【DQⅤ】ゲーム内容全把握のニートが転生時に死なない為の心得。
1,あまり自分を貶めるのはやめましょう。
前書き
6歳ショタ(笑)リュカくんの冒険がここに始まります。
はいどうも、3ヶ月に及ぶ船旅をようやく終え故郷へ帰ってきた6歳ショタ、リュカくんです。
嘘っす。3ヶ月に及ぶ船旅をようやく終え故郷へ帰ってきた18歳ニート、竜牙です。元。
東 竜牙、ヒガシ リュウガと読む。中々の難読漢字だ。キラキラネームか。DQNか。DQNなのか俺は。
高校卒業後ニート職、彼女持ち童貞。襲う勇気?逆に聞くけどあると思う?
友達は小学校から高校まで同じクラスという無駄な腐れ縁の少年のみ。こんな世の中理不尽だ。
「リュカー。聞いてるー?おーい」
っは!?誰に何を説明してるんだ俺は!?
童貞ってなんだよ言うな俺!!そして1mmの間違いもない事実であるという悲しみ!!
「ご、ごめんねお姉ちゃん。ちょっとボーっとしちゃった」
お前、この台詞誰が言ったと思ったろ。もういいわ、お前俺の脳内お友達な。
俺は転生をした。しかもゲームにうるさい俺さえ屈指の名作だと思った、大好きなDQⅤの世界へだ。
前世での俺のぼっち人生は、この幸せの対価だったのかもしれない。
もし違ったら俺強くなって神様殺すわ。
……と。話が逸れたな。悪いな脳内お友達。
俺はこの世界で主人公となった。あの、DQの中でもベストオブアンハッピーと言われた主人公に。
何だそれは。つまり神様よ、俺に父を亡くし奴隷☆ライフを送り幼い息子が捜し求めた勇者であったという悲しみを味わえと。
前世で父を失う悲しみは体験済みなので、出来れば顔パス願いたい。
でもダメなんだろうな、俺強くなって神様殺すわ。
とまあそんなことを考えたものの、折角俺が主人公なんだから運命捻じ曲げればいいじゃん!という結論に辿りつき、いつか来るそのときを待ちながらネコを12,3匹被りつつこの世界を生きている。
そして最近ようようゲームが始まり、今はサンタローズでのビアンカとのお喋りタイムというわけだ。
まあ思いっきり要約すると、さっきの台詞を言ったのは猫被りの俺です。
何ということでしょう、12行が20文字に。
「そっか、やっぱり疲れてるよね。ごめんね、付き合わせちゃって。もう寝る?」
ビアンカってもっと勝手に主人公連行して勝手に本読んで勝手に帰る自己中じゃなかったかと思うんだがそれは。
しかも頭がいい。本全部読みきったぞ。若干物語の確信に触れたぞ。
「うん、ありがとう、お姉ちゃん!ちょっと疲れちゃったから、寝ていいかな」
「もちろんよ、ゆっくり休んでね!良ければ、また一緒に遊びましょう」
「うん、遊ぼうね!」
ビアンカが階段を下りていくのを横目に、俺はベッドに寝っ転がった。
そして目を閉じ……かけると、シーツの中に謎の固い感触が。
(こっちは眠いんだよ、寝かせろクソが)と悪態をつきながらシーツに手を入れると、そこには一冊のノート。
父さんが「これで勉強をしなさい」とかいう小さな親切大きなおせゲフッゲホウッ親切でくれた物だ。
そういえば荷物整理をしたとき無かったな、これ。
正直勉強とかする気さらさら無かったので何の興味も無かったが、さすがに父の大きなおせガハッゲホゲホウッ親切を蔑ろにするのもどうかと思えたので、使ってみることにする。
とはいえ、何を書いたものか。
そうだ、文才皆無絵心皆無の俺に、ノートなんてものは必要なかったのだ。
それかあれだ、「この世界攻略本」でも作るか。
……作る、か?
青紫のノートの表紙に羽ペンで「この世界攻略本」と書きかけ、青紫にインクの黒があまりにも目立たないため中断する。
何処かの国で父さんに買ってもらったカラフルなペンを取り出し、「この世界攻略本」と書きかけ、またもや中断。
「とっととやれよ」という声が聞こえた気がするが気のせいだ。または怪奇現象だ。こわい。
前世でよく読んでいた所謂ラノベを思い出し、どうせならそんな感じのタイトルの方が俺っぽくていいと思い、水色のペンで字を書く。
『ゲーム内容全把握の俺が転生時に死なない為の心得』
「……何書いてんだ、俺……」
思わず独り言が漏れたものの、ペンで書いてしまえばもう消せない。後悔先に立たず。俺ざまあ。
そして表紙をめくり、よくある灰色の線が引いてある紙を見てふと懐かしさに襲われる。
前世でも6歳くらいのとき、父さんがノートを買ってくれた記憶がある。「これで勉強しなさい」とかいう小さな親切(以下略)で。
前世父さんと今世父さんの行動がマッチしすぎて怖い俺氏。
まあそんなことは眠いので明日考えるとして。
羽ペンを持って紙にインクをつけたはいい物の、内容が思い浮かばずインクがジワジワ広がっていく。
知ってるだろ、俺に文才なんて無いんだ。ついでに絵心もな。チクショウ。
などと自分を自虐していたときに頭にふと浮かんだ一言をすらすらと書く。
これ最早攻略本じゃねえなとは思うが、そんなことより大事なのは俺の眠気だ。
さよなら今日。明日はどんな日になるだろうか。
どうせ洞窟探索なんだろうな。欝だが死にたくはない。
後書き
気がついたら今年が終わっていた件。
今年からよろしくお願い致します。
2,善行を積むのは大切です。
前回のあらすじ。
攻略本を書くつもりが教訓も超えて自分への励ましになっていた、以上。
やっぱり魔物に襲われるのはちょっとイヤなので、我らがお父さんに『お父さん、お姉ちゃんのお父さんが病気で、薬を取りにいかないとダメなんだって』と聞いてもいないことを相談してみた。
「薬を作るおじさんが取りにいったんだけど、帰ってこないみたい」
「そうか。大事にするようビアンカちゃんに言っておいてくれ。私は出掛けるが、いい子にしてろよ」
問答無用で出掛けられました。
だが、そんなことでぼっちな18年で培われた俺の心は折れない。
こそこそストーカーのように父さんの後を追うと謎の乗り合いイカダに乗り合ってしまったので、そこを守るジジっ……お爺さんに声をかけてみる。
「あの、おじいさん」
「坊やはええ子じゃな。それならお父上の邪魔をしないようにな」
「えっと、邪魔をするつもりはないんです。ただ、ちょっと……」
「坊やはええ子じゃな。それならお父上の邪魔をしないようにな」
「はい、しません。ちょっとお父さんに用事があるんです」
「坊やはええ子じゃな。それならお父上の邪魔をしないようにな」
「怖いので別の台詞を喋っていただけますと」
「坊やはええ子じゃな。それならお父上の邪魔をしないようにな」
「お爺ちゃん、晩ごはんはもう食べたでしょ」
段々素に近づいていく俺氏。
だってしょうがないと思うの。絶対このジっ、お爺さんボケてると思うの。
「迷子の迷子の子猫ちゃん(意味深)ー、貴方のお家はどこですかー?」
ボケおじい様の前に敗北を喫し仕方なく正攻法で攻めることにしたが、暗いし湿っぽいし何かそこの角から金色の目が見えるしでやっぱり心細いので、「犬のおまわりさん~ver.R-18」を歌い気を紛らわせることにした。
ちなみに武器は木の枝。ひのきのぼうでさえない木の枝。
村の外に行こうとかいう変な気を起こさないようにと、召使いのサンチョに武器は没収されているからだ。
何やってんのサンチョ、難易度上がったぞサンチョ。解雇だぞまったくもう。
「泣ーいて(喘ぎ)ばかりいる子猫ちゃんー(意味深)っうおぉ!?」
サンチョに内心で愚痴を言っていると、角から見えていた謎の金目が飛び出してきた。
金目っていうと鯛みたいだな。今はめでたいの対極にいるけどな俺。
「っご、ごめんなさい。真面目に歌います。すみません」
動揺のあまり見当違いのことを金目鯛……もといドラキーに口走ってしまう俺。
いやだって怖いんだもん。
こう、金色に光る目がそこの物陰からズザザザザァァッって出てきたら怖いだろ?
そういうことなんだ。分からないか、所詮脳内お友達だもんな。
「キィッ」
「うぇ゛あ!?」
何今の!?メラか!メラなのか!!
すげえ!かっこいい!!
何かね!?こう、魔法陣みたいなのがブワァって出来てさ!
それでそこから火が(以下略)
ふぅ。
熱は冷めたが(2つの意味で)、これ何気俺滅亡の危機だな。
今なら多分気絶で済むだろうが……やっぱり金は大事だ。
と、いうことで。
やってやろうじゃねえかうらああああああぁぁぁぁぁぁぁああ!!!
▼リュカ は にげだした !
「は、はぁ、はぁっ……」
逃げ切った。
これでも俺、中学時代は陸上部だったからな。
信じらんねえだろ。50m程度走っただけで疲れ果てて壁にもたれてるやつが陸上部だったんだぜ。
「う、うぅ゛ん……」
うぉ゛あ。
誰だよ唸ってんの。
まあその岩の下のあいつだと思うが、あんな岩の下にいたら死ぬよな普通。
まさか魔物か?血塗れにするぞ?(俺の血で)
「だ、誰かいるのか……助けてくれェ……」
嫌だよ魔物め。死にたくないよ俺。
「いるなら返事をしてくれ……」
「ナンノゴヨウデショウカー」
せめてもの抵抗として、思いっきり棒読みで答えてやった。
さあ、何が出るかな何が出るかな……?
「お、おぉ……!頼む、誰だか知らないが助けてくれ!」
この人絶対いつか騙されるぞ。
ここまで来たにもかかわらずまだ魔物かと疑ってる俺を見習えよ名も知らぬおっさん。
「はぁ……貴方は誰でしょうか」
「サンタローズの村の薬師だ、薬草を取りにきたのだが岩に押し潰されてしまってな」
あ……あーあーあー!
こいつそういえば潰されてたな!
「薬師さん……お姉ちゃんのお薬を作る人ですか?」
「お姉ちゃん?ふうむ、よう分からんが、薬を作ることは間違いないぞ」
来た!物語進んだ!!
「そうですか……岩、どけられます?」
「さっきから試しているのだが……さすがに無理そうだ」
ですよねー。
逆に出来たら魔王級だぞお前。
「手伝うので、ちょっと頑張ってください」
「分かった」
「はい、せーの!」
っおっも!クッソ重い!
これどかせたら魔王超えるぞお前!
頑張れば動かせそうなんじゃないのかよエニックスさんよぉ!
「ど……どうします?」
「ふむ……魔法は使えるか?」
使えたらドラキーのメラにあそこまで興奮しねえよ。
「使えません……」
「そうか……しかし、やらないことにはいつまで経っても何も出来ないぞ」
「はあ……」
「ひとまず試してみようではないか」
ウィッス。
「あー……主人公が使える攻撃呪文か……確か、バギ系だったよなぁ……」
「どうした、少年」
「あ……何でもないです。えへへ」
ネコ12,3匹被りの愛想笑いで誤魔化す。
「えっと……じゃあ、行きますよ?」
「よし」
「それっ」
……出ないよねー。
やっぱちゃんとバギって言わないとダメなのか?
ドラキーは「キイッ」でいいのに理不尽じゃね?
「……というかそもそも何で俺バギっ」
……とか唱えなきゃいけない状況に追い込まれてるの。
というのが後に続く言葉であったはずなのだが、俺の言葉は不自然に止まった。
俺の目の前に、突如として巨大な竜巻が発生したからだ。
竜巻はひゅんひゅんと唸りながら岩を切り裂き、ひとりでに消えた。
……これ、すごくない?
俺、頑張れば本当に神倒せるんじゃない?
「ありがとう……はっ、き、君はパパスの息子か!?」
「ウィッス」
あ、やべえ、若干引かれてる。
ごめんねおっさん。ちょっと考え事してただけなんだ。
内容が限りなくまともじゃないけどね。
「そ、そうか……ともあれ、助かったよ。確か、リュカくんだね」
「はい」
「リュカくんはすごいな、あんな呪文を使えるとは。さすがパパスの息子だ」
「えへへ、ありがとうございます」
呪文と父さんの遺伝子は関係ないと思うけどね。
父さん呪文に関してはからっきしだし。
でもまあ、褒められたのは嬉しい。
俺の前世は、モブの中でもそれこそFくらいの位置づけだったからな。
ようするに限りないモブだ。悲しいなくそう。
「大したものは持っていないが、せめてものお礼だ。受け取ってくれ」
手渡されたのは、どうのつるぎ。
「わあっ、ありがとうございます!」
ありがたく金の足しにさせてもらうよ!
いやあ、善行は積むものだね!
今日の攻略本(震え声)に書く心得は、これで決まりだな!
3,年上のお姉さんを敬いましょう。
前回のあらすじ。
「やれば出来る」と「やらなきゃ出来ない」は違う言葉だ、以上。
「でも、僕がいたら足手まといになっちゃうんじゃない……?」
「大丈夫だ、洞窟を一人で探索できるほどに強くなったのならそんなことにはなるまい!」
ただ今、アルカパに行きたくない俺氏と連れて行きたい父さんが口論を繰り広げております。
いや、正確にはベビーパンサーをもらいたくない俺氏。
ベビーパンサーが俺の下に来たが最後、幸せもつかの間、主人と引き離され、遠い土地で「化け物」と10年間も蔑まれ続けるのだ。
可哀想だ、あまりにも可哀想すぎる。俺だったら「欝だ死のう」即決だ。
ちなみに俺の「死のう」は「誰か構ってください」と同意義なので、本当に死んだりはしない。
彼女を襲う勇気もない俺にそんな勇気がある訳ない。
「あ、あの。リュカは私たちのために頑張ってくれたので、これ以上無理させるのは……」
それはそれとして、ビアンカが異常にいい子だ。
俺の中のビアンカ像が崩れて速攻で超立派なビアンカ銅像が再建されたレベルでいい子だ。
少々人見知りだが慣れれば明るく、空気が読める。しかも可愛い。
見事なまでに俺のタイプだが、俺には心に決めた女性が居るのだ。
くそう、俺だって心は思春期の男子だ、前世に戻って彼女といちゃいちゃしたい。
というかなんで死んだんだよ俺、周りに注意しろって散々言われてただろバカか。
「そんなに遠慮するな、ビアンカちゃん!こいつも照れているだけで、本当は一緒に行きたいはずだ!」
根本!根本から間違ってるよ父さん!!
「そ、そう……で、す、かね?」
めっちゃ顔色伺われてんだけど俺!
何かすっげえ謎の申し訳なさを感じるんだけど!!
「ごめんねリュカ、わざわざ着いてこさせちゃって」
「ううん、お姉ちゃんは悪くないし、楽しいよ!」
はい、結局アルカパに来た俺氏、ビアンカと共にアルカパ観光中です。
右手に見えますのは浮き島(?)、上では何やらクソガキ共が猫(?)をいじめています。
助けたいのはやまやまですが、ここで助けるとあの猫はこんなのは足元にも及ばない苦しみを味わうことになります。心を鬼にして突き放しましょう。
なお、言葉を濁さずクソガキと言ったのは、俺が動物好きだからです。動物をいじめる子供は例に漏れずクソガキです。
「ところでリュカ。もしも猫を飼うとしたら、なんて名前がいい?」
ビアンカ、絶対あのベビーパンサー見えてるだろ。
言っていいぞ、「猫を助けたい」って言っていいぞ。
ただしお前が飼うとき限定な。
「んー……チロル、とか?」
俺が小学生時代にやった一週目のベビーパンサーの名前であり、飼っていた猫の名前だ。勿論DQⅤに洗脳されたからだ。さすがゲームオタな俺。
ちなみに二週目はゲレゲレ。さすがゲームオタな俺。
「チロルかー…………アー、アンナトコロデネコガイジメラレテルー」
テ ラ 棒 読 み 。
「ウワア、ヒドイナー」
棒読みで対抗。
「タスケナイトダメダヨネー」
「ソウダネー」
何この会話。
「……というか私思うんだけど、あれ魔物だよね」
「思った」
まさかビアンカがそこに気づくとは。
「魔物ならお母さんもアレルギー発生しない、かも……」
本気で考え込むビアンカに良心が痛む俺氏。
いやでも、ここで良心に負けたらべビパンが可哀想だ……。
「うぅ……どうしよう……リュカも旅してるし、飼えないよね……」
ソウナンダヨネー。
「あいつらに任せたらいじめられちゃうだろうし……んー……」
コマッタネー。
「……お母さんにねだれば何とか……なる、よね?……よし」
ソウカモネー。
「やめなさい貴方達!猫が可哀想というかそれ以前に人間としてその行為はどうなのかしら!?」
ビアンカ姉さんテライケメン。
「お、ビアンカじゃん!お前も一緒に遊ぼうぜー」
「折角のお誘いとても有難いけれど、全力で拒否させて頂くわ。というか私の話聞いてたかお前ら」
すげえ、ビアンカ姉さんすげえ……!
「な、なんだよー。怒んなよ」
「別に怒ってないわよ。貴方達の疚しい気持ちがそう見せているんじゃないかしら……お前らに限ってそれはないか」
「ウイッス」
「……で?その猫を放してやれっつってんだよ話聞け」
やべえ、銅像がぶっ壊れたけどこれはこれで……!
待って、俺の中でビアンカ姉さんを称える石碑が出来てる!
そして俺はMじゃない!前世での彼女も優しくて明るくて若干S入ってたが断じて違う!!(震え声)
「う゛……じゃ、じゃあレヌール城のオバケを退治できたら渡すよ!」
「生き物をいじめた挙句人に命令するのね貴方。ここまで来たら暴力沙汰起こしても正当防衛な気がするわ」
どうしよう、今の姉さんなら結構マジで暴力沙汰起こしそうな気がする。
よし、何とか止めよう。止められなかったらごめんクソガキ共。
「えっと、お姉ちゃん。僕も手伝うから、レヌール城に行ってオバケを倒しちゃおうよ。僕、暴力はダメだと思うの」
「リュカは優しいのね。でも大丈夫よ、リュカに迷惑はかけられないわ」
あっダメだ、多分この人言葉の暴力で解決するつもりだ。
ごめんガキ共……あ、どうしようめっちゃ見られてる。
めっちゃ縋るような目で見られてる。
…………。
「……僕!お姉ちゃんのこと大好きだから、そんなことさせたくないの!」
赤面するビアンカ姉さん。
そうだよね、今世の俺、顔だけは異常に可愛らしいもんね!
「…………リュカに免じて今回は許すわ。オバケ退治、今夜行ってくる。ちなみにお前らがクソガキであることは変わりないからな」
俺やっぱビアンカ姉大好きだわ。
一旦宿に戻り、村に戻ると言う父さんをビアンカの母さんとビアンカ姉が一緒になって止め、一泊だけアルカパに泊まることになる。いやまあ知ってたけど。
そして就いた床で、俺は気付く。
「……そういえば、べビパンもらいたくないって問題は一切解決してないな……」
「リュカ、何か言ったか?」
「うっ、ううん!何でもないよ」
……まあいいや、何とかなると信じることにしよう。
きっとビアンカ姉が何とかしてくれる……はず。
だってビアンカ姉すごいし。かっこいいし。
4,隠し事はいつまでも隠し事だというのは甘い考えです。
前回のあらすじ。
姐さんと呼ばせてくださいビアンカ姉、以上。
はい起きた!俺起きた!
「あ、リュカ、起こしちゃった?ごめんね、まだ夜だから寝てていいわよ」
おいおい戦闘準備バッチリじゃねえか!
完全一人で行く気じゃないすかビアンカ姉!
「そっか、お姉ちゃんはどうしたの?」
「え、えっとね。ちょっとのどが渇いて」
「お水は玄関にはないよー」
「そうね……ちょっと寝ぼけちゃった」
嘘つくなや。
姉さん一人で行ったら気絶だぞ。
金半分になるぞ。
「僕も行く」
「リュカもお水飲む?いいわよ、ちょっと待ってね」
「違くて。僕もオバケ退治するー」
「はぁ?」
はぁ?と言われましてもね。
ビアンカ姉強い(精神)けど弱い(物理)し。
「違うのよ?オバケ退治とかじゃなくて」
「お姉ちゃんがあの魔物を見捨てるはずないもん」
「ありがと、リュカ。でも本当に」
「僕も行く」
「リュカ」
「僕も行く」
わー俺超絶駄々っ子ー。
まあ6歳だから許されるよねー。
精神はニート(18)だけどねー。
「……リュ……」
「なぁに?」
「えっ、あ、うん。なんでもないわ」
いや何。
何その挙動不審。
ご用件はなんでしょうか姉さん。
「そっか。じゃあ僕も行く」
「ずいぶん話飛んだわね」
「今の所これが最優先事項だから」
「そう。だが断る」
「ナ、ナンダッテー」
やばい楽しい。
なんか前世を思い出すわ。
前世で腐れ縁の友達(笑)とか彼女とかとこういう風に話してた気がする。
ぶっちゃけよく覚えてないけど。
とりあえず彼女は可愛かった。それは分かる。確信持ってる。
あと友達はうざい。それは分かる。確信持ってる。
「分かった?本当に危ないのよ?何かあったら私を囮にしてでも逃げなさいよ?」
「だが断る」
「それをさらに断る」
「ナ、ナンダッテー」
結局駄々をこねこねして連れて来てもらいました。
「ふふ。じゃ、レヌール城はここの西にあるわ。行きましょう」
「うん!」
「一応言うけど、オバケなんかいないと思っちゃダメよ?意外と色々いるんだからね?」
「分かった!」
オバケ信じるタイプの人間っすかビアンカ姉。
いやまあ実際いますけど。
ちっす。リュカっす。
現在ビアンカ姉さんの強さに目を疑ってるところっす。
「ギラ!!」
「ぎゅいぃっ」
なぜか出会ってしまった無駄な強さを誇るオバケねずみが一瞬で燃え尽きてます。
しかもメラじゃない。ギラだ。
何lvっすか姉さん。8lvですか。
戦うの初めてなはずなのに8lvなんすか。
「……すごいね、お姉ちゃん」
「駄々こねて戦闘訓練受けさせてもらってたから」
マジですか。
「ついたわね」
「うん……」
ぶっちゃけこれなら俺着いてこなくてよかったような気がしてしまう俺氏。
俺の命が危険になるだけのような気がしてしまう俺氏。
「ん……正門は開かないわね。裏口とかないかしら、回ってみましょ」
わーおスピード攻略。
「そうだリュカ、入る前にこれ」
ブーメランと薬草、鱗の盾を手渡される。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「どういたしまして。いい、ここまでは私が守ってあげられたけど、万が一この先私がいなくなったりしたときは、自分の身は自分で守りなさいよ」
「うん!」
何この人、ゲームの内容知ってんじゃないの?
「何か変だと思ったものには触っちゃダメよ」
うごくせきぞうのことか……?
「私がいなくなっても動揺しないで。大丈夫、私は死なないから」
はい死亡フラグ入りましたー。
しかし実際にビアンカ姉さんは死にません。
姉さんの勘どんだけ冴え渡ってんすか。
……それとも、まさかとは思うけど。
「分かった。ねえ、お姉ちゃん」
「なぁに?」
「ドラゴンクエスト、って知ってる?」
目を見開くビアンカ姉。
えっ嘘、マジ?姉さんも同じなの?マジで?
しかしビアンカ姉はすぐにいつものように笑顔になって、
「さあ……知らないわ、ごめんね。何かの絵本?」
そう言った。
ダメだ、この人絶対何か隠してる。
隠し事っていうのは暴かれるためにあるんだ。今俺が決めた。
ということで、オバケ退治が終わるまでにその秘密を暴いてやることにする。
幾多の推理ゲームをクリアしてきた俺の腕をなめるなよ、ビアンカ姉!