FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
オリキャラ紹介
前書き
オリキャラはこんな感じです。のちのち追記していきます
名前 シリル・アデナウアー
髪色 水色
髪型 肩甲骨までかかったセミロングで初期のウェンディ同様何もいじっていないがアホ毛がある
好きなもの ウェンディ 甘いもの
嫌いなもの 辛いもの 酸っぱいもの
使用魔法 水の滅竜魔法 水天の滅竜魔法(魔力消耗が激しいが治癒魔法や付加魔法が使えるようになるため割りと使う。が効果はウェンディより落ちる)
年齢 13歳
ギルドマーク 左肩
育ての親 ヴァッサボーネ
身長 ウェンディより少し大きいがかなり細身
その他 ウェンディと同じ化猫の宿所属
女の子みたいな容姿と体型なため気にしている
ウェンディが生まれたときからずっと一緒にいる
ウェンディとは兄妹のようであるがお互いに少し異性としても感じているところがある
治癒能力はウェンディより低いがケガの具合や状況を見る分にはウェンディより優れている
性格は優しいが天然…でも怒るとヤバイ
エクシード
名前 セシリー
色 薄い焦げ茶色
性別 メス
その他 基本はボーッとしていることが多いおっとりとした性格
シャルルとは対比する感じ
好きなもの シリル ウェンディ シャルル
嫌いなもの 辛いもの
後書き
こんな感じでしょうかね?優しい心で見守ってください!!よろしくお願いします
プロローグ
前書き
エブリスタでは書いてないニルヴァーナ編が始まる前の話をちょっと…
「シリル!!なぶらこっちに来なさい」
俺は魔導士ギルド化猫の宿に所属している魔導士シリル・アデナウアー
今日はちょっとギルドのテーブルで飯を食べていたのだがマスターに呼ばれたのでご飯を中断してマスターのもとにいく
「はんれんは?はふはー」
「ちゃんと飲み込んでからしゃべりなさい!!」
口に食べ物入れたまましゃべったら後ろから怒られた…まずは飲み込んでっと
「で…なんですか?」
「なぶら」
マスターは酒をコップに注ぎ
ゴクゴクゴク
「そのまま飲むのかよ!?」
瓶のまま酒を飲んだ
「シリル」ザパー
「マスター…お酒を飲み干してから話してください
マスターはいつもこうなんだよなぁ…まぁいいけど
「なぶら…シリル実はじゃな、この間行った地方ギルドの集まりでのことなんじゃが」
ようやくマスターが俺を呼んだ理由を話し出した
「バラム同盟の六魔将軍は知っておるな?」
「名前くらいなら聞いたことありますよ」
「その六魔将軍が最近不穏な動きをしているらしくてのぉ…それでじゃ」
マスターはコップに酒を注ぎ瓶の酒をラッパ飲みする
「ワシらは六魔将軍を倒す作戦に参加することになった」
「…は?」
六魔将軍を倒す?俺たちが?
「無理じゃないですか?そんなの…だって戦える魔導士なんて俺くらいしかいないのに…」
「なぶら安心せぇ。何もワシらだけで打つ訳じゃない。今回は妖精の尻尾、青い天馬、蛇姫の鱗の3ギルドとの合同任務じゃ。各ギルドから数名代表を出しての任務なんじゃが…うちからはお前になぶら出てもらおうと考えておる」
6年も一緒にいるのにいまだになぶらの意味がよくわからん…とそんなことより
「ちなみに他のギルドはどんな人が来るんですか?」
うちから行くのは多分俺だけだろうし他のギルドの人がどんな人なのかは知っておく必要があるだろう
「なぶら…蛇姫の鱗からは聖十のジュラが来るそうじゃ」
「聖十!?すげぇ!!」
聖十大魔導…このフィオーレ王国の魔法評議院が定めた大陸で優れた魔力を持つ10人にのみ与えられる称号らしい…最近色々あって少々空席があるらしいけど
「青い天馬からは一夜とトライメンズという者たちが来るそうじゃ…そして妖精の尻尾からは妖精女王エルザと氷の魔導士グレイ…そして火竜のナツが来ると聞いておる」
ガタッ
マスターがそういうと突然後ろから誰かがこちらに歩いてくる
「マスター。その任務私も行かせてください!!」
「ウェンディ…この任務はなぶら危険じゃ…シリルに任せ「お願いです!!」」
マスターに藍色の髪の女の子…ウェンディが頭を下げる。俺はそれを見て少し驚く
ウェンディは普段はおとなしい子だからこういう危険な任務には絶対に参加しようとしない。でも今回はこんなに積極的に参加したがるなんて…珍しいなぁ
「ウェンディ…やめておいた方がいいと思うわよ」
「僕もそう思うよ~」
するとまた後ろから声が聞こえるのでそちらを向くとそこには白い猫のシャルルと茶色の猫のセシリーがいた
「大丈夫!!シリルがいるから絶対安心だよ!!ねぇ一緒に行ってもいいでしょシリル~」
「うっ…」
ウェンディが上目遣いで俺を見てくる…ヤバイ可愛い…
「う…うん!!俺がついてるから大丈夫だよ!!マスター!!ウェンディも一緒につれていく!!」
「なぶら…シリルがそういうなら」
「ありがとうマスター!!」
ウェンディは深々と頭を下げる…こういうときは本当に礼儀正しいな
と…それより
「マスター。その任務っていつなんですか?」
「明日じゃ)」
「「は?」」
明日って…急すぎない!?てか地方ギルドの集まりも割りと前にやったような
「もしかしてマスター…忘れてましたね?」
「なぶら…すまん」
マスターはお酒をラッパ飲みして吐き出しながら言う
「まぁいいですけど…それじゃあ明日に備えて俺たち帰ってもいいですか?」
「なぶらいいじゃろ。シリル、ウェンディ。よろしく頼むぞ」
「「はい!!」」
俺たちは明日に備えその日はすぐに家に帰って明日の準備をして眠りについた
後書き
後書きと前書きって初めて書くので何書けばいいかわからないものですね…次回は連合軍と合流します!!よろしくお願いします
連合軍
前書き
連合軍が集結します!!
「シリル~、これから会う人たちって怖くないかなぁ」
俺とウェンディは集合場所に向かって今は歩いている。ウェンディは向かっている最中もいつも通り不安な気持ちでいっぱいのようだ
「大丈夫大丈夫。みんなそんなに悪い話は聞かないから…物はすごく壊すらしいけど」
いや…壊すのは1つのギルドだけだけどね
「妖精の尻尾の人のこと?でも私ナツさんに前からずっと会いたかったんだ~。同じ滅竜魔導士だから」
「ナツさんかぁ。火竜って言われている人だよね~。ウェンディはナツさんに聞きたいことがあるんだっけ?」
「うん!!グランディーネとヴァッサボーネの居場所がわかるかも知れないし!!」
ウェンディはさっきまでの不安な表情から一転明るい笑顔へと変化する
それだけナツさんに会えるのがたのしみなんだろうなぁ。まぁ俺もヴァッサボーネとグランディーネの手がかりがもしかしたら聞けるかもと思うとすごい楽しみだけど
実はウェンディが今回参加したいと言ったのは俺たちの親であるヴァッサボーネとグランディーネの居場所を知ってるかもしれない妖精の尻尾の火竜…ナツ・ドラグニルさんに会うためだったらしい
ちなみにヴァッサボーネとグランディーネは人間じゃない…ドラゴンである
俺たちはドラゴンに言葉や文字…文化などを教えてもらった…しかし7年前の7月7日…ヴァッサボーネとグランディーネは突然姿を消した
そのあと色々あって化猫の宿に入ったのだがそれまではめちゃくちゃ大変だったなぁ…主にウェンディのお守りが…
でも今ではウェンディもずいぶんとしっかりしてるし…色々助けてもらってる
「それに!!今回はシャルルとセシリーに成長した私たちの姿を見せたいんだ!!だから二人はおいてきたんだもん!!」
「あ…そうなの?」
ウェンディが手を握りしめながら言う…そうか…シャルルとセシリーにか…でも…
俺は後ろを振り抜くとそこには木の影に隠れながら俺たちのあとを追っているシャルルとセシリーがいた
しかもあの二人…たまに木からこちらの様子を見るとき体のほとんどが木に隠れてないからはっきりいって丸わかりんなだよなぁ
ウェンディは全然気づいてないみたいだけど…
その後もしばらく雑談しながら歩いているとようやく目的地が見えてくる
「あ!!シリル見て!!あれだよね?」
「そうみたいだね」
俺とウェンディはその集合場所である青い天馬(ブルーペガサス)のマスターボブの別荘の前にやって来る
「シリル見て!!あの窓ハートの形してるよ!!すごいね!!」
「本当…すごい趣味をしてらっしゃる…」
ウェンディが指差す方を見て俺は思わずため息をつきそうになる
まさか別荘の外観にハートを取り入れるとは…せめて内装とかにしておけばいいのに…
「ちょっと…どんだけヤバイやつらが来るのよ!!」
すると中から女の人の声が聞こえてくる。もしかしてみなさんもう集まってるのかな?
「シリル!!みなさんもう集まってるみたいだよ!!急ごう!!」
ウェンディはそう言って別荘の中へと走り出す
「あ!!ウェンディ待って!!」
ウェンディが急ぐと大抵…
「きゃっ!!」
転ぶんだよな…ウェンディ何もないところで転んだけど大丈夫かな?
―――ルーシィside
「これで残すは化猫の宿の連中のみ」
「連中と言うか二人だけと聞いてま~す」
蛇姫の鱗のジュラさんがそう言うと一夜がそう答える…て…え!?
「二人だと!?こんな危険な作戦にたった二人しかよこさねーのか!?」
「ちょ…ちょっと…どんだけヤバイやつらがくるのよ~!!」
『シリル!!みなさんもう集まってるみたいだよ!!急ごう!!』
『あ!!ウェンディ待って!!』
すると扉の方から二人の女の子の声が聞こえてくるのでそちらを見ると
「きゃっ!!」
一人の女の子が盛大に転んだ
「ウェンディ!!大丈夫!?」
「うん。ありがとうシリル」
転んだ藍色の髪の女の子をあとからやって来た水色の髪の女の子が手をとって起こす
「あ!!あの…遅れてごめんなさい!!化猫の宿(ケットシェルター)からきましたウェンディです!!よろしくお願いします!!」
「お…同じく化猫の宿(ケットシェルター)からきましたシリルです!!よろしくお願いします!!」
二人の女の子が頭を下げる…てか化猫の宿(ケットシェルター)から来たって…
「子供!?」
「女!?」
「ウェンディとシリル?」
まさかこんな子達がギルドの代表なんて…
―――sideEND
「これで全てのギルドがそろった」
「話進めるのかよ!!」
かなりガッチリした体型の男の人が言うと黒髪の男の人が突っ込んだ
「この大がかりな作戦にこんなか弱そうな女の子二人をよこすなんて…化猫の宿(ケットシェルター)はどういうおつもりですの?」
厚化粧と盛りに盛った髪型の女の人がそう言う…しょうがないじゃん…俺たちしかいないんだから…てちょっと待て!!
「すみません。俺は女の子じゃない「あら…二人じゃないわよ?」」
「シャルル!!セシリー!!ついて来てたの!?」
おぉ…なんというタイミングで来るんだよシャルル…せめて俺が言い終わってから来てくれよ
「当たり前じゃない。あなたたちだけじゃあ不安でしょうがないもの」
「ごめんねシリル~」
ちょっと上から目線で話しているのがシャルル…そして俺に手を合わせながら謝ってきているのはセシリー
二人とも性格が正反対だから面白いよなぁっていうかそんなことより
「あの…俺は女の「あ…あの…私…戦闘は全然できませんけど…みなさんの役に立つサポートの魔法いっぱい使えます。だから仲間はずれにしないでください~」」
「そんな弱気だからなめられるの!!あんたは」
「ウェンディ気持ちを強く持とうよ~」
ウェンディ…お前まで俺の話を遮るのか…
「すまんな…少々驚いたがそんなつもりは毛頭ない。よろしく頼む」
「うわわ…エルザさんだ…本物だよ。かっこいいねシリル」
「うん…そうだね」
ウェンディがエルザさんに会えてすごい喜んでいる。てかすごい目が輝いてるよウェンディ
「お…オイラの事知ってる?ネコマンダーのハッピー!!」
ぷい
「シャルル~そんな態度ダメだよ~」
青猫がシャルルにそう言うとシャルルはそっぽを向いてしまう
「てれてる…かわいい~」
「相手にされてないようにも見えるけど」
「あの娘ら…将来美人になるぞ」
「今でも十分かわいいよ」
「さ…お嬢さん方こちらへ…」
「早っ!!」
「え…あの…」
「いや…だから俺は女「あの娘たち…なんという香り(バルファム)だ…ただ者ではないな」」
まさか全く知らない人にまで俺は言葉を遮られるのか…今日は厄日かも知れん
「オレンジジュースでいいかな」
「お前ら…かわいすぎだろ」
「おしぼりをどうぞ」
いつの間にか用意されたソファとテーブルで接待される俺たち
「あの…えーと…」
「なんなのこのオスども!!」
「シリル…大丈夫?」
「うん…まぁ大丈夫かな…」
誤解はあとで解くことにしよう…そうしよう
「あ…ナツさんだ」
するとウェンディが少し離れたところにいるナツさんを見つける
「あの人がナツさんか…」
にこっ
ウェンディがナツさんにまんべんの笑みを見せる
「あんた…男に笑顔を振り撒いてたら勘違いされるわよ?」
「え?そ…そんなんじゃないよ~」
「ウェンディの笑顔は可愛いからナツくん落ちちゃうよ~」
ウェンディは人見知りも若干するからあんな初対面の人に笑顔を見せるなんて…ナツさんうらやましい…
後書き
エブリスタだと最初セシリーが空気状態だったけどこっちだと割りとしゃべれるなぁ…よかったね!!セシリー!!
六魔将軍現る!!
「お前たち!!遊びに来たんじゃないんだぞ!!すぐに片づけろ!!」
「「「はい!!お師匠様!!」」」
ホストみたいな3人組は白のスーツの人に言われて急いで机とソファーを片付ける。すると白いスーツの人が突然ライトアップされる
「さて…全員そろったようなので、私の方から作戦を説明しよう」
白いスーツの人はなぜか一々ポーズを決めながら言う
「そのポーズって必要なのかしら?」
「まず…六魔将軍、オラシオンセイスが集結している場所だが…」
金髪の女の人の突っ込みは完璧にスルーしてなおもポーズを決めながら話を進める
「と…その前にトイレの香り(バルファム)を」
「そこに香り(バルファム)つけるなぁ!!」
まさかのライトアップまでしたのにトイレにいってしまった…自由すぎる…
「「「さすが先生!!」」」
「また呼び方変わった」
「というか…どこがさすがなんでしょうか…」
ホスト3人組が拍手をしながら見送っているのに金髪の女の人と俺で突っ込む
―――しばらくして。(この間に自己紹介してもらいました
「ここから北に行くとワース樹海が広がっている。古代人たちはその樹海にある協力な魔法を封印した。その名はニルヴァーナ」
「?」
「ニルヴァーナ?」
「聞かぬ魔法だ」
「ジュラ様は?」
「いや…知らんな」
「シリル知ってる?」
「初めて聞いたよ」
「知ってる?てか魚いる?」
「結構」
「シャルル~仲良くしなきゃダメだよ~」
どうやらみんなニルヴァーナという魔法は知らないみたいだ…シャルルたちはなんか違うことしてるけど
「古代人たちが封印するほどの破壊魔法…ということだけはわかっているが」
「どんな魔法かはわかってないんだ」
「六魔将軍(オラシオンセイス)が樹海に集結したのはきっとニルヴァーナを手に入れるためなんだ」
闇ギルドが欲しがる破壊魔法か…どんなのなんだろう?
「我々はそれを阻止するため」
「「「「六魔将軍(オラシオンセイス)を討つ!!」」」」
青い天馬(ブルーペガサス)のみなさんがポーズを決めながら言う。すごいキラキラしてますね
「やっぱりポーズ」
「俺はもう突っ込まねぇぞ」
ルーシィさんとグレイさんは少々あきれ気味のご様子
「こっちは13人敵は6人」
「だけどあなどっちゃいけないよ」
「この6人がまたとんでもなく強い」
ヒビキさんはそう言うとなにやら見たことない魔法を使い出す
「古文書(アーカイブ)」
「これまた珍しい魔法だな」
「初めてみましたわ」
「古文書(アーカイブ)?」
「初めて聞きますね」
俺とウェンディはヒビキさんの使う魔法を初めて聞いた…蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の人も初めて見る魔法らしいし珍しい魔法なんだろう
するとその古文書(アーカイブ)から映像と言うか画像が出てくる
「これは最近手に入れたやつらの情報なんだけど、こいつは毒蛇を使う魔導士コブラ」
映像の男は髪の毛が少しツンツンしてる男
「悪そうな顔してんなぁ。このつり目やろう」
「「お前も似たようなもんじゃねぇか」」
ナツさんにグレイさんとリオンさんが突っ込むけど…お二人も似たようなものだと思うのは俺だけでしょうか?
「その名からしてスピード系の魔法を使うと思われるレーサー」
続いて出てきたのはモヒカンを伸ばしたような髪のサングラスの男
「どうだっていいが、気に食わねぇ顔してんな」
「同感だな」
この人たち…自分がかっこいいからってこんなに人の顔をとやかく言っていいのだろうか?
「大金を積めば一人でも軍の一部隊を全滅させると言われる天眼のホットアイ」
次に出てきたのは顔がゴツゴツした感じの人
「お金のため?」
「下劣な」
お金は大切だけどそのためだけに生きてると痛い目見ると思いますよ
「心を覗けるという女エンジェル」
次に出てきたのはショートヘアでアホ毛が特徴の女
「うわぁ…本能的に苦手かも、こういうタイプ」
「あのアホ毛がなんか気に入らないです」
「シリルもアホ毛あるじゃん」
なんかアホ毛が被ってるのが気に入らないんだよ
「この男は情報が少ないのだがミッドナイトと呼ばれている」
次は絨毯の上で眠っている黒髪の青年が写し出される
「真夜中?妙な名前だな」
「そしてやつらの司令塔ブレイン」
最後に出てきたのは顔にいっぱい模様のある男
「それぞれがたった一人でギルドの一つくらいは潰せるほどの魔力を持つ。我々は数的有利を利用するんだ」
ギルドを一人で潰せるか…それはずいぶんとすごいですね
「あ…あの…あたしは頭数に入れないでほしいんだけど…」
「私も戦うのは苦手です」
「ウェンディ!!弱音はかないの!!」
「大丈夫~僕たちもそんなに戦えないから~」
「それは大丈夫って言わないわよセシリー!!」
ルーシィさんとウェンディが戦いたくないと意志表示をしてシャルルがウェンディをしかる。セシリーは全くフォローになってないような気がするけど
「大丈夫ウェンディ。ウェンディの分は俺が頑張るからさ」キラッ
「あんたもそんなに強くないじゃない!!」
「シャルル~…本当のこといっちゃダメだよ~」
「セシリー…お前も結構失礼だぞ?」
確かにそんなに強くないけど…やるときは俺もやるんだよ?
「安心したまえ。我々の作戦は戦闘だけにあらず。やつらの拠点を見つけてくれればいい」
いつのまにか近くに来ていた一夜さんがポーズを決めながら言う
「拠点?」
「ああそうだ。今はまだ奴等を補足していないが」
「樹海には奴等の仮説拠点があると推測されるんだ」
「もし可能なら奴等全員をその拠点に集めてほしい」
「どうやって?」
「殴ってに決まってんだろ!!」
「結局前提条件は戦うことじゃないですか?それ」
「あたしは戦いたくないんだってば」
「集めてどうするのだ?」
エルザさんが聞くと一夜さんは上を指差す
「我がギルドが大陸に誇る天馬。その名もクリスティーナで拠点もろとも葬り去る!!」
「おおっ!!」
「それって…魔導爆撃挺のことですの?」
そんなすごい作戦があったのか。無駄にポーズだけ決めてる人じゃなかったんですね
「てか、人間相手にそこまでやる?」
「そういう相手なのだ!!」
ルーシィさんの言葉にジュラさんが力強く答える。おかげでルーシィさんめっちゃビビっちゃってますよ?
「よいか…戦闘になっても決して一人では戦ってはいかん。敵一人に対して必ず二人以上でやるんだ」
「「「うん」」」
「「「「はい!!」」」」
ジュラさんの言葉に俺たちはうなずく
「うあ~ん!!そんな物騒な!!」
「怖いです~!!」
「情けない声出さないの!!」
「ウェンディ!!頑張ろう?シリルもいるしさ」
「う…うん」
ルーシィさんとウェンディが怖くなってちょっと涙目だったのをシャルルが怒ってセシリーは慰める。
「おしっ!!燃えてきたぞ!!」
すると作戦を聞いたナツさんが扉を突き破って走り出す
「6人まとめて俺が相手してやるぁー!!」
「ちょっとナツ!!」
「全くあいつは…」
「せっかちというかなんというか…」
「てか作戦聞いてねーだろあいつ」
「それがナツです」
飛び出していったナツさんを妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さんがあきれながら見ている
「おいおい…」
「ひどいや…」
「扉開けてけよ」
俺たちも外に出るとトライメンズの皆さんはナツさんが扉を壊したことにすごい呆れていた
「仕方ない…行くぞ!!」
「ったくあのバカ!!」
「うぇ~」
それを追いかけるようにエルザさん、グレイさん、ルーシィさんが走り出す。ルーシィさんすごい泣いてるけど…そんなに怖いならなんでこの作戦参加したんですか
「妖精の尻尾には負けてられんな。行くぞ!!シェリー!!」
「はい!!」
「リオン!!シェリー!!」
続いてリオンさんとシェリーさんがジュラさんの制止を聞かずに走り出す
「俺たちも行くぞ!!」
「うん!!」
「エンジェルかぁ」
そしてトライメンズもそれを追いかける。俺も追いかけようとウェンディの方を見ると
「あわわわわ」
ウェンディは一人でおどおどしていた。まぁこんなにむちゃくちゃになってきたらそういう気持ちもわかるよ。ウェンディ
「ウェンディ?行こ?」
俺はウェンディの手を取り走り出す。早く追いかけないと
「ウェンディ!!しっかりしなさい!!」
「待ってシリル~!!」
「あ!!待ってよ~!!」
俺たちが走り出すとシャルルとセシリーもついてくる。ハッピーは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の人とは一緒に行ってなかったのか。そんなにシャルルのこと気に入っちゃったのかな?
「あれ?」
俺は途中まで走っているとジュラさんと一夜さんが来ないことに気づく…何かあったのかな?
「まぁ…いいか」
俺は気を取り直して前を向く
しばらく走っているとようやく前を走っているルーシィさんとトライメンズの皆さんに追いついてきた
「待ってよ~…みんな早すぎ…レディーファーストはどこに行ったのぉ!!」
エルザさんたちに置いていかれたルーシィさんは愚痴をこぼしながら走っている。あれ?もしかしてリオンさんとシェリーさんはルーシィさん追い越して行ったのか?めっちゃ足速いじゃん!!かっこいい!!
「ウェンディ!!シリル!!モタモタしないで!!」
「だって~」
「これが精一杯なんだよ」
「シャルルがせっかちなんだよ~」
シャルルは少し負けず嫌いなところがあるからな…他のギルドの人に置いていかれるのが嫌なんだろう
さらにしばらく走ると
ゴゴゴゴゴッ
「ん?」
「どうしたの?シリル?」
「あれ…」
俺たちは上を見上げるとそこには馬のような形をした船が空に飛んでいた
「ん?」
「うおわ!!」
「うわ」
前方ではナツさんが急に立ち止まったせいでグレイさんとぶつかり倒れていた
「シリル、あれがもしかして…」
「うん。あれがさっき言ってた魔導爆撃挺」
「「「クリスティーナ!!」」」
「「「あれが噂の…天馬!!」」」
前を走っていた皆さんもその場に立ち止まってクリスティーナの方を見上げる
「すごいなぁ」
思わず上を見上げて感嘆の声をあげると突然
ボッボボン
突然クリスティーナが爆発し落下する
「え!?」
「そんな…」
「クリスティーナが…」
「「「「「落とされた!?」」」」」
「え?どういうことですか?」
すると落下しかクリスティーナの中から人が降りてくる。しかし落下したせいで砂煙が立ち込めており誰なのかよくわからない
「誰か降りてくるぞ!!」
「ひぇぇ!!」
「ウェンディ!!」
「いいよシャルル」
ウェンディはビビってしまい岩の影に隠れる。まぁそれはしょうがないだろう…むしろ隠れていた方が安全だしここは隠れていてもらおう。すると次第に砂煙が晴れてくるとそこにはさっき古文書(アーカイブ)で見た6人がいた
「六魔将軍(オラシオンセイス)!?」
「うじどもが。群がりおって」
「君たちの作戦は全部お見通しだゾ」
「ジュラと一夜もやっつけだぞ!!」
「どうだ!!どうだ!!」
ん?あんな小さいやついたっけ?
「何!?」
「バカな!?」
そういえばジュラさんって聖十大魔導で一夜さんも青い天馬(ブルーペガサス)のエースって話だったのに…そらを倒しちゃうなんて…やっぱりこいつら強いんだ!!
「お?動揺しているな。聞こえるぞ」
「仕事は速ぇ方がいい。そのためにはあんたら、邪魔なんだよ」
「お金は人を強くする…デスネ!!いいことを教えましょう。世の中は金が全て。そして「「お前は黙っていろ。ホットアイ」」」
ホットアイってやつ…ちょっとバカなのかも…コブラとレーサーに突っ込まれてるし
「zzzz」
「なんか眠ってる人いるんですけど」
ミッドナイトを見てルーシィさんが言う。確かにミッドナイトは全然こちらを見ないで絨毯の上で眠っているように見える
「まさかそっちから現れるとはな」
エルザさんがそう言うと少し緊張感のある空気が流れる。
「「探す手間が省けたぜ!!」」
ナツさんとグレイさんが六魔将軍(オラシオンセイス)に向かって突っ込んでいく。
「やれ」
「オッケー」
ブレインの指示でレーサーが一瞬のうちにグレイさんとナツさんの後ろに回り込み
「ぐあ」
「うわぁ」
二人を蹴り飛ばす
「「ナツ!!グレイ!!え?」」
「バーカ」
ナツさんとグレイさんに声をかけようと叫ぶルーシィさんが二人。そして片方のルーシィさんがもう一人のルーシィさんをムチで叩く
「行くぞ!!シェリー!!」
「はい!!」
続いてリオンさんとシェリーさんが突っ込むが
「愛さえなくとも金さえあれば…デスネ!!」
すると二人の足場がみるみる沈んでいく
「な…なんだこれは!!」
「愛の方が大事ですわ」
シェリーさん…そんなこと言ってる場合じゃないですよ!!
「僕はエンジェルをやる」
「ずるいや」
「俺は頭をやる」
次にトライメンズが突っ込むが突然現れたレーサーにレンさんが蹴り飛ばされる
「うあ」
「レン!!ぐあ」
「イヴ!!レン!!うあ!!」
速い!!レーサーってやつ、たった一瞬で3人を蹴り飛ばした!!
「あわわわわ…」
「ウェンディ!!しっかりしなさい!!」
「シャルル!!まずいよぉ!!」
「大丈夫!!オイラがついてるよ!!」
「ウェンディたちはそこから出てこないで!!危ないから!!」
ウェンディと猫3匹をとりあえず岩の影に隠れさせて俺はレーサーに突っ込む
「お前は遅いな」
「え?がっ」
すると一瞬のうちにレーサーが俺の後ろに来ていて俺は蹴り飛ばされる
「アイスメイク…」
「ランス!!」
「ぐあ!!」
グレイさんがもう一人のグレイさんにやられる。するとレーサーが今度はナツさんに攻撃しているのを見て俺はレーサーに向かって攻撃する
「(バレないように)水竜の咆哮!!」
「ぐああ!!」
やった!!あいつ完全に油断してたから攻撃当たったぞ!!ちょっと助けるの遅かったからナツさん白目向いてるけど
「水竜の咆哮!!」
「え?ぐああ!!」
俺は後ろにいたいつの間にかいたもう一人の俺に吹き飛ばされる。どうなってるんだこれ?
(うあああ!!」
するとさっきまで善戦していたエルザさんもコブラのヘビに噛まれてしまい倒れる。気がつくと連合軍は全員その場に倒れてしまっていた
「ゴミどもめ。まとめて消え去るがよい」
ブレインはそう言ってドクロのような杖を俺たちに向ける。するとその杖に強大な魔力が集まっていく
「なんですの…この魔力…」
「大気が震えてる」
「まずい…」
「ダークロンド!!ん?」
魔法を放とうとしたブレインが突然魔法を止める…その視線の先には
「ひぃ!!」
ウェンディがいた
「どうした?ブレイン」
「なぜ魔法を止める?」
「ウェンディ?」
「え?え?」
ブレインに名前を呼ばれたウェンディは何が何だかわからず涙目で怯えていた
後書き
なんとまさかの主人公の記念すべき初戦が敗戦と言う斬新な始まり方をしてみました。あとエブリスタではレーサーにやられたけどそれだとあんまりなのでレーサーに攻撃を加えたけどジェミニにやられるって形にしてみました。また次もぜひ読んでください
天空の巫女
前書き
ようやくシリルがちょっと活躍します。戦いじゃないけどねw
「こいつら…」
「強ぇ…」
俺たち連合軍は現在地面に突っ伏している。そしてブレインがダークロンドという魔法を放とうとしたのがウェンディを見つけてそれを止める
「どうしたブレイン」
「知り合いか?」
コブラとレーサーがブレインに問いかける。するとブレインはウェンディを見て少しほくそ笑む
「ウェンディ…間違いない。天空の巫女だ」
「なっ!!」
俺はブレインの呟いた言葉に驚く。なぜあいつがその事を知っているんだ!?
「天空の…」
「巫女?」
「なにそれ」
ブレインの呟きに連合軍はみんな?マークを浮かべてウェンディは頭を抱えてしゃがみこんでしまう
「あいつ…なんでウェンディのことを知ってるんだ?」
「おいシリル!!どういうことだ!?」
グレイさんが俺に問いかけるけど…そんなの説明してる時間はない!!
「こんなところで会えるとは…これはいいものを拾った。来い!!」
「ひっ!!きゃあ!!」
「「「ウェンディ!!」」」
ブレインはそう言って杖から緑色の魔法で作った手を出してウェンディを掴む
「ウェンディ!!うっ!?」
俺はウェンディを助けようと立ち上がろうとしたけど体が痛くて動けない
「きゃああああああ!!」
「「ウェンディ!!」」
「シリル!!シャルル!!セシリー!!」
ウェンディをシャルルとセシリーが走って追いかける
「待ってて!!オイラが助けるから!!」
それを追うようにハッピーもウェンディを追いかける。
「何しやがるこのヤロウ…」
「金に、上下の隔てなし!!デスネ」
「「「「「「「「「「「「うわあああ」」」」」」」」」」」」
ホットアイの魔法で俺たちは全員飛ばされる
「シャルルー!!セシリー!!」
「ウェンディー!!」
「手を伸ばして!!」
シャルルとセシリーが懸命に手を伸ばしてウェンディを掴もうとする。そしてウェンディはしっかりと伸ばされた手を掴んだ。そう
「あれ?」
「あ!!」
ハッピーの手を
「ちょっとアンタ!!」
「ハッピー!!ウェンディ!!」
ハッピーはそのまま何もできずにウェンディと一緒に引っ張られていく。そして二人はブレインの杖から出た緑色の手と一緒にどこかに消えてしまう
「「「ウェンディ!!」」」
「ハッピー!!」
するとブレインの杖が再び魔力を溜め始める
「うぬらにもう用はない。消えよ!!ダークロンド!!」
ブレインがダークロンドを放つとそれは上から俺たち全員に向かって襲ってくる
「ルーシィさん!!」
「きゃああ!!」
ヒビキさんがルーシィさんを抱えて
「危ねぇ!!」
「うわぁ!!」
レンさんがなぜか俺を抱えて
「シェリー!!」
「ああ。これがリオン様の愛」
リオンさんがシェリーさんを抱えて横に飛ぶ
「岩鉄壁!!」
すると俺たちをダークロンドから守るように岩の屋根が現れダークロンドを受け止める
「間一髪」
するとそこにいたのはジュラさんだった
「ジュラ様!!」
「おお!!」
「すごいやジュラさん!!」
「ありがとう。助かったよ」
「あんたも何気にありがとう」
「大丈夫か?」
「はい。ありがとうございます」
ルーシィさんはヒビキさんに俺はレンさんにもお礼を言う
「あいつらは!?」
「どこにもいねぇ!!」
「くそぉ!!逃げられた!!」
ナツさんの問いにグレイさんが答えるとナツさんは悔しそうに地団駄を踏む
「ウェンディ…」
あいつら…ウェンディをつれていきやがって…
「完全にやられた…」
「あいつら強すぎるよ…」
「六魔将軍(オラシオンセイス)なんてやつらだ」
「たった6人なのに俺たちの魔力を遥かに越えてましたね
「頼りのクリスティーナまで…」
あまりの実力差に俺たちは全員が暗くなる
「あの心が覗けるという女言っていた。我々の作戦は全てわかったと」
「あの…クリスティーナに乗ってた人って大丈夫なの?」
ルーシィさんがそう言う。確かにそれは心配だ
「それなら心配ない」
「クリスティーナは遠隔操作で目的地まで行けるからね」
「拠点を見つけたあとで僕たちが乗り込むはずだったんだ」
「そっか…よかった~」
ヒビキさんたちが説明してくれてひとまず安心する。するとリオンさんがジュラさんに近づいていく
「ジュラさん。無事でよかった」
「いや…危ういところだった」
ジュラさんがこちらを振り向くとお腹のところに巻かれた包帯から少し血がにじんでいた
「そのきず…」
「恐ろしい力だった。今は一夜殿の“痛み止めの香り(バルファム)”で一時的に押さえられてはいるが」
「六魔将軍(オラシオンセイス)め。我々が到着したとたんに逃げ出すとは。さては恐れをなしたな?」
後からやってきた一夜さんがそういう…かなりボロボロの状態で
「あんたボロボロじゃねぇか!!」
グレイさん…ナイス突っ込みです
「これしきのケガなんともない」
一夜さんがキラキラしながら言う。結構ボロボロなのになんともないんだ
「皆さん。私の痛み止めの香り(バルファム)を」
一夜さんが小瓶を一つ開けると中からとてもいい匂いが辺り一面に広がる
「わぁ。いい匂いですわ」
「本当だ。痛みが和らいでいく」
「おぉ…体もなんとか動く」
シェリーさんとルーシィさんと俺は体から痛みがなくなっていくのを感じていた
「さすが先生!!」
「「先生!!」」
ヒビキさんたちが誉めると一夜さんは照れたようなポーズを決める
「というかまた呼び方変わりましたね」
「俺はもうつっこまねぇぞ」
グレイさん…それさっきも言ってましたよ?
「あいつら…よくもウェンディとハッピーを…」
ナツさんが怒りを露にしながら立ち上がると突然叫びながら走り出す
「どこいったこらー!!」
「ナツ!!どこいくの!?」
「ナツさん!!」
俺とルーシィさんで呼び止めようとするがナツさんは構わず走っていく。しかし…
「んが」
後ろからシャルルとセシリーにマフラーを引っ張られて後ろに倒れるナツさん
「まったくもう…少しは落ち着きなさいよ」
「ナツくんごめんね~。大丈夫?」
シャルルは翼(エーラ)を出しながらナツさんを見下ろしセシリーは倒れたナツさんに近づく
「羽?」
「羽ですわ」
「猫が飛んでる」
「すごいやぁ」
シャルルとセシリーが翼(エーラ)を出して飛んでいることにみんな驚いている。まぁ確かに猫が空飛ぶとかちょっとへんだもんね。俺とウェンディも最初は驚いたなぁ。するとシャルルがこちらに向き直る
「これは翼(エーラ)って魔法。ま…初めて見たなら驚くのも無理ないですけど」
シャルルがなぜかドヤ顔で言ってくるのが少し腹立つな…
「ハッピーと被ってる」
「何ですって!!」
「ドォドォドォ」
「セシリー!!私は馬じゃないわよ!!」
ナツさんの一言にシャルルが怒ってそれをセシリーがなだめようとしたがそのセシリーも怒られる
「とにかく、ウェンディとオスネコの事は心配ですけど、やみくもに突っ込んでも勝てる相手じゃないってわかったでしょう?」
「シャルル殿の言う通りだ。敵は予想以上に強い」
「メェーン」
気を取り直してシャルルが言うとジュラさんと一夜さんもそれに賛同する
「それに」
シャルルが視線を動かすとそこには苦しそうに腕を押さえているエルザさんがいる。その押さえている腕はかなり変色しているようだった
「エルザ!!」
「しっかりして!!」
ナツさんとルーシィさんが声をかけるがエルザさんは苦しそうなことにかわりがない
「ヘビに噛まれたところから毒が浸透してるのね」
「一夜様」
また呼び方変わりましたね
「メェーン。わかっている。マイハニーのために。痛み止めの香り(バルファム)香り増強!!」
一夜さんはかっこよくポーズを決めながら痛み止めの香り(バルファム)の効果を増やしていく…が
「痛み止めって…毒治すことできませんよね?」
「あ。それあたしも思った」
俺とルーシィさんは同じことを考えていたようでそれを聞いてみる
「先輩の香り(バルファム)は傷の治療だけでなく、毒の浄化作用もあるんだ」
「すごいや!!」
おぉ!!それなら俺は出番無さそうだな。安心した。なんて思っているとエルザさんはなおも苦しそうな顔をしている
「エルザ!!大丈夫か!?」
「よけい苦しんでねぇか?」
ナツさんの言う通りエルザさんは楽になるどころかますます苦しんでいっている
「メ…メェーン…」
「これは…」
「そんな…痛み止めの香り(パルファム)が効かないなんて!!」
「エルザ!!しっかりしろ!!」
「どうしよう!!」
「ルーシィ…すまん…」
エルザさんは苦しみながらルーシィさんの名前を呼び
「ベルトを借りる」
「え?きゃああああ!!」
ルーシィさんのベルトを引き抜いた
「「「おおおおおお!!」」」
「見るなぁ!!」
ルーシィさんをガン見していたトライメンズはルーシィさんに蹴り飛ばされる。ちなみに俺はシャルルとセシリーに目を塞がれました
するとエルザさんはルーシィさんから借りたベルトで変色している腕を縛っている
「何してんのよエルザ!!」
「すまん…このままでは戦えん」
エルザさんはハンカチを口に加えると剣を地面に突き刺す
「切り落とせ」
エルザさんは毒にやられる腕を出しそう言われた俺たちはみんな驚いてしまう
「バカなこと言ってんじゃねぇよ!!」
「頼む…誰か…」
「わかった。俺がやろう」
そう言ってリオンさんはエルザさんが地面にさした剣を抜く
「リオン様」
「リオン!!やめろ!!」
剣を持ったリオンさんの前にグレイさんが立つ
「やれ」
「よせ!!」
急かすエルザさんと止めるグレイさん
「リオン。本当にやる気なの?」
「今この女を失う訳にはいかん」
「けど…」
「もぉ!!妖精さんはどれだけ甘いんですの!?」
「あんたに何が分かるっていうのよ!!」
ケンカを始めてしまうルーシィさんとシェリーさん
「やるんだ!!早く!!」
リオンさんはエルザさんに向かって剣を振り上げる
「やめろ!!リオン!!」
「よさないか!!女性の体に傷をつけるなんて!!」
「そんなことしなくても」
「エルザ殿の意志だ」
止めようとする皆さんとそれを阻止する蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の皆さん
「行くぞ!!」
リオンさんが剣を降り下ろす。しかしそれをグレイさんが氷を使って受け止める
「貴様はこの女の命より腕の方が大事か?」
「他に方法があるかもしれねぇだろ?短絡的に考えるなよ」
リオンさんとグレイさんはお互いににらみ合う。すると
ドサ
その後ろにいたエルザさんが倒れてしまう
「エルザ!!」
「エルザ!!」
ナツさんとルーシィさんがエルザさんにすぐに駆け寄る。そして皆さんも周りに集まっていく
「まずいよ!!このままじゃ毒が全身にまわって…」
「あるわよ…助けられる方法」
「「「何!?」」」
シャルルがそういうと全員がこちらを向く
「どうすりゃいいんだよ!?」
「シャルル!!どうすればいいの!?」
グレイさんとルーシィさんがこちらに詰め寄ってくる
「シリル。ちょっと見てあげて」
「わかった。セシリーもちょい手伝って」
「わかった~」
シャルルに指名されて俺とセシリーがエルザさんに近づく。そしてエルザさんの呼吸音、心拍数、脈拍、血圧を調べる
「完全には無理っぽいけど遅らせるぐらいならいけるかな?」
「わかったわ。あとはウェンディにやってもらいましょ。とりあえず今は…」
俺はうなずいて意識を集中させる
「何やってんだ?」
「静かに!!シリルの気が散るでしょ!!」
「わ…わり…」
ナツさんがシャルルに怒られるが今は気にしないでおこう
「モード…水天竜」ボソッ
俺は小さく呟く。よし…これであとはエルザさんの腕に治癒魔法を当てて…
「魔力の質が変わった…」
「水天竜?」
そして俺が魔法をかけると少しずつエルザさんの腕の色が元に戻っていく
「腕が…」
「元に戻っていく?」
そして大分治ってきたところで俺の水天竜モードも限界に近づいて来たのでそこでやめる
「ふーっ…とりあえずはこんなところが限界かな…」
「お疲れさま~。はいこれ」
「ありがとうセシリー」
治療が終わるとセシリーがどこからか水を持ってきてくれていたのでそれを飲む。よし…力が戻ってきた
「すごいや!!毒が治ってる!!」
「治った訳ではないわ。これは応急処置程度よ」
「そうなのか?」
「はい…さっきより毒がまわるのは遅くなると思いますし命に問題あるほどは毒も残ってないと思いますけど…完全に解毒した訳ではないです」
「じゃあどうすんだよ!!」
「ひっ」
ナツさんが怖い顔で迫ってくるので思わず一歩後ずさる
「あとはウェンディにやってもらうわ。とにかく今はウェンディを早く助けることよ。ついでにオスネコも」
シャルルのやつ…ハッピーの扱いひどいな…
「あの子も解毒の魔法が使えるの?」
「すごいな」
「本当はウェンディが本職よ。シリルはちょっとしかこういうことはできないわ。それでも解毒だけじゃなく解熱や痛み止め、傷の治癒もできるの」
「わ…私のアイデンティティーが脅かされているような」
イヴさんとレンさんの問いに冷静に答えるシャルル。一夜さんはとりあえずスルーで
「でも…治癒って失われた魔法(ロストマジック)じゃなくて」
「そうだよ~」
シェリーさんにセシリーが答える
「もしかして天空の巫女ってのに関係してるの?」
「そうですよ。ウェンディは天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。天竜のウェンディとも呼ばれています」
俺がそういうと全員が驚く
「滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)!?」
「つまりシリル殿も天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なのか!?」
ジュラさんに問いかけられる。まぁ治癒ができるとそう思っちゃうよね
「シリルはね~。水の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)水竜のシリルなんだよ~」
「治癒魔法はあの子と小さいときからいたから少しだけやり方を知ってるだけなのよ」
まぁそんなところですね
「詳しい話はあと!!といってももう話すこともないけど」
「今僕たちに必要なのはウェンディなんだよ~」
「シリルの治癒魔法はこれぐらいで限界!!でもウェンディならエルザを完全に治すことができるわ」
シャルルとセシリーがそういうと全員の顔が引き締まる
「となれば…」
「やることは一つ」
「ウェンディちゃんを助けるんだ」
「エルザのためにも」
「ハッピーもね」
「おっし!!」
ナツさんが拳を前に出すと全員がそれに合わせ拳を出す
「行くぞ!!」
「「「「「「「「「「「「「「オオッ」」」」」」」」」」」」」」
こうして俺たちはウェンディとハッピーの救出作戦を開始した
後書き
いかがだったでしょうか?シリルの活躍が中途半端ですがこのぐらい控えめな主人公も私的にはいいかな?って思っています。また次もよろしくお願いします
ウェンディ救出作戦
前書き
シリル目線でいきますので他のグループの人たちのお話は省かせていただきます。でもウェンディはちょっと登場します。
現在俺たちは3グループに別れてウェンディとハッピーを探している。チーム分けは一つが蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のリオンさんジュラさん、シェリーさんのグループ。
次に青い天馬(ブルーペガサス)のレンさん、一夜さん、イヴさんのグループ。
そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)のナツさん、グレイさんに俺、シャルル、セシリーを加えたグループ
ちなみにエルザさんが動けないのでルーシィさんとヒビキさんがエルザさんの近くに残ってくれている
俺たちはウェンディを早く救出してエルザさんの腕を治してもらわないと
「なぁ…」
不意にナツさんが声をかけてくる
「なんですか?」
「水の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は水飲むってのはわかるけど…天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)って…なに食うんだ?」
そんなことですか!?
「空気」
まさかの質問に俺が驚いているとシャルルが答える
「うめぇのか?」
「さぁ?」
「僕たちは空気食べれないからね~」
「というか…それ酸素と違うのか?」
「やっぱりそう思いますよね…」
俺も小さいときはよく考えてたな…今はちょっと違うってわかったけど
「あ…そうだ。ナツさん!!」
「ん?」
俺はナツさんに聞きたかったことを聞いてみよう
「ナツさんもドラゴンに育てられたんですよね?」
「おおっ。てことはお前もか?」
「はい…それで…ナツさんの親って今はどこにいるんですか?俺たちの親…7年前に急にいなくなっちゃって…」
「おい!!もしかしていなくなったのって7月7日か!?」
「そうですよ」
「イグニールとガジルのドラゴンも…シリルとウェンディのドラゴンも7年前…んがっ!!」
ナツさんがこちらを見ながら話していると前にあった木の根っこが浮き上がっているところに顔をぶつけてしまう
「だ…大丈夫ですか!?」
「ナツくん大丈夫?」
俺とセシリーが心配して駆け寄るが
「そうだ!!ラクサスは!?」
ナツさんはすぐに起き上がってグレイさんに話しかける。だ…大丈夫なのか?
「じーさん言ってたろ?あいつは滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)じゃねぇ」
「な…何コレ!?」
シャルルが突然叫ぶので俺たちも前を見る。するとそこには黒く変色した木々があった
「木が…」
「黒い…」
「な、なんで~!?」
「き…気持ち悪ぃ」
それぞれが感想を言う。一体どうなってるんだ?これ
ザザッ
すると後ろから何かが近づいてくる音がするので俺たちはそちらを向くとそこには見たことない大男が二人いた
「ニルヴァーナの影響だって言ってたよなザトー兄さん」
「ぎゃほー。あまりにすさまじい魔法なもんで大地が死んでいくってなぁガトー兄さん」
なぜどっちも兄さんなんだ?
すると辺りから次々に人が集まってくる
「ちょっと…囲まれてるわよ!!」
「い…いつの間に~」
シャルルとセシリーは囲まれたことに驚いている。なんだこいつら
「ニルヴァーナの影響だってなぁ」
「さっき言ったぜガトー兄さん」
「そうかいザトー兄さん」
W兄さんが話しているがそれどころじゃねぇ…これやばくね?
「うほぉ!!サルだ!!サルが二匹いんぞオイ!!」
ナツさんはなぜかサルのモノマネしながら大喜びしてるんですけど…
「こ…こいつら妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!!こいつらのせいで…」
すると後ろからまた一人出てきてナツさんたちを指差しながら怒りを露にする
「オオッ!!もう一匹増えたー!!」
「はぁ!?」
「感心するところじゃないよナツくん!!」
「六魔将軍(オラシオンセイス)傘下、裸の包帯男(ネイキッドマミー)」
「ぎゃほおっ!!遊ぼうぜぇ」
そう言ってアフロの人が構える
「やられた…敵は6人だけじゃなかったのねぇ…」
「まさか他の闇ギルドも来てるなんて~」
「ヤバイねこれ」
かなり相手いるみたいだし…まさか傘下のギルドも出てくるとは…
「こいつはちょうどいい」
「ウホホッ。ちょうどいいウホー」
「何言ってんのアンタたち!!」
しかしグレイさんとナツさんは全然臆する様子はない。
「拠点とやらの場所をはかせてやる」
「今行くぞ!!ハッピー!!ウェンディ!!」
「は!?」
「ナツくん!!グレイくん!!それ本気!?」
「本気も本気だ。せっかく向こうから出てきてくれたんだからな」
「ちょっと…シリルも「そっか!!こいつら倒せば万事解決か!!」ダメだわ…この子は周りに流されやすい子だった」
一人じゃまず無理だけどナツさんもグレイさんもいる!!だったらこいつらぐらい楽勝だぜ!!
「なめやがってクソガキが…」
「六魔将軍(オラシオンセイス)傘下、裸の包帯男(ネイキッドマミー)」
「「なんで2回言うんだ(言った)!?」」
俺とナツさんで突っ込みをいれる。そんなに大事なことじゃないだろそれ!!
「へっ…死んだぞテメーら」
アフロが俺たちに言う。けど…死ぬのはお前らだぜ?
「なんなのよ…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士は…」
「シリルまで…この状況わかってるのかな~」
「こんな大勢相手に勝てると思ってるのぉ?」
シャルルとセシリーが何かブツブツ言ってるけど今は気にしない
「シャルル!!セシリー!!どっかに隠れてて!!」
「言われなくてもそうするわよ!!」
「気を付けてね~」
シャルルとセシリーは翼(エーラ)出して木の影に飛んでいく
「ヤロウども!!やっちまえ!!」
「「「「「「「「オオッ!!」」」」」」」」
アフロの指示で裸の包帯男(ネイキッドマミー)のやつらが向かってくる
「んじゃいっちょ行くか」
「無理するなよシリル」
「大丈夫ですよ。ウェンディのためなら全然」
「食らいやがれ!!」
敵が魔法弾を放ってくるがそれを俺たちはジャンプでよける
「うおおお」
ナツさんが魔法弾を放ってきた方向にいる敵を火を纏ったパンチで凪ぎ払う
「おらぁ!!」
その後ろから剣を持って敵がナツさんを襲おうとするが
「ぐあ」
グレイさんがそいつの顔を凍らせて投げ飛ばし敵を吹っ飛ばす
「水竜の翼撃!!」
「「「「「「うわああああ」」」」」」
俺も翼撃を使って辺りの敵を倒していく
「うおおおら!!」
「凍れぇ!!」
「やああああ!!」
次々に敵を凪ぎ払っていく俺たち
「おのれぇ…魔導散弾銃でも食らいやがれ!!」
サルがナツさんに魔導散弾銃を放ちそれがナツさんに命中するが
「ひひっ」
まったくダメージを受けている様子はない。そしてそのサルをナツさんが殴り飛ばす
「隙ありゃあ!!」
俺に剣を持った敵が向かってくるけど
「水竜の咆哮!!」
「ぐああああ」
すばやく咆哮を放ち吹き飛ばす
「なかなかやるようだぜガトー兄さん」
「いっちょやるかザトー兄さん」
「「「だからなんでどっちも兄さんなんだよ(ですか)!?」」」
―――――ウェンディside
「重てぇ…これじゃスピードが出ねぇぜ」
「主より早い男など存在せぬわ」
ブレインに何かを持ってくるように言われたレーサーが戻ってきた。そのレーサーが持っているものを見て私は驚いてしまう
「ひっ」
「棺桶!?」
ハッピーの言う通りレーサーは大きな十字の形をした棺桶を持ってきた
「ウェンディ。お前にはこの男を治してもらう」
棺桶についている鎖がはずされていく
「わ…私…そんなのぜったいやりません!!」
「そーだそーだ」
「いや。お前は治す。治さねばならんのだ」
ブレインが次々に鎖を外していく。そして棺桶の扉が開いて私はその中に眠っている人を見て驚いてしまう
「!!」
「この男はジェラール。かつつ評議院に潜入していた。つまりニルヴァーナの場所を知る者」
「ジェラールって…え?え!?」
「ジェラール…」
「知り合いなの!?」
ジェラール…なんで…
「エーテルナノを大量に浴びてこのような姿になってしまったのだ。元に戻せるのはうぬだけだ。恩人…なのだろう?」
そう…ブレインの言う通り私とシリルは…ジェラールがいなかったら死んじゃってた…
「ジェラールってあのジェラール?」
ハッピーがジェラールを見て驚いている
「ハッピー知ってるの?」
「知ってるも何もこいつはエルザを殺そうとしたし、評議院よ使ってエーテリオンを落としたんだ!!」
それはシリルから聞いた…シリルは私には隠そうとしてたみたいだけど…
「そうみたいだね…」
「生きてたのかコイツ~」
「この男は亡霊にとりつかれた亡霊…哀れな理想論者。しかし…うぬにとっては恩人だ」
「恩人?どういうことなの?」
ジェラール…ずっと…ずっと私たちは会いたかった…
「さぁ。この男を復活させろ」
「ダメだよ!!絶対こんな奴復活させちゃダメだ!!」
ジェラール…どうして…
「ウェンディ…」
「復活させぬなら」
ブレインはナイフを取り出す
「やめてぇーーーー!!」
ブレインがジェラールにナイフを刺そうとしたけどそれをやめる
「お願い…やめて…」
そんなひどいこと…ジェラールにしないで…
ドガッ
「きゃっ」
ブレインが魔法で私たちに攻撃してくる
「治せ。うぬなら簡単だろ」
「ジェラールは悪い奴なんだよ!!ニルヴァーナだって奪われちゃうよ!!」
「それでも私たち…この人に助けられた…」
私は涙をこらえられなくなってしまう
「大好きだった…なんか…悪いことをしたのはシリルから聞いたけど…私もシリルもそんなこと信じない」
「何言ってんだ。現にオイラたちは…」
「ジェラールがあんなことするハズない!!」
私は思わず声を荒げてしまう。でも…そうだよね…シリル…
「お願いです!!少し考える時間をください!!」
「ウェンディ!!」
「よかろう。5分だ」
私はジェラールを見つめる…ジェラールはあんなことするハズないよね?シリルもそう思うでしょ?もしシリルが私だったら…きっと…
――――――シリルside
「だはーっ」
「ぶはーっ」
「はぁはぁはぁ」
俺たちはようやく裸の包帯男(ネイキッドマミー)を全員やっつけることに成功し辺りにはやつらが倒れている
「なんだよコイツら。ザコじゃなかったのかよ」
「意外とやるじゃねーか」
「当たり前じゃない!!相手はギルド1つよ!!何考えてんのよアンタたち!!」
「シリル~大丈夫~?」
「うん。大丈夫だよセシリー」
遠い木の影から俺たちに言うシャルルと俺たちに駆け寄ってくるセシリー。てかシャルル、もう出てきて大丈夫だぞ?
「オイ!!ぎゃほザル!!おめぇらのアジトはどこだ!?」
ナツさんがアフロの胸ぐらを掴み問いただす。でもよくよく考えるとそんな簡単に教えてくれるわけないよね?
「言うかバーカ。ぎゃほほほっ」
ほら…やっぱ【ゴン】教えないよなって思ってたらナツさんが頭突きして気絶させちゃったよ
「オイ!!でかザル!!」
そしてすぐに違う奴に聞くナツさん。ある意味すごいな
「本当めちゃくちゃねアンタたち」
「妖精の尻尾(フェアリーテイル)ってみんなこんな感じなのかな?」
「いや…さすがにそれはないでしょ?」
みんなこんなだったらマジで怖いって…
「オイシリル。拠点の場所がわかったから急いで行くぞ!!」
「え?あ、はい!!」
グレイさんに言われて俺たちは急いであとを追う。その際さっきよりも傷跡の増えた裸の包帯男(ネイキッドマミー)を見て同情してしまった
後書き
いかがでしたでしょうか?エリゴールはもう少しあとに出させてもらう予定です。なのでジェラールが服を奪うのはエリゴールじゃない誰かということにこの物語では設定しております。
本当はここら辺でウェンディとシリルの過去に触れようかと思ってウェンディsideを出したんですがうまく過去編に繋げるタイミングがわからなかったのでもうちょっと引っ張ります。
あとウェンディsideがめちゃくちゃ下手になってしまってすみません……また次回もよろしくお願いします
ニルヴァーナ起動
「西の廃村………ですか?」
「あぁ。古代人たちの町だったらしい。奴等はそこを拠点にしているそうだ」
俺たちはさっきのサル(ていうかゴリラ?)から言われた西の廃村に向かっている。確かに昔人が住んでいたところなら拠点として使うにもいいかもしれない
「オオッ!! あれじゃねぇか?」
ようやく森から抜けるとそこは崖になっていてその下の方には確かにそれらしきものがあった
「たぶんそうですね!!よし!!」
俺は目一杯空気を吸って叫ぶ
「ウェンディ!!」
「ちょっとシリル!!敵がいるかも知れないのよ!?」
「ハッピー!!」
「うわぁ!! ナツくんまで!!」
俺とナツさんでウェンディとハッピーを呼ぶ。すると突然何かが光って
「ぐあぁ」
「ぐはぁ」
「うわぁ」
何かによって殴られる。このスピード感のある魔法を使うのは
「レーサーか!!」
レーサーはすばやく木に登っていきこちらを見下ろす
「ここはまかせろ!! 早く下にいけ!!ナツ!!シリル!!」
「おし!!」
「俺も残ります!! 一人はダメってジュラさん言ってましたので」
俺もレーサーの方を向く
「行かせるかよ!!」
レーサーがナツさんに向かっていくが
ツルッ
「おっ!! ぎゃっ」
グレイさんの氷に滑り地面に落下する
「シャルル!! セシリー羽………あ!!」
ナツさんが二人を見ると二人はさっきのレーサーの攻撃で気絶してしまっている
「ナツさん!! これで下まで行ってきてください!!」
俺はウォータースライダーを作り下までの通路を作る
「サンキューシリル!! 行くぞ!!」
ナツさんが勢いよくウォータースライダーに乗り滑っていく
「うおおおおおお」
「きゃああああああ」
「うああああああ」
途中でシャルルとセシリーを目を覚ましたのか2人の叫び声も聞こえてくる
「てめぇ………この俺の走りを止めたな」
「滑ってコケただけだろーが」
「その通りだと思います」
レーサーがなんか因縁つけてくるのを俺とグレイさんでツッコム。だってレーサーが滑らなかったら問題なかったし………
「シリル!! こいつは俺一人で十分だ。どっかに隠れてな」
「いえ!! 俺もサポートくらいならできると思います」
勝てる自信はないけど
「ずいぶんなめてくれてるな………だが」
レーサーが一瞬で視界からいなくなる。すると同時に脇腹に痛みが走る
「うっ」
「ぐっ」
グレイさんも同様に脇腹を押さえる。こいつ………早すぎて動きが見えない
「だったら………モード水天竜!!バーニア!!」
俺は速度上昇魔法を自分とグレイさんにかける
「おらぁ!!」
レーサーが再び俺たちに向かってくるが今度は俺たちはそれを回避する
「お!!なんか体が軽いぞ」
「速度上昇の魔法です。これである程度は対抗できると思います」
「やるな!! アイスメイク」
グレイさんに説明するとグレイさんは魔法の体勢にはいる
「アイスキャノン!!」
ドガッ
グレイさんの魔法はレーサーにかわされ木に直撃する。そしてよけたレーサーはこちらに向かってきてグレイさんを木に蹴り飛ばしぶつける
「くっ」
「グレイさん!! うわぁ!!」
レーサーがこちらにけりをいれようとしたのをギリギリで頭を下げてよける
「ほう………俺のスピードについてこれるのか」
「いや…ついていけないついていけない」
反射でよけただけだし!!たまたまよけれただし!!
「広範囲に放てば当たるかな? 水竜の翼撃!!」
俺は広範囲に攻撃できる魔法で対応するがそれを掻い潜りレーサーは俺の背中にけりをいれる
「ぐあ」
「アイスメイク………突撃槍(ランス)!!」
グレイさんも魔法で対抗するがレーサーはそれをよけグレイさんを蹴り飛ばす
「ぐはっ」
「グレイさん!!」
「大丈夫だ!! しかし………なんて速さだ」
レーサーは目にも止まらぬ速さで登っていく。確かに物凄く速い
「俺のコードネームはレーサー。誰よりも速く何よりも速く………ただ走る。ん?」
レーサーが上を向くので俺も上を見るとそこにはナツさんたちと一緒に飛んでいるウェンディの姿があった
「助け出したか!!」
「やった!!」
「バカな!! 中にはブレインがいたハズだろ!?どうやって!?」
「ぶちのめしたに決まってんだろ!!」
一瞬動揺するレーサー。しかしすぐに気を取り直して木をつたってかけ登っていく
「くそ!! いかせるか!!」
「ナツ!!」
「ナツさん!! 危ない!!」
しかし俺たちの声に気づいたときにはもう遅くナツさんとウェンディは地面に蹴りおとされる
「がっ」
地面に落下するナツさんさんとウェンディも一緒に落ちてくる。それを俺がなんとかキャッチする
「ナイスシリル!!」
「セシリー!! ウェンディを………て」
セシリーたちの方を見ると3人とも目を回して気絶している
「くっそーっ!!」
3人をナツさんが抱えて走り出す。俺もウェンディを背負ってるからとにかく逃げないと!!
「行かせねぇって言ってんだろ!!」
レーサーが俺たちを追いかけてくる。しかし
「アイスメイク………城壁(ランバート)!!」
「ぐほ」
グレイさんが巨大な氷の城壁を作り出しそれを止める
「グレイ」
「グレイさん!!」
「行けよ………こいつぁ俺がやるって言ったろ」
そういうグレイさんは肩で大きく息をしている
「けど………お前今ので魔力を使いすぎただろ!!」
「いいから行きやがれ!! ここは死んでも通さねぇ!!行け!!エルザのところに!!」
「うおおお~!! 必ずエルザを助けるからな!!」
「ナツさん!!」
走り出すナツさん。俺はどうすればいいんだ?
「シリル!! お前も行け!!ナツ一人じゃさすがに全員は運べねぇ!!」
「ぐっ」
確かに………そうだ………くそ
「グレイさん!! よろしくお願いします!!」
俺もウェンディを背負って走る。俺たちはエルザさんの元へと急いで走った
――――しばらく走ると
「うきゅぅ」
「ハッピー!! 起きたか!?」
「ナツ………ここどこ?」
どうやらハッピーが目を覚ましたようだ
「しゃべるな。しばらくこのまま休んでろ」
「でもジェラールが」
ジェラール?
「ジェラール…あのやろう、なんでこんなところにいやがるんだ?」
「あの………ナツさん?」
「なんだ?」
「ジェラールって………もしかして青い髪の顔に………タトゥーの入ったりしてる人ですか?」
「お前!! ジェラールを知ってるのか!?」
すごい勢いで迫ってくるナツさん。思わず立ち止まって後ずさりしてしまう
「あ………はい………小さいときに助けてもらって…」
「あいつが………助けた?」
ナツさんが驚いた顔をする
「だとしても………俺はあいつを許さねぇ!!エルザを泣かせたあいつは!!」
しかしすぐに怒りに満ちた顔になってしまう。エルザさんを泣かせたって……もしかして……噂で聞いたエーテリオンを落としたってことに何か関係あるのか?
『ナツくん。シリルちゃん』
少し雰囲気が悪くなってきたところで突然声が聞こえてくる
『聞こえるかい?』
「その声は………」
「ヒビキさん!! てかなんでちゃん付け!?」
俺もくん付けの方がいいよぉ………
『よかった………誰もつながらないから焦ってたんだ』
俺たちは辺りを見回すがどこにもヒビキさんらしき人影は見当たらない
「どこだ!?」
『静かに!!敵 の中におそろしく耳のいい奴がいる。僕たちの会話はつつぬけている可能性もある。だから君たちの頭に直接語りかけてるんだ』
「頭に語りかける?」
どういうことだ?
『ウェンディちゃんは?』
「ここにいる」
『よかった!! さすがだよ。これからこの場所までの地図を君の頭にアップロードする。急いで戻って来てくれ』
「なに言って………おおっ!?」
「なんですかこれ!? ヒビキさんたちのところまでの行き方がわかる!!」
「つーか元から知ってたみてーだ」
『急いでナツくん。シリルちゃん』
突然頭の中に現れた地図を頼りに俺たちは再び走り出す
「一体どうなってるんだこれ?」
「古文書(アーカイブ)ってのに関係してるんですかね?」
「次は右だな!!」
俺たちは地図の通りに走っていく
しばらく走ってきて大分目的地に近づいてきたとき突然
ドゴォン
すさまじい爆音が聞こえてきた
「なんだ?」
「ニルヴァーナでしょうか?」
その爆音はレーサーがリオンさんを巻き込んで自爆した音だったらしい
「シリル!! 今はとにかくエルザのところに行くぞ!!」
ナツさんは気を取り直して走り出す
「はい!!」
俺もそのあとをついて走っていく
―――――
「ゴール!!」
「着いたー!!」
俺たちはようやくエルザさんたちが待つところまで戻ってきた
「ナツ!!」
「シリルちゃん!!」
「どうなってんだ!?急に頭の中にここまでの地図が………」
「ヒビキさん………ちゃん付けは勘弁してください」
俺とナツさんがヒビキさんに言う
「それよりウェンディちゃんを」
「それよりって………いやいいんですけど」
俺は背負っていたウェンディを地面に下ろす
「ウェンディ? 起きて?」
俺はウェンディに声をかけるが全然起きそうにない
「起きろウェンディ!! 頼むエルザを助けてくれー!!」
「落ち着いてナツー!!」
「ナツさんウェンディがかわいそうです~!!」
ナツさんがウェンディをすごい勢いで揺するので俺とルーシィさんで止めようとする。しかしウェンディは徐々に目を開いていく
「あ!! ウェンディ!!」
「ひっ」
しかしウェンディはナツさんの顔を見ると後ずさりし頭を押さえる
「ごめんなさい………私………」
な………なんだ? どうしたんだ?
するとナツさんはウェンディに向かって土下座する
「今はそんなことどうでもいい!! エルザが毒ヘビにやられたんだ!!助けてくれ!!頼む!!」
「毒?」
ウェンディが俺を見る
「一応応急処置はしたんだけど俺じゃあ完全に治すのは無理なんだ」
「六魔将軍(オラシオンセイス)と戦うにはエルザさんの力が必要なんだ」
「お願い……エルザを助けて!!」
ルーシィさんもウェンディに頭を下げる
「も……もちろんです!! はい!! やります!!」
ウェンディがそう言うとナツさんは嬉しそうに笑顔に変わる
「よかったぁ~」
「いつまでのびてんのよ。だらしない!!」
「シャルルものびてたじゃん~」
そのとき気絶していた猫3人も目を覚ましたようだ
ウェンディはエルザさんに向かって治癒の魔法をかける。その顔は真剣そのものだが少し何か考えているように思ったのは俺だけだろうか?
しばらくウェンディが治療をすると
「終わりました。エルザさんの体から完全に毒は消えました」
「で!?」
額の汗を拭いながらウェンディは言う。そしてナツさんたちはエルザさんを見つめる。するとエルザさんの顔に少し血の気が戻ってきていた
「おっしゃー!!」
「やったー!!」
「あいさー!!」
喜びハイタッチするナツさんたち
シャルルとハッピーとセシリーもハイタッチしている
「お疲れさま。ウェンディ」
「ううん。シリルの応急処置がよかったからだよ」
ウェンディは笑顔で言う。いつもなら治癒魔法使うとすぐに倒れちゃうけど今日は大丈夫そうだ。少しでも負担を減らせたなら俺もよかったと思う。
「ウェンディ!!」
ナツさんがウェンディに手を出しウェンディは遠慮ぎみにハイタッチする
「ありがとな」
「しばらくは目を覚まさないかもですけど、もう大丈夫ですよ」
笑顔でナツさんが言うとウェンディは少しだけ落ち込みながら言う。本当にどうしたんだ?
「そっか!! シリルもありがとな!!」
「いえ。少ししか役立たなくてすみません」
ナツさんは俺にも手を出してくるので俺もハイタッチする
「いいこと? これ以上はウェンディにもシリルにも天空魔法を使わせないでちょうだい」
シャルルは腕を組みながら全員に言う
「この魔法は魔力をすっごくすっごく使うから負担が大きいんだよ~」
「私のことはいいの!! それより私………」
セシリーが言うとウェンディは少し被せぎみに言う。そしてまた暗い顔になってしまう
「あとはエルザさんが目覚めたら反撃のときだね」
「うん!! 打倒六魔将軍(オラシオンセイス)!!」
「おーっ!!ニルヴァーナは渡さないぞぉ!!」
全員ウェンディのことには気づかないのか話を進めていく。俺はウェンディに近づいていく
「何があったのか分からないけど…落ち込んでちゃダメだよウェンディ」
「シリル………」
「大丈夫!! 俺もシャルルもセシリーもついてるから!!」
俺はできる限りの笑みをウェンディに見せる。ウェンディはそれでも少し暗い表情は変わらなかったが
ピカッ
すると突然辺りが輝き出す
「何!?」
そちらを見ると黒い光が空に向かって伸びている
「黒い光の柱………」
「まさか………」
「あれは………」
「「「「「ニルヴァーナ!?」」」」」
「あれがニルヴァーナですか!?」
「まさか六魔将軍(オラシオンセイス)に先を越された!?」
「あの光………ジェラールがいる!!」
ナツさんは黒い光を見て言う。その表情はここに来るまでに見た怒りに満ちた顔だった
「ジェラール!? ナツ!! ジェラールってどういうこと!?」
ルーシィさんが聞くがナツさんはあの光に向かって走り出してしまう
「私の………私のせいだ………」
ウェンディはそれを見て涙目になる
「会わせる訳にはいかねぇんだ!!エルザには!!あいつは俺が………潰す!!」
後書き
いかがだったでしょうか?ちょっと物語の無理矢理感が否めませんが少しずつ改善していけるようにしていきたいと思います。
ニルヴァーナの正体
「な……何がどうしたんですか!?」
俺は思わず取り乱してしまう
「とにかく……ナツくんを追うんだ」
「ナツ……ジェラールとか言ってなかった?」
「説明は後!! それより今はナツを……「あー!!」」
突然シャルルが叫ぶので俺たちはそちらを向く
「エルザがいない!!」
「えー!?」
シャルルの言う通りさっきまで寝ていたはずのエルザさんがいなくなっている
「あ……ああ……」
「どうしたの!? ウェンディ!!」
ウェンディがふらつき始めるので俺はウェンディを支える
「なんなのよあの女!!ウェンディに一言の例もなしに!!」
「エルザさん……どこ行っちゃったの!!」
「エルザ……もしかしてジェラールって名前聞いて……」
「どうしよう……私のせいだ……私がジェラールを治したせいで……ニルヴァーナ見つかっちゃってエルザさんや……ナツさんや……」
ウェンディが頭を抱えて暗い表情に変わっていく
「ウェンディ!! 落ち着いて!!何が―――」
ドン
突然ウェンディが飛ばされる。それはヒビキさんがウェンディに攻撃したためだった
「ちょっ……」
驚くルーシィ
「あんたいきなり何すんのよ!!」
ヒビキさんに怒るシャルル
「ウェンディ!!ウェンディ!!」
ウェンディの肩を揺すって起こそうとする俺
「ヒビキくん!!ウェンディに何するの~!!」
セシリーもヒビキさんに怒る。
俺たちは何が起きたのかまったく理解が追い付かない。するとヒビキさんはウェンディを背負って走り出す
「え?何がどうなってるの?」
「と……とにかく追いかけましょ!!」
俺とルーシィさんもヒビキさんを急いで追いつく
「驚かせてごめんね、でも気絶させただけだから」
追い付いた俺たちの方を見ながらヒビキさんは言う
「どうして!?てかなんで走ってるの!?」
「ナツくんとエルザさんを追うんだよ。僕たちもあの光に向かおう」
ヒビキさんはニルヴァーナを見ながら言う
「納得できないわね。確かにウェンディはすぐぐずるけど、そんな荒っぽいやり方」
「そうだよ」
「ひどいよヒビキくん」
セシリーたちがヒビキさんを責める。ヒビキさんは少し暗い顔になってから話始める
「仕方なかったんだよ。本当のことを言うと……僕はニルヴァーナという魔法を知っている」
ヒビキさんの発言に俺たちは全員驚く
「え?でも最初は知らないって……」
「この魔法は意識してしまうと危険だから言えなかったんだ。だから一夜さんもレンもイヴも知らない。僕だけがマスターから聞かされている」
「どういうこと?」
ルーシィさんが聞く
「これはとても恐ろしい魔法なんだ。光と闇を入れ替える。それがニルヴァーナ」
「光と……」
「闇を……」
「入れ替える?」
どういうことだ?意味がさっぱりわからない
「しかしそれは最終段階。まず封印が解かれると黒い光が上がる。まさにあの光だ。黒い光は手始めに光と闇の狭間にいるものを逆の属性にする。強烈な負の感情を持った光の者は闇に落ちる」
負の感情を持った光の魔導士……それって
「つまりウェンディを気絶させたのって……」
「“自責の念”は負の感情だからね。あのままじゃウェンディちゃんは闇に落ちていたかもしれない」
それを聞いたルーシィさんは慌ててヒビキさんに質問する
「ちょっと待って!!それじゃ“怒り”は!?ナツもヤバイの!?」
「なんとも言えない……その怒りが誰かの為ならそれは負の感情とも言い切れないし」
「どうしよう……意味がわからない」
ハッピーがヒビキさんの言葉を理解できずに頭を抱えている
「あんたバカでしょ。つまりニルヴァーナの封印が解かれた時、正義と悪とで心が動いている者が性格変わっちゃうってことでしょ」
「ウェンディもあのままだと六魔将軍(オラシオンセイス)みたいになってたかもしれないってことだね~」
「そういうことね」
シャルルとセシリーの説明でハッピーはようやくわかったのかそうか、といいながらうなずく
「それが僕がこの魔法を黙っていた理由。人間は物事の善悪を意識し始めるとおもいもよらない負の感情を生む。あの人さえいなければ……辛い思いは誰のせい?なんで自分ばかり…それら全てがニルヴァーナによりジャッジされるんだ」
なんて魔法だ……それは確かに危険だな……ん?でも
「それっておかしいですよね?」
「何がだい?」
俺がそういうとヒビキさんたちはこちらを向く。
「だってそのニルヴァーナが完全に起動したら俺たちは悪人になりますけど、六魔将軍(オラシオンセイス)とかの闇にいる人はみんないい人になっちゃいますよね?」
だって光と闇を入れ換えたら全ての人たちの感情が逆になってしまうのだから
「確かに……そういうことも可能だと思う。ただニルヴァーナの恐ろしさはそれを意図的にコントロールできる点なんだ」
「そんな!!」
ヒビキさんの言葉に驚くルーシィさん。
「例えばギルドに対してニルヴァーナが使われた場合……仲間同士の躊躇なしの殺し合い……他ギルドとの理由なき戦争。そんなことが簡単に起こせる。一刻も早く止めなければ光のギルドは全滅するんだ!!」
「ヤバイですねそれ!!」
昔の人はなんつう危険な魔法を考えるんだ
『イカダの上!?』
するとどこからかナツさんの声が聞こえてくる
「ナツ!!」
「向こうから聞こえましたよ!!」
「ルーシィあれ!!」
俺たちが声をした方を見るとそこにはイカダの上で倒れているナツさんと氷の槍を持っているグレイさんがいた
「危ない!! 開け!! 人馬宮の扉……サジタリウス!!」
ルーシィさんが金の鍵を使うと馬の着ぐるみみたいなのを着た人が出てきてグレイさんの持っている槍を壊す
「誰だ!!」
そのままグレイさんはこちらに氷の矢を放つがすべてサジタリウスが壊してくれる
「何してんのよグレイ!!」
「オイラたちだよグレイ!!」
「であるからしてもしもし」
「ルーシィ……うぷ」
「名前呼んでから吐きそうになるのやめてくれない!?」
ナツさん……まさかイカダで乗り物酔いですか?船酔いみたいなものなのかな?
「邪魔すんなよルーシィ。こいつ片付けたらお前らの相手してやるからよぉ」
グレイさんの笑い顔が黒い……
「な……なによこれ。まさかグレイが“闇”に落ちちゃったの……?」
「なが……流れる……揺れる……揺れてる……」
イカダの上でナツさんは苦しんでいる
「止まってるからしっかりしなさい!!」
てかナツさん顔真っ青ですよ!?そんなに気持ち悪いんですか!?
「ナツ!! 今助けるよ!!」
ハッピーがナツさんを助けに飛ぶけど一瞬で氷漬けにされてしまう
「オスネコ!!」
「ハッピー!!」
「ハッピーに何すんのよ!!」
「ハッピーは“空を飛ぶ”“運べるのは一人”“戦闘力は無し”情報収集完了」
何やらブツブツ言い出すグレイさん…あれ?匂いが…
「何言ってんのよグレイ……しっかりして……」
「ニルヴァーナによって闇に落ちるとああなってしまうのか」
「グレイから見たルーシィ。“ギルドの新人”“ルックスはかなり好み”“少し気がある”」
「はぁ? な……なによそれ」
顔を真っ赤にして言うルーシィさん……いや……この人……
「“見た目によらず純情”“星霊魔導士”ほう……星霊ね……」
「ルーシィさん!! こいつグレイさんじゃありません!!」
「え!?」
「フン!!」
グレイさんに似た相手はルーシィさんに氷で攻撃してくる
スガァァン
しかしそれをヒビキさんが止める
「シリルちゃんの言う通りだ。君は何者だ?」
「グレイから見たシリル“化猫の宿(ケットシェルター)”“水の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)”“詳しく知らない”グレイから見たヒビキ“青い天馬(ブルーペガサス)”“男前”“詳しく知らない”チ…情報不足か」
こいつ匂いがグレイさんと全然違う。それにグレイさんは俺とナツさんを体を張って逃がしてくれる人だ。善と悪の感情に揺れ動くはずない
「あんた誰?」
ルーシィさんがそういうとグレイさんモドキはにやけながら
「ピーリピーリ」
変なことを言って煙に包まれる。そしてその煙から出てきたのは…ルーシィさん?
「あ! あたし!?」
「君……頭悪いだろ? そんな状況でルーシィさんに変身しても騙されるはずがない」
「そーだそーだ!!」
ヒビキさんと俺が言うとルーシィさんモドキは服の裾を掴み
「そうかしら? あんたみたいな男は女に弱いでしょ?」
まくりあげた……て……え!?
「きゃあああああ」
「もしもしもしもしもしもし」
「……………」
「オスども……」
「シリル見ちゃダメ!!」
「イタッ」
悲鳴を上げるルーシィさんとルーシィさんモドキをガン見しているヒビキさんとサジタリウス。あきれるシャルルと俺の目を塞ぐセシリー。力が強すぎてちょっと痛い
「ゆ……揺れてる……」
「「確かに!!」」
「うまいこと言うなぁ!!」
ルーシィさんがヒビキさんたちを蹴り飛ばす
「全く……なんてはしたない魔導士なのかしら」
「違う!! あっち!! あたしじゃない!! いやあたしだけど……もう意味わかんない~!!」
「ルーシィさん落ち着いて~」
「お前は力を緩めろセシリー!!目が痛い!!」
相手は何も攻撃してないのにすさまじいダメージを受けた気がする。主にルーシィさんの精神が
「星霊情報収集完了。へぇ……すごい。結構鍵持ってるんだ」
敵がまた何かゴチャゴチャ言い出す。さっきから情報がどうのって言ってるけど……一体なんなんだ?
「サジタリウス。お願いね」
「がはっ」
敵がそう言うと突然ヒビキさんに矢が刺さる。その矢を放ったのはルーシィさんの星霊サジタリウス
「サジタリウス!?」
「何よこの裏切り馬!!」
「ヒビキくん!! しっかり~!!」
「ち……違いますからして……それがしは……」
シャルルたちがサジタリウスにそう言うがサジタリウスはなぜ自分がヒビキさんに矢を放ったのかをわかっていない……つまり無意識に攻撃していたようだ
まさか……こいつルーシィさんの星霊を操れるのか!?
「シャルル!! ウェンディを連れて今すぐここを離れて!!」
「言われなくてもそうするわよ!!」
「サジタリウス強制閉門!!」
「申し訳ないですからしてもしもし……」
シャルルは気絶したウェンディを連れて飛んでいく。サジタリウスも星霊界に帰ったみたいだしひとまずは安心……かな
「開け、人馬宮の扉……サジタリウス!!」
すると偽者のルーシィさんがサジタリウスを召喚する
「お呼びでありますかもしもし。え……あれ?」
「えーっ!?」
ルーシィさんが驚いて叫ぶ。
まさか……他人の魔法を使えるようになるのか!?何ソレ無敵じゃない!?
「あの飛んでるネコ殺して!!」
「いや……しかしそれがしは……」
偽者のルーシィさんがシャルルを指差しながらそんなことを言いサジタリウスは困ってしまうけど……こいつ……今なんて言った?
「強制閉門!!」
「無理よ。あたしが呼んだ「水竜の咆哮!!」きゃああああ」
俺の咆哮を食らって吹っ飛んでいく偽者のルーシィさん。それは変身が溶けると2体の生き物に変化し、サジタリウスも消える
「あれって六魔将軍(オラシオンセイス)の……」
「ジェミーだよ」
「ミニーだよ」
六魔将軍(オラシオンセイス)がクリスティーナから降りてきたときに一緒に降りてきた奴か……
「いきなりなんてひどいじゃないか!?」
「そーだそーだ!!」
ジェミーとミニーが怒った声で言う。ひどいだと……?
「……れよ……」
「え?」
「黙れよ!! シャルルを打ち殺せだぁ!? んな奴にいきなりがひどいとか言われる筋合いはねぇんだよ!!」
「ちょっと……シリルどうしたの!?」
ルーシィさんが焦ってるみたいだけどそんなことはどうでもいい
「仲間を殺そうとする奴は俺が……」
ニルヴァーナなんか今はどうだっていい!! 今はこいつを
「潰してやる!!」
後書き
いかがだったでしょうか?地の文を後から付け加えたりしたところもあるのでちょっと変なところもあるかもしれません。次回ついにシリルが活躍します!!どのくらい活躍するかは未定ですが(;^_^Aまた次もよろしくお願いします
シリルvsエンジェル
前書き
私事ではありますがまさかのプレイブサーガのデータが全部消えてしまった……・゜・(つД`)・゜・
ルーシィside
「黙れよ!! シャルルを打ち殺そうとする奴にいきなりがひどいとか言われる筋合いはねぇんだよ!!」
突然シリルが声を荒げる。さっきまで丁寧な口調で優しい目をしていたシリルが目の前の敵を睨んでいる
「潰してやる!!」
シリルがジェミーとミニーに向かって構える
「ジェミニ!! もういいぞ!!」
すると向こう岸から女の声が聞こえてくる
「この匂い………六魔将軍(オラシオンセイス)の………」
「は~い。こんにちはシリルちゃん。ルーシィちゃん。エンジェルちゃん参上だゾ」
現れたのは天使のような格好をした女……あれは
「六魔将軍(オラシオンセイス)!!」
「そのちっこいのはてめぇの使いか?」
「そう。この子たちはその人間の容姿、能力、思考、すべてをコピーできる双子のジェミーとミニー。双子宮のジェミニ。私もルーシィちゃんと同じ星霊魔導士だゾ」
「星霊魔導士………」
あたしたちが闇に染まらないように六魔将軍(オラシオンセイス)に善の心が宿ることもない!! そんな甘い考えじゃやられる!!
ナツもヒビキも戦えない………シリルだけじゃとてもじゃないけど勝てるわけない………だったらあたしが頑張らないと!!
「シリル!! あたしも一緒に「必要ねぇ!!」え!?」
「こんな奴、俺一人でお釣りがくるぜ!!」
シリルの強気発言に思わず驚いてしまう。本当にどうしちゃったのよシリル
「あなた一人でお釣りがくる? あははははは」
「何がおかしい!!」
「だってあなたみたいなお嬢ちゃん一人に一体何ができるって言うんだゾ? 水の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)と言ってもさっき私たちに全然歯が立たなかったんじゃないのかゾ」」
エンジェルはお腹を抱えて笑いそう言う。確かにシリルは滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)と言ってもまだ子供……とても一人じゃあ………
しかしシリルはそれを聞き逆に笑みを浮かべる
「敵を見た目で判断してしまうとは………六魔将軍(オラシオンセイス)も大したことないようだな。こっからさきはそんなものは一切関係ない。強い者が勝つ。それだけだ」
「あなたの強さと私の強さじゃ全然格が違うと思うゾ?」
エンジェルはシリルに言う。まさしくその通りだよね………
「まぁ………口で言うのはただだからな。なんでも言っておくといい。来いよ」
シリルはエンジェルに向かってかかって来いと指を振る。あんたそんなことして大丈夫なの!?
「ふ~ん。いいゾ!! 相手したあげるゾ!! ジェミニ閉門」
そういってエンジェルはジェミニを閉門して鍵を取り出す。その鍵は………
「黄道十二門!?」
「開け、天蠍宮の扉………スコーピオン!!」
「ウィーアー!!」
そういって現れたのは赤と白の髪をしたさそりのような姿の星霊
「へぇ………斬新な髪の色してるねあんた」
「何変なところに感心してるのよ!?」
シリルのあまりにも場違いの発言に思わずツッコムでしまう
「本当はルーシィちゃんのアクエリアス封じに使うつもりだったけど、スコーピオンは十分強いし問題ないゾ」
アクエリアス封じにって………もしかしてあれアクエリアスの彼氏!? 初めて見たわ!!
「スコーピオン。あのお嬢ちゃんやっちゃって」
「オーケーエンジェル。サンドバスター!!」
スコーピオンはそう言って尻尾から砂煙をシリルに向かって放つ。しかしシリルはそれを避けようとはせず攻撃を受ける
「あははははは!! なんだこいつ!! 全然口だけだったゾ!!」」
笑いすぎて涙を出しているエンジェル。もうシリルのバカ!! あんなにまともに食らって大丈夫なわけないじゃない!!
「シリル!! 今助けるわ!!」
あたしがシリルの元に駆け寄ろうとすると突然誰かに腕を引っ張られる。腕を引っ張ったのは………セシリー?
「セシリー!! なんで邪魔するの!? シリルが心配じゃないの!?」
「大丈夫~。シリルならほら」
セシリーが指差す方向を見るとそこにいるのは無傷のシリル
「な!?」
「バカな!! 俺のサンドバスターを受けて無傷だと!?」
動揺するエンジェルとスコーピオン。一体どうなってるの!?
「たぶんシリルは反射で防御力アップの魔法を使ったんだと思うよ~。それにシリルは水の魔導士で相手の攻撃は砂。シリルの方が相性はいいからね~」
セシリーが解説ぎみにあたしに教えてくれる。そしてシリルはスコーピオンを見据えて話す
「全然効かないな………次はこちらがいかせてもらおう」
シリルは川にある石を渡りながらスコーピオンに接近しようとする
「やらせるか!! サンドバス「遅ぇ!! 水竜の鉄拳!!」ぐああ」
スコーピオンがシリルに向かってサンドバスターをしようとしたのだがシリルがそれよりも速くスコーピオンの顔にパンチを入れる。
それにしてもシリルの動きがさっきよりも格段に速い!!
「すまねぇ………エンジェル………」
シリルの攻撃を受けたスコーピオンは星霊界へと帰っていく。黄道十二門の星霊を一撃で倒すなんて………
「ふ~ん。少しはやるみたいだゾ。開け、双子宮の扉……ジェミニ!!」
「「ピーリピーリ」」
エンジェルがジェミニを召喚するとジェミニはグレイに変身する
「アイスメイク……突撃槍(ランス)!!」
「水竜の翼撃!!」
ジェミニの攻撃をシリルが魔法で壊す。しかしその隙にジェミニがシリルに接近して
「アイスメイク……大鎌(デスサイズ)!!」
「うおっ」
ジェミニが大鎌でシリルに斬りかかるがシリルはギリギリでそれを避ける。そこからシリルは腕に水を纏う
「水竜の鉄拳!!」
「フン!!」
シリルがジェミニにパンチを繰り出すがジェミニはそれを凍らせて受け止める。戦い方までグレイと一緒なんて……なんて厄介な能力なのかしら
「「やっと触れた……ピーリピーリ!!」」
ジェミニはそう言うと煙に包まれていき……今度はシリルが二人現れる
「へぇ……でも……なんとなく弱点が分かってきた気がするな」
おそらく本物のシリルがそう言う。弱点?
「おめぇはエルザさんやジュラさんに変身すれば俺なんかに勝つのは容易いはずだ……だがそれをしないのは……おめぇは一度触れた相手じゃないと変身できないんだろ?」
「ピーリピーリ。よく分かったね」
「さっきお前がやっと触れたとか言ってたからな……それに変身できるストックにも限りがあるようだな。最初に戦ったとき俺にも変身してたんだからもう一度触れる必要なんて本来はないんだからな」
シリルはジェミニとの距離を気づかれないように少しずつ後退し開けながら言う。シリル……そんなことまで見抜くなんて……さっきまでの少し頼りないシリルとは全然違う
「ピーリピーリ!! でもこれで君の考えは僕に筒抜けなんだよ?」
そうか!! ジェミニは相手の容姿、思考、能力をコピーできる。つまりシリルに変身しちゃえばシリルの考えてることは筒抜け!! 能力が一緒なら相手の考えを分かる方が強いに決まっている
「別に俺が何を考えているかおめぇに分かったところでさほど戦局に影響はねぇよ」
しかしシリルは全然気にした様子はなくあくまで余裕の表情。何か作戦でもあるの?
「そう? なら……水竜の咆哮!!」
「水竜の咆哮!!」
シリルとジェミニの魔法がぶつかり合う。でも二人の能力は一緒なんだからここは相殺しあうだけなんじゃ……と思いながら見ているとシリルの水がジェミニの水をどんどん押していき
「うわあああ」
ジェミニがシリルの攻撃を受け吹っ飛ばされる。そのダメージによってかジェミニは元の星霊の姿へと戻る
「なんで!? ジェミニは相手の能力をコピーするのだから力は互角のはずだゾ!?」
エンジェルはその状況を見て思わず驚きの声をあげる。でもその気持ちは分かる。あたしにだってなんでシリルが打ち勝ったのか全然わからないんだから……
「最初に言っただろ? 強い者が勝つ。それだけだ」
「それはおかしいゾ!? 二人の力は互角なんだゾ!?」
シリルは怒りに満ちた表情の中でもあえて冷静な口調でエンジェルに言う。エンジェルはそのシリルの言葉に異論を唱える
するとシリルはやれやれと言った動きを見せ話し出す
「お前の言っている強いは魔力のことだろ? 俺の言っている強いは違う」
シリルはそう言うと自分の胸を叩く
「俺の言っているのは力じゃない。気持ちだ」
「気持ち?」
あたしはオウム返ししてしまう
「誰かを守りてぇ。誰かの力になりてぇ。そういう気持ちが強い者だけが勝つことができるんだ!!」
シリルはそう言ってエンジェルに向かって走り出す
「こうなったら奥の手だゾ。ジェミニ閉門!! 開け、白羊宮の扉……アリエス!!」
「すみませ~ん。ウールボム!!」
「よっと」
シリルは攻撃をよけて一度距離をとる
エンジェルが呼び出したのは白い毛皮の服を着た角の生えた星霊……あれ!? アリエスって
「カレンの星霊……」
ヒビキが呟く。そう……アリエスは以前ロキが自らを犠牲にしようとしてまで助けようとした星霊。その持ち主は青い天馬(ブルーペガサス)の星霊魔導士……カレンだったはず
「なんであんたがカレンの星霊を!?」
「私が殺したんだもの。これはその時の戦利品だゾ」
「あう」
アリエスの頭をポンポンと叩きながらいうエンジェル。カレンが死んだのって……こいつのせいだったの!?
「あの女……大した魔力もないのに二体同時開門しようとして……自滅だったゾ。まぁトドメを指したのは私だけど」
なんの悪びれた様子もなく言うエンジェル。こいつ……なんてひどいやつなの!!
「さぁ……シリルちゃん。あなたはこの子に勝てるかな?」
「……来なよ……」
シリルは一瞬迷ったような顔を見せるが気を取り直してアリエスに向き合う
「ウールボム!!」
「水竜の翼撃!!」
アリエスの攻撃をシリルは魔法で弾く。しかしアリエスはシリルのすぐ前まで接近しておりモコモコの毛を腕に纏ってパンチする
バシッ
しかしシリルはそれをキャッチし後方に投げる
アリエスは着地するとすぐにシリルに向かって突っ込んでいく。でも……アリエスは確かそこまで戦闘に秀でた星霊じゃなかったはず……今のシリルには敵わないんじゃないかしら?
あたしはそう思いエンジェルの方を見るとエンジェルは余裕の笑みを見せている
「あぅ」
「うっ」
シリルとアリエスが互いのパンチを受けて少し距離を開ける。それを見たエンジェルはポケットから銀の鍵を取り出す
「開け、彫刻具座の扉……カエルム!!」
「二体同時開門!?」
エンジェルはアリエスを召喚したままもう一体星霊を召喚した。2対1に持ち込んでシリルを倒すつもりね!!
「だったら!!」
あたしも加勢しようとロキの鍵を手に取る。しかしエンジェルの召喚したカエルムはシリルとアリエスの方を向いて魔力をためている
もしかして……味方ごとシリルに攻撃するつもりなの!?
あたしはそう思ったとき体がシリルとアリエスの方に向かって走っていた
「やぁ!!」
「はぁ!!」
シリルとアリエスはエンジェルのやろうとしていることに気づかずに戦っている。そして魔力をため終えたカエルムは
ズドォン
シリルとアリエスに向けてレーザーを放った
「シリル!! 避けて!!」
あたしが叫ぶとシリルはレーザーに気づいたようだった
「やべぇ!!」
シリルは横に倒れるようにしてレーザーを避ける
しかしアリエスはそれを避けきれずにレーザーに当たる……寸前であたしがアリエスを抱いて避けさせる
バシャン
あたしとアリエスは水の中に飛び込む形で入る
「ルーシィさん!!」
「ルーシィさん!!」
「だ……大丈夫よ……」
シリルとセシリーが名前を呼ぶのでそれに答える。あたしはアリエスを見るとわずかにレーザーがかすったあとはあるが大きなケガもなかったので安心する
「よかった~」
「助かりましたルーシィさん」
「なんで……」
「え?」
「なんでアリエスを助けたの!?」
あたしとシリルが安堵に包まれているとエンジェルが少しトーンが低くなった声で聞いてくる
「むしろなんで助けちゃいけねぇんだよ」
シリルがエンジェルに質問返しする
「アリエスはあんたたちの敵なんだゾ!? それをなんで助ける!?」
「あんたがアリエスごとシリルを殺そうとしたからでしょ!?」
「星霊は死なないゾ!! そんなこともお前は知らないのか!?」
エンジェルがあたしを指差しながら言う。確かに星霊は死なない……だけど
「星霊だって痛みを感じるんだ!! 星霊だって生きているんだ!!」
「うるさいうるさいうるさい!! カエルム!!」
ドン
「やらせねぇ!!」
エンジェルの指示でカエルムがこちらにレーザーを放つがシリルがそれを川の水を盾のように使って防ぐ
「こいつ……どこまでも邪魔をして!!」
「仲間を守るために俺は戦ってるんだから当然のことだろ?」
忌々しそうにシリルを見るエンジェル。それにシリルは冷静に言う
「このぉ!! カエルム!!」
カエルムがシリルにレーザーを放つがシリルはそれを避けてに水を纏ったパンチを繰り出すがエンジェルをカエルムが守る
バシャッバシャッバシャッ
するとあたしの後ろから誰かが歩いてくる音がしてきて…首に手をかけられる。あたしの首に手をかけているのは……ヒビキ?
「ヒビキさん!? 何してるんですか!?」
「まさか……こいつ闇に落ちたのかぁ!?」
「ヒビキくん!!」
その様子を見て動揺するシリルとセシリー。そして指を指して笑っているエンジェル
「ヒビキ……」
「じっとしてて……」
ヒビキはそう言うと首にかけていた手を頭の方へ移動させていく
「古文書(アーカイブ)が君に一度だけ超魔法の知識を与える」
「うあっ!!」
突然あたしの頭の中に見たことのない図形が流れ込んでくる
「何これ!? 頭の中に……知らない図形が……」
「おのれぇ~!! カエルム!! やるよぉ!!」
エンジェルがカエルムを手に持ちこちらに走ってくる……でも
「行かせねぇよ!!」
「がっ」
シリルがエンジェルの脇腹にけりを入れるとエンジェルはその場に倒れる
「頼んだよ……ルーシィ……」
ヒビキは魔力を使いきったのか川の中へと倒れる
「天を計り天を開きあまねく全ての星々その輝きを持って我に姿を示せ……アトラビブロスよ・我は星々の支配者アスペクトは完全な荒ぶる門を開放せよ」
あたしとエンジェルの周りにたくさんの惑星が姿を現していく
「な…何よこれぇ……」
「すげぇ……」
動揺するエンジェルと見入っているシリル
「全天88星。光る!! ウラノメトリア!!」
「きゃあああああ」
ウラノメトリアを食らったエンジェルは打ち上げられる。すると次第にあたしの意識もはっきりしてくる
バシャーンッ
「ひっ」
川に何かが落ちてきて思わず驚いてしまうあたし。それを見て笑っているシリルとヒビキ
あたしには何が起きたのか全然わからずにシリルとヒビキの顔を交互に見るしかなかった
後書き
いかがでしたでしょうか。当初はシリルがエンジェルを倒そうと思っていましたが先のことを考えるとルーシィがウラノメトリアを覚えてくれないといけないよなぁ……と思い多少無理矢理ですがルーシィにトドメを刺したもらいました。次はシリルたちの過去に触れるお話の前振りです。また次回もよろしくお願いします
追憶のジェラール
前書き
題名が思い付かなかった……すみません……
シリルside
「あれ? あれ?」
エンジェルを倒したルーシィさんが辺りをキョロキョロと見回しているけど……なんか少し様子が変なような……
「ルーシィさん!!」
「あ!! シリル!! うっ」
ルーシィさんは俺が近づくのに気づき立とうとしたが魔力を使いすぎたみたいで立ち上がれない
「なに…コレ…力が全然入らない…」
「大丈夫ですか? ルーシィさん」
「ありがとうシリル」
俺はルーシィさんに手を出すとルーシィさんは手をつかんでやっとの思いで立つ
「大丈夫ですか? 大分フラフラしてますけど……」
「平気……てかシリル口調元に戻ったわね!!」
「え? あぁ……まぁエンジェルは倒しましたしね……」
俺はただ頭に血が上ったからああなっただけで目的が達成できれば怒る必要もないしね
俺はフラフラのルーシィさんと一緒に岸まで戻ろうとする
「あ!!」
「どうしました?」
しかしルーシィさんが何かに気づいて立ち止まる
「ナツのこと忘れてた!!」
「あ!!」
ルーシィさんの視線の先を見るとイカダの上で真っ青な表情のナツさんが突っ伏していた
「ナツ!! 大丈夫!?」
「ナツさん!!」
「おおお……」
ザバァ
俺たちがナツさんを助けようと駆け寄ろうとすると後ろで水が跳ねた音がするのでそちらを向く。そこにはルーシィさんの魔法によってボロボロになったエンジェルがカエルムを持って立っていた
「負け……な……い……ゾ……六魔将軍(オラシオンセイス)……は……負け……ない……」
「まだこいつやる気かよ!!」
あまりの執念深さにあきれてしまう俺
するとエンジェルの持っているカエルムが魔力をためていき
「一人一殺……朽ち果てろぉ!!」
俺たちにレーザーを放つ
「きゃっ」
「うわっ」
とっさにかがむ俺とルーシィさん。しかしそのレーザーは俺たちの横を抜けていき……
ゴガッ
ナツさんのイカダを止めていた木に当たってしまう
「は……外した……」
「おお……おおお……」
イカダを止めていた木が壊れたことによって当然の如く川の流れに乗って動き出すイカダ。ナツさんはいまだにイカダの上で苦しんでいる
「ナツ!!」
「ナツさん!!」
俺とルーシィさんがイカダを止めようと走り出すが
ガッ
「え? ひゃっ」
バシャッ
俺は川の中の石に足をとられて転んでしまう
「……って水の中かい!!」
エンジェルも力尽きたのか何か言いながら川の中に倒れる
「手を伸ばして!! ナツ!!」
「おおおお……」
そんな中ルーシィさんだけはナツさんの元へとたどり着き手をつかむ……しかしその先は急流になっていて……
「きゃあああああ」
ルーシィさんとナツさんは下流へと流されてしまった
「ルーシィさん!!」
「ナツくん!!」
俺とセシリーは急いで急流の近くに行くが……二人の姿はもう見えない……
「どうしようシリル……」
「う~ん……」
セシリーが俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。俺はひとまず辺りを見回す
ハッピーはいまだに氷漬けになってるしヒビキさんも傷とルーシィさんに力を与えたために動けそうにない
「ナツさんはルーシィさんに任せよう……俺たちはヒビキさんたちを安全なところに連れていこう」
「わかった~」
俺とセシリーはヒビキさんを岸に上げ寝かせる。さて……どこに運べばよいのやら……
「シリルちゃん……」
「シリルくんでお願いします」
「いや……呼び捨ての方がいいでしょ~」
ヒビキさんは意識はあるようだし……肩を貸して安全なところまで連れていけるかな?
「僕たちのことはいいから……君はウェンディちゃんを探した方がいいと思うよ」
「え? なんでですか?」
ヒビキさんに言われて理由を聞いてしまう俺。確かにウェンディのことは心配だけど、ヒビキさんたちを放っておくわけにはいかないでしょ
「たぶんウェンディちゃんは意識を取り戻しているはずなんだ。でもウェンディちゃんだけだとまた自分責めてニルヴァーナの影響を受けてしまうかもしれない。でもシリルちゃんが近くにいてあげればウェンディちゃんはそんなことにはならないと思うから」
ヒビキさんは俺の顔を触りながら言う。確かにウェンディは少し……いやかなりメンタルが弱い。さっきみたいに自分を責めていることは十分に考えられるだろう
「わかりました。ヒビキさん。俺たちはウェンディを探してきます」
「うん。気をつけてね」
「はい!! 行こう!! セシリー」
「わかった~」
ヒビキさんに一度お辞儀をして俺はセシリーにつかんでもらって空へと飛び上がる。さて……ウェンディの匂いは……
「あっちからウェンディの匂いがする!!セシリー!!」
「はいはい!!」
俺が指差した方向へとセシリーは進路を変更して飛んでいく。待ってろよウェンディ。闇に落ちるとかは絶対なしだからな!!
夕方……どこかの岩場にて……第3者side
「私……来なきゃよかったかな……」
ウェンディは体育座りをして肩を落とし落ち込んでいる
「まーたそういうこと言うの? ウェンディ」
「だって~」
「ネガティブな感情は闇に心を奪われちゃうのよ」
ウェンディの隣に座っているシャルルがウェンディに注意する
「私……シリルたちを置いて逃げて来ちゃったんでしょ?」
「それは違うよウェンディ」
ウェンディは声がする方を見るとそこにはセシリーに掴まれてこちらに飛んでいるシリルがいた
シリルはウェンディの前に着地する
「逃げたんじゃないよ。危なかったからシャルルと一緒に安全なところまで行ってもらっただけ」
「それを逃げたって言うんじゃないの? シリル」
「あう……」
ウェンディに突っ込まれてシリルは何も言い返せなくなる
「でもウェンディがいなかったらエルザさんは今ごろどうなっていたのかな?」
「そうだよ!! もしかしたら死んじゃってたかも知れないよ~!!」
「でもニルヴァーナも見つからなかったよ」
投げたボールをことごとく打ち返されている状態のシリル。セシリーも簡単に論破され困ってしまう。そんな二人を手助けするようにシャルルが言う
「アンタだってジェラールって人に会えて嬉しかったんでしょ?」
「それは……」
ウェンディは少し悩みながら顔を伏せる
「ウェンディ。もしかしてジェラールに会ったの?」
「うん。六魔将軍(オラシオンセイス)の拠点でね……」
シリルはそれを聞いて驚いた顔をする。しかしすぐにウェンディに笑顔で話しかける
「ねぇ……ジェラールは元気そうだった?」
「ううん……ジェラールはエーテルナノって言うのを吸収しすぎてまともに動ける状態じゃなかったの……それを私が治しちゃったから……ニルヴァーナが……」
ウェンディはますます暗い顔をする。シリルはそれを見てウェンディの額と自分の額をくっつける
「ウェンディは間違ってないよ。それにジェラールがニルヴァーナを悪用するはずないでしょ?大丈夫。だから自分を責めるのはもう終わり。わかった?」
「うん……」
シリルにそう言われウェンディは涙を拭う
「ところで、あのジェラールって何なの? 恩人とか言ってたけど……私もセシリーもそんな話聞いたことないわよね?」
「そうだね……話してなかったね」
「なんのこと~?」
シャルルとウェンディの会話にほとんどジェラールの話を聞いていなかったセシリーが聞く。ウェンディはシリルを見るとシリルはうなずく
「わかったよ。二人には話しておくよ」
シリルはシャルルとセシリーの方を向いた
後書き
いかがでしたでしょうか。今回は少し短めとなっております。次はシリルの過去をやらせていただきます。また次回もよろしくお願いします
シリルの昔話
シリルside
あれは7年前の話……俺とウェンディはヴァッサボーネとグランディーネが突然姿を消してしまい路頭に迷っていたんだ。
「グランディーネ……ヴァッサボーネ……」
「泣かないで……ウェンディ」
森の中をさ迷いながら俺たちは歩いていた。ウェンディはグランディーネとヴァッサボーネがいなくなってしまってからずっと泣いている。俺はウェンディの背中をさすりながら一緒に歩いていた
「どこにいるの? グランディーネ……ヴァッサボーネ……」
ウェンディは目を擦りながら歩いている。俺は自分も泣きそうになるのを抑えていた。
(俺たち……どうなっちゃうのかな?)
二人が突然いなくなって俺は困り果てていた……俺もウェンディも不安な気持ちでいっぱいだった。すると前から誰かの足音が聞こえてくる
ザッザッザッ
その足音は次第に大きくなっている。俺とウェンディはそちらを見る。するとそこには薄い青い髪の顔にタトゥーが入っている少年が現れた
「どうしたの?」
少年は俺たちに声をかける。ウェンディはその少年を見て思わず泣きついてしまう
「うぇぇぇぇん!! いなくなっちゃったのぉ!!」
泣きじゃくるウェンディ。少年はウェンディの肩を持つとそっと頭を撫で、俺に視線を向ける
「どうしたんだい?」
少年は俺に問いかける。俺は少年の方に歩み寄っていく
「俺とウェンディ……その子の親が突然いなくなっちゃって……それでどうすればいいのかわからなくて……」
俺もその時は心に余裕がなくてうまく説明できなかった。でも少年はそれを察してくれたのかウェンディを抱き締める
「大変な思いをしてるんだね……よければ名前を教えてくれないかな? 俺の名はジェラール」
「俺はシリル。シリル・アデナウアーです……」
「私は……ウェンディ……マーベル……です……」
ウェンディは泣きながらつっかえつっかえで名前を言う。ジェラールは俺たちの名前を聞いてなぜか驚いたような顔をするが……すぐに笑顔になって話す
「シリルとウェンディか。いい名前だ!!」
ジェラールは俺の方へと歩み寄ってくる
「ねぇ……もしよければ俺と一緒に旅に出ないか?」
「え?」
俺は突然の提案に驚いてしまう。ジェラールは俺とウェンディを交互に見たあと言葉を続ける
「実は俺も旅をしていてね。今は道に迷っちゃったんだけど。」
ジェラールは恥ずかしそうに頭を掻く
「まぁ道に迷ったといっても宛のある旅ってわけではないんだけどね。もしかしたら君たちの親に旅の途中で会えるかもしれないし。それにこれからどうするのか決まってないんだろ?」
「それは……まぁ……」
ジェラールに言われて口ごもる俺。こんな俺たちがついていって迷惑にならないのかな?
「それに俺も一人じゃ寂しいんだ。君たちも一緒なら楽しい旅になると思うんだ」
「行く!! 私もジェラールと旅にいきたい!!」
ジェラールの言葉にいち早く反応したのはウェンディだった。ウェンディは涙を拭うとこちらに駆け寄ってきて抱きつく
「ねぇシリル!! 一緒に行こう!!」
「……うん!! 行こう!!」
ウェンディが笑顔になったのを見て俺は嬉しくなった。俺とウェンディは手を繋いでジェラールに近づく
「これからよろしくお願いします。ジェラールさん」
「よろしくね!! ジェラール!!」
「あぁ!! よろしく!! それとシリル。俺のことは呼び捨てでいいよ!!」
「いいんですか?」
「あぁ!! だって俺たちは一緒に旅をする仲間なんだから!!」
ジェラールの笑顔になぜかドキッとしてしまう俺。仲間と言われて嬉しい気持ちもあったからなのかも知れない
「さぁ、行こう!!」
ジェラールは俺たちの手をとり歩き出す。そこから俺たちは一緒に旅をした
―――――旅を始めてしばらくして
「ジェラール……なんか天気があれそうだよ?」
その日は俺たちは草原を歩いていたのだがさっきまでまぶしく輝いていた太陽が黒い雲によって覆われている。
するとすぐに雨が少しずつ降ってくる
「まずいね……どこかで雨宿りしないと」
ジェラールも空を見上げながら言う。すると突然雷が光り
ゴロゴロゴロ
「きゃあっ」
大きな音がするとウェンディが俺にしがみついてくる
「大丈夫ウェンディ。ジェラール! とりあえずどこかで雨宿りしよう!!」
「そうだな。あっちに大きな木があるみたいだしそこで雨宿りしよう」
ジェラールが指を指した方向には確かに大きな木があって、それは雨を凌ぐのにはちょうどいい場所だった。
俺たちはその木に急いで走っていった。
「これで大丈夫かな?」
「だね」
「うぅ……ひっく……」
安心する俺とジェラール。しかしウェンディはさっきの雷がよほど怖かったのか泣きじゃくっている
「シリル。ウェンディと一緒にここで待っていてくれ」
「? ジェラールは?」
「俺は何か食べるものを探してくるよ」
「わかったよ」
俺はジェラールの言葉にうなずく。ジェラールはそれを見てカバンを置いてから少し足早に森の中に入っていく
俺はウェンディと一緒にその場で座って待つことにした。ウェンディはなおも目を擦りながら泣いている
「大丈夫?」
「うん……少しビックリしただけだから」
そういうウェンディは寒いのか小刻みに震えている。俺はジェラールのカバンに毛布があったことを思い出してそれを取り出してウェンディにかける。
「ありがとうシリル」
「いやいや」
しばらく俺とウェンディはジェラールが走っていったところを見つめながら待っている。ウェンディが眠たくなってきたのか首がカクカクッと上下しだしたくらいにジェラールが戻ってきた
「ジェラール!!」
さっきまで眠そうだったウェンディはジェラールを見つけて大喜びで駆け寄っていく
「雨の日は嫌だけど、こんないいこともあるんだよ」
ジェラールは腕いっぱいに持っている果物を俺たちに見せる。それは水滴がついていてきれいに見えた
「わぁ!!」
「どこでとってきたの?」
「聞くなよ」
喜ぶウェンディと俺。俺が質問するとジェラールはなぜかそう返答したので俺とウェンディは?マークをいっぱいに浮かべていた
「さぁ、食べよう」
「「うん!!」」
ジェラールは木の下の雨の当たらないところまでいき座る。俺とウェンディはジェラールを囲むように座りジェラールのとってきてくれた果物を頬張る。
その日はその木の下で野宿をした。
その日の夜は昼間の雨など想像できないほど星がきれいだったのを今でも覚えている
―――――ある天気のいい日
旅をしていたときあまりにも天気が良くて凄く暑かった日もあった。
「暑いね」
「そうだね」
俺とジェラールは額に流れる汗を拭いながら歩いている
「ウェンディ。大丈夫?」
「だい……じょう……ぶ……だよ……」
「とてもそうは見えないけど?」
「あう……」
ジェラールの問いにウェンディが答えるが顔を真っ赤にしてふらふらしている。するとジェラールは近くにあった大きな葉っぱの植物を茎から取りウェンディに渡す
その葉っぱのおかげで影ができていた
「ありがとうジェラール」
「ううん。シリルもどうだい?」
ジェラールは俺にも葉っぱを渡してくる
「ありがとう。じゃあ俺からお返し!!」
「お? なんだい?」
俺はジェラールから葉っぱを受けとるとジェラールに手から出した水を掛ける
「どう?」
「冷たくて気持ちいいね。ありがとうシリル」
「わぁ!! シリル!! 私にもかけて!!」
「いいよ!!」
俺はウェンディにも水をかける。気がつくと俺たちは天気のいい日にも関わらずびしょびしょになるまで水遊びをしていた
――――岩場にて
それからまた何日かして俺たちは見晴らしのいい岩場で風を浴びていた
「涼しいね!! シリル!! ジェラール!!」
「うん!! 風がとっても気持ちいい」
「そうだね」
ウェンディは体全身に風を受け俺も一緒になって風を受ける。
ジェラールはそんな中どこか遠くを見つめていた
「どうしたの? ジェラール」
「いや……なんでもないよ」
俺の問いかけにそう答えるがジェラールはどこか上の空だった
「ねえ……これからどこへ行くの?」
「さぁ。どこがいいかな?」
「本当に何も考えてないんだ……」
「まぁね」
俺の問いにジェラールは照れたように返す。ジェラールってしっかりしているようで実はちょっと抜けてるのかもな
「私たちもついていっていい?」
ウェンディがジェラールの手を握る。ジェラールはそれに笑顔で答える
「もちろん!!」
「「ありがとうジェラール!!」」
俺とウェンディはジェラールに笑顔で言う。
「どういたしまして」
ジェラールは空いている方の手で俺の手をとると三人で歩き始める。
ジェラールと出会ってからは俺とウェンディは毎日が楽しかった。俺はそんな日々が永遠に続くと思っていた。でも……別れは突然に訪れた
――――
ジェラールと出会って一ヶ月ほどたったある日、俺たちは三人でお話ししながら歩いているとジェラールは後ろを振り向いて
「アニマ!?」
突然訳の分からないことを言い出した
「アニマ?」
「なに? どうしたの?」
俺とウェンディはジェラールに聞く。すると突然水滴が頭に落ちてきた。俺は上を見上げると雨が降り注いできた
「やば!!」
「あっちの森で雨宿りしよう!!」
「うん!!」
ジェラールは俺とウェンディの手をとると森に向かって走る。そして木が何重にも重なっていて雨の当たらないところで雨宿りした。
「君たちとの旅はここまでにしよう」
「「え!?」」
ジェラールが突然そんなことを言い出した。
「いや!! 私たちも一緒に行く!!」
「ダメだ!!」
「どうしてダメなの!?」
「これから行くところはとても危険なんだ」
俺の問いにジェラールはそう答えた。
「どうしてなの!? ジェラール!! 離れたくないよぉ!!」
泣きそうになるウェンディ。俺もジェラールと離れたくない。
ジェラールはそんな俺たちを見て困った顔をする
「この森を抜けたらギルドがある。そこに君たちを預けるからね」
「いや!! 離れたくない!! 一緒にいる!!」
ウェンディはジェラールに抱きついていっぱい泣いた。ジェラールはますます困った顔をしたのを見て俺はその場に立ち尽くすしかなかった
後書き
いかがでしたでしょうか。アニメのウェンディの回想にシリルが入っていった感じにしました。あとシリルの名前を聞いて驚いたのにもきちんとした理由があります。それはまた別の機会に……また次回もよろしくお願いします
ニルヴァーナ復活
―――――現在
「そして俺とジェラールは泣きつかれて眠ったウェンディをつれて廃そ……あ!!」
俺はそこまで言って三人のいまだに知らない事実を話しそうになったことに気づき話をやめる
「どうしたの?」
シャルルが俺の顔を覗き込む
「いや……なんでもないよ。それでジェラールが預けてくれたギルドが化猫の宿(ケットシェルター)なんだ」
俺は多少強引に話を戻す。
「で? ジェラールはどうなったの?」
「それっきり会ってないの……」
シャルルの問いにウェンディが悲しそうな顔で答える
「シリルも?」
「そう……今日まで全然会ってないんだ」
というか、どこにいるのかすら知らなかったぐらいだし
「その後……噂でね。ジェラールにそっくりの評議員の話や最近はとても悪いことをしたって話も聞いた」
「俺は嘘だと思ったからウェンディに言いたくなかったんだけどな」
俺はウェンディの頭を撫でながら言う。ジェラールがそんなことをするはずがないんだ。だからウェンディに余計な心配をかけたくなかったんだ……
「ジェラール……私のこと覚えてないのかな?」
「覚えてるよ!! 絶対!!」
セシリーがウェンディに大きな声で言う。
「俺たちはジェラールを忘れたことなんてなかった。だからジェラールも俺たちのことを忘れているわけないよ」
俺もウェンディにそう言う。
「そうね。まぁ、ウェンディとシリルのこと忘れてたら私が許さないけど」
シャルルもウェンディに言う。
「ありがとう……みんな……」
ウェンディはようやく笑顔になる。それを見て俺たちも同じように笑顔になる
「さて……それじゃあニルヴァーナを止めに行くか」
「うん!!」
「シャルル!! 頑張ろうね~!!」
「まぁほどほどにね」
俺たちは全員立ち上がりニルヴァーナの方を向き直る。その時見たニルヴァーナはさっきまでの黒い光から白い光へと変わっていた
「あれ?」
「黒い柱が……」
「白い柱に……」
「何が起きてるんだろう?」
俺たちはそれを見て驚く。まさか……ニルヴァーナの封印が完全に……
ピカッ
するとその光の柱はさっきまでよりも遥かに強い光を放ち始める
「シリル!! これって」
「まさか……」
ニルヴァーナが復活するのか!?
ズガガガガガガガ
すると程なくして地面からすさまじい振動が体に伝わってくる。そして辺りからたくさんの何かが地面を破り出てくる
「何これ!?」
ウェンディが声をあげる。その振動は俺たちの真下からも感じられた
「ヤバイ!! セシリー!! シャルル!!」
「わかったわ!!」
「任せて~!!」
俺は嫌な予感がしてセシリーにつかんでもらい空に飛び上がる。ウェンディもシャルルにもってもらって同じように飛ぶ。
そして俺たちのさっきまでいたところからは巨大な岩でできた足が現れた。
「まさかこれが……」
「ニルヴァーナ……」
それは8本の足が生えており、真ん中の胴体と思われるところにはなぜかたくさんの古い家のようなものがあった。
「な……何よこれ」
「これが……魔法なの?」
声が震えているシャルルとセシリー。でもその気持ちは分かる。だってこんなものを見たら誰だって恐怖を感じるに決まっている
するとニルヴァーナはゆっくりではあるが歩き出す
「動き出したわよ!!」
「どうしようシリル!!」
ウェンディが俺に聞く。俺は一瞬迷って下を見るとそこにはニルヴァーナの足を走っているナツさんたちを見つけた。ナツさんたちは胴体のところに向かって全速力で走っていく
「ウェンディ!! 俺たちもあそこに行こう!!」
「うん!! お願いね!! シャルル」
「わかってるわよ」
「僕も頑張るよ~!!」
シャルルとセシリーに運んでもらい俺たちもニルヴァーナの中心へと向かって飛んでいく。ニルヴァーナは絶対に……俺たちが止めてやる!!
―――――街の真ん中付近まで進むと
「ハァハァハァハァ」
「ゼーハーゼーハー」
シャルルとセシリーは俺たちを運んだことでかなり魔力を消耗してしまったのか今はニルヴァーナの上で倒れている
「ごめんねシャルル……無理させちゃって」
「大丈夫か?セシリー」
「大丈夫だよ。シリル」
「私のことはいいの」
二人はその場で状態を起こす
「それよりあんたたち……こんなトコまで来てどうするつもりなの?」
ウェンディは少し考えた顔をする。あれ? ニルヴァーナを止めるんじゃないのか?
「ウェンディ……あんたまだジェラールを追って……」
「違っ!! あ……えと……それもちょっとはあるけど……」
ウェンディは辺りを見回してから言葉を紡ぐ
「私……なんとかしてこれを止めなきゃって!!私にも何かやれることがあるかもしれないでしょ!?」
「そうね」
ウェンディは拳を握るシャルルに言う。シャルルもそれを聞いて少し笑いながらうなずく。
「シリル!! 一緒に頑張ろう!!」
「ああ!! もちろん!!」
「僕も頑張るよ~!!」
ウェンディが俺たちにも笑顔を見せる。俺は歩いてとりあえずグレイさんたちと合流しようと思いシャルルに手を差しだそうとシャルルを見ると……その表情は驚きの表情になっていた
「シャルル? どうしたの?」
俺が聞くとシャルルはふらふらと立ち上がり前へと歩き出す。
「まさか…偶然よね!? そんなことあるはず……」
「どうしたの? シャルル?」
ふらふらのシャルルにセシリーが近づいていきシャルルはニルヴァーナの淵の部分で立ち止まる。
「どうしたのよシャルル」
「何があった……」
ウェンディと俺もシャルルの方へと駆け寄っていく。俺はシャルルの見ている方向を見てシャルルが何を察したのかがわかった
「あんたも気づいたのね?」
「うん……でも……たまたまなんじゃないかな?」
いや……たまたまだと思いたい……
「何がたまたまなの?」
「シリル?」
ウェンディとセシリーが俺たちの顔を覗き込む。俺たちは二人の方を向いて俺たちの気づいたことを言う
「このまま真っ直ぐ進んでいくと……」
「私たちのギルドがあるのよ。ウェンディ。セシリー」
「「え……」」
それを聞いてウェンディとセシリーもその方角を見る
「そんな……」
「なんで……」
「わからないわ……」
三人はその方角を見て固まってしまう。俺は三人の肩を叩く
「今は理由なんかどうでもいいよ。早くこれを止めないと!!」
俺がそういうと三人はうなずいて一緒に走り出す。
―――――――
しばらく走っていると辺りは暗くなってしまった。
「シリル!! どうしよう!! 大分時間たっちゃったよ!?」
「てかどこに向かってるのよ!!」
「わからん」
「「「え!?」」」
俺はただグレイさんたちの匂いを追いかけているだけなのでどこを目指して走っているのかはわからない。とにかくグレイさんたちと合流しないことには俺たちだけじゃあどうしようもないと思うから
「ちょっとシリル!! いい加減なことはしないでよね!!」
「大丈夫だよ。たぶん……」
「そこは自信もって言おうよ!!」
セシリーに突っ込まれたけど……だって止め方がわかんねぇんだもん……
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』
などと考えていると突然大きな音……というよりも何かの叫びが聞こえてくる。この声って……
「ナツさん!?」
「ナツさんに何かあったの!?」
「うるさいわね……」
「耳が壊れる~」
俺とウェンディはナツさんの突然の叫びに驚きシャルルとセシリーは耳を塞いでいた。
しばらくするとその声は聞こえなくなってしまう。
「何かあったのかな?」
「とにかく行ってみよう!!他の皆さんもいるかもしれないし!!」
俺たちはナツさんの声がした方へと急いだ。
―――――
「あ!! グレイさんたちだ!!」
「本当だ!!」
「あんたたち。本当目がいいわね」
「僕たちには見えないよ~」
俺たちは前方にグレイさんたちを発見したので走るペースを上げる
「皆さーん!!」
「大変です~!!」
「ウェンディ!? シリルも!!」
俺たちが駆け寄っていくとルーシィさんが気づく。
「やっぱりこの騒ぎはあんたたちだったのね」
「あれ? ルーシィさん服装変わってる~」
辛口コメントのシャルルと少し間抜けなことを言うセシリー。って違うや。今はそんなことより
「この都市……私たちのギルドに向かってるかもしれません!!」
「どうやって止めればいいんでしょうか!?」
俺とウェンディは切羽詰まってグレイさんたちに言う。しかしグレイさんは腕を組んで余裕のある表情で言う
「らしいがもう大丈夫だ」
「「え?」」
「ウェンディ。シリル。足下」
ルーシィさんがそう言うので俺たちは下を見るとそこには倒れている六魔将軍(オラシオンセイス)の司令塔、ブレインがいた
「ひゃっ!!」
「うわっ!!」
思わず驚き声をあげるウェンディと俺
「ヘビ使いも向こうで倒れてるし」
グレイさんの視線の先を見ると確かにそこにはコブラが倒れていた
「じゃあ……」
「おそらくニルヴァーナを操っていたのはこのブレインよ。それが倒れたってことはこの都市も止まるってことでしょ?」
ルーシィさんの言葉を聞いて俺とウェンディは喜んで抱き合う
「よかった。シリル……」
「うん……よかった……」
ニルヴァーナが発射されてもさほど問題はないけど……とにかくよかった。
「気に入らないわね。結局化猫の宿(ケットシェルター)が狙われる理由はわからないの?」
「まぁ深い意味はねぇんじゃねーのか?」
「そうだよシャルル~!!終わりよければすべてよし!!だよ~」
腕を組んで納得のいかない表情のシャルルにグレイさんとセシリーが言う。
「気になることは多少あるがこれで終わるのだ」
ジュラさんがそう言う。
「お……終わってねぇよ……早く……これ……止め……うぷ」
ナツさんの声が聞こえてそちらを見ると顔が真っ青のナツさんがいた。てかナツさんも服装変わってる
「ナツさん!! まさか毒に……」
「オスネコもよ!! だらしないわね!!」
「大丈夫? ハッピー」
「あい」
ハッピーも真っ青になっていたのを見てシャルルはあきれセシリーは心配して近寄っていく
「シリル!! ナツさんに解毒の魔法を……」
「うん。モード水天竜!! 」
俺とウェンディはナツさんとハッピーに解毒の魔法をかけていく。
そして二人の治療が終わったところでグレイさんたちが塔のようなものに登っていくのを見たのでハッピーにナツさんを運んでもらってあとを追いかけた
―――――――王の間にて
「どうなってやがる……」
「何これ……」
先に到着していたグレイさんたちが辺りを見回しながら言う。俺たちも辺りを見回すが……特に何かがあるわけではないように見えるけど……
「何一つそれらしきものがねぇじゃねーか!!」
「ど……どうやって止めればいいの?」
あ……何もないことが問題だったのか。てことはもしかしてここがもしかしてニルヴァーナのコントロール室なのか!? どうやって操縦してたんだ!?
「ぬぅぅぅぅ…」
「くそ……ブレインを倒せば止められるモンかと思ってたけど……」
「甘かった……止め方がわからないなんて」
「う~ん……」
俺もグレイさんたちと一緒に困ってしまう。その間にもニルヴァーナは化猫の宿(ケットシェルター)へと1歩、また1歩と近づいていく
「どうしよう?解毒の魔法をかけたのにナツさんが……」
そんな状況でもナツさんは倒れたままいる。あれ?解毒の魔法効果足りなかったのかな?
俺がナツさんたちを眺めているとグレイさんに頭を触られる
「あいつは単に乗り物に弱ぇだけだ。気にすんな」
「乗り物って……」
これ乗り物じゃないでしょ? と思ったのは俺だけじゃないはずだ
「どうすればいいのかしら?このままだと……」
「ぬぅ……」
ルーシィさんもジュラさんも頭を悩ませる。何か突破口はないのか?
「オオオオオ!!」
すると突然ナツさんが叫びだす。なんだ?
「何か作戦でも思い付いたのか!? ナツ!!」
俺たちは期待の眼差しをナツさんに向ける。しかし
「平気だ!! 平気だぞっ!!」
ナツさんは大喜びで跳び跳ねるのを見て違うことに気づいた。乗り物酔いが治ったってことだったのね……ウェンディのトロイアかな?
「くそ!!一瞬期待させやがってクソ炎!!」
「本当……空気読んでくれないかしら……」
ナツさんに怒るグレイさんとあきれるルーシィさん。お気持ち……察します
「これ乗り物って実感ねぇのがあれだな!! ルーシィ!! 船とか列車の星霊読んでくれ」
「そんなのいないわよ!! てか今それどころじゃないの!!」
ナツさんに揺さぶられて怒るルーシィさん。
「止め方がわからねぇんだ。見ての通りこの部屋には何もねぇ」
グレイさんにそう言われるとナツさんは真剣な表情へと変わる。一方ウェンディは悲しい表情へと変わってしまうので俺はウェンディの肩に腕を回す
「大丈夫だウェンディ。きっとなんとかなる」
「シリル……」
気休めの言葉しか俺にはかけれない。そんな俺が情けない……
「てか本当にここが制御室なのか?」
「リチャード殿がウソをつくとは思えん」
リチャード殿ってのが誰なのか気になったけど……今はこれを止めることが優先だ
「止めるとかどうとかの前にもっと不自然なことに誰も気づかないの?」
突然シャルルが話し出すので俺たちは全員シャルルを見る
「操縦席はない。王の間に誰もいない。ブレインは倒れた。なのになんでこいつはまだ動いてるっのかってことよ」
シャルルに言われて気づいたが確かにそれはおかしい。となると考えられるのは
「まさか自動操縦!?」
「最悪の場合ニルヴァーナ発射までプログラムされてるかもしれませんね……」
グレイさんと俺が言う。そこまで言って俺はウェンディが泣きそうになってしまっているのに気づきハッとする
「どうしよう……私たちの……ギルドが……」
震えだすウェンディ。俺は慰めの言葉が見つからず、何も声をかけれない。
「大丈夫!! ギルドはやらせねぇ。この礼をさせてくれ」
ナツさんが力のこもった声でそう言う。
「必ず止めてやる!!」
泣きかけているウェンディと何も策が思い付かない俺はナツさんを見つめる。
そうだな……諦めちゃダメだ!! 大丈夫。ナツさんたちがいてくれればなんとかできる!!
俺はそう思い、ウェンディの手を握った
後書き
いかがだったでしょうか。ニルヴァーナの足を原作の6本ではなく8本にさせてもらいました。ちゃんと8本目を壊す人も考えております。また次もよろしくお願いします
天馬から妖精たちへ
「止めるって言ってもどうやって止めたらいいのかわからないんだよ?」
「壊すとか」
「またそーゆー考え!?」
「こんなでけーもんをどーやってだよ」
今は俺たちはニルヴァーナをどうやって止めるかの作戦会議をしている。けどいい作戦が思い付かない……あれ?
「ウェンディ?」コソッ
「何? シリル」
俺はさっきウェンディが言っていたことを思い出したので少し確認しようと声をかける。ただナツさんたちに聞こえると少々めんどうなので聞こえないように小さい声で
「ニルヴァーナってジェラールが復活させたの?」
「う……うん……たぶん……」
ウェンディは申し訳なさそうな顔をするが、おかげで突破口が見つかったような気がする!!
俺はウェンディの手をとる
「皆さん!! 俺たちちょっと心当たりがあるから探してきます!!」
「え!? ちょっとシリル!?」
「待ちなさいシリル!!」
「待ってよ~」
「おい!!」
俺とウェンディのあとをシャルルたちもついてくる。グレイさんに呼び止められたけど今はとにかくジェラールを探そう!!
「シリル!! 心当たりって何!?」
シャルルが聞いてくるので俺は一度立ち止まって話す
「ニルヴァーナはジェラールが復活させたんなら……もしかしたらジェラールはニルヴァーナの止め方を知ってるかもしれないじゃん?」
「あ~!! そっか!!」
セシリーが納得したように手を叩く。
「だったら空から探した方がいいわよね?」
「いや……シャルルたちも魔力が限界だろうし今は歩いて探そう。運よくウェンディが今日ジェラールに会ってくれてたから匂いを辿れると思うし」
「うん……でも……」
なぜかウェンディが浮かない顔をする。どうしたんだ?
「あのジェラール……私たちの知ってるジェラールとは少し匂いが違うんだよね」
ウェンディがそんなことを言う。匂いが違うって……でも7年も会ってなかったら匂いも変わるかもしれないしな……
「とにかく、ジェラールを探そう!! ウェンディ。頼むよ!!」
「うん!!」
ウェンディが走り出すのを俺たちはついていく。ジェラール……ニルヴァーナを止める方法を知っててくれよ
――――――
「どう?ウェンディ」
「少しずつだけど……匂いに近づいてると思う」
シャルルの問いにウェンディが答える。俺ももしかしたらジェラールの匂いがわかるかと思い匂いを探すがジェラールとは違う人の匂いを感じる
「あれ? エルザさんの匂いがするよ」
「え?クンクン。本当だ!! ジェラールと一緒なのかな?」
ウェンディもエルザさんの匂いに気づいたようだ。どうやら二人の匂いは同じ方角からするらしい
その後も俺たちは匂いの方へととにかく走った。途中建物があったりして回り道したりしたせいで時間はかかったがようやく俺は視界に傷だらけのジェラールとエルザさんを見つけた
「ジェラール!!」
「エルザさんもいる!!」
「ウェンディ。シリル」
俺たちの声に気づきエルザさんがこちらを向く
「無事だったか。よかった」
「エルザさんも大丈夫みたいですね」
エルザさんは毒の影響もなくなっているようで傷を負っていることを除けば大丈夫そうだ
「ジェラール」
「久しぶりだね」
ウェンディと俺はジェラールに声をかける。確かにウェンディの言う通り匂いが昔と違うような気がする。
「君たちは?……」
「「!?」」
ジェラールにそう言われ俺たちは驚く
「俺だ!! シリルだ!! こっちはウェンディだ!! 7年前に一緒に旅をした!!」
俺はジェラールにそういったがジェラールは顔を伏せる。ウェンディはそれを見て悲しそうな顔をする。ジェラール……俺たちのこと忘れちゃったのか?
「ジェラールは記憶が混乱している……私のことも君たちのことも覚えていないらしい」
「え?」
エルザさんがそう言う。そういえばウェンディがジェラールはエーテルナノと言うのを大量に浴びたせいで動けなくなっていたって言ってたな……それが原因なのかもしれないな
「もしかしてアンタ!! ニルヴァーナの止め方まで忘れてんじゃないでしょうね!!」
「ええ!? どうなの!? ジェラールくん!?」
シャルルとセシリーは慌ててジェラールに確認する。ジェラールは浮かない表情のまま答える
「もはや……自律崩壊魔方陣も効かない。これ以上打つ手がないんだ。すまない」
「そんな……」
「そっか……」
ジェラールでも止め方を知らないか……これは詰んだかもしれない……
「それじゃ私たちのギルドはどうなるのよ!!」
「もうすぐ目の前まで来ちゃってるんだよ!?」
シャルルとセシリーが大声で言う。ちょうどその時俺たちの声にいる場所に震動が走る
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「何だ?」
エルザさんが辺りを見回しながら言う。俺も辺りを見ると俺たちのギルドのある方向から黒い光が見える
「まさか……」
俺はその方角に向かって走る。ウェンディたちも俺のあとを追ってくる。そして光をためているところを視界に捉えた。それは化猫の宿(ケットシェルター)に向かって放たれようとしていた
「まさかニルヴァーナを撃つのか!?」
光はどんどんたまっていく。
「そんな……」
「あ……ああ……」
「やめろ……」
俺とシャルルたちは声もまともに出せない
「やめてーーー!!」
ウェンディが叫ぶ。しかしニルヴァーナは無情にも発射されてしまった。
発射されたニルヴァーナの光は化猫の宿(ケットシェルター)へと飛んでいく。
しかしその光はギルドのわずかに上を通過していった
「え?うわっ」
「きゃっ」
突然俺たちのいる場所が斜めに傾き俺とウェンディはバランスを崩し滑り落ちそうになる。
「くっ」
しかし俺たちをエルザさんが掴んでくれ落ちることなく済む
「何が……」
「見て!! ニルヴァーナの足が……」
「何かのせいでバランスを崩したみたい~」
建物にしがみつくジェラールと翼(エーラ)によって落ちることなく済んだシャルルとセシリーが言う。
エルザさんはニルヴァーナの足に空から何かが降ってきたのを見ていたため上を見上げる
「あれは……」
俺たちも上を見上げる。そこには
「わぁ」
「魔導爆撃挺!!」
「クリスティーナ!!」
青い天馬(ブルーペガサス)の誇るクリスティーナが空を飛んでいた。
『聞こえるかい!? 誰か……無事なら返事をしてくれ!!』
俺たちの頭に聞き覚えのある声が響いてくる。この声は
「ヒビキさん!!」
「ヒビキか?」
「わぁ」
俺とエルザさん、そしてエルザさんに抱きついているのウェンディが念話に答える。
『エルザさん?ウェンディちゃんとシリルくんも無事なんだね』
お!? くんづけになったぞ!! と俺は一人で感動したりしている
『私も一応無事だぞ』
『先輩!! よかった!!』
一夜さんもどうやら無事のようだ。さすがは青い天馬(ブルーペガサス)の実力者だ
「どうなっている?クリスティーナは確か撃墜されて」
エルザさんの言葉を聞き俺もあのクリスティーナが落とされた瞬間を思い出す。
『壊れた翼をリオンくんの魔法で補い……シェリーさんの人形撃とレンの空気魔法(エアマジック)で浮かしているんだ』
『こんな大きいもの……操った事ありませんわ』
『お……重たくなんかねぇからな』
シェリーさんとレンさんの声も聞こえてくる。その声はかなり苦しそうだ
『さっきの一撃はイヴの雪魔法さ』
「あんたたち……」
『クリスティーナの……本来持ってる魔導弾と……融合させたんだよ……それでも……足の一本すら壊せないや。それに……今の攻撃で……魔力がもう……』
イヴさんは力尽きてしまったのか倒れる音がした。皆さん……そこまでして……
「ありがとうございます……皆さん……」
「ありがとう、みんな……」
俺とウェンディは涙をこらえながらお礼を言う。
『聞いての通り僕たちはすでに魔力の限界だ。もう船からの攻撃はできない。それより最後にこれだけ聞いてくれ!! 時間がかかったけどようやく古文書(アーカイブ)の中から見つけたんだ!!
ニルヴァーナを止める方法を!!』
力強くヒビキさんが言う。
「本当か!?」
『ニルヴァーナに、足のようなものが8本あるだろう?』
最初にニルヴァーナが復活したときに胴体を支えていた足があったことを思い出しそれのことを言っているのだと気づく
『その足……実は大地から魔力を吸収しているパイプのようになっているんだ。その魔力供給を制御する魔水晶(ラクリマ)が各足の付け根付近にある。
その八つを同時に破壊することでニルヴァーナの全機能が停止する。一つずつではダメだ!! 他の魔水晶(ラクリマ)が破損部分を修復してしまう』
「同時にだと!?」
「どうやってですか!?」
タイミングを合わせるなんてなんの合図をなしだとできませんよ!?
「僕がタイミングを計ってあげたいけど……もう……念話が持ちそうにない」
すると突然頭の中にタイマーのようなものが現れる。
『君たちの頭にタイミングをアップロードした。君たちならきっとできる!! 信じているよ』
ヒビキさんがそういうと頭の中に20分という数字が現れ、それはカウントダウンを始める
「20分!?」
『次のニルヴァーナが装填完了する直前だよ』
『無駄なことを……』
ヒビキさんの言葉に被せるように違う声が聞こえてくる。
『誰だ!?』
「この声……」
「ブレインって奴だ!!」
「ブレインって……」
ジュラさんが倒したはず……なんで起きているんだ?
『僕の念話をジャックしたのか!?』
『俺の名はゼロ。六魔将軍(オラシオンセイス)のマスターゼロだ』
ゼロ!? そんな奴までいたのか!?
『まずは誉めてやろう。まさかブレインと同じ古文書(アーカイブ)を使える者がいたとはな』
ゼロの声はまるで余裕を感じさせるような笑いがわずかに入った声をしていた
『聞くがいい!! 光の魔導士よ!! 俺はこれより全てのものを破壊する!!
手始めに仲間を三人破壊した。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)氷の造形魔導士、星霊魔導士、それと猫もか』
『ナツくんたちが……!?』
「でたらめ言うな!!」
「そんなのウソよ!!」
俺たちはゼロの言葉に動揺する。
『てめぇらは魔水晶(ラクリマ)を同時に破壊するとか言ったなぁ?俺ともう一人の男がその八つの魔水晶(ラクリマ)のうちのどれか二つの前にいる!! ワハハハハ!! 俺たちがいる限り同時には壊すことは不可能だ!!』
「もう一人!?」
俺はその言葉に疑問を持つ。六魔将軍は全滅したって話だったのに……まだ誰かいるのか!? 一体誰だ?
そんなことを考えているとゼロとの念話は途切れていた。
ゼロともう一人の敵がどれほどの強さかは知らないけど……勝負になるのか?そんな奴等と……ナツさんたちを倒してしまうような奴と
「待って!!」
シャルルが焦った顔をする
「八人もいない……!? 魔水晶(ラクリマ)を壊せる魔導士が八人もいないわ!?」
言われてみて気づくが今ここにいる魔導士は四人……だけど
「わ……私……破壊の魔法が使えません!! ごめんなさい!!」
頭を下げるウェンディ。ウェンディは破壊の魔法を使えないのだからここにいる魔水晶(ラクリマ)破壊に参加できるのは三人だけ……
「こっちは三人だ!! 他に動ける者はいないか!?」
『マイハニー』
この声は一夜さんか?
『私がいるではないか。縛られてはいるが……』
『一夜さん!!』
一夜さんも参加してくれるようだ。これで四人……あと四人……
『まずい……もう……僕の魔力が……念話が……切れ……』
「あと四人だ!! 誰か返事をしろ!?」
『俺がいこう……』
かすれかけの声がする。この声って……
「リオンさん!? 大丈夫なんですか!?」
『あぁ……魔水晶(ラクリマ)を破壊するくらいなら……なんとかなるかもしれん……』
リオンさんもギリギリの魔力ではあるが参加してくれるらしい。あと三人……
すると上空のクリスティーナがバランスを失い落下し始める
「クリスティーナが!?」
「落ちるぞ!!」
「リオンさん!!」
しかしクリスティーナから一人ふわふわとこちらにゆっくりと落ちてくる人物がいる。そう、リオンさんである。
リオンさんは俺たちの前にゆっくりと着地する
「恩に着るぞ……レン」
『頼むぞ……うっ……』
リオンさんの降りるのをアシストしたのはレンさんの空気魔法(エアマジック)だったようだ。
「グレイ……立ち上がれ……」
するとリオンさんはそのまま念話を通してグレイさんに話かける
「俺たちは誇り高きウルの弟子だ……こんな奴等に負けるわけにはいかんだろ……」
『私……ルーシィなんて大嫌い……』
続いてシェリーさんが話始める
『ちょっとかわいいからって調子に乗っちゃってさ……バカでドジで弱っちぃくせに……いつも……いつも一生懸命になっちゃってさ……』
悪口ばかり言っていた声から徐々に涙声に変わっていく
『死んだら嫌いになれませんわ。後味悪いから返事しなさいよ』
クリスティーナは徐々に落下していき俺たちの視界から姿を消してしまう
「クリスティーナが!?」
「ナツさん……」
「オスネコ……」
「ハッピー……」
「ナツ……」
ウェンディたちがナツさんの名前を呼ぶ。
『ナツくん……僕たちの……声が……』
ナツさん……
『聞こえてる!!』
ナツさんの力強い声が聞こえその場にいた俺たちは笑顔になった
後書き
いかがだったでしょうか。個人的にリオン推しなのでリオンにも最後に頑張ってほしいなと思い魔水晶(ラクリマ)破壊に参加してもらうことにしました。次回はシリルとゼロの用意した刺客が戦います。また次回もよろしくお願いします
想いの力
前書き
昨日ルビの振り方を教えていただきました!!感謝です!!
『聞こえてる!!』
ナツさんの声が聞こえ俺たちは安堵する
『八個の魔水晶を……同時に……壊す……』
『運のいい奴はついでにゼロたちを殴れる……でしょ?』
『あと18分……急がなきゃ……シャルルとセシリー……シリルとウェンディのギルドを守るんだ』
グレイさんたちも荒い呼吸ではあるが無事なようだった。
『もうすぐ念話が……切れる……頭の中に僕の送った地図がある……各魔水晶……に……番号を……つけた……全員がバラけるように……決めて……』
『1だ!!』
俺たちの頭の中に現れた地図を見てナツさんが即答する
『2!!』
続いてグレイさん
『あたしは3に行く!! ゼロがいませんように』
ルーシィさんが続く
『私は4へ行こう!! ここなら一番近いと香りが教えている』
「教えているのは地図だ」
『そんなマジでつっこまなくても……』
「私は5に行く」
一夜さんを完全スルーしてエルザさんも自分の行く場所を決める
『エルザ!? 元気になったのか!?』
「ああ……おかげさまでな」
エルザさんはウェンディの方を見る。ウェンディは照れたように首を振る
「では俺は―――「お前は6だ」」
エルザさんがジェラールの言葉を遮る。
『今の誰だ!?』
「ナツはお前の事情を知らん。敵だと思っている。声を出すな」
エルザさんは小声でジェラールに言う
『おい!!「俺は7に行く!!」』
なおも聞こうとするナツさんの言葉に被せるようにリオンさんが言う。
「なら俺が8ですね」
これで全員の向かう魔水晶が決まった。
『それじゃ……みんな……よろ―――――』プツリ
そこで念話が途切れてしまう。ヒビキさんもかなり限界だったんだな……
「おそらくゼロは“1”にいる」
エルザさんが突然そんなことを言う
「ナツさんのところだ!!」
「なぜわかるんですか?」
「あいつは鼻がいい。わかってて“1”を選んだはずだ」
エルザさんは俺たちにそう言う。するとウェンディが拳を握り言う
「だったら加勢に行こうよ!! みんなで戦えば……」
「ナツを甘く見るな。あいつになら全てを任せて大丈夫だ」
エルザさんは少し余裕のある表情で言う。しかしその表情はすぐに曇る
「問題は奴の用意したもう一人の男……か……」
「そうですね……」
一体どんな奴が……どの魔水晶の前にいるんだ?
「ナ……ツ……」
「ここからはもはや運だ!! 私たちも持ち場に急ぐぞ!!」
エルザさんも自分の持ち場へと歩き出す。
「俺たちも行くぞ」
「はい!!」
リオンさんに促され俺たちも自分の魔水晶急ぐ。
「シリル!!」
ウェンディに呼ばれ俺は立ち止まり振り向く。
「あの……頑張ってね!!」
ウェンディにそう言われ俺は笑顔で答える
「あぁ!! 頑張るよ!! 行こう。セシリー」
「オッケー」
俺はそう言ってウェンディに背を向けてセシリーと一緒に8番魔水晶へと向かった
――――――8番魔水晶にて
「ここか……」
俺たちは魔水晶のある部屋に入るとそこにはすでに誰かがいた
「な!? 誰だ!?」
「なんだ……妖精じゃねぇのかよ……」
男はがっかりしたように言う。しかし……誰だこいつ?
「あー!!」
「うわっ!! なんだよ急に大きな声だして」
セシリーが男を指差しながら驚いたような声を出す。知ってるのか?
「こいつ……エリゴールだ!! 鉄の森のエース。死神 エリゴール!!」
「何!?」
その名前を聞いて俺もよく見る。
その男は上半身裸で大きな鎌を持っている。その顔を見ると確かに見たことがあるような……
「ったくよ~……俺は火竜と戦えると思ってたのに……まぁいいか」
エリゴールは鎌を担ぎ俺に向き直る
「ゼロがおめぇを倒せってんなら俺は従うしかねぇからよ!!」
エリゴールは鎌を担ぎ俺に接近し鎌を振り下ろす
「危ねぇ!!」
ガン
俺はセシリーをつかんでギリギリでその鎌を交わす。
「やべぇな……セシリー。隠れてて」
「わかった~」
セシリーは入り口のところへと飛んでいき隠れる。
俺はエリゴールを見据える
「エリゴール……ね」
確か俺の聞いた話だと鉄の森は呪歌とか言うのでギルドのマスターたちを全員殺そうとしたけどナツさんたちに邪魔されてエリゴール以外は全員捕まったって聞いた……気がする
「なんでこんなところにいるんだ?」
「ふふっ……妖精どもに復讐してやるためにな。俺は六魔将軍の傘下ギルド、裸の包帯男の用心棒をしていてな。」
エリゴールは話ながらも鎌で俺に襲いかかるが俺はそれを避ける
「ブレインがもっと効果的な修行をやらせてくれると言ってきてな。で……ついていったら確かにすげぇパワーアップできたよ。妖精どもも倒せるくらいのな!!」
エリゴールは俺に向かってものすごい風圧の風を浴び得てくる。俺はそれに体を持っていかれ壁にぶつかる
「がっ」
「シリル~!!」
セシリーが遠くから俺の名前を呼ぶが返事する余裕はないな……六魔将軍ほどではないけど……こっちは散々魔力を使っちまってるし。
俺はゆっくり立ち上がりながら残りの時間を確認する。あと12分……か……
「時間ねぇな……急がしてもらうよ!!」
俺は口に魔力をためる
「こいつも口から魔法を……」
「水竜の咆哮!!」
しゅぱっ
俺の咆哮をエリゴールはジャンプして避ける。エリゴールはそのまま風を操り空を飛んでいる
「くそっ!! 空飛ぶなんて卑怯だろ!!」
「だったらこっちも~!!」
いつの間にか俺の近くにいたセシリーが俺をつかんでエリゴールと同じ高さまで飛ぶ。
「ほぅ……空中戦か……いいだろ!! 暴風波!!」
エリゴールが腕から竜巻のようなものを出してこちらを攻撃する
しかし俺はそれを避けエリゴールの顔にパンチを入れる
「水竜の……鉄拳!!」
「ぐおっ」
エリゴールは少し体勢を崩し後退する。俺はその隙を見て今度はけりを入れる
「水竜の鉤爪!!」
「うおっ!!」
しかしエリゴールはそれを腕を使って受け止める。
俺は一度後方に飛んでもらい距離を開ける
「やるなぁ……さすがに1つのギルドのエースだっただけのことはあるな」
「おめぇもやるなぁ……それに……あいつになんとなく似ている」
俺とエリゴールは汗を拭いながら言う。
「ちょうどいい。俺は俺自身が強くなったことを確認したかったんだ。これを試させてもらおう」
エリゴールはそう言って体の前で手を交差させる
「ヤバイよシリル~!! 今のうちに倒さないと!!」
「はぁ!?」
突然セシリーが大声を出す。今のうちって……なんだ?
「暴風衣」
エリゴールがそのうちに風を体に纏っていく
「なんだあれ?」
「シリル~!! あれはまずいよ!! もうあいつに攻撃が届かないよ~」
セシリーが慌てた様子で言う。どういうことだ?
「あれは常に外側に向かって風を吹かせているらしい。つまりナツくんの炎やシリルの水みたいに風の抵抗を受ける属性の攻撃は効かないんだよ~」
セシリーが解説してくれる。なんでこいつはこんなにくわしいんだ?
「ほぅ……よく知ってるなぁ。猫。さぁどうする? もうお前の攻撃は当たらんぞ?」
エリゴールは余裕の表情を見せる。なるほど……でもまぁ
「やってみなきゃわかんねぇだろ!? 水竜の翼撃!!」
俺はエリゴールに攻撃を放つがその攻撃はエリゴールに届く前に風によって飛ばされる
「なっ!?」
「無駄なんだよ!!」
エリゴールが再び風を俺に向かって放つ。俺とセシリーはそれによって体勢を崩しエリゴールはそれを見て大鎌で俺たちを攻撃する
「ぐわっ」
「ひゃっ」
俺とセシリーはそれを受けてしまい壁にぶつかる。
―――――そのころ6番魔水晶では
「本当にできるの?ウェンディ」
「これは私がやらなきゃいけないことなんだ」
心配そうな顔のシャルルに魔水晶を真剣な眼差しで見つめるウェンディが言う。
少し遡って……
「ジェラール……具合悪いの?」
「いや……君は確か治癒の魔法が使えたな?」
アタマを押さえながらウェンディにジェラールが言う。
「ゼロと戦うことになるナツの魔力を回復できるか?」
「それが……」
「何バカなこと言ってんの!! 今日だけで何回治癒魔法を使ったと思ってるのよ!!」
いいよどむウェンディの代わりにシャルルがジェラールに言う。
これ以上は無理!! もともとこの子は……」
「そうか。ならば俺がナツの回復をやろう」
「え?」
ジェラールの突然の提案にウェンディは驚く
「思い出したんだ。ナツという男の底知れぬ力。希望の力をな」
ウェンディはジェラールわただ見つめている
「君は俺の代わりに6番魔水晶を破壊してくれ」
「でも……私……」
ジェラールにそう言われるがウェンディは破壊の魔法が使えないので困ってしまう
そんなウェンディの視線にジェラールは合わせる
「君にならできる。滅竜魔法は本来ドラゴンと戦うための魔法。圧倒的な攻撃魔法なんだ」
ジェラールはそう言い空を見上げる
「空気……いや……空……“天”を喰え。君にもドラゴンの力が眠っている」
……そして今
「ドラゴンの力。私の中の……」
ウェンディは決意に満ち溢れた目をする
「自分のギルドを守るためなんだ!! お願い!! グランディーネ!! ヴァッサボーネ!! そしてシリル……力を貸して!!」
ウェンディはそう言って魔水晶を見つめた
――――シリルたちは……
「くっ……いってぇ……セシリー!! 大丈夫……あ!!」
俺がセシリーの方を見るとセシリーは目を回して気絶していた
「マジか!?」
俺はセシリーを素早く掴むと一度入り口の方へと戻る。
「おい!! どこ行くんだよ!?」
エリゴールの声が聞こえるがひとまず無視してセシリーを入り口の死角のところに隠す。それから俺はエリゴールを壁越しに見る。
「(ヤバイなぁ……あの魔法……対策がないことはないんだけど、俺の魔力が持つかな?)」
相手が風……つまり空気を使うのならそれなりに作戦はある。だが魔力の残り具合を考えるともって精々4、5分か?
「なんだよもう諦めちまうのかよ!! 火竜の奴はこんなもんじゃなかったぜ?」
ナツさん……そうだな……ナツさんなら例え魔力がもとうがもつまいが敵にぶつかっていくだろうな。
俺はそう考えると自然とエリゴールの方へと足が向かっていた。
「お? 来たな」
「俺はあんたを倒して……ニルヴァーナを止める!!」
「止まらねぇよ。いくら火竜でもゼロは倒せねぇ」
「倒す!!」
俺はエリゴールの言葉に間髪いれずに言う。
「ナツさんは負けねぇ!! 必ず約束を果たしてくれる!! だから俺も……自分のギルドを守るために、やれることをする!!」
俺は集中し魔力を高める
「モード水天竜!!」
俺は水天竜モードになって目一杯エリゴールの周りの空気を吸い込む
「なっ!? こいつ……俺の暴風衣を……あいつと同じ……」
俺は水天竜モードになっても基本は水以外は吸収できない。でも……今はこれしかない!!
エリゴールの暴風衣が完全に剥がれたのを見て水天竜モードを解除し右手に魔力をためる
「これで消し飛べ!! 滅竜奥義!!」
俺はエリゴールの方に向かって走っていき、目の前まで来たところでジャンプする
「水中海嵐舞!!」
俺が大量の水を右腕から放つとその水にエリゴールは飲み込まれていく
「ぐはっ!! なんだこれは!?」
その水は嵐の時の海のように荒々しく……中に入ったものを打ちのめし、そして……空中へと投げ飛ばす。
「うわあああ!!」
バキッ
水の外へと投げ飛ばされたエリゴールは俺たちが破壊するはずの魔水晶に衝突し、その勢いによって魔水晶が壊れる
【0!!】
ちょうどその時頭の中のカウントダウンも全員が破壊するタイミングになった。
「よっしゃー!!」
俺はギルドを守れたことに喜び雄叫びをあげたがそれと同時にニルヴァーナが崩壊し始めた
後書き
いかがだったでしょうか。ラスボスにまさかのエリゴールを置くという予想の斜め上をいくやり方をさせていただきました。ちなみに滅竜奥義の前に水天竜モードを解除したのもきちんと理由があります。どのタイミングでそこに触れるかは候補が二つあって困っていますが……
また次回もよろしくお願いします
ニルヴァーナ崩壊
他の魔水晶でも……第3者side
「時間だ!!みんな頼むぜ!!」
2番魔水晶ではグレイが氷の大砲を作り魔水晶を破壊し
「開け!! 金牛宮の扉……タウロス!!」
3番魔水晶ではルーシィに変身したジェミニがタウロスを召喚し魔水晶を破壊し
「ぬおおおおおおおおっ力の香り全開~!!」
4番魔水晶では一夜が力の香りでムキムキになり魔水晶を破壊し
「いくぞ!! 換荘!! 黒羽の鎧!! 」
5番魔水晶ではエルザが剣で魔水晶を破壊し
「天竜の咆哮!!」
6番魔水晶ではウェンディが人生初の破壊魔法で魔水晶を破壊し
「アイスメイク……スノータイガー!!」
7番魔水晶ではリオンが氷の虎で魔水晶を破壊し
「ああああああああ」
「ぐあああああああ」
1番魔水晶ではナツがゼロに攻撃した勢いのまま魔水晶に突っ込み破壊した
それによってニルヴァーナの全ての足が機能を失いニルヴァーナは地面へと落とされる。
「止まった……ウェンディ……」
「止まった……止まったよ」
ウェンディとシャルルはニルヴァーナが停止したことに喜び涙を流していた
全員が喜びに包まれると同時に……
ドガガガガ
ニルヴァーナが崩壊を始める
―――――
「やっぺぇ!! このままだとつぶれるー!!」
シリルは急いで入口付近に置いてきたセシリーと一緒に逃げようと走る。
「シリル~!!」
しかし目を覚ましたのかセシリーがシリルの方に飛んでくるのに気づく
「セシリー!! 大丈夫だったんだ!!」
「うん!! それより急いで逃げようよ~!!」
シリルたちが話している間にもニルヴァーナは崩壊していっている。シリルとセシリーは大急ぎでその場をあとにする
―――――
「うおおおお」
グレイが崩れていくニルヴァーナの中から命からがら脱出に成功する
「おいおい!! みんな無事か!?」
「グレイ!!」
エルザもニルヴァーナから無事に出てくる
「エルザ!!……と」
グレイがエルザの後ろから走ってくる人物を見て驚愕する。
「エルザさ~ん!! 無事でよかった~」
「「げぇーーー!!」」
二人はゴツゴツの筋肉の鎧に包まれた一夜を見て声をあげる。
「何者だ!?」
槍を出してエルザが身構える
「敵か!? ……そしてキモイ」
「落ち着いてください二人とも」
一夜は二人をなだめる
「今は力の香りにて姿形は違えども、中身はいつもと寸分違わぬこの私……あなたのための一夜で~す」
無駄に一々ポーズを決める一夜を見てグレイとエルザはどんよりしてしまう
「おめぇもえらいもんに好かれたもんだな……」
「ああ……頼もしい奴ではあるのだが……」
二人がそう話しているとまた一人ゆっくりと近づいてくる
「まったく……お前たちは相変わらず騒がしいな」
「リオン!!」
グレイはリオンを見て少し安心する。
「というか貴様は誰だ?」
「メェーン!!」
リオンは一夜に対して容赦なく言う。まぁ確かに一瞬誰だかわからなくなるが……
すると突然柱時計のようなものが降ってくる
「むっ、新手か!?」
「何者だ!?」
構える一夜とリオン
「待て!! あれは……」
「ルーシィの星霊じゃねぇか!?」
降ってきたのはホロロギウムだった。その中からルーシィと抱えられたハッピーが出てくる
「ありがとうホロロギウム。てかあたしいつの間に?」
「いえ、私が勝手にゲートを通って参りました」
ルーシィの問いにホロロギウムが答える
「ロキとバルゴもよくやるよねそれ」
「ルーシィ様の魔力が以前よりも高くなっているので可能になったのです。ついでに酸欠や虫刺され、お肌の荒れ、痒みやシミも治まります」
「なんと!? シミまで!?」
ホロロギウムの言葉にエルザが食いつく
「便利なのかしらね……」
「またしても私のアイデンティティが……」
「そういうのはもういいだろ」
一夜が自分のアイデンティティを犯されていることにショックを受けるがリオンがそれを一蹴する
「みなさ~ん!!」
「皆、無事だったか」
「ついでにオスネコも」
次に現れたのはウェンディ、ジュラ、シャルルの三人。ウェンディは走りながら周りを見回してから聞く
「シリルは?ナツさんは?ジェラールは?」
「見当たらんな」
「まさかまだ中に……」
「そんな……」
全員が辺りを見回すがそれらしき人影はいない。
「ナツ……」
「あのクソ炎……何してやがる」
「あいつが一番しぶとそうなのになぁ」
ルーシィは不安そうにナツの名前を呟き、グレイとリオンはどこかに来ているのではないかと辺りをさらに見回す
「シリルー!! ナツさーん!!」
(ナツ……ジェラール……何をしている……)
名前を呼ぶウェンディと静かにニルヴァーナを見つめるエルザ
「ナツー!! うわっ」
ハッピーがナツを呼んだときその足元の地面が盛り上がる
「愛は仲間を救う……デスヨ」
「んあ?」
その盛り上がった地面から出てきたのは六魔将軍のホットアイとそれに抱えられたナツとジェラールだった
「ったく……ひやひやさせやがる」
「ナツさん!! ジェラール!!」
グレイは安堵しウェンディは二人の無事に喜んだ
「六魔将軍がなんで!?」
「色々あったな……大丈夫。味方だ」
驚くシャルルにジュラが答える
「おい……シリルはどうした?」
リオンがそう言うと全員が周りを見る。しかしいまだにシリルの姿が見えない
「シリル……無事なの……」
「セシリー……」
ウェンディが不安そうな顔をしてシャルルもセシリーを思い不安になる
ウェンディが祈るように両手を合わせる
(シリル……どうか無事でいて……)
「やっと着いた~」
「疲れた~」
ナツたちの少し後ろから聞き覚えのある声が聞こえ全員がそちらを向くとそこにはボロボロのシリルとセシリーがいた
「お!? 無事だったか!?」
「セシリー!! よかった~」
ナツとハッピーは二人を見つけ笑顔になる
「シリル!!」
「セシリー!!」
ウェンディはシリルを見つけるとそちらへと駆け寄っていきシリルに抱きつく。
シャルルもセシリーに近づいて手を差し出す
「うわ~。シャルルが手を貸してくれるなんて~。明日は雨かな?」
「うるさいわね!!」
セシリーがシャルルの手を取りながらそう言う。
ウェンディはシリルに抱きついたまま涙を流している。
「シリル……よかった……無事で……」
「ウェンディも無事で何よりだよ」
シリルはウェンディの目に溢れる涙を指でそっと払う。
シリルはその状態のままナツを見る。
「ナツさん。ありがとうございました。ギルドを守ってもらって」
そう言われナツは笑顔のまま二人を見る
「みんなの力があったからだろ?シリルとウェンディの力もな」
ナツはそう言って二人に手を出す
「そんじゃ、今度は元気にハイタッチだ」
「「はい!!」」
パァァン
シリルとウェンディはナツと思いきりのいいハイタッチをする
―――――シリルside
「全員無事で何よりだね」
「みんな……よくやった」
「これにて作戦終了ですな」
「やれやれだな」
とりあえず今ここにいる人たちの安否を確認できて全員が安堵する。
というか一夜さんがあまりにもムキムキになってて一瞬誰だかわからなかったぞ?ルーシィさんも「キモッ!!」とか言ってるし……
「……で、あれは誰なんだ?」
「?」
グレイさんとルーシィさんが見た先にいるのはジェラール。
「天馬のホストか?」
「あんな人いたっけ?」
あれ?二人はもしかしてジェラールの顔知らないのかな?ナツさんとエルザさんは知ってるのに
「ジェラールだ」
「何!?」
「あの人が!?」
エルザさんが教えるとグレイさんとルーシィさんは驚きナツさんは少しムスッっとした顔をする
「だが私たちの知っているジェラールではない」
「記憶を失っているらしいの」
「いや……そう言われてもよぉ……」
グレイさんもどこか納得のいかないという顔をする。俺はそれを見て言う。
「大丈夫ですよ。ジェラールは本当はいい人なんですから」
エルザさんはジェラールに近づいていく。俺たちはそれを遠目で見ている
「シリル。ジェラールに会えてよかったね」
ウェンディが俺の横からそう言う。俺も記憶を失っているとはいえ7年ぶりにジェラールと会えたことはとてもうれしかった
「うん。大変な一日だったけど、来てよかったね」
俺がそう言うとウェンディも笑顔になる。なので俺もウェンディに微笑み返す
「あとで……ジェラールと話にいこうか?」
「うん!! いいね」
ウェンディが俺の意見に賛同してくれる。ジェラール……俺たちのこと思い出してくれるかな?
「メェーン!!」ゴチッ
俺とウェンディが話していると突然青い天馬の一夜さんが叫ぶ
「どうしたオッサン!!」
俺たちが一夜さんを見るとそこにはまるで見えない壁にぶつかっているような一夜さんがいた
「トイレの香りをと思ったら何かにぶつかった~」
俺たちは一夜さんの周りを見ると足元に何かが書いてある
「何か地面に文字が……」
「こっちにもあるぞ!!」
「俺たちを囲んでますよ!?」
リオンさんと俺が俺たちを囲むように文字が書いてあることに気づく
ジュラさんは文字の上にある見えない壁を触る。
「これは……」
「「「「「「「「「「「術式!?」」」」」」」」」」」
「メェーン!! トイレがー!!」
いつの間にか書かれていた術式の中に俺たちは閉じ込められていた。一夜さんは見えない壁を叩きながら叫んでいる
「いつの間に!?」
「どうなってるのさ!?」
「なんで僕たち囲まれてるの~!?」
セシリーたちが言う。なんで俺たちが囲まれてるんだ?
「誰だコラァ!!」
ナツさんが怒ったように叫ぶ。すると俺たちの周りを囲むようにたくさんの同じ衣装を纏った人たちが現れる
「なんなの~?」
「大丈夫ウェンディ……」
「漏れる…」
怯えるウェンディを俺が抱き締める。一夜さんはいまだに壁に突っ込んだままだけど……
「手荒なことをするつもりはありません。しばらくの間そこを動かないでいただきたいのです」
たくさんの人たちの前に立つ眼鏡をかけた人がいう
「誰なのー!?」
ハッピーが眼鏡の人に言う。
「私は新生評議院、第四強行検束部隊隊長、ラハールと申します」
「なっ!?」
「新生評議院だと!?」
「もう発足してたの!?」
妖精の尻尾の皆さんが驚く。そういえば何かの事件で評議院が一度解散したんだっけ?
「我々は法と正義を守るために生まれ変わった。いかなる悪も決して許さない」
ラハールさんは俺たちを見ながら言う。でも
「どういうことなの!?」
「オイラたち何も悪いことしてないよ!?」
「そうですよ!!」
「おおおおう……」
「そこはハッキリ否定しようよ……」
ハッピーと俺がラハールさんに言う。ナツさんは少し動揺しながら言っているけど……
「存じております。我々の目的は六魔将軍の捕縛」
ラハールはそう言いながら視線をホットアイに移す
「そこにいるコードネーム、ホットアイをこちらに渡してください」
「!!」
「ま……待ってくれ!!」
ジュラさんがラハールさんに言う。しかしホットアイがジュラさんの肩を掴みとめる
「いいのデスヨ、ジュラ」
「リチャード殿……」
「例え善意に目覚めても過去の悪行は消えませんデス。私は一からやり直したい。その方が弟を見つけたときに、堂々と会える……デスヨ」
「……」
ジュラさんはホットアイ……いやリチャードさんをじっと見つめてから話し出す
「ならばワシがかわりに弟殿を探そう」
「本当デスカ!?」
ジュラさんの提案にリチャードさんは喜ぶ
「うむ。弟殿の名前を教えてくれ」
「名前はウォーリー。ウォーリー・ブキャナン」
「「「ん?」」」
「ウォーリーだと!?」
リチャードさんの弟の名前を聞いて妖精の尻尾の皆さんは何やら驚いたような声をあげる
「「「「四角ー!?」」」」
突然ナツさんたちが大声をあげたため俺とウェンディは少々驚いてしまう。
「その男なら知っている」
「!?」
「なんと!?」
エルザさんがそう言うとリチャードさんとジュラさんは驚いてエルザさんの方を振り向く
「私の友だ。今は元気に大陸中を旅している」
エルザさんたちは知っていたからさっきあんなに驚いたのか。
リチャードさんはそれを聞くと涙を流しながら膝をつく
「これが……光を信じる者だけに与えられた奇跡というものですか……ありがとう……ありがとう……ありがとう……」
涙するリチャードさんを見て俺も思わず涙する。
大切な弟さんの無事を知ることができてよかったですね。リチャードさん。次は……お二人が会うことを心から祈ってます
リチャードさんはその後評議院に腕をとられて連行されていく
「なんかかわいそうだね」
「善意に目覚めたのにね~」
「あい」
ルーシィさんとセシリー、そしてハッピーがリチャードさんを見ながら言う。
「しかたねぇさ」
「私たちにできることは何もないもの」
「これを機に正しい道を歩んでいけるように努めてくれればいいな」
グレイさんたちも同情する
「もうよいだろ!! 術式を解いてくれ!! 漏らすぞ!!」
「やめてー!?」
真っ青の顔の一夜さんにルーシィさんも真っ青になりながらツッコム。
一夜さん……せっかくいい雰囲気だったんですから空気読んでくださいよ……
「いえ……私たちの本当の目的は六魔将軍ごときじゃありません」
「へ?」
ラハールさんの発言に思わず間抜けな声を出す一夜さん。六魔将軍が本当の目的じゃないって……どういうことだ?
「評議院への潜入……破壊。エーテリオンの投下。もっととんでもない大悪党がそこにいるでしょう」
ラハールはそう言ってある男を指差す
「貴様だジェラール!! 来い!! 抵抗する場合は抹殺の許可もおりている!!」
「え!?」
「そんな!!」
俺とウェンディはそう言われラハールさんを見る
「ちょっと待てよ!!」
ナツさんも納得がいかずラハールさんに怒鳴る
しかしラハールさんはあくまで冷静に俺たちを見てから言う。
「その男は危険だ。二度とこの世界に放ってはならない。絶対に!!」
ジェラールはそれをただ静かに聞いていた
後書き
いかがだったでしょうか。また次回もよろしくお願いします
緋色の空
前書き
個人的ではありますが漫画の緋色の空の扉絵のエルザ・・・好きですw
「ジェラール・フェルナンデス。連邦反逆罪で貴様を逮捕する」
評議院はジェラールの腕に手錠をかける
「ま・・・待ってください!!」
「ジェラールは記憶を失っているんです!!何も覚えてないんですよ!!」
俺とウェンディがラハールさんに伝える。
「憲法第13条によりそれは認められません。もう術式を解いていいぞ」
「はっ」
ラハールさんに言われ評議院の人が術式を解除する。
確かに認められないのはわかってる・・・だけど・・・
「で・・・でも!!」
「いいんだ。抵抗する気はない」
納得できないウェンディにジェラールが言う。
ジェラールは俺たちの方を向き、うつむいたまま話し出す
「君たちのことは最後まで思い出せなかった。本当にすまない。シリル、ウェンディ」
「この子たちは昔、あんたに助けられたんだって」
ジェラールに向かってシャルルが言う。ジェラールは顔をあげこちらを見る。
「そうか・・・俺は君たちにどれだけ迷惑をかけたか知らないが、誰かを助けたことがあったのは嬉しいことだ」
ジェラール・・・でも・・・記憶がないからなのかな。俺の知っているジェラールとは何かが違うような気がしてならない
「エルザ・・・」
ジェラールはエルザさんの方を向く
「いろいろありがとう」
ジェラールはそう言って評議院に連れられていく
「他に言うことはないか?」
「ああ」
ラハールさんはすれ違い様にジェラールに問う
「死刑か無期懲役はほぼ確定だ。二度と誰かと会うこともできんぞ」
「え!?」
「そんな・・・」
「いや・・・」
俺とルーシィさんはラハールさんの言葉に驚きウェンディはうっすら涙を浮かべながら俺の手を強く握る
それを聞いたエルザさんが動こうとした時
「行かせるかぁーっ!!」
ナツさんが評議院数人の頭を掴み暴れ出す
「ナツ!」
「何してるの!?相手は評議院よ!!」
グレイさんとルーシィさんが言う。
「そいつは仲間だ!!連れて帰るんだぁっ!!」
ナツさんはそう叫びながらジェラール評議院を押し退ける。
「よ・・・よせ・・・」
ジェラールが呟くがナツさんは止まらない
「と・・・取り押さえなさい!!」
ラハールさんの指示を受けて評議院がナツさんを取り押さえようとするが
「いけ!!ナツ!!」
「グレイ!?」
グレイさんが評議院たちを体当たりする
「こうなったらナツはもう止まらねぇからな。気に入らねぇんだよ。ニルヴァーナ防いだ奴に労いの一言もねぇのかよ!!」
「それには一理ある、その者の逮捕は不当だ!!」
「ジュラさんに賛成だな。そいつの解放を求めよう!!」
グレイさんの言葉にジュラさんとリオンさんが賛同し加勢する
「悔しいけど、その人がいなくなるとエルザさんが悲しむ!!」
一夜さんも次々と評議院を倒していく
「もう、どうなっても知らないわよ!!」
「あいっ!!」
ルーシィさんとハッピーも参戦する
「ジェラール!!行くな!!」
俺も我慢できずに皆さんと一緒に戦う
「お願い!!ジェラールをつれていかないで!!」
ウェンディが泣きながら叫ぶ
「来い!!ジェラール!!」
ナツさんは評議院に掴まれながらも懸命にジェラールに向かって手を差し出す
「お前はエルザから離れちゃいけねぇっ!!ずっとそばにいるんだ!!エルザのために!!だから来いっ!!
俺たちがついてる!!仲間だろ!!」
ナツの言葉にジェラールは震えていた。
「全員捕らえろぉぉぉ!!公務執行妨害及び逃亡幇助だー!!」
ラハールさんの言葉で評議院が次々俺たちを捕らえる
「ジェラール!!」
「行くなジェラール!!」
ナツさんと俺はジェラールに向かって力いっぱい叫ぶ。しかし俺たちも次々に来る評議院に捕らえられる
「もういい!!そこまでだ!!」
エルザさんが大声を出すとその場にいた全員が動きを止める
「騒がしてすまない。責任は全て私がとる」
全員がエルザさんを見る。
「ジェラールを・・・・つれて・・・いけ・・」
エルザさんがそう言うとジェラールは少し微笑んだように見えた
「エルザ!!」
「座ってろ!!」
「はい!!」
ナツさんがエルザさんに突っかかろうとしたがエルザさんの一言で正座する。
ジェラールは再び評議院に掴まれ歩いていく
「そうだ」
ジェラールは立ち止まり振り返る
「お前の髪の色だった」
「!?」
ジェラールがそう言うとエルザさんは驚いた顔をする。
ジェラールはそのまま評議院の車へと乗り込む
「さようなら、エルザ」
「ああ」
そうして評議院はジェラールをつれてその場を去っていった
評議院が帰ったあと・・・俺たち全員の空気はとても重かった
「エルザ・・・どこ行ったんだろ・・・」
「しばらく一人にしてあげよ・・・」
「あい・・・」
ハッピーとルーシィさんがその場にいないエルザさんの心配をする
「・・・・」
ウェンディは膝をついて涙を目いっぱいに浮かべている。俺はウェンディの頭をそっと撫でる
「シリル・・・」
ウェンディは俺を見る。
「ウェンディ・・・ジェラールはやってはいけないことをしてしまったんだ・・・それはわかるだろ?」
「・・・うん・・・」
ウェンディはそっとうなずく。俺は日が明けてきて少し明るくなってきた空を見上げる
「でも・・・ジェラールはあの時俺たちを助けてくれた・・・それは絶対に変わらない。だからジェラールがどれだけ悪いことをしたとしても、ジェラールは俺たちの恩人だ」
「うん・・・」
ウェンディは自分の涙を拭う。
「私たちは・・・ジェラールの分まで頑張ろう。私たちが人を助ければ、それはジェラールが助けたのと一緒だもん・・・」
「うん・・・だから俺たちは・・・強く生きよう」
ウェンディはその後いっぱい泣いた。俺もウェンディを抱き締めながら静かに泣いた。大好きだったジェラールとのお別れ・・・でも・・・いつかまた会えたらいいなと、願いも込めながら
後書き
いかがだったでしょうか。最後の方がうまく作れなかったのが私的に悔しいです。次はギルドとのお別れです・・・また次回もよろしくお願いします
たった一人のためのギルド
化猫の宿にて
今俺たちは化猫の宿で休んでいる。皆さん服がものすごいボロボロだったので俺たちのギルドで作った服に着替えてもらっている。
早々に着替えた俺はギルドの中に入りマスターの前に腰かける
「マスター」
「なぶら。シリル、よくやってくれたな」
マスターがイスに座ったまま言う。俺は聞きたかったことを聞くことにした
「マスターがニルビット族だったなんて知らなかったんだけど」
「なぶら・・・隠しておったわけではない。言う機会がなくてな」
マスターは少々決まりの悪そうな顔をする。いや、別に責めようと思ってるわけじゃないんだけどね
「シリル・・・ワシは今回の連合軍のことを受けてな、以前から一つ決めておったことがあるんじゃ」
唐突にマスターがそんなことを言う。決めていたこと?
「何を決めたの?」
「ウェンディに本当のことを話そうと思ってな」
「!?」
本当のこと・・・というと俺には一つしか思いつくことがない。それはつまり・・・
「ギルドのみんなのこと?」
「そうじゃ」
マスターはうなずく。まぁ確かにいいタイミングかもしれないけど・・・
「ウェンディ、泣いちゃうかな?」
「お前がいてやればウェンディはそこまで悲しむことはない」
マスターがそう言って俺は少しだけ笑顔になる。俺はこの7年間あのことをずっと言えなかった。
ウェンディに嫌われるのではないかと思い、ずっと隠してきた。でも・・・今度は言わなければならないのだろう
「シリル~!!どこ~?」
俺とマスターが話していると遠くからセシリーが俺を呼ぶ声が聞こえる。
「あ、じゃあマスター。俺はこれで」
「なぶら」
俺は席を立ちその場を後にしようとする
「シリル!!」
俺は不意に名前を呼ばれてその場で振り返る
「ワシも7年間、お前たちといれて楽しかったぞ」
その時のマスターの笑った顔は今までの中で一番幸せそうな顔をしていた
それから少しして俺たちは化猫の宿の前に集合した。
「妖精の尻尾、青い天馬、蛇姫の鱗、そしてシリルにウェンディ、シャルルにセシリー。よくぞ六魔将軍を倒しニルヴァーナを止めてくれた。地方ギルド連盟を代表してこのローバウルが礼を言う」
マスターはそう言って会釈する
「ありがとう。なぶらありがとう」
「どういたしましてマスターローバウル!!六魔将軍との激闘に次ぐ激闘!!楽な戦いではありませんでしたがっ!!仲間との絆が我々を勝利に導いたのです!!」
「「「さすが先生!!」」」
一夜さんがかっこよくポーズを決めながら言うとヒビキさんたちがそれに向かって拍手する
「ちゃっかりおいしいとこもっていきやがって」
「あいつ誰かと戦ってたっけ?」
それを見てグレイさんとルーシィさんがあきれている
「終わりましたのね」
「お前たちもよくやったな」
「ジュラさん」
蛇姫の鱗の皆さんも任務成功を喜び合う
「この流れは宴だろー!!」
「あいさー!!」
「一夜が!!」
「「「一夜が!?」」」
「活躍!!」
「「「活躍!!」」」
「それ「「「ワッショイ!!ワッショイ!!ワッショイ!!ワッショイ!!」」」」
ナツさんの一言で全員がさらに盛り上がり出す。と・・・止めようにも盛り上がり過ぎてて止めにくい・・・
「宴かぁ」
「脱がないの!!」
「フフ」
「あんたも!」
いつのまにか服を脱ぎ上半身裸のグレイさんとリオンさん。それをルーシィさんが注意する
「さぁ化猫の宿の皆さんもご一緒にぃ!?」
「「「「ワッショイ!!ワッショイ!!」」」」
気がつくとナツさんたちまで一緒になって踊っていて
「ワッショイ!!」
ウェンディまで一緒に踊ろうとしていたのを俺は横目で見ていてそれに気づいたウェンディは赤くなって小さくなっている
ヒュウゥゥゥゥ
俺たち化猫の宿のテンションの低さに気づいて連合軍の皆さんが固まってしまう。
なんか申し訳ないです・・・
「皆さん・・・ニルビット族のことを隠していて、本当に申し訳ない」
そんな空気の中マスターが話始める。ついにあのことをウェンディに話すのか・・・
「そんなことで空気壊すの?」
「ぜんぜん気にしてねぇのに、な?」
「あい!」
ハッピーとナツさんがそう言う。
「マスター。私も気にしてませんよ」
ウェンディがマスターにそう言うとマスターは小さくため息をつく
「皆さん、ワシがこれからする話をよく聞いてくだされ」
ついにこのことを話すのか・・・俺はウェンディをチラッっと見るがウェンディは「なんだろう?」といった顔をする
「まずはじめに・・・ワシ等はニルビット族の末裔などではない」
「えっ?」
ウェンディが小さく呟く。まぁ俺もさっきまで知らなかったんだけどね・・・
「ニルビット族そのもの。400年前ニルヴァーナをつくったのはこのワシじゃ」
「何!?」
「うそ・・・」
「400年前!?」
「はぁ・・・」
「・・・」
マスターの突然のことにみんな驚く。
「400年前・・・世界中に広がった戦争を止めようと善悪反転の魔法、ニルヴァーナをつくった。
ニルヴァーナはワシ等の国となり平和の象徴として一時代を築いた。しかし強大な力には必ず反する力が生まれる。
闇を光に変えた分だけニルヴァーナはその“闇”をまとっていった」
俺は少しため息をつく。この辛い話をまともに聞く気になんかなれない・・・
「バランスをとっていたのだ。人間の人格を無制限に光に変えることはできなかった。闇に対して光が生まれ、光に対して必ず闇が生まれる」
「そう言われれば確かに・・・」
マスターの話を聞いてグレイさんは何か思ったようだ
「人々から失われた闇は我々ニルビット族にまとわりついた」
「そんな・・・」
「地獄じゃ。ワシ等は共に殺し合い全滅した」
マスターの話を聞いて連合軍は驚愕する。
「生き残ったのはワシ一人だけじゃ。いや・・・今となってはその表現も少し違うな。我が肉体はとうの昔に滅び今は思念体に近い存在。
ワシはその罪を償うため・・・また・・・力なきワシの代わりにニルヴァーナを破壊できるものが現れるまで、400年・・・見守ってきた。今、ようやく役目が終わった」
そういうマスターの顔は晴れやかなようにも見えた。しかしそれを聞いた俺たちは全員驚きと悲しい気持ちに包まれる
「そ・・・そんな話・・・」
ウェンディが震えながら言う。するとマスターの後ろにいる俺たちの仲間が次々と消え始める
「マグナ!!ペペル!!何これ・・!?」
「みんな!?どうしたの~!!」
「アンタたち!!」
ウェンディたちが次々と消える仲間を見て驚く。昨日まで・・・一緒にいた仲間が・・・
「どうなっているんだ!?人が消えていく!!」
「シリル!!みんなが・・・」
ウェンディが俺を向く。しかし俺は悲しみと真実を黙っていた罪悪感から顔をあげることができない
「騙していてすまなかったな、ウェンディ。ギルドのメンバーは皆・・・ワシのつくりだした幻じゃ・・・」
ウェンディの目から涙がこぼれる
「何だとぉ!?」
「人格を持つ幻だと!?」
「何という魔力なのだ!!」
ジュラさんたちもその光景に驚いている
「ワシはニルヴァーナを見守るためにこの廃村に一人で住んでいた。7年前一人の少年がワシのところに来た」
「一人の少年・・・」
エルザさんが呟く。一人の少年・・・そう、ジェラールだ・・・
「少年のあまりにまっすぐな眼にワシはつい承諾してしまった。一人でいようと決めていたのにな・・・」
―――――
「この子たちを預かってください」
ウェンディを抱えたジェラールがそう言う。俺はその後ろに顔を伏せて立っている。
「・・・わかった・・・」
おじいさんは少し迷ってから答える。
「ありがとうございます。シリル・・・ごめん」
「・・・ううん・・・楽しかったよ。ありがとうね」
「俺もだ。さようなら。シリル、ウェンディ」
ジェラールはそう言ってウェンディを置いて足早にその場をあとにする。
俺はおじいさんに頭を下げる
「無理を聞いてもらってありがとうございます」
「よいよい。気にすることはない」
「シリル・・・」
ウェンディが目を覚ますと辺りを見回している
「起きたか。ウェンディ」
「ここどこ?そのおじいちゃんは?」
「この人はこの家の家主さんでローバウルさんだ」
俺はウェンディにそう言うとウェンディはうつむく
「ジェラールは?」
俺はその問いに答えられない
「ジェラール・・・私たちをギルドにつれてってくれるって・・・」
ウェンディの目に涙がたまる。俺は真実を告げるためウェンディの横にしゃがむ
「ウェンディ・・・ここは「ギルドじゃよ!!」」
俺の言葉を遮るようにマスターが言う。
「ここは魔導士のギルドじゃ!!」
「本当!?」
ウェンディが嬉しそうな顔をする。俺はマスターの顔を見る
「なぶら。外に出てみなさい。仲間たちが待ってるよ」
「やった!行こうシリル!!」
ウェンディが俺の手を掴み外へと飛び出す。するとそこはさっきまでの荒れ果てた廃村から賑やかな一つの町になっていて、たくさんの人たちが俺たちを見ていた。
俺はマスターの方を向くとマスターはただ静かにうなずく。俺はそれに感謝して黙ってうなずいた
―――――
「ウェンディのために作られたギルド・・・」
「そんな話聞きたくない!!バスクもナオキも消えないで!!」
ウェンディが耳をふさぐ
「ウェンディ、シリル、シャルル、セシリー・・・もうお前たちに偽りの仲間はいらない」
マスターそう言ってナツさんたちを指差す
「本当の仲間がいるではないか」
マスターはそう言ってニッコリと微笑む。そしてマスターの体も徐々に消えていく
「ウェンディ・・・シリルに心配ばかりかけるなよ。シリル・・・お前はもっと周りを頼りなさい。一人で抱え込んでいちゃいけない。
お前たちの未来は始まったばかりじゃ」
「マスター!!」
ウェンディがマスターの元へと走る
「皆さん、本当にありがとう。この子たちを頼みます」
そしてマスターが完全にいなくなってしまうと俺たちのギルドマークが消える。
「マスターーー!!」
マスターがさっきまでいた場所でウェンディは泣き叫ぶ。シャルルとセシリーもうっすらと目に涙を浮かべている。
俺はウェンディに近づいて抱きしめる
「ごめん・・・今まで黙ってて・・・」
「ひっく・・・シリル・・・」
ウェンディは俺を抱き返し再び泣いてしまう。俺も我慢できなくなって泣いてしまう
「愛する者との別れの辛さは・・・仲間が埋めてくれる」
エルザさんが俺の肩に手を置き言う。俺とウェンディはそちらを見る
「来い、妖精の尻尾へ」
後書き
いかがだったでしょうか。次からは日常編に入らせていただきます。次回もよろしくお願いします
妖精の尻尾へ
ザサァァ
「ああ・・・船って潮風が気持ちいいんだな」
「よかったねぇナツ~」
今俺たちは妖精の尻尾に向かうため船の上に乗っている
り物っていいもんだなー!オイー!!」
ナツさんが船の上を駆け回る。確かに船って潮風がいいですよね。俺も好きです
「あ」
ウェンディがそんなナツさんを見て
「そろそろトロイアが切れますよ」
「おぷぅ」
そう言うとナツさんはまるで図ったかのように真っ青になって倒れる。まぁ船って縦揺れと横揺れが両方起こるらしいから酔いやすいって言えば酔いやすいらしいね。・・・俺誰に言ってるんだ?
「も・・・もう一回かけ・・・て・・・おぷ・・・」
「連続すると効果が薄れちゃうんですよ」
「放っとけよそんな奴」
「あははははっ」
いつものことなのかグレイさんたちはナツさんを少し笑った感じで見ている。ナツさん苦労してるんですね・・・
「本当にシャルルたちも妖精の尻尾に来るんだね」
「私はウェンディとシリルが行くって言うからついていくだけよ」
「ハッピーよろしくね~!」
「あい!」
セシリーたちも盛り上がっているようだ。ハッピーとセシリーは友達みたいな感じになってるみたいだな。まぁセシリーのオトボケキャラならみんな仲良くなっちゃうんだけどね。
「楽しみです!!妖精の尻尾!!」
「俺も楽しみです!どんなとこなのか」
ウェンディと俺は新しく入るギルドに胸を踊らせていた。ちなみに他のギルドの皆さんとは・・・
――――――
「また素敵な香りを!!エルザさん。ルーシィさん」
「今度こっちに遊びに来てね」
「その時は最高の夜をプレゼントするよ」
一夜さん、イヴさん、ヒビキさんは最後までホストのように振る舞い
「マスターマカロフによろしくな」
「グレイ。脱ぎ癖直せよ」
「お前に言われたくねぇよ!!」
ジュラさんは同じ聖十である妖精の尻尾のマスター、マカロフ・ドレアーさんへと挨拶を頼みリオンさんは半裸でグレイさんに注意して突っ込まれる
というかグレイさんもリオンさんもどんな修業したらいつでも服脱げるようになるんだ?とても気になる・・・
そして俺たちが一番驚いたのは
「と・・・とっとと帰りなさいな」
「さ・・・さみしくなんかねぇからな」
「シェリー!!」
「レン!!」
「できてぇる」
顔を赤らめながらなんだかいい雰囲気のシェリーさんとレンさん。まさか今回の任務で新たな恋が始まるとは・・・予想してなかったです
――――――妖精の尻尾にて
「・・・と言うわけで、シリルとウェンディ。ならびにシャルルとセシリーを妖精の尻尾へ招待した」
「「よろしくお願いします」」
「よろしくね~」
(プイ)
俺とウェンディはお辞儀をしてセシリーは手を振りシャルルは腕を組んだままそっぽを向いている
「かわいーっ!!」
「ハッピーのメスが2匹いるぞ!!」
「お嬢ちゃんたち年いくつ?」
妖精の尻尾の皆さんが盛り上がる・・・けど今俺お嬢ちゃん“たち”って言われたよな?まさか女の子と勘違いされてるのか?
「二人ともかわいいね!これからよろしく!!」
水色の髪のカチューシャをした女の人がそう言う。これは・・・
「えっと・・・すみません。俺は男「ルーちゃんおかえり~」って人の話を聞いてくれ~!」
「きゃっ!レビィちゃん!!」
「ルーちゃーーん!!」
レビィさんはルーシィさんに飛びつくように抱きつく。なんか俺の話を遮られるの久しぶりだなぁ・・・
「グレイ様・・・ジュビア・・・心配で心配で目から大雨が・・・」
「グレイ止めろ!!」
「おぼれる!!」
「なんで俺が・・!!」
すると突然ギルド内が水浸しになっている。というか涙ってレベルじゃないんですけど!!
「初めまして。ミラジェーンよ」
「わぁ!見てシリル!!本物のミラジェーンさんだよ!」
俺とウェンディの前に銀髪のロングヘアの女の人がやって来る。そういえば週刊ソーサラで見たことあるな。
「シャルルとセシリーはたぶんハッピーと同じだろうけどシリルとウェンディはどんな魔法を使うの?」
「ちょっと!!オスネコと同じ扱い!?」
「シャルル~。たぶんその通りだから怒っちゃダメだよ~」
ミラジェーンさんにハッピーと同じ扱いをされてシャルルは怒っちゃったか。そんなにハッピーのこと嫌いなのかな?
「俺は水魔法を使います」
「私は天空魔法を使います」
するとウェンディが俺にアイコンタクトしてくる。なるほど、合わせて言えってことか
「「俺(私)たち、滅竜魔導士です」」
二人の言葉がぴったりと重なる。ずっと一緒にいたからこういうこともできたりするんだよな。
俺たちがそう言うと妖精の尻尾の皆さんの表情が驚いているように変わる。
「信じてもらえなかったのかな?」コソッ
ウェンディが俺に心配そうに呟く。なので俺もコソッと答える
「無理ないよ。珍しい魔法だからね」コソッ
「「「「「「「「「「「うおっ!!スゲェ!!」」」」」」」」」」」
しかし俺たちの不安を吹き飛ばすように皆さんが叫ぶ
「「「「「「「「「「「滅竜魔導士だ!!」」」」」」」」」」」
「すげー!!」
「ナツと同じか!!」
「ガジルもいるしこのギルドに四人も滅竜魔導士が!!」
「珍しい魔法なのにな!」
その盛り上がりに俺とウェンディは嬉しくなって笑ってしまう。
「今日は宴じゃー!!」
「「「「「「「「「「「「おおおおおっ!!」」」」」」」」」」」」
「ミラちゃーん!ビール!!」
「はいはーい」
「うおおおおっ!!燃えてきたぁぉ!!」
「きゃああああ!!あたしの服ー!!」
「いいぞールーシィ!」
「グレイ様、浮気とかしてませんよね?」
「な・・・なんだよソレ!!」
「シャルル~オイラの魚いる?」
「いらないわよっ!」
皆さんそれぞれでいろいろなことをして盛り上がる。妖精の尻尾ってすごい楽しい場所だな
「楽しいとこだね!」
ウェンディはそれを見て笑顔でそう言う。俺も楽しいから笑顔で答える
「うん!めっちゃ楽しい!!」
「私は別に・・・」
「僕も楽しいよ~!」
相変わらず無表情のシャルルと皆さんと一緒に盛り上がってるセシリー。まぁシャルルはツンデレみたいなもんだからこれぐらいで丁度―――
「!?」
「?どうしたのシリル?」
俺は懐かしい匂いを感じて周りを見る。ウェンディがそんな俺を見る
「いや・・・なんでもないよ」
「そう?シリル!あっちでナツさんたちと遊んでこよ!」
ウェンディが俺の手を掴みナツさんの方へと走っていく。俺はそれについていくがさっきの匂いが気になってもう一度周りを見る。
懐かしい匂い・・・7年前のジェラールの匂い・・・でも近くにそれらしき人影がないので俺は探すのをやめて、その日はナツさんたちと一緒に思いっきり盛り上がった
後書き
いかがだったでしょうか。時期的に次は『ようこそフェアリーヒルズ!』が来ると思いましたので次回は『フェアリーヒルズ!』をやらせていただきます。また次回もよろしくお願いします
フェアリーヒルズ
妖精の尻尾に入ってからしばらくして・・・
「じゃあシリル!オイラがウェンディたちを寮に案内するからね」
「ありがとうハッピー」
「あい!」
「じゃあね、シリル」
「朝とか寝坊しないようにね」
「寂しかったら僕がいつでも戻ってくるからね~」
そう言ってハッピーが先頭を歩きウェンディとシャルル、そしてセシリーがそれについていく。
今日はウェンディたちが妖精の尻尾の女子寮、フェアリーヒルズに入る日になっている。
本当は一緒に住もうと思っていたのだがアクシデントが起きて一緒に住むということができなくなってしまった。ちなみにそのアクシデントとは・・・
――――――回想
「う~ん・・・」
「あら?どうしたのシリル」
「ミラさん」
俺がギルドの机で書類を見ていると後ろから来たミラさんに声をかけられる。
ミラさんは俺の目の前に何枚もある書類の内の一枚を手に取り目を通す。
「あれ?まだ住むところ決まってないの?」
「実はそうなんですよ・・・」
そう・・・俺の見ている書類は現在マグノリアにある空き部屋の情報が書いてあるものである。
書類に全て目を通し、物件そのものも見たのだがどの物件も一人暮らし用のため二人が住むには少々狭い。だったら二部屋借りようかとも思ったのだがどの物件も微妙な離れ方をしている。
俺はそのためどうするべきか頭を悩ませていると
「だったらウェンディたちはフェアリーヒルズに住めばいいんじゃない?」
「フェアリーヒルズ?」
ミラさんの突然の提案に俺は困惑する。なんだ?フェアリーヒルズって
「うちの女子寮なのよ。すぐ近くにあるの」
そう言ってミラさんは地図を書いてくれる。しかしその絵が結構下手だったりする。でも・・・
「俺ウェンディと離れたくないんですけど」
「ウェンディのことが大好きなのね!」
「え!?いや・・・そう言うのじゃなくて・・・」
ミラさんに言われて少し恥ずかしくなってしまう・・・いや、確かに好きなんだけど・・・それを知られると恥ずかしいっていうか・・・理由・・・
「そうだ!心配なんですよ!ウェンディのことが」
「はいはい。そうね」
ミラさんは俺に笑顔のままそう言う。なんだろう?少しバカにされた感じがする
「それにウェンディだっていろんな人たちと暮らすことで見聞を広げることだってできると思うわよ?」
「でも・・・」
「あれ?シリルとミラさん。どうしたんですか?」
俺がいまだに悩んでいると今度はウェンディも俺たちのところに来る。そっか、ウェンディに聞いてみればいいのか
「ねぇウェンディ。ウェンディはどっちがいい?」
「?何が?」
「シリルがね、暮らすところを探してるんだけど二人で暮らせそうなところがないんだって。だからウェンディは妖精の尻尾の女子寮、フェアリーヒルズに住めばいいんじゃないかな?って思ったのよ」
「妖精の尻尾に女子寮なんてあるんですか?」
やっぱりウェンディも俺と同じように思ったみたいだ。
「そうよ。私は住んでないけど・・・エルザとかジュビアとかが住んでるみたいね。エルザ~!」
ミラさんが辺りを見回してから近くにいたエルザさんを呼ぶ。それにエルザさんも気づいてこちらに来る
「どうした?ミラ」
「エルザってフェアリーヒルズに住んでるわよね?」
「あぁ。それがどうした?」
「フェアリーヒルズって今は空き部屋ってあるの?」
あれ?いつのまにかウェンディがフェアリーヒルズで暮らすことで決まっている感じになってるぞ?
「あぁ。なんだ?ウェンディとシリルもフェアリーヒルズに来るのか?」
「エルザさん違う。俺は入れないです」
エルザさんはいまだに俺の性別を覚えてくれてないんだな・・・なんか悲しいです
「そうか。ならウェンディの部屋をとっておけばいいのか?」
「えぇっ!?私・・・その・・・」
ウェンディが顔を赤らめて俺の方をチラチラと見てくる。もしかして・・・ウェンディも俺と離れたくないとか?
「あら。ウェンディもシリルと離れたくないのかしら?」
「ち・・・違います!!いや・・・違わないけど・・・」
ウェンディはモジモジしながら言葉を紡ぐ
「シリル・・・朝とか苦手だから私いないと起きれないかな?って心配で・・・」
ガーン!!まさか俺ウェンディに頼りなく思われてるのか?これは・・・
「やっぱり別々に暮らそうか。ウェンディ」
「えぇ!?なんで!?」
ウェンディが心底驚いた顔をする
「俺だって朝一人で起きれるってことを証明してやる!!」キラッ
「シリル。そのセリフあんまりかっこよくないわよ?」
ミラさんに少しあきれたように言われる。そこはほっといてください
「シリルがそういうなら・・・」
ウェンディも渋々といったように納得する。
「それじゃあ決まりね!」
「ミラちゃ~ん!」
「は~い」
ミラさんはそう言ってからマカオさんたちに呼ばれてその場をあとにする
「それじゃあウェンディ。明日にでも荷物を持ってきてくれ」
「わ・・・わかりました!」
エルザさんもその場からいなくなり残されたのは俺とウェンディの二人だけ。ウェンディは俺の方を向く
「シリル・・・寂しかったらいつでも戻ってくるからね?」
「ウェンディも寂しかったら俺の部屋まで来てもいいよ?」
俺がそう言うとウェンディは何かを決意した顔をする。
「わ・・・私だって一人で大丈夫ってところを見せるもん!!シリルが一人で大丈夫なら私だって大丈夫!・・・のはず」
最後の方声小さくなってたぞ?大丈夫か?
「それじゃあそう言うことでやってみようか」
「うん!わかった」
――――――
といった感じにお互いに相手に一人でも大丈夫なんだよ~っと証明しようと思い別々に住むことになった。ちなみに俺はすでに引っ越しが住んでいるので今日はギルドの皆さんとプール掃除をすることになっている。けど・・・
「なぜプールがあるんですか?」
「漢だからな」
隣にいたエルフマンさんに聞いたら訳のわからない回答が帰ってきた。なんだよ漢だからって!
「前にギルドが壊れた時に話題性を持たせたくて作ったんだ」
「そうなんです・・・か!?」
するといつのまにか近くにいたグレイさんが解説してくれる。しかし俺はグレイさんの格好に思わず驚く。
「つーか、てめぇは何か穿いてこいっての!」
「漢だ!」
「うぉ!!だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ナツさんに全裸でいることを指摘されたグレイさんは股間を隠しながら走り去る。そんなに恥ずかしいなら最初っから脱がないでくださいよ
「おい!マカオはどうした?」
「ハッピーもいないな」
「あいつ逃げたな!!」
「あ!ハッピーならウェンディたちをフェアリーヒルズまで案内してくれてます」
ナツさんたちがその場にいないハッピーのことを言うので一応伝えておく。マカオさんはどこにいったのかは俺は知らないけど
「便利なものだな」
「ったく、新築して大して日が経ってねぇのになんで雨漏りするんだよ」
ギルドの上にある鐘のところではアルザックさんとガジルさんが雨漏りの修理をしているようだ。ガジルさんの腕って鉄になるからあんなこともできるのか。便利なものですね
「誰のせいで新築するはめになったのかな?」
「てめぇ脳天に釘打ち付けんぞコラァ!!」
「釘を食うな釘を」
ガジルさんって鉄の滅竜魔導士だから鉄を食べれるのか。でも釘はさすがに痛いでしょ?
「よう。最近フィギュアの売れ行きはどうだ?」
するとプールサイドの方からマカオさんの声が聞こえてくる。そちらを向くとそこにはマックスさんと話しているマックスさんがいた
「ワカバさん。マカオさんあそこにいますよ」
「おぉ!本当だ。やれやれ、連れてくるか」
ワカバさんはそう言ってマカオさんの方に近づいていく。
「おい!今日はプール掃除の日だぞ!?海パン履いてとっととプールに来い!!」
「うっせぇな。今大事な話が・・・」
「はぁ!?どうせお前のフィギュアなんて誰も買っちゃいねぇよ」
ワカバさんにそう言われるとマカオさんは図星をつかれた顔をする。しかしフィギュアなんて売ってるのか。まぁ男のフィギュアなんて誰も買うわけないだろうけど・・・
「てか、製造すらしてないんだけどね」
「あらあら」
マックスさんがそう言うとマカオさんはかなりショックを受けてあるようだった。ドンマイです。マカオさん・・・
それからしばらくして
「水竜の咆哮!」
プール掃除もおおよそ終わってきたので一度水を入れることになった。なぜか水を入れる係りが俺になってたけど・・・
「お前・・・魔法の使い方それで合ってるのか?」
「間違ってると思います」
俺が咆哮でプールに水を入れたのをグレイさんがツッコム。正直咆哮はこうやって使うものではありません!
するとナツさんがすぐにプールに飛び込むとその場に仁王立ちする。何してるんだ?
「燃えてきただろ?今まで味わったことのないプールだろ?」
ナツさんがそう言うので俺もプールの中に入るとそこはまるでお風呂のようになっていた
「ナイスアイデアだな!」
「漢はやっぱり温泉だ!」
「ったく暑苦しいやつめ」
それを見ていたグレイさんは対抗してなのか
「プールと言えばこうだろ?」
プールを凍らせ始めた
「プールというより、氷そのものだな」
「だっひゃひゃ!こりゃ良いや~!」
なぜかビックスローさんは氷のプールにご満悦の様子だった
「あいつら・・・好き勝手だな・・・」
「それよりプール掃除はどうなったんだ?」
「イカレてるぜ・・・」
「とりあえず水を入れてみたらこうなりました」
呆れたように見ているアルザックさんとガジルさん。俺は温泉プールから上がりながら言う
「まぁいいんじゃない?少しくらい息抜きもしないと」
なぜかミラさんはここでくつろいでいる。そういえばミラさん以外女の人見てないような・・・
「ん?なんだこの穴」
「ガラスはめ込んであんぞ」
するとナツさんとグレイさんが何かを見つけたのかプールの底を見ている。
俺たちもそちらの方へと行くとそこには確かにガラスのはめ込んである穴があった
「なんですか?この穴」
「まさか覗き穴!?漢にあるまじき行為!!」
エルフマンさんが怒り声を荒げる。なるほど・・・覗き穴・・・って何を覗くんだ?
「覗くって何をだよ?」
「そりゃお前、女子の水着姿だろうよ!」
ナツさんの問いにワカバさんが嬉々として答える。けど・・・プールで水着姿なんていくらでも見れるような・・・
「そんなの何が楽しいんだ?」
「イカレてるぜ」
ナツさんとガジルさんがあきれたような声を出す。まぁ実際水着なんてプールで見れるから俺もどうでもいいけど・・・
「下に部屋まであんじゃねぇか」
「おおっ!行ってみようぜ!!」
なぜかビックスローさんがすごいノリノリだったので俺たちはその覗き部屋へと向かった
――――――一方ウェンディたちは・・・ウェンディside
「女子寮があるなんて助かるわ」
「本当だよね~」
「シャルル!見えてきたよ!」
ハッピーがそう言って前を指差す。するとそこにはフェアリーヒルズが見えていた。
「あれがフェアリーヒルズなんだ~!・・・あれ?」
するとフェアリーヒルズが近づいてきて気づいたけど入り口の前に誰かいる。あれって・・・ルーシィさん?でもいつもと服装が違うような・・・
「あの、ルーシィさん?」
「ん?あっ、ウェンディ!シャルルとセシリーも!」
私が名前を呼ぶとやっぱりルーシィさんだったようでこちらに振り向く
「いつもの感じと違う服だったから、ルーシィさんじゃないのかと思いました」
「よりによって私の前でその格好?いい度胸ね」
「中々きわどい服だね~。ルーシィさんの趣味?」
「好きで着てんじゃないから」
ルーシィさんは胸とところを隠しながら落ち込んだように言う。だったらなんでそんな服着てるのかな?
「で、どうしたの?ウェンディ」
「私たち、今日からこの寮にお世話になることになったんです」
「オイラはシャルルの引っ越しのお手伝いだよ!」
「あんたには頼んでないわよ」
「シャルル~。手伝ってくれてるんだから、そんなこと言っちゃダメだよ~」
私の後ろからハッピーもルーシィさんに挨拶する。本当ハッピーはシャルルのことが好きだよね。シャルルは相変わらずハッピーには手厳しいけど・・・
「てかハッピー。あんた男子でしょ?ここ女子寮だから入れないわよ」
「オイラは男子じゃありません。猫です」
「「「「あはははは・・・」」」」
ハッピーの言ったことに苦笑いする私たち。確かに男子ではないけど・・・
「ルーシィか?こんなところに来るなんて珍しいな」
すると寮の上からエルザさんの声が聞こえてきたので私たちは上を向く
「エルザ!!もしかしてエルザってここに住んでるの!?」
「ああ。他に何人も住んでいるぞ。おっ!ウェンディとシャルルとセシリー!今日からだったな」
「よろしくお願いします」
私はエルザさんに頭を下げる。
「ねぇおばあちゃ・・・って消えてるし!!」
突然ルーシィさんが独り言を言う。どうしたのかな?
「ルーシィはそこで何をしてるんだ?」
「ううん!ちょっも見学に!」
ルーシィさんは見学に来たんだ。ということはここには住んでないってことなのかな?
「そうなのか?ならば私が案内してやろう」
「本当!?」
「あぁ。ハッピーはウェンディたちを部屋へ案内してくれ。二階の角部屋だ」
「あい!!」
エルザさんはそう言うと廊下の方へといなくなってしまう
「よろしくお願いします!」
「ま、頼んだわよ」
「よろしくね~。ハッピー」
私たちがハッピーにお願いするとルーシィさんが
「てかあんた、ちょいちょいここに来てるわけ?」
「あい!猫ですから」
「何よそれ・・・」
ハッピーの発言に私たちも少しあきれてしまう。
――――――――それから部屋へと荷物を置いて・・・
「私たちの部屋、とっても日当たりのいい部屋だったね!」
私たちがこれから暮らす部屋はとっても日当たりが良かったので私は嬉しくなってしまう
「てかあんたは何してるのよ」
「なんでこんなところにいるの?」
私たちは今はフェアリーヒルズの中を歩いている。先頭はもちろんハッピー。
「オイラが中を案内してあげるよ!」
「わぁ!」
ハッピーが中を案内してくれるというので私は思わず声を出す。これから暮らしていくんだもん。中がどうなってるか知っておきたいもんね
――――大浴場・・・
「ここが大浴場!各部屋にシャワーもあるけど湯船に浸かりたい時はここだよ」
「広~い!!」
「うわぁ!すごいね~!」
「中々いいじゃない」
大浴場はとっても広くてきれいなところだった。寮ってこんな感じなんだ~。
――――資料部屋
「ここは資料部屋。ギルドほどじゃないけど寮生たちの仕事の記録なんかがあるんだ」
「住んでないのにやけに詳しいわね」
「よく来てるからね」
「なんで少しドヤ顔になったの~?」
その後もハッピーが寮の中を色々案内してくれた。ロビーなんかすっごいきれいで私びっくりしちゃった!!それからしばらくするとエルザさんに湖で私の歓迎会をしてくれると言うので私は水着に着替えてエルザさんたちと一緒に湖へと向かった
――――湖でにて
「気持ちいいね。シャルル、セシリー」
「まぁ、いいんじゃない」
「こんなに大きい湖が近くにあるなんてね~」
私たちは湖で皆さんと一緒に遊んでいる。皆さん砂浜を駆けたりバナナボートで浮かんだりして楽しそう!!
その後皆さんがビーチバレーを始めたので私は少し休憩している。
「楽しいですね」
「あぁ。フェアリーテイルもフェアリーヒルズもどっちも楽しいぞ」
「ふん。みんなガキね」
シャルルはパラソルの影でゆっくりくつろいでいる。ちなみにセシリーははしゃぎすぎてシャルルの隣でお昼寝中。するとハッピーがシャルルに飲み物を持ってくる
「お待たせ致しました」
「あら。オスネコのくせに気が利くのね」
「女子寮の皆さんからそう言われます。皆さん!!」
「あ!?」
突然ハッピーが飲み物を投げてビーチバレーをやってる皆さんの方を向くのでシャルルが驚く
「それでは例のやついきますよ!!」
例のやつ?って何かな?
「フェアリーヒルズ名物!!恋のバカ騒ぎ!!」
「「「「「「わ~!!」」」」」」
するとどこから現れたのかトーク番組みたいなセットが現れる
「グレイ様」
「ラクサス」
「早すぎ!」
ジュビアさんとエバーグリーンさんが言うとハッピーが突っ込む。何なのかな?これ
「二人とも、まだ今日のお題が出てないぞ」
「今日のお題は!!」
ハッピーがビコピコハンマーで机を叩く
「妖精の尻尾の中で彼氏にしてもいいと思うのは誰?です。さぁ!」
「グレイ様。以上」
「ジュビア・・・それじゃあつまんないよ」
即答ですね!ジュビアさんはやっぱりグレイさんのことが好きなんですね。
「他の人!!」
「え~・・・その・・・」
ビスカさんは恥ずかしそうにもじもじしてますね。
「花が似合って、石像のような感じの」
「それって人間ですか?」
エバーグリーンさんはなんとも特殊な趣味なんですね。
「エルザは?」
「いないな」
エルザさん即答ですか!?
「ラキもないね。他の人」
「ちょっとお題に無理があると思います。だってそんな人いる?」
ラキさんがお題に意見する。でも妖精の尻尾の皆さんって魅力的な人も多いと思いますけど
「レビィはどう?」
「私!?」
ハッピーからレビィさんが指名され少し動揺する
「例えば、ジェットとかドロイとか。三角関係のうわさとかあるしね」
「冗談!チーム内の恋愛はご法度よ!!仕事にも差し支えるもん!!」
レビィさんってやっぱりしっかりしてますね。
「トライアングル~!グッと来るフレーズね~」
「三角関係・・・恋敵!!」
「その真ん中にいると全ての毛穴から鮮血がぁ!!とか?」
「はいそこ!!脱線しすぎ!!」
後ろに座っている3人が別の世界にいってしまっていたのでハッピーが呼び戻す。
「チームの恋愛と言えば、私前から気になってることがあるんだけど?」
「何なに?」
レビィさんの話題にビスカさんが食い入る。私も気になる~!!
「実は、ナツとエルザがあやしいんじゃないかって思うの!だって昔、一緒にお風呂に入ったって言うし」
えぇ!?一緒にお風呂に入ったんですか!?
「ん?グレイとも入ったぞ?」
「「「「「!?」」」」」
「それはすなわち好きということになるのか?」
エルザさんの発言で皆さん頭から湯気が出ちゃってますよ!
「グレイ様と・・・お風呂に【ピコッ】」
「はいそこ!想像しない!!」
ジュビアさんがなみだを浮かべながらグレイさんとお風呂に入ってる姿を想像したらハッピーに叩かれました。
「ビスカこそ、アルザックとはうまくいってるのか?」
「エルザさん!それ内緒です!!」
「え?みんな知ってるよ?」
「てか気づいてないのアルザックだけだし」
「「「「うんうん」」」」
「ぽ~///」
ビスカさん自分の恋愛事情を皆さんに知られちゃってて顔真っ赤になっちゃってますね
「すまん!私のせいだ。仲間だというのに。とりあえず殴ってくれないか?」
「え・・・」
エルザさんの提案にビスカさんも思わず苦笑いしてますね。
「じゃあルーシィはどう?」
「ナツじゃないかしら?」
「意外とグレイかも?」
「ジュビアはロキだと!!」
エルザさんがグレイさんの名前を出すとジュビアさんがそれに食いつくように言う。そんなに恋敵がいて欲しくないんですね
「あ!でもルーちゃん言ってたよ?青い天馬のヒビキって人に優しくしてもらったって!
「ん~・・・意表をついてリーダスとか?」
「「「「「ないない」」」」」
「わかった!!きっとミラさんだ!!」
「「「「「ははっ・・・」」」」」
ラキさんのとことん的はずれな解答に皆さん苦笑いする。でも・・・皆さん本当楽しそう。
「ちなみにウェンディは?」
「え?」
ハッピーから突然話を振られる。え?でも・・・やっぱりそういうのって恥ずかしいよ・・・
「え!?ウェンディいるの!?」
「だれだれ!?」
レビィさんとビスカさんがこちらをすごい見てくる。というか皆さんすっごい見てますよ!!まさか私まで参加させられるなんて!!
じーーーっ
み・・・皆さんの視線が・・・
「だ・・・誰にも言わないでくださいよ?」
「「「「「うんうん!!」」」」」
皆さん本当にすごい見てきますね!
私はためらいながらもなんとか言う決意をする
「し・・・シリルです・・・///」
「「「おおー!!」」」
「グレイ様じゃなくて良かった」
「小さいときから一緒にいる好きな人・・・これはもう幼なじみという名の許嫁!」
ラキさんがすごい脱線しちゃってます!!別に許嫁ってわけではないですけど・・・
「それじゃあ本日のメインゲスト!ウェンディの好きな人も聞けたことだし本日はここまで!!」
えぇ!?これって私の好きな人を聞くための会だったの!?
ドガァン
私がそんなことを思っていると突然大きな爆発音が聞こえる。
「ん?なんだ?」
「ギルドの方から聞こえたぞ?」
「どうせナツとグレイでしょ」
エバーグリーンさんがそう言うと皆さん納得してしまう。
―――――ちなみにこの爆発はやはり・・・シリルside
俺たちはプールの真下にある覗き部屋なるものに来ている
「ここが覗き部屋というものか」
「がーっ!!許せん!!」
「で?犯人は誰なんだよ」
「すげぇな!色んな角度で拝めるぜ!!」
皆さんが犯人を探そうとしてるなかワカバさんは覗き穴を一生懸命に覗いていた。でも今覗いても女の人なんて誰もいないと思いますけど?
「おおっ!!誰か入ったぞ!!うぎゃ」
ワカバさんがそう言うとナツさんが割り込むで覗き込む
「興味ねぇなら覗くなよ」
「お・・・俺にも見せろよぉ!!」
「イカレてるぜ」
「ていうか誰が入ったんですかね?」
ミラさんかな?でも今このタイミングで入るわけないか
「おい、誰が入ってんだ?」
「泡ばっかでよく見えねぇ。お!「退けよ!」ぎゃっ」
今度はグレイさんが覗き込む。
「誰だ?」
まじまじと覗くグレイさん。しばらくすると
「げぇ!?」
「誰だ?」
「見てみろよ・・・」
ナツさんがグレイさんと入れ替わって覗く。
「なんだ。じっちゃんか。」
マスターが入ってたのか。
「ん?」
するとナツさんが何かに気づく
「どうしたんですか?」
「じっちゃん・・・なんであんなに慌ててんだ?」
あぁ~・・・そういうことか
「動揺してるってことはよぉ」
「犯人はじいさんか」
「「「「「「「「「「う~ん」」」」」」」」」」
俺たちがマスターにあきれていると
「げぇっ!!」
ナツさんが何かを気持ち悪がる声を出す
「ん?どうした?ナツ」
グレイさんの問いに答えずにナツさんは小刻みに震えている。すると
「目がぁ!!!!」
ナツさんは目を抑え口から炎を出す
「やめろナツ!!」
「こんなところで火ぃ吹くな!!」
「見ちゃいけねぇもんを見た!!」
ナツさんは苦しみながら炎を吐き出し続ける
「ったく、何を見たっていうんだ。げぇっ!!」
するとグレイさんも同じ反応をする。ものすごく嫌な予感・・・
「目がぁ!!!!」
「やっぱりー!!」
今度はグレイさんが体から冷気を出して辺りを凍らせ始める
「だから何を見たんだよ」
続いてガジルさんが覗く。するとガジルさんはゼロコンマ数秒固まると
「目・・・がぁ・・・」
息も絶え絶えにそういうと目にシャッターが降りる。なぜシャッター!?
「な、何を見たんでしょうか?」
俺も気になってしまいその穴を覗く。するとそこにはマスターがいた・・・海パンの脱げたマスターが
「・・・俺は何も見ていない、俺は何も見ていない、俺は――――」
「「「「「シリルが壊れたー!!」」」」」
俺はとにかく自分に暗示をかける。これはきっと悪い夢だ!そうに決まってる
「「うわぁぁぁぁぁぁ」」
その後もナツさんとグレイさんが魔法を放ち続けついに
ドガァン
プールが爆発した。
「「「さ・・・最低だ(です)・・・」」」
「もう、ダメでしょマスター。怒りますよ!」
「しゅみません」
結局この日はプール掃除のはずがしばらくプールを使用禁止にしてしまうだけの日になってしまった・・・
――――その日の夕方
「今日はひでぇ目にあったなぁ」
「そうですね・・・」
今俺はナツさんと一緒に少し散歩をしている。その理由は
「しかしハッピーの奴どこいきやがった?」
「ウェンディの引っ越しはもう終わってるはずですけどね?」
ウェンディたちの引っ越しを手伝いにいったハッピーがいまだにギルドに戻らないので俺とナツさんは匂いを頼りにハッピーを探している。
「お?あっちのほうからハッピーの匂いがすんぞ!」
「行ってみましょう!」
俺たちがハッピーの匂いのする方へと向かうとそこは湖・・・そこには何かを片付けているハッピーがいた
「ハッピー!」
「ハッピ~!!」
「あ?ナツ!シリル!」
ナツさんと俺が名前を呼ぶとハッピーはそれに気付いてこちらに飛んでくる。
「何してるの?」
「セットの片付け」
?何のセット?
「でももう終わったんだよ」
ハッピーがそう言って指差すところには確かに何やらたくさんの椅子とかがあった。
「おぉ!ハッピーたいへんだったな。じゃあ帰るか」
「あい!あ、ところでさ、シリル」
「ん?何?」
ハッピーが俺に話しかける
「シリルはさぁ・・・好きな人とかいるの?」
「えぇ!?」
なんだこいつ!?いきなり変な質問しやがって!!
「な・・・なんで?」
俺がハッピーに聞くと
「気になるから。大丈夫。オイラ誰にも言わないよ」
いや・・・ナツさんがいるじゃん・・・言いにくい・・・
「ほら!早く」
ハッピーが俺に耳を出してくる。なるほど・・・耳元でささやけってことね。
俺はハッピーの耳に口を近づける
「う・・・ウェンディだけど・・・」
俺は少し顔が赤くなりながらそう言うとハッピーは少しにやっと笑い
「でぇきてぇる」
と言ってきた
「え!?何が!?」
「じゃあナツ!!帰ろうか」
「おぉ!またな!シリル!」
「え!?いや・・・ハッピー!!何ができてるの!?ねぇ!!」
俺が一人困惑してるなかハッピーはナツさんをつかんで飛んでいってしまった
「一体・・・何が“でぇきてぇる”んだ?」
俺は一人考えながら帰路へとついた
後書き
いかがだったでしょうか。この話ではウェンディとシリルは両思いってことだけは一応確定させておこうと思いました。二人が結ばれるのは現在の予定だとかなり先の予定になっております。次回もまたよろしくお願いします
竜の誘い
妖精の尻尾にて
今ウェンディはギルドのリクエストボードの前をうろうろしている。
「何かいい仕事あった?」
俺がそう声をかけるとウェンディはこちらを振り向く。
「色々ありすぎちゃって」
そう言って俺はウェンディの後ろのリクエストボードを見る。確かにそこにはたくさんの依頼があった。
化猫の宿は正式なギルドじゃなかったからなぁ・・・依頼なんて来ないから街とかで勝手に仕事を引き受けて、それをあたかも“ギルドへ来た依頼”みたくしてたからこんなに依頼はなかったからなぁ。それは確かに迷うよねぇ・・・
「そうね」
すると俺の後ろからミラさんがやってくる。
「初めのうちは誰かの仕事のアシスタントをやってみるといいと思うわ。その分報酬は少なくなるけどね」
「アシスタントですか?」
「と言ってもこの連中とじゃね・・・」
「少し不安かも・・・」
シャルルとセシリーの視線の先にいるのは仕事もしないでおしゃべりしてるナツさんやエルフマンさんたち。でも仕事行ってる人もいるんだからそんなこと言うなよな。
「ウェンディ!シリル!仕事決めたの?」
すると今度はルーシィさんとレビィさんがやってくる。
「ううん。最初は誰かと一緒にやってみたらって言ってたとこなの」
「そういえば、ルーちゃんも初仕事はナツと始めたんだよね?」
「おかげで命がいくつあっても足りない目に何度あったことか・・・」
「でも楽しそうだよ?」
ルーシィさん・・・泣くほど大変な目にあったんですね・・・なんて思っているとウェンディが
「あの、私妖精の尻尾に来てもう一週間になるし、そろそろ初仕事をと・・・思うんですけど・・・」
「じゃあ私たちシャドーギアと一緒にやる?」
「やるなら私たちと一緒にどう?」
レビィさんとルーシィさんがそう言う。ウェンディはどうするのかな?と思いウェンディの方を見ると
「どうしよう?シリル」
まさかの俺に振ってきた
「シャドーギアは楽しいよ?」
「私たちの方が楽しいよ」
「み・・・ミラさん・・・」
二人が俺にそう詰め寄ってくるので俺はミラさんに助け船を求める
「じゃあ順番でどう?」
「うん!決まり!」
「で、どっちが先?」
「う~ん・・・」
ウェンディは悩みながらこちらをチラ見する。なるほど、俺にも考えろってことですね・・・
ルーシィさんと一緒ってことはナツさんたちもいるだろうからお互いに知ってるって意味ではいいと思う。レビィさんたちの方はまだあまり話したことはないけどこれを機に仲良くなるって意味ではいいと思うし・・・
「う~ん・・・」
俺とウェンディが一生懸命考えていると
「ドラゴンを見たことがあるって言う奴がこの街の近くに来てる」
不意にそんな言葉が聞こえてきて俺はそちらを向く。そこにはグレイさんたちがいてさっきの言葉はグレイさんが言っていたことだったようだ。
「すごい情報だねナツ」
「なぁ。ドラゴンって、イグニールか?」
ナツさんは立ち上がりグレイさんに言う。
「そこまではわからねぇ」
「お前、ドラゴンを見たって奴に会ったのか?」
「いや、街で噂を聞いたんだ。ダフネって奴がドラゴンのことを得意気に話してるんだと。ただ」
グレイさんは一拍置いてから言う。
「見ただけじゃなく、最近・・・会ったとも言ってるらしい」
「本当か!?本当なんだな!?」
「確かめる価値は・・・あるだろ?」
グレイさんはナツさんを見ながらそう言う。ドラゴンに会ったって・・・マジか!?
「どこにいるって?」
「西の荒れ地にある、ライズって宿だ」
「よっしゃー!!行くぞハッピー!!」
「あいさー!!」
そう言ってナツさんたちが走り出す。そのドラゴン、もしかしたらヴァッサボーネかもしれない!!
「俺も行きます!!」
「私も行きます!そのドラゴン、グランディーネかもしれないから」
ウェンディもグランディーネに会えるかもしれないという期待を込めて一緒にいくようだ。
「じゃあ行ってみるか。ガジル!お前もいくか?」
ナツさんがカウンターに座っているガジルさんも誘う。
「行かねーよ。どうせガセネタだろ」
「そんなのわかんねーだろ!」
「そう言って飛び出して何度ガセネタに踊らされてきた!ドラゴンの話ってのは人を惹き付ける!だから利用される!ちったぁ学習しろ!!」
ガジルさんの言う通りかもしれないけど・・・でも
「ガジルさんは会いたくないんですか?」
「そーだ!お前だってメタリカーナに会いたいだろ!」
「会ってどうしようってんだ、突然消えちまうような勝手な奴なんざ・・・俺はどうでもいいね」
「ガジルさん・・・」
ガジルさんはそう言うけど・・・やっぱり心のどこかでは会いたいとは思ってるんじゃないかな?だってやっぱり俺たちを育ててくれた親なんだから
「とかなんとか言ってるけど、本当は会いたいのよ」
「私もそう思う」
ルーシィさんたちも俺と同意見のようだ。
ナツさんはその後ガジルさんを少し見てから俺たちの方を向く。
「シリル!ウェンディ!行くぞ!」
「はい!」
「グランディーネかヴァッサボーネだといいね。シャルル」
「あんまり、期待しない方がいいと思うけどね」
「僕はドラゴンに会うの楽しみだな~」
シャルルはそう言うけどやっぱり期待しちゃうよ。もしかしたら・・・て思っちゃうもん
「お前にしちゃあマトモなネタじゃねぇか」
「まぁな」
俺たちはダフネさんに会うために西の荒れ地にあるという宿へと向かった。
――――――――西の荒れ地にて
「ここが旅の宿ライズ?」
「ボロだな~」
ハッピーとナツさんがそう言うが、それよりもこんな周りに何もないところにこんな宿が建ってるなんて・・・猛烈な違和感・・・
そんな違和感を抱えながらも俺たちは宿の中へと入っていくが・・・中には誰も見当たらない
「誰もいませんね」
「本当にここ営業してるの~?」
ウェンディとセシリーがそう言う。確かにホテルマンみたいな人もいないし・・・どうなってるんだ?
「無人のはずよ」
シャルルがそう言うので俺たちはそちらを向くとそこには何やら魔水晶が置いてある
「なんだこれ?」
「見たことないけど」
「全自動魔水晶式宿泊管理システム。チェックインもチェックアウトもこれ一台でOKって奴」
「シャルルよく知ってるね~!」
ナツさんと俺の疑問にシャルルが腕を組みながら答える。よくそんなこと知ってるなぁ
「だから宿の人いないんだ」
「宿の人どころかお客がいるようにも見えないけど」
「確かにね~」
シャルルの言う通りだと思う。少なくともロビーにお客の一人や二人はいてもおかしくはないはずだからな・・・俺の勝手な偏見だけど
「またガセかよ!グレイの奴」
「まだそうと決まったわけではないですよ。誰かいるかもしれません」
「部屋を一つ一つ調べていけばそのダフネさんもいるかもしれませんしね」
「よーし!みんなで手分けしてやるか」
というわけで俺たちはみんなで手分けして宿の中を探すことになった。
一つ一つノックしたり声をかけたりしたが全然人がいる気配がない。
途中でシャルルがドアノブを壊したのを見てセシリーが爆笑していたけどそれでもどの部屋からも誰も出てくる様子はなかった。てかシャルルドアノブ壊すなよ!!
――――――――
「結局ここまで誰もいなかったね」
「あとはここだけか」
俺たちは最後の一室の前に立っているのだが・・・明らかにさっきまでの部屋とは違う
「ていうかこの部屋だけ絶対おかしくないですか!?」
俺は部屋の入り口を見て思わず突っ込んでしまう。だってドアになんかいるし隣の壁からもなんかぬいぐるみみたいなのが出てきてるし、入り口の両隣にも大きいぬいぐるみがいるし、なんかハッピーみたいな置物がドアの上にくっついてるし!!突っ込みどころ多すぎなんだけど!!
「おい!誰かいんのか!」
「ハイハイ」
ナツさんが部屋に向かってそう言うと中から声がする
「いた!」
「最後の最後でいましたね!」
俺とウェンディはようやく人がいたことに感動する
「開けてくれ!!ダフネって奴か!」
ナツさんがそう言うとぬいぐるみみたいな扉が開く。
「ハイハイ。ダフネさんは私だけど」
そう言って出てきた女の人は何かを食べている。というか目がだるそう・・・
「ちょっと話があるんだ」
ナツさんがそう言うとさっきまでのだるそうな表情から一転してなんだかキラキラし始める
「ハイハイハイハイ!話ね話!もしかしてもしかしなくてもお客さんね!!」
ダフネさんはそう言うと扉を全開にする。そこまで開ける意味はあるのか?
「入って入って入ってちょうだい!!ハイハイハイハイ!」
ダフネさんがそう言うと突然俺たちの足元に魔方陣が現れて部屋の中へと勝手に進んでいく。
「どわっ!」
「ええ!?」
「おおっ!すげぇ!」
「シリル感心しないで~!」
「わぁ!」
「何なの!?」
俺たちが中に入るとなぜかそこはとても真っ暗になっている。
「ハイハイハイハイ!私各地を旅に旅する美の伝道師ダフネと申します」
うわっ・・・なんか語りだした・・・てか室内で花火打ち上げるなよ!火事になるぞ火事に!!
「びと申しましても貧乏のびにあらず!美貌の美!美人の美!美形の美にございます」
あまりのテンションの高さに俺たちは言葉を失う
「ハイハイハイハイ!売り物は何かと言えばこの夢のダイエット食品、名付けてメタモちゃん!」
「「「め・・・メタボちゃん・・・?」」」
なんつう商品名だ!?逆に太るんじゃないですか!?
なんて思ってるとダフネさんが俺とハッピーとセシリーを指差す
「ハイハイハイ。そこ!言い間違えないでくださいませね!!」
すみません・・・聞き間違えました
「メタボちゃんにあらずメタモちゃん!長年の研究に研究を重ねて作り出した奇跡の食品なのですね~」
「聞けよ!!」
「解毒作用を持つ海の幸を、三日三晩秘伝の薬に漬け込んで、天日に干してさらに一週間!そして完成したのがこの・・・」
「「「夢のダイエット食品、メタモちゃん!!」」」
なぜか俺たち三人がライトアップされたので大慌てで叫ぶ俺たち。
「ハイハ~イ!今度はよく言えましたねお嬢ちゃんと子猫ちゃんたち。「俺はお嬢ちゃんじゃねぇ!!」嬉しいからサンプルあげるよ!ハイハイどうぞ」
俺の言い分は無視してメタモちゃんの箱を渡してくるダフネさん。でも俺たちにそれはいらないような・・・
「でも・・・」
「オイラたちメタボじゃ「ハイハイ!いいから食べてみて!美味しいから」」
ダフネさんは俺たち三人にメタモちゃんを押し付けるように渡す。
「一口食べたら美白の効果!二口食べたらスッキリお腹!ハイハイこちら兄妹かしら?坊っちゃん嬢ちゃん猫ちゃんも、食べてみてみてメタモちゃん!」
ウェンディたちにもメタモちゃん押し付ける。好き勝手やってるな~・・・
「効果はバッチリ御覧遊ばせ!ビフォーアフター!!」
すると太った猫のぬいぐるみが全部スッキリしたスリム体型に!
「すごーい!」
「わぁ!効果抜群!!」
「たった一瞬でスリム体型に!?」
「お・・・おい!何感心して!?」
いや、だってあれすごいでしょ!?
「それではいくつかユーザ様からの喜びの声を聞きましょう。」
というといつのまにか部屋が変わっちゃってるよ!?どうなってんのこれ!?
「まずは・・・」
「ちょっと待てーーーー!!!!」
さすがにナツさんも我慢の限界に達したようですね。
「ハイハイ!お客さん。お便りはたくさんありますから」
「そのハイハイもやめろー!!聞きたいのは痩せ薬の話じゃねぇ!!」
「ハイハイ!薬じゃないですよ?メタモちゃんのお話です」
「ドラゴンの話だ!」
ナツさんは手に炎を纏いながら言う。するとダフネさんは眼鏡をかけ直すとその眼鏡がキランっと光る
「ハイハイドラゴンですか?よござんすよ?メタモちゃんならドラゴンさんもダイエットできちゃう優れもの」
「いいから話を聞け!!俺は滅竜魔導士だ!!」
ナツさんの一言でようやく本題に入れましたね。まぁ、楽しかったてすけど
「俺は7年前に姿を消したドラゴン。イグニールを探している。ウェンディはグランディーネ!シリルはヴァッサボーネっていうドラゴンを探している」
ナツさんは俺たちを指差しながら探してるドラゴンの名前を言う。
「もしお前が会ったっつうならドラゴンの誰に会ったのか、どこで会ったのか、いつ会ったのか教えてくれ」
俺たちはダフネさんの方を見る。
するとダフネさんは立ち上がり俺たちに背を向ける
「ドラゴンに会った話ですけどね、あれ商売上のウソ!ハイハ~イ」
「ウソだと!」
「そんな・・・」
「なんだよ・・・」
ダフネさんの話を聞いてガッカリする俺たち。ガジルさんの言う通りだったのか・・・
「ハイハイ。このメタモちゃんにドラゴンの鱗を粉末にしたものを入れたって言うと売れ行きが違うんだもの」
「鱗だと!?」
「ナツさん・・・どう考えてもウソですよ」
ドラゴンに会ってないのに鱗を手に入れれるわけないじゃないですか
「それじゃあ詐欺ですよ!?」
「そうかしら?私の作ったものは完璧よ?」
「いや・・・完璧なメタモちゃんとか知ったこっちゃないんですけど・・・」
というかメタモちゃんはあなたが作ったものなんだから完璧も何もないような気がする・・・
「こんの~!!ふざけやがって!!帰るぞ!!」
怒ったナツさんがドアを蹴破る。しかしそこにはあるはずの廊下がなくなっていて変な空間のようなものができている。
「な・・・なんだこれ!?」
「廊下が消えてる!!」
「ウソ!!」
「どうことなんですか!?」
「ハイハイ。あなた方は篭の鳥」
そう言うダフネさんの表情はうっすらと笑っている。
俺たちは完全にこの部屋に閉じ込められた!?
「こんなもの!火竜の鉄拳!」
ナツさんは空間のようなものを殴る。しかし
「うわっ」
ナツさんは後方へと飛ばされる
「ナツさん!」
「ナツ!」
「大丈夫ですか!?」
「これって魔法の壁~!?」
「あんた魔導士!?」
俺たちはダフネさんの方を向く。ダフネさんは不敵な笑みを浮かべている
「ハイハイ。美しい炎だこと。さすがは火竜ね」
「くぅ・・・」
なんだ?ダフネさんの雰囲気が変わった?
「ハイハイ、待っていたのよ。お客さんみたいな滅竜魔導士を!」
「なんだと?」
俺たちのような滅竜魔導士を待っていた?どういうことだ?
「ハイハイ、すぐにわかるわ、落ち着いて。お一ついかが?」
ダフネさんはそう言いながらメタモちゃんを差し出してくる。けど雰囲気が元に戻ってるぞ?
「いらねぇよ!!」
ナツさんはそれに怒る。まぁ今はそんな状況じゃないしね。ひとまず俺は出口が万が一にもあるかもしれないから探してみるか
「外がない」
「こっちもだ」
「完全に閉じ込められたわね」
「どうしよう~!」
俺とウェンディは窓を開けてみるがそこにもやはり変な空間のようなものが見える
「ハイハイ。なかなか素敵な魔法でしょ?」
「くそっ!」
ナツさんは再び腕に炎を纏う
「こんなもの、ぶっ壊してやる!!うおおおっ」
ナツさんが殴ろうとするが
「ぐわっ」
ナツさんが何かによって飛ばされる。それと同時に何かの破片のようなものが宙をまう
「氷!?」
「なんだ?」
俺たちは扉の方を向く。そこには見覚えのあるシルエットが・・・あれは
「グレイ・・・」
「いい格好だな。ナツ」
ナツさんを見下すように見ているグレイさんがいる。なんでグレイさんが?
「グレイさん!」
「あれ?どこから入ってきたのグレイ?」
ウェンディはグレイさんを見て喜びハッピーは疑問を持つ。それより・・・
「なんで今ナツさんを攻撃したんですか?」
俺はグレイさんに問う。なんでこんなことを?
「フン。なんでだと?簡単だろ?」
グレイさんは俺たちの脇を抜けてダフネさんの方にいく。そしてダフネさんのとなりに立つとダフネさんはグレイさんの肩に肘を置く
「ハイハイハイハイ。いらっしゃいませ、グレイ・フルバスター」
「「「「「「!?」」」」」」
「お前ら・・・知り合いだったのか?」
ナツさんが聞くとダフネさんはグレイさんの頬を馴れ馴れしく触る。
まるで恋人かのように・・・
「おおっ!でぇきてぇる」
「うるさいよハッピー!!」
「ごめんなさい・・・」
ハッピーが少しふざけてみたら珍しくセシリーが怒ってしまい、しゅんっとするハッピー。ていうかそんなことより!
「どういうことだよ!グレイ!!」
「グレイさん!!」
ナツさんと俺がそう言うとグレイさんは一歩こちらに歩み寄る
「ナツ、お前とはずいぶんやりあってきたよな」
「ああ!?」
そういえばナツさんとグレイさんはよく喧嘩してるんだっけ?そのことを言ってるのかな?
「そろそろ・・・決着をつけてもいいんじゃねぇか?」
「何言ってやがる」
「俺は、今までお前に合わせてやってきた。だが、もううんざりだ」
グレイさんはナツさんに背を向ける
「俺は俺のやり方でいく。お前らとはもうつるまねぇ。さっきナツを攻撃したのはそういうことだ」
「グレイ・・・」
そう言うグレイさんの目は本気だ!!マジでナツさんと決着をつけようとしてるのか!?
「ハイハイ、聞いての通りよ。グレイ・フルバスターは私のもの。滅竜魔導士がほしいの。潰して」
「あぁ」
ダフネさんに言われたグレイさんは再びこちらを向く。
「変だぞグレイ」
「変?それは・・・お前だ」
グレイさんはそう言って魔法を放つ体勢になる。本当にやる気なのか!?
「じゃあな。ナツ」
グレイさんはそう言って俺たちに向かって魔法を放った
後書き
いかがだったでしょうか。次回もよろしくお願いします
ナツvsグレイ
「アイスメイク・・・突撃槍!!」
「くっ」
グレイさんはそう言って魔法を放つ。ナツさんはそれをジャンプしてよける。その破片が俺たちの方にも飛んでくる
「水竜の盾!!」
俺はジュビアさんの使っている魔法の要領で水の盾を敷いて破片を防ぐ。
別にケガするほど大きな破片ではないけど万が一に備えてのことだ。
「ナツさん!グレイさん!」
「どういうことよ!?これ」
「なんでこんなことに!?」
ウェンディたちは状況を理解できていないようだ。まぁ俺もいまいち理解できてないけど・・・
「グレイ!なんでナツを攻撃するんだよ!?」
「ハハハハハハッ!ハイハイハイハイ、驚いているようね。でも、ボケぇっとしている時間はないわよ?グレイ・フルバスター!!仕事を片付けなさい!!」
「わかってるよ」
グレイさんは再び俺たちに魔法を放つための構えに入る
「グレイてめぇ・・・どういうことだよ一体!!」
「どうもこうもねぇよ。てめぇは・・・くたばれってことだ!!」
グレイさんは魔法を放つ。しかしそれもナツさんは見事によける。
「やめてグレイさん!!」
「ひょっとしてあいつ・・・偽物なんじゃないの?」
シャルルはグレイさんが本物か疑っているようだ・・・だけど・・・
「いや・・・あの匂いは確実にグレイさんだよ」
俺はそれを否定する。俺の鼻は滅竜魔導士だけあってかなりいい。正直間違えることはないと思う。
するとグレイさんは服を脱ぎ捨て上半身裸になる
「そろそろ本気でいくぜ!!ナツ」
「あ!!本当に本物だったみたいだね」
「「「そこ・・・?」」」
ハッピーも本物だとわかったようだな。ウェンディたちはハッピーの見分け方に少々不満があるようだが・・・
「この野郎・・・本気でやる気か」
「いくぜナツ!アイスメイク、戦斧!!」
「火竜の咆哮!!」
二人の魔法がぶつかり合う。二人の魔力は均衡しているのかぶつかり合っていた魔法は爆発する
「きゃあああ」
「あああああ」
「うわあああ」
「ひゃあああ」
「くっ」
その爆発によって俺たちに風が来る。そして煙の中からグレイさんがナツさんに向かっていき攻撃する。
「ぐあっ!」
「ナツさん!」
「ハイハイハイハイ、その調子よ」
それをメタモちゃんも片手に観戦しているダフネ。その間にもグレイさんがナツさんを攻撃する
「もしかして・・・魔法か何かで操ってるんじゃないの~?」
セシリーがグレイさんを見ながらそう言う。なるほど。それは確かにあるかもしれない
「ハイハイハイハイ。魔法で操ってる訳じゃないわ。これは彼が自由意思でしていることよ」
しかしその考えもダフネによって否定される。本当にグレイさんどうしちゃったんですか?
「言われるまでもねぇ。このムカつく殴り方は本物のグレイだ」
「ほう。それを確かめるためにあえて殴らせたってのか?」
口の周りを拭いながら言うナツさんとそれを見ながら言うグレイさん。てか二人ともどんだけケンカしてるんですか!?殴り方で相手が本物かわかるって!!
「うおおお」
「ぐおっ」
すると今度はナツさんが頭突きをして反撃する。
「火竜の鉤爪!!」
「ぐあああ」
今度はナツさんの蹴りが入り飛ばされたグレイさんは壁を突き破ってしまう。
「待てこらー!!」
それを追いかけていくナツさん。
「ナツー!!」
「相変わらずめちゃくちゃね」
「すごいすごい~!!」
俺たちも空いた穴から二人を追うと二人は廊下で向かい合っていた。
「もういいだろ?いい加減説明しろっての。何考えてやがんだグレイ」
「・・・音無の街・・・」
ナツさんの問いにグレイさんは小さな声で答える。音無の街?
「ああ!?音無の街?なんのことだ」
「わからねぇだろうな。それならそれでいい。そのままくたばりやがれ!!」
グレイさんは氷の槍でナツさんを攻撃する。ナツさんはそれをよけながら炎を出すがグレイさんもそれをよける。
「すごい!!どっちの力も互角だ!!」
「関心してる場合じゃないでしょ!」
「あい・・・」
シャルルに怒られしょげるハッピー・・・どんまい・・・
「一体どういうことですか・・・」
「なんでグレイくんがこんなことを・・・」
「・・・」
ウェンディとセシリーがそう言う。グレイさんがこんなことをやるのには何か理由があるはず・・・だってニルヴァーナの時あんなに仲間思いだったグレイさんがこんなことをするはずがない!!
「グレイ・フルバスターは自分から協力を申し出て来たのよ」
「自分から!?」
「私がマグノリアに来たのは10日ほど前。私がナツ・ドラグニルの素性について調べているとそこに居合わせたグレイ・フルバスターがその話に興味を持ち、協力を申し出てくれたってわけ。今では私のパートナーよ」
ダフネがメタモちゃんを食べながら言う。自分から?
「それは完全な裏切りね!!」
「ひどいよグレイくん!!」
「そんな・・・信じられない・・・」
「てことは・・・グレイとダフネってやっぱむぎゅ!!」
とりあえず、ハッピーが何を言うかはおおよそわかったから顔を鷲掴みにして黙らせる。でも・・・やっぱり、何かおかしいなぁ・・・グレイさんがこんなことをするなんて・・・
「音無の街って、一体なんなんですか?」
「ナツさんを調べてたって、一体なんなんですか?」
俺とウェンディはダフネに聞く。グレイさんがこんなことをしたのは多分さっき言ってた音無の街というのが関わってるはずだ・・・そこから答えを考えよう
「ハ~イハイ!質問は後にしてとりあえずあなたたちも食べない?」
「質問に答えろよ!!」
どこからともなくダフネはメタモちゃんを取り出す。この人どんだけメタモちゃん持ってんだよ・・・
「バカ言わないでちょうだい!!そんな場合じゃ――――」
「せっかくだからもう一本」
「ハッピーずる~い!僕も僕も!」
ハッピーとセシリーはメタモちゃんをもらってそれを口に含む。
「食べてるんじゃないわよ!!」
「お前らなぁ・・・」
シャルルに続いて俺も注意しようとするとなぜだか二人の顔が赤い。どうした?
「「辛ーーーい!!!!!」」
二人は廊下でそう言って炎を吐き出す。セシリーなんか泣きながら炎吐いてるぞ!?あいつ辛いの苦手だからな・・・
「それはスパイシー系ね。はい、あなたたちもお一ついかが?」
「いらんわーー!!」
ダフネは俺たちにもメタモちゃんを差し出す。あんな辛そうなの見せられたあとに食えるわけねぇだろ!!なんなんだよこの人!!
「へへっ。燃えてきたぞ?そっちがその気なら俺も本気だぁ!」
一方ナツさんたちの方はまだ戦いが続いている
「お前を叩きのめして訳を聞かせてもらうぞ!!」
ナツさんは炎を手に纏いグレイさんに向かって走る。
「うおおおおお」
(ニヤッ)
グレイさんはそんなナツさんを見てなぜか笑っている。
「アイスメイク、盾!!」
「火竜の鉤爪!!」
「ぐわっ」
グレイさんの氷の盾をものの見事に粉砕するナツさん。グレイさんは飛ばされるが階段の踊り場に着地する
「アイスメイク、床!!」
「うわあああああああ」
踊り場にいるグレイさんを追いかけようと階段を下りようとしたナツさん。グレイさんは階段を凍らせ、そのせいでナツさんは滑っていき、下の階まで落ちて壁に激突する。
「ざまぁねぇな」
「うるせぇよ!!こらぁ!!」
グレイさんがナツさんに氷のハンマーで攻撃するがナツさんがそれを炎で溶かす。
「アイスキャノン!!」
「火竜の翼撃!!」
「「「「「うわあああああああ」」」」」
二人の攻撃がまたもやぶつかり合ったため近くにいる俺たちに爆風が来る。
「すごい・・・」
「どっちの技も決まらない!」
「魔力が均衡してるからね~!」
「このままじゃ両方力尽きて共倒れだわ!!」
二人は下の階の廊下で向き合う。ナツさんがグレイさんに向かって走る。
「火竜の炎肘!!」
「ぐわっ」
グレイさんは攻撃を受けて二人は壁を突き破って部屋に入る。
そのみ床に倒れるかと思ったがなぜか水しぶきが上がる。
「プール?」
「な・・・なんでプールが?」
「ちょっと・・・やばくない!?」
シャルルがそう言うとグレイさんはニヤッと笑いジャンプする。
「アイスメイク、牢獄!!」
グレイさんはプールの水を利用してナツさんを氷の檻に閉じ込める。
「おい!!こら!!出せやこらぁ!!」
「いい様だな。おい」
「動物かよ俺は!!火竜の咆哮!!」
ナツさんが炎で檻を破壊するそのせいで辺りに煙が立ち込める
「これじゃあ見えない~!」
「こっちに来ないでよね!」
俺たちは二人の攻撃でこちらに被害が来ないことを祈りながら煙が晴れるのを待つ。
『うわっ』
ガァン
するとナツさんの声と一緒に何かが壊れる音がする。煙が晴れるとそこにはまたも壁を突き破っているナツさんとそれを見下ろすグレイさんがいる、
「俺はお前といつかケリをつけるつもりだった。今がその時だ!」
「この野郎・・・上等だこら・・・」
「ほざいてろ!」
グレイさんは膝をついているナツさんに氷の槍を作り斬りかかろうとする
「ほざいてんのは・・・てめぇだ!!」
「うおっ」
ナツさんは床の殴って壊し、二人は下の階へと落ちたようだ。
「あうう・・・」
「宿壊しすぎでしょ!」
「どこいったの~!!」
「ナツー!!」
「一階よ!行きましょう」
シャルルの言う通り俺たちは二人を追って一階へと向かう
「ナツー!!どこ~!!」
「こうなったら、私とシリルの咆哮で二人を止めるしか!」
「待って!!こんな狭いところで使ったら全員大怪我するかも知らないわ!!」
「その前に建物が倒壊して生き埋めになっちゃうよ~!!」
「よ~し!!オイラが助けを呼んで「待て!!」ぷぺっ!」
ハッピーが窓に突っ込もうとしたので俺はハッピーの背負っている風呂敷をつかんで止める。
「さっきダフネの部屋で確認しただろ?この宿から外に出る手段はないの!」
「あい・・・」
「あ、ごめんごめん」
ハッピーは苦しかったのか顔を真っ青にしてたので俺は風呂敷を離して謝る。
「ハイハイ、よくわかってるわね。あなたの言う通りこの建物からは逃げ出すことはできないわ」
俺たちの後ろからダフネがやって来る。待てよ?こいつをやっつければいいんじゃないのか?
「そうだ!!こいつをやっつければ――――」
「今度は緑黄色系野菜味」
ダフネが突っ込んできたハッピーの口にメタモちゃんを突っ込む。ハッピーはよほど美味しくなかったのだろう、「まずーい!」と叫んでいる!
「逃げようなんて無駄なこと。ここは私が作った幻の宿だから」
「幻の宿・・・」
「そうよ。私の魔法は人や物を隠してしまう隠匿魔法。そしてこの宿は“ヒドゥンゲージ”によって作られた言わば実体のない建物なの」
「そうなのか・・・」
人や物を隠す魔法で幻の物体を作り出すことができるとは・・・応用ってことなのか?
「あら、お仲間が迎えにきたわよ」
窓の方を見ながらダフネが言う。外を見るとそこにはエルザさんとルーシィさんがいた。
「エルザさん!ルーシィさん!」
「オイラたちはここだよ!!」
「こっち向いて~!!」
ウェンディたちが呼ぶがエルザさんたちは全く気付く様子はない。
というか俺たちのいる建物にすら気づいている様子がない・・・気がつくと二人はどこからか現れたとかげのような奴と戦いを始める
「なんだ?あのとかげは」
そのとかげの繰り出す魔法をよくよく見てみると対戦しているエルザさんやルーシィさんの星霊のバルゴ、ロキと似たような・・・いや、まるでコピーしたような魔法を使っている
「ルーシィさん!エルザさん!」
「無駄だよ。ウェンディ」
「向こうからは、こちらが見えていないようね」
「あのとかげ頭もお前の仲間か!?」
ハッピーはダフネに歩みより問いかける。
「ハイハイ、正解よ。ここにはさまざまなタイプの人工生命体が格納されている」
黒い笑みを浮かべながらダフネは言う。
「人工生命体・・・?」
「ゴーレムの一種ね」
「そして、相手に応じ、自動的に同じ属性のものが出現するシステムになっているのよね。ナツ・ドラグニルに関わるついでに色々な魔導士のデータを集めさせてもらおうと思ってね」
なるほど、だから相手が変わる度に魔方陣にとかげが戻ったり出てきたりしてたのか
「そんなことして何する気だ!!」
「それはこれからのお楽しみ。データを集めれば集めるほど、さらにおもしろいことができるようになるのよ」
「おもしろいことって?」
俺がダフネに聞こうとした時
ドーン
何かの音が聞こえる
「おっと。試合再開のようね」
下を見るとそこにはナツさんとグレイさんが肩で息をしながらにらみあっていた。
「ったく。つくづくタフな野郎だなてめぇは」
「そりゃこっちのセリフだっつうの」
「ナツー!!頑張れー!!」
「ハイハイハイハイ。おしゃべりはそのくらいにして、そろそろ時間よ。グレイ・フルバスター」
ダフネがグレイさんに突然そんなことを言う。時間?魔法のリミットか?
「言われるまでもねぇ!」
「来いやー!!」
グレイさんは腕に氷刃を出し、ナツさんは全身に炎を纏うと、二人は互いに相手に突っ込み音を立ててぶつかり合う。
するとグレイさんの氷刃がナツさんの体当たりによって破壊される
「あ!?」
「グレイー!!」
そのままナツさんの体当たりはグレイさんの腹部へと激突し、二人はその勢いで壁をぶち破る。
「ナツが勝った!!」
「さすがは火竜ね」
「ナツくん強~い!」
ハッピーはナツさんの勝利を喜びシャルルとセシリーはナツさんの強さに感心している
「そうね、さすが」
「?」
しかし仲間であるはずのグレイさんが負けたのになぜかダフネは笑っているように見える。一体どういうことだ?
「へへっ。どうだグレイ。俺の勝ちだぜ!」
ナツさんが横たわっているグレイさんに言う。しかしグレイさんはピクリとも動かない。
「おいおい・・・いつまで寝たフリしてんじゃ、うおっ!!」
ナツさんは倒れているグレイさんに駆け寄ると足元を凍らされてしまい動けなくなる
「足冷てぇ!!」
「だから・・・お前は甘いってんだよ」
「ハイハイハイ。ごくろうさんね」
いつのまにかナツさんの後ろに来ていたダフネが両手で魔方陣を作り出す。
「ヒドゥンダークネス!」
「なんだこりゃあ!!」
するとナツさんの足元に同じような魔方陣が現れ落ちてしまうナツさん。
「ナツー!!
「ナツさん!!」
俺たちはナツさんの落ちた穴の前に来てそれを覗き込む。しかしナツさんの姿は見当たらない
「あんた、最初からここにおびき寄せるつもりだったのね」
「まぁ、作戦勝ちってとこだな」
「くぅ・・・」
シャルルの言葉に得意気に答えるグレイさん。しかしこんな決着の付け方でこの人はいいのか?
「パワーじゃ負けたくせに偉そうにすんな!!」
「実際はナツくんが勝ってたじゃないか~!!」
ハッピーとセシリーがそう言うとグレイさんは二人を掴み穴の上につれていく
「てめぇもここにぶちこむぞ!」
「やめてください!!」
「うおっ」
俺はグレイさんの足を払い、グレイさんが倒れたうちに二人を抱え込んで助ける。
「ありがとうシリル!」
「助かったよ~!」
「てめぇ・・・」
グレイさんがこちらを睨んでくるけど今回は勘弁してほしいな・・・悪いのはあなたなんだから
「ハイハイ。ここでこれ以上のケンカはやめてちょうだい。せっかく火竜を捕らえたのに間違って余計なものが入ったら困るから」
「ちっ」
グレイさんは舌打ちすると俺に対しての殺気がなくなる。よかった。まともにやったら勝てないからな。
「これがあなたの目的だったんですか?」
「そう、これで私の研究が完成する」
「研究だと?」
「ああああああああああ」
ダフネの言葉に疑問を持ったところで突然穴から凄まじい雷の音とナツさんの悲鳴が聞こえてくる。
「ナツ!!」
「ナツさん!!」
ハッピーと俺が名前を呼ぶと突然建物が音を立てて揺れ始める。
「何?」
「これからが本番よ」
ダフネはしてやったりとほくそ笑む。まだ何か起こるのか?
ゴゴコゴゴゴゴコゴゴ
次第に音と揺れが大きくなっていく。これってヤバイんじゃね!?
「ハイハイそれじゃあ私たちはこれで」
「じゃあな」
二人はそう言う魔方陣を使ってどこかに消えてしまう。俺たちは完全に取り残されてしまう。
「これやべぇぞ!!」
「ど・どうしよう!!」
『ハイハイハイハイ!』
俺とウェンディが慌てている外からダフネの声が聞こえてくると突然俺たちの体が窓の方へと引き寄せられる。
「きゃあああ!!」
「ウェンディ!」
「私に任せて!セシリーはシリルを!」
「わかった~!」
「オイラもやるよー!」
飛ばされそうになった俺をセシリーが、ウェンディをシャルルがつかんで体勢を整えながら流れに沿って飛んでいく。
『隠匿魔法解除!魔水晶コア起動準備!各間接アンロック!神経伝達魔水晶、感度良好!火竜以外の不純物!とっとと出てけー!!』
「「「「「うわあああ」」」」」
俺たちはなんとかその場から脱出に成功する。エルザさんたちの姿が見えないってことは・・・反対側に出ちゃったのか?
『ハイハイハイハイ。それでは火竜の魔力、吸収開始!!』
ダフネが裏声的な声で言うと乗っている動物・・・というかドラゴンのようなもののお腹にある赤いランプが光る。
『ドラゴノイド、起動!!』
ダフネが叫ぶとダフネのいた場所が顔のようなもので覆われ、その乗り物はまさしくドラゴンの形になった。
「ナツー!?」
ルーシィさんの声だ!!
「あっちだウェンディ!」
「うん!早くこの事を皆さんに伝えないと!」
俺たちはルーシィさんの声のした方へと走る。
ギャオオオオオオオオオ
するとドラゴノイドは凄まじい雄叫びを出し、俺たちはあまりのうるささに耳を押さえる。
『ハイハイハイ。滑り出しは順調ね。見て見て?これは私が開発した人工ドラゴン。その名もドラゴノイド。火竜の魔力を得て、今ここに堂々とお披露目ってわけ!』
滅竜魔導士がほしいって言うのは、その魔力が欲しかったってことなのか。この人の目的はこれ・・・
「いたわ!ルーシィよ!」
「エルザさんもいるよ~!」
「ルーシィさん!」
「エルザさん!」
シャルルたちが前方にエルザさんたちを発見したのでウェンディど俺は二人の名前を呼ぶ。二人はそれに気づいてこちらを向く。
「お前たち!」
「無事だったのね!」
「大変だよー!!」
俺たちは二人の前へと着いたので足を止める
「何がどうなっている?」
「ナツは?」
「捕まっちゃってるんだよ!!」
「グレイくんがダフネって人と手を組んでナツくんを罠にかけちゃったの~!!」
ハッピーとセシリーが二人に事情を説明すると二人はやはり驚いた顔をする。
「グレイが!?」
「操られてる訳じゃなくて、自分の意思でだって」
「俺たちもよくわからなくて・・・」
そういえば音無の街・・・だったっけ?あれのこと聞くの忘れてたな・・・
するとルーシィさんは何かに気づいてドラゴノイドの頭のところを見上げる
「グレイ!!」
俺たちもそちらを見るとそこには腕を組んでこちらを見下ろしているグレイさんがいた
後書き
いかがだったでしょうか。次回もよろしくお願いします
友は屍を越えて
「グレイ!!」
エルザさんがグレイさんを呼ぶ。グレイさんは近くにあった石の塔へと飛び移る。
「貴様が妖精の尻尾を裏切ったと言うなら、訳があるはずだ」
エルザさんがそう言うとグレイさんはこちらを睨む。
「ねぇよ。そんなもん」
「何・・・?」
「グレイ・・・」
グレイさん・・・音無の街っていうのが理由じゃないのか?なんでエルザさんたちには言わない?
『ハイハイハイ。こうして私の研究の成果が実を結んでドラゴノイドが完成したってわけ。お前たちはそれを祝福すればいいんじゃな~い?』
「この声がダフネという奴か?」
「そうですよ」
エルザさんの質問に俺が答える。
「速やかにナツを返せ!」
「それはできない相談ね。このドラゴノイドがナツ・ドラグニルの魔力を吸い取って動いてるって知ってんでしょ?」
そういえば魔力吸収開始的なことを言ってたな。つまりナツさんがいないと動かないのか。なんだそれ動力源も作れないとかただのダメ科学者なんじゃないの?
『そこのお嬢ちゃん・・・今失礼なこと考えなかった?』
「?考えましたけど?」
「そこは否定しなさいよ!!」
俺がダフネの質問に答えるとシャルルが突っ込みを入れる。いや・・・だって事実だし・・・てか俺なんでお嬢ちゃんで返事しちゃったんだよ~!!
『まぁいいわ。とにかく!魔力を吸い尽くすまでナツ・ドラグニルは返してあげな~い』
「魔導士にとって、魔力とは命にも等しいもの」
それを全て吸い尽くされれば死んでしまう!!
「ナツを返しなさいよ!!」
「ねぇ・・・どうしよう・・・このままじゃナツが・・・」
ハッピーが不安そうな声を出す。一体どうすればナツさんを助けられるんだ?
俺たちはドラゴノイドを見つめる。とりあえず攻撃でも加えてみるか?
「邪魔するつもりならやってみろよ。
もっとも、お前らごときの力じゃあ、チャージ完了までもたねぇだろうがな」
「グレイ・・・」
グレイさんを見るエルザさん。その表情は怒りに満ちている。しかし俺たちの力じゃあもたないのか・・・まずいなぁ・・・
「あ!ドラゴンマニアがこうして人工的にドラゴンを作り出そうとしている危ない魔導士がいるって聞いたことがあるけど・・・」
「それがあなたなの!?」
『その失礼な噂はこう変わるのね。天才科学者ダフネが人工的にドラゴンを作り出すことに成功したってね』
ダフネは得意気にそう言う。しかし他人の魔力を利用している時点でそんな噂は立たないだろうと俺は思ってしまう。
確かに人工的にドラゴンを作ったのはすごいけど、肝心要の動力源を自力で作れないんじゃあはっきり言ってダメだよね・・・
『ふふふっ。完成に至るまでは本当に長い道のりだったわ。その第一歩は人工ドラゴンの卵を孵化させるとこから始まったわ』
ダフネはドラゴノイドについて語り出す。
『私の住んでいた街はデータを取るにはもってこいだったんだけど、私を含む街の住人はみんなヒドゥンが使えちゃうのよね。
で、そんな実験データの取れない街なんて私には用なし。罰として彼らのヒドゥンを解けないようにしてやったわ。
そしてヒドゥンで消えた住民は感知できない。不完全なドラゴノイドにも罰を与えたわ。
そしてその街はやがて音無の街になった』
自分の都合でこの人はそんなひどいことをするのか!?でも・・・だったらグレイさんはなんでこの人に肩入れするんだ?
『その後も研究を続けた私はついに気づいたの。ドラゴノイドを動かすには滅竜魔導士の力がいるってね』
だからドラゴン見たってウソをついたの・・・そう言えば俺たち滅竜魔導士が話を聞きに来るのは明白だからな
『ハイハイハイ。ナツ・ドラグニル。火竜よ!!命を閉じて働くがいいわ!!この私と私の野望のために、燃え尽きろー!!』
ダフネが叫ぶとドラゴノイドはその場で一回足踏みをする。
「ぐっ」
「きゃああああああ」
「何すんのよ!」
「危ないでしょ~!?」
「大きい上に、」
「ものすごい迷惑!!」
「あい!」
俺たちはその砂煙を浴びてしまうが別にダメージ的なものはない
「貴様!こんなものを作り上げて、一体何をしようとしているのだ!」
『ハイハイハイ。私の野望。それは究極のドラゴノイドを完成させることよ。
これもまだ試作品に過ぎないわ。まずは現段階での能力を、テストテスト!!』
「きゃああああああ」
「うわああああああ」
ダフネがエルザさんの質問に答えるとドラゴノイドはその場で何度も足踏みをする。
俺たちはそれに寄ってバランスを崩し倒れる。
『ハイハイハイ、脚部の動きがぎこちないわね。ハイハイハイ!徒歩での移動は無理っと!』
「迷惑!ものすごく迷惑な奴!!」
ルーシィさんがドラゴノイドを見ながら言う。はっきり言って同感です!
「オイラ知ってるよ。こういうのマッドサイエンティストって言うんだ!」
「なんとかして止めねば、しかし」
「中にナツさんがいたら、迂闊に手出しできません!」
「そう?別にいいんじゃない?」
「ナツくん丈夫だしね~」
「お前らなぁ・・・」
ドラゴノイドを止めようにもナツさんが中にいたら攻撃はできない・・・シャルルとセシリーの言う通りナツさんは丈夫だけど、それでも仲間が中にいるのに攻撃なんかできない!!
「グレイ・・・これがお前の望んだことか?」
エルザさんは岩の上に立っているグレイさんを見上げる。
ドガガガガ
すると後ろから何かの音が聞こえてくるので俺たちはそちらを見る。そこには魔導四輪がこちらに猛スピードで走ってきている
「グレイてめぇ!!」
「とんでもねぇことしてくれたな!!」
「漢として、お前をギルドに連れ戻す!」
魔導四輪を運転しているマカオさんとそれに乗っているワカバさん。そして上に立っているエルフマンさんが言う。エルフマンさんは魔導四輪からグレイさんの方へと飛ぶ。
「ぐおっ」
エルフマンさんはグレイさんの懐へと強烈なパンチを入れる。グレイさんはそのまま崩れ落ちそうになるがそれをエルフマンさんが抱える。
「悪く思うなよ。マスターの命令だからな」
「マスターの!?」
「あぁ、どっからかダフネの情報をつかんできたんだ」
「あのデカブツの処分についてはグレイの話を聞いてから決定するんだと」
マカオさんとワカバさんがそう言う。エルフマンさんはグレイさんを抱えて岩から降りる。
「エルザ!!こいつ・・・まさか!」
ルーシィさんがドラゴノイドを見ながら何かに気付く。俺たちもドラゴノイドを見るとドラゴノイドは翼を広げ空に飛び立とうとしていた。
「飛んだー!!」
「飛ぶなんてずるいよ~!!」
「あんたが言わない!」
ハッピーとセシリーの発言にルーシィさんが突っ込む。ドラゴノイドはそのままゆっくりと空を飛んでいく。けど・・・その飛んでいく方向は
「大変!!あの方角は・・・」
「マグノリアの方角ですよ!!」
ウェンディと俺はドラゴノイドの見ながら言う。まさかマグノリアに何かするつもりか!?
「おのれ・・・」
『このドラゴノイドはもはや何にも止めることはできないわ』
ドラゴノイドはそのままマグノリアへと向かっていく。しかしそこまでの速度は出ていないようだ
「ルーシィたちは、ギルドに戻って皆に出動を要請してくれ。皆でマグノリアをの街を守るんだ」
エルザさんはドラゴノイドを見送ったまま俺たちに言う。
「でも!そしたら」
「あのドラゴノイドは私が止める」
ルーシィさんが何か言おうとしたがエルザさんは剣を換装しながらそう言う。
「わかった。ハッピー!」
「あいさー!!」
ハッピーはルーシィさんを掴み空に飛び立つ。
「俺たちも行こう!」
「うん!!」
「任せて!」
「早くギルドに行こう~!」
俺をセシリーが持ち、ウェンディをシャルルが持ち俺たちもギルドに向かって飛んでいく。しかし・・・
『ハイハイハイ。行かせないわ。リザードマン!!』
ダフネがそう言うと俺たちの前に一体翼のようなものが生えたとかげが現れる。あれはエルザさんの黒羽の鎧か?でも一体だけだし俺でなんとかできるか?
「こいつは俺がやる。ウェンディたちはギルドに急いでくれ」
「わかった!!」
「気を付けてね」
俺はとかげの頭に鉄拳を入れ、その隙にウェンディたちは飛び去っていく。するととかげは一度魔方陣に消えると次に現れたのは俺くらいの大きさのとかげとそれを持っている翼の生えた小さなとかげ。なるほど・・・俺たちと同じ属性ってことか・・・でも・・・
「いやぁ・・・一回俺の属性ってのを相手にしてみたかったんだよなぁ」
「え?どういうこと?」
俺の発言にセシリーが疑問を持つ。まぁ普通に考えておかしいだろう。けど!
「見てればわかるよ!!水竜の咆哮!!」
俺がブレスを出すと相手も同じように水を口から出してくる。互いの攻撃はぶつかり合うが力が均衡しているのかすさまじい爆音と爆風を残し消滅する。
「うおおおお」
「ひゃあああ」
俺とセシリーはその風に少し押される。でも相手も押されてるし本当に俺と同レベルぐらいなんだな。
「互いの力が同じなら問題ないでしょ?水竜の鉄拳!!」
今度は俺ととかげの拳がぶつかり合うがなぜか俺の方が押し負けてしまう。
「「うわあああ」」
俺とセシリーは地面へと落ちていく。さっきよりもとかげの力が上がったのか?そんなのありなのかよ!!
俺とセシリーは地面に着地するととかげも地面に降りてくる。あれ?これって・・・
「セシリー・・・翼消してみて」
「え?うん。わかった~」
セシリーが翼をしまうと小さなとかげも翼をしまう。なんだ・・・単に俺たちのものまねをしているだけなのか。
「まぁ・・・だからと言って対処法があるわけではないんだけど・・・」
さっきこいつは俺よりも威力のある鉄拳を繰り出した。となると俺の発言に能力よりも上を行っている可能性がある・・・純粋な力でぶつかり合ったら俺が負けるなぁ・・・
「だけど・・・作戦考える頭とか俺にはないし!!正面から行かせてもらうぜ!!水竜の翼撃!!」
俺ととかげの翼撃がぶつかる。しかしまたも相手の魔法が打ち勝ってしまう。俺はそれをよける。
「一回やれるかやってみよう。水竜の咆哮!!」
相手も咆哮をしてまた相手の咆哮が俺の咆哮に打ち勝ち、それが俺をめがけて飛んでくる。しかし俺はその水を吸い込む。
「な・・・なるほど~!!同じ属性同士ならシリルはいくらでも飲めるからね!!」
「そういうこと!飲んだら力が湧いてきた!!水竜の鉤爪!!」
さっきよりも威力のある俺の魔法。とかげも同じように繰り出すがそれが今の俺の力に勝るはずがない!!
とかげは俺の蹴りで体が裂かれ消えてなくなる。
「よし!!」
「やったねシリル~!!」
あのとかげの力が上げることができるなら俺がそれよりも力を上げて先に勝負を決めればいい!!ようは勝てばいいんだから手段なんてどうでもいいんだよ!!
「セシリー!!俺たちもギルドに向かうぞ!!」
「おっ「うあああああ」この声!!エルフマンくんじゃない!?」
「あれ?グレイさんをギルドに連れていったんじゃ・・・」
俺たちは声のした方へと向かうとそこには傷だらけのエルフマンさんとマカオさん、ワカバさん、グレイさんがいた。とかげの一人がエルフマンさんの獣王の魂化してるってことは・・・エルフマンさんが押し負けたのか!?
「水竜の咆哮!!」
俺が獣王の魂化してるとかげにブレスをぶつける。ビーストソウル化したとかげは消滅したが他に2匹のとかげがいる。
「シリル・・・お前・・・ギルドに戻ったんじゃ・・・」
「俺たちもとかげに邪魔されたから相手してたんです。ウェンディたちは先にギルドに戻りました」
俺はエルフマンさんに駆け寄りながら説明する。しかし・・・見た感じとかげはマカオさんとワカバさんか?炎と煙の魔法なら俺でなんとかできる!!・・・かも
「水竜の鉄拳!!」
俺がリーゼントのとかげに鉄拳を入れるとそのとかげは消える。なんだ、楽勝じゃん!
「シリル!!後ろた!!」
「え?ぐあっ」
エルフマンさんの言葉で後ろを振り返るとそこにはさっき消えたはずのリーゼントのとかげがいて俺を煙の拳で攻撃してくる。ワカバさんのスモークフェイクだっけ?このとかげなんでもできるのかよ!!
続けざまにマカオさん似のとかげが炎を放とうとしてくる。
「ビーストアーム!!鉄牛!!」
しかしそれをエルフマンさんが防いでくれる。
「すみません。エルフマンさん」
「礼はいらねぇ!!漢ならこいつらをとっとと倒してグレイを連れてギルドに戻るぞ!!」
「はい!!水竜の鉄拳!!」
俺がマカオさん似のとかげを攻撃するがそれを炎によって阻まれる。
「隙あり!!ビーストアーム!!黒牛!!」
しかしその隙にエルフマンさんがとかげに拳を叩き込みとかげは消滅する。あと一匹!!
「水竜の翼撃!!」
ワカバさんとかげはまたスモークフェイクでかわす。芸がないよ!!芸が!!
でも・・・煙なら対策はある・・・煙といえば、風でしょ!!
「モード水天竜!!」
俺が水天竜モードになると俺の周りに風が出てくる。これなら煙を飛ばせるでしょ?
狙い通り煙は風に流されていき本物らしきとかげがどれかはっきりわかる。
「これならいけるぜ!!獣王の魂!!」
全身テイクオーバーにより獣化したエルフマンさんがワカバさんとかげを殴り、それによってとかげは消滅する。
「やりましたね!!」
「あぁ・・・じゃあ・・・グレイを・・・」
バタンッ
すると力尽きてしまったのかエルフマンさんが倒れてしまう。て・・・え!?
「ウソ!!エルフマンさん!?」
「大丈夫だ・・・ちょっとふらっときただけだ」
ふらふらと立ち上がりながらエルフマンさんが言う。ワカバさんとマカオさんたちも立ち上がるけど・・・すごいふらふらしてるし・・・ヤバイな・・・
「そんなこと言ってられないか・・・セシリー・・・手分けして・・・」
俺がセシリーの方を向くとマカオさんの上に乗っかっていたグレイさんが立ち上がってエルフマンさんに肩を貸す。
「グレイさん?」
「手伝ってやるよ・・・ったく、ギルドに連れていこうとしてた連中が、連れていかれる側に連れていかれるってどういうことだよ」
グレイさんはそう言いながら一歩一歩歩いていく。俺はマカオさんに肩を貸し、セシリーはワカバさんを持ち飛ぶ。俺はグレイさんの隣に付いて歩いたが、なんでこんなことをしたのか怖くて聞くことが出来なかった・・・
―――――――――妖精の尻尾にて
ようやく俺たちはギルドの前へとたどり着き、ギルドの前にいた皆さんがこちらに駆け寄ってくる。その中には先にいったウェンディとルーシィさんたちもいる。
「シリル!!」
「おい!大丈夫か!?」
「俺は大丈夫だけど・・・」
俺はそう答えてマカオさんたちの方へ視線を移す。三人ともかなり傷が深いし・・・
「とりあえずこっちに来て!」
「レビィはミラを呼んできて!」
「わかった!」
カナさんに言われレビィさんがギルドへと走っていく。他の皆さんに手伝ってもらいギルドの前までようやくたどり着く
「マカオとワカバを中に!!早く手当てを!!」
「エルフマン!!」
ギルドからミラさんが大慌てでエルフマンさんに駆け寄る。
「シリル!!ケガの治療をするよ!!」
「いや・・・俺はいいからエルフマンさんたちを・・・」
ウェンディが俺のケガを治そうと来たがエルフマンさんたちを先にやるように言うとエルフマンさんが力尽きて倒れる。
「エルフマン!!」
「ウェンディ。エルフマンさんを・・・」
「うん!!任せて!!」
ウェンディはエルフマンさんに駆け寄り治療を始める。それにしても・・・あのとかげ・・・強かったな・・・
「答えないなら」
「やめてください!!」
俺たちの後ろではグレイさんをカナさんが肩をつかんで激しく揺すっていたが、ジュビアさんがそれをやめさせる。ジュビアさんはそのままグレイさんをかばうように前に立つ。
「グレイ様が妖精の尻尾を裏切るはずがありません!!ジュビアは信じてます!例え世界中を敵にまわしても、ジュビアは」
「ジュビア・・・いい」
グレイさんはジュビアさんの肩に手を置き話を止める。そして座っていたグレイさんはその場に立ち上がる。
「じーさんのとこに連れてくんだろ?ぐずぐずしてる暇はねーはずだ」
「あぁ。ついてこいよ」
「変な気を起こさないよう、見張ってるからね」
グレイさんはアルザックさんとピスカさんに連れられマスターの元へと向かう。
ジュビアさんはそれを心配そうに眺めていた。
「うぅ・・・」
「エルフマン!!」
「もう大丈夫です。はっ・・・」
「ウェンディ!!」
「大丈夫か!?」
こちらではエルフマンさんの治療が終わったのだが、ウェンディが疲れで倒れそうになってしまうのを俺とルーシィさんで支える。
「大丈夫です。早くマカオさんとワカバさんも治療しないと」
「やめなさい!!これ以上天空魔法を使ったら、あなたの命も危なくなるわ!!」
「私のことはいいの」
「よくないわよ!!」
「私は役に立ちたい!!そしてちゃんと妖精の尻尾の仲間になりたい!!」
「・・・全く、頑固なんだから」
これ以上の治療をやめるように言うシャルルにウェンディが真剣な表情で答えると、シャルルはそれに負けて納得するとウェンディは笑顔になる。
本当・・・頼もしくなったな・・・ウェンディ
ルーシィさんは立ち上がると皆さんの方を向く。
「みんなお願い!!力を合わせて、ナツを助けて!!」
「あぁ。俺たちみんな、ナツには世話になったからな」
「そうそう。今度は俺たちがナツを助ける番だ」
「ナツ・・・私たちと一緒に戦ってくれたよね」
ルーシィさんの言葉にシャドーギアの皆さんがそう言う。
「俺も、ナツに勇気をもらったよ!みんなだってそうだろ?今度は俺たちがナツを助ける番だよ!」
ロメオくんがそう言うと皆さんうなずく。
「よーし!!みんなの力でナツを助け出そー!!」
「「「「「「「「「「あいさー!!!」」」」」」」」」」
ハッピーの掛け声で俺たち全員手を突き上げて返事する。さぁ・・・ナツさんを助けるぞ!!
「待つんじゃ!!」
皆さん一致団結したところでギルドの上の階から声が聞こえたので俺たちはそちらを向く。そこには腕を組み、仁王立ちしているマスターがいた。
「マスター!」
ルーシィさんが言う。マスターは俺たちを見ながら話始める。
「妖精の尻尾はマグノリアを共に生きるギルドじゃ。今は街の崩壊を食い止めるのが先決!!」
マスターは無情にもそう言う。つまり・・・
「あれを攻撃するんですか!?」
「中にはナツがいるんだよ!?」
「そんなことしたらケガしちゃうよ~!!」
ルーシィさんとハッピーとセシリーがマスターに向かって言う。しかしマスターはそんなことお構いなしに話を続ける。
「妖精の尻尾のマスターとして全員に命ずる。手段は問わない!ドラゴノイドを食い止めろ!!な~に、あいつなら心配いらない。頑丈な体しとるからのぅ」
マスターは俺たち全員を見ながらそう言う。マスターのことだから何か算段があるのだろう。
俺たちは全員がその言葉に納得する。するとほどなくしてドラゴノイドがマグノリアの上空に降りてくる。
「来たか・・・」
ドラゴノイドはマグノリアに降り立つ。
『ふはははははは!!ペチャンコにしてあげるわ!!エルザ・スカーレット!!』
ドラゴノイドが片足をあげ、何かを踏み潰そうとしている。よく見るとそこにいるのは・・・エルザさん!?
「ブラストショット!!」
「スティンガーシュート!!」
アルザックさんとピスカさんの攻撃が当たりドラゴノイドの動きが遅れる。
「マジックカード“爆炎”!!」
「ウォータースライサー!!」
「サンドスピアー!!」
「水竜の咆哮!!」
俺たちもその隙に魔法をドラゴノイドに打ち込む。
「エルザさん連れてきたよ~!!」
セシリーがエルザさんを連れてこちらに戻ってくる。エルザさんは俺たちの前に来る。
「これはどういうことだ?」
「マスターの命令でドラゴノイドの止めろって!」
ルーシィさんがエルザさんに言う。エルザさんは驚いた顔をする。
「ドラゴノイドの破壊が最優先・・・それがマスターの決定だと言うのか?ナツのことは?」
「頑丈だから大丈夫だって」
「そうか・・・」
エルザさんはそれを聞くと納得する。ナツさんよっぽど皆さんから多少のことじゃあ死なないと思われてるんだな。まぁ確かに死なないだろうけど・・・
「ナツ!!マスターの命に従い、我々は全力でドラゴノイドを止める!!その前に、お前の意思を確かめたい。声を聞かせろ!」
『へへっ・・・あぁ・・・聞かせてやんよぉ・・・』
ドラゴノイドからナツさんの声が聞こえる。
『いいか、耳の穴かっぽじってよーく聞きやがれ。』
そう言ったナツさんは目一杯の声で叫んだ。
『こいつを・・・俺ごとぶっ壊せ!!』
後書き
いかがだったでしょうか。シリルがリザードマンを割りと簡単に倒せたのは私的に滅竜魔導士のデータをダフネは完全に集められてなく、予想よりの上を行ってしまったという形でこんな感じにしました。
次でドラゴノイド編が終わる予定です。次もよろしくお願いします
フェアリーテイルの魔導士
『こいつを、俺ごとぶっ壊せ!!』
「そんなことしたら、ナツはどうなっちゃうんだよ!!」
ナツさんの言葉にハッピーは木の棒を構えながら言う。
『四の五の言ってんじゃねぇ!!俺のせいでマグノリアがボロボロになったら、目覚めが悪ぃだろうが!!』
その間も俺たちはドラゴノイドに攻撃を加えている・・・しかし
「びくともしないな・・・」
「このままじゃ・・・」
「マグノリアの街が!」
「どうしたらいいの?エルザ!・・・ねぇエルザ!!」
ルーシィさんがエルザさんに問うがエルザさんはただドラゴノイドを眺めている
『ああ~!!なんというパワー!!美しきパワー!!あの時と同じだわ!!』
「あの時・・・?」
『えぇそうよ!!私は小さいときに見たの・・・あれは・・・なんという恐ろしさ・・・なんという猛々しさ・・・あんな美しいものを見たことはなかった』
ダフネは静かに語り出す。
『だけど、竜は気まぐれよ。次にいつ会えるかわからないなら・・・自分で作るまで!!』
ダフネはそう言って高笑いする。こいつ・・・
『くそー!!ふざけんな!!』
ドラゴノイドからナツさんの声が聞こえる。
『ドラゴンに会いたいのはお前だけじゃねぇぞ!!俺も、ウェンディも、シリルもガジルも!!それをおめぇは!!』
『ドラゴンなんていねぇよ。あれは全滅したんだ。目の錯覚だわ・・・』
ダフネの声が突然悲しげなものへと変わる・・・なんだ?
『ウソつき、ウソつき、ウソつき!誰にも信じてもらえず、呪われ、無視され、ドラゴンの存在をあの力強さを否定され続けた・・・その悔しさ・・・あんたならわかるだろう?』
これはナツさんに言ったのだろう・・・しかし、俺たち滅竜魔導士なら全員わかる・・・この気持ちは・・・だけど!!
『ハ~イハイハイ!そしてようやくここにお披露目できることにあいなったわけ!』
「なんかむちゃくちゃなこと言ってる・・・」
「そんな理由で!?」
「それはねぇだろ・・・」
ハッピーとルーシィさんと俺はダフネの言い分に納得できない。そんなのおかしいじゃん!!
『手始めにこの街ぶっ壊して、大陸中を飛び回ってやるわ!!』
『ギャオオオオオオオ』
ドラゴノイドがすさまじい雄叫びをあげたせいで俺たちは飛ばされそうになる。
するとエルザさんが何かに気づいて後ろを向く。
「グレイ!!」
「ったく・・・俺も読みが甘かったぜ。手短に真相を話す!信じるも信じないもお前らの自由だ!!」
建物の上にいるグレイさんの方を全員が向く。真相?
「わ・・・忘れてた?そんな大事な約束を?」
「全く・・・相変わらずにもほどがある」
あきれるルーシィさんとぷるぷると震えるエルザさん。
グレイさん曰く、小さいときナツさんがドラゴンの鳴き声がする街があるという噂を聞き、イグニールかもしれないとその街に向かったのだが・・・
その街にはドラゴンどころか人すら誰もいなかったらしい。しかし、一人の住民らしき人がナツさんに声だけは届けることができて、その時にダフネを倒すようにお願いしたらしい。
ダフネがその街の住民の使える魔法、隠匿魔法を解除できないようにしたからダフネを倒すことでその隠匿魔法を解除できるという理由でお願いしたのだが・・・ナツさんはすっかりそんなことを忘れて、たまたま影から聞いていたグレイさんがそのことを思い出させるために今回のことをした、ということだった・・・ナツさん・・・今回の原因あなたじゃないですか・・・
「よかった!!ジュビア、グレイ様を信じていました!!」
涙を流しながら喜ぶジュビアさん。よかったですね!!
「こうするより他に方法がなかった。だが・・・今はあのデカブツをなんとかするのが先だ!!」
俺たちはドラゴノイドに視線を戻す。
「なんとかするったって・・・」
「どうするの~?」
「あっ!!」
「ん?」
シャルルとセシリーがドラゴノイドを見てそう言ったときウェンディが下を見て何かを見つける。俺もそちらを向くとそこには人が倒れていた。
「誰か倒れてますよ!!」
「あれはケーキ屋の・・・」
「逃げ遅れたんだ!!」
「カバーしろ!」
「助けるぞ!」
俺たちはケーキ屋のおじさんのところに急ぐ。
『ハイハイハイ。リザードマンバージョン3.1放出!!』
さっきのとかげが大量に街に現れる。こんなのキリがないぞ!
エルザさんがおじさんを抱き抱える
「おい!こんなときに何をしていたのだ?」
「店、踏み潰されちまって・・・なんとかこれだけは・・・」
おじさんがそういって見せるのはイチゴのケーキ・・・これは?
「これを・・・わざわざ・・・?」
「新人さんを迎えてやるんだろ?あんなデカブツに・・・負けるなよ・・・」
新人さん・・・もしかして俺とウェンディのことか?まさか・・・俺たちのために?
「私、治療します」
「ちょっとウェンディ!!あんたもう魔力が!!」
「大丈夫、少し休んだから」
ウェンディはおじさんに手を当てる。俺も手伝うか。それなら負担は減るしな
「俺もやるよウェンディ」
「シリル~!大丈夫なの~?」
「うん」
俺とウェンディがおじさんに魔力を当て治療をする。ウェンディはエルザさんを見る。
「あの・・・私、梅干しが苦手で・・・」
「梅干し?」
「はい。弱点なんです」
ウェンディは突然自分の苦手なものを話始める。ちなみに俺も梅干しは苦手です。
「どんなものにも必ずあるはずです。弱点って。私・・・まだ妖精の尻尾に入ったばっかりで、何もかも始まったばっかりで・・・もっともっとみんなと笑ったり、泣いたり、怒ったりしたいんです。もう一回ナツさんとハイタッチしたいんです」
「ウェンディ・・・」
ウェンディのその時の表情は今はまでになく真剣で・・・力強かった
「だから・・・ナツさんを・・・助けて・・・」
「ウェンディ!!」
ウェンディが倒れそうになるのを俺とエルザさんで支える。魔力を使いすぎたのか・・・
「ウェンディ~!!」
「バカ!!だから言ったのに!!」
セシリーとシャルルもウェンディに駆け寄る。皆さんをこちらを見つめていた。
ミラさんがウェンディの額に手を置く。
「大丈夫。意識を失ってるだけよ。でも・・・魔力の消耗が・・・」
今日だけで相当治癒魔法を使ったからな・・・無理もない・・・
俺たちはドラゴノイドを見つめる。ナツさんを必ず助ける!!ウェンディが目を覚ましたとき喜んでくれるように
「エルザ。じーさんは俺に秘策を」
「だと思っていた。皆まで言うな」
グレイさんがエルザさんにそう言うとエルザさんも何か分かったような顔をする。秘策?
するとエルザさんが天輪の鎧に換装する。
「皆は全力でリザードマンを排除しろ。私はドラゴノイドを倒す!!」
「でもエルザ!」
「ナツはどうするのさ!?」
エルザさんの言葉にルーシィさんとハッピーが言う。
「それがマスターの・・・つまりは妖精の尻尾の意思だ!いいか?この街はなんとしても守る!ギルドと、私たちの魂の誇りをかけて!!」
「エルザ・・・」
「わかってるよ・・・オイラだって妖精の尻尾の魔導士だ・・・でも・・・」
「オスネコ・・・」
「とかげたちが来ましたよ!!」
四方からリザードマンが次々に現れ俺たちに襲いかかってくる。
「ナツ・・・オイラ、仲間なのに・・・オイラが助けなきゃいけないのに・・・」
ドラゴノイドを見つめ、涙を浮かばせているハッピー。
「「ヒーハー!!」」
「これでもくらいな!!」
「水竜の咆哮!!」
「MOー!!」
俺たちはリザードマンを片っ端から凪ぎ払う。
『ウオオオオオオオオオオオオオ!!』
「うるさーい!!」
「きゃああああ」
すると突然ドラゴノイドが叫び出すが・・・その声はどう聞いてもナツさん。
『ちくしょー!!俺を壊せ!!いや、全部ぶっ壊してやんぞぉ!!じゃなくって!!うおおおおおお!!』
ドラゴノイドの様子が明らかにおかしい・・・どうしたんだ?
「やべぇぞありゃ・・・俺には見える。ナツの魂が、あのデカブツに吸収されそうになってるのが」
ビックスローさんが仮面を外してドラゴノイドを見ながら言う。魂を吸収って・・・
『壊せー!!じゃなくて壊してー!!もう意味わかんねー!!!ああああああ!!』
「ナツ!!」
エルザさんがドラゴノイドに近づこうとするのをリザードマンが邪魔をする。
「邪魔をするなー!!」
しかしそのリザードマンたちをエルザさんは一太刀で破壊する。さすがですね。
『ほらぁ、エルザ怒ってんじゃんよ~。』
『知ったことかよ!あいつも潰しちまえっての!!』
『何言ってんだよ~。仲間だろ?』
『知らねぇよ、ぶっ壊せってんだよ!』
『うるせぇっての!!人の頭の上でもめてんじゃねぇ!!』
ドラゴノイドが一人言をいっているのだが・・・すべて声がナツさんなんだけど・・・あれか?自分の中にいる天使と悪魔的な奴がナツさんの頭の上に出てるのか?
それであんな一人言を・・・
「あらあら・・・」
「なんか言ってるっていうより・・・」
「筒抜けですね・・・」
ウェンディを抱えているミラさんとルーシィさんも同じことを思ったらしく少しあきれている
「どうしよう!?今ごろになってニルヴァーナの影響が!?」
「んな訳ないでしょ!?」
「さすがに無理があるよ~!!」
ハッピーに突っ込みを入れるシャルルとセシリー。もうニルヴァーナは破壊されたんだから今ごろ影響出るわけないじゃん・・・
ザバー
すると俺たちの周りから突然水の柱が現れ、その柱もすぐに氷づく
「「なんだこりゃ!?」」
「氷のカーテンだ!!」
今度はその氷のカーテンから氷柱が大量に降ってきてリザードマンたちを攻撃し、次々にリザードマンたちが消えていく。
『ぐわぁ!!冷てー!!』
ちなみにナツさんもこの氷柱の雨にダメージを受けていた。
「この魔力の感じ・・・あたし知ってる!!」
「氷と水の合体魔法!!」
「まさか・・・グレイとジュビア!?」
「二人の力が一つにってことは~?」
「でぇきてぇるぅ」
この魔法はグレイさんとジュビアさんの魔法が合わさったものだったらしい!!合体魔法って確か息のあった者同士じゃないとできないはず・・・やっぱりあのお二人はラブラブだったんですね!!
『ほ~れ見ろ!おいしいとこ持っていかれたじゃねぇか!』
『やるなぁ、グレイ』
『踏み潰しちまえあんな奴!』
『やかましい!!』
ドラゴノイドはまた一人言をいい始めるとその場で地団駄を踏み暴れだす
『なんかムカつく、もやもやすんぞ!!この街をぶっ壊せ!いやダメだって!』
「な・・・ナツさん・・・」
「あれはもういよいよ・・・」
「危ない感じ・・・?」
ナツさんドラゴノイドのあまりの壊れ具合に俺とハッピーとルーシィさんが心配する。すると
「聞こえるか!?ナツ!!」
ナツさんを呼ぶ声がする。あの声はグレイさんか?
『グレイ!!』
「手も足も出ねぇのか!?情けねぇ・・・この口先だけのつり目やろうが!!」
グレイさんはナツさんに向かって叫ぶ。そんな悪口言ったらまずい予感がするんですけど・・・
「デカイ図体に溶け込んで、いつまで1人漫才やってやがる!!」
『なんだとこらぁ!!』
「どうしたんだよ、ひどいよグレイ!!あ!!」
案の定ナツさんは怒ってしまう。ハッピーもグレイさんに怒るが、すぐに何かに気づく。なんだろ?
「てめぇが交わした約束を忘れやがって!それでも妖精の尻尾の魔導士か!!そんなドラゴンもどき、とっととぶち壊せ!!」
グレイさんがそういうとドラゴノイドは汗を流している。するとルーシィさんも何かに気づいたような声を出す。
『ハイハイ。それが狙いだったのグレイ・フルバスター。でももう手遅れって訳、なぜなら火竜くんはもうすでに、魔力と共にその意識もほとんど吸収されてるんだから』
『壊せんならとっくにやってんだよ!!』
『あんなタレ目やろうぶっ潰してやんよ!!』
「オイラナツを見損なったよ!!」
『何ー!?』
グレイさんに続いてハッピーもナツさんを挑発する。一体どうしたんだ!?
「だってそうじゃないか!!今までどんなピンチでもぶち破ってきたじゃないか!!俺ごと壊せなんて聞きたくないよ!!」
「そうよ!!みんなが、妖精の尻尾のみんながあんたを必要としてる!!だから必死で頑張ってるのに、仲間の思いに応えないナツなんてナツじゃないよ!!」
『な・・・ルーシィてめぇ・・・』
『ひっでぇな!』
『踏み潰すぞこら!!』
ルーシィさんもナツさんに言う。ナツさんもかなり怒ってしまっているようだ。
「皆の言う通りだ。手もなく囚われたまま、お前は簡単にあきらめた」
『俺がいつ諦めた!?いや、諦めろ!!じゃねぇっつうの!!』
今度はエルザさんも言う。何かこれに狙いがあるのかな?
「俺ごと壊せと言ったな?それが諦めだと言っている!そしてそれは、弱音以外のなにものでもない!!ならば願い通り、その巨体ごと葬り去ってくれる!!」
エルザさん言い過ぎなような気が・・・
「妙なことになってきたね」
「おいおい・・・ナツの魂がほとんどドラゴノイドと同化してんぞ!!」
カナさんも何か変だと思い、ビックスローさんは慌てたように言う。ほとんど同化ってヤバイじゃないですか!?
『うおおおおおお!!やってみろやこらぁ!!』
ドラゴノイドは口から炎を出す。その威力はかなり凄まじいものだった。
『おおっ!!すんげぇ・・・』
「自らの命を小さく見るものは、妖精の尻尾には必要ない」
『なんだとごらぁ!!』
エルザさんが挑発しナツさんがそちらを向くとエルザさんは換装する。あれは黒羽の鎧・・・かな?
「そんな中途半端なものに、気高き竜は会いたいと思わんぞ!!会って懐に飛び込んだところで、殴り返されるのがおちだ!!」
『ふざけんな・・・』
『『このパワーならエルザに勝てんじゃねぇか!?』』
『!?』
ナツさんドラゴノイドはそういって翼を大きく広げる。
『おっもしれぇ!!かかってこいやエルザ!!今日こそお前に勝ーーつ!!』
「聞こえるぞ。今のは・・・」
「本音にかなり近いゾ!」
「デスネ!!」
「何呑気に構えてんのよ!!」
「シリルまで一緒になって何やってるの!!」
ナツさんドラゴノイドの発言をハッピーがコブラの真似をして俺がエンジェルの真似、そしてルーシィさんがホットアイの真似をして解説し、それをシャルルとセシリーが突っ込む。
いや、だってハッピーが聞こえるぞ。とかいうからつい・・・
『オラオラ!!ビビったかエルザ!!オラァ!!』
「貴様と言う奴はぁ!!」
ナツさんがエルザさんを挑発するとエルザさんはドラゴノイドのお腹にある赤いものを叩く。
『『『うおおお!!やっぱ怖ぇぇ!!』』』
その中にいると思われるナツさんたちはかなりビビっていたゾ♪
『うおおおおおお!!ふざけんじゃねぇぞこらぁーーー!!』
ナツさんが叫ぶとドラゴノイドが体中から炎を吹き出す。
『ちょっと!魔力の吸収が容量越えすぎてる!!なんで急に!?』
『どいつもこいつも、好き勝手こいてんじゃねぇぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』
ナツさんドラゴノイドがすごい勢いで炎を体中から出し始める。
「「ナツ!!」」
「ナツさん・・・」
「ウェンディ!」
いつのまにか目覚めていたウェンディもそちらを心配そうに見ている。大丈夫なのか?
「ったく・・・いかれてるぜ。せっかく忠告してやったって言うのによぉ。暑苦しい奴が余計に暑苦しい姿になりやがって」
すると後ろから声が聞こえる。そちらを向くと砂煙の中からガジルさんが現れる。
「「ガジル!!」」
「ったく、アホくせぇ!!」
『ガジル!!』
するとガジルさんはおもいっきりジャンプしてドラゴノイドの真上に到達する。
「手間ぁかけてんしゃねぇ!!滅竜奥義!!業魔・鉄螺旋!!」
ガジルさんは凄まじい勢いで回転し、ドラゴノイドの赤い玉に向かって飛んでいく。
『ぎゃおおおおおおおお』
ガジルさんがその赤い玉を破壊するとドラゴノイドは悲鳴にも似た声を出す。
その玉から炎が大量に出ていたが、特に家事などは起きなかったため安心した。
すると中からガジルさんとナツさんの姿が見える。よかった!無事だったんだ
「ルーシィ!!あの馬やろうを呼べ!!ありったけの火を矢に集めて、ここにぶちこめ!!」
ガジルさんが叫ぶ。なるほど!サジタリウスに火を運ばせてナツさんのパワーアップを図るのか!!
「ナイスガジル!!後は任せて!!」
「であるからして、もしもし~」
ルーシィさんはそういってサジタリウスを召喚する
「みんな聞こえた!?炎を使える人は力を貸して!!」
「良しきた!」
「ウィ!」
「ナツに火を届ければいいのね?」
「行くよアル!」
「うん!」
「俺もやれるぜ!」
「食いきれんほどの炎を、その腹に放り込んでやる!!」
火を使える魔導士の皆さんが一斉に準備を始める。皆さんお願いします!!
「たのんだわよ!サジタリウス!」
「もしもし!!」
『ちょ!!タンマタンマ!!これ以上魔力は吸収できないって~!?』
ダフネが慌てた声を出しているけどもう遅い!!
「今よ!!放って!!」
「乾坤一擲!もしも~し!!」
「立体文字!!ヒートスペル!!」
「換装!ブラストシュート!!」
「ガンズマジック!ブラストショット!!」
「火炎!!」
「爆炎!!」
「ナツーー!!仮を返すぜー!!」
「はぁ!!」
皆さんの放った炎は矢へと集まり、強力な炎へと変わる。
「受け取って!!ナツ!!」
その炎はドラゴノイドへと命中して大爆発を起こす。
ナツさんはそれによってできた炎を一気に平らげる。
「ふははは!!食ったら力が湧いてきた!!燃えてきたぞぉ!!」
ナツさんは体中から炎を出し、ドラゴノイドはそれにより苦しんでいるように見える。
「怒り・・・それが奴の最大の力の源」
「マスター」
俺たちの後ろからマスターが来たので俺たちはそちらを向く。
「自らを解放し、困難に立ち向かい、それを打ち破る原動力。それには、ナツを怒らせるのが一番なんじゃよ」
「やっぱり!」
「オイラたちもそう思ってたよ!!」
マスターの説明でようやく理解できた・・・皆さんナツさんの力の引き出し方をわかっていたからあんなことをいっていたのか・・・
ナツさんはその間にもドラゴノイドを攻撃している
「グレイには、ナツを怒らせろと言った。エルザは皆まで言わずとも察したようじゃのぉ。
者共!!よーく見るがよい!!妖精の尻尾の魔導士は、邪を祓うぞぉい!!」
「このドラゴンマニア女が・・・アッタマきてんだよぉ!!」
ナツさんはダフネのいるドラゴノイドの頭を部分をぶち破りダフネに到達する。
「なんでも隠しちまう技、使ってみろよ?ドンドン力が湧いてきてんだよぉ。てめぇの魔法じゃ隠しきれねぇほどになぁ!!」
俺はその瞬間・・・ナツさんの後ろにドラゴンのようなものが見えた気がした。
「イグニールに謝りやがれぇ!!ドラゴンもどきがぁー!!」
ナツさんはドラゴノイドを殴り、ドラゴノイドは爆発した。
「見てくれたかよ。イグニール」
ナツさんはダフネを担いで戻ってくる。
「結局・・・ドラゴノイドの弱点ってのは」
「その動力源のナツそのもの」
「てことだったのね」
「ってグレイ!!てめぇよくもやってくれやがったな!!」
「もともとてめぇのせいだろうが!!」
ナツさんとグレイさんはそういってまたケンカを始めてしまう。本当・・・仲がよろしいですね
「シリル!!こっち来て!!」
「ん?」
ウェンディに手を捕まれ走り出す。そしてついた先にいたのは先のケーキ屋のおじさんとエルザさん。
「ほら!お祝いだ!!」
「「ありがとうございます!!」」
俺とウェンディはケーキ屋さんが守ってくれたケーキをいただいた。
「二人ともケーキが好きと聞いていたからな」
「あ、そうなんですか?」
「嬉しいです!!ありがとうございます!!」
エルザさんに俺とウェンディは頭を下げる。
「さぁ!!ギルドに戻るぞ!!」
「「はい!!」」
「てめぇこのやろう!!」
「やんのかこらぁ!!」
「くらいやがれ!!」
俺はギルドに戻りながら、ケンカしているナツさんとグレイさん、なぜか参加してしまっているガジルさんを見て、またそれを見ているギルドの皆さんを見て・・・妖精の尻尾に来てよかったなと思った!!
またこれからも頑張ろう!!
後書き
いかがだったでしょうか。オチがうまくできなくてもっと頑張らないといけないと感じております。次もアニメオリジナルストーリーです。次回もよろしくお願いします
虹の桜
ハコベ山にて・・・
「開け!時計座の扉、ホロロギウム!!」
ルーシィさんがそういうと振り子時計の形をした星霊、ホロロギウムが現れる。でも特に敵などは出てきていません。
「「あたし、またここに薄着で来ちゃった・・・寒すぎる~!」と申しております」
「寒いですね~」
「これ着る?」
「ごめんシリル。ありがとう」
今俺たちは仕事でハコベ山というところに来ている。今は季節的には春!っで明日は妖精の尻尾名物の花見らしい。
のだが、ハコベ山はなぜかものすごい吹雪になっている。
ルーシィさんはホロロギウムを使って暖をとろうとしてるようだ。ちなみにウェンディはノースリーブのワンピースという、寒そうな格好をしていたので、俺は上に着ているパーカーの一枚をウェンディに渡す。
ちなみに俺はハコベ山が寒いところというのをマカオさんから聞いたのでかなり厚着をしているのでそんなに寒くはない。
「「ウェンディもどう?風邪引いちゃうよ?」と申しております」
「そうですか?じゃあお言葉に甘えて。シャルルとセシリーは?」
「全然平気よ!寒さなんて心構え一つでどうとでもなると思うけど?」
「僕も平気!シリルからマフラーもらったし!!」
シャルルはいつもと対して変わらない服装なのに寒くないのか。タフだな・・・セシリーはかなり震えていたからマフラーを渡したら寒さは感じないようだ。いっぱい防寒具持って来ててよかった。
「空模様も落ち着いてきたな」
「腹へったなぁ。どっかに火でもねぇかな」
「さすがに雪山じゃ無理だと思いますよ」
エルザさんの言う通りさっきまでの吹雪より雪は収まってきている気がする。
ナツさんは炎が一番の大好物なのか。雪の滅竜魔導士とかいたらここは天国だろうな
「「暖か~い」「早く帰りた~い」と申しております」
ホロロギウムさん・・・そんなのいちいち代弁しなくてもいいような・・・
「くそっ!こんだけ積もってると歩きづれぇな」
「それ以前に服を着ろ」
「うおっ!」
グレイさんは相変わらず脱ぎ癖が出ているようだ。こんな雪山で上半身裸なんて自殺行為以外のなにものでもないのに・・・全然寒そうじゃないからまたすごい。
「ねぇナツ。そんな便利な薬草って本当にあるのかな?」
「さぁな。依頼書に書いてあったんだからきっとあんだろ」
そう。今回の俺たちの仕事はこのハコベ山にあるすごい薬草を取りに来たのだ・・・けど
「お茶に煎じて飲んだり、ケーキに練り込んで食べれば魔導士の魔力が一時的にアップする薬草なんてなぁ・・・」
そんな便利なのありなのか?
「オイラは眉唾物だと思うなぁ。ほら、うまい魚には毒があるって言うでしょ?」
「それって河豚のこと~?」
ハッピーがとんちんかんなことわざをいいセシリーもそれに乗ってしまう。
「それを言うならうまい話には裏がある、だ」
「うわぁ!エルザに突っ込まれた!!」
エルザさんに突っ込まれハッピーは驚いている。でもエルザさんが突っ込むのはそんなに珍しいことじゃないよね?
「効果はともあれ、依頼はこの山にある薬草の採取だ。ついでに多めに取れたら、明日のビンゴの景品にしよう。皆喜ぶぞ」
「うおーい!!薬草!!いたら返事しろ!!」
ナツさんが薬草に呼び掛ける。
「するかよバーカ」
「んだとコラァ!!」
「思ったことなんでも口に出しゃいいってもんじゃねぇだろ」
あ、これはケンカが始まるパターンかも・・・
「しかもおめぇのは意味わか「は~い!」シリル!!こんな奴のボケに付き合わなくていいぞ!!」
「だってこのままだと二人ケンカ始めるじゃないですかぁ?」
「「うっ・・・」」
二人は図星をつかれた顔になる。たまにならケンカしてもいいと思うけど、こんなしょっちゅうケンカしてたらこの人たちの魔力だと街とか消しかねないからな。止めれる時は止めておこう。
「「あぁ、早く仕事終わらせて帰りたいな。明日のお花見の準備したいのに」「私もすごく楽しみです!」「すんごいきれいなんだよ!マグノリアの桜ってね!しかも夜になると花びらが虹色になるのぉ!そりゃあもう超きれいで!」「虹色の桜!?うわぁ、想像しただけできれい!!」「でしょでしょ!!」と申しております」
虹色の桜か・・・すごいきれいなんだろうなぁ・・・想像しただけですごそうだもんなぁ。
その後もルーシィさんとウェンディはマグノリアの虹の桜についてやら、お花見についてやらの話をしている。
俺たちはその間に薬草を探したり、バルカンに遭遇したりしたが、ナツさんたちが簡単に倒してくれて全然問題なく進んでいく。
ちなみに俺が魔法を使おうとしたなぜかミゾレみたいな魔法が出てきた。寒すぎて魔法がちょっと凍っちゃったのかな?その分威力は上がってたけど・・・複雑・・・
その後もルーシィさんとウェンディは花見の話で盛り上がっていたが
「時間です。ではごきげんよう」
ホロロギウムは時間が来たため帰ってしまう。
「さむ~~!!」
「ひぃぃぃ!!」
そのため外に強制的に出てきた二人は抱き合いながら顔を真っ青にしている。
「おいおい・・・」
「お前たちもちゃんと探さないか!!」
「だって~!」
しょうがないなぁ・・・
「ウェンディ。こっち来て」
「な・・・何・・・」ガクガク
震えながらこっちに来るウェンディ。俺はかなり大きめの服を間違って持ってきていたので、それを裂いて毛布みたいなしてウェンディを包み込むように抱き締める。
「ほら、これで寒くないでしょ?」
「う・・・うん・・・///」
あれ?ウェンディの顔が赤いけど・・・風邪引いたのかな?
「プレイボーイね」
「それも天然のな」
「多分自覚はないな」
「まぁいいんじゃない?」
「仲良いことは美しきかな~」
「でぇきてぇる」
上からルーシィさん、グレイさん、エルザさん、シャルル、セシリー、ハッピーが俺たちの方を見ながら言う。
あれ?寒いならこうするんでしょ?前に何かの本で読んだ気がする。
「クンクン・・・お!?匂うぞ!!これ絶対ぇ薬草の匂いだ!!」
「相変わらずすごい鼻だね」
ナツさんが何かの匂いに気づく。俺も匂いを嗅いでみる。
「確かにそれっぽい匂いはしますね」
「シリルの鼻もすごいよねぇ」
「鼻だけだけどね」
ウェンディは俺を誉めてくれるがシャルルはなんかバカにしてくる感じに言う。悪かったなぁ!!鼻だけで!!
「ていうかナツくんとシリルはその薬草の匂い嗅いだことあるの?」
「いーや、嗅いだことねぇけど間違いねぇ」
「俺もないけど・・・それっぽい匂いはするよ」
「いくぞハッピー!!」
「あいさー!!」
二人はそういって走り出す。
「あ、ちょ・・・ちょっと!」
「ったく、せっかちやろうめ」
「とにかく、ついていくことにしよう。あいつの鼻は侮れないからな」
「気のせいかしら?何かすごくいやぁな予感がするんだけど・・・」
「シャルルの勘はよく当たるもんね」
「悪い予感は特によく当たるよね~」
「というか、早く追いかけないと見失いますよ?」
俺がそう言うと皆さんもナツさんの後を追う。ちなみにウェンディは毛布みたいにした服を羽織っています。
「あったーー」
「あいーー」
するとナツさんとハッピーの声が聞こえる。本当にあったのか
「はやっ」
「早ぇことはいいことだ」
「デスネ~」
驚くルーシィさんとレーサーみたいなことを言うグレイさん、セシリーもなぜかホットアイの真似してるし・・・なんかこの間も六魔将軍の真似をしたような気がする。
「さすがだな」
「ナツさんすご~い!!」
「本当に薬草の匂いだったのか」
「やっぱり獣だわ」
ナツさんは確かに獣って感じがするな・・・この間の時はドラゴンの幻覚まで見えたし・・・
「お~し。さっさと摘んで帰んぞ!」
「あいさー」
ナツさんたちが薬草を摘もうとすると、上から何かがやってくる。
「ギャオー」
白い色をしたワイバーン・・・確かブリザードバーンだっけ?通称白ワイバーン。
確か草食動物って聞いたけど・・・この山に住んでいたんだ・・・あれ?草食?・・・まさか。
ブリザードバーンはナツさんとハッピーを翼で生み出した風で吹き飛ばす
「うわ!」
「うお!」
ブリザードバーンはそのまま薬草の前に着地する。まさか独り占めする気か!?
「確かこういうのを一石二鳥とか棚ぼた、て言うんだな」
いつの間にか戦闘体勢に入っているグレイさんが言う。棚ぼたって何が?
「白いワイバーンの鱗は、結構高く売れるって知ってっか?」
なるほど!!だから棚ぼたか!!
「おーし!!薬草ついでにこいつの鱗全部剥ぎ取ってやんぞ!!」
「やったー!!ブリザードバーンの鱗いただくぞー!!」
「ここは私たちに任せて、ルーシィたちは下がってろ」
「あっ・・・」
「オイラも戦うよ!」
やる気満々の俺たち三人とエルザさんとハッピーも参加するようだ。
するとエルザさんは換装する。その鎧は水色っぽい色合いで、手には巨大な槍を持っている。
「私たちはあれの注意を引き付ける。その隙を伺って、ルーシィたちは薬草を採取するんだ」
「はい!」
「仕方ないわね」
「任せて~」
「えぇ・・・なんか一番危険なポジションではないかと・・・」
「頼んだ!!」
「はい!やります!喜んで!!」
ルーシィさんがやりたくなさそうにしてたけどエルザさんの一睨みにビビってしまったようだ。ドンマイです、ルーシィさん・・・
「行くぞ!!ナツ!グレイ!シリル!」
「「「おうよ!!(はい!!)」」」
俺たちはブリザードバーンに向かって突っ込む。こいつの鱗で作ったお金で、ウェンディに何か買うぞ!!
「キャオオオオ」
「うわぁぁぁぁ!」
「ひゃぁぁぁぁ!」
「急いで急いで!」
「情けない声も出さないの!」
「バレないようにね~!」
ウェンディとルーシィさんはブリザードバーンに見つからないようにハイハイ歩きで頑張っていた。
というかハッピー!!お前さっき戦うって言ってなかったか!?
「火竜の煌炎!!」
ナツさんが炎の球体を作りブリザードバーンに向かって投げ飛ばす。
しかしブリザードバーンはそれを翼で風を吹かせて跳ね返す。
「え!?」
「ナツさんの炎が!!」
「風圧で跳ね返された!?」
その跳ね返された炎の球体はウェンディたちの方に飛んでいく。ってあぶない!!
「水竜の咆哮!!」
その炎の球体を俺の水で消火する。あぶないあぶない・・・ウェンディたちがケガするところだった。
「ありがとうシリル!!」
「シリルありがとう!!」
「ほら、今のうちに!」
「急いで急いで!」
「また何か飛んで来るかもしれないよ~」
ウェンディたちはまたまたハイハイ歩きを始める。
「アイスメイク、ソーサー!!」
グレイさんもブリザードバーンに攻撃するがそれも風圧で跳ね返され・・・
「うわぁぁ!!」
ルーシィさんの目の前に落ちる。
「これならどうだ!!」
今度はエルザさんが槍から雷を出して攻撃する。しかしそれをブリザードバーンはよけて・・・
「おいおい・・・」
「待てこら!!」
「「ぎゃああああ!!」」
グレイさんとナツさんに命中する。あんなの俺食らったらひとたまりもねぇ・・・俺の属性水だから効果は抜群だからな・・・
「バカもの!ちゃんとよけないか!」
「つーかあれだな・・・」
「先に謝れっつうの・・・」
そんな二人のことなどお構い無しにブリザードバーンはエルザさんを踏み潰そうとする。エルザさんはそれを槍で防ぐ。
でも・・・あれなら俺作戦あるぞ?
「グレイさん!!手を貸してください!!」
「あぁ!?作戦でもあんのか?」
「もちろん!!」
俺はそういって手に水を纏う。
「水竜の洪水!!」
ブリザードバーンに向かって俺の手から出た水が飛んでいく。ブリザードバーンは風で飛ばそうとするけど・・・
「グレイさん!!水を凍らせてください!!」
「わかった!!」
グレイさんが俺の水を先端から凍らせていく。そして俺の水の勢いでその氷ごとブリザードバーンにぶつければ・・・
ドガァン
「ぎぃやぁぉぉぉぉぉ」
ブリザードバーンの風なんて関係なくぶつかるって訳!!
「今です!!ナツさん!エルザさん!」
「おうよ!!」
「わかった!!」
二人はブリザードバーンに向かっていき、
「はぁぁぁぁっ!!」
「火竜の鉄拳!!」
ブリザードバーンに攻撃をぶつける。
二人の一斉攻撃を受けたらさすがにブリザードバーンも・・・
「取ったぁ!!見てみて!!あたしだって妖精の尻尾最強チームの一人なんだから!!」
薬草を取って大喜びのルーシィさん・・・でもそれどころじゃない・・・
ドドドドドドド
「雪崩ーー!!!?」
ドーーーーーーーーン
雪崩が俺たちのいたところを襲う。俺とウェンディはセシリーとシャルルに持ち上げてもらったおかげで難を逃れたけど・・・ナツさんたちはもろに雪崩を受けたようだ
「みんな!!無事か!!」
「お・・・おう・・・」
「そりゃああんだけ暴れりゃこうなるか」
ナツさんたちもブリザードバーンの上に乗っていたために難を逃れたみたいだ。ナツさんは顔色悪いけど・・・
「やっぱり獣ね」
「あ~あ・・・すごいことになったね~」
あきれるシャルルとセシリー。でも俺とウェンディはあることに気づく。
「あれ?」
「ルーシィさんがいないですよ?」
「ルーシィどこ?」
ハッピーがルーシィさんを呼ぶと雪の中から手が出てくる。
「さ・・・さ・・・寒い・・・」
ルーシィさんは雪に埋もれてしまい、ガクガクと震えていた・・・
翌日・・・花見当日
「さぁみんな。どんどん食べてね」
「これは私のだからね!」
「樽ごと持ってきたんかい!!」
「誰もとりゃあしねぇっての」
カナさんがお酒の入った樽を大事そうに抱えて言う。ワカバさんとマカオさんはそれを見て驚きとあきれているようだった。
しかしカナさんはよくあんなに飲めるなぁ・・・
「花見は・・・漢だぁ!!」
「意味わかんないよ」
「レビィ、何食べる?」
「レビィ、何飲む?」
エルフマンさんはいつも通り漢を強調し、レビィさんはそれに突っ込みを入れる。ドロイさんとジェットさんはレビィさんに食べ物やら飲み物やらを勧めている。
一方、俺たちはというと・・・
「風邪ひいたって?」
「ひどいんですか?」
「う~ん・・・」
「鼻はグショグショ、顔は真っ赤でそれはもう・・・」
ルーシィさんが見当たらなかったのでナツさんたちに話を聞いたら、ルーシィさんは風邪をひいて寝込んでいるらしい・・・原因は間違いなく昨日のあれですね・・・
「なぜ風邪をひくんだ?」
「気づいてないのね・・・」
間違いなく原因は俺たちにあるのだが・・・エルザさんは全然心当たりがないようだ・・・
「ルーシィさん・・・あんなに楽しみにしてたのに・・・」
「そうだ!ウェンディとシリルの魔法で治してもらえばいいんだ!」
ハッピーが思い付いたように言う。だけど・・・
「ゴメンハッピー・・・もう治癒魔法はかけてあるんだよ・・・」
「明日には良くなると思うんですけどね」
「明日か~・・・」
残念そうにするハッピー。明日じゃ花見も終わってるからなぁ・・・ルーシィさん本当に可哀想です・・・
しばらくすると・・・
「それではこれより、お花見恒例のビンゴ大会を始めま~す!」
「「「「「「「「「「ビンゴ~!!!」」」」」」」」」」
ついに皆さん楽しみにしていたビンゴ大会か~。一体どんな景品があるのかな?
「にょっほっほっほい。今年も豪華な景品が盛りだくさんじゃ!!皆気合い入れてかかってこ~い!!」
「「「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」」」」」
マスターの言葉で皆さんが盛り上がる。俺とウェンディもその流れに乗って盛り上がる。
「みんな、用意はいい?」
「「「「「「「「「「あいさ~!!」」」」」」」」」」
なぜ返事がハッピーに?
「それでは真ん中に穴を開けてくださ~い」
言われた通りにビンゴカードの真ん中に穴を開ける。よし!!なんかいいの来い!!
「レッツビンゴ!!」
「まずは一発目じゃ!!」
ビンゴマシーンが回転して数字が現れる。
最初に出たのは・・・
「24番!!」
24・・・24・・・ないな・・・
「やった!!いきなり来たよ!!」
「すごい強運・・・」
「レビィ頑張れ!!」
カナさんがいきなりきたのか!すごいですね
その後もどんどん数字が出てくるがほとんど開かない
「続いて5番」
5・・・おっ!あった!
「うおっ!!開いた!!漢だ!!」
「漢は関係ねぇだろ・・・」
「・・・全然来ないなぁ・・・」
エルフマンさんが叫びガジルさんが突っ込みを入れる。ナブさんはあまりに来なくてぼやいているなぁ。
「68番!!」
「ビンゴだぁーー!!!」
エルザさんが一番乗りでビンゴになる。すごい強運だなぁ。
「のりのりだなぁ・・・」
「リーチが3つも!!」
ジュビアさんも何気にかなり当たってるんだなぁ・・・俺はリーチにすら届いてないぞ・・・
「初ビンゴはエルザね!」
「運も修練の賜物だ!で、景品はなんだ?」
ミラさんにめっちゃそわそわしながら聞くエルザさん。なんかいつもと印象変わるなぁ。
「は~い!これ!一時的に魔力をアップさせると言われる薬草で~す!!」
「何ーっ!?」
それって昨日俺たちが取ってきたやつじゃ・・・しかも枯れてるし・・・
「それは私たちが取ってきたもの・・・しかもすでに枯れている・・・」
「急に暖かいところに持ってきたからかのぅ」
「私の・・・ビンゴがぁ・・・」
「あらあら」
膝をついてがっかりしているエルザさん・・・残念ですね・・・
「ビンゴ~!!!」
「マジか!?俺一個も来ねぇ!!」
「おめぇは爪が甘ぇんだよ」
「父ちゃん頑張れ!!」
続いてカナさんがビンゴかぁ・・・俺も一列だけリーチあるんだけどなぁ・・・しかもその一列以外何も空いてない・・・
「絶対当たらない気がする」
「シャルルの予感はよく当たるけどね」
シャルルがそう言うと大体当たるからなぁ。シャルルの六感はなかなかのものだ。
「うぅ・・・景品がそろそろなくなっちゃうよ・・・」
「僕も当たらない気がする~・・・」
ハッピーとセシリーもしょげてるな・・・俺もなんか当たらない気がする・・・
「シリル・・・あんた多分当たると思うわよ」
するとシャルルがそんなことを言ってくる。ウソ!!マジで!?
「それ本当?」
「わかんないけど・・・そんな気がする」
おおっ!!シャルルに言われると自信が出てくるなぁ!!ちょっと楽しみに待ってよぉっと
「115番!!」
「「「ビンゴー!!」」」
すると今度はエルフマンさん、ジュビアさん、レビィさんがビンゴになる。
「「「あれ?」」」
「あらあら・・・」
「三人同時か!?じゃあ一発芸で一番おもしろい奴に景品をやろうかの」
「「「一発芸!?」」」
マスターの一言に驚く三人。でも一発芸なんてなんかお花見っぽいぞ!!どんなのやるか楽しみ!!
「景品はなんと!アカネリゾートの高級ホテル、二泊三日ペアチケット」
「すごい・・・」
「ペアで旅行!?」
まさかの景品にレビィさんは嬉しそうにして、ジェットさんとドロイさんもなぜか喜んでいる。
「アカネリゾートか!!姉ちゃんにプレゼントしてやる!!」
「グレイ様と二人きり・・・二泊三日!?ジュビア、まだ心の準備が・・・」
ミラさん思いのエルフマンさんとグレイさんと行く気満々のジュビアさん。さて誰に当たるのかな?
ビロロォン
なんて思っていると突然ギターの音が・・・
「一発芸・・・それは一度きりギリギリの戦い。つまり、俺の出番ってことさ。相棒」
「「またお前か!!」」
「引っ込め!!てか、リーチもしてねぇだろおめぇは!!」
まさかのガジルさん登場・・・しかし速攻で退場というなんとも言えない展開・・・
結局優勝したのは・・・
「よっしゃー!!漢だぁ!!」
エルフマンさんだった。
「グレイ様との旅行が・・・」
「あ~あ・・・残念だったなぁ・・・」
「「くっそ~!!」」
ジュビアさんとジェットさんとドロイさんはがっかりと肩を落とす。なぜレビィさんよりジェットさんたちの方ががっかりしてるんだ?
「惜しかったな、ジュビア」
グレイさんがジュビアさんを慰める。けど多分そんなことすると・・・
「うわぁ~ん!!グレイ様!!」
ジュビアさんの大号泣。いつもほどじゃないけど・・・グレイさんは青ざめてるけど・・・予測できてなかったのかな?
「さぁ!あと少しじゃぞ!皆心してかかれ!!」
マスターの一言で再開するビンゴ大会。でも今さら心してかかったところで結果は変わらないような・・・」
「89番!!」
89・・・89・・・お!?
「ビンゴだぁーーーーーーーーーー!!!!!!」
「シリル叫びすぎ・・・」
ウェンディに注意される。だって嬉しかったんだもん・・・
「やっぱりシリルに来たわね」
「うぅ・・・僕なんかまだリーチにもなってないのに~・・・」
予想通りって反応のシャルルとがっかりしているセシリー。なんかごめんなセシリー。
「何がもらえるのかな?」
「珍しい水とかならいいなぁ」
魔力のめちゃくちゃ上がる水とか。もうジュラさんを越えるくらいの奴!!
「よかった~。これシリルとウェンディにぴったりだと思って買った奴だったのよ」
「へ?」
ミラさんにそう言われ変な声を出してしまう。俺たちにぴったり?
「景品はこれよ!」
そういって出してきたのはどう見ても指輪箱・・・しかも二つ・・・
一つは水色の宝石のついた指輪・・・もう一つは青と緑の宝石のついた指輪
ミラさんはまず水色の指輪を指差して言う。
「この宝石はアクアマリンって宝石で石言葉は勇敢。シリルにはウェンディを勇敢に守るナイト様になってほしいからね」
な・・・ナイト様!?
続いてミラさんは青と緑の指輪を指差す。
「この宝石はオパールって宝石で石言葉は純粋無垢。ウェンディみたいな子にぴったりだと思って買ったのよ」
ミラさんは笑顔でそういうけど・・・もし俺かウェンディに当たらなかったらどうするつもりだったんだ?
「はい!じゃあウェンディにはシリルから着けてあげてね」
ミラさんはそういって指輪の入った箱を俺に手渡す。
おおっ!なんか緊張するような・・・
俺はそんなことを思いながらウェンディたちのところに戻る。
「何が当たったの?」
「食べ物~?」
ウェンディとセシリーが戻ってきた俺に聞いてくる。というかセシリーってそんなに食い意地の張った奴だったかな?
「指輪だよ・・・」
「へぇ・・・え!?」
当然驚くウェンディ。まぁ景品で指輪とか驚くわなぁ・・・
俺は箱から指輪を取り出す。ちなみに周りはビンゴ大会に夢中でこっちを見ている人はいない。
「二つもらったから一つあげるよ。手、出して」
「えぇ!なんかドキドキするぅ!」
「さりげなく左手を出すあたりあんたも怖いわよ」
左手を出したウェンディにシャルルが突っ込む。俺はウェンディの薬指にオパールのついた指輪をはめる。
指輪はちょうどのサイズだったようでウェンディの手に見事にはまる。まさかミラさんそこまで計算してたのか?恐るべし!!
「ありがとうシリル!!この指輪、大切にするね!!」
「うん!!」
その後ウェンディも俺に指輪をはめてくれた。俺の手にもアクアマリンの指輪はジャストサイズだった。
こうして俺たちは夕方まで花見をワイワイ楽しんだ。
――――――――――翌日・・・
「こりゃあ!!街の大切な桜の木を引っこ抜いたのは誰じゃ!!町長はかんかんじゃぞ!!」
マスターが突然そんなことを叫び出す。でもそんなことする人いるわけ・・・
「「・・・・・・・・・」」
わぉ・・・ナツさんとハッピーが真っ青になってるよぉ・・・間違いなくやったのはあの二人だな。
「やっぱりナツさんはすごいね!!」
「やっぱり獣ね・・・」
「でもいいんじゃないかな~」
ウェンディたちがそう言う。俺もセシリーの言う通り別にいいんじゃないかな?って思うな。
だってルーシィさんあんなに嬉しそうなんだもん。きっとあの二人はこれからもずっとうまくやっていくんだろうなぁ・・・
後書き
いかがだったでしょうか。ビンゴのシリルの上がりの数字にした“89”は私が高校野球をしていたので、野球=89ということでやらせていただきました。
シリルとウェンディの指輪は天狼島編でちょっとした力をシリルに与える予定になっております。
次回はオリジナルストーリーをやらさせていただきます。うまくできるかわかりませんがよろしくお願いします。
魔法コンテスト
前書き
オリジナルストーリーです。7年後の大魔闘演舞の伏線張りになる予定です。
ヒロインのウェンディが全く出てきません。
ある日の仕事・・・
「シリル!!そっち行ったぞ!!」
「はい!!」
ナツさんの声で俺は今回のターゲットが来るのを待つ。
「ブモー!!」
「うわっ!!来た~!!」
セシリーがブドラゴスが現れたことに驚き木の影に隠れる。だったら最初からついてくるなよ・・・
「まぁ、いいや。水竜の鉄拳!!」
「ブモー!!」
俺の攻撃がブドラゴスに命中し、ブドラゴスは怯む。よし!!
「あとはお願いします!!」
「任せて!!開け!獅子宮の扉・・・ロキ!!」
「王子様参上!!」
ルーシィさんがロキさんを召喚する。正式名はレオだけどギルドにいたときはロキって名乗ってたからその名残らしい。
「行くぜロキ!!」
「おっけー!!」
ナツさんとロキさんがブドラゴスに向かってジャンプする。
「レグルス!インパクト!!」
「火竜の鉤爪!!」
「ブモーーッ!!」
二人の攻撃が見事に決まり、ブドラゴスは動かなくなる。あとは適当な木の枝と縄を使って動けなくして・・・よし!!
「本日の依頼終了!!」
「わ~い!!今回は何も壊してないから報酬丸々もらえる~!!家賃が払えるぞ~!!」
「よかったねルーシィ!」
「わ~い!!」
俺とルーシィさん、ハッピーとセシリーがそういってハイタッチする。
今回俺たちのやっている依頼は最近出没するブドラゴスを退治してほしいという依頼。
そのため今回の依頼は終了したってわけだ!!
「いやぁ、なかなか大変だったなぁ」
ナツさんが額の汗を拭いながら言う。確かにブドラゴスは意外に動きが速くて大変だった・・・
「まぁ、いいじゃない!早く依頼主のところに戻りましょ!!」
「あい!!」
「帰ろ帰ろ~」
ナツさんがブドラゴスを縛り付けた木を持って、ルーシィさんはスキップしながら依頼主のところへと向かう。しかしウェンディがいないとなんか寂しいなぁ・・・
今日の仕事は討伐の依頼だったためウェンディはダメとミラさんに言われて俺とナツさん、ルーシィさん、ハッピーとセシリーの五人で来ている。
グレイさんはジュビアさんと、エルザさんは一人でS級クエストに行ってしまったらしい。
今回の報酬は50万J、一人頭20万Jという割りと高額な依頼だ。ルーシィさんもこれで家賃が払えるらしいし、安心だな。
ちなみに俺は家賃8万Jのアパートに住んでいるが、化猫の宿時代に貯めた貯金があるから家賃は困ってない。でも仕事しないとウェンディと遊びに行くお金が作れないからこれからも頑張らないとな・・・
――――――――妖精の尻尾にて
「たっだいま~!!」
「おかえりルーちゃん!!どうだった?」
「うん!!ばっちり!!」
ルーシィさんは帰ってきて早々、レビィさんと仲良くお話している。
俺もウェンディとお話しにいこうかなぁ、なんて思ってウェンディの姿を探していると・・・
「おかえり。シリル」
「ミラさん!ただいまです」
後ろからミラさんに声をかけられる。ミラさんは俺とウェンディのことをいつも気にかけてくれているので本当に助かってます。
「ねぇ、シリル。明日って暇?」
「明日ですか?」
突然の質問に驚く俺。別に予定もないし・・・仕事も決めてないし・・・うん、問題ないな。
「はい!空いてますよ!!」
「本当?よかった!!グレイ!!シリルが大丈夫そうよ!!」
「おおっ?マジか?」
ミラさんが後ろを振り向いてそう言うとグレイさんがこちらに歩いてくる。明日俺に用事があったのはグレイさんなのか。
「いやすまねぇなシリル」
「いえ。ところで一体どうしたんですか?」
「これよ」
ミラさんがそういって一枚の紙を俺に渡してくる。魔法コンテスト?
「なんですか?これ」
「その名の通り、魔法を使ってのコンテストだ」
「毎年各ギルドから2名選出して魔法を披露するの。でも、バトルとかじゃなくて、より魔法を美しく、そして芸術的に魅せることが求められる大会なのよ」
芸術的に魅せる・・・か。確かにグレイさんは造形魔導士だから芸術とかはうまいだろう。でも・・・
「だったらジュビアさんの方が相方としては良くないですか?」
ジュビアさんはグレイさんとドラゴノイドの一件でも見事な合体魔法を見せたし、聞いた話だとファンタジアって言うのでコンビを組んだらしい・・・魅せる魔法なら二人の方が最適だろう。
「本当はそのつもりだったんだけど・・・ジュビアが明日は仕事を入れちゃってたらしくて・・・それで同じ水の魔法を使うシリルにお願いしたってわけ!」
なるほど、そういうことか。
「まぁ、演技は俺とジュビアがファンタジアでやったのをちょっとアレンジしてやるだけだから、安心しろって」
「そういうことなら・・・」
しかし明日いきなりかぁ・・・場所は王都のあるクロッカスで・・・ん?
「優勝賞金100万J!?」
思わず大きい声を出してしまった俺は慌てて口をふさぐ・・・でも100万Jなんて・・・
「あ!もちろん優勝賞金はシリルとグレイで分けてもらっていいから」
笑顔で言うミラさん。俺はそれを聞いてやる気が出てくる。
だって100万 Jってことは、俺とグレイさんで50万Jずつ、これだけあれはウェンディとどこかに旅行とかもいけるんじゃないか?
「ちなみに去年はどこが優勝したんですか?」
どのギルドが有力候補なのか知っておかないとな。
「去年は青い天馬のレンとヒビキのペアが優勝してるわ!」
「ちなみにうちは去年、マカオとワカバが出て惨敗だったらしい」
レンさんとヒビキさんかぁ。ニルヴァーナの時はお世話になったなぁ。
去年はグレイさん出てなかったのか。仕事でも入ったのかな?
しかし、やるからにはもちろん優勝するぞ!!目指せ!!100J!!
大会当日、会場にて・・・
「あの・・・グレイさん・・・」
「どうした?」
今は俺たちは今日行われる魔法コンテストの衣装に着替えているのだが・・・
「なんで俺ドレスなんですか?」
なぜか俺の衣装が青を基調としたロングスカートのドレスになっている。なんでこんなことに?
「本当はジュビアが出るはずだったからお前のその衣装、ジュビアが着る予定の奴なんだ」
「ジュビアさんこの大きさ着れます?」
俺の体にちょうどのサイズだからジュビアさんには小さいような・・・
「昨日ミラちゃんがお前のためにわざわざサイズを小さく直してくれたらしいぞ」
「どうせだったら違う衣装にしてくれればよかったのに・・・」
「そう言うなよ」
「似合ってるよ~」
「いや・・・そういう問題じゃ・・・」
セシリーに誉められるが・・・俺ははぁ~、とため息を漏らす。確かに色合い的には俺の髪の色にも合ってるとは思う。俺とジュビアさんの髪の色が一緒だから当然と言えば当然なんだけど・・・
「グレイ!!」
すると背後から聞き覚えのある声が聞こえるので振り返る。そこにいたのは、ニルヴァーナの時に連合軍に参加していた蛇姫の鱗のリオンさんだった。
「リオンくん!久しぶり~!!」
「まさかおめぇもこの大会に参加するのか?」
「無論だ。造形魔導士として、この大会は参加せざるを得まい。というか、その女・・・まさかシリルか?」
「は・・・はい・・・」
リオンさんが俺を指差して聞いてくる。それは驚くよね、連合軍の時俺は男だ!、って言ってた奴がこんなドレス着てたらね・・・
「本当は違う奴が参加する予定だったんだが、違う仕事が入ったらしくてシリルが代わりに入ったんだ」
「なるほどな。納得だ」
「リオンくん」
「リオン~」
するとリオンさんの後ろから二人の小さな女の子が服を引っ張っている。一人は赤紫色のショートヘアの女の子。 もう一人は腰元まで伸びた金髪とタレ目が特徴の女の子。赤紫色の女の子の方が少し大きいかな?
見た感じ二人とも俺より年下だな。7、8歳くらいか?
「私たちもう観客席に行ってていい?」
「あぁ。いいぞ」
「やった!行こうレオン!!」
「うん!頑張ってね!リオンくん!」
そういって二人は手を繋いで行ってしまう。仲良しだなぁ。
「なんだあれ?ラミアの新入りなのか?」
「いや、俺とシェリーのいとこだ」
「へぇ!従兄弟なんですか」
「あぁ。赤紫色の方がシェリーのいとこで、金髪の方が俺のいとこだ」
金髪の方はリオンさんといとこなのか・・・そのわりに似てないな・・・いや、いとこはあまり似ないのか
「プッ!!おめぇといとこの女の子全然似てねぇな!あっちの子は可愛いのにお前はつり目が印象悪いからな!!」
グレイさんがリオンさんに笑いながら言う。別にいとこなんだから似てなくてもいいじゃないですか・・・
「女?レオンは男だそ?」
「「・・・は?・・・」」
リオンさんの発言に思わず間抜けな声が出た俺とグレイさん。男?あれが?いや、俺も人の子は言えないけどさ。
「あいつは少女願望とやらがあってな・・・小さいうちは別にいいんじゃないか、ということで今はああなっている。将来的には普通に男らしくするつもりではあるが」
リオンさんはそう言うけど・・・小さいうちにそんなことしてたら大人になっても直らないような・・・
「あれ?リオンくん?グレイくんとシリルちゃんも!」
「なんだ。お前らもこの大会参加してたのかよ」
これまた聞き覚えのある声が聞こえる。その声は青い天馬のイヴさんとレンさんだった。ヒビキさんはいないみたいだな。出場者は二人だけだからヒビキさんは置いてきちゃったのかな?
「イヴとレンか。久しぶりだな」
「ヒビキはいねぇのか?」
「この大会の出場者は二人だから。俺とイヴの魔法なら最適だろう、ってなってな」
確かにヒビキさんの魔法古文書は魅せるものには向かないな・・・去年は優勝したみたいだけど。
「連合軍の揃い踏みだな」
「あの時は味方だったが今は敵だからな」
「負けねぇぞ!」
リオンさん、グレイさん、レンさんが妙にやる気だ。ちなみにイヴさんは・・・
「シリルちゃん。また可愛くなった?」
「いや・・・可愛くなりたいわけではないのですが・・・」
「シリルちゃんだって~www」
イヴさんは俺をナンパしてくるし、セシリーはそれを見て爆笑してるし・・・
なんか疲れるなぁ・・・
「それはそうと、そろそろ抽選に行かないと行けないんじゃないか?」
「抽選?」
レンさんの言葉にグレイさんが言う。何の抽選だ?
「演技する順番を決める抽選だよ。演技をする順番も結構重要になってくるよ」
イヴさんが説明してくれる。確かに演技の順番は重要だな。できれば早めにやっちゃってこの服を着替えたい。
「なら行くか。リオンに勝たねぇといけねぇしな」
「貴様に俺が負けるわけないだろう」
グレイさんとリオンさんは互いににらみ合いながら歩いていく。ところでリオンさんの相方って誰だ?
「リオン様!!」
会場の方に向かおうとするとこれまた聞き覚えのある声が聞こえてくる。
そういえばシェリーさんのいとこが来てるんだからシェリーさんも来てるに決まってるか。
「おぉ。シェリー」
「リオン様!どうでしょ・・・」
シェリーさんがリオンさんに衣装の感想を聞こうとすると突然固まってしまう。視線の先は・・・レンさん。
「レン!!」
「お前・・・似合いすぎだろ」
「でぇきてぇるぅ」
シェリーさんとレンさんがいい雰囲気になってしまう。ちなみに今のでぇきてぇるぅ、はセシリーが言いました。
「やれやれ・・・先に行くぞ」
「レンとシェリーさんはゆっくり来なよ」
「お先に」
「失礼します」
「じゃあね~」
俺たちは気を利かせて先に抽選に向かう。しかしあの二人本当に雰囲気いいなぁ。あのまま結婚とかするのかな?
抽選にて・・・
「6番か。天馬は?」
「僕たちは16番だよ」
すでにリオンさんとイヴさんがくじを引き終わってお互いの順番を教えている。
「シリル。お前が引いていいぞ」
「いいんですか?」
「別に何番目にやっても一緒だからな」
グレイさんは余裕綽々な表情で言う。確かにグレイさんは王子様的な衣装だからいいけど、俺はこんなドレスなんか着てるから早く脱ぎたいんですよ!!
「どうぞ」
抽選係のお姉さんから箱を差し出される。俺は箱の中に手を入れてくじを引く。
さて、何番だ?
「何番だ?」
グレイさんたちもそのくじを覗く。しかし書いてあった数字を見て俺はがっかりする。
「24番です・・・」
「大分あとだな」
「何を言っているグレイ。確かこの大会の出場ギルドは24のはずだぞ」
「つまり一番最後ってことだね~」
「よかったね!!シリルちゃん」
まさかの一番最後って・・・つまりこの衣装を最後まで着てなきゃいけないなんて・・・とほほほほ・・・
『さぁ!今年もやって参りました、魔法コンテスト!!』
ようやく魔法コンテストが始まるということで俺たちは会場に来ているのだが・・・
「シリル、何をそんなに落ち込んでるんだよ」
「別に最後だっていいじゃ~ん」
俺の気持ちはどんよりしている。まさか最後に演技するなんて・・・緊張感すごいし、最後までこの衣装でいなきゃいけないし、以外にお客さん多いし・・・なんか帰りたくなってきたな・・・
「大丈夫なのか?そっちは」
「おめぇんとこも大丈夫じゃなさそうだぞ」
「うちもヤバそうだよ・・・」
リオンさんとイヴさんはレンさんとシェリーさんを見て不安そうにしている。二人ともなんか顔赤くして話してるから本番の演技できるのかな?
するとグレイさんが一度ため息をついてから俺の前に来る。
「お前さぁ・・・優勝賞金って何に使うつもりなの?」
唐突な質問・・・賞金はそりゃあ・・・
「ウェンディになんか買ったり一緒に旅行でも行こうかなぁ?って思ってますけど」
「だったら、ウェンディのために優勝しなきゃいけないだろ?ウェンディのためならその格好だって恥ずかしくないと思えるだろ?」
諭すように言うグレイさん。なるほど!ウェンディのためだと思えば、確かにこれぐらいの恥ずかしさは耐えられる!!よし!!
「グレイさん!!俺、ウェンディのために頑張ります!!」
「よし!!そのいきだ!!」
よし!!そうと決まれば最後だって緊張しないぞ!!
「単純だな」
「単純ですわね」
「いいのかあれで」
「かわいいからいいんじゃない?」
「まぁシリルだからね~」
リオンさんたちに何か言われてるけどとりあえず頑張るぞ~!!
『続いて蛇姫の鱗!!氷の魔導士、リオン・バスティア!!&人形劇、シェリー・ブレンディ!!』
「じゃあな、グレイ。俺の演技で勉強でもするがいい」
「余計なお世話だ」
「じゃ・・・じゃあ、私も行きますので///」
「お・・・おう・・・///」
リオンさんは相変わらずグレイさんにケンカを売って、シェリーさんはようやくレンさんと離れて演技に向かう。どんな演技をするのかな?
『それでは、お願いします』
司会の一声で二人が演技を始める。まずはリオンさんが氷の鳥を10羽ほど造り、会場中を一周する。
すると今度はシェリーさんがその鳥たちを操って隊列を作らせたり、8の字に飛ばせたりする。
「なるほど、あれならリオンの魔力の消耗も押さえられるから他の造形に力を入れることができるって訳か」
グレイさんがそう言う。なるほどな、そういう使い方もあるって訳か。
その後も二人の演技は続いていき、ラストは氷のドラゴンが上空で砕けて、氷の粒がキラキラと舞い降りてきて演技が終わる。
会場中から二人に大きな拍手が送られる。
『ありがとうございました!続きまして――――』
二人の演技が終わり、次の人たちの演技が始まる。戻って来た二人は満足そうな顔をしていた。
「どうだグレイ!さすがにこの演技には勝てまい」
「言ってろよ。俺たちの演技の方がすげぇからな」
「そうか。あとで泣くなよ」
「泣くのはそっちだ!」
戻ってきて早々リオンさんとグレイさんは会話を始める。この二人は仲が良いのか悪いのか・・・というかグレイさん、すでに上に何も着てないんだけど!!と思ったらセシリーが持ってました・・・少し安心した。
「ど・・・どうでした?」
「まぁ・・・よかったんじゃねぇか?」
シェリーさんとレンさんは相変わらずだ。
その後も演技が続いていき・・・
『続きまして!!青い天馬!!色黒ツンデレ魔導士、レン・アカツキ!!&雪使いの弟キャラ、イヴ・ティルム!!』
二人が登場すると女性客からすごい歓声が上がる。やっぱりかっこいいから人気があるのかな?
というか・・・
「なんですか今の紹介?」
「それぞれに会った紹介を各ギルドからアナウンスに言ってもらえるらしい。俺とお前のはミラちゃんが考えてくれたらしいぞ」
「へぇ~」
レンさんとイヴさんの紹介はなんか悪意があったけど・・・俺たちの紹介はそんなことになるわけないよな。せいぜいグレイさんが露出魔!!とか言われるくらいだと思う。
グレイさんと話しているといつのまにか二人の演技が始まっていたのでそれを見る。
イヴさんの雪魔法をレンさんの空気魔法で操ったり、イヴさんが雪で様々なものを作るっているようだった。
それにしてもあの二人はコンビネーションがいい。レンさんは去年の優勝経験者らしいし、こりゃあ強敵だな。
などと考えていると二人の演技も終わって二人は盛大な拍手に見送られながらステージ裏に戻ってくる。
「どうだった?シリルちゃん!」
「とってもきれいでしたよ」
「ま・・・まぁまぁでしたわね」
「そっか・・・ありがとよ」
イヴさんは帰ってくるとすぐに俺のとこにくる。あんまりキラキラ攻撃はしないでほしいな。俺男だから・・・
そしてついに・・・
『さぁ!今年の魔法コンテストもいよいよ大詰めです!!』
うわぁ!ついに来てしまった。
『今年のトリを飾りますのは、妖精の尻尾!!氷の造形魔導士、グレイフルバスター!!』
グレイさんの紹介はいたって普通だな。俺はなんだろう?水の滅竜魔導士!!とかかな?
『&!!ギルドの名にふさわしい、水の妖精、シリル・アデナウアー!!』
観客たちがすごい拍手と歓声を上げる。それにしても水の妖精って・・・なんて恥ずかしい紹介なんだ!!
「よし!!行くか」
「ふーっ。はい!!」
俺とグレイさんはステージへと上がる。そして観客席を見ると、人!人!人!めっちゃ人がいっぱいいる!!
『それでは、お願いします!!』
司会の声で俺とグレイさんも演技を始める。
まずは俺が水を地面から吹き上げて、グレイさんがその水を凍らせると氷の城が出来上がる。
それからグレイさんが出した氷を俺が水で砕くとその氷の粒でキラキラと城が光っているように見える。
その後もグレイさんとの連携で演技をしていく。
そして最後はもちろん・・・
水と氷のアーチを造り、上にFAIRYTAILと文字を造り締めくくった。と思ったら
「よっ」
「えっ?」
グレイさんにいきなりお姫様だっこをされる。え?なんだこれ?
「目を瞑れ」コソッ
「え?」
「目を瞑れ」
グレイさんに言われるがままに目を閉じる。ちょっと薄目を開けて見てるとグレイさんの顔が近づいてくる。え!?
「ちょっ!」
止めようと思ってがグレイさんの顔がすでに目の前にあったのでそのまま動けなくなる。
しかし、グレイさんの顔は俺の顔の目の前で止まる。
わぁーーーーーーーー
すると観客席から盛大な拍手と歓声が送られる。俺はグレイさんに下ろされて一緒にお辞儀するが・・・絶対顔真っ赤だよ俺・・・
『ありがとうございました!!以上で演技を終了いたします。ただいまから―――――』
司会の声が遠くで聞こえるが俺の心はそれどころではない。足早にステージ裏に帰るグレイさんを追いかけるように俺も戻る。
「グレイ・・・お前すごい演技するな」
「ビックリしましたわ」
「本気でキスするかと思ったぜ」
「すごいや!!」
「ウェンディに怒られるかと思ったよ~」
ステージ裏ではリオンさんたちが迎えてくれる。しかし・・・俺も本気でキスされるかと思った・・・
「あぁ?ミラちゃんから最後あれやるように、って言われたんだ。氷の城の姫と王子なんだからキスしてるフリぐらいはな」
言われて納得する。だったらミラさん・・・俺にも教えておいてくれればよかったのに・・・
「そういうことか」
「よかった~。グレイくん、シリルのこと好きになったかと思ったよ~」
「なるか!」
セシリーのボケに素早く突っ込むグレイさん。しかし・・・ファーストキスはウェンディとやりたかったから・・・フリで済んでよかった~・・・
表彰式・・・
『今年の優勝は・・・妖精の尻尾で~す!!』
会場中から俺たちに祝福の拍手と歓声が送られる。
「やったなシリル」
「はい!あそこまでやってダメだったら俺泣きましたよ」
女装させられて、キスのフリまでしたからな。かなり恥ずかしかったけど・・・優勝できてよかった~!!
そして・・・
「じゃあな、グレイ」
「またね。シリルちゃん」
「またいつでも相手してやるぜ」
「ありがとうございました」
「じゃあね~」
俺たちはリオンさんたちとお別れしてギルドへと帰っていく。リオンさんは連れてきたチビッ子たちと手を繋いでいる。ちなみにレンさんとシェリーさんは二人で何かお話ししてたのでそのまま置いてきちゃったw
さて、優勝したことだし・・・
「さっそく何か買って帰りましょう!」
「そうだな。ミラちゃんにでも土産を買ってくか」
俺たちが話ながら歩いていると、目の前に俺と同じぐらいの黒髪の少年がやってくる。
「あ・・・あの・・・」
少年はもじもじしながら話しかけてくる。どうしたのかな?
「どうしたの?」
俺が聞くと少年は何かを俺に渡してくる。
「これ!あげる」
そういって少年がくれたのはピンクのチューリップだった。
「わぁ!ありがとう!!」
俺はそれをもらう。少年はもじもじしながら言葉を紡ぐ。
「あの・・・演技、すごいよかったよ。シリルちゃん」
「ありがとう!君は何て言うの?」
俺が名前を聞くと、少年は一瞬迷った顔をしてから答える。
「ら・・・ライオス・・・」
「ライオスくんか。いい名前だね」
「ありがとう・・・その・・・じゃあね」
ライオスくんはそう言って足早にその場をあとにする。しかしこんな花をくれるなんて・・・なんでだろう?
「あの子・・・かわいそうにな・・・」
「まさか好きになった子が男だって知ったら・・・」
グレイさんとセシリーが何か言ってるけど・・・なんだろう?
とりあえず、この花は部屋に飾ることにしようっと。もらったものを他人にあげるのは失礼だからね。
俺たちは再びギルドに向けて足を進め始めた。
後書き
いかがだったでしょうか。現在の予定だと大魔闘演舞の4日目のタッグバトルでナツとシリルのペアで戦う予定になってますので、ローグとシリルを関係付けておきたいと思いました。
ちなみに今回出てきたシェリーのいとこはもちろんシェリアです。リオンのいとこはオリジナルキャラクターとなってます。
レオンの設定についてはすでに決定しているので早く大魔闘演舞にいければいいなぁ、と考えております。
次もオリジナルストーリーです。次回もよろしくお願いします。
雷との出会い
前書き
この話は小さい頃、私がよく迷子になっていた、という話を親から聞いて思い付きました。
今回も頑張っていきたいと思うのでよろしくお願いします
クロッカスにて・・・
「グレイさん!!これなんてどうですかね?」
「いや、ウェンディにはこっちの色の方があるんじゃねぇか?」
今俺たちは魔法コンテストのあった首都クロッカスで買い物をしている。俺はウェンディが最近髪を結っていいるところを見かけるのでヘアゴム的なものを買ってみようと思いグレイさんとセシリーと一緒にお店を見ている。
「この赤いのなんていいんじゃないですか?」
「いいかもな。ウェンディの髪色と反対色だしな」
「きっと似合うと思うよ~!!」
グレイさんもセシリーも賛成してくれる。よし!ならこれに決定だな!
レストランにて・・・
「いやぁ、ウェンディにお土産買えてよかったです」
「大会も優勝できたしな」
「二人の演技本当にきれいだったよ~!最後のあれもなかなかだったし~」
さ・・・最後のあれか・・・ウェンディとかギルドの人には見せられないな・・・
「で、これからどうするよ?そのままギルドに戻るか?もうちょっとなんかしてくか?」
グレイさんがかき氷を食べながら聞いてくる。グレイさんは冷たいものが好きなんだよな。ナツさんは熱いものが好きらしいし・・・
「もう少し遊んでいこうよ~」
「せっかく王都まで来ましたしね」
「だな」
俺たちはギルドに戻るのはもう少しあとにしてしばらくクロッカスを探索することにしました。
「ここが華灯宮メルクリアスか」
「大きいですね~」
「王様ってどんな人なのかな~?」
俺たちはクロッカスのいろいろなところを探索している真っ最中。しかし首都ってだけあって本当に色んなものがあるなぁ。人もいっぱいいるし・・・魔法コンテストをやった会場も大きかったし。
その後も俺たちは観光を続けていたのだが、突然目の前に人だかりを見つける。なんだあれ?
「なんかあんのか?」
「行ってみます?」
「行こう行こう!!」
俺たちはそう言って人混みの中に飛び込んだ。しかし・・・
「うぅ・・・前に進めない・・・」
人が多すぎて全然前に進めない。体が小さいから隙間を通っていけるかと思ったんだけど・・・隙間を通る小ささよりも人を掻き分ける力の方が必要だったな・・・
「しょうがない・・・俺だけでも外に出て待ってよう」
俺は前に行くことを諦めて人混みの外に出る。グレイさんとセシリーはうまく前まで行けてたみたいだし、あとで二人から何があったのか聞けばいいや。
俺はそう思い人混みから離れたところで二人が戻ってくるのを待つ。しばらくすると人が少しずつその場をあとにしていく。なんだったのかな?グレイさんたち早く戻って来ないかな?
しばらくするとそこにはさっきまでいた人たちが全員いなくなる・・・いなくなったのだが・・・
「あ・・・あれ?」
俺は辺りを見回す。しかしグレイさんとセシリーらしき人影が見当たらない・・・あれ?これってもしかして・・・
「はぐれちゃった!?」
―――――――グレイたちは・・・第3者side
「なんだよ・・・ただの酔っ払いが騒いでただけかよ」
「なんかがっかりだったね~」
グレイとセシリーは人混みを掻き分け先頭にまでいったのに、その集まっていたのはなんてことのないことだった。昼間から酒を飲んで酔っぱらったおっさんが電柱にぶつかってしまい、その電柱を人だと思い込み電柱に文句を言って一人で電柱と格闘していたのだった。
なんともアホな話である。
「なんか疲れちまったな」
「そうだね~。シリル~。そろそろ帰ろ・・・」
ここでようやく二人もあることに気づく。そう・・・シリルがいなくなっていることに。
「あれ!?あいつどこいった!?」
「そういえばあの人混みに入ったときから見てないような~・・・」
二人は顔を見合わせる。そして二人はため息をつく。
「しょうがねぇ・・・探すか」
「だね~」
二人はシリルを探すために歩き始める。
――――――シリルはというと・・・シリルside
「二人ともどこいったのかな?」
俺は辺りをキョロキョロと見回しながら歩くけど・・・二人の姿は見当たらない。まったくもう・・・
「二人とも迷子になるなんて!!」
いや、多分迷子になったのは俺なんだろうけど・・・なんかそれは認めたくない!
それにしても・・・二人ともどこにいったのかな?
フィオーレ王国の首都だけあって、人が溢れかえっているクロッカス。おかげで周りに人しかいなくてよく見えない。
「どうしよう・・・」
―――――第3者side
一人の男がクロッカスを歩いているとその目に懐かしいギルドマークを肩に入れた少女が目に入る。
「妖精の尻尾か・・・」
男はその少女を見て少し懐かしい気持ちになる。しかし、その男にはその少女の顔が全く記憶にない。
「新入りか?」
男はそう考える。するとその少女は困ったような顔で辺りを見回している。
多分仲間とはぐれたのだろう。じじぃがこんな小さな子を一人でこんな遠くの街に行かせるはずないからな、と男は考える。
「しゃあねぇな・・・」
自分がさんざん迷惑をかけてしまったギルド、そこに新しく入った少女なら、助けてやるぐらいはしてやらないとな、男はそう思い、その少女に近づいていく。
―――――シリルside
「う~ん・・・」
俺は背伸びしたりジャンプしたりしてグレイさんたちを探している。しかし、一向に見つかる気配はない。
「ヤバイなぁ・・・どうしよう・・・」
二人の名前でも叫ぶか?でもいかにも「僕迷子なんですよ~」って言ってるみたいで恥ずかしいな・・・でも何か行動しないと二人を見つけられないしなぁ・・・
「はぁ・・・」
思わずため息が出る。13歳にもなって迷子になるなんてなぁ・・・恥ずかしいけど、叫ぶしかないのかな?
「あ!」
そこまで考えて思い出す。今探している人たちの特徴を思い出す。一人はイケメンの露出魔・・・もう一人は空飛ぶ猫・・・常識的に考えたら二人ともありえない特徴だ。多分二人を見た人は覚えているに違いない!そうと決まれば誰かに聞いてみよう!
そう思って俺は話しかけられそうな人を探す。すると突然
ガシッ
後ろから肩を捕まれる。もしかしてグレイさん?
「グレイさん!!」
俺は振り返るとそこにいたのは・・・金髪を刈り上げた大柄の男の人だった。
「迷子か?」
「え?」
いきなり金髪の人に聞かれる。まさか心配して声をかけてくれたのかな?見た目によらずいい人だ。
「はい。そんなところです」
「誰を探してるんだ?」
一緒に探してくれるのか?優しいなぁ。でもあんな特徴言って信じてもらえるかな?
「ほら。早く言え」
「えっと・・・一人が上半身裸の男の人で、もう一人・・・というか一匹が羽を出して空を飛ぶ茶色の猫です」
「なんだ。グレイか。猫の方はよくわからんが」
「え?グレイさんのこと知ってるんですか?」
俺がそう言うと男は言わなきゃよかったと言う顔をする。なんかあったのかな?聞かないでおくか。
「それで、グレイさんを見たりしてませんかね?」
「いや、見てねぇな」
「そうですか・・・」
どうやらこの人もグレイさんとセシリーは見てないようだ。振り出しだな。
「一緒に探してやるよ」
「え?いいんですか?」
「ああ。いろいろ聞いてみてぇこともあるし」
「ありがとうございます!!えっと・・・」
「ラクサスだ。ラクサス・ドレアー」
「よろしくお願いします、ラクサスさん。俺はシリル・アデナウアーといいます」
「俺?」
ラクサスさんが驚いた顔をする。もしかして・・・
「俺・・・男なんで・・・」
「男!?」
ラクサスさん声を上げる。そんなに驚かなくてもいいのに・・・
「すまねぇ・・・てっきり女だと思ってたぜ・・・そういえばその服・・・男物だったな・・・全然気づかなかった・・・」
「いえ、よく間違えられるので大丈夫です。それより早くグレイさんを探しましょう!」
「そうだな・・・」
俺はラクサスさんと一緒にグレイさんを探すために歩き始める。ラクサスさんは身長も大きいし、きっと見つけるのも楽なんだろうなぁ~。俺もこのくらい大きくなれればなぁ・・・
―――――――その頃グレイたちはというと・・・第3者side
「グレイく~ん!」
「セシリー!いたか?」
セシリーはグレイの前に降りて首を振る。
「そうか・・・」
「どうしよう・・・もう一回探してこようか?」
「いや・・・いい」
セシリーがグレイに言うが、グレイはそれをやめさせる。
「別れて探すと今度は俺たちもはぐれちまいそうだ」
グレイは辺りを見回しながら言う。グレイの言う通り、人が多すぎて別々に行動してたら二人もはぐれてしまうかもしれない。
「そうだね~・・・じゃあ歩いて探そうか」
「そうだな。ん?」
「どうしたの~?」
グレイは突然顎に手を当て考える。そしてシリルの特徴を思い出す。
「そういえばあいつ・・・男物の服を来てたよな?」
「シリルはあれでも男だからね~」
シリルは黒のタンクトップにジーンズという格好をしている。服装だけ見れば男っぽいのだが、シリルの外見はどう見ても女の子のそれだ。
しかも中性的っていうよりも、その辺にいる女の子や下手をしたらモデルとかをやってる女の子よりも可愛いかもしれない・・・そんな美少女みたいな奴が男物の服を着ていたら、見た人たちは絶対に忘れるはずがない。グレイはそう考えた。
「セシリー!!いろんな奴に聞き込みするぞ!」
「うん!!」
セシリーはグレイの頭に乗っかる。歩くのがめんどくさくなったようだ。
「それじゃ、とっとと見つけるぞ!」
「お~!!」
二人は近くの人たちに声をかけ、シリルを探し始めた。
しばらくして・・・シリルside
「見つからねぇな・・・」
「そうですね・・・」
俺とラクサスさんはなかなかグレイさんとセシリーを見つけられなくて困っている。ちなみに道行く人に「上半身裸の男の人と羽の生えた猫見ませんでしたか?」と聞くと、「え?そんな変態と新種の生き物いるわけないじゃん!」みたいなことを言われてしまう。
まさかとは思うけど・・・グレイさん、こんな時に限って脱ぎ癖を発動してないのか?早く服を脱いでグレイさん!!
「ところでよぉ、お前、いつ妖精の尻尾に入ったんだ?」
ラクサスさんに質問される。えーと確か・・・
「二週間ぐらいですかね?」
「やっぱり最近なのか」
やっぱり?どういうことかな?
「やっぱりって?」
「いや・・・実はな・・・俺は前まで妖精の尻尾にいたんだ」
ラクサスさんはそう言う。前まで?やめちゃったのかな?でも・・・そういう話は聞かないのが礼儀ってもんだよな・・・もしかしたら嫌な思い出とか出てくるかもしれないし。
「そうなんですか・・・」
「どうだ?じじいは元気か?」
「マスターのことですか?そりゃあもう元気ですよ!」
「そっか・・・ならよかった・・・」
ラクサスさんはどこか安心したような顔をする。マスターの心配をしてるのか。本当に優しい人なんだな。
「そういえばラクサスさんってどんな魔法を使うんですか?」
「俺か?俺は雷の魔法を使うんだ」
雷かぁ・・・俺は水だから相性悪いな・・・敵として会わなくてよかった~。
「お前はどんな魔法を使うんだ?」
「俺は水の魔法です。実はこう見えて水の滅竜魔導士なんですよ。俺」
「水の滅竜魔導士!?」
ラクサスさんが心底驚いた顔をする。珍しいからかな?でも妖精の尻尾にはナツさんもガジルさんもいるからそんなに驚く必要はないような気がするけど・・・
「なるほど・・・こいつがカミューニの探していた・・・」ボソッ
「ん?何か言いました?」
「いや・・・なんでもねぇ」
「そうですか?」
ラクサスさんは慌てたように否定する。
「ちなみに・・・お前はドラゴンから滅竜魔法を教わったのか?」
「そうですよ!」
「ほう・・・そのドラゴンの居場所とかはわかるのか?」
「いえ・・・全然・・・」
そう言えばヴァッサボーネもグランディーネも全然情報が得られないなぁ・・・どうしてるのかな?
「そうか・・・」
ラクサスさんは申し訳なさそうに言う。別に気にしなくていいですよ!
「あれ?お前“は”?」
俺はさっきのラクサスさんの質問に一つおかしな点を見つける。お前は、ってどういうことだ?ナツさんもガジルさんもドラゴンから魔法を授かったんだから、お前“も”が正解のはずだ。
「気づいちまったか」
「どういうことですか?」
「実は・・・俺も滅竜魔導士なんだ。第二世代のな」
「第二世代?なんですか?それ」
世代ってことは・・・第一世代もあるんだよな?まさかラクサスさんの他にも滅竜魔導士がいるのか!?
「第一世代の滅竜魔導士は、ドラゴンから滅竜魔法を教わった奴ら。お前とかナツだな。んで、第二世代の滅竜魔導士は体内に滅竜魔法を使えるようにできる魔水晶を埋め込んだ奴ら。俺と六魔将軍のコブラと、あとあいつだな」
「あいつ?」
「いや、気にすんな」
気になるわ!!じゃなくて、滅竜魔導士でもそんな風に分類されているのか・・・なかなか奥が深い。
「まぁ、ダチから聞いた話だと第三世代の滅竜魔導士ってのもいるらしいけどな。第三世代はドラゴンに魔法を教わって、なおかつ体内に滅竜魔法を使えるようにする魔水晶を埋め込むそうだ。そうすることによってより大きな力を得られるらしい」
「へぇ!!すごいですね!!」
第三世代かぁ!なんかかっこいいな!!というか第一世代の俺たちなら第三世代になれる可能性があるんじゃね?いや・・・別にヴァッサボーネに教わった魔法だけで十分なんだけどさ。
「ナツは元気か?また街とか壊してねぇだろうな」
「ナツさんはですね。――――」
その後も俺たちは妖精の尻尾の話で盛り上がった。ラクサスさんはすごい懐かしそうな顔をしているのが印象的だった。
―――――グレイたちは・・・グレイside
「すまねぇ。聞きてぇことがあるんだが」
「なんですか?」
俺とセシリーはシリルを探すために道行く人たちに話を聞いている。いや、聞いてるのは俺だけだな。セシリーは招き猫みたいな格好して俺の頭の上に乗ってやがる。
おかげで話しかけるたびに頭の上を心配そうに見られちまうじゃねえか!!なんか恥ずかしいだろ!!
「あの・・・」
「あぁ・・・すまねぇ。この辺りで男物の服を着た小さな女の子見なかったか?俺の連れなんだがはぐれちまって」
「それなら確か・・・」
「あっちで金髪の大きな男の人に連れられてるのを見ましたよ?」
「本当か!?わかった!!ありがとう」
「ありがとね~」
俺は二人組の女が指を指した方に向かって走り出す。金髪の男?誰だ?シリルの知り合いか何かか?
「金髪の男の人って誰だろ~?」
「セシリーも知らないのか?」
「うん。金髪の人なんて昨日のリオンくんのいとこくらいしかわかんないよ」
セシリーも知らないようだ。シリルから声をかけたのか?だったら心配はいらねぇが・・・まさか誘拐しようとかじゃねぇだろうな・・・もしそうだったらミラちゃんとかナツに何言われるかわかんねぇぞ!!急がねぇと!!
女の子たちの言ってたところに来たが・・・それらしき人影はねぇなぁ。また聞くか。
「おい。ちょっといいか?」
「ん?なんだ・・・あ!」
「どうした?・・・あ!」
「なんだよ・・・あ!」
話しかけた三人組の男が俺を見て何かに気づく。なんだ?
「さっきの嬢ちゃん言ってた奴ってこいつか~」
「まさかこんな人混みで半裸になってる奴なんかいねぇと思ったら・・・」
「いたな・・・」
男たちは口々に言う。半裸?
俺は自分の格好を確認したら上半身に服を着てねぇ!!またやっちまった!!
「水色の髪の女の子だろ?それならあっちに行ったよ」
「あの子のお兄ちゃんか?早く迎えいってやれよ」
「頭の猫も探してたぞ。ペットか?」
「僕はペットじゃないよ~」
「「「猫がしゃべったーー!!!?」」」
セシリーが人間の言葉を発したら男たちはびっくりする。そりゃそうだろ。俺だって事情も知らずにいきなり話されたら驚くからな。
と、それより今は
「あっちだな!ありがとう!」
「またね~」
男たちの指さす方へと俺たちは再び向かう。今度こそ捕まえるぞ!!
シリルside
かなり時間もたち、日も暮れてきた。青かった空は夕日で紅く染まりつつある。
「いねぇな」
「そうですね」
俺とラクサスさんはいまだにグレイさんとセシリーを発見できない。困ったな・・・
『お!いたぞ!!シリルだ!』
『本当だ!!お~い!!』
すると遠くから二人の声が聞こえてくる。そちらを振り向くとそこには確かにグレイさんとセシリーがいた。
「あ!!グレイさん!!セシリー!!」
「お?見つけたのか」
ラクサスさんは俺の頭に手をのせてくる。
「手伝ってもらってありがとうございました」
「いや、いいってことよ。それじゃ、俺はこれで」
そう言ってラクサスさんはその場を後にしようとする。あれ?
「グレイさんに会って行かないんですか?」
「あぁ。俺はあいつらと顔を合わせていい身分じゃねぇからな。あ、そうだ」
ラクサスさんは一度俺に背を向けていたが、こちらに向き直る。
「じじいによろしく伝えといてくれ。あと、俺からお前に一つだけ伝えといてやる」
「?なんですか?」
「赤髪の男に気を付けろ。それだけしか言えねぇ。じゃあな」
「え!?あ、はい!!ありがとうございました!!」
ラクサスさんがその場から立ち去るので俺はラクサスさんにお辞儀する。するとほどなくしてグレイさんとセシリーがこちらにやって来る。
「シリル!!よかった!!」
「はぐれた時はどうしようかと思ったよ~」
「すみませんグレイさん。ごめんねセシリー」
俺は二人に頭を下げる。
「まぁ、いいさ。もう遅いし、今日もここに泊まってくか」
「そうだね~!明日朝一で帰ろう!!」
「はい!!」
俺たちは今日もクロッカスに泊まることに決めて、宿を探しに向かった。
その夜、クロッカスのはずれにて・・・第3者side
ラクサスはクロッカスから離れ、今は森の中を一人で歩いていた。すると目の前に一人の男が姿を現す。
「カミューニ・・・」
「よぉ、ラクサス。久しぶりだなぁ」
カミューニと呼ばれた赤髪の男はラクサスに手を上げて挨拶する。その上げられた手には闇ギルド、悪魔の心臓のギルドマークが入っている。
「お前・・・まだ悪魔の心臓なんかにいるのか?」
「目的を達成するためなら、俺ぁ手段を選んでらんねぇんだよ」
カミューニはラクサスの隣に立つ。
「水竜になんで俺に気を付けろ、なんて言ったんだ?」
「言葉通りの意味さ。お前はあいつの魔法を取り出すつもりなんだろ?」
二人は少し睨み合う形になる。カミューニはそれを聞いて少し笑ってしまう。
「もちろん。必要とあらば奪うつもりだ。それでハデスを殺せるならな」
「第三世代の滅竜魔導士なら、悪魔の心臓のマスターを倒せるのか?」
カミューニは一瞬困った顔をする。カミューニ自信も、それについてはわかっていないからだ。
「さぁ、どうだろうな。まぁ、今の俺よりかは・・・幾分かマシにはなるんじゃナァイ?」
「元聖十大魔導のお前でも倒せないとはな・・・ま、俺には今のところは関係ねぇ。だが・・・」
ラクサスはカミューニを睨む。
「もし、妖精の尻尾に手を出すような・・・俺はお前を許さねぇぞ。例えそれがダチであるお前だとしても」
「そうかよ。別に、お前の好きなようにしろ。だが、これだけは言っておくぜ。俺はあのガキと必ず戦う。それだけは決まっている」
カミューニもラクサスを睨み返す。そして二人は互いに背を向け歩き出す。
「妖精の尻尾がお前らになんかに負けるかよ」
「それははっきり言ってどうでもいい・・・むしろうちをやってくれるならやってくれた方がいい。だが・・・ハデスを殺すのは俺だ」
二人はそう言い、その場をあとにした。
後書き
いかがでしたでしょうか。最後に出てきたカミューニもオリジナルキャラクターとなっております。もうお分かりだと思いますが、天狼島でカミューニは再び登場します。
次回はようやくウェンディが頑張ってくれます。次回もよろしくお願いします。
ウェンディ、初めての大仕事 !?前編!!
前書き
序盤、シリルとグレイは遅れてギルドに入ってくるので、グレイのセリフをナツやルーシィたちが代わりにいいます。ご注意ください。
妖精の尻尾にて・・・ウェンディside
「う~ん・・・」
「なかなかこれってのがないわね」
私とシャルルは今、リクエストボードの前で次のお仕事を探しています。だけど、シャルルの言う通り、私がやれそうな依頼がないなぁ・・・
「おかえり」
すると私たちの後ろからミラさんの声が聞こえてくるので、私たちはそちらの方へと振り返る。
「もう次の仕事探してるの?ウェンディも、だいぶうちの仕事に慣れてきたわね」
「といっても、この街の中でも簡単な依頼しかあんたが受付ないじゃないのよ」
「ちょっとシャルル!」
笑顔で言うミラさんと、それに対して言うシャルル。私はシャルルの失礼な言い方に注意する。ミラさんは私たちのことを考えてくれてるんだからそう言うこと言わないの!
「でもシリルは他の街の仕事とかにも行ってるじゃない!!」
「シリルは以前からいろんなところに仕事をもらいにとか行ってたみたいだし、ナツやグレイと一緒に行ってるから」
「そうだけど・・・」
納得がいかないという顔のシャルル。
「それに、小さな仕事で経験を重ねるのも大事だと思うから」
「でもよぉ、そろそろでっかい仕事やってみてもいいんじゃねぇか?遠くの街からの依頼とかよぉ」
すると今度は後ろからナツさんが来てそう言う。遠くの街かぁ。私、そんなに遠くには行ったことないからなぁ。それに・・・
「私、早く大きな仕事ができるようになって、皆さんのお役に立ちたいんです!!」
「ふぅ・・・」
私も大きな仕事ができるようになって、早く胸を張って妖精の尻尾の魔導士だって言えるようになりたい!!それに、シリルにだっていいとこ見せたいもんね!!
「みんなの役に立ちたい・・・か」
「頑張れよ!」
「こういう素直で健気な子を見ると、応援したくなるねぇ」
「頑張ります!///」
私がそう言うと皆さんが優しい言葉をかけてくれました。すごく嬉しいです。
しばらくすると、なぜかハッピーとルーシィさんが追いかけっこを始めてしまいました。ハッピーも逃げるなら最初っから変なこと言わないといいのに・・・
「でも、留守にしてる連中が戻ってきたら、驚くだろうな。こんな小さな子が・・・しかも二人もいて」
「えへへへ・・・」
リーダスさんにそう言われて少し照れちゃいます。シリルも私と見た目の年齢は変わらないからね。
「だな。ギルダーツとか」
「ギルダーツかぁ・・・」
「相変わらず音沙汰ねぇよなぁ・・・あの仕事にいって確か・・・三年くらいたったか?」
「ん?」
ギルダーツ・・・さん?
「心配ねぇだろ。俺たちならともかく、あのギルダーツだからな」
「そうそう。別格だからなぁ」
皆さんそのギルダーツさんのというか人の話を始めました。一体どんな人なんでしょうか?
「そういえば、ちょうどいい仕事があるわよ」
ミラさんはそう言って一枚の依頼書を持ってきてくれました。ちょうどいい仕事って、どんな依頼なんでしょうか!
「心を癒してくれる魔導士を探してるんだって。報酬はそこそこだけど、ピッタリじゃない?」
心を癒してくれる魔導士ですか!?それなら私にもできそうです!!
私はミラさんから依頼書をもらいました。
「なんだなんだ?オニバスの街か?どんな依頼だ?」
私はもらった依頼書を手にとって読み始めます。
「えーっと・・・ありがとうございます?」
「「「!?」」」
なぜいきなりお礼なんでしょうか?するとナツさんとルーシィさんがいきなりのお礼わ聞いて固まってしまいました。
「いきなりお礼?」
「カァーーー!!思い出したーー!!なんか思い出してきたーー!!」
ナツさんが何かを思い出して怒り始めました。昔もこんな依頼があったんでしょうか?
「劇団の役者に逃げられ、舞台の公演も失敗続き、心も体もズタズタです。私を元気づけてください。
ラビアン」
「ラビアン、って誰だっけ?」
「シェラザード劇団の団長だよぉ!!」
「ほら、前にお芝居やったでしょ?」
「ああっ!!フレデリックとヤンデリカ!!」
ナツさんとルーシィさん、そしてハッピーが暗くなってしまいました。嫌なことでも思い出したんでしょうか?
「ウェンディ!悪いことは言わねぇからやめとけ!!」
「とっても人使いが荒いんだよ・・・」
「しかも低賃金重労働・・・しかもなかなか帰してもらえなかったのよぉ・・・」
ナツさんたちが口々にそう言う。そ・・・そんなに大変だったんですね・・・
「私も反対よ。何もそんな仕事じゃなくても・・・悪い予感もするし・・・」
「シャルルの予感はよく当たるけど・・・」
皆さんにそう言われると少し不安になっちゃう・・・けど・・・
「でも・・・私で役にたてるなら・・・」
「あなたは人が良すぎるのよ。大体、行ったこともない街で大きな仕事なんて・・・あなたじゃまだ無理よ」
「そんなことない!!私もちゃんと依頼を果たしてみせる!!」
「なら、好きにするといいわ!私はついていかないから・・・」
「ちょっとちょっとぉ!?なんであんたたちがケンカになるの!?シャルルもそんなにカリカリしなくていいでしょ?」
「ふん!!」
私とシャルルが言い合っているとルーシィさんが間に入る。シャルルの予感は確かによく当たるけど・・・でも私だって一人でできるはず!!
「私、このお仕事を引き受けます!!」
「ちょっと待って!!まさか一人でいくんじゃ・・・」
「はい!何事も経験ですから!」
ミラさんは心配そうに言う。でも、何事もやってみないとわからないよね?まだシリルはナツさんやグレイさんと一緒に行ってるみたいだし!私の方が先に一人でお仕事できるようになるぞ!!
「待て待てー!!」
するとマスターが叫ぶ。やっぱりダメなんでしょうか?
「ウェンディもようやくこのギルドのやり方に慣れてきたばかりじゃ。いきなり一人で遠くにやるわけにはいかん!」
マスターはそう言ってお酒を飲みながら周りを見回す。
「前もいったことのあるもの・・・そうじゃなぁ・・・ハッピー!!」
「オイラ!!」
マスターに指名されて驚くハッピー。
「うむ。んっ!それにフリード、お前も手が空いてあったな。手を貸してやれ」
「マスターのご指示とあらば」
「ええ~!!?」
「「なんでフリード!?」
フリードさんが指名されたことにナツさんたちが驚く。フリードさんとはあまり話したことがなかったので、これを機に親しくなれたらいいですね。
「それに・・・気心の知れた者も行かせたいが・・・」
マスターがナツさんたちを見るとあからさまに視線を反らす。そんなにこのお仕事嫌なんでしょうか?
すると
「ただいま」
「ただいま帰りました」
「たっだいま~!」
ギルドの扉からグレイさん、シリル、セシリーが帰ってくる。するとマスターがそれを見る。もしかしてシリルも一緒に行くのかな?シリルに成長したところを見せるにはいいかもしれない!!
「ちょうど良い!!お主も行ってやれ、セシリー!!」
「何が~??」
「「「なんでセシリー!!!?」」」
シリルじゃなくてセシリーだった。ハッピーと同じ猫だからかな?ハッピーとセシリーは仲がいいし、そういうのも考えてるのかな?
こうして私はハッピーとセシリー、そしてフリードさんと一緒にオニバスの街に向かうことになりました。
ギルドの前にて・・・シリルside
「それじゃあ、行ってきます!!」
「むぅ・・・」
今はウェンディの見送るためにギルドの前に来ている。シャルルが怒ってるみたいだけど・・・ウェンディも頑張らなきゃならないんだからしょうがないじゃん。
「よし、行ってきな」
「フリード。ウェンディのことをちゃんと守ってあげてよ~」
「心配無用だ。任せておけ」
「必要以上の手出しはいかんぞ。ウェンディの勉強にならんからな」
「あいさ~・・・」
「了解で~す!」
マスターがフリードさんたちに言う。ハッピーが暗くなってるけど、そんなに前に仕事した時の印象が悪かったのか?
「ふんっ!」
ウェンディがシャルルを見るとシャルルはそっぽを向いてしまう。ウェンディはそれを見て悲しそうな顔をしたあと、オニバスの街へと歩いていく。
「本当に大丈夫かな?」
「フリードが一緒なら、心配ないと思うけど・・・」
「でもあいつも、変に融通利かないっていうか、マイペースなところあるからねぇ・・・」
ルーシィさん、リーダスさん、カナさんが心配そうに言う。まぁ確かに心配だけど・・・
「心配ないですよ。ウェンディはああ見えて、結構しっかりしてますから」
「そうだぞ~。心配することねぇよ」
俺が言うとナツさんも同意してくれる。ただ、シャルルはウェンディが歩いていくのを見て、すごく心配そうな顔をしていた。
マグノリア駅にて・・・ウェンディside
『オニバス行きの列車は、線路の破損事故のため運休です!!繰り返します!オニバス行きは運休です!!』
駅についてオニバス行きの列車に乗ろうと思ったんですけど・・・どうやら運休みたいです。
「さっそく試練だな。どうする?ウェンディ」
フリードさんに問いかけられる。う~ん・・・
「オイラとセシリーさぁ、飛べるから一気に空飛んで連れてってあげようか?」
「ウェンディとフリードくんは僕とハッピーでちょうど運べるよ~」
ハッピーとセシリーがそう言ってくれる。でも・・・
「ううん。今度の仕事はできるだけ自分の力でやり遂げたいの。だから、オニバスまで歩いて行こうと思うの!」
「えぇー!!?めちゃくちゃ時間がかかるよ!?フリードも止めてよぉ」
「確かに・・・その通りだな」
フリードさんもハッピーに同意する。やっぱり難しいかな?
「ほら!フリードもこう言ってる」
「俺も歩こう」
「えぇ・・・!?」
フリードさんは私に賛成してくれてたみたい!!ハッピーは心底驚いてるけど。
「この仕事は、ウェンディの気持ちを尊重する。マスターに言われた。それが、いわばルールだ。ルールは守らねばならん」
「ありがとうございます!!フリードさん!!」
この依頼は私の気持ちを尊重してくれるのか~!!フリードさんって優しい方なんですね!!
「頭固すぎ・・・」
「そんなこと言ってないで!早く行くよ~」
セシリーも私に任せてくれるみたい。ハッピーは絶望みたいな顔してるけど、今回は自分の力で絶対達成するんだもん!!頑張ろう!!
とある山にて・・・
「この距離歩くの~・・・」
「いいじゃん別に~。運動は大切だよ~」
「そうだけどさぁ・・・」
ハッピーは相変わらず歩きたくないみたい・・・ちょっと悪いことしちゃったかな?
「正確に言えば、お前は歩いているのではなく、飛んでいるわけだが?」
「どっちもあんまり変わんないよ!!」
「言葉は正確に使うべきだ。術式を使う俺には、言葉の大切さがよくわかる」
「は・・・はい!!」
「そんな話今されても・・・」
フリードさんの説明にセシリーが珍しく語尾を伸ばさずに返事した!?というか、そんなことより
「いきましょ?急がないと日が暮れちゃいます」
「よ~し。レッツゴー!!」
私たちはオニバスに向かって歩き始めました。
―――――一方、妖精の尻尾にて・・・シリルside
「何!?あの劇団からまた依頼!?」
「そうなの。ついて行こうと思ったんだけど・・・マスターに止められちゃって」
エルザさんとルーシィさんが何やら話している。すると・・・
「あ!え!い!う!え!お!あ!お!」
突然エルザさんが発声練習を始める。どうしたんだ?
「なんで発声練習?」
「備えあれば憂いなし」
「何の備え?」
「マスターの言うこともわかるが、しかし、やはり四人だけでは心配だ。私もあとを追おう!」
そう言うエルザさんはどこからかたくさんの荷物を取り出す。どこにあんなの持ってたんだ!?てか何ついていく気満々なんですか!?
「ちょちょちょっと待てお姉さん!!」
「どうしたシリル」
「なんか今の変だったわよ」
すみません・・・一回やってみたくて・・・というかそんなことより!!
「ウェンディなら大丈夫ですよ!たぶん・・・」
「自信持って言いなさいよ!!」
いや・・・正直なところ心配だし・・・あれ?
「そういえば・・・オニバス行きの列車って今止まってたような・・・」
「え!?」
俺の言葉にルーシィさんが驚く。
「それ本当!?」
ミラさんこちらにやってくる。
「はい。帰ってくるときアナウンスしてました」
「だったら・・・ちょっと見てきてくれない?エルザも行くみたいだし」
「えぇ・・・いいのかな?」
「わかったぞミラ!!行くぞシリル!!ルーシィ!!」
「わかったわ!」
「エルザさんは別の目的のような気がしてならないんですけど・・・」
ミラさんに頼まれたし・・・本音を言えばウェンディも心配だし・・・ここはちょっと様子を見に行こう!!
「わかりましたミラさん!シャルルも行く?」
俺はカウンターに腰かけているシャルルに聞く。
「まったく・・・おせっかいなんだから。ついて来なくていいって言ってるんだから、ほっとけばいいのよ!!」
シャルルはそう言いながらカウンターから立ち上がると俺たちと一緒にギルドから出ていく。
「そもそも、どうしてオニバスの仕事なんか受けるのよ。遠くに行けばいいってもんじゃないでしょ?まったく時間の無駄」
「とかいいながら、ついてきてるじゃない」
「ウェンディのことだから、セシリーたちの力は借りず、徒歩で向かってるはずよ。長旅になりそうね」
シャルルはなんか言ってるしエルザさんは発声練習してるし・・・
「ルーシィさん・・・俺、ウェンディたちよりも俺たちの方が心配なんですけど・・・」
「それは私も思ったわ・・・」
こんなので俺たち・・・大丈夫なのかな?
森の中にて・・・ウェンディside
私たちは今、森の中を歩いています。フリードさんたちも一緒に歩いてくれてます。
「すみません・・・私のためにフリードさんたちまで・・・」
「仲間のためだ。気にするな」
「僕も全然平気だよ~」
フリードさんとセシリーがそう言ってくれるので少し気が楽になる。
「ねぇねぇ~。少し休もうよ~」
ハッピーはお疲れみたい。本当は休んであげたいけど・・・
「でも、雨が降りそうだから急ぎましょ。私、空気の流れが読めるんです」
「まさか~。こんなにお天気なのに~?」
「ハッピー・・・ウェンディが言うってことはたぶん降るよ・・・」
セシリーかそう言うと頭にポツポツっと水滴が落ちてくる。やっぱり降ってきちゃった!!
「なんだこの天気ー!?」
「早く雨宿りしないと!!」
「風邪引いちゃうよ~」
私たちはどこか雨宿りできるところを探す。すると近くに洞窟があるのを見つける。あそこに隠れよう!!
「ハッピー!!セシリー!!あの洞窟に隠れよ!!」
「あいさ~!!」
「わかった~!!」
私たちは急いで洞窟に飛び込む。よかった~、これでみんな無事に雨宿りでき・・・あれ?フリードさんがいませんよ?
私たちが外を見るとそこには立ち止まっているフリードさんがいる。
「ラクサース!!」
「フリードさーん!!こっちですー!!」
私が呼ぶとフリードさんもこちらに気づいて走ってくる。何か叫んでましたけど・・・どうしたんでしょうか?
「よかった。やはり、手を貸さなくて正解だった」
洞窟に入ったフリードさんは服についた雨を払いながら何か呟きました。
「ん?何ブツブツ言ってるの?」
「フッ。わからなくていいことだ」
「フリードの頭の中ってどうなってるんだろう・・・」
「きっといろいろ考えてるんだよ~」
ハッピーたちも何か言ってるけど・・・しばらくこの雨は止みそうにないなぁ・・・シリルがいたら雨も大丈夫だったのに・・・
――――そのシリルたちは・・・シリルside
ウェンディたちのあとを追って歩いていると・・・何かの匂いを感じる・・・この匂いは・・・
「皆さん!雨が降ってきそうですよ」
「何!?本当か!?」
「まさか~。こんないい天気なのに」
俺がそう言うとエルザさんは荷物の心配をし始め、ルーシィさんは冗談だと思ったみたいだ。
「シリルがそう言うってことは・・・」
シャルルはそう言いながら空を見上げる。するとさっきまで青かった空は雨雲によって見えなくなる。
「やば!!開け!!時計座の扉・・・ホロロギウム!!」
ルーシィさんはそう言ってホロロギウムを召喚する。どうしたんだ?
現れたホロロギウムにルーシィさんは素早く入り込む。
「「みんなも早く入って!!濡れちゃうわよ!!」と、申しております」
「必要ないわ」
「大丈夫ですよ。ルーシィさん」
「「え?それはどういうこと?」と、申しております。
ホロロギウムって一々中にいる人の言葉を代弁しなきゃいけないのが大変そうだな・・・
俺たちが話していると雨が降ってくる。だけど・・・その雨は俺には当たらないようにできるんだよね♪
だって俺は水の滅竜魔導士!つまり水は俺にとってはなんてことのないもの。
「はぁっ!!」
俺は空に手を向け魔力を使い、雨が俺たちに降ってこないようにコントロールする。魔力を消耗するけど、今はバトルとかでもないから問題ない。
「すごい!!全然雨が当たらない!!」
「これなら衣装が濡れなくて済むな」
ホロロギウムを閉門したルーシィさんとエルザさんが言う。ウェンディたちはどうしてるのかな?早く追いかけないと!!
「皆さん。ウェンディたちを追いかけますよ」
「うん!」
「そうだな」
「まったくもう・・・」
俺たちは再びウェンディたちを追いかけ始めた。
後書き
いかがだってしょうか。ちょっと長くなりそうだったので前編と後編に分けさせていただきます。次回もよろしくお願いします。
ウェンディ、初めての大仕事!?後編!!
しばらくして・・・ウェンディside
ようやく雨が上がったので私たちは洞窟の外に出て夕日を眺めています。
「雨が上がってよかったね」
「本当だね~」
ハッピーとセシリーは雨が上がって一安心したみたい。
「でも、暗くなるわ。今夜は野宿するしかないみたい・・・」
「寝る場所は、さっきの洞穴でいいとして・・・問題は食料だな」
フリードさんはそう言って歩き出す。
「食べ物集めくらい手伝ってよ」
「じゃないと力が出ないよ~」
ハッピーとセシリーがフリードさんに言う。私もなんとか食料を集めないといけないけど・・・何をすればいいのかな?
「案ずるな。俺も、己の為すべきこと、為さざるべきことはわきまえている男だ」
「一々言い回し固すぎ・・・」
「か・・・かっこいい~・・・」
フリードさんの言い方にハッピーが呆れ、セシリーは目をキラキラさせている。確かにちょっと言い回しがかっこよかったかも・・・
するとフリードさんはこちらに振り返る。
「俺に食料の心当たりがある。すでに準備も終えている」
「本当ですか!?」
「さすが雷神衆!!いざと言うときは頼りになるね!!」
「うん!!」
「フリードくんかっこいい~!!」
もう食料の準備も終わらせてたなんて!!フリードさんってすごい!!セシリーも目がさっきよりもますますキラキラしてる!!
フリードさんは剣を抜くと術式を展開する。
「この術式の中に入った・・・ 羽魚は落下する!!」
フリードさんがそう言うと空からたくさんの羽魚が落ちてきました!!
「なんで羽魚!?」
「この辺りは、羽魚の回遊ルートだ。今は卵を産むため、羽魚の群れが登ってくる季節なんだ」
驚くハッピーと説明してくれるフリードさん。そんなことまで考えた術式を作ったんですね!!すごい!!
「羽魚・・・て・・・」
するとセシリーが顔を真っ青にしている。どうしたのかな?
「ところでこれって・・・食べられるんですか?」
「ううん・・・めちゃくちゃまずいんだよ・・・」
「え!?」
ハッピーの発言に驚く私。ハッピーがお魚をまずいっていうなんて・・・
「オイラたち・・・前にひどい目にあったんだから・・・」
「僕もシリルと一緒に食べたけど・・・とてもじゃないけど食べれたもんじゃないよ~・・・」
「と思うのが素人の浅はかさ。大方、焼き魚にでもしたんだろ?」
フリードさんがそう言いながら落下させた羽魚を何匹(羽?)かを宙に浮かばせる。
「羽魚の料理にはコツがあるんだ」
フリードさんはそう言いながら宙に浮かばせた羽魚を三枚に下ろしていく。
「フリードさんって、お料理がお得意なんですか?」
「それほどでもないが、ラクサスや雷神衆と行動するときなど、たまにな」
フリードさんがいつのまにか用意したテーブルには豪華な料理がたくさん並んでいる。
「「おいしそう!!」」
「はぁ・・・」
私とハッピーはあまりにも豪華な料理に興奮してしまう。セシリーだけはなぜかため息をついているけど。
「味も見た目に負けないぞ。さぁ、食べてくれ」
「ぼ・・・僕はいいや~・・・何か食べ物取ってくる~」
私たちはテーブルに座る。セシリーだけは遠慮してどこかに飛んでいく。
「「いただきま~す!!」」
私とハッピーは料理を一口、口に含む。そのお味は・・・お・・・おいしくない・・・です・・・
「やっぱり、調理法の問題じゃなかった・・・」
「そ・・・そうだね・・・」
そういえば、シリルは焼き魚はあんまり好きじゃないんだった・・・だから羽魚を焼き魚で食べるわけないんだ・・・きっとセシリーはフリードさんが作ってくれた料理みたいなのを食べてたからあんなに遠慮してたんだね・・・
「ウェンディ!!ハッピー!!こっちに木の実がいっぱいあるよ~!!」
セシリーが私たちを呼んでる。セシリーはきっとこうなることを見越して木の実を探してくれてたんだ・・・意外にしっかりしてるんだね、セシリー。
「ん?好き嫌いは感心しないな。魔導士は体が資本だというのに」
フリードさんは羽魚をなんであんなに平然と食べられるんでしょうか?いろんな意味ですごいです。
――――――シリルたちはというと・・・第3者side
「はむっ・・・うぅ・・・」
シャルルは焼いた羽魚をまずそうに食べている。
エルザとルーシィも同様である。
「他に食料はなかったのかぁ・・・?」
「あれば食べてるわよ・・・」
「だからこんなところに来たくなかったのよ・・・」
女子三人は全然おいしくない羽魚を我慢にして口に頬張っている。すると
「皆さ~ん!!果物見つけたので取ってきました~!!」
シリルは腕いっぱいに果物を抱えてエルザたちに駆け寄っていく。
「すごい!!こんなのどこにあったの?」
「匂いを頼りに探しました」
「おお!!助かったぞシリル!!」
「あっちは大丈夫かしら?」
エルザたちはシリルの取ってきた果物を頬張りながら言う。
「大丈夫だと思いますよ。セシリーは俺と一緒に羽魚で痛い目見てるから・・・何か別の食料を探してると思います」
「だといいんだけど・・・」
なぜかサバイバル能力が意外に高いシリルとセシリーであった・・・
翌日・・・ウェンディside
「山道の次は砂漠かー・・・」
「暑いね~・・・」
今は砂漠地帯を歩いている。ハッピーとセシリーは暑くてなんだか疲れちゃってるみたい。フリードさんはまるで冬場みたいな格好してるけど・・・暑くないのかな?
「フリードさん、暑さに強いんですね」
「こっそり魔法で涼しくしてるんじゃないの?」
「え?そんなのできるの?」
ハッピーがフリードさんを見ながら言う。
「仲間を差し置いて、自分だけ楽をしようとは思わん。単に鍛え方の問題だ」
「フン!」
ハッピーがそっぽを向くと突然落下し始める。
「もうだめ~・・・」
「ハッピー!!」
「大丈夫~!?」
私とセシリーは急いで駆け寄る。あまりの暑さにやられてしまったんだ。シリルがいたら水で冷やしてあげれるけど・・・今は私の魔法しかない!
「待ってて。私が元気にしてあげる」
私がハッピーに魔法をかけようとすると横にフリードさんが座る。
「君が魔力を使うことはない。俺がなんとかしてみよう」
「どうするんですか?」
私が聞くと小さくフリードさんは笑ってみせる。
するとフリードさんはハッピーを岩の上に乗せる。
「まずこうして寝かせる」
フリードさんは剣を抜く。
「続いて、呪文を書く」
フリードさんは流れるように呪文を書いていく。
「この術式の中にいるものは、暑さを感じない」
「岩が熱くて焦げちゃうよー・・・」
「そりゃあ岩の上は普通に考えて熱いよね~」
フリードさんが術式を書いたけどハッピーはまだ目を回したままである。大丈夫かな?
「術式を設定するには、時間がかかるんだ」
「意外に大変なんだね~」
フリードさんとセシリーが言う。だけど・・・
「ていうか・・・術式から出たら意味ないんじゃ・・・」
「あい~・・・」
結局・・・我慢して歩くことになりました。
しばらく歩くと・・・
「暑い~・・・」
「もう一息だ。我慢しろ」
「僕もきつくなってきた~・・・」
ハッピーとセシリーはフラフラしながら飛んでいる。私は少し心配になってきた。だけど・・・
「あっ!!」
「どうしたの~」
「嵐が来る!!」
「嵐って、砂嵐!!?」
私は風の流れで嵐とかも感知することができるの。ハッピーと砂嵐が来ると聞いて驚いてる。
「この地域特有の、呪いの砂嵐か!?」
「ええー!!?」
「呪い!?」
フリードさんがそう言う。呪いって・・・まずいじゃないですか!?
すると前方に大きな砂嵐が現れる。
「どっかに隠れなきゃ!!」
「この砂漠に隠れる場所などない。逃げるんだ!!」
フリードさんの声で私たちはもと来た道を走り出す。呪いの砂嵐なんて!どうすればいいの!?
―――――その頃シリルたちは・・・シリルside
「本当にこっちであってるの?」
「方角は間違っていないはずよ」
「山道のあとは砂漠なんて・・・」
俺たちは今は砂漠の中に入っている。昨日までは山道だったはずなのに、今日はいきなり砂漠道になるなんて・・・暑いし、砂が柔らかくて足が取られるし・・・結構きついな・・・本当にウェンディはこんな道通ってるのか?
などと思っているとおもむろにエルザさんが叫ぶ。
「来るな!!」
「「え?」」
「何がですか?」
すると目の前にいたエルザさんが突然何かに飲み込まれるように落下する。
「エルザ!?」
「エルザさん!?」
「くっ!」
エルザさんは流砂に捕まってしまっている。全然身動きができない状態だ!
「ダメだ・・・脱出できない・・・」
「なんとかならないの?」
「なんとかって言われても・・・」
俺たちの力で引っ張るには足場が悪い。下手したら俺たちまで巻き込まれるぞ?
「あ!そうだ」
ルーシィさんは何か思いついたようで一本の鍵を取り出す。
「開け!処女宮の扉、バルゴ!!」
バルゴさんか!確か穴を掘るのがうまいからエルザさんを助けるには向いてるかも!!
「お仕置きですか?姫」
「じゃなくて・・・エルザを助けて!!」
「かしこまりました」
バルゴさんはルーシィさんにおじぎすると穴を掘り始める。
するとエルザさんが流砂に飲み込まれるのが止まった!あとは引き上げてくれれば・・・
「ダメです。重すぎてびくともしません」
「失敬な!!」
バルゴさんの言葉にエルザさんが怒る。でもさぁ・・・
「そんな・・・星霊の力でも無理なの?」
「いや、エルザさんの鎧が重くて持ち上がらないんじゃ・・・」
鎧って鉄だし。重さがかなりあるって話を聞いたことがあるし。
「そっか!」
「エルザ!何か軽い服に換装できないの!?」
「わかった。換装!!」
ルーシィさんとシャルルが言う。エルザさんは砂に埋もれて何に換装したのかわからないけど・・・とにかく換装したみたいだ。
「バルゴ!!どう!?」
「ダメです。まったく動きません」
しかしバルゴさんはそれでもエルザさんを持ち上げることができないようだ。流砂ってそんなに身動きができないものなのか!?
「ルーシィさーん!!シリルー!!あれ?シャルルも?」
「ぷいっ」
すると俺たちがさっきまで向かっていた方角からウェンディとフリードさん、それにハッピーとセシリーが走ってくる。
シャルルはそれを見て顔を背ける。まったく・・・シャルルは素直じゃないなぁ・・・心配なら心配だ、って言えばいいのに。
「なんでここにいるの~?」
「心配でついて来ちゃった」
「そっちは四人とも無事みたいね」
セシリーの質問に俺が答える。ルーシィさんはウェンディたちの無事を確認して安心する。
「エルザ!!どうしたのさ!?」
「なんか埋もれてるよ~!?」
ハッピーとセシリーはエルザさんが流砂に捕まっているのを見て驚く。
ウェンディはシャルルがついてきてくれたことに喜んでいるみたい。よかったね、ウェンディ。
「それがね・・・」
「流砂に捕まって動けなくなったの」
ルーシィさんと俺で簡潔に事態を説明する。するとフリードさんはさっき走ってきた方角を見る。
「まずいなぁ・・・ここはもうすぐ、砂嵐に飲み込まれる!」
「えぇーー!!?」
「砂嵐!?」
ルーシィさんと俺は驚いてそちらを見る。するとその先には確かに大きな砂嵐がこちらに向かってきているのがわかる。これってまずくね!?
「私に構わず、お前たちは行け!!」
エルザさんはそう言うけど・・・そんなことできるわけないじゃないですか!?
「何言ってんのよ!!」
「そんなことできませんよ!!」
「不思議です、この重さ。まるで鉄の塊のような」
エルザさんを持ち上げようとしているバルゴがそう言う。鉄の塊・・・
「エルザさん・・・もしかして何か重いものを身に付けてるとか・・・」
「重いもの・・・あぁーー!!」
「何!?何かわかったの!?」
ウェンディが言った言葉で俺は何がそんなに重いのかようやくわかった!!
「芝居の道具!!」
「あ!!」
「そういえば・・・」
俺が答えを言うとルーシィさんとシャルルは納得する。するとエルザさんは申し訳なさそうに言った。
「すまん・・・実はずっと握ったままなんだ・・・」
「えぇー!?」
「そりゃあ重いわ・・・」
驚くハッピーとあきれるルーシィさん。
「しかし、これがなければ舞台ができん!!」
力強く言うエルザさん。なんでそんなに芝居がしたいんだ!!
「今回の仕事は、舞台の助っ人じゃないから!!」
「というかエルザさんは仕事に来た訳じゃないですからね!!」
ルーシィさんと俺がエルザさんに言うとエルザさんはさめざめと涙を流しながら・・・
「うぅ・・・すまない・・・私の思い出・・・」
芝居の道具を離したようだった。するとバルゴさんが砂煙を巻き起こしながらエルザさんを救出する。思い出は重かったんですね。
「私の心のよりどころが~・・・」
「あとで掘り出しゃいいじゃない!!」
「お仕置きですね」
エルザさんはバルゴさんにお姫さま抱っこをされながら涙を流し、ルーシィさんはそれに突っ込みを入れる。
エルザさんって真面目そうで意外とアホなところがあるよな・・・実は天然なのかな?
「というか~!!もう砂嵐がすぐそこに来てるんだけど~!!!」
セシリーの声で俺はようやく今の状況を思い出す。すぐ目の前に大きな砂嵐が来ている!しかもなんか叫んでるような音まで聞こえるんだけど!?
「もう逃げる暇がないわね!?」
「あれに飲み込まれたら、二度と出ることは不可能だ」
「えぇー!!」
二度と出ることのできない砂嵐・・・呪いの砂嵐か!!おとぎ話か何かかと思ってたけど、本当にあったんだ!!
「わぁ!!」
「どうしよう~!!」
ハッピーとセシリーが慌ててその場で飛び回る。するとウェンディが
「私が・・・なんとかしてみます!!」
そういって砂嵐に向かって走り出すウェンディ。どうするって、どうするんだ!?
「ウェンディ・・・」
心配そうに見つめるシャルル。
「天竜の、咆哮ーー!!!」
ウェンディが最大パワー(と思われる)天竜の咆哮を放つ。すると呪いの砂嵐の顔が徐々に癒されていき・・・消滅した。
「呪いの砂嵐が・・・消えた」
「すげぇ!!」
「やったー!!」
「ウェンディ~!!」
「すごーい!!」
「えへへっ///」
俺たちがウェンディを褒め称えると、ウェンディは照れたようにもじもじと体を動かす。何これ!?めっちゃかわいい!!
「ふっ・・・」
シャルルはそれを見て、少し成長したウェンディに感心しているようにも見えた。
「それじゃ!!オニバスに向かって!!」
「レッツゴー!!」
ウェンディとセシリーがそういって手をグーにして突き上げる。なんかかわいい上にかなり成長したような気がする!!
「行きましょ!」
「そうだな」
「仕方ないわね」
「行きましょ行きましょー!!」
俺たちもウェンディのあとをついていくように歩き出す。
「待ってくれ・・・私の思い出を~・・・」
ちなみにエルザさんは芝居の道具が埋もれているところを必死に掘り起こしているのがとても印象的だった。
オニバスの街にて・・・
ようやくオニバスの街に着いたー!!(エルザさんの思い出はバルゴさんが掘り起こしました)
着いたのはいいんだが・・・
ワイワイガヤガヤ
「どうも、ありがとうございます」
俺たちはウェンディの仕事の依頼人であるラビアンさんが団長を務める劇団の劇場まで来たのだが・・・入り口には長い行列ができているし、ラビアンさんも元気そう・・・どうなってるんだ?
「なんで元気なの?」
「心も体もボロボロだったんじゃ・・・」
ハッピーとセシリーがそう言うとラビアンさんは
「役者たちと仲直りして、舞台ができるようになったんです。お客も大入り!ありがとうございます!!」
まんべんの笑みでそう言った。
「そんな・・・何のために苦労してたどり着いたのよ・・・」
「せっかく苦労して掘り出したというのに・・・」
「オイラ・・・ダメ・・・」
「僕も・・・もう限界・・・」
ルーシィさん、エルザさん、ハッピー、セシリーが次々に地面に倒れ出す。まさかそこまでショックを受けるとは・・・一番残念なのはウェンディだと思うんですけど?
「うっ!」
「ん?」
「え?」
今度はフリードさんが口を押さえる。その顔は真っ青だ。
「羽魚を食べ過ぎたせいで・・・今になって・・・気分が悪くなってきた・・・」
あんなの食べたら確かに気持ち悪くなりますよ・・・というかよくここまで持ちましたね。
「はぁ・・・あ!いかん・・・立ってられない・・・」
「はわわわわわ・・・」
そういってフリードさんも倒れる。ウェンディはそれを見て大慌てしている。
「お~い・・・」
「ナツさん!」
すると今度はナツさんがこちらに歩いてくる。しかしその足取りはフラフラしていて今にも倒れそうだ。
「やっと線路が直って・・・たどり着いたんだ・・・でも・・・ずっとオニバスとマグノリアを行ったり来たりして・・・もう・・・ダメ・・・」
「あぁ・・・」
ナツさんも力尽きて倒れる。すると
「ちぇっ!」
ラビアンさんが舌打ちをしてこちらを見下ろす。その顔はさっきまでとは大違いだ。
「態度変わった!!」
「何か黒い顔してるぞ!!」
「こんなところで寝られちゃ営業妨害だ。君たち!!」
「「はいっ!?」」
ラビアンさんはこちらを指差す。
「こいつらを全部片付けてくれ。大仕事だが・・・報酬はちゃんと払う」
「「えぇー!!?」」
ラビアンさんは黒い笑顔でそう言った。
夕方・・・
「はぁ~あ・・・」
「ふぅ~・・・」
俺とウェンディはようやく全員を運び終えて一息つく。だがそれはどちらかと言うとため息のような感じだった。
「これが初めての大仕事だなんて・・・」
不満そうなウェンディ・・・無理もない・・・俺だってなんだが納得できないもん。
「いいんじゃない。みんなあなたのことを心配してたけど、むしろあなたがみんなの役に立ってるわ。これも立派な仕事よ。胸を張っていいと思うわ」
「そうかな・・・」
するとシャルルがウェンディにそう言う。ウェンディはどうも納得のいかない様子だけど・・・ここは任せるか
「えぇ!!私はそう思う」
「うん。そうね!」
ウェンディは伸びているナツさんたちを見て笑顔になる。確かに最後はこんな形になったけど、ここに来るまでの道のりでウェンディはたくさんのことを学んだはずだ。それはきっとこれからの財産になっていくんだろう。
俺もこれからウェンディと共に道を歩んでいくために、もっともっと成長しよう!!
だから俺たちのことを、見守っていてくれ。グランディーネ!!ヴァッサボーネ!!
「次は一緒に仕事に行こうね!!シリル!!」
ウェンディが笑顔で俺に言ってくる。だから俺も笑顔で返す。
「もちろん!!一緒に頑張ろう!!」
俺たちはそう言い、沈んでいく夕日を眺めていた。
後書き
いかがだったでしょうか。個人的にこの話のウェンディの最後に笑った顔がすごく好きです!!次は耐久レースをやらせていただきます。細かく書くか、はしょって書くか決めかねておりますが・・・
次回もよろしくお願いします。
24時間耐久ロードレース
前書き
基本的にシリルとウェンディたちしか出てこない形にしようと思います。基本会話ばかりしてます。
今日はなんと妖精の尻尾名物、耐久ロードレースの日!!なんでこんなイベントがあるんだ?
『COOL!!今年もこのイベントがやって来たー!!妖精の尻尾恒例、全魔導士強制参加の 24時間耐久ロードレース!!実況は私、週刊ソーサラでお馴染み、ジェイソンであります!この一大イベント!COOLでHOTにお伝えしてまいりま~すぅ!!」
なぜか実況のジェイソンさんが一番テンションが高い。それに皆さんすごいやる気満々ですね。
『あぁ!!出ました!!この当ロードレース無敗のタイトルホルダー、ジェット!!クエストではいまいちな活躍も、これでチャラとのう・わ・さ!』
「おい!
『噂ですよ。噂』
ジェットさんは神足っていう魔法で高速走行をできるらしいからね。そりゃあこのイベントだと負けないですよね。
「皆さんすごいやる気だね。シリル」
「そうだね。何かすごい景品でも出るのかな?」
俺とウェンディはそんなことを話している。
「ううん。みんな罰ゲームを受けたくないだけなのよ」
「毎年すごいわよね・・・罰ゲーム・・・」
レビィさんとピスカさんがそう言う。罰ゲームなんてあるのか。どんなのなのかな?
「みんなガキね」
「僕もそれなりに頑張るよ~」
シャルルとセシリーはそんなにやる気はないようだ。
『妖精の尻尾の諸君!知力、体力、共に強くあってこその魔導士だぁ!今日は存分にそのパワーを競いあってほしい』
知力と体力を競い合うって言うけど、今日の競技は・・・
「どう考えてもこれは体力しか必要としてないと思うけど」
「僕もそう思うよ~」
「確かにそうだよね」
「知力は必要ないんじゃないかな?」
耐久ロードレースってことは基本は走るだけだ。どのタイミングで仕掛けるとかもあるかもしれないけど、それは直感的なものだしなぁ・・・
『ルールは簡単!南口公園をスタートしたあと決められたコースを激走し、イボール山を目指せ!
今年はイボール山の頂上にワイバーンの鱗を置いておいた』
ワイバーンの鱗って・・・それ俺たちがこの間ハコベ山で取ってきた奴のことか?そんな使い方しないでくださいよ・・・
『その鱗を取って、24時間以内に折り返してここまで来るのじゃ!脱落は認めんぞ。妖精の尻尾の魔導士たるもの、完走してこそ明日の仕事に繋がるというものじゃ!』
完走は必須か。まぁ頑張るしかないだろうな。
『さらに!多くの魔導士の要望を受けて、新たなレギュレーションを設けた。それが、飛行魔法の禁止じゃ!!』
マスターがそういうとハッピーとエバーグリーンさんがあからさまに嫌そうな顔をする。セシリーたちも翼が使えなくなったけど、まぁ一緒に走れば問題ないよね。
『それ以外の魔法は使用無制限じゃ!』
「それが厄介なのにねえ・・・」
「毎年すごいのことになるわよね・・・」
レビィさんとピスカさんはそう言う。魔法無制限って言われても、俺の魔法もウェンディの魔法も走る上ではまったく意味をなさないから大して関係ないけどね。
『例によって最下位になったものには・・・世にも恐ろしい罰ゲームが待っておるぞぉ!!』
マスターがそう言うと皆さんかなり青ざめる。そんなにヤバイ罰ゲームなのか!?これは何がなんでも回避しなければいけないな。
「マスターは罰ゲームが楽しみなだけよね」
「あの顔見れば一発でわかるわ」
レビィさんとルーシィさんがぼやく。まぁ、最下位にさえならなければいいんだよね?いけるいける!!
「私大丈夫かな・・・?すごく心配・・・」
「あんたは心配しすぎよ」
「四人で頑張れば大丈夫だよ~」
「だね。一緒に頑張ろう!!ウェンディ!」
「うん!!ありがとう!!みんな」
最初は心配してたウェンディだけど、もう大丈夫そうだ。よし!!今回の目標は、最下位回避だ!!
『それでは・・・いよいよスタートだ!!全員、スタートラインについてくれ!!』
ジェイソンさんの指示に従い、俺たちはスタートラインにつく。こういうのは位置取りが重要だ。できるだけ前に行って・・・
俺たちは皆さんに譲ってもらって一番前に陣取ることができた!!皆さん優しくて助かります。
「レビィ!スタート見てろよ!」
「見てる余裕ないよ!?」
ジェットさんがレビィさんに言う。レビィさんは視線を反らしながら返事する。
「かっこいいとこ見せたいのよ」
「ルーちゃんは知らないだろうけど、スタートなんて絶対見られないから」
ウインクして少しからかいぎみにルーシィさんが言うけど・・・スタートは絶対見られないって・・・どういうことだ?
「よぉ~い・・・どん!!」
「どりゃああああああ!」
マスターがスタートの合図をする。それと同時にジェットさんが全速力で走り出す。するとそのあまりの勢いに砂煙が舞い起こった。
「行くぜ!!神足!!」
『スタート同時にぶっちぎったのは、今年もジェ~ット!!』
ジェットさんのあまりのスタートダッシュに俺たちは全員倒れている。なるほど・・・確かにレビィさんが言ってた通り、スタートなんか絶対見れないな・・・
「ね?見られなかったでしょ?」
「納得・・・」
レビィさんとルーシィさんはそんなことを話している。
「すごかったね。シリル」
「あんなのありなの?」
「むしろあれでどうしてクエストはいまいちなの~?」
ジェットさんに感心しているウェンディと立ち上がりながら言うシャルルとセシリー。すると今度は
「うおおおおおお!!」
ナツさんが手に炎を纏い、それを利用して猛スピードで走り出した。
「え!?」
「マジかよ!?」
「見たか俺の秘密兵器!!火竜の鉄拳ブースターだ!!」
驚くルーシィさんとグレイさん。ナツさんは得意気に言いながら加速していく。
「ジェット!!ナツ!!そういうのありかよ!?」
他の皆さんもナツさんとジェットさんを追いかけ走り出す。俺たちもぐずぐずしてられないな。
「行こうウェンディ!」
「うん!ルーシィさん!レビィさん!お先失礼します!」
俺たちは転倒したままのルーシィさんたちの脇をすり抜けスタートする。かなり出遅れちゃったな。
「今日に限ってはみんな敵。気遣い無用だと思うんだけど?」
「早くしないと最下位になっちゃうよ~!」
シャルルとセシリーも一緒に走り出す。この二人はこんな小さいのに、一緒に走るなんてなんか大変だな。
ちなみに俺たちは集団から少し遅れたところに位置している。
しばらく走っていると、前方では魔法合戦が行われていた。
「ビクトマジック、落とし穴!」
「「どわぁぁっ!!」」
リーダスさんの魔法によってできた落とし穴にウォーレンさんとドロイさんが落ちる。あんなのもありなのか・・・なんでもありだな。
「楽勝楽勝~!皆落ちろ~!」
余裕そうなリーダスさん。しかし・・・
ドガッ
「うわぁぁぁ!!」
「「あ!!」」
リーダスさんは後ろからやって来たガジルさんに自分で作った穴に落とされてしまう。
「呑気に絵なんか書いてるからだ!!」
ガジルさんはそういって走り去っていく。
「なんかロードレースっていうより・・・」
「魔法合戦みたいだね」
俺とウェンディはそれを見ながらそう思う。またしばらく走ると・・・
「アイスメイク、床!!」
「「「「「うわっ!!」」」」」
今度はグレイさんが地面を凍らせ、それによって皆さん滑って転んでしまう。
「悪く思うな」
グレイさんは転んだ皆さんを横目に悠々と滑っていく。さすが氷の魔導士!氷の上には慣れているのか。
「きゃっ!」
「うわっ!」
「ひゃっ!」
ちなみにウェンディたちはその氷によって滑り転んでしまう。
「大丈夫?」
「うん・・・ありがとう」
俺は転んだウェンディたちの手を差し出す。ウェンディたちはゆっくり転ばないように立ち上がるけど・・・
「さ・・・さぁシリル。行こう!」プルプル
「ウェンディ・・・あんた今にも転びそうよ」プルプル
「シャルルも人のこと言えないよ~」プルプル
「お前らなぁ・・・」プルプル
立ってみたけど俺たちは足をプルプルさせて立っている。
「どわぁっ!!」
するとグレイさんがエルフマンさんに飛ばされて逆方向へと滑っていく。お?これ使えるぞ!!
「ウェンディ!!トロイアして!!」
「え?あ!うん!!トロイア!!」
ウェンディのトロイアによってバランス感覚を養って・・・よし!!
「転ぶなよ?そーれ!!」
「「「きゃあああ!!」」」
俺はウェンディたちを押し出すとウェンディたちはすごいスピードで氷の上を滑っていく。
俺も追いかけるか。
「皆さんすみません。お先に失礼します」
「「「そんなのありか!!」」」
俺もトロイアによってバランスを得たのでスイスイと氷の上を滑っていく。しばらく滑ると氷の道が終わって普通の山道へと戻る。ウェンディたちはそこで待っていてくれてた。
「やっと来た!行こうシリル!」
「おっけー!」
俺たちは四人で再び走り出す。しかしナツさんとジェットさんの姿は全然見えてこないな。どんだけ速いんだよあの人たち。
しばらく走っていると・・・
「「「「ハァハァハァ」」」」
俺たちはとりあえず誰かに邪魔されることもなくゆっくりと走っていく。
まぁ、俺たちは足は速くないから後ろからいろんな人に抜かれてはいるけど・・・最下位では今のところないかな?
「ずいぶん走ったわね」
「頂上にはあとどれくらいかな~?」
「う~ん・・・」
シャルルとセシリーが質問してくる。俺はイボール山を見るけど・・・まだ全然距離があるような気がする。
「あと3、4時間ってところじゃない?」
「えぇ・・・」
「ずいぶんあるわね・・・」
「なんだか僕疲れちゃったよ~・・・」
がっかりしたように言うウェンディたち。俺も正直疲れてきたし・・・
「きゃああああああああああああ!!!」
ビューン
「「「「!?」」」」
俺たちが走っているとその脇をすごいスピードで走り去っていく人がいた。今の声って・・・
「ルーシィさん?」
「すごい速くなかった?」
「もしかして星霊に運んでもらってるんじゃ~?」
「あんな速さで走られたら怖いわよ・・・」
「「「う~ん・・・」」」
あんなに速く走れる星霊って誰かな?ロキさん?いや・・・ロキさんならルーシィさんのことを考えて走るか。
となると・・・バルゴさんだな。あの人なんかバカっぽいから「全速前進!!」とか言われたら力加減しないで走っていきそうだもん。
「あら?あらら~!?」
すると今度はジュビアさんの声が聞こえる。
「今の・・・ジュビアさん?」
「でもどこにもいないよ~?」
俺たちはジュビアさんの声がした方を見るけど・・・そこには誰もいない。まさか・・・
「さすが水の使い手。水に自分を浸して癒されている内に・・・」
「自分が水に溶け込んでしまったわけか・・・」
「「えぇーー!!?」」
俺たちの説明に驚くウェンディとセシリー。つまりジュビアさんは今、川と一緒に流されているわけか・・・
御愁傷様です・・・
「ジュビア、ここにいなかったか?」
今度は後ろからグレイさんがやって来る。シャルルは無言で川の方を指さす。
「なっ!?マジ!?」
「グレイ様ー!!?」
驚いたグレイさんとグレイさんを呼ぶジュビアさん。もう!しょうがないなぁ!!
「ウェンディ。ちょっと待ってて」
「何するの?」
俺はウェンディたちを待たせると川に水をいれる。確かジュビアさんの魔力は・・・
「見つけた!!ふっ!!」
ザバァッ!!
俺が魔力を川の水に込めると少し離れたところで水しぶきが上がる。そこには水から分離したジュビアさんが立っている。
「ジュビア!!」
「グレイ様~!!」
ジュビアさんの名前を呼ぶグレイさんとグレイさんに駆け寄っていくジュビアさん。もういいよな?
「それじゃ、俺たち先に行きます」
「失礼します」
「あんたたちはゆっくり来なさいね」
「じゃあね~」
俺たちは二人に背を向けて走り出す。
「あ!!おい!!ちょっと待て!!」
「グレイ様!疲れた体に冷たいお水でも!!」
後ろからそんな会話が聞こえてくる。まったくお熱いようで。
「さっきのどうやったの?」
ウェンディが聞いてくる。
「ジュビアさんの魔力の位置を探してそこに魔力を込めてみたら分離できた」
「そんなこともできるんだ!!」
「シリルは水ならなんでもできるわね」
「水ならね~」
説明する俺と驚くウェンディ。シャルルとセシリーも誉めてくれてるみたいだけど・・・なんかバカにされてる気もする・・・
日も暮れてきて・・・
辺りはすっかり真っ暗になってしまった夜。俺たちはようやくイボール山の頂上にたどり着いた。
「やっと着いたわね」
「長かった~」
シャルルとセシリーは半分走り終えたことに一安心のようだ。さて、それでは鱗を取って折り返しますか!!
俺とウェンディはワイバーンの鱗を二枚ずつ取ってそれぞれシャルルとセシリーにも渡す。
シャルルとセシリーは微妙な高さに鱗があったせいで届かないみたいだったし、翼も使えないからしょうがないよな。
「さてと・・・下ろうか」
「そうだね」
「ケガしないようにね」
「行っくよ~」
俺たちはゆっくりと下り始める。行きの道を戻っている訳なので途中で遅れている人たちとすれ違う。
「ハァハァハァハァ」
するとハッピーもゆっくりと頂上に向かって走っているのが見える。あいつ一人で頑張ってるな。
「頑張れハッピー!!」
「ありがとうシリル!」
俺はすれ違い様にハッピーに声をかける。ナツさんが鉄拳ブースターで先に行ったから一人で頑張るしかないからな。最下位にだけはなってほしくない。
むしろあいつが優勝したら面白いことになるんじゃないかな?シャルルもハッピーに惚れちゃうかも!
「それはないわ」
「ないんですか・・・」
「え?何が?」
「何の話~?」
シャルルは俺の心を読んだようでその可能性を否定する。ウェンディとセシリーは何のことかわかってないけど。
「ぬおおおおおおおおお!!」
ビューン
するとまたも後ろからすごいスピードで走り去る人がいた。いたけど・・・
「あれ?ナツさん?」
「なんで私たちの後ろから来たのよ」
「どこかで休んでたのかな?」
「優勝狙ってたら休むわけないでしょ」
大方、燃料切れして鉄拳ブースターができなくなったけど、どこかで燃料補給して走り出したんだろう。
その後も俺たちはゆっくりゆっくりとゴールに向かって走っていく。この調子でいけば最下位はないだろう。
罰ゲームは誰になるのかな?
日が明けて・・・
皆さんも疲れてきたみたいで少しずつペースが落ちてきているみたいだ。俺たちはペースの落ちてきた人たちを交わして順位を上げていく。
「案外いい順位でゴールできるんじゃない?」
「10位以内に入れたら嬉しいな~」
「そうだね!」
ウェンディたちはいいペースで走れているからかそんなことを言い出した。確か前にいるのは・・・
ジェットさん、エルザさん、ナツさん、グレイさん、ガジルさん、ルーシィさん、エルフマンさん、マカオさん、ワカバさん、カナさん、かな?ちょうど10人くらい前にいるなぁ。ベスト10は難しいかな。
「うおおおおおおお!!」
すると後ろから誰かが砂煙を巻き上げて走ってくる。俺はチラッと後ろを向くとそこには・・・
「ジェットさん!?」
「え!?」
「なんで!?」
「一位じゃなかったの~!?」
必死の形相で走っていくジェットさん。あまりの勢いに砂煙が巻き起こっている。
「うおおおおおおお!!」
「あぶない!!水竜の盾!!」
ジェットさんの砂煙で吹っ飛ばないように盾を作る俺。おかげで全員飛ばされなくてすんだ。
テクテクテクテク
するとジェットさんのあとを追うようにゆっくりと俺たちの前を走っていくハッピー。あいつ・・・意外と速いな!
「あら?先に行かれちゃった」
「別にいいじゃ~ん」
「そうね。最下位にさえならなければ」
「別に問題ないよ」
ウェンディはハッピーを見送りながらそういって俺たちは別にいいよと言う。俺たちも完走目指して頑張るか。
再び俺たちは走り始めたのだが・・・
「いたたたた・・・」
「なんでジェットの奴が後ろから来るんだよ・・・」
前の皆さんはさっきのジェットさんの走りによって飛ばされてしまい、どこかぶつけてしまったようだ。
俺たちはその前を申し訳なく思いながら通りすぎる。あれ?これって本当にトップ10入っちゃうんじゃないか?
俺はそんなことを思いながら走っているとマグノリアの街にようやく到達する。前方ではものすごいスピードのトップ争いが繰り広げられていた。
「皆さん速っ!!」
「ジェットさんも追いついたみたいだね」
「あんたたちよく見えるわね」
「僕ハッピーしか見えないんだけど」
現在トップ争いはナツさん、エルザさん、グレイさん、ガジルさん、ジェットさんの五人。そこから少し遅れたところにハッピー、またそこから遅れたところに俺たちが着いている。
ということは!
「セシリー!トップ10には入れてるみたいだぞ!」
「本当!?やった~!!」
「私たち・・・一番真面目に走った気がするわ」
「ハッピーもね」
そういえば皆さん魔法をたくさん使って走ってたけど・・・俺たちはウェンディのトロイアくらいか?
真面目に走るのが一番効果的なのかもしれない。
俺たちは前の五人を見ながら走る。すると
「「あ!!」」
「どうしたの?」
「何~?」
俺とウェンディは思わず驚いてしまう。なんとトップ争いをしていた五人がゴール直前で大クラッシュしてしまった。皆さん変に絡まってしまいすぐには動けそうにない。
すると・・・
『おっと!ここでCOOLにやって来たのは!?』
ジェイソンさんの声が聞こえてくる。ここでやって来たのはあいつしかいないだろ!!
『ハッピーです!!ハッピーが来た!!』
ハッピーは息を乱しながらも懸命に走り続け
『さぁさぁゴールは目前!!』
そして・・・
「ええい!!」
ハッピーは一等でゴールテープを切った!!
『GOLA!!今年の24時間耐久ロードレースの優勝は、ハッピーだぁ!!今ここに歴史は大きく塗り替えられたー!!』
ハッピーの優勝にたいして観客たちからの拍手と歓声が送られる。
「あいつ本当に優勝しちゃったよ!!」
「ハッピーすごい!!」
「オスネコのくせにやるじゃない」
「ハッピーおめでとう!!」
俺たちもハッピーのゴールに走りながらも拍手を送る。
「ウソだろ・・・」
「やられたな・・・」
「猫だと・・・」
意気消沈しているナツさんたちはゴールの目の前で足を止めたままだ。てことは?
「よしセシリー!二位取ってこい!!」
「本当!!やった~!!」
「シャルルも行ってきていいよ!」
「そう?じゃあ」
俺とウェンディはセシリーとシャルルを先に行かせてナツさんたちの前を通り過ぎる。
「シリル!?」
「ウェンディ!?」
「シャルル!?」
「セシリー!?」
ナツさんたちは俺たちが通りすぎるのを見て驚く。
「「「やった(~)!!」」」
「ゴール!!」
セシリー、シャルル、ウェンディ、俺の順番でゴールに飛び込む。
『ああっと!!二着セシリー!三着シャルル!四着ウェンディ!五着はシリル!トップ3は妖精の尻尾きってのプリティーアニマルが独占だ!!』
俺たちがゴールすると歓声がより大きくなる。それにトップ3が猫三匹、しかも魔法を一切使わないでの優勝だからな。すごすぎるぜ!!
「「「「「「「「「「うおおおおおおお!!」」」」」」」」」」
すると俺たちがゴールしたあとから皆さんものすごい勢いでこちらへとやって来る。
「速っ!?」
「皆さんそんなに罰ゲーム受けたくないんですね」
すると皆さんはゴール手前で立ち止まっているナツさんたちを踏みつけてゴールする。
『なんということだ!!魔導士軍団、この機に乗じて一気にGOLA!!ちゃっかりエルザもGOLAINだぜ!』
エルザさんはいつのまにかゴールインしてる!!あと走りきってないのはナツさん、グレイさん、ガジルさん、ジェットさんの四人!
「グレイ様!早く早く!」
「ナツー!!」
「みんな早くー!!」
ジュビアさんたちの声を受けてグレイさんたちは立ち上がる。
「しまった!」
「やべぇ!」
「早くじゃねぇだろお前ら!!」
そんな中一番にゴールに飛び込もうとしたのは
「冗談じゃね!神速!!」
ジェットさんが自慢の俊足でゴールに飛び込もうとする。しかし、
ガシッ
そのジェットさんにナツさんたちが飛び付いて四人同時にゴールする。
『GOLAGOLAGOLAGOLA!!四人同時のGOLAINだ!!』
「「「「何!?」」」」
『今年は、大番狂わせ!!COOLな上にCOOLな決着を迎えました!最下位はなんと!ナツ!ガジル!グレイ!ジェットの四人です!!罰ゲーム、決定!!』
ジェイソンさんの声に四人は青ざめている。その四人にマスターは歩み寄る。
「覚悟は良いか?」
「ウソだろじっちゃん!」
「じーさん!せめて敗者復活戦とかよぉ!」
ナツさんとグレイさんがマスターにそう言うが、
「いか~ん!!」
聞き入れてもらえるはずがない。
「無様なことを言うでない!魔導士たるもの、仕事のしくじりと同じ!やり直しはきかんのだ!!ワシの罰ゲームに従ってもらうぞ!!ニカッ!!四人でな」
「わーったよ!!なんでもやってやるぁ!!言ってみろよ罰ゲーム!!」
ナツさんが覚悟を決めてそう言う。
「ほほぅ!!いい覚悟だ!!では今年の罰ゲームを発表する!!これじゃ!!」
そういってマスターが取り出したのは・・・週刊ソーサラ?
「週刊ソーサラ?」
「それがどうした?」
「お前たち四人は、再来週発表の週刊ソーサラにて超恥ずかしいグラビアを飾るのじゃ!超豪華堂々20ページ、一週間密着取材付きじゃ!!」
「「「「なぁぁぁっ!!?」」」」
マスターの言葉によってナツさんたちは青ざめる。これはすごい罰ゲームだ!!
「超恥ずかしいグラビアって・・・」
「保存用も観賞用も買いますわ。グレイ様」
「買わんでいい!!」
ジュビアさんはグレイさんのグラビアで大喜びだな。
「それでは皆さん!!これからさっそく、衣装選びと参りましょう!!」
ジェイソンさんがそういって近寄ると四人は目にも止まらぬ速さで走り去る。
「あぁ!!お待ちをーー!!」
「誰が待つかーー!!」
四人とジェイソンさんはもうスピードで走り去る。あんなに走ってまだ走れるのか・・・体力が有り余ってるなぁ。
「なんかこういうのって、すごく楽しいね!!」
ウェンディが俺に笑顔でそう言う。
「うん!楽しかったね!!」
俺もそれに笑顔で返す。いろいろあって疲れたけど、本当に楽しかった。今年はハラハラドキドキだった耐久ロードレースだったけど、来年は俺も優勝目指して頑張ろうかな!!
後書き
いかがだったでしょうか。基本的にシリルとウェンディが登場している話にしてみました。
次はウェンディ好きにはたまらないスッピンオフ漫画、ブルーミストラルをやってみようと思います。うまくできるか不安しかありませんが頑張ります!次回もよろしくお願いします。
出発
前書き
この物語を書き始めて1ヶ月が経ちました・・・これからも頑張りますので皆さんよろしくお願いしますm(__)m
そろ~りそろ~り・・・
ズルッ
「きゃっ!」
「危ね!」
ガシッ
俺はお酒のビンに足を滑らせてしまったウェンディの腕を掴む。
「ありがとうシリル」
「ううん。ケガはない?」
「大丈夫」
俺たちは小さな声で話をしている。理由はギルドの皆さんは現在眠っているからだ。
「・・・ウェンディ、あんたそんなんで本当に大丈夫なわけ?」
「やっぱりナツくんたちも一緒の方がいいんじゃない~?」
シャルルとセシリーがウェンディに向かって言う。二人はウェンディのことが心配なんだろうな。
「シャルルとセシリーの心配性!大丈夫だってば!」
「どこがよ」
「僕心配性なんて初めて言われたよ~」
「だろうな」
ウェンディは手をバタバタと振り回しながら言う。シャルルの言う通り俺の目から見ても大丈夫なようには見えないんだが・・・
「これからは大丈夫なの!!今回の依頼は私とシリルの二人でやり遂げてみせるんだから!!
いつも失敗したり助けられたりばっかりだけど・・・胸を張ってこのギルド・・・妖精の尻尾の魔導士ですって言えるようになりたいの!」
ウェンディが想いを強く込めた声で言う。
「だから・・・」
「ウェンディ?」
「シャルルとセシリーもそばにいてくれる・・・?」
涙目になりながら言うウェンディ。実は今日は俺たちが妖精の尻尾に入って初めて二人だけで行く仕事の日なのだ。ウェンディとは化猫の宿にいた頃にしょっちゅう一緒に仕事には行っていたが、どれも簡単な依頼だった。
今回は初めて二人だけで大きな仕事に挑戦するからウェンディが不安になるのもよくわかる。
シャルルとセシリーもその気持ちを察してか・・・
「バカね!どこにだって一緒に行ってあげるわよ!」
「もちろんだよ~!ウェンディ~!」
二人はウェンディにやさしくそう言う。
「俺も一緒にいるからさ、だからそんな泣きそうな顔するなよ」
「し・・・してないよ!!」
「してたわよ」
「少し泣いてたけどね」
「うるさいよ!!」
俺がウェンディに言うとウェンディは顔を赤くしながら反論する。
「それじゃ・・・行こうぜ!」
「うん!あ!その前に・・・」
「「「?」」」
ウェンディはギルドから出たところで立ち止まって振り返る。なんだ?忘れ物か?
「いってきます!!」
ウェンディはギルドに向かっておじきをする。そういうことか。しっかりしてるな。
「シリル!行こっか!」
「うん!行こう」
ウェンディが俺にそう言う。俺もギルドに一礼してからウェンディと一緒に歩いていく。
さぁ!ウェンディとの初めての大仕事!絶対成功させるぞ!!
列車の中にて・・・
「切符なくすんじゃないわよ」
「わかってるってば!!」
「あれ~?僕が切符なくしちゃった~」
「マジかよ!?」
今は俺たちは目的地であるナナル村へと向かう列車に乗っている。その列車の中でウェンディは今回の依頼書を眺めている。
「ウェンディ、それ今回の依頼書?」
「うん!」
「どんな依頼なの~?」
セシリーがウェンディに依頼の内容を聞く。実は俺も依頼の内容は知らなかったりする。ウェンディが「これ一緒に行こう!!」って言うのでついてきたのでこの依頼の内容はウェンディしか知らなかったりする。
「うん!依頼書にはこう書いてあるの![ナナル村のリュウといいます。村で起こっている怪現象を解決するため力を貸してください。ただし、滅竜魔導士にかぎる]って書いてあるの」
「滅竜魔導士にかぎる・・・か」
いったいなんでそんな魔導士の限定をしてるんだ?滅竜魔導士限定ってことは普通に考えればドラゴンが何か関係してるんだろうけど・・・なんか引っ掛かるな・・・あれ?そういえば依頼人の名前、リュウって言うのか。リュウと竜・・・なんか関係があったりするのかな?
「そんなわけないか・・・」
たまたま依頼人の名前がリュウって言うだけで深い意味はないだろう。うん、きっとそうだ。
「怪現象って何かしらね?」
「怖い系だったらやだなぁ・・・」
「お化けとか~?」
「怪現象って言うならそういうのもあるかもな。夜後ろを歩いていると、後ろから血まみれの・・・」
「やめてよシリル!夢に出てきそうだから!」
「冗談だよ冗談」
俺たちはナナル村の最寄りの駅に着くまでそんな話をして列車の中を過ごした・・・
森の中にて・・・
ガサッガサッ
「お・・・おいウェンディ・・・」
「な・・・何?」
俺は少し前を歩いているウェンディに声をかける。ウェンディは少し息を乱しながら返事をする。
「これ・・・もう道ってレベルじゃないんだけど!?」
「どう考えても草の中を歩いてるよ~!!」
「本当にこっちであってるの!?」
そう。セシリーの言う通り今、俺たちは草の中・・・というよりも雑草林のようなところを歩いている。まるで道なんかどこにもなくてただただ草を掻き分けて歩いている。
「あってるよ!!・・・たぶん・・・」
「なんで目をそらすのよ!?」
「ちょ!!不安になってきた!!地図を俺にも見せろ!!」
「ダメだよ!!シリルに地図なんか見せたらますますワケわかんなくなっちゃうよ!!」
「何ー!?」
「シリルは方向音痴だからね~・・・」
ウェンディも道があっているのか自信がないみたいだった。俺はウェンディに地図を見せてもらおうとしたが断られてしまう。しかしセシリーの奴失礼だな!俺は方向音痴じゃなくて道を曲がるタイミングを間違えているだけだ!!
「でも方角はあってるはずだもん!!」
そういって走り出すウェンディ。ちょっと!?
「待てウェンディ!!」
「走ると危ないわよ!!」
「僕追いかけてくる~!!」
そういって翼を出してウェンディを追いかけるセシリー。あ・・・あれ?
「最初から空飛べよ!!」
「私たちに翼があるの忘れてたわ・・・」
シャルルは俺を掴んで空へと飛び立つ。それからウェンディとセシリーを追いかけていくと、徐々に木々がなくなっていく。
「あれ?もしかしてこれ・・・」
「出れるんじゃない!?」
俺たちはそのまま前に進んでいくと雑木林を抜け、崖へと出る。
その下には大きな村のようなものが見えていた。
「もしかしてあれが」
「ナナル村?」
「そうみたいだよ~」
俺とシャルル、セシリーは見えている村を指さして話す。
「ほ・・・ほら!道間違ってなんかなかったでしょ!!」
「あんた迷ってたじゃ・・・」
「ごめんウェンディ!俺が悪かった!!」
「ウェンディが道を間違えるはずないよね~!僕信じてた~!!」
「あんたらねぇ・・・」
胸を張って言うウェンディとそれに手を合わせて謝る俺。セシリーはウェンディに飛び付いて言う。シャルルは俺とセシリーにあきれてたみたいだけど・・・目的地につけばいいんだよつけば!!
「さっそく降りてみよう!」
「だな」
俺たちはナナル村へと降りていく。
ナナル村にて・・・
「ねぇ見て!ロマンチックなところだね」
「あんた、迷ってたくせに・・・」
俺たちはナナル村へと到着して村の中に入ろうとしているところである。
「ここでどんな怪現象が起きているのかな?」
「あんまりめんどくさい奴じゃないといいな~」
俺とセシリーはそんな会話をしている。ウェンディが村の中に入ろうとすると突然・・・
ドン
村の中から何かがウェンディを襲う。
「「「ウェンディ!!」」」
なんだ!?いったい何が!?俺はウェンディを襲ったものが飛んできた方を見るとそちらから手に魔力を込めている少女がこちらにジャンプしている。
まさかウェンディを攻撃するつもりか!?
「やらせるか!!」
「「「シリル!!」」」
俺はウェンディの前に両手を広げて立つ。すでに目の前に少女が来ていたためとてもじゃないが魔法をやる時間がない!だったらウェンディは俺が守らないと!!
少女の攻撃が俺に当たる直前
ぽひゅぅ~
「・・・へ?」
少女の手に込められた魔力はあまりにもむなしい音を残して消える。な・・・何が起きた?
「やだぁ~!なんで失敗しちゃうの!?だから攻撃魔法っ苦手なの~。っていうか」
少女は俺たちの方を指さす。
「あんたら子供じゃん!!」
「あんたもね」
「人のこと言えないよ~」
その少女は俺たちにそう言うが、シャルルとセシリーが突っ込む。見た感じ・・・俺らと同じくらいかな?
「ほんっとーごめんね~!!最近村で変なことばかり起きるから警戒してたんだ!」
「気にしなくていいよ」
「私たちなら大丈夫ですから」
少女は俺たちに手を合わせて謝る。それはもう一生懸命に、頭を何回も下げる。そこまでしなくていいんじゃないかな?俺たちも紛らわしかったかもしれないし。
「ああああ・・・どうしよう・・・なんてお詫びをしたらいいのか・・・」
「き・・・気にしないでくれるのが一番ありがたいんだけど・・・」
今度は頭を抱えて震え出す少女。そこまで気にされると俺たちもなんか申し訳なくなっちゃうから・・・
「・・・そうだ!」
すると少女は何か思いついたようで立ち上がる。すると
「えいっ!!」
少女は手に魔力を込めるとその手から空似向かって花を咲かせてみせる。
「わぁっ!きれーい!!」
「花の魔法か!なかなかきれいなもんだな」
ウェンディと俺は感想を述べる。少女はそれを見てようやく明るい表情になった。
「おどかしちゃったおわび!わたしヨシノっていうの。12歳だよ 」
「俺はシリル。こっちは相棒のセシリー」
「よろしくね~」
ヨシノちゃんが自己紹介するので俺たちもそれに答える。
「私はウェンディです。こっちはシャルル。同い年・・・ですね!」
今度はウェンディとシャルルが自己紹介する。するとヨシノちゃんはウェンディの一部をじっと見つめる。
「同い年か・・・でも私のほうがお姉さんみたいね!」
「身長だよね?身長のことだよね?」
ウェンディは胸を押さえてそう口にする。ヨシノちゃんもウェンディとたいして変わりないと思うぞ?
「ちなみに俺は13歳だ。俺の方が年上だね」
「え?そうなの?」
ヨシノちゃんは俺をじっと見つめてくる。すると手で俺との身長を比べる。
「でも私のほうがお姉さんみたいだよ?」
「余計なお世話だ!!」
あまりの物言いについ怒ってしまった。確かにヨシノちゃんの方が大きいけど・・・本当に少しだけだからな?俺はこれからもっと大きくなるからな?お前もいずれ抜くからな?
「私ね、村で唯一の魔導士なの。戦闘は苦手だけど物を変化させるのは得意なんだ♪」
得意気に言うヨシノちゃん。ヨシノちゃんはまた手のひらに花を作ってみせる。なんともきれいな魔法だな。
「素敵な魔法ですね!」
「そうだね」
「ねぇ、ウェンディとシリルはどうしてこの村に?」
ヨシノちゃんが質問してくる。ちょうどいいや。依頼人がどんな人なのか教えてもらおう。
「俺たちはだな・・・」
「この村のリュウって人によばれて・・・」
「リュウ?」
俺たちが言うとヨシノちゃんは不思議そうな顔をする。どうしたんだ?
「そんな人、この村にはいないけど?」
「「「「え!?」」」」
依頼人がいない!?じゃあこの依頼はいったい誰が・・・?
俺たちは顔を見合わせて考える。すると
「・・・ねぇ・・・その人とはどういう関係なの?」
ヨシノちゃんが怖い顔をして詰め寄ってくる。
「俺たちは依頼で「卑猥!?」違うわ!!」
「お・・・お金をもらって「お金!?」」
あぁ・・・もう、だめだ・・・たぶんすごい勘違い発言が出るぞ・・・
「あんたたち!悪い男に騙されてるわよ!!」
「えええええ!?」
「いや・・・そうじゃなくて・・・」
ヨシノちゃんにそんなことを言われて慌てるウェンディ。俺は事情を説明しようとするがいきなり抱きつかれてしまう。
「いたいけな少女をだますなんて!私がほの男見つけ出してあげる!!」
「そそそそ・・・そんなんじゃないよ~」
「あぁ・・・もうすでにめんどくさい・・・」
ヨシノちゃんに勘違いされてしまった・・・しかもこの子かなり思い込みが激しいようだ。
「ちょうどいいわ。このまま村に入りましょ」コソッ
シャルルが俺たちの服を引っ張りながら言う。
「でも・・・」
「今回の依頼はいつものとは違うんだよ~」
セシリーにそう言われて思い出す。今回の依頼は滅竜魔導士限定だったな。何か特別な事情があって偽名を使わざるを得ないのかもしれない。
「なるほど・・・だったら・・・」
「えぇ。少し村を調べてみましょ」
俺たちがそうやって話していると
「ほら!ウェンディ!シリル!早くおいでよ!」
「わっ!」
「おっと!」
ヨシノちゃんが俺とウェンディの腕を掴んで走り出す。本当に元気な子だな。
「うちの村、年の近い女の子がいないんだよね。ウェンディとシリルが来てくれて嬉しいな!!」
そういって俺たちに笑顔を見せるヨシノちゃん。それを見てウェンディも笑顔になる。なるけど・・・
「俺・・・女の子じゃないんだよな・・・」
喜んでくれてるヨシノちゃんに申し訳ない気持ちが沸き上がってくる。猛烈な罪悪感・・・言ったら心をへし折ってしまいそうで怖ぇぇぇ!!
そんなことを考えながらヨシノちゃんのあとをついていく。途中でウェンディが階段に転びそうになったりして危なかったが・・・二人ともとても楽しそうだ。
しばらく歩いていると前を歩いていたウェンディが突然立ち止まる。どうした?
「ウェンディ?」
「シリル・・・あれ・・・」
ウェンディが何かに気づいて指を指す。俺は指を指された方を見る。そこにはたくさんの人が手を合わせてゾロゾロと歩いている。
「なんだあれ・・・」
「不気味な行列・・・」
「ていうかあの人たちのつけてるお面・・・」
「ドラゴンの形してるね~・・・」
シャルルとセシリーの言う通り、人々がつけているお面はドラゴンの形をしていた。
もしかして・・・あれが今回の依頼に関係のあるものなのか?
後書き
いかがだったでしょうか。しばらくブルーミストラル編をやらせていただきます。
ブルーミストラルのウェンディもかわいいですよね!
次回もよろしくお願いします。
竜の谷
この村で一体何が起きているんだ?
俺たちはしばらくその行列を眺めていると人々は聖火台のような物の前に集まる。
そしてその聖火台に火が放たれると突然
「うちの子を返してぇ!!」
「お母さーん!!」
「どうか夫をお返しください!!」
村の皆さんが手を合わせて叫び出す。なんだこれ!?一体何をしてるんだ!?
「ヨシノちゃ・・・あれ?」
俺はヨシノちゃんに事情を聞いてみようと思って振り返ったのだが・・・どこにもヨシノちゃんの姿はない。
「あれ?ヨシノちゃん?」
ウェンディも辺りを見回してヨシノちゃんを探す。しかし辺りにヨシノちゃんの姿はない。どこにいったんだ?
すると周りには村の人たちが溢れていて俺たちは周りの人たちに押されてしまう。
俺はバランスを保ってウェンディと一緒に一度その場を離れようとしたが・・・
「きゃあっ!」
ウェンディが誰かに押されて倒れそうになる。危ない!!
「ウェンディ!!」
俺がウェンディに駆け寄ろうとすると
「危ないっ!」
ぐいっ
男の人の声と一緒にウェンディが抱き寄せられる。ていうか・・・顔が近い!!
「大丈夫?」
「え・・・あ・・・その・・・」
「ありがとうございます~!!」
「うわっ!」
爽やかスマイルでウェンディに声をかける男。俺は慌てているウェンディに変わって礼を言って二人を引き離す。危ない危ない。ウェンディの変なことされるところだった。
「なんだ。お友達と一緒だったのか」
「そうですよ~、だ!」
「うわっ・・・」
「シリル・・・ライバル心むき出しね・・・」
セシリーとシャルルが何か言ってるけど・・・ライバル心なんかじゃない!こんな奴は俺のライバルなんかになるもんか!!
「いたいた!ウェンディ!シリル!探したよ~」
俺が男を睨んでいると慌てた様子のヨシノちゃんが駆けてくる。
「おっ!あっちから来た」
「ヨシノちゃーん!」
俺はヨシノちゃんの方に視線を移す。ウェンディはヨシノちゃんに抱きつくように飛び付く。というか涙目になってるんですけど・・・
「よかった。心配したよ~」
「ヨシノの友達だったんだ」
「シユウが見つけてくれたんだね」
ヨシノちゃんとシユウと呼ばれた男は仲良さそうに話している。なんだ。二人はそういうことか。心配して損した。
「広場は人が多いから気を付けてね」
シユウはそういって手を振りながら去っていく。くそ・・・ちょっとかっこいいからって調子に乗りやがって・・・俺だってあと5年もしたらきっと・・・
「何を考えているか手に取るようにわかるわ」
「シリルは単純だからね~」
シャルルとセシリーはそんな話をしている。単純ってことは純粋ってことなんだよ!!だからいいことなんだよ!!
「ありがとシユウ♪」
ちなみにヨシノちゃんはシユウに目をキラキラさせながら手を振っている。ウェンディも手を振っているが俺は舌を出して「ベーッ(・┰・)」とする。突然出てきた奴にウェンディをやるもんか!!
するとシャルルはヨシノちゃんを見て
「あんた・・・わかりやす~い片思いしてるわね」
「えっ!ヨシノちゃんってシユウさんのこと・・・!?」
「ウェンディ、気づいてなかったの~?」
「かなり分かりやすかったけどな」
俺たちはからかい気味にヨシノちゃんに言う。するとヨシノちゃんはこちらを向く。
「まさかウェンディとシリルも・・・!!やっぱり!!こうなると思ってたのよ!!」
「ないないないないないってば!!」
「ありえねぇよ。そんなこと」
てかやっぱりってなんだよ!!
「じゃあ誰が好きなの!?」
ヨシノちゃんはウェンディに顔を近づける。ウェンディは俺をチラッと見る。もしかして・・・
「そ・・・そんな人いないよ~!!」
マジか・・・今のは「シリルだよ!」って言うノリじゃなかったのか・・・
「ありえない!!乙女はみんな身近なイケメンに恋するものでしょ!!」
「でしょって言われても・・・そもそも身近にイケメンなんて・・・」
するとウェンディは誰かの顔を思い浮かべたようなそぶりを見せる。だ・・・誰だ?
「べべべべ・・・別に私、女の子みたいな人とか炎を食べるひとか、すぐ服を脱ぐ人に恋したりしてないもん!!」
「何その変態たち・・・まぁ、いいわ。シリルは・・・ってどうしたの!?」
ヨシノちゃんが俺に質問してくるけど・・・俺は分かりやすくいえばorzになっている・・・女の子みたいな人って・・・どう考えても俺だよな・・・
「だ・・・大丈夫!?」
「大丈夫だよ・・・ちょっと心が折れただけだから」
「それ・・・大丈夫って言わないと思うけど・・・」
ヨシノちゃんがそういって心配してくれる。でも大丈夫。きっと明日になれば忘れるから。
ヨシノちゃんの家にて・・・
「お父さんただいま!」
「おじゃまします・・・」
「失礼します」
俺たちは今ヨシノちゃんの家に来ている。ヨシノちゃんが扉を開けてくれて俺たちは中に入って挨拶をする。するとそこではヨシノちゃんのお父さんが迎えてくれた。
「おかえりヨシノ。見かけない子たちだね」
俺たちは迎えてくれたヨシノちゃんのお父さんを見て驚いてしまう・・・だってヨシノちゃんのお父さんはベッドに寝たまま、体中に包帯を巻いた痛々しい姿をしていたのだから・・・
「ひどいケガだね・・・」
「どうしたのかしら・・・」
「誰かに襲われたとか~?」
「・・・」
俺たちはヨシノちゃんたちに聞こえないようにコソコソと話す。さっきの儀式といい、ヨシノちゃん父のケガといい・・・もしかして・・・これが怪現象と関係しているのか?
「さっき友達になったの!うちに泊めてもいいでしょ?」
「かまわないよ」
ヨシノちゃんは俺たちが家に泊まれるようにお父さんに聞いてくれてるみたいだ。めっちゃ優しいわ。助かります!!
「やったぁ♪今夜は悪い男の話、いっぱい聞かせてね!ウェンディ!シリル!」
「!?」
「「やめてぇえ!!」」
ヨシノちゃんはピースをしながら俺たちにそう言ってくる。悪い男って言い方やめてくれよ!!お父さんびっくり来てるじゃんか!!きっとすごい勘違いされてるよ俺たち!!
その日夜・・・
「はぁ~・・・気持ちよかった~」
「本当だね~」
俺とセシリーは一緒にお風呂に入って、ちょうど今上がったところである。セシリーはメスだけど、別に猫だから関係ないだろう、ということで一緒に入ったりしている。というかセシリーは風呂でも遊び出すからウェンディだけに任せると大変だから俺が一緒に入ったのだが。
「でも泊めてもらえてラッキーだったね~」
「本当そうだね。村に宿みたいなところ見当たらなかったし・・・」
ナナル村は小さい村なので宿屋みたいなところはもしかしたらないのかもしれない。そう考えるとヨシノちゃんに出会えたのは本当にラッキーだったな。ウェンディとも仲良さそうだし。
俺たちが次に風呂に入ることになっているウェンディたちを呼びにいこうとすると・・・ヨシノちゃんとヨシノちゃんのお父さんが話している声が聞こえてくる。
そちらに向かうとウェンディも部屋の前で足を止め、話を聞いているようだった。
「・・・でさ、今日も広場で変な儀式してるの。バカみたい!」
「そんなことを言うなヨシノ」
ヨシノちゃんは昼間の儀式のことをバカにしてるようだな。まぁ、俺もなんであんなことしてるか分からないから変なものにしか見えなかったけど。
「みんなドラゴンを鎮めようと真剣なんだから」
するとお父さんのその言葉で俺たちは顔を見合わせる。さっきの儀式は・・・やっぱりドラゴンに関係しているのか。ちょっと詳しく聞いてみるか。
「すみません。その話、詳しく教えてもらってもよいですか?」
俺は部屋に入りながら二人に言う。二人は一瞬驚いたような顔をするが、お父さんはすぐに冷静な顔に戻る。
「・・・悪いが、村の者以外に話すことでは・・・」
「なんで!?隠すことないじゃん!!」
お父さんの言い分にヨシノちゃんが怒鳴る。
「ウェンディとシリルだってありえないって言うはずだよ!実はね・・・」
「やめなさいヨシノ!!」
「人が次々に消えているんだ」
ヨシノちゃんの言葉に俺たちは言葉を失う・・・人が・・・いなくなる?
「一人や二人じゃないよ。もう十人以上・・・」
「そんなにたくさん・・・?」
「いつ頃から?」
消えた人の多さに驚くウェンディ。俺はヨシノちゃんにいつ頃からなのか質問する。
「半年くらい前から・・・突然なの。今までこんなことなかったのに・・・」
半年前から・・・ずいぶんと前からなんだな。
「一体どうして・・・」
シャルルが聞くとお父さんは一度ため息をつく。
「ドラゴンの亡霊の仕業だよ」
「「「「ドラゴンの亡霊!?」」」」
「ここは昔、近くの谷に住むドラゴンを倒してできた村でね。その時のドラゴンが亡霊になって村に復讐しているんだ」
「・・・ありえない・・・」
お父さんの説明にヨシノちゃんが小声で言う。
「ドラゴンを倒したのって百年以上も前のことじゃん!なんで今になって復讐なの!?絶対亡霊以外の犯人がいるはずだよ!」
ヨシノちゃんは大きな声でそう言う。確かに・・・今さらになって復讐するなんてありえないと俺も思うな・・・たぶん人の力が関わっているんだろう。
しかしお父さんはそんなヨシノちゃんを見ながら言う。
「でも、そうじゃなきゃ説明がつかないだろ。消えた人たちを私が探しにいったあの日・・・確かに崩れた橋が、次の瞬間には何事もなかったように元に戻っていたんだから。
橋のことも人を消すのも、人間にできることじゃない・・・」
「そんなっ・・・」
お父さんの説明にウェンディが驚く。橋が元に戻った・・・?
「あの高さから落ちてケガですんだのは、ドラゴンからの警告なんだろう・・・私たちにはドラゴンの亡霊が鎮まるように祈るくらいしかできないんだよ」
自分のケガした腕を見つめて言うお父さん。そんなお父さんにヨシノちゃんは
「あんな儀式で消えた人が戻ってくるわけないじゃん!みんなどこかで助けを待ってるはずだよ!!」
「ヨシノちゃん・・・」
「もういい!私が絶対助け出してみせる!!」
「お前には無理だ!関わるな!!」
お父さんの大きな声にびっくりしてしまうヨシノちゃん。
「・・・何よ・・・このままみんなを放っておけって言うの!?お父さんのバカー!!」
ヨシノちゃんは泣きながら部屋へと走っていってしまう。俺とウェンディはただそれを見送ることしかできない。
「・・・すまないが、ヨシノのそばにいてやってくれないか?」
お父さんはベッドに横たわったまま俺たちにそう言う。手で顔を隠していたから表情は見えないが・・・声からお父さんも辛い思いをしているのだと俺は感じ取った。
「わかりました。行こうウェンディ」
「う・・・うん」
俺たちはヨシノちゃんの部屋の前までいくとヨシノちゃんは扉を開けたままベッドに顔を伏せて泣いていた。
「私が村を守るんだから・・・ぜったいに・・うん」
「ヨシノちゃん・・・」
ウェンディはそんなヨシノちゃんの姿を見て、とても辛そうな表情をする。仕方ない・・・
「ウェンディ・・・俺、ちょっとその谷を見てくる。お前はヨシノちゃんと一緒にいてやってくれ」
「待って!!シリルもいくなら・・・」
ウェンディは俺についてこようとするが俺はウェンディの額と俺の額をくっつける。
「俺の言うことが聞けるな?」
「・・・うん・・・」
ウェンディはしぶしぶといった感じで納得してくれる。よし。それじゃ・・・
「さっそく俺、行ってくる」
「僕も行くよ~」
「いや・・・セシリーもヨシノちゃんのそばにいてくれ。人は多い方がいいと思う」
「・・・わかった。気を付けてね~」
俺はウェンディたちをヨシノちゃんの家に残して谷へと向かった・・・
竜の谷にて・・・
「ここがさっきヨシノちゃんたちが言ってた竜の谷・・・か」
俺はさっきヨシノちゃんのお父さんが落ちて大ケガをしたという谷に来ている。なんだが・・・すごい不気味なところだ。
俺は谷の下を覗いてみる。霧でよく見えないけど、その高さは落ちたら普通の人間なら確かに死んでしまうかもしれないくらいの高さは十分にあるように思える。でも・・・俺たち魔導士なら・・・落ちても多少のケガですむかもしれない、
「ん?あれが橋か?」
続いて俺はお父さんが落下してしまった橋の前にやってくる。別になんてことのない、普通の橋のように見える。
「ん?」
今橋が少しキラッと光ったような気がした。でも・・・木で作られたつり橋じゃあ、光るわけないよな。ワックスをかけてるわけでもあるまいし・・・
俺はそう思いながらも橋を落とさないように手で触ってみる。すると触った橋には猛烈な違和感があった。
「あれ?この橋・・・冷たいぞ?」
なぜかつり橋は氷のように冷たかった。というか・・・これ本当に氷なんじゃないのか?
「氷の橋なら・・・確かにすぐに作ることはできるけど・・・」
氷の橋を作る・・・これは俺の知っている人ならできる。氷の造形魔導士なら・・・
でも・・・この村にはヨシノちゃん以外魔導士はいないって言ってたから・・・
「となると・・・誰か外部の人間ってことか・・・」
だとすると・・・目的はなんだ?この村に何かあるのか?俺がそんなことを考えていると突然
オオオオオオオオオオオオ!!
突然ものすごい声が聞こえる。なんだ今の?
「あっちから聞こえてきたぞ?」
俺は声のした方へと急いで向かった。
「結局・・・何か分からなかった・・・」
俺は声のした方へと向かったのだが・・・結局何も手がかりは残ってなかった・・・
仕方ないので俺は竜の谷に戻ってきた。するとそこにヨシノちゃんが走ってやってくる。なんだ?
「あ!?」
走ってきたヨシノちゃんはあろうことか氷でできた橋を渡ろうとしている。とてもじゃないけど、あの橋に人を支えるほどの強度があるはずがない!!
「ヨシノちゃん!!」
バキッ
俺がヨシノちゃんの元へ向かうがヨシノちゃんを乗せた橋は無情にも崩れ落ちる。
ヨシノちゃんはそのまま崖の下に落ちていこうとした・・・しかし
ヒュウウウ
突如吹いてきた風がヨシノちゃんの落ちる速度を軽減させる。もしかしてこれ・・・ウェンディの魔法か!?
「ヨシノちゃん!!」
どこからか現れたウェンディはヨシノちゃんを助けるためか崖の下へとダイブする。ウェンディは落ちていくヨシノちゃんを抱き締める。
俺も二人を助けないと!!
「間に合え!!」
俺は水でウォータースライダーを作る。そのウォータースライダーに二人はうまく乗ることができて崖の下までゆっくり滑っていく。
「よかった・・・俺も行くか」
俺はウォータースライダーを滑ってウェンディたちの元へと向かっていく。
「二人とも無事か!?」
「シリル!!やっぱりこの魔法、シリルだったんだ!!」
ウェンディはこちらを向いてそう言う。ヨシノちゃんも目立ったケガは無さそうだし・・・二人とも無事でよかった。
「大丈夫!?」
「ウェンディ!ヨシノ!あれ?シリルもいる~」
遅れてシャルルとセシリーがこちらに飛んでくる。二人はどこにいたんだ?
すると
ガシッ
ヨシノちゃんはウェンディに泣きながら抱きつく。
「ありがとう・・・ウェンディ・・・シリル・・・助けてくれて・・・本当にありがとう・・・ありがっ・・・怖かったよ~・・・」
「ヨシノちゃん・・・」
「大丈夫そうだな・・・」
ヨシノちゃんは橋から落ちたことがよほど怖かったのだろう。たくさん涙を流している。無理もないよな・・・死んじゃうかもって思っちゃうもんな・・・
「早く帰ろう?おじさんを安心させなきゃ」
「なんでウェンディまで泣いてんの!?」
ウェンディはなぜか泣きながらヨシノちゃんに手を差し出す。もらい泣きか?もらい泣きしたのか?
「うん!」
ヨシノちゃんはそんなウェンディを見て少し笑顔になる。そしてウェンディの手をとろうとして・・・固まってしまう。
「その紋章・・・」
ヨシノちゃんは差し出されたウェンディの右腕の肩の部分を指さす。
「ウェンディって妖精の尻尾だったの!?」
「言ってなかったけ?」
「聞いてないよ!!妖精の尻尾って超すごいギルドじゃん!!もしかしてシリルも!?」
「うん。そうだよ」
「えぇ!?」
ヨシノちゃんは俺たちが妖精の尻尾の魔導士だと知ると驚いたあと、目をキラキラさせてこちらを見つめる。
「どうりでさっきの魔法・・・!!ウェンディとシリルってすごい魔導士だったんだね!!」
「そ・・・そんな・・・私は別に・・・」
ヨシノちゃんは興奮したのか、ウェンディの手をとるとぐるぐると回り始める。ウェンディ・・・目を回してるじゃん・・・やめてあげて!!
「え!?」
「どうしたのシャルル~?」
シャルルは何かに気づいて驚く。セシリーと俺はシャルルの視線の先を見るとそこには・・・元に戻った橋があった。
「橋が元に戻ってる!?」
「な・・・なんで~!?」
「「えっ!?」」
ウェンディとヨシノちゃんも橋が元通りになっているのを見て驚く。ミスったな・・・上に犯人がいたのか・・・俺だけでも上にいれば犯人を捕まえられたのに・・・
「何あれ!?」
俺が考え事をしてるとウェンディが不意に大声を出す。俺もその方角を見る。
「!?」
俺たちの見た先には・・・ドラゴンの影のようなものが見える。そしてそれはしばらくすると消えてしまう。
「今のって・・・」
「まさか・・・」
「本当に・・・」
「ドラゴンの亡霊・・・!?」
「・・・」
驚くウェンディたちと言葉を失う俺・・・あれは一体なんなんだ?
後書き
いかがだったでしょうか。今回のお話も日本語がおかしいところがあるかもしれません。本当に申し訳ないですm(__)m
もっとうまく書けるよう努めたいと思います。次回回もよろしくお願いします。
竜の宝
次の日の朝・・・
「ふぁ~・・・もう朝か・・・」
俺は布団から体を起こすと、一度大きく背伸びをする。
「ふぅ・・・」
俺は昨日のことを思い出してため息を漏らす・・・あれは間違いなく魔導士の仕業だと思うけど・・・あのドラゴンはなんだったんだ・・・
「まっ、いいか。ウェンディ!起きて!」
「モフモフ~・・・」
俺は隣に眠っているウェンディを起こそうと体を揺する。しかしウェンディはシャルルの尻尾をさわりながら気持ち良さそうに眠っている。
「まったく・・・」
「ウェンディ気持ち良さそう~」
「本当だね」
シャルルはウェンディが自分の尻尾を気持ち良さそうに触っているのを見てちょっと照れたような顔をしている気がする。
セシリーと俺は寝ているウェンディの顔を見ている。本当・・・気持ち良さそうだ。
ドタドタドタドタ
すると廊下を誰かが走ってくる音が聞こえてくる。もう誰が来たかは分かるな・・・
「ウェンディ!!シリル!!まだ寝てるの!?」
「朝っぱらからうるさいわねヨシノ!!」
「おはようヨシノちゃん。俺はもう起きてるよ」
部屋に来たヨシノちゃんは扉を勢いよく開ける。それはもう、扉が壊れるんじゃないかと言うほどの勢いで。
「ウェンディはまだ寝てるの!?も~!!」
ヨシノちゃんはウェンディに近づくと肩をつかんで大きく揺すり始める。
「起きて!!起きて!!」
「ん~・・・違うよシャルル・・・」
「寝ぼけてないで!」
「ちょっとヨシノちゃん・・・揺すりすぎ揺すりすぎ」
ヨシノちゃんのあまりの勢いに俺は少々引いてしまう。そんなに揺すったら首がむち打ちになっちゃうじゃん!
するとウェンディは眠ったまま何かを言い出す。
「ヨシノちゃんはクリオネじゃないよ~・・・」
「プッ!」
「くっ!」
「・・・」ブルブルブルブル
ウェンディの予想外の寝言にシャルルと俺は口を押さえて笑うのをこらえる。セシリーは体を震えさせて笑うのを我慢しているようだ。
「・・・」ブルブルブルブル
それを聞いたヨシノちゃんも体を震わせている。怒っちゃったかな?
「起きろー!!!!!」
「ん?・・・んん」
ヨシノちゃんがウェンディの耳元で大声を出すとウェンディはようやく目を覚ましたようだ。
ウェンディは眠そうな目を擦りながら上体を起こす。
「ごめんシリル・・・寝坊しちゃった・・・」
「大丈夫だよ。昨日はいろいろあったからな」
むしろ寝不足とかにならなくてよかった。今回の依頼は・・・なかなか大変な依頼だからな。寝不足で途中で倒れたりしたら大変だ。
「ヨシノちゃんももう少し休んだ方が・・・」
「休んでなんかいられないよ!私たちドラゴンの亡霊を見ちゃったんだよ!?村のみんなもドラゴンの声をきいてますます不安になってる・・・お願い!早く解決の手がかりを探しに行こう!!」
ヨシノちゃんはそういって俺とウェンディの手を握る。こんなに村の人のことを思ってるなんて・・・ヨシノちゃんはいい子なんだな。
「・・・うん!」
ウェンディも握られた手を握り返し、返事をする。
それじゃあ・・・身支度しますか。
「じゃあ俺たち着替えるから・・・」
「それなら任せて!」
俺は着替えようと服を持って脱衣場に行こうとしたらヨシノちゃんが俺たちに魔法をかける。すると俺たちの服が変化する。
「わぁっ!!ヨシノちゃんと色違いだ!!」
「いったでしょ?変化させる魔法は得意なの」
喜ぶウェンディと得意気な表情のヨシノちゃん。だけど・・・
「ごめん・・・俺やっぱり着替えてくるわ・・・」
「えぇ!?なんで!?似合ってるよ!?」
ヨシノちゃんが俺に近づいてそう言う。けどね。
「昨日言ってなかったけど・・・俺男なんだ」
「ウソォ!?」
驚くヨシノちゃんは俺の周りをぐるぐると歩きながら見つめる。
「わ・・・私よりかわいいのに・・・男なんて・・・男に負けるなんて・・・」
「いや・・・ヨシノちゃんの方が全然かわいいよ?」
ヨシノちゃんがorz状態になってしまうのを俺は慰める。なぜかウェンディが俺を睨んでるけど・・・どうしたんだ?なんか悪いことしたかな?
「う・・・ウェンディ?」
「私にはかわいいなんて言ってくれないのに・・・」ボソッ
ウェンディが頬を膨らませながら何かを言ってるけど・・・あまりにも声が小さくて俺には聞き取れなかった・・・
しばらくして・・・
ようやく着替え終わったので、俺たちはヨシノちゃんの家から出て村の中を歩いている。
「これからどうするの~?」
セシリーが質問してくる。そうだな・・・
「まずは村で消えた人たちの情報を集めましょ!」
「そうだな」
「わかった!」
シャルルの提案に俺とウェンディが返事する。俺たちは村でいなくなった人たちの情報を聞いて回ることにした。
いなくなった人の名前、年齢、性別、日時、場所・・・聞けそうなことは全て聞いてみた。そして、集めた情報をヨシノちゃんの家に戻って地図に書き出してみる。
「これで全部ね・・・完成!」
シャルルが作った地図を俺たちに見せる。それを俺とウェンディは顎に手をおき見つめ、ヨシノちゃんとセシリーは頭に?マークを浮かべている。
「これ何~?」
「こんな図作って何か意味あるの?見てもよくわかんないよ?」
「アンタたち・・・もっと頭使った方がいいわよ」
「何よ猫のくせに・・・」
「何よクリオネ頭・・・」
セシリーとヨシノちゃんはなぜ地図を作ったのかわかってないみたいだった。
シャルルに頭を使えと言うとヨシノちゃんはシャルルとにらみあってしまう・・・何やってんだか・・・
「お前ら・・・少し落ち着け」
「シャルル!ヨシノちゃん!今はそんなことやってる場合じゃないでしょ?」
俺とウェンディが割って入ると、二人は落ち着きを取り戻し、にらみ合いをやめる。
「いい?まずは一つ。事件は半年前から突然始まってるわ。
つまり半年前に村に何か変化があったはずよ」
シャルルは腕を組みながら言う。地図を見て確認すると・・・最初にいなくなった人は確かに半年前にいなくなっていることがわかる。
「半年前かぁ・・・」
「ヨシノちゃん、何かわかんない?」
俺がヨシノちゃんに聞くとヨシノちゃんは何かを考えている・・・その表情は心当たりがあるような顔に俺には見えた・・・のだが
「・・・別に、何も」
「そっか・・・」
「ふ~ん・・・」
ヨシノちゃんは首を横に振り、そう言った。ヨシノちゃんは村を守りたいって言ってたし、何かあるなら教えてくれるだろう。さっきの顔は俺の勘違いだったかな?
「それからもう一つ」
シャルルは地図のあるところを指さす。その指をさした場所は・・・竜の谷。
「人が消えたのは全て竜の谷の近く!おそらく・・・谷に人を近づけたくない理由があるのよ!」
「「「!」」」
シャルルに言われウェンディたちは驚いた顔をする。確かに竜の谷の近く・・・しかもよく見ると、徐々に竜の谷から離れていっている・・・よほど近づけたくない理由があるんだな・・・
「じゃあ・・・橋の怪現象も昨日のドラゴンも・・・」
「僕たちを谷から遠ざけるためなの~!?」
「たぶんね・・・竜の谷を調べればきっと何か出てくるわ」
シャルルはそう言ったあと、俺に視線を移す。
「シリル・・・アンタ昨日谷を調べたとき・・・何か分からなかった?」
「そうだな・・・」
俺は昨日谷を調べたときのことを思い出す。わかったこと・・・あれくらいしかないな・・・
「橋のトリックぐらいしかわからなかったよ」
「「「「橋のトリック?」」」」
四人は俺に視線を向ける。
「昨日あの橋を見てたら途中で光ったような気がしてさわってみたんだ。そしたら、あの橋は氷でできた橋だってことがわかったよ」
「氷でできた橋・・・」
「そう。しかも強度的にはかなり弱い氷でできてたみたいだから、人が乗ると簡単に壊れる。でも氷の魔導士なら・・・あれくらいの橋、簡単に復元できる。だからいかにも壊れた橋が突然直ったように見えたんだと思うよ」
俺が説明するとウェンディたちはなるほど、といった顔をする。まぁ、あくまで推測だけどね。
「他には?」
「あとはよくわかんなかったな。霧もすごかったし」
「そっか・・・」
シャルルに質問され、俺はそう答える。ヨシノちゃんはそれを聞いて残念そうにそう言った。
「まぁ、しょうがないわ」
「もう少し何か共通点がないか探してみよ~」
「うん!」
「だね」
「そうだな」
セシリーの提案によって俺たちはもう少し行方不明になった人たちの共通点がないか調べることにした。
ドタドタドタドタッバンッ
「ウェンディ!!シリル!!」
しばらくするとヨシノちゃんが俺たちがいる部屋のドアをすごい勢いで開ける。
「ヨシノちゃん?」
「どうしたの?」
「ど・・・どうしよう・・・お父さんが・・・お父さんが・・・」
ドアを開けたヨシノちゃんは涙を浮かべ、少し震えている。どうしたんだ?
「お父さんがドラゴンに連れていかれちゃった!!」
「「えっ!?」」
ヨシノちゃんの言ったことに驚く俺とウェンディ。俺はヨシノちゃんのお父さんが寝ている部屋に向かう。
バンッ
「本当だ・・・」
「そんな・・・」
俺とウェンディが部屋につくとそこには眠っているはずのお父さんの姿はない・・・
「ど・・・どうしよう・・・ウェンディ・・・シリル・・・」
ヨシノちゃんは泣きながら俺たちにしがみつく。
「落ち着けヨシノちゃん」
「・・・そうだ!どこかに出掛けただけかも」
「違うよ!!あんなケガでどこいくの!?」
俺とウェンディはヨシノちゃんを落ち着かせようとするが、ヨシノちゃんは顔を押さえて泣き出してしまう。
でも・・・どこに行ったんだ?あんなケガをしてるって言うのに・・・
俺が悩んでいるとウェンディが
「もしかしたら・・・」
「ウェンディ!?」
「ちょっと!?」
「どこいくの~!?」
ウェンディがどこかに走り出してしまう。
「お父さん・・・お父さん・・・」
「ヨシノちゃん落ち着いて」
俺は泣いているヨシノちゃんの背中を擦る。それにしてもウェンディはどこに・・・
「あ・・・」
俺はさっきまで俺たちが話していたことを思い出す。もしかして・・・あの話を聞いて、竜の谷に向かったんじゃ・・・
それなら・・・
「行くよヨシノちゃん!!」
「え?どこに・・・」
「お父さんのいるところだよ」
俺はヨシノちゃんの手を握り家を飛び出す。ウェンディはさっきそれに気づいたんだ。たぶんウェンディも同じように向かってるはず・・・
俺たちがしばらく走ると、俺の予想通りウェンディと一緒に傷だらけのお父さんがいた。よかった。
「お父さん!!」
「・・・ヨシノ・・・」
ヨシノちゃんはお父さんを見つけると駆け寄り抱きつく。そして目にたまっていた涙は一気にこぼれ落ちる。
「おと・・・さ・・・消えちゃったかと思ったぁ・・・」
「ヨシノ・・・」
俺はそれを見てひとまず安心する。だけど・・・
「シリル・・・」
「・・・わかってるよ・・・」
セシリーが不安そうに俺を見る。俺は泣きわめくヨシノちゃんを見て、このままじゃダメだと思う。おそらく・・・ウェンディもそう思っているのだろう。
人が消える・・・それは誰にとっても辛いことのはずだ・・・ましてや大切な人が消えてしまったら・・・俺だってもしウェンディやセシリー・・・シャルルがいなくなったりしたら・・・
「ウェンディ・・・ヨシノちゃんと一緒にいてくれ」
「・・・シリルは?」
俺はウェンディの方を向く。
「竜の谷に行って・・・原因を突き止める!!」
俺はウェンディにそう言い残し、竜の谷に向かう。今度こそ・・・今度こそ犯人を見つけてやる!!
「とは言ったものの・・・ここって昼でも不気味なんだな・・・」
俺は竜の谷についた。昨日は夜来たから不気味な感じがしたのかと思ったが・・・昼でも十分気味の悪いところだ・・・ウェンディが来たら涙目かもな・・・
「さてと・・・何か手がかりはないかな?」
俺は調査を始めようとした。すると
「シリル!!」
「誰だ!?うわっ!!」
突然声をかけられビクッとなりながら振り向こうとした。しかし谷の崖になっているところにかなり近づいていたためバランスを崩し落ちそうになる。
ガシッ
しかし俺に声をかけたシユウが手を取ってくれたおかげて落ちなくて済んだ・・・死んだかと思った・・・
「大丈夫?」
「うん・・・助かったよ。ありがとう」
俺は礼を言う。そういえば・・・なんでこいつはここにいるんだ?
「シユウ・・・さんはなんでここに?」
「シリルが谷に行くのが見えたから・・・」
それでついてきたのか・・・
「一人でこんなとこきたら危ないだろ!?ほら帰るよ!!」
シユウさんはそういって手を出す。だけど・・・
「すみません。俺・・・この怪現象の理由を突き止めなきゃいけないんで・・・ヨシノちゃんや村の人が安心して生活できるようになってほしいから・・・だから悪いけどまだ帰れないです」
俺がそう言うとシユウさんはため息まじりに笑って見せる。
「・・・わかった。でも一人じゃ心配だから、俺が案内するよ。ついてきて」
「え?は・・・はい!!」
俺は先をいくシユウさんについていく。谷の下に降り、しばらく歩くと何か洞窟が見えてくる。
「洞窟?」
「足元気をつけて」
シユウさんがそういって手を差し出す。俺はその手を握り、凸凹した洞窟の中を進んでいく。シユウさんは女の子だけに優しくする奴じゃないのか・・・ただの心優しいイケメンさんか・・・しかし・・・
「なるほど・・・こうやって女の子はエスコートするのか」ボソッ
「? 何か言った?」
「ううん。なんでもない」
俺は横に首を振り、返事をする。ただ今後のウェンディとの行動の時の参考にさせてもらうだけですので。
しばらく歩くと光が入ってきているところがあることに気づく。なんだ?
するとそこには今まで見たことのないような光景が広がっていた。
「ここは竜の巣だよ」
「竜の巣・・・?」
俺がその光景に見とれているとシユウさんが教えてくれる。
「村の人間はそう呼んでる」
俺は竜の巣の中を見て回る。それにしても・・・なんて神秘的なところなんだ。谷底にこんなところがあるなんて・・・お?
「すげぇ!水もきれいだ!!」
俺は湖になっているところにしゃがむと、その水に手を入れる。とても冷たくて、そして今までの水の中で一番きれいな水のような気がする。
水の滅竜魔導士である俺にはこの水がすごいいいものだということが一瞬でわかる。
俺はその水を眺めていると不意に視界にあるものが入る。それはドラゴンの骨・・・
「ドラゴン・・・?」
「驚いた?百年前に倒されたドラゴンの骨だよ」
「なるほど・・・それで竜の巣っていうのか」
いつのまにか隣に来ていたシユウさんが説明してくれる。
シユウさんは近くにある岩に腰かける。
「あれのおかげで村の人はここに近づかないから・・・一人になりたいときはたまに来るんだ」
「へぇ・・・」
確かに村の皆さんはドラゴンにひどく怯えていたからな・・・こんな物があったら近づこうとは思わないだろう。俺は少し疲れたのでシユウさんの隣に座る。するとその顔がとても暗いように見える・・・どうした?
「シユウさん?」
「・・・俺さぁ・・・両親をなくしてさ・・・まだこの村に来て一年もたってないんだ」
両親を・・・なくした?
「ご両親は・・・なんで・・・?」
「俺の住んでた街がさ・・・何者かに襲われて・・・俺以外みんな殺されちゃったんだ・・・」
シユウさんは辛そうな声で答える。やべぇ・・・嫌なこと思い出させたかな?
「す・・・すみません!!」
「ううん。気にしないで。村の人はみんな良くしてくれるけど・・・たまにそれがすごくさみしくなるんだ・・・
だからここに一人になりに来るんだ」
「・・・わかる気がするよ・・・」
「え?」
俺の言葉に驚くシユウさん。
「俺とウェンディも、最近今のギルドに入ったんです・・・皆さんすごく優しいし、いい人なんです。だけど・・・なんか気を使わせちゃってる気がするんですよね・・・」
「まだ仲間として認めてもらえてない気持ちになる?」
シユウさんにそう言われ考える。
「それとはなんか違うんですよ・・・皆さん年上だから・・・年下の俺たちを気にしちゃってるのかな・・・って思っちゃって・・・」
仲間としては・・・どうなのかな?認められてるのかどうか・・・よくわかんないな・・・ハッ!!
何言ってるんだ俺!!
「そ・・・そろそろ村に戻りましょう!みんな心配してるかもですし」
俺は話を強引に変えて、立ち上がる。すると突然シユウさんに目を塞がれる。
「まだダメだよ!」
「ちょ!?何すんですか!?」
俺は慌てて手を払おうとするが、
「いいもの見せてあげる。そのまま歩いて」
シユウさんが歩くように急かしてくる。何する気だ?まさか・・・
「シユウさん・・・」
「何?」
「念のため言いますけど・・・俺男ですからね?」
「えぇ!?」
俺がそう言うと心底驚いた声を出す。シユウさん・・・あなたもてすか・・・
「ごめんごめん。女の子だとずっと思ってたから驚いちゃって」
「いえ、よく間違われるので。気にしないでください」
「そっか。まぁいいや。もうすぐだから。歩いて歩いて」
シユウさんに言われて俺はゆっくりと歩く。なんだ。別に変なことをされるわけじゃないんだ。安心した。
しばらく歩くと、シユウさんは手を離す。
「・・・見て、竜の宝って言うんだよ」
そういってシユウさんが見せてくれたのは宝石みたいな石だった。
「すごいきれい・・・」
「この石にはどんな願いでも叶える力があるんだって」
「どんな願いでも・・・?」
シユウさんの言葉に俺は少し驚く。
「どうすればその力を使えるかはわからないんだけど・・・」
シユウさんはそういって竜の宝を手に取る。
「・・・でもシリル・・・君たちにならわかるんじゃないか?」
「え・・・ええ!?」
「この力の使い方を教えてくれ!」
シユウさんは俺に竜の宝を渡してくる。使い方なんて・・・いきなり渡されてもわかるわけないじゃん!!
「ギルドの魔導士ならできるだろ!?」
シユウさんが一歩詰め寄ってくるので思わず後ずさる。
「いきなりそんなこと言われても・・・」
「お願いだシリル!!」
ドン
シユウが俺の後ろの石の壁を叩く。
「これが使えれば消えた人たちだって救えるんだ!!」
シユウさんが真剣な表情でそう言う・・・そっか、この石に本当にそんな力があるなら・・・使い方さえわかれば村の人たちを救うことができるんだ・・・でも・・・
「・・・すみません・・・俺には使い方が本当にわからなくて・・・」
「「何してるの(んですか)!?」」
すると俺たちがきた洞窟の方から叫び声が聞こえる。この声は
「ウェンディ!!ヨシノちゃん!!」
「ごめんなさいシリル・・・」
「二人ともシリルのところに行くって言い出して~」
二人に抱えられたシャルルとセシリーが申し訳なさそうに言う。
「心配したんだよ!!」
「谷底に行くなら行くって言ってよ!!」
「ご・・・ごめん」
ヨシノちゃんとウェンディに叩かれる。そんな心配してくれたのか。というか二人とも泣かなくても・・・
「暗くなる前に村に戻りましょ」
「もう日が落ちて来ちゃったよ~」
「早く戻ろ!シリル」
「う・・・うん」
ウェンディに手を引かれて歩き出す。俺はその際シユウさんを見るとシユウさんはヨシノちゃんと何かを話しているようだった・・・
ヨシノちゃんの家にて・・・
「「「竜の宝?」」」
「うん。どんな願いでも叶える力があるんだってさ」
俺は昼間シユウさんに見せられたものの話をウェンディたちにしている。
「へぇ・・・そんなものが・・・」
「つまり、竜の谷から人を遠ざけるのは」
「その宝を守るため~?」
「そうなのかな・・・?」
三人に言われて俺は考えてしまう・・・
「でも普通にキレイな石みたいだったよ。どうすればその力を使えるのかもわからないみたいだし・・・」
あの石に本当にそんな力があるのか?それに・・・
コンコン
俺が考えていると誰かが部屋をノックする。といってもヨシノちゃんしかいないけどね。
「は~い」
「どうぞ」
ウェンディと俺が返事をするとヨシノちゃんは勢いよくドアを開け
「たのもーー!!」
「「!?」」
果たし状と書かれた封筒を俺に渡す。え?え?なんで?
人気のない森にて・・・第三者side
ヨシノにつれられたシリルたちは森の中の開けたところに来ている。
「行くよシリル!!」
ヨシノがシリルに攻撃するがシリルはそれを避ける。
「水竜の・・・咆哮!!」
「ギャー!!」
シリルの放った咆哮をかろうじて避けるヨシノ。
「手加減って知らないの!?バカー!!」
「え?ご・・・ごめん・・・」
ヨシノに怒られ謝るシリル。それをシャルルたちはあきれたように見ている。
「ヨシノちゃん・・・」
「シリルとウェンディに魔法を習いたいならそう言いなさいよ」
「だ~って、[果たし状]って一度やって見たかったんだもん!」
「じ・・・自由だね~・・・」
ヨシノのしょうもない理由にあきれる四人。そんな中シャルルはヨシノに気になっていた質問をする。
「そういえば、アンタ魔法は誰に教わったの?」
「お母さん!!うちのお母さんの家系が魔導士なんだ!村で唯一の魔導士一族なんだよ!」
シャルルの質問に嬉々として答えるヨシノ。それを見ているウェンディとシリルは話ずらそうに言う。
「・・・やっぱりこの村の魔導士はヨシノちゃんだけだよね」
「どうしたのきゅうに?」
「昼に俺言ったでしょ?あの橋のトリックは氷の魔導士がやっていることなんだって。最初は外部の人間がやってるのかとも思ったんだけど・・・」
「もしかしたら村の人の中に・・・」
シリルとウェンディの推測を聞いたヨシノは怒る。
「魔導士は私だけだよ!!村の人を疑わないで!!」
「ご・・・ごめんヨシノちゃん」
「す・・・推測だから・・・ごめんね」
ウェンディとシリルはヨシノに謝る。ヨシノは我に帰り申し訳なさそうな顔をする。
「・・・ごめん。みんなとは生まれたときからずっと一緒だから、疑いたくないの・・・」
ヨシノはそういって顔を隠してしゃがむ。それを見たシリルとウェンディもその場に腰をおろす。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
しばらくの沈黙・・・
「・・・っていうかシリルとシユウっていい感じですよね?」
「敬語!?」
「いや待て!!それはおかしい!!」
顔を上げたヨシノはふてくされた顔で言う。ウェンディは突然の敬語に驚き、シリルはまさかの発言に驚く。
「お前・・・俺は男だからな!!」
「男同士の恋愛も私好きだよ?」
「そういう問題じゃねぇ!!」
ヨシノのまさかの告白・・・ヨシノはそのまま横たわる。
「・・・なんだか、いろいろうまくいかないなぁ・・・」
「・・・ヨシノちゃんは・・・どうしてシユウさんのこと好きになったの?」
「え~・・・///」
ウェンディの唐突な質問に顔を赤らめるヨシノ。するとヨシノは夜空に浮かぶ星を指さす。
「あの星とおんなじ・・・かな」
「え?」
「どういうこと?」
ウェンディとシリルは意味がわからず聞き返す。
「たくさんある星の中で、なぜか目にとまる星ってあるでしょ?
[なんで]とか[どうして]とかわかんないけど」
「確かにあるかもね・・・」
「うん・・・」
ヨシノの言葉にシリルとウェンディは同意する。
「始めて会ったとき、シユウだけ“特別”に見えたんだ。
他の人を見てもこんな気持ちにはならない・・・シユウだけが“特別”なの」
ヨシノは笑顔になり言う。
(特別・・・か・・・)
シリルはウェンディの方を向くとウェンディと目線が合い、二人ともとっさに視線を反らしてしまう。
(ビックリした!!目が合った・・・ウェンディもこっち見てたのか?)
(シリルと目線が合っちゃった!!今の話のあとだと変に意識しちゃうよ・・・)
二人はそんなことを考えていると突然顔に水がかかる。
「「うわっ!!」」
「隙あり~」ドヤッ
手から水を出してどや顔するヨシノ。
「やったな!!」
「ええい!!」
「うわあっ!!」
どや顔のヨシノにシリルとウェンディが魔法を放ち、ヨシノはそれをかろうじて避ける。
その後しばらく三人は魔法を使って遊んでいた。そして気がつくと辺りは暗くなっていた。
「そろそろ帰ろうか?ヨシノちゃんのお父さんも心配するし」
「そうだね」
「うん!帰ろう帰ろう!!」
シリルが帰ろうと言うと、ウェンディとヨシノもそれに賛成する。
「はい!」
「ん?」
ヨシノがシリルに右手を差し出す。よく見るとヨシノとウェンディが手を繋いでいる。シリルは差し出された右手を握り、三人は一列になってヨシノの家へと帰っていった。
しばらく歩くと三人はヨシノの家に到着する。
「お風呂先につかって」
「ありがとー!シリル!先に行っていい?」
「いいよ」
シリルたちは家の中に入るとヨシノは自分の部屋に、シリルとウェンディは借りている部屋へと向かう。
シリルたちが部屋へとつくとウェンディはタオルを持って風呂場に向かう。
「じゃ、先行くね!!」
「うん!いってらっしゃい」
「私も行くわ」
「僕も今日はウェンディたちと入ろ~っと」
部屋を出る際にシリルに手を振るウェンディ。シリルもそれに手を振り返し、シャルルとセシリーはウェンディのあとをついていく。
「さて・・・うがいだけでもしておくかな」
ウェンディたちを見送ったシリルは手洗いとうがいをしに部屋を出る。
シリルが台所へと向かっているとヨシノの父がシリルに声をかける。
「シリル!」
「はい?」
シリルはヨシノ父への部屋へと入る。
「竜の谷に行って・・・何かわかったかい?」
「・・・あ・・・」
シリルはそんな質問をされ、何も調べられてなかったことを思い出す。竜の巣や竜の宝・・・あれも関係あるのかもしれないがそれについても何も調べていない。
「す・・・すみません!!」
「いや・・・いいんだよ。ごめんね。こんなことをお願いしてしまって・・・」
頭を下げるシリルと申し訳なさそうな顔をするヨシノ父・・・
ドタドタドタドタ
二人が話していると部屋の前をヨシノが通りすぎる。
「ヨシノの奴・・・どうしたんだ?」
「さぁ?」
二人は部屋から廊下に出ると、ヨシノは自室の部屋を勢いよく開けて中に入ってしまう。
二人は顔を見合わせる。
「・・・そっとしておいた方がいいかもな・・・」
「・・・そうですね・・・」
二人はそう言うとヨシノ父は部屋に戻り、シリルはうがいをするため台所に向かった。
少し遡って・・・
「ウェンディ!!シリル!!この石鹸・・・」
ヨシノはウェンディとシリルが借りている部屋に入る。その手にはおニューの石鹸が握られているが、渡そうと思った二人はそこにはいなかった。
「なーんだ。ウェンディはそのままお風呂に行っちゃったのか・・・シリルはおトイレかな?」
ヨシノは石鹸を渡しにお風呂場に向かおうとする。すると
コツン
窓を叩く音がする。ヨシノがそちらを向くと窓の間から部屋の中に一枚の紙が入っているのが目に入る。
(?・・・手紙?)
ヨシノはその紙を手に取り、開けてみる。そこにはこう書いてあった。
[大事な話があるんだ。明日、竜の谷で会いたい。シユウ]
ヨシノはその手紙を読み、口元を押さえる。
(そんな・・・もしかしてシユウはシリルのこと・・・?)
ヨシノはシユウからの手紙を見てしまい、ひどく動揺する。
動揺したヨシノは、その手紙を持って自室へと走り出す。
(・・・どうしよう・・・どうすればいいの・・・?)
後書き
いかがだったでしょうか。最後のヨシノのシーンを出すために終盤は第三者sideにさせていただきました。
ウェンディがされるはずだった壁ドンをシリルにしたのは、たぶんウェンディがシユウに壁ドンをされたらシリルが発狂してしまうのでは・・・と私が勝手に思ってしまったのでシリルが変わりに壁ドンされてみました。
ちなみにシリルのシユウに対する態度が前の話とあからさまに違うのは、このときはウェンディがいないのでライバル心を持っていないからです。
次回も最初は第三者sideで始めさせていただきます。次回もよろしくお願いします。
亡霊の正体
前書き
ブルーミストラルではウェンディにヨシノが変身してましたが、ここではシリルにヨシノが変身しています。
最初からヨシノが変身していることがわかるように書かせてもらいます。
原作を読んでない方いらっしゃいましたら申し訳ありませんm(__)m
翌日・・・竜の谷にて
「し・・・シユウさ~ん・・・?」
現在竜の谷では、昨日手紙で呼ばれたシリルに化けたヨシノがシユウの名前を呼んでいる。
(わざわざ手紙で呼び出すなんて・・・大事な話ってもしかして・・・)
シリルはソワソワしてシユウの到着を待つ。
「シリル!」
「ひゃあ!!」
突然後ろから抱きつかれたシリルは驚き、悲鳴をあげてしまう。
「来てくれてよかった」
そんなシリルにシユウは笑顔で言う。
次にシユウは周りを見回し始める。
「・・・シリル一人?」
「は・・・はい!あの・・・大事な話って・・・」
シリルはシユウを見上げる。シユウはそんなシリルを見つめる。
「・・・シリル」
「・・・・・」
シリルは何を言われるのか想像してしまい、ドキッとする。
しかしシユウは突然、シリルの腕を掴み歩き出す。
「来て!」
「えっ・・・」
「見せたいものがあるんだ」
シリルはシユウに腕を引かれ、そのままついていく。
しばらく歩くとさっきまで黙っていたシユウが口を開く。
「昨日みんなが帰ったあとに見つけたんだ」
「見つけたって・・・何をですか?」
シリルの質問に答えるように、シユウが前を指さす。
「行方不明の人たちを・・・」
シリルもそちらを見ると、そこには村の人たちが氷漬けにされている光景があった。
「みんな・・・!!なんでこんな・・・」
シリルはそれに近寄る。それを触るとシリルはそれが氷だということに気づく。
(氷!?それなら・・・)
シリルは近くにあった大きめの石を持つ。
「待ってて・・・すぐに助けるから!!」
シリルはその石で氷を砕こうと叩く。しかしその氷は壊れるような気配はない。
「シリル!そんなんじゃ壊せないよ!!」
「でも!!」
「これは普通の氷じゃないんだ!!」
シユウはシリルを止める。シリルはその勢いで石を地面に落とす。
「俺もいろいろ試したけど・・・どうしても壊すことかをできなかったんだ」
シユウはシリルの肩に手を置き言う。
「シリル・・・やっぱりみんなを助けるには、竜の宝の力が必要だと思うんだ。
もう一度・・・あの石の使い方を考えてみてくれないか?」
シユウはシリルの耳元でささやく。シリルは一度固まるが、シユウに向かって話始める。
「昨日・・・シャルルに言われて気がついたことがあるんです」
「え?」
「亡霊騒ぎが始まった半年前・・・一つだけ村に変化がありました」
シリルはシユウに向き直る。その目にはうっすらと涙がたまっている。
「あなたが・・・村に来たことです」
シリルは氷漬けの村人の前に行き、氷を触る。
「氷の魔法・・・これを使えば偽物の橋をつくることができる。
霧の中にドラゴンの姿をつくれば亡霊が出たように見えます」
シリルは胸に手を当て、再びシユウの方を向く。
「そしてあなたなら、村人を連れ去ることも・・・」
「ま・・・待ってくれ!!俺は魔法なんか使えな・・・」
「でもあなたが魔導士だと考えるとすべてつじつまが合うんですよ!!」
シリルはシユウの言葉を遮り、大きな声を出す。そしてシユウに視線を移す。
「この事件の犯人は、あなたですね。シユウさん」
その頃・・・本物のシリルは・・・シリルside
「も~!どこ行っちゃったのよあの子!!」
「落ち着けよ、シャルル」
「そうだよ~!シャルル~」
俺たちは今はヨシノちゃんの家でお茶をごちそうになっている。シャルルはヨシノちゃんが家の中にいなくてソワソワしている。
「一人で出歩くなっていっておいたのに・・・」
「まぁまぁ。ヨシノちゃんなら大丈夫だよ」
ウェンディもシャルルをなだめるが・・・シャルルは落ち着きなく家の中をウロウロする。すると・・・
「何かしらこれ・・・」
「どうしたの~?」
シャルルが何かを見つけ、俺たちは近づく。シャルルが拾ったものは・・・紙?
「普通に紙じゃない?それ」
「ゴミ箱から出ちゃったのかな?」
俺とウェンディはシャルルの持っている紙を見てそう思う。しかしシャルルは何かを感じたのか、その紙を広げてみる。
「ちょっと!!これ!!」
シャルルはその紙を広げると慌てて俺たちに渡す。俺はそれを見るとそこには文が書いてあった。
[大事な話があるんだ。明日、竜の谷で会いたい。シユウ]
俺はそれを読んでヨシノちゃんがどこに行ったのかを理解する。ウェンディもその手紙を見て気づいたようだ。
「行こう!!ウェンディ!!」
「うん!!」
俺たちはヨシノちゃんが向かった竜の谷へと走っていった・・・
竜の谷にて・・・第三者side
ドン
「きゃあ!!」
シリルはシユウの放った魔法をギリギリで避ける。シユウの魔法が当たった場所は一瞬にして凍ってしまっていた。
「せっかく穏便にしまそうと思ってたのに・・・」
「し・・・シユ・・・」
シリルはシユウを向くと、そこには先程までとは違う、表情が明らかに変わってしまっているシユウがいた。
「そこまでバレてるなら仕方ないな・・・早く竜の宝の秘密を解いてくれよ」
「お・・・俺知りません・・・きゃっ!!」
シユウはシリルに向かって次々と攻撃を繰り出し、一歩一歩詰め寄っていく。
「だったら早く考えてくれよ。もう時間がないんだから」
シユウはそう言いながらもシリルに次々と魔法をぶつける。シリルは魔法の勢いに押され倒れてしまう。
「・・・なんで反撃してこないの?すごい魔法使えるんだろ?」
シユウはシリルを見下ろしながら冷たく言う。シリルは倒れたまま起き上がれない。
「・・・それなら」
シユウはシリルに向けていた手を氷漬けのの村人たちに向ける。
「一人ずつ人質を消す間に、考えてもらうしかないな」
「やめてえ!!」
手に魔力を溜め、村人に溜めた魔力を放とうとしたシユウ。しかしそれをシリルは飛び付いて止める。
「どけっ・・・」
「本当のシユウはそんなことしない・・・
だって・・・だって私知ってるもんー!シユウは優しい人だって知ってるもん!!」
「・・・は?」
シユウは腕に捕まっているシリルを振り払う。
「数日前にあったばかりの奴が何を・・・!!俺の何を知ってるんだよ!!」
「なんだって知ってるよ!!こんなこと好きでやってるんじゃないんだよね!?そうでしょ!シユウ!!」
シリルは涙ながらにシユウに呼び掛ける。シユウはそれを見て、ようやくこのシリルが違う人間だと気がつく。
「・・・お前まさか・・・」
シユウはそこまでいい、騙されていたことに怒り、表情を歪ませる。
「離せ!!」
「きゃ・・・」
腕に抱きついたヨシノを再び振り払うシユウ。振り払われたヨシノは壁にぶつかりそうになるが、
パシッ
それを本物のシリルが受け止める。
「お前・・・」
「・・・なんだよ・・・」
シリルとシユウがにらみ合う。しかしその隙に
「天竜の咆哮!!」
「なっ!!わっ!!」
後ろから来ていたウェンディがシユウに咆哮を繰り出し、シユウは壁に叩きつけられる。
「やっぱり・・・ヨシノの変身魔法だったのか・・・」
シユウはそう言うとがっくりと肩を落とす。
「ヨシノちゃん!!」
ウェンディがシリルとヨシノのところに駆け寄る。
「大丈夫・・・?」
「ウェンディ・・・シリル・・・」
ヨシノは変身魔法を解き、元の姿へと戻る。
「どうしてここが・・・?」
「さっきヨシノちゃんの家でシユウさんからの手紙を見つけたんだ」
「それでここまで急いで来たんだよ~」
ヨシノの質問にシリルとセシリーが答える。
「アンタ・・・シユウが怪しいって気づいてたのね」
「・・・」
シャルルの質問にヨシノは黙ってしまう。
「シリルに変身して危ない目に・・・」
「どうして相談してくれなかったんだ?」
「・・・だって」
ウェンディとシリルがヨシノに聞くとヨシノはようやく答える。
「もしシユウが犯人なら・・・私が止めたかったの」
「ヨシノちゃん・・・」
「シリルの姿で訴えたら、やめてくれるかもって思ったんだ・・・私、変身魔法だけは得意だから・・・でも・・・できなかった・・・」
ヨシノの目からポタポタと涙がこぼれ落ちる。
「こんなんで“特別”とか言って、私・・…バカみたいだね・・・」
「そんなことないよ」
「え・・・?」
シリルは泣いているヨシノにそっと話しかける。
「ヨシノちゃんはシユウさんのためにすごい頑張ったじゃん。“特別”な人のために頑張った。それだけで十分だと思うよ」
「シリル・・・」
「私もそう思う。だから・・・バカみたいとか言わないで」
シリルとウェンディにそう言われ、ヨシノは涙を拭いながらうなずく。
「う・・・ヨシノがなりすましてたなんてな・・・通りで答えられないはずだ・・・」
すると壁に打ち付けられ気を失っていたシユウが意識を取り戻す。
シリルはウェンディたちの前に立つ。
「シユウさん・・・なんでこんなことをするんですか?」
「竜の宝を何に使うつもりですか?」
「・・・答える必要はないな。お前たちはさっさと竜の宝の秘密を解けばいいんだ」
シリルとウェンディの質問にそう返し、シユウは手に魔力を溜める。
「昨日も言いましたけど、俺には竜の宝の秘密なんかわかんないですよ!!」
「わかるはずだ!!滅竜魔導士だろ!!」
シユウはシリルに氷の槍で攻撃する。
「水竜の鉄拳!!」
「な・・・!」
しかしシリルはそれを鉄拳で砕き割り、シユウはそれに驚いてしまう。
「ウェンディ・・・ヨシノちゃん・・・離れてて」
「うん・・・」
シリルはウェンディたちを遠ざける。
シリルはシユウを見据える。
「昨日の両親の話もウソですか?」
「・・・それは本当だ」
「亡くなったご両親は、あなたがこんなことして喜ぶわけないでしょ!?」
「黙れ!!」
シユウはシリルに魔法放とうとする。しかしそれよりも先にシリルが動く。
「水竜の翼撃!!」
「うわ!!」
シリルの魔法によりシユウは壁に叩きつけられる。シリルはシユウの前に歩みよる。そんなシリルをシユウをを見上げる。
「・・・これが、滅竜魔導士の力・・・」
「氷漬けの人を解放してください。今ならまだ村のみなさんだって・・・」
「おとなしく俺のいうことを聞けばよかったんだ」
シリルの言葉を遮り、シユウは砂を掴みながら言う。
「その正義感のせいで・・・この村は全滅だぞ」
「・・・え?」
「どういうことですか?」
いつのまにか近くに来てきたウェンディがシユウに聞く。
「もういいわシユウ。あとはあたしたちがやるから♪」
しかし後ろからそんな声がして、シリルたちはそちらを振り返る。
「?」
「なんだ?」
「なっ・・・約束は明日のはずだろ!?」
シユウはやって来た二人に言う。しかし二人は悪びれた様子もなくこう言う。
「だってあたし、待ちきれなかったんだもの♪」
「盗賊団ナイトバタフライ参上だよぉぉ!!うわぁぁん」
シリルたちの向いた方には若い男と太った女の二人組がいた。二人とも、ものすごい変な格好をして・・・
「「「「「・・・・・」」」」」
あまりの変な格好に思わず言葉を失うシリルたち。しかしすぐに正気を取り戻す。
「ええっ!!」
「盗賊団!?」
「そんな・・・」
「そんな・シユウは盗賊団の一味だったのね!!」
「ウソォ~!!」
「今、一瞬変な間がなかった?」
「うわぁぁん!」
盗賊団という言葉に驚く五人。変な二人組は一瞬変な間が空いたことにイラだっているようだった。
「シリル~!!」
「囲まれてるわ!!」
「え!?」
「いつのまに・・・」
「そんな・・・」
シリルたちが変な二人組に気を取られていると、周りを大量の盗賊団に囲まれていた。
「シユウのやり方は生ぬるいのよ~。滅竜魔導士のお嬢さんたちに秘密を解かせればいいんでしょ?簡単じゃないの」
男はそう言い、ニヤッと笑う。すると太った女の手から触手のようなものが現れ、ヨシノを捕まれる。
「きゃ!!」
「「ヨシノちゃん!!」」
捕まえられたヨシノは地面に叩きつけられる。男はそれを見て笑みを浮かべる。
「大事なものをいたぶればいいのよ♪」
「やめて!!」
「ヨシノちゃんを離せ!!」
ウェンディとシリルは男に向かって走り出す。しかしその前に他の盗賊団たちが立ちふさがる。
「どけぇ!!」
「ヨシノちゃんを返して!!」
シリルとウェンディは盗賊団を魔法で凪ぎ払う。
「きゃっ!」
「ウェンディ!うわっ!」
ウェンディが背後から攻撃を受け、そちらに気をとられたシリルも攻撃を受けてしまう。
二人はその間にたくさんの敵に囲まれてしまった。
「きゃああ!!」
「ひゃああ!!」
「シャルル!!」
「セシリー!!」
シャルルとセシリーも盗賊団からの攻撃を受けてしまう。シリルとウェンディはセシリーとシャルルを抱えるように抱き締める。
「水竜の盾!!」
シリルが水の盾をしき、攻撃を防ぐ。
「いっ!!」
「「ヨシノちゃん!!」」
しかしそれを見た盗賊団の男はヨシノを地面に叩きつけられる。
「早く秘密を解きなさいよ~。お友だちが死んじゃうわよ~」
「やめてください!!」
「俺たちは竜の宝の秘密なんて知らないんだよ!!」
盗賊団にウェンディとシリルが叫ぶ。それを聞いた盗賊団はつまらなそうな態度をとる。
「あ、そう!」
「しめあげるよぉぉ!!」
「あっ・・・」
盗賊団の女が触手を操りヨシノの首を締める。
「おい!!やめろって!!」
それを見たシリルは怒鳴る。ヨシノはシリルとウェンディに息も絶え絶えに話しかける。
「に・・・逃げて・・・シリル・・・ウェンディ・・・」
「何言ってるの!!」
「そんなことできるわけないでしょ!!」
「お・・・お願いだから・・・逃げて・・・
巻き込んじゃって・・・ご・・・めんね・・・シリル・・・ウェ・・・ンディ・・・」
ヨシノはそう言うと力尽きたように手をだらんと下げる。
「「ヨシノちゃん!!」」
シリルとウェンディが助けようと魔法を出そうとするがたくさんの盗賊団の攻撃により、魔法を出すことができない。
「きゃ・・・」
「くそ・・・」
二人とも成すすべなく盗賊団の攻撃を受ける。シリルは悔しくて地面を 叩く。すると隣でウェンディが大粒の涙を流しているのが目に入った・・・
「ヨ・・・シノ・・・ちゃ・・・」
「やだぁ~。泣いちゃったぁ。ウザ~イ」
「やり過ぎちゃったよぉぉ!?」
シリルはウェンディの泣いている姿を見て、歯を食い縛る。そして
「くそ・・・くそぉ!!」
「シリル!!」
シリルはヨシノを締め上げている女に向かって突っ込む。しかしそれを盗賊団たちが止めに入る、が!!
「火竜の・・・咆哮!!」
「「「「「ぐあああ!!」」」」」
突然上から来た炎が盗賊団を凪ぎ払う。
シリルはその隙に女に向かって加速する。
「行かせ・・・」
「アイスメイク、突撃槍!!」
「ぐあっ!!」
また立ちふさがろうとした敵が、今度は氷の槍によって倒される。そしてシリルはヨシノを締め付けている女の目の前に到着し、
「水竜の、鉄拳!!」
「うわあああん!!」
シリルの拳が女の顔面に入る。女はそれによって気を失い、ヨシノを締め上げていた触手が姿を消す。
「ヨシノちゃん!!」
解放され、落ちてきたヨシノをウェンディがキャッチする。二人はそれから盗賊団を凪ぎ払った炎と氷が飛んできた方を見る。
「無事か!?シリル!!ウェンディ!!」
「間に合ってよかったな」
そこにはナツ、グレイ、ルーシィ、エルザ、そしてハッピーがいた。
「皆さん・・・!」
「来てくれたんだ・・・!」
二人は五人を見て笑顔になる。
「ちょっ!!あれって妖精の尻尾じゃない!!なんでこんなとこに!?」
盗賊団の男はナツたちを見て動揺する。ナツは男を見る。その表情は怒りに満ち溢れていた。
「・・・てめぇら・・・大事な仲間を泣かせやがって!!俺が絶対許さねぇ!!」
ナツはそう言い、拳に炎を纏った。
後書き
いかがでしたでしょうか。なんとかナツたちが到着するまでシリルがやられてくれてよかったですw
ちなみに盗賊団のリーダーと思われる奴ですが、絵を見た感じだと私は男だと思ったのでそういうことで話を進ませてもらいました。
次はナツたちも大暴れします。
次回もよろしくお願いします。
夜に舞う蝶
シリルside
よかった・・・ナツさんたちが来てくれて・・・本当によかった・・・
俺はナツさんたちの姿を見て安心する。
さっきほウェンディが泣いたのを見て思わず突っ込んだけど、もしナツさんたちが来てなかったら間違いなくやられていた・・・
ウェンディはいまだに泣いているが、その顔からは安心しているのが分かる。
「フンッ!妖精の尻尾って言ったって
、たった四人じゃない!アンタたち!やっちゃ・・・」
ゴッ
盗賊団の男が指を鳴らして指示を出すし、盗賊団が襲いかかろうとする。それは上から飛び降りてきたナツさんによって一瞬で吹き飛ばされる。
男はそれに驚いている。
「てめぇらのことは許さねぇって言っただろ!」
ナツさんが男を睨む。その後ろでルーシィさんが谷底の水に鍵を入れている。
「開け!宝瓶宮の扉、アクエリアス!!」
「全員まとめて吹っ飛びなー!!」
「「「「「うわあああ」」」」」
ルーシィさんの呼び出したアクエリアスさんによって盗賊団が一気に流されていく。
「アイスメイク、氷欠泉」
今度はグレイさんが敵を一瞬で凍らせる。
「循環の剣!!」
エルザさんは四方から来る敵を切り裂く。
「シャルルたちはオイラが守るよ!!」
ハッピーはシャルルとセシリーの前に立ち二人のことを守る。
ナツさんたちの攻撃によってたくさんいた盗賊団はいつの間にか全員倒れている。残るはリーダーと思われる男一人!!
「くっ!」
「あとはてめぇだけだ!!」
ナツさんは男に向かって火竜の鉄拳を放ち、男はそれによって吹っ飛ばされる。
「あいさー!!」
「やったわね」
「すごいすごい~!!」
ハッピーたちがそれを見て大喜びする。
「こんなに強い魔導士、はじめてみた・・・!!」
「私たちの仲間が助けに来てくれたんだよ!妖精の尻尾のみんなが・・・!!」
いつの間にか目を覚ましたヨシノちゃんとウェンディがそれを見て驚きの声と喜びの声を出す。 よかった・・・ヨシノちゃんも無事だったんだ。
「みなさん!!」
「助けに来てくれたんですか!!」
ウェンディと俺が駆け寄る。するとルーシィさんが慌てた様子で言う。
「えっ!?・・・た・・・たまたま通りかかって!!」
「ええっ!?」
どう考えてもウソをついている様子のルーシィさん。ナツさんはルーシィさんのウソに驚いちゃってるし・・・
でも、そういうところが本当に優しい人たちだよな。
「そうなんですか?ありがとうございます!!」
ウェンディはルーシィさんのウソに騙されちゃってるみたいだ・・・まぁ、ウェンディらしいな・・・
すると俺の頭にポンッとグレイさんが手を置く。
「さっきはよく突っ込んだな。かっこよかったぜ」
「え・・・えへへ・・・////」
グレイさんに誉められて俺は嬉しくなる。誉められるのって本当に嬉しいな。
「オホホホホ・・・」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
後ろから笑い声が聞こえ、俺たちは驚いてそちらを向く。そこには盗賊団のリーダーの男がフラフラと立ち上がっていた。
「いいわ、いいわぁ・・・ゾクゾクしちゃう・・・熱い男ってSU・KI♪」
「うお!?」
「ナツ!!」
「ナツさん!?」
男がそういって腕を広げると突然ナツさんが飛ばされる。何が起きたんだ!?
「攻撃が効いてない!?」
「みょうな奴だな!アイスメイク、突撃槍!!」
驚くルーシィさんと男に攻撃を放つグレイさん。男はそれを見てニヤッと笑う。
男は避けずにその攻撃を受ける・・・いや、受けたんじゃなくて吸収した!?
「おおきくなった!?」
「攻撃を吸収しているのか・・・」
「ええ!?」
敵はグレイさんの魔法を受けて一回り大きくなる。なんなんだあれ!?
「ウフフ。相手の力を吸って生きる。それが夜に舞う蝶、ナイトバタフライ!
攻撃されるほど、あたしは強くなるのよぉ~!!」
男は体から無数の黒い物体を出して俺たちを攻撃してくる。
「「きゃあ!!」」
「ウェンディ!ヨシノちゃん!」
二人はその攻撃を受けてしまい壁に打ち付けられる。
「「「「「うわぁ!」」」」」
男の攻撃は倒れている盗賊団にまで当たっている。
「自分の仲間にまで!?」
「お前!!仲間がどうなってもいいのか!?」
俺とナツさんが男に言う。男は悪びれた様子もなくこう言った。
「あら、そんなのも避けられないようじゃ、あたしの仲間には必要ないってことよ」
「てめぇ・・・」
それを聞いたナツさんはさらに怒る。
「さぁ・・・あたしの攻撃をもっともっと喰らいなさい!!」
男はさらに大量の黒い物体を放つ。
「きゃっ!」
「ウェンディ!」
俺はウェンディを守るように抱き締める。しかし・・・
「う・・・」
「しまっ・・・」
「ヨシノちゃん!!」
相手の攻撃は無防備なヨシノちゃんの元に飛んでいく。ダメだ!俺の魔法じゃ間に合わない!!
ドン
男の攻撃がヨシノちゃんにぶつかる。いや、正確にはヨシノちゃんを守るように上に乗ったシユウさんに当たる。
「シユウ・・・!?」
「シユウさん・・・!?」
「なんで・・・?」
シユウさんは痛みに顔を歪める。シユウさんは盗賊団の仲間のはずなのに・・・なんでヨシノちゃんを守った?
「もう・・・いいだろ?」
シユウさんは痛みを堪えながら立ち上がり、盗賊団の男を見る。
「竜の宝は手に入ったんだから!こいつら、本当に何も知らない・・・秘密をとく方法は俺たちで調べれば・・・」
「・・・何よあんた。情でもうつった?」
男はシユウさんを睨む。
「竜の宝を使って消えた村を元に戻したいんでしょ?」
消えた村・・・昨日言ってたことか・・・
「ああ。だからこそ早く次の手がかりを探しに・・・」
「プッ。まぁ・・・戻さないけどね」
「え?」
男はシユウさんに向かってそう言う。
「なーんで消した村をわざわざ元に戻さなきゃいけないのぉ~?
竜の宝のことを知ってるっていうから利用しただけなのに、シユウってばまーったく気づかないんだもの。
顔はかわいいけどいい加減あきれちゃうわ~」
「・・・!?」
男はクルクルとその場で回りながら言う。シユウさんは意味がわからなくて驚いた顔をしている。
「どういうこと?仲間じゃないの!?」
ヨシノちゃんはシユウさんに聞く。
「まさか・・・」
「そうよ~。あんたの村を襲ったのはあ・た・し・た・ち」
男にそういわれ、シユウさんは目を見開く。
「・・・じゃあ、あの日俺のすべてを・・・家族や友達を奪ったのは・・・」
「せっかく略奪しに行ったのに、つまんない村だったわぁ。襲い損ね」
「ふざけるなっ・・・ぐっ!」
「シユウ!!」
シユウさんは竜の宝を落とし、男に魔法を放とうとするが、さっきヨシノちゃんをかばったダメージでその場に倒れてしまう。しかし・・・こいつら・・・
「・・・許せない・・・」
「ウェンディ?」
ウェンディは男を見据える。その目からは怒りが感じられる。
「イヤ~ン♪すごい殺気!またあたしに力を分けてくれるのかしら~?嬉しいわぁ♪」
男は嬉しそうに言う。しかしウェンディはそんなのお構い無しに空気を溜める。
「ダメよウェンディ!!」
「攻撃しても吸収されちゃうわ!!」
「天竜の咆哮!!」
シャルルとセシリーがウェンディを止めようとするがウェンディは男に向かって咆哮を放つ。
「ウフフフ・・・オホホホ」
やっぱり全部吸収されちまうのか・・・でも!
「俺だって・・・水竜の咆哮!!」
俺も咆哮で男に攻撃する。男はそれをみるみる吸収して大きくなる。
「「「でかー!!」」」
「俺だってやってるぜ!火竜の咆哮!!」
「開け!天蠍宮の扉、スコーピオン!!」
「サンドバスター!!」
「アイスメイク、突撃槍!!」
「循環の剣!!」
それを見たナツさんたちも一緒に攻撃してくれる。
「ちょ・・・みんなまで!!」
「これ以上の攻撃は本当に危険よ!!」
「すごいカウンターがきっと来るよ~!!」
ハッピーたちが慌てた様子で言うが、俺たちは攻撃をやめない。すると、俺たちの魔法が次第に一つに集まっていく。
「・・・え!?みんなの魔法が・・・」
「一つに・・・!!」
「これってもしかして・・・」
「「「合体魔法!?」」」
俺たちの魔法は一つに合わさって、盗賊団の男にどんどん吸収されていく。
「すごい!こんな強い攻撃初めて!!高まるぅ~!!」
ビキッ
「え?え!?」
男の体から突然変な音が聞こえる。よく見ると男の体にヒビのようなものが入っているように見える。もしかして・・・相手の限界値を越えたのか!!
「ちょ・・・これ以上は・・・む!!」
バンッ
ついに魔法を男は吸収できなくなった男は爆発し、その場に倒れ落ちる。
「・・・か・・・勝った・・・?」
「よ・・・よかった・・・」
その場に座り込むウェンディ。俺もその隣でしゃがみこむ。
「やったなウェンディ!!シリル!!」
「すご~い!!」
「大したもんだぜ」
「うむ。よくやった」
ナツさんたちが笑顔で俺たちを誉めてくれる。めっちゃうれしい・・・
「信じられない!相手の許容量を越えるなんて・・・!?」
シャルルは男を倒したことに驚き、ハッピーとセシリーは二人でハイタッチしている。
俺たちが盗賊団を倒したことに喜んでいると
「シユウ!?」
ヨシノちゃんの叫び声が聞こえ、俺とウェンディはそちらを向く。
そこにはお腹から血を流しているシユウがいた。
「やだ・・・どうしよう・・・血が・・・!!」
「シユウさん!!」
俺は急いでシユウさんとヨシノちゃんのそばに駆け寄る。シユウさんは出血がかなりひどくて、呼吸もかなり苦しそうだった。
「いつからこんな・・・もしかしてさっき私をかばったときに・・・!?」
「ヨシノ・・・俺のかわりに・・・みんなに謝っておいてくれないか・・・?」
シユウさんは真っ青な顔でヨシノちゃんにお願いする。
「何言って・・・そんなことより早く村に戻って手当てを・・・」
「いいんだ・・・」
「え・・・」
「もう、いいんだ・・・
俺はみんなに・・・ひどいことをしてしまった・・・どのみち・・・もう・・・ここにはいられないんだ・・・」
シユウさんはフラフラになりながら言う。一瞬倒れそうになるが、それをヨシノちゃんと俺で支える。
「シユウ!!」
「シユウさん!!」
「半年前・・・村が襲われて・・・俺はすべてを失ったんだ・・・家も家族も友達も・・・
村をどうにかしたくて、聞いたことのある竜の宝を探そうとしたとき・・・あいつらに声をかけられた・・・
いい奴らじゃないのは・・・すぐにわかったけど・・・どうでもよかった。
村を元通りにするためなら・・・なんだってできたから・・・でも・・・ゴホッ!」
「シユウ!!」
シユウさんは苦しそうに咳をする。ケガがよっぽど深いんだろうか・・・
「ばか・・・だよな・・・ずっと・・・村を襲った奴らに従ってたなんて・・・」
「もう話さなくていいから!!」
ヨシノちゃんが止めるが、シユウさんは話すのをやめない。
「俺は・・・もう一度帰る場所が欲しかったんだ・・・一人で生きるのは・・・つらくて・・・」
「・・・バカ・・・」
シユウさんの手をヨシノちゃんはギュッと握る。
「シユウは一人ぼっちじゃないじゃん・・・私がここにいるよ!!私・・・シユウを一人になんかしない!シユウの家はここなんだよ!?だから・・・」
ヨシノちゃんはシユウさんの手を強く握りながら、大粒の涙を流す。
「ずっとここにいてよ・・・!いなくなっちゃやだよぉ・・・」
シユウさんはヨシノちゃんにそう言われると、少し笑顔になる。
「・・・そっか・・・もう・・・ずっと・・・一人じゃなかっ・・・ありがとう、ヨシ・・・ノ・・・」
シユウさんはヨシノちゃんにそう言うと、ヨシノちゃんに頭を預けるように気を失う。ヨシノちゃんはそんなシユウさんを抱き締める。
「・・・シユウ?ねぇ・・・やだぉ・・・やだ・・・シユ・・・シッ・・・シユウ~・・・」
ヨシノちゃんはシユウさんを抱き締めながら声を出して泣く。
シャルルやルーシィさんたちも、そんな二人を見て涙する。
だけど・・・俺にはわかる・・・
まだわずかにシユウさんに生気がある!!
「俺に任せて・・・」
「シリル・・・?」
俺はシユウさんに魔力を当てる・・・だけど、俺の力じゃあ全然傷が治るようには見えない・・・
「私に任せて!!」
「ウェンディ!あんた、そんな体で・・・」
「ウェンディが危険なことになっちゃうよ~!!」
「大丈夫!!」
ウェンディはシャルルとセシリーに大きな声で言う。
「絶対に助ける!!もうこれ以上・・・大切な人たちを泣かせたくないの!!」
ウェンディがそう言い、治癒魔法の魔力を強める。すると
「傷が・・・」
「消えた・・・」
俺たちの体に合った傷がみるみる消えていく。さらには氷漬けにされていた村人たちも少しずつ元に戻っていく。
「すごい・・・」
「ウェンディが本当に得意なのは攻撃魔法じゃなくて人を癒す治癒魔法なの。でも・・・」
ウェンディが魔力を当てているとシユウさんは目を覚ます。
「こんな大きな魔法ははじめて・・・!!」
シャルルはウェンディがシユウを助けたことに涙して、俺たちはシユウさんが治ったことに喜んだ。
「よかった・・・」フラッ
「ウェンディ!!」
治癒を終えたウェンディは気を失う。俺はそんなウェンディを受け止める。
「ウェンディ!?」
「大丈夫。気を失ってるだけだから」
「そうなんだ・・・」
ヨシノちゃんはウェンディが気を失ってるだけと知って安心した表情になる。
「しばらく寝かせてあげよう」
「もちろん!今日はウェンディ・・・すごく頑張ったからね」
「そうね・・・」
「すごかったね~!」
俺たちはウェンディをゆっくりと地面に寝かせる。そんなウェンディの顔はすごく満足そうな顔をしているように見えた。
しばらくすると・・・
「・・・あれ?」
「ウェンディ?よかった。気がついた」
「大丈夫?あんた魔力を使いすぎて倒れたのよ」
「でも気がついてよかった~!」
眠っていたウェンディが目を覚ます。よかった。特に問題とかもなさそうだ。
「ウェンディ!!よかったぁ!!」
「ちょ!?」
「いきなり抱きつかないであげて!!」
シャルルと俺はヨシノちゃんがウェンディにいきなり飛び付いたことに驚いてしまう。ウェンディは今起きたばっかりだからあんまり無理させないであげて!!
「ヨシノちゃん・・・あ!!シユウさんや村の人たちは!?」
「安心して!みーんな無事だから」
「ウェンディの魔法が皆さんの氷も溶かしちゃったんだぞ!」
ヨシノちゃんが指をさしたところには元気そうに話している村の人たちとシユウさんがいる。
「シユウもこのまま村にいられることになったんだ!みんながね!「この村でやりなおせ」って言ってくれて・・・!!
ぜーんぶウェンディとシリルのおかげだよ!本当にありがとう!!」
ヨシノちゃんはまんべんの笑みで俺たちにそう言う。ヨシノちゃんも村の人たちも救えてよかった。
「やっぱりウェンディもシリルもすごい魔導士だったんだね!」
「そ・・・そんなっ!」
ヨシノちゃんはそう言いながらウェンディに頬擦りをする。
「なんか二人がイチャイチャしてるように見えるぞ?」
「それはあんたの勘違いよ」
「僕もそう思う~」
俺が二人を見てそう言うとシャルルとセシリーに否定される。本当かな?なんか最近ウェンディが俺からすごい離れていってるような気が・・・
「ところでさぁ・・・シリルの膝枕はどうだった?」コソッ
「え・・・ええ!?」
ヨシノちゃんがウェンディの耳元で何か言うとウェンディは顔を真っ赤にして声をあげる。なんだ?
「私からのお礼だよ!シリルにお願いしてウェンディが寝ている間膝枕してもらったんだから」
「な・・・なんでそんな・・・////」
「だって・・・ウェンディ、シリルのこと好きでしょ?」
「ええ!?なんで!?」
「だってずっとシリルと一緒にいたがるし、なんか話してるときもシリルの方チラチラ見てるんだもん!多分シユウもわかってるよ?」
「そ・・・そんな・・・////」
なんか二人がコソコソ話しちゃってる。ウェンディの声だけ丸聞こえだけど・・・ヨシノちゃんが何言ってるかわかんないから何の会話してるかわからないや・・・
「ウェンディ!頑張ってね!!」
「え!?な・・・何を頑張るの!?」
ヨシノちゃんはウェンディとの会話が終わったのか、シユウさんの元に走っていく。あとに残されたのは顔を真っ赤にしたウェンディただ一人。
俺はそのウェンディに近寄る。
「大丈夫?ウェンディ」
「し・・・シリル!?う・・・うん!!全然大丈夫!!」
慌てた様子で首をものすごい勢いで横に振るウェンディ。なんか小動物みたいで可愛いぞ!?
「でも・・・よかったね。無事に解決できて」
「うん!!だけど・・・私たちだけじゃ解決できなかったね。また皆さんに助けてもらっちゃいました・・・」
「そんなこと気にしてたの?」
ウェンディが少し落ち込みぎみにそう言うとルーシィさんが顔を覗きこみながら言う。するとナツさんがウェンディの髪を後ろから掴む。
「いいじゃねーか!解決したんだし!助け合うのが仲間だろ!」
「ちょっと!!ナツさん!!髪を引っ張らないであげてください!!」
「悪ぃ悪ぃ」
俺がナツさんを注意するとナツさんは悪びれた様子もなく手を離す。ウェンディも怒ってるか?と思って顔を見たらなんだか嬉しそうな顔してる!?
もしかしてウェンディってそういうことされたい人なのか!?
「じゃあ俺らも家に帰るか!!」
「? 家?」
「家って・・・?」
突然ナツさんが背筋を伸ばしながらそう言ったので、俺とウェンディは意味がわからず聞き返してしまう。
「おう!!俺らの家だ!」
ナツさんがそう言うとそこで俺たちはようやく家という言葉の意味を理解する。
「「はい!!家に帰りましょう!!」」
俺とウェンディは返事をする。俺たちの家・・・たくさんの家族がいる家・・・妖精の尻尾に!!
パァッ
「「!?」」
俺たちが話していると突然まばゆい光が目にはいる。俺たちはそちらを向くとそこにはヨシノちゃんがうろうろしていた。
「どうしたの!?」
「ヨシノちゃん?この光は!?」
「わかんない!竜の宝が突然光だして・・・」
俺とウェンディ、そしてヨシノちゃんは光輝く竜の宝の前にやって来る。するとその光の中から一つの映像が現れる。そこには一人の少女と一匹のドラゴンが映し出されていた。
「なに・・・これ・・・」
「ウェンディ・・・シリル・・・私、あの子知ってる・・・」
「「え!?」」
俺とウェンディはヨシノちゃんの方を向く。もしかして・・・これが竜の宝の秘密なのか!?
後書き
いかがだったでしょうか。
原作だとウェンディにみんなの魔力が集まって敵を倒しましたがここでは全員での合体魔法にしてみました。
次でいよいよ竜の谷編終了です。
次回もよろしくお願いします。
竜からの宝物
前書き
ブルーミストラル読んでみて思いましたが・・・7年後の世界でウェンディとヨシノが遭遇したらどうなるのでしょうね?
ウェンディが成長してないのにヨシノが驚くのかな?「私の方がお姉さんになったね!」って勝ち誇るのでしょうかね?
7年後の世界で一回くらいヨシノ出してみようかな?w
「・・・私、あの子知ってる・・・」
ヨシノちゃんが竜の宝から映し出される映像を見て言う。俺はその映像を見て一つ気づく・・・女の子の髪が・・・なんか見たことあるような・・・
ジャリ・・・
俺がそんなことを思っていると何か音が聞こえたのでそちらを見る。そこにはヨシノちゃんのお父さんがいた。
「こ・・・これは一体・・・」
「お父さん!!どうして!?ケガは?」
「それが・・・さっき不思議な光を浴びたら痛みが消えたんだ」
ヨシノちゃんのお父さんは俺たちが家を出てくるまで巻いていたはずの包帯をしていない。不思議な光って・・・
「ウェンディの魔法ね」
「い・・・いつの間に~?」
「ご・・・ごめんね?」
「いや・・・謝ることではないでしょ?」
俺たちが竜の谷に向かう前にウェンディがお父さんの治療をしていたようだ。
よく気が回る子だこと・・・
「それよりこれは?どうしてサキハおばあちゃんが!?」
「サキハおばあちゃんって?」
お父さんは竜の宝から映し出される映像を見て言う。ヨシノちゃんは誰?って顔をしている。
「お前のひいおばあちゃんだよ。家に肖像画があるだろ?」
「あ・・・!!」
お父さんに言われてヨシノちゃんはハッとする。なるほど、だからヨシノちゃんは見覚えがあるのか。そういえば髪にヨシノちゃんの触手みたいなのがあるな・・・跳ねが小さいけど・・・
「あれがサキハだって!?」
「伝説の魔導士の!?」
「伝説の・・・」
「魔導士・・・?」
村の人たちが騒ぐ。ウェンディと俺は伝説の魔導士という言葉に?マークを浮かべている。
「どういうこと?」
「・・・お前に話すのは初めてだな。あのドラゴンを倒したのは、サキハおばあちゃんなんだよ」
「「「ええっ!?」」」
お父さんに言われて俺たちは驚く。でも・・・ドラゴンと仲良さそうにしてるのに・・・どういうこと?
「サキハおばあちゃんがまだ今のヨシノくらいのころだ。
両親を亡くしたサキハおばあちゃんはこの村へやってきた。しかし、魔導士だったサキハおばあちゃんは受け入れてもらえず、村の外れで一人で暮らしていたんだ・・・当時の村人には魔法は怖いものだったんだろう・・・
だが、サキハおばあちゃんは魔法でドラゴンを倒し、長年ドラゴンに怯えていた村人たちはサキハおばあちゃんを英雄として村に迎え入れたそうだ」
「・・・それが私の家、村で唯一の魔導士一族なのね?」
お父さんの話を聞いてヨシノちゃんはそう言う。すると映像から突然声が聞こえてくる。
『お願い!早くここから逃げて!!』
ドラゴンに向かって叫ぶサキハおばあちゃん・・・ん?やっぱり猛烈な違和感・・・
「え・・・じゃあこれって・・・サキハおばあちゃんとドラゴンの話なの?」
俺たちはその映像を食い入るように見る。
『村のみんながあなたを倒すって集まってるの!もうすぐここにくるわ!』
『・・・フン!私は逃げも隠れもせぬわ』
『で・・・でも』
どうやら当時の村人たちがドラゴンを倒すために集まっているのをサキハおばあちゃんがドラゴンに教えているところのようだな・・・
だけど、ドラゴンは全然動じていないようだ・・・
『・・・構わぬ。どうせ私はもう寿命なのだ』
『・・・そんなこと、言わないで・・・』
『サキハ。この石を覚えているか?』
ドラゴンはそう言うと一つの小さな石をサキハおばあちゃんの前に差し出す。あの石って・・・竜の宝か?
『これ・・・あなたの足に挟まっていた・・・?』
『そうだ。私たちが初めて会ったとき、お前がとってくれた・・・人の優しさを教えてくれた石だ』
ドラゴンはサキハおばあちゃんに笑顔を見せる。
『まさか私が人間と仲良くなるとは・・・思ってもみなかったよ』
サキハおばあちゃんとこのドラゴンは仲良しだったんだ・・・じゃあなんで・・・ドラゴンはサキハおばあちゃんに倒されたんだ?
『・・・どうして急にそんな話・・・』
『サキハ。お前は本当は村の人々と暮らしたいのだろう?
お前が隠れて泣いていること・・・知っているぞ』
ドラゴンは一拍置いてから話を続ける。
『いいかサキハ。私の命を使え。悪いドラゴンを倒した魔導士として村に行くのだ』
『そ・・・そんな・・・』
サキハおばあちゃんは手を握りしめプルプルと震え出す。
『あなたを悪いドラゴンになんてできない!!できるわけないでしょ・・・』
『・・・頼むサキハ。私の最期の願いを聞いてくれ。私の命をお前の幸せのために使ってほしいのだ・・・』
ドラゴンはサキハおばあちゃんに頬擦りをする・・・サキハおばあちゃんは目に涙を浮かばせている。
『倒せ!!』
『今日こそドラゴンを倒すぞ!』
するとドラゴンを倒そうと斧を持った村人たちが押し寄せてくる。
『村の人が・・・』
『チッ・・・頼んだぞ、サキハ』
『待って!いかないで!』
ドラゴンはそういって翼を羽ばたかせ、村人たちの前に降り立つ。
『ドラゴンだ!』
『怯むな!いけ!!』
村人たちがドラゴンに向かって行くが、ドラゴンはそれを一瞬で凪ぎ払う。
『うわっ!!』
するとドラゴンは一人の村人を食べようと口を大きく開けて見せる。
『うわああ!!』
『・・・だめっ、やめてぇ!!』
サキハおばあちゃんはドラゴンに向かって魔法を放つ・・・ドラゴンはその魔法によって地面へと倒れる。
『ドラゴンが・・・!』
『少女がドラゴンを倒した!!』
村人たちはサキハおばあちゃんがドラゴンを倒したことに驚き、そしてその声は次第に歓喜の声へと変わっていく。
『今の魔法お前が・・・!?』
『えっ・・・』
『すごいぞ!!この子は英雄だ!!』
『わ・・・私・・・』
サキハおばあちゃんはドラゴンを倒してしまったことに動揺して、首を振る。しかし、サキハおばあちゃんはドラゴンの手に竜の宝があるのを見つける。
きっとドラゴンは・・・サキハおばあちゃんに幸せをつかんでもらえて幸せだったんだろう・・・その顔は少し・・・俺には嬉しそうに見えた。
サキハおばあちゃんは顔を覆って、涙を流していた・・・
スゥ・・・
そこで竜の宝から映像が見えなくなってしまう・・・俺とウェンディはそれを見て思わず立ち尽くす。
「・・・そうか。そういうことだったのか!」
「お父さん?」
お父さんはその映像を見て何かに気づいたようだ。
「子供の頃、お前のお母さんと一緒にサキハおばあちゃんからよく聞かされたんだ。
“竜の谷にはすごい宝があって、私の願いを叶えてくれたんだ”って」
「それが願いを叶える魔法の石として伝説になったのか・・・」
「全然知らなかったわ!」
シユウさんも村人たちもその話を聞いて驚く。
「・・・優しいドラゴンね」
「うん」
「めっちゃいい話・・・」
「感動したよ~」
俺たちもその話を聞いて涙を流す。ヴァッサボーネもグランディーネも優しかったけど・・・このドラゴンもすごく優しいな・・・
「・・・やだ・・・こんなの悲しすぎるよ!!」
するとヨシノちゃんはそれを聞いて大きな声を出す。
「私たち・・・ずっとこのドラゴンは悪い奴だって思ってた・・・おばあちゃんを助けてくれたのに・・・
なのに・・・なのに・・・ドラゴンは悪いことしてないのに・・・こんなのドラゴンがかわいそうだよ!!」
ヨシノちゃんはそういって涙を拭う。ウェンディはそんなヨシノちゃんの手をそっと握る。
「ヨシノちゃんはおばあちゃんと同じ、優しい心を持っていたから、竜の宝が反応したんだね」
「これからはこんなことが起こらないようにしような」
「お父さん・・・」
「そうね!」
「私も頑張るー!!」
「みんな・・・」
気がつくとお父さんさんも村人たちもみんなこの話を聞いて、ドラゴンに対する認識が改まったようだ。
「ヨシノがいれば大丈夫ね」
「またここに来るのが楽しみだよ」
「ウェンディ・・・シャルル・・・」
ウェンディとシャルルもヨシノちゃんに声をかける。俺もヨシノちゃんに近づいていく。
「ドラゴンさんの思いをこれから大切にな」
「ヨシノちゃんたちならきっと大丈夫だね~!」
「シリル・・・セシリー・・・うん!!」
ヨシノちゃんは笑顔になって、ドラゴンの方を向く。
「悪いドラゴンだと思ってて・・・ごめんね!私たち、もっともっといい村にするよー!!」
ヨシノちゃんはそういってたくさんの花を咲かせる。それはまるで、ドラゴンを着飾るようにたくさんの花がドラゴンを囲んだ。
「きっとナナル村はいいところになるね~」
「これからますます・・・な」
セシリーと俺はそう話、その様子をしばらく眺めていた。すると
「あー!!」
「「「「!?」」」」
突然ルーシィさんが大声を出す。どうしたんですか!?
「もう汽車がでちゃう!これ逃したら今日中に帰れないわよ!!」
「マジか!?」
「いくぞウェンディ!!シリル!!」
「えっ!?」
「うわっ!!」
ナツさんに首を捕まれ走り出す。もうちょっと感動に浸らせてくださいよ!!
「あ!私たち、ヨシノちゃんちに荷物が・・・!!」
「そういえば!!」
ウェンディのウサギのカバンと俺の財布とか入ったバック!!ヨシノちゃんの家に置きっぱだ!!
「あきらめろ。めんどくせぇ」
「えぇ~!?」
「いやですよ~!!」
ナツさんのまさかの発言に涙目のウェンディとガッカリの俺・・・
するとその様子を見ていたヨシノちゃんは笑っていた。
「またね!!ウェンディ!シリル!ありがとー!!」
ヨシノちゃんたちは俺たちに笑顔で手を振ってくる。
「うん!またね!ヨシノちゃん!!」
「シユウさんとお幸せにな~!!」
「ちょ!!シリル!!」
俺たちも笑顔で手を振り返す。俺の一言でヨシノちゃんは顔を赤くしていた。でもあの二人ならきっといい感じになると思うんだよなぁ。またいつか・・・会えるといいな
帰りの列車にて・・・
「よくやったな、シリル!ウェンディ!」
「お疲れ~♪」
「これ食いな」
「わぁ!!」
「ありがとうございます!」
帰りの列車の中ではルーシィさんたちが用意してくれていたお菓子が俺たちの目の前にどんどん乗せられていく。それはもうびっくりするくらいの量が!!
「こいつら、ずっと心配だ心配だって騒いでたんだぜ!!」
「本当ですか!?」
グレイさんがエルザさんとルーシィさんを見ながらそう言う。そういえばこの間のオニバスの時もルーシィさんはめっちゃ心配してたな。結局足手まといで終わったけど・・・
「う・・・ウェンディ・・・酔い止めの魔法かけてくれ・・・」
「ナツさん!?」
「大丈夫ですか!?」
ナツさんは案の定乗り物酔いで顔を真っ白にしていた。まさかこっちに来るときもこんなんだったんじゃ・・・
ぎゅむ
「オイコラ・・・」
「こんなところで寝てんじゃねーよ」
するとグレイさんがナツさんを踏み二人はにらみ合う。すぐにナツさんが酔って吐きそうになってるけど・・・
「ふふっ。なんかこういうのひさしぶりだね」
「そうだね。なんか皆さんと一緒にいるときが一番楽しいよ!」
「私も!!」
俺とウェンディは二人でそんな話をしている。ナツさんたちはハチャメチャだけど、すごい優しくて、頼りになって・・・本当に憧れちゃうや・・・
「ん・・・」
するとウェンディが突然俺の肩に頭を乗せてくる。どうしたのかと思ってウェンディの顔を見ると、ウェンディは気持ち良さそうに眠っていた。
「寝ちゃった?」
「ルーシィさん!」
横に来ていたルーシィさんが声をかけてくれる。その後ろではエルザさんとグレイさんがナツさんを押し付け合ってるけど・・・そんなことしたらナツさん吐いちゃいますよ~。
「ウェンディ、気持ち良さそうね」
「疲れちゃってるんですね」
ウェンディは静かに寝息を立てて眠っている。今日は色々ありすぎたからな・・・ゆっくり寝かしてあげよう。
「シリルも眠かったら眠った方がいいからね」
「はい!ありがとうございます」
ルーシィさんはそういってエルザさんたちを止めにいく。少し窓が壊れつつあるけど・・・大丈夫かな?なんか列車壊しました~、とか言いそうでちょっと怖いわ・・・
しばらくすると・・・
「う・・・寝てた・・・」
俺はいつのまにか眠っていたらしく、気がつくとナツさんたちも眠っていたようだ。なぜかナツさんは荷物置きの上で眠ってたけど・・・と、そこまで思って猛烈な違和感・・・
「あれ!?ウェンディがいない!!というか窓が壊れてる!?」
俺は立ち上がって辺りを見回す。なぜか隣にいたはずのウェンディがいなくなっている・・・
まさか・・・窓から落ちたのか!?
「シリル~・・・」
「セシリー!!」
俺があたふたしているとセシリーがなぜか壊れた窓の外からやってくる。何してたんだ?
「シリル~!!すぐにこっちきて~」
「え?ちょっと!!」
セシリーはそう言うと俺をつかんで壊れた窓から外に出る。何してるんだこいつは!?
「おい!!セシリー!?どういうこと!?」
「うーんとね~・・・実は・・・」
――――――少し遡って・・・第三者side
「ん・・・ねちゃった・・・」
ウェンディは目を擦りながら周りを見る。するとそこには列車の車窓が見るも無惨に砕けてなくなっている光景が広がっていた・・・
「ええええ!?なんで窓が・・・あれ!?こっちも!!壊しちゃったんですか~!?」
ウェンディは自分達がわの窓も壊れていることに気づいて動揺する。するとその声でシャルルが目覚める。
「あんた、よく寝られたわね」
「シャルル!!どうしよう・・・せめてお片付けを・・・」
「ムダよ」
ウェンディはそういいながら窓の破片を広い始めるが・・・風が強すぎて思わず落ちそうになる。
「ちょっと・・・いくらあんたでも汽車から落ちたりしないわよね・・・」
「そこまでドジじゃないよ!!」
ハラハラと言うシャルル。ウェンディはそれに対して反論しようとし、窓を掴んでいた手を離してしまう。つまり・・・風に流され電車の外に出てしまうわけで・・・
「きゃああああああ!!」
「ウェンディ!!」
「ん・・・」
落ちてしまうウェンディとそれを助けにいくシャルル。二人の大声でセシリーが目を覚まし、列車の外を見る。
シャルルがウェンディを見事に掴むが・・・二人はなぜかそのまま落ちていく。
「シャルル!!ウェンディ!!」
セシリーはあわてて二人を助けようと列車から飛び降りる。しかし
「来ちゃダメよセシリー!!」
「な・・・なんて~!!?」
シャルルがセシリーを止め、セシリーも思わず止まってしまう。
「シリルたちに言って助けに来るようにお願いして!!私たちは大丈夫だから!!」
シャルルはそう言うとなんとか軌道を修正して下にある屋敷に向かって落ちていく。セシリーは思わず二人を追いかけようとするが・・・あることに気づく。
「あれ?魔力が~・・・」
力が抜けていく感じをセシリーは感じた。シャルルが飛べないのは、もしかしてこれが原因なのか、とセシリーは考え、その場な留まる。
「必ず助けにいくから~!!」
「お願いね!!」
「わぁ!!落ちる~!!」
セシリーは落ちていく二人を悔しそうに見てから、魔力が足りないながらもゆっくりとゆっくりと列車に向かって戻っていく。列車に近づいていくと、魔力が元通りに戻ってきたのをセシリーは感じた。
「魔法が戻ってきた・・・なんだったんだ・・・さっきの・・・」
セシリーはシャルルたちの方を見ると、シャルルたちは森の中の大きなお屋敷へと落ちていった。
「もしかして・・・あの屋敷に魔法を使えなくする何かがあるんじゃ・・・」
セシリーは急いで、シリルたちの元へと戻った・・・
後書き
いかがだったでしょうか。
呪いの屋敷編は簡潔にやらさせていただこうと思います。
次回もよろしくお願いします。
呪われた怪物
シリルside
「ま・・・マジかそれ・・・」
「うん~。マジ~」
セシリーは俺に楽しそうに言ってくる。こいつ・・・ウェンディたちがヤバイかもしれないのに・・・
「というかウェンディの悲鳴に気づかなかった俺が情けない・・・」
「シリルも疲れてたんだよ~。しょうがないと思うよ~?」
「そうだけど・・・」
ウェンディの声なら反応しないと・・・ウェンディがピンチの時に「俺寝てました」とかじゃグランディーネとヴァッサボーネに顔向けできないじゃん・・・
だけど・・・
「その屋敷はまだなの?」
「さっき力が抜けたりしたせいで列車に追い付くのに時間がかかったから・・・もう少しだとは思うんだけど~・・・あれ?」
セシリーはそう言うと突然俺たちは落下を始める。どうした?
「セシリー!?どうしたの!?」
「さっきと一緒だよ~!魔力が・・・抜けていってる・・・」
セシリーはどうも魔法がうまく使えなくなっているようだ・・・俺が何とかしないと・・・あれ?
「やべぇ!!俺も魔法がうまく使えない!!」
「ええ!?ヤバイよ!!落ちるよ!!」
セシリーの翼が消えてしまい、俺たちはすごい速度で落下を始める。
「「うわあああああ!!」」
バキッバキバキッボスン
「「いった~い・・・」」
俺とセシリーは木にぶつかって減速したおかげでなんとか地上に到着した。ここは・・・森の中かな?周りには木がいっぱいあるし・・・
俺が辺りを見回していると、聞き覚えのある羽の音が聞こえてくる。この羽を羽ばたかせる音は・・・
「シャルルだ!!セシリーいくぞ!!」
「うん!!あれ~?魔法が使えるぞ~?」
俺は音のする方に走っていき、セシリーは魔法が使えるようになったのか、翼を出して俺のあとを追う。
走っていくと次第にシャルルの匂いが近づいてくる。
「もうすぐだ!!」
「待ってて~!!シャルル~!!ウェンディ!!」
あれ?シャルルの匂いはするのに、ウェンディの匂いがしない。どうしてだ?
俺がそう思っているとシャルルの羽を音が止む。何かあったのか!?
「急ぐぞ!!セシリー!!」
「うん!!」
俺たちはシャルルの匂いのところまで急ぐ。すると嗅いだことのない匂いも混じってくる。
そして俺たちは一人の女と少年に捕まえられているシャルルを発見した。
「あの屋敷から生かして帰すわけにはいかないの。
ネコ鍋にしてやろうか?あ?」
「させねぇよ!!」
「え?きゃっ!!」
俺はシャルルを捕まえている女に体当たりする。女はその勢いで倒れ、シャルルを縛っていたものが外れる。
「シリル!!セシリー!!助かったわ」
「気にすんな」
「シャルル~。ウェンディは~?」
「まだあの屋敷に・・・」
シャルルがそういって指を指した先には大きな屋敷がある。あの中にウェンディがいるのか!?だったら
「待ちなさい!!」
「どわっ!」
俺は屋敷に向かって走り出そうとしたら突然足に何かが絡まって倒れてしまう。なんだこれ?木の枝か?
「その猫はあんたの仲間か」
「そうだけど?それが何か?」
「ちょっとシリル!!」
「敵対心丸出しにしすぎ~」
女が俺に歩み寄ってくる。俺はそれを睨むように見る。まさかシャルルをそんなにネコ鍋にしたいのか?見かけによらず残酷な人だ。
「あの屋敷には入っちゃいけないわ」
「え?」
突然そう言われて俺は意味がわからずに変な声を出す。屋敷に入っちゃダメって・・・それじゃあ屋敷の意味ないじゃん!!
「あの屋敷には悪い奴が住んでいる。そこに行ったら、あんたも死ぬことになるわよ?」
「ウソ!?」
女の言葉に俺は驚いてしまう。悪い奴って・・・じゃあウェンディが危ないじゃん!?
「あの屋敷に俺の仲間が落っこちたらしいんですよ!?なおさら助けに行かないと!!」
「ダメよ!!あの屋敷に入ったらあなたも病気になってしまうわ!!この森を死なせる病気にね」
病気?病気ならかかった人が悪い奴なわけじゃないんじゃないか?
「あの・・・病気になったのは別に悪い人とは言わないんじゃないですかね?」
俺がそう言うと、女の人は一瞬困ったような顔をしたがすぐに表情が元に戻る。
「その男たちは病気をばらまいて私たちの森を奪おうとしたの。だから私たちはそいつらを屋敷に閉じ込め、魔法をかけたわ」
「魔法?」
「そう。人を木に変える魔法よ」
「人を木に変える!?」
俺は女の人の言葉に驚く。人を木に変えるって・・・何もそこまでするか!?
「もしかして・・・屋敷で見た人みたいな木って・・・」
「そう。それは私が木に変えた人間よ」
どうやらシャルルは屋敷の中で木に変えられた人を見たらしい・・・女の人はまったく気にした様子もなく平然と言う。
「何もそこまでしなくても~」
「そうだよね・・・」
セシリーも俺と同じことを思ったらしく女の人に言う。
女の人は俺たちを見ながら答える。
「それぐらいしないとダメなのよ。そうじゃないと・・・この森は死んでしまうんだから」
「森が・・・死ぬ?」
「えぇ」
女の人にそう言われ、俺たち三人は意味がよくわからずに顔を見合わせる・・・病気でなんで森が死ぬんだ?病気は人に感染していくものだろう?
女の人はため息をつくと俺たちに手を差し出す。
「仕方ないわ。詳しく話してあげるからこっちに来なさい。
私の名前はサラ。あなたは?」
「俺はシリル。こっちがシャルルでこっちがセシリー」
「よろしく」
「よろしくね~」
俺たちはサラさんの手をとって立ち上がる。サラさんは俺たちが立ち上がったのを見るとそのままどこかに歩き出すので俺たちはそれについていく。
しばらく歩くと数件の家が見えてきて、そこには数人の村人らしき人たちがいた。
「サラ。その子達は・・・?」
「安心して。タンたちとは関係ないわ」
タン?誰だ?屋敷に閉じ込めている人のことか?
サラさんはそう言うと恐らくサラさんの家だと思われる家に入っていく。サラさんは俺たちにも入ってくるよう手招きするので俺たちも中に入っていく。
家の中はいたってシンプルな感じのベッドや机があるだけの家だった。
「そこに座りなさい」
「は・・・はい」
サラさんは机の前にある椅子に腰かけると俺たちにも座るように促す。俺たちは近くにある椅子にそれぞれ座る。
「それで・・・一体何があったんですか?」
「あれは・・・10年くらい前だったかな・・・」
俺がそう言うとサラさんは昔起きたこの森についての話を始めた。
昔・・・この森に数人の男たちがやって来た。
「俺たちの技術を教えるかわりに、森の一部に俺たちの村を作らせてほしい」
タンと名乗るその男は、村人たちが貧しい生活をしているのを見かねて、もっと良い暮らしができるようにと、そう提案した。
村人たちは当然それに賛成した。そしてタンとその仲間たちの指導によって森は発展していった・・・しかし、しばらくすると森にある異変が起こる。
「何これ・・・木が・・・」
サラさんは森の木を見て驚いたそうだ。それは木が次々と枯れていっていたのだ・・・
原因はすぐにわかった。木が枯れ始める前と後に起こった変化・・・それは、タンたちがこの森に来たことだった。
「タン!お前らが来たせいでこんなに森の木が枯れたんだぞ!早くここから出ていけ!!」
サラさんはタンさんに向かって植物のようなものをだし、自分の目の前まで引っ張る。
「私に逆らって生きていけると思うなよ」
「いい加減にしろサラ!!どこの木が枯れたっていうんだ!?周りを見てみろ!!」
タンは植物を振り払うと、辺りを見回して見せる。そこにはまったく木が枯れているようには見えない。
しかし、それもそのはず・・・サラさんが魔法の力で森の木を元に戻していたのだから。
その後もサラさんとタンさんは幾度となく衝突し、村人たちと開発者側の間に大きな溝が生まれ始めた・・・
「もうウソはやめてくれサラ!!
お前のせいで村人との関係は悪くなるばかりだ!」
「ウソじゃない!!嫌ならさっさと出ていけ!!」
二人はその日もいつものように言い合ったいたらしい。するとタンさんはサラさんに言われて困った顔をする。
「俺たちは他に行く場所なんてない。何年もさまよい、何人も仲間を失った・・・そしてようやくここにたどり着いたんだ!やっと見つけた居場所を俺たちから奪わないでくれ!!」
タンさんにそう言われ、サラさんは困った顔をする・・・しかし、それでは森が枯れてしまう。サラさんはタンさんにつかみかかる。
「だめだ!それでは森が死ぬんだ!!」
「しつこいぞサラ!!」
タンさんはサラさんの腕を払うとその場を後にしようとする。サラさんはそれを見て、ある決意をする。
「あいつらを・・・隔離するしかない!!」
その日はタンさんたちは屋敷の完成を祝うために屋敷に集まっていた。村人たちはサラさんの魔法を中心に、屋敷のドアや窓を開かないようにして、さらには開発者たちを木に変えていく魔法を使い、開発者たちは木へと変わってしまった・・・ただ、いまだにタンさんだけは木に変わらずにいるらしく、それがあの屋敷に入ってはいけない理由らしい・・・
俺はその話を聞いて一つ思ったことを言う。
「サラさんももっと詳しく説明しなきゃダメだったんじゃ・・・」
「そうよね・・・木を直す前にそのタンって人に見せるとか」
「そうすればその人たちももっと配慮してくれたかもしれないのに~」
俺たちがそう言うとサラさんは怒った顔をする。
「そんなことをする暇すらなかったんだ!!木は次々に枯れて、さらには動物や村人たちにまでその病気は蔓延していった!!
それに、あいつらはこの森を始めから奪うつもりで病気をばらまいていたんだ!!枯れた木を見せては・・・奴らの思うつぼだ・・・」
サラさんはそういって俺たちを見る。その目はウソを言っているようには見えないし・・・多分本当にタンさんという人たちがこの森に病気を持ち込んでしまったのだろう・・・
「お前の仲間も・・・もしかしたらその病気にかかってしまってるかもな」
「かかりませんよ?」
「え?」
サラさんにそう言われたので俺はそんな病気にウェンディはかからないと伝える。もちろんサラさんは驚いた顔をする。
「ウェンディは・・・その仲間は天空魔法を使うんです。天空魔法は状態異常にならない・・・つまり、病気になりにくいんですよ」
俺がそう説明するとサラさんはなるほど、と納得する。危ない危ない。もしかしたらウェンディも外に出しちゃいけないとか言われるとこだった・・・こんなウソに引っ掛かってくれるとは・・・助かったな・・・
とりあえず、ウェンディを助け出したら病気にかかってないかすぐに確認しよう。そしてかかってたら俺の治癒魔法でなんとかして治そう。それで万事解決だ!!
「サラ!!」
俺たちがそんなことを話していると、突然村の人が扉を勢いよく開ける。どうしたんだ?
「どうした?騒々しい」
「それが・・・地中から何か穴を掘る音が聞こえてきて・・・何か来たのかもしれない!!」
地面から音が・・・?なるほど・・・ウェンディが考えたんだな。扉や窓から出れないなら、地面を掘って出てくればいいって訳か・・・シャルルは翼があるから上から出てきたみたいだけど・・・ウェンディにはそんな跳躍力はないからな。
「地中から・・・?一体・・・」
「多分屋敷から地面を掘って逃げようとしてるんですよ。とにかく・・・そのタンさんを捕まえないといけないんじゃないですかね?」
「そ・・・そうだな・・・」
俺がそう言うとサラさんはうなずく。うなずいたけど・・・今表情が曇ったような・・・
「みんな行くぞ!!タンを捕まえて屋敷に連れ戻すんだ!!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
サラさんは村人たちを従えて、その音をする場所を目指す。俺たちも行ってみるか?ウェンディを助けなきゃいけないし
「俺たちも行くぞ!!」
「もちろん!!」
「ウェンディ・・・大丈夫かな~」
俺たちはサラさんたちのあとを追いかけるように、家を飛び出した・・・
崖の前・・・
しばらく走ると、村の人たちがなぜか崖の前の森の中で息を潜めているのを発見する。何やってんだ?
「サラさん?なんでこんなところに?」
「ああ。マキがここから出てくるよ、って言うからそれを信じて待ってるんだ」
「マキ?」
「ん」
サラさんが指を指したところを見ると、そこには赤い髪の毛の小さな少年がいた。なんであの子はここから出てくるってわかるんだ?
「なるほど・・・あの子が屋敷に出入りしている道を掘ってウェンディたちは脱出しようとしてるわけね」
「すごいねシャルル~。そんなことがわかるなんて~」
セシリーはシャルルの考えに感心する。へぇ・・・あの子、屋敷に出入りなんかしてるのか。ん?それっておかしくない?
「シャルル?あの子、本当に屋敷に出入りしてるの?」
「? ええ。屋敷の中で何回も見かけたわよ?」
屋敷で見かけた?・・・それって・・・屋敷の中の人たちが持ってるっていう病気にかかっちゃうんじゃ・・・
「ごめんシャルル、セシリー。ちょっと席はずす」
「どうしたの?」
「シリル~?」
俺は二人にそういってその場から離れる。そして俺はマキくんの元に歩いていく。
「マキくん?」
「何?」
「ちょっといいかい?」
「いいよ。それならこっちに来て。おねーちゃん」
「おね・・・」
俺はマキくんに話を聞こうとしたら、話すにはちょうどいいところがあるらしく、そこに手を引かれていく。しかし・・・こんなちびっこにまで女に間違えられるとは・・・本当にショックだわ・・・
しばらく歩くと、そこはあまり人が出入りしているようには見えないところに出る。もしかしてここって、この子の遊び場か?
「で?何?おねーちゃん」
「夢を壊してごめんね。俺、おねーちゃんじゃないんだ。おにーちゃんなんだ」
「ええ!?」
俺がそう言うとマキくんはすごい驚いた顔をする。いや・・・そんなに驚かなくても・・・
「屋敷にいたおねーちゃんより可愛いのに・・・男なのか・・・」
マキくんは俺が男だったことにかなりショックを受けているのか、何やらブツブツと言っている。
まぁ、今はそんなはことはいいんだけどさ・・・
「マキくんってさぁ・・・あの屋敷にいつぐらいから出入りしてるの?」
「え!?な・・・なんのこと~?」
俺が質問するとマキくんは視線を泳がせて、知らないフリをする。もしかして・・・勝手に入っちゃってるのかな?それなら・・・
「そっか。マキくん知らないのか~。だったらサラさんに聞いてみても「ごめんなさい!!サラには言わないで!!」」
マキくんは俺の言葉に大慌てで頭を下げてお願いしてくる。よっぽどサラさんは怖い人みたいだな。なんかわいそうだけど・・・あとで報告はするからね?
「それで?いつから入ってるの?」
「い・・・一年くらい前からだよ」
マキくんはソワソワと周りを見ながらそう言う。よっぽど誰にも聞かれたくないんだな・・・
それよりも・・・一年か・・・ずいぶんと出入りしていたようだな。それなのに病気が発症していないのは・・・一体・・・
「あ・・・」
「え?な・・・何?」
俺はあることに気づいた。病気と言えば免疫力がつくはずだよな?つまり・・・この子はその病気に対する耐性を持っている。いや・・・もしかしたらこの子だけじゃなく、村の人全員が免疫を持っているんじゃないか?
「そうと分かれば!」
「え!?な・・・何なのー!?」
俺はマキくんの手を握って走り出す。このことをサラさんに言えばきっとタンさんとその仲間たちを受け入れてくれるはず!!
俺はとにかく急いでサラさんのところに戻った・・・
崖の前にて・・・
俺たちが崖の前まで戻ってくると、そこからはウェンディの声が聞こえてきた。
「離して!!きゃあ!!」
「ウェンディ!?」
ウェンディは村の人に腕を握られている。あいつら!!ウェンディにまで危害を加えるつもりか!!それはさせん!!
「ウェンディ!!離せ!!」
「え?うわあああ」
俺は右手にもっていたマキくんを村人に投げる・・・あれ?
「「うわあ!!」」
「あ・・・」
俺が投げてしまったマキくんと村人の男の人は目を回して倒れてしまった・・・魔法を出そうと思ったら、間違えてマキくん投げちゃった・・・ごめんなさい・・・
「あれ?あなた・・・お屋敷にいた子!!」
ウェンディはマキくんを見つけてそう言う。するとサラさんはその声が聞こえたのかウェンディのほうを向く。
「お屋敷に・・・いた?」
「は・・・はい!!お屋敷で最初に会ったのがこの子なんです!!」
サラさんはそれを聞くとマキくんの前へと歩み寄る。そしてマキくんを持ち上げる。
「お前!!いつから屋敷に出入りしていたんだ!?」
ちなみにマキくんは俺がさっき放り投げたせいで目を回してしまっている。サラさんはそんなのお構いなしにマキくんを揺すって問いかける。
「答えろ!!いつからだ!?」
「い・・・一年くらい前って言ってましたよ!!」
マキくんを揺するサラさんを押さえるつけながら俺が答える。するとサラさんは俺の方をきょとんとした顔で見つめる。
「一年!?」
「は・・・はい・・・そう言ってました・・・」
サラさんのあまりの迫力に俺がびびってしまう。するとサラさんはじっとマキくんを見つめ、なぜか笑い出す。
「ふっ・・・ふふふっあはははっ」
「さ・・・サラさん?」
サラさんは
笑い終わると木になりかけている男の人を見る。もしかして・・・あれがタンさんか?
「タン。どうやらすでに時は満ちていたようだ」
「時が・・・満ちた?」
意味がわからずおうむ返しするタンさん。サラさんはそんなタンさんを横目で見つつ、手を空に向かって高々とあげる。
「私がかけたのは時を待つ魔法・・・お互いを受け入れるためには時間が必要だったんだ。
間に合ってよかった・・・」
そういうサラさんの目にはなぜか涙がある・・・なんだ?
「サラ・・・」
タンさんも意味がわからずサラさんを見ていると、サラさんが突然光出す。すると
パアッ
「なっ・・・」
木になりかけていたタンさんが突然普通の人間の体に戻り始めた!!これは・・・どういうことだ!?
後書き
いかがだったでしょうか。シリルがまさかのマキくんを投げてしまったのはウェンディのことになるとシリルは通常以上の力を発揮できるということを書きたくて出してみました。
今回のお話はいつにもまして文章がおかしかったと思います・・・全然ストーリーが頭の中で組み立てられず、このようになってしまいました。
次は原作にそって書いていくので今回よりはましになると思います。
次回もよろしくお願いします。
本当の強さ
カッ
サラさんが光ったかと思ったら、木になりかけていたタンさんは普通の人間の体へと戻っていく。一体どうしたんだ?何が起きたのかよくわかんないぞ?
「体が・・・元に戻った・・・!!」
「おいサラ!!どういうことだ!!」
「なぜ魔法を解くの!?」
「病気をばらまいて森を奪おうとしている悪者だって・・・」
元に戻った自分の体を見つめるタンさんとサラさんが魔法を解いたことに驚く村人たち。サラさんはそんな村人たちを見ながら答える。
「それは・・・私のついたウソだ」
サラさんは真面目な顔でそう答える。ウソ・・・?さっきの話がか?
「なっ・・・どうしてそんなこと!!」
「そうよ!何を言い出すの!?」
村人たちはサラさんの言うことに騒ぎ立てる。サラさんは腕を組み、その理由を答える。
「この森を守るためにやったんだ」
「森を守る・・・?」
「どうしてタンさんたちを閉じ込めることが森を守ることになるんですか!?」
ざわめく村人たちとサラさんに問いかけるウェンディ。サラさんはそんなみんなを見ながら答える。
「私は森の声を聞くことができる。タンたちが来て、しばらくしたころ・・・森が私に助けを求めてきた」
サラさんはある日助けを求めてきた木を触ったところ、その木は中身がなくなっており、中からみたことのないような液体が出てきていた・・・そう・・・木が病気にかかっていたのである。
「木が病気に・・・!?」
「ああ・・・今まで見たことのない病気だった。全て森が教えてくれたよ。
原因はタンたちが持ち込んだ病気の種だとな」
「俺たちが持ち今こんだ・・・?」
タンさんは心当たりがないようで驚いた顔をする。さっきサラさんはウソだといったけど、全部が全部ウソってわけではないのか・・・
「そうだ。お前たちが以前住んでいたところに存在していた病気の種・・・お前たちにはなんともないが、私たちにとっては死に至る病気だ」
「死・・・」
「ずっと森から出たことのない村人たちは、その病気の免疫がなかったのね」
「森の木すら死なせてしまう病気だもんね~・・・」
「恐ろしい病気だな・・・」
でも、タンさんたちはその病気を持ち込んだという認識は持ってなかったんだ。だから今回みたいな互いの勘違いが起きたわけか・・・
「私の魔法は生命力を操る。それを利用して木々を治療していった。
しかし・・・治療は追い付かず、病気は動物たちにも広がっていったんだ。
私はこのままでは森のみんなが死んでしまう・・・そう考えた。
たからタンたちを屋敷に閉じ込めたんだ。村人たちに協力してもらうためにタンたちを悪者にして・・・
森を守るためなら、私はどんなことだってしてみせる・・・!」
そう言うサラさんの眼差しは真剣そのものだった。森のために・・・簡単そうで、そうできることではないはずだ。
「だったらなおさら・・・タンにかけた魔法を解いたら危険だろ!?」
「心配するな。タンたちと同じように私たちも病気の種になれてしまえば発症しないんだ」
サラさんはマキくんに視線を動かす。マキくんはようやく目覚めたようだが、サラさんの視線が怖いのか、ビクついている。
「そして大丈夫になったことをそのガキが証明してくれた。勝手に一年も屋敷に出入りしてな。
時間はかかったが・・・この森はもう安全だ」
そう言うサラさんの顔は清々しいものだった。サラさんは初めから、自分たちが病気になれるのを待っていたんだ・・・
「タンさん!!」
すると屋敷の方から数人の男たちがタンさんに向かって走ってくる。もしかして、木になっていたっていうタンさんの仲間たちか?でもなんで元に・・・
「あ・・・」
俺はさっきサラさんの言っていたことを思い出す。そういえば・・・サラさんのかけた魔法は時を待つ魔法・・・つまり、最初から木になった人たちは元に戻すつもりだったんだ。
「サラ・・・お前最初から、いつか魔法を解くつもりだったのか?村人たちが病気の種に慣れたら・・・再び俺たちが森で暮らせるように・・・」
どうやらタンさんもそのことに気づいたようだ。しかし・・・なぜかタンさんの表情は暗い・・・どうしたんだ?
「・・・あの時俺が、森を出たら他にいく場所がないと言ったから・・・」
「・・・それだけではない」
サラさんはそう答えたあと、突然震え始める。するとそのまま、フラッと倒れそうになってしまう。
「サラ!!」
しかしそのサラさんをタンさんが受け止める。
「・・・さっきの魔法で力を使い果たしてしまった・・・そろそろ・・・限界のようだ・・・」
サラさんはそういうと咳をし始める。すると口から血を吐き出す・・・まさか・・・
「・・・お前、病気に・・・!?」
「ああ・・・治療しているうちにかかってしまったんだ・・・私の魔法は自分以外のものにしか効かないから・・・
私が死んだら、みんなを治療できるものがいなくなってしまう・・・そしたら・・・この森はもう終わりなんだ・・・
だから一刻も早くタンたちを閉じ込めるしかなかった・・・12歳にしては、良くできた解決策だろ・・・?」
サラさんはそう言うと口を押さえる。そんなに病気が進行しているのか!?
「俺が・・・俺があの時お前の話をちゃんと聞いていればこんなことには・・・お前はずっと訴えていたのに・・・
俺が本気にしようとしなかったから・・・!!」
タンさんも自分のやってしまったことに悔いて顔を押さえる・・・だけど・・・タンさんも悪いわけではないと思う・・・だって、タンさんたちは自分たちが病気を持ち込んだなんて気づいてなかったんだから・・・
サラさんはそんなタンさんを見て、鼻で笑う。
「フン・・・開発しか頭にないお前たちには本当にうんざりだ・・・もう顔を見なくていいと思うと清々する・・・」
「ウソつき!なんでそんなことばっかり言うんだよ!!」
サラさんの言葉にマキくんが反応して大声を出す。
「俺・・・知ってるんだ!サラ姉ちゃんが毎日崖の上の屋敷を見上げていたこと!
最初は屋敷の奴らが憎いんだと思ってた・・・でも違うよね?だって・・・だって・・・サラ姉ちゃん・・・いつも泣きそうな顔してたもん!!」
マキくんは泣きそうな顔でそう言う・・・マキくんは気づいてたんだ・・・だから屋敷に出入りなんかしてたのかも知れない・・・サラさんが毎日見ている人たちを見に・・・
「ガキが・・・」
「ごめんなさいサラ!私たち大人が気づかなきゃいけなかったのに・・・」
「情けない・・・あの頃は森の発展ばかりに目がいって悪いところを見ようとしなかった・・・」
村の大人たちもサラさんに言う。サラさんはそちらを見て押し黙ってしまう。
「サラ・・・お前一人が背負う必要はないんだ。どんなことだっていい!全部話してくれ!
どんな言葉も、どんな思いも・・・もう絶対に無視したりしない!!」
タンさんがサラさんを抱え混みながら言う。サラさんはそんなタンさんの頬にそっと手を伸ばす。
「・・・私の力が尽きる前に、お前たちの魔法が解けてよかった・・・」
サラさんは笑顔でそう言ったあと、涙を目一杯に浮かばせる。
「・・・だけどっ・・・本当は私・・・もっと・・・ずっとお前と一緒にいたかった・・・」
サラさんは大粒の涙を流し、目を閉じる・・・え?サラさん?
「・・・サラ!?しっかりしろサラ!?」
「私が助けます!」
「ウェンディ!何を・・・」
「安心しなさい。治癒魔法よ」
ウェンディはサラさんに魔力を当てる。しかし、サラさんの顔色はまったく良くなる気配がない!
「・・・シリル・・・どうしよう・・・魔法が効かない・・・」
「くっ!俺もやる!!二人でやればもしかしたら・・・」
俺は水天竜になりサラさんの治療をする。しかし・・・全然サラさんの様子はよくならない。
「体の奥まで病気が入り込んでる!」
「どうしよう・・・どうしたらいいの?」
「そんな・・・なんとかならないの・・・」
「サラ姉ちゃん!!」
マキくんや村の人たちも心配そうに見守る。なんとかしたい・・・だけど、どうすればいいんだ!?
このままじゃ・・・サラさんが・・・
「ぐ・・・」
「ウェンディ・・・」
ウェンディは涙を目に浮かばせる・・・頼む!!なんとか・・・なんとか治ってくれ!!
ポワ・・・
俺が祈るようにしていると、辺り一面に光の結晶が見える・・・何?これ?
「これは・・・」
「サラさんが守ってきた森や村の人たちの思い・・・」
「みんながサラさんを助けようとしてるんだ!」
「すごい~!!」
俺たちはその光の結晶を見てそう言う・・・するとウェンディは何かを思い付いたのか。突然その結晶を吸い込み始める。
「ウェンディ!?」
「シリルも!!吸って!!みんなの思いを私たちの魔力で繋げたらもしかしたら・・・」
「そうか!!」
サラさんを助けられるかもしれない!!
俺もウェンディと同じように光の結晶を吸い込む。すると・・・体中に魔力が溢れてくる。
「すごい・・・」
「これなら・・・」
俺とウェンディは魔力をサラさんに当て治療する。治れ・・・治ってくれ!サラさん!!
しばらくすると・・・
「え・・・」
「サラ!!」
「サラさん!!」
「やった!!」
「よかった・・・!!」
サラさんは見事に病気が治り、目を覚ます。村の人たちの強い思いが・・・サラさんを助けたんだ・・・
「私・・・」
「サラ」
タンさんはサラさんを後ろから抱き締める。
「望み通りこれからはずっと一緒にいるぞ!」
「!?」
サラさんは顔を赤くするとタンさんを振り払う。
「バババ、バカッ!!あんなのウソに決まってるだろ!バーカ!!」
「サラ姉ちゃん・・・そのウソはバレバレだよ~」
「くくくっ」
「照れちゃってるね~」
村の人たちと俺とセシリーはそんなサラさんを見て微笑む。サラさんはツンデレですね。かわいいですよ
村の人たちとタンさんの仲間たちはその後、仲直りをした。本当に、お互いの誤解が解けてよかったですね。
「もう大丈夫そうね」
「うん」
「いいものを見せてもらったよ」
「僕も~」
俺たちは少し離れたところでその様子を見守る。誰かを思う気持ち・・・思いの力・・・か・・・例え一人一人の思いは小さくても、みんなの思いが集まればそれは大きな力になる。
まるで・・・妖精の尻尾みたいだな。
「ウェンディ、本当に世話になった」
「シリルもありがとうね」
「いえいえ」
「私の方こそお世話になりました」
俺たちはこれからギルドに帰るため、村の人たちとお別れをしている。
タンさんはウェンディに向かって手を差し出す。
「お前は本当にいい魔導士だ。お前に出会えてよかった」
「ありがとうございます!」
ウェンディはタンさんに笑顔でお礼を言う。タンさんに出会ったおかげて、ウェンディはさらに成長したのかもしれないな。
俺がウェンディを見ていると今度はサラさんが俺に手を出す。
「あんたたちのおかげでタンと一緒になれたわ。ありがと」
「いえ。サラさんの病気が治ってよかったです」
俺もサラさんと握手を交わす。サラさんは突然俺を引き寄せると小さな声で耳打ちする。
「ウェンディちゃんと仲良くね」
「なっ・・・サラさんこそタンさんとラブラブしてください!」
「なっ・・・ち・・・違っ」
サラさんは俺にそう言われると顔を真っ赤にする。まさかのカウンターにやられたな。ドンマイw
「それでは皆さん!!ありがとうございました!!」
「サラさん!タンさん!お幸せに~」
「ありがとう!!ウェンディ!」
「じゃ・・・じゃあね」
俺たちは村の人たちに手を振りながら村をあとにする。サラさんとタンさん・・・うまく行くといいなぁ。
列車にて・・・
「「「「疲れた~」」」」
俺たちはマグノリア行きの列車に無事乗ることができ(切符代はサラさんたちにお借りしました)席に座って一息ついている。
「まったく・・・あんたいつのまにか怪物男と仲良くなってるんだもの!」
「シャルルこそ、森の人たちの仲間みたいになってたじゃない!」
「私はあんたを助けようと必死だったのよ!!」
「おい・・・お前ら・・・」
「二人とも~。落ち着いてよ~」
二人は席につくなり突然言い合いを始める。この二人は仲はいいのに・・・突然言い合いを始めるから勘弁してほしいよ・・・
「あ・・・」
「どうした?」
ウェンディはスカートのポケットから一枚の紙を取り出す。なんだ?
「ナナル村の依頼書・・・」
「入れっぱなしになってたのね」
「かばんはおいてきちゃったのにね~」
「それは言うなよ」
ウェンディはポケットから取り出した依頼書を見つめる。
「私・・・ギルドを出るときは絶対にシリルと二人で解決するんだっていってたよね・・・」
「そういえばそんなこと言ってたね~」
ウェンディに言われて思い出す。そういえばそんなこと言ってたな・・・俺も頑張ろうって思ってたし。
「結局ナツさんたちに助けられたけどね」
「まぁでも・・・二人とも頑張ったわよ」
シャルルは俺たちが落ち込んでいると思ったのか、慰めるように言う。俺は別に気にしてなかったけど・・・
「ううん。違うの。私ね、わかったことがあるんだ」
「わかったこと?」
ウェンディは俺たちを見ながらそう言う。何がわかったんだ?
「うん!ナナル村の事件を解決できたのは、ギルドの皆さんやヨシノちゃんが一緒に頑張ってくれたから・・・
今回のことだってお屋敷を脱出できたのはタンさんがいたからだし、サラさんが助かったのはみんなの強い思いがあったからだと思うの。
私は魔法でみんなの思いを繋いだだけ・・・
それからね。私が頑張れたのはシリルやシャルル、そしてセシリーがそばにいてくれたからなの」
「ウェンディ・・・」
「ウェンディ~!」
「優しい奴だな。ウェンディは」
俺は途中ではぐれちゃったけど・・・そう思ってくれてると助かる・・・
「私・・・すごい魔法を使ってなんでもできるのが強いってことだと思ってた・・・でも、そうじゃないんだね。
本当に強いのは、大切な仲間がたくさんいるってことだったんだね!!」
そういうウェンディの顔はとてもきれいだった・・・いつもよりもキラキラしている笑顔が、俺には妙に眩しく感じた。
「成長したな。ウェンディ」
「えへへ////」
俺が誉めるとウェンディは頭をかきながら照れ笑いする。本当に・・・すごい成長した・・・
「まぁ、外見は小さいままだけどね」
「!?」
「プッ・・・」プルプル
シャルルの一言でウェンディはショックを受け、セシリーは懸命に笑いをこらえる。余計なことは言わなくていいぞ?シャルル。
その後も俺たちは今回の旅のことを話した。いろんなことがあったよな・・・でも、俺たちはそのおかげで成長できた気がする。
しばらくするとマグノリアに到着し、俺たちはギルドに向かって走り出す。
「わあっ、シリル!!妖精の尻尾が見えてきたよ!!」
「久々に帰ってきた~!!」
「待ちなさい二人とも!!」
「走るの速すぎ~」
俺たちはギルドに到着し、中に入る。そこにはギルドの皆さんがいつものように騒いでいた。
「シリル!!ウェンディ!!」
「いままでどこ行ってたの~?」
ナツさんとルーシィさんが俺たちに駆け寄ってくる。
はぐれた原因はナツさんたちにあるんですけど!?
するとウェンディはギルドに帰ってきたことが嬉しいのか、顔を緩ませる。
「何ニヤニヤしてんだ?変なもんでも食ったのか?」
「そんなわけないでしょ!!」
ナツさんをルーシィさんが叩く。この二人はコンビネーションバッチリだな。
ウェンディは二人を見て、一層笑顔になる。
「ここは本当にいいギルドですね!」
「「「?」」」
ウェンディの突然の言葉に俺たちは一瞬固まる。そりゃあ妖精の尻尾はいいギルドだよな?
「いけない!!私たち挨拶を忘れてました!!」
ウェンディはそう言うと俺の手を引っ張り入り口へと戻っていく。挨拶か・・・しっかりしてるなウェンディは。
「いくよシリル。せーのだからね」
「はいはい」
俺はウェンディにそう言われ返事をする。俺たちはギルドの皆さんに聞こえるように挨拶する。
「「せーの、ただいま帰りましたぁ!!」」
「「「「「「「「「「おかえり!!シリル!!ウェンディ!!」」」」」」」」」」
俺たちの挨拶を笑顔で返してくれる皆さん。妖精の尻尾は本当に優しくて、いいギルドだな!!
後書き
いかがだったでしょうか。
なんかブルーミストラル編はシリルの活躍の余地がなかったですね・・・
次回から本編に戻ります。
次回もよろしくお願いします。
ギルダーツ
ギルドにて・・・
「・・・」
「モグモグモグモグ」
今俺たちはギルドのテーブルに集まっている。ウェンディは何やら本を読んでいて、シャルルはダージリンティを飲み、セシリーはウェンディの読んでいる本を横から眺め、俺は朝食を取っている。
すると丁度今ギルドにやって来たルーシィさんがコートを脱ぎながら俺たちに話しかける。
「シリルとウェンディも大分このギルドに慣れてきたみたいね」
「はい!!」
「おかげさまで!」
「ルーシィさんたちに色々教えてもらってるからね~」
「女子寮があるのは気に入ったわ」
ルーシィさんに俺たちはそれぞれ答える。いつもルーシィさんやナツさんにいろいろ助けてくれるからな。本当に感謝してます。
「そういえばルーシィさんはなんで寮じゃないんですか?」
「それ僕も気になってた~」
ウェンディとセシリーがルーシィさんに聞く。ルーシィさんは家賃7万Jのアパートに住んでるってナツさん言ってたな。ナツさんはよく忍び込んでるからルーシィさんの家には詳しいらしい。
というか人の家に忍び込んじゃダメなような・・・」
「女子寮の存在最近知ったのよ。てか、寮の家賃って10万Jなのよね~・・・もし入ってたら払えなかったわ・・・今頃・・・」
「「「「あはははは・・・・・」
ルーシィさんは涙を流しながら言う。ルーシィさんはナツさんとチームを組んでるらしいけど、ナツさんはよく物を壊すからその支払いで報酬が減ったりなくなったりするらしい・・・ルーシィさん・・・苦労してますね・・・
「「た・・・大変だー!!」」
俺たちがそんな話をしているとウォーレンさんとマックスさんがギルドのドアをすごい勢いで開けながら叫ぶ。どうしたんでしょう?
ゴーンゴゴーン
するとほどなくして大きな鐘の音が聞こえてくる。
「何?」
「「鐘の音?」」
「「なんで~?」」
突然の鐘の音に俺たちは少し驚く。なんの鐘の音なのかな?
「この鳴らし方は・・・」
「あい!」
「おおっ!!」
「まさか!!」
ギルドの皆さんもこの鐘の音を聞いて騒ぎ始める。何か特別なことでも起こるのかな?
「ギルダーツが帰ってきた!!」
「あいさー!!」
「「「「「「「「「「ギルダーツだぁ!!!」」」」」」」」」」
ナツさんの一言で皆さんいつにもまして騒ぎ始める。ギルダーツ?
「ギルダーツ・・・さん?」
「誰ですか?」
「あたしもあったことないんだけど・・・」
俺とウェンディ、そしてルーシィさんはギルダーツさんが誰なのかわからず、ミラさんに問いかける。ミラさんはいつも通りのにこやかな表情で答える。
「妖精の尻尾最強の魔導士よ」
「ええっ!?それってエルザより強いってこと!?」
「ウソ!?」
エルザさんより強いって・・・どんだけ強いんだ!?まるで想像できないんですけど・・・
「私など足元にも及ばんさ」
「ど・・・どんだけヤバい人なのかしら・・・」
エルザさんですら足元にも及ばないと言わしめる魔導士ですか・・・きっとすごいんだろうな~・・・
俺がそんなことを思っていると ギルドの皆さんはまるで宴会でも始まったのかと思うぐらいの盛り上がりを見せる。
「どうでもいいけど、この騒ぎよう何?」
「お祭りみたいだね!シリル!」
「すごいね!!いつもの騒ぎの比じゃないね!!」
「本当騒がしいギルドね」
「すごいすごい~!!」
俺たちはギルドの皆さんの騒ぎようを見てそう言う。ギルダーツさんが帰ってくるって聞いただけでこの騒ぎって・・・何かあるのか?
「みんなが騒ぐのも無理ないわ。三年ぶりだもん。帰ってくるの」
「三年も?何してたんですか?」
ミラさんにルーシィさんが聞く。三年も帰ってこないなんて・・・仕事かな?
「S級クエストの上にSS級クエストってのがあるんだけど、そのさらに上に10年クエストって言われる仕事があるの」
「10年クエスト!?」
「それはどんなクエストなんですか?」
俺は気になってミラさんに質問する。まさか「クエスト完了するのに10年は覚悟してね♪」ってクエストじゃないですよね?
「10年間、誰も達成した者がいない。だから10年クエスト」
エルザさんが変わって説明してくれる。なんだそういうことか・・・ちょっと安心・・・するわけないじゃん!!10年も達成者がいないなんて・・・すごい難しいクエストじゃないですか!!
「ギルダーツはそのさらに上・・・100年クエストに行っていた」
「100年クエスト!?」
「100年間誰も達成できなかったってことですか!?」
「ああ」
エルザさんの説明に驚く俺とルーシィさん。エルザさんは平然と返事をするけど・・・100年も誰も達成できない仕事って・・・どんな仕事なんですか!?
『マグノリアをギルダーツシフトに変えます!!町民の皆さん!!速やかに所定の位置へ!!』
すると今度は外からそんなアナウンスが聞こえてくる。ギルダーツシフト?
「それにしても騒ぎすぎじゃないかしら?」
「なんでだろう?」
「町の方もすごい賑やかだよ~」
「だよな?ギルドの皆さんはいつものこととしても・・・」
俺たちはギルドのみならずマグノリアの町全体が賑やかなことに疑問を持つ。いくらなんでも騒ぎすぎだよな?
「マグノリアのギルダーツシフトって何?」
「外に出てみれば分かる」
エルザさんにそう言われたので俺たちは外に出てみる。すると町は大きな地響きを建てて変形を始める。
「ええ!?」
「う・・・ウソ!?」
「なんなのこれ!?」
「建物が~!?」
「動きすぎ!!」
俺たちは町が変形する姿を見てただただ驚くしかない。その後も町は変形を続け、気がつくと町の入り口からギルドまでの一本の道ができていた。
「町が、割れたー!!?」
「ギルダーツは[クラッシュ]という魔法を使う」
「触れたものを粉々にしちゃうから、ボーッとしてると民家も突き破って歩いて来ちゃうの」
「どんだけバカなの!?そのために町を改造したって事!?」
エルザさんとミラさんの説明にルーシィさんが驚く。しかし・・・普通そこまでやるか?いくらなんでも・・・
「やりすぎだろ・・・」
「すごいねシャルル!!セシリー!!」
「うん!!すごい~!!」
「ええ。すごいバカ・・・」
ウェンディとセシリーは何故か喜んでる・・・俺とシャルルはあまりのやり過ぎ具合にあきれてしまう。
俺たちがそんな話をしているとその道から一人の人影が見えてくる。
「来たぁ!!」
「あい!!」
ナツさんとハッピーがそう言う。俺たちはその人影がこちらにやって来るのをそちらを見ながら待つ。
そしてギルダーツさんはギルドの中にゆっくりと入ってくる。
「ふぅ」
ギルダーツさんは疲れたのか、ため息のように息を吐き出す。
この人がギルダーツさんか・・・年齢は40代ぐらいかな?服装は黒いローブのようなものを羽織っていた・・・しかし、俺は髪の色を見て一瞬驚く。
「赤色・・・」
ラクサスさんの言っていた赤髪の男に気を付けろって、もしかして・・・
「そんなわけないか・・・」
いくらなんでも仲間に気を付けろなんて言うわけないよな?妖精の尻尾の魔導士が仲間に危害を加えるわけないし。
「ギルダーツ!!俺と勝負しろ!!」
「いきなりそれかよ!!」
ナツさんがいきなりそう叫ぶのをエルフマンさんが突っ込む。ナツさんってそんなに誰かと勝負したいんですね。
「おかえりなさい」
「この人がギルダーツ・・・」
ミラさんがギルダーツさんに笑顔で挨拶し、ルーシィさんがギルダーツさんを見て呟く。
ギルダーツさんはミラさんを見て話し出す。
「むっ、お嬢さん。確かこの辺りに妖精の尻尾ってギルドがあったはずなんだが」
「ここよ。それに、私ミラジェーン」
「? ミラ?」
ギルダーツさんはミラさんを見つめて何かを思い出しているようだ。
「おお!?随分変わったなお前!!つかギルド新しくなったのかよー!?」
「外観じゃ気づかないんだ・・・」
ギルダーツさんはギルドを見回しながら言う。そういえば最近ギルドを建て替えたって言ってましたね。だから気づかなかったのか。
「ギルダーツ!!」
「おお、ナツか!久しぶりだな」
「へへ。俺と勝負しろって言ってんだろうー!!」
二階からナツさんが降りてきてギルダーツさんに向かってジャンプして殴りかかる。しかしギルダーツさんはそれを片手で受けとめ
「ごぱぁっ!」
「また今度な」
天井に叩きつける・・・す・・・すげぇ・・・
「や・・・やっぱ・・・超強ぇや」
「変わってねーな!オッサン!」
「漢の中の漢!!」
グレイさんとエルフマンさんがギルダーツさんに言う。
「いやぁ、見ねえ顔をあるし、本当に変わったな・・・」
ギルダーツさんが周りを見ながら言う。見ない顔って俺たちのことだろうな。あとで挨拶しないと。
するとそんなギルダーツさんをマスターが呼ぶ。
「ギルダーツ!」
「おお!?マスター、久しぶり」
「仕事の方は?」
「あ~・・・がっはははははは」
ギルダーツさんは頭をかきながら笑いだすとマスターは小さくため息を漏らす。
「ダメだ。俺じゃ無理だわ」
ギルダーツさんがそう言うと皆さん信じられないという顔をする。
「ウソだろ?」
「あのギルダーツが・・・」
「クエスト失敗・・・!?」
「ありえねぇ・・・」
俺とウェンディはその姿を呆然と見ている。
「オッサンでもダメなのか・・・」
「引き際の見極めも漢!!」
グレイさんは残念そうにそう言い、エルフマンさんはいつも通りの態度でそう言う。
しかし・・・妖精の尻尾最強の魔導士でも無理だとは・・・よっぽど難しいんだな、100年クエストって・・・
「そうか。主でも無理か」
「すまねぇ・・・名を汚しちまったな・・・」
「いや、無事に帰ってきただけでよいわ。ワシが知る限り、このクエストから帰ってきたのは主が初めてじゃ」
マスターは笑顔でそう言う。ギルダーツさんもそれを見て微笑み返す。
帰ってくるのすら困難なクエストか・・・なんか想像しただけで怖いな・・・
「俺は休みてぇから帰るわ。ひ~疲れた疲れた」
ギルダーツさんはそう言いながら歩き出す。そして歩きながらナツさんに話しかける。
「ナツ!」
「ん?」
「あとで俺んち来い。土産だぞ~?がっははははは」
「へへっ」
ギルダーツさんの言葉にナツさんも少し笑う。ギルダーツさんはそのまま歩いていくけど・・・扉そっちじゃないですよ?
「んじゃ、失礼」
ギルダーツさんはそのまま壁に向かって歩いていくと・・・その壁が砕けて大きな穴ができてそこから出ていく。
「・・・」
「あらあら」
「扉から出てけよ!!」
ルーシィさんはあまりのことに言葉を失い、ミラさんはいつも通りの感じで言い、ウォーレンさんは驚いた顔で言う。これは・・・直すの大変そうですね・・・
「へへ。土産って何かな~?楽しみだなって!」
ナツさんはそう言うと壁をパンチで壊して出ていく。
「お前まで真似すんな!!」
「あらあら」
「ハッピー!早く行くぞ!」
マックスさんが怒るけどナツさんはそんなのお構いなしに出ていく。なんか、いつにもましてはちゃめちゃだな・・・
「ねぇ。ギルダーツとナツってそんなに仲がいいの?」
「あい!実力の差は天と地ほどあるけどギルダーツはナツのこと気に入ってるみたいだね」
ルーシィさんの質問にハッピーが答える。
「へぇ。でもギルダーツってたまにしか帰ってこないんでしょ?」
「あい!オイラが生まれてすぐの頃にも丁度帰ってきたよ?」
その後ルーシィさんとハッピーはしばらく雑談した後、ハッピーはナツさんの後を追っかけ飛んでいく。
しかし・・・ギルダーツさんかぁ。妖精の尻尾最強の魔導士だけあって雰囲気も凄かった・・・ぜひ一度、戦ってる姿を見てみたいなぁ・・・
その日の夕方・・・第三者side
「ふぅ・・・」
マカロフは一人、ギルドの上の鐘の前に腰かけていた。
「このギルドに四人の滅竜魔導士・・・ボーリュシカ。主の言った通りじゃ。
運命は、動き出そうとしている」
マカロフはそう言うと、一人腕を組み、夕日を眺めていた・・・
その日の夜、とある場所で・・・
ゴゴゴゴゴゴ
とある場所で、空に突然大きな穴が開き、その穴は下にあるものを吸い込もうとしている。しかし・・・
「はぁっ!!」
一人の男が一本の杖をその穴に向けると、次第に穴は閉じていく。
「ふぅ・・・間に合ってよかった・・・しかし・・・今日は少し異常だな。あまりにもアニマの数が多すぎる・・・」
その男は空を見上げる・・・そして、最悪の場面を考えてしまう・・・
「まさか・・・巨大アニマを使うつもりか!?」
男はそう言うと、次のアニマの出現されると思われる場所へと駆けていった。
後書き
いかがだったでしょうか。作ってみたらあまりにも短くなってしまったので最後の方は次のエドラス編に繋げるような感じにしてみました。
次からはエドラス編に突入します。
次回もよろしくお願いします。
アースランド
妖精の尻尾にて
今俺とウェンディはギルドのテーブルでルーシィさんとお話ししている。
「777年7月7日?」
「私たちやナツさんに滅竜魔法を教えたドラゴンが同じ日にいなくなってるんです」
「そういえば、前にナツがガジルの竜も同じ日に姿を消したって言ってたかも」
「俺とウェンディは滅竜魔法を教わったときから一緒にいたんでいなくなったのが同じ日ってのは知ってたんですけど・・・」
まさかナツさんたちのドラゴンも同じ日にいなくなってるなんて・・・何かあったのかな?
「どういうことなの?」
「遠足の日だったのかしら?」
「ルーシィさんも・・・たまに変なこと言いますよね」
「遠足だったらすぐに帰ってくるでしょ~?」
シャルルの問いにルーシィさんがボケをかます・・・さすがのウェンディも少しあきれてしまったようだ・・・
「火竜イクニール。鉄竜メタリカーナ」
「水竜ヴァッサボーネ、そして天竜グランディーネ・・・か」
「みんな・・・今どこにいるんだろう・・・」
ウェンディは少し寂しげな表情をする。ヴァッサボーネたちが姿を消して7年か・・・
俺たちがそんな話をしているとハッピーが元気な声でこちらにやって来る。
「シャルル!!」
「ん?」
ハッピーに呼ばれてシャルルはそちらを向く。するとハッピーは魚を持ち上げたままシャルルの前に飛んでくる。
「これ、オイラが捕った魚なんだ。シャルルにあげようと思って―――」
「いらないわよ。私、魚嫌いなの」
シャルルはそう言うとハッピーから顔を反らす。しかしハッピーはそれでもめげずに話を続ける。
「そっか。じゃあ何が好き?オイラ今度「うるさい!!」っ!?」
ハッピーはシャルルに怒鳴られて思わず怯んでしまう。
「私に付きまとわないで」
シャルルはそう言うと立ち上がってその場を立ち去ろうとする。
「おい・・・」
「ちょっとシャルル!!」
「ふん!」
俺たちがシャルルを呼び止めようとするがシャルルはお構いなしに歩いて行ってしまう。
「待ってシャルル~!!」
そんなシャルルを見てセシリーは後を追いかける。
「何もあんな言い方しなくて・・・ねぇ、ハッピー」
ルーシィさんがそう言うとハッピーは落ち込んだ顔をしている・・・
「シャルル!!ちょっとひどいんじゃないの!?」
ウェンディがそう言うがシャルルは振り返らないでギルドを出ていってしまう。セシリーはそんなシャルルの横を落ち着かせるような動作をしながらついていく。
「待ってよ!!シャルル!!セシリー!!」
ハッピーは急いで二人の後を追いかける・・・シャルルの奴・・・ハッピーに対する態度がなんかひどいな・・・
「なんかシャルルって、ハッピーに対して妙に冷たくない?」
「セシリーとは仲がいいのに・・・どうしたんだろう・・・」
「確かにな・・・」
俺たちはシャルルたちが見えなくなるまでそちらを見ている。そういえばセシリーとも初めの頃は仲がよくなかったな・・・ある日突然仲良くなったけど・・・ハッピーとも突然仲良くなったりするのかな?
シャルルを追いかけていったハッピーたちは・・・第三者side
「シャルル~!!」
「何よ。付きまとわないでって言ったでしょ?」
「シャルル~・・・そんな言い方ダメだよ~・・・」
シャルルを追いかけてきたハッピーにシャルルは冷たく言う。セシリーはそんなシャルルを注意するがシャルルは聞く耳を持たない。
「オイラ・・・何か悪いことしたかなぁ」
「そーゆーのじゃないの」
しょんぼりするハッピーとそれにため息を漏らすシャルル。セシリーは二人を交互に見てあたふたしている。
「あなたにナツは守れない」
「え?」
「私たちはウェンディとシリルを守る。何があっても絶対に二人を守る!」
シャルルはそう言うとセシリーの手を引っ張って歩き始める。ハッピーもそれについていく。
「オ・・・オイラだってナツを守れるよ!!ナツはオイラを仲間って言ってくれるんだ!!」
「守れないわ。
自分が何者か知らない猫には・・・行きましょ、セシリー」
「う・・・うん・・・」
シャルルはそういって歩き出す。セシリーはハッピーの方を一瞥し、シャルルの後をついていく。
ハッピーはあきらめて、ギルドに帰ろうとすると、そこには顔が傷だらけのガジルが立っていた。
「その傷・・・どうしたの?」
「うっせぇ!!」
二人はそれだけ言うと、揃って肩を落としてギルドへと帰っていった・・・
再びギルドにて・・・シリルside
「あれ?ハッピーだけ帰ってきた・・・」
「本当だ!」
「シャルルとセシリーはどうしたのかな?」
俺たちが入り口の方を見てるとハッピーがとぼとぼと帰ってきた・・・何故かガジルさんと一緒に・・・というか何故ガジルさんは顔が傷だらけなんだ?
「ん?」
俺が入り口の方を見ていると、外では雨が降っているのが見える・・・シャルルとセシリー、傘持ってなかったような・・・
「私・・・二人のこと探してくる!!」
「あ!!ウェンディ!!」
ウェンディが席を立ち、傘を持たずにギルドを出ていく。まったく・・・
「俺も―――」
ガシッ
俺もウェンディと一緒にシャルルたちを探しに行こうとすると、後ろから手を捕まれる。俺はそちらを向くとそこにはグレイさんがいた。
「グレイさん?」
「シャルルのことはウェンディに任せた方がいいだろ。あんまり大人数で行っても、シャルルが可哀想だしな」
「・・・それもそうですね・・・」
俺はグレイさんの言うことにうなずく。確かに・・・俺もシャルルを見つけて注意しようと思ってたしな・・・いっぱいの人に注意されちゃうとなんか面白くないと俺も思うし・・・ここはウェンディに任せるか。
「こっち来いよ。一緒に飯でも食ってウェンディたちを待とうぜ!」
グレイさんはそういって俺の手を引っ張っていく。気づくとルーシィさんもそちらに移動していたみたいで俺もそこに加わって話をする。
「雨やまないな~」
「ねぇ」
「結構降ってますね」
「ププーン」
「ジュビアのせいじゃないと思う」
「誰もそんなこと言ってねぇよ」
俺たちは窓から見える景色を見て、そんな話をする。そういえばジュビアさんって昔は雨女だったそうですね。でもグレイさんに恋したら直ったとか・・・愛の力ってすごい!
「くがーごがー」
「いつまで寝てんだナツ!」
ナツさんはさっきからずっと寝っぱなしだ・・・相当眠たいのかな?何かあったのか?
「顔に落書きしちまおうぜ!!」
「うわぁ・・・子どもの発想・・・」
そういってグレイさんは立ち上がるとペンを片手にナツさんの顔に落書きを始める・・・どうなっても知りませんからね~。
一方、シャルルを追いかけていったウェンディは・・・第三者side
「シャルル~!!セシリー!!」
ウェンディは二人を探してマグノリアの街を歩いている・・・しかし、なかなか二人は見つからない。
「シャルル~!セシリー!どこなの~!?あ・・・」
ウェンディがなおも叫ぶと、前から二つの小さな影が歩いてくるのを見つける。そう、シャルルとセシリーである。ウェンディは二人に素早く駆け寄る。
「シャルル!セシリー!やっと見つけた」
「ウェンディ~!!」
「あんた、傘もささずに風邪引くわよ」
「シャルルたちもでしょ?」
ウェンディは二人の前にしゃがみ目線を合わせる。
「シャルル!私たち、ギルドに入ってそんなにたってないんだから、もっとみんなと仲良くしないとダメだと思うの」
「必要ないわよ」
「しゃ・・・シャルル~・・・」
ウェンディがシャルルに言うが、シャルルは腕を組み興味なさそうにいう。
ウェンディはそんなシャルルを頬膨らませながら見る。
「あんたたちがいれば、私はいいの」
「もう・・・またそう言うことばかり・・・ん?」
「なに~?」
ウェンディはシャルルに向けていた視線を別のところに移す。シャルルとセシリーもそちらに視線を移すとそこには覆面を纏い、背中に杖を持った男がこちらに歩いてくるのが見える。
「ん?誰?」
「こっちに来るよ~?」
男はウェンディたちの前に来ると、その場に立ち止まる。ウェンディはその男を見ながら立ち上がる。
「ウェンディ」
「え?その声・・・」
「!?」
「今の声って・・・」
男の声にウェンディたちは思わず驚く。その声は三人には聞き覚えのある声だったからだ。
「まさか君たちがこのギルドに来るとは・・・」
男はそう言うとつけていた覆面を取り、顔をウェンディたちに見せる。その顔を見てウェンディたちは驚いた。
「ジェラール!?」
ウェンディは思わずそう言う。その顔は7年前にウェンディとシリルと共に旅をして、ニルヴァーナを止めたときに評議院に捕まったジェラールそのものだった。
「ど・・・どういうこと!?あんた確か捕まって!?」
「評議院に連行されていったよね~!?」
「それは私とは別の人物だ」
驚くシャルルとセシリーにミストガンはそう説明する。
「そんな・・・」
「ウソでしょ!?」
「どう見たってあんたジェラールじゃない!!」
「私は、妖精の尻尾のミストガン。7年前はこの世界のことはよく知らずに、君たちにはジェラールと名乗ってしまった」
「え?」
「(この世界)って?」
ミストガンの説明にウェンディとセシリーは疑問を持ち、シャルルは目を見開かせる。
「ま・・・まさか・・・」
ミストガンはウェンディに向かってうなずいてみせる。ウェンディはジェラールを見つめる。
「あなたが・・・7年前の・・・あのときの・・・ジェラール・・・」
ウェンディは嬉しくて涙を流す。
「ずっと・・・ずっと会いたかったんだよ!!私も・・・シリルも・・・ずっと会いたかったんだよ!!」
「会いに行けなくてすまなかった・・・」
ミストガンは申し訳なさそうにそう言い、ウェンディが泣いているのを見ている。
「だが・・・今は再会を喜ぶ時間はない」
「え?」
「今すぐ・・・」
ミストガンは少しふらつく。
「今すぐこの街を離れるんだ!」
ミストガンはそう言うとウェンディの前に倒れるようにしゃがみこむ。
「ジェラール!!」
「私の任務は失敗した・・・」
ミストガンは雨の降っている上空を悔しそうに見上げる。
「大きくなりすぎたアニマは・・・もはや私一人の力では押さえられない!
・・・まもなく、マグノリアは消滅する」
ミストガンにそう言われたウェンディは驚く。
「ど・・・どういうこと・・・?全然意味わかんない!!」
「もう終わるんだ・・・消滅はすでに確定している」
ミストガンは下を向いたままそう言い、ウェンディはそれにただ驚くしかできない。
「せめて、君だけでも・・・」
「妖精の尻尾は!?シリルたちはどうなるの!?」
ウェンディにそう聞かれ、ミストガンは目を閉じたまま黙ってしまう・・・
「ねぇ!!シリルたちは!?」
「・・・全員、死ぬということだ」
ミストガンがそう言うとウェンディはギルドに向かって走り出す。
「「ウェンディ!!」」
「みんなに知らせなきゃ!!」
セシリーとシャルルが呼び止めるとウェンディは二人の方を振り向いてそう言う。
「行ってはいけない!君だけでも、街を出るんだ!!」
「私だけなんてありえない!!」
「!?」
ウェンディにそう言われ、ミストガンは驚く。
「私はもう、妖精の尻尾の一員なんだから!!」
ウェンディはそういって再びギルドに向かって走り出した。
一方、妖精の尻尾では・・・シリルside
「ぐがーごがー」
「グレイ。そう言う子どもみたいないたずらやめなよ」
「誰が子どもだコラァ」
グレイさんは寝ているナツさんの顔を落書きをしている。ルーシィさんに注意されたけど、グレイさんは楽しそうにさらに落書きを加える。落書きされたナツさんの顔は・・・パンダのような猫のような顔になっている。
「子ども以下だわ!!」
「子どもでもこんなことしないですよ」
「ププーン」
俺たちがナツさんを見てそう言うとナツさんはすごい勢いで飛び起きる。
「ケンカかぁ!?俺も混ぜろ!!」
「はぁ~ぁ。何寝ぼけてんのよ」
「ん?」
「ナツさん・・・顔すごいことになってるんですよ」
「顔?」
俺がそう言うとナツさんは顔をペタペタと触り始める。そんなことしてもどうなってるかわかりませんよ?
「お前ら!!たまにはシャキっとしろ!!それでも漢か!?」
違うところではエルフマンさんがレビィさんの後ろで何やらソワソワしているジェットさんとドロイさんに怒っている。ルーシィさんはそれを見てため息をついたあと、ナツさんに手鏡を見せる。
「はい!」
「なっ!!」
ナツさんはその鏡に映る自分の顔を見て驚き、怒りを露にする・・・よく、そんなに書かれるまで寝れましたよね・・・
「誰だ!!これ書きやがったのは!!」
「そんなことするのは、同じような誰かさんしかいないでしょ?」
「はっ!!」
ルーシィさんがナツさんに囁くとすぐにナツさんは誰だかわかったようだ・・・
「てめぇかグレイ!!」
「やんのかコラァ!!イビキがガーガーうっせぇからお仕置きしてやったんだよ!!」
「なんだとこのやろう!!」
二人はそう言いあって殴りあいを始めてしまう・・・やれやれ・・・
「あ~ん♪グレイ様、ケンカしてるお姿も素敵!!」
「ジュビアさん・・・色々と大丈夫ですか・・・?」
ジュビアさんはケンカしてるグレイさんを見てうっとりしている・・・ジュビアさんも変な人だよな・・・幽鬼の支配者にいたときからこんな人だったのかな?
「ぷはっ!雨の日は彼氏とデートに限るね!」
「カナ、お客さんに出す分のお酒は残しておいてね」
樽を抱えて言うカナさんとミラさん。なぜかミラさんはコートを羽織っている。
「あれ?ミラさん、こんな日にお出掛けですか?」
「うん。ちょっと教会まで」
教会?で・・・今日何かあるのかな?
「漢ならもっと強くなれ!!そんなんじゃレビィは守れんぞ!!」
「おぉ・・・」
「わかってるよ・・・」
「エルフマン!行くわよ」
ミラさんはジェットさんとドロイさんを説教しているエルフマンさんに声をかける。ジェットさんたち何したんだ?
「姉ちゃんからも言ってやってくれ!!こいつら、この間仕事でヘマしやがってよぉ、先に伸びちまって結局レビィ一人で仕事を片付けちまったんだとよ!」
「うわ・・・耳が痛ぇ・・・」
「情けねぇ・・・」
ジェットさんとドロイさん・・・そんなことがあったんですか・・・それじゃあ確かにエルフマンさんにしっかりしろって言われますよね・・・
「ジェットもドロイも頑張ってると思うわよ!」
「ミラちゃ~ん!!」
「それなりに」
「ひでぇ!!」
ミラさんが笑顔でジェットさんとドロイさんにそう言う。でも・・・それなりって言ってもらえるだけまだいいんじゃないですか?
レビィさん一人じゃ大変だったでしょうし・・・
そのままミラさんたちが話していくと、しばらくしてミラさんとエルフマンさんは教会に向かう。
「ミラさんとエルフマン、こんな日にわざわざ教会になんだろう?」
「あ、そっか・・・」
「もうすぐリサーナの命日だったね・・・」
「リサーナさん?」
ルーシィさんの疑問にレビィさんとカナさんが答えるけど・・・リサーナさんって?
「ミラとエルフマンの弟なのよ。仕事中の事故で二年前にね・・・命日が近づくとあの二人、教会に通い出すんだ」
「そう・・・なんだ・・・」
その話を聞いて俺たちは少し暗くなる・・・ミラさんたち、辛かっただろうな・・・
「そういえばあんた、リサーナにちょっと似てるわね!」
「そうなの?」
「ナツと仲いいとことか!」
「え!?ナツさんが女の子と仲良かったんですか!?」
俺は驚いてナツさんに視線を移す。ナツさんはいまだにグレイさんとケンカしている。その脇でジュビアさんがその様子を眺めてるけど・・・目をハートにして!!
しばらく見ていると二人は疲れたのかケンカをやめる。
「ったく、どんだけ力余ってんだよ」
「ぐがーごがー」
「うおっ!もう寝てるよ!!」
ナツさんはケンカが終わるとすぐに椅子に座って寝てしまう・・・そんなに疲れたんでしょうかね?
「ふ~ん。昔ナツが女の子とね~」
ナツさんをニヤニヤしながらルーシィさんが言う。
「何ニヤニヤしてるんですか?」
「あー!!もしかしてルーちゃんナツのこと!!」
「えぇ!?ち・・・違うわよレビィちゃん!!」
赤くなるルーシィさん。まぁルーシィさんがナツさんのこと気になってるのは前から知ってたから俺はおどろかないぞ?
そんな話をしていると周りではグレイさんとジュビアさんがイチャイチャしたり、それを見てアルザックさんとピスカさんが何か話したり、マスターとエルザさんも何かを話している。
「あぁ!暇だね~」
「こんな雨だと仕事する気も起きないしね」
「なんかテンション上がりませんね~」
ルーシィさんとレビィさんと俺は集まってそう話している。俺は雨は別に気にしないけど、なんか今日は異様にやる気しないんだよな~・・・
「ん~・・・なんか面白いこと起きないかな~」
「面白いことですか~・・・」
こういうときは鏡でも見てきたら?って言うのがベタだけど・・・怒られそうだからやめておこう。
なぜか俺の意識は、そこで途切れてしまった・・・
その頃ウェンディは・・・第三者side
「ハァハァハァハァ」
ウェンディはギルドのみんなに危険を知らせるためにひたすらに走っている。
「きゃっ!!」
走っている最中にウェンディは転んでしまい、水溜まりに倒れる。ウェンディはすぐに立ち上がろうとしたがその水溜まりに映っている空を見て動きを止めてしまう。
ウェンディは立ち上がって空を見上げる。空には雨雲の間に大きな穴ができており、時おりその穴から何かが光る。
ウェンディはそれを見てさらに不安になり、再びギルドに向かって走り出す。
しばらく走るとギルドが見えてくる。しかし街の中では石や建物などが空に向かって吸い寄せられている。
「シリル!!みんな!!大変なの!!空が!!」
ウェンディがギルドに駆け込もうとすると目の前でギルドは何かに覆われ、歪み、徐々に姿を消していってしまう。
「何これ!?みんな!!きゃあっ!!」
ウェンディはギルドの前で叫ぶが風によって後方に飛ばされてしまう。
そんな最中もマグノリアの街はあらゆるものが消えていき、空に吸い寄せられていき、やがて全てのものが無くなってしまう・・・
「ん・・・んん・・・」
ウェンディが起きて前を見るとそこには先程まであった妖精の尻尾がなくなっているのが見える・・・いや、それだけではない。周りにも何もなく、ただただ真っ白な広野が広がっている。
「ウソ・・・ギルドが・・・消えた・・・?街も・・・全部・・・そんな!」
ウェンディはゆっくり立ち上がる。
「一体・・・何が起きたの!!」
ウェンディはギルドのあった場所に立って叫ぶ。
「誰かいないのー!?誰かー!!!」
ウェンディが叫ぶが誰も姿を現さない。ウェンディは立ち尽くし、やがて膝をついた。
「・・・誰か・・・あれ?」
ウェンディはそこまできてあることに気づく。
「なんで・・・なんで私だけ・・・ここにいるの?」
ウェンディは自分の手のひらを見て呟く。
「街も・・・ギルドも・・・みんななくなっちゃったのに・・・なんで私だけ・・・」
そう言うウェンディの目からは涙がこぼれる。ウェンディが呆然としていると脇で何か音がするのでウェンディはそちらを向く。
じっと見ていると突然地面が小さく競り上がる。
「ひっ!!」
「ブハァッ!な・・・なんだ?」
競り上がった地面からはナツが姿を現す。
「ナツさん!!」
「ウェンディ!!あれ?ここどこだ?」
ナツは周りを見回す。ウェンディはナツを見つけ嬉しくなり、顔を赤くし、涙をこらえながらナツに言う。
「何も、覚えてないんですか?」
「寝てたからな」
ナツはそう言い立ち上がる。ウェンディもそれにあわせて立つ。
「ここ・・・ギルドですよ」
「はぁっ!?」
「突然空に穴が開いて、ギルドも街もみんな吸い込まれちゃったんです!!」
ウェンディが事情を説明するとナツは驚いた顔をする。その顔はギルドがなくなったということに驚いたというよりも、ウェンディがおかしなことを言ったことに対する驚きの方が大きいようだが・・・
「本当です!!残ったのは、私たちだけみたいなんですよ!!」
「ウェンディ・・・どっかに頭ぶつけた?えらいこっちゃ」
「違うー!!」
ウェンディの頭を心配そうに触るナツ。ウェンディはバタバタと腕を動かし否定する。するとウェンディは自分とナツとの共通点に気づく。
「もしかして・・・滅竜魔導士だけが残された!?」
「そうよ」
ウェンディの言葉を肯定する声がナツの後ろから聞こえ、二人はそちらを見る。そこには翼を出したシャルルとセシリーがいた。
「シャルル!!セシリー!!よかった!無事だったんだね!!」
「まぁね」
「なんか助かっちゃった~」
ウェンディは二人に駆け寄り笑顔をこぼす。
「滅竜魔導士の持つ特殊な魔力が幸いしたようね。よかったわ、あなたたちだけでも無事で」
「シャルル・・・」
「そりゃあ聞き捨てならねぇな!!他のみんなはどうでも・・・って!!本当に消えちまったのか!?」
「・・・うん」
「さっきからウェンディがそういってるじゃ~ん!!」
ナツはウェンディとセシリーの言葉を聞くと後ろを振り向いてみんなを探す。
「消えたわ。正確に言えば、アニマに吸い込まれて消滅した」
「アニマ・・・!!」
「さっきのジェラールくんの言ってた・・・」
シャルルとウェンディとセシリーがそう言う。シャルルは腕を組み話を続ける。
「さっきの空の穴よ。あれは向こう側の世界、エドラスへの門」
「向こう側の世界~・・・?」
「エドラス・・・!?」
シャルルの言うことにウェンディとセシリーが驚く、
「お前!!さっきから何言ってんだよ!!みんなはどこだよ!!」
「ナツさん!!」
「ナツくん落ち着いて~!!」
今にもシャルルにつかみかかりそうなナツをウェンディとセシリーは押さえる。ウェンディはナツを押さえながらシャルルを見る。
「ねぇシャルル、何か知ってるの?そういえば、なんでシャルルとセシリーが無事だったの?」
「・・・」
「僕らだけじゃないよ~。ほら」
ウェンディの問いに無言のシャルルと何かを指さすセシリー。セシリーの指差した方向からはハッピーが飛んできた。
「ナツー!!何これー!?街がー!!!?」
「ハッピー!!」
「無事だったのね」
無事だったハッピーを見て笑顔になるナツとウェンディ。しかし、シャルルだけは依然として暗い表情のままである。
「私は向こう側の世界、エドラスから来たの」
「「「「え?」」」」
シャルルの言葉に四人は変な声を出す。
「そこのオスネコとセシリーもね」
「「?」」
「どういうこと?」
ウェンディが聞くとしばらくの沈黙が訪れる。シャルルはうつむいたまま話始める。
「この街が消えたのは・・・私たちのせいってことよ・・・」
四人はシャルルの言葉に呆然とするしかなかった・・・
後書き
いかがだったでしょうか。
途中からシリルがフィードアウトしましたが忘れてたわけではありません。ちょっと遅れて出てきます。
ちなみにセシリーとシャルルが仲がいいのもちゃんと理由は考えてありますが納得してもらえるか不安です・・・
次回はエドラスへと向かいます。
次回もよろしくお願いします
エドラス
「エドラス?」
「そう。こことは別の世界、エドラス。そこでは今、魔法が失われ始めている」
「魔法が失われる?」
「なんだよそりゃあ」
「どういうこと?」
「よくわかんないよ~?」
シャルルの説明でウェンディたちは魔法が失われるっと言うところに疑問を持つ。
「こっちの世界と違って、エドラスでは魔法は有限。使い続けてしまえばいずれ世界からなくなるのよ」
ウェンディたちはそれを聞いて固まってしまう。シャルルは四人に背を向けたまま話を続ける。
「その枯渇してきた魔力を救うためにエドラスの王は別世界・・・つまりはこの世界から魔力を吸収する魔法を開発した。それが超亜空間魔法[アニマ]・・・さっきの空に空いた穴よ」
「あれが・・・アニマ・・・」
ウェンディはミストガンが探してきたアニマの存在を知り表情を曇らせる。
「6年前に始まったこの計画は、この世界の至るところにアニマを展開したけど、思うような成果は上げられなかった。何者かがアニマを閉じて回っていたの」
(誰かが閉じていた・・・まさかジェラールはアニマを閉じるために旅をしていたの・・・?)
シャルルの話を聞いてウェンディはそう考える。
「だけど、今回のアニマは巨大すぎた。誰にも防ぐ術などなく、ギルドは吸収された」
「なんで妖精の尻尾を吸収したんだよ」
「言ったでしょ。エドラスの魔力とするためよ」
「妖精の尻尾には強大な魔導士がいっはいいる。だから狙われたってこと?」
「そうよ」
ウェンディの言ったことにシャルルはうなずく。
「ずいぶん勝手な奴らだなぁオイ!!みんなを返せやこのやろう!!!」
ナツが空に向かって叫ぶがそこにはすでに穴もなく、ただ雷がなっているだけである。
「そ・・・それが・・・オイラとシャルルとセシリーのせい・・・なの?」
「間接的にね」
「間接的~?」
シャルルの言葉をおうむ返しするセシリー。シャルルは腰に手を当て答える。
「私たちはエドラスの王国からある別の任務を与えられ、この世界に送り込まれたのよ」
シャルルの言葉に呆然とするハッピーとセシリー。しかしそれに対してウェンディとナツが反論する。
「そんなはずない!!あなた、卵から生まれたのよ!!この世界で!!セシリーだってそう!!」
「ハッピーもだ!!俺が見つけたんだ!! 」
「・・・そうね。先に言っておくけど、私はエドラスに言ったことはないわ」
シャルルの言葉をみんな理解できずに固まる。
「ウェンディが言う通り、この世界で生まれ、この世界で育った・・・でも私たちにはエドラスの知識や自分の使命が刷り込まれてる。生まれた時から・・・全部知ってるはずなのよ。なのに・・・」
シャルルは振り返りハッピーを指さす。
「あんたはなんで何も知らないの!!」
「オイラ・・・」
指を指されたハッピーは下を向いてしまう。シャルルは再びハッピーたちに背を向けて話す。
「とにかくそういうこと。私たちがエドラスの者である以上、今回のことは私たちのせい」
「さっき別の使命って言わなかった?シャルル」
「・・・それは、言えない・・・」
少しの沈黙のあと、ハッピーが背を向けているシャルルに話す。
「教えてシャルル。オイラ、自分が何者か知りたいんだ」
「言えないって言ってんでしょ!!自分で思い出しなさいよ!!」
そう言われハッピーはがっかりと肩を落とす。すると今度はセシリーに話しかける。
「・・・セシリーは知ってるの?」
「えぇ!?えっと・・・」
「言っちゃダメよ、セシリー」
「ううんと・・・言っちゃダメと言うか言えないと言うか~・・・」
セシリーはあたふたとして周りを挙動不審に見回しながらそう言う。それを見てウェンディはこう思った・・・
[セシリー・・・実は何の任務か知らないのに知ってるとか言っちゃったのね]と。
それを見たナツは一度ため息をついてから話し出す。
「おーし。そんじゃ、話も纏まったことだし、いっちょ行くか!エドラスってとこに!」
「纏まってないわよ!!」
ナツの突然の提案にシャルルが突っ込む。
「てか、あんた全く理解してないでしょ・・・」
「ナツさん・・・」
「どこをどう聞いたらあれで話が纏まったって思うのかな~?」
シャルルとウェンディとセシリーがナツを見ながらそう言う。
ぐぅ~
するとハッピーがお腹を鳴らすので、ウェンディたちはハッピーを見て脱力してしまう・・・
「ナツ・・・オイラ・・・不安でお腹すいてきた」
「へへっ。それは元気な証だろ?」
緊張感のないナツとハッピー。ウェンディはシャルルの方を見つめている。
「エドラスにみんながいるんだろ?だったら、助けに行かなきゃな」
「どうなのシャルル?」
「おそらく・・・いるとは思う。だけど助けられるかわからない。そもそも、私たちがエドラスから帰って来れるかどうかさえ・・・」
「シャルル~・・・」
シャルルは不安そうにそう答える。それを見てセシリーも不安な表情をする。ナツはそんな二人に笑いかける。
「まぁ、仲間がいねぇんじゃ、こっちの世界には未練はねぇけどな。イグニールのこと以外は」
「私も!」
ナツとウェンディがそう言う。するとまたハッピーがお腹を鳴らす。
「みんなを助けられるんだよね・・・オイラたち・・・」
「僕も・・・すごく心配~・・・」
ハッピーとセシリーがそう言うのを聞いてシャルルは何かを決意する。
「私だって、曲がりなりにも妖精の尻尾一員の訳だし・・・母国の責任でこうなったってやましさもあるわけだし、連れてってあげないこともないけど・・・いくつか約束して」
シャルルはそういって四人に約束事を伝える。
「私がエドラスに帰るということは使命を放棄するということ。向こうで王国の者に見つかるわけにはいかない・・・全員変装すること!!」
「俺もか?」
「シャルルはそれでいいの?」
「いいの。もう決めたから」
そう言ったシャルルは次にハッピーを指さす。
「そしてオスネコ。私たちの使命については検索しないこと」
「あい・・・」
ハッピーはシャルルに向かってうなずく。シャルルはハッピーに向けていた視線をウェンディたちに移す。
「3つ目。私も情報以外エドラスについて何も知らない。ナビゲートはできないわよ」
「うん!」
「わかった!」
ウェンディとナツが返事をする。
「最後に・・・私たちがあなたたちを裏切るようなことなことがあったら、躊躇わずに殺しなさい!」
シャルルの言葉にウェンディたちは言葉を失う。
「オイラ・・・そんなことしないよ・・・」
「ぼ・・・僕もそんなこと・・・」
ハッピーとセシリーがシャルルにそう言う。するとハッピーのお腹が・・・
ぐぅ~
「てか、オスネコ腹うるさい!!」
ウェンディとナツは互いを見てうなずく。
シャルルはそれを見て背中から翼を出す。
「行くわよ。オスネコもナツをつかんで、セシリーは一人でいいけど。」
「あれ?」
「飛んでいくの?」
「私たちの翼は、エドラスに帰るための翼なのよ」
「・・・」
ウェンディの問いにシャルルがそう答えるとハッピーはボーッとシャルルを見ている。
「行こうぜハッピー!お前の故郷だ!!」
「・・・あい!!」
ナツが親指をたてハッピーに言うとハッピーは手をあげて返事をする。
「行くわよ!!」
「あ・・・ちょっと~!!」
シャルルはウェンディをハッピーはナツをつかみ空に飛び立つ。セシリーは何かを言おうとしたがシャルルたちが空に飛び上がってしまったためすぐに後を追う。
「セシリー!!オスネコ!!魔力を解放しなさい!!」
「うん!!」
「あいさー!!」
「きゃあああああ!!」
「わああああああ!!」
シャルルたちは一気に加速して空へと飛んでいく。
「アニマの残痕から、エドラスに入れるわ!私たちの翼、エーラで突き抜けるの!!」
四人はどんどん加速していき、
「今よ!!」
シャルルがそういうとウェンディたちはまるで穴に吸い込まれるかのように加速し、エドラスへと旅立った
「まぶし・・・あっ!!」
ナツが目を開けるとそこにはさっきまでとは全く違う光景が広がっていた。
そこにはたくさんの浮遊島や見たことのない植物がたくさんあり、ウェンディたちはそれに思わず見とれてしまう。
「ここが・・・エドラス・・・」
「オイラたちの・・・ルーツ!」
「すごい~・・・」
シャルルたちがエドラスを見てそう言う。
「島が浮いてますね」
「ここがお前の故郷か!ハッピー!」
「ここがエドラス・・・」
ウェンディとナツは見たこともないような光景に笑みをこぼし、ハッピーは周りを見ると見たことのない生き物を見つける。
「本当に・・・別世界・・・」
「不思議な木や植物がたくさん!!」
「すげぇ!!見ろよハッピー!!あれ!!」
するとナツが何かを見つけて騒ぎ出す。そこには空を流れる巨大な川があった。
「川が空を流れ出てんぞ!!どうなってんだ?」
「あんなの見たことないよ~!!」
四人が初めて見るエドラスに興奮しているとシャルルが注意する。
「ちょっとあんたたち!!気持ちはわかるけど、観光に来たわけじゃないんだから、そんなにはしゃがないの!!」
「あははっ・・・そうだね」
「悪ぃ悪ぃ」
ウェンディとナツがシャルルに謝ると、突然ハッピーたちの翼が消えてしまい、五人は落下を始める。
「「「うわあああああ!!」」」
「「きゃあああああ!!」」
落下したウェンディたちは綿のようなキノコの上に落ちていき、それがクッションになってなんとか助かる。
「急に翼が・・・」
「どうなってるの?」
「言ったでしょ?こっちじゃ魔法は自由に使えないって」
「あれ?本当だ!なんか変な感じがする!」
「翼が全然出せないよう~!!」
ウェンディたちがそんな話をしていると頭からキノコに突っ込んでいたナツがようやく、抜け出す。
「ぶはぁ!!さ~て、みんなを探しに行くか!!」
「あの~・・・いまさらなんだけど一つ言っていい?」
気合い十分のナツの脇からセシリーが手をあげて言う。
「何よセシリー」
「どうしたの?」
「僕たちさ~・・・一人忘れてきたよね?」
「「「「?」」」」
セシリーの発言に全員が?マークを浮かべる。セシリーはため息をついてから説明する。
「滅竜魔導士だけが残されたってことはさ~・・・」
「あ!!」
「なんだよハッピー?」
セシリーにそこまで言われてハッピーが誰のことかようやく気づく。
「もう一人って?」
「シリルだよ!!シリル!!」
「シリルを忘れて来ちゃったよ~!!」
「「「あ・・・」」」
ウェンディたちも名前を言われ、もう一人の滅竜魔導士であるシリルを忘れてきたことに気づく・・・しかし
「まぁ、ここまで来ちまったんだからしょうがねぇ!!俺たちだけで行くぞ!!」
「あい!!」
「シリルを連れてくる手だてがないし・・・しょうがないわよ」
「後でシリルに謝ればきっと許してくれるよ」
「そうだね~。行こう行こう~!!」
五人は気を取り直してギルドのみんなを探しに向かった。
その頃、忘れられたシリルはというと・・・シリルside
「・・・ル・・・リル・・・」
「んん・・・」
誰かが呼んでる声がするけど・・・この声・・・誰だったっけ?
「・・・リル!!シリル!!」
徐々に鮮明になっていく声・・・なんかこの声懐かしいぞ?
「おいシリル!!いい加減に起きろ!!」
「んん?」
俺は目を開けるとそこには懐かしい人がいた。
「あ!ジェラール!久し振り!!」
「あ・・・あぁ・・・久し振りだな」
ジェラールは少し困惑した顔をしてるけど、どうしたんだ?いや・・・というかまだ眠たいな・・・
「まぁいいや・・・あと5分寝かせて・・・」
「おい!!シリル!!」
俺はもう一度寝ようと横になる。いやぁ、ジェラール元気そうで何より・・・あれ?
俺は体を起こしジェラールを見る。
「・・・ジェラール?」
「あぁ」
「なんでここにいるの!?評議院に捕まったんじゃ・・・」
確かジェラールは評議院のラハールさんにつれていかれたはず・・・もう二度と外の世界には出れないって言ってたのに・・・
「それは私とは別人だ」
「え?クンクン・・・確かに少し匂いが違うような・・・」
本当に少しだけどね。
俺がそう言うとジェラールが立ち上がるので俺も立つ。
「私の名前はミストガン。妖精の尻尾の魔導士
だ」
「ミストガン?」
「詳しい話は後だ。これを食べておけ」
ジェラ・・・ミストガンはそう言うと俺に赤色の飴のようなものを食べさせる。なんだこれ?
「これ何?」
「これはエクスボール。向こうの世界、エドラスで魔法を使えるようにする薬だ」
「向こうの世界?エドラス?って何・・・」
俺は質問をしかけて一つ気づいたことがある。ミストガンの後ろに広がっている真っ白な景色・・・いや、俺たちの周り全体が真っ白になっている。
「やっと気づいたか」
「これって・・・何?」
「ここはマグノリア、お前のいる場所はギルドがあった場所だ」
「・・・は?」
ミストガンにそう言われ俺は変な声を出してしまう・・・ここが、マグノリア?
「向こうの世界、エドラスにマグノリアは吸収されてしまったのだ」
「吸収された!?それってどういうこと!?」
「詳しく話している余裕はない。エドラスへの門が閉じてしまう」
ミストガンは心配そうに空を見上げる。なんか全然話がわからない・・・
「エドラスにはナツとウェンディが先に行ったようだ。私は他にも無事なものがいないか探す。だからお前だけでもエドラスに向かってくれ」
ナツさんとウェンディもエドラスとやらに行ったのか・・・じゃあ二人に合流すれば・・・え?
「ウェンディとナツが!?二人で!?ラブラブで!?」
「いや、ラブラブとは言ってないぞ・・・(汗)」
「いやいやいやいや」
ナツさんとウェンディが二人きりなんて・・・ウェンディはナツさんに憧れてるところがあるからもしかしたら・・・
「ナツさん!!大好き!!」
「俺もだ。ウェンディ!!」
そう言って抱き合う二人・・・
「そ・・・阻止せねば!!」
「・・・ハッピーたちも一緒に向かったようだからたぶん大丈夫だと思うぞ・・・?」
頭を抱えながら言うミストガン。いや~、万が一ということがある。もしかしたら・・・
「って!もしかしてセシリー俺のこと置いてったのか!?」
俺なんか自分がかわいそうになってきた・・・
「・・・もういいか?」
「・・・うん。落ち着いた」
「そうか。ならよかった。実はお前に頼みが二つほどあるのだ」
「何?」
俺は顔をあげてミストガンと視線を合わす。
「一つはエドラスのどこかにある魔水晶にされたみんなを元に戻してくれ」
「どうやって?」
てか魔水晶にされたってなんだよ。
「お前の滅竜魔法で魔水晶を砕くんだ。そうすれば元に戻る」
「そうなんだ。わかった」
「そしてもう一つ・・・」
ミストガンは人差し指を立てて言う。
「向こうの世界に行ったら、シリル・ブランドという男に会ってほしい」
「シリル・ブランド?」
俺と同じ名前だ・・・一体・・・
「シリル・ブランドは、エドラスの世界のお前だ」
「え?」
エドラスの世界の俺?何?どういうこと?
俺が頭を抱えて悩んでいるとミストガンは話を続ける。
「エドラスとはこの世界の平行世界。つまり、向こうの世界には向こうの世界のお前やウェンディがいるんだ。お前のいう評議院に捕まった私はこちらの世界の私。私は本来、向こうの世界の住民なのだ」
「ほ・・・ほう・・・」
ミストガンの言葉になんとなく俺はうなずく。よくわかってないけどな。
「向こうのシリルとは友だ・・・奴は頭脳明晰、身体能力もかなり高い。私に頼まれたといえばきっと力を貸してくれるはずだ」
「なるほど・・・わかった!!」
俺は体の前で手を握りしめ返事する。ミストガンはそれを見てうなずくと背中の杖を一本俺に向ける。
「それじゃ・・・頼むぞ!!」
「うん!!任せて!!」
ミストガンがそう言うと、杖が光り出し、俺は空へと飛ばされていく。
エドラスにて・・・
「ここがエドラスか・・・」
俺がミストガンに送られたエドラスという世界は確かにアースランドとはどことなく違っていた。
空にはたくさんの島が浮いていて、見たことのない生き物や植物がたくさんあった。
「なんかすげぇな・・・」
俺は周りを見ながらそう声を漏らす・・・さて、それじゃあ俺もやるべきことをやりますか。
俺のやるべきこと・・・それはもちろん
「ウェンディとナツさんのラブラブ阻止だ!!」
俺は匂いを頼りにウェンディたちを探すため走り出した。
「探すとは言ったけど・・・こうも知らない匂いが多いと、なかなか大変だなぁ・・・」
俺はウェンディたちの匂いを頼りに探そうとしていたのだが、初めて嗅ぐ匂いばかりでちょっと鼻が変な感じがする。ウェンディたちの匂いが微かにするからこっちだとは思うんだけど・・・
「ぎぃゃあああああ!!」
「ん?」
すると前から青い髪のおじさんが叫びながら走ってくる。どうしたんだ?
おじさんは疲れたのか、木に手をついて息を切らせている。ちょっと聞いてみるか。
「あの・・・」
「ハァハァ・・・な・・・なんだい?」
「どうしたんですか?」
「いやぁ・・・変な植物に話しかけられてね・・・フェアリーテイル・・・とかいう奴を探してるって・・・」
妖精の尻尾?もしかしてそれウェンディたち?なぜに植物に間違えられたのかは知らないけど。
「その植物、どこで見かけました?」
「あっちだよ。全く気味が悪い」
おじさんは自分が走ってきた方向を指さす。よかった。方向は間違ってなかったんだ。
「わかりました。ありがとうございます!!」
俺はそちらの方向に再びかけていく。しかし・・・なんで植物に間違えられたんだ?ウェンディたち何してるんだ?
しばらく走っていると何か音が聞こえてくる。
「ん?」
ザバァ
何の音だ?何かが水から出てきたみたいな音だ。
俺はそう思って音のした方向に向かう。湖の上にかけられた大きな木でできた橋の向こう側で聞き覚えのある声が聞こえる。
「ぬああああ!!」
「ナツさんの声だ!!あっちか!!」
俺はその声のした方にかけていく。そうだ!!あれやってみよう!!ナツさんが耐久ロードレースでやってたあれ!!
「名付けて!水竜の鉄拳ブースター!!」
炎と違ってただ水を手から出して加速してるだけだけど・・・普通に走るより全然速いぞこれ!!これなら二人に速く追いつけ・・・ん?
俺が二人を追いかけていると最初に見えてきたのは・・・巨大ナマズ!?
「いくら森の中でもまずいんじゃないですか!?」
「んなのあのデカナマズに聞けっての!!」
そのナマズの前からウェンディとナツさんの声が聞こえる。あの二人この巨大ナマズに追いかけられてるのかよ!?早く助けないと!!
俺がさらに加速して追いかけるといつのまにかウェンディたちは崖の淵に追い詰められていた。
「「「うわあああああ!!」」」
「「きゃあああああ!!」」
ウェンディたちに襲いかかる巨大ナマズ。俺はギリギリでそのナマズに追い付く。
「水竜の咆哮!!」
「ぐががががが!!」
俺の咆哮は巨大ナマズに見事に命中してウェンディたちを間一髪で助けることができた・・・よかった~・・・
「みんな!!大丈夫!?」
「シリル!!」
「シリル~!!」
「おお!!」
「シリルが助けてくれたんだ!!」
「ありがとう。助かったわ」
俺がウェンディたちの前に来るとウェンディ、セシリー、ナツさん、ハッピー、シャルルの順でそう言う。
いやぁ・・・よかったよかった。みんな無事みたい。
「というかナツさん!!ウェンディを守っててくださいよ!!俺より全然強いんだから!!」
「ちょっと。なんでお前魔法使えるんだ?」
「え?」
俺がナツさんに怒った風に言うと、ナツさんは俺にそう返してくる。何言ってるんだナツさんは・・・
「私たち。こっちの世界じゃ魔法が使えないんだよ!?」
「どうしてシリルは魔法が使えるの~?」
「俺はミストガンに薬をもらったんだけど・・・」
もしかして・・・ウェンディたちは薬もらってなかったのか?だったらミストガン・・・ウェンディたちの薬もくれればよかったのに・・・
「あんた・・・いい加減にしなさいよ・・・」
「はぁ?」
するとシャルルが怒ったような声でナツさんに話しかける。どうした?
「変装もしてないのにこれ以上騒ぎを起こさないで!!」
「シャルル!!」
「お・・・俺のせいなのか・・・マジで!?」
「全部じゃないけどほぼそうでしょ!?王国の連中が私たちの存在に気づいたら、何をするかわからないのよ!?そうなったら、みんなを救出するどころか、私たちだってどうなるかわからないんだから!!」
シャルルにそう言われるとナツさんはあからさまにふくれる。
「そ・・・そっか・・・なんかよくわかんないけど俺が悪いんだな・・・」
「逆になんでよくわかんないのよ・・・!!」
「シャルル、言い過ぎだよ。ナツさんだって悪気があってやったわけじゃないんだから」
「悪気があったらなおたちが悪い!!」
シャルルは怒って叫び出す。ちなみに俺は全然話についていけなかったりする・・・
「セシリー・・・分かりやすく説明して。できるだけ短く」
「ナツくんが大半悪いよ~?」
「いや・・・それはもういいから・・・(汗)」
ナツさんが悪いのはおおよそわかるから・・・変装とか王国とかの説明がほしいんだけど・・・
森の中にて・・・
俺はさっき事情を説明してもらい、なんとなくだけど理解することができた。要は王国に見つからずにみんなを助ければいいってことだろ?簡単簡単!!
「「「あ!!」」」
「「「ん?」」」
俺が考えているとウェンディとシャルルとセシリーが何かに気づく。俺たちもそっちを見るとそこには二人の人がいた。なぜかこっちを見て固まってるけど・・・
「また見られた」
「それもがっつりね~」
「どうしよう・・・」
やっぱり人に見つからずにみんなを助け出すなんて無理っぽいな・・・誰だよ簡単とか言った奴!!
「えっと・・・オイラたちは道に迷っただけの旅の者です」
「どうかお許しくださいませ!!」
ハッピーがそう言うとなぜかエドラスの人は正座して頭を深々と下げる。なんだ?
「エクシード様!!どうか命だけはご勘弁を!!」
「エクシード?」
「誰のことだろう?」
「さぁ?」
エクシードと言われて俺たちはよくわからずに顔を見合わせる。その時シャルルの表情が曇ったような気がするけど・・・気のせいかな?
「あのよぉ」
「うわ!!ダメだよナツ!!」
「学習能力なさすぎ~!!」
「いまさら取り繕っても無駄だろ?」
人に話しかけようとするナツさんをハッピーとセシリーが止めようとするが・・・確かにナツさんの言う通りもう何をしても無駄な気がする。
「あのよぉ!!ちょっと聞きたいことがあんだけど!!俺たちの仲間がこのエドラスに・・・」
「「ひいいいいい!!お助けを~!!」」
ナツさんが話しかけると二人組はそう叫びながら走っていってしまった。というか今の人たちハッピーとセシリーを見てあわてて逃げたような気が・・・
「おいおい・・・」
さすがにナツさんも唖然としてますね・・・
「さっき人たち、シャルルとセシリーとハッピーを見て怯えてたような・・・」
「俺にもそう見えたよ」
「ほれ!!俺のせいじゃねぇじゃん!!」
「オイラ、そんなにこわい顔してたかな?」
「別に普通にしてただけなのに~」
「喰われると思ったとか?」
「そりゃないでしょ!」
「こんなお口でどうやって人を食べるのさ~」
俺たちは少し笑いながらそんな話をしているとシャルルだけは暗い表情のままである。そんなに自分が怖いと思われたのかショックなのかな?
そんなことを思っているとナツさんが何かを踏んでしまう。
「おろぉ?」
「今度は何よ・・・」
「嫌な予感がします」
「僕もそんな気がするよ~」
その時足場が急に盛り上がって俺たちは空へと投げ出された!!
「「「「わああああああ!!」」」」
「「きゃあああああ!!」」
飛ばされた俺たちは巨大キノコにぶつかっては飛ばされ、ぶつかっては飛ばされを繰り返してカボチャ型の家に落っこちる。
「オエ・・・」
「また落ちた・・・」
「いったい・・・」
「まったくもう・・・」
「もうやだよ~・・・」
俺たちは起き上がって周りを見回すと・・・そこは倉庫みたいだった。
「なんだここ?」
「どこかの倉庫みたいだね」
「色々なものがあるね~」
「そりゃ倉庫だからな」
俺たちは倉庫の中を見回しながらそんな話をしている。するとシャルルは腰に手を当てて話し出す。
「いまさらどれくらい役に立つかはわからないけど・・・とにかくここで、変装用の服を拝借しましょ」
「だね~!!」
俺たちはそういうことになり、おもむろに服を探し始める。
「おお!!おもしれぇ服がたくさんあんぞ!!」
「面白さよりかっこいい服の方がいいんですが・・・」
「ナツさん。シリル。こっち向かないでくださいね?」
後ろでウェンディが着替えているだと!?なんか妙な緊張感があるような・・・
それぞれが着替え終わる頃に、ナツさんが窓の外で何かを見つける。
「んん!!」
「どうかしました?」
「なんですか?」
ウェンディと俺がナツさんに着替えながら話しかける。ちなみに俺の服装は上はウェンディと色違いの紺の服に、下は白っぽいジーンズ系のズボンにしてみた。
というかウェンディの今つけてる髪飾り・・・俺がこの間あげた奴だ!!つけてくれてるなんてめっちゃうれしい!!
「妖精の尻尾だ!!」
「「「「「ええっ!?」」」」」
ナツさんはそう言って倉庫から飛び出す。俺たちもあわてて飛び出すとそこには確かに妖精の尻尾のギルドマークのある建物がある。あれ?魔水晶にされたんじゃなかったのか?
「なんか形変わってるけど妖精の尻尾だ!間違いねぇ!!」
「ナツさん!!」
「待ってくださいよ!!」
俺たちはギルドの扉の前まで来る。なんか木みたいな形してるけど、確かに妖精の尻尾だ!!俺たちはすぐにその中に入る。
そこにはギルドの皆さんがそのままの姿でいた。
「みんな無事だ!!」
「あっけなく見つかりましたね」
「ミストガン・・・魔水晶なんかになってないじゃん・・・」
せっかく活躍するチャンスだと思ったのに~・・・まぁみんな無事でよかったけどね。
「でもずいぶんギルドの雰囲気違うね」
「なんか別のギルドみたい~」
「細けぇこと気にすんなよ」
「気にしませんか?そこ」
「みんな無事ならそれが一番だよ」
ナツさんは感極まって少し目に涙浮かべてる、やっぱりナツさんは仲間思いの人なんだなぁ。
「ちょっと待って。様子がおかしいわ」
シャルルがそう言うので俺たちはテーブルの下に隠れる。なぜにテーブルの下?
「ねぇあれ。ギルドのリクエストボードだよね?」
「なんもおかしくねぇじゃん」
「でもなんか違和感はありますよ?」
「よーく見て」
俺も何か違和感は感じるけどそれが何かわからない。俺たちはそのままリクエストボードを見ていると、ボードを見ていた女の人がボードから振り返る。
「ん?あいつは・・・」
「ジュビア、これから仕事に行くから」
「気を付けてな」
あれジュビアさん!?なんか髪型いつもと違ぇ!!
するとそのジュビアさんに一人の男が声をかける。
「ま・・・待ってよジュビアちゃん!」
「なっ!?」
「ウソ!?」
その男の人を見てナツさんと俺は驚いてしまう。
「俺も一緒にいきてぇな~、なんて」
「暑苦しい。何枚着てんの服」
「なっ!?」
男の人はグレイさんだった・・・かなり厚着してるけど!!
「もっと薄着になってから声かけて」
「ひ・・・冷え性なんだよ~・・・」
「グレイの奴、ベタベタしすぎなんだよ」
「恋する男ってのは、熱心なもんだね~」
「なんだこりゃあ!!」
グレイさんがジュビアさんに声をかけてジュビアさんがそれに喜ばないなんて!!どうなってんだこれ!?
「情けねぇなエルフマン」
「また仕事失敗かよ!」
「恥ずかしいっす」
「おい見ろよ。ギルド最強候補のジェットとドロイがまたエルフマンに説教してるぞ」
「ほどほどになぁ」
「仕事仕事~!!」
「ナブは働きすぎだろ?」
「だよな」
またあるところではジェットさんとドロイさんがエルフマンさんを説教している。いつも仕事に行かないナブさんが働きすぎとか言われてるし・・・逆でしょ逆!!
「カナさん、たまには一緒に飲みませんか?」
「こっちにきてくださいよ~」
「何度も申しているでしょう?私、アルコールは苦手でございますの」
「ふほぉっ!?」
今度は丁寧な感じのマカオさんとワカバさん!?カナさんがアルコール苦手って・・・じゃあカナさん何が飲めるんですか!?
「ピスピス~」
「な~に?アルアル~」
「きゃああ!!」
あっちではアルザックさんとピスカさんがイチャイチャしてる!!ウェンディはそれを見て顔真っ赤にしちゃってるし・・・
「だいたいおめぇはよ」
「でも・・・だって・・・」
「いちいち泣くなよ!?」
エルフマンさんが泣いてるし漢と言わないなんて!!
「俺は、ジュビアちゃんが好きなんだーー!!!!」
「うっせぇぞグレイ!!てか暑苦しい!!」
ジュビアさんが好きなグレイさんだと!!ジュビアさんが泣いて喜びますよ!!
リーダスさんなんか怖いし痩せてるし・・・なんかあべこべ~!
「ど・・・どうなってんだこりゃあ?」
「みんなおかしくなっちゃったの!?」
「おかしいのは前からだったけどもっとおかしくなっちゃった~!!」
「・・・!?」
俺たちがみんながおかしくなったのに唖然としていると
「おい!誰だてめぇら」
「「「「「「!?」」」」」」
一人の女の人が俺たちの前に不良みたいな座り方をし、その声を聞いたギルドの皆さんがこちらを向く。
はっきり言おう。めっちゃ怖い!!
「うそ!?」
「あい!?」
「まさか!?」
「マジ!?」
「えぇ~!?」
俺たちの前に座っている女の人を見て俺たちは驚く。
「ここで隠れて何こそこそしてやがる」
「ルーシィ!?」
「さん~!?」
いつもと雰囲気の全然違う怖いルーシィさんだった!!
「な・・・な・・・な・・・え?」
「お前は落ち着けウェンディ」
「これはいったい・・・」
「どうなってるの~!?」
俺たちはあまりの変化に驚き、ルーシィさんはそんな俺たちにガンを飛ばしていた
後書き
いかがだったでしょうか。
シリルに少し活躍させようと思っているので先にエクスボールを飲んで魔法を使えるようにしました。
ちなみにシャルルとセシリーが仲が良いのは、別にセシリーが嘘をついていたからではなくて違う理由がちゃんとあります。
今回はハッピー一人をシャルルが責めるためにセシリーは知ってるフリをしてるということにしました。
次回もよろしくお願いします
妖精狩り
「おい。誰だてめぇら。ここで隠れて何こそこそしてやがる!」
俺たちは今ギルドの皆さんにメチャクチャ睨まれている。なんだろう、凄い怖い・・・
「ど・・・どうしちまったんだよみんな」
「ルーシィさんが・・・怖い・・・」
「実はこれが本性だったとか・・・」
もしかしたらルーシィさんは今まで本当の自分を隠していたとか?あり得る・・・
すると何か感じたのか、ルーシィさんはナツさんのことをじっと見つめる。
「ナツ・・・」
「!?」
あまりのルーシィさんのプレッシャーに俺たちは思わず息を飲む。すると
「よく見たらナツじゃねぇかお前!!」
「ぐほぉ!!」
ルーシィさんはナツさんに抱きついた。
「ナツだって?」
「なんだよその服」
ギルドの皆さんもナツさんのことを見て思い思いの声を出す。
「ナツ・・・今まで・・・どこいってたんだよ・・・心配かけやがって!」
「ルーシィ・・・?」
ルーシィさんはそう言いながらナツさんを強く抱き締める。何この展開!!
するとルーシィさんは突然体勢を変えてナツさんに肩車の形で乗っかる。
「処刑だ~!!」
「ぎゃあああ!!」
乗っかったルーシィさんはナツさんの頭をグーでグリグリとする。
「出たー!!」
「ルーシィの48の拷問技の一つ、ぐりぐりクラッシュ!」
「うえぇ!?」
「ナツさん!?」
「大丈夫~!?」
「てか名前のセンスがなさすぎ!?」
ナツさんがルーシィさんにいじめられるのを見て俺たちは驚く。てか48の拷問技ってルーシィさん怖すぎ!?
「あまりいじめて、可哀想ですわよ?」
「うわぁ・・・とてもカナとは思えない・・・」
「服装もなんか上品だし~・・・」
カナさんがお嬢様なのがかなり違和感あるよ。
「ひっく・・・ひっく・・・」
「こっちはもっとだ。エルフマンとは思えない」
「「いつまで泣いてんだおめぇは!!」」
「も・・・申し訳ないっす!」
「ジェットくんとドロイくんもまるで別人だよ~!!」
いまだにエルフマンさんをジェットさんとドロイさんが説教してる。日頃の恨みか?
「うわ・・・訳がわかんない・・・」
「一体どうなってるの~!?」
ハッピーとセシリーは皆さんのあまりの変わりように驚いている。安心しろ。俺もだから。
「とにかく無事でよかった。ねぇ?ジュビアちゃ~ん!」
「うるさい」
グレイさんに対するジュビアさんの態度そっけねぇ・・・なんかグレイさん可哀想だぞ?
「これ・・・全部エドラスの影響なの?」
「何から何まで全部逆転してるよ~?」
「う~ん・・・」
シャルルは腕を組み、真剣な表情をしている。マジで意味がわからねぇ・・・誰かまともな人はいないのか?
「ナツ~!!おかえりなさい!!」
するとカウンターからミラさんがこちらに手を振っている。なんだ。いつものミラさんだ。
ある意味つまんないな・・・
「ところで・・・そこのお嬢ちゃんたちと猫は誰です?」
「お嬢・・・」
また間違えられたのかと一人ショックを受けていると
「猫?「・・・猫!?」」
「猫がいますよ!?」
「「「「「「「「「「猫~!!!?」」」」」」」」」」
セシリーたちを見てみんな驚く。いつも見てるじゃん!どうしたの?
「どういうこった!」
「こんなところになんでエクシードが!」
「うぇぇぇぇぇ!!」
「エクシード!?」
ギルドの皆さんはみんなざわめき出す。何なのこれ?
「な・・・なんだよ~・・・」
「みんなどうしたの~?」
ハッピーとセシリーはみんなに見られてそう言う。
「どうなってんだよこれ?」
「つか・・・なんでこっちの人間はエクシードって聞くとビビんだよ。エクシードってなんなんだ?」
ルーシィさんもナツさんをぐりぐりする手を止めてセシリーたちを見つめる。
「シャルル?」
「セシリー。どういうこと?」
「僕に聞かないでよ~」
ウェンディと俺が心配してセシリーたちを見る。セシリーたちも事情がよくわかっていないようだ。
するとハッピーが頭に被っているお面を取る。
「ブハァ!暑かった暑かった」
「本当そっくり!」
「え?」
するとそんなハッピーにミラさんが近づく。
「あなたたちって、エクシードみたいね」
「「いや・・・みたいというか・・・」」
「そのものじゃないか?」
ミラさんの言葉にマカオさんたちが突っ込む。
「姉ちゃんの言う通りだよ。エクシードにそっくりなだけだよ」
「それもそうね」
「そうかな?」
「どう見ても猫そのものだけどな」
ミラさんの声に納得する人とどうも納得のいかない人で別れてるけど・・・エクシードってなんだ?
「えっと・・・」
「こらぁ!!脱がないの!!」
「ハッピー!約束約束~」
変装を解いたハッピーにシャルルとセシリーがそう言う。
ひとまずは猫騒ぎは収まったようだな。
[じーーー]
ルーシィさんは再びナツさんをじーっと見つめている。
「ルーシィさんが怖い・・・」
「言うな・・・怒られるぞ・・・」
ウェンディはいつもと違うルーシィさんに少し暗くなる・・・いつもは優しいからな・・・
「さぁ言えよ!さんざん心配かけやがって、どこで何してたんだよ?」
「何って言われてもなぁ・・・」
「ナツ!そこはちゃんと説明しないとダメだよ~!!」
今ナツさんは席に座らされてルーシィさんに睨まれながら事情聴取されている。
ナツさんはルーシィさんに少しビビってるなぁ・・・新鮮!
「あぁ・・・つまりあれだ・・・ほれ、なんつったっけ?」
「ああ!?」
ナツさんが説明するのに苦労しているとルーシィさんの機嫌が悪くなり、
「あいっかわらずじらったいなお前は!!」
「ぐおおお!!」
ルーシィさんにこめかみを肘でぐりぐりされている・・・痛そう・・・
「出たー!!」
「今度はぐりぐり、肘クラッシュ!!」
「肘がついただけだよ」
「ネーミングセンスがないみたいだね~」
ルーシィさんの48の拷問技(笑)の一つにハッピーとセシリーが突っ込む。
「 ピスピス~!」
「なぁにアルアル~?」
「そろそろ、二人っきりで仕事行こっか?」
「行こ行こ!!アルアルはなんの仕事がいい?」
「あ~んそうだな、ピスピスの好きな仕事にいこうよ~」
「いやーん!アルアルてば!や・さ・し・いー!!」
アルザックさんとピスカさんはあまりにもいちゃつきすぎ・・・
「も・・・ものすごい仲がいいですね」
「いくら逆って言っても限度ってものがあると思うけどね」
「でもあの二人は将来的にはあぁなったんじゃないかとも僕思うけどね~」
「ないない・・・」
ウェンディは二人のあまりのいちゃつきようにたじたじだし、ハッピーは普通に見てるし、セシリーは目を輝かせているし・・・でもあの二人はあまりイチャイチャしてないからよかったけど・・・ああなってはもう見てられないよ・・・
「なぁジュビアちゃん、さっき仕事に行くって言ってただろ?俺も一緒にいきてぇな~」
「だから近寄らないでって言ってるでしょ?暑苦しい。仕事はジュビア一人で行くのよ。あんたなんか全然役に立たないんだから」
グレイさんはジュビアさんにそういわれがっかりとしている。
「グレイさん。そろそろ諦めたらいかがです?」
「リオンくんもそうでしたけど、どう見ても脈なしですよ」
「あの着膨れナンパ男の名前を出すなよ~・・・ジュビアちゃ~ん!頼むからさぁ・・・」
「うざいってば!!」
「ぎゃお!!」
リオンさんも着膨れしてるんですか!?
グレイさんはジュビアさんに顔に蹴りを入れられて飛ばされる。服が厚着のせいなのか、何度もバウンドしてハッピーの前まで転がってくる。
「うお~!!誰か助けて~!!」
「こっちが助けて~!!」
ハッピーは転がってきたグレイさんに追いかけられ走っていると、リーダスさんにぶつかる。
ハッピーがぶつかったリーダスさんは立ち上がってハッピーを見下ろす。
「ったく、うろちょろしてんじゃねぇよ。ケガするぜ、エクシードモドキが!」
「モドキって!!オイラよくわからないけどモドキはないよ!!」
リーダスさんとハッピーがそう言い合っているとグレイさんはその脇を通り抜けて壁にぶつかる。
「グレイ!!だらしねぇぞおめぇは!!起きろ!!」
「こうやってうずくまってるとぬくぬくして暖かいんだよな~」
「だらしねぇし情けねぇ!!」
床にうずくまって言うグレイさんに怒るリーダスさん。前のグレイさんと今のグレイさんを足して2で割るとちょうどいい服装になりそうな気がする。
「技の35!えげつないぞ固め!!」
「くもぉ!!」
「技の28!もうやめてロック!!」
「うわああ!!」
ちなみにいまだにルーシィさんにナツさんは技をかけられていた・・・大丈夫かな?
「ルーシィさんが怖い・・・」
「えげつないな・・・」
ナツさんは我慢できなくなったのか、ようやく脱出してどこかに隠れる。
「逃げんなナツ!!どこに隠れた!!」
ナツさんを探し回るルーシィさん。もうやめてあげればいいのに・・・
「仕事仕事~!!」
ナブさんが次の仕事に行こうと駆け回っていると
「うるさいよクソナブ!!」
「んだとコラ!クソとはどういうこったレビィ!!」
今度はレビィさんとナブさんがケンカをはじめる・・・レビィさんヤンキーみたい・・・
「出てこいナツー!!新技かけてやっからさ~!!」
「うるさいよこのクソルーシィ!!」
「なんだとコラァ!!」
今度はレビィさんとルーシィさんがケンカを始める・・・二人は仲良かったのに今度は悪くなるのか・・・逆になると怖いなぁ・・・
「レビィさんも怖い・・・」
ウェンディはそれを見てますます青ざめる・・・二人のケンカはマカオさんとワカバさんが仲裁してくれて収まったようだな。
「あれ?そういえばエルザさんがいないみたいだけど・・・」
「あれ?本当だ!」
ウェンディに言われて気づいたけど確かにエルザさんがいない。どこにいるんだ?
「冗談じゃねぇ・・・」
「ねぇねぇ、こっちではエルザってどんな感じなのかな?」
「そりゃあおめぇ・・・やっぱ逆だろうよ」
「ナツさん・・・」
「完全にルーシィさんにびびってるね・・・」
「大丈夫~?」
ナツさんはルーシィさんの拷問技が怖くて机の下に隠れていた。
「エルザの逆ってどんな感じさ?」
「そうだな・・・」
ナツさんはそういうと自分にいいように言われる気弱なエルザさんを想像した。
「とか?」
「それ単にナツの願望だよね!?」
「んだと~!んじゃハッピー、お前はどうなんだよ」
「オイラはこう思うよ!きっと・・・」
ハッピーは自分を尊敬して守ってくれるエルザさんを想像した。
「とか?」
「いや、お前の願望の方がひどくねぇか?」
「確かに」
ナツさんの願望もハッピーの願望もなんか違う気がする・・・
「う~ん・・・私はこう思います!」
ウェンディは自分にたくさんケーキを作ってくれるパティシエのエルザさんを想像した。
「とか!」
「「「そう来たか!!」」」
まさかの想像に驚く俺たち。すると今度はセシリーが・・・
「僕はこう思うよ~!!」
セシリーはミラさんみたいな天然系のウェイトレスのエルザさんを想像した。
「とか~?」
「「それはそれで怖い!!」」
「私はそれでもいいかも!」
「いいのか!?」
「シリルはどんなエルザさんだと思う?」
「そうだな・・・」
いつものエルザさんはまじめでキリッとしてるから、逆の感じのエルザさんっていったら・・・
俺は毎日ドジばっかりする、ウェンディみたいなドジっ子のエルザさんを想像した。
「とか?」
「やめろ!!なんかありえそうで怖い!!」
「そんなエルザ見たくないよ!!」
「そんなのエルザさんじゃないよ~!!」
「てか私そんなにドジしてないよね!?」
みんながなんか頭抱えだしたけど・・・一番まともだと思うよ?てかウェンディはドジっ子の自覚がなかったのか・・・
俺たちがそんな感じで盛り上がっていると
「揃いも揃ってつまんないこと妄想してんじゃないわよ」
「あはははは・・・」
「ごめんごめん」
シャルルに怒られてしまい苦笑いのウェンディと謝る俺。
「でも、逆の感じのエルザさんって・・・」
「実際のとこどうなんだろ?」
「すごい気になる~!!」
ウェンディたちが口々に言う。確かにエルザさんの逆って・・・どんなだろうな・・・
「ナツ見っけ!!」
「なっ!?」
すると騒ぎすぎたせいか、ナツさんがルーシィさんに見つかってしまう。
「おいコラァ!」
「おーし!新技かけっぞ!!」
「やめろって!いい加減にしねぇといくらルーシィでも・・・」
「へぇ~・・・」
腕をぐるぐる回してやる気十分のルーシィさん。ナツさんはそれを止めようとしたら逆にスイッチ入れちゃったみたい?
「やろぉってのか?上等だよ!」
黒いルーシィさんはナツさんにエルボーや蹴りを入れ、ナツさんは地面に叩きつけられる。
「つ・・・強い・・・」
「あのナツさんを沈めた・・・」
「ナツ~、大丈夫?」
「大丈夫・・・じゃねぇ・・・」
「根性たりねぇんだよお前は」
ルーシィさんはのびているナツさんに腰を下ろす。もうここまで来るとただの鬼だな。
それを見たギルドの皆さんは・・・
「ナツさんがルーシィさんに口答えなされるなんて・・・」
「珍しいこともあんだな」
「つーかアホだろ」
ルーシィさんにナツさんがボコボコにされたことよりもナツさんがルーシィさんに口答えしたことの方に驚いていた。
ルーシィさんは倒れたナツさんの胸ぐらを掴み上体を起こさせる。ナツさんはあまりの恐怖に震えていた。
「さぁ言え!どこで何してやがった?あぁ?」
「だから・・・それが・・・ハッピー!助けて・・・」
ナツさんがハッピーに視線を向けるとハッピーは顔をポリポリとかき
「さっきからこの仮面が蒸れて力が出ません」
「薄情もの!!」
どこかのアンパンのヒーローみたいなこと言い出したよ・・・まぁ顔蒸れてなくてもハッピーじゃ助けられないだろうけど・・・
「ルーシィ!またナツをいじめて!ダメじゃない!」
すると怖いルーシィさんを注意する女の人が出てきた。誰だ?
「ちぇ、わーったよ」
ルーシィさんは女の人に言われて手を離す。離されたナツさんはその女の人を見て固まっている。
「う・・・うそ・・・」
ナツさんに続いてハッピーまで固まる。どうしたんだ?てかあんな人いたっけ?
「お?戻ったのか」
「お帰りなさい。リサーナ」
「ただいま。ミラ姉、エルフ兄ちゃん」
エルフマンさんとミラさんがその女の人の名前を呼ぶ。リサーナさん?って確か・・・
「り・・・リサーナ・・・」
「ん?」
ナツさんとハッピーはリサーナさんを見て涙を浮かべ、ジェットさんとドロイさんと話しているリサーナさんを見つめる。
「見つけた・・・」
「ナツさん?」
「「リサーナ!!」」
ナツさんとハッピーはリサーナに飛び付いた!!
「ひっ!」
「コラァ!!」
「「ぎゃああ!!」」
しかしそれを見たルーシィさんにナツさんは蹴り飛ばされてしまう。
「お前いつからそんな獣みたいになったんだ?ああ!?」
「だって・・・リサーナが生きて・・・そこに・・・」
「はぁ?何言ってんだお前」
ナツさんはルーシィさんに胸ぐらを捕まれながらリサーナさんを指さしてそう言う。でもなんでリサーナさんって・・・
そんなことを思ってるとナツさんが着膨れグレイさんに連れていかれる。二人は仲いいんだ・・・ケンカしないと物足りないけど・・・
「なんでリサーナがいるんだ?」
「ミラさんの妹の・・・確か亡くなったはずだよね?」
「そうレビィさんに聞いたよ・・・2年前に事故で・・・」
なんでいるんだ?これもエドラスの影響なのか?
「みんなが逆になってるわけじゃないってことね」
「え?」
「どういうこと~?」
シャルルの言葉にハッピーとセシリーが反応する。
「ミラはあの通り、全然変わってないわ。決定的なのはアレ!」
「「「「ん?」」」」
俺たちはシャルルの指さした方向を見る。そこにはどことなく見覚えのある女の人がいた。
「あの子、少しお前に似てね?ウェンディ!」
「そう?」
「雰囲気とか近いよな?」
「私っ!?」
「ウェンディ!?」
そこにいたのはスタイル抜群の大人ウェンディだった。めっちゃきれいになってるやん!?てかなんでウェンディが二人?
「逆・・・じゃなくて違うのよ」
「そ・・・それって・・・」
「つまり・・・」
「そうよ。この人たち、私たちの探してるみんなじゃないわ!」
俺たちの探してるみんなじゃないって・・・どういう・・・あ!?
俺はそこまできてミストガンの言ってたことを思い出した。エドラスにはもう一人の自分がいるってこと・・・ウェンディやナツさんもこっちの世界にはこっちの世界の二人が初めから存在してるってミストガン言ってた!!
「別人・・・エドラスに・・・最初からいる人たちよ」
「そ・・・そういえばミストガンがこっちの世界にはこっちの世界の俺やウェンディがいるって言ってたなぁ・・・とか今思い出したりして~」
「何!?」
「なんでそういうことを早く言わないの~!?」
「シリルのバカ!!ドジっ子!!」
「いやだから忘れてたんだって!!」
みんなにミストガンから言われたことを伝えたら怒られた。だって忘れてたんだもん・・・てかウェンディにドジっ子とか言われたくないよ・・・ウェンディよりは大丈夫・・・なはず・・・
「ちょっと待て!!じゃあ、俺たちの知ってるみんなはどこに行ったんだよ?」
「ごちゃごちゃ何言ってんだ?」
「知らないわよ。それをこれから見つけるんでしょ?」
ナツさんはいまだにルーシィさんに捕まったままだ、シャルルはそう言うとセシリーの手をつかんで走り出す。
「これ以上ここにいるのも面倒ね。行くわよ!」
「ええ~!?」
「シャルル!セシリー!待ってよ!!」
「おいシャルル!!」
「シャルル!!どこへ!?」
ハッピーはシャルルたちのあとを追いかけようとし、俺とウェンディは三人の方を見る。
「王都よ!吸収されたギルドの手がかりは、王都にあるはず!」
シャルルはそういってギルドを出ようとすると目の前にナブさんが立ちふさがる。
「妖精狩りだ!!妖精狩りがきたぞぉ!!」
ナブさんがそう叫ぶとギルド全体に緊張が走る。妖精狩り?
「そこの猫!!どこへいく気だ!?外はまずい!!」
「「「え?」」」
ルーシィさんにそういわれ、シャルルたちは扉の前で立ち止まる。
「ちくしょう!!」
「もうこの場所がバレたのか!?」
「王国の方たち、また私たちを追って・・・」
「「えらいことですよ~!!」」
ギルドの皆さんは騒ぎ出す。どうしたんだ?
「王国?」
「私たちをアースランドに送り込んだ奴等よ!!」
「それじゃあ僕たち・・・」
「妖精の尻尾の敵なの?」
セシリーたちはそんな会話をしている。そんな中でもギルドの皆さんは忙しなく動いている。
「リアクター点火準備、座標設定、誤差修正まで5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・マーカーにコネクト!ショックアブソーバーに魔力供給!」
「転送魔方陣はまだなのレビィ!!」
「今やってるよクソルーシィ!!」
「遅いって!!妖精狩りが来るんだぞ!!」
「だからわかってるって!!」
「「しゃべってねぇで早くやれよ!!」」
ルーシィさんとレビィさんが何やら口喧嘩してるけど・・・それを見ているとギルドの中で突然小石が宙に浮かび上がる。
「転送臨界点まで出力40%!43・・・46・・・51・・・」
レビィさんが機械を操縦しているとギルドの中がさらにざわめき出す。
「早くしろ、レビィ!」
「もたもたしてんじゃねぇ!!」
「うるさい!!出力61・・・63・・・転送まであと2分!!」
「大気が・・・震えてる・・・」
「なんだよこれ・・・」
ウェンディと俺がそう呟くとエルフマンさんが叫ぶ。
「来るぞぉ!!」
するとギルドの外に見たことのないような巨大な生物が現れた。
「なんだありゃあ!!」
「妖精狩り?」
「なんなの!!」
「一体これは~・・・」
「 王国が妖精の尻尾を狙ってる?」
「なんで?」
「そんなの決まってるじゃない」
俺たちが話しているとエドラスのウェンディがこちらに話しかける。
「王の命令ですべての魔導士ギルドは廃止された。残っているのは世界でただ一つ、ここだけだから」
「「え?」」
「知らないでナツについてきたの?つまり私たちは、闇ギルドなのよ!」
俺とウェンディはエドウェンディの言葉に驚く。妖精の尻尾が・・・闇ギルド・・・!?
「よし!臨界点到達!ショックアブソーバー作動!転送魔方陣、展開!!」
レビィさんがそう言うと俺たちの体が浮かび上がる。
「みんな!!何かに捕まれ!!」
ルーシィさんの声が聞こえて俺はすばやく柱を掴む。
「きゃあ!!」
「ウェンディ!!」
俺はウェンディの手をつかんで離さないようにする。
「展開・・・開始!!」
俺たちは巨大な生物に踏み潰される直前で別の所へと飛んでいった。
第三者side
「転送だと?」
「ん~~。転送魔法か。あんなに魔力を無駄遣いする魔法を使うとは。司令塔のいなくなった奴等は・・・全く困ったものだな」
巨大な生物に乗っている女と、金髪のリーゼントヘアの男がそう言う。
「シュガーボーイ、いたのか」
「ん~~、本当、逃げ足の速い妖精だね」
「逃げ足だけでは意味がないがな。いずれ奴等の魔力は尽きてしまうのだから」
すると今度は二人の後ろから水色の髪の男がやってくる。
「貴様まで来たのか」
「もちろん!例の巨大アニマ作戦がようやく成功したらしいから、それを伝えるためにな」
「んで、魔戦部隊長は全員王都に戻れってさ」
「アースランドの妖精の尻尾を滅ぼしたのか!?」
二人の男の言葉に女が驚く。
「滅ぼしたとは人聞き悪いなぁエルちゃん」
「正確には吸収した・・・うちの王はやることがでかいねぇ」
二人は嬉々として答える。
「吸収されたアースランドの魔導士はどうなった?」
「王都さ」
「巨大な魔水晶になってるよ。いや~でかかったよエルちゃん!」
「素晴らしい。それならエドラスの魔力はしばらく安泰だろうな」
「ん~~!!」
三人はそういって、互いにほくそ笑み、王都へと戻っていった。
引っ越した妖精の尻尾は・・・シリルside
ドン!ドドドン
「野郎共!!引っ越し完了だ!!」
ルーシィさんがそう言うとギルドの皆さんは互いの無事を確認しあい、安堵する。
「引っ越し?」
「ギルドごと移動したのか」
「すごい・・・」
「つか痛ぇ・・・」
「うん~・・・」
俺たちはあまりのことに全員倒れてしまっている。それにしてもすごい魔法だった・・・
「てめぇ!!何もたもたしてんだよ!!危なかっただろ!!」
「うっさい!!たまには自分でやってみろ!!」
ルーシィさんとレビィさんはまたもにらみ合いをしている・・・あの二人見てるとグレイさんとナツさんの関係が頭をよぎるな・・・
「なんだったんださっきのやつは・・・」
「どうしちゃったのナツ?久しぶりで忘れちゃった?」
「んなわけねぇだろ!!」
ナツさんが立ち上がって言うとミラさんが心配し、リーダスさんがキレる。
忘れちゃったんじゃなくて最初から知らないんですよ~。
「あれは、王都魔戦部隊隊長の一人、エルザ・ナイトウォーカー。
またの名を、妖精狩りのエルザ」
「「「「「!?」」」」」
「エルザが・・・敵・・・!?」
驚きの事実に俺たちは驚いた。
後書き
いかがだったでしょうか。
エドラスのエルザとシュガーボーイと話していた男はエブリスタで読んでる人はたぶんわかると思います。
次回もよろしくお願いします。
エドラスのシリル
「つーと何か?お前らはアースランドとか言うもう一つの世界から」
「仲間を救うためにエドラスに来たってのか?」
「ああ」
俺たちはエドラスのギルドの皆さんに事情を説明しました。簡潔にだけどね。
「そっちの世界にも妖精の尻尾があって」
「そっちじゃエルザは味方だって?」
「ざっくり言うとね」
「あい」
「うん~!」
エドラスの皆さんは理解してくれたようだ。
「どうにも信じがたい話ですけど」
「う~ん・・・でも確かに、このナツは俺たちの知ってるナツじゃねぇしな」
「似てるのは顔だけよね」
「言えてる!」
「「「「「「「「「「アハハハハハハ!!」」」」」」」」」」
皆さんはそういって大笑いする。俺たちからすればエルザさんが敵ってのが一番信じられないけどね!
「この子がそっちの世界の私?」
「ど・・・どうも」
「プッ!ちっちゃくなったなウェンディ」
ナブさんがそう言うとエドウェンディは少し不機嫌な顔をする。こっちがちっちゃいのかそっちが大きいのかわかんないけどね。
「ところであんたは誰?」
レビィさんが俺に詰め寄ってくる。ヤンキーみたいに少し目付き悪いなぁ、このレビィさん。
「俺はシリルです。こっちの世界にもいるって聞きましたけど・・・」
「「「「「「「「「「シリル!?」」」」」」」」」」
俺が名乗ると皆さん驚く。どうしたんだ?
「確かに小さい時のシリルに似てるなぁ・・・」
「タレ目だけどな」
「い・・・いいじゃないですかタレ目でも!!」
つり目でもタレ目でもいいじゃんか!!てかこっちの世界だと俺も大人ってことか!?
「・・・」プルプル
「ウェンディ?」
すると俺を見たエドウェンディが震えだす。どうしたんだ?
「あの・・・」
「か・・・」
俺が声をかけるとエドウェンディは目を輝かせて抱きついてくる。
「可愛い!!」
「ふぇ!?」
「「「「「ええ!?」」」」」
俺たちは突然のことに目を白黒させる。何?何これ?てかこっちのウェンディなんか色々と柔らかい・・・
「出たな・・・」
「ウェンディの奴、シリルのこと本当好きだからな」
「確かに顔はいいけど・・・」
「性格がアレだからね・・・」
ウォーレンさんとマックスさん。加えてルーシィさんとジュビアさんが言う。もしかしてこっちの俺って性格悪いの?
「エドラスのシリルはどんな感じなんですか?」
ウェンディも気になったらしく聞いてみる。するとマカオさんたちが頭を抱えて答える。
「ナルシストですよ」
「それも重度の」
「エドラス一の美形とか自分で言ってるよ」
「ですけどウェンディさん以外の女性とは関係を持たないようにしてる純粋な方ですわよ?」
マカオさん、ワカバさん、ルーシィさん、カナさんが答える。ナルシストかぁ・・・そう来たか。
「シリルはウェンディの恋人なのよ!」
「「え!?」」
ミラさんに言われて思わず驚く俺とウェンディ。マジで!?
「そう!そっちだとシリルの方が年上みたいだけど、こっちだとウェンディの方がお姉さんなんだから!」
「一つしか変わんないけどね」
ミラさんとエドウェンディがそう言う。うわぁ・・・こっちだと二人は付き合ってるのか・・・逆だと仲悪いのかとも思ったけど・・・年が逆転してるだけだったか。
「そういやそのシリルはどこだよ!」
「「「「「うっ・・・」」」」」
ナツさんが聞くとギルドの皆さんは表情を歪める。どうした?
「し・・・シリルは・・・」
エドラス王都にて・・・第三者side
「スッゲェよ!!スゲェよ!見たかエルザ!!あのでかい魔水晶!!」
「来るとき見たよ、ヒューズ。きれいなもんだな」
「あれは何万ものアースランドの人間の魔力なんだぜ!!」
「ん~~。正確には魔導士100人分くらいの魔力。と、その他大勢の生命、と言うべきか」
王都の城では魔戦部隊長のエルザ、ヒューズ、シュガーボーイが外にある魔水晶を見てそう話している。
「へへっ。細けぇことはいいんだぜ、シュガーボーイ。俺が言いてぇのはとにかくスゲェってことさ!
」
「ん~~」
「ヒューズ。スゲェだけじゃよくわからんぞ?」
すると三人の後ろから水色の髪の男がやってくる。
「俺のスゲェはただのスゲェっじゃねぇ!!超スゲェってことだぜ!!」
「ん~~超スゲェ」
「だからそのスゲェがよくわからんのだよヒューズ。わかりやすい例を挙げてみろ」
適当に受け流そうとしたシュガーボーイとは反対にどこまでも追及しようとする水色の髪の男。
「そうだな~。シリル!!お前の女子への人気度がスゲェだとするだろ?俺のスゲェはそれより上なんだよ!!」
「何!?貴様が俺よりモテるわけなかろう!!」
「いや・・・例えだから例え」
ヒューズはシリルにわかるように説明しようとしたが、シリルにはうまく伝わらなかったようだ。
四人が魔水晶の話をしていると後ろから声が聞こえる。
「エルザしゃん。妖精の尻尾はまだやれんのでしゅかな?」
「バイロ」
四人は振り返るとそこには背の小さな男、バイロがいた。
「ぐしゅしゅしゅしゅ。妖精狩りの名が廃りましゅなぁ。残るギルドはもはや妖精の尻尾のみ。確かに一番逃げ足の速いギルドでしゅがね、陛下はそろそろ結果を求めておいでだ」
「そう慌てんな。女神が妖精を狩り尽くす日は近い」
「うむ。急いだ狩りよりもじわじわといたぶる狩りの方が面白味があるからな」
「そうだよ!それに、エルザの剣は、スゲェっていうより、スッゲェんだよ!!」
バイロをエルザは睨み、シュガーボーイ、シリル、ヒューズはエルザを擁護する。
「ぐしゅしゅしゅしゅ」
「その不気味な笑いはやめろ、バイロ」
「パンサーリリー」
するとバイロの後ろから人間ほどの大きさの黒い猫、パンサーリリーがやってくる。
「うるせぇのは好きじゃねぇ。シリル。ヒューズ。お前らもだ」
「俺もかよ!!」
「リリー。貴様は俺にそんな口をきいて良いのか?」
リリーの言葉にシリルが反応し、リリーと睨み合う。
「貴様は俺の足元にも及ばんのだよ?わかってるのか?」
「少しは口を閉じろ」
「俺に敵うようになってからそういう口をきけよ」
シリルは不機嫌なパンサーリリーにそう言う。パンサーリリーはますます不機嫌な表情になる。
「ん~~。機嫌悪いねぇリリー」
「フン!」
リリーはそのままシリルたちの間を通り抜けて行ってしまう。
「最近の軍備強化が不満らしいな」
「軍人なら喜ぶべきとこなのにな」
「まぁ、リリーみたいに自分の力を過信してる者ならば不機嫌になるのも致し方あるまい」
パンサーリリーの背中を見ながらシリルたちはそういう。
「それに、我が国はほぼ世界を統一した。これ以上軍備を強化する必要がないのも事実」
「ん~~?まだ反抗勢力が少しは残ってるからじゃねぇの?」
「それはありえんだろ?あんな雑魚は我々だけで一掃できるはずだが?」
「わっかんねぇ!!スッゲェ難しい話してんだろ!?全然わっかんねぇ!!」
シリルたちの話についていけないヒューズはそう言う。そんな四人の後ろでバイロは不気味な笑みを浮かべていた。
エドラスの妖精の尻尾にて・・・シリルside
「ウソ・・・」
「エドラスのシリル・・・王国軍にいるの?」
「なんで~?」
ウェンディとハッピー、そしてセシリーは納得のいかないようでそう言う。そういわれ、エドウェンディたちは顔を見合わせる。
「う~んとね・・・話すと長くなるんだけど・・・」
今から半年ほど前・・・第三者side
「まったく・・・グレイ!!ナツ!!なんなのだあれは!?なぜあそこで足がもつれるのだ!?」
「「す・・・すみません・・・」」
その日ウェンディたちは仕事にいった帰りだった。仕事にいったのはシリル、ナツ、グレイ、ルーシィ、ジュビア、ウェンディの六人。
ジュビアとグレイは絶対に一緒に仕事にいったりしないのだがその時はシリルとウェンディが頼み込んでようやく一緒に行ってくれたのだ。
六人は仕事を無事に遂行し、六人はとある店でお茶をすることになったのだが・・・
「グレイ・・・お前ジュビアにいいとこ見せたかったんじゃないのか!?」
「見せたかったけど・・・服が邪魔で・・・」
「だったら脱げぇ!!」
グレイがシリルに説教されるというアースランドではまずありえない光景が繰り広げられる。
シリルは次にナツを見る。それにナツは思わずビビってしまう。
「ナツ・・・いじめてくるルーシィを見返そうと思ってたんじゃなかったのか?」
「でも・・・怖くて・・・グスッ」
「泣くなよ!!」
ナツは目からこぼれる涙を拭う。
それを女性陣は遠目から見ている。
「何あれ?」
「シリルの奴グレイとナツになんか期待してたのか?」
「期待してたというか・・・」
ジュビアとルーシィはシリルが説教してるのを見てため息にも似た声を出す。
実は今回の依頼を使ってグレイとジュビアをくっつけてなおかつルーシィがナツをいじめる頻度を減らそうとシリルとウェンディが計画して、グレイとナツに最後いいとこを決めさせようとしたのだが・・・
最後二人が揃いも揃って転倒してしまい、結局ルーシィとジュビアが最後を決めてしまったのだ。
それにシリルが怒ってグレイとナツを店内で説教しているのである。
「大体お前らは日頃からたるんでるんだ!!だからジュビアに相手にされないし、ルーシィにあんな関節技を決められるんだ!!」
「「うぅっ・・・」」
なおもシリルが二人を説教している。女性陣は楽しくお茶をしている。すると
「いたぞ!!妖精の尻尾だ!!」
「捕まえろ!!」
店の中に鎧を着た男たちがなだれこんでくる。
ウェンディたちはそれを見て驚く。
「王国軍!!」
「しまった!!見つかった!!」
「どうするの!?」
「こっちだ!!」
慌てる女性陣をシリルが呼び、シリルはすばやく窓を蹴り飛ばして、外に全員を出す。
「窓から逃げたぞ!!」
「追えーー!!」
「「「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」」」
王国軍は窓から逃げたシリルたちを追いかけてくる。シリルたちは急いで逃げるが王国軍は六人に徐々に迫ってくる。
「追いつかれるわ!!」
「どうすんだよ!!」
「うわぁ!!」
「迫ってくる!!」
「シリル!!」
ジュビア、ルーシィ、ナツ、グレイ、ウェンディが後ろを見ながらそう叫ぶ。一番後ろを走っているシリルは走りながらも後ろをチラチラ見る。
(このままだとナツの車までたどり着くまでに全員捕まってしまうな・・・となると・・・)
シリルは走る速度を少しずつ緩めてウェンディたちとの距離を取り、やがて立ち止まる。
「シリル!?」
「何してる!?」
「早くしないと――――」
「振り返るな!!」
ウェンディたちはシリルが立ち止まったことに気づいて振り返ろうとするが、シリルの声に驚いてしまう。
「ナツ!!グレイ!!ウェンディたちつれて早くいけ!!」
「し・・・シリルは!?」
「お前はどうすんだよ!!」
シリルは王国軍の方を向く。
「俺が時間稼いでおく。お前らはギルド戻ったらレビィに伝えて早く別のところにギルド移せ」
シリルは最後にナツたちの方をチラッと見て言う。
「ウェンディを頼むぞ」
そういってシリルは王国軍を足止めしていた。
現在・・・シリルside
「それでシリルは王国軍に捕まっちまったんだ」
「本当なら捕まったらすぐに殺されちゃうんだけど・・・」
「シリルは戦闘がかなり得意だから、洗脳して王国軍の魔戦部隊長として戦わされているんだ」
エドウェンディたちに説明された俺たちは暗い雰囲気になってしまう・・・マジかよ・・・
「シリルだけじゃねぇ・・・他にもたくさんの仲間を失った」
「マスターだって・・・畜生・・・」
ギルドの皆さんはそういって泣き出す。仲間を失うなんて・・・俺たちにだって辛いことはわかる・・・
「逃げるのが精一杯なんだよ・・・」
「もしお前たちが王国軍とやり合うつもりなら・・・やめておいた方がいい」
「諦めて元の世界に戻りな」
最初の説明で俺たちが王国軍と戦うかもしれないとわかったギルドの皆さんは俺たちを止めようとする。確かに危険なことはわかってる。だけど・・・
「頼む。王都までの道を教えてくれ」
「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」
ナツさんがそういうとギルドは騒然となる。
「例え奴等がどんな奴等だったとしても・・・俺は仲間を助けるんだ」
ナツさんがそう言うと皆さんポカーンとしてしまう。
「お願いします!!王都までの道を教えてください!!」
俺もギルドの皆さんにそう言う。ちなみにいまだに俺はエドウェンディに抱き締められてたりする。
「わかったわ・・・教えてあげる」
「「「「「ウェンディ!?」」」」」
俺たちがお願いするとエドウェンディはそういって俺を離す・・・あぁ・・・至福の時がぁ・・・
「ただ・・・お願いが一つあるんだけど・・・」
「お願い?」
「シリルを・・・連れ戻してほしいの」
エドウェンディは俺の肩をつかみながらそう言う。なんだ。そんなことか。
「もちろん!!皆さんを助けたら、エドラスの俺もぶん殴って連れてくるよ」
「ぶ・・・ぶん殴んなくていいわ・・・(汗)・・・お願いね」
「うん!」
俺たちはエドラスの妖精の尻尾を出て、王都へと向かうことにした。
「ところでシリル」
「何?ウェンディ」
ギルドから出たところでウェンディが話しかけてくる。
「気持ちよかった?」
「へ?」
俺はウェンディが何を言っているのかわからずにいるとウェンディからなんだかどす黒いオーラのようなものが見えた気がした。
「エドラスの私に抱かれてた時・・・ずっと顔が緩んでたよ~?」
「あ・・・いや・・・それは・・・」
「シリルの・・・バカ~!!」
「ぐはぁっ!!」
ウェンディはそういって俺の顔にグーパンチを入れてきた・・・めっちゃ痛い・・・
とある砂漠にて・・・
「よ~し、動くなよ・・・」
「ウゲロー」
「とらぁ!!待てー!!」
王都へと向かう俺たちは砂漠地帯を歩いているのだが・・・ナツさんは飽きてしまったのか、見たことのないカエルを追いかけ回している。
「何やってんのよあんた」
「蛙を追いかけてるんじゃないの~?」
「王都まではまだまだかかるのかな?」
「さっき出発したばかりじゃない!」
「五日は歩くって行ってたよね」
「五日も歩いてる内に手遅れとかにならないといいけど」
俺たちはカエルを追いかけるナツさんを見ながらそんな話をしている。
王都どんだけ遠いんだよ・・・
「なんか・・・翼の調子も悪いし、歩いていくしかないわね」
「オイラたち、本当に魔法使えなくなっちゃったの?」
「わからない・・・先が思いやられるわ」
「シリルしか魔法が使えないなんてね~」
「ミストガンから全員分の薬をもらっとけばよかったよ」
シャルルやセシリーは不安そうな顔をする。せめて三人が魔法を使えれば王都まで一っ飛びなのにな。
「ウゲロー、ウゲロー、ウゲロー、ウゲロー」
「よぉ!!」
俺たちが話している最中もナツさんはカエルと追いかけっこをしている。
「ハッピー、手伝ってくれ!見たことねぇカエルだぞ!これ!ルーシィへのお土産にしようぜ!」
「オイラ、喜ばないと思うよ!」
「俺もハッピーと同感ですね」
俺たちはそういったけど、ナツさんはお構いなしに再びカエルを追いかけ始める。すると
「んがっ!!」
ナツさんは何かに思いっきりぶつかる。俺たちはナツさんがぶつかったところを見る。
「あっ!!」
「げぇ!?」
そこにはかなり巨大なカエルがいた。俺たちよりずっとずっと大きいカエルが!
「どわー!?」
「「でかー!?」」
「きゃあああ!!」
「大きすぎですよあれ!!」
俺たちは驚いてシャルル以外全員が声をあげる。巨大ガエルはさっきナツさんが追っかけていたカエルの親なのか、敵意剥き出しで俺たちに襲いかかってくる。
「ウゲロー!!」
「ナツ!!襲いかかってくるよ!!」
「よーし、火竜の・・・」
ナツさんは腕に力を入れて火竜の鉄拳を出そうとするけど・・・さっき魔法は使えないって言ってなかった?
「忘れてた!!魔法は使えねぇんだ!!」
「「きゃああああああ!!」」
「「「「うわああああああ!!」」」」
俺たちはカエルから全力で逃げる。あれ?俺そういえば魔法使えるんだった!
「忘れてた!!水竜の翼撃!!」
「ウゲロー!?」
俺の魔法を食らってカエルは倒れる。しかしその後ろからまた巨大なカエルが現れる。
「また来た!!」
「任せろ!!水竜の・・・」
今度は鉄拳でカエルを倒そうとしたら、
ズルッ
「「「「「「あ?」」」」」」
下の乾いた砂のせいで俺の足が滑ってしまい倒れる。
「痛ッ!!」
「ウゲロー!!」
すると倒れている俺に巨大なカエルが襲いかかってくる。やばい!!
「ど・・・りゃあっ!!」
「ウゲロー!?」
するとどこからともなく現れた怖いルーシィさんが巨大なカエルをムチで倒す。よかった!助かった!
「怖いルーシィ!!」
「「怖いルーシィさん!!」
「ヤバイルーシィさん~!!」
「いちいち怖いとかつけんな!!あと茶猫!!ヤバイってなんだよヤバイって!!」
俺たちに怖いと言われて怒る怖・・・ルーシィさん。てかセシリーのヤバイってなんだよ。
そんな中、カエルは逃げるようにその場を離れる。本当に助かった。
「けっ、大したことない奴だな」
「でも、なんであんたが?」
シャルルがルーシィさんに聞くと、ルーシィさんはなぜか視線を反らす。
しかし視線を向けた先にナツさんがいて、ルーシィさんは顔を赤める。
「心配してる訳じゃねぇからな!」
「なんだかんだ言っても、やっぱルーシィだな。お前」
「どんなまとめ方だよ!!」
「そういう突っ込みとか?」
ナツさんはそういったあと、ハッピーとコソコソ話を始める。結構丸聞こえだけどね。
「ルーシィにこんな怖いルーシィ見せたいね」
「どんな顔すんだろうな、本物は」
「あたしは偽者かい!!」
「「ふがっ!!」」
うわぉ・・・ルーシィさんの蹴りが二人の顔面にクリーンヒットした・・・
「技の12、ボキバキブリッジ!!」
「ぎゃあああああ!!」
「やっぱり怖い・・・」
「これが五日も続くのかしら・・・」
「勘弁してくれ・・・」
「すごいすごい~!!」
セシリーはナツさんが関節技を次々に決められているのになぜか拍手してる。俺たちはもう既にブルーな気持ちになってるけどね・・・
その頃、ルーエンの街の近くにて・・・第三者side
ザッザッザッ
一人の男が砂漠の中を歩いている。男は目深くフードをかぶっている。
しばらく歩くと、男の目の前に一つの街が見えてくる。
「くそがっ。でたらめなとこに飛ばしやがって・・・ったく、イカれてるぜ」
男はそう呟いて、街の方へと歩き始めた。
後書き
いかがだったでしょうか。
エドラスのシリルはナツやグレイよりも立場が上な感じにしてみました。
エドラスのシリルは弱虫ペダルの東堂くんをモデルにしてるのでとても仲間思いです。
次回もよろしくお願いします。
希望の鍵
砂漠地帯にて・・・シリルside
「そっか・・・エクシードと間違われて、それど通報されて奴らが嗅ぎ付けたのか」
「そういうことみたいですね」
さっき妖精の尻尾が王国軍に見つかったのは、どうも俺たちが森の中で大暴れしたせいで村の人に通報されたかららしい。なんかすみませんね・・・
「エルザが敵なんてまだ信じられないよ」
「いやぁ、怖いのはあっちもこっちも一緒だけどなぁ」
「ああ!?」
「いやいやいやいや、エルザの話!」
ルーシィさんににらまれて怯えるナツさん。相当あの拷問技がきてるみたいだな・・・
「あたしたちからすれば、エルザと仲良くやってる話の方が信じられないよ」
「不思議ですね」
「だよね~」
妖精女王と妖精狩りだもんなぁ。
妖精を守るものと狩るもので完璧に真逆ですし。
「あいつを恐れない魔導士なんていない。顔を見たときは死ぬ時だ」
「ぜってー会いたくねー!!ただでさえ怖ぇのに・・・」
「ナツさんとグレイさんはエルザさんのこと苦手ですよね」
二人はよくケンカしてるからそれをエルザさんに怒られるから怖がってるらしい。エルザさん、結構優しいのに・・・
「ほら、着いたよ。見えるか?」
「おお!!」
ルーシィさんの視線の先を見る。そこには大きな街が広がっていた。
「街だぞ、ハッピー!」
「何日も歩くのは大変だったね」
「え?まだ1日しかたってないよ~?」
ハッピーにセシリーが突っ込む。正確には一日もたってないぞ?
「なんか丸いですね」
「そういえば丸いね」
ウェンディの言う通り、俺たちの見ている街はなんだか丸い形をしている。なんであんな形なんだ?
「さ、急ぎましょ」
「あの、来てくれて助かりました」
「もうちょっとでカエルに食べられるとこでした」
ウェンディと俺がルーシィさんに向かってそう言うと、ルーシィさんは顔を赤くして目線を反らす。
「つ・・・着いてきな。魔法の武器も持たずにこの先旅を続けんのは無理だからな」
「ありがとな、怖いルーシィ」
「怖いルーシィ」
「ケンカ売ってんのかコラァ!!」
このあとナツさんがルーシィさんに関節技を決められたのは言うまでもない・・・
ルーエンの街にて・・・
「ちょっと前までは、魔法は普通に売買されてたんだ。けど、王国のギルド狩りがあって、今は魔法の売買は禁止されてる。それどころか、所持してるだけで罪になるんだ」
俺たちはルーシィさんを先頭に街の中を歩いている。ルーシィさんの言う通り、街には魔法屋らしきものがたくさんあるけど、どれも閉まっている。
ていうか、俺たちはどこに向かってるんだ?
「所持してるだけで罪って・・・」
「元から使える人はどうなるんですか?」
「俺とかすでに犯罪者ってことですよね?」
今は俺しか魔法は使えないけど、エクスボールさえ手に入ればナツさんもウェンディも魔法を使えるようになるんだから・・・そうなると二人も犯罪者ってことになるのか?
「どうって・・・魔法を手放せばいいだけだろ?つーか、さっきのアースシリルの魔法って、一体どんな原理で出してるんだ?」
「「「「「「!?」」」」」」
ルーシィさんにそう言われて俺たちは顔を見合わせる。どういう原理と言われても・・・俺にもわからねぇ?
「どうやらこっちの世界じゃ、魔法はものみたいな感じらしいわね」
「物?」
「どういうこと~?」
シャルルの言葉にハッピーとセシリーが質問する。
「魔力が有限ということは、私たちのように、体の中に魔力を持つ人がいないってことよ」
なるほど。確かに体内に魔力をもってたらいくらでも回復できるから有限な訳ないな。
「魔力を持つのは魔水晶などの物質。それを武器や生活用品に組み合わせることで、魔法の道具を作る。その総称を【魔法】とくくってるようね」
「なるほど~」
シャルルの説明にセシリーが納得する。分かりやすい説明をありがとうございます。
「こっちの魔導士って魔法の道具使うだけなのか?」
「さぁ?」
「そういうことになりますよね?」
魔力を体内に持ってないんだから・・・
「着いたよ」
ルーシィさんがそう言うと、そこには地下へと続く階段がある。
「この地下に魔法の闇市がある。旅をするなら必要だからな」
「闇市・・・」
「おおっ!!」
闇市と聞いてウェンディは少し怯えた声を出す。だけど今はそんなことは気にしてられない。それになんか闇市って響きがかっこいいぞ!!
「しょうがねぇ。こっちのルールに乗っ取って魔法使うか」
「あい!」
「順応・・・早いわね・・・」
「さすがナツくん!!」
ナツさんは全然気にした様子はないようだ。さすがに逆境に強い人だな。
俺たちはバレないように地下へと降りていった。
闇市にて・・・
「おおっ!なんか怪しいものが一杯並んでる!」
「ていうかこの店、なんかカビ臭いわね」
「確かに少し空気が悪いかも~」
ハッピーたちは闇市にあるものを見てそんな話をしている。確かにカビ臭い気がするけど・・・気にしたら負けでしょ。
「おっほほほほほ。そらなんてったって歴史深い骨董品が多いですからな~。
カビとか傷とか臭いとかは、いわゆる味というものですよ。お客さん」
店の店主はそういうけど・・・傷はともかくカビと臭いはダメだろ?管理ができてないだけじゃないのか?
「味なんてどうでもいいんだよ。大事なのは使えるかどうか。結構パチもんも多いから、買うときはよく点検しな」
「いよぉ、親父。炎系の魔法は?」
ナツさんは棚の中を見ながら店主に質問する。確かにナツさんと言ったら炎だもんな。ナツさんが水とか使ったらカッコ悪いし。
「おっほほ!それなら最高のものがありますよ!」
店主はそういって足元から何かを取り出す。それは剣の鞘の部分のように見える。
「こちらなんかいかがでしょう?エドラス魔法、【封炎剣】!!ここをこうやって・・・」
店主が何かのボタンを押すと炎の刃が現れる。
「ほらぁ!!すごいでしょ!?」
ドラスの魔法ってあんな感じなのか・・・なんかショボいような気が・・・
「ショボい炎だけどないよりはましか」
「お客様お目が高い!!」
ナツさんは少しがっかりしたようにいうけど店主はお構いなしにそういってくる。バカにされてるってわからないのかな?
「私、これがいいです!」
「どこがいいの?」
「ちっちゃくてかわいいじゃない?」
ウェンディは何やら小さい水色の筒を持ってそう言う。確かにかわいいけど・・・あれは何の魔法なんだ?
「あのねぇ・・・そういう基準で選んじゃダメでしょ!」
「戦えるか戦えないかが問題なんだよ~」
シャルルとセシリーがウェンディにそう言う。まぁ別にいいんじゃないか?かわいいし。
すると店主はウェンディに近づく。
「これは空裂砲と言いましてなぁ。外見はただのかわいい小箱ですがここをこうして少し開ければ・・・」
店主がそうやって少し筒を開けると、辺りに風が吹いてくる。
「わぁ!!風の魔法だ!なんかロマンチック!」
「お客様お目が高い!!」
うっとりしてるウェンディとウェンディにそう言う店主。店主は何買ってもお目が高いしか言わないんじゃないかな?
「シリルは何か買う?」
ウェンディが俺に空裂砲を持って聞いてくる。別に俺は魔法使えるから必要ないよな。
「いや、俺はいいや」
「そう?まだかわいいのいっぱいあるのに・・・」
ウェンディはそういって魔法を眺めている。俺はかわいいのなんか買わんぞ?
「よーし、この二つをくれ。」
「は~い。ありがとうございます。二つでしめて2万になりますが、おおまけにまけて1万8000あたりでどうでしょ?」
「あぁ・・・高ぇな・・・」
「何分品数も少なくて貴重なので・・・」
ナツさんは魔法が予想よりも高かったらしく嫌そうな顔をする。でも魔法は少ないみたいですし仕方ないですよ。
「つーか大事なこと忘れてたけど、お前ら金は?」
「がっははは!そんなん持ってるわけねぇだろ」
「笑い事か!?」
大笑いするナツさんに突っ込むルーシィさん。俺も金あるかな?
「私もポケットにビスケットしか・・・」
「俺もクッキーしか入ってないです・・・」
「なんであんたらはお菓子をポケットに入れてるのよ・・・」
俺たちにシャルルが突っ込みを入れる。そういえばなんでお菓子が入ってるんだ?
「しゃねぇ・・・ルーシィ、払っといてくれ」
「え!?」
ナツさん・・・そんなこと言ったらまた関節技決められるんじゃ・・・
俺がそんな心配をしているとルーシィさんはなぜか顔を赤くする。
「どうかしたのか?」
「まぁいい!ここはあたしが奢ってやるよ」
ルーシィさんは腕を組んでそう言う。めっちゃ太っ腹ですね!
すると店主が慌て出す。
「いえいえいえ!ルーシィ様からお金をいただくわけにはいきません!」
ルーシィさんからはお金もらえないって・・・どういうこと?
「以前ガサ入れの時助けてもらいましたからなぁ」
「まぁあれしきのこと、どうってことないさ」
「とにかく、これは私めからのプレゼントということで」
店主はそういってにこやかに笑う。こっちのルーシィさんはずいぶん顔が広いんだなぁ。本当助かります。
「じゃ、遠慮なくいただくよ」
「ありがとよ、おっちゃん」
俺とウェンディも店主にお辞儀をして店を出た。
「あっちのルーシィと違って怖いルーシィは頼りになるね」
「だから怖いをつけるなって!!」
俺たちは店を出たすぐ前で少し立ち話している。ハッピーは相変わらずルーシィさんに怖いをつけているな。ま、確かに怖いけど。
「しかも、ここらじゃ結構【顔】って感じだからな」
「本当助かりました!」
「ありがとうございます」
俺たちがルーシィさんにそう言うとルーシィさんは少し顔をぽりぽりとかく。
「ところでさぁ・・・」
「「「「「「?」」」」」」
「あっちのルーシィって奴の話に興味があるんだけど・・・」
喫茶店にて・・・
「あははははは!!あーはっはっはっはっ!!あたしが小説書いてんの?ひ~(笑)。そんでお嬢様で鍵の魔法使って、あーはっはっはっはっ!!」
「やかましいとこはそっくりだな」
「やかましい言うな!!」
俺たちは喫茶店の屋外テラスでアースランドのルーシィさんの話をエドラスのルーシィさんにしたら、それを聞いたルーシィさんは大笑いしている。
ナツさんの言う通りとてもやかましいですよ?
「さっきもらったこれ、どう使うんだっけ?」
「バカ!人前で魔法を見せるな!」
「あうっ!」
ウェンディがさっき闇市で買った魔法をいじってるとルーシィさんに怒られる。ウェンディはルーシィさんに怒られて慌てて隠す。
「今現在、魔法は世界中で禁止されてるって言っただろ」
「ごめんなさい・・・」
ルーシィさんは辺りをキョロキョロと見回しながらそう言う。ウェンディはしょんぼりしてるけど、誰にも気づかれてないみたいだし、あんまり気にしなくていいぞ。
「でも、元々魔法は生活の一部だったんでしょ?」
「そうだよ。王国の奴ら、あたしたちから文化を一つ奪ったんだ・・・」
「何のために?」
「自分たちだけで独占するためだよ」
「酷い奴らだね~」
その独占欲のせいで俺たちにまで被害が来るんだからたまったもんじゃないよな。
「んじゃあ、王国の奴らやっつければ、また世界に魔法が戻って来るかもなぁ」
「な、何バカなこと言ってんだよ!!王国軍となんか戦えるわけねぇだろ!!」
ルーシィさんはナツさんの言葉に立ち上がってそう言う。
「だったら・・・なんで着いてきたんだ?」
「それは・・・王都までの道を教えてやろうと・・・戦うつもりなんかなかったんだ・・・」
ルーシィさんは少し暗そうに話す。
「そっか。ありがとな」
「!?」
ルーシィさんはナツさんにそう言われると少し顔が赤くなる。なんかナツさんに何か言われる度に顔が赤くなるのはなぜだ?
すると突然俺たちの後ろから声がする。
「いたぞ!!街の出入り口を封鎖しろ!!」
「王国軍!!」
「ええ!?」
「噂をさればなんとやら・・・って奴か・・・」
その声の主は王国軍の連中だった。もう見つかったのか。
「妖精の尻尾の魔導士だな?そこを動くな!!」
「もうバレたの!?」
「早すぎるよ~!!」
「うぇぇ!!」
王国軍は俺たちに向かって一斉に走ってくる。しょうがない、相手するか!!
「ここは俺「よ~し!さっそくさっき手に入れた魔法で」」
「よせ!!」
うわお・・・久しぶりに台詞を阻まれたよ・・・なんか久しぶり~・・・
「いくぞ!!ファイヤー!!」
俺の台詞を阻んだナツさんは封炎剣で炎を出して王国軍を凪ぎ払おうとする。さっき店で見たときより威力上がってるぞ?どうなってんだ?
「シャルル!!これどうやって使うんだっけ!?」
「知らないわよ!!」
「何かを開けるんだよ何かを~!!」
「何かって何!?」
一方ウェンディは魔法の使い方がわからずに空裂砲を振り回している。あぁ・・・こりゃあダメだ・・・
「ははははは・・・あっ!?」
高笑いしていたナツさんが王国軍が無傷なのを見て驚く。あれは・・・盾か?
「にゃろぉもう一回!!」
ナツさんはもう一度封炎剣を使おうとするが・・・炎が出てないぞ!?
「魔力は有限だって言っただろ!!全部の魔法に、使用回数が決まってるんだ!!」
「一回かよこれーー!!!?」
「使えねぇー!!」
「出力を考えれば100回くらい使えたんだよ!!」
出力を考えるとか・・・めんどくせぇ・・・俺は普通に魔法使えるからいいんだけどね。
王国軍はそんな俺たちに一気に迫ってくる。やっぱり、俺が行くしかないだろ!!
「いくぜ!!水竜の【スポッ】え?」
「あ!」
スポッという音のあとに突然俺たちを竜巻が飲み込む。まさかウェンディの空裂砲か!?どうなってんだよこれ!?
「何したウェンディ!?」
「ごめんなさーい!!」
「ほれ見ろウェンディの方がドジっ子だったー!!」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ~!!」
「「うわあああああ!!」」
俺たちは竜巻に巻き込まれたまま、どこかの家に入っていった。
どこかの家にて・・・
俺たちが今いる家の前を王国軍が通りすぎる。やれやれ助かった・・・
「なんとかまけたけど・・・このままじゃ街を出られないよ」
「不便だなぁ、こっちの魔法」
「ですね」
ナツさんとウェンディはエドラスの魔法の扱いづらさにしょんぼりしてきた。ウェンディは使い方をちゃんと聞いておいて。
「う~ん~・・・」
「どうしよう」
「別の出入口ない?」
「難しいな・・・」
「正面突破でもします?」
「それはやめろ!!」
「す・・・すみません・・・」
俺の提案はルーシィさんに即却下される。でも出入口は一つしかないし・・・どうしよう・・・
と俺たちが頭を悩ませていると、
「いたぞ!!妖精の尻尾だ!!」
「「「「「「「ギクッ!!」」」」」」」
外からそんな声が聞こえて俺たちは出入口を見る。しかし王国軍が踏み込んでくる気配がない。すると外から聞き覚えのある声がする。
「離してよ~!」
「あれ?」
「この声・・・」
俺たちは恐る恐る扉を開ける。
「こっちに来い!」
「お前はルーシィだな?」
「確かにルーシィだけど・・・何なの一体!?」
そこには王国軍に腕を取られているルーシィさんがいた。たぶんアースランドの。
「ルーシィ!?」
「あたし!?」
ナツさんとエドルーシィさんはそれに目を丸くしている。なんでルーシィさんがあるんだ?
「痛いってば!!」
「なんでルーシィがここに?」
「ど、どういうこと?」
「わかんないよ~!!」
セシリーたちもルーシィさんを見て目を丸くしている。だけど・・・そんなこと言ってる場合じゃない!!
「助けねぇと!!」
「そうですね!!」
ナツさんと俺はそういって隠れている家から飛び出す。ナツさんは魔法使えないし、俺が助けないと!
「開け!!天蠍宮の扉!」
「ルーシィさん!こっちの世界じゃ魔法は使えないんです!!」
ルーシィさんは金の鍵を取り出して魔法を使おうとする。あの鍵はスコーピオンさんか?あいつ俺なんかにやられる弱い星霊じゃん!!そんなの呼ぶなよ!!
「間にあうか?水竜の・・・」
俺が咆哮を出そうとした時、
「スコーピオン!!」
「ウィーアー!!」
「「「「「「!?」」」」」」
スコーピオンさんが現れて俺は魔法を放つのをやめる・・・え?なんで?
「サンドバスター!!」
「「「「「「「「「「うわあああああ!!」」」」」」」」」」
スコーピオンさんの攻撃によって王国軍は吹き飛ばされる。
「魔法・・・」
「なんで?」
「これは・・・」
ウェンディたちはルーシィさんが魔法を使ったことに驚いている。
魔法を使えるってことは、ルーシィさんもエクスボールを飲んだってことだ!!もしかしたら予備のエクスボールもってるかも!!
「俺っち、これからアクエリアスとデートなんで。んじゃ」
スコーピオンさんはそういって星霊界に帰っていく。デートだから帰るって、自由だな・・・
「ルーシィ」
「ん?」
ナツさんが呼ぶとルーシィさんがこちらを向く。よかった、本物だ。
「みんな・・・会いたかった~!!」
「何がどうなってるんだ・・・」
「俺にもさっぱり・・・」
「あい・・・」
ルーシィさんは俺たちに駆け寄ってくる。しかしその視線がエドルーシィさんを見ると驚きの表情に変わる。
「あたし!?」
「ま・・・まさかこいつがアースランドの・・・」
「見ての通り・・・」
ルーシィさんとエドルーシィさんは互いを見つめて固まってしまう。そりゃあ自分に似てる人がいたら驚くよね。
「いたぞ!あそこだ!!」
するとさっきルーシィさんに吹き飛ばされた王国軍がゾロゾロと集まってきた。復活はやっ!!
「王国軍が集まってきた~!!」
「話は後回しにしましょ!!」
「このままじゃ捕まっちゃうよ!!」
セシリーたちが慌てた様子で言う。では、とっとと倒して逃げますか。
「ルーシィさん!!やりますよ!!」
「あたし!?ナツがいるから二人でやっつけてよ!!」
「どうやって?」
「あんたの魔法で。決まってんでしょ?」
そういえばルーシィさんはナツさんが魔法使えないの知らないんだった。
「俺たち魔法が使えねぇんだよ!」
「・・・は!?」
驚くルーシィさん。そりゃあそうですよね・・・だってルーシィさんは魔法使えるんだから。
「ルーシィ!!シリル!!お願い!!」
「あいつらをやっつけて!!」
「ルーシィさんとシリルしか魔法使えないんです!!」
「ルーシィさんお願い~!!」
ウェンディたちがルーシィさんにお願いする。早くやんないと敵が迫って来ちゃうよ?
「もしかして・・・今のあたしって最強?」
「いいから早くやれー!!」
「ほらルーシィさん!!敵がすぐそこまで来てますよ!!」
王国軍は俺たちが話してる間にもこちらに迫ってくる。ルーシィさんゆっくりしすぎ!!
「開け、白羊宮の扉、アリエス!!」
「あ・・・あの・・・頑張ります。すみません!」
「モコモコ!!」
「懐かしい~!!」
「お久しぶりです。アリエスさん」
「こちらこそお久しぶりです・・・すみません!」
ルーシィさんはアリエスさんを召喚する。エンジェル戦以来かな?
「な・・・なんだこれは!?」
「人が現れた!?」
「いや魔物か!?」
「こんな魔法見たことないぞ!!」
エドルーシィさんと王国軍はアリエスさんが現れたことに驚く。エドラスじゃあこんな魔法ないだろうから当然だよね。
「アリエス。あいつら倒せる?」
「は、はい!やってみます!!」
アリエスさんはそういって腕をバタバタとさせる。なんかかわいいなぁ・・・
「ウールボム!!」
「あ~ん!!」
「やさしい・・・」
「癒される~」
アリエスさんの魔法によって王国軍は癒されていた・・・これ攻撃系の魔法じゃないよな?
「あれ?効いてるんでしょうか?すみません!」
「十分ですよ!!あとは任せてください!!」
俺はアリエスさんのウールボムで癒されている王国軍に近づく。
「気持ちいいとこ悪いけど・・・水竜の翼撃!!」
「「「「「うわあああああ」」」」」
俺の攻撃で癒されていた王国軍は吹っ飛んでいく。やっと魔法できた!!さっきまで全然魔法やらせてもらえなかったから気持ちいい!!
「みんな!今のうちよ!!」
「早く逃げましょ!!」
「こんな感じで、よかったんでしょうか?すみません」
ルーシィさんと俺は王国軍が飛んでったのを見てみんなに逃げるように言う。アリエスさんはどこまでも謙虚と言うか可愛らしいというか・・・
「モコモコ最高ー!!」
「ナイスルーシィ!!」
「シリルかっこいい!!」
「さすがシリル~!!」
ハッピーとナツさんはルーシィさんを、ウェンディとセシリーは俺を誉めてくれる。やべぇ、超気持ちいい!!
「あ~!あたしも気持ちいいかも!!」
「エドラスに来て初めて活躍した気がする~!!」
ルーシィさんと俺も上機嫌でその場をあとにする。
ルーエン近くの森にて・・・
「ここまで逃げてくれば大丈夫よね?」
「だと思うよ~?」
俺たちはルーエンの街から一度出て、近くの森に身を隠している。さすがに王国軍もあの魔法を食らったあとだとすぐには追い付いてこれないようだな。
「しっかしお前、どうやってエドラスに来たんだ?」
「私たち、ルーシィさんも魔水晶にされちゃってると思って、心配してたんです」
「助かったのは俺たち滅竜魔導士だけだと思ってましたから」
俺たちはルーシィさんにそう言う。なんでルーシィさんは無事なんだ?
「ホロロギウムとミストガンが助けてくれたのよ」
「ホロロギウム!?」
「ミストガン!?」
ルーシィさんはホロロギウムが時空の歪みを感知したとかで助けられ、その後ミストガンに事情を説明され、エクスボールも飲まされて、こちらの世界に飛ばされたらしい。
ミストガンも意外と説明するのがめんどくさかったのかもね。俺にも説明してくれたし。
「で、誰か知り合いがいないかって、ずっと探してたのよ」
「ミストガンさん。どうしてエドラスの世界のことを知ってたんでしょう?」
「ミストガンはこっちの世界のジェラールらしいよ。だから顔が一緒らしい」
俺はウェンディにミストガンから聞いたことを簡単に説明する。てかミストガンもこっちに早く来いよ、と思ったのは俺だけじゃないはず・・・
「まぁ、そんなことはどうでもいいや。ルーシィさん!ミストガンからエクスボールもらったと思うんですけど・・・それウェンディたちにあげてくれませんか?俺もらうの忘れてたもので」
「え?あたしももらってないわよ?」
「「「「「「・・・は!?」」」」」」
ルーシィさんにそう言われて俺たちは思わず声をあげる。まさかミストガン・・・誰にもエクスボールを渡してないんじゃないだろうな・・・
「てめぇら、本気で王国とやりあうつもりなのか?」
「当然!!」
「仲間のためだからね!!」
エドルーシィさんの質問にナツさんとハッピーが答える。そりゃあもちろん!やるしかないでしょ?
「・・・」
「本当にこれ・・・あたし?」
「顔はそっくりだよ~?」
黙ってしまうエドルーシィさんを見てそう言うルーシィさん。セシリーの言う通り、顔は同じだけど中身は大分違うからなぁ。
「魔法もまともに使えねぇのに・・・王国と・・・」
「ちょっと!!あたしたちは使えるっての!!」
ルーシィさんはそういって立ち上がる。
「ここは、妖精の尻尾現最強魔導士のあたしに任せなさい!!」
「いや、最強ならシリルのほうじゃねぇか?」
「いじけるわよ・・・」
うわっ・・・ナツさんの心無い一言でルーシィさん泣き出しちゃった。フォローしないと。
「じゃ、じゃあ俺とルーシィさんの現最強コンビでいきましょう!!」
「それいいわね!!」
俺の提案でルーシィさんも機嫌を治してくれた。俺とルーシィさんのコンビなんて中々ないけど・・・今はこれしかないでしょ!!
「情けねぇが・・・」
「頼るしかないわね」
「あい!!」
「いけいけ二人とも~!!」
「がんばれシリル!!ルーシィさん!!」
ウェンディの笑顔の声援で俄然やる気が出てきた!!
「燃えてきたぞ!!」
絶対に仲間を助け出す!!俺はそう心に誓った
後書き
いかがだったでしょうか。
次回はエドラスのナツが登場します。
次回もよろしくお願いします。
ファイアーボール
シッカの街、宿屋にて・・・
俺たちはルーエンの街近くの森から少し歩いて、今はシッカの街というところの宿屋に来ている。
俺たちはそこでエドラスの地図を広げている。
「ホテルの人から借りてきた、エドラスの地図です」
「アースランドの地形とあまり変わらないね」
「本当だ~!!そっくり~!!」
「お前らよく地形なんて覚えてるなぁ・・・」
ハッピーとセシリーが地図を見てアースランドとエドラスは地形が似てるなんて言ってるけど・・・俺にはよくわからん。だって地図なんてあんまり見ないもん。
シャルルがその地図を使ってエドラスの妖精の尻尾の位置や、その後の出来事が起きた場所、そして俺たちの目指す王都の位置を教えてくれる。まだまだ王都までは遠いなぁ・・・
「まだまだ遠いなぁ・・・」
「おまけに間に海があるみたいですし・・・」
「しかも、王国軍に見つからないように気を付けないといけないですし・・・到着までどのくらいかかるか・・・」
俺たちがそんな真剣な話をしていると、
「おい見ろよ!!」
「「「「「「?」」」」」」
突然ルーシィさんの声が聞こえたのでそちらを見る。
「あいつとあたし、体までまったく一緒だよ!!」
「だー!?そんな格好で出てくなぁ!!」
そこにはエドルーシィさんが立っていた。バスタオル一枚だけを身につけて。
「ブッ!!」
「し、シリル!!」
「はい、ティッシュ~」
「あ、ありがとうセシリー・・・」
思わず鼻血を出してしまった俺にセシリーがティッシュを渡してくれる。とりあえず鼻にティッシュを入れて・・・よし、おっけぇ。
「エドルーシィさん!!シリルとナツさんがいるんですよ!!」
ウェンディが慌てた様子でエドルーシィさんにそう言う。もっと言ってやってくれ、ウェンディ。
「別にあたしは構わないんだけどねぇ」
「構うわ!!」
「そこは構ってください!!」
しかしエドルーシィさんは恥じらいもなく笑顔でそう言う。恥じらいと言うことを知らないのかな?エドラスの人は。
「にぎやかだね、Wーシィ」
「それ、うまいこと言ってるつもりなの?」
「え~?ハッピーにしてた上手だと思うよ~?」
セシリーたちはそんな会話をしている。Wーシィか・・・うまいなぁ。
「ふ~~~ん・・・」
するとナツさんがWーシィさんの方をじーっと見つめている。そんなに見つめちゃダメですよ!
「なんだナツ~、見たいのか?」
「やめてぇ!!」
エドルーシィさんは自分のバスタオルに手をかける。や・・・やめてくださいよ~?
「プッ!」
するとナツさんがなぜか吹き出す。どうしたんだ?
「な・・・何がおかしいのよ!?そうか、あたしよりエドルーシィの方がスタイルがいいとか、そう言うボケかましたいわけね!?」
「フフン!」
エドルーシィさんは勝ち誇った表情をする。しかし、ナツさんの言葉は予想の斜め上を行っていた。
「自分同士で・・・一緒に風呂入んなよ・・・」プルプル
「「言われてみれば・・・」」
そう言われてみると・・・なぜ一緒に入ったんですかね?
「本当に見分けがつかないほどうり二つですね」
「まさかケツの形まで一緒とはなぁ」
「やめてよぉ!」
「おっ!」
Wーシィさんたちがそんな話をしているとナツさんが何かを思い付く。
「鏡の物真似芸できるじゃねぇか!!」
「「やらんわ!!」」
「あぁ、息もピッタリ・・・」
「悲しいわね」
「根本的なところは一緒なのね・・・」
「なんだかな~・・・」
ナツさんに突っ込むルーシィさんに少し同情する俺たち。
「ていうかジェミニが出てきたみたい」
「おお、確かに」
「外見は・・・ですけどね」
ジェミニは相手の思考とかもコピーするからな。エドラスとアースランド中身は少し違う気もするけと・・・
「ジェミニ?」
「あたしが契約してる星霊よ。他の人そっくりに返信できるの」
そういってルーシィさんはジェミニの鍵を取り出す。
「開け、双子宮の扉、ジェミニ!」
「じゃ~ん!ジェミニ登場!!」
召喚されたジェミニは既にルーシィさんになっていた。さすがに空気を読んでるね。
「おお!?」
「Wーシィじゃなくて、Tーシィね!」
「おお!?すげぇ!これだけで宴会芸のゲームに使えるぞ!!」
想像してみた・・・けど・・・よく考えるとみんな外見は一緒だからわかるわけなくね?
「「「これは芸じゃない!!」」」
「息がピッタリ・・・」
「悲しいわね・・・」
「なんだかなぁ・・・」
「ていうか服着ないの~?」
「わ・・・忘れてたー!!」
ルーシィさんはそう叫んで大急ぎでパジャマに着替えました。ちなみにジェミニは閉門しました。
「二人に戻ったけど、やっぱ見分けつけにくいな」
「にくいどころかさっぱりわからないですよ」
ナツさんと俺はルーシィさんを見てそう言う。パジャマまで一緒だからさっぱりわからん。
「確か、髪型を弄ってくれる星霊もいるんだよな?」
「うん。蟹座の星霊、頼んでみよっか?」
ルーシィさんはそういってキャンサーさんを召喚する。
「お久しぶりです、エビ」
「蟹座の星霊なのにエビ?」
「やっぱりそこに突っ込むか、さすがあたし」
出てきたキャンサーさんの語尾に突っ込むエドルーシィさん。なぜに語尾がエビなんだ?
そうこうしてるうちにキャンサーさんがエドルーシィさんの髪型をショートヘアにした。
「こんな感じでいかがでしょうか?エビ」
「うん、これでややこしいのは解決だな」
エドルーシィさんはそう言うけど・・・ずいぶん短くしましたね。
「でも本当によかったの?こんなに短くしちゃって・・・」
「アースランドでは、髪の毛を大切にする習慣でもあるのか?」
「まぁ、女の子はみんなそうだと思う、エビ」
「女の子ねぇ・・・」
エドルーシィさんは苦笑いをしたあと、表情が暗くなる。
「こんな世界じゃ、男だ女だって考えるのもバカらしくなるよ・・・生きるのに必死だからな・・・」
エドルーシィさんは外の景色を見ながらそう言う。確かに・・・生きてくだけで精一杯ですもんね・・・
「でもこっちのギルドのみんなも楽しそうだったよ?」
「そりゃそうさ。無理にでも笑ってねぇと、心なんて簡単に折れちまう。それに、こんな世界でもあたしたちを必要としてくれる人たちがいる。だから例え闇に落ちようと、あたしたちはギルドであり続けるんだ」
エドルーシィさんの顔に、少し笑みが戻った気がする。やっぱり、そう言う思いがあるからこそ、みんなあんなに笑顔でがんばっていけるんだな。
「けど、それだけじゃダメなんだよな・・・」
「え?」
「いや、なんでもねーよ」
エドルーシィさんは何か言ったようだけど、俺たちには聞こえなかった。
なんでもないと言うし、俺たちは特に気にすることもなく、その日はそのまま眠ることにした。
翌日・・・
「信じらんなーい!!何よコレー!!」
俺とナツさんとセシリーたちはソファで寝ていたのだが、朝になるとルーシィさんの大きな声で目を覚ます。たぶんアースランドのルーシィさん・・・かな?
「朝っぱらからテンション高けぇな」
「うぅ・・・嫌な目覚め方・・・」
「どうしたの?」
俺たちがそう言うとルーシィさんは一枚の紙を見せてくる。
「エドラスのあたしが、逃げちゃったのよ!!」
俺たちはルーシィさんの周りに集まり、その紙をウェンディが読み始める。
「王都へは東へ3日歩けばつく。あたしはギルドに戻るよ。じゃあね、幸運を」
「手伝ってくれるんじゃなかったの?もう!どういう神経してんのかしら!!」
「ルーシィと同じじゃないの?」
「根本的なところは一緒みたいだったしね~」
「うるさい!!」
ハッピーとセシリーに言われてルーシィさんは怒ってしまい、その場で地団駄を踏み始める。
「仕方ないと思いますよ?」
「元々戦う気はないって言ってましたし」
「だなぁ」
昨日喫茶店で言ってたもんな。王国とやりあえるはずないって。あ!その時ルーシィさんいないんだった!
「あたしは許せない!同じあたしとして許せないの!」
「まぁいいじゃねぇか」
「よくない!!ムキー!!」
ルーシィさんはますます不機嫌になってしまう。やれやれ・・・
その後しばらくすると・・・
「ふん♪ふふ~ん♪」
ルーシィさんは本を抱き締めながら鼻歌なんか歌ってる。機嫌直るの早いですね。
「もう機嫌直ってる」
「本屋さんで珍しい本見つけて、嬉しいんだろうね」
「本で機嫌直るなんて・・・さすが小説家志望」
ルーシィさんは小説をよく書いてるらしい。本を買って機嫌直るなんて・・・俺にはよくわからないな。
「何の本買ったんだよ、ルーシィ」
「こっちの世界の歴史書。あんたたちも、この世界について知りたいでしょ?」
「別に」
「この世界にそんな長居しませんし」
「歴史書が物語ってるわ!この世界って面白い!!」
ルーシィさんは本を高々と持ち上げて目をきらきらさせる。だから別に知ろうと思いませんってば。
「例えば、エクシードって一族について書いてあるんだけど」
「あ!私も聞きました。すごく恐れられている種族らしいですけど・・・」
「それにセシリーたちが昨日間違われたんですもんね」
「興味ねぇって。ん?」
「「「「「?」」」」」
ナツさんが何かに気づいたと思った時、俺たちにも何やら変な音が聞こえてきて、突然辺りが暗くなる。なんだこれ?影か?
「何?」
「あれは・・・」
俺たちは上を見上げるとすぐにその正体がわかった。
「飛行船!?」
ナツさんがそう言う。すると俺たちの歩いている近くの道を王国軍が走り去っていく。なんだ?
「王国軍だわ!」
「隠れて!」
俺たちは王国軍に見つからないようにすばやく建物の影に隠れて様子を伺う。
「あの巨大魔水晶の魔力抽出が、いよいよ明後日なんだとよ!」
「それで俺たちにも、警備の仕事が回ってきたのか」
「乗り遅れたら、世紀のイベントに間に合わねぇぞ!」
王国軍がそんな話をしているのが聞こえる。間違いない!ギルドの皆さんのことだ!
「魔力抽出が二日後?歩いていたら間に合わないじゃない」
「歩いて3日はかかるらしいですからね・・・」
「魔力抽出が始まったら・・・もう二度と元の姿には戻せないわよ」
シャルルの言葉で俺たちは不安感に襲われる。どうしよう・・・どうすればいいんだ?
「あの船奪うか」
「は!?」
「奪う!?あの飛行船を!?」
「普通そこまでしないでしょ!!忍び込むだけで十分じゃない!!」
ナツさんの提案に思わず驚く俺たち。シャルルの言う通り潜入すればいいじゃないですか!?
「隠れんのやだし」
「そんな理由なの~!?」
「ナツが乗り物を提案するなんて珍しいね」
「フフフフッ!ウェンディのトロイアがあれば乗り物など――――」
「私たち魔法使えませんよ」
「この案は却下しよう!」
「おい!!」
ナツさんは乗り物酔いが激しいらしいから、できるだけ乗り物には乗りたくないみたいですね。
するといつの間にか飛行船はプロペラを回し始めている。まさかもう出発するのか!?急がないと。
「あたしは賛成よ。そうでもしなきゃ、間に合わないでしょ?」
ルーシィさんが立ち上がりながらそう言う。確かに他に選択肢ないですもんね。
「でもどうやって?」
「あたしとシリルの魔法で!知ってるでしょ?今のあたし最強って」
「だから最強ならシリルなんじゃねぇのって・・・まぁいいけど」
ため息混じりで言うナツさん。ルーシィさんにあきれてますね。でも・・・大丈夫かな?ルーシィさんなんやかんやで役に立たないときあるしなぁ・・・
「ルーエンの街で戦ってみてわかったのよ。どうやら魔法は、アースランドの方が進歩してるんじゃないかってね」
「確かにそうかもですね」
「どうでもいいから早くやっつけてよ~」
ルーシィさんの言葉にウェンディとセシリーがそう言う。でも大丈夫かな?ルーシィさん意外と役に立たないときあるし・・・大事なところなので二度言いました。
ルーシィさんはいつの間にか飛行船の前に行っている。俺も早く行くか。
王国軍もルーシィさんの姿が見えたためこちらに振り向く。もう後戻りはできません!
「開け、獅子宮の扉、ロキ!!」
「申し訳ありません、姫」
「え?あれ?」
ルーシィさんがロキさんを召喚すると・・・なぜか出てきたのはバルゴさんだった。なぜ?
「ちょっと、どういうこと?」
「お兄ちゃんはデート中ですので、今は召喚できません」
お・・・お兄ちゃん?
「お、お兄ちゃん?」
「はい。以前そのように読んでほしいとレオ様から」
「バッカじゃないのあいつ!!」
頭を抱えるルーシィさん。お兄ちゃんか・・・
俺はウェンディの方をチラッと見る。
「どうしたの?シリル」
「俺のこともお兄ちゃんって呼んでくれてもいいよ?」
「あんたもバカじゃないの!?」
シャルルに頭を叩かれた・・・冗談だったのに・・・
「えぇ!?でも・・・お兄ちゃんじゃ結婚できないし・・・」
「ウェンディ~、帰ってきて~」
ウェンディは顔を真っ赤にして何かぶつぶつ言っていた。セシリーが一生懸命揺するけど・・・ウェンディは全然戻ってくる気配ないな。
「あいつ、ルーシィだ!」
「捕まえろ!!」
王国軍はルーシィさんを見てこちらに一気に迫ってくる。
「どうしよう・・・あたしの計算じゃ、ロキなら全員やっつけられると思って・・・」
「姫、僭越ですが私も本気を出せば」
おお!?バルゴさんも戦えるのか?
「踊ったりもできます」
「帰れ!!」
踊らなくていいような・・・そんなうちにも王国軍はこちらに迫ってきている。
「もう!ルーシィさんやっぱり使えないじゃん!!水竜の咆哮!!」
「使えないってシリルひどい!!」
ルーシィさんがなんか言ってるけど、だって本当のことじゃないですか。
俺の咆哮を受けて王国軍は結構な人数が倒れてる。よし!このまま一気に・・・
「なんだ!?この小娘!!」
「口から水を吐いたぞ!?」
「女の癖になんつう力だ!!」
「この女!!」
・・・・・・・・・・・
「シリル?」
「う・・・」
「どうしたの~?」
「うわ~ん!!」
「泣いた!!」
「なんで!?」
「だって・・・こんな大勢に女女って・・・」
俺は悲しくなってきて膝をつく・・・ダメだ・・・力出ないや・・・
「なんだ?どうした?」
「あの小娘、いきなり泣き出したぞ!!」
「チャンスだ!!捕まえろ!!」
王国軍が俺が座り込んだのを見てこちらに向かってくる・・・やべぇ・・・けど・・・なんかもう力出ねぇ・・・
「しょうがねぇ。やるしかねぇな。こっちのルールで」
「もう使い方は大丈夫です!」
ナツさんとウェンディが闇市で買った魔法で王国軍に向かっていく・・・けど・・・
「うわああああ!!」
「きゃああああ!!」
王国軍にいとも容易くやられてしまう。やっぱりダメか・・・
「ナツとウェンディが全然ダメだ!!」
「シリルとルーシィさんよりましだけど~!!」
「ごめんなさ~い!!」
「すみませ~ん!!」
だって・・・なんか悲しくなったんだもん・・・
「まずいわ!!飛行船が!!」
シャルルの声が聞こえて横目で飛行船を見ると、既に離陸を始めてしまっている。
「あれに乗らなきゃ間に合わないのに!」
「くそぉ・・・」
「そんな・・・」
飛行船はそのまま王都へと飛んでいってしまう・・・残されたのは王国軍に捕まった俺たち・・・もうダメか・・・
俺がそう思った時、遠くから何やら音が聞こえてくる。
王国軍もその音に気づいてそちらを向く。そこにはこちらに向かってきている魔導四輪が見えた。
「「「「「「「「「「うわああああ!!」」」」」」」」」」
その魔導四輪は王国軍に突っ込んでいき、王国軍は一気に飛ばされる。その魔導四輪には妖精の尻尾のギルドマークがついていた。
「ルーシィから聞いてきた。乗りな」
「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」
俺たちは運転手にそう言われて急いで魔導四輪に乗り込む。
「飛ばすぜ。落ちんなよ。GO FIRE!!」
運転手の声と共に魔導四輪は凄いスピードでその場から離れる。速い速い!!
「すっご~い!!あっという間に逃げ切っちゃった!」
「助かったわ」
「ありがとうございます」
「お・・・おお・・・」
「ナツさん・・・大丈夫ですか?」
ナツさんは既に魔導四輪で酔ってしまったそうだ。俺もトロイアできるけど・・・魔力もったいないから黙っとこ。
「王都へ行くんだろ?あんなおんぼろ船より、こっちの方が早ぇぞ」
確かにそうですね。でも・・・この運転手の声・・・どこかで聞いたことあるような・・・
「「妖精の尻尾最速の男・・・」
「「「「「「あっ!!」」」」」」
男の人はゴーグルを外す。その顔はとても見覚えのある顔だった。
「ファイアーボールのナツとは、俺のことだぜ」
「「「「「「ナツ!?」」」」」」
「お・・・俺・・・?」
俺たちはまさかの人に驚く。なんでこのナツさん、乗り物が平気なんだ!?
「ナツ?こっちの・・・エドラスのナツ・・・?」
「ルーシィが言ってた通り、そっくりだな。で?あれがそっちの俺かよ。情けねぇ」
エドナツさんはナツさんを見てそう言う。ナツさんは乗り物酔いで後部座席に倒れ込んでいた。
「こっちのナツさんは、乗り物が苦手なんです」
「乗り物に乗ったとたんすぐにこうなりますよ」
「それでも俺かよ?こっちじゃ俺は、ファイアーボールって名前の、運び屋専門の魔導士なんだぜ」
ウェンディと俺が教えるとエドナツさんはクールに答える。なんかかっこいいぞ!!
「この魔導四輪、SEプラグついてないよ!!」
「SEプラグ?」
「SELF ENERGYプラグって言って、運転手の魔力を燃料に変換する装置なんだ」
ウェンディの質問に俺が答える。確かによく見ると、SEプラグついてないな。
「そっか。こっちじゃ人が魔力をもってないから、SEプラグが必要ないんだ」
「完全に魔法だけで走ってるってこと~?」
「何よ。車に関しては、アースランドよりも全然進んでるじゃないの」
俺たちがそんな話をしていると、突然エドナツさんは急ブレーキをかける。今度はなんだ?
「ちょっと、何よ急に!」
「そうとも言えねぇな。魔力が有限である以上、燃料となる魔力もまた有限。
今じゃ手に入れるのも困難。だから、俺が連れてってやるのはここまでだ。降りろ」
「「「「「「なっ!?」」」」」」
エドナツさんにいきなりそう言われて俺たちは固まってしまう。そんな~・・・
「これ以上走ったら、ギルドに戻らなくなるんだ。あいつら、また勝手に場所を移動したからな」
「おおお!!生き返った!!」
するとナツさんはもう既に魔導四輪から降りてしまっている。そんなに早く降りたかったのか?
「もう一人の俺は、ものわかりがいいじゃねぇか。さ、降りた降りた!」
俺たちはそう言われて魔導四輪から追い出される。
「王国とやりあうのは勝手だけどよぉ、俺たちを巻き込むんじゃねぇよ。今回はルーシィの・・・お前じゃねぇぞ。俺の知ってるルーシィの頼みだから、仕方なく手を貸してやった。だが面倒はごめんだ。
俺は・・・ただ走り続けてぇ」
「おい!」
俺たちを見ながらそう言うエドナツさんに、今度はナツさんが何やら話しかける。
「お前も降りろ!!」
そういってナツさんがエドナツさんを魔導四輪から引きずり出そうとする。
「バッ!てめぇ!何しやがる!」
「同じ俺として、一言言わしてもらうぞ」
「よせ!!やめろ!!俺を・・・俺を下ろすなぁ!!」
エドナツさんの必死の抵抗むなしく、エドナツさんは魔導四輪から引きずり出される。
「お前・・・なんで乗り物に強ぇ?」
「「そんなことかい(ですか)!?」」
ナツさんのまさかの質問に俺とルーシィさんが突っ込む。そんな質問魔導四輪に乗ったままでもできたような・・・
「ひっ・・・」
「ん?」
すると・・・エドナツさんの様子が何やらおかしい・・・どうしたんだ?
「ご・・・ご・・・ごめんなさい・・・僕にも・・・わかりません」
「「「「「「「は?」」」」」」」
エドナツさんは泣きながらそう言う。ど・・・どうした?
「お・・・お前・・・本当にさっきの俺?」
「はい!よく言われます!車に乗ると性格変わるって!」
「こっちが本当のエドナツだー!!」
「まさかそうきましたか!!」
ハッピーと俺が叫ぶ。まさか車に乗ると性格変わるとは・・・予想の斜め上をいきますねエドラスは!!
「ひ~っ!大きな声出さないで~!怖いよぉ・・・」
「・・・・・・・」
「鏡の物真似芸でもする?」
頭を抱えて怯えるエドナツさんを見て固まるナツさん。ルーシィさんはそれを見ていやらしい顔をする。
「ごめんなさい!ごめんなさい!でも僕には無理です~!!」
「ああ?」
「ルーシィさんの頼みだからここまできただけなんです~」
エドナツさんは怯えながらそう言う。なんかいたたまれないなぁ・・・
「いえいえ、無理しなくていいですよ」
「ここまで送ってくれただけで十分ですから」
ウェンディと俺がそう言うとエドナツさんは少し落ち着いてくれる。王国軍から助けてくれただけでも十分ありがたいですからね。
「こんなのいても、役に立ちそうにないしね」
「シャルル!!」
「そういうこと言わないの~!」
シャルルがそう言うとエドナツさんは一回顔を下ろしてしまう。しかしすぐにこちらを見直す。
「もしかして、ウェンディさんとシリルさんですか?」
「はい」
「そうですよ」
「うわぉ。二人とも小さくて可愛い」
可愛いって・・・俺男なんだけど・・・
「でもシリルさんは、こっちのシリルさんの小さいときに似てますね。きっと将来はかっこよくなりますよ」
「本当ですか!?」
「はい。こっちのシリルさん、すごいかっこいいですから」
おお!!なんか嬉しくなってきた!!早く大人になりたい!!
「そっちが、アースランドの僕さん?」
「どこにさんづけしてんだよ」
エドナツさんにナツさんが突っ込みを入れる。エドナツさんは丁寧な人なんですねわ
「オイラはハッピー。こっちがシャルルで、こっちがセシリー」
「ふん!」
「よろしくね~」
ハッピーが自己紹介すると、シャルルは顔を背け、セシリーは手をあげて挨拶する。
「あたしは、もう知ってると思うけど」
「ひ~!!ごめんなさい!!なんでもします!!」
「お前さ、もっと俺にやさしくしてやれよ」
ルーシィさんが挨拶しようとしたら、エドナツさんは魔導四輪の陰に隠れてしまう。
てかナツさん。こっちのルーシィさんにそんなこといっても意味ないですよ?
「こっちのルーシィさんは・・・皆さんをここまで運ぶだけでいいって・・・だからぼく・・・」
エドナツさんにそう言われて気づいたけど・・・俺たちのいるところのすぐ下には王都が見える。ウソ!!もうついてたの!?
「大きい!!」
「すげぇ・・・」
ウェンディの言う通り、確かに王都は今までの街に比べて大きかった。
それを見てナツさんはエドナツさんと肩を組む。
「なんだよ!着いてんならそう言えよ!」
「うわぁ!!ごめんなさい!?」
「・・・・・・」
エドナツさん・・・怒ってるわけではないのでそんなに怖がらないでください・・・
ナツさんはそんなエドナツさんから離れて王都を見下ろす。
「いいぞ!!こんなに早く着くとは思わなかった!」
「あのどこかに、魔水晶に変えられたみんなが・・・」
「さっさと行くわよ」
「あ!待ってよシャルル~!!」
シャルルとセシリーはいち早く王都へと向かって降りていく。
「俺たちも行こうぜ!!」
「うん!!」
「んじゃ、ありがとな」
「あたしによろしく!」
俺は転ばないようにウェンディの手を取って下り始める。
途中でナツさんとエドナツさんが何か話していたようだけど・・・下っていく俺たちには聞こえなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
次回もよろしくお願いします。
おかえりなさいませ
王都にて・・・
王都に着いた俺たちは驚いている。だって・・・
「何これ・・・」
「意外ですね。独裁国家の統治下というから・・・」
「もうみんなヤバイことになってるのかと思ってたのに・・・」
街の中は意外にも大いに賑わっていた。どうなってるんだこれ?
「街の中にもあっさり入れたしなぁ。ん?」
「ルーエンやシッカと全然違う。遊園地みたい」
「魔力を奪ってこの王都に集中させている。国民の人気を得るために、こんな娯楽都市にしたんだわ」
「呆れた王様ね」
「信じられないよ~」
ルーシィさんの言う通りだ・・・こんなことのために俺たちの仲間を奪ったのか・・・
ていうか・・・なんでナツさんは木馬で乗り物酔いしてるんですか!!
「ん?なんか向こうの方が騒がしいですね」
ウェンディの言う通り、なんか向こうの方が騒がしいな。てかナツさん早く木馬から降りて!
「パレードとかやってんのかしら」
「ちょっと見に行ってみるか~!」
「あいさー!」
「俺も行きます!!」
「僕も僕も~!!」
「あんたたち!!遊びにきたんじゃないのよ!!」
シャルルがそういうけど、だって気になるじゃん。少しだけなら見てもいいよね?
「なんだなんだ?」
「待ってよナツ!」
「ルーシィさん早く早く!!」
俺たちはナツさんを先頭にしてどんどん前へと進んでいく。それにしてもすごい人だな。
「もう・・・あたっ!」
「痛っ!」
「きゃっ!」
俺たちは歩いているとナツさんが突然立ち止まったため、全員が前の人にぶつかる。
「ちょっとぉ、急に立ち止まらないでよぉ・・・ん?」
「どうしたんで・・・」
俺も鼻を押さえながら前を見る。そこにはかなりの大きさの魔水晶があった。
「ら・・・魔水晶?」
「まさか・・・これが・・・」
「マグノリアのみんな・・・」
「しかも一部分よ。切り取られた跡があるわ」
「これで全部じゃないの~!?」
俺たちはその魔水晶を見て驚いてしまう。それにしても・・・なんて大きさだよ・・・
すると一人の老人が魔水晶の前に立つ。
その老人を見て、観客たちの歓声はより大きくなる。つまり・・・あいつが王様か。
「エドラスの子らよ、我が神聖なるエドラス国は、アニマにより10年分の魔力を生み出した」
「何が生み出しただよ!オイラたちの世界から奪ったくせに!!」
「何我が物顔でそんなこと言ってるんだよ~!!」
「落ち着きなさい。セシリー、オスネコ」
王の言葉を聞いてハッピーとセシリーは怒りを露にする。何が神聖なる・・・だ。性根が腐ってる。
「共に歌い、共に笑い、この喜びを分かち合おう」
そう言うと観客たちは大声で喜びを表現する。
「エドラスの民にはこの魔力を共有する権利があり、また、エドラスの民のみが未来へと続く神聖なる民族。我が国からは誰も魔力を奪えない!!」
そりゃあ・・・この国に魔力がないんだから奪えないわな。
「そして、我はさらに魔力を手に入れると約束しよう・・・これしきの魔力が、ゴミに思えるほどのな」
王はそういって杖で魔水晶を叩く。その破片が、地面へと砕け落ちた・・・
その瞬間、ナツさんが魔水晶の方へと走り出そうとする。しかし、それをルーシィさんが押さえる。
「我慢して!」
「できねぇ!あれは・・・あの魔水晶は・・・」
「お願い!みんな・・・同じ気持ちだから・・・」
俺たちは汚い笑いを浮かべる王を睨み、その場を後にした。
夕方、王都のホテルにて・・・
俺たちは暗い雰囲気の中にいた。ナツさんは窓の外をじっと眺め、ルーシィさんとウェンディはソファに座って黙り込み、ハッピーとセシリーは壁にもたれ掛かって座り、シャルルは机の上で何かを一生懸命に書き、俺はそれをボーッと眺めていた。
「やっぱり我慢できねぇ!俺は城に乗り込むぞ!!」
「もう少し待ってちょうだい」
ナツさんはそういって部屋から出ていこうとするが、シャルルに止められる。
「なんでだよ!!」
「ちゃんと作戦を立てなきゃ、みんなを元に戻せないわよ」
「・・・」
ナツさんはシャルルにそう言われて黙ってしまう。
「みんな・・・あんな水晶にされちゃって・・・どうやって元に戻せばいいんだろ・・・」
「戻し方は俺知ってるよ」
「「「「「え!?」」」」」
ウェンディの問いに俺が答えるとシャルル以外の全員が驚く。エドラスに来るときにミストガンから戻し方は聞いた・・・
「ただ・・・あの魔水晶を元に戻せるのは、今のところ俺しかいませんし・・・
それにあれが一部なんだから、他のも見つけないとみんなを元に戻せないですよ?」
「だよな・・・」
「他の魔水晶の居場所も探さないといけないのか~・・・」
「でもどうやって!?」
俺たちは頭を抱えて悩んでしまう・・・一体どこにあるのかな・・・?
「王に直接聞くしかないわね」
「教えてくれるわけないよ」
「俺もそう思うよ・・・」
「殴ってやればいいんだ!!」
ナツさんがそういうけど・・・そんなのやったら王国軍に捕まりますよ?
するとルーシィさんがいきなり立ち上がる。
「そうか!王様はみんながどこにいるか知ってるんだ!!」
「おそらく」
王様自身が魔水晶のありかを知らないわけないからね。
「いけるかもしれない!もしも王様に近づくことができたら・・・」
「本当か!?」
「どういうことですか?」
ルーシィさんの言うことにナツさんが驚き、ウェンディがルーシィさんに聞く。一体どうするつもりなんでしょうか?
「ジェミニよ!ジェミニは触れた人に変身できるんだけど、その間、その人の考えていることまで分かるの」
「つまり、王様に変身すれば、みんながどこにいるかわかるってことですね!!」
「そういうこと!」
「おお!!」
ただしジェミニが変身できるの5分間だけで、ストックも二人しかできないらしい・・・ストック二人って、意外と少ないのね。
「問題は・・・どうやって王様に近づくか・・・だね」
「さすがに護衛が多すぎて簡単には・・・」
「王に近づく方法はあるわ」
「「「「「「!?」」」」」」
俺たちは驚いてシャルルの方を見る。シャルルはさっきまで書いていた紙を見せてくれる。
そこには城までの行き方が書いてあった。
「元々は城からの脱出用の通路だったんだけど・・・街はずれの坑道から城の地下へと繋がってるはず」
「すごい!なんで知ってるの!?」
「情報よ。断片的に浮かんでくるの」
なんでそんなのが浮かんでくるんだ?
シャルルの言葉を聞いたハッピーとセシリーは固まっている。
「エドラスに来てから、少しずつ地理の情報が追加されるようになったわ」
「オイラは全然だよ」
「僕も~・・・」
ハッピーとセシリーは落ち込む。なんでシャルルとセシリーたちでこんなに情報が違うんだ?
「とにかく、そこから城に潜入できれば、なんとかなるかも」
「おーし!!シリル!!お前本当にみんなを元に戻せるんだな!?」
「はい!!いけるはずです!!」
俺はナツさんにそう言う。ミストガンが教えてくれたんだ、絶対にいけるはず!!
「だったら、シリルはあの魔水晶をなんとかしておいて!!」
「そのうちにあたしたちはみんなの居場所を突き止めるわ!!」
「おし!!みんなを元に戻すぞ!!」
「あい!!」
「がんばろ~!!」
ウェンディたちも気合い十分だ。よし!!頑張るぞ!!
「待って」
「今度はなんだよ~!!」
シャルルにまたも止められてナツさんがそう言う。
「出発は夜よ。今は少しでも休みましょ」
なるほど、確かに夜なら広場の人も少ないだろうし、城に行くのにもバレにくいはず。
俺たちは夜に行動を起こすため、しばらく仮眠などをとることにした。
夜・・・
「それじゃあ、俺は広場に行ってきます」
「頼むぞ」
「気を付けてね」
「みんなの場所がわかったら、すぐに戻ってくるから!」
俺は挨拶をして皆さんと別れる。さて、広場に向かうか・・・
俺は皆さんを元に戻すため、広場に向かう。広場に着くと、そこはもう夜なのにも関わらず、たくさんの人がいまだに魔水晶の前にいた。
「人が多すぎて・・・魔水晶に近づけないなぁ・・・」
俺は人混みを掻き分けて前に進もうとするが、あまりにも人が多くてとてもじゃないけど魔水晶に近づけない・・・むぅ・・・
「どうしようかな・・・もういっそ見物人もぶっ飛ばしていくか?」
あまりの人の多さにやけを起こそうとしていたとき、
ガシッ
突然後ろから肩を捕まれる。
「!?」
俺は驚いて振り返るとそこには見覚えのある人がいた。
「よぉ」
「が・・・ガジルさん?」
そこにいたのはガジルさんだった・・・な・・・なんでここにいるん・・・あ!!そういえばガジルさんも滅竜魔導士だった!!だからアニマに魔水晶にされなかったのか!!
だけど、ちょうどいい!手伝ってもらおう!
「「あの、ちょっと手伝ってもらっいいですか?(ちょうどいい、ちょっと手を貸してくれ)・・・え?(は?)」」
まさかの二人の声が見事に被る。もしかして・・・ガジルさんも同じことを考えてるのか?
「もしかして・・・あの魔水晶のことですか?」
「ああ、そうだ。やり方はミストガンって野郎から聞いてんだろ?」
「はい。それで早く元に戻したいんですけど・・・」
俺が魔水晶を指差しながら言うと、突然ガジルさんは俺の手をつかんで魔水晶から離れていく。え?
「ちょっと・・・ガジルさん!?」
「まぁ、落ち着け」
しばらく走ると俺たちは建物の間に隠れるように入っていく。
「ガジルさん?なんですか?」
「あれを早く元に戻してぇのは分かる。だが、今動くと見物人も巻き込んじまう。だから少し待て」
「そんな悠長に構えてられるんですか!?」
魔力抽出は明日だか今日だかよくわかんないけど、時間がないんですよ!?
しかしガジルさんは全く気にした様子もなく、逆になぜか笑みを浮かべる。
「なぁに。ちょっと俺が情報を持ってくるのを待つだけだ、ギヒッ」
「?」
俺が情報を持ってくる?俺は意味がわからずに、ただ首を傾げるしかなかった・・・
一方ウェンディたちは・・・ウェンディside
「ずいぶん使われてない感じね」
「そうだよね~」
私たちは、夕方シャルルの言っていた、城へと続く坑道を歩いています。
ルーシィさんの言う通り、中は所々に壊れたところや、もう使われてないスコップなどが置いてあります。なんだか少し怖いですね。
「松明持って歩くのって変な気分だな」
「本当なら簡単に火出させるもんね」
ナツさんとハッピーがそんな話をしています。私とナツさんが松明を持って坑道の中を照らしています。
ルーシィさんが松明を坑道の入り口の前の小屋から持ってきてくれて、おまけに火までつけてくれました。
エドラスのルーシィさんもそうだったけど、こっちのルーシィさんも頼りになりますね!
するとシャルルが突然立ち止まる。どうしたのかな?
「この先、照らして!」
シャルルにそう言われて私は前を照らす。するとその先は行き止まりになっていた。
ううん、行き止まりと言うよりも、封鎖されている感じ・・・その壁にはKYー20という文字が書いてある。何かの暗号なんでしょうか?
「ここよ」
シャルルがそう言うとルーシィさんがその壁をノックします。今の私たちでも壊せるくらいの厚さかな?
「かなりの暑さよ。しかも、魔法でコーティングされてるし」
「これじゃあ進めねぇぞ」
ルーシィさんとナツさんがそう言う。今から引き返す訳にもいかないですし・・・
「でも間違いないわ。この先に、脱出経路があるはずなのよ」
「壊すしかないよね」
「どうやって~?」
ハッピーの提案にセシリーがそういいます。確かに・・・私とナツさんは魔法使えませんし・・・
「方法はあるわ!こんなときこそ、あたしの出番よ!!」
ルーシィさんが体の前で手を握りしめながらそういいます。そっか!ルーシィさんは魔法使えるんだった!!
ルーシィさんは金牛宮の星霊、タウロスさんを召喚しました。
「んMOーーー!!」
「そうか!!タウロスなら!」
「タウロスはあたしの星霊の中で、一番の力の持ち主だもん!!絶対この壁、壊せるはずよ!!」
「そりゃあMO、ルーシィさんの頼みとあらば!!」
タウロスさんはそういって壁を何度も何度も叩きます。頑張れタウロスさん!!
しばらくすると、タウロスさんのパンチで壁は見事に壊れる。その先には、確かにシャルルの言う通り、通路がありました!!
「見て!!」
「通路があった!!」
「シャルルの情報、間違ってなかったね!!」
「さすがシャルル~!!」
ハッピーとセシリーも嬉しそう!シャルルはそれを見てなぜか驚いてるけど・・・まさかシャルルも信じてなかったのかな?
そしてルーシィさんはタウロスさんにお礼を言って、タウロスさんを閉門しました。
「ちゃんと城の地下に繋がっていればいいけど・・・」
「情報は正しかったんだもの。この先だってきっと!」
私が心配そうなシャルルにそう言う。それでもシャルルは少し不安そう・・・
「・・・」
「ん? どうした?ハッピー」
するとナツさんの後ろでハッピーが暗い表情をしています。よく見ると、セシリーもいつもより暗そうな顔してる・・・どうしたのかな?
「ねぇ? なんでオイラには情報ってのがないんだろう?」
「シャルルにはいっぱい入ってくるのに~・・・」
ハッピーとセシリーはそう言う。確かに、なんでなのかな?
「同じエドラスの猫で、同じ何かの使命を与えられて、アースランドに送られたんでしょ?」
「その話はしない約束でしょ?」
「あい・・・」
「私にもわからないわ。あんたみたいなケースは」
シャルルはハッピーにそう言う。シャルルはセシリーが知ったかぶりしてるって気づいてないのかな?セシリーには何もいわないよね?
「とにかく、奥に進んでみよ」
「はい!」
「うん」
ルーシィさんに私とナツさんは返事をして、そのまま奥へと進んでいく。
その後、ナツさんが影で遊んだりしてたけど、シャルルの言う通りに進んでいくと、私たちはなんだか広いところに出ました!
「なんか広いところに出たわね」
「どうやら、ここから城の地下へと繋がってそうね」
「どういう原理かわからないけど、シャルルがいて助かったわ」
「私にもわからないわよ。次々に情報が浮かんでくるの」
「ありがとうシャルル」
「さすが僕のお嫁さん~!」
「礼を言うなら、みんなを助けてからにして。あとセシリー、あんたもメスでしょ」
私たちは、ずいぶん安心してしまってるけど、シャルルは気を引き締めたままだね。確かに、シャルルの言う通り、ここからが本番だよね。
「ここからが大変なのよ。気づかれずに王の寝室へ行き、気づかれずに脱出するの。
兵隊に見つかったら、今の私たちに勝ち目はないわ」
「いざって時は、あたしの魔法があるんだけどねー」
「あまり期待できねーけどな」
「なに言ってんのよ!!この作戦だって、あたしのジェミニあってなのよ!!」
「はいはい」
ルーシィさんとナツさんが口論してますね。でも、そんな中でもハッピーとセシリーはなんだか暗いな。大丈夫かな?
「ハッピー、セシリー、行きましょ」
「・・・あい!」
「・・・うん!」
私がそう言うと、ハッピーとセシリーも返事をしてくれる。よかった、あんまり落ち込んでないみたい。
私たちが先に進んでいると、突然ルーシィさんが何かに捕まる。
「ひっ!」
「ルーシィ!!」
「ルーシィさん!?」
何あれ!?一体どこから!
するとその謎の物体は、私の体にも飛んでくる。
「きゃあ!!」
「ふぉぼ!!」
気がついたら、私もナツさんも捕まってしまっていました。何これ・・・動けない・・・
すると遠くから足音が聞こえてきて、その足音の主たちは、私たちを囲む。まさかこの人たち・・・
「兵隊!?」
「なんでこんな坑道にこれだけの・・・」
「どうして見つかったの~!?」
私たちはよくわからずに王国軍たちを見る。すると今度は、聞き覚えのある声が聞こえてきました。
「こいつらがアースランドの魔導士か?」
「「「「「「!?」」」」」」
私たちは声のした方を向く。
「奴等とそっくりだな。ナツ・ドラギオン。ルーシィ・アシュレイ・・・とは、本当に別人なのか?」
「エルザ!!」
そこにいたのはエルザさん・・・もしかして、この人がエドラスのエルザさん!?
「つれていけ」
「「「「「はっ!」」」」」
エルザさんの指示を受けた王国軍は私たちを引っ張り始める。どこにつれていく気なの!?
「はばべー!!」
「エルザ!!話を聞いて!!」
「シャルル!!セシリー!!」
「ウェンディ!!」
「ナツ!!」
「ルーシィさん!!」
シャルルたちが私たちの方に走ってくる。だけど、その前にエルザさんが立ちふさがる。
「エクシード」
「「「え!?」」」
エルザさんがそう言うと、王国軍は突然膝をつく。なんなの!?一体
「おかえりなさいませ。エクシード」
エルザさんはシャルルたちにそう言う・・・おかえりなさいませ?
「エクシード?」
「・・・」
「ハッピー、セシリー、シャルル・・・あなたたち、一体・・・」
「侵入者の連行、ご苦労様でした」
エルザさんにそういわれた三人は、何が起きたのかわからず、みんな呆然としていた・・・
エドラス城にて・・・第三者side
「んがっ!」
「きゃ!」
ナツとウェンディは王都魔戦部隊隊長の一人、ヒューズに蹴り飛ばされるように牢の中に入れられる。
「・・・んの野郎!!」
蹴り入れられたナツはすぐに体勢を立て直し、ヒューズに向かって走り出す。
「みんなはどこだー!!」
しかしナツはすんでのところで柵を下ろされてしまい、その柵をつかみながら叫ぶ。
「みんな?」
「ルーシィさんとシャルルとセシリーとハッピーです!!」
ヒューズはナツの言葉に?マークを浮かべ、ウェンディがそれに答える。
「ルーシィ・・・ああ・・・あの女か。
悪ぃけど、あの女には用はねぇんだ。処刑されんじゃね?」
ガシャン
ナツはそれを聞いて柵を握る手に力を込める。
「ルーシィに少しでも傷をつけてみろ!!てめぇら全員灰にしてやるからな!!」
「おお!スッゲェ怖ぇ。アースランドの魔導士はみんなこんなに凶暴なのかよ」
ナツにそう言われたヒューズは別段怖がるそぶりも見せずにそう言う。
「なんでルーシィさんだけ・・・シャルルとセシリーとハッピーは!?」
「エクシードのことか?」
「ハッピーはそんな名前じゃねぇ!!」
ナツはヒューズを睨む。ヒューズはそんなナツを見ながら話す。
「任務を完遂したエクシードは母国へお連れしたよ。
今頃、褒美でももらっていいもん食ってんじゃね?」
「任務を完遂?」
ウェンディはヒューズにそう言われて疑問を持つ。シャルルが出発前に言っていたことと違っていたからだ。
「そんなことありえない!その任務の内容は知らないけど、シャルルは放棄したはず」
ウェンディはヒューズにそう返す。ヒューズはそれに対して失笑する。
「いいや、見事に完遂したよ」
ナツとウェンディはそう言われてしまい驚く。
「何なの?シャルルたちの任務って・・・」
「まだ気がつかねえのか?エクシードたちの任務は・・・」
ヒューズにシャルルたちの任務の内容を聞かされたウェンディとナツは、その内容に驚き、言葉を失った・・・
後書き
いかがだったでしょうか。
次回もよろしくお願いします。
エクスタリア
――――――
「ねぇシャルル~!この服なんかいいんじゃない~?」
「ふん!」
服を片手にシャルルにセシリーが話しかける。しかし、シャルルはそれにそっぽを向いてしまう。
「シャルル!そんな態度じゃダメでしょ?」
「いいじゃない。別に」
ウェンディに注意されたシャルルはそういって、化猫の宿のギルドから、外に飛び出してしまう。
「待ってよシャルル~!!」
「あ!!セシリー!!」
「あ~あ・・・ 行っちゃったな・・・」
ギルドを飛び出したシャルルのあとを、セシリーが追いかけていく。ウェンディはセシリーを呼び止めようとしたが、セシリーはそれに気づかず行ってしまう。
シリルはそれを見て、ため息まじりにそう言った。
「行っちゃったな・・・じゃないよ!!早く二人を追いかけないと!!」
「確かにな・・・まったく、なんであんなに仲が悪いんだか・・・」
ウェンディとシリルは二人のあとを追いかけようと席を立つ。しかし、
「待ちなさい、シリル、ウェンディ」
「「マスター」」
シリルとウェンディは後ろからやって来た、化猫の猫マスター、ローバウルに止められてしまう。
「なんでダメなんですかマスター!!」
「あの二人が仲悪いのは知ってるでしょ!?」
「なぶら・・・」
ローバウルはコップに酒を注ぎ、そのコップの酒を無視して瓶から直接お酒を飲む。
シリルとウェンディはそれどころではないので突っ込むことはしない。
「大丈夫じゃ、セシリーに任せておけ」
「任せられれば追いかけようとはしないんですよ!!」
ローバウルの言葉にシリルがそう返し、ウェンディはシリルの言葉にうなずく。
「あの二人・・・生まれてから三ヶ月もたったのに、全然シャルルがセシリーと話そうとしないんですよ!?」
「もうあの二人はダメですよ!俺たちがなんとかしないと――――」
「バカタレがーーー!!!」
「「ビクッ!!」」
ローバウルにそういわれ、ウェンディとシリルは固まる。
ローバウルは酒を口に含み、それをこぼしながら話す。
「安心せぃ。あの二人はきっと大丈夫じゃ。すぐに仲良くなって帰ってくるわい」
「「・・・だといいんですけど・・・」」
二人は怒鳴られたのにビビったのか、しぶしぶ席に着き、二人が帰ってくるのを待った。
「シャルル~!!待ってよ~!!」
「ついてこないで」
シャルルはあとをついてくるセシリーに向かってそう言う。しかし、セシリーはあくまでもついてくる。
「なんで~?」
「なんでもよ」
「理由ないならいいじゃん~」
「・・・好きにすればいいじゃない・・・」
相手をするのがめんどくさくなってきたシャルルはそう言う。それを聞いたセシリーは笑顔になり、シャルルの隣を歩き出す。
「隣に立たないで」
「なんで~?」
「あんたが嫌いだからよ」
「僕はシャルルが好きだよ~?」
シャルルは立ち止まり、セシリーを指さす。
「私はあんたが嫌いなの!!私の隣に立たないで!!」
シャルルはそう言うと再び歩き出す。セシリーはシャルルにそう言われ、とぼとぼとシャルルの後ろをついていく。
しばらく歩くと、二人は河原に着き、シャルルがそこに腰を下ろすと、セシリーもその隣に腰を下ろす。
「隣に来ないでって言ったでしょ」
「僕も川を見たいだけなの~」
「・・・そ・・・」
二人はしばらく、何も言わない。互いに黙ったまま、時間が流れていく。
「「・・・・・」」
しばらくすると、その状態を片方が破る。先に話し始めたのは・・・シャルル。
「あんた・・・なんで私につきまとうのよ」
「? さっきも言ったでしょ~?シャルルが好きだからだよ~」
「なんで好きなのよ」
「う~ん・・・」
シャルルに質問され、セシリーは顎に手を当て考え始める。
「わかんない~」
「何よそれ・・・」
セシリーの答えにシャルルは思わずあきれてしまう。
「じゃあさ~、シャルルはなんで僕が嫌いなの~?」
今度はセシリーが質問する。するとシャルルの顔が曇る。
「・・・たが・・・」
「ん~?」
「あんたがいつも楽しそうだからよ!」
「え!?」
シャルルの言った理由に、セシリーは耳を疑う。
「なんで楽しそうだとダメなの~?」
「・・・あんたは、私と同じ使命を受けているはずなのに・・・私は苦しいのに・・・なんで同じはずのあんたはそんなに毎日楽しそうなのよ・・・」
シャルルは涙を噛み締めながら言う。セシリーはシャルルにそう言われ、?マークを頭いっぱいに付ける。
「なんでって・・・そんなの簡単だよ~!」
「え?」
セシリーは立ち上がってそう言い、シャルルはそんなセシリーを見上げる。
「僕はシャルルも、シリルも、ウェンディも好きだからだよ~!!」
まったく迷いのない声でそう言われ、シャルルは唖然とする。
「なんで好きだと楽しいのよ?」
「好きな人と一緒だと毎日楽しいでしょ~?それに!!」
セシリーはシャルルを指さす。
「好きな人が辛い顔をしてると、相手も辛いからだよ~」
「・・・え・・・」
シャルルは一瞬、意味がわからなくなる。
「僕は三人が好きなの~。たぶんシリルもウェンディも僕たちのこと好きだと思うよ~!シャルルは僕のこと嫌いみたいだけど・・・」
しょぼんとするセシリー。だが、すぐに顔をあげる。
「僕はシャルルが辛い顔してると・・・辛いの~・・・きっとシリルたちも、僕たちが辛そうな顔をしてたら、辛いと思う~。だから僕はいつだって、どんなときでも笑ってるの~!!」
セシリーはそういってシャルルに笑いかける。シャルルはそれを見て、ただ唖然としている。
「だから~、シャルルも一緒に笑ってた方が――――」
ズルッ
「「あ!?」」
するとしゃべっていたセシリーが足を滑らせて、川へと落ちてしまう。
「うぅ・・・冷たい・・・」
セシリーは川の中でしりもちをついた状態になっている。するとそんなセシリーに、川の魚がたくさん向かってくる。
「うわぁ!!魚がー!!」
セシリーは川の中で魚から逃げ出す。猫が魚から逃げると言う通常とは逆の現象にシャルルは・・・
「・・・ぷっ・・・」
「?」
セシリーは魚の群れから逃げ切って、川から上がると、シャルルがふるふると震えている。
「うふふふふ・・・あはははは!!」
シャルルはお腹を抱えて笑い出す。セシリーはそれを見て、一瞬ポカーンとしてしまうが、すぐに笑顔になる。
「シャルル~、やっと笑ってくれた~!!」
「う・・・うるさいわね!!」
シャルルは顔を赤くしてそう言うと、セシリーに手を差し出す。
「ほら、風邪引いちゃうから帰りましょ」
「うん!ありがと~!!」
セシリーはシャルルの手をつかみ、二人はそのまま手を繋いでギルドへと帰っていく。
その日の夜、ギルドに帰ってきた二人が仲良く話しながら、笑顔で帰ってきたのを見てシリルとウェンディは驚き、ローバウルは静かにうなずいていた。
――――
「あれ?ここは?」
ハッピーが目を覚ますと、そこはどこだかよくわからないが、見た感じ寝室だということはわかった。
ハッピーは隣で眠っているシャルルとセシリーに気がつく。
「シャルル!セシリー!起きて!」
「ん・・・」
「うぅ・・・」
シャルルとセシリーはハッピーに声をかけられ、その場で体を起こす。
「オスネコ・・・」
「ハッピー・・・」
三人は部屋をキョロキョロと見回す。
「私たち・・・どうなったの?」
「オイラたち眠らされて・・・それで・・・」
「ここどこだろう・・・?」
「・・・」
シャルルはうつむいて、暗い顔をしている。
「シャルル?」
「私の情報が罠だった・・・」
「違うよ!!オイラたちはたまたま見つかったんだ!!」
「うん!!偶然あんなところにいた王国軍に捕まった!!ただそれだけだよ!!」
ハッピーとセシリーはシャルルを元気付けようとする。しかし、シャルルの表情は暗いままだった・・・
「誓ったのに・・・私はウェンディを守るって、誓ったのに・・・」
「シャルル・・・」
シャルルは悔しそうにうつむき、セシリーはそんなシャルルを心配そうに見つめる。
ガチャ
すると、突然ハッピーたちのいる部屋のドアが開き、中に誰かが入ってくる。
「お前たちがアースランドで任務を完遂した者たちか。うむ、いい香りだ」
その猫は三人の似てる人にそっくりだった。
「青い天馬の!?」
「一夜!?・・・ていうか猫?」
その猫は連合軍で共に戦った、青い天馬の一夜にそっくりだった。
「何を驚く?同じエクシードではないか」
「ニチヤさん」
すると今度は、ニチヤの後ろから黒いひょろ長い顔の猫が現れる。
「彼らは初めてエドラスに来たんですよ。きっとエクシードを見たのも初めてなんでしょう」
「おお!そうであったか」
黒い猫はなぜか部屋に入ってきてからずっと、手を上下に振っている。ニチヤは黒猫の説明に納得すると、突然ポーズを決める。
「私は、エクスタリアの近衛師団を率いる務めるニチヤだ」
「ぼきゅはナディ。エクスタリアの、国務大臣ですよ。任務お疲れさま」
「「任務?」」
ハッピーとセシリーはナディが言ったことがわからず聞き返し、シャルルは辛そうに黙っている。
「さっそくであるが、女王様がお待ちである。ついてまいれ」
「女王様だって!?」
ニチヤは三人にそう言うと、ニチヤとナディは部屋の外に出ていく。
ハッピーはシャルルの方を見る。
「シャルル・・・セシリー・・・オイラに任せて。ここはひとまず、様子を見るんだ」
「ハッピー頼りになる~・・・」
ハッピーがシャルルとセシリーにそう言うと、セシリーは笑顔で返すが、シャルルはなおも暗い顔をしている。
「オイラが絶対守るからね!」
ハッピーは体の前で手を握りしめてそう言う。
三人はそのまま、ゆっくりとニチヤたちに付いていった。
部屋から出ると、そこにはドアの両側を挟むように、立っているものがいた。
「ご苦労」
「「ニャン!」」
「また猫だ」
「本当~」
三人は前の二人についていく。
「それではこちらへ」
ナディが手を振りながらそう言う。
「一体何がどうなって・・・」
「ハッピー、あそこ・・・」
セシリーが指をさした方をハッピーが見る。そこからは光が入ってきてた。ニチヤたちはそちらに向かって歩いていく。
三人がその扉から外に出ると、そこにはたくさんの猫がいた。
ハッピーとセシリーはそれを見て驚き、シャルルは相も変わらずうつむいたままである。
三人は、ニチヤたちの先導の元歩いていくと・・・どこもかしこも猫ばかり。
お店を営業してるのも猫、おしゃべりしているのも猫、勉強しているのも猫・・・そこはまるで、
「猫の国だ」
「猫しかいないみたい~」
ハッピーとセシリーがそう言う。すると周りの猫たちが三人をじっと見ている。
「お?あれが噂の・・・」
「アースランドの任務を完遂した・・・」
「すげぇ!よ!ヒーロー!!」
「見ろよ、あの白い娘、すげー美人!」
「茶色の娘もかわいいなぁ」
猫たちはハッピーたちを見て口々にそう言う。それはまるで英雄を見る民のような感じだった。
「猫ばっかりだ」
「ぼきゅたちは猫じゃない。エクシードさぁ!」
「エクシード?」
ナディの言ったことにセシリーが質問する。
「人間の上にたち、人間を導く、エクシードだよ?」
「エクシード・・・」
「人間の上に立つ~?」
「そう、そしてここはエクシードの王国、エクスタリア!!」
ハッピーたちはナディの説明を、ただただ聞くことしか出来なかった・・・
一方、そのころシリルとガジルは・・・シリルside
今俺とガジルさんは魔水晶を一望できる建物の上に立っている。それにしても人が多いなぁ・・・
「ガジルさん、どうします?」
「正面から突っ込むと、見物人を巻き込んじまうなぁ・・・」
ガジルさんも何も思い付かないみたいだ・・・どうしよう。ナツさんじゃないけど・・・ここは殴るしかないのかな?
「ん?」
「?」
するとガジルさんが何かに気づく。俺もそちらを見ると、人混みの中にいる、スーツを着て、帽子を被っている人がこちらに視線を送っている。あれ誰だ?
「やっぱり・・・あいつに頼るしかねぇか・・・」
ガジルさんはその人を見て小さくそう呟く。ガジルさんの知り合いか?
しばらくそのまま、俺たちは様子を伺っていると、王国軍が太鼓を鳴らして行進してくる。まさか・・・魔力抽出を始める気か!?こうなったら・・・
「待て!」
俺は飛び出そうとしたらガジルさんに手を捕まれる。
「ガジルさん!!なんで止めるんですか!?」
「今行くと見物人を巻き込むからだ!」
「そんなのいいじゃないですか!?仲間の命が――――」
「それじゃあ、あいつらと一緒だ」
ガジルさんは顎を王国軍に向ける。そうか・・・自分たちのことしか考えてないなんて・・・あいつらと一緒か・・・
「すみません・・・」
「わかってくれりゃあいい。しかし・・・どうする・・・ん?」
俺が少し落ち込んでると、ガジルさんがまた何かに気づく。その視線の先には、またあのスーツの人がいて、今度はこちらに背を向けて、何かを指さしている。俺とガジルさんはその指の指している方を見て、互いにほくそ笑む。
「ふっ、なるほどな!!行くぞ小娘!ギヒッ」
「はい!でも、小娘はやめてください!」
スーツの人が指さしていたのは、魔水晶の北側!そっち側は配置されている王国軍が少ないようだ。あれぐらいの人数なら、俺たちだけでも十分いける!
俺たちはそう思い、魔水晶の北側へと急いだ。
エクスタリアにて・・・第三者side
ハッピーたちはエクスタリアの城の中に入っている。
「人間はひどく愚かで劣等種だからね。ぼきゅたちがきちんと管理してあげないと」
「その上、ひどい香りだ」
ナディの説明と、ニチヤの個人的な意見を、ハッピーたちはただ黙って聞いている。
「女王様はここで、人間の管理をしているんだ」
「女王様は、素敵な香りさ」
ニチヤがキラキラしながら言うけど・・・セシリーは、「はっきり言ってどうでもいいんだけど~」と、心の中で思っている。
「勝手に増えすぎると厄介だからね~」
ナディは後ろを歩いているハッピーたちの方を向き直る。
「いらない人間を女王様が決めて、殺しちゃうんだ」
「な・・・なんでそんなこと・・・」
ハッピーたちはナディの言うことに驚き、質問してみる。
ナディは前を向いて、再び歩き始める。
「失われつつある魔力を正常化するためだと、女王様はおっしゃった。女王様はこの世界だけでなく、アースランドの人間も管理しておられる。
「人間の“死”を決めてるの?」
「女王様にはその権限がある。なぜなら、あの方は神なのだから」
「「神!?」」
ニチヤの言葉にハッピーとセシリーは驚く。
「私たちの任務って・・・何?」
ここにきて、さっきまでずっとうつむいていたシャルルが口を開く。
「私には、生まれたときから任務が刷り込まれていた」
シャルルがそう言うと、ナディとニチヤは顔を見合わせる。
「女王の、人間人間管理によって選ばれた・・・滅竜魔導士、ウェンディの抹殺」
「「えっ?」
シャルルの言ったことに、ハッピーとセシリーは驚く。
「ど、どういうこと!?シャルル!!」
「黙ってて」
シャルルがハッピーを制しようとするが、ハッピーは話すことを止めない。
「ウェンディの抹殺って、どういうことだよ!?」
「ハッピー・・・」
驚くハッピーの風呂敷を、セシリーは引っ張る。ハッピーはセシリーの方を向くと、セシリーはさっきまでのシャルル同様に、暗い顔になっている。
「シャルルがウェンディの抹殺ってことは~・・・」
「はっ!!」
ハッピーはそこで、セシリーの言おうとしていることがわかり、頭を抱える。
「あれ・・・それじゃあ・・・オイラの任務って・・・」
(僕の任務って・・・まさか・・・)
「あんた・・・知らなくて幸せだったわね・・・」
頭を抱えて座り込むハッピーと、ただ無言で立っているようだが、心の中では動揺を隠しきれないセシリー。
そして、二人は同時に叫んだ。
「ナツを・・・オイラが抹殺する任務に!!」
「シリルを・・・僕が抹殺する任務に~!?」
二人は自分たちの任務に驚き、頭を抱えた・・・
(なんでセシリーが驚いてるのかしら?)
シャルルは驚いているセシリーとハッピーを見て、そう思っている。
「落ち着きなさい!セシリー!オスネコ!
私たちは、任務を遂行してないし、遂行するつもりもなかった。なのに、どうして完遂していることになってるわけ!?」
シャルルはニチヤとナディに向かってそう叫ぶ。それを聞いた二人は、なぜか驚いた顔をする。
「記憶障害か?」
「仕方ありませんよ。上書きによる副作用は未知数なのですから」
二人が話していると、シャルルがそちらを指さす。
「答えなさい!!」
「ぼきゅが説明するよ」
ナディはそういって、語り始める。
「女王様の人間管理に従い、6年前、100人のエクシードを、アースランドに送ったんだ。
卵から孵ると、滅竜魔導士を捜索し、抹殺するように情報を持たせてね。
しかし、状況が変わったんだ。人間の作り出したアニマが、別の可能性を導き出したからね」
シャルルたちは目を見開き、ナディの話を聞いている。
「アースランドの人間を殺すのではなく、魔力として利用するものなんだ。
中でも滅竜魔導士は別格の魔力になるみたいだよ~?」
それを聞いてシャルルの表情がますます驚きに変わる。
「なので、君たちの任務を急遽変更したんだ。【滅竜魔導士を連行せよ】とね」
それを聞いた三人は、固まってしまい、動けなくなる・・・
そして、シャルルは膝をつき、手を地面につけて涙を流す。
ハッピーとセシリーも同様に、その場で固まって、涙を浮かばせていた。
そのころシリルは・・・シリルside
広場ではついに、魔力抽出が始まろうとしている。俺たちは北側に移動しようとしたが・・・あまりにも人が多くて身動きができない・・・
俺たちが動けないでいると、魔力抽出の準備が着々と続いていってしまう。
急がないといけないのに・・何か突破口はないのか?
パンッ
「花火だ!!」
「いいぞ!!もっとやれ!!」
こんなときに花火まで上げやがって・・・
「なんだ!?」
「花火なんて聞いてないぞ!?」
すると盛り上がる見物人とは対照的に、王国軍はその花火を見て驚いている。まさか、さっきのスーツの人か?
何かヒントをくれるといいんだけど・・・
その後も花火は次々に打ち上がり、全部で五個の花火が打ち上げられる。
その花火には、一つ一つにアルファベットが書いてあった。
NORTH
花火にはそう書いてあった・・・北・・・
そうか!!あの文字を利用して、王国軍を北側に動かしちゃえばいいのか!!だったら・・・
「あそこ見て!!何か文字が書いてあるよ!!」
「広場の北だ!!怪しい野郎が、魔水晶を狙ってるみたいだぜ!!」
俺とガジルさんはそう叫びながら前に進んでいく。最前列につくと、王国軍は俺たちの誘導によって慌て、大半の王国軍が北側を守りに向かっていた。
「下がってください!!」
「もっと後ろへー」
王国軍はそういって見物人を後ろに下げる。おかげで、暴れるには十分のスペースが出来た。
「よーし!これで大暴れできるぜ!ギヒッ」
「さて・・・行きますか」
「おい!何をしている!下がれ!」
王国軍の一人が俺たちにそう言ってくる。だけど・・・下がらないんだよねぇ、俺たちは。
ガジルさんは羽織っていたマントを投げ捨てる。
「俺が兵隊を倒しますんで、ガジルさんはそのうちに・・・」
「おうよ!!任せとけ!!」
俺とガジルさんは魔水晶に向かって走り出す。
「ぶっ飛べ!!水竜の・・・翼撃!!」
「「「「「「「「「「うわああ!!」」」」」」」」」」
俺の攻撃で王国軍は一気に飛ばされる。
その内に、ガジルさんは魔水晶に向かってジャンプする。
「あのミストガンて野郎はうさんくせぇ奴だが、ひとまずは信じてやるぜ!!鉄竜剣!!」
ガジルさんが魔水晶に滅竜魔法を打ち込む。
「なんだあいつ!?」
「やめさせろ!!」
王国軍は騒ぎを聞き付けて少しずつ戻ってくる。
「お前らはおとなしくしてろ!!水竜の咆哮!!」
俺の咆哮で集まってきた王国軍は水に飲まれて飛んでいく!!
「まだまだ!!うお!!」
ガジルさんがそういって何度も滅竜魔法を放つと、魔水晶は光出した。
すると、その魔水晶はみるみる小さくなっていく。
「え?」
「何!?」
俺たちは元に戻った人たちを見て、驚いてしまった。