユウナ達は戦闘を人形兵器達との戦闘を開始した。



「「―――――」」

「っと!」

「その攻撃は既に見切っている……!」

戦闘開始時、人形兵器達はそれぞれ回転する刃を放ったが、放たれた対象―――ユウナとクルトはそれぞれ武器で叩き落した。

「ブリューナク、照射。」

「――――――」

「落ちよ、聖なる雷――――ライトニングプラズマ!!」

反撃にアルティナはクラウ=ソラスにレーザーを解き放たさせ、セレーネは詠唱時間が短い魔術を発動して人形兵器達にそれぞれダメージを与えた。

「逃がさない……!ヤァァァァッ!!」

「ハァァァァ……これで、沈め――――黒鷹旋!!」

ユウナとクルトも続くようにそれぞれ遠距離攻撃のクラフトを放って追撃し

「いきます――――ノワールクレスト!――えいっ!」

「―――――」

「ヤアッ!」

アルティナはブレイブオーダーを起動して味方全体に反射結界を付与した後セレーネと共に人形兵器達に詰め寄って近接攻撃をして更なるダメージを与えた。

「「――――――!?」」

近接攻撃を仕掛けて来た二人の行動を好機と判断した人形兵器達は麻痺毒が塗り込まれている糸を放って反撃したがアルティナのオーダーによって、反射結界が二人に付与されていた為、人形兵器達は自分達の反撃でダメージを受けてしまった。



「ハァァァァァ……!―――斬!!」

「ハァァァァ……!えいっ!!」

「「!?」」

クルトとユウナもセレーネとアルティナに続くようにそれぞれ人形兵器達に接近してクラフトを叩き込んで人形兵器達の態勢を崩し

「崩したぞ!」

「追撃します!」

「崩したわ!」

「そこですっ!」

人形兵器達の態勢が崩れるとそれぞれと戦術リンクを結んでいたアルティナとセレーネがすかさず追撃を叩き込んだ。

「アークス駆動――――エアリアルダスト!!」

追撃を終えた後、戦術オーブメントの駆動を終えたアルティナは竜巻を発生させるアーツを発動して人形兵器達の動きを止め

「全てを塵と化せ―――超電磁砲(レールガン)―――――ッ!!」

止めにセレーネが両手から極太の雷光のエネルギーを放って人形兵器達を跡形もなく消滅させた!



「ふう………ゼシカ、大丈夫!?」

人形兵器達の撃破を確認したユウナは一息ついた後ゼシカに安否を確認し

「ええ……!でもウェイン君が……!」

「う……ぐううっ……」

ユウナの言葉に頷いたゼシカは地面に倒れて人形兵器達との戦いで負った重傷で呻いている眼鏡の男子生徒―――ウェインを心配そうな表情で見つめた。

「皆さん……!」

「だ、大丈夫ですか……!?」

「こちらへ、応急処置しますっ!」

するとその時医療班を担当しているミュゼ、中性的な容姿の男子生徒―――カイリとティータが駆け寄ってゼシカ達に声をかけた。

「シドニーさん!ウェインさんを連れて下がってください!」

医療班の到着を確認したセレーネはシドニーに指示をした。

「わ、わかりましたっ……!クルト、ここは頼んだぜ!」

「ああ、任せてくれ!」

「索敵を再開します!」

そしてセレーネ達は遊撃や援護を再開した。



「フン、思ったよりも食い下がりますわね。」

「ふふっ、ランディ兄も、教え子君達も悪くないじゃん。指揮と遊撃のおかげかな?なかなかソソらせてくれるねぇ……」

一方分校の生徒や教官達による迎撃戦をデュバリィと共に観戦していたシャーリィは不敵な笑みを浮かべて自身の得物のチェーンソーの部分を起動させ

「ちょ、ちょっと貴女!まさか―――」

シャーリィの行動を見て何かを察したデュバリィは表情を引き攣らせた。

「あはは、美味しそうな匂いには我慢できないタチなんだよね……ちょっとだけ―――味見するくらいだからさああっ!!」

そしてシャーリィは装甲列車を攻撃する為に演習地に突撃し

「ああもう―――どうしてわたくしが御守を!」

シャーリィの行動を見たデュバリィは疲れた表情で溜息を吐いた後シャーリィの後を追って行った。



「………!」

「チイ……ッ!」

シャーリィとデュバリィの行動に逸早く気づいたリィンは厳しい表情を浮かべ、ランディは舌打ちをし

「し、死角を……!」

「くっ、狙いは車両―――」

トワは不安そうな表情をし、ミハイル少佐は唇を噛みしめた。

「うおおっ……!?」

「ひええっ……!」

突撃してくるシャーリィを見た生徒達は悲鳴を上げ

「ほらほら!巻き込まれたくなかったらとっとと逃げなよねぇ!」

そしてシャーリィが車両に近づいたその時、シャーリィの頭上から銃弾が解き放たれ、突然の奇襲に気づいたシャーリィは一旦下がった。

「え………」

「うふふ、なるほどね。となるとアルトリザスにいる他のメンバーも――――」

シャーリィへの奇襲を見たティータが呆けている中レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。

「あははっ……!ナイスタイミングだね!」

「………バッドタイミングの間違いだと思うけど。」

「………あ………」

「フィーさん……!」

シャーリィの言葉に対して列車の屋根にいるフィーは静かな表情で答え、フィーの登場にリィンは呆け、セレーネは明るい表情を浮かべた。

「3年―――いや4年ぶりかな?おっきくなったねぇ!”西風の妖精(シルフィード)”!」

「”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”―――……ううん、結社の”紅の戦鬼”。4年前は敵わなかったけどこっちもそれなりに成長した。今日は届かせてもらう。」

「アハッ、いいよ!それじゃあ小手調べと行こうか!」

フィーの言葉に好戦的な笑みを浮かべて答えたシャーリィはフィーとの戦闘を開始した!

「まさか”旧Ⅶ組”が他にも来ていたとは……しかもあの娘は確か………!これは――――」

一方二人の戦いの様子を見守っていたデュバリィは突如戦場に響き始めたバイオリンの音に気づき、音がしてくる方向へと視線を向けた。



「響いて――――レメディ・ファンタジア!!」

デュバリィが視線を向けた方向―――列車の屋根でバイオリンに変形した魔導杖で演奏をしていたエリオットが演奏を終えると何と戦闘によって傷ついた生徒達の傷が回復し始めた。

「おおっ、動けるぞ……!?」

「なんて綺麗な音色……」

「エリオット……」

「す、凄い……」

「魔導杖の特殊モードによる戦場全体の回復術ですか……」

「ふふっ、さすがはエリオットさんですわね。」

エリオットの回復術に生徒達だけでなく、リィンやセレーネも驚いたり感心したりしていた。



「つ、次から次へと……いいでしょう!ならばわたくしも本気を――――」

次から次へと現れるリィン達に対する援軍に顔に青筋を立てて身体を震わせていたデュバリィが本気を出そうとしたその時

「その本気は私達が受け止めさせてもらおうか。」

娘の声が突如聞こえ、声に気づいたデュバリィが視線を向けると高い丘にいつの間にか大剣を構えたラウラがいた。

「くっ………現れましたわね!」

「奥義――――”洸凰剣”!!」

ラウラの登場にデュバリィが表情を引き締めて迎撃をしようとしたその時ラウラは高い丘から突撃してデュバリィに闘気によって蒼く輝く大剣による強烈な一撃を叩き込んだ!

「くうっ……こ、ここまでとは……ラウラ・アルゼイド―――皆伝に至りましたわね!?」

ラウラの強烈な一撃を盾で防御したデュバリィだったが、あまりの威力に後ろへと下がらせられた後ラウラを睨んだ。

「フフ、お陰様でな。これでそなたらともようやく対等に渡り合える。」

「くっ、生意気な……―――なっ!?くっ………」

ラウラの言葉にデュバリィが唇を噛みしめたその時突如デュバリィに向かって狙撃が次々と放たれ、狙撃に気づいたデュバリィは間一髪のタイミングで盾で防ぎながら回避行動に移ったが銃弾が僅かに肩をかすった事でうめき声を上げた。

「今の狙撃はまさか――――!やはり、貴女でしたか………ステラ・ディアメル!口上も無しにいきなり狙撃をするなんて、パンダグリュエルで撤退する為に背を向けたわたくしを撃った時といい、その卑劣さも相変わらずですわね……!前々から指摘しようと思っていましたけどそれが騎士のやる事ですか!?」

ラウラがいた高い丘でライフルを構えているステラを見つけたデュバリィは声を上げた後ステラを睨んで問いかけ

「”銃騎士”の本領の一つは敵に気取られる事無く狙撃を成功させ、味方を援護する事です。それに確か貴女の部隊の隊員の一人に弓の使い手がいて、星見の塔での”特務支援課”の皆さんとの戦いで人形兵器達に”特務支援課”の相手を任せて、自身は”狙撃”による奇襲攻撃をしたと聞いています。私の”狙撃”による奇襲攻撃を”卑劣”と評した貴女のその言葉は貴女の仲間―――”魔弓”にも当てはまると理解していて、発言しているのですか?」

「ぐっ………!」

ステラの指摘と正論に反論できないデュバリィは唸り声を上げ

「フフ、それに先程私はそなたに対して、”そなたの本気は私達が受け止めさせてもらおうか”と言った。”ステラ達と共にそなたの相手をするつもりでいた私”の言葉をよく聞いていなかったそなたの落ち度だ。」

「くっ、やかましいですわ!―――――!?”ステラ達”という事はまさか他にも―――――」

ラウラの指摘に対して反論したデュバリィだったが、すぐにある事に気づいて血相を変えて周囲を見回したその時

「絶――――蒼龍天雷槍!!」

「あぐっ!?」

デュバリィの死角から全身に雷を迸る蒼き竜を宿したフォルデが突撃してデュバリィに強烈な一撃を与えた!

「やれやれ、わざわざ敵の落ち度を指摘してやるなんて、相変わらず正々堂々が好きだね~、ラウラは。」

「フフ、それが私―――いや、”アルゼイド流”の性分ですので。」

「クッ……―――フォルデ・ヴィント!死角から絶技による奇襲をするなんて、貴方には”ヴァンダール流”の使い手としての”誇り”はないのですか!?」

若干呆れた様子で指摘したフォルデの指摘に対してラウラが苦笑している中デュバリィは唇を噛みしめた後フォルデを睨んで指摘し

「”誇り”とかそう言うめんどくさいものは”本家”の連中が受け継いでいるから、”本家”の人間ではない俺達はやりたいようにやらせてもらうだけだ。それにメンフィルは奇襲、夜襲、暗殺と言った俗に言う”卑怯な手段”も十八番(おはこ)だし、第一”実戦”に”ルール”なんて存在しないぜ?”実戦”で相手が正々堂々な正面からのぶつかり合いの勝負に応じてくれるって思っているお前の方が随分とおめでたい考えをしているんじゃねぇのか?」

「だ、誰がおめでたい考えをしているですって!?というか”殲滅天使”といい、ステラ・ディアメルや貴方といい、1年半前の”七日戦役”や内戦の件といい、何でメンフィルはそんなに卑劣な手段ばかり取る事が多いのですか!普通、そういった手段は我々”結社”や”猟兵”のような裏の組織に所属している者達の専売特許ですわよ!?―――って、言った傍から……!ああもう……!どうしてわたくしばかりこんな目に……!」

「そんじゃ、俺達も始めるとするか。」

「フフ、承知した。」

フォルデの話や正論を聞くと怒りの表情で反論したが、ステラによる問答無用の狙撃に気づくと回避や防御行動に移り、フォルデとラウラもステラの狙撃に続くようにデュバリィとの戦闘を開始した。

「フィーちゃん、エリオット君、ラウラちゃん、フォルデさんにステラちゃんも……」

「……トールズ旧Ⅶ組にメンフィル帝国の特務部隊。助かったがこのタイミングは……」

フィー達の登場にトワが安堵の表情をしている中ミハイル少佐はフィー達の登場のタイミングの良さに呆れていた。



「ふーん、口先だけじゃなかったみたいだね?ぬるい道を選んだと思ったけど紫電ってヒトの薫陶かな?」

一方列車の屋根でフィーと武器の打ち合いをしていたシャーリィは一旦離れた後興味ありげな様子でフィーに問いかけた。

「否定はしない。でも、まだそっちの方が上かな?」

「あはは、それが言えるだけでも十分凄いとは思うけど。……いいね、妖精。改めて気に入っちゃったよ。」

「こちらはお断り。」

そして二人が再び戦闘を再開しようとしたその時

「ええい、小腹を満たしたならとっとと行きますわよ!」

ラウラ達との戦闘を一旦中断したデュバリィがシャーリィに注意をした。

「あはは、ゴメンゴメン。」

デュバリィの注意を聞いたシャーリィは苦笑した後デュバリィと共に再び高い丘へと戻っていった。



「な、なんて身体能力……」

「これが”結社”……」

二人の身体能力にユウナとクルトは驚き

「チッ……化物娘どもが。」

「……しかも全然、本気を出していないな。」

ランディは舌打ちをし、リィンは真剣な表情で呟いた。

「……あら?ランディさん、ランドロス教官が見当たらないのですが……?」

「ハア?げっ……ちょっと目を離した隙にこの非常時にどこに行ったんだよ、あのオッサンは!?しかもエルンストも見当たらねぇ!まさかとは思うが―――」

ある事に気づいたセレーネの指摘を聞いたランディは周囲を見回してランドロスやエルンストがいない事に気づいて疲れた表情で声を上げた後ある推測をした。



「お遊びにしてはなかなか楽しめたかな?―――本当の”戦争”だったら5分くらいで壊滅だろうけど。」

「ひっ……」

「お、お遊びですって……」

シャーリィの言葉を聞いたカイリは悲鳴を上げ、ゼシカは怒りの表情でシャーリィを睨んだ。

「まあ、この場所を叩くのは今夜限りと宣言しておきます。明日以降、せいぜい閉じこもって演習や訓練に励むといいでしょう。―――この地で起きる一切のことに―――」

そしてデュバリィが第Ⅱ分校の生徒や教官達に忠告をしかけたその時!

「ほう。残党の分際でこのオレサマ達がいるにも関わらず、5分で”壊滅”とは随分と口がデカくなったようだな、小娘共?」

「へ。」

「な―――――」

なんとエルンストの転移魔術によってランドロスがシャーリィとデュバリィの背後にエルンストとレン、そしてパテル=マテルと共に現れ、エルンスト達の登場にシャーリィは呆け、デュバリィが絶句したその時

「クク、演習初日早々に仕掛けて来て、雛鳥達に”奇襲”を経験させてくれた事に関しては礼を言うよ。その礼代わりに……例え”お遊び”だろうと、”戦争”を仕掛けたんだったら、当然”思わぬ反撃”を喰らう事も覚悟していた事を確かめさせて―――もらうよっ!!」

そしてエルンストは両手に溜め込んだ膨大な魔力を解放してシャーリィとデュバリィの周囲に魔力による怒涛の連続大爆発を起こし

「なああああああああっ!?」

「あはは、さすがランディ兄の使い魔だけあって、容赦がないねぇ!」

エルンストのSクラフト――転移爆発に対してデュバリィは混乱しながら、シャーリィは不敵な笑みを浮かべて反撃の機会を練りながらそれぞれ必死に回避や防御行動に移り

「こいつは今回の”お遊び”の”土産”だ。遠慮なく持っていけ――――玄武の滅燐撃!!」

「あうっ!?」

「あぐっ!?」

そこにランドロスが膨大な闘気を纏った大剣を地面に叩き付けて広範囲の凄まじい威力の衝撃波を二人に命中させて怯ませ

「うふふ、そしてこれは”お土産のオマケ”よ♪――――パテル=マテル!」

「―――――――」

「ちょ――――ぐっ!?」

「さすがにこれは不味――――へぶっ!?」

二人が怯んだ隙にレンはパテル=マテルに指示をし、レンの指示を受け取ったパテル=マテルは二人に向かって突撃してアッパーカットを放って二人を空高くへとふっ飛ばした!

「あはは、まんまとやられたねぇ。」

「くっ……去り際のセリフすらも言わせてもらえなかったなんて……!ううっ、今日は厄日ですわ……!今回受けた屈辱、1年半前に受けた屈辱も合わせていつか必ず倍返しにしてあげますから、絶対に覚えていやがれですわ――――!」

空高くへとふっ飛ばされたシャーリィは呑気に笑いながら、デュバリィは疲れた表情で呟いた後捨て台詞を口にした後転移魔術の効果がある道具を使ってシャーリィと共にその場から消え、その様子を見守っていたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ったく………これだから目を離す事ができねぇんだよ、あのハチャメチャ連中共は!」

「レ、レンちゃ~ん………」

「ア、アハハ……敵どころか味方まで欺く所も、レン教官達らしいと言えばらしい行動でしたわね……」

我に返ったランディとティータは疲れた表情で溜息を吐き、セレーネは苦笑していた。



「くっ……まさか初日からとは。」

「とにかく被害状況を確かめましょう……!」

シャーリィとデュバリィがパテル=マテルの追撃によってその場からふっ飛ばされた後戦闘が終了した事によって生徒達が安堵や疲労で地面に座り込んだり倒れ込んだりしている中ミハイル少佐は唇を噛みしめ、トワはすぐにやるべきことを口にした。

「動けないヤツには手を貸してやれ!」

「動けない方達はわたくしとレン教官が治癒魔術で治しますので、わたくしかレン教官の所に運んでください!」

「軽傷で済んだ人達も動けない人達の治癒が終わったらちゃんと治癒魔術をかけてあげるから、後片付けが終わったら忘れずにレンかセレーネの所に来なさい!」

「手が空いている奴等はまず消火活動をしろ!火をほおっておいたら、二次災害が起きるぞ!」

「みんな、怪我はないな?ユウナとアルティナは負傷者のフォローを。クルトは被害状況の確認に回ってくれ。メサイアもすまないが、セレーネやレン教官に手を貸してやってくれ。」

それぞれの教官達が生徒達に指示をしている中、リィンはユウナ達に他の教官達のように指示をしていた。



「は、はい……!」

「……………(コクッ)」

「……了解です。」

「わかりましたわ。」

リィンの指示にそれぞれ頷いたユウナ達はメサイアと共にその場から離れてリィンの指示通りの行動を始めた。

「リィン。」

するとその時ラウラ達と共に来たエリオットがリィンを呼び止めた。

「エリオット、ラウラ……ステラにフォルデ先輩……そしてフィーも。ありがとう、助かったよ。」

「ん。ラウラとかミリアムみたいに再会のハグがしたかったけどちょっとそんな雰囲気じゃないね。わたし達も手伝おうか?」

「ああ、助かる―――ってミリアムのことまでなんで知っているんだ?」

「フフ、それは追々な。」

フィーの言葉に頷きかけたリィンだったが、フィーがその場にいなかったにも関わらず知っている出来事に困惑し、リィンの様子にラウラは苦笑していた。

「クク、しかしラウラやミリアムでハグなんだから、お前やエリゼちゃん達と”同じ立場”でありながら中々会う機会が無かったアリサが再会したら、ハグに加えてディープキスもするんじゃねぇのか~?」

「フフ、アリサさんでしたらありえそうですね。」

「ん。その光景がわたし達でも目に浮かぶ。」

「まあ、1年前の最後の”自由活動日”の時も、人前であるにも関わらずミリアムのように、リィンに突撃した後自ら口づけをする程、リィンを慕っている様子を見せていたしな。」

「というかそういう話はせめて当事者の一人になる俺がいない所でしてくれないか……?」

フォルデのからかいにステラが苦笑している中フィーの言葉に続くようにラウラは困った表情で答え、フォルデ達の会話を聞いたリィンは疲れた表情で指摘した。

「アハハ……とりあえず僕も治療を手伝うよ。医務室は列車の中?」

「ああ、よろしく頼む。それにしても――――」

苦笑した後気を取り直したエリオットの申し出に頷いたリィンは”戦場”跡となった演習地を見回し

「……とうとう事態が動き始めてしまったか。」

「うん……そうだね。」

「それも氷山の一角。全貌がまったく見えない。」

「やれやれ……今回の出来事はアルトリザスと隣接しているメンフィル帝国領(セントアーク)にとっても他人事じゃないだろうから、間違いなく今夜の件も既にリウイ陛下やシルヴァン陛下の耳に入っているだろうな。」

「はい………そして両陛下が例の”要請(オーダー)”を発動する可能性も非常に高いでしょうね。」

「ああ……―――明日は色々と忙しくなりそうだ。」

リィンと共に演習地を見回して重々しい様子を纏って呟いたラウラの言葉にエリオットは頷き、フィーは静かな表情で呟き、疲れた表情で溜息を吐いたフォルデの言葉に続くように呟いたステラはリィンに視線を向け、視線を向けられたリィンは頷いた後決意の表情を浮かべていた。


 
 

 
後書き
原作と違い、レン達がいるのでデュバリィとシャーリィは思わぬ反撃を喰らった上最後はポケモンのロケット団のように空高くへとふっ飛ばされましたww 

 

第19話

4月23日、演習2日目――――



シャーリィとデュバリィによる夜襲があった翌朝、リィン達はミハイル少佐とレクター少佐から信じられない報告を受けていた。



~デアフリンガー号・2号車―――ブリーフィングルーム~



「て、鉄道憲兵隊も動かないんですか……!?」

「ああ……諸般の事情でな。」

「ま、帝国の東側で面倒な事件が起こってな。こっちに戦力を割いてる余裕がないってことだ。」

驚いている様子のトワにミハイル少佐は重々しい様子を纏って、レクター少佐はいつもの調子で理由を答え

「……おいおい、ふざけんなよ。”結社”の執行者に鉄機隊―――しかもあのシャーリィが来ている。下手したらサザ―ラント州が火に包まれてもおかしくねえぞ?」

「サザ―ラントどころか、下手したらアルトリザスの”お隣”のメンフィル帝国領(セントアーク)まで”巻き添え”を受けるかもしれないわねぇ?」

「クク、1年半前の件でメンフィルにあれ程痛い目に遭わされたにも関わらず、そんな”余裕”があるなんて、さすがは1年半前に建国されたばかりの”新興の某帝国”と違って”伝統”を誇るエレボニア帝国だなぁ?」

「………それは………」

静かな怒りを纏ったランディと小悪魔な笑みを浮かべたレン、そして不敵な笑みを浮かべたランドロスの指摘に対して反論できないミハイル少佐は複雑そうな表情で言葉を濁した。

「……ランドルフ教官。あの、シャーリィさんという女性は?」

「ああ……身内の恥にはなるが俺の従妹になる。大陸最強の猟兵団の一つ、”赤い星座”の大隊長……―――いや、叔父貴が死んで団長になったみてえだな。」

トワの質問に対してランディは静かな表情で答え

「赤い星座……聞いた事があります。」

「クロスベルの異変で暗躍していた最強の猟兵団………わたくしやお兄様、それにランディさんが所属していた”特務支援課”やヴァイスハイト皇帝陛下達―――”六銃士”の方達の協力によって阻止する事ができたのですわ……」

「阻止っつーか、リア充皇帝共や”嵐の剣神”達が言葉通り叔父貴を含めたあの異変に関わっていたほとんどの猟兵達の命を奪って”壊滅”に陥らせたけどな。だがその後、あの人喰い虎は”結社”にスカウトされやがった。”赤い星座”に所属したままな。」

ランディの答えを聞いたトワは真剣な表情を浮かべ、複雑そうな表情で答えたセレーネに続くように疲れた表情で答えたランディは厳しい表情を浮かべた。

「それは………」

「―――”赤い星座”の本隊の連中が控えているって事だな。」

「更に”神速”を除いた”鉄機隊”の他の面々もね。」

ランディの話を聞いたリィンは表情を厳しくし、ランドロスとレンはそれぞれ静かな表情で答えた。



「―――それなんだが、”赤い星座”の本隊の方は帝国には入ってないみたいだな。」」

「なに……!?」

するとその時レクター少佐が意外な情報を口にし、その情報を聞いてリィン達と共に血相を変えたランディは驚きの声を上げた。

「元々、結社の傘下じゃないし別のヤマをやってるみたいだぜ?分隊は知らんが、アンタが想像する最悪の状況にはなってないってことだ。」

「……………」

「……その意味で、現状の危険度は”そこまで”ではないという判断だ。連中の狙いがわかるまであくまで第Ⅱのみで備えておく。無論、サザ―ラント領邦軍には治安維持をしてもらうつもりだが。」

レクター少佐の指摘にランディが目を細めて黙り込んでいる中ミハイル少佐は静かな表情で答えた。

「で、でも……」

「ならば帝国正規軍には?リグバルト要塞―――サザ―ラントの北端ですよね。」

ミハイル少佐の説明に納得し切れないトワが反論しようとしたその時、リィンが別の質問をした。

「……正規軍は正規軍で忙しい。煩わせたくないとの判断だ。繰り返しになるが……今回の件は、現地領邦軍と第Ⅱの”現有戦力”に対処してもらう。これが現時点での決定事項だ。――――エレボニア帝国政府の。」

ミハイル少佐の説明を聞いたリィン達はそれぞれある人物―――オズボーン宰相の顔を思い浮かべた。

「そ、それって………」

「帝国政府……ってことは”あの”―――」

「なるほどなぁ………まさか”そういう手で来る”とはな。」

「……そういう事ですか。そして貴方が今朝タイミング良く現れた事を考えると………――――例の”要請”を貴方が”両陛下の代理人”としてこの場に現れたのですね?」

オズボーン宰相の顔を思い浮かべたトワは不安そうな表情をし、ランディは厳しい表情を浮かべ、ランドロスが不敵な笑みを浮かべたその時ある事を察したリィンは静かな表情でレクター少佐に問いかけた。

「お兄様……」

「………?」

リィンの言葉を聞いたセレーネが心配そうな表情をしている中、ランディは不思議そうな表情をしていた。



「ハハッ………いいんだな?そこまで察しているという事は、お前がやろうとしている事は結果的にお前の今の祖国であるメンフィルではなく、1年半前の戦争相手だったエレボニアの方に”利”がある事も既に察しているだろう?」

「ええ、レン皇女殿下達に鍛えて頂いたお陰で。だが、そこに危機が迫り、何とかする力があるのなら……エレボニアの内戦を終結させた”特務部隊”の”総大将”として、”七日戦役”を”和解”への切っ掛けを作った者として、俺は見過ごすことはできません。このまま”結社”の計画通りに状況が進めば、最悪アルトリザスに隣接しているメンフィル帝国領(セントアーク)まで巻き込まれ、その結果”ユミルの二の舞い”になる事は見過ごせません。」

レクター少佐の問いかけに対してリィンは決意の表情で答え

「……上等だ。」

リィンの答えを聞いて不敵な笑みを浮かべたレクター少佐は持っていた封筒から一枚の紙を取り出してある宣言をした。

「『”灰色の騎士”リィン・シュバルツァー殿。メンフィル帝国両皇帝の”要請(オーダー)”を伝える。サザ―ラント州にて進行する”結社”の目的を暴き、これを阻止、可能ならば”結社”の関係者を討伐せよ。」

「ほう~?それが話に聞いていた例の”灰色の騎士”専用の”要請(オーダー)”とやらか、」

「メンフィル帝国両皇帝―――”英雄王”とその息子である現メンフィル皇帝からの要請(オーダー)……”灰色の騎士”を動かす唯一の。」

レクター少佐が読み上げた紙の内容を知ったランドロスは興味ありげな表情を浮かべ、ミハイル少佐は真剣な表情を浮かべていた。

「その要請(オーダー)―――しかと承りました。」

そしてリィンは紙を受け取った後手に胸を当てて宣言をした。



「……なるほど。そういうカラクリか。しかし何で、エレボニアでの出来事にメンフィルが介入して、それをエレボニアの政府は何も言わないんだ?幾らエレボニアが1年半前の件でメンフィルに頭が上がらない立場とはいえ、さすがに不味くねぇか?」

「え、ええ……普通に考えたら、一種の”内政干渉”に考えられますけど……」

リィン達の様子を見守っていたランディの疑問に続くようにトワは戸惑いの表情で呟いた。

「うふふ………メンフィルが求めている”利”とエレボニア帝国政府が求めている”利”……―――それぞれに”利”があるからこそ、エレボニア帝国政府はパパとシルヴァンお兄様によるリィンお兄さんに対しての要請(オーダー)について何も口出ししないのよ。」

するとその時レンが小悪魔な笑みを浮かべて答えた。

「メンフィル帝国とエレボニア帝国の双方に”利”……ですか?それは一体どのような”利”なのでしょうか?」

レンの答えを聞いたトワは不思議そうな表情で訊ね

「既にみんなも知っての通り、パパ達やメンフィル帝国軍の精鋭部隊や暗殺部隊が結社の”盟主”を始めとした最高幹部クラスのほとんどを討ち取ったわ。で、メンフィルは今も”残党”として生き残っている結社の”殲滅”を目指して”極一部の人達を除いた結社や十三工房の上層部やエージェント”―――”執行者”や”蛇の使徒”、”蛇の使徒直属の部隊”、それと”十三工房”の関係者達を”賞金首”扱いしているの。で、エレボニアは1年半前の七日戦役やクロスベル帝国建国の件で様々な”力”が衰退した影響で、戦力もそうだけどあらゆる方面で深刻な人材不足に陥っているわ。――――ここまで言えば、エレボニア帝国政府がパパとシルヴァンお兄様による介入の件について何も言わない”理由”もわかるでしょう?」

「あ…………」

「……なるほどな。そういうカラクリになっていたのか。」

「クク、エレボニアの”利”に関しては”それ以外の利”も当然あるんだろうなぁ。」

レンの説明を聞いたトワは呆けた声を出し、ランディは真剣な表情で呟き、ランドロスは不敵な笑みを浮かべた。

「………!」

「やれやれ………今の話だけで”そこまで”察する事ができるなんてな……天性―――いや、”野生の勘”って所か?」

ランドロスの言葉を聞いたミハイル少佐が驚いている中疲れた表情で溜息を吐いたレクター少佐は不敵な笑みを浮かべてランドロスを見つめた。



「それにしても、その要請(オーダー)とやらは見ようによってはメンフィルの言いようにこき使われているようにも見えるが……リィン、お前さんはそれで納得しているのか?」

「ラ、ランドルフ教官。この場にはメンフィル皇家の一員であるレン教官もいらっしゃるのですから………」

リィンを見つめて目を細めて問いかけたランディの問いかけにトワはレンを気にしながら冷や汗をかいた。

「うふふ、ランディお兄さんはリィンお兄さんを心配して訊ねている事はちゃんと理解しているから、レンの事は別に気にしなくていいわよ。それにそのリィンお兄さん専用の要請(オーダー)はリィンお兄さんにとっても様々な”利”があるからこそ、リィンお兄さんも納得して請けているのよ?」

「ふえ……?それってどういう”利”なんですか……?」

レンの指摘を聞いたトワは不思議そうな表情でレンに訊ねた。

「国内、国外に関わらずいずれかの勢力によるシュバルツァー家に対する干渉に関する事はレン達―――メンフィル皇家がシュバルツァー家の”後ろ盾”になって、守ってあげる事よ。リィンお兄さん―――いえ、シュバルツァー家は1年半前の”七日戦役”とエレボニアの内戦の件で”色々な意味”でメンフィルやエレボニアは当然として、ゼムリア大陸ではとても有名な存在になったしね。特にエレボニアの両派閥の”一部の勢力”も、シュバルツァー家を取り込む事を未だに諦めていないみたいだしねぇ?」

「あ…………」

「…………………」

「なるほどな……特に、”某宰相”あたりはリィンを利用する事を考えていそうだな。何せリィンとの関係を考えると、あの怪物の事だから”政治以外の方面”からも利用できると考えているだろうしな。」

「ハハッ……どうやらその口ぶりだと、”特務支援課”の連中にも今の両親から聞いたお前の”真実”について話したみたいだな?」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたトワが呆けている中ミハイル少佐は複雑そうな表情で黙り込み、目を細めたランディに視線を向けられたレクター少佐は口元に笑みを浮かべた後リィンに問いかけた。

「ええ……アリサ達も知っているのですから、ロイド達にも当然知っておいて欲しかった事実でしたので。――――話を続けますけど、いくら戦争で活躍し、その活躍を評して”公爵”の爵位を授けたとはいえメンフィル皇家が一貴族を贔屓する事は、メンフィル帝国内の人々に”示し”がつきません。ですからメンフィル皇家以外の人々を納得させるには、それなりの”対価”が必要です。」

「そしてその”対価”が、メンフィル皇帝直々による”要請(オーダー)”って訳か。わざわざ皇帝直々の”要請(オーダー)”にしたのは皇家以外のメンフィルの政治家や軍の連中の介入を防ぐ為か?」

レクター少佐の問いかけに静かな表情で頷いたリィンは説明を続け、リィンの説明を納得した様子で聞いていたランドロスはレンに視線を向けた。



「うふふ、大正解♪リィンお兄さんに対する”要請(オーダー)”の権限を持つのはパパとシルヴァンお兄様のみだから、レンやプリネお姉様は当然として、リフィアお姉様ですら、リィンお兄さんに対する”要請(オーダー)”の権限を発動する事もできないのよ?」

「次期メンフィル女帝に即位する事が確定しているリフィア皇女殿下ですらも、リィン君に対する”要請(オーダー)”の権限がないのですか………」

レンの説明を聞いたトワは驚き

「更にリウイ陛下達もお兄様に対する”要請(オーダー)”を発動した際は、お兄様に様々なサポート要員を付けてくれましたわ。―――勿論、そのサポート要員の中にはわたくしも入っています。」

「やれやれ、至れり尽くせりだな。ま、そのお陰で”北方戦役”でのノーザンブリアの市民達の被害は皆無に済んだから、こっちとしては助かったんだがな。」

「何……っ!?」

「”北方戦役”って……!もしかしてリィン君、1年前のエレボニア帝国によるノーザンブリア侵略に協力していたの……!?」

セレーネの説明の補足の後に苦笑しながら答えたレクター少佐の話を聞いたランディは驚き、トワは信じられない表情でリィンに訊ねた。

「えっと、それは……」

「あー、紛らわしい事を言ってすまん。正確に言えば、”遊撃士協会の外部協力者として”、ノーザンブリアの公都であるハリアスクの市民達の避難誘導や救助に手を貸していやがったんだ。」

「遊撃士協会の………という事はエレボニア帝国軍によるノーザンブリア侵攻の情報を掴んだ遊撃士協会がメンフィル帝国と交渉して、リィン君達をハリアスクの市民の人達の避難誘導や救助を手伝う”要請(オーダー)”を両陛下が出したの……?」

リィンが困った表情で答えを濁していると代わりにレクター少佐が答え、レクター少佐の説明を聞いてある事に気づいたトワはリィンに視線を向け

「はい。」

視線を向けられたリィンは静かな表情で頷いた。

「ま、そのお陰でエレボニア帝国軍(こちら側)に軽い混乱が起こった上、被害も受けたから、メンフィルによる”北方戦役”に対する介入を疑って、情報局(オレ達)を惑わせたんだぜ?」

「ほう?”被害”って事はノーザンブリアに侵攻したエレボニアの連中を殺ったのか?」

レクター少佐の話を聞いてある事を察したランドロスは興味ありげな様子でリィンに訊ね

「市民にまで危害を加えようとした極一部のエレボニア帝国の兵士達のみを峰打ちか重傷を負わせただけですから、命までは奪っていません。」

「そ、そうだったんだ……」

「つーか、リィン達に攻撃されたエレボニアの兵士達は完全に自業自得だろ。市民にまで危害を加えようとするなんて、”百日戦役”の再来じゃねぇか。”七日戦役”でのメンフィルもそうだが、メンフィル・クロスベル連合軍によるカルバード侵攻―――”三日戦役”で旧共和国に恨みを持っていたクロスベル帝国軍ですら市民達に危害を加えるような事はしなかったんだぜ?」

「うふふ、対して”百日戦役”ではエレボニア帝国軍は多くのリベール王国の罪無き市民達の命を奪ったものねぇ?」

リィンの説明を聞いたトワが安堵の表情をしている中、ランディは呆れた表情で溜息を吐き、レンは意味ありげな笑みを浮かべてミハイル少佐やレクター少佐を見つめた。



「……シュバルツァー教官が言っているように、市民達に危害を加えようとしたエレボニア帝国軍の兵士達は”極一部”だ。そしてその者達は”北方戦役”後軍法会議にかけられ、重い処罰を受けた。」

「ま、メンフィルに”七日戦役”を仕掛けられてエレボニアが衰退した原因の一つは”北の猟兵”だったから、そのバカな連中は八つ当たりでハリアスクの市民達に危害を加えようとしたとの事だったから、シュバルツァーがハリアスクに侵攻したエレボニア帝国軍の兵達を攻撃した理由が判明した後帝国政府に加えてユーゲント皇帝陛下直々からも感謝状や勲章をシュバルツァーに贈ったんだぜ?」

レンに視線を向けられたミハイル少佐は静かな表情で答え、レクター少佐は苦笑しながら答えた。

「うふふ、そう言う訳だからリィンお兄さんは自分に対する”要請(オーダー)”も納得の上で請けているのよ。―――――そう言う訳だから、今からレンもリィンお兄さんやセレーネと一緒に”要請(オーダー)”を開始するからトワお姉さんはⅨ組の生徒達の面倒をお願いね♪」

「ええっ!?セレーネちゃんがリィン君を手伝う事は察していましたけどレン教官まで、手伝われるのですか……!?」

レンの話を聞いたトワは驚いた様子でレンに訊ね

「セレーネの説明にもあったでしょう?リィンお兄さんが”要請(オーダー)”を実行する際はメンフィルからもサポート要員を付けるって。――――ミハイル少佐も、その件について特に文句はないでしょう?」

「………ああ。シュバルツァー教官に対するメンフィル両皇帝陛下専用の”要請(オーダー)”の件に関する事はエレボニア帝国政府も承認した事は情報局を通して私にも伝わっているし、幸いにも第Ⅱのクラスには全て”副担任”もいるのだから問題無い。ハーシェル教官は本日の演習で、マーシルン教官がいないと支障が出る事はあるのか?」

理由を説明したレンはミハイル少佐に視線を向け、視線を向けられたミハイル少佐は静かな表情で頷いた後トワに確認し

「い、いえ、特に問題はありませんけど………」

「ならばその要請(オーダー)、我等も手伝わせてもらおう。」

ミハイル少佐の確認に対してトワが答えたその時、ラウラ達が現れた。



「ラウラ……フィーにエリオット、それにステラやフォルデ先輩も。」

「待て、部外者は遠慮してもらおうか……!」

ラウラ達の登場にリィンが驚いている中ミハイル少佐はラウラ達に注意をしたが

「メンフィル両皇帝からの要請は一教官へのものじゃない筈。リィン個人への要請だったらわたしたちも無関係じゃない。」

「まあ、俺とステラの場合はメンフィル帝国所属だから、強制参加みたいなものだけどな。」

「フォルデ先輩……時と場合を考えて発言してください……」

「どうやら何らかの思惑で正規軍も動かしたくない様子……リィン達も動きにくいでしょうし僕達がサポートしますよ。」

フィーが反論し、フォルデの答えにステラが疲れた表情で指摘している中エリオットが協力の申し出の理由等を口にした。



「だ、だが――――」

「ああ、何を言っても無駄だぞ?メンフィル帝国所属のフォルデ殿やステラは当然として、我等もみな、エレボニア政府からのしがらみを受けぬ者ばかり……その意味で、TMPと情報局に行動を制限される謂れはないからな。」

「……ぐっ………」

「確かに、止められる権限はカケラも持っちゃいないなぁ。」

「はは……」

「だぁっはっはっはっ!さすがは旧Ⅶ組だけあって、1枚上手じゃねぇか?」

「ラウラちゃん、フィーちゃん、ステラちゃん、フォルデさん、エリオット君も……」

ラウラの正論に反論できないミハイル少佐は唸り声を上げ、レクター少佐が苦笑している中その様子を見守っていたランディは苦笑し、ランドロスは豪快に笑い、トワは明るい表情を浮かべた。

「みんな……その、いいのか?」

「あはは、なに言っているんだか。どうして僕達がこのタイミングでこの地方に来たと思ってるのさ?」

「え………」

自分の問いかけに対して苦笑しながら答えたエリオットの答えを聞いたリィンは呆けた声を出した。

「皆、1年前の我等にとっての最後の自由行動日を機会に、滅多にエレボニアに姿を現さなくなったそなたの事をずっと気にかけていたのだ。内戦を終結させた後更にはクロスベルの仲間達の元に駆けつけ、彼らと共にクロスベルの動乱を解決した事でようやくそなたも平穏な生活に戻る事ができたにも関わらず、元エレボニア帝国領を含めたメンフィル帝国の領土に加えてノーザンブリアでそなたが為さなければ誰かが傷つくような”要請”――――それを独りで成し遂げてきたかけがえのない”Ⅶ組”の仲間を。」

「………ぁ………」

「皆さん………」

ラウラの話にリィンは呆けた声を出し、セレーネは微笑んだ。

「”約束”もあったし一石二鳥。ちなみに第Ⅱの演習地と日程はとある筋から教えてもらった。それで来られそうなメンバーが集まったっていうカラクリ。」

「ふふ、アリサとかマキアスなんか物凄く悔しがってたよね。」

「クク、特にアリサはその件を大義名分にして、婚約者のリィンと会えるから、二重の意味で悔しがっているだと思うぜ?」

「ふふ、そうですね。」

「…………………」

「お兄様……」

フィーやエリオット、フォルデとステラの話を聞き、仲間達の心遣いを知ったリィンが感動している中その様子をセレーネは微笑みながら見守り

「………えへへ………」

「……ったく。正直、予想外っつーか……エレボニアの内戦の話は聞いてはいたが、まさか俺やロイド達のような深い”絆”を結んでいたとはな………そう言う意味でもロイドと似ているな。」

「うふふ、ついでに言えばロイドお兄さんと同じようにレディ達にモテモテな所も似ているわよね♪」

「クク、この調子ならば成長すればいずれヴァイスハイトと同じ―――いや、それ以上の”器”になるかもしれないなぁ?」

トワは嬉しそうな表情を浮かべ、ランディは苦笑し、レンはからかいの表情で答え、ランドロスは興味ありげな表情でリィンを見つめていた。

「……成程。あの方からの手回しか。」

「ったく、翼をもがれながら色々とやってくれるぜ。」

一方ラウラ達が分校の演習地の場所等を知っている理由を察したミハイル少佐は複雑そうな表情で呟き、レクター少佐は呆れた表情で呟いた。



「―――ありがとう。ラウラ、フィー、エリオット、ステラ、フォルデ先輩。”灰色の騎士”への要請……ヴァリマールを動かす可能性すらあり得るほどの案件だ。どうか5人の力を貸してくれ!」

「うんっ!」

「ああっ!」

「……ん!」

「はい!」

「おう!」

リィンの言葉に対してエリオット達はそれぞれ力強く頷いた。その後準備を整えたリィン達が外に出ると娘の声がリィンを呼び止めた。



~演習地~



「教官……!」

声に気づいたリィン達が足を止めるとユウナ達―――”特務科”の生徒達がリィン達に駆け寄った。

「ユウナ……クルトにアルティナもか。」

「い、いまトワ教官から聞いたんですけど本当ですか!?メンフィル皇帝直々からの要請で教官達は別行動になるって―――!」

「それは…………」

「アランドール少佐が来ていたのはこのためですか。」

「それで―――どうなんですか?」

ユウナの問いかけにリィンが答えを濁しているとアルティナが推測を口にし、クルトはリィンに問いかけた。

「本当だ―――特務活動は昨日で終了とする。本日はⅧ組・Ⅸ組と合同でカリキュラムに当たってくれ。」

「トワさん達には既にⅦ組がⅧ組・Ⅸ組と合同でカリキュラムをする事は既に伝えてありますわ。」

「……………」

「そ、そんな……!」

「了解しました。では、わたしだけでも――――」

リィンとセレーネの話を聞いてそれぞれ血相を変えたクルトは黙り込み、ユウナは信じられない表情をし、アルティナは冷静な様子でリィン達に協力を申し出ようとしたが

「―――例外はない。君も同じだ、アルティナ。」

「え。……ですがわたしは教官をサポートするため―――」

リィンから協力の申し出が不要の指示が与えられるという予想外の指示に呆けた後反論をした。



「……経緯はどうあれ、今の君は第Ⅱに所属する生徒だ。一生徒を、”俺の個人的な用事”に付き合わせるわけにはいかない。それに”君の処遇については俺達シュバルツァー家にある事は今も変わらない。”」

「……………………」

リィンの説明によって反論の余地を奪われたアルティナは黙り込み

「これも良い機会だと思う………ユウナやクルトと行動してくれ。」

「でも、わたしは……………………」

再び反論をしようとしたが、反論の言葉が頭に浮かばなく目を伏せて黙り込んだ。

「………一つだけ聞かせてください。」

「?……なんだ?」

「見れば、アルゼイド流と”槍”のヴァンダール流の皆伝者を協力者として見込んだ様子……”双剣”のヴァンダール流では――――……いや、僕の剣では不足ですか?」

「……………ああ、不足だな。」

「!」

自身の問いかけに対して少しの間考え込んだ後ハッキリと断りの答えを口にしたリィンの答えを聞いたクルトは目を見開いた。

「”生徒だから”とは別にして。いくら才に恵まれていようがその歳で中伝に至っていようが……半端な人間を”死地”に連れて行くわけにはいかない。」

「!!っ……失礼します―――!」

リィンの答えを聞いたクルトは唇を噛みしめた後その場から走り去り

「ちょ……クルト君!?ああもう……アルも一緒に来て!」

クルトの突然の行動に驚いたユウナはアルティナの手を握ってリィン達に背を向け

「……何よ、ちょっとは見直しかけたのに。」

リィンに対する指摘を口にした後アルティナの手を引っ張ってクルトの後を追って行った。



「ふう………」

「お兄様……」

「ふむ……さすがに厳しすぎるのではないか?」

「リィン、ツンデレすぎ。」

「うふふ、まあアリサお姉さんみたいな典型的なツンデレと比べたら可愛いものよ♪」

「確かにアリサ程まさに”ツンデレの見本”と言ってもおかしくない女は現実には滅多にいないよな?」

「ふふ、そうですね。ですがリィンさんのそう言う所は初めて見ました。」

「はは、まあリィンも不器用な所があるしね。けっこう苦労してるでしょ?」

クルト達が去った後溜息を吐いたリィンの様子をセレーネは心配そうな表情で見つめ、ラウラは複雑そうな表情でリィンに問いかけ、ジト目のフィーとからかいの表情を浮かべているレンとフォルデの指摘にステラと共に苦笑していたエリオットは気を取り直してリィンに訊ねた。

「ああ……苦労の連続だよ。今になって、セシリア教官やサラさんの凄さが身に染みるくらいだ。」

「それは……どうなのであろうな?」

「セシリア将軍はともかくサラは絶対、深くは考えてないと思う。」

「うん……でもリィンは少し真面目すぎるのかもね。」

リィンの言葉に冷や汗をかいたラウラは困った表情でエリオットやフィーに視線を向け、フィーは呆れた表情で答え、エリオットは困った表情で答えた。

「ああ、不真面目なくらいが時にいいこともあると思う。でも、これも性分だ。……あの子たちとどう接するか俺とセレーネなりに今後も考えていきたい。―――何とかこの危機を乗り越えることができたなら。」

「……そうだな。」

「”死地”か……たしかに連れていけないね。」

「ふふ、僕なんかよりは戦闘力は高いとは思うけど……やっぱり経験ってあるよねぇ。」

リィンの話にラウラとフィー、エリオットはそれぞれ頷き

「うふふ、確かに”命を奪い合う実戦の経験”は大事よね。―――そう言う意味では”旧Ⅶ組”のみんなも、”特務部隊”と一緒に行動してよかったのじゃないかしら♪」

「よりにもよって、アリサさん達に殺人の強要をした張本人であるレン教官がそれを言いますか……?」

「ま、実際に命は奪っていなくても、”実戦”の経験が大事である事は事実だな。」

「はい。”実戦”の雰囲気は”模擬戦”や”練習”とは全く違うものですから、例えどのような使い手であっても、”実戦”を経験していなければ本来の力を出せずに倒れてしまう事もあり得ますものね。」

レンの問いかけにその場にいる全員と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたセレーネは疲れた表情で指摘し、苦笑しながら答えたフォルデの言葉にステラは静かな表情で頷いた。そしてリィン達は互いの顔を見回してそれぞれ頷いた。

「――――出発しよう。時間は有効に使いたい。とりあえず情報を集めたいがなにかアイデアはないか?」

「それならまずはアルトリザスに移動しよう。情報整理ができそうな場所にリィン達を案内する。」

「え、それって……」

「フフ、そなたの新たな”就職先”に関わる場所か。」

「―――なるほど、期待できそうだな?」

「ま、お楽しみに。馬は使えるんだっけ?」

「ああ、準備を済ませたら演習地を出て向かおう。」

その後準備を整えたリィン達は馬を駆って演習地から去っていった。



「ハハッ……せいぜいガンバレよー。」

「―――ハッ、もうトンボ帰りかよ?」

リィン達を見送ったレクター少佐も演習地から去ろうとしたその時アッシュがレクター少佐を呼び止めた。

「朝っぱらから使いっ走りとはご苦労なこった。」

「ま、これも宮仕えの辛いとおろってヤツでね。―――で、”そっちの方はどうよ?”」

「……ハン、まだ何とも言えねぇな。……言えねぇが………―――どうやら色々と”重なる”のは確かみてぇだ。」

レクター少佐の問いかけに対して鼻を鳴らして答えたアッシュは周囲を見回した後片手で左目を抑えて答えた。

「……なるほどね。いや~、紹介した甲斐があったぜ。ま、演習が終わるまでに手掛かりを掴めるのは祈ってるぜ?」

「……チッ、カカシ野郎が。」

自分の答えを聞いて満足げな表情を浮かべた後演習地から去って行くレクター少佐を見つめて舌打ちをしたアッシュはその場から去り

(ふふ……幾つもの”縁”が絡まり合っているみたいですね。)

二人の様子を距離を取って見守っていたミュゼは意味ありげな笑みを浮かべた後ティータに視線を向けた。

(サザ―ラントでの盤面もどうやら後半戦みたいです。少しばかり”指し手”として介入させて頂きましょうか―――)

そしてティータに視線を向けたミュゼは意味ありげな笑みを浮かべていた。



~同時刻・メンフィル帝国領クロイツェン州・”翡翠の公都”バリアハート・クロイツェン統括領主城館前~



「――――それではサフィナお姉様、後の事はよろしくお願いします。」

「ええ、武運を祈っていますよ。」

同じ頃腰まで届く程の夕焼け色の髪をなびかせている女性―――メンフィル帝国皇女の一人にして、レンの義理の姉でもあるプリネ・カリン・マーシルンはツーヤと銀髪の青年、銀髪の娘と共に金髪の女性―――プリネは腹違いのメンフィル皇女であり、セレーネとツーヤの義理の母にしてメンフィル帝国の”竜騎士軍団”の”元帥”とプリネやレンと同じ臨時のクロイツェン統括領主を兼ねているサフィナ・L・マーシルンに見送られて城館を後にした。

「それにしても演習初日早々に結社が第Ⅱ分校に襲撃するなんて、想像もしていませんでしたね……」

「そうね……それもエレボニアでは”捨石”や”二軍”扱いされている分校にわざわざ”執行者”や”鉄機隊”程の使い手が襲撃するなんて……」

「……それだけ”結社”が追い詰められている証拠かもしれんな。1年半前の”英雄王”達を含めたメンフィルの精鋭部隊や暗殺部隊によって、”盟主”や多くの”蛇の使徒”達を失ったからな。」

「くふっ♪それにしても”結社”って、バカだよね。リウイお兄ちゃん達のリィンに対する”要請(オーダー)”も知っているだろうに、わざわざリィンがいるとわかっていてリィンがいる場所に現れるなんて、自分から殺されに来ているようなものじゃん♪」

バリアハート市内を歩きながら呟いたツーヤの言葉に頷いたプリネは考え込み、銀髪の青年―――元結社”身喰らう蛇”の”執行者(レギオン)”にしてプリネの恋人でもあるプリネ皇女親衛隊副長――――”剣帝”レオンハルト=ベルガー――――通称”レーヴェ”は静かな表情で推測し、銀髪の娘―――”深凌の契魔”の一柱にして、メンフィル帝国の”客将”の一人でもある魔神エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべて呟いた。

「………案外、それが目的で第Ⅱ分校の演習地を”幻焔計画”の為の”実験”の場所に選んだのかもしれんな。」

「え……それって、どういう事なんですか?」

静かな表情で呟いたレーヴェの推測を聞いたツーヤは不思議そうな表情で訊ねた。

「………あくまで俺の勝手な推測だからあまり気にする必要はない。――――それよりも、急ぐぞ。セントアークからのあの場所への移動時間と、リィン達があの場所に辿り着く時間の予想を考えると下手をすれば俺達が到着した頃に”実験”が終わり、”神速”達が撤退しているかもしれん。」

「?その口ぶりだと、”結社”の残党がいる場所もわかっているの?」

レーヴェの話を聞いてある事に気づいたエヴリーヌは不思議そうな表情でレーヴェに訊ね

「……ああ。アルトリザス近郊で多くの人形兵器を忍ばせ、必要に応じて繰り出せる”拠点”………”多くの死者が眠っているだけのあの村”しか思い当たらない。」

「”多くの死者が眠っているだけのあの村”……―――!そう言えばアルトリザスの近郊には……」

「!まさか結社が”拠点”にしている場所は――――」

レーヴェの推測を聞いてある事を察したツーヤとプリネは信じられない表情をし

「ああ、二人の想像通りの場所だ。―――どうやら今回の”墓参り”は随分と”騒がしい墓参り”になりそうだな。」

レーヴェは静かな表情で頷いた後静かな怒りを纏い、目を細めて空を見上げた―――――




 
 

 
後書き
という訳でこの物語の要請(オーダー)はエレボニアに理不尽かつただ働きさせられる原作と違い、リィンにもちゃんとした対価がありますからリィンも納得して要請(オーダー)を請けています(そりゃそうだw)なお、各章での後半(旧Ⅶ組や特務部隊の仲間達が加入する時期)の通常戦闘BGMはVERITAの幻燐陣営の戦闘BGMである”我が旗の元に”、手配魔獣や大型の魔獣の時の戦闘BGMはVERITAの”怨嗟を孕みし幾千の”だと思ってください♪そして今回の話の最後でプリネ達が登場した事で既に察しているかもしれませんが……1章で結社の誰かが死亡し、原作よりも早期退場させられる事は確定しています(黒笑)それと今の内に予告しておきますと2章は戦女神と魔導巧殻、3章は幻燐、4章は戦女神のキャラ達がゲスト参戦し、そして終章は戦女神、魔導巧殻、幻燐、神採り、更に空主人公勢や零・碧主人公勢も登場し、終章後半のヘイムダルで起こる大混乱鎮圧の為に力を貸すか、リィン達のラストダンジョン突入時に加入してラスボス戦まで参戦するという超豪華な予定を考えています(当然ラスボス戦時はエウシュリー二大作品である戦女神、幻燐の主人公であるセリカとリウイ、どちらかの参戦は確定しています)なので原作と違い、旧Ⅶ組はラストダンジョンで待ち受けているボスたちの足止めとかしません(そもそもメンツを考えたらする必要すらないww)ちなみに私は今、ラストダンジョンでルトガー達4人組の戦闘を終えたあたりですからもう少しでようやく閃Ⅲクリアできます(遅っ) 

 

第20話

アルトリザスに到着したリィン達はフィーの先導によってアパートの一室に到着し、部屋に到着後フィーは部屋に備え付けている端末を操作した。



~遊撃士協会・アルトリザス仮設支部~



「よっ、久しぶりだなリィン、セレーネ。それに”殲滅天使”のお姫さんも。元気してたか?」

フィーが端末を操作すると端末の映像に遊撃士の一人であるトヴァル・ランドナーの顔が映った。

「トヴァルさん……!お久しぶりです。」

「エレボニアに戻って来られたのですね……!」

「うふふ、たった1年半でB級に昇格し直した上エレボニアの支部に戻る事を”本部”に許可してもらえたなんて、オレドどころか色んな支部にも応援に行ってよっぽど頑張ったのかしら?」

トヴァルの登場にリィンが驚き、セレーネが微笑んでいる中レンは小悪魔な笑みを浮かべてトヴァルに問いかけた。

「ああ、”七日戦役”の”前科”があるから俺がエレボニアの支部に戻る事に”本部”の連中も相当渋っていたが、1ヵ月前にようやく認められてオレド支部の引継ぎもすんで戻ってこれた所だ。――――それよりも話には聞いていたがお前さん達も教官の方、頑張ってるみたいだな?」

「……ええ、おかげさまで。」

「ふふっ、まだまだ教官としてはわたくし達は未熟ですけどね。」

「うふふ、それにしても遊撃士協会は本当に運が良いわね♪”七日戦役”や”風の剣聖”のせいでゼムリア大陸の人々に対する遊撃士協会の信頼が落ちると思いきや、それを払拭するほどの活躍がエステル達がしてくれた上、史上初の”SSランク”の遊撃士が生まれたものね♪しかも、”西風の妖精(シルフィード)”まで遊撃士協会入りしたしねぇ?」

「ハハ、そうだな。実際、フィーが去年入ってくれた事は本当に助かったぜ。」

トヴァルの言葉にリィンとセレーネが頷いている中意味ありげな笑みを浮かべたレンの指摘にトヴァルは苦笑しながら同意した。



「フフ、それにしてもフィーが遊撃士になるとはわからぬものだ。」

「まあ、士官学生になる前の職業とは正反対の職業だしな。」

「フォ、フォルデ先輩。」

「ま、サラやトヴァルには相当サポートしてもらったけど。今回、わたしたちの合流にも色々と力を貸して貰ったし。」

ラウラはフィーに視線を向け、からかいの表情で答えたフォルデの言葉にステラは冷や汗をかき、たフィーは静かな表情で答え

「そうそう、トヴァルさん発案の”Ⅶの輪(ROUND・OF・SEVEN)”が無かったらそもそも難しかっただろうしねぇ。」

「!じゃあ、あれはトヴァルさんが作ってくれたアプリなんですか!?」

エリオットの話を聞いて”Ⅶの輪”の発案者がトヴァルである事を知って驚いたリィンはトヴァルに確認した。

「いやいや、アプリ開発は財団で俺はARCUSⅡの機能を利用した”裏技”を提案させてもらっただけさ。オリヴァルト殿下が隠し持っている”あらゆる場所と通信できる古代遺物”――――そいつの力を使わせてもらうことで中継器を介さない通信が可能になるような。」

「うふふ、そういうカラクリだった訳ね。という事はオリビエお兄さん、結局あの通信機はケビンお兄さんから取り上げられないように頑張ったみたいね♪」

トヴァルとレンの話を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「な、何だかとんでもない事を聞いた気がするんだが……」

「そ、そうですね……しかも所々聞いてはいけない方がいいお話も知ってしまいましたし……」

「うん、技術的な事はサッパリだが相当な裏技である事は理解できる。」

「まあ、古代遺物(アーティファクト)頼りだからさすがに汎用性は無いんだけど。」

「それでも、ゼムリア大陸ならどんな場所でもⅦ組や特務部隊のみんなと通信が繋がるっていうのは奇蹟だよねぇ。」

「確かにな。導力通信ですら繋がる距離は限られているしな。」

「ふふ、古代遺物(アーティファクト)の力を借りていますから、言葉通り”奇蹟”ですわね。」

我に返ったリィンとステラは困った表情で呟き、ラウラとフィーは静かな表情で答え、エリオットとフォルデ、そしてセレーネは苦笑していた。

「ああ……本当に色々な人に助けてもらってるんだな、俺達は。―――トヴァルさん。改めて、本当にありがとうございました。」

「ハハ、いいってことさ。こっちも好きでやってるんでな。で、本当だが……”結社”がチョッカイをかけてきたんだって?」

「ええ……半年ぶりに。いや、エレボニア本土に限定すればあの内戦以来になりますね。数種類の人形兵器群―――鉄機隊の”神速”に加えて新たな執行者まで現れました。そこまでの戦力をこの地に投入する目的―――何か心当たりはありませんか?」

「………結社についてはギルドも警戒を強めてはいる。だが、詳しい動きは何もわかっていないのが現状だ。各地で暗躍しているいくつかの猟兵団も含めてな。」

リィンの問いかけに対してトヴァルは複雑そうな表情で答えた。

「そうですか……」

「ま、”赤い星座”の本隊がいないってわかっただけでも収穫だけど。」

「ああ、その辺は”かかし(スケアクロウ)”に感謝するとして。結社については、現時点で一つだけ確実に言えることがある。――――”例の計画”ってのを何としても奪い返す事をきっかけにして、メンフィルによって大きく力を削がれた裏の世界での結社の力や名を復活させようとしてるってことだろう。」

「そ、それって確か、クロチルダさんが言っていた――――」

「―――”幻焔計画”、ね。一昨年の内戦の裏で進められ、最後には”鉄血宰相”に奪われたという。」

トヴァルの推測を聞いて仲間達と共に血相を変えたエリオットは真剣な表情をし、レンは意味ありげな笑みを浮かべた。



「ああ、計画の内容はいまだ不明だがリベールやクロスベルでの前例もある。奴等の行動のすべてが、何かしらの形でそれに繋がってるのは間違いないだろう。おそらく、現れた人形兵器ってのもそのために用意された”駒”の一つだ。」

「ありそうな話だね。問題は、人形兵器を持ち出して連中が何を狙っているかだけど。」

トヴァルの推測に頷いたフィーの言葉を切っ掛けにリィン達はその場で少しの間黙って考え込んだ。

「……昨日の様子を見る限りたとえばアルトリザスを攻撃しようとしている感じじゃないよね。そんな事をしたら、さすがに正規軍だって動かないわけには行かないだろうし。」

「うん、そうであろうな。そもそも第Ⅱに釘を刺している時点で彼らは見極めているのであろう。政府と貴族勢力の力関係と正規軍が介入するギリギリの一線を。」

「……そうだな。いずれにせよ、最大の手掛かりはあの大量の人形兵器になるだろう。昨夜にしてもそうだが―――そもそも彼らは、あれだけの数をどこから持ってきたんだろうか?」

エリオットとラウラの推測に頷いたリィンは考え込みながら疑問を口にした。

「……確かに。」

「まさか全然別の場所から”転位”させたとか……?」

「もしくはメンフィル帝国のように転位装置があるのかもしれませんわね……」

「まあ、実際内戦でも結社の連中は”転位”を使っていたからその可能性は十分にありえるな。」

「それを考えると何らかの転位装置、もしくは古代遺物(アーティファクト)の類を使っているかもしれませんね。」

「いや、さすがに結社とはいえそこまでの技術は無いはずだ。かと言って、奴等が持っていた”方舟”は4年前の”リベールの異変”にてメンフィルに奪われている。」

リィンの疑問にフィーが頷いている中それぞれ推測をしたエリオットとセレーネ、フォルデとステラのそれぞれの推測をトヴァルは否定し

「……ならばどこかに何らかの彼らの”陣”があるのではないか?人形兵器という戦力を忍ばせ、必要に応じて繰り出せる”拠点”が。」

「”拠点”か……」

「―――いい目のつけ所じゃねか。」

ラウラの言葉を聞いたリィンが考え込んだその時アガットが部屋に入って来た。



「え………」

「あ、貴方は……!」

「うふふ、出たわね、ロリコン。」

「ロリ……ッ!このクソガキ……!」

アガットの登場にエリオットが呆け、リィンが驚いている中小悪魔な笑みを浮かべて呟いたレンの言葉にリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アガットは背中の大剣に手をかけかけたが、レンの挑発に乗れば更に悪循環になる事やレンの性格を熟知していた為、必死に耐えながら大剣から手を離して顔に青筋を立ててレンを睨みつけた。

「よう、お疲れさん。」

「遅かったね――――アガット。」

「へっ、ちょいと寄り道しちまってな。邪魔するぜ、”灰色の騎士”に”聖竜の姫君”―――いや、リィン・シュバルツァーにセレーネ・L・アルフヘイム。まさかこんな形で再会するとは思わなかったがな。」

「ハハ……俺達の方こそ。入学式の日に会った時も只者ではないと思っていましたが……なるほど、遊撃士だったんですね。」

「レン教官とアガットさんはお知り合いのようですけど……一体どちらで知り合ったのですか?」

アガットの言葉にリィンは苦笑しながら答え、セレーネは不思議そうな表情でアガットとレンを見比べた。



「”重剣”のアガット―――リベールの”A級”遊撃士さ。少し前からエレボニアギルドに助っ人に来てくれていてな。何かの助けになればとあらかじめ連絡しておいたのさ。」

「”A級”っていうとサラ教官と同じ……!?」

「まあ……という事は相当の使い手の方なのですね。」

「ん、かなりの凄腕。あの”リベールの異変”を解決した立役者の一人でもある。」

「4年前にあったという……そうだったんですか。」

「という事はその時にレン教官とアガットさんがお知り合いである理由はその件で……?」

「ええ。あ、そうそう。ちなみにアガットはあのレーヴェを”無謀”にも好敵手扱いしているのよ♪レーヴェの実力を知っているみんなからしたら、あのレーヴェの好敵手を名乗るなんて”無謀”なのがわかるでしょう?」

トヴァルとフィーの説明を聞いたエリオットとステラが驚いている中リィンは納得した様子で呟き、セレーネに視線を向けられたレンはからかいの表情で答え、レンの答えにリィン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「え、えっと……」

「確かにアガットは凄腕だけど、レーヴェ相手だとさすがに分が悪いね。」

「うふふ、フィーはよくわかっているじゃない♪」

「クソガキ共が揃いも揃ってふざけた事を……!」

我に返ったエリオットは困った表情で答えを濁し、冷静な様子で推測を口にしたフィーの推測を聞いたレンはからかいの表情でアガットを見つめ、アガットは顔に青筋を立てて身体を震わせながらレンとフィーを睨んでいた。



「ふふ、風の噂で巨大な大剣を振るうA級遊撃士の渾名を聞いた事はあったが……お目にかかれて光栄だ、”重剣”殿。」

「ハッ、こちらこそだ、”光の剣匠”のお嬢さんよ。―――話を戻すが、結社の”拠点”がどこかにあるっていうのは同意見だ。シュバルツァー、アルフヘイム。どうやら昨日色々回ったみたいだが、何か心当たりはねぇのか?」

「それは………幾つか気になる場所があったのは確かです。ですが、どこも決め手となるような手掛かりがあったとはいえませんね。」

「そうですわよね………」

アガットの問いかけを聞いて昨日の特務活動で回った場所を思い返したリィンの言葉にセレーネは頷き

「そもそもサザ―ラント州ってのは手付かずの自然が多い土地だしなぁ。」

「怪しい場所をしらみ潰しにしたらキリがないと思う。」

「かと言って幾ら何でもアルトリザスに隣接しているからと言って、エレボニアよりも警戒が厳しいメンフィル帝国領(セントアーク)に潜伏しているとは思えないしなあ……」

「フン、そうか………テメェの方は何か心当たりはないのか?」

トヴァルとフィー、フォルデはそれぞれ意見を口にし、リィン達の話に頷いたアガットはレンに視線を向けて問いかけた。



「あら、そこでどうしてレンに話を振るのかしら?レンはリィンお兄さん達と違って、アルトリザス地方やパルム地方の様々な所を巡っていないわよ?」

「ハッ………テメェの事だから、大方サザ―ラントに限らずエレボニアの各地で情報収集をしているメンフィルの諜報部隊から様々な情報を手に入れているだろうが。テメェやシュバルツァー達の分校への派遣もメンフィルの思惑も間違いなく関係しているだろうしな。」

「……………」

「実際”アーベントタイム”の件をお姉様から知らされた時も、メンフィル帝国の諜報部隊による情報収集のお陰でしたものね……」

「リィンさん……セレーネさん……」

「確かにそうだね。英雄王と現メンフィル皇帝のリィンに対する”要請(オーダー)”が発動した早さも考えると、どう考えてもサザ―ラントにもメンフィルの諜報部隊がいる証拠だね。」

レンの問いかけに対して鼻を鳴らして答えたアガットの推測を聞いたリィンは目を伏せて静かな表情で黙り込み、セレーネが複雑そうな表情を浮かべている中、二人の様子をステラは心配そうな表情で見つめ、フィーは真剣な表情で答えてレンを見つめた。

「で、でも……どうしてメンフィルの諜報部隊がエレボニアに……内戦や”七日戦役”が終結して、既に1年半も経っているんだよ?」

「いや、むしろその逆であの件から”まだ1年半しか経っていない”。第一他国の情報を集める為に自国の諜報関係者を他国で情報収集に当たらせる事は国として当然の事だし、ましてやエレボニアは1年半前の件で衰退した”原因”の一つであるメンフィルに対して怨恨があり、その怨恨に対する”報復”をエレボニアが実行する可能性がある事をメンフィルが予想していない訳がないだろうしな。」

「それは………」

不安そうな表情で呟いたエリオットの話に複雑そうな表情で指摘したトヴァルの推測を聞いたラウラもトヴァル同様複雑そうな表情で浮かべてリィン達―――メンフィル帝国所属の人物達に視線を向け

「うふふ、その件については今はあまり関係ないから置いておくとして………―――話を戻すけど、結社の”拠点”の件については既に目星はつけているわよ。」

「ええっ!?」

「ハハ、さすがレン皇女殿下っすね。」

「……やっぱり、既に目星をつけていたか。だったら、どうして演習地から出る時に教えてくれなかったの?その時に答えてくれれば、ここに来る手間も省けたんだけど?」

レンの答えを聞き、リィン達と共に血相を変えたエリオットは驚きの声を上げ、フォルデは苦笑しながら感心し、フィーはジト目でレンに問いかけた。

「や~ね、それを答えようと思った時に情報整理ができそうな場所をフィーが案内する雰囲気になっていたから、レンも”空気を読んで”、フィーに花を持たせて黙ってあげていたのよ♪」

「く、”空気を読んで”って………」

「というかレン教官はいつ、結社の”拠点”がアルトリザスのどこかにある事を推測して、その目星をつけたのですか?」

レンの答えを聞き、エリオット達と共に冷や汗をかいて脱力したリィンは疲れた表情で呟き、セレーネは疲れた表情でレンに訊ねた。



「うふふ、アルトリザスのどこかに”拠点”がある事は昨夜の襲撃の時点で既に予想していたわ。で、肝心の結社の”拠点”の目星についてだけど昨夜の襲撃の後片付けが終わった後に”Ⅶの輪”でレーヴェに聞いてみたのよ。」

「!あの野郎か………」

「確かに結社出身の”剣帝”だったら、結社が”拠点”にしそうな場所の目星がつくかもしれねぇな。」

レンの説明を聞いて血相を変えたアガットは真剣な表情でレーヴェの顔を思い浮かべ、トヴァルは納得の表情で呟いた。

「それで、レーヴェ殿の予想では結社の”拠点”はどこなのですか?」

「それについてだけど………――――まずはリグバルド要塞に向かうわよ。そこの”責任者”からの許可がないと、その場所に向かう事ができないもの。レーヴェが目星をつけた結社の拠点については、リグバルド要塞の責任者と会った時に教えてあげるわ。」

「結社の拠点にしている場所に向かうにはリグバルド要塞――――正規軍の拠点の責任者の許可が必要……ですか?」

「………ま、何でこの場で答えないかの理由については聞きたいけど、どの道正規軍からも得られる情報があるかもしれないから、まずはそっちに行った方がよさそうだね?北西の”リグバルド要塞”に。」

ラウラの問いかけに答えたレンの答えにステラが不思議そうな表情をしている中フィーは静かな表情で今後の方針を口にした。

「待て待て。いきなり行ってどうする?軍なんざ普通、民間相手に融通を利かせたりはしねえだろ。ましてや、あのエレボニア軍……門前払いが関の山じゃねえか?」

するとその時様子を見守っていたアガットが指摘した。



「いや―――訊ねる価値はあるだろう。たしか今、リグバルド要塞はとある将軍が預かっているはずだ。”最強”と謳われる第四機甲師団長―――”紅毛”のオーラフ・クレイグが。」

トヴァルの話を聞いたリィン達はエリオットの父親――――エレボニア軍の第四機甲師団を率いるオーラフ・クレイグ将軍の顔を思い浮かべた。

「エリオットのお父さんが……!」

「成程、そうであったか……!」

「半年くらい前からだっけ?」

「……うん、実はそうなんだ。こっちでの巡業が終わったら現地で会う約束もしているから不在っていうこともないと思う。」

「そうか、だったら………」

「エリオットさんのお父様でしたら、事情を説明すれば融通を利かせて会ってくれそうですし、レン教官が仰る”許可”もくださる可能性も高いでしょうね。」

「ま、何せ”超”が付く子煩悩だしな♪」

エリオットの推測を聞いたリィンとセレーネはそれぞれ明るい表情を浮かべ、フォルデはからかいの表情で答え

「ハッ、さすがアイツが立ち上げたクラスというか……それにしてもあの野郎が目星につけた場所か………そう言えばあの野郎はサザ―ラントの出身で、しかもあの野郎やヨシュアの”故郷”の位置は………―――よし、だったらそっちの筋は任せたぜ。」

リィン達の様子を見守っていたアガットはある人物とレーヴェの顔を思い浮かべて小声で呟いた後気を取り直して口を開いた。

「アガットはどうするの?」

「俺は俺で足を使って調べてみる。レンの今の話を聞いて、俺も結社が拠点にしそうな場所に心当たりがある事に気づけたしな。―――そうだ、コイツを渡しておく。」

フィーに訊ねられたアガットは答えた後リィンにメモを渡し、メモの内容を確認するとメモには手配魔獣がいる場所について書かれていた。



「これは……魔獣の情報ですか?」

「ここに来るついでにまとめた、いわゆる”手配魔獣”の情報だ。そっちの行動範囲だから警戒しとけ。余裕があれば倒しちまっても構わねぇ。」

「ああ、それで遅れてたんだ。けっこうマメだね。」

「うふふ、ホントに見た目とは裏腹にマメよね~。」

「遊撃士としてこのくらいは当然だっつの。気張れよ、シュバルツァー。お前らもな。」

フィーとレンの指摘に対して静かな表情で答えたアガットはリィン達に応援の言葉を送った。

「わかりました……!アガットさんもお気をつけて。」

「ま、折角だし第Ⅱの演習地にも顔を出してきちゃどうだ?!大事なあの子も”さぞ喜ぶんじゃないか?」

「………」

トヴァルの指摘を聞いたアガットは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「ああ、ひょっとして。」

「あ、さっき話したよ。聞いてた以上に可愛かった。」

「うふふ、ついでに言えば家族公認―――いえ、ティータのママを除けば家族全員からも”認められているのよ♪”」

「まあ……そうだったのですか。」

「クク、これはいいネタを聞いたな♪」

「フウ……そういう所も全然変わりませんね、フォルデ先輩は……」

トヴァルの話からティータの事を示している事を察したリィンは目を丸くし、フィーは口元に笑みを浮かべてアガットを見つめ、小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えにセレーネは微笑み、からかいの表情で呟いたフォルデの答えにステラは疲れた表情で溜息を吐いた。



「ったく………余計なお世話だっつの。そんじゃあな。何かわかったら連絡する。」

アガットは溜息を吐いた後部屋から出て行った。

「あ、逃げた。」

「フフ、よくわからぬが……」

「うーん、ちょっと怖そうだけど親しみやすそうな人だね。」

「ハハ、そうみたいだな。―――トヴァルさん、俺達も行動を開始します。」

「ああ、健闘を祈ってる。くれぐれも気をつけてくれ。フィー、ラウラお嬢さんもしっかりサポートしてやってくれ。」

「ん、任せて。」

「リグバルド要塞は北西にある街道の先でしたね。」

「そんじゃまあ、先程の手配魔獣の件も含めて用事をすませたら向かうとしますか。」

そしてリィン達も行動を開始し、アルトリザス市内での用事や手配魔獣の撃破を終えた後リグバルド要塞へと向かった―――――


 
 

 
後書き


昨日ようやく閃Ⅲクリアしました!クリアしてからの感想は……うん、攻略サイトである程度予め知っていたとはいえ、今までの軌跡シリーズの中で一番後味悪いかつ続きが滅茶苦茶気になる最後でしたね……後ファルコムさん。貴方達の方がエウシュリーさんよりもカオスルート作る才能あるんじゃないですかぁ!?と思ってしまいましたwwマジで今までのエウシュリー作品のカオスルートの上を行っているんじゃないかと本気で思いました、閃ⅢED(汗)それと光と闇の軌跡のカオスルートは……うん、タイトルは既に変えたとはいえカオスルートの名前は今更ですが返上します。原作閃Ⅲの終章以降の展開にはとても対抗できません(笑)そして閃Ⅲクリアしたお陰で閃Ⅲ篇を完全に把握できましたので、今後も閃Ⅲ篇完結&閃Ⅳ篇への布石の為の更新をがんばります!なお、現時点でアルベリヒ、ゲオルグ、オズボーン、そしてセドリックをエウシュリー陣営or空陣営の誰かによって絶望や屈辱を感じさせられた挙句内二人はむごい最後(それこそ光と闇の軌跡シリーズのブレアードやマリアベルのような最後)を遂げさせる事は既に決定していますので、その時を気長にお待ちください(黒笑)それと皆さんも既に予想していると思いますがこの物語は敵陣営はぶっ殺す事が当然になっていますが、閃Ⅲの敵陣営の内5名は寝返るか生き残る事は確定しています。ちなみにシャロンは………下手したら……というか、ほぼ確実に終盤18禁展開になると思います(ぇ)……え?何でシャロンが終盤18禁展開になるかだって?それはまあ……ベルフェゴールが閃Ⅲ篇でも当然の如く運命が改変されたシリーズのスカーレットやエーデルの時のように悪知恵(?)を誰かさんに吹き込み、しかもその悪知恵にアリサも巻き込みますので(もうこの時点で誰かさんについてはバレバレですがw)とりあえず現時点で言えることは…………困った時は性魔術で解決としか言いようがないですね!(オイッ!)
 

 

第21話

リグバルド要塞に向かいながらリィン達は時折襲い掛かってくる魔獣達を撃破し続けた。



~北アルトリザス街道~



「よし……!」

「ふむ、この先は魔獣が手強くなっているようだな。」

「ん、慎重に、でも迅速に先を急ごう。」

「………ははっ。」

魔獣の撃破を確認した後のエリオットやラウラ、フィーの反応を聞いていたリィンは懐かしそうな様子で微笑み

「?どうかされたのですか、お兄様。」

「いや……こうしてみんなと街道を往くのも懐かしいなって。内戦の頃や特務支援課に派遣されていた頃を思い出すというかさ。」

「………ふふ、そうだね。」

「そう言えば、”特務支援課”という部署は”旧Ⅶ組”や”新Ⅶ組”と非常に似た存在だったそうですね?」

「そうね。ま、要するにどれも遊撃士の”パクリ”よ♪」

リィンの言葉にフィーが静かな笑みを浮かべている中ステラの疑問にレンがからかいの表情で答え、レンの答えにリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「アハハ……僕達も自覚はしていたけど……」

「そっちももうちょっと遠回しな言い方をしたらどう?」

「フフ、しかし”特務支援課”か。話には聞いてはいたが、クロスベルの警察の部署でありながら活動はレン皇女殿下の話通り我等と共通している所はいくつかあったと聞く。そんな部署に派遣されていたリィンが我等Ⅶ組と関わる事になるとは、これも女神のお導きかもしれないな。」

「ま、それはあるだろうな。何せ俺やリィン達はクロスベルでその”女神”――――”空の女神”とも実際に会った事があるしな♪」

「ア、アハハ……ですがエイドス様がラウラさんの今の話を知れば、『何でもかんでも私のせいにしないでください!』って言いそうですわね……」

我に返ったエリオットは困った表情で呟き、フィーはジト目でレンに指摘し、苦笑しているラウラの言葉に頷いたフォルデはからかいの表情で答え、フォルデの話を聞いて苦笑しながら口にしたセレーネの推測を聞いたエリオット達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「そ、そう言えばリィン達はクロスベル動乱を鎮める為に突如現代のゼムリア大陸に降臨した”空の女神”やその両親に先祖とも会って、”空の女神”達とも一緒に戦ってクロスベル動乱を解決したんだったね……」

「フム……クロスベル動乱を解決し、天界へと戻られるまでの”空の女神”のゼムリア大陸での精力的な活動を考えるとセレーネの推測も強ち間違っていないかもしれないな。」

「というか精力的な活動って言っているけど、ぶっちゃっけ”空の女神”は自分のやりたい放題にゼムリア大陸を引っ掻き回しただけじゃん。各国の観光旅行に各国の音楽家達を集めて、更に自分達も参加したコンサートをするとか、どう考えてもハチャメチャ女神じゃん。……まあ、わたしからすればあんなハチャメチャ女神が先祖だからエステルみたいな”子孫”もできるんだと思ったね。」

「ハ、ハハ………」

(これでエイドス様は天界に戻ったのではなく、”自分の時代に戻った事”を知ればエリオットさん達は再び驚くでしょうね……)

エリオットの言葉に続くように呟いたラウラの推測をジト目で指摘したフィーの言葉を聞いたリィンが冷や汗をかいて乾いた声で笑っている中、セレーネは苦笑していた。

「”エステル”………カシウス卿のご息女にして、かの”ブレイサーロード”か……」

「もしかして仕事の関係で、フィーは”ブレイサーロード”と会った事があるの?」

フィーの話を聞いたラウラは考え込み、エリオットはフィーに訊ねた。

「ん。ちなみにエステルはクロスベル動乱を解決した件で史上初の”SSランク”に昇格している。」

「え、”SSランク”……!?」

「確か遊撃士の最高ランクは非公式である”Sランク”であると聞いた事があるが……」

フィーの話を聞いたエリオットが驚いている中ラウラは困惑の表情をした。



「詳しい話はわたしも知らないけど、エステルは今までの遊撃士の中で”規格外な存在”かつリベールのクーデター、異変、そしてクロスベル動乱を解決した事から”Sランク”の上の史上初の”SSランク”に認定されて、その事からエステルは”ブレイサーロード”の異名の他にも”ブレイサーオブブレイサー”の二つ名が遊撃士協会本部から贈られたって聞いている。」

「”ブレイサーオブブレイサー”………”遊撃士の中の遊撃士”を意味する二つ名か……史上初という事はゼムリア大陸で唯一の”SSランク遊撃士”という事になるから、まさにSSランクに相応しい二つ名だな……」

「サラ教官よりも二つも上のランクの遊撃士って、どんな人なんだろう……?」

「ふふっ、クロスベル動乱の時に私達もエステルさん達と会って共に”碧の大樹”を攻略しましたけど、存在するだけでその場を明るくしましたからまるで太陽のようなとても明るい方でしたよ、エステルさんは。」

「しかも仲間や恋人であるエステルの周りの連中もリィンのハーレムメンバーとも並ぶくらい色々な意味でとんでもないメンツだったしな♪」

「うふふ、言われてみればそうね♪」

「何でそこで俺が出てくるんですか……」

フィーの説明を聞いたラウラは静かな表情で呟き、エリオットの疑問にステラは微笑みながら、フォルデとレンはからかいの表情で答え、フォルデとレンの答えを聞いたリィンは疲れた表情で呟いた。

「リ、リィンの周りの女性―――セレーネやアリサ、それにアルフィン皇女殿下達とも並ぶくらい”色々な意味でとんでもないメンツ”って……」

「ふふ、機会があれば会ってみたいな、そのエステル殿という人物に。」

一方エリオットは冷や汗をかいてリィンに視線を向け、ラウラは苦笑していた。



「ま、エステル達もラウラ達にも興味はあるようだし、機会があればいつか会えると思うよ……それにしてもあれから1年ちょっとか。」

「うん……皆、見違えるほど逞しくなったものだ。」

「あはは、ラウラがそれを言う?」

「そうだな……アルゼイド流の”奥義”も完全に受け継いだみたいだし。」

ラウラへの指摘に対するエリオットの言葉に頷いたリィンは昨夜の結社による襲撃の際に放ったラウラの奥義を思い返した。

「フフ、まだ完全に使いこなせているわけではないが。あれを完成させるためには更なる精進が必要となろう。―――かの”鉄機隊”に後れを取らぬためにも。」

「……昨夜の”神速”が所属してる部隊でしたね。」

「250年前の獅子戦役で槍の聖女リアンヌが率いていた”鉄騎隊”と似ているんだっけ……?」

ラウラの話を聞いたステラは静かな表情で呟き、エリオットはラウラに確認した。

「うむ、父上にも出立の間際、かの隊には注意せよと言付けられた。何か他にも事情がありそうな雰囲気ではあったが……今は成すべき事を成すのみだろう。」

「ふふ、ラウラらしいね。」

「それにしても”鉄機隊”だったか?肝心の”主”はメンフィルに寝返ったって言うのに、何で未だに結社に残っているのか連中の考えが未だにわかんねぇぜ。」

「まあ、1年半前の件で”神速”の件も含めて”鉄機隊”はメンフィルに散々な目に遭わされたから、幾ら敬愛する主がメンフィルに寝返っても過去の経緯で自分達もメンフィルに寝返る気持ちが湧いてこないんじゃないかしら?」

ラウラの説明にフィーが苦笑している中疲れた表情で呟いたフォルデの疑問に答えたレンの答えにリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「1年半前の内戦や”七日戦役”の件で鉄機隊の筆頭であるデュバリィさんを散々嵌めたり、弄んだ張本人であるレン教官がそれを言いますか……?」

セレーネは疲れた表情で指摘した。



「うふふ、成長していると言えば、リィンお兄さん達もそうよね♪たった1年半でみんな、領主やその補佐をする秘書として随分と力をつけてきたもの♪」

「フフ、恐縮です。これもレン皇女殿下達による教育の賜物です。」

「ま、今の内に苦労をしておけば、リィンの親父さんみたいにさっさと気楽な領主生活を送れるようになりますしね。」

「だから、何でそんな事に限って父さんを見本をするんですか……」

「ま、まあまあ……お養父(とう)様も領主としては素晴らしい方である事には間違いはないのですから……」

「ふふ、領主の娘として私もそなた達を見習わなくてはな。」

レンの指摘にステラは微笑みながら、フォルデはいつもの調子で答え、フォルデの答えに脱力して疲れた表情で指摘したリィンを宥めるかのようにセレーネはフォローの言葉を口にし、ラウラは苦笑していた。

「リィン達が成長している事で気になったけど……そういうレンは成長しているの?身体的成長とは違う意味で。ぶっちゃけ、前会った時と全然変わっていないように見えるんだけど。」

「ちょっと、フィー……幾ら何でもその言葉はレン皇女殿下に失礼だよ……」

ジト目でレンを見つめて問いかけたフィーの問いかけを聞いたエリオットは不安そうな表情で指摘し

「うふふ、むしろレンが特務部隊や旧Ⅶ組のメンバーの中で一番成長しているのよ?何せクロスベル動乱では今ではクロスベル帝国を動かす重要人物として働いている”六銃士”やヴァイスお兄さんの為にわざわざ異世界からやって来たヴァイスお兄さんの”仲間”の人達の”知識”も吸収したしね♪」

「そ、それってもしかして……」

「かの”D∴G教団”に誘拐され、投与された”グノーシス”なる薬物によって覚醒させられたレン皇女殿下の能力の一つである”相手の記憶を読み取る”事ですか……」

「というかそれってどう考えても反則技じゃん。人が時間をかけて、手に入れた知識を横からかすめ取っているようなものだし。」

レンの説明を聞いてある事を察したエリオットは表情を引き攣らせ、ラウラは困った表情で呟き、フィーはジト目で指摘した。



「うふふ………―――そう言えば、まさかかの”西風の妖精(シルフィード)”が真逆の存在である遊撃士に就職するなんて正直ちょっと意外だったわね。」

「はは……エレボニアでは厳しい立場にあるがやっぱりサラさんの影響か?」

「ま、ね。それに、わたしの”目的”に一番近い道だと思ったから。」

「大陸最強の猟兵団の一つ、”西風の旅団”……か。」

「……あれから何か手掛かりは掴めたの?」

レンとリィンの指摘に対して答えたフィーの話を聞いてフィーの目的を察していたラウラは静かな表情で呟き、エリオットはフィーに訊ねた。

「……残念ながら。でも必ず尻尾は掴むつもり。ゼノやレオに近づくためにも。」

「………フィーならきっとできるさ。」

「前にトヴァル殿から聞いたが最年少で正遊撃士の資格を取ったとか。何でも、リベールで活躍する”ブレイサーロード”―――いや、エステル殿を含めた若手遊撃士達以来の快挙だそうだな?」

「……みたいだね。でも、頑張ったっていうならエリオットもそうだと思う。演奏だけじゃなく魔導杖のほうも腕を上げているみたいだし。」

「あはは……巡業旅行の合間に何とかそちらも鍛えてるからね。」

フィーの指摘に対してエリオットは苦笑しながら答えた。



「デビューしたばかりですのに、すでに人気が出始めてるんですよね?去年のヘイムダルのコンクリートでは音楽院の在学中に優勝してかなり話題になったと聞いていますよ。」

「ほう、そうだったのか。」

「やるね、エリオット。」

「えへへ、僕なんてまだまだ駆け出しだと思うけど。でも……この巡業中にできるだけたくさんの人達に音楽の力を見せられたらいいな。去年の”北方戦役”あたりから、エレボニア全体が変な流れになりつつあるっていうか……」

ステラの話を聞いて自分に対して感心している様子のラウラとフィーの言葉に苦笑しながら答えたエリオットは気を取り直して真剣な表情を浮かべた。

「……うん、私も各地を巡る中で肌で感じている。ノーザンブリアの併合を称揚し、新興の大国であるクロスベルに加えて1年半前の戦争で敗戦した相手であるメンフィルをカルバードに代わる”宿敵”と見る流れ……正直言って”怖い”くらいだ。」

「ああ………これもきっと”計画外に起こった出来事”を修正させた”彼”の描いたシナリオなんだろう。」

ラウラの言葉に頷いたリィンは静かな表情で推測を口にした。

「お兄様……」

「……そなた……」

リィンが言っている人物が誰であるかを察していたセレーネは心配そうな表情で、ラウラは真剣な表情でリィンを見つめた。

「はは、悪い。気にしないでくれ。――――リグバルド要塞まであと半分くらいだな。とにかく、今は先を急ごう。」

「……了解。」

そしてリィン達は再びリグバルド要塞に向かい、時折襲い掛かってくる魔獣達を撃破しながらリグバルド要塞に到着し、要塞の近くまで来ると青年の将校がリィン達に声をかけた。



~リグバルド要塞~



「――君達、この要塞に何か用かい?」

「すみません、自分達は――――……あれ?その声、どこかで聞いた事があるような……?」

近づいてきた青年士官に名乗り上げようとしたリィンだったが青年士官の声に聞き覚えがある事に首を傾げ

「―――ああ、もしかして君はリィンか!?どうしてこんなところに!?」

「えっと……すまない、声に聞き覚えがあるのは確かなのだが貴方は誰なんだ?」

「なんだよ~、俺の事を忘れちまったのかよ……まあ、俺は”Ⅶ組”程リィン達と頻繁に接していないし、あれから1年半も経っちまっているからな……って、おおっ!?よく見たら”Ⅶ組”の面々までいるじゃないか!?しかも”特務部隊”の面々まで!?ははっ、久しぶりだなあ!俺の事覚えてないか?」

リィンの問いかけに苦笑した青年士官だったがエリオット達に気づくと驚きの声を上げ、懐かしそうな様子でエリオット達に声をかけた。

「そなたは確か、フェンシング部の………!」

「もしかして―――アラン君!?」

青年士官―――アランの顔をよく見て何かに気づいたラウラとエリオットは驚きの声を上げた。

「帝国正規軍・第四機甲師団所属のアラン准尉であります!ははっ……なんてな。みんな、本当に久しぶりだ!」

そしてアランは敬礼をして自己紹介をした。その後リィン達はアランの案内によって要塞の責任者の元へと向かい始めた。



「……改めて凄いな。主力戦車に加えて、新型の機甲兵があんなに……」

「よくもまあたった1年半で”ここまで”立て直したな……」

「ええ………エレボニア帝国はクロスベル帝国によってRF(ラインフォルトグループ)との兵器売買の取引について様々な”制約”が加えられているというのに……」

「うふふ、1年半の件で衰退したエレボニア帝国があれらを購入する為の”軍資金”は一体どこから調達したのでしょうねぇ?」

要塞内に入り、戦車や機甲兵が整列している様子を見て驚いたリィンや呆れた表情で溜息を吐いたフォルデの言葉に頷いたステラは考え込み、レンは意味ありげな笑みを浮かべていた。

「……見て、あれ。」

するとその時一際大きい機甲兵――――”ゴライアス”に気づいたフィーは静かな表情で呟き

「あ、あの大きいのは確か……!」

「トリスタ奪還作戦の時に、ノルティア領邦軍を苦戦させた結果ベルフェゴール様達に出て貰って破壊した機体ですわね。」

「かつての貴族連合軍の切り札……あんなものまで配備されているとは。」

「ああ………(……それにしてもこの軍備の規模はいったい……)」

ゴライアスを見たエリオットは驚き、セレーネとラウラの言葉に頷いたリィンは真剣な表情で考え込んでいた。



「……あそこにいるのは閣下の御子息じゃないか?」

「ああ、例の巡業旅行で立ち寄ったのかもしれないな。」

「って、一緒にいるのは”灰色の騎士”か!?」

「それによく見たら”聖竜の姫君”や”小さな参謀(リトルストラテジスト)”、”奔放の懐刀”に”魔弾の姫騎士”もいるぞ……!」

「おおっ、あれが……!」

「―――敬礼!」

「ようこそ、我等がリグバルド要塞へ!」

リィン達に気づいた兵士達は演習や作業を中断してそれぞれリィン達に対して敬礼をした。



「……参ったな。」

「うーん、わかってたけどここまで注目されるなんて。」

「ちょっと恥ずかしいですわよね……」

「しかもいつの間にか二つ名まで付けられているしな……俺なんて得物は槍なのに、”懐刀”って色々とおかしいだろ。」

「そういう意味での”懐刀”ではないと思うのですが……まあ、私も幾ら伯爵家の令嬢だったとは言え”姫騎士”は過剰評価だと思っていますが……」

「うふふ、まあレンにとってはそこそこ可愛さもあるからまあまあな二つ名だけどね。」

「確かに”殲滅天使”と比べたら可愛げはあるだろうね。」

兵士達からある程度距離を取った場所で立ち止まったリィンは溜息を吐き、エリオットとセレーネは苦笑し、フォルデとステラはそれぞれ疲れた表情で溜息を吐き、小悪魔な笑みを浮かべて呟いたレンにフィーはジト目で指摘した。

「リィン達―――特務部隊の武勇伝はいまだに流れているみたいだからな。すまない、裏口から案内するべきだったか?」

「いや、気にしないでくれ。それにしても、アランが正規軍入りしていたとは……しかも第四機甲師団に配属されていたなんて。」

「正規軍最強の師団……訓練もかなり厳しいのではないか?」

「はは、まあね。毎日シゴかれてクタクタだよ。でも、正規軍入りを決めた事を後悔はしてないつもりさ。……”あいつ”のいるこのエレボニアをこの手で守りたいからな。」

ラウラの問いかけに対して苦笑しながら答えたアランはある人物の顔を思い浮かべて決意の表情をした。



「フフ、男子の誉れ、か。」

「うふふ、そう言えばアランお兄さんはブリジットお姉さんと卒業後に婚約したんだったわよね?」

「ええっ、そうなの!?」

「ほ~?そう言えばブリジットって確かステラと同じ貴族のお嬢様だったな……幾ら幼馴染の関係とはいえ、エレボニアの貴族に結婚を認めてもらえるなんてやるじゃねぇか。」

「ふふ、おめでとうございます。」

「俺からも祝福の言葉を贈らせてくれ……―――ブリジットとの婚約、おめでとう。」

「ゴチソーサマ。」

「というかレン教官はどうしてそんな情報まで知っているのでしょうか……?」

アランの言葉にラウラが静かな笑みを浮かべている中レンが口にした情報を知ったエリオットやフォルデ、ステラやリィンが様々な反応を見せている中フィーはジト目でアランを見つめ、セレーネは表情を引き攣らせてレンに視線を向けた。

「ハハ……ちょっとクサかったか。」

「――来たか。」

リィン達の反応にアランが恥ずかしがっていたその時金髪の将校がリィン達に近づいてきた。



「お疲れ様です!」

「ようこそ、”特務部隊”。エリオット坊ちゃん。アルゼイドにクラウゼル、それにレン皇女殿下も。」

「貴方は……ナイトハルト少―――いえ、中佐……!」

「ふふっ、お久しぶりですわ。」

「うふふ、実際に会うのは1年前のⅦ組の最後の”自由行動日”以来ね。」

「ども。」

「ハハ、相変わらず俺の知り合いと良い勝負をする堅物だね~。」

「あはは……坊ちゃんはやめてくださいよ。」

「お久しぶりです、少佐―――いえ、今は中佐でしたか。」

「遅くなりましたが昇進、おめでとうございます。」

「フッ、皆変わりないようでなによりだ。いや―――違うな。驚くほどに見違えたものだ。かつて君達を教えた身として、そして共に戦った身として誇らしい限りだ。」

リィン達がそれぞれの反応を見せている中金髪の将校―――第四機甲師団の師団長の補佐を務めているナイトハルト中佐はリィン達の成長を感じ取り、静かな笑みを浮かべた。

「中佐……」

「ふふっ……ありがとうございます。」

「―――閣下がお待ちだ。ここからは私が案内しよう。ご苦労だったな、准尉。」

「ハッ!」

その後リィン達は要塞の責任者がいる場所にナイトハルト中佐の先導によって到着した。



「―――閣下。彼らをお連れしました。」

「うむ、入るがいい。」

ナイトハルト中佐の言葉に対して紅毛の将官―――第四機甲師団の師団長にしてエリオットの父でもあるオーラフ・クレイグ将軍が答えるとリィン達がナイトハルト中佐と共に部屋に入って来た。

(オーラフ・クレイグ将軍……相変わらずの威厳と風格だな。)

(ああ、大将に昇進されてからも一層活躍されてるみたいだが……)

(クク、だがその威厳や風格もすぐにぶち壊されるだろうけどね♪)

(うふふ、そうね♪何せここにはエリオットお兄さんもいるしね♪)

クレイグ将軍がさらけ出す威厳や風格をラウラやリィンが感じ取っている中ある事が起こる事に気づいていたフォルデとレンがからかいの表情を浮かべたその時

「――――よーく来てくれた、エーリオットォオオオ!!」

クレイグ将軍が満面の笑みを浮かべてエリオットを抱きしめようとしたが、エリオットは一瞬の隙をついて回避した後軽くクレイグ将軍の肩を叩いた。

「ハイ、それはいいから。さっそく本題に入りたいんだけどいいかな?」

「頼もしくなったな、我が息子よ。父は嬉しいぞ……」

(そう言っている割には寂しそうに見えますわね……)

(フフ、エリオットさんを溺愛している将軍閣下からすれば色々と複雑なのでしょうね。)

(お約束だね。)

(ああ、エリオットの躱しっぷりも慣れたものというか。)

(うふふ、確かにエリオットお兄さんは確実に成長している証拠ね♪)

エリオットとクレイグ将軍のやり取りに冷や汗をかいて脱力したセレーネとステラは苦笑し、フィーの言葉にリィンは頷き、レンは小悪魔な笑みを浮かべて呟いた。

「コホン、とにかくよくぞ来た。―――本来であれば招かれざる客だがまずは歓迎させてもらおう。」

「……!」

「父さん、ひょっとして……」

「………我等が訪れた理由も大凡察せられているようですね?」

「無論―――帝国南部の治安維持は本要塞の主要任務の一つでもある。期待には沿えないだろうが……一応、話を聞かせてもらおうか?」

その後リィン達はクレイグ将軍に事情を説明した。



「―――結社に関する一連の状況は既にこちらでも把握している。―――だが、現時点で第四機甲師団が直接的な作戦行動を行う予定はない。たとえおぬしらの頼みであってもな。」

「父さん……」

「アランドール少佐の言葉通り……あくまで動向を見守るだけですか。」

「……腑に落ちないな。正規軍も、結社の人形兵器を野放しにしていいわけないよね?」

クレイグ将軍の答えを聞いたエリオットは複雑そうな表情をし、ラウラは真剣な表情でクレイグ将軍を見つめ、フィーは真剣な表情でクレイグ将軍に問いかけた。

「……ここに来るまでの間、その”意味”を考えていました。この要塞が備える戦力ならば結社の動きなど、それこそ半日足らずで片づけられるでしょう。にも関わらず、正規軍が頑なに動こうとしない本当の理由――――」

「あ………」

「……………」

「へえ?」

リィンの言葉を聞いたエリオットは呆け、ナイトハルト中佐が重々しい様子を纏って黙っている中レンは興味ありげな表情を浮かべた。

「正規軍―――いや、帝国政府は待っているんですね?今度こそ貴族勢力が音を上げるのを。」

「…………………」

「またえげつない事を考えたもんだねぇ、エレボニアの政府―――いや、”革新派”は。」

「貴族勢力にとってはまさに”泣きっ面に蜂”でしょうね。」

「ええ………しかも民達まで巻き込もうとするなんて、相当悪辣なやり方ですね。」

「1年半前の件で貴族勢力は相当衰退したのに、どうしてそこまでして貴族勢力を……」

リィンの推測を聞いたクレイグ将軍は否定することなく黙り込み、事情を察して呆れた表情で溜息を吐いたフォルデとレンの言葉にステラは頷き、セレーネは悲しそうな表情をし

「……そういう事か。なんとか存続しているとはいえ、領邦軍の規模は縮小の一方……そんな状況で”何か”が起きれば―――」

「”領邦軍とは名ばかり”……そんな主張が成り立つわけか。その存続と引き換えに”北方戦役”で自らの手を汚した准将達の功績すら打ち消す形で。」

「ひいては貴族勢力の存在意義すらみんなに、国民に疑問視させる……―――父さん、ナイトハルト中佐もそれでいいんですか……!?」

フィーやラウラに続くように帝国政府の狙いを口にしたエリオットはクレイグ将軍とナイトハルト中佐に問いかけた。



「………それは………」

「……わかっている。内戦では争ったが、領邦軍も本来、エレボニアの地を共に護る同胞―――窮地にあるのを見過ごすなど、帝国軍人の誇りに(もと)るだろう。だが――――我等が”軍人”だ。そして軍の統括権は陛下にあり、ひいては帝国政府に委ねられている。その決定を覆す形で勝手に動くわけにはいかんのだ。」

「………父さん……」

「……ま、それもそっか。納得はできないけど。」

「―――ならば、情報については?結社がこの地に築いた”拠点”―――当然、目星も付いているのでしょう。」

答えを濁しているナイトハルト中佐の代わりに答えたクレイグ将軍の答えを聞いたエリオットが複雑そうな表情をし、フィーが静かな表情をしている中ラウラは真剣な表情で質問を続けた。

「それは………」

「―――当然、こちらの方でもある程度の当たりはつけてある。だが、現時点で確たることが教えられるような状況でもなくてな。」

「?それは一体……」

「意味が全くわかんないぜ……」

「そんな……!それすら駄目なんですか!?」

結社が拠点にしている場所の目星すら教えられないというナイトハルト中佐の回答にステラが不思議そうな表情をし、フォルデが溜息を吐いている中エリオットは信じられない表情で訊ねた。



「―――案の定”レンの読み通り”だったようね。」

「え………”読み通り”という事は……」

「もしかしてレン皇女殿下は将軍閣下達からも結社が拠点にしそうな場所の目星を我等に教えてくれない事も察していたのですか……?」

するとその時呆れた表情で呟いたレンの答えにセレーネが呆けている中、ラウラは真剣な表情でレンに訊ねた。

「ええ。ま、レン達に教えない理由は帝国政府の意向もあるかもしれないけど………別の意味でも正規軍としては、”あの場所”にレン達に入って欲しくないものねぇ?」

「…………!」

「……………」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの問いかけを聞いたある事を察したナイトハルト中佐は目を見開き、クレイグ将軍は重々しい様子を纏って黙り込んだ。

「――――なるほど。だから、レン教官はクレイグ将軍の許可が必要だからリグバルド要塞に向かうと仰ったのですか。」

「え………リィンさんもレン皇女殿下が仰っている”あの場所”について何かお分かりになったのですか?」

するとその時レンの話を聞いてある事を察したリィンの答えを聞いたステラはリィンに訊ね

「ああ………アルトリザス近郊―――いや、サザ―ラント州の治安維持を司る正規軍の責任者の許可も必要な場所……―――恐らく”ハーメル村”の事だ。」

「あ………っ!」

「ええっ!?ハ、”ハーメル村”って確か……!」

「……14年前の”百日戦役”が勃発した理由にして、レーヴェ殿の故郷でもあるエレボニア帝国が犯した”大罪”の象徴を示す廃村……か。」

「道理でレーヴェも気づいたわけだ。けど何でエレボニアは今でもあの村の存在を隠そうとするの?1年半前のメンフィルとの”和解条約”で”ハーメルの惨劇”も公表したから、今更隠す必要なんてないんじゃないの?」

リィンの答えを聞いたセレーネは昨日の夕方見つけた巨大な(ゲート)があった場所を思い出し、エリオットは驚き、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、フィーは静かな表情で呟いてクレイグ将軍とナイトハルト中佐に問いかけた。



「………それは………」

「……なるほど。レン皇女殿下達が結社に関係する情報と何らかに対する儂の”許可”を求めて来たという知らせを聞いてまさかとは思いましたが、やはり”ハーメル村”に立ち入る許可を貰う為だったのですか………そして特別にハーメル村立ち入りの自由が許可されているレオンハルト准将をこのサザ―ラントに呼ばずにエリオット達を同行させてわざわざ許可を求めに来た理由の一つは”ハーメル村”を未だに国家機密の場所に指定しているエレボニア帝国の”現状や理由”を教える為と言った所ですか……」

「ハ、”ハーメル村を未だに国家機密の場所に指定している”って………」

「それってどういう意味?」

ナイトハルト中佐が答えを濁している中静かな表情でリィン達が来た理由を口にした後レンの意図を口にしたクレイグ将軍の推測を聞いたエリオットは目を丸くし、フィーは不思議そうな表情で首を傾げた。

「うふふ、その件については後で教えてあげるわ。――――という訳でハーメル村立ち入りの許可証を用意してもらえるかしら?パパとシルヴァンお兄様が発行したリィンお兄さんに対する”要請(オーダー)”を妨げるような行為を行ってはいけない事は帝国政府からも知らされているでしょう?」

「……了解しました。ナイトハルト。書筒の用意を。」

「は。」

レンの問いかけに重々しい様子を纏って頷いたクレイグ将軍はナイトハルト中佐に指示をし、指示をされたナイトハルト中佐は書筒の用意を始めた。

「……感謝します、将軍。」

「礼には及ばぬ。―――むしろしがらみに縛られた己の不甲斐なさを痛感している所だ。……やはりヴァンダイク元帥や”彼”と比べればまだまだだな。」

「え………」

「閣下、こちらを。」

「うむ、すまぬな。」

感謝を述べた事に対して静かな表情で答えたクレイグ将軍の言葉にリィンが呆けたその時書筒の用意を終えたナイトハルト中佐が書筒をクレイグ将軍に渡した。



「――――先程レン皇女殿下も仰ったようにハーメル村に立ち入るにはサザ―ラント州における2名の最高責任者の許可を必要とする。」

「”サザ―ラント州における2名の最高責任者の許可”という事はもう一名許可を貰う人物がいるのですか……」

「そしてもう一名の人物は恐らく――――」

ナイトハルト中佐の説明を聞いて考え込んでいるステラに続くようにセレーネが答えかけたその時、書類にサインを終えたクレイグ将軍が書類を手に顔を上げた。

「――――リグバルド要塞司令、オーラフ・クレイグの名において”許可証”をしたためた。これを持ってアルトリザスにいるもう一人の”責任者”を訊ねるがいい。サザ―ラント州統括―――ハイアームズ侯爵閣下の元へな。」

そしてクレイグ将軍から許可証を受け取ったリィン達はハイアームズ侯爵からの許可証を求めてアルトリザスへと向かい始めた―――――




 

 

第22話

~同時刻・演習地~



リィン達がアルトリザスへ向かい始めた同じ頃、分校の演習地では午前の訓練を終えていた。

「ふう………午前の訓練も終わりか。」

「あ~、ハラ減った~!!」

「……みんな、少しは調子が戻ったみたいね。」

「ティータちゃん。私達、先に行ってるね?」

「あっ、はい!先に食べてくださいっ!」

「―――よお、ちょうど昼メシ時か?」

午前の訓練を終えた生徒達がそれぞれ昼食に向かっている中、昼食に向かわずに演習地に残っているティータに用事で演習地に寄ったアガットが声をかけてティータに近づいた。

「あ、あ……―――アガットさん!?わああっ、アガットさん!ほ、本物ですよね!?」

「って、見りゃわかるだろ。3週間ぶりってとこか。元気にしてたか、ティータ?」

自分の登場に無邪気にはしゃいでいるティータの様子に苦笑したアガットはティータの近況を訊ねた。

「えへへ、はいっ!みんなとってもよくしてくれて……授業もどれもとても興味深い内容ばかりで……あ、ちなみにレンちゃん―――いえ、レン教官はわたし達に”魔術”をとってもわかりやすいように教えてくれているんです!で、でもどうしてこんな所にいるんですか~!?」

入学してからの近況を嬉しそうに答えたティータだったが遊撃士のアガットが分校の演習地に訊ねた事を疑問に思い、アガットに訊ねた。



「ああ、ちょっとした野暮用ついでに様子を見に来たところでな。昨日は大変だったみたいだが……悪かったな、側にいてやれなくて。」

「アガットさん……ふふ、そんなことないです。いつだってアガットさんはここにいてくれますから。」

「……ったく。」

アガットに頭を撫でられたティータは微笑んだ後胸に手を当て、ティータの言葉にアガットは苦笑していた。

「あれ、貴方は……ティータちゃんの知り合いの方ですか?」

するとその時トワがランディとランドロスと共に二人に近づいて声をかけた。

「あ、えっと………」

「ま、コイツの保護者みたいなモンでな。仕事で近くを通るついでにちょいと立ち寄らせてもらった。」

「へえ、”仕事”ねぇ。……察するに”支える篭手”の助っ人あたりってところかい?」

トワの疑問に答えたアガットの説明を聞き、アガットの服の胸につけている”支える篭手”の紋章に気づいたランディはアガットに確認した。

「あ、それじゃあフィーちゃんやリィン君達の……!?」

「ほう、その赤毛に大剣………お前がヴァイスハイトの話にあった”影の国事件”に巻き込まれ、共闘した”重剣”か。」

「へえ……って事は、アンタもティオすけが巻き込まれたっていう”影の国事件”に関わっていたのか。」

アガットの話を聞いてある事を察したトワは目を丸くし、興味ありげな様子でアガットを見つめて呟いたランドロスの話を聞いたランディは若干驚いた様子でアガットを見つめ

「やれやれ、シュバルツァー達以外の教官陣も充実してるみてぇだし、何やら俺の知り合いとも縁があるみたいだな。丁度いい、昨日の状況を詳しく聞かせてくれねぇか?俺はリベール出身の遊撃士―――」

アガットは苦笑した後自己紹介をし、トワたちの昨夜の襲撃について聞き始めた。



~同時刻・デアフリンガー号・3号車~



「二人とも、お疲れ!はい、クルト君。こっちはアルね!」

同じ頃午前の演習を終えた特務科の面々は昼食を取ろうとし、ユウナがクルトとアルティナの分も含めて自分達の昼食を机に置いた。

「……ああ、ありがとう。」

「どうも……あの、先程から気になっていたのですが。”アル”というのは、一体……?」

「へ……ああ、そう言えば何となく縮めちゃったっていうか。でも呼びやすいし、いいと思わない?」

「ふう、ユウナさんまでランドルフ教官や誰かみたいなことを……まあ、構いません。お好きに呼んでもらえれば。」

ユウナの自分への呼び方に溜息を吐いてランディやミリアムの顔を思い浮かべたアルティナだったが、過去の経験から一々訂正を求めても時間の無駄だとわかっていた為諦めてユウナの自分への呼び方を受け入れた。

「えへへ、そう?そんじゃアルで決まりね!折角だしクルト君もって、あれ?ちょっ、どこ行くの?……ってまさか。」

席から立ちあがってどこかへと向かおうとするクルトに気づいたユウナは驚きの表情でクルトを見つめ

「心配いらない。ただの稽古さ。………半端者だが、一人で飛び出すほど愚かではないつもりだ。」

ユウナの推測ではない事をクルトは淡々とした様子で答えた。



「クルト君……その、あの人にあんな風に言われたからって―――」

「別に落ち込んじゃいないさ。……とっくにわかっているんだ。あの人が、僕らを危険から遠ざけるためあんな態度をとったことくらい。僕らには―――いや、僕には荷が勝ちすぎる。……彼の判断は何も間違っていないさ。」

「………クルト君………」

「…………………」

リィンの判断が間違っていない事を複雑そうな表情で肯定しているクルトの様子をユウナは心配そうな表情で見つめ、アルティナは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「ハハ……情けなくはあるけどね。だが、この情けなさもある意味、僕自身の不甲斐なさから来たものだ。今は噛み締めて―――あるかわからないけど、”次”に活かすしかないな。」

「………………はあ、まったく。男の子って不器用よね。」

「え………」

決意の表情で答えたクルトだったが呆れた表情で溜息を吐いた後苦笑したユウナの言葉に呆けた声を出した。

「―――あのね、クルト君。格好つけて物分りがよさそうな事を言ってるみたいだけど……そんな悔しそうな顔してたら説得力ないよ?」

「………っ………」

そしてユウナに図星を刺されると息を呑んだ。



「別にいいじゃない、”置いてかれて悔しい”で。あんな風に遠ざけられて、納得なんてできるわけない。あたしも、アルだて同じだよ。」

「……”悔しい”かどうかはわかりませんが、おおむね同意見です。これでも”特務部隊”結成時から一年半近く、教官をサポートしてきた実績もあります。それこそ”要請”の時も作戦行動の関係で教官とは別行動を取っていたセレーネ教官やエリゼ様達にも任されて教官をサポートした事もありますし、内戦では教官を含めた”特務部隊”のメンバーや”旧Ⅶ組”とも同じ作戦行動を行いましたし、クロスベル動乱でも教官達と一緒にクロスベル解放作戦に参加し、更には”碧の大樹”にも突入して教官―――いえ、”特務支援課”の悲願である”彼女”の奪還を果たしました。形式上”生徒”になったとはいえ、それを理由に外されるのは………正直”納得”いきません。」

ユウナの言葉に続くようにアルティナは若干不満そうな様子で答えた。

「そっか……って、やっぱりアルも”あの人達”と一緒に”あの娘”を助けるために”碧の大樹”に突入していたんだ。……まったくあの薄情好色教官はこんな子にここまで言わせて……!」

「……わかってるさ。そんなことは、僕だって。」

ユウナがリィンに対する不満や怒りの言葉を口にしたその時、クルトは静かな表情で呟いて入学前に兄ミュラーから言われた言葉を思い出した。



クルト、お前の”護る(ヴァンダール)”の在り方を決めるのは、他でもないお前自身だ。有角の獅子の魂を継いだ第Ⅱ分校……あの場所ならば、きっと――――



「だけど―――だからって、どうすればいい……!?未熟さも、置いてかれた事実も何も変わりはしないのに……!」

「……クルトさん。」

「―――そんなこと、動いてみなきゃわからないじゃない?」

「!?」

クルトが辛そうな表情で自身の本音を口にしたその時、その様子をアルティナは静かな表情で見守り、ユウナは口元に笑みを浮かべて指摘し、ユウナの指摘に驚いたクルトはユウナを見つめた。

「納得できないことがあるならとにかく動くしかない、でしょ。足掻いて足掻いて、足掻きまくって、いつか”壁”を乗り越えればいい……私から尊敬する人達も、いつだってそうしてきたんだから。」

「え……」

「……………………」

ユウナの言葉にクルトとアルティナ、それぞれ呆けた様子で黙って聞いていた。

「そもそも、1ヵ月程度の付き合いで足手まとい呼ばわりとか失礼な話でしょ。思い知らせてやろうじゃない。そっちの目が曇ってたんだって。あたしたちも協力するから―――ね、アル?」

「……断る理由はありません。Ⅶ組のサポートが現状任務ですし。」

「……本当に前向きというか、どこまでも真っすぐだな、君は。―――そこまでいうからには何かいいアイデアでもあるのかい?この件を解決しようとしている教官達に追いつくための。」

ユウナの真っすぐな正確に苦笑したクルトは今後の方針をユウナに訊ねたが

「え。……えっとまあ、それはその、あるような……ないような?」

今後の方針を全く考えていないユウナは表情を引き攣らせた後視線を逸らして答えを濁し、ユウナの答えにクルトとアルティナは冷や汗をかいて脱力した。

「まさか、何の案もなしにあそこまでの発言を……?逆にちょっと感心しました。」

「う、うるさいわねっ。これから皆で考えればいいでしょ!」

「……はは、そうだな。簡単には行かないだろうが。」

「―――ふふっ、よかった。元気を取り戻されたみたいで。」

アルティナの指摘に頬を赤らめて恥ずかしがっているユウナの様子にクルトが苦笑しながら答えたその時ミュゼがユウナ達に声をかけて近づいてきた。



「……?」

「Ⅸ組・主計科の……」

「ミュゼだっけ。……えっと、何か用かな?」

「ふふ、ちょっとだけお耳に入れたい事があるんです。―――もしかすると皆さんのお役に立てる情報かもしれなくって。」

「え。」

「それは……」

「……どういう意味だい?」

ミュゼの意外な提案にユウナ達がそれぞれ不思議そうな表情をしたその時

「――クク、なにやら面白ぇ話をしてるみてぇだな?その話、俺にも聞かせろや。」

いつの間にか現れたアッシュがユウナ達に声をかけた。



「ア、アンタは……!」

「アッシュ・カーバイド……どうして君まで……?」

「クスクス……わかりました。では、内緒話と参りましょうか。……実はこの周辺の地図で気になる”場所”を見つけまして―――」

アッシュの申し出にユウナ達が困惑している中意味ありげな笑みを浮かべたミュゼはユウナ達にソファーに座るように促した後それぞれが座ると話し始めた。



ユウナ達がミュゼの話を聞き始めたその頃、アルトリザスに到着したリィン達はそのまま侯爵家の城館に向かい……事情を説明して面会の時間を作ってもらったのだった。



~アルトリザス・貴族街・ハイアームズ侯爵城館・執務室~



「―――クレイグ将軍の許可証、確かに拝見させてもらった。昨夜の演習地襲撃、サザ―ラント州を預かる身として何とか解決するつもりだったが……よりにもよって、我々も手を出せない”あの地”を拠点としていたはな。………いや、むしろ彼の地だからこそ、人知れず仕込みを進められたのか……」

「閣下……」

事情を聞き終えた後様々な思いを抱えている様子のハイアームズ侯爵をセレスタンは心配そうな表情で見つめ

「”ハーメル村”がこ、侯爵閣下ですら手を出せない場所って………」

「確かにエレボニアが”ハーメルの惨劇”を隠ぺいしていた頃だったら侯爵でも手を出せない場所だっただろうけど、”ハーメルの惨劇”は”七日戦役”の和解条約の件で世間に公表されたのに、何で今も正規軍もそうだけど侯爵も手を出せないの?」

エリオットは信じられない表情をし、フィーは不思議そうな表情でハイアームズ侯爵を見つめて問いかけた。

「……レン教官が何か事情を知っているとの事ですが……できれば、エレボニア帝国側である侯爵閣下から詳しい事情を伺いたいのです。」

「…………アルフィン皇女殿下を娶った君ならひょっとしたら、皇女殿下から皇女殿下自身が疑問に思っている事を伺っているかもしれぬな。――――エレボニアの”ハーメルの惨劇”に対する”贖罪”の件について。」

「エレボニアの”ハーメル”や”百日戦役”に対する贖罪の件でアルフィン皇女殿下自身が疑問に思っている事……ですか?」

「あ………」

リィンの問いかけに対して少しの間考えた後答えたハイアームズ侯爵の答えにステラは不思議そうな表情をし、心当たりがあるセレーネは呆けた声を出した。

「その様子だと、何か心当たりがありそうだな。」

「あ……はい。以前、アルフィンさんがエレボニア帝国に対する疑問を仰っていた事があるんです。―――――エイドス様に与えられたハーメルとリベールに対する”エレボニアの贖罪”を本当にエレボニア帝国が行ったかを。」

「そう言えばシュバルツァー家に来てからのアルフィンはエレボニアの状況を知る為に毎日”帝国時報”を読んでいて、”帝国時報”にエレボニアが”贖罪”を実行したという話が一度も載っていない事を分校に来る少し前も気にしていたな……」

フォルデに視線を向けられて答えたセレーネの話を聞いてリィンはかつての出来事を思い出し

「”空の女神”に与えられた”ハーメルの惨劇”に関するエレボニア帝国の”贖罪”の件って……」

「確か”七日戦役”の和解条約の時に現れた”空の女神”にアルフィン皇女が”ハーメルの惨劇”について謝罪した後、”空の女神”から与えられた様々な”贖罪”の件だね。」

「……言われてみれば、内戦終結から今日に到るまでエレボニア帝国がアルフィン皇女殿下がエレボニア帝国を代表して約束された”空の女神”から与えられた”贖罪”を実行したという話を聞いた事がないな……」

エリオットは目を丸くし、フィーとラウラは静かな表情で呟いた。



「………すまないが、それ以上は私の口から言う事はできない。だが、一つ言えるとしたら……君達が触れようとしているのはエレボニアがアルフィン皇女殿下の”想い”すらも無下にしようとしている事を思い知らされてしまう”事実”だ。あまりに哀しく――――そして愚かしい、ね。」

「………………」

「エレボニアがアルフィンさんの”想い”を無下にしようとしている事、ですか………」

「うふふ、確かに遠からず当たっているわね、侯爵さんのその言葉は。」

重々しい様子を纏って答えたハイアームズ侯爵の説明を聞いたリィンは目を伏せて考え込み、セレーネは真剣な表情で呟き、レンは意味ありげな笑みを浮かべた。

「……すまない。無用に混乱させてしまったようだ。―――セレスタン、例のものを彼らに。」

「……は。こちらをお持ちください。」

ハイアームズ侯爵に視線を向けられたセレスタンは廃道の鍵をリィンに手渡した。

「正規軍司令、サザ―ラント州統括者、両名の許可をもってその鍵を託そう。……おそらく大凡の事情についてはギルドの高位遊撃士も知っていよう。だが―――この件についてはくれぐれも(おおやけ)巷間(こうかん)に流布しないと約束して欲しい。………場合によっては帝国機密法に接触し、国家反逆罪に問われかねないだろうから。」

「ごくっ……」

「……わかりました。丁重に預からせていただきます。」

「トールズⅦ組――――君達に女神達の加護を。どうかくれぐれも気をつけてくれたまえ。それとレン皇女殿下。こんな事を頼める立場ではないと承知していますが、できれば”贖罪”の件についてはリベール王国や七耀教会には――――」

「別に頼まれなくったって、リベールや七耀教会に教えるつもりはないわよ。”贖罪”の件は”七日戦役”の”和解条約”とは無関係だし。―――というかレン達―――メンフィルが教えなくてもリベールや七耀教会もそれぞれ独自で掴んでいるか、内戦終結以降のエレボニアの態度で”察している”と思うわよ。」

リィン達に忠告した後懇願するような表情を浮かべたハイアームズ侯爵に見つめられたレンは呆れた表情で溜息を吐いて答え

「……確かにそうですね。ちなみにその件について彼――――レオンハルト准将は何と仰っていましたか?」

レンの答えを聞いたハイアームズ侯爵は重々しい様子を纏って頷いた後レンに問いかけた。

「そうねぇ………『エレボニアは何も変わっていない―――いや、エレボニアに変わる事を期待するだけ時間の無駄だ』と言っていたわね。」

「………そう、ですか………確かに内戦が終結してからのエレボニアの態度を考えれば……―――ましてや当事者の一人であった彼ならばエレボニアに対してそう思って当然でしょうね……」

「閣下……」

レンの話を聞いて疲れた表情で肩を落としている様子のハイアームズ侯爵をセレスタンは心配そうな表情で見つめ

「……こんな事を頼むのは恐れ多い事と承知していますが、できればレオンハルト准将に機会があれば、私自身は”ハーメル”の件に関わる事で彼ともう一人の”ハーメルの遺児”に謝罪したいと伝えて頂けないでしょうか?」

「そのくらいは別にいいけど……――――それは”ハイアームズ侯爵個人”として?それとも”サザ―ラント州統括者”として?」

「勿論、”両方として”、です。」

「……そう。ま、ハイアームズ侯爵はオリビエお兄さんやアルフィン夫人のように”ハーメル”の件について重く受け止めている事も伝えておくわ。」

「……寛大なお心遣い、ありがとうございます。――――私事で、時間を取ってしまってすまないね。改めて女神達の加護を。どうか武運を。」

その後アルトリザスを後にしたリィン達はハーメル村に向かう為に馬で街道を進み、パルムに到着後町で困っている家族の依頼を達成した後パルムをを出てハーメル村に向かい始めた。



~パルム間道~



「……ハハ、どうやら先を越されちまいそうだな。」

リィン達が昨日の人形兵器の探索・撃破の最中に出会った謎の中年の男がリィン達がパルムを出てハーメル村に向かう所を見つめて苦笑していた。

「しかし、あの若いのが前から聞いてたヤツだったとは。まあいい―――まずはお手並み拝見と行くか。……ウチのチビがどのくらい育ったのかも含めてな?」

そして男が呟いたその時、何とどこからともなく男の背後にかつてリィン達が1年半前のエレボニアの内戦で戦った貴族連合軍の”裏の協力者”にして”大陸最強”を誇る猟兵団の片翼である”西風の旅団”に所属している”罠使い(トラップマスター)”ゼノと”破壊獣(ベヒモス)”レオニダスが現れ

「ハハ、異存はないで~。」

「では、行くとしよう。」

それぞれ興味ありげな様子で答えた後男と共にリィン達の後を追い始めた――――






 

 

第23話

~パルム間道~



巨大な(ゲート)の前に仲間達と共に到着したリィンはハイアームズ侯爵から受け取った鍵を使って門の鍵を開いた。

「ふう……やっと開いた。」

「これだけの厳重さ……やはり”ハーメル村”に”百日戦役”以外の”何か”があるようだな。」

「ええ……”ハーメルの惨劇”を公表してもなお、ハーメル村に続く道をここまで厳重に閉じていますし……」

「問題はその”何か”ですが……」

「ま、少なくてもロクでもない事には間違いないだろうな。」

厳重な鍵を解いた事にフィーが一息ついている中ラウラとセレーネの呟いた言葉に続くようにステラは考え込み、フォルデは疲れた表情で溜息を吐いた。

「フン……やはりそこに繋がりやがるか。」

するとその時アガットがリィン達に近づいてきた。



「あ………」

「アガット、来たんだ?」

「トヴァルさんから連絡を?」

「ああ、それと俺の方でもタイタス門周辺を探ってな。領邦軍の監視を掠めるようにこっちの方へ大量の人形どもを移動させた跡を見つけた。侯爵やレーヴェの野郎から仕入れた情報の裏付けにはなるんじゃねえか?」

「そうでしたか……」

「……弱体化した領邦軍の目を盗んで拠点にしたんだね。」

「うふふ……結社なら領邦軍が弱体化しなくても目を盗んで拠点にする事くらいできるでしょうけど、あえて”ハーメル村”を拠点にするなんて、”盟主”や大半の”蛇の使徒”が死んでも悪知恵は未だ顕在のようね、”身喰らう蛇”は。」

アガットの話にリィンが頷いている中エリオットは複雑そうな表情で呟き、小悪魔な笑みを浮かべて呟いたレンの言葉を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「結社も、内戦で様々な策略で散々貴族連合軍どころか自分達まで陥れた”殲滅天使”に”悪知恵”って言われる筋合いはないと思うだろうね。」

「ああ、まったく同感だ。………しかし結社の連中もこの先の場所をぬけぬけと利用するとはな。」

ジト目のフィーの言葉に頷いたアガットは真剣な表情で考え込んだ。



「そう言えば侯爵閣下は高位遊撃士の方ならば、”ハーメルの惨劇”を公表した後でもなお、未だ”ハーメル村”に正規軍や領邦軍がおいそれと手を出せない場所である事を知っているような事を仰っていたが……」

「もしかしてアガットも知っているの?」

「ああ、大凡の事情はな。」

「えっと……リベールの方、なんですよね?」

ラウラとフィーの質問に頷いたアガットの答えを聞いたエリオットはアガットに確認した。

「ああ―――――行くんだったら俺も付き合わせてもらうぜ。”後輩ども”への義理と、………俺自身を見つめ直す機会をくれたあの銀髪野郎への義理を果たす為にもな。」

「あ………」

「……サラから、ちょっとだけ聞いた事があるけど……」

「ヨシュアさんとレーヴェさんの事ですか………」

「―――わかりました。ありがたく力をお借りします。」

アガットの答えを聞いたエリオットは呆け、フィーとセレーネは複雑そうな表情で呟き、リィンはアガットの申し出を受け入れる事に頷いた。

「”重剣”の名、聞き及んでいる。A級遊撃士としての実力、是非とも学ばせていただこう。」

「ハッ……サラと同じく殆ど我流だがな。”光の剣匠”の娘に見せられるモンがあるといいが。―――”連中”が何のためにこの先に入り込んでるかは不明だ。だが、ここまで仕込んでる以上、相当ヤバイ状況が待ってるだろう。覚悟はいいな――――トールズ士官学院”旧Ⅶ組”とメンフィル帝国軍”特務部隊”?」

「ええ……!」

「とっくに完了。」

「いつでも”彼女達”と戦う覚悟―――いえ、彼女達を討つ覚悟もできていますわ。」

「ま、サクッと終わらせようぜ。」

「エレボニアの地に漂い始めたモヤを晴らす為にも……!」

「そしてこれ以上”結社”による暗躍を防ぐ為にも……!」

「この先に待ち受ける闇。我等の手で払ってみせよう!」

「うふふ、それじゃあ”要請(オーダー)開始(スタート)、ね♪」

アガットの問いかけにそれぞれ決意の表情で答えたリィン達は先へと進み始めた。



「へっ……ドンピシャだったな。」

一方その頃リィン達がハーメル村へと続く山道を進み始めている様子をユウナ達―――”特務科”の面々と共に遠くから見守っていたアッシュは不敵な笑みを浮かべ

「ふう……あの(ミュゼ)の情報通りだったわね。でも、ここまで離れてなくてもさすがに大丈夫だったんじゃない?」

「……リィン教官とセレーネ教官の気配察知や聴力を考えたらこのくらいの距離は必要かと。同行者達も侮れませんし。」

「ああ……何とか気づかれずに後を追いかけるしかなさそうだ。場合によっては獣道を使う必要があるかもしれない。」

溜息を吐いた後呟いたユウナの疑問にアルティナは静かな表情で答え、アルティナの推測にクルトは頷いた。

「はあ、ここまでするのはちょっと気が咎めるけど……―――でも、ここまで来て蚊帳の外は納得できないよね!……Ⅷ組のアンタがどうして付いてきたのかは知らないけど。あたしたちのこと、気に喰わないんじゃなかったの?」

「ハッ、俺の勝手だろうが。ランドロスとランドルフの野郎共を撒いてコイツを持ってきたのを忘れんなよ?」

ユウナの疑問に対して鼻を鳴らして答えたアッシュは機甲兵―――ドラッケンに視線を向けた。

「はあ……いいのかなぁ。」

「戦力としては妥当かと。」

「どうせ通せない道理……多少の無理は押し通すまでだ。」

その後ユウナ達はリィン達の後を追い始めた。



~同時刻・演習地~



「あれっ……?」

「どうしたんだ?もう訓練が終わったのか?」

一方その頃、サンディとサンディと話していた男子生徒―――スタークは演習地に慌てた様子で戻って来たⅧ組の生徒達を不思議そうな表情で見つめて問いかけた。

「いや、それがねぇ……」

「……少々不味い状況だな。」

「ええっ!?」

レオノーラが答えを濁している中大柄な男子生徒―――グスタフが重々しい様子を纏って答え、グスタフの答えを聞いたカイリは驚きの声を上げた。

「クソッ、やりやがった……!」

「だぁっはっはっはっ!むしろお前どころか、俺まで出し抜いた事は評価すべきじゃねぇか?」

「感心している場合じゃないだろうが!?」

厳しい表情で声を上げたランディだったが、呑気な様子で豪快に笑っているランドロスの言葉に疲れた表情で指摘した。

「ど、どうしたんですか?」

「まさか……また襲撃があったのか?」

するとその時騒ぎを聞きつけてランディとランドロスに駆け寄ったトワとミハイル少佐が二人に事情を求めた。

「……訓練中にアッシュの野郎がドラッケンごと消えちまった。ユウ坊、クルト、アルきち――――Ⅶ組の連中も付いていったらしい。」

「へ………」

「な、なんだと!?」

「………ふふっ。お役に立てて何よりです。」

ランディの説明にトワとミハイル少佐が驚いている中、その様子を見守っていたミュゼは口元に笑みを浮かべた。



~ハーメル廃道~



分校がユウナ達の失踪に気づいたその頃、リィン達は時折襲い掛かってくる魔獣達や結社が放った人形兵器を撃破しながら先を進んでいた。

「ふう……」

「厄介だけど何とかなりそうだね。」

「ええ、内戦時に戦った人形兵器と比べれば大した事はありませんね。」

「ですが油断はできませんわ。アルトリザスやパルムのそれぞれの場所に内戦時で戦った人形兵器や見た事のない特殊な人形兵器もいたのですから。」

「ま、少なくても連中と直にやりあう羽目になったら、嫌でも戦う事になるだろうな。」

「うふふ、今までの事を考えたらもはや”お約束”の展開だものね♪」

人形兵器を撃破し終えて一息ついたラウラとフィーの言葉にステラは頷き、セレーネの忠告に続くようにフォルデは苦笑しながら答え、からかいの表情で答えたレンの答えにその場にいる全員は冷や汗をかいた。

「しかしトールズの”Ⅶ組”にメンフィルの”特務部隊”か……フィーも驚いたが、アルゼイド流のお嬢さんやあのヴァンダールの少佐―――いや中佐の親戚といい、灰色の騎士やツーヤの妹といい、リベールのお姫さんに似た雰囲気を纏っている銃使いのお嬢さんといい、やるじゃねえか。さすがは、あのお調子者や”英雄王”達が設立に関わっただけはあるぜ。」

「お調子者……?」

「”Ⅶ組”の設立に関わったって事はもしかして……」

「オリヴァルト殿下の事ですか?」

アガットの評価を聞いたリィンが不思議そうな表情をしている中、ある事を察したエリオットは目を丸くし、ラウラはアガットに確認した。

「ああ、4年前のリベールの異変で知り合ってな。当時あいつは、身分を隠してリベールでスチャラカ演奏旅行をしてやがったんだが……俺の後輩を中心に、一緒につるんで最後には”結社”の陰謀をぶっ潰した。まあ、エレボニアの機甲師団を率いて小芝居を打ったりもしやがったが。」

「うふふ、まさに”茶番”のようなお芝居だったわね♪」

「おいコラ……”お茶会”で散々俺達を振り回した挙句、あのスチャラカ皇子と一緒に小芝居を打った”英雄王”達の関係者のお前だけはあのスチャラカ皇子の事は言えねぇぞ。」

アガットとレンの話にリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アガットは顔に青筋を立ててレンを睨んで指摘した。



「アハハ……そう言えば、ツーヤお姉様からそのあたりは少しだけ伺った事がありますわ。」

「リベールの智将と英雄王と協力してエレボニア軍の強引な介入を口先三寸で阻止したんだっけ。」

「あはは……つくづく規格外っていうか。」

「フフ、”紅き翼”や我等Ⅶ組の産みの親の一人でいらっしゃるだけはあるな。」

アガットのレンへの指摘にセレーネは苦笑し、フィーの説明を聞いたエリオットとラウラはそれぞれ苦笑していた。

「ああ、だが知っての通りヴァンダール家の守護職は解かれ、今のあいつの翼はもがれちまった。帝国政府―――いや”鉄血宰相”、ギリアス・オズボーンの意向によって。」

「あ………」

「……エレボニアの状況について一通りご存知みたいですね?」

「ああ、別にアイツを助けようってわけじゃないが……内戦やメンフィルとの戦争が収まったにも関わらず異常なまでの軍拡を続ける一方怪しげな連中が動き始めている。そんな状況でも、帝国政府のギルドへの規制は続いたままだ。」

「大陸中部にある、ギルド総本部も流石に見過ごせないって判断した。それで、アガットやシェラザードなんかがリベールから派遣されたみたい。」

「”シェラザード”というと……1年半前の内戦でアルフィン皇女殿下の護衛を担当した女性のA級遊撃士の方ですね。」

「規制されている状況で大陸で20数名しかいないA級遊撃士を二人も送り込むなんて、エレボニアはよっぽどヤバイ状況である証拠だな。」

アガットとフィーの説明を聞いたステラはある人物の顔を思い浮かべ、フォルデは疲れた表情で溜息を吐いた。

「うふふ、そこに補足する形になるけど……ギルド総本部は”エレボニア帝国に接している外国の領土”―――つまり、メンフィルやクロスベルの領土にあるギルドの各支部にもA級遊撃士に加えてエステル達を含めたS級遊撃士も派遣しているのよ♪」

「ええっ!?え、A級遊撃士やS級遊撃士どころか、最近生まれたばかりの大陸で一人しかいないSS級遊撃士まで……!」

「まあ………という事はエレボニアに接しているメンフィルからクロスベルの領土のギルドにエステルさん達も派遣されているのですか。」

「エレボニアの領土に接しているメンフィルやクロスベルの領土に彼女達が派遣されたのは、エレボニアに”何らかの緊急事態”が起こった場合、いつでも応援に向かわせる為ですか?」

「ああ。幸いな事にメンフィル・クロスベルの両帝国政府はエレボニアと違って、ギルドへの規制は特にしていない―――いや、むしろ一人でも多くの高ランク遊撃士を自国の領土に派遣して治安維持に手を貸して欲しい申し出をギルド総本部にしたそうだからな。で、両帝国政府の申し出はいざとなったら、いつでもエレボニアに応援を送れる状況にしたいギルド総本部にとっては渡りに船だったから、エステル達を含めた多くの高ランク遊撃士をエレボニアの領土に接しているメンフィルやクロスベルの領土に派遣したそうだ。特に元エレボニアの領土で、”五大都市”だったオルディス、ルーレ、そしてバリアハートのそれぞれの支部に最低でもA級遊撃士2名を派遣していると聞いている。」

小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの説明を聞いたエリオットが驚き、セレーネが目を丸くしている中ある事に気づいたステラの問いかけにアガットは頷いて答えた。



「そうだったのですか……」

「……つくづくギルドには世話になってしまっているな。」

事情を聞き終えたリィンとラウラはそれぞれ静かな表情で呟き

「ま、エレボニアに何かあったら周辺諸国も他人事じゃねえからな。……本当なら、俺の後輩共―――エステル達がエレボニア入りするはずだったんだが……帝国政府の許可が下りなくて代わりに来たっていうのもある。」

「政府の許可が下りない………どうして政府は”ブレイサーロード”達をエレボニアに入れたくないんだろう……?」

「エステルとミントの場合、1年半前の戦争相手だったメンフィルから爵位を貰っている事もそうだけどエステルとヨシュアの親――――”剣聖”カシウス・ブライトが王国軍の重鎮だから許可が出なかったと聞いている。」

「……ま、もう一人―――ヨシュアの出身も含めて目をつけられてるみたいでな。それはともかく……村跡までは結構歩くはずだ。気を抜かずに行くとしようぜ。」

「……了解です。」

「そんじゃま、探索を再開するとしますか。」

その後リィン達は再び先へと進み、時折襲い掛かってくる魔獣達や人形兵器達を撃破しながら先を進んでいた。



「ふう……それにしても、どうしてエレボニアは”ハーメルの惨劇”を世界中に公表したのに、未だに”ハーメル村”への立ち入りに厳重な規制を続けているんだろう……?」

「ハイアームズ侯はエレボニアがアルフィン皇女殿下の”想い”をも無下にしようとしていると仰っていたが………」

「………………」

ハーメル村跡までの道のりでの中間地点に到着して溜息を吐いて呟いたエリオットと考え込みながら呟いたラウラの言葉を聞いたアガットは目を伏せて黙り込み

「……アガットさん。ハイアームズ侯が言っていました。ギルドの高位遊撃士であればエレボニアが未だにハーメル村跡への立ち入りに厳重な規制を敷いている事を知っているかもしれないと。」

「それにレン教官も後でわたくし達にも説明すると仰っていましたが……」

「……うふふ、そうね。それじゃあ、そろそろ教えてあげるわね。――――アガットも勿論”ハーメルの惨劇”公表後の”エレボニアのハーメルに対する対応に秘められた真意”に関して知っているのでしょう?」

「ああ……俺はレンと違って、完全に又聞きになるが、それでもいいか?エレボニア人であるお前らやあのスチャラカ皇子の妹を妻にしているシュバルツァーにはちょっとキツい話でもあるだろう。」

「……是非とも。」

「お、お願いします。」

アガットの問いかけにリィン達の代わりにラウラとエリオットはそれぞれ答えてリィン達と共に決意の表情でアガットを見つめた。



「そうだな……―――言うまでもねぇだろうが、”ハーメルの惨劇”はエレボニアが絶対に世間に隠し通し続けるつもりだった”真実”だ。もし、世間に知られてしまえば、エレボニアの国際的な立場は地の底に堕ちるだろうからな。」

「だけど、”ハーメルの惨劇”は”七日戦役”の和解条約によって、”メンフィルとの和解の為にエレボニアは渋々”公表し、その結果アガットの言う通り、エレボニアの国際的な立場はどん底に落ちて周辺諸国のエレボニアに向ける目は厳しくなったわ。――――”ハーメルの惨劇”の公表を和解条約に入れるようにパパに要請した”空の女神”のせいでね。」

「そして、エレボニアは”ハーメルの惨劇”を隠ぺいする為にこの先にあったハーメルという村は今も存在しないという事にしている。エレボニアの地図からも消えてるだろ?まったく、大した情報規制ぶりだぜ。……村人全員が皆殺しにあった真実を知り、その真実を知った”空の女神”の怒りを収める為にその場で謝罪し、更には”贖罪”を誓った自国の皇女の意志を完全に無かった事にしようとしているのだからな。」

「ええ……っ!?」

「……どうするんだ、リィン?話の初めの内容からして、あの皇女さんにとってショックを受けるような内容っぽいぜ?」

「……………勿論、リーヴスに戻った後にアルフィンにも教えます。”贖罪”の件はアルフィンが当事者なのですから、当事者である彼女に教えないのは”筋が通らない”ですし、何よりアルフィン自身が知る事を心から望んでいます。」

「お兄様……」

「アガット殿、それは――――」

レンの後に答えたアガットの答えにエリオットが驚いている中疲れた表情をしたフォルデの問いかけに少しの間黙り込んだ跡静かな表情で答えたリィンの様子をセレーネは辛そうな表情で見つめ、ラウラは真剣な表情でアガットを見つめた。

「ま、とにかく先に進むぞ。”結社”の連中しだいだが……続きはハーメルに到着してからだ。」

「……わかりました。」

「よろしくお願いする。」

その後リィン達は先へと進み、ついにハーメル村に到着した――――




 

 

第24話



~”忘れ去られし村”ハーメル~



「………………」

「ここが……”ハーメル村”………」

「ここにレーヴェさんやヨシュアさん、それに転生前のプリネ様が……」

「……どうしてだろう。こんなに哀しい風景なのに。」

「綺麗……だね。」

「ああ……一種の絵画にも見えるな……絵描きの一人として許される事なら、この風景を絵にしたいくらいだ。」

「……美しい(むら)だったのだろう。この地に眠る魂が今は安らいでいる証拠かもしれぬ。」

「……そうだといいんだが。」

「ま……あながち間違っちゃいないかもな。」

「……そうね。」

ハーメル村に到着したリィン達がハーメル村の風景に様々な思いを抱えている中アガットとレンは静かな表情でラウラが呟いた言葉を肯定した。



「ヨシュア達……さっき言った俺の後輩たちやレーヴェも一度、里帰りしているはずだ。それで安心したのかもしれん。」

「それと後は、”空の女神”によって自分達が存在していた事を世間の人達にようやく知ってもらえたのかもしれないわね。」

「その、ヨシュアさんというのが……」

「リベールの若手遊撃士の一人で、エレボニア出身みたいだね。」

「そして、ヨシュアさんもレオンハルト准将と同じこのハーメル村の遺児というわけですか……」

アガットとレンの説明を聞いたエリオットの言葉に続くようにフィーが答え、リィンは溜息を吐いてかつてクロスベル動乱で共に戦った仲間の一人――ヨシュアの顔を思い浮かべた。

「ああ………―――”ハーメルの惨劇”については既に世間にも公表されたし、お前達は内戦の最中にレンから”七日戦役”の和解条約の説明を受けた際に、あのスチャラカ皇子から”百日戦役”の真実である”ハーメルの惨劇”を聞いたとの事だから、それについては説明は省略する。」

「で。ここからの説明がリィンお兄さん達も知らない”ハーメルの惨劇”を公表しても、今もなお頑なに”ハーメル”の存在を隠そうとしているエレボニアの”事情”よ。」

「わたくし達も知らない”ハーメルの惨劇を公表しても、今もなお頑なにハーメルの存在を隠そうとしているエレボニアの事情”、ですか……」

「リグバルド要塞でレン皇女殿下の口から少しだけ話に出ましたね……」

「ま、この村の状況を見たら俺でも何となくわかってきたけどな。」

「え……ハーメル村の今の状況を見て、フォルデさんは何がわかったのですか?」

アガットの後に説明したレンの説明を聞いたセレーネは考え込み、ステラは静かな表情で呟き、呆れた表情で溜息を吐いたフォルデの言葉を聞いたエリオットは不思議そうな表情でフォルデに訊ねた。



「――――村の状況をよく見てみろ。1年半前の和解条約の際に現れた”空の女神”に誓った皇女さんのエレボニアの”贖罪”の一つである”惨劇で亡くなったハーメル村の村人達の墓がどこにあるんだ?”」

「!!」

「……言われてみれば、どこにもない――――というか、”ハーメルの惨劇が起こった後の状態のまま”だね。」

「一体どういう事なのだ……!?まさかとは思うが……エレボニア帝国政府はアルフィン皇女殿下が”空の女神”に誓ったエレボニアの贖罪の一つである”惨劇で亡くなったハーメル村の村人達全員の墓を建造する事”を実行していないのか……!?」

フォルデの指摘を聞いたリィンは目を見開き、フィーは静かな表情で呟き、ラウラは厳しい表情で自身の疑問を口にし

「一つどころか、エレボニアはアルフィン夫人が”空の女神”に誓った”贖罪”を全て実行していないわよ。」

「す、”全て”って……!」

そしてレンの説明を聞いたエリオットは信じられない表情をした。



「……お前達も知っての通り、エレボニアは一年半前のメンフィルとの戦争、メンフィルの介入による内戦終結、そして領土問題で旧共和国と揉めていた”自治州”だったクロスベルによる下克上で戦力や国力が大きく衰退した事に加えて、皇族―――特に現エレボニア皇帝であるユーゲント皇帝と政府に対するエレボニアの民達の信頼が失墜し、更にはゼムリア大陸での国際的な立場は地の底に堕ちた。」

「そんなあらゆる意味でボロボロになったエレボニアだけど、エレボニア帝国政府に復帰した”鉄血宰相”がボロボロになったエレボニアの復興だけで満足する訳がないでしょう?で、政府やユーゲント皇帝に対して落ちたエレボニアの民達の信頼を回復し、エレボニアを再びゼムリア大陸の覇者に戻してエレボニアの国際的立場の地位回復の為の手っ取り早い方法として、メンフィル・クロスベル連合の侵略によって滅びた長年の宿敵――――旧カルバード共和国の代わりに”宗主国”である自分達に歯向かった挙句、下克上までした新興の大国―――”クロスベル帝国”との戦争に勝つ事を考えたのよ。」

「だが、内戦や”七日戦役”の”和解条約”によって国力――――特に財政方面で深刻なダメージを受けた状態で、とてもエレボニアの一部の領土に加えてカルバードの大半を領土としているクロスベルに戦争を仕掛けた所で結果は”エレボニアの敗戦”が目に見えている。そして一日でも早くクロスベルに対抗できる戦力を整える為に帝国政府は内戦勃発前よりも軍拡を再開した。――――それこそギルド総本部が”異常”とまで思う程のな。」

「で、軍拡――――内戦やメンフィルとの戦争で失った戦力を回復・増強する為には当然たくさんのお金が必要な事は誰でもわかるでしょう?そしてそのお金を集める為に帝国政府はアルフィン夫人が”空の女神”に誓った”ハーメルの惨劇”に対する”贖罪”を”エレボニアがアルフィン皇女が空の女神に誓った贖罪は帝国政府内では何の権力もないアルフィン皇女の独断の為、贖罪を実行する必要はない事を決定したのよ。”」

「ま、”空の女神”がエレボニアに要求した”贖罪”の中にはリベールに”百日戦役”の賠償金を払わなければならない挙句自国の領土の一部までリベールに贈与しなければならない事になっているからな。クロスベルとの戦争に向けての軍拡を最優先で行っているのに、自国の皇女―――ましてや他国に嫁いだ皇女が独断で決めた虐殺された村人達の墓の建造費も含めた”無駄な出費”を帝国政府が許す訳がない。だが、本人はもはや今のゼムリア大陸から去ったとはいえ、ゼムリア大陸全土で崇められている”空の女神”に自国の皇女が”ハーメルの惨劇”に対する”贖罪”を必ず実行する事を和解条約時に出席していたリベール、ギルド、七耀教会、そしてメンフィルの代表者達の前で宣言しちまった以上、その宣言を撤回してしまえば、エレボニアはクロスベルに加えてリベールや七耀教会、更には内戦終結に最も貢献した事からエレボニア皇族の中で最も人気があったスチャラカ皇子の妹を慕っている自国の民や貴族達まで敵に回しちまう事になるからな。そうならない為に、帝国政府は”贖罪”を実行していない件でのリベールや七耀教会の指摘に対しては”未だに国力が回復していない為、贖罪を実行する余裕がない事”を理由に、”贖罪”の実行を延期し続けている。」

「クロスベルに加えていざとなったら無条件でメンフィルに軍を出して貰える上”不戦条約”の件でクロスベルとの関係も悪くない―――いえ、むしろ良好な関係を結んでいるリベールは当然として、自国の民達を含めたゼムリア大陸に多くの信者を抱え、”外法を殺す事”が認められている”星杯騎士団”を有する七耀教会まで敵に回す事やエレボニアから去って1年半経った今でも根強い人気を誇るアルフィン夫人を慕う平民や貴族達を敵に回す事はさすがに今のエレボニアだと”無謀”である事くらいは帝国政府も理解しているわ。だから、アルフィン夫人が”空の女神”に誓った”贖罪”はあくまで”延期”という理由で実行せず、リベールや七耀教会に対して誤魔化し続けているのよ。」

「そして帝国政府はエレボニアの民達に”贖罪”の件を忘れるように徹底した情報工作を行った。―――――かつてハーメルの虐殺を未来永劫、闇に葬った時のようにな。これが――――ハーメルの惨劇を公表したエレボニアが今もなお、ハーメルの存在を隠し続けている”事情”だ。」

「…………………」

「そんな……そんな事が………」

「レーヴェが言っていたっていう『エレボニアは何も変わらない――――変わる事を期待するだけ時間の無駄だ』って言う言葉はそういう意味だったんだね。」

「そうですね……ハーメルの惨劇を闇に葬った時から、何も変わっていませんね。」

「そしてハイアームズ侯が言っていたエレボニアはアルフィンの”想い”をも無下にしようとしているという意味はエレボニアは一からやり直して欲しいと願っていたアルフィンの”想い”をも無下にしようとしている事だったのか………」

「やれやれ……あの皇女さんが知ったら、冗談抜きでエレボニアの政府どころか政府の意向を認めた父親――――ユーゲント皇帝に対しても失望するかもしれないな。」

「はい…………そして、アルフィンさんの事ですからきっと悲しまれるでしょうね……」

アガットとレンからエレボニアがハーメルの存在を隠ぺいし続ける事情を知ったラウラは信じられない表情で絶句し、エリオットは悲しそうな表情で呟き、複雑そうな表情で呟いたフィーの言葉にステラは静かな怒りを纏って頷き、リィンは静かな表情で呟き、呆れた表情で溜息を吐いたフォルデの推測にセレーネは辛そうな表情で頷いた。



「……レン皇女殿下。メンフィル帝国はエレボニア帝国がアルフィン皇女殿下が”空の女神”に誓った”贖罪”を実行していない事について抗議等はしなかったのですか?メンフィル帝国の貴族であるリィンに降嫁なされたアルフィン皇女殿下はメンフィル帝国に所属されている事になりますし、和解条約には”空の女神”の希望である”ハーメルの惨劇の公表”が組み込まれたとの事ですから、”贖罪”とも間接的に関係があるように思えるのですが……」

「まあ、アルフィン皇女自身がリィンお兄さんに嫁いだ事でアルフィン皇女がメンフィル帝国の所属になったから全く関係がないとは言えないけど、エレボニアは”和解条約”を全てちゃんと実行したし、”贖罪”はあくまで”アルフィン皇女と空の女神を含めた七耀教会との間で結ばれた条約”の為、”和解条約ではなく別の条約”になるから、幾ら戦争で勝ったとはいえ、”メンフィルとは関係のない別組織同士で決めた出来事”に口出しする”権利”なんてないわよ。第一、もし抗議なんかして七耀教会の肩を持ったら、メンフィルが理想として掲げる”光と闇の共存”を破る事になるもの。」

「え………それって、どういう事なんですか?」

ラウラの質問に答えたレンの答えを聞いて疑問を抱いたエリオットは困惑の表情でレンに訊ねた。

「………メンフィルは”光と闇の共存”を理想として掲げている以上、”光”の勢力として見られている七耀教会に一方的に肩入れをしてしまえば、メンフィルの民達に”示し”がつかないからだと思いますわ。」

「―――加えてリウイ前皇帝陛下の側室の一人であられるペテレーネ神官長は”闇”の勢力である混沌の女神(アーライナ)教の”神格者”です。しかもペテレーネ神官長はゼムリア大陸に存在する混沌の女神(アーライナ)教の長でもありますから、ペテレーネ神官長個人はともかく、メンフィル建国時より協力関係を結んでいた混沌の女神(アーライナ)教にも”メンフィルが光と闇の共存を理想として掲げている事”に対して疑問を抱かれる可能性も考えられます。」

「それは…………」

「光と闇―――相反する存在の”共存”を謳っているからこそ、異世界では”光”と、”闇”、それぞれの勢力に”宗教”があるメンフィルは宗教関係でどちらかの肩入れはできないって事か。」

レンとステラの推測を聞いたラウラは複雑そうな表情をし、フィーは静かな表情で呟いた。

「………それと”贖罪”をエレボニアが実行するつもりがない事に気づいたリベールや七耀教会のエレボニアとの関係を悪化させてエレボニアを孤立させる事で、エレボニアがメンフィル、もしくはクロスベルとの戦争に敗戦して滅亡の危機に陥った際、エレボニアの懇願に応えてエレボニアを存続させる為のリベールや七耀教会の仲裁の意志を無くす事も含まれているのでしょう?」

「あ………」

「確かにエレボニアの皇女が自分達が崇め続けている”空の女神”自身と約束をしたって言うのに、それを破れば七耀教会は当然エレボニアが再び滅亡の危機に陥っても和解条約や西ゼムリア同盟の時のようにエレボニアに味方しないだろうし、幾らオリヴァルト皇子と親交があり、慈悲深いアリシア女王やクローディア王太女とは言え、王国政府やリベールの民達の”贖罪”を実行しないエレボニアに対する感情を考えればエレボニアの味方はし辛いだろうな。」

リィンの推測を聞いたエリオットは呆けた声を出し、フォルデは疲れた表情で呟き

「……そして、エレボニア皇族――――それも帝位継承権を持つ自分がエレボニアを代表して”空の女神”に誓った”贖罪”すらも実行しない事を決めたエレボニア帝国政府やユーゲント皇帝陛下に失望したアルフィン自身のエレボニアに対する”想い”を断ち切る事で、エレボニアの帝位継承権を持つアルフィンがいつか起こるかもしれないメンフィル・クロスベル連合とエレボニアとの戦争によって敗戦したエレボニアの統治者に選ばれ、エレボニアへの想いを断ち切ったアルフィン自身がその決定に従って受け入れる意志を作る為………――――違いますか?」

「それは………」

更なるリィンの推測を聞いたラウラは複雑そうな表情をした。

「へえ?”そこまで気づく”なんて、驚いたわ♪リィンお兄さんの予想外の成長の早さに、一日でも早くレン達をお役御免にして欲しい臨時クロイツェン統括領主の一人として、嬉しい誤算だわ♪」

一方レンは意味ありげな笑みを浮かべてリィンを見つめ、リィンの推測を肯定したレンの答えにエリオット達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「ったく、案の定ロクでもねぇ事を考えていやがったようだな……」

「うふふ、”ロクでもない”とは失敬ね。レン達メンフィルはエレボニアの”ハーメルの惨劇”に対する”贖罪”について口出しする”権利”はリベールや七耀教会程持ち合わせていない事は事実だし、別に内戦や”七日戦役”の時と違って何らかの暗躍もしていないわよ?要するにエレボニア自身が自滅しようとしているから、それを上手く利用しようとしているだけよ。」

「……確かにレン皇女殿下の仰る通り、その件に関しては完全にエレボニアの自業自得ですね。」

「……だな。帝国政府も”贖罪”を無視し続ければ、いずれエレボニアは孤立する事くらいは予想できているのに、そんな選択を取るという事はいつかクロスベルやメンフィルどころか、リベールを含めた各国に戦争を吹っ掛けるつもりなのかね?」

呆れた表情で溜息を吐いたアガットに小悪魔な笑みを浮かべて指摘したレンの指摘にステラと共に頷いたフォルデは呆れた表情で溜息を吐き

「……確かに今のエレボニアの軍拡を考えれば、フォルデの推測も当たっているかもね。」

「い、幾ら何でも1年半前の件で衰退したエレボニアがゼムリア大陸全土の国家に戦争を吹っ掛けるなんて、ありえないと思うけど……」

「だが………エレボニアは自ら破滅の道を歩もうとしている事は今の話で思い知らされたな………」

「あの……レン教官。もしお兄様の仰るような出来事が本当に実現したら、アルフィンさんをエレボニアの統治者にするつもりなのですか……?1年半前のエレボニアの内戦終結によって”七日戦役”勃発に対する”償い”とようやく皇族の重荷を捨てる事ができて、お兄様に嫁いだ事で平穏な生活を送っていたアルフィンさんを今更政治の世界に再び連れ戻す事は酷な事だと思われるのですが……」

「………………」

静かな表情で呟いたフィーがフォルデの推測を肯定している中エリオットは不安そうな表情で呟き、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、セレーネは心配そうな表情でレンに問いかけ、リィンは真剣な表情で黙ってレンを見つめていた。

「うふふ、”万が一”メンフィル・クロスベル連合とエレボニアが戦争状態になり、エレボニアを降した時に考えているエレボニアの統治者は正確に言えば”リィンお兄さんとアルフィン夫人の子供”だから、アルフィン夫人自身を今更政治の世界に連れ戻すつもりはないから、安心していいわよ。」

「リ、リィンとアルフィン皇女殿下の子供って………」

「確かに帝位継承権を持つ皇女殿下の血を引く御子ならば、当然エレボニアの帝位継承権はあるだろうな。」

「………―――なるほど。”幻燐戦争”の時のように、元々その国を治めていた皇族の血を引く子供を統治者にする事で、エレボニアの民達の反感を抑えてエレボニアの統治をしやすくする為ですか。」

レンの答えを聞いたエリオットが困惑している中ラウラは真剣な表情で呟き、リィンは静かな表情で呟いてレンを見つめた。

「”幻燐戦争”………以前レンがレグラムに”ガランシャール”を返しに来てくれた時に少しだけ話に出た事がある異世界の戦争だね。」

「俺も”影の国”で少しだけだが、当事者――――”英雄王”達本人から聞いた事がある。大陸全土の国家を敵に回したその戦争に勝利した事によって建国当時は小国だったメンフィルが大国へと成りあがった戦争で、戦後占領した皇族を生かしてそのまま占領した領土の統治を続けさせて”英雄王”がラピス皇女さん達――――各国の皇女を側室にして、その子供を占領したそれぞれの国の統治者にしたって話だったな。」

リィンの話を聞いたフィーとアガットはそれぞれかつての出来事を思い出し

「またまた大正解♪―――まあ、”幻燐戦争”の時と違ってあくまで案の一つなだけだから、リィンお兄さんとアルフィン夫人の子供がエレボニアの統治者になる事が決定している訳ではないわよ?リィンお兄さん達が拒否するんだったら、当然他の案を考えるつもりだもの。1年半前の件が切っ掛けで大出世した今のシュバルツァー家はエフラムお兄様達を始めとしたメンフィル皇家の分家と同格と言ってもおかしくないのだから、そんなシュバルツァー家の意志を”無下”にはできないわよ。」

「……寛大なお心遣い、ありがとうございます。ですが、さすがにマーシルン皇家や各国の皇家の血を引く分家の方々と”同格”は過剰評価かと。」

レンの答えにリィンは静かな表情で会釈をした後苦笑しながら指摘し

「シュ、シュバルツァー家がメンフィル皇家の分家と同格って………」

「フム、強ち間違ってはいないだろう。1年半前の件でシュバルツァー家は広大なクロイツェン州の大半の部分の統括領主に任命される事が内定しているのだからな。正直、エレボニアで例えるのならば”四大名門”と同格と言ってもおかしくないと私は思っている。」

「ハ、ハハ……」

表情を引き攣らせているエリオットの言葉に続くように呟いたラウラの言葉を聞いたリィンは乾いた声で苦笑していた。

「―――ま、話は戻すけどエレボニアがメンフィルやクロスベルに限らず他国に戦争を仕掛ける事をしなければ、リィンお兄さんの当たって欲しくない推測は見事に外れる事になるけどね♪」

「ったく、このクソガキは………―――まあいい。とりあえず、さっきの花を供えに行くぞ。たしか、村の奥の方に14年前の慰霊碑があるはずだ。」

小悪魔な笑みを浮かべて呟いたレンの言葉にリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アガットは呆れた表情で溜息を吐いた後気を取り直して答えた。

「……わかりました。行きましょう。」

「一応、警戒した方がよさそうだね。」

そしてアガットの提案にフィーと共に頷いたリィンが仲間達と共に先へと進もうとしたその時、リィンの頭の中に一瞬だけ惨劇が起こる前のハーメル村の平和な光景の一端―――黒髪の姉弟と銀髪の少年の普段の生活、そして幼い自分を背負った若い頃のオズボーン宰相の姿が浮かんだ。

「………!?(……今のは……?)」

一瞬の出来事に驚いたリィンは周囲を見回し

(間違いない……ここに来るのは初めてのはずだ。だが……何か関係があるのか?)

少しの間考えて困惑の表情をしたが気を取り直して仲間の後を追った――――――


 

 

第25話

リィン達が慰霊碑がある場所に到着すると、そこには慰霊碑に廃道の最中に生えていた花を供えているデュバリィとシャーリィの姿があった。



~”忘れ去られし村”ハーメル~



「「………………」」

慰霊碑に花を供えた二人はそれぞれ惨劇で亡くなった村人達に対する祈りを捧げていた。

「―――さてと、お待たせ。」

「なにをグズグズしてますの?待っていて差し上げますから花を捧げてしまいなさい。」

「貴女たちは……いや……そうだな。」

「それでは謹んで捧げさせていただこう。」

祈りを終えた二人に促されたリィンとラウラは二人の言葉に頷いて仲間達と共に二人のように廃道でつんだ花を慰霊碑に供えて祈りを捧げた。



「お前達もここがヨシュアとあの野郎―――レーヴェの故郷である事は当然知っているんだよな?」

「ええ――――No.Ⅱ”剣帝”レオンハルトとNo.ⅩⅢ”漆黒の牙”ヨシュア。かつてエレボニアの民だった二人がエレボニアに仇名す”結社”に所属し、結社脱退後はそれぞれエレボニアの戦争相手だったリベールとメンフィルの民になるなんて、皮肉な話ですわ。」

「”剣帝”レオンハルトに”漆黒の牙”ヨシュアか。”剣聖”に育てられたっていう”漆黒の牙”も気になるけど、”剣帝”レオンハルトは元から滅茶苦茶強くてメンフィルに所属してから更に強くなったそうだね。特に”剣帝”はあの火焔の亡霊のお兄さんにも気にいられているみたいだし。」

「ええ、付き合いも長かったようですから。……終わったようですわね?」

祈りを終えたアガットの問いかけに頷いたデュバリィの話にシャーリィは興味ありげな様子で呟き、デュバリィは祈りを終えた様子のリィン達に問いかけた。

「……昨夜の件も含めて聞きたいことは山ほどある。だが――――ここでは止めておかないか?」

「村の手前の広場あたり……あそこなら少々五月蠅くしても迷惑はかけねえだろ。」

「いいでしょう。貴女も構いませんわね?」

「別にいいよー。本命はまだ来てないし。そんじゃ、行こっか。」

リィンとアガットの提案に頷いたデュバリィとシャーリィは一足先に村の手前の広場へと向かい

(本命……?)

(何のことだろう……?)

(わからぬが……決着をつけるとしよう。)

(うふふ………プリネお姉様達の方はギリギリのタイミングで”間に合いそう”ね。)

シャーリィが呟いた意味ありげな言葉に仲間達が首を傾げて二人の後を追っている中一人だけ意味ありげな笑みを浮かべたレンはリィン達の後を追って行った。



~ハーメル廃道~



「―――単刀直入に問おう。この地の静寂を破ってまで”何”をしようとするつもりだ?」

「死者を悼む心と礼節を持ち合わせている事は見受けます。なのに何故、よりによってこんな場所を利用しているのですか?」

村の手前の広場で仲間達と共にデュバリィとシャーリィと対峙したラウラとステラはそれぞれ真剣な表情で二人に問いかけた。

「……こういった里は別にここだけではありませんわ。エレボニア以外の辺境……野盗風情に襲われて全滅した集落なども少なくありません。わたくしの故郷のように―――」

「え………」

「なるほどな……結社の連中にしては妙に言葉遣いが礼儀正しい事に疑問を思っていたが、その理由が何となくわかってきたな。」

「もしかして貴女―――いえ、”鉄機隊”の方達は分校長に……」

デュバリィがふと呟いた言葉を聞いたリィンが呆けている中フォルデは納得した様子でデュバリィを見つめ、ある事を察したセレーネは複雑そうな表情でデュバリィを見つめた。

「どうでもいい話でしたわね。」

一方リィン達の反応を見たデュバリィは自分を蔑むような表情を浮かべたがすぐに気を取り直した。

「死者は死者だよ。そして生者には生者の生きる世界がある……生きて足掻いて苦しんで―――刹那の喜びと安らぎを感じながら死んでいく世界がね。」

「……!」

シャーリィが自身の主張を口にした後から漂い始めたシャーリィの闘気を逸早く察したフィーが表情を厳しくしたその時、自身の得物を取り出したシャーリィが後ろに跳躍してリィン達から距離を取った。



「それじゃあ、始めようか?ランディ兄や”紅き暴君”がいないのはちょっと残念だったけど……妖精にA級遊撃士、殲滅天使もいるし、けっこう楽しめそうかな?」

そして不敵な笑みを浮かべたシャーリィの言葉を合図にデュバリィの背後に人形兵器が2体、更にシャーリィの背後から大型の獣型の魔獣が3体現れた。

「赤い星座の軍用魔獣……!」

「白い人形兵器の方は鉄機隊の専用機体といった所ですか……」

敵の援軍の登場にフィーとステラは人形兵器と魔獣を警戒し

「ヴァンガード”F2”スレイプニル。最新鋭の機体ですわ。わたくしの剣技があれば無用ですが少しは愉しませて差し上げます。」

デュバリィは不敵な笑みを浮かべて説明した。

「チッ……」

「……数は若干こちらが上か。」

「問題はこの後に姿を現すかもしれない敵の援軍だな。」

「まあ、少なくても他の”鉄機隊”のメンバーは現れる可能性は高いと考えた方がよさそうね。」

敵が増えた事にアガットは舌打ちをし、エリオットは状況を分析し、フォルデとレンはそれぞれ真剣な表情で推測をしていた。

「―――いいだろう。俺達が勝ったら話してもらうぞ。1年半の沈黙を破り、”盟主”を始めとした多くの最高幹部を失った”結社”の残党が何をするつもりなのか!」

「あはは、乗った……!それじゃあ妖精、昨日の決着をつけようか!?それと昨日受けた”貸し”を倍にして返させてもらうよ、”殲滅天使”!?」

リィンの問いかけを聞いたシャーリィは武器を構えなおしてフィーとレンを見つめ

「望むところ。」

「うふふ、やれるものならやってみなさい♪」

対するフィーも武器をシャーリィに向けて宣言し、レンは大鎌を構えて不敵な笑みを浮かべてシャーリィを見つめた。

「灰の起動者に”重剣”、”聖竜”に”魔弾”―――アルゼイドの娘と槍のヴァンダールも参りますわよ!」

「上等だ……かかって来いや小娘共!」

「いざ、尋常に勝負――――!」

そしてリィン達はそれぞれ分散してそれぞれが戦う相手へと向かい、デュバリィ達との戦闘を開始した!



「二の型―――疾風!!」

セレーネと共に人形兵器達に向かったリィンは電光石火の攻撃で先制攻撃を人形兵器達に叩き込み

「「…………」」

リィンの先制攻撃を受けた人形兵器達は強烈な盾による攻撃で敵を気絶させるクラフト―――シールドバッシュでリィンに反撃したが

「!―――緋空斬!!」

リィンは攻撃が当たるギリギリのタイミングまで引き付けて後ろに跳躍して回避した後炎の斬撃波を放って反撃を叩き込んだ。

「集束せし聖なる光よ、炸裂せよ――――ホーリーバースト!!」

「「!?」」

その時魔術の詠唱を終えたセレーネが高火力の魔術を発動し、セレーネの魔術によって発生した集束した光の魔力による爆発をその身に受けた人形兵器達は怯んだ。

「二の型―――大雪斬!!」

「そこです――――スパイラルピアス!!」

人形兵器達が怯んだ隙を見逃さないかのようにリィンは跳躍して人形兵器の頭上からの強襲攻撃で、セレーネは人形兵器に詰め寄って捻りを加えた突きによる攻撃でそれぞれ人形兵器の片腕の関節部分を攻撃した。すると二人の攻撃によって関節部分が破壊された人形兵器達はそれぞれ盾を持つ腕が地面に落ちた。

「「…………」」

片腕を失った人形兵器達だったが、腕を失った事に気にせず残りの片腕に持つ戦斧でリィンとセレーネに攻撃し

「!吼えろ、蒼き龍よ――――蒼龍炎波!!」

「ハッ!雷光よ、我が右腕に宿れ――――サンダーストライク!!」

それぞれ後ろに跳躍して敵の攻撃を回避したリィンは太刀を振るって闘気で発生した蒼き炎の竜を、セレーネは右腕に集束させた雷光のエネルギーを解き放って人形兵器達に止めを刺した!



「「「ガウッ!!」」」

軍用魔獣達は自分達に向かってきたフォルデとステラ、そしてエリオットにそれぞれ襲い掛かったが

「―――させません!そこっ!!」

「「「ガッ!?」」」

散弾銃(ショットガン)を取り出したステラによる銃撃を受けて怯み

「アークス駆動――――エアリアルダスト!!」

更に竜巻を発生させるエリオットのアーツが魔獣達に炸裂し、魔獣達はダメージを受けると共に竜巻によって足止めをされた。

「吹き飛びなあっ―――――轟爆旋風牙!!」

「「「ギャンッ!?」」」

そこにフォルデが魔獣達の前の地面に槍を突き立てて衝撃波と共に旋風を発生させて魔獣達に追撃すると共に吹き飛ばした。

「貫け―――スパイラルショット!!」

「そこだ―――風雷神槍!!」

吹き飛ばされた魔獣に更なる追撃をする為にステラは散弾銃(ショットガン)からライフルに戻した後ライフルで回転する風の弾丸を、フォルデは槍から雷が迸る竜巻を魔獣達に放ったが、魔獣達は素早い動きでそれぞれ回避した後フォルデ達に反撃する為に猛スピードでフォルデ達に迫った。



「奏でて―――ブルーオーケストラ!!」

魔獣達の攻撃がエリオット達に命中する寸前にエリオットが起動したダメージを7割も軽減するブレイブオーダーによって発生したエネルギー障壁に魔獣達の攻撃は阻まれ、ダメージを受けたエリオット達は軽傷ですんだ。

「巻き込んでさしあげます………!――――ショット!!」

一撃離脱技―――空牙でエリオット達にダメージを与えてエリオット達から離れた魔獣達だったがステラが放った吸引力のある竜巻を発生させる魔術が込められた弾丸を放つクラフト―――トルネードバレットによって発生した竜巻に巻き込まれて一か所に固められ

「常世の鐘よ、鳴り響け――――ノクターンベル!!」

そこにエリオットの魔導杖(オーバルスタッフ)によって発生した銀の鐘が鳴り響いて魔獣達に追撃を叩き込んだ。

「こいつは見切れねぇだろう?ハァァァァァァ……!――――終わりだっ!!」

そして止めにフォルデが連続突きの後強烈な薙ぎ払い攻撃を放つクラフト―――スラストレインで3体の魔獣達を纏めて止めを刺した!



「さ~てと……サクッと行くよ!」

シャーリィが自分に向かってきたフィーとレンを見るとチェーンソーの部分を回転して二人に向かって突撃し

「!」

「っと!」

シャーリィが放ったクラフト―――ブラッドストームに対して二人はそれぞれ軽やかな動きで左右に分かれて回避し

「排除する。」

「消えちゃえ♪」

フィーは双銃剣による一斉掃射のクラフト―――クリアランスでレンは指先から高熱度の光を放つ純粋魔術―――死線で遠距離攻撃による反撃をシャーリィに放ち

「あはは、いいねぇ!それじゃあ、これはどうかなあっ!?」

二人の反撃に対して好戦的な笑みを浮かべながら回避したシャーリィは火炎放射を放つクラフト―――フレイムチャージでフィーとレンに向けて放ち

「ミッションスタート。」

「―――転移。」

襲い掛かる火炎放射に対してフィーが幻影の風をその身に纏って完全に気配を戦場から消し、レンが転移魔術を発動してその場から消えるとフィーとレンがいた場所は誰もいなく、誰もいない所に火炎放射が通り過ぎ

「うふふ、反撃よ♪」

「おっと!良い奇襲だけど、シャーリィには通じないよ。」

転移魔術でシャーリィの背後に現れたレンはシャーリィの背後から大鎌で襲い掛かったが、レンの奇襲に即座に気づいたシャーリィはレンの奇襲を回避した後ライフルによる乱射攻撃でレンに反撃しようとしたが

「せーの……ヤアッ!―――止め。」

「あうっ!?」

戦場から完全に姿と共に気配を消していたフィーがシャーリィの側面から限界突破の連続攻撃―――トライサイクロンで攻撃してシャーリィの態勢を崩し

「崩したよ!」

「隙は逃さないわよ♪―――羅刹刃!!」

「っ!?」

シャーリィの態勢が崩れるとフィーと戦術リンクを結んでいたレンがフィーに続くように大鎌を振り回しての連続攻撃でシャーリィに追撃し、レンの追撃に対してシャーリィは攻撃の一部を喰らった後後ろに跳躍してダメージを最小限にした。



「行くよ―――シュッ!!」

「狙いは悪くないけど、その程度じゃあシャーリィには届かないよ、妖精!」

「っ!?」

更なる追撃を仕掛ける為にフィーは全身に風を纏って神速の強襲攻撃を仕掛けるクラフト―――サイファーエッジでシャーリィに攻撃を仕掛けたがシャーリィは攻撃が命中する寸前で身体を逸らして回避した後無防備になったフィーの背後から反撃を叩き込んでフィーにダメージを与えると共にダメージによる痛みでフィーの持ち味である速さを失速させた。

「そおれっ!」

「……っ!」

「彼の者に光の守護を―――防護の光盾!!」

失速し、足が止まったフィーにシャーリィはライフルを掃射させて追撃し、シャーリィの追撃に対してフィーが武器を構えて防御をしたその時レンが光の魔力による障壁をフィーに付与してフィーの防御力を高めた。

「ぶっ飛べ!!ブラッディクロス!!」

「くっ……!?」

ライフルを掃射したシャーリィは続けてフィーに詰め寄ってチェーンソーを振るってフィーを宙へと上げた後チェーンソーによる十文字斬りをフィーに叩き込んでフィーにダメージを与えた。

「アークス駆動―――ティアラ!!」

「援護します―――シュート!!」

「!」

シャーリィの攻撃が終わったその時、魔獣達との戦闘を終えたエリオットが治癒アーツをフィーに放ってフィーが受けたダメージを回復し、シャーリィをフィーから離れさせるためにステラはライフルによる三連射攻撃―――トライバーストを放ち、ステラが放った三連射攻撃に気づいたシャーリィはフィーから離れて攻撃を回避した。



「伍の型―――光輪斬!!」

「あうっ!?」

そこに回避行動を取った後にできたシャーリィの僅かな隙を狙って、エリオット達同様人形兵器との戦闘を終えてフィー達の加勢にかけつけたリィンが刀気の輪を繰り出してシャーリィにダメージを与えた。

「四の型・改――――紅蓮切り!!」

「っと!今度はこっちの番だよおっ!」

続けてリィンが太刀に炎を纏わせた一撃離脱技で追撃を仕掛けると側面に跳躍して回避したシャーリィはクラフト―――ブラッドストームでリィンに反撃し

「させるか!」

「あはは、やるじゃない!それじゃあ、これはどうか――――」

自分の反撃を太刀で受け流して回避したリィンの回避行動に好戦的な笑みを浮かべたシャーリィは続けてライフルを掃射する為にライフルをリィンに向けようとしたその時

「やらせないよ!アークス駆動―――ブルーアセンション!!」

「っ!?」

エリオットが発動したアーツによってシャーリィの足元から凄まじい威力の水のエネルギーが吹き上がってシャーリィにダメージを与えて怯ませると共にリィンへの追撃の手を中断させた。

「リィンさん、敵から距離を取ってください!えいっ!」

「わかった!」

「あうっ!?身体が……!へえ……変わった物を持っているねぇ……!」

エリオットのアーツが終わる寸前にリィンに忠告したステラはリィンがシャーリィから距離を取ると同時に冷気が込められたFグレネードをシャーリィの足元に投擲した。するとエリオットのアーツが終わると同時にグレネードは炸裂して閃光と共に冷気をシャーリィの周囲に発生させ、冷気によって身体の一部が凍結した事で動きが鈍くなったシャーリィは冷気が込められたFグレネード―――Aグレネードを投擲したステラを興味ありげな様子で見つめた。

「うふふ、感心している場合かしら?」

「くっ、身体が完全に……!?」

凍結効果によって動きが鈍ったシャーリィにレンが魔眼を発動してシャーリィの動きを完全に封じ込めたその時!

「―――さてと。始めよっか。それっ!」

フィーが双銃剣を回転させて投擲した。すると双銃剣はまるで意志を持っているかのようにシャーリィに襲い掛かって無数の斬撃を叩き込んだ後シャーリィから離れ

「キャッチ。ヤァァァァァ……っ!」

跳躍して空中で片方の双銃剣をキャッチしたフィーはそのままシャーリィに掃射攻撃を叩き込んで地面に着地すると同時にそのままシャーリィに神速の強襲攻撃を叩き込み、強襲攻撃が終わると残り片方の双銃剣がフィーの手に戻った。

「パシッと。ダメ押し――――リーサクルセイド!!」

そしてフィーは双銃剣でシャーリィ目がけて怒涛の連射をした。するとシャーリィを中心に連鎖する爆発が起こった!

「っっっ!!??へえ……!」

フィーが放ったSクラフト―――リーサクルセイドの最中にレンの魔眼の効果が切れたシャーリィはフィーのSクラフトを受けながら後ろへと跳躍して最後に起こった連鎖する爆発を回避した後好戦的な笑みを浮かべてフィーを見つめた。



「そこだぁっ!」

「甘いですわ!―――喰らいなさい!」

ラウラと共にデュバリィに向かったアガットが放った先制攻撃である火柱を伴う衝撃波――――ドラグナーエッジに対してデュバリィは側面に跳躍して回避した後高速によって発生した残影を残しながら強襲攻撃を行うクラフト―――残影剣でアガットに反撃し

「チッ……!」

デュバリィの反撃に対してアガットは自身の得物である大剣で受け流し

「蒼裂斬!!」

「……!」

クラフトを放ち終えたデュバリィにラウラは蒼き闘気を纏った衝撃波を放ち、デュバリィはラウラが放った衝撃波が命中する寸前で盾で防いだ。

「喰らいやがれ―――ドラゴンエッジ!!」

「うっ!?」

ラウラの攻撃が終わるとアガットが竜気を纏った回転撃―――ドラゴンエッジでデュバリィに襲い掛かり、デュバリィはアガットの攻撃も盾で防ごうとしたがアガットの攻撃の破壊力によって態勢が崩されると共にダメージを受け

「崩したぜ!」

「行くぞ―――でやぁっ!!」

「キャアッ!?」

アガットと戦術リンクを結んでいるラウラはデュバリィの態勢が崩れると追撃に獅子のように襲い掛かって2連続攻撃を行うアルゼイド流の剣技―――獅子連爪で追撃してデュバリィに更なるダメージを与えた。



「調子に乗っているんじゃ――――ありませんのっ!」

「「!!」」

デュバリィは反撃に炎を纏わせた剣による薙ぎ払い――――豪炎剣で反撃し、アガットとラウラはデュバリィが放った炎の薙ぎ払い攻撃が当たる寸前で後ろに跳躍して回避した。

「まだですわ――――喰らいなさい!」

「っ!?」

「くっ!?」

豪炎剣を回避した二人にデュバリィは続けてクラフト―――残影剣を放って回避行動に成功した事によってできた僅かな隙をついてダメージを与え

「おぉぉぉぉ……ドラゴンスマッシュ!!」

「!」

反撃に放ってきたアガットの竜気を宿らせた強烈な一撃を側面に跳躍して回避した。

「逃がしはせぬ――――洸閃牙!!」

「くっ……小癪な……っ!?」

しかしそこに光の渦を発生させて自分の元へと引き寄せて一閃を放ったラウラの攻撃を盾で受け止めたが、ラウラの一撃の凄まじさが盾越しに伝わって来た事によって盾を持つ腕が痺れ

「そこだぁっ!」

「蒼裂斬!!」

「キャアッ!?」

片腕に伝わる僅かな痺れによってできたデュバリィの隙をついたアガットとラウラはそれぞれ左右から逃げ場のない衝撃波を放ってデュバリィにダメージを与えた。



「七色の光の矢よ――――プリズミックミサイル!!」

するとその時人形兵器との戦闘を終わらせたセレーネがラウラとアガットの加勢に現れてデュバリィ目がけて魔術によって発生した七色の光の矢を放ち

「!!」

「行くぜ――――ハァァァァッ!そらっ!」

「あうっ!」

セレーネが放った七色の光の矢を側面に跳躍して回避したデュバリィだったが、そこに狙いすましたかのようなタイミングでセレーネ同様軍用魔獣との戦闘を終え、ラウラ達の加勢に現れたフォルデが華麗な槍舞による攻撃―――スピアダンサーでデュバリィにダメージを与えた。

「アルゼイドの真髄、その身に刻むがよい―――参る!オォォォォ……ッ!」

「こいつでしまいにしようぜ……!ハアッ!セイヤァッ!―――とうっ!」

「く……っ!?キャアッ!?」

するとその時それぞれ奥義を発動したラウラは精神統一をした後神速の強襲攻撃を行い、アガットは片足を地面に踏み込んでデュバリィに突進して大剣による斬撃を何度も叩き込んで盾を構えたデュバリィの防御を崩した後空高くへと跳躍し

「奥義――――洸凰剣!!」

「ハァァァァァァ……ッ!止めだ――――ドラゴン――――フォール――――ッ!!」

「キャアアアアアア……ッ!?く……っ!」

ラウラは蒼き闘気を纏わせた事によって光の大剣と化した得物で一刀両断攻撃を、アガットは全身に竜気を纏った空からの一刀両断攻撃をデュバリィの目の前の地面に叩き付けて凄まじい火柱を発生させ、二人のSクラフトによる大ダメージを受けたデュバリィは後ろに跳躍してラウラ達から距離を取った――――


 
 

 
後書き


もうすぐ1章が終わりますが、1章にて閃Ⅳ篇を書く為に必要なキャラクター達を登場させる予定ですのでその時をお待ちください。それと暁の軌跡、サラの為に回したガチャでアルティナが当たってしもうた(汗)先月もアルティナの為に回したガチャでシャロンが当たってしまった事を考えるとまさか来月のピックアップキャラのガチャの時にサラが来るのか……と一瞬思ってしまいましたが、さすがにそんな強運はありえないですよね(苦笑)
 

 

第26話

~ハーメル廃道~



「あはは、なかなかいいじゃん!」

「フン、さすが皆伝に至っただけはありますわね……!」

それぞれが対峙している相手と距離を取ったシャーリィは不敵な笑みを浮かべ、デュバリィは鼻を鳴らして忌々しそうな表情でラウラを見つめた。

「そちらはそちらで更に腕を上げたようだ。」

「……まだ、届いていないか。」

敵の評価に対してラウラとフィーはそれぞれ静かな表情で答えた。

「うーん、”重剣”や”殲滅天使”に”ヴァンダールの槍”も相当だし、楽士のお兄さんや”聖竜”に”魔弾”のお姉さんの支援もいいけど……―――ねえ、灰色のお兄さん。どうして本気を出さないのさァ?しかもお兄さんの使い魔……じゃなくって婚約者だったか。何でその人達も呼ばないの?もしかしてシャーリィ達を舐めているのかなぁ?」

「………!」

それぞれの評価をしたシャーリィは不敵な笑みを浮かべてリィンを見つめ、対するリィンがシャーリィから漂う凄まじい殺気に気づいたその時

「させない!」

フィーがシャーリィ目がけて突進したが、斜め上方から自分に襲い掛かる狙撃の矢に気づき、シャーリィへの突進を中断して回避行動に専念した。

「狙撃………!」

「それも”矢”という事は、まさか……!」

狙撃による矢を見たステラが驚き、ある事を察したセレーネが真剣な表情で仲間達と共に狙撃が放たれた方向に視線を向けると、そこにはデュバリィと同じ騎士装束を纏った女弓騎士と斧槍(ハルバード)を持つ女騎士がいた。

「も、もしかして”鉄機隊”の……!?」

「ああ……他の隊士だ。」

「うふふ、”やっぱり”出て来たわね。」

「予想通りの展開ですが、”赤い星座”の援軍はいないみたいっすね。」

女騎士達の正体を察したエリオットの言葉にリィンは頷き、レンは意味ありげな笑みを浮かべ、フォルデは敵の援軍で”赤い星座”の猟兵達がいない事に気づいた。



「我が名は”剛毅”のアイネス。音に聞こえしアルゼイド流の後継者と遥か昔に失われたヴァンダール流の”槍”の後継者と(まみ)えて光栄だ。」

「”魔弓”のエンネア――――ふふっ、うちのデュバリィがお世話になったみたいね。」

斧槍(ハルバード)を持つ女騎士と狙撃を行った弓女騎士―――デュバリィと同じ”鉄機隊”の隊士であるアイネスとエンネアはそれぞれリィン達に名乗り上げた。

「こ、子供扱いするんじゃありませんわ!それとアルゼイドの娘と卑劣な手段ばかり取るヴァンダールの槍相手に礼儀など無用です!」

するとその時、転移魔術が込められた魔導具で転移したデュバリィが二人に注意し、シャーリィは驚異的な身体能力でデュバリィ達の所まで下がった。

「―――ま、それはともかく。改めて9対4……”対戦相手”も様子見みたいだし、とことん殺り合おうか?」

「まあ、いいでしょう。上手くいけば”起動条件”もクリアできそうですし。」

「”対戦相手”……?」

「”起動条件”だと……?」

リィン達との戦闘を再開しようとしたシャーリィとデュバリィの言葉にエリオットとアガットが眉を顰めたその時!

「ハッ、もらったぜ!!」

「おっと……!」

何とドラッケンを操縦するアッシュがシャーリィの背後から現れてシャーリィに奇襲し、奇襲に逸早く気づいたシャーリィは間一髪のタイミングで前方に跳躍して回避した。

「その声―――Ⅷ組のアッシュか!?」

「うふふ、”やっぱり”来たわね。大方演習の最中にランディお兄さん達の目を盗んでここまで来たんでしょうけど………どのタイミングでレン達の後を追って、しかも”自分達”どころか機甲兵(ドラッケン)をランディお兄さん達の目を盗んでここまで来た方法は純粋に気になるわね♪」

「か、感心している場合ではありませんわよ……というかどうしてその事をわたくし達に教えてくれなかったのですか………あら?”達”という事はまさかとは思いますが――――」

ドラッケンから聞こえてきたアッシュの声を聞いたリィンは驚き、小悪魔な笑みを浮かべたレンの言葉に呆れた表情で溜息を吐いたセレーネだったがある事に気づいた。

「あたしたちもいます!」

「参る――――!」

するとその時セレーネの予想通り、ユウナとクルトの声が聞こえた後ユウナとクルトは”鉄機隊”の側面から現れ

「ほう……!?」

「あら……!?」

アイネスとエンネアはクルトとユウナの奇襲攻撃をそれぞれ回避した後二人と対峙した。

「くっ、雛鳥ごときが―――ぐっ……!」

そしてユウナとクルトの奇襲に唇を噛みしめたデュバリィが何かに気づいて視線を向けたその時、片腕にアルティナを乗せたクラウ=ソラスがデュバリィを殴り飛ばした!



「”黒兎(ブラックラビット)……!貴女がいましたか……!」

「久しぶりですね、”神速”の。」

唇を噛みしめて呟いたデュバリィの言葉に対してアルティナは淡々とした様子で答えた。

「アルティナ……クルトにユウナまで……!駄目だ、下がってろ……!」

ユウナ達の登場に驚いたリィンはユウナ達に警告をしたが

「聞けません―――!貴方は言った……!”その先”は自分で見つけろと!父と兄の剣に憧れ、失望し、行き場を見失っていた自分に……間違っているかもしれない―――だが、これが僕の”一歩先”です!」

「………!」

「クルトさん……」

意外にもクルトが反論し、クルトの反論にリィンとセレーネはそれぞれ驚いた。

「クルト君……」

「―――命令違反は承知です。ですが有益な情報を入手したのでサポートに来ました。状況に応じて主体的に判断するのが特務活動という話でしたので。」

「それは………」

「ア、アルティナさんまで……」

「クク、1年半前の時とは比べものにならないくらい、”人”に近づいているようだな。」

「そうですね………それもリィンさん達――――”シュバルツァー家”での生活や第Ⅱ分校での学生生活によるものでしょうけど、この場合のアルティナさんの”判断”は褒めるべきか、叱るべきなのか迷う所でしょうね……」

クルトの意志を知ったユウナが静かな表情でクルトを見つめている中、クルトに続くように反論をしたアルティナの言葉にリィンは答えを濁し、アルティナまで命令違反に加えて反論までして来たことにセレーネは表情を引き攣らせ、口元に笑みを浮かべたフォルデの言葉にステラは苦笑していた。

「アル……すみません、教官。言いつけを破ってしまって。―――でも、言いましたよね?『君達は君達の”Ⅶ組”がどういうものか見出すといい』って。そしてセレーネ教官は『わたくし達に対する意見や注意して欲しい事があれば、遠慮なく言ってくださいね』って。自信も確信もないけど……3人で決めて、ここに来ました!」

「「…………………」」

「ハハッ……」

「君達……」

「……なるほど。確かに”Ⅶ組”だな。」

「しかもリィンとセレーネの言葉が全部ブーメランになってる。」

「クスクス、二人とも見事に返されたわね♪」

ユウナの主張に返す言葉がないリィンとセレーネが黙っている中、アガット達は苦笑し、レンはからかいの表情で呟いた。



「くっ、何を青臭く盛り上がってるんですの!?」

「あはは、愉しそうでいいじゃん。折角だからまとめて全員と殺り合ってもよかったけど……―――これだけ場が暖まってたら行けそうかな?」

自分達の存在を忘れているかのようなリィン達のやり取りにデュバリィが唇を噛みしめている中呑気に笑ったシャーリィは懐からボタンがついた何らかの装置を取り出した。

「おっと、イカした姉さん。妙なことはやめてくれよな?化物みてぇに強そうだが……勝手な真似はさせねえぜ?」

シャーリィの行動に逸早く気づいたアッシュはドラッケンを操作してドラッケンが持つ自分と同じタイプの得物の切っ先をシャーリィに向けて警告した。

「ふふっ、面白い子がいるねぇ。機甲兵に乗ってるのに全然油断してないみたいだし。」

「ハッ、戦車よりは装甲が薄いって話だからな。昨日みたいに対戦車砲(パンツァーファウスト)喰らったらヤバいってのはわかってんだよ。その化物みたいなチェーンソーもむざむざ喰らうつもりはねぇぞ?」

「ふふっ、パパが生きていたら君の事を気にいりそうだけど……今は引っ込んでてくれないかな?」

「てめえ……!」

そしてシャーリィがアッシュの警告を無視して装置のボタンを押したその時、何らかの駆動音が広場に聞こえてきた。



「な、なんだァ……」

突然の出来事にアッシュが戸惑ったその時アッシュが操縦するドラッケンの背後にドラッケンの何倍もの大きさがある人形兵器が現れ

「後ろ―――!?うおっ……!」

ドラッケンを一撃で殴り飛ばした!

「アッシュ……!?」

「大丈夫ですか……!?」

「ま、まさかこれも……?」

「結社の……人形兵器?」

「なんという巨きさだ……」

「……巨人機(ゴライアス)以上みたいだね。」

「………結社の”神機”。クロスベル独立国に貸与され、第五機甲師団を壊滅させた……」

「そしてパパ達に壊されたらしいけど……どうやら、それの後継機みたいね。」

「確か話によると”至宝”の力で動いていたらしいが……まさか”至宝”の力なしで動けんのかよ!?」

新たに現れた超弩級人形兵器―――”神機アイオーン”TYPE-γIIの登場にリィン達がそれぞれ驚いている中レンは真剣な表情でアイオーンを見つめ、アガットは信じられない表情で声を上げた。



「あはは、見事成功だね!」

「あとはどこまで機能が使えるかのテストですが―――っ……!」

アイオーンの起動成功にシャーリィが無邪気に喜んでいる中何かに気づいたデュバリィがリィンに視線を向けるとリィンは集中し、リィンに続くようにレンも集中した。

「リィンさん、行くんですね?」

「ああ―――こんなものを人里に出す訳にはいかない」

「後は任せたぜ。」

「わたし達がリィンがヴァリマールで実際に戦っている所を見るのはこれが初めてになるね。」

ステラの問いかけに頷いたリィンをフォルデは静かな表情で見つめ、フィーは興味ありげな表情でリィンを見つめ

「………!」

「まさか……」

一方リィン達の様子を見て何かに気づいたユウナとクルトが驚きの表情でリィンを見つめたその時

「来い―――”灰の騎神”ヴァリマール!!」

「来て――――パテル=マテル!!」

リィンはヴァリマールの名を呼び、レンも続くようにパテル=マテルの名を呼んだ!



~演習地~



「応!!」

「――――――!!」

それぞれの呼びかけに応えたヴァリマールとパテル=マテルは操縦者無しで起動し、2体が起動すると2体を収納していた列車の屋根や装甲が開いた。

「ええっ……!?」

「な、なんで勝手に……!?」

「ほう?オルキスタワーでの”神機”以来のようだなぁ?」

「あの時も疑問に思ったが、マジでどうなってやがるんだ!?」

突然の出来事に生徒達が驚いている中ランドロスは不敵な笑みを浮かべ、ランディは困惑の表情で声を上げた。

「ヴァリマール!リィン君から呼ばれたの!?」

するとその時トワがヴァリマールに近づいてヴァリマールに状況を訊ねた。

「―――うむ。尋常ではない敵が現れたらしい。生徒達もいるようだ。そなたらも征くといいだろう。」

「………!」

トワに助言をしたヴァリマールはパテル=マテルと共に空へと飛びあがり、主であるリィンの元へと向かい始めた!



「す、凄い……」

「ふふっ……選ばれし者の(はたら)きですか。」

その様子を見守っていたティータは驚き、ミュゼは静かな笑みを浮かべた。

「くっ、あそこまでの機動性があるとは……」

「―――ミハイル少佐、ランドロス教官とランドルフ教官も!TMPと領邦軍に連絡――――この場をお願いして総員、現場に向かいましょう!」

予想外の出来事にミハイル少佐が唇を噛みしめたその時トワが振り向いてミハイル少佐達に今後に行動を提案した。

「な、なんだと!?」

「ハッ……合点承知だ!」

「さぁて……悪ガキ共を連れ戻すついでに、俺達も加勢に行こうじゃねぇか!」

トワの提案にミハイル少佐が驚いている中ランディとランドロスはそれぞれトワの提案に頷いた。



~ハーメル廃道~



「あれは……!」

「ヴァリマールとパテル=マテル………!あの2体をリィンさんとレンさんが呼んだという事は、それ程の相手が”ハーメル村”に……!?」

廃道を進んでいたプリネとツーヤは空を飛んでハーメル村に向かっているヴァリマールとパテル=マテルに気づいて驚きの声を上げ

「…………――――急ぐぞ。”ハーメル”を”実験”の場に選んだ事…………奴等に必ず後悔させるぞ。」

「レーヴェ………ええ、急ぎましょう―――!」

「くふっ♪エヴリーヌは誰と遊ぼうかな♪」

目を伏せて黙り込んだ後静かな怒りを全身に纏ったレーヴェの言葉を聞いたプリネは少しの間目を伏せて黙り込んだが決意の表情になってツーヤとレーヴェ、そしてこれから結社の使い手達と戦う事を楽しみにしているエヴリーヌと共にハーメル村へと向かう足を速めた。



「あ、あれは……!」

「リィン教官とレン教官の……」

「”灰の騎神”とパテル=マテル……久しぶりですね。」

「ハハ、まさか演習地から飛んでくるとは……!」

空を飛んで近づいてきたヴァリマールとパテル=マテルに気づいたユウナとクルトは驚き、アルティナは静かな表情で呟き、アガットは感心した様子で苦笑していた。

「あははっ!これが噂の”騎神”だね!」

「来ましたわね――――パテル=マテルは少々予定外でしたが、想定の範囲内ですわ!」

地面に着地したヴァリマールとパテル=マテルの登場にシャーリィが興味ありげな様子でいる中デュバリィは真剣な表情で声を上げた。そしてリィンは光に包まれてヴァリマールの操縦席へと入り、レンはその場で集中をしてパテル=マテルの操縦を始めた。

「リィン、ヴァリマールも!」

「レン教官とパテル=マテルも御武運を……!」

「相手はクロスベル独立時に機甲師団を壊滅させた機体……」

「くれぐれも気をつけるがよい!」

「「おおっ……!」」

「うふふ、後はレン達に任せなさい♪」

「――――」

仲間達の声援に応えたヴァリマールとパテル=マテルはそれぞれの操縦者の操作によってヴァリマールは太刀を、パテル=マテルは両腕を構えて格闘の構えをした。



「ふむ、久々の実戦だが尋常な相手ではなさそうだ。」

「ああ、騎神とも機甲兵とも違う、奇妙な力の流れを感じる……まずはパテル=マテルと協力しつつ、様子を探っていくぞ!」

「承知……!」

そしてヴァリマールはパテル=マテルと共にアイオーンとの戦闘を開始した!大きさは数倍以上もあるアイオーン相手にヴァリマールとパテル=マテルは果敢に戦ったが、いくら攻撃しても全くダメージが通っている様子はなく、攻めあぐねていた。



「くっ、デカブツ相手に大したモンだが……」

「”神機”とやらもまた別格のようだな……」

「クロスベル解放の時にオルキスタワーで戦ったデカブツと比べても別格じゃねえか?」

「ええ……加えて、あの”神機”の操縦者は戦闘に縁がなかった”人”―――――ディーター元大統領でしたから……」

ヴァリマール達の攻撃が効いている様子がない戦いを見守っていたアガットは唇を噛みしめ、ラウラは真剣な表情で呟き、フォルデの推測に頷いたステラは考え込み

「途轍もない質量と装甲……それ以外にもあるみたいだね。」

「ええ……ヴァリマールの”太刀”は以前内戦終結の為に旧Ⅶ組の皆さんがわたくし達”特務部隊”の指揮下に入った際に、レン教官が皆さんに支給したウィルフレド様直々に作成された武装と同じ”オリハルコン”を始めとした様々な高位の鉱石で作られているのですから、攻撃が通らないなんて幾ら何でもおかしいですわ。」

「ど、どうしたら……」

フィーの推測に頷いたセレーネは真剣な表情で考え込み、エリオットは不安そうな表情で呟いた。するとその時デュバリィ達から離れたユウナ達がアガット達の元に到着した。



「結社が開発した合金、”クルダレゴンⅡ”。ですが”匠王”―――ウィルフレド様が直々に開発したオリハルコンを始めとしたゼムリアストーンよりも高位のディル=リフィーナの鉱石で作られた太刀が通らないのは妙です。」

「ああもう……!流石に相手が悪いでしょ!あんなデカブツに二機じゃ無理があるわよ!」

「そうか……!」

アルティナが淡々と分析している中ユウナは信じられない表情で声を上げ、何かに気づいたクルトは声を上げた後ある場所に向かって走り始め

「クルト君……!?」

クルトの行動に驚いたユウナはアルティナと共にクルトを追って行くと、アイオーンにふっ飛ばされたドラッケンに近づいたクルトはドラッケンの操縦席を開放した。

「……ク、クソが……」

「大丈夫か……!?」

「……ああ……だがクラクラしやがる……インパクトは外したから機体のダメージは軽いはずだ……不本意だが任せた……ブチかましてこいや……!」

「ええっ!?」

「もしかして――――」

クルトに向けたアッシュの激励の言葉を聞いてある事を察したユウナとアルティナが驚いたその時

「ああ―――任せてくれ!」

クルトは決意の表情で頷いた。



「おかしい……幾ら何でも硬すぎる……!クロスベル独立騒ぎの時には超常的な力を振るったが……レン教官、何かわかりませんか!?」

「そうね……機体から感じる膨大な霊力からして、”零の至宝”程ではない何らかの”力”があの機体に働いているわ。多分、ヴァリマールも気づいているのじゃないかしら?」

「うむ、どうやら機体そのものに不可解な力の働きがあるようだ。何とかして流れを断てれば――――」

「――――助太刀します!」

リィン達がアイオーンの攻略法について相談しているとアッシュと操縦を変わったクルトがドラッケンを操作してヴァリマールやパテル=マテルと並んだ。

「その声―――クルトか!?クルト、下がれ!機甲兵の敵う相手じゃない!」

「百も承知です!ですが見過ごすことはできない!幼き頃に育ったこの地を災厄から守る為にも……僕自身が前に踏み出すためにもヴァンダールの双剣、役立ててください!」

「君は………」

クルトの意志を知ったリィンが呆けたその時リィンの懐が光を放ち始めた。

「これは……」

「戦術リンクと同じ……!?」

「ラウラお姉さん達も光っていて、アガットだけ光っていない。もしかしてこの光は――――」

それぞれが所有しているARCUSⅡが光を放ち始めている事に気づいたリィンとクルトが驚いている中二人同様光を放っている自身のARCUSⅡやユウナ達に視線を向けたレンはある仮説をたてた。

「こ、この感覚って……!?」

「ARCUSⅡを介して……?」

「内戦でトールズ士官学院を奪還した後に起こった旧校舎での出来事の時にもあった……」

「……いや、その時よりも強い繋がりを感じるな。」

「この光の正体は一体……」

「ま、少なくてもリィンや俺達にとって悪い効果ではないだろうな。」

「はい。ARCUSⅡの性能を考えると恐らく戦術リンクに関係する何らかの機能でリィンさん達を援護できると思うのですが……」

「ん、新しいⅦ組の子たちまで……」

「おいおい……魂消たな。」

それぞれ光を放っているARCUSⅡを取り出したユウナ達が驚いたり呆けている中、その様子を見守っていたアガットは信じられない表情で呟いた。

「―――小言は後だ。あのデカブツを無力化する。奇妙な”力”の流れを見極め、断ち切って刃を突き立てるぞ!」

「ええ―――!」

「了解です―――!」

そしてドラッケンを加えたヴァリマール達はアイオーンとの戦闘を再開した!



「パテル=マテル、銃で頭を狙いなさい!」

「―――――」

レンの指示によって異空間から大型の機関銃を召喚して両手にそれぞれ一丁ずつ持ったパテル=マテルはアイオーンの頭目がけて機関銃を連射し

「――――――」

パテル=マテルの銃撃を頭に受けたアイオーンは”溜め”の態勢に入った後両腕を振り上げた。

「!――――ブースターを起動させて側面に回避しなさい!」

「―――――」

「―――――!」

アイオーンが振り上げた両腕をパテル=マテル目がけて振り下ろした瞬間、レンの操作によってパテル=マテルは両足についているブースターで側面へと移動してアイオーンが放ったクラフト―――ギガースハンマーを回避した。

「下がれっ!」

「ハァァァァァァ……!―――斬!!」

アイオーンがパテル=マテルへの攻撃が失敗に終わったその時、アイオーンの注意がパテル=マテルに逸れている事を利用し、アイオーンの左右から襲い掛かったヴァリマールはクラフト―――弧月一閃で、ドラッケンはクラフト―――レインスラッシュをアイオーンに叩き込んだ。

「!?」

「そこだっ!」

「もらった!」

左右からの強襲攻撃で態勢が崩れたアイオーンにヴァリマールとドラッケンは追撃し

「今の内に追撃よ、パテル=マテル!」

「――――――」

パテル=マテルも二体に続くように異空間から巨大なハルバードを召喚した後ハルバードをアイオーンに叩き込んだ。



「―――――」

「く……っ!」

パテル=マテルの攻撃が終わるとアイオーンは反撃にドラッケン目がけてパンチを放ち、襲い掛かるパンチを見たクルトが衝撃に備えようとしたその時

「やあっ!」

「――――!?」

ドラッケンとリンクを結んでいるアルティナが反射結界を付与するEXアーツ――――ノワールバリアをドラッケンに展開させてアイオーンに攻撃を反射させて攻撃したアイオーン自身にダメージを与えた。

「援護しますわ、お兄様!」

その時ヴァリマールとリンクをしているセレーネの思念を受け取ったヴァリマールは剣に霊力(マナ)によって発生した雷撃を纏わせ

「サンダーストライク!!」

雷撃を纏わせた強烈な突きを勢いよくアイオーンに叩き込んだ!

「――――!!??」

強烈な雷撃を受けた事によって一時的に麻痺状態になったアイオーンは動けなくなり

「えいっ!」

「うふふ、パテル=マテルにまで効果があるなんて、便利な機能ね♪――――ダブルバスターキャノン発射!!」

「―――――!!」

そこにパテル=マテルとリンクを結んでいるユウナのEXアーツ――――クイックスターによって一時的に全体的な動きが”加速”状態になったパテル=マテルは両肩についている砲口に一瞬でエネルギーを溜めた後溜めたエネルギーを解き放ってアイオーンに命中させた!



「―――――――」

「パトリオットフィールド展開!」

「――――――」

パテル=マテルが放った凄まじいエネルギー攻撃を受けたアイオーンは両腕を動かしてパテル=マテルを捕えようと両腕を伸ばしたがパテル=マテルが展開した絶対防壁の展開に阻まれてパテル=マテルを捕える事ができなかった。

「援護する―――洸翼陣!!」

「受け取りなぁ―――蒼龍陣!!」

「唸れ――――おぉぉぉ……螺旋撃!!」

「ハァァァァァァ……!―――斬!!」

「――――!!??」

そこにそれぞれとリンクを結んでいるラウラとフォルデが発動したEXアーツによって一時的に様々な能力が上昇したヴァリマールとドラッケンが再びアイオーンの左右からクラフトを叩き込み、左右からの強烈な攻撃にアイオーンはダメージを受けると共に態勢を崩した。

「崩した――――二人とも、頼んだ!」

「ええ!」

「レンに任せて♪」

態勢を崩したアイオーンの様子を見て好機と判断したヴァリマールはドラッケンとパテル=マテルと共に連携攻撃を開始した。

「―――下がれ!」

「ハァァァァァァ……!そこだっ!」

「パテル=マテル、ダブルバスターキャノン発射!!」

「―――――!!」

ヴァリマールがクラフト―――弧月一閃を叩き込むとヴァリマールに続くようにドラッケンはクラフト―――双剋刃を、パテル=マテルはクラフト―――ダブルバスターキャノンをアイオーンに叩き込み

「連ノ太刀―――――箒星!!」

止めに太刀に闘気を溜め込んだヴァリマールが太刀をアイオーンに叩き込むとアイオーンの上空からアイオーン目がけて無数のエネルギー弾が降り注いだ!」

「――――――!!!???」

ヴァリマール達が放った連携技による大ダメージを受けた事と今までの戦いで蓄積したダメージによってついに限界が来たアイオーンは全身をショートさせながら戦闘の続行が完全に不可能になった―――――!
 

 

第27話

~ハーメル廃道~



「やったあああっ!」

「機能停止―――奇妙な力の流れも完全になくなったみたいです。」

「……へっ………」

「やりやがったか……!」

「ふふ……見事だ。」

「まずはこれで”1体”、ですね。」

「問題はあんな代物を結社がいくつ持っているかだが……今は、そんな事を気にしていても仕方ないな。」

「ふふっ、そうですわね。」

「ん……連携も良かった。」

「新Ⅶ組……いいクラスみたいだね。」

ヴァリマール達の勝利にユウナ達はそれぞれ喜んだり嬉しそうな様子でヴァリマール達を見つめた。

「な、なんですの、その力は!?」

「ふむ……”実験”は終了か。」

「まあ、最初にしては上出来と言うべきかしら?」

「ふふっ、そうだね。いいタイミングみたいだし。」

一方ヴァリマール達との戦いを見守っていたデュバリィは驚き、冷静な様子で呟いたアイネスとエンネアの言葉にシャーリィが頷いてある方向へと視線を向けたその時

「―――そこまでだぜシャーリィ!」

ランディが操縦するヘクトルがヴァリマール達の背後から現れた!



「あ……ランディ先輩!」

「来てくれたのか……」

ランディの登場にユウナは喜び、リィンは苦笑していた。

「ああ、他の連中もこちらに駆けつけている。”おいた”は終わりだ―――全員、覚悟してもらおうか!?」

「くっ、生意気な……」

「ふふっ……ちょっと喰い足りなかったけどまたのお楽しみかな。今度はちゃんと殺り合ってくれるよね――――”猟兵王”?」

ランディの警告にデュバリィが唇を噛みしめている中苦笑したシャーリィはある方向へと視線を向けて不敵な笑みを浮かべてリィン達にとって驚愕の人物の二つ名を口にした。

「……え………」

「なに……!?」

「へえ?」

シャーリィが叫んだある人物の二つ名を聞いたフィーが呆け、ランディが驚き、レンが興味ありげな表情をしたその時

「―――なんだ、気づいてやがったか。」

なんとシャーリィが視線を向けた方向にいつの間にかゼノとレオニダス、そしてリィン達が昨日の人形兵器の探索・撃破の最中に出会った謎の中年の男がいた!



「………………」

「チッ、いつの間に……!」

「あ、あのオジサン……!」

「やはり貴方も今回の件に何らかの関係があったのですか……」

「あのマークは……」

「……なるほど。そちらの所属でしたか。」

中年の男の登場にフィーが呆けている中アガット達は様々な反応を見せた。

「久しぶりやなぁ。黒兎、それに”闘神の息子”。」

「そちらは6年ぶりくらいか。」

「”西風の旅団”―――なんでここにいやがる!?そ、それにアンタは……」

ゼノとレオニダスに声をかけられたランディは厳しい表情で声を上げた後困惑の表情で中年の男を見つめた。



「ハハ、まさかここに関係者一同が集まるとはな。嬢ちゃんも久しぶりだ。相手できなくて悪かったな?」

「ま、”実験”は終了したから別にいいけどね。それにしても、あはは!”本当に生きてたなんて”……!”空の覇者”に討ち取られたのはこの目でちゃんと見たのにさ………!」

「”空の覇者”――――ファーミシルス大将軍閣下ですか……」

「あの大将軍閣下を相手にして生き延びるとか、どんな化物―――いや、”一度討ち取られた”から、大将軍閣下との戦闘で敗北した後大将軍閣下は死んだと判断して去った後に奇蹟的に生き延びていたのか……?」

「うふふ、ファーミシルスお姉さんに限って止めを刺さずに去るなんて事はしないはずよ。―――ましてや、自らが”強者”と認めた相手は特に、ね。」

「っ………」

「ま、まさか………」

「4年前に亡くなったというフィーの育ての親―――」

「”西風の旅団”の団長か!?」

男とシャーリィの会話を聞いてある事に気づいたステラは考え込み、フォルデの疑問にレンは意味ありげな笑みを浮かべて答え、フィーは辛そうな表情で顔を俯かせ、男の正体を察したエリオットとラウラは信じられない表情をし、リィンは男の正体を口にした。



「フフ………西風の旅団長、ルトガーだ。改めてよろしくな、新旧Ⅶ組と特務部隊。それにフィー、ずいぶんと久しぶりだぜ。」

中年の男――――フィーの育ての親にして”西風の旅団”の団長である”猟兵王”ルトガー・クラウゼルは懐かしそうな表情でフィーに声をかけた。

「ど、どうして……だって団長はあの時に……お墓だって作った……!ゼノ、レオ、どういう事……!?」

「いや~、別にお前を騙しとったんとちゃうで?これには色々と込み入った事情があってなぁ。」

「結果的に、お前を置いて消えた理由の一つでもある。”真の雇い主”の要請で今は亡きカイエン公と貴族連合に協力していたことも含めて。」

「なっ………」

「あの内戦で、西風の旅団が貴族勢力以外に雇われていた……?」

「うふふ、中々興味深い話ね。」

「……………………」

ゼノとレオニダスが語った驚愕の事実にラウラは絶句し、エリオットは困惑の表情をし、レンは小悪魔な笑みを浮かべてルトガー達を見つめ、フィーは呆けていた。

「ま、背はそんなに伸びなかったが大きくなったモンだぜ。遊撃士もヤクザな商売だが猟兵稼業よりは百倍マシだろう。”紫電”のお嬢ちゃんにはいつか礼を言っとかないとな。」

「……団長……………本当に団長なんだ。どうして―――一体、何がどうなってるの!?」

「―――サラへの伝言は俺が預かっておこうじゃねえか。遊撃士協会としても色々と話を聞いてみたいからな?」

フィーのルトガーへの問いかけに続くようにアガットは大剣をルトガー達がいる方向に向けて問いかけた。



「ハハ、こっちはギルドと事を構えるつもりはねぇんだが。ま、今後は色々と動くつもりなんで挨拶だけはしておくぜ。」

自身のリィン達に対して伝えたい事を伝え終えたルトガーはその場から飛び降り

「団長……!?」

「と、飛び降りた……!?」

「いや、この音は―――」

ルトガーの行動にリィン達が驚いたその時何かの機械音がし、ルトガーが飛び降りた先から紫色の騎神らしき機体が現れた!

「な……!?」

「新手……!?」

謎の機体の登場にリィン達が驚いていると謎の機体はアイオーンに激しい攻撃を叩き込み始めた!

「あははははっ……!」

「迅い……!」

謎の機体の強さにシャーリィが無邪気に喜んでいる中デュバリィが驚いていると謎の機体はアイオーンの両足と両腕を斬り落とした!

「クルト、ランドルフ教官、レン教官!」

「はい!」

「おおっ!」

「ええ!」

その様子を見てある事が起こる事を察したリィンがクルト達に呼びかけるとヴァリマール達はユウナ達の前に出てアイオーンの破壊によって起こる爆発に備えた。そして謎の機体はアイオーンに止めを刺してアイオーンから大爆発を起こさせ

「きゃああっ……!」

「クラウ=ソラス……!」

襲い掛かる爆発の余波にユウナは思わず悲鳴を上げ、アルティナはクラウ=ソラスを自分達の前に出して障壁を展開させて爆発の余波を防いだ。



「ぁ……」

「馬鹿な……あれではまるで……」

「紫色の……騎神!?」

「あはは!さすがは”闘神”のライバル”今度はちゃんと相手をしてよね!」

「クク、いいだろう。フィー、灰色の小僧もまたな。」

「ほななー!」

「せいぜい精進するがいい。」

そして謎の機体を操るルトガーを始めとした西風の旅団はその場から去り

「コラ、待ちやがれ!」

それを見たランディは声を上げた。

「まったく……敵同士で何を悠長な。」

「フフ………相手にとって不足なしだ。」

「ええ、次の邂逅が楽しみね。」

デュバリィ達もルトガー達に続くように転移の魔導具を起動した。



「それでは失礼しますわ第Ⅱ分校、それに遊撃士協会。」

「『幻焔計画』の奪還もようやく始まったばかりだ。」

「”我々”と”彼ら”の戦い……指を咥えて眺めていることね。」

そしてデュバリィ達が転移の光に包まれたその時、転移の光は突然消えた!

「あら……?」

「転移の光が消えた………だと……?」

「ちょっとー、一体何があったのー?」

「そ、それは私達もわかりませんわ!?途中まではちゃんと起動していたのに、一体何が――――」

転移の光が消えた事にデュバリィ達が困惑したその時

「だぁっはっはっはっ!援軍に来たぜ!」

「教官達、ご無事ですか!」

「よっしゃ!Ⅶ組も無事みたいだぜ!」

「アッシュ!君も何をやっている!」

「ええい、先行するな!」

「まずは周辺の警戒を……」

ランドロスを始めとしたⅧ組のメンバーやミハイル少佐、トワもその場に駆けつけた!



「――――やれやれ、まさに”千客万来”の状況だな。」

するとその時リィン達にとって聞き覚えのある声が聞こえてきた!

「と、突然声が……?」

「新手か……!?」

「な………」

「あら、この声は確か―――」

「!!どこにいるのですか!?No.Ⅱ―――”剣帝”レオンハルト・ベルガー!」

「くふっ♪死にたくなければせいぜい逃げ回ればぁ!?――――三連制圧射撃!!」

聞こえてきた声にⅧ組のメンバーが戸惑っている中声に聞き覚えがあるアガットは絶句し、エンネアが目を丸くし、血相を変えて周囲を見回したデュバリィが声を上げたその時デュバリィ達の頭上に転移魔術で現れたエヴリーヌがクラフトを発動してデュバリィ達の頭上から無数の矢を降り注がせた!

「なあっ!?」

「上空からだと……!?」

「クッ、まさか私が矢による奇襲を許すなんて……!?」

頭上から襲い掛かる矢の雨に驚いたデュバリィ達がそれぞれ回避や防御行動に専念し始めたその時、ルトガー達がいた場所とは反対の場所の森に潜んでいたレーヴェが人間離れした動きでシャーリィに強襲した!

「おっと!」

レーヴェの強襲攻撃に対してシャーリィは後ろに跳躍して回避した。

「破邪の力よ、我が刃に力を――――エクステンケニヒ!!」

「十六夜――――”斬”!!」

「「きゃあっ!?」」

「ぐっ!?」

一方デュバリィ達が回避や防御に専念している間にレーヴェが現れた場所から人間離れした動きで一瞬でデュバリィ達に近づいたプリネとツーヤはデュバリィ達を挟み撃ちにしてそれぞれ光の魔法剣と抜刀による広範囲の斬撃のクラフトをデュバリィ達に叩き込んでデュバリィ達を怯ませた!



「………………」

自身の強襲を回避したシャーリィと対峙したレーヴェは静かな表情で剣を構え

「ええっ!?あ、貴方達は……!」

「”特務部隊”出身にして元結社の”執行者”No.Ⅱ――――”剣帝”レオンハルト・ベルガー!それに”魔弓将”やプリネ皇女殿下、”蒼黒の薔薇”まで……!」

「い、一体いつの間にここに……」

「というかレン教官……まさかとは思いますが、ツーヤお姉様達の登場も予想をしていらしていたのですか……?」

レーヴェ達の登場にトワは驚き、ミハイル少佐は信じられない表情で声を上げ、リィンは困惑し、ある事を察していたセレーネは疲れた表情でレンに問いかけ

「クスクス、むしろ”ハーメル”が関係しているのに、レーヴェ達が来ない事を推測する方がおかしいわよ♪」

セレーネの問いかけに対してレンは小悪魔な笑みを浮かべて答えた。

「”剣帝”レオンハルト……兄上の話にあったプリネ皇女殿下の親衛隊副長にして元結社の最高峰の剣士……」

「ええっ!?それじゃあ、あの銀髪の剣士の人も元結社の人だったの!?」

「はい。しかも戦闘能力は結社でも分校長や”劫焔”に次ぐトップクラスの使い手だったそうです。」

「………っ!あの野郎はまさか………!?」

一方リィン達同様レーヴェ達の登場に驚いて呆けた様子でレーヴェを見つめて呟いたクルトの言葉を聞いて驚いたユウナの疑問にアルティナは答え、レーヴェの顔を見て何かに気づいたアッシュは左目を抑えてレーヴェを睨みつけた。



「クッ……No.Ⅱどころか”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”に”蒼黒の薔薇”、それに”魔弓将”まで……!現れたタイミングとわたくし達の転移の魔導具の発動がしなかった事を考えると、まさか貴女方が何かしたのですか!?」

「―――その通りです。”転移封じの結界”。メンフィルがウィル様達――――ユイドラの”工匠”達と協力して開発した魔導具です。」

「”転移封じの結界”とはその名の通り、魔術、魔導具に限らず”転移”に関わる類のものは全て封じる魔導具です。効果範囲が限られている事やある条件がなければ、味方も転移できない等欠点が残されている”試作品”ではありますが……」

「いざとなったら”転移”で逃げるお前達のウザイ行動を封じられるんだから、いつも”転移”に頼っているお前達にとっては嫌な道具でしょう?キャハッ♪」

唇を噛みしめて声を上げたデュバリィの問いかけに対してプリネとツーヤは静かな表情で答え、エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべてデュバリィ達を見つめた。

「なあっ!?」

「”ウィル”……”工匠”……”ユイドラ”……―――なるほど。かの”匠王”が私達が持つ転移の魔導具を封じているこの状況に関わっていたようね……」

「そのよう魔導具を持ち出し、しかも普段はバリアハートや異世界の本国にいる貴女達がわざわざこの場に現れた理由は……この状況を考えれば、愚問か。」

「シャーリィ達を”狩る”つもりなんだ?」

プリネ達の話を聞いたデュバリィは驚き、エンネアとアイネスはプリネ達の動きを警戒しながら厳しい表情で答え、シャーリィは不敵な笑みを浮かべてレーヴェを見つめた。

「大正解♪というか”実験”する場所をよりにもよって”ハーメル村”を選ぶなんて、ポンコツなのは1年半前から変わっていないわね、”神速”は♪」

「だ、誰がポンコツですって!?」

レンの言葉を聞いたデュバリィはレンを睨んだが

「逆に聞かせてもらうけど、大方貴女達の事だから”要請(オーダー)”の件も知っていて、その”要請(オーダー)”をも利用した”実験”を行ったのでしょうけど……”この場所”で”実験”を行えば、パパとシルヴァンお兄様の”要請(オーダー)”を受けたリィンお兄さんを補佐する人員としてレーヴェが来ないと、本気で思っていたのかしら?」

「グッ……!」

「何……!?」

「リ、リィンが受けている”要請(オーダー)”をも利用した”実験”って……」

「恐らく”騎神”が関わっているのでしょうね……」

「まさか”そこまで気づかれていた”なんてね……」

「さすがは”殲滅天使”―――――いや、”小さな参謀(リトルストラテジスト)”といった所か……」

レンの指摘に反論できないデュバリィが唸り声を上げている中アガットは驚きの声を上げ、エリオットは困惑の表情で呟き、ステラは静かな表情で推測し、エンネアは厳しい表情で呟き、アイネスは重々しい様子を纏って呟いた。



「――――そう言う訳だ。多くの死者たちが静かに眠っていた”ハーメル”を騒がせたその愚かさ………かつて”ハーメル”を滅ぼした者達と同じ猟兵であるお前自身の”命”で償ってもらう――――血染め(ブラッディ)―――いや、”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランド。」

「あはははは……っ!今回の”実験”は喰い足りない結果で終わると思っていたけど、まさかこんな”御馳走”が転がり込んでくるなんてねぇ!”剣帝”とも一度殺り合いたいと思っていた所なんだよね……!」

魔剣を突き付けたレーヴェに対して好戦的な笑みを浮かべたシャーリィも自身の得物を構えた。

「いや――――先程の”続き”も、再開させてもらうから、あんたの相手はレオンハルト准将だけじゃない――――”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランド。」

「リ、リィン……!?」

「そなた、まさかあの”力”を……」

するとその時静かな表情で前に出て集中を始めたリィンの様子を見てある事を察したエリオットとラウラが驚きの声を上げたその時

「神気――――合一!!」

リィンは”鬼”の力を解放し、更に”神剣アイドス”を鞘から抜いた!

「あ、あれ……?あの”太刀”って、教官がいつも使っているのじゃないわよね……?」

「ああ……今まで教官が頑なに抜く事すらなかったもう一本の”太刀”だ。しかし……なんて”力”だ……離れていても、あの”太刀”から凄まじい”力”を感じる。」

「―――”神剣アイドス”。リィン教官の婚約者にして女神であるアイドス様自らが宿る”神剣”です。」

リィンが鞘から抜いた神剣アイドスを見て首を傾げたユウナの疑問に答えたクルトは神剣アイドスを見つめ、アルティナは解説し

「ええっ!?それじゃああの”太刀”にメサイア皇女様みたいに、教官の婚約者の一人が……―――って、今、”女神”って言わなかった!?」

「はい、正真正銘本物の”女神”があの”太刀”に宿っている為、まさに”神剣”と呼ぶべき武装です。”神剣”ですから当然威力も古代遺物(アーティファクト)クラスの武装ですらも比較できない程強力な為、リィン教官は生身で機甲兵や戦車等の”兵器”に挑む時を除けば”よほどの強敵”を相手にする時以外抜く事はありません。そしてあの剣を抜いたという事は恐らくアイドス様も―――――」

「力を貸してくれ―――アイドス!」

自分の解説に驚いているユウナにアルティナが補足の説明を仕掛けたその時、リィンはアイドスを召喚した!



「な、なんだぁ……!?」

「リィン教官の太刀から女性が………」

「綺麗な人………」

「な……あの女は……!おいおい……どうなってやがるんだ!?正義の大女神(サティア)はエステルに宿っているはずだろう……!?」

アイドスの登場に分校の生徒達が驚いている中アイドスの容姿を見たアガットは一瞬絶句した後困惑の表情で声を上げ

「メサイア皇女様じゃない……という事はもしかして、あの人もリィン教官の婚約者の一人で、しかも女神様なの……!?」

「―――はい。”慈悲の大女神”アイドス様。争いを誰よりも嫌う性格をしている方ですが教官が契約している異種族達の中では間違いなく”最強”の使い手です。」

「さ、”最強”って……!」

「あの女性が兄上の話にあった”飛燕剣”の使い手か……」

分校の生徒達同様驚いているユウナの疑問にアルティナは静かな表情で答え、アルティナの答えを聞いたユウナが信じられない表情をしている中クルトは興味ありげな様子でアイドスを見つめた。

「我が祖国メンフィルが今もなお行い続けている”蛇狩り”を成功させる為……そして元”特務支援課”の一員として、”碧の大樹”では付けられなかった決着をロイド達の代わりに今ここで付けさせてもらう、”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランド!」

「生者達の争いを愉しむ”狂人”の子よ………これ以上、貴女の”狂気”によって巻き込まれる生きとし生ける者達が出る事を防ぐ為に、そして貴女が今まで犯した”罪”を我が姉正義の大女神(アストライア)に代わって裁く為に私自らが剣を取ります。――星芒より出でよ、”真実の十字架(スティルヴァーレ)”!!」

「あははははっ!それが灰色の騎士のお兄さんの”本気”なんだ……!灰色の騎士のお兄さんが呼んだお姉さんといい、面白くなってきたじゃない……!で、その様子だとランディ兄もシャーリィを”狩る”つもりなの?」

リィンの宣言と自らの神剣を異空間から呼び寄せたアイドスの宣言に好戦的な笑みを浮かべたシャーリィはヘクトルから降りてリィン達に近づいてきたランディに視線を向けた。

「まあな……リィン同様俺も元”特務支援課”の一員としてロイド達の代わりに決着を付ける義務があるし、それに……俺は古巣(おまえら)と決別した事を他の連中に知らしめる必要もあるしな。ハァァァァァァ……ウォォォォォ――――!」

シャーリィの問いかけに対して静かな表情で答えたランディは紅き闘気を全身に纏うクラフト――――クリムゾンクライを発動して全身に紅き闘気を纏って普段使っている得物(スタンハルバード)ではなくリィンが普段使っている太刀と同じ”匠王”ウィルフレド・ディオンの娘達が開発したランディ専用のブレードライフル――――メルカルトを構えた。

「――ま、そう言う訳だから身内に引導を渡す意味も込めて、俺も加勢させてもらうぜ、リィン、”剣帝”。」

「ランディ……ああ、よろしく頼む。」

「―――好きにしろ。」

ランディの言葉に対してリィンは頷き、レーヴェは静かな表情で答えた。



「教官、私達も加勢を――――」

「―――止めときな。」

一方その様子を見守っていたゼシカはⅧ組のクラスメイト達と共にランディ達の加勢をしようとしたが、ランドロスがゼシカ達の先を遮るかのように片手を真横に広げた。

「どういうつもりだい、ランドロス教官?」

「ここからは”強者”と”強者”が殺し合う”戦場”の中でも”特上の戦場”だ。雛鳥達のお前達があの場に加わるのはまだ早い。―――勿論主任教官殿や戦闘ではなく主に頭脳を担当していた”紅い翼”を率いた才媛、そして”旧Ⅶ組”の連中でも、あの中に加わってあのメンツの足を引っ張らずに生き残る事が厳しい事は理解しているだろう?」

「そ、それは………」

「フン………そちらこそ、シュバルツァー教官達に加勢しなくていいのか?ランドロス教官にとっても”紅の戦鬼”は因縁がある相手ではないのか?」

レオノーラの問いかけに対して不敵な笑みを浮かべて答えたランドロスの指摘にトワは複雑そうな表情をし、ミハイル少佐は鼻を鳴らした後真剣な表情でランドロスに問いかけ

「クク、それについてはランディが俺達の分も纏めて引導を渡してくれるから、わざわざオレサマが出るまでもねぇさ。」

ミハイル少佐の問いかけに対してランドロスは口元に笑みを浮かべて答えた。



「うふふ、”紅の戦鬼”はリィンお兄さん達に任せてレン達は”鉄機隊”の相手をするわよ、ステラお姉さん、フォルデお兄さん、セレーネ。」

「はい。」

「了解。」

「はい……!」

そしてレンはステラ達に呼びかけた後転移魔術を発動してステラ達と共に転移し

「クッ……―――撤退に専念しなさい、No.ⅩⅦ!幾ら貴女でも、その4人を同時に相手するなんて貴女に勝ち目はほとんどありません―――いえ、全くありません!わたくし達も協力しますから、撤退に専念しなさい!エンネア、アイネス!No,ⅩⅦが撤退できるように――――」

リィン達の加勢の様子を見ていたデュバリィはシャーリィに忠告をした後エンネアやアイネスに指示をしかけたが

「うふふ、リィンお兄さん達の邪魔はさせないわよ?」

転移魔術を発動したレンがステラ達と共にデュバリィ達の前に現れた。



「なあっ!?」

「先程そちらが使った転移封じの結界の魔導具は味方の転移も封じると説明したにも関わらず、転移の手段を取ってくるとは……!」

「大方、説明の中にあった”ある条件”とやらを”殲滅天使”は満たしているのでしょうね。」

結界によって転移が封じられている中でレンが転移魔術を使った事にデュバリィとアイネスは驚き、エンネアは厳しい表情で推測を口にした。

「―――その通りです。貴女達の相手は私達がします―――”鉄機隊”。」

「そんじゃ、俺達もさっきの”続き”を再開しようぜ、”神速”。」

「”紅の戦鬼”の心配よりもまずは自分達の心配をする事ですね。」

「くっ、”星洸陣”を使おうにも、こうも分断されていては………!」

プリネとフォルデ、ステラが対峙したデュバリィはそれぞれの相手と対峙しているアイネスとエンネアの様子を見て唇を噛みしめ

「プリネ皇女殿下親衛隊長にして専属侍女長ツーヤ・A・ルクセンベール、参ります。」

「アルフヘイム子爵家当主にしてトールズ第Ⅱ分校”Ⅶ組”副担任、セレーネ・L・アルフヘイム、我が姉ツーヤと共に貴女のお相手をさせて頂きます……!」

「フフ、本来ならばかの双子の竜姫姉妹が相手とは腕が鳴るな……と言いたい所だが、今のこの状況だと正直喜べないな。”鉄機隊”が隊士、”剛毅”のアイネス。この窮地、我が斧槍にて切り抜けさせてもらう……!」

ツーヤとセレーネが対峙したアイネスは口元に笑みを浮かべて斧槍(ハルバード)を構え

「ん~?ねえ、レン。あの弓使いの女騎士ってな~んか見覚えがあるんだけど、レンは知っている?」

「あら、エヴリーヌお姉様ったらもう忘れちゃったのかしら?”影の国”のパパとエクリアお姉さんの”試練”の途中で出てきてエヴリーヌお姉様自らが討ち取ったエヴリーヌお姉様の二つ名に似た二つ名を持つ”魔弓”のエンネアよ♪」

「キャハッ、道理で見覚えがある訳だ♪あの時同様、すぐに潰れないように手を抜いてたっぷり遊んであげるよ♪」

「あらあら……まさか”影の国”で私の”偽物”まで出て来ていたなんてね。”偽物”を倒したからと言って本物である私をそこまで侮ったその傲慢、すぐに後悔させてあげるわ。」

エンネアは自身と対峙した相手―――エヴリーヌとレンの会話を聞くと微笑みを浮かべながらも目は笑っていない表情で弓矢を構えた。



「ハァァァァァ…………!」

「な、何これ………闘気で空気が……震えている……?」

「っ……!何という剣気……!この剣気……兄上―――いや、父上や叔父上以上……!?それにリィン教官達から感じられる剣気も尋常じゃない……!ハハ……ランドルフ教官もそうだがリィン教官の実力を僕は完全に読み違えていたようだな……」

レーヴェが練り始めた空気を震わせる程の莫大な闘気の余波を受けたユウナと共に驚いたクルトは苦笑し

「あははははっ!面白くなってきたねぇ!!」

シャーリィは一流の猟兵達のクラフト―――”戦場の叫び(ウォークライ)”の上位技であるオーガクライを発動して全身に莫大な紅き闘気を纏って武器を構え

「トールズ第Ⅱ分校”特務科Ⅶ組”担当教官、リィン・シュバルツァー以下4名。これより結社”身喰らう蛇”の”執行者”――――No.ⅩⅦ”紅の戦鬼”シャーリィ・オルランドの”討伐”を開始する。みんな、行くぞ!」

「おおっ!」

「ああ!」

「ええ!」

そしてリィンの号令を合図にリィン達はそれぞれ戦術リンクを起動させてシャーリィ達との戦闘を開始し、プリネ達も戦術リンクを起動させて”鉄機隊”との戦闘を開始した――――!


 
 

 
後書き
という訳でここから光と闇の軌跡シリーズ恒例の原作をぶっ潰す久々のメンフィル無双の時間ですwwというか書いていて気づきましたけど、何気に今回の話で原作ではありえなかったアッシュとレーヴェの邂逅が実現してしまいました(汗)果たして大丈夫だろうか……アッシュがwwそして今回の話でも何気にウィル達ユイドラ勢が関わっていましたwwウィル達にかかれば、転移封じの結界くらい楽勝かと。理由?それは当然”工匠に不可能はない!”だからです(オイッ!)なお、レーヴェ達の登場のBGMは空FCかFCEVOの”銀の意志”で次回の戦闘BGMは空3rdか3rdEVOのカシウスや黒騎士戦のBGMである”銀の意志”だと思ってください♪ 

 

第28話



~ハーメル廃道~



「参りましょう――――レディーライズ!!」

プリネ達と共にデュバリィとの戦闘を開始したステラは味方の集中力を高めてクリティカルヒットや回避率等を高めるブレイブオーダー―――レディーライズで自分達の集中力を高め

「雷の力よ―――瞬雷!!」

「甘いですわ!」

「そこだ―――風雷神槍!!」

「!」

デュバリィは細剣(レイピア)に雷の魔力を纏わせたプリネの強襲攻撃を回避した後、プリネの攻撃のすぐ後に放たれたフォルデの雷が迸る竜巻を盾で防いだ。

「出でよ、双子の竜巻よ―――双竜の大竜巻!!アークス駆動―――エアリアルダスト!!」

「キャアッ!?」

プリネとフォルデの攻撃を防いだデュバリィだったが、二人の攻撃の間に魔術の詠唱と戦術オーブメントの駆動を終えたステラが発動した竜巻を発生させる魔術とアーツをその身に受けてダメージを受けると共に怯み

「行きなさい―――貫通闇弾!!」

「ぐっ!?」

「滅翔槍!!」

「くっ……あうっ!?」

デュバリィが怯んだ隙にプリネは片手から貫通力のある暗黒の魔力弾を放ち、フォルデは槍でデュバリィを跳ね上げさせた後空中で追い討ちをかけて叩き落として追撃し

「崩したぜ!」

「そこですっ!」

「っ!?」

フォルデのクラフトによってデュバリィの態勢が崩れるとフォルデと戦術リンクを結んでいたステラが追撃にライフルによる射撃をデュバリィに命中させた。



「よくもやりましたわね……!オォォォォォ………ハアッ!!」

「!」

「よっと!」

ステラの追撃が終わるとデュバリィは反撃に剣に氷の魔力を纏わせて薙ぎ払うクラフト―――豪氷剣をプリネとフォルデに放ち、放たれた斬撃に対して二人はそれぞれ後ろに跳躍して回避し

「まだですわ――――喰らいなさい!」

「させねえぜ?」

「回復します!」

続けてクラフト―――残影剣でステラに襲い掛かったが、ステラと戦術リンクを結んでいるフォルデがすぐにステラのカバーに入ってデュバリィの攻撃を防御態勢でステラの代わりにダメージを受け、更にステラはリンクアビリティ―――クイックキュリアを発動して自分の代わりにダメージを受けたフォルデの傷を回復した。

「炎の力よ、我が剣に宿れ――――集炎!!」

「オォォォォォ………豪炎剣!!」

炎の魔力を細剣(レイピア)に宿したプリネの薙ぎ払いに対してデュバリィもプリネのように剣に炎の魔力を纏わせた斬撃を放って相殺し

「―――ロックオン完了。逃がしません!!」

「!!」

更にステラのライフルによる弾丸を撃ち尽くす程の連射――――アサルトラッシュに対してはすぐに盾を構えて襲い掛かる連射を防いだ。

「足元がお留守だぜ――――そらっ!」

「!?―――ぐっ!?足を狙うとは相変わらず、卑劣な真似を……!―――そこですっ!」

「おっと、あぶねぇな!」

しかしステラの連射を盾で防いでいる事で視界が盾によって若干遮られている事を利用したフォルデは懐から取り出した数本の短剣をデュバリィの足目掛けて投擲し、ステラの連射攻撃に対する防御でフォルデの攻撃に対して一瞬反応が遅れたデュバリィはフォルデが投擲した短剣の一本が足に刺さってうめき声を上げた後すぐに足に刺さっていた短剣を抜いて投げ捨ててフォルデを睨んで高速の剣技で斬撃を放つクラフト―――瞬迅剣でフォルデに反撃したが、フォルデは槍を振るって襲い掛かる斬撃波を受け流した。



「刃折る風よ、巻き上がれ――――ヘレネーの消沈!!」

「くっ、またですか……!?――――な……ち、力が……」

その時魔術の詠唱を終えたステラが闘志を奪う広範囲の竜巻をデュバリィを中心に発生させ、ステラが放った魔術に対して身構えたデュバリィだったが竜巻に込められる闘志を奪う力によって自身の闘志が奪われ、更に闘志が奪われた事で身体が重く感じて動きが鈍くなり

「闇に呑まれよ――――ティルワンの死磔!!」

「しまっ――――キャアアアアアアアッ!?」

そこに魔術の詠唱を終えたプリネが超広範囲に闇の世界を造りだし、闇に包まれた敵全員を暗黒魔力による攻撃を叩き込む暗黒上位魔術を発動してデュバリィに大ダメージを与えた。

「そんじゃ、そろそろ決めちまうか。ハァァァァァァ……!」

そしてプリネの魔術が終わるとフォルデがデュバリィに詰め寄ってデュバリィの全方位から凄まじい早さの槍舞を繰り出すと共に雷が迸る竜巻を発生させてデュバリィを宙へと上げ

「そらっ!こいつでしまいだ――――ラグナクロス!!」

「かはっ!?ぐっ……あ、ありえませんわ……!」

止めに跳躍して宙へと舞い上がったデュバリィ目がけて竜巻と雷を纏わせた槍で突進した。するとフォルデの槍がデュバリィに命中した瞬間デュバリィを中心に竜巻と雷の十字が刻み込まれて爆発が起こると共に無数の雷の刃と風の刃の鎌鼬が発生し、フォルデが放ったヴァンダール流槍術の連槍術の奥義――――ラグナクロスを受けた事によって大ダメージを受けたデュバリィは戦闘不能になり、地面に膝をついた。



「攻めますよ――――十六夜”閃陣”!十六夜――――”突”!」

「落ちよ、聖なる雷―――ライトニングプラズマ!!」

セレーネと共にアイネスとの戦闘を開始したツーヤは一時的に味方の攻撃能力を高め、更に加速させるブレイブオーダー―――十六夜”閃陣”を発動した後抜刀による突きの衝撃波を放ち、魔術の詠唱をしていたセレーネもツーヤのブレイブオーダーによって行動が加速された為一瞬で魔術の詠唱を終えてアイネスの上空から雷を落とす魔術を発動した。

「盾よ!―――吹き飛べ!地裂斬!!」

対するアイネスは闘気による絶対防壁を展開するクラフト―――秩序の盾を発動してツーヤとセレーネの先制攻撃を防いだ後反撃代わりに斧槍(ハルバード)を地面に叩き付けて発生させた衝撃波を二人に放った。

「「!!」」

襲い掛かる衝撃波を見たツーヤとセレーネは左右に散開して回避し

「砕け散れ!」

そこにアイネスが跳躍して敵の脳天を叩き割る一撃―――兜割りでツーヤに襲い掛かった。

「十六夜―――”破”!!」

「何……っ!?」

対するツーヤは自身が扱える抜刀技の中でも一撃や打撃力に優れている抜刀技を放ってアイネスの強烈な一撃を防ぐと共に吹き飛ばし、自身の攻撃を防ぐどころか吹き飛ばしたツーヤの一撃の重さにアイネスは驚きながらふっ飛ばされた後空中で受け身を取って着地した。



「聖なる水よ、奔流となり、我が仇名す者達に裁きを――――リ・カルナシオン!!」

「ぐっ!?」

そこにツーヤに注意が向かっている隙に魔術の詠唱を終わらせたセレーネが凄まじい水流のエネルギーを発生させてアイネスにダメージを与えると共にアイネスの身体をずぶ濡れにし

「まだですわ!アークス駆動――――ネメシスアロー!!」

「ガアアアアアッ!?」

続けて雷のエネルギーを解き放つアーツをアイネスに放ち、全身が水にぬれた所に雷のアーツを受けたアイネスは感電して悲鳴を上げた。

「秘技――――神速!鳳凰剣舞!!」

「く……っ!?」

セレーネのアーツによって怯んだアイネスの隙を逃さないツーヤはまさに”神速”のような早さで次々と斬撃を繰り出し、繰り出される斬撃に対してアイネスは咄嗟に斧槍(ハルバード)で防御した。

「吹き荒れよ――――ハリケーンブリザード!!

「な――――うあああああっ!?くっ……か、身体が……!」

神速の連続斬撃を終えたツーヤは続けて自身を中心に猛吹雪を発生させ、詠唱無しで魔術を発動した事に驚いたアイネスは猛吹雪を至近距離で受けると共に濡れた体に吹雪を至近距離で受けた影響で身体の一部が凍結してしまい、身体の動きを封じ込められた。

「ハァァァァァァ……―――そこっ!」

「カハッ!?」

「崩しました!」

「追撃、開始します!一瞬で決めます! 剣閃よ、唸れ!疾風のように! ヴァーテクス・ローズ!!」

そして身体が凍結した影響で動きが鈍くなっているアイネスの腹にツーヤが籠手を付けた拳による闘気を纏った一撃で怯ませた瞬間、ツーヤと戦術リンクを結んでいるセレーネがツーヤの攻撃に続くように疾風のような速さの連続突きをアイネスに叩きつけた後すれ違う瞬間蒼い薔薇を刻み込んだ!

「ガハッ!?見事……!」

セレーネが放った鋭い剣撃によって敵をバラのように散らすSクラフト―――ヴァーテクス・ローズを受けた事によって戦闘不能になったアイネスは地面に膝をついた。



「フフ………耐えられるかしら?」

レンとエヴリーヌとの戦闘を開始したエンネアは一撃で戦闘不能に陥らせる呪いの矢を連射して放つクラフト―――デビルズアローを放ったが

「うふふ、無駄よ。」

レンが闘気を込めた大鎌を振り回し、衝撃波を発生させるクラフト―――旋風大魔刃で自分達に襲い掛かる矢を吹き飛ばし

「くふっ、そっちこそこれに耐えられるっ!?五連射撃!!」

エヴリーヌは反撃に一瞬で矢を5連続に放ち

「……!っ!?」

襲い掛かる矢に対してエンネアも矢を放つ事で相殺しようとしたが、全ては相殺できず、相殺できなかった2本の矢が両方の脇腹をかすった事でダメージを受けてしまい、表情を歪めた。

「串刺しにしてあ・げ・る♪――――豪破岩槍撃!!」

「く……っ!」

エンネアが地面に着地した瞬間を狙って魔術の詠唱を終えたレンが魔術を発動するとエンネアの足元から次々と大量の岩の槍が発生し、足元からの奇襲攻撃に驚いたエンネアは回避行動に専念して紙一重で全て回避した。

「どっかーん!―――旋風爆雷閃!!」

「!――――ここからが本番よ?」

更にエヴリーヌが放った直線上に爆発を起こしながら襲い掛かって来た雷に対してエンネアは側面に跳躍して回避した後姿を消すと共に魔法反射の結界を付与するクラフト―――リフレクトミラージュで自身の姿を消した。



「あら、姿を消しちゃったわね。」

「姿を消した所で、炙り出してやればいいじゃん――――どっかーん!どっかーん!キャハッ、隠れたってムダムダ―――!」

エンネアが姿を消した事にレンが目を丸くしている中エヴリーヌは全方位に連続で魔術を放った。するとその時エヴリーヌが放った魔術がある一か所に向かうと何と反射して、エヴリーヌとレンに向かってきた!

「「!!」」

反射して自分達に向かってきた爆発を起こしながら襲い掛かって来た雷を見た二人はそれぞれ転移魔術を発動してその場から消えると共に反射してきた魔術を回避し

「もらった――――石化の雨を喰らいなさい!」

そこに魔術を反射した場所からエンネアが現れて石化効果を付与する特殊な薬を塗り込んだ矢――――メデュースアローをレン達がいた場所に放った。

「くふっ♪一気に全部潰すよ――――アビスブレイク!!凍え死んじゃえ――――氷垢螺の絶対凍結!!」

「キャアアアアアアアッ!?」

するとその時転移魔術によってエンネアの側面に現れたエヴリーヌが深淵の力であらゆる攻撃能力を上昇させるブレイブオーダー―――アビスブレイクを発動した後続けて氷垢螺凍結のまま異次元に閉じ込める魔術を発動した。ブレイブオーダーによって”魔神”である事からただでさえ莫大な魔法攻撃力があるエヴリーヌの魔法攻撃力が強化された事によって発動された異次元に閉じ込めると共に一瞬で凍死させる程の猛吹雪をその身に受けたエンネアは大ダメージを受けると共に全身が凍結し

「うふふ、逃げられないんだからっ!それっ、それっ、それ―――――――っ!!ハァァァァァ………!」

そしてエヴリーヌの魔術が終わると転移魔術でエヴリーヌとは正反対の方向に現れた後エヴリーヌが魔術を放っている間にエンネアの背後を取ったレンが全身に闘気と魔力を込めた後エンネアにすざましい乱舞攻撃を放った後大鎌に魔力を込めた。すると大鎌は魔力によって巨大化し

「クリミナルシックル!!」

巨大化させた大鎌を振り下ろすと同時にレンはエンネアの真正面に駆け抜けた!

「アアアアアッ!?油断……したわね………」

レンのSクラフトによる大ダメージを受けた事によって戦闘不能になったエンネアは地面に膝をついた。



「かかれ――――シルバーウィル!負の刃よ――――我が敵を滅せよ!!」」

リィン達と共にシャーリィとの戦闘を開始したレーヴェは(しろがね)の意志によって物理攻撃能力や身体能力を高めると共に物理絶対防壁を付与するブレイブオーダー――――銀の意志(シルバーウィル)を発動した後強力な負の瘴気を剣に纏わせて衝撃波として解き放つクラフト―――ケイオスソードをシャーリィに放った。

「おっと!さ~てと……サクッと行くよ!」

「これで終わりだ………喰らえっ!!」

襲い掛かる衝撃波を側面に跳躍して回避したシャーリィはクラフト―――ブラッドストームで反撃したがランディもシャーリィと同じ攻撃内容のクラフト―――ブラッディストームを放って相殺し

「あははははっ!今のを相殺するなんて、また強くなったみたいだね、ランディ兄!」

「テメェにだけは言われたくないぜ、この虎娘が!」

攻撃を相殺されたシャーリィはランディと数度刃を交えて互いの攻撃を相殺した後距離を取って横に走りながらランディに向かって牽制射撃を行い、対するランディもシャーリィと同じ方向に走りながら牽制射撃を行った。

「二の型・改――――裏紅蓮剣!劫!!」

「うわっ!?」

シャーリィの注意がランディに行っている隙にリィンが炎の太刀による神速の攻撃と斬撃波をシャーリィに叩き込んでシャーリィにダメージを与えると共にシャーリィの態勢を崩し

「崩した!」

「妖の型――――沙綾身妖舞!!」

「っ!?」

シャーリィの態勢が崩れるとリィンと戦術リンクを結んでいたアイドスが続けて目にも止まらぬ高速剣の連続斬撃を一瞬でシャーリィに叩き込んでシャーリィから距離を取り

「―――疾風突!!」

「!く………っ!?」

アイドスの攻撃が終わるとレーヴェが疾風のごとき素早さでの突進で突きを繰り出し、対するシャーリィは自身の得物で防御したがレーヴェが放った攻撃の威力の重さと早さによって再び態勢を崩し

「崩れた!」

「そこだっ!」

「!!」

レーヴェと戦術リンクを結んでいるランディが追撃にブレードライフルによる連続射撃を行うとシャーリィは側面に跳躍して追撃を回避した。



「あははははっ!灰色のお兄さんや剣帝もそうだけど、ランディ兄や”嵐の剣神”にそっくりのお姉さんも容赦がなくていいねぇ!もっとシャーリィを愉しましてよぉ!」

シャーリィは反撃にクラフト―――フレイムチャージをリィン達に放ったが

「―――甘い!」

「わっ!?」

レーヴェは魔剣から凄まじい気流―――零ストームを巻き起こして襲い掛かる火炎放射を吹き飛ばすと共にシャーリィにダメージを与えた。

「ほーらよっ!!」

「っと!そんじゃ、今度はこっちの番だよぉ!?」

ランディが投擲した炸裂弾を回避したシャーリィはランディに向かってブレードライフルで連射し

「ハッ、テメェの番なんてあるかよ!」

対するランディもブレードライフルを連射し

「どりゃっ!」

「オラアッ!」

二人は連射を終えた後それぞれ同時に詰め寄って十文字斬りを放って互いの攻撃を再び相殺した。

「緋空斬!!」

「星よ、走れ――――星光地烈斬!!」

「空を断つ!!」

ランディとシャーリィが互いの同じ技――――ブラッディクロスで相殺して互いが距離を取った瞬間、リィンが炎の斬撃波を、アイドスは星の光を宿す衝撃波を、そしてレーヴェは凄まじい早さの衝撃波をシャーリィの3方向から放った!

「よっと!あはははははっ!」

一斉に襲い掛かって来た3方向からの遠距離攻撃に対してシャーリィは人間離れした動きで高く跳躍し、そのまま空中でライフルによる掃射をした。

「無駄だ!」

自分達の頭上から襲い掛かって来た無数の銃弾をレーヴェは再びクラフト―――零ストームを放って全て吹き飛ばし

「二の型―――大雪斬!!」

「おっと!―――わあっ!?」

レーヴェがシャーリィの攻撃を無効化するとリィンが跳躍して落下していくシャーリィ目がけて静かなる闘気を宿した太刀を振り下ろし、対するシャーリィは自身の得物であるブレードライフルで防御したが神剣によるリィンの剣技(クラフト)の威力はあまりにも凄まじく、防御した態勢のまま地面に叩き落された。

「輝け、星よ――――星光紅燐剣!!」

「あうっ!?」

そこにアイドスが逃げ場のない超広範囲の星の光を宿らせた高速剣による衝撃波を放ってシャーリィにダメージを与え

「外さないぜ―――そこだっ!」

「!……っ!?」

アイドスの攻撃が終わるとランディがシャーリィの起動力を奪う為に狙いを定めた部分に銃弾を集中攻撃させるクラフト―――スナイプラッシュでシャーリィの足に狙いを定めて集中攻撃し、ランディの集中射撃を回避する為に咄嗟に側面に跳躍して回避したシャーリィだったが、いくつかの弾丸はシャーリィの足をかすった。



「あはははははっ!やるねぇ、ランディ兄!でも……このくらいじゃ、シャーリィは止められないよ!行くよ―――テスタ=ロッサ!」

銃弾がかすった部分から血を流しながらもシャーリィは一切気にせずブレードライフルを構えて魔法陣を展開した。すると魔法陣から弾丸が現れ、シャーリィがブレードライフルのトリガーを引くと次々とリィン達目がけて襲い掛かった。

「させるか!伍の型――――光輪斬 !!」

自分達目がけて襲い掛かる弾丸を見たリィンは前に出て抜刀による刀気の輪を繰り出して襲い掛かる弾丸が自分達の元に到着する前に全て空中で炸裂させて無効化した。

「さあ―――上げて行くよっ!!」

そしてブレードライフルの刃の部分に炎の闘気を宿したシャーリィがリィン達に突進して一閃したその時!

「斬の型―――紅燐舞華斬!!」

「え―――――」

「今だ!――――行くぞ、ランディ!!」

神剣に闘気を溜め込んだアイドスが人間離れした動きでリィンの前に出て一閃をしてシャーリィのブレードライフルを真っ二つに斬り、自身の得物が真っ二つに斬られた事にシャーリィが呆けるとリィンはランディに呼びかけ

「おっしゃあ!任せとけ!」

リィンの呼びかけに頷いたランディはシャーリィを斜め挟み撃ちにした後ブレードライフルを振るって竜の姿をした炎の衝撃波を、リィンは太刀を鞘に収めた後抜刀による鳳凰の姿をした炎の闘気エネルギーを放った後ランディはブレードライフルに炎の竜を纏わせ、リィンは抜刀した太刀にそのまま”鳳凰”のオーラを纏って二人同時に斜め十字(クロス)に突撃して自分達が放った斬撃波や闘気エネルギーがシャーリィに命中した瞬間間髪入れずにシャーリィの背後を駆け抜けた。



「「龍凰――――絶炎衝!!」」



二人が敵の背後へと駆け抜け終えるとシャーリィを中心に炎の大爆発が起こると共にシャーリィの周囲は凄まじい炎に包みこまれた!

「うあっ!?アハハハハハハッ!”赤き死神”と”灰色の騎士”の協力技をシャーリィに躊躇う事無く使うなんて、さすが1年半前の件で敵に”容赦”をしなくなったランディ兄と灰色のお兄さんだねぇ!けど、それでもシャーリィはそう簡単に狩る事はできないよぉ!?」

炎竜と鳳凰による炎で敵陣を焼き尽くすランディとリィンの協力技(コンビクラフト)――――龍凰絶炎衝による全身に痛々しい火傷や無数の切り傷がありながらシャーリィは凶悪な笑みを浮かべてランディとリィンを見つめて叫び

「やれやれ……痩せ(ヴァルター)ですらもこれ程の狂気は宿していなかったが……まあ、本質は似ている奴と気が合うのは間違いないだろう。奴と会えるように”次”で貴様を冥府へと送ってやろう。」

「―――哀れな人。これで全て終わらせましょう。」

シャーリィの様子を見たレーヴェは呆れた後目を細めて魔剣を構えなおし、シャーリィを憐れんだアイドスも神剣を構えなおして二人はそれぞれ大技を発動した!

「受けてみろ……風鎌の奥義―――――ハートヴェイル!!」

「飛燕剣奥義――――飛燕―――姫神恍舞!!」

「あ―――――」

そしてレーヴェとアイドスはまるで瞬間移動したかのような人間離れした動きによる速さで一瞬でシャーリィに詰め寄ってそれぞれの剣を振るって神速の無数の斬撃を叩き込んでシャーリィの背後へと駆け抜けてそれぞれの剣を一振りすると、何とシャーリィはレーヴェとアイドスが刻み込んだ無数の斬撃によって全身から血が噴出した!

「あはは……は………さすがにこれ以上は……無理……かな………まさか再デビューのつもりが退場させられることになるなんてね………あ~あ……こんな事だったら……さっき”猟兵王”と殺り合えばよかったな……けどま、リーシャの時以上に楽しめたからいい……や…………………………」

全身から血を噴出させながら地面に倒れたシャーリィは大量の血を失った事と急所をつかれた事によって自身が”死”に近づいている事を自覚して様々な想いを口にした後最後は満足げな笑みを浮かべて絶命した!



「ったく、戦いの果てに満足して死ぬとかあの虎娘らしい最後だな………」

「ランディ………」

「「……………」」

シャーリィが絶命する様子を見守った後複雑そうな表情で呟いたランディの様子をリィンは辛そうな表情で見つめ、レーヴェとアイドスは静かな表情で自身の武器を収めた。

「ランディ先輩……リィン教官………」

「ユウナさん………」

「……これが、”互いの命を奪い合う本物の実戦”、か………」

一方リィン達の戦いを見守り、シャーリィの絶命を見て複雑そうな表情を浮かべるユウナをアルティナは心配そうな表情で見つめ、クルトは重々しい様子を纏って呟き

「結局”紅の戦鬼”には届く事ができず……”勝ち逃げ”されちゃったか………」

「フィー………」

「リィン……」

「………チッ、どうやら向こうも終わったようだが………何であいつらの方は止めを刺していないんだ?」

複雑そうな表情でシャーリィの死体を見つめて呟いたフィーの様子をラウラは心配そうな表情で見つめ、エリオットは辛そうな表情でリィンを見つめ、アガットは舌打ちをした後既に戦いを終えているレン達の様子を見て、”人を殺す事を楽しむ悪癖”があるレンやエヴリーヌと戦ったデュバリィ達が生きている事を不思議に思い、眉を顰めてレン達を見つめた。



「まさか………あのNo.ⅩⅦが………」

「No.Ⅱのみが相手ならば単独での撤退も可能だったかもしれないが、”灰色の騎士”を始めとしたNo.ⅩⅦと互角―――いや互角以上に渡り合う使い手が4人もいては、幾らかの”闘神”や”戦鬼”と同じ”狂戦士(ベルセルク)”の血を引くNo.ⅩⅦといえど、分が悪かったという事だろうな……」

「く……っ!よくもNo.ⅩⅦを……!貴女達メンフィルはわたくし達”結社”からどれだけのものを奪えば気がすむのですか!?メンフィルがいなければわたくし達”結社”は”残党”と呼ばれる程の惨めな存在になっていませんし……それにマスターも……っ!」

シャーリィの絶命を見たエンネアは信じられない表情をし、アイネスは重々しい様子を纏って呟き、悔しそうな表情で唇を噛みしめたデュバリィはレン達を睨みつけた。

「まあ、メンフィルがいなければ”身喰らう蛇”は衰退していない可能性については一理あるから、否定はしないけど………”身喰らう蛇”は設立から様々な”表”の人達に迷惑をかけたり、リベールの異変やエレボニアの内戦、そしてクロスベル動乱のような国家の一大事になる大事件になる重犯罪を犯し続けていたのだから、いつかその”報い”が自分達に返って来る事はありえないと本気で思っていたのかしら?」

「……っ!」

「……”報い”、か。確かに我等結社が今まで行った行為は世間一般からすれば、義に反した行為だな……」

「もしかしたらマスターが離反した理由の一つは”マスターの生まれ変わりであるもう一人のマスター”がそのような行為を犯し続ける結社を許せなかったからかもしれないわね……」

不敵な笑みを浮かべたレンの正論に対して反論ができないデュバリィが唇を噛みしめて黙り込んでいる中アイネスは重々しい様子を纏って呟き、エンネアは複雑そうな表情で呟いた。



「どうやらその口ぶりですと”鉄機隊”の方達も分校長がシルフィア様の生まれ変わりである事もご存知のようですわね……」

「まあ、シルフィアお姉さんの性格を考えたら長年”もう一人の自分”が面倒を見てきた”鉄機隊”に自分の事を教えてもおかしくないわよ。―――さてと。プリネお姉様。」

「ええ。―――――今転移封じの結界を解除しました。貴女達の転移の魔導具の使用も可能になっていますから、今ならば貴女達の転移の魔導具も正常に起動して撤退できるはずです。”今回は”これ以上追撃するつもりもありませんから、安心して撤退してもらって構いませんよ。」

セレーネが呟いた言葉にレンは自身の推測を答えた後プリネに視線を向け、視線を向けられたプリネは懐から何らかの装置を取り出して操作をした後デュバリィ達に撤退を促した。

「なあっ!?わたくし達をわざと見逃すつもりですか!?」

「一体何の真似かしら?貴女達メンフィルは私達―――”結社”の残党を全て”狩る”為に貴女達が”灰色の騎士”達の援軍に現れたのではなかったのかしら?現にNo.ⅩⅦを狩ったのに、何故……」

レン達が自分達をわざと見逃そうとしている事を知ったデュバリィは驚き、エンネアは警戒の表情でレン達に問いかけた。

「シルフィアさ―――いえ、リアンヌさんとの”約束”です。」

「マスターとの”約束”だと……?」

ツーヤが呟いた答えを聞いたアイネスは眉を顰め

「リアンヌ様が”結社”や”盟主”に対する”義理”を果たしてようやく”シルフィア・ルーハンスの生まれ変わりとして”お父様の元に現れ、結社からの脱退並びにメンフィルへの転属を申し出、その申し出をお父様が受け入れた時にリアンヌ様がお父様達に嘆願したのです。――――『盟主討伐後、結社が衰退もしくは崩壊後、”鉄機隊”が義に反した行為を犯した場合、一度だけ見逃して欲しい』と。」

「ちなみにお前達を一回だけ見逃して欲しい理由はシルフィア……じゃなかった。リアンヌの存在を支えにしているお前達の元から去った”詫び”だってさ。」

「え…………」

「マスターがそのような事を………」

「…………………」

プリネとエヴリーヌの説明を聞いたデュバリィは呆け、エンネアとアイネスはそれぞれ重々しい様子を纏っていた。



「そしてその嘆願をお父様達が受け入れ、今回私達は貴女達を討たず、撤退を許す結果となりました。それと――――昨夜の第Ⅱ分校の演習地への襲撃の件を知ったリアンヌ様から私達に貴女達への伝言も伝えられています。」

「マスターが貴女達に………どのような内容なのですか?」

プリネの話を驚きの表情で聞いていたデュバリィは続きを促した。

「『”アリアンロード”を失った貴女達が、”迷い”や”戸惑い”等の様々な”想い”、そして今までアリアンロードと共に世話になっていた結社に対する”義理”を果たす為に衰退した結社”身喰らう蛇”に残っている事も想定していました。貴女達にそのような選択をさせた全ての”元凶”は私でありますから、その事について責める権利は私にはありません。ですが”今の私”は結社”身喰らう蛇”に―――”盟主”に忠誠を誓っていた”鋼のアリアンロード”ではなく、リウイ・マーシルン前皇帝陛下とイリーナ・マーシルン皇妃殿下が目指す”全ての種族との共存”という理想に共感して御二方に心からの忠誠を誓ったシルフィア・ルーハンスの生まれ変わりであるリアンヌ・ルーハンス・サンドロッドです。我が忠誠を捧げた御二方が建国し、御二方の意志を受け継ぐメンフィル帝国に刃を向け続けるのならば、一度は見逃しますが”二度目”はありません。今後の結社の”実験”にも関わるのならば、かつて貴女達を見出した張本人としての責任を取る為に、私自らが”灰色の騎士”の”要請(オーダー)”の補佐の一人として彼に同行し、未だ結社に残り続ける貴女達の意思を聞き、その意思が結社に殉じるものならば私自らの手で貴女達に引導を渡しましょう。』―――――以上です。」

「マス、ター…………」

「「………………………」」

「クッ……分校長は一体何を考えているのだ……!?全く理解できん……!」

「クク、さすがは”軍神(マーズテリア)”の伝説の聖騎士の生まれ変わりだけあって、筋が通っている上厳しいねぇ。」

「えっと………ランドロス教官は分校長の事について何かご存知なのですか……?」

「さぁてなぁ。オレサマ自身は”シルフィア・ルーハンスという聖騎士”も、”鋼のアリアンロードという結社の蛇の使徒”とも会った事がないから、知らないぜ?」

「話には聞いていたがまさか本当に結社の”蛇の使徒”にあの聖騎士が生まれ変わっていたなんてな……」

「?アガット殿はサンドロッド卿が結社からメンフィル帝国に転属した理由をご存知なのか?」

「ああ……まあ、その件も後輩たちからの又聞きだがな。」

プリネを通したリアンヌ分校長からの伝言にデュバリィが呆然としている中エンネアやアイネスは辛そうな表情で黙り込み、ミハイル少佐は疲れた表情で呟き、ランドロスがふと呟いた言葉が気になったトワはランドロスに訊ねたが、ランドロスは口元に笑みを浮かべて答えを誤魔化し、自分がふと呟いた言葉を聞いたラウラに問いかけられたアガットは静かな表情で答えた。



「…………マスターからの伝言、確かに聞き届けましたわ。”敵”である私達にわざわざマスターからの伝言を伝えた事に関しては感謝致しますわ。―――行きますわよ、エンネア、アイネス。」

「ええ……」

「承知。」

そして気を取り直したデュバリィはエンネアとアイネスに視線を向けた後二人と共に転移の魔導具を発動させ

「――――わたくし達との雌雄の決する時が来るまで、わたくし達以外の結社の他の残党を含めた様々な勢力に負ける事は絶対に許しませんわよ、”特務部隊”と”旧Ⅶ組”。」

ある意味リィン達に対する激励の言葉にもなる言葉をリィン達に伝えた後転移の光に包まれてその場から消えた―――――


 
 

 
後書き


という訳でシャーリィは1章にて退場しちゃいました(黒笑)なお、2章でも敵キャラが退場しちゃう予定です(黒笑)2章で敵キャラを退場させるとんでもないキャラはホント誰でしょうねー。(目、逸らし)2章の演習場所を考えると幻燐勢に加えて戦女神に神採り、魔導巧殻と創刻陣営の登場も容易ですからねぇww
 

 

第29話

その後――――第Ⅱ分校全員が到着し、今回の件の事後処理が行われた。『決して口外しない』という誓約の元、分校生全員に”ハーメル村”の存在を隠蔽し続けている事情も明かされ……遊撃士アガットやメンフィル帝国皇女プリネ達の協力も受けつつ、シャーリィの遺体の処理と廃道から人形兵器を掃討するのだった。



そして――――廃道の人形兵器を掃討し終えた後分校は教官を含めた全員がハーメル村の慰霊碑に花を捧げ、祈りをささげた。



~ハーメル村~



「―――さっきは流したがこれは明白な命令違反だぞ!?確かに君達には自分達で考えろと言った!だが、言ったはずだ!特務活動は昨日で終了したと!おまけに訓練からのエスケープと機甲兵の私的な利用……!正規の軍人なら軍法会議ものだぞ!」

「わたくしも”自分の意志”ハッキリと口にして下さいと言いましたが、それと今回の件は全く別です!それに皆さんはただの学生ではなく士官学生――――”軍人の見習い”です!私的な理由で上官の軍事指示に逆らう事は単なる”命令違反”ですわ!」

「はい………」

「……反論できません。」

慰霊碑への祈りを終えた後リィンとセレーネは新Ⅶ組の生徒達を集めてそれぞれ怒りの表情で生徒達が自分達の助太刀の為に訓練を抜けだした事等に対する注意をし、二人の注意に対してユウナとアルティナは顔を俯かせて反省した様子で答えた。

「―――責は自分にあります。処分は一人にしていただけると。」

「って、そうじゃないでしょ!」

「責任は全員にあるかと。」

クルトは自分が全ての責任を負おうとしたが、クルトの言葉を聞いたユウナとアルティナがそれぞれ反論した。

「まあ、そのくらいにしておいてあげたら?」

「我等もかつて、命令違反は幾度もしてしまったからな。」

「そだね、トールズ本校が機甲兵に襲われた時とか。」

「そういや、ステラやエリゼちゃんから聞いた話だがお前も1年半前の”七日戦役”で命令違反もどきをしたんじゃなかったか~?」

「フフ、”オーロックス砦制圧作戦”の時に指示もなく戦列から飛び出して一番槍を行った時ですね。」

「うっ………」

「ア、アハハ……そんな事もありましたわね……」

「ふふっ、ユウナ達の時程じゃないけどリィンも上官のゼルギウス将軍に注意されていたわね。」

エリオット達のフォローの言葉やフォルデとステラの指摘を聞いてかつての自分を思い出したリィンは唸り声を上げ、セレーネとアイドスは苦笑していた。



「……教官?」

「自分達の正当性を主張するつもりはありませんが………」

「ブーメラン、でしょうか。」

「―――それはそれ、これはこれだ。教官である以上、生徒の独断専行を評価するわけにはいかない。今回は運が良かっただけで次、無事である保障がどこにある?」

「お兄様達とシャーリィさんの”死闘”を間近でその目にした皆さんならばお兄様が仰る事についてよく理解していますわよね?」、

生徒達に責められるような視線を向けられたリィンは咳ばらいをして誤魔化した後気を取り直してセレーネと共にユウナ達に問いかけた。

「それは……」

「……仰る通りです。」

「……………………」

二人の教官の指摘に反論できないユウナ達はそれぞれ反論することなく静かに聞いていた。

「―――ただまあ、突入のタイミングは良かった。」

「え。」

「機甲兵登場の隙を突いて女騎士達を下がらせたこと。倒れたアッシュの安全確認と臨機応変な機甲兵の運用。授業と訓練の成果がちゃんと出ていたじゃないか?」

「あ………」

「お兄様……」

「フフ……」

注意の後に生徒達を褒めたリィンの言葉にユウナとアルティナが呆けている中セレーネとアイドスは微笑ましそうに見守っていた。

「そしてクルト―――助太刀、本当に助かった。君ならではのヴァンダールの剣、しかと見届けさせてもらったよ。」

「…………ぁ…………―――はい!」

リィンに評価されたクルトは一瞬呆けた後決意の表情で頷いた。



「―――訓練中にⅦ組の連中とはぐれてここまで来ただと?そんな言い訳が通用すると思ってんのか?」

リィンとセレーネがユウナ達に注意をしている同じ頃、ランディはランドロスと共にユウナ達同様独断専攻を行っていたアッシュに注意をしていた。

「いや~、野外訓練って道に迷ったら大変だよなぁ。サーセン、次は気をつけるッス。」

「クク、道に迷ってこんな所までねぇ?それが本当ならとんでもない方向音痴だな。」

「ったく、Ⅶ組の連中が抜け出すってんならともかく……そういや誰からこの場所の事を聞いたんだ?」

アッシュの適当な言い訳にランドロスが口元に笑みを浮かべている中ランディは呆れた表情で溜息を吐いた後非常に限られた人物達しか知らないハーメル村をアッシュが知っていた理由を訊ねた。

「っと、Ⅷ組の連中のフォローに戻らねえとな。そんじゃ教官達、お疲れっしたー!」

「おい―――!ったく、何を考えてるんだか。」

「まあ細かい事はいいじゃねえか。ガキ共に限らず他人の考えを完全に悟る事ができるなんて、どこぞの”天使”のような”特別な才能”を持った奴くらいだぜ?」

答えを誤魔化して去って行ったアッシュの様子に溜息を吐いたランディをランドロスは慰めの言葉を送り

「あー……確かに”ルバーチェ”どころか”鉄血宰相”に旧共和国の大統領、それにテロリスト共の狙いを悟ってた上での策略を考えたルファディエル姐さんだったら、マジでできるかもな……って、アッシュよりも考えが全くわからねぇあんたにだけは言われたくないぞ!?………それにしても”猟兵王”――――4年前の”リベールの異変”で”空の覇者”に討ち取られたはずの男か。…………一体どうなってやがるんだ?」

ランドロスの慰めの言葉に苦笑しながら答えた後疲れた表情で溜息を吐いたランディは気を取り直してルトガーの顔を思い浮かべていた。

「この匂い、建物の並び……ハッ。やっぱり間違いなさそうだ。」

ランディとランドロスから離れたアッシュは立ち止まって周囲を見回した。すると何かを感じたアッシュは左目を片手で抑え

「……14年前の”あの日”。どうやら本当に……落とし前をつけられそうだぜ。だがその前に…………確かめる事があるな。」

不敵な笑みを浮かべた後アガットやティータ、そしてプリネ達と共に改めて慰霊碑に祈りを捧げているレーヴェを見つめた。



「……あいつらの分か?」

「はい、お兄ちゃんとお姉ちゃん、それにミントちゃんの分も………」

花を捧げ終えて立ち上がったティータにアガットは問いかけ、問いかけられたティータは静かな表情で答え

「ティータちゃん………」

「フフ……エステルさん達に続いて、まさかお二人まで私達と一緒にこの村の墓参りに来ることができるなんて、不思議な巡り合わせですね。」

「フッ、それこそ”女神の導き”かもしれないな。――――最も、今の俺の言葉を聞けば子孫や先祖共々、自分達のせいにするなと文句を言ってきそうだがな。」

「くふっ♪エステルもそうだけど、エイドスも”導き”が自分達のせいにされる事を滅茶苦茶嫌がっていたもんね。」

ティータの答えを聞いたツーヤは静かな表情で見つめ、プリネは微笑み、レーヴェは静かな笑みを浮かべ、エヴリーヌは口元に笑みを浮かべてある推測をした。

「アハハ……」

「ったく、洒落になっていねぇぞ………いつかあいつら全員と共にここを訪ねられりゃあいいんだが。」

レーヴェの言葉にティータが苦笑している中呆れた表情で溜息を吐いたアガットは気を取り直して静かな表情である人物達の顔を思い浮かべた。



(これにて”初手”は終了……ふふ、次の盤面はどんな風に進むのでしょう?)

一方ティータ達の様子を物陰から見守っていたミュゼは周囲を見回した後意味ありげな笑みを浮かべた。

「――――それで?今どんな気持ちなのかしら、”リィンお兄さんやレン達の動き、ユウナ達の独断専行に結社や西風の旅団の行動を含めた全てが貴女の読み通り”に進んでいる事に。」

するとその時レンがミュゼに近づいて意味ありげな笑みを浮かべてミュゼに問いかけた。

「ふふっ、何の事やら。私には1年半前の内戦で貴族連合軍の動きをまるで自分の掌の上で踊ってくるかのような聡明な考えができるレン教官のような才能はございませんわ。」

「うふふ、謙遜も時と場合によっては嫌味になるわよ?―――――まあ、それはともかく。貴女程の才女が典型的な”貴族の愚物”だった”某主宰”の元公爵と同じ血を引いているとはとても思えないわね。―――あ、でも息子はともかく娘達は優秀だから、それを考えると某公爵家は男性ではなく女性が優秀になりやすい傾向でもあるのかしら?」

「……………フフッ、やはりレン教官―――いえ、”レン教官達”は私の事をご存知でしたか。姫様もいけずですわね、乙女の秘密を何の断りもなく他の方達に話すなんて。」

小悪魔な笑みを浮かべたレンに見つめられたミュゼは少しの間黙り込んだ後苦笑しながらアルフィンの顔を思い浮かべていた。

「あら、アルフィン夫人はシュバルツァー家の跡継ぎの妻の一人として、そしてメンフィル帝国に所属している人として当然の事をしただけよ?第一貴女、”入学前に通っていた女学院”では別に正体を隠したりとかしていなかったでしょう?」

「フフ、それはそれ、これはこれですわ。それで………私の事を知ったレン教官達は今後、私に対してどういう対応をされるおつもりですか?」

レンの指摘に対して笑顔で誤魔化したミュゼは静かな表情でレンに問いかけた。



「別に何もするつもりはないわよ?幾ら貴女が”某主宰”の親類とはいえ、たったそれだけの理由で貴女の事を警戒する程レン達―――いえ、メンフィルの”器”は