仮面ライダーガイゼル Feet.オール・ダークライダーズ


 

Capture:00 ~融合世界群ゼノアース~

 
前書き
 前々からやっていたネタに挑戦。
主役は一号ライダー達と敵対していたかつての強敵・ダークライダー。
舞台はダークライダー同士が鎬を削って戦いあう融合した世界。
そこに現れるのは一人のライダー。 

 
 そこは理想郷と絶望郷の二つを兼ね備えたような世界だった。


いくつもの世界と混ざり合った特殊な世界――【融合世界群ゼノアース】。
様々な人種、様々な技術、そして様々な怪人達。
そしてゼノアースでは各世界から集まった"凄まじき戦士達"が世界の覇権を握るために戦っていた。



――某所。

「ハァッ!」

「トォッ!」

白波が大きく波打つ荒海を戦場に、二人の戦士が死闘を繰り広げていた。


片方は水色、青、赤で彩られた頭部にサメ、胴部にクジラ、下半身にオオカミウオの意匠を持った仮面の戦士。
金色の複眼と胸には三種の海洋生物の刻まれた三角形状のプレート(トライングデルタ)のその戦士は、手に持ったオオカミウオを模した槍・ディーペストハープーンを眼前の敵へと振りかざす。

――その名は『仮面ライダーポセイドン』。
人工コアメダルと最新鋭のポセイドンドライバーによって生み出された戦闘欲溢れる大海の現人神。


片方は黒のアンダースーツにグリーンカラーのラインが走り、腰のマントが靡かせてた仮面の戦士。
前髪のようなパーツと王冠のように生えた五本の角、黒目があるデザインのツインアイの宿したその戦士は、手に持った炎の刀身を持つ両手剣・ガシャコンソードでディーペストハープーンの刃を受け止めた。

――その名は『仮面ライダークロノス』。
時の神のごとき力を秘めた人類最大のゲームにおける攻略の鍵となる伝説の戦士。


奇しくも神々の名を持つ二人のライダーは互いに傷つけ合い、刃を振るいあう。

「貴様、手強いな」

「お前も手強くて攻略しがいがある」

「ハッ……だが命乞いはするな、時間の無駄だ!」

「いいや? 審判の時はここからだ」

ポセイドンが切り出した言葉をクロノスは自信満々に返すと、手元に召喚した可変式の銃型・ガシャコンマグナムを構えて引き金を引いた。
銃口から放たれた光弾がポセイドンへ狙って真っすぐ飛んでいくが、ポセイドンはディーペストハープーンを振り回して撃ち落として迫る。

「「ハァァァッ!!」」

ポセイドンのディーペストハープーンから放った大海の刃と、クロノスのガシャコンソードから放った炎の斬撃がぶつかり合う。
水と炎、相対する属性の力はやがて水蒸気爆発を引き起こし、眩い閃光を放ちながら辺り一帯の海水を空高く吹き飛ばした。



――某所。

【NEXT!】

【CLOCK-UP】

闇夜でも光輝く摩天楼の下の元、不可視の戦士達が激闘を繰り広げていた。


片方は黒いボディに水色のラインが描かれており、ワイヤーフレームのような形状の肩パーツ。
胸部には黒地に黄色のラインが走ったタイヤ型パーツ・タイプネクストタイヤが装着されており、水色のバイザーアイが光り、右手に握る一本の剣・ブレードガンナーを握りしめる。

――その名は『仮面ライダーダークドライブ』。
未来から一条の光として闇の中を走り続ける、正義を胸に秘めた漆黒の疾走者。


片方は黒と銀色のアンダースーツの上に黒い鎧に基盤のように走る赤い模様。
黄金色の複眼に天を指すような猛々しい一本角を携えた仮面の戦士は、その手に持ったクナイ型武器・ゼクトクナイガンを構えている。

――その名は『仮面ライダーダークカブト』。
光り輝く太陽の影から生み出された、光無き世界を駆け抜ける黒き暗黒神。


常人には見えぬ超高速の世界でお互いの刃をぶつけあい、切り結ぶ。
ダークドライブが発動した新型エンジン"コア・ドライビア-A"を応用した超加速で、ダークカブトの有する時間流にのった超高速能力・クロックアップを対抗していく。

「ようやく、慣れてきたぜ」

「速い!? クロックアップに対応できるヤツが他にもいるなんて……ぐあっ!?」

ブレードガンナーから繰り出された斬撃を受け、ダークカブトは地面へと転がる。
超高速の世界から帰ってきたダークドライブはゆっくりと歩みながら言葉を投げかけた。

「おい、いい加減退いてくれないか? お互い消耗したくはないだろう?」

「……生憎、オレには戦う理由がある。どうしてもやり遂げなくちゃいけない理由がオレにはある!」

ダークドライブの提案を蹴ったダークカブトは天へと向かって手を掲げた。
すると、バチリと電撃音が響いた途端に巨大な剣を模した昆虫型メカ・ゼクターが出現する。
何かがまずいと思ったダークドライブは咄嗟にバックステップで離れ、その瞬間大剣を握ったダークカブトの雰囲気が変わった。

「ついて来いよ。ここからが本気の速度だ」

大剣型のゼクター・パーフェクトゼクターをゼクトクナイガンと共に構えたダークカブトは再びダークドライブへと立ち向かっていく。



――某所。

何処かの廃れた遊園地にて蔓延る、無数に蔓延る仮面ライダー達。
量産型仮面ライダー"ライオトルーパー"達はたった一人の相手に苦戦を強いられていた。

「出番だ、グリム兄弟!」

【カイガン!グリム!】
【心のドア!開く童話!】

「ハァ!!」

韻を踏んだような電子音声と共に、空中に浮かぶのは"パーカーゴースト"と呼ばれる浮遊するパーカーを模した偉人の英霊達。
その中の一体・グリムパーカーゴーストは呼び出した本人へ憑りつくように装着し、両肩に装備されたペン型の武装・ニブショルダーを展開。
伸縮自在なエネルギーチューブとペン先型の鋭利な金属体で構成されるそれを振るい、ペンのような先端からは文字のような光のエフェクトを出現させると、ライオトルーパー達へお見舞いする。
避ける暇もなく被弾し、光の文字によって倒れていくライオトルーパー達……それでも後方から襲い掛かる部隊が現れると、次なるパーカーゴーストを呼び出した。

「行くよ、信長さん!」

【カイガン!ノブナガ!】
【俺の生き様!桶狭間!】 

次に呼び出されたのはノブナガパーカーゴーストは迫りくるライオトルーパー部隊を体当たりで蹴散らすと、グリムパーカーゴーストと交代するように装着した。
今度は手の意匠が入った銃器・ガンガンハンドをライフル銃のように構え、狙いすまして引き金を引くとその瞬間、周囲に無数のガンガンハンドが出現し、迫りくるライオトルーパー達を撃ち抜いていった。
やがて殲滅されたライオトルーパー達を前に、パーカーゴーストから解放された一人の戦士が姿を現した。


漆黒のボディに黒いパーカーを身に纏い、胸部には目玉の模様が描かれている。
一本の角を生やした頭部には白いマスクに鋭い眼のような複眼が、他の戦士よりその異質さを浮かび上がらせる。

――その名は『仮面ライダーダークゴースト』。
数多の英雄や偉人の力を集めるために命を燃やして奔走する、漆黒なる幽霊の戦士。


10000人にも及ぶライオトルーパー部隊を殲滅したダークゴーストはただ静かに佇む。
だがそこへ、静かに一人の戦士がやってくる。


黒いボディに金色のエネルギーラインが走り、腰のローブが靡かせている。
赤く大きなモノアイとΩ(オメガ)を模したデザインが施されたその仮面からは尋常じゃない威圧を感じ取っていた。

――その名は『仮面ライダーオーガ』。
命を落として復活した人類の進化種、その頂点に立つ冥府を支配せし地の帝王。


ダークゴーストの目の前に姿を現したオーガは手に持った剣型武器・オーガストランザーを構え、ゆっくりと迫る。
それに対してダークゴーストは先程のパーカーゴーストを呼び出した目玉型アイテム・ゴースト眼魂を片手に持って側頭部のスイッチを押す。

「頼みます、ムサシさん」

ダークゴーストが呼び出されたムサシパーカーゴーストは召喚されると、すぐさまダークゴーストへと装着される。

【カイガン!ムサシ!】
【決闘!ズバット!超剣豪!】

パーカーチェンジによって偉人・宮本武蔵の力を宿したダークゴースト・ムサシ魂となると、両手に持った可変型武器・ガンガンセイバー二刀流モードを構えて、オーガ目掛けて走り出した。

「「ハァ!」」

ダークゴーストとオーガ、一度目の死してなお蘇った二人のライダーが刃を交えた。
ぶつかり合う二つの刃から発生した余波は辺りの遊園地の器具を破壊していく。



己の誇りをかけて、命をかけて、ぶつかり合う仮面ライダー達。
幾多の仮面ライダー達がこの世界に存在し、死闘を繰り広げていた。

終わりなき戦いが今もゼノアースで広がり、先の見えない暗闇が未来を閉ざす中で……。


闇を裂いて光で未来の道へ切り開くのように、"一人の戦士"がライダー達の前に現れる。



――某所。
日本の中心であるこの都市には、何万人にも及ぶ住民が人の営みを育んでいた。
アスファルトで舗装された黒く硬い道を100人を優に超える通行人が歩き、それぞれの目的地へと向かっていく。
ある者は友人と語り合いながら、ある者は仕事を果たすべく、ある者は久方ぶりの休みを満喫するべく。
まるで北海の荒波の如く人が行き交うその裏で……迫り来る影があった。

『ケケッ』

「ひぃ、ひぃ、ひぃ!」

一人の幼い少年が何者かに追われている。裏路地に響き渡るその足音が異形の人影を呼び寄せていると知らずに。
少年は躓き、その場に転ぶ。

「あいたっ……ててっ、はっ!?」

迫り来る異形の怪物達が、少年へと狙いを定める。
その光に映し出された影が不定の形となって実体化したようなその異形は少年の命を駆らんと、その手を伸ばした。

「助けてっ!!!」

少年が叫んだ声は路地裏に響き渡った。
異形の影が伸ばしたその手が少年の喉元をかき切らんとした……その時だった。
――異形の影の手の掴んだ者が現れたのは。

『ケケッ!?』

異形の影が見ると、そこにいたのは漆黒の戦士。
昆虫を模した複眼となった緑色の双眸がギロリと睨みつけると、戦士は握っている方とは別の空いた手を拳として握り締めて、鉄拳を叩き込んだ。
異形の影は断絶魔を上げることもなく、その場で霧散。
漆黒の戦士は殴った手をプラプラと振りながら、仮面で隠した口元で呟いた。

「どうやら哀れな亡者が人間襲ってるようだな。こりゃ大変と言うべきか、楽しみというべきか」

戦士は自虐じみた言葉でそういうと、少年の方へ振り向く。
少年は先程起きた一瞬の出来事を目の当たりにして動けないようだ。
名も知らない彼の様子を見た戦士は、誰に言うわけでもなく、しかしその耳に届くように言葉をこぼした。

「今の事は、悪い夢だと思って忘れな。じゃあな」

そう言いながら少年を残して漆黒の戦士は去っていく。
気が付けば、まるで最初から何もなかったかのような裏路地の光景が続いていた。
そう、自分を襲うとしていた異形の影も、自分を助けた謎の戦士の姿も最初からいなかったように。


 

 

Capture:01 ~皇帝ライダー、出陣~

 
前書き
 多くの仮面ライダー達が戦いあい争う融合世界群ゼノアース。
ある者は同じ神々の名を持つライダーと刃をぶつけ。
ある者は不可視の速度で走り抜け。
ある者は奇しくも死してなお復活した者と対峙し合う。

そんな血で血を洗う異世界にて、新たなるライダーが参戦しようとしていた。 

 
 東京、とある人混みの中。
そこでは自らの素顔を灰色のフードで隠したその人物は周囲の人達とは異なる雰囲気を身に纏っており、口を一切開かずに自身の歩みを進める。
その最中で見つけたのは、人気がなさそうなとある裏路地。人の目を気にしながらそこへ足を踏み入れると、小走りに去っていく。
やがて通りかかる人の姿がなくなった所へ辿り着くと、フードの人物は上を見上げて地面を蹴り上げた。

「よっ、と」

自分の身長を優に超えるほどの脚力で建物同士の狭い壁を足場にジャンプし、上空へと駆け上がる。
まるでアクションゲームのキャラクターのように飛び上がると、近くのビルの屋上へと辿り着く。
上手く着地すると目深に被っていたフードをとってその素顔を晒した。

「窮屈すぎて嫌だなぁ、この街……いやこの世界って言った方がいいか」

そこから露になったのは短く整えた金髪の幼げな少年の顔。
その童顔な年若い少年という印象が強いが、彼の眼に宿る強い光が年相応には見えない。
その青年――『レクス・ルーファス』は街の光景を見ながら、自身が思った事を口にする。

「さーて、何処かの仮面ライダーが戦っていないだろうか」

レクスはこの世界に何処かにいるであろう"仮面ライダー"達の存在を探るため、目を瞑ってその気配を探る。
最初に聞こえてきたのはビルの下の街を歩く人々の多くの歩く足音、他愛もない話、聞きなれた雑音。
そして次に聞こえてきたのは、誰かが争う喧騒だった。
それも一般人がやるような普通なものではない。何かを焼くような熱線、物体を斬り落とす斬撃音、そして骨をも砕く勢いを秘めた打撃音。
尋常ではないほどの喧噪の様子を文字通り耳にしたレクスはニヤリと笑う。

「おっ、早速やってるねぇ。んじゃあ向かいますか」

レクスは自分が見つけた喧噪の正体を確かめるために、足を屈伸させた後、助走をつけて走り出す。
ひしめき合う建物と建物の間を飛び越えて、目的の場所へと向かっていく。


「頼むぜ、お目当てのいるといいけどなぁ! よっとぉ!」


まるで空を飛ぶように駆け抜けるレクス。
彼が目指すその場所は、仮面の戦士達が巡る一つの戦火が今上がっていた。


~~~~


場所はとある港。
太平洋から運ばれてきた大きなコンテナが周囲を囲むその場所は、ライダー達によって戦いの舞台と化していた。

最初にぶつかり合っていたのは、二人の仮面ライダー。
拳と蹴りによる激しい格闘戦を繰り広げた後、二人は距離を取って相手を見据えた。


一人は漆黒のアンダースーツの上から黒い鎧を身に纏った龍を模した仮面の戦士。
腰部の銀色のベルトには龍のエンブレムが刻まれた黒いカードデッキが装填されていた。

その名は、『仮面ライダーリュウガ』。
鏡の中の世界・ミラーワールドにて死闘を繰り広げる黒き龍の騎士。


一人は黒いボディに紫色の煌く装甲を身に着け、後ろの腰部からはマントが靡いていた。
頭部は指輪の宝石のように輝いており、その手には紫色の宝石が嵌められていた。

その名は、『仮面ライダーダークウィザード』。
かの"指輪の魔法使い"と同じ容姿をした謎に包まれた黒い魔法使い。


二人の仮面ライダーは接近戦だけでは決着がつかないと判断すると、それぞれのアイテムを取り出す。
リュウガはデッキから引き抜いたカード・アドベントカードを左腕の手甲型召喚機・ブラックドラグバイザーへと装填。
ダークウィザードは右手に嵌めた指輪・ウィザードリングを自らの変身ベルト・ウィザードドライバーへと翳す。

【STRIKE-VENT】

【チョーイイネ! スペシャル・サイコー!】

リュウガは右腕につけられた龍の頭部を模した武器・ドラグクローを構えると、同時に相棒である竜型の契約モンスター・ドラグブラッカーが出現し、その口からは炎が噴き出しはじめる。
対してダークウィザードは前方へ片手を向けると魔法陣が生まれ、そこから勢いよく炎が噴き出そうとする。
そして両者は同時に燃え盛る火炎を放った。

「タァァァァァ!」

「はぁっ!!」

リュウガの放った『ドラグクローファイヤー』と、ダークウィザードの魔法『スペシャル』を用いた火炎攻撃。
炎と炎、ぶつかりあう熱量が二人のライダーへ襲い掛かる。
奇しくも竜という力の源にしている両者の炎は場所が場所なら余りある熱量が余波となって一般人へと襲い掛かりかねない勢いで、この場に人がいなかったのが幸いだ。
お互いを焼き尽くさんとする勢いで炎を繰り出す二人……だがそこへ、水を差すかのように一人の戦士が乱入する。

「――ハッ!!」

「「!?」」

リュウガとダークウィザードへと襲い掛かるのは強烈な突風。
変身した状態でも耐えられないほどの風力が二人を襲い、重いコンテナすら容易く揺らぐ。
そこに現れたのは一人の仮面ライダーだった。


深紅と黒のボディという古代ギリシャの彫像のような美しさを印象付けるその姿。その背中には一対の鳥の翼が広げていた。

その名は『仮面ライダーイカロス』。
悪意と邪悪な意思によって進化した宇宙(ソラ)より舞い堕ちた英雄。


両翼を広げたイカロスは地面へと着地すると、強風に煽られて態勢を崩れたリュウガとダークウィザードへと襲い掛かる。
イカロスが振りかざしたパンチをリュウガはいなして回避し、両者の格闘戦へと発展する。
振りかざされるイカロスの連続パンチを手ではじき、時には躱し、お返しと言わんばかりにドラグクローによる打撃を放つ。

「ハァッ!!」

「フンッ!」

イカロスは背中の両翼を展開し、盾としてドラグクローによる一撃を防ぐ。
あまりにも鉄壁な硬度を誇るその両翼にリュウガは驚き、イカロスは反撃へ移そうとする。
だがそこへ、イカロスにとってもリュウガにとっても意外な伏兵が仕掛けてきた。

【コネクト・プリーズ】

「そのまま耐えて!」

ダークウィザードが叫んだと同時に、空間を繋げるコネクトの魔法によって呼び出した銃剣型変形武器・ウィザーソードガンを構えてその引き金を引いた。
放たれた銀色の銃弾は不可思議な軌道を描いてイカロスの両翼をくぐり抜け、吸い込まれるように被弾した。
イカロスの体から火花が飛沫のように飛び散り、その体を揺らがせる。

「ぐぅっ!?」

「ここだッ!!」

リュウガはドラグクローを嵌めている拳に力を込めてイカロスを突き放した。
数メートルまで引き剥がされたイカロスは両翼を広げて攻撃を仕掛けようとする……だが、そこへ獣のような咆哮が聞こえてきた。
驚いたように急いで振り向くと、そこには長い体をうねらせる黒い竜の影があった。

『ギャォオオオン!』

「貴様ッ! ぐぅ!?」

黒い竜――ドラグブラッガーの口から放たれた黒い炎がイカロスへと飛び掛かる。
咄嗟に両翼で炎の直撃を防ぐが、火炎を浴びた箇所が次第に石のように硬くなっていく。
しまった、と気付いたときには時すでに遅し……ドラグブラッガーの火炎が全身を包み込み、やがて硬直化した。
やがて大きな鉱石のように拘束されたイカロスを見て、リュウガはダークウィザードに向かって一言呟いた。

「どうやらおれ達だけの戦いどころじゃなくなったな」

「……うん」

「お前を信じたわけじゃないが、さっきの借りだ。場所を移して仕切りなおすぞ」

「ええ。でも、次は手加減しない」

ダークウィザードとの数少ない受け答えをすると、リュウガはダークウィザードと共に港のコンテナ置き場から去ろうとする。
だが、そこへ彼ら二人に追い打ちをかけるように、何者かが銃の乱射による襲撃をかけてきた。

「「ッ!?」」

「ダメじゃないですか。『やることあるならちゃんとやらないと』ってお母さんから言われなかったんですか?」

まるで子供を叱るような言葉と共にやってきたのは、漆黒の戦士。
全身黒一色のボディに加え、腰部には二本の黒い小型ボトルが装填された回転レバー付きベルト、戦車の模った双眸の複眼が二人のライダーを見ていた。
黒い仮面ライダーの手にはガトリング銃武器・ホークガトリンガーをを構え、引き金を引いた。

その名は『仮面ライダーメタルビルド』。
輝く未来を創造した自意識過剰な天才な英雄(ジーニアスヒーロー)とはかけ離れた、漆黒に塗りつぶした世界を造り出す鋼鉄の戦争兵器(ウォーメイカー)。

激しい銃撃音と共に襲い掛かる銃弾。
リュウガはダークウィザードを突き飛ばしつつ咄嗟に避けると、舌打ちしながら悪態づく。

「チッ、次から次へと!」

リュウガはベルトに収められたVデッキからアドベントカードを引き抜くと、ブラックドラグバイザーに装填する。

【GUARD-VENT】

何処からともなく現れた竜の胴体を模した盾・ドラグシールドを装着したリュウガはメタルビルドの放つ銃撃を防ぐ。
メタルビルドがリュウガに注目しているその間を駆け抜けてダークウィザードはウィザーソードガンを銃の形をしたガンモードから剣の形をしたソードモードに変えて走り出す。
向かう先はメタルビルド……目の前まで接敵すると、そのまま斬り付けようとする。

「やぁぁぁぁぁ!!!」

「あっ」

メタルビルドが気が付くのも束の間、ダークウィザードが振り下ろした刃が迫る。
ウィザーソードガンの刃がメタルビルドの首元へと迫り、勝っ切ろうとする。
だが、メタルビルドに当たる直前、何者かが防いでそのままダークウィザードごと弾き飛ばした。

「きゃっ!?」

「黒い魔法使い!? くっ!?」

メタルビルドの周囲に現れたのは、何体にも及ぶ重武装の機械人間達。
本来ならばとある重工が作った『ハードガーディアン』と呼ばれるそれはメタルビルドを守るように現れる。
メタルビルドは現れた彼らに対し嬉しそうな声を上げた。

「皆、ありがとう!よーし、あのライダー達をやっつけちゃうよ!」

メタルビルドの言葉と共にハードガーディアン達は右腕のガトリングガンを向け、そして発砲した。
一斉に放たれた銃弾を回避しつつ、リュウガと背中合わせになったダークウィザードは彼(最も素顔は知らないため性別は分からないが)に話しかけた。

「追われてしまったね」

「あぁ、状況が一変することにもほどがあるだろ」

「どうする? このままだと私達やられてしまうよ?」

「元より諦めるつもりはない。だが……どうこの状況を覆すか」

強襲してきたメタルビルドに追い詰められていくリュウガとダークウィザードの二人。
彼らがハードガーディアンの乱射攻撃をどうにか防いで凌ぐが、あれだけの機体数だ。撃ち抜かれる野も時間の問題だ。
彼ら二人に敗北と死の匂いが香り始めようとした……その時だった。


「よっ、とっ!」


――――誰かが重い鉄を蹴り飛ばすような音が聞こえてきたのは。
謎の乱入者によってハードガーディアンの一体は蹴り飛ばされ、地面に転がった。
メタルビルドは倒れたハードガーディアンを見て大きく動揺し、手に握っていたホークガトリンガーまで投げ捨てて駆け寄る。

「わわっ、大丈夫!?」

「えっ?」

「誰だ?」

ダークウィザードとリュウガはハードガーディアンを蹴り飛ばした乱入者へと注目する。
二人とメタルビルドを割って入ったのは、一人の若い金髪の青年。
その青年――レクスはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、少々芝居がかった声で話しかけてくる。

「やぁやぁ、どうも親愛なる仮面ライダー諸君。今日も元気に戦っているようじゃないか?」

突如姿を現したレクスにリュウガとダークウィザードの二人は警戒し、メタルビルドは連帯感を持っていたハードガーディアンを蹴られて戸惑っている。
彼ら三人のライダーの様子を見て、レクスは少し残念そうな表情を浮かべた。

「なんだよ、折角強敵なオレが乱入したってのに盛り上がりにかけるなぁ」

「な、なんなのですかアナタ!? あ、危ないですから下がっててください!」

ハードガーディアンを立て直したメタルビルドは動揺しているのか挙動不審な言動で怒鳴るが、レクスは鼻で笑って返した。
そして周囲を見回して現在この場にいる仮面ライダー達の姿を確認する。
傷ついたリュウガとダークウィザード、石化して身動きができない様子のイカロス、そして何体ものハードガーディアンを連れたメタルビルド。
どう見てもメタルビルドが優勢のこの状況を見て、眉を顰めたレクスは『ある物』を取り出す。


――それは、奇妙な球体上の液晶体が取り付けられた大型のバックルだった。


レクスの取り出したそれを見て、リュウガとダークウィザードは驚きの声を上げる。

「……あれは!?」

「ライダーベルト!?」

2人が驚く中、レクスは気にも留めずにそのバックル――『インペリアルドライバー』を自身の腰へと装着させる。
さらに独特な紋章(エンブレム)が刻まれた十字架型アイテム『クロイツキー』を取り出す。
クロイツキーの一つ・カイゼルキーをインペリアルドライバーに設けられた装填口へとセットする。

【Set Gaiser】

「さぁ、いくぜ……変身!」

【Armord Up】

バイクのエンジンを回すようにカイゼルキーを回すと、バイク音と共に電子音声が鳴り響く。
ドライバー中央部に設けられた液晶体部分・E-リアライザーからいくつもの光のボディアーマーが出現。
レクスの前方に人一人分の全身鎧(フルアーマー)一式が出現すると、レクスの体へと重なり合い、その姿を一人の仮面ライダーへと変貌させていく。

漆黒のアンダースーツの上に一体化したのは赤と黄色で彩られた鎧。
骸骨とも思えるほどの白い頭部へ、燃えるように赤い十字型のパーツが装着。さらにバラバラになって展開。
まるで王冠にも見えるパーツが取り付けられた後、鮮やかなグリーンの複眼が発光する。
首元に黄色のマフラーが靡くと、最後に電子音声が鳴り響く。


【The Imperial lord Descended(皇帝は降臨した)】


そこに現れたのは、新たなる仮面ライダー。
異端なこの世界に渦巻く混沌を破壊するために現れた、鎧を纏った皇帝(Kaiser)。
威風堂々を地を行くその仮面ライダーの名は……。


「仮面ライダーガイゼル。ただいま降臨、ってな」


――仮面ライダーガイゼル
かの仮面の戦士は目の前のライダー達を打ち倒すべく自ら出陣した。 

 

Capture:02 ~電撃凱旋、その名はガイゼル~

 突如現れた謎の仮面ライダー・ガイゼル。
ゆっくりと足を前に出して歩き出した彼にメタルビルドは驚愕していた。

「あ、新しい仮面ライダー!? でも、あんなシステム、たぶん見たことない……でも、私が頑張らないと!」

未知の敵性存在に動揺していたが、なんとか自分を鼓舞して立ち直ったメタルビルドは武器を生み出す。
碇のような水色のボディに電車のパーツが組み合わさったボウガン型武器・カイゾクハッシャーを手に取り、弓のように構えると"ビルドアロー号"という電車型攻撃ユニットを矢のように引き、電車型のエネルギー弾を発射した。

【各駅電車ー!】

「やぁ!」

「おっと?」

放たれた電車型エネルギー弾をガイゼルは軽く避けると、先程とは打って変わって真横へと疾走。
メタルビルドは狙いをガイゼルへと再び定め、さらに隣に立つハードガーディアンも狙いを銃口を向けて乱射する。
いくつものエネルギー弾と実弾を交えた銃撃が放たれるのだが、ガイゼルはそんなものを気にせず走り抜けていく。

「たっく危ないねぇ。妙に連携が取れているっていうか!」

メタルビルド達の銃撃を掻い潜り、近くの大型コンテナへと身を隠すガイゼル。
少しの間は銃撃を凌ぐことはできるが、相手は仮面ライダーだ。鉄のコンテナを容易くぶち抜く術などいくらでも持っている。

……まず戦いの喧騒を嗅ぎつけてやって来た時、まず見えたのは二人のライダーを思い詰めるメタルビルドの姿。
全身黒ずくめのあのライダーは多くの人型戦闘兵器を連れてやって圧倒していた。
数で押して戦うという多勢に無勢の様子に何らかの厭気を感じたガイゼル――レクスは今回の戦場へ頭を突っ込むことを決めた。

奴らの鼻っ柱を折るために、とりあえず動かなければならない……そう考えた時、カイゼルの視界に入ってきたのは一つの石化した黒い石のような何か。
先程の戦いでドラグブラッガーによって拘束された仮面ライダー・イカロスが封じられている。
それを見て何かを閃いたガイゼルは咄嗟に地面を蹴って走った。

「あれだ!」

「まちなさーい! てぇい!」

【快速電車ー!】

メタルビルドとハードガーディアンによる掃射攻撃がガイゼルへと迫る。
だがそれらを掻い潜りながらガイゼルはイカロスが封じられた石の物体へと近づくと、勢いよく殴りつけた。

「どっりゃあああああ!!」

ガイゼルが繰り出した拳と共に、石の表面は黒い炎となって砕け散っていく。
降り注ぐ炎からリュウガはダークウィザードを庇い、ガイゼルが行った行動に驚いていた。

「ぐっ、アイツ何を!?」

「――ウガァァァァァ!!」

咆哮を上げながら、砕け散った石の中からイカロスは解放されるとその両翼を広げて羽ばたいた。
イカロスから巻き起こった強風はメタルビルド達へと襲い掛かり、身動きができなくなる。

「わわわっ!?」

「邪魔をするな! オレは、仮面ライダーとしてお前達ライダーを……!」

解放されて自由の身になったイカロスは空中へと舞い上がると自身の体を回転させ、周囲の物体を巻き込みながらメタルビルドの方へと迫る。
イカロスの回転による強風によりメタルビルドは身動きが取りづらくなり、代わりに重装甲によって吹き飛ばされにくいハードガーディアンが出て来て対応をする。
混沌と化した戦況になりつつある中、ガイゼルは仮面の下でニヤリと笑った。

「どうやら狙い通りになったみたいだなぁ」

「あなたまさか、あのライダーを解放して戦いの流れを変えたの?」

ガイゼルの言葉を聞いてダークウィザードは驚きの声を上げる。
まさか敵であるイカロスを利用してメタルビルドの優勢を変えてしまうとは思ってもなかったのだ。
現にイカロスの驚異的な猛攻によりメタルビルドとハードガーディアンの連携を崩しつつある。
自分達では思いつかないような奇策にリュウガとダークウィザードは驚くが、そんな彼らの事を知る由もなくガイゼルは次なる一手に出る。

「出番だぜ、カリバー」

自信ありげに口にしながらガイゼルが取り出したのは、変身の時に使った物とは別のクロイツキー。
ガイゼルはそのクロイツキー……カリバーキーをインペリアルドライバーへと装填し、勢いよく回した。

【Set Caliber】

「鎧変身(がいへんしん)!」

【Call Up】

ドライバーからの電子音声が鳴り響くと、インペリアルドライバーのE-リアライザーから人型のエフェクトが出現。
ガイゼルの重なりあい、その姿を一本の剣を携えた紫の甲冑の戦士に変える。
紫のボディスーツに銀色の装甲を纏い、銀色の仮面をつけた頭部には剣を模した一本の角が映えていた。


【The Riding Power Caliber】


その名は『仮面ライダーカリバー』。
闇の力を以て未来を閉ざす暗黒を切り開く誇り高き暗黒剣月闇(くらやみ)を振るう剣士。

カイゼルが変身したそのライダー・カリバーは愛剣である暗黒剣月闇を構えて目の前の敵を見据える。
そして勢いよく月闇をメタルビルド達へ振り下ろした。

「いくぜぇ、とりゃああ!!」

振り下ろされた暗黒剣月闇から繰り出された黒い炎の刃がハードガーディアン達へと放たれた。
高熱を宿したその一撃はハードガーディアンの分厚い装甲を容易に断ち切り、文字通りに真っ二つにした。
共に戦ってきたハードガーディアン達が撃破された事に、イカロスと対峙していたメタルビルドは驚愕の声を上げた。

「皆ッ!? なんてことを!?」

「余所見をしている場合か!」

悲痛な声を上げるメタルビルドに対し、イカロスは風のエネルギーを纏ったパンチを叩き込もうとする。
だが当たる直前にメタルビルドの姿が掻き消えた。まるで実体のない雲を触るかのように、消えたのだ。
イカロスは周囲を見回すと、カリバーへと急いで襲い掛かるメタルビルドの姿があった。
その手には四つの漫画のコマを模した刀身を持つ刀・4コマ忍法刀をカリバーへと振り下ろす。

「てぇぇぇい!」

「おっと?」

「よくも、よくもぉぉぉぉぉ!!!」

【分身の術!】

全てのハードガーディアンを撃破されたメタルビルドは声を荒らげながら4コマ忍法刀のトリガーを引く。
するとガイゼルの周囲にメタルビルドの分身が出現。一斉に斬り付けようとする。
カリバーは刀を治めるように暗黒剣月闇を腰部の専用ホルダー・必冊ホルダーへと納め、トリガーを引いた。

【月闇居合! 読後一閃!】

「どっりゃあああ!!」

暗黒剣月闇の刀身に集まった紫色のエネルギーを振るい、分身したメタルビルドを……否、正確にはメタルビルド達がいた空間を叩き斬る。
空間が闇に包まれ、メタルビルドに囲まれていたカリバーはいつの間にかその姿を消していた。
攻撃しようとせずに一体どこに行ったんだ……と、メタルビルドが警戒していると、上空から聞こえてきたのは一つの電子音声。

【Radiat On】

「さぁて、ここからはこの姿だ! 刮目しな!」

「!?」

メタルビルドが急いで見上げると、そこにはカリバーの姿から元の基本形態に戻ったガイゼルの姿。
急降下しながらガイゼルは新しいクロイツキーをドライバーへとセットする。

【Set Release】

「その身に刻め!これが王道だ!!」

【Final Burst】

インペリアルドライバーから鳴り響いた電子音声と共に、ガイゼルの周囲に光のエフェクトで出来た道が出現。
光の道・フォトンロードはメタルビルドへと真っ直ぐ伸び、分身を含めて巻き込んでいく。
全てのメタルビルドを絡めとった後、黄色のマフラーが炎のように揺らめいて勢いよく噴出した。
まるで加速器のように勢いを増しながら、ガイゼルは足を前へと出して、そして……。


――轟音。


カイゼルの必殺の飛び蹴り『ライトロードストライク』が炸裂した。
生み出した分身が爆発する中でメタルビルドは蹴り飛ばされ、地面へとバウンドしたのちに叩きつけられた。
呻き声も上げるすらできないほどの一撃を受けて、メタルビルドはそのまま沈黙。
あと残されたのは砕け散ったハードガーディアンの大量の残骸。そして唖然と見ていたリュウガ、ダークウィザード、イカロスだけだった。
特にダークウィザードは仮面の下で目を見開いて驚いていた。

「別の仮面ライダーに変身、それにあの強さは一体……」

「分からないことが多い。だがただものじゃない事は確かだな」

ダークウィザードの言葉を聞いてリュウガは答える。
二人は次が自分がやられるかもしれない、と思いながら何時目の前に立つガイゼルが襲い掛かってもいいように身構えている。
それはイカロスも同じようで、手から生み出した風の渦をいつでも叩き込めるように力を溜めている。
三人を見てガイゼルは上手く着地した後、何かリアクション起こす様子もなく、ただじっと見つめるだけ。
三者三葉の様子を見せる中、暫しの静寂が流れる。
だが、一同の間に流れていた静寂は意外な増援によってすぐに破られた。

「おっ、なんだ?」

「あれは、さっきの機械兵団?」

驚きの声を上げるガイゼルとイカロス。
そこに現れたのは、ハードガーディアンとよく似た機械兵達。
『ガーディアン』と呼ばれるそれはガイゼル達ライダーへ武器の機関銃で攻撃し始める。
降り注ぐ銃弾をイカロスは両翼で防ぎながら、疑問符を浮かべる。

「何故今になって増援がやってきた?」

「さぁてね、失いたくないんだろうさ。あの硬そうな真っ黒クロスケをさ!」

「チッ、決着は次の機会だ!」

イカロスは舌打ちを打つと、上空へと逃げて去ろうとする。
――だが、そこへイカロスの耳に聞こえてきたのは……メタルビルド、正確にはその変身者の悔しそうな声だった。

「そんな……私、負けちゃった? お母さんとの、約束が……」

その思いがけない内容の譫言のように呟くその声にイカロスは難色を示すと、両翼を羽ばたかせて上空へと舞い上がった。
メタルビルドの……その変身者は、嫌に思えるほどに澄み切った青空を見上げる事しかできなかった。


その一方、目に見えぬほどの速度で離脱していくイカロスを背にしてガーディアンがこちらへと攻撃をする状況は続いていた。
ガイゼルは自身の首から長く伸びたマフラーを振るい、降り注ぐ銃弾を叩き落とすとリュウガとダークウィザードへ声をかける。

「じゃあな、お二人さん!」

リュウガとダークウィザードを背にして逃げるガイゼル。
謎の仮面ライダーの事も気になるが、ここは逃げるしかないと思ったリュウガ達の方もその場を撤退。
その場には残されていたのは、仮面ライダー達が戦った戦闘の痕跡だけだった。


――彼らの光景を、いくつもの戦士が遠くから見ていたのであった。 

 

Capture:03 ~邂逅、戦士達~

 様々な仮面ライダー達が己の信念と目的の為に戦いあう世界・ゼノアース。 
苛烈を極めるライダーバトルの中で、謎に包まれた新たなる仮面ライダー・ガイゼルが姿を現した。
その圧倒的な力と策略の前に他のライダー達は圧倒されてしまう。
ガイゼルの目的とは、ダークライダー達の戦いの行方は。一体なんのために戦うのか。


―――何処かの森。
何十体もの怪人達を相手に二人の仮面の戦士が背中合わせで戦っていた。
どちらも刀剣型の武器を構え、襲い掛かる怪人達を断ち切っていた。

「たっく、人気者はつらいねぇ。千両役者ともなるとこうも魔化魍やそれ以外の奴らまで来るとはな」

片や緑と赤のアシンメトリーな外見を持つ派手な姿をした鬼の戦士。
腰部には腰マントを生やし、太鼓のようなバックルを取り付けており、いかにも豪華絢爛さが伺える。
手には音叉が変化した一本の刀が握られていた。

――その名は、『仮面ライダー歌舞鬼』
戦国から受け継いだ音撃の道を繋ぐ現代に生きる歌舞く鬼。

「お前が退治する魔化魍と違って、ファンガイアは知性も文化もある……それでも人を襲う奴らはいるがな」

片や黒と赤の鎧に彩った分厚い鎧に身を包んだ異形の戦士。
まるで吸血鬼とも皇帝とも思えるその威風堂々とした姿には畏怖がかった雰囲気を漂わせる。
片手には月のように白く光る刀身を持つ両手剣が握られていた。

――その名は、『仮面ライダーダークキバ』
古の時代から生きる吸血鬼の一族を支配する闇を統べる皇帝。

二人の仮面ライダーは襲い掛かってくる怪人達へ向けて、刃を振るう。
歌舞鬼は妖怪伝承の大元とも言える魔物・魔化魍の一体である"テング"へと刀・音叉剣で斬り付けて倒していく。
ダークキバは同族でもある吸血鬼・ファンガイアが迫ってくると迎え撃つ形で愛剣・ザンバットソードを振るって一刀両断。
それぞれ人間ならざる怪人達を倒していく二人……本来、仮面ライダー同士である二人は戦う運命を定めつけられている。
だが今は……。

「その首、もらい受けるぞキング!」

「ッ!」

ファンガイアの一体が自身の体から作り出した剣でその首を狙って振り下ろされる。
別の相手に気を取られていたダークキバは身動きが取れず反撃ができない形で首を狩られようとしていた。
だが首に当たろうとしたその瞬間、剣を持っていたファンガイアへと何かが直撃。

「ぎゃふっ!?」

「ああ悪い、手が滑った」

歌舞鬼が悪びれる様子もなく気持ちの籠ってない謝罪を口にする。
ダークキバがよく見ると、ファンガイアの顔面に円盤型アイテム・ディスクアニマルが直撃しており、それによって地面へと倒れてしまう。
抜け目がない彼の行動に少し驚きつつも、目の前の敵を断ち切った後にダークキバは見やる。

「……お前」

「おーっと、王様相手に失礼でございましたか?」

「……」

ダークキバは無言のままザンバットソードを持つ手を上げると、そのまま歌舞鬼へと向ける。
何を考えているのか、と一瞬驚く歌舞鬼を他所にダークキバは握る力を強める。
その瞬間、歌舞鬼の背後に迫っていた(・・・・・・・・)怪物……樹木と貝殻で出来た体でできた壁のような魔化魍・ヌリカベを巨大な紋章で拘束する。
ダークキバだけが使える"キバの紋章"によって身動きできなくなったヌリカベを見て、歌舞鬼は言葉を漏らす。

「おっとぉ、凄まじいねぇ」

歌舞鬼はチラリとダークキバへ視線を向ける。
対してダークキバは襲い掛かるファンガイア達へ赤い斬撃を振りかざしながら、歌舞鬼へ言葉を紡いだ。

「先程の借りは返した」

「へへっ、感謝感激雨霰だよ。王様ァ!」

歌舞鬼は足に力を込めて、一気に地面を駆け抜ける。
緑と赤を交えた一つの影が通り過ぎ、ヌリカベの目の前へと辿り着くとそのまま音叉剣を振り上げた。
――一閃、その振り上げた刃が見事にヌリカベを叩き斬る。
まるで鋏で切られた紙の如く真っ二つになったヌリカベは爆炎と木の葉を撒き散らしながら消滅していく。

その様子を見ていたダークキバはザンバットソードを掲げる形で両手で構えると、腰部のベルト・キバットベルトに収まった蝙蝠型モンスター・キバットバット二世にその刀身を噛ませた。

『ガブリッ、ウェイクアップ!』

「――絶滅・ザンバット斬!!」

ダークキバが叫ぶと同時に彼の周囲にいくつものザンバットソードが出現。
無数にも及ぶザンバットソードは夜空を駆け抜ける流星群の如く敵対者へと貫いていく。
それはファンガイアでも、魔化魍でも、関係なく降り注ぐ。
容赦のない死への鉄槌が異形の怪人達へと下された……やがてそこには砕け散った硝子の破片と、串刺しになった瀕死の魔化魍がいた。
ファンガイアならまだしも、清めの音でしか浄化できない魔化魍でも先程の一撃は強烈だったらしく今すぐに身動きができない。
そこに追い打ちをかけるように、歌舞鬼が仕掛ける。

「音撃打・豪火絢爛!!」

歌舞鬼の展開した音撃鼓に目掛けて一対の鬼の頭がついた撥・音撃棒烈翆が叩き込む。
音撃鼓から発せられた清めの音が周囲に広がり、息も絶え絶えな魔化魍達へと炸裂。
穢れた大地で作られた土塊の身体を打ち壊していく。

そうして歌舞鬼とダークキバ、二人の『鬼』は自分達が狩るべき異形を倒していく。
魔化魍とファンガイアという怪人達の成れの果てだった破片が散らばる中、二人の戦士はその素顔を晒した。

「おーおー、結構派手にやっちゃったねぇ。俺達」

歌舞鬼が変身を解くと、長しの着物を纏った黒髪の美丈夫が姿を現した。
肩まで伸ばした漆黒の髪色に赤い瞳が特徴的な青年――『夜鳥神威』はニヤリとダークキバだった男に視線を向ける。
対してダークキバがいた場所には、西洋の騎士を思わせる服装を纏った若い青年が立っていた。
金髪をオールバックに整え、ギリシャ神話の胸像を思わせる美貌を兼ね備えた青年……『キング』が冷静な面持ちで視線を向けた。

「まさか互いの戦うべき敵と相対するとはな……言いたくはないが、俺達も災難な事だ」

キングは足元にあったファンガイアの亡骸ともいうべきステンドグラスの破片を握り、光に透かすように眺める。
例え自分に歯向かった反逆者であれ、同じ種族の同胞に思うところがあるのだろう。
神威はそう思いながら、キングへ気軽に話しかけた。

「で、どうするんだい? 仕切りなおしてやるかい?」

「いや、興がそがれた。お前との決着は別の機会にしよう」

「へぇ、そうかい……で、聞いたか?例の皇帝ライダーの話」

「皇帝ライダーか」

キングは神威との会話で出た『皇帝ライダー』という名前を聞いて、同じ言葉を口に出す。
巷のライダー達が口にするその【謎の仮面ライダー】についての噂は神威とキング、二人のライダーの耳にも届いていた。
その他ライダーを一閃敷く無敵の強さは轟いてはいる……一体その正体が何なのか、少なくとも神威は気になっていた。

「いやぁ、しっかし物好きだよなぁ。基本争い合うしかないライダー同士なのによ」

神威は土塊の山の上へと座ると、呑気そうな様子を見せる。
そんな彼に対してキングはその美形な顔を向けて、神威へ訊ねた。

「そう言えばお前は何故、命を懸けて戦う?」

キングの質問を聞いて、神威は少し思案する。
そして考えた後に神威は面倒な表情で答えた。

「あー、そうだな……売られた喧嘩は買う主義だが、できるなら平和に暮らしたい」

「ほう……オレも似たようなものだな。天下泰平の世、それが俺の目指す覇道だ」

キングは神威が口にした言葉を聞いて、自分自身の掲げる覇道を告げた。
その顔は先程のぶっきら棒な表情を比べて柔らかく見えた……堅苦しい王様という印象を若干変えていく。

そうしていると、どこからか龍のような嘶く声が空から聞こえてきた。
そこには西洋風の城から龍の頭と翼が生えたような外見を持った、建物とドラゴンが融合した怪物が空を飛んでいた。
キングの根城・キャッスルドランの光景を見て、キングは神威へ背を向けて去ろうとする。

「貴様との決着はいずれつける。それまでにくたばるな」

『行くぞ、キング』

傍らに飛び回るキバットバット二世に言われ、キングは地上へ降り立ったキャッスルドランの元へと向かう。
その様子を見て、神威はニヤリと笑い返した後、待機状態のディスクアニマルを拾い上げ、自分も何処かへと去っていった。


~~~~




日本近海、とある名も無き小島。
真白い月夜の荒れ狂う波が海岸の岩場に激しく打ち付ける中、そこに一人の仮面ライダーの姿があった。
――仮面ライダーポセイドン、つい先日仮面ライダークロノスと激闘を繰り広げていた仮面の戦士、その一人である。

「……」

先刻の戦いも記憶に新しいはずの彼は座り込んで次の相手が来るのを待っていた。
戦いの中で生きる欲望の化身は餓えた我が身を満たすために、静かに強者が来ることを待ち望んでいた。
そんな彼の元へ、一つの白い影が舞い降りる。

「ん……今度は誰だ?」

ポセイドンが仮面に覆われた顔を振り向くと、視界に写ったのは一体の仮面ライダー。
全身白いボディ、背中から靡かせる漆黒のマント、腰部にはUSBメモリ型アイテム"ガイアメモリ"が装填されたベルト・ロストドライバー、そして黄金色に光る双眸の複眼と『E』を模した三叉の角。

――その名は『仮面ライダーエターナル』。
26をも地球の記憶(ガイアメモリ)を有する白い死神。

エターナルはポセイドンへ首を上げると、男とも女ともどちらともとれるような声で口を開いた。

「アナタが仮面ライダーポセイドン、でいいのかな?」

「そうだが。で、テメェは強いのか?」

「どうだろうね……でも、少なくとも自分は弱くはないと思う」

ポセイドンの投げかけてきた問いにエターナルは受け答える。
その手には専用武器であるメモリスロットが設けられたナイフ・エターナルエッジを指で回している。
エターナルの様子から見て、ポセイドンは感じ取ると立ち上がって愛用の武器・ディーペストハープーンを構える。
戦う気満々の様子のポセイドンにエターナルはエターナルエッジによるナイフ捌きを止めて、その鋭い刃を下した。

「待て、自分は戦いに来たわけじゃない」

「なんだ? 戦わないのか? 命乞いだけはするなよ。時間の無駄だ」

『何故だ』を体で表現せんとする勢いでポセイドンはディーペストハープーンの矛先をエターナルへ向ける。
今にも飛び出して交戦する気満々の相手にエターナルは冷静に言葉を紡ぐ。

「世間に疎い神様気取りのアナタに死神からのお知らせ。皇帝ライダーが姿を現したよ」

「……なんだと?」

興味を持った様子なのか、ポセイドンはディーペストハープーンの刃を下げる。
かの噂の皇帝ライダー・ガイゼルの噂はポセイドン自身の耳にも聞き及んでおり、そのたぐいまれな強さは自分の欲望を満たすには十分なほど相手だと感じている。
いつもなら人の話など聞く耳を持たないはずの孤高の戦人(いくさびと)の意外な様子を見て、エターナルは仮面の下で感心した表情を思い浮かべる。

「どうやら彼、リュウガとダークウィザードを助けたみたいだ」

「ほう、このライダーバトル盛んな時代に他のライダーを助けるとはな」

「興味がわいたかい? 皇帝ライダーに?」

エターナルから告げられた言葉を聞いてこちらも仮面の下で好奇心が抑えきれない様子。
……元々生物達の欲望の結晶であるコアメダルを用いた仮面ライダーゆえか、自身の身に宿る欲望を抑制しきれてない。
ポセイドンの変身者が抑えるどころか、欲望という波の流れに身を任せて戦闘能力へ昇華させているから何らかの暴走といった不具合はない……とエターナルは今まで集めた情報を考えて推察している。
そして、ポセイドンは荒波を打ち付ける夜の海の光景を見ながら、仮面の下でニヤリと笑う。


「戦ってみたいものだ。仮面ライダーガイゼル」


「お前は、オレを満たしてくれるのか?」


仮面の下でにやりと嬉しそうな笑みを浮かべるポセイドン。
それがまだ見ぬ強敵と戦える歓びなのは明らかなほど、彼の笑い声が海岸の岩場で木霊していた。
狂喜するポセイドンの姿を見て、エターナルはただ静観するだけ。

「……」

エターナルがふと見上げると、そこで目に写ったのは真白の月。
まるで穢れを知らない真珠の宝石のように純白の光の照らすそれを見て、エターナルはただ静かに佇んでいた。



~~~~



世界は巡る。世界は回る。
変わらぬ仮初の平穏を、その裏で起きている非日常、終わりの知らない闘争を。
だが、それらをひっくり返すべく、動き出したものがいた。

――それは、闇から這い出てきた仮面をつけた異形だった。
歪な形の冷たい体、牙をむいた口、人ならざる虫のような複眼。
仮面ライダーによく似た、しかし決して仮面ライダーならざる存在である異形の怪物はおどろおどろしい声を発した。


「スベテノ 仮面ライダー 二 死 ヲ」


大いなる闇を抱いた『ソレ』が仮面ライダー達の前に現れるのは、そう遠くない。