とある暗部な協奏演者(とあるダークなエクスプロード)


 

Praface

 
前書き
旧版の番外編を焼き直したもの。
φ(゚Д゚ ) 

 
此処は学園都市。

その街の一角にある人通りの少ない入り組んだ路地裏で異変が起きていた。

時間は深夜で野良犬や野良猫ぐらいしか気配はない。


「ヒューッ、ヒューッ」


一部の例外を除いてであるが。


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」


呼吸困難で息切れを起こしながらもひたすら走る小太りなスーツの男性が一人。


「ぐあっっ!?」


男はゴミ箱に躓いて転んだ。引っ繰り返った水色のプラスチックで出来たゴミ箱からは生ゴミが散乱して撒き散らされ、蓋の上に乗っていた猫は驚いて逃げる。


「ぐっ、ごほっ、はあっ…早く逃げなければ……!」


男は考えていた。何故こんなことになっているのかと。自分はそれほどの罪を犯したというのだろうか。


(くそっ、あんな化け物が出てくるなんて聞いてないぞ! こんなことなら真面目にやっていれば良かった!)


まあ今更そんなことを思ってみても後の祭りではあるのだが。


「く……」


男は直ぐに立ち上がって再び夜の闇へと消えていく。少しするとゴミ箱の辺りに誰かが来た。


「……」


特に何の感慨も無く、ただ無言で歩いている。

(はた)から見ればのんびりと普通にリラックスして歩いているようにしか見えない。なのに先程の男より速い動きをしながら余裕がある。

上下を黒で統一した(よそお)いに眼鏡の下から垣間見える鋭い眼光は金属のように冷たく獲物に狙いを定めた狩人(ハンター)のよう。


裂博(さきひろ)、そっちはどうだ?」

「こっちは全員片付きました。これからそっちに近付きながら首謀者を追い込みます」

「そうか。なら俺はもう少し追い駆けっ子するとしよう。奴の体力を削り取る」


頭に被ったヘッドセットでの会話を終えた眼鏡の青年は歩速を緩めて目標の背中を追い回しながら、ゆっくりと相棒を待つ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


数分後──


「ど、どうにか撒いたか……?」


散々逃げ回っていた男の名は《荒屋敷曲輪(あらやしきくるわ)》。

とあることをして部下と共に学園都市の暗部から追われる身となっていた。


「なんでみんな、そんなに簡単に
死亡フラグを建てるんですかねぇ?」


曲輪が恐る恐る振り返ると
何とも御人好しで優しそうな若い青年の姿。

自分を追っていた眼鏡の男とは違うことに安心し、思わず力が抜ける。


「こんな時間にこんな所で出歩いてると危ないよ?早く家へ帰った方が良い」


そこで曲輪は気が付いた。彼はかつて能力開発を受け、暗部並みの戦闘訓練を受けている。その曲輪から見て隙が見当たらない。相変わらず青年は微笑んだままだ。


「僕は《神田裂博(かんださきひろ)》と言います。
貴方を殺しに来ました」


その直後、
反対側の道からもう一人が姿を現す。


「暁さん」

「丁度タイミングが合ったみたいだな」


二人は仕事柄、路地で毎日のようにたむろしている(やから)より学園都市のこういった裏道に詳しい。追い詰められるのは自明の理だった。

曲輪(くるわ)が双方に目をやると一本の脇道が見える。あそこなら逃げられるだろう。一目散に飛び込むと暁と裂博は首を振る。


「こうも計算通りだと歯応えが無いな」

「今まで見た限り、あの人の身体能力じゃ、あの先から逃げれないんですけどね」


二人の青年は慌てることもなく、のんびりと後を追う。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「くそっ! 行き止まりか!?」


三方がビルに囲まれた袋小路に追い込まれた曲輪があることを思い出す。それは裂博と名乗った青年が呼んでいた『暁』という名の青年。


(何処かで…何処かで聞いた名前なんだが……)


そうこうしている間に二人がやって来た。


「まんまと罠に嵌まって頂いてありがとうございます」

「お陰で楽は出来たが張り合いが無いな。もう少し頑張って欲しかった」


暁と裂博の仕事は統括理事会の金に手を付けた汚職役人の《荒屋敷曲輪(あらやしきくるわ)》を始末すること。


「お、お前達。もうすぐ学園都市(このまち)が終わるかもしれないのに、どうしてそんなに平然としていられる!?」

「関係無いな。俺は報酬(ギャラ)の分、仕事(ビジネス)をするだけだ」

「手を付けたお金の主が悪かったです。
諦めてください」


二人は曲輪に耳を貸すこと無く死刑を宣告した。


「お…お前達は一体何なんだ? 私と一緒に動いていた部下も側に居た護衛も構わず手を掛けてまった。暗部が証拠になる人間を一人残らず消してしまうかのように…。ただの暗殺者では無いだろう……?」


冥土の土産とばかりに
二人の正体が明かされる。


「【ghoul(グール)】」

「それが僕達の組織です」


その名を聞いた途端に曲輪は絶望し、氷水でも浴びせられたかのように青褪めていく。


「暁…まさかお前はあの……!?」

「《下田暁(しもだあかつき)》。それが俺の名前だ」

「気は済みましたね?」


裂博(さきひろ)は笑みを浮かべる。


「う、うわああああ!!!」


パニックを起こした曲輪は銃を取り出して構える。裂博は直ぐに体を捻って銃口の射線から身を逸らす。すると直前まで居た場所へ銃弾が飛び、通り過ぎていった。


(くそっ! 死んで…死んで堪るかっっ!!)


発砲の反動で曲輪の腕が跳ね上がる。再度発砲しようと腕を戻す彼に対し、暁が一迅の黒い風となって駆ける。

まるで地を這う黒豹が如く身体を下げても耐えられる体幹と足腰から生まれる伏せと滑走。そしてそこから全身のバネを使っての急上昇。

暁の長い足が銃を握った手を蹴り飛ばす。更に続けて曲輪(くるわ)の頭に見事な上段回し蹴りを喰らわせた。壁に叩き付けられた曲輪は意識を朦朧とさせながら地面に沈む。


「貴様程度、能力を使うまでもない」


暁がそう言うと上から何かが落ちてきた。腕を横に振ってキャッチする。先程蹴り飛ばした銃だ。


(何故だ…何故私ごときを始末する為にわざわざ彼等がやって来るんだ……? もしかして…あれを知ってしまたったせいなのか……!?)


暁は曲輪の頭に銃口を近付けると一切の躊躇無く鉄爪を引いた。それが《荒屋敷曲輪(あらやしきくるわ)》の最後の意識となった。


「あ……」


はずだった。


◆◆◆◆◆


「ああああああああああ──ッッッ!!!!!!」


生きている。頭を撃ち抜かれた曲輪は
絶叫しながら悶え苦しんでいた。


「往生際が悪いな」


暁は頭を目掛け全弾を喰らわせる。しかし曲輪は止まらない。それどころか傷が全て塞がり体の内側から何かが生まれてきそうに(うごめ)いている。


裂博(さきひろ)、こいつの能力は何だった?」

「レベル3の身体強化です」

「俺の覚え間違いじゃあないな。それじゃあこの現象は一体どういうことなんだろうな?」


依頼人(クライアント)が意図して情報を隠していたとは思えない。学園都市の暗部に【ghoul】を騙そうなどと考える者はいない。


「もしかして【第0学区】の方かな? だがあちらに対して何かした覚えは無いが」

「そんなこと言ってる場合じゃ無さそうですよ」


曲輪の姿が異形となる。その身長はおよそ5メートル。体重は2トン。大型乗用車ほどある巨体だ。


「えい」


何やら気の抜けた声で裂博がその巨体に触れる。すると血走った目で曲輪が睨み付けた。


「あ、やば」


裂博がその場を離れると筋肉が異常発達した巨腕が振るわれた。壁も地面も構わず薙ぎ払われて抉られる。


「マッハ1はあるな」

「あの体であのスピード。能力か改造しかないですね」

「お前の能力が効かないところを見ると
普通の体じゃあないな」


神田裂博の能力【機能停止(シャットダウン)】は触れると意識を刈り取り臓器を止めることが出来る。それが通用しないということはまともな人間の体構造をしていないということだ。


「他人の能力で操られていたとしても臓器が止まっていれば死んでしまう。となれば臓器が関係無い機械になっていたり、操っている間は他者の身体干渉能力を受け付けない能力が相手だったりする。だがこの荒屋敷という男は違う」

「ええ、恐らくはどちらにも
当てはまらないでしょうね」


そこについて二人の考えは一致している。


「生体部品で出来た人間と同じ
有機物の人形か」

「僕達の知らない
新しい技術か未知の能力」


巨体となった曲輪から振るわれる嵐のような攻撃を躱すghoulの二人は取り敢えず人体急所に打撃を打ち込むが効果は無い。


「普通に硬いな。人間の感触じゃ無いぞ」


すると曲輪が動きを止める。


「暁さん。また体がボコボコ鳴ってますよ」

「もっと危険なのになれるってことか」


依頼人に報酬(ギャラ)を上乗せして吹っ掛けてやると思った暁の目前で今度は10メートルはありそうな巨体になり、鬼のような角が二本生え、蝙蝠のような翼が二枚生えた。

そして(わに)のような尾が生え鮫のような歯が生えると手足の爪が鋭くなる。それはまるで悪魔のような全身が黒い怪物だった。


「──ッッッッ!!!!!!!!」


その咆哮は凄まじく、
それだけで周囲のビルを崩壊させていく。


「絶対、依頼人(クライアント)に特別報酬と手間賃を請求してやる」


マッハ20で迫る曲輪を相手に暁がそう決心するとマッハ40で後ろを取った。


さっさと死ね(・・・・・・)


5㎝程の黒い球体を背中に直接叩き込む。するとそれは曲輪の胴体をみるみる内に収束し、圧縮していく。まるで紙をグシャグシャと丸め込むように小さくする。

そして全てが黒い球体の中へ飲み込まれると───


「塵芥も残さず消し飛べ」


黒球から物凄いエネルギーが放出され勢いよく爆ぜた。地上には破片の一つも落ちてこない。


「これだけ大きな爆発って
久し振りじゃないですか?暁さん」


下田暁の【吸引爆弾(スイーパーボム)】は小さなブラックホールのようなもの(・・・・・)を生み、物も能力も吸い込む。そして消える時には吸い込んだものに応じて力を放出し、爆発させることも出来る。

裂博と暁は素早くその場を立ち去る。


「ちょっと派手になったからな。
厄介事になる前にトンズラだ」

「はい、暁さん」


それにしてもあの《荒屋敷曲輪(あらやしきくるわ)》は何だったのだろうか。そんなことを思っていた暁だが今はそれ以上に重要なことがある。


「さて、報酬(ギャラ)を受け取りに行くぞ」

「今日は空費時間(ロスタイム)を取ってまで始末(ダウン)して良かったですね」

「ああ、元々奴の始末(ダウン)にはかなりの金が出るからな。臨時ボーナスを請求させてもらうが」


二人はビルの上を跳んで壮観な摩天楼が整然と立ち並ぶ眠らない街へと消えていく。

彼等は二人だけで【ghoul(グール)】という殺し屋の組織を経営している。

学園都市の暗部からも超一流と言われる実力の持ち主であり、特に暁は街に居る暗殺者の中でも『最凶』の呼び声が高い。

二人はまだ知らない。曲輪が言っていたことの真意を。学園都市の歴史が終わるかもしれない事態が起きようとしていることを。

闇の中で生きる捕食者(プレデター)はその時が来ればどうするのか。今は誰にも解らない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「荒屋敷曲輪はどうだった?」

「俺ほどじゃあないが、まあ及第点だな」


二人は【SUBJECT】という組織の支部長を勤める《組瓦成元(そがなりもと)》と《石塚歴(いしづかれき)》。

組瓦は曲輪が
異形へと変貌した事態に関わっている。


「そっちはどうだった?」


暦が別の方へ声を掛ける。


「私はghoulの方が気になったよ」

「オレも同じく。地上でとはいえ『最凶』の名は伊達じゃあない」


こちらの二人も同じくSUBJECTの支部長を勤める《イオ・メドヴェキア》と《子話阿倉(すわあぐら)》。

こちらは阿倉が曲輪の異変に関わっている。


「【fortress(フォートレス)】と【STUDENT(ステューデント)】のことがあるからな。今は(・・)あの二人に余計な手出しは無用だ」

「了解」

「だが実験の相手になってもらう分には
構わんのだろう?」

「其処に関して文句は言わん。
敵になった場合もな」


四人はそそくさと引き上げて【腐敗区】の飲み屋に行って学園都市への愚痴を零すのだった。 
 

 
後書き
荒屋敷曲輪(あらやしきくるわ)》の二回目の変身モデルはONE先生が作画した方のワンパンマン原作に出てくる『ガロウ』の一番ゴツい羽根を生やした姿。

マジ頭突きの後だから確か92撃目だったかな?

タイトルは最初、『とある暗部(ダーク)爆殺葬者(エクスプロード)』だったんですが、メインは暁さんだけじゃなく裂博くんも合わせた『ghoul(グール)』の二人なので『協奏演者』に変更しました。 

 

Normal Work

 
前書き
Losの " 並行する世界 " にルート分岐。 どの話も間違いなく一筋縄ではいかないのだろうなあ。
 

 
下田暁(しもだあかつき)》と《神田裂博(かんださきひろ)》の組織【ghoul(グール)】は仕事の数が非常に少ない。

一ヶ月間に来る依頼は平均して三件ほど。多くて五件までである。その代わりにと言っては何だが内容はハードなものがちょくちょくあり、報酬(ギャラ)も高い。

大体はレベル4の中でも高位能力者が支給される一年分に相当する。時には一年遊んで暮らせる額を叩き出すことも珍しいことではない。

この前に片付けた《荒屋敷曲輪》の報酬は一年遊んで、すなわち後者だった。臨時報酬も付けさせたとはいえ良い儲けになったので満足している。

二人がこの仕事を始めた時は実積が無かったので値段設定も安く条件も余り良くない仕事が依頼として多く持ち込まれていた。

しかし依頼解決率9割以上、暗殺率95%以上を維持しながらスペックの高さを見せることで評価をウナギ登りに上げていった。

その甲斐もあり、現在では学園都市の裏社会で一番の腕を持つ殺し屋として《下田暁》は『最凶』、《神田裂博》はその相棒という肩書きを得た。

その頃からghoulに持ち込まれるのは暗殺難易度がやけに高かったり、標的を殺すのは楽なのに後で面倒な厄介事が待っていたりと他の同業者が手を出さない案件が多くなった。

それに比例して支払われる報酬も跳ね上がっていったので二人にとっては万々歳なのだから文句を言うことも無く喜んで仕事に行く程なのでますます暗部からは頼りにされている。


「一週間振りの仕事ですねー」


裂博は待ってましたと言わんばかりに張り切っている。


「心配は不要だと思うが
腕は(なま)ってないだろうな?」


暁は入念にストレッチしながら体をほぐしている。定期的な簡易任務だと言えど油断はならないことを彼はよく解っている。交通事故と同じで『ふ』と襲ってくる強敵がいるからだ。


「僕も暁さんもスケジュールが空いてる期間は【災禍の軍隊(ユーベミリテア)】や【無白の証明(イノセントゲイン)】に行って訓練に混ざってるじゃないですか~。そうでなくとも自己鍛錬を欠かさないのに~」


無白の証明はほぼ全員が二人にボコされており、災禍の軍隊もある一線を越えた実力者以外では一人で圧倒する有り様なので体術は折り紙付きだ。

特に裂博にとっては近接戦闘の技術が生命線となる能力を保持しているので習熟度に関しては恐らく暁をも上回るだろう。


「そうか。なら良いんだがな」


裂博は災禍の軍隊にいる《春日桜花》と、暁は無白の証明で『阿修羅王』が関わる事件を調べている《坂本龍次》と手合わせすることが多い。仕事でも組んだことがある良好な関係だ。

桜花に対する二人の印象は『本気を見せない』ひねくれ者。『掴みどころが無い』変人。

龍次に対しての印象はというと、能力レベルは【フルバースト(・・・・・・)】の暁より下だが体術と武器術では『今の』暁より上。


「そろそろ行きましょう、暁さん」

「ああ、今日も一稼ぎするとしようか」


◆◆◆◆◆

数時間後、二人は現場に居た。


「周辺の下見が終わりました」

「よし、休憩しよう」

「今日は確か、この【第一七学区】に集まってくる【蒼世の必要悪義(バッドジャスティス)】が活動を起こす前に討伐をするんでしたよね?」

「ああ。全く彼奴等ときたら毎回毎回同じような所しか狙わん。計画とは名ばかりの行き当たりばったりみたいだ」


【蒼世の必要悪義《バッドジャスティス》】とは『学園都市』の存在そのものに反対している過激抵抗軍だ。

まあ『軍』と言っても軍事的な訓練は受けた事が無く、ほぼ全員が素人の集まりである。

所属する能力者のレベルも低く、良くてレベル2止まりなのでghoulの二人には問題にすらならない。

仕事の難易度が低い割には貰える報酬(ギャラ)が多いボーナスステージのやられキャラ達である。


「『蒼世の必要悪義(バッドジャスティス)』の連中は行動パターンとして、『一』『二』『一一』『一七』『二一』の学区をよく狙う」

「でも今回は少し様子が違うんですよね?」

「ああ、入れ知恵をしている奴がいる」


その人物が本日のターゲットというわけだ。


「あ、来ましたよ。もしかしてあの一人だけ浮いてる格好の人がそうなのかな?」

「だな。あの科学者で間違いないだろう」

「科学者が操車場の入り口に置いてある車に乗り込んだら始末(ダウン)するんですね?」

「どうやら標的も周囲の蒼世の必要悪義も武器らしいものを持っていないようだな。裂博、お前は周りに居る連中を排除してくれ。後から増援が来たらまとめて始末(ダウン)しろ。その間に車へ爆弾を仕掛けておく」

「はい、任せてください」


裂博は彼等にゆっくりと歩み寄りながらAIM拡散力場を放出し、自分だけの現実(パーソナルリアリティー)を展開する。


「今日も僕達の生きる現金(かて)になって下さい」


ここまでで薄々気付いた方も居るかもしれないが、【ghoul(グール)】の《下田暁》、《神田裂博》。

この二人、金次第である。 
 

 
後書き
二次の最終章三つのルート、どれも気になりますね。 

 

Normal Work2

 
前書き
_〆(。。)
 

 
「なるほど。そういうことか」

「今までの俺達は【学園都市】の
上層部ばかりを敵にしてたからな」

「非情さが足りなかったわけだ」


蒼世の必要悪義(バッドジャスティス)】のメンバーが何やら真面目な顔で科学者と話している。


「そうだ。目的の為に
多少の犠牲は付きものだろう?」

「この【第一七学区】はクローン食肉の牧畜や野菜の人工栽培をしている『農業ビル』がある。そこを叩けば街の食糧事情が悪化する」

「解っていたこととはいえ実際にやるのは気が引けるんだが今の『蒼世の必要悪義(バッドジャスティス)』の状況を鑑みれば選り好みしてる場合じゃあない」

「直接に学園都市の公的機関と戦り合うだけが手段じゃない。あらゆる面で仕掛ける必要がある」

「まあ、相手はそれでも
びくともしない奴だからな」


意外ではあるが、『蒼世の必要悪義』は過激な抵抗運動で武力を振るってはいても何だかんだで民間人を巻き込むような事は少なかった。

学園都市を倒す為に彼等を狙うという考えが無かったからだ。それだけにある程度は見逃してくれる敵も少なからず存在していた。

しかし間接的とはいえ一般市民に被害を出したとなれば糾弾されるのは間違いないだろう。相手も本腰を入れて潰しに来るはずだ。

その覚悟があって尚、この街の存在を消したいのかという【蒼世の必要悪義】の本気度を見る為に科学者が提案したのが農業ビル襲撃。そしてもう一つの作戦である。


「この第一七学区は都市内で使用される工業製品の製造に特化している。つまり其所を叩くことで工業は勿論、日常生活にもダメージを与えることが出来る」


その行為がどういう意味を持つのかを解っている『蒼世の必要悪義』幹部の面々は黙って聞いている。

戦争にもルールというものがあり
最低限のモラルが問われる。

この作戦は民間人に出来るだけ被害を出さず、生活に必要なパイプラインや輸入に頼るしかない生活必需品の物流を止めてはならないという一線を踏み越えている。

その非人道性を理解した上で科学者はこの作戦を提案しているのだ。


「更に都合の良いことに学区内施設の大半が自動化され、人口も極端に少ないと来ているから邪魔が入る可能性も低い」

「あんたの容赦の無さに参りますよ」

「【蒼世の必要悪義(バッドジャスティス)】が相手にしているのは地球上の科学サイドを一手に握る超巨大勢力なのだと君たち幹部は理解しているが、末端が理解していないからね」

「民間の犠牲者が少ないのに越したことは無いが綺麗事だけで勝てる相手ではないというのはウチのトップが一番解ってますよ」

最も地上の学園都市全域に撒かれている70ナノメートルのシリコン塊で構成された『滞空回線(アンダーライン)』によって街中の出来事に即事対応できる情報網を持つ《学園都市統括理事長》に話は筒抜けである。


「ん。なんだアイツ?」

つまりあの二人はその滞空回線で知り得た情報によって学園都市のかなり上(・・・・)から今回の依頼を受けたというわけだ。


「ウチのメンバーじゃあねえな……」

「~♪」

近付いてくる人物は鼻歌を鳴らしながら楽しそうに歩速を上げていく。異変に気付いた青い正義はにわかに慌ただしくなった。


「おい、その人を早く車へ乗せろ!」

「行ってください、ここは俺達が!」

「くっ、頼んだぞ!」

科学者は車へ向かって駆け込んでいく。


計画(プラン)通りに車へ誘導成功。
後は頼みましたよ暁さん)

「その間、こっちは任せて下さい!」

神田裂博(かんださきひろ)》はターゲットを守ろうとする蒼世の必要悪義へと襲い掛かった。

彼はまず正面の男に手を伸ばす。すると触れた途端に心臓が止まり裂博の方へと倒れ込んで来る。

裂博の能力【機能停止(シャットダウン)】は触れると体機能を止めて意識を断つことが出来る対人用の強力な力がある。

射程が短いので接近戦をしなければならないのが弱点だが蒼世の必要悪義を相手に裂博が遅れを取ることは有り得ない。

裂博が倒れてきた男を後ろに下がって躱すと左右から押さえ付ける為に別の二人が襲ってきた。彼は直ぐにその場を動かず相手を引き寄せてからバックステップする。

するとその二人の男は互いに激突して倒れてしまう。いきなり動いたので裂博に着いていけなかったのだ。

そこへすかさず裂博の両手が迫り、そのまま頭を掴む。二人は脳機能を停止させられると白目を剥いて息を絶やした。

裂博はそれを見ても怯まず次々と飛び掛かってくる『蒼世の必要悪義(バッドジャスティス)』の中へ体を踊り込ませ死をもたらしていく。


(今回の相手には武器が無い。それに暁さんやあの二人に比べればこいつ等の動きなんか止まってるようなもんだ)


休むこと無く自分へ伸びる生身の攻撃を悉く回避しながら操り人形の糸を切るように青い正義の動きを止めていく。

払った手。引っ掛けた足。ぶつけた肩。なぞる指。神田裂博が触れた部位の身体機能が例外無く停止する。

そして最後の相手をすり抜けるようにして躱すと背中合わせの状態から手刀を放ち、脊髄の生体機能を止めた。


「良し。終わったな。後は……」


操車場の出入口で科学者を乗せた車が爆破され轟音が響き爆煙がもうもうと立ち昇った。


「どうやら向こうも始末(ダウン)させたみたいだ」


そう言うと裂博は暁の所へ向かう。そんな一仕事終えた【ghoul(グール)】の二人を同じ操車場の中にある山積みにされたコンテナの上で座り眺めている者が一人。


彼奴等(あいつら)アレ(・・)を止められるのかねぇ? ま、俺はめんどくさい事をしなくて良いから助かるんだけどな。お前らには是非とも俺の為に頑張ってもらうぜぇー【人形の残骸(ドールディブリス)】」


この人物は学園都市の極秘防衛組織【fortress(フォートレス)】のヒーローで最強能力者の一角を占める《夢絶叶(むぜつかの)》。

この話で何かの役割を持つかもしれない偽悪の英雄である。そして三人が去った後、別の役割を持つ者達がやって来ていた。


「こりゃまた酷いな」


科学者が乗っていた車に誰かが近付く。


「死んだんじゃない?」


更にもう一人現れた。


「いや、まだ生きてる」


誰かが感知を使ったようだ。


「手っ取り早くどかすとしよう」


四人目は槍を使って瓦礫とスクラップを
箒で掃くように移動させた。

するとある場所が地雷でも埋まっていたかのように土砂が噴き上げる。そこから出てきたのは先程の科学者だ。


「御苦労様」

「もうその格好は良いんじゃないですかね」


仲間の言に従い科学者が自らの顔に手を掛けるとそのまま皮を剥ぎ取ってしまった。


「いやぁー、【蒼世の必要悪義(バッドジャスティス)】の力を借りて学園都市(あちらさん)の戦力を削ると同時に民間被害者を出して街の評判を落とし、ここから出ていきたい人達を作って人口を減らそうと思ったんだけどね」


科学者に(ふん)していた【SUBJECT】の《仕戸栄生(しとえいき)》がここまでの流れを思い返す。


「こっちも計算外ですよ」


槍を持った《忠沖功務(ただおきいさむ)》が笑う。


「取り敢えず無事なのは褒めておきます」


二見純(ふたみじゅん)》は一安心した。


「やはりアレイスターの【滞空回線(アンダーライン)】は厄介だな。何か手立てを考えないと」


上垣利行(うわがきとしゆき)》が唸る。


「『蒼世の必要悪義(バッドジャスティス)』は上の方になると結構まともな人間が居るみたいだから失った人材の分はこっちで補充してあげましょうか。末端にいる一山幾らの武装無能力集団(スキルアウト)と変わらない連中はあれだから利用するだけ利用させてもらうけど」

小川真帆(おがわまほ)》が割り切った判断を下す。


この五人は学園都市への復讐と存在の崩壊を目指す組織【OBJECT】に協力する組織『SUBJECT』のメンバーだ。


「誰か『ghoul(グール)』の二人と直接戦って力を試してくれないかなあ」

「何人かは戦えますがあの二人を相手に
好んでは行かないですよ」 
 

 
後書き
荒屋敷曲輪(あらやしきくるわ)の本体的なキャラで新屋敷廓(あらやしきくるわ)というのを考えていたんですが事情によりお蔵入りになってしまったよ……。
(´・ω・`)

私の中でちょっとだけイメージしていたOBJECTの叶瀬君とfortressの夢絶君みたいな感じに書きたかったんですけどね。

原作の御坂オリジナルと妹達(シスターズ)的な話。

蒼世の必要悪義上層部は案外良識はあるんですが下っ端がダメダメなので評判が悪いです。 

 

Mission Fake

 
前書き
旧版の焼き直しなのであと少しです。 

 
科学者を爆殺した日の夜、【ghoul(グール)】に一件の依頼が入った。


「依頼を頼む前に聞いておきたいのだが、君達は【fortress】を知っているかな?」


それは今、一部で流行りの噂である。何でも影ながら学園都市を守っている18人のヒーローで実在が疑わしい能力者が揃っているとのことだった。


「噂に興味は無い。そんな確証も取れんものは特にな。それより早く今回の暗殺目標(ターゲット)報酬(ギャラ)の額を見せろ」


下田暁(しもだあかつき)》は話の腰を折って
仕事を進めようとする。


「いや暁さん。せっかく話してるんですからこの仕事に何か関係あるんでしょう」

「そうなんだよ。その【fortress】が君達にこの依頼を持ってきたらしいんだ」

「相手の素姓は問わない。
報酬(ギャラ)があるなら引き受けてやる」


暁は外に行くと受け取った標的の写真を見た。


「なんだこいつは。ピントがズレてたのか?」

「その相手の人物は《島崎粉葉(しまざきこのは)》という学生だよ。【森宮高等学校】の二年F組に居る。報酬は前払いしておくから宜しく頼む」


ghoulの二人は早速出かけて目的地の周辺を調査し仕事に備えることにした。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆


二日後──

第七学区・森宮高等学校の校門前。


「この学校は出入口が一つだ。
裏口から帰るという選択肢は無い」

「人目に付くんですけど此処で待機ですか?」

始末(ダウン)させるのは別だから安心しろ」


暁が顎を指した方に路地がある。


「丁度お誂え向きに
人目に付かない場所がありますね」


暫くすると暗殺対象が姿を見せた。


「君が島崎粉葉か?」

「ちち、ち、違いますよ!?」


首を左右に振って両手を胸の前で上げながら否定する。


「嘘はいけないよー。
君のことは全部解ってるんだからね」


裂博がそう言うと粉葉の姿はノイズが掛かったようになり激しく光を放つ。気付くと何時の間にか消えていた。


「あんな素人に撒かれるとは…。不覚だ……!」

「手分けして捜しましょう暁さん。
僕は校内を捜します」

「俺はここいらを見回る。
見付けたら機を見て始末(ダウン)させろ」


校舎の中に入った《神田裂博》の前を
二人の学生が通り過ぎた。


「は? 何で今からゲーセン?」

「え~? いーじゃん行こうぜゲーセン」


この子達に尋ねてみよう。裂博が写真を見せる。


「誰これ?」

「見たこと無いな」


仕方なく教室を一つずつ回っていると目標は自身の在籍するクラスに居た。その手には一冊の『本』があり友達とおぼしき人物も見える。


(これじゃあ仕事出来ないな)

「今回は先にお金を貰ってるから仕事の内容を達成出来ないとヒジョーに不味い……」


口に出したのを気付かれたようだ。
粉葉は再び光とノイズを発して消える。


「ヤバい…ヤバいぞ。このままだと仕事失敗で暁さんからのお仕置きが待ってるだべ~」


意外と余裕のありそうな裂博は
校舎を出て暁と合流する。


「どうだった?」

「逃げられました」

「移動型の相手は厄介なんだよなぁ。
依頼する時に教えといてくれよ……」


暁は久し振りに仕事を放棄しようかという考えが頭に浮かんでいた。するとそこに二人が知らない人物が話し掛けて来る。


「《島崎粉葉》はそこまで体が強くないから後ろから押さえ込んじまえば直ぐに倒せるぞ」

「誰だお前。何故そんなことを知っている?」

「悪いがめんどいからその質問には答えない」


暁は舌打ちするが取り敢えず礼を言う。


「助かった」

「彼奴は今、校門近くの路地に居るぞ」


すれ違い様にそう呟いたのを聞くと暁が走り出し裂博が後を追う。その背中を見送ると笑いが起きた。


「裂守。お前の作った【人形(ドール)】はどうやら俺を楽しませてくれそうだ」


夢絶叶(むぜつかの)》は二人に任せて
ある場所へ向かって歩き出す。


「んにしても、アイツ等は為なら少しめんどくさく無くなるのは何でなんだろうな?」


暁と裂博は見ず知らず(むぜつかの)の言った通りに路地へ向かい目標を追い込んだ。


「もう逃げられないぞ」

「ア、アァ…アアアアアアアァーーー!!!!!」


ビクビク怯える粉葉は叫び出した。
そして何かを取り出す。


「もうあんなのに協力したくないっ! あんなのはもう…嫌だあああぁぁーーー!!!!」


暁は裂博の首根っこを掴んで大通りまで走る。すると後ろから光と爆炎が瞬き路地から強烈な爆風が吹き出した。


「自爆だが一応は条件を満たせたな」

「証拠にこの『本』を持って帰りましょう」


裂博が拾ったのは『幻未来具現化理論』という名前の本だ。


「未来の具現化なんぞ出来てたまるものか。時空操作があってすらも無理だろう」


ghoulの二人はそのまま帰還した。


「いやぁー。今のは危なかったねぇ~」

「あ、貴女は一体……」


島崎粉葉は生きていた。


「あの子達に頼んで君にあのオモチャを持たせたあげく、今回の事件を企んだ魔の美貌の持ち主《島崎向子(しまざきこうこ)》さんとは私のことよ!」


ドンと胸を張る彼女に粉葉は後ずさる。


「ひどっ! 事情は知ってるけどここまで重症とはね」

「僕はもうあれには………」

「君は死んではいけない。『島崎』の名を広めてもらわないといけないからね」


向子はゲートを開いて共に転移する。


「計画の為にも」 
 

 
後書き
(*゚ω゚)
一応は次の仕事で焼き直し分が終わる予定。  

 

Facility Settlement

 
前書き
今回は私が書いた方の旧版でなく二次の旧版を元に構成して大幅加筆しました。

つまり今回の主役は『ghoul(グール)』の二人でなく別の三次で主役をしているあの人です。 

 
蒸し暑い夏の真昼。

ghoul(グール)】の事務所に依頼人がやって来た。

【森宮高等学校】の《島崎粉葉(しまざきこのは)》を始末してから一週間は経過している。


「お、開いてる開いてる」

「んん? アンタ何処かで会ったことないか? 見覚えがあるんだが」

「あの人ですよ暁さん。
島崎粉葉の始末に協力してくれた」


そう言えばそんなこともあった気がする。

下田暁(しもだあかつき)》は寝転んでいたソファーから背中を起こして来客に尋ねた。


「それで? アンタは一体何処の誰でどんな奴を始末する依頼を持って来てくれたんだ?」

「俺は《夢絶叶(むぜつかの)》。
ヒーローをやっている者だ」

「裂博。お帰り願え」


暁にジョークは通用しない。


「待て待て待て! 名前も職業も本物だ! ちゃんと依頼も持って来てる」

「聞くだけ聞いて見ましょうよ暁さん」


神田裂博(かんださきひろ)》が暁を(なだ)める。三人は移動して応接室のテーブルで向き合う。


「これを見てくれ」


叶が取り出したのはある施設の写真。


「何ですか?これ」

「【第一七学区】の端っこにある『未来促進研究所』っつってな。真っ当な商売してるぜ?まあ表向き(・・・)は、な」

叶が意地の悪い顔になる。そこに暁が食い付いた。


「裏の顔は?」


既に仕事に入る顔になった暁を見て叶が思う。


(へぇー…。やっぱただもんじゃねぇな。さっきまでユルユルだった筈なのに今は隙無しだ。【人形の残骸(ドールディブリス)】で何番手くらいに入るのかねぇ…?)

叶は表情を崩すこと無く依頼の話を続ける。


「裏では『幻未来具現化理論』とか言うのを実現しようとしてる科学者(へんじん)どもの集まりだよ」


裂博は先の一件で拾った本を思い出す。


「その人達は何を目的にしてるんですか?」

「(めんどくて)調査してない。【学園都市】が消えるほどのヤバい計画らしいが」

「僕達で止められますかね?」

報酬(ギャラ)はこの街から出る。ただし公的機関の警備員(アンチスキル)とかが手を回すのはカバー出来ないからな」


話が一通り終わると暁が席を立つ。


「よし裂博(さきひろ)。全ての指定目標(ターゲット)始末(ダウン)させるぞ」

(まあせいぜい頑張ってくんな。これで面倒な仕事を押し付けられたぜ)


叶は茶を(すす)りながら、
なに食わぬ顔で内心ほくそ笑んでいた。


(でもちっとはカバーしてやる。残骸(ディブリス)の連中は知らないやつじゃないわけだしな)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


【ghoul】の事務所を出た夢絶叶は
電話をしながら何処かへ向かう。


「本当に彼奴等に出来るんだろうな重実」


受話器の先に居る相手は彼の上司であるfortressのリーダー《叶世重実(かなやじゅうじつ)》である。


「当然だろう。でなければ【fortress(フォートレス)】のメンバーで片を着けてるさ」

「そりゃ楽しみだ」


叶は満足そうに通信を切る。

彼が辿り着いたのは学園都市に巣食っているギャングの溜まり場の一つだった。

そして数分後───


「グワァァァーッッッ!!?」

「ギャーッッッ!!!!」

「いやー楽だわこの仕事」


叶の笑みは収まらない。


彼奴等(あいつら)の為になるし能力でスッキリ出来るし一石二鳥だな、うん」

「レベル4の師匠が能力無しの一撃で!?」


普通に見るのならば、【大能力者(レベル4)】だと学園都市でも上位に入る能力者であるのは間違いない。

裏社会で生き抜く為に相当ごついマッチョになるまで必死に鍛えているのも解る。

だが(まれ)に見る『能力測定不可能力者(アンノウンホルダー)』の中でも突出して実力がある者が集まる『fortress』のヒーローを相手取るには役不足だ。


「オラァッ!!」


叶が拳を上に向かって軽く打つと空気に衝撃が伝わり威力が数十億倍に膨張つつ、重力も引力も大気圧も、その全てを以てしても押さえられない豪風が吹き昇る。

その莫大な1500キロトンに及ぶエネルギーは建築物を地中の基礎から大砲のように撃ち出し地面を地盤ごと(まく)り上げ引っ繰り返した。

無論人間なぞ紙切れや発泡スチロールのように軽く吹き飛ばされて宙を舞い、遥か遠く雲の彼方まで消え去り遂には見えなくなってしまう。


「どのくらいまで行ったかなー?」


叶は目の辺りに手を(かざ)して天を仰ぐ。建物と地面は空を覆い尽くすほど落下して轟音を鳴らすが人間は全く落ちてこない。

それもそのはず全員が大気圏を越えて地球の周辺を漂う宇宙ゴミとなっていたのだから。


「これは…もしかしてあれか。またもやあの台詞を言わねばならんのか……」


叶が息を吸う。そして腹から声を出した。


「またッ、また……まぁったしても一撃(ワンパン)で終わっちまったじゃねぇかッッ!!! こぉんのクソッタレェェェェ──ッッッ!!!!!」


fortress所属のHERO―T《夢絶叶》

Tanegashima/種子島(たねがしま)の称号を持つ男

その異称は戦国時代の火縄銃のように一度発射すると次に撃つまで時間が掛かるという意味ではない。

彼の能力が強過ぎて、攻撃が当たる当たらないに関わらず、相当な手加減をしないと地形がまるで変わってしまうほど一帯を巻き込んでしまうので、一発しか能力を撃つ必要が無く、一度しか撃てないのだ。

上記にあるように手を抜けば別だがそれでも当たれば一回の攻撃で終わることが大半である。

普段からfortressの『鉄砲玉』と言われ、行ったっきり戻ってこないほど強い相手との戦闘を好む彼ではあるが、その状態ですらどれ程に力を抑えているのかは恐らく本人と本気を知る者しか解らないのだろう。


「ハアー……。重実なら実力は充分だが節度を弁えてるからなぁー。頭がアレ(・・)な刹那か、『彼奴(あいつ)』に次ぐオバサ、おっと危ない危ない…。セルビアさんなら良い線行くんだけど」


言いかけた瞬間に寒気が走った叶は慌てて言い直す。その時ふと彼の頭に浮かんだのは背中から見た因縁の相手。銀の髪を揺らして立ち去る黒服の男。


「けーっきょく、あんにゃろうには一度も勝ってねぇんだよなぁ。手合わせですら」


fortress史上メンバー候補になった者も含めてNo.1の戦闘力を持つ孤高の最強ヒーローとされた『奴』の力は実際に組織創設時から共に居た第一期メンバーの叶や重実をして認めざるを得なかった。


「何でこうなっちまったのかねぇー……」


現実(リアル)に神を宿す肉体を持った偽悪の英雄は少し肩を落としながらその場を去って行った。


「ふんっ」


ボコッという音と共に地面から手が突き出てくる。這い出してきたのは【SUBJECT】の支部長《一堂切麻(いちどうせつま)》。


「ほらしっかり」


さつま芋を抜くように引っ張り出されて姿を現したのは同じくSUBJECTの《相川圭人(あいかわけいと)》。


「貴重な体験が出来たな」

「二度と御免だ。叶瀬が避けるのも頷ける」


あまり人的被害が出ないのならば『SUBJECT』は学園都市の為にならないことに喜んで手を貸す。今回は不幸だったが。


「早いとこ帰ろうぜ」

「他のfortressが来たら
堪ったもんじゃないからな」 
 

 
後書き
15キロトンが広島型原爆だったかな。

私がイメージしてる範内囲のビルも地面も吹っ飛ばしてしまうくらいならこれでも足りないはず。

叶君が土砂を含めて何百億トンを宙に浮かせたのかは読んでいる人の想像に任せます。

私のイメージだとワンパンマンの主人公サイタマ先生のマジちゃぶ台返しの簡易版のつもりで書いてます。

叶君のヒーローアルファベットTの種子島が持つ意味は果たしてこれで良かったのだろうか。 

 

Future Laboratory

 
前書き
φ(-ω-。`) 

 
「あ、暁さん。あれ見てください。あれじゃないんですかね?目標の施設というのは」

《神田裂博》が指を指す方に一風何の変哲も無い大きめの建物が見える。


「あれが『未来促進研究所』か。よし、早速仕事に取り掛かるとしよう」

《下田暁》は裂博と共に研究所の前に辿り着くと偶然居合わせた研究員と守衛を始末する。

無事に潜入した二人は気配を殺しながら少しずつ奥へ進み、警備員室を沈黙させ、防衛システムを破壊した。


「裂博。ここからはどんなに暴れても良いぞ」

「了解です」

始末する対象がこの施設そのものなので二人は一人も逃がさないよう虱潰しに内部の人間を殺していく。しばらくすると分かれて行動していた彼等が合流して状況を確認した。


「少なくとも八割は片付けましたかね」

「九割でもおかしくないな。たまに施設の一部ごと吹き飛ばしてるし」

その時だった。


「居る」

「ええ、殺気がだだ漏れですね」

ghoul(グール)』の前に姿を現したのは一人の男。


「勘が良いな。流石は超一流」

「裂博は残りを頼む。もし俺が予定通りに施設の外へ出なかったら構わず施設を破壊しろ」

「任せます。生きてて下さいよ」

「こんな所で死ぬ気は無い。だが最悪の事態は想定するべきだから言っているだけだ」


裂博は対峙する二人を残して始末(ダウン)を続行する為に更なる奥地へと進んだ。


「俺は《島崎玄白(しまざきげんぱく)》って言うんだけどさ。わけあってお前と戦ることになっちまった」

(島崎…?)


暁の頭には有名な組織で情報屋をしている食えない食わせ者の女が浮かぶ。


「悪いがちょっとばかしの間は俺に付き合ってもらうぜ。否が応でもな」


玄白は氷の矢を現すと腕を振る。
暁が躱すと床に次々と刺さっていく。


「俺はアンタのことをよーく知ってるよ《下田暁(しもだあかつき)》さん?  【人形の残骸(ドールディブリス)】の一人であり暗部の中でも一握りしか知らない伝説の殺し屋。その依頼達成率は98%と来てる。いや本当に凄い。あの化け物みたいな『伝説』とどっちがスゲェのかなあー?」


玄白はどうやら誰かと比べているようだ。


「誰のことを言ってる? それに俺は今、お前を始末(ダウン)することだけ考えているんだぞ?」


暁は周囲を見渡す。


(一本道の通路。互いに必殺を狙える間合いだな)


そんなことに気付かず玄白は話を続ける。


「ああーこりゃ失敬。俺が言ったもう一人の伝説ってのは三年くらい前のことになるかな」


当時、学園都市の地下に存在する『第0学区』には【Anaconda(アナコンダ)】という暗殺組織があり、高い暗殺成功率を誇る名う手の暗殺者が揃っていた。

そこは毎日のように依頼が来ては達成されるため『暗殺者の聖地』とも囁かれる程であり、名声は業界中に響いていた。

Anacondaに所属する構成員は体の何処かへと『髑髏に巻き付いた蛇』のタトゥーを彫って忠誠の証にしていたという。

暗殺者の養成所まで抱えたそのAnacondaである怪物が生まれた。訓練時代において歴代最高の成績(スコア)を残し、現役時代でも最後の任務しか失敗したことが無い。

その人物が失敗した理由はある一人を救い守る為であり、情に流されなければ暗殺成功率100%という驚異の才能を遺憾無く発揮していた。

『人を殺す』ということにおいてあまりにも天才が過ぎた故に周囲からは色々と妨害を受けたが流している内にその者達は任務で死に絶えていたという。


「正に化け物だよなあ。組織の暗殺者は能力者が半数を超えていて本人も能力が使えるはずなのに能力無しでトップに立ったんだから」


島崎玄白はその人物と会ったわけではない。だがその第0学区ですら都市伝説になるほどの力に羨望を抱いていた。それは目の前の下田暁に対してでもある。


「俺も知っているぞ。Anaconda(アナコンダ)という組織の歴史上で最も幼くして才能を開花させ、最年少で組織の暗殺者達の頂点に立った歴代最強のNo.1暗殺者(アサシン)。それは組織の内外に及ばず業界の枠を越え裏社会全体でも畏怖された」


恐らく学園都市で暗殺者や殺し屋を知っている者なら一度は聞いたことのある男が二人いる。

一人は現在の学園都市暗部において『最凶』と目されている超一流の中の殺し屋。

爆殺葬者(エクスプロード)』の《下田暁》。

もう一人は組織の半数を占める能力暗殺者達を押し除けて頂点に立ち、Anacondaの並み居る歴代No.1暗殺者の中でも最強に登り詰めた男。

鴉蛇(からすへび)』と『断頭・頭並(かしらなら)べ』という黒い小刀を持った暗殺者(アサシン)の《IS(イズ)》。


「ISはたった一人の為にAnacondaを壊滅させて消えたと噂されている」

I who reap the soul(私は魂を刈り取る者)。アンタと同じく俺が殺したい目標だよ」

「一度は会ってみたい気はあるな。
俺は貴様に殺される気は無いが」

「ほざけよ最凶!」


玄白は尖氷を放つ。今度は射った先から次の氷が生み出され休み無く氷片が飛び散る。


(能力レベルは5も無いな。数と持久、連射と速射が優れてはいるようだが。しかし能力者本人と違って意外にも堅実な制御をされているからか性能自体は悪くない。現時点ではレベル4の上位と言ったところか)


暁は彼の能力が威力でなく継戦能力に重点を置いた『長時間撃ち続けられる広範囲弾幕』という評価を下した。問題はその攻撃が相手に当たるかどうかだが。


「こんにゃろおぉぉう……! 人間なのに何でそんな風に避けれるんだよ!?」


暁は体の横幅が薄い熱帯魚のような鋭角の波打つ動きで玄白を左右に振り回し、能力の狙いを外しつつ観察をしながら退いていく。


(わざわざこんな通路であの能力に有利な場所のまま戦り合う必要は無いからな)


そのまま受付のある広いロビーに到着する。今度は暁が攻勢に出る番だ。

熱帯魚の動きに剣道でいう摺り足の送り足と継ぎ足、そしてアウトボクサーのヒットアンドアウェイを混ぜたようなフットワークを使う。

玄白に付かず離れず移動を繰り返しながら
打撃を叩き込んで弱らせる。

それは獲物の肉を咬んで頭を振ることで食い千切りながら通り過ぎ、また咬みに来る凶暴な人喰い鮫のようだ。

それを可能とするほど
二人には圧倒的な差があった。

降りしきる氷雨をぬるりと滑り抜けると暁は時計回りに玄白の背面首元へ手刀を決める。

そして崩れ落ちる途中に
後ろから左足の甲で左側頭部を蹴り飛ばした。


「暫く動けんだろう。言っておくが殺さないのは貴様があの女に関わっているからかもしれんからだぞ」

「相変わらず聡いわねぇ~。暁ちゃ~ん」

(苗字を知った時に予感はしてたがやはりか)


其処に居たのは学園都市で最大の規模を誇る情報組織【GROW(グロウ)】のNo.2である《島崎向子(しまざきこうこ)》だった。


「ごめんね~暁ちゃん。手加減してもらってー。仮にも私の弟だからさあ。ちゃーんとこっちでお仕置きしとくわ」

「是非ともそう願いたいものだな」

「ほーら玄白ちゃーん♪ 貴方の大好きなお姉ちゃんがお迎えに来てあげたわよー?」


暁は背中を向ける。


「一つ聞いておきたいんだが、もし俺がそいつを始末しようとしたらどうした?」

「本気の向子さんが見れたよ」


何時もと変わらぬ顔でそう言って見せた彼女が本気なのかどうかは判らない。

だが暁が本能で敵対を避けた方が良いというくらいの実力はあるという事を感じた。


「そうか…。それは少し残念だ。悪いが俺は先に行かせてもらうぞ。裂博が待ってるんでな」


彼は相棒の後を追って研究所の奥へ進んだ。


「暁君、相変わらず甘いんだから。何時か足下を掬われちゃうぞ?ひょっとすると私よりも『制御解除(リベライル)』を使いこなしてバースト出来るって言うのに」

(今日は弟を見逃してくれてありがとね。この借りはちゃーんと返すよ。私なりのやり方で)


一方研究所を進む暁は
道中で不穏な空気を感じていた。


「傷の無い死体は裂博の『機能停止(シャットダウン)』で殺ったんだろう。だがこの血痕は一体なんだ?」

裂博(あいつ)が遅れを取るとは思えんが……。大丈夫なんだろうな?) 
 

 
後書き
「名無君」
( *・ω・)ノ

「あ、IS(イズ)君」
( ゚д゚)

「僕が暁君と戦うのかな?」
( ・_・)

「二人とも私のキャラでないのでね。ここで勝敗を着けると色々ある気がするんですよ」
(◎-◎;)

「僕は試してみたくはあるんだけど」
(-ω- ?)

「予定はあったんですけどね。でも白黒は付けれないので止めておきましたよ。私も見たいカードの一つだったんですけど描写出来なさそうだったのでお蔵入りに」
(´・ω・`; ) 

 

Future Laboratory2

 
前書き
焼き直し終了です。 

 
下田暁(しもだあかつき)》が血痕を辿って『未来促進研究所』の奥に進んでいくと《神田裂博(かんださきひろ)》が壁に(もた)れて座り込んでいる。


「あ…暁さん。殺れましたか……?」

「見逃した。島崎向子の弟だったらしいからな」


裂博が腕を押さえている。その押さえた指の間からは血が止めどなく流れていた。


「これですか…?ちょっと刃物でブスッとされましてね。良い腕してたんですよ…。顔を隠してはいましたが…あれは女ですね……」


暁が手で口を塞ぐように腕を前へ出して
裂博の言葉を遮る。


「お前は此処で休んでろ」


急所が刺されたわけでないのなら短時間は放っておいても問題ないだろう。置いていきたくはないが仕事を優先する。

裂博が居た場所を先に進むと大きな扉があった。暁は気配を殺して警戒しながら内部を覗き込む。

部屋には大きな柱にも見える機械が中央に設置されており、白衣の科学者と学生が何人か見えた。測定に使う以外の機器も並んでいる。

すると科学者の一人が暁の方を向いた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「君、どうしたの?血が出てるけど」

「…誰ですか貴方は?」


裂博が顔を上げると
その人物はからかうように言う。


風紀委員(ジャッジメント)で~す。まあ嘘だけどね♪」


彼が薄ら笑いを浮かべながら裂博を通り過ぎ、暁が暴れている研究室の大扉の前に立つと話し掛ける。


「あーあー向子さん。
仕事なんだけど大丈夫?」


その直後、大扉の向こう側でしていた音が収まった。そしてニセ風紀委員が部屋へと突入する。


「はいはいそこまで。
向子さん、重要人物を優先して跳ばしてね」

「解ってるよぉ~」


其処には先ほど弟を連れて転移したはずの《島崎向子》がおり、その場に居た人間が次々と消えていく。

そして暁が『さきもり』と呼んでいた人物も
跳ばされてしまった。


「何で奴を逃がした?」

「あれでも今の学園都市にとっては重要人物なんだよねー。色々思うところはあるけどさ」

「次会ったら始末(ダウン)させれば良いよ」


暁はニセ風紀委員の言葉に頭から血を下げる。


「解った……。だが次は絶対にあの男を…。『裂守(さきもり)』を始末(ダウン)させてもらう………」

「さっすがリーダー君、話が早い」


島崎向子はGROWのNo.2。その彼女がリーダーと呼ぶということはニセ風紀委員の正体が何者か知れただろう。


「これでも僕は組織のトップなんでね。リスクの計算はしないといけない」

「それじゃあ暁くん。今度こそさようなら~♪」


向子はリーダーと共にその場を後にした。


「この施設を破壊する前に
裂博を診せに行かないといけないな」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


暁は暗部に居る知り合いの治癒能力者の元へ連れていった。二人が向かったのはGROWの下部組織の一つ【遊び人の集まり(オユウギカイ)】。


「生尾さん、居るか?」

「待ってたよ二人とも。向子さんに話は聞いていたからね。早速始めるとしよう」


彼はGROWの医師で治癒能力者でもある《生尾荘司(いくおそうじ)》という。暁や裂博は何度も世話になっている。

荘司が裂博の腕に手をやるとみるみる内に傷が塞がり血行も良くなっていく。それから頭にも手を当て眠らせた。


「彼は少し休ませる。暁君は自分の仕事をやりなさい」

「はい、ありがとうございます」

(あの施設は俺が始末(ダウン)するから待ってろ)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


誰も居なくなった『未来促進研究所』の前に戻ると今回の仕事を持ってきたあの男が居た。


「お、来たな。ちーとばかし手伝わせてもらうぜ」


夢絶叶(むぜつかの)》の言葉が聞こえないかのように暁が叫ぶ。


時間外労働(ロスタイム)だっ!! この想いを何かにぶつけんことには収まらんっ! 行くぞっ、『制御解除(リベライル)』だッ!!!」


三年前、第0学区のある地下世界の一部で行われていた実験で生まれた新しい能力者の概念。それが『制御解除』だ。

学園都市の書庫(バンク)には表記されないが能力者の強度(レベル)には小数点以下が存在する。

制御解除の特徴は強度の小数点以下が『.5』になることが殆どであり、次のレベルに半分踏み込んでいる状態とされる。

超電磁砲(レールガン)が暴走した大覇星祭での『PHASE(フェイズ)NEXT(ネクスト)』に近いが別物であり、あれよりは安全性が確保されている上位互換と言って良いかもしれない。

というよりも、あの『悪魔化』と呼ばれるものを『感情』をキーにすることで制御可能にしたと言えば良いのか。

とにかく感情を鉄爪にして演算能力を上げ、超能力を強化することが出来る。フェイズが5より下や上の者が居ないでもないが大きな問題にならないので省こう。


感情化(ブレイク)。バースト発動」


感情が制御されて抑えられていた能力が解放され本来の強度(レベル)を取り戻す。

暁は自分の前方に野球のボールくらいのサイズがある数十個の黒い球体を現出させた。彼の能力【吸引爆弾(スイーパーボム)】だ。

それを幾条もの光線として放ち軌道上のものを吸い込みながら研究所の中で炸裂させる。建物全体が大きく揺れて外部にまで所々亀裂が入っていく。

未来促進研究所の内部は球状の爆発で吹き抜けのようになり、強度が著しく落ちた。


「おぉー負けてらんねぇな。
俺は半分解体するわ」


夢絶叶が【二次災害(セカンドチャンス)】を使いながら拳を振ると空間そのものが殴られ見えない素粒子レベルまで衝撃が走る。

それは振動として素粒子、中性子、原子核、原子、分子と順番に揺らし乗算するように振動を増幅させる。

最後には粒子の振動が熱にまで転化され原子崩壊する程のエネルギーを生み出すと第一位の一方通行と同じ向き(ベクトル)を操作する力で未来促進研究所の半分をキッチリ蒸発させた。


(あれだけの力をいとも簡単に制御しながら対象に集束させて瞬時に炸裂させるとは…! この男、ただのヒーローではないな……)

「良いものを見せてもらった。なら次は俺の番だな。よく見てろよ夢絶叶。これが俺の『フルバースト』だ!」


下田暁の体から黒い霧や煙に見えるオーラが出る。


「迂闊に触れるなよ?消されるからな」

「危ねっ!」


フルバーストはバースト以上に感情を高めて人間の精神が理性を保てるギリギリの状態で使う段階だ。

能力の源であり土台でもある『自分だけの現実(パーソナルリアリティー)』の奥底、つまり自分自身の心の中にある自分でも気付かない深層心理にまで感情を落とし込んで使う。

ただし暁は自分の意思で自分だけの現実に潜り込んでフルバーストを任意に使いこなせる制御能力があるので例外である。

彼が出している黒い煙霧のようなオーラは『悪魔の燻煙(デビルスモーク)』と言い、暁がフルバーストを使うと発生するもので、接触するとあらゆるものを消してしまう。

これは能力の一部として認識されているらしく、元々の能力に影響を及ぼさない。

バーストは能力の上昇値で言えば1が2に変わるようなもの。レベルで言えば相当な上がり方なのだがフルバーストの場合はそれどころではない。

数字ではなく?で表される測定不能、解析断念、正体不明の扱いになることが大半だ。


(訳の解らなさは表の超能力者第七位(ナンバーセブン)も顔負けだな…。AIM拡散力場が暴走並みに強くて酷く不安定だ。だがそれを維持してる……!)


fortressで『無系』という既存の枠に入らない『測定不可能能力者』と肩を並べて戦い第0学区の上位能力者も知る夢絶叶ですらも下田暁のフルバーストには驚きだ。


「俺がフルバーストさせた時、能力は【移動爆弾(アクションボム)】という名前になる。バースト状態の吸引爆弾(スイーパーボム)より規模が大きく複雑な動きが可能だ」


暁の頭上に大きな…10メートルはありそうな黒い球体が姿を現す。それは巨大なクレーンの鉄球を使って解体するように研究所へと叩き込まれた。


吸引(スイープ)!」


移動爆弾が建物を
黒球の中心へと引きずり込んでいく。


「くおぉ……!?」

(まるでブラックホールだな。360°全てにあるものを丸呑みしていきやがる……!)


そしてそのまま残った研究所の半分を球体に取り込むと重力が掛かっているかのように小さく圧縮して押し潰していく。

それに伴い黒球の大きさも小さくなった。


解放(リリース)爆破(ブラスト)


暁が呟くと内包した物体をエネルギーに変換し未来促進研究所が立っていた敷地をまるごと掘り返す程の大爆発が起き、まるで隕石が落ちたかのようなクレーターが出来た。

しかしそれを監視する小さな虫型ロボットには誰も気付かない。


「下田暁…。良いー具合いに育ってくれたじゃないか。昔みたいにデータを取らせて欲しいもんだぜ。他に居る【人形の残骸(ドールディブリス)】どもは何をしてるやら。ああ、そう言えばそっち(・・・)の方に三人ほど居るんだったっけな」


ロボットのカメラアイを通して暁を見ていたのは研究所から逃げた『裂守(さきもり)』という人物だ。そして話し掛けているのはある組織の幹部。


「私達の目的が達成されるか組織が活動を辞めるまでは手出し無用でお願いします。あの三人は支部長を勤めているので」


裂守に対して釘を刺すのは裂守に声を掛けられた【SUBJECT】の《小川真帆》。神田裂博の腕を刺したのは彼女だ。


「あの三人が自分からSUBJECTを辞めれば
問題はねぇんだろう?」

「手を回すつもりならご遠慮下さい。やっぱ堅苦しいのは合わないわね。ぶっちゃけアンタ頭のネジ飛んでるわよ?」

「凡人に俺の考えは理解出来ねえよ。まあ《一橋錐弥(ひとつばしきりや)》達には手を出さねぇでいるさ。それより最近懐かしい奴と賭けをしたんだ」

(ろく)な知り合いじゃ無いんだろうなあー)


彼が賭けをしたのは《STUDENT》という組織のリーダーなのだが此方(こちら)には関係の無い話。

SUBJECTにとってはとても縁がある相手なのだが。

裏で色々動いている間に暁と叶は仕事を終えた。学園都市の捕食者は再び暗部の闇へと沈んでいく。


「裂博が怪我をした。治療費と通院費を請求する」

「別に良いけどよ」


ghoul(グール)に仕事を押し付けたのがバレた叶は出費を給料から天引きされた。 
 

 
後書き
「ふっざけんじゃねえぞ重実!!! ちゃんと俺の給料を耳揃えて全部払えや!」
(#゚Д゚)ゴラァ

「ふう…任せた、来てくれ」
щ(゚д゚щ)カモーン

「………先輩。覚悟は出来てますね」
( ・-・)

「おまっ、それはちょっと卑怯だろ重実。よりによって…あ、ちょっと待って御臼ちゃん……」
Σ(゚Д゚;)

「ア"ァ─ッッッ!!!」

「うむ、今日も平和だな」
旦(´∀`)ズズー

(スルーだ)
(=_=)

ルレシオ・ジン・シェイリアスは夢絶叶が御臼来未にやられるのを眺めて、のんびりと茶をしばく叶世重実を見ながら我関せずとしていた。
──────────────

一旦この話は完結です。

機会と書きたいネタがあれば続きますけど。

それ以外のghoulの活躍は二次で見て下さい。
 

 

下田暁

 
前書き
二次設定を引き継いだ
三次設定になっています。 

 
下田(しもだ) (あかつき)

性別・男

年令・19才

一人称・俺

────────

身長190㎝

体重83㎏

─────────────
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

《性格》

冷徹/非情/熱血/執念深い

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《容姿モデル》

【新章イケメン大奥◇禁じられた恋】

[夏津/なつ]

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眼鏡を掛けた鋭い目付きの青年。

何処か近寄り難い雰囲気。

上下ともに黒の服装が多い。

誰かは知らないが、たまに『ガリ勉』とおちょくられることがあるらしいのだが、おちょくった人物が後でどうなっているのかは知られていない。

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かつて【第0学区・目的区】で行われていた【63計画】の被験者であり、実験体の一人だった【人形(ドール)】の《第二世代》

自分と同じように計画で【制御解除(リベライル)】を得た者達による反乱で起きた事件【学園都市の人工地震】によって解放され、生き残りの【人形の残骸(ドールディブリス)】となる。

数少ない実験当時の記憶を有す人間。

下田暁は第二世代の人形能力者の中でも特に制御解除を使いこなすことが出来る。


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《神田裂博》と共に二人で【ghoul(グール)】という殺し屋の組織を経営しており、その実力は【学園都市】の[暗部]からも『最凶』との呼び声が高く、裏社会では半ば伝説と化した。


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暁がghoulを立ち上げた理由は中学時代の友達《心包康光郎(こころづつみやすみつろう)》と《夢見ヶ原佐太尋(ゆめみがはらさだひろ)》の親友を殺した《ハデス》、そして【63計画】の首謀者であり中心人物の《神田裂守(かんださきもり)》を始末(ダウン)させ、計画で死んだ仲間の敵を取ること。

そしてハデスの次の標的になっているという
『阿修羅』を見付けることである。


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暗殺の依頼は莫大な報酬を得られるものの、暁と裂博の二人は毎月のように金欠で困窮している。

無駄使いしているわけではなく、情報屋へ支払い広域での長期に渡る調査をしてもらうことによるもの。

ハデスや阿修羅、裂守などは普通に捜していても見付からず、戦闘能力も高いので、学園都市に存在する情報組織で最大の規模を持つ【GROW(グロウ)】、その中でもトップクラス人間に動いてもらう必要が有るので定期的に大金が必要なのだ。


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《能力》

吭陰裂拒(スイーパー)

[レベル6.2]

小さい『ブラックホール』のような黒い塊を生み、それにより物も能力も吸い込む。

重力を掛けるように圧潰できる。

吸い込んだものに応じたエネルギーを放出させて爆発させることが出来る。

複数の弾を出せる。

設置することが出来、敵味方に関係無く爆発する[反応型]、時間が来ると発動する[時限型]、自分で動かす[任意型]、指定対象のみに攻撃が向かう[認識型]などが有る。

一度でも射出すると操作不能。

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《下田 暁》は制御解除(リベライル)の完成度が高い。

彼が[解放心(バースト)]を使うスイッチは『不快な奴』と『ghoulを(けな)された時』だが暁は感情の制御が優れているので自由に解放心が使える。


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第一解除(アインス)

[レベル???]

黒球の数と大きさが増す。

形状変化と簡単な操作。

足場に出来る。

指定対象のみを吸引。

吸引したものが転化したエネルギーを使う。

黒球を黒球に吸引させて、別の黒球が在る場所へと転移させられるが自分は転移できない。

吸引したもののエネルギーを使って連続の爆発や吸引の強化を行うことが出来る。


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第二解除(ツヴァイ)

餓怨尽誅(グラドオーバー)

[レベル???]

形状変化の自由度が拡張。

精密操作可能。

悪魔の燻煙(デビルスモーク)』という黒い煙のようなオーラを出し、触れたものを吸引し、爆破し、消す。

オーラを翼や天使の輪にしたり、身に纏うことや回復、強化など、幅広く使うことが出来る。

黒いエネルギーを空間転移に利用。

吸引したもののエネルギーを増幅し、反物質のように莫大なエネルギーを用いた爆発を起こしたり、超広範囲を黒い力で覆い尽くす。

 
 

 
後書き
そう言えば康光郎君と佐太尋君は《凉峰龍実》君と同じ聖セルビア学園だったな。

副会長と前生徒会長か。 

 

神田裂博

 
前書き
三次設定ですが変更するかもしれません。

基本は二次設定を引き継いでいます。 

 
神田(かんだ) 裂博(さきひろ)

性別・男

一人称・私/僕

年令・16才

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身長172㎝

体重56㎏

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《性格》

一途/穏やか/愛情深い

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《容姿モデル》

【あんさんぶるスターズ!】

朱桜 司(すおうつかさ)

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【63計画】に参加していた第二世代の【人形(ドール)】で【人形の残骸(ドールディブリス)】の一人。

現在は《下田暁》の相棒として、殺し屋組織の【ghoul(グール)】に勤めている。

『63計画』の首謀者である《神田 裂守(さきもり)》の弟だが、彼を恨んでもいる。

本来は心優しく戦いを好まないが、いざという時は他者を引っ張る発言力と意志の強さを持つ。

兄を心から嫌い、
彼のような人間を無くそうとしている。

兄を尊敬している部分もある。

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《能力》

機能停止(シャットダウン)

[レベル3.5]

自分から生物に接触して発動する。

意識や臓器の動きを制御する。

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第一解除(アインバースト)

[レベル4.5]

能力が強くなる。

相手から触れても能力が働く。

50メートル離れた相手にも効果がある。

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第二解除(ツヴァイバースト)

人生始末(ライフダウン)

[レベル5.5]

意識や臓器の制御だけでなく
寿命への干渉も出来る。

射程は100メートル。

白銀翔(シルバリオ)】という白銀に輝く翼のようなオーラを背中から放出して攻防に使用できる。

敵対者がオーラに触れると意識が消失させられたり臓器に変調を(きた)して正常な行動を取れなくなってしまう。

オーラに触れた味方を回復させる。

対象から奪った時間(寿命)を使うことで
自己を強化・回復することが可能。

体内電流を乱して神経伝達を狂わせ本人にも予想できない突発的な動きを引き起こさせる。

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《サンプルボイス》

「裂博です。よろしく」

「兄は悪の化身みたいな人です」

「僕も残骸(ディブリス)ですよ?」

「裂守。お前だけは殺すッ!!」

「兄さん……」

「暁さん。僕が先に始末(ダウン)するかもですよ?」 
 

 
後書き
素奈田(そなた) 匠真(しょうま)》に関しては私もあまり解らないので上には書きません。

この話が進んで裂守さんと戦うなら暁さんも裂博君も第二解除を越えてきますよ。主役ですしね。

裂守さんの名前が人形のメンバーとして載ってるんですけど裂博君の間違いかなと思います。