ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル


 

プロローグ 出会いは一つのおにぎりから

 
前書き
こんにちは作者のリョウヘイです、最近イッセー×小猫にハマりましてトリコが面白いなと思い自分で書いてみました。

 もう一つの作品の箸休めで書いてますので更新は遅いかも知れませんが良かったら感想などをお願いします。 

 
 side:小猫


 皆さんこんにちは、私は塔城小猫と申します、さっそくですが私の周りは有名人ばかりです。


「小猫、どうかしたの?何だかうわの空だけど?」


 あ、いけません、部長に心配をかけてしまいました。私が通う『駒王学園』は色んな有名人がそろっています、例えば今声をかけてくれた『リアス・グレモリー』部長。美しい紅い髪が特徴の三年生であり私の主、そしてもう一人…


「あらあら、小猫ちゃん「心ここにあらず」ね」


 上品そうに言うのは『姫島朱乃』先輩。部長とは違う綺麗な黒髪が特徴で大和撫子と言う言葉が良く似合っている、部長と朱乃さんは『学園の二大お姉さま』と呼ばれ全校生徒の憧れの的になっています。


「でも小猫ちゃん、楽しそうな表情だね、まるで何か待ってるみたいだよ」


 爽やかに微笑みながら言うのが『木場祐斗』先輩。二年生の先輩で私が所属している『オカルト研究部』の唯一の男子生徒。本当はもう一人いますけど今はそれには触れません。
 祐斗先輩は『学園のプリンス』として女子生徒から凄い人気がある先輩です。実際にカッコいいと思います、私にとってはお兄ちゃんみたいな感じかな?


 他にも『完璧な生徒会長』や『変態2人組』といった人達もいます。いい意味でも悪い意味でも有名人が多いです、私も『学園のマスコット』と呼ばれています。
 でも私は思うんです、この学園で『あの人』ほどある意味有名な人はいないと思います。


 ちらりと時計を見ると16時を回っていた、そろそろかな。


「部長、今日はもうやる事はありませんでしたよね?」
「ええ、今日は特に予定は無いけど……何か個人的な予定があるのかしら?」
「はい、その……」
「分かったわ、今日はもう上がってもいいわよ」
「!ッ、ありがとうございます!」


 私は大慌てで荷物を纏めて部室を後にした。


「あらあら、あんなに慌てて…」
「最近小猫ちゃん、よく出かけますね」
「そうね、まああの子なら心配は無いけど…何をしてるのかしらね?」
「ふふ、きっと彼の元に行ってるんじゃないんですか?」
「彼?それってもしかして……」
「はい、兵藤君の所にですよ」



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「…先輩いるかな?」

 私は学園の階段を上がりながら家庭科室を目指していた、えっ、どうして家庭科室に向かっているのかって?それはさっき言っていた『有名人』がいるからです。


 私は家庭科室のある階に到着した、すると甘く香ばしい匂いが漂ってくる。


「良かった、先輩いるんだ…」


 私は家庭科室の扉をそっと開ける、そこには一人の男子生徒がオーブンの前に立っていた。
 青髪の特徴的な髪型、顔に三本の傷、ほっそりとしたように見えるが制服の上からでも分かる鍛え上げられた筋肉、と初めて見れば誰もが忘れられない見た目をしている人…


「おッ、小猫ちゃんじゃねえか、丁度いい所に来たな、今グルメ食……おっと、じゃなくて珍しい果物を使ったフルーツケーキを作ってたんだ。勿論食っていくだろ?」


 料理研究部部長、『兵藤一誠』……通称イッセー先輩は笑いながらそう言った。



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「よ~し、出来たぜ。俺特性のデラックスフルーツケーキの完成だ!」


 イッセー先輩はフルーツをたっぷり使ったショートケーキを一ホール私の前に置きました。うわぁ……凄く大きいです、イチゴやバナナ、メロンやブルーベリーとふんわりしたホイップクリームが実に美味しそうです。


 ゴクリッ……


 思わず唾を飲んでしまう、身体が早くケーキを味わいたいと言ってるみたいにお腹が空いていきます。


「ははッ、そんなに目を輝かせんなよ。今切り分けてやるからよ」


 イッセー先輩が包丁でケーキを切り分けていく。うう~、ケーキの切れ目からまた甘い匂いが……早く食べたいです。


「それじゃ、この世の全ての食材に感謝を込めて……」


 先輩が目を閉じて手を合わせる。先輩曰く食べる時には食材に、そして命に感謝するのが決まりであると考えているとのこと、私も食材に感謝の気持ちを込める。


『頂きます!」


 二人で合唱して私はケーキをフォークで一口サイズに分けて口の中に運んだ。


「んっ……ふんわりと柔らかいスポンジに甘すぎなくてくどくないクリームですね。そこにフルーツの酸味や甘さが加わってとっても美味しいです!」
「喜んでもらえて良かったぜ」


 私達はあっという間に一つのケーキを食べてしまった、本当に美味しい物ってあっという間に消えちゃうんだなぁ。


「そんなしょんぼりすんなよ、もう一ホール焼いてるからよ」
「本当ですか!」


 先輩の言葉に思わずテンションが上がってしまう、でもしょうがないですよね、それだけ美味しかったんですから!


「うめえ!!」
「美味しいです!」


 私たちは夢中でフルーツケーキを食べた。先輩と一緒に食べる食事はとっても美味しくて楽しくて……ずっとこんな時間が続いたらなって思っちゃいます。



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「先輩、ご馳走様です。先輩の作ったケーキ、とっても美味しかったです」


 ケーキを2ホール食べ終えた私は先輩が用意してくれたコーヒーを飲んでいた。先輩はブラックで飲んでいたけど私は苦かったのでミルクを入れました、苦いコーヒーにミルクの甘みが舌にジンワリと広がっていくのが心地よいです。


「相変わらず小猫ちゃんは美味そうに食うよな。こっちも作りがいがあるってもんだ」
「イッセー先輩の作る料理は美味しいですから、いくらでも食べれちゃいます」
「そうだな、初めて会った時もおにぎりを美味そうに食ってたもんな」
「い、言わないでください、恥ずかしいです…」


 そっか、イッセー先輩と初めて会ってもう二週間も立つんですね。



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ーーー 二週間前 ---


「ううっ…遅れちゃいました…」


 まさか入学式に寝坊しちゃうなんて……朝ごはんもぬいちゃったしお腹すいたなぁ…


 そんな事を考えながら自宅を出て駒王学園に急ぐ。


「あの角を曲がれば学園に着く、急がないと…!」


 慌てて角を曲がろうとしたが…


「うおッ!?」
「きゃっ!?」


 ドンッ!!


 急いでいたせいか誰かにぶつかってしまった、相手の人は大丈夫かな…!


「ご、ごめんなさい!私急いでいて……」
「あ、いや、俺も悪かった、飯食ってて前が見えなかったよ」


 飯…?それにこの人が着てるのは駒王学園の制服…もしかして先輩なのかな?…あ!そろそろ行かないと間に合わない!


「私急ぐのでこれで……!」


 ぐぅ~~~……


「……」
「……」


 こ、こんな時にお腹がなるなんて…恥ずかしいよ…


「あははは、何だ、君腹減ってるのか!」


 うう…初対面の人にも笑われるし…軽く死にたい…


「さては朝飯を抜いたな?駄目だぜ、朝はエネルギーを一番使うんだ、ほら、これをやるよ。」


 青髪の男性は私に大きなおにぎりを渡してきた。


「あの、これは…?」
「俺が作った特性おにぎりだ、まあ食ってみろよ」


 うう、急いでるんですが…でもせっかくのご好意を無駄にしたら駄目だし…ここは頂こう。見た目はよくある海苔を巻いた普通のおにぎりですね、ではさっそく…


「はむっ、もぐもぐ……!?ッ」


 な、何これ!?こんな美味しいお米食べたことがない!お米本来の味がダイレクトに伝わってくる。それにこの海苔、味付け海苔だ。パリパリと心地いい音が口になってる。んっ、中身は鮭。脂がのっていて凄く肉厚……でも全然しつこくない。とっても美味しい!!


 私は夢中でおにぎりを食べた。あ、無くなっちゃった…


「よっぽど腹が減ってたんだな、あっという間に食っちまったぜ」


 はっ!?わ、私は何を……初対面の人の前でおにぎりを一心不乱に食べたりしてはしたないです!


「ま、これからは朝飯はしっかり食えよ、それじゃあな」


 青髪の男性はそう言って走っていった。


「何だったんだろう……あ、私も急がないと!」


 私は再び駒王学園に急いで向かった。心なしかさっきより足取りが軽かった。


 
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「小猫遅かったじゃないの、心配したわよ!」


 校門前でリアス部長達が待っていてくれたようです、心配をかけてしまったようです…


「部長ごめんなさい、寝坊をしてしまって…」
「いつも冷静な貴方が珍しいわね、もしかして緊張してる?」


 緊張…確かにしてるかも知れない、だって今日から私も高校生になるから。


「ほら、しっかりしなさい。今日は貴方の晴れ舞台なんだから」


 部長はそう言って微笑む、…そうですよね、今日は入学式、気を引き締めないと…!


 そして時間が過ぎいよいよ一年生の入場が迫ってきた、緊張していた…


『一年生、入場』


 いよいよだ…焦っちゃ駄目、落ち着いて落ち着いて…私は列を崩さないようにピシッとしながら歩き出す、あ、部長達だ…


 そして自分が座る席の前に立った。後は合図の放送で着席するだけ…


『一年生、着……』
「ぐぎゅるるるる!」
『……!?』


 え、何…?何この音…凄い音だけど…周りの人達も突然の音に驚いていた。


「うわ!また兵藤かよ!」
「一体どうしたらそんな音が出るんだよ!?」
「何、またなにかしたのー?」


 何やら二年生の席が騒がしい。ちらりと見てみると何やら一人の生徒が音の原因らしい……ってあの人は確か朝に出会った人でしたね。


「おい兵藤うるせえぞ!何とかしろよ!」
「わりぃわりぃ、ちょっと朝飯が足らなかったみたいだわ」
「みたいだわじゃねーよ!どんだけ食えば気が済むんだよ!」


 や、やっぱり朝におにぎりをくれた人だ、先輩だったんだ……というか凄い音、あれってお腹がなってるんだよね?


 結局その先輩は席を離れていき入学式が再開された。何だったんだろう、あの先輩は……



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ーーー


「それじゃあ今日から小猫もオカルト研究部の一員ね、今日から宜しくね」
「はい、よろしくお願いします」


 入学式も終わり放課後になった、私は学園の校舎の裏手にある旧校舎にあるオカルト研究部の部室に来ていた、オカルト研究部は主であるリアス様が部長が勤める部活で今日から私もその一員になる。


「それにしても今日の入学式は驚いたわ、まあ兵藤君らしいといえばそうなんだけど」


 兵藤?あの先輩のことかな?


「あの部長、その兵藤先輩ってどんな人なんですか?」
「あら小猫、もしかして彼に興味があるの?」


 何やら部長がニヤニヤしながらそう言う。そういうのじゃありません。


「そうね、彼を表わす言葉と言ったらとにかく「よく食べる」ということかしら」


 よく食べる?私もよく食べるほうだけど、でもあのお腹の音は凄かった。


「兵藤君は「料理研究部」の部長でこの学園でもかなり有名な人だと思うよ、いい意味でも悪い意味でもね」
「……どういうことですか?」


 私は祐斗先輩の言葉に首をかしげた、いい意味でも悪い意味でも有名?


「彼は料理の大会でも多くの賞をとっているの、それもプロが参加するほどの大会にね」
「それは凄いですね、なら悪い意味とは?」
「とにかくよく食べるんだよ、登校中も休み時間も何かを食べているんだ、一年生の時は授業中にも食べてたらしくて流石に注意を受けたらしくて今は授業中には食べないみたいだけどそれ以外では常に食べてるってイメージかな」
「……とんでもない人ですね」


 でも料理研究部か、だからあんなに美味しいおにぎりが作れたのかな?お礼を言いたいな……


 私はそんなことを考えていた。




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ーーー



ーーー 駒王学園 三階家庭科室 ---


「ここが料理研究部……」


 私はリアス部長に料理研究部の場所を聞いてそこに向かった、どうやら兵藤先輩は普段は家庭科室を借りてそこで料理をしたりレシピの開発などをしているらしい。


 コンコンッ


 ドアをノックする、すると中から「入っていいよー」と声が聞こえたのでドアを開ける。


「失礼します……」


 中に入ると…あ、兵藤先輩だ。大きな本を開けながら大きな鍋を覗き込み中身を棒でかき混ぜていた。


「あれ、君は朝の……」
「塔城小猫です。兵藤先輩、朝はありがとうございました」
「気にすんなよ。あ、俺の事はイッセーって呼んでくれ、親しい人にはそう呼ばれているからな」
「分かりました。イッセー先輩」


 朝も思ったけど気さくな人だな…所でここって料理研究部の部室…なんだよね?…でも他に人が見えないけど……


「イッセー先輩、他に部員はいないんですか?」
「ああ、この部活、部員は俺だけだよ」


 えっ、それって部活として成り立つのかな…?


「普通は部員が足らないから無理なんだけど俺の実績が認められたのか特例で許してもらったんだ」


 そういえば賞を取ってるって部長が言ってましたし予想より凄い先輩なのかな?


「所で塔城……」
「私も小猫でいいですよ」
「……じゃあ小猫ちゃん、俺に何か用でもあるのか?もしかして入部希望者か!」
「あ、すみません、私別の部活に入ってて……今日きたのは朝のお礼がいいたかったんです。今日先輩がお腹を鳴らせてたのって私におにぎりをくれたからですよね?」


 入学式の時先輩は「朝飯が足らなかった」と言っていた、それって朝、私にくれたおにぎりだったんじゃないんでしょうか?


「もしかしたら私のせいで迷惑をかけたんじゃないかと思って……」
「何だ、そんなことか。あんなのここじゃ日常茶飯事だぜ、気にする必要はねえって」
「でも……」
「いいんだって。むしろあんなに美味しそうに食ってくれたのが嬉しかったしな」


 ……先輩、優しいんですね、ありがとうございます。


「……あの先輩、もし良かったら時々ここに来てもいいですか?」
「別にいいけどどうしてだ?あ、もしかして他にもなにか食いたいのか?小猫ちゃんは食いしん坊だな」
「なっ!?確かにそれもありますが……」
「何だ、他に理由でもあるのか?」


 ……言えません、先輩に興味があるなんて。


「と、とにかく!私も時々ここに来ますからお願いしますね!!」
「お、おう。よく分からんが宜しくな」



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「そうだな、あれから小猫ちゃん、ちょくちょくここに来るようになったからな」
「うう~、イッセー先輩の料理が美味しいからいけないんです……」
「ならもう作らないほうがいいのか?」
「そ、そんな!?私の体(主に舌)はもうイッセー先輩に染められてしまった(主に料理による餌付け)んですよ!そんなことになったら私死んじゃいますよ!」
「あはは、冗談だよ冗談」
「もう先輩の意地悪……」


 これが私と彼の最初の出会いだった。でも私は後に知ることになる、これはまだ始まりに過ぎないということを……





 
 

 
後書き
 今回はここまでです、次回はいよいよトリコの世界に入ります、次回「小猫グルメ世界へ、未知なる食の冒険の始まり」で会いましょう。

 

 

第1話 小猫グルメ世界へ、未知なる食の冒険の始まり

side:小猫


「ふんふ~ん♪」


 鼻歌を歌いながら私は家庭科室に向かう、今日もイッセー先輩いるかな?


「失礼しま…ってあれ?鍵が掛かってる…」


 おかしいな?大体放課後のこの時間には先輩がいるんだけど…何かあったのかな?


「ちょっと心配ですね…先輩のクラスに行ってみましょう」


 私はそう言って家庭科室を後にした。




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ーーー


 私はイッセー先輩がいる二年生の教室に来ていた。


「あ、あの子塔城小猫ちゃんだ」
「あれが『学園のマスコット』かぁ」
「可愛いな~、告白したら付き合ってくれないかな?」
「お前じゃ無理だろ~、あんな可愛い子と付き合えるのなんて木場くらいじゃないか?」
「一緒の部活だし案外付き合ってるのかも…」
「うわ、何か想像したら悲しくなったわ…」
「イケメン爆発しろ!!」


 何だか周りの視線が集まってますね…というか男子の視線が凄いです。まあそんな事よりイッセー先輩を探さないと…先輩のクラスを見てみますが…う~ん、いない…もしかしてもう帰っちゃったのかな…


「あの、すみません」
「!?ッ、は、はい!何でしょうか!」


 私は近くにいた先輩に声をかけた、でも何で驚いた表情になってるんだろう?


(え、マジかよ…小猫ちゃんに声をかけられるなんて…もしかして我が世の春が来たーーーッ!?)


 何でしょうこの人……急にニヤニヤしたりしてもしかして危ない人なのかな?


「ゴホンッ!…何かご用かな、小猫ちゃん?」
「あの…イッセー先輩ってもう帰られたのですか?」
「イッセー…ああ、兵藤か。あいつは今日休みだよ」
「お休みですか?」


 いつもあんな元気なイッセー先輩が……?


「ああ、兵藤は一年の時から偶に学校を休んでたんだ、いつもは元気な奴なのにな」
「先輩が…」


 どうしたんだろう、何だか心配になってきました、様子を見にいこうかな……?


「そ、そんなことより小猫ちゃん、今暇かい?良かったら俺とデートにでも……ってあれ?……いない……」




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ーーー


 私はイッセー先輩のクラスの担任の先生に話して先輩の家の住所を教えてもらった。最初は渋っていたが私が「普段彼にお世話になっている、急にお休みされて心配です、どうか教えて頂けないでしょうか」と言ったら「塔城は先輩思いの優しい子だな。皆には内緒にしておけよ」と特別に教えてくれた。


「確かこの辺だって聞いたんだけど…あ、あれかな?」


 私は一つの家の表札を見る、そこには「兵藤」と書いてあった、ここが先輩の家なんだ。


 ピンポーン


 インターホンを鳴らすが反応が無い、何回か鳴らすがそれでも反応はない、誰もいないみたい、でも休んだのに家にいないなんてことあるのかな…?
 

 私はふとドアノブに手をかけた。


「開いてる…」


 ドアノブが回り扉が開いた、ということはやっぱり誰かいるんだ。私はイッセー先輩の家にお邪魔した。


「すみませーん、あの誰かいらっしゃいませんか?」


 …やっぱり反応が無い、まさか先輩に何かあったんじゃ…ドアの鍵もかわずに何処かに行くなんてことは無いと思うし…


「イッセー先輩。いるんですか?いるなら返事してください!」


 私は不法侵入しちゃったと思いながらもイッセー先輩を探した、だがイッセー先輩はおろか先輩のご家族の姿もない。一体どうしたんだろう…


「先輩…」


 その時だった、私はある部屋の隅で何やら光を放つものを見つけた。近づいてみるとそれは蝶だった、ケースの中で七色に輝く姿はとても美しかった。


「綺麗…こんな蝶見たことがない…」


 私は無意識にケースに手を伸ばした、すると…


「な、何この光…!?」


 突然蝶が光輝き私はその光に飲まれてしまった…



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ーーー



「う~ん…あれ、ここは…?」


 一体何がどうなったんだろう、私は確かイッセー先輩の家で不思議な蝶を見つけてそれから…私は状況を把握するために辺りを見渡してみるがそこにあったのは…


「…お菓子?」


 そう、私がいた場所はイッセー先輩の家ではなく見た事もないお菓子で出来た家だった。


「どうなってるの…」


 さっきまで住宅街にいたはず…私はどこに来てしまったんだろう…


「…!ッ、先輩の匂いがする…」


 私はイッセー先輩の匂いを微かに嗅ぎ取った。先輩、この辺りにいるの…?私は先輩を探すため走り出した。

 
ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 森の中を彷徨いながら先輩の匂いを頼りに歩いていく、暫くすると大きな湖が目の前に現れた。


「大きな湖…先輩はこの辺に…?」
「お、来た来た来たーーー!!」


 突然誰かの声が響いた、私は声が聞こえた場所に向かった。


 私が駆けつけた場所に誰かがいた、間違いない、駒王学園の制服を着てるあの男性はイッセー先輩だ!私は直に駆け寄ろうとしたが先輩は持っていた釣竿のような物を大きく振り上げる、すると……


 ザッパーン!!


 湖から魚にザリガニの腕がくっ付いたような生物が現れた、そらにその魚目掛けて大きな五つの尾を持つ大鷲が魚にその鋭い爪を付き立てた。


「あ、ソイツは俺の得物だぞ!」


 先輩は釣竿を大きく振り回し魚と大鷲を地面に叩き付けた、何て筋力をしてるんだろう…


「うは~、ザリガニフィッシュにつられて五ツ尾オオワシまで捕獲できるなんてな、こりゃついてるぜ!」


 あの屈託のない笑顔、やっぱりイッセー先輩だ…!


「イッセー先輩!」
「なッ!こ、小猫ちゃん!?」


 私は勢いよく先輩に飛びついた。


「良かった……イッセー先輩に会えて……」
「小猫ちゃん、どうしてここに……って泣いているのか?」


 ……正直に言えば怖かった、得体の知れない場所に一人で来てしまって心細かった、だからイッセー先輩に会えて嬉しかったんです。


「小猫ちゃん……ごめんな、怖い思いさせて…」


 イッセー先輩も私をあやすように頭を撫でてくれる、先輩の手、大きくて暖かい……


 私は泣き止むまで先輩に頭を撫でてもらいました。



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ーーーーーー

ーーー


「小猫ちゃん、もう大丈夫か?」
「はい、ごめんなさい、いきなり泣き出してしまって…」
「いや今回は俺が悪かった、まさか鍵をかってなかったとはな…」


 数分後、泣き止んだ私はイッセー先輩が急に休んだこと、心配になった私は先輩の家に行った事、先輩の家で不思議な蝶を見つけた事、そして気が付いたら見知らぬ場所にいたこと、全て話した。


「先輩、ここは一体何処なんですか、さっきの生き物も見た事が無いし…」
「…小猫ちゃん、今から話す事は誰にも言わないでほしい、例えグレモリー先輩でもだ」


 先輩は普段はあまり見せない真剣な顔で私にそう言ってきた、恐らくとても重要な事なのかも知れない…


「…分かりました、これは私と先輩だけの秘密にします」
「よし…まず最初にここは俺達がいた地球とは全く異なる世界だ」


 ……えっ?予想を遥かに超える先輩の言葉に一瞬思考が停止しちゃいました。


「驚いただろう、でも事実なんだ。現にさっき見たザリガニフィッシュや五ツ尾オオワシなんて今まで見た事が無いだろう?」


 確かにあんな生き物は今まで見た事が無かった。


「この世界の地球は俺達がいた地球の何百倍も大きいんだ、これを見てくれ」


 先輩は懐から大きな地図を取り出した。


「この地図の中心が『人間界』、つまり人間が生きている場所でこの人間界を囲む広大な未開の地『グルメ界』が存在するんだ」
「グルメ界…?何だか美味しそうな名前ですね」
「ああ、実際昔はグルメ界っていうのは未知なる食材に溢れた楽園と呼ばれていたんだ、だが実際にグルメ界に行って戻ってきた人間はいなかった、唯一人を除いてな。その人間の名はハッチ、グルメ界の真実を教えた人だ」


 グルメ界の真実……?それは一体何でしょうか?


「グルメ界は楽園なんかじゃなかった。予想もつかない異常気象に人間界以上の凶暴な猛獣……まさしく地獄そのものだったらしい」
「地獄…この世界にはそんな危険な場所があるんですか?」
「ああ、それ以来グルメ界は非常に危険な場所だと世間に知れ渡りIGOは直に人間界とグルメ界の間に関所を作ったんだ」


 IGO…?また知らない単語が出てきました。


「あ、小猫ちゃんはIGOを知らないか、IGO…通称『国際グルメ機構』、世界中の食材の流通を適正にコントロールしている組織のことだ。IGOがしていることは新しいグルメ食材の発見、既に滅んだ食材の研究や新しい食材の開発、そしてさっきいった食の流通と食などに関する治安維持などがあるんだ」
「食…何というか凄いですね」
「あっちじゃ考えられない事だろ、こっちでは『美食』が世界的流行になっていてそれを『グルメ時代』と呼んでいるんだ、世界中に未知の食材が溢れ一つの食材に億単位の値段が付くこともあるんだぜ」
「億単位ですか…本当にあっちでは考えられないですね」


 グルメ時代…本当にここは異世界なんだ…あれ、でもどうしてその異世界に私達がいるんだろう?


「先輩はこっちの世界の人間なんですか?」
「いや元々は小猫ちゃんも知っているあっちの世界生まれだ、随分昔に俺は虹色に輝く不思議な蝶を見つけたんだ」


 不思議な蝶…先輩の家にいたあの蝶のことでしょうか…?


「俺はふとその蝶に触ってしまった、すると強い光に包まれて気がついたら見知らぬ海の上にあった小島に立っていたんだ、あの時は死ぬかと思ったよ、いきなり海から猛獣が現れて俺に襲い掛かってきたんだ」


 あははと笑いながら先輩はそう話す。というか先輩って何気に危険な橋を渡ってきたんですね…


「その時、後に俺を育ててくれた恩人が助けてくれたんだ。その後はその人の元で美食屋として修行を積んできた。美食屋っていうのは未知の味を求めて世界中を渡り歩き、様々な食材を捕獲、採取することを生業としている探検家のことさ」
「先輩が美食屋…」


 未知なる味を求め世界中を旅する…なんだか凄いスケールの大きい話ばかりで混乱しちゃいそうです。


「そんなある日、俺はこの世界に来る切っ掛けとなったあの蝶を見つけたんだ。俺は直にその蝶に触ってみると強い光に包まれて気がついたら元の世界に戻っていたんだ」


 先輩はリュックから写真を取り出した、それには私がイッセー先輩の家で見た七色に光る蝶が写っていた。


「『異次元七色チョウ』…この世界でもこの一匹しか見つけられていない非常に珍しい蝶だ、原理は分からないがこの蝶は二組のペアがあるらしく触れた物体をもう片方のペアの近くまで瞬間移動させる性質があるみたいんだ、どうしてあっちの世界にもう一匹がいたのかは分からないんだけどな」
「じゃああっちの世界には帰れるんですか?」
「ああ、ちゃんと帰れるよ。そこは安心してくれ」


 良かった、流石に帰れなかったら大変ですよね。



「一誠様…」


 突然第三者の声が後ろから聞こえた、私達が振り返るとそこにはスーツを来たサングラスの男性が立っていた。


「一誠様、お久しぶりです」
「アンタは確かIGOの…」


 どうやら先輩のお知り合いの方みたいです。


「先輩、この人は…?」
「ああ、この人はさっき言っていたIGOの関係者だ」
「お初にお目にかかります、私『IGO開発局食品開発部」』部長ヨハネスと申します」


 ピシッとお辞儀をしながら私に名詞を渡してきた、礼儀正しい人だな。


「一誠様、今回はIGO主催のグルメパーティに出されるメインデッシュの食材の捕獲依頼に参りました。」
「おいおい、IGOには専属の美食屋がいるだろ?どうして俺なんだ?」
「今回捕獲して頂きたいのは『ガララワニ』です」
「何、ガララワニだと!?」


 先輩が驚いた表情を浮かべる、ガララワニ…?


「はい、発見が困難な上、その生態も謎に包まれており戦車でも仕留めるのが難しいと言われている非常に凶暴な猛獣です」


 戦車でも仕留められないって…もう怪獣じゃないですか…


「一切れ十万円はするという最高級の食材、プリップリの高級タラバガニと霜降り脂たっぷりのA5ランクの高級和牛をあわせたような肉の旨み…ジュルリ…たまんねえな!」


 高級タラバガ二とA5ランクの高級和牛をあわせた肉…ジュルリ、私も何だか食べたくなってきました。


「では…」
「ああ、その依頼俺が受けるぜ、ガララワニ…相手にとって不測はねえ!!」
「あの、先輩…」
「ああ小猫ちゃん、悪いが俺はこれから依頼なんだ。小猫ちゃんは元の世界に……」
「私も連れて行ってください」
「…はあ!?」


 私の言葉に先輩は驚いた顔になる。


「小猫ちゃん、これは危険な事なんだぞ、命の保障はできねえ。それでも来たいって言うのか?」
「はい!」
「…そっか、なら付いてこいよ」


 あれ…?予想よりも早く折れてくれた…?


「『思い立ったら吉日、その日以降は全て凶日』ってな。小猫ちゃんが決めたことだ、俺はとやかく言わねえよ」
「それじゃあ…!」
「一緒に行こうぜ、小猫ちゃん。ガララワニが生息する島…『バロン諸島』によォッ!」







 これが後に『最強のグルメコンビ』と呼ばれる先輩と私の最初の一歩でした。














ーーー オリジナルグルメ食材 ---



『異次元七色チョウ』 捕獲レベル 不明


 七色に輝く蝶でグルメ界とイッセーと小猫が住む世界にそれぞれ一匹ずつしか発見されていない大変貴重な蝶。
 本来は二組のペアらしく触れた物体をもう片方のペアの近くに瞬間移動させる性質がある、イッセーがグルメ界に来ることになった切っ掛けの生物である。何故片方の異次元七色チョウがイッセーの住む世界にいたのかは不明、まだまだ謎に包まれた生き物である。
 因みに捕獲レベルが不明なのは数が少なすぎる上発見も困難なため。捕らえるだけなら捕獲レベルは1しかない。また非常にデリケートなため持ち運んだりするとショックで死んでしまうのでスイーツハウスとイッセーの家にあるIGOが開発した特別なケースに入れてある。





 
 

 
後書き
 こんにちは、小猫です、今回から次回予告を担当します。私たちは凶暴なガララワニを捕獲しにバロン諸島に向かいます、そこで私はイッセー先輩の本当の強さを知ることになります、次回「赤き龍の力、ガララワニを捕獲しろ!」
 ではまた次回お会いしましょう。 

 

第2話 赤き龍の力 ガララワニを捕獲しろ!

side:小猫


 ガララワニという猛獣を捕獲しに向かうため私とイッセー先輩は港に来ています。


「イッセー先輩、どうやってバロン諸島という場所に向かうんですか?」
「バロン諸島には船に乗っていく、もうすぐ来るはずなんだが…お、来た来た」


 港に一艘の船が止まりました、そこからサングラスをした浅黒い男性の方が降りてきました。


「よ~イッセー、待たせたな」
「よお十夢、今回も頼むぜ」


 イッセー先輩とサングラスをした男性はガッチリと握手をかわす、この人が先輩の知り合いなのかな?


「小猫ちゃん、コイツは十夢、俺の親友で卸売商をしているんだ」
「始めまして、塔城小猫といいます」


 私はペコリと十夢さんにお辞儀をする、すると十夢さんは目を見開いて私を見る、何でしょうか…?


「お、女の子!?イッセーが女の子を連れて来ただと…!あの食い気しかないイッセーが女の子を…!」
「お前いきなり失礼じゃねえかッ!?」


 イッセー先輩がポカリと十夢さんの頭を叩く、別に先輩とはそういう関係じゃありませんから…もう…


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「悪かったな小猫ちゃん、十夢の奴がはしゃいだりしてよ」
「いえ、別に気にしてませんから…」


 十夢さんの船に乗せてもらって私たちはバロン諸島に向かっていた。


 グウウ~……


…何でこんな時にお腹がなるんでしょうか…


「ははッ、そういや小猫ちゃん、こっちに来てからまだ何も食ってなかったんだろう、これをやるよ。」


 イッセー先輩はリュックからクッキーを取り出した。


「先輩、これは?」
「向こうにいる時に作ってきたんだ、小猫ちゃんが来るとは思ってなかったから量はそんなに無いけど腹の足しにはなるだろう」
「えっ、でも悪いですよ…」
「いいっていいって、腹が減るのは誰だって辛いんだ、遠慮しないで食えって」
「先輩…ありがとうございます」


 先輩のご好意に感謝を込めて私はクッキーを齧る。


 カリッ…


 ん…サクッとした歯応えが丁度いい、バターの風味と控えめにかけられた砂糖の甘さが絶妙です…美味しい!


「先輩って凄いですね、お菓子も作れちゃうんですから」
「まあ普通美食屋は焼くといった「食材を食える状態」にするくらいしか出来ないからな。俺は甘いもの好きだから自分で作ったりはするけどそこまで料理が得意って訳じゃないぞ」


 ええっ、そうなんですか!あんなに美味しい料理が作れるのに…?


「そうだ、これが終わったら小猫ちゃんも料理をしてみないか?」
「えっ…私がですか…?」
「ああ、食うのもいいけど自分で作った料理もまた格別だぜ。そういえば小猫ちゃんは料理はできるのか?」
「一人暮らしをしているのである程度は。でもイッセー先輩のような腕はないです。だからご教授お願いしますね、先生」
「先生か、そんな風に呼ばれたのは初めてだな、じゃあ小猫ちゃんは俺の生徒って訳か」


 イッセー先輩の教師姿…ふふッ、食べ物のことばかり話しそうですね…


「小猫ちゃん、いきなり笑い出してどうしたんだ?」
「何でもありません♪」
「やっぱり付き合ってんじゃないのか、お前ら?」
「うるせーよ!お前は静かに運転しててくれ!」



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ーーーーーー

ーーー


 それから暫くすると前方に岩礁に囲まれた島が見えてきた。


「見えてきたぜお二人さん、あれがバロン諸島だ」


 あれがバロン諸島…何だか不気味な島です…船は岩礁の間を通ってバロン諸島に近づいていきます、あ、岩礁の上に何やら生き物がいます。


「先輩、岩礁の上に何かいます」
「あれは…フライデーモンキーか。あいつらは臆病だから襲い掛かってはこねえさ。……でも何でこんなところに…」


 先輩が何かを呟いたように聞こえたが私には聞き取れなかった。


「よし、イッセーもうすぐバロン諸島の入り口につくぜ。このまま一気に行くか?」
「…いや、ここからは俺達だけで行く」
「はぁ?…別に構わないが…どうしたんだ?」
「何か嫌な予感がするんだ…とてつもない嫌な予感が…」
「…そうか、なら小型ボートを出す。くれぐれも気をつけろよ?」
「ああ…」


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ーーー


 私と先輩は小型ボートに乗ってマングローブの生い茂る水路を渡っていた。


「先輩、さっき言っていた嫌な予感って何ですか?」
「ん…ああ、あれは俺の勘だ」
「勘…ですか?」
「長いこと美食屋をやってると危険がありそうな場所に近づくと何となくだが感じるんだ、特に俺の場合はそういう時大抵面倒ごとに巻き込まれる」
「…今からその面倒ごとがありそうな場所に行くというのにそんな話しないで下さい」


 そうこうしている内にボートは岸にたどり着いた、私とイッセー先輩はガララワニが生息しているバロン湿原を目指して歩いていく。


「…キャッ!」
「ん、どうしたんだ小猫ちゃん」
「何かが首に…」
「どれどれ…」


 先輩は私のうなじに手を伸ばす…ひゃあっ!?


「おいおい、そんな動かれたら見えねえよ」
「ご、ごめんなさい、くすぐったくて…」


 私はくすぐったいのを我慢して先輩に見てもらう。


「あ~、バロンヒルに噛まれてるな」
「えっ、ヒルですか?」
「ちょっと待ってろ」


 先輩は近くにあったマングローブの木から葉を取り握り締める、すると葉から水が出てそれがヒルに当たるとヒルがポロッと取れた。


「ヒルは塩が苦手なんだ、マングローブの木は海水を吸い上げてるから葉には塩があるって訳だ」


 へえ~、知らなかった、先輩って意外と博識なんですね。


「でもヒルなんているんですね」
「このバロン諸島には約20万という種類の生き物が生息しているんだ」
「凄い数ですね…」
「流石にこう多いと何が生息してるかも覚えにくくてな…!?ッ小猫ちゃん!」
「キャッ!」


 突然先輩に抱え上げられました…先輩何を…って何ですかあれは?私の目の前には鋭い牙と爪を持つ猛獣がいました。


「バロンタイガー…捕獲レベル3の猛獣か。気配を消して小猫ちゃんに襲い掛かったが相手が悪かったな」


 あ、危うくあの猛獣の餌になるところだったの…!?


 バロンタイガーはうなり声を上げながら私たちを威嚇する。


「何だ、お前…俺と遊びたいのか…?」
「!?」


 バッ…


 あれ、バロンタイガーが逃げていく…どうして…?


「小猫ちゃん、大丈夫か?」
「あ、はい、私は大丈夫です、でも、その…」
「何だ、何処か怪我したのか?」
「その…胸に…当たってます、先輩の手が…」


 今私はイッセー先輩に後ろから抱きかかえられている状態なんですが、イッセー先輩の右手がダイレクトに胸に触れてて…あう…


「なッ!?すまねえ小猫ちゃん、直に離すから!」


 珍しく動揺したイッセー先輩が私を地面に降ろした、そして何とも言えない空気になる…うう、気まずいです…


「あ~…ゴホンッ!しかしおかしいな、バロンタイガーがこんな所にいるなんて…」


 イッセー先輩が無理やり話題を変える、まあ今はありがたいですが…


「何がおかしいんですか?」
「バロンタイガーはバロン諸島の奥にあるバロン湿原に生息しているんだ。だからこんな入り口近くにはいないはずだ。さっきのフライデーモンキーもそうだ、一生を洞窟で過ごすあいつらがあんな岩礁にいることは無い。何か強大な存在に生きる場所を追われたとしか考えられない」
「それって…」
「小猫ちゃん、気を抜くなよ、どうやら今回の依頼、相当やばそうだ…もしかしたら『コイツ』を使うことになるかも知れないな」


 先輩はそういって自分の左腕をジッと見ていた。



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ーーー



「よ~し、ヘビガエルの丸焼き一著上がりっと」


 辺りはすっかり暗くなり私たちは夕食を食べていた、焼いているのはヘビガエルという捕獲レベル1の猛獣らしい、そういえば…


「先輩、さっきから気になっていたんですけど『捕獲レベル』って何ですか?」
「捕獲レベルっていうのはその猛獣の強さを表わした数値のことだ。レベル1が猟銃を持ったプロのハンターが10人いて捕まえれるくらいかな」
「レベル1でそれって…今回のガララワニはどれくらいですか?」
「確か5だったぞ」


 捕獲レベル5って…もう化け物じゃないですか。それはそうとさっきから周りに動物が集まってるんですが何なんでしょうか?


「先輩、何やら猛獣が集まってきたんですが…」
「そいつらは俺達のおこぼれを貰いに来たんだろうな」
「おこぼれを…?」
「ああ、小猫ちゃんは気づいているか?奥に進むほど生き物の気配がなくなっていることを…」


 確かに奥に行くほど周りの生物の気配が無くなっている、これって…


「もしかしてガララワニが?」
「いや、確かにガララワニも大食漢だがこんな短期間に生物が減るほど食い尽くせはしない……普通ならな」
「じゃあ何が…」


 コポッ…コポコポッ…


 その時私達の近くにある沼から気泡が現れ大きな揺れが発生した。


 ドパァァァン!


「何ですか…!」


 沼から現れたのは大きな白い蛇だった。


「沼蛇!捕獲レベル5の大蛇か!」


 捕獲レベル5…!?ガララワニと同じじゃないですか!私達は戦闘態勢に入るが突然沼蛇は地面に倒れてしまう。


「…死んでる、一体何が?」
「小猫ちゃん、これを見てみろ!」


 私は先輩に言われた所を見る、何これ…大きく抉られたような傷がある…


「見たか小猫ちゃん、この傷は一撃でつけられた物だ、しかし沼蛇は警戒心が高く滅多に水面には出てこないはずだが……ん、これはバロンヒル!」


 沼蛇の身体についていたのは昼間私の首にくっ付いていたヒルだった。


「そうか、コイツに血を吸わせてその匂いをたどったのか」


 ズシンッ…ズシンッ!!


 何…この振動は…?私は後ろを振り返り…言葉を失った。


「…そういえば小猫ちゃんも血を吸われていたっけ、あの時からもう僕達は既にお前のターゲットだったんだな…そうだろ、ガララワニよッ!」


 私達の背後にいたのはとんでもない生物だった、全長20mの身体と八本の足、鋭い牙と爪、そしてバロンタイガーすら丸呑みにしてしまいそうな大きな顎…あれが…ガララワニ!?


「こんなのもう猛獣じゃない……怪獣!!」


 私は唖然とした、こんなのどうやっても勝てない…!


「先輩逃げましょう!」


 私は先輩に声をかける、だが先輩はガララワニを見て微動だにしない。


「先輩、速く逃げま…」
「なあ小猫ちゃん、ガララワニって推定150歳は生きるみたいだぜ、長生きすればするほど強さは増して行く。だがコイツはそれ以上だ、おそらく倍の300歳は生きている、それって肉が熟成されてるってことだよな?」
「何を言って……!?」


 私が先輩に振り返るとそこには先ほどまでの先輩はいなかった、目がまるで捕食者のように血走っていた。


「小猫ちゃん、何処かに隠れていな…ここからは俺の喧嘩だ!」


 私は直にその場から離れる。


「ガァァァァ!!」


 ガララワニが跳んだ、その巨体からは想像もつかないような速さで先輩に迫っていく。


「おらぁッ!!」


 先輩はガララワニの噛み付きを避けて尻尾を掴みガララワニを振り回し投げ飛ばす、ガララワニは体勢を直し地面に着地した。その時の衝撃で大きな砂埃が辺りに広がった。


「ガァァァァ!」


 砂煙の中からガララワニが先輩に飛び掛った、先輩はガララワニの連続して繰り出される噛みつきをかわしてガララワニを殴り飛ばした。でもガララワニには然程効いてない様で逆にガララワニの尻尾を喰らい吹き飛んだ。


 ドガァァァァァンン!!


「先輩!」


 私が声をかけると先輩はゆっくりと立ち上がってきた、でもどうしてガララワニはあんな視界の悪い砂煙の中であんなに正確に攻撃できるの…?


「ちっ、意外とやるなあ……ん?これはバロンヒル!」


 先輩の腕に何匹ものバロンヒルがくっ付いていた。一体どこから…


「グガァァァァ……」
「ひッ……!」


 ガララワニが口を開けるとそこには大量のバロンヒルが蠢いていた。


「ガララワニはバロンヒルを飼っていたのか、得物の血を吸わせ血の匂いを嗅ぎ捕食する、血の匂いに反応して瞬時に攻撃してくる訳か、コイツは長引くとやっかいだな……使うしかねえか、『アイツ』を!」


 先輩はガララワニの前に立ち塞がる。


「ガララワニ……その硬い鱗、鋭い爪、強靭な牙、そして三tはあるだろう顎の力…まさにバロン諸島の王者に相応しいその風貌……お前に敬意を払い、お前に見せよう、赤き龍の力を……来い、『ドライグ』!!!」


 イッセー先輩の左腕が赤く輝きだす…何が起こるの…?


『俺を呼ぶとは…それほどの相手なのか?』
「ああ、久しぶりにお前の力を借りるぜ、ドライグ!」


 先輩の左腕にはいつの間にか赤い籠手が装着されていた…ドライグってそんなまさか…あれは…


「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)…!」


「グガァァァ!!」


 ガララワニは今までで一番の速度で先輩に向かっていく、先輩は左腕を大きく頭上に振り上げる。


「三段階で行くぞ…!」
『Boost!Boost!Boost!』


 赤い籠手から音が流れ先輩の戦闘力が上昇していく…!


「この世の全ての食材に感謝を込めて…頂きます!」
「ガァァァァァ!!」


 先輩の左腕が手刀のような形になった。


「ナイフッ!!!」
『Explosion!!』


 ザンッ!!!


 先輩は迫り来るガララワニ目掛けて左腕を振り下ろした。すると一瞬の内にガララワニが真っ二つに分かれた。


 ギャリンッ、ギャリンッ!


「ご馳走様でした…」


 ドガシャァァァァン!


「凄い…これが先輩の力…!」


「……」


 その時私達の頭上に何かカメラのような物が浮かんでいたことに気がつかなかった…


 
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ーーー


side:??


「…」


 雷雲が轟く広大な城…その玉座には美しい銀色の髪を靡かせた青年が座っていた。


「失礼します、---様、ご報告があります。」


 そこにフードを被り杖を持ち、大きく裂けた口を縫い合わした老人が入ってきた。


「……ジョージョー。報告とは何だ?」
「バロン諸島の異変はガララワニの仕業らしく……例の食材では御座いませんでした。しかし面白い報告が御座います、そのガララワニを捕獲した者がいるとの事です」
「その者の名は?」
「左腕に赤い籠手を付けた少年だったらしく、恐らく美食四天王の兵藤一誠かと……---様?どうなされました?」


 ジョージョーと呼ばれた老人が青年に声をかける、何故なら青年は笑っていたからだ。


「そうか、目覚めていたのか。赤龍帝……」


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side:小猫


 ガララワニを仕留めた私たちはつかの間の休憩をしていた。でも先輩には驚かされてばかりだ。


「まさか先輩があの赤龍帝だったなんて……」


『赤龍帝』……かつて悪魔と天使、そして堕天使の大きな戦争がありました。戦争が激化していくなかで彼らは突然現れました。『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』赤龍帝ドライグと『白き龍(バニシング・ドラゴン)』白龍皇アルビオン、通称『二天龍』。
 

 三大勢力の戦争に突然乱入してきた二匹のドラゴンは三大勢力を壊滅する一歩前にまで追い込んだそうです、四人の魔王と聖書の神がやっと神器に魂を封じ込めたとか……
 その赤龍帝の力を宿しているのが『赤龍帝の籠手』だと部長から聞いています。


「ああ、隠していてすまなかった、俺が今代の赤龍帝なんだ」
『そういうことだ、宜しく頼むぞ小娘』


 私今あの赤龍帝と喋ってるんだよね、グルメ界といい今日は驚いてばかりです……ってちょっと待ってください、先輩が赤龍帝なら悪魔のことも知ってるはずじゃないんでしょうか?


「先輩は私の正体を知ってるんですか?」
「……ああ。知っていた。君が悪魔だってことをドライグに教えてもらったんだ」
「そうですか……」


 そっか、先輩は悪魔だって知っていたんだ、そう、私は人間じゃない、リアス部長によって生まれ変わった転生悪魔だ。


「気持ち悪かったですよね、こんな得体の知れない私がいつも先輩のそばに来て……」
「小猫ちゃん、確かに初めて会った時俺は少し警戒した。でも直にそんなこと直に忘れちゃったよ」
「えっ?」
「小猫ちゃんが俺の料理をニコニコしながら美味しそうに食べてるのを見てさ、毒気抜かれちゃったんだ。だからむしろ君が来てくれるのが返って嬉しかった…ってこんな事言わすなよな、照れくさいな」
「先輩……」


 先輩は私が悪魔でも構わないんですね、やっぱり先輩は優しいです……


「ほらほら、暗い話はまた後だ、今はガララワニを食おうぜ!」
「……はい!」




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ーーー



 ジュー…


「わああ……!」


 ガララワニのお肉がこんがりと焼けていく…香ばしい肉の香りでもうお腹ペコペコです。


「それじゃ、全ての食材に感謝をこめて……」
「「頂きます!!」」


 私は手づかみでガララワニのお肉を取る、え、行儀が悪い?たまにはいいじゃないですか。


 はむ……ん!


「凄い!噛んだ瞬間に蕩けるような甘い脂が口いっぱいに広がった!噛んでも噛んでも肉汁が溢れてきます!」
「すげえジューシィで噛めば噛むほど肉汁が溢れる…まるで肉汁の噴水だぜ!!」


 私と先輩は夢中になってガララワニを食べ続けた。


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ーーーーーー

ーーー


「美味しかった、もうお腹いっぱい……」


 あれからガララワニのお肉をお腹いっぱい食べました、もう幸せです。


『それでどうだ、これはフルコースに入るのか?』
「いや確かに美味かったが…もうちょっとインパクトが欲しいな」


 先輩とドライグが何か話してる、フルコースって何でしょうか?


「先輩、フルコースって何ですか?」
「フルコースって言うのは未知の味を捜し求める美食屋が人生の目標とするメニューのことでオードブル、スープ、魚料理、肉料理、メイン、サラダ、デザート、ドリンクの八つがあるんだ、俺はいつか自分だけのフルコースを完成させたい…それが俺の夢なんだ」
「そうなんですか……先輩、もし先輩のフルコースが完成したら私にも食べさせてくれますか?」
「勿論だ、小猫ちゃんにも食べて欲しいしな」
「じゃあ楽しみにしてますね、約束ですよ?」
「ああ、約束だ!!」


 
 

 
後書き
小猫です、次回は久しぶりにハイスクールD×Dの世界が舞台となります、ある日先輩は公園でシスターと出会います、シスターの優しさに触れて次第に心を許していく先輩、ですがシスターにはある秘密があって…次回「学園の日常、聖女アーシア登場!」 

 

第3話 学園の日常、聖女アーシア登場!

 
前書き
  

 
side:イッセー


 よう皆、第3話目にしてようやく主点になれたイッセーだ。…なんかメタい事言ってる様な…何言ってんだ俺?


『どうした、いきなり独り言を呟くなど…疲れているのか?』


 俺に声をかけて来たのはドライグ、かつて二天龍の一角としてあらゆる種族に恐れられ『赤龍帝』と呼ばれた最強の龍、今は聖書の神によって魂を神器に封じ込まれ俺に宿っている。


「何でもねえよ、よく分からんが呟いちまったんだよ」
『そういえば今日はあの娘がいないな?』
「ああ、何でも部活の方で呼び出しがあったみたいだぜ」


 まあ小猫ちゃんはオカルト研究部の部員だからあっちを優先するのは当たり前だしな。


『ククッ…何だ、寂しいのか?』
「はあ…?違えよ、久しぶりに一人になったから何しようか考えてたんだよ」


 さて何しようか…あっちから依頼は無いし久々に町に出て食い歩きでもしようかな…


『お前は本当に食ってばかりだな…ん、向こうから誰か走って来るが…』


 ドライグの言う通り向こうから誰かがこちらに走ってきた…ってあの二人は…


「こらーーー待ちなさい!」
「今日という今日は絶対に許さないわよ!!」
「ひいいいぃぃぃーーーッ!走れ元浜!!」
「全くいい所で…捕まってなるものか!!」


 走って来たのは男子二人と女子二人だった、後ろの女子二人が鬼のような形相で竹刀を振りかざしながら男子二人を追いかけている…っておいおいぶつかるぞ!


 ドンッ!


「ぐあッ!?」
「いてッ!?}


 俺にぶつかった男子二人は勢いよく吹き飛び尻餅をつく、え?俺は微動だにしなかったぞ。


「いてて、一体何が…ってお前は兵藤じゃねえか!」
「丁度いい所に…助けてくれ!」


 丸刈り頭の男子が俺に指を指して驚き眼鏡をかけた男子が俺に助けを求めてきた。


「ようやく追い詰めたわよ!」
「観念しなさい…って兵藤一誠!?」


 追いかけてきた女子二人は俺を見るなり後ずさる、しかし何でこの学園の女子は俺を見るたびに警戒するんだ?


『そりゃ普段から引かれるレベルで食ってばかりで喧嘩が強くて顔に三本も傷がありゃ関わりたいなんて思う人間はそういないだろう』


 ふ~ん、まあ確かに普通の女子なら俺みたいな粗暴そうな男子は嫌だろうな、木場みたいに爽やかなイケメンのほうがいいだろう。


「ど、どうして兵藤がここに…」
「いやな、歩いていたらこいつ等がぶつかってきたんだが…何かされたのか?」
「い、いえ別に!」
「そ、そうだ!私達部活があるんだった!それじゃ私たちはこれで!」


 女子二人はそう言ってそそくさと去っていった。


「ふうぅ~…助かった…」
「命拾いしたぜ…」
「命拾いしたじゃねえだろうが、今度は何したんだお前らは…どうせまた覗きでもしたんだろう?」


 俺は呆れながら二人の男子…松田と元浜に声をかけた。


 『変態二人組』…この二人は学園でそう呼ばれている、何故そう呼ばれてるのか、それは二人の行動にある。


「兵藤、お前も男なら分かるだろ?この高まるリピドーを押さえるには!覗くしかねえだろ!」
「いや違うだろ」


 顔を真っ赤にしてそう語るのは松田。見た目は爽やかなスポーツ少年だが実際は口を開けばセクハラばかり話す変態だ。聞けば中学時代にあらゆる記録を塗り替えた男らしいが今ではカメラを片手に女子高生のパンチラを追いかける毎日らしい。


「ふッ。俺の中に眠る魔性が叫ぶのだ、女子の裸が見たい…とな」
「いやカッコよくいっても駄目だからな」


 格好つけてそういうのは元浜。頭はかなりいいらしいが特技は女子の体型を数値化すること…どうやってるんだそれ?


「というかお前ら彼女がほしいんだろ?なら覗きなんてしたら意味ねえじゃねえか」
「ぐッ…そ、そんな事よりも兵藤!我々は聞いたぞ!」


 話をすりかえやがった…なんでこいつ等は興奮してるんだ?


「何をだよ」
「しらばっくれるな!あの学園のマスコットこと塔城小猫ちゃんが最近お前の部に入り浸ってるらしいじゃないか!」
「いつも食いっけしかないくせに!どうやって小猫ちゃんを落としたんだ!?」
「はあ?小猫ちゃんは食う趣味が合うから来てるだけだぜ」
「じゃあ付き合ってるとかではないのだな?」
「当たり前だろ、俺があんな可愛い子と付き合えると思うか?」
「うむ、そうか…」
「じゃああんな噂を流したのは拙かったかな…?」


 ガシッ!!


 俺は松田の一言を聞き逃さなかった。


「おい…今なんて言った?…噂だと?」
「あ、いやその…」
「何を流した…?」


 ちょいと語尾を強めて問い詰める、二人とも冷や汗をダラダラと流している。


「そのな…お前が小猫ちゃんを部室に連れ込んで…」
「裸エプロンにさせたり女体盛りをさせたりしてると…」
「てめぇらの仕業かぁぁぁ!!!」


 グイッ、ガキッ!!


 俺は松田をアルゼンチンバックブリーカーに、元浜に首4の字をかけた、通りで最近女子からの視線が痛いと思ったわ!!


「ふざけんじゃねえ!俺は食うことに対しては真面目なんだぞ!それに小猫ちゃんにそんな格好させられるかぁぁぁーーー!!!」
「ぐあああぁぁぁ!俺達が悪かったーーー!!!」
「何でもするから許してくれーーー!!!」


 その後二人を解放した俺は罰として今日の食い歩きの代金を出してもらった。




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 
「ふう、食ったな…」


 松田達と別れた俺は帰路についていた、しかしあいつ等あんな噂を流してたとはな…全然気がつかなかったぜ。


『その腹いせにカツ丼3杯、天丼4杯、ラーメン6杯も食べたのか、あの二人泣いていたぞ』
「う…だが小猫ちゃんに裸エプロンとかアホじゃねえか?」
『何だお前…まさか照れているのか?』
「んな訳ねえだろう…ったくドライグまでからかいやがって…」


 今日はさっさと帰るか…


「はわう!」


 突然背後から声が聞こえ同時にボスンと路面に何かが転がるような音が聞こえた、何だ一体?


 俺は後ろを振り返る、するとそこにはシスターが倒れていた、それも両手を広げて顔面から突っ伏してるし…おいおい、大丈夫かよ…


「おい、大丈夫か?」


 俺は倒れているシスターに手を差し伸べた。


「あうぅ…どうしてこんな何もない所で転んじゃうんでしょうか…ああ、すいません、ありがとうございます」


 俺はシスターの手を引いて立ち上がらせる。


 ふわっ…


 その時だった、突然強い強風が吹きシスターのヴェールが跳んでいく、するとヴェールにおさまっていたであろう金色の長髪が露になった。


 ーーーッ!


 …正直一瞬心を奪われた、光に当りキラキラしたストレートのブロンドにエメラルドグリーンの双眸があまりにも綺麗だ…俺が食うこと以外に心を奪われるなんて…


「あの…どうかしましたか?」
「あ、いや何でもない。…怪我はないか?」


 俺は近くにあったヴェールをシスターに返し怪我がないか確認した。


「はい、怪我はありません。助けてもらいありがとうございます」
「それならいいが…君は外人だろ?随分と日本語が上手いな」
「はい、実は今日からこの町の教会に赴任することになりまして…日本語はその為に覚えてきました。流石に文字までは分かりませんがある程度なら日本語は話せます、えへへ。あ、貴方もこの町の方ですか?今日からよろしくお願いします」


 ペコリと頭を下げる彼女。人事異動って奴か?シスターも大変だな…


「でもこの町に教会なんてあったかな…いやまさかあそこか?」


 この町の外れに古びた教会らしき建物があったような…でもあそこって使われていたか…?


「もしかして教会のある場所を知ってるんですか!」
「ああ、心当たりはあるが…」
「あの…もしご迷惑でなければそこまで案内をして頂けないでしょうか?この辺りの道がまだ分からなくて…」


 迷子になっていたのか…急に見知らぬ土地に飛ばされて困っていたんだな。


「いいぞ、教会まで案内するよ」
「本当ですか!ありがとうございます、えっと…」
「兵藤一誠だ、イッセーと呼んでくれ。」
「私はアーシア・アルジェントと言います、アーシアと呼んでください」


 こうして俺は奇妙な縁でアーシアを教会まで連れて行く事になった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 アーシアを連れて教会まで向かう途中で公園の前を横切る。


「うわぁぁぁん!」
「よしくん、大丈夫?」


 公園から子供の泣き声が聞こえてくる、どうやら転んで足をケガしたみたいだ、痛そうだな…


 ダッ


 俺がそんな事を考えているとアーシアは泣いている子供の側まで駆け寄っていく。


「大丈夫?男の子ならこのぐらいのケガで泣いてはダメですよ」


 アーシアはニッコリと微笑み子供の頭を撫でる、そしておもむろに子供がケガをした膝に手のひらを当てる。


 ポワッ…


「何だあれは……」


 アーシアの手のひらから淡い緑色の光が発せられ子供の膝を照らしていく、すると子供のケガがみるみると治っていく、あれはまさか…


『あれは回復系の神器だな、それもかなり強力なものだ』


 俺の中にいるドライグがそう語りかけてくる。


 ---神器……特定の人間に宿る、規格外の力。彼女もそれを持っているのか…?


「はい、これで大丈夫ですよ」


 子供のケガはあっという間に治っていた、子供とその母親は驚いた表情をしている、まあ非現実的な事が目の前で起きたんだ、無理はないな。


 母親はアーシアを化け物を見るかのような目で見ると子供を連れてそそくさと去っていった。


「ありがとう、お姉ちゃん!」


 子供はアーシアに感謝を言って去っていく。


「アーシア、それは…」
「これですか?これは治癒の力…神様が授けてくれた素敵な力なんですよ」


 微笑むアーシア、だがその表情は何処か寂しそうなものだった。
 

 ドライグから聞いた事があるが神器の所有者は大体が悲惨な目に合うそうだ。まあ無理もないな、人間は自分の理解を超えた現象や力を受けいられない生物だ、大抵はさっきの子供の母親みたいに化け物を見るような目で見て怯えてしまう。


(…アーシアにもあるんだろうか…そういった事情が…)


 俺は寂しそうに微笑む彼女に何も言ってやれなかった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



 そうこうしている内に目的の教会までたどり着いた。だがやっぱりボロイな、本当に人がいるのか?遠目で見ると明かりがついている、誰かはいるようだ。


「あ、ここです!良かったぁ」

 地図に書かれたメモと照らし合わせながらアーシアは安堵の声を出す、どうやらここで間違いないらしいな。


「本当にありがとうございました、良かったらお茶でも飲んでいきませんか?」
「えっと…」


 …何だろう、あの教会から嫌な感じがする…美食屋としての勘がそう俺に伝える。


「わりぃ、実は急ぎの用事があって…」
「そうなんですか?それなのに案内なんて頼んだりして…」
「いや気にすんな、困った時はお互い様だ」
「…イッセーさんは優しい人ですね」


 ニコッと微笑むアーシアを見てドキッとした、何か調子狂うな…


「それじゃまたな」
「はい、本当にありがとうございました、イッセーさん」


 アーシアはペコリと頭を下げて教会の方に歩いていった。


「………」
『入らなくて正解だったな』


 アーシアを見ていた俺にドライグが語りかけてきた。


「どういう事だ…?」
『あの教会から堕天使の気配を感じるからだ』


 堕天使…悪魔や天使と並ぶ三大勢力の一角…そいつ等があの教会に…?


「じゃあ待てよ…何故アーシアはそんな所に…?」
『それは分からん、だが一つ言えるのはあのアーシアという娘…唯のシスターではないということだな』
「…アーシア…彼女は一体…」


 俺は教会に入っていくアーシアの後姿を見ながらそう呟いた。




 

  
 

 
後書き
 この小説ではアーシアちゃんは日本語を勉強してきたという設定にしています、イッセーは悪魔じゃないから通訳は出来ないしかといって作者は英文が死ぬほど苦手で…申し訳ありませんがそのような設定でお願いします。
 今回は小猫ちゃんの次回予告は無しです。 

 

第4話 怒れイッセー!エクソシストとの戦い 

 
前書き
 遅れてしまい申し訳ございません…残業ばっかり増やすなってのに…愚痴はこの辺にしてそれではどうぞ! 

 
side:イッセー


「ふッ、はあッ、せいッ!」


 日も沈み人気も少なくなった公園の近くにある森…そこで俺と一人の戦士が拳をぶつけ合っていた。


 ドガッ、バキッ、グガッ!


 激しく肉体がぶつかり合う、どちらも一歩も譲らない…まさに均衡した戦いだ。


「またパンチ力が上がってるじゃないか、これも魔法少女の力か、ミルたん!」
「そんなに褒められると照れるにょ、でもドラゴンさんも強くなってるにょ!」


 そういいながら独特の決めポーズを決める人物…鍛え上げられた見事な肉体に加えて、魔女っ子に憧れる乙女心を持った、男の娘…いや『漢の娘』だ。


「よっしゃ、こっちもギア上げていくぜ!ミルたん!」
「にょ!魔法少女の力、とくと見るにょ~!」


 再びぶつかり合う俺とミルたん、誰もいない深夜の森に肉体がぶつかる音が響いた。



ーーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「いやー、やっぱりミルたんは強いな!」
「こっちも久々にいい汗かかせてもらったにょ」


 戦いが終わり俺とミルたんはスポーツドリンクを飲んでいた。


 俺とミルたんの出会いはほんの些細なきっかけだった。俺は美食屋の仕事が無い時はアニメを見たりしてるんだけど、ある日行きつけのDVDショップに行ったんだ。


「ん~、今回はロボット物だったし、今回は魔法少女物にでもしようかな」


 そういって俺はアニメコーナーに向かった。


「新作は…お、新しい魔女っ子のアニメか…チェックしとくか…」


 そういってそのアニメDVDを取ろうとしたんだが…


「ん?」
「にょ?」


 おっと、丁度同じものを取ろうとした人がいたみたいだ。俺はチラリとその人を見て…絶句した。


「にょ?お兄さんもこのアニメ見てるのかにょ?」


 な、何だ…この生物は…核によって崩壊した世界に現れた世紀末覇者のような男性がネコミミとゴスロリ衣装を着こなしているだと…!?
 凄いプレッシャーだ…今まで対峙してきた猛獣が可愛く思えたぜ…


 正直あの時は猛獣が徘徊する野生の大自然にいる時よりも警戒したなぁ、でも話してみるとすっげえいい人で意気投合した。


「ドラゴンさん、どうかにょ?ミルたんは魔法少女に近づけたかにょ?」
「う~ん、ミルたんは十分強いと思うんだが魔法少女と言われるとな…」


 ミルたんは魔法少女になるのが夢らしく魔法少女になるために様々な事を試してきたが、失敗ばかりらしい。聞いた話では異世界まで行って魔法を授けてくれる存在を探したがいなかったようだ。
 

 初めてこの話を聞いた時、俺はまさか異次元七色チョウがいるのか、と思ったがミルたんは知らないようだし…まさか生身で異世界を渡れるのか…?まさかな、だがミルたんなら難なく出来てしまいそうだ。


「そうかにょ、残念だにょ…ミルたんも早く魔女っ子になって魔法の力で悪者を退治したいにょ」
「まあ気長に行こうぜ、思い立ったら吉日、その日以降は全て凶日ってな、自分で決めたんだろ?俺も力になるからさ」
「ドラゴンさん…ありがとうだにょ、そうだにょ、ミルたんは絶対に魔法少女になるんだにょ!」


 ミルたんは力強く腕を突き上げる。因みにミルたんが俺をドラゴンさんと呼ぶのはドライグの事を知っているからだ。普通なら怖がるのにミルたんは逆に羨ましがってたな。


「そろそろいい時間だし帰るか」
「ドラゴンさん、実はあの魔女っ子アニメの最新刊ブルーレイが手に入ったにょ、家で見ていかないかにょ?」
「お、それは是非見たいな。美味いツマミを作るから酒でも買っていこうかな?」
「あ、お酒は20歳からだにょ!悪い事はしちゃ駄目だにょ!」
「ははは…ミルたんには適わないな」
「魔法少女は良い子の見本だにょ、これ位当たり前だにょ」


 そんな冗談を言いあいながら俺たちはジュースを買ってミルたんの家に向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー 



「じゃあなミルたん、アニメ楽しかったぜ」
「それは良かったにょ、また来てほしいにょ」


 アニメを見終わった俺はミルたんに礼を言って帰路に付いていた。うわ、もう22時過ぎじゃんか…腹減ったな、明日は土曜日だから学園は休みだ、何か食っていこうかな…


 そんな事を考えながら歩いていたが…俺はふいに足を止めた。


『…ん、どうしたんだ相棒?』


 ドライグが離しかけてくる。


「…ドライグ、血の匂いがする、それもちょっとじゃねえ…かなりの量だ」
『…なんだと、こんな住宅街でか?』


 俺の問いにドライグは疑問そうに話す、俺の嗅覚は常人の一万倍、警察犬すら凌ぐほど特化している、だからほんの僅かな匂いも嗅ぎ分ける事が出来るんだ。


「間違いない、この強い鉄の匂い…これは赤血球に含まれているヘモグロビンから分泌されるものだ…あの家から匂う」


 少し離れた先にある一軒の家、そこから血の匂いが漂っていた…


「まさか殺人事件でも起きたのか…?」
『おい、まさか様子を見に行くつもりか?』
「こんな近所で殺人事件でも起きたら怖くて夜も歩けねえよ」
『どの口が言うんだ…仮に殺人でも普通は警察というのを呼ぶものじゃないか?』
「まあな、でも何でか分からないが嫌な予感がするんだ」
『それは美食屋の感か?」
「ああ、そうだ」


 俺はその家に近づく、すると更に血の匂いが強くなってくる。


『ん?おい、相棒。見ろ、扉が開いているぞ』


 ドライグが指摘した通りその家の玄関のドアは半開きになっていた、こんな深夜に何故…


『これは相棒の言う通り何かあったのかも知れんな…ってオイッ!』
「何だよドライグ…いきなり叫ぶなよ…」
『何普通に入ろうとしてるんだ、少しは警戒しろ!』
「分かってるって…」


 ドアの隙間から中を確認して辺りに気配がないか探りながら中に入る。少し奥に入るとリビングがあった、テレビやソファーなどが置いてある、どこにでもある普通の光景だな…!


 …俺は一瞬息を詰まらせてしまった、壁に貼り付けられた男性の死体…それも上下逆さまにだ。ズタズタに斬られており腹から内臓が出ている。


「…えぐいな」


 死体は逆十字の形で壁に貼り付けられていた、それも釘でだ。両腕や両足、更には心臓の辺りにも太い釘が刺さっている。明らかにまともな人間がすることじゃない。


「何か壁にかいてあるぞ、これは…」
「『悪い事をする人はおしおきよ!』って聖なる言葉を借りたものさ」


 背後から声が聞こえ俺は振り返る、そこには白髪の男がいた、外人らしく年は俺よりちょっと上くらいか?神父の格好をしているがその易たる所に血が付着していた。


「んーんー?なんだいなんだい?どーして一般ぴーぽーがいる訳?僕チンわかんなーい♪」


 ゲラゲラと笑いながら訳の分からない事を言い出す、何だコイツ…


「俺はエクソシスト~♪糞なデビルを切り殺し~♪悪魔の首を切り捨てて~♪血の雨を浴びるのさ~♪っと言うわけで自己紹介!俺はフリード・セルゼン!趣味は悪魔殺し!とある悪魔祓い組織に所属してる末端でごぜーますよ!以後宜しく~♪まあキミとはもうすぐイナイイナイばいちゃ!だけどね~」


 …間違いねえ、コイツイカれてやがる、それに悪魔祓いって…教会の関係者か!


「おい、フリードといったか…お前がこんな事しやがったのか?」
「イエス!Exactly!!だって悪魔を呼び出す常習犯だったらしいし~、俺が正義の制裁を加えてやったのさ!」
「正義だって?こんなイカれた殺しがか?ふざけんなよ」
「はあ?なんなのお前?そのカスもしかしてお知り合いでしたか~?そりゃ悪い事しちまったナッシング!」
「知り合いじゃねえよ、俺は唯…命を貶す奴が大嫌いなだけだ」
「そっすか。遺言はそれだけかな~。いやあ、キミも運がなかったね~、これを見なきゃもう少し長生きできたのにな~。慈悲深い俺が選ばせてやるぜ、バラバラ死体になりたいか、それとも銃弾たらふく喰って死にたいかどっちかな!」


 フリードと名乗った神父は懐から刀身のない剣の柄と拳銃を取り出した。


 ブオンッ


 刀身のない剣の柄から光の刀身を生み出した、ならこっちも赤龍帝の籠手を……


「な、何をしてるんですか!?」


 突然誰かの声が響き、神父はそちらに視線を移す、俺も一緒に視線を移すが…おい、嘘だろ、何でここにいるんだ?


「ア、アーシア!?」


 そう、そこにいたのは前にあった町で道に迷っていたシスターの女の子…その彼女がどうしてここに!?


「おんや、助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。どうしたの?結界は張り終えたのかな?」
「!!い、いやァァァァァッ!?」


 アーシアは壁に貼り付けられた死体を見て悲鳴を上げた。って待て!今あの神父なんて言った?助手だと!?アーシアはコイツの仲間…!?


「期待通りの可愛い悲鳴ありがとうございます!そっか、アーシアちゃんは初めて見るんだね、コイツは糞悪魔に魅入られた哀れな人間の末路だよ。よ~く見て覚えてね」
「な、何てことを…あ、貴方はイッセーさん!?」


 アーシアは俺を見て驚愕した表情を浮かべた。


「あらあら、もしかして知り合いだったんですか~?それとも彼氏かな~?うわッ、アーシアちゃん清純ビッチ!!でもごめんちアーシアちゃん、コイツこれを見ちまったから死んでもらうんだ、アーシアちゃんもコイツが天国に行けるようにお祈りしてあげなよ!」
「そ、そんな…フリード神父、止めて下さい!この人は私を助けてくれた方なんです!」


 アーシアは俺を庇うように神父に立ち塞がる。


「おいおいアーシアちゃん、キミ、何してるか分かってるの?」
「もう嫌です、悪魔に関わったというだけで何の罪もない人達をが殺されるのを見てるだけなんて…そんなのおかしいです!」
「はぁァァァァ!?バカこいてんじゃねえよ!悪魔は糞だって教会で習わなかったのか?お前頭にウジ虫でもわいてんじゃねえのか!?」


 フリードの表情は憤怒に包まれていた、だがアーシアは怯まず神父を睨む、何て心の強い子なんだ。


 バキッ!


「キャッ!」


 あいつ、持っていた拳銃でアーシアを殴りやがった!


「アーシア!」


 床に倒れたアーシアに駆け寄る、…顔面に痣ができている…コイツ、マジで殴ったのか…!


「…堕天使の姉さんからキミを殺さないように念を押されてるんですけどねぇ…ちょっとむかつきマックスざんすよ。殺さなきゃいいわけだから、ちょっくらレ○プまがいのことでもさせてもらいましょうかね…ッとその前にそこのゴミからおかた付けしましょうかね」


 神父は光の剣を俺に突きつける…だがそんなことはどうでもいい…コイツ…アーシアを殴りやがったな…!!!


「そんじゃサクッと殺してアーシアちゃんをおか……」
「黙れ!」
「はえ?」


 気がつけば俺は左腕から籠手を出しクソ野郎の顔面を殴っていた。


 ミシッ、ミシミシッ!!


 神父の顔面がきしむ様に陥没していき…


 ズガァァァァンッ!!


 壁を突き破って吹っ飛んでいった。


「はぁ、はぁ……」
『おい相棒、大丈夫か?お前がそこまでキレるなんて珍しいな』


 ドライグが声をかけてくるが怒りは収まりそうにもない…いつだってそうだ、俺を本気で怒らせるのは……人間だけだ。


「ッそうだ、アーシアは?」


 俺はアーシアに駆け寄り様子を見る、殴られたショックで気を失っているようだが痣以外に傷は見当たらない。


『…ムッ、相棒、この家に複数の堕天使の気配を感じた、こっちに向かって来ているぞ』


 堕天使か…相手してやってもいいがアーシアがいてはな…よしここは取っておきの作戦でいくか…


『ほう、どんな作戦だ?』
「決まってるだろ、全力で……撤退する!逃げるんだよォォォ、ドライグゥゥゥッ!!!」
『オイッ!!!』


 ドライグがつっこむが今は無視だ、早くアーシアを安全な場所までつれていかなくては…!



 俺はアーシアをお姫様抱っこして走り出した。



  
 

 
後書き
 こんにちは小猫です…最近出番が無いです、ううッ、一応ヒロインなのに…アーシアさんを連れて逃げた先輩。彼女が堕天使に狙われていると知った先輩は彼女をかくまう事にした、そしてイッセー先輩はアーシアさんと過ごしている内に段々と惹かれて…って何ですか!この台本!これじゃ本当にアーシアさんがヒロインじゃないですか!…気を取り直して次回「魔女と呼ばれし少女、アーシアの悲しき過去」でお会いしましょう…私は出ませんが… 

 

第5話  魔女と呼ばれし少女、アーシアの悲しき過去

 
前書き
 大変遅くなってしまい申し訳ございません。かなり間をあけていたらお気に入りが200を超えていてビビりました作者のリョウヘイです。この小説を読んでいただき誠にありがとうございます。更新ペースは遅いですが気長に待って頂けると幸いです。 

 
side:イッセー


「はあ…はあ…良し。追手はいないな」
『堕天使の気配もない、逃げ切れたみたいだな』


 気絶したアーシアを連れて家に帰ってきた俺は辺りの匂いを嗅いで追手がいないか確認するがそれといった匂いはしない。ドライグも堕天使の気配を感じないことから無事に逃げ切れたようだ。


「ここにいればとりあえずは安全だな」
『いや、それはどうかな?』


 安堵していた俺にドライグが声をかけてくる、何かあるのか?


『さっきのイカれた神父は堕天使側の人間だ、奴が戻らなければ堕天使共は不穏に思い動き始めるはずだ。それにあの神父は生きている。奴がお前の事を話せば堕天使達はすぐにお前を探し始めるだろう、ここがバレるのも時間の問題だな』
「やっぱりそうだよな…さてどうするか…」


 ドライグの話を聞いて俺は今後どうするか考える。もし堕天使がこの家の事を嗅ぎつけたら問答無用で攻撃してくるだろう、そうなるとここに留まるのは危険だな。


 町を転々とするのも不味い、いっそ小猫ちゃんに頼んでグレモリー先輩に……いやそれも駄目だ、アーシアは堕天使側の人間だ、悪魔の彼女がアーシアに危害を加えないとかぎらない。小猫ちゃんは信用してるがグレモリー先輩達とは余り関わったことがないからな、信用しきれない。さてどうすれば…ん?そうだ!


「あるじゃないか。絶対にバレない場所が…」
『相棒?』


 俺は部屋の隅でケース入っている異次元七色チョウを見ていた。



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side:アーシア


「聖女様、どうかこの子をお助けください」
「聖女様、私の家内が重傷をおってしまいました、どうか奇跡の力で家内を助けてください」


何時からだったでしょうか、私が聖女と呼ばれるようになったのは…


 この世に生を受けた私は直に実の両親から捨てられました。捨てられた私は教会兼孤児院を運営していたシスターに拾われて育ててもらいました。貧しくも私を愛し育ててくれたシスターに出会わせてくれた主に感謝しながら幸せに生きていました。
 

 でも私が8歳の時運命は大きく変わりました。私には生まれた時から生物を癒す不思議な力が宿っていたのです、ある日町で事故にあって腕に大きな怪我をした子供を見かけた私は癒しの力でその子の怪我を治しました。人々は神の奇跡と驚き私を称えました。そして噂を聞いたカトリック教会の本部に連れて行かれ私は『聖女』と呼ばれるようになりました。
 

 突然の事に私は最初は驚いていました、ですが私の力で誰かの助けになれることが、必要とされることが何よりも嬉しかったんです。私はこの力を授けてくれた主に改めて感謝いたしました。
 

 でも私にはひとつ夢があります、それは一人でもいいから私と友達になってくれる方がほしかった事です。でも私を見る目は異質を見る目…そんな人は現れませんでした。
 

 そんなある日でした、私は怪我をしていた悪魔を見かけました、悪魔は敵だと教わっていましたが怪我をしている人を見捨てたくないと思いその方の怪我を治してあげました。ですがそれを教会の関係者に見られてしまいました。


「悪魔を治しただと!?」
「そんなことはありえない!」
「聖女ではなく魔女だったのか!?」
「汚らしい魔女め、悪魔の手先だったか!」


 人々から聖女と称えられていた私は「魔女」として人々から恐れられ教会から追放されてしまいました、そして行き場を無くした私は堕天使の皆さんに拾われました。
 

 私は主への祈りを忘れたことは一日だってありません、でも私はあっさりと捨てられました、これは主の与えた試練なのでしょうか?そうですよね、私がバカだからこんなことになっちゃったんですよね……
 

 そんなある日私は日本という国に行くことになりました、教会の場所がわからずオロオロしてどうしようと思っていたとき……


「おい、大丈夫か?」


 そう声をかけてくれたのはイッセーさんという方でした、見ず知らずの私に何の躊躇いもなく教会に連れて行ってくれると聞いた私は嬉しくて泣いちゃいそうでした。誰かにやさしくされたのは本当に久しぶりでしたから……
 

 彼は不思議な方でした、私の力を見ても異質と見るどころか何か心配するような目をしていました。私を教会に送ってくれた彼は何の見返りも要求しないで気にするなと言って去っていきました。


 もし教会にいた時にイッセーさんと出会っていたら……



 私と友達になってくれたでしょうか……



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ーーー


「……夢?」


 何だか懐かしい夢を見たような気がします…あれ、私は何をしていたのでしょうか?


 確かフリード神父と悪魔と契約した方の家に行きそこでし、死体を見てそれから……


「……?」


 何があったんでしょうか。ううっ……頭が痛いです、ズキズキとします。とにかく教会に戻らないと。私はベットから出ようとしましたがあることに気がつきました。


「お菓子……ですか?」


 私がいた部屋は至る所がお菓子でできていました。壁はクッキー、チョコの柱、わたあめのベット…子供の頃に見た絵本の世界のような光景が広がっていました。


「私はまだ夢を見ているのでしょうか?」


 目の前の光景が信じられない私は自分のほっぺたをつねってみます…あうっ、痛いです…じゃあ夢じゃないのでしょうか?


「お、起きたのか」


 背後から声を掛けられて少しビックリしちゃいました。あれ、今の声って……私が後ろを振り返るとそこにいたのは……


「イッセーさん!?」


 道に迷っていた私を助けてくれたイッセーさんが立っていました。


「イッセーさん、どうしてここに?」
「どうしてって…ここ俺の家だし」


 家…?このお菓子の家がイッセーさんの…?メルヘンチックなお菓子の家に住むイッセーさん…あ、何だか可愛いかも…


「おいおい、大丈夫か。あの神父に殴られた傷がまだ痛むのか?」


 殴られたって…ああ、思い出しました!あの時何故かイッセーさんがいてフリード神父がイッセーさんを殺そうとして…私はそれを止めようとして神父に殴られて…


「…った…」
「アーシア?」
「良かった…イッセーさんが殺されなくて…本当に良かった…」


 全部を思い出して私はイッセーさんが生きていてくれたことが嬉しくて思わず泣きだしてしまいました。


「全く…自分の事より俺を心配するなって」


 泣いている私をイッセーさんは優しくなでてくれました。私が泣き止むまでずっと…



ーーーーーーーーー

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ーーー


side:イッセー


 その後アーシアは数分間泣き続けてようやく落ち着いてきた。今は顔を真っ赤にして座っている。


「そ、その、ごめんなさい!いきなり泣き出して…」
「気にするなよ、むしろいいもん見れてラッキーなくらいだ」
「あう…恥ずかしいです」


 アーシアは更に顔を赤くしてうつむいてしまった、この子は感情豊かで面白いな。


「所でイッセーさん、ここはどこなんですか?お菓子の家なんて見たことがないのですが…」
「あ~……なあアーシア、これから話すことは信じられないかもしれないが事実なんだ。後このことは誰にも言わないでほしい、いいか?」
「分かりました、誰にも言いません」


 俺はグルメ界について知っていることを全てアーシアに話した、この世界がさっきまでいた世界とは違う異世界だということ、俺の正体、猛獣や食材の事全てだ。


「……というわけだ」
「あう……頭がこんがらがってきました……」


 ……まあいきなりこんな話をして理解しろなんていうほうが無茶だよな。


「信じられないかもしれないが本当なんだ」
「いえ私はイッセーさんが嘘をついてるなんて思いません。だからイッセーさんを信じます。唯ちょっと難しい話が多くて……」
「そうか、ありがとな」


 その時アーシアのお腹からキュウ~ツと可愛らしい音がなった。


「………」
「……アーシア、腹減ってるのか?」
「はわわ!私ったらなんてはしたない!!」


 顔がもはや沸騰してると思うくらい真っ赤になったアーシアはブンブンと顔を振っている。


「はは、まあ少し待ってろ」


 俺は立ち上がり台所に向かう。そして作っていたスープを持ってきた。


「これは…?」
「簡単な野菜スープだ、アーシアは聖職者らしいから肉類は使わなかったが…良かったか?」
「いえ、心遣いありがとうございます」


 あまりそういった事に詳しくないから無難な物にしたがどうやらアーシアはお気にめしてくれたようだ。


「わあ…美味しそうです」


 スプーンでスープをすくいゆっくりと口に運ぶ。音を立てずに上品に飲む姿は綺麗だと思った。


「美味しい!色んな野菜の甘みとコンソメが口いっぱいに広がります!私、こんな美味しい物初めて食べました!」


 満面の笑みを浮かべてスープを飲むアーシアを見て思わず俺も笑みを浮かべてしまう。良かった、『コンソメオニオン』や『ネオトマト』などの野菜を気に入ってくれたみたいだ。



「ごちそうさまでした」
「おう、お粗末様」


 空になった皿を見てアーシアが満足してくれたことが良く分かった、作ってよかったぜ。


「本当にありがとうございます、イッセーさん。助けて頂いた上にこんな美味しい物まで…」
「だから気にするなって、困った時はお互い様だろ?」


 俺がそういうとアーシアは少し沈んだ表情を浮かべた。


「…イッセーさんって本当に優しい方ですね、こんな風に誰かに優しくしてもらったのは本当に久しぶりです」


 嬉しそうなのに悲しそう…アーシアはそんな複雑な表情を浮かべている。


「…アーシア、一つ聞いてもいいか?」
「何でしょうか?」
「なんで堕天使達と行動を共にしてるんだ?あのクソ神父を部下にするような奴だ、決してまともじゃないことくらい俺にも分かる。俺はアーシアのような優しい子があいつらの仲間だとは到底信じられないんだ。あいつらに脅されてるのか?」
「いえ違うんです、全部私が悪いんです…」


 アーシアは話してくれた、自分の力の事、聖女と呼ばれていたこと、悪魔を癒したこと、そのせいで魔女とされて教会を追放されたこと…


「………」
「…きっと、私の祈りが足りなかったんです。ほら、私ぬけている所がありますから。道だって分からないバカだから…」


 アーシアはポロポロと涙を流しながら話す。


「これは主が与えてくれた試練なんです。私がダメなシスターだから……こうやって修行の場を…」
「ふざけんなッ!!」
「イ、イッセーさん……?」


 もう我慢ができなかった!何が魔女だ!何が試練だ!ふざけるんじゃねえよ!!!


「アーシアの何が悪い!悪魔を癒したから魔女だと!違う!悪魔すら平等に癒す本物の聖女様じゃねえか!それをよってたかって悪にしやがって……神だってそうだ、何故この子を救わない!こんなにも助けを求める子の声を何故聴いてやらない!」


 怒りが収まらなかった、この子を聖女に仕立て上げて利用した挙句あっさり切り捨てた教会の連中も誰よりも神を信じて祈り続けるアーシアに答えない神も……何もかもが許せなかった!


「アーシア、君はどうしたい?君の気持ちを聞かせてほしい。主も教会も関係なしにアーシアの本当の気持ちを!」
「わ、私は……」
「もしアーシアがそれでも神を信じているなら俺は何も言わない、堕天使達の元に帰っても構わない。でもアーシアがそうじゃないなら俺はアーシアの力になりたい!」


 俺はアーシアの手を握りながらそう答える。


「……どうしてそこまで私を」
「困った時はお互いさまだろ、それに俺はアーシアを友達だと思っている」
「友達……私がですか?」
「そうだ、アーシアはたった一回しか会っていない俺の為にあのクソ神父に立ち向かってくれたじゃないか、だから俺はアーシアを助けたい。友達として」


 アーシアは口元を手で押さえながら、先ほどよりも大きな涙を流す。だがそれは悲しそうには見えない、むしろ嬉しそうに見えた。


「…イッセーさん、私世間知らずです」
「そんなもの今から知っていけばいい、俺が教えてやる」
「…ドジでダメで泣き虫で、きっと迷惑をかけてしまいます」
「それがどうした、友達なら助け合うもんだろ」
「…本当に私と友達になってくれるんですか?」
「ああ、勿論。むしろこっちから頼みたいくらいだ。俺、まともな知り合いが少ししかいないからな」
「…イッセーさん!」


 アーシアは涙を流しながら俺にギュッと抱き着いてきた。


「嬉しいです!私…ずっと友達が欲しくて…寂しかったです!」
「そうだ、素直に自分の感情をぶつけてこい。俺が受け止めてやる」
「イッセーさん…」


 俺はアーシアの頭をゆっくりとなでる。散々裏切られ孤独な世界にいた少女の悲しみを少しでも和らげるように…


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「すう…すう…」


 泣き疲れてしまったのかアーシアは眠ってしまった、俺はアーシアをベットに運ぶ。


「…さてと」
『堕天使の元に行くつもりか?』


 さっきまで黙っていたドライグが話しかけてきた。


「なんだ、ドライグ起きていたのか」
『俺も空気ぐらいは読むさ。そんなことより相棒、お前どうしたんだ?俺達は極力悪魔や堕天使には関わらないようにしてきた、だが今のお前は率先して首を突っ込んでいる。らしくもない、まさかその小娘に本気で惚れたか?』
「違うさ、俺は本当に絶望したときに手を差し伸べてくれる人がいる嬉しさを知っている。次は俺がそうする番だ」
『相棒…』


 あの時俺を助けてくれたあの人のように……今度は俺がアーシアを助ける番だ。



「行くぞドライグ……鴉狩りにな」





 
 

 
後書き
 こんにちは小猫です。ていうか何か月も放置されて出番がこれだけって…とにかく次回予告です。アーシアさんを救う為堕天使の元に向かうイッセー先輩、一人乗り込む先輩をあざ笑う堕天使達…だが奴らは知らない、美食屋イッセーの本当の力を…次回「イッセーVS堕天使!放て、必殺釘パンチ!」次回は私も出ますよ。 

 

第6話 イッセーVS堕天使!放て、必殺釘パンチ!

side:小猫


 皆さんお久しぶりです、小猫です。今日はお休みだったんですが急遽部長から集合するように言われたのでオカルト研究部に来ています。


「小猫ちゃん、急に説明口調になったけどどうしたの?」


 近くにいた祐斗先輩が何か心配そうな目で声をかけてきた…どうしてこんなことを言ったのかは分からないけど何故か言わなくちゃいけないって思って…疲れてるのかな。


「いえ、何でもありません。心配してくれてありがとうございます」


 祐斗先輩にお礼を言って視線を逸らす、すると部長と朱乃先輩が入ってきた。


「せっかくの休みに呼び出してごめんなさいね、祐斗、小猫」
「いえ、眷属として当然のことです」
「…何か異常でも起きたのですか?」


 私の言葉に部長は頷いた。


「ええ、実は以前から報告がされていた堕天使達が動きだしたようなの」
「堕天使が…」


 部長の言葉に祐斗先輩が反応する、実はこの数日前、堕天使達が部長が管理するこの街に不法侵入していた事が発覚しました。


 え?ならさっさと対処しろ?それはもっともですがそう簡単にはいかないんです。かつて戦争をしていた三大勢力は現在は休戦状態になっており互いに干渉することが難しくなりました。もしその堕天使達が堕天使上層部の指示で動いているならヘタに接触できません、最悪また戦争が再開されることになってしまったら大変です。


「部長、その話が出たと言うことはもしかして…」
「お兄様から堕天使上層部に確認したところ自分達は関与していないとのこと…つまりこの街にいる堕天使達は独断で動いてるってことになるわね」


 それならこちらから手を出しても問題にはなりませんね。


「堕天使側からは私達で対処してもいいと言われた、だから今夜堕天使達の討伐を実行するわ、皆気を引き締めていて頂戴」
「分かりました」
「うふふ、鴉達が泣き叫ぶのが楽しみですわ」


 部長の言葉に祐斗先輩は力強く答え、朱乃先輩は若干怖い笑みを浮かべている。私も頑張らないと…!




 そういえばイッセー先輩は何をしてるのかな?最近は忙しくて会いにいけなかったしコレが終わったら先輩に会いにいこっと。



side:イッセー


 よう皆、イッセーだ。もう辺りはすっかり暗くなっちまった、今俺は例の教会の傍に来てるんだ。感知されないギリギリの場所にな。


『また独り言か、気を引き締めろと言ってるのに…』


 悪いなドライグ、だがおふざけはここまでだ。俺は匂いを嗅ぎ教会の内部を探る。


「…けっこういるな、数は30ほど…後なんか人間じゃない匂いが4…」
『おそらく堕天使だろうな、はぐれ悪魔祓いも抱えていたのか』
「はぐれ?」
『何らかの原因で教会を追われた者達だ、大抵は堕天使側につく』


 アーシアと同じ…いやあんな奴らに従ってるんだ、一緒な訳がない。


『それでどうするんだ、隙でも付くか?』
「おいおいドライグ、俺の性格は知ってるんだろ?こういう時は…」


俺は一瞬で教会の壁に接近して…


「正面突破しかねえだろォ!!」


 拳を叩き込んだ。



side:レイナーレ


「全く…使えない連中ね」


 私は至高の堕天使レイナーレ。現在は中級だけどいずれはアザゼル様に愛される存在となるもの…ようやくその日が近づいているという時に肝心のアーシアを逃がすなんて無能ね。


「フリード、貴方は一体何をしていたの!」


 この失態を犯したはぐれ悪魔祓いのフリードに怒りを露わにする、強いって聞いたから部下にしてやったのにこんなカスだったなんて期待外れだわ。


「も、申し訳ありません。ですが姐さん大丈夫っすよ、今度は必ずあの野郎ぶち殺してアーシアちゃんを連れてきますから…」
「当り前よ!じゃなきゃお前など光の藻屑にしているところよ!さっさとアーシアを連れてきなさい!」
「イ、イエッサー!」


 そういってフリードはその場を離れた。


「ホントに人間って使えないっすね」
「全くね、一人の少女も連れてこれないとは…話にもならないわ」


 傍にいた私の仲間…ミッテルトとカラワーナがフリードに悪態をついた。彼らは私の部下でもう一人ドーナシークという堕天使がいるが今はアーシアの捜索に行かせている。


「本当に人間は役にも立たないわ、この私の期待に応えられないなんて…」


 私は人間が嫌いだ、弱いし惨めで所詮家畜以下の存在でしかない。ああ、奴らの失態がなければ今頃私はアザゼル様に愛して頂ける存在になっているはずなのに…


「レイナーレ様」


 私の部下であるドーナシークが戻ってきた。


「ドーナシーク、アーシアは見つかった?」
「アーシアを連れだした人間の住処を見つけました、おそらくそこに…」
「よくやったわ」


 ようやく見つけたわ、アーシア。もう逃がさない、貴方は至高なる私の生贄とならなきゃいけないんだから…


「聞いたかしら、今すぐその人間の元に行きアーシアを連れてきなさい。後その人間は殺してきなさい、いいわね?」


 私は待機していたはぐれ悪魔祓い達に指示を出した、ああ、ようやく私は至高の存在になれるのね、待っていてください、アザゼル様…


 ズガァァァァン!!!


 な、何がおきたの!いきなり壁が吹き飛んで…


「よっこいしょと、おじゃましまーす」


 吹き飛んだ壁から一人の人間が入ってきた、何なのアイツ…


「レイナーレ様。奴がアーシアを連れて行った例の…」
「アイツが…」


 まさかアーシアを連れて行った張本人が現れるなんてね…予想外だわ。


「うわ、うじゃうじゃいるな…えーと…」


人間の小僧は何かを探すようにキョロキョロとしている。


「お、アンタがレイナーレか?」


 あろうことか家畜以下の分際で私の名前を吐いた。


「…人間ごときが私の名前を吐くんじゃないわよ」
「へえ、堕天使って初めて会ったけど傲慢なんだな」
『全部がああじゃないと思うがな』


 人間は私の言葉を無視してヘラヘラと笑っている、それにかなりイラついたが私は奴がはいたある言葉に引っかかった。


「堕天使を知っている…貴方、唯の一般人じゃないわね」
「まあそれなりに裏の事は知ってるぜ」
「なら話が早いわ、私はレイナーレ。人間とは遥か別次元の存在である至高の堕天使…貴方が連れて行った子は私の大切な物なの…返してくれるかしら」
「勘違いするな、俺はお前にアーシアを返しにきたわけじゃねえよ」


 あら、てっきり命乞いでもしに来たのかと思ったけど…


「じゃあ貴方は何をしにここに来たのかしら?」
「アーシアは俺が引き取る、そのお願いに来た」


 ……一瞬この人間が何を言ったのか理解できなかった、お願い?至高の存在である私に人間がお願い…?


「…あはは、あははははははッ!!!」


 私はたまらず笑ってしまった、だってジョークにしては冗談がすぎるわよ!


「プッあはは!人間ってバカっすね~!」
「…呆れて物も言えないわ」
「愚かな…」


 ミッテルト達も笑っている、それもそうでしょうね。こんな面白いジョークで笑うなって言うほうが無理よ!


「あーあ……笑っちゃった…面白いジョークだったわ。それじゃさっさとアーシアを返して死になさい」
「悪いがジョークじゃない」
「…じゃあ本気なの?それこそ笑えないわ。下等な人間が堕天使に勝てるとでも?…もういいわ。こんなバカに時間は使いたくないし…貴方達、さっさとそいつを殺してア-シアを連れてきなさい」
「「「はッ!!」」」


 光の剣や銃で武装したはぐれ悪魔祓い達が人間を取り囲んでいく、可愛そうだけど貴方が悪いのよ。


「かかれッ!」


 一人の合図で全員が小僧に向かっていく、本当に馬鹿な奴だったわね、まああの世でアーシアと再会させてあげるからおとなしく死んでね。


「ほう、お前ら……俺と遊ぶかのか?」


 ギンッ!!


 !!ッな、何この感覚は…体に寒気が…よく見るとはぐれ悪魔払い達が硬直していた。


「な、何をやっている!早くその小僧を始末しなさい!!」


 私が指示を出してもはぐれ悪魔祓い達は動かない、仕舞には泡を吐きながら倒れてしまった。


「…ちょっとの殺意でこれか、大したことないな」


 奴の仕業…?はっ、もしかしたら神器使いか!?通りで妙に自信があるはずだ。


「レイナーレ様、ここは我々が…」


 ドーナシークとカロワーナ、そしてミッテルトが小僧の前に立つ。


「人間よ、ここに乗り込んできた度胸は認めよう。だが所詮は人間…」
「この光の槍で一突きっすよ~」
「勇気と無謀は違う物…それを理解しながら死んでいきなさい」


 ドーナシーク達は手から光の槍を生み出し人間を取り囲む、人間は特に慌てた様子もなく立っている。


「行くぞ、かかれ!!」


 ドーナシークの合図と共に三人が一斉に攻撃を開始した。


『相棒、俺は使うか?』
「いやいい、素で十分だ」


 人間は何かを呟くとまずドーナシークのほうに向かった。


「私に向かってくるとはナメられたものだなッ!」


 ドーナシークは人間の顔目がけて光の槍を真っ直ぐに放った、人間では到底反応できない速度…私はこれで終わると思った。


「へえ、そこそこ早いな」


 だが人間はヒョイッと首を動かしてドーナシークの攻撃をかわした。


「なッ!?」


 攻撃をしかけたドーナシークも驚きの表情を浮かべている、まさかかわされるとは思っていなかったのだろう。


「こんのォォ!!」


 ミッテルトが人間の背後から攻撃をしかける、だが人間はドーナシークの腕を掴んでミッテルトに向かって振り回した。


「ギャッ!?」
「ガァッ!」


 正面から激突した二人は一瞬動きを止める、その隙に人間は動きの止まったミッテルトを蹴り飛ばし、ドーナシークの顔を踏み潰した。ミッテルトは天井にめり込みドーナシークは床に陥没する。


「な、何が…ウッ」


 そして唖然としていたカロワーナの背後に回り込み首に手刀を打ち込み気絶させた。堕天使三人が僅か十数秒たらずで全滅!?一体なんなのよ、この人間は!?


「…何だ、本当に大した事がないぞ?」
『所詮コイツらは下級クラスだからな、捕獲レベルで言えば2か3くらいだろう』
「そんなに低いのか…さて後はお前だけだな」


 ヒッ…!不味い、人間がこっちに来る…誰かに助けを…ってもう味方がいないじゃないの!どうしましょう…いや待てよ、何も馬鹿正直に戦う必要はない、強いといっても所詮は人間…付け入る隙なんていくらでもあるはず…


「ま、待ちなさい!貴方アーシアが目的なんでしょう?あげる、あんな子いくらでもあげるから…だから、だから命だけは助けてッ!」


 私は涙を流してそう悲願した。この人間はアーシアにお熱と見た、つまりか弱い女に弱いはずよ。


「何だ、さっきまでとはえらく態度が違うじゃねえか」
「私が馬鹿だったわ!もうアーシアにはもう関わらないって約束する!だから見逃して!」
「…そうか、ならもういい。今後一切アーシアの前に現れるな、そいつら連れてさっさとこの街から出ていけ」


 人間はそういうと私に背を向けて教会から出て行こうとする…ふふッ、本当に人間ってバカね!


「死になさいッ!!」


 私は最大級の光の槍を生み出して人間に突撃する、気が付いた人間が振り返るがもう遅いッ!


 ドスッ!!!


 私の槍が人間の胸に突き刺さった、やったわ!やはり私は至高の存在なのよ!もうこれで私の邪魔をする奴はいない、私はアザゼル様に愛される存在になれる!






               私の勝ちだわ!!!!!
 

















 ガシッ!


 えっ…………?


 腕が掴まれた…?


「…こんな事だろうと思っていたぜ」


 えっ……そんな…まさか…嘘でしょ…?


「光の槍を心臓に刺されたはずの人間が…どうして生きてるの!?」
「刺した所をよく見てみろよ」
「何を言って…!?」


 こ、これは…


「槍が刺さりきってないッ!?」


 槍の先端が少し刺さっているだけでそれ以上槍が刺さらない、私の最大級の槍が…どうして!?


「槍が刺さりきらなくて驚いてるのか?こんなもん筋肉で締め付けてるだけの誰でもできる芸当だ」


 筋肉って…普通の人間がそんなことで私の槍を防げるはずが…


「さて、俺は一発もらったんだ。次はお前だな」


 こ、殺される…!?そう思った私は直にこの人間から離れようとするが何コイツ、ビクともしないじゃない!


「離せ、離しなさい!!」
「ドライグ、三段階で行くぞ」
『了解した』


 奴の左腕から赤い籠手が現れた、あれは『龍の手』…?


『Boost!Boost!Boost!』


 な、何が起きたの!目の前の人間の戦闘力が見る見る内に上昇していく!?力が何倍も……まさか!?


「そ、その籠手はまさか……」
『ようやく気が付いたか愚か者め』


 突然謎の声が聞こえてくる、それはあの赤い籠手から出ていた…間違いない、これは……


「赤龍帝の籠手!?どうして神滅具が!?」


 理解できない、神すら滅ぼす神滅具の一つがここにあるの!?なんでこのタイミングで!?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!?!?



「行くぜ、『釘パンチ』!!!」
『Explosion!』


 ガゴォォォッ!!!


 私の腹部に凄まじい衝撃が突き刺さる、息ができない…内臓が!?


 ガゴォォォォォォォォッ!!!!


 がふッ!?更に強い衝撃が……!?何…これ…死ぬ…


「釘パンチ、ドライグの倍加の力を直接相手に叩き込み衝撃を倍加させていく、まるで釘が突き刺さっていくように衝撃は突き進む。1…2…」


 人間が何か話しているがもう私には聞こえない、意識が朦朧として何も考えられない……


「…3…貫通だ」


 ガッゴォォォォォォォォォォォッ!!!!!


「ガボハァァァァァァァッ!!?!?」


 体が引き裂かれるような痛みと壁に叩き付けられた衝撃に私の意識はどんどん薄れていく。


「あ、これじゃ三発だな」


 最後に私が見た物は巨大な赤いドラゴンだった………










side:小猫


「何が起きたというの……」


 部長の驚きを隠せない、そんな感じの声が教会…いや廃墟に響き渡る。私達は作戦通り堕天使達に奇襲をしかけようとしたが堕天使のアジトである教会は半壊していた。これは一体……?


「部長!」


 そこに見回りに行っていた祐斗先輩と朱乃先輩が戻ってきた。


「二人とも、状況は?」
「はい、辺りには気絶した悪魔祓いが30人ほど、そして堕天使が4人。報告通りの数です」
「悪魔祓い達、堕天使の一人は傷もなく倒れていたのでおそらく何らかの力で気絶させたようです」


 祐斗先輩と朱乃先輩はそれぞれの情報を部長に話す、気絶していた?


「それで堕天使の様子は?」
「それが全員錯乱して話も出来ません。特に首謀者のレイナーレが酷くてずっと赤いドラゴンが……と呟いてるだけの状態になっていますわ」
「一体何があったのかしら……」


 部長達の話を聞いていてふと疑問に思った事がある、赤いドラゴン、それってまさか……


「イッセー先輩…?」


 まさか、ね……











sideイッセー



 ただいま~っと、ふう、堕天使達の件も終わったしこれでアーシアはもう安全だな。俺はスイーツハウスに戻りアーシアの様子を見に行く。


「あ、イッセーさん!」


 アーシアが眠っていた部屋に行くとアーシアが笑顔で迎えてくれた、どうやら起きて待っていてくれたようだな。


「ただいま、アーシア。起きたばかりで早速だけどアーシアの今後について話があるんだ」
「私の今後…ですか?」


 俺はレイナーレ達と話し合いアーシアを家で引き取ることになった事を彼女に話した。


「本当にレイナーレ様が?」
「おう、バッチリと話し合い(物理的)を済ませてきたぜ。アーシアはもう自由だ」
「でも本当にいいんですか?私なんかがいたら迷惑じゃ…」


 はぁ~…全くアーシアは…


「アーシア、迷惑なんて言うな。俺がそうしたいからそうしたんだ、それともアーシアは俺といるのは嫌か?」


 俺はアーシアの肩を掴み真剣な表情でそう訴える。おいドライグ、頭の中で『また口説くような言い方を……』とか呟くな、大事な時なんだぞ。


「…嫌じゃないです、私、イッセーさんのお傍にいたいです。もっと色んなことをイッセーさんと知っていきたいです」
「ならここにいてくれ。俺がどんな事でも教えてやる、俺がどんな奴からも守ってやる、そして幸せになってくれ」
「……はいッ!!」


 そういって眩しい笑みを浮かべたアーシアを見て俺は満腹感にも劣らない充実した気分になった。






 
 

 
後書き
 こんにちは小猫です…この小説のタイトル私の名前もあるのに実質アーシアさんがヒロインじゃないですか…
 と、とにかく次回はグルメ界のお話です、どうやら虹の実と呼ばれるものがターゲットらしいのですが一筋縄ではいかないようです。次回『イッセー、懐かしき庭へ!虹の実を捕獲せよ!前編』でお会いしましょう。 

 

第7話 イッセー、懐かしき庭へ!虹の実を捕獲せよ! 前編

side:イッセー


「ん…むにゃ…朝か…」


 俺達の世界では今日は日曜日か…今日は何をするかな…そういって俺は起き上がろうとベットに手を置くと…


 ムニュン


 ん?何だこの柔らかいのは…ベットの感触じゃないし枕でもない、これは…


 モニュモニュ


「んッ…あッ…」


 え?何でアーシアの声が…ってまさか!


 バッ!!


「ふみゅ…イッセーさぁん…」


 布団を引きはがすとそこにはパジャマを着たアーシアが眠っていた。


「…何でアーシアがここに?」


 昨日は確かに別々の場所で寝たはずだが。うーむ、謎だ、とにかくアーシアを起こさないとな。


「アーシア、朝だぞ」
「んみゅ…」


 体をゆすりながら声をかけるとアーシアは目を覚ましコシコシと目をこすっている。


「ふあ~…おはようございます、イッセーさん…」
「おう、おはようアーシア。寝起きで悪いんだけどいつ俺のベットにもぐりこんだんだ?」
「えっと、たしかおトイレに行こうとして…それから…はわわ、寝ぼけてイッセーさんのベットに入っちゃったみたいです。ごめんなさい~」
「寝ぼけていたのか、まあいいさ。こんなかわいい子と一緒に寝れてむしろラッキーかな」
「もう、恥ずかしい事言わないでください!」


 可愛らしくぷんすかと怒るアーシア、しかし怖いどころか和んでしまう。


「悪かったって、それより朝飯にしようぜ、俺腹減っちまったよ」
「あ、私もお手伝いします」


 俺とアーシアは着替えて台所に向かった。




side:小猫


「………」


 皆さんこんにちは、小猫です。今私はイッセー先輩の家の前にいます。昨日捕らえた堕天使の一人が言っていた赤いドラゴンという言葉…私はこのドラゴンがイッセー先輩なんじゃないかと気になってここに来ました。
 

 最近は悪魔の仕事が忙しくて先輩に会えなかったからちょっと嬉しい…って違います。この嬉しさは久々に出番が来たからです。イッセー先輩に会えるのが嬉しい訳じゃありません!


「では行きましょう」


 意を決して私は先輩の家の玄関のチャイムを鳴らす、髪型崩れてないかな…そうこうしている内に玄関の扉が開く。


「おはようございます、先輩。今日は先輩に用が合って…え?」


 私は扉から出てきた人物を見て固まってしまった、何故なら扉から出てきたのはイッセー先輩じゃなくて金髪の美少女だったんです。


「え…あれ…?」
「どうかしましたか?」


 金髪の女性は何も反応しない私に声をかけるが反応できない、一瞬家を間違えたのかと思ったが標識を見ると『兵藤』と書かれている、ここで間違いない。


「あの…イッセー先輩は見えますか?」
「イッセーさんですか?はい、いますよ」


 イッセーさん!?この人先輩を知ってる、それもこんな親し気な呼び方、まさか…


「アーシア、誰か来たのかって小猫ちゃん?」


 そこに先輩が何食わぬ顔で現れました。そして私の顔を見るなり顔色を変えました。


「…えっと、小猫ちゃん?」
「何ですか、兵藤先輩?」
「あの…何やら怒ってるように見えるんですが…後何故名字で呼ぶんですか?」
「別に何でもありませんよ、こんな可愛らしい彼女さんがいるなんて知らなかっただけですから」
「いや、アーシアは彼女じゃなくて…」
「お邪魔してすいませんでした、どうぞご幸せに!!」
「ちょ、小猫さーん!?」
「そんな、私がイッセーさんの彼女なんて……えへへ」


 無表情で帰ろうとする私を必死で止める先輩、そして顔を真っ赤にして照れている金髪の女の子という知らない人が見れば絶対誤解される光景がありました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー




「本当にすいませんでした…」


 あれから先輩に事情を聴いた私は深々と頭を下げました、うう、あんな勘違いをしてしまうなんて…恥ずかしいです。


「まあ分かってくれたならいいさ」


 先輩は気にしてないよという感じで許してくれました。


「それにしても驚きました、まさか先輩が堕天使と戦っていたなんて…」


 私の読み通り赤いドラゴンとはイッセー先輩の事でした、この金髪の少女はアーシアさんというらしく彼女を助ける為に堕天使と戦ったそうです。


「でもどうしたんですか、あれだけ堕天使には関わらないようにしていたのにこんな…」
「まあアーシアをほっとけなかった、そういう事だよ」
「そうですか…」


 …何でしょうこの感じは、なんか面白くありません。


「あのイッセーさん、この人は…」


 さっきまで蚊帳の外だったアーシアさんが私の事を聞いてくる。ってさりげなく先輩の右手を握らないでください。


「この子は小猫ちゃん、学校の後輩で悪魔なんだ」
「悪魔さんですか?でもイッセーさんが信頼してるならいい人なんですね、私はアーシア・アルジェントといいます、どうかよろしくお願いします」
「あ、塔城小猫といいます、こちらこそよろしくお願いします」


 元シスターらしいからてっきり警戒されるかと思いましたが、どうやら無駄な心配だったようですね。


「さてお互いに自己紹介も終わったことだし朝飯を食おうぜ、小猫ちゃんも食っていくか?」
「あ、いいですか?じゃあお言葉に甘えて…」


 そして私は今日二回目の朝ご飯を頂きました


「ごちそうさまでした」
「はわわ…凄い、あんな大盛りをペロリと食べちゃいました」


 やっぱり先輩のお料理は美味しいです、私も一人暮らしをしているから料理の心得はありますし最近は先輩に料理を習ってますがまだまだ先輩にはかないません。


「さてと、腹も膨れたしそろそろ準備するか…」


 先輩が立ち上がり何やら準備を始めました。


「先輩、何をしてるんですか?」
「ああ、これからグルメ界に行こうと思ってな。そうだ、二人も来るか?凄い場所に連れて行ってやるよ」
「「??」」


 私とアーシアさんは首をかしげました。一体どんな場所なんでしょうか?






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「うわぁ!!」


 私は今目の前にある光景に心から驚いている、見た事もない食材があちらこちらにありそれらの食材を買おうと何百万も出し合っている光景は正に壮大だ。


「イッセーさん、この市場は一体何ですか?」 
「ここは『グルメ中央卸売市場』…またの名を『世界の台所』!世界中からありとあらゆるグルメ食材が集まってくる市場で一日に一兆円もの金が取引されるバケモノ市場だ」


 一日で一兆って…どれだけ凄い食材があるんだろう。でも私はそれ以上に気になっている物がある。


「先輩、それは何ですか?」


 私はイッセー先輩が抱えている恐竜のような生物を指さした。さっき先輩が洞窟で捕らえた生物だ。


「コイツはシャクレノドン。捕獲レベル4の翼竜獣類で肉以外にもその骨から取れるスープは絶品なんだぜ」
「もしかしてそのシャクレノドンを売るんですか?」
「ああ、今日は十夢との取引があって…ん?何だ?」
「何か言い争ってるみたいですが…」


 先輩が視線を向けた先を見るとピンク色のスーツを着た女性が誰かと言い争っているのが見えた。


「ええ、何度でも言ってあげるわ!このピスタチオ、口が開いてる、新鮮じゃない証拠!こんな物放送しても視聴者を一グラムも感動させられない!」
「クポー!」
「何だと、店のもんにケチつける気か!」


 凄い言い争い…どっちも譲らない気迫です。というか女性の近くにいる丸い鳥は何でしょうか?


「コイツはな、口が開いた時が食べごろなんだ、全くこれだから素人は…」
「姉ちゃんいい目してるじゃねえか。ピスタチオは確かに口が開く時が食べごろだが市場じゃ悪手だ、風味が落ちちまう。調理するくらいに開くのがいいくらいだな」
「何だと…ってアンタは美食屋イッセー!?」


 あ、先輩いつの間に…というか周りの人達の様子が変ですね、先輩を見て驚いてます。


「え、美食屋イッセー!?あの四天王の一人の!?これはなんててんこ盛りな美味しいニュースなのかしら、早速取材よ!」


 女性はイッセー先輩に近づいていく。誰でしょうか?


「ねえ貴方イッセーでしょ、カリスマ美食屋の!」
「ああ、俺がイッセーだが」
「やっぱり!あのイッセーに会えるなんて大盛り、いや特盛ラッキー!私はティナ、この子はクルッポーっていうの」
「クポー」
「私、グルメTBで世界中のあらゆる食材を紹介するグルメキャスターなの!ねえイッセー是非取材させてくれない?」


 グルメTBにグルメキャスター?この世界のテレビ番組でしょうか?でもあのクルッポーって子は可愛いです。


「せっかくのお誘い悪いが今日は先客がいるんだ、また今度な」
「あ、ちょっと待ってよ!」


 先輩が戻ってきました、でも先輩ってこっちの世界じゃ凄い有名なんでしょうか、未だに驚いている人がたくさんいます。


「はは、相変わらず凄い人気だな」
「貴方は十夢さん!」


 そこに現れたのは前にガララワニの件でお世話になった十夢さんがいました。


「お久しぶりです、十夢さん」
「よお小猫、おや見慣れない子もいるが…」
「あ、私はアーシア・アルジェントといいます」
「アーシアか、俺は十夢だ、よろしくな。しかしまた美少女を増やして…ハーレムでも作る気か、イッセー?」
「へッ、言ってろ。それより見てみろよ、俺はシャクレノドンを捕まえてきたぜ。㎏4万でどうだ?」
「おおシャクレノドンか。㎏3万にしてくれないか?うちは貧しい小売りも抱えているからな」
「よし、それでいこう」


 なるほど、先輩はこうやって生計を立ててるんですね。


「困りますね、IGOの定めるグルメ相場を厳守していただかないと。食材の価値が変わってしまいます」


 すると突然黒いスーツを着た男性が現れた。確かIGO開発局のヨハネスさんだったっけ?


「なんだヨハネスじゃねえか、どうしたんだ一体?」
「お久しぶりですイッセー様、実は貴方にお願いしたい仕事がありまして…」
「またかよ、IGOにはお抱えの美食屋がいるだろう?何で俺にそんな話ばかり持ってくるんだ」
「虹の実がなりました」
「何…?」


 虹の実?これまたカラフルそうな食材ですね。


「聞いたことがある、気温や湿度によって味が七色に変わる伝説の木の実…25mのプールの水にほんの一滴虹の実の果汁を入れただけでプールの水が濃厚で芳醇なジュースに変わるほど果汁濃度の濃い実だと……」
「プールの水がですか?凄い濃い木の実なんですね」


 十夢さんの説明にアーシアさんも驚いた表情で聞いている。一滴だけで濃い果汁濃度の高い木の実、直に食べたらどんな味なんだろうか。


「だが自然界では虹の実は絶滅したって話を聞いたが…」
「それは一部のグルメ投資家が虹の実の値を上げるために流したデマでしょう、先日IGOの庭で虹の実をつけるのに成功しました、もちろん天然ではありませんが」
「お得意の品種改良って訳か」
「問題はその虹の実の周りにトロルコングが巣を作り誰も近づくことが出来ません」


 トロルコング…如何にもやばそうな名前ですね。


「最強のゴリラ『トロルコング』!!先日一両20億するグルメ戦車を出動させましたがすべて引っ繰り返されてしまいました。重さ40トンの戦車がです。管理局が発表した捕獲レベルは『9』!あのガララワニを凌ぐと…!」


 ほ、捕獲レベル9!?あのガララワニより高いなんて…!どんなゴリラか想像も出来ないです。


「虹の実か、食ってみてぇし久々に帰るか、懐かしい庭にな」



 虹の実…私も食べてみたい。でも先輩が言っていた懐かしい庭ってどんなところなんだろう…きっと一筋縄ではいかないと思うから私も気合を入れないと!







「…聞いたクルッポー?こんな美味しさてんこ盛りのニュース、逃す手はないわ!」
「クルッポー!」



 
 …今誰かの声が聞こえたような気がしましたが気のせいかな?


 
 

 
後書き
 こんにちは、アーシアです。今回は私が後書きを担当しますね。私達は虹の実を捕獲するために庭と呼ばれる場所にいきましたがそこはとっても危険な場所でした、でもイッセーさんや小猫ちゃんがいればきっと安心ですよね!私も頑張ります!次回『イッセー、懐かしき庭へ!虹の実を捕獲せよ! 後編』で会いましょう。次回もご馳走様です♪ 

 

第8話 イッセー、懐かしき庭へ!虹の実を捕獲せよ! 後編

side:小猫


 こんにちは、塔城小猫です。たまにはフルネームで自己紹介しました。私達は現在虹の実を捕獲するために『庭』と呼ばれる場所に向かっています。


「うは~!見ろよ小猫ちゃん、アーシア!十夢が虹の実捕獲を祈願して『金色イクラ』を100㎏もくれたぞ!」
「わあ、キラキラ光って綺麗です!」


 先輩達が食べているのは金色イクラという何でもストライプサーモンという魚から少量しかとれない貴重な食材だそうです、そんなものをポンッとくれた十夢さんには今度何かお礼がしたいです。


「私も頂きます、はむ…」


 …美味しい!魚が好きな私からすればこれは絶品だった、普通のイクラより濃厚でプチプチッとした歯ごたえからトロッと中の旨味があふれてくる!たまりません!


「はむはむ…あの先輩、一ついいですか?」
「何だ?」
「一つ気がかりなんですけど、トロルコングが真っ先に虹の実を食べちゃうってことはないんですか?」


 もしその虹の実が既にトロルコングに食べられていたら行く意味がなくなってしまう、私はそれが心配だった。


「トロルコングは動物の肉しか食べないんだ、虹の実の香りに誘われて寄ってくる動物が目的なんだろう」


 なるほど、だから虹の実のなる樹を住処にしてるんですね。


「でもそんな怖いゴリラさんがいたら動物さん達も近づかないんじゃ…」
「近づく動物は後を絶ちませんよ」


 アーシアさんの疑問にヨハネスさんが答える…って凄い姿勢で運転してますね。


「反射神経に近い…野球でバックネットにファールボールが飛んだ際、客は必ず避けようとするでしょう?『網がある』と理解しているのに反射的に避けてしまう。つまり虹の実の匂いを嗅いだ動物は反射的に『食べたい』という食欲に支配されてしまうんです。例え猛獣に襲われても虹の実を食べるのを止めない動物も多いですからね」


 理性を忘れてしまうほど美味しい木の実…一体どんな物なのでしょうか?


「皆さん、見えてきましたよ、目的地である『庭』が---」




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「なんて大きな壁…」


 私達は車を降りてまず目にしたのがとてつもなく大きな壁に囲まれた設計物でした。どれぐらいの高さがあるんだろう?それにビオトープって書かれてますがこれが『庭』という事でしょうか。


「「ご馳走様です、イッセー様!」」
「止めろよその挨拶、何も奢っちゃいないだろう」


 入り口らしき場所に立っていた二人の男性がイッセー先輩に謎の挨拶をする。


「ビオトープガーデン…?」
「人工的に作られた動植物の生息区間のことです、限りなく自然に近い状態で動物達を放し飼いにしています」
「IGOはこのビオトープ内でグルメ動物の生態調査等を行っているんだ」
「そうなんですか」


 アーシアさんの疑問にヨハネスさんと先輩が答える、ここはIGOが作った人工の猛獣が放し飼いにされている場所なんですね。


「じゃあゲートを開けてくれないか?」
「それが…」


 ドドドドンッ!!ドドドドドンッ!!


「はわわ!?」
「ぐッ、この音は!?」


 突然雷のような轟く音が響き私とアーシアさんは耳を塞ぐ、今の音は?


「研究所の監視塔からの連絡ですでに一頭のトロルコングがゲート裏に…」
「待ち構えているのか!?」


 えッ、もうすでにそのトロルコングが待ち構えているんですか?じゃあ今のはそのトロルコングが中から門を叩いた音じゃ…


 ドォンッ!!


 また大きな音が鳴り響き何事かと思い振り返ると、先輩が自分の胸を叩いていた。


「先輩、ビックリしたじゃないですか!」
「『ドラミング』、ゴリラ特有の威嚇のポーズ、さっきの爆音はトロルコングが胸を叩いて威嚇した音だ。庭の王者が俺に入るなと忠告したんだ」



 ドラミング…確かによくゴリラが胸を叩いてるのをテレビなどで見た事がありますが、こんな分厚いコンクリートの壁を越えてここまで響いたってことですか?


「かまわん、ゲートを開けてくれ」
「ここ『第8ビオトープ』ではゲートから5㎞圏内に捕獲レベル5以上の猛獣がいる場合ゲートを開ける事はできません」
「…なるほど、ならゲートの5㎞圏内にトロルコングがいなければいいんだろう?」


 先輩はそう言って壁に近づいていきました。


「ゴリラはドラミングの他に何かを投げたり近くのものを壊したりするというが…今度は俺が威嚇する番だ」


 先輩は左腕に赤龍帝の籠手を出して、力を溜めていく、まさか先輩…


「ドライグ、三段階でいくぞ」
『任せろ』
『Boost!Boost!Boost!』


 先輩の戦闘力が見る見る内に上がっていき凄まじい力を感じる。


「3連釘パンチッ!!!」


 ドドドドドンッ!!


 先輩が放った一撃が分厚いコンクリートの壁を陥没させる、それどころか更に衝撃が奥に突き刺さっていく、そしてあっという間に関通させてしまった。


「信じられない…あんな分厚い壁に穴を開けちゃうなんて…」


 戦車の駒を持つ私でも容易にあの壁は壊せない、でも先輩は難なく突破してしまった、これが先輩の力の一つなんでしょうか。


「ほら、小猫ちゃんにアーシア、突っ立ってないで行くぞ」
「あ、はい…」
「待ってください~」


 私とアーシアさんは先輩の後を追ってビオトープ内に入っていった。





「…警備員が困惑してる内に…」
「クポー」



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「ま、待ってください、先輩!」
「はう~」


 私とアーシアさんは急いで先輩の元に向かう、でもどうして先輩はこんなに急いでいるんだろうか?


「小猫ちゃん、アーシア、雲行きが怪しい。一雨降るかもしれん、虹の実の樹は背が高いから雷が落ちたら大変だ、なるべく急ごう」


 空を見上げると確かに雲行きが怪しくなっていた、これは急いで虹の実を目指した方がよさそうですね。


「さて…そこの岩陰にいる奴、出てきたらどうだ?」
「ッ!?」


 先輩が突然後ろにある岩陰にそう言うと岩陰から昨日の女性が現れた。


「ど、どうして分かったの?」
「匂いだよ、匂い。アンタ今までに結構な食材に触れてきただろ、その匂いがした」
「嘘でしょ、あらかじめ匂いは消してきたのに、これが美食屋イッセーの嗅覚…凄すぎるわ!」
「クポー!」


 そういえば先輩は警察犬よりも嗅覚が優れているんでしたね、私も分からなかったのに凄いです。


「アンタは確かティナだっけ?一般人の立ち入りは禁止されているんだがどうしてここに?まさかつけてきたのか?」
「こんな美味しさてんこ盛りのニュースを聞いちゃグルメキャスターとしての誇りが騒いだのよ!」
「大した勇気だな、なら一緒に行くか?」
「え、いいの?」
「思い立ったが吉日、その日以降はすべて凶日ってな、まあ命の保証は出来ないがいいか?」
「勿論よ、グルメキャスターとしてそういった覚悟は出来てるわ!」


 ニュースの為にこんな危険な所に来るなんてキャスターって凄い仕事なんですね、その根性は尊敬できます。


 私達はティナさんを連れて虹の実の元に向かうことになりました。



「先輩、この葉っぱお肉みたいな模様があります」
「こっちにはバナナみたいなきゅうりがあります~」
「それはベーコンの葉でそっちのはバナナきゅうりね。それをベーコンの葉でまいて食べると美味しいわよ」
「流石グルメキャスター、食材に詳しいじゃないか」
「流石ですね…って先輩もう食べてるじゃないですか!?」


 見た事もない食材を見つけた私達はティナさんに色々教えてもらいました。先輩はもう既に食べてますが…


「あ、そうだイッセー、虹の実とベーコンの葉って合いそうじゃない?」
「お、美味そうだなソレ♡」


 先輩が小さな崖を滑り降りてる時でした、突然先輩の足元の地面が沈んで大きな穴が開きました。


「ぐおッ!(落とし穴!?)」
「せ、先輩!?」
「ゴガァァァァァッ!!!」


 上から猛獣の咆哮が聞こえ見上げると腕が四本生えた巨大なゴリラが大きな岩を先輩の落ちた落とし穴に目がけて投げているのが見えました。あれがトロルコング!?


「イッセーさん!?」
「イッセー!?」


 アーシアさんとティナさんの悲痛の叫びが聞こえ、私は先輩を助けに行こうとしましたがすぐ傍に降り立ったトロルコングを見て恐怖で動けなくなりました。


 あ、私ここで死ぬんだ……


 そしてトロルコングは大きな口を開けて私を食べようと……



「ノッキング!!」


 した瞬間先輩が現れて何か道具を出してトロルコングの肩に当てました、するとトロルコングは痙攣したかのように地面に倒れてしまいました。


「うわッ、唾液つけられちまった!」


 …私、助かったの?自分が生き残った事を実感して安心したら体が動くようになりました。


「小猫ちゃん、大丈夫か?」
「先輩…先輩ッ!」


 私は泣きながら先輩に抱き着きました、だって先輩がやられちゃったと思って…食べられそうになって…怖くなって先輩にしがみ付きました。


「よしよし、もう大丈夫だ」


 先輩の温かい手が私の頭を優しく撫でてくれる、これだけでさっきまで感じてた死の恐怖が薄れていきます。でもトロルコングの唾液でベタベタです…


「先輩、トロルコングは…」
「大丈夫だ、ノッキングしたからな」
「ノッキング?」


 私は聞きなれない言葉に首をかしげました。


「ノッキングっていうのは小さい針などを動物の運動神経に突き刺して麻痺させる捕獲技術の事だ、因みに今使ったのはノッキングガンっていう専用の道具だ」
「じゃあトロルコングは生きてるんですか?やっつけたほうがいいんじゃないですか?」
「ん、別に殺す意味はないだろ。俺達の目的はあくまで虹の実だからな」


 アーシアさん達が駆け寄ってくる中、私は先輩の言った言葉の意味が分からなかった。明らかに殺されかけたのにどうして先輩はノッキングだけですませたのだろうか…私は倒れているトロルコングを見ながらそう思った。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 雨が降る庭を進んでいると何か甘い匂いがしてきました。これって…


「先輩、もしかしてこの匂いは…」
「ああ、虹の実は近いぞ」


 これが虹の実の匂い…なんて芳醇な甘い香りでしょうか…理性が無くなってしまうのも頷けます。


「トロルコングもやっつけたしこれで虹の実ゲットね!」
「あいつは群れの一番下っ端だよ、俺に唾液をつけた意味もそこにある」


 群れ…まさかあんなのがまだまだいるってことですか?


「トロルコングはチンパンジー並みに頭がいいからな、落とし穴や待ち伏せは普通にやるさ。だがそういった奴が一番怖いのは小細工を止めた時だ」


 先輩が見た先には何十頭というトロルコングがいました……あ、また走馬燈が見えてきました…


「さて…群れのボスはどこだ?」
「「「ゴアアアアアッ!!!」」」


 先輩が何かを探すように辺りを見てますがトロルコング達はお構いなしにと飛びかかってきました。


「アーシア、ティナ!死ぬ気で俺に掴まれ!小猫ちゃん、いけるか?」
「はい、さっきは不覚をとりましたが今度は負けません!」


 トロルコングの攻撃をかわして私と先輩は群れの中に突っ込んでいきました。


「やぁぁぁッ!!」
「ノッキング!!」


 一頭のトロルコングの腕を掴み振り回して他のトロルコングにぶつけました、先輩はアーシアさん達を守りながらノッキングで二頭のトロルコングを麻痺させていました。


「先輩、ノッキングじゃ倒せませんよ!赤龍帝の籠手じゃないと!」
「そんな事をしたら殺しちまうだろ、トロルコングの肉は筋っぽくて食えたもんじゃないからな」
「えッ…」
「俺は『食う』目的以外で命は奪わねえ。食わないなら殺さないし殺したなら食う、それが俺のルールだ」
「………」


 ……言葉が出なかった、私は危険な猛獣はやっつけたほうが楽だと思った、でも先輩は違った。命を目的を達成する為に奪うんじゃない、食べるという生物の原点にしてシンプルな答えを守っていた。例え殺されかけても目的が違うなら命は奪わない…それが兵藤一誠という人間なんだ。


「イッセーさん…」
「決して無駄な殺生はしない…これもまた美食屋イッセーのひとつなのね」


 アーシアさんもティナさんも先輩の言葉に美食屋イッセーの本質を見ていた。


「しかしこれはキリがないな、このままじゃノッキングガンの針が持たないぞ」


 トロルコングの攻撃をかわした先輩の左腕を別のトロルコングが掴んだ。


「イッセーさん!?」
「ぐッ、正当防衛だ、悪く思うなよ」


 先輩は赤龍帝の籠手を出して力を溜める、すると先輩を掴んでいたトロルコングが怯えたように手を放した。


「放した…?つまり俺の左腕に恐怖を感じたのか…そうか!雨のおかげで下っ端の匂いが落ちてきたんだ、これなら威嚇が通じるぞ!」



 トロルコング達が先輩から後ずさりしているのを見ていたら一頭だけ毛が白いトロルコングが目に映りました、その白いトロルコングは慌てたように身を隠すと次の瞬間強い光に襲われました。


「雷が落ちたか!虹の実に落ちたらアウトだぞ、皆、今の雷で真っ先に隠れた奴を見なかったか?そいつがボスだ」
「えっ、普通は逃げないのがボスじゃないんですか?」
「逆だ、群れのボスに必要なのは強さ以上に危機管理能力だ、危険を真っ先に感知できるのがボスの器だ」
「…なら見ました。私…あの奥にいる白いのが真っ先に隠れました」


 私は奥にいる白いトロルコングを指さしました。


「シルバーバック…見つけたぜ!『頭トロル』とでも言おうか」
「凄いです、小猫さん!」
「でもどうして奴がボスだって分かったの?」
「それが、トロルコング達が先輩を恐れて攻撃してこなくなって…そしたら妙に落ち着いて周りを見れたというか…とにかく分かったんです」
「お手柄だぜ、後は奴とケリをつけるだけだ」


 アーシアさん達を下ろした先輩は凄まじい殺気を放ちトロルコングを払いのけていく、そしてあっという間に頭トロルの前に立ちました。頭トロルは巨大な口を開けて先輩を威嚇しますが私達には見えました、巨大な赤いドラゴンが頭トロルの頭をゆっくりと撫でる光景が…
 

 頭トロルは冷や汗を流し遂に目を閉じて戦意を失いました。


「なんて静かな決着なの…」


 ティナさんの言う通り雨の降る音しか聞こえない中…私達とトロルコングの対決は静かに幕を下ろしました…



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「あーもう!せっかい美味しいニュースがとれたのに~!」


 私達は今先輩のもう一つの家である「スイーツハウス」に来ていました。トロルコング達を屈服させた先輩は虹の実を捕獲しました、でもあくまでもトロルコングの生活を脅かさないように一つだけです。ここも先輩らしいなぁと思いました。
 

 その光景をティナさんはビデオカメラに収めようとしましたがIGOの関係者が来てカメラは没収されてしまいました、危うくティナさんも連れていかれそうになりましたが先輩が止めてくれたので今回は見逃してもらえたそうです。虹の実は半分をIGOに渡し、その一部をもらって今から食べます。


「まあまあティナさん、今回は仕方ないですよ」
「でもね小猫ちゃん、グルメキャスターとしてあんな美味しいニュースを視聴者に届けられないなんて悔しいのよ~!」
「はわわ、よしよしです、ティナさん」


 アーシアさんと二人でティナさんをあやしていると奥から先輩が出てきました…ッ!?この匂い…今まで嗅いだ甘味の中でも比べ物にならない…自然とよだれが出てくる!


「おまたせしました、ゴク、虹の実でございます。ゴク」


 先輩も凄いよだれをたらしています、アーシアさんとティナさんも同様です。


「やはりそのまま…ゴク、いただくのが美味しいかと思って…ゴク」
「先輩…ゴク、何を言ってるのか…ゴク、分かりません…ジュル」


 駄目だ、よだれが止まらない…それだけ体が食べたいって言ってるんだ…先輩が虹の実を取り分けていく。ああ、今すぐ口に入れたいよぅ!!


「それじゃ、全ての食材に感謝をこめて…」
「「「「いただきます!!」」」」



私はスプーンを手に取り虹の実をすくう、プリンみたいに柔らかいが重さが全然違う…


「はむ…ッ!?」


 なにこれ…口の中でもう4回も味が変わった!?完熟マンゴー数百個を濃縮した糖度、そのあとに広がる酸味はレモンやキウイとは比べ物にならない!


「うおおッ甘栗みたいな香ばしさが広がっていく!」
「美味しいです、色んな味が波みたいに押し寄せてきます~!」
「これはまるで味のデパートね!」


 喉を通ってもまだ味が変わってる…最後まで凄い存在感…美味しい…


「…決めた」
「えッ?」
「決まりだ、俺のフルコースの『デザート』…虹の実で決定だ!」


 先輩の人生のフルコースが一つ決まったんだ!自分の事みたいに嬉しいです!


「わあ!良かったですね、イッセーさん!」
「美食屋イッセーのフルコース…それの決定に立ち会えるなんて美味しすぎるニュースだわ!」
「クルッポー!」


 私達はその後心いくまで先輩のフルコース決定を祝い続けた。良かったですね、イッセー先輩!!


 
 

 
後書き
 こんにちは小猫です。次回は久々に悪魔の話です。部長の婚約者であるライザー・フェニックスが現れて…えッ、私が欲しい!?そんな、私には先輩が…って先輩とはそういう関係じゃないし!…と、とにかく大変な事になりそうです。次回『リアス部長の婚約者 ライザー・フェニックス登場!!』でお会いしましょう、にゃん♪ 

 

第9話 リアス部長の婚約者 ライザー・フェニックス登場!

side:イッセー


 虹の実捕獲から数週間が過ぎた、あれから時に依頼も無くめぼしい食材も見つからないため俺は駒王学園で学生生活を送っていた。


「あ~…腹減った……」
『またか、毎日それを聞く俺の身にもなれ』


 俺の呟きにドライグが呆れた様子で脳内に声をかけてきた、だってしょうがねえだろ、この体滅茶苦茶燃費が悪いんだからよ。
 机に突っ伏しているとパタパタと可愛らしい足音が近づいてきた。


「イッセーさん、一緒に帰りましょう」


 俺に声をかけてきたのはアーシアだ、つい一週間前に駒王学園に転入したんだ。
 

 アーシアは俺が預かっているが家にいたってやることも無いだろうし同い年なら学生になってみるのもいいんじゃないかって事でアーシアに話を持ち掛けてみた。最初は申し訳ないと断ったがドライグが『コイツと四六時中一緒にいられるぞ』と言ったら目の色を変えて俺の提案を受け入れてくれた。


「でも何でまた急にノリ気になったんだ、もしかしてまだ堕天使の襲来を恐れて……」


 俺と一緒にいなければアーシアは戦うことも出来ないからなすすべもなくやられてしまうだろう、きっとそれを防ぐために駒王学園に入ったんだろうな。


『お前はバカか?どうみてもお前と一緒にいたいから……もういい。だがひとつだけ言っておくが偶には食う事以外にも目を向けたらどうだ?』
「はあ、食う事以外にね……想像もつかんな」
『駄目だなこれは……』


 うるせーぞドライグ、そもそも俺から食い気をとったら何が残る……って何故か俺から食い気を取ったら何だか変態扱いされそうだ、具体的にはおっぱいなんて恥ずかしい事を惜しげもなく言うような変態に……いやないな。


「イッセーさん、どうかしましたか?」
「ああいや、アーシアの制服姿が可愛らしくてな、少し見惚れてたわ」
「……そうですか、嬉しいです」


 俺がそう言うとアーシアは両手の人差し指をツンツンとさせながら顔を赤くして微笑んだ。


 実際にアーシアの人気は凄い、転入して最初の日にその日本人離れした金髪とエメラルドグリーンの瞳に多くの男子生徒がノックアウトしてしまったようで10人以上もの男子に告白されるほどだ。だがアーシアが返事を返す前に逃げて行っちまった、あいつら何がしたかったんだろうな?


『(まあこいつが睨むせいで全員逃げて行ったんだがな)』


 ドライグが何か言いたそうに感じたがまあいいや、とにかくアーシアの人気は凄いもので男子だけでなく女子にも人気が高い、普通男子にチヤホヤされる女子は嫌われる事が多いがアーシアにはそれが全くない、同性からも好かれるアーシアは『学園の聖女様』なんて呼ばれるようになった。


「それにしても遅かったな、何かあったのか?」
「ええと、その職員室から教室に帰ろうとしたらある方に声をかけられてその…」


 何、声をかけられただって!?


「まさか何かされたのか!?」
「その…告白されました」


 な、てっきりもうそんな奴はいないと思っていたがまだいたのか!


「それでどうしたんだ?まさかOKしたのか!?」
「いえ桐生さんが通りかかって助け舟を出してくれました」
「桐生が?」
「そういう事よ」


 アーシアと話していると眼鏡をかけたおさげの女子生徒が話しかけてきた。こいつの名は桐生、この学園で数少ない俺に普通に接してくれる女子生徒だ。


「兵藤、あんたがアーシアを見ておかないと駄目じゃない。アーシアに告ってた奴この学園じゃちょっと名の知れたイケメンよ。そいつ女癖が悪くて気に入った女子は力づくでも物にするとかいう噂だし」
「そうだったのか、アーシアを助けてくれてありがとうな、桐生」


 俺は桐生に対して感謝の言葉を言う。すると桐生は少しニヤけた表情を浮かべた。


「兵藤、あんたがしっかりしないと大事なアーシアちゃんが他の男に取られちゃうわよ?」
「別にアーシアは俺の物じゃないぞ?」
「……本当にアーシアには同情するわ」
「いえ今はこうでもいつか必ず……!」
「偉いわね、本当に健気なんだから……可愛い♪」
「はわっ、桐生さん!?」


 桐生が俺に残念そうな視線を向けて何やらアーシアがやる気を出してそれを見た桐生がアーシアをハグする……なんだこれ?


『お前には分からんだろうな』


 ドライグにもそう言われて俺は首を傾げたままだった。


「なら今度裸で迫れば……」
「はわわ、裸ですか!?」
「おい、さりげなくアーシアに変なことを教えんな!!」



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 その後桐生と別れ俺とアーシアは家に向かっていた。


「いいかアーシア、桐生はいい奴だが時々とんでもない事を言い出すから真に受けるなよ?」
「そんな事ないですよ、桐生さんは色んなことを私に教えてくださいます」
「じゃあ二日前に風呂場に突入してきたのは……」
「はい、桐生さんに教えてもらいました、日本では裸の付き合いがあってそれで仲良しになるって……」
「それは同性同士でやるもんで普通は異性とはやらないんだよ」
「そうなんですか……」


 桐生はいい奴だとは思うが実は結構エロいことを普通に話す、それこそ女版元浜と呼ばれるくらいだ。アーシアの事を気にかけてくれるのはいいがそれだけがな。


『まあそんなガッカリするな、相棒も内心では嬉しがっていたぞ』
「え、本当ですか?」
「あ、おいドライグ!」


 いきなり話し出したと思ったら何を言ってるんだ!


「待て、アーシア誤解するな、俺はそんなふしだらな事は考えてない!」
『本当か?』
「イッセーさん……」
「えっと……正直ドキッとはした……うん」


 無理だ…潤んだ瞳で上目遣いで見つめてくるアーシアに酷い事は言えない…というか言える奴がいるなら会ってみたい。


「嬉しいです、イッセーさんが喜んでくれて」
「普通は異性に裸を見せるのは嫌なもんなんだけどな」
「そんな事はありません、私はイッセーさんなら見られてもいいですし……それくらいでしかお役に立てませんから……」
「えっ?」
「私は小猫ちゃんみたいに一緒に戦えませんし回復の力もイッセーさんのお役には立っていません、最近は小猫ちゃんもお料理の腕が上達しているのに私はダメダメで……」
「ああ、確かに小猫ちゃんは呑み込みが早いよな……包丁の扱い方も様になってきてる、でもアーシアだって負けてないさ。人によって上達の速さは違うし何より料理は速さも大事だが丁寧に作業をこなすのも大事な事だ、アーシアはそれが出来ている。だからそんなに自分を卑下にすんなよ」
「イッセーさん……はい!」


 アーシアはギュッと俺の左腕に抱き着いてきた。


「やっぱりイッセーさんは優しい人です、そんな貴方だから私は……よーし、決めました!」
「何をだ?」
「私、もっともっと回復の力やお料理を頑張ります、小猫ちゃんにも負けてはいられません。アーシア頑張ります!」
「おお、何だか分からないが頑張れ!」
「はい!」


 小猫ちゃんにも負けないようにか……そういや最近は姿を見ないな、部活が忙しいんだろうか……






side:小猫


 皆さんこんにちは、小猫です。今悪魔の仕事を終えて部室に帰る所なんですが何故かラブコメ臭を感じて絶賛イライラしています、隣で歩いている祐斗先輩も困ったような表情を浮かべています」


「小猫ちゃん、何だか不機嫌そうな顔だね」
「あ、ごめんなさい。何故か突然イライラしちゃって……」
「もしかしてリアス部長の事で何かあったのかい?」
「部長の事でイライラした訳じゃないんです、でも心配ではあります」


 私は悩んでいる事がある、リアス部長の事だ。ここ最近リアス部長は疲れ切った表情を浮かべており悪魔の仕事も調子が悪いようだ、何があったんじゃないかと思って聞いても大丈夫としか言わないし……どうしたんでしょうか?


「朱乃先輩なら何か知ってるんでしょうか?」
「そうだね、朱乃さんは部長の『女王』だから多分詳しい事も把握していると思う、でも僕達がでしゃばる訳にもいかないし…難しい所だよね」
「はい……」


 そんなことを考えていると不意にどこから何か強い殺気のようなものを感じて戦闘態勢になった。


「小猫ちゃん、どうかしたの?」


 だが祐斗先輩は何も感じてないようで私の行動に首を傾げていた。


「いえ、何か強い殺気を感じて……」
「殺気?僕は感じなかったけど……」
「……そうですか、騒がせてすみません」


 祐斗先輩に謝って再び部室に向かったが部室前で祐斗先輩が立ち止まった。


「僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて……」


 目を細めて顔を強張らせる祐斗先輩、私が先程感じた強い殺気もここからしたんだと思います、でも何で私は気付けたのに祐斗先輩は気付けなかったんだろうか、実力的にはお互いに一緒くらいなのに。


 祐斗先輩が扉を開けて中に入るとそこには部長と朱乃さん、そして銀髪のメイドの格好をした女性が立っていた。


「グレイフィア様……」


 彼女はグレイフィア様といってグレモリー家にメイドとして仕えている方で他にも説明することがありますが今は省きます。
 部長は不機嫌そうに顔を歪めており朱乃さんもニコニコとしているが身に纏うオーラは冷たい。会話は無くピリピリとした雰囲気が部室に漂っていた。


「まいったね……」


 祐斗先輩も苦笑いをしている、それだけこの場の空気が重いということなんだろう、私も正直辛いです。


「全員揃ったようね、実は貴方達に話があって……」


 その時だった、部室の隅に描かれた魔法陣が光りだした、これは転移現象……?でも部室には全員いるしグレイフィア様もここにいる、あれは……


「フェニックス……」


 隣にいた祐斗先輩がボソリと呟いた、そして光が晴れてその場に姿を現したのは金髪の男性だった。


「ふぅ、人間界は久しぶりだな」


 赤いスーツを着崩したホストっぽい男性が部長を見てイヤらしい笑みを浮かべた。


「愛しのリアス、君に会いに来たぜ」


 その男性の正体はリアス部長の婚約者、『ライザー・フェニックス』だ。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「いやー、リアスの『女王』がいれてくれたお茶は美味いな」
「痛み入りますわ」


 朱乃先輩はニコニコしているがあれは絶対に不機嫌な時の朱乃先輩だ、何度か噂で聞いたことがあるがあれが部長の婚約者…もしかして最近の部長の様子と何か関係があるのかな?


「所でリアス、さっそくだが式場を見に行こうか、日取りも決まっているんだ、早め早めがいい」
「いい加減にして、ライザー!!」


 先程から肩や髪を触られていた部長がとうとうキレたのか立ち上がってライザーを睨みつける、当の本人はヘラヘラと笑って余裕の笑みを浮かべている。


「以前にも言ったはずよ、私は貴方とは結婚するつもりはないと!私は自分の意志で旦那様を決めるって!」
「そうだったな、だがリアス、それを聞いて、はいそうですかとはいかないんだよ。先の戦争で純潔悪魔の大半が塵と消えた、戦争を脱したとはいえ天使、堕天使達とは拮抗状態にある。だからこそ純潔の血を引く俺のフェニックス家と君のグレモリー家、二つの強い血を混ぜて更に強い新生児を生んでいく……これは俺と君の父上、そして魔王サーゼクス様の意志でもあるんだ。君は身勝手な我儘でグレモリー家を潰すつもりなのか?」
「家は潰さないわ、婿養子だって入れる。でもそれは貴方じゃない、私が自分で決めて本気で好きになった人とよ」


 部長が真剣な表情でそういうと流石に今まで余裕の笑みを浮かべていたライザーも不機嫌な表情になり舌打ちをする。


「……なあリアス、俺もフェニックス家の看板を背負っているんだ、だからこの名前に泥を塗る訳にはいかないんだよ。これ以上駄々をこねるっていうなら君の眷属を全員燃やしてでも君を連れ帰るぞ?」


 ライザーの体から炎があふれ出しチリチリと火の粉が舞う、殺意と敵意が部室に広がり私の背中に冷たいものが走り手足が震えだした。この人は強い……!見た目のチャラさとは裏腹にかなりの実力者だ、もし今ライザーに全員で戦っても勝てない……そう思わせるくらいに……


「お待ちください、お嬢様、ライザー様」


 部長とライザーは互いににらみ合っている、一触即発の空気になりかけた時グレイフィア様が待ったをかける。


「これ以上続けるというにならば流石に私も黙っている訳にはいきません」


 静かだが部長やライザーを遥かに上回る魔力を放ちながらグレイフィア様は淡々と話す、するとにらみ合っていた二人は殺気を抑えた。


「最強の女王候補にある貴方にそう言われたら俺も止めざるおえないな、まだ死にたくはないんだ」
「ありがとうございます。さて今回の件ですがグレモリー家もフェニックス家も意見の食い違いになることは初めから予想されていました、そこで今回の一見は『レーティングゲーム』で決着をつけるのはいかがでしょうか?」


 レーティングゲーム…確か爵位持ちの悪魔たちが行う、下僕である『兵士』『騎士』『戦車』『僧侶』『女王』を用いて悪魔同士で競い合うゲームの事ですね、でもあれって確か成人してないと駄目なんじゃ…


「お嬢様も知っての通りレーティングゲームは成人した悪魔しか参加できません、ですが非公式なら話は別です」
「なるほど、御家同士のいがみ合いに決着をつけるにはちょうどいい舞台って訳ね、私は賛成よ」
「俺も異論はない」
「承知いたしました。お二人のご意見は私が私が確認させていただきました。ご両家の立会人として私がゲームの指揮を執らせていただきます。それでよろしいですか?」
「構わないわ」
「こちらもだ」
「分かりました、ご両家には私から話しておきます」


 レーティングゲーム……いつかは参加しなくちゃいけないと思っていたけどまさかこんなに早く参加することになるなんて思ってもいませんでした。


「おいリアス、もしかしてここにいる全員が君の眷属か?」
「それが何か問題でもあるのかしら?」


 部長がそう言うとライザーは可笑しそうに笑いだした。


「ははは!それで俺と戦うつもりか?たった3人しかいないじゃないか」


 ライザーが指を鳴らすと再び魔法陣が光りだして光が晴れるとそこには15人の女性が現れた、そう、15人全員が『女性』だ。


 騎士や魔法使い、小さな女の子といった所謂美少女達がライザーの周りに集まる。


「これが俺の眷属だ。どうだ、今からでも考え直して俺の物にならないか?そうすれば君も君の眷属も愛してやるぞ、こんな風にな」


 ライザーは近くにいる自分の眷属の女の子を引き寄せると唇を奪った、それもディープなほうをだ。私はその光景に不快感を感じた、部長も朱乃先輩も同じように顔を歪ませて祐斗先輩も嫌悪感を露わにしていた。


「……ライザー、今貴方私だけじゃなく私の眷属も、と言ったわね。どういうつもりかしら?」
「決まってるだろ、俺がグレモリー家に嫁げば君は俺の物、従って君の眷属も俺の物になる訳だ。『雷の巫女』も相当な美少女だからな、男もいるようだがそいつはいらん」
「……最低ですわ」
「ははっ、酷い言われようだね……」


 朱乃先輩も祐斗先輩も笑ってはいるが完全にキレる一歩手前だ、私も流石に頭に来た。ライザーは眷属を物としてしか見ていない、自分の欲を満たす道具にしか思ってないんだ、私達を家族として愛してくれるリアス部長とは全くの正反対、部長が頑なに拒否するのも理解できた。
 

「--ッ!?……ほう」


 ライザーが私を見て舌なめずりをした、一体なんですか…


「君、名前は?」
「……塔城小猫」
「驚いたな、リアスの眷属に君みたいな美少女がいたなんて……」


 ライザーは私に近づくと目線を私に合わせて顔を近づけて……ッ!?


 パァンッ!!


 私の平手がライザーの右頬に真っ赤な跡をつけた、間違いなく今この人私にキスしようと……!


「小猫!?ライザー、貴方何を!!」
「ライザー様!?」


 部長が怒りの表情を露わにして怒鳴りライザーの眷属達が私を睨んでくる。怒りたいのは私なんですが……


「大丈夫だ、しかし……ふふふっ気に入ったぞ小猫。君を俺の女にしてやる」
「なッ!?」


 私がこの男の女……!?


「冗談じゃありません!だれが貴方なんかに……第一気安く私の名前を呼ばないでください!」
「その気の強さも気に入った、そういう女を俺色に染めるのもいい物だからな」


 こんな男の女なんて…想像もしたくありません!第一私はこんなチャラチャラした女性に不埒な事をする男が大嫌いなんです。私はもっとこう見た目はワイルドだけど子供みたいに好奇心旺盛で食べてばっかりだけど優しくて私を支えてくれるそんな男性がいいんです!


「リアス、気が変わった、直にゲームを始めようかと思ったが君に10日間の猶予をやろう」
「猶予ですって?」
「このままやっても俺の勝ちは確実…それじゃあつまらない。だからハンデとして10日間の猶予をやる、その間に修行でも何でもして強くなればいい。そうすれば君は理解するだろう、なにをしても俺には勝てんとな……」
「ぐっ……」


 ライザーは私達に強くなるチャンスを与えたんじゃない、どれだけ修行して足掻いても無駄だという意味を込めて10日間の猶予を与えたんだ。


「じゃあなリアス、10日後を楽しみにしているぜ。そうだ小猫、お前も準備しておくんだな、俺の女になる準備をな……ハハハハハッ!!!」


 ライザーはそう言うと魔法陣に入り消えて行った。


 ライザーがいなくなってしばらく部室には何とも言えない空気が広がったが部長が話し出した。


「皆ごめんなさい、こんなことに巻き込んでしまって……」


 部長は申し訳なさそうに私達に謝る。


「部長、僕達は貴方の眷属です」
「リアスが望むなら私達は喜んで戦いますわ」
「それにもう他人事ではないですしね」


 部長をあんな男にくれてやるつもりもないし私もライザーの女になるつもりはない。


「皆……ありがとう」


 部長は嬉しそうに微笑んだ。


「なら私達は与えられた10日間で強くならなければならないわ、明日から早速修行を始めるわよ!」
「「「はい!」」」


 ……でも正直このまま普通に修行してもライザーには勝てないかも知れない、一体どうすればいいんでしょうか、イッセー先輩なら力になってくれるでしょうか……




  
 

 
後書き
 こんにちは小猫です、次回は打倒ライザーに向けて修行に入ります……ですが本当にライザーに勝てるのでしょうか?イッセー先輩に相談しようともしましたが彼を悪魔の事情に巻き込めないし…どうすればいいんでしょうか……次回『小猫涙の悲願、グレモリー眷属修行開始します!前編』でお会いしましょう。 

 

第10話 小猫涙の悲願、グレモリー眷属修行開始します!前編


side;イッセー


 よっ、皆。イッセーだ。俺は今松田、元浜、桐生、そしてアーシアの5人で学園の屋上にいた。松田達とは前の一件で親しくなりこうやってよくつるむ様になった。


「所でよイッセー」
「ん、何だ松田」
「最近小猫ちゃんを見かけないけど何かあったのか?」


 松田はゲーム機をピコピコと操作しながら俺にそう聞いてきた、因みに松田と元浜は俺をイッセーと呼ぶようになった、桐生にもイッセーでいいと言ったが彼女は何故か兵藤呼びがいいらしい。


「ああ、最近は部活が忙しいらしいからこっちには来てないな」
「かぁー、お前といれば小猫ちゃんに会えると思った当てが外れたな……」
「是非とも小猫ちゃんとお近づきになりたかったんだがな」


 松田と元浜がそんな事を言い出した、おいおい、俺とつるむ様になったのは小猫ちゃんとお近づきになりたかったからか?


「ちょっとアンタ達、こんな綺麗な美少女二人を捕まえておいてよくそんなことが言えるもんね」
「はあ?アーシアちゃんはともかくお前は美少女じゃないだろう」
「せめてもう少し胸が大きくなってからそう言ってほしいものだな」
「む、胸は関係ないでしょ!?」


 やれやれまた始まったか、この三人集まると大抵こういう言い争いになるからな。どうしたものか……


「あ、あのイッセーさん」
「ん、何だアーシア?」


 アーシアが俺の制服の裾を引っ張って何やら思いつめたような表情を浮かべている。


「イッセーさんはおっぱいの大きな女性が好みなんですか……?」
「ぶっ!?」


 アーシアがとんでもない事を聞いてきたぞ!誰の仕業だ、桐生か、それとも松田か元浜か!


「何でいきなりそんなことを?」
「その……クラスの女子の方達が男は巨乳の方が好きだって言っていたので、気になっちゃって……」


 寄りによってクラスの女子かよ、年頃だから仕方ないとは思うが純真なアーシアの前でそんな話はしないでほしいぜ。


「俺はアーシアちゃんのおっぱいはいいと思います!」
「そもそもアーシアちゃんは貧乳ではなく美乳の分類に入ってると俺のスリーサイズカウンターが反応したぞ」
「アンタ達には聞いてないわよ……でどうなの兵藤?アンタって女っ気が全くないから気になるのよね?この際だから言っちゃいなさいよ」


 ぐっ、言い争っていた三人もここぞとばかりに話に入ってくるし……助けてくれドライグ!


『知らん、別に隠す事でもないだろうし言ってしまえばいいだろうが』


 相棒にも見捨てられてしまいいよいよ跡が無くなってしまった。


「お、俺は別に胸の大きさで女性の良さは出していない、一緒にいて楽しいとかこの人となら一緒に頑張っていけるとか……そういった気持ちが一番重要だと思うぞ……うん」


 くそっ、恥ずかしい……俺がそう思ってると松田達は何やら温かい眼差しを送ってきた。


「何だよその目は……」
「いやー、兵藤って意外とピュアよね」
「はあ?」
「うむ、何だかおっぱいおっぱい言ってる我々が凄く恥ずかしく思える位だ」
「なんつーか、一途って言う奴だな」
「イッセーさんはとっても綺麗な心を持っているんですね!」
『クククッ、何だ、普段はあんなこっぱずかしい口説き文句を言うくせに純真なんだな』


 おい止めろって、なんだその視線は!ドライグまで一緒にからかってきやがって!俺は恥ずかしくなって顔を逸らした。



「……イッセー先輩」


 不意に俺を呼ぶ声が聞こえたのでそっちを振り返ってみると……


「小猫ちゃん?」


 白髪が特徴的な俺の後輩である塔城小猫ちゃんが屋上の入り口に立っていた、だがその表情はとても暗かった。


「こ、小猫ちゃん!?本物の小猫ちゃんだ!」
「これがイッセーの加護なのか!まさか本当に小猫たんに会えるなんて!」


 小猫ちゃんを見た瞬間松田と元浜が騒ぎ出した、特に元浜のテンションは鰻登りになっている、ロリコンだって聞いていたがここまでとは……


「……」
「桐生さん?」


 桐生だけは何か神妙そうな表情で小猫ちゃんを見ていた、そんな桐生を見てアーシアも首を傾げる。


「あの小猫ちゃん、俺松田って言うんだ!良かったら一枚写真を……いてぇ!?」
「こ、小猫たん!俺は元浜といいます、前からお近づきになりたかった……ぐぉ!?」


 桐生が立ち上がり松田と元浜の耳を引っ張る。


「な、何すんだよ桐生!?」
「はいはいそこまでよ、見たところ塔城さんは兵藤に用があるみたいだし私達は退散するわよ」
「そうはいくか!ようやく小猫たんと話せるチャンスが……!」


 桐生は文句を言う二人を連れて屋上から去っていった。


「あの先輩、今の方達は……」
「いや何というか気を使わせてしまったみたいだな」


 今度桐生には何かお礼をしないといけないな。


「で小猫ちゃんは俺に用かい?何やら深刻そうな話みたいだが」
「えっと、私もいないほうがいいですか?」
「いえ、アーシアさんもいてください、悪魔についての話ですから……」
「分かった、話してくれ」


 俺とアーシアは二人で小猫ちゃんの話を聞くことにした。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「……という訳なんです」
「なるほどな」


 小猫ちゃんから聞いた話を纏めるとグレモリー先輩が自らの許嫁であるライザー・フェニックスとの婚約を破棄したいらしくレーティングゲームとやらに参加することになった、そして小猫ちゃん達はライザーに勝つべく修行を明日から始めるらしいが小猫ちゃんは唯の修行では勝てないと思い俺に相談してきた、という訳だ。


「つまり小猫ちゃんは俺にグレモリー眷属の特訓のコーチをしてほしいって事か」
「……はい」


 事情は分かったがこれは俺には手が余りそうだな、今までは何とか誤魔化してきたがグレモリー先輩と直に接触したら赤龍帝の籠手がバレるかも知れない。

 
 いや籠手がバレなくても俺の強さを知ったら眷属に勧誘してくる可能性だってある、自慢じゃないが俺は素の状態でも並みの中級悪魔なら相手できる、それを知れば先輩が勧誘してくるかも知れない。


 小猫ちゃんの話ではグレモリー先輩は無理やり眷属にしようとはしないらしいが他の悪魔に知られたら厄介な事になりそうだ。


「イッセーさん、何とか力になれないでしょうか?」
「ううん……」


 アーシアもそう言うがこれは大きな起点になりそうだ。もし先輩と関われば悪魔の事情に深く突っ込む事になる、先輩の兄は魔王らしいから何らかの方法で俺を知る可能性だって十分ある。そうなればこっちでの生活も難しくなるな……さてどうしたものか……


「……ごめんなさい先輩」


 俺が考え込んでると小猫ちゃんが頭を下げてきた。


「小猫ちゃん、一体どうしたんだ?」
「先輩の事情は分かっています、それなのに無理なことを言ってしまって……今言った事は忘れてください……それでは」


 そう言って屋上から去ろうとする小猫ちゃんは……泣いていた。


「待ってくれ小猫ちゃん!」


 俺は小猫ちゃんの手を掴んで小猫ちゃんを引き留めた。


「先輩……?」
「小猫ちゃん、本当はまだ言ってないことがあるんじゃないか?」
「……そんなことは」
「嘘だ、だったらどうしてそんな涙を浮かべるんだ?自分の主が望まない結婚をさせられようとしてそれを何とかしたいのは理解できた、でも小猫ちゃんが泣くのを見て思ったんだ、小猫ちゃんは俺に何かを隠してるって、他に何か言えないことがあるって思ったんだ」
「…………」
「話してくれないか、俺は小猫ちゃんが泣く姿は見たくない」
「私も小猫ちゃんの力になりたいです」
「イッセー先輩……アーシアさん……」


 そして小猫ちゃんは話してくれた、負ければグレモリー先輩だけじゃなく自分もライザーの女にされると……


「先輩、私嫌です……部長を苦しめるような奴と結ばれたくないです……でもライザーは私達より強いのが本能的に分かって……どうすればいいのか分からなくて……」
「…………」
「先輩……助けてください……」


 俺は小猫ちゃんの涙を見て決心した、さっきまでウジウジと考えていたがもう決めた。


『おいイッセー、お前まさか……』
「ああ、俺は腹を括ったよドライグ」
『本当にいいのか?ドラゴンは力を引き寄せる、つまり赤龍帝であるお前がグレモリーと関われば間違いなくお前は力に引き付けられてそちら側に引き込まれるぞ』
「構わん、思い立ったら吉日、その日以降は全て凶日だ。それに……」
『それに……何だ?』
「大事な後輩の涙見て動かなきゃ先輩じゃないだろう?」
『お前と言う奴は……』


 俺はドライグにそう言って小猫ちゃんの目に溜まった涙を指で優しく拭い取った。


「先輩……?」
「小猫ちゃん、俺がどこまで力になれるかは分からないが俺に任せてくれないか?」
「いいんですか?だって先輩は……」
「いいんだよ、俺は大事な後輩が泣いてるのを黙ってみてるほど薄情な奴じゃない」
「先輩……!ありがとうございます!」


 小猫ちゃんが嬉しそうに笑う、うんうん、やっぱり小猫ちゃんは笑顔が一番だな。


「まあ最悪面倒なことになったらアーシアを連れてグルメ界に逃げちまえばいいんだしな」


 俺が冗談でそう言うと小猫ちゃんは何やら不機嫌そうな表情を浮かべていた。


「アーシアさんだけですか……?」
「えっ……?」
「ズルいです、私だって先輩と一緒にいたいです……私は連れて行ってくれないんですか……?」
「小猫ちゃん、今のは冗談だぞ?」
「嫌です、一緒にいてください……」


 うーん、これは変なスイッチを入れてしまったか?小猫ちゃんの様子がおかしくなってしまったぞ……


『普段の行いが悪いからだ』


 うるせーぞドライグ、とにかく今は話を先に進めよう。


「小猫ちゃん、取りあえずまずは先にグレモリー先輩に話をしにいかないか、彼女から了承を得なきゃ結局意味がないからな」
「あ、確かにそうですね。部長はまだ旧校舎にいるはずです」
「よし、全は急げだ、話をしに行こうぜ」
『おいイッセー』


 俺達が旧校舎に向かおうとするとドライグが話しかけてきた。


「何だよドライグ、止めてももう行くぞ」
『もうそれについては諦めたからいい、俺が言いたいのはやはり赤龍帝だというのはバレないほうがいいという事だ、俺は三大勢力の戦争に乱入してかなりの悪魔達を殺したから恨みも買っているからバレたら色々不味いだろう』
「それはお前のせいじゃねえか」
『うっ、あの時は俺も若かったんだ。とにかく俺に案がある」
「何だ案って?」
『それはーーー』




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



 俺達はグレモリー先輩がいる旧校舎にやってきた。ていうか旧校舎に来るのは初めてだな。


「こっちです」


 小猫ちゃんに案内されて旧校舎の中を進んでいく、そして普段小猫ちゃんたちが部室として使っている部屋の前まで来た。


「失礼します」


 俺はノックして中に入る、中にはグレモリー先輩、姫島先輩、そして同じ学年の木場がいた。丁度全員そろっているみたいだな。


「あら小猫どうしたのって貴方達は兵藤君に確か少し前に転入してきたアルジェントさん?」
「初めましてグレモリー先輩、兵藤一誠といいます」
「アーシア・アルジェントです」
「ご丁寧にありがとう、私はリアス・グレモリーよ」
「姫島朱乃です」
「木場祐斗だよ、こうやって話すのは初めてだね、兵藤君」
「そうだな」


 取りあえず挨拶を交わす、互いに見た事はあってもこうやって話すのは初めてだからな。


「それで兵藤君、一体何をしに来たのかしら?一応ここは私達オカルト研究部しか入れないのだけど……」
「すいません、実はグレモリー先輩に話がありまして……」
「私に……?」
「いや正しく言えば……『悪魔』の貴方達に話があります」


 俺がそう言った瞬間木場が剣を出して姫島先輩が手に雷を放ちだした。


「……貴方、私達の事を……」
「ええ知ってますよ、貴方達が悪魔だって事を、そして三大勢力や裏の事情もね……」


 俺はアーシアを背中に隠しながら話を進めていく。


「取りあえず先ずは話し合いをしませんか、俺の事をどうこうするかはその後に決めればいいでしょう」
「……分かったわ、朱乃、祐斗、武器を下ろしなさい」


 先輩がそう言うと姫島先輩と木場はそれぞれの武器をしまう。さてここからだ、どうやって話をもっていこうか。





ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「紅茶です」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」


 ソファーに座った俺とアーシアに姫島先輩が紅茶を出してくれた、お、これは美味いな。


「それで兵藤君、貴方は何が目的なの?」
「そうですね、俺がここに来た理由はしいて言うなら後輩を助けるためですかね」
「後輩を?もしかして小猫の事かしら?」
「ええ」


 俺は小猫ちゃんにライザーとの件について聞いたことを話した。


「小猫、貴方部外者にこのことを話したの!?それは……」
「おっと小猫ちゃんを責めないでください、俺が無理を言って聞き出したんですよ」
「先輩……」


 小猫ちゃんが先輩に叱られそうになったのでフォローを出した。


「……まあいいわ、それで兵藤君、貴方は何がしたいの?」
「単刀直入で言えば先輩達の修行のコーチをしたいかなって」
「……はい?」


 グレモリー先輩が間の抜けたような表情を浮かべた、姫島先輩や木場も同じような表情を浮かべている。


「貴方が私達のコーチ?本気なの?」
「本気ですよ、俺は唯の人間じゃないですからね」


 俺はそう言って左腕に赤龍帝の籠手を出した……緑の宝玉部分を隠しながら。


「それは『龍の手』……やはり神器所持者だったのね」


 よし、先輩は赤龍帝の籠手を龍の手と勘違いしたな、ドライグがさっき言ったのは宝玉部分を隠して見せれば龍の手と思わせる事が出来るんじゃないか、ということだ。龍の手は赤龍帝の籠手とよく似ているからな、これで倍加にさえ気を付ければ問題はないだろう。


「でも貴方が神器所持者だとしても私達は悪魔よ、人間の貴方より強いからコーチなんて無理よ」
「へえ、つまり先輩は俺より強いと言いたいんですか、なら試してみましょうか」
「試す?」
「俺と貴方の眷属の誰かとで模擬戦でもしましょうよ、そうすれば互いの実力がはっきりと分かりますよ、なんなら全員で来ても構いません」
「全員って……それこそ無謀だわ」
「いいじゃないですか部長」


 俺とグレモリー先輩の会話に木場が入ってきた。


「祐斗?」
「僕はそれでいいと思います、彼は隠してるようですが前々から兵藤君の目からは師匠のような達人を感じさせる何かを感じていたんです」
「へえ……しっかりと隠していたつもりだったがよく分かったな」
「君は有名人だからね、知らずと目に入ってたんだ」
「それはお互いさまだろう」


 普段は自分の力を一般人並みに抑え込んでるが木場は若干ながらも俺の隠していた力を感じ取っていたのか。


「部長、駄目でしょうか?」
「……分かったわ、最初から無理無駄と決めつけるのは良くないわね、ならこうしましょう。貴方は祐斗と戦って勝てたらコーチを頼む、後何かお願い事を聞いてあげるわ。でも貴方が負けたら……」
「負けたら?」
「私の眷属になってもらうわよ」
「いいですよ、こっちから無理を言ってるしそれでかまいません」
「祐斗もそれでいいかしら?」
「はい」


 こうして俺と木場の模擬戦が始まることになった。




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー





sedi:祐斗


 僕達は旧校舎の前にある広場に立っている、ここで僕と兵藤君が戦うんだ、因みにこっちに人が来ないように姫島先輩が結界を貼ったので気兼ねなく戦える。
 兵藤一誠君……この駒王学園では知らない人はいない有名人だ、最も部長達みたいに好意的なものじゃなくて厄介者みたいな意味でだけど。

 
 兵藤君とは今日まで明確な関わりがあった訳じゃない、でも僕は前から兵藤君はただものじゃないって感じていたんだ。切っ掛けは去年の球技大会で兵藤君とサッカーの試合をした時だ。彼は他の競技でほとんど一人で自身のチームを勝たせていた、そしてサッカーの試合で僕のクラスと対戦することになったんだ。あの頃は小猫ちゃんはまだ入学してなかったっけ。で試合が始まり兵藤君が攻めてきたので僕が彼と対峙した。

 
 正直最初は悪魔の力を少し抑えていたんだ、普通にやったら一般人に怪我をさせてしまうかも知れないからね、最初は互いにいい勝負が出来ていたとおもったんだけど途中で兵藤君の動きが変わったんだ、気が付いたら僕は抜かれていて彼がゴールを決めていた。その時は驚いたよ、騎士の駒を持つ僕はスピードにはかなり慣れていた、その僕が全く反応できなかったんだ、いくら力を抑えていたとしても油断はしていなかった。僕は次の対決でちょっと本気になった、大人げないとおもったけど悪魔の力を出して再度対峙した、でも兵藤君は僕をあっさりと抜いてしまった。僕は思ったよ、彼は唯の人間じゃないって……

 
 その日から何かと兵藤君の事を目で追っていた。彼を見ている内に段々と分かってきたんだ、兵藤君は本来持っている力を抑えている事に……
 そして一年が立ち兵藤君は小猫ちゃんと知り合った。そして彼と出会ってから小猫ちゃんの実力が上がっている事に気が付いた。部長達は気付いてないようだけど前に模擬戦をした時に明らかに動きが良くなっていたんだ。僕は思った、もしかして兵藤君が関係してるのかなって……


 そして今日僕は彼の正体を知った、彼は神器所有者で僕達悪魔や三大勢力の事を知っているようだった、そして何の因果かこうして彼と決闘をすることになった。
 まさか今日いきなりこうなるとは思っていなかったけど正直ワクワクしているんだ、彼の本当の実力を知ることが出来るかも知れないしね。


「それじゃあそろそろ始めるとしようぜ」


 兵藤君は左腕から神器を出して構える、僕も剣を出してそれを持ち構えた。


「木場も神器所持者なんだな、剣を生み出す神器か?」
「うん、僕の神器は『魔剣創造(ソード・バース)』……僕は任意に魔剣を創り出せるんだ」


 互いの手のひらを明かして戦闘態勢に入る、そして兵藤君が動いた。


「ナイフッ!!」


 速い!それが僕が最初に思った事だった。距離をあっという間に詰めて左腕で手刀を放ってきた。僕は体をそらすことでギリギリそれを回避した。そしてがら空きになった兵藤君の脇腹に剣を振るうが彼は跳躍してそれを避けた。


「行くぜ!」


 そして上空から僕目がけてパンチを放ってきた、咄嗟に剣で防ごうとするが剣が砕かれてしまい僕は彼の攻撃を受けて吹き飛んだ。


「祐斗っ!?」
「大丈夫よリアス、祐斗君は兵藤君のパンチが当たる瞬間自分から後ろに飛んで衝撃を分散していたわ」


 部長の心配そうな声が聞こえる、僕は咄嗟に受け身をとって体制を立て直した。


「凄いね兵藤君、この剣はそれなりに耐久があるって思ってたのにまるで紙屑みたいに砕かれちゃうなんて……」
「へへっ、鍛えてるからな。それで木場、どうするんだ?武器を失ったみたいだが?」
「言ったでしょ、僕の魔剣創造はあらゆる魔剣を創り出せるって……壊れたならまた創ればいい」


 僕は右手に炎の魔剣、左手に氷の魔剣を生み出して構えた。


「二刀流か、それも炎と氷と来たもんだ。いいねぇ、中二心をくすぐられるぜ」
「あはは、もしかして兵藤君もそういうのが好きなの?魔剣を創り出すイメージトレーニングに役立つから結構アニメとか見てるんだ」
「そうなのか、俺も好きだぜ」
「趣味が合うんだ、何だか嬉しいね」


 互いに軽口を言いながら再度構え僕は兵藤君に向かっていった。


「はぁぁぁっ!!」


 右上、斜め左、振り下ろしと連続して兵藤君に攻撃する、兵藤君は籠手でいなしたり体をそらしてかわしていく。なら……!
 僕は一旦距離をとって炎の魔剣を地面に刺した、すると兵藤君の周りに炎の渦が生まれて彼を飲み込んだ、そして氷の魔剣を振るい炎ごと氷漬けにする。


「イッセーさんっ!!」


 だが氷は直に割れて中から無傷の兵藤君が飛び出してきた。


「フォークッ!!」


 そして左指をまるで食器のフォークのようにそろえて刺突を放ってきた。僕は地面から剣を出してそれを防ぐ、そして両手の魔剣を捨てて新たに雷の魔剣を生み出した。


「兵藤君、この攻撃はどう対処するかな?」


 僕は雷を纏った斬撃を縦横無尽に兵藤君目がけて放つ。


「斬撃勝負か、面白い!!」
『Boost!』


 兵藤君は左腕の籠手に力を込めて手刀を放つ、あれは龍の手の力である力を二倍にする能力のはずだ。先ほどよりも大きく威力が上がったその一撃は僕の斬撃を飲み込み打ち消した、更にその攻撃の余波で僕の体も吹き飛んでしまう。


「うわっ!?」
「まだまだいくぜ!」


 体制が崩れるのを何とかこらえて地面から魔剣を出して兵藤君に攻撃する、だけど兵藤君は魔剣を手刀や刺突で砕いて接近していく。


「ならこれでどうかな!」


 僕は左手に重力を操る魔剣を創り兵藤君の周りの重力を重くする。


「ぐっ、厄介だな。その神器……!」


 流石に重力には抗えないのか兵藤君はその場に膝をついた。


「だがこの程度の逆境は乗り越えてきた……うぉぉぉぉっ!!」
『Bosst!』


 兵藤君は再び力を二倍にして無理やり重力の波を打ち消した。


「木場、正直予想以上だ。お前強いじゃねえか」
「兵藤君だって凄いよ……ここまでワクワクするのは初めてだよ」 


 互いに息も切れて疲労が見えてきた。でも僕が思った通りだ、兵藤君は強い。小手先の技術じゃ勝てないだろう、なら……
 

 僕は左手に魔剣を創る、能力はなく切れ味を高めた魔剣、ここからは僕の本当の力で挑ませてもらうよ!


「はあっ!!」


 僕は自身が持つ騎士の駒の特性である速さを最大限まで発揮して兵藤君に攻撃する。


「!?ッ」


 兵藤君は僕の攻撃をかわすがさっきまでと違い余裕がない表情だった。立て続けに兵藤君に攻撃を放っていく、そして僕の攻撃の一つが兵藤君に掠った。


「……なるほど、それがお前の本当の武器か」
「うん、魔剣創造はあくまでも僕が持つ力の一つ、僕の本来の武器は騎士の駒の特性である速さを生かした戦いさ。といってもここまで本気を出したのは君が初めてだけどね」
「そりゃ光栄だな」
「だからもっと見せてよ、君の実力を!」


 僕は更に速さのギアを上げて兵藤君の周りを縦横無尽に駆け回る。


「速い!祐斗の本気は初めてみたけどここまでだなんて……!」
「私ではもう目で追えませんわ、祐斗君、凄い……」


 これが今の僕が出せる全力だ、さあ行くよ兵藤君!


 僕は背後から兵藤君目がけて全力で剣を振るった、彼は反応できていない、貰った!


「おりゃあっ!!」


 ドゴンッ!!


 兵藤君が地面を思いっきり殴って地面をえぐる、その時に出た土埃や岩の破片で視界を遮られて一瞬動きが止まってしまった。


「チェックメイトだ」


 そして次に目を開けると背後から兵藤君が僕の首に手刀を当てていた。


「速さは大したもんだったが咄嗟の状況に弱かったな。それでどうする、まだ続けるか?」
「……いや、この状況から抜け出す方法が思いつかない。僕の負けだよ」


 もしこれが実戦だったら僕は今頃やられていただろう、でも負けた悔しさもあったけどそれ以上に楽しかった。ここまで全力で戦えたのは初めてだったからだ。


 こうして僕と兵藤君の模擬戦が終わった。


 



side:イッセー


 今回は俺が勝ったが木場の底力には正直驚かされたな。戦闘だけで言えば小猫ちゃん以上の才能を持っていると思う、グレモリー眷属でも一番強いだろう。


「楽しかったぜ木場、また戦いたいな」
「あはは、だったら僕はもっと強くならないとね。じゃなければ君には到底追いつけそうもない」
「お前なら直に強くなれると思うぜ」
「ありがとう、兵藤君」


 俺は右手を差し出し木場と握手を交わす。


「驚いたわ、まさか人間の身でありながら悪魔に勝ってしまうなんて……」


 するとグレモリー先輩達がこちらに向かってきた。


「祐斗は私の眷属の中でも一番強い子だったんだけど……貴方一体何者なの?」
「俺ははぐれ悪魔や堕天使などを狩るバンティングハンターをしてるんですよ。それなりに修羅場は潜り抜けてきたつもりです」


 これは嘘だ、美食屋の事を話す訳にもいかないのでそれらしい話を作った。


「堕天使……まさか前の堕天使達も貴方が?」
「ああ、あいつらはアーシアを利用してよからぬ事をしようとしたのでちょっとね」
「アーシアってアルジェントさんの事?まさか堕天使の仲間じゃ……」
「アーシアは奴らに利用されていただけです、申し訳ありませんがアーシアに手を出すつもりなら黙ってはいませんよ?」


 俺は語尾を強めてそう話した。


「まあその件については終わった事だからいいわ。貴方を敵に回すのは得策じゃないしね」
「おや、さっきまでと言ってることが違うようですが?」
「これでもこの子達の主をしている身よ、さっきの祐斗との模擬戦で貴方が私達より強いのはよく分かったわ。現にこの眷属で一番強い祐斗が負けたんですもの」


 俺はグレモリー先輩の言葉に素直に感心した、自分の弱さを認めて相手の強さを理解するのは中々難しい、特にプライドの高い悪魔は人間に負けた事なんて認めようともしないだろう。どうやら他の悪魔みたいに人間を徹底的に見下している訳じゃないんだな。


「……なるほど、小猫ちゃんの言っていた通り他の悪魔とは違うようだ、さっきまでの無礼を許してください」
「私も貴方に失礼なことを言ってしまったし気にしないでちょうだい」
「なら今回はお互いさまということでいいですか?」
「ええ」


 良かった、グレモリー先輩は悪魔の中でもかなり話が分かる人みたいだ。


「それで俺が貴方方のコーチをするって話ですが……」
「そうね、正直普通に修行してもライザーに勝てるか不安だったから私としては構わないけど……」
「けど、というと何か不安でも?」
「ひとつだけいいかしら、貴方が小猫に近づいたのは何のため?利用しようとかそういう事じゃないわよね?」


 そうか、この人は俺がバンティングハンターをしていると言ったから自分の眷属である小猫ちゃんに何か悪意を持って接していたんじゃないかと思ったんだな。


「最初は先輩達が悪魔と分かっても関わるつもりはありませんでした。バンティングハンターをしてると言っても自分に降りかかる火の粉を払うみたいなものだったし面倒ごとは嫌いなのでそのまま関わらずにいようと思ってました」
「…………」
「でも入学式があった日に小猫ちゃんと出会ってから彼女は何かと俺に会いに来てくれました。最初は何か企んでいるんじゃないかとも思いましたが小猫ちゃんが俺の作った料理を美味しそうに食べているのを見ていたらそんな事どうでもよくなってしまいました。今ではこうして自分から厄介ごとに首をつっこみたくなるくらい大事な後輩です」
「先輩……」


 俺の言葉に小猫ちゃんがちょっと顔を赤らめながら嬉しそうに笑った。


「……なるほどね、貴方がどういう人か少し分かったわ。小猫が懐いたのも頷ける」
「と言いますと?」
「学園では厄介者として嫌われてるけど実際に話したら唯のお人よしだったって訳ね」


 お人よしって……褒め言葉なのか?


『こうやって自ら厄介ごとに首をつっこむような奴はバカかお人よしくらいだろう』


 ドライグが脳内にそう語りかけてきた、いやもうちょっと言い方があるだろうに……


「小猫、貴方中々いい人見つけたじゃない。私は応援するわよ」
「そ、そんなんじゃありませんから!」


 グレモリー先輩と小猫ちゃんが何か話していたがドライグとの会話で聞こえなかった。


「それで先輩、俺が先輩達のコーチをするって言う話はいいですか?」
「ええ、こちらからお願いしたいくらいよ。ライザーに勝つために貴方の力を貸してちょうだい、兵藤君」
「なら俺の事はイッセーと呼んでください、その方が気楽ですから」
「分かったわ、なら私達の事も名前で呼んでちょうだい、これで対等でしょ?」
「分かりましたリアス先輩、明日からみっちりと鍛えこんでいきますから覚悟していてくださいね?」
「勿論よ!」


 こうして俺はグレモリー眷属の修行の為のコーチになった。色々面倒ごとが起きそうだがまあ何とかなるだろう。



 
 

 
後書き
 初めまして木場祐斗です。今回は僕が後書きを担当するね。え、小猫ちゃんが良かった?あはは、期待している人には申し訳ないけど今回は我慢してね。 


 次回は僕達グレモリー眷属の修行だよ、兵藤君の修行は今までしてきた特訓がお遊びに思えるほどかなり厳しいものだった。でも弱音は吐けないよね、僕だって強くなってみせるんだ!


 次回『小猫涙の悲願、グレモリー眷属修行開始します!後編』でまた会おうね。え、まさかの『彼女』が出るんだって?これはどうなるか楽しみだね。 

 

第11話 小猫涙の悲願、グレモリー眷属修行開始します!後編

 
前書き
 え~……投稿が遅れてしまい申し訳ありません。ペルソナ5やソードアート・オンラインといった面白いゲームが多くてついついサボりがちに……遅れてしまいましたが11話です、どうぞ。 

 
side;イッセー


 よっ、皆。イッセーだ。今俺は山登りを楽しんでいる所だ。なんでもリアス先輩が所有している別荘があるらしくそこでなら多少派手に暴れても周りに迷惑はかけない丁度いい場所らしい。しかし緩やかな山だな、前に絹クジャクの卵を取りに行った時の山はもっと険しかったな。


「はあはあ……山登りって意外ときついんだね。イッセー君は疲れてないの?」
「これくらいじゃ散歩にもならないな」
「流石だね」


 かなり重そうなリュックサックを背負う木場は少し疲れた様子を見せる。どうやらあまり体力はないほうみたいだな。まあもう山を登りだして数時間が立つしあれだけ大きな荷物を背負ってたら悪魔でも厳しいか。


「祐斗先輩、ファイトです」


 後ろから木場より遥かに大きな荷物を持った小猫ちゃんが話しかけてきた。その表情に疲れは見えない。


「おいおい木場、女の子がこんな涼しい顔してるのに情けないぞ?」
「あはは……そうだね、このままじゃ情けないね」


 木場はそういって更に山を登り始める。男の子だねぇ。


「アーシアは疲れていないか?もし疲れていたら直に言えよ?」
「はい、ありがとうございます、イッセーさん」


 隣を歩くアーシアに気遣うがどうやらまだ大丈夫そうだな。


「むう、イッセー先輩はアーシアさんに過保護過ぎます。私には何も言ってくれないのに……」
「いや、小猫ちゃんなら楽勝だろう?」
「ふん、もういいです」


 ありゃりゃ、怒っちゃったか……何が悪かったんだ?


「ほらほら貴方たち、もうすぐ到着するからもうひと踏ん張りしなさい!」
「うふふ、こういう和気藹々とした雰囲気も偶にはいいものですね」


 先を歩くリアス先輩と朱乃先輩に声をかけられて俺たちは先輩達の元に駆け足で向かっていった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「着いたわ。ここが私たちが10日間修行を行う場所よ」
「うわぁ……大きなお屋敷です」


 アーシアが言うように俺の眼前には漫画によく出てくるような大きな木造建築の屋敷が立っていた。実際にあるもんなんだな、ああいうのって。


『お菓子の家に住んでるやつがいまさら何を言ってるんだ?』


 あ、確かにそうだな。まああっちはあっちで凄いもんばかりだしな。


「さて、まず修行を始める前に着替えちゃいましょうか。私たちは二階を使うからイッセーたちは一階の部屋を使って頂戴」
「分かりました」


 リアス先輩に案内された部屋で木場と一緒に着替える。すると木場が俺の体をジッと見ていた。


「ん?どうかしたか?」
「いや、イッセー君って着痩せするタイプなんだね。普段は分からなかったけど無駄がなく引き締まった筋肉の体……まるで芸術品みたいだ」
「まあな、それなりには鍛えているからな」


 しかし何故か木場の見つめてくる目が若干熱がこもってるように感じるのはなんでだ?そんなことを思いながら俺と木場は着替えて外に向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「それじゃあ早速ですが修行を初めていきますか」


 外に出た俺たちは屋敷から結構離れた森林地帯にいた。


「それでイッセー、一体どんな所業をするのかしら?」
「これからみんなにはサバイバルをしてもらいます」
「「「はい?」」」


 俺の問いにリアス先輩たちはちょっと意味がわからないな、といった表情を浮かべた。


「イッセー君、サバイバルって一体……」
「これから皆にこの森に入ってもらう、そして一分後に俺が森に入って皆を死なないギリギリまで叩きのめしに行きます。皆は俺を撃退するなり逃げるなりして生き延びてください、以上!」
「「「ええっ……」」」


 俺の問いに先輩たちは更に訳が分からないよ、といった表情を浮かべた。


「ちょっと待ってイッセー、それに何の意味が……」
「ほらほら、時間が惜しいんだからいったいった。質問は後から受け付けますから」


 俺はアーシア以外の全員を森に向かわせた。


「イッセーさん、これから何をするんですか?」
「そうだな……しいていうなら『狩り』だな」






sidei;小猫



 私たちは先輩に言われるがままに森の中に入っていきました。


「一体イッセー君は何を考えているんでしょうか?」
「てっきり漫画みたいな修行を想像してたのにちょっと期待外れだわ」
「サバイバル……一体何をするんだろう?」


 部長達もこれから何が始まるのか予想がつかないみたいです、もうすぐ一分が立ちますけど先輩は何を……ッ!?


「部長、回避してください!!」
「えっ?」


 私が叫んだ瞬間、何かが茂みから出てきてあっという間に私達を引き飛ばしました。


「がはっ!?」
「きゃあっ!?」
「い、一体何が……?」


 うう、痛いです……私たちが顔を上げるとそこにはイッセー先輩が立っていました。


「いたた……ちょっとイッセー!いきなり何をするのよ!」
「修行するっていったでしょう?」
「いきなり現れて私達をぶっ飛ばすのが修行なのかしら!」
「申し訳ないですが修業を引き受けた以上この10日間は俺もマジでいきます。10日という短い時間の中で強くなるならそれこそ死ぬつもりでやらなきゃ強くはなれませんよ」
「でもこんな……」
「お喋りはここまでです、行きます!」


 イッセー先輩は部長との話を中断してこちらに向かってきた。


「やるしかないようね。祐斗、小猫、貴方たちで彼を抑えて!」
「「了解!」」


 私と祐斗先輩がイッセー先輩を迎撃しに向かう。


「行くよイッセー君!」


 祐斗先輩が魔剣を創り出してイッセー先輩に切りかかる、でも先輩は手刀で魔剣を打ち砕いた。


「なっ!?」


 祐斗先輩が驚いている内にイッセー先輩は裕斗先輩のお腹を殴り飛ばした。


「次!」


 そして今度は私の元に向かってくる。ぐっ、先輩が相手だなんて……でも私は強くなりたい!


「行きます、先輩!」
「来い、小猫ちゃん!」


 先輩のパンチをかわして正拳突きを放つ、でも先輩は既にそこにはいなくて私の攻撃は空振りした。


「ナイフ!」


 上空から先輩が手刀を放ってくる、それを紙一重でかわして先輩の腕を取り十字固めに決めた。


「やるな、だが……」


 えっ、嘘!?先輩は技をかけられながら私を持ち上げ……


「はああ!」


 私を思いっきり地面に叩き付けた。


「かはっ!?」
「次!」


 私と祐斗先輩を倒したイッセー先輩は次に部長の元に行こうとしたが……



 カッ!!


 その瞬間先輩が立っていた場所に巨大な落雷が落ちた、朱乃先輩の雷だ。


「うふふ、油断大敵ですわ」
「そっちもな」
「ッ!?」


 でもイッセー先輩はあの一瞬で朱乃先輩の背後に回り込んでいた、そして朱乃先輩が振り返る間もなく腰を掴み……


「せやあっ!!」


 ジャーマンスープレックスで朱乃先輩を叩きつけた。


「げほっ!」
「朱乃!」
「王である貴方が最後までボーッとしてたのは頂けませんね」
「えっ?」


 そして最後に部長を投げ飛ばして地面に叩き付けた。


「ふむ、アーシア」
「あ、はい」
「全員を回復してやってくれ」
「分かりました」


 イッセー先輩に手ひどくやられた私たちはアーシアさんに回復してもらった。悪魔まで治すなんてすごい神器です。


「悪魔まで癒すなんて……ねえアーシアさん。良かったら私の眷属にならないかしら?」
「ごめんなさい、私もイッセーさんと同じで人間でいたいですから」
「そう、残念……」


 こっそり部長がアーシアさんを勧誘していましたが断られてました。


「さて全員回復したな?それじゃ再開するぞ」
「ちょ、ちょっと待って!これいつまでやるつもり!?」
「そりゃ丸一日……といいたいですが流石に無茶をし過ぎても意味はないので日が暮れるまでやりましょう」
「じゃあ後5時間近くは……」
「はい、俺にぶっ飛ばされてもらいます」


 お、鬼です……鬼がいます!あ、違った、先輩はドラゴンでした。そして宣言通り私達は日没まで地面に叩き付けられて宙を舞いました。


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「はあ……はあ……」
「もうダメ……動けない……」


 ようやく日が暮れてきたころには私たちは満身創痍になってました。傷はアーシアさんが回復してくれても精神までは治りません。何回も地面に叩き付けられて正直心が折れそうです。


「初日はこんなものか、それじゃあ今から今日の皆の評価をしていくか」
「評価って何の評価かしら?」
「そりゃ全員の戦闘スタイルの評価と改善点ですよ」
「え、今日一日で分かったの!?」
「まあある程度は」
「なんて洞察力なの……」


 先輩の言葉に若干呆れたような声を出す部長、部長、多分そんなことは氷山の一角にすぎません。


「まずは木場だ、最初は翻弄されていたが直に俺の動きに対応できた、それに技のバリエーションが増えたな。まさか剣を飛び道具にしてくるとは思わなかったぞ」
「あの時は無我夢中で……騎士として恥ずかしいよ」
「そんなことはない。戦いで大事なのはプライドやこだわりよりも勝ちに向かう精神だ。騎士道精神のお前にこんなこと言うのはあれだが勝つためには自分が出来る事、使える事は全部使った方がいい、たとえそれが卑怯なことに感じてもだ」
「そうだね、騎士道も大事だけどそれ以上に部長の方が大事だ。勝てるためなら何でもしていくよ」
「それがいい、後お前は速さを武器にしてるが少し単調になってるぞ」
「単調?」
「ああ、お前は速いが動きは単純だ。真っ直ぐにしか動いてないからな。特にお前と同じスピードを武器にしている奴には読まれやすい。野球で例えるなら速いストレートも最初は打てないが何回も見ている内に目がなれてくるだろう?そんな感じだ」
「なるほど、ただ速いだけじゃダメなんだね」
「そうだな、ちょっと見ていろ」


 イッセー先輩は少し離れた場所に向かう、そして同じところを祐斗先輩並みの速さで走り回る、だが次の瞬間先輩の姿が消えた。


「イッセー君が消えた!?」
「一体どこに……」
「こっちだ」


 声をかけられた方に振り替えると先輩が立っていた。


「いつの間にそんなところに……」
「木場、俺がどうやってここに来たか分かるか?」
「うーん、もしかして速く動いていた所でワザと速度を落としたの?」
「正解だ」


 え、どういう事でしょうか?


「要するに速さに目がなれてきた時にイッセー君がいきなり速度を落としたから一瞬目が錯覚したんだ、イッセー君が消えたように見えたのはそのためだね」
「そういう事だ、さっきの例えで言うならストレートになれてきた所にフォークが来て空振り三振、みたいなもんだな」
「ありがとう、色々参考になったよ」
「ああ、お前なら直に強くなれるさ、自分だけの『速さ』を掴んで強くなれ」
「うん!」


 イッセー先輩と祐斗先輩が握手を交わした。男の友情ですね。


「次に小猫ちゃんだ。小猫ちゃんは最初から俺の奇襲に気が付けた。まあ体はついていかなかったがその後は徐々に体もついていくようになったな。正直ナイフをかわされたのは驚いたぜ」
「ありがとうございます」
「ただ小猫ちゃんは大ぶりの攻撃が多いな、要するに体の動きに無駄がある。それを無くしていけば体の小さい小猫ちゃんでも今よりも強い攻撃ができるぞ」
「小さいは余計です。具体的にいうと?」
「そうだな、これも見てもらった方がいいか」


 先輩は近くにあった木の近くにいくと大ぶりで拳を振るった。


 パァン!!


 先輩の拳が木に当たり大きく抉った。


「見ててどうだった?」
「確かにちょっと隙が大きいですね、当たればいいですけどかわされたら不味いかもしれません」
「それじゃ次だ」


 先輩は隣にある木の前に立ち構えをとる。


「すうぅぅぅ……はあっ!!」


 息を吸い込み拳を握りそして打ち込んだ。


 パァァァァァァンツ!!!


 木は先程よりも大きく抉れて倒れて行った。


「凄い……」
「無駄のない攻撃ができるようになれば小猫ちゃんはもっと強くなれるはずだ、後で徹底的に教えてやるからな」
「はい、お願いします!」


 やった!イッセー先輩と個人レッスンです!


「じゃあ次は朱乃先輩ですね」
「宜しくお願いしますね、後無理に先輩ってつけなくてもいいですよ」
「なら朱乃さんで。朱乃さんはウィザードタイプのようですね。魔法の威力は大したものです。でもさっきいった二人以上に隙も大きいです、正直一対一で戦うと厳しいですね」
「あらあら、ならどうすればいいかしら?」
「正直魔法に関しては俺は素人なのでとやかくは言えません。一応助っ人で魔法に詳しい人物を呼んでますから3日後には来ると思いますのでそれまでは回避や防御の仕方に専念しましょう」
「助っ人?ここに呼んで大丈夫なの?」
「信頼できる人物なので危険はないです」
「貴方がそういうならいいけど……」


 助っ人……一体誰でしょうか?


「最後にリアス先輩……」
「私も先輩はつけなくてもいいわよ」
「ならリアスさんで。リアスさんは……率直に言って一番ひどいですね」
「ッ!!」


 部長は先輩の言葉に思わず悔しそうに俯いてしまいました。


「身体的能力は高くても回避もとれないし防御も出来ていない。攻撃も単調で滅びの魔力を真っ直ぐに飛ばす事しか出来ない。当たれば破滅的な威力だと思いますがあれじゃ当たる方が凄いほどです」
「で、でも私は(キング)だから戦いは……」
「指示だって『行け!』くらいしか言ってなかったじゃないですか。そんなのは指示とは言いません」
「ぐっ……」
「はっきり言えば貴方は、いや貴方たちは今まで格下の相手しか戦ってこなかったんだと思います」
「それは……」


 先輩の言葉に部長は、いや私たちは何も言えなかった。思い当たる事が多すぎるからだ。


「……私は今まで強者のつもりだったのかもしれないわね。上級悪魔だから強くて当然、今まで相手してきたはぐれ悪魔も私たちが強いから勝ててきたと思ってた。でも違ったんだわ。弱い相手ばかりを倒して天狗になっていたんだわ」
「部長……」


 部長の気持ち、私も分かります。もし先輩に会ってなかったら弱い敵ばかりに勝っている自分が強いと勘違いしていたに違いありません。ライザーとの対決も何も危機感も感じないで勝てると調子に乗ってそして惨めに負ける……そんなビジョンが頭に浮かびました。


「なら今から強くなればいいじゃないですか」
「えっ?」
「弱いって分かったなら強くなればいいだけです。俺も少なくとも最初からこの力を扱えていた訳じゃありません、最初に神器を手に入れた時に少し調子に乗っていた時がありました、この力があれば自分の望む事を叶えることが出来るって……その結果多くの人に迷惑をかけました。その時初めて気づいたんです、自分は弱い人間だったと。自分を変えたいと思ったから、弱い自分に負けたくないからがむしゃらに突き進んで色んなことを経験してきました。今は自分も少しは成長できたと思っています」
「イッセー……そうね、最初から強者になれる訳がないのよね。私も今よりも強くなりたい、自分の為にも眷属である皆の為にも……イッセー、改めてお願いするわ。私たちを強くして。その為ならどんなことにも耐えて見せるわ!」
「分かりました、明日からもっと厳しくいきますね」
「ええ、お願いね」


 良かった、部長も元気を取り戻してくれました。でも私はイッセー先輩の過去をちょっと知ることが出来たのが嬉しかったです。先輩も最初っから赤龍帝の籠手を扱えていた訳じゃなかったんですね、きっと相当な苦労を重ねて今の先輩があるんだと思います。


「よし、今日はここまでにしておくか。早くしないと夕食に間に合わなくなるからな」
「あら、なら私たちも協力させてもらいますね」
「先輩私も手伝います」
「なら皆で作るか、その方が楽しいしな」
「はい、頑張ります」


 こうして一日目が終わっていきました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



 私たちの修行が開始されて三日が立ちました。相変わらず私たちは先輩に吹き飛ばされています。でもやられっぱなしじゃありません。私たちはイッセー先輩の奇襲にある程度反応できるようになりました、というか反応しないと死ぬほど痛い目に合うので反応せざるを得ないんです。これが殺気を体で感じることなのでしょうか?
 その中でも部長は特に頑張っています。何回もイッセー先輩に吹き飛ばされて叩き付けられても諦めずに向かっていきます。今も先輩の攻撃をギリギリかわして反撃しました。でもかわされてまた吹き飛ばされました。私も負けていられません。



「あら、何か魔力を感じたわ?」


 部長が何かを感じたらしく動きを止めました。私も感覚を集中させると確かに何か魔力を感じます。でもこの魔力は誰でしょうか?


 シュウウウウウッ!!


 すると近くの地面に魔法陣が現れました。私たちは何者かと警戒しましたがイッセー先輩だけその魔法陣を見て「来たか……」と言ってました。


「お久しぶりです!師匠!」


 魔法陣から現れたのは金髪のとんがった帽子を被った女の子でした。見た目はまるで魔女のようにも見えます。というか師匠?イッセー先輩が?


「ルフェイ、来てくれたか。忙しい所に無茶言って悪かったな」
「そんな、師匠の頼みなら断れませんよ。だから気にしないでください」


 むっ、何だか先輩とただならない雰囲気です、面白くありません。


「イッセー、その娘は一体誰なのかしら?」
「あ、自己紹介が遅れました。私はルフェイ・ペンドラゴンと申します」
「ペ、ペンドラゴン!?アーサー王で有名なあの!?」
「はい、私はその末裔です」


 と、とんでもない人が来てしまいました。というか先輩はなんでそんな人と知り合いなんですか?


「ルフェイは『黄金の夜明け』に所属していたとても優秀な魔法使いです。リアスさんや朱乃さんのアドバイザーとして呼びました」
「黄金の夜明けって……ねえ朱乃、私驚きすぎて感覚がマヒしてきたわ」
「奇遇ねリアス、私もよ」


 ただでさえ伝説上の人物の末裔というだけでも驚きなのに黄金の夜明けに所属していたという怒涛の展開に部長と朱乃先輩はついていけない様子です。ん、所属していた?


「今は違うんですか?」
「はい、実は私ある目的の為に黙って家を出ちゃいまして……しばらくは一人で旅をしていたんですがある日上級悪魔に目を付けられて眷属になるよう言ってきたんです。それを断ったら実力行使に出てきたんです」
「無理やり眷属にするのは禁止されてるはずなのに……同じ上級悪魔として耳が痛いわ」


 部長が呆れたような表情を浮かべました。同じ上級悪魔として思うことがあるんだと思います。


「私はその時空腹や疲労で疲れていて逃げる事が出来ませんでした、そんな時に師匠が現れて私を助けてくれたんです」
「でもどうしてイッセー君を師匠って呼んでいるんだい?」
「それは師匠が小さいころに憧れていたヒーローにそっくりだったんです。私は思いました、この人みたいになりたいって。それで弟子入りしたんです」
「そうだったんですか……私もイッセーさんと運命的な出会いをしたから分かります」
「最初は魔法なんて使えないから無理だって断ったんだが熱意に負けてな。今では時々特訓してやってるんだ」


 そんな出会いがあったんですね、でも安心しました。先輩の事は師として慕ってるんですね……ってなんで私は安心したんでしょうか?


「それで頼んでいた物は持ってきてくれたか?」
「はい、ちゃんと用意してきました」
「そうか、じゃあさっそくで悪いんだがルフェイはリアスさん達のアドバイスをしてくれないか。俺は魔法に関しては素人だからな」
「任せてください!」
「頼むな」


 そして私たちはルフェイさんが部長と朱乃さん、私と祐斗先輩がイッセー先輩の班に分かれました。



「それでイッセー君、僕たちはこれから何をするの?」
「二人にはこれを付けてもらう」


 イッセー先輩は懐から何か指輪のようなものを取り出しました。


「先輩、これは何ですか?」
「説明はつけてからするよ」


 そう言われたので私たちは指輪を付けました、すると……


「ッ!?か、体が重い……!?」


 突然私たちの体に強い負荷がかかり立っていられなくなってしまいました。


「先輩、これは一体……」
「今つけてもらったのはルフェイに作ってもらった重力を3倍にする魔法が込められた指輪だ。つけている限り二人の感じる重力は3倍になる」
「なるほど……これはキツイね」
「二人にはそれを付けたまま特訓してもらうぞ。因みに慣れてきたら5倍、10倍の物もあるから頑張れよ」
「か、簡単に言わないでください!」


 でも部長だって頑張っているんです、私も負けていられません!


「やってやります!」
「うん、僕だって意地を見せてやる!」


 私たちは立ち上がりそれぞれ戦闘の構えに入りました。


「いい根性だ、行くぞ!!」
「「はい!!」」

 そして私たちと先輩はぶつかり合いました。部長、朱乃さん。お二人も頑張ってください。



ーーーーーーーーー

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ーーー


side:リアス


 私と朱乃はルフェイに連れられて屋敷の前にいた。これから何をするのかしら?


「取り合えず最初にお二人で模擬戦をしてもらいます」
「私たちが?」
「はい、お二人がどのようなウィザードタイプか実際に戦っている所を見させて頂きたいんです」


 なるほど、私たちの特徴を知らなければアドバイスのしようがないから実戦で見るという事ね。


「そういう事なら構わないわ。朱乃、準備はいい?」
「いつでもいけますわ」


 私と朱乃はそれぞれの手に滅びの魔力と雷を纏わせる。


「それじゃ始めてください」
「行くわよ!」


 私は滅びの魔力を朱乃目がけて真っ直ぐに放った。朱乃はそれを横に飛んでかわしてすかさず雷を放つ。私は雷を滅びの魔力で相殺して再び朱乃目がけて滅びの魔力を放った。
 

「ふんふん、なるほど……」


 しばらくそれが続き一瞬のスキをついて朱乃の体制を崩した。


「キャッ!?」
「チェックメイトね」


 そして朱乃の顔の前に滅びの魔力を纏った手を翳す。実戦ならこのまま滅びの魔力を放ち決着がついただろう。


「ふう、負けてしまいましたわ」
「ギリギリ勝てたわね」
「お二人とも、お疲れ様です」


 私たちの傍にルフェイが駆け寄ってくる。


「ルフェイ、見ていてどう思ったかしら?」
「そうですね。まず朱乃さんですが雷の魔法の威力は凄いです。まともに喰らえば相当なダメージになります。でも溜める時間が多いので隙も大きいですね。でも防御用の結界や回避するときの移動魔法はとても早く発動できていました」
「イッセー君に鍛えてもらってますから」
「流石は師匠です。朱乃さんは魔法の基本は出来てますから新しい魔法を覚えた方がいいと思います、私が実戦で使える北欧の術式を教えますね」
「黄金の夜明けに所属していた方に教われるなんて楽しみですわ」
「次にリアスさんですが……」


 次に私の評価が来た。


「滅びの魔力は初めて見ましたけど凄いですね、あれはヘタな防御結界すら容易に貫通してしまうほどです。でもコントロールは出来てないようですね」
「そうね、何とかコントロール出来るようには意識してるんだけどうまくいかなくて……」
「見ていて思ったんですがリアスさんはどちらかと言えばパワー寄りのウィザードタイプだと思います、だから下手にコントロールしようとしないで寧ろ思いっきり放ってみてはどうでしょうか」
「思いっきり放つ……」


 ルフェイにそういわれた私は思い当たる事があった。私のお兄様は滅びの魔力を自在に操るテクニックタイプだったから私もそれを目指していた。でも自分には自分のスタイルがあるんじゃないかと思った。


「……よし」


 私は二人から離れると遠くにあった山に手を翳す。今まではヘタにコントロールしようとしてうまくいかなかった、ならコントロールするなんて思わないで思いっきり滅びの魔力を放ってみた。


 ズガガガガガァァァァァァァンッ!!!


 私の放った滅びの魔力は相変わらず真っ直ぐにしか飛ばなかったが速度は上がり大きなものになっていた。滅びの魔力は次々と木々を消し去っていき山に当たった。すると山の真ん中を消し去っていきしまいには大きな風穴を開けてしまった。


「す、凄い威力……ですわ……」
「凄いです、リアスさん!!」
「こ、これを私が……?」
「はい!やっぱりリアスさんはパワータイプだったんですよ、あんな凄まじい魔力は久しぶりに見ました!」
「あれが私の滅びの魔力……」


 出来たんだ……私の、私だけのスタイルが……


「じゃあこの調子でドンドン使っていきましょう、魔法も使わなくちゃ上達しませんからね」
「わかったわ。……ありがとうルフェイ、貴方のお蔭で私は強くなれたわ」
「私はアドバイスしただけです。それにまだまだ強くなってもらいますからこれぐらいで満足しちゃ駄目ですよ」
「勿論よ!私はもっと強くなって見せるわ!」
「うふふ、私もリアスには負けていられないわね」


 ようやく私は一歩前に進むことが出来た。でもこの程度で満足してはいけない、自分の我儘に文句も言わずついてきてくれる眷属の皆の為にも私はもっと強くなって見せるわ!!



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ーーーーーー

ーーー



side:イッセー


 リアスさん達との修行を開始して10日が過ぎた。グレモリー眷属の皆は才能が高く教えた事を直に覚えていた。特にリアスさんの頑張りは凄くて最初は回避もままならなかったのに今はある程度俺の攻撃や動きに反応できるようになってきた。またルフェイのアドバイスで滅びの魔力を前よりも上手く扱えるようになったらしい。威力も上がっていたしあれをまともに喰らえば格上の敵にも通じると思うほどだ。


 祐斗も(彼にも下の名前でいいと言われたからそう呼んでいる)速さに複雑な動きや虚像が混ぜられて簡単には捕らえられなくなってきたし魔剣も0・2秒早く出せるようになってきた。
 

 朱乃さんは前よりも殺気を捕らえられるようになり回避や防御の質が向上し簡単にはやられなくなったし彼女もルフェイのアドバイスで魔力の効率的なコントロールを会得し更に北欧の魔法も覚えて戦術の幅が広がった。


 アーシアも特訓して回復の力が上昇、さらに簡単な魔法や結界を教わりある程度の護身は出来るようになった。


 最後に小猫ちゃんだが彼女も動きに無駄が少なくなってきて打撃の威力が上がり技のバリエーションが増えた。


「本当にルフェイには感謝してるぜ」
「えへへ、師匠のお役に立てたなら光栄です」


 俺は今ルフェイと共に屋敷の屋根の上で話し合っている。


「それでリアスさん達の様子はどうだ?」
「はい、お二人とも覚えがいいから教えていて楽しいです」
「そうか、祐斗と小猫ちゃんも最終的に10倍も耐えていたからな、根性あるぜ、本当に……」
「うふふ」
「ん?どうした?」
「いえ、師匠ってあまり親しい人間関係を見た事がなかったからなんか新鮮で……」
「別に俺はボッチじゃねえよ……ねえよな?」
『知らんな』
「おいおい……」
「あはは、ドライグも相変わらずですね」


 ドライグの冷たい回答にルフェイが笑う。ルフェイは俺が赤龍帝だという事、そしてグルメ界の事も知ってる数少ない人物だ、実際にルフェイも行ったことがあるしな。


「それでどうだ?お兄さんは見つかったか?」
「いえ、それがまだ……色々探ってはいるんですが進展はあまり……」
「そうか……」


 ルフェイが家を出た理由、それはいなくなった兄を探すためらしい。


「俺も調べているはいるんだが……すまない、いい情報が見つからなくてな」
「そんな、師匠にそこまでしてもらって文句なんて言えませんよ。大丈夫、私は諦めませんから」
「強い子だな」
「えへへ……っていけない!もうこんな時間!」

 
 ルフェイはもっていた懐中時計を見ると驚くように立ち上がった。


「どうしたんだ?」
「実はこの後にリアスさん達とパジャマパーティーをしようって誘われていまして……」


 パジャマパーティーって……明日本番だろうに……まあこの10日間は皆頑張ってたし野暮なことをいうのは辞めておこう。


「楽しんで来いよ、お前は友達少ないからこれを機に親しくなっとけ」
「もう、意地悪言わないでください!さっきの仕返しですか!じゃあ行ってきます!」
「おう、じゃあな」


 ルフェイが屋根から降りて俺は一人になる。こうやって一人でいる時間は久しぶりだな。


「思えばいつからだったかな、誰かが隣にいるってのは……」


 美食屋だって一人でやっていた。ドライグもいてくれたが寂しくないと言えば噓だった。俺の育ての親は忙しいし兄さん達も気軽に会えるわけじゃないからな……


「小猫ちゃんと会ってからか……」


 小猫ちゃんと会ってから俺は一人じゃなくなった。アーシアとも出会い松田や元浜、それに桐生とも仲良くなれた。そして祐斗達とも友人になれた。一人でいることには慣れていたが……やっぱり誰かといるのは楽しいもんだ。


「……先輩?」


 不意に声をかけられて振り返るとそこにいたのは……


「小猫ちゃん?」


 俺の後輩、塔城小猫だった。




side:小猫



『この化け物が!ここから出ていけ!』
『よそ者が好き勝手に歩くな!!』
『悪しき妖怪め、退治してやる!』


 どうして皆私を傷つけるの?どうして皆私を否定するの?私が何をしたの?


『ごめんね、本当にごめんね……』


 どうしてあなたは泣いてるの?どうして行っちゃうの?傍にいてよ、それだけで私は幸せなのに……


『必ず会いに行くから……だからそれまで貴方は笑って待っていて……約束よ……』


 行かないで……行かないでください……


「姉さまッ!?」


 ガバッ


「はあ……はあ……夢?」


 どうしてあの夢を……最近は見なかったのに……どうして……


 コンコンッ


 私の部屋の扉にノックする音が聞こえたのでベットから降りて扉を開く。ノックしていたのは部長だった。


「良かった、小猫も起きていてくれたのね」
「部長、何かご用ですか?」
「実はこれから親睦を深める為に女子だけでパジャマパーティーすることになったわ。アーシアやルフェイと知り合えたんだしちょっとは交流して仲を深めようと思ったの、それに本番前の息抜きも兼ねてね。小猫、貴方も来ない?」
「……ごめんなさい部長、折角のお誘いですがちょっと体調が悪くて……」
「あら、大丈夫なの?」
「はい、明日のレーティングゲームには参加できます」
「そう……無茶はしないでね?」
「はい、ありがとうございます」


 部長は私を心配しつつ部屋を後にした。どうして断っちゃったんだろう、あの夢のせいかな……


「眠れないしちょっと散歩しようかな……」


 私は寝巻のまま外に向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「綺麗なお月様……」


 外に出ると辺りはもう闇夜だった。もう深夜だしお月様に優しい光が心地よい。悪魔は夜に力が出るが私は悪魔になる前からお月様が大好きです。


「……姉さま」


 ……駄目だ、あんな夢をみちゃったから姉さまの事しか考えられない。私には年の離れた姉がいました。幼いころに両親が死んでずっと私の親代わりをしてくれた姉さま、色々酷い事を言われたり苦しい思いをしてきましたがいつも姉さまが守ってくれました。姉さまが傍にいてくれるだけで私は幸せでした。 
 
 でもそんな幸せな日々に終わりが来てしまいました。ある日一人の上級悪魔が私たちに接触してきました。その悪魔は姉さまの美しい容姿と力に目を付けて眷属になるように言ってきました、姉さまは断りましたがその悪魔は私を人質にして無理やり姉さまにいう事を聞かせようとしました。
 姉さまはその悪魔に傷を負わせて私を助けてくれました、でも姉さまが上級悪魔に危害を加えた事によって姉さまは悪魔から命を狙われるようになりました。


 それからはずっと逃亡生活を続けていましたが日に日に追い詰められていきもう後がなくなってきました。そんな時姉さまは噂でグレモリー家の事を知りました、悪魔のなかでも情に厚い変わり者だと……姉さまと私は最後の賭けとしてグレモリー家に向かいました。そして部長のお父様に事情を話して私はグレモリー家に預けられることになりました。でも姉さまは顔が割れてしまっているので流石のグレモリー家でもかばいきれなかったそうです。


 姉さまは迷惑はかけられないと出て行ってしまいました。私もついていきたかった、でも姉さまは必ず会いに戻るからここにいてと約束して言ってしまいました。そして私は部長……いえリアスさんの眷属になり平穏を得ました。姉さまを眷属にしようとした悪魔、またはその関係者に素性がバレてしまう可能性もあったので私は本当の名を捨ててリアスさんに『塔城小猫』という新しい名を貰いました。
 今はリアスさんや皆がいてくれるから私は幸せになれました、でも……


「やっぱり会いたいです……姉さま……」


 姉さまとはあれから一度も会っていない。死んだなんて思いたくない、でも本当は不安で仕方ない。大丈夫と考えても不安は消えない、寧ろ強くなってしまう。


「姉さま……」


 ぼんやりと空を見上げていると屋敷の屋根からルフェイさんが降りてきて急いだ様子で屋敷の中に入っていきました。何をしてたんだろうと思って屋敷の屋根の上を見るとそこには人影がありました。
 私はそれが誰か気になったので近くに行きました、そこにいたのはイッセー先輩でした。


「……先輩?」
「小猫ちゃん?」


 私が話しかけると先輩が振り返りました。


「先輩、ここで何をしていたんですか?」
「ああ、ルフェイと雑談していたんだ。一応弟子だからか近状報告くらいは聞いておかないとな」
「何だか年頃の娘を持つお父さんみたいです」
「俺はまだ17歳だぞ?」
「ふふっ、分かってますよ」

 
 先輩と話しているとさっきまでの暗い気持ちが和らいでいった。


「……何かあったのか?」
「えっ?」
「いやさ、何か小猫ちゃん元気がないように見えてさ。気になったっていうか……」
「……いいえ、私は大丈夫です。心配してくださりありがとうございます」
「そうか?何かあったら直に言えよ、力になるからさ」
「はい」


 先輩は私が元気がないって直に分かってくれた、それがとても嬉しかった。私は先輩の隣に座り少し寄り添う。この温かいぬくもりが寂しさを和らげてくれる。


「……先輩」
「ん?なんだ?」
「先輩は……私が人間じゃなかったらこうやって助けてくれませんでしたか?私と今の関係を作ることもなかったですか?」
「それは小猫ちゃんが悪魔だからか?」
「いえ、元々人間ですらなかったらの話です……」


 私はまだ先輩に話していないことがある、自分の本当の正体を……怖かったんです。先輩は悪魔の私は普通に受け入れてくれた、でもそれは先輩が私が元々人間だったからと思っているからなんじゃないかと思ってしまいます。
 私は最初から人間ですらありません、どこに行こうとずっと忌み嫌われてきた存在……もし先輩がそれを知ったら今度こそ先輩との関係が壊れてしまうんじゃないかって思ってしまうんです。


「人間じゃなかったらか……んー、そうだな……」
「……」
「……今と変わらない関係を作っていたと思うな」
「えっ?」
「だって俺にとって重要なのは『塔城小猫』という一人の少女と出会えたことが一番嬉しいんだ。小猫ちゃんが元々人間じゃなくってもそれは変わらない。それに……」


 先輩は私の頭を優しく撫でながら笑顔でこう言ってくれました。


「そんな些細な事で崩れちまうような脆い仲か?俺たちは?」
「先……輩……」


 嬉しかった、嬉しくて涙が止まらなかった。姉さまや事情を知るリアスさん達は私を愛してくれた、でも自分が人間じゃないから、ずっと否定されてきたからそれ以外の人には好きになってもらえると思わなかった。
 でもこの人は最初から私を受け入れてくれた。私の我儘も嫌とも言わず聞いてくれた。いつだって私の為に動いてくれた……私はバカだ。こんな温かい人を疑っちゃうなんて……


 それから先輩は泣き続ける私をずっと優しく抱いてくれました……



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「……恥ずかしいです」


 しばらく泣き続けてようやく落ち着いてきましたが今度は恥ずかしさが込みあがってきて先輩の胸に顔を隠しています。ううっ、恥ずかしいです。


「先輩、いきなり泣き出してごめんなさい」
「別にいいさ。アーシアの時もこうやって慰めたしな」
「……今はアーシアさんの話はしないでください」
「え、どうしてだ?」
「どうしてもです。デリカシーがないです」
「ご、ごめん……」


 先輩は申し訳なさそうにそう言って私の頭を撫でてくれます。ああ、そっか、この感触を何処かで感じたと思ったら姉さまに似ているんだ……この温かい感触が本当に似ている……心が安心して安らいでいく……


(そっか……私、この人の事がどうしようもなく好きなんだ……)


 今まで目を逸らしてきた自分の気持ち……嫌われるのが怖くて違うって言い続けてきたけどもうダメです。こんな温かくて優しい人を好きになってはいけないなんていうほうが無理です。


「……先輩、私先輩に伝えたいことがあります。でも今は言いません。ライザーとのレーティングゲームに勝ったら先輩に伝えます」
「そうか、なら楽しみにしておくよ」
「はい!」


 私はもう迷いません。姉さまを探すことだって諦めません。イッセー先輩への想いを知った今必ず先輩の心を射止めて見せます。本気を出した私はもう止まりませんよ?だって貴方が教えてくれたんです、『思い立ったら吉日、その日以降は全て凶日』だって……



 大好きです、イッセー先輩!!



 
 

 
後書き
小猫です。いよいよライザーとのレーティングゲームが始まります。不安はいっぱいあるけど成長した皆とならきっと勝てます!!次回第12話『いよいよ決戦!私、覚悟を決めます!!』でお会いしましょう、にゃん♪ 

 

第12話 いよいよ決戦!私、覚悟を決めます!!

 
side:小猫


深夜11時40分頃……私と部員たちは旧校舎の部室に集まっていた。それぞれが来る時間までリラックスできるように本を読んだり紅茶を飲んだりして過ごしていた。


「小猫ちゃん、手が震えてるけど大丈夫かい?」
「祐斗先輩……」


 私が本を読んでると祐斗先輩が話しかけてきた。手が震えていると言われて右手を見ると微かに震えていた。


「……通りで本が読みにくいと思いました」
「無理もないよ。僕だって緊張でおかしくなりそうだもの」


 祐斗先輩も微かに膝を震わしながら微笑む。部長や朱乃先輩も落ち着いてるように見えてとても緊張している。


(無理もないですよね、初めてのレーティングゲームで人生が決まりかけているんですから……)


 私だって例外じゃありません。このゲームに負けたらイッセー先輩と離れ離れになってしまう……そんなのは嫌です。でも修行したから絶対にライザーに勝てるとは思いません。向こうはレーティングゲーム経験者、加えて不死身の力を持つフェニックス……本当に勝てるのでしょうか?


 ガチャ


 そんなことを考えていると部室のドアが開いて誰かが入ってきました。グレイフィア様でしょうか?


「よっ、お邪魔するぜ」
「こんばんわ~」


 部室に入ってきたのは何とイッセー先輩とアーシアさんでした。


「イッセー先輩にアーシアさんまで……どうしてここに?」
「皆が緊張してないか心配でな、様子を見に来たんだ」
「大丈夫なの?グレイフィアに見つかったら……」
「直に出て行けば大丈夫だろ」


 部長の問いに先輩はそう答えた。態々危険を冒してまで激励に来てくれるなんてとっても嬉しいです。


「しかし見事に緊張してるな、皆大丈夫か?」
「あはは、情けないね……」


 祐斗先輩が力なく笑い部長達も力なく笑う。そうですよね、鍛えてもらったのにこんなんじゃ情けないです……


「情けなくていいじゃねえか、初めてすることに緊張しない奴なんていない」
「イッセーくん……」
「大事なのは失敗を恐れないことだ。何があっても最後まで決してあきらめるな、自分と仲間を信じろ」
「仲間を信じる……うん、分かったよ」
「諦めない……ふふっ、分かりましたわ」
「その言葉、胸に刻んでおくわ」


 先輩の言葉に祐斗先輩、朱乃さん、そして部長が力強く頷いた。見ればさっきまであった緊張が幾分がほぐれていた。先輩の言葉に勇気をもらったからですね。


「じゃあ俺たちはそろそろ行くな」
「皆さん、ご武運をお祈りします」


 そういってイッセー先輩はアーシアさんと部室を去ろうとする。あ、ちょっと待ってください。私は先輩の服の裾を掴む。


「小猫ちゃん?」
「先輩、ギュッってしてくれませんか?まだちょっと怖いんです……」
「ああ、分かったぜ」


 先輩は両腕を私の背中に回して優しく抱きしめてくれた。優しくて暖かくて心の底から勇気が湧いてきます。アーシアさんの涙目が気になりますが今は私が先輩を独り占めです。


「先輩、もう大丈夫です」
「そうか、小猫ちゃんも頑張れよ」
「はい!」


 先輩たちが部室から出ていく、そして十分後に魔法陣が光りだしグレイフィア様が現れました。


「皆さん準備はお済になられましたか?開始10分前です」


 私たちはそれを聞き全員が立ち上がった。準備が済んだことを理解したグレイフィア様はゲームに関する説明を始める。


「開始時間になられましたら、こちらの魔法陣から戦闘フィールドへ転送されます。戦闘フィールドは人間界と冥界の間に存在する次元の狭間に構成された戦闘用の世界。どんな派手な事をなされても構いません」


 戦闘用の世界ですか。悪魔の技術力の高さに驚きを隠せません。


「今回のレーティングゲームは両家の皆様も他の場所から中継でご覧になられます。更に魔王ルシファー様も今回の一戦を拝見なされますのでそれをお忘れのないように」
「お兄様が……分かったわ」


 部長の兄であるサーゼクス様は魔王様なので今回のレーティングゲームを見に来ても不思議じゃないですね。無様な姿は見せられません。
 説明が終わるとグレイフィア様は部室の中央に魔法陣を展開させる。


「そろそろ時間です。これより皆様を戦闘フィールドにご案内いたします。魔法陣にお入りください。尚一度転移すると終わるまでは戻れないのでご注意を」


 指示通り私たちは魔法陣に入る、すると魔法陣が光りだしていく。いよいよ決戦の舞台に向かうんですね、どんな場所で戦うことになるんでしょうか?光が更に強くなり私は目を閉じました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



 ……転移が終わったんでしょうか?私は恐る恐る目を開けました。そこに映ったのは……


「部室?」


 さっきまで私たちがいた旧校舎の部室でした。これは一体……


『皆様。このたびグレモリー家、フェニックス家のレーティングゲームの審判役を担うことになりました、グレモリー家の使用人グレイフィアです』


 これは校内放送でしょうか?グレイフィア様の声が聞こえます。


『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、宜しくお願い致します。さっそくですが今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様が通う駒王学園のレプリカをご用意いたしました』


 この世界がレプリカなんですか?窓から外を見ると空は真っ白だった。


『両陣営、転移された先が本陣でございます。リアス様の本陣が旧校舎のオカルト研究部の部室、ライザー様の本陣は新校舎の生徒会室。「兵士」の方はプロモーションをする際は相手の本陣までお越しください』


 プロモーションというのは兵士の駒の特性で相手陣地の最深部まで駒を進めると「王」以外の駒になれる特性だ。相手の兵士が八人だから下手をすれば八人全員が「女王」になってしまう可能性もある。加えてこっちには兵士がいない、かなり苦しいですね……


『開始のお時間となりました。今回のゲームの制限時間は人間界の夜明けまでとなります。それでは、ゲームスタートです』


 キーンコーンカーンコーン


 学園のチャイムが鳴りレーティングゲームが開始される。私たちはまず地図を広げてどう動くか考えていく。相手の本陣と自分たちの本陣に丸を付けていく。


「私たちがまずしなければいけないのは相手の兵士を如何に無力化していくかって事ね。数で負けているのに全員が女王にプロモーションされたらこちらが苦しいわ」
「そうですわね、こちらは4人、対して向こうは15人。長期戦になればなるほど此方が不利ですわ」


 部長と朱乃先輩の言う通り長期戦は不味い、やるなら短期決戦しかない。


「なら部長、まずは体育館を確保した方が良くないですか?」
「そうね、ここをライザーに取られるのは避けたいわね」


 体育館はこちらの本陣近くにあるのでここを取られてしまうとかなり厳しくなってしまう。


「でもこちらは唯でさえ数が少ない、体育館を確保できてもそのまま守るのは難しいわ。だからいっその事破壊してしまうのはどうかしら?」


 なるほど、相手に取られても駄目でこっちが取っても守れないなら壊してしまえばいいって事ですね。


「なら部長、体育館には私が行きます。機動性の無い私は室内の方が有利ですから」
「あなた一人で?流石にそれは……」
「大丈夫です。この力を使いますから」


 私は頭とお尻から猫耳と尻尾を出す。


「小猫、貴方……」
「私はもう迷いません、猫魈の力を使います」


 そう、私の正体は猫又、それも極稀な種族である『猫魈』……私たちは仙術と呼ばれる気を操る術を使うことが出来ます。姉さまも仙術を使うことが出来その為に悪魔に狙われる事になりました。姉さまと離れる原因になったこの力を私はずっと疎んでいました。
 でも私はイッセー先輩と出会って成長できました。力に対していつまでも怯えて目を逸らしても何も変わらない。だから私はこの力と向き合いました。


「……強くなったわね、小猫」
「はい、大好きな人のお蔭で強くなれました」


 このゲームが終わったら先輩にこのことを伝えます、そしてそのままの勢いで先輩に告白してそのまま先輩の家までいって……


「えへ、えへへ♪」
「こ、小猫……?」


 はっ!?いけません、意識がトリップしていました。今はゲームに集中しないと……


「まあいいわ、それじゃあ貴方たち。ライザーに思い知らせてやりなさい、誰に喧嘩を売ったのかをね」
「「「はい!!」」」


 レーティングゲーム、スタートです!!

 
 
 

 
後書き
 こんにちは小猫です。いよいよレーティングゲームが始まりました。覚悟も決まり私は体育館に向かいます。ライザーの眷属なんかには絶対に負けません!次回13話『レーティングゲーム開始!!決めろ一発逆転!!前編』でお会いしましょう、にゃん。 

 

第13話 レーティングゲーム開始!!決めろ一発逆転!!前編

side:小猫


 リアス部長達と別れた後私は体育館の近くに来ています。しかし凄い再現度ですね、いつも使っている体育館その物です。もし事前に作られた物だと説明をされてなかったら全く分からない程です。  
 まあ鑑賞に浸るのはここまでにしておきましょう。私は目を閉じて仙術を使う。


「…気配が四つ…兵士でしょうか?」


 体育館の中から四つの気配を感じました。どうやら敵は既に中で待ち構えているようなので私も体育館の裏口から中に入り壇上に向かうと体育館のコートには四人の女性が立っていました。


「待っていたわよ、グレモリー眷属!」


 チャイナドレスの女の子に双子、そして棍を持った女の子…ここに来る前に相手の顔写真でどの駒を持っているのか聞いていたので相手がどの駒か判断する。


(戦車が一人と兵士が三人…ですか)


 四対一はかなり厳しいですが自分で戦ると言ったので必ず勝ちます。


「あら、貴方ライザー様に求愛された子じゃない?一人で来るなんてとんでもないおバカさんなのね」
「あんな下品な男性に好かれても嬉しくありません、貴方たちは男の趣味が悪いんですね」
「何ですって!」

 
 私はワザと相手を挑発した。棍を持った女の子が怒りを露わにして持っていた棍を体育館の床に叩き付ける、他の三人も怒っているみたいですね。これで相手は冷静な判断が出来なくなったはずです。


「もういいわ、少しは手加減してあげようかと思ったけど…イル!ネル!貴方たちのチェーンソーでバラバラにしてあげなさい!」
「は~い」
「解体しまーす♪」


 双子の女の子たちが小型のチェーンソーをうならせながら此方に向かってくる。女の子が使う武器とは思えないんですが……まあいいです。チェーンソーなんてイッセー先輩のパンチに比べたら怖くもありません。
 

「そーれ!」


 火花を散らしながら振り上げられたチェーンソーを右にステップしてかわす、けど背後にはもう片方の女の子が回り込んでいた。


「きゃはは!後ろががら空きだよ!」


 そのまま私を真っ二つにしようとチェーンソーを横なぎに振るってくるが私はバク宙をしてかわす。


「戦車の癖に何て機敏な動きなの!?」


 ライザー眷属の女の子たちが驚いてるがその隙を見逃しません。棒立ちしている女の子のお腹に抉りこむ様に拳を叩きつけます。


「ゲボォッ!?」
「ネル!?」


 そのままもう一人の方目掛けて殴り飛ばしました。双子は体育館の壁に叩き付けられてぐったりと倒れて行きました。もうこれは動けませんね。


「イルとネルがいとも簡単に敗れるなんて……」
「雪蘭、このままではライザー様に合わす顔が無いわ。二人係で一気に仕留めるわよ!」
「分かったわ、ミラ!」


 さっきまで余裕そうな笑みを浮かべていた棍を持った女の子は私がここまでやるとは思わなかったのか驚愕した表情を浮かべる、そして隣にいたチャイナドレスを着た女の子と同時に向かってきた。


「はぁぁッ!!」


 二人の攻撃は激しく左右上下から棍や打撃を放ってくるが私は一つ一つの攻撃を冷静に見極めてかわしたりガードしていく。


「どうして当たらないの!?」
「ぐっ、ガードが崩せない!」


 攻撃が当たらない事にイラついてきたのか二人の攻撃が雑になってきました。私は一瞬の隙をついて二人のお腹に掌底を放ちます。


「ぐっ!?」
「がはっ!」


 二人は後退りしてお腹を押さえます、これで私の勝ちですね。


「こんな攻撃じゃ私たちは…がはっ!?」
「ミラ!?……か、体が……動かない!?」


 二人はまるで硬直したかのように動かなくなりました。


「貴方たちに流れる気の流れを乱しました。もう満足に動くこともできないはずです」


 二人は尚も動こうとしますが足がもつれて倒れてしまいます。


『小猫、聞こえる?私よ』


 耳に付けていた通信機器から部長の声が聞こえてきました。


「はい、聞こえます」
『そっちの状況は?』
「ライザー眷属を四人無力化しました」
『本当に!凄いわ、小猫!』


 部長に褒めてもらえました、嬉しいです。


『小猫、朱乃の準備が出来たようなの、今すぐそこから離れて頂戴』
「了解しました」


 私は言われた通り体育館から外に出ます、すると次の瞬間一瞬の閃光が走り、そして……


 ドォォォォォオオオオオオンッ!!


 轟音と共に巨大な雷が落ちて体育館を消滅させました。


『ライザー・フェニックス様の「兵士」三名、「戦車」一名、戦闘不能!』
「撃破……ですわ」


 声がしたので振り返るとそこには黒い羽根を広げた朱乃先輩が手に電気を走らせながら浮かんでいた。


「うふふ、小猫ちゃん、お疲れ様」
「朱乃先輩もお疲れ様です。流石は雷の巫女ですね。今まで見たどの雷よりも凄い雷でした」
「前までは溜めなければ放てなかったけど今は溜めなくてもあれくらいならできますわ。ルフェイちゃんに感謝しないといけませんわね」


 朱乃先輩は前の修行で魔力のコントロールが上達したと聞いていましたがあれ程の威力を持った雷を一瞬で放てるようになっていたなんて凄いです。


『朱乃、小猫、聞こえる?二人の活躍で最初の目的は果たせたわ。私と祐斗は他のライザー眷属を倒しに行くわ。貴方たちも二人で行動しながら私たちと合流して頂戴』


「うふふ、二人も頑張っているようね、私たちも行きましょう、小猫ちゃん」
「はい、目指すはライザーです!」


 私は気合を入れなおして先に進もうとしたその時だった。


 ドォォォオオオンッ!!


 激しい爆発音が鳴り響き私の視界が赤く染まった。




side:朱乃


「小猫ちゃん!?」


 一瞬の出来事でしたわ、小猫ちゃんがいる方から大きな爆発音がなったと思えばそこには小猫ちゃんの姿はありませんでした。


「ふふっ、あっけないわね」


 私は上を見上げるとそこにはフードを被った魔導士のような恰好をした女性、ライザーの女王であるユーベルーナが浮遊していた。


「貴方が小猫ちゃんを……」
「ふふ、獲物を狩るときは油断しているときが絶好のチャンス……貴方たちがやり遂げたなんて表情を浮かべていたのは本当に傑作だったわ、これから私に狩られるともしらないでね」
「じゃあ体育館を狙っていたのも……」
「当然読んでいたわ。貴方たちが此方の駒を何人倒そうと一人潰せればそれでいいの。四人しかいない眷属なんて一人欠いただけで致命傷だもの。
 それにしても小猫と言ったかしら?随分とあっさりやられちゃったわね、あの子。ライザー様もあんなちんちくりんのどこがいいのかしら……私がいくらでもお相手いたしますのに……」
「よくも小猫ちゃんを……」


 私が付いていながら小猫ちゃんを失ってしまうなんて……私は雷の魔力を両手に纏いながらユーベルーナを睨みつける。だがここで疑問が生まれた。


(どうして小猫ちゃんがやられたのにアナウンスがならないのかしら……?)


 レーティングゲームでは戦闘不能になるとアナウンスが流れるようになっています。先ほど私の雷で撃破したライザー眷属はちゃんとアナウンスで戦闘不能と言われたのにどうして小猫ちゃんは……もしかして……


「ちんちくりんで悪かったですね」
「なッ!?」


 ユーベルーナが驚きの声を上げる、何故なら倒したと思っていた小猫ちゃんがユーベルーナの背中に張り付いていたからです。


「バカなッ!お前は私の爆発で倒したはず!?」
「獲物が油断した時が一番のチャンス……同感ですね。貴方がベラベラと話してくれているおかげで楽に接近する事ができました。後貴方に一つ言ってあげます。獲物を狩ったならキチンとトドメを刺したか確認することです」
「こ、この!放しなさい!」
「無駄です、私が触れた瞬間勝負はついています」
「!?ッ、体が!」


 ユーベルーナの様子がおかしいですわ、小猫ちゃんを振り落とそうと暴れていたのに急に動かなくなりました。もしかして小猫ちゃんが仙術で体に流れる気を乱したのかしら。ユーベルーナはそのまま真っ逆さまに落ちていきます。


「もう勝負はついてますがさっきのちんちくりんという発言は許せません、だから先輩に教わったこの技で貴方を倒します!」


 小猫ちゃんはそう言うと落ちていくユーベルーナの両足首を掴んで相手の腋に自分の両足をかけてそのまま落下していきます、そしてユーベルーナの頭を地面に叩き付けました。



「小猫ドライバーです!!」
「ガハァッ!!」


 うわぁ……えげつないですわ。ユーベルーナは白目をむかせたまま倒れて消えていきました。


『ライザー・フェニックス様の「女王」一名、戦闘不能!』


 それにしても小猫ちゃんはどうして無事だったのかしら?私は小猫ちゃんの傍に駆け寄る。


「ふう、上手くいって良かったです。先輩は漫画の技だって言ってましたけど中々いい感じの技ですね」
「小猫ちゃん!」
「あ、朱乃先輩。見てください、私、女王を倒しましたよ!これで勝利に一歩近づきましたね!」
「え、えぇ、凄いわ小猫ちゃん。でもどうやってあの攻撃を防いだの?」
「戦車の駒の特性である頑丈さを使って防御したんです。前までだったら無理でしたけど今は先輩の攻撃を受け続けてより頑丈になりましたからね、あれくらいならへっちゃらです」
「そ、そうなの……」


 ユーベルーナは『爆発女王』という二つ名を持つほどの女王……その爆発女王の爆発をまともに受けてへっちゃらだなんて……どれだけ頑丈になったのかしら?


「そして相手が私を倒したと油断している内に背後に回った……という訳です」
「そうだったの……私も全然気づけませんでしたわ」
「猫は音を立てず狩りをしますからね」
「……」


 小猫ちゃんは本当に変わりましたわ。前までは自分の持つ力に怯えていたのに今ではそれを戸惑うことなく使いこなしている……小猫ちゃんは力だけではなく心も強くなっていた。


「……小猫ちゃん」
「はい、なんですか?」
「小猫ちゃんは怖くないの?仙術が……自分の中にある力が……」
「……正直怖いです、姉さまと離れ離れになったこの力……私は姉さまのように上手く仙術は使えないし仙術は悪き気も取り込んでしまうからそれが原因で力に飲み込まれてしまった猫魈もいると聞きました」
「それならどうして……」
「私を受け入れてくれた人が言ってました。私がどんな存在でも構わない、私という塔城小猫に会えたことが嬉しいって……」
「……イッセー君の事?」
「はい、先輩は私を信じてくれている……だから怖かったこの力も使えます。そしていつかあの人の隣に立ちたい、一緒に歩んでいきたい……それが今の私の願いなんです」


 そう話す小猫ちゃんは本当に幸せそうに笑っていましたわ。


(イッセー君……)


 小猫ちゃんを変えた男の子。彼との接点はありませんでした、精々見かける程度。でもどういう男の子かは知っていました。よく食べる男の子で体格もよく顔の傷のせいであまりいい印象がないと皆は言っていました、でも私は笑顔をよく浮かべる素直な男の子と思っていました。
 でも彼は唯の人間じゃなかった、神器を持ち私たちを圧倒するほどの力を持っていた。こうしてライザー眷属と戦えるのも彼のお蔭だ。


(イッセー君だったら受け入れてくれるのかしら……穢れた血が流れる私を……)


 ぼんやりとそんな事を考えていると小猫ちゃんが心配そうな眼差しで私の顔を覗き込んでいた。


「朱乃先輩?急に黙り込んでどうしたんですか?もしかして具合が悪いんですか?」
「え、えっと、何でもないのよ。おほほ……」


 いけませんわね、今はこんな事を考えている場合じゃないのに……


「小猫ちゃん、私は大丈夫ですわ。それよりも早くリアス達と合流して戦いに復帰いたしましょう」
「そうですね、行きましょう」


 私と小猫ちゃんはリアス達と合流する為に先に向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:祐斗


「はあッ!」
「きゃあッ!?」


 魔剣の一閃がライザー眷属の兵士一人を切り裂いた。切られた子は前のめりに倒れていく。


「滅びよ!」


 背後で部長が放った滅びの魔力が兵士二人に直撃して消滅させる。


『ライザー・フェニックス様の「兵士」三名、戦闘不能!』


 これで相手は八人が戦闘不能になった。そのなかでも女王を落とせたのは大きい。これで残るは王であるライザーを含めて八人だ。


「祐斗、やったわね」
「はい。部長もお見事でした」
「ふふ、ありがとう。本当は王が前線に出るのは良くないんだけどそうも言ってられないものね」
「でも部長がやられれば僕たちの負けです。そうならないためにも僕がしっかりと部長を守ります」
「お願いね、私の騎士」
「はい!」


 ここからが正念場だ、朱乃さん達と合流して少しでもライザーの眷属を倒していかないと。


「聞こえるか、グレモリー眷属よ!私の名はカーラマイン!ライザー様に使える騎士が一人!チマチマと隠れて戦うのはもううんざりだ!騎士として正々堂々と戦いを挑む!臆していなければ姿を現せ!」


 急に女性の声が聞こえ何事かと思って見てみると野球部が使うグラウンドの中心に甲冑を装備した女性が堂々と立っていた。何て豪胆な女性なんだろうか、あれでは狙い撃ちしてくれと言っているようなものだ。


「……罠かしら?」


 体育用具を入れる小屋の陰から見ていた部長がそう呟いた。普通ならそう考えるだろう、いくら何でも無謀すぎる行動だ。でも僕は同じ騎士として何となく感じた。あの女性は罠や何か企んでああしているのではない、本当に正々堂々と戦いたくてあんなことをしているんだと。


(……何を考えているんだ僕は……)


 咄嗟に出ていきそうになった足を止める。さっき部長を守るって言ったばかりなのに相手の挑発に乗ってしまいそうだった。このままのこのこ出て言ったら部長は無防備になる、そこを他の眷属達に襲われたらひとたまりもない。イッセー君も言っていたじゃないか、騎士道精神も大事だけど勝ちに行くためにはそれを捨てなくちゃいけない時もあるって。


「祐斗……行ってきてもいいわよ」
「部長!?」


 僕がそう考えていると何と部長自らが行くように指示を出したのだ。


「部長、それは危険です。もしあれが罠で他の眷属達に襲われたらどうするんですか。不意打ちをしたほうがまだ確実です」
「貴方が私の為に色々考えて動いてくれるのは嬉しい、それこそ自分の騎士道精神まで捨ててまで……貴方を騎士に持てて誇りに思うわ。でもそれじゃ貴方が納得できないんじゃない?」
「部長、ですが……」
「それに私も何の策も無しにこんなことは言わないわ。あの騎士を見て作戦を思いついたの」
「作戦……ですか?」


 僕は部長から作戦を聞いてそれを拒否した。


「駄目です!それは危険すぎます!」
「でも私たちは経験でも眷属の数でも負けている、勝つためには多少のリスクは払うものよ」
「ですが……」
「大丈夫、私は貴方を信じてるから」


 部長……全くここまで言われたら男として引き下がれないな。


「分かりました、部長は僕が守ります」
「信じてるわよ、さあ、行くわよ!」


 僕は部長と共に野球部のグラウンドに向かった。


「僕はグレモリー眷属の騎士、木場祐斗」
「その主にしてグレモリー眷属の王、リアス・グレモリー」


 相手の近くまで行き名を名乗る。


「まさか王自らも出向いてくるとわな。お前たちのような戦士と出会えた事を嬉しく思うぞ!戦場のど真ん中にのこのこ出てくる奴など正気の沙汰ではないからな」
「それは君も同じだろう?」
「無論だ!さあ同じ狂った者同士存分に死合おうではないか!」


 対立する騎士、カーラマインは剣を構える、僕も魔剣を生み出して同じく構える。


 ダッ!


 先に動いたのはカーラマインだった。踊るように振るわれた斬撃をかわして僕も剣を振るう。剣と剣がぶつかり合い激しく火花を散らす。


「中々やるな、ならばこれについてこられるか?」


 カーラマインは縦横無断に飛び回り切りかかってくる。流石は騎士の駒を持つだけあって速い。僕も速度を上げて剣を振るう。互いが消えてつばぜり合いをして現れるなど第三者からすれば瞬間移動してるかのようなスピーディーな攻防を繰り返す。
 攻防を一旦やめて距離をとる、ふと手に持っていた魔剣が軽くなったように思い見てみると刀身が半分溶けていた。


「残念だがお前の神器は私には通用しない」


 カーラマインが持っていた剣が炎に包まれていた。なるほど、あれがカーラマインの能力か。でももう勝ったつもりでいるのならそれは甘いよ。
 僕はカーラマイン目がけて走り出した。


「馬鹿め、武器を失って自暴自棄になったか!」


 カーラマインは炎の剣を構えて僕目がけて振り下ろした。でもその一撃は空を切っただけで終わった。


「消えただと!?」


 カーラマインは僕を探すがもう遅いよ!だって僕はもう既に君の背後に回っているんだからね。


「背後か!?」


 カーラマインは僕に気付き振り返ろうとするが僕はその前に剣を振るった。


「九頭龍閃!!」


 剣術の基本である9つの斬撃を同時に放ちカーラマインを切り裂いた。


「がはッ!?……な、なんて速さだ……」


 カーラマインは血反吐を吐きながら地面に倒れた。


「ふう、イッセー君が教えてくれた技が出来て良かったよ」


 魔剣に付いた血を振り払って落とす。


「ぐっ、負けたか……」


 カーラマインは倒れていながら首を上げて僕に話しかけてきた。戦闘不能にはなっていないがどの道もう戦えないだろう。


「あれだけ斬ってまだ動けるなら大したものだよ」
「一つだけ教えてくれないか?なぜお前は剣を持っているんだ?私の剣で壊したはずなのに……」
「ああ、簡単な事だよ。また創ったんだ、こうやってね」


 僕はカーラマインの目の前で魔剣を生み出した。


「どんな魔剣でも創り出すことが出来る、これが僕の神器『魔剣創造』だよ」
「なるほど、武器を持たずに走り出したのは私を油断させるためか……勝ちを急いで焦りすぎたか……」
「騙すような勝ち方をしちゃったけど僕は何があっても勝たなくちゃいけないんだ。王である部長を守るために……」
「主の為か……お前は真の騎士だよ。戦えた事を誇りに思う……」
「僕も君の正々堂々とした騎士道精神は嫌いじゃない、また戦えることを願っているよ」
「それは……光栄だ……」
『ライザー・フェニックス様の「騎士」一名、戦闘不能!』


 カーラマインはそのまま消えて行った。だがその時だった、死角からライザー眷属の兵士二名が現れて部長に襲い掛かった。


「カーラマインに気を取られて油断したわね!」
「これでライザー様の勝利よ!」


 二人の攻撃が部長に当たる……事は無かった。


「がはッ!」
「ぐあっ!?」


 地面から鋭い針が飛び出して兵士二人を貫いた。


「い、一体何が……」
「僕の魔剣だよ。形状を変化させる魔剣を部長に持たせていたんだ。部長は自分が狙われる事は知っていた、だから自身を囮にしたんだ。魔剣を針金みたいに伸ばして自分の周りの地面の下にもぐらせておく。そして襲われた時に串刺しにする……そういう作戦さ」


 僕は困惑する兵士の一人に近づきそうそう説明した。


「バカな、失敗すれば敗北していたんだぞ……なんて無謀な……」
「そこまでのリスクを払わなきゃこのゲームには勝てないわ。それに私は自分の眷属を信じてるの。だから囮になってでも戦える」


 最後は部長がそう言って動けない兵士二人を滅びの魔力で消し去った。


『ライザー・フェニックス様の「兵士」二名、戦闘不能!』


 僕は念の為辺りにまだ敵がいないか気配を探るがどうやらもういないようだ。


「祐斗、お疲れ様。流石は私の騎士ね」
「部長の作戦が上手くいって良かったです。でも即興で渡した魔剣をあそこまで使いこなせたのは驚きました。部長は魔剣を使った事があるんですか?」
「いいえ、一度も無いわ。でも貴方が創った魔剣なら必ず私を守ってくれると思っていただけよ」


 ……ははッ、本当に凄いお方だよ、我が主は。


「さあ行くわよ、祐斗。残りのライザー眷属、そして王であるライザーを打倒しにね」
「何処までもお供いたします」


 ゲームも終盤に差し掛かってきた、でも僕たちは必ず勝って見せる!!



 


 
 

 
後書き
 よっ、イッセーだ今回は俺が次回予告をするぜ。いやー、小猫ちゃんも祐斗も凄いな。漫画で見た事ある技を教えたら本当に再現しちまうんだもんな。リアスさんや朱乃さんも強くなってるしここまでは順調だな。でも油断はできないな、最後に残るのはライザー・フェニックスだからな。
 次回第14話『レーティングゲーム開始!!決めろ一発逆転!!後編』。次回も勝利目指していただきます! 

 

第14話 レーティングゲーム開始!!決めろ一発逆転!!後編

 
side:小猫


「やあぁッ!!」


 私の拳が相手の僧侶に決まり吹き飛ばした。


「終わりですわ」


 朱乃先輩の放った雷の魔力が騎士の足に当たった、そして動けなくなった相手の騎士に魔力で作った槍を突き刺した。


『ライザー・フェニックス様の「僧侶」一名、「騎士」一名、戦闘不能!』


 アナウンスが流れちょっとだけ一息つく。


「大分相手眷属の数も減らせてきましたわね」
「はい、あと少しです」


 これまでに倒したライザーの眷属は合わせて13人、残るは僧侶一人と戦車一人、そして王であるライザー・フェニックスを合わせて3人です。ここまで誰一人かけることなくライザー眷属と戦えたのはやっぱりイッセー先輩のお陰です。これが終わったら何かお礼をしたいです。


(わ、私がお礼です……何てどうでしょうか?)


 ゲーム中だというのに私はイッセー先輩にお礼をする光景を考えました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「小猫ちゃん、勝ったんだってな!俺は信じてたぜ」


 ライザー眷属とのレーティングゲームに勝利した私は先輩の家に来ていました。先輩は私の報告を聞いてまるで自分の事のように喜んでくれました。


「私たちが勝てたのも先輩が特訓してくださってくれたお陰です。本当にありがとうございました」
「よせって。俺は切っ掛けを与えただけだ。小猫ちゃんたちが勝てたのは自身の力があったからさ」
「それでも先輩のお蔭には変わりありません。だからお礼を受け取ってほしいんです」
 

 私はそう言うと着ていた制服を脱ぎだした。


「こ、小猫ちゃん!?一体何を!?」


 先輩が驚いてますが私は構わず制服を脱ぎ続ける、そして下着一枚になった所で先輩に抱き着いた。


「これがお礼です……私自身を先輩にあげます。だから……私を食べて?」


 私は上目遣いで先輩に甘えました。すると先輩は真剣な表情を浮かべて私をお姫様抱っこしてくれました。


「全く、女の子にここまでさせておいて何もしなかったら男が廃るもんだ」


 先輩は私をベットまで運んで自身も来ていた制服を脱ぎだしました。そして私と同じく下着だけになると私の上に覆いかぶさりました。


「俺だって男だ、もう止まらねえぞ?」
「はい、覚悟はできてます……来てください、先輩……」
「小猫ちゃん……」


 そして先輩は目を閉じて徐々に顔を近づけてくる。私もそれに答えるように目を閉じてそして……








「……えへへ♡」
「こ、小猫ちゃん?急に黙ってどうしたのかしら?」


 隣で朱乃先輩が心配そうに見ている、私は妄想を消してキリッとした表情になる。


「何でもありません、心配かけてごめんなさい」
「そ、そう?それならいいのですけど……」


 朱乃先輩は若干怪しむかのように目を細めたが直に笑顔を浮かべた。ふう、危ない危ない。ゲーム中にこんなことを考えてしまうなんて……これは先輩に責任を取ってもらわないといけませんね。


「小猫ちゃん、そろそろリアス達との合流場所に着くから急ぎましょう」
「はい、行きましょう」


 思考を切り替えて朱乃先輩と共に合流場所まで走りました。合流場所には部長と祐斗先輩がいました。


「朱乃、小猫、お疲れ様。そっちも無事で良かったわ」
「リアスこそ無事で何よりですわ」


 私たちはお互いの無事を喜び合い今の状況を話し合いました。


「なるほど、相手の女王を倒したのは小猫だったのね。本当に凄いわ、やっぱり恋する女の子は強いのね」
「あ、ありがとうございます……」


 改めてそう言われると恥ずかしいですね……まあその通りなんですけど。


「小猫ちゃんも強くなってるし僕もウカウカしてられないな」
「私ももっと精進しないといけませんわね、じゃないと女王の座を小猫ちゃんに取られちゃいますわ」
「そ、そんなに褒めないでください……」


 私は顔を真っ赤にして手で隠しました。


「うふふ、でも事実よ。貴方たちのお蔭でここまでこれたんですもの。朱乃、祐斗、そして小猫。これだけは言わせて頂戴、私の眷属になってくれてありがとう」
「部長、そう言ってくださるのは光栄ですがそれはライザー眷属に勝ってからにしましょう」
「そうですわ、貴方を本当に自由にしてからまた言ってほしいですわ」
「そうね、ちょっと早かったわね。なら早くライザーを倒して改めて言うわね、さあ行くわよ!」
「あらあら、勇ましい事ですわね」


 私たちが先を行こうとすると何者かが話しかけてきた。声がした方を見るとドレスを着こんだ金髪の少女と顔を半分隠すような仮面を付けた女性が立っていた。あれはライザー眷属の僧侶と戦車でしたね。


「ご機嫌ようリアス・グレモリー様、そして眷属の方々は初めてお会いいたしますわね。私はレイヴェル・フェニックス、兄であるライザー・フェニックスの僧侶をしています。以後お見知りおきを」
「同じく私は戦車のイザベラ。レイヴェル様の護衛をしている」


 えっ?妹……?どういう事ですか?ライザーはどうして実の妹を僧侶にして……もしかしてそういう趣味なんでしょうか?だとしたらドン引きなんですが……


「そこの白髪の貴方、今不快な想像をいたしましたわね?」
「い、いえそんな……」
「言っておきますが私にそんな趣味はございません。兄が「ハーレムものに妹はつきものだろう」などと訳の分からない事を言うので渋々特別な方法で眷属になっているにすぎませんわ」
「そ、そうなんですか……」


 見た目より苦労されているのかもしれませんね……


「久しぶりねレイヴェル、貴方が戦車を引き連れてきたのは私たちと戦う為かしら?」
「いいえ、さっきも言いましたけど私は無理やり兄の眷属に入ったので正直この婚約もどうなろうと興味はありませんわ。私は兄の伝言を貴方方に伝えに来ただけですわ」


 伝言ですか?一体何でしょうか?


「『俺は新校舎の屋上で待っている』……伝える事はそれだけですわ」
「屋上に……ライザーが直接出てきたというの?」
「貴方方は兄が出る間もなく終わる、それが最初の考えでした。でも貴方方は一人も欠けることなく女王すら倒した。これにはお兄様も、そして私も驚いていますのよ?」
「……」
「それでも貴方方は兄には勝てないでしょう。フェニックスの不死身の力はどんな攻撃でも崩せない。最初から貴方方が勝てる要素何てなかった、いわば出来レースという事ですわ」


 レイヴェル・フェニックスはクスクスと笑いながら話す。でも部長は毅然とした態度で話し出した。


「……だから何だというの?」
「はい?」
「不死身の力?出来レース?そんな事分かっているわよ。相手は何度もレーティングゲームを続けてきた経験者、それに比べて私は初のレーティングゲームで眷属の数も経験も負けている。これで勝てると本気で思うならバカだと思うわ」
「ならどうしてそこまでして戦うのですか?」
「この子たちは私の我儘に文句も言わず従ってくれた。何の得もないのに私たちの為に動いてくれた人たちがいた。もうこれは私だけのゲームじゃない。私の為に戦ってくれた、協力してくれた人たちの為にも勝てないなんて諦める訳にはいかないのよ」
「……唯の感情論ではありませんか、誇りある貴族とは思えない発言ですわね」
「私もそう思うわ。それに貴方のお兄さんは私の眷属を気にいちゃってね、無理やり自分の物にしようとしてるのよ」
「ああ、そこの白髪の子ですわね。兄は大層気に入ったようですわよ?リアス様の話よりその子の事ばかり話すんですもの」


 レイヴェル・フェニックスの話を聞いて寒気がした、まさかそこまで気に入られているなんて思っていなかったからだ。


「でも残念、この子にはもう既に想い人がいるの。私も相手の男の子を気に入ってる、だからこそ二人には結ばれてほしいの。その為にも絶対にこのゲームを勝って見せるわ」
「部長……」


 部長にそこまで思って頂けるなんて……本当に嬉しいです。


「……なら私に見せてくださいまし。貴方方の思いの強さを……」
「ええ、そこで見ていて頂戴、私たちが勝つ姿をね。いくわよ皆!」
「「「はいっ!」」」


 私たちは悪魔の翼を広げて新校舎に向かった。






side:レイヴェル


 飛び去っていくリアス様たちを見ながら私はどうして先ほどあんな事を言ったのか考えていた。フェニックスの不死身の力には勝てないと言っておきながら最後には応援するかのような発言……一体私はどうしたのでしょうか?


「良かったのですか?レイヴェル様は戦わないと知っていましたが私まで戦わないというのは……」
「なら貴方一人でリアス様方に勝てたのかしら?」
「……いえ、10日前のグレモリー眷属なら兎も角今のリアス様方に一人で勝てるとは思えません」


 10日前ですか……あの時のリアス様達は正直に言って大したことがなく見えましたわ、レーティングゲームもこちらが楽に勝てる者ばかりと思っていました。でも蓋を開けてみればこちらが押される展開になっています。
 もしかしたら本当に兄であるライザー・フェニックスにすら勝ってしまうかもしれない……そんな考えが浮かんでしまいました。


(何を思ってるのかしらね、私は……)


 まあいいですわ。勝つも負けるもリアス様たち次第ですし兄をギャフンと言わせられるなら是非そうして欲しいですし。
 無理やり眷属にされた事を私怒っていますのよ、意外と根に持つタイプですので。


 私はそう思いリアス様たちが飛んでいった白い空を眺めました。






side:小猫


 レイヴェル・フェニックスと別れた後私たちは新校舎の屋上に向かいました。新校舎が見えてくると屋上に人影がありました。あれがライザー・フェニックスですね。


「皆、降りるわよ」


 部長の合図で私たちは屋上に降り立ちました。ライザーは私たちに背を向けていましたがはぁ~ッと大きなため息を吐きながら此方に振り返りました。


「正直ここまでやるとは思ってなかったぞ。俺の女王であるユーベルーナすら序盤にやられるとはな……どうやらお前たちを見くびりすぎていたようだ」
「あら、もしかして降参かしら?」


 部長がそう言うとライザーはハハハッと大きな声で笑いだしました。


「冗談を言うな、リアス。例え俺の眷属が全滅しようと王である俺がいる限り俺の勝ちは揺るがない。この不死身の力の前にお前たちなど無力なのだからな」


 ライザーはそう言って身体から炎を吹き出しました。


「リアス、お前たちを倒す前に一つ提案をしよう。お前たちが俺に勝てる可能性は0%……妻になる女性を傷つけるのは辛いんだ、だから潔く負けを認めろ」


 部長はライザーの話を聞いて先ほどのお返しと言わんばかりにはぁ~ッと大きなため息をつきました。


「お断りよ、貴方が私一人だけを愛してくれる人だったら受け入れたかもしれない。でも貴方は女を自身の欲を満たす物にしか見ていないじゃない。じゃなきゃサクリファイスを好んで使ったりしないでしょ?それに私は好きな人がいるの。だから貴方とは結婚できないわ」
「な、何だと!?」


 部長の発言にライザーだけでなく私達全員が驚きました。部長、好きな人がいたんですか!?


「だ、誰だそいつは!一体何処の貴族だ!?」
「貴族じゃないわ、私15歳の時に誘拐されたんだけどその時に助けてくれた男の人がいたのよ」
「そ、そんな奴に……名前を言え、誰だソイツは!?」
「名前は聞けなかったけどね。でも私はその時その男の人に惚れてしまった……もう一度会いたくてずっと探してるけど見つからない。でも私は諦めない、その男性を必ず探し出して見せるわ。だから貴方とは結婚できないの、ごめんなさいライザー」


 そういえば部長は15歳の誕生日に何者かに誘拐されたことがあります。
 私たちは謎の襲撃者に負けてしまいその後魔王様が直に助けに向かったけど、着いた頃には犯人はボロボロで部長は怪我一つなかった……という出来事があったんです。
 それにしても部長にも好きな男性がいたなんて知りませんでした。


「ぐぬぬ……ならば小猫、お前はどうだ?さっきのレイヴェルとリアスの話を通信機器で聞いてたが想い人がいるようだな。だがどうせ大した事もない一般人だろう?そんな奴の事は忘れて俺の女になれ。贅沢な暮らしも豪華な食事も用意してやる、どうだ?」


 ライザーは矛先を私に変えてそう言ってきました。でも私の答えはもう決まっています。


「嫌です。私は贅沢な暮らしも豪華な食事もいりません。あの人の笑顔を見ながら食べる御飯が一番美味しいですから」


 私はライザーの提案をキッパリと断る、ライザーは怒りに身を震わせて更に大きな炎を体から吹き出す。


「もういい……なら力づくでお前らを俺のものにするだけだ。リアス、そして小猫。この学園の風景をよく見ておくんだな。作り物とはいえこれがお前たちが見る最後の…ガァッ!?」


 ライザーはそれ以上話すことが出来ませんでした。祐斗先輩がライザーの首を斬り飛ばしたからです。


「き、貴様……!?」
「ベラベラと長ったるい話はもういい、朱乃さん!」


 祐斗先輩はライザーから離れる、するとライザーの傍に朱乃先輩が手に電撃を走らせながら接近する。


「うふふ、隙だらけですわ。『放電(ヴァーリー)』!!」


 朱乃先輩の手から雷のエネルギーが放たれてライザーを感電させる。よく漫画で骨が見えるような演出がありますが感電するライザーは今まさにそんな状態です。


「っと見ている場合じゃないですね」


 私もライザーに接近して飛び上がり首目掛けて蹴りを喰らわせた。


「やぁぁッ!『フライング・レッグ・ラリアート』!!」


 私の蹴りを首に受けたライザーは大きく吹き飛んでいき屋上のフェンスに背中から激突しました。暫くぐったりとしていましたがクククッ、と笑いながら立ち上がりました。ですが直に怒りの表情を露わにしてこちらを睨んできます。


「不意打ちとはやってくれたな!もう容赦はせんぞ!!」


 怒りを露わにしながらライザーは私たちに激しい炎を飛ばしてくる。


「水よ!壁となり私たちを守りなさい!」


 朱乃先輩は魔力で水を操りライザーの炎を打ち消していく。


「何!?」
「よそ見はいけないよ!」


 驚くライザーの死角から祐斗先輩が魔剣を構えて向かっていく。ライザーも炎を剣のような形にして迎え撃つ。空中で激しく切り合いながらライザーは祐斗先輩に炎が纏った蹴りを繰り出した。


「ぐあッ!?」


 祐斗先輩はお腹を蹴られて苦痛の表情を浮かべたがそれに耐えてライザーに向かっていく。


「俺の攻撃を戦車でもないのに耐えただと!?」
「はあぁぁッ!!『牙突』!!」
「ぐあぁッッ!」


 祐斗先輩は閃光のような速さでライザーのお腹に魔剣を突き刺しました。


「雷よ、万の槍となり相手を射抜け、『万雷(ママラガン)』!!」


 朱乃先輩は上空から沢山の雷を落としてライザーに放ちます。


「喰らって溜まるか!」


 ライザーは空中を動き回り雷をかわします、ですが雷はライザーを追尾していきます。


「雷が追ってくるだと!?」


 ライザーのお腹にはさっき祐斗先輩が刺した魔剣が刺さっていた。確かあれは電気を吸い寄せる力を持った魔剣だったはずです。それが雷を引き寄せているんだ。


「か、かわしきれ……グアアァァァアアッッ!!?」


 そして追尾する雷を受けてしまったライザーは苦しそうに声を上げる。でもまだライザーを倒すには足りません。私は大きく跳躍してライザーの首めがけて左腕でラリアットをします。


「『喧嘩ボンバー』です!!」
 

 そして体勢を崩したライザーの足を掴んで逆さまにしてそこに自分の両足をライザーの足に合わせて落下する。


「『メガトン・小猫落とし』!!」
「ゲホォォッ!?」


 ライザーは頭から屋上に落下して膝まで埋もれてしまいました。ですが直に背中に炎の翼を出して飛び上がってきました。


「火の鳥と鳳凰!そして不死鳥フェニックスと称えられた我が一族の業火!その身で受けて消えろ!!」


 そして先ほどよりも遥かに大きな炎の球を生み出して此方に投げつけてきました。


「水よ!!」


 朱乃先輩は水の壁で防ごうとしましたが今度は水の壁が蒸発して消えてしまいました。


「魔剣創造!!」


 祐斗先輩は魔剣を壁のように出して防御する体制に入りました。


「私が部長を守ります。二人は防御を!」


 私は部長の前に立ち腕を組んで待ちかまえます。そして炎の球が私たちに向かってきました。


「ぐッ……凄い熱さ……」


 必死で耐えますが凄まじい熱量です、でも負けません。私は必死でガードを続けました。暫くしてようやく炎が消えてきましたが私は大きなダメージを受けてしまいました。祐斗先輩も朱乃先輩も耐えれたようですが二人も大きなダメージを受けていました。


「どうだ、お前達がどれだけ攻撃を重ねても俺は倒せない……俺は不死身のフェニックス!お前らじゃ俺には勝てないんだよッッ!!」


 ライザーは受けた傷を再生させながらそう吠える。確かにあれだけ攻撃しても倒れないとは……これがフェニックスの力ですか……


「なら倒れるまで攻撃し続けるまでです!!」


 私たちは再びライザーに攻撃を仕掛けました。



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ーーー


side:イッセー


「イッセーさん、この食材はここに置いておけばよろしいでしょうか?」
「ああ、そこに置いといてくれ」
「師匠~!師匠が頼んでいた食材を持ってきましたよ~」
「お、ありがとうな。魔法ってのは本当に便利だな」


 俺とアーシア、そしてルフェイは俺の家で祝勝会の準備をしていた。えっ、気が早いって?こういうのは早めに用意しとくもんだろ。


「でもイッセーさん、小猫ちゃんたちは大丈夫でしょうか?」


 隣で作業をしていたアーシアが心配そうな表情で俺を見ていた。今レーティングゲームで戦っている小猫ちゃんたちが心配なんだろう。


「それは俺にも分からないよ。勝てるかどうかは小猫ちゃんたち次第だ」
「それはそうですが……」
「俺たちは皆の勝利を祈るしかないんだ。だから信じて待っていようぜ」
「……そうですね、私も一生懸命祈ります!」
「ああ、その域だ」


 あれはアーシアの頭を撫でながらそう話す。アーシアはえへへっと可愛らしく笑いながら俺に撫でられている。


「師匠、アーシアさんとイチャついてないでこっちを手伝ってくださいよ」
「ああ、今行くよ」


 頑張れよ、リアスさん、朱乃さん、祐斗、そして小猫ちゃん!



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side:小猫


「はぁ……はぁ……」
「ぐッ、何てしぶとい奴らだ……」


 あれから何分、いや何十分戦っているのでしょうか?それが分からないくらいの時間が流れていました。何度も何度もライザーに攻撃を繰り返してきましたが流石にこちらも消耗が激しいです。祐斗先輩も朱乃先輩も身体中に火傷を負ってボロボロの状態です……


「皆……」


 部長も後ろで心配そうに私たちを見ています。


「リアス、あれだけ大口を叩いたくせに自分は安全な後方で見学か!グレモリー家は慈愛に満ちた一族と聞いていたがとんだ白状者だな!」
「ッッ!」


 部長はライザーの挑発を聞いて前に出ようとしましたが踏みとどまりました。


「何だ!臆病風に吹かれたのか?これだけ言われても言い返しもしないのか?つまらない女だな!!」


 ライザーは尚も部長を挑発しますが部長は歯を食いしばって耐えています。


「さっきから煩いですわ、焼き鳥はよく泣きますのね」
「な、何だと!?」
「同感だね、貴方ごときの相手に部長が出てくる必要はないよ」
「はい、焼き鳥の相手は私たちだけで十分です」
「き、貴様ら……ッッ!!?」


 私たちは逆にライザーを挑発します。相手も強気でいますが先程から再生する速度が落ちてきています。
 部長の話によればフェニックスを倒す方法としては再生できないほどの一撃を与えるか精神的に追い詰める方法があるそうです。回復する速度が落ちた、つまり今ライザーは精神的に追い詰められている状況だということです。


「もうお遊びは終わりだ!そろそろケリをつけてやる!」


 ライザーは炎を纏った拳を振り上げて私に向かってきました。回避しようとしますが火傷のせいで体が上手く動きませんでした。私は腕を組んで防御の体制を取ります。


「ぐうう……ッ!」


 両手が焼かれ激しい痛みが走りますが何とか防御できました。でもライザーは追撃で私に攻撃しようとしました。


「させませんわ!」


 でも朱乃先輩が雷を放ってライザーを引き離してくれました。


「小賢しいッ!!」


 でも朱乃先輩はライザーに殴られて吹き飛んでしまいます。


「そこだ!」


 祐斗先輩が一瞬の隙をついてライザーの右腕を斬り飛ばしました。でも左の腕で首を掴まれてしまいました。


「燃えろ!!」


 ライザーは左手から炎を出して祐斗先輩を吹き飛ばしました。


「このぉッ!!」


 私は背後から殴りかかりますがライザーは攻撃をかわして私の首を再生した右腕で掴んで宙づりにしました。


「ぐうぅ……」


 徐々に力を込められていき私の意識が薄れていきます。


「もう諦めろ、そうすれば助けてやるぞ?」
「……お断りです。私は最後まで諦めません!」


 私は足でライザーの右目を蹴りました。


「ぐああぁぁぁッッ!?」


 そして怯んだ隙に右腕を外して足払いをしてライザーを倒しました。そして倒れているライザーの背中に回り込み首から顎を掴み海老反り状にします。


「『キャメルクラッチ』です……!!」


 ライザーを海老反り状にしたままどんどん力を込めていく。ですがライザーも無抵抗ではなく背中から炎を出して私の体を焼いていきます。でもこの手は絶対に離しません!!


「は、離せぇぇぇッッ!!」
「やあああぁぁぁぁッッ!!」


 暫くは耐えていましたが等々ライザーから手を離してしまいました。両手は焼けてしまいもう打撃も寝技も出来そうにありません。


「耐えたぞ、俺の勝ちだ……!!フハハハハハッッ!!!」


 ライザーは笑いながら私にトドメを刺そうと炎を出しました。もう動けません、ここまで何でしょうか……


「皆、ありがとう。皆のお蔭で魔力が溜まったわ」


 その時だった。背後から凄まじい魔力を感じてライザーが攻撃を中断しました。私は部長の方を見ると部長の両手には巨大な滅びの魔力が集まっていた。


「な、何だ……この凄まじい魔力は……ッ!?」
「ライザー、これが私の切り札よ。溜めて溜めて溜めぬいた滅びの魔力を圧縮して一気に相手に放つ……名付けて『紅き滅殺の魔閃光(クリムゾン・ルイン・フラッシュ)』よ!!」
「先程から攻撃してこなかったのはその技を放つ為か……ッ!」
「そう、小猫たちが身体をはって時間を稼いでくれたおかげでこうして完成させることが出来た……お望みどおりに今から私が相手になるわ」
「グゥッ!?(ま、不味い……今の俺はこいつらとの戦いで疲労している……そんな状態であれを喰らったら……)ここは一度引かせてもら……ッ!?」


 ライザーは飛んで逃げようとしましたが足がガクンと引っ張られるように体制を崩しました。ライザーの足を見るとそこには魔剣が刺さっていました。


「逃がしはしないよ……」
「こ、こいつッ!?」


 祐斗先輩はボロボロになりながらもライザーを足止めしていました。


「こんなもの直に抜いて……」


 ライザーは足に刺さっていた魔剣を抜こうとしましたがそれよりも早くライザーの周りに鎖が現れてライザーを捕らえました。


「う、動けん……ッッ!?」
「北欧の魔法で作った鎖はどうかしら?強度はあまりないですが一瞬動きを止める位なら十分ですわ」


 部長は両手に圧縮された滅びの魔力をライザーに向けました。


「これで終わりよ、ライザー!!『紅き滅殺の魔閃光』!!」
「ク、クソオオオォォォォォォォォッッッ!!!」


 ライザーは最後の叫びを上げて部長の放った紅き滅殺の魔閃光に飲み込まれていきました。そして部長の攻撃が終わるとライザーはもうそこにはいませんでした。


『ライザー・フェニックス様、戦闘不能!よってこのゲーム、リアス・グレモリー様の勝利です!』


 私たちはそのアナウンスを聞いて暫く固まっていましたが次第に私たちが勝ったんだと理解することができました。


「やった……私たちが勝ったんだ……ッッ!」
「「「「やったーーーッツッ!!!」


 私たちは腕を振り上げながら叫びました、私たちあのライザー・フェニックスに勝ったんです!!


「皆ッ!」


 部長は涙を流しながら私たちを抱きしめました。


「本当にありがとう!貴方たちは最高の眷属よ!」
「部長、これであなたは自由になれましたね。僕も嬉しいです」
「ふふっ、良かったわね、リアス。そういってもらえると親友として頑張った甲斐がありますわ」
「私も頑張りましたよ、部長、褒めてください」
「ええ、小猫の仙術も凄かったわ。流石恋する女の子は強いわね」
「勿論です」


 エッヘンと胸を張る私を見て部長達は笑っていました。そうだ、このことを早くイッセー先輩にも報告しなくちゃ!
 そう思って早く帰ろうとしましたが部長に首根っこを掴まれてしまいました。


「こら、貴方が会いに行きたい人がいるのは分かるけどまずは怪我を治さないと。服もボロボロだしそんな状態じゃ女の子として恥ずかしいでしょ?」


 確かに私たちの着ている制服は激しい戦いでボロボロになっています。


「うぅ~、速くイッセー先輩に会いたいです……」
「本当に吹っ切れたわね、貴方……」


 部長がちょっと呆れたようにジト目で見てきますが仕方ないんです、先輩に会いたいって体が欲してるんですもん。そう言うと部長達はアハハと笑いだしました。もう笑わないでください!!



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side??


 レーティングゲームを観戦するために用意されたVIPルーム、そこにリアスによく似た赤い髪の男性がモニター越しにリアス達を見ていた。


「まさかリアスがライザー・フェニックス君に勝つとは……」


 彼の名はサーゼクス・ルシファー。リアスの実の兄であり冥界に四人いる魔王の称号『ルシファー』を持つ男である。


「サーゼクス様」


 そこに銀髪の女性、グレイフィアが現れた。彼女は魔王サーゼクス・ルシファーの女王であり今回のレーティングゲームで審判役を務めた。


「やあグレイフィア、今は二人っきりなんだからいつもの口調でもいいんだよ?」
「そうはいきません、今は仕事中ですので」
「相変わらず真面目だね、ところで父上とフェニックス卿は何だって?」
「お二人は今回の縁談は破棄でいいとの事です。特にフェニックス卿は息子に敗北を与えてくれたことに感謝したいと……」
「そうか、まあ遺恨が残らなくてよかったよ」
「……サーゼクス様はこうなると予想していたのですか?」
「いや、僕もリアスが勝つとは思ってなかったよ。リアスが勝ったのは個人的には嬉しいんだけどね」


 サーゼクスは妹を溺愛していた。今回の縁談も出来れば断りたかった。しかし自分は魔王であり私情を挟む訳にはいかなかった。だから心を鬼にして縁談を仕組んだ。そしてリアスを納得させる為に今回のレーティングゲームを持ち掛けたのだ。 
 今回のレーティングゲームは出来レースだとサーゼクスは思っていた。レーティングゲーム経験者にて不死身の力を持つライザー・フェニックスとまだ若く眷属も経験も少ないリアス・グレモリー……どちらが勝つかなど一目瞭然……そういわれていた。
 だが結果を見ればリアスは勝ってしまった。


「たった10日間であれだけの成長……君はどう思う?」
「間違いなく何者かの介入があったかと」
「だよね……」


 サーゼクスはリアスたちの成長に疑問を持っていた。別に妹を弱いなんて思っていない、寧ろ才能もあるしこれから実力をあげていくとサーゼクスは思っていた。だがそれは長い目で見た場合だ。たった10日間であそこまで強くなるのは難しい、少なくともリアスたちだけでは到底不可能だ。間違いなく何者かが介入したとしか思えない。


「リアスたちが修行中の光景を僕たちは知らない、その時に何かあったのか……グレイフィア、リアスが修行中に誰かが接触したって事はないよね?」
「はい、公平を守るために我々が接触するのは控えてました、ですので我々以外の人物しか接触は出来ないかと……」
「そうか……グレイフィア、念のために調査をしておいてくれ」
「了解しました」


 魔王サーゼクスはリアスたちを強くした何者かに対し強い興味をもったようだ。それがイッセーにどのような影響をもたらすのかは今は分からない……




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side:小猫


「早く、早く行きましょう!」
「わ、分かったからそんなに慌てないで頂戴!」


 レーティングゲームを終えて三日が過ぎました。怪我は『フェニックスの涙』というアイテムを使ったらあっという間に治ってしまいました。流石は不死鳥と謡われたフェニックス家が作ったものですね。ですが体力までは回復しなかったので三日も過ぎてしまいました。
 三日もイッセー先輩に会えなくて寂しかったけどようやく会えますね。


「小猫ちゃん、嬉しそうですね」
「昨日イッセー君からLINEが来てからあんなにニコニコして……羨ましいですわ」


 そうなんです!昨日イッセー先輩からLINEが来て祝勝会を開くから家に来てくれって書いてあったんです!先輩ったら私たちの勝ちを当り前のように思ってくれるなんて……もうますます好きになっちゃいますよ……♡


「あ、見えてきましたよ!」


 住宅街を歩いているとイッセー先輩の家が見えてきました。


「へえ、あれがイッセー君の住んでいる家なんだ」
「けっこう大きな家に住んでますのね」


 私たちは先輩の家の前に立ちインターホンを押す。すると玄関の扉が開いてアーシアさんが出てきた。


「皆さん、お待ちしていました」
「アーシアさん、態々出迎えて頂いてありがとうございます」
「私いてもたってもいられなくて……皆さんがご無事で良かったです」


 アーシアさんは本当に優しい人ですね。恋のライバルとして見習いたいです。


「さあ皆さん入ってください、イッセーさんとルフェイさんもお待ちです!」
「先輩が!?こうしちゃいられません!」


 私は素早く靴を抜いてそろえる、そして急ぎ足で先輩の元に向かいます。リビングに入ると中にはエプロンを着た先輩がいて私を見つけるとおっ、と言いながら手を振ってくれました。


「小猫ちゃん、よく来てくれ……」
「先輩!」
「おわあッッ!?」


 私は先輩が話しているのも構わずに先輩に抱き着きました。


「先輩、会いたかったです……ふふっ、三日ぶりの先輩の温もりを感じます……」
「こ、小猫ちゃん……?」
『様子がおかしくないか?何と言うか吹っ切れたように見えるが……』


 先輩とドライグが何か話してますが私は抱きしめる力を強めて先輩の胸板に頭を擦り付けます。ああ、想いを自覚するとこんなにも違うんですね、この人が愛しいっていう気持ちがどんどんあふれる位出てきます。


「あらあら、小猫ったら早速お熱いわね」
「お邪魔するね、イッセー君」
「あら、綺麗に整頓されてますね。男の子の家に入ったのは初めてですがイッセー君はしっかりされていますのね」


 先輩の温もりを堪能していましたがそこに部長達もリビングに入ってきました。


「イッセー、お邪魔するわね。お蔭さまでレーティングゲームに勝つことが出来たわ。本当にありがとう。それに態々祝勝会を開いてくれるなんて……貴方には世話になってばかりね」
「気にしないでください、俺が馬鹿騒ぎしたいだけですから」
「そんな、それじゃ悪いわ。もし貴方が何か困ったら私に相談して頂戴、力になるわ」
「ならその時にお願いしますね。ささっ、それよりも今は祝勝会です、そこの席に座ってください。今料理を持ってきますから」


 先輩は私から離れてキッチンに入っていきます。先ほどから美味しそうな匂いがしていたので楽しみです。


「うわあぁ……ッ!」


 先輩が大きなお皿を持ってきてテーブルの上に置きました。お皿には空揚げや串カツ、チャーシューやエビフライ、色んなおかずが乗ったオードブルを前菜にカルボナーラやピザ、何とお寿司まで出てきました。


「凄いご馳走ね。もしかしてイッセーが作ったの?」
「ええ、これでも料理研究部の部長ですからね、アーシアやルフェイも手伝ってくれました」
「あらあら、女として複雑な気分ですわ」


 流石イッセー先輩です。まさかお寿司まで握れちゃうなんて凄すぎます。一通り料理が運ばれてきたので私たちはジュースの入ったグラスを持って乾杯します。


「じゃあ乾杯する前にリアスさんに一言お願いします」
「ええっ、私ッ!?それじゃあゴホンッ!……今回は私の為に色々してくれてありがとう。皆には迷惑かけちゃったけど本当に感謝しています。私の眷属は勿論の事イッセーやアーシア、ルフェイといった多くの人が助けてくれたから今回の勝ちを拾う事が出来ました。では今回のレーティングゲームを勝った記念として……乾杯ッ!!」
「「「「「かんぱーーーいッッッ!!」」」」」


 カーンとグラスを合わせてグイッとジュースを飲んでいきます。ぷはぁ、美味しいです。そこからは無礼講になって普段はあまり食べない祐斗先輩もかなりの量を食べていたし部長と朱乃さんが歌を歌ったりルフェイさんが魔術で手品をしたりしていました。
 私はイッセー先輩にあーんしたり逆にしてもらったりといっぱいイチャイチャできました。でもアーシアさんも負け時と先輩にくっついていました。


「けぷっ……お腹いっぱいです……」


 出された料理も殆ど食べてしまい皆満足そうです。


「ねえ皆、折角だしこれからカラオケにでもいかない?もうちょっとはしゃいでいたい気分なの」
「おお、いいですね。祐斗、二人でアニソンでも歌おうぜ」
「うん、いいね」
「なら私はアーシアちゃんとラブソングを歌ってみたいですわ」
「ラ、ラブソングですか!私、いっぱい想いを込めて歌います!」
「なら私は今流行りの魔法少女の歌でも歌おうかなー」


 どうやら二次会はカラオケで決まったようですね。あ、そうだ……


「あの、イッセー先輩……ちょっといいですか?」
「うん、どうしたんだ小猫ちゃん?」
「その……二人っきりで話したいことがあるんです……」





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ーーーーー

ーーー


 私は部長にお願いして皆を連れて先にカラオケ店に向かってもらいました。ですので今先輩の家にいるのは私とイッセー先輩だけです。


「それで小猫ちゃん、話って何だ?」
「先輩は覚えてますか?修行していた10日目の夜に話したことを……」
「ああ、レーティングゲームを終えたら話したいことがあるって言ってたよな」


 先輩、ちゃんと覚えていてくれたんですね……


「もしかして今から話したいことってそのことか?」
「はい、先輩には知っていてほしいんです、私の正体を……」


 私は頭に耳を、お尻に尻尾をだしてイッセー先輩に見せます。


「それは猫又の尻尾と耳……小猫ちゃんは猫又だったのか」
「知っているんですか?……はい、私は猫又という妖怪です。それも稀な存在である猫魈の末裔です」
「猫魈……」


 それから私は幼少の頃から各地を姉と共に彷徨っていた事、その姉と離れ離れになってしまった事、そしてリアス様の眷属になったことを全部話しました。


「……苦労していたんだな、小猫ちゃん」
「……先輩は私を怖いって思わないですか?」
「思わないよ。俺だって神器を持ってるから迫害される者の気持ちも分からなくはない。それに……」


 先輩はそっと私を包み込むように抱きしめてくれました。


「言っただろう?俺にとって重要なのは『塔城小猫』という一人の少女と出会えたことが一番嬉しいんだ。だから小猫ちゃんが妖怪でも関係ない、寧ろその耳と尻尾は可愛らしいと思う。小猫ちゃんによく似合ってるよ」
「先輩……はい」


 嬉しい……私はイッセー先輩と会えて本当に幸せです……でも今の私はちょっと欲張りになっちゃいました。このまま先輩と後輩の関係は嫌です。今ならチャンスですし……うん、今こそ先輩に想いを伝えます!


「あの先輩……私、もう一つ先輩に言いたいことがあるんです」
「ん、何だ?」
「あの……私、私……先輩の事が……す、す……好……ッッ!」


 ガシャンッ!


 ふわっ、何でしょうか!?何か扉から音がしたのでそちらを見てみると……


「…………」
「…………」


 扉からこっそりとこちらを見ている部長たちと目が合いました。


「……どうしてここにいるんですか?」
「……その、気になっちゃったからつい……」
「……」
「……えへ、ごめんね」


 ……ふふふっ、そうですか、気になっちゃっいましたか……


「もーーーッッッ!!!何やってるんですかーーーッッッ!!!」
「ご、ごめんなさい!でもね小猫、私は止めようって言ったんだけど朱乃がどうしても見たいって……」
「ちょっと、確かに言い出したのは私ですけどリアスだってノリノリじゃなかったかしら?」
「そ、そんなことないわよ!」
「ううっ、部長に言われたからって親友と妹のように思ってた女の子との逢引きをのぞき見しちゃうなんて騎士失格だよ……」
「はわわ、小猫ちゃん積極的です。私も負けていられません!」
「いやー、師匠も隅に置けないですね♪」


 うう、もう滅茶苦茶です。折角いい雰囲気だったのに……


「なあ、さっき言いかけていた事って何だったんだ?」
「あ、その……やっぱり今はいいです。また次の機会に話します」
「そうか。分かったよ」


 ……でもこのままお終いっていうのも嫌ですね。あ、そうだ。


「先輩、ちょっと屈んでもらえますか?私の目線と合うくらいに」
「こうか?」


 先輩は私の言う通りに目線が合うくらいに屈んでくれました。


「はい、それで大丈夫です」
「そうか。んで、これでどう……むぐっ!?」
「ん……」


 チュッ……


 私は先輩の頬に手を添えて先輩の唇に私の唇を重ねました。先輩は驚いたように固まってしまい他の人たちもポカーンとした表情を浮かべていましたが私は構わず先輩との口づけを続けました。そして数秒が過ぎた所で唇を離しました。


「こ、小猫ちゃん!?何を……!?」
「お礼です。私を助けてくれた白馬の王子様にファーストキスをあげました」
「いやお礼って……女の子が簡単に唇をだな……」
「先輩、行きましょう!」
「え、あ、ちょ……!?」


 顔を真っ赤にする先輩の手を取って外に向かいました。後ろで何か騒いでるような声が聞こえてきましたが今はどうだっていいです。


(先輩、私、もっともっと素敵な女の子になります。そして必ず貴方の最愛を勝ち取って見せます!)


 だから今はこれでいい。いつだって先輩が傍にいてくれますから。



「これからもよろしくお願いしますね、イッセー先輩♪」




 
 

 
後書き
 こんにちは、小猫です。遂に先輩と初キッスが出来ました!この調子でもっと深い仲に……おや、部長どうしたんですか?……ええっ!?私がイッセー先輩の家に住むことになったですって!?次回15話『先輩と同居ですか!?お引っ越しと狙えフグ鯨!?』でお会いしましょう。にゃん。 

 

キャラ設定

 
前書き
 キャラ設定を作りました。1話から14話まで読んでない方は注意してください。後原作のネタバレもあるのでそれが嫌という方も注意してください。 

 
【兵藤一誠】


 この小説の主人公。原作トリコのポジションに入っている。身長は184㎝、体格も良くなっている。髪の毛の色は青で顔に傷がありトリコと同じくらいの食事量、更に喧嘩も強いので他の生徒からは距離を置かれている。
 戦闘スタイルは肉弾戦でナイフとフォークをメインに戦う。また色々な武術も習っておりそれを小猫に教えることもある。本気を出すときは『赤龍帝の籠手』を使う。だが肉体的には原作トリコ程の身体能力はない、これはグルメ細胞が神器と上手く噛み合わず本来発揮できる力が出せないので籠手を使わないとナイフなどは出せない。
 性格はおおらかで基本的に差別はしない、また自分の信念はもっているがそれを相手に押し付けたりせずまた相手がどんな思想を持っていようと闇雲に否定したりはしない。だが命を無下にする奴には怒りを露わにすることもある。
 小猫やアーシアの事は可愛い妹的な存在で見ている。原作イッセーの性欲が食欲に変わったため色恋沙汰には疎い、寧ろ初心な所がある。でもヘタレではないので気持ちを知れば真剣に向き合う。
 原作トリコが博識なので頭はいい。でも英語は苦手。
 漫画やアニメを好んで見ている。
 


【ドライグ】


 イッセーの宿す神器『赤龍帝の籠手』の中に魂だけ入っているかつての二天龍。イッセーとは古くからの付き合いで切っても切れない仲であり無くてはならない存在である。当初は白との決着をつけたがっていたがイッセーと過ごすうちにそれが薄れ今では父親的な感情も持っている。
 イッセーの鈍感さには呆れておりそれを治すため小猫にちょっと期待している。




【塔城小猫】


 ヒロインでありもう一人の主人公。原作と違い姉の黒歌の件で悪魔に責められていないので感情豊かでよく喋るようになった。
 イッセーとは入学式の時に知り合いそこから彼に興味を持ち始めた。そして一緒に過ごしていくうちにイッセーに惹かれていきレーティングゲーム前の修行中に遂に自身の想いに気付いた。それからはイッセーに積極的にアタックしている。ちょっと暴走してしまう事もあるが……
 戦闘スタイルは原作と変わらないがイッセーから漫画に出てくる技を習って戦術の幅が広がり更に仙術も使えるようになった。だが姉と比べるとまだ使いこなせてはいないらしい。
 一人暮らしをしているので料理は出来る、イッセーに習いながら徐々にレパートリーを広げている。


【アーシア・アルジェント】


 ヒロインその2。でもちょっと小猫に押され気味かも……
 原作同様イッセーに助けられてそこから一緒に住んでいる。彼に好意を抱いており恋のライバルである小猫の事も好いている。
 レイナーレに殺されてないので人間のままでいる。修行で回復に磨きがかかったがイッセーがあまり怪我をしないので使う機会が少なくて悩んでいる。


【リアス・グレモリー】


 純潔の悪魔の一族『グレモリー家』の次期党首にて小猫の主。原作とさほど変化はないが滅びの魔力に磨きをかけて実力が上がった。イッセーの事は最初は人間という事で軽視していたが彼の強さを知ると謝罪する。それ以降はイッセーを気に入り小猫のパートナーになってほしいと思っている。
 15歳の頃に何者かに誘拐されてそこである人物に助けられていらいその人物を探している。


【姫島朱乃】


 リアスの女王。こちらも原作とあまり変わりはないがルフェイとの特訓で魔術の幅が広がり実力を上げる。イッセーと直接的な接点はなかったが小猫をいい意味で変えた彼に興味を持ち始める。


【木場祐斗】


 リアスの騎士。一年の時からイッセーの隠された実力に気付いていた。それ以降は彼を目で追っていた、イッセーと模擬戦をして彼の実力を知り親しくなった。
 アニメなども見ており魔剣創造の参考にしている。イッセーとの特訓で速さに磨きがかかり更に実力を上げる。イッセー曰く戦闘に関しては祐斗の潜在的能力はグレモリー眷属で一番らしい。


【ルフェイ・ペンドラゴン】


 イッセーの一番弟子。この小説では失踪した兄を探して旅をしている。イッセーに好意を持っているが小猫たちとは違い親愛のようなものである。少なくとも現段階では。
 修行を共にしたことでグレモリー眷属と親しくなり特にリアスと朱乃とはかなり仲が良くなった。イッセーが赤龍帝であること、グルメ界の存在の事も知っており実際に行ったこともある。




 余談だがオカルト研究部の部員は原作では朱乃のことは副部長と呼んでるがこの小説では基本名前で呼んでいる。変えた意味は特にない、作者が間違えて名前呼びにしちゃったからそのままにしただけ。
 
 

 
後書き
 とりあえずざっと上げてみました。今後設定が増えてきたら新たに紹介を作ります。 

 

第15話 先輩と同居ですか!?お引っ越しと狙えフグ鯨!?

side:イッセー


 よう皆、イッセーだ。俺は最近自分がおかしいって思うんだ。何でかと言うと最近食欲が落ちてしまったんだ。病気かと思ったけど医者に行っても何ともないらしいし一体俺はどうしちまったんだろうか?


『食欲がない?今朝もカレーを15杯も食べた奴が言う台詞じゃないな』
「いつもは30杯は食うんだぞ、半分も減っちまってるじゃないか……」
『知るか』


 一体俺はどうしちまったんだろうな、何からしくねえぜ。


『原因はあの白髪の小娘じゃないのか?』
「そ、それは……」
『明らかに意識してるだろうが。全く好きなら好きでさっさとヤってしまえば良いだろうに……』
「な、なに言ってるんだよドライグ!?」


 ドライグの奴、事あるごとに小猫ちゃんとの事をからかってきやがる。レーティングゲームの騒動が終わった日から小猫ちゃんのスキンシップが激しくなったような気がする。毎日朝一緒に登校するし昼に弁当を作ってきてくれるし常に時間があれば一緒にいるくらいだ。


『まあそのせいかあの金髪の小娘もスキンシップが激しくなってるようだし……クククッモテる男はつらいな?』


 そうなんだよな、小猫ちゃんに対抗してかアーシアもスキンシップが激しくなってきてるんだよな。風呂に裸で入ってきた時はビックリしたぜ。


「でも小猫ちゃんやアーシアといると俺も嬉しいのは確かなんだけどよ……いまいちこの感情が分かんねえな。今まで誰かに好意を持たれたことなかったからさ」
『……まあこれもいい機会だしゆっくりと考えてみる事だ』
「ああ、そうするよ」


 ドライグはそう言って眠りに入った。


「イッセーさん、こちらにいたんですね」


 声をかけられたので振り返るとそこにいたのはアーシアだった。


「アーシア、用事はすんだのか?」
「はい、待たせてしまって申し訳ございません」
「気にすんな、それより早く帰ろうぜ」
「そうですね。あ、その、イッセーさん?」
「ん、何だ?」
「その、手をつないでもいいですか?」
「手を?ああ、いいぜ」


 俺はアーシアの手を優しくつかんだ。


「えへへ、嬉しいです」
「じゃあ行こうぜ」
「はい!」


 俺はアーシアと手を繋ぎ家へと向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「イッセーさん、今日は何が食べたいですか?」
「ん~、そうだな……ジャガイモが結構残ってるしコロッケでも作るか」
「あ、いいですね。私も手伝います」


 アーシアと今日の献立について話しながら家へと向かう。揚げ物が食いたい気分だったしアーシアと一緒に作るか。


「あ、お帰りなさいイッセー先輩」
「こんばんは、イッセー」
「あれ?小猫ちゃんとリアスさん?」


 俺の家の前に小猫ちゃんとリアスさんが立っていた。もしかして俺たちを待っていたのか?


「二人ともどうしたんですか?俺を待っていたみたいですが……」
「ええ、夕暮れ時にごめんなさい。貴方に頼みたいことがあって……」
「頼みたいこと?まあ立ち話も何ですし家に上がってから話しましょう」


 俺は二人を家に入れてアーシアにお茶を用意してもらう。


「はい、どうぞ」
「ありがとう、アーシア」
「すみません、アーシアさん」


 アーシアが二人にお茶を渡して俺は本題に入った。


「それで俺に頼みたいっていうのは何ですか?」
「ええ、実は小猫が使っているアパートが老朽化が酷くて壊すことになったの」
「ええ、そうなんですか?というか小猫ちゃんアパートに住んでいたんですね。もっと高級マンションみたいな所に住んでるのかと思ってました」
「あまり高級そうな所は好きじゃなくて……」
「話を戻すわね。その関係で小猫が住む場所がなくなってしまうの、それでもしイッセーが良ければこの子を預かってほしいの」
「俺は構いませんがそんなことしなくてもリアスさんなら住む場所くらい直に用意できると思いますが……」
「えーと、それは……そう!この子人見知りだから前住んでたアパートもこの子以外住んでなかったのよ!だから小猫が懐いてる貴方なら安心して任せられると思うの!お願い、生活費はちゃんと入れるから考えてくれないかしら?」


 リアスさんは何やら焦ったような口調で話す。まあ困ってるなら力になるつもりだし別にいいんだけどな。


「俺はかまいませんよ。どうせ見栄で大きい家を持ってますし部屋も余ってますから。アーシアもいいか?」
「はい、小猫ちゃんが来てくれるならもっと楽しくなりますね」
「ありがとう、イッセー。良かったわね、小猫。これでアーシアに追いつけるわよ」
「そ、それは言わないでください!」


 その後はリアスさんが祐斗と朱乃さんを小猫ちゃんの荷物ごと魔方陣で呼び出して一時間ぐらいで引っ越しは終わった。悪魔の技術ってやっぱ凄いな。その後は皆で引っ越しそばを食べている。コロッケを作る予定だったがまあ今度にしておこう。


「おそば美味しいです~」
「イッセーって蕎麦も打てるのね。食べる事に関しては何でもできちゃうのかしら?」
「流石にその道でやってるプロには勝てませんよ」


 よしよし、俺の作った蕎麦は好評らしい、良かった良かった。


「所でイッセー、一つ質問をしてもいいかしら?」
「はい、何ですか?」
「前に貴方たちの料理研究部の様子を見に行ったんだけどだれもいなかったの。でも小猫は貴方の元に行ってたし一体何をしてたの?」
「あー、それは……」


 まずいな、いつかは感づかれると思っていたが結構早かったな。ここ最近小猫ちゃんをグルメ界に連れて行きすぎたのが仇になったか。小猫ちゃんとアーシアも心配そうな顔で俺を見ている。さてどうしたもんか……


「……もしかして話しにくい事?私は貴方を信用してるから変な事はしてないと思うけどやっぱり小猫の主として行動位は把握しておきたいの。駄目かしら?」
「……そうですね、小猫ちゃんを預かってる以上保護者でもあるリアスさんには話しておくべきですね」


 構わないよな、ドライグ?


『いちいち止めるのも疲れたしお前が信じたならそれでいいさ。どうせ一龍に怒られるのはお前だけだしな』


 ありがとう、ドライグ。


「折角だしここにいる全員に話すよ。俺の秘密を……ただこれは絶対に他の人に話さないってことを約束してほしい」
「そこまでの事なの?……分かったわ、ここにいる全員が秘密を守ることを誓うわ、貴方たちもいいわね?」
「はい、僕も話しません」
「私もですわ」


 俺はリアスさん、祐斗、朱乃さんの言葉を信じてグルメ界の事を話した。


「「「……………」」」
「えっと、一応俺が話せるのはこのくらいなんですが……」


 三人はどういった表情をすれば分からないといった困惑した様子だった。


「……ごめんなさい。驚きの余り思考が停止していたわ」
「無理もないですわ。私もイッセー君じゃなければ到底信じられない話ですし……」
「まさか異世界だなんて……イッセー君にはいつも驚かされるね」


 三人は俺の話を聞いて信じてはくれたようだがやはり頭が追い付いていないのだろう。よし、なら実際に見てもらったほうが早いな。


「なら実際に行ってみましょう、グルメ界にね」


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「これは……」
「まさか実際にお菓子の家を目にする日が来るなんて……」


 異次元七色チョウの力でグルメ界に来てもらったわけだがリアスさんたちは目の前に立つお菓子の家に驚いているようだ。


「うわ、石かと思ったらこれはチーズじゃないか」
「あら、これ木じゃなくてチョコだわ」
「本当に見た事もない食材だらけですわね。まるで子供の頃に読んでいた童話の中に入ってしまったようですわ」


 更に周りにあるチーズ岩やチョコレートの木など見た事もない食材の数々を見てようやくこの光景が現実だと頭が追い付いたようだ。


「部長達の驚きって冷静に考えれば当り前ですよね、魔法や他種族が存在する私たちの世界でもありえないものばかりですし」
「あはは……私たちはすっかり慣れちゃいましたね」


 そういえば小猫ちゃんやアーシアも初めてここに来たときは驚いてたしあっちの世界の住人なら普通の反応か。


『俺たちは慣れ過ぎてしまって寧ろああいった反応の方が珍しいからな』


 ドライグも最初は『な、なんだこの世界は!?』って驚いてたしな。


『……言うな、恥ずかしい』


 恥ずかしがることはないと思うがな、まあドラゴンとしてのプライドが許せないんだろう。


「ねえイッセー、小猫が修行する前から私たちより実力を上げていたのはこの世界に来ていたからなのかしら?」
「ええ、俺は美食屋として様々な危険地帯に行ったりしてます、小猫ちゃんやアーシアもそれに付き合ってるんです」
「そう、ねえイッセー。もし貴方が良ければ私たちもそれに連れて行ってくれないかしら?」


 俺はリアスさんの言葉に少し驚いた。


「危険ですよ?ヘタをすれば悪魔でも死にかねないことだってあります」
「それでもお願いしたいの。今回のレーティングゲームは貴方のお蔭で何とかなったけど今後またライザーのような輩が、いえもしかしたらライザーなんて比べ物にならない強者が立ちふさがるかも知れない。その時に眷属を守れるように強くなりたいの」
「本当に危険ですよ?俺も助けられない状況にもなるかもしれないし死ぬ覚悟も必要になりますがいいんですか?」
「構わないわ」
「イッセーくん、僕からもお願いしたい。騎士として皆を守れるくらい強くなりたいんだ」
「私もイッセー君のように強くなりたいですわ、リアスの女王として……だからお願いします」


 ……どうやら三人の決意は本物のようだな。


「分かりました。そこまで言うなら俺はかまいません。『思い立ったら吉日、その日以降は全て凶日』ってのが俺の信条ですからね」
「あら、素敵な言葉ね」
「なら明日早速行きましょうか、美味い深海の珍味を食べにね」


 丁度例の食材が出てくる時期だし皆も連れていく事にしよう。そうだ、久しぶりにココ兄に会いに行くとするか。ココ兄なら俺が向かうことくらいもう把握してるだろうしココ兄じゃなきゃ調理できないだろうしな。


「待っていろよ、フグ鯨!!」


 
 

 
後書き
 こんにちは、小猫です。先輩が向かうのは占いの街という場所らしいんですが今回の食材に何か関係があるんでしょうか……ええっ!?先輩のお兄さんがいるんですか!?次回16話『イッセー先輩のお兄さん?四天王ココ登場!!』でお会いしましょう。にゃん♪ 

 

第16話 イッセー先輩のお兄さん?四天王ココ登場!!

 
side:小猫


 どうもこんにちは、小猫です。私たちグレモリー眷属はイッセー先輩とアーシアさんと一緒にとあるグルメ食材を求めて列車の旅を楽しんでいます。特にアーシアさんは今まで列車に乗った事がないのか先程から外の景色が流れていくのを楽しそうに見ています。
 えっ?学校はいいのかって?今日は向こうの世界は土曜日なので学校は休みです。


「かぁ~、列車に乗りながら食う駅弁は格別だな!いくらでも食えちまうぜ」


 イッセー先輩は先程駅で大量に購入した駅弁を食べながら列車の旅を楽しんでいる、私も先輩の隣の席でストライプサーモンの鮭弁を食べています。美味しいです。


「小猫もだけどイッセーって本当によく食べるのね……」
「見ていてお腹が一杯になりそうですわ」


 同じ座席に座る部長や朱乃さんが少し呆れたように苦笑を浮かべた。因みに私たちが座っている座席はコの形になっており部長と朱乃さん、アーシアさんにイッセー先輩と私、そして祐斗先輩の順に並んでいる。


「それにしても凄い所を走ってるんだね、この列車」
「グルメ食材は様々な所にありそこに人が集まって村や町になるからな。もっと過酷な場所も沢山あるしこんなもんは序の口だぞ」


 私たちが乗ってる列車は峡谷の狭い岩山の上を走っています。先輩が言うにはこの世界は様々な場所にグルメ食材があり一般の人でも行けるように列車や飛行船、または船などの交通手段が向こうの世界よりも発達しているらしいです。


「所でイッセー先輩、わたしたちは今どこに向かってるんですか?」
「そういや言ってなかったな。俺達が向かっているのは『グルメフォーチュン』という町だ」


 フォーチュン……運命や幸運を意味する言葉ですがどんな町なんでしょうか?


「グルメフォーチュンは古くから易学で栄えてきた町なんだが一番の特徴が占いなんだ」
「占い……?」


 部長が首を傾げますが占いが特徴な町とは……よっぽど当たるんでしょうか?


「ああ、グルメフォーチュンの占いは当たると評判でな、大手企業や投資家、または一般人など数多くの人間がこの町を訪れるんだ。今回の食材であるフグ鯨の情報もある占い師によるものだからな」
「フグ鯨……それが今回狙う食材なんですね」


 前は虹の実だったけど今回はフグ鯨……名前からしてお魚ですよね。


「フグ鯨はフグの淡白で歯ごたえのある触感と鯨の肉厚で脂の乗った二つのいいとこどりをした食材だ」
「フグは食べた事あるけど鯨は無いわね」
「どんなお魚か楽しみです」


 私も部長や皆と一緒にフグを食べた事はありますがフグ鯨はフグの美味しい所に鯨の美味しい部分をもった魚……絶対に美味しいですね。


「ただフグ鯨は強力な毒を持っていてな。普通のフグをさばく免許は俺も持っているがフグ鯨は『特殊調理食材』と呼ばれる厄介な食材で俺ではさばけない」


 先輩フグもさばけれたんですか……それはそうとそれじゃフグ鯨を食べる事は出来ないんじゃないでしょうか?


「もしかしてそのグルメフォーチュンにフグ鯨をさばける人がいるのかい?」
「鋭いな祐斗。今向かっているグルメフォーチュンにフグ鯨をさばける人間がいる。俺の知り合いだ」


 イッセー先輩の知り合いの方ですか、どんな方なんでしょうか?……まさか女性ではないですよね?


「おい爺さん!ふざけた事言ってんじゃねえぞ!」
「そうはいってものぅ……あっしは高けぇ所が苦手でして……その酒が無いと怖くて震えて震えて……」
「だからって全部の酒を買いしめやがって!俺を舐めているのか!?」


 前の座席から何やら大きな声が聞こえてきたので何事かと思いそっと覗き込んでみます。そこで見えたのは大柄の男性が何本もの酒ビンを持った白髪のリーゼントのお爺さんに絡んでいる光景でした。


「何事かしら、物騒ね」
「あの男性がお爺さんに一方的に絡んでいるように見えますが……」
「あのお爺さん、中々にイカした髪型をしてるね」


 部長達もそっと覗き込んで様子を伺っています。もう、折角の旅気分が台無しです。


「私ちょっと文句を言ってきます!」
「あ、小猫!?」


 私はいまだに叫んでいる男性の傍に行き声を掛けました。


「ちょっと!貴方が叫ぶせいでこっちは迷惑をしてるんですよ!公共の場でそんなに騒いで恥ずかしくないんですか!ましてやそんなか弱いお爺さんをイジメるなんていい大人が恥ずかしいです!!」
「何だと~?てめぇ俺様が誰か分かってんのか?お?俺様は美食屋ゾンゲ様だ!!俺様のフルコースを教えてやろうか!何と俺様のメインディッシュはあのガララワニだぞ!この前ぶっ殺して食ってやったのさ!美味かったぜ!!」


 ゾンゲと名乗る男性は私に自身のフルコースを見せてきました。メインディッシュのガララワニにはちょっと驚きましたがイッセー先輩だってガララワニを倒したしこんな程度では怯みません!


「イッセー先輩の方が遥かに凄いです!貴方のメインディッシュだって軽々と倒しちゃったんですから!」
「何が先輩だ。俺様より凄い美食屋なんぞ……」
「呼んだか、小猫ちゃん?」
「ん、何だてめえは?」


 私とゾンゲが言い争っているとイッセー先輩がこちらに来てくれました。


「先輩!どうしてここに?」
「いや小猫ちゃんが心配でちょっと様子を見にな」
「私を心配してくれたんですか?嬉しいです、イッセー先輩!」


 私はギュッと先輩に抱き着く。こういう何気ない優しさが本当に好きです。


「何俺様をほったらかしにしてイチャついてやがる!てめえら、なめていやがるのか!?」
「まあまあゾンゲ様、相手は子供ですよ?そんなに絡んだら怯えてしまいますよ。ここは大人の俺たちが譲ってあげてもいいのでは?」
「ふん、それもそうだな。おい爺さん、俺様は優しいからな。一本ですませてやるから早くよこしな」


 ゾンゲたちはそういうとシッシッと私たちを追い払うようにしてお酒を持って去っていきました。ふん、あんな下品な人嫌いです!


「あ、戻ってきました。お二人とも大丈夫ですか?」
「ああ、何ともないよ。心配かけたな、アーシア」


 私と先輩は元の席に戻り部長達に事情を話しました。


「なるほど、あのお爺さんがお酒を買い占めたから怒ってたのね」
「それにしたってお爺さんを相手にあの態度はどうかと思いますわ。やっぱり男性は紳士的じゃないと……ねえイッセー君?」
「災難だったね、それにしてもかっこいい髪型のお爺さんだったな……」


 部長達も思い思いの反応をしていました。でも朱乃さん?どうしてイッセー先輩に色っぽい視線を送ってるんですか?後祐斗先輩はああいうのが好きなんですか?


「あの~……」


 私たちが話しているとさっきのお爺さんがこちらに来ていた。


「あ、さっきのお爺さん。どうかしましたか?」
「いえ……お嬢ちゃんにお礼をと思ってな……見ず知らずのあっしの為にありがとうごぜえました」
「気にしないでください。でもお爺ちゃんもあまりお酒ばかり飲んでいてはダメですよ?」
「へえへえこんな可愛らしいお嬢さんに心配して貰えるたぁあっしも捨てたもんじゃねえなぁ……この恩はきっといつか返します……それでは……」


 お爺さんはそう言って去っていきました。でも可愛らしいだなんて……お上手な人ですね。


「うふふ、先輩。私可愛らしいですって」
「まあ事実だしな」
「もう先輩まで私を褒めちゃって……もう♡」


 先輩の胸板にしなれかかり指で先輩の胸にハートを描く。先輩に可愛らしいっていわれちゃった……


「小猫ちゃん、いくらなんでもがっつきすぎだよ……」
「本当に恋って人を変えるのね……」


 部長達が小さい声で何か言ってますが私は構わずに先輩に甘え続けました。


「小猫ちゃんくすぐったいって……それよりも皆、そろそろグルメフォーチュンに着くから降りる準備をしておけよ」


 あ、もう着いちゃうんですか。名残惜しいけど私たちは列車から降りる準備をしました。でも先輩の知り合いの方って一体誰なんでしょうか?会うのが楽しみです。


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「これはどういう事なんでしょうか?」


 グルメフォーチュンに降り立った私たちが最初に見たのは人が一人もいない光景でした。えっ、降りる場所を間違えてませんよね?


「どうやら猛獣が出る時間帯みたいだな?」
「え、この町って猛獣が出るの!?」


 先輩の言葉に部長が驚いてますが私たちも驚いています。町に猛獣が出るなんて大丈夫なんでしょうか?


「たまに出るらしいぞ。この街の占い師が猛獣が出る時間帯を占い住人はその時間になったら毒で出来た家の中に避難している。その占いのお蔭で猛獣による犠牲者は数十年全くいないとされている。それがこの町の占いの信用に繋がってるんだ」


 へ~、本当によく当たるんですね。流石は占いの町ですね。


「ん?あれは……!?イッセーくん、大変だ!人がいるよ!」


 えっ、猛獣が出る時間帯に誰か出てるんですか!?祐斗先輩が見る方向に歩いている人がいます……しかもすぐ傍に猛獣がいるじゃないですか!早く助けないと!


「先輩、早く助けないと!?」
「大丈夫だ、まさか向こうから来てくれるなんてな……」
「えっ、それって先輩が言っていた……?」


 猛獣は大きな口を開けて歩いている人に襲い掛かろうとしましたが直前で止まり何故か去って行ってしまいました。


「ど、どういう事なの?」


 部長達も驚いてますが先輩は一人こちらに歩いてきた人に話しかけます。


「そっちから来てくれるとは思わなかったぜ。ココ兄」
「大事な弟分だからな。所でイッセー、お前はどれだけフルコースを決めたんだ?」
「まだデザートだけだ。ココ兄の占いの通りだったな」
「それは良かった」


 え、ココ兄……?イッセー先輩のお兄さんですか?


「皆、紹介するよ。彼はココ。俺の兄貴で四天王の一人だ」
「初めまして、イッセーの友達かな?俺はココ、元美食屋でこの町で占い師をしている。よろしく」



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「そうか、学校生活も楽しんでいるようで良かったよ」
「ああ、美食屋だけじゃ得られない貴重な体験をさせてもらっているよ」


 私たちはイッセー先輩のお兄さんであるココさんの案内で彼の家に向かっています。でも先輩すごく楽しそうだな、あんな顔見た事ないです。


「イッセーってお兄さんがいたのね。とても仲がよさそうだわ」
「でも顔や髪の色は似てませんわね」
「義理の兄弟なのかな?」


 部長達も先輩のお兄さんであるココさんについて話してますがよく考えれば先輩の家族関係って私たちは全く知らないんですよね。私たちと同じ世界の出身だって事は分かりますがそれ以外はからっきしです。でも何か事情がありそうですしそんな気軽に聞けることじゃないですよね……


「所で彼らはもしかして……」
「ああ、ココ兄の思ってる通りだ」
「……いいのかい?あまりこちらの世界と向こうの世界の住民が行き来するのはよくないと思うが……」
「他の奴らはどうかしらんが小猫ちゃんたちは信用できると判断したまでだ」
「……そうか、まあいいさ。君がそういうなら大丈夫だろう、僕の占いでも悪い結果は出ていないしね」


 先輩たちが何か話してますがここからじゃ聞こえないですね、何を話してるんでしょうか?


「見えた、あれが僕の家だよ」


 ココさんの家は断崖絶壁の先にある細い岩山の上にありました。え、でもどうやって行き来してるんですか?


「キッス!!」


 ココさんが口笛を吹くと空から大きな鴉が降りてきました。


「巨大な鴉!?何て大きさなの!」
「空の番長『エンペラークロウ』じゃないか。絶滅種が仲間にいたのか」
「家族のキッスだ。キッス、七人いるが運べるか?イッセーは重いぞ?」

 
 キッスは問題ないと言わんばかりに羽を広げました。


「じゃあ皆、乗ってくれ。悪魔の皆は飛べるかもしれないが大事なお客様だからね」
「え、ココさん、貴方悪魔の事を……」
「イッセーから聞いてるからね。大丈夫さ、この世界じゃ人間も悪魔もそう変わりないさ。……僕と比べればね」


 ……?ココさんの最後の言葉が聞こえませんでしたが何か悲しそうな顔をされたような……


 私はそんな事を考えましたが見間違いかも知れませんし今はキッスの背中に乗せてもらいましょう。キッスは私たち七人をのせても何ともなさそうに飛んでくれました。


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「遠慮しないでくつろいでくれ」
「あ、ありがとうございます」


 ココさんの家に着いた私たちはココさんの作ってくれた料理を食べています。とっても美味しいです。


「さて早速だけど本題に入ろうか。僕の元に来たのはフグ鯨を捕獲する為だろう?」
「流石はココ兄、話が早いぜ」


 よく当たる占い師だけ合って既に私たちの目的を知っていたようです。


「あ、あの。ココさんってフグ鯨をさばけるんですか?」
「ん?ああ、そうだよ。ただフグ鯨は別名『ミジンコ鯨』と呼ばれるほど個体のサイズが小さく本来のフグくらいの大きさだ。そのため普通のフグをさばく要領で料理する人が多くフグ鯨が出回る年は大体10万人が中毒で亡くなっている」
「10万人……!そうやって聞くととんでもない数ね」


 普通のフグでもそこまではいかないです。部長が驚くのも納得です。


「まず最初に言っておく。僕でもフグ鯨を毒化させずに捕獲できるのは五割ほど……更に毒袋を取り除ける確率は二割ほどしかない」
「俺じゃあ確率はゼロだ。問題は無い」
「それだけじゃない。近年フグ鯨の産卵場所となっている『洞窟の砂浜』……全長数十㎞深さ800mにも及ぶ洞窟を抜けなければならない。更にはあの『デビル大蛇』が洞窟内に生息している、他にも危険な猛獣が何匹も……」
「なあココ兄、嫌に不安を煽ってくるがもしかして俺たちの中に死相でも見える奴がいるのか?」
「……!?ッ」


 ……死相?何だか物騒な事を言ってますがどういう事なんでしょうか?


「……分かった、君たちに同行しよう」
「ヨッシャー!流石ココ兄!依頼料は言い値で払うぜ!」


 どうやら話がまとまったみたいですね。ちょっと不安ですが先輩がいれば大丈夫ですよね。


「アーシアさん、私たちも頑張りましょう」
「はい、小猫ちゃんも頼りにしてますね」


 あれ?ココさんがこちらを見ていますが何かあるんでしょうか?




(ヤバい……超見える……)



 
 

 
後書き
うふふ、朱乃ですわ。私たちはフグ鯨を求めて洞窟の砂浜に入りましたがこの世界の危険性を思い知らされましたわ。でもわたくしたちが行くと決めた以上弱音何て吐いてられませんわね。次回第17話『探索、洞窟の砂浜!美食屋ココの悲しき過去』ですわ。人は誰だってつらい過去を持ってるものですわね…… 

 

第17話 探索、洞窟の砂浜!美食屋ココの悲しき過去

side:小猫


 ココさんの家を後にした私たちは洞窟の砂浜の入り口に来ています。いよいよグルメ食材の捕獲が本格的に始まりそうです。


「全く……うちの食材をほとんど平らげたと思った途端に出発とは。相変わらずせっかちな奴だ」
「思い立ったら吉日!その日以降は全て凶日だぜ、ココ兄!」


 あまり乗り気ではないココさんとは逆にイッセー先輩は張り切っています。ココさんが乗り気じゃないのは死相とやらが原因なのでしょうか?


「それにしてもこの辺りに人が沢山いるのは何故かしら?」
「美食屋にしては殺気だってますね」


 部長と祐斗先輩は洞窟の砂浜の入り口周りにいる人たちを見て怪訝そうな表情を浮かべています。


「あいつらは殺し屋や盗賊だ。大方捕獲したフグ鯨を奪う為にああやって待ち構えてるんだ」
「こ、殺し屋さんですか……イッセーさん、私怖いです……」
「大丈夫だ。あの程度の奴らに遅れは取らんさ」
(……ほぼ全員に死相が見えるな。僕やイッセーが手をかけるとは思えない……それだけの奴が中にいるのか?)


 アーシアさんが殺し屋と聞いて怯えますがイッセー先輩から食材を奪えるなんて到底思えません。それよりもココさんが何か警戒するような表情を浮かべているのが気になりました。


「うおおおおぉぉぉっ!!!帰るぞーーーーっ!!!」
「えー!?ゾンゲ様、フグ鯨は!?」
「もう止めだ、止め!!もうキモいこの洞窟!!」


 洞窟の砂浜の入り口から大きな声を上げながら誰かがこちらに走ってきました。ってあの人は……


「---っ……に、逃げ切れたようだな……ん?あ!てめぇらは!?」
「何だ、誰かと思ったらさっきのおっさんじゃねえか。たしかサ〇ゼリアだったっけ?」
「誰だソレ!?ゾンゲだよゾンゲ!美食屋ゾンゲ様だ!なんか美味そうな名前だな!?」


 先輩、それはとあるレストランの名前ですよ……


「もしかしてフグ鯨を捕獲できたのか?」
「ん!?あ…ああ……そーだなァ、捕獲する直前まで行ったんだが……」
((嘘ついてるーーーっ!))
「ほ、ほらあれだ!簡単に捕獲出来たらつまらねえだろう!俺様はRPGとかもやりこんでからクリアするタイプだしな!ラスボスとかもサブイベントとか最強装備をそろえてからとかやってからじゃねえともったいねぇだろ?」
「まあ確かに俺もトロフィーとか全部取りたい派だしな……」


 ゾンゲの滅茶苦茶な言い訳にイッセー先輩は信じ込んでしまいました。先輩って意外と天然なんでしょうか?


「さてと、俺たちもいい加減に出発するとするか!じゃあな、ゾンビ!」
「だからゾンゲ様だって言ってるだろうが!!」


 叫ぶゾンゲを後にした私たちは洞窟の砂浜内部に入りました。中はとても広いですが暗い暗黒の世界が広がっていました。


「真っ暗ね……私たち悪魔は暗闇でもよく見えるけどそれでも見づらいと感じるなんてよっぽどの暗さなのね」
「ええ、注意しないといけませんわね」


 私たち悪魔は暗闇でもよく見える目なんですがそれでも注意して進まなくてはいけない程の暗さです。


「アーシアはライトを付けて俺の傍にいるんだ。離れるなよ?」
「はい、お願いしますイッセーさん」


 イッセー先輩はアーシアさんと手を繋いでいくようです。羨ましいですが流石に自嘲しないと……


「僕が先導しよう。皆は離れないようについてきてくれ」


 ココさんはそう言うと先に奥に向かっていきました。こんな暗いのに大丈夫でしょうか?


(暗闇は好都合だな……人は視覚からほとんどの情報を得る。悪魔は分からないが少なくとも慎重な行動をとるはずだ……)
「先輩!ここにキノコが生えてますよ!」
「あーーーっ!『ポキポキキノコ』じゃねえか!」
(ってもう勝手な行動しとるーーーっ!?)


 ココさんが大きなお口をあけて驚いてますが何かあったんでしょうか?私はポキポキキノコを食べながらそんなことを考えてました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 私たちは洞窟の砂浜を進んでいますが急斜面だったり急に通路が狭くなったりとする道に悪戦苦闘しています。ただでさえ視界が悪いのにこれじゃあ上手く進めません。


「グルメ食材を取るのって本当に大変なのね……正直舐めていたかもしれないわ」
「でもココさんは人間なのによくこんな暗闇をスイスイ進めるね」


 私たち悪魔でも見づらいこの暗闇をココさんはまるで気にもせずに進んでいます。


「ココ兄は目がいいんだ、とは言っても視力じゃないぞ。ココ兄の目は普通の人間が見える可視光線の波長を大きく超える電磁波まで捕えることができるんだ。錐体細胞の種類と視細胞の数が多い為赤外線から弱い紫外線まで見えるらしい。ココ兄からすればこの暗黒の世界も真昼間のように見えてるだろうぜ」


 む、難しい言葉が多くて内容はよく分かりませんがとにかくココさんの視覚は凄まじく凄い事だけが分かりました。先輩の嗅覚もそうですがもしかして四天王という方々は五感のどれかが驚異的に凄い方々なのでしょうか?


「む、皆止まってくれ」


 先導していたココさんが止まれという合図をされたので皆が立ち止まりました。


「どうかしたんですか、ココさん?」
「静かに……よーく目を凝らして下を見てごらん」
「下ですか?」


 どうやら先は大きな段差になっておりその下になにかいるみたいです。そういえばさっきからガサガサと音がしますがそれが関係してるのでしょうか?


「……!?ッな、何あれ!?」


 部長が何かを捕らえたようです。ようやく目が慣れてきたのか下にいる何かが見えてきました……って何ですかあれは!?下にはゴキブリのような昆虫が大量に潜んでいました!


「あれは『サソリゴキブリ』!!ここはあいつらの巣か!?」


 サソリゴキブリという生物なんですか?女の子には受け入れがたい生物です。


「きゃぁぁぁ!?」


 その時でした、私達以外の悲鳴が聞こえたと思ったら何かがサソリゴキブリの巣に落ちていきました。


「あれは他の美食屋か!?不味いな、ほっといたら数秒で骨にされちまうぞ!」
「なら早く助けないと!」


 私は急いで巣の中に落ちた美食屋の人を助けに行こうとしましたが先輩に止められました。


「待て小猫ちゃん!サソリゴキブリは猛毒を持っている、悪魔の君でも危険な毒だ!」
「じゃあどうするんですか!」


 こうしている間にもサソリゴキブリが落ちた人を襲おうとしています。


「皆、下がっていて。ここは僕が行こう」


 ココさんはそう言うと巣の中に向かって飛び込みました。


「ココさん!?危険ですわ!」
「止めるんだ、ココさん!」


 朱乃先輩や祐斗先輩も止めようとしましたが間に合いませんでした。このままじゃココさんまで……!


 でも私たちの心配は憂鬱に終わりました。何故ならサソリゴキブリはココさんを襲うどころか一斉にココさんを避けるように逃げていったからです。


「ど、どうなってるの……?」


 部長が困惑したようにそう言いますがオカルト研究部の全員が驚いています。何に驚いたかというとサソリゴキブリがココさんを避けたからではなくココさんの体のほとんどが紫色に変色していたからです。


「大丈夫かい?」
「あ、はい……ありがとうございます」
「怪我はないようだね。よし、皆も降りてきてくれ。今のうちにここを通り抜けよう」


 私たちは困惑しながらもココさんの指示に従い無事にサソリゴキブリの巣を抜ける事が出来ました。


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「うっそ―――――っ!?美食屋ココ!?まさかこんな所で四天王の一人に会えるなんて!これは滅茶苦茶美味しいニュースになりそうね!」
「クルッポー!」


 何とココさんが助けたのはティナさんでした。でもどうしてティナさんがここにいるんでしょうか?


「おいティナ。お前なんでこんな所にいるんだよ」
「それが聞いてよイッセー。私、フグ鯨の映像を取るために美食屋を雇ってここに来たんだけど速攻で裏切られて猛獣の囮にされたの!それで死に物狂いで逃げてたら穴に落ちちゃってあそこに出たわけなの」
「運がいいのか悪いのか……その行動力だけは本当に凄いな」


 前も危険な場所に来ていたしティナさんって結構アグレッシブな人なんですね。


「イッセー、この人は知り合いなの?」
「初めまして、私グルメリポーターのティナと申します。っていうかイッセー、誰よこの美少女は?もしかしてイッセーの彼女かしら?」
「俺の仲間だよ。こっちからリアスさん、朱乃さん、そして祐斗だ」


 簡単な自己紹介を済ませた後ティナさんも一緒に先に進むことになりました。
 本当は危ないからやめておいた方がいいと私は行ったんですが、今から入り口に戻るのも面倒だし本人が覚悟して来てるならいいだろうとイッセー先輩が言い、ココさんも渋々それに同意しました。


「あの、ココさん?」
「うん?何だい小猫ちゃん?」
「その、さっきの姿は一体何だったんでしょうか?」


 さっきの紫色になった現象がふと気になったのでココさんに質問してみましたがココさんは少し嫌な事を思い出したような苦い表情をされました。イッセー先輩も何か言いにくそうな様子でしたがもしかして地雷を踏んでしまったのでしょうか?


「あ、もしかして言いにくい事ですか?すみません、私ってば軽率な事を……」
「いや、もう見られているし隠す事でもないさ。さっきのあれは毒を出していたんだ」
「毒……ですか?」
「そう、僕は体内に毒を持ってるのさ。僕たち美食屋の多くは毒を持つ生物に対抗するためにあらかじめ人工的に免疫を作ることがあるんだ。自然界にある毒草や毒を持った虫、それらの毒を微量ずつ定期的に体内に入れる事によって人工的に免疫を作るんだ」


 なるほど、あらかじめ毒に対する免疫を作ることによって毒が効かないようにしているんですね。


「だが自然界に存在する毒の種類は数百とも数千とも言われている。全ての毒に対しての抗体を作るのは実質不可能……俺で大体70種類だがココ兄は500種類の抗体を持っている。美食屋でもトップの数だ」


 500種類ですか!?そんなにも抗体を持ってるなんて凄いです!


「はは……僕は常人では耐えられない量の毒に耐えられる体を持っていた。でも余りにも短期間に多くの毒を注入した結果僕の体内で毒が混ざり合い新たな毒が生まれてしまった。さながら僕は毒人間ってところか……全く品のない存在さ……さあおしゃべりはここまでにして先を目指そう。洞窟の砂浜はまだ先だ」


 ココさんは自虐するように笑って一人で歩いていってしまいました。その背中は何だか悲しそうに見えました。


「ココさん、何だか寂しそうです……」
「……多くの科学者やIGOの医療班などがココ兄の血液から新たな血清を精製しようと追いかけまわしたこともあったしココ兄本人が第一級の危険生物として隔離されそうにもなったことがあるんだ。美食屋を離れたのもそういったしがらみから抜け出したかったんだろう」


 危険生物だなんて……まだ出会って少ししかたっていませんが私はココさんは危険だなんて思いません。先導しているときによく危ない場所を注意をしてくれたりさっきだって何も言わずにティナさんを助けてました。先輩と同じでとっても優しい人だって思います。きっと皆そう思っています。


「私はココさんが怖いなんて思いません」
「わ、私もココさんはいい人だって思います!」
「ふふっ、私も同意見ですわ」
「イッセー君のお兄さんが怖い人な訳がないよ」
「ええ、皆そう思ってるわ」
「私も今日初めて四天王ココにあったけどやっぱり噂なんてアテにならないわね。真実は自分の目で見なくちゃ」


 やっぱり皆も私と同じように思ってくれています。


「……そうだな、俺だってそう思うさ。ココ兄は自慢の兄貴だから……皆ありがとうな、皆ならきっとココ兄も本当の意味で心を開いてくれるはずだ。やっぱり皆は最高の仲間だよ」
「イッセー先輩……」


 イッセー先輩も嬉しそうに笑ってくれた。ココさんにも笑ってほしいです。だから私たちの素直な気持ちをココさんに伝えます。


「行きましょうアーシアさん!」
「はい、小猫ちゃん!!」


 私とアーシアさんは走って先に歩いていったココさんに向かってダイブしました。


「なっ!?一体どうしたんだ二人とも!?」
「えへへ、何でもないです」
「それよりもココさん、イッセーさんの小さい頃ってどんな感じだったんですか?私知りたいです!」
「あ、それは私も知りたいです!どうなんですか、ココさん?」


 グイグイとココさんに引っ付いて怖くないよってアピールする私たち。ココさんは動揺してるけどもっともっと仲良くならないと!


「き、君たち離れるんだ!僕には毒が……!」
「毒なんて皆持ってますよ。私も小さい頃は毒舌でしたし」
「ココさん、『水清ければ魚棲まず』です。人間毒があったほうが好まれますよ」
「き、君たち……」


 ココさんの気持ちは私も分かります。私も部長達に出会うまでは辛い思いをいっぱいしてきました。でも今は辛いことがあっても仲間が支えてくれます。だから私たちもココさんを支えます!


「はっはっは!ココ兄モテモテだな!」
「ココさん、私にもイッセー君や貴方の事を教えてくれませんか?」
「僕も知りたいです、ココさん」
「ふふっ、皆仲良しね」


 ココさん、私たちはもう既に仲間じゃないですか!頼りないかも知れないけど私たちの前では本当の自分を出してほしいです。



「……(この子たちに恐怖心は無いのか……?いやこれはこの子たちの純粋な優しさか……イッセーが気に入った理由が分かったよ)……ありがとう、皆」
「えへへ、どういたしまして」


 さあ、皆でフグ鯨をゲットしに行きましょう!!


 
 

 
後書き
やあ皆、ココだ。イッセーの仲間たちは本当にいい子たちばかりだ、出来れば死なせたくないがどうやら油断のならない相手が出てきたらしい。次回第18話『激突!デビル大蛇!唸れ5連釘パンチ!!』で会おう。奴の毒と僕の毒…どちらが有害か勝負してやる…!! 

 

第18話 激突!デビル大蛇!唸れ5連釘パンチ!!

side:小猫


 ココさんの過去を知った私たちはココさんと仲良くなるために今ココさんの背中にアーシアさんと一緒にくっついています。ココさんは最初は渋っていましたが今は何も言わずにおんぶしてくれています、最初は迷惑をかけちゃったかな?、と思いましたが気のせいか先ほどより和らいだ表情になっているような気がします。


「だんだん勾配がキツくなってきたな」
「ああ、ここからは100mくらい真下に向かって巨大な穴が広がっている」


 私たちの目の前には大きな穴が開いており今度はここを通らなければならないようです。


「よし、ロープを引っかけて下に降りるか」


 先輩が背負っていたリュックから細いロープを取り出しましたがあんな細いロープで大丈夫なんでしょうか?


「イッセー、そのロープじゃ切れてしまわないかしら?」
「炭素繊維を配合したワイヤーロープですから大丈夫ですよ。100人ぶら下がっても切れません」


 部長が私が思った事を聞いてくれました。でも流石先輩です、道具の準備も怠っていませんね。


「じゃあアーシアとティナは俺たちに捕まってくれ、他の皆は飛んで降りてくれるか?」


 私たちは飛べるからロープを使う必要はありませんよね、いつまでもココさんにくっついていたら降りにくいかも知れません。私はココさんにアーシアさんを任せて彼の背中から降りました。


「じゃあティナは俺が…」
「イッセー君、ちょっといいかしら?」
「ん?朱乃さん?」


 先輩がティナさんを背負おうとしたときに朱乃さんが先輩を呼び止めました。


「実は私、羽の調子が悪くて……イッセー君が運んでくれないかしら?」
「え?それは大変ですね。分かりました、朱乃さんは俺が背負いますよ」
「うふふっ、ありがとうございます」


 な、何ですと―――――っ!?先輩に運んでもらえるなんてズルいです!でももしかしたら本当かも知れませんし……ムムムッ……どうしたらいいんでしょうか?


(まあここは我慢するしかありませんよね、朱乃先輩もイッセー先輩の反応が可愛いのでからかっているだけですよ。多分……)


 しぶしぶ認めた私は背中から悪魔の羽を出しました。


「じゃあティナさんは僕が運びますね」
「お願いね祐斗君。それにしてもこんなイケメン君にお姫様抱っこされるなんてあたしもツイているわね」
「あはは、それは光栄です」


 祐斗先輩も羽を出してティナさんをお姫様抱っこしました。因みに悪魔の事はティナさんに言ってありますが「へー、不思議な種族がいるのね」と普通に受け入れてくれました。この世界では悪魔も珍しくないのでしょうか?


「よし、最初に僕が降りていくから後に続いてくれ」


 まずココさんとアーシアさんが降りていき次に私、そして先輩と朱乃さん、最後に部長と祐斗先輩とティナさんの順で穴を降りていきます。


「うう、暗くて怖いです……」
「アーシアちゃん、しっかり捕まっていてくれ」
「は、はい!」


 ゆっくりと下に降りていくココさんの後を追う私、少し下に降りると淡い光が飛んできました。


「これは蛍ですか?」
「ああ、『海蛍』だね。海から洞窟に紛れ込んできたようだ」
「凄く綺麗です~」


 目の前に広がる幻想的な光景に思わず見とれてしまいそうです……


「先輩!凄く綺麗ですよ!先輩も見て…って何してるんですかーーーっ!?」


 上を見上げると朱乃さんが先輩の背中に大きな胸をこれでもかと押し付けていた。


「ちょ、朱乃さん!?」
「ごめんなさい、イッセー君の背中が心地よくてつい密着してしまいましたわ♪」


 朱乃先輩がイッセー先輩に大きな胸を押し付けているのを見て私はついにキレてしまいました。


「先輩、何顔を赤くしてるんですか!!朱乃さんもそんなに密着しないでください!!」



 私に対する当てつけですか!?どうして私の周りには巨乳しかいないんですか!?姉さまや部長と朱乃さんは言わずもがなアーシアさんもそれなりに大きいですし前に知り合ったルフェイさんも大きかった、更にはティナさんも……世界は私に恨みでもあるんですか!?


「がるるぅ!!」
「こ、小猫ちゃん!?落ち着けって!?」


 あまりにも辛い現実を突きつけられて思わず獣化してしまいそうになりましたが何とか下まで降りることが出来ました。


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「全く……何をやっているんだ、君たちは」
「イッセーさん!!デレデレしてはダメです!!」


 ココさんとアーシアさんに私は先輩と朱乃さんと一緒に怒られています。でもあれは不平等すぎませんか?


「あはは……」
「もう、貴方たちは仕方ないわね」
「四天王を取り合う二人の美少女……美味しいニュースなのかしら?」


 部長達もあきれ顔になってます。ううっ……自分が情けないです……


「ぎゃあああぁぁぁぁ!?」


 その時でした、洞窟内に誰かの悲鳴が響きました。


「今のは他の美食屋の悲鳴か…!?イッセー!」
「ああ、分かっているさ!」


 先輩とココさんが目線を向けた方から何かがこちらに向かって飛んできました。


「ナイフ!!」


 先輩は赤龍帝の籠手を出して飛来してきた何かを切り裂きました。


「ポイズンドレッシング」


 ココさんは指先から毒を出して飛来してきた何かに毒のシャワーを浴びせました。


「こ、蝙蝠?」


 部長の言う通り飛来してきたのは蝙蝠でした。でも普通の蝙蝠と違い羽が鮮やかな模様をしています。


「『アゲハコウモリ』さ、スパイスが効いてて美味いぞ」


 先輩はムシャムシャとアゲハコウモリを食べていました。というか生でいけるんですか?


「でも何か様子がおかしかったな。ココ兄にまで襲い掛かるなんて」
「ああ、でも襲い掛かってきたというよりは必死で何かから逃げていたように見えたが……」


 確かに毒を持つココさんに襲い掛かるなんて変ですね、何かとんでもないものが奥にいるんでしょうか……?


「まあ警戒しながら奥に行くしかない……!?ッリアスさん!」
「えっ?…きゃあ!?」


 先輩が突然部長をお姫様抱っこして飛びました、その瞬間に何かが部長のいた場所の地面を砕きました。


「イッセー!?今のって……」
「ええ、どうやら向こうから来てしまったみたいですね……」


 洞窟の奥から現れたのは巨大な口と三つの目、そして長い胴体に生える幾つもの腕……まさに化け物としか言いようがない生物でした。


「こいつが伝説の魔獣『デビル大蛇』か!?」
「デビル……悪魔の異名を持つ生物……何て禍々しいの……!?」


 デビル大蛇……ココさんが言っていた猛獣がこの生き物ですか!?部長の言う通り悪魔の名に相応しい見た目です。


「ギャオアァァアア!!」
「ぐっ、何て凄まじい咆哮なんだ!」
「気が狂ってしまいそうですわ……」


 デビル大蛇の悍ましい咆哮に身震いが止まらなくなってしまいそうです…!


 ズム…ズムム……


 …?何の音でしょうか?何かが沈んでいくような音が聞こえた私はデビル大蛇の腕のひとつが胴体の中に入っていくのを見つけました。


 ギュボアッ!!


「なっ!?」


 次の瞬間、デビル大蛇の腕が凄まじい速度で私に迫ってきました。余りの速さに反応が遅れてしまいます、これじゃ避けることが出来ない……!


「小猫ちゃん!!」


 先輩が私を突き飛ばしてくれたお蔭で私は助かりましたが先輩がデビル大蛇の腕に掴まってしまい壁に叩き付けられてしまいました。


「先輩!?」
「イッセー君、今助けますわ!」


 朱乃さんが雷をデビル大蛇に放とうとしましたがデビル大蛇は口から何か液体のようなものを吐き出してきました。


「ぐっ!」


 朱乃さんは攻撃を止めて液体をかわします、液体が地面に当たるとジュウジュウと音を鳴らしながら地面を溶かしました。


「消化液を吐き出しましたわ…!?」


 もしあれに当たったらドロドロに溶かされてしまいます、朱乃さんがかわせて本当に良かったです。


「ヴロロロロ……」


 デビル大蛇は捕えていた先輩に目がけて消化液を吐きかけようとします、まさか自分の腕ごと…!?


「イッセー先輩!!」
「オおぉおㇽあァあああ!!!」


 先輩は間一髪デビル大蛇の腕を引きはがして脱出しました。そして赤龍帝の籠手をデビル大蛇の腕に振り下ろしました。


「ナイフ!!」


 先輩の一撃はデビル大蛇の腕を斬り裂きました。


「やった…!?」


 私は目の前の光景が信じられませんでした。何故なら斬られた腕の切り口から一瞬で新たな腕が生えてきたからです。


「ぐはっ!?」


 先輩はデビル大蛇に殴られて再び洞窟の壁に叩き付けれてしまいました。


「何て再生速度なの!?斬られた腕が一瞬で生えてくるなんて…!」


 まるでイモリの尻尾みたいですが再生する速度が比べ物になりません!


「くそ、あの巨体で素早い奴だ」


 先輩は崩れてきた岩を払いのけてこちらに飛んできました。先輩がここまで苦戦するのは初めて見たかも知れません。


「皆は下がっていてくれ。流石にこいつを相手にするのは骨が折れそうだ」


 先輩の言葉に私たちは素直に頷いた。先輩ですら手を持て余す相手に私たちが適うはずがありません、寧ろ足手まといになってしまいます。私はアーシアさんの盾になろうと彼女に視線を送りましたがあることに気が付きました。


「あれ?アーシアさん?」


 アーシアさんの姿がどこにも見当たりません!ど、どうして……!?ッこの匂いは…!


「先輩、アーシアさんが!?」
「ああ、俺も今気がついた、アーシアの匂い以外に何者かの匂いがする……連れ去られちまったか!」


 そ、そんな……一体誰が!?


 ブォン!!


 そんなことを考える暇も与えないとデビル大蛇が攻撃をしてきました。私たちは何とかそれを回避しました。


「喰らえ、毒砲!!」


 ココさんの右腕に毒の塊が集まって巨大な球になりそれがデビル大蛇に向かって放たれる。だがデビル大蛇はそれを回避して髪の毛から黒い液体を出してきた。


「驚いたな、髪の毛から毒を出してくるとは…ポイズンドレッシング!!」


 ココさんは指先から毒のシャワーを出してデビル大蛇に放つ。だがデビル大蛇は毒をかわしてココさんに消化液を吐き出した。


「イッセー、ここは僕に任せてアーシアちゃんを追うんだ!」
「でもココ兄だけじゃそいつは…!」


 ココさんがデビル大蛇を引き付けていますが防戦一方になっています。


「くそ、俺は何をやっているんだ。守ると言っておきながら……」


 先輩は悔しそうに手を握っている。いくら先輩でもデビル大蛇を相手にしていたら気が付くのは遅れてしまうだろう。


「……イッセー、ここは私たちに任せて頂戴」
「リアスさん!?」
「部長!?一体何を!」


 部長の突然の言葉に全員が驚きました。




sede:イッセー


 俺はリアスさんの言葉に驚いていた。何故ならこの危険な洞窟を俺やココ兄抜きで行くと言っているようなものだからだ。


「駄目だ、あまりにも危険すぎる!」
「分かってる、でも私たちじゃあデビル大蛇には適わないわ。でもココさんだけでも分は悪い……ならここは二手に分かれてアーシアを追う方がいいと思うの」


 リアスさんの意見は正論だ、このままではアーシアの身が危険だ。今すぐに俺が追いたいがデビル大蛇に背中を向けたら殺されてしまう、でもリアスさんたちがアーシアを追えば俺とココ兄でこいつを足止めできる。だからその提案が一番いい選択だと頭では理解できる。


(だがリアスさんたちだけでは…!)


 この洞窟には他にも危険な猛獣が存在している、もしかしたら他の個体のデビル大蛇がいるかも知れない。いくらリアスさんたちが強くなったといえデビル大蛇に勝てるはずがない。そんな危険地帯に仲間を行かせることは……


「イッセー君、僕たちは仲間だ、アーシアさんだって同じこと。だったら助けに行くのは当然の事だろう?たとえ危険な場所であろうと僕は仲間を助けに行きたい」
「私たちは貴方に鍛えてもらったんですもの、逃げることくらいなら出来ますわ」
「それに私たちは危険を承知でここに来たの。だから貴方だけが全部背負うのは止めて、もっと私たちを頼ってほしいの」
「皆……」


 俺はどうすればいいんだ?皆の覚悟は本物だ、でも万が一誰かが死んでしまったら……そう考えると体の震えが止まらない。偉そうなことを言っておきながら俺は誰かを失うのが怖くて仕方ない…


「先輩」


 小猫ちゃんがそっと俺の右手を自身の両手で包み込むように握った。


「小猫ちゃん?」
「先輩、私たちを信じてください。私たちはまだ弱いです、でもそれでも貴方の力になりたいんです。だからお願いします、私たちを信じて……」


 ……俺はやってるんだろうな、自分一人で全部背負おうとして皆を唯守る対象としか考えてなかった。それじゃ対等ではない、時には仲間を信じて送り出すことも必要なんだ…!


「分かった、不甲斐ない俺に代わってどうかアーシアを助けてくれ!」
「はい、勿論です!」


 俺は皆にアーシアの事を任せてデビル大蛇に向かっていく。因みにティナだけは後ろに下がっていてもらっている、彼女だけは戦う術が無いからな。


「ココ兄、加勢しに来たぜ!」
「イッセー、何をやっているんだ!?アーシアちゃんはどうするつもりだ!」
「アーシアの事は皆に任せた、ココ兄だけじゃこいつには勝てないだろう?俺も一緒に戦う!」
「だが危険じゃないのか?」
「俺は皆を信じる…だから俺はやるべきことをやるだけだ」
「…そうか。いい仲間をもったな」
「ああ!」


 俺とココ兄は赤いドラゴンと不気味な人型のオーラを放ちデビル大蛇を威嚇する。だがデビル大蛇は怯むどころか睨みつけてきた。


「俺の威嚇やココ兄の毒にも怯えない……何年ぶりだろうな、本気で戦うのは…」
「イッセー、久しぶりの連携だ。気を抜くなよ」
「ああ、勿論だ!」


 俺は向かってくるデビル大蛇の腕をかわしてデビル大蛇の胴体にナイフを繰り出した。


「ぶった切ってやる!」


 だがデビル大蛇の胴体は予想以上に固く浅く切り裂いただけだった。


「か、硬え…!伸縮性のある皮膚を限界まで縮めて硬度を上げやがったのか!」


 さっきのナイフで学習したのか、なんて知能してやがる!


「はぁぁ…毒砲!!」


 ココ兄が再び毒砲を放つがデビル大蛇はあっさりとかわしてしまう。


「くそ、何で奴はこの暗闇であんなに動き回れるんだ?」
「恐らくデビル大蛇は『ピット器官』をもっているんだろう」


 ピット器官…蛇が持っている熱を察知するセンサーの事か。これは厄介だな。


「なあココ兄、あいつの動きを止める事は出来ないか?」
「出来なくもないが……もしかして奴を倒す技があるのか?」
「ああ、今の俺なら『5連』までいける。再生する間もなく内部から破壊してやるぜ」
「なるほど…なら奴の毒と僕の毒…どちらが有害か勝負してやる…!!」


 デビル大蛇は一旦ココ兄に任せて俺は赤龍帝の籠手に力を溜めていく。


「いくぞ、デビル大蛇!!」


 ココ兄はデビル大蛇の攻撃をかわしながら接近していく。


(僕の毒液の弱点はスピード……動きの素早いデビル大蛇には避けられてしまう。ならまずは奴のピット器官を潰す…!)
 

 ココ兄は跳躍して右腕を構えた。


「(ピット器官は……見えた!)喰らえ、ポイズンライフル!!」


 ココ兄の指先から微量の毒が弾丸のように放たれた。それはデビル大蛇の鼻の上に当たった。おそらくデビル大蛇のピット器官を潰したんだろう。


「よし、微量だから効くまでに時間がかかるが粘着性のある毒でピット器官を完全に潰した!喰らえ、毒砲!!」


 だがデビル大蛇はピット器官を潰されたにも関わらずココ兄を腕で掴んだ。


「し、しまった!コイツのピット器官は三つじゃない!?他に隠していたのか!」


 デビル大蛇は髪の毛をココ兄に突き刺した。不味いぞ、ココ兄はデビル大蛇の毒の抗体を持っていない…!俺はココ兄を助けようとするがココ兄が手で必要ないと合図した。


「イッセー、お前は力を溜める事に集中しないといけないだろう…」
「でも、ココ兄はそいつの抗体を…!」
「ああ、持っていない…ならば新しく精製ればいい…!」


 まさかココ兄は直接毒を体の中で解読して抗体を精製するつもりか…!?普通は不可能だが強力な免疫力を持つココ兄なら可能だ。


「…ふう、何とか抗体を作れたか。…そろそろだな」
「ギュロロッ!?」


 突然デビル大蛇の動きが鈍くなった、先ほど打ち込んだポイズンライフルの毒がようやく効きだしてきたのか。


「よし、毒が周ったか。イッセー、準備はいいか?」
「ああ、いつでも放てるぜ…!!」


 俺は限界まで溜めた赤龍帝の籠手をデビル大蛇の胴体にぶちかました。


「5連!!釘パンチ!!!」


 俺の放った釘パンチはデビル大蛇の胴体を貫きバラバラに粉砕した。俺は落ちてきたココ兄をキャッチする。


「大丈夫か、ココ兄?」
「やっぱりブランクが大きいね。流石に疲れたよ……」
「俺もだ。でもそうは言ってられねえ。早く皆を追わないとな」
「ああ、急ごう」


 俺とココ兄はティナを連れて皆の後を追った。待っていろよ、アーシア!

 
 

 
後書き
 リアスよ。イッセーとココさんは大丈夫かしら?ううん、今は私たちのやるべきことを果たさなくちゃ…アーシア、待っていてね!次回第19話『伝説の美食屋現る!フグ鯨を捕獲せよ!!』で会いましょう。 

 

第19話 伝説の美食屋現る!フグ鯨を捕獲せよ!!

side:アーシア


「へへっ、まさか四天王のイッセーとココがいるなんてな…!奴らならデビル大蛇にも食い下がるだろう!この小娘は他の猛獣が出た時の生贄にしてやる!」
「んんんっ!?」


 イッセーさんたちがデビル大蛇に気を取られている内に私はこの美食屋の人に誘拐されてしまいました。私がもっとしっかりしておけばこんな事には…


「もうすぐ洞窟の砂浜だ!俺が一番乗り…!?ッな、何だと…!」


 広い場所に出た私たちに立ちふさがったのはデビル大蛇でした。さっきのとは違う個体でしょうか?足元にいる象のような猛獣を食べていました。


「ば、馬鹿な!?デビル大蛇が複数いるだと…!だが俺には囮がある。そうらっ!」
「あうっ!」


 私はデビル大蛇の目の前に投げ飛ばされてしまいました。こ、怖いです……


「俺は絶対に洞窟の砂浜に行くんだ!何が何でも洞窟の砂浜に!!」


 私を投げた美食屋の人は一目散に逃げていきましたがデビル大蛇は腕を伸ばして美食屋の人を捕まえました。ま、まさか……


「やめてください!」
「ぎゃああぁぁぁああ!?」


 美食屋の人はデビル大蛇に丸のみにされてしまいました。


「そんな、食べられてしまうなんて……」


 目の前で人が捕食された光景を見て初めて弱肉強食という世界の恐ろしさを知りました。


「このままじゃ私も食べられてしまいます、でもどうしたら……」


 デビル大蛇はゆっくりと私の方まで這いずってきます、私も逃げようとしましたが恐怖で足が動きません。このままでは私も殺されてしまいます、私は懐からお札のようなものを取り出しました。


「イッセーさんが万が一の時に使えってくれたお札…確か防御結界を出す物でしたね」


 イッセーさんが旅立つ前にくれたのがこのお札でした。朱乃さんに頼んで用意してもらった防御用の結界を生み出すお札で更にイッセーさんの『赤龍帝からの贈り物』で強化しているので並みの猛獣なら破ることは出来ないと言っていました。


「イッセーさん……」


 どんな時でも私の事を思ってくれるイッセーさんに感謝しながらお札を使いました。すると私を覆うように丸い結界が生まれて周りにいた小さな猛獣たちを遠ざけてくれました。


「これなら何とか…!?」


 私が安堵しているとデビル大蛇が結界を殴りつけてきました、大きな衝撃に転びそうになってしまいます。


「結界にヒビが……!?」


 デビル大蛇の攻撃で結界にヒビが入ってしまいました。デビル大蛇の攻撃は更に激しくなっていきヒビが大きくなっていきます。


「イッセーさん……小猫ちゃん……助けてください……!」


 しかしとうとう結界が壊されてしまいデビル大蛇の腕が私を捕らえようと迫ってきました。私は恐怖で目を閉じました。


「させません!」


 絶体絶命だと思ったその時でした、小猫ちゃんが現れて迫っていた腕を受け止めていました。


「祐斗先輩!」
「うん、任せて!」


 そこに祐斗さんも現れてデビル大蛇の腕を魔剣で切り裂きました。


「喰らいなさい!」
「うふふ、ちょっとオイタが過ぎますわね…雷よ!」


 リアスさんと朱乃さんの滅びの魔力と雷がデビル大蛇の胴体に直撃しました。


「小猫ちゃん、それに皆さんも…」
「話は後です!今は早く逃げましょう!」


 小猫ちゃんは私をお姫様抱っこしてデビル大蛇から逃げようとします。ですがデビル大蛇は先程の攻撃が効いてない様子でこちらを追いかけてきました。


「くっ、魔剣よ!」
「これでも喰らいなさい!」


 リアスさんたちが魔剣や魔法で足止めをしますが直に再生して腕を伸ばしてきました。


「きゃあっ!!」
「しまった!?」


 一瞬の隙をつかれて私と小猫ちゃんがデビル大蛇に捕まってしまいました。


「小猫!?アーシア!?」
「今助けるよ!」


 リアスさんたちが私たちを助けようとしますがデビル大蛇の攻撃で近づけないみたいです。


「小猫ちゃん、私のことはいいから小猫ちゃんだけでも……」
「そんなの駄目です!先輩と約束したんです、必ずアーシアさんを助けるって…それにアーシアさんは先輩やオカルト研究部の皆と同じくらい大切な人なんです!だから絶対に見捨てたりはしません!!」
「小猫ちゃん……」


 小猫ちゃんは必死で腕を外そうとしますがデビル大蛇は更に強く締め付けてきました。


(主よ、どうか小猫ちゃんだけでも……)


 どうして私はこんなにも非力なのでしょうか…何もできない自分が嫌になります。私は薄れゆく意識の中で主に祈る事しか出来ませんでした。


「何じゃ、騒がしいのう。人が折角フグ鯨のヒレ酒を楽しんでいるというのに無粋な奴じゃな」


 そんなときでした、不意に誰かの声が聞こえたかと思うと急にデビル大蛇が私たちを手放しました。宙に投げ出された私たちを救ってくれたのは大きな手でした。


「大丈夫か?怪我はしていないか?」


 意識がはっきりとしてきた私の目に映ったのは大きな白髪のリーゼントをしたお爺さんでした。よく見るとデビル大蛇がお爺さんの横に倒れていました。


「小猫!アーシア!」


 駆けつけてきたリアスさんが私と小猫ちゃんを抱きしめました。


「良かった…二人が無事で…」
「リアスさん…皆さん…ご心配をおかけして申し訳ございません…」


 リアスさんは安堵して涙を流していました。私はこんなにも沢山の人に思ってもらえていることを知って泣いてしまいました。


「貴方が二人を助けてくれたのね、ありがとう」
「なあに、礼には及ばんよ。お前さん達には列車での借りがあったからのう」
「借りって……もしかして貴方は列車にいたお爺さんですか!?」


 リアスさんのお礼にお爺さんは気にしてないという風に手を振りました。でも祐斗さんはお爺さんの正体を聞いて驚きました。無理もありません、今目の前にいるお爺さんは列車で出会ったお爺さんとはまるで体格が違いますから皆が驚いています。


「でもどうしてお爺さんがこんな所にいるんですか?」
「あっしはフグ鯨を捕獲しに来たんじゃよ。こいつのヒレ酒は絶品じゃからのう」


 小猫ちゃんの問いにお爺さんは持っていたバケツの中身を見せてくれました。これがフグ鯨なんですか?何だか可愛いです。


「そんじゃあ気を付けてな。連れの少年にも宜しく言っておいてくれ」


 お爺さんはそう言って去っていきました。


「彼は一体何者だったんだろうか?」
「命の恩人であるのは間違いありませんわね、私たちではデビル大蛇から逃げる事はかなり厳しい状況でしたしまさに運が良かったとしか言えませんわね」
「人の縁って本当に不思議なものね」


 リアスさんの言う通りあの時小猫ちゃんがお爺さんを助けて無かったら今頃私たちは生きてはいませんでした。これも主の導きなのでしょうか?命が助かったことを感謝しないと。



「アーシア!皆!無事か!」
「イッセーさん!」


 そこにイッセーさんとココさん、そしてティナさんが駆けつけてくれました。私はイッセーさんに駆け寄り彼に抱き着きました。


「アーシア!ごめんよ、君を守るなんて言っておきながらこんな怖い目に合わせちまって…」
「そんな事ありません、イッセーさんがくれたお札が無かったら私はもう死んでいました。イッセーさんは約束通り私を守ってくれました」
「アーシア……」
「イッセーさん……」


 えへへ、不謹慎ですがこうやってイッセーさんに抱きしめられるとさっきまでの恐怖が嘘のように和らいでいきます。


「皆もありがとう、アーシアを救ってくれたんだな」
「イッセーくん、それなんだけどね……」

 
 祐斗さんが先程までの出来事をイッセーさんに話しました。


「…という訳なんだ」
「…白髪の爺さんにノッキングされたデビル大蛇……間違いない、それは『ノッキングマスター』次郎だ」
「ああ、デビル大蛇をノッキングできるなんて彼くらいだろう」
「嘘!ノッキングマスターに出会ったの!?めちゃんこ美味しいニュースになったのにーーーっ!!」


 イッセーさんたちはどうやらさっきのお爺さんの事を知っているみたいです。


「ノッキングマスター次郎……世界で数人しかいないとされているグルメ界に入ることが出来る伝説の美食屋だ。あらゆる猛獣のノッキングを熟知しており体の形態すらも自在に操ることが出来るとも言われている。彼のフルコースは未だに世界中の人間がほとんど口にしたことのない未知の食材で捕獲レベルも測れんらしい」


 そんな凄い人物に会っていたなんて…!私たちは本当に運が良かったんだと思いました。


「いつかまた会えたらお礼を言わないとな」
「はい、そうですね」


 いつかまた次郎さんに会えたらちゃんとありがとうございましたってお礼を言いたいです。


「でもノッキングマスターが向こうから来たって事はもう洞窟の砂浜はすぐそこだって事だね」
「ああ、いよいよフグ鯨とご対面って訳だ!行こうぜ、皆!!」


 私たちは洞窟の砂浜を目指して歩きだしました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー
 
side:祐斗


 アーシアさんを助けてイッセー君たちと合流した僕たちは洞窟の砂浜を目指して歩いていた。しばらくすると前方に光が見えてきたので皆で駆け足でそこに向かった。するとそこには美しい自然の風景が広がっていた。


「なんて綺麗な光景なのかしら…」
「水も透明で泳いでいる魚が見えますね、じゅるり…」


 部長達もこの光景に目を奪われている、僕も思わずため息が出てしまうくらいの美しさだ。


「さてさっそくフグ鯨に会いにいくとするかな!」


 イッセー君はそういうと上着を脱いで半裸になっていた。相変わらず引き締まったいい体だね。


「イッセー先輩の半裸……!たまりません……!」
「はわわ、すっごく逞しいです!」
「あの腕で抱きしめてほしいですわ……♡」
「小猫と朱乃は自嘲しなさい」
「若いわね~」


 女性たちがそれぞれの反応をしているが小猫ちゃんやアーシアさんは分かるけどもしかして朱乃さんもイッセー君の事を…?だとしたらイッセー君も中々に罪な男だね。


「じゃあ行こうぜ、小猫ちゃん!」
「えっ?でも私は水着を持ってませんよ?」
「あ、そういや言い忘れてたな…すまん、女性陣はここで待っていてくれないか?」
「ええ、分かったわ」


 まあ女の子が水着も無しに海に入る事なんて出来ないよね。フグ鯨の捕獲は僕たち男性陣だけで行くことになった、正直僕は足手まといかもしれないけど二人の美食屋の技術を見てみたいし付いていく事にしたんだ。


(うわ…海の中ってこんなにも透き通ってるものなんだ…)


 海に潜ってみると水の透明度がよく分かる、まるで空を泳いでいる感覚だ。


(祐斗、こっちだ)


 イッセー君とココさんの後を追って泳いでいくと二人が急に止まった。


(イッセー君、どうしたの?)
(見てみろよ、お目当てのフグ鯨がいたぜ)
 

 イッセー君が指を刺した方を見てみるとそこには鯨ほどの大きさをした魚が泳いでいた。


(あ、あれがフグ鯨!?普通に鯨サイズじゃないか!)
(よーく目を凝らして見てみるんだ。どうやら今年は大当たりみたいだね)


 ココさんに言われた通り目を凝らして見てみると目の前にいた大きな魚の正体に気が付いた。


(あれは……小さな魚が何匹も集まっているのか…?)


 そう、僕が見た巨大なフグ鯨は何十匹ものフグ鯨が集まって出来たものだった。凄い数のフグ鯨だね。


(さてここからが本番だ。フグ鯨はほんのちょっとした刺激で直に毒化してしまう。まずはこちらの気配を消して近づくんだ。見ていてくれ)


 ココさんはゆっくりとフグ鯨に近づいていく。そしてココさんは懐から何か道具を取り出した。


(イッセー君、あれは何?)
(あれはノッキングガンのデリケートタイプだ。刺激に弱い動物や一瞬の緊張や痛みで肉が劣化してしまうような猛獣に使うんだ。フグ鯨はまさにデリケートな生き物だからな、一瞬でツボをつかなくちゃならねえ)


 ココさんはノッキングガンを構えながらフグ鯨一匹一匹を見て回っている。


(イッセー君、ココさんは何をしてるの?)
(ココ兄は今フグ鯨を見て警戒心が薄い個体を探しているんだ)


 目で見ただけで警戒心のない個体が分かるのかな?そういえばココさんは電磁波も見えるって言っていたからそれが関係してるのかな?


(…こいつがいいな)


 ココさんは近くを泳いでいたフグ鯨にゆっくりとノッキングガンを構える、そして……


 パシュンッ


 ノッキングガンから針が出されフグ鯨に刺さった、そしてフグ鯨がゆっくりと動きを止めた。


(ノッキング成功だ!流石はココ兄、見事なもんだぜ)


 どうやらココさんはノッキングに成功したらしい。


(ふう、上手くいって良かったよ)


 ココさんは網の中にフグ鯨を入れてこちらに泳いできた。


(祐斗くん、君も良かったらフグ鯨を捕獲してみないか?)
(え、僕がですか?)
(ああ、君がよければだけど…)
(は、はい!やらせてください!)


 ココさんからノッキングガンを借りた僕はココさんと同じ要領でフグ鯨に接近する、だがフグ鯨はちょっと指先が当たっただけで紫色に変色した。


(えっ、もう毒化したのか…!?)
(祐斗くん、フグ鯨は意識に非常に敏感なんだ)


 困惑する僕にココさんが話しかけてきた。


(意識…ですか?)
(そう、どんなに気配を隠しても攻撃する瞬間殺気は生まれる…野生の猛獣は殺気に敏感だ。だから意識を消すんだ)
(意識を消す……でもどうすれば…)


 ココさんのアドバイスを聞いてもいまいち実感がつかめない。意識を消すってどういう事だろうか?


(祐斗、次は俺が行くぜ。そこで見ていてくれ)


 今度はイッセー君がフグ鯨の捕獲に向かうようだ。


(イッセー、ほら、ノッキングガンだ)
(いや、俺は素手でいく)


 イッセー君はココさんからノッキングガンを受け取らずにフグ鯨に近づいていった。


(さて…こうやればいいのかな?)


 その時だった、イッセー君の体が一瞬消えてしまったかのように見えたんだ。でもイッセー君はそこにいるし今のは一体…?


(驚いたな、意識を完全に海水に溶け込ませている……一回見ただけでもうコツを覚えたのか…)
(ココさん、イッセー君は何をしたんですか?)
(イッセーは自身がフグ鯨に向ける意識を完全に消し去っている。フグ鯨からすればイッセーが近くにいる事は分かっていても意識が向いてないから自分に何かしようとしてるだなんて思ってもいないだろう)


 ココさんの説明と今のイッセー君を見て何となくだけど意識を消すという事が分かったような気がする。意識を消すっていうのは注意や敵意、そして殺気を完全に抑え込んだ状態の事なんだ。だからイッセー君が近くにいてもフグ鯨は警戒しないんだ。


(…エラから頭部の中心へ…斜め45度の角度…ここだ!)


 イッセー君は素早く指をフグ鯨に刺した。そしてフグ鯨がゆっくりと動きを止めた。


(やったか…?)


 でもフグ鯨は紫色に変色してしまった。


(しまった、ノッキングの角度が悪かったのか…それとも一瞬殺気をだしちまったのか?)
(いや、ノッキングの角度も意識も完ぺきだった。今回は運悪くエラの近くに毒袋があったんだ)
(くそ、もう一度だ!)


 イッセー君は再びフグ鯨を捕獲しに向かった。


(どうかな?意識を消すっていう事が掴めたかい?)
(あ、はい。何となくですが分かったような気がします)
(そうか、それにしてもイッセーの才能には驚かされるな。初めて見た技術もあっという間に吸収して自分のものにしてしまうんだからな)


 ココさんの話を聞いて僕は驚いた。イッセー君は今日初めて知った技術を驚くべき速さで習得したとのことだ、てっきりもう既に慣れているんだと思っていた。


(…凄いな、イッセー君は…)


 僕と同い年なのに強いし頼りになるし色々な事を知っている、まるで年上の兄みたいな存在だ。


(僕も負けてられないね…!)


 そんな彼に追いつきたい、そう思った僕は再びフグ鯨を捕獲しに向かった。


 
 

 
後書き
 こんにちは小猫です。いよいよフグ鯨を調理するときがきました。でも特殊調理食材とされるだけあってココさんも相当苦戦しています。はたしてフグ鯨を食べる事は出来るのでしょうか?次回第20話『小猫、初めてのグルメ食材。フグ鯨を調理せよ!!』でお会いしましょう……って私が調理するんですか!? 

 

第20話 小猫、初めてのグルメ食材。フグ鯨を調理せよ!!

 
前書き
 今回ハイスクールD×D、トリコの原作の設定がかなり変わった場面がありますので苦手な方は注意してください。後遅れて申し訳ありません。 

 
side:小猫


 イッセー先輩たちが海の中に潜ってる間、私たちは砂浜でそれぞれの時間を過ごしていました。


「本当に綺麗な海よね、私の家が持ってるプライベートビーチよりも綺麗じゃないかしら?」
「うふふ、また夏になったらみんなで行きたいですわね、リアス」
「あ、ティナさん。見てください。イカさんみたいなお魚さんが泳いでますよ」
「あれはイカマグロね。あのゲソが絶品なのよ」


 部長と朱乃先輩は砂浜の景色を見ながらおしゃべりをしているしアーシアさんはティナさんと海の中を泳いでいる生物の観察をしています。私は砂浜に座り込んで先輩たちが戻ってくるのを待っています。


「イッセー先輩、遅いなぁ……」


 ぼんやりと海を見ていると海から見慣れた青髪が浮き上がってきた。イッセー先輩たちが戻ってきたのかな?


「ふう、ようやく3匹目を捕まえることが出来たぜ」
「あ、小猫ちゃん。僕も一匹捕まえれたよ!」


 続けて祐斗先輩も上がってきたんですが祐斗先輩の手には一匹のフグ鯨が置かれていました。もしかして祐斗先輩が自分で捕獲したんでしょうか?私たちはイッセー先輩たちの元に向かいました。


「これがフグ鯨…さっきのお爺さんに一回見せてもらいましたが改めて見ると可愛らしい見た目をしてますね」
「見た目は可愛いがこいつは凄いお宝なんだぜ。毒化していないフグ鯨一匹の末端相場は約一億だが毒袋を取り除いたフグ鯨は三億にまで跳ね上がるんだ」
「三億って…食材一つにそこまでお金をかけるなんてこの世界の食材に対する価値観って向こうと随分違うのね」
「こっちじゃ食材こそが価値ある宝ですからね、まあ毒化したら一気に0ですが」


 部長がこっちの世界の食材に対する価値観に驚いてますが当然ですよね、あっちじゃ食材一つに一億も出すことはほぼ無いでしょうから。


「さて俺と祐斗は引き続きフグ鯨を捕獲してくるからココ兄は毒袋の除去を頼むぜ」
「本当に二人だけで大丈夫かい?」
「ああ、代替コツはつかめたし早くしないとノッキングが切れちまうからな」
「僕は足手まといにならないかい?」
「この短期間でフグ鯨を一匹でも捕獲で来たお前は相当なもんだぜ。なに、これも経験だ。お前が嫌なら無理は言わないけどな」
「そんなことは無いよ、勿論挑戦させてもらうさ」


 イッセー先輩と祐斗先輩が再び海の中に入っていくのを見送るとココさんが包丁を取り出した。


「……」


 包丁を構えてフグ鯨を見つめるココさんを見て私まで緊張してきました。いよいよフグ鯨の調理が始まるんですね。


「……失敗してもイッセーは怒らないかな?」
「「「だぁぁぁ!?」」」


 真剣な表情から一変して不安そうにこちらを見てきたココさんを見て思わずずっこけてしまいました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

 
side:??


「うい~…ヒック、まあ安心しろい…ただノッキングしただけじゃよ、5分もすれば動けるようになる…へへ」
「ぐっ……」


 洞窟の砂浜の入り口前、複数の殺し屋や盗賊が倒れていた。ノッキングマスター次郎からフグ鯨を奪おうとしたようだが返り討ちにあったようだ、もっともただノッキングされただけなので死んではいない。


「しかし美食屋イッセーか…面白い若者じゃのう。近くにいた白髪の少女も相当な食運を秘めていたしありゃ化けるかもしれんのう…ひひっ、若い芽は順調の育っとる訳か」


 次郎は列車で出会ったイッセーたちのことについて話していた。特にイッセーと小猫を見てかつて自身を育ててくれた二人の男女を思い出していた。


「最高の美食屋と最高の料理人…になれるか?案外あっしのフルコースがコンプリートされるのも遠くない未来なのかも知れんのう…へへ」


 次郎は楽しそうに笑うとフグ鯨を持って去っていった。


「しかし急いだほうがええぞ、得体の知れない奴も来ているみたいじゃからな」




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:小猫


「はあ…はあ…」


 ココさんがフグ鯨の調理を初めてから既に3匹のフグ鯨が毒化していた。


「ココさん、かなり疲れていますわね」
「よっぽど集中しなくちゃいけない作業なのね、見ている私たちまで疲れてきちゃいそう」


 ココさんの顔は汗がびっしりと浮かんでおり疲れが出ていました。デビル大蛇と戦った後だから余計に辛いのかも知れません。


(ぐっ、手元がぶれる…フグ鯨の調理はミリ単位のズレで失敗してしまうから今の僕では…よし)


 ココさんが作業を止めて私のほうを見てきました。何か顔についてるんでしょうか?


「小猫ちゃん、もしよかったら君がフグ鯨の調理をしてみないか?」
「えっ……ええぇぇ!?」


 ココさんの突然の提案に私は驚きを隠せませんでした。そりゃそうですよ、特殊調理食材と呼ばれているフグ鯨を私が調理するなんて!?


「む、無理ですよ!ココさんでも難しいっていう食材を私なんかが調理なんて出来ません!」
「イッセーから聞いたが君は仙術とやらが使えるんだろう?ならフグ鯨の氣の流れを見て毒袋の位置が分かるんじゃないか?」
「た、確かに仙術なら毒袋の位置も分かるかも知れませんが私はまだ未熟ですし…それに魚は兎も角フグなんてさばいたことないです…」
「大丈夫だ、僕がさばく順序を言っていく。それに情けないが僕はデビル大蛇との戦いで毒の消耗が大きかったせいか手元が震えてしまうんだ、だから今の僕じゃ成功しそうにないんだ」
「……」
「もし君が嫌なら無理強いはしない、無茶な提案をしているのは分かっているから」


 どうしよう…私なんて姉さまに比べれば仙術も料理もまだまだ半人前だし出来る訳がないです。私が無理ですとココさんに言おうとしたときさっきのイッセー先輩と祐斗先輩の会話が頭に浮かんだ。


(なに、これも経験だ。お前が嫌なら無理は言わないけどな)
(そんなことは無いよ、勿論挑戦させてもらうさ)


 …そうだ、祐斗先輩も未知の技術に挑戦したのに私が最初から無理だなんて決めつけるなんて言っていたら私はいつまでたってもイッセー先輩にも姉さまにも追いつけない。


(先輩のいる場所に私も行きたい、そして隣を歩いていきたい…なら逃げちゃ駄目ですよね)


 私は決心をしてココさんに向きかえった。


「ココさん、私やります!」
「そうか、じゃあお願いするよ」


 ココさんは私の覚悟を理解してくれたのかニコッと笑って場所を開けてくれた、私はココさんのいた場所に正座をしてフグ鯨を見つめた。


(なんてプレッシャーなんだろう…こんなに小さいのにまるで鯨みたいな大きさに見える)


 私は一瞬怯えてしまうが自分の頬を叩いて気合を入れなおした。


「それじゃあフグ鯨の調理を始めようか。包丁はこれを…」
「あ、大丈夫です。私、包丁は持ってますから」


 リュックに入れていた包丁を取り出して皆に見せる、するとココさんが何やら驚いた表情を浮かべた。


「こ、これは…なんて美しい包丁なんだ。まるで濡れているかのような霞仕上げ…手入れの行き届いた立派な包丁だ。小猫ちゃん、これは君の包丁かい?」
「これは私の包丁じゃありません、これは父さまのものです」
「君の御父上の…?」
「はい、そうです」


 私は包丁を見ながら自分の過去を話し始めました。


「私の父さまと母さまは私が5歳の時まで一緒に暮らしていたんです。姉さまもいて貧しくも温かい家庭でした」
「小猫ちゃんのお父さんとお母さんですか、二人とも猫妖怪だったんですか?」
「いえ母さまは猫妖怪でしたが父さまは人間です。母さまは藤舞という名で猫魈の中でもひと際仙術の才能に溢れていた人だったらしく大変美しい容姿をしていたそうです。その美貌から多くの男性を虜にしたほどと聞きました。そんな時母さまが暮らす妖怪の集落に一人の男性が迷い込みました、名前は小松といって料理人だったそうです」
「小松……それが包丁の持ち主なのね」


 部長が包丁の持ち主が父さまであるか尋ねてきたので首を縦に振った。


「はい、父さまは自分が住んでいた町からいきなり知らない森の中にいたらしくてずっと森を彷徨っていたらしいです、そして母さまが住んでいた集落に行きつきました。母さまは父さまを助けて父さまの看病をずっとしていました。いつしか母さまは自分の美貌を前にしてもデレたり媚び諂うことなく変わらず接してくれた父さまの人柄に本気で惚れこんでしまい二人は恋に落ちました」
「素敵な出会いね、私もそんな恋をしてみたいわ」


 部長がうっとりとした表情でそう言います。部長は助けてくれた男性を探しているのでこういう恋物語に憧れているんですね。


「でもその集落の長、すなわち母さまの父は人間嫌いでした。長との大喧嘩の末母さまは父さまと一緒に集落を出て行ったそうなんです」
「愛する人の為に住んでいた集落を出るなんて…まさに愛ね!」


 ティナさんはうっとりとした表情でそう言いました。やはりティナさんも女の子なんですね。


「暮らしは決して裕福ではなかったそうですが父さまも母さまも仲のいい夫婦として生活していたそうなんです。そして姉さまと私、二人の子供が誕生しました。父さまはとっても料理が上手でいつも美味しいご飯を作ってくれていました。私も姉さまも習っていましたしこの包丁も最初は姉さまが父さまから貰ったものなんです」


 私は包丁を見つめながら頭の中にある楽しかった思い出を浮かべていた。父さまが料理を作って母さまが笑っていて姉さまと私が美味しそうにご飯を食べている、そんな光景を……


「でも父さまは病気にかかってしまい亡くなってしまいました。母さまも父さまを失ったショックで衰弱していき後を追うように……その後は姉さまと生活していましたが後はリアス部長達も知ってる通りです。この包丁は姉さまと別れる時に貰ったものです」
「小猫、さらっと話したけど良かったの?私たちに自身の過去を話したりして」
「はい、私の大切な人たちに知ってほしいと思ったからです。後は父さまの話をして勇気を貰おうと思いまして」


 私は包丁を手にしてフグ鯨を目にする、さっきまでの緊張はもうなくなっていた。


「小猫ちゃん、そのフグ鯨は浮袋の真下に毒袋がある、分かるかい?」
「はい、ぼんやりと見えました」


 猫耳と尻尾を出して集中する、するとココさんが言った辺りから少し濁ったような氣の流れを感じた。これが毒袋なんでしょう。


「まずは尾びれのつけ根から三枚におろす要領で10センチ包丁を入れよう、ゆっくりね」
「は、はい!」


 私はフグ鯨に包丁を当てて調理を開始しました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



 調理を初めてからどれだけ時間がたったんでしょうか、何匹も何匹も失敗して既に何回目の調理か分かんないくらい集中していました。途中で上がってきたイッセー先輩と祐斗先輩は私が調理しているのを見て驚きましたがすぐに応援してくれました。そしてフグ鯨が産卵を終えて深海に帰ったためラスト一匹になりました。


「み、見えた……毒袋」


 とうとうフグ鯨の毒袋が見える所まできました。


「さて小猫ちゃん、ここからが本番だ。今度は素手で毒袋の周りにある粘膜をはがしていくんだ」
「はい…!」


 私はこれまで以上に集中して毒袋の粘膜をはがしていく、普通の人でさえ難しい繊細な作業を戦車の駒の怪力を持つ私がやるのは至難だ。でもここまできたら自分の力でやり遂げたい。


「いいぞ小猫ちゃん、手前についてる粘膜が取れたらやさしく救い上げるように手のひらに乗せるんだ。そして裏についてる粘膜もはがしていく」
「……」
「やさしく、ゆっくりと……」


 私はそっと毒袋を持ち上げていく、慌てない、大丈夫、私なら出来る……!


 そして…………


「と、取れました…」


 遂に毒袋を取り除くことが出来た…!


「よぉおおおぉぉぉーーーーーーっし!!!」
「やったーーー!!小猫、凄いわよ!!」


 やった…私、出来たんだ…


 ピカァァァッ!!


 その時でした、フグ鯨が眩い光を出して輝きだしました。


「フグ鯨が光った!?」
「毒が無くなったことで輝きだしたんだ。成功だよ、小猫ちゃん。これは君がやったんだ」
「良かった…ふえぇぇぇん!」


 私は嬉しさのあまり泣き出してしまいました。でもなんでしょうか、この言葉では言い尽くせない程の感動は…そうか、これが美食屋の喜びなんですね。


「さあ皆、小猫ちゃんが頑張ってくれたこのフグ鯨!さっそくいただくとしようぜ!」
「「「おおーーーーーっ!!!」


 私はフグのさばき方は知らないのでイッセー先輩に教えてもらいました。


「えへへ、出来ました、フグ鯨の刺身です。ちょっと不格好な形になってしまいましたが…」
「そんなことないわ。とっても美味しそうよ」
「それじゃあフグ鯨の捕獲を記念して、頂きます!!」
「「「頂きます!!」」」


 私は自分で切ったフグ鯨の身を箸で掴み口の中に入れました。噛むと口の中に脂の旨味が口いっぱいに広がりました。でも本マグロの大トロみたいに溶けてなくなることはなく、フグの身のような触感がずっと続いています。


「凄い…噛んでも噛んでも味が無くならない!」
「それどころか旨味や香りがどんどん出てきますわ」
「こんな美味しい食材がこの世に存在していたなんて…」


 部長達も皆幸せそうな表情を浮かべています。私も嬉しくなってきちゃいました。


「毒化してでも食べたい…か。実際に食っちまうとそれも頷けてしまうな」
「はい、本当に美味しいです」
「でもな小猫ちゃん、こんなに美味しいのはきっと君や皆が頑張ってくれたからなんだぜ?」
「えっ?」


 イッセー先輩の話に思わず首を傾げてしまった。私なんてココさんのアドバイスが無ければフグ鯨の調理なんて不可能だったしデビル大蛇と戦ったのもイッセー先輩とココさんだし…


「僕もそう思うよ、美食屋の喜び…久しく忘れていた。君たちがいなければきっと気付けなかっただろう。だから言わせてほしいんだ、ありがとうってね」
「ココさん…」


 ココさんの笑顔を見て私も皆も自然と笑顔になりました。


「さあ皆、フグ鯨をもっと堪能しようぜ!!」
「「「おおーーーーーっ!!!」」」



 そうだ、今度はイッセー先輩にあーんしちゃおうかな……なーんて……







 ザバァァァァァ!




「あれ、何の音でしょうか?」
「海から聞こえたね」


 何かが浮かんでくる音がしたので海の方をみると人型の生き物が上がってきました。顔は嘴みたいな長さで全身が毛むくじゃらの生き物でした。でも仙術で見ると氣の流れは全く感じません。


(あれは何だろう…先輩なら知ってるかな?)


 私はあの生物について先輩に聞こうとしましたが…


「せ、先輩…?」


 先輩とココさんはまるで見てはいけないものを見たような表情を浮かべていました。


「ドライグ!最大倍加だ!!」
『おう!!』


 イッセー先輩は赤龍帝の籠手を出して戦闘態勢に入りました。


「はああぁぁぁ……!」


 ココさんも全身を真っ黒にして戦闘態勢に入りました。あの生き物はそれだけ危険な生物なのでしょうか?



 謎の生物は暫くこちらを見ていましたが興味を無くしたのか同靴の砂浜の入り口に消えていきました。


「あ、危なかった……」
「せ、先輩…今の生き物は…」
「分からない、唯あいつと目が合った瞬間殺されるかと思った…」


 私は先輩に寄り添いながら謎の生物が去っていったほうを見つめていました…





side:ゾンビ


「ふざけるんじゃねーぞ!!俺様はゾンゲだ!!」


 ったく、ようやく俺様視点になったかと思えばふざけた事をしやがるぜ。


「ゾ、ゾンゲ様?いきなり叫んでどうしたんですか?」


 おっと俺様の子分を怖がらせちまったみたいだ。いかんいかん。


「いや、何でもない」
「それよりもゾンゲ様、本当に上手くいくんでしょうか?フグ鯨を取ってきた奴から奪うなんて…さっきのじいさんは明らかにやばそうでしたしもう帰りませんか?」
「そうですよ、周りにはまだまだ殺し屋とかいますし疲れましたよ…」
「馬鹿野郎、手ぶらで帰れるか!それに奪うんじゃなくて譲ってもらうんだよ!手みあげにホワイトアップルを持ってきたからな。それにさっきのじいさんはかわいそうだったから見逃しただけだ」
「だから見え張って列車でお爺さんを恐喝するなんてことしなければよかったんですよ。ゾンゲ様、実際は気が弱いんですし…」
「ていうかホワイトアップルでフグ鯨を交換するのは無理かと…」
「うるさいうるさーい!!俺様の考えにケチつける気か!!」


 全く、こいつらは可愛い子分だがたまにこういう事言うから困っちまうぜ。


「あ、ゾンゲ様、だれか出てきますよ」


 子分の一人が洞窟の砂浜の入り口に指を刺したので俺様も見てみる、そこには毛むくじゃらの変な奴がいた。


「なんだありゃあ…気持ち悪いな」
「あ、でもあいつフグ鯨を持ってますよ」
「他の殺し屋たちもアイツんとこに行きましたね」


 ちっ、美食屋でもない奴らに先こされるのは許せんな。よし、俺様も…


「ゾ、ゾンゲ様!あれを!」
「ああん?なんだ…ってなんだありゃ!」


 再びさっきの奴を見てみると殺し屋の一人が変な奴に腹を貫かれているのが見えた。


「こ、殺し屋がどんどん殺されていく…」
「ゾンゲ様、どういたしますか…?」
「き、決まってんだろう!逃げるんだよ」
「「ああ、待ってください!ゾンゲ様!!」


 あんなやばそうな奴に構っていられるか!


 俺は子分を連れて必死で逃げ出した。


 
 

 
後書き
 小猫です。洞窟の砂浜から帰った私たち、久々の日常を満喫しようと思います。さぁて何をしようかな?次回第21話『久々の日常、小猫デートします!!前編』でお会いしましょう。先輩、私、先輩の事が......! 

 

第21話 久々の日常、小猫デートします!!前編

 
前書き
  

 
side:小猫


「んん……くあぁ……」


 皆さんおはようございます、小猫です。窓から照らされる朝の日差しを感じて私は目を覚ましました。イッセー先輩の家で暮らすことになった私は二階の空き部屋を借りてそこで生活しています。猫耳のついたフード付きのパジャマのフードを頭から下ろした私は時計を見てそろそろ起きる時間と判断してスリッパを履き一階に向かいました。


「あ、おはようございます。小猫ちゃん」
「おはようございます、アーシアさん」


 一階の洗面所に行くとそこにはアーシアさんがいました。私は彼女に挨拶をして洗面台の前に立って顔を洗います。


「小猫ちゃんと一緒に住む様になって3日が立ちましたけどここでの暮らしには慣れましたか?」
「はい、イッセー先輩もアーシアさんも良くしてるのでここでの生活は楽しいです」
「私も家族が増えたみたいで嬉しいです」


 イッセー先輩が好きな者同士初めはギスギスするかなって思いましたがアーシアさんは気にもしてないそうです。それどころか家族のように接してくれるので私も彼女のことをもう一つの家族だと思っています。


「イッセー先輩は起きていますか?」
「はい、今は朝食を作っていらっしゃいます」
「今日の御飯当番はイッセー先輩でしたね。朝食が楽しみです」


 ここに住む様になって最初に決めたのが一日ごとに料理する人を交代していく決まりです。イッセー先輩やアーシアさんの手料理は美味しいから私も精進しないといけません。


「おはようございます、イッセー先輩」
「お、小猫ちゃん起きたのか。おはようさん、今デビル大蛇の肉を使ったハンバーガーを作ってるからちょっと待ってな」
「じゃあ私は食器を用意しますね」
「頼んだぜ、アーシア」


 洞窟の砂浜で捕獲したデビル大蛇の肉は一部をIGOに渡して残りは私たちが貰いました。ジュージューという音と香ばしい香りがキッチンに広がり食欲を沸かせます。


「後はココ兄からもらったネオトマト、レモレタスとミネラルチーズを乗せれば…よし、出来た!名付けてデビルバーガーだ!」
「うわぁ!美味しそうです!」


 先輩が作ったハンバーガーが私の目の前に運ばれてきました、速く食べたいです。


「それじゃあ手を合わせて…食材に感謝をこめて頂きます」
「「頂きます!」」


 私は肉汁溢れるデビルバーガーにかぶりつきました。デビル大蛇のハンバーグはちょっと癖がありますがジューシーで肉の旨味が口一杯に広がります、そこにミネラルチーズのとろけるような味が加わり更に美味しくなりました。ちょっとくどくなったかなと思った時にネオトマトの瑞々しい果肉とレモレタスの爽やかな酸味が更に肉の味を深めてくれます。パンズもフワフワで美味しいです。


「そのパンズはムキムキコムギで作った俺の手作りだ。市販の物よりもフワフワで生地の味が強いから濃厚なハンバーグやチーズも負けずしっかりと主張する。パンズとハンバーガー、チーズにトマトやレタス、これらが纏まって一つの美味いハンバーガーになるんだよな」
「あ、それ何かの漫画で見ました。肉が良くてもパンズが駄目だとハンバーガーとしては駄目だと」
「あはは、まあただの受け売りさ」


 雑談をしながら朝食を終えて駒王学園の制服に着替えて三人で学校に向かいます。


「そういえばイッセー先輩ってグルメ界で仕事をするときもその学生服ですよね?」
「ああ、グルメ界で仕事を終えた後にそのまま学校に向かうってのも結構あったからこのままの方が楽なんだ。まあ破れたりもするからスペアを大量に持ってるんだ」
「そうだったんですか?猛獣とかって匂いが強いタイプもいますから服に匂いが付いたりしないのかなって思ってたんですが…」
「俺の知り合いに匂いのスペシャリストがいるからその人に特別な香水を作ってもらってるんだ」
「へえ、先輩って案外おしゃれさんなんですね」
「まあエチケットには気を使わないとな」

 
 会話をしながら駒王学園を目指して歩いていきます。学園に近づくにつれて人も増えてきました。


「あ、小猫ちゃんだ。今日も可愛いな~」
「バッカ、お前アーシアちゃんが一番だろうが」
「…ってまた兵藤と登校してるぞ!?」
「最近あの三人よく一緒にいるけどどういう関係なのかしら?」
「学園のマスコットに学園の聖女、そこに駒王の大食い番長がいるんだろう?木場なら分かるけど兵藤ってそんなにモテたっけ?」
「ワイルド系のイケメンだけど女受けはよくないしな…小猫ちゃんも大食いだって噂があるしそれで意気投合したとか?」
「その理屈だとアーシアさんも大食いって事にならないか?」
「どっちにしろ羨ましいよな」


 私たちを見て周りの人達が私たちについて色々と話していました。私たちがイッセー先輩と一緒に登校するのがそんなにおかしい事なんでしょうか?


「イッセーさん、駒王の大食い番長ってなんですか?」
「そいつは俺の二つ名みたいなもんかな。俺が一年の時駒王町に暴走族がやってきて近隣住民に迷惑をかけてたんだ、それを俺がちょっとお灸を据えてやったんだがその時一人で暴走族を倒した男って事でそう呼ばれるようになったんだ。その後はやたらと不良に絡まれてたんだけど全員軽くじゃれてやったら二度と来なくなったな」
「私が入学する前にそんなことがあったんですか…」


 玄関で先輩たちと別れて自分の教室に向かう、私が席につくと何人かの女子生徒が近づいてきた。


「おはよう、塔城さん」
「おはようございます、皆さん」


 笑顔で挨拶をかわすと女子生徒の一人がニヤニヤした表情で話しかけてきた。


「ねえねえ塔城さん、塔城さんって兵藤先輩と付き合ってるの?」
「ふえっ!?」


 突然の発言に思わず声を出してしまいました。


「ど、どうしてそんな話が…?」
「だって塔城さん、よく兵藤先輩と一緒にいるじゃない。しかも私たちが見た事もない満面の笑みで!」
「これはピーンと来ちゃったんだよね」
「で!で!実際どうなの?」


 女子はコイバナが好きだって聞きますがちょっとこの女子Aさんのテンションについていけないです。


「付き合ってはいません…付き合いたいとは思ってますが」
「きゃあーーー!!付き合いたいだって!!!」
「やっぱり兵藤先輩のこと好きなんだ!」
「でも兵藤先輩って怖いって噂があるよ?大丈夫なの?」


 女子Bさんと女子Cさんがキャーキャーとはしゃぐ中女子Dさんは心配そうな表情でそう聞いてきました。


「それは間違いですよ、イッセー先輩は優しい人です。私の我儘を聞いてくれますしいつも美味しい料理を作ってくれますし頭をナデナデしてくれます。それに先輩って意外と茶目っ気があって可愛い所があるんですよ?例えば私にジュースを奢ってくれた時があったんですが私に渡そうとしたとき頬に冷たいジュースをくっつけてきたんです、その時の先輩のいたずらが成功した子供みたいな笑顔が本当に可愛くて……って皆さん、どうしたんですか?口から砂糖を吐き出しそうな顔をしてますが?」
「あ~…いや、なんていうか…乙女だよね、塔城さんって」
「私は女ですよ?」
「皆さん、おはようございます。朝礼を始めますから席に戻ってくださいね~」
「「はーい!!」」


 私が首を傾げていると私のクラスの担任のティアーユ先生が教室に入ってきたので私の席に集まっていた方々は全員自分の席に戻りました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「~でここはこういった式を使います。そして…」


 朝礼が終わり今は授業中、私は黒板に書かれた図や式をノートに写していますがその最中に先日の洞窟の砂浜での事を思い出していました。


(確か洞窟の砂浜を出た後にグルメ警察が来ていたんですよね)


 謎の生物と遭遇したあの後私たちが洞窟の砂浜から出るとそこには多くの人が何かの作業をしていました、イッセー先輩の話では作業をされていた方々はグルメ警察という組織の方々だったそうです。警察ということは何か事件が起きたのかと思いましたがイッセー先輩は見ない方がいいと早々にその場を後にしました。


 因みにイッセー先輩が赤龍帝だってことも部長たちに話しました。先輩がドライグって叫んだからバレちゃったんですよね。でも部長たちは驚きながらもそれを受け入れて内緒にしてくれると約束してくれました。


(イッセー先輩とココさんはグルメ警察の方と話をしてたから事情は知ってるのかもしれない…)


 その後はココさんがキッスを呼んで私たちにお別れの挨拶をしていました。でもその時にココさんはイッセー先輩にこう言いました。


『じゃあな、イッセー。久しぶりに会えてうれしかったよ』
『ああ、俺もだ』
『…もっとも、直に再会することになりそうだけどね』
『…そうかもな』


 二人はそれ以上話すことはなくココさんは去っていきました。でも私はなんとなく察しました。二人は洞窟の砂浜で出会った謎の生物の事を考えているって……


「…城さん?塔城さん?大丈夫ですか?」
「えっ…?」


 私を呼ぶ声に施行を現実に戻され横を向くとティアーユ先生が心配そうな顔をして私を見ていました。


「塔城さん?何やら考え事をしていたみたいですが大丈夫ですか?」
「あ、その…ごめんなさい、ティアーユ先生。ちょっと考え事をしてて…」
「あら、いつもは真面目な塔城さんが珍しいですね?でも具合が悪いとかではなくて良かったわ」
「はい、ご迷惑をおかけしました」


 いけない、今は授業に集中しなくちゃ……


 私は再びノートを書く作業に戻る。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 あの後はしっかりと授業に集中したので問題なく一日の授業が終わり今は放課後の時間になりました。オカルト研究部は部長の用事で今日は休みになったので私は鞄に荷物を入れて先輩の教室に向かおうとしましたが何やら教室が騒がしいです。


「あの、何かあったんですか?」
「あ、塔城さん。丁度良かったよ、これをどうぞ」


 同じクラスの女子生徒から何かのチケットを貰いました。


「それ映画館で使える前売り券なんだけど私のお父さんが映画関係のお仕事をしていてその関係で貰った物なの。折角だから皆にも分けようかなって思って…あ、そうだ。もう一枚あげるよ、兵藤先輩でも誘っていってね」
「え、あ、ありがとうございます…」


 映画の前売り券ですか…丁度二枚貰いました。今日は暇ですしイッセー先輩と映画を見に行くのもいいかも知れません。


「でもアーシアさんの分が無いです…」


 イッセー先輩の傍にはアーシアさんがいます、それなのにイッセー先輩だけを誘うのも気が引けてしまいます。


「まあ最悪部長か誰かに譲ってもいいしとりあえず先輩のいる教室に向かいましょう」


 私は前売り券をしまって先輩の教室を目指しました。



 先輩がいる教室の前に来ましたが先輩はいるでしょうか…あ、いました。でも誰かと話しています、あれは確か国語の担当教師の坂田先生です。一体何を話しているんでしょうか?


「じゃあそういう事で頼むぜ」
「はい、分かりました」


 坂田先生が去っていくと先輩が私のいる方に歩いてきました。


「よっ、小猫ちゃん。俺に何か用か?」
「イッセー先輩、もしかして私がのぞき見しているの気が付いていたんですか?」
「小猫ちゃんの匂いがしたからな」


 匂いって…変な匂いしてませんよね?


「そ、それよりもイッセー先輩、さっきは坂田先生と何を話していたんですか?」
「ああ、坂田先生は料理研究部の顧問でもあるからそれについての話さ」
「顧問の先生がいたんですか…知らなかったです」
「顧問は流石にいるぞ。まああの人甘党だからスイーツで釣ったんだけどな」
「イッセー先輩、意外と鬼畜です…」


 あれ、そういえばアーシアさんの姿が見えませんね、教室にはいないしどうしたんでしょうか?


「あの、アーシアさんのお姿が見えないんですがどうされたんですか?」
「アーシアなら桐生や他の女子生徒たちと一緒に遊びに行ったぞ。アーシアも俺以外との生徒と交流を深めておいたほうがいいと思っていたからな」
「お父さんみたいですね」


 あ、ということは今イッセー先輩は一人ってことでしょうか?一応確認はしておきましょう。


「イッセー先輩はこの後何か用事は…?」
「いや、特にないぞ」


 何て運がいいんでしょうか、これなら先輩を誘っても問題ないですね。


「あの…イッセー先輩、実はさっきクラスメイトから映画の前売り券を貰ったんです。もし良かったら私と一緒に見に行きませんか?」
「映画?ああ、いいぜ。一緒に行こうか」


 やった!先輩を誘えました!これっていわゆるデートですよね!ふふふ、やりました♪


「あ、イッセー先輩…その、もし先輩が嫌じゃなかったら手を繋いでいきませんか?」
「手を?構わないぜ、ほら」
「あ…」


 イッセー先輩が私の手を優しく握ってくれました。



「じゃあ行こうか、小猫ちゃん」
「はい、先輩」


 そのままイッセー先輩と一緒に街の映画館に向かいました。



 
 

 
後書き
 ちょっと字数が多いので前後編に分けます。今回は次回予告はないです。 

 

第22話 久々の日常、小猫デートします!!後編

side:小猫


 私はイッセー先輩の手を引きながら街にある映画館を目指して歩いています。先輩の手は大きくて私の手を包み込んでくれてそれが言いようのない安心感と温かさを私に感じさせてくれます。


「先輩の手って大きくて暖かいです」
「小猫ちゃんの手だって小さいけど暖かいぞ。きっと小猫ちゃんの優しい心が浮き出てきてるんだろうな」


 先輩は頬を指で書きながらそう言いました。よく見るとイッセー先輩の頬が若干赤くなってるように見えます。もしかして私の事を意識してくれているんでしょうか?そうだったら嬉しいです。


「小猫ちゃんが家に来てから三日が過ぎたけど暮らしは快適か?何か不満でもあったら言ってくれ」
「そんなことはないですよ。イッセー先輩の家での暮らしは楽しいです。アーシアさんも仲良くしてくれますし充実しています」
「そうか、初めは大丈夫かなって思っていたけど不満がないなら良かったぜ」


 不満どころか大好きなイッセー先輩と同じ空間で過ごせるだけで幸せなんですが……今はちょっと恥ずかしくてそうは言えませんね。


「しかしあの時ぶつかった女の子とここまで親しくなるとは思わなかったな」
「入学式の時の事ですね。私もこんな経験が出来るなんて当時は思ってもいませんでした」


 そう思うと先輩との出会いって何だか運命を感じてしまいます。もしあの時先輩と出会ってなかったらグルメ界の事もグルメ食材の事も知らずに過ごしていたと思います。


(そして誰かを好きになるって感情も……)


 先輩がいてくれたから私はこの思いに気が付くことが出来た、自分の中にある仙術の力と向き合うことが出来ました。先輩には本当に感謝の言葉をどれだけ言っても足りないくらいの恩があります。


「先輩、ありがとうございます。私と出会ってくれて……」
「なんだ、急にそんな別れの挨拶みたいな事を言ったりしてどうしたんだ?」
「いえ、なんだかそう言いたくなったんです」
「そうか……なんか恥ずかしいな」


 ポリポリと自分の頬を指でかく先輩を見てフフッと笑う私、何だかいい雰囲気じゃないでしょうか?


(そうだ、今日のデートなら先輩に告白できるんじゃないでしょうか?)


 そうです、これはチャンスです!アーシアさんには申し訳ありませんが恋は戦いだっていう人もいますし遠慮していたらイッセー先輩を振り向かせることはできません。


(でも今はムードがないしもう少し後で告白したいですね、例えば夜景のきれいな場所とかで……いや私と先輩は学生ですしあえて身近な場所でもいいから二人っきりになってそれで……)


 二人っきりの空間で私と先輩しかいない甘い空間、最初は先輩はあまり意識してなかったけど何かの拍子で手が触れあってお互いを意識していく。そのまま見つめ合ってそして……


「……えへへ♡先輩、そんな所をさわっちゃだめですよぅ……♡」
「小猫ちゃん?映画館に着いたんだけどどうしたんだ?」
「はわっ!?な、なんでもないですよ!」


 どうやら妄想しているうちに映画館についてしまったようですね。


「それで小猫ちゃんは何が見たいんだ?」
「そうですね……」


 二人で何を見るか決めているんですが何がいいでしょうか?私が見たいものでいいって先輩は言いましたがそう言われると何にしようか迷ってしまいます。最近は先輩の影響でアニメも見てるからそういうのにしようかなって思ったときある映画のポスターを見て興味が湧きました。


「いちごの青春……?」


 ストーリーが気になったのでスマホで調べてみました。ストーリーとしては主人公の男の子は映画が好きで将来は映画監督になりたいと思い高校に入学したときに映画研究部を作った、そして高校で出会ったヒロインたちとの交流や青春を描いた甘酸っぱい恋愛物……とのことらしいです。


「先輩、私これがいいです」
「これか。でも次の上映までに少し時間があるな。その間町をぶらついてみるか?」
「……!はい!是非そうしたいです!」


 やった!これってもう間違いなくデートですよね!映画だけじゃなくて二人で町巡り……ああ、何だかドキドキしてしまいます……


 二人分のチケットを購入した後に私たちは町の中を見て周りました。二人でスイーツ巡りをしたりウィンドウ・ショッピングをしている途中でアクセサリーを売っている専門店に立ち寄り綺麗な首飾りを買ってもらいました。

 流石に悪いと思ったんですが先輩がグルメ界で取れた鉱石などはこっちで売ってお金にしているから余ってるくらいだ、と言って買ってくれました。それでも悪いと思ったんですが大事な後輩への贈り物と笑顔で言われてしまってはダメと言えずついつい甘えてしまいました。


「お、ここは……」
「?先輩、このゲームセンターがどうかしたんですか?」


 先輩はゲームセンターを懐かしい物を見るような眼差しで見ていました。


「ああ、前にこのゲームセンターに松田や元浜、それに桐生やアーシアと遊びに来たんだ。丁度オカルト研究部と合宿に行くちょっと前だったな。ゲーセンなんて言ったことなかったが楽しかったぜ。アーシアともプリクラとったしな」
「へー……そうなんですか」


 イッセー先輩とアーシアさんのプリクラ……ズルいです!私だって先輩とプリクラ取りたいです。


「(あ、しまったな。流石に付き合ってないとはいえ女の子と二人でデートしてるときに他の女の子との思い出を話すのはデリカシーが無かったか。)……小猫ちゃん、よかったらここで遊んでいかないか?俺、小猫ちゃんとプリクラとってみたいんだ」
「えっ、本当ですか?……嬉しいです。私も先輩とプリクラをとってみたいって思ってましたから」


 まさかのイッセー先輩からのお誘いに驚いてしまいましたがそれも一瞬で嬉しさで胸がいっぱいになっちゃいました。だって私からじゃなくてイッセー先輩から誘ってくれたんですよ、こんなの嬉しいにきまってるじゃないですか!!


「行きましょう、イッセー先輩!ほら、早く早く!」
「そんなに慌てなくてもゲーセンは逃げないって」


 イッセー先輩の手を引っ張ってゲームセンターの中に入り二人でプリクラを取りました。イッセー先輩の頬が触れ合ってしまうくらいに引っ付いてプリクラを取りました。一枚だけ先輩の頬にチュッとキスしたものも取れたんですがその時の先輩の顔が真っ赤で面白かったです。


「小猫ちゃん、ああいうイタズラは程々にしてくれよ」
「ふふっ、ごめんなさい。先輩にイタズラしてみたくなっちゃって」


 ペロリと舌を出して先輩にウインクすると先輩は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまいました。


「先輩、どうしました?もしかして怒っちゃいましたか?」
「いや、違うよ。顔が赤くなったのを見られるのが恥ずかしくなっただけさ。(あっぶねー……小猫ちゃんが可愛くて思わず顔をそむけてしまったじゃねえか)」
「……?変な先輩?」


 その後は先輩と一緒にいろんなゲームをして遊んでいたんですがそこで思わぬ人たちに会ってしまいました。


「あれ、イッセーじゃん……って小猫ちゃん!?」
「なんでイッセーと小猫ちゃんが一緒にゲーセンにいるんだ!?まさかデートか!?」
「松田に元浜じゃねえか。お前らこそどうしたんだ、こんなところで?」
「俺たちは遊びに来てただけだ。そんなことよりも詳しく聞かせてもらおうじゃないか」
「そうだそうだ。なんで小猫ちゃんと一緒なんだ?まさかデートか!?」


 ……最悪です。イッセー先輩の友人である松田先輩と元浜先輩に出会ってしまいました。正直言って私はこの二人が苦手です。覗きの常習犯だしエッチなものを学校に持ってくるしとやりたい放題やってました。それでついたのが『変態二人組』という二つ名で正直関わりたくないと思ってたくらいです。その二人と出会ってしまったからにはデートの邪魔されるのは間違いないでしょう。


「まあデートみたいなもんかな」
「そうか、それならいいんだ」
「抜け駆けしやがってよー、コイツめ」


 ……あれ?なんでしょうか、この和やかな雰囲気は?てっきり激情してイッセー先輩に殴りかかっていくんじゃないかって思ってたのに全く違う反応をしているのに私は困惑してしまいました。


「なんだ、お前ら変に冷静だな。てっきり俺に殴りかかってくるかと思ったけどしないのか?」


 イッセー先輩もそう思ってたのかポカンとした表情を浮かべていました。


「まあこれが他の奴ならな……でもお前には色々助けてもらったしそんなことはできねえよ」
「それにイッセーだと怒りよりもなんか安心するんだよな、お前にもようやくそういった相手が出来たのかって」
「なんだそりゃ……お前ら俺の母ちゃんかよ」
「まああれだ、俺たちもお前に感謝してるんだ。じゃあおじゃま虫は退散するとしますか」
「避妊はしっかりしろよなー」
「な、なんてこと言うんだ!?」


 動揺する先輩をからかいながら二人は去っていきました。


「ったく、あいつら面白がりやがって……」
「あの、先輩。先輩はあの人たちになにかしたんですか?恩があるって言ってましたが……」
「ん?ああ、あいつらとは以前からつるんでたんだ、アーシアが学校に転入してきた時くらいの話になるんだけどあいつらって覗きとか学校に卑猥なものばかり持ってきたりしてただろ?今まではティアーユ先生や坂田先生など一部の先生がかばってくれたお陰で何とかなってたけど等々かばいきれなくなって退学寸前までに話が上がっていたらしいんだ」


 まあ普通ならそうなるでしょうね。ティアーユ先生は生徒の更生を信じて二人をかばってたらしく坂田先生も普段はズボラですが生徒には面倒見のいいところもありますからね。


「それを聞いた俺はアーシアや桐生も交えて二人を説得したんだ。最初は俺たちは退学になってもエロは捨てないって言ってたんだがアーシアが涙目で訴えると流石にこたえたのかもう覗きやエロいものは持ってこないって約束したんだ。それからは信頼を取り戻すために覗いた女子生徒に謝ったり学校の奉仕活動に俺やアーシアも手伝いながら取り組んでるんだ」
「……確かに最近はおとなしいって皆言ってましたがそういった事情があったんですね」
「あいつらって他の生徒みたいに見た目で俺を怖がったりしないしなんだかんだと相談にものってくれる友達想いな所もあるんだ。確かにあいつらがやってきたことは悪いことだ、でも今はそれを理解して反省してる。今はまだ信用はされてないが時期に皆もあいつらを認めてくれるさ」
「……少し見直しました」


 イッセー先輩は本当に嬉しそうに二人の事を話していました。イッセー先輩は怖いって皆に思われて距離を置かれてますがよく考えたらあの二人は先輩に物怖じしないで話しかけたりつるんでたりしていました。きっと先輩にとってあの二人はかけがえのない友達なんですね。なんだか羨ましいです。


「今度あいつらとも話してみてくれよ。小猫ちゃんと会いたいって言ってたしな」
「……そうですね、また機会があれば」


 私もイッセー先輩の特別になれるでしょうか……?



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 ゲームセンターで時間を過ごしもうそろそろ映画の上映時間になりそうになったので私たちは映画館に向かいました。


「いちごの青春……どんな映画か楽しみです」
「そうだな、恋愛物はあまり見ないから俺も楽しみだ」


 上映席に座り映画の始まりを待つ私たい、でも恋愛物だからかやっぱりカップルが多いですね。ってあそこではキスしてるし……


「あ、あはは……やっぱりカップルが多いな?」


 先輩も周りの甘い空気に気が付いたのかちょっと気まずそうにしていました。でも私はこれをチャンスだと思い先輩の手を握りました。


「こ、小猫ちゃん?」
「こ、これくらいいいですよね?デ、デートですし……」
「あ、ああ。そうだな。デートだもんな……」


 お互いに顔を真っ赤にしながら意味の分からないことを言ってますが先輩も手を握り返してくれたのでこのまま映画を見ることにしました。そろそろ上映されますね、私は映画への期待と先輩の手のぬくもりというう二つのドキドキをこめて映画を見ることにしました。
 いちごの青春は王道の恋愛ストーリーで主人公が中学3年で受験を控えていた時屋上である一人の少女と出会うところから物語が始まりました。そしていろいろあって高校に入学して映画研究部を作りそこから合宿に行ったり学園祭をしたりヒロインを狙うライバルが現れたり修学旅行に行ったりと物語が進んでいきます。そして高校生活3年目の冬、主人公はヒロインとすれ違ってしまいこのまま卒業になってしまうのかと思いましたがそこに別のヒロインが現れて主人公を激励して主人公はヒロインに告白。そして二人は抱き合ってキスをしました。


「……」


 ちらりと先輩を見ると先輩は真剣に映画を見ていました。時々私の手を強く握ったりしていたので私は別の意味でドキドキしてましたが……


(私も先輩とあんな恋をしてみたいな……)




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「いやー、いい物語だったな。偶にはああいう王道の恋愛ストーリーもいいもんだって思ったぜ」
「そうですね、見ていてドキドキしちゃいました」


 映画が終わった後、私たちは帰路についてました。楽しかったデートもこれでお開きになってしまいますね。結局先輩に告白する前に家についてしまいました。


「ただいまー……ってアーシアはまだ帰ってなかったのか。まあ飯は桐生と食ってくるって言ってたし俺たちは晩飯をつくるか」
「じゃあ私も手伝いますね」


 先輩と一緒に夕食を作って二人で食べました。その後は食器を洗いリビングのソファーで先輩の隣に座って先輩と他愛無い話をしていました


「それにしても今日は楽しかったよ。女の子とデートなんて初めてしたよ」
「そうなんですか?」
「ああ、グルメ界にいたころは猛獣とばかり戦ってたしこっちに帰ってからも女子とは縁がなかったからな……まあ今は小猫ちゃんやアーシア、リアスさんたちといった美少女と交流できてるけど当時はそんなことになるなんて思ってもいなかったしな」
「じゃあ私が先輩の初めての相手になるんですね」


 そう言って私が微笑むとイッセー先輩はまた顔を赤くして頬を指でかき出しました。先輩って照れたりすると頬をかこうとするんです。だから先輩が照れてるって直にわかっちゃいます。


「初めてのデートが小猫ちゃんだなんて俺も運がいいな、だってこんなかわいい子とデートなんてなかなかできないし小猫ちゃんなら沢山の男が誘いそうだしな」
「そう言ってもらえると嬉しいです。でも私はイッセー先輩以外の人とデートはしないですよ?」
「えっ……?」
「先輩だけです。私がこうやって一緒にいたい男の人はイッセー先輩だけなんです……」


 ボソッと言った私の言葉は先輩に聞こえたようで今日一番の真っ赤な顔を見せてくれました。


「お、おっと!もうこんな時間か。そろそろアーシアも帰ってくるかもしれないし俺は風呂でも洗ってくるかな!」


 先輩はそう言ってソファーから立ち上がりお風呂場に行こうとしました。アーシアさんはまだ帰ってきてない……ならこれが最後のチャンスかもしれません!そう思った私はリビングからお風呂場に向かおうとしていた先輩に抱き着きました。


「こ、小猫ちゃん?一体どうしたんだ?」
「イッセー先輩、前にここでレーティングゲームが終わった後に打ち上げをしたのを覚えてますか?」
「ああ、その時に小猫ちゃんが猫又だって聞いたからよく覚えてるよ」
「実はあの時に言えなかったことがあるんです……」
「言えなかったこと?」


 私は先輩から離れて意を決して先輩に言いました。


「先輩、私……先輩の事が大好きです!一人の男として先輩が大好きなんです……!!」
「……えっ?」


 先輩は最初何を言われたのか分からないような顔をしていましたが途端に驚いた表情を浮かべました。


「初めて会った時からずっと気になっていたんです。美味しそうにご飯を食べる先輩も顔を真っ赤にして慌てる先輩も戦ってるときの荒々しくもかっこいい先輩も……先輩の全部から目がはなせなくなっちゃったんです……」
「小猫ちゃん……」
「あなたがいてくれたから私は仙術と向き合うことができました。私を強くしてくれた先輩がこの世界で一番好きなんです。ずっと傍にいさせてください、私を先輩のお嫁さんにしてください……!」


 私は先輩を真っ直ぐに見つめてそう言った。イッセー先輩は初めは驚いていたが真剣な表情で私に向き合った。


「……小猫ちゃん、君がそこまで俺の事を想っていてくれたなんて知らなかったよ。正直そういった感情を異性から向けられたことがなかったからさ、全然わかんなかった。でも小猫ちゃんが勇気をだして告白してくれて、俺、分かったんだ。俺も小猫ちゃんが好きだ!」
「…!っ先輩!!」
「最初は妹みたいに思ってたけどだんだんと小猫ちゃんの事が気になっていったんだ。ライザーに君を取られそうになった時言いようのない不安が胸の中に出てきたんだ。あの時は後輩のためなんてもっともらしい事を言ったけど今わかったよ、俺は君を他の男に取られたくないって。だから俺は小猫ちゃんを助けたいって思ったんだ。こんなガサツで大食らいの俺なんかでよかったら俺の恋人になってほしい!!」
「先輩っ!!」


 私は嬉しくなって先輩に抱き着きました。だってずっと夢に思っていたことが現実になったんですもん!嬉しくて仕方ないです!


「嬉しいです……私、先輩の恋人になれたんですね?」
「ああ、今まで君の気持ちに気が付けなくてごめんな?」
「いいんです、こうやって先輩と結ばれることができたんですから……」
「小猫ちゃん……」
「先輩……」


 私は目を閉じて唇を上にあげる、先輩はそっとかがんで私の頬に手を添えて……優しくキスをしてくれました。


「んっ……ちゅ……はぁ……ふふっ、先輩からキスしてくれましたね」
「前は小猫ちゃんからだったな。今思えば女の子にキスされてお礼だなんて思った俺って本当にバカだったな」
「本当ですよ、私は誰にでもキスするような女じゃありませんから……悪いと思ってるならもっとキスしてください」
「ああ、わかったよ」
「ん……」

 
 ガタッ!


 ……えっ?今リビングの扉から何か音がしたような……?そう思い先輩とのキスをやめて音がした方に視線を送るとそこにはアーシアさんがいました。


「ア、アーシア!?いつからそこに!」
「あ、あの……私今帰ってきて、その……リビングに入ろうとしたらイッセーさんと小猫ちゃんが、その……」
「アーシア、その、これはだな……」
「いいんです。二人が結ばれたのはキスしている時点で把握できました。……おめでとうございます。二人が恋人になれて私も嬉しいです。……じゃあ私はこれで……」
「待ってください、アーシアさん」


 私はリビングから立ち去ろうとしたアーシアさんの右手をつかみました。


「小猫ちゃん……?」
「……アーシアさんはいいんですか?このまま私と先輩が恋人になっても?」
「でもイッセーさんは小猫ちゃんを選びました。なら私は二人の幸せを祝福するだけです」
「……全く、そんな涙目で言っても説得力なんてないですよ」


 私はアーシアさんをそっと抱きしめました。


「アーシアさん、私はアーシアさんなら一緒でもいいと思ってますよ?」
「えっ……?でも、そんな事……」
「前に言ったじゃないですか、アーシアさんの事は家族みたいに思ってるって。だから二人でイッセー先輩のお嫁さんにしてもらいましょう」
「……本当にいいんですか?私なんかがいても……」
「正直私一人だとイッセー先輩を支えられるかわかりませんしアーシアさんならかまいません」
「……わかりました。私も勇気を出します」
「その意気です」


 アーシアさんは私から離れて先輩の方に向きかえりました。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!話が分からないんだが……」
「もう!私の気持ちに気が付いたならアーシアさんの気持ちにも気が付くでしょう?」
「アーシアの気持ちって……まさかアーシアも俺の事を?」
「……はい」


 アーシアさんは顔を真っ赤にして先輩の質問に頷きました。



「えっと、その……いつからなんだ?」
「初めて会ったときからです。イッセーさんは出会った私に優しくしてくれました、それどころかレイナーレ様たちから私を引き取って下さり学校まで通わせてもらっています。イッセーさんには返せないほどの恩を貰いました。だから……」
「……そうか、アーシアも俺の事を想っていてくれたんだな……」


 先輩はアーシアさんの気持ちを知って少し気まずそうな表情を浮かべました。


(どうしよう、俺は小猫ちゃんを選んだ。でもアーシアも俺の事が好きだって……正直メチャクチャ嬉しいが二人をお嫁さんにするっていっても日本の法律じゃダメなことだし……)
『何を下らないことで悩んでいるんだ』


 先輩が何か考え込んでいると先輩の左腕に赤龍帝の籠手が現れてドライグの声が聞こえてきました。


「ドライグ!?寝てたんじゃないのか?」
『そのつもりだったがお前が優柔不断すぎて起きたんだ。別に二人を娶ってもかまわないだろう?グルメ界にはそういった法律なんてないしそもそも本人たちが納得してるなら猶更だ』
「それはまあそうかもしれないが……」


 ドライグ、ナイスです!思わぬ助け船に私とアーシアさんは笑みを浮かべました。


『それにどっちも守ると約束したんだろう?なら男らしく女二人くらい守って見せろ、思い立ったが吉日なんだろう?』
「……そうだな、ウジウジ考え込むなんて俺らしくねえ。分かった、俺も覚悟が決まったぜ!」


 先輩は両手で自分の頬を叩くと私とアーシアさんを抱きしめました。


「小猫……いや白音!アーシア!俺は二人が大好きだ!!ずっと俺の傍にいてほしい、誰かになんて言われようと絶対に離さない!だから二人を俺の恋人にさせてくれ!!」
「イッセー先輩……!はい!私も大好きです!!」
「イッセーさん、ずっとお傍にいさせてください、大好きです……!」


 私はイッセー先輩にキスをしてその後にアーシアさんが先輩にキスをしました。ようやく三人の心が一つになれましたね。


「しかしまさか今日で恋人が二人もできるとはな……リアスさん達になんて言おうか……」
「大丈夫ですよ、先輩。部長たちも祝福してくれます」
「そうですよ。桐生さん達も絶対におめでとうって言ってくれます」
「そうだな。まあとりあえず今は風呂に入るか。もうこんな時間だしな」
「じゃあ私とアーシアさんも一緒に入ってもいいですよね。もう恋人なんですし……」
「え、いや流石に付き合ったばかりでそれは早いんじゃ……」
「ちゃんと水着は着ますよ、ねっ、アーシアさん?」
「はい、小猫ちゃん」
「んー……じゃあ三人で入るか」
「「はい!」」


 その後は三人で一緒にお風呂に入りました。先輩の家のお風呂は結構広いので三人で入っても余裕がありました。私とアーシアさんが先輩の体を洗ってあげたり先輩に体を洗ってもらい一杯イチャイチャしました。


「ふう、さっぱりしたな。風呂上りのアイスが美味い」
「先輩、はいあーん」
「あーん……ん、やっぱりアイスはスー〇ーカッ〇のバニラ味だな」
「イッセーさん、次は私があーんしますね」


 今は先輩の膝の上にアーシアさんと一緒に座ってアイスの食べさせあいっこをしています。


 ビーッ!ビーッ!ビーッ!


 その時でした、突然異次元七色チョウを入れてあるケースについてあるランプが光りだしました。因みにこっちの家にいる異次元七色チョウの名前がシュウでスイーツハウスにいるのがマイという名前らしいです。


「先輩、シュウの入ってるケースについてるランプが光ってますがあれはなんですか?」
「あれは向こうで誰かが俺を呼んでいるんだ。何か緊急の依頼などがあった場合はマイの入ってるケースについている赤いボタンを押すとこっちのランプが光る仕組みなんだ」
「そんな仕掛けがあったんですね、でもどうやってシュウとマイをケースにいれたんですか?確か凄いデリケートだったんじゃ……」
「俺がグルメ界に入ったのは5歳の時だ。それから8年間はグルメ界で過ごしていたんだがある日スイーツハウスを建てた場所にマイが入ってきてな。なんだと思って触れてみたらこの家が建つ前の空き地に立っていたんだ。そして辺りを見渡すとシュウがいた。どうも二次元七色チョウには好みの場所があるらしくシュウはここ、マイはスイーツハウスに居ついてしまったんだ。俺はIGOの会長にこのことを話して直に異次元七色チョウを調べてもらってこのケースを作ってもらったんだ。でも大変だったぜ、コイツらデリケートだから他の研究員が触ろうとすると弱っちまうし俺と親父が調べるしかなかったんだ」
「先輩には触れさせてくれるんですか?」
「ああ、なんでかな?もしかしたら俺や親父には異次元七色チョウが好きな匂いでもするのかもしれないな。そういえばオカルト研究部の皆が近寄っても嫌がらないな。向こうじゃIGOの職員がケースに近寄っただけでも嫌がるのに変だな?」


 さりげなく先輩の過去について重要な事を知ってしまいましたがシュウとマイとはそんな出会いがあったんですね。


「とにかく向こうで誰かが俺を呼んでいるって事だしちょっと行ってくるよ」
「あ、私たちも行っていいですか?」
「えっ?まあ大丈夫だと思うが……」
「決まりですね」


 そして私たちはシュウに触れてグルメ界へと向かいました。スイーツハウスに着くと近くのマシュマロソファーに誰かが座っていました。


「久しぶりね、イッセーちゃん」
「アンタは、ウーメン梅田じゃないか、久しぶりだな」


 先輩がウーメン梅田と呼んだ人は濃い青ヒゲとおかっぱ頭をしたグラサンをかけた男性でした。でも女言葉でしゃべっているのでオネエという人なんでしょうか?


「先輩、この人は……」
「彼はウーメン梅田。IGO事務局長で組織の中でもトップ10に入る人物だ」
「初めまして、私はウーメン梅田。気軽に梅田とでも呼んで頂戴」
「あ、はい。分かりました」


 自己紹介を終えた後に私たちはソファーに座りました。


「こんな夜遅くにごめんなさいね、イッセーちゃん」
「構わないさ。でもヨハネスじゃなくてアンタが直接来るなんてな、よっぽどヤバい依頼でもあるのか?」
「話が早くて助かっちゃうわ。ええ、そうなの。実は例の組織が等々本格的に動き出したの。すでにいくつものグルメ食材が奪われたとの情報が入ってるわ。あなたがかつて取ってきた『虹の実』も全部奪われたわ」
「じゃあトロルコングたちは……」
「残念ながら……」
「……そうか。奴らが遂に動き出したか」


 先輩は怒りを隠すように私とアーシアさんの頭を撫でながら悲しそうにつぶやきました。組織が何なのかは分かりませんがあのトロルコングたちが何者かに殺されたってことだけは分かりました。
 先輩はかつてトロルコングとぶつかり合いましたがそこには彼らに対する怒りや殺意はありませんでした。そんな先輩だからこそ命が無下に扱われたことが悲しいんだと思います。
 私はそっと先輩に寄り添い先輩の手を握りました。


「……ありがとうな、小猫ちゃん。……それで本題は一体なんだ?」
「奴らの次のターゲットは予想だと『リーガルマンモス』だと警戒してるわ。所長が警戒してるから万が一って事はないでしょうけど保険として四天王を招集することになったの。どう?リーガルマンモス……いや『ジュエルミート』の捕獲を依頼したいのだけど引き受けてくれるかしら?」
「……ああ、勿論だ。美味い食材があるなら俺はどこにでも行くからな!」


 どうやら次の目的の食材は『リーガルマンモス』と呼ばれる生き物らしいです。でもマンモスって図鑑でしか見たことがないですが結構大きい動物ですよね?果たしてどんな生物なんでしょうか……


「じゃあ行くとするか、第1ビオトープにな!!」


 
 

 
後書き
 こんにちは、小猫です。遂にイッセー先輩と恋人になれました、次回からはもっとイチャイチャしていきたいですね……えっ?そんな暇はない?次回は再びグルメ界での冒険です。第23話『現れた伝説!大陸の王者バトルウルフ!!』でお会いしましょうね。にゃん♪ 

 

第23話 現れた伝説!大陸の王者バトルウルフ!!

side:小猫


 こんにちは、小猫です。今私たちはヘリコプターに乗って空の旅を楽しんでいます。ウーメン梅田さんから依頼を受けたイッセー先輩は次の日に部長たちを集めて依頼について話しました。部長たちもついていくことになり今は第1ビオトープと呼ばれる場所に向かっています。


「それにしてもようやく小猫とイッセーが結ばれたのね。見ているこっちとしてはむずがゆくて仕方なかったわ」
「あはは、すみません……」


 部長の苦笑を交えた言葉にイッセー先輩も苦笑いを浮かべた。私たちの事は集まった時に話したけど皆祝福してくれました。まあアーシアさんも交えた3人で付き合ってると言ったら流石に驚いていましたが直に受け入れてくれました。


「でもまさか小猫ちゃんだけじゃなくてアーシアさんとも付き合うことにするなんて思ってもなかったよ。まあイッセー君なら二人を幸せにできるよね」
「祐斗、プレッシャーをかけないでくれよ……まあ愛想をつかされないようにしっかりやるさ」
「私たちが先輩に愛想なんてつかす訳がないじゃないですか、ねっ、アーシアさん」
「はい、その通りですね、小猫ちゃん」
「「ねー♪」」


 先輩の左右に座る私とアーシアさんは先輩の両腕にギュッと抱き着いて満面の笑みを浮かべました。


「あらあら、お熱いですわね。ねえイッセー君?私も貴方の恋人にどうかしら?大人の魅力を教えてあげますわ♡」
「えっ……」
「だ、駄目です!先輩は私たちのものなんです!」
「朱乃さんがライバルになったら勝てないですぅ!」
「うふふ、冗談ですわ」


 朱乃先輩はそう言ってますが油断なりません。先輩を取られないようにしっかりとみていないといけませんね。


「所でイッセー君、前に食べたフグ鯨は君のフルコースには入れないのかい?」
「そうだな、フグ鯨は上手かったが海にはまだまだ俺の知らない食材が眠ってそうだし今は保留だな」
「そっか、僕はすごく美味しかったんだよね」
「なら皆もフルコースを作ったらどうだ?別に資格がいるわけでもないし自由に決めていいんだぞ?」
「そうなんだ、なら僕も作ってみようかな?」
「これから向かう場所も沢山の食材があるから楽しみにしていろよ」


 今向かっている場所は確か第1ビオトープと呼ばれる場所でしたね。以前第8ビオトープも大きな庭でしたがそこも同じくらい広いんでしょうか?


「第1ビオトープはIGOが保有する庭の中でも最大の大きさで一孤島丸ごと使ってありその面積は50万平方キロメートル。北海道約6つ分の面積だ」
「と、とんでもない広さなのね……」
「あまりの広さにIGOですらも島の全てを把握しきれていない、今では研究の為に放ったクローン生物や品種改良した生物が独自の生態系を形成してるくらいだ」
「もういいわ、聞いてるだけで驚いてばかりだもの……」

 先輩の説明に部長は驚きというか呆れたような表情を浮かべていました。相変わらずグルメ界のやってる事ってこっちと比べると規模が凄いって思ってしまいますもんね。


「そろそろ到着します」


 パイロットの方の言葉にいよいよ第1ビオトープに到着することがわかりました。ヘリコプターが島の外壁に作られたヘリポートに降り立ち私たちは外に出ました。


「ここが入り口なんですか?」
「いやここは研究所の入り口だ。一般公開されている場所もあるがそこはごく一部で本来なら関係者以外は入れないんだ。皆もここで見たことは口外しないようにな」
「ええ、分かったわ」


 職員の方に挨拶をして私たちは研究所内部に入っていきます。すると驚きの光景が目に写りました。


「うわぁ……これは凄いな」
「こんな大規模な工場は見たことがないわ。我がグレモリー家だってこんな工場は所有してないし本当に規格外ね……」
「……あまりの広さに向こう側が見えないくらいですわ」
「大きな工場みたいです~」


 私たちが見たのは圧倒的な広さの面積に敷き詰められた様々な機械が色んな食材を調理している光景でした。これだけ広いともう一つの町なんじゃないでしょうか?


「こんなに沢山の食材が調理されているなんて凄いですね、イッセー先輩」
「全世界の3割の食材がここで生産可能だからな、常時あらゆる研究がここで行われている。……まあ一般には公開できないこともしてるんだがな」
「えっ、それってどういう事ですか?」
「時期に分かるさ」


 先輩の言葉に首を傾げながらも私たちは研究所の奥に進んでいきます。途中に男女の職員が立っていて私たちに挨拶をしてきました。


「「ごちそうさまです、イッセー様」」
「だからそれ止めろって。所長はいるか?」
「はい、イッセー様の到着を心待ちにしております」
「そうか、じゃあここからは俺と祐斗で先に行くから女性は後から来てくれ」
「あら、どうしてですの?」
「ここから先に行くには服や体を殺菌しないといけないんだ。シャワーを浴びるのに男がいたら駄目でしょう?」
「私はイッセー君なら構いませんけどね、うふふ」
「朱乃さん、勘弁してください。小猫ちゃんとアーシアが俺の腕を抓ってきますから……」


 むう、先輩ったら朱乃先輩にデレデレして……悔しくなんてありませんから!


「先輩、なら私とシャワー浴びませんか?恋人ですしいいですよね?」
「流石にそれはできないって……」
「でも先輩ってば朱乃先輩にデレデレしてますし……心配なんですよ」
「ごめんな、でも確かに朱乃さんは魅力的な女性だけど俺が好きなのは小猫ちゃんとアーシアなんだからな」
「あっ……えへへ、そうですよね。ごめんなさい、イッセー先輩」
「わかってくれたならいいさ」


 ポンポンと頭を撫でられて安心する私、そしてイッセー先輩と祐斗先輩が先に進みその後は私たちもシャワーを浴びて服を殺菌してもらい待っていたイッセー先輩たちと合流してエレベーターに乗りました。


「イッセー、ここの所長さんってどんな方なの?」
「唯の酒飲みオヤジだよ。一応会長、副会長に次ぐIGOのナンバー3ともいわれてるけどな」
「凄い人なんだね、僕会うのがドキドキしてきたよ……」
「多分それ以上にドキドキすることになるだろうぜ。もうすぐで着くぞ」


 エレベーターが止まり扉が開くと目の大きな猿がこっちに飛び掛かってきました。私は驚いて先輩に抱き着きましたがよく見ると透明なケースに入れられていたので安心しました。ていうか私とアーシアさんだけじゃなくて部長や朱乃さん、おまけに祐斗先輩までイッセー先輩に抱き着いているんですね。


「び、びっくりした……ねえイッセー、今のはなんなの?」
「あれはバタリアンイエティの新種だろうな。ここはチェインアニマルを作っている実験室さ」
「チェインアニマル……?」


 部長が先輩から離れて息を整えた後にイッセー先輩にさっきの生き物はなにか質問した、それに対してイッセー先輩が言ったチェインアニマルという言葉にアーシアさんが首を傾げていた。


「こいつらは絶滅種のクローンやグルメ動物同士の混合種、ほとんどが自然界には存在しない人の手が入れられた人工の生物。通称『束縛された動物』……グルメ研究という大義は掲げているが動物保護や倫理的な観点からこの研究所でもトップシークレットの場所だ」
「さっきイッセー君が口外するなって言ってたのはこのことだったんだね」


 あたりを見回してみると今まで見たこともない生き物ばかりが目に写りました。これ全部が人の手で作られた生き物なんですか……


「た、大変だーーー!!!マッスルクラブが逃げ出したぞーーー!!!」


 何か騒ぎが起きたようなのでそちらを見てみると筋肉モリモリなカニが暴れていました。


「イッセー君、あれって……」
「ああ、実験動物が逃げ出したんだろうな。どれ、ちょっくら行ってくるか……」


 先輩がマッスルクラブの元に行こうとしたその時でした。何かがぶつかる鈍い音がしたと思ったらマッスルクラブが壁に叩きつけられていました。よく見るとマッスルクラブの傍にスキンヘッドの男性が立っていました。


「あ、あれ……?」
「何が起きたんでしょうか?」
「……全く、そっちから来てくれるとはな」


 私たちが困惑していると先輩はスキンヘッドの男性の元に歩いていきました。


「相変わらず容赦ねーな。もう少し動物たちには優しくしてやれよ、マンサム所長」
「はっはっは!相手が誰だろうと全力でぶつかるのが愛ってもんだろう?なあイッセー!」


 所長……もしかしてあの人がこの研究所の所長さんなんでしょうか?


「イッセー先輩、もしかしてその人がここの所長さんなんですか?」
「皆、紹介するよ。彼はマンサム所長。この第1ビオトープ研究所の所長だ」
「はーはっはっは!!お前らがイッセーの友人か?わしはマンサム。この研究所の所長をしている。気楽にハンサムって呼んでくれ」
「呼ばねーよ」


 ……えっと凄く個性的な方なんですね。イッセー先輩以外の皆は苦笑いを浮かべています。


「しかしお前が学生生活してるって聞いたときは驚いたもんだがダチまで連れてくるとはな。いきなり連絡を寄こされたもんだから根回しに苦労したぞ」
「面倒かけて悪かったな」
「なあに、他ならぬお前の頼みだ。それよりここで立ち話もなんだしあそこに行かないか?」
「まだあんな事やってんのか?」
「まあそういうな、それに今日はスペシャルゲストが出るんだぜ、なんていったってあの『バトルウルフ』が出るんだからな!!」
「バトルウルフだって……!?」


 先輩が驚愕といった表情を浮かべていますがバトルウルフという生き物とは一体なんでしょうか?



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「ギュアアアア!」
「ゴァアアアア!」
『ウワァァァアアアアア!!!』



 マンサム所長に案内されて来た場所には凄い歓声が響いてました。そこはコロシアムのような場所で部屋の真ん中にはあのガララワニとトロルコングが戦いを繰り広げていました。


「はっはっは!やっとるなぁ!」
「先輩、ここは一体……」
「ここはグルメコロシアム。猛獣たちの戦闘力と捕獲レベルを図る目的の闘技場だ。実際は悪趣味な金持ちや権力者たちの道楽の場所だがな」
「人聞きの悪いことを言うな、イッセー。まあその通りなんだがその金は貧しい者たちに回してるんだ、これは必要な事だ」


 グルメコロシアム……なるほど、猛獣たちの捕獲レベルはこうやって定められていたんですね。コロシアムで戦っているガララワニとトロルコングは接戦を繰り広げていましたがトロルコングの攻撃がガララワニの頭に炸裂してガララワニが倒れました。


「流石はトロルコング、番狂わせは無しか。まあそれだけウチらが定めたレベルが適格だってことだ」
「知能の差だ、ガララワニだって十分強い……それよりも所長、本当にあのバトルウルフが出るのか?」
「この観客たちの人数を見ればわかるだろう?今日行われるはずだったサミットまで蹴って各国の首脳が来てるんだ」
「そろいもそろってトップの連中がなにやってんだか……」
「えっ、イッセー君。あの人たちって一般人じゃないの?」
「このコロシアムに入れるのはIGO加盟国のVIPだけだ。あの男はある国の大統領であっちの男は石油王……どいつもこいつも権力者さ。元々IGOは国連の一専門機関に過ぎなかったんだがグルメ食材の需要にともない主要機関となり後に独立、今では巨大な国際機関に成長した。現在のIGO加盟国は360ゕ国にも及ぶ。このコロシアムに入りたいがために加入する国もあるくらいだ」
「はっはっは!それだけここは刺激的なのさ!!ここでは賭けも行われていて一日に莫大な金が動くんだ。お前らも賭けてみるか?」
「未成年に賭けを進めるなよ」


 先輩たちの話の内容を聞くとどうやらこのコロシアムに来ているのはグルメ界に存在する各国の首脳や権力者ばかりだそうです。さっき先輩が言っていた金持ちたちの道楽ってこういう事だったんですね。


「あ、ゲートが開いていくよ」


 祐斗先輩が指を刺した場所のゲートが開き実況のアナウンスの紹介と共に猛獣が出てきました。『エレファントサウルス』に『ガウチ』、『怪鳥ゲロルド』に前に戦ったトロルコングのボス『シルバーバック』など強そうな猛獣ばかりです。それに加えて前に洞窟の砂浜で戦った『デビル大蛇』までいるみたいです。そんな猛獣たちを相手にするバトルウルフってどんな生き物なんでしょうか?


「先輩、バトルウルフってどんな生き物なんですか?」
「太古の昔、デスゴールと言われる超巨大な草食獣が生まれたんだ、こいつは群れを作り自然を食いつくしていった、奴らが通った後を砂漠に変えていった。そのスピードは驚異のもので世界が砂漠だけになるのも時間の問題だった……だがデスゴールはある大陸に上陸して絶滅した。そこを縄張りにしていたある一匹の狼の手によってな」
「それがバトルウルフなんですか……」


 先輩の話を聞いて私たちは鳥肌が収まらなかった、そんな凄い生物が今ここに現れるんですよね。すっごくドキドキしてきました……


『第5ゲートより伝説が闊歩する!古代が生んだ大陸の王者!!最大最強の狼!!!バトルウルフの登場だぁあああ!!!!!』
『ウワァァァアアアアアアアアッ!!!!!』


 アナウンスの紹介で遂にバトルウルフが姿を現しました。白い毛並みに鋭い眼光……そして静かに立つその姿はまさに王者としての貫禄を出していました。


「あれがバトルウルフ……」



 いよいよ伝説の王者の戦いが始めるんですね……




 
 

 
後書き
 こんにちは、小猫です。遂に姿を現したバトルウルフ。これから伝説の王者の戦いが見られるんですね……ってイッセー先輩?どうかしたんですか……ってイッセー先輩がコロシアムの中に入っちゃいました!?次回第24話『波乱の乱入者、激戦グルメコロシアム!!』……えっ?イッセー先輩が本気で怒ってる……? 

 

第24話 波乱の乱入者、激戦グルメコロシアム!!

side:小猫


「あれがバトルウルフ……」


 バトルウルフがコロシアムに現れた瞬間、コロシアムの熱気は最大に達しました。静かに佇むその姿は王者としての貫禄が出ていました。


「遥か昔、デスゴールが絶滅したといわれる場所……そこで偶然採取できたDNAを元に復元したクローンだ」
「な、なんて存在感なんでしょうか……言葉が出ないですわ」
「かつて存在したと言われる大陸の王者……実際に見るとそれがヒシヒシと伝わってくるわ」


 部長や朱乃先輩も驚いたというよりは感動しているように見えました。


「あ、見てください。他の動物さん達が怯えています」
「無理もないね、あのバトルウルフは凄く強い……僕たちでさえそれが実感できるんだ。それより感の鋭い野生動物ならその強さがより本能的にわかっちゃうんだよ」


 アーシアさんが言った通り他の猛獣たちはバトルウルフに怯えています。あれではとても戦える状態ではありませんね。


「ふむ、リン!もっと匂いを出してくれ!」
『うっさいし!ハゲ!自分でやれ!』
「なにぃ!?ハンサムだって?」
『言ってねーし!」


 所長さんが何やら通信機のようなものを取り出して誰かと話しています。一体誰と話しているんでしょうか?


「マンサム所長が話してるのはリン姉だ。猛獣使いで匂いのスペシャリストだ」
「匂い……ですか?」
「ああ、グルメ界には様々な匂いがあってそれぞれに効果があるんだ。例えば闘いの止まぬ島『バトルアイランド』に咲く花『バトルフラワー』……この花の匂いは動物の中枢神経に作用して激しい興奮状態にするんだ。コロシアムでは必須のアイテムさ」
「なるほど、猛獣を興奮させて闘いを促すんですね」


 コロシアムの壁にある隙間からピンク色の煙が出てきてコロシアム内部に満ちていきます。すると先ほどまで怯えていた他の猛獣たちの目が見る見る内に血走っていきました。


「臨戦態勢に入ったな。あいつら一斉にバトルウルフに襲い掛かろうとしてるぞ」


 先輩の言葉通り全ての猛獣がバトルウルフに襲い掛かりました。


「さて、王者の実力はどんなものか……」


 だがバトルウルフは全身を噛みつかれても微動だにしませんでした。


「なんで反撃しないんだ?……まさか!おい、所長!あいつ、雌か?」
「ああ、そうだが……」


 先輩はバトルウルフの様子になにか違和感を感じたようでマンサム所長にどうしてか性別を聞いていました。


「あ、ガウチがバトルウルフに攻撃をしかけたよ!」


 祐斗先輩はガウチがバトルウルフに牙を深く突き刺そうとしているのを見て叫びました。


「先輩、バトルウルフの様子がおかしくないですか……ってイッセー先輩?」


 ちらりと先輩の方を見るとそこには先輩の姿はありませんでした。


「ガァァァアアアアッ!!」
「2連……」
「ガァ?」
「釘パンチ!!」


 コロシアムの方でなにか動きがあったので見てみるとなんと先輩がガウチに釘パンチを放って吹き飛ばしていました。


「イッセー先輩!?」
「どうしてイッセーがコロシアムの中に……?」
「あ、あれを見てください!」


 朱乃先輩が指を刺した方を見るとコロシアムを覆っていたアクリル板に小さな穴が開いていました。もしかして先輩が壊したんでしょうか?


「でもどうしてイッセーがコロシアムの中にいるのかしら?」
「なにかに気が付いたような様子だったけど……あれ、そこにいるのってティナさん?」


 祐斗先輩が私たちの傍でカメラを持ってコロシアムを見てるティナさんがいました。ってなんでいるんですか……


「ティナさん、ティナさんってば」
「もう何よ、今いいところなんだから邪魔しないで……って小猫ちゃん!?どうしてここに?」
「それはこっちのセリフですよ……ここはVIPしか入れないんですよ。どうやって入ったんですか?」
「えっと……その……」


 この様子だとどこからか入り込んだようですね、凄いというか無謀というか……


「ん?なんだ、その嬢ちゃんはお前らの知り合いか?」
「はい、アナウンサーのティナさんです」
「あ、えっと……その……」
「どうやってここに入ったんだ?警備は厳重のはずだが……」
「あはは……すいません」


 案の定マンサム所長に質問されてますし……まあそれは置いといて今は先輩のほうですね。私は空いた穴から身を乗り出して大声で先輩に話しかけました。


「先輩、何をしてるんですか!危ないですよ!」
「悪いな小猫ちゃん、どうもコイツ訳ありみたいなんだ」


 先輩は左腕に赤龍帝の籠手を出して猛獣たちに威嚇しました、するとバトルウルフに噛みついていた猛獣たちが離れていきました。


「あれが赤龍帝の籠手……洞窟の砂浜でイッセーが赤龍帝だと知った時は本当に驚いたわね」
「あの、部長……すいません、黙っていて……」
「いいのよ小猫、あなたが黙ってたのも仕方ないわ。以前の私だったらそれを知った時無理にでも眷属にしようとしたでしょうしそれに今は私たちを信頼してくれたから話してくれたんでしょう?だから気にしなくていいわ」
「……ありがとうございます」


 仕方ないとはいえずっと部長たちに隠し事をしていたので罪悪感があったのですが部長や皆は気にしてないと言ってくれました。


「……グルル」
「ん?」


 コロシアムの方を見てみるとバトルウルフは先輩を前にしてその場に伏せてしまいました。猛獣にも反撃しなかったし先輩の威嚇に反応しなかった……バトルウルフは最初から戦う気がないように思いました。


「死ぬ時ですら直立していると言われる誇り高きバトルウルフが服従のポーズを取るとは、こいつはやはり……」
「グァァァアアア!!」
「うん?」


 その時でした、先輩の背後からシルバーバックが襲い掛かってきました。先輩はシルバーバックの攻撃をかわして相手のお腹に正拳突きをいれました。


「悪いがちょっと寝ててくれ!」


 先輩の一撃でシルバーバックは気絶して倒れました。


「所長!試合は中止だ!」
「なんじゃと?」
「(狼特有の獣臭の中にわずかな羊水の匂いとフェロモンを感じた。もしかしたらバトルウルフは……)こいつは身体になにかあるはずだ、とにかく試合を止めてくれ!」
「(イッセーはなにかに気が付いたようだな)わかった、試合を止めよう。リン、今すぐ猛獣をクールダウンさせろ」
『ちょっと待てし!こっちも大変なんだし!ああもう!デビル大蛇、落ち着けし!!』


 どうやらリンさんという人は何かの対応に追われていてこっちに手が回らないようです。その間もバトルフラグレンスが出てきて猛獣たちを興奮させています。


「リン姉になにかあったのか?とにかく猛獣をおとなしくさせるか」


 先輩はバトルウルフをかばうように立ちふさがりました。


「バトルウルフ、お前の子供はグルメ細胞の悪戯かかつての先祖からの贈り物か……どちらにせよめでたいことじゃないか、安心して産んでくれ。猛獣は俺が止めてやる……それに人間の見世物になるのも誇り高いお前からすれば屈辱だろう?どっちも排除してやるよ、祝いの花火と一緒にな」


 先輩は突進してきたエレファントサウルスの牙をつかんで持ち上げました、そして勢いよくエレファントサウルスをアクリル板目掛けて投げ飛ばしました。


「こっちに飛んで来るわよ!?」
「安心しろ、赤髪の嬢ちゃん。このコロシアムを覆っている特殊超強化アクリル板はロケット砲すら跳ね返すんだからな」
「でもイッセー先輩の空けた穴に目掛けて飛んできてますが……」
「……あ」


 エレファントサウルスが先輩の空けた穴に激突してアクリル板にヒビが入りました。その間に先輩が左腕に力を溜めてアクリル板目掛けて突っ込んでいきました。


「所長!悪いがコロシアムは暫く休業してくれ!」
「や、やめーい!イッセー!?」
「5連、釘パンチ!!」


 マンサム所長が叫びましたが先輩は構わずに拳をアクリル板に叩き込みました。するとアクリル板全体にヒビが入りそして……


 ボゴォォォンッ!!!


 粉々に吹き飛びました。


「か、壁がこわれたぞー!!」
「に、逃げろ!猛獣が出てくるぞ!!」


 アクリル板が壊れたことによって観客の人たちは一目散に逃げだしました。


「イッセー!?あなた何をやってるのよ!」
「あはは、皆見てみろよ。飛び散ったアクリル板の破片がキラキラと光って綺麗じゃねえか。新たな生命の誕生を祝福しているみたいだぜ!」
「え……?」


 部長がイッセー先輩に怒りますが先輩は楽しそうにバトルウルフを見て笑っていました。私たちもバトルウルフを見てみるとそこには小さなバトルウルフが大きなバトルウルフに幸せそうに寄り添っている姿でした。


「うわあ、バトルウルフさんの赤ちゃんです」
「そうか、イッセー君はバトルウルフが妊娠していたのが分かったからコロシアムに乱入したんだ」
「うふふ、流石イッセー君ですわね♡」
「バトルウルフの出産……こんな貴重な光景を目にできるなんてメチャクチャてんこもりな状況じゃない」


 母親のバトルウルフが子供の毛を舐めて毛づくろいをする光景を見て感動して涙が出てきました。


「ようこそ、グルメ時代へ……」


 バトルウルフの親子を優しく見つめるイッセー先輩、私はコロシアムに入って先輩の傍に向かいました。


「先輩、先輩はバトルウルフが妊娠してるって知ってたんですか?」
「かもしれないって思っただけだ。今回は合っていたようだけどな」
「ならそれくらい言ってくださいよ。いきなりコロシアムに乱入したりして、私……心配したじゃないですか……」
「……悪かった、ただもしもの事があるかもしれないって思ったらさ」


 私は先輩に注意をしますがこれはこりてませんね。まあ先輩の彼女ならこういう事も受け入れないといけませんしね。


「もう気にしてませんよ。それにしてもああやって母親に甘える子供を見てると生命の誕生って本当に素敵な光景だって思いますね」
「生命の誕生ってのはどんな動物でも尊いものだ」
「そうですね、バトルウルフの赤ちゃん可愛いですね。あの光景を見てると私も先輩との赤ちゃんが欲しいなって思っちゃいます」
「うえっ!?さ、流石に気が早すぎるんじゃないか?」
「ふふっ、冗談ですよ、でもいつかは……」
「……そうだな」


 先輩に寄り添いながら私はバトルウルフの親子を見つめていました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

side:リアス


 全くもう、イッセーと小猫ったら二人だけの世界に入っちゃってるじゃない。観客席では我先に逃げようと出入り口に人が殺到しているんだけど取っ組み合って喧嘩していたりする人もいて大変な状況になっているの。私たちも避難誘導を手伝っているんだけどこれじゃ避難もままならないわね。


「グロロロ……」
「ゲロルドが上がってきたぞーーー!?」


 怪鳥ゲロルドがコロシアムの外に上がってきていた。私はマズイと思ったがゲロルドの足元には既にマンサム所長が拳をならして立っていた。


「こらぁ、中に戻らんか……!」


 マンサム所長の背後には3つの顔と6つの腕を持った大仏のような悪魔が出ていた。イッセーの威嚇でも赤いドラゴンが見えるけどあれはそれ以上に恐ろしいわね。


「フライパンチ!!」


 マンサム所長がゲロルドの腹を殴ってコロシアムに叩きつけた。


「小猫ちゃん以上のすごいパワーだ。あれがマンサム所長の実力なのか?」
「それに彼は全然本気ではありませんでしたわ。この世界の実力者は並みの悪魔や堕天使よりよっぽど強いですわね……」


 祐斗と朱乃の驚きの声につい同意してしまう、異世界とはいえこんな凄い力を持った人間がいるなんてイッセーに会うまでは思ってもいなかった。


「マンサム所長、大丈夫ですか?」
「えっ、ハンサムって言った?」
「いえ言ってませんが……それにしても凄いですね、あんな大きな猛獣を殴り飛ばせるなんて……この世界の人間は鍛えれば皆ああいう事ができるんですか?」
「はっはっは!こんなもん自慢にもならんよ!まあ全員が強くなれるわけじゃない。わしらは身体の中にあるものを飼っているからな」
「あるもの……?それって一体……」


 マンサム所長が言った意味深な言葉を私が質問しようとしたときコロシアムの壁が壊れ中からデビル大蛇が出てきた。


「デ、デビル大蛇だーーー!?」
「最悪のタイミングで出てきたぞ!?」
「しかもメチャクチャ興奮しているじゃないか!?殺されるーー!!!」


 デビル大蛇の登場で逃げようとしていた観客たちは遂にパニックになってしまいさっきよりひどい状況になってしまった。


「グロアァァァアアア!!」


 デビル大蛇は腕を伸ばしてガウチとゲロルドを鷲掴みにしてガウチに食らいついた。そしていつの間にか起きていたシルバーバックが逃げようとしたが触手を刺して毒を注入した、シルバーバックは口から泡を吐きながら倒れてしまった。


「うわぁ~……洞窟で出会った個体より狂暴そうね……」
「あの時は本当に死ぬ覚悟をしましたからね……」
「あらあら、ガウチが丸呑みにされて今度はゲロルドを……凄い食欲ですわね」
「ティナさん、どうして私の目を隠すんですか?」
「アーシアちゃんにはちょっとグロテスクな光景だからね……うわ、あんなおおきなゲロルドを……」


 いつの間にか傍に来ていた祐斗や朱乃もデビル大蛇を見てげんなりとした表情を浮かべていた。今思うと私たちって本当に運がよかったのね。だって次郎さんがいなかったらああやって丸呑みにされてたかもしれないし……考えないでおきましょう。


「ん?お前さんらは逃げないのか?」


 マンサム所長が逃げようとしない私たちを見て不思議そうな表情を浮かべていた。


「あはは、僕たちも慣れちゃったのか不思議と怖いとは思っても逃げようとは思わないんですよね……」
「私はイッセー君がいますから全然平気ですわ♡」
「はい、イッセーさんが守ってくれますから平気です!」
「アーシアはともかく本当にぶれないわね、朱乃って……」


 私たちの言葉に最初はポカンとしていたマンサム所長は次第に笑みを浮かべだして大きな声で笑った。


「はっはっは!そいつぁいい度胸だ!各国のトップがこの様だってのによ!!」


 マンサム所長は背後で醜く言い争っている各国の首脳を見て更に笑った。


「見ろ!普段は威張り散らしている各国の首脳たちも丸腰じゃ何とも情けない姿じゃないか!!まあこの状況なら例えミサイルを持っていても逃げる方が賢明だがな!!わっはっは!!」


 まあどこの世界でもいるわよね、普段は威張り散らしていてもいざ何か起きるとああいう醜態さらす奴って……私も気を付けないと。


「あら、誰か座っているわ?」


 そんな状況の中、観客席の一部に今も座り続けている人を見つけた。あの人は逃げないのかしら?


「マンサム所長、あそこに逃げない人がいますけど……」
「あれはロト共和国のドヘム大統領じゃないか。この状況で逃げないのは大したものだが流石に危険だ。どれ、わしが行ってくるよ」


 マンサム所長はそう言って座っていた男性に声をかけた。


「これはこれは……ロト共和国のドヘム大統領。せっかくのお楽しみがこんな形で中止になってしまい誠に申し訳ありません。落胆の極みお察ししますが既にここは危険な状況にあります。身の安全のため一刻も早く非難を……」


 その時だった、マンサム所長の腹をドヘム大統領が腕で貫いていた。


「マンサム所長!?」
「なあに、この程度じゃ死にはせんさ……」


 マンサム所長は腹を貫かれたにも関わらず平然としていた、それどころか腹の筋肉を締め付けてドヘム大統領の腕が抜けないようにしていた。


「フライパンチ!!」


 そのまま相手の顔面に一撃を入れて大きく吹き飛ばした。普通ならあれで再起不能になる一撃だったがドヘム大統領はゆっくりと立ち上がった。


「ふむ、噂の新型か。既に紛れ込んでおったとはな」


 ドヘム大統領の顔がはがれそこから出てきたのはかつて洞窟の砂浜で出会ったあの生物だった。


「あれ?色が違う……?」


 祐斗が指摘した通り前に出会ったアレは黒い毛並みだった。だがここにいるアレの毛並みは緑色だった。


「お前さんらは下がっていろ。あれはわしが相手をする」


 マンサム所長はそう言って私たちを下がらせた。


「ここに簡単に忍び込めるとは高性能だな……いやバカというべきか?貴重なサンプルを一機くれるとは有り難いな、『美食會』よ」


 び、美食會…?知らない単語に私たちは困惑した。


「操縦者は誰だ?ん?どうせ聞こえているんだろうし喋れるんだろう?目的はなんだ?」


 マンサム所長は操縦者と言った、という事はあれは生物じゃなくてロボットってことなの!?


『……所長、アンタ……旨ソウダ』
「なに?……てめえ、ベイだな?」


 謎のロボットはマンサム所長に近づいて指から出た針を差し込んだ。あれってイッセーも使ってるノッキングって奴かしら?


「残念……わしは其処じゃない」


 マンサム所長の身体中の筋肉が盛り上がっていき両腕のパンチを挟み込むように相手の顔面に叩き込んだ。


「『フライパンサンドイッチ』!!!」


 金属がぶつかり合うような大きな衝撃が響いたがあのロボットは平然としていた。


「ふむ、硬いな……」


 マンサム所長が拳を離して相手の様子を伺う、だが謎のロボットは突然顔を開きそこからビームを放ってマンサム所長の喉を貫いた。

「マ、マンサム所長!?」


 地面に倒れたマンサム所長を見て全員が悲鳴を上げた、マンサム所長を倒したロボットはコロシアムの方に向かおうとした。だがそこに雷と魔剣がロボットに降り注いだ。


『……アン?何ダ、コレハ?』
「イッセー君たちの所には行かせないよ!」
「勝てるとは思いませんが足止めくらいはできますわ……」
「アーシア、あなたはマンサム所長をお願い!」


 私と祐斗、そして朱乃は謎のロボットの前に立ちふさがった。


「ここから先には行かせないわ!!」
『……メンドクセェナ、全員殺スゾ?』
「ぐっ!やれるもんならやってみなさい!!」


 せめてイッセーが来てくれるまで耐えきらないと……!私たちは謎のロボットとの戦闘を開始した。


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:小猫


「にゃああ!『ベルリンの赤い雨』!!」
「はああ!『ナイフ』!!」


 私の手刀と先輩のナイフがデビル大蛇の腕を切り裂きました。でもデビル大蛇の腕は直に生え変わり私たちに襲い掛かってきました。


「くそ!相変わらず反則級の再生力だぜ!」
「なかなか近づけないですね……」


 前にデビル大蛇を倒したときはココさんが毒で弱らせたのが勝てた要因だったらしいのですが実際に戦ってみるとその強さが更に分かり同時にココさんのように先輩の手助けができない自分に苛立ちました。


「そんな顔をするなよ、小猫ちゃん。一人で戦うよりは遥かに楽だ。決して役立たずなんかじゃない」
「先輩……」
「だがどうする?このままじゃ……」


 私たちがどうするか考えていると後ろから母親のバトルウルフがゆっくりとデビル大蛇に向かっていた。


「バトルウルフ!?まさか戦うつもりか?無茶だ!お前は出産で体力を大きく消耗しているんだぞ!」


 先輩はバトルウルフにそう言うがバトルウルフは構わずに歩みを進めていく。


「ギュロアアアァァァア!!」


 デビル大蛇はバトルウルフに腕を伸ばして攻撃を仕掛けましたがバトルウルフが口をカチカチッと鳴らした瞬間デビル大蛇の腕が消えていた。


「なっ!?噛み切っただと!?ほとんど見えなかったぞ!」


 なんとバトルウルフはデビル大蛇の腕を祐斗先輩の速度に慣れた私たちでも目視できないほどの速度で噛み切ったようです。そしてバトルウルフの姿が消えたと思ったらデビル大蛇の上半身が塵と化しました。


「これが……」
「バトルウルフの力……」


 私と先輩はバトルウルフの実力に言葉が出ませんでした。バトルウルフは子供の元に向かおうとしましたが足を縺れさせてしまいました。


「先輩、バトルウルフの様子が……」
「出産をして体力を極限まで消耗した状態であの攻撃を放ったんだ。それこそ命をすり減らしてまでな」
「そんな危ない体でそんな無茶をするなんて……」


 私は自分の命を消耗させても子供を守ろうとしたバトルウルフの姿に涙を流しました。あれが母親の強さなんですね……

 
「クウン……」
「あ、バトルウルフの子供が……」


 母親を心配そうに見つめるバトルウルフの子供に先輩が声をかけました。


「……行ってこい。お前の母親はありったけの命を注いでお前を生んでくれたんだ。バトルウルフが親に甘えるのは生まれたその日だけ……だから思いっきり甘えてくるんだ」


 バトルウルフの子供は先輩の言葉に頷いて母親に駆け寄っていきました。母親も震える足を前に出してゆっくりと自分の子供に歩み寄っていきます。そして二匹が触れ合おうとしたその瞬間……



 母親をビームが貫きました。




「……えっ?」


 私は一瞬何が起きたのか分かりませんでした。先輩も目を見開いてバトルウルフの子供も何が起きたのか分からないといった表情を浮かべていました。


『カカカ……バトルウルフハ食ウ気ガシネェ。不味ソウ、イラネー!』


 上を見てみると洞窟の砂浜で出会ったあの生き物がいました。いえあれは生き物じゃありませんでした。だって顔面が開いてそこにビームの発射台があったんですから。


「あなた!何て酷い事をするんですか!」
『何ダ、オマエ?ゴミヲドウコウシヨウト俺ノ勝手ダロウ?』
「そんな勝手な理由で……!?あれは……朱乃先輩!祐斗先輩!」


 ロボットの足元には裕斗先輩が倒れていて右手で朱乃先輩の首をつかんでいました。


『コイツラハ仲間カ?カッカッカ!弱イクセニ粋ガリヤガッテ馬鹿ミテーダ。今始末シテヤルカラヨーク見テルンダナ!!』


 ロボットが朱乃先輩の首をへし折ろうと力を力を籠める、私は朱乃先輩を助けに行こうとしましたが隣にいたイッセー先輩の姿がないことに今気が付きました。


「おい」
『アン?ナン……!?』


 その時でした、いつの間にかロボットの傍にいた先輩がロボットを観客席に殴りとばしました。そして宙に浮いていた朱乃先輩をお姫様抱っこしてロボットを睨みつけました。


「イッセー先輩が怒ってる……?あんな姿今まで見たことがない……」


 イッセー先輩の形相は怒りに満ちておりその姿はまるで鬼でした。私は初めて見るイッセー先輩の怒りの表情に驚きました。


「今回は捕獲じゃねえ……駆除だ……!!」
 
 
 

 
後書き
 小猫です。バトルウルフの命を無下に扱った乱入者に怒りを見せる先輩。イッセー先輩、負けないでください!その外道に怒りの鉄槌を!!次回第25話『敵の名はGTロボ!活性、グルメ細胞!!』
次回もお楽しみ、にゃん。 

 

第25話 敵の名はGTロボ!活性、グルメ細胞!!

side:アーシア


「所長さん!大丈夫ですか!?」


 私は倒れていた所長さんに駆け寄り声をかけました。お腹と喉から血がダクダクと溢れており見ているだけで痛々しい姿でした。


「金髪の嬢ちゃんか、なあにこれくらい平気だ。わしは痛覚を麻痺させているからな」
「痛覚を……?でも重症ですよ。早く回復しないと」
「しかしわしがベイ如きに遅れを取るとは……それだけ新型のGTロボが優れていたということか」
「GTロボ?さっきのはロボットなんですか?」


 所長さんが言ったGTロボという言葉に私は首を傾げた。


「ああ、グルメテレイグジスタンスロボット……深海数万メートルや月面などを調査する無人探査機がグルメ用に進化したものだと思えばいい」


 前にテレビで深海や月面の様子を調べる機械を見ましたがあれも同じようにロボットを使って美食屋の活動をするという事でしょうか?


「だが凄いのはその性能だ。操縦者の動きをほぼ完璧にこなすロボ、それに加えて人の五感すら備えておりもはや操縦者が実際に現場に行っているのと何ら変わらんほどの臨場感らしい」


 今まで教会以外の事は知らなかったけどこの世界にはそんな技術があるんですね、そのロボットがあれば私でも危険な場所に一人で行けるってことですね。


「それよりも嬢ちゃん、わしのズボンのポケットに酒が入っている、それを取ってくれないか?」
「えっ?でも先に回復した方が……」
「頼む」


 私は回復を先にしたほうがいいと思いましたが所長さんの真剣な表情を見てなにかあると思い言われたとおりにお酒をポケットから出して所長さんに渡しました。所長さんは私にお礼を言った後にお酒を怪我にかけ始めました。


「所長さん!?一体何をしているんですか……ええっ!?」


 私は最初所長さんが何をしているのか分かりませんでしたが直にその理由が分かりました。


「傷が治ってる……!?」


 所長さんがお酒をかけたら傷が見る見る内にふさがっていきました。


「テレイグジスタンスの技術は医療機関でも活躍している。今や世界的な外科医がロボを駆使し、その場にいながら世界中の患者を治療できるほどだ」
「それは素晴らしいですね、だって沢山の人が助かるんですから」
「ああ、その通りだ。だがな嬢ちゃん、そんな尊い技術も悪用する奴らが必ず出てくるってもんさ」
「しょ、所長さん……?」


 所長さんの背後から何かが現れてその表情も怒りに満ちていました。


「あのガキが……ネジ一本この世に残らんと思え……!!!」
「あ、あう……」


 所長さんの凄まじい怒りについ後ずさりをしてしまいました。でも私はその時に所長さん以上の怒りを感じてコロシアムの方を見ました。


「リ、リアスさん!?皆さん!?」


 そこには地面に倒れているリアスさんとGTロボの足元に倒れている祐斗さん、そして首を絞められている朱乃さんの姿が映りました。


「いかんな、早く助けんと……ん?」


 突然GTロボが吹き飛んで観客席に叩きつけられました。GTロボが立っていた場所に視線を向けるとそこには朱乃さんをお姫様抱っこしたイッセーさんが立っていました。


「イッセーさんが怒ってる……」


 そこにいたイッセーさんはいつもの優しい表情ではなく今まで見たこともない怒りの表情を浮かべていました。


「あんなイッセーさんを見るのは初めてです、猛獣さんとの戦いでは怒ったことがないのに……」
「そりゃそうじゃろう、動物相手にキレたりはせんよ。自然界にあるのは弱肉強食という一つのルールだけだ、そこには善も悪もない。生きるためではなく己の快楽のための無益な殺生をされたからイッセーはキレたんじゃろう。しかしイッセーの奴め、怒りでグルメ細胞が活性化しているな。こりゃわしの出番はないかもしれないな」
「グルメ細胞……?」


 聞きなれない言葉に私は首を傾げましたが今はイッセーさんの勝利を祈って私は祈りを捧げました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:イッセー


 俺はGTロボを殴りとばし朱乃さんと祐斗の状態を確認した。……よし、命に別状はねえな。


「ううっ、イッセー君……」
「ご、ごめんなさい……足止めすることも……できませんでしたわ」
「祐斗、朱乃さん、大丈夫ですか?リアスさんは?」
「部長は、あそこに……」


 祐斗が指を刺した場所にはリアスさんが倒れていた。


「とにかく皆をアーシアの所に連れて行かないと……朱乃さん、ちょっと失礼しますよ」


 俺は朱乃さんを右腕で抱えて祐斗を背中に背負いリアスさんの元に向かった。


「リアスさん、大丈夫ですか?」
「……うう、イッセー?」
「無茶しましたね、でも助かりました。時間を稼いでくれたんですね」
「ごめんなさい……あいつ、観客たちに攻撃を……」
「なに?まさかそれをかばって?」
「ええ、祐斗が防いだんだけどそこを突かれて……」


 リアスさん達も結構鍛えてあるから勝てはしなくとも油断しなければ負けはしないと思っていたが……あいつめ、やってくれるな。


「イッセーさん!」
「イッセー!」


 そこにアーシアとティナが俺の傍に駆け寄ってきた。


「アーシアにティナか、ちょうどいいところに来てくれたな。リアスさん達を頼む」


 俺はアーシアにリアスさん達を任せてGTロボの元に向かった。



『ググッ……糞ガッ!!イキナリ殴リヤガッテ!!』


 GTロボが俺目掛けて突っ込んできた。


『ブッ殺シテヤルゾ!美食屋イッセー!!』
「来いよ、GTロボ!!」


 俺の拳がGTロボの右の頬に当たりGTロボの拳が俺の頬を掠める。


「うるぁあああっ!!!」


 今度は反対側の頬を殴りGTロボを吹き飛ばした。


(……硬いな。二酸化チタン、それにカーボンの匂いが僅かにする。奴のボディはカーボンファイバー配合のチタン合金か。打撃でのダメージは期待できねえな)


 俺は奴を殴った籠手からする奴の匂いを嗅ぎ相手のボディに使われている物質を割り出した。赤龍帝の籠手で殴ってもヒビ一つ入らないとは敵とはいえ見事な技術だ。


「だが操縦者はクズそのものらしいがな」
『グダグダト煩インダヨ!死ネ、ピーラーショット!!』


 奴が腕を振るった瞬間、俺の右腕の皮膚がはがされ血が噴き出した。


「んなっ!?」
『クキャキャキャ!野菜ノ皮ムキ機ナラヌ人間皮ムキ機ダ!体中削ギ落トシテ内臓ヲ引キズリ出シテヤル~~~!!!』


 GTロボは見えない何かを飛ばして俺の体中の皮膚をはがしていく。


「ふん、所詮は皮むき器の切れ味だな!日焼けして皮膚がはがれる程度だぜ!」


 俺は高速で奴に接近して力を溜める、体が硬くても間接までは硬くないと判断した俺は奴の関節部分にナイフを喰らわせた。だが逆に赤龍帝の籠手にヒビが入った。


「なんだと!?」
『クキャーキャキャキャ!!『食技』人肉オロシ!!』


 GTロボの指がガリガリと俺の体の肉を削っていく。俺はダメージを負いながらもなぜ奴にナイフが効かなかったか考える。


『キャッキャッキャ!馬鹿ガ、コイツハ新型ダゼ!!『超高分子特殊ポリエチレン』デ出来タ関節ニ『強化アラミド繊維』ノ体毛デ覆ッタ体ヨ!隙ナンテ無ェンダヨ、ボケガ!!』
「聞いてもいないのに説明ありがとうよ!」


 再び俺の皮膚を見えない何かで削っていく。どうやらこの攻撃の正体は強化アラミド繊維を高速で飛ばしていたってことか。


「なら本当に隙がないか試してやる。5連……釘パンチ!!」


 俺は5連釘パンチをGTロボに喰らわした。奴は身体をくの字に曲げて大きく吹き飛んだ。


(ぐっ、今日は3回も5連を使っちまったからな。腕が限界だ……)


 俺の釘パンチはドライグの倍加の力で殴った相手の衝撃を倍加させて内部から破壊する技だが倍加させた数ほど負担が大きくなるので今の俺は5連までが限界だ、それを一日で何回も使い過ぎた。これ以上釘パンチを使えば腕が壊れてしまう。


 
『クキャーーー!!シャラ臭エェェェ!!』


 しかもあいつはそこまで効いた様子じゃなさそうだ。やはり狙うならアソコしかないな。


『クキャキャキャキャ!!死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネカス死ネ死ネ死ネ!!!』


 GTロボは怒涛の勢いで俺に攻撃を仕掛けてくる。体中が削られていき俺は血まみれになっていった。


「イッセーさん!!」
(……イッセーの奴、狙っているな)


 アーシアの叫び声が聞こえる、そろそろあいつを倒さねえとアーシアに心配をかけちまうな。俺は攻撃を喰らいながらGTロボに話しかけた。


「皮むき機におろし金……幼稚な器具ばかりだな」
『アアッ?』
「お前本当はGTロボの機能を出し切れてないんだろう?こんなんで俺を殺せるだなんて思っているならお笑いだな」
『ハア?強ガッテンジャネエゾ、イッセー!!テメエハモウスグ死ヌンダヨ!!』
「その割には俺はまだピンピンしてるけどな。まあお前みたいな低能な奴がGTロボなんて難しいものを操縦なんてできるわけがないか、正に宝の持ち腐れだな」


 GTロボは攻撃をやめて俯いた。どうやら相当怒っているようだな、新型のGTロボはそんなことまで伝わってくるんだと感心した。


『……ジャア』


 ……さあ、来いよ。


『ジャア今スグニブッ殺シテヤルヨォ!!アノ世ニ行キナ!!』


 GTロボは顔を開きビームを出そうとする……それを待っていたぜ!!


『死ネェ!イッセー!!』
「くたばるのはてめぇだ、喰らえ一点集中!!『5連アイスピック釘パンチ』!!」


 俺はより貫通力を上げるために指を拳じゃなく指を纏めた釘パンチをGTロボの顔内部にあったビームの発射台に喰らわせた。GTロボはビームを内部で暴発させて自らの頭を吹き飛ばした。


『グガ……ギギ……』
「何とか貫通できたか……それにしても自分のビームが暴発して自滅とはザマァねえな。まあ俺も左手がイカれちまったし今回は引き分けだな。次は生身でやろうぜ」
『引キ取ケダァ?馬鹿ガ!死ヌノハテメエダ、イッセー!!』


 GTロボは首を失った体でありながらこちらに向かって走ってくる、まさか自爆するつもりか!?


「今だ!撃てぇぇぇ!!」


 マンサム所長の叫び声と共にコロシアムに設置されていたレーザー砲がGTロボに降り注いだ。


「きゃあああ!?建物が崩れたら私たちも死んじゃいますよ!!」
「大丈夫だ、金髪の嬢ちゃん。ここの造りは核原子炉並みに頑丈だからな。中で核爆発が起きても外には漏れんほどの造りだ」
「でもそれって中にいる私たちは死んじゃうってことですよね……」
「うん」


 アーシアや皆は所長が守ってくれたか……俺は爆発したGTロボの残骸に目を向ける、そこから虫のような何かが現れた。


「なんじゃありゃあ!?新型GTロボの核アンテナか!?醜っ!!ようし、コイツを狙え!!」


 所長の指示でGTロボの核アンテナをレーザーが狙うが核アンテナはそれらをかわして逃げ出していった。


「あ、逃げちゃいました!?」
「ふむ、本部!あそこから一番近い出口はどこだ?」
『はい、Bゲートです』
「よし、わしの部屋のハッチをあけろ、音声も繋げてくれ……リッキー、聞こえるか?Bゲートから出てくる虫を仕留めるんだ!」


 所長は本部の職員に指示を出し誰かに話しかける。そうか、所長のペットにあいつの撃退を頼んだのか。外の様子が映し出されたモニターにさっきの核アンテナが出てきたが突如バラバラに引き裂かれた、すぐそばにはパンサーに羽が生えたような猛獣が地面に降り立っているのが映った。


「わああ、おっきなパンサーさんです!」
「あいつはハイアンパンサーのリッキー、わしのペットだ。あいつには後でご褒美に好物のホロホロパフェを食わせてやるぞ」


 前に会った時はまだ子供だったのにリッキーも大きくなったな、しかしリッキーのお蔭でGTロボを逃がさないですんだぜ。


「これで脅威は去ったか……バトルウルフはどうなったんだ?」


 俺はコロシアムに戻り小猫ちゃんの傍に立つバトルウルフを見る。


「あ、先輩。終わったんですね……」
「小猫ちゃん、バトルウルフは……」


 小猫ちゃんは涙を流しながら首を横に振った。そうか、立ったまま絶命したのか……


「死んでもなおこの風格……伝説の王者にこうして出会えたことを心より感謝したい」


 俺は敬意をこめてバトルウルフに頭を下げる、そして悲しそうに母親の死体を見つめるバトルウルフに話しかける。


「まる一日は無理だったが少しでも一緒にいられてよかったな」
「クウン……」


 バトルウルフの子供は近くにあったデビル大蛇の肉を咥えて俺の足元に置いた。


「なんだ、もしかしてお礼のつもりか?俺は別にお前の母親の仇を討つために戦ったんじゃない、個人的にあいつがムカついたから戦ったんだ。それにそのデビル大蛇の肉はお前の母親が命をかけて狩った獲物だ、だからそれはお前が食うんだ」
「……」


 バトルウルフの子供は俺の言葉を理解したのかデビル大蛇の肉を食べた。


「そうだ、それでいいんだ。お前はこれから母親の分までこの世界を生きていかなくちゃならない。グルメ細胞に選ばれた者として……」
「……クウン」
「……不安か?」


 俺はバトルウルフの子供の前に屈んで頬を撫でる。


「俺もお前と同じだ。俺も父さんと母さんが命に代えて俺を守ってくれたからこうやって生きていられた。そして会長や所長、リン姉にココ兄たちが俺の傍にいてくれた。温もりをくれたんだ。だからお前がいつか一人で旅立つ時まで俺が傍にいてやるさ……」
「クウン……」


 バトルウルフの子供は頭を俺の顔に摺り寄せてきた。


「ん?どうしたんだ?ふふっ、気持ちいいな、お前の毛並み……厚手のタオル地のような温かさみたいだ。そうだ、いつまでもお前じゃ嫌だろう?お前は今日からテリー……テリークロスだ」
「……ヴァン!」


 俺は力強く鳴いたバトルウルフ……いやテリークロスを見て笑った。


「先輩、その子は?」
「小猫ちゃんか、見てくれよ。どうも俺に懐いちまったみたいだ、折角だし名前をテリークロスって付けたんだ。どうやら気に入ってくれたみたいだ」
「そうなんですか?じゃあ私も挨拶しないと……テリー、私は小猫と言います。よろしくお願いします」
「……」
「うわあ……柔らかい毛並みです」


 テリーは嫌がる素振りも見せずに小猫ちゃんに撫でられている。俺の仲間だって分かるのかもしれないな。


「ようし、テリー、小猫ちゃん。お腹がすいただろう?所長がメシを用意してくれてるはずだから皆で腹ごしらえだ!」
「はい、先輩!」
「ヴァン!」



side:小猫


「さぁとびっきりの料理を用意したぞ!存分に食うがいい!」
「うわぁ……凄いです」
「こんな沢山の料理は私の家でも中々見ない光景ね」


 私たちは所長さんに連れられてきた場所には沢山の料理が並べられていました。アーシアさんの神器で回復した部長たちも目を輝かせていました。


「先輩、あの大きなドラゴンはなんですか?」
「酒の楽園「バッカス島」の主『バッカスドラゴン』さ。アルコールを含んだその肉は上質なブランデーを思わせる味わいとも言われている。所長のフルコースのメインディッシュだ」
「どうだ凄いだろう?他にも『酒盗エスカルゴ』『酒貝のスープ』『バッカスシャーク』『酒乱牛』『バッカスオニオン』『酒豪メロン』『バッカスホエールの塩』があるぞ!」
「お、お酒の名前が入った食材ばかりですね」
「所長のフルコース全部にアルコールが入ってるからな、実際」
「お前らもワシのフルコースを食べさせてやるからな!がっはっは!」
「だから俺たちは未成年だろうが……」


 さり気なくアルコールを進めてくるマンサム所長にイッセー先輩が苦笑していた。


「ウチ酒飲めないし!所長のフルコース最悪だし!」
「お前には聞いとらんわ!」


 リンさんはお酒が苦手のようでマンサム所長に文句を言ってました。因みにリンさんとはもう互いの自己紹介を終えており「イッセーに友達がいたなんてウチ感激だし~!」と言って泣いて喜んでくれました。でも私とアーシアさんが先輩の彼女だと知るとマンサム所長と一緒に目が出るほど驚いてました。ティナさんは驚くというよりスクープが合ったことに喜んでましたが……


「これがマンサム所長のフルコースね、どれも超高級品ばかりじゃない!」
「ていうかなんでこの人もいるし」
「いいんだリン、わしが許可した」
「そうそう!という訳だから取材していくわよ!」


 ティナさんとリンさんはどうも馬が合わないようで言い争いをしていました、でもマンサム所長が「ハンサムって言った!?」と反応すると「「言ってない!!」と息の合ったツッコミをしていました。


「まったく、大人が揃いも揃って騒がしいもんだ。お前が一番静かだな」


 先輩はそう言うと自分の背後に座っていたテリーに視線を向けました。


「来いよ、テリー。一緒に食おうぜ」
「クォン」


 テリーは返事をするように鳴くと先輩に近づきすり寄っています。テリーが羨ましいです……


「私も食べようっと」


 私は食事を再開して近くにあったお肉にナイフを通しましたがあまりの柔らかさに驚きました。まるで豆腐のようにスッと切れたんです。それをフォークで刺して口に運びました。


「美味しい……脂の旨味がゆっくりと広がっていきます」


 初めて感じた触感と味に思わず頬が緩んでしまいます。流石世界の3割の食材が作られている研究所ですね、今まで見たことのない食材に心が躍ってしまいます。まあ私はほとんどの食材を知らないんですが細かい事は気にしないでいきましょう。


「おお、霜降り豆腐じゃないか。美味そうだな、後で俺も食べよ♪」


 先輩の方を見ると凄い量の皿が積まれてました。私も負けていられませんね。


(あれ?先輩の顔の傷が治ってる……というかプルプルになってる)


 先輩はさっきまで傷だらけだったのに今はまるでケアをしたかのように輝いていました。そういえばアーシアさんがマンサム所長がお酒を怪我にかけたら治ったのを見たと聞きましたがもしかして先輩も同じなんでしょうか?所長がグルメ細胞っていう私たちには分からない言葉を言ったらしいですし私たちはまだ先輩の全てを知っている訳じゃないんですね。


(でもアーシアさんも可哀想ですね、先輩を回復したかったでしょうに大丈夫だと言われて何もできなかったんですもんね)


 先輩は悪気はないと思いますがアーシアさんも先輩を回復したかったはずですし後でさり気なく言っておいたほうがいいでしょうね。


「そういえばよ所長、今回の仕事の話だけど……」
「あ~ん?仕事……ああ!?忘れとったぁぁぁ!!」


 マンサム所長が慌てた様子で立ち上がりました。


「不味い!すっかり忘れておったわ!?ベイがコロシアムの方に来たのは時間稼ぎが目的だったんじゃな!!このままではリーガルマンモスが奴らに奪われてしまう!!誰じゃコロシアムの方に行こうなんて言ったのは!!このままじゃリーガルちゃんが……!」
「大丈夫だし」
「うん?」


 マンサム所長の言葉を遮って話し出したのはアイスを食べてるリンさんでした。


「さっきお兄ちゃんから連絡があったし。リーガルマンモスを捕獲したからこっちに向かってるって言ってたよ」
「なんじゃと!?」
「サニー兄、この島にもう来ていたのか」


 どうもリンさんのお兄さんがリーガルマンモスを捕獲したようです、それにイッセー先輩がサニー兄と言ったのでもしかしたらココさんのように四天王の一人かもしれませんね。


 私たちはそのサニーという人に会うために研究所の外に向かいました。




side:??


 月に照らされる不気味な城、そこから聞くのも悍ましい怒鳴り声が響いていた。


「あァのイッセーのクソがあぁァ!次は本体で来いだァあ?上等だァぁ!直々に内臓引きずり出してグチョグチョに踏みつぶしてやるぁ!!!」


 怒りを表にして地団太を踏みながらイッセーへの殺意を向ける緑色の体色をした男がいた。彼の名はベイ、イッセーに破壊されたGTロボの操縦者だ。


「ベイ、今のお前ではまだイッセーには勝てんじゃろう」


 そこにローブを着た老人のような男が現れた。


「うっせーぞ!ジョージョー!!」
「見ろぃ、お前が乗っていた8号機……所長、イッセー戦合わせて圧覚超過が計16回じゃ。16発も致命傷を受けたようなもんじゃな、生身だったら死んどるわぃ」


 ジョージョーと呼ばれた男は今回のマンサム所長とイッセーでGTロボが受けたダメージについて話していた。


「ケッ!それよりほかのロボはどーした?俺があいつらを足止めしてる間にリーガルマンモスをとっ捕まえたんだろうな!?お?」
「全部で5機とっくに上陸はしとる……じゃが肝心のマンモスが見当たらんようじゃ」
「なにぃ!?」
「もしかしたら先手を打たれたのはワシらかも知れんのう……」





 一方場面は第1ビオトープの岩山に変わる、そこには一人の男がおりまるで巨大な山のような動物を片手で持ち上げて歩いていていた。地面にヒビが入るほどの重さだが男は涼しげな顔をしていた。
 


「そういえばリンがイッセーも来ているっていってたっけな。あいつの肌がどれくらい綺麗になったか確かめてやるか」


 
 

 
後書き
 リアスよ。次回はイッセーのお兄さんの一人が登場するらしいわ。手も触れずにノッキングしたりと強いんだけどちょっとクセがありそうな人ね。次回第26話『無敵の領域を持つ男!四天王サニー登場!』で会いましょう。 

 

第26話 無敵の領域を持つ男!四天王サニー登場!

 
前書き
 原作のジュエルミート編ではGTロボはベイのを除くと大型が一体とリーガルマンモスに踏みつぶされた一体とセドルの操っていた一体とスタージュンが操っていた一体の計4体出ましたがこの二次小説ではもう一体出ますのでお願いします。 

 
side:小猫


 食事を終えた私たちは研究所の裏手にある岩場の付近にいました。リンさんが言っていたリーガルマンモスを捕獲した人はこの岩場からこっちに向かっているようです。


「皆、来たし!」


 双眼鏡で遠くを見ていたリンさんがそう言った瞬間にズシン、ズシンと大きな音がしてそれが近づいてきました。


「な、何よあれ!?」
「もしかしてあれがリーガルマンモス!?すっごいスクープだわ!!」


 部長が指さした方には山かと思うくらい大きな動物がいました、もしかしてあれがリーガルマンモスなんでしょうか?でも私たちが驚いたのはそこじゃありませんでした。


「片手で持ち上げている……?」


 祐斗先輩の言う通りリーガルマンモスは自分で動いているのではなくその下で誰かによって運ばれていましたがその運び方が信じられない光景でした、だって山ほどの巨体を片手で持ち上げているんですもの。あんな大きな生物は私でも持てません。


「信じられませんわ、あんな巨体を片手で持ち上げているだなんて……ねえイッセーくん、リンさんのお兄さんは怪力の持ち主なんですの?」
「サニー兄は四天王の中でも腕力は非力なほうだ」
「えっ?でもサニーさんは現に片手でリーガルマンモスを持ち上げてますよ?」


 朱乃先輩の質問にイッセー先輩がそう答えましたが私は信じられませんでした。先輩を疑うわけじゃないですが実際に片手で持ち上げているのをこの目で見てますからね。


「あれ、あの人の近くに何かいるよ」


 祐斗先輩はこちらに向かっているサニーさんの近くに人型の獣がワラワラと現れた事に気が付きました。


「あれはギャングフッドの群れか……狂暴な上に食欲も旺盛な奴だ。リーガルマンモスを奪おうと待ち伏せしていたんだな」
「先輩!そんな呑気に説明してる場合じゃないですよ!?」


 このままじゃあの人はギャングフッドの餌食になっちゃいますよ!慌てて先輩に助けにいこうと言うが先輩は首を横に振った。


「心配ねえよ、あいつらじゃサニー兄には指一本触れることはできない」
「えっ?」


 私と先輩がそう話しているとギャングフッドの一匹が遂にサニーという人に襲い掛かりました。でもギャングフッドがサニーさんに近づこうとしたとき突然ギャングフッドは倒れてしまいました。


「何が起きたの?猛獣が突然倒れてしまったんだけど……」
「あれは多分ノッキングされたんですね、でも手も使わないで一体どうやってノッキングをしたんだろうか?」


 部長と祐斗先輩は手も使わないでノッキングされたギャングフッド達を見て疑問に思ったようだ。


「所長、パス」
「なぬぅ!?」


 その時でした、リーガルマンモスを運んでいたサニーさんが突然こちらに目掛けてリーガルマンモスを投げてきました。マンサム所長が受け止めたが改めてサニーさんを見てみるとカラフルな髪以外はいたって普通の男性だった。でもリーガルマンモスを片手で持ち上げていたしイッセー先輩やココさんみたいに何か特殊な力を持っているんでしょうか?


「あ、ゴメ。ちょ重かった?所長」


 急にリーガルマンモスを投げたことに謝るサニーさん、どうやら見た目のカラフルさとは違って真面目そうな人みたい……


「けどナイスキャッチ!流石腕力はみじんも衰えていない模様……ただし!美しさが足りない……」


 真面目そうな……?


「マンモスを受け止める所作に全然胸がドキュンとしないしそもそも全く感動が起きないってゆーかそもそもがに股でブサイクだし色気ないしもう死ねって感じかな……」
(((なんだこの人ーーー!?)))


 な、なんでしょうか?物凄く個性的な方なんですねとしか言えないです。部長たちも顔を引きつらせてますし私と同じ気持ちなんでしょう。


「あれが四天王のサニー!!めちゃくちゃ美味しいニュースじゃない!?後で取材していいか交渉してみよっと」


 ティナさんは相変わらずでした。


「こらぁ!サニー!!大切な食宝をブン投げるんじゃない!!昔とちっともかわっとらんな、お前は!!このバチ当たりが!!」
「ここまで優しく運んで来たんだからもう少し感謝してほしいなぁ。てかバチ当たりって所長に言われたくないんですけど……」


 サニーさんはふわりと私たちがいる高台まで上がってきました、でも今サニーさんはジャンプをしてませんでした。なんというか無重力でふわ~っと浮かび上がったような飛び方でした。


「やあ、久しぶりだな。イッセー」
「サニー兄も相変わらずそうで安心したぜ」
「ふむ、昔より細胞が活性化している……肌の弾力性も高い。まあまだ神器とやらがグルメ細胞と上手く混じってないのは美しくないがな」
「あ、また勝手に肌を触ったな!?あれ気持ち悪いんだからやめてくれよ!!」
「いいじゃないか、久しぶりの兄弟のスキンシップだ」


 イッセー先輩は何か嫌そうに肌を触っていますがサニーさんは何もしてませんでした。何を嫌がったんでしょうか?


「ちょっとお兄ちゃん!イッセーに変な事すんなし!大体実の妹をほっぽりだしておいてスキンシップとかありえないし!!」
「ん?……リン、お前!なんだその土管みたいな足は!?皮下脂肪もハンパない!甘いモンばっか食べてるなこれぇ!!」
「うるせーし!別にお兄ちゃんには関係ねーし!」
「関係したくねーし!んな男みたいな妹と!!」
「女みたいな兄貴に言われたくねーし!」
「ねーしねーしうるせーし!!」


 リンさんとサニーさんは私たちがいることも忘れたのか喧嘩を始めてしまいました。


「あの、イッセー先輩。サニーさんってリンさんに触れてないですよね?なんでリンさんの体の事に詳しいんですか?先輩もさっき嫌そうな顔をしていましたしサニーさんが何かしたんですか?」
「ああ、俺はサニー兄の触角を嫌がったんだ。もう既にここにいる奴ら全員がサニー兄の触角に触れられているんだ」
「触角……ですか?」
「まああいつだけは気が付いたみたいだけどな」


 先輩が視線を向けた先にはテリーが私たちから離れた高台にいました。いつの間にあんなところにいったんでしょうか?


「……なるほど、あれがバトルウルフか。警戒心の強い猛獣でも一切気が付くことがない俺の触角に反応したとは興味深いな。味方なら頼もしいが……」
「心配いらん!そのバトルウルフはイッセーの相棒だ、これから共に仕事をしてもらう。ターゲットはリーガルマンモスだ!!」
「いやいやリーガルマンモス捕まえたじゃん」
「こいつは『子供』だ!!こいつより断然デカい『親』がまだどこかにいるはずだ!!」
「なっ……!?」
「嘘でしょ!?」
「信じられませんわ……」
「これが子供だって!?」
「はわわ~……」


 マンサム所長の言葉に私たちは言葉を失いました。子供で山のような大きさなら親は一体どれだけの大きさなんでしょうか……


 こうして私たちはサニーさんを仲間に加えてリーガルマンモスの親を探すために第1ビオトープを探索することになりました。




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:??


 イッセーたちがサニーと出会う少し前の時間、美食會第6支部に何者かが近づいていた。それは背中から白銀の光翼を生やした仮面を付けた人間だった。


「……着いたか」


 男は第6支部に降り立つと内部に入っていった。暫く歩いていると男の目の前に緑色の体色をした男がお尻が大きい虫のような生物を追いかけまわしていた。


「ピキキキャー」
「待ぁてぇええ!その尻食わせろよぉォオ!」


 男の名はベイ、先ほどイッセーに敗れたGTロボの操縦者で今は食事中のようだ。目の前の獲物に夢中なのか仮面を付けた男には気が付いていないようだ。


「ウラぁあ!」
「ギーーー!?」
「かっかっか、旨そうだぁあ~~~!こりゃあ丸焼きよりも刺身がいいなぁああ!わさび血醤油ぶっかけて食ってやるぅう!」


 ベイは逃げ回っていた生物『おしり虫』を捕まえて舌なめずりをする、だがようやく傍にいた仮面の男に気が付いたベイは驚きの表情を見せた。


「は……はぁああ……こ、これはヴァーリ!?あ、様ぁ!!?」
「相変わらず食い物の趣味が悪いな、ベイ」
「い……いやぁ~~~へっへっへ……し、しかし何故副料理長の貴方様がどうしてここへ?」
「なに、ただの気まぐれだ。それよりもリーガルマンモスの捕獲に手間取っているようだが何か問題でも起きたか?」
「あ、それがそのぉ……」


 ヴァーリという男にベイは丁寧な口調で喋る。さっきまでイッセーに対する憎悪を含んだ罵声を叫んでたりジョージョーに怒鳴っていた男とは思えないほどベイは委縮していた。


「まあいい、ジョージョーはどこだ?」
「ジョ、ジョージョーならこの先にいます……」
「そうか、邪魔をしたな」


 ヴァーリと呼ばれた男は更に奥の部屋に向かう、するとそこにいたジョージョーがヴァーリの姿を見た瞬間先ほどのベイ同様に驚いた表情を見せた。


「こ、これはこれは副料理長ヴァーリ様!このような辺鄙な場所に来られるとは……出迎えもせずに申し訳ございません」
「かまわん。それよりセドルはどこだ?」
「セドル様はただいま7号機を操縦中でございます」
「GTロボか、この前乗ってみたが反応が鈍かったな」
「さようでございますか……GTロボではヴァーリ様の動きを完璧に表すのは至難のようですな。改良のほうを進めておきます」
「できるといいんだがな」


 ヴァーリとジョージョーは暫く歩いていたがある場所に着くと足を止めた。彼らの目の前にはガラス張りの先にある大きな空間が見下ろせるようになっておりその部屋のいたる所にドーム型のスペースがあり中で全身を何かのスーツと仮面で覆った人間が動いていた。


「メンバーはどうなっている?」
「はい、メンバーは第6支部長『セドル』様に怪人『ザイパー』、野人『ド-サ』に『ギド』、更に新人の『メザル』の計5名です」
「相手は四天王を出してくるかもしれんのだぞ?いささか不安なメンバーではあるな」
「お恥ずかしながら既にベイが四天王イッセーに敗れました……」
「四天王イッセーか……」


 ヴァーリは何かを考えるように右手を顎に乗せる、しばらくするとヴァーリはジョージョーに向き話し出した。


「面白い、ならば俺も出るとしよう。ジョージョー、一機俺と交代しろ」
「ヴ、ヴァーリ様自らが!?」
「ああ、美食屋イッセー……それにその仲間たち、如何なものか久しぶりに試してみたくなった」


 ヴァーリの表情は仮面で分からないが笑っているようにも見えた。




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ーーー


side:小猫


 研究部を後にした私たちはリーガルマンモスの親を探すため『黒草の草原』に来ていました。名前の通り辺り一面が真っ黒な草原を見て私はテンションが上がってしまいました。


「先輩、これは何ですか?」
「これは黒草っていう植物でサラダにして食べたりするんだ」


 私は地面に生えていた黒草を引き抜いて食べてみました。ちょっと苦いけどフレッシュな味わいですね、触感はニラや青ネギに似ているかな……うん、美味しいです。


「ちょっと小猫、洗ってもいないのに口にいれたら駄目でしょ?」
「まあまあ、僕たちも食べてみましょうよ。部長も実は味に興味があるんですよね?」
「えっ?私は別に……」
「あら、隠していても駄目ですわ。リアスって隠し事があると直にソワソワしてしまいますもの」
「ええっ!?私ってそんなクセがあったの!?」
「ウソですわ♪」
「朱乃ーーー!!」 


 部長も黒草に興味があるそうです。というか前にフグ鯨を食べてからこの世界に来るのが楽しみらしいです、本人は隠したがってますけど眷属の私たちには分かります。


「……っていうかイッセー、こいつら誰?」


 サニーさんが私たちを指さしてイッセー先輩にそう言いました。そういえばまだ自己紹介をしてませんでしたね。


「ご紹介が遅れてしまい申し訳ありません。私はリアス・グレモリーといいます」
「姫島朱乃ですわ」
「木場祐斗です」
「ア、アーシア・アルジェントです」
「塔城小猫といいます。サニーさん、よろしくお願いします」
「ど-でもいいけどさ、美しさ足りてなくね?」


 私たちの自己紹介をぶった切ってサニーさんは美しさが足りないと言いました。


「一応肌のケアはしてるんだろうけど俺から言わせれば全然足りてねえんだよな。お前ら普段なに食ってんの?」
「なにと言われましても……普通のものしか食べてないわね」
「私は和食を好んで食べますわ」
「僕は洋食が好みかな」
「私とアーシアさんはイッセー先輩がご飯を作ってくれることもあるので色々食べてますね」
「ふーん、通りでそこのえーと……猫とアルはリーア達と比べると細胞が活性化してると思ったぜ」


 ……猫って略されてしまいました。アーシアさんはアルで部長はリーア、朱乃さんはヒメで祐斗先輩はユウと呼ばれました。


「でもそれじゃ全然美しさが足りてないぜ、ビタミンとかコラーゲンとかもっとハンパない食材を取らないと……よし、お前ら今度俺のフルコースをご馳走してやるよ」
「サニーさんのフルコースですか?」
「ああ、オードブルから『美肌キャビア』『カリスロブスター汁』『美白マグロ』『完美牛』『もち肌もやし』『カリスドラゴンの鱗酒』だ。主菜とデザートはまだないけどな」
「すごい!どれもこれも女性が憧れる食材ばかりじゃない!!」


 ティナさんの話を聞いて私たち女性陣は目を輝かせました。それを食べていたら私もイッセー先輩が惚れ直してくれるような魅力的な女性になれるんでしょうか?


「サニー兄は四天王一の偏食だから効果はともかく味は保証できないぜ」
「うっせーよ、イッセー。大体お前はどうなんだよ?」
「フルコースか?まだデザートしか決まってないぞ」
「はぁ?あんだけ食材とっておいて優柔不断かよ……てかやっぱお前、『アレ』をメインディッシュに狙ってんの?」
「当然だろう、俺のメインディッシュは『アレ』しかないからな」


 二人が言っているアレとは何でしょうか?先輩に聞いてみようと思いましたが突然先輩に手を握られました。せ、先輩……大胆です……


「小猫ちゃん、見ろよ!あそこに『ココマヨの樹』があるぜ。早速行かなくちゃな!」
「わわっ、待ってくださいよ」


 先輩に連れられて私はココマヨの樹まで来ました。


「見てろよ、ここを押すと……おっ、出てきた♪」


 ココマヨの樹に吊らされていた実のようなものを先輩が押すと中からマヨネーズが出てきました。私はそれを黒草にかけて食べてみます……ココアの苦みとマヨネーズの酸味がいい具合に混ざってますね、黒草とも相性抜群です。


「美味しいです、ココアマヨネーズって野菜以外の食材とも会いそうですね」
「あ、小猫ちゃん。口にマヨネーズが付いてるぞ」
「えっ、本当ですか?」
「俺が取るよ」


 イッセー先輩はそう言って私の前に屈むとそっと顔を近づけて……って近い……っん!?


 チュッ


 先輩は私の唇にキスをしてマヨネーズを舐め取りました。皆とは距離があるから見られてはいないでしょうが先輩がこんな行動をとったことに驚きました。


「せ、先輩!?」
「ん、いつも小猫ちゃんにされてたし偶には俺から攻めてみたくなってな。嫌だったか?」
「もう、嫌な訳がないじゃないですか。すっごく嬉しいです♡」


 こういう事されちゃうと胸がキュンッてしちゃうじゃないですか……♡帰ったらもっと一杯キスしてもらう事にしましょう。


「おいイッセー、いきなり走り出すのは止めろよ」
「お兄ちゃん、体力なさすぎだし……」
「うっせ!俺はスマートで繊細なんだよ!」
「おーい、テリー!!お前もこっちにこいよ!」
「お、無視か?」


 サニーさんがイッセー先輩に文句を言いましたが先輩は遠くにいるテリーに声をかけました。でもテリーは先輩が呼び掛けてもこちらには来ませんでした。


「やっぱりサニー兄の触角を警戒してるんだな、サニー兄も触角引っ込めたらどうだ?ずっと出してるのも疲れるだろう」
「なんで俺の方が気ィ遣わなきゃなんねーの?意地でも引っ込めねーし」
(……ああ言ってるが実際は美食會を警戒してやってるんだろうな。相変わらず不器用と言うか素直じゃないというか……)
「あん?なんだよイッセー?」
「いや、何でもないさ」


 イッセー先輩がサニーさんを微笑ましいものを見るような眼差しで見ていました。こうしてみるとサニーさんもココさんと同じでイッセー先輩が心許せる存在なんだなって思います。


「ねえイッセー。こんな風にのんびりしていてもいいの?マンサム所長が敵はもうこの島に上陸しているって言っていたけど……」


 部長はコロシアムで出会ったGTロボが先にマンモスを捕獲してしまうんじゃないかと心配していた。そういわれるとマズいんじゃないかと焦ってしまいます。


「そう簡単にはいきませんよ、この島は『危険度A』のビオトープですからね」
「危険度……?」
「IGOは世界中に庭を保有していてそれぞれが気候や環境が異なっています、そしてその全てが危険区域として指定されていますがこの第1ビオトープは捕獲レベルアベレージ27という群を抜いてヤバい場所なんですよ、まさしく地獄の島ですね」
「27って……どれだけ危険な島なのよここは……」


 部長は先輩の話を聞いて顔が青ざめてしまいました。捕獲レベル27なんて今まで出会ってきた猛獣の中でもかなり高いですよね。それが島中にいると聞いたら私も怖くなってきました。


「研究所の話ではリーガルマンモスの親がいるのは『リーガル高原』と呼ばれるこの島の奥地にある高原に向かわなくちゃなりません。以下にGTロボであろうと簡単にはたどり着ける場所ではありません」
「でもそれって私たちも同じ事よね?」
「勿論です」


 どうやら私たちが思っていた以上にヤバい場所なんですね、この第1ビオトープは……

 
「ヴァウ!!ヴォウ!!」


 その時でした、遠くにいたテリーが突然吠え出したんです。何かあったのかと警戒をしましたがどこからか地響きがしてそれが徐々に近づいてきました。


「あれを見て!」


 部長が示した方向には岩の鎧を纏った巨人のような生き物が草原に住んでいる他の動物たちに襲い掛かっている光景でした。


「あれはロックドラム!捕獲レベル27の巨大甲殻獣類よ!元々生息地は海岸付近だったんだけどあまりの大食漢故より大量の餌を求めて進出してきた猛獣よ!」


 ティナさんがロックドラムについて解説してくれましたが要するに狂暴な猛獣なんですね、今も他の生物を叩きつぶして食べてますし。


「わわっ、イッセー君、あいつこっちを見たよ!」
「どうやらエサと認識されたみたいだな。サニー兄、援護してくれ」
「嫌だ」
「はあっ!?」


 サニーさんのまさかの返答に先輩が驚きました。いや私たちも驚いてますよ、まさか嫌だなんて言うとは思ってもいませんでしたから。


「所詮食欲に溺れた醜い生物だ、全然美しくねえ。見た目もブサイクだし俺が相手する要素0だな」
「でも肉は珍味だぞ!相手する要素100だろ!!」
「栄養とか豊富なの?無いなら0だ」
「じゃあ間をとって50だ!」
「先輩!ロックドラムが来てますよ!!」


 ロックドラムが両手を合わせて先輩に叩きつけてきました。先輩は攻撃をかわしてロックドラムを攻撃しました。


「喰らえ!『5連釘パンチ』!!!」


 先輩の釘パンチがロックドラムの両手に穴をあけました。でも先輩は一回釘パンチを使っただけで疲れたような表情を浮かべていました。


(イッセー先輩、コロシアムでの消耗がまだ響いてるんだ……)


 私がそんなことを考えていると別のロックドラムが私たちに襲い掛かってきました。


「滅びよ!!」
「雷よ!!」


 部長と朱乃先輩が滅びの魔力と雷でロックドラムを攻撃しますがあまりの大きさにそこまで効いてないようです。


「やあぁぁぁ!!」
「魔剣よ、奴を取りかこめ!!」


 私もロックドラムに打撃を打ち込みますが対して効いておらず祐斗先輩の魔剣は全部弾かれてしまいました。


「流石捕獲レベル27の生物ね、一筋縄ではいかないわ。でもいつまでもイッセー任せでいたら私たちは成長できない……だから皆、ここは私たちがイッセーを手助けするのよ!!」
「了解です、部長!!」
「イッセー君に守られてばかりじゃ意味がありませんものね」
「私だってイッセー先輩の力になるんです!」


 私たちは気合を入れ直してロックドラムに攻撃を仕掛けました。部長と朱乃先輩の魔法は少しずつだがロックドラムの甲殻をはがしていく。ロックドラムは部長たちを踏みつぶそうと右足を上げました。


「今です!!」


 私はロックドラムが上げた右足に向かって飛びそのまま足を持ち上げてロックドラムを転倒させました。


「魔剣よ!奴を取りかこめ!!」


 体制を崩したロックドラムに祐斗先輩が魔剣を放ちました。さっきは甲殻で弾かれましたが部長たちの攻撃で砕けた場所を狙っていたので今度はロックドラムに刺さりました。ロックドラムは起き上がって私たちに攻撃を仕掛けようとしましたが突然動きを止めて倒れてしまいました。


「ココさんを習ってロックドラムを眠らしてみたけど上手くいってよかったよ」


 どうやら祐斗先輩が刺した魔剣は刺した相手に眠気を誘う魔剣のようでした。それにしても魔剣創造って便利な神器ですよね、想像しただけでどんな魔剣でも作れちゃうんですから。


「どうにか動きを止められたわね……上手くいってよかったわ」
「勝てなくても足止めくらいはできましたね」
「ああ、見てください!リンさんが!?」


 私が見た方向には酷く興奮したロックドラムがリンさんを追い詰めている光景がありました。


「どうしてあのロックドラムは興奮しているんでしょうか?」
「朱乃先輩、そんな呑気な事を言ってる場合ですか!?このままじゃリンさんが!!」
「でもあんなに興奮したロックドラムじゃさっきの魔剣は効きそうにないしどうすれば……」


 私は近くで見ていたサニーさんに話しかけました。


「サニーさん!貴方の妹さんがピンチなんですよ!どうして動かないんですか!?」
「だってあんなブサイクな奴ら相手したくねーし」


 な、なんて薄情な人なんですか……


「美しい美しいって言ってますけど妹さんのピンチを見過ごすようなあなたは美しいなんて私は思いません!!」
「……へえ、言うじゃん」
「もういいです!私がリンさんを助けに行きます!!」


 私はサニーさんを無視してリンさんの元に向かいロックドラムの顔面にドロップキックを喰らわせました。


「リンさん、大丈夫ですか!?」
「小猫ちゃん!?危険だし!離れてるし!」
「嫌です!たとえ敵わないと分かっていても将来の義姉さんを見捨てるなんてことはできません!!」
「小猫ちゃん……」


 ロックドラムは起き上がり拳を振るってきました。私は防御しようと構えましたが突然ロックドラムが吹き飛んでしまいました。


「……えっ!?」
「お前、意外と無茶苦茶なことするんだな」


 私の傍にはサニーさんが立っていました。


「敵わない相手に無謀にも挑もうとするその姿、滑稽だという奴は多いだろう……だが実に気高く美しい」
「美しい……私が?」
「ああ、美しいよ。お前、気に入ったぜ。いいもんを見せてもらったお礼に俺のダイニングキッチンを見せてやろう」
「ダイニングキッチン……?」


 サニーさんはそう言うとこちらに向かってきた別のロックドラムが攻撃を仕掛けてきた。


「サニーさん、危ない!?」
「美しく散るがいい……『フライ返し』!!」


 ボガアァァァンッ!!


 攻撃を仕掛けたロックドラムの右腕が突然破壊されてしまいました。一体何が起きたのでしょうか?


「小猫ちゃん、大丈夫か!?」
「あ、先輩……」


 そこに先輩が来てくれて降ってきたロックドラムの甲殻から私を守ってくれました。


「サニー兄、ダイニングキッチンの範囲広くなってないか?」
「ん?まあ大体25メートルくらいかな?てかお前も5連まで撃てるようになってたのは恐れ入ったぜ」
「まだ連発はできないけどな」


 イッセー先輩はサニーさんが何かしたのを知っているようですので聞いてみました。


「イッセー先輩、サニーさんは何をしたんですか?」
「攻撃を跳ね返したのさ。サニー兄は自分の髪の毛の先から伸縮自在の触角を出しているんだ。その大きさは0.1ミクロン、肉眼じゃまず見えない大きさだ」
「触角ですか?でもそんなに細いと直に切れちゃうんじゃないですか?」
「サニー兄の操る触角一本の張力は約250㎏……俺がぶら下がっても切れないほどだ」
「凄い……」
「しかもそれが全部で20万本はある、すべてつかえばあの巨大なリーガルマンモスすら持ち上げることができるんだ」


 さっきサニーさんがリーガルマンモスの子供を片手で持ち上げてたように見えましたが実際は20万本の見えない触角で支えていたんですね。


「グロロロロ……」
「ん?そか、まだいたのか」


 別のロックドラムがサニーさんを警戒するように見ていました。そして自分の甲殻を剥がしてそれをサニーさんに投げつけました。


「『髪ネット』……」


 ロックドラムが投げた甲殻はサニーさんの目前で止まってしまいました。目では見えませんがおそらく触角で防いでいるんだと思います。


「ほら、返してやるよ……『フライ返し』!!」


 空中で止まっていた甲殻がロックドラム目掛けて跳ね返っていきました。ロックドラムは自分の甲殻を顔面に受けて倒れてしまいました。


「あれぞサニー兄のカウンター技『フライ返し』!あらゆる物理攻撃はすべて同じ威力で返されるんだ」
「でも最初サニーさんが吹き飛ばしたロックドラムはかなり遠くに飛んでいきましたよ?それって凄いパワーだったってことですよね?」
「ああ、個体としては同じなんだけどなんでだろうな?」
(ウチが間違ってバトフレ嗅がせちゃったから興奮して力が出てたんだし……)


 倒れていたロックドラムは起き上がるとサニーさんに向かっていきました。


「あーあ、警戒して接近戦を避けたのは正解だったのに結局サニー兄のダイニングキッチンに入っちまったな」
「ダイニングキッチンってもしかしてサニーさんの触角が伸ばせる範囲の事なんですか?」
「その通りだ、その距離はサニー兄が言っていた25メートル。その中に入ってしまえば以下にロックドラムといえど脱出は不可能だ」


 先輩の言う通りロックドラムはサニーさんから25メートルの距離に入った瞬間硬直してしまいました。


「決まったな、『髪ロック』……あとはゆっくりと調理されるだけだ」


 ロックドラムはサニーさんに調理されて地面に倒れてしまいました。


「ダイニングキッチン……通称『サニーゾーン』とも言われる。その中では誰もサニー兄には勝てない」


 あれが美食屋サニーという人の力なんですね……


「ん、終わったよ」
「あ、サニーさん!」


 私はロックドラムを倒したサニーさんに近づいてお礼を言いました。


「サニーさん、助けてくださりありがとうございました。それと失礼な事を言ってしまって申し訳ございませんでした」
「別にいいよ、それにいいもんが手に入ったからな」
「いい物ですか?」
「ああ、触ってみて分かったんだがロックドラムの甲殻は超硬タンパク質の表皮に美炭酸カルシウムが付着してできた甲殻だ。これを加工すれば美しい『完美大理石』に生まれ変わる。まさに俺が求めた美しい代物だ」
「あ、あはは……」


 ロックドラムの甲殻を愛おしそうに見つめるサニーさんに思わず苦笑をしてしまいました。


「それにお前猫って言ったっけ?中々見どころがあんじゃん。どうだ、良かったら俺とコンビを組まないか?」
「コンビ……ですか?」


 サニーさんから何か誘いを受けましたがそこに先輩が割り込んできました。


「駄目だ!小猫ちゃんは料理人じゃないしたとえそうだとしても俺の彼女だぞ!!」
「あ、そなの?でも別によくね?俺が猫とコンビ組みたいって思っただけだし。これも一種の調和って奴?」
「それ言えばいいと思うなよ!小猫は俺の女だ!!」


 お、俺の女だなんて……それに怒っているからか私を呼び捨てにしていましたしこれはこれで悪くないですね……♡


「ふ、二人とも落ち着いてくださいよ……」
「あらあら、痴話げんかって奴かしら?」
「小猫ちゃんも罪な女ですわね♪」


 そこに部長たちも集まってきて先輩とサニーさんの喧嘩を微笑ましいものを見るような眼差しで見ていました。


 ドドドドドドド……


「うん?何の音だ?」


 どこからか地響きが聞こえてきたので辺りを見渡すと遠くから凄い勢いでロックドラムがこちらに向かって走ってきていました。


「あいつはサニー兄が最初に吹っ飛ばした奴じゃねえか!?」
「あ~……ノッキングすんの忘れてたわ……」


 逃げる間もなく私たちはティナさんとテリーを除いてロックドラムに蹴り飛ばされてしまいました。

 
 
 

 
後書き
 以前感想でグルメスパイザーを出すと答えたことがありましたが原作でポケットフードプロセッサーという似たようなアイテムがあったので態々これ出す意味あるかなと思い結局出さないことにしました。楽しみにしていたり期待していた方は申し訳ございません。 

 

第27話 それぞれの戦い 向かえリーガル高原!!

side:小猫


「きゃああっ!!」
「うわああっ!!」


 こんにちは、小猫です……って今挨拶をしている場合じゃないんでした。私たちはロックドラムに蹴り飛ばされてしまって危ない状況なんですよね。


「小猫ちゃん、悪魔の羽根を出すんだ!」
「あ、そういえばその手がありましたね」


 うっかり忘れていましたが私たち悪魔には羽根が生えてました。私と祐斗先輩は羽根を生やして空中で体制を整えました。


「きゃああっ!!」
「アーシアさん!?」


 ですがアーシアさんは人間なので飛べるわけもなくこのままでは地面に叩きつけられてしまいます。私と祐斗先輩は直に助けに行こうとしましたがアーシアさんは地面に当たる前に空中で網にかかったように止まりました。


「あれ?これは……」
「『髪ネット』……危なかったな、アル」


 アーシアさんを助けてくれたのはサニーさんでした。私と祐斗先輩は地面に降りて二人の元に行きました。


「アーシアさん、大丈夫ですか!?」
「はい、サニーさんのおかげで怪我はありません。サニーさん、助けて頂いてありがとうございます」
「別にいいよ。そんなことよりも……」


 サニーさんは辺りを見渡しため息をつきました。この辺一帯が沢山のキノコが生えており遠くがキノコ以外の物が見えないくらいです。


「流石は捕獲レベル27、少し油断しすぎたか……勢い余ってマッシュルームウッドにまで飛ばされちまうとはな」
「あれ?部長たちがいない……イッセー君や他の皆も……まさかはぐれたんじゃ!?」


 祐斗先輩が部長や朱乃先輩、そしてイッセー先輩やティナさんとテリーがいないことに気が付いて私たちは不安になってしまいました。大丈夫でしょうか……


「あいつらなら問題ないだろうよ。俺たちは先に進むぞ」
「えっ、イッセー君たちと合流しないんですか?」
「俺たちがマッシュルームウッドに飛ばされたならイッセーたちは恐らくホワイトフォレストの方に飛ばされたんだろう。ここからそこに行くよりもリーガル高原を目指した方が結果的に早く合流できる。イッセーもそう考えるはずだ」
「イッセーさん……」


 先輩や部長たちの事も心配ですが私たちは先輩たちを信じてリーガル高原に向かう事にしました。


 ピョン。


「はわっ!?」


 アーシアさんが悲鳴を上げたので何かあったのかと思い見てみるとアーシアさんの頭の上に大きなバッタが乗っていました。うっ、虫は苦手です……


「これはバッタ?でも背中に何か黒い球体がついてるしなんだろう?」


 祐斗先輩は素手でバッタを掴みジロジロと観察しています。やっぱり祐斗先輩も男の子だからか虫を触ることに抵抗はなさそうですね。


「サニーさん、この生き物もグルメ食材なんですか?」
「ギャー!!キモっ!!美しさマイナス100!!キモさ5万!!」
「あれ?サニーさんは虫は駄目ですか?」
「いいから近づけんなっての!そいつは『醤油バッタ』だ!キモい背中に最高級の醤油を蓄えたキモいバッタだ!」
「キモいキモい言い過ぎですよ……」


 よっぽど虫が嫌なんですね、女の子の私やアーシアさんよりも拒絶してます。


「あ、あそこにあるのは……」


 私は大きなキノコの根本に生えてあった白いキノコに目をつけて近づきました。


「やっぱり……これ『クリーム松茸』だ。前に先輩に食べさせてもらった物と一緒ですね」


 前にイッセー先輩に食べさせてもらった事があるクリーム松茸が天然で生えていました。私はクリーム松茸を取って皆の元に行きました。


「皆さん、ちょっとお腹すきませんか?ここいらで軽食でも食べましょう」


 私は背負っていたリュックから七輪と網を取り出して火をつける。


「何を背負っているのかと思ってたけど調理器具だったんだね」
「はい、旅先でも食材を食べられる状態にできるように持ってきました」


 祐斗先輩と話しながら私はリュックから包丁を取り出してクリーム松茸を切っていきます。するとサニーさんが何やら興味深いものを見つけたような顔をして話しかけてきました。


「その包丁は猫、お前のか?」
「はい。まあこれは父さまの遺品でもありますが……どうかしましたか?」
「いや、美しい包丁だなって思っただけだ」
「そうですか。この包丁を褒めてもらえるなんて嬉しいです」


 私は上機嫌でクリーム松茸を切ってから七輪の上に置いてそこに醤油バッタの醤油を振りかけました。


「うわぁ……香ばしい匂いですぅ」
「いい匂いだね。何だかお腹がすいてきちゃったよ」


 クリーム松茸の独特な香りに醤油の香ばしさが加わって実に美味しそうです。十分に焼いてから私はアーシアさんと祐斗先輩にクリーム松茸を渡しました。


「美味しいです!甘くて濃厚な味わいですぅ!」
「うん、美味しいね」


 二人は幸せそうに焼きクリーム松茸を食べていました。


「サニーさんもどうですか?美味しいですよ」
「ん?ああ……」


 サニーさん、どうかしたんでしょうか?さっきから私をジッと見てますが何かあるんでしょうか?


「そうだ、次は刺身で食べてみましょう」


 私はクリーム松茸を薄くスライスして生の状態で食べてみました。


「ん、コリコリとした触感がいい感じです。いくらでも食べれちゃいますね」


 前にイッセー先輩と食べた物も美味しかったですが自分で取った物はより美味しく感じちゃいます。


 ドシンッ!!


 急に大きな衝撃がしたので何かと思って辺りを見回すと私たちの傍に大きなバッタが倒れていました。


「これは……」
「醤油バッタの成虫だ。こいつの方が醤油が熟成していてより深い味わいになるぜ」
「サニーさん、態々取ってくださったんですか?」
「猫、お前やっぱ気に入ったわ。調理してるときのお前は実に美しい……」
「えっ……あ、ありがとうございます……」


 ちょ、ちょっと照れちゃいますね。でも私はイッセー先輩一筋なので動じたりはしてませんよ。多分……


「あ、ゴメ。今ちょっとほっぺ舐めちった」
「ふえっ!?舐めるって何をしたんですか!?」
「してねーよ。ほら、早く松茸食おうぜ」
「いや、気になってそれどころじゃありませんから!」
「なに?俺が気になるの?なら何かしてやろうか?」
「そういう意味じゃありませんよ!!」
「……僕たち完全に蚊帳の外だね」
「クリーム松茸美味しいですぅ」


 ううっ、やっぱりこの人苦手です……会いたいです、イッセー先輩……




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:イッセー


 ん?今なんか小猫ちゃんに呼ばれたような……気のせいか?俺は襲い掛かってきた猛獣を殴り飛ばしながら場違いな事を考えていた。ロックドラムに蹴り飛ばされた俺たちが行きついた先がこの島でも多数の猛獣が生息している森……通称『ホワイトフォレスト』だった。


「グォオオオ!!」


 サイのような猛獣『ドム』が鋭い角を突き立てて俺に突進してきた。俺はドムの角を掴んで後ろへと放り投げる。


「ギュロアアアアア!!」


 背後から豚にシマウマのような模様が入った猛獣『ビグマ』が群れをなして襲い掛かってきた。


「リン姉、頼む!」
「任せろし!」


 リン姉がスーパーリラクゼーションを使いビグマたちを眠らせていく。


「ギャー!!」
「あ……」


 リン姉がビグマたちに気を取られているうちに巨大な怪鳥『バラッグ』が襲い掛かる。だが突如バラッグの頭上から雷が落ちてバラッグを痺れさせた。


「うふふ、おイタをする悪い子にはお仕置きですわ」
「ありがとうだし、朱乃!」
「どういたしましてですわ。リンお姉さま」


 朱乃さんはどうしてかリン姉をお姉さまと呼ぶようになった。まあリン姉も満更じゃなさそうだしいいんだけど何か変な感じだな。


「イッセー!これじゃキリがないわよ!」


 『ゼブラコング』に魔力弾を喰らわせたリアスさんがキリがないと叫んだ。このホワイトフォレストはリーガル島でも最も多数の猛獣が生息している場所だから入るつもりはなかったんだがロックドラムに飛ばされた先がここだったので止む無くこの森を進んでいるわけだ。


「とにかく今はこの森を抜けることを優先しよう。極力猛獣とは戦わないようにしてください!」
「分かったわ!」


 俺たちは猛獣を避けながら森の奥を進んでいく。しかし小猫ちゃんや祐斗、それにアーシアは大丈夫なのか?テリーとティナは攻撃に巻き込まれてなかったがあの3人はガッツリ吹っ飛ばされてたしな……


 まあ多分サニー兄と同じ方向に飛ばされただろうから心配はねえんだけどサニー兄が小猫ちゃんに何か意味深な視線送ってたから別の意味で心配だぜ……


「イ、イッセー!前を見て頂戴!」
「ん、前?……おおう、これは圧巻だな」


 リアスさんに言われた通り前を見てみると俺たちの前方には猛獣の大群が立ちはだかっていた。


「これを相手にするのは不味いな……仕方ねぇ。リン姉!俺にバトフレを浴びせてくれ!」
「ええ!?でもそれしたらイッセーが危ないんじゃ……」
「今はそれしかねえんだ。早く!」
「わ、分かったし!終わったら直にクールダウンするからね!!」


 リン姉は仕方ないという感じで俺にバトフレを浴びせた。すると俺の身体に異常が起きる。


「ぐっ、うお……ああっ、ぐあっ……!!」
「イッセー君!?リンお姉さま、イッセー君に何を!?」
「イッセーにバトフレを浴びせたの。イッセーはバトフレで闘争本能を引き出していつもより強い威嚇をするつもりだし」
「でも何だか苦しそうですわ」
「本来バトフレを人間に使用するのは使用者への肉体的、精神的な疲労が大きすぎるため『グルメ八法』で禁止されてるし。でもウチが心配してるのはそこじゃないんだ」
「じゃあリンさんは何を心配しているんですか?」
「イッセーの中に眠る野生の本能の出現だし」
「本能……?」

 
 ぐあぁぁ!!お、俺の中に眠っている野生が表に出てきやがったか……!?不味い、このままだとリアスさんたちに襲い掛かってしまう!早く威嚇をしないと……!!


 着ていた制服の上が破れて身体から紅いオーラが出てくる。そのオーラは俺の頭上に集まるといつもの赤いドラゴンではなく真紅の鬼のような姿になり猛獣たちを睨みつけた。


 ぞわっ…………


 ドドドドドドドドドドドッ!!!!!


 激しい音を鳴らしながら猛獣たちは逃げて行った。何とかなったか……


「イッセー君!大丈夫ですか?」


 そこに朱乃さんが近づいてきて心配そうに俺に触れてきた。


「朱乃さん……ははっ。何とか野生の本能を抑え込むことができましたよ」
「もう、無茶しすぎです」
「すいません、でもどうやらまだ無茶をしないといけないようです」
「えっ?」


 俺は立ち上がりさっきまで猛獣たちで埋め尽くされていた草原を見る。するとそこに逃げて行ったはずの猛獣たちとは違いその場に居座って俺たちを睨む存在がいた。


「あれは……」
「あの猛獣は『オブサウルス』といって自分を負かした者をオーナーとして忠誠を誓い再び負けるまで忠誠し続ける猛獣です。おそらく美食會の誰かがオーナーになって俺たちを足止めするよう命令していったんでしょう」
「戦うしかないんですの?」
「ええ、威嚇が通用しない以上実力で退けるしかありません。何、大丈夫ですよ。朱乃さんや皆はここにいてください。俺が戦ってきます」
「信じてますね、イッセー君……」


 俺は朱乃さんを安心させるように頭を撫でるとオブサウルスの元に向かう。


「オブサウルス、ここからは俺がお前のオーナーになってやろう。GTロボとどちらが強いか比べてみるがいい……」


 そして俺はオブサウルスとの戦闘を開始した。




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:小猫


 私たちは途中でみつけた『サーロインキノコ』や『テラナメコ』、更に『フカヒレタケ』、『プリンキノコ』など沢山のキノコ食材を堪能した後マッシュルームウッドを抜けてリーガル高原を目指して歩いています。


「お前ら、見えてきたぞ。『いにしえの沼地』だ」


 私たちの眼前には広い沼地が広がっており大きな猛獣が翼獣を捕食しているのが見えました。


「食べられちゃっていますね……」
「ここはいにしえの沼地つって、太古のグルメ食材が数多く眠る通称『食の博物館』とも呼ばれている場所だ。あそこで翼獣を食ってるのが『沼ウツボ』だ。そろそろ出てくるか……」



 沼ウツボの下からカタツムリに7つの首が生えたような生き物が現れて沼ウツボを襲いました。


「あれは?」
「あいつは『ヤマタノツムリ』。この沼地でも高い捕獲レベルを持っているが……また来たか」


 すると今度はとてつもなく大きなサメのような生き物から沼地から現れてヤマタノツムリはおろか沼ウツボと翼獣をまとめて捕食してしまいました。


「最後に『鰐鮫』がもっていったか」
「あ、あれが弱肉強食の世界か……」
「食べて食べられて……なんですね」
「何他人事みたいに言ってるんだ。俺たちも今からこの食物連鎖のバトルに参加するんだぞ?」
「えっ、この沼地を渡るんですか?もしかして泳いでですか?」
「こんな汚い沼泳ぐわけねえだろう!こうするんだよ」


 サニーさんは沼の上に浮かぶように佇んでいた。


「あれは触角を使って浮かんでいるのか?」
「アメンボとかがやる表面張力ってやつさ。ほら、お前らもいくぞ」


 すると私たちの体が宙に浮かんだ。サニーさんが触角で持ち上げたからだ。


「サニーさん、私と祐斗先輩は一応飛べますが……?」
「あ、そういや羽生えてたな。でも羽根を羽ばたかせながらこの沼地を渡ろうとしたらさっきの翼獣みたいにエサになっちまうぜ?」
「……やっぱり運んでいただけますか?」


 どうやら音に敏感な猛獣もいるらしいのでここはサニーさんに甘えることにしました。サニーさんは触角を使って音もさせずに静かに沼地を渡っています。
 

「沼の中は冷てーな。水温は5~6℃か……まるで冷蔵庫だな」
「えっ、水温まで分かるんですか?」


 祐斗先輩が驚いたようにサニーさんに質問した。


「俺の髪は色によって『感覚点』が異なる。今、沼の中の温度を測ったのは『冷点』を備えたブルーの髪だ。他にピンクは『温点』、グリーンは『圧点』。そしてホワイトが『痛点』を備えている」
「なるほど。髪の色によってそれぞれの役割が違うんですね」
「そういうこと。分かりやすいだろう?」
「はい、勉強になりました!」


 アーシアさんは目を輝かせながら頷いた。彼女は勤勉だから知らないことを知るのが楽しいんでしょうね。


「しかしなんか沼の中がおかしいな……」
「おかしい……ですか?」
「ああ。沼の中に沈んでいるはずのグルメ食材がほとんど感じられねぇ。それどころかまず沼の中に住んでいる猛獣たちの数が少ねえな」
「そういえばさっきまで激しい食物連鎖を繰り広げていたのに今は静かですね……」


 しばらく沼地の上を渡っていると前方から何か腐ったような匂いがしてきた。


「あ、あれを見てください!」


 アーシアさんが指を刺した方には猛獣たちの死体が山のように積まれていた。ハエもたかっており所々が腐りかけているため死後から結構な時間が立っているんでしょう。


「ひ、酷い……」
「猛獣たちが皆殺しにされている……」


 私たちはあまりに無残な光景に嫌悪感を感じてしまいました。食べられる訳でもなく殺されてただゴミのように放置されるなんてあまりにも酷いです。


「誰がこんなことを……」
「決まってんだろ、こんなことするのは美食會の連中だ」
「美食會……今回僕たち以外でリーガルマンモスを狙っている集団ですよね?彼らは何者なんですか?」
「世界中のグルメ食材を牛耳ろうとしてるゲス野郎どもさ。グルメ食材を集めるだけ集めてグルメ細胞を一気に進化させようとしてるんだ」
「グルメ細胞……?」


 そういえばアーシアさんがコロシアムでマンサム所長がグルメ細胞がどうたらと話しているのを聞いたと言っていましたが一体なんの事なんでしょうか?


「グルメ細胞……それは深海に住む幻のクラゲから採取できる特殊な万能細胞の事だ。優れた再生機能と生命力を備えるグルメ細胞は他の細胞組織とうまく結合すればその組織の長所を驚異的に伸ばすことが出来る。美味いリンゴはより美味くってな」
「そんな細胞があるんですね……」
「だがこれを人体に結合させればどうなると思う?」
「……まさか」
「そう、圧倒的な生命力を持つ超人の誕生って訳だ。しかもこのグルメ細胞は美味い食材を食えば食うほど成長していくんだ。俺やイッセー、ココにマンサム所長、後リンもグルメ細胞を持っている」


 ……ようやくイッセー先輩たちの強さの秘密が分かったような気がします。それだけではないって事は分かりますが先輩たちの強さの秘密の一つがそのグルメ細胞という訳なんですね。


「……それって僕たちも使えるんですか?」
「なんだ、ユウ。興味が出たのか?だが好奇心で言ったなら止めておけ。グルメ細胞とうまく結合できなければ最悪死んじまうからな」
「……分かりました」


 ……祐斗先輩、どうしたんでしょうか?一瞬怖い雰囲気になったような気がしました。


「じゃあその美食會という人たちも……」
「当然グルメ細胞を持っているよ。しかも元々下等でキモい悪党集団、それがグルメ細胞で邪悪さが際立ちキモさ100万倍って訳だ。まあ、俺にすりゃあンな事どうでもいいんだけどな。美食會との戦いなんざ……」


 私たちは殺された猛獣たちの傍に着きました。近くで見るとより無残な姿に見えます。


「猛獣さんたち、可哀想です……」
「こんなことが平然とできるなんて美食會というのはよっぽどタチの悪い集団なんだね」


 私たちが無残に殺された猛獣を見ているとサニーさんは何も言わずに死体を見つめていました。


「サニーさん?」


 正直失礼かもしれませんがサニーさんだったら「ぎゃー!キモい!もう最悪!美しさ0!!」とか言うと思ってましたからちょっとおかしく感じてしまいます。


「……なあ猫。俺は美食會との戦いなんざどうだっていいんだ。でもな、こんな美しくねぇ事されると流石に笑えねえよ……笑えねぇぞ、美食會よ……!!」


 サニーさんの表情には強い怒りが込められており私はこの人はやっぱりイッセー先輩と同じ四天王なんだと実感しました。


「行くぞ、お前ら。こんな汚ねえことをするキモ集団をさっさと片付けになぁ!」
「はい!」
「行きましょう、サニーさん」
「私も許せません!」


 私たちは決意を胸にしてリーガル高原を目指す旅路を再開しました。



 
 

 
後書き
 アーシアです。美食會の人たちは酷い人たちです。猛獣さんをただ殺すだけ殺して放置するなんて命の冒涜としか思えません。こんなことは主も決して許さないことでしょう。次回第28話『現れた巨大猛獣、リーガルマンモス!』でお会いしましょうね。 

 

第28話 現れた巨大猛獣、リーガルマンモス!

side:イッセー


「ぐうぅ……」
「イッセー君!?」


 背後から朱乃さんの悲痛な叫び声が聞こえる。俺は大丈夫だと言い右腕を上げるが実際はちょっと不味い状況になっていた。


「カロロロロ……」


 俺の前に立ちはだかるのは怪鳥『ルバンダ』。リーガル島でも指折りの危険地帯『デビルアスレチック』の5面を守る猛獣だ。俺が何故ルバンダと戦っているかというと俺はオブサウルスを何とか退けてホワイトフォレストを抜けることが出来た。だがそんな俺たちに立ちはだかったのが次なる難所であるデビルアスレチックだった。
 デビルアスレチックはいくつかのステージがありそれを選んでそこを守る猛獣たちを倒しながら進む場所で全部で10面まであるんだがどうやら俺たちは難易度の高いステージを選んでしまったようだ。


「カォオオォォオ!!」


 ルバンダの姿が消えて背後から殺気を感じた。俺は素早くその場から離れると背後でルバンダが鋭い牙を空振りさせていた。噛みつき攻撃をかわした俺はナイフで攻撃するがルバンダは霧のように分散して消えてしまった。


「くそっ!偽物か!」


 俺は辺りを見渡すと何体ものルバンダが現れて俺を囲んでいた。


「ルバンダは幻覚作用のある息を吐いているのか。しかし強烈だな……」


 デビルアスレチックは別名悪霊の遊び場とも言われておりここに生息している猛獣は不思議な幻術や擬態を使って入ってきた者を惑わすという。まさに悪霊の遊び場という名がふさわしい場所だ。


「くそ、オブサウルスは幻覚に惑わされてあっという間に奈落の底に落ちてしまったし戦力が足らないな……」


 オブサウルスを倒した後俺はオーナーになったんだが当のオブサウルスはまったく戦力にならなかった。まあオブサウルスは頑丈だから落ちたくらいでは死なないだろうがサニー兄たちと分散されたのはやっぱりキツかったな。リアスさんたちも消耗してるしここは俺が踏ん張るしかねえか!


「リン姉!この幻覚を中和できないか?」
「ちょっと待って……あった!『サンダーペパーミント』のフラグレンス!」


 リン姉が取り出したのはサンダーペパーミントというこの世界で最も香りが強い葉を乾燥させ抽出したメントールで作られたフラグレンスでその匂いはまるで雷が落ちたかのようなメントールとミントの強い刺激臭があり一度嗅ぐと5日は眠れないほどの気付け効果がある。


「目に入ったら失明するかもしれないからイッセーもリアスたちも目を閉じてほしいし!」
「分かったわ!」


 リアスさんと朱乃さんが目を閉じたのを確認してから俺も目を閉じる。こいつを相手にするには視界はむしろ邪魔だ。奴の体から出る匂いで奴の本体を探り出す。


 バシュッ!!


 リン姉が出したサンダーペパーミントのフラグレンスが辺りに充満していく。まさに雷が落ちたかのような強いメントールの匂いの中で俺はルバンダの体から出る獣臭をかぎ取り奴の本体を探していく。


「……っ!そこだぁ!!」


 俺はルバンダの匂いを探り当ててそこに攻撃を仕掛けたが手ごたえは無くかわりに背中に鋭い痛みが走った。


「ぐぁぁあ!?」
「イッセー君!?雷よ!!」


 俺の背中に噛みついたルバンダを狙って朱乃さんが雷の魔法を放つがルバンダは素早く動き雷を避けた。


「こいつ、アイソレーションで匂いの位置まで錯覚させたのか……!?」


 アイソレーションとは体の一部を単独で動かす技術でこれを高速で、さらに緩急をつけて行う事により残像を残し敵に自分の位置を探らせないことができ野生で使われる擬態の一種でも使われる。本来は視覚を惑わすものだがルバンダは自らの匂いの量すらも操り俺の嗅覚を欺いたんだ。


「厄介な相手だ。サニー兄がいれば触角であいつの位置が分かるだろうが今はいないしな……俺の体力が満タンならもう少しマシに立ち回れるんだが……」


 バトフレの使用や猛獣との激戦で俺たちの体は疲労しておりいつも以上に苦戦させられている。ルバンダは幻影を使い複数に分かれて攻撃を仕掛けてきた。俺は防御をしようとしたが突然何かがルバンダを弾き飛ばした。


「テ、テリー!?」


 ルバンダを攻撃したのはテリーだった。ティナも一緒に連れてきたのか宙から落ちてきたがクルッポーがクッションになって無事のようだ。俺はまずテリーに駆け寄った。


「テリー、来てくれたんだな!ナイスタイミングだったぜ!」
「クオン!」


 テリーの頭を撫でながら俺は満面の笑みを浮かべた。


「テリー、羨ましいですわ……」
「テリーに嫉妬してどうするのよ……ってそういえばルバンダが攻撃してこないわね?」


 ルバンダはテリーを見て警戒するように様子を伺っていた。現時点での実力はルバンダが上だがあの幻影の中的確に自分を攻撃してきたテリー、いやバトルウルフが持つ非凡な才能を感じ取ったんだろう。


「クワオ!!」


 テリーは俺たちがいたステージから戻るように違う道に向かった。


「テリー?どうかしたのかしら?」
「こっちに来いって言ってるようにも見えますわ」


 リアスさん達もテリーの行動に首を傾げていたが俺はもしかしたらテリーは何か危険を察知したんじゃないかと思いテリーの方に向かった。


「皆、テリーに着いていこう。テリーはサニー兄の触角に初見で反応するほどの鋭い感覚を持っている。恐らく物理的な感覚というよりは野生の部分がデカいはずだがそれはそのまま危機回避能力にも繋がる」
「つまりテリーはこの先に何か大きな危険があると察知したということですの?」
「どの道俺たちはかなり消耗している。ここはテリーを信じよう」


 俺たちは怪鳥ルバンダを無視してテリーが案内してくれたルートを通ることにした。テリーが案内してくれた道は猛獣が全くいないショートカットだったようで楽にデビルアスレチックを抜けることが出来た。


「よし、デビルアスレチッククリアだ!お前のお陰だぜ、テリー」


 俺はテリーの頭を撫でるがテリーは何故かデビルアスレチックの方に視線を向けていた。


「ウオーーーーーッ!!!」
「テリー!?」


 テリーはまるで覚悟を決めたように雄たけびを上げてデビルアスレチックに戻っていった。


「テリー?一体どうしたのかしら?」
「そうだ、イッセー!大変なの!洞窟の砂浜にいたあの黒いGTロボがこの島に来ているの!」
「なんだと!?」


 ティナの言葉に俺は驚いた。洞窟の砂浜で出会ったあいつがリーガル島に来ているのか?……そうか!テリーはそれを俺に伝えるために追いついたがそれが返って敵に俺たちの位置を教えてしまった事を気にして一人で戦いに向かったのか。


「……皆、先を進もう」
「えっ、でもテリーが……」
「テリーは自分がここに来てしまった事であのGTロボが俺たちの位置を知ってしまった事に責任を感じて一人で戦いに向かったんだ。あいつが覚悟を決めたのにここで俺たちが助けに向かったらテリーの覚悟を踏みにじってしまう」
「イッセー……分かったわ。私たちは自分がするべきことをしましょう!」


 俺たちはテリーを信じてリーガル高原に向かう事にした。死ぬなよ、テリー!!




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:小猫



 ウオーーーーーッ!!…………


 なんでしょうか、今の雄たけびは……テリーの声によく似ていましたがもしかしてイッセー先輩たちに何かあったんでしょうか?


「今のはイッセーが連れていたバトルウルフの鳴き声だな」
「やっぱりテリーの……今の様子だと何かあったようにも聞こえたけど……」
「まさかイッセーさん達に何かあったんでしょうか?」


 祐斗先輩やアーシアさんが心配そうに話していましたがサニーさんは構わずに先に行こうとしました。


「サニーさん、イッセーさん達の所には行かないんですか?」
「んな無粋なことするかよ」
「無粋って……」


 私たちはサニーさんが言った言葉の意味が分かりませんでしたが次の言葉でサニーさん達美食屋の覚悟が分かりました。


「ここに来た奴らは全員が覚悟を決めてきているんだ。お前らだってそうだろ?さっきの遠吠えには何かただならぬ覚悟を感じた。今助けに行くのはその覚悟を侮辱する行為であって……」
「「「美しくないってことですね?」」」
「そういう事だ」


 私たちはサニーさんの話を聞いて改めて覚悟をして先を進むことにしました。


「さぁお前ら、今度はここを登っていかなきゃならねえからな!」


 私たちの前方には巨大な崖が立ちふさがっていました。あまりの大きさに天辺が見えないくらいです。


「リーガル高原の入り口『リーガルウォール』だ。高さは3000メートルはある断崖絶壁を越えなければリーガルマンモスには会えないって訳だ」
「3000メートル……そんな高さだと飛んでいこうにも体力が持ちませんね」
「ここは俺に任せろ」


 サニーさんはそう言うと触角で壁に張り付き地面を歩くように上がっていきます。


「凄い、壁の上まで移動できるんですね」
「俺にとっちゃこんな崖、地面と変わりないからな。ほら、行くぞ」


 私たちはサニーさんの触角に持ち上げてもらいリーガルウォールを登っていきます。暫く上っていると崖の途中に穴が開いてありその中に猛獣がいました。


「サニーさん、こんな崖に猛獣がいますよ?」
「あいつらはリーガルウォールの主『ヘビークリフ』。見た目はおっかないがこっちから何もしなけりゃ襲ってこない。まあ怒らせたらハンパなく厄介だがな」


 私たちはサニーさんの言う通りヘビークリフを刺激しないように大人しくしていました。近くにヘビークリフの顔が迫って怖いですがジッと我慢します。


「あれ?何だか急に暗くなってませんか?」
「ん、そうか……?」


 何かに太陽の光が遮られたかのように影が出来たので私たちは上を見上げました。するととんでもない物を見てしてしまいました。


「な、なんだありゃあッ!?」


 リーガルウォールの天辺から巨大な何かが落ちてきていました。あまりの大きさにそれが何なのか分からない程です。


「うおおおぉお!ヤベェぞぉーーー!?」
「サニーさん!触角であれを持ち上げられないんですか!?」
「無理だ!ありゃデカすぎる!とにかく逃げるぞ!!」


 私たちは上から迫る物体から逃げようとしましたが近くにいたヘビークリフが急に殴りかかってきました。


「うわっ!?ヘビークリフが襲い掛かってきたよ!!」
「まさかこの地震は私たちが原因だと思っているんじゃ……」
「どうもそうらしいな!全くもってヤバい状況だぜ!!」


 サニーさんがフライ返しでヘビークリフたちを弾き飛ばしますが数が多くてキリがありません。


「お前ら、流石にこいつら相手しながらあの巨大な物体から逃げるのは手にあまるから一旦引くぞ!」
「なるほど、今は逃げるんですね」
「逃げるなんてブサイクな事はしねえよ。一旦引くだけさ。まあMXAで引くけどな!」


 サニーさんが全力で崖を降りていきますが巨大な物体は私たちの直上まで迫ってきていました。このままでは逃げきれません!


「小猫ちゃん!アーシア!祐斗!サニー兄!皆、無事か!!」
「イ、イッセー先輩!!」


 リーガルウォールの下にイッセー先輩とリアス部長、朱乃先輩にリンさん、そしてティナさんがこっちに向かって走ってきていた。良かった、無事だったんですね。


「イッセー先輩!会いたかったです!!」
「イッセーさん!ご無事でよかったです!」
「部長と朱乃さんもよくぞご無事で……」
「てかイッセー!お前この状況どーにかできね!?」


 いくらイッセー先輩でもあの巨大な物体を持ち上げることはできないんじゃ……そう思っているとイッセー先輩はナイフで地面に四角い切込みを入れてフォークを刺して岩盤を引っこ抜きました。


「サニー兄、この穴の中に飛び込むんだ!!」
「よっしゃ!行くぜ、お前ら!!」


 サニーさんは触角をバネのように使って穴に目掛けて飛びました。でも巨大な物体はもうすぐそこまで迫りそして……



 ズドォオオオォォオオオォオオオッ!!!!!



 巨大な物体が地面に激突してクレーターが出来てしまいました。私たちはというと……


「『髪ネット』……間一髪だったな。ここまで押し込められちまったが、ふぅ……なんとかこらえたぞ」


 サニーさんが髪ネットで押しとどめてくれたので私たちは無事でした。


「小猫ちゃん!!」
「イッセー先輩!!」


 私はイッセー先輩の胸の中に飛び込んで思いっきり抱きしめました。先輩も私を強く抱きしめ返してくれました。


「会いたかったです、イッセー先輩……」
「無事でよかったぜ。小猫ちゃん……」


 そのままキスできそうなくらい甘い雰囲気になりましたが流石にこの状況でそんなことはできず渋々と先輩と離れました。


「イッセーさん!?すごいボロボロじゃないですか!今回復しますね」
「ああ、頼むよ。アーシア」


 アーシアさんはイッセー先輩に傷を神器を使って癒していきます。ようやくイッセー先輩を回復できたのが嬉しいのかいつもより気合が入っています。


「……よし。これで傷は治ったな。ありがとう、アーシア」
「えへへ……」


 イッセー先輩はアーシアさんをギュッと抱きしめると穴の外に出ました。


「イッセー、こいつはもしかするとリーガルマンモスか?」
「ああ、遠くから見たらはっきり分かったぜ。こいつがリーガルマンモスの親だ」
「マジかよ。こんなサイズじゃ俺の触角も届かないぞ……」


 私たちも外に出てリーガルマンモスを見てみますがもはやデカすぎて何で表したらいいか分からない程です。


「も、もう私は驚き過ぎてどういうリアクションしたらいいか分からないわ!!」
「気持ちは分かりますわ、リアス……」
「怪獣映画なんて比にならないくらいの大きさだ、こんなのが僕たちの世界にいたら太刀打ちできないかも知れないね」
「あわわ、お口あんぐりです……」


 部長は頭を抱えてますし朱乃先輩も顔を引きつらせています。祐斗先輩はリーガルマンモスのサイズにこちらの世界にこんなのがいなくて良かったと安堵してますしアーシアさんは口をあんぐりと開けています。私もガララワニやトロルコング、さらにはデビル大蛇と色んな猛獣を見てきましたがリーガルマンモスはそれらが霞んでしまうほどの迫力です。



「……ん?」


 近くの地面に何かが埋まっていてそれがモコモコと人型の形になっていきます。


「あれはヘビークリフか?生きていたなんて……」
「マンモスさんに押しつぶされても平気だなんて信じられないです……」
「あいつらは体を丸めて高質化してマンモスの落下の衝撃から身を守ったんだ……メンドくせぇ状況だな……」


 祐斗先輩とアーシアさんの驚きにサニーさんがヘビークリフがどうやって生き残ったのか説明していましたが状況は良くありません。だってヘビークリフは私たちに対してメチャクチャ怒っていますから今にも襲い掛かってきそうです。


「クソ!マンモスとヘビークリフ、こいつらを同時に相手すんのかよ……イッセー!リン!お前らも……」
「僕もいるよ、サニー」
「あん?」


 私たちに襲い掛かろうとしたヘビークリフが突然痙攣したように体を震わせて倒れてしまいました。


「死にはしないさ。全身麻痺の神経毒だからね」


 空からターバンを被った男性が降り立ち私たちはその男性を見て驚きました。


「ココさん!?」
「やあ、久しぶりだね。小猫ちゃん。相変わらずこんな危ない危険区域に来てるとは危なっかしい子だ」
「その毒のある言い方はやっぱりココさんです!お久しぶりです!」


 私はココさんと握手をして再会を喜びました。


(な、なんて美しい登場なんだーーーっ!?このタイミング!!有り得んほどビューティー!!……ビューティすぎて逆になんかムカつく……)
「おや?どうしたんだい、サニー?触角を引っ込めているじゃないか」


 何やら驚愕した様子のサニーさんにココさんが話しかけます。


「えっ?サニーさん、今触角を引っ込めているんですか?」
「うん、出してないね」


 部長の質問にサニーさんが頷くがココさんはサニーさんの触角も見えてしまうんですね。


「ココ兄はサニー兄の触角も見えるんだもんな」
「まあ正しくは触角から出る微量の電磁波を捕らえているんだけどね」
「相変わらず凄い視覚ですわね……」
「それでどうして触角を引っ込めているんだい?」
「別に……お前に触れるのが嫌なだけだよ。だってお前毒だし」
「な、なんてストレートな奴……」


 サ、サニーさんってやっぱりハッキリと言うんですね。ココさんも分かってはいたようですが驚愕の表情になってますし……


「バオオオオオオ!!」


 その時でした。リーガルマンモスが体を持ち上げて前足で私たちを踏みつぶそうとしていました。


「しまった!リーガルマンモスが!?」
「いや、もう済ませてある」
「バオオ!?」


 リーガルマンモスは突然動きを止めてフラフラとしだしました。


「ココさん、もしかしてリーガルマンモスに毒を……」
「ああ。ただ流石は巨大なサイズだけの事はある。毒が完全に回っていないがもうじき動けなくなるだろう。問題は……」


 ココさんはリーガルマンモスをジッと見つめると険しい表情を浮かべた。


「……マンモスの中に別の電磁波が見える。もう既に敵が体内に侵入しているんだ」
「なんだって!?」
「このサイズだ、仕留めるのを諦めて直接体内に入って『ジュエルミート』を取りに行ったな。流石ゲスい連中は考えまでゲスいな」
「ジュエルミート……」


 ジュエルミート……イッセー先輩から話は聞いていましたが全ての肉の部位の味を兼ね備えた古代の食宝とも言われた幻のお肉……こんな状況なのにどんな味なのか食べてみたくなっちゃいました。


「時は一刻を争う。僕たちも早くマンモスの体内に入ろう」
「あぁ!?何言ってるんだ、ココ!!」
「ふむ、あのサイズならお尻から入った方が安全だな」
「ジョークだろ、それ!?この毒が!!」


 サニーさんの毒発言にココさんがショックを受けてしまいました。


「サニーさん!ちょっと言い過ぎですよ!」
「ははは……(昔とちっとも変ってないね、サニーは……)」


 私はサニーさんに注意するが彼はふん、と首を横にして嫌そうな顔をした。


「俺は絶対にごめんだぜ。そんなことするなら美食會の奴らがジュエルミートを持って出てきたところを奪えばいいだろうが。美しい方法とは言えんが体内に入るよりはマシだ」


 サニーさん、よっぽどリーガルマンモスの体内に入るのが嫌なんですね……


「うん?……ッ!?サニー兄、危ねぇ!!」


 イッセー先輩がサニーさんを引っ張って飛びました。すると光線がサニーさんの立っていた場所に振ってきて大きな爆発を生みました。


「な、何が起きたの!?」
「部長、あれを!」


 驚くリアス部長に朱乃先輩が何かを見つけたかのように空を指さしました。すると空から大きなGTロボが降ってきました。


「これはGTロボ!何て大きさなんだ!」


 巨大なGTロボまで存在していたなんて……普通のサイズでもあんなに苦戦したというのにこれは厳しいですね。


『コレハ幸運ダゼ。有名人ガコンナニモ揃ッテヤガル。マア雑魚モ多イガコイツラヲ片付ケタ方ガ手柄ニナルンジャネーカ?』


 大型のGTロボは私たちを見て嬉しそうにしていました。でも雑魚とは言ってくれますね。


「はん、テメーなんぞ俺が一人で……」
「いや、ここは僕に任せてくれ」
「ココさん!?」


 ココさんはターバンを外しながら前に出た。


「いくらお前でも大型を相手にするのはキツイだろう?美しくはないが全員でボコった方が早いぜ」
「いや、ここは急いだほうがいい。新型のGTロボは味すらも送れるそうじゃないか、もし美食會がジュエルミートを手に入れたらマンモスは殺されるだろう……その前に早くジュエルミートを手に入れるんだ」
「ココさん……」


 ココさんの言う通り今は一刻も早くジュエルミートを手に入れたほうがいいですね。


『バカガ!テメエラハココデ死ヌンダヨ!!』


 大型のGTロボは顔を開きレーザー砲を発射しようとするがキッスが足元に体当たりをして体制を崩した。


『ンナッ!?』


 GTロボが発射しようとしていたレーザーは地面に当たり巨大な爆発がGTロボを包み込んだ。ココさんはキッスの背中に乗り巨大GTロボとの戦闘を開始した。


「よし、あいつはココ兄に任せて俺たちはマンモスの中に向かうぞ!」
『オイオイ、オレ達ヲ忘レテンジャネエヨ』


 マンモスの元に向かおうとした私たちの前に新たに2機のGTロボが現れました。


「ちっ、まだいたのかよ!」
『美食屋イッセーニサニーカ……獲物トシテハ十分ダナ。オイ、メザル。オ前ハ雑魚ヲ殺レ、イッセートサニーハ俺ガ殺ス』
『ザイパー先輩、人使イガ荒イデスヨネ……マアイイデスケド』


 2機のGTロボが武器を構えて私たちに襲い掛かってきた。


「くそ、時間がねえっていうのに……」
「イッセー!お前はどっちかと戦え。残りは俺が…」
「その必要はありませんわ」
「……あん?」


 朱乃先輩が魔法陣から黄金の棒を取り出してキャノンを付けたGTロボを弾き飛ばした。


『グアッ!?』
『先輩!?……クッ!?』


 味方が弾き飛ばされたことに動揺したもう一体のGTロボを祐斗先輩が切りつけた。GTロボはサーベルでそれを防ぐが大きく後退させられた。


「朱乃さん!?祐斗!?何をしているんだ!」
「イッセー君、ここは僕たちに任せてくれないかい?」
「な、何言ってやがる!ユウ、ヒメ!そいつらはお前らが敵う相手じゃ……」
「なら私たちも戦います!」


 私は祐斗先輩の方に向かい部長は朱乃さんの方に向かいました。


「ツーマンセルで戦えば少なくとも簡単には負けないはずです!イッセー先輩、サニーさん。あなたたちは先へ!」
「そんなことできるわけがないだろう!」
「でも今はそうしないと時間がないんでしょう?大丈夫、絶対に死んだりしないから」
「イッセー君に守られてばかりじゃさっき覚悟を決めたテリーに負けてしまいますわ。だから私も覚悟を決めました」
「僕は君と同じ道を歩きたい。だからそのためにも今こそ戦う時だって思ったんだ」
「私たちも覚悟をしてここに来ました!だから……私たちを信じてください!!」
「小猫ちゃん、皆……」


 私たちはイッセー先輩に振り返ると全員で頷いた。


「……サニー兄、リン姉、アーシア、ティナ。俺たちはマンモスの中に向かおう」
「ええっ!?小猫たちを置いていくし!?」
「リン、無粋な真似すんなよ。あいつらが覚悟決めたっていうのに俺たちが躊躇してたらあいつらの覚悟を踏みにじっちまうだろうが」
「で、でも……イッセーはそれでいいの!」
「俺は皆を……仲間を信じる。それだけだ」


 イッセー先輩はそう言うとマンモスの方に向かっていった。サニーさんもリンさんもティナさんもそれに続き私はアーシアさんに声をかけた。


「アーシアさん、私の包丁を持って行ってくれませんか?せめてものお守りです」
「小猫ちゃん……分かりました。必ずこれを返しに戻ってきます!」


 アーシアさんに包丁が入ったケースを渡すと彼女も先輩たちの元に走っていった。


『……テメェラ、モウ楽ニハ死ネネエゾ?』
『ヘエッ、面白ソウジャナイデスカ』


 2機のGTロボは標的を私たちに変えたようで殺気を送ってきました。


「皆、コロシアムでの無様な敗北をここで返上するわよ!」
「勿論ですわ、イッセー君の傍にいるためにも……」
「いつまでも僕たちが足を引っ張っている訳にはいかない!」
「……乗り越えて見せます。イッセー先輩と共に行くために!」


 私たちは覚悟を決めてGTロボに向かっていきました。


 
 

 
後書き
 やあ、裕斗です。僕たちはイッセー君たちを先に行かせるためにGTロボと戦う決心をした。正直無謀かもしれない、でもいつまでもイッセー君に守ってもらってばかりじゃ意味がないよね。この戦いに勝って僕たちは足手まといじゃないって証明するんだ。次回第29話『美食會との死闘!オカルト研究部、戦います!』で会おうね。 

 

第29話 美食會との死闘!オカルト研究部、戦います!

 
前書き
 『ハイスクールD×D HERO』面白いですね、九重も可愛いです。でもこの小説に彼女が出るとしたら何時になるやら…… 

 
side:リアス


『オラオラァ!!シネシネシネーーー!!』


 私と朱乃は紫色のGTロボと死闘を繰り広げていた。相手のGTロボはどうやら遠距離型のようで肩に付いた二本のキャノンや片腕についたマシンガンで攻撃してきた。


「くっ、こちらだってやられてばかりじゃないわよ!」


 私は右腕に滅びの魔力を溜めてGTロボ目掛けて放った。


『ン?コイツハ……』


 GTロボは最初滅びの魔力を受けようとしたが途中で体をずらして滅びの魔力をかわした。かわされた滅びの魔力はGTロボの背後にあった岩山に当たると岩山を消滅させた。


「かわされた!?」
『ナンカヤバイ気ガシタカラカワシタガ何ダ今ノハ?喰ラウノハ流石にヤベーカモナ』


 野生の感って奴かしら?咄嗟に滅びの魔力の性質に気が付くなんて面倒だわ。私は連続して滅びの魔力を放つが全て交わされてしまう。


『直線ニシカ飛バセネーノカ?ナラ大シタコトハネエナ!』


 GTロボはお返しと言わんばかりにキャノンを放ってくる。魔法陣で防御するが爆発で吹き飛ばされてしまった。


「キャアッ!?」
『コイツデトドメダ!』
「させませんわ!」


 吹き飛んだ私にトドメをさそうとGTロボがマシンガンを構えるがそこに朱乃が黄金の棒『ののさま棒』をGTロボに叩きつけて攻撃をそらした。


『チィ、邪魔シヤガッテ!』
「見たところ、そのロボは遠距離型のようですわね。なら近づかれては嫌なはずですわ!」


 朱乃はイッセーに鍛えてもらった棒術を駆使してGTロボを攻めていく。


『ナメテンジャネエゾ!ミキサーパンチ!!』


 GTロボの腕が高速で回転して朱乃に殴りかかった。朱乃はののさま棒で防御するが弾かれて攻撃を喰らってしまった。


「ぐうぅ……!」
『バカメ!GTロボガソンナ甘イ兵器ナ訳ネエダロウガ!コレデ死ニナ!』
  

 GTロボはもう一度回転する腕で朱乃を殴ろうとしたが私は魔法陣から紅い籠手を出して装着しGTロボの攻撃を受け止めた。


『ハッハッハ!ソンナモンデ止メラレルト思ッテンノカヨ、バーカ!』
「受け止めたりなんてしないわ!これはこうするために使うのよ!」


 私は籠手を使いGTロボの攻撃をそらして体制を崩させた。


『ナンダト!?』
「喰らいなさい!!」


 体制を崩したGTロボの左肩についてあったキャノンを滅びの魔力で消滅させる。そのまま追撃しようとしたがGTロボに腹を蹴られてしまい逃げられた。


『ソノ籠手ハ……マサカ『ルビースネーク』ノ皮デデキテイルノカ!?』
「ええそうよ。イッセーがIGOに頼んで作っていてくれたの」


 ルビースネーク……捕獲レベル25の猛獣で体を覆う皮がまるでルビーのように輝いていることからその名前が付けられた。その皮は鋼に勝る強度がありながら非常に軽く防具として使われることもあるってイッセーが言っていたわ。


「リアスったら早速イッセー君からの贈り物を使っていますのね」
「朱乃だってイッセーから貰ったののさま棒を嬉しそうにつかっているじゃない、お互い様よ」


 研究所を出発する前にイッセーが私と朱乃にそれぞれ武器を用意してくれていたらしく私はこの紅い籠手を貰った。前から私と朱乃は接近されると弱いという弱点があったのでライザーとのレーティングゲーム前の合宿で私はイッセーに接近戦で使える技術を、朱乃は棒術を魔法の特訓の合間に習っていた。まあイッセーみたいに格闘をメインにするんじゃなくてあくまでも戦闘の際に使える補助としてだけどね。


(イッセーには本当に助けられてばかりね……)


 私は頭の中でイッセーに感謝をしながらGTロボ目掛けて滅びの魔力を放ったがGTロボはかわして距離を取った。


『チッ!雑魚ナリニハヤルジャネエカ!ダッタラコッチモ本気デイクゼ!!ピーラーショット!!』


 GTロボは高速で体毛を飛ばして攻撃してくる、私と朱乃は魔法陣で防御するが激しい攻撃で動けない。次第に魔法陣にヒビが入っていく。


『コイツデトドメダ!!』


 GTロボの顔から極太のレーザーが放たれて魔法陣を粉々に打ち砕いた。


「きゃああっ!?」
「リアス!?よくもリアスを!!」


 吹き飛ばされた私を見て朱乃が激情しののさま棒で攻撃を仕掛けたがGTロボにあっさりと防がれてしまい髪を掴まれて地面に叩きつけられた。


「がはっ!?」
『イイ加減ニウゼェンダヨ!』


 そのまま朱乃を蹴り飛ばしてトドメにレーザーを放ち朱乃を貫いた。


「あ、朱乃―――――っ!?」
『ギャッハッハ!!ザマァネエナ!所詮ハ雑魚ダ!』
「よ、よくも朱乃を……!!」
『安心シロヨ。オ前モオ友達ト同ジ所ニ送ッテヤルカラヨ』


 GTロボは私の傍に近寄ると倒れている私に目掛けてマシンガンを突きつけた。


『オ前モアノ世デ他ノ奴ラガ来ルノヲ待ッテイルンダナ』
「……ふふ、ふふふふふっ」
『ナンダ?恐怖デ頭ガイカレタカ?』
「イッセーがここにいたらきっとこう言うわ。獲物はしとめたことを確認するまで決して油断はするなってね」
『ゴチャゴチャト何ヲ言ッテ……』
「雷よ!!」
『ガアッ!?』


 突然GTロボの頭上から巨大な雷が降り注いだ。私はGTロボの気が逸れた瞬間に立ち上がりGTロボに接近した。


「喰らいなさい!新技『ビクトリールインソード』!!」


 すれ違いざまに左手の指から滅びの魔力で作った魔力の剣を出してGTロボをVの字に切り裂いた。


『ナ、ナンダトッ!?』


 油断していたGTロボは四肢を両断されて地面に転がった。


「はぁ……はぁ……土壇場でやったけど上手くいってよかったわ」


 正直GTロボが気をそらしていなかったら当たらなかっただろう。だってまだ数秒しか維持できないし射程距離も短いからね。本当に上手くいってよかったわ。


『イ、イッタイ何ガ起コッタンダ……?』
「こういう事ですわ」


 倒れたGTロボの傍に朱乃が姿を現した。


『馬鹿ナ!?オマエハ死ンダハズジャ!!』
「私が作った泥人形はいかがでしたか、よくできていたでしょう?」


 さっきレーザーで貫かれた朱乃は魔法で作った泥人形で今は元の土くれに戻っていた。


『泥人形ダト?ソンナ物イツノ間ニ作ッテヤガッタンダ?』
「私たちは魔法がつかえますの。あなたが泥人形を必死で攻撃している間、私は魔法で姿を消して見てましたけど滑稽な姿でしたわ」
『チッ、GTロボモオ粗末ナモンダ。ソンナコトニ気ガ付ケナカッタトハナ』
「いいえ、あなたが朱乃に気が付かなかったのは死んだと決めつけて注意しなかったからよ。GTロボは高性能でも操縦者が甘かったわね」
『ムカツク女ダ……ゼ……』


 私は滅びの魔力を放ちGTロボを消し去った。万が一自爆されたらマズイしコアもどこにあるか分からなかったから全部消したけど良かったのかしら?まあいいわよね、だって加減できるような相手じゃなかったし。


「それにしても強かったわね。相手が油断してくれていたのと私の滅びの魔力がGTロボすら消せたのが幸いしたから勝てたけど私たちもまだまだね」
「本当ですわね……小猫ちゃんたちは大丈夫でしょうか?」


 触れたものを一切残らず消滅させる滅びの魔力が無ければGTロボには勝てなかっただろう。私は自分が本当に恵まれていることに感謝した。


「じゃあ次は小猫たちの援護に……!?うぅ……」
「リアス!?……ぐっ、私ももう……」


 私と朱乃は地面に倒れてしまった。


「……うう……流石に魔力を使い過ぎましたわね……体が重いですわ……」
「情けない……小猫たちの援護に行かないといけないのに……」


 私たちは地面に倒れながら小猫と祐斗の事を想いながらも気を失ってしまった……



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:小猫


「はあっ!」
『ホゥ、ヤリマスネ』


 祐斗先輩の魔剣とGTロボのサーベル、いやあれは包丁でしょうか?それらがぶつかり合い甲高い金属音が辺りに響きました。
 

「炎よ、敵を焼き尽くせ!」


 祐斗先輩は炎の魔剣を作り出しGTロボを炎で焼いていく。私は炎で視界を防がれたGTロボに接近して背後から殴りかかります。


『ン~、生ヌルイデスネ。料理スル際ノ火力ハコレクライナイト、バーナーキック!!』
  

 GTロボは炎を足に纏わせて私を蹴りました。ジュウジュウと肉が焦げる音がして私を苦しめていきます。


「きゃあぁぁ!?」
「小猫ちゃん!」
『気ヲ抜イタラ駄目ジャナイデスカ、ジャナイトコンナ目ニ合ッテシマウンデスヨ!ピーラーショット!』


 気を取られた祐斗先輩を高速で飛ばされた体毛が右腕の皮を剥ぎました。


「ぐあぁぁ!」
『コノGTロボハ近接戦闘ヲ得意トスルタイプデス。故ニコンナ事モ出来ルンデスヨ、ミキサースラッシュ!!』


 両手に包丁を持ったGTロボが高速で回転して私たちを切り裂きました。


「うわぁぁぁぁ!!」
「きゃああああ!!」


 全身を切り刻まれた私と祐斗先輩は血まみれになりながら倒れてしまいました。


『オヤオヤ、威勢ガイイ割ニハ大シタ事ハ無イヨウデスネ。コレナラサッキノ2人ノ方ガ楽シメタカモ知レマセン』
「な、舐めないでください!」


 私は素早く起き上がりGTロボに飛び蹴りを放った。


「喰らえ!『フライング・レッグ・ラリアート』!!」
『芸ガ無イデスネ、ソンナ正面カラノ攻撃ナド簡単ニ防ゲマスヨ』


 GTロボは腕を組んで防御しようとしましたが私は蹴りが当たる瞬間に足を止めてがら空きだった顎をサマ―ソルトキックで攻撃しました。


『ナニ!?フェイントヲシテクルトハ!』
「まだまだです!」


 よろけたGTロボの顔にトマホークチョップをお見舞いしそのままGTロボを肩に担ぎあげてカナディアン・バックブリーカーを決めました。


「このまま背骨をへし折ってやります!」
『フフ、GTロボカラスレバクスグッタイダケデスヨ。ソレニコンナチャチナ技ナド簡単ニ外セマスヨ』


 GTロボは私の両手を掴み技を外そうとしました。でもこれが狙いです!私はカナディアン・バックブリーカーから逃れようとしたGTロボの頭と両足を掴みたすき掛けをかけるような形で締め上げていきます。


『コ、コレハ!?』
「普通のカナディアン・バックブリーカーが通用するなんて思っていませんよ!これが本命の『リビルト・カナディアン・バックブリーカ-』です!!」


 GTロボは私から離れようとしますが掴んだ頭と両足をガッチリと極めて逃げ出すことが出きないように力を強めました。そう簡単に逃がして溜まるもんですか!!


「私だってイッセー先輩とずっと一緒にいるために努力してきたんです!あなたなんかに負けてなんていられません!」
『ホホウ、中々ノ覚悟デスネ。コノ技カラハ絶対ニ勝ツトイウ気迫ヲ感ジマス。実ニ面白イ』
「ず、随分と余裕ですね。いくらGTロボとはいえこれ以上締め上げられたら流石にマズイんじゃないんですか?」
『新型ガソンナニ軟ナ訳ナイデショウ。ソレニアナタハモウ限界ニ近イ筈ダ』
「っ!?」


 私に締め上げられながらもGTロボは余裕そうに話し出しました。


『気迫ハ十分デモアナタノ身体ハソレニツイテイケテイナイ。現ニ技ノ掛リガヨ弱クナッテキテイマスヨ』
「はぁ……はぁ……そんなことは……」
『努力シタコトハ認メテ差シ上ゲマショウ。デスガチョット鍛錬シタカラ勝テルト思ッテイルノナラ実ニ甘イデスヨ!』


 GTロボは技を無理やり外すと私にむかってエルボードロップを放ってきました。私はそれをまともに喰らってしまい地面に倒れてしまいます。


「ぐぅぅ……」
『故ニコウイウ結果ニナッテシマウンデス。デスガ今ノ技ハ中々ニ面白カッタデスヨ。ソレニ小柄ナガラモGTロボト同ジ程ノパワーヲ出セル身体……実ニ興味深イ。チョット解剖シテドンナ筋肉ヲシテイルカ見セテ貰イマショウカ』


 GTロボは両手に再び包丁を取ると私に近づいてきました。でもそこに祐斗先輩が現れてGTロボを魔剣で攻撃しました。GTロボは特に慌てた様子も見せずに祐斗先輩の攻撃を包丁で防ぎました。


『オヤ、ソウ言エバアナタモイタンデシタネ。金髪ノ剣士サン』
「小猫ちゃんはやらせない!」
『アナタモ興味深イデスネ。ソノ剣ハ何処カラ出シテイルンデスカ?』


 祐斗先輩の魔剣を包丁で砕きながらGTロボは戦闘中だというのに呑気そうに話した。


「炎よ、氷と一つになり目の前の敵を滅せよ!『双龍牙』!!」


 祐斗先輩は炎の魔剣と氷の魔剣から炎の龍と氷の龍を生み出してGTロボに攻撃を仕掛けたがGTロボは難なく龍を包丁で切り裂いた。


「ぐっ、ああも簡単に破られるなんて……」
『ミキサーパンチ!!』
「うわぁぁぁ!!」


 唖然としていた祐斗先輩のお腹にGTロボの攻撃が決まり祐斗先輩は吹き飛ばされてしまいました。


(このままじゃ駄目だ。あのGTロボには炎や氷といった魔剣は通用しない……なら僕のもう一つの力で挑むしかない!)


 祐斗先輩は魔法陣を生み出してその中に手を入れました。するとそこから一本の白い太刀が掴まれていました。


「あれは研究所を出るときにイッセー先輩が祐斗先輩に渡していた刀……?」
「『和道一文字』……イッセー君が僕の為に用意してくれた太刀さ」
『波紋ハ直刃、造リハ白塗鞘太刀拵……間違イナクソノ刀ハ大業物21工ノ一振リデアル『和道一文字』ニ違イナイ。随分ト珍シイモノヲ持ッテイルンデスネ』


 えっ?あれってそんなに凄い刀なんですか?イッセー先輩がポンッと祐斗先輩に渡していましたから全然知らなかったです。


「祐斗は魔剣を出せるからこんなものを渡してもお荷物になるかも知れないが一応持っていてくれ……彼はそう言っていたけど僕からすれば凄く頼もしい一刀だ。イッセー君の思いに答えるためにもこの刀を使いこなしてみせる!」


 祐斗先輩はそう言うとフッと姿を消して気が付いた時にはGTロボに攻撃を仕掛けていました。気のせいでは無く明らかにさっきよりも早くなっています。


『速イ!サッキマデトハマルデ違ウ!』
「はぁぁぁ!『龍鎚閃』!!」


 上空に飛び上がった祐斗先輩は落下重力を利用した威力の高い斬撃をGTロボに喰らわせました。さっきまでは傷をつけることが出来なかったGTロボのボディに切り傷が走ります。


「まだだ!『龍翔閃』!!」


 地面に着地した祐斗先輩は、今度は刀の峰を右手で支えてGTロボの下から跳躍し刀の腹で切り上げました。飛び上がった祐斗先輩は背中から悪魔の羽根を生やしてGTロボの周囲を高速で動きながら連続して攻撃していきます。


「これでどうだ!『龍巣閃』!!」


 人間の急所と思われる場所に連続して攻撃を喰らい流石のGTロボも後ずさりしました。


『背中カラ羽根ヲ生ヤストハ益々興味深イ!是非トモ解剖シテミタイデスネェ!』
「はぁ……はぁ……効いてないのか?」
「いえ、効いてはいるみたいです。見ていて思ったんですがあのGTロボは速い動きをするためか他のタイプより装甲が薄いんじゃないでしょうか?私たちの攻撃で所々ヒビが出来ていますし……」


 私のリビルト・カナディアン・バックブリーカーや祐斗先輩の怒涛の攻撃を受けて顔や指に細かいヒビが出来ていました。体毛が切られた場所にもヒビが見えたのであのGTロボは他のよりも装甲が薄いのかも知れません。


「だとして硬いことには変わりないけどね。僕が鋼を斬れればこんなことにはならなかったんだけど……」
「私に考えがあります。祐斗先輩はあいつに隙を作ってくれませんか?」
「隙を?……分かった、やってみるよ!」


 祐斗先輩はそう言うと地面に右手を置いて大量の魔剣をGTロボの周囲に出現させました。私はその間にGTロボの背後に回り込み一気に接近していきます。


(取った!ここです!)


 だがGTロボは素早くこちら側に振り向き回転する腕を私に放ってきました。


『ナニヲスル気カハ知リマセンガ残念、読ンデイマシタヨ!』


 GTロボは私の動きを読んでいたらしく、カウンターを放ってきました。ですがGTロボの攻撃は地面から出てきた魔剣に阻まれました。


『マタ剣ガ出テキタ!?マサカ、私ニ行動ヲ読マレル事ヲ更ニ呼ンデイタノデスカ!?』
「隙が出来ましたね!」


 攻撃を弾かれて体制が崩れたGTロボのボディに私は拳を叩き込みました。でもこれはただの一撃ではありません!一撃目の衝撃が物質の抵抗とぶつかった瞬間、私は拳を折ってニ撃目をいれました。そしてニ撃目の衝撃がGTロボのボディを貫きました。


『コ、コアニマデ達スル程ノ衝撃!!チタン合金ノ装甲ト強化アラミド繊維ノ体毛ガマルデ意味ヲ成サナイトハ……』
「これが私の切り札、『二重の極み』です……!」


 よ、良かった……イッセー先輩に教わってから一回も上手くできなかったけど土壇場で成功させれました。でも前より攻撃の威力が上がったのは何故でしょうか?力が強くなったというよりは身体が進化したような感じです。


『コアヲヤラレマシタカ……私モ懲リナイデスネェ、興味深イ物ヲ見ツケルト周リガ見エナクナッテシマウ。コレデハベイ先輩ヤザイパー先輩ヲ悪ク言エナイデスヨ……マアアナタ方ハヨクヤリマシタ、デモ無駄ナ事デス。結局ハ美食會ガ勝ツノハ決マッテイル事デスカラネ』
「イッセー先輩やサニーさんがマンモスの中に向かいました。勝負は分かりませんよ?」
『イッセートサニーデスカ……彼ラモ強イノデショウガコノ作戦ニヴァーリ様ガ参加サレタノデアレバ、誰モアノ方ニハ敵ワナイ……』
「ヴァーリ?」


 私は聞きなれない名に首を傾げ、それが誰なのか聞こうとしましたがGTロボのボディから煙が上がりだしました。


『デハオ二人共、機会ガアリマシタラマタ会イマショウ……』


 GTロボは最後にそう言うと活動を停止しました。私と祐斗先輩は何とか勝てた事に安堵してその場に座り込みました。


「おーい、二人ともー」
「ココさん!」


 そこにキッスに乗ったココさんが来てくれました。キッスの背中委には部長と朱乃先輩も載っていました。


「ココさん、あの巨大GTロボに勝ったんですね!」
「ああ、それで急いで救援に来たんだけどもう終わっていたとはね。君たちには驚かされてばかりだよ」
「ココさん、部長と朱乃先輩は大丈夫ですか?」
「二人とも、疲れで眠っているだけさ。安心してくれ」
「良かった……」


 私は全員が無事だと知り心から安堵しました。そしてリーガルマンモスに向かったイッセー先輩たちを思い出しました。


「ココさん、早くイッセー先輩たちを追わないと!」
「いや、今は休憩を取って体力を回復させよう。僕も毒を使い過ぎちゃったからね」
「でも……」
「焦りは禁物だ、それに今の君がイッセーの元に向かった所で何が出来る?」
「それは……」
「君がイッセーを案じているのは分かるよ。でも無理をして君に何かあれば悲しむのはイッセーだ。あの子にようやく君という大切な人が出来たんだ。僕としては、危ない事はしてほしくない」
「ココさん……分かりました、今は休息をとって体力を回復させることに専念します」
「うん、いい子だ」


 私は地面に伏せているリーガルマンモスを見ながらイッセー先輩たちの無事を祈りました。


「あいたっ!?」
「何やってるんだい、小猫ちゃん。悪魔が祈りを捧げたらダメージを喰らうんだよ?」
「うう、忘れてました……」



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:イッセー


 俺たちは小猫ちゃんたちと別れた後リーガルマンモスの口から体内に侵入した。落ちた先で偶然にも敵のGTロボと遭遇しサニー兄がそいつの相手を一人でするといい俺はそれを承諾、現在はジュエルミートを手にいれる為にマンモスの体内を捜索中なんだがアーシアとティナが流石に疲れたらしく軽めの休憩をしている。


「しっかしリーガルマンモスの体内ってどうなってるのかしら?迷路みたいに入り組んでいるし猛獣も住んでるしまるでゲームのダンジョンね」
「シチュエーション的にはよくあるけど実際に自分がこうして生き物の体内に入るなんて思ってなかったし」
「ある意味貴重な体験ですね」


 リン姉もなんやかんやでティナと意気投合したのかアーシアを交えて談笑している。確かに今の状況ってゲームに良くある光景だな。


「それにしてもサニーさんは大丈夫でしょうか、一人で残ると言われて置いてきてしまいましたがやっぱり心配です……」
「サニー兄は強い、あんな奴に遅れなんか取らないさ。問題は……」


 俺が一番心配しているのはテリーとティナが教えてくれた洞窟の砂浜で出会ったGTロボが来ているという事だ。あいつは本当にヤバい、できれば遭遇する前にジュエルミートを手にいれておきたい。


「ほら、休憩もそこまでにして早くジュエルミートを探しに戻るぞ」
「はーい、分かったわ」


 ティナが返事をして立ち上がり俺たちは更に先を進んでいく。マンモスの体内からする熟成した肉の匂いを嗅ぎながら進んでいくと腸内が眩しく思えるくらい輝いている場所に出た。


「イッセーさん、ここ何だかすっごく光ってますよ」
「恐らくジュエルミートが近いんだろう。マンモスの体内が明るいのはジュエルミートから出る輝きのお陰だろうからな」
「だから最初からマンモスさんのお腹の中が明るかったんですね。私、ジュエルミートを見るのが楽しみです!」
「ああ、もうすぐでジュエルミートに出会える……ッ!!?」


 アーシアに振り返って返事をしようとしたが俺は見てしまった。アーシアの背後の肉の壁から黒いGTロボが現れる瞬間を……


「アーシア!そこをどくんだあああぁぁぁぁ!!!」
「イッセーさん!?」


 驚くアーシアを無視して俺はホワイトフォレストで使った深い殺気をGTロボに送りながら跳躍した。既に赤龍帝の籠手は出してある。だが黒いGTロボは俺の威嚇を受けても平然としていた。


「(渾身の威嚇も全く通じないか!)5連!釘パ……」
『遅イ』


 バキィ!!


 俺はGTロボに釘パンチを放とうとしたが首に強い衝撃を受けて肉の壁に叩きつけられた。


(な、何が起きたんだ……?)


 首の骨が折れたらしく激しい痛みとは裏腹に意識が朦朧としてきた。リン姉がフラグレンスバズーカを放つがGTロボはそれをかわしてリン姉の腹を手で貫いたのが薄目で見えた。


「リンさん!!」


 アーシアの悲鳴が俺の耳に入ってくる。くそっ、俺は……何をやっているんだ……早く起きねえと……


(駄目だ……体が……)
 

 俺の意識はどんどん薄れていき意識が闇の中に沈んでいった……


 
 

 
後書き
 アーシアです。イッセーさんもリンさんもやられてしまって絶体絶命の大ピンチです……でも私は諦めません!例え死ぬことになったとしても逃げたりなんてしません、だってイッセーさんを信じてますから……!!次回第30話『死闘の果てでの進化!イッセーVSGTロボ!!』でお会いしましょう。イッセーさん、その姿は…… 

 

第30話 死闘の果てでの進化!イッセーVSGTロボ!!

 
前書き
 この作品には悪魔が眷属を作る際の独自ルールがあるのでお願いします。 

 
side:小猫


「……なるほど、それがグルメ細胞という物なんですね」


 私と祐斗先輩は眠っている部長と朱乃先輩の様子を見ながらココさんと一緒に休息を取っていました。キッスが持ってきてくれた食材を食べながらココさんにサニーさんから聞いたグルメ細胞について話を聞いていました。


 グルメ細胞を発見したのは美食神『アカシア』と呼ばれる伝説の美食屋。彼はこの世界の地球上を旅をして回り多くの食材を食べながら旅をしていたそうなんですが彼は深海でとんでもない発見をしてしまったそうなんです。
 

 何がとんでもないかというと深海に生息していた魚を捕獲して食べてみると今まで食べたどんな食材よりも美味しくあまりの美味さに言葉を失ってしまったそうです。魚の細胞を調査していくうちにアカシアはある生き物を発見しました。それが後に『グルメクラゲ』と呼ばれることになったクラゲでした。


 この生き物は他の生物に捕食されても形を変えながら再生する驚異の細胞を持っており更にその細胞を他の生物が取り入れると細胞が進化してより美味しくなることをアカシアは発見しました。そしてそのグルメクラゲから取られた細胞が『グルメ細胞』と呼ばれるようになったそうです。


「美食の神ですか……一体どんな人だったんでしょうね?」
「数百年も昔の話だからね、僕も実際にあった事はないけど書物によれば彼が残した所業に人間界で起こった戦争を食材を使う事によって止めてしまったという伝説があるんだ」
「戦争を止めてしまうなんて凄い人だ。きっと聖人のような素晴らしい人だったんだね」


 ココさんの話に私と祐斗先輩は美食神アカシアがどのような人物だったのか想像してみます。ココさんの話では他にも貧困に苦しむ人々に食材を渡したりもしていたと聞いたので聖人のような心の広い人だったんでしょうか?


「でもグルメ細胞か……そんなものがあると僕たちの世界の人が知ったら欲しいと思う人は相当多そうだね」
「特に強欲な悪魔は絶対に何が何でも欲しがるでしょうね」


 私は姉の件もあって部長たちや一部の悪魔の人達以外は傲慢な存在だと思っています。実際に悪魔が他の種族を眷属にする場合は本人の許可が無ければならないというルールがあるんですが殆どの上級悪魔はこれを守っていないそうで魔王様方も頭を抱えているくらいです。そんな悪魔がグルメ細胞を知ったりすれば必ず手に入れようとするでしょう。


「イッセーもその点については凄く慎重になっているんだ。本当は教えない方がいいんだけどサニーの奴め……いや所長がもらしたのが原因か……」
「ご、ごめんなさい。私たちが無理に聞いたりしたから……」
「いや、僕も君たちなら大丈夫だと判断はしてるからそこまで怒ってはないさ、イッセーだって君たちにはいずれ教えていただろうしね。ただ口外だけはしないでくれ」
「はい、絶対に言いません」
「僕も同じく」


 ココさんの真剣な表情を見て私と祐斗先輩は頷きました。


「あ、でも部長と朱乃先輩には話してもいいですか?」
「ああ、いいよ。二人が起きたら話してあげて」
「分かりました」


 ココさんと話をしているとリーガルマンモスが苦しそうにせき込み、口から何かを吐き出しました。猛獣や生物の骨の中にサニーさんが混じっていました。


「キッス、頼む!」


 キッスは勢いよく飛び上がるとサニーさんを背中に連れてこちらに来ました。サニーさんは顔などに怪我をしていましたが無事のようで安心しました。でもサニーさんは何故か顔を隠して私たちには見せようとはしません。


「……サニーさん、どうして顔を隠しているんですか?」
「いいか、猫。俺は敵にやられたんじゃねえ。これはうっかり転んじまって出来た傷だ、いいな?」
「えっと……分かりました」


 どうも敵に傷をつけられたのが嫌なのか転んで傷をつけたと主張しています。何だかサニーさんらしくて可愛いですね。


「でもサニーさん。どうしてあなただけがマンモスの口から出てきたんですか?」
「ん?ああ、俺が敵のGTロボを倒した時に強い突風が吹いてな、それに巻き込まれて気が付いたら外に放り出されていたんだ」
「恐らくマンモスが体内に入った異物を出すためにせき込んだんだろう。僕の毒も大分抜けてきたようだ」
「イッセー先輩たちは大丈夫でしょうか……」


 私は今もマンモスの体内にいるイッセー先輩たちを想い両手を重ねて祈りました。また頭痛がしましたが私はかまわず先輩の事を想い続けます。


「イッセー先輩、頑張ってください……!」





ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

side:イッセー


「ん、ここは……」


 俺が目を覚ますと辺りが真っ暗な闇で覆われた場所に立っていた。アーシアやリン姉の姿が見えないが何があったんだ……?


「そうだ、俺はGTロボに……」


 自分がGTロボにやられた事を思い出して俺は焦りだした。


「そうだ、こんな所で呑気にしてる場合じゃねえ。早くアーシアたちの元に行かねえと……でもここは何処なんだ?」


 辺りを見渡すと真っ暗な空間の一部から何か音が聞こえてきた。


「うん?誰かいるのか?」


 音がする方向に歩いていくと、次第に音が大きくなっていった。グジュグジュとまるで肉を食っているような音だ。


「な、なんだ?あれは……」


 俺の目に移ったのは大きな赤い鬼が何かを食べている光景だった。しかも俺はその鬼が食っている物を見て驚いた。


「お、俺を食っている……」


 そう、鬼が食っていたのは俺自身だった。鬼はこちらに振り向くと口についた血を手で拭いながら話しかけてきた。


『タイムリミットは5分だ。その間に急いで何かを口に入れろ、それもとびきり美味い物を……』
「美味い物……?」
『そうだ、それで細胞は進化する……』
「お前は一体……?」
『お前の中にいるのはあの赤い蜥蜴だけじゃない。それを忘れるな』


 鬼がそう言うと辺りが急に眩く輝きだして俺の意識も薄れていった。













『イッセー!目を覚ますんだ!!』
「……ぐっ、ドライグ?」


 俺が再び目を覚ますとそこはマンモスの体内だった。目の前には腹から血を流すリン姉と倒れているティナ、そしてアーシアに手を伸ばすGTロボの姿があった。


「ぐうあああぁぁぁぁ!!GTロボォォォォォォォ!!!」


 俺は雄たけびを上げながら籠手を出してGTロボの顔を殴った。GTロボは大きく吹き飛んでいき肉の壁に埋まった。


「イ、イッセーさん!首の骨は大丈夫なんですか!?」
「正直、メチャクチャ痛ぇ。気力でどうにか動いている状態だ」
「なら早く回復を……」
「俺は後でいい、今はリン姉とティナを頼む」
「イッセーさん……」
「そんな顔をすんな、俺は必ず勝って見せるからよ」


 俺はアーシアの頭を優しく撫でると吹き飛んでいったGTロボの元へ向かった。


『フム、首ノ骨ハ完全ニ折ッタハズダガ……ソレニコノ攻撃力……面白イ』
「GTロボォォォォ!!」


 俺はGTロボに飛び掛かると顔面にフォークを当てる、貫通はしなかったものの前に戦ったGTロボには利かなかったチタン合金の顔に大きな凹みが出来ていた。


『フンッ!』
「ガハッ!」


 GTロボがお返しにと放った一撃が腹部に炸裂した。俺は吐血しながらもナイフで再び顔を攻撃した。


『ッ!?』
「……5……6……!!」


 俺は5連ではなく6連まで力を溜めて釘パンチを放った。それを受けたGTロボは体を大きく折り曲げながら吹き飛んでいった。


(なんだ、この力は……空腹だっていうのに力が溢れてくる……)


 さっきまでとは違いGTロボに攻撃が効いている事に俺は戸惑いが隠せなかった。


『……間違イナイ、『オートファジー』ヲ発動サセテイル。ククッ、土壇場デ進化ノ前兆ヲ見セルトハ面白イ』
「オートファジー……?」


 オートファジー(自食作用)……栄養飢餓状態に陥った生物が自らの細胞内のたんぱく質をアミノ酸に分解して一時的にエネルギーを得る仕組みの事だ。今の俺はその状態になっているって事なのか?


『イッセー、何があったんだ?お前の意識が途絶えたと思った瞬間体から凄い力が溢れてきているぞ?』
「ドライグ、俺もよく分かんねえんだ。確か俺は……」
『だがこの状態がいい訳じゃない。あくまでも一時的にエネルギーを作り出しただけでお前の体はもう既に瀕死の状態だ。もって5分が限界だろう』
「5分……」


 俺はあの空間にいた鬼の言葉を思い出した。5分以内に何かを食えって言っていたが……


『とにかく急げ!お前には時間が残されてないぞ!!』
「ああ、まずはあいつを倒す!他の事は後回しだ!!」


 俺は勝負を速攻で決めるために体の負担を無視してGTロボに攻撃を仕掛けた。


「フォーク!!」


 フォークをGTロボの顔に放つがGTロボは首を動かしてそれをかわした。


『フンッ!』
「おらぁ!」


 GTロボが攻撃しようと振るってきた右腕をナイフで防ぐ。すると今度はレーザーを放とうと顔を開いた。


「閉じていろ!」


 俺は両手でGTロボの顔を無理やり閉じるとそこにヘッドパッドを叩き込んだ。


「うおおおりゃあああァァァァ!!」


 そして顔を掴んだまま大きく振りかぶってGTロボを投げ飛ばした。


「す、凄い戦いです……!」


 煙が晴れるとそこからは大したダメージも無さそうにしながらGTロボがゆっくりと立ち上がった。


『……困ッタモンダ。パワー、スピード……GTロボデハ俺ノ本気ハ再現出来ナイ』
「……」


 ……ハッタリじゃねえ、GTロボが操縦者自身の力を再現できていないんだ。もしGTロボがあいつの力を再現できていたら勝負なんて一瞬でついていた。


『コノボディガ粉々ニナリソウナ程ノパワー……美食屋イッセー、ソノ年デ大シタモノダ』
「……そりゃどうも」
『ダガソノパワーハアクマデモ一時的ナモノニ過ギナイ。後何分持ツノカナ?ソシテソノ間ニ俺ヲ倒セルノカ?』
「倒すさ、倒して見せるさ」
『無理ダナ』


 なっ……!?速い!一瞬で俺の目の前に来やがった……!!


『ピーラーショット!!』


 前に戦ったGTロボとは比べ物にならないほどの速い攻撃が俺の全身を切り刻んでいく。


「イッセーさん!?」
「ぐっ、おらぁ!!」


 俺はナイフを放つがGTロボはそれを受け止めた。


『ミキサーパンチ!!』


 回転したGTロボの腕が俺の腹部に深々と刺さった。


「がはぁ!?」
『ドウヤラココマデノヨウダナ。進化ハ無シダ』


 GTロボは俺の腹から腕を引き抜くと顔を開いてレーザーを放とうとする。くそっ、体が動かない……


「俺は、死ぬわけには……」
『サラバ、美食屋イッセー!!』


 GTロボが放ったレ-ザーは俺を肉の壁ごと吹き飛ばした。どこまで飛ばされたかは分からないが自分が死の淵に立っていることだけは理解できた。


(くそっ……俺は負けちまったのか……小猫ちゃんやアーシア、皆とジュエルミートを食うって約束したのに情けねえ……)


 体はもう動かねえ。意識が今にも消えそうだ……これが死ぬって事なのか……



(……ごめんな、小猫……ちゃ……ん……ア……シア……)








「イッセー先輩、頑張ってください……!」
「イッセーさん、私、信じています……」





 ……っ!?今、小猫ちゃんとアーシアの声が聞こえた……!


「お、俺は……死ねない……死ぬわけにいくか……!!」


 前までは野生の戦いで死ぬならそれも自然の摂理だと思っていた、でも俺にはもう死ねない理由が出来た。あの子たちを守るためにもここで死ぬわけにはいかねえ……


「諦めるもんか……俺は……生きる……!」


 這ってでも動こうと口や鼻に溜まった血を出して大きく息を吸い込んだ。するとすぐ側で芳しい香りが俺の鼻に入ってきた。


「この匂いは……?」


 ゆっくりと目を開けるとそこには光輝く肉の塊がぶら下がっていた。


「あれは、ジュエルミート……!?」


 それを見た瞬間、さっきまで動かなかった体に力が入る。汗も血液も全て枯渇したはずの俺の口から涎が出てきた。瀕死の重傷のはずなのにそれが食べたくて仕方がねえ。俺は立ち上がるとフラフラとまるで光に誘われるようにジュエルミートに近づいていった。
 

 う、美しい……サニー兄じゃねえがそう思っちまう。工芸品を思わせるような霜降り模様、滴る肉汁はまるで砂金のようだ……そして何よりも香り。高級フレグランス顔負けの気品あふれる芳醇さと本能を撃ち抜くような濃厚で原始的な肉の香りだ……


「この世の全ての食材に感謝を込めて、いただきます……!」


 俺はジュエルミートの一部にナイフを当てて肉をはぎ取った。そしてそれを口に含みゆっくりと噛んでいく。なんてしっとりとした触感なんだ、柔らかくていつまでも噛んでいたくなるような感触なのに肉汁は止まる事を知らねえ……!!


「うめぇ、美味すぎる……!!」


 俺は今度は直接ジュエルミートに噛みついて味わう。さっきまでとは違い今度は砂肝を噛んだような豪快な歯ごたえに肉汁の旨味とコクが口いっぱいに広がっていった。


「たまらねぇ……たまらねぇ!!」


 涙を流しながらジュエルミートを食う俺の身体が光り始めた。


『な、なんだ?イッセーの身体の中にあるグルメ細胞と神器が混ざっていく?……凄い力だ、今ならあれが出来るかも知れん。イッセー!!』
「ああ、いくぞドライグ!!」


 俺は赤龍帝の籠手を出して大きく頭上に突き上げた。


「禁手!!」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!』





ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:アーシア


「イ、イッセーさん……!!」


 イッセーさんがGTロボから放たれたレーザーをまともに喰らい、肉の壁を突き破り吹き飛んでしまいました。


『……少シハ期待シタガコノ程度ダッタカ。残念ダ』
「あ、ああ……」


 GTロボが私の傍に近づいてリンさんを見ると首を曲げた。


『ハテ、サッキ始末シタハズダガ傷ガ治ッテイル……?ソウカ。オ前ノ神器ノ力デ治シタノカ』
「えっ……?」


 私はGTロボが神器と言った事に驚きを隠せませんでした。どうして私たちの世界の神器をこっちの世界の人が知っているんでしょうか?


「リ、リンさんたちはやらせません!」


 私は勝ち目がないことは理解していましたがリンさんたちを守るためにGTロボの前に立ちふさがりました。


『止メテオケ、オ前ナド相手ニモナラン』
「そ、そんなことは分かっています!それでも私は逃げたりしません!」
『……フン』
「きゃあっ!?」


 GTロボに蹴飛ばされた私は地面に倒れてしまいました。い、痛いです……


『オヤ、コレハ……』


 GTロボは自分の足元に転がってきた包丁を興味深そうに見ていました。あれは小猫ちゃんから預かった大事な物……!


「返してください!それは私の大切な仲間から預かったものなんです!」
『イイ包丁ダ、名ノアル料理人ハ包丁ヲ見レバ分カルガオ前ノ仲間ニコレ程ノ包丁ヲ持ツ者ガイタノカ。興味深イナ』
「返してください!」


 私はGTロボに飛び掛かりましたがGTロボは軽く避けてしまいました。


「うぅ……」
『……フム、小娘。一ツ取引ヲシナイカ?』
「と、取引……?」
『ソウダ、コノ包丁ヲ黙ッテ俺ニ譲ルナラオ前ハ見逃シテヤロウ。ドウダ、イイ取引ジャナイカ?』
「……」
『サア、答エヲ聞コウカ?』
「お断りです」


 私はGTロボからの問いにきっぱりと答えました。


『……死ニ急グノカ?愚カナ選択ダゾ』
「死ぬのなんて怖くはありません!私だって覚悟をしてここに来たんです!それを返してください!!」


 その瞬間、GTロボから凄まじい殺気が私に送られました。気が狂い心臓が止まってしまいそうな程の恐怖に襲われても私はGTロボを睨み続けました。


『コレハ驚イタ、覚悟ハ本物カ……』
「そう、覚悟が無いのは貴様だけだ。GTロボ……」
『ッ!?』


 ……ああ、やっぱり来てくれたんですね。この声を聴くだけで心から安心します。


「イッセーさん!!」


 私は声がした方に視線を向けるとそこにいたのは赤い鎧を纏った人でした。でも声や雰囲気は私が知っているイッセーさんそのものでしたので直に分かりました。


「イッセーさん、その姿は……?」
「遅くなってごめんな、アーシア。危険だからリン姉たちの元に下がっていてくれ」
「は、はい!」


 GTロボはイッセーさんに集中しているからなのか直に包丁を取り返すことが出来ました。私は包丁を取り返すと急いでリンさんとティナさんの元に向かいました。


「遅くなって悪かったな、GTロボ」
『貴様、生キテイタノカ。イヤ、ソレヨリモソノ姿ハ……』
「圧覚超過を解除しろ。打撃の信号を全て通すんだ、お前も死の覚悟を背負ってここに立て!」
『……イイダロウ』


 イッセーさんはGTロボの前に立って睨みあいを始めました。


『オ望ミ通リ圧覚超過ハ解除シタ。コレデ打撃ノダメージハ100%俺ニ伝ワル』
「……名を教えてくれないか?」
『ソウイエバ名乗ッテハイナカッタナ。俺ノ名ハヴァーリダ』
「ヴァーリ……お前のその余裕はGTロボではお前の実力を引き出すことが出来ない強者故のものか?」
『自分デ言ウノモナンダガGTロボハ俺カラスレバ足手マトイデシカナイ。ソレニ圧覚超過ハ無イ方ガイイ、オ前ノ実力ガ直ニ感ジ取レルカラナ』
「そうか、ならたっぷりと味わえ。進化した俺の力を……」


 イッセーさんとGTロボはお互いに構えると暫く硬直したように止まっていました。相手の出方を見ているのでしょうか?


『ミキサーパンチ!!』


 最初に動いたのはGTロボでした。GTロボは腕を高速で回転させるとイッセーさんのお腹に強烈なパンチを放ちました。


『……ッ!?硬イ!傷スラツケラレントハ……!!』


 GTロボが放った攻撃はイッセーさんを纏っている鎧に弾かれました。イッセーさんは弾いたGTロボの腕を掴むと勢いよく手刀を落としました。


「ナイフ!!」
『グガァ……ッ!』


 GTロボの腕にナイフが当たると凄まじい金属音が辺りに響きました。たった一撃でGTロボの腕の一部が千切れてケーブルや機械が見えてしまうほどのダメージを与えました。


「ナイフ!ナイフ!ナァァイフ!!」


 休む暇も与えずイッセーさんは連続してナイフを当てていきます。そして最後に渾身のナイフを当ててGTロボの腕をもぎ取ってしまいました。


『……ハッ』


 GTロボの顔が開いてイッセーさんにレーザーを放とうとしました。でもイッセーさんはレーザーが放たれる前にフォークを開いた顔の内部に放ちレーザーを発射する部分を破壊しました。


「フォーク!!」


 イッセーさんはなんと両手でフォークを放ちGTロボの全身に喰らわせました。さっきまでよりも遥かに威力が高くなったフォークはGTロボのボディに風穴を開けました。


『……ピーラー』
「遅ぇよ!!」


 GTロボが攻撃を放ってくる前にイッセーさんが釘パンチを当てました。ボディを大きく曲げながらもGTロボは釘パンチの衝撃を受け流しました。


『……ココマデノヨウダナ』


 でもGTロボは攻撃もしようとしないで止まってしまいました。何故ならばGTロボの目の前には既に拳を構えたイッセーさんが立っていたからです。


『マサカ『禁手』ニ至ルトハナ。体ノ細胞モ進化シテイルトコロヲ見ルトジュエルミートヲ食ベタノカ』
「お前、何者だ?神器を知っているのか?」
『俺モ食ベテミタカッタガソレハ次ノ機会ニシヨウ』


 イッセーさんは黒いGTロボの操縦者が神器の事を話したので何者かと質問しましたが相手はイッセーさんの質問には答えませんでした。


『マタ会オウ、イッセー。今度ハ生身デナ』
「……ああ」


 イッセーさんはGTロボの問いに頷くと拳をGTロボに叩きつけました。


「10連!釘パンチ!!」


 イッセーさんの放った10連釘パンチを受けたGTロボはボディにヒビを入れながら辺りを跳ね回ります、そして……


「ごちそうさまでした」


 イッセーさんが手を合わせるとGTロボは空中でバラバラに吹っ飛んでしまいました。イッセーさんは戦闘が終わると赤い鎧を消して私の方に駆け寄ってきました。


「アーシア!」
「イッセーさん!」


 私は感極まってイッセーさんの胸に飛び込んでしまいました。


「イッセーさん!私、信じていました!イッセーさんは必ず来てくれるって……」
「怖い思いをさせちまってごめんな、アーシア」
「怖くなんてありませんでした、だって私にはイッセーさんがいますから……」
「アーシア……」


 イッセーさんは私の顔に手を添えると顔を近づけてキスをしてくれました。イッセーさんの温もりを感じながら暫くお互いの唇の感触を感じあっていました。


「……ぷはぁ。イッセーさん、大胆です……」
「ごめんな、なんか急にしたくなって……そうだ、リン姉は?」
「リンさんの傷はもう塞ぎました。ティナさんは気絶しているだけで命に別状はありません」
「そうか、二人を守ってくれたんだな。ありがとう、アーシア」
「えへへ……」


 その時でした、マンモスさんの体内に強い風が吹き出しました。


「おお、マンモスの奴め、いいタイミングだ」
「イッセーさん、これは……」
「マンモスが俺たちを吐き出そうとしているのさ……っと忘れてた、あれも一緒に持って帰らねえとな」
「あれ?」


 イッセーさんはマンモスさんの体内の奥に行くと大きなお肉を持ってきました。


「イッセーさん、それってもしかしてジュエルミートですか?」
「ああ、こいつを食ったお陰で『禁手』に至れたんだ」
「さっきの鎧姿ですね。とってもかっこよかったです」
「ありがとうな。さて、俺は二人を運ぶからアーシアは背中に捕まってくれ」
「分かりました!」


 私はイッセーさんの背中にしがみ付くとイッセーさんはリンさんとティナさんを担いでジュエルミートを持ったまま風にのって外に向かいました。暫くすると日の光が見えて私たちは外に放り出されました。


「イッセー先輩!アーシアさん!」
「小猫ちゃん、皆さん!」


 外には小猫ちゃんたちがいて私たちを見つけると悪魔の羽根を生やしてこちらに飛んできました。見るとサニーさんもいたので無事にマンモスさんから脱出出来ていたようです。


「先輩!!アーシアさん!!」
「小猫ちゃん、祐斗、俺はいいから二人を頼む!」
「うん、任せて!」


 イッセーさんはリンさんとティナさんを小猫ちゃんと祐斗さんに預けるとサニーさんに話しかけました。


「サニー兄!クッションを頼む!」
「よっしゃ!最高に優しくキャッチしてやるぜ!」


 サニーさんが髪ネットを使って私とジュエルミートをキャッチしてくれましたがイッセーさんだけが落ちてしまいました。


「いってー!?おい、サニー兄!!俺も優しくキャッチしろよ!!」
「すげぇ、これがジュエルミート……なんて美しいんだ……」
「いや聞けよ!!」


 イッセーさんはサニーさんと喧嘩を始めてしまいました。私はサニーさんの髪ネットにぶら下がったまま降りられなかったんですがココさんが下ろしてくれました。


「まったくあの二人は……大丈夫かい、アーシアちゃん?」
「はい、下ろしてくださってありがとうございます。あ、そうだ!ココさん、リンさんがGTロボにお腹を貫かれちゃったんです!私が傷を塞ぎましたが大丈夫でしょうか?」
「リンちゃんからは死相は見えない、今キッスが研究所から医療チームを呼んでいるから安心してくれ」
「そうですか、良かった……」
「それよりも僕としては君たちに何があったのか知りたい。僅かの間だけど誰かの電磁波が途絶えたから心配したんだ」
「分かりました、私が知っていることを全て話します」


 私はマンモスさんの体内で何があったのかをココさんに話しました。


「……そうか、通りでイッセーの電磁波がさっきよりも強くなっていると思ったよ。イッセーは死相を乗り越えて死の淵から進化して戻ってきたんだ」
「はい、イッセーさんはすっごく強くなっていました!とってもかっこよかったです!」


 私とココさんが話しているとイッセーさんとサニーさんがこっちに向かって歩いてきました。


「よう、アル。イッセーから聞いたぜ、お前がリンを救ってくれたんだってな」
「いえそんな……私もお役に立ててよかったです」
「本当にありがとうよ。あんなじゃじゃ馬でもたった一人の家族だからな、心から感謝してるぜ」
「ふふっ、そう言って貰えると嬉しいです」


 サニーさんに頭を撫でられているとイッセーさんが何か不安そうな表情を浮かべているのが目に映りました。


「イッセーさん、どうかしたんですか?」
「あ、いやテリーがどうなったか心配でな」
「そういえばテリーちゃんは敵を足止めしに別れたんですよね」
「ああ、だがあのGTロボが来たってことはテリーはもう……」
「先輩!あれを見てください!」


 上空にいた小猫ちゃんが何かを発見したようでそちらを見てみると大きな猛獣さんに乗ったテリーちゃんの姿が見えました。


「テリー!無事だったんだな!」
「バウッ!」


 テリーちゃんは猛獣さんから降りるとイッセーさんに駆け寄りました。体はボロボロでしたが無事でいてくれて良かったです。


「ていうかテリー、お前ってばオブサウルスをしもべにしたのか!?」
「うわっ!なんだコイツ!キモー!」


 この子はオブサウルスっていうんですね。しもべとはよく分かりませんがテリーちゃんのお友達なんでしょうか?


「皆、向こうからリーガルマンモスの子供とヘリコプターが来てるよ!」
「キッスが誘導してきてくれたんだね」


 祐斗さんが指を刺した方角からリーガルマンモスの子供がこっちに向かっているのが見えました。


「良かった。これで親マンモスさんも安心ですね」
「ああ、本当に感謝しないといけないな。ありがとう、リーガルマンモス」


 私とイッセーさんは親マンモスさんに感謝の印として頭を下げましたが親マンモスさんは前足を上げると私たちを踏みつぶそうと……ってええっ!?


「イッセーさん!!親マンモスさんご立腹のようです!!」
「うおォォォ!?コイツなんで怒ってんだ!?」
「そりゃ自分の子供誘拐されるわ、体内荒らされるわなんてされたら怒りますよ……」
「うわぁぁぁ!!イッセー君!部長や朱乃さんたちを運ぶの手伝ってー!」
「サニー、フライ返しだ!!」
「いやここはお前の毒の出番だろうが!!」
「と、とにかく逃げるぞ――――――っ!!!」


 私たちは大慌てでその場を逃げるように立ち去りました。でも今回の旅も楽しかったです。後はジュエルミートを実食するだけですね。



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side:??


 イッセーたちがリーガルマンモスから逃げている頃、研究所ではマンサム所長が誰かと会話をしていた。


「……そうか、イッセーたちはジュエルミートを捕獲できたか」
「ええ、かなりの傷を負ったようですが全員無事にこちらに向かっています」


 マンサム所長に話しかけていたのは片目を瞑った男性だった。彼の名は茂松、IGO副会長を務める男で今回はある目的のために第1ビオトープ研究所に訪れていた。


「……ふむ、この酒は中々に美味いな」
「『ガラナウナギ』の焼酎漬けです。丸二年漬け込んでいます。アルコール度数65%。私の一押しです」
「虎の睾丸に似たクセのある味だ。それにわずかな薬草の苦み……全身の毛穴が一気に開き体が温まってきた、まるで漢方薬だ。うん、美味い」
「何故ゼブラの出所許可を出さなかったのですか?茂さん」
「あの問題児をそう簡単に出す訳にもいかんだろう。逮捕を決断したグラス局長の面子もある」


 マンサム所長が話したゼブラとは四天王最後の一人であり実力は四天王内でも最強と言われている。だが性格に難があるうえ問題ばかり起こしたため今は刑務所に入れられているらしい。


「ゼブラがいればマンモスの捕獲もGTロボとの戦いも楽だったと思いますがなぁ」
「まあそう言うな、結果的にはイッセーたちがやってくれた。問題なのは自爆していないGTロボがあるということだ」
「……奴らが取り返しに来ると?」
「可能性は高い。恐らくは副料理長レベルの奴が来るだろう」
「となると来るとすれば『ヴァーリ』か『トミーロッド』かのどちら……はぁ、できれば来てほしくありませんな」
「どちらにせよ、後は俺たちの仕事だ」



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side:アーシア


 研究所に戻った私たちは治療をしてもらい現在は研究所の屋上でジュエルミートが出てくるのを待っています。


「おまたせいたしました。『ジュエルミート』盛りでございます」


 ジュエルミートが出てきた瞬間、辺りは夜で真っ暗なのにも関わらずにまるで昼間のような明るさになりました。


「うっひゃあ!来たァあ!!」
「こ、これがジュエルミート……!」
「なんて美しいお肉なんでしょう……」
「じゅるる……とってもいい匂いです」
「小猫ちゃん、よだれ出てるよ……でもこの食材を前にしたら無理もないよね」
「キャー♡ステキー♡」
「何て輝きだ……」
「う…う…(美しすぎて声が出ねえ……!!)」
「皆さん、見てください!これが古代の食宝ジュエルミートです……ってカメラ壊れてるしー!!」


 上からイッセーさん、リアスさん、朱乃さん、小猫ちゃん、祐斗さん、リンさん、ココさん、サニーさん、ティナさんが目を輝かせて感想を言いました。


「さあ、皆!ジュエルミートを頂こうじゃねえか!!」
「「「おおっ―――――――――っ!!!」」」


 私たちは手を合わせると「いただきます」と言いさっそくジュエルミートを頂くことにしました。


「はうぅ……なんて優しい光なんでしょうか」


 ナイフで肉を切るとまるで肉汁が花火のように輝きながら吹き上がりました。


「あむ……ん~!おいひぃれふぅ!」


 凄いです、見た目はこんなにも輝かしいのに飾り気のないお肉の旨味が口一杯に広がっていきます……あれ?触感が変わりました。さっきまで柔らかかったのに今はコリコリとした触感になりました。噛むたびに肉汁が溢れてきますがあっさりとしていて全然しつこくありません。

「ん……」


 ゴクリとお肉を飲み込むと身体から光が出てきました。まるで細胞の一つ一つが喜んでいるみたいです。


「あむ、んん!?これは肝臓だ!レバ刺しの触感になった、でもクセや匂いは全くない!クリーミーな味わいだぜ!」
「あら、これはバラ肉かしら?お肉と脂の層が何重にも重なってそれが口の中でほどけるように旨味が溢れてきますわ」
「あ、サーロインかな?口に入れた途端に溶けてしまった、でもなめらかで全然しつこくない。凄く美味しいよ」
「このプリプリはホルモンでしょうか?まったく臭くないししつこくもないです!ああ、ご飯が欲しくなっちゃいます」
「そう言うと思って『極楽米』を用意しておいたぜ!!」
「ッ!?イッセー先輩、愛してますぅぅぅ♡」


 色んなお肉の味や部位、そして触感まで楽しめてしまうなんてジュエルミートはまるでお肉のカーニバルみたいです。


「グワゥ!!」
「おお、テリーも美味いって思うだろ?」
「カァー!!」
「キッスも気に入ったようだね」
「バルァァァ!!」
「あら、オブちゃんも食べますか?」


 テリーちゃんもキッスちゃんも美味しそうにジュエルミートを食べています。でも何でオブちゃんだけ朱乃さんから貰っているんでしょうか?


「ふぅ……こりゃ決まりだな」


 ミネラルウォーターを飲んだイッセーさんが何かを呟きました。


「何が決まったんだ?イッセー」
「ん?ああ……ってサニー兄!めっちゃ輝いているぞ!?」


 サニーさんはこの中でも一番光り輝いていました。


「これは……どうやらジュエルミートはサニーと相性が良かったようだ。細胞が一番進化している」
「まあな。んでイッセー、何が決まったって?」
「これだけの肉だ。俺のフルコースにいれてもいいかなって」
「イッセーさん、それって……!!」
「やったじゃない、イッセー!!」
「とうとう肉料理が埋まりますのね!!」
「イッセー先輩のフルコースがまた埋まるんですね!!」


 私たちは全員でイッセーさんのフルコースの肉料理が埋まったことに喜んで「ちょっと待てーい!!」……ふえっ?サニーさん?


「なんだよ、サニー兄。今いい所だったんだぞ」
「なんだよじゃねーよ!イッセー、よーく俺を見てみろよ」
「うん?……めっちゃ光ってるな」
「だろう?こりゃジュエルミートは俺を選んだって事じゃないか?」
「選んだって……まさかサニー兄!?」
「ああ、こいつは俺のメインディッシュに入れる」


 え、ええっ!?サニーさんもフルコースにジュエルミートを入れたいんですか?


「何でサニー兄のメインなんだよ!意味わかんねーし!!」
「俺が一番光ってるからに決まってんじゃねえか!!」
「光ってるのなんか関係ねーし!!」
「大体ジュエルミートを捕獲できたのは俺のお陰じゃなくね?少なくとも俺が倒したGTロボが一番強かったし!!」
「んなわきゃねぇだろうが!俺が倒したGTロボが一番ヤバかったぞ!!」


 あ、あわわ!イッセーさんとサニーさんが喧嘩しだしちゃいましたぁ!!


「ね、ねえ二人とも?二人のフルコースにジュエルミートを入れたらいいんじゃないかしら?」
「それは駄目ですね」
「ならん!」
「えぇ!?どうしてなの?」
「いや、身内とフルコース被るのなんか嫌だからです」
「えぇ~……」


 リアスさんがフォローに入りましたが二人はどちらも譲りませんでした。


「二人のフルコースにジュエルミートを入れたらいいじゃないの!」
「いや、ここは俺のプライドにかけて肉料理に!!」
「いや、俺のメインだ!!」
「あわわ、喧嘩は駄目ですよ~」


 リアスさんが涙目で二人を止めようとしますがそこに小猫ちゃんがイッセーさんの傍にいきました。


「私はイッセー先輩の肉料理に一票入れますね♡」
「流石小猫ちゃんだぜ!どうだ、サニー兄!これで俺が一票だぜ!」
「おい、猫!お前色々と助けてやったじゃねえか!アルとユウは俺の味方だよな?」
「わ、私はそのイッセーさんがいいかと……」
「これは難しい選択だね……」
「なら私もイッセー君に……♡」
「こじれるから止めておきなさい……」
「四天王のフルコース争い……美味しいニュースね」


 小猫ちゃんの発言でサニーさんは私と祐斗さんに声をかけてきたり朱乃さんがイッセーさんに抱き着こうとしてそれをココさんに止められたりと大騒ぎになりましたが結局はサニーさんのメインディッシュに決まりました。


「ちくしょう、あそこでグーを出しておけば……」
「よしよしです、イッセーさん」
 
 

 
後書き
 リアスよ。ジュエルミートを手に入れてから3日が過ぎたんだけどテリーがご飯を食べないそうなの。このままじゃ死んでしまうかも知れないし何とかならないかしらね……えっ?人間界でグルメ界の食材を取れる場所があるですって?次回第31話『テリーのご飯はいずこへ?植物地獄、ウールジャングルに迎え!』で会いましょう。 

 

第31話 テリーのご飯はいずこへ?植物地獄、ウールジャングルに迎え!

side:??


イッセーたちがジュエルミートを捕獲してから3日ほどが過ぎていた。ココやサニーたちと別れたイッセーはテリーとオブサウルスをスイーツハウスに連れてきて新たな家族にした。その後は学業に励みながら放課後にリアスたちと特訓したり食材を食べたりと久々にのんびりと過ごしていた。


「行くよ、イッセー君!」
「来い、祐斗!」


 スイーツハウス周辺にある草原でイッセーと祐斗が模擬戦をしていた。祐斗は和道一文字を構えてイッセーに向かっていき上段から太刀を振るった。


「ナイフ!」


 イッセーは赤龍帝の籠手を出さずに素手でナイフを放つが祐斗の和道一文字に当たっても血は少ししか出ずに断ち切るまでには至らなかった。


「素手でナイフをするなんて……!」
「流石和道一文字、無傷ではいかなかったか」


 イッセーは左手でフォークを放つが祐斗は上空に飛び上がってそれをかわし、和道一文字を上段にかまえて大きく振りかぶった。


「龍鎚閃!」
「甘いぜ!」


 イッセーは迫りくる刃を両手でのナイフで挟み込み太刀筋をそらした。


「しまった……!?」
「これで終わりだな」


 そして祐斗の首に右手のナイフを突きつけたことによってこの模擬戦はイッセーの勝利で終わった。


「負けちゃったな、流石イッセー君だよ。でも籠手も使わないでナイフやフォークを出せるようになっていたんだね」
「ああ、ジュエルミートを食って細胞が進化したからかナイフやフォークを素手で、しかも両腕で出来るようになったからな。釘パンチも5連までなら素手で出来るようになったぜ」
「更に禁手にまで至ったんだよね。あっという間に先に行かれちゃったね」


 祐斗は羨ましそうにイッセーを見つめるがイッセーは首を横に振った。


「こんなんじゃまだまだ足りねえよ。あのGTロボの操縦者、ヴァーリは今の俺よりも圧倒的に強い。もっともっと強くならねえとな」
「……強さか」


 イッセーは祐斗に自分はまだまだだと言うが、祐斗はイッセーの言葉を聞いて何か悲しそうな目になる。イッセーが何かあるのかと思ったが聞かれたら嫌な事かも知れないので今はそっとしておくことにした。


「先輩、そろそろご飯にしませんか?夕食が出来ましたよ」
「おっと、もうそんな時間か」


 小猫が背後からイッセーに近づいて背中によじ登って夕食が出来たことを二人に告げる、イッセーは祐斗と小猫を連れてリアスたちが待つ場所に向かった。


「あ、イッセーさん。夕ご飯出来てますよ」
「お、美味そうだな」


 イッセーは目の前で焼かれている『フライアダック』の丸焼きを見て涎を垂らしていた。小猫が包丁でフライアダックを切り分けて皿に盛り付けていく。そして夕食の準備が終わるとイッセーたちは用意していた椅子に座って料理をテーブルに置いた。


「待たせて悪かったな。それじゃ皆、全ての食材に感謝を込めて……頂きます!」
「「「頂きます!」」」


 イッセーはフライアダックの肉を手でつかむと口の中に入れる。


「鶏肉の淡白な味わいに霜降り肉のようなとろける触感、更に高級ブランド豚のような甘い脂が口いっぱいに広がってたまんねえぜ!」
「手で食べるなんてちょっとお行儀が悪い様な気もするけど偶にはいいわね」


 イッセーたちはフライアダックの肉を全て食べてしまい骨だけが残った。するとイッセーは油を用意するとフライアダックの骨をその中に入れる。


「先輩、何をしているんですか?」
「骨を揚げてるのさ。普通鳥の骨は食えないがフライアダック、こいつは別だ。こうすることで骨まで食えるからな」


 油で揚げられたフライアダックの骨はカリカリに揚がっておりイッセーが骨を手に取りかじるとサクサクとした音が辺りに響いた。


「まるでスナックのような触感に鳥の軟骨の味がうめぇな、皆も食えよ」
「はい!」
「僕はちょっと……」
「わたくしももうお腹いっぱいですわ」


 イッセーと小猫はすさまじい勢いで食べていくが他のメンバーは満腹で見ているだけでお腹いっぱいになっていた。


「ふ~、食った食った。お腹いっぱいだぁ」
「イッセーさん、『ホワイトアップル』で作ったアップルパイとジュースがありますがそれも食べますか?」
「マジで!?食べる食べる!!」
「私も食べたいです!!」


 アーシアが持ってきたアップルパイにかぶりつくイッセーと小猫を見てリアスは苦笑いを浮かべた。


「本当にあなたたちってよく食べるわよね、慣れたと思っていたけど目の前で見てると唖然としちゃうわ」
「それに比べて……」


 朱乃がチラッと横を見るとそこにはテリーがいた、傍にはフライアダックの肉があるがテリーは興味を示さないで眠っている。


「テリーちゃん、本当に食べませんわね……」
「一体どうしたのかしら、このままだと栄養失調で死んでしまうわ」


 テリーはジュエルミートを食べたのを最後にまったく食事を取ろうとしなかった、どんな食材を見せても食べようとしないのだ。


「もしかして何かの病気なのでしょうか?私、心配です……」
「アーシアさん……」


 心配そうな表情を浮かべるアーシアに小猫は何も言えなかった。ここにいる全員がテリーを心配してるがどうしたらいいのか分からないのだ。


「俺も流石にマズイと思って色々調べたんだけど昨日世界の台所に行った時丁度十夢に会ったんで相談してきたんです」
「十夢?」
「イッセー先輩の親友で卸売商をしている方です、前にお会いしたことがあります」


 十夢と面識が無いリアス、朱乃、祐斗は首を傾げたが小猫がフォローをした。


「十夢の話だとテリーは元々グルメ界に生息していたバトルウルフのクローンから生まれた子だから人間界の食材が口に合わないのかも知れない、と言っていました」
「なるほど、それでご飯を食べなかったのですね」


 テリーのDNAにはグルメ界の食材の情報が刻まれているため人間界の食材では口に合わないんじゃないかとイッセーは説明する。


「でもグルメ界って相当危ない場所なんだよね、そこから食材を採ってくることは出来るの?」
「難しいな、俺もいつかは行こうとは思ってるが今は無理だ」


 流石のイッセーでもグルメ界に入るのは容易な事でないと言われてリアスたちは落ち込んだ表情を浮かべた。


「でも手が無いわけじゃないんだ。十夢の話には続きがあってな、世界の台所にグルメ界の食材を持ってきた人物がいたらしいんだ。なんでも酔っ払った爺さんだったらしいが大手の業者が買い取ってったらしいから本物である可能性は高いだろう」
「酔っ払ったお爺さん……なんか覚えがあるような……」


 イッセーの話に出てきた酔っ払いのお爺さんに引っかかりを見せるリアスだったが思い出せなかった。


「それでその爺さんがこう言ってたらしいんだ、「人間界で取れる数少ないグルメ界の食材」ってな」
「人間界で取れるグルメ界の食材?」
「ああ、その食材の名は『BBコーン』っていってな、グルメ界の猛獣たちも大好物だと言う穀物さ。圧倒的な香ばしさとコク、たった1粒を強力な火力で炒り爆発させれば100人前のポップコーンになり取引では1粒で数10万単位で行われ丸々一本なら10億は下らないコーンの王様だ」


 イッセーの話を聞いたリアスたちはBBコーンを食べてみたいと思った。


「既にヘリの用意はしています、明後日には出発しますがリアスさんたちも行きますか?」


 イッセーの誘いにリアスたちは迷いなく首を縦に振った。



―――――――――

――――――

―――


side:リアス


 イッセーからの誘いを受けた私たちは現在ヘリに乗ってウール大陸と呼ばれる場所を目指していた。


「いやぁ、私、グルメ界に来たの久しぶりですよー」
「今回はルフェイも一緒なの?」


 そう、今回の旅はイッセーの弟子であるルフェイも一緒に付いてきていた。


「ええ、今回はかなりの遠出なんで時間を短縮するためにルフェイの力を借りることにしました。お陰で途中にあった巨大怪鳥の巣を迂回しなくて済んだし燃料や食料も魔法で異空間にしまってあるからノンストップでウール大陸まで来れましたよ」
「もう、師匠ったら私を青い猫型ロボットと勘違いしてませんか?怪鳥に見つからないようにヘリを消したり異空間から物を召喚するのも大変なんですよ!」
「悪かったって、感謝してるよ。ルフェイのおかげで本当なら3日はかかるのが1日半程でついたんだ、この礼はちゃんとするから期待していてくれ」
「えへへ、なら美味しい物を食べさせてくださいね」


 ルフェイの魔術師としての才能と実力は私や朱乃以上のもので彼女がいなかったらこうもスムーズにはいかなかったと思うわ。
 

「しかしよく学校側に許可を貰えましたね、俺はいいとしてリアスさんたちは何か言われなかったんですか?」
「えっと、お兄様に修行の旅に出たいって言ったら許可をくれたわ。ただちょっとおかしいの、普通ならなんで修行をするんだとかいつまでするのかって聞いてくるはずなのに何も言わず許可を出してくれたの」
「……リアスさんの兄、魔王が俺に感づいたって事ですか?」
「確証はできないわ、でも用心はしたほうがいいと思う」
「分かりました、まあいつかはバレると思っていたんでリアスさんは気にしないでください」


 イッセーはそういうけど多分気が付いているわね、何もしないのはグレイフィアが私の家族だからなのかしら?だとしたらイッセーは優しすぎるわ。


(でもそんな彼だから小猫は惹かれたのよね……)


 私はもしお兄様がイッセーに何かしようとするのならお兄様と敵対してでもイッセーの味方になろうと決めた。彼にはそれだけの恩がある、だから迷いはなかった。


「ウージャングルはここから北西へ80㎞です。危険のためここまでしか近づけません、ご了承ください」
「十分だ、ありがとうよ。BBコーンを捕獲したらウール火山に行くつもりだからそこまで頼むな」
「帰りはいいと仰られましたがどうされるおつもりですか?」
「大丈夫だ、宛がある」
「分かりました。ご武運を祈ります」


 ヘリから降りた私たちはウージャングルを目指して徒歩で向かうことになった。途中の草原でさっきイッセーとパイロットの人が話していた話の内容をイッセーに聞いてみた。


「イッセー、帰りはヘリを使わないみたいだけどどうやって帰るつもりなの?」
「大丈夫です。ルフェイ、アレの準備は出来ているか?」
「はい、バッチリです!」


 ルフェイは魔法陣から緑色の宝石を取り出した。


「ルフェイ、それは一体なんなの?」
「これはフロルの風というアイテムでマーキングした場所に瞬時に移動することが出来るんです。一回使うと壊れちゃうし作るのも大変なのが欠点ですがこの世界のどこにいてもマーキングした場所に一瞬で戻れちゃうんですよ。今回は2つ持ってきました」
「一つはさっきのヘリが降りた場所に、もう一つは俺のスイーツハウスにマーキングを設定してありますから帰りはこれを使います」
「へぇ、便利なアイテムね。でもいつもは使ってないみたいだけどどうして?」
「それはこのアイテムがルフェイが作った新しい魔法アイテムだからです。前から話は聞いていたんですがようやく完成したと聞いたので今回は実地テストもかねてルフェイを連れてきました」
「えっ、じゃあ絶対に帰れるか分からないって事?」
「まあ失敗したらその時考えますよ」


 イッセーとルフェイはあははと笑う。ほ、本当に大丈夫なのかしら……まあルフェイは優秀な魔術師だから信じることにしましょう。


「因みにこれを作る材料はグルメ界でしか取れないので俺たちの世界じゃ作れません」
「リアスさんたちと初めてお会いした時に師匠に渡したアイテムも私が作った物なんですよ、まあ師匠にしか売りませんけどね」
「買っていたのね……」


 えっへんと胸を張るルフェイ、彼女が作る魔法アイテムにちょっと興味が出てきたわ。買う事は出来なくても一度どんな物があるのか見せてもらえないかしら?


 それから半日ほどかけて歩いていくと鬱蒼と茂るジャングルへと辿り着くことができた。


「ここがウージャングル……」
「朝なのに薄暗いね、こんなに巨大で不気味な森は初めてだよ」


 小猫と祐斗はウージャングルの巨大さと不気味さに圧倒されているがそれは私と朱乃も同じだった。


「テリー、ここからは俺を助けたりはするな。俺もお前を援護はしねぇ、野生ではまず自分の命を優先しろ。いいな?」
「クォン!」


 イッセーはテリーにそう言うとテリーは分かったという風に頭を下げた。


「皆も出来る限り気を付けてください。アーシアは俺の傍を離れないようにな、ルフェイも気を付けろよ?」
「は、はい。お願いします」
「これも修行ですね、頑張ります!」


 アーシアがイッセーの傍に近寄り私たちはジャングルの中に入っていく、辺りには食獣植物がうようよといて沢山の猛獣が食べられていた。


「うわぁ、グロいわね……」
「植物地獄……まさに名の通りの地獄絵図ですわね」


 気を抜けば自分たちもあれの仲間になると思うとゾッとした。


「それにしてみたこともない植物ばかりだ、グルメ界の種子や胞子が偏西風に乗ってここまで飛んで来たのかそれとも……」


 その時だった、頭上から何かが降ってきて地面に当たる、するとそこから植物の芽が出て凄い勢いで成長していった。


「な、なんなの、これは?」


 頭上を見上げると大きな鳥がフンをまき散らしていた……ってやだ、最悪!


「うぉォォ!!なんだこりゃあ!?」


 イッセーの叫び声が聞こえたのでそちらを振り返ってみるとイッセーの肩に植物が生えていた。


「イッセー!?」
「怪鳥のフンから芽が出た……いやフンの中に種が混じっていたのか!?」


 フンの中に植物の種が混じっていたとイッセーが説明するが普通人体に発芽したりしないわ、なんて生命力なの!?私たちが驚いている内にイッセーの肩に発芽した食獣植物はどんどん成長していく。


「ぐっ、マズい!このままじゃ体の養分吸収されつくして干乾びちまう!仕方ねえ!!」


 イッセーはナイフを振るい肩の肉ごと食獣植物を剥がした。


「ぐわぁ!クソッ、メチャクチャ痛ぇな……皆、今は走るんだ!フンには絶対に当たるな!」


 私たちはイッセーの言葉通り怪鳥のフンをかわしながら先を進もうとするが突然テリーがイッセーを突き飛ばした。


「テリー!お前、何してんだ!!」


 テリーは何か触手のようなものに巻き取られて身動きが取れなくなっていた。


「なんだ、こいつは……」


 テリーを捕まえていたのは植物の化け物だった。宝石のような目を光らせて私たちを睨んでくる。


「こいつはゴブリンプラント……ここの主ってわけか」


 ゴブリンプラントというらしい生物は樹の枝のような触手でテリーを締め上げていく。


「テリーちゃん!」
「先輩、テリーを助けないと!」
「……」
「イッセー?」


 普段なら真っ先に動くはずのイッセーが動かなかった、イッセーはゴブリンプラントではなくテリーを睨みつけて普段は出さないような重苦しい声で話し出した。


「テリー、なぜ俺を助けた?森の入り口で約束しただろう、お前と俺は助け合いはしないって……お前は俺を助けたと思っているのかも知れんが俺はそいつが背後から近寄ってきていたのを察知していた。つまりお前は俺の邪魔をしただけだ……」


 イッセーから放たれた殺気がゴブリンプラントを硬直させてその間にテリーは触手から脱出した。


「テリー、約束を破った罰としてゴブリンプラントはお前がどうにかしろ。もともとBBコーンはお前の為に手に入れようとした食材だ、なら自分の力で手に入れて見せろ」


 イッセーはテリーにそう言うとそのまま腕を組んで動こうとしなくなった。テリーはイッセーの言葉に頷き一匹だけでゴブリンプラントに向かっていった。


「ブゲァァァァ!!」


 ゴブリンプラントが再び触手でテリーを捕らえようとするがテリーは素早い動きでそれらをかわしていく。そしてゴブリンプラントの体を鋭い牙で噛みつき引きちぎるが引きちぎられた部分が肥大化してテリーを飲み込もうとする、テリーは素早く後退して難を逃れたが今のは一体なんなの?


「厄介だな。幹を少しかじり取ったくらいじゃ直に再生しちまう、しかもそこから新しい根を増やして増えるだけ。あのままじゃテリーに勝ち目はない」


 イッセーはそう言うが一切手を貸そうとはしなかった。


「イッセー、どうしてテリーを助けないの?あなたの大事な家族じゃないの?」
「だからこそです」
「え……」
「あいつはいずれこの広い大自然の中で一人で生きていかなくちゃならなくなります、その時に甘さがあればあいつは殺されてしまうでしょう。だからこそ今は助けるんじゃなくテリーが成長するために信じて見ているんです」
「……イッセー」


 イッセーの言葉に私たちは何も言えなくなってしまった。よく見るとイッセーの右手から血が出ていた、爪が肉を切ってしまうほどの力で握りこんでいるからだ。彼は必至で自分を抑え込んでいるようだった。


(獅子は我が子を千尋の谷に落とす……獅子は自分の子供を谷に突き落として登ってきた強い子供だけを育てるなんて話を聞いた事があるけどその言葉の意味が今分かったわ)


 本当はテリーを助けたいがそれをすればテリーのためにはならないからこそ今は冷たい態度を取っていることが分かった。そんなイッセーとテリーの関係を見て私は自分が王としてまだまだ未熟だと痛感した。その間もテリーとゴブリンプラントの攻防は続いておりゴブリンプラントは幹の数を増やしてテリーを捕らえようとする、テリーも牙や爪で攻撃するが効果は無さそうだ。


「……テリー、相手は自分よりも格上だ。知恵も使え」


 イッセーがテリーにそういうとテリーは何かに気が付いたようにハッとした表情を浮かべた、イッセーの手には何かの木の実が置かれていたがあれが何か関係しているのかしら?


「テリーが動いた!」
「は、速すぎて動きが分かりませんわ!」


 テリーは私たちが目視できないほどの速度で辺りを動きまわっていた、あのスピードがテリーの武器なのね。だがゴブリンプラントはテリーを捕らえようと無数とも思えるくらいの触手を辺り一面に広げてきた。


「周りを枝で囲まれてしまったわ!これじゃ逃げられない……ッ!?」


 万事休すかと思ったその時だった、テリーから凄まじい殺気を感じ一瞬テリーが巨大な狼になったように見えテリーはゴブリンプラントの触手を噛みちぎり引き裂いていく。


(一瞬だが才能を才能の片鱗を垣間見せたな!!)


 だがテリーは等々触手に捕まってしまいゴブリンプラントに食べられてしまった。


「アアアアアァァァァ!!!」
「そんな……」
「テリーちゃんが……」


 私たちが絶望している中、イッセーはゴブリンプラントを睨みつけていた。ルフェイも落ち着いた様子でニコッと微笑む。


「……何を嬉しそうに吠えてやがる、もしかして勝利のおたけびのつもりか?確かに決着はついたな、お前の負けで。なあルフェイ?」
「はい、とても素晴らしい死闘でした。流石は師匠がパートナーにしただけのことはありますね」


 イッセーとルフェイがそう発言した瞬間、ゴブリンプラントの身体から煙が上がり突然燃えだした。


「ヴァァァ!?」


 ゴブリンプラントは驚いてテリーを吐き出した。するとイッセーが動きテリーをキャッチして地面に降り立つ。


「テリー、よくやったな。立派だったぞ」


 イッセーは笑みを浮かべてテリーを撫でた。私たちは何故ゴブリンプラントが燃えだしたのか分からなかったのでイッセーに確認した。


「イッセー先輩、何が起きたんですか?」
「ゴブリンプラントが燃えだした理由、それはこいつさ」


 イッセーはさっき持っていた木の実を私たちに見せてきた。


「こいつは『酒ヤシの実』って言ってな、中には発行した酒が詰まっているんだ。アルコール度数は60%もあり引火しやすい、テリーがさっき辺りを動き回っていたのは周りに実っていた酒ヤシの実を傷つけて酒をゴブリンプラントの幹にかけるためさ。そしてそこに全力で牙をかみ合わせた時に出た火花でアルコールに着火させたんだ」


 そこまで考えて戦えるなんて……私たちはテリーの戦闘の才能に驚きを隠せなかった。


「ん?どうかしたのか、テリー」


 テリーは近くに落ちていたゴブリンプラントの燃えカスを食べた。味もしないだろうし美味しくもないはずなのにテリーは燃えカスを食べ続ける。


「テリー、お前俺が殺した命は必ず食えと言ったからそれを守ったんだな……」


 イッセーはテリーが自分の言った事を守ったことを理解して嬉しそうに微笑んだ。


「いいよテリー、そいつは食わなくて。そもそもそいつは死んでない、燃えた灰をバクテリアが分解してその栄養を吸ってまたすぐに再生する。それよりも……」


 イッセーは頭上に伸びていたゴブリンプラントの枝を見ていた。


「こいつの長い枝の行き先、それが気になるな。これ程大量の食糧を吸収するこいつの枝の末端に何があるか……皆、見てみたくないか?」
「イッセー、それって……」


 イッセーの言葉に私はまさかという思いで答えた。


「ああ、きっとこの上にあるはずだ。BBコーンが!」



―――――――――

――――――

―――


side:朱乃


 うふふ、ようやくわたくしの視点がやってきましたわね。わたくしたちは現在ゴブリンプラントの幹の末端を目指して木登りをしている最中ですわ。幹が生い茂っていて羽根では飛べないのでこうして上に行くしかないのですが胸に引っかかって上りにくいですわね。


「ふぅー、だいぶ登ったな……」
「随分登ったけど一体何百メートルあるんだろうね」
「しかもこんなに細いのに俺の体重230キロを余裕で支えるほどの耐久性……これだけの規模だと森の上にビルを建設しても持ちこたえるかも知れないな」
「でもそれがビルじゃなくて食材だったらと思うとワクワクしてきますね」
「よし、急いでここを登っちまうぞ!」
「はい、イッセーさん!」
「私もがんばっちゃいますね!」


 イッセー君や祐斗くん、小猫ちゃんとアーシアちゃん、そしてルフェイちゃんはテリーちゃんを連れてどんどん登っていっていますわ。ふふっ、さっきまで冷たい殺気を放っていた人物とは思えないくらいのはしゃぎっぷりですわね、でもそこがまた可愛いですわ。


「……」
「あら、リアス。どうかしたの?」


 隣にいるリアスに様子がおかしかったのでわたくしは声をかけました。するとリアスは慌てた様子で反応しました。


「あ、ごめんなさい。何か用かしら?」
「……リアス、大丈夫ですの?何か思い悩んでいるように見えたけど」
「……ちょっとさっきのイッセーのことを思い出していてね」
「さっきのイッセー君というとテリーちゃんがゴブリンプラントと戦っていた時のイッセー君かしら」
「ええ、そうよ。あの時イッセーはテリーを成長させるためにワザと冷たい態度を取っていたじゃない。私、眷属に何かあったら助けようってばかり思っていたから時にはああいう判断も必要なんだなって思ったの」
「リアス……」


 リアスは苦笑していましたがきっと自分の未熟な部分を知って思い悩んでいますのね。


「リアス、わたくしが言うのもなんですがあなたは変わったわ。昔のあなたは我儘な部分もあったけど今は頼りになる王だとわたくしは思っています。確かにイッセー君と比べたらあなたはまだまだ下もいい所、でもそれはわたくしたちも同じ事ですわ。今は自分のペースで成長していくのが一番だと思います、そうじゃない?」
「朱乃……そうね、ちょっと焦ってたのかも知れないわね。ありがとう、支えてくれて」
「当然ですわ、わたくしはあなたの一番の親友なのですから」


 リアスの悩みを聞いたわたくしはこれからもリアスの力になると固く思いましたわ、それは祐斗君も小猫ちゃんも同じ気持ちのはずです。


「ふふっ、じゃあ行きましょう。イッセーたちが待ってるわ」
「そうね、早くいかないと小猫ちゃんにイッセー君を独り占めされてしまいますわ」
「ぶれないわね、あなたも……」


 それからも樹の上を目指して登り続けてようやく天辺までたどり着くことができました。そこには素晴らしい光景が広がっていましたの。


「凄い、これが……」
「BBコーン……」


 ウージャングルの天辺、そこには沢山のとうもろこしが至る所に生えている光景が広がっていました。
 


「すげぇ、こんな立派なとうもろこしは初めて見たぜ……」
「ウォウ!ウォウ!」
「はは、嬉しいのか。それなら苦労してここに来た甲斐があるってもんだ」


 テリーちゃんは嬉しそうに辺りを飛び回っていました。それを見たイッセー君も嬉しそうに微笑みました。


「イッセー先輩、あっちに巨大なBBコーンがありますよ!」
「うお、マジかよ!本当にビルみたいじゃねえか!」


 小猫ちゃんが見つけたのは巨大なBBコーンでした、それはまさにビルほどの大きさがありましたわ。


「それじゃあ皆、早速BBコーンを採っていこうぜ!」
「「「おおーっ!!」」」


 わたくしたちは別れてBBコーンを取りに向かいました。


「じゃあわたくしはこのBBコーンを貰おうかしら」


 近くにあったBBコーンを引き抜こうと引っ張ったのですが予想以上に堅く全然動きもしませんでした。


「あら、なんて重さなんでしょう。まるでウージャングルそのものを持ち上げようとしているみたいな感覚ですわ」
「朱乃さん、取れましたか?」


 そこにイッセー君がBBコーンを持ってわたくしの元に来てくれました。


「イッセー君はBBコーンを採れましたの?」
「ええ、ナイフで何とか切り取る事が出来たんですが繊維が複雑に絡まって信じられないほどの強度を持っていましたよ、まるでGTロボの腕みたいでした」
「あらあら、それだとわたくしでは取れそうにありませんわね」
「俺が切込みを入れるので朱乃さんは引っ張ってくれませんか?」
「分かりましたわ、二人の初めての共同作業ですわね♡」


 イッセー君と協力してわたくしも何とかBBコーンを採る事ができました。


「イッセー君、朱乃先輩、二人はBBコーンを採れたんだね」
「祐斗は採れたのか?」
「僕はまだ一個も採れてないんだ、和道一文字でも斬れないなんてちょっとショックを受けたよ」
「なるほどな、なら俺も手伝うぜ」
「イッセー先輩、私も手伝ってもらえますか?」
「おー、今行くよ」


 イッセー君は祐斗君や小猫ちゃんたちの方に行ってしまいました、もう少し二人でいたかったけど仕方ないですわ、だってイッセー君は人気者ですもの。


(……小猫ちゃんとアーシアちゃんが羨ましいですわ)


 二人はイッセー君と結ばれて恋人になりました、前の戦いでもイッセー君が格上の存在と戦えたのは二人を想っていたからだとわたくしは思いますの。


(小猫ちゃんは自分の力で過去のトラウマを乗り切った、それに比べてわたくしは今も逃げ続けるばかり……リアスに偉そうに言えたものじゃありませんわね)


 わたくしは自分の中にある血から目をそむけてきました、否定されてきた血を……


「わたくしもイッセー君に言いたい……でも怖いわ……」
「何を言うんですか?」
「それはわたくしの秘密を……って小猫ちゃん!?」


 いつの間にかわたくしの背後に小猫ちゃんが立っていました。ま、まさか今の独り言を聞かれていたんじゃ……


「はぁ、いつかこうなると思っていましたが案外早かったですね……」
「あ、あの、小猫ちゃん。これはその……」
「いいですよ、誤魔化さなくても。その様子だとイッセー先輩を本気で好きになっちゃったんですよね?」
「……」


 わたくしは顔を真っ赤にしながらコクッと頷きました。


「いつから好きになったんですか?」
「……イッセー君の事は出会う前から知っていましたの、他の人は野蛮だとかおっかないとか彼に否定気味な事を言ってたけどわたくしはイッセー君は素直な男の子で笑顔が可愛らしい素直な男の子だと思ってましたの」
「素直……ですか?確かにイッセー先輩は嘘をつかないし笑顔も普段とのギャップでキュンッとしちゃうくらい可愛いです」


 小猫ちゃんは照れながらイッセー君の事を話しますがちょっと素直の意味が違いますわね。


「うふふ、小猫ちゃんは普段同級生の男の子や先輩に可愛いって褒められたりしてますわよね?」
「まあ騒がれるのは好きじゃないんですがよく言われますね、告白もされたりしますが今はイッセー先輩がいますから断っています」
「わたくしはリアスの女王ですから会合などで他の上級悪魔の方に出会う機会も多いのです、その時決まって彼らはわたくしを「美しい」とか「綺麗」だと言ってきますの。でも実際はわたくしの身体目当てで来る男性ばかり……そのせいでちょっと男性不振になりかけていましたわ」
「朱乃先輩……」
「でもイッセー君は取り繕ったりしないでハッキリと自分の思いを話しますの、レーティングゲーム前の合宿でも厳しい言葉を言われたり挙句には吹っ飛ばされたりもしましたわ。でもわたくしはそれが凄く新鮮に感じましたの、今までそんなことをした男性はいませんでしたから」


 わたくしに優しくしてくれたり褒めてくれる男性は沢山いました、でも大抵は下心のある人ばかりで何回か無理やり関係を迫られたこともありましたの。その時はリアスや魔王様が助けてくれましたがそんなことが続いていたからかわたくしは下心のある男性が分かるようになっていき最近では祐斗君やもう一人の僧侶の男の子以外の男性に恐怖心がありました。でもイッセー君はわたくしのご機嫌をとったり気に入られようともせず自然体で接してくれました。


「レーティングゲームで小猫ちゃんが恐れていた猫魈の力を使った時そのきっかけを作ったのがイッセー君だと思ってからはずっとイッセー君の事を見ていましたわ。そうしていたらどんどんイッセー君の事が気になってきて彼のことから目が離せなくなっていましたの」
「その気持ち、私もよく分かります。私もずっとイッセー先輩を見ていましたから」
「でもわたくしはある事を理由にして逃げていますの、イッセー君からも皆からも……」
「朱乃先輩……」


 そのくせイッセー君に意識してもらいたいからと大胆な発言をしてからかったりして……本当に浅ましくて卑しい女ですわ、わたくし……


「ごめんなさい、小猫ちゃん。折角楽しい気分だったのに台無しにさせてしまって。あなたの大事な恋人にもうちょっかいをかけたりしないから安心してくださいね」
「それでいいんですか、本当に?」
「ええ、どのみち敵わない恋ですから……」


 イッセー君には既に小猫ちゃんやアーシアちゃんがいます、そこに入り込む隙間なんてあるはずがありません。


「……あーもう!そんな顔で言っても説得力0ですよ!ちょっと待っていてください!」
「小猫ちゃん、何を……」


 小猫ちゃんはそう言うと向こうの巨大なBBコーンから粒を出して回収していたイッセー君たちの元に向かいました。


「小猫ちゃん、急にどうしたんだよ。今巨大BBコーンから粒を弾き出して回収していたんだけど……」
「それは後にして今はこっちに来てください」


 小猫ちゃんはあろうことか話の話題になっていたイッセー君をわたくしの元に連れてきてしまいました。


「朱乃さん、やりもしないで諦めるなんて駄目ですよ。そこまで好きならちゃんと言葉にして伝えないと」
「で、でも……」
「今更一人や二人増えたって気にしませんよ。思い立ったら吉日、その日以降は全て凶日なんですから」
「小猫ちゃん……」


 小猫ちゃんは「でも1番は私ですからねっ」とウィンクをするとリアスたちの元に向かいこの場にはわたくしとイッセー君が残りました。小猫ちゃんはわたくしの背中を押してくれましたのね、ならわたくしはこれ以上逃げ続けることはできません。


「えっと、朱乃さん。俺に何か話があるんですか?」
「はい、イッセー君に話したいことがあるんです。まずはこれを見て頂けますか?」
「何でしょうか?」


 わたくしはそう言うと今まで隠していた堕天使の羽根をイッセー君に見せました。


「その羽根は、堕天使の……」
「はい、わたくしは堕天使の幹部バラキエルと人間の間に生まれた者です。母はとある神社の娘で傷ついて倒れていた父を助けた時に縁を結んだと死んだ母から聞きました」
「死んだ……」
「母は殺されたんです、堕天使と人間のハーフであるわたくしを忌み嫌うものたちからわたくしを守るために母は殺されました。その時母を殺した人たちからわたくしがいたから母は死んだ、恨むなら生まれてきた自分自身を恨めと言われました。わたくしは父であるバラキエルに助けられましたがわたくしはその時に父を傷つけてしまったんです、「どうして私を生んだの?私がいたからお母さんは死んじゃったの?どうしてお父さんは人間じゃないの?」とそう言いました」
「それは……」


 今でも鮮明に覚えています、そう言った時の父の悲痛な表情を……


「わたくしは父を避けるようになり触れ合う事も話し合う事もなくなりました。父も次第に仕事に没頭するようになり見かねた堕天使の総督であるアザゼルはリアスの兄である魔王様と取引をしてわたくしはリアスの元に来ました」
「……そんな過去があったんですね」
「イッセー君はわたくしをどう思いますか?堕天使とのハーフであるわたくしを……」


 イッセー君は真っ直ぐにわたくしを見るとギュッと抱きしめてきました。


「あ……」
「朱乃さん、そんなつらい過去を俺に教えてくれてありがとうございます。俺は朱乃さんが堕天使とのハーフでも全く気にしませんよ、俺だってグルメ細胞を持った超人ですからある意味では純粋な人間じゃありませんしね」
「イッセー君……」
「朱乃さんは俺にとって大切な仲間です、だから安心してください」


 イッセー君はそう言ってニコッと微笑みました。わたくしは受け入れてもらえたことが嬉しかったですが一つだけ不満がありました。


「仲間……ですの?」
「はい、そうです。朱乃さんは仲間です」
「……嫌ですわ」
「えっ?」
「仲間じゃ嫌ですわ……わたくしもイッセー君のお嫁さんになりたいです」


 彼の胸に寄り添い上目使いでイッセー君を見つめました。


「あ、朱乃さん?今なんて……」
「お嫁さんにしてくださいって言いましたの。駄目ですか?」
「……その、朱乃さんは俺の事が好きなんですか?」
「はい、わたくしはイッセー君の事が好きですわ。例え一番じゃなくてもいいんです、道具でもいいから傍に置いて頂ければそれで構いません、だから……」
「朱乃さん……」


 わたくしは本心でそう言いました。でもイッセー君はムッとした表情をするとポコッと軽く拳骨をしてきました。


「イッセー君?」
「……朱乃さん、俺はあなたが好きです。だから自分を道具なんて言い方はしないでください」
「え……」


 イッセーはそう言うとわたくしの唇にキスをしてきました。わたくしは最初は驚いて目を開いていましたがイッセーにキスをしてもらえたことが嬉しくて彼の首に両手を回して深いキスをしました。


「ぷはぁ……イッセー君?」
「前に決めましたからね、ウジウジ考え込むなんて俺らしくねえって。朱乃さん、俺はあなたをずっと守ります、だからあなたは俺の傍で俺を支えてくれませんか?」
「イッセー君……!」


 再びイッセー君、いえイッセーと深いキスをしました。ああ、想い人と結ばれるのはこんなにも嬉しいことなのね、自分が女で良かったって心から思いますわ……


「んん、いっふぇ……くちゅ」
「ん、あけの……んく、じゅる」


 ぴちゃぴちゃ、じゅるじゅるとお互いの舌が絡み合い止まらなくなっていきます。流石に息苦しくなってしまい唇を離ししましたが再びイッセーの唇を奪いました。


「はぁ……はぁ……キスってこんなにも気持ちのいいものだったんですね」
「朱乃さん、ちょっと激しいですよ……」
「……朱乃」
「えっ?」
「二人でいるときはわたくしの事を朱乃って言ってほしいの。駄目?」
「分かったよ、朱乃」


 イッセーに名前を呼んでもらうと言いようのない喜びがわたくしの胸に広がっていきました。母もこんな気持ちだったんでしょうか?


「朱乃、これからよろしくな」
「はい、末永くお願い致します。イッセー」


 最後にイッセーとキスをしてわたくしは彼と一緒にリアスたちの元に行きました。


(……お母さま、わたくしにも大好きな人が出来ました。今はまだ無理かも知れませんが彼と一緒ならいつかお父様とも仲直りが出来ると思います。だから安心して見守っていてください)

 
 
 

 
後書き
 朱乃です。ふふっ、ようやくわたくしもイッセー君のヒロインに仲間入りできましたわ。今まで遅れていた分もしっかりと取り戻していきますわ。イッセー君は巨大BBコーンを調理するためにウール火山という場所に向かうらしいんですが一応水着を持ってきていて正解でしたわね。次回第32話『灼熱の火山に向かえ!実食、BBコーン!!』でお会いしましょうね。 

 

第32話 灼熱の火山に向かえ!実食、BBコーン!!

 
前書き
 話の都合でグリンパーチの会話にて出るGODの出現を数年以内に変えましたのでお願いします。 

 
side:イッセー


 よう、イッセーだ。朱乃さんの過去を知った俺は彼女が俺を異性として慕っていることを知り彼女を受け入れた。まあ前から結構過激なスキンシップや大胆な発言をよく俺にしてきたから「あれ、この人俺の事好きなんじゃねえの?」とうぬぼれた事を考えてたこともあったけどまさか本当だったとはな。


「うふふ、イッセー君♡」
「朱乃さん、くっつくのはいいんですが胸が当たっていますのでもうちょっと離れてくれませんか?」
「駄目ですか?」
「い、いや駄目じゃないんですがちょっと恥ずかしいと言うかその……」
「イッセー君の傍にいるだけで胸が暖かくなって心地いいんです。だからもう少しだけこうさせてください」


 上機嫌で俺の右腕に自分の腕を絡めながら微笑む朱乃さんを見て俺は仕方ないなと思いながらもこんな美人に好意を持たれている自分の幸せに感謝した。


「ちょっとイッセー、こんな空の上でイチャつかないでよ。独り身としてはツラいのよ?」
「すいません、少し舞い上がっていました」


 後ろの席に座っていたリアスさんにジト目で睨まれてしまった。朱乃さんとも恋人になったことを話した時は「ああ、やっぱりな」という風にリアスさんから視線を送られたがそれでも自分の親友がイチャイチャしてるのを見てるのは悔しい様だ。


「先輩は女の子を垂らしこんでしまう悪い癖があります、これ以上は増やさないでくださいよ?」
「いや3人以外に俺に好意を持ってる女子なんてもういないって」
「分かりませんよ、この先出会う相手がイッセーさんを好きになるかも知れませんし……」
「「確かにそうですね」」


 俺の膝に座る小猫ちゃんがジト目で俺に忠告してきた、俺はないないと手を振ったが隣に座るアーシアの発言に小猫ちゃんと朱乃さんが同時に頷いた。


「なあ祐斗、俺ってやっぱり節操なしなのかな……」
「あはは……それよりイッセー君、今このヘリはどこに向かっているの?」
「誤魔化した……まあいいや、このヘリはウール火山に向かっている」
「ウール火山?」


 ウージャングルでBBコーンを捕獲した俺たちは巨大BBコーンの粒を調理するためにウール火山と呼ばれる場所に向かっていた。普通に行くと1500㎞もあるのでルフェイの加速の魔法を俺が倍加して凄まじい速度で空を飛んでいた。掛かる負担は魔法で軽減させているがそれでも機体に大きな負担がかかるので普段はしない、だが今回は速くBBコーンをテリーに食べさせたかったので急ぐ事にした。


「ウール火山はホットスポットと呼ばれる一帯で極めて高温のマグマが地下を流れている火山地帯だ」
「そんな危険な場所に何をしに行くんですか?」
「決まってるだろう、ポップコーンを作るためさ」
「ポップコーンを作るためだったの!?」


 俺の発言に全員が驚いた表情を浮かべた、まあ普通はポップコーンを作るために火山に行くことは無いから驚くのは当然だ。


「BBコーンは昔、グルメ貴族という上流貴族が好んで食べていたおやつでもありその調理方法がポップコーンだったんです」
「貴族も食べていたポップコーン……それは興味深い一品ね」
「はい、ですがBBコーンは生半可な火力ではポップコーンにはできません。ましてやこのサイズともなると火山ほどの火力じゃなければ無理なんです」
「なるほど、だからウール火山に向かうんだね」


 俺の説明に全員が納得した表情で頷いた、だがそのポップコーン作りがとても過酷なものになるとはその時誰も思っていなかった。









「よーし、調理場に到着したな!」
「凄い熱さね、今回は水着も持ってきていて良かったわ」
「私が作った特製の悪魔用日焼け止めクリームがありますからリアスさんたちもどうぞ」
「ありがとう、ルフェイ」


 ウール火山に到着した俺たちはサウナのような熱さの地表に降り立ちポップコーン作りを始める事にした。


「それでイッセー君、どうやってポップコーンを作るんだい?」
「ウール火山は下を流れるマグマの温度が1400度でそこに近い岩石が1200度、それから積み重なった岩石の順に温度は下がっていくんだ。今俺たちが乗ってる岩石が50度くらいだな」
「1400度……悪魔でも耐えられない温度ね」
「こんなところを自由に歩けるのはGTロボでしょうからね、たまにあいつらが羨ましくなりますよ」


 岩石の下を流れるマグマを見て俺はGTロボたちが羨ましく思った。そういえばグルメ界にはコンソメ味の美味な味がするマグマが流れている火山があると聞いた事があるが……ふふ、いつの日か飲んでみたい物だな。


「ようし、それじゃさっそくBBコーンを調理していくぞ!」
「「「おおーっ!!」」」


 俺はまず温度のさほど高くない岩石の上にBBコーンを置いて焼いていく、いきなり高温の岩石に載せたら直に焦げてしまうからだ。まずはこうしてじっくりと中から温めていき徐々に下に降りていく方法で試すことにした。


「あ、熱いわね……」
「胸に汗が溜まって気持ち悪いですわ……」


 一番低い温度でも50度はあるので座っているだけでも相当熱い、リアスさんたちは汗が酷くなってきたので水着に着替えていた。こんな熱い場所で素肌を曝したら普通は危ないが魔法で保護しているらしい。


「そろそろひっくり返してみるか……」


 焼き加減を見ようとBBコーンをひっくり返してみたが裏側が黒く焦げていた。


「あ、焦げてしまってるわ」
「しまった、ひっくり返すのが少し遅れてしまったか……」


 もう一度やり直してBBコーンを焼いていくがまた焦がしてしまった。


「タイミングが難しいですわね……」
「うん、目を少しでも離したら失敗してしまう。難しい調理だ……」


 その後何回も焦がしてはやり直しを繰り返し辺りはすっかり暗くなっていた。夜になっても灼熱の世界は変わらず熱くその中で作業を繰り返しているが全員が朦朧としだしてきた。


「はぁ……はぁ……」
「皆、無理はしなくていいんだぞ?BBコーンは俺とテリーで見ておくから皆は休んだ方がいい」
「いや、まだ大丈夫だよ。心配しないで」
「私も大丈夫ですわ」
「……そうか、なら水分補給はしておけ。長丁場になりそうだからな」


 俺は皆に水筒を渡して水分補給するように言った。


(しかしマズいな、これ以上下に行けば服も靴も全部溶けちまう……ん、あれは?)


 近くの岩場にネズミのような生き物の死体が3つあった。あれはマグマラットの死骸か、ちょうどいいぜ、マグマラットの皮は超高温にも耐え熱を遮断してくれる。これを敷けば温度の高い岩石に降りても大丈夫だ。


 俺は小猫ちゃんたちにマグマラットの事を話して協力して皮をはぎ取って下に敷いた。よし、さっきよりも遥かにマシになったぜ。


 それからもBBコーンを焼き続けた俺たちはいつの間にか朝を迎えていた、全員汗だくになりもはや会話すらなくなっていた。アーシアやルフェイも耐熱を得る魔法で耐えてはいるがとても辛そうだ。


「皆、もう少しだ、がんばれよ」
「の、望むところよ」
「美味しい物を食べるには忍耐も必要ですからね」
「はぁ……はぁ……負けませんわ」


 しかしBBコーン、ポップコーンを作ろうとするなら捕獲レベルは30を超えるかもしれんな。中々骨のある食材だ……


 それからもひたすら焼けるのを待ち続け等々1200度の岩石まで降りてきた。


「ぐっ、はぁ……はぁ……」
「息をするのも……大変ですわ……」
「でも……これを耐えれば……」
「美味しい食事が待っています……!」


 1200度ともなれば悪魔でも危ない温度なので俺以外のメンバーには耐熱の保護魔法をルフェイにかけてもらったがそれでも相当の熱さが俺たちを襲ってきた。俺はアーシアだけでも退避した方がいいと言ったがアーシアは最後までやらせてほしいと言ったので残ってもらっている。初めて出会った時はビクビクしていたのにグルメ界を旅してからアーシアもすっかり頼もしくなっちまったな。


(やっと一番下の岩石まで来たぜ。温度は1200度……さあ、弾けろ、BBコーン!)


 するとBBコーンに変化が起きた、身が膨らんでいき今にも破裂しそうな感じだ。


「おっ、とうとう来たか!」
「いよいよね……」
「あと少しだ……」


 小猫ちゃんたちもBBコーンの様子に気が付き期待を膨らませていく。さあ、来い!!


 バァァァァァァァァァン!!!


「き、来た――――――――――――――っ!!」


 BBコーンがはじけてまるで爆弾が爆発したような音と共に上空に打ち上げられたポップコーンが雨のように落ちてきた。


「うわあ、ポップコーンの雨です!」
「凄い、辺り一面ポップコーンで埋まってしまったわ!」


 全員がポップコーンの雨を見て歓喜を上げた、あれだけ苦労したんだ。俺だって嬉しくて仕方ねえぜ!


「皆、嫌な顔をひとつもしないでよく頑張ったな!」
「はい!辛かったけど頑張ってよかったです!」
「私もがんばりましたよ!」
「おう、二人もよく頑張ったな!」


 嬉しそうにはしゃぐアーシアとルフェイの頭を撫でて俺は辺り一面を埋め尽くすポップコーンを見ながら皆に声をかける。


「それじゃあさっそく出来立てのポップコーンを皆で食べようぜ!」
「「「おお――――――っ!!!」」」


 俺たちはポップコーンを持って岩石の上まで向かった、ここは1200度もあって死ぬほど熱いからな。


「お、おぉ……なんて大きさなんだ。見た目はポップコーンというよりは綿あめみたいな感じだな」


 マジマジと巨大ポップコーンを見るが綿あめみたいにふわふわの触感だ、でも匂いは香ばしくて嗅いでいるだけで食欲をそそる。


「ふわぁ、いい匂いです……」
「まるで揚げたてのコロッケみたいな香ばしさがするね」
「でもこうして見渡してみると凄い量ね、たった一粒からこんなに大量のポップコーンが作れちゃうなんて」
「流石はコーンの王様と呼ばれることはありますわね」


 全員がポップコーンを持ったことを確認して俺はポップコーンを一口かじった。


 ワシャ、ゴクン。


「……ん?」
「あれ?」
「おかしいですわね、直になくなってしまいましたわ」


 俺たちは一瞬で飲み込んでしまった事に疑問を持ったが次は噛んで味わおうともう一口食べる。


 ワシャ、ゴクン。


「んあ!?美味すぎて直に飲み込んじまうぞ!?」
「しかも食べれば食べるほどもっとほしくなってしまいますわ!」
「美味しい、美味しすぎて手が止まらない!」
 

 他の皆もあまりの美味しさに一瞬で飲み込んでしまっていた。俺はもう一回ポップコーンをかじると飲み込みたいのを我慢して何回も噛んで味わっていく。


(噛め……味わうんだ!!)


 噛むとサクサクと気持ちのいい音がして風味が増して更に深い味わいになった、しかも普通のポップコーンにあるひっかかるような感じはなくのど越しはなめらかでスッと胃の中に落ちていった。


「イッセーさん、私なんだかお腹が空いてきちゃいました!」
「こんなに食べているのに私、まだまだポップコーンがほしくてたまらないです!」


 アーシアとルフェイももりもりとポップコーンを食べ続けている。一口食べるとやめられないし止まらなくなるうえに寧ろ腹が減ってきて他の食材も食べたくなってきた。


「こいつの食欲増進効果はハンパじゃねぇ……!」


 これはピッタリなんじゃねえか、あの項目に……!!


「ウォン!ワォン!」


 テリーのほうを見てみるとテリーは美味しそうにポップコーンを食べていた。


「どうだ、テリー!美味いか?」
「オウ!」
「そうか、美味いか……お前の口にあって本当に良かったなぁ……」


 俺は嬉しくなってしまいつい泣いてしまった。


「良かったですね、先輩」
「ああ、ここまで来た甲斐があったぜ」


 そこに小猫ちゃんが現れて俺の涙をハンカチで吹いてくれた。するとその時だった、遠くにあった火山が噴火をして火山灰を巻き上げた。


「イッセー、火山が噴火したわよ!?」
「大丈夫です、ウール火山の火山灰は程よい塩分を含んでいてしかも食べられるんです。ポップコーンのスパイスに丁度いい」


 俺は火山灰が付着したポップコーンを食べると程よい塩気がポップコーンの味を更に深めてよりおいしくなっていた。


「美味しい!火山灰に含まれている程よい塩気が合わさって更に美味しくなったわ!」
「火山灰も食べられるなんてやっぱりこの世界は面白いなぁ」
「この火山灰も何かの魔法アイテムの材料にならないかな?」


 皆も満足した様子で俺も嬉しくなった、そして俺はある事を決めた。


「この火山灰、まるで火山が俺たちを祝福してくれているみたいに思えるな。テリーの主食が見つかったこと、そして俺のフルコースに相応しい食材が決まったこと……」
「先輩、もしかしてBBコーンを?」
「ああ、BBコーンは俺のフルコースの前菜に入れる!」


 俺がBBコーンをフルコースの前妻に入れることを発表するとリアスさんたちは驚いてから歓喜の表情を浮かべた。


「イッセー、フルコースが決まったのね!」
「うふふ、テリーちゃんのご飯とイッセー君のフルコースが同時に見つかるなんて素敵な偶然ですわね」
「おめでとう、イッセー君!」
「おめでとうございます、イッセーさん!」
「やりましたね、師匠!」


 皆も自分の事のように喜んでくれた、俺はテリーの顔を撫でながら抱きしめた。


「ありがとうな、テリー……」
「クォン……」


 俺はテリーと出会えた事に心から感謝した。皆も俺たちを見て涙を流していた。


「よーし、それじゃあ皆!残ったポップコーンを全部平らげちまおうぜ!!」
「はい、イッセー先輩!」


 ヒュゴ!!


 何かが吸い込まれるような音がしたと思ったら辺り一面を埋め尽くしていたポップコーンが跡形も無く消えていた。


「……え?」
「な、なにが起きたの……?」


 全員何が起きたのか分からなかったが背後から嫌な雰囲気を感じて振り返ってみるとそこには先ほどまで誰もいなかったはずなのに何者かが立っていた。


「うめぇ~~~BBコーン……」


 そこにいたのは顔や肩に入れ墨を入れ両眼は瞳孔が3つある複眼、さらには腕が4本もある大きなストローを持った奇妙な男だった。


「……お前は誰だ?」
「次はその犬、吸っていい?」


 バッ!


 テリーは一瞬にしてその場を離れ遠くへ逃げていった。男はテリーの逃げた方向にストローを構えて口に加えた。


「すぅぅぅ……」


 ベコン!!


 男の腹が音を立ててへこむとまるで台風のような暴風が吹き荒れた、すると逃げていたテリーが空中で止まり凄い勢いでこちらに引き寄せられていた。


(こいつ、テリーを吸っているのか!?)


 既に豆粒にしか見えないほど離れた場所にいたテリーを難なく吸い寄せるその肺活量に俺は驚いたがこいつがテリーに何かしようとしているのは確かなので赤龍帝の籠手を出してストローを切ろうと腕を振るった。


「ナイフ!!」


 ナイフはストローを直撃したが大きくしなるだけで切ることはできなかった。


「おぉ?」
(切れねえだと!?)


 切ることはできなかったが男が吸い込みを中断したのでテリーは近くの岩場に降り立っていたがその表情は怯えを浮かべていた。


「な、何が起きたの……?」
「テリーちゃんが逃げたと思ったらこっちに吸い寄せられていましたわ……」
「部長!朱乃先輩!気を付けてください!」
「この男、ヤバいです……!」


 小猫ちゃんたちもこの男の異様な雰囲気に警戒して臨戦態勢に入った。


「……てめぇ、何者だ?人の食糧を勝手に食い荒らしやがって」
「ヒヒ、悪かったな。ポップコーンは返すよ、イッセー」


 男は言ってもいないはずの俺の名前を言いながら喉を大きく膨らませた、何をするのかと思ったが次の瞬間、男は食ったポップコーンを吐き戻しやがった。


「なっ……!?」


 こ、こいつなんてもん見せやがるんだ……!俺が気分を悪くしていると男は吐き出したものをストローで再び吸って飲み込んだ。


「うぅ~ん、うぃっぷ……ヒヒ、反芻反芻。うまぁ~~~い飯は何度も繰り返して味わなくちゃ損だからな~ヒヒヒ」


 ……なんだ、こいつは?俺は男のマイペースぶりに酷く困惑していた。飄々として呑気そうにも見えるがこの男が放つ異様な雰囲気が俺を更に警戒させる。リアスさんたちも決して油断しないように構えていた。


「BBコーン……ああそうBBコーンなぁ……今俺のペットが採りに行ってるんだがいかんせん方向音痴でな、そいつ……うん、方向音痴。そろそろ戻って来る頃だと思うがそしたら返すよ」
「……」


 ペット?そんな奴は見かけなかったがそういえば巨大なBBコーンが丸ごと一本採られていた痕跡をウージャングルで見つけたな、その時は何だと思ったがそれはこの男のペットがやったのか?


「チューチュー」


 俺たちの傍にマグマラットが一匹現れた、男はそれに気が付くとストローをマグマラットに突き刺した。


「何を……っ!?」


 リアスさんは男の行動に眉を吊り上げるが男はストローを口にくわえて息を吸い込んだ、するとマグマラットはあっという間に干乾びていき最後には身体ごとストローの中に吸い込まれていった。


「んふ~~~ヒヒ。いいストローだろ、これ?デビルモスキートという巨大な蚊の口を加工して作ったストローだ、耐久性としなやかさに優れている」


 デビルモスキート……大型の獣も襲い血液を全て吸い尽くしてしまうと言う悪魔の昆虫か、そいつの口から作ったストローだから俺のナイフでは切れなかったのか。


「だが流石にさっきの一撃は切れちまうかと思ったぞ~……イッセー、あれがお前のナイフか……」
「俺を知っているのか?」
「ヴァーリの奴が珍しく褒めていただけはあるなぁ……本当に腕がもげると思ったらしい。もげればよかったのになぁ、ヒヒ……」
「ヴァーリ……!!貴様、美食會か!」


 男が口にしたヴァーリという名、忘れもしねえリーガルマンモスの体内で戦ったGTロボの操縦者だ。その男の名を口にしたということはこの不気味な男も美食會のメンバーであるのは間違いない。


「今回のリーガルなんとかの捕獲失敗の件で第6支部(食料調達チーム)の連中は責任をとらされ全員半殺しにされたらしい……ヒヒ、新入りが一人死んだとも聞いたな、でもそんな事じゃあ料理長の怒りは収まらねえ。ボスの食欲は最近更に増しているらしいからなぁ、調理が追い付かないんだとよ……ヒヒ」


 ボス……美食會のトップか。実態は知られていないが恐ろしい男だと噂で聞いた事がある。こいつがここにいるのもそのボスって奴が関係してるのか?


「お前らが壊したGTロボ、一部が自爆しないで残ったままだろう?俺がそれを回収しに向かったんだよ。いやぁ~楽しかったなぁ、IGOの庭には初めて行ったけど見たこともない食材がわんさかでよぉ……ヒヒ。ただあのニ人が待ち構えていたとは思わなかったぜ」
「あの二人?」
「IGO副会長と所長さ、あのニ人本気になっちゃっててよ~面倒くさくなっちまったしGTロボもどうでもよくなっちまったからくれてやったよ、ポンコツロボ」


 そうか、俺たちがリーガル島を離れた後にそんなことがあったのか。というか茂さん来ていたなら俺にも声かけてくれよ、知らなかったじゃねえか。


「まあその代わりに島中の食材を片っ端から食い荒らしてやったがな、うまかったぜぇ~あのアスレチックみたいな所にいたデカイ奴……でも手ぶらじゃ流石に帰れねえ、だからリーガル島の食材と更にBBコーンをボスへのみあげにしようと思ってな」
「……お前らの、美食會の目的はなんだ?何故グルメ食材を集めている?」


 俺はこいつらの目的が何か男に質問した。普通なら答えるはずもないが男は気にした様子もなく座り込みストローに葉巻樹の枝を刺して温度の高い岩石に押し当てて火をつける、そしてストローごしに煙を吸い込んで一服した。


「すぅぅぅぅ……はぁぁぁ~~~……俺たちが狙ってんのは『GOD』という食材だ」
「―――――――――!!」


 男の言葉に俺は身体中に電流が走ったような衝撃に襲われた。何故なら男が言ったGODという食材は俺がずっと探し求めていた食材だからだ。


「GOD……?」
「聞いた感じだと食材の事みたいだけど……」
「唯の食材には思えませんわね」


 オカルト研究部の皆はGODが何か分からないため首を傾げていた。


「……500年前、この世の全てを食破したという伝説の美食屋『アカシア』が唯一晩年まで追い求め最後に発見できた食材、それがGODだ。かつて行われていた世界規模での大戦争を止めたきっかけにもなったという幻の食材でGODの発見からグルメ時代が始まったとも言われている」
「GOD……美食神とも呼ばれたアカシアが食材を使って戦争を止めたという話はココさんから聞いてましたがそれがそうなんですね」


 俺は皆にGODについて簡単に説明した、すると男は不気味な笑みを浮かべて楽しそうに笑いだした。


「ヒヒ……なんだよ、詳しいじゃねーかイッセー」
「当然だ、GODは俺のフルコースのメインディッシュに決めてる食材だからな」


 俺は虹の実を食うまではフルコースは空っぽだった。でもメインディッシュだけは既に決めていたんだ、それがGODだ。


「……ハッ、そうか。お前もGODを狙っていたのか、ならこんなウワサを聞いた事ないか?」
「ウワサ……?」
「数百年に一度起こると言われている『グルメ日食』、その日食が見える日がGODの活動が始まる時だと言われているが、なんとそのグルメ日食がここ数年の間で起こるらしい……」
「な、なんだと……!?」


 俺は男の言葉に再び身体に電流が走ったような衝撃に襲われた、幻の食材GODが数年の間に現れるだと……?


「巷にゃあまだ流れていないニュースだが一部のグルメ研究科や腕の立つ美食屋はすでに動き出していると聞くぞ、中には引退した実力派もいるらしい……近頃美食會のボスの食欲が異様に増してんのも日食が近い事を感じ取ってるからなのかもしれねえな」
「……」
「分かるか、イッセー?数百年前に産声を上げたグルメ時代が今再び躍動し動き始めているってことだぜぇ……ヒヒ」


 男の言葉を聞いて俺は震えが止まらなくなっていた、俺が追い求めていた食材が遠くない未来に現れると知ったからだ。


「……ところでよ、イッセー。お前もGOD狙ってるってことは俺たちはいずれ殺りあう事になるよな?」
「お前らも狙っているならそうなるな」


 俺がそう言うと男はゆっくりと立ち上がりながら濃厚な殺気を放ちだした。


「……めんどくせぇから今の内に決着付けておくか、うん?」
「……上等だ!!」


 俺は赤龍帝の籠手を禁手にして鎧を身にまとった。


「おお~?いきなり鎧を纏うとか面白いなぁ」
「はっ、もっと面白くしてやるよ!……リアスさんたちは出来るだけ離れていてください」
「で、でも……」
「こいつは強い!リアスさんたちがいたら足手まといです!」
「先輩……分かりました、どうか死なないでください」



 背後にいるリアスさんたちに離れるよう厳しい言い方をする。本当はこんな言い方はしたくないがこの男は強い、皆を庇いながら戦えるような余裕はない。心配そうに俺を見ながら離れていく小猫ちゃんに手を振ってから俺は男と対峙する。


「ヒッヒッヒ……イッセー、お前の心臓吸ってい~い?」
「でっけぇ蚊だな……!目が覚めるモン喰わせてやるよ!」


 男がストローを口に加え大きく息を吸い込んだ、俺は右腕に力を溜めて構えた。


「ブレスバズーカ!!」
「10連!釘パンチ!!」


 俺の釘パンチと男が吐き出した息がぶつかり凄まじい衝撃が走り辺りを震わせた。


「おわぁ!」
「のぉっ!」


 弾けた衝撃に吹き飛ばされた俺は離れた岩石に叩きつけられた、あいつも吹き飛ばされたようで遠くの岩石の上に倒れていた。


(こいつ、息を吸わずに吐いて俺の釘パンチを相殺しやがった……!)


 今俺が放てる最高の威力を持った10連釘パンチが相殺されたことにショックを受けながらも俺は立ち上がり男を見据えた。


(しかしいきなり10連を使う事になるとはな、しばらくは使えないか……)


 目の前の男がヴァーリと同じ程かそれに近い実力者なのは対峙して分かった。普通なら勝てるはずがない、でも何故か負けるとも思わなかった。ジュエルミートを食べて細胞がパワーアップしたことが起因しているのかも知れないな。


「ヒッヒッヒ……俺のブレスバズーカと変わらねえ威力か。危ねえ危ねえ、そんなもんに俺の吸い込みまで加わっていたらストローがイカれちまうところだったぜ」


 遠くの岩石の上で倒れていた男はゆっくりと起き上がり愉快そうに笑みを浮かべた。チッ、不気味な奴だ。


「だがなイッセー、お前は俺には勝てねえよ。お前の弱点はずばり射程距離だろぉ、離れた相手には何もできねえ」
「……」


 男の言葉に俺は何も言えなかった、それが事実だからだ。俺の戦闘スタイルは近接戦闘がメインで遠距離戦用の技は一つも持っていない。


「てことでこの場所から攻撃させてもらうぜ、そのあとゆっくり飲み込んでやるよぉ」


 男はストローを加えて大きく息を吸い込んだ。


「ブレスガン!!」


 ストローから放たれた息が俺の鎧を貫いて血を噴出させた。


(野郎、この距離まで息を弾丸のように圧縮して飛ばして来やがったのか、なんて肺活量だ……!!)


 男は連続して息を吐き出して攻撃してくる、俺の腕や腹に当たり血が噴き出していき身体を血で赤く染めていく。


「イッセー先輩!!」
「(一発の威力は致命傷にはならないが適格に当ててきやがる……)上等だコラァ!!」


 俺は奴に向かってフォークを放った、普通なら届くはずがない攻撃だが男は突然自分の肩に衝撃を喰らい大きくのけぞっていた。


「おお……?」
「……射程距離が弱点だぁ?そんなことはハナから理解しているんだよ。俺がいつまでもそんな弱点を残しておくと思うか?今からお前に見せてやるよ、進化したナイフとフォークを……!」


 俺は確信していた。リーガルマンモスの内部でGTロボと戦った時になった「自食作用」、そこに「ジュエルミート」という食材がプラスされてグルメ細胞は大きく進化したことに……


「今では赤龍帝の鎧無しでもナイフやフォーク、釘パンチを両手で使えるようになった。だが鎧を纏った状態で全力でナイフやフォークを使えばどうなると思う?」
「……」
「答えは今から見せてやるよ!」


 俺はフォークを全力の力で出す、するとフォークが衝撃波として指から放たれて奴の腹に当たり4つの傷を付けた。


「こいつは……!」
「フライングフォークと名付けるかな、流石にこの距離じゃ貫通はしなかったが……お前に届いたぜ!」
「……驚いたなぁ、フォークを飛ばしてくるとは」
「おっと、驚くならこいつを見てからにしな」


 俺は次に右手をナイフの形にして上段から一気に振り下ろした、すると今度はナイフが飛んでいき奴の身体に切れ込みをいれた。


「おぉ!」
「フライングナイフ……今はまだ薄皮を切る程度だが、そのうちこの距離からお前の命を真っ二つにするぜ!!」


 俺は男に殺気を送りながらそう言ったが男は驚異の肺活量で自分の傷から出ている血を吸い込んで傷を塞いだ。


「ヒッヒッヒ……流石だなぁ、イッセー。まさか遠距離への攻撃を可能にするとはな、だがそんな岩も切れない威力じゃアキレス腱であった射程距離を克服したとはいえねえな……そのか弱いエアガンとミサイルの違いを見せてやろう」


 男はそう言うと今までより一番深く息を吸い込み始めた。


(分かってるさ、あんなチャチな攻撃であいつを倒せるなんてハナから思ってはいない。俺の目的は別にある……さあ、来い!)
「くらえイッセーぇ!!ブレスバズーカの遠距離版『ブレスミサイル』!!」


 男はストローからさっき10連を相殺した技を遠距離用にして吐き出してきた。その威力は男の目前にある岩石や地面を削り取ってしまうほど強力なものだ。だが男は技に集中するために視界が狭くなっていた。


「今だ!」


 俺は男が技を放っているうちに地面を走り一気に近寄っていった。1200度もあるマグマに近い岩石の上も赤龍帝の鎧を纏った俺なら耐えることが出来る、まあさっきは自分を鍛えるために使わなかったがこれで男に接近することが出来た。


「ッ!?」
「ナイフ!!」


 男は俺に気が付き振り返って攻撃しようとしたが既に遅い、俺はナイフを奴のストローに全力で放った。


 ズガァァァァン!!


 岩石ごとストローを真っ二つにした俺は不思議そうな顔をした男に声をかけた。


「よう、ぶった切ってやったぜ」
「……お前、どうやってここに?地表の温度は1200度だぞ?」
「この鎧は赤き龍の力を具現化したものだから耐熱に優れている、1200度なら耐えられるのさ。そして最初にナイフやフォークで攻撃したのはお前を挑発するために敢えて使った……案の定お前は俺に格の違いを見せつけようとして大技を放ってきた、その隙に接近したって訳さ」
「……ヒッヒッヒ!なるほどなぁ、あっぱれだ」


 しかしここからが問題だ。この男はまだ全然本気じゃない、ストローを切ったとはいえ本体には大したダメージも無いし何をしてくるか分からない以上迂闊には動けねえ。さてどうするか……

 
 キリキリキリ!


 男から不快な音が鳴り出して男は不機嫌そうに懐から何かを取り出した。


「何だよオイ、今いい所なのに料理長から呼び出しがかかりやがった」
「……なに?」
「今日はここまでだ、イッセー。スグに本部に戻らなきゃいけねぇ、それに丁度俺のペットも帰ってきたようだ」


 俺の背後から巨大な影がこちらに接近していた。


「な、なんだあれは!?」
「象……?いや昆虫ですか?」


 オカルト研究部の皆もその生物を見て驚いていた。俺も分からない生物だがそいつは巨大BBコーンを持っていた、あいつがこの男のペットなのか?


「よっと」


 男は大きく跳躍すると飛んできた生物の背中に乗って俺を見下ろしていた。


「今日は楽しかったぜぇ、イッセー。ジャックが来るまでのいい暇つぶしになった、次会うときは存分に殺り合おうな」
「待てよ、BBコーンを返してもらってないぞ!」
「お前は俺のストローを壊したんだ、それでおあいこだ」
「あいこだぁ!?てか名前くらい名乗れコラ!」
「俺の名はグリンパーチ。美食會、副料理長だ」


 男……いやグリンパーチはそう言うと昆虫のような生物に乗って飛び去っていった。


「……はぁ、引いてくれたか」


 俺はグリンパーチが引いてくれたことに安堵して皆の元に向かった。


「イッセー先輩!」
「イッセーさん!」
「イッセー君!」


 皆の元に行くと小猫ちゃん、アーシア、朱乃さんが抱き着いてきたので俺はそれを受け止めた。


「イッセー、ごめんなさい……」
「僕たち、見てる事しかできなかった……」
「師匠、お役に立てなくて申し訳ありません……」
「ウォウ……」


 リアスさん、祐斗、ルフェイも落ち込んだ表情で頭を下げてきた。テリーも未だにグリンパーチに恐怖を感じているのか震えていた。


「いいんだ、皆が無事ならそれでいい。寧ろよく逃げてくれたな」
「イッセー先輩……」
「俺だってヤバい相手だったんだ、気にしないでくれ。次は俺が勝つからよ!」


 俺はそう言うが内心は焦っていた、何故ならグリンパーチはまったく本気を出していなかったからだ。


(あれが副料理長クラス……俺もまだまだだな)


 仲間を守る為にさらに強くならなくちゃいけない、俺はそう思い決意を新たにした。





―――――――――

―――――

―――


side:??


「サーゼクス様、こちらが例の調査結果をまとめた資料でございます」
「ありがとう、グレイフィア」


 冥界にあるグレモリー家の屋敷、その一室にリアスの兄にして現魔王の一人である『サーゼクス・ルシファー』が自身の女王である銀髪のメイド『グレイフィア』から何かの資料を受け取っていた。


「……なるほど、リアスたちはこの兵藤一誠という少年によく出会っているのか」
「はい、他にもアーシア・アルジェントという教会を追放された元シスターもこの少年と一緒に住んでいるようでお嬢様たちとも繋がりがあります」
「リアスは彼らを眷属候補にしているのかい?」
「いえ、お嬢様に彼の事をさりげなく確認しても眷属がお世話になってる恩人で彼を眷属にする気はない、と仰られました」


 サーゼクスは最初、イッセーとアーシアはリアスの眷属候補なのかと思った。悪魔が違う種族を眷属にするにはその眷属にしたい人物より自分の実力や潜在能力が上回っていないといけない。
 

 大抵は駒を多く使う事である程度カバーはできるが兵士の駒を8つ使っても眷属にできないこともある。そういう場合は諦めるか「変異の駒」を使うか主がその人物より実力が上回るまで眷属候補として傍に置いておくという手段があるが眷属候補にする場合は魔王に許可を貰う必要がある。
 

 何故ならばもしその人物が危険な思想を持っていたら厄介なことになるかも知れないからだ。だがサーゼクスの元にはそう言った話は上がっておらずグレイフィアも知らないようなので眷属候補である可能性は低いだろう。


「彼らとは何時頃から出会っているんだ?」
「お嬢様の眷属の一人である塔城小猫様が最初に接触したらしくお嬢様や他の眷属の皆様はレーティングゲームが終わってから頻繁に兵藤一誠の元に向かうようになりました」
「レーティングゲーム後か……話を聞く限り彼らがリアスたちが強くなった事に関係がありそうだね」


 リアスたちが強くなったのはレーティングゲーム前の合宿中で間違いない、もしその時兵藤一誠がリアスたちと接触してその後もイッセーたちと一緒にいるようになったと考えれば彼らが関係している可能性は極めて高いだろう。


「ふむ、資料を見る限りは普通の少年だが……グレイフィア、実際に見てどんな人物だと思ったんだ?」
「そうですね、遠くから見ただけですが食欲が旺盛なのと見た目の厳つさを除けば大抵の人物は普通の少年だと思うでしょう。ですが私にはただの少年には見えませんでした、何か大きな力を隠しているようにも感じました。それとお嬢様方が兵藤一誠の自宅に入っていって数分後に気配を感知できなくなっていました」
「それは魔法陣でどこかに移動したという事か?」
「いえ、魔力は感知できませんでしたので魔法陣での移動ではないかと……」
「そうか、魔法陣ではない移動手段を持っているか。やはり彼には何か秘密があるのかも知れないな」
「いかがなさいますか?私としては接触を試みるかべきかと思いますが」
「いや、今は止めておこう。リアスが僕たちの動きに感づいているようだ」
「お嬢様が……?」


 グレイフィアはまさかという表情でサーゼクスに言うがサーゼクスは首を横に振りながら話し始めた。


「昔のリアスと同じだと思わない方がいい、実力だけでなく気配や危機を察知する力が異常に上がっている。君が彼の周りを嗅ぎまわっていることを知っているはずだ。僕としては妹の恩人かも知れない人物に敵意を持たれたくはない」
「……かしこまりました。次はより慎重に行動いたします」
「頼んだよ」


 グレイフィアが部屋から姿を消すとサーゼクスは資料と一緒に渡されたイッセーの顔写真を見ながら笑みを浮かべた。


「兵藤一誠君か……一体どんな子なんだろうね」

 
 

 
後書き
 こんにちは、アーシアです。グルメ界から戻ってきた私たちは授業を受けたり球技大会に向けて練習をしたり日常を楽しんでいます。次回第33話『球技大会に向けて練習します!登場、生徒会長です!』でお会いしましょうね。 

 

第33話 球技大会に向けて練習します!登場、生徒会長です!

 
前書き
  

 
side:イッセー


 よう、皆、イッセーだ。BBコーンを無事捕獲した俺たちは俺たちの元いた世界に戻り日常を過ごしていた。朱乃さんが俺の家に引っ越してきたこと以外には変わったことは無く普通に生活していたんだが今ちょっと困った事になっているんだ。


「うぅん……」


 俺の頭を豊満な胸に押し当てながら眠っている朱乃さんをどうしようかと悩んでいる所だ。いつの間にか俺の寝床に入り込んできたらしくネグリジェっていうのかな?そんな感じの服装でいるから肌の感触が物凄く伝わってくる。


「どうして気が付かなかったんだ、俺は……」


 どうも俺は気を許した相手だと気配を察知しにくいようだ、匂いを嗅いでも小猫ちゃんやアーシア、それに朱乃さんの匂いは安心できるものと体がインプットしているらしく起きれない。これはマズイなぁ……


「う、うぅん……イッセー……」


 朱乃さんは更に強い力で俺を抱きしめてくる、そして俺の頭は更に胸の中に沈んでいった。男としてはこれ以上ない幸せかも知れんが息が出来なくて苦しい。


「朱乃さん、起きてください」
「……ふあぁぁ、おはようございます、イッセー」


 背中を軽く叩くと朱乃さんは目を覚ましたのか朱乃さんは目を擦りながらゆっくりと起き上がった。ふぅ、ようやく息が出来るぜ。


「朱乃さん、いつの間に俺の寝床に忍び込んだんですか?」
「ごめんなさい、昨日夜中に目が覚めてしまって寝付けなくなってしまったの。それでイッセーから温もりを貰おうと思ってつい入ってしまったの。もしかして嫌だった?」
「いやそういう事じゃないんですよ、ただビックリしただけですから……って何してるんですか!?」


 俺がそう言ってる間に朱乃さんは俺の首に両腕を回して抱き着いてきた、ネグリジェの薄い服装だと朱乃さんの大きな胸の感触がダイレクトに伝わってくる。


「ちょ、朱乃さん!?」
「イッセー、二人きりの時は朱乃って呼んで」
「あ、朱乃……何をしているんだ?」
「うふふ、恋人同士がする朝のコミュニケーションですわ」


 チュッと俺の頬にキスをしてくる朱乃さんに俺は動揺しながら何とか離れようとするが朱乃さんがガッチリと掴んでいるため離れられない。


「朱乃、朝からこういうことするのは恥ずかしいんだが……」
「あら、せっかく恋人同士になれたのにそんなことを言うの?」
「あ、嫌じゃないんだけどそろそろ小猫ちゃんやアーシアも俺を起こしに来るだろうしさ」
「なら4人ですればいいじゃない。わたくしは初めてじゃなくてもかまいませんわ、最初は小猫ちゃんがするべきでしょうし」
「す、するって何を……?」
「男と女よ、することなんて決まっているでしょう?」


 妖艶な笑みを浮かべながらペロッと唇を舐める朱乃を見て俺の頭はオーバーヒート寸前だった。いやだって、男と女がするって、それって……!!


「がふぅ!!」
「キャア、イッセー!?」


 等々恥ずかしさの限界が来てしまった俺は鼻血を垂らしながら頭から湯気を出して倒れてしまった。その後俺はアーシアと小猫ちゃんが来るまで倒れていたらしい。










「全く!朝から何をしているんですか!」
「ごめんなさい……」


 回復した俺は朝ご飯を食べながら小猫ちゃんに怒られていた。今日の朝ご飯は白飯に焼き魚、だし巻き卵にネギと豆腐の味噌汁と言った日本らしい和食で朱乃さんが作ってくれたものだ。うん、美味しいな。


「先輩!現実逃避して逃げないでください!」
「ご、ごめんって!俺が悪かったから!」


 小猫ちゃんに頬を抓られて慌てて謝った、今度からはもう少し気を付けておこう、うん。


「まあまあ小猫ちゃん、そんなに怒ったりしたらお肌に悪いですわよ?」
「朱乃先輩も関係しているんですよ!私のイッセー先輩に朝から迫るなんてズルいです!」
「うふふ、ごめんなさいね。でも今日はイッセー君をからかっただけよ、小猫ちゃんとイッセー君が初めてをするまではわたくしからしようとは思いませんので安心してください」
「ほ、初めてって……!?まあそれならいいですけど……」


 朝から生々しい会話をする二人、だが今は朝ご飯を食ってるからそういう会話は後でしてほしいんだが……


「イッセーさん、おかわりはいりますか?」
「ああ、大盛りで頼むよ」
「はい、大盛りにしますね。それにしても小猫ちゃんや朱乃さんが言っている初めてって何のことなんでしょうか?」
「ええっと、アーシアは気にしない方がいいと思うぞ……」


 アーシアは二人の生々しい会話がよく分からないようで首を傾げていた、俺はアーシアはそのままでいてくれと思いながら朝ご飯を完食した。













 その後は4人で学校に向かったんだが道中で他の生徒たちが俺たちを見て驚いていた、でももう慣れてしまったので気にしないでおいた。


「おいおい、今度は朱乃先輩も一緒だぞ!?」
「あんな仲良さそうに腕を組んだりしてるなんて……!」
「小猫ちゃんやアーシアちゃんだけでなく朱乃お姉様まであんな野蛮そうな奴の手に落ちたって事なの!?」


 相変わらず俺は嫌われているなぁ、まあ1年の時色々やんちゃしたし見た目も怖いからある事ない事を噂されている。例えば一人でヤクザの組を潰したり海外のギャングとつながりがあったりと言われたい放題だ。


(まあそんな俺にも気さくに声をかけてくれる奴らもいるんだけどな)


 小猫ちゃんと朱乃さんとは玄関で別れ、俺はアーシアと一緒に自分のクラスに向かった。


「ちぃーす、おはようさん」
「来やがったな、この野郎!!」
「くたばれ、イッセー!!」


 教室に入ると松田と元浜が殴りかかってきた、二人の拳が胸に当たると俺ではなく二人の方が吹き飛んでいった、俺は微動だにもしなかったぜ。


「朝からいきなり何するんだ」
「何するんだ、じゃねーよ!お前、小猫ちゃんやアーシアちゃんがいながら何駒王学園の2大お姉さまとまで親しくなっているんだ!」
「羨ましいぞ、こんちくしょー!!」


 どうやら朱乃さんとも一緒に登校してきたことが許せなかったようだ、そんなことで嫉妬されても困るぞ。


「大体お前ばっかりズルいぞ!オカルト研究部は入りたくても入れないのにお前はめちゃくちゃ親しいじゃないか!」
「そうだそうだ!不公平ではないか!」


 既に何枚もの入部届が出されているらしいがオカルト研究部の皆は悪魔なので一般人に正体がバレないようにリアスさんの眷属以外は基本入部できない、だから部員でない俺がオカルト研究部の皆と親しくしているのが周りからすれば驚愕のようらしい。


「そんなこといわれてもなぁ……大体前に俺が小猫ちゃんと一緒にゲーセンにいたときは何も言わなかったじゃねえか」
「小猫ちゃんとアーシアちゃんはお前とよく一緒にいるし何となくそういう感情を持っているんだろうなって察したからいいさ、でも駒王学園の2大お姉様とまで仲良くなっていたらそりゃキレるだろうが!!」


 そういえば朱乃さんって小猫ちゃんやアーシアに負けない位の人気者だったな、周りの男子生徒たちの鋭い視線も嫉妬から来ているものだったか。俺がこの3人とお付き合いしていますなんてバレたら大暴動が起きるな、こりゃ……


「うぅ~……俺だって可愛い女の子と仲良くなりてぇよ~」
「まあ今までのお前らは完全に自業自得だからこれから頑張っていけって」


 最近は落ち着いてきたとはいえ以前の二人を知る人たちからは未だ疑惑の目で見られている。まあこればっかりは地道に信頼を得ていくしかないよな。


「松田さん、元浜さん。私はお二人の事を友達と思っていますから安心してくださいね」
「ア、アーシアちゃん……」
「うう……俺、もうアーシアちゃんがいればそれでいいや」


 アーシアに励まされた二人はさっきまで泣いていたというのに今では笑みを浮かべていた、まったく単純な奴らだぜ。


「お前ら、そろそろ席に戻れよ。朝のショートホームルームを始めるぞー」


 俺たちのクラスの担任である坂田先生が入ってきたので全員が席に戻り朝のショートホームルームが始まった。


「もうすぐ球技大会があるがウチのクラスは野球だったな、ポジションなどはお前らが自由に決めてくれ」


 そういえばそろそろ駒王学園の球技大会の時期だったな。野球、サッカー、テニス、バスケなどの球技を一日使って楽しむ行事でクラス対抗戦以外にも男女別競技や部活対抗戦もある、これは俺の所属している料理研究部も例外ではなく人数が少ない部活は生徒会公認のリサーバーを加えて補う事になっている。去年はバスケだったんだが俺を恐れた生徒はだれもリサーバーになりたがらなかったんだよなぁ、まあ例外で一人の出場を許されてしかも優勝してしまったんだがな。


「くれぐれも面倒ごとを起こさないでくれよな、特に兵藤、お前は去年暴れまわったから今年は抑えておけよ?後松田と元浜も女子のブルマ姿を見て興奮しないように」
「はい、分かりました」
「「了解です……」」


 坂田先生にも釘を刺されてしまったので流石に今年は自重して力をセーブしておこう。皆で楽しめないと意味が無いからな。


 その後はショートホームルームも終わり授業が進んで行きお昼の時間になった。俺とアーシアは小猫ちゃんと朱乃さんを連れて屋上に行きお弁当を小猫ちゃんから貰った。


「はいどうぞ、今日はイッセー先輩の好きなものを沢山用意しましたからね」
「おう、ありがとうな、小猫ちゃん」


 小猫ちゃんからお弁当を受け取った俺は、早速フタを開けて中を見た。


「おお!手作りミニハンバーグに鳥のから揚げ、更に甘い卵焼きにミートボール!俺の好物ばかりだ!」
「えへへ、喜んでもらえて良かったです。アーシアさんや朱乃先輩もどうぞ」
「うわぁ、美味しそうですぅ~」
「あらあら、小猫ちゃんはイッセー君の好みを熟知していますのね。流石は正妻、わたくしも負けてはいられませんわね」


 小猫ちゃんが作ってきてくれたお弁当を食べながら俺たちは球技大会についての話をしていた。


「そういえばオカルト研究部も部活対抗戦にでるんですよね?」
「ええ、リアスったらイッセー君に負けないようにって張り切っていますの。ここ最近は色んな球技の練習を放課後にしていますわ」


 へぇ、そういえばリアスさんたちが放課後にグラウンドで野球やらサッカーの練習をしていたのを見かけたことがあったな。


「イッセー先輩は料理研究部として出るんですよね?」
「そうだけど今年もリサーバーが来ないかもしれないんだよなぁ」
「えっ、どういう事ですか?」


 おっと、そういえば小猫ちゃんとアーシアはその時はまだ駒王学園にはいなかったな。俺は去年の球技大会の事を二人に話した。


「な、なんですかそれ?イッセー先輩は一人で部活対抗戦に出たんですか?」
「ああ、去年は松田たちともそこまで親しくなかったし誰も知り合いがいなかったからな」
「でもどうしてそこまでしてイッセー君を怖がるのかしら?少し度が過ぎているようにも思えますわ」


 朱乃さんは不思議そうに首を傾げていた。まあ俺の場合は自業自得みたいなものだからしょうがない所もあるんだけどな。


「一年の時は食欲を抑えれれなくて授業中に食事をしだしたり不良と喧嘩したりとやんちゃをしていましたからね、オマケにヤクザみたいな傷まであれば誰でも怖がりますよ」
「私はイッセーさんはいい人だって知っています、でもあそこまで怖がられたり避けられたりしたら可哀想です……」


 アーシアが悲しそうな目で俺を見つめていたので、俺は苦笑しながらアーシアの頭を撫でた。


「そんな顔すんなって、別に気にしちゃいないし今は皆がいるから平気だよ」
「イッセーさん……」


 俺がそう言うとアーシアは嬉しそうに微笑んだ、やっぱりアーシアには笑顔が一番似合うぜ。


「イッセー先輩には悪いですがこのままの方が私としては嬉しいですね、だって他の女の子がイッセー先輩に近づかないんですから」
「あら、それは確かにいい状況ですわね。わたくしたち以外の子がイッセー君に惚れることもありませんし」
「いやいや心配し過ぎですから……」


 まあでも実際に寂しいとは思わないな、今はアーシアやオカルト研究部の皆、それに松田や元浜に桐生もいるからな。


 その後は小猫ちゃんにあーんしてもらったり朱乃さんが口移しをしようとして騒動になったりしたが平穏に過ぎていった。



―――――――――

――――――

―――


side:小猫


 放課後になった私は今日も球技大会の練習をするためにオカルト研究部に向かいました、旧校舎に入ると中からオカルト研究部の皆とは違う悪魔の雰囲気を感じ取ったんですが今日は誰か来ているのでしょうか?


「失礼します」
「あら、小猫来たのね」


 部室の中に入るとそこにはオカルト研究部の皆以外に複数の悪魔がいました、あれって確か……


「リアス、どうやら眷属はそろったようね」
「あなたは生徒会長さん……」


 眼鏡をかけた黒髪の女性が部長に話しかけてました。彼女の名は支取蒼那といってこの学園の生徒会長を務めている方です、でも彼女も悪魔であり真の名はソーナ・シトリーと言って部長のグレモリー家と同じ七十ニ柱のひとつ、上級悪魔シトリー家の娘であり夜は私たちオカルト研究部、昼は生徒会が分担しながら悪魔としての活動や町の治安維持などをしています。


「こんにちは塔城さん、今日は私の新しい眷属の紹介の為にお邪魔させて頂いています」
「そうだったんですか、来るのが遅れてしまい申し訳ございませんでした」
「いえ、気にしないでください。球技大会の準備などで最近は忙しくようやく時間を採ることが出来たので急な訪問をさせていただいたのはこちらですから」


 私がペコリと頭を下げると生徒会長さんは気にしないでくれと微笑みました。彼女は部長の幼馴染で私が眷属になったころから知り合っている方ですかとても優しい方です、人間や他の種族を見下したりしないし他の悪魔みたいな傲慢さもありません、私は悪魔と言う種族は苦手ですが生徒会長さんのことは信頼できます。
 

「さて、全員集まったようですしそろそろ私の新しい眷属を紹介させてもらいますね。匙」
「はい!」


 匙と呼ばれた男子生徒が一歩前に出てきて私たちに頭を下げてきました。


「オカルト研究部の皆さん、初めまして。匙元士郎といいます、2年で会長の兵士をしています。若輩者ですがこれからよろしくお願いします!」
「匙は兵士の駒を4つ使って転生させた期待のルーキーです、今はまだ未熟者ですが皆さんも仲良くしてあげてください」
「兵士の駒4つ……中々見どころのありそうな子ね。期待してるわよ、匙くん」
「ありがとうございます!グレモリー先輩にそう言って頂けるなんて感激っす!俺、頑張ります!」


 部長に期待していると言われた匙先輩は嬉しそうにガッツポーズをしていました、兵士の駒4つ分の実力者ですか、私も負けてはいられませんね。


「そういえばリアス、あなたに一つ確認しておきたいことがあったの」
「なにかしら?」
「最近兵藤一誠君がオカルト研究部に出入りしているみたいだけど彼はあなたの眷属候補なのかしら?」
「……」


 生徒会長がイッセー先輩の事を話した瞬間、オカルト研究部の皆は固まってしまいました。


「えっと、どうしてそんなことを聞くの?」
「私たち悪魔は一般人との関りは極端に少なくしている、それは私たちの正体がバレることを防ぐためなのはあなたも知っているでしょう?ですが兵藤君は悪魔でない唯の一般人じゃない、それなのに最近オカルト研究部の皆さんとも行動をよく共にしているとも聞いたからてっきり眷属候補にしていると思っていたのだけど違うのかしら?」
「えーと、その……」


 部長!そんな目をキョロキョロさせながら慌てていたら私は隠し事をしています、って言っているようなものじゃないですか!いくら不意の出来事に弱いとはいえ慌てすぎですよ!


「どうかしたの、リアス?」
「その……実を言うとね、彼は私の眷属である小猫と恋人関係にあるの」
「あら、そうだったの」
「ええ、でも小猫って恥ずかしがり屋だから周りにバレるのが嫌らしいのよ、だからイッセーにも協力してもらってこっそり会っているって訳なの」


 部長は何とか誤魔化すためにイッセー先輩と私が付き合っていることを生徒会長さんに話した、アーシアさんや朱乃先輩もイッセー先輩と付き合ってますがまさか3股をしているなんて話せないしここは一番である私が代表となって話を進めるしかありませんね。


「では彼は私たち悪魔の事は?」
「一応話したわ、でもそういう事には興味がないようで眷属になることは断られてしまったけどね。まあ私としては小猫の恋を応援してあげたいから眷属じゃなくても何かと関わっているのよ」
「ふむ、まあリアスがいいのなら私は何も言わないわ。それにしても塔城さんと兵藤君がそんな関係だったとは……最近二人の仲が異常にいい理由が分かったわ」
「ていうか兵藤の奴、塔城さんと恋人の癖にアルジェントさんとも仲いいのかよ。羨ましい奴だな」


 ほっ、どうやら誤魔化すことが出来たようですね。


「さて、匙の紹介も終わりました事ですし私たちはこれで失礼させていただくわ。リアス、球技大会はお互い正々堂々と戦いましょう」
「ええ、楽しみにしているわ」


 生徒会長さんはそう言って自身の眷属を連れて旧校舎を後にしました。


「……ふう、イッセーの事を上手く誤魔化せてよかったわ」
「そうですね、イッセー君の事がバレたら面倒な事になってしまいますからね」
「でもこのままではいずれバレてしまうのではないかしら?」
「そうね、お兄様もイッセーを探っているしこのままじゃバレるのも時間の問題かも知れないわね。でも今そんなことを話してもどうにもならないからいずれこの話はイッセーとすることにして今は球技大会に集中しましょう」


 部長が今は気にしないでおこうと言ったので、とりあえず目の前の事に集中することにして球技大会の練習をすることにしました。


 
 

 
後書き
 こんにちは、小猫です。次回はイッセー先輩のお家で部活動をしますがそこでイッセー先輩の過去について話を聞く事になりました。次回第34話「明かされしイッセーの過去、球技大会、始まります!」でお会いしましょうね。 

 

第34話 明かされしイッセーの過去、球技大会、始まります!

 
前書き
 この小説ではイッセーには他に親族などはいない設定にしていますのでお願いします。 

 
side:小猫


「もぐもぐ……美味しいです」


 生徒会長とその眷属である匙さんとの自己紹介を終えた翌日、午前の授業を終えた私はイッセー先輩と二人きりでお昼ご飯を食べている所です。アーシアさんは桐生さんと、朱乃先輩は用事があるらしく今は私がイッセー先輩を独り占めにしています。


「ふう、お腹いっぱいです。先輩が作ってくれたお弁当は格別でした」
「満足してもらえたなら何よりだ」


 食事を終えた私はイッセー先輩の身体に身を預けてもたれかかっています。先輩の大きな手が私の頭や頬を優しく撫でてくれてまるで夢心地のような幸せな気分です。


「ふわぁぁ……イッセー先輩とこうしてのんびり過ごせて幸せです……」
「大きな欠伸だな、まあこうやって二人きりで過ごすのも久しぶりだし気が緩むのも仕方ないか」


 イッセー先輩の前じゃなきゃこんな無防備な事はできません、先輩と二人っきりだからこそこうやって大きな欠伸も出来るくらいのんびりと気を休めることができます。


「ふふっ、イッセー先輩♪」
「おっと、急にどうしたんだ?」


 私は体制を入れ替えていわゆる対面座位になって先輩の首に手を回してに抱き着きました、先輩はちょっと困惑した表情を浮かべましたが微笑みを浮かべながら右手を私の背中に回してギュッと抱きしめ返してくれました。


「こうやって二人きりになれるのも久しぶりですしイッセー先輩とイチャイチャしようかなって思ったんです」
「確かに二人きりになれたのは久しぶりだったな」
「そうです、朱乃先輩までイッセー先輩の恋人になってしまったから中々イッセー先輩とイチャイチャできないじゃないですか。それについて不満はありませんがやっぱり私をもっと構ってほしいって思っちゃうんです。先輩はこんな私は嫌いですか?」
「そんなわけがないだろう、大体小猫ちゃんに寂しい思いを抱かせちまったのは俺が不甲斐ないからだ。本当なら君一人を愛するべきなのに俺が他にも恋人を作ってるのが悪いんだ」
「でも先輩は優しいから私たちの事を真剣に想ってくれています、そんな先輩が私は大好きです、だから気にしないでください」


 アーシアさんや朱乃先輩の事は大好きだし私が一番でいいと言ってくれています、世間からすれば間違った関係なのでしょうが私たちが幸せだからそれでいいんです。


「それに今は二人きりです、だから今は私だけを感じてほしいです……」
「小猫ちゃん……」


 私は目を閉じて先輩の唇にチュッと自分の唇を重ねました、押し当てるだけの軽いキスですがとても暖かくて幸せな気持ちで一杯になります。


「もっと……もっとキスをしてください」


 チュッ、チュッと何度も先輩の唇を奪っていきます、先輩も私の腰に両腕を回して強く私を求めて来てくれています。そういえば私とイッセー先輩って軽いキスはよくしますがそれ以上のキスってしたことがなかったんですよね、折角ですし今ここで大人のキスをしちゃいます。


「ん……」
「んうっ……!?」


 先輩の口の中に私の舌を入れて先輩の舌と絡めます、先輩は最初驚いてビクッと身体を振るわせましたが直に慣れたのか私の口の中に自分の舌を入れ返してきました。


(凄い、これが大人のキスなんだ……とっても気持ちいい……)


 ピチャピチャ、クチュクチュといやらしい音が静かな屋上に響きます。舌を絡め合うたびに頭が痺れるような感覚が広がっていき胸の高鳴りが大きくなっていきます。次第に先輩とのキスはエスカレートしていき最早お互い貪りあう勢いで唇を深く重ねていました、先輩の舌をジュルルと吸ったり舌だけのキスをしたり先輩に私の唾液を飲ませたりと普段ではしないような凄い行為ばかりしています。


(最初は普通にキスするだけでも先輩は顔を赤らめていました、でも今は慣れちゃったのかあまり慌てないですね)


 付き合いだした頃は軽いキスでも顔を真っ赤にしていた先輩ですが何度もしているうちに慣れてしまったのか慌てなくなっていました。顔を赤くする先輩も可愛かったですがこうやって私を受け止めてくれる男らしいイッセー先輩もいいですね。


「ん、ぷあぁ……」
「はぁはぁ……凄かったな」


 流石に息が続かないので一旦先輩から離れて呼吸を整えました、お互いの口の端から唾液が垂れていて実にエロいです。私は先輩の口に付いていた唾液を舐め取るとニコッと先輩に微笑みました。


「ごちそうさまです、先輩♡」
「小猫ちゃん、なんか出会った頃よりもエッチな性格になっていないか?」
「そうですね、前はエッチなことは正直苦手だったんです。でも今は寧ろ率先して覚えたいって思うんですよね、イッセー先輩にもっと好きになってほしいから……」
「小猫ちゃん……」


 再び先輩とキスしようとしましたが、タイミングが悪かったらしくチャイムが鳴ってしまいました。


「むう、お昼休みが終わっちゃいました」
「まあ仕方ないさ、続きはまた今度な」
「はい、楽しみにしていますね」


 取りあえず私たちはお弁当を片付けて屋上を後にしようとしました、でも部長からイッセー先輩に伝言を預かっていたことを思い出して先輩を呼び止めました。


「イッセー先輩、部長から伝言があるんですがいいですか?」
「リアスさんから?」
「はい、実は今日のオカルト研究部の活動をイッセー先輩のお家でさせてもらえないかと」
「俺は別に構わないぜ」
「ありがとうございます、部長にそう伝えておきますね」


 最後に先輩と軽いキスをして、私は自分の教室に向かいました。




―――――――――

――――――

―――


side:イッセー


 放課後になった後、俺はアーシアを連れて急いで家に帰った。今日はリアスさんたちが来るので部屋を少し片づけておこうと思ったからだ。


「イッセーさん、この本はどこに片付けておけばいいですか?」
「その料理の本はそこの本棚の3段目に入れておいてくれ」
「分かりました」


 アーシアもテキパキと動いてくれるので掃除はスムーズに進んで行く。うん、これならリアスさんたちが来る前には終わりそうだな。


「はうぅ!?」


 そう思っていると背後から何か大きな音がした、なにかと思い振り返ってみるとアーシアがコケて本を落としている光景が目に映った。


「おいおい、大丈夫か、アーシア?」
「あうぅ……ごめんなさい、イッセーさん……」
「お前に怪我が無いなら気にしなくていいよ。ほら、一緒に片付けてしまおうぜ」
「ありがとうございます、イッセーさん」


 アーシアに怪我は無いようだ、安堵した俺は散らばった本を回収しているとあるものに目がいった。


「これは、アルバムか……」


 そこにあったのは俺がグルメ界で過ごしていた時に親父やリン姉が撮った写真を収めたアルバムだった。アーシアが本棚にぶつかった時に落ちたようだ。


「イッセーさん、これは一体何ですか?」
「これは俺がグルメ界で過ごしていた時に撮った写真を収めたアルバムだ」
「イッセーさんの……見てみてもいいですか?」
「ああ、いいぞ」


 アーシアが嬉しそうにアルバムを開く、すると同時に玄関の呼び鈴が鳴ったので俺はそっちに向かった。


「リアスさん、祐斗、いらっしゃい。小猫ちゃんと朱乃さんも一緒でしたか」
「今日はごめんなさいね、イッセー」
「別に構いませんがどうして今日はウチに来たんですか?」
「旧校舎の掃除をするために今日は業者の人が来てるの、だから今日一日は旧校舎は使えないのよ」
「そういうことでしたか、まあ立ち話も何ですし中に入ってください」


 俺は全員を連れてリビングに向かう、アルバムを読んでいたアーシアはリアスさん達が来たことを確認するとペコリと頭を下げた。


「こんにちは、部長さん、皆さん」
「こんにちは、アーシア。何を見ているの?」
「イッセーさんのアルバムです」
「アルバム?」
「「アルバム!?」」


 リアスさんはアーシアが何を見ているのか気になったようでアーシアに質問する、アーシアは笑顔で答えるがリアスさんの背後にいた朱乃さんと小猫ちゃんが目を輝かせて食いついた。


「アーシアさん!そんな素晴らしい物を一人で見ているなんてズルいです!」
「そうですわ!わたくしにも見せてほしいですわ!」
「はわわ!?」


 電光石火の動きでアーシアの持っていたアルバムを取った二人は食いつくようにアルバムを見ていた。


「ち、小さいころのイッセー先輩です!ああ、なんて可愛らしい……」
「今は逞しいイッセー君もこんなに愛らしい時が合ったのね、ココさんに抱っこされているイッセー君可愛いですわ」


 二人は俺の赤裸々な過去の写真を見ながら顔を赤らめていた。何だか複雑な気分だな……


「全く、二人ともイッセーの過去に興味があるのは分かるけどそろそろ……」
「ああ!見てください朱乃先輩!小さいイッセー先輩が全裸でお風呂に入ってます!」
「まあ、とっても可愛らしいおちん……」
「いい加減にしなさい!!」
「……もう、ここからがいい所だったのに……」


 隣にいる祐斗がドンマイという風に肩を叩いてきたが……本当に複雑な気分だ。











「……という訳だから皆、よろしくね」
「了解しました」
「了解です」
「了解ですわ」


 その後リアスさんたちは悪魔の仕事などの打ち合わせをしたりしていた。俺とアーシアは部外者なので席を外そうと思ったがリアスさんに居てくれと言われたので一緒に話を聞いていた。
 そういえばリアスさんから生徒会長が俺の事を質問してきたという話を聞いた。生徒会長とはあまり話したことは無かったからあまり気にしていなかったな、まあリアスさんの話では俺がオカルト研究部に出入りしていることを純粋に疑問に思っただけのようなので警戒する必要はないだろう。


「ふう、長々と話していたから喉が渇いたわ」
「なら紅茶でも入れてきますよ」
「あら、じゃあお願いしちゃおうかしら」


 俺は台所に行き紅茶やお菓子を用意してリビングに戻る、すると小猫ちゃんと朱乃さんがまたアルバムを見ていた。


「二人とも、まだアルバムを見ていたのか?」
「はい、貴重なショタイッセー先輩の写真ですからもっと目に焼き付けておかないと」
「この家に住んでいるならいつでも見れるだろう?まあ好きなだけ見てくれ」
「はい!」


 小猫ちゃんと朱乃さんはよっぽど気にいったんだな、さっきからずっと見ているんだぜ。


「そういえばイッセー、前から聞きたいことがあったんだけどいいかしら?」
「何ですか?」
「イッセーはグルメ界出身の人間なの?」
「いえ俺は元々こっちの世界……この駒王町に住んでいました」
「えっ、そうだったんですか?」


 俺の言葉にアルバムを見ていた小猫ちゃんたちも反応してこちらに振り返ってきた。


「小猫ちゃんには前に話したと思うけど俺は5歳の時にグルメ界に行ったんだ。それまではこの町に父親と母親の3人で暮らしていた。これが父さんと母さんだ」


 俺は懐から懐中時計を取り出してそれを開く、中にはアルバムの写真に写っていた俺より幼い俺と優しそうに微笑む男女の写真が貼られておりそれを皆に見せた。


「この人たちがイッセー君のご両親なのかい?」
「ああ、神崎誠と神崎恵梨香……俺の両親だ」
「神崎?先輩の苗字は兵藤じゃないんですか?」
「兵藤は婿養子で家に来た父親の旧姓だ、今は訳があってこっちの苗字を使っている」


 俺の本名は神崎一誠だがこっちの世界に帰ってきてからは兵藤一誠を名乗っている、なぜ名を変えたのかはまた後で話すことにしよう。


「俺は5歳の頃に両親を交通事故で亡くしたんだ。俺は父さんと母さんが守ってくれたから助かったが、今まで当たり前だった普通の日常が一瞬で奪われた瞬間だった」
「ご両親を……」
「他に親族や身内がいなかった俺は施設に入れられることになったんだ、でも俺はそれが嫌で逃げ出してしまった」


 あの頃の事はあまり覚えてはいない、ただ死にたいと思うほど絶望していたのは覚えている。


「闇雲に走っていた俺は気が付いたら見知らぬ森の中にいた、その森をさまよっている時に見つけたのが虹色に光る蝶だった。
 好奇心でその蝶に触れた俺は気が付くと広大な海にポツンと浮かんでいた小島に立っていた、訳も分からず辺りをキョロキョロしていると海の中から猛獣が現れて俺に襲い掛かってきたんだ。子供ながらに死ぬという事がはっきりと分かった、でも俺は死ななかった」


 俺はアルバムからファンキーな恰好をしたムキムキの男性に抱っこされている俺が写っていた写真を取り出して皆に見せた。


「IGO会長、一龍……運よく近くにこの人の別荘が合ったらしく俺はこの人に助けられた」
「この人がイッセーのお師匠さん?」
「そうです、俺が師として、そして父として尊敬する人です」


 俺は写真を見つめながら親父について皆に話し出した。


「親父は得体の知れない俺を何も言わず引き取ってくれた、最初は困惑したけど帰る方法も分からなかった俺は親父の子供として生きていくことにしたんだ。まあそれから色々あって俺は美食屋を目指すことになったんだ。ココ兄やサニー兄ともその時に出会ったな」
「一龍さんはどんな方なんですか?」
「あの人は豪快で大雑把なところもあるが優しくて俺を本当の息子のように育ててくれた。そんな親父に俺は次第に心を開いていった、正直初めは帰りたいとも思っていた俺だったが親父と過ごしていくうちにそれが薄れていった」


 アーシアの質問に俺は自分が親父に対して持っているイメージを説明した。


「結局俺は元の世界に戻ることを諦めた、それから8年をグルメ界で過ごしていき、元の世界の事を忘れかけていたある日、アレが現れた」
「異次元七色チョウね」


 リアスさんの問いに俺は頷いた。


「俺は無意識のうちにまたその蝶に触れていた、すると今度は駒王町に俺は立っていた」
「なるほど、それでイッセー君はこの世界に戻ってきてこの町で生活することになったんだね」
「ああ、でも最初は直にこの世界を立ち去ろうと思った」
「ど、どうしてですか?」
「グルメ界にどっぷりと浸かってしまった俺がこの世界に来れば余計な争いを起こしかねない、その頃にはグルメ細胞や目覚めたドライグ……赤龍帝の籠手を持っていたからな」
「それは……」


 グルメ細胞の力を知るオカルト研究部の皆は複雑そうな表情をしていた、全員がこの細胞の恐ろしさを知っているからそれを悪魔や堕天使と言った勢力が知れば欲する者が必ず現れると思ったのだろう。


「でも出来なかった、父さんと母さんと過ごしたこの町から去ることが出来なかったんだ」


 それはこの世界にとって悪いことなのは理解していた、それでも俺はこの町を忘れることが出来なかった。


「俺は親父にこの事を話した、最初は渋っていた親父だったが異次元七色チョウが他にもいるかもしれないという可能性を調査する名目で俺をこの世界に送り出してくれた。それから俺は他に異次元七色チョウがいないかを調査するためにこの町に住みながら世界を旅することにしたんだ」
「その旅の間でルフェイに出会ったのね」
「ええ、そうです。因みに苗字を変えたのはそのころ神崎一誠は行方不明者として警察が調査していたから目立つのを避けるために新たに戸籍や住所、経歴などを偽装して『兵藤一誠』として生きる事にしたんです」
「偽装したんですか?」
「そういう事をしてくれる人たちが裏社会にいるんだよ、詳しくは話せないがな」


 もう俺はこの世界には存在しない人物だ、神崎一誠として生きるのは無理があったので俺は父親の旧姓を名乗る事にしたんだ。


「まあ俺の過去についてはこんなところかな」
「イッセー君も中々波乱万丈な生き方をしていたんだね」
「家族がいる事が当たり前に思えるけど私は一番幸せだったのね……」
「今は私たちも一緒にいますよ、イッセーさん」
「そうですわ、わたくしたちも家族みたいなものじゃないですか」
「そうだな、今は皆もいてくれるから寂しくはないな」


 親父には本当に感謝しないといけないな、こんなかけがえのない仲間たちに出会う切っ掛けを作ってくれたんだから。


「イッセー先輩を育ててくれた一龍という人には是非ともお礼が言いたいですね、その人のお陰で私たちはイッセー先輩と出会うことが出来たんですから」
「皆の事は既に話しているから近いうちに会いに行くぞ。特に小猫ちゃんの事を話したら親父は大分興味を持っていたからな」
「そ、そうなんですか?だとすればちゃんとおめかししていかないと……」
「そこまでかしこまる必要はないと思うけどな」
「何を言っているんですか!イッセー先輩のお嫁さんになる予定の私からすれば一龍さんは何よりも重要な人になります!第一印象から良く思って貰わないと!」
「お、おう……そうだな……」


 その後は明日の球技大会について話し合いをしてリアスさんと裕斗は帰路に付き、俺たちは明日に備えて早めに休むことにした。明日はいよいよ球技大会だ、気合を入れていくぜ。


 
 

 
後書き
 木場です、次回はいよいよ球技大会が始まるんだけど意外と手加減するのって難しいよね。ちょっとした動作が常人よりも凄い動きになっちゃうから気を付けないと。次回第35話『白熱、球技大会!忍び寄る聖剣の影!』で会おうね。


 ……聖剣か。 

 

第35話 白熱、球技大会!忍び寄る聖剣の影!

 
前書き
 作者はスポーツに詳しくないので何かおかしな描写がありましたら是非教えてください、お願いいたします。 

 
side:小猫


 パーンと大きな音を立てて花火が上がり空に綺麗な模様を描きました。球技大会の始まりを知らせる花火を見ながら私は隣に立っていたイッセー先輩に話しかけました。


「いよいよ球技大会が始まりますね」
「そうだな、でも去年と比べると加減するのが難しそうだ。軽い動きをしても他の奴らを凌駕する動きになってしまうからな」


 先輩は超人的な身体能力を持っているので2%程の力に抑えても一般人を凌駕してしまうんですよね。でもそれは私たちも一緒で短期間で成長した代償なのか力を加減するのが難しくなってしまっていたんです。


(まあデビル大蛇やらGTロボやら全力を出しても危ない奴らを相手にしてきた反動なのか力を抑えるのが難しくなってしまっていたんですよね……)


 ただ力を振りかざしているだけじゃ意味は無いしある意味これも修行の一環だと思えばいいですね、でも一般生徒に怪我をさせるのだけは控えないといけませんね。


「先輩はクラス対抗戦の競技は何ですか?」
「2年は野球だったな、1年は確かバレーだったか?」
「はい、私たちはバレーです」
「そっか、まあ程々に力加減をしてやってくれよ。テンションが上がると無意識に力を出してしまう事があるからな」
「クスッ、もしかして体験談ですか?」
「恥ずかしながらそうなんだ、まあ小猫ちゃんなら大丈夫か」


 駒王学園は学年ごとに5クラスに分けられています、クラス対抗戦は同じ学年と一試合ずつして勝ち数が多いクラスが優勝になります。私はイッセー先輩と別れた後に体育館に向かいクラスの皆と合流しました。


「あ、塔城さん。丁度良かった、もうすぐ試合が始まっちゃうから呼びに行こうと思ってたんだー」
「そうでしたか、心配かけて申し訳ございません」
「そんな、気にしなくていいよー。だって大好きな兵藤先輩とお話ししていたんでしょ?とっても楽しそうだったもん」
「見ていたんですか……あの、このことはあまり他の人には……」
「言わないよー、二人が恋人同士なのは秘密だもんね」


 私に声をかけてきたのはクラスでも比較的仲のいい友人でした。彼女は私とイッセー先輩が付き合っていることを知る数少ない人物です、最初は驚いていましたが直に祝福してくれました。流石にアーシアさんや朱乃先輩もイッセー先輩と関係を持っているとは言えませんので彼女は私だけがイッセー先輩の恋人だと思っています、まあ普通はそうなんですけどね。


 暫くしてクラス対抗戦が始まりまずは私のクラスじゃない他の2クラスが試合を行っていました。クラス対抗戦は全員が絶対に一回は試合に出る決まりになっているのでチームはバラバラに決められており私は2試合出ることになっています。ようやく私の出番が来たので試合に出たんですが……


「えい」


 宙に上がったボールを軽く叩くとまるで全力のスマッシュを放ったかのような速度でボールが体育館の床に当たりました。思っていた以上に自分の身体能力が上がっていることに気が付きどうしようかなって思いました。


「塔城さん、かっこいいー!!」
「まるでプロみたい!」


 幸いにも周りの皆さんに咎められたりしないのですが正直試合にならないですね。


(まさかここまで力が上がっていたなんて思ってもいませんでした。普段全力ばかり出していると気が付きにくいものですね)


 イッセー先輩が控えるようにしろと言っていた意味がようやく分かりました、この分だと他の皆さんも苦労していそうです。
 私が出場した2試合は全部勝利しましたが結果的には4位でクラス対抗戦は終わりました。どうして4位なのかというと、私が出なかった3試合で私のクラスがすべて負けてしまったからです。男子生徒が私にいい所を見せようとしたのか自分勝手なプレーが多かったのが敗因でした、もうちょっと頑張ってほしかったですね。


「まったく、男子ったら塔城さんにアピールしようとして結果的に負ける要因になっているんだから困ったものよね」
「私としては普通にプレイしてほしかったんですけどね」
「まあ塔城さんにはもう兵藤先輩がいるからご愁傷様なんだけどね」
「えへへ……」

 もういっその事私とイッセー先輩が付き合っていることを大々的に発表したほうがいいんでしょうか?他の男子生徒さんが私に好意を寄せてくれるのは有り難いんですが私にはイッセー先輩がいます。でもそのせいでイッセー先輩にヘイトが溜まってしまうのは嫌なんですよね、好きな人の悪口を聞くのはやっぱり嫌ですから。


「あ、そろそろ男女別競技が始まっちゃうね。急いで着替えてテニスコートに向かおうか」
「了解です」


 次の男女別競技は男子と女子に分かれて全学年交えて行います。女子はテニスでルールとしてはクラスで一人代表者を決めてトーナメント方式で行われていきます、全学年なので2年のアーシアさんや3年のリアス部長や朱乃先輩とも試合をする可能性があるという事です。15人いるので1人は抽選で選ばれると一回戦をパスすることが出来ます、選ばれたらラッキーですね。


 テニスウェア姿になった私は友人と一緒にテニスコートに向かいました、すると先に来ていたのか同じくテニスウェア姿になったアーシアさんが私を見つけて駆け寄ってきました。


「小猫ちゃん、テニスウェア姿とってもお似合いですよ」
「ありがとうございます、アーシアさんも似合ってますよ」


 アーシアさんが私のテニスウェア姿を褒めてくださったので私もアーシアさんのテニスウェア姿を褒め返しました。実際に金髪が良く合っているんですよね。


「塔城さん、私は向こうに行っているね」
「あ、はい。分かりました」


 友人はそう言うと違うクラスの知り合いの元に向かいました、きっとアーシアさんと話す時間を作ってくれたんですね。後でお礼を言っておかないといけませんね。


「今の方はお友達ですか?」
「はい、私の友人です」
「そうでしたか。もしかして私、邪魔をしちゃいましたか?」
「いえ、彼女は気を使ってくれただけです。アーシアさんは気にしないでください」
「それなら後でお礼を言っておかないと……それで小猫ちゃん、クラス対抗戦はどうでしたか?」
「私が出た試合は全部勝ちましたがそれ以外では負けてしまったので4位でした、アーシアさんはどうでしたか?」
「私のクラスは優勝しましたよ。私、なんとホームランを打っちゃったんですよ!」
「それは凄いです」



 アーシアさんは野球でホームランを打ったことを嬉しそうに話していました。アーシアさんは普段戦ったりはしないですがグルメ界の厳しい環境を乗り越えてきたからか一般人より身体能力が上がっているんですよね。


「イッセー先輩はどのポジションにいたんですか?」
「イッセーさんはキャッチャーをしていました。ボールを受け止めるイッセーさん、すっごくかっこよかったです!」


 イッセー先輩はキャッチャーをしていたんですか、確かに外野を守ったらどんな球でも取ってしまいそうですしピッチャーをしたら誰も打てないしキャッチすらできないですよね。それにしてもイッセー先輩のキャッチャー姿……是非とも見てみたかったです。


「小猫、アーシア。二人で何を話しているのかしら?」
「部長さん、朱乃さん!お二人ともテニスウェア姿とってもよく似合っています!」


 私たちに声をかけてきたのはリアス部長と朱乃先輩でした。二人とも抜群のスタイルを持っているのでテニスウェア姿がとてもよく似合っています。ミニのスカートから覗く太ももなんて色気があるくらいです。


「うぅ……二人を見ていると自分の貧相な体が嫌になってきます……」
「小猫、イッセーは別にスタイルの良さなんて気にしていないでしょ?」
「それでも朱乃先輩に抱き着かれている時のイッセー先輩は嬉しそうです、やっぱりおっぱいが大きい方が先輩もイイに決まっています」
「うーん、それならイッセーに大きくしてもらったらどうかしら?」
「えっ?」


 リアス部長の言葉に私は大きく食いつきました、イッセー先輩におっぱいを大きくしてもらうとはどういう事でしょうか?


「確か好きな異性に揉んでもらうと胸が大きくなると聞いた事があるわ、あなたにはイッセーがいるんだから彼に揉んでもらったらいいんじゃないのかしら」
「イッセー先輩に……」


 ……イイ、すっごくイイです!イッセー先輩におっぱいを触ってもらえる上に大きくなるなんてまさに一石二鳥って奴ですね。


「分かりました、今夜あたりにでもイッセー先輩にお願いしてみます。リアス部長、貴重なアドバイスをしていただきありがとうございます」
「え、ええ……納得してくれて良かったわ……(もしかしたらマズイ事を言ってしまったかしら?まあ、イッセーに迷惑をかけてしまうことになってしまうけど彼女の悩みを彼氏が解決してあげるのなんて当たり前よね。うん、私は悪くない)」


 ふふっ、今夜イッセー先輩のお部屋に行ってお願いしちゃいましょう。もしかしたらそのままいい雰囲気になっておっぱいをもんでもらう以上の事まで……!?


「えへ、えへへ……」
「こ、小猫ちゃん?」


 アーシアさんが心配そうに声をかけてきます、でも今の私にはまったく聞こえませんでした。


「幸せそうで何よりだわ」
「あら、もしかしてリアスも羨ましいのかしら?想い人、いまだに見つかっていませんですものね」
「ええそうよ!羨ましいわよ!あなたたちの惚け話を聞くたびに羨ましくてしょうがないのよ!」


 部長がなにか怒っているように叫んでいますが何か嫌な事でもあったのでしょうか?


 その後テニスの試合が始まり私はクラス代表として出場しました。一回戦、二回戦を軽々と突破した私は準決勝でアーシアさんと対決することになりました。アーシアさんはかなり粘ってきましたが最後は私が得点を入れて勝利することが出来ました。そして決勝は生徒会長を打ち破ったリアス部長と行う事になりました。


「ふふ、やっぱりあなたが決勝まで勝ち上がってきたのね、小猫」
「部長、手加減は出来ませんよ?」
「あら、強気な発言ね。でも私もそう簡単には負けるつもりはないわよ」


 決勝戦が始まりまず私が先攻のサーブを打ちました、部長は軽やかな動きでそれを返しますが私も負けじと打ち返します。


「塔城さーん、頑張れー!!」
「キャー!リアスお姉様ー!!」


 外野の女子生徒たちが私たちを応援してくれています、友人からの支援を受けて私はテンションが高ぶってきました。


「やるじゃない、小猫!」
「部長こそ流石です!」


 主として仕えているリアス部長ですが、今この時は一人の女として対等に戦っています。お互いにテンションが上がっているためか、普段は言わないようなかる口まで言い合うほど白熱しています。


「私の波動球は百八式まであります!」
「どんな球だろうと私のリアスゾーンで打ち返してあげるわ!」


 先輩の家で読んだスポコン漫画のようなセリフを言い合いながら私と部長のラリー合戦は続いていきました、最終的には私の放ったスマッシュが部長のラケットを粉砕して私が優勝をすることが出来ました。








「えへへ、お昼ご飯が美味しいです♪」


 男女別競技も終わり、今は昼食の時間になりました。イッセー先輩と祐斗先輩と合流した私たちは旧校舎前の一角にビニールシートを敷いてイッセー先輩が作ってくれたお弁当を食べています。


「先輩、私リアス部長に勝ったんですよ。その時の姿を先輩に見てほしかったです」
「そりゃ凄いな、俺のクラスも優勝できたけど小猫ちゃんほど活躍はできてないからな」
「そうなんですか?」
「はい、イッセーさんは野球ではバントしたりしてなるべく打たないようにしていました」
「男女別競技のバスケでもパスに徹していたからね、まあイッセー君の相手が出来るのが僕しかいないから仕方ないんだけどね」


 アーシアさんと祐斗先輩の説明を聞いてなるほどと思いました。去年はまだグルメ細胞が進化していなかったから何とかなったそうですが、前にジュエルミートを食べて細胞が進化した結果余計に加減しにくくなっていたんですね。


「あの~、本当に私たちもご一緒してもよろしかったんですか?」
「あら、もしかして嫌だったかしら?」
「いえそんなことはないです!唯場違いなんじゃないかなって思いまして……」


 端っこの方に座っている桐生先輩が緊張した様子で場違いなんじゃないかと言い、松田先輩と元浜先輩もその言葉に頷いていました。何故この人達がいるのかというとイッセー先輩とアーシアさんが連れてきたからです、お昼を一緒にしないかと誘ったみたいですがまさか私たちオカルト研究部も一緒だとは思っていなかったようで石のように固くなっていました。


「なんだ、松田と元浜、やけに大人しいじゃねえか?リアスさんや朱乃さんと一緒にメシを食えているんだぞ。嬉しくねえのかよ?」
「いや嬉しいに決まってんだろ!でもやっぱ緊張しちまうというか……」
「前までの自分たちの行ってきた行動を顧みると恥ずかしくなってな……」


 なるほど、松田先輩と元浜先輩は以前は覗きの常習犯でした。そんな彼らが最近は大人しくなったとはいえいざ女の子を前にすると恥ずかしく感じるのは当たり前ですよね。


「松田君と元浜君、そこまでかしこまらなくてもいいわよ?確かに以前のあなたたちが問題児だったのは確かだけど今は反省しているのでしょう?イッセーから聞いたけど奉仕活動を率先してやっているらしいじゃない、私はそうやって反省して自分を直そうとしている人を凄いと思うわ。だからそんなに気にしないで頂戴」
「グ、グレモリー先輩……」
「何て優しい人なんだ……」


 リアス部長の言葉を聞いて松田先輩と元浜先輩は泣き出してしまいました、女の子に優しい言葉をかけてもらったのが嬉しかったようです。


「桐生さんもそんなかしこまらないで自然体で接して頂戴」
「あはは、分かりました。でもグレモリー先輩たちって案外気さくな方々だったんですね、私、もっとお堅い人たちかと思っていましたよ」
「そんなことねえよ、リアスさんなんか自分の好物が出るとつまみ食いしてるからな」
「ちょ、ちょっとイッセー!」


 イッセー先輩につまみ食いをすることをバラされてしまった部長が顔を赤くしてそれを否定していた。


「何か以外ね、話してみるとオカルト研究部の皆さんって面白い人たちばかりなのね」
「だろう?周囲の連中が騒ぎ立てているが実際は普通の人たちだ。朱乃さんはSっけが凄いと見せかけて隠れMだし祐斗は意外とエロい話に食いついてくるし小猫ちゃんは一人でいるとふにゃ~って気の抜けた欠伸をしているんだぜ」
「あ、あらあら……バレてしまっていたのですね、これはイッセー君に責任を取ってもらわないと……」
「イッセー君、それは誤解だよ。僕は唯普通の高校生ならそういう話もするかなって思っているだけで本当はエッチなことに興味なんてないんだよ?……聞いてるかい?」
「先輩!私たちの恥ずかしい事をバラさないでくださいよ!」


 オカルト研究部の全員の秘密をバラされてしまいました。朱乃先輩は動揺しながらも顔を赤くしてイッセー先輩を熱い眼差しで見ているし祐斗先輩は早口になって否定しだしました。私も顔を赤くして先輩の頬を引っ張りました。


「ほねほひゃん、わるふぁったふぇば。あやふぁるかあてをはなふぃてふれ」
「駄目です!先輩には罰を与えます!」


 ふにょんふにょんと先輩の頬を引っ張って変な顔にします、それに部長や朱乃先輩、祐斗先輩も混じって全員でイッセー先輩の顔をイジりました。桐生先輩たちはそんな私たちを見てお腹を抱えて笑っていました。


―――――――――

――――――

―――


side:イッセー


 イッセーだ、昼は酷い目にあったぜ。昼食を終えた後、俺は部活対抗戦の種目を確認しに行ったんだがどうやらドッジボールに決定したようだ。


(ドッジか、また面倒な種目になったな……)


 今までは球を打ったりゴールに入れるだけの競技だったが、直接相手にボールをぶつけるこの競技はヘタをすれば相手に怪我をさせかねないからな。


(まあ力加減は午前の競技で大体つかめてきたから何とかなるか、問題は人数なんだよな……)


 数が足らない部活はリサーバーを出してもらえるんだが去年は俺が怖くて来なかったんだよな。今年はアーシアがいるがそれでも2人だ。今年もリサーバーが来なければ2人で出なくてはならないだろう。


「まあそん時はそん時か……あれ?アーシアがいないな?」


 待ち合わせの場所に来たがアーシアの姿はなかった、何処かに行っているのかな?


「イッセーさん、お待たせしました」
「お、アーシア。何処に行って……」


 背後からアーシアの声が聞こえたので俺は振り返った、だがアーシアの姿を見てつい固まってしまった。


「ブ、ブルマ……」


 そう、アーシアは学校指定のハーフパンツではなくブルマに着替えていたんだ。か、可愛いじゃねえか……


「あ、あの、桐生さんからドッジボールの正装はブルマだって聞いたんです。だから急いで着替えてきました。ど、どうでしょうか?」


 桐生ぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!最近大人しくしていると思ったらやりやがったな!こんな可愛らしいアーシアを見て他の男子生徒が変な事を考えたらどうするんだ!!


「イッセーさん、もしかして駄目だったでしょうか?」
「えっ、あ、いや……すっごく可愛いよ、似合っている……」


 何故か泣きそうになっているアーシアを見て俺は顔を赤くしながらもアーシアのブルマ姿を褒めた。


「本当ですか!?何処が一番気に入ってくれましたか!」


 な、何だ?今日のアーシアはグイグイと攻めてくるじゃないか……


「そ、そうだな……全体的に良く似合っているが特に太ももの辺りが俺的にはイイと思うぞ……」


 うわぁぁ!テンパってセクハラまがいな事を言っちまった―――――ッ!!こんなの唯の変態野郎じゃねえか!!


 一瞬やっちまったか、と思ったがチラッとアーシアを見てみると身体をモジモジとさせながら嬉しそうに微笑んだ。


「えへへ、嬉しいです。イッセーさんが私の太ももを褒めてくださいました」
「えっ、嬉しいのか?結構酷い事を言った気がするんだが……」
「そんな事ありません、イッセーさんが私の身体を気に入ってくださったんです。こんなにも嬉しい事はありません」


 ああもう、どうして今日のアーシアはこんなにもエッチな事を言うんだ!俺じゃなかったら襲っているぞ!


「最近は朱乃さんや小猫ちゃんに押されていました、だからちょっとでもイッセーさんにアピールがしたくてブルマを履いてみましたが気に入ってくださって良かったです」
「そ、そうか……気に入ったのは事実だが俺としてはアーシアには人前でそんな恰好はしてほしくないんだがな……」


 他の男子生徒がこんなエロ可愛いアーシアを見たら絶対にろくでもないことを考えるに違いない。だからできればアーシアには人前でブルマの恰好をしてほしくないのが本音だ。


「えっ、それってこの格好は俺と二人きりの時だけにしろって事ですか?イッセーさんって情熱的ですね……」
「ア、アーシア?」
「分かりました、このブルマ姿はいつかイッセーさんとそういう事をするときの為に取っておきますね!私、着替えてきます!」


 アーシアはそう言うと急いで女子更衣室まで走って行ってしまった。


「ど、どうしたんだ?アーシア、走っていっちまったぞ……?」
『恋人ができてもお前は変わらんな……』


 何故かドライグに呆れられてしまったが俺はどうしてドライグガ呆れているのか分からなかった。














「死ね―――ッ!」
「くたばれや、松田ッ!元浜ッ!」
「お、お前ら!何でそんな殺気立っているんだよ!?」
「うるせー!お前らがオカルト研究部の方々とお昼を一緒にしていたのは知っているんだぞ!!」
「何でお前らみたいな変態コンビが……どんな卑劣な手を使いやがった!言え!!」
「「ぎゃ―――――ッ!?」」


 部活対抗戦の競技であるドッジボールの初戦が始まった。俺とアーシアが所属している料理研究部の最初の相手は野球部なのだが相手は俺を狙わず松田や元浜ばかりを狙っていた。どうして松田と元浜が料理研究部のチームに入っているのかと言うと、二人が生徒会長にお願いしてリサーバーとして助っ人に入ってくれたのだ。ったくあいつら「俺たちは親友じゃねえか、力になるぜ!」とらしくもなくかっこいい事を言いやがって……


「うお―――――ッ!元浜―――――ッ!耐えろ―――――ッ!」
「無論だァァァ!ここでグレモリーさんや姫島さんにいい所を見せるまでは負けるわけにはイカン!」


 ……動機が不純じゃなければもう少し感動できたんだがな。


「ほらほら、あんたたち!もっと頑張りなさいよ!」
「あわわ、お二人とも頑張ってください!」


 同じくリサーバーとして料理研究部の助っ人に入った桐生とアーシアが外側で松田と元浜を応援していた。しっかしフルボッコだな、あいつらが任せろって言っていたから様子を見ていたがそろそろ助け舟を出してやるか。


「よっと」


 俺は元浜の顔面目掛けて飛んできたボールを片手でキャッチした。


「そろそろ俺も攻撃させてもらうぜ」


 軽い力でボールを投げたがそれでも野球部の連中には速かったらしく、元浜の顔面にボールを投げた男子生徒の身体に当たりアウトにした。


「お、おい。兵藤が動き出したぞ……」
「ど、どうしよう……」
「何を怯えてやがるんだ!あいつは小猫ちゃんやアーシアちゃんを独り占めにしている憎き怨敵だぞ!今こそ下克上のチャンスじゃねえか!」
「で、でもよ……野球部のエースピッチャーの村田の投げた球すら片手で取るような奴に勝てるわけねえだろう……」
「情けない奴らだ!だったら俺があいつを倒してやる!」


 そう言った男子生徒は力を込めてボールを投げてきた。俺はそれを片手で受け止めた。


「なるほど、いい球だな!」
「えっ?あ、ど、どうも……」
「なら俺も全力で行くぜ!」


 俺は相手が怪我をしない零度の力を込めてボールを投げた、俺が投げた球を野球部全員が一丸となって止めようとしたが全員弾かれてしまった。


「よっしゃ!俺たちの勝ちだな!」


 その後サッカ-部やらバスケ部やらなどのチームに勝っていき遂に最後の試合になった。相手はオカルト研究部の皆だ。


「イッセー、普段は世話になっているけど今日は勝ちに行かせてもらうわよ!」
「面白い、打ち勝ってやりますよ!」


 試合が始まるとまずは俺がボールの取り合いで裕斗に勝ちボールを手に入れる。


「よっしゃ!行くぜぇぇぇ!!」


 そして俺は今までより力を込めたボールをオカルト研究部の皆に向かって投げた。


「受け止めて見せます!!」


 俺の投げたボールを小猫ちゃんが受け止めた。怪我をしない程度に力を抑えているとはいえ今までの小猫ちゃんだったらキャッチは出来なかったはずだ、小猫ちゃんも成長したな。


「先輩、行きますよ!私の(愛のこもった)ボールを受けてください!!」
「よし、来い!!」


 小猫ちゃんが投げたボールを俺は体で受け止めた。ギュルギュルと俺の胸で回転していたボールは次第に速度を落としていき俺の手の中に落ちた。


「いい球だぜ、小猫ちゃん!」
「次こそは決めて見せます!」


 その後も白熱した試合が続いていった、オカルト研究部の皆は手ごわく祐斗の素早い動きやリアスさんの的確な指示、更に朱乃さんの絶妙なパスもあり中々いい勝負を繰り広げていた。だがこちらも松田や元浜、それに桐生やアーシアが一丸となって戦い遂に試合は俺と小猫ちゃんの一騎打ちに持ち込まれた。


「先輩、決着を付けましょう……!」
「望むところだ!」


 ボールは小猫ちゃんが持っているのでまずは小猫ちゃんが攻撃してくる、俺はどんな球が来ても受け止めれるように構えを取った。


「行きます!!」


 小猫ちゃんが大きく振りかぶりボールを投げようとする、俺はボールを受け止める体制に入ったがある光景に目が向かった。


(小猫ちゃんが口パクで何かを言っている……?)


 小猫ちゃんの口が動いて俺に何かを伝えようとしていた、俺はついそれを読み取ってしまった。


(なになに……「今夜、私のおっぱいを揉んでください」だと……はぁ?)


 小猫ちゃんが伝えてきた事に思考が停止してしまい動きが止まってしまった。


「今です!!」


 小猫ちゃんが投げたボールに反応するが一瞬遅かったらしく俺の身体に当たったボールが大きく弾んで地面に落ちていった。


『決まったぁぁぁ!!オカルト研究部の勝利です!!』


 アナウンスが俺の耳に入りようやく思考が正常になった。ま、まさかそういう手で来るとは……完全に油断していたぜ……


 こうして駒王学園の球技大会のメインイベント、部活対抗戦はオカルト研究部の優勝で幕を閉じた。










「全く、小猫ちゃんは悪い子だぜ!」
「キャ――――――ッ♡」


 球技大会が終わった後、俺はオカルト研究部の部室がある旧校舎で小猫ちゃんの頭をワシャワシャと乱暴に撫でていた。小猫ちゃんは可愛らしい悲鳴を上げながら喜んでいた。


「うーん、なんだか釈然としないわね……」
「しょうがないですよ、部長。イッセー君に勝つには正直あの手しかなかったかと思います」


 優勝して貰った表彰を眺めながらリアスさんは何処か納得のいかないような表情を浮かべていたが祐斗がフォローをする。


「小猫ちゃんも中々に策士ですわね」
「うー、小猫ちゃんが一番なのは納得していますがそれでも何だか胸の辺りがチクチクします……」


 朱乃さんは微笑んでいるがアーシアはちょっと泣きそうな表情を浮かべていた。情けない負け方をして本当にすまない……


「まあいいわ、イッセーに遊びとはいえ勝てたんだから何かお祝いをしましょう」
「ならファミレスで打ち上げをしませんか?松田たちも誘って」
「あら、いいじゃない。たまにフライドポテトが食べたくなるのよね」
「じゃあ行きましょうか」


 リアスさん、祐斗、朱乃さん、アーシアが部室を後にしたので俺も後を追おうかと思ったが不意に小猫ちゃんに右手を引っ張られる。


「うん?どうかしたのか、小猫ちゃん?」
「先輩、さっきのは冗談じゃないですよ。今夜、先輩のお部屋に行きますからね♪」
「……へ?」


 ウィンクをしながら部室を出ていく小猫ちゃんを見ながら俺は再び思考を停止させてしまった。



―――――――――

――――――

―――


side:??


 イッセーたちが球技大会の打ち上げに向かっている頃、日本の成田国際空港に一つの飛行機が降り立った。飛行機から降りようと乗客達が立ち上がっていくがその中に奇妙な恰好をした人物が2人いた。白いフードで全身をスッポリと隠しているその姿はあまりにも怪しい恰好だったが周りの乗客たちは気にもしないでいた、まるでそれがおかしなことではないように認識させられているかのようだ。


「ふう、ようやく日本についたようだな」


 フードを被った2人の内、青髪の少女が席を立ち飛行機の外に出ようとするがもう一人の栗色のツインテールをした少女は首につけていたペンダントを見て物思いにふけっていた。


「おい、イリナ。もう着いたんだぞ?」
「あ、ご、ごめん。ゼノヴィア……」


 青髪の少女……ゼノヴィアに呼ばれた栗色のツインテールの少女……イリナは慌てた様子で返事を返した。


「全く、しっかりしてくれないか?我々は大事な使命を持って日本に来たのだぞ、久しぶりの故郷だからと言って気が緩んでないか?」
「そんなことないわ、ただイッセー君の事を思い出しちゃって……」
「イッセー……行方不明になったお前の幼馴染だったな?」
「うん、私の大切な幼馴染なの。私も色々調べているんだけど未だに見つからない……」
「確か警察の捜査では未だに発見されていないのだったな、何年捜査しても見つからないという事はこう言っては何だがもう生きていないのではないか?」
「……」
「……すまない、失言だったな」
「ううん、いいの。私がいつまでも引きずっているのが悪いんだから……」


 自分の失言に気が付いたゼノヴィアはイリナに頭を下げる。イリナはペンダントをそっと握りしめながらゼノヴィアの謝罪を受け入れた。


「このペンダントはね、私が日本を離れる事になった時にイッセー君がくれた物なの。離れるのが嫌で大泣きをしていた私を元気づけてくれたイッセー君は私にまた会おうね、って約束してくれた。これがあればまたイッセー君に会えるって思っていた……でもイッセー君のご両親が事故で亡くなってイッセー君まで行方不明になったって知らせを聞いたとき、私は死にたいって思うほど絶望した」
「イリナ……」
「そんな私を支えてくれたのがお父さんやお母さん、そして貴方だったよね、ゼノヴィア」


 イリナはニコッとゼノヴィアに微笑んだ後、キリッとした決意を込めた表情を浮かべた。


「聖剣を奪いし者コカビエル……奴がこの日本で何をしようとしてるのかは分からない。でもイッセー君と過ごしたこの国をメチャクチャにしようっていうなら絶対にさせない」
「……無論だ、私も主のため、そしてお前の為に戦おう」
「ありがとう、ゼノヴィア……」


 ゼノヴィアに手を差し出されたイリナはその手を握り返し立ち上がった。


(イッセー君、君がいないこの国に私は帰ってきたよ。君と過ごした大切なこの国を守る為に……)
 


 
 

 
後書き
 イッセーだ。球技大会も終わり日常が戻ってきたかと思ったがそこに教会の使いを名乗る2人が現れた。どうやらこの駒王町にコカビエルという堕天使が入り込んで何かを企んでいるらしいな。次回第36話『奪われた聖剣、予想だにしなかった再会』で会おうな。


 ……どうして今更になって出会っちまったんだろうな、イリナ。 

 

第36話 奪われた聖剣、予想だにしなかった再会

side:イッセー


 よう、イッセーだ。球技大会も終わりまた日常が戻ってきた。今は大きな欠伸をしながら放課後の部活で何をするか考えている所だ。そろそろ新しいメニューでも考えてみるかな?


「兵藤、あんた目が赤いけど大丈夫?今日の授業もなんだか眠そうだったしもしかして寝不足なの?」
「ああ、まあ昨日少しな……」


 目を擦っている俺を見た桐生が声をかけてきた。何があったかと言うと昨日、夜に小猫ちゃんが俺の部屋を訪ねてきて胸を揉んでくれと頼んできたんだ。オカルト研究部の部室で冗談じゃないと言ってたがまさかマジで言ってくるとは思ってもいなかった。


(しかもそこにアーシアと朱乃さんが便乗してきたんだよな……)


 まるで小猫ちゃんがそういう行動に出ると知っていたようなタイミングでアーシアと朱乃さんも来て自分たちも混ぜてほしいと言ってきたんだ。
 結局断ることが出来なくて俺は3人の胸を揉むことになった。えっ?直で揉んだのかって?バカ言うな、そんな度胸は俺にはねえよ。妥協案として体操服の上から揉んだんだ……何?揉み心地はどうだったかって?そんなもん言えるかよ。はぁ?どうしても知りたいって?……しょうがねえな、ちょっとだけ教えてやるよ。


『相棒の奴、現実逃避しようとしておかしくなっているな……』


 ドライグが何か言っているが無視だ、無視。まず朱乃さんだが一言で言うと凄かった、指が沈むんだもん、ハンパじゃないね。堕天使の女性は男を堕落させるためにそういう身体に成長しやすいと朱乃さんは言っていたがそれにしてもヤバいだろう。
 

 次にアーシアだが朱乃さんと比べれば劣るように感じるが朱乃さんが凄すぎるだけでアーシアも十分に柔らかかった。
 

 最後に小猫ちゃんだが彼女は胸が小さい事を気にしているようだったがちゃんと女性らしい膨らみは存在していた、というよりも小猫ちゃんが一番エロかった。甘い声を出しながら上目遣いで俺を見つめてくる小猫ちゃんを見てマジで理性が消えかけたほどだ。


 一瞬そういう事をしようと思ったが必死で欲望を抑え込んで3人を抱きしめて無理やりベットに倒して眠らせた。3人は不服そうな表情を浮かべていたが流石に欲望のまま襲い掛かるのは嫌だったので我慢してもらった。


(まあそのせいで寝不足になっちまったんだけどな……ふぁぁぁ……)


 俺の疲れたような姿を見ていた桐生は怪訝そうな顔をしていたが、不意にニヤリと笑うと俺に耳打ちをしながらボソッと何かを話してきた。


「もしかして……アーシアとお楽しみだった?」
「んなッ!?」


 桐生の発言に俺はつい声を出して席を立ちあがってしまった、放課後とはいえ教室にはそれなりに人が残っていたので全員が変な奴を見るような目で俺を見ていた。俺は顔を赤くしながらペコリと頭を下げて再び席に座り桐生に顔を近づけて小声で文句を言った。


「おい、桐生!いきなり変な事を言うんじゃねえよ!」
「えー、だってアーシアもなんか熱の籠った視線を兵藤に送ってるしこれは何かあったんじゃないかと思わない方がおかしいじゃない」
「ぐっ……」


 確かに今日一日はアーシアに熱の籠った視線を送られていたがこいつ、それに気が付いていたのか……


「それで、実際はどうなのよ?」
「俺は何もしてないよ。確かにそういう雰囲気にはなったがその時俺は避妊具を持っていなかったんだ、欲望のままアーシアを傷つけるような事はしたくない」
「へ~……やっぱ兵藤ってしっかりしてるね、今時の男女なんて大抵その場の雰囲気で流されちゃう事も多いけどあんたはアーシアを傷つけないように考えれるなんて偉いと思うわ」


 バシバシと背中を叩いてくる桐生だがまさか小猫ちゃんと朱乃さんもその場にいたとは思ってはいないだろう。だから褒められても正直複雑な気分だ。


「お二人とも、何を話しているのですか?」


 そこに外にある自動販売機にジュースを買いに行っていたアーシアが現れて会話に入ってきた。


「んっふっふ、アーシアの彼氏はしっかりしてるねって話してたの。アーシア、あんた、すっごい愛されているよ」
「ふええ!?イッセーさんが私を!?……そんな、嬉しいけど恥ずかしいですぅ……」


 いやんいやんと体をクネクネさせるアーシア、桐生の奴、純粋なアーシアで遊ぶなってのに……


「失礼します、イッセー先輩はいますか?」
「お、小猫ちゃんじゃないか」


 教室の後ろ側のドアが開いて小猫ちゃんが入ってきた、小猫ちゃんが現れるのを見たクラスメイト達は騒ぎ出した。


「イッセー先輩、まだ教室にいてくれたんですね」
「ああ、後少し経ったら家庭科室に向かおうと思っていたんだけどな」
「ちょうど良かったです、実は部長がイッセー先輩とアーシアさんを呼んでいまして……」
「リアスさんが?何か用事なのか?」
「ここではちょっと……」


 ふむ、小猫ちゃんが言いずらそうにしているという事はここでは話せない内容なんだろう。


「分かった、直に旧校舎に向かうよ」
「ありがとうございます、私は外で待っていますね」


 ペコリと頭を下げた小猫ちゃんが教室から出ていく、俺はアーシアを連れて旧校舎に向かった。










「すみません、イッセー先輩、アーシアさん。部活があったのに無理を言って付いてきてもらって」
「気にしなくていいさ、リアスさんが俺たちを呼んでいるって事は何かあったって事だろう?」
「私も詳しくは知らないんですが、どうやら教会の関係者が訪ねてきたらしいんですよ」
「教会の関係者……ですか?」


 外で待っていた小猫ちゃんと合流した俺とアーシアは、小猫ちゃんから何の用でリアスさんが俺たちを呼んだのか聞いてみたが、どうやら教会の関係者とやらが絡んでいるようだ。でも教会か……


「アーシアに関係する事じゃないだろうな?」


 教会はアーシアを魔女として追放した、それで終わりだと思っていたがまさかまだアーシアに何かしようとしているんじゃないだろうな?


「いえ、どうやらアーシアさんのお知り合いらしくて……ゼノヴィアという方を知っていますか?」
「ゼノヴィアさん!?ゼノヴィアさんが来ているんですか!?」


 ゼノヴィアという人物の名を聞いてアーシアが嬉しそうにその名を叫んだ。


「知り合いか、アーシア?」
「はい!ゼノヴィアさんはエクソシストで私が教会にいた頃に一度だけ私の元を訪れたことがあったんです、その時に酷い怪我をしていて私が治したんですが私の事を聖女ではなく普通の人間として接してくれた数少ない人です。それ以来は出会えず私が教会を追放されてからはそれっきりだったんですがこの町に来ていたんですね」


 アーシアが嬉しそうに話すあたり悪い人物ではなさそうだな。


「つまりゼノヴィアという人物がアーシアに会いたがっているという事で俺たちを呼んだのか?それだったら俺は行かなくてもいいと思うが……」
「ゼノヴィアさんはアーシアさんに会いに来たわけじゃないそうです、ここに来る最中に偶然アーシアさんの姿を見たゼノヴィアさんが無理を言って会わせてほしいと言ったんです」
「そういえばさっきジュースを買いに行く途中でフードを被った2人にすれ違いましたがその人たちの一人がゼノヴィアさんだったんですね」
「私たちはお二人と親交があったのでこうして迎えに来ました。因みにイッセー先輩も呼んだのはゼノヴィアさんが訪れた本当の目的の為です」
「本当の目的?取りあえず旧校舎に行ってリアスさんから詳しい事情を聴くことにするか」


 詳しい事はリアスさんに聞く事にして俺たちは旧校舎のオカルト研究部の部屋の前まで来た。


「部長、イッセー先輩たちを連れてきました」
『小猫、ご苦労様。入ってもらっても大丈夫よ』


 小猫ちゃんが部屋の扉を開いて中に入る、そこにはリアスさんや祐斗、朱乃さんといったいつものメンバーに白いフードを被った二人の人物がソファーに座っていた。


「ッ!?アーシア!!」


 フードを被った一人がアーシアを見て勢いよく立ち上がった、すると被っていたフードが取れてその人物が凛とした美少女だったと知ったがそれ以上に驚いたことがあった。


(なんだ、あの格好は……!?ピッチピチじゃねえか!?)


 フードの下は身体のラインがくっきりと浮かぶくらいのピッチピチの黒いスーツだった。なんだ、あのエロい恰好は!?まさか教会っていうのはああいうのが趣味なのか!?
 俺が教会の使いである女性の恰好に驚いていると、女性はアーシアの元に行きアーシアを抱きしめた。


「アーシア!ああ、本当に君なのだな!」
「ゼ、ゼノヴィアさん、苦しいです~」
「あ、すまない。だがどうしても喜びが抑えきれなかったんだ、あの時君に助けてもらっておきながら私は何もしてやれなかった、君が追放されたと知った時はもう会えないと思っていたがまさかこの地で君に会えるなんて……これも主の導きだな」
「ゼノヴィアさん……ご心配をおかけしてごめんなさい」
「いいんだ、こうしてまた会えたんだから」


 ……良かったな、アーシア。


「ゼノヴィア、その子があなたが昔お世話になったっていう子なの?」
「ああ、この子がアーシア・アルジェント。かつて聖女と言われていた子だ。それにしても教会の上層部の奴らめ、悪魔を治しただけでアーシアを魔女にして追放するとは……シスター・グリゼルダの言う通り堅物ばかりだな」
「まあそれについては同意だけどあんまりそういう事は口に出さない方がいいわよ?ただでさえあなたって思った事をハッキリと言ってしまう性格なんだから」


 ふむ、どうやらこの二人は教会の上層部とやらに不信感を持っているようだな。教会の関係者と言うと神を信仰しすぎてそれ以外に盲目的になっているイメージがあったが勘違いのようだったな。


「えっと……話に入ってもいいか?」
「おや、そういえば君は誰だ?悪魔ではないようだが……」
「ゼノヴィアさん、この人は私を保護してくれたイッセーさんです」
「なんと、君がアーシアを助けてくれたのか。私はゼノヴィア、教会のエクソシストだ。アーシアを助けてくれたことを心から感謝している」
「兵藤一誠だ。気にすることは無いさ、アーシアには色々と助けてもらっているからな」
「そうか、アーシアはいい人物に助けられたようだな」


 ゼノヴィアか……中々いい奴だな、これは教会についての印象を変えた方が良さそうだ。


「……一誠?」
「うん?今俺を呼んだか?」


 ソファーに座っていたもう一人の教会の使いの人物がボソッと俺の名前を呟いたことが分かったので返事をする、すると俺の名を呟いた人物は慌てた様子で手を振った。


「あ、ごめんなさい!知り合いの名前に似ていたからつい……私も自己紹介しなくちゃね」


 声も女の子のものだし私と言ったからこの人も女性なんだろう、フードを被った女性は立ち上がると被っていたフードを取って素顔を曝した。栗色の髪をツインテールにした可愛らしい美少女だった。でも身体はゼノヴィアと同じくらい発達しており目のやり場に困ってしまう。
 というか教会のエクソシストってスタイル抜群の美少女ばっかりなのか?やっぱりこれ、少し誰かの趣味が入っていないか?


「初めまして、私は紫藤イリナといいます。あなたの名前は?」
「……イリナ?」


 俺はその名を聞いて心臓が掴まれたかのようなくらい動揺した。嘘だろ、まさか、そんな……


「あれ?どうかしたの?」
「イッセーさん?」


 皆が心配そうな表情で見つめてきたので、俺は動揺を抑え込んで自己紹介をした。


「あ、ああ、すまない。俺は兵藤……兵藤一誠だ」



―――――――――

――――――

―――
 



「なるほど、エクスカリバーという聖剣が奪われたという訳ですか」


 リアスさんやゼノヴィアから詳しい事情を聴いた俺は話を纏めてみた。カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われたらしい。 

 エクスカリバーといえばゲームや漫画を嗜んでいる人物なら名は知っているという位の有名な聖剣だ。元々は一つの剣だったが大昔の戦争で折れてしまったらしい。その折れた破片を集めて錬金術で新たに聖剣を7本生み出したようだが、そのうちの一つは行方が分からなくなっており6本のエクスカリバーを教会がそれぞれの場所で管理していたようだ。


「私が所持しているのは『破壊の聖剣』という物だ。単純な破壊力なら7本の中でも一番強い」
「私のは『擬態の聖剣』といって自由自在に形を変えられるの。こんな感じでね」


 ゼノヴィアとイリ……紫藤はお互いの獲物を取り出して俺たちに見せてくれた。神々しい聖なる波導を感じた俺は少し身震いをした。俺でさえ身震いをする聖剣か、悪魔のオカルト研究部の皆はまさに天敵を見せつけられたような気持ちなんだろうな。いうなれば足を怪我したシマウマが迫り来るライオンの群れを見るような心境か?


「奪われたエクスカリバーの事は分かった。でもそれがこの町とどういう関係があるんだ?」
「奪ったのは堕天使……『神の子を見張る(グリゴリ)』だ」


 グリゴリ……堕天使アザゼルをトップとする巨大組織か。そういえば前にアーシアを使って何かをしようとしていたレイナーレという堕天使がアザゼルという名を呟いていたな。


「堕天使の組織に聖剣を奪われたの?明らかな失態ね」
「返す言葉もないよ。奪った主な連中は既に把握している、グリゴリの幹部コカビエルだ。そいつが今この町に潜伏している」
「コカビエル……かつての戦争を生き抜いた歴戦の戦士じゃない。本当にそいつがエクスカリバーを奪ったの?」
「襲撃に合った際、生き残った者がそう発言した。間違いないだろう」


 コカビエルか、名前は知っているが実際に会った事は無いな。ドライグ、そいつは強いのか?


『コカビエルは堕天使の中でもかなりの強さを持っている、しかも戦闘狂だ。今回の事件も大方戦争を起こしたいからおこなったのではないか?』


 脳内でドライグがそう説明してくれた。しかし面倒くさい奴だ、戦争がしたいなら一人で戦っていればいい、それなのに何の関係もない一般人が住むこの町を巻き込もうとするとはな。


「堕天使側には確認したの?もしかしたらコカビエルの独断の可能性もあるわ」
「……確認はしていない」
「……えっ?」
「確認はしていないんだ。教会の上層部は今回の事件を隠したがっている。エクスカリバーを奪われたなどと教徒たちに知られれば大きな責任を払わなくてはならなくなる、だから秘密裏に解決したいんだ。このことはごく一部しか知らされていない、襲撃に会った際もエクスカリバーを守り今は隠していると発表している」
「ふ、ふざけているの!?一歩間違えれば戦争になりかねない状況なのよ!自分たちの保身の方が大事だと言うの!?」


 リアスさんは怒りを露わにするが無理もないだろう、本来ならこのことを堕天使側にも話して確認を取らなくてはならない。 
 もし堕天使側が指示したことならそれに対してどう行動しなければならないか考えなけらえばならない、だが堕天使側が知らなければ今回の事件はコカビエルの独断と分かるのでトップが何らかの責任を取ることになるだろうが戦争になる可能性は低くなる。
 まあ堕天使側に嘘をつかれたらどうしようもないが上がすることといえばまずは状況の確認だろう。なのにそれすらしないで秘密裏に処理しようとしているらしい、まったく人間らしくて感心するぜ。


「教会の上層部はコカビエルが逃げた先を調べ上げ、それがこの町だと分かった。既に何人ものエクソシストがこの町に入り込んでいるが全員が通信を途絶えている、恐らく始末されたんだろう」
「……最近怪しい神父がこの町に入り込んでいると報告はあったから警戒はしていたけど、まさかコカビエルが関係していたなんて思いもしなかったわ」


 リアスさんはまさか聖書に名を残すような大物がこの町に入り込んでいたとは思っていなかったようで大きな動揺を見せている、まあこればかりは俺も同意だ。


「それで私たちが今回魔王の妹であるあなたの元を訪ねたのは、事件解決の為に協力を要請したいからだ」
「協力?勿論この町を管理する者として協力するけど、それは教会上層部の判断なの?確か秘密裏に処理したがっているんでしょう?」
「いや本部からは私達二人でエクスカリバーを奪還しろと言われている、だからこれは私とイリナの独断だ」


 独断だって?組織の意向に逆らう気なのか?


「どうして独断で私たちに接触したの?そんなことをしたら貴方たちが罰を受けることになるのよ?」
「二人だけでコカビエルをどうにかできると思っているほどうぬぼれてはいない、少しでも任務の成功率を上げるためにこうすべきだと判断した。何より今回の事件はこちらの落ち度でありながらそれを隠して無断でこの地に足を踏み入れている、下手をすれば悪魔とも敵対することになってしまうと思いこうやって接触したという訳だ」
「……貴方たちの思いは良く分かったわ。この町を守る為に私たちも協力させてもらうわ」
「感謝する」


 どうやら話は纏まったみたいだな。


「イッセー、本来あなたは何も関係ない一般人だけど今回の事件はかなり危険なものになるわ。だから……」
「力を貸してほしいって言いたいんでしょう?勿論協力しますよ、この町に住む者としてね」
「ありがとう、イッセー」


 リアスさんはニコッと微笑みながら俺に礼を言った、そして真剣な表情を浮かべてオカルト研究部の皆に指示を出した。


「祐斗、小猫。あなたたちはイッセーと協力してこの町の見回りをしなさい、万が一コカビエルを発見しても直接戦闘はしないで直に私に知らせる事。それと明日から学校は休んでもいいから今日は夜間も見回りを続けて頂戴」
「「了解しました!」」
「朱乃、あなたはこのことをソーナ達に知らせてちょうだい、彼女たちにも協力してもらうわ。唯イッセーの事は伏せておいてね」
「ふふ、勿論ですわ。それでは行ってきます」


 朱乃さんはそう言うと部室を出ていった。


「あなたたちはどうするの?」
「私たちも兵藤一誠についていこう、この町の地理は知らないので一緒に行動した方がいい」
「それでいいかしら、兵藤君?」
「……ああ、俺は構わないぜ、よろしくな」


 指示を受けた俺たちは早速行動しようとしたが、俺だけリアスさんに呼び止められたので他の皆を外に出してリアスさんと二人きりになった。


「イッセー、祐斗の事なんだけど……」
「祐斗がどうかしたんですか?そういえばさっきから思いつめた表情を浮かべていたので気にはしていたんですがもしかして聖剣に何か関係があるんですか?」
「流石に鋭いわね、その通りよ。あの子は過去に色々あって聖剣を憎んでいるの。流石に何があったのかはあの子の許可無しでは話せないわ、あなただったら祐斗から話すと思うけど今はこのくらいしか言えないの。ごめんなさい」


 祐斗の様子から何かあるとは思っていたが結構な因縁がありそうだ。聞いてみたい気もするが自分の知られたくない過去を勝手に話されるのは嫌だろう、あいつが話してくれるまで待つことにしよう。


「分かりました、祐斗の事は任せてください」
「それともう一つ話があるの……今回の事は魔王様に報告するわ」
「……そうですか」
「ごめんなさい、あなたに迷惑がかかるかも知れないけどコカビエルが出てくるとなれば報告しない訳にはいかないの」
「構いません、リアスさんの判断は間違っていませんよ。遅かれ早かれ接触することになるでしょうしそれが早まっただけです」


 コカビエルがどれだけの強さかは知らないが、もしかしたら俺でも勝てないかもしれない。何より戦争が起きかねないこの状況で魔王に報告しない訳にはいかないだろう。


「……ありがとう、イッセー。あなたには本当にお世話になってばかりね、今度何かエッチなお礼でもしてあげましょうか?」
「うえっ!?何を言っているんですか!あなたには想い人がいるんでしょう!?」
「ふふっ、冗談よ。皆をお願いね」


 リアスさんはウィンクしながら部室を出ていった。俺はちょっと顔を赤くしながら外で待っている皆の元に向かった。




―――――――――

――――――

―――


side:祐斗


 イッセー君と合流した僕たちはゼノヴィアさんたちにこの町の地理を知ってもらうためにイッセー君の家に向かっていた。どうしてイッセー君の家に向かっているのかというとこの町の地図をイッセー君が持っているらしいからだ。


「これは君の家か?随分と大きな家に住んでいるんだな」
「すっごい豪邸だね!一人で住んでいるの?」
「いや、アーシアと小猫ちゃん、朱乃さんも住んでいる」
「はい、ちょっと事情がありまして」


 ゼノヴィアさんとイリナさんの言葉にイッセー君と小猫ちゃんが答えた。流石に3人と交際していて同棲までしているなんて話せないよね。


「よし、皆、まずはこれを見てくれ」


 イッセー君が広げたのは大きな地図だった、この町の全体が書かれており至る所に赤ペンで丸が付けられていた。


「この赤い丸が付いている場所は人目の付かない森や廃墟がある場所だ、まずはこの辺りを手分けして捜索していこう」
「班分けはどうするんだい?」
「そうだな、ゼノヴィアと紫藤はこの町の地理に詳しくないからオカルト研究部の誰かと行動を取った方が良さそうだ。ここは万が一の時の安全も考えてスリーマンセルで行こう。メンバーは俺、祐斗、紫藤。次に小猫ちゃん、アーシア、ゼノヴィアのチームでどうだ?」
「アーシアと一緒か、なら気合を入れていかないとな」
「ゼノヴィアさん、お願いしますね」
「僕は異論はないよ」
「私もそれでOKだよ」


 全員がイッセー君の言ったチーム分けに賛成と言ったが、小猫ちゃんだけ不満そうな表情を浮かべていた。


「イッセー先輩、どうして私はイッセー先輩のチームじゃないんですか?」
「えっと、俺と小猫ちゃんは鼻が利くだろう?察知タイプが同じチームにいるよりは分けたほうがいいと思ったんだ」
「うう~、理屈では分かっていますが離れるのは寂しいです……」


 小猫ちゃんはイッセー君と離れるのが相当嫌みたいだね、もしかしたらイリナさんの事が気になるのかな?イッセー君はイリナさんにだけ何処か余所余所しい態度を取っているから僕も気になっていたんだけど何か事情がありそうだから簡単には聞けないんだよね。でも一緒のチームにしたって事は何か考えがあるのかな?
 話が纏まるとイッセー君は懐から白いリングを取り出してアーシアさんに渡した。


「イッセーさん、これはなんですか?」
「これは付けると透明になる魔道具だ、ルフェイから貰ってきた。これを付けていれば文字通り透明人間になれる」
「どうしてそんな物を付けるんですか?」
「ソーナ会長にも話がいっているのなら生徒会のメンバーも見回りに来るかもしれない、その時に俺たちが一緒だと言い訳ができないからな」


 そうか、さっき部長が朱乃さんにソーナ会長にもコカビエルの事を伝えるように言ったから生徒会のメンバーも出てくるかもしれない、彼らに見つからないようにするために透明になる魔道具を用意したんだね。


「生徒会というのは同じ悪魔の仲間だろう?どうして姿を隠す必要があるんだ?」
「俺たちの事はオカルト研究部の皆にしか話していないんだ、リアスさん以外の上級悪魔が俺やアーシアを知ったら何をしてくるか分からないから念の為に姿を隠すって訳さ」
「悪魔にはなりたくないのか?普通の人間がどうして悪魔と一緒にいるのか気になってはいたが、何か事情があるようだな」
「まあ私たちはエクスカリバーを取り戻す間だけの関係だからあなた達の事情に首を突っ込んだりはしないわ」
「ありがとうな、ゼノヴィア、紫藤」


 教会の2人はイッセー君達の事情を察してそれ以上は何も聞かなかった。


「姿が消える……アーシアさん、それを貸してもらってもいいですか?」
「えっ?別に構いませんがどうするんですか?」


 小猫ちゃんがアーシアさんからリングを貰って腕にはめる、すると小猫ちゃんの姿が消えてしまった。


「お、どうやらちゃんと機能したみたいだな。これルフェイが新しく作った魔道具だって言っていたからちょっと心配だったけど問題はなさそうだ」
「服も一緒に消えちゃうんだね」
「何だ、もしかして祐斗は服だけ消えないなんていうベタな展開を期待していたのか?」
「ええっ!?そんな事期待していないよ!」
「いいって隠さなくても。いやー、祐斗も男の子だねぇ」
「うう~、イッセー君、意地悪だよ……」


 ニヤニヤとしていたイッセー君だったけど、急に体をビクンとさせて顔を赤くしてしまった。


「ど、どうしたの?イッセー君?」
「か、体に何か感触が……ひえっ!誰かが触っているぞ!」
「も、もしかして小猫ちゃんですか?」


 アーシアさんが小猫ちゃんの名を言うが小猫ちゃんは反応しない。でもイッセー君は触られている感じがするらしいし姿が消えている小猫ちゃんが何かをしているとしか思えないんだけど何をしているんだろう?


「ふふ、顔を真っ赤にする先輩、とっても可愛いです」
「や、やっぱり小猫ちゃんか!?何をやっているんだよ、人前でこんな……あひっ!?」
「私の姿は見えないんですから何をされているのか何て分かりませんよ。それに恥ずかしいんだったら先輩も消えてしまえばいいんです」


 白いリングがフワリと浮いてイッセー君の腕にはまった、するとイッセー君の姿も消えてしまった。恐らく姿の見えない小猫ちゃんがリングを持ってイッセー君の腕にはめたんだろう。


「ほら、これで恥ずかしくないですよ。もっと触っちゃいますね♡」
「うひっ!?や、やめろって……流石に、うお!?お、怒るぞ、あうっ!?」
「そんな可愛い声を出していたら全然怖くないですよ?ほら、もっと可愛らしい声を聞かせてください」


 な、なにをしているんだろう……姿が見えない分変に意識しちゃうよ……


 それからしばらくして小猫ちゃんとイッセー君がリングを外したから二人の姿が見えるようになったんだけど……


「ふふ、いい気分です♡」
「……」


 妙にツヤツヤした小猫ちゃんと服装が乱れて顔にキスマークがついたイッセー君を見て僕たちは何とも言えない気分になっていた。ゼノヴィアさんはアーシアさんの目を隠しながら凝視しているし、イリナさんもキャーと言いながら顔を両手で隠している。


「だ、大丈夫かい?イッセー君……?」
「……ああ」
「その、なにされたの?」
「……今は何も聞かないでくれ」
「う、うん、分かったよ……」


 その後僕たちは落ち込むイッセー君を慰めて街の見回りに向かった。
 
 
 
 

 
後書き
 最近小猫ちゃんを暴走させがちですが、これはアニメの小猫ちゃんが可愛いのが悪い。よって自分は悪くないです、多分。


 今回は次回予告は無しです、それでは。 

 

第37話 教会の闇、祐斗の過去とイッセーの幼馴染

side:祐斗


 イッセー君とイリナさんと同じチームを組んだ僕は、現在駒王町の見回りをしている最中だ。僕たちは闇夜の中、怪しい場所や人気のない場所を捜索しているんだけど未だに成果はない状況だ。気が付けばもうすぐ朝日が昇る時間になっていた。


「コカビエルという奴はよほど用心深い奴なのかもしれないな」
「どうしてそう思ったんだい?」
「血の匂いでもするかと思ったが俺の嗅覚でも変わった匂いを感じることが出来ない、これは徹底されているな」


 イッセー君の嗅覚は警察犬をも凌ぐ精度を持っている、そのイッセー君でも匂いを嗅ぎ取れないという事は敵はかなり手ごわいという事なんだね。


(しかしいくら匂いを消したといっても、俺の嗅覚でも捕らえられなくすることなんてできるのか?グルメ界には匂いを消して俺でも嗅げないぐらい無臭にしてしまうフラグレンスなどもある。だがここはグルメ界じゃない、だからそういった道具を使ったとは思えないが……)


 イッセー君は右手を顎に添えて何かを考えこむようにしていた。どうしたのか気になって声をかけようとしたけどイッセー君は急に透明になるリングを付けて姿を消してしまった。


「イ、イッセー君?」
「静かに……誰か近づいてくる」
「えっ?」


 イッセー君がそう言った2分後に何者かが空から降りてきた。


「よう、木場」
「匙君!」


 空から降りてきたのはソーナ会長の眷属である匙元士郎君だった。


「姫島先輩から話を聞いたから会長の指示で町の見回りを交代しに来たんだ。そっちの姉ちゃんが教会の使いか?俺は匙元士郎っていうんだ、よろしくな」
「紫藤イリナよ、よろしくね」


 イリナさんに自己紹介した匙君は次に僕に話しかけてきた。


「交代するって言っていたけど詳しく教えてくれるかな」
「グレモリー先輩と会長が話し合って俺たち生徒会が朝から夕方までの見回りをすることになったんだ。俺は木場達に交代を伝えるために来たって訳さ、塔城さんたちの方には花戒が向かったぜ」


 なるほど、僕たちが夜間の見回りをして生徒会が昼間の見回りに当たるんだね。コカビエルがこの町に潜伏している以上一瞬も気は抜けないとはいえ休みもなしに見回りを続けるのは悪魔でも厳しいからね。


「それで何か発見は出来たのか?」
「いや、僕たちの方では何も発見できなかったよ」
「そうか、敵は見つかっていないのか。まあ今から俺たちが見回りをするから木場達は休んでくれ」
「そうだね、よろしくお願いするよ」


 ここからは匙君に任せて僕たちは休息を取ることにした、イッセー君は姿を消しているので匙君は気が付いていないが彼は僕たちの背後で静かにしていた。


「それにしてもよ、木場ってあんなに強かったんだな」
「えっ、急にどうしたの?」
「いやさ、俺前に会長たちと一緒にグレモリー眷属とライザー眷属のレーティングゲームを見たんだけどほとんど圧倒して勝ったようなものだったからスゲェなって思ってたんだ。一体どんな特訓をしたらあそこまで強くなれるんだ?」
「えっと、まあ企業秘密で……」


 一瞬何度も地面に叩きつけられたり吹き飛ばされたりするのを繰り返したり、10倍の重力の中格上の存在と死闘をしたりすれば自然と強くなれるよと言いそうになったけど止めた。


「でももしグレモリー先輩と会長がレーティングゲームをすることになったら、その時は俺たちが勝たせてもらうからな!」
「あ、うん、お手柔らかにね」


 どうやら匙君は僕をライバル視しているようだね、まあ同期では数少ない男性眷属だし親近感が湧くのかな?イッセー君は眷属じゃないからね。


「へー、木場君ってそんなに強いんだ。私もちょっと興味が湧いてきたかも」
「イリナさんは強くなりたいの?」
「勿論よ、強くなって主の為に戦うのが私たちエクソシストなんだから!……それに強くなくちゃ大切な人は守れないもん……」


 ……?最後の辺りから声が小さくなって聞こえなかったけどイリナさんが悲しそうな顔をしていたような気がした。


「大丈夫だぜ、紫藤さん!俺がいればコカビエルだろうとなんだろうとどんな敵が出ても怖くなんかないさ!俺は会長に期待しているって言われた男だからな!」
「あはは、じゃあ頼りにしているわね」


 匙君はどうも可愛い女の子に弱いようだ、イリナさんにカッコイイところをアピールしているし部長が匙君を褒めた時もデレデレしていたからね。まあ年頃の男の子だししょうがないとは思うけど慢心するのはいけないことだ。


「匙君、自分に自信を持つのはいい事だけど相手の強さを見誤ったら駄目だよ」
「何だよ、木場。お前随分と弱気なんだな」
「弱気の方がいいくらいさ、その方が危険を察知できるからね」


 匙君は悪魔になって自信が付いたようだけどちょっとその力に過信しすぎている傾向がある、僕もある目的の為に部長の眷属になったがその時悪魔の身体能力を実際に体験して己惚れていた部分があった。更に自分より弱い相手とばかり戦っていて天狗になっていたのかもしれないと今なら思う。


(でも僕の知らない所で自分より強い存在なんていくらでもいたんだ)


 イッセー君と出会ってから僕は自分よりも格上の存在を何回も目にしてきた、昔の僕は自分の実力を見誤った道化……まさに井の中の蛙大海を知らずということわざ通りの男だった。
 そんな僕だったけどイッセー君やココさん、サニーさんたちといった強者やグルメ界の過酷な環境を乗り越えたり屈強な猛獣たちと戦いを繰り広げることで成長できたと思う。もしイッセー君と出会っていなかったら聖剣使いのゼノヴィアさんやイリナさんを見た瞬間に怒りで視野が狭くなってしまっていただろう。
 匙君の気持ちはよくわかる、強い力を身につければ人は傲慢になりやすい。でも己惚れるのと自信があるとでは全く違う、出来れば彼には冷静な判断をしてもらいたいと思ったんだ。


「まあ安心しろよ、無茶する気はねえからよ。俺はある目的を果たすために会長の眷属になったんだからこんな所で死ぬわけにはいかねえんだ」
「匙君の目的?よく分からないけどそれだけの意気込みを見せるって事は相当強い思いが込められた目的なんだね」
「おうよ、俺の人生の目標だからな。それじゃ俺はそろそろ生徒会のメンバーたちと合流して町の見回りに入るな」
「うん、気を付けてね」
「頑張ってね、匙君」


 匙君と情報を交換して彼は去っていった、すると透明状態になっていたイッセー君が姿を現した。


「あいつがソーナ会長の新しい眷属か。少し調子に乗っているな、まるで昔の俺を見ているみたいだ」
「えっ、イッセー君も調子に乗っていた時期があったの?」


 戦いの時は冷静なイッセー君が匙君みたいに調子に乗っていた時期があった事を知って僕は驚いた。


「俺だってまだ17歳のガキさ、昔よりはマシになったが当時は酷かったぜ。自分の力を過信して猛獣に殺されそうになったことも何度もある」
「意外だね、君にもそういう時期があったんだ」
「ああ。だからあいつを見てると少々危なっかしく思っちまうんだ。何とかしてやりたいがあいつはソーナ会長の眷属だから接触できないしな……」
「……ふふっ」


 匙君に何かしてあげられないか考えるイッセー君を見ていて、僕は自然と笑みを浮かべてしまった。イッセー君は本当にお人よしなんだなって思うよ、何の接点もない匙君の事を心配しているんだからね。
 でもそういうイッセー君だから小猫ちゃんが好きになったんだと思う。昔の小猫ちゃんは人見知りが激しくて眷属以外の人とは話すのが苦手だった、でもイッセー君はそんな小猫ちゃんに手を差し伸べて勇気を与えてくれた。そして部長や朱乃さんもイッセー君を信頼していくようになった、勿論僕もね。


「あのー、もうそろそろいいかしら?」


 あ、しまった。ここにはイリナさんもいたんだった、もしかして僕たちの会話を聞かれちゃったかな?


「猛獣がどうとか言っていたけどどういうなの?」
「ああ、漫画の話さ。俺は漫画やアニメを好んで見ているからそう言う話をしていただけさ」
「へー、兵藤君は漫画とか好きなんだ。私も小さい頃はよく読んでいたなぁ」


 イッセー君が上手い事誤魔化してくれたので何とか話を逸らすことが出来た。その後はイッセー君の家に戻り小猫ちゃんたちと合流した。


「お帰りなさい、イッセー先輩!」


 既に小猫ちゃんたちは帰ってきていたようで、イッセー君の姿を見た小猫ちゃんが勢いよく彼の胸に飛び込んだ。


「ただいま、小猫ちゃん。そっちは何か収穫はあったか?」
「いや、残念ながらこちらでは何もつかめなかった」


 ソファーに座っていたゼノヴィアさんがイッセー君の質問に答えた。よくみると彼女の膝を枕にしたアーシアさんがソファーに横たわって眠っていた。


「アーシアは寝てしまっていたか、もう朝方だし無理もない。シャワーでも浴びて皆も眠った方がいいだろう」
「あ、なら私がお風呂を焚いておいたので入ってください。私とゼノヴィアさんとアーシアさんは先に入りましたので後は先輩方だけです」
「おお、それはありがたい。ありがとうな、小猫ちゃん」
「えへへ……」


 小猫ちゃんはイッセー君に頭を撫でられて嬉しそうに笑った。


「じゃあ先に紫藤から入ってくれ、俺と祐斗で最後に入るからよ」
「分かったわ、日本のお風呂なんて久しぶりね~」


 その後はゼノヴィアさんとアーシアさんが用意された部屋で就寝してイリナさんがお風呂から出てくるまで僕とイッセー君はゲームをして遊ぶ事にした。小猫ちゃんの姿が見えないけどもう寝ちゃったのかな?


「はあ~……良いお湯だったわ」


 お風呂から出てきたイリナさんがリビングに来た、肌はほんのりと赤くなってちょっと色っぽい。


「紫藤、湯加減はどうだった?」
「もう最高だったわ、やっぱり日本のお風呂は最高ね。ずっとシャワーばかりだったからなおさらだわ」
「随分と風呂に慣れているようだが紫藤は日本暮らしの経験でもあるのか?」
「うん、小さい頃はこの町に住んでいたの」
「!?ッ……そうか、なら久しぶりの風呂に入れてよかったな」


 おや、一瞬イッセー君の表情が歪んだような気がしたけど気のせいだったかな?


「よし、じゃあ俺たちも入ってさっさと寝るか」
「そうだね、それじゃイリナさん、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」


 僕たちはイリナさんと別れて浴室に向かった。


「うわ~、結構広いんだね」
「広い風呂が好きだからちょっと奮発してみたんだ。結構いい出来だろう?」


 イッセー君の家には地下室があり浴室は地下にあったんだけどちょっとした銭湯みたいだね。


「よし、じゃあ最初に体を洗うか。祐斗、俺が背中を洗ってやるからそこに座れよ」
「えっ、いいのかい?」
「偶には裸の付き合いをしてもいいだろう?遠慮すんなって」
「……じゃあお願いするね」


 イッセー君に背中を洗ってもらい、次に僕がイッセー君の背中を洗う事になった。イッセー君の背中は傷だらけでとても大きかった。


「イッセー君、レーティングゲーム前の合宿でも思ったけど身体中傷だらけなんだね」
「ああ、美食屋の修行はかなり厳しいものだったからな。IGOが所要するビオトープで生活したりコロシアムで戦ったりしたこともある」
「コロシアムってマンサム所長と出会った第1ビオトープにあったアレのこと?イッセー君は昔から凄い事をしてきたんだね。でもどうしてそこまでそこまで過酷な修行をこなせたんだい?辛くはなかったの?」


 僕はついそんな質問をしてしまった、僕が受けてきた修行もかなりハードなものだったけど、イッセー君が昔受けた修行はそれ以上に過酷なものだと彼の話から推測できた。でもそんな過酷な試練を幼かったイッセー君がどうやって乗り越えたんだろうとふと思ってしまったんだ。


「……そうだな、あの頃の俺は空っぽも同然だった、俺は親父に拾われて暫くは錯乱状態にあったらしいんだ、少し立って落ち着きはしたが何をするにも無気力で本当に唯生きているだけだった。自殺も考えたが結局できなかったよ、親父に止められたんだ」
「それは……」


 ……無理もないよ、両親を失ったという悲しみを背負ったイッセー君がいきなり今みたいな前向きな性格になれるはずがない。苦しくて悲しくてどうしようもなかった時にいきなり異世界に来てしまえば混乱するのも無理はない話だ。
 

「そんな俺を親父は見捨てなかった。兄貴たちに紹介してくれたり慣れない子育てを一生懸命してくれた。そんな親父を見ていて俺は次第に心を許すようになっていた、全てを失った俺にとって親父はまさに生きる希望だった」
「……」
「親父には夢があった、それはいつか世界中の人々から飢えが無くなり平等に食べ物が食べられる世界にしたいっていう途方もない大きな夢だった。実際にそれはグルメ界でも難しい事だ、あの世界でも貧困の差は存在している、並大抵の事では果たせない。でも俺からすれば親父の夢が凄く輝いて見えた、俺も親父の力になりたいと思って美食屋になったんだ。俺はいつか必ずGODを手に入れて親父の夢を叶えて見せる」
「……それがイッセー君の夢なんだね」


 ……話を聞いて良く分かった、僕たちはよく似ているんだ。空っぽだった自分に生きる目的をくれた人がいる事、誰かの為に叶えたい夢があるという事……でも僕の叶えたい夢、いや目的はイッセー君みたいな輝いたものじゃない、それとは真逆のどす黒い身勝手な欲望だから……


「……なあ祐斗、そういうお前は辛くないのか?」
「えっ、何が?」
「……復讐したい対象がすぐ側にいるのにそれを果たせないことがどれだけ辛いのか、俺には理解できないが相当苦しいものなんだろうな」


 ドクンッ……イッセー君の言葉を聞いて僕の心臓は強くなりだした。呼吸も荒くなり動揺してしまう。


「ど、どうして……」
「悪いな、お前の過去の一部はリアスさんから話を聞いたんだ。お前が昔、聖剣と何らかの因縁を持ったとな」
「……部長が僕の事を」
「リアスさんを責めないでやってくれ。あの人はお前の事を本当に案じているんだ、本当ならお前から話があるまでは聞かないでくれと頼まれていたがそれを破ったのは俺だ」
「……イッセー君、僕は君と似ていると思っていたんだ。大切なものを失った事、生きる希望を無くして絶望していた事、そして生きる目的をくれた人がいる事……だから僕は初めて君を見た時に気になっていたんだと思う、自分と同じ思いを持った人間がいるって無意識に感じ取ったんだと思う」


 初めてイッセー君と出会った時、僕は無意識にイッセー君と自分と同じものを感じたんだと思う。だから1年の時からイッセー君を目で追い続けていたのかもしれない。でも今分かった、僕は彼と違う、一緒にするのだっておこがましい、だって僕がしたい事は復讐だから……


「君には知られたくなかった……こんな汚い僕を、嫌われるのが怖かったんだ……」


 僕はポロポロと涙を流して泣き出してしまった。イッセー君は命を大切にしている、前にテリーの母親を遊びで殺したGTロボに凄まじい殺気を送っていた。あの時はGTロボにやられていたから意識が朦朧としていたけどそれだけはハッキリと伝わった。
 そんなイッセー君に僕の目的が復讐という命を奪う行為だと知られれば嫌われると思っていた、それだけはどうしても嫌だった。だってイッセー君は僕にとって初めて出来た親友だから……


「……祐斗」


 イッセー君に声をかけられて僕は心臓が止まりそうなくらい動揺した。何て言われるんだろう、失望したって言われるのかな?突き放されてしまうのかな?そんなマイナスな考えが頭の中に過っていたが、不意に頭に何かが当てられた感触があった。


「イッセー君……?」


 僕の頭に置かれていたのはイッセー君の右手だった。彼は優しく僕の頭を撫でながら悲しそうな表情を浮かべた。


「悪かった、俺がもっと早くお前の事を気にしてやれていたらそこまで思い悩むことは無かったのに何もしてやれなかった。これでダチだなんて言える訳ないよな」
「イッセー君……」
「でもよ、祐斗。俺はお前が復讐したいと思っているのなら俺は力を貸すぜ」


 僕はイッセー君の言葉に驚いてしまった、命を大切にするイッセー君が復讐に手を貸してもいいだなんて言うとは思ってもいなかったからだ。


「確かに俺は食う目的以外で命を奪う事はしないというルールを持っている。だがそれは俺のルールだ、お前がそれに付き合う必要はねえ。それにダチが困っているのなら手を貸すのは当たり前だろう?俺たちは仲間なんだから。だからもう泣くな、男は人前で涙をみせるもんじゃねえぜ。ダチには笑っていてほしいからな」
「イッセー君……」


 嬉しかった……復讐という狂った目的を果たそうとする僕を、イッセー君は受け入れてくれた、力になると言ってくれた。こんな素晴らしい仲間を持てた事に心から感謝した。


「イッセー君、僕、僕はね……」
「だ、駄目です―――――――っ!!」


 僕がイッセー君に自分の秘密を話そうとしたその時だった、湯船から勢いよく水柱が上がったかと思ったらそこに現れたのは湯着を着た小猫ちゃんだった。


「小猫ちゃん、何でここにいるんだ!?」
「先輩、いくら何でもそれは駄目です!BLなんて絶体駄目です!先輩には私がいるじゃないですか!もし先輩がそういう事をしたいのであれば私が受け止めますから!」
「何を言ってるんだ!?こ、こら、くっつくなって!」
「男同士なんて駄目です――――――っ!!」


 小猫ちゃんがイッセー君に詰め寄りイッセー君にしがみ付く、僕たちは湯着を着ていないのでイッセー君は下半身をタオルで押さえて隠してるんだけど興奮した小猫ちゃんがそれを引きはがそうとする。


「ほら、私がお相手をさせていただきますから素直に女の子が良いって言ってください!」
「とにかく落ち着いてくれって!ここには裕斗もいるんだぞ!ちょっ、おい、あ、マズい!あ……」


 イッセー君がタオルを落としてしまいイッセー君