『殺し、失い、得たもの。』


 

『人物紹介』





蓮(零の男友達)

舞(零の妹分)

桜(舞の実姉)

組長
(零の父親的存在)

蓮のツレ5人


『零』

母親から放置され、死にかけては何とか生き延びた。
再婚した男から虐待とレイプを受け続ける。
何回も死を試みるも逝かして貰えず、生かされてる。
負けん気だけは無駄に強い。
間違ったことが許せん。
筋通さん奴が好かん。
口が悪くて強情で意固地。
かなりの負けず嫌い。
歪んだ性格。
捻れた人格。


『蓮』

家庭環境が似てた。
決定的に違うのは、蓮が男でチカラが強いって事。
されっぱなしから反発して暴力で返すようになった。
それで虐待から抜け出せた事。

蓮の母親は、蓮に怯えて、蓮の存在を消したがってる。
『ウチの子じゃありません』
其れが口癖。

性格は意外に素直。
良くも悪くも零に似てハッキリ言うタイプ。
で、反感を買いやすい。
トラブルは絶えん。

顔は可愛い系。
話が合うって言うか、深いところで共鳴する。
交わす言葉は少なくとも解り合える。
馴れ合いでもなく特別な愛でもない。

同じ闇を感じ取り、お互いに無言でも解り合い支え合えた。


 

 

『舞』



何故か妙に零を慕ってくる可愛い子。
目はクリクリ。
ぷっくりアヒル口。
両親不仲で、父親は愛人宅。
母親は若い男とセックス狂い。

『舞がおってもおらんでも家庭は崩れてる。誰もおらん家に帰る意味がない。お姉ちゃんは、おるけど微妙な関係』

そう淋しそうに泣く。
守りたくなる。
そんな子だった。

いかにも女の子って感じの子は嫌い。
舞は見た目も中身も女の子らしい女の子。
本来なら好かんタイプ。
でも、不思議と舞は放っとけんかった。

守りたい。
守ったらなあかん。
居場所を求めてんねや。
其れは解る。

自分の存在に意味やか無いって思ったまんま、生きていって欲しくなかった。
そんなん、ごっつ辛いし、苦しいやんか...

血を分けた妹の様に、大事な大事な存在になった。


『桜』

舞の実姉。
零は、舞と桜の関係性を知る為、桜に近付いた。
強気で勝ち気で生意気。
口が悪くてプライド高い女。
自分がもう1人おるみたいやった。

喧嘩中の桜に加勢。
でも、喧嘩中にも関わらず、零の胸ぐら掴んできた。

『おどれ誰ぞ』
『似たモン同士』
『はぁ?アホか』
『お互い様。とりあえず終わらそ』
『おぉっ!』

喧嘩が終わって色んな事を話した。
気が合うってゆうか分身?
そんくらい許し合えた。

目的は家族の話。

『妹おるやんなぁ。超可愛い♪』

『...知り合いなん?』

『慕ってくれてる♪』

『そっか、アンタが傍におるんなら良かったわ』

『...複雑なん?』

『姉の意地やな。何も出来なんだ。合わす顔やか無いわ』

『詳しくは知らんけど、その気持ち舞には伝わってないよな?』

『助けてやれなんだ!合わす顔やか無い言うてるやんかっ!』

自分を責めるように泣き出した。
苦しくてイタイ気持ち。
助けたい人を助けれんかった...
そのイタミは、ほんまにイタイくらいに解る...

『桜、大丈夫。舞、其処に来てる』

舞は、泣きながら桜を優しく包み込むように抱きしめた。


『姉妹愛』

長年のボタンの掛け違い。
想うが故の遠慮。
想うが故のイタミ。

元の仲良し姉妹に戻った。
何のシコリもなく。
良かった...
ほんま嬉しかった。
つい、涙が流れるくらいに...


 

 

『組長』



ヤクザの組長。
父親的存在。
義理人情の塊。

助けを求めると即、駆けつけてくれる。
強がってる時でさえ見抜くから、零は泣かされてばっかり。
零の本音を読むのが得意。

基本的には激甘なくらい優しい。
普段怒鳴る事は無い。
時々厳しく叱咤。
その時は相当怖い。
情が相当深い。


『蓮のツレ』

いっつも皆で馬鹿やってる。
幼稚な遊びで騒いでる。
単なるガキ。
頭弱いし喧嘩も弱い。
そのくせイキッとる。
で、目ぇつけられてフルボッコ。
馬鹿過ぎて笑える。

そんな馬鹿な奴やけど人間らしい人間。
本能に正直で、計算も駆け引きも裏表も無い。
『今』を楽しく生きることに重きを置いてる。

先のことは考えん。
やりたいことをやる。
怖いモンやか何もない。

零も同じ。
怖いモンも失うモンも、そんなん何ひとつ無かった。
何も持ってない。
何も要らん。
やりたいことやって怒られたって、捕まったって、死んでしもたって、どうでもええ。
関係ない。
後悔やかせん。
そんなスタンス。

1日、どう楽しく過ごせれるか、其れが日々の課題。
それぞれ、暗い闇を思い起こさずに済むか...

好奇心、拒絶、意外にハマッたり、色んなアソビを持ってくる。
おもろい馬鹿な奴等。
根が優しくて、良い奴ばっか。


 

 

『舞と蓮』



舞は父親のせいで男嫌い。
不信感と嫌悪感が相当強い。
でも、舞みたいに可愛い女を盛りのついた男が放っとくわけない。
そんな男のギラつく態度に恐怖心を煽られる。
近寄って来るだけで泣き出してしまう。

本人の意思もあり、蓮で慣れさすことに。

いずれは自然と男に興味持つやろうけど。
蓮とは可愛い系同士で似合う。
蓮は、ピン10本前後くらいで髪のアレンジしてる。
アレンジしてる髪をワックスつけて遊んでツンツンさしてる。
オシャレ感漂う男子。

零から見たら、やりすぎやし単なる女々しい男なんやけどね。
舞は、逆に蓮みたいなオシャレ男子が好きっぽい。

改めて、舞に蓮を紹介した。
会話どころか返事すら俯いてる舞。
蓮は優しいし穏やかやから、無理矢理喋らそうとかは無い。
無理ささんようにってのは伝わってくる。

零がトイレに立つ。
舞もついてきた。
蓮に、待ってて、ゴメン!って合図した。

『舞、蓮どぉ?』
『優しくて可愛い』

恥ずかしそうに言うのが、ごっつ可愛い。

『付き合ってみたりは?』
『ムリムリムリムリムリ!』

超必死でクソ可愛い。

『いきなりじゃなくて、勿論2人で話す時間とか増えたら、そのうち』

『でも...男...』

『舞、舞は病気とかや無い。嫌悪感はある。零も同じ。でも舞は、舞が好きな人なら大丈夫。大丈夫、克服できる。ゆっくり頑張ろ?』

『蓮は、怖くないし嫌悪感もない。でも顔見るんも見られるんも恥ずかしい。好きとか恋愛とか全然解らんし...』

必死。
放っといてもくっつく。


確信してた。
蓮は最初から舞に惚れてた。
根は真面目やから大事にはするやろう。

席に戻ったら舞が頑張りだした。
『失礼な態度でゴメンナサイっ!』

『零、おまえ舞に何説教したんぞ。いじめんなやっ!
舞、零の言うことやか気にすんな!俺は理解しとるつもりや♪』

舞にニカっ!と笑った。
カッコつけくさって...

『てか零が可愛い可愛い舞をいじめるわけ無いやろ!カッコつけんなや馬鹿蓮!』

『うっさい馬鹿零!』
『おどれのー!殴らせや』
『殴らしたらん』

掴み合いやけど、いつものジャレ合い。
舞は笑ってる。
蓮の目はアニメみたいにハートなってる。

数日後、2人から付き合いだしたって報告を受けた。
シッカリと手を繋いでた。

『舞、良かったなぁ』

『でも、蓮以外は怖い』

『蓮、オマエ他の男に取られるなよっ!舞のこと守れよっ!』

『はぁ!言われんでも守るし!舞、浮気...すんなよ...?』

何故か最後オドオド言う蓮。
その言い方に舞がツボッた。
ケタケタ笑ってる。
大丈夫かな...?


 

 

『零と桜』


相変わらず呼び出しは食らう。
うんざりする。
無駄な頭数だけ揃えてくる奴等。
コッチは無駄な馴れ合いやか好かんし2人。

喧嘩が好きなワケちゃうし。
わざわざ痛いのとか勘弁やし。
そんなん虐待だけで充分過ぎるやろ。
殴る方も痛いし。
自ら望んでする喧嘩は滅多にない。

喧嘩で強くなりたいワケでもない。
でも、勝手な言いがかりつけて喧嘩ふっかけられたら腹立つやん。
無駄な喧嘩に勝っても意味やか無い。
嬉しくもない。
でも、何でも負けたら負けたで悔しいし腹立つやん。
負けず嫌いやし。

桜とは喧嘩したくない。
絶対お互い譲らん。
2人共が負けず嫌いの度合い半端無いから。
考えただけでゾーッ!!とする。


『蓮の異変』

舞と蓮は暫くズット一緒だった。
最近たまに蓮がおらんなる。
其の度に舞が暗い顔してる。
口喧嘩すら聞いたこと無いけど、なんかあんのかな?

『舞、蓮は?』
『えっとー...帰った!』

何か隠してる。
こんなん今迄なかった。
余計なお世話かも知れん。
けど...踏み込んだ。

『舞、何隠してる?言いたぁない?それとも言えんよぉな何か?』

『言いたい...けど!』

『言うん怖い?零が信用ならんけん?』

『ちがっ!違うっ!!蓮が!怖い!薬が...蓮が...!!』

はちきれたように泣き崩れた。

『...蓮、薬しよん?』
舞は頷く。
『何てやつか解る?』
舞は首を横に振る。

舞は、零達と違って普通の子。
悪さには無関係で無知。
一緒に居るだけ。
ただただ純粋な子。
すれてない子。

『わかった。蓮には零が言っとく。正直言って薬は初めてちゃうんや。やってるのは知ってる。ハマッてないし問題無かったから何も言わんかった。
それに、蓮は零と似てて、誰に何言われても従うことはせんやろ?止めても意味ないんよ...』

『でもっ!人間やめますか?ってやつやろ?蓮、死ぬん?嫌やそんなん!お願いやけんヤメさしてやぁっ!!』

舞は号泣した。
何とかなだめた。
でも、蓮はヤメん。
零が言ってもヤメん。
誰が言っても同じ。

零と違って、蓮は素直で可愛い。
でも、零と同じで、自分の意志で選択したことは他人の意志で変えることは有り得ん。
『従うこと』は有り得ん。
何よりキライ。
同じやから解る...。
仮に其処に愛が在っても。

共に歪んでる。
価値観も歪んでる。
思考回路も歪んでる。
で、2人共、根は真面目。



蓮の居場所を突き止めた。
見たこと無い人達とおった。

『蓮!ちょお来て!』
『おぉっ!何で此処に?』

いつもの口調。
でも、違和感...。

『今はあの人から買いよん?』
『うん!あ、欲しいん?』

『要らんわ。アンタなぁ、舞のこと守るんやないん?そんなんやっとったら守れんなるで?
舞が怖がってる...蓮が壊れるんやないかって。人間やめますか?ってやつになるんちゃうかって...それでええん?』

『アイツやらしてくれんもん。ほな紛らわすしかないやん?』

え...
そんな理由?
で、薬?

『アンタ冷静なりぃや!舞は男嫌いで近付いて来ただけで泣いてたんやで。でもアンタに惚れた。
ユックリでええやん、焦らんでもええやん。なぁ?』

『待っとるやん。薬で身ぃ削ってまで待っとるっ!!』

引いた。
なんか、冷めた。
最低。
ショックやった。
蓮は...
こんなんちゃうかった。

『アンタのこと買い被り過ぎてたかも。ガキ過ぎてビックリ。
舞から手ぇ引いて。別れて。
其れが嫌なら薬ヤメて。どっちか選びぃや』

翌日、舞に話した。

『蓮と別れるん嫌?好き?』
『嫌!!ちゃんと好き!!』

『そっか、蓮には昨日話した。舞と別れたぁ無かったら薬やめぇ。選びぃやって言うた。』

『蓮、なんて?』
『なんも』

暫く沈黙。
舞は涙を堪えながら言う。

『舞は蓮を信じる。舞が自分で蓮を好きになったんやけん』

『うん。信じたげて。零は舞みたいに強く信じるのは無理』

『でも2人は舞に解らんとこで強い絆在るやん!そんなこと言わんといてやっ!』

『ごめんな...やからこそってのも在るんよ...蓮を紹介した零が悪い。でも、蓮がチャント舞んとこに戻ってきたら信じれる』


 

 

『零と組長』



零は組長に相談した。
『そいつ連れて来たら薬抜いたるわ。根性も叩き直したる。任しとき!』

『誰の言うことも一切聞かんからなぁ。連れてくるんも厄介。でも、舞の為にもヤメて欲しい』

『零?おまえが思い詰める必要無いやろ?』

『2人が付き合うようになったん零の紹介やし、蓮を買い被り過ぎてたし、零の責任...』

泣いてしもた。
頭ポンポンされる。

『おまえが信じてた蓮は、もう見込み無いんか?時間が経てば変わることも在るかも知れんぞ?』

『...待ってみる。ごめん、迷惑ばっかりかけて...』

『あははははは!!おまえの迷惑くらい可愛いもんや。ワシを誰や思とんや!甘えとけ!!』

そう笑っててくれる。

零は、組長に救われて以来、父親の姿を重ねてる。
組長も解ってくれてる。


『蓮、舞の元へ』

蓮が戻って来た。
舞曰わく、薬ヤメたらしい。
でも、信用しきれなんだ...。

『蓮、ヤメたんは何で?』

『はぁ?ヤメぇ言うたんオマエだろ!俺が買えん様に手ぇ廻しくさってから!なんなんぞマジ』

『はぁ?何ソレ意味解らん!!その言い方やったら買えんけんヤメたってだけやんっ!!舞の為とかそぉゆう気持ち無いやんか!!』

『どっちもや』

『...呆れたぁ...蓮、アンタ変わったわ。信用してた自分が情けない。ごっつムカツクっ!!』

ほんっま情けない。
涙が止まらん。
悔しい...。

蓮は、もう、零の知ってる前の蓮じゃない。
確実に壊れてしもてる。
こんな奴やなかった。
薬が人格を変えるのは良く解ってる。

根は凄く優しくて真面目で、素直で可愛くて憎めん奴やった。
そぉいや、何の薬やってたんやろ...
人間やめますか?
そんなん信じてなかった。
そんな風になるのは馬鹿な奴だけって...。
薬やか意思ひとつでヤメれるのにヤメる気が無いだけやって。

前とは違う蓮。
それでも舞は変わらず優しい。
可愛い笑顔で蓮に向かう。
『愛』ってすごいんやなって感じた。
でも...痛々しかった。

蓮は、次は酒浸りになった。
御飯も食べずにやつれた。
人相も変わった。
可愛らしい面影もなくなった。
舞は、それでも蓮に尽くしてた。
酒臭い蓮が近付いて来た。

『零!もぉ俺マジ薬ヤメたけん!で、今アル中。オマエのせいやけんのぉ』

『はいはいわかった!えらいやん!薬ヤメれて!ほな酒もヤメれるわ。減らしぃや。舞見てて痛々しい』


『はぁ?そんなに舞が大事なんか零は...俺より...。俺がこんなんなっとんのにアイツ未だにヤらしてくれんのんで!限界...』

『またその話?ほな蓮は舞とヤル為に付き合ったん?ちゃうやろ?!蓮はそんなん関係無しに舞を守るって言うたやん!!』

『零...俺も男や』

『わかってるよ。それでもやんか!それでも!舞に対しては理解在った筈やんか!...もぉええ。舞と別れてやぁ...』

『はぁ?イヤやし!どぉせならヤらして貰わな損やしな!』


 

 

『組長宅』



色んなモヤモヤはあったけど、蓮が言うてた『手ぇ廻して』ってのがズーット気になってた。
買えんなったって。

組長が?
でも、蓮の事、何処の誰かも知らん筈やしなぁ...
いや、でもやっぱ、薬関係や売人も関与しとるよね?
でも、あんな馬鹿丸出しのチンピラやか此の組に居らんし...。

『おぉっ!元気やったか?』

厳つい顔が急にニカッ!と無邪気な笑顔に変わる。
頭クシャクシャされた。

『なんやぁ、元気ないやないか!どしたんぞ!言うてみぃ!何飲む?』

『ドライ』

『おまえなぁー...まぁえっか!付き合ったるわ』

『...』

『ほら!乾杯!零...オマエは娘みたいなもんや。言うてるやろ。
オマエもワシを父親みたいに慕ってくれとる。遠慮すな!何でも言え!出来ることなら何でもしてやるっ!!誰や思とんや!
ワシやでっ♪』

ごっつ満面の笑み♪
思わずドライ吹き出しそうやった。

『...せやんな、今更気ぃ遣う間柄でも無いよなぁ...
あんなぁ、服買って!高級なやつ!着てみたいねん1回だけ!』

『アホ、そんな事ちゃうやろ。オマエ高級品に興味無い筈や!ほんまに欲しいモンなら金額関係なく何でも買ったるで言いや♪
で?なんや?そんな言いにくいことなんか?』

言いにくいワケではない。
自分でも何で濁しよんか解らん。

『あんなぁ、こないだ蓮の話したやんかぁ...蓮に薬売ってた奴等って知ってたりする?』

『あー、そりゃ、まぁ。どした?欲しいんか?オマエがするんはワシが許さんぞっ!!』

『零もぉヤらんし。効かんし。何が楽しいか解らんからムダ』

『オマエいつの間に...もぉ絶対にすんなよっ!!』

『はいっ!...って、なんか親子みたいやし♪』

『そんなもんやろが♪』

『まぁねぇ。
そぉそぉ、ほんで、蓮に薬売らん様にし向けたんって...』

『おうっ!ワシよっ!』

『え、でも蓮の事、顔も知らんし何も知らんやん...』

『そりゃあ...零、此処が何でワシが何なんか解っとるやろ。
ガキ調べるんやか簡単よ?』

『そっか...じゃあ、父さんも』

『ストップストップ!別問題っ!前も言うたろ?情報が無さ過ぎる。県外やし、しかも大阪はなぁ...』

『まぁね!地元のガキとは違うしねっ♪』

無理矢理笑って話した。
泣きそうだった。
頭ポンポンされた。
やっぱり泣く。


『絶対に逢う度に泣いてるやん。零、ごっつい泣き虫みたい。いっつも負けた感じするし』

『普段泣かんからや。溜め過ぎなんや。まぁ、泣くんやかどぉせワシん前くらいやろが?可愛いやっちゃ♪泣け泣けぇ♪』

『もぉー...ヤメてやぁー...』

『あははははは...
ほんで蓮はどぉなっとんな?』

『今はアル中ぽい?やつれてるし人相も違うし...舞とくっつけたこと、ごっつ後悔しとる。
舞が痛々しくて正直マジ辛い』

『薬が酒に変わったか。あの薬しょったら他の下手なんは受け付けんからなぁ』

『そんなひどいやつ?』

『いや、ひどいんやのぉて質がええやつや』

『ふーん』

『零は知らんでええ』

『うん。もぉ興味無いし大丈夫やで、安心してや♪』


 

 

『舞と桜』



痛々しい舞。
それでも無理矢理ヤル事はしてない蓮。
理性は在るみたい。
桜は舞に付きっきり。
可愛い可愛い妹やし当然。

組長と、良い案が無いか考えてた。
蓮が学生やなかったら組入れて更生さすんは簡単らしい。
学生やしカタギやし、蓮をどうこうするのは難しいって。
見守るしかないって。
下手なことは出来んって。

舞は急に泣き出す。
叫び出す。
情緒不安定。
過呼吸も起こす様なった。

零は過呼吸もちやから組長に薬貰ってた。
でも、あんまり飲むことは無かった。
何故か?
効果無いからやな。

舞が紙袋吸うのも困難になったら桜に薬を渡してた。
蓮は、そんな舞を見ても我関せず。
騒いでるしブチギレそう。
今、感情任せに殴りかかったら止まらん。
なんとか理性を保つ努力をした。


 

 

『零の本心』



組長に、蓮を消して欲しいって笑いながら言った。

『零、本心やろ其れ』

『あはは。何言いよんやろな。出来んわなそんなこと』

『ワシが消すんは簡単や。でも早まるな。零のせいやない。体を許したくない舞チャンのせいでもない。悪いんは蓮自身や。其れが事実や!!間違うな!!』

またまた泣いた...
なんでか今回なかなか涙止まらんやん。
感情が、頭が、まとまらん。
今のまんまやったら怖い。
確実に此の手で...

現状を変えたかった。

『なぁ蓮、ヤれたら誰でもえんか?』

『お?何ソレ。用意してくれんの?』

『てことは舞やなくてもえん?』

『其れと此は別やろ』

『蓮...浮気しよん?』

『あったりまえやん!!ヤらしてくれん女とおる意味ないし』

初めて本気で連に殴りかかった。
頭ん中で『殺したアカン!!』って必死で言い聞かせてた。
元々、蓮のチカラは強い。
一切適わん相手や。
でも、今の蓮は弱い。
零と互角。
零が押し倒して馬乗りになって殴れる程に弱くなってる。

決して零が強いワケやない。
武道とか、鍛えたりしてない、普通の女の中では強い方やけど、なんぼなんでも男には負けてきた。
男に勝つことはなかった。

周りに人がおって良かった。
殺さずに済んだ。

組長に話した。
ありのまま全部。
零は自分が怖い。
理性を失ったらどうなるか。
自分が一番良く解ってる。
組長も、零の過去全部知ってる。
職員達が知らん事も全部、調査済みやと思う。
わざわざ隠す気も無いけど。

『理性飛ばす薬ならナンボでも在るくせに』

愚かやな。
零は馬鹿で愚かで救いようがない。
死にたい。
殺して。
狂ったように叫びながら泣いた。
何の涙なんかも解らん。

零がある程度落ち着いてから、組長が大事な用在るからって出て行った。
すぐ帰って来るからおれって。

零はドライ飲みまくっては泣いての繰り返し。
しまいには部屋に在ったテキーラ飲んでた。
焼けるように熱くて其れがクセになった。
笑いながら、泣きながら、壊れたまま飲み続けた。

部屋には、組の人が何人かおったけど、どうしたら良いか解らんかったんやろな。
意外と早く帰ってきた組長は、皆を怒鳴り散らしてた。
零が潰れてたから。

普段怒鳴り散らすやか滅多にないからビックリした。
気付いたら寝室。
初めて組長に拾われて以来やなぁ。
懐かしい。

てか超頭割れそう。
泣きそう。
ってかバリ泣っきょったし。
馬鹿...手に負えん。
まいるわ。
自分の馬鹿さ加減に情けなさ過ぎて絶望。

組長が美味しそうな『オジヤ』作って持ってきてくれた。
妙に『愛されてるってこんな感じなんかなぁ』って想って、また号泣。

どんだけ泣いたら涙が無くなるんやろ。
泣きっぱなしな気がする。
困るやんね、組長も。
相変わらず優しい。
今日は特に。
隣で胸を貸してくれた。
頭も背中も撫でてくれた。
このまま寝てしまいそぉ。
いっそ、抱かれても良いと想うくらい優しい。

『零とヤる?』

『あっ!アホかっ!おまっ!
ほんっまに!オマエなぁっ!!』

『あはは。そんな焦らんでええやん。失礼やわぁ!!』

『自分を大事にしなさい!ワシやなかったら食われとるぞ!』

あかん...
おもしろい。
久々に勝った気分♪

『ごめんな...あの日からズット零は迷惑かけっぱなしや。
解ってる。いつまでもこんなんやったらあかんやんな。
誰かに甘えた記憶も、甘える癖も無い。やけん普通とは違う、普通よりタチ悪いんやと思う。
零の人生、組長の存在は一生残る。なんぼ頭下げても返しようがない恩がある。でも、たぶん、また迷惑かけることになる。
今迄とは違う罪。やけん、もぉ零とは...』

『言うな!!そん時はそん時や!ワシは味方や!娘は親父が守る。そぉゆうもんやろが!』

組長はニカッ!と笑った。

正直、なんでここまでしてくれるんか理解できひん。
義理人情の強い、情の深い人やから...
放っとけんだけなんやろな、拾ってしもたし...
それとも別の違う何かが在るんか...
実は、父さんと知り合いとか?
考えたとこで解らん。
さぐることも出来ひんし。
聞いたとこで、何もないよって言うのは解ってる。


 

 

『舞の本心』



舞に話した。
零の本心を。
舞の本心を聞いた。

舞は、こんな風に変わった蓮でも守ってあげたいって。
でも、舞はカラダを許さん。
それは舞が自身を責めてた。
それでも無理って。
単純に怖いって。
Sexに興味無い女からしたら未知の世界。
そんなんせんでも一緒に居て気持ちが満たされるなら充分。
性欲ある女以外は。

カラダを許して蓮が満足するなら...
元の、おもしろくて優しくて可愛い蓮に戻るなら...
舞は、そぉ言いはじめた。
蓮は3日おきくらいに舞に聞いてくるらしい。
次、聞かれたら許すって舞が決めた。

純粋無垢な処女の一大決心。


 

 

『桜の本心』



『可愛い妹が、あんな状態の男の相手になるんやか嫌っ!犠牲になるんやか間違っとる!なんなら桜がぶち殺したってもええ位や!!そんくらい今のアイツには殺意しかない。

舞の決めたこと...相当悩んで考えて出した決意...姉としては否定したくない。

でもっ!!やっぱり...姉やからこそ無理やわ。黙って見とけん。絶対大事にされんやん。解ってるし...せやのに...

犠牲になる必要やか無いんや。舞が責任感じることやか無いんや。間違っとる!間違っとる!間違っとる!

許せん...蓮が...っ!!!』


 

 

『蓮の本心』



蓮と話した。
舞と零に対してどう考えてるか。

『何が?何も考えとらんわ。要は舞がヤらしてくれたらええんやって!なんでこんな拒否られ続けなアカンのん。好きならヤらせぇやっちゅーねん。意味解らんのんじゃって!!』

キレながら話す蓮。
アカンわ。
零は蓮を見切った。
改めて最低やと感じた。

零が、世の中で、どんな人間を最低な奴だと思ってるか...
それすらも忘れてるんか?
悲しかった。

あんなに、お互い解り合えて、語り合って、支え合ってきた。
其れが無かったことの様になってて...
ただただ、悲しかった...
淋しかった...


 

 

『其の日』



舞が来た。
零と桜は、舞がおかしいと察して顔を見合わせた。

桜が聞いた。
『舞、なんかあった?』

零も言った。
『何でも言って!何でもする!』

不安で不安で怖かった。

舞が小声で言った。
『今日ラブホ行く。さっき蓮に待てんって言われた...』

桜が言う。
『解った!そのかわり、場所は連絡して!』

舞は黙って深く頷いた。
舞は泣いてない。

でも、零と桜が泣いてた。
舞に、もしものことがあったらヤバイな2人共。

桜のケータイが鳴る。

舞からのメール。
[蓮が、先にツレとゲーセン行くけん付き合えって]

桜が返信。
[状況変わる時また教えて!気を付けや!近くには居るから!]

暫く経ってケータイが鳴る。
[次カラオケ。知らん人増えた!]

怖い...
どぉしよぉ...
舞、危ないやんなぁ。
2人は考えた。

舞にメール送った。
[蓮のケータイ鳴らす!なんとか気付くようにして!]

蓮にケータイかけながら移動。
尾行は、敏感な蓮は気付くからヤメてた。
カラオケ店に向かった。
偶然は有り得んけん危険。

6回目の発信で蓮は出た。
『なんぞーなんべんも鳴らしてーっ!今カラオケ中やしっ』

『マジで!混ぜてや』

『来るーんっ!また説教とか嫌やしぃーっ』

少し酔ってる感じ。
薬しよらなんだらええけど。

『説教せんし奢るけん!』

『マジっ!奢りならええよ♪マジ説教無しぞっ!!』

『解った!』

とりあえず受け入れたってことは悪企みは無さそう?

桜が舞に報告メール。
[今行きよるけんっ]

舞から返信。
[ありがとー怖かったから嬉しい!待っとくね♪]

妙に不安になった。
とにかく全力で急いだ。

舞の顔見て安心した。
思わず『良かったぁー』って言いそぉになって、慌てて口を塞いだ。
ホンマ無事で良かった。

蓮からは、舞も一緒って聞いて無かった。
だからわざとらしく言った。
『舞♪蓮と一緒やったんやぁ♪あゆ歌ったん?』

舞を挟む様に零と桜が両隣に座った。
ふと、蓮が居らんことに気付いた。
笑えるくらい舞しか目に入ってなかった。

見たこと無い人に対して零が聞く。
『蓮とは何仲間?』
『くすりぃー♪』
『あー、ねぇ』
『アンタ零やろ?』
『何で知っとん!』

ケラケラ笑われた。

『蓮が、俺を説教できるんは零しかおらんって言ってた』

『手ぇかかるやろ、蓮。昔のが可愛かったで♪』

『手ぇかかるやろ、蓮。昔のが可愛かったで♪』

『最近知り合ったけんのぉ』

蓮が戻ってきた。

『早っ!もぉおるしぃっ!』
『せやろ♪何でも頼み!』
『ほな酒とツマミ追加ー♪』
『はいはぁい』

桜は、場を盛り上げた。
零は、皆に解らんように舞の背中さすったり手ぇ握ったり。

会計済まして今からどぉするか聞いた。
すかさず蓮が言う。
『今日は舞貰うけん邪魔すんな!おまえらは帰れぇーっ♪』

舞は、覚悟を決めた表情に。
別れた後ホテルの名称だけの本文が届いた。

2時間経っても連絡は無い。
蓮、ムチャクチャな事しよんかな...
舞、辛くて連絡出来んのんかな...
不安で不安でたまらんかった...

ふと桜が言う。
『周りの連中にってことは...』

別れ際のことを思い出す。
皆、蓮と舞とは離れてたけど、同じ方向だった。

桜が慌てて舞のケータイにかける。
ホテルに向かう。
ホテルの人に舞の写真見せたけど見てないって。
駅に向かった。
他校の制服がバラつく中、舞を探した。
見当たらん。

桜は舞のケータイ鳴らし続ける。
聞き覚えのある着メロ。
零と舞が大好きな、あゆの...
嘘やん...零は桜を見た。
桜は泣いてた。
悪い予感しかせん。
桜は一旦ケータイを切った。
また鳴らす。

響いてるのは目の前のトイレの中。
零も涙が流れてた。
鍵は閉まってる。
桜がまた舞のケータイを鳴らす。
間違いなく、目の前の個室から流れる。

何が起きた?

あらゆる想像をした上で、どれなんや?
で、舞はどんな状態なんや?
まず、生きててくれなアカン!!
どぉしたらえんや!!

此は現実なんか?


 

 

『殺意』



『舞?...舞...舞っ!!舞っ!!舞...居るんやろ?生きてるやろ?お願い...開けて...舞...』

2人共泣きながら...
声が出んくらい怖くて...
必死で舞を呼んだ。

カチャッ!ギィ――――…

『舞っ...!!!』

良かった...
ほんっっっまに...
安堵の涙が溢れ出た。

舞の目に涙はない。
感情が無い目。
遠くを見てる。
服は刃物で切られてる。
下着も同様。
零には、痛いほど解る。

『舞?舞...舞?まーいー?わかる?舞?』

舞が戻ってくるように声掛けを続けた。
舞を抱えて個室から出た。
零が服を脱いで舞に着させた。

桜が鞄から出したブランケットを舞の背中に掛けた。
零は舞を抱えたまま思いっ切り抱き締めた。
桜は舞を後ろから抱き締めた。

暫く、体温と意識を戻す為に必死だった。
桜は自販機に飲み物を買いに行った。

舞に、飲み物を少しずつ流し入れた。
無意識にコクッと飲んだ。
舞の目が少し戻ってきてる様な気がする。

声を掛ける。
名前を呼び続ける。
抱き締め続ける。
きつく。
きつく。
きつく...
戻ってきて!!って想いを込めて...

突然、舞が叫んだ。
戻った。
残酷な現実に...
記憶障害にはなってないみたい...。

人間には、あまりにも辛い体験をした場合、許容範囲を越えると記憶を失う能力が有る。
零は昔、そんな能力が欲しくて欲しくてたまらんかった。
...舞にも其の能力が在れば良かったのに...。

舞は叫んだ。
泣いた。
笑い出した。
解る。
解るよ。
イタイくらいに...
解る...
そうなるよね。

昔の自分とリンクした。

感情は既に抑えれん。

殺す。


 

 

『決行』



桜も零の過去を知ってる。
初日に語り合ってる。
零の今の想い、考え、行動...察してくれた。
桜に過呼吸の薬を渡した。
通じ合った。

『舞を任したよ、姉ちゃん!』
『...死ぬなよ!!』

お互い、泣いてるものの、笑顔で...

蓮のツレに連絡。
来た順に半殺し。
零はもぉ泣いてない。
ただただ淡々と、無心に、痛みを感じんくらい、殴り続け、蹴り続けた。
勿論、零も殴られてる。
相手は男やもん。
下手したら零が死ぬ。
それでも、痛みを感じることは無かった。

舞のイタミに比べたら...

あの時のイタミに比べたら...

此の絶望感に比べたら...

1人が口を開いた。
すべて蓮の命令だったと。
零は、こいつ等がムリヤリってのも有るかも知れんって考えてた。
100%蓮の仕業では無いだろうと...。

この期に及んで...。
蓮に対する情が少し残ってた。

それでも、真実が、こいつ等の言う通りなら殺す。
ホテルの前で舞が躊躇した。
怖いって。
たったそれだけ。
でも、蓮にとっては、薬や酒で紛らわしてきて散々待たされてる。
だから、もぉ限界越えてた。

蓮は、駅に行ったツレに連絡した。
トイレ集合。

舞は、死にたいくらい辛かったやろな。
怖かったやろな。
ツレに抑えられ、口も塞がれ、彼氏にムリヤリ犯される。
其の後、蓮はツレ皆に、舞をヤる命令を下した。

拒否した奴もおる。
だいたい殆どが舞に恋心抱いてたワケやし。
ラッキーって思う奴と、こんな可哀想なこと出来んって思う奴に分かれたらしい。

でも、命令は命令。
せめて痛くない様に優しくするしか無かった。
舞に申し訳ない気持ちで涙した奴もおった。
イッたフリして早々終わらした奴も。
そんな皆の舞を庇う気持ちが気に入らんかったんか、蓮は、痛めつける様に激しくせぇってキレたらしい。

最っっっ低!!!
最低ってもんじゃ無い!!
殺しても足りんのんちゃうか!!

蓮に何処居るんか聞いて貰た。
あの海に居るらしい。
よく遊んだり語ったりした。
季節関係なく花火して騒いだり、光のない未来に絶望して生きるのをヤメようとしたり...
色んな沢山の思い出が駆け巡る。

なんでこんなことに?
蓮が薬せなんだら?
舞を逢わせてなかったら?
いや、零と出逢ってなかったら?
何があかんかった?


 

 

『決闘』



せめて零が此の手で、すべてから解放さしてやる...

どっちが死んでも最期の場所に相応しい。

思い出が多過ぎる此の場所...

深い処で繋がってた。

どんなに憎んでも消えん事実。

其れでも、許すことは不可能。

蓮も、零が受けてきた全てを知ってる。
だからこそ覚悟はしてるんやろ。
せやから此処に居るんやろ。

零の気配に?殺気に?気付いて振り向いた蓮。

『おー、やっぱ来たか』
『...』
『来る思た。覚悟はしとるで』
『......』

『すまなんだな、零。オマエが世の中で最もキライな人種に俺がなってもうたわ...ははは...ホンマあほやな俺!今更遅いっちゅーねんなぁ...』

『ホンマ遅いわ、アホ...!!』

涙止まらんし声も出ん...
昔に戻りかけの蓮。
どうせなら、もっとおかしかった頃だったら...
躊躇せずヤれたのに...。

『...ほな始めよか。蓮、アンタのこと殺すで?覚悟しぃや...』

『できとるって、んなもんとっくに...』

蓮の瞳の奥が哀しい。
でも...

情を持ったままだと殺せん。
逆に殺される。
桜の『死ぬなよ』ってコトバ。
舞の想い、あの時の憎しみ、殺意。
反芻する。

素手勝負。
情を剥ぎ取る。
殺意を...

蓮が舞にヤったこと。
殺しても殺しきれん...
殺してやる...!!

気付けば殴りかかってた。
時間の経過も解らん。
記憶も飛んだ。
曖昧な世界。

ふと我に返った。
目の前に桜が居た。
すごく不安そうな顔で、泣きながら零を呼んでくれてた。
横には舞。
零の血塗れの手を綺麗に拭いてくれてた。

そっか...来てくれてたんや。
舞、無事で良かった...。

前、桜に此処の話をしたことがあった。
蓮がおかしくなった頃。
覚えてたんや...嬉しいな。

『ありがと、来てくれて...あ、蓮は?!逃げられた?ヤり損ねた?!』

舞と桜が顔を見合わせた。

『零?』
『ん?』
『あれ...』

2人は指をさした。
蓮が寝てた。

『あー...失敗?!はぁ...またヤらなあかんのんかぁ...』

2人はまた顔を見合わせた。

『え、何?』
『死んどるで...記憶...?』

『あー...殴りかかって暫く記憶無いかも...でも人格変わってない。マジで死んどん?』

『脈ないもん』

『そっか...良かった...舞、ごめんな、舞の好きな人...殺してしもた』

舞は首を横に振った。
抱きついてきた。
号泣した。
零は舞の頭をゆっくり撫で続けた。

暫くしてから桜が言った。
『どぉすんのコレ』
『ん、電話してみる』
『誰にぃっ!!』
『大丈夫、前話した組長』
『でも...!!』

桜の声を遮って組長が電話に出た。

『なんやぁ?』


 

 

『処理』



『あ、えーっと...すみません。今から出て来られますか?』

妙な言い回しをしてしまった。

『なんや...ヤッてしもたんか...何処?』

場所を伝えた。

『絶対に動くな!!すぐ行く。3人一緒か?』

返事をした。

零の数少ない交友関係や詳細は把握してくれてる。
早過ぎってくらい早く来た。

『適当に着替え!それやったら間違いなく連行される!!』

大きな紙袋の中に女モンの服が色々。
折り畳まれた紙袋も一緒に在った。
コレは脱いだ服を?
もしかして今の事態って想定されてた?
で、コレ既に用意してた?

3人は目を合わせた。
急いで着替えた。

組長は1人で着々と処理してる。
たぶんあぁゆうのも前から用意してたんやろな...
なんでこんなことまでしてくれるんやろ...
同情だけじゃ出来ん、こんなこと。
零の知らんとこで何かあるんかもしれん。
急に組長が怖くなってきた。
違う意味で...。
自分勝手に甘えてきたけど、今見てる姿が本来の姿な気がして...。

おいでって合図で急いで車に乗った。

『暫くドライブやから寝ときぃ!なっ!!』

いつも通りの笑顔。

コーンスープ、おしるこ、ミルクティー、カフェオレ、ブラック...温かい飲み物の袋を渡された。
マダ充分温かい。
何かは飲めるようにと、急いでる時にコンビニ寄ってたんかな...
そんなこと想像してたら、さっき抱いた怖い気持ちが吹き飛んだ。
やっぱ組長は組長。
本質的には怖くない。
それより、零は理性が飛んだ自分が怖い。
組長は、零が絶対寝んのは解ってる。

『零、大丈夫か?』
『うん、ごめんなさい...』
『そうやない!心配なんはオマエのことや。何があっても助けるっていつも言うてるやろ!!』

『なんでなん?』
『...今度話そか、な?』
『やっぱ何かあんの?』
『やっぱって何や!』
『いや...なんとなく裏があるんかなって』

『あほか!!裏やか無い!!ただ、オマエが、娘が、大事なだけやっ!!』

『...親父をこんな事に巻き込む娘が?』

『ほんま大したやっちゃなぁ!!養子になれやホンマに!女組長なれるかもしれんぞっ♪』

『零もそぉしたいわ♪』

笑いながら話す。
人を殺した後とは思えん何気ない会話が続いた。
舞と桜は爆睡。
零は、殺したことを後悔はしてない。
ただ...此の2人に共犯の罪を擦り付けたみたいで...
それが唯一の失敗だと思った。

山道を突き進み、其処に数人待ち構えてた。
其の数人に、蓮を預けて、組長は戻って来た。

『アイツ等がチャントしてくれる。安心しぃ。心配要らん。なっ!!』

組長はニカッ!と笑顔で言う。

『...うん...』

あの人達は本当に何の罪も無い...いや、あるんかもしれんけど、蓮に関しては何も無い。
それでもやっぱ仮に遺体が見つかってしまったら...
巻き込んでしまうんやろなぁ...
そんなこと考えてたら、組長が心を読んだかのように言う。

『大丈夫や!絶対発見されることはない。安心しぃ♪』

頭ポンポンされて、意志とは関係なく涙がこぼれた。


 

 

『涙』



『零、今のうちにシッカリ涙流し切れ。せめてものはなむけや』

零の想いそのまんまを知ってるかのように言う。
殺した実感が無い。
いっぱい怪我しとる。
でも不思議と痛くない。

『何ヶ所か折ったんちゃうか?』

『そんな痛みないで?』

『そりゃおまえ...今は解らんだけや。後からごっつ痛ぁなんでぇーっ!!』

脅すような口調でふざけて言う。
虐待の痛みとは違う。
体の奥が、ごーっつげに痛い。
『心』とかゆう処?


 

 

『笑』



組長は、皆を寝室に連れて帰るつもりやろな。
コンビニ寄った。
弁当、オニギリ、パン、飲み物...
これまた何かは食べれるようにと大量にカゴに入れていく。
レジが終わり、車に戻って、袋の量を見て、堪えきれず笑ってしまった。

『笑うなやっ!!女子供の好む食べモンやか解らんのんじゃ!!』

拗ねたように言うのがおかしくて、また笑ってしまった。

『おまえーっ!!』

頭グリグリされた。
その時、桜が起きて『もしかして零って愛人だったん?』って、目ぇ丸くして言うから更におかしくて大爆笑。
これには組長も腹抱えて笑った。

『えっ!!マジでっ!!愛人やったんやぁっ!!』

アカン笑いが止まらん。
舞も起きた。

『何?なんかおもっしょいことあったん?』

桜がすかさず言う。

『零、愛人やったんやって!!』

『マジでっ!!目ぇ覚めたっ!!』

舞も更にクリッとした目で驚く。
笑い過ぎて横腹痛い。
零が、なんとか喋った。

『ちゃうって!!愛人やなくて親子やし♪』

組長も笑い終わって言う。

『わろたわろた♪笑い疲れるって、いつぶりやろなぁ!!あんなぁ、零は娘みたいなもんや♪勘違いすんなやぁー!』

組長の、わざとらしい睨みで2人は笑ってた。


 

 

『寝室』



現実を忘れようとするかのように皆が笑った。

組長が、寝室で大量の食料を広げる。
2人はシッカリ御礼を言った。
零は、笑いを堪えてた。

『オマエまだ笑うんか!馬鹿にしとんかぁ?あ゛ぁ?』

わざとらしい威嚇。

『申し訳ございません。有り難く頂戴致しますっ!!』

わざとらしい感謝。
皆が笑う。
女3人残され、意外といっぱい食べた。
食べ終わった頃を見計らったように組長が来た。

『手当てするぞー』

『うおっ!!急に痛いっ!!やっばっ!!!マジ痛いっ!!急過ぎ!!なんでーっ!!』

『言うたやろ?まぁ正気に戻った証拠や...先これ飲み!』

ボルタレン、ロキソニン、後、何か神経麻痺起こす薬とかブレンドして、組長独自の配合で砕かれた粉薬を出された。
零は薬物がとにかく効かん。
麻薬類とかでさえ殆ど効果が無くて...
イヤな体質。
だから組長に出された薬も量が多いし、少しでも効きやすいように粉末にしてるし、飲むん辛いし大変。


 

 

『居間』



医者にされるであろう処置をキレイにして貰った。
舞の手当もして貰った。

『よしっ!!2人共シッカリ寝ておいで!!』

『組長、ドライ在る?』
『はいはい在るでー』
『ありがと、お父さん♪』
『じゃかぁしぃっ!!』
『照れんのんよ、お父さん♪』
『おどれー、ほらっ!飲めっ!』

ありったけのドライと、テキーラ飲んで潰れた。
ふと目が覚めたら、毛布がフワッとじゃ無くて、落ちんようにキチッと包むように掛かってた。
すんごい優しくて、人間味あって、愛情深い人...
今、此処で、零が生きてるのは、組長のおかげ...
組長に拾われた当時を思い出す。

目の前のテキーラを飲む。
オエッ!まずっ!
気持ち悪っ!!

怖いくらい見計らったように、ぬるま湯を持ってきてくれた。

『組長...怖いよ...?』
『は?何を今更!!』

『いやいやちゃうねん、そっちやなくて...タイミング良過ぎて怖いってこと』

『そぉなんか?そんな能力在ったらもっと違うこと出来るわ』

『確かに!ほな、たまたま?』

『ある程度は察知できるけどの。零の考え方は大体解ってるつもりやしな』

『そぉゆうことか!理解してくれてるんや...ありがと♪』

『おうっ!』

照れたようにそっぽ向く組長が可愛く想えた。


 

 

『ピザ』



『起きましたぁー』
2人が寝室から居間に来た。
組長が聞く。
『寝れたか?』
『はいっ!バッチリです!』
『良かった。風呂か飯か、飯は何食うか決めてなぁ』

『あ、はいはいはいっ!!零、ピザってゆう丸いやつ食べてみたい!!』

皆がハモった。

【『「食べてみたい?」』】

『え、うん!あ、イヤ?なら何でも良いよ』

組長がチラシ持って来て、泣き真似しながら言った。

『何でも好きなん選びぃ...』

2人もノッて泣き真似中。

『もぉーなんなん。食べたこと無いんがそんなアカンのん。そんなん零のせいちゃうし!御飯くれん親がそもそもアカンねやし!ふんっ!もぉえーしっ!!』

拗ねたフリした。
舞が慌てて抱き付きに来た。

『ごめぇーん零!!!』
『嘘々!拗ねたフリ!舞ピザ好き?』

『好きっ!』
『美味しい?』
『うんっ!』
『ほな任す、見ても解らん』
『解った♪姉ちゃんと一緒に初体験に相応しい美味しいの選んであげるけんっ♪』


 

 

『失ったもの』



ごくごくありふれた普通の日々のように想えた。
すべてが嘘だったかのように...
でも、カラダに傷は在って、心も一部失ってて...
確実に現実が鋭く突き刺さる。

蓮は根が良い奴やったから辛い。
最期の最期に...
元の蓮に戻りかけやったから尚更...
いっそ、最期迄、最低な奴やったら...こんな気持ちにすら、ならなんだかもしれん。

蓮との綺麗な思い出を失った。
蓮との歪な関係を失った。
蓮との深い絆を失った。
蓮との信頼関係を失った。

蓮との...

蓮の存在を...

失った...

其れが現実。

失った...

違う。

消した。

そぉ零が。

此の手で。

怖い。

ホンマに現実?

やっぱり現実は残酷や。

このまま零も死のっかな。

ほな、あの世で蓮が言うんよ。

『オマエも来たんか!』って、笑いながら。

また昔みたいに愚痴ったり語ったり...
あの世には、もしかしたら楽しく過ごせれる未来があるかも!
零でも死ねる薬無いかな...

自殺未遂何回したんやろ。
薬、リストカット、飛び降り...
無駄に痛いだけで死ねれん。
青酸カリなら逝ける?

2人はピザ選んで風呂入った。
またテキーラ飲みながらボーッと死ぬ方法考えてた。
其れを察したかどうかは知らん。
先に風呂あがってきた舞。
零に抱き付いて来た。

『舞、どした?』
『...』
『舞?』

顔を伏せたまま首を横に振る。

『ありがと、舞』

舞が静かに泣く。
たぶん、見せたらアカンような表情やったんかもしれん。

『ごめんな、舞。辛いなぁ』

大きく首を横に振る。
振り絞るように言う。

『...もし、蓮が、あの時死んでなかったとしても、舞が自分で殺してたと思う。やけん謝らんといて!辛くない!そぉやって自分ばっか責めんとって!其の方が舞は辛い!!』

桜も風呂あがってて今の扉の処で聞いてた。

『そやで、零。舞は、あの時、横たわってた2人を見て、瞬間的にアンタの脈を確認してた。生きてるって解ってすぐ血を拭きだした。舞は確かに蓮を好きだった。でも、零の方が大事な気持ちも事実なんやで!アンタが舞を泣かしたら意味ないやろ!
うちら2人は何も後悔してない。此で良かったって改めて思う。零の蓮への気持ちも解ってるつもり!何も言わん...
でも!!死のうとか馬鹿なこと考えるんは許さん!!絶対許さん!!監禁でも何でもして見張る!!』



桜がまくし立てるのは珍しい。

『...あはは...あー...桜ホンマに監禁しそぉやからなぁ...怖いわぁー!!舞ぃー助けてやぁー!!』

ふざけるように返した。
だってあまりにも嬉しくて、照れるやん?
あれ、違うか...
んー...人からの熱い気持ちって素直になれん...
慣れてないからかなぁ、誰かに想われるってことに。

『おまえなぁ!!真面目に話しよんのにぃっ!!!』

冗談混じりに笑いながら、軽く首締められて以前みたいにジャレた。
舞も笑った。

組長がピザ持って登場。

『おぉっ!!元気やのぉ♪ピザ来たぞ!酒どけろー。もぉ飲むなよ零!!』

『ん、今は飲まん』

桜が言う。

『零、これめっちゃ普通のやつね。あとコッチが...』

説明を受ける。
食べてみる。
...微妙。
チーズ脂っこ過ぎ。
吐きそう。

『オマエが酒飲み過ぎなんよ!』

突っ込まれた。
皆が笑った。
寝室に残ってあったオニギリいただいた。

組長が言う。

『零!オマエが失ったものは現実や。でも、この2人の気持ちを素直に受け止めろ。その上で、得たものの大きさを考えてみ?
今、此処に居る皆、間違いなくオマエの味方や!!忘れんなっ!!』

『...さっきの話、聞いてたんやろぉー...』

『タイミング悪くなぁー』

皆が笑った。


 

 

『得たもの』



『せやな、零、今此処に在る関係に限っては、ごっつ恵まれてるやんな...せやから尚更怖いんかもしれん...』

『何があっても深く繋がっとる!変わらん!ワシが保証したる!』

『舞も!絶対絶対何があっても味方やし!!』

『桜も!決まっとるやん!!』

桜は、舞と組長を見る。
組長が言う。

『可愛い娘が、こんな良い友達に巡り逢えてて父は嬉しいぞ!零!!』

半笑いで子芝居風。
皆、我慢したあげく堪えきれず爆笑。

零が言う。

『蓮と良く話してたんやけどな、失うものって何ひとつ無かった筈なんよ。何ひとつ。大切なもんやか無かった。失って困るほどのモンやか、何ひとつ...』

桜が言う。

『でも実際は失いたくない大切なものは残酷なほど在るよね』

舞が言う。

『舞は、今の関係が、すごくすごく大切やし、失ったら生きていけんっ!!ホンマそんくらい大切っ!!』

いつの間にか皆が泣いてた。
組長は、泣き真似しながら言う。

『うっうっうっ...ワシも...オマエがおらな生きていけんっ!うっうっうっ...』

組長の子芝居が邪魔する。
皆が泣きながら笑ってグシャグシャな顔を見合わせて、更に笑った。


 

 

『日常』



人を殺した後も何事も無かったかのように...
こぉやって日常に戻るんかぁ...
こんなんで良かったんやろか...

でも今更出頭できひん。
それこそ皆を巻き込んでしまう。
こぉなったら遺体が見付かった時に捕まる他無い。
でも、絶対みつからんって...
ミンチにでもなったんやろか?

ホンマはこぉゆうの今迄したことある人なんやろか?
人殺しも何回かしとんやろか?
そぉゆうのがあってもおかしくない世界やし。

大阪居った頃、母さんが観よったヤクザもんのテレビには、殺したり沈めたりもあった。
そんな昔ほど無いにしても、少なからずそぉゆう事実はあったわけやろぉし...
まぁ仮にそぉやったとしても今の関係は変わらんけど。
で、今の生活も。

零が表立って問題起こさん限り、何も変わらん。
こんなことしても、ただ、なくなっただけ...失っただけ。
それでも、此で良かったと、後悔はないと...

昔、冗談混じりに蓮と交わした約束。

『俺が死にたぁなったら零に頼む!そん時はヤってなっ!!』

『えーっ!じゃあ零も!何回も未遂で死に損ないやし、蓮が確実に殺してやぁっ!!』

『早いもん勝ちか!』

そんな会話。
今頃頭をよぎる。
世間的には許されん。
でも2人には許される。
これで良い。
これで良かった。

蓮の名前を出す奴は1人もおらなんだ。

何気ない日常に戻る。
心の一部を置き去りにしたまま。
日常に戻る。
戻す...
日常に...


-END-